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夢を見ていた。 故郷ラ・ヴァリエール家の領地内にある屋敷の、誰も寄り付かない中庭の池にある『秘密の場所』。そこはルイズが唯一安心出来る場所。 幼い頃、叱られるとよくここに来て、たった一艘浮かべられている小舟の中に隠れた。 夢の中の幼い私もその小舟の中に隠れていた。 しばらくするとマントを羽織り、つばの広い帽子を被った『彼』がやってきた。 「ルイズ、泣いているのかい?」 『彼』は夢の中の自分に優しく声をかけた。 「可哀相に…また怒られたんだね…。」 『彼』とは領地が近くにあったことから晩餐会を共にしたこともあり、また父と彼の交わした約束もあって、会う度によく会話したものだ。 幼い頃も、そして会わなくなった今も紳士的だった『彼』は私の憧れだ。 「僕の可愛いルイズ。ほら、僕の手をおとり。もうじき晩餐会が始まるよ。 ……安心して。お父上には、僕から取り直してあげる。」 …今思えばかなり陳腐で芝居がかった言葉である。多分今同じ事言われたら「キモい」と言ってしまうだろう。 それでも夢の中の幼い私は立ち上がると、差し出された彼の手を握ろうとした。が、その時、いきなり足元がぐらついた。 「!?」 私は思わずしゃがみ込んだ。何故ぐらついたのか分からなかった。舟の揺れが収まってから立とうとしたが、立てなかった。違う、身体が怠くて動けないのだ。だんだんと睡魔が襲って来た。 私は助けを求めるように彼を見たが、いつの間にか手はひっこめられ、彼は彼じゃ無くなっていた。つばの広い帽子をしていたが、マントが無くなり、全身が真っ黒だった。しかし、何故かそれをどこかで見た気がし、同時に頭が淋しい気もした。 結局夢の中の私は眠気に耐え切れず、舟の中で眠り込んでしまった。 「はう!」 目を覚ますと学生寮の自分の部屋にいた。 「夢か…って何で夢の中でまで寝るのよ。」 私は自分の頭を触った。…よし、髪はある。 「やっと起きたか。」 ポルナレフがベッドのすぐ側に立っていた。洗濯から帰ったばかりらしく(どこでやってるかは知らないが)籠を持っていた。 「…なんか嫌な夢見たわ。いきなり憧れの人が帽子を被った真っ黒い人影みた…「それ以上言うなッ!」!?」 ポルナレフはそう叫ぶと籠を取り落とし、その場にうずくまった。また何かのトラウマに触れたのだろうか?それにしてもこいつってトラウマが無駄に多いわね。若い頃何やってたのかしら? 「言わないでくれ…あそこはああするしかなかったんだ。さもなければやつに、ディアボロに矢を…」 もうなんだかよく分からない。完全に頭の中がどっかにトリップしているらしい。 「ほら立ちなさい。もう言わないから。誰も責めてなんかないわよ。早く朝ご飯食べにいきましょ?」 ポルナレフは泣きじゃくりながら頷くと私の後についてきた。この姿をあのシエスタとか言うメイドやキュルケが見たらどう反応するだろうとか考えつつ外に出るとほぼ同時にキュルケが部屋から出て来た。 「あら、おはようダーリン。」 とだけ言うとキュルケは私を無視してポルナレフに抱きつこうとした。いつものようにポルナレフは避けると私を指差した。 「なんだ、いたの。いろいろ小さくて全然気付かなかったわ。」 「ちょい待ち。いろいろも気になるけど、こいつの情けない顔見て何も…」 振り返ってポルナレフの顔を見ると普段と全く変わらない落ち着いた表情をしていた。 「何も…やっぱりダンディねぇ…」 キュルケが頬を赤らめる。 いや、それより何でもう元に戻ってんの? 「レディに情けない顔など見せられん。」 「私はレディじゃないのかしら?」 私はにっこり微笑みながらポルナレフの股間を蹴り飛ばした。 今日は何となくルイズに着いて行き、授業を受けることにした。股間の痛みも収まってきたし、気分転換にはちょうどいいだろう。 教室のドアを開け入って来た教師は黒い長髪に黒のマントと全体を黒で統一したスネイプもどきの男だった。 「では授業を始める。知っての通り私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ。」 疾風ということは風のメイジか。 「さて、最強の系統をご存知かな?ミス・ツェルプストー」 「『虚無』じゃないんですか?」 「伝説に…」 この時点でもう聞く気になれなかった。どうせギトーは「風が最強だァーッ!」と言うだけだろう。 土が金属を作り、火が生活のための火を起こし、風は舟を進ませ、水は治癒に関する。つまり優劣等無いはずだ。あるとしても虚無だけが別格といった所か。 ましてや大人と子供では格差というものがある。それを考慮すればあのギトーがキュルケをみせしめにした所で意味は無い。生徒の不満を呼ぶだけだ。 そこまで考えると寝る体勢に入った。どうせ自分は使い魔の平民だ。起こされることはあるまい。 「…残念ながら試したことは無いが、我が風は『虚無』すら吹き飛ばすだろう。…貴様寝ているなッ!」 右手で顔を隠し、左手を半分開け人差し指だけをピンと伸ばし指差してきた。面倒だな… 「生憎俺は生徒じゃなく使い魔なんでな…」 「だからといって寝る奴がいるかッ私が講義しているのにッ!自覚をもたんかッ!」 少しむかっとした。お前よりは人生経験は豊富だぞ。若造が。 「講義?まさか生徒一人吹っ飛ばして『風は最強なんだ。風のメイジは最強のメイジなんだ!』とか自慢することが講義な訳はあるまいな?そうだったら余りにも大人げ無いぞ。」 タンカを切ってやった。生徒達がどよめく。 「おいおい、あの平民頭大丈夫か?」 「まあ、あの『ゼロ』の使い魔だし。」 「さすが平民!俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ!そこに痺れない!憧れないィ!」 「大人げないだと…?」 わなわなとギトーが震え出した。そしてどよめいていた生徒達は一気にシンとなり、心配そうに自分とギトーを交互に見た。 「ああ。子供と大人じゃ場数が違うからな。」 ルイズが「やめなさい。殺されるわよ。」と言ってきたが無視する。 「ほう…なるほど、つまり君は自身が痛い目に逢わないと私の言う事が分からないのだね?使い魔君。」 ギトーが杖を構える。多分もう詠唱し始めているだろう。 「貴様も前のギーシュと同族か?やれやれ、反吐がでる…」 立ち上がって机に立て掛けていたデルフリンガーを引き抜き臨戦体勢に入る。トライアングルメイジ相手だ。容赦せずチャリオッツも使ってもかまわないだろう。 ここまで来るとさすがのルイズも「勝手にしなさい。」とそっぽを向いた。 じりじりと距離を詰めていく。相手がまず出す魔法はエア・ハンマーか、あるいはウインド・ブレイクに違いない。 相手の方が射程が広く、シルバー・チャリオッツの剣も風で弾き飛ばされるかも知れない。だがそれを乗り越えるのが闘いの年季というものだ。もうそろそろ相手の射程に入るかな。 「エア・ハンマー!」 ギトーが叫び、身体に空気の塊が直撃する。チャリオッツを使い防御するが剣の先が飛んでしまい自分も風圧に耐え切れず吹っ飛ばされてしまったが、デルフを床に刺しその抵抗で勢いを殺す。そのおかげで壁に激突する前に止まることが出来た。 「ほう、やるじゃあないか。私の風の勢いに剣を刺して耐え切るとはね。」 ギトーが余裕のある声でそう言った。だが、『もう遅い。』 ドスッバタン ギトーの首筋にチャリオッツの剣が刺さり昏倒した。馬鹿め、剣が折れたときに首筋を狙ってやったのだ。最もスタンドが無い貴様には何も見えなかっただろうがな。 さて、後の処理はルイズに任せようか。 「ルイズ、よくやってくれた。私の失態をカバーしてくれるとはさすが私の主人だ。」 俺は振り向き、うやうやしくそう言った。ルイズが戸惑った様子を見せたが、このまま俺に合わせろと目で合図を送る。 「え?ま、まあね。私にかかればあれぐらいお安い御用よ。」 皆一斉にルイズを見た。まさかゼロのルイズが魔法を!?というような表情である。ルイズもそんな皆の態度に少し嬉しそうだ。 皆から「何をしたのか」と聞かれた時にコルベールが入って来た。 金髪ロールのカツラ、レースや刺繍によって華やかさを演出しているローブという明らかに似合わない、珍妙不可思議で胡散臭い恰好をしている。 「ミスタ・ギトー!授業などやっている場合では…なんと眠っておられるのか!情けない!生徒に居眠りを許さないあなたが自分の授業で居眠りするとは!」 …何を勘違いしたらそうなるの… 「はっ!そんな場合ではありませんぞ! …おっほん。皆さん、今日の授業は全て中止であります!」 教室から歓声が上がる。そりゃ誰だって授業が無くなったらうれしいだろう。 だが、コルベールはその歓声を押さえる様に両手を振り、言葉を続けた。 「えー、皆さん。本日はトリステイン魔法学院にとって名誉な日です。我が国に咲く一輪の華、アンリエッタ姫が急遽行幸に参られることになりました!」 教室中がどよめく。 「したがって、粗相があってはいけません。急な事ですが、今より全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。各人、正装して門に整列すること」 生徒達は緊張した面持ちで頷いた。 「皆さんが立派な貴族になったこと(この時ポルナレフはギロリとコルベールを睨んだ)を姫殿下にお見せする絶好の機会です。 御覚えがよろしくなるよう、しっかりと杖を磨いておきなさい。よろしいですな!」 コルベールの言葉に全員が重々しく頷くと学生寮のそれぞれの部屋に戻って行った。私も行こうとするとポルナレフはコルベールに目配せして「コルベールと話がある」と言って中に残った。 今更ミスタ・コルベールと話?と気になって教室のドアに耳を当てて盗み聞きしてみると中で 「このスネイプもどきがァ!てめーをこの事だけで20年は減給になるようにしてやるぜ!」 「ゆ、許して~私は…実演しただけだァーッ」 「トンチキがァ!! 俺はてめーのような長髪野郎がでー嫌いなんだ。だがな、俺達はいい奴なんだ。これから毎週2エキューずつ俺達の所に持ってこい。それから生徒から取り上げた物の半分もだ!」 …二人がかりでギトーからカツアゲしていた…。 後で取り分の半分を脅して上納させようかしら?そんな事を考えながら部屋に向かった。 To Be Continued...
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医療器具の使い方 ちょっとしたコツを紹介。 ヒールゼリー 小さな傷の治療をする場合は、ほんの少しでOK。 縫合箇所の消毒をするときは重ね塗りをしなければOKはでない。 縫合箇所の消毒は手術の最後であるので、一気にたっぷり使って手術時間を短縮しよう。 注射 炎症の沈静剤は、炎症の大きさと使用量が比例する。 注射器いっぱいにロードした状態で、小さな炎症なら4つ、大きな炎症は2つ治療できる。 薬を注射器にロードする際、ちゃんと薬ビンの上までポインタを移動させないとMissになってしまうので、薬ビン周辺でのロードは避けよう。 針&糸 縫合は傷口の端から端まで、全部カバーできるように範囲に気をつけよう。 縫合が傷口中央に寄るとCool判定が出にくくなる。 通常、傷口の左右2ヶ所くらいでOK。大きな傷口は左右3ヶ所。 ドレーン 特にコツはない。 レーザー 特にコツはない。 小さな患部へは当てすぎないこと。 スキャナ ルーペの場合、拡大する位置に気をつけよう。 拡大したが、看護婦が邪魔で見えづらくなることも多い。 次に拡大する場所が分かっている時は、患部が出現する前にあらかじめ拡大しておくことで、手術時間の短縮が可能。 メス 切開する場合、ラインに沿うように気をつけよう。 メスでの切開はMiss判定にさえならなければ、Coolにしかならない(?)。 ピンセット 除去した異物を回収トレイに置く際、回収トレイの底までポインタをシッカリ移動させよう。 そこでAとBボタンを離さなければMissになってしまう。 回収トレイの縁付近は危険だ。 保護テープ(Extra) 縫合した傷口に張る。 傷口の一方の端から、他方の端までカバーしよう。 傷口の若干外側あたりを狙うとCool判定になりやすい。 あと、傷口と平行に張ること。傷口に対して角度が着くとCool判定は出にくい。 カウンターショック(Extra) 指示が出てからWiiリモコンを前に突き出そう。 指示がある前に突き出していると、そこからさらに突き出す羽目に。 このゲームで一番操作性の悪い部分なので、下手に手術時間短縮は求めずに 確実に動作を行って無駄な時間を使わないようにしよう。
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「機神飛翔デモンベイン」より、二闘流&アナザーブラッドを召喚 二闘流とアナザーブラッドの本名は『大十字 九朔』となりますが 完全同名で混乱を招きますので二闘流を『九朔』、アナザーブラッドを『紅朔』と表記して分けております 汝等、虚無の使い魔なり!-01 汝等、虚無の使い魔なり!-02 汝等、虚無の使い魔なり!-03 汝等、虚無の使い魔なり!-04 汝等、虚無の使い魔なり!-05 汝等、虚無の使い魔なり!-06 汝等、虚無の使い魔なり!-07 汝等、虚無の使い魔なり!-08
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 午後 彼女は授業を終え自室に戻る最中だった。 当然カイトも一緒だ。 今日は何もなく、いい気分だった。 周りのものがあからさまに彼女に皮肉を言わなかったのである。 また、昨夜つっかえたものを吐き出したこともあるだろう。 いつもと変わらない世界が新しく見えた。 そんな感じで廊下を歩いているとメイドが突然声をかけてきた。 ルイズはその声に振り返るとそこには自分よりはるかにスタイルのよい少女がいた。 この生意気な体の女は誰? 「えと、あなた誰だったっけ?」 その問いに慌ててメイドは答える。 「え、あ!す、すいません。私はこの学院のメイドをさせてもらっているシエスタといいます。 昨日のギーシュ様の件についてのお礼をしたいのですが…」 そこまでいわれルイズは思い出した。 そうだ、あのときギーシュにひたすら謝ってた…。 話を聞くとどうやら自分の不手際を助けてくれた2人にお礼がしたいらしい。 どうか厨房まで来てくれないか、と彼女は頼んだ。 だがその誘いをルイズは断った。 「別にいいわよ。あれは勝手にやっただけの事だから」 「で、でも」 食い下がるシエスタを見てルイズはカイトを見る。 「私は休んでいるから、あんただけでも行って来なさいよ」 「…ハアアアアア」 それじゃ、と言ってルイズはその場を去った。 残されたのはシエスタとカイトの2人だけ。 彼女はルイズを誘うのを諦めたのかカイトの方を見て微笑む。 「それでは、こちらにいらしてください」 そういってカイトを連れ出そうとする。 了解したのかカイトは声を出した。 「…ハアアアアア」 ビクッ! 彼女の反応は分かりやすかった。 普通なら、「わかった」とか言う所をいきなり唸るともため息とも取れない声を出したのだ。 ルイズだって未だに慣れていない。 震えながらも彼女は声を出す。 「あ、あの。あなたは平民の使い魔なんですよね?」 「…ハアアアアア」 こればかりははっきりいって相手が悪い。 少し涙目になりながらシエスタはカイトを厨房へと連れて行った。 何度か勇気を振り絞って話しかけてみたがすべて撃沈だったと言う…。 場所は変わり厨房 待っていたのはコックとその料理長である。 「『我等の剣』が来たぞ!」 彼はうれしそうに大声で言う。 どうやら歓迎しているようだ。 「よくシエスタを助けてくれた。あの生意気な貴族がお前にコテンパンにやられた時はスカッとしたぜ」 「…ドウモ」 彼は豪快に笑う。 マルトーはカイトを無理やり椅子に座らせご馳走を持ってくる。 それを見て彼は不思議そうにそれを見る コレハナニ? 「The World」では食料などない。 仮想の世界なのだから当然だ。 だからカイトにとってそれは未知のアイテムにしか映らなかった。 ご馳走を出しても何も反応しないカイトにマルトーは不思議そうな顔をする。 (もしかしてこいつロクなもの食わされてねえんじゃないのか?) 彼はカイトが作られたモノだとは知らない。 だからカイトのことをこう曲解した。 ご馳走に反応しない→今までロクな物を食わされたことがない →主人がそうするようにした→その主人→貴族=敵! ぜんぜん違う。というか論点がずれている。 「けっ!これだから貴族ってやつは!」 だがカイトはそれを否定する言葉を出すことは出来ない。 彼がヒートアップしていくのにシエスタは気づいた。 この悪くなってきた空気をかえようとカイトに声をかける。 「あの、カイトさんって言うんですよね?これはシチューって言って…」 そういってスプーンを持たせシチューをすくわせる。 一から教えていくシエスタはまるで出来の悪い弟を見る姉のようだった。 カイトは難しそうにスプーンでシチューをすくい口に入れる。 瞬間、彼は満たされていく感じがした。 なるほど、ルイズが厨房に行けとあの日言われたのはこのことだったのだろう。 口の中の料理が彼の舌を刺激する。 以前グルメのカードを送られたときは「ナイ」と返した。 だが今なら彼は「シチュー」と返すだろう。 普通の人間なら当たり前の事が彼にとっては革命に近かっただろう。 シエスタは一心不乱にシチューを食べるカイト見て不憫に思っていた。 それほどまでにひどい物しか食べてこなかったのだろうか、と。 そして、無邪気な子供を見ているようで、かわいいとも思ってしまった。 最初は怖かった。何者も寄せ付けない雰囲気に。 でも、助けてくれた。 決闘のときは怪我をすると思った。 自分のせいで。 だけど、彼は勝った。 シエスタは微笑んだ。 いつの間にか周りはにやついている。 いつもなら顔を赤くさせ、逃げてしまうところだが、 今日ぐらいは良いだろう。 (もっと、あなたのことが知りたいです。カイトさん…) 次に来たときは自分の料理をご馳走させようと誓ったシエスタだった。 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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「プロペラ、回します!」 その一言と同時に、シエスタが真空殲風衝を放ち、ゼロ戦のプロペラを回す。 その事実に、江田島は少しだけ驚いた。まだ年端もいかない少女が、真空殲風衝を使うとは思わなかったのだ。 しかし、その目を見て納得する。外見は全く違うとは言え、確かに彼女の目は「大豪院」に連なるものの目であったのだ。 だから、江田島は 「大義である!ルイズとやら、準備は良いか?」 そう言ってルイズを見つめた。その目には、深い海のような優しさがあった。そして威厳があった。 その様子に、ルイズは一瞬言葉に詰まる。しかし、彼女はやはり誇り高いトリステインの貴族であった。 「誰に向かっていっているのよ!それよりとっとと追い払って、帰ってくるわよ!」 初対面にも関わらず、ルイズは江田島の目を見つめ返してそう言った。 その様子に江田島は大きくうなずく。おそらく彼女にとっては初めての戦場であるのだろう。その瞳にはほんの少しの恐れがあった。 しかし、それを遥かに上回る大きさの、純粋な何かがあった。 ルイズはずっと考え続けてきたのだ。自分は魔法を使えない、シエスタや使い魔達のように強くはない。 考えて考えて考え抜いた結果、今のルイズがある。 (私は貴族よ。ならば決して後ろを見せない!取り乱さない!それに……) ルイズは親友のアンリエッタのことを考える。 今の彼女ならば、自分から先頭に立つに違いない。そして敗北が決まるまで決して退くまい。 そう、ウェールズの死を告げた時、アンリエッタがそう心で誓ったのをルイズは見ていたのだ。 ならば、今のルイズは、自分がアンリエッタのためにできることをするだけである。 そんな気持ちが江田島にも伝わったのか、江田島はにやりと笑って大きく叫んだ。 「道を開けーい。ゼロ戦、発進するぞ!」 その瞬間、ゼロ戦に命が舞い戻る。 ふわりと浮き上がったとき、ルイズは興奮を隠せなかった。 そう、これほど巨体が魔法によらずして空を飛び始めたのだ。 数十年ぶりに命を取り戻したゼロ戦は、一瞬で遥か彼方へと消えていった。 その瞬間塾生達は、確かに塾長の声を聞いた気がした。 「わしが男塾第三の助っ人である!」 「むう。少し遅れたようだな。」 「王大人!」 桃が驚いて振り向くと、そこには王大人がいた。 富樫の治療はいいのかと詰め寄る桃に、王大人はにやりと笑って振り返る。 そこには、助っ人二号の肩を借りて地面に降りる富樫の姿があった。 そのことに安堵の表情を浮かべる桃達に、王大人は真剣な顔をして言った。 「それよりも、早く江田島殿を追いかけるぞ。少々気になることがあってな。」 王大人と、ルイズの使い魔達は、戦風吹き荒れるタルブの村を目指すことになった。 時は数分前に遡る。 江田島平八が意識を取り戻したとき、そこには最近行方不明になっていた一号生達の姿があった。 そのことに江田島は安堵する。そう、彼らは無事生きていたのだ。 彼らは、一様に呆けたように江田島を見つめていた。そう、まるでこれが白昼夢であるかのように。 だから、江田島は応えることにした。 「わしが男塾塾長江田島平八である!」 その言葉に、周りにいたシエスタとルイズは思わず耳を押さえてうずくまる。 頑丈に作られたはずの新男根寮すら、大きく震えていたのだ。 だが、効果は抜群であった。 見る見る内に一号生達の顔色に生気が戻る。それと同時に虎丸などは感極まって泣き出しそうな顔をしていた。 それを見届けた江田島は、桃の方を見ると声をかけた。 「状況を報告せい!」 「押忍!一号生筆頭剣桃太郎、状況を報告します。」 そして桃は手短に状況を報告した。 ここが異世界のハルケギニアであることを。自分達がこのルイズなる少女の使い魔をしていることを。 そして今は戦争中であり、この少女の手助けをしようとしていることを。 それらの言葉一つ一つを江田島はかみ締める。 桃は、意味もなく嘘を言うような男ではない。おそらく言っていることは全て真実であろう。 そう判断した江田島は、まずはルイズの方へと向き直った。 「こいつ等が世話になった。この江田島、礼を言おう。」 「え、いえこちらこそ。」 思わぬ江田島の言葉にルイズは困惑していた。 この男からは、ルイズ自身の母である「烈風カリン」から感じるものと同じものをルイズは感じていたのだ。 そんな怖い時の母と似た雰囲気を持つ江田島に頭を下げられたルイズが思わず困惑してしまうのも無理はなかろう。 そうして礼を言い終わった江田島は、ゼロ戦と幻の大塾旗を見上げる。 かつての友、佐々木武雄が己の命をかけて守ったものだ。決して粗略に扱えるものではない。 (お主の故郷を守るため、今しばらく借りるぞ。) そうして心の中の佐々木に語りかけた江田島は、先ほど話を聞いていた通りにルイズを乗せると空高く舞っていった。 「「「塾長!ルイズ!御武運を!!」」」 一号生達が敬礼をしてその様子を見送っていた。 江田島は怒りを隠そうとはしていなかった。 ギリギリと歯をかみ締める。怒りの炎の宿った目で眼下のタルブの村を見つめる。 そこにはかつて美しかったであろう平原が移っていた。 アルビオン軍は、官民の区別なくこの平原を焼き払おうとしているようであった。 (塾長。後は頼みます。) そんな時、江田島の耳に、ふと大豪院邪鬼の声が聞こえたような気がした。 そう、ここは大豪院邪鬼が、その生涯の果てに命をかけて守り抜いた地でもあるのだ。 そんな大切な場所を汚すようなやつ等を、江田島平八は許しはしない。 その時、江田島の視界の端に、敵竜騎兵の姿が映った。 「ルイズよ。あのでかぶつの前には必ず送り届けるゆえ、今しばらく辛抱せい!」 「へっ?」 まだ竜騎兵を捉えることのできていないルイズが一瞬間抜けな声を上げる。 しかし、江田島はそれを無視して急上昇を開始した。後ろから、苦しそうな呻き声が響いていた。 「三匹目だ」 そうしてブレスを放とうとした竜騎兵は己が目を疑った。 信じられない速度で敵竜は急上昇をすると、次の瞬間には自分の後ろにいたのだ。 江田島が、かつての友人坂井某から教わった必殺技『ひねり込み』である。 (ば、ばかな!) そう思った瞬間、その竜騎兵は爆散した。 ゴホゴホと咳き込んだルイズは、荒っぽい運転に文句を言おうとして思いとどまる。 そう、ここはすでに戦場であるのだ。 「右下から三騎来ているわよ。いい?絶対にわたしを『レキシントン』まで送り届けなさい!」 その言葉に江田島は不敵な笑みで応えると、続いて襲いかかってきた三騎へと逆に襲い掛かった。 天下無双江田島平八、それを止めるに足る技量が、知力が、そして何より度胸がレコンキスタ軍には足りていなかった。 そう、この男を除いては。 次々と味方が落とされていくのをワルドはじっと眺めていた。 そうして分析する。今の竜では、真正面からでは勝てない。 たとえ不意を突いても、一対一では手傷を負わせるのが精一杯に違いない。 だからこそワルドはじっと勝機を待っていた。 見渡す範囲の敵騎を打ち落とした江田島は、再度『レキシントン』へと侵攻を開始した。 しかしその時、予期せぬトラブルが襲う。 ガクン、とゼロ戦がぶれる。 「きゃあ!」「ぬう!」 かつての大戦の後、ほとんどメンテナンスされることのなかったこのゼロ戦である。 また、韻竜とすら戦った歴戦の機体でもあるのだ。 いかに魔法によって劣化をとどめてあるとはいえ、修理には限界がある。 このハルケギニアにおいて、これ程壊れかけたゼロ戦を修理しきることはできなかったのだ。 韻竜との戦いで負った損傷部からパーツが一部剥がれ落ちる。 機体が不安定そうに空で揺れていた。 その瞬間を見逃すワルドではなかった。 「勝機!」 ワルドは思わず叫んでいた。 完全無欠に思えた敵が、思わぬトラブルか何かで手間取っているようであった。 これを見逃しては、おそらく自分に勝機はあるまい、そうワルドは考えていた。 (それに) その竜の中には、ピンク色の髪をした人物が乗っていたのだ。 ならば、一緒に乗っているのはルイズの使い魔に違いない。 ワルドの左腕がうずいていた。その顔には残忍な笑みが浮かんでいた。 今、エア・スピアーがゼロ戦を襲う。 ドン! 硬い何かが機体をたたく音がする。計器が次々と警報を告げる。 ついに、ルイズは死を覚悟した。この高度から落ちて助かるはずはない。 ただ、アンリエッタの力になれそうにないことだけが残念であった。 最後にルイズは、憎き敵を見つめた。 そこには、残忍な笑みを浮かべるワルドの姿があった。 何とか機体を立て直そうとする江田島であったが、もはや機体は制御を受け付けなかった。 コクピットが爆発する瞬間江田島は、今は亡き友、佐々木武雄の声を聞いた気がした。 「やった!」 人が乗っている部分が爆発するのを確認したワルドは、思わず右手を握り締める。 あれでは乗っていた人物は生きてはいまい。 しかし、それでもまだゼロ戦は飛んでいた。 パイロットを失って、致命的な損傷を受けて、それでもまだ『レキシントン』へと飛んでいた。 往生際が悪い、そう思ったワルドは地面へと叩き落すべく、己の竜をゼロ戦へと進めた。 ドスン ワルドの耳に、何か重いものが着地する音が響いたのはその時であった。 (江田島よ。後は任せろ。) 確かに江田島にはそう聞こえた。その瞬間江田島はルイズを抱えて空へと飛び出していた。 男の、友の言葉である。二言はない。 ならば自分は眼前の露払いをするだけである。 そう考えた江田島の下に、敵竜の姿があった。 振り向いたワルドは、一瞬己の目を信じることができなかった。 確かに殺したはずの敵が、自分の竜へと乗り移っているのだ。無理もあるまい。 しかし、その一瞬が致命傷となった。 慌てて呪文を唱えようとする。 「ライトニング……」 「遅い!」 素早く懐にもぐりこんだ江田島の拳が一閃する。 次の瞬間ワルドは、自分が凄まじい速度で水平に飛んでいくのを感じた。 そしてワルドの意識は闇へと落ちていった。 「わしが男塾第三の助っ人である!」 ワルドを遥か彼方へと吹き飛ばした本人は、そう名乗っていた。 ようやくルイズは我に帰ったとき、江田島は竜を手なずけていた。 『何故か』『拳状に』頭部を変形させていた竜は大変従順であった。 「佐々木武雄少尉に敬礼!」 江田島の声が走る。思わずルイズは手を頭のところに上げていた。 見ると、江田島も見事な色気のある敬礼をしていた。 その視線の先には、黒煙をあげながらも『レキシントン』へと突撃をしていくゼロ戦の姿があった。 『レキシントン』から次々と魔法の火が飛ぶ。 一撃一撃とゼロ戦はその姿を削られていくが、勢いは止まらない。 (馬鹿な!何故落ちない!) 『レキシントン』にて砲撃を担当していた士官は、そう思ったところで意識を失った。 ルイズはその様子をじっと眺めていた。 ただの機械仕掛けのゼロ戦に、何故かシエスタや自分の使い魔達のことを重ねてしまったのだ。 ボロボロになりながらもゼロ戦は進軍していく。その勢いは微塵たりとも衰えない。 ついにゼロ戦が『レキシントン』へと突撃して爆散する。 その時、ルイズに耳には、見知らぬ男の雄叫びが聞こえていた。 気づくと、ルイズの口からは呪文が漏れていた。 「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」 『レキシントン』では消火活動が続いていた。 敵竜の突撃によるダメージは決して少なくはない。しかし、それでもまだトリステインと戦える。 ボーウッドはそう判断していた。 そしてそれは正しかった。その瞬間までは。 相変わらずルイズの視線の先では、『レキシントン』が黒煙をあげ続けている。 しかし、徐々にその煙は治まりを見せていた。 そのことを確認したルイズは、最後の呪文を唱えることにした。 あのゼロ戦が作った隙を逃すわけにはいかないのだ。 「エクスプロージョン!」 その瞬間膨大な魔力がルイズの体を駆け巡る。 そうして発動したエクスプロージョンは、空間にすら歪みを与え、敵艦隊を炎上させた。 アンリエッタと、ようやく到着したルイズの使い魔達は、その瞬間を見ていた。 凄まじいまでの閃光が走り抜けた次の瞬間、全敵艦隊が炎上していたのだ。 全員事態の変化についていけない中、アンリエッタだけが祈りを捧げていた。 「ありがとう、ルイズ。わたしのお友達……」 そう言って、彼女は進軍を宣言した。 トリステインの勝利は目前へと迫っていた。 そんな中ルイズは、息を荒くしながら江田島にもたれかかっていた。 エクスプロージョンはルイズの全精神力と引き換えに莫大な成果を挙げていた。 見れば、まだ空間が歪んでいるのが分かる。 その時、 「ぬう!」「きゃあ!」 白い光が彼らを包んでいた。 「お、おいアレを見ろ!」 虎丸が思わず空を見上げて叫ぶ。 そこでは、ルイズと塾長を載せた竜が白い光に包まれているのが見て取れた。 次の瞬間、そこには何も残ってはいなかった。 ただ、その光の先には、懐かしい男塾の校舎があったのを、彼らは見ていた。 状況が全くつかめないまま、飛燕が皆の気持ちを代弁するかのように呟いたのが印象的であった。 「……我々は恐ろしい人を塾長に持ったようです。」 しかし、王大人だけはその様子を真剣な様子でじっと見つめていた。 (さすがは江田島殿。これで手がかりがつかめた!) 男達の使い魔 第一部 完 NGシーン 雷電「むう、あの技は!」 虎丸「知っているのか雷電!?」 雷電「あれぞまさしく周の時代に失伝したとされる飛念離個魅(ひ・ねんりこみ)!」 周の時代、最強と謡われた拳豪に風魯経羅(ふう・ろへら)なる人物がいる。 彼が最強と謡われた理由の一つにその技があった。 風魯経羅は、己の手に持った二つの棒をまわして自由自在に空を飛びまわったという。 時には遥か上空へ、時は急旋回を。 念を駆使して飛び回るその姿はとても一個人の保有する念の量では不可能と言われるほど人間離れしていたという。 しかし、その姿は優美を極めて人々を魅了した。 そんな人々が尊敬の意を込めて、彼の技を飛念離個魅と呼ぶようになるまでそれほど時間はかからなかった。 なお、このような故事に明るい坂井氏が、己のゼロ戦での技をひねり込みと呼ぶようになったのは、極めて納得のいく理由である。 また余談ではあるが、この話がシルクロードを伝わって欧州とハルケギニアに伝わり、 回転するもの一般をプロペラと呼ぶようになった、というのは今やもう常識である。 民明書房刊 「古代中国に学ぶ一般常識百撰」(平賀才人撰)
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「The Elder Scrolls IV OBLIVION」(海外ゲーム)より、アルゴニアンと闇の一党を召喚 ゼロの使い魔-闇の七人-1 ゼロの使い魔-闇の七人-2
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前ページ次ページ狂蛇の使い魔 第六話 ルイズは一人、夜の学院を歩いていた。 窓を見やると、雲一つない澄みきった夜空に、二つの月が皎々と輝いている。 暗い学院の敷地内のあちこちを淡く照らし出す月の光を見て、ルイズはその光源に顔を向けた。 (月が綺麗……) そう思った瞬間、突然強い耳鳴りがルイズを襲う。 「……っ!」 ルイズは思わず両手で頭を抱え、しゃがみこむ。 辺りを見回したが、特に変わった様子はない。 そう思った時、壁に掛けられた鏡に気づいた。 鏡の方を向き、恐る恐る覗いてみる。 すると、そこには異様な物が映り込んでいた。 全身真っ白で、のそのそと動く人の形をした影のようなものが、丁度ルイズが立っている後ろの辺りを通り過ぎようとしている。 その光景にルイズは総毛立ち、あわてて後ろを振り返る。 が、誰もいない。 もう一度鏡を見ると、そこに映っていたはずの白い影もなかった。 いつの間にか、耳鳴りも消えている。 ルイズは再び、その場にへたりこんだ。 「ま、まさか、今のって……」 「……と、いうことがあったのよ」 そう言うと、ルイズは紅茶の入ったカップを口に運んだ。 残っていた紅茶を飲みほすルイズの姿を見ながら、キュルケが言う。 「へぇ……。でもそれ、本当に幽霊だったのかしら。顔つきとか分からなかったの?」 「暗くてよく見えなかったし……」 腕を組み、眉をひそめてあの時のことをよく思いだそうとしながら、ルイズは答えた。 「でも、幽霊以外に考えられないわよ。あんな姿の生き物なんて聞いたことないし……ねえ、タバサ?」 ルイズはタバサの方に顔を向け、尋ねる。 が、彼女からの返事はなかった。 それどころか、タバサは大きく目を見開き、小刻みにその小さい体を震わせている。 開かれている本のページが、先ほどからいっこうに変わっていない。 答えられそうにない彼女に代わって、キュルケが言った。 「ああ。この子、幽霊とか大がつくほど苦手なのよね。女の子っぽいっていうか、なんというか……」 「へぇ……タバサにも苦手なものとかあったんだ。」 何があっても動じない、常に冷静な普段のタバサを思うと、ルイズは少し親近感をおぼえたのであった。 ギーシュと浅倉の決闘から三日。 あの日以来、ギーシュは毎日のように浅倉に呼び出されていた。 あの手この手で浅倉がワルキューレたちを次々と打ち倒していく光景に、その物珍しさからか、いつも見物客が集まっていた。 今では、広場のちょっとした名物となっている。 今日もそんな「決闘」を終えた浅倉は、いつものように意気消沈しているギーシュをよそに、厨房の方へと向かっていった。 「あ。浅倉さん、いらっしゃい。」 厨房に着くと、黒髪の給仕シエスタが笑顔で浅倉を出迎えた。 結果的にシエスタを庇ったことになる浅倉は、彼女にすっかり気に入られていた。 料理長のマルトーを始めとする厨房の面々にも、貴族に臆せず立ち向かう浅倉は平民の鑑であるとして『我らが剣』と崇められる始末。 いつの間にか、厨房で好きな時に食事ができるという権利を獲得していたのであった。 浅倉は厨房にあった椅子にどっかりと座り込むと、脇にあるテーブルに肘をつき、足を組む。 「何か食い物は……!!」 言いかけた時、元いた世界で感じ慣れていた「あの」感覚が突然、浅倉を襲った。 タバサは廊下で立ちすくんでいた。 あの二人がいつまで経っても別の話題に移ろうとしなかったため、思わず部屋を飛び出してきてしまった。 とりあえず気分転換にでもと図書室へ向かっていたのだが、今になってこの判断をしたことを悔やんだ。 誰かに見られている気がする。 ルイズの話を聞いていなければ、ただ気配に気をつけるだけで先に進めただろう。 しかし、話の内容はすでに記憶済みだ。 その上運の悪いことに、ここの壁には鏡が掛けられているのである。 ルイズの話を思いだし、全身に鳥肌が立つ。 タバサは覚悟を決め、顔をゆっくりと、壁に掛けられた鏡の方へと向けた。 しかし、鏡はいつもと同じ廊下の風景と、緊張してこわばったタバサの姿以外、何も映し出していなかった。 (特に変わった様子はない……) ふぅ、と思わずため息をつく。 そして、急に馬鹿馬鹿しくなってきた。 そもそもルイズの話だって、どこまでが本当なのか分からない。 それをそのまま真に受けてしまったなんて。 そう思うと、いくらか気持ちが楽になった。 鏡から顔を背け、再び歩き出そうと足を一歩踏み出した、その時。 後ろから、ウヘ、という声がした。 タバサが反射的に後ろを振り向くと、そこには、見たこともないものが立っていた。 二メイルほどの、所々に線状のくぼみがある白い体。 頭部は透明の膜のようなものに覆われていて、顔と思わしき部分が透けて見える。 口元に生えた金属製の牙や、何かを着けたような丸みを帯びた両腕は、およそ生物とは思えない出で立ちであった。 常に絶やすことのないぐねぐねとした動きに合わせて、ウへ、ウへ、という不気味な声をあげている。 タバサは絶句した。 何もいなかったはずの場所に、いつの間にか奇妙な怪物が存在していたのである。 (これが、噂の幽霊……!?) 見た目からして、明らかに幽霊ではない。 それどころか、生物かどうかも怪しい。 ゴーレムやガーゴイルの類だろうか……? タバサが観察していると、目の前の怪物がのそのそと動き出した。 杖を構え魔法の詠唱に入ろうとした時、怪物の口から突然何本もの白い糸が吐き出された。 「!!」 いきなりの動きに反応できず、四肢と首を取られ、杖を手放してしまう。 怪物が相変わらずぐねぐねと動きながら、タバサを鏡の方へ引きずっていく。 タバサは必死に糸を掴むが、抵抗らしい抵抗ができない。 怪物が鏡まであと一歩と迫った、その時。 何処からか駆けつけた浅倉が、横から怪物に飛び蹴りをくらわせた。 怪物の糸に絡まれたままのタバサも吹き飛ばされる。 突然の乱入者に驚いた怪物は、タバサを捕らえていた糸を回収すると、慌てて鏡の中に消えていった。 浅倉はその光景に笑みを浮かべながら、呟く。 「まさかこの世界にもいるとはな……。ま、戦えればどうでもいい」 言い終わると鏡の方を向き、紫の箱をかざした。 タバサは吹き飛ばされた体勢のまま、呆然とその様子を眺めている。 機械のベルトが装着された後、右腕を胸の前で前後させ、叫んだ。 「変身!」 ガラスの割れるような音と同時に、その姿が紫の蛇の鎧へと変わる。 ため息とともに首を回すと、王蛇は一瞬タバサの方へ顔を向けたが、すぐに鏡の方へと向き直し、鏡に向かって歩き出した。 王蛇が鏡に吸い込まれるようにして消えると、廊下の奥からバタバタという足音が聞こえてきた。 見ると、ルイズがこちらに向かって駆け足で近づいてくる。 タバサは杖を拾って立ち上がり、服についた埃を払った。 「タ、タバサ! 大丈夫!?」 ルイズが慌ててタバサに駆け寄る。 「どうしてここが?」 キョロキョロしているルイズに、タバサが尋ねた。 「変な耳鳴りがしたから、それがする方に近づいていったら……それより、一体何が?」 タバサが鏡の方を向き、彼女とルイズを映し出している鏡面を指さして、言った。 「怪物」 「えっ!? よ、よく分からな……」 ルイズが鏡に顔を向けると、口を開けたまま、その目を大きく見開いた。 「あ、あのときの……バ、バケモノ!? 白いバケモノが後ろで……あれ?」 後ろを振り向くが、誰もいない。 「ど、どういうこと……!? あっ、アサクラ!! アサクラが中に!!」 ギーシュとの決闘の時と同じ格好をした浅倉が、鏡の中で怪物に剣を振るっている。 「見える? 何が?」 タバサが再び尋ねた。 タバサには、普段通りの鏡の様子しか見えていない。 アサクラと呼ばれたルイズの使い魔が鏡に消えていくのは目撃したが、その後の消息は分からない。 「えっ……? 見えないの?」 王蛇と怪物が鏡の中に存在し、タバサはそれが分からないという。 ルイズの頭は混乱しきっていた。 「い、一体何が、どうなって……」 「ハァッ!!」 かけ声とともに剣が突き出され、白い怪物、シアゴーストが火花を散らしながら弾き飛ばされる。 後から湧いて出た二体を巻き込み、呻き声をあげながら廊下の床に倒れ込んだ。 「ふん……餌には丁度いい」 王蛇はそう言うと、箱から素早くカードを抜き取り、杖に装填する。 『FINAL VENT』 杖から音声が鳴り響くと、王蛇のいるすぐ後ろの壁をぶち破り、鋼鉄のサイ、メタルゲラスが姿を現した。 銀色の表皮に包まれたその体は王蛇より一回り大きく、二・五メイルはあるだろうか。 頭部には黄色い角が反り立ち、顔の両脇では赤く鋭い目が光っている。 唸り声をあげ、肩を上下に揺らしながら、王蛇の真後ろで待機していた。 右腕にメタルホーンが装着されると、王蛇は飛び上がり、後ろから走り出したメタルゲラスの肩に足を乗せる。 まるで一本の巨大な角と化した王蛇は、猛スピードで廊下を駆け抜けていく。 起き上がった三体のシアゴーストたちは、必殺の一撃をその身に受けると、ウヘァという断末魔の叫びとともに爆発し、消滅した。 「あっ! アサクラ!!」 浅倉が廊下の鏡から元の世界に戻ると、その場にいたルイズとタバサが、驚きの表情とともに出迎えた。 ガラスの割れるような音とともに王蛇の姿が砕け散り、浅倉の姿に戻る。 「一体何がどうなってるのよ!! あのバケモノは何なの!? それになんであんなところにいたのよ!?」 困惑した表情で、ルイズが浅倉に向かって矢継ぎ早に質問を浴びせる。 だが、浅倉はニヤリと笑うと、踵を返して無言で廊下を去っていった。 「あ、待ちなさい! 質問に答えなさいよー!!」 ルイズが慌てて浅倉を追いかける。 「お礼……」 追いついたルイズが捲し立て、浅倉がそれを無視して歩き続ける。 礼を言うタイミングを完全に失ったタバサは、そんな二人の姿を見ながら、ぼんやりと立ち尽くすのであった。 日は既に傾き始め、大地を朱色に染め上げていた。 前ページ次ページ狂蛇の使い魔
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前ページ次ページ鋼の使い魔 トリステイン魔法学院の敷地内で、もっとも広い中庭に集められた生徒達が、それぞれに整列して、教師達を待っている。 やがてそこに学園長オールド・オスマンを筆頭に、教師達は生徒に対面するように並んだ。 オスマンは拡声の魔法をかけた杖に両手を乗せて、集まった二百人近い生徒達に向かって声をかける。 「諸君。本学院の今年度上半期の学期は、本日の正午をもって終了し、ふた月ばかりの休暇に入るわけだが、本年度は隣国との紛争などもあり、領地に帰っても休まらない生徒もおるだろう。 そこで儂は、通年確保しておる夏季休暇中の在学許可の枠を広げ、例年より多くの生徒や教師が学院に残れるように準備しておる。勿論、係累等後見人の承認は要るがの。 この休暇をどのようにつかうのも諸君らの意思次第である事を言っておこう。避暑に赴くもよし、独自に何がしかの研究に励むのもよいじゃろう。しかしこの学院の責任者として、 諸君らが壮健であって次学期を迎えられることを切に願っておる。 ふた月後にまた会うとしよう」 生徒側から感謝の拍手が送られ、次に教師達を先導とした移動が始まる。移動は学院の内壁正門で止まり、再び整列する。オスマンはそこで正門に向かって杖を構え、魔法で厳重な鍵を掛けた。 この鍵は原則、次学期の始業式まで掛けられたままになっている。裏門や脇の出入り口がいくつかあるから、学院に残る者たちにとって不便というほどでもない。 祭事の時に鳴らされるいつもとは少し違った鐘の音が学院に響いた。 終業式が終わり、生徒達は各々の予定に従って行動しはじめる。既に学院の裏門の前には生徒達を迎えに来た大小の馬車が並んで待っているのである。ルイズ・フランソワーズはまず、私物をトランクに詰め込むところから始めた。 「といっても、大したものはないのよね。姉さまのところに大体揃っているし」 ルイズの夏季休暇は、王都トリスタニアでアカデミー研究員をしている姉エレオノールが住むヴァリエール家所有の別宅で過ごす予定である。暫くの寄宿だが昔から使い慣れた勝手知ったる場所で、 わざわざ持っていかなければならないものはそれほどない。 したがって、ルイズの手荷物は貴族の旅荷としては比較的軽量な規模に収まった。 それを運んだシエスタ曰く、 「えぇ。ミス・ヴァリエールのお荷物はとてもよく纏められていて、他のお嬢様達が大型トランクを三つはお使いになるのに、ミス・ヴァリエールはお一つしか使われてませんでした」 人一人は優に入るトランクを引っ張るシエスタを連れて、ルイズは学院の本棟から少し離れた小塔に向かう。そこはコルベールが自分の為に学院で用意した研究室だ。 塔の脇に建てられた小屋からは細く煙が煙突より伸びている。ルイズが小屋の中に入ると、壮年の男が小屋の奥に作られた炉の火を落としているところだった。 「早かったじゃないか。手伝いに行こうと思ったんだが」 「煤けた格好で手伝いに来られても迷惑だわ」 「聞いたかい相棒、嬢ちゃんは使い魔である相棒の手なんて借りたくないってさ」 「それは困ったな。明日から職の手を探さなくちゃならないな」 「あんた達……!」 ルイズの癇癪が弾けると同時に炉の中に残っていた小さな火がかっと燃えて弾けた。溜まった煤が炉口から噴き出して二人と一振りに降りかかる。 二人は盛大にせき込んで、ルイズは息を吐いた。 「まぁいいわ。あんたはもう準備できてるの?」 「そこに置いてある荷物で全部だな。あとはコルベール師に挨拶して終わりだ。あの人は休みの間も学院にいるらしいな」 「休暇の時くらい家に帰ればいいのにね。何処の出身なのか知らないけど」 壮年の男は己の荷物が入った背負い袋を身体にくくりつけた。月日に焼けた金髪を長く後ろに撫でつけ、その動きは実年齢よりもいくらか若々しい。身なりからみて貴族ではない。しかし平民らしからぬ振る舞いに、 どこか気品がにじみ出ていた。 コルベールは自室に居た。窓の少ない塔の中は、埃っぽさと熱気が入り混じって、入ってくるものを立ち竦ませる不快さを感じさせた。 しかし塔の主人はそんなことはまったく気にしておらず、訪問者を快く迎え入れてくれる。 「おや、ミス・ヴァリエールにギュスターヴ君。今日は何か……?」 「はい。私はルイズについてここを離れますので、その間小屋の管理をお願いしたいのです」 自分の使い魔はこの禿頭の教師と仲が良いな、とルイズは前から思っている。趣味が合うのだろうか? そんな少女の呟きも知らず、コルベールは壮年の男――ギュスターヴの要請を聞きいれてくれた。 「ではお二人とも、休暇の間息災で」 「ありがとうございます。では」 「そう言えばシエスタは休まないのか?」 「メイド仲間のうちで何人かはこの機会に帰省するみたいですけど、私は残ってお仕事しますよ。お手当ても出るんですから」 「学院長も太っ腹よね」 裏門までの道でそう話していると、三人を誰かが呼びとめる。 振り向けば、赤髪の娘と青い髪を短く刈った少女が木陰から手招きしていた。 「ハァイ」 「なによキュルケ。私達急いでるんだけど」 赤髪のキュルケと言われた娘はルイズの険のある言葉に肩を竦ませた。 「ちょっと声掛けただけじゃない。もう少し肩の力抜いたら?」 「どうでもいいでしょう。で、何か用?」 「私達休暇中も学院に居るんだけど、何か休みの間予定があったら教えて頂戴、遊びに行ってあげるから」 「遊びに行って『あげる』ですって?」 ルイズのこめかみがぴくぴくと動いているのがギュスターヴから見える。この娘は感情の波が激しいことこの上ない。それを知っているくせに、キュルケはこう言い放った。 「だって貴方の事だもの。どうせ帰っても相手してくれるのがギュスだけじゃ、流石にギュスがかわいそうでしょう?」 「そ、そんなこと……」 「そんなことは、ないさ」 言いよどみかけたのを遮って、ギュスターヴは自信満々といった風に言った。 「俺たちはトリスタニアに行くんだ。ヴァリエールの末娘なら顔くらい見たい貴族だっているだろう。それほど暇じゃないかもしれないぞ」 「そうかしら?」 「そうさ。……だから遊びに行きたいなら素直にそう言ったらどうだ?」 「う……」 口ごもってキュルケは隣に居て沈黙を守る青髪の少女タバサに向けられた。 見返すタバサの目に表情はない。それが鏡を覗きこむような気分にさせた。 「……そうね。実はねルイズ。寮に残るのは女生徒ばっかりで男が全然いないの。当然よね、戦争になりそうなんだもの。だから退屈になったら、貴方のところにいってもいいかしら?」 ルイズは煮えかけた頭がだんだんと冷めてくるのがわかった。要するにキュルケは寂しいから構ってくれと言っているのだ。そう思えばほんの少し、自尊心がくすぐられる。 「来てもいいけど、姉さまも一緒にいるから居心地は保証しないわよ」 「あのお姉さんはいじり甲斐がありそうでいいわね」 キュルケの答えにルイズはさらに頭が冷めていくのであった。 寄越した馬車に乗せられたルイズとギュスターヴが到着するのが見えて、エレオノールは階下のロビーに降りることにした。 ヴァリエールの別邸は、王都の高級住宅街に数ある貴族の邸宅の中でも、上から数えた方が早い位に豪華な屋敷である。勿論ヴァリエール領にある本家と比べれば慎ましい出来であるが、調度品や建築の見事さは是非に及ばない。 ロビーでは使用人に荷物を託したルイズと、使用人について屋敷の奥へ行こうとするギュスターヴの後ろ姿があった。 それがちらっと見えただけでエレオノールは胸の奥がかっと熱く打たれてしまうのだ。 (あぁ、あの人もここで過ごしてくれるのね……) 一目会ったその日から、密かにエレオノールはギュスターヴへ思慕の情を募らせており、一時期は暇さえあればギュスターヴが立ち上げた百貨店に通いつめて、ギュスターヴの姿が無いか歩いたものだった。 ……その姿は周囲から「貴族の婦人が通い詰めるほど百貨店は良い店なんだ」というというように見られていたりする。おかげで店を切り盛りするジェシカは右肩上がりの左団扇である。 「……姉さま?」 出迎えに来てくれたらしい姉があらぬ方を見たままぼうっとしてるので、ルイズは手持無沙汰のままロビーに立たされる羽目になったのだった。 正気に戻ったエレオノールはルイズを連れて談話室に入ると、テーブルで薬湯と菓子を啄みながら学院での生活について事細かに聞き出し、オスマンが休暇中の寮滞在を認めた話を聞いて関心していた。 「よくそんな財布の余裕があったものね。アカデミーなんて予算を削られてしまうんじゃないかって汲々としてるのに」 「どうして?」 「軍備に国費がかかるからよ。アルビオンの奇襲で軍艦はほぼ全滅で、タルブでの合戦では勝ったけど王軍も被害甚大だそうだから」 そういうエレオノールに相槌をルイズは打てない。王軍の被害の一端は自分が行った虚無の発動が原因やも知れないから。 「王軍はタルブ戦役で功あった傭兵部隊を正規軍に組み入れたと聞くし、トリステインの格が落ちるというものよね。アンリエッタ女王には頑張ってもらいたいわ」 「姉さま、陛下を助けるのが私達貴族の義務でしょう?」 「当然よ。現にヴァリエール家は王家に資金と人足を供出したし、私もアカデミーでアルビオン軍が残した船から見つかった、砲弾の解析に駆り出されてるもの。うちで何もしてないのはあんたとカトレアだけよ」 「……仕方がないでしょう、まだ学生なんだもの……」 だがルイズは先日、内々にアンリエッタから彼女直属の女官としての権限を与えられているのだ。いざ王女からの命令があれば一目散に駆けつけなければならない。 その時は意外に早く訪れるのだが、ルイズとギュスターヴが別邸に着いたその日の夜、ギュスターヴはあてがわれた部屋で背中を伸ばしていた。 部屋を見渡すに一応、使用人用の部屋らしい。質素なベッドと椅子、テーブルと小さな衣装箱が一つだけ置いてある部屋だ。 「あまり歓迎されてないようだな、俺は」 独り言に答える声が荷物から帰ってくる。 「まぁ、仕えてる貴族のお嬢様がどこの馬の骨ともしれない男を連れてきているんだから、歓迎はされないわな」 答えたのは荷物に収まっている一振りの剣だった。知恵ある魔剣インテリジェンス・ソードの一つであり、古の虚無の使い魔『ガンダールヴ』が使っていたと自ら主張するデルフリンガーである。 「時に相棒よ。あんたはこれからどうするんだよ?お嬢ちゃんはひと夏ここで過ごすわな。その間それにつきあっているつもりかい?」 「そこなんだ、デルフ」 ベッドから起き上がって荷物からふた振りの剣を引っ張りだすと、それぞれをテーブルに乗せた。一方はデルフだが、もう一方は石でできた長剣だ。 「俺がルイズにアニマの使い方を教えたのは、一つにはそれがルイズの未来につながるものだと思ったからだ。この世界ではアニマの術を使えるものは居ない。ただ一人のアニマ術師になる。 あとはそれを自分で使いこなせるだけの精神を持っていれば自由に生きられるだろう」 世間知らずでわがままなルイズだが、ギュスターヴはそれが出来ると信じている。 「一つってことは、もうひとつあるんだな」 「始祖の祈祷書とやらが変化した卵型のクヴェルが気になる。鉛の箱にしまってあるが、あれは尋常な代物じゃない」 「アニマとやらが無い相棒に解るのかよ?まぁ、俺っちもありゃやばい代物だと思うどな……」 虚無に使われる立場のデルフから見ても、卵形と化した祈祷書は異常な存在なのだという。 「もしあれを再びルイズが手にする時があれば、ルイズ自身で制御できるようにならなきゃいけないだろう」 「それまでの訓練、ってことかい?」 「そんな時が来ないに越したことはないんだがな……」 ちらりと目が白い石剣を映す。 「嬢ちゃんに対する理由はそれでいいとして、あんたはその、なんだ……サンダイルってところに、帰りたくないのかい?」 「……帰りたいさ。帰って友人達に謝りたいな、黙っていなくなって済まないってさ」 「相棒は妻子居ないんだろ?その年でやもめたぁ、寂しいよなぁ……」 そこまで言って、デルフは何か閃いたようにカタカタと鳴った。 「解ったぜ、相棒がこっちに後ろ髪引かれて元の世界に帰る方法を探し渋っている理由。あんたは嬢ちゃんを自分の娘か何かみたいに思えて仕方がねぇんだ」 「ルイズが娘だって?」 「そうさ。手元で大事にしたいって気持ちがあるんだろ。だから離れるのを渋ってるのさ」 得意そうに魔剣は笑った。 だがそう指摘されたギュスターヴは、怒るでも笑うでもなく、むしろ神妙に表情を暗くして考え込んでしまうのだった。 「ど、どうしたよ?」 「……これが親の気持ちという奴のなのか?」 「いや、そうなんじゃないかって思っただけだよ。実際のところは知らないね」 そう言ってやるとギュスターヴはますます悩み深げにうつむいた。 皺を寄せて黙っている相棒をどうしたものかとデルフが考えていると、夜更けだというのに部屋を尋ねる者が居た。 「客だぜ相棒」 ノックにギュスターヴが答える間もなく訪問者は勝手にドアを開け部屋へと入ってくる。 部屋着に着替えたルイズだった。ルイズは部屋を一瞥し、自分の使い魔の境遇に文句をつけた。 「こんな貧しい部屋がこの屋敷にあったなんて知らなかったわ。私の使い魔に相応しくないと思うの」 「それで嬢ちゃんはどうするのよ?」 「明日から家令に言いつけて他の部屋を用意させるわ」 「別にこの部屋でいいだろう。気を使われると居づらくなる」 「あんたはそれでいいかもしれないけど、それで召使たちに舐められているんなら許しがたいわ」 部屋にやってくるなり青筋立てて息を巻くルイズに、先程まで考えていた事を頭に押しやり、ギュスターヴは言った。 「わざわざこの部屋に文句をつけにきたのか?」 「あっ、そうだったわ。姉さまと夕食を済ませた後、私宛に手紙が来たの」 これよ、とルイズが懐から出したのは小奇麗な封筒だった。送り主の名前はなく、ただ宛名だけが記されている。しかし、封蝋等の格式から見て、貴族の使う梟便で運ばれたものらしい。 「梟便?」 「伝書用に調教された梟に手紙を持たせて送るのよ。貴族の屋敷なら梟を受け入れる鳥小屋が天井裏にあって、そこに手紙を持った梟が入ってくるのよ。学院には何十羽も入ってこれる梟小屋が置いてあるわ」 「わざわざ梟に持たせるなんて手間暇かけるもんだな」 「中には自分の使い魔にやらせる人もいるけど……って、そんなことはいいのよ。問題はこの中身よ」 言ってルイズは剥がされた封蝋の下から便箋を取り出して見せた。その様子なら既に中身は確認済みなのだろう。 「読んでも構わないか?」 「汚さないでよね」 ギュスターヴは受け取ると、便箋に目を走らせる。ジェシカと手紙のやりとりをするようになって、一応日常の読文に支障はない。 「なんて書いてあるんだい?」 「かいつまんで言えばお茶のお誘いさ」 「茶ぁ?」 「もっと上品に言ってくれる?陛下からわざわざ謁見に来るようにという申し渡しよ。内々に送ってくるところを見ると、何か任務を与えられるんじゃないかしら」 一見、そう冷静にルイズは言っているが、内心では働ける事に喜んでいるに違いないと、ギュスターヴは思った。この娘のアンリエッタ女王への尊敬とトリステイン王国への忠誠は揺るがないものらしい。 「この手紙の日付を見ると明後日になっているな」 「そうよ。それまでに身の回りの物をそろえなくちゃいけないわね。明日は忙しくなるわよ」 「どうして?」 「休み一杯任務に費やすかもしれないから、明日のうちにめいいっぱい遊んでおくのよ。あと、買い物とか」 にひ、と意地の悪い顔をするルイズを少し疲れた気持ちでギュスターヴは見た。女の買い物に付き合うのはいつ何時でも大変なのだから。 前ページ次ページ鋼の使い魔
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「ドスペラード」のエイジを召喚 ゼロの使い魔は魔法使い(童貞)-01 ゼロの使い魔は魔法使い(童貞)-02 ゼロの使い魔は魔法使い(童貞)-03 ゼロの使い魔は魔法使い(童貞)-04
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スレッド多すぎて、分かりにくいんだよカス!! 申し訳ない!! それでは各スレッドの使い方を確認してください! 基本的な制作避難所は、製作速報VIP(クリエイター)だよ! 制作避難所はこちら ここで基本は会話や雑談が行われてます! 社畜が指示を出す時や個別で話し合いなんかしたい時は、別のしたらばスレで行われているよ!! ここには、よく名無しさんも話しに参加してくれてる。みんなすごく良い人達だ。 職業別での話し合いや、 1との細かい話し合いはしたらば避難所!したらば避難所一覧はこちら 現在は、ライターさん用、絵師さん用、音楽家さん用の3つ相談窓口が立ってます。 あとは、もしも上の制作避難所が消えてしまった場合は、総合避難所2もあるよ! 簡単に説明はしましたが、それでもわからなければ、基本的な制作避難所で質問してみてください! 社畜なのにさぼっている製作者1(社畜)がお答えするよ! まあ基本は制作避難所で色々と報告してくれると嬉しいと思ってます!