約 848,836 件
https://w.atwiki.jp/clubshiny_technote/pages/62.html
このWikiの使い方 本Wikiに初めて訪れた方向けに使い方を簡単に紹介します。 このWikiの使い方キーワード検索で調べる メニュー一覧から調べる そもそも色違い粘りのことが良く分からない… おススメのページ ポケモン別の色粘り方法が知りたい キーワード検索で調べる 色違い粘りで気になる関連キーワードを「サイト内検索」機能を使って検索します。 良ければ↓の検索ボックスよりどうぞ。 検索 and or 検索すると結果が一覧で表示されます。 (例:固定リセット で検索した場合) メニュー一覧から調べる こちらをクリックしメニュー一覧から見たいページを選んでください。 ↓↓↓ メニュー そもそも色違い粘りのことが良く分からない… 色違いの基礎的な用語を知らない どんなキーワードで検索したら良いか分からない といった方は、検索を掛けるより 初心者向けコンテンツ のページから読み進めることをおススメします。 「こちら」からどうぞ。 おススメのページ 色粘りでおススメしたいガジェット紹介 色粘り勢に是非紹介したい便利グッズのページです。 これから色粘り配信をしたい方にもおススメ。 効率を意識した色粘り方法 色違いを厳選するにあたり、1回あたりの効率を上げることは肝要。 各世代で使えるコツやテクニックを紹介します。 色違いの捕獲成功率アップ方法 色違いは出して終わりではありません。確実に捕まえてこそです。 安心して捕まえるために確認すべき必須ポイントを伝授します。 ポケモン別の色粘り方法が知りたい 検索ボックスより色を粘りたいポケモンをキーワードに検索します。 検索 and or ※全国図鑑分作成予定ですが反映に時間が掛かります。予めご了承ください。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2050.html
前ページ次ページサイヤの使い魔 「タ、タバサ! 落ちついて! この人は怖くない!」 「オバケなんて無いさオバケなんて嘘さ寝惚けた人が見間違えたのさ」 「どきなさいルイズ! どうせあんたの話なんか聞いちゃいないわよ! ここはあたしが――」 「パーソナルネーム『キュルケ・ツェルプストー』を敵性と判定。当該対象の有機情報連結を解除する」 「あーんやっぱり駄目だー! お願いだから正気に戻って! 戻りなさい! 戻れー!」 格闘すること、約10分。 悟空と一緒に瞬間移動で図書館にやって来たルイズとキュルケの必死の説得により、ようやくタバサは(悟空に対し警戒しているものの)話を聞く気になった。 それにしても司書の視線が痛い。 「…説明して欲しい。主に、貴方の素性を」 「あたしもタバサに賛成。さっきの魔法も興味あるし」 キュルケの言葉でルイズは自分の中にあった違和感に気付いた。 この男、当たり前のように物理的弊害を無視して何処にでも現れるが、そんな事ができる魔法は自分の知る限り、無い。 先住魔法だろうか。とするとこの男、生前は何だったのだろうか。 …もしや、自分はとんでもない人物を喚び出してしまったのではないか? 「あれはよ、魔法じゃなくって瞬間移動ってんだ」 「瞬間…移動?」 悟空が説明する。 「ああ、昔ヤードラットって星の連中に教えてもらった技でよ、相手を思い浮かべてそいつの気を感じ取るんだ。 そうやって、そいつがいる場所に移動する。だから知ってる奴がいねえ場所とかは行けねえんだ」 「に…にわかには信じられない話ね……」 「えーと、全然言ってる意味がわかんない。キって何? 何系統?」 改めて聞く使い魔の能力。 キュルケは半信半疑ではあるものの一応額面どおりに解釈したが、ルイズは理解できていない。 実際、彼と一緒にその能力を体験しているものの、あまりにも自分の常識とかけ離れた現実にまだ頭がついてこない。 「説明はつく。二度も私の目の前に現れたのだから、私は彼を信用する」 口ではそういうものの、タバサは未だに悟空と目を合わせられないでいる。 こうして見ると生きている人間と同じ、いや、普通の人間以上に生き生きとしているが、やはり瞳孔が開ききった目を見るのは怖い。 いや、よく見ると虹彩が暗くて瞳孔の色と区別がつかないだけか。 それに気付き、タバサは若干警戒の色を弱めた。 タバサの言葉に、ルイズもようやく悟空の説明を(納得はできないものの)聞き入れることにしたが、すぐさま別の疑問が沸き起こった。 「あんた、今「星」って言ったけど、そういえば何処から来たの?」 メイジでも無いのにメイジ以上の能力をぽんぽん使いこなすこの男は今、「星」と言った。 ルイズは「宇宙の何処かにいる私の使い魔よ!」とサモン・サーヴァントの時に言ったが、まさか本当に宇宙の何処かに自分に似た生命体がいるなどとは、本気で考えていなかった。 「オラ地球って星から来たんだ」 「じゃあ「チキュウ人」って事? そこがあんたの生まれた星なのね」 「いや、生まれは惑星ベジータってとこなんだけどよ」 「どういう事?」 悟空は説明した。 自分が惑星ベジータで生まれたサイヤ人である事。 産まれてすぐ、侵略のため地球に送り込まれたが、幼少時の事故により穏やかな性格になったらしい事。 ドラゴンボールとそれにまつわる様々な冒険。(これにはタバサが多大なる関心を示した) 自分の出生の秘密を、敵である実の兄から聞かされた事。 一度目の死。 サイヤ人の地球侵略。 ナメック星での激闘。 人造人間との戦い。 そして、二度目の死。 満月と大猿の関係については、既に尻尾の無い悟空には関係ない話だったので省略した。 悟空が全てを語り終えると、場に重い沈黙が立ち込めた。ルイズに至っては、頭から煙が出ている。 途中から頭を抱えてうなだれていたキュルケがのろのろと口を開いた。 「…なんか、にわかには信じられない話ね。頭痛くなってきたわ」 顔を上げ、悟空を見る。 「それで、貴方はこれからどうするの?」 「どうするも何も、オラはルイズの使い魔になっちまったんだろ? だったらそれでいいさ」 「…ずいぶん楽天的なのね」 昼休みを告げるチャイムが鳴った。 「続きは食後」 タバサの一言で、ルイズを除く全員が席を立った。 未だヒューズが飛んだままのルイズに、キュルケが声をかける。 「ルイズ~、私たちお昼食べてくるから、復活したら食堂に来なさいね~。さ、ゴクウさん行きましょ」 「はれってほれってひれんら~……って、え!? ちょ、ちょっと待ちなさい!」 悟空に椅子を引いてもらって席に着いたルイズは、爪先に何か硬いものが当たったのを感じてテーブルの下を覗き見た。 今朝、使い魔に朝食を与えるつもりで用意した皿がまだ置かれている。 (そういえばこれでご飯食べさせようと思ったんだっけ) ルイズは今朝の怒りを思い出したが、さっきの説明を聞いて幾分混乱している今となっては、それも些細な事のように感じられた。 (あの話が本当だったとしたら、わたしはこれからこいつをどう扱えばいいんだろう…?) 正直、さっきの説明はルイズの頭では理解が追いつかなかった。 宇宙人だの人造人間だの何でも願いを叶える球だの、この使い魔の頭は一体どこに繋がってるんだ。 支離滅裂な事を言ったならまだしも、話の内容に筋が通っているから厄介この上ない。 こうなったらこいつの素性を信用するしかなさそうだ。 となると、こいつはメイジでもなければ天使でもない、自分からすれば単なる平民(宇宙人だが)の幽霊だ。 その代わり、こうして自分の隣に立っている今もなお、周囲の生徒から注目を浴びているこの異世界から来たらしい使い魔が、 果たしてこの世界の食べ物を口にしても大丈夫だろうか、と心配になった。 考えてみれば、朝食の時は居なかった。食事が終わってから、何処で道草食ってたのか、手ぶらで戻って来たのだ。 「そういえば、あんた朝食の時居なかったけど、ちゃんとご飯食べたの?」 「ああ、シエスタがメシ分けてくれたんだ」 確か、ゴクウが洗濯を頼んだ平民の名だ。 ルイズは再び足元の皿を見た。 厨房に昼の分の指示は出してなかったので、皿は空っぽのまま置かれている。 「じゃあ、お昼もその平民に貰ってきなさい」 「わかった。んじゃ行ってくる」 厨房へと消えていく使い魔を見送りながら、ルイズは、だから朝食の後すぐ見つけられたのか、と合点し、 自分の使い魔が惨めったらしく地べたに座り込んで粗食を食べる様子を他の生徒に見られずに済んでよかった、と密かに思った。 高貴な存在だと思われているのだ、下手にイメージを崩す事も無いだろう。 「確か本当の天使って霞食ってるんだっけ?」 つい疑問が口をついて出る。 隣席のマリコルヌがそれを耳ざとく聞きつけた。 「なんだって?」 「何でもないわよ、ただの独り言」 「ゴクウさん、お待ちしてました!」 シエスタが笑顔で悟空を出迎える。 厨房に足を踏み入れた悟空は、朝食の時とは比べ物にならないくらい大量の料理を目にした。 「すっげー! 美味そうなもんが一杯あっぞー!!」 「おうよ! お前さんが来てくれたおかげで食材が無駄にならずに済みそうだからな! これはその前祝いだ!!」 悟空の見事過ぎる食いっぷりに触発されたマルトーは、本当に余りものの食材を余すところ無く使い、 尋常ではない量と種類の料理を用意していた。 ざっと見ただけでも10~15人分、テーブルに乗りきらなかった分や鍋に残っている分を加味しても60~70人分はある。 とても賄いと呼べる分量と種類ではない。 中にはこのまま貴族に出してもいいんじゃないかと思えるくらい豪勢な盛り付けのものもある。 マルトーの密かな宣戦布告であった。 「これ全部オラが食っていいのか?」 「おう、食えるだけ食え! 無理なら残してもいいぜ。どうせ元は捨てなきゃならんものばかりだからな、がっはっはっは!!」 10数分後、全ての料理が悟空の胃袋に収まった。 コルベールは、トリステイン魔法学院の長を務めているオールド・オスマンに、自分の教え子の一人がガンダールヴの幽霊を使い魔にしたのではないか、という自説を披露していた。 ミス・ロングビルにぱふぱふをせがんで左の頬に真っ赤な紅葉をこさえたこの学院の長は、彼の説明を聞き終わると、それまで閉じていた口を開いた。 「ルーンが一致したというだけで、そいつがあの使い魔の幽霊であるというのは、いささか結論を急ぎ過ぎじゃないかのう」 「で、ですが…」 「第一、その者がそう言ったというだけで、そ奴が幽霊だという明白な証拠はあるのか?」 コルベールは返答に窮した。 確かにオールド・オスマンの言うとおりである。 ミス・ヴァリエールが幽霊だと紹介したからといって、本当に彼がそうなのか確認をしていなかった。 そもそも、幽霊とはあのように頭の上に輪がついているものなのだろうか。 自分が死んでしまったら余計に頭頂部の眩さがアップしてしまいそうで、できることなら御免こうむりたい。 「まあ、暫くは様子見じゃの。その使い魔から色々聞いてみるとよい」 「わかりました。では失礼します」 一礼して退室したコルベールは、ふと空腹を思い出し、食堂へと向かった。 今なら生徒たちが昼食を採っている。ひょっとしたら、使い魔に会えるかもしれない。 ルイズが満腹感に浸っていると、食堂がどよめきに包まれた。 何事だろうと周囲を仰ぎ見たルイズは、騒ぎの原因を発見して胃が痛くなった。 自分の使い魔が、メイドに付き従ってデザートの配膳を手伝っている。 「本当にありがとうございます、ゴクウさん。わざわざ手伝って頂いちゃって」 「構わねえって。オラのせいで忙しくなっちまったみたいなもんだしよ」 マルトーが腕によりをかけて悟空に大量の料理を振舞った結果、その料理を載せるために、食堂に残っていた食器の殆ど全てを使ってしまい、 大量に発生した洗い物のために貴族へデザートを運ぶ人手が足りなくなってしまった。 そこで食器洗いを手伝うかデザート運びを手伝うかの二者択一の結果、悟空が選んだのがデザート運びであった。 悟空もチチを手伝って食器を洗った経験はあるが、陶器製の食器しか取り扱った事がない悟空には、繊細なガラス細工が施されたものもある学院の食器は、何となく触らない方がいいような気がしたのも一因だ。 「あ、あんた、何やってんのよ」 配膳がルイズの席まで到達した時に、小声でルイズが訊いた。 「メシ食わせてもらった礼に仕事手伝ってんだ」 「あ、ああそう…。あまり目立つような真似はしないでよね」 「何で?」 「あんた、一応他の生徒には天使って事で通ってるんだから」 「ケーキ運ぶくらいどってことねえだろ」 ルイズは改めて周囲を見回した。 居心地の悪そうな顔で配られたデザートを見つめている者もいるが、恐る恐るケーキに口をつけて、普段通りの味だと判った者は、安心したのかいつも通りの調子を取り戻し、級友と歓談したり、既に食べ終えた者は席を立ったりしている。 「…それもそうね。いいわ。終わったら私のところに戻ってきなさい」 「ああ」 やがて、全てのケーキを配り終えた悟空がルイズの元に戻ってくる頃、ケーキを食べ終えたらしき生徒が立ち上がった拍子に、懐から小瓶を落とした。 コロコロと悟空の方へ転がってくる。 悟空はそれを拾い上げ、落とし主である金髪の生徒に声をかけた。 「おーい、おめぇ、これ落っことしたぞ」 「なあギーシュ、お前今誰とつき合ってるんだ?」 「つき合う? 僕にはそのような特定の女性はいない。 薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 聞こえていないのか、あるいは聞こえていて無視しているのか、青年は応えず、他の生徒と話しながら食堂を出ようとしている。 悟空は後ろで紅茶のカップを手に取ったルイズに訊いた。 「なあ、あいつの名前、何つうんだっけ」 「ギーシュ・ド・グラモン」 「サンキュー。おーい、ティッシュのバケモン」 すました顔で食後の一杯を飲んでいたルイズが、鼻から紅茶を吹いた。 『ギーシュ・ド・グラモン(だ/よ)!!』 前門のギーシュと後門のルイズから、同時にユニゾンで悟空にツッコミが入る。 決して悟空に悪気があったわけでは無いのだが、言う相手が悪かった。 貴族の名を家名つき、その上名前を間違えて呼んだ。 意図的であれ偶然であれ、それは、その貴族だけでなく、家柄に対する重大な侮辱行為である。 血相を変えてルイズが駆けつけた。 「あんた謝りなさい。今すぐ」 「わ、わりぃ。オラ長ったらしい名前覚えんの苦手なんだ」 「君は確か「ゼロのルイズ」の…。駄目だな、許すわけにはいかない」 手袋を取り出し、悟空に投げつける。 「決闘だ!」 「ギーシュ!」 「これは僕だけの問題じゃない。そいつは我がグラモン家を、グラモンの家名を汚した。この罪は償ってもらわなければならない」 ギーシュの目が敵意をはらんだものに変わっていく。 「貴族同士の決闘はご法度よ!」 「オラ貴族じゃねえぞ」 「その通りだ。だから問題は無い。ではヴェストリの広場で待つ。10分後に開始だ。遅れるなよ」 そう言い放ち、ギーシュは身を翻して食堂を後にした。 成り行きを見守っていたシエスタが悟空に駆け寄る。 「あ…あなた殺されちゃう。貴族を本気で怒らせたら…」 「ああ、こいつなら大丈夫よ、たぶん」 青ざめた顔でブルブルと震えるシエスタに、ルイズがフォローを入れる。 一応使い魔が世話になっているのだ、多少は仲良くしてもいいだろう。 幽霊だから死なない、と付け加えようと思ったが、話がややこしくなりそうなので伏せた。 「なあルイズ」 「何?」 「あいつ、強えのか?」 「そうね…どっちかといえば強いほうかしらね。仮にもグラモン家の貴族だし」 「そりゃあ楽しみだ」 「嬉しそうね…まったく。いい? あんたはあいつの名前を間違えた事によって、あいつの家名も同時に汚したの。それはとっても不名誉な事。 だから…まあ仮にあんたが勝ったとしても、その点はきっちり謝っときなさいよ」 「ああ、わかった」 「よろしい」 平民がメイジに勝つことなどありえないが、ルイズは不思議と、この使い魔ならもしかしたらギーシュに勝つかもしれない、と思い始めていた。 「フン、まあ逃げずに来たことは褒めてやろう」 「オラ逃げたりなんてしねえぞ」 普段人気のあまり無いヴェストリの広場は、ギャラリーで埋め尽くされていた。 ゼロのルイズの使い魔 対 青銅のギーシュ。 オッズ比は16。 意外にも、悟空の勝ちを予想する生徒は皆無ではなかった。 その中には、タバサとキュルケも混じっている。 「本当にあの使い魔が勝つと思うの?」 「負けはしないと思う。彼の話が本当なら」 街一つ吹っ飛ばすだのこの星ごと消えて無くなれだの、よくもまあそんなホラが吹けるもんだとキュルケが内心呆れていた話を、タバサは話半分だが信じているようだ。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 「へへっ、ワクワクすっぞ」 超能力を使う敵と戦った事はあったが、魔法を主体に戦う相手は悟空にとって初めての経験であった。 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。 従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手をするよ」 ギーシュが手に持った薔薇の造花を振るうと、零れ落ちた花弁から甲冑を纏った優美な女性型のゴーレムが生成された。 「へぇー、面白ぇなあ」 「お褒めに預かり光栄、とでも言っておこう。では、始めるか!」 「ああ、どっからでも来い!」 ワルキューレが悟空に向かって突進する。 が、それよりも遥かに速く、悟空はワルキューレとの間合いを詰めた。 「ずえぁりゃあっ!」 正拳一発。 凄まじい衝突音の後、腹から背中まで達する凹みを作ったワルキューレがギーシュの傍を猛スピードで掠め、背後の壁に激突して砕け散った。 場が、静まり返った。 振り返り、かつてワルキューレだった残骸を確認した後、目をまん丸に見開き、口を顎が胸に付きそうなくらい開け、鼻水まで垂らしたギーシュは、恐る恐る悟空に向き直った。 壁が「固定化」で補強されていなかったら、飛距離は更に伸びていただろう。 ワルキューレ殴り飛ばし世界新記録を作った男は、全く本気を出した様子が無い。 それどころか「とりあえず挨拶代わりに一発ぶん殴ってみました」といった感じだ。 「あれ? 何だ、てんで弱っちいぞ」 「な、何だと!?」 焦ったギーシュは一気に6体のゴーレムを生成した。 それぞれが手に武器を備えている。 「取り囲んで叩きのめせ!」 ギーシュの命令に従い、わらわらと悟空の周囲に散開したワルキューレは、一斉に悟空めがけて手にした武器を振り下ろした。 衝撃で悟空が地面に膝を付く。 静止命令を受けていないワルキューレは、這いつくばる悟空めがけて何度も何度も、武器がひしゃげて変形するまで攻撃を繰り返した。 「も、もういい! 下がれ!!」 数分後、ギーシュがワルキューレを下がらせると、地面に倒れ付した悟空が姿を見せた。 ピクリとも動かない。死んでしまったのか。いや、既に死んでいる。 そろりそろりと、ギーシュが悟空に近づく。 先ほどからギャラリーは静まり返っている。ギーシュが地面を踏みしめる音だけが聞こえる。 「よっこいしょっと」 「はうあ――――!?」 何の前触れも無く悟空が起き上がり、ギーシュは腰を抜かしてへたり込んだ。 ギャラリーのそこかしこから悲鳴が上がる。 固唾を飲んで見入っていたタバサも、あまりに予想外な出来事に少々チビッた。 怪我一つ負っていない悟空の問いかけに、ギーシュの顔が真っ青になった。 「なあ、もうちっと本気でやってくんねえか? これじゃちっとも面白くねえぞ」 前ページ次ページサイヤの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4980.html
前ページ次ページ鋼の使い魔 空賊船として偽装されたアルビオン王党軍最後の戦艦『イーグル』号。巡航速度と小回りに優れ、戦列艦等級では最小の4級艦に分類される。その運動性と引き換えに砲撃能力は低い。アルビオン内乱で王党軍の誤算があったとすれば主力であった空軍の大部分が貴族派についてしまったことだろう。『イーグル』号がその中に含まれなかったのは、当艦が内乱当時に船員訓練の為の練習艦として運用され、直接空軍の指揮系統に置かれていなかったから、という『偶然』だった。 一方、アルビオン内乱の序章を繰り広げた当時のアルビオン空軍旗艦であり、現在貴族連合『レコン・キスタ』の空軍艦隊旗艦となった『ロイヤル・ソヴリン』号改め『レキシントン』号。戦列艦等級では搭載可能人員・火砲共に最多となる1級艦であり、両舷側あわせて108門の砲門を揃えている。艦齢も古く乗員も熟練の船乗り達に取り仕切られ、戦時であれば数頭の竜騎兵も搭載し戦場を渡る雄雄しき空軍の華であった。 その『レキシントン』号は今、随伴する味方艦と共に岬の突端に立てられたニューカッスル城をアルビオン標準高正1200メイルの高度を保って包囲していた。 因みに『アルビオン標準高』とは「アルビオンを中心としての標高差」を表す。始祖ブリミルの降り立った地とされる首都ロンディウムを0として上方向には正、下方向には負で表示される。世界の上空を漂うアルビオンならではの単位だろう。 包囲のまま城を睨むようにたたずむレコン・キスタの艦隊は、時より砲撃を行うものの、それによって王党軍に被害を出すことは少なかった。 木で出来た艦艇を撃沈するならともかく、堅い壁に『固定化』を施した城を落とすのは用意ではない。そのため貴族派はニューカッスルを陸上から包囲することで補給の道を絶ち、篭城する王党軍を枯死させる手段に出たのだ。…もっとも、拠点という拠点を落とされた今の王党軍に補給の手などあるはずはないと高をくくってもいる。 暗闇の中を船が進んでいく。ルイズは洞窟特有のひやりとした風を頬に感じた。 アルビオン標準高負400メイルにある人工的に作られた孔であった。位置的にはニューカッスル城の真下に位置し、外見からは雲に覆われて見る事が出来ない。 『イーグル』号は明かり一つない洞窟の中を気流の流れや洞窟の壁面を覆うわずかな発光性の苔などを頼りに進んでいた。 「熟練の、本物の船乗りでなければこの隠し港へ行くことは困難だ。そもそもが城を秘かに脱出する為に掘られたものでね、3等艦以下の艦艇でなければ通過する事もままならない」 甲板に立って客人のエスコートを買って出たウェールズ王太子は、呆然とするギュスターヴ、ルイズ、ワルドに向かってそう告げた。ギュスターヴは軍隊運営というともっぱら陸の人であったので、こういう船を駆る守人の気風が珍しかった。 「しかし小型艦ではこの狭い路を通るのは怖いですな。わずかな操作ミスで壁面をこすりそうだ」 「なかなか判ってるじゃないか子爵」 「これでも軍人の端くれですので」 「『レコンキスタ』の叛徒共はその辺りが分かってなくてね。あいつ等は駄目だ。船は大きく、砲がたくさん積めればそれで良いと思っている。お陰でまた今日のように無事に戻ってこられたというわけさ」 船乗りとして空を駆けた人間が持つ深い目で暗黒の行路を見るウェールズは、星ひとつ浮かばない夜の空に向かって船が飛ぶような錯覚をルイズに与えるのだった。 『前夜祭は静かに流れ』 程なくして『イーグル』号、そして後続する『マリー・ガラント』号はニューカッスルの地下に作られし秘密の港へと到着した。 そこは堅い岩肌を削って作られたドームに、半円状に突き出た岸から桟橋を伸ばした姿をしている。 二隻の船は桟橋を挟むように投錨した。『マリー・ガラント』号の本来の持ち主達はここへ連れてくる前にカッターボートに乗せて放出した。運がよければ陸にたどり着くか、何処かの船が拾ってくれるだろう。 『イーグル』号へ渡されたタラップをウェールズをはじめ乗員たちが降りていくと、岸では船を待っていたらしき兵士らが迎えてくれた。 その中で一人、背の高いメイジらしき男がウェールズに近寄ってくる。 「殿下。これはまた、たいした戦火でございますな」 長い月日を生きた証たる顔の深い皺を緩ませて男は言った。 「喜べ、パリー。荷物は硫黄だ」 その声に岸で迎えていた兵士一同がおお、と歓声をあげる。 「火の秘薬でございますな。であれば我等の名誉も守られるというもの」 「うむ。これで」 兵士達の熱い視線を受けるウェールズは、ほんの少しだけ声を揺らがせる。 「王家の誇りと名誉を叛徒へ示しつつ、敗北する事ができるだろう」 「栄光ある敗北ですな!…して、叛徒どもから伝文が届いておりますゆえ」 「なんだね」 言うとパリーは懐から一巻きの書簡を取り出してウェールズに手渡した。 「明日正午までに降伏を受け入れぬ場合、攻城を開始するとのこと。殿下が戻らねば、ろくな抗戦もできぬところでしたわい」 「まさに間一髪というところかな。皆の命預かるものとして、これで責務もはたせるというもの」 伊達にそう言ったウェールズと共に、兵士達は愉快に笑った。 笑いあうウェールズ達をルイズはどこか哀しい気持ちで眺めていた。 どうして彼等は笑えるのだろう。この場で敗北とは死ぬ事のはずなのに。 そんなルイズの心中を知ってか知らずか、ウェールズはパリーの前に三人を呼び寄せる。 「パリー、この方達は客人だ。トリステインからはるばる密書を携えてきてくれた大使殿に無礼のないように」 「はっ。…大使殿。アルビオン王国へようこそ。大したもてなしはできませぬが、今夜は祝宴を開くつもりです。是非とも、ご出席願います」 老メイジはそう言って深く頭を下げた。 ウェールズの案内の元、港を離れ、ニューカッスルの城内へ三人は入った。長い抵抗を続けた城は、倒壊こそしてはいないもののあちこちの壁にヒビや割れが見え、行き交う人々も少なく、そして疲れているように見える。中には、怪我が治りきらず包帯を巻いた者も少なくない。 三人がたどり着いた一室。それはウェールズ王太子の私室だった。 一国の王子らしからぬ、粗末な部屋である。木枠のベッドに机が一つ、壁に申し訳程度に壁にはタペストリーが飾られている。 引き出しより宝石箱を取り出したウェールズは、その中に納められた、便箋も封筒も擦り切れてボロボロになっている手紙を拡げる。何度も読み返しているのだろうことが想像できた。 ウェールズはそれをいとおしげに読み直すと、端に口付けてから封筒に戻した。 「アンリエッタが所望の手紙はこれだ。確かに返却するよ」 「ありがとうございます」 礼をしてルイズはそれを受け取り、慎重にしまい込んだ。 「明日の朝、非戦闘員を『イーグル』号に乗せて退避させる。トリステイン領内に下りる事は出来ないが、カッターボートで近くに滑降させることは出来るだろう」 ウェールズの声の淀みなさに、たまらずルイズは聞いた。 「殿下…もはや王軍に勝ち目は無いのでしょうか」 「ない。我が軍は300、向こうは5万で城を囲んでいる。援軍が期待できない篭城というのは既に戦術としても戦略としても負けているのだよ」 「そんな!」 冷厳なウェールズの言葉にルイズの淡やかな期待が打ち崩される。 「しかも向こうはアルビオンのあとはハルケギニア各国へ侵攻するつもりだ。であれば亡命も選択できない。亡命先を真っ先に戦火に巻き込むことになる」 「しかしその…姫様の手紙には…」 ルイズはウェールズが密書を見た時、そして今さっき手紙を渡してくれた時のしぐさが脳裏を巡った。任務を負う時アンリエッタは「婚約が破棄になるような内容が書かれている」と言った。それはもしや恋文ではないのか。それも、始祖や精霊に誓うような熱い手紙。であればアンリエッタは手紙だけではなく、ウェールズの身の安全も図りたいはずである。たとえ、結ばれなくても。 複雑な相を浮かべたルイズをみて、ウェールズは話した。 「……確かに、アンリエッタの手紙には亡命を勧める旨が書かれていたよ」 その言葉に静かに会話を聴いていたはずのワルドは顔を強張らせ、ルイズはハッと顔を上げた。 「…しかし、僕はここで誰よりも先んじて名誉と栄光ある討ち死にをするつもりだ」 「そんな…姫様のお気持ちはどうなさるのですか」 絶望が身体を包んでいるようにルイズは思えた。 「僕一人の命でトリステイン何万という人命を危うくしろと、その責任をアンリエッタに負わせと、君は言うのかね?ラ・ヴァリエール嬢」 ウェールズはあくまでも冷厳に、緊張した声でルイズに宣告した。 それは不退転の意思。アンリエッタの招く手を払い、国に殉じるという強い思いだ。 突きつけられたものに蒼白となったルイズの肩に、ウェールズの暖かい手が置かれる。 「君は正直すぎるな、ヴァリエール嬢。それでは大使は務まらないよ。しっかりしなさい」 声は一転して穏やかで、暖かな優しさを含んでいた。しかしそれも今のルイズにはウェールズの死出を演出しているかのように思えてならない。 「しかし、滅び行く国への大使には適任かもしれないね。明日滅ぶ国ほど正直なものはない」 「そんな…そんな、こと…」 ウェールズは言葉にならないルイズを励ますように軽く肩を叩いた。 「…さて。そろそろパーティの時間だ。君達は我らが迎える最後の賓客。どうか出席してほしい」 これ以上の説得を拒むような力強い声だった。 「……わかり、ました」 苦々しく答えてルイズは部屋を出て行った。ギュスターヴもそんなルイズを追う様に、ウェールズへ一礼して部屋を出た。 しかしワルドは一人、佇まいを直しながらも退室の気配を見せない。 「…何か御用かな子爵」 「恐れながら、一つお願いしたい議がありまして」 恭しげにもワルドはウェールズへ歩み出る。 「ふむ」 「実はですね…」 静かにワルドは懐に暖めていた案件をウェールズに伝えた。 ウェールズは得心が行ったように頷いて答える。 「私のようなものでよいのなら、喜んでそのお役目を引き受けよう」 陽も落ち、月明かりが差し込むほどの頃。ニューカッスル城の大ホールではこの日のためにと蓄えの中に残された新鮮な肉菜を放出して、ささやかながらも宴が開かれた。酒が入って陽気になった国王ジェームズ一世は、同じく酒の深い臣下達とともに笑いあっている。 ギュスターヴは壁際でグラスを片手にどんちゃん騒ぎを始める兵士達や、その家族として付き添っていた婦女らを眺めていた。 「傷はどうよ?相棒」 「まだ痛むが、まぁ大丈夫だよ。それにしても…」 ギュスターヴの視界の端端で繰り広げられる喜劇。明日までの命と悟りきり、せめて絶望を笑い飛ばすために騒ぎ立てる兵士達は、一国の主だったギュスターヴには心肝を寒くするものがあった。 「…侘しいものだな。敗軍というのは」 そんなギュスターヴを客人と思っても声をかけるものが少ない中で、ウェールズは努めて相手をしてくれた。 「やぁ」 好青年然としているウェールズへ、会釈をしたギュスターヴ。 「ラ・ヴァリエール嬢の使い魔をやっているという剣士の方だね。トリステインは変わっている。人が使い魔をやっているとは」 「トリステインでも珍しいそうだ」 ははは、と笑うウェールズ。 「……しかし、300でも部下が残っただけで幸運だ。内乱の途中から造反者が続発してね。空軍旗艦として建造した『ロイヤル・ソヴリン』を始めとして、指揮系統ごと貴族派につかれたのさ」 「組織ごと?」 「ああ。…これも僕ら王族が義務を全うせず今日まで生きてきたからだ。だからこそ、僕は明日それを果たさねばならない」 「王族としての使命……」 嗚呼、ギュスターヴは思わずに入られなかった。なぜなら己はその王族の使命を殺し、なぎ倒して生きてきたのだから。 義弟に使命を果たせぬ『出来損ない』と叫ばれながらもその首を刎ねた。 実弟がその使命のために奔走するのを助けても、それを叶えることもできなかった。 そして今、異界、異国の王族が斃れようとしている中で、王族の使命を掲げて死に行く若者を目の前にして、ギュスターヴは考えるのだった。 人は過去から何を譲られ、何を未来へ託すのだろうか、などと。 ホールを辞したギュスターヴは、心身穏やかではいられなくなっているだろうルイズの様子を見るべく、用意された部屋へ続く廊下にいた。 今宵も異界の双月は二色の光を投げかけている。 「やぁ。使い魔の…」 そんな廊下の壁にもたれてギュスターヴに声をかけたのはワルドだった。 「ギュスターヴ」 「うむ。失礼。…君に言っておきたいことがある」 「何か?」 「明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」 ギュスターヴの目が大きく開かれた。 「……こんな時にか」 「こんな時だからだ。ウェールズ王太子に媒酌をとってもらい、勇敢なる戦士諸君らを祝福する意味でも、決戦の前に式を挙げる」 朗々とワルドが言い放つ。それは一応は正論としてギュスターヴは理解した。 「…そうか」 「君は明日の朝、『イーグル』号で先に帰国したまえ。僕とルイズはグリフィンで帰る」 「長い距離は飛べないんじゃないのか」 「滑空して降りるだけなら問題ないよ」 「そうか…じゃあな」 それを今生の別れかの様にワルドは立ち去るギュスターヴを見送った。 その姿が夜闇に見えなくなると、口元を弛ませて嗤うのだった。 用意されていた部屋で、ルイズは明かりも入れずにテーブルに突っ伏していた。 「…ルイズ」 呼び声に顔を上げたルイズの瞼は、月明かりのような弱い光の中でも判るほど、泣き腫れている。 「ギュスターヴ…」 ルイズは立ち上がるとギュスターヴに飛び掛るように組み付く。鳩尾に顔を埋め、嗚咽を雑じらせている。 「どうして!どうして!みんな、笑ってるの?!明日にはもう死んじゃうんでしょ?…どうして…」 そんな稚いようなしぐさを見せる主人を、無言のギュスターヴは大きな手のひらで撫でてやるのだった。 「姫様が…恋人が、大事な人が死なないでって、逃げてもいいって言ってるのに、どうしてウェールズ王太子はそれを無視して、死のうとするの?」 「…ルイズ。貴族ならそれがわからないわけじゃないだろう。人と国を治めるものは自分の命を費やしてでもそれを守らなきゃいけない」 それがギュスターヴに答えられる数少ない言葉でもあった。 「だけど!もうアルビオンは滅んじゃうのよ…一体何を守るっていうのよ…」 「それは俺にもはっきりとは言えない…でも、上に立つ人間というのは、たとえ一人でも部下が居れば、逃げることは出来ないんだよ」 自分がそうであったように。 ひとしきり泣いたルイズは力なく立ち歩き、しつらえられたベッドに身を投げる。 「…もういや。早く帰りたいわ。遺された人がどれだけ悲しむか、考えもしない人ばかりで」 「そんなことを言うなよ。明日は結婚式なんだろう?」 「…え?」 綿の枕に顔を擦り付けながらルイズが聞き返す。 「ワルドが明日、ルイズと結婚式を挙げる、ウェールズに媒酌を頼むんだ、って息巻いていたぞ」 「知らないわ、そんなの…」 泣き疲れたのか、徐々にルイズの意識と声は途切れ途切れになっていく。 「もう、どうでもいい…。皆、馬鹿ばっか…」 そう言ったきり言葉がでない。暫くすると静かに寝息が聞こえてくる。 ギュスターヴはベッドのルイズに毛布をかけてやると、静かにルイズの部屋を後にした。 しかしその足は、自分に与えられた部屋へは向いていなかった。 前ページ次ページ鋼の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2994.html
それは―――彼らから見て、天頂方向より来た。 孤島でトンチキな推理劇を演じる事になったSOS団夏期合宿から帰ってきて、 ようやく俺は夏休み気分を味わい始めていた。 言うまでもなく学校からわんさと背負わされた課題の山なんぞを切り崩す気には全然ならず、 いつの間にやら八月も半ばを過ぎようとしていた頃……。 それは訪れた。 「あんた誰?」 抜けるような青空をバックに、俺の顔を覗き込む女の子が一人。 黒いマントの下に、白いブラウスとグレーのプリーツスカートを着込んでいる。 顔は……可愛い。桃色の髪に透き通るような白い肌。 勝気そうにくりくりと動く瞳が誰かさんを連想させ……いかん。 その目に一抹の不安を覚えた俺は、慌てて周囲の状況を確認する事にした。 俺はどうやら仰向けに寝転んでいるらしい。立ち上がって辺りを見回す。 携帯電話を取り出そうとして……寝巻き姿だった事に気付き、やめた。 「誰って……俺は……」 「どこの平民?」 平民?いや、確かに俺は生粋の平民と言えば平民だが、 改めてそれを指摘する事に一体全体何の意味があるというんだ? 「ゼロのルイズ!平民を召喚してどうするんだよ!」 「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」 「間違いって、いつも通りだろ!」 「ルイズはいつもそうだ!」 俺を覗き込んでいた奴は、どうやらルイズというらしい。 外人みたいだ。いや、実際外人なんだろう。 周囲を囲む少年少女も異国情緒を振り撒く顔立ちばかりで、 まるで少々昔に流行ったファンタジー映画に出てくる魔法使いのようにマントを羽織り、 ご丁寧に小さな棒まで手にしている。コスプレか?それとも真性の……。 「ミス・ヴァリエール。どうやら『サモン・サーヴァント』は成功したようですね」 「ミスタ・コルベール!」 大きな木の杖に真っ黒なローブ、薄い髪の毛にメガネと、 その存在の全てで自分は魔法使いです、と主張しているかのような男が前に進み出た。 「さあ、契約を済ませてしまいなさい。召喚と契約の間は短ければ短いほど良いのです」 「で、でも!人ですよ!」 「前例はありませんが、使い魔は使い魔です。召喚した以上は、責任を取らなくてはいけません」 使い魔?サモン・サーヴァント?何なんだ、さっきからこいつらは何を言ってるんだ。 まさか妙な儀式をして、俺を使い魔とやらに仕立て上げるつもりじゃないだろうな? 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 貴族?アホか。何が貴族だ。どうやらこの方々は自分は特別なんだと思いたいばかりに、 自分は魔法が使える、魔法が使えるんだから偉い、などと独特の論法を完成させた特殊な方々のようだ。 その貴族ってのも、どうせどこぞの団長様のように適当に偉そうな称号を選んだだけなんだろ? 俺は流石に嫌気がさして、何とかしてお暇しようと頭の中で適切な言い訳をこねくりまわしてみるのだが……。 「ちょっと、屈んでくれないと届かないでしょ!」 しかし。ルイズとかいう奴は俺の服を掴んで、ぐいっと引っ張ってある一言を放った。……ああ。 よりによって同じセリフを似たようなシチュエーションで吐く奴が二人いるとは思わなかった。 「協力しなさい」 俺は完全に虚を突かれて、このルイズとかいう奴のなすがまま、少し体を屈めてしまい……。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 抗議の声を上げようとした俺に、ルイズは強引に唇を重ねた。 こんなことって、こんなこと? 世界中の時間が、停止したかと思われた。 ルイズとやらは顔を真っ赤にしてわめき散らしている。 いわく、これはただの契約であって、それ以上の意味合いはない。 いわく、わたしの使い魔になったことを光栄に思うべき。 いわく、使い魔は主人の剣となり、盾となり、手足となり――― それにしてもよく動く口だな、と、俺が何気なく口に右手を当てたその時。 目の前の右手がまるで焼印でも押されたように痛み出し、 俺は悲鳴を上げて転げまわる様を衆人環視のもとで見せ付ける派目になった。 小さい女の子だと思って油断していたが、あの『儀式』の間に何か小細工をされたのか!? 「ぐあっ……!俺の手に何をしやがった!」 ようやく搾り出した俺の抗議に、ルイズとやらは平然とした顔で宣告する。 「使い魔のルーンが刻まれているだけよ。もう大丈夫でしょ?」 いつのまにか痛みは治まり、右手には奇妙な文字が刻まれていた。 「ふむ……珍しいルーンだな」 いつのまにか近寄っていた中年魔法使いが、俺の右手に刻まれた文字を見てそう呟く。 「さて。教室に戻るとしましょう」 中年魔法使いはそう言い残すと、宙に浮いて教室とやらに向かう。 それを見ていた少年少女たちも、彼に倣うように空を飛んで、建物の中へと消える。 「すごい飛んでる!」 俺の驚愕の叫びに、ルイズとやらはこともなげに答えて、言った。 「メイジが飛ぶのは当たり前でしょ?」 メイジ?メイジで貴族?これ本当に魔法使い? 呆然と彼らの飛んでゆく姿を見続けるうちに、 後に残されたのは俺と、ルイズとかいう自称貴族様だけになった。 数分間の沈黙の後、まず始めに口を開いたのは俺だった。本来ならば、 何の罪もないごく普通の高校生であるこの俺をこんな目にあわせる理由を小一時間問い詰めたい所ではあるが、 このルイズとやらはどうみてもまだ子供だ。子供に対して本気で問い詰めるような態度をとってしまえば、 いかに正当な理由があろうとも、責められるのは年上のお兄さんであるこの俺のほう。 おもに妹との長い長い戦いにより獲得したこのような経験則から、 俺は内心のもやもやを理性という光で押さえ込んで、できるだけ穏やかな風を繕って話を切り出した。 「まず、俺をここに連れてきた理由を聞きたい。使い魔とか言ったが、具体的にはどうするつもりなんだ?」 それを問うた俺に、ルイズとやらは『やっと話を聞く気になったか』と言わんばかりの期待の眼差しを俺に向ける。 「使い魔はね、そう……まず、主人の目となり耳となる能力を与えられるの」 目となり耳となる?別段見る世界が変わったような感覚はないが……。 いまいち反応が良くない俺を見て、ルイズとやらは使い魔の解説を補足する。 「それからね、使い魔は主人の望むものを見つけてくれるのよ!秘薬とか、宝石とか」 期待を滲ませて俺を見つめるルイズとやらに、俺はしかしため息を一つついて返答とした。 だんだんとしょんぼりしてきたルイズとやらに少々罪悪感を憶えたが、できないものはできないのだから仕方ない。 なにせ俺自身は生粋の凡人、ただ周囲に少々変人が集まっているだけの高校生にすぎないのだからな。 「じゃあ、主人を色んな敵から守ることは……」 ルイズとやらは縋る様にそう言って、俺の返答を待つ。 「……できると思うか?」 おそらく予想はしていたであろうその答えに、ルイズとやらは深く肩を落として落胆を表現する。 「じゃあ……掃除、洗濯、雑用……」 しゃがみこんでいじけながらもようやく言葉をひねり出したルイズとやらに、 しかし俺は望む答えを用意することはできない。 「言っとくが俺は洗濯なんてできないぞ。掃除だって『キョン君はいいよ』って言われるぐらいで……」 「やるのよ」 ルイズとやらはどうにかして俺に存在価値を見出したいようだが、 あいにく俺は要求された使い魔としてのスペックを満たす自信は持ち合わせていないし、満たしたいとも思わない。 「白いブラウスが青斑色に変身したり、食器が神隠しにあったりする不思議時空を体験したいと言うなら話は別だが」 「あんた本当に使えないのね。いいわ、朝の洗い場にメイドがたむろしてるから、頼んで何とかしてもらいなさい」 「メイドに頼むって……やってくれなかったらどうするんだ?名前出してもいいのか?」 「そこまでご主人様に言われないと何もできないの!?バカ!ルイズ様の使い魔ですぐらい自分の判断で言っていいわよ!」 へいへい。いつまでここにいることになるのかはわからないが、どうやら俺はここでも似たような運命を辿る事になりそうだ。 雑用係としての運命をな。 ……まさか、このルイズとやらも常識外れの特別な力があるとか、そんな奇跡……いや、悪夢はないよな? 俺は誰ともなくそう問いかけたが、もちろん答えが帰ってくることはなかった。
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/476.html
autolink ZM/W03-T01 ZM/W03-012 カード名:“ゼロの使い魔”サイト カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:2500 ソウル:1 特徴:《使い魔》?・《武器》? 【自】あなたが「集中」を使った時、その効果でクライマックスが控え室に置かれたなら、そのターン中、このカードのパワーを+3000。 TD:こちとら、ゼロのルイズの使い魔だっての! C:くそっ、無駄にヒラヒラしてて洗いにくいったら… レアリティ:TD C illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 一度の集中で5500+集中補正までパワーが上昇するので、レベル1以上と相打ちが狙えるようなら使うのも手。 ティファニア・ウエストウッドやゼロのルイズなどのパワーを上げるものと組めば、レベル3を打ち取ることも不可能ではない。 とはいえ、無理に集中を使用して終盤にストックが足りなくなる事態は避けたいところ。 D.Cのカードに多いデッキトップ確認・デッキトップコントロールと併せて集中を使用するデッキや、 ディスガイア以降増えてきたレスト不要の集中持ちと併せて使用すれば、バニラよりも活躍できる機会は多くなるだろう。 ・関連ページ 「サイト」?
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5783.html
前ページ次ページ狂蛇の使い魔 第十二話 気絶したフーケを捕らえ、タバサとキュルケは元来た道を大急ぎで戻ると、意識を失ったルイズを学院に運び込んだ。 キュルケが強引に引っ張ってきたモンモランシーのおかげで大体の傷は治り、特に別状はないという。 それでも、ルイズは目を覚まさなかった。 結局、事の報告は後回しとなり、タバサとキュルケの二人はつきっきりでルイズの看病にあたることとなったのだった。 そして、その日の夜 「ぅ……ん……」 ルイズが目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋であった。 キュルケが上からこちらを覗き込んでくる。 その傍らにはタバサもいた。 「やっとお目覚めね。まったく、いつまで寝てるんだか」 おかげで舞踏会に行けなかったじゃない、とキュルケは腕を組みながら言った。 「……ごめんなさい」 ルイズがしょんぼりとした表情で謝る。 それを見て、キュルケは微笑んだ。 「ま、いいわ。それより、あのカメなんとか……」 「仮面ライダー」 タバサが突っ込む。 「そうそう、それそれ。あれって一体何だったの? 詳しく話してみなさいよ」 ルイズは一瞬顔を曇らせたが、しばらくすると体を起こし、ゆっくり口を開いた。 ミラーワールド、モンスター、仮面ライダー…… キュルケは、ルイズの口から語られる信じられないような話に目を丸くしていた。 一方のタバサは、表情一つ変えずに話を聞いている。 「……なるほど。だから、そのカードデッキは破滅の箱なんて呼ばれてたのね」 ルイズの話が一段落すると、キュルケがルイズの手元にあるタイガのデッキを指差しながら言った。 「多分、そうでしょうね。……それで、今日あったことだけど……」 ルイズがミラーワールドでの出来事を話そうとした時、突然部屋の扉が開かれた。 「ひっ! あ、アサクラ!?」 扉の前に立つ浅倉を見た途端、ルイズの顔から血の気が引き、青ざめる。 それを見ると、浅倉は笑いながら彼女がいるベッドへと近づいていった。 「いつもの偉そうな態度はどうした? 俺に叩きのめされたのが、そんなに怖かったのか?」 「い、いやっ! 来ないで、来ないでぇっ!!」 ミラーワールドでの恐ろしい体験が脳内に甦り、ガタガタとその身を震わせるルイズ。 そんな彼女と浅倉との間に、キュルケが割って入った。 「ちょっとアンタ! 一体ルイズに何をしたのよ!?」 キュルケがきっ、と浅倉を睨み付ける。 今まで浅倉をダーリンとよび、恋心を抱いていたキュルケであったが、今の彼女にそんな気持ちは微塵もない。 むしろ、友を傷つけたことへの怒りの感情の方が強くなっていた。 そんな彼女を浅倉はフン、と鼻で笑う。 「そのデッキを手にした今、こいつも一人のライダーだ。ライダー同士、戦うのは当たり前だろう?」 「なら、これからもルイズと戦い続けるとでもいうの?」 「いやっ!」 キュルケの問いかけにルイズが反応し、膝を抱えて体を縮こまらせた。 その目には涙が湛えられている。 「もう戦いたくない……! もう戦いたくなんかないよ……!」 浅倉はそんなルイズに冷めた目を向けると、再びキュルケの方へと視線を戻した。 「だとしたら、どうする?」 怒りの形相で睨み続けるキュルケに、浅倉は余裕の表情で問い返す。 「……なら、容赦しないわ!」 「ほう、やるか?」 そう言って、キュルケは杖を、浅倉はデッキをそれぞれ取り出した。 そんな二人を、ルイズは心配そうに見つめている。 「待って」 不意に聞こえてきたタバサの声に、皆の視線が彼女に集中する。 そして、タバサの口から思いがけない言葉が発せられた。 「……私が仮面ライダーになる」 「ダメよタバサ! 危険よ!!」 タイガのデッキに伸ばされたタバサの手を見て、ルイズはタバサに渡すまい、と両手でデッキを抱きしめた。 しかしタバサが杖を一振りすると、デッキはルイズの元を離れタバサの手に収まった。 「誰かがライダーにならないと、ルイズが食べられてしまう。でも、今のルイズに変身は無理」 タバサが淡々と理由を述べていく。 「それに、まだアサクラに助けてもらったお礼をしてない。私なら、相手をしてあげられる」 浅倉の方を向き、微笑みかけた。 「……本気なの? アサクラには摩訶不思議な怪物がいるし、下手したら死んじゃうのよ?」 納得のいかないキュルケがタバサに尋ねた。「こういうのには慣れてる」 「でも……」 「俺なら誰だって構わないぜ。」 尚も食い下がろうとするキュルケを、浅倉が邪魔をした。 「それに、こいつよりもよっぽど楽しめそうだしな」 そういうと、浅倉はルイズの方へ顔を向けた。 「情けない奴だ。周りの人間にまで迷惑をかけておいて、役立たずにもほどがある」 浅倉の放った言葉が、ルイズの胸にぐさりと突き刺さる。 「そのくせプライドだけは人一倍、か。笑わせるな。……少しは身の程を知ったらどうだ?」 ルイズは堪らず、目から涙をポロポロとこぼし始めた。 「私は……私は……」 「ルイズ! ……アサクラ、あんた何てこと言うのよ!! 誰のせいでこんなことになったと思ってんの!?」 キュルケが再び浅倉に食って掛かる。 「俺は事実を言ったまでだ。……寝るぜ?」 それだけ言うと、浅倉は部屋の隅まで歩いていき、床の上に寝転がる。 そして、キュルケが投げ掛けてくる憎しみのこもった視線をよそに、浅倉は深い眠りへと落ちていった。 翌日。 ルイズ、タバサ、キュルケの三人は、学院長室にてフーケ討伐の報告を行っていた。 しかし、いつも通り無口なタバサに加え、ルイズも終始沈んだ表情で黙りこんでいたため、報告はもっぱらキュルケによってなされていた。 「……というわけで、今回の成功はルイズとその使い魔の活躍があってこそのものなのです」 『ルイズ』の部分を特に強調して、キュルケが報告を終えた。 「なるほどのう。まさか、あのロングビルが……」 オスマンが残念そうに溜め息をつく。 「ともかく、ご苦労じゃった。……そうじゃ、王室にも報告しておこうぞ。きっと何かしらの褒美がもらえるじゃろうて」 先ほどの表情から180度変わって、ニッカリと笑いながらオスマンが言った。 キュルケとタバサの顔にも、それぞれ笑みが浮かぶ。 が、ルイズの表情は相変わらず沈んだままだった。 「ミス・ヴァリエール、どうかしたかの? 元気がないようじゃが……」 「え? あ、いえ。何でもありません。ありがとうございます」 「……そういえば、破滅の箱を君の使い魔殿に渡す約束じゃったな。約束通り自由にしてよいと伝えておいてくれ」 ルイズはそれを聞くと、コクリ、と力なく頷いた。 「それと、ついでじゃ。これも渡しておいてくれ」 そう言って、オスマンは一枚のカードを取り出した。 「これは……?」 「荒らされた宝物庫の整理をしてたら出てきたものでの。破滅の箱に入っていたものとそっくりじゃから、君の使い魔なら使えるじゃろう。 わしには無用の品じゃ。もっていくがいい」 「……ありがとうございます」 ルイズは小さな声でお礼を言いながら、手渡されたカードを懐にしまった。 「ルイズ。ちょっと」 「……なに?」 学院長室からそれぞれの部屋へと戻る途中、ルイズはキュルケに引き止められた。 ――バチン! 振り返ったルイズの頬を、キュルケの手のひらが思い切りはたき、赤く染めた。 ルイズが驚いた顔で頬に手を当てる。 「アンタ、いつまでくよくよしてんのよ! らしくもない!」 キュルケが腰に手を当て、ルイズを見据えながら言った。 「いい? フーケに勝てたのはルイズが破滅の箱を使って、ゴーレムの動きを封じたからなの! ルイズのおかげ! わかる!?」 「でも、それは破滅の箱の力で……」 「破滅の箱を使って戦おうと勇気を出したのはアンタでしょう? もっといつもらしく誇りなさいよ!」 ルイズの反論を遮り、キュルケが続ける。 「例え魔法が使えなくても、諦めずに一生懸命頑張ってきたのが今までのアンタじゃない! そんなルイズはどこに行っちゃったのよ!?」 呆然と話を聞いていたルイズが、暗い表情のまま顔を下に向けた。 名門貴族に生まれながらも魔法を使えず、優秀な家族との落差に悩んだ日々。 失敗ばかりで散々ゼロのルイズと馬鹿にされ、劣等感に苛まれ続けた学院での毎日。 やっと成功したサモン・サーヴァントでも、呼び出した使い魔の扱いすら上手くいかず、逆に虐げられる始末。 それらの辛い記憶がルイズの頭の中を駆け巡り、涙となって目から溢れ出てきた。 「……何がわかるのよ」 俯いたまま、ルイズが震えた声をあげた。 「あなたに私の何がわかるのよぉっ!!」 顔をあげてその泣き腫らした表情をキュルケに向けると、ルイズは大声で言い放ち、自室に向かって勢いよく駆け出した。 「あっ、待ってルイズ!」 キュルケが止めようと手を伸ばしたが、走り出したルイズには届かず空を切る。 「ルイズ……」 自らの思いが友の心に届かなかったことを歯がゆく感じながら、キュルケはその場に立ち尽くすのだった。 同じ頃、ミラーワールドのとある森の中。 フーケとの戦いの最中に気配を気づかれた白い怪物のうち、王蛇の攻撃から免れた一体がそこにいた。 くねくねとした動きで怪物が森の中を歩いていくと、しばらくして広大な湖が目の前に現れた。 トリエステンとガリアに跨がる湖、ラグドリアン湖である。 水の精霊がいることで知られる湖だが、鏡の中の異世界では異様な光景が広がっていた。 今しがた辿り着いた白い怪物と同じ怪物があちこちから集まり、続々と湖へと向かって行ったのである。 不気味な唸り声をあげながら、無数の怪物がひたすら前に進んでいく。 たどり着いた怪物も湖に向かおうと動きだした、その時。 怪物が突然どさりと前のめりに倒れると、手足をピクピクと動かしながら体を丸め始めた。 そしてしばらくすると、背中がボコボコと盛り上がり、固い表皮にヒビが入る。 次の瞬間、白い怪物の体を破り、羽の生えた青い怪物が姿を現した。 青い怪物はすぐに頭に生えた羽を羽ばたかせ、湖の上を飛び始める。 それから、同じようにして数匹の青い怪物が現れ湖の上を舞うと、何処へともなく飛び去って行ったのだった……。 前ページ次ページ狂蛇の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5833.html
前ページ次ページ狂蛇の使い魔 第十四話 いきなり目の前に現れた、浅倉、タバサ、ギーシュの三人。 アンリエッタは突然の出来事に目を丸くし、不安げな顔でルイズに状況の説明を求めた。 要求に応じたルイズが三人をそれぞれ紹介していくと、しだいにアンリエッタの緊張が解け、元のにこやかな表情に戻っていった。 そして、ギーシュがアンリエッタに協力の意を示すと、彼女は改めて事情を説明し、彼やタバサにも任務を依頼。 二人とも快く引き受けたのだった 乗り気でないルイズだったが、三人が進んで引き受けたのと、何より親友であるアンリエッタたっての願いである。 結局、姫様の為なら、と渋々受諾したのだった。 一方、浅倉はその一部始終を見ると、床で大の字になったまま、ルイズに向かって「俺も連れていけ」と声をかけた。 暇潰しの相手がいなくなることに加えて目的地が戦地であるため、欲を満たすには好都合だと考えたのである。 彼の何かを企んでいるような怪しい表情を見て、ルイズは一度その申し出を断ろうと考えた。 しかし、傍若無人な彼の性格からして逆らっても無駄だろうと判断し、やむを得ず了承したのであった。 「ねえ、アサクラ。起きてる?」 晩餐会も終わり、学院中が寝静まった頃。 自分も眠ろうとベッドに横になっていたルイズは、顔だけを浅倉に向けて問いかけた。 浅倉も同様に、顔だけをルイズに向ける。 「あんた、いつも私の部屋で寝てるけど……何か理由でもあるの?」 ルイズが引き留めているわけでもないのに、わざわざ彼女の部屋で寝る浅倉。 給仕に掛け合えば、食堂での気に入られ具合からして寝室の一つくらいは用意してもらえそうなのだが。 少しの間を置いた後、浅倉が口を開いた。 「お前といると、落ち着くんでな」 「……えっ?」 思いがけない言葉に、ルイズは思わずベッドから上半身を持ち上げた。 「ふ、ふざけないでよ……」 「別にふざけてなんかいない。そんなことをしてなんになる。 お前といるとなぜかイライラが和らぐような気がする……ただそれだけの話だ」 ルイズは呆然としていた。 なんの気なしに側にいると思っていた浅倉が、実は自分を心の拠り所にしてくれていた……。 今までぞんざいに扱われてきた分、ルイズはその言葉に少しだけ好意を抱いた。 しかし、同時に新たな疑問が浮かびあがる。 「そ、それじゃなんであの時私に襲いかかったのよ」 「お前がライダーだったからだ」 浅倉がさも当然というように言い放つ。 「言わなかったか? 俺はな、ライダーと戦っている時が一番幸せなんだよ」 「それなら、今の私は……」 「襲う価値など微塵もないな」 つまるところ、浅倉にとってルイズはどうでもいい存在、ということだった。 ルイズはなんだ、と肩を落としたが、前よりもいくらか気分が楽になった気がした。 ルイズと浅倉が眠りについて、しばらくした頃。 自我を持った剣、デルフリンガーは、ルイズが眠っていることを確認すると、その身を揺らし浅倉の枕元でがちゃがちゃと音を鳴らし始めた。 しばらくすると浅倉が目を覚まし、呟いた。 「……その耳障りな音を止めろ。へし折られたいのか?」 「相棒、やっと起きたか。すまねぇな、少し話があるんだが……」 「後にしろ。俺は眠い」 そう言って、浅倉は再び目を閉じる。 「そう言うなって! お前の能力について話しておこうと思ってんだ!」 「……何?」 浅倉が古びた剣へと顔を向けた。 「相棒、あんた最近武器を持った時に体が軽いと感じたことはなかったか?」 浅倉は今までの戦いを思い出す。 ……確か、ギーシュと最初に決闘をしてからだ。 体が妙に動かしやすいと感じるようになったのは。 「……あったらどうなんだ?」 「やっぱりな。その左手のルーンといい、あんた、『ガンダールヴ』だぜ」 「なんだそれは」 耳慣れない単語に、浅倉は思わず顔をしかめる。 「知らねえのか? いいか、ガンダールヴっていうのはな……」 そう言って、デルフリンガーは語り始めた。 伝説の使い魔、ガンダールヴ。 あらゆる武器や兵器を自在に操る力をもち、使えるべき主である虚無の担い手を守るといわれている。 その能力は、例え見たことのない武器でさえ一瞬で使いこなせるほどらしい。 さらに、ひと度武器を持てばその身体能力は飛躍的に上昇するという。 「なるほど……。ずいぶんと都合のいい能力だな」 左手に刻まれた奇妙な印を見ながら、浅倉が言った。 「それで、その虚無の担い手とかいう奴は……まさか、あいつか?」 浅倉の視線が、自身の左手からベッドの上のルイズに移る。 「今のところ確証は持てねぇ。ただ、一つ言えることは……あの娘っ子がいるからこそ、相棒は使い魔としての力を行使できるってことだ」 ルイズの方を見つめ、何かを考えるような仕草をしたまま動かない浅倉。 構わず、デルフリンガーが続ける。 「今まで乱暴にしてきたみてぇだが、これからは優しく扱ってやんな。あの娘っ子が死んだら、お前の力もなくなっちまう。 間違っても殺そうだなんて思わないこった」 そう言って、デルフリンガーが話を終えた。 しばしの静寂の後、沈黙していた浅倉が再び古びた剣に視線を戻すと、口を開いた。 「別にライダーになれるだけで十分だが……そうだな。もっと力を得るのも悪くない。奴が俺の邪魔をしなければ、特に何もしないとだけ言っておくぜ。 ……それにしても、お前もずいぶんと割り切った奴だ。俺の耳には、あいつのことを道具のように利用しろというように聞こえたぜ?」 ニヤリ、と笑みを向ける浅倉。 デルフリンガーは押し黙ったまま答えない。 そのまま二人の間で会話が途切れ、部屋は再び夜の静けさに包まれたのだった。 (すまねぇな娘っ子。俺にできるのは、これだけだ……) デルフリンガーが心の中で呟いた。 翌朝。 アルビオンに向かうため身支度を整えたルイズたちは、学院の門の前に集合していた。 アンリエッタによって手配されたという護衛を待つためである。 「おはよう、ルイズ。もう大丈夫なの?」 「おはよう……ってあれ? なんでキュルケがここに?」 キュルケに声をかけられ、驚いた表情を見せるルイズ。 タバサから事の詳細を聞いたキュルケは、ルイズへの心配と浅倉への警戒心から、勝手についていくことにしたのであった。 「そう……。いろいろと迷惑をかけちゃったわね」 「ふふっ。これで借り一つね。……ところで、本当に彼も連れていくの?」 キュルケが後ろを振り向き、厳しい視線を投げかける。 その先には、ギーシュに荷物を押しつける浅倉の姿があった。 「どうせ言ってもきかないし……。ま、なるようになるんじゃないかな」 そう言って、ルイズは苦笑する。 少し前まではあれだけ彼を怖がっていたのに、今のルイズにはあまり不安が感じられない。 何かあったのかとキュルケがルイズを問い詰めようとしたその時、朝もやの奥から何かが羽ばたくような音が聞こえてきた。 皆が視線を向けると、そこにはグリフォンから降り、こちらに近づいてくる何者かの姿があった。 前ページ次ページ狂蛇の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4808.html
前ページ次ページ鮮血の使い魔 ルイズは困っていた。 「皿洗いくらい手伝いな」 とマチルダに言われた。 そんな下々の仕事をと思ったが、自分はこの家に厄介になってる身。 言葉に任せようかとも思った、指輪を取られて不機嫌そうなので頼みにくい。 だから仕方なく皿洗いを始めたのだが……。 「ルイズ、そんなに強くこすっちゃお皿に傷がついちゃうわ」 右隣にティファニアも立っていた。家事は自分の仕事だから一緒にやろうと言ってきた。 それはいい。 「ずいぶんお皿が多いですね。子供達の分……ですか?」 左隣に言葉も立っていた。ルイズがやるなら自分もやりますと言ってきた。 それはいい。 しかし「じゃあ二人に任せていいかしら」と言ったら、 言葉は「ルイズさんがやらないなら私もやりません」と言うし、 そんな風にティファニア一人に皿洗いを押しつけたら悪役になってしまう。 こうして三人一緒に皿洗いをしている訳だが。 (何で私が真ん中なの?) ティファニアが身体を傾ける。たわわな柔肉がルイズの腕に当たって形を変える。 言葉が身体を傾ける。たわわな柔肉がルイズの腕に当たって形を変える。 左右からの苛烈な乳房責めを受け、ルイズの脳みそは沸騰寸前だった。 (私はノーマル、私はノーマル、私はおっぱい、私はノーマル……。 クールになれ、クールになれ、素直クールになられ、クールになれ……。 うろたえるな、うろたえるな、ウロヤケヌマ、うろたえるな自分ー!!) 言い聞かせる。自らに命ずる。ノーマルで在れ、クールで在れと。 なぜならルイズ・フランソワーズは女の子! 花も恥らうツンデレ乙女! それが同性の肉袋如きに惑わされてどうするというのだ! 「きゃっ」 「えっ」 ティファニアが悲鳴を上げると同時に左手がやわらかい何かに呑み込まれていく。 それはティファニアの乳房だった。指が吸い込まれる。何この脂肪の塊という名の芸術。 (天の願いを胸革命に刻んで心頭滅却すれば火もまた火とひとつになれば炎となる。 煩悩退散煩悩退散、煩悩おっぱい困った時は、オラオラ、はしばみ、オラオラ、はしばみ) 頭の中で意味不明の念仏を唱えるルイズ。嗚呼、虚乳コンプレックスここに極めり。 「……ぼんやりしてると、お皿、落としちゃいますよ」 言葉の右手が、ルイズの左手に、伸びて、 薬指の水のルビーの表面を撫で、中指のアンドバリの指輪に、触れ、 ガシャン。 皿が滑り落ちた。 ルイズは慌てて自分の手元を、ティファニアはルイズの手元を見た。 その前に言葉はルイズの左手から素早く手を引いていた。 「……だから、言ったじゃないですか」 「あ、ごめん。ぼーっとして……」 謝ろうとして言葉の方に顔を向けようとして、洗い場から泡だらけの手を引いて、 肘が言葉の雄大な谷間に直撃。 「あんっ……」 熱っぽい言葉の声に、余計慌てたルイズはてんやわんや。 「わっ、痛かった? ごめ……ひゃうっ!?」 慌てて言葉から身を引いたため、隣にいたティファニアの胸に後頭部からダイブ。 「きゃあっ!?」 突然の出来事だったためティファニアはルイズを支えられず、そのまま転倒。 「あっ……」 反射的に言葉はルイズが転ばないよう腕を掴もうとした。 掴んだ。 引っ張られた。 バランスが崩れた。 結果、ティファニアの上に二人分の体重がのしかかった。 「きゅ~……」 倒れた時に頭を『前後』から打って、もうろうとしているティファニア。 思いっきり倒れこみ、ティファニアのおでこに自身のおでこをぶつけてしまった言葉。 その間で、ルイズが挟まれていた。 頭の左斜め後方! ティファニアの左乳房確認! 頭の右斜め後方! ティファニアの右乳房確認! 頭の左斜め前方! 言葉の右乳房確認! 頭の右斜め前方! 言葉の左乳房確認! ぱふぱふ……などというレベルではない。威力倍増にも程がある。 しかもどちらも威力は極上。 頭を打ったせいで小さく身じろぎするティファニアと言葉、 そのせいで肉のマッサージを受けるルイズの顔。 「お、おお……」 声にならない声が漏れ、それが甘い吐息となって言葉の肉丘を撫でるように吹き抜ける。 「んっくぅ……」 言葉が身をよじる。巨大な肉は面白いほどに形を歪め、ルイズの顔を圧迫する。 「むおおー……」 圧倒的圧力に押され、ルイズは後ろへと逃げる。しかし後ろはティファニアの肉枕。 底なし沼のように沈んでいく。 深いの谷に呑み込まれていく。 (お、おおお、おおちちちちちちち、ち、ちちぶささささ、くにゅうにゅう……) 至高の感触に思考は断絶され嗜好が覚醒する。 虚であるが故に巨に恋焦がれ続けたルイズ・フランソワーズ。 白き肉の奔流に溺れながらも、唇を焦がす程に熱い美酒を貪欲に飲み干す。 女王蜂の発するフェロモンの如き汗の香りは心肺を侵略し理性を四散させる。 まるで生き物のように姿を変えながら這い回る四つの白い球。 それはまさに生き物であり、魅惑の効果を放ち続ける"巨夢の魔法"であった。 (そう、私は伝説を体感した――!) 視界が真っ白い光に包まれる。 それは星の光だった。 意識が天空の頂をも飛び越え星々にまで至ったのだ。 星光の中、ルイズは悟る。 ("巨夢"は、此処に在る) 嗚呼、始祖ブリミル。 有難う御座います。 第21話 巨夢のティファニア 完? 「……何やってんだい?」 ルイズ達が盛大に転んだ音を聞きつけて戻ってきたマチルダが、 凶器の域に達した乳房に顔をふさがれ窒息して臨終寸前のルイズを救出する。 実は本気で危なかったルイズだが、息を吹き返した途端、恍惚の表情でこう抜かした。 「もう……死んでもいい……」 「だったら死にな、来世は牛になるよう願うんだよ」 呆れ返ったマチルダは、皿洗いの続きを言葉とティファニアに任せ、 朦朧としたままの精神的な意味で危ないルイズを、言葉が使っていた部屋に運んだ。 そしてティファニアが面倒を見ている子供達に、ルイズが大の苦手の蛙を取ってこさせると、 躊躇微塵も無く蛙をルイズの顔面に乗せてやる。 これこそ魔法学院で得た知識(ゼロのルイズの下らない噂や悪口)の有効活用である。 天にも届くような悲鳴と共に、ルイズはお星様から帰って来た。 一方、足手まといのルイズがいなくなったおかげで素早く皿洗いを終えた言葉とティファニア。 ルイズがいないから何を話したらいいか解らないが、 楽しくお話できたらいいなとティファニアは思う。 「あの、コトノハは――」 「すみませんが、この家を案内してもらえませんか? ウェールズさんにもご挨拶したいですし」 「案内するほど広い家じゃないけれど……コトノハもウェールズと仲がいいの?」 「いいえ、あまり」 共通の話題を見つけたと思った直後に潰された。 それでもめげず、ティファニアは言葉に部屋を案内した。 といっても、台所とくっついてる居間を除けば部屋は二つしかない。 ひとつはティファニアの部屋で、先日まではルイズが使い、今は言葉が使っている。 もうひとつの部屋はウェールズを担ぎ込んで、ずっと彼が使っているそうだ。 「ではルイズさんはどの部屋で?」 「居間の暖炉の前で。私とマチルダ姉さんと三人一緒に毛布で寝ました」 「そう……ですか」 つまらなそうに言葉は言った。 なるほど寝込みに指輪を盗もうとしても、マチルダと一緒なら気づいてもらえる。 (私……何を考えてるの) 視線を伏せ、左手を軽く握った。甲に刻まれたルーンが目に留まる。 (……でも、誠君のためだから……) ルイズと一緒にいたい。 それ以上に誠と。 それが言葉。 「ところでルイズさんは大丈夫でしょうか……」 「すごい悲鳴だったものね。マチルダ姉さん、いったい何をしたのかしら?」 言い終わるとほぼ同時に家の戸が開き、フードのついたローブを着たマチルダが入ってくる。 ルイズの悲鳴の後、マチルダは心配無用と告げて納屋に向かったのだが、 どうやら旅支度を整えてきたようだ。 「マチルダ姉さん、出かけるの?」 「ああ、港町ダータルネスまでね。夕食はいらない、遅くなるから先に寝てな」 「港町にお仕事?」 マチルダの本業を知らないティファニアの純粋な疑問だった。 暴露してやろうかという意思があった訳ではないが言葉は冷笑し、 それが酷くマチルダの癇に障った。 「コトノハ。余計な事をしでかしたら、いくらあんたでもただじゃおかないよ」 かつて言葉の狂気と凶器に恐怖し屈服した女が言ってのけたのは、 精神的に成長したとかではなく単純に言葉という人間に慣れただけである。 「……お気をつけて」 どうでもよさそうに言葉は見送る。 多分、トリステインに帰る船を調べに行くのだろうと察しながらも。 賄賂を渡して船の片隅に乗せてもらうか、それともひっそりと密航するか。 どちらにせよ、無駄な努力である。 ルイズもマチルダも、アンドバリの指輪が死者を生き返らせると知っている。 だが人の意思を操る事を知っているのは言葉のみ。 港町ダータルネスに着いたら堂々と正面から、指輪で操った兵に船へ案内させればいい。 だから、一応味方の立場にいるマチルダに無駄な労力を負わせる必要はない。 が、ルイズの側にいられては指輪を取る障害となる。 だから行けばいい、港町ダータルネスへ。 マチルダが帰ってくる頃には、きっと誠も生き返ってるだろう。 この家を出て行くまでなんて、待てないから。 事件は昼に起こった。 教会でルイズを裏切った事、レコン・キスタに侵入した時の事を直接聞きたいとウェールズが言い、 どこまで正直に話すかは疑問だが言葉はそれに応じた。 その間、ルイズとティファニアは外で洗濯物をほしていたのだが、 見るからにガラの悪い男達が十数人という数で、それぞれ武器を持ってやって来た。 「何か用?」 強気に出るルイズだが、男達は下卑た笑いをする。 「こいつぁいい。まだ乳臭いガキだが極上の上玉だ。そっちのデカ乳も入れりゃ、大儲けよ」 「あんた達、盗賊?」 「貴族派の傭兵だよ。本隊とはぐれて、満足に飯も食えねぇ有様さ。 そこでちょっと小金を稼がせてもらおうと思ったが、お前さんりゃを売れば金貨四千はいくぜ」 「貴族派の傭兵?」 ルイズは一瞬、ウェールズと言葉がいる部屋へ視線をやった。 口振りからしてルイズとティファニアをいかがわしい目で見ているようだが、 それはむしろルイズを安心させた。 貴族派にウェールズの居場所が知られた訳ではないようだ。 しかしここで彼等の略奪を許せば、家の中にいるウェールズも発見されてしまう。 この数が相手では"ゼロ"のルイズでは歯が立たない。 ティファニアはハーフエルフとはいえ魔法は使えないようだし、二人ではどうにもならない。 こういう時に頼りになりそうなマチルダは現在留守。 となれば、まだ回復してないながらトライアングルメイジであるウェールズと、 ガンダールヴの力を持つ言葉に頼らねばこの窮地を脱する事はできない。 助けて、と悲鳴を上げれば家の中の二人に声は届くだろう。 しかしそれまでの間に、もし、自分達が捕まって人質にされようものなら……。 いっそ家の中に逃げ込むか? いや、貴族が卑しい盗賊風情に背を向けたとあってはヴァリエール家末代までの恥! 「テファ、私が囮になってる間に、コトノハとウェールズ様に助けを求めて」 小声で指示され、ティファニアは一歩、前に出た。 ナウシド・イサ・エイワーズ……。 振り向くルイズ。貴族しか、メイジしか持たぬ杖を、ティファニアが持っていた。 ハガラズ・ユル・ベオグ……。 勤勉なルイズは魔法を使えない身の上なれど、学院で学んだ魔法の詠唱はすべて暗唱できる。 ニード・イス・アルジーズ……。 だがこんな詠唱は聞いた事がない。火ではない、水ではない、風ではない、土ではない。 ベルカナ・マン・ラグー……。 でも不思議と、ルイズはこの詠唱を知っている気がした。懐かしいとさえ思う。 脈々と受け継がれてきた血が知っていた。この詠唱は本物だと。 「テファ……?」 問いかけると同時に、ティファニアは小さな杖を振り下ろす。 大気が歪み、男達を包み込むと、霧が晴れるように消えうせる。 「……ありゃ? 俺達、ここで何してんだ?」 「つーか、ここどこよ?」 うろたえる男達に、ティファニアは落ち着いた声で言う。 「あなた達は森に偵察に来て迷ったのよ」 「はえ? そうなのか?」 「隊はあっち。森を抜けると街道があるから、北に真っ直ぐ行って」 「ああ……そうする」 ふらふらと、寝惚けているかのような、あるいは酔っ払っているかのような足取りで、 男達は森の方へと立ち去っていく。 その光景を見て、ルイズは何も言えなくなってしまい、口をパクパクとさせていた。 そんなルイズを見て、ティファニアは恥らうような声で言う。 「か、彼等の記憶を奪ったの。"森に来た目的"の記憶よ。 この村の事も、私達の事も忘れちゃってるから大丈夫 「せ、先住魔法?」 違うと確信しながらもルイズは問わずにはいられなかった。 先住魔法なら杖は必要ない。だから系統魔法のはずなのだ。 詠唱を聞いてた時に感じていた確信めいた何かを、今はもう感じない。 だから訳が解らなかった。 ただ確かなのは、ティファニアが"記憶を奪う"という魔法を使えるという事実。 (――まさか、虚無?) 一瞬の突飛な思いつき。しかし虚無かどうかよりも、もっと重要な事柄があった。 ルイズの疑問が、次々に氷解した。 この村とティファニアの存在を明かしたくなかったにも関わらず、ここに案内したマチルダ。 土くれのフーケではない、真実の名前とおぼしき名前を明かしたマチルダ。 ハーフエルフを匿っているという事実を知られながらも自信にあふれていたマチルダ。 それはつまり、自分達がここから去る時、それらの記憶を消すという事。 皇太子としての名誉を蹂躙すればウェールズを救えると言ったマチルダ。 それはつまり、ウェールズから皇太子の記憶を奪えばレコン・キスタに特攻などせず、 ただの平民としてこの地で平穏無事に生きていけるという事。 さらにマチルダはルイズ本人には言わなかったが、ウェールズと同じ手段で、言葉を救える。 言葉から誠の記憶、ルケギニアに召喚される前の記憶などを消し去れば、 惚れ薬の時とは異なる形で、忘却という救済の元、精神に安定を取り戻すだろう。 ウェールズを救う方法があると言ったマチルダだ、当然言葉も救えると知っていたはず。 だがそれを言わなかったのはきっと、ルイズが断ると考えたからだ。 ルイズは思い出す、惚れ薬に心を惑わされたままの言葉でいさせてやる優しさもあった事を。 あの事件をマチルダは知らないだろう。 けれどルイズが言葉の思い出や誠も大事にしようとしている姿を見れば、 忘却などという逃げに屈したりはしないだろうと思ったかもしれない。 もしルイズが恋人を喪い、絶望に打ちひしがれたとしたら、 忘却という逃亡に走ってしまうかもしれない。 でも言葉は心を壊しながらも決して手放そうとせず、 その一途さはうんざりすると同時に羨ましくも思う。 心壊れていても、言葉が言葉でいられるのは、その狂愛があるからだ。 でも、ティファニアなら言葉を救えるというのも、間違いなくて。 「その、その魔法で、テファ、記憶を……コトノハの……」 そこまで言い、ルイズは口を閉ざした。 こんな救済、言葉は望まない。 心が壊れる前の言葉こそ真の使い魔であり、その言葉に出会うためにがんばろうと決めた。 できる。 今、ティファニアに頼めば、すぐにでもできてしまう。 「ルイズ? コトノハの記憶を……消したいの?」 困惑気味なティファニアの声に、ルイズは首を横に振った。 「ごめん。違うの何でもないっ……忘れて……」 言葉を救いたいのに、目の前に救う手段があるのに、ルイズはその場から逃げ出す。 残されたティファニアは呆然とルイズの背中を見送っていた。 ルイズと言葉がこの村を去る時、記憶を消さなければならない。 けれどできるなら、友達の記憶は消したくない。 でもルイズは言葉に忘れてもらいたい記憶がある? その記憶とは、何だろう。 ティファニアは、マチルダとルイズが大事にしていた鞄を思い出した。 あの鞄は言葉の物で、今は言葉の手にあり、言葉はマチルダ達以上に鞄を大事にしている。 つまりあの鞄の中が、きっとそれに関係あるのだろう。 何が入っているんだろう。 家の壁に背もたれながら、言葉は天を仰いでいた。 ウェールズとの話を終え、ルイズとティファニアが洗濯している間に武器を探そうと、 裏庭にある薪割り用の斧を手にとってみたが、ルーンは輝かず武器と判断されなかった。 残念がりながら家に戻ろうとした時に、盗賊達が来た。 一部始終を見た。盗賊達が記憶を奪われ帰っていく様を。 一部始終を聞いた。記憶を消す魔法の存在を。 あの魔法を使えば、言葉は誠の存在を忘れ去り、ルイズの忠実な使い魔となる。 なのにルイズは、一度は頼みかけながらも、それをやめた。 「それでも……私は誠君の、彼女ですから」 ルイズよりもアンドバリの指輪を見つめる言葉。 もし指輪をしているのがルイズでなければ手荒な真似をしていたかもしれない。 「よかったですね、ルイズさん。私がルイズさんの事を好きで」 自嘲の笑みは痛々しく、しかしそれを見る者の姿はなかった。 第21話 虚無<ゼロ>のティファニア 前ページ次ページ鮮血の使い魔
https://w.atwiki.jp/svmdfnlanc/pages/26.html
スレッド多すぎて、分かりにくいんだよカス!! 申し訳ない!! それでは各スレッドの使い方を確認してください! 基本的な制作避難所は、製作速報VIP(クリエイター)だよ! 制作避難所はこちら ここで基本は会話や雑談が行われてます! 社畜が指示を出す時や個別で話し合いなんかしたい時は、別のしたらばスレで行われているよ!! ここには、よく名無しさんも話しに参加してくれてる。みんなすごく良い人達だ。 職業別での話し合いや、 1との細かい話し合いはしたらば避難所!したらば避難所一覧はこちら 現在は、ライターさん用、絵師さん用、音楽家さん用の3つ相談窓口が立ってます。 あとは、もしも上の制作避難所が消えてしまった場合は、総合避難所2もあるよ! 簡単に説明はしましたが、それでもわからなければ、基本的な制作避難所で質問してみてください! 社畜なのにさぼっている製作者1(社畜)がお答えするよ! まあ基本は制作避難所で色々と報告してくれると嬉しいと思ってます!
https://w.atwiki.jp/chikusaba1/pages/173.html
PayPayの使い方講座 ステップ1 PayPayアプリをダウンロードしよう! お使い端末のApp storeまたはGoogleストアでPayPayアプリをインストールしよう ステップ2 アカウント登録をして現金をチャージしてみよう! アカウント登録をしよう! 詳しくはこちら ステップ3 snsリンクを作ろう! 購入したい金額分のリンクを作成しよう! 詳しくはこちら ステップ4 リンクをコピーしてフォームに貼り付けよう! ちく鯖wikiから支援金フォームへ行き下の画像にある欄にリンクを貼ってください! 詳しくはこちら