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前ページ次ページ残り滓の使い魔 粗末な食事を終え、悠二はルイズとともに教室に来ていた。 大学の講義室のような教室には、既に何人もの生徒とそれぞれの使い魔がいた。 昨日召喚されたときに大半の使い魔は見ていたが、それでもゲームなどでしか見たことのない架空の生き物たちは、悠二を魅了した。 ルイズが席に着き、その隣に悠二も腰掛けようとしたが、ルイズが非難するような目で自分を見ていたのに気づき、床に座りなおした。 しばらくして、先生と思われる中年のふくよかな女性が教室に入ってきた。女性は教室中を見回しながら言った。 「春の使い魔召喚の儀式は大成功のようですね。このシュブルーズ、毎年さまざまな使い魔を見るのが楽しみなのです」 「おやおや。変わった使い魔を召喚したのですね、ミス・ヴァリエール」 シュブルーズの目が悠二で留まり、隣のルイズを見て言った。 そう言うと教室中が笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 そう誰かが言い出したのを発端に、しばらくの間、 「かぜっぴき!」 だの、 「ゼロのくせに!」 などといった、小太りのマリコルヌという生徒とルイズの小学生レベルの口げんかが続いた。 その後、シュブルーズがマリコルヌ他数名の生徒の口に赤土を押し付けることで教室に静寂が戻った。 授業が開始され、はじめに魔法について基本的な説明があった後に錬金の実演となった。 (魔法を自在法に応用できるのかな?) 多少の期待を胸に秘めつつ授業を聞いていたが、どう聞いても先生は自分の属性である『土』系統の魔法びいきであった。 しかし、シュブルーズが錬金の魔法を使ったときには“存在の力”の流れに微妙な変化があったので、授業を聞いたこと自体無意味ではなかった。 「ルイズ、スクウェアとかトライアングルって何なの?」 「簡単言うとメイジのレベルね。ドット、ライン、トライアングル、スクウェアがあって後者ほどレベルが高いってこと」 「ふーん。で、ルイズは何なの?」 こう聞くとルイズは下を向き黙ってしまったが、シュブルーズにこのやり取りを見咎められ、ルイズが錬金の実演をすることになった。 「先生、危険です」 なぜかキュルケがシュブルーズにやめさせることを提言していたが、先の錬金を見た悠二には、どこに危険な要素があるのか皆目見当がつかなかった。 教室の前にルイズが立ったとき、生徒たちは机の下に隠れていた。悠二は、なぜみんなが机の下に隠れているのかわからなかったが、とりあえず警戒だけはしておくことに決めた。 そして、ルイズが呪文を唱え、杖を振ると、大きな爆発が起こった。 現在、教室にはルイズと悠二しかいなかった。あの爆発の後、シュブルーズは気絶してしまい自習となった。 しかし、爆発を起こした罰として教室の掃除をすることになったのだ。もちろん魔法は使用せずに掃除することになる。 ルイズは不貞腐れているのか全く手が動いていなかった。それに反して、悠二はしっかりと掃除していた。ルイズがゼロといわれている理由も、爆発の後に生徒の誰かがルイズを馬鹿にしているのを聞いてわかった。しかし、悠二はルイズに何も声をかけず黙々と掃除をしていた。 ふと、ルイズが口を開いた。 「どうせあんたも心の中で私を馬鹿にしてるんでしょ! 魔法も使えないくせに威張ってるとか思って! そうなんでしょ! 何とか言いなさいよ!」 ルイズが怒鳴るように喚きたてると、悠二が静かに口を開いた。 「初めから全てができる人はいないよ。努力し続けて、ようやくできるようになるんだ」 悠二は自分の経験を元にルイズに言っていた。 悠二はここに来る前、身体能力向上のためにシャナと早朝鍛錬をしていた。 『振り回す枝を、目を開けて見続ける』 『前もって声を掛けた一撃を避ける』 『十九回の空振りの後に繰り出す、二十回目の本命の一撃を避ける』 『二十回の中に混ぜた本気の一撃をよけて、隙を見出したときは反撃に転じる』 このように段階を経て鍛錬を続けていた。はじめはシャナの振り回す枝を、目を開けて見ていることもできなかったが、努力し続けることでこの段階まで至っていた。 それに、他人がなんて言っても、自分で考えてどうするか決めないとダメだし」 そして、友人である佐藤啓作が悠二を羨望の眼差しで見ていたことを思う。 悠二が“徒”から“存在の力”を吸収し、フレイムヘイズと対等とまではいかないが、劣らぬ力を発揮して戦う姿を。 それを憧れとも嫉妬とも取れる目で見ていたが、彼は自分に出来ることをする、と外界宿に行くことを決断する。 ここに至るまでは、さまざまな葛藤があったようだが、彼なりの結論を出し、慕っているフレイムヘイズ、マージョリー・ドーを助けるという目的のために、羨望などを捨て前向きに進んでいた。 (それに、) 悠二は最初に会ったころのシャナを思う。 (最初は自在法が苦手だったシャナも、いきなり紅蓮の双翼を出せるようになったし) かつて、敵として『弔詞の詠み手』と戦ったときを思い出す。あの戦いを境に、シャナは突如として自在法を使えるようになっていた。 そう考えると、ルイズが魔法を使えない理由は、悠二には契機がまだだとしか思えなかった。 「ルイズも魔法を使えるようになるよ。僕はそう信じてるし、応援もする。使い魔でいる間は守るっても言ったしね」 「うるさいうるさいうるさい! いいから黙って掃除しなさい! それと、ご主人様に生意気な口を利いたからご飯抜き!」 他人にはバカにされてばかりであったが、悠二の邪気のない「信じている」という言葉にルイズは面食らった。 悠二は不意に怒鳴られ驚いたが、そっぽを向いたルイズの横顔が赤くなっているのに気づき、声は掛けず掃除に戻った。 このあと二人は一言も話すことなく掃除を続けた。 二人は掃除を終え食堂に行ったが、悠二は食事抜きだったことを思い出し、コルベールの所へ行こうとした。 (先生のいる場所の名前は聞いたけど、そこがどこにあるのかはわからないんだった) ルイズに聞こうにも聞きにくい雰囲気だしな、と食堂の前で途方にくれていた。肩を落としている悠二の前に、シエスタが現れた。 「あの、ユージさんどうしたんですか?」 「コルベール先生のところに行きたいんだけど、場所がわからなくて困ってたんだ」 「ミスタ・コルベールなら図書館にいると聞きましたよ。……ところで、図書館の場所はわかりますか?」 「……よければ教えてくれないかな?」 悠二はシエスタに図書館の位置を教えてもらいコルベールに会いに向かった。 図書館近くの廊下で偶然にも悠二とコルベールは鉢合わせた。 「コルベール先生、少しいいですか?」 「君は、昨日ミス・ヴァリエールの使い魔の……」 「坂井悠二です。あの、このルーンについて聞きたいことがあるんですが?」 悠二がそう言い左手に刻まれたルーンを見せると、コルベールはわずかに眉をしかめた。 「聞きたいことは何かね? 私にわかる範囲でなら説明できるが」 「ルイズに、ルーンは付与効果があるって聞いたんですけど、このルーンの効果って何ですか?」 「もう一度ルーンを見せてくれないかね? ふむ、しかし効果まではわかりかねますな」 そうコルベールは言って、無意識のうちに、持っている本を強く抱えなおした。その仕種を見た悠二は、違和感を覚えていた。 (見間違えかもしれないけど、なんで本を僕から隠すようにしたんだ? 本に、僕には知られたくないようなことが書いてあるのか? そうでもないと、隠すような行動をした意味がわからない) 悠二のルーンから手を離し、若干焦りを感じるような声色でコルベールは言った。 「力になれなくてすまないね。他にも何か困ったことがあったら相談してくれたまえ。私はこれから、学院長のところに行かなければならないので失礼するよ」 そういい残し、早足で去っていってしまった。 (コルベール先生の部屋は外にあるはず。それなのに、違う方向に向かった) 悠二は、戦闘時ばりに考えをめぐらせた。 (このまま学院長に会いに行くってことは、あの本も持っていくということだ。急いでいたということを考えると、早く伝えなければならないような重要な内容) 先ほどのコルベールの行動から推測を続ける。 (それに、さっきルーンの話で明らかにあの本を意識した。ということは、このルーンのことで学院長に急いで報告しなきゃいけないような大事な話か) 悠二は音を立てず、コルベールが行ってしまったほうへ走り出した。 悠二がコルベールを追って学院長室に向かっているころ、ルイズは自室のベッドの上でじたばたと暴れていた。 「わかわかわかわか! なんなのあいふは! そえい、ふふへはっへ! ん~~~~~!」 枕に顔を押し付けながら叫んでいたので、何を言っているのか全くわからないが、この場面を見れば、明らかに怒っているとわかる光景だった。 ルイズがこうなった原因は、昼食を食べている時にあった。 「あら、ルイズ。もう掃除は終わったの? 意外と早かったわね」 ルイズが食べようとすると、キュルケが不適に笑いながら話しかけてきた。 「ええ、おかげさまでもう終わったわ」 ルイズは、これでもうこの話はおしまい、とでも言うように言い放ったが、それに構わずキュルケは続けた。 「ところで、あなたの使い魔はどうしたの? ここにはいないみたいだけど」 「あいつなら、ご主人様に生意気なこと言ったから食事なし」 それを聞いたキュルケは、意地悪な笑みを浮かべた。 「あの使い魔が何を言ったか知らないけど、満足に食事もできないんなら、そのうち逃げちゃうんじゃないかしら? もしかして、こうしてる今にも逃げてるかもしれないけど」 「そんなわけないじゃない! まったく、失礼しちゃうわ!」 そう言って顔を赤くしながら食事をするルイズを見て、キュルケは満足げな笑みをたたえた。 「いじわる」 キュルケの隣に座る青髪の少女、タバサが呟いた。 「あの子をからかうのって、おもしろいのよね~」 そう言ってから食事に戻った。 (そうよね、あんまり厳しすぎてもダメよね。そうよ! 飴と鞭の要領よ!) キュルケにからかわれた後、ルイズはそう考え、食堂の前で待っているだろう使い魔のためにパンを持っていくことにした。 (お腹を空かしているだろう使い魔のためにパンを持っていく優しいご主人様、さらに従順になるでしょうね) 自分が食事を抜きにしたことを思考の脇に置き、ずる賢く笑い、食事を終え食堂を出たが、そこに使い魔の姿はなかった。 (どこ行ってんのよ、あいつったら) まあ、どうせ部屋に戻って空腹に悶えているのよね、と思い、またしても黒い笑みを浮かべ自室に戻った。 そして今である。意気揚々とした足取りで自室に戻ったが、空腹に泣いているであろう使い魔がいなかった。 (ごごご、ご主人様がせっかく食事を持ってきてあげたっていうのに、あのバカったらどうしていないのよ!) 声にならない怒声を上げ、ルイズはベッドにダイブしたのだった。 しばらく、うつ伏せで枕を抱きしめ、足をバタバタさせ、今いない悠二、パンを持ってくる原因とも言えるキュルケに対し、怒りをぶちまけていた。 ある程度冷静になると、急に不安に襲われた。 (本当に使い魔逃げちゃったのかしら? せっかく召喚したのに。初めて成功した魔法だったのに) 考え始めると、ネガティブな思考が頭の中を埋め尽くし、再度ルイズは枕を強く抱きしめた。 前ページ次ページ残り滓の使い魔
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前ページ/ゼロの使い/次ページ 空賊如きメディルにとっては物の数ではないが、人質に取られた船員の身を案じるルイズの命により、手が出せないでいた。 三人は大人しく、空賊船の一室に入ることになった。 「どうする?」 「しばらくは様子を見るしかあるまい。」とワルド。 暫くすると、乱暴に扉が開き男が二人入ってきた。 「頭領がお呼びだ。来い!」 連れて行かれた船長室で明らかになったのは衝撃の事実だった。 なんと空賊の正体はアルビオン王党派の空軍で、その頭は捜し求めたウェールズ皇太子だったのだ。 流石に簡単には信じられなかったが、彼の風のルビーと水のルビーが反応し、虹が出来たことで信じざるを得なくなった。 大使であるルイズ一向はアルビオン王国最後の砦であるニューカッスル城へと招きいれられた。 招かれたあまりにも粗末な皇太子の部屋で、ワルドが少しの間だけ席を外した。 少しといっても、1分程度の時間だったのでルイズも皇太子も不審に思わなかった。 「そんな・・・アンリエッタが・・・結婚・・・!?」 姫の文を渡された皇太子は驚愕のあまり声が震えていた。無理も無い話だ。 そのまま無言で、机から小箱を取り出し、何度も呼んだのであろう、ボロボロの文をルイズに渡した。 「殿下、どうか亡命してください。」 明日には敗北すると言う絶望的戦況を聞いたルイズが溜まらず叫ぶ。 「これは姫様の願いです!」 ルイズは悟っていた。あの文には亡命を勧告する一文があったことを。 だが、皇太子の返事は首を横に振ることだった。 「僭越ながら殿下。」とメディルが口を挟む。 「何だね、ミスタ・メディル。」 「5万ぐらいなら、やってやれないことは無いですが・・・」 メディルは少し控えめに言った。 本音を言えば、今の彼は一国を一人で敵に回しても勝つ事の出来る程である。 「貴殿の武勇は聞き及んでいる。しかし、大使を戦争に巻き込むわけにはいかない。」 「左様でございますか・・・それでは最後に一つだけ聞き入れては下さいませんか?」 「何かね?」 メディルの口から出た申し出は意外なものだった。 「ルイズと共に、部屋の入り口付近に行ってくれませんか?」 「は?」 「殿下、お願いです。彼の言う通りに。」 まだ短い付き合いだが、彼女はメディルの人となり・・・否、「魔となり」を知っていた。 彼は意味も無くこんな事を言う者ではないと言うことを。 言われたとおりにルイズとウェールズが移動したところで、メディルは二人から離れた位置にいるワルドに向き直った。 「役者は揃い、文も受け取った。もう猿芝居はいいのではないか?・・・ワルド。」 メディルの言葉の意味がルイズとウェールズにはすぐには理解できなかった。 「何を突然言い出すのかね、ミスタ・メディル。」とワルド。 「生憎と、我々魔族は嫉妬や憤怒、欲望と言った人間の負の感情に敏感でな。 貴様が我々を欺いている事は先刻承知だったのだ。すぐ殺すことも出来たが、案内役と生かしてしておいた。」 「何を馬鹿げた事を・・・なあ、ルイズ。」 ワルドはルイズを見やった。しかし、その目は婚約者に対するものでは到底ありえなかった。 ウェールズもまた、杖を構えている。 「皇太子殿も、このような人間ですらない者の言うことを真に受けるなど・・・」 「確かに、我々魔族は長い歴史の中で星の数ほどの人間を苦しめ、殺してきた。 だが、貴様のように主を裏切ったものは少なくとも私のいた軍にはいなかった。」 メディルの台詞が終わると、ワルドは俯いて黙り込んだ。しかし、すぐに狂ったような高笑いをした。 「ああそうさ。僕はアルビオン貴族派レコン・キスタの刺客。 ルイズと文とウェールズの命を手土産にここを去るつもりだったが、 どうやらルイズは諦める他なさそうだ。だが・・・」 ワルドは懐から杖を取り出し、ウェールズに襲い掛かった。 「文と皇太子の首は逃さん!!」 ワルドの杖がウェールズの心臓に命中する――寸前で、ワルドは飛びのいた。 そうしなければ、メディルが不意を突いて放った火炎呪文で焼け焦げていたから。 「皇太子を殺したければ、私を殺してからにするのだな。」 「面白い。風が最強たる所以とスクウェアメイジの恐ろしさを身を以って知るがいい。ユビキタス・デル・ウィンデ!」 ワルドが詠唱を終えると、部屋の中に、合計五人のワルドが出現した。 「一つ一つが意志と力を持った分身か。」 「一目で見抜くとは流石だ。スクウェア相手に5対1で勝てるかな?」 笑止とばかりにメディルが眼前の一人に最強火炎呪文・メラゾーマを放つ。 しかし、ワルドは周りに強風を起こし、火炎を受け流した。 「君の攻撃は分析しつくしているよ。火炎は見ての通り、フーケを仕留めた死の言葉はサイレントで防ぐ。 爆発も他の魔法も同じ事。そして・・・」 言い終わらぬ内に二人のワルドがルイズとウェールズに襲い掛かった。 「君と正面から戦う必要も無い。」 ドカッ!二人の心臓に深々と杖が突き刺さった。 しかし、次の瞬間その顔が驚愕に染まった。 あろう事か、二人の姿はゼリーの様などろどろの生き物になり、そして崩れ落ちた。 「それはジェリーマンと言って、他人に化けることの出来る連中だ。 普段の姿のときは音も無く移動し、液体であるがゆえにドアの隙間からでも入れる。 ちなみに本物の二人はジェリーマンに持たせた文の指示の下、同じく持たせた消え去り草というアイテムで姿を隠している。 貴様が私に気を取られている僅かな隙を突いて種を仕込ませてもらった。」 「やはり君を先に殺さねばならないようだ。だが、扉を固めてしまえば、二人が脱出する術は無い。」と言いながら一人がドアを封鎖した。 そう。この部屋にはたった一つの扉以外に出入り口は無かった。メディルとの会話中も、ワルドは音に気を配っていた。 その彼の記憶では、ドアの開く音はしなかったので、部屋から出てない事だけは間違いない。 「そうだな。消え去り草もいずれは効き目が切れるだろう。だが・・・」 メディルが未だかつて無い殺気を放った。それは彼が本気でワルドを殺しにかかろうとしている証だった。 「それまでに貴様の息の根を止める!」 前ページ/ゼロの使い/次ページ
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バスタード!よりダイ・アモン伯爵を召喚 美的センスゼロの使い魔-1 美的センスゼロの使い魔-2
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前ページ次ページ死人の使い魔 第一話 ルイズにとって今日は待ちに待ったサモン・サーヴァントの日だった。 不名誉な二つ名であるゼロを返上できるかもしれないのだ。 素晴らしい使い魔さえ召喚できれば。しかし彼女の希望はあっけなく潰えた。 何度かの『サモン・サーヴァント』のあとついに彼女が召喚したのは、 大きな、非常に大きな箱だった。箱というには少しおかしな形だったが。 箱というよりは変わった小屋といったほうがいいかもしれない。 特徴としては直方体のような形で、材質は金属だろう。 一部ガラス張りになっている前部分と全面金属で覆われている 非常に長い後ろ部分とで構成されている。 そしてタイヤがいくつかついている。 トレーラーと呼ばれるものだったがルイズには知るよしもなかった。 「ミスタ・コルベール」 彼も驚いているようだった。声に反応がない。 もう一度強く呼びかけるとやっとルイズの方を向いた。 「もう一回召喚させてください」 『サモン・サーヴァント』は生物を呼び出す魔法だ。 決してこんなものを呼び出すものではない。 願いはあえなく却下されたが、希望になることも言ってくれた。 これは檻ではないかと。 言われてみればそうかもしれない。 それならば中には高位の幻獣がいるかもしれない、 いやいるに違いない。 その横でコルベールが魔力の反応は無いようだと呟いていた。 まずは前部分をのぞく。ガラス張りになっているため、のぞきやすい。 中には何もいない。 今度は後ろ部分の開け口を探す。 どうやら真後ろが開け口のようだ。取っ手がみつかった。 乱暴に取っ手を引くがなかなか開かない。 突然コルベールに止められる。 考えもしなかったが中には凶暴な獣がいるかもしれない。 金属製の檻で閉じ込める程の。 コルベールが先頭に立ってくれ、杖を構える。 扉が開く。 中から何かが飛び出してくる、というようなことはなかった。 冷たい空気が開いた扉から流れてくる。 おそるおそる中をのぞきこむルイズとコルベール。 中は結構広く生物の気配はない。 奥に視線を向けると上の方から太いパイプが伸びているのが見えた。 ふとそれを目でたどっていく。 イスの背もたれにつながっているようだった。 そしてあることに気づき、息を飲む。 イスに人が座っているのだ。 その人物は黒い服を着ておりまったく動かない。 まるで眠っている、いや死んでいるかのようにみえた。 コルベールはこれのつくりに驚いていた。 外側も異質だが中はさらに異質だった。 そして何よりこれらを作るのに魔法を使っている 痕跡が一切感じられない。 いったいどのようにして作られたのか。 ルイズは奥に座っている人に声をかけてみたが反応はない。 少しイライラし中に入っていく。 ゆっくりと奥のほうへ歩き出す。 イスの前に立ち再び呼びかける。 突然明かりがついた。 恐くなりそこから飛び出す。 コルベールも警戒している。 しかし何かが起きるわけでなく、機械の音が響く。 しばらくたち機械の完了音とともにイスのパイプがはずれる。 イスに座っている男が目を開ける。 同時にトレーラーの中に備えつけられていたモニターから 声が流れはじめた。 それは浅葱ミカからビヨンド・ザ・グレイヴへの別れの言葉。 天寿を全うしグレイヴを残していく彼女からの最後の挨拶だった。 グレイヴ以外にはその言葉は理解できなかったが、 ルイズもコルベールも黙って聞いていた。 驚きのあまり声も出ないのかもしれなかった。 モニターからの声の終わりとともにルイズが口を開いた。 あんたは誰? これは何なの? さっきの声は? 疑問はつきない。しかし男は無言だった。 「もう一回召喚させてください」 再びこの台詞を言う。いろいろ気になることはあるが 彼はきっと平民だろう。平民の使い魔など考えられない。 しかし先ほどと同じ言葉で却下される。 「でも平民を使い魔にするなんて」 伝統とルールそして彼はただの平民ではないかもという言葉、 そして進級がかかっているという現実にルイズは折れた。 へんてこな箱の中にいたし、もしかしたらすごい力があるかも という淡い希望も抱いていた。 「感謝しなさいよ、貴族にこんなことされるなんて」 そう言い『コントラクト・サーヴァント』の呪文を唱え イスに座ったままの彼と唇を重ねる。 そして彼の左手に『使い魔のルーン』が刻まれる。 相変わらず彼に変化はないように見えた。 コルベールはまず生徒を帰らせた。 授業は全員使い魔を呼んだので終了である。 ただ個人的興味としてさきほど召喚された平民の彼に話しかけた。 『ディテクトマジック』をし彼が平民ということはわかった。 しかし彼の入っていた箱は興味をひいた。 何か話しかけているルイズとともにコルベールも 質問をしてみるが彼は何も答えない。 喋れないのか? 疑問が浮かぶがそれにしてはおかしい。 「体を調べても?」 とグレイヴに尋ねる。 少ししゅんじゅんしたように見えたが、首が縦にふられる。 調べてみて驚いた。平民とかそういうレベルではなく 彼は人間ではないのかもしれない。 それを伝えられたルイズは驚いた。 「では彼はなんなんですか?」 「わからないですがガーゴイルのような存在かも。それにしては 魔力を感じないですが。 東方か、もしくはエルフの技術でつくられたのかも。この箱もね」 驚きグレイヴをみながら答える。 「エルフのガーゴイル……。でも彼は人間にしか見えません」 「おぞましいことだが、人間を材料に作ったのかもしれません」 聞こえているだろう言葉にグレイヴは反応しなかった。 「まあいいわあんたがガーゴイルなら平民よりは使えるかも」 内心の怯えを隠しながらルイズは言う。 「あんた歩けるの? とりあえずついてきなさい」 グレイヴは黙って立ち上がり彼女についていく。 トレーラーから降りる際グレイヴは “ケルベロス”――二丁の巨銃――の入ったアタッシュケースと “デス・ホーラー”――重火器を多数搭載した棺桶――を持ち出す。 「何それ、持っていくの?」 鞄のようなものはともかく髑髏の刻まれた 金属の棺桶は不気味だった。 うなずくグレイヴをみてまあややこしいことは 後回しだわ、と学院に歩き出す。 コルベールも後からついてきている。 オスマンにコルベールがルイズの召喚したトレーラーと グレイヴについて報告している。 オスマンから質問されるもやはり無言のグレイヴ。 「あの箱を調べれば何か分かるかもしれません、 是非とも私に調べさせてください」 コルベールがオスマンに頼んでいた。 ルイズとしても異論はなかった。少しでも彼のことが分かればと。 「ところでそれは何かね? 鞄と棺桶にみえるが」 「わかりません。彼があの箱から持ってきたんです」 「中を見せてくれんかね?」 グレイヴはアタッシュケースを開き中を見せる。 「何かねこれは?」 コルベールが好奇心からケルベロスの片割れを 手に取ろうとするが、グレイヴに止められた。 「そっちにも何か入っているの?」 棺桶を指差しルイズが尋ねる。 首を横にふるグレイヴ。 「マジックアイテムではないようだし大丈夫じゃろ。 ミス・ヴァリエールにも従っておるようじゃし。 それから彼は喋れない平民ということにしておいてくれると ありがたいんじゃが、少なくとも詳細が分かるまでは」 ルイズは心の葛藤はあったものの同意した。 人間を材料にしたガーゴイルというのが真実だとしたら、 とてもじゃないが言いふらせることではない。 「今日はいろいろあって疲れたわ。細かいことは明日にしましょう」 グレイヴと部屋に戻ったルイズは寝る準備をしながら言った。 使い魔の役割はさっき伝えた。内容を理解しているのか していないのか反応はあまりなかった。 ただ最後に伝えた一番重要な役割 「使い魔は主人を守る存在であるのよ!」 その言葉にはうなずいていた。 寝る準備が終了する。 「あんたの寝場所はイスでいい?」 ルイズの部屋には使っていないイスが一つあった。 入学祝いとして家族が買ってくれたものの一つだが、 ルイズには大きかったため自分の使うイスは別に用意したのだ。 今までイスで眠っていたのだ構わないだろうと、ルイズは言った。 グレイヴは何も言わず、指定されたイスに座った。 言うことには素直に従うのよね。 そこで重要なことに気づく。 彼の名前はなんなのかしら? そもそも名前はあるの? どういうわけか箱の中に流れていた声を思い出した。 なんて言っていたかは理解できなかったが最初に聞こえてきた 単語はこいつの名前だったのでは? 確かこう言っていたはずだ。 「ビヨンド・ザ・グレイヴ」 彼がこちらを向いた、今までとは少し違う反応に思えた。 「あんたの名前?」 首を縦にふった。やはり彼の名前なのだ。 「これからはあんたのことグレイヴと呼ぶわ、いい?」 再び首を縦にふる。 「じゃあグレイヴ、おやすみなさい」 前ページ次ページ死人の使い魔
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「ヤミと帽子と本の旅人」のコゲが召喚される話 ゼロと帽子と本の使い魔01 ゼロと帽子と本の使い魔02
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そなたそ講座NORMAL編一覧 第一章 各レーンの特徴とロール 第二章 チャンピオンの性能と弱点 第三章 買い物上手になろう おまけ ビルドサイトの使い方 第四章 便利ツールで差をつけろ 第五章 レーン戦で勝利せよ 追記1 レーンの基礎知識 追記2 ヘルスマナ経済理論 追記3 Junglerをやろう 第六章 集団戦で勝ちに行け 第七章 タブーから学ぶ 第八章 よそみをするなMAPを見ろ 第九章 腕を上げずに強くなる方法 Hi!Neetの皆は元気かな?今回は英語が大嫌いな新規ちゃん向けにビルドサイトの使い方と良いビルドの探し方を解説するよ!つーか普通なら必要ないガイドだから読み飛ばしてくれても構わないよ! 目次 Solomidの場合 Mobafireの場合 コメント欄 Solomidの場合 SoloMidのトップへ チャンピオン名を入力するとガイド一覧へ飛ぶ。 FEATUREDかAPPROVEDの中から選ぶと良い。しかし、Last Update(最終更新日時)があまりにも古い物はオススメできない。 Mobafireの場合 Mobafireのトップへ Mobafireは見やすいが時々とんでもないビルドがあったりするのでSolomidの活用を薦める。 オールチャンプスからチャンピオン一覧へ。そこからガイドのページに飛べる。 各ガイドページのサイドバーからも検索できる。 ビルドガイドの他にビデオガイドなども見られる。カウンターチャンプ情報なども若干載っている。 ガイド検索などの便利ツールに関しては 第四章 便利ツールで差をつけろにて後述するのでそちらをどうぞ コメント欄 名前 コメント
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前ページ次ページ鮮血の使い魔 ルイズは困っていた。 「皿洗いくらい手伝いな」 とマチルダに言われた。 そんな下々の仕事をと思ったが、自分はこの家に厄介になってる身。 言葉に任せようかとも思った、指輪を取られて不機嫌そうなので頼みにくい。 だから仕方なく皿洗いを始めたのだが……。 「ルイズ、そんなに強くこすっちゃお皿に傷がついちゃうわ」 右隣にティファニアも立っていた。家事は自分の仕事だから一緒にやろうと言ってきた。 それはいい。 「ずいぶんお皿が多いですね。子供達の分……ですか?」 左隣に言葉も立っていた。ルイズがやるなら自分もやりますと言ってきた。 それはいい。 しかし「じゃあ二人に任せていいかしら」と言ったら、 言葉は「ルイズさんがやらないなら私もやりません」と言うし、 そんな風にティファニア一人に皿洗いを押しつけたら悪役になってしまう。 こうして三人一緒に皿洗いをしている訳だが。 (何で私が真ん中なの?) ティファニアが身体を傾ける。たわわな柔肉がルイズの腕に当たって形を変える。 言葉が身体を傾ける。たわわな柔肉がルイズの腕に当たって形を変える。 左右からの苛烈な乳房責めを受け、ルイズの脳みそは沸騰寸前だった。 (私はノーマル、私はノーマル、私はおっぱい、私はノーマル……。 クールになれ、クールになれ、素直クールになられ、クールになれ……。 うろたえるな、うろたえるな、ウロヤケヌマ、うろたえるな自分ー!!) 言い聞かせる。自らに命ずる。ノーマルで在れ、クールで在れと。 なぜならルイズ・フランソワーズは女の子! 花も恥らうツンデレ乙女! それが同性の肉袋如きに惑わされてどうするというのだ! 「きゃっ」 「えっ」 ティファニアが悲鳴を上げると同時に左手がやわらかい何かに呑み込まれていく。 それはティファニアの乳房だった。指が吸い込まれる。何この脂肪の塊という名の芸術。 (天の願いを胸革命に刻んで心頭滅却すれば火もまた火とひとつになれば炎となる。 煩悩退散煩悩退散、煩悩おっぱい困った時は、オラオラ、はしばみ、オラオラ、はしばみ) 頭の中で意味不明の念仏を唱えるルイズ。嗚呼、虚乳コンプレックスここに極めり。 「……ぼんやりしてると、お皿、落としちゃいますよ」 言葉の右手が、ルイズの左手に、伸びて、 薬指の水のルビーの表面を撫で、中指のアンドバリの指輪に、触れ、 ガシャン。 皿が滑り落ちた。 ルイズは慌てて自分の手元を、ティファニアはルイズの手元を見た。 その前に言葉はルイズの左手から素早く手を引いていた。 「……だから、言ったじゃないですか」 「あ、ごめん。ぼーっとして……」 謝ろうとして言葉の方に顔を向けようとして、洗い場から泡だらけの手を引いて、 肘が言葉の雄大な谷間に直撃。 「あんっ……」 熱っぽい言葉の声に、余計慌てたルイズはてんやわんや。 「わっ、痛かった? ごめ……ひゃうっ!?」 慌てて言葉から身を引いたため、隣にいたティファニアの胸に後頭部からダイブ。 「きゃあっ!?」 突然の出来事だったためティファニアはルイズを支えられず、そのまま転倒。 「あっ……」 反射的に言葉はルイズが転ばないよう腕を掴もうとした。 掴んだ。 引っ張られた。 バランスが崩れた。 結果、ティファニアの上に二人分の体重がのしかかった。 「きゅ~……」 倒れた時に頭を『前後』から打って、もうろうとしているティファニア。 思いっきり倒れこみ、ティファニアのおでこに自身のおでこをぶつけてしまった言葉。 その間で、ルイズが挟まれていた。 頭の左斜め後方! ティファニアの左乳房確認! 頭の右斜め後方! ティファニアの右乳房確認! 頭の左斜め前方! 言葉の右乳房確認! 頭の右斜め前方! 言葉の左乳房確認! ぱふぱふ……などというレベルではない。威力倍増にも程がある。 しかもどちらも威力は極上。 頭を打ったせいで小さく身じろぎするティファニアと言葉、 そのせいで肉のマッサージを受けるルイズの顔。 「お、おお……」 声にならない声が漏れ、それが甘い吐息となって言葉の肉丘を撫でるように吹き抜ける。 「んっくぅ……」 言葉が身をよじる。巨大な肉は面白いほどに形を歪め、ルイズの顔を圧迫する。 「むおおー……」 圧倒的圧力に押され、ルイズは後ろへと逃げる。しかし後ろはティファニアの肉枕。 底なし沼のように沈んでいく。 深いの谷に呑み込まれていく。 (お、おおお、おおちちちちちちち、ち、ちちぶささささ、くにゅうにゅう……) 至高の感触に思考は断絶され嗜好が覚醒する。 虚であるが故に巨に恋焦がれ続けたルイズ・フランソワーズ。 白き肉の奔流に溺れながらも、唇を焦がす程に熱い美酒を貪欲に飲み干す。 女王蜂の発するフェロモンの如き汗の香りは心肺を侵略し理性を四散させる。 まるで生き物のように姿を変えながら這い回る四つの白い球。 それはまさに生き物であり、魅惑の効果を放ち続ける"巨夢の魔法"であった。 (そう、私は伝説を体感した――!) 視界が真っ白い光に包まれる。 それは星の光だった。 意識が天空の頂をも飛び越え星々にまで至ったのだ。 星光の中、ルイズは悟る。 ("巨夢"は、此処に在る) 嗚呼、始祖ブリミル。 有難う御座います。 第21話 巨夢のティファニア 完? 「……何やってんだい?」 ルイズ達が盛大に転んだ音を聞きつけて戻ってきたマチルダが、 凶器の域に達した乳房に顔をふさがれ窒息して臨終寸前のルイズを救出する。 実は本気で危なかったルイズだが、息を吹き返した途端、恍惚の表情でこう抜かした。 「もう……死んでもいい……」 「だったら死にな、来世は牛になるよう願うんだよ」 呆れ返ったマチルダは、皿洗いの続きを言葉とティファニアに任せ、 朦朧としたままの精神的な意味で危ないルイズを、言葉が使っていた部屋に運んだ。 そしてティファニアが面倒を見ている子供達に、ルイズが大の苦手の蛙を取ってこさせると、 躊躇微塵も無く蛙をルイズの顔面に乗せてやる。 これこそ魔法学院で得た知識(ゼロのルイズの下らない噂や悪口)の有効活用である。 天にも届くような悲鳴と共に、ルイズはお星様から帰って来た。 一方、足手まといのルイズがいなくなったおかげで素早く皿洗いを終えた言葉とティファニア。 ルイズがいないから何を話したらいいか解らないが、 楽しくお話できたらいいなとティファニアは思う。 「あの、コトノハは――」 「すみませんが、この家を案内してもらえませんか? ウェールズさんにもご挨拶したいですし」 「案内するほど広い家じゃないけれど……コトノハもウェールズと仲がいいの?」 「いいえ、あまり」 共通の話題を見つけたと思った直後に潰された。 それでもめげず、ティファニアは言葉に部屋を案内した。 といっても、台所とくっついてる居間を除けば部屋は二つしかない。 ひとつはティファニアの部屋で、先日まではルイズが使い、今は言葉が使っている。 もうひとつの部屋はウェールズを担ぎ込んで、ずっと彼が使っているそうだ。 「ではルイズさんはどの部屋で?」 「居間の暖炉の前で。私とマチルダ姉さんと三人一緒に毛布で寝ました」 「そう……ですか」 つまらなそうに言葉は言った。 なるほど寝込みに指輪を盗もうとしても、マチルダと一緒なら気づいてもらえる。 (私……何を考えてるの) 視線を伏せ、左手を軽く握った。甲に刻まれたルーンが目に留まる。 (……でも、誠君のためだから……) ルイズと一緒にいたい。 それ以上に誠と。 それが言葉。 「ところでルイズさんは大丈夫でしょうか……」 「すごい悲鳴だったものね。マチルダ姉さん、いったい何をしたのかしら?」 言い終わるとほぼ同時に家の戸が開き、フードのついたローブを着たマチルダが入ってくる。 ルイズの悲鳴の後、マチルダは心配無用と告げて納屋に向かったのだが、 どうやら旅支度を整えてきたようだ。 「マチルダ姉さん、出かけるの?」 「ああ、港町ダータルネスまでね。夕食はいらない、遅くなるから先に寝てな」 「港町にお仕事?」 マチルダの本業を知らないティファニアの純粋な疑問だった。 暴露してやろうかという意思があった訳ではないが言葉は冷笑し、 それが酷くマチルダの癇に障った。 「コトノハ。余計な事をしでかしたら、いくらあんたでもただじゃおかないよ」 かつて言葉の狂気と凶器に恐怖し屈服した女が言ってのけたのは、 精神的に成長したとかではなく単純に言葉という人間に慣れただけである。 「……お気をつけて」 どうでもよさそうに言葉は見送る。 多分、トリステインに帰る船を調べに行くのだろうと察しながらも。 賄賂を渡して船の片隅に乗せてもらうか、それともひっそりと密航するか。 どちらにせよ、無駄な努力である。 ルイズもマチルダも、アンドバリの指輪が死者を生き返らせると知っている。 だが人の意思を操る事を知っているのは言葉のみ。 港町ダータルネスに着いたら堂々と正面から、指輪で操った兵に船へ案内させればいい。 だから、一応味方の立場にいるマチルダに無駄な労力を負わせる必要はない。 が、ルイズの側にいられては指輪を取る障害となる。 だから行けばいい、港町ダータルネスへ。 マチルダが帰ってくる頃には、きっと誠も生き返ってるだろう。 この家を出て行くまでなんて、待てないから。 事件は昼に起こった。 教会でルイズを裏切った事、レコン・キスタに侵入した時の事を直接聞きたいとウェールズが言い、 どこまで正直に話すかは疑問だが言葉はそれに応じた。 その間、ルイズとティファニアは外で洗濯物をほしていたのだが、 見るからにガラの悪い男達が十数人という数で、それぞれ武器を持ってやって来た。 「何か用?」 強気に出るルイズだが、男達は下卑た笑いをする。 「こいつぁいい。まだ乳臭いガキだが極上の上玉だ。そっちのデカ乳も入れりゃ、大儲けよ」 「あんた達、盗賊?」 「貴族派の傭兵だよ。本隊とはぐれて、満足に飯も食えねぇ有様さ。 そこでちょっと小金を稼がせてもらおうと思ったが、お前さんりゃを売れば金貨四千はいくぜ」 「貴族派の傭兵?」 ルイズは一瞬、ウェールズと言葉がいる部屋へ視線をやった。 口振りからしてルイズとティファニアをいかがわしい目で見ているようだが、 それはむしろルイズを安心させた。 貴族派にウェールズの居場所が知られた訳ではないようだ。 しかしここで彼等の略奪を許せば、家の中にいるウェールズも発見されてしまう。 この数が相手では"ゼロ"のルイズでは歯が立たない。 ティファニアはハーフエルフとはいえ魔法は使えないようだし、二人ではどうにもならない。 こういう時に頼りになりそうなマチルダは現在留守。 となれば、まだ回復してないながらトライアングルメイジであるウェールズと、 ガンダールヴの力を持つ言葉に頼らねばこの窮地を脱する事はできない。 助けて、と悲鳴を上げれば家の中の二人に声は届くだろう。 しかしそれまでの間に、もし、自分達が捕まって人質にされようものなら……。 いっそ家の中に逃げ込むか? いや、貴族が卑しい盗賊風情に背を向けたとあってはヴァリエール家末代までの恥! 「テファ、私が囮になってる間に、コトノハとウェールズ様に助けを求めて」 小声で指示され、ティファニアは一歩、前に出た。 ナウシド・イサ・エイワーズ……。 振り向くルイズ。貴族しか、メイジしか持たぬ杖を、ティファニアが持っていた。 ハガラズ・ユル・ベオグ……。 勤勉なルイズは魔法を使えない身の上なれど、学院で学んだ魔法の詠唱はすべて暗唱できる。 ニード・イス・アルジーズ……。 だがこんな詠唱は聞いた事がない。火ではない、水ではない、風ではない、土ではない。 ベルカナ・マン・ラグー……。 でも不思議と、ルイズはこの詠唱を知っている気がした。懐かしいとさえ思う。 脈々と受け継がれてきた血が知っていた。この詠唱は本物だと。 「テファ……?」 問いかけると同時に、ティファニアは小さな杖を振り下ろす。 大気が歪み、男達を包み込むと、霧が晴れるように消えうせる。 「……ありゃ? 俺達、ここで何してんだ?」 「つーか、ここどこよ?」 うろたえる男達に、ティファニアは落ち着いた声で言う。 「あなた達は森に偵察に来て迷ったのよ」 「はえ? そうなのか?」 「隊はあっち。森を抜けると街道があるから、北に真っ直ぐ行って」 「ああ……そうする」 ふらふらと、寝惚けているかのような、あるいは酔っ払っているかのような足取りで、 男達は森の方へと立ち去っていく。 その光景を見て、ルイズは何も言えなくなってしまい、口をパクパクとさせていた。 そんなルイズを見て、ティファニアは恥らうような声で言う。 「か、彼等の記憶を奪ったの。"森に来た目的"の記憶よ。 この村の事も、私達の事も忘れちゃってるから大丈夫 「せ、先住魔法?」 違うと確信しながらもルイズは問わずにはいられなかった。 先住魔法なら杖は必要ない。だから系統魔法のはずなのだ。 詠唱を聞いてた時に感じていた確信めいた何かを、今はもう感じない。 だから訳が解らなかった。 ただ確かなのは、ティファニアが"記憶を奪う"という魔法を使えるという事実。 (――まさか、虚無?) 一瞬の突飛な思いつき。しかし虚無かどうかよりも、もっと重要な事柄があった。 ルイズの疑問が、次々に氷解した。 この村とティファニアの存在を明かしたくなかったにも関わらず、ここに案内したマチルダ。 土くれのフーケではない、真実の名前とおぼしき名前を明かしたマチルダ。 ハーフエルフを匿っているという事実を知られながらも自信にあふれていたマチルダ。 それはつまり、自分達がここから去る時、それらの記憶を消すという事。 皇太子としての名誉を蹂躙すればウェールズを救えると言ったマチルダ。 それはつまり、ウェールズから皇太子の記憶を奪えばレコン・キスタに特攻などせず、 ただの平民としてこの地で平穏無事に生きていけるという事。 さらにマチルダはルイズ本人には言わなかったが、ウェールズと同じ手段で、言葉を救える。 言葉から誠の記憶、ルケギニアに召喚される前の記憶などを消し去れば、 惚れ薬の時とは異なる形で、忘却という救済の元、精神に安定を取り戻すだろう。 ウェールズを救う方法があると言ったマチルダだ、当然言葉も救えると知っていたはず。 だがそれを言わなかったのはきっと、ルイズが断ると考えたからだ。 ルイズは思い出す、惚れ薬に心を惑わされたままの言葉でいさせてやる優しさもあった事を。 あの事件をマチルダは知らないだろう。 けれどルイズが言葉の思い出や誠も大事にしようとしている姿を見れば、 忘却などという逃げに屈したりはしないだろうと思ったかもしれない。 もしルイズが恋人を喪い、絶望に打ちひしがれたとしたら、 忘却という逃亡に走ってしまうかもしれない。 でも言葉は心を壊しながらも決して手放そうとせず、 その一途さはうんざりすると同時に羨ましくも思う。 心壊れていても、言葉が言葉でいられるのは、その狂愛があるからだ。 でも、ティファニアなら言葉を救えるというのも、間違いなくて。 「その、その魔法で、テファ、記憶を……コトノハの……」 そこまで言い、ルイズは口を閉ざした。 こんな救済、言葉は望まない。 心が壊れる前の言葉こそ真の使い魔であり、その言葉に出会うためにがんばろうと決めた。 できる。 今、ティファニアに頼めば、すぐにでもできてしまう。 「ルイズ? コトノハの記憶を……消したいの?」 困惑気味なティファニアの声に、ルイズは首を横に振った。 「ごめん。違うの何でもないっ……忘れて……」 言葉を救いたいのに、目の前に救う手段があるのに、ルイズはその場から逃げ出す。 残されたティファニアは呆然とルイズの背中を見送っていた。 ルイズと言葉がこの村を去る時、記憶を消さなければならない。 けれどできるなら、友達の記憶は消したくない。 でもルイズは言葉に忘れてもらいたい記憶がある? その記憶とは、何だろう。 ティファニアは、マチルダとルイズが大事にしていた鞄を思い出した。 あの鞄は言葉の物で、今は言葉の手にあり、言葉はマチルダ達以上に鞄を大事にしている。 つまりあの鞄の中が、きっとそれに関係あるのだろう。 何が入っているんだろう。 家の壁に背もたれながら、言葉は天を仰いでいた。 ウェールズとの話を終え、ルイズとティファニアが洗濯している間に武器を探そうと、 裏庭にある薪割り用の斧を手にとってみたが、ルーンは輝かず武器と判断されなかった。 残念がりながら家に戻ろうとした時に、盗賊達が来た。 一部始終を見た。盗賊達が記憶を奪われ帰っていく様を。 一部始終を聞いた。記憶を消す魔法の存在を。 あの魔法を使えば、言葉は誠の存在を忘れ去り、ルイズの忠実な使い魔となる。 なのにルイズは、一度は頼みかけながらも、それをやめた。 「それでも……私は誠君の、彼女ですから」 ルイズよりもアンドバリの指輪を見つめる言葉。 もし指輪をしているのがルイズでなければ手荒な真似をしていたかもしれない。 「よかったですね、ルイズさん。私がルイズさんの事を好きで」 自嘲の笑みは痛々しく、しかしそれを見る者の姿はなかった。 第21話 虚無<ゼロ>のティファニア 前ページ次ページ鮮血の使い魔
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管理人の動画参照 https //youtu.be/gsVhBgf3dRg 完全なるお肉の仕様が分かります ~肉の効果~ 肉の匂いに引き寄せられるとプレイヤーを攻撃せず 肉にターゲットが行きます つまり肉の効果範囲内ならゾンビに攻撃される心配がないです ~肉の範囲~ 直線でフロア12マス程度という検証がありますが それよりも一度肉に魅せられたゾンビは プレイヤーを無視し、肉が壊れない限り、永遠と その肉を狙うようになる事に注目です ~肉ハメ~ これは完全にシステムをついた裏技となります 1:肉をゾンビが届かない高さに設置します 2:肉の真下にシュレッダーを設置します 3:囲いを用意(自分を囲います) 4:ウェーブに挑みます この手法を使うと壁4個、罠2個ぐらいでHardの30日でも 余裕で突破可能です ただし面白くはないですので引っ越し中に使いましょう ~入り口周辺に肉~ ルートが肉まである場合は、肉に魅せられたゾンビは きちんとルートを守るようになります 変にふさいだりしなければ、すべてのゾンビが壁や罠を 叩かなくなります 一直線で肉を狙うので罠の配置さえきちんとすれば どのモードでも余裕です
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シエスタ@ゼロの使い魔 トリステイン魔法学院で働く平民の17歳のメイド。 ゼロの使い魔に出てくるメインキャラの女子では珍しく貴族以外のキャラである。 曽祖父が日本人であるため、1/8だけ日本の血が流れている。
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リンキングマシーン「くるーる」の使い方 備忘録 1.まずはプーリーを白丸に合わせて、 スイッチはオフ。 (針は引っ込んでいる状態で、リンキングは動くようになります。) 2.糸かけはこのように 3.針付近のアップ 4.ピンク文字は㎝。 グレー文字は針数(目数)。 5.中表になるようにかけます。 今回は袖付けに使ったので、 身頃を先にあらかじめ製図で計っておいたAH寸に付ける。 私は薄くつけたい派なので1目で、 きちんと割りたい場合はもう少し多く。 その分を含めて編成する。 6.目がかかってる針の一個向こうを、金属の合わせ位置に合わせる。 7.アップの写真。 8.抑えを下ろして、縫う? 編む? リンキングる。 突っ張るようなら先のほうを外しながら。 9.捨て編みを作っておいて。 ひと針開けて3cmぐらいまでリンキングる。 上へ 2016-05-06 17 44 21 (Fri)更新 ◎メモ 名前 コメント