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法皇は使い魔~法皇の使い魔第二章~ 「我が名は花教院典明」 なぜ僕は生きているのかという疑問はもはや頭の中に無かった。 DIOのことだから能力は時間を止める事だけでは無いかもしれない。 殺してからも相手に死を与え続ける、そんなえげつない能力があってもおかしくは無い。 とても恐ろしい能力だ。しかし、だからこそ彼は誇り高く名乗った。 スタンドでは負けても心で負けないために。 そしてDIOの恐怖に打ち勝つために。 「ハイエロファントグリーン」 彼のスタンドが現れ臨戦態勢に入る。 するとなぜだろう、 「なに叫んでるんだ?」 「変な髪形だなあ」 「あんな服見たこと無いぞ」 見下されている感じはあれど殺意もなさそうだし、スタンドも見えていないようだ。 「カキョーイン?発音しにくいわね、何でも良いけど動かないでね」 名前を聞いてきた少女が近づいてきた。 相手がスタンド使いで無いと思って油断していたそのときだった 唇を奪われた いつもは冷静な花教院だがこのときばかりは動揺した。 髪型は独特だがイケメンといってなんら差し支えの無い彼だが、 承太郎達と出会うまで真の友達いなかったのである。彼女などいるはずが無い。 つまりファーストキスだったのである。 「な、なによ、私だって初めてなんだからね」 少女が赤面して叫んでいる。 彼はとりあえず話題を変えようとした。普段の冷静なイメージを崩したくなかったのである。 「そういえば、あなたの名はなんというのですか」 口調はあくまで冷静だった。 「私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 ルイズ、自分のファーストキスを奪った相手なのか。 こんな事を考えていると急に体が熱くなっていった。 これは恥ずかしいというれぜるじゃ無い、これはもう明らかな痛みだ。 「まずい・・・意識が・・・遠・・・のい・・・て・・・いく・・・」 油断していた、キスで動揺していたとはいえこんなに簡単にやられてしまうとは・・・ 夢を見た。承太郎たちと日本へ戻る夢だ。 承太郎はいつものように静かで、ジョースターさんとアブドゥルは仲良く酒を飲み、、 ポルナレフはいつものように騒がしく、イギーもこころなしか幸せそうな顔をしていた。 そして僕は・・・ 「こ、ここはどこだッ」 いいところで夢から覚めるとそこは西洋風のベッドの上だった。 なぜ僕はこんなところにいるんだ・・・そうか、DIOの第2の能力で・・キ・・ス・・をされて・・・ 彼は少々赤面しながら彼は大体の事を思い出した。 「もう手遅れかもしれないがとにかく逃げるしかないッ ハイエロファントグリーンッ壁に穴を開けろッ エメラルドスプ・・・」 「もう起きたの?それに何叫んでるのよ」 ピンク色の髪をした少女ルイズが部屋にはいってきた。 「お、お前はッDIOのスタンドだか手下だかわからないが、 さっきのキスで君を敵と確信した、女の子だが倒させてもらおうッ、 ハイエロファントグリーン、エメラルドスプラッシュだッ」 彼のスタンドの手から宝石が放たれる。 「な、何なのよ、何で急に空中から宝石なんかが出てくるのよ?」 「何?やはり君にはハイエロファントグリーンが見えていないのか?」 そういえば彼女がDIOの仲間なら寝首をかく事だって容易だったはずなのになぜ自分を殺さなかったのか。 冷静になって考えればこちらの勘違いかもしれない。 「一応聞くが、君はDIOという男は知っているか?」 「DIO?だれよ?それと君って呼ぶのはやめなさい、使い魔のくせに無礼よ!」 「使い魔だと?いったい何なんだ?それは。」 花京院という男は冷静である。 「使い魔」と呼ばれに明らかに目下に思われているのに現状把握に努めている。 その結果ルイズから、この世界の事、使い魔とは何か、などを聞き出すことに成功した。 「つまり、僕は君、失礼、ルイズの執事となればいいのだろう? だが断るッ といいたいところだが、DIOの仲間と間違えて攻撃してしまった以上、 謝罪の気持ちの表れとして当分はルイズ、あなたの言う通りにしよう。」 もちろん、彼の心の中には、まだDIOの手下である可能性はぬぐいきれなかったが、 元の世界に帰るためにルイズの近くにいることが最善であるのも確かだ。 「それじゃこの下着洗っといてね」 早速ルイズが仕事を申し付けてくる。 それにしてもあまり親しくも無い男に下着を洗わせるのは恥ずかしくないのだろうか? 承太郎で無くてもこういうだろう。 「やれやれだ」
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マイナーポケモンを使う上での注意点 注意点 有用な技 心構え 注意点 種族値が低いこと 種族値が低いため後出しで受けて出す事が困難なポケモンが多いです。 そのため、交換読み交換など的確に読むことが出来なければパーティ崩壊の危険性があります。 またとんぼがえり、アンコールなどの補助技で無償降臨を狙う立ち回りが必要とされる事があります。 例 ハブネーク、ココロモリなど 技の少なさ 使える技が少なく、型が読まれやすいという欠点があります。 読まれた上で選択しなければなりません。 例 ギギギアル、ジャローダなど 劣化にならない 種族値が低いだけで同じ技構成であればわざわざ使う必要はありません。 そのポケモンだけでしか出来ない技を入れ差別化を行うようにしましょう。 しかし差別化を気にしすぎるあまり、実用的ではない型にならないように注意してください。 例 ランクルスとオーベムなど 有用な技 高威力技 種族値を補うために高威力な技を積んで決定力を上げます。 例 かみなり、ふぶきなど とんぼがえり、バトンタッチ 耐久のある遅いポケモンから繋いで無償降臨や、相手の襷や頑丈を潰しつつ交換ができます。 例 フワライド、エモンガなど ふいうち、きあいパンチ マイナーポケモンではごり押しなどの芸当が出来ないため、読みで有利に働く技が重宝されます。 例 クチート、クリムガンなど 心構え 「自分になれ」 世間での評価、○○が強い弱いといった評価に影響されず、自分のパーティを組んで下さい。 「オリジナルになれ」 例えばガブリアスが嫌だからフライゴンを使うといったことでマイナーポケモンを使わないでください。 むしろフライゴンを使うのであれば、ガブリアスの上位互換として使うぐらいの意気込みが欲しいです。 「自分を貫け」 自分のパーティをどんなに非難されようと、自分の考え方を貫いて下さい。 「常に挑戦者であれ」 テンプレートな構成も最初は少数派でした。様々なポケモンの使い方を発見し、それがテンプレ構成になるぐらいまで昇華して下さい。 「常にマイノリティであれ」 これこそがイテリノイマの信念です。
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「円環少女」のグレン・アザレイを召喚 虚無の使い魔と煉獄の虚神-1 虚無の使い魔と煉獄の虚神-2 虚無の使い魔と煉獄の虚神-3 虚無の使い魔と煉獄の虚神-4-前/虚無の使い魔と煉獄の虚神-4-後 虚無の使い魔と煉獄の虚神-5 虚無の使い魔と煉獄の虚神-6-前/虚無の使い魔と煉獄の虚神-6-後 虚無の使い魔と煉獄の虚神-7 虚無の使い魔と煉獄の虚神-8-前/虚無の使い魔と煉獄の虚神-8-後 虚無の使い魔と煉獄の虚神-9 虚無の使い魔と煉獄の虚神-10 トップページに戻る
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――アルビオン軍、その数7万。 対するは一騎。虚無の守護者。虚無の盾。ガンダールヴ。 勝ち目なぞ、最初から無かった。 自明の理だ。ゆえに、後悔は無い。 突貫し、暴れまわり、少しでも長く敵をひきつける。 捨て駒だ。 自覚していた。 自覚した上で、それを――。 それを、彼女に任せるわけには、いかなかったのだ。 傷ついた身体をひきずって、少年は立ち上がる。 怪我をしていない場所を探すほうが大変なありさま。 あちこちに矢が突き刺さり、剣で切り裂かれた傷もある。 そして何より、魔法の直撃を受けた腹部。 ロクな医療知識なぞない、彼でもわかった。 そこから流れ出た血は、もはや致命的な量に達している。 ――だけど。 「おでれーた!凄い眺めだなぁ、相棒。 この数相手に一騎駆けなんざ、古今東西、どんな英雄もやった事ァ無いぜ! 「……なんで俺、こんな事やる嵌めになっちまったんかなぁ」 「そりゃおめぇ……言っちまったんだろ? 好きだって」 「……まあな。 なあ、デルフ。……俺、死ぬよな、これ」 「多分な。まず間違いなく」 「だよなぁ……」 「ま、どーせなら格好つけようぜ」 「……そーだな。勿体無いもんな」 「そーだ。勿体無いぜ」 ――だけど、愛剣と軽口を叩いて、少年は笑った。 その身を犠牲にしても、守るべき大義のある男の顔だった。 覚悟を完了した男の笑みだった。 魔剣を握る。 遥か昔、恐らくは同様の気持ちから主人を守ったのだろう男の持っていた武具。 それは出会ってから数ヶ月しか経過していないというのに、少年の手にも良く馴染んだ。 ――それで十分。 後ろには守りたい奴がいる。 目前には倒すべき敵がいる。 傍らには一緒に戦う相棒だ。 文句なぞある筈もない。 だから、平賀才人は笑った。 それが恐怖をこらえた為に引き攣った顔でも。 怯えを押さえ込めず手が震えてしまっていても。 それでも。 ――それでも。 世界中の誰だって、彼を笑うことはできないのだ。 「――今夜は、死ぬにゃあ良い日だ」 たった一騎。七万へ挑む、少年。 彼の周囲を包囲した魔法使いたちが、致死的な威力を持つ光を杖に灯し、それを彼目掛けて放とうとする。 ――その、刹那。 「……なんだ、アレは!」 アルビオン軍に、戦慄が走る。 轟音。爆音。風を切る唸り声。 そう、覚えている。 彼らは、その身をもって味わった。 そうだ、あの時の大敗は覚えている。 「龍の、羽衣? いや……だが、この音は――」 <<よう、サイト。――まだ生きてるか?>> ……………数時間前。 「撤退、ですか」 「……はい、陛下。 このまま正面からぶつかっても、我々に勝ち目は――」 「その為に一人の少年を犠牲にして」 「……彼はガンダールヴで、そして平民ですよ」 「その平民に総てを託さねばならない。 ――挙句見捨てたとなれば、末代までの恥。 貴族としての誇りを失うことは、死も同然ッ」 幕僚からの報告を聞いていた王女は、なおも言い募る彼を視線一つで黙らせる。 かつて姫殿下と呼ばれていた頃とは、まるで違う、剣呑な瞳。 そう、彼女は今までずっと、夢を見ていたのだ。 幻想の中にいた。 それが赦されていた。彼女の周囲の世界は優しかったから。 ――だが、それができなくなった。 いつからだろう。 自分が政略結婚をしなければならないと悟った時か。 淡い恋心を抱いていた相手が死んでしまった時か。 それとも。 それとも――親友の想い人が、たった一人で死地に挑むと知った時か。 覚悟というものは人を変える。 それは、たとえ王女といえど。 「――私が、総ての責任を取ります。 ……魔法学園に、連絡をとってください」 ――トリステイン魔法学園。 この学園には、古くから伝わる、ある伝統があった。 魔法使いが一生を共にするパートナー。 俗に使い魔と呼称される存在を、生徒に召還させるのである。 無論、通常は小動物をはじめとする小さな生物であり、 極稀に稀少種族が召還されることがあるが、 それだとて”奇妙”と思われるようなことはありえない。 だが、今年の使い魔召還は、確かに”奇妙”といわざるを得なかった。 ――召還されたのは、人間だったのだ。 ”ゼロの”ルイズと呼ばれる劣等生の少女。 後に虚無の使い手と判明する彼女が、 サイトという平民を召還したのは良い。 だが、他の生徒。 一年生58人全員が人間を召還するなどというのは、 魔法使いという概念が生まれて以来、前代未聞の珍事である。 それも、ただの人間では無かった。 彼らは「騎士」だったのだ。 敵味方に別れていたとは言え、同じ戦場で戦った英傑たち。 平穏の時代が過ぎ去り、戦乱が世界を覆い尽くした今。 この学園を「学園」と呼称する人間は少なくなった。 ある者は尊敬をこめ。 ある者は畏怖をこめ。 ――「円卓」と呼んだ。 ≪管制塔了解、至急応援部隊を送る≫ ≪ガルム隊、以後は空中管制機の指示に従え≫ ≪撤退は許可できない≫ ≪だろうな、報酬上乗せだ≫ ≪お財布握って待ってろよ≫ ≪姫様からの伝言。アルビオンの財布から支払う、とのこと≫ ≪姫さんも随分性格変わりましたね。まぁ良いや、さあ行くか!≫ ≪で……どうしてもついてくる気か、PJ?≫ ≪あいつ、学園に恋人がいるんスよね。帰ったらプロポーズするって言ってたんだ。花束も買ってあったりして≫ ≪仕方ないな。……落ちるなら俺の眼の届かない場所で頼む≫ ≪了解!≫ ――アルビオン戦争には謎が多い ≪ロト1より各機へ≫ ≪アルビオン狩りだ≫ ≪全部落とすぞ≫ ≪ラージャ≫ 誰もが正義となり 誰もが悪となる そして誰が被害者で 誰が加害者か 一体『平和』とは何か ≪俺たちがこの世界に呼ばれたのは、この時の為だったか≫ ≪アルビオン軍を確認。合計7万≫ ≪ソーサラー1から全機へ、最大推力であたれ≫ ≪サイトを無事に連れ戻してやる≫ ≪本物の「魔法使い」とはどんなものか、連中に教えてやれ≫ 有り得ない出会い ≪シュヴァルツェ1より各機。まさか「ハゲタカ」にまでお呼びがかかるとはな≫ ≪隊長が魅惑の妖精亭でバイトしてたルイズちゃんに手ェ出したからでしょ≫ ≪まったく、胸にチップいれようとするから……≫ ≪良いんだよ。可愛い子を泣かせたりは、したくないだろ?≫ 変わる運命 ≪状況を確認≫ ≪こちらグリューン2、相手は七万だ≫ ≪……楽しませてもらおう≫ 変われない世界 ≪ゴルト1より各機、状況を開始する≫ ≪国境は要らない。――境界を無くせば世界は変わる≫ ≪アルビオンの奴らに我々の正義を示すぞ≫ ――その中にあって ≪シュネー1より各機、敵戦力を確認した≫ ≪アルビオンの竜騎士を蹴散らす≫ ≪全機、槍を放て≫ 彼らは飛び続けた。 ≪ゲルプ2。不愉快なアルビオン軍を食い止める≫ ≪私たちは、その為にこの世界に来たのですから≫ ――全ては ≪インディゴ1より各機≫ ≪アルビオン軍を確認≫ ≪敵航空戦力は微少、対地攻撃に集中≫ ≪攻撃を開始する≫ 一人の英雄と ≪戦場が混乱しています≫ ≪私の生徒を救出する、ついてこい≫ ≪了解、ボス≫ 一本の魔剣と ≪こちらウィザード1、アルビオンが網にかかった≫ ≪ウィザード5了解≫ ≪目標補足、その数七万≫ ≪前方より接近中≫ ≪問題ない。オメガ大隊よりは少ない≫ ≪では始めよう≫ 一人の少女の為に ≪受け入れろよルイズ、これが戦争だ≫ ≪ガンダールヴがなんだ!俺がやってやる!≫ ≪生き残るぞ、ガルム1!≫ ――――人は彼らを『円卓の騎士』と呼んだ Servant Of Zero Not Coming Soon!!
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前ページ次ページ無情の使い魔 「待ちなさい!」 そこへやってきたのは、今まで教室で泣き崩れ、今になって食堂へとやってきたルイズだった。 騒ぎの原因は他の生徒の話によると、ギーシュが落とした香水の瓶をシエスタが拾い、それによって彼が一年の女子と同級生のモンモランシーとで二股をかけていたのがバレてしまった。 そして、その責任を瓶を拾ったシエスタに擦り付けようとしたら桐山が介入し、あろう事かギーシュを殴り倒してしまった事でここまで騒ぎが発展してしまったという。 「ギーシュ! 馬鹿な真似はやめて! 学院での決闘は禁止されているはずでしょ!?」 「それは貴族同士の話だよ。使い魔とではない」 鼻で笑うギーシュはさらに続け、 「君の使い魔の躾がなっていないから、この僕が代わりに躾けてやろうというんだ。少しは感謝してもらいたいね」 そう言って食堂から去っていった。 唇をかみ締めるルイズは未だに平然と立ち尽くしている桐山の方を振り返り、彼に詰め寄る。 「あんた、何を勝手な事やってるの! 貴族であるギーシュを殴り倒すなんて!」 「あ、ああ……キリヤマさん。申し訳ありません……わたしのせいで、こんな事に……」 ルイズが喚き散らし、シエスタが泣き崩れて詫びているがやはり桐山は全くの無表情である。 すると、桐山は持っていた本をシエスタに手渡す。 「ヴェストリの広場はどこだ?」 彼が発した言葉にシエスタは蒼白になり、首を横に振る。 「いけません、キリヤマさん! 貴族と決闘なんかしたら、殺されてしまいます!」 「主人の許可もなく、そんな事をするのは許さないわ!」 しかし、桐山はすぅと目を閉じ、二人を無視して食堂を後にしていく。 慌ててその後をルイズは追った。 「ちょっと、どこへ行くの!」 「ヴェストリの広場を探す」 即座に返され、ルイズは唖然とした。桐山はやる気だ。 彼は怒りや屈辱などといった感情を抱いている訳でもない。なのに、何故決闘を受けようとするのか。 「貴族に平民が勝てる訳ないじゃない! そんな事は許さないわよ!」 桐山の正面に立ち塞がり、必死に叫ぶルイズ。 メイジである貴族には魔法があるのだ。対して、桐山は明らかに平民。勝算は無きに等しい。 「ちょっと……!」 桐山はルイズの脇を通り、さっさと立ち去ってしまう。 桐山は他の生徒達が自分を見つつ血相を抱えて移動するのを見て、 その方向からヴェストリの広場の場所を勘で推測し、そこへと辿り着いていた。 「諸君、決闘だ!」 ヴェストリの広場にギーシュは薔薇の造花を模した自らの杖を掲げ高らかに宣言をする。 集まってきた群集から歓声が湧き上がる。 「逃げずに来たとは、その勇気は褒めてやろう!」 目の前に佇み、こちらを見つめてくる桐山に杖を突きつけるが、やはり無表情のままだ。 「何とか言ったらどうだね? ……いや、平民に貴族の礼儀を期待する方が間違っているか」 鼻で笑うギーシュ。 恐怖で声が出ないのか、とも思いたいが残念だがそうではなさそうだ。では、何も考えていないのか。 だが、どうであろうと決闘は続ける。そして、貴族の力を平民に思い知らせてやるのだ。 「あんたの使い魔、大丈夫なの?」 やってきたルイズの隣に立つのは、寮生活において隣部屋同士であるキュルケだった。 「大丈夫な訳ないでしょ。……もう、何であんな決闘なんか受けるのよぉ」 額を押さえ、ルイズは顔を歪めていた。 「でも彼、とても落ち着いてるわね」 ルイズから見れば落ち着いている、というよりは何も考えていないようにも見えた。 「だからって、平民が貴族に勝てる訳がないでしょ!」 ルイズの願いとしては、桐山がわざと負ける事によりそれでギーシュが満足してくれる事だけだった。 今、ここで使い魔を失う訳にはいかない。 使い魔が負けたと、恥をかくことになってもそれだけは避けなくては。 「あなたはどう思う?」 キュルケは自分の脇で無関心そうに本を読むタバサに語りかける。。 「結果をは見ないと分からない」 (彼……ただの平民じゃない) タバサはちらりと桐山へ視線を向けていた。 先日、ルイズが彼を召喚した時から彼から異様な威圧感を感じ取っていた。 恐らく他の生徒達はそれで恐怖などしか感じられていないだろうがタバサは違った。 (……血の臭いがする) それは祖国からの過酷な任務をこなし、時には血を流し、実戦経験が豊富なタバサだからこそ嗅ぎ取れるものだった。 あの少年は、その手を血で濡らしている。人を、殺めた事がある。 彼がここに召喚される前、一体何をやっていたのかは知る由もない。 だが、確実に彼は自らの手で、しかも事故などではなく実戦で人を殺めている。 それも一切の躊躇いも、容赦もまるで無く。 (わたしと……同じ?) 「雪風」の二つ名を持つ自分よりも遥かに冷たい、一切の感情が宿っていない凍りついた瞳……。 まるで人形のようなその瞳が、自分とそっくりに思えた。 学院長室へとやってきていたコルベールは学院長であるオスマンと会話をしていた。 春の使い魔召喚の際に、ルイズが平民の少年を呼び出し、そして彼に刻まれたルーンが見た事がないものであったことを話していた。 オスマンは、コルベールが描いたルーンのスケッチを見つめた。 「あの少年の左手に刻まれているルーンは……伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれていたモノとまったく同じであります……」 「つまり、君は彼が伝説の使い魔、『ガンダールヴ』であると、そう言いたいのかね?」 「……まだ憶測の域を出ませんが、その可能性は大いにあります……」 普段なら何かを新しいものを発見すれば子供のようにはしゃぎだすはずのコルベールであったが、今度ばかりは様子がおかしい。 何やら、酷く思い詰めた様子だった。 「どうしたのだね? そんな顔をして。お主らしくないではないか」 「……いえ、何でもありません」 苦々しい表情のままコルベールは首を横に振る。 何か訳ありのようだ。オスマンは問いただすのを中断する。 「ふむ……。――誰かね? 入りたまえ」 その時、コンコンッっとドアがノックされた。 扉の向こうから現れたのは、オスマンの秘書ミス・ロングビルだった。 「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。 教師達は、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」 「たかが子供の喧嘩を止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい。 ……で、誰が暴れておるのかね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンとこのバカ息子か。血は争えんのう。……それで? 相手は誰じゃ?」 「それが……、ミス・ヴァリエールの使い魔のようです」 その返答とともにコルベールの顔が蒼白になった。 「いけない……! すぐに止めなくては!」 「どうしたと言うのかねミスタ・コルベール、そんなにあわてて…さすがにグラモンの馬鹿息子も平民を殺したりはせぬよ」 そうまくしたてるコルベールをなだめながらオスマンは言う 「……使い魔のことを言っておるのです。……あの少年は、普通ではない」 人を殺める事に何の躊躇もしなさそうな無情の瞳。 彼が誰かと争わなければ良いと願っていたのが早々に打ち砕かれる。 それで誰かを傷つけでもしたら……。 「私が止めてきます」 意を決したコルベールは踵を返し、学院長室を後にした。 「それで……本当によろしいのですか?」 「うむ。まあ、放っておきなさい。子供同士の喧嘩じゃ」 と、言いつつ彼女の尻に手を伸ばそうとするオスマン。 手が触れる寸前で、ロングビルの肘鉄が彼の頭に叩き込まれていた。 「僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね」 しかし、やはり桐山は無言である。 構わずにギーシュは杖を振り、造花の花びらを一枚地面に落とす。 零れ落ちた花びらは光と共に、甲冑を纏った女性を模したゴーレムへと変化する。 「僕の二つ名は「青銅」のギーシュ。よって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手をするよ」 桐山はワルキューレを見て、くくっと小首を傾げていた。 ギーシュが杖を振ると、ワルキューレは桐山に向かって前進し始める。 桐山はガチャガチャと音を立てて走りこんでくるワルキューレを、そしてギーシュを交互に見比べていた。 (ふっ……一瞬で片付くな) ボーっとしていて隙だらけに見える桐山にギーシュが勝利を確信して笑みを零す。 だが、それだけではこちらの気が済まない。わざと急所を外して少し甚振ってやらねば。 自分の顔をあれだけ思い切り殴った代償を払ってもらう。正直、まだズキズキと痛む。 ワルキューレが拳を突き出し、それは桐山の顔面を強打するはずだった。 (何……!?) 確かに、その一撃は彼の顔面に入った。 しかし、桐山は顔を殴られた方向に向かって動かす事で衝撃を受け流し、全くの無傷だった。 「どうしたギーシュ!」 「さっさとやっちまえー!」 その光景を目にした多くの生徒達は桐山が無傷である事に一瞬、唖然としたが一部からそのような野次が飛ぶ。 ワルキューレはギーシュの命令により、次々と連打を繰り出す。 パンチが、蹴りが、目の前にいる平民を地に伏させるべく容赦なく繰り出されていく。 (……何故だ?) ギーシュはその光景を見て、顔を顰める。苛立ちが湧き上る。 (何故、奴は無傷なんだ?) 桐山はワルキューレの猛攻を常人とは逸脱した絶妙な、そして優雅な動きで次々と回避している。 その際、彼はかすり傷一つも負ってはいない。 そして、その間にも彼は相変わらずの無表情だった。 「……な!」 ギーシュは目を疑った。 何が、起きたのだ。 桐山がワルキューレの攻撃を体を横へ捻って回避した途端、ズガッという音と共に突然ワルキューレが大きく吹き飛ばされていたのだ。 10メイルは吹き飛ばされたワルキューレは群集達に向かって飛んでいき、彼らは慌ててそれをかわした。 そして、学院の壁に激突し、バラバラに崩れ去る。 今まで桐山の神がかりな回避に静かだった群集が、今度は完全に沈黙する。 「な、何が起きたんだ」 「いや……平民が攻撃をかわした途端に……」 「な、あいつ……何をしたの」 今、目の前で起きているのは現実だ。 先程からルイズは唖然とし、口を開けていた。 平民であるはずの桐山が常人離れした動きで攻撃をかわし、挙句の果てにゴーレムを吹き飛ばしてしまったのだ。 何をしたのか、全く見えなかった。 (あいつ……あんなに強かったの?) 驚きと共に、何故か嬉しさが生じてくる。 極めて寡黙で雑用くらいしかできない平民だと思っていたのが、まさかあれ程にまで強いなんて。 決して、役立たずな使い魔ではなかったのだ。 「……ほう、平民にしては中々やるな」 一瞬、口端を痙攣させて笑ったギーシュは杖を振り、今度は七体のゴーレムを召喚する。 「……僕も調子に乗りすぎていたようだ。本気でいかせてもらう!」 剣や槍、メイスなどで武装したワルキューレ達が佇む桐山を取り囲み、一斉に攻撃を仕掛ける。 だが、桐山の姿は忽然とその場から消えていた。 「……ど、どこに?」 ギーシュが狼狽する中、ワルキューレの一体が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。 桐山はいつのまにかワルキューレが手にしていた剣を握り、囲みの外へと出ていた。 ワルキューレ達が次々と桐山に突進していく。 桐山は手にしていた剣を投げつけ、二体をまとめて串刺しにした。 倒れようとするワルキューレの一体へ瞬時に駆け寄り、その手から今度はメイスを奪い取る。 体の遠心力を活かして振り回し、一体を殴打。さらにもう一体へと衝突させた。 その背後、左右からワルキューレが武器を振りかぶって襲い掛かる。 しかし、振り下ろされた武器は桐山ではなく、彼が手にしていたメイスを捉えていた。 軽やかに蜻蛉を切り、瞬時にしてワルキューレの背後へと着地していた桐山は一体の背中に掌低を繰り出し、吹き飛ばす。 そして体を思い切り捻り、落ちていたメイスを再び拾って最後の一体の頭へと叩き付けた。 この時、光るはずであった彼の左手のルーンは、一切の光を発さず力を発揮してはいなかった。 (……すごい) あまりにも常人を逸脱した桐山の戦闘に、タバサは感嘆とした。 どんなに鍛えられた手練のメイジでもあそこまでの動きをとる事はできない。 多くの修羅場を巡ってきた自分でさえ、彼の動きは初めの一瞬だけを見るので精一杯だった。 そして、その間に垣間見ていた彼の表情は、全くの無だ。 焦りも、恐怖も、余裕も、何一つ伝わってこない。 まるで今、行っている戦闘ですら彼にとってはただ機械的にこなしているだけのようにも見え、戦慄する。 そして、タバサは感じ取った。 (……やっぱり、わたしと同じ) 「そんな……馬鹿な……」 自分の精神力の全てを注ぎ込んで作り出したゴーレムを全滅させられ、ギーシュは力なくへたり込んだ。 彼は、ただの平民。そのはずだ。 なのに、こんな事があって良いのだろうか。 あり得ない光景にギーシュは恐怖する。 「ひっ……」 ちらりと、桐山はギーシュへ視線を向けてきた。 戦闘中も全く変化のなかった表情、瞳――それを目にしたギーシュは蒼白する。 そして、即座に感じ取る。 (こ、殺される……!) 桐山はギーシュを見つめていたが、しばらくするとつかつかと歩き出し、向かってくる。 ガクガクと震えるギーシュは尻餅をついたまま、後ろへ下がる。 「ま、まいった! 降参だ!」 しかし、桐山の足は止まらない。 何故、止まらない。 ギーシュは自分がまだ杖を持っている事に気付き、それも放り捨てる。 だが、桐山は杖に目もくれる事も無く止まる様子は全くない。 何故だ。何故、止まらない。 自分はもうワルキューレを作り出す事もできない。悔しくはあるが降参もした。杖も捨てた。 それで勝敗は決まったはずだ。なのに―― そして、はたと気付く。 自分は彼に、その事を言ったか? 貴族同士の決闘の勝敗は、本来ならどちらかが降参するか杖を落とされた時。……しかし、今回はその事を一度も口にしていない。 この決闘、自分が一方的に勝つものだと思い込んでいた。だから、ルールの説明なんてしていなかった。 平民に貴族のルールを説明しても、意味などないと思っていた。 だがそれでも、自分はもう戦えない。 いくら平民の彼でもそれに気付けない程、愚かではないはず。 なのに、何故止まらない。 (逃げないと……逃げないと……) しかし、恐怖に全身を支配され、もはや立つ事はおろか動く事さえできないギーシュ。 突然、腹部に突き刺さるような激痛が走った。 「う、ぶ――」 ギーシュはその場で嘔吐し、胃にまだ残されていたものを吐き出す。 それを見ていた生徒達が悲鳴を上げる。 (痛い! ……何で、こんなに痛い! この決闘で、彼からは何も受けていないのに!) 腹を押さえて蹲り、悶え苦しむギーシュ。 「……ある男が、健康診断を受けた」 突然、立ち止まった桐山が口を開き始める。 「その男が帰りに、車で子供を轢いた。男は数分と経たない内に腹部に激痛を覚え、病院で再検査を受けた」 (何を、言っている) 「検査の結果、男は重度の胃潰瘍と診断された。もちろん、先の検査では健康そのものだった。 男は短時間で胃に穴が開いていた。……つまり。 ――極度の恐怖や緊張で、人間の体はすぐに壊れる」 何を言っているのか、恐怖に支配されるギーシュに理解する事はできない。 ただ、このままでは自分が殺されてしまう。それだけしか考えられなかった。 そして、桐山が目の前まで来た所で意識を手放した。 「もうやめてっ!!」 白目を剥いて気絶するギーシュの前に立つ桐山の背中に、悲鳴を上げて飛び掛るルイズ。 「決闘は終わったの! あんたの勝ちよ! もう戦わなくてもいいの!」 「どうすれば終わる」 (え……?) 「決闘は、どうすれば終わる」 「何を……言ってるの?」 「俺は決闘が終了する条件を聞いていないんだ」 「だって、ギーシュが散々降参していたじゃない!」 意味不明な言葉にルイズは喚く。 「それが終了の条件であると、彼は言っていない」 確かに、ギーシュは一度もそんな事は説明していなかった。 しかし、もう戦う事すらできないのだ。いくら平民でもそれは判断できるはず。 それが、桐山は分からないのか? 「……いいから! もう決闘は終わりよ! 主人の命令よ!」 そう叫ぶと、桐山はすっと目を閉じて大人しく従い、その場を後にしていった。 既に気絶しているギーシュに対する興味も失っていた。 (まさか……!) ヴェストリの広場へと向かう道中、桐山とそれを追いかけるルイズとすれ違ったコルベール。 そして、そのすぐ後気絶したギーシュが他の生徒達にレビテーションの魔法をかけられて医務室へと運ばれていくのも見届けた。 生徒が無事である事を知って、ホッと息をつく。 ただ、あの様子からしてギーシュは彼に殺されかけたのだと察する。 危害そのものは加えていないようだが、決闘が続いていたら確実に彼はギーシュを殺していたのだろう。 一切の躊躇も、罪悪感も、後悔も、何一つ感じる事はなく。 何故、あんな少年があそこまで冷酷になれるのか。 コルベールには分からなかった。 前ページ次ページ無情の使い魔
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ゲートの使い方 手前側の上部分にワールドの名前があるので、行きたいワールドの奥の看板を右クリックすることで飛ぶことができます。 チェストロック(LWC) ロック方法 チャットで/cprivateって打ちます。その後に、ロックしたいチェストやドアやかまどをクリックします(開きます)。 ロック解除方法 チャットで/cremoveって打ちます。その後に、ロックしたいチェストやドアやかまどをクリックします(開きます)。 LWCのほかのコマンド コマンド 機能 /cpublic 他人が使用できる状態でロックします /cpassword Password パスワードを使ってロックができます /cunlock Password 上のパスワードロックを解除するのに使用します /cmodify user ロックされた対象を使用できる人を追加します /cmodify - user ロックされた対象を使用できる人を削除します /cinfo 対象のロックの詳細を表示します(ロックをかけた人・ロックの種類など) リフトの使い方 まず、鉄ブロックの上に乗る 次に前にあるボタンをクリックする。
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前ページ次ページ滅殺の使い魔 朝、小鳥がさえずりだす頃。 休日である虚無の曜日であるが、豪鬼には、いや、格闘家には休日は存在しない。 日々これ鍛錬である。 そんな訳で、豪鬼は既に日が昇りきる前に修練を終え、一人瞑想に入っていた。 ルイズの部屋の扉の横で、ではあるが。 豪鬼が方目を開け、横に視線を向ける。 部屋の中から、ドタドタと言う音が近づいてくる。 勢いよく開かれた扉から現れたのは、既に着替えを終えたルイズであった。 「ゴウキ! 出掛けるわよ!」 「ぬぅ……、しばし待てぃ」 仮にも自分は『使い魔』であるから、付いて来いと言われれば付いて行く。 豪鬼は修羅と言えるほどの者だが、常識が無い訳ではなかった。 無視していただけなのだ。 豪鬼は瞑想を終わらせ立ち上がると、イライラと自分を見つめているルイズを見た。 「どこへ行くつもりだ」 「剣よ」 「……うぬは剣技をするのか」 「わたしじゃないわよ。 あんたに買ってあげるって言ってんの」 「……何?」 豪鬼は拳での闘いにおいては正に無敵に近いものがあったが、武器を使っての闘いの経験はほとんど無い。 槍や刀を持った相手と死合いをした事はあるが。 「拳こそ我が武。 故に得物はいらぬ」 ルイズはそんな豪鬼の声に一切耳を貸さず、豪鬼の手を取り、引っ張り始めた。 「いいから! わたしが持たせてあげるってんだから、ありがたく買ってもらいなさい!」 豪鬼はとりあえず諦め、抵抗せずにルイズに引っ張られることにした。 「ルイズ。 何処へ行く」 「剣っていったら町でしょ。 町へ行くの」 豪鬼は、ルイズに引かれながら考えていた。 剣技。 自分に立ちはだかった者達の中にもそれは存在した。 短刀、長刀、槍、銃。 これらの得物を持った者達を、豪鬼は拳一つで粉砕してきたのだ。 しかし、得物によって様々な恩恵が得られることもまた事実であり、その様な敵との戦いでは間合いで不利になる事も多々あった。 幸い、飛び道具には対抗する術を持ち合わせていたが、槍や刀などには一方的に不利な状況を作られる。 これを機に新たな闘い方を習得するのも悪くないか。 一人でそう考えていると、何時の間にか学院の門へとたどり着いていた。 ◆◇◆◇ タバサは、ルイズの部屋の前で息を呑んだ。 先日召喚されたあの男。 初めからただならぬ気配を感じていたもので、それはギーシュとの決闘騒ぎで確信へと変わった。 あの身のこなし、あれはこれ異常ないほどに洗練された『暗殺術』ではないか。 タバサはそう仮定していた。 時に流麗、時に豪胆、そして放たれる殺気。 もしも自分があの技術を会得できるのならば、自分は目的へと大きく近づく。 それが一つ。 そして、それよりも大きな理由が一つあった。 それらを胸に、一度深呼吸をしてから、部屋の扉をノックした。 あの使い魔が出てきたらどうする? いきなり「弟子にして下さい」か? 駄目だ、平常心を保っていられるか不安が残る。 それでは駄目だ。 では、「私と決闘して欲しい」か? それも駄目だ。 技術を盗む云々の前に倒されるだろう。 殺されるかもしれない。 事実、ギーシュとの決闘では、あの使い魔の動きが見えなかった。 ギーシュがドットだったから勝てた、だとか、本気でやってなかったからだ、とか言う者がいるが、そんなことはない。 本当に強いのだ、あの使い魔が。 トライアングルの自分とキュルケが同時にかかっても恐らく歯が立たないレベルであり、なおかつスクウェアでも勝てない筈だ。 そう悩んでいると、タバサはその隣の部屋の扉が開くのに気付いた。 中から現れたのはタバサの親友、キュルケであった。 「あらタバサ、どうしたの? あなた、ヴァリエールと仲良かった?」 タバサは小さく首を横に振る。 すると、何を思ったかキュルケがニヤニヤとタバサを見つめ、からかうように言った。 「なあに? あなたもゴウキ目当て? 渡さないわよ~?」 明らかにキュルケの考えていることと自分の考えている事は違うのだが、一応ゴウキ目当てなのは事実なので、否定も肯定もしなかった。 キュルケはタバサに近づき、扉の前へ来ると、躊躇無く鍵に『アン・ロック』の魔法をかけた。 「禁止事項」 「いいのよ。 恋の情熱は全てのルールに優越するの。 だから校則とかは無視よ無視」 扉が開くと、キュルケは悠然と中に入っていく。 しかし、その中にキュルケの望んだ結果は待っていなかった。 もぬけの殻だ。 目当ての豪鬼も、ルイズも居ない。 キュルケに続いて部屋に入っていたタバサが呟く。 「鞄が無い。 外出の可能性が高い」 鞄が無いということは、どこかに出掛けたのだろうか。 キュルケは窓から外を見回した。 見つけたものに、思わず驚きの声を上げる。 「え、ちょ、えぇ!?」 キュルケが目にしたものは、馬に乗るルイズ。 ……と、それと全く同じスピードで走る豪鬼の姿だった。 キュルケがそれを呆けたように見つめていると、タバサが窓を開け、口笛を吹いた。 それから、窓枠によじ登り、外に向かって飛び降りる。 タバサの突然の奇行に、しかしキュルケは動じず、あろう事か同じように外に身を投げのだった。 タバサは命じた。 「例の『あの方』」 ◆◇◆◇ 「あ、あんた、どんな体力してんのよ……」 ルイズがもう何度目かの驚きの声を上げる。 無理も無い、普通なら馬で移動する距離を、豪鬼は馬と同じ速度、いや、馬に『合わせて』走り切ったのだから。 むしろ、豪鬼にとって、馬で程度の距離は物足りないレベルだった程だ。 ルイズは、隣を歩く、息切れ所か汗一つとして掻いていない豪鬼を見た。 こいつは一体全体何なのか? もはやそんなことはどうでも良くなってきていた。 「はぁ……。 まぁいいわ、ここがブルドンネ街よ。 ここであんたの剣を買うわ」 「……うむ」 豪鬼は街を見まわす。 元居た世界の都会と比べて、随分と狭いものである。 しかし、道を歩く者達の目は、あの世界よりもいきいきとしている。 ただ、この広さでは、格闘大会は開かれないだろう。 そう思いながら、豪鬼はルイズについて行く。 しばらく歩くと、ルイズは更に路地裏へと入っていった。 大通りがあの狭さなのだから、路地裏は当然もっと狭く、汚く、暗い。 「もうっ! だから来たくないのよ!」 ルイズが忌々しそうに呟く。 豪鬼は別段それに構うこともせず、ただルイズについて行った。 少し歩くと、四辻に出た。 「えーっと、この辺の筈……」 辺りを見回すと、一枚の同の看板が目に入った。 豪鬼は気付かなかったが、確かにそれは武器屋の看板だったらしい。 ルイズと豪鬼は、それに向かって行った。 扉を開け、店に入る。 扉に付いた鈴が、カランカランと音をたて、来客を知らせる。 すると、中から長髪オールバックの男が出てきた。 男はルイズのマントに気付き、一瞬驚くと、今度は気障な笑みをこぼした。 「イヤー困った! 遂にこの世界でもワイの美形は知られてしもたようやな! せやけどお嬢ちゃん、ワイはもう心に決めた人がおるんや。 心が痛むけど、ここは一つ引き下がってもらえへんかなぁ?」 「……は?」 ルイズは呆気にとられる。 その間にも、男はふぅ、とか、はぁ、とか言っている。 なるほど、ギーシュと同じ系統の人間か。 そう思ったルイズは、男の言うことを聞き流し、用件だけ言うことにした。 「客よ」 「ん? なんや客かいな。 悪いけど、いくら積んでもワイの愛は買えへんで~?」 「使い魔が使うの。 あいつ」 ルイズは豪鬼を指差す。 豪鬼は店内を物色していた。 豪鬼を見た瞬間、男の目付きが変わる。 鋭い眼光が、豪鬼の体を観察する。 「チョイ待っとれや~」 男が店の奥へと消える。 少しすると、男が大きな両手剣を持って戻ってきた。 巨大な刀身に、派手な宝石等が散りばめられている。 「どないや! 店一番の業物やで! 嬢ちゃん貴族やろ、ほんならこのくらいはせめて欲しいやろなぁ」 豪鬼はいつの間にかルイズの隣に戻り、その大剣を見つめていた。 「ゴウキ、振ってみなさい」 ゴウキが無言でそれを手に取る。 「……!」 すると、突然豪鬼の左手のルーンが輝き始めたのだ。 豪鬼はそれを見つめる。 力が湧き上がる、この感触。 これは、今まで何度も経験した『殺意の波動』のそれとは僅かに違う。 体が軽い。 それは正に羽のようであった。 そして、何よりも違うのは―― 「ルイズ。 この剣は要らぬ」 そう、手に持った得物の事が、自然と頭の中に流れてくるのである。 豪鬼の頭は、瞬時にこの大剣の本質を見切った。 故に、この剣は要らない、と言ったのだ。 「ちょ、なんでよ! これが一番……」 「はは! やっぱりな! あんたには剣なんぞ似合わんわ!」 ルイズが豪鬼に不満をぶつけようとするが、それは男の大笑いによって掻き消された。 「嬢ちゃん、ワイが断言したる。 その剣はボッタや。 非美形や」 「あ、あんた、わたしからふんだくろうとしてたの!?」 食って掛かるルイズに、男は特に気にした様子も無く答える。 「ふんだくれるもんはふんだくるのが商人ちゅー奴やろ。 ……まぁええわ。 嬢ちゃん、謝罪としてあの山の中から好きなの持ってってええで。 ワイは心も美形やからな」 男が店内の一角を指差す。 そこには、乱雑に積まれた様々な武器の山があった。 ルイズが男の態度に怒りを通り越して呆れて山を見ていると、その中から突然声が聞こえた。 低い男声。 店長の物では無いようだ。 「ロバート! 俺はタダかよ!?」 「ん? なんや、デル公かいな」 「デル公?」 ロバートはその武器の山に近づくと、その中から一本剣を取り出した。 「こいつや。 知っとるやろ? 意思を持った魔剣、インテリジェンスソードや。 どこの馬鹿が始めたんやろなぁこんなの。 ワイへの嫌がらせちゃうか?」 「おうおうおう! そこのお前! ちょっとばかしいい体してるからよ、ちょっと俺を持ってみな」 「……ふむ」 豪鬼がロバートから剣を受け取ると、またルーンが輝き始めた。 豪鬼のルーンが、剣の判定を行う。 ……良い剣だ。 そう判断したところで、剣が小さく呟いた。 「おでれーた。 てめ『使い手』か」 「『使い手』……?」 「ふん、自分の実力も知らんのか。 まあいい。 てめ、俺を買え」 「……」 しばらくの沈黙。 豪鬼は、ルイズに向き直り、一言、こう言った。 「ルイズ。 これを買う」 当然ルイズは不満の声をあげる。 しかし、それを男が遮った。 「いや~! その剣、五月蝿くてかなわんかったんや。 せやから、タダで譲ったるわ」「豪鬼、それにしましょ」 ルイズは即答した。 小遣いだって無限ではないのだ。 もらえるなら貰おう。 大丈夫、豪鬼なら大丈夫。 ルイズはそう言い訳を念じた。 豪鬼達は剣を受け取り、武器屋を後にした。 前ページ次ページ滅殺の使い魔
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前ページ次ページ鋼の使い魔 1296年、グラン・ヴァレに程近い所に築かれた砦は、しんと沈むべき夜中にあって、火竜の心臓の如く赤く燃えがっていた。 ギュスターヴは少数の手勢と側近を連れて南方の巡察に赴きその砦を宿としたが、その夜、何者かに率いられたモンスターの群が砦を襲った。 一騎当千ともいえるギュスターヴ軍といえども多勢に無勢、ギュスターヴはフリンに師父シルマールの高弟ヴァンアーブルを逃がすように 遣わし、自らは護衛であるヨハンとともに砦に残った。 砦の奥深く、わずかな調度品が置かれた一室にギュスターヴは鎮座していた。扉は閉め、内側から閂をかけてある。 ふとガタガタと音立てる窓を見ると、窓枠の端から顔を覗かせるフリンを見つけた。 「フリン!なぜ戻ってきた!」 ギュスターヴは狼狽した。最早運命は決している。既にどこからか上がった火の手が扉の奥まで迫っていたはずだ。 毒に病んでいるヨハンが倒れればモンスター達が扉を食い破り炎と共に押し寄せてくる。そうなればギュスターヴは命の限りに剣を振るい、 最後までこの陰謀をたくらむ者に抵抗するつもりでいたのだ。たった一人で。 「……私は最期までギュスターヴ様と共にいると決めたのです」 「この馬鹿者が!何のためにヴァンアーブルと脱出させたと思っているのだ。お前には生きてこのことを ケルヴィン達に伝える使命があるというのに……」 流石のフリンも火の手が回り始めた砦を何度も出入りする事が出来るはずもない。 となれば此処でモンスターを相手に死闘と共に果てるだけだ。 「ギュス様」 「なん……だ?」 急に子供の頃のように呼ばれたギュスターヴは、フリンの声にすぐに答えられない。 「僕は、ギュス様が居なければ、今日まで生きていなかったよ。ギュス様あっての今までの命だよ。 だからさ。最期までそうさせてくれないかな?ギュス様が死んだんじゃ、ずっと生きててもつまらないよ……」 「…つまらない、か……」 グリューゲルでの親分子分の関係から既に四半世紀以上。同じ術不能者として、術社会に鋼鉄を握って立ち振る舞った半生を振り返る。 「……俺と一緒にいるせいで、辛い目にあったりしただろうに」 「それでも、僕はギュス様が大好きなんだよ」 笑いかけるフリンに、同じくギュスターヴに笑みがこぼれる。 扉がぎしぎしときしみ始める。閂が曲がり始め、隙間からモンスターの獣臭が漂う。 「……付いてくるなら、最後まで気を抜くんじゃないぞフリン」 「ギュス様こそ、もう若くないんだからがんばってね」 やがて砕け散る扉。モンスター達が飛び掛る前に、二人は自分達から扉の向こうに飛び込んで行った。 周囲は見渡す限り煙と火の粉、自らで鍛え上げた剣には、緑や赤黒い血痕が付いている。 既に、煙の向こうから飛び掛るモンスターを切り伏せて二十は越えた。フリンの声も途絶えた。天井が焼け落ち、出入り口も塞がった。 「此処までか……」 せめて最期まで共に居たフリンを見取るべくそれほど狭くない砦の中を歩き回ったが、焼け落ちて行けなくなった部屋に居るのか、 見つけることが出来ずにいた。 「グフッ、ゴフッ、ゴフッ……」 火の粉と煙を吸い過ぎた。モンスターから受けた傷もある。獣の餌にはならずに済んでも、消し炭になるのは確実だ。 酸欠で腰が立たない。剣を床に突き立てて杖にする。 「ゴフッ……」 視界も徐々に暗くなってくる。天井が落ちて、火の玉となって降りかかってくるのがわかるのに、体が付いていかない。 立ったまま、それを見ていた。 「あぁ……」 力尽きるように目を閉じるギュスターヴ。そのまま下敷きになった…… はず、だった。 『ギュスターヴと学院』 ここはトリステイン魔法学院学生寮。ヴァリエール公三女ルイズの部屋。 目を覚ました時、ギュスターヴはやはり自分があの砦からここに召喚された、という事を改めて実感した。 夢に見た、砦落ちる最期の瞬間。フリンと砦に残り、モンスターを蹴散らし、崩落する天井に押しつぶされて果てる直前に、 そこのベッドに眠る少女に呼び出されて九死に一生した。 (……生き残って、しまった……) ギュスターヴの脳裏に浮かぶのは、死を覚悟して共に砦に残り、事実死亡しただろうフリン。 そしてギュスターヴ無き後の混乱を任されたケルヴィンやヴァンアーブルのことだった。 (フリン。俺はどうやら死ねなかったよ。お前なら笑ってくれるか? ケルヴィン。俺は戻れないらしい。うまくやってくれていると信じたいが……) 朝日がカーテンの隙間から入る。朝鳴く鳥の声が耳を洗う。身に着けていた鎧等、荷物は邪魔にならないように部屋の角に纏めておいた。 そこからギュスターヴは50サントほどの長さがある短剣を取り出す。 ギュスターヴが最初に打った、手製の短剣である。ギュスターヴは一国の主となった後も、 自ら身に着ける武具だけは、自分の手で作り出していた。 鞘から抜いて掲げる。研ぎ澄まされた黒い光沢が、細く届く朝日を反射するようだった。 「ん……」 背中から聞こえる声に、部屋主の存在を思い出したギュスターヴは、短剣を荷物に戻し、ルイズの肩を揺らした。 「んみゃ……」 寝起きが悪いらしいルイズは、多少揺すられても起きそうになかった。仕方が無いのでギュスターヴは、窓に掛かるカーテンを空け、 窓を開けて外気を呼び込んだ。朝の空気は澄んで冷たい。ルイズは覚醒を迎える。 「ん…んぅ?……」 「起きたかな、主人」 目をうっすらと開くルイズに見える、壮年の男性の顔。 「はぁう!?だ、誰よあんた!」 「昨日、お前に呼び出されたらしい、使い魔のギュスターヴだ」 「あ……そう…だったわね」 身体にかけた毛布を払い、背筋を伸ばしているルイズは、ギュスターヴに向かって言う。 「それじゃ、そこのクローゼットから服を出して頂戴」 「何?」 ネグリジェを脱ぎながらも当然のように。ギュスターヴは狼狽する。 「早く出しなさいよー、風邪引いちゃうじゃない」 どうやら自分でやる気がないらしいようなので、ギュスターヴは渋々クローゼットを開け、適当に服と下着を選んでベッドに運ぶ。 「着せて」 「それくらい自分で出来るだろう」 呆れたギュスターヴにルイズは言い放つ。 「田舎者だから知らないかもしれないけど、貴族は下僕がいれば自分で服なんて着ないの」 当然のような顔をして腕を伸ばして待機するルイズがおかしくて、ギュスターヴは噴出してしまった。 「何笑ってるのよ」 「いや。しかしルイズ「様」…ルイズ様。それじゃ貴族というのは服も自分で着る事の出来ない赤ん坊と一緒じゃないか…… と、俺は思うんだが、違うか?」 貴族が無力な赤ん坊と同じだ、と言われて、流石のルイズも鼻白む。 いいから着させなさい、と言おうとする前に、ギュスターヴは洗濯籠を持って立ち上がっていた。 「それでは俺はこの洗濯物をどうにかしてくるので、それまで裸でいたいならそうしているといい」 ルイズと取り合う気が無いギュスターヴはそのまま部屋を出て行ってしまった。閉じられたドアを呆然とみるルイズ。朝の空気が身体を冷やす。「使い魔だったら主人の言う事位聞きなさいよ!……寒い…」 洗濯籠を抱えて学生寮の外、学園敷地内を歩くギュスターヴ。宮城の類には親しい。しかもここは貴族が多く住んでいる。 なら、貴族の衣服を洗濯する専用の小屋が敷地内にあるはずだ、と辺りをつけ、学院を囲む塀沿いに歩いていた。 暫く歩いていると、寮の裏手に当たる場所に石造りの小屋を見つける。 よく見れば朝日の差し込む広い物干し台がしつらえてあり、既に洗われたシーツ等が掛けられて、風に靡いている。 一人のメイドがちょうど、小屋から出て洗濯物を干し台に掛けようとしていた。ギュスターヴは何気なく近づき、声を掛けてみる。 「すまないが、洗濯はここでやっているのかな」 「あひゃう?!」 声を掛けられたメイドは頓狂な声を上げて驚いた。背後から近寄ったのが不味かったかな?とギュスターヴ。 「驚かせたかな?仕事中に失礼」 「ああ、いえ、大丈夫です。大きな声で驚いてごめんなさい」 互いに謝る姿が奇妙に思われて、メイドとギュスターヴは笑った。 「主人から洗濯物を預かっているんだ。ここで洗ってもらえると助かるんだけど」 「ご主人?……貴方は噂になっているミス・ヴァリエールが召喚した人ですか?」 もう噂になってるのか、いや、この狭い学院の中ならそんなものだろう。ギュスターヴは若草の髪のメイドに答える。 「うん。昨日からルイズの使い魔になっている、ギュスターヴだ。よろしく」 「はい。私はシエスタ。学院付のメイドです。ではこちらの衣服は、私共で洗わせてもらいますね」 会話しながらも小屋から持ち出してきた洗濯物は全て干し台に掛けられている。 「じゃあ、頼むよ。俺はルイズの部屋に戻るから」 「はいっ。……あの……」 なにか?と振り返るギュスターヴを、まじまじとシエスタは見ていた。まるで観察するように。 「その……ミス・ヴァリエールって、変わった方ですね。平民を使い魔にされるなんて……」 「?…そうらしいな。それじゃ」 得心が行かないながらも、戻らなければ困るだろうとギュスターヴは学生寮に戻っていった。 シエスタはそこで見えなくなるまでギュスターヴを見ていたが、 「不思議な人。…まるで、空の瓶のような……」 やがてルイズの洗濯物を持って小屋に戻った。 ルイズの部屋に戻る道すがら、ギュスターヴはルイズを部屋に放置したことを思い出した。ギュスターヴは生まれこそ高貴だが、 成人するまで傅かれて生活するような日々とはあまり縁がなかった人間だ。ワイト候となって以後は侍従や下男がつくようになったが、 身の回りのことを人に任せるのは落ち着かないからと、掃除洗濯以外は殆ど自分でしていた。 厩番が「だんな様がギンガーの世話をされては馬丁達が仕事を覚えません」と小言を聞かせた時は流石に困ってしまったが。 ギュスターヴにとって貴族とは、一に術社会の象徴であるが、一方で自分を支援してくれたヤーデ伯やケルヴィンに見る、 精神的な清貧を現すものだった。ルイズの実家は公爵らしいが、果たしてこの世界の貴族は一体どうなのか……。 「お前も、下僕に服を着さてもらってたのか?ケルヴィン……」 今は遠い親友の姿を想像して、なんともいえない気分にギュスターヴは浸る。 部屋に戻ると、ルイズは下着姿ではなかった。一応、昨日見た感じと同じように、制服を着ていたが、顔はあまりいいとは言えない。戻ってきたギュスターヴを睨んだ。 「主人を裸のまま放置するなんていい度胸じゃないの」 「いい年して服を着せてもらおうなんていうのが悪いんじゃないか」 なんですって!と怒鳴りつけるのをいなしていたギュスターヴは、鍵を掛けたはずのドアが勢い良く開くのを見た。 「ハァイ!朝のお目覚めいかがかしらルイズ?」 入ってきたのは女性だ。しかし部屋主のルイズとは性別以外でほぼ違っている。赤髪をなびかせ、背が高い。 胸元は開かれて豊かな胸が覗かせている。化粧もルイズよりもずっと上手で、何より醸し出す色気があった。 「おはようキュルケ。その前に何か言う事はない?」 「なにかしら?」 「『アンロック』は校則で使用禁止になっているでしょうが!」 ああ、そうだったね。キュルケはルイズとあんまり取り合う気が無いらしい。 「それよりも、貴方平民を使い魔にしたって言うけど本当?興味が有ったからお披露目まで待ちきれなかったの」 キュルケはルイズの部屋を見渡すまでもなく、ルイズのそばに立っていたギュスターヴをまじまじと見た。 「ふぅん。結構いい男ね。お名前聞かせ願いますかしらミスタ?」 「ギュスターヴ」 「初めましてミスタ・ギュス。私はキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー」 「何親しげに挨拶してるのよ!」 それがどちらに向けられた言葉か分からないが、ルイズは非常にいらだたしげに声を荒げる。 「それにしても本当に平民を使い魔にしたのね。魔法学院の歴史で初めてだそうよ。流石ゼロ」 「うるさいわね」 「私も昨日使い魔を呼んだのよ。いらっしゃい、フレイム」 のそのそと開けられたドアから入ってきた赤銅色の物体は、鰐程もある大きな蜥蜴であった。 「どう?これだけ立派な使い魔は、そうお目にかからないんじゃないかしら」 「サラマンダーね」 「そうよ~しかも火竜山脈に生息する亜種よ。普通のサラマンダーよりもずっとレア物なんだから」 「そりゃ、よかったわね」 キュルケの相手が鬱陶しそうなルイズと対照的に、ギュスターヴはフレイムの背中を撫でて感触を確かめていた。 「それじゃ、使い魔も見させてもらったし、失礼」 あらかた話し終わるとフレイムをつれて出て行ったキュルケ。閉じられたドアに向かって火を噴きそうなほど睨みつけるルイズ。 「きー!なんなのよ!自分がレア物の使い魔を召喚できたからって!」 「あまりかっかとしていても仕方が無いだろう」 「よくないわよ!いい?メイジの実力を見るには使い魔を見よ、っていうのよ。つまりあいつがレア物のサラマンダーを呼んだってことは、あいつが 優秀な火のメイジだってことを明らかにしているんだから」 つまり術不能者のギュスターヴを使い魔にしたルイズは、優秀ではない、ということになるらしい。 「……そりゃ、わるかったな」 まったくよ、とそろそろ朝食が始まる時間。ルイズはギュスターヴをつれて食堂に向かうべく部屋を出た。 廊下道すがら、ギュスターヴはルイズに聞いてみた。 「ところで、キュルケはルイズの事を『ゼロ』と呼んだが、どういう意味なんだ?」 「あだ名よ。それだけ。メイジは大体、自分の能力に相応した二つ名があるわ。キュルケは『微熱』、昨日会ったミスタ・コルベールは『炎蛇』ね」 そう説明するルイズだったが、その場で『ゼロ』の意味を言う事はなかった。 アルヴィーズ、と書かれている――ギュスターヴには読めなかった――部屋は、巨大な食堂だった。 テーブルが並べられ、豪勢な料理と粛然とした雰囲気が包んでいる。 「さて、あんたの朝食はどうしようかしら?食堂には貴族しか入れないんだけど」 本来ならこの時使い魔は、学院付の厩番などから食事をもらったりするのだが、ギュスターヴはそうはいかない。 どうしたものか。食堂では朝食を運ぶメイド達が行き交う。ルイズはその一人を呼び止めて近づいた。 「ちょっといいかしら?」 「なんでございましょうか貴族様」 若草の髪をしている少女だった。 「こいつに食事を用意できないかしら。食堂には入れされられないから、都合して頂戴」 「かしこまりました。私共の厨房まで案内させてもらいます」 それじゃ頼むわね、とルイズは食堂の中、自分に割り当てられた席に向かっていった。ギュスターヴはメイドに連れられて 食堂から繋がる地下の厨房へ続く廊下を歩いていた。 「また、会いましたね」 「そうだな。食事なんて用意できるのか?」 そのメイドは丁度、ギュスターヴが洗濯小屋で話しかけたシエスタだった。どうやらシエスタは雑役女中らしい。 「学院に奉公に来ていたり、雇われている平民は一緒に食事を取るんです。賄いも作ってますから、一人分くらいどうってことないですよ」 シエスタは胸を張った。ルイズよりも立派に主張する体付きをしていた。 「この先が厨房です」 地下廊下の先にある厨房は、大人数の貴族を養うべく広く、且つ立派なものだった。オーブン、ロースター、鍋、フライパン、調理具の数々がコックに握られ踊っている。 出来た料理は皿に盛られてメイドたちが運んでいく。 「マルトーさーん」 シエスタは厨房で指示を出している恰幅のいい男性に声を掛けた。風貌からここの料理長だろう。 「おう、話はシエスタに聞いたぜ。俺はマルトー。学院の厨房を任されている。聞けば噂の使い魔にされちまったってのは、あんたなんだってな。 知り合いもいなくて困ってんだろ。何かあったら相談に乗ってやれるぜ……っと、朝飯だったな。厨房の隣に俺達用の食堂があるんだ。そこで食べてくれ。 賄いだが貴族向けにも負けない出来だ!腹いっぱい食って行きな!」 まくし立てるマルトーに言葉がでないギュスターヴであったが、シエスタに案内されて厨房の隣部屋に設えられた食堂に入った。 そこは地下にある為か薄暗い印象をもったが、使い込まれたテーブルや椅子、壁掛けられたタペストリー、交代制なのか既に食事を取っているらしい男女がいて、 生活の匂いがした。ギュスターヴはどこか懐かしいような気さえした。 ともかく腹を満たさねばならないと、並ぶ男女の列に混じり盆を取り、食事を取り分けてもらう。 野菜や肉の入ったシチュー、少々硬いがしっかりと味のある黒パンに、匙で掬って皿の端に盛られた鶯色のペースト。 シチューを掬い、口に入れる。思えば丸一日、何も食べていなかった。召喚される前は真夜中の上満身創痍だったし、召喚された後は夕方まで倒れたまま、 目が覚めたらそのままルイズの部屋で眠り、と、水すら飲む機会がなかった。 結局ギュスターヴは、シチューを三皿戴き、黒パンで皿を拭って堪能した。 シチューは良く煮込まれて具は歯に立たぬほどだったし、黒パンには何か香料が混ぜてあったのか酸味のある香りがした。 ペーストは豆か何かだったが、パンにあう甘みがあった。 使い終わった食器を洗って返し、一段落して食事をしていたマルトー、シエスタに礼をいうギュスターヴ。 「御馳走様。美味しかったよ。ありがとう」 「何、気にする事はないさ。これからも来てくれてかまわないぜ。どうせ貴族様はそうするよう言うだろうしな」 忌々しげにマルトーが言い、それを少し困った顔で見ているシエスタ。 「マルトーさんは貴族嫌いなんですよ」 「おうよ!あいつらは魔法が使えるってんで、平民を見下してるんだ。ま、給料の支払いがいいから、俺はここで仕事してるんだけどな」 マルトーの言葉にどう答えていいか分からないギュスターヴにマルトーは笑った。 「なんでも魔法もないような田舎から来たって言うじゃないか。いいねぇ。メイジが威張って平民をあごで使ったりしない所があるなら、俺も行きたいもんさ」 その言葉に、ギュスターヴは自分の元いた世界でも、術不能者は術が使えるものから蔑まれていたのだ、という事を思い出さずにいられなかった。 厨房を抜けてアルヴィーズの食堂に戻ったギュスターヴは、同じく食事を終えて食堂の入り口で待っていたらしいルイズと合流した。 「遅いわ!主人を待たせるなんてとんでもないわよ。次待たせたらお仕置きよ!」 「時計がなかったんだ。仕方ないだろ」 何か言いた気だったルイズだが、気に留めずに次の予定を言った。 「使い魔召喚の後の最初の授業は、使い魔のお披露目を兼ねているの。余程大きな使い魔じゃなければ連れて行く事になっているわ」 ルイズはギュスターヴをつれて食堂から廊下を渡り、学院を巡る塔の一つに入った。 教室であるらしいそこは、すり鉢上の構造になっている。一番下の段には教壇と大きな黒板が置かれて、そこから扇状に机が並んでいる。 (ハンの廃墟を思い出すな……) 埒もないギュスターヴの思考を消し飛ばしたのは、既に教室に多数いる他の生徒が召喚したらしい使い魔の動物達だった。キュルケのフレイムもいた。 キュルケの足元でじっとしている。他にも梟や蛙、蛇、猫、一つ目の怪生物のような、ギュスターヴの見たこともない動物もいた。 「俺はどこに居ればいい?」 「そうね、床に座って……でも、邪魔かしらね。いいわ。特別に私の隣に座らせてあげる」 得意そうに言うルイズであったが、ルイズが座った机からは次第に他の生徒達が離れ、別の机に付いて行った。 程なくして教室の机は生徒の少年少女で満たされ、ほぼ生徒の数と等しい使い魔の生き物達も居る事で、教室は非常に騒がしい空間になった。 やがて教壇に一人の女性が立つ。中年の、すこしふとましい風貌が、優しげな印象を作っている。 「皆さん。春の使い魔召喚は、どなたも成功したようですね。このシュヴルーズは、毎年この日を楽しみにしているのですよ」 「先生!ルイズは成功してません!平民を使い魔の代わりに雇ってるんです!」 シュヴルーズと名乗った女性の声の後、すぐに飛んできたのはルイズを目標とした侮蔑の声だった。シュヴルーズはコホン、と咳をはらって、 「いえいえ、ミス・ヴァリエールは少し変わった使い魔を召喚されましたが、私はそれはそれでよいと思いますよ」 「そうよ、それにちゃんとサモン・サーヴァントには成功したもの!ただこいつが来ちゃっただけよ」 「ゼロのくせに魔法が成功するものかよ!」 ざわめく生徒。その声にはひそひそと忍ぶ笑い声が混じっている。 「あまり学友を悪く言う事は許しませんよ。ゼロだのなんだのと」 「しかしゼロはゼロです。それは先生が一番知って……」 ルイズを口汚く罵る小太りの少年は、シュヴルーズが静かに振った杖と共に静かになった。彼の口には粘る赤い土が張り付いている。 「あなたはそのまま授業を受けなさい。では授業を始めますよ、皆さん」 やがて静かになる教室。シュヴルーズは再び杖を振ると、教壇に置かれたチョークがふわりと浮き、黒板に字を書いていく。 ギュスターヴはハルケギニアの字がまったく読めなかった。しかしシュヴルーズが話すメイジの4属性と失われた虚無、メイジの等級、 社会との関わり方、という内容は、統治者としてのギュスターヴの思考を大いに刺激するものだった。 「ルイズ。魔法が使えない者はどうやって生活するものなんだ?」 ハルケギニア、特にこのトリステインという国は魔法が産業の基盤だそうだ。土のメイジが土壌改良や鉱脈をさがし、水メイジが治水などを行う、という具合に。 そこに平民の入る場所はあるのだろうか? 「平民は平民でする仕事があるんでしょ、この学院にもたくさん平民が働いているじゃない」 ということは平民の多くは肉体労働のような単純な仕事しか与えられない、ということだろう。それは凄く淋しいことのようにギュスターヴは感じられた。 「……では、この『錬金』の実演を……ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズはルイズに教壇に置かれた石の錬金を実演するように指名した。次の瞬間教室にどよめきが走る。ある生徒は顔を青くして机の下にもぐりこんでいる。 「先生、やめたほうが良いかと思いますが……」 キュルケが先生に考え直すよう言うが、シュヴルーズは首を縦に振らない。 「いいえ。使い魔を召喚できた一人前のメイジなら、錬金は簡単にできましょう。さぁ、ミス・ヴァリエール。やってごらんなさい。きっと成功できましょう。」 ギュスターヴはシュヴルーズの言葉の端に、言い聞かせるようなニュアンスを聞き取ったが、ルイズは立ち上がり、教壇に歩いていった。 「さぁ、ミス・ヴァリエール。この石ころを、望む金属に変えるのです。変えたい金属のイメージを強く念じなさい」 ルイズは頷き、少し間を置いて、石ころに向かって杖を振った。 瞬間、教壇は光と共に消失し、次の瞬間には爆音と爆風が教室を貫いた。その衝撃は、総石造りの教室を共鳴しあい、椅子や机など調度品に守られなかった 生徒や使い魔を壁に叩きつけた。 ギュスターヴは光を放った瞬間に身を屈めたため怪我はなかったが、他の者はそうではないようだった。シュヴルーズは間近にいた為爆風と爆音を諸に受け 壁に打ち付けられたらしく、ぐったりとして動かないし、同じくルイズも教壇に一番近い机にもたれかかるようにしてのびている。使い魔が暴れだしているものもいて、 教室全体がパニック状態に陥っている。 「ん…」 やがて目を覚ましたルイズは、破れた衣服を気にする事無く、ハンカチを取り出し、煤で汚れた顔を拭いて一言。 「ちょっと失敗ね」 たちまち巻き起こるルイズへの罵声が教室を覆う。 「なにがちょっとだ!魔法の使えないメイジのくせに!」 「成功率ゼロだろうが!ゼロのルイズめ!」 向けられた言葉をどこ吹く風か、つんと澄ましているルイズだが、ギュスターヴは見ていた。 杖を握った手が静かに震えていることを。 前ページ次ページ鋼の使い魔
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MySQLの使い方 ■使い始めの流れ ●インストール ●データベース作成 ●ユーザー作成(?) で、使用するユーザーとデータベースの準備完了 あとは、作成したユーザーで、作成したデータベースに テーブル等を作っていく。 ■MySQLに接続 C \ mysql -u root -p ■データベース操作 ●新規作成 mysql create database meke; Query OK, 1 row affected (0.01 sec) ●一覧表示 mysql show databases; +--------------------+ | Database | +--------------------+ | information_schema | | meke | | mysql | | test | +--------------------+ 4 rows in set (0.02 sec) ●接続する mysql use user_db; Database changed ●テーブル一覧表示 mysql show tables; ■ユーザー操作 ●新規作成 mysql grant select,insert,delete,update,create,drop,file, alter,index on *.* to db_user identified by 123456 ; mysql flush privileges; ■MySQLのデータ型 http //www.javadrive.jp/mysql/datatype/index.html ■バックアップ・リカバリー MySQLのダンプファイルは、SQLのInsert文の形式らしい。 ■Tips ●MySQLコマンドの際のBeep音の止め方 【対策1】 「my.ini」ファイルに設定した「no-beep」オプション http //www.naotaka.com/blog/2005/07/23/myini-%E3%81%A7-%E3%80%8Cno-beep%E3%80%8D-%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8F%E4%BD%8D%E7%BD%AE%E3%82%92%E5%A4%89%E6%9B%B4/ ↓書き方 [mysql] set-variable=no-beep 【対策2】 mysql.exe 起動時のコマンド行オプションで -b を付ければBeep音は止まります。 http //www.mysql.gr.jp/mysqlml/mysql/msg/6006 ● INSERT文での日付の使い方 A.5.2. DATE カラム使用時の問題 http //dev.mysql.com/doc/refman/4.1/ja/using-date.html 6.2.2.2. DATETIME、DATE、TIMESTAMP 型 http //dev.mysql.com/doc/refman/4.1/ja/datetime.html ■ADO.NET のデータプロバイダ 24.2. MySQL Connector/NET http //dev.mysql.com/doc/refman/5.1/ja/connector-net.html
https://w.atwiki.jp/garnot/pages/13.html
FA-124の使い方 How to use FA-124?