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「ただいま、まりさ。ゆっくりしてたかな?」 ゆっくりまりさは透明な箱の中から人間を見上げた。 野良ゆっくりである自分が人間の手の中にあるという事実を再認識する。 どうしてこんな事に。 なぜ、こんな事に。 さかのぼる事約10時間前。 お兄さんが朝のゴミ出しから帰ってみると、家に居るはずの無い、黒いとんがり帽子を被った喋って 跳ねるという饅頭と遭遇した。 そいつはちゃぶ台の上に乗り、お兄さんの朝食の残りを口に蓄えようとしている最中だった。 まさにばったり、といった効果音が聞こえてきそうな位だったが、まりさが振り向いて お互いの視線が交差するやいなや。 「ごめんなざいごめ゛ん゛な゛ざいぃぃぃぃぃぃぃ」 口から食べ物をこぼしながら、バスケットボール大の侵入者はそう謝りながら全力で駆け出した。 なんとか人間の脇をすり抜けて元の入り口から逃げ出そうというのだ。 しかし、お兄さんの背後にある勝手口が完全に閉じていることを視認すると、パニックに陥り Uターンして家の中をデタラメに跳ねまわり始めた。 3分後。 あっさりと捕獲された。 「おねがいです!みのがしてくださぃぃぃ。さいきん全然ゴハンがたべられなくて 家族みんながゆっくりできないんですぅぅぅぅ」 会社に遅刻寸前だったことを思い出したお兄さんは、髪をつかまれて吊り下げられて喚くまりさを 手際よく透明な箱にいれて急いで出かけていった。 最近、数が増えすぎた野良ゆっくりの食糧事情は深刻になっていた。 この野良まりさの家族も例外ではなく、番のれいむも子ゆっくりたちも常にお腹を空かせていた。 まりさは家族の長としてそんな状況をどうにかしないと、と責任を感じていた最中に開けっ放しの勝手口に遭遇したのだ。 そろーりそろーりと中を覗くが、人気は無い。 少しだけ。少しだけでいいから食べ物を貰って急いで逃げよう。 家族が大喜びする姿を想像し、行動にうつってしまった。 「寝坊したのも、開けっ放しにしたのもボクが悪いんだけどさ、泥棒は良くないよね?」 まりさの入った透明な箱を両手で運びつつ、中身に話しかけるお兄さん。 「たべものが欲しかっただけなんです。もうしませんからまりさを許してくださいいぃぃぃぃ」 「ダメだよまりさ。悪い事したらさ、罰を受けないと」 廊下を移動した先、ドアを開けるとそこはコンクリート土間の無機質な拷問室。 運の悪いことに。 お兄さんは虐待お兄さんだった。 部屋に唯一あるテーブルの上にまりさ入りの箱を置き、カセット式コンロを用意し始める。 「じゃあ始めようか。足をこ~~んがり焼こうね」 コンロから立ち上る青い炎を目にし、まりさは絶句した。 これからこの炎であんよを焼かれる!? 「やめでぐだざい!ぞんなごどされだら゛もう狩りがでぎなぐなっでじまいまず! 家族が死んじゃいまずぅ゛ぅぅぅ」 ガタガタと箱の中で暴れて抗議するが、お兄さんはどこ吹く風。 慎重に箱のフタをあけると、まりさの髪を鷲づかみにしてコンロの上へ。 「あづいぃぃぃぃぃぃぃ!れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 最愛のゆっくりの名を叫びながら底部を焼かれるまりさ。 なんとか熱から逃れようともがくが、お兄さんの両手ががっしりとそれを阻む。 やがて叫ぶ気力も無くなったのか、目をひん剥いて歯を食いしばり、うなるだけに なった頃、まず底部の右半分がすっかり黒焦げになった。 一旦炎の上から離され、お兄さんの目線の高さまで持ち上げられる。 「よしよし。まず半分が終了だ。もう少しだから頑張ろうね」 お兄さんの励ましの甲斐なく、空ろな目をしたままのまりさ。 反応が無いのでつまらなそうに、お兄さんはゆっくりと再びまりさを灼熱の上にかざすと 後半戦の開始の合図が響く。 「いじゃあああああああああ!あづい゛のは、もういじゃああああああああ」 ものの10分程だったろうが、当のまりさ本人には数十時間にも感じられた。 底面を全て黒焦げにされ、ゆぅゆぅと息も絶え絶えになり机の上でぐったりするまりさに 希望が投げかけられる。 「よく耐えたね、まりさ。これで罰は終了だよ」 目線をあげて、お兄さんを仰ぎ見るとそこには爽やかな笑顔。 これで無事開放されるのだろう。 家族の元に帰れる。 しかし。 「でも、まりさは家族の為に泥棒に入った結果こんな酷い目にあったのに、元凶の奥さんや子供が何の咎めも無いなんて… これは連帯責任を負うべきだよ」 まりさにお帽子をそっと被りなおさせて、その上から優しく撫でながら。 「だからまりさ、家族の元に案内してくれないかな。みんなにも罰を受けてもらおう」 自分に対してこんな事をする人間だ。れいむや子供たちには一体どんな罰が与えられるというのだ。 「ぞんな゛事でぎるわ゛げないでじょぉぉぉぉぉ」 即座に拒絶され、まりさを撫でていた手がぴたりと止まる。 「どうしてさ?まさかそんなゲスなゆっくりどもを匿うというのかい?」 「れいむや子供たちの所にお兄さんを連れて行くなんて絶対にしないよ!」 これが先ほどまで息も絶え絶えだったゆっくりだったとは誰が想像もできるだろうか。 その目には家族を守るという強い意志が宿っていた。 お兄さんの笑顔が完全に消え、完全なる虐待おにいさんの容貌へと変化する。 「じゃあゲスゆっくり隠匿の罪でまりさに罰を与えまーーす。案内をしてくれるなら罰は終わるから いつでも言ってね!」 罰だの責任だのともっともな言葉を使ってはいるが、お兄さんはまりさを、いやゆっくりをとにかく 苛められればそれでよかった。 まりさが耐え切れずに家族を売り渡せば一家まとめてヒャッハーー!!だろうし、そうでなければ まりさの精神と肉体が完全に壊れるまでいたぶるつもりなのだ。 机の上にまりさを残し、いそいそと部屋の隅の工具箱から『道具』を用意し始める。 「今回のアイテムはこれに決定」 片手にプラスドライバー、もう片手にはジャラジャラと音のする木の箱を持ち、虐待お兄さんは 戻ってきた。 「刑の執行を開始しまーす」 箱から取り出されたのは長さ約10cm、ねじ径7mmの特製のステンレス木ねじ。 その半ばのあたりまで螺子が切ってある。 「一本目~~」 尖った先端をまりさの左頬に軽くプスリと刺す。 軽い痛みと金属の独特のひんやりとした冷たさに、思わず目をぎゅっと閉じるまりさ。 お兄さんは左手でねじを支えつつ、ドライバーで少しずつ、少しずつ回転を加えていく。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぎい゛っ!ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っゆ゛ゆ゛」 ねじは見る間に真ん中までめり込んでいく。 目と歯を固く閉じたまま、ひたすら激痛に耐えるまりさ。 中枢餡に傷が付かない限りはほぼ死の危険が無いゆっくりにとって、一定の長さのねじは苦痛を 与えるだけの実に都合の良い道具だ。 「これじゃあバランスが悪いから、逆の側にも一本追加するね」 わざわざそう言うと右頬にもねじを当て、じわりじわりとめり込ませてゆく。 「ゆ゛ゆ゛っ……ゆ゛ゆ゛っっぅ~~」 涙と涎でグチャグチャになったまりさに口調だけは優しく問いかけるお兄さん。 「うわ~~、痛そうだね。どうかな?家族を許せなくなったでしょ?こんな目にあってるのはキミ だけのせいじゃ無いんだし。責任を一人で背負い込む事は無いんだよ?」 「ま゛り゛ざはれ゛い゛む゛もこども゛達もう゛ら゛んでま゛ぜん。悪い゛のはま゛り゛ざだけ でず」 「ゲスゆっくりたちをまだ庇うなんて、罰が全然足らないみたいだね」 やれやれと大げさに両手を上げて首を左右に振るジェスチャーをすると、お兄さんはねじを更に合計で6本 まりさの頬にめり込ませた。 まりさは途中何度か白目を剥いて気絶したのでそのつど作業は中断し、ペットボトル入りの オレンジジュースを頭のてっぺんからぶっかけられては覚醒した。 30分後、まりさの頬には4対の突起がまるでヒゲのように誕生した。 「ぷっ。くっ、あはははは、ゴメンゴメン。まるでネズミさんのようだったから。チュウまりさとでも呼ぼうかなあ」 相変わらず軽い態度をとるお兄さんをなんとかに睨み返すまりさ。 足は焼かれ、顔にネジが埋め込まれ、それでもまりさの心は折れなかった。 「今日の所はボクの負けさ。それではまた明日、おやすみ。まりさ」 お兄さんは部屋を出て行き、照明が落とされて暗闇に取り残される。 「おちびたち…お腹を空かせているだろうね…ごめん。れいむ、おちびたちをゆっくり頼むよ」 まりさは残してきた家族のことばかりを心配をしていたが、極度の疲労のためか間もなくまどろみに 落ちていった。 「ゆっくりただいま!みんなおかあさんの言うことを聞いてよい子にしてたかな?」 「おとうしゃんゆっくりおかえりなさい!かえってくるのがおそいから、おかあしゃんがとーーってもしんぱいしたんだよ」 「ゆゆ!?ごめんねれいむ…。でもゆっくりできるゴハンがたくさん取れたよ!」 「今日もゆっくりお疲れ様、まりさ。おちびちゃんたちがかたつむりさんが一杯居る場所を見つけてくれたんだよ。」 「ゆっへん!いもうとたちとみんなで、がんばってとってきたんだよ!」 「すごいね!かたつむりさんがこんなに!?こんな豪華な夕飯は生まれて初めてだよ」 「さあ、みんなお父さんの取ってきた分も合わせて分けたらゆっくりいただきましょう」 「「「むーしゃ、むーしゃ。しあわせ~~~~~!」」」 きっとこれからも何度と無く繰り返されたであろう団欒の風景。 きっともう戻れないであろう幸せの風景。 夢であっても見れたのは正に幸運であったろうか。 次にお兄さんが部屋に来たのは翌日の夜だった。 「遅くなってごめんね。お腹空いただろう?なにか食べるかい」 お菓子やらパンやらの入ったビニール袋を掲げて見せるが、まりさは拒絶する。 「ゆうぅ…なにも食べたくないよ」 「そうかあ。まりさのむーしゃむーしゃ、しあわせ~、を見てみたかったなあ」 がっかりした表情で袋を部屋の隅に置くお兄さん。 「…そのうち出来なくなるんだし」 幸運な事に、ボソリと出た言葉はまりさには届かなかった。 次の瞬間には何事も無かったのごとく明るい表情になるお兄さん。 「じゃあ今日は、熱いのとねじねじとどっちにしようね?」 部屋にある棚から道具を選択しながらの質問。 「どんな事をされてもまりさは負けないよ!」 自分はどうなろうとも、家族の元に虐待お兄さんを連れて行くわけにはいかない。 まりさの覚悟は固いままだった。 「案内したくなったらすぐに言うんだよ?じゃあ、今日のメニューはこれ」 右手にはドライバー、左手にはアルコールランプが。 「熱くてネジネジ♪」 仰向けに寝かされたまりさはベルトで机に固定され、微動だに出来なくなった。 お兄さんはアルコールランプの炎の先がまりさの左右の『ステンレスのおひげ』の先に うまく当たるように位置を調節し、点火した。 熱がねじを伝わり、やがて餡子に到達する。 「ゆ゛あああああぁぁあづい゛あづい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」 皮膚を炙られのとはまた別の、直接餡子に熱が襲う激痛が始まる。 じたばたともがこうとするが、しっかりと固定されたベルトの所為で身動きは取れない。 「針灸みたいで、なんか餡子のめぐりが良くなって健康になりそうだね。これじゃあ 罰にならないかなあ?」 熱くて、が完了したのでネジネジの準備をしながら暢気な感想を述べるお兄さん。 「まずは下ごしらえをしないとね」 手にしたのは裁断用のハサミ。 慣れた手つきで金髪をバサバサと切り落としてゆく。 「あのね、まりさ。誤解してるみたいだけど、なにもまりさの家族を殺しちゃうわけじゃないんだよ?」 ジョキジョキジョキ。 「悪いことに加担したのは確かだけど、なにも泥棒しただけで死刑にはならないさ。 それに、ここにキミが来てから丸2日。最初からお腹を空かせていたんなら、もう すごく心配になってるんじゃないかなあ」 ジョキジョキジョキジョキジョキ。 まりさはただ歯を食いしばり、餡子を蝕む熱に耐えるしかなかった。 「だからさ、意地を張らずに家族に会いに行かないかい?」 ジョキジョキジョキ。 まりさの周辺にきれいな金髪だったモノがうっすらと降り積もった。 お兄さんはハサミをしまいに行き、代わりに3面鏡を抱えて持ってきた。 「チャームポイントのおさげだけ残してみました。お気に召しましたでしょうか」 横たわるまりさに見えるように開いた3面鏡が、熱さに悶えるまりさに変わり果てた姿を映す。 「ま゛り゛ざの髪の毛がぁぁぁぁああ」 3方向から文字通りつるつる饅頭が映し出された鏡を両手に、お兄さんはニコニコ笑顔のままで。 「安心してねまりさ。これから素敵な髪型にしてあげるよ。 ああでも、かっこよくなり過ぎて家族にまりさがわからなくなっちゃうかもね!」 いそいそと鏡をドライバーとネジに持ち替えヘアセットを開始する。 …30分後、まりさの頭部には銀色に輝く直毛がまばらに生えていた。 「こんな感じになりましたけど、いかがでしょうかお客様?ってまた気絶してる」 許容量をはるかに超えた苦痛で、とっくにまりさは口から餡子を吐いて白目を剥いていた。 お兄さんはめんどくさそうに餡子を口に入れなおし、オレンジジュースをドボドボと流し込む。 無理矢理現実に引き戻され、ゲホゲホと咳き込むまりさ。 「どうかな?ここまでされても家族を庇うのかい?」 まだ視界がぼんやりとしたまま、昨夜見た夢を思い出す。 まりさはただ黙ったまま、弱弱しくもお兄さんを睨み返した。 「明日も仕事だし、ここまでかなあ。ホンっトまりさは頑張るね!」 アルコールランプの火を消し、新たな頭髪が植えられた頭部にもオレンジジュースを たっぷりとかけてから。 「今日もまりさの勝ちでいいよ。ゆっくりおやすみ」 拘束しているベルトはそのままに、お兄さんは部屋を後にした。 明かりが落ち、再び暗闇に支配される部屋。 頬のねじを熱せられたことで内部の餡子に軽いヤケドが出来たようで、体の内側から ジンジンと痛みが自己主張を続ける。 頭部のねじの痛みはオレンジジュースでかなり緩和されていたが、餡子まではその効果は あまり届かなかったようだ。 まりさは一晩中、鈍痛でうなされ続けて夢を見るどころか一睡も出来なかった。 「ゆっくりおはよう、まりさ。よく眠れたかい?」 「………」 翌日の晩、お兄さんが部屋に入ってきて声をかけてもまりさは無反応だった。 疲労、睡眠不足、飢え、そして痛みと積み重なってきた『ゆっくりできないこと』は 確実にまりさの精神を蝕んでいった。 「無視するなんてひどいなあ。でも今日の罰も気にせず開始するからね」 昨日髪を無残に切り落としたハサミを再び手に、拘束されたままで動けないまりさの前に現れるお兄さん。 ハサミを持たない方の左手でそっとまりさの口に人差し指を突っ込むと、次に親指とで上の唇をつまむ。 次に何をされるかと想像し、必死に顔を逸らそうとするが既に上唇はガッチリとつままれ 皮がビロンと伸びるのが逆に滑稽だった。 「じゃあ今日の罰のまずは下ごしらえ。まりさの唇を奪いまーす。っていってもチュッチュするわけじゃ ないんだけどね」 鼻歌まじりに、摘まんで伸ばした上唇に遠慮なくハサミを入れていく。 ジョキジョキジョキ。 「ねえ、キミの家族ってさ、帰ってこないお父さんの事を自分たちを捨てたって考えて 怨んでるかもしれないよね?」 まりさは目を見開いたまま何も答えない。 その視線は眼前のお兄さんを捉えているわけでも、何かを見ているというわけでもなかった。 無反応のまりさにつまんないなー、とつぶやきつつも作業を続ける。 元々は饅頭の皮なのだから唇はみるみる切り裂かれて、とうとう上半分が取り除かれた。 「歯も歯茎もむき出しで、おおきもいきもい。では続いて下半分もいっちゃおー」 もう何をされてもまりさはなすがままだった。 このまま、まりさは嬲り殺しにされるだろうね。 別に好きにすればばいよ、生きてここを出る事は諦めちゃった。 ただ心残りは残してきた家族の事だけ。 帰ってこない父親を怨んでいるかもしれない。 既に自分の事など忘れてしまっているかもしれない。 それでもとにかく…無事に皆でゆっくりしていてくれればそれでいいんだ。 「はい。これで上手にごーくごーくも出来ないし、ちゅっちゅも永遠に出来ないまりさの完成でーーす」 切り取った皮を無造作に背後にポイと投げ捨ててお兄さんが宣言する。 「でもこんなのはあくまで準備なんだよ。これからまりさには永遠にむーしゃむーしゃ、しあわせー が出来なくなる事をしちゃうんだけど、何か言うことは無いかな?」 ここまでやっておいて、ここまでされても家族のことを言わないまりさに敢えて聞くお兄さん。 こんな風に全身をメチャクチャにされて、もはや自分は『ゆっくり』と言えるのだろうか。 「殺じで……さっさとま゛り゛ざを殺ぜぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 「ああ残念。ボクが聞きたかった言葉とは違うなあ」 片手に愛用のドライバーと、もう片手には今度はヒゲや頭髪に比べて細くて短めのネジを。 「では邪魔な唇も無くなったし、歯にねじねじしようかなあ。うんうん、虫歯は無いようだね感心感心」 コツンとネジが前歯に当てられ、グリグリと先端で傷を付けて中心を定める。 ネジ頭にドライバーをあてがい、お兄さんの腕にぐっと力がこもる。 ギギギギ、ギリギリ。 ゆっくりの歯は飴細工で出来ているという。 ステンレス製のねじは多少の抵抗を受けつつも、やすやすと貫通していく。 ギリギリギリギリギリ。 わざとらしく、じわりじわりとしかドライバーを回さない。 「ゆぎぃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ殺ぜぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛殺じでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」 4cmほどのねじの丁度半分が歯を貫いたところで1本目の処置が完了した。 歯の厚さを差し引いた分、口の内側に銀色の先端が姿を現している。 唇が無いのでよだれが周辺に飛び放題になり、お兄さんの服にもシミを作ったが、大して気にも留めても居ない。 今は虐待という世間一般には絶対に知られてはならない趣味を全身で堪能しているからだ。 このまりさの、この悲鳴は2度とは奏でられない。 全身全霊をもって発せられるこの音を、一秒たりとも聞き逃す事なんてどうして出来ようか? 「んー。全体のバランス的に考えて、それぞれの前歯に1本ずつで8本。今日はあと7本ねじねじって所かな 時間もあんまり無いしどんどん行ってみよ~!」 ギリギリギリギリギリ、ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。ギリギリギリギリギリ。 ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。 「痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛ 痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛ も゛う゛や゛だお゛う゛ぢ帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅう……」 5本目の途中でガックリと気絶したまりさ。 既に傍らに準備されていたオレンジジュースで、間髪入れずまりさの意識を引き戻すお兄さん。 「やあ、おかえりなさい。まりさ」 笑顔のお兄さんの優しい言葉にまりさは。 「ゆ、ゆっくりただいま…。れいむっ!?」 ほぼ数秒意識が遠のいたときに、家族の元に帰れた幻影でも垣間見ていたのであろうか。 だが幸せなひと時も一転、まりさは自分の置かれている状況を再認識して絶望する。 「ゆ゛んやぁぁぁぁぁああ!ま゛り゛ざ帰る゛の゛!お゛う゛ぢ帰る゛の゛ぉぉぉぉぉぉぉ」 もはやただの駄々っ子と化したまりさに、容赦なくお兄さんは残りの作業を開始する。 途中、一旦入ったねじを逆回転させて戻してからまた入れてみたりとか散々したために、全部の前歯にきれいな ねじ頭が生えた頃には用意したオレンジジュースがほとんど無くなってしまうのだった。 翌日、お兄さんが虐待部屋に来たとき、まりさはうっすら開いた目で天井をぼんやり眺めたまま 「帰りたい」とブツブツ呟くだけだった。 「おうちに帰りたいなら連れてってあげるけど?」 というお兄さんの問いかけにも完全に無反応。 はたして、泥棒してしまう前にかえりたい、こんな姿になる前にかえりたい、という意味だったのか もしれない。 お兄さんはため息一つ、固定していたベルトを外しはじめた。 「ごめんね、まりさ。調子に乗ってやりすぎちゃったみたいだ。しばらくゆっくり休もうね。 あ、そうだ。まりだとは別のゆっくりと今暮らしてるんだ。その子たちに会わせてあげるよ。 すごくゆっくりしたいい子ばかりだから、きっとまりさとも仲良くしてくれるよ」 『ヒゲ』や『頭髪』そして『歯の一部』が邪魔なので透明な箱に入れるわけにもいかず、底面を両手で そっと持ち上げてまりさを運ぶお兄さん。 この悪夢の出発点、台所のある部屋に待っていたもの。 「「「「むーしゃむーしゃ、しあわせーーーー」」」」 「おいちいね!すごくおいちいね!」 「ほらほら、あんまりがーつがーつしちゃ駄目だよ」 床に置かれた皿に山盛りのゆっくりフード。 それを囲んで堪能する成体サイズのゆっくり1匹と4匹の子ゆっくり。 お兄さんが部屋に入って来たことに気づくと、一旦食事を中断して振り向いて。 「「「おにいさん、ゆっくりいただいてます!」」」 それまでブツブツと繰り返していたまりさは、その顔を見てガクガクと震え出した。 自分が死ぬ間際に夢を見ているんだろうか? 見間違えることがあるはずのない、愛しいれいむ、子供たち。 どうして今、このお兄さんの家に? 「あれ?どうしたのまりさ。この子達と知り合いかな?」 自分を抱きかかえたお兄さんの言葉にはっと我に帰る。 まずい。知られてはいけない。 絶対に知られてはいけない。 「し、知りません。ぜんぜん知らないゆっくりだよ」 「あ、そう。じゃあこれから紹介するけど…」 先ほどまで団欒していたゆっくりの親子を見ると、まりさを凝視したまま固まっていた。 飾りのおぼうしも無く、髪も無い。 銀色のヒゲに頭髪。 唇も無く剥き出しの歯からはネジが生えている。 なんなのだろう?一体、全然ゆっくりできない。 「これはボクの家に泥棒に入ったゆっくりなんだ。しかも他に仲間がいるらしいんだけど そいつらのことを教えろって言っても庇うゲスなんだ。 だからたくさん罰を与えた結果、こういう姿になっちゃんだよね」 親子はお兄さんの説明を受けても、これが自分たちと同じゆっくりだとは到底信じられないと いった表情だった。 「そしてこのれいむ親子は3日前だったかなあ。朝仕事に行こうとしてたら、すぐそこの所で 行き倒れになってたんだ。 一旦家まで連れてきて、ゴハンだけあげて急いだんだけどまた遅刻で大目玉さ。 で、帰ってきてから事情を聞くと、お父さんゆっくりが狩りに出たまま一晩戻らなかったって。 お腹を空かせたまま夜明けを待ち続けて、それからずーーっとこの辺を探して回ったって」 今度はまりさに親子の事情を説明するお兄さん。 これで納得がいった。 帰らない自分を心配して一家総出で探しにきたのだ。 結果、数日間まともに食べていないゆっくりが遭難するのは当然のことであろう。 ゆっくりの行動範囲は実際は大して広くは無い。 お決まりの狩り場、というのを探そうとすればこのお兄さんに遭遇するのも仕方が無いこと だった。 「じゃあ、みんな一緒に生活するんだから仲良くしていってね」 まりさを大皿の脇に置いて親子の食卓に参加させるお兄さん。 れいむ達はおぞましい姿のゆっくりが改めて間近に来てビクっとしたが、お兄さんが笑顔のまま 一度だけうなずいて促す。 「で、ではあらためて…」 一匹を新たに加えて食卓を囲む一同が声を合わせて。 「「「「ゆっくりいただきます」」」」 まりさは複雑な気持ちだった。 家族全員無事だった事。 ここならなに不自由なく暮らせるだろう事。 しかし、自分が父だと言い出せない事。 さらに、この人間が本当に家族を飼いゆっくりとしてゆっくりさせるだろうかという事。 「「「むーしゃーむーしゃ、しあわせーーー!」」」 ゆっくり特有の習性。 皆が声を揃えて幸せな気分を表現する。 しかし、まりさには出来なかった。 団欒の中でまりさだけが出来なかった。 物を噛むと歯に激痛が走るからだ。 仕方なく少しずつ舌でペロペロとすくいとり、口に運ぶと噛まずに飲み込むことしか出来ない。 今まで味わったことの無い甘味が口内にしっとりと広がるが、何故かしあわせー、な気分に なることは出来ない。 それでも、再び家族とこうして一緒に居られるなら。 そこがまりさのゆっくりプレイスなのだから。 ゆっくりたちのそれぞれの食事の風景を、目を細めつつ見守るお兄さん。 その胸の内では、次はなにをしよっかなー、と無邪気な虐待魂を燃え上がらせていたのだった。 その日の晩、お兄さんも自分の寝室に行き、親子ゆっくり達もゆぴゆぴと安らかな寝息を立てた頃。 「れいむ起きて。ねえ、れいむ。ゆっくりしていないで起きて」 まりさの少し潜めた感じの呼び声で母れいむは目を覚ました。 「だいじなお話があるんだ。まりさは実はれいむのまりさなんだ。みんなのゴハンを集めなきゃって このおうちに入っちゃってこんな事に……。 ここのお兄さんは全然ゆっくりできない人だから、お願いだからゆっくりしないでここから出て行ってね」 まりさはれいむにだけは真実を話しておこうと思った。 れいむは賢く、冷静なゆっくりだからばれる前に子供たちをつれて上手く脱出できる方法を考えてくれるだろう。 「いきなり何を言ってるの!?そんなこと言われてもゆっくり信じられないよ」 れいむのこの答えも当然だった。 目の前のボロクズのような、ゆっくりとさえ言えない様なモノにいきなり旦那宣言されたのだ。 そこでまりさはれいむとの過去の出会い、永遠に一緒にゆっくりする事になったきっかけや 子供たちが生まれてからのことを出来るだけ細かく思い出しながら説明した。 そこまでされてようやく、れいむは探し続けていた夫を見つけることが出来たのだった。 それと同時に、行き倒れていた自分たちを手厚く保護してくれた同じ人間が、ゆっくりに対してこのような 虐待を行うことが出来るのかと戦慄するのだった。 「ゆぁぁ…まりさ…どうしてこんなことに」 「れいむ達が無事で良かった…頑張った甲斐があったよ…」 れいむがまりさの頬にすがりついて今までの分も含めて思い切りす~りす~りをし、2匹はしばらくそのままで 涙を流すのだった。 ようやく落ち着いた後、しばらくお互いに知らないフリをしてチャンスを伺う事にした。 れいむはまた元の子ゆっくりたちが一かたまりになって眠っている場所に戻っていった。 「ゆっくりおやすみ、れいむ」 「ゆっくりおやすみ、まりさ」 ドア一枚向こうのお兄さん 「ゆっくりおやすみ」 2?に続きます。
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キャラクター CVは一部ダメ絶対音感によるものなので完全に確定はしていませんが キャラクター名の横に声優名があるものは公式・雑誌などで確定済みのものです。 ムービーの呼び方を統一させます 初期PV(ファミ通付録DVD) OP(公式オープニングムービー) ラッシュPV(公式ラッシュムービー) PV A(プロモーションムービーA) PV B(プロモーションムービーB) メインキャラクター主人公(CV:浪川大輔) 花村陽介(CV:森久保祥太郎) 里中千枝(CV:堀江由衣) 天城雪子(CV:小清水亜美) クマ(CV:山口勝平) 巽完二(CV:関智一) 久慈川りせ(CV:釘宮理恵) 白鐘直斗(CV:朴璐美) ベルベットルーム関係者イゴール(CV:田の中勇) マーガレット(CV:大原さやか) サブキャラクター堂島遼太郎(CV:石塚運昇) 堂島菜々子(CV:神田朱未) 足立透(CV 真殿光昭) コミュキャラクター海老原あい(CV 伊藤かな恵) 一条康 長瀬大輔 小沢結実(CV 伊藤かな恵) 松永綾音 キツネ 上原小夜子 南絵里 その他諸岡金四郎 柏木典子(CV 大原さやか) 祖父江貴美子 柊みすず 生田目太郎(CV 服巻浩司) 久保美津夫 伏見千尋(CV:前田愛) 江戸川先生 シャドウ陽介の影(CV:森久保祥太郎) 千枝の影(CV:堀江由衣) 雪子の影(CV:小清水亜美) 完二の影(CV:関智一) りせの影(CV:釘宮理恵) クマの影(CV:山口勝平) 美津夫の影 直斗の影(CV 朴璐美) グラフィックなしガソリンスタンド店員(CV:浪川大輔) 河野剛史 南勇太 中村先生 メインキャラクター 事件に挑むペルソナ使いたち 主人公(CV:浪川大輔) 初期ペルソナ:イザナギ アルカナ:? 武器:長剣 高校2年生の少年。 都会で生まれ育つが、ある日両親がそろって海外へ赴任することに。 言葉も通じない土地に移住するよりはと、母方の親戚を頼って稲羽市へと移住してきた。 親戚の家に居候しながら八十神高校に通うことになる。 彼はこの田舎町で、数々の冒険や戦い、 そして大切な仲間たちとの出会いを経験していくことになる…。 ひそかに手品が趣味らしく、菜々子が落ち込んだ時などよく見せている。 前作同様、女たらしの面もあるものの前作主人公ほど神経は図太く無い。 説明書内部のゲーム画面では、「月森 孝介」とされている(詳細はパロディの項を参照)。 クリティカル演出は横薙ぎ→振り下ろし→ジャンプ斬り上げ。 召喚演出はペルソナカードを握りつぶす。 花村陽介(CV:森久保祥太郎) 初期ペルソナ:ジライヤ アルカナ:魔術師 武器:短剣 主人公の同級生。 もとは都会育ちだが、親の転勤にともない半年前に稲羽市へ引っ越してきた。 父親は市内にオープンしたスーパー「ジュネス」の店長。 陽気な性格だが、実は腹を割って話せる友達が少ない。 地元商店街にとってライバルとなる、スーパーの店長の息子だということが大きく影響しているようだ。 女好きで、お調子者的な側面もあるパーティーのムードメーカーで、 なんやかんやといいながら面倒見が良く、協調性に富み、人当たりも良いため、 顔には出さないが、色々と苦労を背負い込みがちである。 とあるきっかけで事件を解決しようと決意し、 その手立てを持つ主人公に、リーダーとなって自分たちを率いてくれるように頼みこむ。 赤いヘッドホンがトレードマークで、のど飴が好きらしく、いつもポケットに持ち歩いている。 クリティカル演出は右袈裟斬り→左袈裟斬り→ジャンプ斬り上げ。 召喚演出はペルソナカードをアクロバティックな斬り上げで斬る。 追撃は自身をコマのように高速回転させて「クリティカルヒット」。 里中千枝(CV:堀江由衣) 初期ペルソナ:トモエ アルカナ:戦車 武器:靴 主人公の同級生で、小学校、中学校と地元で過ごしてきたごく普通の少女。 行動的でよく喋る、人懐っこい性格で、主人公が転校してくる前から、 無用の反感を持たれている花村とも偏見なしに友達付き合いしていた。 押しの強いタイプだが、切迫した状況に立たされると弱腰になる場面もある。 カンフー映画のマニアで、我流の足技を習得してるようだ。 成績は中の下程度。雪子ほどでは無いにせよ割と美人で性格もいいので校内での人気は高い。 よく体を動かしているせいか、食欲旺盛で、特に肉類が好き。 成龍伝説というDVDを大事にしている。 クリティカル演出は二段踏み蹴りからの飛び蹴り(浴びせ蹴り?)。 召喚演出はペルソナカードを後ろ回し蹴り。 追撃は気合を入れたミドルキックで遥か彼方まで吹っ飛ばして「即死」させる。ラッシュPVで見せていた蹴り飛ばしがコレ。 天城雪子(CV:小清水亜美) 初期ペルソナ:コノハナサクヤ アルカナ:女教皇 武器:扇子 主人公の同級生。 稲羽市で老舗高級旅館として知られる、天城屋旅館の女将の娘。 里中千枝と仲が良く、行動を共にすることが多かったが、現在は女将修行の真っ最中。 頭の回転は速いが、周囲の空気を読むのが苦手であり、やや天然ボケな面も。 外見、性格、成績等が軒並み高レベルであり、校内一の人気を誇っていると言っても過言では無いほど。 そのため通称「天城越え」と呼ばれる現象も起こっている。 脂身の多い肉類は苦手だが、カップラーメン、特に赤いきつねのおあげには目がない。 クマからは「ユキチャン」と呼ばれてる模様。 救出後は、ありのままの姿を見せるようになり、よく食べ、よく笑い、たまに暴言も吐く、普通の少女(少し変わっているが)になった。 クリティカル演出は扇を左右に振って斬りつける→ジャンプ斬り上げ。 召喚演出はペルソナカードを扇で浮かせてから回転斬り。 追撃は集中、狙いすまして扇を放ち「クリティカルヒット+気絶付着」。攻撃時の台詞はドスが効いてて怖い。 クマ(CV:山口勝平) 初期ペルソナ:キントキドウジ アルカナ:星 武器:拳・爪 テレビの中の異世界に、一人で住んでいる謎の存在。 少なくとも人間ではなさそうだが、その正体が何であるかは全く分からない。 クマ自身も自分が何なのか分かっておらず、よく一人で頭を悩ませている。 可愛らしい着ぐるみのような姿をしているが、 その中身は空っぽという、よくよく考えると不気味な存在だ。 また、チャックが付いていると思いきや別にチャックを外さなくても頭が外れるという意味不明な構造。 ナビと戦闘にも参加している。ペルソナを会得した事によって戦闘に参加するようになる。 見た目モチーフはハンプティダンプティ? 語尾は「クマ」。後に特訓の末ちゃんとした身体を手に入れるが、やっぱり語尾は「クマ」。 ただし女を口説くときは語尾からクマが消え、声のトーンも変わる。 寂しん坊ならぬ「寂しんボーイ」らしい。 臭いでシャドウやクマの世界に迷い込んだ人間を感知できる。 クリティカル演出は右手で突き→回転切り→ジャンプ切り上げ(着地時に尻もちをつく)。 召喚演出はペルソナカードを回転切りをする。 追撃は飛んで相手に頭を向け回転して「クリティカルヒット」なぜかキメポーズをする。 巽完二(CV:関智一) 初期ペルソナ:タケミカヅチ アルカナ:皇帝 武器:鈍器(PVではパイプ椅子を装備) 八十神高校の生徒で、主人公よりも一つ下の学年の一年生。 "中学時代に一人で族を潰した"と噂されており、札付きの不良として稲羽市にその名を轟かせている。 しかし、その噂からも分かるように徒党を組んで悪さをするようなタイプではない。 今どき珍しい、硬派な不良のようだ。よく間違えられるが暴走族の類ではない。 逆に、騒音による不眠症で悩む母親のために暴走族を潰したという猛者である。 長身に鋭い目つき、鼻ピアスといったゴツイその外見に反し、一般的にいって女性が嗜好する趣味・趣向を持っている、いわば「オトメン」。 幼い頃は野球等のスポーツよりおままごとを好み、女性以上に裁縫や絵画が得意なため、 それをからかわれ続け、周囲から孤立し、シャドウを産み出してしまう原因となってしまう。 その趣味は現在も変わるどころか、さらに高いスキルを持っている。 クマやキツネなどのふさふさした可愛いものが好きな、動物好きでもある。 完二本人はホモというわけではなく、見た目とギャップのある趣味を馬鹿にする女性を嫌い、 男といたほうが楽、けれどそれもやはり、本来の姿をひた隠しにしての結果であり、 ありのままの自分を周囲に受け入れてほしいという、抑圧された意識と上記の事情からあのシャドウが生まれてしまった。 歳相応の男子高校生らしく、エロスな事柄には鼻血を出す事も。 女性に対しては雪子や千枝には好意的な反応を示す反面、近所付き合いのあるりせとは腐れ縁的な関係のためか、反応が薄い。 しかし、直斗のこととなると時折、超反応を返すほど。 シャドウの時のことをネタに延々と陽介にいじられては、豪快にキョドり、暴走して結果自滅する。 千枝、クマ同様の大食。 どうやらそれは、常に食卓に五人前以上の料理を満載する母親の影響らしい……。 女手一つで育ててくれた母親に対して、人前では強がるが、実は全く頭が上がらず、 たった一人の肉親ということで、ことのほか大事にしている。 ……同時に、素行の良くない自分のことで迷惑をかけていることで後ろめたく思っている部分も。 クリティカル演出は近距離で武器投げ→ケンカキック→スマッシュ。 召喚演出はペルソナカードを武器で薙ぎ払う。 追撃はジャンプして地面に衝撃を与えて「敵全体にクリティカルヒット」。 ペルソナのデザインは「感電によるレントゲン状態」というコンセプトだと思われる。 久慈川りせ(CV:釘宮理恵) 初期ペルソナ:ヒミコ アルカナ:恋愛 全国区で名前が売れている、人気絶頂の準トップアイドル。 数年前に芸能オーディションで優勝し、彗星の如くアイドルデビューを果たした。 都会で活動を続けていたが、突如八十神高校の一年生として転校してくる。 テレビCMにも起用され順風満帆だった彼女に、どのような事情があったのかは一切不明だ。 実は、稲羽市出身らしい…。 スタイル抜群で、いわゆるアイドル体系である。 そのペルソナは、呪術に優れ、未来を予見したという邪馬台国の女王の名を冠しているためか、 その役割は直接戦闘ではなく、探索補助・索敵等のナビゲーションである。 救出後、主人公に好意をもったらしく、ことあるごとに積極的にアピールしてくるため、 他の女性キャラ(特に千枝)からはやや危険視されている。 職業柄、鬱積したものが多く、酔うといろいろ危険なカミングアウトを始めてしまう。 ちなみに彼女の料理は通称「溶岩」。 本人の嗜好がそうなのか、とにかく辛くて鈍痛がするらしい。 アイドル業の時とは異なり、実家である豆腐屋の店番をしている時は割と地味、 そして意外にも生真面目で、自分の家の豆腐に誇りを持っている。 白鐘直斗(CV:朴璐美) 初期ペルソナ:スクナヒコナ アルカナ:運命 武器:銃 高校1年生。 連続怪奇殺人事件への捜査協力を求められ、定期的に稲羽市を訪れている。 そのためか、事件にまつわる場所で、何度も主人公たちと出会うことになるようだ。 どうやら事件の核心につながる手掛かりをつかんでいるようだが、その詳細は謎である。 大正時代から名探偵を輩出してきた名家・白鐘家の若き5代目(携帯用公式ページ情報)。 テレビで「探偵王子」と呼ばれて取材を受けるほどの有名な探偵少年らしい。 探偵として5代目なのか、単に家の跡継ぎとして5代目なのかは、現時点では不明。 持っている銃(形状からしておそらくニューナンブ)が、法的に認められているのかどうかは不明。 セリフの端々から、一匹狼タイプの匂いがうかがえる。 ズボンの裾を折り返していたり、底の厚い靴を履いていたりと、チビキャラ疑惑が濃厚。 寒がりなのか、冬はコタツとホットカーペットを同時に使うらしい。 クールなキャラを装っているが、実は内心どうにもならない悩みを抱えてたりする。 クリティカル演出は銃撃しながら接近→標的を蹴り上げてダウン。 召喚演出はペルソナカードを銃で撃ち抜く。ある意味で前作の召喚演出に近い。 ベルベットルーム関係者 導き手たち イゴール(CV:田の中勇) シリーズでお馴染みの老人、ベルベットルームの主である謎の人物だ。 主人公は、このイゴールの力を借りることでペルソナの合体を行う。 今回はタロットカードで主人公の運命を占ったりしている。 今回のベルベットルームはリムジンの中。 3に比べてよく喋り、よく笑うようになっている。 マーガレット(CV:大原さやか) アルカナ 女帝 イゴールの助手。 マーガレットは、生み出したペルソナをリスト化し、 お金と引き換えにいつでも呼び出せる"ペルソナ全書"を管理している。 主人公の心そのものであるペルソナに乗りたいがために「炎をぬるく」しようとしたり、全く掛かってない謎掛けをしようとしたり、 即興でいい話を考えて披露するも肝心な所で噛んで拗ねたりと 前作のエリザベスに負けず劣らず天然なところがある。 「ペルソナ アインソフ」にも出張中 元ネタはエリザベスと併せ「若草物語」と思われがちだが イゴール・エリザベス・マーガレット全て映画「フランケンシュタイン」「―の花嫁」である(出典:ペルソナ倶楽部3) サブキャラクター 主人公の周辺関連 堂島遼太郎(CV:石塚運昇) アルカナ:法王 主人公の母の弟で、娘の菜々子と二人暮らし。 仕事一筋で眼光鋭く、口調もややぶっきらぼうだが、 両親の仕事の関係で、環境が突然変わった主人公を温かく迎え入れる。 職業は刑事。 年齢は定かではないが、主人公とはそれほど年が離れているわけではない(兄貴というほうが近い)そうなので、 おそらくまだ30代と思われる。 職業柄、不良少年の完二のことには詳しい(少年課の刑事ではないが)。 捜査において、物事を「偶然」で済ませないことをポリシーとしているらしく、 時期や交友関係から主人公を疑わざるを得ない状況に悩んでいる。 服のセンスはイマイチで、菜々子は面白がり、主人公はやや閉口気味なようだ。 家事はほとんどできないが、コーヒーを入れるのだけは一家で彼の役目らしい。 堂島菜々子(CV:神田朱未) アルカナ:正義 堂島 遼太郎の娘で、小学一年生。 主人公の従妹にあたり、やや人見知りはするが、素直で純粋な性格。 まだ幼いが、仕事が忙しくてしょっちゅう家を空ける父に代わり、家事をこなすしっかり者。 が、1人で料理は危ないからとの理由で朝食の目玉焼き程度の物意外はお惣菜などを買っている。 近頃、市内にオープンした大型スーパー「ジュネス」に興味津々。 クラスのブームであるジュネスのテーマソングを特に好み、ことあるごとに歌う癖がある。 彼女のジュネス好きは店長の息子・花村をも感動させる。 ゴールデンウィークをきっかけに、主人公の仲間たちとも親しく付き合うように。 …実は非常に感覚が鋭く、彼女の何気ない言葉が、後に真相を暴く手助けとなる。 足立透(CV 真殿光昭) 堂島の部下の新米刑事。 死体を見て、吐いてしまったりするあたり、あまり気の強いほうではなく、 捜査情報を一般人に漏洩しまくり、よくジュネスで一息ついているなど、 職務にあまり熱心な方ではない。 その辺、仕事一筋で家庭をほとんど顧みようとしない、堂島とは対照的。 度々、堂島宅に上がって主人公達と一緒に夕飯を食べる事もある。 今年、本庁から転勤してきたらしい。 コミュキャラクター 絆を育む人々 海老原あい(CV 伊藤かな恵) アルカナ:月 運動部マネージャーだが、それは単位のためで、実質活動はしてくれない。 今時の遊んでる女子高生です的な外見。素行不良でよく授業を抜け出している。 実はあるトラウマを抱えており、彼女の過去は今の姿からは想像できないほど酷い物だったらしい。 庇ってもらったことをきっかけに、運動部の2人のどちらかに好意を抱くが……? 一条康 アルカナ:剛毅 バスケ部部員でスポーツ万能なだけでなく、顔もよく頭もいいという 要領のよさで、女生徒たちにモテモテ(ただし、本人曰くいい人どまり)。 人当たりが良いため、男子生徒の友達も多い。 …顔が広いせいか、よく合コンなどをしているようだが、 実は、主人公もよく知るある人が本命。 バスケに対する意識は高く、用具の手入れなどもきっちりしており、その真摯さがうかがえる。 やる気のない他の部員たちに頭を悩ませているが…? 実家は名家だが、実は後継ぎとして孤児院から引き取られた養子。 長瀬大輔 アルカナ:剛毅 サッカー部部員。 才能はあるが、どうも全力を出し切っていないようで、 用具の手入れや後片付けなどもかなりいい加減な模様。 一条と合わせて、女生徒に人気があるが、女性嫌いの硬派で有名。 …むしろ、女性を避けているようにさえ思える、冷たく透徹した態度には訳があるようだが…。 小沢結実(CV 伊藤かな恵) アルカナ:太陽 演劇部部員の2年生。 部内では群を抜いて演技力があり、そのためか非常に自信家で、馴れ合いの多い部内のムードを嫌っており、 部長の彼女というだけで副部長になっている1年先輩の女生徒に対しては、挑戦的な態度を取ることが多い。 その陰には、「自分以外の人生を送りたかった=自己からの逃避」というジレンマを抱えている。 松永綾音 アルカナ:太陽 吹奏楽部部員。 演劇部と二者択一。 いつまで経っても演奏が上手くならず、全く活躍出来ず、 雑用に徹してばかりの自分に不満があったが、才能のなさを理由にずっと逃げている。 演奏会への出演者に選ばれたことをきっかけに、そんな自分を変えようと努力し始めるのだが、結局……。 キツネ アルカナ:隠者 辰姫神社で出会う謎のキツネ。 どうやらボロボロになった神社を再建したいらしく、お金(お布施)を必要としている。 目つきが非常に悪いが、仕草はとても可愛い。 何故か不思議な力を持つ葉っぱを多数所持しており、ダンジョンにも現われ、 回復係として、主人公たちの手助けをしてくれるようになる。ただしきっちり有料。 また、コミュランクが上がれば回復料金も安くなる。 ……が、動物らしく、非常に気分屋。 上原小夜子 CV 村上仁美? アルカナ:悪魔 稲羽市立病院で働く看護士。 妖艶な女性で何かと主人公を色仕掛けで誘惑してくる。 ある条件を満たさないとコミュは発生しない。 南絵里 CV 村上仁美? アルカナ:節制 夫の連れ子である義理の息子との付き合い方が分からないらしい。 また主人公と同じく、都会からやってきたことと、後妻という立場から、 周囲から馴染めずにいる。 その他 八十神高校関係者 諸岡金四郎 CV 龍谷修武 主人公、花村、里中、天城の担任。 "えんえんと長い説教をする先生"と有名。 かなり石頭で、高圧的な説教はもはや毒舌の域。 担当教科は倫理。 主人公の部活を「出会い目的」と認識しているが、 実際そのとおりなので言い返せない(コミュ的な意味で)。 生徒間でのあだ名は「モロキン」。 生徒達を容赦なく罵倒したり死んだ人間の尊厳を傷つけたり、 「腐ったミカン帳」なる反抗的な生徒のリストをつけていたりと、人間的にも救いようが無い。 後にこれが、最悪の事態を引き起こす事となる(言ってしまえば、自業自得ではあるが)。 曰く、主人公は都落ちした落ち武者。 余談では女好きで、天城雪子に目をつけ、久慈川りせの写真集なども買っていた。 …どうやら、未だに独身のようだ。 柏木典子(CV 大原さやか) 7月11日から担任となる先生。 若い子を目の敵にしている、少々自意識過剰な女性 地味に40歳を越えているらしいが… 大谷と仲がいいようだ 祖父江貴美子 八十神高校世界史教師。 エジプトのファラオみたいな被り物(メネス)をしている。 一人称が「わらわ」。 見た目に反し授業内容はかなりマトモで、生徒への態度も丁寧なのでウケは悪くない。 生徒間でのあだ名は「カーメン」 趣味はダウジング。 実は3に登場したある人物と非常に深い関係がある。 事件関係者? 柊みすず 演歌界の若きプリンセス。 生田目太郎(CV 服巻浩司) 市議会議員。昨年柊みすずと入籍した。 稲羽市に移り住んだようで、商店街では度々姿を見かける。 久保美津夫 他校の男子生徒。物語序盤で雪子にいきなり告白、そしてあっさり振られ勝手にキレて去って行った。 根暗で、引きこもりがちな生活のためか肌は真っ白、目は全体的に黒目勝ちで焦点が合っていない印象がある。 大きな事ばかり周りに吹聴するも、その実、自分は何もできず、それでいて周りを完璧に見下していると人間的にも救いようが無い。 物語中で起こすある事件から、主人公達に関わる事となるが…… 旅先で出会う人々 伏見千尋(CV:前田愛) 修学旅行で出会う私立月光館学園の生徒。 雑誌による前情報では「利発そうな女子生徒」との紹介であったが、 陽介曰く「一番の眼鏡美人」で完二すらはっきりと「可愛い」と言った。 が、しっかりしてると思いきやどこか抜けてる所はあまり変わってないようだ。 公式仕掛けのマヨナカテレビ7/8分の発表で千尋である事が確定。 江戸川先生 修学旅行で特別授業を受け持つ私立月光館学園の保険医兼科学教師。 女神異聞録ペルソナの黒瓜に引き続く、アトラス社員をモチーフにしたキャラクター。 「ヒヒヒ……」という笑い声が特徴で、オカルトに精通している。 P3では体調が悪い時か風邪の時に尋ねると、実験台にされるというステータス上げイベントがあった。 シャドウ 異形の存在たち 陽介の影(CV:森久保祥太郎) 名前通り陽介のシャドウ。変化前は目が不気味に輝き、いつもとは違い邪悪な笑みを浮かべていた。 暴走形態はジライヤが大型化したような姿で、下半身が大蝦蟇。 陽介が抱える「退屈なものを破壊したい」という感情が具現化された姿。 弱点が電撃系統。戦闘は主人公一人で行うが、ジオを当てれば全く相手にならない。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウ陽介」という名だった。 千枝の影(CV:堀江由衣) 変化前は千枝そのものだが、口調がやや高圧的。 影の様な外見になった千枝から鎖が伸び、その上に鎖を握った女王の様な立ち居振る舞いのトモエが座る。 千枝の抱える「雪子に頼らせたい」という欲望が具現化された姿。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウ千枝」という名だった。 雪子の影(CV:小清水亜美) 変化前は豪華なドレスに身を包み多少過激な性格を出していた。 下部に蝋燭が灯されたシャンデリアのような豪著な鳥籠に、雪子の頭部をもった赤い巨鳥が入っている。 その姿はまさに、「籠の中の鳥」と言えるだろう。 胸部に白い部分があり、ハート型になっている。 雪子が抱える「役目から逃避したい」という願望が具現化された姿。 完二の影(CV:関智一) 変化前は褌姿で顔を赤らめ、口を尖らせながらレポートをしているどう見ても「ソッチの人」な外見。喋り方もオカマ臭い。 首の代わりに沢山の薔薇の花を咲かせた、肉団子のような白黒の巨人から完二の上半身が生えている姿。 横にガチホモブラザーズ(ナイスガイ、タフガイ)を引き連れている。二体とも地味に強い。 一度倒されても、なおも「男」に受け入れてもらおうとした。 完二の持つ「誰にも拒絶されたくない」というトラウマが具現化された姿。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウ完二」という名だった。 りせの影(CV:釘宮理恵) 変化前は水着姿でツーサイドアップの髪型で、本人よりスタイルがよくなっている。 ポールダンスをするストリッパーの様な極彩色で、頭にりせの髪があるヒミコの顔をした女性型シャドウ。 HPが一定以下になると「マハアナライズ」という専用スキルを使い、 以降は一切攻撃が通用しなくなる恐るべき敵。 最終的にクマの特攻で倒された。 りせの持つ「誰も本当の自分を見てくれない」という悩みが具現化された姿。 クマの影(CV:山口勝平) 変化前は少し巨大なクマそのものだが、目が不気味に鋭くなっている。 クマが大型化したような感じで、腐ったパンダみたいな姿。 そのひび割れた顔の奥から、青く不気味に光る眼を覗かせている。 すごくドスの利いた声で喋る。クマとは違い、ネガティブな言動が目立つ。 クマの中にある不安感を象徴したものと言える。 クマの持つ「本当の自分などいるのか」という疑念が具現化された姿。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウクマ」という名だった。 美津夫の影 変化前は美津夫そのもの。シャドウになってもやっぱり根暗。本体よりちょっと悟った事を言うがそれでも根暗。 自らを「自分には何も無い、カラッポだ」と言う。 大きな白い赤ん坊の頭の周りに文字化けした文字列が回っているシャドウ。 その姿は、精神的な幼稚さ・何もかもが未熟で「無」でしかない美津夫自身を大きく表していると言える。 開始直後に「キャラメイク」という技で速攻引きこもる。シャドウになってもやっぱり(ry 最後まで美津夫に受け入れてもらえず、消滅した。 美津夫の持つ「大きな虚無感」が具現化された姿。 直斗の影(CV 朴璐美) 変化前は袖が余った白衣を着て、直斗自身の二面性を象徴するかのように泣きじゃくったり急に冷静に核心を突いたことを言う。 直斗がそのままアニメのロボットの様な姿になったシャドウ。 直斗の持つ「カッコいい大人の男になりたい、見られたい」というどうしようもない願望が具現化された姿。 なお、完二の影と同じく、倒されてからもセリフがあった。 グラフィックなし 稲羽市の住人たち ガソリンスタンド店員(CV:浪川大輔) 堂島、菜々子に引き続いて、稲羽市にやってきた主人公を出迎えてくれた人物。 非常にフレンドリーな性格で、主人公をスタンドのバイトに誘いつつ、握手を求めてくる。 その後も、雨の日の街に出現する。 河野剛史 戦車コミュに登場する、里中千枝の幼馴染。 千枝からほのかな想いを寄せられているが、本人は全く気付いておらず、天城雪子に憧れている。 千枝をダシに雪子に近づこうとする、テンプレートなタイプで、 ある意味、千枝のコンプレックスを生み出した原因とも言える。 千枝とは幼稚園から中学校まで同じ学校だったが、現在は他校に通っている。 外見からすでにチャラ男で、どこか人を小馬鹿にしたような物言いをしながらも、 主人公にそれを一喝されると慌てたり、カツアゲされても手も足も出ず、 おまけに庇ってくれた千枝を置き去りにして逃げ、その後、全く悪びれないで姿を現すなど、 ともかく情けない言動が目立つ。 最後には、雪子に対する不用意な発言で、千枝からも見離されてしまう。 はっきり言って、自業自得である。 南勇太 節制コミュに登場する、南絵里の義理の息子。 主人公のバイト先である学童保育に通っている。 周囲の談によれば、成績も悪く、粗暴で、問題行動が多く、 自己中心的なところがある、かなりの悪童だが、根は悪くない。 絵里に対して、態度が悪いのも、子供なりに気を使っているからである。 中村先生 勇太の担任。 父兄には良い先生として評判がいいらしいが、 勇太に手を焼かされているのと、継母である絵里への偏見からか、 かなり失礼な物言いをする、底意地の悪そうな女性。 ◆声優 服巻浩司 福原耕平 伊藤かな恵 吉川未来 臺奈津樹 龍谷修武 坂熊孝彦 遠藤智佳 島田知美 高橋剛 村上仁美
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田所実徳は手に負えない学生だった。 「つまんねぇなぁ……」 自分の机の上に足を乗せ、心底退屈そうに椅子を揺らしていた実徳の一言だけで授業中の教室の 空気が一変する。黒板に板書をしている途中だった老教師はピクリと肩を震わせ、殆どの生徒達は 関わり合いは御免だとばかりに背中を丸めて教科書で顔を隠し、同世代の少女の『突然の引っ越し』を 何度も経験した女生徒達に至っては恐怖で全身を硬直させる。 そして実徳の取り巻きを自称する数人だけが目を輝かせ一斉に腰を浮かせた。 「だよなぁ、気晴らししようぜ!」 「じゃあ、この前の店とかどうかよ?」 「行くよな? なっ?」 口調こそ対等っぽいが、彼らの声色は皆一様に実徳に媚びるそれだ。地方都市とはいえ繁華街周辺の 土地の利権を握る大地主(儲けのために金に物を言わせ、自分の土地に駅を誘致したとも言われている)で、 叔父が市会議員でもある田所家の一人息子の側で機嫌を取ってさえいれば遊ぶ金に困ることもないし、 上手くいけば何の苦労もなく田所の会社の一つにでも入れるかも知れない。 そして、そこで実徳の名前を使えば生涯安泰も夢ではないだろう。 勉強をする気も無い彼らが毎日マメに登校しているのも、出席日数でも勉強でもなく実徳との接点を 持ち続けて濡れ手に粟を狙っているからであり、こういう機会があれば我先にと実徳に便乗して只で 遊ぶために他ならないのだ。 「そうだなぁ……」細面で全体的に華奢な実徳は、靴の踵でドンドンと数回机を叩いた後に大きな音で 席を立ち、大袈裟なほどの動きで肩を怒らせ教師の存在など気にもしていない大股で教室の外へと向かって 歩き出した「……じゃ、ちょっくら顔でも出してみっか。もう開いてるんだろ?」 「お、俺オーナーに電話してみるよ!」 「じゃあ、俺は一年に招集かけっから!」 おう、と取り巻き連中の慌ただしさに満足そうな声を出す実徳。 実徳自身、不良を気取ること以上にチヤホヤと持ち上げられ御山の大将気分を味わうのが好きなのだ。 そんな自由奔放な日々を親の金と七光りで謳歌していた実徳だったが、とある週明けの早朝に彼の 人生は一変してしまう。 「あ~眠ぃ」 「ンだよ、もうこんな時間かよ」 「学校、どうする?」 「お前らだけ行ってこいよ、俺は帰って一眠りしてから考えっから」 行きつけのバーで夜が明けるまで騒いだ実徳は眩し過ぎる朝日に目を細めながら大あくび。遊び 疲れた所為で煩わしくなってきた取り巻きを学校に行かせ、タクシーでも捕まえようと重い足取りで 大通りへと一人で向かうことにした。 「田所実徳さん、ですよね?」 だが数歩も進まないうちに横合いから声を掛けられ足を止められた。 「あぁ!?」 実徳の出した声は返事ではなく威嚇である。この界隈で有名な田所の御曹司に大した用もなく声を 掛けたり、ましてや寝不足で疲れた所に邪魔をするような無知な輩など存在するはずなどないと思って いたのだから、不機嫌さを隠そうともしないのは当然だ。 「貴男に非常に大切なお話があって、お待ちしておりました」 「…………あぁ?」 次に実徳の口から出たのは何とも間も抜けた声だった。 彼が振り向いた先に立っていたのは彼自身より少し上らしい年頃の、しかも裾も袖も長い西洋の 給仕服を着込みカチューシャまでつけた場違いにも程があるメイドだったのだ。 そして彼女の後ろには黒塗りの高級車がアイドリング状態で控えている。 「ンだよ、朝っぱらから新手の客引きか?」睡眠不足な頭でどんなに頑張って理解しようとしても、 精々その位しか解釈のしようが無い光景である「うぜぇから消えろっつんだよ! つか俺が誰だか 本当に分かってンのかお前!?」 「ですから最初に確認させて頂きました。田所実徳さんで間違いないと存じますが?」 荒げた声に全く動じる気配を見せず話す冷淡な口調だけでも腹立たしいが、それ以上に女が自分に 向けて来ている汚物を見るような視線が逆鱗に触れた。 「だったらなんなんだよ、あぁん!?」 怒気も露わに、アルコール臭い息を吐きながらメイド少女に詰め寄る実徳。 「失礼ですが、耳がお悪いのでしょうか? それとも残念なのは頭の中身ですか? 大切なお話が あるのでお待ちしておりましたと先ほど……」 「舐めてんのか、このアマぁ!!」 男と女では体格が違う。年齢では負けていても背丈で勝っている自分にゼロ距離で怒鳴られても 微動だにしない女の胸ぐらを掴んで吊し上げようと腕を伸ばす実徳だが。 「……どうやら、本当に残念な頭しかお持ちでないようですね」 はぁ、と目の前の女が呆れ果てた溜息を漏らすと同時に実徳の視界が反転して…… 「……ちゃったんじゃないんですか?」 「そんなことは……が……て……普通に……」 「でも、全然目を……………様に……」 「その必要は……不足とお酒……から大丈夫……」 自分を囲んでいる複数の気配と、姦しい話し声で実徳の意識が浮上してきた。 「…………くそっ!」 それと共に後頭部の鈍痛を感じ、目を開けるより先に腹立たしげに頭を振るう実徳。 「あ、動いた!」 「だから言ったでしょう? この男の鍛え方が足りないだけなんですよ」 「でもぉ、アスファルトに叩き付けるなんて少しやり過ぎな気もぉ……」 「先に手を出した訳ではありませんから正当防衛です」 「……確かにいい気味だとは思いますけど、傷物にしちゃったら……」 「その程度の分別はあります。か弱い女性に問答無用で手を上げる輩には丁度良い薬と……」 「……るっせぇなぁ、頭に響く声で何騒いでンだよ……っ!」 痛む後頭部を手で摩りながら上半身を起こすと、実徳は見慣れない部屋で数人のメイド服に囲まれ 見下ろされていた。 「目を覚まして早々、悪態がつける程度の元気があれば心配は要りませんね。間違っても歓迎は いたしませんが、とりあえず儀礼的な挨拶だけはして差し上げます。いらっしゃいませ」 その中の一人、気を失う直前に実徳が掴みかかろうとした女が汚物を見下すような目で感情の欠片も 篭もっていない声を掛けてきた。『いらっしゃいませ』と言われたと言うことは、この女の家か関係先に 担ぎ込まれたらしいが、それ以外は訳が分からないことだらけだ。 まだ完全には回復しきっていない頭を回転させながら改めて周囲を見渡すと、実徳いる場所は 四畳半程度の質素な洋室だった。自分を取り囲んだメイド達の隙間から見える室内には小さな衣装箪笥と 簡素な机と椅子のセット以外の家具はなく、綺麗に磨かれたフローリングの床の輝きと相まって生活臭を 微塵も感じさせないモデルルームかビジネスホテルの一室のよう。 あと分かることと言えば唯一の窓から覗く景色と日差しのお陰で部屋が地上階ではなく、かつ南向きで 比較的過ごしやすいらしいということだけだった。 「ンだよ、ここは?」 「そのアルコール漬けで空っぽ同然の頭では理解できないと思いますが、一応は尤もな疑問なので 親切に教えて差し上げます」と口を開いたのは、やはりあの女「勿体なくも貴男如きとご学友であらせ られる新庄政幸様のお宅の空き部屋です」 「……新庄? 誰だよそれ?」 「えぇっ?」 「知らないって……自分のクラスの委員長の名前も知らないとか……」 「わかってたつもりだけど……流石にありえないよぉ!」 と、一斉に騒ぎ始める実徳と同世代っぽい他のメイド少女達。 「ごちゃごちゃ言うなっ! 知らねぇモンは知らね……っつぅ……!!」 大きな声を出すと頭が痛む。 「聞きしに勝る放蕩ぶりですね。まだ野生の猿の方が文明的に見えるほどです」 他のメイド達も同様に感じているのか、皆一様に冷めた視線を実徳に注ぎつつ黙ったまま。 「な、なんなんだよ、なんなんだよこれ……くそ……っ!」 ずっと太鼓持ちという壁に守られ煽てられる人生だけを送り敵地という存在とは長らく無縁だっただけに、 到底好意的とは言い難い目を四方八方から向けられた実徳の気迫は見る見る萎んでしまう。 まるで丸裸にされてしまったかのような居心地の悪さに俯き、口の中で悪態を繰り返すのみ。 「お、覚えてやがれ……あとで、必ず……」 メイド達のリーダーらしい生意気な女はおろか、他の少女達の顔すら怖くて見ることが出来ない。 「うわ、かっこ悪ぅ~!」 「女の子相手に『覚えてろ!』なんて、ヘタレすぎだよぉ……」 「本当に見た目倒しなんだ。政幸様の方が数倍は男らしいです」 心が折れそうな実徳の背中に容赦ない言葉が次々と突き刺さって胸を貫通する。 「うるせぇ……うるせぇ……ここを出たら、後で纏めて犯してやる……」 頭痛が収まって、この家を出たら必ず仕返ししてやる。仲間を集めて手籠めにして輪姦して写真を 動画を世界中にバラ撒いてやる。もちろん、ここにいる女全員だ。二度と表を歩けなくなる位に汚して 孕ませて腹を蹴って…… 「残念ですが、もはや貴男には後も先もありません。反吐が出そうなほど見苦しい現実逃避も大概に して頂けませんか?」 「ぐあっ!?」 茶髪を掴まれ引っ張り上げられた実徳の口から情けない声が漏れる。数に頼っている時ならいざ知らず、 弱い相手を痛めつけた事は数知らずあっても自分より強い者から苦痛を与えられた経験など無いに等しい 実徳は、まるで牙を爪を持たない小動物の様に無意味に藻掻くだけ。 「いかに政幸様のご所望とは言えど我慢にも限度があります。私の見立てで五体満足と判断させて 頂き、このまま政幸様の御前に引っ立てて参ります!」 「は、はいっ!」 リーダーの怒気に恐れをなしたメイド少女達はモーゼの海割りのように慌てて道を作り、中の一人が 弾かれたように廊下に続く扉に駆け寄って恭しく腰を折りながら開く。 「あなた達も一緒にいらっしゃい。政幸様の御前で、この屑に身の程という言葉の意味を徹底的に 叩き込みます」 はいっ! と恐ろしいほど見事に揃ったメイド少女達の返事。 そのままゴミ袋か何かのように廊下を引きずられ、自分の足で立ち上がる暇も与えられず階段を引っ張り 上げられ、全身を汚され服をボロボロにされブチブチと髪を何本も引き抜かれながら生意気なメイド女の 細腕一本で実徳が連れてこられた場所は二階の一室だった。 ドラマかで見かける学者か医者の書斎を思わせる本棚だらけの広い部屋。飾り気こそ無いが高級そうな 木製の家具に囲まれた室内の一番奥で、これまた年期が入っていそうな大きな机でペンを走らせていた 少年は、ボロ雑巾のようになってしまった実徳の姿に驚きもせず穏やかな笑顔で顔を上げた。 「ご苦労様でした、佐久間さん」 いや、それどころか実徳の姿など眼中に入っていないようにメイドの方へと労いの言葉を掛けた。 「勿体ないお言葉でございます」 「っつっ!?」 深々とお辞儀をしながら無造作に髪を解放され、床で頭を打った実徳の口から呻き声が漏れる。 そして、そんな実徳を佐久間の後ろに控えたメイド少女達がクスクスと嘲笑う。 「て、てめぇら……!!」 「さてと……」安っぽい恫喝など聞くに値しない、とばかりに遮って実徳の同級生らしい新庄政幸と 思しき少年が眉一つ動かさず実徳を見下す「……いま詳しい説明をしても聞く耳は持たないっぽい様子 だし、結論から先に言わせてもらうけど……田所君は僕の所有物になったから」 「はぁっ!?」 痛む節々に顔をしかめながら床に立ち上がろうとしていた実徳の動きが途中で止まる。 「要するに売り飛ばされたのですよ貴男は。本当に察しが悪い屑ですね」 「な、な……!?」 「と言うわけで僕なりに田所君の処遇について色々考えたんだけど、とりあえず新人のメイドとして 使ってあげるのが一番良いって結論に達したんだ。だって田所君、他に何も出来ないだろ?」 「め、め……メイドって……何言……」 「僕の話はこれで終わりだから。田所君をお願い出来ますか、佐久間さん?」 「……私に一任して頂けるなら……」 「もちろんだよ。使えるようになるまで存分に躾けてやって構わないですから」 「そう仰って頂けるのでしたら、必ずご満足頂けるよう仕込んで見せます。あなた達にも協力して 貰いますよ?」 きゃ~~っ、とメイド少女達が小躍りしながら控えめに歓声を上げる。 言うまでも無く、全てが実徳の頭上を素通りである。 「お、おいっ! ンだよそれっ! 訳わかんねぇだろ、ちゃんと説明ぐわっ!?」 「お目通りは終わりです」細い指で手首を掴まれ軽く捻られただけで、耐えがたい激痛が実徳の 全身を麻痺させる「いまから貴女は新入りの見習い。つまり下働きの中の下働きとして私たち全員の 教育下に入りました。以降、許可が無い限りプライベートはおろか寝食の自由すら与えられないものと 心得て精進して下さい」 その日、町一番の問題児が忽然と姿を消した。 その日の空は、果てしなく青く澄み切っていた。 遙かな上空を緩やかに漂う綿雲と、程よい暖かさを与えてくれる日差し。 清々しい大気を切って流れ星のように視界を横切るヒヨドリの鳴き声も何処と無く楽しそうで、 この世界の広さと美しさを改めて実感させて、 「誰も休憩して良いなんて言っていませんが? 只でさえ手が遅いというのに、サッサと片付けないと 昼食の時間を削りますよミノリさん?」 「うぐっ!?」 布団たたきで文字通りに尻を叩かれた実徳の口から小さな悲鳴が漏れ、慌てて窓拭きの続きを再開する 背中に、これ見よがしの忍び笑いが幾つも浴びせかけられる。 言うまでも無く、実徳を監視しているのは佐久間とか言うメイド。 そして、心底面白そうにクスクスと笑っているのは常に実徳の無様な姿がよく見える場所で掃除を しているメイド少女達である。 更に実徳自身もメイド姿だ。 もちろん好きこのんで小間使いの格好をしている訳ではない。他に着る物を一切与えられていないので 選択肢がないのだ。この屋敷に拉致監禁された日、有無を言わさず放り込まれた浴室でシャワーを浴びて いる間に衣服はおろか下着から所持品まで全てを奪われ隠されしまったのだからやむを得ない。 「携帯電話は解約済みですしカードも止められています。持っていても意味が無いでしょう?」 そう言いながら浴室に押し入ってきて実徳を羽交い締めにし首を絞め意識が朦朧としている間にメイド服を 着せ錠前付きの首輪をはめ、そこから伸びる金属製の鎖を握られ衣食住の全てを掌握されてしまっては、 これはもうメイド達に従うしかない。 いずれ脱出して仲間と共に報復するにしても、いまは機を伺うかがって耐えるしかない。 この生意気な女達を犯し尽くす日を夢見ながら。 「……まったく、掃除はおろか雑巾の絞り方一つ知らないとは使えないにも程があります。まだ 小学生の方が数倍はマシでしょうね」 「小学生以下だって!」 「ありえないし~!」 「そ、そんなに笑ったら……うぷぷっ」 「………………馬鹿みたい」 「お前ら丸聞こえなんだよっ! 俺を扱き使いながらサボってんじゃあぐぅっ!!」 「先輩達に向かって、その口のきき方はなんですか。あと粗暴な男のような下品な言葉遣いも直しなさいと 言ったでしょう?」 存外に分厚く、重いメイド服越しでも叩かれて痛くないわけがない。下手に動こうとする度に鎖を引っ張られ、 喉が締まりうずくまってしまう。 いまの実徳は、まるで奴隷だ。 屋敷の外はおろか、常に鎖で繋がれ邸内でも限られた範囲での移動しか認められない。女に引きずり回され 監視され、辛うじてプライバシーが守られるのは入浴とトイレくらいである。 もっとも、それすらストップウォッチで時間を計られながらであるが。 そして朝から晩までの労働。 勤労経験皆無な実徳に出来るのは簡単な掃除くらいだが、恵まれた環境で温々と暮らしてきた実徳にとっては 下働きの仕事自体が苦痛であり屈辱以外の何物でも無い。 「くそっ……くそっ……!」 苦しんでいる自分の視界の隅、和気あいあいとしながらも手際よく仕事を片付けてゆく他のメイド少女達の 姿を恨めしげに睨む程度のことしか出来ない。 「メイド以前に女の子が『くそ』なんて言葉を使うなど言語道断です。ここまで物覚えが悪いとは、どこまで 頭の出来が残念な屑なんですか貴女という人は」 「ひぅっ!?」 ひゅん、と背後で布団たたきを振り上げる気配。思わず竦み上がってしまう実徳。 「次に下品な言葉遣いをしたら、今晩の入浴の時間を半分にしてしまいますからねミノリさん?」 「は、はぃ」 「……何も聞こえませんね。もう一度お願い出来ますか?」 「はは、はいっ!」 「やはり何も聞こえませんね。私の耳が悪いのでしょうか?」 「す、すみません! もう下品な言葉は使いませんっ!!」 「貴女達はどうですか? 私には風の音しか聞こえませんが?」 「「「なにも聞こえません~ん!」」」 「………………ま、ません……」 この時を待ち構えていたように声を揃えるメイド少女達(約一名を除く) 「ぐぅっ!」歯ぎしりする実徳。露骨に弱者をいたぶる集団的な悪意に心が折れてしまいそうだ「げ、下品な 言葉遣いはっ! 二度とっ! 使いませんっっ!!」 全身から火が噴き出しそうな羞恥に耐え一言一言、腹の底から声を絞り出して叫ぶ実徳の情けない姿を冷淡に 見下ろす佐久間と、底意地の悪そうな笑みで鑑賞する他の少女達。 「……結構です。ただし昼食は窓拭きが終わるまでお預けにしますが、宜しいですね?」 「はいっ!!」 ビクン、と弾かれたように姿勢を正した実徳は慌てて作業を再開した。 そして、やっと迎えた就寝の時間だが…… 「んちゅ、んちゅ、ちゅ~~~っ!」 「はぅん! あん! んん~~~~っ!」 新入りの実徳に個室など与えられる筈もなく、女物の上下の下着のみを着せられ部屋の両側に二段ベッドが 鎮座する相部屋に押し込まれる。 しかも実徳の反対側のベッドではメイド少女が二人、まるで実徳に見せびらかすように全裸で絡み合い、 隠す気など微塵もなさそうな音量で乳繰り合っている。 「み、未玖ちゃん……それ、強すぎるよぉ……!」 「だって静っちは少し痛いくらいの力加減で前歯で乳首を甘噛みされるのが好きでしょ? それから歯が食い 込んだ跡を舌で優しく……れろれろれろっと」 「そ、それは感じすぎるから駄目ぇぇぇ!」 ほぼ毎晩、この調子である。 恐らくだが、この二人と相部屋にしたのも『わざと』だろうし、二人が実況さながらの説明を聞かせながら 耽っているのも実徳を苛める為だろう。 何故なら、ベッドの中の実徳は後ろ手に両手の親指を拘束され鎖の先端を丈夫な鉄柱に固定され目の前で 痴態を繰り広げている二人に襲いかかることも、自分を慰めることも出来ないのだから。 「ほらほら静っち、次はどうして欲しい? このままクリトリスをコチョコチョしながら乳首噛まれる だけで良いのかなぁ?」 「そ、それは……その………………れて、欲しい……」 「ん? ん~ん?」 「だ、だからっ! 未玖ちゃんの指で私のおま……お腹の中、掻いて欲しいの……っ!」 「だよねっ、そうこなくっちゃ! じゃあ静っちも私のアソコ、思いっきり恥ずかしい音を立てながら たっぷり啜ってくれる?」 「う、うん……」 背を向け、見ないようにしていても何をしているのか分かってしまう。最初の数日こそ怒鳴って脅かして 止めさせようとしたが、それが負け犬の遠吠えで手も足も出せないと熟知している二人が聞き入れてくれる わけもなく、それどころか安全な観客である実徳に全て晒す事で更に燃え上がるという新たなプレイに 目覚めたらしく、以前にも増して大きな音を立てるようになってしまったのだから始末に負えない。 「うわぁ、静っちの中トロトロでキツキツだよ。どう、私の指、美味しい?」 「くぅん! い、いいけど……もっと奥……それに一本だけ……足りないよぉ……」 「おっけおっけ! じゃあ二本で一番奥をぐちゅぐちゅしてあげるね」 「ひぅっ! ひ、ひぁぁぁぁぁぁっ……!」 「静っちの中、超熱いって! ねぇ、私の方も早くくぱぁってして! じゅるじゅる吸って!」 「う、うん……ちゅっ、ちゅるっ……ちぅぅぅぅぅっ!」 「あはっ! 静っちのバキューム最高だよ、感じるゥ!!」 「わ、わらしも未玖ちゃんのちゅうちゅうしながら指れされるの……幸せらよぉ……」 四人用とはいえ所詮は狭い部屋だ、たちまち少女達の淫臭が溢れだして部屋を満たしてしまう。 そして元々は男を興奮させる為の濃厚なフェロモンを問答無用で嗅がされ吸わされた水っぽい音を 聞かされ実徳の体が反応しないはずがない。 「ぐっ……!」 ここに監禁されてから一度も発散させたことのない実徳の性器は瞬く間に充血し、ジンジンと痛みすら 感じるほどに張ってしまう。 だが目の前でドロドロに濡らしているだろう女達を犯して胎内にまき散らす事は叶わない。 思う壺だと知りつつ、自分の手で鎮めることも不可能だ。 「う……うぅっ……」 勃起がムズムズと疼き、とても眠れそうにない。 少女達の嬌声が否が応でもセックスを連想させて射精への欲求も高まるばかりだ。 (くそっ! 出してぇ出してぇ、誰でも良いから女に突っ込んで射精してぇよぉ!!) 犯した女、金で買った女、行きずりの女。 多すぎて顔も覚えていない女が殆どだが、その味は全て肉棒に刻み込まれている。その愚息が空気も 読まず女体に挿入する快楽を脳に反芻させるのだから、それこそ溜まったものではない。 (ヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇ!!) 「ほらほら見てよ静っち。アイツ、シーツを相手にヘコヘコ腰振ってるじゃん!」 「…………知らないもん。興味ないもん……」 「そんなこと言わないで見てみてよ。面白いからぁ!」 「……………………気持ち悪いだけだもん」 「あはははっ、女物の下着で床オナとかマジカッコ悪ぅ! 猿みたい!」 「くっ……!!」 嘲りの視線と嫌悪の視線をチクチクと感じながらも、他に性欲をいなす方法を知らない実徳は 女物の下着姿でひたすら腰を揺らす。 「もぅ未玖ちゃんってば……じゅじゅじゅっ、じゅるるるぅ~~~~!!」 「ひぁんっ! な、なに? そんな急に激……きゅぅぅぅぅん!!」 「私としてるのに……あんなケダモノのこと……未玖ちゃんの馬鹿っ!」 「え? なに、ヤキモチ? ごめん! もう余所見しないから待って! ちゃんと静っちのこと 気持ちよくしてあげるから……って中をウネウネ舐めながら両手でお尻の穴引っ張らないで前歯で クリ苛められたらイグぅぅっ!!!」 「ちゅっ、ちゅっ、ちぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~!」」 「いぃ、イッてるのぉ! イッてるからぁ! イッてる最終に強く吸わないでぇ!!」 (くそっ! くそくそくそくそくそっ!!) 射精することも出来ないまま、疲れ果てて眠りに落ちるまで実徳は無様に腰を振り続けた。 そして翌朝の食堂。 「……それでね? 朝起きたら凄い臭いがして、アイツってば半泣きになってんの!」 「そんなに臭いんだ?」 「しかもパンツどころかシーツまでドロドロにしちゃってさ、もう最悪って感じ!」 「腐った牛乳みたいで気落ち悪かった……」 「あの年で夢精とか、最低ね」 「まだオシッコの方が可愛げがあるよねぇ?」 「どっちもどっちでしょ? もう終わりだよね、男としては」 意識を失うまで擦っても出なかった精液が、寝てる間に残らず漏れ出して下着を寝具をドロドロに 汚してしまった。しかもそれを未玖と静江に見つかってしまったのだ。 実徳に聞こえる音量で話に花を咲かせているメイド少女達の明け透けな物言いもさることながら、 上から目線で笑われ小馬鹿にされ何も喉を通らない。 正に針のむしろである。 「ところで、本日のミノリさんの仕事についてですが」 「……はい」 淡々と朝食を摂る佐久間は知らん顔。普段なら口五月蠅くメイド少女達を躾けている彼女が、 何故か朝食の席に相応しくない話題を遮ることもせず少女達を放置している。 「状況を鑑みた結果、洗濯の仕方を覚えて貰いたいと思いますが異論はありませんね?」 「……くっ!!」 「ありませんね?」 「…………………はい」 暗に、夢精で汚した物を自分で洗濯しろと言われているのだ。 「はいは~い!」その会話を耳に挟んだ未玖が元気よく挙手する「佐久間さん! 私と静っちの シーツと下着も洗濯して貰っても良いですかっ?」 憎たらしほど爽やかな笑顔の未玖が言う洗濯物とは、まず間違いなく夕べのレズプレイで汚して しまったものに違いない。散々見せびらかした挙げ句に、後始末をしろと言っているのだ。 「くっ……!」 「構いませんよ。仕事を早く覚えるためにも量は多い方が良いでしょうし」 「だったら私の洗濯物もお願いしても良いですか? 少しオリモノが多いですけど……」 「当然、手洗いですよね? だったら私もっ!」 「靴下とかも良いですか!?」 「じゃあ私も溜まってる下着を全部!」 「女同士なのですから遠慮は無用です。私が監視して全て手洗いさせますから、綺麗にして 欲しい物があれば籠に入れて廊下に出しておいて下さい」 悔し涙を浮かべ体を震わせる実徳の姿を横目でチラチラ見ながら、メイド少女達は我先にと 楽しそうに食堂を飛び出して洗濯物を出しに言ってしまった。
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Phalaenopsis -愛しいきみへ、愛するあなたへ- ◆6XQgLQ9rNg ◆◆ 落涙していた。 目の前に立ちはだかる男は、その双眸から、滂沱の涙を流していた。 何かを告げるべく口を動かそうとするが、濡れそぼった吐息が苦しげに吐き出されるだけで、何一つ意味のある言葉にはならないでいる。 整ったその顔は、えずきを堪えるように酷く歪んでいて、愛する女性の声を聴いたことによる喜びの表情とは程遠いものとなっていた。 胸の内を荒れ狂う辛苦を抑えきれず、ピサロの表情に現れているようだった。 今しがたのロザリーのメッセージによれば、かつてロザリーは、憎しみに突き動かされるピサロを止めたという。 ならば、ロザリーの言葉はピサロに届くという証だ。 しかしながら、ピサロは武器を収めない。 ロザリーの意志を無視してでも、彼女を蘇らせたいと願うからか。 ――きっとそれは間違いじゃない。でも、それだけじゃない。 それだけならば、こんなに苦しみを飽和させるはずがない。 みっともないほどに涙して、それでも戦おうとする理由が、他にもあるはずだ。 アナスタシアはロザリーのメッセージを思い返す。 同時に、夜雨の下で目の当たりにしたピサロの様子を想起する。 すぐに、ピンと来た。 ピサロは深い憎しみを抱き、人間の敵となった。 その原因は、ロザリーを人間の手によって殺されたからだった。 ならばつまり、ピサロが抱いた憎しみというものは、深い愛情の裏返しなのだ。 ロザリーを傷つけた者を許せない。 ロザリーの命を奪った者を、許せない。 「貴方は……」 だからこそ。 「貴方は、誰よりも自分を傷つけたいのね……」 ◆◆ 痛みを求めていることに気付いたのは、余計な負の感情を捨て去り、ただ愛だけで心を満たしてからだった。 自覚できていないだけで、きっと今までも、そうだったと思う。 ロザリーを蘇らせるためという目的意識を壁にし、自分以外をも憎悪することで憎しみを分散させていた。 その結果、復讐心を細分化し無意識の奥底に押し込めて、見えないままでいられた。 ピサロは、憎しみを糧に絶望感を燃やし、純粋な愛を錬成した。 その愛は汚れのない鏡面のような輝きを放つ。 怨まず、憎まず、絶望せず。 されど消えない傷跡は、じくりじくりとピサロを苛むのだ。 疼きのような鈍痛は止まらない。 しかし、足りない。 その程度の痛みでは駄目なのだ。 耐えられる程度の痛みでは、ロザリーが受けた苦しみには届かない。 もっと強い苦しみが必要だった。更に強い痛みを渇望した。 ロザリーを殺した者<ピサロ>に、復讐をしたかった。 ピサロはロザリーを想う。 誰よりも深く、何よりも愛しく思う。 彼女の優しさは知っている。争いを望まぬ気持ちを理解している。共存を願う意志を熟知している。 その気高い尊さこそ、ロザリーという女性そのものなのだ。 そこから――ピサロは目を背ける。 ロザリーの全てを理解したいと、受け入れたいと切望しながらも、決して彼女の手を取らない。 想っているのに優しさに目も暮れず、大切にしたいのに争いを望まぬ気持ちを無視し、愛しているのに共存を願う意志を置き去りにする。 そうやって騙して、裏切って、茨まみれの道を行き、返り血だらけになって、ロザリーが心より忌避するほどの身になって。 ようやく、ロザリーの命へと至れるのだ。 とても辛いことだった。 とても苦しいことだった。 とても痛いことだった。 これ以上の復讐は、存在しなかった。 そうしてピサロは、ロザリーを蘇らせるために武器を振るい、無意識下で自身への復讐を続けてきた。 復讐の念があったからこそ、ロザリーの意志を無碍にして彼女を蘇らせようと決意できた。 たとえロザリーのメッセージを受け取っても。 この島にいる全ての者へと発信されながらも、ピサロを想う気持ちがいっぱいに溢れるメッセージを聞き届けても。 それすらも裏切り、痛みに変える。 ロザリーの声を、願いを、想いを、祈りを、愛を。 夢ではなく真正面から受け取り、その上で取り入れず捨てるのは、感情が振り切るほどの激痛だった。 だから、涙が飽和した。心が深手を負った。 それでも、まだ。 強い純愛を抱く故に、ピサロは自傷行為を止められない。 無様に涙するほどに心が悲鳴を上げる。言葉を放てないほどに心が痛みを訴える。 それこそが望みと言わんばかりにピサロは戦う。 その果てに、最愛の女性が蘇ると信じて前へ行く。 全てを捨て去り純粋な愛だけを燃え盛らせるがために表面化した痛みを求め、更なる先へ。 滲む視界の先、アナスタシアの姿がある。 痛みを抱きながらも涙を振り払い、ピサロは、バヨネットの切っ先を敵へと突き付ける――。 ◆◆ 本当は、救いたいと想った。 だから、アナスタシアは一人でピサロに対峙した。 それでも叩きつけられたのは無力さで、救えないと実感し、怒りを以ってピサロと戦った。 結局、アナスタシアはピサロを救えないのだと思う。 どんなに頑張っても、どんなに言葉を練っても、女神を覚醒させた愛の化身には、手が届かない。 だが、よくよく考えたらそれは当然なのかもしれなかった。 たった一つの最愛を胸に抱く男の心を、何処の馬の骨とも知らない女が動かそうなどと、おこがましい思い上がりだ。 それでも。 それでも、心の片隅でやっぱり止めたいと思ってしまうのは。 彼が愚直にまで闘う理由の一端を、垣間見てしまったからか。 彼を愚直にまで愛する女性の声を、受け取ってしまったからか。 「馬鹿だわ」 男も女も本当に馬鹿だ。 馬鹿でなければ、女への愛を抱き自身を痛めつけられるはずがない。 馬鹿でなければ、身だけではなくココロまで傷つけられても、男を好きでいられるはずがない。 だが、もしも。 本気で恋をすれば、馬鹿になってしまうというのなら。 なってみたいと思う。 そんな恋愛をしたいと、アナスタシアは心の底から強く深く激しく思う。 「ほんッとうに――羨ましいくらいの純愛だわねこのバカップルがッ!!」 両手で握り締めたアガートラームを、掲げる。 これはラストチャンスだ。 頑固で馬鹿な男を止めるための、ラストチャンス。 アナスタシアは集中する。 アガートラームはただの武器ではない。人々の想いを束ね、繋ぎ、未来へ進むための鍵である。 そのイメージを強く持ち、意識を聖剣へ注ぎ込む。アガートラームが輝きを放ち始める。 白く眩い光は広がり、周囲の想いを集めていく。 光を通し、アナスタシアは想いを感じる。 拡散していくロザリーの想いを、だ。 あのメッセージは、何らかの方法で生前のロザリーが残したものなのだろう。 それは記録に過ぎない。けれど、そこに込められた想いは本物だった。 その想いを、もう一度カタチにする。 記録だけではなく、ロザリーの想いを、ここに形作る。 こんな芸当は、アガートラームの力だけでは到底不可能だ。 だがここには、ラフティーナがいる。 愛する想いと愛される想いを、きっと彼女は祝福してくれるはずだ。 想いを、アナスタシアはかき集める。 最愛を胸に抱く男を止められるのは、最愛を胸に抱く女だけなのだ。 輝きは次第に強さを増し、世界を覆い尽くしていく。白が広がり、想いを集め、剣へと収束させていく。 もっと、もっと。 もっと輝け。 消えゆく想いを繋ぎ止め、ここに想いを成すために。 分からず屋の男へと、一人の女の想いを届けるために。 光は広がる。 何処までも何処までも広がる。 その輝きが、周囲を埋め尽くした瞬間に。 愛の奇跡は、果たされる。 ◆◆ 世界が白い。 果てがないような白さが、ピサロの視界を埋め尽くしていた。 自分の姿と輝き以外が見えない世界で、ピサロは足音を聞く。 小さな足音だった。 それは丁寧な足運びを思わせる足音で、アナスタシアが立てる粗雑な音とは全く異なるものであった。 音は近づいてくる。白の世界に、人影が浮かび上がる。 ピサロは意識を戦闘状態に切り替え、魔法を詠唱し始め――。 『よせ。彼の者は敵ではない』 ラフティーナの制止に、ピサロは怪訝さを覚えながらも影へと目を凝らす。 深い霧を思わせる白の中、人影が鮮明になっていく。 その華奢なシルエットを、ピサロは知っている。 またも目を剥き、息を呑んだ。 一瞬、幻術かと疑う。 だが、愛の貴種守護獣は一切の警戒を見せてはいなかった。 その間にも、人影は、ピサロが視認できるところまで、やってきた。 極上の絹糸を思わせる桃色の髪。 髪の合間から存在を主張する、整った形をした尖った耳。 一流の職人が作り上げた陶磁器よりも白い肌。 錬成に錬成を重ねた紅玉にも勝る美しい瞳。 「……ロザリー……?」 震える声で名を呼ぶ。 対し、彼女は嬉しそうに目を細め、頷いた。 「はい。ロザリーです。またお会いできて嬉しく思います、ピサロ様」 清らかな声は心地よく鼓膜を震わせる。 こうしてロザリーに会えた喜びよりも、ロザリーと対面している事実を、ピサロは信じられなかった。 このロザリーが、幻でないとすれば。 「夢でも、見ているのか……?」 いいえ、とロザリーは首を横に振る。 「私は、死んだのか……?」 違いますわ、とロザリーは首を横に振る。 「ならば、君は……」 このロザリーが、幻でもなく、夢でもないのなら。 この白の世界が、死後の世界でもないのなら。 「君は、蘇ったのか……?」 ピサロの希望は、しかし、もの寂しい表情で、そっと否定される。 そうではありません、と、ロザリーは首を横に振る。 「私の想いを集めてくださった方がいました。そして――」 形のよい唇が、言葉を紡ぐ。 「ピサロ様が、私を強く深く愛してくださいました。だから、私は今、ここにいられます。貴方に想いを、届けられます」 呆然とするピサロに、ロザリーは歩み寄り、手を伸ばす。 細く綺麗な手が、ピサロの頬に触れ、汚れきったピサロの頬を撫でる。 その手は、温かかった。 「こんなに――」 否定しようもないその温かさは、ピサロの胸を解きほぐし、曇りを拭い取り、疑念を完全に取り払う。 ロザリーだ。 目の前にいるのは、本当にロザリーなのだ。 「こんなに、傷だらけになってしまわれたのですね」 ロザリーの瞳に雫が溜まる。雫はすぐに溢れ、輝かしいルビーとなり、零れ落ちていく。 それを見るのが辛くて、ピサロは慰めるように返答する。 「大した傷では、ないのだ。まだまだ、全然痛くなど、ない」 「嘘を、つかないでくださいませ」 「嘘ではない。私は、嘘などついてはいないよ」 「では、どうして――」 ロザリーは悲しげに、自分の左胸に手を当てる。 「私のココロは、これほどまでに痛いのですか?」 「……ッ!」 返答に詰まるピサロの胸へと、ロザリーは飛び込んでくる。 ロザリーの両腕が背へと回され、優しくピサロを抱き締める。 ピサロに刻まれた無数の傷を確かめ、癒すように。 「貴方の傷は私の傷。貴方の痛みは私の痛み。貴方の苦しみは私の苦しみ」 ロザリーの香りが鼻孔をくすぐる。ロザリーの柔らかさを全身で感じる。ロザリーの体温が肌に伝わってくる。 ロザリーは、震えていた。 「痛いです。苦しいです、ピサロ様」 ピサロは動けない。 武器を握った手をだらりと下げたまま、ピサロの胸に顔を埋めるロザリーを見下ろすしかできないでいた。 「ピサロ様が私を想い、私の命を願ってくれるのは大変嬉しく思います。 ですが、痛みと悲しみの果てにある命なんて、私は、いりません」 ロザリーが、顔を上げる。 濡れる真紅の瞳が、ピサロを捉えていた。 「ピサロ様ならば、分かってくださいますよね? 私を喪い、あれほどまでに悲しんでくれたピサロ様ならば、命を奪うという行為がどれほどの痛みと悲しみを生むのかを。 あのような痛みと悲しみが広がっていくのは、辛いです。傷つく人が増えるのは悲しいです」 ロザリーは優しいから、殺戮によって生まれる痛みと悲しみを感じ入り、自分のことのように苦しむだろう。 蘇った後もきっと、その痛みと悲しみに苛まれることだろう。 分かっていた。知らないはずがなかった。 それでもピサロは、殺戮を続けてきた。 殊に、ピサロが奪ったのは、ロザリーの命だけではない。 「もう、遅いのだ。私は……君の友を殺めた。君の友が愛した人をこの手に掛けた」 魔法使いの少女と暗殺者の少年の姿を思い起こし、告げる。 背中に回された腕の力が、強くなった。 「過去はもう、戻せません。できるのは、未来へ伸びる道を歩むことだけです。 過ちを繰り返さず、償いを果たしてくださいませ。殺めた貴方が行うべき償いを、果たしてくださいませ」 忘れないでください、と締めるロザリーに、ピサロは口籠る。 生きて、償う。 それは、ロザリーを蘇らせるという終着点にはたどり着けない道だった。 示された一本の道筋を前で、ピサロは立ち尽くす。やはりピサロは、希わずにはいられないのだ。 身勝手で醜悪で無様な言い分だとしても。 他者を顧みず無数の運命を蔑ろにする、罪深い欲望だとしても。 ロザリーの命を今一度、望まずにはいられない。 「それでも、私は、君に……」 弱音めいた口調が、零れ落ちた。 それをロザリーは、宝物のように掬い取る。 「逢えます。私が貴方を愛する限り、貴方が私を愛している限り、いずれ、必ず」 断言には揺るぎがない。 お互いに想い合う気持ちさえなくさなければ、絆はきっと引き寄せられると、ロザリーは告げている。 ですから、とロザリーは続ける。 「ニノちゃんが伝えてくれた私の想いを、もう一度、私の言葉で伝えます」 毅然として、堂々と。 「もう、お止めください。私の命を願い息づく命を奪う行為など、私は、決して望んではおりません。 その果てに蘇ったとしても、私は」 それでいて、ひどく痛そうに、とても苦しそうに、見ていられないほどに辛そうに。 「貴方を、愛せません……ッ」 断言する。 「どうか、私にくださる想いやりを、少しでも他の方に向けてあげてください。 罪を思い、償いを成し、そして――ご自身を大切になさってください」 お願いです。 「どうかこれ以上、貴方を傷つけないで。私を、苦しめないで……ッ」 深い吐息を挟み、ロザリーは、想いを吐き出した。 「ずっとずっとずっと、貴方を、好きでいさせて……ッ!!」 責められても仕方あるまいと、憎まれても言い返せまいと、怨まれて当然であると。 嫌悪され、唾棄され、侮蔑され、憎悪され、忌避され、厭悪されるであろうと。 思っていた。思い込んでいた。 そうあるべきだと独りよがりに信じていた。だから躊躇わず、ロザリーの想いを裏切ってきた。 そんなピサロのココロに、ロザリーの震えが、嗚咽が、切なる願いが突き刺さる。 ピサロの傷がロザリーの傷ならば、ピサロの復讐は、ロザリーをいたずらに痛めつける行為でしかなかった。 自傷行為が愛する者を傷つける行為に繋がるというのなら。 この復讐は、二人の傷を深めるだけで、決して終わらない。 ピサロはロザリーを三度殺した。 それだけではなく、殺した後も、その高潔な想いを冒涜し続けた。 「すまない……。本当に、すまない……ッ!」 見て見ぬふりはもう出来ない。ロザリーの傷を目の当たりにしても復讐を続けられるほど、ピサロの愛は歪んでいない。 謝罪の気持ちが溢れ、またも涙が視界を滲ませる。 「抱きしめて……くださいませ……」 変わらず両手を下げたままのピサロを、ロザリーは、潤んだ瞳で真っ直ぐに求めてくる。 泣き声の彼女に、ピサロは、歯を食い縛って首を横に振った。 「私の手は血塗られている。罪に塗れている。そんな手で君を抱き締めるなどと――」 言い淀むピサロへと、ロザリーは繰り返す。 ルビーの涙を流しながら、ピサロを真正面から見据えて、繰り返す。 「抱きしめて、くださいませ。私を抱き締めるのは……お嫌ですか?」 問いかけと呼ぶには生易しい強さを孕むその言葉は、ピサロの想いの確認だった。 言い訳がましい否定よりも、逃避めいた理屈よりも、ただ、愛おしさが勝る。 もう、裏切るのは止めにするべきだと思った。騙すのは止めにしたかった。 大切な女性の願いたった一つを叶えられないというのなら、そこに愛は、きっとない。 ピサロの手から武器が落ちる。 空いた手で、代わりに。 愛しき身を、抱き締めた。 腕の中にある肩はとてもか細い。 この細い肩は、どんなことがあったとしても、絶対に傷つけてはならないもののはずだったのだ。 その根本にあった誓いを押し出し、内省へと繋げ、傷ついたロザリーのココロを撫でるように抱き締める。 「愛している。未来永劫、本当に君を愛し続けると誓うよ、ロザリー」 「私も、愛しています。貴方の愛に負けぬほどの、心よりの想いを、貴方に注ぎ続けます、ピサロ様」 どちらともなく、見合わせた顔を、ゆっくりと近づける。 想いを確かめ合うように、二人は口付けを交わす。 その口付けは、最高に甘かった。 ◆◆ はぁ、と溜息を吐いたのは何度目だろう。 この短時間で、アナスタシアはもう一生分の溜息を吐いた気がする。 うっとりしているわけでは決してなく、ピサロとロザリーの想像以上のいちゃつきっぷりに呆れ果てていた。 奇跡の立役者として立ち合う権利くらいあるだろうと言い訳をし、出歯亀根性に従ったのが間違いだった。 一部始終を見物したのはいいが、これほどまで見せつけられるとは全くもって予想外だ。 脚本も台本もない生のラブロマンスは、完全にアナスタシアから気勢を削いでいた。 ――なんかもう……どーでもいいわ。色々と。 怒りが失せて毒気が抜け、代わりに壮絶な疲労が全身に圧しかかって来る。 立っているのも億劫になり、大の字に倒れ込んで、横目でピサロとロザリーを窃視する。 まだ、ちゅーちゅーやっていた。 さすがに見ていられなくて、アナスタシアは目を逸らし、もう一度盛大に溜息を吐く。 信じられないくらい体中が痛むのは、あのアツアツっぷりが目に毒だからに違いない。 ――いいなー。いいなあー。わたしも素敵な彼氏がほしいなあー。 ヤケクソ気味な欲望を声に出さなかっただけ、自分を褒めてあげたいとアナスタシアは思う。 再度の生を得て、仲間が出来て、少しくらいは満たされたと思っていた。それは確かだ。 けれど人の欲というものは果てを知らない。 ましてやアナスタシアは、ルシエドを従えるほどに欲深いのだ。まだまだ乾いている箇所はいくらでもある。 もっと生きたい。生きてやりたいことは山ほどある。欲しいものだって星の数ほどある。 まだまだ欲望の火種は、アナスタシアのココロで燻り脈打っている。 だから、アナスタシアは安心できた。 ――まだ、わたしは“わたし”でいられるのね。 その安堵はすぐに、強烈な眠気へと変わる。 瞼が重い。とんでもなく重い。 耐えられず、アナスタシアは目を閉じた。 心地よいまどろみの中で、素敵な男性のことを夢想し、アナスタシアの意識は消えていった。 ◆◆ 腕の中の温もりが消えていく。唇に触れる湿っぽい柔らかさが遠ざかっていく。 目を開ければ、もはや白の光はなく、荒れ果てた地が目に入った。 甘い奇跡の時間は終わった。 空になった掌に、ピサロは目を落とす。 そこにはまだ、温もりが残っている。温かい残滓を逃さないように、ぐっと握り締める。 手の甲を目尻に押し当て、流れる涙を思い切り拭き取る。 息を吸い込む。 肺に満ちた埃っぽい空気を、長く吐き出した。 目元を擦り深呼吸を繰り返す。 膿を出し澱を抜くように、体内に淀む空気を入れ替える。 愛する者を痛めつけ続ける不毛な復讐の念を、外に放り出す。 悲嘆と殺戮の果てに愛する者の命を求める旅路は、もはや歩めない。その旅の果てに、ロザリーの姿はないと知ってしまったから。 行くべきは、ロザリーが示してくれた別の道。 過ちを繰り返さず、罪を償い、ロザリーを決して裏切らない道のり。 その方向へ、ピサロは、自らの意志で踏み出すのだ。 ピサロがこの手で奪った命に、ピサロ自身の想いを以って償うために。 一歩を行く。 何ができるか分からない。何をすべきかは定まらない。だが、やると決めたのだ。 ならばもう、迷ってはいられない。 ピサロはバヨネットを拾い上げる。意志を貫くための、力とするために。 やけに重く感じる武器を持ち上げ、天へと翳し、目を閉じる。 ――ニノ。そなたに宣言した約束を反故にすることを詫びる。 ――そして、不実を承知で頼む。これからも、ロザリーの傍にいてやってくれ。 引き金を引く。 打ち上げられた魔力が、天空で爆ぜる。 ――ジャファル。ともすれば、ラフティーナを呼び覚ましていたのは貴様だったやもしれぬ。 ――貴様の至った境地、立派だったと今にして思うぞ。私が次に道を踏み外そうものなら、その手で我が身を裁いてくれ。 撃鉄が落ちる。 舞い上がる魔力が、蒼穹を彩る。 ――ロザリー。何度でも、何度でも言わせてくれ。私は君を愛している。いつまでもいつまでも、愛している。 ――私は、君を傷つけず苦しめない道のりを辿るよ。その果てで必ず君に、逢いに行く。 ――だから今は、どうか。 ――どうか、安らかに。 魔砲が、唸る。 迸る魔力が高く、高く、高く昇り上がり、ソラを染め上げた。 ピサロは忘れない。この想いを、決して忘れない。 見送りを終えて、砲を降ろす。 耳にあるのは残響と、少し遠くから響く戦闘の音。 奇妙なほどに静かで、ピサロは怪訝さを表情とし、あたりを見回し、見つける。 大の字で地面に倒れ込むアナスタシアを、だ。 近づいてみるが、彼女は目を開けない。動かない。 「おい」 呼びかけてみる。 「おい!」 だが、返事はない。 呼んでも、答えは返ってこない。 顔を覗き込み、少し声を張り上げ、 「おい……アナスタシア・ルン・ヴァレリア!」 初めて、その名を呼ぶ。 「……ふにゃー、そこは、駄目よぉ……」 寝言が返ってきた。それも、口端から涎を垂らして、だ。 殺してやろうかと、本気で思った。 沸々とわき上がる黒い感情を、ロザリーの顔を思い出して必死で抑える。 本当に、この女は気に入らない。 粗雑で下品でやかましく欲深い。ロザリーの慎ましさを少しくらいは見習うべきだとピサロは思う。 だが不本意ながら、アナスタシアには借りができてしまった。 彼女がいなければ、ピサロはロザリーを傷つけ続けるだけだっただろう。 「全く……」 呆れるように呟き、ピサロは手を翳す。 癒しの光がたおやかに輝き、アナスタシアへと降りかかる。 「……そ、そこ、いいわぁー。気持ち、いー……」 お気楽な寝言を零すアナスタシアに肩を竦めたとき、ふと、ピサロの手から回復魔法の光が消えた。 全身から、力が抜ける。 膝をつくだけの気力も絞り出せず、ピサロはアナスタシアの隣に倒れ込んだ。 またも、魔力切れ。 更に、感情が揺れ動いたことによる心労が、ピサロの魔力をより早く枯渇させていた。 強烈な睡魔が、意識を侵食してくる。 眠るな、とピサロは思う。 まだ戦いは続いている。仲間のいないピサロにとって、今この場で眠るのは危険極まりない。 なんとか起き上がろうと手を地面につけたとき、声が響いた。 『案ずるな。汝に危機が迫りしとき、我が汝を呼び覚まそう』 音なき声は、ピサロの頭に直接届く。 『二人の愛がある限り、我が力は不滅。愛しき者を想い、今は休むがよい』 愛のガーディアンロードの囁きは優しく、穏やかで。 ピサロは、身を委ねるように目を閉じる。 ◆◆ かくして、魔王と恐れられた男と、英雄と称えられた女の喧嘩は終わる。 神聖さも荘厳さも大義も野望もない、感情と意地と欲望のぶつかり合いの果てで、二人は並んで眠りにつく。 そこには、あらゆる戦場と切り離されたかのような静けさが満ちていた。 【C-7とD-7の境界(C-7側) 二日目 昼】 【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:ダンデライオン@ただのツインテール ダメージ(大) 胸部に裂傷、重度失血 左肩に銃創 リフレッシュの連発とピサロの回復により全体的に傷は緩和。爆睡中。 精神疲労(超極大) 素敵な彼氏が欲しい気分 [装備]:アガートラーム@WA2 [道具]:感応石×3@WA2、ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式×2 [思考] 基本:“自分らしく”生き抜き、“剣の聖女”を超えていく。 1:まだまだ生きたい。やりたいこと、たくさんあるもの。 2:ジョウイのことはとりあえずこの場が全部終わってから考える 3:今までのことをみんなに話す [参戦時期]:ED後 [備考]: ※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。 ※アナスタシアの身にルシエドが宿り、聖剣ルシエドを習得しました。大きさや数ついてはある程度自由が利く模様。 現在、セッツァーが欲望の咢を支配しているため、剣・狼ともどもルシエドを実体化できません。 【ピサロ@ドラゴンクエストIV】 [状態]:クラス『ピュアピサロ』 ダメージ(大) ニノへの感謝 ロザリーへの純粋な愛(憎しみも絶望感もなくなりました) 精神疲労(極大) 魔力切れ 熟睡中 [装備]:クレストグラフ(5枚)@WA2 愛のミーディアム@WA2 バヨネット [道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実 点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石) 天罰の杖@DQ4 [思考] 基本:ロザリーを想う。受け取ったロザリーの想いを尊重し、罪を償いロザリーを傷つけない生き方をする 1:償いの方法を探しつつ、今後の方針を考える [参戦時期]:5章最終決戦直後 [備考]:*クレストグラフの魔法は、下記の5種です。 ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック、ハイパーウェポン *バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます *ラフティーナの力をバヨネットに込めることで、アルテマを発射可能です。 時系列順で読む BACK△147-1Aquilegia -わたしの意地、私の意地-NEXT▼148 オディオを継ぐもの 投下順で読む BACK△147-1Aquilegia -わたしの意地、私の意地-NEXT▼148 オディオを継ぐもの 147-1 Aquilegia -わたしの意地、私の意地- アナスタシア 149-1 魔王様、ちょっと働いて! ピサロ ▲
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パウル=ミュンツァー、本編以前のエピソード0的な何か SSスレに投下したものを一部修正したものです 「ショーダウン……フルハウス!」 響く歓声が、場に走ったカタルシスの大きさを端的に表していた。煌びやかな空間に、割れんばかりの拍手の音が続く。 取り繕いきれない渋面のジェントルマンの手から、ジャラジャラとチップが『勝者』の手へと渡されていった。 「っへへ……最後に大事になってしまったけど、結局勝つのは、女神様に愛される男って事だな」 テンガロンハットを微調整し、金髪の男は愉快気に葉巻を一息吸い込む。手元に残ったのは、換金すれば約400,000程にはなろうかと言う、カジノのチップ。 そのうち半分は、この勝負に自分の手元から出したものだから、200,000の勝ちと言う事になる。 ドレスアップした紳士淑女のひしめくこの場において、Yシャツにスラックスと言う、風采の上がらない男の大勝利は、場を沸き立たせるのに十分な出来事だった。 ――――夜の国の某大型カジノホテル。勝利と敗北、欲望と諦観が交差する、大人の遊び場にして、金の伏魔殿。 そこから勝利を拾い上げた男は、ちょっとした札束を手に、御満悦の様子で退出する。あちらこちらから立ち上る熱気の気配を背にして。 「今日はツイてた、いつも以上にツイてた。……どうやら今日は、ご機嫌みたいじゃないの……女神様?」 今日はあえてドレスアップせず、普段着のままで『勝負』に挑む事に決めたのだが、どうやらそれが良いゲン担ぎになったらしい。 すれ違いざまに、時折向けられる奇異の眼も、胸元に押し込められた札束に、跳ね返されてしまう。 勝利の夜と言うのは、やはり気分が良い――――強運に身を任せる、自分の判断の正しさの証明と言う意味もある。 幾重もの愉悦を身に纏いながら、男は自室へと足を向ける。 「おっと、おにーいさん! その様子じゃ、良い感じに遊べたみたいだね! どう、この後であたしとも遊ばない?」 「ぉ、目ざといなぁ……随分フランクじゃないか。良いよ、気に入った。で、いくら出せば良いんだ?」 金と服装、2つの意味で目立つ男は、程なくしてコールガールに声を掛けられる。 質素ながら扇情的なドレスに、肩から少し下がるくらいの眩しい金髪、透き通るような大きく青い瞳――――結構な『上玉』だ。 「部屋は取ってあるんでしょ? じゃ、そっちにお邪魔して60,000! あと、晩御飯も食べたいなぁ」 「良いぞ、この際野暮は言いっこなしだ。パッと明るくやろうじゃないか……!」 商談はあっさりと成立し、男は女性の腰に手を回して抱き寄せ、歩調を合わせて廊下を進む。 ――――こういう『商売女』に対して、値切りなど絶対にやってはならない。見せ金があるのなら、尚の事だ。 自慢げに歩く男の姿は、正に『勝者』のそれだった。 「おにぃさん、どんな感じで勝ったの? これだけ行ったからには、一発モノにしたんでしょ?」 「お、聞きたいのか? んじゃ教えてやるよ! 今日の俺はポーカー一本でいこうって決めてたんだよなぁ……」 (――――どこで聞いたんだったかな……「恵まれない分には、腐っちまうのもしょうがない」って……全くその通りだ、俺もそう思うよ) 既に軽いトークでじゃれ合いながら、男の胸中に、ふと思い出された言葉があった。 ――――自分の強運に自信のあった男は、賭場と言う運の戦場に足を踏み入れ、そして勝利を引っ提げて生還した。 もしもこれが、ツキの無い奴の行動だったなら、そいつは何もかも失っていたはずだ。 金だけならまだ良いだろう。運と言うのは馬鹿にならない。下手をすれば、こんなままならないモノのおかげで、命を失う事だってあるのだ。 (ま……俺ほど運に恵まれてる奴も、そうそう居ないだろうよ……なんせ、今の今まで生きてこれたんだからな……) そんな感慨なんて今まで無かったはずなのに、ふと体に残る古傷が疼く様な気がした。恐らく気のせいだ。 気のせいながらも――――男はふと、己の運に対して思いを馳せる。今まで何度も、死んでもおかしくない目に遭ってきた。 それでも、こうして五体満足で生きているし、金を稼いで旨い物を喰い、時には良い思いをしている。 だからこそ――――この男は戦うのだ。世間に背を向けて、高いオッズに手を伸ばすべく。 信じるのはただ、己自身の運と、女神の祝福だけ。それ以外、彼には何もいらないのだ――――。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「おーいパウル! 試験明けの打ち上げ、お前も来るだろ!?」 「おぅ、今度は誰んちに集まるんだ!?」 ――――昼の国。 夜の存在しない、太陽とリゾートの国にあっても、学生と言うのはやはり、他の国と大差ない存在で。 それが学生の本分と、勉学に明け暮れる者もいれば、仲間たちと青春を謳歌する者、流れる日々をただモラトリアムとして過ごす者、様々だ。 とは言え、大多数の彼らは、ごく当たり前の目立たない存在。学生の内から一味違う存在など、そうはいない。 「やっと全教科終わった訳だけどよ、パウルお前、出来の方はどれくらい自信あるんだ?」 「あぁ、今回は良い感じだ。ひょっとしたら学年トップ10、いけるかもな?」 「あぁ!? お前いっつも遊んでんのに、なんでそんなに自信あるんだよ!?」 「バーカ、お前ら授業の時、ちゃんと目ぇ開いてんのか? ちゃんとノート取って集中してりゃ、家の勉強時間なんて短くて済むだろ。授業は昼寝の時間じゃねぇんだぞ?」 「いやー、あんな詰まんない授業、よく集中してられるよね。あたしいっつも眠くなっちゃうんだけど……」 「そういやお前、先週も涎垂らして爆沈してたっけな?」 「うっ、うっせ! 人の寝顔見て喜んでんの!? 変態なんだパウルー!」 ――――その『学生の頃から一味違う』存在を連れた一団が、校門から開放される。 ある種のタレント性とでも言うべきか、いつでも仲間内の輪の中心にいる存在。そんな風に日々を過ごしていれば、畢竟、目立つ事になる。 成績が良く、交友関係が広く、ノリも良い。絵に描いたような、青春の若者の周りに、やはり友人は引き付けられるのだ。 「あっ、悪いちょっと待っててな――――おーい!」 「……なんだパウル」 一団から離れた少年は、1人足早に帰り道を行く級友に声をかける。うんざりした様子で、彼は振り返った。 「いや、3日前掃除当番変わってもらっちゃって、悪かったよ。どうにも約束断り切れなくてよ」 「……別に良いよ、あいつら強引だもんな。1回ぐらいなら、別に……」 ぶっきらぼうに答える級友にめげず、少年は自分のカバンの中を漁る。 「んな訳で、埋め合わせって訳じゃないんだが……ほらこれ、あの時のお礼にと思って。助かったよ」 「え……これは、明日発売の『怨念戦記』39巻!? ど、どうして……」 「お前のキーホルダーが見えたの、覚えてたんだよ。それ、怨念戦記の愛羅姫だろ? だったら、読んでんじゃねぇかなと思ってさ。 知り合いの、本屋のおっちゃんから、今朝無理やり買い取ってきたんだよ。いよいよ最終章突入だし、早めに読んだ方が良いだろ?」 「……パウルもこれ、読んでたのか。なんか意外だな……」 「……けど、俺は謝瑠姫派だな」 「……へぇ」 「おっと、一家言ありそうだな。けど、積もる話はまた今度って事で、それじゃな、本当にありがとよ!」 どこかリアクションに乏しい、それでも何か言いたげな級友に対し、最後まで笑顔で語りながら、少年は仲間の輪に帰っていく。 「パウルお前、漫画まで詳しいって知らなかったぞ……」 「どんな漫画なの、あれ?」 「お前らが読んでも面白いとは限らねぇぞ。櫻の国を舞台にした、ホラー伝奇超能力バトル漫画だからなぁ、ありゃあ漫画慣れしてる奴が読むものだよ」 「お前は分かってるって事は、結構なもんじゃねぇか! 読んでんだろお前!」 ガヤガヤと盛り上がりながら、一団もまた学校を後にする。 単行本を渡された級友は、少しだけ羨ましそうに、その背中を見つめていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「さーてね……っと、来た! やったよ2等、大当たりだぜ! 後で親父に換金してもらって――――」 夜の無い部屋で、少年は籤券を前にほくそ笑んでいた。 夜の無い国と言えども、人々には相応の生活リズムというものがある。窓の外を見れば、今の通行はまばらだ。 風を求めて開け放たれた窓には、寝るときの為に陽の光を遮光する、分厚いカーテンが掛けられている。 その窓から入り込んでくる、温かい光と風を満身に感じながら、少年は会心の笑みを浮かべていた。 ――――第72回昼の国産業振興記念くじ、それで当選金1,000,000を引き当てたのである。 「っと、それは良いとして……そろそろ、先生から頼まれたアレ、片付けとかないとな……」 小躍りしたいほどの喜びが胸に溢れてくるが、そればかりに浮かれてもいられない。学校の先生からの頼まれごとを、少年は抱えていたのだ。 机の上を片して、紙とペンを用意すると、少年はじっと思索を重ねるために動きを止め、時折ペンを紙に走らせていく。 ――――彼にとって、こうした事は珍しい事では無かった。これまでの生活の中で、何度かあった事に過ぎないのだ。 ――――文武両道、才色兼備、更に類まれなる強運に恵まれている。「天は二物を与えず」と言う言葉は、彼には当てはまらない様だった。 誰彼構わず交友関係が広く、目上の人間からの信頼も厚い。そうした周辺の期待に応えられるだけの能力も持ち合わせている。 誰もが人生の主役、という様な言い回しがあるが、正に彼は、自らを中心にして人生が回っていく、その中核に存在するものだったのだ。 「――――うん、良い感じだ。これで、次回の集会発表も、お願いするけど良いよな?」 「勿論ですよ先生。もう読み方の練習まで始めちまってますよ。任せて下さいって!」 「……本当にお前、やるもんだなぁ……」 翌日には、少年は教師と打ち合わせ、片付けた頼まれ事を仕上げた事を報告する。受ける教師の表情は、完全にシャッポを脱いだものだった。 何でも卒なくこなす彼にとっては、この程度は片手間だったのだろう。事前に知らされていないオプションまでつけて、見事にうならせていた。 「……そうだ、面倒ついでにもう1つ、お願いしても良いかな?」 「何ですか、改まって?」 「お前、6組のカルロス達ともそれなりに親しいんだろ? あいつらに、いい加減他所との喧嘩は止めろって、言ってやってくれないか? よその生徒に怪我でも負わせたりすると、色々と問題なのだが……どうも聞く耳持たんで、上手く行かなくてなぁ……」 「先生そりゃ、頭ごなしに「止めろ」って言われたら、反発もしますって。そういうの、あいつら一番嫌う事ですからね 上から目線だって思われたら、終わりなんですよ。ちゃんと理路整然って奴を貫徹しないと あいつら、馬鹿じゃないですから。話してる相手が「こっちをチンピラだって見下してる」っての、ちゃんと見抜いてきますよ ……まぁ、地雷原を歩くような話ですけど、そこら辺の加減を間違えなきゃ、案外話は通じますって」 「そ、そうか……」 「まぁ、俺の口から伝えてはみますよ。でも、それで俺がぶん殴られても、それでまたオイコラって向かっちゃいけませんからね?」 通常、教師が生徒にする範疇の相談を超えてなお、少年は涼しい顔で答える。既に彼は、能力的な範囲に留まらず、『自己』を確立し始めていたのだ。 モラトリアムと言う事は、もはや彼には当てはまらない。その中で、少年は精一杯、青春を楽しんでいた。 「……で、顔に青あざ作って帰ってきたと」 「――――我慢するからお前をぶん殴らせろってね……ちょっと言い方不味かった。まぁ、約束は取れたから良かったよ……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「――――あーあ……ツイてねぇな。つまらねぇ……」 ――――個室型の病室で、少年は1人、ため息を吐いていた。 急病に倒れて入院。しかもその為に、修学旅行への参加を断念せざるを得なかったのである。 学生生活最大級のイベントを堪能できない――――常に楽しく過ごしてきた少年の落胆は大きかった。 「今頃みんなは、風の国の大山脈ツアーかよ……はぁ、高原チーズ、俺も食いたかったよチクショウ……」 せめて染みの数でも数えてやろうかと天井を見上げても、そこには綺麗な白しか広がっていなかった。 思うままに体を動かす事も出来なければ、自分の生活リズムで、いたずらな夜更かしをすることも出来ない。 持ち込んだ漫画も、他にする事も無いので、もうすぐ3週目に突入してしまう。ひたすらに気だるかった。 これ幸いに骨休め、などという疲れた感性とも無縁だった少年は、完全に時間を持て余してしまったのである。 「かと言って、昼間はマシなテレビなんてないんだよなぁ……ニュースもすぐに同じ事ばっかりで慣れちまうし…… 国会中継って言ったって、テロ対策か馬鹿な質疑応答しかしないし……ある意味面白いけど……」 あと、日替わりでランダムな話題を持ち込んでくれるものと言ったら、病室備え付けのテレビしかなかった。 ぼんやりとつけっぱなしにしたテレビに見入る。なんだか、自分の頭が鈍化して行く様な感覚に、少年は囚われていた。 「やぁパウル君、相変わらず暇そうだね。検温と……どうだい、体調は?」 「あぁ先生……ま、腹の奥に、相変わらずの鈍痛はありますけど、熱は特に……それよか、早く起きたいですよ 旨いもの食べたいし、外を歩きたいし……はぁ……」 「ま、1ヶ月ほどの我慢さ。君なら、勉強の遅れを取り戻すのも楽だろうし、その体力なら病状も悪化しないだろうしね」 検診に来た医者と、他愛ない会話を交わす。これもまた、少年の数少ない心の慰めとなっている、今の日常だった。 ――――その終わりを知らせたのは、つけっぱなしにしていたテレビである。 『――――番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします 本日、午前11時27分頃、昼の国太陽航空、第245便旅客機が、「エンジントラブルに見舞われた」という通信を最後に、グランツ北東400㎞沖合の海上に墜落したとの情報が入りました』 「!? おいおい……飛行機の墜落かよ……」 「……大変な事が起きてしまったね……」 『この、245便には、修学旅行中の高校生を含む、377人が搭乗しており――――』 「――――ッ!?」 キャスターの、緊迫した言葉が、原稿のその場面を通り抜けた時、少年の頭は真っ白になった。 「ぱ、パウル君……!?」 「ちょっと待てよ……まさか、まさかみんな……!? 先生、ちょっと、確かめてくださいよ……俺の友達、これに乗ってたんじゃ……!?」 「お、落ち着くんだ。興奮は、腹の病変に悪いって分かるだろう?」 「だから、ちゃんと確かな事を知りたいんですよ! 教えてください先生! 俺の代わりに調べて!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「……みんな……みんな……なんでだよ……」 果たして、墜落した飛行機は、少年の学友たちが乗っていた航空機だった。そして当然――――飛行機の墜落で、乗客乗員全員死亡は、当たり前の話である。 少年は、親しい友人たちを、大人たちを――――かけがえのない日常を、一気に失ってしまったのである。 (ツイてないって思ったけど、俺だけ生き残ったのか……でも、これでツイてるって言えるのかよ……!) 急病で修学旅行に参加できない事は、全くの不運だと思っていた。だが、その為に彼は生き残り、学友たちは全滅してしまったのだ。 現実味の無い事実を突きつけられて、少年の思考は空転し、同時に混乱に見舞われていた。起こった出来事を、受け止めきれなかったのだ。 さしもの少年も、こんな急転直下の事態を、どう受け止めれば良いのか、それに答えを出せるだけの人生経験を積んではいなかった。 これから自分はどうなるのか、今ここに自分がいるのはどういう事なのか、少年の意識は、取り留めなくそんな疑問を見つけては、有耶無耶のまま霧散してしまう。 ただ、友人たちの死を悼む事くらいしか、病人の身である彼にはできなかった。 「……なんで俺、のんきに寝てるんだろ。みんな……凄い怖くて、最後の瞬間に痛い目見て、死んでったんだろ……?」 飛行機内のパニックに、思いを馳せる。友人たちはきっと――――どうなってるんだと叫び、死にたくないと叫び、そうして死んでいったはずなのだ。 いや、それは友人たちだけに留まらない、先生だって、そして他の乗客たちだって。地獄みたいに、恐怖と振動に振り回された挙句に、死んでいったはずなのだ。 ――――それを思うと、病を患いこんな所で伏せっている我が身が、たまらなく腹立たしく、情けなく、悔しかった。 「……俺1人生き残ったんだったら、生きてかなきゃいけねぇな。身体治して、弔わなきゃ……」 しかし、こうも考える。自分1人が生き残る巡り合わせにあったと言う事は、そこに何らかの意味があるんじゃないか、と。 別に道徳教育を尊ぶつもりはないし、運命論者になった覚えもない。ただ、何かしらの意味と言えるものは、そこに確かにあるのではないか、と。 その手始めとして、まずは死んでいった知人たちに、ちゃんと冥福を祈り、ちゃんと遇する礼を尽くさなければならない。 明かりを消した暗がりの中、ベッドに横たわりぼぉっと天井を見上げていた少年は、どうにか自分の感情にケリをつけることが出来た。 ――――眠りは、深かった。重く、昏く、熱く。 ――――ずるい……ねぇか ――――なん……お前だけ…… ――――こっ……一緒……来なってば…… ――――1人だ……不公へ……! 「――――っぅ、ぐ……ぅぅぅ、ぅ……!」 ――――お前も、俺たちと一緒に死ねよ……! ――――勝手に腹壊したとか言って、死ぬのさぼってんなよ……! ――――命を抜け駆けなんて、冗談じゃないぞ……! ――――来いよ、お前もこっちにッ! 「――――っぐぁぁぁぁぁ…………ぁ、ぐ、っ……!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「――――しっかりしなさい、大丈夫か!?」 「っぐ、ぐ、うぅ…………」 ――――深夜、個室のドアが開け放たれる。少年の個室に足を踏み入れてきたのは――――見知らぬ老人だった。 「おい、おい! 私の声が聞こえるか!?」 「ぎっ……は、腹が…………ッ、あ、熱い……ッ、焼ける……!!」 「生まれたばかりの悪霊共が……引きずり込んでいくつもりか。そうはさせん!!」 少年は、腹部を抱え込む様に抑えたまま、うずくまっている。呻きながらも、意識は朦朧としている様で。 ――――老人はそれを悪霊の仕業と見切り、すぐさまその手で、少年の額と腹を押さえつける。 青く澄んだ光が掌に集い、少年の体に衝撃が走る。がくんと少年の体が跳ねる様にのけぞった。老人の白髪も、白髭も、空気の振動にそよぐ。 「がぁっ!?」 「我慢しなさい……自分を失うなよ……!」 「ぐあっ、はがぁ!!」 ドクン、ドクンと、鼓動の様に衝撃は連続する。少年の口から苦悶の悲鳴が漏れ、塊の様な空気が絞り出される。 ガクガクと体は痙攣し、それも老人の手に抑え込まれる。まるでAEDを行使される様に、ビクビクと身体は跳ね上がった。 「ぼ、っふぁ……ッ!?」 「出たな、死霊の呪いが……もう大丈夫だ」 何度目かの衝撃で、少年の口から何かが吐き出された。空気だけではないそれは、黒い煙のような物で、中空に漂う。 それを視認して、老人は少年から手を放し、その黒い塊に向けてかざして見せた――――青い光が、眩く光度を上げる。 ――――なんでよ……ひどいじゃない…… ――――なんで、なんで俺らだけよぉ…… ――――恨むぞ……お前を一生……! ――――俺たちが死んだから、お前が生きた様なもんだろ…… ハッキリと、2人の耳に恨みの声が聞こえてくる。光に当てられて霧散していくその黒い煙は、最後に恨み言を残して消えていった――――。 「ハァ、ハァ……い、今のは……?」 「……どうやら事故で死んだ、君の知り合い達の霊魂の様だ。それが君の病気にとりついて、死の道連れにしようとした様だね…… ……未練が残るのは当たり前と言え、逆恨みも良い所だろう。だからこそ悪霊になってしまったのだろうが」 「――――ひどい、ひどいぜ、みんな……」 異変が収束し、少年は埋火の様に熱を残す腹部を抑えながら、老人の言葉に俯く。自分は恨まれ、呪われる存在なのか、と。 彼らの死に、思うところはあったが、それがこんな形で跳ね返ってくるとなると、少年の胸にもやりきれない思いが込み上げてくる。 何かのせいにしなければ、彼らの無念が浮かばれないのは勿論なのだろうが、その矛先が、自分に向けられるとは……。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「――――しかし、君は運が良かった。隣の病室に寝てたお陰で、気が付けたよ……じゃなきゃ、君は急な病変と言う事で、死んでいただろう……」 「……!?」 ホッと一息ついて、老人はポツリと呟く。どうやら霊能力者らしい彼の手によって、少年は救われた訳だが、その言葉が胸に刺さった。 (……運が良かったって? そりゃ、みんな死んだ事に比べたら運が良かっただろうよ……でも、それで良かったのか……?) 不運に巻き込まれて死んだ友人たちに比べれば、病気の為に墜落する飛行機に乗らずに済んだ自分は、確かに運が良い。 だが、それは果たして本当の幸運なのか――――本当に運が良ければ、そもそも友人たちも死なずに済んだのではないか? (こうやって、呪われて殺されかかっても生き延びたって事で、運が良いって事になるんだろうけど……でも、本当にそうか? これは本当に運が良いのか? 悪運ってだけじゃないのか? ……運が良いの悪いので、こうまであっさり運命じみたものが決まってしまって、いいのか?) 我が身に起こった出来事に、実感が沸かないのだろう。窮地を2度も偶然で生き延びた少年は、「運が良い」の一言の為に、思考の沼に陥っていた。 ――――人生と言うのは、運の良さだけで、こうもあっさりと片付いてしまう程に儚い物なのだろうか。 自分の身を守ったこの『運』と言うのは、そういう性質のものなのだろうか。 だとしたら――――結局、全てはそれで片付いてしまう事になる。人生がどうのこうの、なんてレベルではない、この世界のすべてが――――。 (――――もし、本当にそうなのだとしたら――――) 「……どうしたね、まだショックか? まぁ、放心してしまうのは分かるが……」 「いや――――これからどうしようかって、思ってたところです。これでもう、学校にも帰れなくなりましたし 俺は……これから、自分の力で生きてかなきゃならないなって……あ、そういえば……ありがとうございました」 「……何を思いつめたか知らんが、今はゆっくりと休みなさい。君のその病気も、これで快方に向かうだろう」 少年の瞳に、ハッキリとした光が宿る。彼は、何か得心が入った様子で、老人に頭を下げた。 ――――腹の中に、まだわずかに燻る熱と、先ほどの呪いの声の残響を聞きながら――――。 ――――足元で死んでいる両親を見下ろす。退院して真っ先に行った事が、それだった。 考えに考えた手はずで襲う。悲鳴をあげさせもしなかった。恐らく外に今の事態は漏れていまい。 金を都合し、家に火を放ち、姿を消す――――全ては、思いの外上手く行った。両親は死亡、自分は行方不明。だが、事件はそれ以上の進展を見なかった。 「……ツイてる。やっぱりそうなんだ。俺にはツキがついてる。そして、あいつらがくれたこの呪いが…………ッ」 両親の魂が、腹の中で泣き叫んでいる事を、少年は感じている――――あの呪いの残滓は、身体に焼き付き、魂を縛る力場として機能していた。 ――――これが、運の力なのか。因果応報など嘘八百だと、少年は確信した。全ては運、善悪など関係ない――――。 やけっぱちで起こした行動が、悉く運に恵まれた事で、少年は己の人生を確信した。 ――――そして、彼は世界に対して「逆」を行くという、一生をかけたギャンブルに身を投じる――――。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (――――ま、こんなもんよな。人生は結局、勝つか負けるか、それだけよ……) 隣で寝ている女の息吹を感じながら、男はその裸身をシーツにくるみ、ぼぉっとテーブルの上の食事跡を眺めていた。 今では、カノッサ機関のナンバーズ。それを話しても、この女は驚きこそすれ、むしろ興味をもって身を乗り出してきた。 ――――ひと時の濃密な時間を過ごして、古傷だらけの体は充足感に満ちていた。 「――――随分、ご機嫌ね……」 「ん……なんだ、起こしちまったか?」 眠っていた金髪の女が目を覚ます。ぴったりと身を寄せ合って、その温もりを感じ取る。 「いいえ、ずっと起きてたの……――――あなたがこんな所で息抜きをしてるから、ちょっと揶揄ってあげようってね」 「は……!?」 だが、男は肝を冷やした――――女は己の首を、左手でむしり取ったのだ。同時にその体は輝き、姿を変える。 そこには――――黒い髪にすっきりした目鼻立ちの、先ほどとはまた違ったタイプの美人が、勝気な笑みを浮かべて横たわっていた。 「あ、殺狩!? ……お前、さっきの変装かよ!!」 「えぇ、あなたが遊びにうつつを抜かしているって聞いたから、ちょっと揶揄ってあげようってね でも、相変わらずねぇ……こんな所で賭け事して、好い気になって遊んでるなんて」 「あー、あぁ……あー……勿体ねぇ。それであの娘殺してなり替わったのかよ……結構な上玉だったのに」 「随分余裕じゃない? ……あたしの目の届かないところで女遊びなんて、少し調子に乗り過ぎてるんじゃないかしら?」 「良いだろ別に。そこんところ、お前はそううるさくなかったと、思ってたんだけどよ」 「うるさくするつもりはないわよ。でも、だからって野放図を認めるつもりも、無かったんだけどね?」 ――――ベッドの中の痴話喧嘩。しかしてそれを繰り広げているのは、≪No.21≫と、機関の頭領の1人。 世界にとっての恐怖の象徴の様な2人だが、今はただの個人に過ぎなかった。 「まぁ良いさ。俺は女神様に、まだ懇意にさせてもらってるっての、分かったからな。そこは収穫だよ」 「……露骨に話を逸らさないでくれるかしら?」 「で、だ――――お前とも、懇意である事を確かめさせてもらいたいんだけどな?」 「……そうやって誤魔化すつもり? 少しは捻りなさい、芸が無いわよ」 「必要か? お前だって乗り気だったんだろう? わざわざ姿を変えてまでな」 「そう面と向かって言われると、冷めちゃうのよ……全く、そこら辺がさつな人ね……」 「……でも、実際悪くないだろ。飾らないって言うのも、偶にはな――――」 呆れた様な笑みを浮かべながら、男は女の白い肩に手を回す。眉を顰めながらも、女はその身を男へと預けた。 ――――そっと唇が重なる。クールダウンしていた体が、再び熱を帯び始めた。 ――――幸運の女神と死霊の呪いは、今も男の体を包み、渦を巻いている。 男の行き先は、流れ流されて、ただ雲水の如く――――。
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『ゆっくり除け』 22KB いじめ 虐待 野良ゆ 子ゆ 虐待人間 ドゴスッ 「うぐおおぉぉぉぉぉぉぉ………!」 第一声が俺の汚いうめき声で大変申し訳ない。 だが思い出して見てほしい。 タンスの角に足の小指をぶつけた時の痛みを。 俺は今、現在進行形であの筆舌に尽くし難い苦痛を味わっているのである。 「畜生……! やっと月一の部屋掃除が終わりそうだって時に……おおぅ……」 ひょこひょこと無様な足取りで救急箱を取りに行く。 …えらく…遠く感じるな……。こういう時、2LDKの大部屋を借りている事を非常に悔やむ。 しかし痛い……これだけ鈍痛が長いって事は爪が割れてる可能性がある……。 ……早く処置したい。 「ゆ!? ありす! このおうちはまどさんがあいてるのぜ!」 「ほんと! これはゆっくりしてるとかいはなありすたちへのみつぎものね! まちがいないわ!」 「みちゅぎものだにぇ~~!!」 (声……?…………!………まさか!?) 「「ここをまりさ(ありす)のゆっくりぷれいすにするよ!!」」 「ちゅるよ!」 壁に手をやって可能な限り足早に隣部屋に行くと、薄汚れた饅頭が3匹。 埃が立つから換気がてら窓を開けっ放しにしていたのが不味かった。 俺がいることにも気づかず、3匹の饅頭は部屋を跳ねまわり始めた。 「ゆうぅぅぅ! ひさしぶりにゆっくりできるのぜ!」 「みたことないものがいっぱいあるわ。 これもどれいからのみつぎものかしら?」 「きっとそうなのぜ! ここにあるものはみんなまりさとありすのものなのぜぇ!!」 「そうね、そのとおりね。 でもはいちがとかいはじゃないわ……ありすがもっとうつくしくこーでぃねいとしてあげるわ!」 「ぴゃぴゃ! ありちゅも~!」 「もちろん、おちびのものでもあるのぜ!」 掃除したての部屋はみるみる泥で汚れていく。 畳んであった夏物の服はぐちゃぐちゃに、小さい三段本棚は倒され……etc。 って解説してる場合じゃなかった…。 これ以上汚される前にさくさく処理するか。 と、割と冷静に分析していた俺の目に飛び込んできたのは、 「おいおま……おわーーーーーーーーーーーーーっ!? やめろ!それに触るなぁぁぁぁぁ!」 「「ゆひぃぃ!? なに、なんなのぉぉぉ!?」」 「ゆぴぃ!?」 売って金にしようとゲーム類をまとめていた場所。 買って開ける事も無かった新古品も多くあった為、結構な値段で売れるはずだった。 止める声も間に合わず、むしろ叫んでびびらせたのが良くなかったらしい。 饅頭共はパニックを起こして3匹バラバラに部屋中を跳ね始めた。 「だぁぁぁ! 待て、動くな! とまれぇぇぇぇ!」 「ゆひぃぃぃぃ!? なんなのぜぇぇぇ!?」 「おおきいおとこわいぃぃぃぃぃぃい!!! とかいはじゃないわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「たちゅけてみゃみゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」 どうやら恐怖で俺の姿を認識もできていない、というより後ろを振り返ろうともしない。 ってだから分析してる場合じゃぁぁ……ああああぁぁぁぁ……。 「お…俺のあぶく銭が………」orz 縦積みしてたソフトが崩れてハードに若干の汚れ……それだけなら良かったものを……。 あいつらがびびった時に漏らしたしーしーで、ハードは完全に浸水していた。 もちろんソフトの外箱もだ。 これでは乾いても売り物になるかわかったもんじゃない。 さようなら、今月の豪華な昼飯。 また一か月、昼はカップ麺か百円ショップだ……。 俺は右足の痛みも一時忘れて膝から床に崩れ落ちた……。 「ゆひっ、ゆひぃ……いったいなんなのぜぇ……ゆ?」 どうやら帽子の饅頭、まりさが一番最初に正気を取り戻したらしい。 そして何も追加の音や痛みが襲ってこないから不審に思ったのだろう。 声の主、俺の方をゆっくりと振り返った。 目の端に捉えていただけだが、まりさの体はたるんだ中年の贅肉のようにたるんでいた為、えらく気味悪かった。 そして奴は項垂れている俺を見るなり、急に踏ん反り返って大声で捲し立てた。 「なんだ、にんげんなのぜ。おどろいてそんしたのぜ! ありす、おちび、だいじょうぶなのぜ! にんげんはもうまりさがせいっさい!したのぜ」 「ゆひぃぃぃ……ぃ? にんげん? それならあんしんね……。 ありすのだーりんがにんげんなんかにまけるはずないもの!!」 「とうぜんなのぜ……あいしてるのぜ、ありす……! すーりすーり♪」 「ありすもよ、まりさぁ……すーりすーり♪」 「ゆぴぃぃぃぃい! きょわいよぉぉぉぉぉ! たちゅけてぇぇぇぇぇぇぇええ!」 いつの間にかまりさに倒された事になっていた。 それはそうとまりさの大声にカチューシャ付きの饅頭、ありすは顔中の涙と涎をまき散らしながら、同じく涙と涎塗れだが眉だけをキリっとあげたまりさに跳ね寄った。 子供がいまだにパニくってるのも忘れて、すっかり二匹の世界である。 さて……怒りのボルテージが沸々と湧き上がってきたわ。 こちとら隔月の「ゆっクリーン作戦」には常に参加。 ゆっくりについての知識はそれなりにあるつもりだ。 「……さて、とりあえずゴミ袋、と」 「ゆあーん? にんげん、いきてたのぜ? ならもういっぺんしぬのぜぇぇぇ!」ボスン 「うぐおおぉぉぉぉぉぉぉ………!」 まりさがしょぼいスピードで突進してきてるのは見えていたが、こいつらの突撃なんて痛くもかゆくもない。普段なら。 奴の着地した地点はなんとちょうど立ち上がろうとしていた俺の右足の爪先。 こいつら、詰まってるのは餡子なので、意外と重い。 今の俺の敏感な爪先にその重さは……きつかった。 再悶絶……。 「おおおぉぉぉぉぉ……」 「ゆーっひゃっひゃっひゃ! ざまあないのぜ! そこでえいえんにゆっくりしてたふりしてればよかったのぜ!!」 「あぁん! まりさすてきぃぃぃぃぃぃ!」 「ゆぴぇぇぇぇぇえん! みゃみゃー! ぴゃぴゃー!!」 ……もう絶対に許さん。 適当にゴミ袋に突っ込んで潰そうと思ったが……。 この痛み、数十倍にして味あわせてやる……! 俺は震えながら立ち上がると、左足の内側まりさをサッカーのパスの要領で小突いた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ……げぶっ……!」 まりさはボールよろしくゴロゴロ転がり、半分だけ閉じてあった網戸に激突。 若干餡子を吐いて気絶した。 側面には細かい網目上に無数の傷が付き、中心部は深めに裂けて餡子が滲んでいる。 起きたら大騒ぎだろう。 「ゆ………? え…………? ………………………………………まりざぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!? ごべぶっ」 遅いだろ、とは思いつつありすも同じ要領で軽く蹴り飛ばす。 蟻の死骸や草が張り付いた気持ち悪い歯が何本か砕けて落ちた。 さっきより軽く蹴ったのだが、急にこっちを向いたので顔面にクリーンヒットしてしまったようだ。 ありすは少し浮き上がってすぐに落ち、小タンスの引出しに顔面を強打して意識を失ったらしい。 部屋はこいつらが来た時よりさらに汚れてしまったが、今はそんなことどうでも良かった。 人はある程度キレると後先考えなくなるものである。 「みゃみゃーーーー! ぴゃぴゃぁぁぁぁぁぁああ!!! ありちゅはいだいにゃるえんじぇるしゃん!」 まだ何かから逃げ回っていたらしい子ありすは、蹴ると潰しそうなのでそのまま掴みとる。 さらに蹴り飛ばしたまりさとありすを回収して、俺は汚れた方の部屋を後にした。 舞台は元いた部屋へ。 まずはまりさとありすを引っ張り出してきた水槽に放り込み、小ありすを降ろす。 端からありす、まりさ、子ありすの順だ。 かなり大きめの水槽だが、3匹入れるとそれなりに隙間が埋まる。 少なくとも跳ねまわったりできる広さじゃない。 「にゃんかここくちゃいぃぃぃぃ! みゃみゃー! ぴゃぴゃーー! ちっかりちてぇぇぇぇぇ! ありちゅをたちゅけてよぉぉぉぉぉおお!!」 この水槽、ゆっくり用では無く、昔大量のザリガニを飼っていた時の物で、何故か長い事引っ越し荷物の中に埋もれていた。 古い箱だと思って興味本位で開けた時は失神するかと思うくらい生臭かった。 一応ある程度は洗ったが、それでも臭いは完全には落ちず、今は鼻栓をして臨んでいる。 大きさはこの3匹が入ってちょうど。 今日という日の為に出てきたんじゃないかと少し運命を感じた。 「オレンジジュースよし、竹定規よし、プラスチック定規よし、ペットボトルよし……」 必要な物を準備し終えたが、まりさとありすはまだ目覚めていないので、一足先に喧しい子ありすでも弄って鬱憤を晴らす事にする。 プラスチック定規をしならせた俺の手は、気づかれることなく子ありすの真後ろへ。 ぶりぶりと変な汁を出しながらナメクジみたいに這いずり回るその尻に狙いを定めて、一撃。 「ありちゅがこわがってりゅんだよ!? はやくたちゅけ [ベシィィィィィィィィン!!!] ゆぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!? いぢゃいぃぃぃぃぃぃいいい!!!!!?」 突然尻に訪れた凄まじい痛みに大声で泣き叫ぶ子ありす。 みるみる内に赤く腫れ上がる尻をさっきより高く地面から上げて振っている。 地面に触れただけで痛いのだろう。 だが相変わらず元気に、今度はうんうんとしーしーを漏らしながら尻を振っている。 「そんなに挑発されたら……もう一発やりたくなっちまうわ!」 ベッシィィィィィィィィン!!! ベッシィィィィィィィン!!! 「ゆっぴょあぁぁぁぁぁぁああああ!? にゃんで!? にゃんでありちゅのおちりいぢゃいのぉぉぉぉぉぉおおおおお!!?」 今度はさっきより少し強めにしならせ、二発。 いい音が鳴って、同時にいい具合に喧しく汚い悲鳴が部屋に響き渡る。 角が当たってしまったのか、皮の色が薄くなっていた部分が切れている。 連続二発は調整が難しいようだ。 餡子が漏れて終わってしまってはかなわないので、ゴム手袋を装着。 オレンジジュースを塗った人差し指ですぐにほぐして傷を塞ぐ。 「みゃみゃぁぁぁぁぁぁあああ!! はやくたちゅけてぇぇぇぇぇぇええ! ゆっくりさせちぇよぉぉぉぉぉぉおお!!」 涙と涎、うんうんとしーしーをまき散らしながら眠りこけている親を呼び続ける子ありす。 親子だな、と思う。 そんな子ありすに死角から天の声をかけてあげることにした。 「ありす」 「ゆぴっ!? だれなにょ!? 」 「親が目を覚ませば、お前はゆっくりできるぞ」 「ゆぅ! ほんちょ!?」 「……だが親が目を覚まさなければ、この痛みは永遠に続くぞぉぉぉぉ」 「ゆぅぅぅぅ!? いぢゃいのやじゃよぉぉぉぉおおお! みゃみゃ! はやきゅおきてぇ! ぴゃぴゃも! ありちゅゆっくりしちゃいのぉぉぉぉぉぉおお!」 にんげんの声であることには気づいていない。 都合よく神様とでも考えたのだろうか。 言葉の真偽も確かめぬまま、子ありすは再び両親を起こす為に泣き叫び始めた。 傷が痛むのか、相変わらず尻は上げたままだが。 「それでは第2ラウンド…………レディー…………ゴォ!!」 ベッシィィィィィィィィン!!! 「ゆぴぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」 「ゆ……? ここはどこなんだぜ……? まりさはたしか、まりさのおうちにふほうしんにゅうしてきたにんげんをぶっとばして……」 視界の端で草と泥だらけの湿った帽子が蠢く。 ようやくまりさが目を覚ましたようだ。 混濁する意識を呼びもどうと必死なのか、顔の皮を大きく振っている。 ぶるんぶるんっという効果音が聞こえそうだ。 そして意識がハッキリするにつれ、痛みも戻ってきたようである。 「ゆ?……ゆぎいぃぃぃぃぃぃぃいいい!? おもにがおが! ほっべがいだいのぜぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!?」 「……ゆ……? ま……りさ………? ………ゆぅぅ……なんかおくちがいたいような……っていぢゃぁぁぁぁぁぁあああああ!?」 まりさのたるんだ頬についた無数の小さな網目状切り傷。 殴られた時のような強烈な痛みは無いが、とにかく断続的に痛む。 痛みにじっとしていられなくなったのか、悲鳴に合わせて身体を震わせるまりさ。 その振動でありすも目覚めたようだ。 こちらはすぐに覚醒したようで、顔と口の痛みに悶絶し始める。 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁああああ!? まりさのたまのおはだが!? かまきりさんとたたかったときもむきずだったれきせんのゆうしのあかしがぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」 「いぢゃいぃぃぃいいい!! いぢゃいわぁぁぁぁぁぁあああ! だずげでまりざぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」 自分でやっておいてなんだか、気持ち悪い光景だった。 草と泥と虫の死骸と、外のあらゆる物で汚れた身体……からさらにとめどなく粘っこい汁を出してうねうねと動く二匹の饅頭。 目は餡子で黒く血走り、血管のような物も浮いている。 そんなに痛いのか、口を大きく開けすぎて端が少し裂けている。 もしかしてこいつら、全身が人間でいう爪先みたいなものなのか? それなら痛みに敏感なのも頷ける。 どこかに身体をぶつける度にこの足みたいな痛みが走るなんて想像しただけで身震いする。 と、同時に自分の顔がにやついていくのもわかった。 「もうやだぁぁぁぁ! おうちかえるんだぜえぇぇぇぇぇえ!」 「おっとまりさストップだ」 「ゆ!?」 痛みに耐えかねたのか、水槽からジャンプして逃げようとしたまりさの前に俺は手を突き出した。 「にんげぇぇぇぇえええん!!! おまえのしわざかぁぁぁぁあああ! はやくまりざざまをだずげろぉぉぉぉおお!」 「いいから、横見てみ」 「ゆぎぎぎぎぎぎぎ! ……ゆ? 横?」 「……ゅ……ゅぴ……」 「ど、どぼじでおぢびがぼろぼろになってるんだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!?」 「あんまり動くと大事な子供がつぶれるぞ? ジャンプしようと力こめた瞬間押しちゃうぞ?」 「ゆっぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……!」 子ありすと遊び始めてからまりさが起きるまできっかり30分。 その間、休む暇も無く俺に尻を叩かれ続けた子ありす。 最初のうちは限られたスペース内で逃げようと必死になっていたが、しばらくすると叩いても反応すらしなくなった。 尻を打つ度にビクンッと反応はするので、痛みは継続しているようだが。 「ゆっがぁぁぁぁあああああ!!!! おばえはぜっだいゆるざないのぜぇぇぇぇぇえええ!!!」 「ふんっ!!!」 ボグゥッ! 「ごべびっ!?」 血相変えて叫ぶところまでは予想通りだったが、ここまで汚い唾が跳んでくるとは想定外だった。 思わず竹定規で縦殴りしてしまった。 中心からは少しずらしているので死んではないだろうが、痙攣してるな……。 竹定規はまりさの中心から少し右へずれた脳天へ直撃。 片目をぶちゅっと潰したところで止まった。 やりすぎた、とりあえずジュースはかけておこう。 「さて、次は加減を間違えないように……」 「ゆ……いだがっだのぜ………いっだいなにが…… [ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!!] ゆっぐぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!?」 意識を取り戻した瞬間、今度は横向きにして引っぱたく。 これなら潰れたりはしないだろう。横叩きなら子ありすの時にある程度の力加減は覚えている。 叩かれたまりさの右頬は赤を通り越して餡子が透けて薄黒くなっていた。 衝撃で左頬の切り傷から少量の餡子が飛び出したのも確認している。 「おいおい、あんまり動くなよ。 子供潰しちまうぞー?」 「ゆぐぅぅぅぅぅぅぅぅううう!! おぢびぃぃぃぃぃ! ばやぐどぐのぜぇぇぇぇぇええええ!」 この四方壁に囲まれた状況で子供相手に何言ってるんだこいつは。 俺は口汚く子供に「どけ」と言い続けるまりさの頬にさっきと同じくらいの一撃を打ち込む。 ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「ゆぎゃっ!?」 次は二発。 ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「ゆげっ! ゆっびぃぃぃぃぃ!!!?」 次は四発。連続打ちにも慣れてきた。 ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「ゆぼっゆごぇっっゆぎゃぼっっっゆっぎゃぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!?」 ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「………ゆ……ごぶぇ…………ぼ……ぼぅ………ゆるじでぐだざぃ………」 つい夢中で叩きまくっていたら、息も絶え絶えのまりさがえらく弱気になっていた。 それもそのはず、まりさの姿は蜂の大群に襲われたように歪な形状になっていた。 腫れているだけかと思ったがそうでは無いらしい。 なまじ皮が破けないように加減している為、逃げ場が無くなった餡子が叩かれる度に衝撃でめちゃくちゃに移動しているのだろう。 瞼も腫れぼったくなって前が見えているかも怪しい。 その証拠に俺が移動しても同じ場所に向かって謝っている。 「ばり………ざ……がわるがっだでず……ぼういだいの……やべで…………」 あらぬ方向へ謝り続けるまりさ。 そんな状態でも何気に子供を潰してないのは正直驚いた。 後で知ったが、ゆっくりは他のゆっくりが死んだ時に出る死臭とやらを非常に嫌うらしい。 子思いじゃ無さそうなこいつが子供を潰さなかった理由も多分それなんだろう。 定期的にオレンジジュースをポタポタと垂らして延命処置していたのもあるが。 「ゆっぐり………ゆっぐりじだぃぃぃぃ………………」 最早まりさは息も絶え絶えといった感じだ。 歯は残っていないし、舌もだらしなく出しっぱなしになっている。 自慢のおかざりやおさげも叩かれ続けでズタボロだというのにそれすら気にしない。 放っておけば5分持たず死ぬだろう。 だが、 「そうかそうか、ゆっくりしたいか。 ほれ、じゃあゆっくりさせてやるよ」 ドボドボビチャビチャ 「ゆっぐ、ゆっぐ、ゆっぐ……ゆぅぅぅぅぅ! なんだかげんきになってきたのぜぇぇぇぇぇ! まりささまのふっかつなのぜぇぇぇぇええ!!」 俺はまりさの上からオレンジジュースを飲ませつつかける。 案の定、まりさの腫れはあっという間に引いていった。 失った目や葉、おかざりやおさげの破損は戻らないが。 「よう、まりさ」 「ゆぁーん? まりささまにきやすくこえをかけるんじゃないのz [ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!!] ゆひぃぃぃぃい!!!!?」 先程まで誰に何されたのか忘れていたようなので、水槽の表面を叩いて思い出させてやる。 打撃音がトラウマになったのか、それを聞いただけでまりさは飛び上がって涙としーしーをまき散らして縮こまってしまった。 これでは面白くない。 そこで俺の目についたのはすっかり忘れていた端のありす。 「そういやこいつ、ずっと気絶しっぱなしだな」 そういて俺はゴム手袋をつけた左手でありすをの髪を束ねて掴み上げた。 何本かの髪がミチっと音を立てて抜け始めたところで、ようやくありすが目を覚ます。 そしてさっきと同様、すぐに大声でわめき始めた。 ミチミチミチ 「ゆ……? ありすは………? ……いぎゃああああぁぁぁぁぁぁああ!!!」 それにしてもとんでもなく喧しい。 まりさも相当うるさかったがそれ以上だ。 どうもこいつはまりさ以上の痛がりらしい。 すぐに気絶するのも納得できる。 となると力加減が今まで以上に重要になってくる。 下手すりゃショック死だ。 そう簡単に潰す訳にはいかない。 まだ処置していない右足の痛みが俺にあの瞬間に膨れ上がった痛み怒りを思い出させる。 「じゃあまずはある程度痛みに慣れてもらうかね」 俺はありすを水槽に落とすと、間髪入れずにその頬に狙いを定める。 「いだぁ!? あんよいだぃぃぃぃぃいいい!!!」 ベッシィィィィィィィィン!!! 「ゆぐべっ!? おがおいだぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!」 プラスチック定規に持ち替え、子ありすの時と同じくらいの強さでありすの頬を引っぱたく。 軽く叩いただけでやはりわめく。 まずはこれに何発耐えられるか試してみるか。 ベッシィィィィィィィィン!!! ベッシィィィィィィィィン!!! ベッシィィィィィィィィン!!! 「いぎゃっ!? ゆべしっ!!!! あぎゃぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」 「うおー……本当にうるさいなこいつ……スカっとはするけどさすがに耳痛いから黙ってもらうか」 耳がキンキンしだしたので、少しありすに静かにしてもらうべく、俺はオレンジジュースで延命処置していた子ありすをありすの口内に放り込んだ。 「ぁ………!? ……、………!」 案の定、まりさと違いありすの方は子供を大事にしているようで、口に入れられる寸前の子ありすの状態を見て何かを叫ぼうとした。 だがそれはかなわず、子ありすはありすの口内に。 これで少しでも喋ってしまえば瀕死の子ありすは潰れてしまう。 それどころか、不用意に口内を動かせば子ありすを飲み込んでしまうかもしれない。 ありすは血走った目から黒い血涙を流して俺を睨んだ。 ベッシィィィィィィィィン!!! 「…………っっっっ!!!!!!」 ベッシィィィィィィィィン!!! ベッシィィィィィィィィン!!! ピトッ ベッシィィィィィィィィィィィィィィィィン!!! 「…………! …………! ……っ! ………?…………………っゅぐぅぅっっ!!」 「……ゅ……ぴぃ………!」 「………………!?」 三発目と四発目の間にフェイントをいれたせいか、ついに声を上げてしまうありす。 その動きで一本の歯が子ありすに当たって傷つけてしまったようだ。 我が子のか細い悲鳴に再び身が竦む。 ぷるぷると小刻みに震えながら、ありすは来たるべき痛みに備えた。 これ以上、子ありすに苦痛を与えないようにというありすなりの覚悟なのだろう。 だが、 ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「……………!!!!!? あぎゃぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!?」 プチュ 「」 「いだぃ、いだぃぃぃぃ……! ゅ…? おちび、ちゃん……?」 いつもの痛みと思わせて、こっそり竹定規に持ち替えて力任せに脳天を引っぱたいた。再度響き渡るありすの悲鳴。 叩いた時の小気味よい音にかき消されたが、カチューシャは真ん中から真っ二つに折れてしまい、叩かれた頭の一部ラインは竹定規のように平らになっていた。 想像していたものとは比較にならないその痛みに、ありすの覚悟はあっさりと終焉を迎えた。 「おぢびぢゃん!? おぢびぢゃぁぁぁぁぁああん!!!? へんじじでぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!」 途端、ありすの目からは滝のように涙が流れ出す。 そして大きく痙攣したと思うと、今度は口からクリームを吐き出した。 野良だからだろうか、クリームは乳白色では無く、からしと牛乳がブレンドされたみたいな汚い斑模様になっている。 「ゆげぇぇぇぇ!!! ゆべろぼぇぇぇぇぇぇええ!!!!?」ビチャビチャビチャ 「とっとと、このままだと死んじまう」 ドボドボドボ 「ごぶっ!? ごぶぉぉっ! ぐべっ!? ぶぐぅぅぅぅぅぅぅぅうううっっ!!!!?……っご……ぶ………」 俺は慌ててオレンジジュースをかける。 ついでに吐かれたクリームをありすの口に戻した。 吐こうとするので、落ち着くまで口の上下を掴んで開かないようにする。 1分程待つと大きくゴキュンという音が聞こえたので、ようやく手を放すことができた。 と同時に、ありすは白目を剥いて三度気絶した。 まだ右足はジクジクと痛む。 気絶したありすの横で下を向いて震えるまりさを見た。 「お? 番があんな目に合ってるのに気絶してなかったのか?」ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「ゆひっ……! ひっ……!」 自分の掌を叩いて大げさな音を出す。 その度にまりさは大きく体を震わせ、勢いのなくなったしーしーをちょろちょろと垂れ流す。 「永遠にゆっくりしたフリしてりゃ良かったのに~」ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! やっぱり、顔がにやけてしまう。 どうやら新たな趣味に目覚めてしまったようだ。 「さあて」ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「ゆひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!?」 「もう一回戦いってみようか」 ッパァァァァァァァァァァアアアアアアアン!!! 「っゆっぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 ――1か月後 「ふー、今月の掃除も終わりっと」 1か月ぶりの部屋掃除は無事完了。 換気もしやすくなって、今まで以上に捗っている。 ゆっくりが寄ってこないだけでここまで難易度が下がるものかと思い知った。 「これもお前らのおかげだわなー。 感謝してるぞー」 「「………っ………っ!」」 あの日、人の部屋を汚した上に余計な痛みを追加してくれた饅頭二匹は、現在うちの窓辺でオブジェとして稼働中。 おかざりと髪は適当に毟ってわざと微妙に残してある。 この方が惨めさが際立つからだ。 この格好で逃げ出しはしないと思うが、念のため足も傷つけてあるので、万に一つも逃げられはしない。 その後、例によって全身の形が丸状を保てなくなるほど殴った後、水槽に入れて放置。 歯は全部抜き、舌も声が出せない長さまで切り取ってあるのでご近所にも迷惑をかけない。 「お前ら置いとくだけで野良ゆっくりは悲鳴あげて逃げてくし、大声あげて逃げるもんだからすぐに加工所呼んで処理してもらえるし」 昨今の加工所は儲かっているのか、駆除対象である野良ゆっくりを引き渡すとパンやお菓子などの食品と交換してくれるのである。 今日も掃除中に悲鳴が聞こえたので見に来れば、五匹の親子連れが悲鳴を上げたまま漏らして固まっていた。 その場で全匹足を傷つけて動けなくした後、加工所を呼んでパンと変えてもらったわけである。 「食費まで浮くとは思わなかったわー。 っと、そろそろ飯の時間だな。 待ってろよ」 「「………っ………」」 俺がそう言って立ち上がると、大して動かせない体を必死に捩って拒否の姿勢を取ろうとする。 その訴えはもちろん却下。 ゴム手袋を両手に装着し、うねうねと無駄な足掻きをするありすを抑える。 そして、歪な形状の額から生えた茎をたどり、生まれる寸前まで成長した実ゆっくりをもぎ取った。 「おー、今回は6匹も大きくなったぞ。 良かったな、飯が増えて」プチップチップチッ ガバッ ポトッ ポトッ ポトッ 「…………っっっっっ!?」 摘んだ実ゆっくりは相変わらず無駄な抵抗を続けるありすの口の中へ。 そう、このゆっくり除け、自給自足させることもできる。 ゆっくりは寄ってこなくなり、食費も浮き、ストレス解消もできて、何より金がかからない。 「正直もうゲームとかしばらくいらんなぁ……」プチップチップチッ ガバッ ポトッ ポトッ ポトッ 同じように頭を抑えて上を向かせたまりさの口にも落としていく。 二匹は唯一まともに動かせる目からとめどなく涙を流す。 栄養が足りてないのか、はたまたストレスか、最近は例の粘っこい汁も出なくなった。 ゴム手袋越しに触るときの不快感が薄れるので、個人的には助かる。 同時に思う。 このままだとこいつらそろそろ死ぬのでは?と。 「と、いうことで、次のお前らのガキのうち、二匹を二代目ゆっくり除けとして育ててやろう」 「「!!?」」 「活きがいいのを頼むぞ~」 「「……っ! ………っ!」」 無理やり口の上下を掴んでさっきの実ゆっくりを咀嚼させる。 まりさとありすは一層泣いた。 「ゆ? まりさ! このおうちはまどさんがあいてるよ!」 「でかしたのぜ、れいむ!」 その声にならない声が他のゆっくりを逆に惹きつけるのか、今日もまた野良ゆっくりが寄ってくる。 寄ってくるんじゃ、除けになってないって友人に言われた事もあるけど、 集まってきたゆっくりから「ゆっくり」を除去する訳だから、間違っては無いだろ? ==================================== 感想板、定期的に読ませてもらっています。 感想は励みに、批判は勉強になります。 ありがとうございます。 【過去作】 anko4408:まりちゃと草むらの森 anko4403:まりさと大きな石
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分類不明の情報、どこにまとめるか分からない情報をメモしておく場所です ex)ダメージ計算式などの検証データ 堅苦しく書いてありますが、なんでもかまいません。 起動時のメッセージ あらすじ(ネタバレ注意) EXP ロボ アビリティパッシブ増加値 アビリティパッシブ増加値(FD) アビリティ 計算式 BYスキル 91階以降のモンスターのドロップ91~99階モンスターLv 消費品 装備品 虚経路グループCD スキル 100階以降 フロアボス 書き残す 起動時のメッセージ 歩武 Now Dying... 弓那 Now Singing... 雲母 Now Rolling... 藍 Now Eating... 麻衣乃 Now Reading... 黎 Now Tomoring... 月夜 Now Summoning... 陽子 Now Planning... 会長 Now Wondering... FDも一緒。FD新キャラ分も少しあり るみね Now Appealing... リリーティア Now Damaging... エレオノール Now Victiming... あらすじ(ネタバレ注意) +【共通ルート】 [部分編集] 神撫学園二年生の翠下弓那は、成績不良によりぎりぎりの学園生活を送っていた。ある日そんな弓那のクラスに、朱島歩武が転入してくる。 父親の言いつけにより転入してきた歩武だが、その理由とは『神撫学園にいる翠下弓那という少女が、世界を守る救世主だから』という突拍子もないものだった。 二人は根本的にそりが合わず、口喧嘩の絶えない毎日を送っていた。その果てに弓那は、テストの日に暴力事件を起こし、留年決定の事態に陥ってしまう。絶望に打ちひしがれる弓那の前に、論説部の部長・黒河雲母が現れる。 論説部部長である雲母は、超選挙トーナメントに勝ち抜き会長になれば、すべての権限を手に入れられると教える。 そして歩武と弓那は、強引な部長に導かれ留年を取り消すため、超選挙大戦に立候補することになった! 恋と友情と感動の、超青春&超能力ヘリクツバトルが幕をあける。 以下省略 決勝戦を勝ち抜いたで翠下弓那だが、正体不明の武装集団に誘拐される。 一回戦…図書委員 二回戦…運動連合 三回戦…巫女委員会 決勝戦…神楽なゆた 以下省略 論説部一行は宇宙へ… +【弓那ルート】 [部分編集] +【雲母ルート】 [部分編集] 戦闘演習中に雲母が反乱を起こし、銀河連邦総帥ガレオーンを暗殺しようとするが、歩武とディーレに止められ失敗。 ※雲母曰く、ガレオーンがイシリアルと異空体の共倒れを策略した為に、弓果が死亡したとのこと ※ガレオーン曰く、イシリアルは道具、イシリアルが異空体を滅ぼすと、イシリアルは人類の敵となるため、戦力は小出しにして然るべきであると 今までの異空体の出現位置から異空体の群れが銀河連邦本部を目指していることを知る。 雲母は異空体と銀河連邦が消耗しているところに乗り込んで、異空体を滅ぼすべきであるというが、歩武が納得せず。 すぐに救援に向かうことになる。 銀河連邦本部近くで、カラレスと再会。 カラレスは置き土産(異空体のデカイモノ)を置いて退散。 ディーレも救援に来るが倒すことができない為、 雲母は敵と自分たちとを、ティルセシードにテレポートさせる。 ベリダディアが剣に変身し、敵を撃破する。 以下省略 +【藍ルート】 [部分編集] リシェインとディーレ=グムラ=タリムにより異空体の母体の位置が判明したとの情報が得られる。 ※リシェインはアルゴダの総帥 ※アルゴダは銀河連邦に技術支援を行ってる星で、実質銀河連邦よりも上の立場 ※ディーレは藍の姉であり、現時点で最強のイシリアル能力者 ※藍は元々銀河連邦側の人間であり、アルゴダ星出身 一行は母体に乗り込み、そこにいたカラレスを撃破。 カラレス撃破により異空体は全滅したかに思えた… だが、異空体の集団が襲来。 なすすべもない一行だが、急遽リシェインが駆る天空体が出現し、異空体の集団を撃破後消えた。 ※リシェイン曰く、最後の生き残り達であると カラレスを撃破した功績により藍は天空都市に招かれる。 一行はリシェインの不審な行動に疑問を抱くと同時に 仲間を連れ戻す為に、一行はアルゴダに乗り込む。 藍の精神を天空体のコアとして取り込み、完全体となる天空体だが、雲母の力により藍の精神世界に進入した歩武により藍の精神を助ける。 不完全な天空体を撃破。 めでたしめでたし。 +【完結編】 [部分編集] +【過去】 [部分編集] 神撫学園二年生の翠下弓果(弓那の母)は、黒河雲母、恋人の鹿島武人(歩武の養父)と共に 星徒会優勝し、宇宙にあがった。宇宙でカラレスと出会う。 ※武人は弓果を補佐する為に銀河連邦から派遣された人間 ※当時カラレスは宇宙最強のイシリアル能力者 我々4人は当時最新鋭の宇宙船であるゼーレルムに乗り込み、異空体と戦った。 幾多の戦いを経た弓果は宇宙最強であるカラレスと肩を並べる存在になっていた。 戦いの中、弓果は武人の子供を身籠もった。 武人は弓果を前線から遠ざけ、地球へ返した。 弓果がいない二年弱の間、武人は銀河最強と肩を並べる働きをした。 だが、弓果が弓那を生み、なんとか動けることになった時、武人の体は壊れていた。 ふたりの位置は、そっくり入れ替わった。 弓果が宇宙で戦い、武人が安全な場所で弓那を育て、守る。 異空体の核の存在を発見。 戦いの最中カラレスは異空体と融合。止めようとした弓果は敵性宇宙に取り込まれる。 雲母は敵の攻撃に晒され、気付いた時には能力の暴走を引き起こし、 ベリダディアたちのいる世界へと移動してしまった。 雲母は能力の使い方をティルセシードで訓練後、元の世界に能力を使い戻る。 EXP +... [部分編集] Lv差 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 倍率 1.1 1.3 1.5 1.75 2 2.4 2.8 3.4 4 5 Lv差 1 2 3 4 5 6 7 8 倍率 0.75 0.5 0.3 0.2 0.1 0.05 0.02 0.01 論説戦 敵Lv 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 EXP 50 100 384 575 792 1280 1607 1970 2793 3253 3743 オーダクル 敵Lv 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 EXP 177 312 485 727 981 1272 1598 1958 倍率 RARE 1.1 HB 1.15 HB RARE 1.25 ロボ +... Rフレーム Lv HP 攻防 1 750 10 10 1737 24 20 4909 59 30 10265 115 40 17805 192 50 27529 289 60 39437 408 70 53529 547 80 69805 707 90 88265 888 100 110000 1100 天空体 Lv HP 攻 防 天 1 30000 25 25 1 10 32610 95 56 5 20 41020 315 146 15 30 55230 715 294 25 40 75240 1202 501 35 50 101050 1867 767 45 60 132660 2682 1091 60 70 170070 3646 1474 70 80 213280 4756 1915 80 90 262290 6216 2415 90 100 320000 7500 3000 100 アビリティパッシブ増加値 [部分編集] Lv 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 最大HP +20 +70 +140 +240 +390 +590 +860 +1230 +1750 +2500 論理攻撃心理攻撃論理防御心理防御 +1 +3 +6 +10 +15 +20 +26 +33 +41 +50 論理心理攻撃論理心理防御 +1 +2 +4 +6 +9 +12 +16 +20 +25 +30 全能力(表記はないが天空力も上昇する)天空力 +1 +2 +3 +5 +7 +9 +11 +14 +17 +20 [部分編集] アビリティパッシブ増加値(FD) Lv 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 最大HP +3% +6% +9% +12% +15% +18% +21% +24% +27% +30% 論理攻撃心理攻撃論理防御心理防御 +2% +4% +6% +8% +10% +12% +14% +16% +18% +20% スキル論理ダメージ値スキル心理ダメージ値スキル論理ディフェンス値スキル心理ディフェンス値 +3% +6% +9% +12% +15% +18% +21% +24% +27% +30% 天空力 +2% +4% +6% +8% +10% +12% +14% +16% +18% +20% スキル回数 +3% +6% +9% +12% +15% +18% +21% +24% +27% +30% オーディエンス変動値 -2% -4% -6% -8% -10% -12% -14% -16% -18% -20% トランプル効果値 +3 +6 +9 +12 +15 +18 +21 +24 +27 +30 プロテクト・カウンター効果値 +2 +4 +6 +8 +10 +12 +14 +16 +18 +20 シフト・ドレイン効果値 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 +8 +9 +10 ダメージ軽減値 +2% +4% +6% +8% +10% +12% +14% +16% +18% +20% トランプル プロテクト カウンター シフト ドレイン ダメージ オーディエンス スキル 歩武 ○ ○ ○ 黎 ○ 弓那 ○ ○ 麻衣乃 ○ ○ ○ 藍 ○ ○ ○ 月夜 ○ ○ ○ 雲母 ○ ○ ○ 陽子 ○ ○ ○ 那由他 ○ アビリティ +... 剣技 戦う心 螺旋 集中力 刀閃 貫く心 錐揉 中心力 巧妙な発剣 怒れる心 竜巻 透徹力 絶妙な発剣 荒ぶる心 渦巻 不惑力 心機溌剌 優しさ 心法・砕 冷静な目 闘志 いたわり 心法・堕 冷徹な瞳 怒気 真心 心法・魂 催眠 闘魂 風楯 心法・闇 集団催眠 激怒 土楯 求心法 偃月陣形 心機充実 大樹鎧 混沌 鶴翼陣形 忘却の楔 大気鎧 焦熱 消沈 守備の理 偶像 流体・太 抑圧 防御の理 平常心 交叉法 停滞 受体 歌声 流体・極 残心 鋼体 岩石の守り 転換法 防御メソッド 抜き打ち 鋼鉄の守り 見切り 守勢 狙い打ち 金剛の守り 刹那の捌き 攻勢 打ち掛け 疾風の守り 毒刺 防衛メソッド 防護円 捌き 突貫 沈黙 熱情 避難 遠当て 遮蔽 熱狂 魂の壁 闇討ち 遮断 魂の壁 心の壁 崩し・身 混乱 心の壁 崩し・身 崩し・心 途惑 守護者 崩し・心 崩し・総 熱情 不屈の魂 安心 混乱 熱狂 上天の刃 平坦 途惑 除去 炎熱抵抗力 浄化 混濁 走査 自然 献身の心 克己の意思 透明な精神 暗黒 大空の護り 後の先 大海の護り 氷雪 貫通 鷹の目 奪熱 不動 強打 釣り針 迅雷 縮地 上天の癒し 先の先 逆転 孤高 不動 影縫い 収束 計算式 ダメージ期待値=(効果値*倍率+攻撃力)*(1+天空力/600) 最大倍率のために必要な攻撃力 相手防御力x10 ディフェンス期待値=(効果値*倍率+防御力/2)*(1+天空力/600) 最大倍率のために必要な防御力 効果値×5 +相手防御力13の時の攻撃力/攻撃力倍率 SkillLv1 0 1.00 1 1.00 2 0.78 3 0.80 4 0.83 5 0.83 6 0.85 7 0.88 8 0.90 9 0.90 10 0.93 15 1.03 20 1.23 21 1.29 22 1.29 23 1.35 24 1.41 25 1.48 26 1.56 27 1.56 28 1.64 29 1.72 30 1.83 31 1.83 32 1.90 33 2.00 116 2.00 117 7.50 118 7.50 119 7.56 120 7.64 121 7.74 122 7.74 123 7.86 124 8.00 125 8.16 126 8.16 127 8.48 128 8.88 129 9.40 130 10.00 +... 最大倍率 購買販売攻撃スキル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 アユム 10 10 10 10 8.5 8.5 8.5 7 6.8 6.8 10 10 10 8.5 8.5 7 6.8 6.8 7.1 7.5 10 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.1 7.5 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.5 8 8 ユミナ 10 10 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.1 10 10 10 8.5 8.5 7 6.8 6.8 7.1 7.5 10 10 8.5 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.5 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.5 7.5 8 キララ 10 10 10 8.5 8.5 8.5 7 6.8 6.8 7.1 10 10 10 10 8.5 8.5 8.5 7 7 6.8 10 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.1 7.5 10 10 10 8.5 8.5 7 7 6.8 6.8 7.1 アイ 10 10 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.5 10 10 10 8.5 8.5 7 7 6.8 6.8 7.1 10 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.1 7.5 10 8.5 8.5 7 7 6.8 7.1 7.5 8 8 +... ディフェンススキル最大倍率 全スキル共通 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 4 4 4 4.25 4.25 4.5 4.5 4.75 4.75 5 藍に蒼天弓フェンデローテスを装備させ、自然な無視の論理ディフェンス期待値と倍率を調べる 論防 Lv10 Lv9 5810 2.35 2.26 7060 2.96 2.82 8310 3.74 3.60 9560 4.56 4.36 10810 5.00 4.75 11220 5.00 4.75 +... ディフェンススキル発動時 ダメージ=(ダメージ期待値-ディフェンス期待値)*属性耐性 属性耐性 赤→緑→黒→青→赤 弱点 順方向1.1 耐性 逆方向0.95 例外 弱点逆方向 リザードマン 弱点1.05 麻衣乃・黎・月夜・陽子 弱点なし 味方4人・那由他・クラカワ機・ディーレ・天空体 プロテクト・シフト・トランプル プロテクト減衰=(ダメージ期待値-ディフェンス期待値)*プロテクト効果値/100*(1-トランプル効果値/100) シフト回復=ダメージ期待値*シフト効果値/100*(1-トランプル効果値/100) BYスキル +... FD 攻up 防up 攻down 防down 歩武 ○ ○ 黎 ○ ○ 弓那 ○ ○ 麻衣乃 ○ ○ 藍 ○ ○ 月夜 ○ ○ 雲母 ○ ○ 陽子 ○ ○ 全体 攻up 防up 攻down 防down 論 アクセラレートゼム マテリアライズゼム 堕落した理想 無限の苦悩 心 ライジングゼム ブレッシングゼム 超心理戦 偽りの真理 論心 マキシマムゼム レジスタンスゼム 美徳の喪失 深遠の呼び声 敵 司令体 複合ダメージ軽減 ブラスト+敵論心攻▼ ブラスト妨害+敵論心防▼ ディーレ 複合ダメージ軽減 ブラスト+特殊攻撃防御▼ 継続解除+全能力▼ カラレス 敵任意複合攻撃+対象前進 ブラスト+ダメージ 継続解除+全能力▼ 天空体 ブラスト+ダメージ 継続解除+ダメージ 全体複合攻撃 那由他 ブラスト妨害+ダメージ 耐性効果無効化 継続解除+ダメージ 空母型 ブラスト 敵FW全能力▼ 弱点増進 敵性宇宙 ブラスト妨害+ダメージ 全体複合攻撃+Dr 敵全体全能力▼ 91階以降のモンスターのドロップ +... 前置き モンスターをグループで分けることにする グループA ダンジョンの61~70階で出現するもの グループB ダンジョンの71~80階で出現するもの 虚経路ではモンスターが16種出現するので、グループABCDと呼称する 91~99階 モンスターLv 最高 階数-1 最低 max(90,階数-5) 消費品 下表は階数が偶数の場合のドロップを示す。 奇数の場合にはグループA・Bが逆になる。 通常 階 属性 グループ A B 91~93 赤 HP回RARE29 HP回RARE30 緑 HP回RARE29 HP回RARE30 青 HP回RARE30 HP回RARE29 黒 HP回RARE30 HP回RARE29 94~96 赤 HP割回 攻割up 緑 防割up HP割回 青 HP割回 攻割down 黒 HP割回 防割down 97~99 赤 全up HP回 緑 HP回 全up 青 全down HP回 黒 全down HP回 ハイパーバトル 属性 グループ A B 赤 HP回 スキル回 緑 HP回 スキル回 青 スキル回 HP回 黒 スキル回 HP回 装備品 通常(全てRARE29) 階 属性 グループ A B 奇数 赤 心攻 天空 心ダ% 論心攻 HP 心ダ 緑 論防 天空 論デ 論心防 HP 論デ% 青 論心防 HP 心デ 心防 即死 心デ% 黒 論心攻 HP 論ダ 論攻 即死 論ダ% 偶数 赤 論心攻 HP 心ダ 心攻 即死 心ダ% 緑 論心防 HP 論デ% 論防 即死 論デ 青 心防 天空 即死 論心防 HP 心デ 黒 論攻 天空 論ダ% 論心攻 HP 論ダ ハイパーバトル(全てRARE30) 階 属性 グループ A B 奇数 赤 論心攻 HP 心ダ% 心攻 天空 心ダ 緑 論防 天空 論デ 論心防 HP 論デ% 青 心防 HP 心デ 論心防 回復 心デ% 黒 論攻 回復 論ダ 論心攻 HP 論ダ% 偶数 赤 心攻 HP 心ダ 論心攻 回復 心ダ% 緑 論心防 HP 論デ% 論防 回復 論デ 青 論心防 天空 心デ% 心防 HP 心デ 黒 論心攻 天空 論ダ% 論攻 HP 論ダ 虚経路グループCD 下表に対応するグループの属性と同じものをドロップ 属性 グループ C D 赤 B黒 B緑 緑 A赤 A黒 青 B赤 B緑 黒 A青 B青 スキル ハイパーバトルでも変化無し 簡便のためにスキルの組に番号を振る 虚経路 番号 スキル 1 アカシマキャリバー 2 炎の服 7 パワーアクセルワン 8 マインドライズワン 9 アクセラレートワン 10 ライジングワン 11 パイロスプリット 12 ハートビートレッド 21 アカシマヴォルケイノ 22 炎の兜 23 アカシマイリュージョン 24 マテリアライズワン 25 ブレッシングワン 26 イクシードナウ 27~30 炎の服 炎熱・常緑・蒼穹・暗闇 31 クロスノヴァ 32 ムービングウォール 33 イラプション 41 アカシマアヴァランチ 42 炎の楯 43 アカシマスペシャル 46 マックスハートワン 47~50 炎の兜 炎熱・常緑・蒼穹・暗闇 51 アカシマゲヘナ 53 メルトダウン 57~60 魔除け 緋・翠・蒼・影 61 アカシマディバイダー 62 炎の鎧 63 アカシマストーム 64 アカシマメテオ 65 プライマルオーダー 66 マックスハートゼム 67~70 炎の楯 炎熱・常緑・蒼穹・暗闇 73 アカシマインフェルノ 76 リミットブレイクスルー 77~80 炎の鎧 炎熱・常緑・蒼穹・暗闇 スキルドロップ表 階 属性 グループ A B C D 91 赤 64 70 80 62 69 79 63 68 78 61 67 77 緑 63 67 65 61 70 79 64 67 65 62 70 79 青 61 66 73 64 69 78 62 66 73 63 69 78 黒 62 68 77 63 76 80 61 68 77 64 76 80 92,93 赤 2 8 11 1 7 12 2 10 11 1 9 12 緑 2 10 11 1 9 12 2 8 11 1 7 12 青 1 9 12 2 8 11 1 7 12 2 10 11 黒 1 7 12 2 10 11 1 9 12 2 8 11 94,95 赤 21 24 31 22 26 32 23 30 33 21 29 31 緑 23 24 33 23 28 33 23 26 33 23 27 33 青 21 26 31 21 27 31 21 30 31 21 25 31 黒 22 25 32 22 29 32 22 24 32 22 28 32 96,97 赤 41 46 60 42 50 59 43 49 58 41 48 57 緑 43 47 53 43 50 59 43 48 53 43 46 59 青 41 46 51 41 49 58 41 47 51 41 50 58 黒 42 48 57 42 46 60 42 49 57 42 47 60 98,99 赤 61 66 76 65 70 73 64 69 76 62 68 73 緑 63 67 77 65 70 80 62 68 77 61 66 80 青 61 66 73 64 69 79 63 67 73 65 70 79 黒 62 68 78 61 66 76 64 69 78 63 67 76 虚経路以外 番号 スキル 緑 黒 青 1 ユミナチャージ エンドオブデスペラード ディスラプター 2 ユミナチャージ エンドオブデスペラード 傷の反転、重傷対応 3 ガード スマイル 溶痛の闇衣 自然な無視 4 ガード スマイル 溶痛の闇衣 反転の大氷壁、展開 7 ハードマテリアルワン 胸刺さる棘 怠惰な思考 8 ブレストエイムワン 心切り裂く剃刀 拘束された心 9 マテリアライズワン 息苦しい沈黙 愚鈍な思考 10 ブレッシングワン 思慮なき言葉 傷ついた真心 11 メディカルアローン ハートビートブラック ハートビートブルー 12 ヒーリングアローン ハートビートブラック ハイドロブラスター 13 ハートビートグリーン ハートビートブラック グラシアルハート 14 ヒーリングアローン ハートビートブラック ハートビートブルー 15 メディカルアローン ハートビートブラック ハイドロブラスター 21 ユミナダイナマイツ マニフォールドバイト デヴァステイター 22 ガード ガッツ 苦痛の闇鎧 容赦ない無視 23 ラディカルスラッグ トラキュレントソウ クライオバンブレイザー 24 ユミナバリヤー 凶刃の黒楯 全員による聞き捨て 27 息苦しい沈黙 レイジングフィーバー ヌルサイレンサー 28 思慮なき言葉 オーバーレイド レリーブアローン 29 息苦しい沈黙 コンヴィクション ヌルサイレンサー 30 思慮なき言葉 光断つ闇の輝き レリーブアローン 31 シャイニングスマイル 心締めつける鎖 アクセラレートワン 32 メディカルオール バーニングハート 反転の超雪山、展開 33 リダクションアローン 魂縛る蔦 ライジングワン 41 ユミナシュート ラセレイトフレッシュ ブランディッシュ 42 ハイパーガード スマイル 悦痛の黒冠 聞く耳を持たない心 43 スカイダイブインパクト バックインブラック オーバーウェルキャノン 44 ユミナフィールド 暴刃の闇鎧 団結した無視、自己防衛 45 リカバリーアローン 闇から覗く瞳 思念停止 46 レジストスピリットワン 闇から覗く瞳 思念停止 47 リカバリーアローン 闇から覗く瞳 反転の水壁、展開 48 レジストスピリットワン 闇から覗く瞳 反転の水壁、展開 49 リカバリーアローン 闇から覗く瞳 傷の反転、防壁硬化 50 レジストスピリットワン 闇から覗く瞳 傷の反転、防壁硬化 51 サイレンスハート ゲームオブカオス 傷の反転 52 ヒーリングオール ゲームオブカオス 傷の反転 53 サイレンスハート ヒートアップアリーナ 峨々たる山の陣 54 ヒーリングオール ヒートアップアリーナ 峨々たる山の陣 55 サイレンスハート 天覆う深淵の煌めき 燃えたぎる血 56 ヒーリングオール 天覆う深淵の煌めき 燃えたぎる血 スキルドロップ表 階 属性 グループ A B 92,93 赤 4 8 14 2 7 15 緑 3 10 13 1 9 13 青 1 9 11 4 8 11 黒 2 7 12 3 10 12 94,95 赤 24 28 33 22 27 31 緑 23 30 23 21 29 33 青 21 29 31 24 28 31 黒 22 27 32 23 30 32 96,97 赤 44 47 55 42 50 52 緑 43 49 55 41 50 56 青 41 46 52 44 45 51 黒 42 48 54 43 47 53 階 属性 グループ A B 91 赤 ロジカルラビリンス ユミナディメンション リバイバル ユミナザ100t ユミナスペース リカバリーオール 緑 ユミナザ100t ユミナスペース レジストスピリットゼム ロジカルラビリンス アストラルブレイカー リカバリーオール 青 ユミナザ100t ワイルドスクリーミング アークティックフラット ロジカルラビリンス アストラルブレイカー クワイアットダウン 黒 ユミナザ100t ユミナディメンション リダクションオール ロジカルラビリンス ワイルドスクリーミング リダクションオール 98,99 赤 ユミナスペース リカバリーオール リバイバル ロジカルラビリンス ユミナディメンション アークティックフラット 緑 アストラルブレイカー ワイルドスクリーミング リダクションオール ユミナザ100t レジストスピリットゼム クワイアットダウン 青 ユミナザ100t レジストスピリットゼム クワイアットダウン ユミナスペース リカバリーオール リバイバル 黒 ロジカルラビリンス ユミナディメンション アークティックフラット アストラルブレイカー ワイルドスクリーミング リダクションオール 91 赤 暴刃の闇鎧 妖刃の黒冠 運命貫く深淵の槍 悦痛の黒冠 ヒートアップアリーナ 運命貫く深淵の槍 緑 バックインブラック アーベインクレッセント 天覆う深淵の煌めき ラセレイトフレッシュ 闇から覗く瞳 ゲームオブカオス 青 ラセレイトフレッシュ 闇から覗く瞳 ゲームオブカオス 暴刃の闇鎧 妖刃の黒冠 運命貫く深淵の槍 黒 悦痛の黒冠 ヒートアップアリーナ 運命貫く深淵の槍 バックインブラック アーベインクレッセント 天覆う深淵の煌めき 98,99 赤 妖刃の黒冠 サルベージョン 運命貫く深淵の槍 アーベインクレッセント サルベージョン 運命貫く深淵の槍 緑 妖刃の黒冠 サルベージョン 運命貫く深淵の槍 アーベインクレッセント サルベージョン 運命貫く深淵の槍 青 アーベインクレッセント サルベージョン 運命貫く深淵の槍 妖刃の黒冠 サルベージョン 運命貫く深淵の槍 黒 アーベインクレッセント サルベージョン 運命貫く深淵の槍 妖刃の黒冠 サルベージョン 運命貫く深淵の槍 91 赤 ディレクショナルバースト 傷の反転、防壁硬化 反転の水壁、展開 イラディエイター 満たされぬ想い フローズンソリッド 緑 ディレクショナルバースト 傷の反転、防壁硬化 反転の水壁、展開 グラビティスパイラル 傷の反転、攻性防壁 インナーサイト 青 イラディエイター 満たされぬ想い フローズンソリッド 大波にかき消される声たち 峨々たる山の陣 レリーブオール 黒 心の声と歩く気持ち 燃えたぎる血 クールダウンフロアー 崩さない自我を皆に… 反転の氷壁、展開 ブレインフリーズ 98,99 赤 ディレクショナルバースト グラビティスパイラル クールダウンフロアー イラディエイター 満たされぬ想い フローズンソリッド 緑 ディレクショナルバースト グラビティスパイラル クールダウンフロアー 傷の反転、重傷対応 反転の氷壁、展開 ブレインフリーズ 青 イラディエイター 満たされぬ想い フローズンソリッド 大波にかき消される声たち 傷の反転、攻性防壁 インナーサイト 黒 心の声と歩く気持ち 崩さない自我を皆に… レリーブオール 反転の大氷壁、展開 反転の超雪山、展開 グラシアルハート 追記 スキル番号21等は誤植ではない。 ミゼルド91~99階のドロップでハイパーバトルと橙歪みを少し調べてみて出てこなかったもの サブジュゲイト・鈍痛の黒楯・インビテイショントゥヘル・返刃の闇衣・ チェインステイシス・光裂く影の閃き・愚鈍な思考・傷ついた真心 100階以降 登場モンスターLv95~99 ドロップは91~99階のものからランダム。 アイテム・スキルの組み合わせから考えて、偶数階の装備品と91階のスキルの組み合わせを90階のドロップと呼称すると、100階以降のドロップは90,93,94,97,98階の5パターン。消費品は6パターン中5。スキルは5パターン全て出現。 目当てのものの収集は91~99階が無難か。ただし上天の刃などのLv10を取得できるかは不明 フロアボス ドロップするスキルは、同属性モンスターが91~99階でドロップするもののどれか。 ドロップするアイテムは各属性4通り。100・110・120階,ハイパーバトルでおそらく変化せず。 属性 1 2 3 4 赤 即死 軽論心 プロテクト 軽論心 オーディエンスリミット 軽心 スキル回数 軽心 緑 即死 軽論 オーディエンス減 軽論 スキル回数 軽論心 青 即死 軽心 シフト 軽心 ドレイン 軽論心 効果継続 軽論心 黒 即死 軽論心 オーディエンス増 軽論 効果継続 軽論 書き残す ネタバレ部分を展開式にしてみました。反転式とどっちがいいだろう… -- 箱 (2009-01-31 20 11 13) 反転式の方が見栄えがすっきりしていいと思いますよ。 -- 名無しさん (2009-02-01 00 21 56) 反転式で作成してみたのですが、文章が多くなる分下スクロールが長くなってしまい、なんだか冗長になってしまいました。テストページ01に反転版を作成してみたので比較してみてください。 -- 箱 (2009-02-01 00 56 22) これからもっと文章量が増えると思われるので、展開式がいいかと思います。 -- 名無しさん (2009-02-01 01 19 02) 名前 コメント
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象の像の人 ◆Nap/gUKt9Eの凸装備 58 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 08 34 21.63 ID LnT2lPIj0 さて、俺の探索遍歴を語り終えたところで、探索装備について考えていきたいと思う。 何を大げさな、と思われるだろうが、にわかミリタリーマニアの俺としては、装備には拘っておきたいのだ。 お金は無いけど。 59 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 08 36 44.76 ID LnT2lPIj0 出来れば意見なども言って欲しい。 只、俺も凄い眠たいので、何時落ちるかわからないし、此のスレも何時落ちるかわからない。 返事が無くても許して欲しい。 60 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 08 38 02.19 ID LnT2lPIj0 あと、保守がてらの行動なので、文章が小出しなのは目をつぶっていて欲しい。 決して眠たいからではないんだ。 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 08 41 02.17 ID rMxcK6wF0 この企画でガチで幽霊と遭遇した事あんの? 62 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 08 45 03.69 ID LnT2lPIj0 先ずは服装だ。 今現在、イラク戦争真っ只中なので、本物のBDU、所謂戦闘服は手に入りづらい。高いしな。 そこで、服装については動きやすい、汚れても良い服装としか言えないのが現状だろう。 それこそが究極のチョイスだと思われる。 因みに俺は、メーカー不明の偽BDUを着込んで探索している。頭おかしいのは今も同じだったのだ。 色はOD色。良く見る軍隊チックな緑色だ。 これは、低視認性を獲得したいが為の選択だった。 何故か。 結局、日本には私有地と国有地しかないのだ。見も蓋もない言い方になるが、人に見つからないようにしたいのだ。 遭難したときは地獄なんでしょうね。 矢張り、偽者の為か、破れやすそうな印象を受けている。 63 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 08 46 52.36 ID LnT2lPIj0 61 俺に関して言えば、無い。 只、今回の象の像は、存在する地区が何かしら暗いイメージを伴っていたので、後味は嫌な感じだった。 64 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 08 54 12.00 ID LnT2lPIj0 さて、話が聊かずれてしまったが、次は靴だ。 御他聞に漏れず、廃墟は荒れている。自然の淘汰能力は恐ろしい。 ヴェトコン並みのトラップを随所に仕掛けていることも多々ある。 例えば釘。 並みの靴では踏み抜いてしまい、足を怪我すること請け合いだ。 しかも、その釘が錆びていたら、シリアスプロブレムとなる。 足が腐り落ちてしまうぞ。 靴底が厚いもの、ソールが比較的新しいものがベストだろう。 因みに俺は、心斎橋の軍用品店で購入したジャングルブーツを履いている。 これには踏み抜きようの鉄板が内蔵されている為、気楽に廃墟を走破できるのが魅力だ。 防水性能は無い。 雨の日に廃墟には行かない。 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 08 58 07.36 ID jhOxkZQN0 すげー拘ってるwwwwwwww 釘は怖いな確かに 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 08 59 09.83 ID oNExmalnO サバイバルwwww 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 09 01 20.89 ID qe0uq5iB0 廃墟にかかわらず雨の日は嫌だな 68 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 09 02 45.71 ID LnT2lPIj0 そして、グローブ。 意外に軽視されそうだが、此れが以外に重要なファクターを占めている。 やはり廃墟というのは荒れている。 足場が不安定な場合、手腕により体制を保持せざるを得なくなる。 その際、手がむき出しだと、いらぬ負傷をする可能性が高い。 それを防ぐ為、グローブは着用すべきだ。 また、寒さが堪える此の季節、防寒用具としてもグローブは必需品だと思う。 因みに俺は、自衛隊勤務時代に購入したOD色の革手を愛用している。 軍手より丈夫だし、なにより保温性も高い。 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 09 10 49.38 ID qe0uq5iB0 本格的だな。 ライトはどんなの使ってる? 70 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 09 16 09.45 ID LnT2lPIj0 65 コスプレイヤーの気持ちは、友人の中では俺が一番理解している筈だ。結局は頭がおかしいんです俺。 66 矢張り、これくらいは揃えるべきだと声高に主張しても聞き入れてもらえない俺涙目。 67 俺としては雨は好きなんだが、友人達が嫌がる。 被服装備としての最後は頭部。 理想を言えばフリッツヘルメットなんだが、これは単に俺の趣旨だったりする。 安全ヘルメットでも、戦場ではないから、十分に頭部を保護してくれるだろう。 只、その姿は異常な様相を呈すること請け合いなので、ここではキャップを推奨する。 落下物による頭部への負傷を抑えるのだ。 むき出しの頭では、裂傷に発展しかねない落下物も、キャップを被ることにより鈍痛に押さえることが期待できる。 出血というのは、意外にストレスを感じるものである。 只でさえ、廃墟という非日常空間で活動しているのだ。余計な心理的負担は予防するべきであろう。 因みに俺は、これまた偽ファティーグキャップを使用している。勿論ODだ。 71 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 09 32 07.57 ID LnT2lPIj0 69 それについては、今から語ろうと思っていた。 被服関連はこれで網羅したと思う。抜けがあれば指摘して欲しい。自信があるわけではない。勉強したいのだ。 さて、次は探索用具となる。 先ずは照明器具。 廃墟探索は夜間が多い。人が少ない時間でもあるし、何より雰囲気を楽しみたいなら、矢張り夜間だ。 となると、必要なのは照明器具だ。 多く見受けられるのは、防災ライトと呼ばれる、手提げ式の赤いライトだ。電気屋等で叩き売られているのを目にすることが多いだろう。 大雑把に言えば、広範囲を照らせればいいのである。 只、用途によって使い分けたほうが良い。 室内などの閉所であれば蛍光灯系のライト、野外であれば通常の豆球ライト。 避けたいのは常備灯のような小型サイズのライトだ。 はっきり言えば意味をなさない。 因みに俺は、マグライトとシュアファイアを併用している。 使用法は次に示す。 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 09 34 31.41 ID YlK6QXTnO む 73 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 09 42 00.75 ID LnT2lPIj0 マグライトはバトンサイズを2本所持している。 ショートサイズの1本は腰のホルダーに予備として刺し、通常はロングサイズを使用する。 これは、例えば避けたい事態であるが、遭遇戦に陥った際、相手を威嚇し、攻撃を躊躇させ、その場を離脱する為に使用する。 余程の身体的危険を予測できる情況以外では、絶対にこちらから攻撃してはならない。正当防衛に当てはまらない可能性があるからだ。そんな度胸も無いしな。 また、野外に於いて野生動物が襲ってきた場合の護身用具にもなる。 但し、トンファーグリップを装備してしまうと、それは武器となってしまうので、外で持ち歩けなくなってしまう可能性がある。あくまでもライトなのだ。 シュアファイアは上記のような、遭遇戦にも効果を発揮するが、探索に於いてはその光量に注目したい。 匍匐姿勢での照明確保には、ペンサイズでありながら、LED以上の光量を有するシュアファイアは強力なパートナーとなるだろう。 因みにマグライトは照らす範囲を調節できる。 野外の道では広範囲設定で、室内などでは狭範囲設定で使い分けることができる。 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 09 47 01.31 ID YlK6QXTnO 73 つまりLEDよりもマグライトの方が効率的って奴か… 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 09 48 18.75 ID YlK6QXTnO マグライトとシェアファイアだったな 76 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 09 58 36.80 ID LnT2lPIj0 次は携行するべき物品についてだ。 先ずは救急用具。 何も衛生兵のようにショルダーを携えろとは言わない。 携行するのは小型の軟膏、消毒液、絆創膏、ガーゼ、包帯だ。 これらを防水性のある入れ物に入れて携行しておくのだ。 これならある程度の傷には対応できる。 また、骨折などは、付近の適当な硬さを持った棒状の物を添え木とし、包帯で固定してやれば応急処置は済む。 それ以上の大きな負傷、例えば開放性の骨折や貫通創は、最早俺達素人の出番ではない。 速やかにその場を離脱し、プロに任せるべきだ。 理想を言えば、チームで一人、衛生担当が欲しい。救命講習を受けているのであればベストだ。 因みに救命講習は地域の消防署が主催で行っているので、受けに行くと良い。 大阪では無料だ。まあ、俺はまだ受けに行ってないんだが。 77 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 05 52.16 ID LnT2lPIj0 74 LEDでも、照度を調節できるものが在る筈だから、使いやすいほうを選んだほうが良い。 俺は個人的趣旨が多めに入っているから此のチョイスになった。 LEDの長所は長持ちすることであり、維持費が安い。 只、目に付きやすい光だから、他人に発見されやすいと俺は考えている。 また、バトンサイズのLEDライトもある。 先述のような機能をLEDに求めることも可能だ。 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 10 08 12.08 ID qe0uq5iB0 サバイバルというかゲリラ戦というか本格的だな。 ヘッドマウントのライトもあったほうが良くないか? 79 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 09 15.48 ID LnT2lPIj0 無線は個人的趣味によるものなので割愛する。 只、携帯の電波が届かないところでの探索では必要になる可能性がある。 まあ、複数チームに分かれての探索に於いてだが。 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 10 12 06.55 ID qe0uq5iB0 昔持ってたアマチュア無線のトランシーバーに ロングライフバッテリーを装着すると鈍器完成ww 81 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 17 25.49 ID LnT2lPIj0 78 それは盲点だった。 確かに両手は自由に使えたほうが良い。 それの購入も検討する。 只、光度、スイッチの操作性を検証しなければならないと思う。 俺は実物を持っていないので、実物を持っている方は是非、使用感をレポートして欲しい。 今、ざっと妄想してみたが、可搬式のライトの利点は照明方向の自由性にあると思う。 例えば、自分は前を注視しつつ、後ろを照らしたい、等の状況では、可搬式ライトのほうが分があると思う。 使ってみなければ解らないのだが。 あと、俺は矢張り格好にも拘りたいのでマグライトを推した。 と、情けない言い訳を言ってみる。 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 10 17 51.70 ID YlK6QXTnO 救急箱、デジカメ、地図、資料、ライト、メモ用紙しか持ってない俺には詳しい説明は助かるな 車の中にはノートパソコン。車中泊用の布団とカーテンが入ってるが…。 83 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 18 49.80 ID LnT2lPIj0 80 兎にも角にも、身を守る手段をどれに求めてもいいと思う。 が、矢張り俺は格好に(ry 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 10 22 36.96 ID gooAU1s9O つまり、自衛隊時代に購入した迷彩服と半長靴、テッパチ(新型)、マグライトを所持していて 救命講習、応急救護講習を終えていて尚且つスキー場でのレスキューを4年ほどしていたので実践経験があって オマケにアマチュア無線の免許も持ってる俺は廃墟探索には最強ってわけですね? あ、偽装網とドーランは必要ですか? 85 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 23 24.01 ID LnT2lPIj0 82 それだけでも凄い装備だと思う。 地図は防水マップケースに入れれば、長時間の活動や雨露にも対応できる。 俺は、付近の詳しい地図はグーグルマップ等の印刷したものを併用している。皆も一緒だと思うが。 それらも防水マップケースに入れれば長持ちする。 資料は何の資料だろうか? 86 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 27 49.33 ID LnT2lPIj0 84 最強。 チームを編成する際、必要な人材、というかリーダーだと思う。 是非、ぐいぐい引っ張っていって欲しい。 また、今まで俺が述べてきたことに添削もして欲しい。いやまじで。 因みに俺は海上自衛隊だった。 基地防備訓練の指導に来た陸上自衛官が「ええ、敵は殺しますよ」と真顔で言ったのに肝っ玉冷やしたのは秘密だ。 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/19(水) 10 31 50.01 ID YlK6QXTnO 85 ライブドア地図と廃墟探索の証拠物件を集めた宝の地図だな。 だいたい場所も書いてあるので推理して探すことになるがな 88 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 31 53.95 ID LnT2lPIj0 あと、記録器材についても、俺が貧乏だという理由で割愛させて頂く。 持ってないんだよね、デジカメ。 携帯のカメラしかないんだよね。 89 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 33 36.98 ID LnT2lPIj0 87 素晴しい。 俺もそのように記録していこうと思う。 片付けが出来ない子だが。 90 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 35 26.12 ID LnT2lPIj0 84 ああ、あとテッパチは譲って欲しい。 91 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 37 04.46 ID LnT2lPIj0 本当なら、編成等にも言及したかったが、遍歴で語ったように、 行動を共にする友人がいまや一人になってしまったので割愛する。 92 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/19(水) 10 42 39.57 ID LnT2lPIj0 どうだろうか、参考になっただろうか? 間違っている点や意見が在ればどんどん言って欲しい。 あくまで保守的な意味で。 探索者 ◆M2JESBg.7cの凸装備 377 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 11 09 40.87 ID mjxy4seRO えーっと、昨日の象の象の人が書いてた探索の際の装備を 俺の好みを多分に織り交ぜて書いていこうと思うんだけど、いいかい? 380 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/20(木) 11 12 38.34 ID W8qR2+TEO 377 要望を出した、俺の口からは何とも言えない。 保守がてら、ということにして、メインの話題が来たら止めるという方向がベストではないだろうか。 382 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 11 17 55.07 ID mjxy4seRO まずは、頭。 像の人も言っていたけど、怪我を防ぐためにもせめて帽子の着用はした方が良いと思う。 今の時期は寒いから、防寒という点を考えると ニット帽は最適だと思うんだ。 あるならドカヘルとかなら安全だけどね。 ただ、いくら安全でもバイクのフルフェイスはオススメできない。 384 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 11 20 30.23 ID mjxy4seRO メインの話題が出たら止める、ね、了解した。 携帯からだから若干のラグは許してちょーだい 386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 11 23 43.64 ID 592lTPNf0 いいよ~ メインなんてないからどんどん書いて 391 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 11 45 48.24 ID mjxy4seRO んじゃ続けるね~。 次に服装ね。 今は寒いから半袖なんていないだろうけど、真夏でも長袖長ズボンはデフォな。 んで、寒いからといって着込んで行くと、動き回ってるうちに汗をかいて その汗で逆に体温を奪われるなんて事もあるから、あまり厚着はおすすめしない。 機能性インナーなんかあると重宝するよ。 予算に余裕があるなら「ゼロポイント」とか「アーマー」とか 余裕が無いなら確かユニクロにもあった 392 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 11 48 51.12 ID aWV6TpSQO あと質問。夏冬とも作業服凸ってどうなの? 俺よくやってるんだけど 393 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 11 54 35.03 ID mjxy4seRO 手は素手は厳禁な。 像の人が言ってたとおり、ケガが怖いし、自衛官ぐらいしか破傷風の予防接種なんて受けてないだろうし。 なので、手の装備でオススメは皮の手袋。 皮の手袋から滑り止めのついた軍手を装着すれば最強かな。 靴は底とか爪先に鉄板が入ってる奴を推奨。 ただ、履き慣れてないと靴擦れとかが怖いから、履き慣れたスニーカーなんかでもいいかも。 そこは各自の判断に任せる 394 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 11 56 43.28 ID mjxy4seRO 392 作業服凸は悪くないと思うよ。 汚れても問題ないし、普通の服よりは生地もしっかりしてるだろうから。 後は季節に合わせたインナー選びじゃないかな 395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 11 58 42.27 ID aWV6TpSQO 394 了解しましたー。 396 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 12 02 47.39 ID mjxy4seRO じゃあ、次から持ち物書いてくね。 質問があったらどんどん書いていってー。 まずは、ライトからいこうか。 ライトは俺もLEDよりマグをオススメするかな。 確かにLEDは輝度も高いし明るいんだけど、見にくいんだよね。 あとLEDの特性なんだけど、視認性は高いけれど照明性はイマイチなんだ。 言い換えると、相手からは見やすいけど、自分はイマイチ見にくいって感じ。 だから、マグを一つくらい持ってた方がいいかも。 像の人が言ってたとおり、場所や状況に応じて使い分けるのがベストだけどね。 ヘッドライトはあったらとても便利だと思う。 397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 12 02 52.49 ID 47TB5sgHO まぁ、気楽に凸しようぜぃ 398 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 12 07 47.10 ID mjxy4seRO 397 そうそう、気楽が一番。 ただ、安全第一で凸してもらいたいのと、これから凸してみたいって人の参考になれば良いなと思って書いてるんだ。 399 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 12 17 19.29 ID aWV6TpSQO あと安全靴のスニーカーてのもどこかに売ってあるんだよな。 それとこれが気になった。 http //m.rakuten.co.jp/arde/i/10021942/?aftk=S7h3Lda.FjKjUYkq0ufV67IXbpf3ofhdKz.DWveBGtPrRGbNnU(携帯用) 400 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 12 20 37.04 ID 5rEmqEO70 トレッキングシューズとかいいんじゃね? 401 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 12 22 10.87 ID mjxy4seRO 後は軽いケガにその場で対応出来るように応急救護セット。 最低でも絆創膏、ガーゼ(できれば滅菌ガーゼ)、化膿止めの軟膏、包帯、水は用意した方が安心。 知識があるなら、包帯じゃなくて三角巾がモアベター。 三角巾は一枚あれば何でもできる優れものなので、あると便利です。 402 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 12 25 37.16 ID mjxy4seRO 399 安全靴のスニーカーはワークマンとかホームセンターで3000円しなかったかな。 そのインナーソール良いね。俺も買おうかな。 400 トレッキングシューズも悪くないと思う。 歩きやすいのが一番! 403 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 12 29 01.83 ID mjxy4seRO 後は下着の着替えは持っていったら安心だと思うよ。 んで、持ち物は防水対策をちゃんとした方が良いよ。 防水対策に便利なのは、ジップロック。 衣類はジップロックに入れて圧縮すればかさばらないし、防水にもなるから、非常に便利なのでぜひ使ってもらいたい 404 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 12 30 35.55 ID 47TB5sgHO たしかに備えあれば憂いナッスング とりあえず高いところから飛びおりるときは足元確認を! 405 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 12 32 50.75 ID l74pBjj+O 段差がないかとかね 落ち葉で見えにくいしね 406 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 12 34 07.28 ID mjxy4seRO 箪笥飛び降りオ(ryの際は要注意って事だなwww 407 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 12 44 21.98 ID l74pBjj+O 大した高さじゃなくても足捻ったらいたいしねー 411 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 13 02 40.84 ID mjxy4seRO 後は持っていって便利なものを書いていこうか? 414 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 13 26 33.78 ID mjxy4seRO 凸レポ用のカメラは必需品だろ? ライターと10得ナイフみたいなのもあると便利かも。 後は、高いけどポケナビがあると便利だよ~。 ポケットサイズのGPSナビで、現在地の座標と方角が表示されるから、山奥なんかの凸の際は重宝するはず。 目的地の座標がわかればナビゲートもしてくれるし 415 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 13 30 01.28 ID l74pBjj+O ポケナビ…便利な世の中になったものです!ポケットピカチュウ! 416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 13 36 30.11 ID EpNJwhGLO 10得ナイフ欲しいなー…… あと新しいデジカメ 修理出しても直るかどうか…orz 417 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 13 40 16.48 ID l74pBjj+O 刃物怖いですぅ<●><●> 418 :象の像の人 ◆Nap/gUKt9E :2007/12/20(木) 13 43 17.40 ID W8qR2+TEO 休憩保守をかます。 詳しい説明が有り難い。 勉強になる。 420 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 13 49 27.91 ID mjxy4seRO ポケナビは登山用品扱ってるスポーツ用品店ならあると思う。3万くらいだったかな 10得も安いやつでいいんだけどねー。 他には何か聞きたいことある? 421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 13 50 19.41 ID l74pBjj+O 3万… 422 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 13 54 07.17 ID 5rEmqEO70 携帯のナビ機能で我慢するわ。 電波はいらないと使えんかったような気もするが・・・。 423 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 13 55 09.31 ID EpNJwhGLO とりあえずはEZナビウォークでもいいじゃない! 10得ナイフの代わりになるもの、何かあった気がするけど思い出せない´` 425 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 14 02 05.35 ID bPaIJvk40 420 今までの実績をよろしく! (経験談など) 426 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/20(木) 14 07 21.12 ID aWV6TpSQO あと地図なんだけど、スーパーマップル関西道路地図06版と姫路圏道路地図があるんだよ。 それでおk? 427 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 14 08 44.12 ID mjxy4seRO 俺の実績かい? 俺は廃墟凸は数回しかないんだぜ。 ただ、山登りとか、雪山のバックカントリースキーとかが好きだから、装備が充実してるのだ。 429 :探索者 ◆M2JESBg.7c :2007/12/20(木) 14 12 42.18 ID mjxy4seRO 426 その地図装備で十分だと思うんだぜ。 行く前にグーグル先生に場所教えてもらうと安心なんじゃない? 探索者気分を味わうならポケナビ買ってグーグルアースで座標だけ調べて座標のみで向かうとか最高に楽しいんだけどなー
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/543.html
ライダー大戦2010(中編) ◆gFOqjEuBs6 ここに二人の男が邂逅してしまった。 身体は化け物でありながら、心に人間を宿してしまった仮面ライダーと。 身体は人間でありながら、心はまさしくモンスターである仮面ライダーと。 化け物の皮を被った人間と。人間の皮を被った化け物。 ここまで二人は、他社の命を奪う為に行動を起こすも、誰の命も奪えなかった。 そういう意味では、良く似た二人と言える。 そんな二人が出会った時、その刃が交差するのは必至。 これは最早、誰にも止められない事だ。 浅倉は、自分のデイバッグの中からペットボトルを取り出した。 にやにやと笑いながら蓋を開け、それを口元へと持っていく。 一口水を飲めばそれで満足。ペットボトルを足元に放り投げた。 それを踏みつける事で、中の水が噴出する。 「さぁ、始めようぜ……ライダーバトルって奴をよ」 アスファルトに出来た水たまりに、紫のカードデッキを翳した。 たちまち装着されるVバックル。元の世界では、これも良く慣れた行動だった。 翳した左手を腰へと引いて行き、右手をカンフーの型のような動きで眼前へと回す。 緩く開いた指で、蛇の牙をイメージ。それを前方へと突き出し、叫んだ。 「変身ッ!」 右手で作られた蛇は、前方の得物をその牙で噛み砕くように突き出された。 すぐに顎まで引かれた右手は、得物を握り潰すように。 左手に掴んだデッキをVバックルへと装填した。 幾つもの銀色の虚像が現れ、オーバーラップ。それは浅倉の身体へと集まって行き。 すぐに紫の装甲――グランメイルを形成した。 気だるそうに息を吐き出しながら、首元を回し、右手をぶらつかせる。 真の仮面ライダー王蛇が、ここに復活した。 ◆ 「らぁっ!」 王蛇は、手した黄金の剣――ベノサーベルでカリスへと切り掛かった。 そんな直線的な攻撃がカリスに通る訳が無い。すぐにカリスアローの弓部――ソードボウで受け止めた。 一瞬の激突。火花が散り、お互いが肉薄する。 蛇をイメージした鎧なのだろうか。何処となくコブラに似た外観の仮面だ。 カリスはすぐにベノサーベルを弾き、身を翻した。 カリスアローを構え、フォースアローを連射する。 「ハハハハハハハハァッ!!」 だが、通用しない。 発射した光弾は全てベノサーベルによって阻まれてしまった。 王蛇はベノサーベルを巧に振り回し、その全てを撃ち落としたのだ。 流石に、使い慣れた武器は違うという事か。 いいだろう、掛って来い。 それでこそ戦い甲斐があるというもの。 戦えば戦う程、自分の中で眠っていた闘争本能が目覚めて行く。 そうだ。自分も目の前の男と大して変わらない。 自分とて本質的には戦いを求めているのだから。 「ハァッ!」 「フンッ!」 二度目の激突。 カリスアローとベノサーベルが、鋭い金属音を鳴らして激突した。 力で押し切る王蛇に、華麗な戦法を得意とするカリスでは部が悪いか。 カリスの腕が、肩が。ベノサーベルとの激突による振動で震えた。 王蛇の一撃は、確かにカリスに響いていた。 カリスアローでベノサーベルを跳ね上げ、今度は自分から前方へと躍り出る。 素早く王蛇の眼前へと潜り込めば、両手で構えたカリスアローを上段から振り抜いた。 されど、それが通る事は無く。 「ははぁっ! やっぱり最高だよなぁ、ライダー同士の戦いってのはぁ!」 「ああ、否定はしない」 ベノサーベルで受け止められた。 嬉しそうに宣言する男に応え、カリスはそのまま弓を振り下ろした。 フォースボウは弓の形をした剣。ゆるやかにしなった弓は、ベノサーベルから滑り落ちるように振り抜かれた。 王蛇の身体の表面を浅く傷つける。 軽い火花が発せられるが、王蛇は大したダメージを受けてはいない。 今度は弓を持つ手を翻し、両刃の剣を振り上げる。 対処しきれずに、王蛇はカリスアローに傷つけられる。 だが、やはり元々大した威力を持たない攻撃では王蛇を仕留めきれない。 「ハァ……ッ!」 「!?」 今度は王蛇の攻撃だ。 溜息を吐き出すように息を漏らし、ベノサーベルを下方から振り上げた。 カリスベイルに火花が走り、後方へと仰け反ってしまう。 すぐに体制を立て直し、腰を低く落とす。獣のように唸り、眼前の王蛇を見据える。 仮面を付けた男との戦いは、忘れかけていた感情を呼び起こさせる。 それはまさしく、研ぎ澄まされた獣の本能。 何が人間らしさだ。 何が優しさだ。 そんなセンチメンタルな感情など捨ててしまえ。 これこそが、戦いという行動こそが。 乾きを癒す事が出来る唯一無二の神聖なる儀式なのだ。 唸るように吠え、カリスは王蛇へと飛びかかった。 「トゥッ!」 防がせはしない。 カリスアローを右上段から振り抜き、手首を翻す。 両刃の剣は左上段から王蛇を切り裂き、同じ容量で右上段から刃を叩き付ける。 何度も、何度も。得物を刈り取る獣のように、フォースボウからの斬撃を王蛇に浴びせる。 激しい火花が王蛇のグランメイルで爆ぜ、今度は王蛇の身体が仰け反って行く。 王蛇が苦し紛れにベノサーベルを叩きつける。が、それが当たる事は無い。 カリスは身体を翻し、左足を軸に一回転。上半身の硬度が下がった事で、ベノサーベルは空を切るしか無かった。 そのまま回転の勢いを活かし、カリスが繰り出すは後ろ回し蹴り。 王蛇の胴を思い切り蹴りつける。 「ぐ……あぁ……ッ」 胴にめり込んだ蹴りは、王蛇にダメージを与えるには十分。 蹴りの衝撃で、王蛇は数歩後方へと蹴り飛ばされるように後退。 すぐに体制を立て直し、ベノサーベルを構え直した。 挑発するように、カリスが吠える。 「どうした! そんなものか仮面ライダーッ!!」 「はっはは……はははは! はっはっはっはっはぁっ!! いいぜこの感じ! 面白いじゃねぇか、お前!」 王蛇はベノサーベルを投げ捨て、腹部のデッキから一枚のカードを取り出した。 何処かから取り出した牙召杖ベノバイザーに、そのカードを装填。 そのままカードホルダーをバイザーの内部へと叩き込んだ。 ――STRIKE VENT―― 王蛇の右腕に装着されるのは、犀の頭部を模した銀色の手甲。 腕を覆い隠して余りある装甲の先端からは、黄金の角が装備されている。 見ての通り、先程始を襲ったメタルゲラスの頭部をそのまま武器にしたものだ。 それを構えたまま腰を低く落とし、王蛇はすかさずカリスの間合いに踏み込んだ。 当然カリスも黙ってはいない。攻撃される前に、王蛇をカリスアローの横一閃で薙ぎ払う。 が、王蛇はその動きを身切ったように、腰を落とした。 結果カリスアローの一撃は防がれ―― 「――ぉぉらぁぁぁッ!!」 「ぐっ……ガァ……ッ!?」 カリスの胸部装甲・シャドウブレストに、強烈な一撃が叩き込まれた。 下方から撃ち出されたストレートパンチと、メタルホーンの貫通力は凄まじい物だ。 メタルホーンはそもそも、どんなに分厚い鉄板であろうと容易く貫通してしまう程の武器。 それを、仮面ライダーの腕力で力任せに叩き付けられるのだからたまったものじゃない。 生半可な相手ならばこの一撃で死に追いやる事も可能だ。 だが、このカリス相手にそう簡単には行かない。 カリスベイルに使用されているのは、古代の超鉱石・シャドウクリスタル。 シャドウクリスタルは、ライダーシステムを造った人類ですら発見し得なかった超鉱石。 自己再生機能を持った、地球上でも最高硬度に属する物質なのだ。 それをさらにシャドウタールで強化し、何層にも重ねた装甲は、そう簡単には破られはしない。 カリス自身もそれを自負していた。だが、だからこそ驚愕は隠せない。 それを持ってしてもメタルホーンの威力を完全に防ぎきる事は叶わなかった。 予想外に大きなダメージに、カリスの動きが止まった。 「どうした、その程度かよ!?」 繰り出されるのは、王蛇からの追い打ち。 ふらふらと、まるで隙だらけな動きでカリスを挑発する。 いや、隙だらけに見えはするが、実際はそうでは無い。 王蛇はどの体制からでも、攻撃に入れるのだ。それを理解しているからこその、あの態度。 現に今だってカリスアローを叩きつけるつもりが、王蛇のメタルホーンに受け止められてしまった。 メタルホーンはそのままカリスアローを跳ね除け、力任せにカリスの左肩に振り下ろされた。 肩部への痛みに、左腕から指先までがびくんと震える。 「ぐ……ぁぁ……ッ!」 メタルホーンは、連撃でカリスベイルを傷つけて行く。 一撃目は、カリスの胸部装甲を、脇腹から振り上げるように。 二撃目は、メタルホーンから繰り出す力任せのパンチ。それをカリスの心臓部へと叩き付ける。 三撃目は、仰け反るカリスに追い打ちを掛けるように左側からメタルホーンを叩き付けた。 最後の一撃を受けたカリスは、仰け反る瞬間に地面を転がった。 このまま王蛇の射程内に居続けるのは拙いと判断し、王蛇と距離を取ったのだ。 相対する王蛇は、挑発するように構え、言った。 「クク……ハハハハハァ! どうした、ライダーなんだろう! 俺をイライラさせるな!」 「黙れ……! 俺を、仮面ライダーと呼ぶなぁッ!!」 怒気を込めた咆哮。 そうだ。俺は仮面ライダーなどではない。 オリジナル仮面ライダーと言えば確かにそうだが、その行動に仮面ライダーらしさなど皆無。 正義の為に戦う彼らと、命を奪う為に戦う自分とでは、根本的に違うのだ。 だが、目の前の男にそれを言ったところで無駄だろう。 何故なら、目の前の男だって仮面ライダーとは言い難い殺人鬼だからだ。 立ちあがり様に、腰のカードホルダーから二枚のカードを取り出した。 カリスは二枚のカードを立て続けにラウズする。 ――CHOP―― ――TORNADO―― ラウズしたカードは、チョップヘッドとトルネードホークのカード。 一枚目。チョップの効果は、カリスの手刀に力を与え、絶大な威力を引き出す事。 二枚目。トルネードの効果は、カリスの攻撃に風の属性を追加し、威力を高める事。 二枚のカードは空中に蒼い紋章を描き、カリスの身体へと吸収されて行く。 カリスの周囲を竜巻が覆い、その手刀には雷が宿る。 二枚のカードによるコンボが発動。 ――SPINNING WAVE―― ――CONFINE VENT―― 「なにっ!?」 驚愕した。 カリスの周囲から、巻き起こる竜巻が消え失せた。 カリスの腕から、その輝きが消え去ってしまった。 確かに二枚のカードによるコンボを発動した筈なのに、その効果は何処にも表れない。 何故だ、と。考える前に、カリスの目に入ったのは、牙召杖を構える王蛇の姿。 なるほど、そういう事か。王蛇が使った何らかのカードに、スピニングウェーブは無効化されてしまったのだ。 二枚のAPの合計は2000。これでカリスは、2000ものAPを無駄に消費した事になる。 最初のフロートで1000、今回で2000。残ったAPは4000。 使用可能な大技は、あと一回。それを無効化されてしまえば終わりだ。 仮面の下で舌打ちをしながら、再びカリスアローを構える。 相対する王蛇は日光を浴びるように両手を広げて、言った。 「ライダーだろうがモンスターだろうがそんな事はどうでもいい! 戦えるのなら同じだ!」 「……ああ、そうだ。貴様の言う通り、俺は戦う事しか出来ないモンスターだ……! ならばせめてモンスターらしく、殺すことでしか他者と向き合えない化け物(ジョーカー)として……俺は貴様をブッ殺す!!」 力の限り宣言した。 そうだ。何を躊躇う必要がある。 今この瞬間だけは、戦いの瞬間だけは。 俺は何もかも全てを忘れる事が出来た筈だ。 だから、ギンガには悪いが今だけは戦わせて貰う。 本能に任せて、獣の様に戦わせて貰う。 相手は仮面ライダー。自分はライダーの宿敵である化け物。 化け物らしく醜く戦う事こそが、仮面ライダーと自分との宿命。 ならばこそ。その宿命に応える為にも、眼前の仮面ライダーを徹底的に叩き潰す! そうだ。今、一人の化け物・ジョーカーとして、目の前に居る仮面ライダーをブッ殺す! 「―――ル゙ァァァァァァァアアァァァァウアアアアアアアアッ!!!」 両手を広げ、咆哮する。 天に向かって、まさしく獣の様に。 凄まじい威圧感が込められた咆哮。 大気が、大地が、びりびりと振動する。 王蛇は更なる力の解放に素直に喜んでいるのか、嬉しそうに笑い続けていた。 走り出したこの身体は、もう誰にも止める事は出来ない。 本能に突き動かされるままに、奴をブッ殺すまで走り続ける。 あの仮面ライダーに、俺をこの姿にさせた事を後悔させてやる。 その笑いが、二度と発せられない様にしてやる。 その余裕を、硝子の様に撃ち砕いてやる。 ◆ カリスを包むシャドウフォースが霧散した時、そこに居るのはカリスでは無くなっていた。 人間の恐怖心を掻き立てる鬼の様な表情。それを覆うのは、クリアグリーンのフェイスカバー。 剥き出しの筋肉組織は、まるで人体構造を模したかの様で。醜悪な身体は、まさしく死神を連想させる。 この姿こそ。最強にして、最凶の死神の姿。 並みのアンデッドなどは、只の一撃で封印に追いやる程の戦闘力。カテゴリーキングですら恐れる化け物。 死神ジョーカーは、今ここに復活した。 「そうだ、それだ! もっと俺を楽しませてくれ!」 強大な力を前に、感じたのは狂喜。 ジョーカーの威圧感は、王蛇にも良く解る。 解るからこそ、喜んでしまう。強い相手と戦う事が出来る快感に、酔いしれてしまう。 目の前の化け物が先程までのカリスの比では無い事も。 生半可な戦いをすれば、たちまち死においやられてしまうであろう事も。 全て解っているからこそ、感覚が研ぎ澄まされていくようなこの快感を止める事が出来ない。 最初の一撃は小手調べとして、大きな技をぶつけさせてもらう。 これで死んでしまうようであれば、それまでという事だ。 精々がっかりさせてくれるなよ。 ――FINAL VENT―― 電子音が鳴るや否や、現れたのはメタルゲラス。 装填したのは、犀の紋章が描かれたファイナルベントのカード。 かつて仮面ライダーガイが使用した、どんな障壁をもブチ抜く大技だ。 右腕に装着したメタルホーンを左手に乗せ、とんとんを軽く叩いて、軽い余裕を見せた。 走り出したメタルゲラスに飛び乗り、その肩に脚を乗せる。 突き出したメタルホーンは、一直線にジョーカーを狙い定めて。 されど、ジョーカーは動じない。深く腰を落として、手に持った緑のナイフを構えていた。 真っ向からぶつかる気だ。 面白い。その自信を打ち砕いてやる。 メタルホーンは鋭い閃光を放つ。仮面越しで無ければ目も開けられない程だ。 そして――凄まじい加速で、ジョーカーに激突。 「グウアァァァァァァッ!!」 「なんだと……ッ!?」 刹那。ジョーカーが咆哮と共に、緑のナイフを一閃したのだ。 光り輝く刃は、同じく光り輝くメタルホーンを正面から受け止めた。 そのままメタルホーンの黄金の切先は、ぱきぱきと砕かれ。 一瞬の後には、王蛇の身体はメタルホーン毎弾き飛ばされていた。 身を以て体感したのは、とんでも無い威力と、とんでも無い破壊力。 王蛇の身体は地に足を付ける事も叶わず、全身をアスファルトへと打ち付けながら吹っ飛ばされた。 急激な勢いで弾き返された王蛇の身体は、遥か後方の建物へと叩き付けられる。 瞬間、建物の壁は清々しい程の破壊音と共に大きく穿たれた。 コンクリートで造られた建物の壁には、王蛇の激突によって大きなクレーターが出来あがったのだ。 「が……あぁ……」 それでも、負けはしない。 何とか着地し、よろよろと立ち上がり目線を上げる。 上げられた視界が捉えたのは、眼前に佇む化け物・ジョーカーの姿。 死神は既に距離を詰め、王蛇の眼前まで迫っていた。 ジョーカーは王蛇の仮面を片手で掴み、軽々と持ち上げる。 凄まじい威圧感。凄まじい腕力。凄まじい握力。 浅倉が今まで戦ってきた仮面ライダーなどとは比較にもならない程の力の体現者。 王蛇の仮面が、みしみしと音を立てる。 ジョーカーの爪が仮面の表面装甲を割り、内部へと侵入してきたのだ。 紫の仮面全体に亀裂が走る。頭を割られるような鈍痛が、浅倉を襲った。 仮面ライダーの仮面を素手で割るモンスター等、浅倉自身も聞いたことがない。 掴まれた王蛇の仮面は、そのままジョーカーの眼前まで引きつけられた。 「仮面ライダァァァァアアアアアア……!」 剥き出しの牙が動く。 気味の悪い吐息と共に吐き出されたのは、憎むように告げる正義の名前。 そんなに仮面ライダーが憎いか。そんなに仮面ライダーを殺したいか。 ならばとばかりに、王蛇は浮き上がった身体から力の限りの回し蹴りを打ち出した。 「ぐっ……ぁ……ッ!」 されど、結果は予想通り。 王蛇の蹴りは、届きすらせず。ジョーカーの身体に当たる前にその左腕によって阻まれたのだ。 左腕の筋肉から無数に生えたトゲに激突した王蛇の右脚の装甲には、幾つかの亀裂が走った。 しかし、それだけで済みはしない。 ジョーカーは王蛇の蹴りを受けた左腕を、そのまま真っ直ぐに突き出した。 王蛇の胸部グランメイルを、突き出された拳が打ち砕いた。仮面の下で、浅倉が鮮血を吐き出す。 パンチの勢いはそのまま突き抜け、王蛇の身体は再び遥か後方へと吹き飛ばされ―― 先程の衝撃で亀裂の入ったコンクリの壁に、再び叩き付けられた。 今度は流石のコンクリの壁と言えども耐え切れず、粉々に砕け散る。 王蛇の身体が、穴が開いた壁から建物の内部へと叩き込まれた。 「は……はは、は……いいぜ、これだ! これをやりたかったんだ……!」 だが、それでも。それでも王蛇は笑っていた。 目の前のジョーカーが化け物なら、浅倉威と言う男もまた化け物。 人間の皮を被った化け物にとって、これ程楽しめる戦いは未だかつて有り得なかった。 これで最後だ。こんなに楽しい戦いで死ねるなら、本望だ。 最後の力を振り絞って、浅倉はデッキから一枚のカードを引き抜いた。 ――FINAL VENT―― 窓硝子の鏡面から、紫の大蛇が召喚された。 大蛇は地を這うように王蛇の背後へと迫り、王蛇も大蛇と共に走り始める。 地を這う蛇と同じように、低く、速く。 大蛇と王蛇は一つとなり、全身全霊を込めて駆け抜ける。 この戦いの相手への、最高の礼儀で応える為に。 建物の壁に開けられた穴から飛び出し、王蛇は空高く飛び上がった。 それに呼応するように、大蛇・ベノスネーカーは口から溶解液を吐き付ける。 その効果は、吐き出された溶解液による更なる加速。 両足を交互連続で突き出し、下方のジョーカーへと迫る。 「そうだ、来い仮面ライダァァァァアアアア! 俺を倒して見せろォッ!!」 ジョーカーもまた、王蛇に応える様に腰を深く落とした。 王蛇が見たのは、緑の閃光。眩い程の輝きを放つ武器。 それは先程と同じ、緑の輝きを放つジョーカーの固有武装。 それは見る間に光を強めて行き――投擲された。 「ルァァァアアァァァアァアアアアアァァァァァアアアアアァァァァアアアアアッ!!!」 「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」 咆哮、激突。全ては一瞬。 王蛇の脚が投擲された刃を蹴った。一撃、二撃と蹴り続けた。 されど、いくら蹴られようともジョーカーの刃はビクともしない。 輝く刃を蹴れば蹴る程、王蛇の脚の装甲に亀裂が走って行く。 やがて刃は、王蛇の脚の装甲を見事に引き裂き、打ち砕いた。 当然、それで終わる程生易しい攻撃でも無い。 輝きを放つ刃は、王蛇の胸部のグランメイルにまで到達。 そこで刃はブーメランのように旋回し、横一線に胸部を切り裂いた。 ジョーカーの攻撃で既にダメージを負っていたグランメイルに、刃を防ぐだけの耐久力は残っては居ない。 切り裂かれたグランメイルから、浅倉の鮮血が飛び散った。 ぐるんぐるんと回転しながら、刃はジョーカーの手中へと戻って行く。 されど、対する王蛇に戻る場所は無い。 キックをするだけの体力も、精神力も。 今の浅倉には何も残されては居ない。 全てを出し切った王蛇の身体はそのまま重力に引かれ、落下。 硬いアスファルトに、王蛇の装甲は叩き付けられた。 ◆ 「はは……楽しいなぁ……戦いってのは……」 激しい戦闘によるダメージに、王蛇の装甲は限界を超えていた。 それでも、ここまで浅倉を守る為に戦い続けたあたり、流石仮面ライダーの装甲と言える。 アスファルトとの激突による衝撃を防いだのを最後に、グランメイルは虚像と共に消えてしまった。 最早浅倉の身体を守る物は何もない。浅倉は血まみれの身体で、青空を見上げていた。 されど、致命傷に至る攻撃はまだ受けてはいない。 そんな浅倉にトドメを刺すのは、死神ジョーカー。 「楽しかったぜ、お前……最後に教えろよ、名前」 「相川……始」 ジョーカーは、牙が剥き出された醜悪な口元を動かし、答えた。 浅倉は無言で笑う。今からジョーカーは、浅倉の命を刈り取る。 右腕から生えた緑の鍵爪を、天に向かって振り上げた。 それを浅倉の喉元に突き刺せば、この戦いは自分の勝利に終わる。 ようやく人を殺して、最初の一歩を踏み出す事が出来る。 ジョーカーはその鍵爪を、勢い良く浅倉の喉元へと突き立てた。 ――なんで……! どうしてそんな人間らしさを持ってる貴方が、平気で人を殺せるんですか!? ―― 不意に、女の声が脳裏を過った。 浅倉の喉元に付き付けられた鍵爪は、浅倉の喉の皮を貫く直前で止まる。 何故だ。自分に問いただす。 自分は殺す事でしか他者と向き合えない死神の筈だ。 それなのに、どうしようも無くあの女の顔が浮かんでしまう。 だけど、それでも。殺さなければ自分は前には進めない。 今度こそ殺そうと、鍵爪に力を込める。 ――貴方はまだ引き返せる! 人殺しなんて絶対にさせない!―― 何故だ。何故邪魔をする。 自分の中の何かが、人の命を奪う事に抵抗していた。 それは、相川始としての人間の心。それは、ギンガに教えられた人間らしさ。 人間らしさ等と、考えるだけで笑ってしまう。 所詮は弱い者が慣れ合うだけではないか。 それなのに。解っているのに。どうしようもなくて。 ――SPIRIT―― 相川始は、浅倉威に背を向けた。 ジョーカーラウザーに通したカードは、人間の姿に戻る為のカード――スピリット。 ラウザーから現れた半透明のゲートをくぐり抜け、人間の姿に戻ったのだ。 「何で殺さない」 「わからない」 背中に投げ掛けられたのは、先程まで戦っていた男の声。 始は一言そう告げると、浅倉には見向きもせずに歩き出した。 「いいのか、俺を殺さなくて。後悔するぜ?」 「その時は、もう一度戦ってやる」 それまでに、答えを見付ける。 何の為に戦うのか。自分は強さの果てに何を目指して戦えばいいのか。 それまでは、戦いなどやるだけ無駄というもの。何度戦ったって、このような結果になる筈だ。 背後から、高らかな笑い声が聞こえる。あの男もまた、自分と似ているのだろう。 ただ闘争本能に突き動かされるままに、戦いを求めて。戦う為だけに戦う男。 その戦いの果てにあるのは、“死”だけだ。意味も無く戦い続けたって、いつかは死ぬしか無い。 だが、自分は違う。限りなく似てはいるが、決定的に違う。 始は、“生きる”為に戦っているのだ。生きて、答えを見付ける為に戦っている。 その先にあるものが何かはまだ解らないが、死ぬ為に戦うのは御免だ。 だから、始は戦う。答えを見付ける為に。 「……生きる為に戦え」 最後に一言だけ、そう告げた。 この言葉は、果たして誰に向けて発せられた言葉なのだろうか。 浅倉に対してか。それとも、自分に対してか。 始が踏み締める大地は、瓦礫の山になっていた。 何者かの戦闘によるものか、元々こうなっていたのかは始には解らない。 だが、それでも始は道無き道を進んで行く。 闇の中に潜んだ答えを、見付け出す為に。 【1日目 午後】 【現在地 F-7 壊滅した街】 【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状態】変身による疲労(大)、言葉に出来ない感情、一時間変身不可(カリス、ジョーカー) 【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、 録音機@なのは×終わクロ 【思考】 基本:何の為に戦うのか、その答えを見付ける 1.生きる為に戦う? 2.アンデッドの反応があった場所、もしくは他の施設に向かう。 3.アンデッド、エネル、赤いコートの男を優先的に殺す。 4.アーカードに録音機を渡す? 5.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。 6.ギンガの言っていたスバルが気になる。また他の4人(なのは、フェイト、はやて、キャロ)も少し気になる。彼女達に会ったら……? 7.ギンガの死をこのまま無駄に終わらせたくはない。 8.浅倉が再び戦いを挑んでくるなら受けて立つ。 【備考】 ※自身にかけられた制限にある程度気づきました。また、ジョーカー化の欲求が強まっている事を自覚しました。しかしジョーカーに戻るつもりは全くありません。 ※首輪を外す事は不可能だと考えています。 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。 ※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。 ※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。 ※ギンガを殺したのは赤いコートの男(=アーカード)だと思っています。 ※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。 ※殺し合いには乗っているつもりですが、今は誰も殺すつもりはありません。 【現在地 F-6 レストラン跡地付近】 【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】 【状態】充実感、疲労(大)、全身にダメージ(大)、一時間変身不可(王蛇) 【装備】カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎 【道具】支給品一式×2、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、 フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12、ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎 サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物。 1.一先ずは体力の回復を待つ 2.その後は天道の居る温泉に向かうか、相川始を追いかけるか、市街地に向かう? 3.相川始ともう一度戦い、今度は決着を付ける 4.回復した天道と戦う時にはベルトを返した上で戦う。 5.なのは(StS)と遭遇した時にはヴィヴィオの名前を出してでも戦ってもらう。 6.キング、鎌を持った奴(キャロ)、なのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ユーノと戦う。 7.首輪にイライラ、外したい。 8.プレシアには「規定の人数を殺害した参加者には、望む人間の居場所を教える」という特典を採用してほしい。 【備考】 ※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています。 ※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムに気付きました。 ※カブトに変身できる資格があるかどうかは分かりません。 ※なのは、フェイト、はやては自分の知る9歳の彼女達(A s)とヴィヴィオの言っていた大人の彼女達(StS)の2人がいると考えています。 ※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。 ※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。 ※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。 Back ライダー大戦2010(前編) 時系列順で読む Next ライダー大戦2010(後編) 投下順で読む 相川始 浅倉威 柊かがみ
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876 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 05 08 大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 幕間 -ハイダ工廠強襲- GAEハイダ工廠は、ネクストの接近を知らせるアラート音が響き渡っていた。 GAはついにグループ盟主の意に反したアクアビットとの取引を続けるGAEの粛正に乗り出したのだ。 標的となったのは、アクアビットと提携して建造が進められている大型兵器『ソルディオス』。 いくらかは完成状態の物を無事に送り出すことに成功しているが、まだ工廠内部には製造中で残っている。 何とかそれを運び出すか、あるいは技術者を逃がすか。いずれにせよ時間稼ぎが必要だった。 「いそげ!GAの戦力が接近中だ!」 「まだ作業員が……」 「最優先で離脱させろ!警備部門は白兵戦用意!」 工廠の警護のための部隊が次々に展開されていく。アラート音には兵員が動いたり、兵器が起動する音が混じっていく。 MT、ノーマルAC、ガードメカ、あるいはパワードスーツなどなど。それらは一つの工廠を守るにしては過剰過ぎた。 無論、過去にテロリストによって襲撃を受けたことがあるハイダ工廠はその警護を増強していた。その際はGAの紹介で アナトリアの傭兵がテロリストを排除したが、それでも工廠の持ち主であるGAEは油断なく戦力を配置した。 否、見方によっては、GAEがGAA(グローバル・アーマメンツ・アメリカ)に警戒を強めたと言えるかもしれない。 そこについては、GAE上層部しか知りえない。ノーマルACやガードメカは通路にも展開し、外部に設けられた砲台などがレーダーの情報に従い順次砲の向きを変える。しかし、そのうち一つがいきなり弾け、爆発した。 「!?」 発砲音が遅れて届く。 遠距離からの狙撃で、大型砲が撃破された。続くようにミサイル砲台や対空砲が破壊される。 展開していた警備部隊が敵影を探す。いた。しかし、その位置ははるか遠くだった。 『狙撃だ!狙い撃ちにされてる!稜線に隠れろ!』 『迎撃用意!ネクストが突っ込んでくるぞ!』 悲痛な声で通信が交わされ、絶望的な戦闘が始まった。 877 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 06 21 『命中。左4度、大型ミサイル搭載車両』 『ラジャー』 発砲音と、数瞬遅れた着弾。 スポッターとスナイパーのコンビネーションで2機のネクストは敵陣に穴を穿っていた。片方のネクストはスナイパーライフルを持ち、片方のネクストは左の背部武装に観測機器を積み込んでいる。それによって、一定速度に維持しながらとは言え、時速500kmもの速度でOBで飛行しながら標的を狙撃してのける仕組みだった。十数発の発砲が行われGAEハイダ工廠の入り口を固める戦力が減少していく。 的確に、ネクストの進行を妨げるような大型火器やノーマルACが優先的に狙われる。 『ハイダ工廠入口を捕捉した、このまま突入する』 『了解。俺はここで時間稼ぎをする。GAEのリンクスだとミセス・テレジアがいるが……まあ、何とかする』 『任せた』 ハイダ工廠へと突入していくのは、白いカラーリングのSUSANOWO-01に黒い鴉のエンブレムを刻む『白鴉』だった。 『アナトリアの傭兵』あるいは『レイヴン』と呼ばれる彼は、ここからが本番だ。彼がこの工廠で建造している大型兵器を見せしめを兼ねて破壊する。背中に背負っていた観測装置はパージしていく。ここからは不要だ。 他方で、SUSANOWO-01にBFFの4脚パーツをアセンブルしたネクストは防衛線を強行突破するために続けていたOBを緩めて、徐々に速度を落としていく。そのネクストの名前は『水破兵破』。日企連のオリジナルリンクス『虎鶫』の愛機だった。 スナイパーライフルとアサルトライフル、垂直ミサイル、レーザーキャノンという重武装のアセンブルだ。 そのようなアセンブルをした理由はすぐにわかる。ノーマルACやMTがあちらこちらからわらわらと湧いてきたのだ。 『数だけは立派ってか?』 しかし、虎鶫はおびえない。この程度の数ならば、国家解体戦争時に経験してきた。 数百の敵を圧倒的な質で覆す、まさに一騎当千の古強者。それがアーマードコア・ネクストであり、リンクスだ。 『さて、お仕事お仕事』 優先するのは大型兵器やノーマルAC。スナイパーライフルの弾丸は的確に砲塔やコア部位を貫いていく。 並行して、アサルトライフルがMTを撃破していき、硬い敵はレーザーキャノンで消し飛ばす。 彼の役目はアナトリアの傭兵をハイダ工廠に送り込み、ことをなし終えるまで包囲網を排除し、撤退できるようにすること。 その為にこそ、このような重武装。無論殲滅力ではアックスブロウも適しているのだが、迅速の撤退には自分の方が有利だ。 878 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 07 10 「さて、来るかな……」 虎鶫はAC4のシナリオを知っている。それがアックスブロウではなく自分が派遣された理由。 ハイダ工廠の粛正は、アナトリアの傭兵が工廠内部で製造中の大型兵器の破壊を目的として行われた。 しかし、ハードモードにおいてはなぜかGAのリンクス『メノ・ルー』が操るプリミティブ・ライトが増援として表れる。 何故GAの戦力がGAEの工廠へと救援に訪れたのか。何故アナトリアの傭兵という、GAに協力的な戦力を攻撃するのか。 GAEが偽の情報で彼女をだましたという説もあるが、真実は分からない。 ただ一つ言えることは、彼女がここに現れる可能性があるということ。 (まぁ……レイレナードを通じて手を回しているんだろうがなぁ) ハイダ工廠ではGAEとアクアビットの製造しているソルディオスがあるのだろう。 そして、完成しているソルディオスは襲撃の前にいくらか運び出されている。そして技術者もすでに逃げ出している。 アクアビットの親企業はレイレナード社だ。そして、密かに日企連はレイレナード社との伝手を持っている。 GAの依頼とはいえ、GAEの粛正に日企連のオリジナルリンクスが投入され、そして襲撃の前になぜか襲撃が露見した。 (まあ、はっきり言えばやらせの開戦理由だよなぁ) 果たして運び出されたソルディオスがすべて無事にレイレナード陣営の元に届けられるか。 あるいは、技術者たちは本当にレイレナード陣営の所に逃げ込めたのか。 その技術者たちが本当にGAEとアクアビットに殉じるのか。 この粛正のタイミングは誰かの意思によって決まったのか。 この粛正で連鎖的に発生するであろう戦争は、本当に自然な企業間闘争なのか。 (おお、エグイエグイ……) 盛大なマッチポンプ。 レイレナードと日企連が、オーメルらが密かにレイレナードを潰そうとする動きを利用した、壮大なモノ。 一体どこの誰が、自社の崩壊さえも計算の上で戦争を起こすと考えるだろうか。 879 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 08 08 白鴉が突入してから10分余り。水破兵破の正確な射撃は、一定距離より内側に防衛部隊を近寄らせずにいた。 追加弾倉を格納している水破兵破の弾薬には余裕があった。元々そういう役目と割り切っていれば、このようなアセンブルも可能だ。 『退屈だな……流石に無駄に突撃はしてこないか』 その時、水破兵破のレーダーに反応があった。ネクストの運搬に使われる高速飛行輸送機。所属はGAE。 このタイミングでとなれば、おのずと候補は絞られる。 『ネクストの反応、急速接近。GA社のプリミティブ・ライトです!』 『おいでなすったか……って、反対側かよ!』 出現位置が予想外だった。工廠の反対側まで追いかけなければならない。ハイダ工廠は大きい。 元々は虎鶫が何とかプリミティブ・ライトを足止めして「GAによるソルディオス破壊」という事実を成立させるはずだった。 しかし残念なことに日企連は「プリミティブ・ライトがハイダ工廠に現れる」ことは知っていても、どのようにして現れたかまでは知らない。 あっという間にプリミティブ・ライトはハイダ工廠内部へと突入していく。追いかけたいところだが、あいにくと 水破兵破の装備は大型で工廠内部で使うには不向きだ。それに、白鴉が出てくるための退路を確保し続けなければならない。 『クソ!今の水破兵破じゃ工廠内部に突っ込めない!オペレーター!レイヴンに注意を飛ばせ!多分GAEの馬鹿に騙されてる!』 『すでに通達してあります……あ!白鴉、プリミティブ・ライトと会敵!戦闘を開始しました!』 『遅かったか……!』 工廠内部はそれなりに広いとはいえ、ネクストが通過するのはギリギリだろう。 白鴉も突入用装備の為、そこまで火力があるわけではない。狭い空間なら互いが回避ができないままにダメージレースとなり、重量二脚型ネクストのプリミティブ・ライトの方が有利となる。負けるとは思えないが、殺してしまうのは寝覚めが悪い。 そう思ったとき、水破兵破の周囲に大口径弾が着弾する。 『ぐぉっ……!?まだいたのかよ!』 クエーサー。PAも展開可能で大型砲や機銃などを搭載した巨大兵器。 ネクストほどではないにしろ、厄介な戦力だ。倒せなくはないが、面倒なことに変わりがない。 『敵増援を確認。どうやら続々と到着しつつあるようです!』 『展開が速過ぎるな……やはりGAE側に漏れていたか。 こっちで可能な限り通常兵力を排除する。最悪プリミティブ・ライトを撃破して回収、そのまま離脱させろ!』 『了解しました!ご健闘を!』 白鴉のオペレーターのフィオナの声に、水破兵破のスナイパーライフルの銃声が答える。 祈るような銃撃は、着実に敵機を吹き飛ばしていく。大量のMTはミサイルやレーザーキャノンで塵に変え、生き残りをライフルが打ち抜く。 『早く済ませてくれよ……!』 レーダーが感知する敵の数はじわじわと増えている。 というか、地形や配置によって包囲を構築しつつあった。その包囲網を破るべく、虎鶫は攻撃を続行した。 880 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 08 48 この事態を俯瞰的に見れば、GAEの意図が見えてくる。メノ・ルーはGAにとっては貴重な戦力であることは間違いない。 GAはメノ・ルー ローディー エンリケ・エルカーノ ユナイト・モス マタドール・フェザーなどの リンクスを戦力として抱えている。しかし、後続のリンクスの養成は順調とは言い難く、アナトリアの傭兵が国家解体戦争以来、屋台骨の一人として雇用され続けているのも、使い勝手の良い戦力が不足していることに由来する。 だが、ここでそのGAのリンクスを日企連リンクスが、ほぼGAに出向しているアナトリアの傭兵かBFFと関係の深い 虎鶫が撃破すれば、確実にGAと日企連の関係はこじれ、さらにBFFとGAの関係まで連鎖的にこじれる。 そうすればGAEはGAからの離脱の状況を生み出しつつ、GAの戦力を削ることができる。 そもそもメノ・ルーが欧州にいたこと自体、GAEの要望によるものだった。確かにアナトリアの傭兵は使い勝手の良い戦力だが、結局体は一つしかない。そして、プリミティブ・ライトはGAE工廠の救援要請にこたえて駆けつけ、戦闘を開始した。 『くっ……』 SUSANOWO-01をベースとする白鴉の機体表面にガトリングガンの弾丸が命中する。 基礎的な防御が堅いことが幸いとなったのか、弾丸は弾かれる。しかし、ダメージを受けたことに変わりはない。 レイヴンは正直状況の悪さを呪っていた。遮蔽物が多く、おまけに地形として引っかかりやすいハイダ工廠内部は、白鴉の機動力が逆に足かせとなっていた。動いてかわせない。向こうはこちらの攻撃を躱さない。重量二脚型の機体は、防御において遥かにこちらより優れている。ガシャンと機体が工廠の隔壁にぶつかる。それ無理やり押しのけてバズーカの一撃を回避する。 今度は天井から釣り下がるクレーンにぶつかった。ワイヤーが背部武装に絡まるが、無理やりちぎった。 『諦めて、お願い!』 メノ・ルーの声が届く。だが、諦めてやるわけにはいかない。 スウッと息を吸う。そして、ゆっくり吐き出す。意識が冴え、焦りを追い出す。 『おい、聞け!プリミティブ・ライト!』 反応なし。オープン回線で呼びかけるが、攻撃の手は緩んでいない。 『話さえ聞かないか……!』 いや、無線が妨害されているのか。それとも、機体そのものに細工がなされているのか。 だとするならば、プリミティブ・ライトは間違いなく捨て駒として利用されている。 自分が撃破すればGAEと敵対することになるし、GAと日企連の関係にもひびが入る。 もしプリミティブ・ライトが自分を倒せるならばそれもよし。その時は『処理』をすればいい話だろう。 その時、虎鶫から通信が入る。 『レイヴン、悪い知らせだ。GAE所属と思われる重爆撃機を近くで捕捉した。とっとと片付けないと丸ごと焼かれる。 こっちで足止めするが何時増援が来るかわからん!』 『了解した……!』 予感は的中。 虎鶫が爆撃機を迎撃しているが、何時まで持つだろうか。 10分という制限時間を、レイヴンは自分へと課した。それがおそらく限界。 AMS接続状態での最大戦闘時間はおよそ1時間程度。敵性が低いことで、一目連のように長い時間は戦えない。 直感がその数字を導き出した。離脱のことを考えれば、あまり負荷のかかる戦闘はしない方がいい。 短く、簡潔にしなければならない。 881 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 09 41 白鴉は、巨大兵器の製造ドックに飛び込んだ。 ハイダ工廠でも比較的広い空間が確保されている場所で、今も巨大兵器の残骸が煙を上げている。 ようやくガトリングガンやバズーカから逃れる空間を得た白鴉は、機敏に飛び回って回避する。 だが、同時にプリミティブ・ライトも背中の大型ミサイルを使える空間を得た。狭い空間なので爆風が拡散せず、逆に反響することで機体にダメージを与えやすくなっているだろう。事実、プリミティブ・ライトはミサイルを発射し始めた。 『被弾も考慮せず……!』 だが、理にかなったミサイルの使用だ。そもそもサンシャインは重装甲で防御しながら戦う設計思想を持っている。 リンクスの技量をネクスト本体でカバーするというGAの方針が、その重装甲を作らせた。咄嗟に右手のマシンガンで破壊する。 爆風が工廠内部を破壊するが、構わない。 (ジリ貧か……どうする!?) 白鴉の武装は軽装だ。狭い空間でも取り回しの良いマシンガンと大型兵器用のレーザーブレード。 右の背部武装には軽量レーザーキャノン。だが、どれも弾数が通常兵器との戦闘で減っている。 爆風で機体が揺れる。辛うじてミサイルの直撃を避けたが、爆風は確実にダメージを与えている。 バズーカを反射で回避。天井にぶつかって、慌てて下方へとQB。そこにガトリングガンが追いかけてくる。 戦闘を継続しながらもレイヴンはコンピューターのライブラリーを呼び出す。GA社のネクストサンシャインについての情報は日企連もつかんでいる。コクピットの配置や内装関連については戦闘を行う際に必要となる情報としてコンピューターに登録されているのだ。 並行して、自分が荒らした工廠のドック内構造を精査する。AMSを通じて頭の中に鈍痛が走る。歯を食いしばり、堪える。 そして、必要な情報がもたらされる。 (ええい、南無三!) レイヴンは己の戦闘経験に全てを委ねた。 一気に加速。プリミティブ・ライトへの接近を選択したのだ。 882 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 10 12 (おかしいわ) 白鴉との戦闘を続行しながらも、メノは疑問を感じていた。 相手のネクストは日企連のSUSANOWO-01をベースとしていた。そしてエンブレムはアナトリアの傭兵のそれだ。 GAEの工廠を所属不明ネクストが襲撃しているとの情報を受けて出撃してきたが、なぜアナトリアの傭兵が? 先程からジャミングによって自分の機体とオペレーターの通信は途絶している。相手の通信もこちらに届いていない。 とりあえず攻撃をしてきているから反撃しているが、当初の目的がずれているのを感じていた。 所属は分かり切っている。しかし、彼の所属を考えれば日企連かGAの依頼で動いているはず。 それはつまり、GAか日企連がGAEを攻撃する理由があったということ。 (どういうことなの?) メノ・ルーはGAの最高戦力。それ相応に情報は得ていた。 確かにGAEは独自路線をとっているところがあったが、GAそのものとの関係は悪くはなかった。 日企連との関係も悪くはないはずとメノは理解していた。 しかし、残念なことにそれは一介のリンクスが知ることができる範疇の知識。 根底には旧大陸と新大陸という、陸地を隔てることで生まれていた確執故の不和が確かに存在していた。 ともかく話を聞かなければと思いながらも、攻撃を続ける。 メノ・ルーは認識していないが、彼女のゆがみはそこにあった。 争うことを口では忌み嫌いながらも、しかし体には争いの為の力しかない。 そして戦うことに抵抗を覚えていない。そういうところで、彼女は歪んでいた。 メノ・ルーは見た。白いネクストが、自分への接近を選んだのを。 相手の武装で警戒すべきだったのは、左手のレーザーブレード。 軽装備の敵ネクストの中で、唯一プリミティブ・ライトの重厚な防御を破って、致命的な一撃を与え得る武装だった。 だが、接近はこちらにとってもバズーカやガトリングガンの命中率が上がることにつながる。 軽量二脚型よりましとはいえ、中量二脚型ネクストの防御ではバズーカの一撃には耐えられない。 (来た!) 接近してきた。 落ち着いてバズーカを放つ。それは紙一重で回避される。PAをかすめながらも、ネクストそのものには当たっていない。 ガトリングガンのトリガーを引こうとした瞬間、頭を突然殴られた。頭部に損傷。真上からの攻撃。どうやって? どうして?と思う間もなく体が、機体がバランスを失う。手からバズーカが離れてしまう。首が真上から叩かれ、 ネクストの頭部パーツとコアパーツをつなぐ部位に予想外の衝撃が加わり、一瞬不具合が発生。首が回らなくなる。 883 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 10 52 その時、メノは見た。 敵ネクストのマシンガンを投げ捨てた右手が真上に挙げられ、何かをしっかりとつかんでいるのを。 『作業用クレーンのフック……!?』 力任せに引っ張られたそれは、巨大兵器の製造時にパーツを釣り上げるために使われていた。 そしてそれは、巨大兵器が破壊された際に損傷していた。それをネクストの力によって無理やり引っ張ればどうなるのか。 巨大なパーツを持ち上げることができるクレーンがそっくり落ちてくる。プリミティブ・ライトは、その巨大な鉄骨に殴られていたのだ。 『あっ!?』 そして、白鴉の左手に残ったレーザーブレードが一閃される。 PAが鉄骨の打撃で消失していたプリミティブ・ライトは、コクピットの内蔵されたコアパーツの前面装甲を一気に破られた。 AMSを通じてメノの頭に激痛が走る。疑似的に胸を斬られたようなものだ。すぐさまコンピューターが痛覚を遮断する。 しかし、続けて何かを引きずり出されるような感覚が走った。接続が無理やり解除されていく。 『流石GAのコア。頑丈だな』 接触回線で、アナトリアの傭兵の声が届く。 白鴉はプリミティブ・ライトからコクピットブロックをごっそりと引き抜いていた。前面装甲を綺麗に破り、 尚且つコクピットに傷をつけないようにブレードを振るう。それは単なる適性だとか計算でできるものではない。 数千数万もの訓練を重ね、長年戦場に身を置いたからこそできる芸当だ。 ほっとしたような声。だが、次の瞬間焦ったような声が届けられる。 『今すぐ出ろ!』 促されるままにコクピットから脱出する。イジェクションレバーを引き、対Gゲルを廃棄。ハッチを開いて飛び出す。 自分の体は白鴉の右手に掴まれた。白鴉の左手はプリミティブ・ライトのコクピットブロックを投げ捨てた。 直後、爆発。それは明らかにコクピットが破壊されたことに由来するものではなく、コクピットに仕込まれていたモノが 起動して爆発した結果だった。 「そんな……」 ここに来る直前、プリミティブ・ライトはGAEスタッフによって調整を受けてた。 それはネクストという機動兵器を扱う上では当然の事。しかし、あまりにも状況が悪すぎた。 『PAはカットした。急いで白鴉のコクピットに入れ……このまま離脱する』 呆然としたままの彼女は、鉄骨の下で力尽きているプリミティブ・ライトを、ただ眺める事しかできなかった。 斯くして、アナトリアの傭兵および虎鶫はGAEハイダ工廠への粛正を遂行し終えた。 残酷なむなしさが、任務完了時だというのに漂っていた。 884 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 11 40 ハイダ工廠は嘗てのポーランド クヤヴィ=ポモージェ県南部にある。 そこから陸路、あるいは海路を通じてソルディオスは逃がされていた。一部はインテリオルの手によってアフリカへ。 あるいはBFFの艦隊に護衛されて北欧へ。そして現在、北海を航行する巨大兵器『ソルディオス』を搭載したGAEの輸送艦隊は事前の打ち合わせ通りにアクアビット本社のある北欧を目指していた。そう、事前の打ち合わせ通りに。 護衛についているのはBFFの主力艦隊で北海を担当とする第3艦隊。リスクを避けるために分散させるということで数は多くはない。 現在この輸送艦隊が運んでいるソルディオスはおよそ3機分。1機は組み上がった状態で、残りはパーツ単位で分解されて搭載されている。 「これだ、ソルディオスがあれば企業戦力の差はひっくり返せる」 GAE重役の男は、輸送スペースにある巨大兵器を思う。レイレナード陣営の企業は新興企業が中心であり、GAのように企業体力に優れているわけではない。GAEとてGAグループであるが、あくまでヨーロッパにおいている出先企業に過ぎない。 アクアビットは技術性に特化した企業であるし、レイレナードもネクスト戦力は優秀だがそれ以外はいまいち。 残るのはBFFとなるのだが、海上企業としてはGAと良好な関係にある日企連がいるために安心はできない。 だが、ついに企業の技術力はネクスト以外の方法で体力差を引くり返すことができる兵器を開発した。 それがソルディオス。ネクストさえ浴びれば危険なコジマキャノンを搭載し、PAも展開可能。通常の火器も搭載しているため、これが戦場に出るだけで大きく変わってしまう。多少変わった兵器を投入しょうが、力でねじ伏せるのだ。 「しかし、殺風景な船だな……」 BFFが急遽用意した船舶は人員が少ない。タンカーだったものを改修して何とか積み込んでいるとの話だが、 VIPルームはあまり整備されているとはいえなかった。まあ、それでも快適な船旅が出来ているので不満はないのだが。 「ん?」 その時、水平線の彼方にぽつりと何かが現れた。 最初は船かあるいは鳥かと思った。しかし、それは見る見るうちに大きくなってく。 それは、人型をしていて、翼もないのに飛行をしている。つまり、飛行型ノーマルACなどではない。 885 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 12 31 「ネクスト!?」 咄嗟に近くに置いてあった双眼鏡をとってのぞき込む。 目に飛び込んできたのは、三日月に雲と刀をあしらった、まるで武家の家紋のようなエンブレム。 「あ、あのエンブレムは……日企連のオリジナル、一目連!?ま、まさか……!」 そうGAEの重役が叫んだ時、その部屋めがけてレーザーブレードが突きさされた。 一瞬にして、重役の体は熱量により蒸発した。しかし、艦艇は動き続けていた。 いくつもの艦艇をQBを連発して飛び越え、標的の直前で艦の航行に影響が出ないように急停止しつつ、レーザーブレードをつかって定められた船室だけをピンポイントで貫く。高いAMS適性と技量がなした、とてつもない曲芸。 『流石は剣豪一目連。見事だ』 『お気に召していただけたようで光栄だ』 BFF第三艦隊の旗艦からの通信に、一目連は短く礼を述べる。 輸送艦内部では目撃者の処理が行われている。油断しきっていたし、輸送のための人員をBFFに任せきりにしていたことで、GAEはそれほど人を用意していなかった。GAEの重役がいたが、たったいま処理がなされた。いや、正確に言えば 『海に落ちてしまって遺体が回収できなくなった』。襲撃を受けたのだから、仕方がないことである。 ソルディオスはとかくコジマキャノンを搭載した兵器という点が注目されているが、本来注目すべきはその設計にある。 戦場では単独で強力なユニットとして運用可能で、対処するにはネクストを引っ張ってくるしかないような、企業にしか 開発・運用不可能な大型兵器。そう、ソルディオスはアームズフォートの草分けともいえる兵器なのである。 そして、このような大型兵器の中でも最先端と言えるこれは、非常に貴重なサンプルなのだ。そもそもこの兵器の製造には日企連がGAを介して提供した技術も盛り込まれていた。大型兵器建造は日企連もだいぶ重ねてきたが、やはりAFの 建造には技術的発達段階を踏む必要がある。 『救難信号を受信した船舶を発見した。BFF第三艦隊は別途任務があるため、日企連にこれの保護を要請する』 『承った。丁度良く母艦があるのでそちらから人員を移して、日企連が保護する』 白々しい会話がなされ、BFFはネクストによる奇襲を受けたとレイレナードに報告し、レイレナードもそれを受理する。 そして、『襲撃』した日企連と『襲撃』を受けたレイレナードの関係は言うまでもない。 短い奇襲が完了し、BFFの艦隊と日企連のネクスト搭載母艦は分かれていく。 これは記録には別な形で残る、ほんのわずかな出来事に過ぎなかった。 886 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 13 35 斯くして、GAはアクアビットとのグループ盟主の意に反した取引を行っていたGAEの粛正を実施。 ハイダ工廠を皮切りに、各地の工廠や企業機能を持つ都市を襲撃した。特にGA最高戦力たるプリミティブ・ライトを GAEが捨て駒として利用したことはGAの逆鱗に触れていた。 これに対し、アクアビットは提携先たるGAEへの攻撃は自らへの直接攻撃にあたるとして難癖をつけ、GAに対して報復攻撃を実施した。 GAEもまたプリミティブ・ライトがハイダ工廠攻撃の片棒を担いだと証言し、GAと袂を分かつかのように行動を開始。 同時に粛正を行ったリンクスの所属であるアナトリア及び日企連に対しても報復攻撃を開始した。 これは即日の内にパックス全体に波及し、歴史的背景も含む長年の対立関係を火薬として一気に爆発。 世界は、レイレナード陣営(レイレナード アクアビット BFF GAE インテリオル)とGA陣営(GA オーメル ローゼンタール イクバール テクノクラート)に真っ二つに分断され、理念なき闘争へとなだれ込んでいく。 唯一態度を鮮明化していなかった日企連も、GAEの報復を退け、序盤戦が終わった後からGA陣営への参加を表明。各企業は、磨き上げていた戦力同士をぶつけ合う、泥沼の戦争へと突入していった。 後の第一次リンクス戦争は、こうして幕を開けたのであった。 887 :弥次郎@帰省中:2016/08/31(水) 11 15 09 以上です。wiki転載はご自由に。 うん、ひどすぎる。これでもマイルドにしたのに、ひどい。 オーメルもインテリオルも怒っていい。あとイクバールとGAEも。 大体日企連とレイレナードのせいだから。 ハイダ工廠の位置がXBOX版とPS3版とで異なっていたので、XBOX版の位置を採用しています。 一目連のやったのは、分かりやすく言うと「ローラースケートで音速で滑りながら、時速30kmで動いている車の前で急制動を掛け、車にもぶつかることなく窓越しに車内の人間の口の中に箸で食べ物を突っ込む(無論口の中にぶつけない)」ようなもの。 さて、これでリンクス戦争は勃発となりましたー。 虎鶫が何気にお気に入りなので動かしたくなる。悪い癖かもしれませんな。 では次回をお楽しみに