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田所実徳は手に負えない学生だった。 「つまんねぇなぁ……」 自分の机の上に足を乗せ、心底退屈そうに椅子を揺らしていた実徳の一言だけで授業中の教室の 空気が一変する。黒板に板書をしている途中だった老教師はピクリと肩を震わせ、殆どの生徒達は 関わり合いは御免だとばかりに背中を丸めて教科書で顔を隠し、同世代の少女の『突然の引っ越し』を 何度も経験した女生徒達に至っては恐怖で全身を硬直させる。 そして実徳の取り巻きを自称する数人だけが目を輝かせ一斉に腰を浮かせた。 「だよなぁ、気晴らししようぜ!」 「じゃあ、この前の店とかどうかよ?」 「行くよな? なっ?」 口調こそ対等っぽいが、彼らの声色は皆一様に実徳に媚びるそれだ。地方都市とはいえ繁華街周辺の 土地の利権を握る大地主(儲けのために金に物を言わせ、自分の土地に駅を誘致したとも言われている)で、 叔父が市会議員でもある田所家の一人息子の側で機嫌を取ってさえいれば遊ぶ金に困ることもないし、 上手くいけば何の苦労もなく田所の会社の一つにでも入れるかも知れない。 そして、そこで実徳の名前を使えば生涯安泰も夢ではないだろう。 勉強をする気も無い彼らが毎日マメに登校しているのも、出席日数でも勉強でもなく実徳との接点を 持ち続けて濡れ手に粟を狙っているからであり、こういう機会があれば我先にと実徳に便乗して只で 遊ぶために他ならないのだ。 「そうだなぁ……」細面で全体的に華奢な実徳は、靴の踵でドンドンと数回机を叩いた後に大きな音で 席を立ち、大袈裟なほどの動きで肩を怒らせ教師の存在など気にもしていない大股で教室の外へと向かって 歩き出した「……じゃ、ちょっくら顔でも出してみっか。もう開いてるんだろ?」 「お、俺オーナーに電話してみるよ!」 「じゃあ、俺は一年に招集かけっから!」 おう、と取り巻き連中の慌ただしさに満足そうな声を出す実徳。 実徳自身、不良を気取ること以上にチヤホヤと持ち上げられ御山の大将気分を味わうのが好きなのだ。 そんな自由奔放な日々を親の金と七光りで謳歌していた実徳だったが、とある週明けの早朝に彼の 人生は一変してしまう。 「あ~眠ぃ」 「ンだよ、もうこんな時間かよ」 「学校、どうする?」 「お前らだけ行ってこいよ、俺は帰って一眠りしてから考えっから」 行きつけのバーで夜が明けるまで騒いだ実徳は眩し過ぎる朝日に目を細めながら大あくび。遊び 疲れた所為で煩わしくなってきた取り巻きを学校に行かせ、タクシーでも捕まえようと重い足取りで 大通りへと一人で向かうことにした。 「田所実徳さん、ですよね?」 だが数歩も進まないうちに横合いから声を掛けられ足を止められた。 「あぁ!?」 実徳の出した声は返事ではなく威嚇である。この界隈で有名な田所の御曹司に大した用もなく声を 掛けたり、ましてや寝不足で疲れた所に邪魔をするような無知な輩など存在するはずなどないと思って いたのだから、不機嫌さを隠そうともしないのは当然だ。 「貴男に非常に大切なお話があって、お待ちしておりました」 「…………あぁ?」 次に実徳の口から出たのは何とも間も抜けた声だった。 彼が振り向いた先に立っていたのは彼自身より少し上らしい年頃の、しかも裾も袖も長い西洋の 給仕服を着込みカチューシャまでつけた場違いにも程があるメイドだったのだ。 そして彼女の後ろには黒塗りの高級車がアイドリング状態で控えている。 「ンだよ、朝っぱらから新手の客引きか?」睡眠不足な頭でどんなに頑張って理解しようとしても、 精々その位しか解釈のしようが無い光景である「うぜぇから消えろっつんだよ! つか俺が誰だか 本当に分かってンのかお前!?」 「ですから最初に確認させて頂きました。田所実徳さんで間違いないと存じますが?」 荒げた声に全く動じる気配を見せず話す冷淡な口調だけでも腹立たしいが、それ以上に女が自分に 向けて来ている汚物を見るような視線が逆鱗に触れた。 「だったらなんなんだよ、あぁん!?」 怒気も露わに、アルコール臭い息を吐きながらメイド少女に詰め寄る実徳。 「失礼ですが、耳がお悪いのでしょうか? それとも残念なのは頭の中身ですか? 大切なお話が あるのでお待ちしておりましたと先ほど……」 「舐めてんのか、このアマぁ!!」 男と女では体格が違う。年齢では負けていても背丈で勝っている自分にゼロ距離で怒鳴られても 微動だにしない女の胸ぐらを掴んで吊し上げようと腕を伸ばす実徳だが。 「……どうやら、本当に残念な頭しかお持ちでないようですね」 はぁ、と目の前の女が呆れ果てた溜息を漏らすと同時に実徳の視界が反転して…… 「……ちゃったんじゃないんですか?」 「そんなことは……が……て……普通に……」 「でも、全然目を……………様に……」 「その必要は……不足とお酒……から大丈夫……」 自分を囲んでいる複数の気配と、姦しい話し声で実徳の意識が浮上してきた。 「…………くそっ!」 それと共に後頭部の鈍痛を感じ、目を開けるより先に腹立たしげに頭を振るう実徳。 「あ、動いた!」 「だから言ったでしょう? この男の鍛え方が足りないだけなんですよ」 「でもぉ、アスファルトに叩き付けるなんて少しやり過ぎな気もぉ……」 「先に手を出した訳ではありませんから正当防衛です」 「……確かにいい気味だとは思いますけど、傷物にしちゃったら……」 「その程度の分別はあります。か弱い女性に問答無用で手を上げる輩には丁度良い薬と……」 「……るっせぇなぁ、頭に響く声で何騒いでンだよ……っ!」 痛む後頭部を手で摩りながら上半身を起こすと、実徳は見慣れない部屋で数人のメイド服に囲まれ 見下ろされていた。 「目を覚まして早々、悪態がつける程度の元気があれば心配は要りませんね。間違っても歓迎は いたしませんが、とりあえず儀礼的な挨拶だけはして差し上げます。いらっしゃいませ」 その中の一人、気を失う直前に実徳が掴みかかろうとした女が汚物を見下すような目で感情の欠片も 篭もっていない声を掛けてきた。『いらっしゃいませ』と言われたと言うことは、この女の家か関係先に 担ぎ込まれたらしいが、それ以外は訳が分からないことだらけだ。 まだ完全には回復しきっていない頭を回転させながら改めて周囲を見渡すと、実徳いる場所は 四畳半程度の質素な洋室だった。自分を取り囲んだメイド達の隙間から見える室内には小さな衣装箪笥と 簡素な机と椅子のセット以外の家具はなく、綺麗に磨かれたフローリングの床の輝きと相まって生活臭を 微塵も感じさせないモデルルームかビジネスホテルの一室のよう。 あと分かることと言えば唯一の窓から覗く景色と日差しのお陰で部屋が地上階ではなく、かつ南向きで 比較的過ごしやすいらしいということだけだった。 「ンだよ、ここは?」 「そのアルコール漬けで空っぽ同然の頭では理解できないと思いますが、一応は尤もな疑問なので 親切に教えて差し上げます」と口を開いたのは、やはりあの女「勿体なくも貴男如きとご学友であらせ られる新庄政幸様のお宅の空き部屋です」 「……新庄? 誰だよそれ?」 「えぇっ?」 「知らないって……自分のクラスの委員長の名前も知らないとか……」 「わかってたつもりだけど……流石にありえないよぉ!」 と、一斉に騒ぎ始める実徳と同世代っぽい他のメイド少女達。 「ごちゃごちゃ言うなっ! 知らねぇモンは知らね……っつぅ……!!」 大きな声を出すと頭が痛む。 「聞きしに勝る放蕩ぶりですね。まだ野生の猿の方が文明的に見えるほどです」 他のメイド達も同様に感じているのか、皆一様に冷めた視線を実徳に注ぎつつ黙ったまま。 「な、なんなんだよ、なんなんだよこれ……くそ……っ!」 ずっと太鼓持ちという壁に守られ煽てられる人生だけを送り敵地という存在とは長らく無縁だっただけに、 到底好意的とは言い難い目を四方八方から向けられた実徳の気迫は見る見る萎んでしまう。 まるで丸裸にされてしまったかのような居心地の悪さに俯き、口の中で悪態を繰り返すのみ。 「お、覚えてやがれ……あとで、必ず……」 メイド達のリーダーらしい生意気な女はおろか、他の少女達の顔すら怖くて見ることが出来ない。 「うわ、かっこ悪ぅ~!」 「女の子相手に『覚えてろ!』なんて、ヘタレすぎだよぉ……」 「本当に見た目倒しなんだ。政幸様の方が数倍は男らしいです」 心が折れそうな実徳の背中に容赦ない言葉が次々と突き刺さって胸を貫通する。 「うるせぇ……うるせぇ……ここを出たら、後で纏めて犯してやる……」 頭痛が収まって、この家を出たら必ず仕返ししてやる。仲間を集めて手籠めにして輪姦して写真を 動画を世界中にバラ撒いてやる。もちろん、ここにいる女全員だ。二度と表を歩けなくなる位に汚して 孕ませて腹を蹴って…… 「残念ですが、もはや貴男には後も先もありません。反吐が出そうなほど見苦しい現実逃避も大概に して頂けませんか?」 「ぐあっ!?」 茶髪を掴まれ引っ張り上げられた実徳の口から情けない声が漏れる。数に頼っている時ならいざ知らず、 弱い相手を痛めつけた事は数知らずあっても自分より強い者から苦痛を与えられた経験など無いに等しい 実徳は、まるで牙を爪を持たない小動物の様に無意味に藻掻くだけ。 「いかに政幸様のご所望とは言えど我慢にも限度があります。私の見立てで五体満足と判断させて 頂き、このまま政幸様の御前に引っ立てて参ります!」 「は、はいっ!」 リーダーの怒気に恐れをなしたメイド少女達はモーゼの海割りのように慌てて道を作り、中の一人が 弾かれたように廊下に続く扉に駆け寄って恭しく腰を折りながら開く。 「あなた達も一緒にいらっしゃい。政幸様の御前で、この屑に身の程という言葉の意味を徹底的に 叩き込みます」 はいっ! と恐ろしいほど見事に揃ったメイド少女達の返事。 そのままゴミ袋か何かのように廊下を引きずられ、自分の足で立ち上がる暇も与えられず階段を引っ張り 上げられ、全身を汚され服をボロボロにされブチブチと髪を何本も引き抜かれながら生意気なメイド女の 細腕一本で実徳が連れてこられた場所は二階の一室だった。 ドラマかで見かける学者か医者の書斎を思わせる本棚だらけの広い部屋。飾り気こそ無いが高級そうな 木製の家具に囲まれた室内の一番奥で、これまた年期が入っていそうな大きな机でペンを走らせていた 少年は、ボロ雑巾のようになってしまった実徳の姿に驚きもせず穏やかな笑顔で顔を上げた。 「ご苦労様でした、佐久間さん」 いや、それどころか実徳の姿など眼中に入っていないようにメイドの方へと労いの言葉を掛けた。 「勿体ないお言葉でございます」 「っつっ!?」 深々とお辞儀をしながら無造作に髪を解放され、床で頭を打った実徳の口から呻き声が漏れる。 そして、そんな実徳を佐久間の後ろに控えたメイド少女達がクスクスと嘲笑う。 「て、てめぇら……!!」 「さてと……」安っぽい恫喝など聞くに値しない、とばかりに遮って実徳の同級生らしい新庄政幸と 思しき少年が眉一つ動かさず実徳を見下す「……いま詳しい説明をしても聞く耳は持たないっぽい様子 だし、結論から先に言わせてもらうけど……田所君は僕の所有物になったから」 「はぁっ!?」 痛む節々に顔をしかめながら床に立ち上がろうとしていた実徳の動きが途中で止まる。 「要するに売り飛ばされたのですよ貴男は。本当に察しが悪い屑ですね」 「な、な……!?」 「と言うわけで僕なりに田所君の処遇について色々考えたんだけど、とりあえず新人のメイドとして 使ってあげるのが一番良いって結論に達したんだ。だって田所君、他に何も出来ないだろ?」 「め、め……メイドって……何言……」 「僕の話はこれで終わりだから。田所君をお願い出来ますか、佐久間さん?」 「……私に一任して頂けるなら……」 「もちろんだよ。使えるようになるまで存分に躾けてやって構わないですから」 「そう仰って頂けるのでしたら、必ずご満足頂けるよう仕込んで見せます。あなた達にも協力して 貰いますよ?」 きゃ~~っ、とメイド少女達が小躍りしながら控えめに歓声を上げる。 言うまでも無く、全てが実徳の頭上を素通りである。 「お、おいっ! ンだよそれっ! 訳わかんねぇだろ、ちゃんと説明ぐわっ!?」 「お目通りは終わりです」細い指で手首を掴まれ軽く捻られただけで、耐えがたい激痛が実徳の 全身を麻痺させる「いまから貴女は新入りの見習い。つまり下働きの中の下働きとして私たち全員の 教育下に入りました。以降、許可が無い限りプライベートはおろか寝食の自由すら与えられないものと 心得て精進して下さい」 その日、町一番の問題児が忽然と姿を消した。 その日の空は、果てしなく青く澄み切っていた。 遙かな上空を緩やかに漂う綿雲と、程よい暖かさを与えてくれる日差し。 清々しい大気を切って流れ星のように視界を横切るヒヨドリの鳴き声も何処と無く楽しそうで、 この世界の広さと美しさを改めて実感させて、 「誰も休憩して良いなんて言っていませんが? 只でさえ手が遅いというのに、サッサと片付けないと 昼食の時間を削りますよミノリさん?」 「うぐっ!?」 布団たたきで文字通りに尻を叩かれた実徳の口から小さな悲鳴が漏れ、慌てて窓拭きの続きを再開する 背中に、これ見よがしの忍び笑いが幾つも浴びせかけられる。 言うまでも無く、実徳を監視しているのは佐久間とか言うメイド。 そして、心底面白そうにクスクスと笑っているのは常に実徳の無様な姿がよく見える場所で掃除を しているメイド少女達である。 更に実徳自身もメイド姿だ。 もちろん好きこのんで小間使いの格好をしている訳ではない。他に着る物を一切与えられていないので 選択肢がないのだ。この屋敷に拉致監禁された日、有無を言わさず放り込まれた浴室でシャワーを浴びて いる間に衣服はおろか下着から所持品まで全てを奪われ隠されしまったのだからやむを得ない。 「携帯電話は解約済みですしカードも止められています。持っていても意味が無いでしょう?」 そう言いながら浴室に押し入ってきて実徳を羽交い締めにし首を絞め意識が朦朧としている間にメイド服を 着せ錠前付きの首輪をはめ、そこから伸びる金属製の鎖を握られ衣食住の全てを掌握されてしまっては、 これはもうメイド達に従うしかない。 いずれ脱出して仲間と共に報復するにしても、いまは機を伺うかがって耐えるしかない。 この生意気な女達を犯し尽くす日を夢見ながら。 「……まったく、掃除はおろか雑巾の絞り方一つ知らないとは使えないにも程があります。まだ 小学生の方が数倍はマシでしょうね」 「小学生以下だって!」 「ありえないし~!」 「そ、そんなに笑ったら……うぷぷっ」 「………………馬鹿みたい」 「お前ら丸聞こえなんだよっ! 俺を扱き使いながらサボってんじゃあぐぅっ!!」 「先輩達に向かって、その口のきき方はなんですか。あと粗暴な男のような下品な言葉遣いも直しなさいと 言ったでしょう?」 存外に分厚く、重いメイド服越しでも叩かれて痛くないわけがない。下手に動こうとする度に鎖を引っ張られ、 喉が締まりうずくまってしまう。 いまの実徳は、まるで奴隷だ。 屋敷の外はおろか、常に鎖で繋がれ邸内でも限られた範囲での移動しか認められない。女に引きずり回され 監視され、辛うじてプライバシーが守られるのは入浴とトイレくらいである。 もっとも、それすらストップウォッチで時間を計られながらであるが。 そして朝から晩までの労働。 勤労経験皆無な実徳に出来るのは簡単な掃除くらいだが、恵まれた環境で温々と暮らしてきた実徳にとっては 下働きの仕事自体が苦痛であり屈辱以外の何物でも無い。 「くそっ……くそっ……!」 苦しんでいる自分の視界の隅、和気あいあいとしながらも手際よく仕事を片付けてゆく他のメイド少女達の 姿を恨めしげに睨む程度のことしか出来ない。 「メイド以前に女の子が『くそ』なんて言葉を使うなど言語道断です。ここまで物覚えが悪いとは、どこまで 頭の出来が残念な屑なんですか貴女という人は」 「ひぅっ!?」 ひゅん、と背後で布団たたきを振り上げる気配。思わず竦み上がってしまう実徳。 「次に下品な言葉遣いをしたら、今晩の入浴の時間を半分にしてしまいますからねミノリさん?」 「は、はぃ」 「……何も聞こえませんね。もう一度お願い出来ますか?」 「はは、はいっ!」 「やはり何も聞こえませんね。私の耳が悪いのでしょうか?」 「す、すみません! もう下品な言葉は使いませんっ!!」 「貴女達はどうですか? 私には風の音しか聞こえませんが?」 「「「なにも聞こえません~ん!」」」 「………………ま、ません……」 この時を待ち構えていたように声を揃えるメイド少女達(約一名を除く) 「ぐぅっ!」歯ぎしりする実徳。露骨に弱者をいたぶる集団的な悪意に心が折れてしまいそうだ「げ、下品な 言葉遣いはっ! 二度とっ! 使いませんっっ!!」 全身から火が噴き出しそうな羞恥に耐え一言一言、腹の底から声を絞り出して叫ぶ実徳の情けない姿を冷淡に 見下ろす佐久間と、底意地の悪そうな笑みで鑑賞する他の少女達。 「……結構です。ただし昼食は窓拭きが終わるまでお預けにしますが、宜しいですね?」 「はいっ!!」 ビクン、と弾かれたように姿勢を正した実徳は慌てて作業を再開した。 そして、やっと迎えた就寝の時間だが…… 「んちゅ、んちゅ、ちゅ~~~っ!」 「はぅん! あん! んん~~~~っ!」 新入りの実徳に個室など与えられる筈もなく、女物の上下の下着のみを着せられ部屋の両側に二段ベッドが 鎮座する相部屋に押し込まれる。 しかも実徳の反対側のベッドではメイド少女が二人、まるで実徳に見せびらかすように全裸で絡み合い、 隠す気など微塵もなさそうな音量で乳繰り合っている。 「み、未玖ちゃん……それ、強すぎるよぉ……!」 「だって静っちは少し痛いくらいの力加減で前歯で乳首を甘噛みされるのが好きでしょ? それから歯が食い 込んだ跡を舌で優しく……れろれろれろっと」 「そ、それは感じすぎるから駄目ぇぇぇ!」 ほぼ毎晩、この調子である。 恐らくだが、この二人と相部屋にしたのも『わざと』だろうし、二人が実況さながらの説明を聞かせながら 耽っているのも実徳を苛める為だろう。 何故なら、ベッドの中の実徳は後ろ手に両手の親指を拘束され鎖の先端を丈夫な鉄柱に固定され目の前で 痴態を繰り広げている二人に襲いかかることも、自分を慰めることも出来ないのだから。 「ほらほら静っち、次はどうして欲しい? このままクリトリスをコチョコチョしながら乳首噛まれる だけで良いのかなぁ?」 「そ、それは……その………………れて、欲しい……」 「ん? ん~ん?」 「だ、だからっ! 未玖ちゃんの指で私のおま……お腹の中、掻いて欲しいの……っ!」 「だよねっ、そうこなくっちゃ! じゃあ静っちも私のアソコ、思いっきり恥ずかしい音を立てながら たっぷり啜ってくれる?」 「う、うん……」 背を向け、見ないようにしていても何をしているのか分かってしまう。最初の数日こそ怒鳴って脅かして 止めさせようとしたが、それが負け犬の遠吠えで手も足も出せないと熟知している二人が聞き入れてくれる わけもなく、それどころか安全な観客である実徳に全て晒す事で更に燃え上がるという新たなプレイに 目覚めたらしく、以前にも増して大きな音を立てるようになってしまったのだから始末に負えない。 「うわぁ、静っちの中トロトロでキツキツだよ。どう、私の指、美味しい?」 「くぅん! い、いいけど……もっと奥……それに一本だけ……足りないよぉ……」 「おっけおっけ! じゃあ二本で一番奥をぐちゅぐちゅしてあげるね」 「ひぅっ! ひ、ひぁぁぁぁぁぁっ……!」 「静っちの中、超熱いって! ねぇ、私の方も早くくぱぁってして! じゅるじゅる吸って!」 「う、うん……ちゅっ、ちゅるっ……ちぅぅぅぅぅっ!」 「あはっ! 静っちのバキューム最高だよ、感じるゥ!!」 「わ、わらしも未玖ちゃんのちゅうちゅうしながら指れされるの……幸せらよぉ……」 四人用とはいえ所詮は狭い部屋だ、たちまち少女達の淫臭が溢れだして部屋を満たしてしまう。 そして元々は男を興奮させる為の濃厚なフェロモンを問答無用で嗅がされ吸わされた水っぽい音を 聞かされ実徳の体が反応しないはずがない。 「ぐっ……!」 ここに監禁されてから一度も発散させたことのない実徳の性器は瞬く間に充血し、ジンジンと痛みすら 感じるほどに張ってしまう。 だが目の前でドロドロに濡らしているだろう女達を犯して胎内にまき散らす事は叶わない。 思う壺だと知りつつ、自分の手で鎮めることも不可能だ。 「う……うぅっ……」 勃起がムズムズと疼き、とても眠れそうにない。 少女達の嬌声が否が応でもセックスを連想させて射精への欲求も高まるばかりだ。 (くそっ! 出してぇ出してぇ、誰でも良いから女に突っ込んで射精してぇよぉ!!) 犯した女、金で買った女、行きずりの女。 多すぎて顔も覚えていない女が殆どだが、その味は全て肉棒に刻み込まれている。その愚息が空気も 読まず女体に挿入する快楽を脳に反芻させるのだから、それこそ溜まったものではない。 (ヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇヤりてぇ!!) 「ほらほら見てよ静っち。アイツ、シーツを相手にヘコヘコ腰振ってるじゃん!」 「…………知らないもん。興味ないもん……」 「そんなこと言わないで見てみてよ。面白いからぁ!」 「……………………気持ち悪いだけだもん」 「あはははっ、女物の下着で床オナとかマジカッコ悪ぅ! 猿みたい!」 「くっ……!!」 嘲りの視線と嫌悪の視線をチクチクと感じながらも、他に性欲をいなす方法を知らない実徳は 女物の下着姿でひたすら腰を揺らす。 「もぅ未玖ちゃんってば……じゅじゅじゅっ、じゅるるるぅ~~~~!!」 「ひぁんっ! な、なに? そんな急に激……きゅぅぅぅぅん!!」 「私としてるのに……あんなケダモノのこと……未玖ちゃんの馬鹿っ!」 「え? なに、ヤキモチ? ごめん! もう余所見しないから待って! ちゃんと静っちのこと 気持ちよくしてあげるから……って中をウネウネ舐めながら両手でお尻の穴引っ張らないで前歯で クリ苛められたらイグぅぅっ!!!」 「ちゅっ、ちゅっ、ちぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~!」」 「いぃ、イッてるのぉ! イッてるからぁ! イッてる最終に強く吸わないでぇ!!」 (くそっ! くそくそくそくそくそっ!!) 射精することも出来ないまま、疲れ果てて眠りに落ちるまで実徳は無様に腰を振り続けた。 そして翌朝の食堂。 「……それでね? 朝起きたら凄い臭いがして、アイツってば半泣きになってんの!」 「そんなに臭いんだ?」 「しかもパンツどころかシーツまでドロドロにしちゃってさ、もう最悪って感じ!」 「腐った牛乳みたいで気落ち悪かった……」 「あの年で夢精とか、最低ね」 「まだオシッコの方が可愛げがあるよねぇ?」 「どっちもどっちでしょ? もう終わりだよね、男としては」 意識を失うまで擦っても出なかった精液が、寝てる間に残らず漏れ出して下着を寝具をドロドロに 汚してしまった。しかもそれを未玖と静江に見つかってしまったのだ。 実徳に聞こえる音量で話に花を咲かせているメイド少女達の明け透けな物言いもさることながら、 上から目線で笑われ小馬鹿にされ何も喉を通らない。 正に針のむしろである。 「ところで、本日のミノリさんの仕事についてですが」 「……はい」 淡々と朝食を摂る佐久間は知らん顔。普段なら口五月蠅くメイド少女達を躾けている彼女が、 何故か朝食の席に相応しくない話題を遮ることもせず少女達を放置している。 「状況を鑑みた結果、洗濯の仕方を覚えて貰いたいと思いますが異論はありませんね?」 「……くっ!!」 「ありませんね?」 「…………………はい」 暗に、夢精で汚した物を自分で洗濯しろと言われているのだ。 「はいは~い!」その会話を耳に挟んだ未玖が元気よく挙手する「佐久間さん! 私と静っちの シーツと下着も洗濯して貰っても良いですかっ?」 憎たらしほど爽やかな笑顔の未玖が言う洗濯物とは、まず間違いなく夕べのレズプレイで汚して しまったものに違いない。散々見せびらかした挙げ句に、後始末をしろと言っているのだ。 「くっ……!」 「構いませんよ。仕事を早く覚えるためにも量は多い方が良いでしょうし」 「だったら私の洗濯物もお願いしても良いですか? 少しオリモノが多いですけど……」 「当然、手洗いですよね? だったら私もっ!」 「靴下とかも良いですか!?」 「じゃあ私も溜まってる下着を全部!」 「女同士なのですから遠慮は無用です。私が監視して全て手洗いさせますから、綺麗にして 欲しい物があれば籠に入れて廊下に出しておいて下さい」 悔し涙を浮かべ体を震わせる実徳の姿を横目でチラチラ見ながら、メイド少女達は我先にと 楽しそうに食堂を飛び出して洗濯物を出しに言ってしまった。
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Phalaenopsis -愛しいきみへ、愛するあなたへ- ◆6XQgLQ9rNg ◆◆ 落涙していた。 目の前に立ちはだかる男は、その双眸から、滂沱の涙を流していた。 何かを告げるべく口を動かそうとするが、濡れそぼった吐息が苦しげに吐き出されるだけで、何一つ意味のある言葉にはならないでいる。 整ったその顔は、えずきを堪えるように酷く歪んでいて、愛する女性の声を聴いたことによる喜びの表情とは程遠いものとなっていた。 胸の内を荒れ狂う辛苦を抑えきれず、ピサロの表情に現れているようだった。 今しがたのロザリーのメッセージによれば、かつてロザリーは、憎しみに突き動かされるピサロを止めたという。 ならば、ロザリーの言葉はピサロに届くという証だ。 しかしながら、ピサロは武器を収めない。 ロザリーの意志を無視してでも、彼女を蘇らせたいと願うからか。 ――きっとそれは間違いじゃない。でも、それだけじゃない。 それだけならば、こんなに苦しみを飽和させるはずがない。 みっともないほどに涙して、それでも戦おうとする理由が、他にもあるはずだ。 アナスタシアはロザリーのメッセージを思い返す。 同時に、夜雨の下で目の当たりにしたピサロの様子を想起する。 すぐに、ピンと来た。 ピサロは深い憎しみを抱き、人間の敵となった。 その原因は、ロザリーを人間の手によって殺されたからだった。 ならばつまり、ピサロが抱いた憎しみというものは、深い愛情の裏返しなのだ。 ロザリーを傷つけた者を許せない。 ロザリーの命を奪った者を、許せない。 「貴方は……」 だからこそ。 「貴方は、誰よりも自分を傷つけたいのね……」 ◆◆ 痛みを求めていることに気付いたのは、余計な負の感情を捨て去り、ただ愛だけで心を満たしてからだった。 自覚できていないだけで、きっと今までも、そうだったと思う。 ロザリーを蘇らせるためという目的意識を壁にし、自分以外をも憎悪することで憎しみを分散させていた。 その結果、復讐心を細分化し無意識の奥底に押し込めて、見えないままでいられた。 ピサロは、憎しみを糧に絶望感を燃やし、純粋な愛を錬成した。 その愛は汚れのない鏡面のような輝きを放つ。 怨まず、憎まず、絶望せず。 されど消えない傷跡は、じくりじくりとピサロを苛むのだ。 疼きのような鈍痛は止まらない。 しかし、足りない。 その程度の痛みでは駄目なのだ。 耐えられる程度の痛みでは、ロザリーが受けた苦しみには届かない。 もっと強い苦しみが必要だった。更に強い痛みを渇望した。 ロザリーを殺した者<ピサロ>に、復讐をしたかった。 ピサロはロザリーを想う。 誰よりも深く、何よりも愛しく思う。 彼女の優しさは知っている。争いを望まぬ気持ちを理解している。共存を願う意志を熟知している。 その気高い尊さこそ、ロザリーという女性そのものなのだ。 そこから――ピサロは目を背ける。 ロザリーの全てを理解したいと、受け入れたいと切望しながらも、決して彼女の手を取らない。 想っているのに優しさに目も暮れず、大切にしたいのに争いを望まぬ気持ちを無視し、愛しているのに共存を願う意志を置き去りにする。 そうやって騙して、裏切って、茨まみれの道を行き、返り血だらけになって、ロザリーが心より忌避するほどの身になって。 ようやく、ロザリーの命へと至れるのだ。 とても辛いことだった。 とても苦しいことだった。 とても痛いことだった。 これ以上の復讐は、存在しなかった。 そうしてピサロは、ロザリーを蘇らせるために武器を振るい、無意識下で自身への復讐を続けてきた。 復讐の念があったからこそ、ロザリーの意志を無碍にして彼女を蘇らせようと決意できた。 たとえロザリーのメッセージを受け取っても。 この島にいる全ての者へと発信されながらも、ピサロを想う気持ちがいっぱいに溢れるメッセージを聞き届けても。 それすらも裏切り、痛みに変える。 ロザリーの声を、願いを、想いを、祈りを、愛を。 夢ではなく真正面から受け取り、その上で取り入れず捨てるのは、感情が振り切るほどの激痛だった。 だから、涙が飽和した。心が深手を負った。 それでも、まだ。 強い純愛を抱く故に、ピサロは自傷行為を止められない。 無様に涙するほどに心が悲鳴を上げる。言葉を放てないほどに心が痛みを訴える。 それこそが望みと言わんばかりにピサロは戦う。 その果てに、最愛の女性が蘇ると信じて前へ行く。 全てを捨て去り純粋な愛だけを燃え盛らせるがために表面化した痛みを求め、更なる先へ。 滲む視界の先、アナスタシアの姿がある。 痛みを抱きながらも涙を振り払い、ピサロは、バヨネットの切っ先を敵へと突き付ける――。 ◆◆ 本当は、救いたいと想った。 だから、アナスタシアは一人でピサロに対峙した。 それでも叩きつけられたのは無力さで、救えないと実感し、怒りを以ってピサロと戦った。 結局、アナスタシアはピサロを救えないのだと思う。 どんなに頑張っても、どんなに言葉を練っても、女神を覚醒させた愛の化身には、手が届かない。 だが、よくよく考えたらそれは当然なのかもしれなかった。 たった一つの最愛を胸に抱く男の心を、何処の馬の骨とも知らない女が動かそうなどと、おこがましい思い上がりだ。 それでも。 それでも、心の片隅でやっぱり止めたいと思ってしまうのは。 彼が愚直にまで闘う理由の一端を、垣間見てしまったからか。 彼を愚直にまで愛する女性の声を、受け取ってしまったからか。 「馬鹿だわ」 男も女も本当に馬鹿だ。 馬鹿でなければ、女への愛を抱き自身を痛めつけられるはずがない。 馬鹿でなければ、身だけではなくココロまで傷つけられても、男を好きでいられるはずがない。 だが、もしも。 本気で恋をすれば、馬鹿になってしまうというのなら。 なってみたいと思う。 そんな恋愛をしたいと、アナスタシアは心の底から強く深く激しく思う。 「ほんッとうに――羨ましいくらいの純愛だわねこのバカップルがッ!!」 両手で握り締めたアガートラームを、掲げる。 これはラストチャンスだ。 頑固で馬鹿な男を止めるための、ラストチャンス。 アナスタシアは集中する。 アガートラームはただの武器ではない。人々の想いを束ね、繋ぎ、未来へ進むための鍵である。 そのイメージを強く持ち、意識を聖剣へ注ぎ込む。アガートラームが輝きを放ち始める。 白く眩い光は広がり、周囲の想いを集めていく。 光を通し、アナスタシアは想いを感じる。 拡散していくロザリーの想いを、だ。 あのメッセージは、何らかの方法で生前のロザリーが残したものなのだろう。 それは記録に過ぎない。けれど、そこに込められた想いは本物だった。 その想いを、もう一度カタチにする。 記録だけではなく、ロザリーの想いを、ここに形作る。 こんな芸当は、アガートラームの力だけでは到底不可能だ。 だがここには、ラフティーナがいる。 愛する想いと愛される想いを、きっと彼女は祝福してくれるはずだ。 想いを、アナスタシアはかき集める。 最愛を胸に抱く男を止められるのは、最愛を胸に抱く女だけなのだ。 輝きは次第に強さを増し、世界を覆い尽くしていく。白が広がり、想いを集め、剣へと収束させていく。 もっと、もっと。 もっと輝け。 消えゆく想いを繋ぎ止め、ここに想いを成すために。 分からず屋の男へと、一人の女の想いを届けるために。 光は広がる。 何処までも何処までも広がる。 その輝きが、周囲を埋め尽くした瞬間に。 愛の奇跡は、果たされる。 ◆◆ 世界が白い。 果てがないような白さが、ピサロの視界を埋め尽くしていた。 自分の姿と輝き以外が見えない世界で、ピサロは足音を聞く。 小さな足音だった。 それは丁寧な足運びを思わせる足音で、アナスタシアが立てる粗雑な音とは全く異なるものであった。 音は近づいてくる。白の世界に、人影が浮かび上がる。 ピサロは意識を戦闘状態に切り替え、魔法を詠唱し始め――。 『よせ。彼の者は敵ではない』 ラフティーナの制止に、ピサロは怪訝さを覚えながらも影へと目を凝らす。 深い霧を思わせる白の中、人影が鮮明になっていく。 その華奢なシルエットを、ピサロは知っている。 またも目を剥き、息を呑んだ。 一瞬、幻術かと疑う。 だが、愛の貴種守護獣は一切の警戒を見せてはいなかった。 その間にも、人影は、ピサロが視認できるところまで、やってきた。 極上の絹糸を思わせる桃色の髪。 髪の合間から存在を主張する、整った形をした尖った耳。 一流の職人が作り上げた陶磁器よりも白い肌。 錬成に錬成を重ねた紅玉にも勝る美しい瞳。 「……ロザリー……?」 震える声で名を呼ぶ。 対し、彼女は嬉しそうに目を細め、頷いた。 「はい。ロザリーです。またお会いできて嬉しく思います、ピサロ様」 清らかな声は心地よく鼓膜を震わせる。 こうしてロザリーに会えた喜びよりも、ロザリーと対面している事実を、ピサロは信じられなかった。 このロザリーが、幻でないとすれば。 「夢でも、見ているのか……?」 いいえ、とロザリーは首を横に振る。 「私は、死んだのか……?」 違いますわ、とロザリーは首を横に振る。 「ならば、君は……」 このロザリーが、幻でもなく、夢でもないのなら。 この白の世界が、死後の世界でもないのなら。 「君は、蘇ったのか……?」 ピサロの希望は、しかし、もの寂しい表情で、そっと否定される。 そうではありません、と、ロザリーは首を横に振る。 「私の想いを集めてくださった方がいました。そして――」 形のよい唇が、言葉を紡ぐ。 「ピサロ様が、私を強く深く愛してくださいました。だから、私は今、ここにいられます。貴方に想いを、届けられます」 呆然とするピサロに、ロザリーは歩み寄り、手を伸ばす。 細く綺麗な手が、ピサロの頬に触れ、汚れきったピサロの頬を撫でる。 その手は、温かかった。 「こんなに――」 否定しようもないその温かさは、ピサロの胸を解きほぐし、曇りを拭い取り、疑念を完全に取り払う。 ロザリーだ。 目の前にいるのは、本当にロザリーなのだ。 「こんなに、傷だらけになってしまわれたのですね」 ロザリーの瞳に雫が溜まる。雫はすぐに溢れ、輝かしいルビーとなり、零れ落ちていく。 それを見るのが辛くて、ピサロは慰めるように返答する。 「大した傷では、ないのだ。まだまだ、全然痛くなど、ない」 「嘘を、つかないでくださいませ」 「嘘ではない。私は、嘘などついてはいないよ」 「では、どうして――」 ロザリーは悲しげに、自分の左胸に手を当てる。 「私のココロは、これほどまでに痛いのですか?」 「……ッ!」 返答に詰まるピサロの胸へと、ロザリーは飛び込んでくる。 ロザリーの両腕が背へと回され、優しくピサロを抱き締める。 ピサロに刻まれた無数の傷を確かめ、癒すように。 「貴方の傷は私の傷。貴方の痛みは私の痛み。貴方の苦しみは私の苦しみ」 ロザリーの香りが鼻孔をくすぐる。ロザリーの柔らかさを全身で感じる。ロザリーの体温が肌に伝わってくる。 ロザリーは、震えていた。 「痛いです。苦しいです、ピサロ様」 ピサロは動けない。 武器を握った手をだらりと下げたまま、ピサロの胸に顔を埋めるロザリーを見下ろすしかできないでいた。 「ピサロ様が私を想い、私の命を願ってくれるのは大変嬉しく思います。 ですが、痛みと悲しみの果てにある命なんて、私は、いりません」 ロザリーが、顔を上げる。 濡れる真紅の瞳が、ピサロを捉えていた。 「ピサロ様ならば、分かってくださいますよね? 私を喪い、あれほどまでに悲しんでくれたピサロ様ならば、命を奪うという行為がどれほどの痛みと悲しみを生むのかを。 あのような痛みと悲しみが広がっていくのは、辛いです。傷つく人が増えるのは悲しいです」 ロザリーは優しいから、殺戮によって生まれる痛みと悲しみを感じ入り、自分のことのように苦しむだろう。 蘇った後もきっと、その痛みと悲しみに苛まれることだろう。 分かっていた。知らないはずがなかった。 それでもピサロは、殺戮を続けてきた。 殊に、ピサロが奪ったのは、ロザリーの命だけではない。 「もう、遅いのだ。私は……君の友を殺めた。君の友が愛した人をこの手に掛けた」 魔法使いの少女と暗殺者の少年の姿を思い起こし、告げる。 背中に回された腕の力が、強くなった。 「過去はもう、戻せません。できるのは、未来へ伸びる道を歩むことだけです。 過ちを繰り返さず、償いを果たしてくださいませ。殺めた貴方が行うべき償いを、果たしてくださいませ」 忘れないでください、と締めるロザリーに、ピサロは口籠る。 生きて、償う。 それは、ロザリーを蘇らせるという終着点にはたどり着けない道だった。 示された一本の道筋を前で、ピサロは立ち尽くす。やはりピサロは、希わずにはいられないのだ。 身勝手で醜悪で無様な言い分だとしても。 他者を顧みず無数の運命を蔑ろにする、罪深い欲望だとしても。 ロザリーの命を今一度、望まずにはいられない。 「それでも、私は、君に……」 弱音めいた口調が、零れ落ちた。 それをロザリーは、宝物のように掬い取る。 「逢えます。私が貴方を愛する限り、貴方が私を愛している限り、いずれ、必ず」 断言には揺るぎがない。 お互いに想い合う気持ちさえなくさなければ、絆はきっと引き寄せられると、ロザリーは告げている。 ですから、とロザリーは続ける。 「ニノちゃんが伝えてくれた私の想いを、もう一度、私の言葉で伝えます」 毅然として、堂々と。 「もう、お止めください。私の命を願い息づく命を奪う行為など、私は、決して望んではおりません。 その果てに蘇ったとしても、私は」 それでいて、ひどく痛そうに、とても苦しそうに、見ていられないほどに辛そうに。 「貴方を、愛せません……ッ」 断言する。 「どうか、私にくださる想いやりを、少しでも他の方に向けてあげてください。 罪を思い、償いを成し、そして――ご自身を大切になさってください」 お願いです。 「どうかこれ以上、貴方を傷つけないで。私を、苦しめないで……ッ」 深い吐息を挟み、ロザリーは、想いを吐き出した。 「ずっとずっとずっと、貴方を、好きでいさせて……ッ!!」 責められても仕方あるまいと、憎まれても言い返せまいと、怨まれて当然であると。 嫌悪され、唾棄され、侮蔑され、憎悪され、忌避され、厭悪されるであろうと。 思っていた。思い込んでいた。 そうあるべきだと独りよがりに信じていた。だから躊躇わず、ロザリーの想いを裏切ってきた。 そんなピサロのココロに、ロザリーの震えが、嗚咽が、切なる願いが突き刺さる。 ピサロの傷がロザリーの傷ならば、ピサロの復讐は、ロザリーをいたずらに痛めつける行為でしかなかった。 自傷行為が愛する者を傷つける行為に繋がるというのなら。 この復讐は、二人の傷を深めるだけで、決して終わらない。 ピサロはロザリーを三度殺した。 それだけではなく、殺した後も、その高潔な想いを冒涜し続けた。 「すまない……。本当に、すまない……ッ!」 見て見ぬふりはもう出来ない。ロザリーの傷を目の当たりにしても復讐を続けられるほど、ピサロの愛は歪んでいない。 謝罪の気持ちが溢れ、またも涙が視界を滲ませる。 「抱きしめて……くださいませ……」 変わらず両手を下げたままのピサロを、ロザリーは、潤んだ瞳で真っ直ぐに求めてくる。 泣き声の彼女に、ピサロは、歯を食い縛って首を横に振った。 「私の手は血塗られている。罪に塗れている。そんな手で君を抱き締めるなどと――」 言い淀むピサロへと、ロザリーは繰り返す。 ルビーの涙を流しながら、ピサロを真正面から見据えて、繰り返す。 「抱きしめて、くださいませ。私を抱き締めるのは……お嫌ですか?」 問いかけと呼ぶには生易しい強さを孕むその言葉は、ピサロの想いの確認だった。 言い訳がましい否定よりも、逃避めいた理屈よりも、ただ、愛おしさが勝る。 もう、裏切るのは止めにするべきだと思った。騙すのは止めにしたかった。 大切な女性の願いたった一つを叶えられないというのなら、そこに愛は、きっとない。 ピサロの手から武器が落ちる。 空いた手で、代わりに。 愛しき身を、抱き締めた。 腕の中にある肩はとてもか細い。 この細い肩は、どんなことがあったとしても、絶対に傷つけてはならないもののはずだったのだ。 その根本にあった誓いを押し出し、内省へと繋げ、傷ついたロザリーのココロを撫でるように抱き締める。 「愛している。未来永劫、本当に君を愛し続けると誓うよ、ロザリー」 「私も、愛しています。貴方の愛に負けぬほどの、心よりの想いを、貴方に注ぎ続けます、ピサロ様」 どちらともなく、見合わせた顔を、ゆっくりと近づける。 想いを確かめ合うように、二人は口付けを交わす。 その口付けは、最高に甘かった。 ◆◆ はぁ、と溜息を吐いたのは何度目だろう。 この短時間で、アナスタシアはもう一生分の溜息を吐いた気がする。 うっとりしているわけでは決してなく、ピサロとロザリーの想像以上のいちゃつきっぷりに呆れ果てていた。 奇跡の立役者として立ち合う権利くらいあるだろうと言い訳をし、出歯亀根性に従ったのが間違いだった。 一部始終を見物したのはいいが、これほどまで見せつけられるとは全くもって予想外だ。 脚本も台本もない生のラブロマンスは、完全にアナスタシアから気勢を削いでいた。 ――なんかもう……どーでもいいわ。色々と。 怒りが失せて毒気が抜け、代わりに壮絶な疲労が全身に圧しかかって来る。 立っているのも億劫になり、大の字に倒れ込んで、横目でピサロとロザリーを窃視する。 まだ、ちゅーちゅーやっていた。 さすがに見ていられなくて、アナスタシアは目を逸らし、もう一度盛大に溜息を吐く。 信じられないくらい体中が痛むのは、あのアツアツっぷりが目に毒だからに違いない。 ――いいなー。いいなあー。わたしも素敵な彼氏がほしいなあー。 ヤケクソ気味な欲望を声に出さなかっただけ、自分を褒めてあげたいとアナスタシアは思う。 再度の生を得て、仲間が出来て、少しくらいは満たされたと思っていた。それは確かだ。 けれど人の欲というものは果てを知らない。 ましてやアナスタシアは、ルシエドを従えるほどに欲深いのだ。まだまだ乾いている箇所はいくらでもある。 もっと生きたい。生きてやりたいことは山ほどある。欲しいものだって星の数ほどある。 まだまだ欲望の火種は、アナスタシアのココロで燻り脈打っている。 だから、アナスタシアは安心できた。 ――まだ、わたしは“わたし”でいられるのね。 その安堵はすぐに、強烈な眠気へと変わる。 瞼が重い。とんでもなく重い。 耐えられず、アナスタシアは目を閉じた。 心地よいまどろみの中で、素敵な男性のことを夢想し、アナスタシアの意識は消えていった。 ◆◆ 腕の中の温もりが消えていく。唇に触れる湿っぽい柔らかさが遠ざかっていく。 目を開ければ、もはや白の光はなく、荒れ果てた地が目に入った。 甘い奇跡の時間は終わった。 空になった掌に、ピサロは目を落とす。 そこにはまだ、温もりが残っている。温かい残滓を逃さないように、ぐっと握り締める。 手の甲を目尻に押し当て、流れる涙を思い切り拭き取る。 息を吸い込む。 肺に満ちた埃っぽい空気を、長く吐き出した。 目元を擦り深呼吸を繰り返す。 膿を出し澱を抜くように、体内に淀む空気を入れ替える。 愛する者を痛めつけ続ける不毛な復讐の念を、外に放り出す。 悲嘆と殺戮の果てに愛する者の命を求める旅路は、もはや歩めない。その旅の果てに、ロザリーの姿はないと知ってしまったから。 行くべきは、ロザリーが示してくれた別の道。 過ちを繰り返さず、罪を償い、ロザリーを決して裏切らない道のり。 その方向へ、ピサロは、自らの意志で踏み出すのだ。 ピサロがこの手で奪った命に、ピサロ自身の想いを以って償うために。 一歩を行く。 何ができるか分からない。何をすべきかは定まらない。だが、やると決めたのだ。 ならばもう、迷ってはいられない。 ピサロはバヨネットを拾い上げる。意志を貫くための、力とするために。 やけに重く感じる武器を持ち上げ、天へと翳し、目を閉じる。 ――ニノ。そなたに宣言した約束を反故にすることを詫びる。 ――そして、不実を承知で頼む。これからも、ロザリーの傍にいてやってくれ。 引き金を引く。 打ち上げられた魔力が、天空で爆ぜる。 ――ジャファル。ともすれば、ラフティーナを呼び覚ましていたのは貴様だったやもしれぬ。 ――貴様の至った境地、立派だったと今にして思うぞ。私が次に道を踏み外そうものなら、その手で我が身を裁いてくれ。 撃鉄が落ちる。 舞い上がる魔力が、蒼穹を彩る。 ――ロザリー。何度でも、何度でも言わせてくれ。私は君を愛している。いつまでもいつまでも、愛している。 ――私は、君を傷つけず苦しめない道のりを辿るよ。その果てで必ず君に、逢いに行く。 ――だから今は、どうか。 ――どうか、安らかに。 魔砲が、唸る。 迸る魔力が高く、高く、高く昇り上がり、ソラを染め上げた。 ピサロは忘れない。この想いを、決して忘れない。 見送りを終えて、砲を降ろす。 耳にあるのは残響と、少し遠くから響く戦闘の音。 奇妙なほどに静かで、ピサロは怪訝さを表情とし、あたりを見回し、見つける。 大の字で地面に倒れ込むアナスタシアを、だ。 近づいてみるが、彼女は目を開けない。動かない。 「おい」 呼びかけてみる。 「おい!」 だが、返事はない。 呼んでも、答えは返ってこない。 顔を覗き込み、少し声を張り上げ、 「おい……アナスタシア・ルン・ヴァレリア!」 初めて、その名を呼ぶ。 「……ふにゃー、そこは、駄目よぉ……」 寝言が返ってきた。それも、口端から涎を垂らして、だ。 殺してやろうかと、本気で思った。 沸々とわき上がる黒い感情を、ロザリーの顔を思い出して必死で抑える。 本当に、この女は気に入らない。 粗雑で下品でやかましく欲深い。ロザリーの慎ましさを少しくらいは見習うべきだとピサロは思う。 だが不本意ながら、アナスタシアには借りができてしまった。 彼女がいなければ、ピサロはロザリーを傷つけ続けるだけだっただろう。 「全く……」 呆れるように呟き、ピサロは手を翳す。 癒しの光がたおやかに輝き、アナスタシアへと降りかかる。 「……そ、そこ、いいわぁー。気持ち、いー……」 お気楽な寝言を零すアナスタシアに肩を竦めたとき、ふと、ピサロの手から回復魔法の光が消えた。 全身から、力が抜ける。 膝をつくだけの気力も絞り出せず、ピサロはアナスタシアの隣に倒れ込んだ。 またも、魔力切れ。 更に、感情が揺れ動いたことによる心労が、ピサロの魔力をより早く枯渇させていた。 強烈な睡魔が、意識を侵食してくる。 眠るな、とピサロは思う。 まだ戦いは続いている。仲間のいないピサロにとって、今この場で眠るのは危険極まりない。 なんとか起き上がろうと手を地面につけたとき、声が響いた。 『案ずるな。汝に危機が迫りしとき、我が汝を呼び覚まそう』 音なき声は、ピサロの頭に直接届く。 『二人の愛がある限り、我が力は不滅。愛しき者を想い、今は休むがよい』 愛のガーディアンロードの囁きは優しく、穏やかで。 ピサロは、身を委ねるように目を閉じる。 ◆◆ かくして、魔王と恐れられた男と、英雄と称えられた女の喧嘩は終わる。 神聖さも荘厳さも大義も野望もない、感情と意地と欲望のぶつかり合いの果てで、二人は並んで眠りにつく。 そこには、あらゆる戦場と切り離されたかのような静けさが満ちていた。 【C-7とD-7の境界(C-7側) 二日目 昼】 【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:ダンデライオン@ただのツインテール ダメージ(大) 胸部に裂傷、重度失血 左肩に銃創 リフレッシュの連発とピサロの回復により全体的に傷は緩和。爆睡中。 精神疲労(超極大) 素敵な彼氏が欲しい気分 [装備]:アガートラーム@WA2 [道具]:感応石×3@WA2、ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式×2 [思考] 基本:“自分らしく”生き抜き、“剣の聖女”を超えていく。 1:まだまだ生きたい。やりたいこと、たくさんあるもの。 2:ジョウイのことはとりあえずこの場が全部終わってから考える 3:今までのことをみんなに話す [参戦時期]:ED後 [備考]: ※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。 ※アナスタシアの身にルシエドが宿り、聖剣ルシエドを習得しました。大きさや数ついてはある程度自由が利く模様。 現在、セッツァーが欲望の咢を支配しているため、剣・狼ともどもルシエドを実体化できません。 【ピサロ@ドラゴンクエストIV】 [状態]:クラス『ピュアピサロ』 ダメージ(大) ニノへの感謝 ロザリーへの純粋な愛(憎しみも絶望感もなくなりました) 精神疲労(極大) 魔力切れ 熟睡中 [装備]:クレストグラフ(5枚)@WA2 愛のミーディアム@WA2 バヨネット [道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実 点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石) 天罰の杖@DQ4 [思考] 基本:ロザリーを想う。受け取ったロザリーの想いを尊重し、罪を償いロザリーを傷つけない生き方をする 1:償いの方法を探しつつ、今後の方針を考える [参戦時期]:5章最終決戦直後 [備考]:*クレストグラフの魔法は、下記の5種です。 ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック、ハイパーウェポン *バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます *ラフティーナの力をバヨネットに込めることで、アルテマを発射可能です。 時系列順で読む BACK△147-1Aquilegia -わたしの意地、私の意地-NEXT▼148 オディオを継ぐもの 投下順で読む BACK△147-1Aquilegia -わたしの意地、私の意地-NEXT▼148 オディオを継ぐもの 147-1 Aquilegia -わたしの意地、私の意地- アナスタシア 149-1 魔王様、ちょっと働いて! ピサロ ▲
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No. 名前 HP SP 攻撃力 防御力 魔力 敏捷性 弱点属性 耐性属性 説明 弱点ステート 無効ステート 経験値 賞金 アイテム ドロ率 場所 備考 001 赤ぷよ 144 10 19 13 17 15 氷 凶暴化した赤いぷよ。 3 12 最初の森 002 ヤムチャ 1500 55 26 15 21 19 始まりは荒野の大悪党。終わりはただのヘタレ。 40 102 最初の森 ボス 003 リアルスライム 162 10 23 16 19 19 氷 どろどろした単細胞。決してあの愛らしいDQのマスコットではない。 5 18 最初の森 004 キワミ 2600 80 28 18 27 23 フタエノキワミ、アッーー! 62 210 最初の森 ボス 005 野盗・知力25 192 25 26 18 22 22 所詮知力25脳筋。 7 18 赤ポーション 1/100 盗賊の洞窟 006 野盗・器の小さい男 186 40 23 15 22 25 嫉妬深く何より器が小さい。人としてどうかと思う。 7 16 1/100 盗賊の洞窟 007 緑ぷよ 192 25 25 20 20 20 凶暴化した緑ぷよ 6 16 1/50 盗賊の洞窟 008 本気のキワミ 3800 85 35 25 30 31 本気を出しても所詮キワミはキワミ。 80 300 盗賊の洞窟 ボス 009 鈴仙・優曇華院・イナバ 5000 85 36 23 35 34 輝夜と永琳とてゐのおもちゃ。外見のせいもあり新参ホイホイの称号を与えられる。 120 500 ボス 010 上海人形? 270 35 29 28 28 31 電 中華が誇る最先端の二足歩行ロボ。 10 23 1/200 東の塔 011 KFC 260 37 27 29 32 28 電 氷、水 主にクリスマスに活躍する人。クリスマス時期は1時間待ちは当然である。 12 21 東の塔 012 全てを吸い込む者 288 0 29 26 28 33 電 氷、水 ブラックホールにあらず。 11 25 東の塔 013 上海人形 1800 50 35 30 37 32 アリスの操る人形。実物はもふもふしている。 眠り、麻痺 35 122 東の塔 014 アリス・マーガトロイド 6000 100 42 33 39 35 友達いない。アリス・マーガロイドと間違われる。いわゆる可愛そうなキャラ。が、こいつは偽者。 202 300 東の塔 ボス 015 邪神像・M 353 60 41 32 38 38 光 闇 実質1万円するらしい。 16 33 1/125 東の森アリスの館 016 邪神像・S 335 60 44 28 35 36 光 闇 これは酷い! 17 31 青ハーブ 1/125 東の森アリスの館 017 下魔 313 100 42 30 29 35 氷、光 炎 中身はあんこらしい。 14 28 東の森アリスの館 018 スーパーヤムチャ 2000 55 48 33 35 48 どのあたりがスーパーなのか突っ込みたいプレイヤーは数知れず。 100 150 東の森 ボス 019 アリス人形 2200 100 42 33 39 35 アリスそっくりな鈍痛人形。 300 500 アリスの館 020 アリス・マーガトロイド 7000 100 58 38 62 48 友達いない。アリス・マーガロイドと間違われる。いわゆる可愛そうなキャラ。 480 300 アリスの館 ボス 021 Mr.D 9900 100 65 42 65 55 某球団のマスコットだが、球団よりマスコットの方が人気が出てしまっている。 600 500 ボス 022 ジャイアン 455 60 53 43 49 49 雑貨屋の息子ではない。 21 42 青ハーブ 1/125 東の洞窟 023 キワミマインド 453 60 51 46 51 51 未練タラタラのキワミである。 24 38 東の洞窟 024 リアルなスケルトン・T 456 50 50 42 53 48 炎 リアルすぎてぶよも強そうだ。 20 42 東の洞窟 025 水銀燈 12000 250 66 48 58 62 誇り高きローゼンメイデン第一ドール。 800 900 東の洞窟 ボス 026 紫ぷよ 502 100 63 50 56 58 凶暴化した紫ぷよ 37 52 毒消し草 1/50 南西の塔 027 武者 505 100 67 48 58 56 コロッケが好物らしい。 39 48 南西の塔 028 スプー 507 100 66 50 59 56 炎 かなり不気味である。 37 50 南西の塔 029 射命丸・文 13500 300 72 52 65 999 新聞屋。しかし、最近は色恋沙汰ばかり記事にしているのでもはやただの週刊誌化しているようだ。 1300 1150 南西の塔 ボス 030 Mr.M 9900 200 76 48 65 59 ドナルドマジックと称する記述で子どもたちに幻覚を見せる恐ろしいピエロ。 700 900 ボス 031 小町の餌 540 100 71 52 60 61 氷 炎 とてもおいしいらしい。 43 60 南西の森地下工場Ⅰ 032 中魔 563 100 74 54 62 63 氷、光 炎 中身は白あんらしい。 44 58 青ハーブ 1/125 南西の森地下工場Ⅰ 033 汎用人型決戦兵器 555 95 75 49 59 61 電 中国のネルフっぽい機関が開発したらしい歩く粗大ゴミ 45 55 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 南西の森地下工場Ⅰ 034 金糸雀 16000 300 77 56 70 68 ローゼンメイデン第二ドール。本人曰く頭脳派らしい。 1950 2000 南西の森新設の火山 ボス混乱有効 035 キワミシリーズ 2150 85 71 53 55 62 ついに量産化されてしまったキワミ。 800 300 地下工場Ⅰ 036 霧雨魔理沙 13000 650 73 55 87 96 地、風 人間の魔法使い。まだまだ本気じゃない。 2650 1000 地下工場Ⅱ ボス 037 リアルナズーリン? 599 100 76 56 64 68 ドラえもんの天敵である。 50 66 山奥の塔 038 下級妖精 612 180 77 54 70 64 電 妖精の中でも下級の能力。それでも生身の人間なら簡単にピチューンする。 54 70 山奥の塔 039 愛と勇気だけが友達 616 180 79 57 65 61 炎、氷 おなかが空いている人を見かけるとおかまいなしに自分を食わせる。 52 67 山奥の塔 040 風見幽香 16500 650 89 58 81 55 長く生きている妖怪。成り行き上戦うことになったため本気ではない。 2500 1000 山奥の塔 ボス 041 霧雨魔理沙 29000 800 78 58 88 98 地、風 人間の魔法使い。キノコマニア。 4350 2500 山奥の塔 ボス 042 霊烏路・空 38500 1250 85 63 92 100 氷、電、水 炎 特技は臨海核実験。融合分裂どんとこい!放射能汚染関係なし!でも鳥頭。 6000 3500 山奥の塔 ボス 043 バケバケ 601 100 79 59 67 67 炎、光 そこらへんに浮遊しているおばけ。かなりうっとおしい。 50 63 1/125 海底洞窟 044 キワミゴースト 611 100 77 60 68 66 炎、光 キワミシリーズが成仏できないとこうなる。 54 59 海底洞窟 045 フェアリーゴースト 605 182 77 54 74 72 炎 妖精のおばけ。 59 75 海底洞窟 046 西行寺幽々子 6000 300 83 65 83 69 炎、光 闇 1000年以上も亡霊をやってる人。でもこいつは幻影。 3850 2500 海底洞窟 047 西行寺幽々子 29000 1250 87 68 96 105 炎、光 闇 1000年以上も亡霊をやってる人。腹ペコ亡霊。いつでもどこでも食う。 4250 4400 海底洞窟 ボス 048 上魔 660 200 83 61 77 80 氷 炎 中身はうぐいすあんらしい。 59 80 1/125 新設の火山 049 中級妖精 650 350 79 58 95 88 妖精の中でも中級の能力。生身の人間はもちろん、鍛えた人間でもピチューンする。 63 79 新設の火山 050 毒パンマン 680 180 87 60 70 77 炎、氷 おなかが空いている人を見かけるとおかまいなしに自分を食わせる。 60 71 新設の火山 051 翠星石 28500 500 93 112 93 ローゼンメイデン第三ドール。実力はかなりある。 5000 6000 新設の火山 ボス狂気有効 052 エリートキワミ 4500 85 95 60 70 102 量産化されたキワミの中でも特に優秀な部類。 1500 500 新設の火山 053 八意永琳 30000 85 106 77 126 115 光、闇 何やら様子がおかしい。弾幕薄いよなにやってんの! 6000 7500 新設の火山 ボス 054 リアルみすちー?(事後) 715 200 88 66 100 93 炎、地 みすちーの成れの果て? 78 84 北西の森 055 フォレトスキワミ 800 150 96 58 72 99 炎 水、地 森での暮らしが長かったためか、身体が緑になった。 72 63 北西の森 056 決してリグルではない 703 200 92 62 91 133 炎 ただのゴキブリである。断じて蛍ではない。 79 82 北西の森 057 キワミシリーズⅡ 1500 150 97 60 74 99 HPを犠牲にして他の部分を強化したキワミ 500 500 北西の森 058 因幡てゐ 32000 255 106 81 111 119 地上の兎。外見は幼いが幻想郷ではかなりの古参。嘘と詐欺が大好き。 7000 10000 北西の森 ボス狂気有効 059 ガトチュ 918 100 103 66 85 101 元新撰組。強姦パウダーの被害者。 96 105 1/200 魔物の施設 060 悪魔 923 100 101 68 88 97 炎 こんなのに襲われたらひとたまりも無い。 95 103 オリデオコン 1/200 061 上級妖精 950 400 97 65 106 100 炎、風 地 妖精の中でも上位に部類され下級妖怪なら相手にならない。 100 112 魔物の施設 062 多々良・小傘 26000 240 112 80 119 138 炎 雷、水 元は忘れられた傘。人を驚かせるのが生きがい。 6500 9000 魔物の施設 ボス 063 カレーセット 988 100 100 66 91 112 殺さずを誓う人。 112 150 064 ポーズだけルーミア 972 100 99 68 93 138 どこをどう見てもブーン。 108 146 065 フェアリーゾンビ 945 220 95 69 115 115 炎 妖精のゾンビ 110 156 1/150 066 八意永琳 18000 85 105 75 125 122 永遠亭の影の支配者。日々、ニートクイーン輝夜を働かせようと四苦八苦している。 12000 7500 ボス 067 カースドール 995 160 98 64 94 106 炎、光 闇 呪われた人形。夜な夜な奇声を出すらしい。 115 155 068 アイスキワミ 997 154 96 62 92 100 炎 氷、水 長い雪国暮らしで肌が青くなってしまった。血流悪し。 112 150 069 ポリン 990 150 97 65 104 105 ROで一番最初にお世話になる魔物。この物語だと強い。 117 155 1/200 070 雪華綺晶 21500 250 102 66 117 115 ローゼンメイデン第七ドール。本来は実体を持たないアストラルドールであるが、この世界で実体を手に入れた。 16500 12500 ボス 071 ひろし 993 180 105 61 89 95 呪いの館に迷い込んだリーマン。 118 143 072 デビルドール 980 180 104 65 93 91 悪魔が宿るらしい人形。 113 148 073 森の精 989 300 90 65 106 97 森に住む妖精 114 149 074 蓬莱山輝夜 21000 250 703 71 115 105 永遠亭の姫。永遠のニート。 17000 10000 ボス 075 お取り寄せ 1022 100 103 69 97 119 働きたくないでござる! 123 160 1/200 076 ピラミッドの番人 1055 300 91 70 110 100 王様の趣味で妖精に守らせていたらしい。 119 155 1/200 077 墓荒し 1200 100 105 115 95 60 炎 こんなもんで乗り込んだら荒らしどころか壊れる。 120 159 078 霊烏路・空(偽者) 51000 1250 105 68 102 100 氷、雷、水 実は偽者だったため、本物より賢い。 18000 12500 ボス 079 ヒテンミツルギ 2500 200 103 72 105 122 5円引き!! 450 400 080 ロイヤルキワミ 2200 150 106 78 74 115 キワミシリーズで優秀なキワミ。 450 400 081 ナイトマジシャン 70000 3500 111 79 123 115 闇 パチュリーの忠実な僕。ただし中二病。ちょっと気がふれている。 5500 12500 ボス 082 量産型門番 1455 150 112 71 113 123 門番さんの量産型。元が元だけによく寝てサボる。 155 190 083 非想天則? 1438 150 117 67 109 117 どうみても中国製。 148 186 084 最上魔 1459 150 116 69 115 114 氷、水 炎 中身は白あんらしい。 153 183 085 最上級妖精 1350 950 105 60 133 116 妖精の最上位。 160 146 086 雪華綺晶 55000 2800 116 70 133 120 ローゼンメイデン第七ドール。本来は実態を持たないアストラルドールであるが、この世界では実態を手に入れた。そしてついに本気を出した。 45000 38500 ボス 087 マウントキワミ 1725 150 121 83 90 119 山に特化したキワミ 199 202 088 山の精霊 1660 1300 110 70 145 118 炎 山を守っている精霊。 188 179 1/200 089 箱根駅伝5区担当 1669 150 123 88 84 177 山をかける童子?将来は箱根駅伝5区を走りたいらしい。 192 208 090 死神 18500 1500 143 90 166 115 闇 死を裁く神。何故地上にいるのか不明。 10000 10000 091 東風谷早苗 55000 1500 144 96 183 155 水 霊夢の2Pカラーだのルイージだの酷い言われよう。だが、霊夢より人気がある? 30000 32000 ボス 092 量産型門番弐式 1985 330 132 92 118 132 門番さんの量産型の改良型。でも元が元だけに… 225 233 093 ナイトメア 2033 280 128 84 124 140 光 闇 悪魔の馬。ゲフェンダンジョンによく沸く。 232 222 094 EXひろし 1956 220 133 85 105 122 スタイリッシュになった。 226 295 095 フランドール 58000 2200 166 100 172 145 レミリアの妹。理性を失うとこんな感じか。 38000 70000 ボス 096 ゴンズ 5000 330 53 70 52 62 光、闇 魔界から召喚された雑魚 0 0 097 ジャミ 5000 330 47 42 56 55 光、闇 魔界から召喚された雑魚 0 0 098 ドラゴン 2370 400 140 97 135 151 氷、水 炎 ファンタジーの王道。 290 300 099 ダークマージ 2200 1050 130 92 159 148 氷、水 炎 悪魔に魂を売った人間の魔法使い。 295 288 1/200 100 ダンジョンキワミ 2210 150 141 90 120 132 ダンジョンに特化したキワミ 270 255 101 キラーマシン 2250 150 143 92 125 139 こいつに殺されたら死んでも死に切れない。 278 292 オリデオコン 1/150,1/100 102 ヤムチャ 9500 400 132 95 145 139 所詮ヤムチャ。もはや素質の問題だろう。 即死 5000 2500 103 真紅 68000 2000 156 100 202 173 ローゼンメイデン第五ドール。主人公なのだが水銀燈や翠星石の方が人気があり不人気と呼ばれてしまう。 42000 40000 ボス 104 量産型門番参式 3870 800 156 112 178 168 どうあっても門番は門番。 335 402 白ポーション 1/200 105 量産型う詐欺 3750 800 159 116 174 183 量産された詐欺兎 372 359 106 ひまわり妖精 3600 1350 152 108 189 178 ひまわりを持った妖精。 325 379 青ポーション 1/200 107 パチュリーガードキワミ 3770 900 159 109 174 166 パチュリーの肉壁。 342 396 108 ヤムチャ 17000 400 132 95 145 139 二人になってもヤムチャはヤムチャ。 即死 5000 2500 109 νキワミ 3850 900 165 118 185 173 新型のキワミ 358 410 110 キャーイクサーン 3847 915 162 116 190 179 雷、水 幽々子の食材2号にされてしまいそうな感じがする。 365 419 111 ヤムチャ 31000 400 175 18 15 999 死にすぎた結果がこれだよ! 12500 5000 112 翠星石 66000 500 173 115 202 175 ローゼンメイデン第三ドール。実力はかなりある。前回よりパワーアップした。 40000 35000 ボス 113 風見幽香 95000 3000 210 123 190 215 本気を出したゆうかりん。 50000 45000 ボス 114 のうかりん 3890 800 166 115 185 172 ゆうかりんにあらず。 370 410 1/200 115 フランドール 220000 3000 208 118 200 175 炎、光 紅魔城伝説のフランドールさらに本家のフランドールと配合されむりげーになった。 50000 60000 ボス 116 金糸雀 56000 1000 182 115 193 178 実力を出したはいいが相手が悪かったようだ。 35000 30000 ボス 117 量産型アル中 3870 800 172 110 182 168 一応ラスボスではあるがカリスマという次元で語られたことはない。 377 418 1/200 118 ゴリアテ 190000 3000 215 153 200 150 雷 アリスが作った試作品。 49000 50000 ボス 119 CCO 5200 1000 185 135 192 183 炎 全身包帯男。「燃え尽きたぜ、真っ黒に」 395 601 1/200 120 地を這う門番 4990 1000 180 139 188 193 うぞうぞ… 390 588 超モルヒネ 1/200 121 量産型みょん 5400 1000 188 133 180 186 みょーん!! 388 585 122 ファイナルキワミ 5150 900 178 135 185 192 最後のキワミ 400 650 1/200 123 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 イグドラシルの種 1/1 124 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 イグドラシルの実 1/1 125 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 超・モルヒネ 1/1 126 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 青ポーション 1/1 127 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 白ポーション 1/1 128 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 エルニウム 1/1 129 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 オリデオコン 1/1 130 パチュリー・ノーレッジ 330000 5000 245 150 248 180 ダークソウルに乗っとられかけているパチュリー。理性があったりなかったり。 85000 300000 ボス 131 ジ・エンド・オブ・キワミ 7800 900 185 147 198 215 本当の最後のキワミ 615 700 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 132 量産型門番最終形態 7850 900 196 155 191 218 最後の門番 625 700 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 133 ゾフィー 7650 2200 190 145 221 215 炎、光 妖精の幽霊 650 695 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/158 134 量産型桶 7500 900 190 160 193 205 Tomak・・・ではない。 628 695 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 135 量産型有頂天 7690 900 193 163 190 200 有頂天。 640 900 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 136 量産型さぼり魔 7900 900 202 166 182 192 隙あらばサボる。 636 690 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 137 小悪魔 230000 5000 235 161 241 210 図書館の司書。公式設定があまり無い事をいいことにうp主が好き勝手に設定した結果がこれだよ! 70000 200000 ボス 138 ヤムチャ 10000 400 190 142 178 166 最後もヤムチャもヤムチャであった。 即死 8500 10000 139 ヤムチャ 60000 400 190 142 178 166 最後もヤムチャもヤムチャであった。 即死 8500 10000 140 量産型ゴリアテ 11800 3000 210 159 223 180 雷 アリスが作った試作品を完成させ量産化したもの。本家より性能はだいぶ劣る。 920 1250 オリデオコン、エルニウム 1/30,1/30 141 ファーストフード店の主 12800 1500 220 166 210 195 ドナルドマジックと称する奇術で子供達に幻想を見せる恐ろしいピエロ。 1020 1140 青ポーション、エルニウム 1/40,1/50 142 ナゴヤドームの主 11500 1000 216 155 216 188 某球団のマスコットだが、球団よりマスコットの方が人気が出てしまっている。 990 873 超モルヒネ、オリデオコン 1/50,1/60 143 エクストラキワミ 13000 900 212 175 211 215 EXキワミ 980 889 オリデオコン、エルニウム 1/30,1/30 144 死神 105000 1500 240 160 218 220 闇 死を裁く神。小町の同僚ではないらしい。 30000 35000 145 ナズーリン 250000 5000 230 170 250 252 宝探しが得意なねずみ。同志ナズーリン!地球は青かった! 80000 400000 バスタードチルノソード 1/1 ボス 146 スーパーヤムチャ 350000 400 312 1 1 1 最後もヤムチャはヤムチャであった。 即死 12500 10000 147 姫海棠はたて 420000 7000 282 200 322 300 文のライバル。よくほたてと間違えられる。 200000 900000 ボス 148 霧雨魔理沙EX 290000 8000 280 258 550 355 強化版魔理沙 125000 210000 おまけ 149 西行寺幽々子EX 320000 5500 478 312 455 205 強化版幽々子 125000 200000 おまけ 150 霊烏路・空EX 288000 3250 502 225 400 215 炎 強化版お空 125000 200000 おまけ 151 フランドールEX 410000 2200 498 210 422 235 強化版フランドール 125000 200000 おまけ 152 多々良小傘EX 380000 3200 502 302 498 275 強化版小傘 125000 230000 おまけ 153 グランドマスターキワミ 22500 900 315 287 302 253 最強最悪のキワミ 2250 1350 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 154 超級妖精 17000 2200 288 265 520 275 最強の妖精 2300 1200 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 155 パチュリーソウル 24500 2200 305 275 488 238 パチュリーの魂っぽいもの 2180 1500 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 156 フランちゃんウフフ 26600 1000 535 280 310 263 やはり量産化されていた 2400 1660 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 157 レミリアHyper 410000 7500 498 210 422 235 レミリアのコピー 125000 200000 ディスティニー 1/1 おまけ 158 アリスHyper 455000 7000 470 202 498 238 アリスのコピー 140000 200000 フェイト 1/1 おまけ 159 古明地さとり 350000 5500 445 220 515 315 本編では全く出番が無かった。 99000 100000 インフィニティ 1/1 おまけ 160 古明地こいし 328000 5500 622 235 420 250 本編では全く出番が無かった。 99000 100000 メビウス 1/1 おまけ 161 ヤムチャ総集編 160000 3550 355 302 300 999 最後もヤムチャはヤムチャであった。 12800 22000 ヤムチャの証 1/1 おまけ 162 早苗Hyper 400000 7000 560 310 202 288 早苗のコピー 133000 100000 ジェノサイド 1/1 おまけ 163 風見幽香 600000 7000 580 380 490 300 これぞラストバトル100%の力を出した。 200000 100000 164 アリス(嫁補修) 915000 7000 740 350 715 325 ここまで来るともはやうp主の趣味以外のなにものでない。 500000 2000000 165 うどんげシリーズ 31000 2500 487 290 502 269 いつの間にか量産されていた鈴仙。 3650 3220 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 166 ゴッドキワミ 32650 1500 517 312 415 260 ついに神化した 3300 3250 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 167 さとりソウル 34800 5500 480 300 530 290 さとりの魂のようなもの 4125 3280 168 こいしソウル 35000 5500 548 256 560 250 こいしの魂のようなもの 4100 3958 169 レミリアシリーズ 34250 7500 522 273 422 278 レミリアのコピーのシリーズ化。 4000 3290 イグドラシルの実 1/1 170 早苗シリーズ 33900 7000 482 250 485 271 早苗のコピー 3950 4012 171 八意永琳 358000 4500 589 450 613 489 永遠亭の影の支配者。日々、ニートクイーン輝夜を働かせようと四苦八苦している。ルナティックダンジョンでついに出番が回ってきた。 115000 28900 172 蓬莱山輝夜 319000 3800 652 438 670 422 永遠亭の姫。永遠のニート。蓬莱ニート。 125000 10000 173 鈴仙・優曇華院・イナバ 448000 5200 635 450 615 453 鈴仙の偽者。本編で登場予定であったが没になったためここで出て来ることになった。 160000 25800 174 フランドール 530000 6000 672 480 650 470 本物のフランドール。 180000 30000 175 風見幽香シリーズ 52500 2800 580 380 490 365 ゆうかりんの偽者 6200 3500 176 ナズーリンシリーズ 53000 5000 560 390 480 445 ナズーリンの偽者。 6000 3280 177 キワミ総集編 56000 1500 550 385 480 402 全てのキワミ 6380 3950 1/15,1/15 178 パチュリーシリーズ 62500 2200 450 388 688 398 パチュリーの偽者 6870 4520 起死回生の札、イグドラシルの実 1/15,1/3 179 薔薇水晶 560000 8000 650 470 660 480 TBSメイデン。原作には出てこない。チルノRPGでは本編で登場予定であったが雪華綺晶を仲間にする都合上没キャラとなってしまった。 210000 40000 180 霊烏路・空 600000 8000 710 400 600 425 没仕様の本物の空。没時より約10倍強くなっている。 245000 60000 181 アドベントチルノ 750000 9999 750 450 815 485 あたいったらさいきょーね! 550000 100000 182 ナインボール・チルノ 940000 9999 910 350 912 745 あたいったらさいきょーね! 800000 0 No. 名前 HP SP 攻撃力 防御力 魔力 敏捷性 弱点属性 耐性属性 説明 弱点ステート 無効ステート 経験値 賞金 アイテム ドロ率 場所 備考 どうやらVer2.51が何度か配信されていたようで、12/30までに配信されたデータは修正されていたのでそちらの方を乗せておいた。
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きみのたたかいのうた(前編) ◆Vj6e1anjAc どん、と響いた衝撃音が、始の鼓膜へと突き刺さる。 ちら、と視線のみを向ければ、馬鹿でかい装甲車のタイヤが空回りしている。 おおよその目測だが、速度は時速80キロほどであっただろうか。 人の姿では、直撃を食らっていたなら一発でアウトだっただろうし、あれが堅牢な装甲車でなければ、乗り手も死んでいたかもしれない。 そう。 相川始は、強襲する装甲車の突撃を、食らわなかった。 咄嗟の判断だった。 一瞬回避が遅れていたなら、まず間違いなく食らっていたと断言できた。 そのシビアなタイミングを掴むことができたのは、ひとえに前面に灯っていたもの――ヘッドライトのおかげと言えるだろう。 踏むものもない舗装された道路を走っていた車だ。 音だけでなく光すらも無く走っていたなら、最期まで気付けなかったのは間違いない。 「!」 ぶぉん、とエンジンが唸りを上げた。 標的を外し、勢い余って森の木々にぶち当たった装甲車が、轟音と共にバックする。 その勢いで車体が反転し、勢い余って回りすぎたところを、戻す。 もたついた動作は、運転免許を持たない素人のものか。 マニュアル通りの運転をしているのなら、相手に居場所を伝えてしまうライトをつけっぱなしにしていたのも頷けた。 「変身!」 一度目はまぐれであっても、二度目はない。 人間と自動車とではスピード差がありすぎる。このままの姿では、次の突撃は回避できまい。 故にほぼ反射的な動作で、カリスラウザーへとカードを通した。 『CHANGE』 低い合成音声と共に、相川始の姿が一変。 ヒューマンアンデッドの姿から、マンティスアンデッドを彷彿とさせる鎧姿へと変わる。 漆黒のオーラを振り撒き現れたのは、黒金と緋々色金の戦士――ハートの仮面ライダー・カリス。 瞬間、ぶおぉ、と吼えるエンジン。 巨大な鉄の塊が、戦闘態勢へと移行。 雄叫びと共に加速する体躯が、偽りの仮面の戦士へと殺到する。 「っ……!」 これを飛び退り、回避する。 仮面ライダーカリスの最大走力は、およそ時速75キロ。 純粋な速さ比べならともかく、瞬発力では十二分に対処可能。 相手もコツを掴んできたのだろう。避けられたのを理解した瞬間にブレーキをかけ、木との衝突だけは防いだ。 とはいえ、乗り物を運転する上で、急ブレーキが悪手であることは言うまでもない。 その理解も曖昧なうちは、素人と言って差し支えない。 (それなら、逃げ切れる) くるりと踵を返し、疾走。 アスファルトの道路から飛び出し、手頃な獣道へと突っ込む。 実のところ、始には交戦する気などなかった。 理由は第三回放送の直後、すぐに浅倉威と戦わなかった時のそれと同様。 ジョーカーの欲求と人の情――2つの感情に心を掻き乱されている現状では、とてもまともな状況判断などできない。 故に無理に戦闘して下手を打つよりも、この場は最初から戦わないことを選んだのだ。 刹那、背後から迫りくる鋼の咆哮。 金属の光を放つ猛獣が、ばきばきと枝葉をへし折って肉迫する。 道が開けているうちは駄目だ。装甲車のパワーとタフネスなら、それくらいの障害はこじ開けられる。 ばっ、と。 横跳びで獣道を外れ、茂みの中へと飛び込んだ。 そのまま木々の密集したところを狙い、幹の合間を縫うように走る。 これなら装甲車でも追うことはできない。相手が並の人間なら、このままやり過ごすこともできる。 「ちょこまか逃げるんじゃないわよッ!」 相手が並の人間なら、の話だが。 少女の金切り声が響いた。 そのヒステリックな叫びには、覚えがあった。 つかさなる少女から「お姉ちゃん」と呼ばれていた双子の姉――名前こそ知らないが、過去に2度顔を合わせた娘だ。 よもやこんなにも短いスパンで、3回も顔を合わせることになるとは思わなかった。 『HENSHIN――CHANGE KICK HOPPER』 次いで聞こえてきた機械音声は、自分達仮面ライダーのそれを想起させるもの。 浅倉が変身した紫のライダーのような、自分の知らないライダーへの変身手段を手に入れたのだろう。 これで機動力は互角となった。 だが、それでもまだ始の方が有利だ。 走るスピードが同じなら、互いの距離は詰められない。その隙に、相手に見つからないよう身を隠してしまえばいい。 『CLOCK UP』 その、はずだった。 「ぐぅあっ!?」 刹那、襲いかかる鈍痛。 腹部目掛けて放たれた衝撃と痛覚が、カリスの鎧姿を吹っ飛ばす。 宙を舞いかけた漆黒の身体が、どん、と木の幹に当たって停止した。 何だ、今のは。 未だ抜けきらぬ混乱の中で思考する。 自分と相手の間の距離は、相手が車から降りるまでに、100メートル近く開いていたはずだ。 だというのに、攻撃が届いた。発射音が全く聞こえなかったことから、射撃攻撃でないことは分かる。 ならば一体何をどうやった。射撃でないなら、どうやって攻撃を当てたというのだ。 「――ぉぉぉおおりゃああああああああああっ!」 びゅぅん。 がきぃん。 瞬間、奇妙な情景を見聞きした。 目の前に立っていた緑色の鎧。 掛け声か何かのような雄叫び。 猛スピードで空気を切り裂く音。 カリスの鎧を叩いた金属音。 それら4つの映像と音声が、ほとんど同時に再生されたのだ。 関連性が、見当たらない。 静かに佇んでいる目の前の敵と、猛然と走り追撃を仕掛けた音声とのイメージが結びつかない。 (音速を超えて動けるのか、こいつは) 導き出された答えはただ一つ。 敵の追撃とここまでへの到達が、追撃により発生した音を置き去りにしたということだ。 音より速く動けるのなら、掛け声より速く手が出たのも納得がいく。 「ったく……手間、かけさせんじゃないわよ。これ、結構、疲れるんだから……」 鎧の奥から響くのは、やはりあのツインテールの少女の声。 改めて相川始は、眼前の仮面ライダー――キックホッパーの姿を見定めた。 ホッパーの名前が指す通り、全体的にバッタの雰囲気を色濃く宿したライダーだ。 身体は宵闇の中でもはっきりと伝わってくるほどの、鮮やかに輝く緑色に包まれている。 顔面を覆うマスクなどは、そのものズバリでバッタのそれだった。 片足に装備された金色のパーツは、これまた名前通り、キック力を増幅させるためのサポーターだろうか。 「どうやらその高速移動も、そう何発も使えるものじゃないらしいな」 立ち上がり、態勢を立て直し、呟く。 半ば息を切らした声からも、あれの体力消耗が大きいというのは確かなのだろう。 ずっとあのままではたまったものではなかったが、短時間しか使えないのなら、どうにかなる。 「関係ないでしょ。どうせアンタ、ここで死刑確定なんだから」 言いながら、緑のライダーが構えを取った。 「そうか」 始もまた、それに応じる。 できることなら雑念が消えるまで、戦うことなくやり過ごしたかったが、この距離ではそうも行かないだろう。 逃げるにしても倒すにしても、確実に反撃を要求される間合いだ。 「分かったらとっとと……死ねぇぇぇっ!」 「はあぁっ!」 緑と黒が同時に吼える。 赤い瞳同士が肉迫する。 加速し、振りかぶられるキックホッパーの足。 踏み込み、突き出されるカリスの腕。 もはや何度目とも知れぬ、仮面ライダー同士の一騎討ちが始まった瞬間だった。 ◆ 見る者が見れば、明らかに異常と分かる切り口だった。 なればこそスバル・ナカジマは、目の前の男を犯人だと断定した。 いくら鉄には劣るとはいえ、人間の骨は相当に頑強で強靭だ。 いかな豪剣を持っていたとしても、よほどの達人でもない限りは、完全に平坦な切り口を作ることはかなわない。 にもかかわらず、止血の際に垣間見た、ルルーシュ・ランペルージの傷跡は、怖ろしいほどに真っ平らだった。 そしてここに至るまでに見た木々や、あの男が切り裂いた柱も、同じように真っ平らだった。 故にスバル・ナカジマは、ヴァッシュ・ザ・スタンピードを犯人と断定した。 「オオオオォォォォォォォッ!!」 怒号を上げる。 拳を振りかざす。 獣のごとく獰猛な叫びと、獣のごとく荒々しい動作で。 獣のごとき金色の瞳を、爛々と憎悪に煌めかせながら、勢いよく床を蹴って飛びかかる。 びゅん、と反撃に出るのは無数の尖翼。 袖のない左腕から迫りくる、糸のごとき白刃の雨だ。 ぐわん、と腕を振るい、薙ぎ払った。 両足で地面を突いて逆立ちとなり、駒のごとく両足を回した。 ジェットエッジのスピナーが唸りを上げる。咆哮と共に旋風を成し、迫る凶刃を引きちぎる。 かつてナイブズだったもの――ヴァッシュの左腕から伸びる尖翼の速度は、これまでに比べると明らかに遅い。 知覚不可能な速度で放たれていたはずの斬撃が、今ではご覧の有り様だ。 それは宿主たるガンマンの意志が、かつてほどこの左腕に毒されていないためなのだろう。 そしてその程度の攻撃では、彼女を死に至らしめることなどできはしない。 「うああぁぁぁぁッ!!」 今のスバル・ナカジマは全開だ。 戦闘機人モードを解放し、IS・振動破砕を発動させ、怒りのままに四肢を振るっている。 情けも容赦も残されていない。 常人なら即死確定の技を使用することへの躊躇いなど、その目には一片も宿されていない。 腕を振り、足を振り、轟然と咆哮し立ち回る姿は、まさに金眼の野獣そのもの。 かつて地上本部攻防戦で、姉ギンガを傷つけられた時以来の、憤怒と憎悪に狂った阿修羅の形相だ。 「どぉぉぉぉぉけえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――ッ!!」 目の前に立ち並ぶ刃の壁を、両手で強引にこじ開ける。 超振動の五指が触れた先から、刃を粉々に砕いていく。 目の前の男が殺したわけではなかった。 黒髪の少年を死に追いやったのは、猛烈な炎を伴う攻撃だ。 それでも、この男に負わされた手傷さえなければ、あの場から脱出することもできたはずなのだ。 「アンタ、は……!」 ブリタニアの少年――ルルーシュの顔が脳裏に浮かぶ。 この身をきつく抱き締めた、隻腕の感触を覚えている。 不思議な少年だった。 あれほどまでにストレートに、誰かに縋られたのは初めてだった。 それほどに救いを求められたことは、生まれてこの方経験したこともなかった。 彼の世界にいた自分のことを、それ相応に大切に思っていてくれたのかもしれない。 ひょっとしたら、好きでいてくれたのかもしれない。 その好意に応えることは、残念ながらできそうにない。会ってすぐの男になびくほど、自分は軽い女ではないらしい。 それでも、あの今にもへし折れてしまいそうな背中を、支えてあげたいとは思っていた。 こうして怒りに狂った獣へと化生するほどには、救いたいと思っていた――! 「アンタだけはああぁぁぁぁァァァァァ―――ッ!!」 遂にスバルは絶叫した。 怒号と共に繰り出された一撃は、遂にその防御の全てを打ち砕いた。 生温かい吐息が漏れる。 ぎらぎらと豹眼を輝かせる。 百獣の軍勢のごとき威容と異様を孕み、殺意の魔獣がヴァッシュを睨む。 「く……」 微かな呻きが、聞こえた気がした。 目と鼻の先まで迫ったガンマンの顔は、確かに意識を失っているようにも見えた。 しかしそれらの情報は、瞬きの後にはシャットアウトされる。 獣が狙うは食らうべき獲物。 すぐに叩き潰すだけの相手のことなど、いちいち気に留める必要はない。 迷いなき敵対意識に従い。 極大の憤怒と憎悪と共に。 轟転するスピナーの右足を振り上げ、踵落としの姿勢を取る。 「ァアアアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!!」 ヴァッシュ・ザ・スタンピードが目を見開いたのは、ちょうどそれが振り下ろされた瞬間だった。 ◆ 奇妙な夢を見ていた。 否、眠っているのとは違うのだから、夢というよりは幻だろうか。 ともかくもその幻の中では、彼は真っ暗な闇の中で、1人ぽつんと立っていた。 上も、下も、右も、左も。 その他ありとあらゆる方向を、どこまで遠くまで見渡しても、黒い闇しか見当たらない世界。 地平線さえ塗り潰された、真っ黒くろの世界の中で、彼だけが、たった1人。 そんな闇の中で立ちふさがったのが、今は亡きミリオンズ・ナイブズだった。 彼が自らを取り巻く闇の幻に気付いたのも、ちょうどその瞬間だった。 気付いた瞬間には既に、そこは1人ぼっちの世界ではなかった。 ナイブズに連れ添うようにして、いくつもの顔が浮かんでくる。 消してしまったジュライの人々。 この戦いの中で救えなかった人々。 自らの手で殺してしまった人。 それらが彼をずらりと取り囲んで、一様に何かを訴えるような目を向けている。 その目を見続けていることが耐えられなくて、彼はうつむき、視線を逸らした。 それからどれほど経っただろうか。 ふと、妙な気配が彼の身に降りかかった。 己を見下ろす視線の中に、1つ覚えのあるものの存在を、肌で感じ取ったのだ。 どこか懐かしいような、それでいて暖かいような感触。 ふっと顔を上げてみると、人ごみの中に、その顔がある。 長い黒髪を持った女性は、かつて彼を育てた母だった。 レム・セイブレム――その名を呼びかけた彼だったが、その声は途中で遮られてしまう。 彼女に伸ばそうとした手が、目に見えぬ何かに阻まれてしまったからだ。 面食らったような顔をした彼は、その謎の違和感の正体を探る。 それは人ごみと己とを隔てる、透明な壁のようなものだった。 壁の向こうに立っているレムは、ただ穏やかな笑みを浮かべるだけで、彼に何も応えてくれない。 一番手前にいたナイブズも、何も言葉にすることなく、ひたすらに沈黙を貫いていた。 ああ、そういうことか、と彼は気づいた。 自分の目の前に立ちはだかる壁は、死者と生者を分かつ壁だったのだ。 後ろを振り返ってみれば、なるほど確かに、生きている知り合いは、皆壁とは反対の方向に立っていた。 生と死の狭間の向こうには、手を伸ばそうにも届かない。 生と死の狭間の向こうからは、相手の声を聞くこともできない。 死んだものは、戻ってこない。 自分はこれまで犠牲にした人々を、そんなところに送ってしまったんだな、と。 彼は改めて実感し、それきり口を開かなくなった。 それからまた、しばらく経って。 いつしか壁の向こうの死者も、生者すらも見えなくなって。 再び真っ暗闇の中で、赤いコートがたった1人。 多少は落ち着いたのだろうか。瞳は下を向いてはおらず、ある一点を見つめていた。 それは生死の壁の反対側。少し前まで、生きていた者達が立っていた場所。 死者の世界を過去とするなら、未来に続いているであろう方角。 しかし、そこから先が伴わない。 ただじっとその先を見ているだけで、立ちあがって進むことができない。 柄にもなく、怯えているのか。 何が待ち受けているのか――ろくでもない結末しか切り開けないのではと、怖れを抱いているというのか。 らしくないぞ、と己を叱る。 今さら何をブルついているんだ。 アンジールに救われていながら、何故また同じことを繰り返しているんだ、と。 ふと、その時。 闇の世界に、光が差した。 自分しかいなかった世界の中に、不意にいくつかの光が灯った。 ふわふわと浮く光の玉だ。地球には確か、ホタルとかいう虫がいるらしいが、ちょうどそれが近いのかもしれない。 彼の周囲に現れた光は、ふわふわと闇の中に浮かびながら、彼の視線の方へと流れていく。 ちょうどそれは、立ち止まって動けない彼を、先へと促しているようにも見えた。 つられるようにして、立ちあがる。 きょろきょろと、周囲の光を見やる。 何故だか、妙な既視感を覚える光だった。不思議と、不快に思うことはなかった。 光に導かれるようにして、一歩踏み出す。 自分でも驚くほどにあっさりと、あれほど頑なに止まっていた足を動かす。 ブーツの片足が、ず、と闇を踏みしめた瞬間。 彼は――ヴァッシュ・ザ・スタンピードは、唐突に覚醒した。 ◆ (あ……) 闇を抜けたかと思えば、今度は靄の中にいた。 そう誤認するほどに、視界はぼんやりと霞んでいた。 薄っすらと確認できる地形から、そこが元のホテル・アグスタだと分かる。 朦朧としかけた意識の中で、状況を整理した結果、自分が気を失っていたことを自覚する。 どれほど気絶していたのだろうか。 その間に彼女は――スバルという少女はどうしたのだろうか。 「―――ぉぉぉけええ―――――――ぇぇぇ―――ッ――」 と。 鼓膜に突き刺さったのは、そんな怒声だ。 意識に割り込んできた声を皮切りに、少しずつ感覚が鋭さを取り戻してくる。 ほとんど色しか分からなかった視力も、物のシルエットを捉えられる程度には回復してきた。 目の当たりにしたのは、戦いの構図。 叫びを上げる青髪の少女が、絶叫と共に暴れまわる様だ。 敵は人ではない。細く鋭く、徒党を組んで襲いかかるのは、刃を宿したナイブズの翼。 どうやらまた、自分の左腕がやらかしたらしい。 意識を失っていた間に、またしても暴走したようだった。 (おいこらヴァッシュ・ザ・スタンピード、寝てる場合じゃないぞ) だとしたら、大変な事態だ。 ぐ、と身体に力を込めて、動かぬ五体を起こそうとした。 目の前の命が潰えるより前に、左腕を抑え込もうとした。 「――タ、は…――」 それでも、身体が応えてくれない。 今までよりはマシとはいえ、やはり左腕の主張は激しく、無理やりにヴァッシュの制御をはねのけようとしてくる。 「―ンタだけはあ―――ぁぁァァァァ――――ッ――」 負けてたまるか。 屈してたまるか。 こんな程度で挫けるのが、ヴァッシュ・ザ・スタンピードであってたまるものか。 同じ過ちは犯さない。 かつてと同じように力に呑まれ、誰かの命を奪うなんて真似はしない。 もう2度も繰り返したのだ。 ジュライの悲劇を繰り返すものか。 フェイトの死別を繰り返すものか。 だから立て。あともう一歩だ。意識を取り戻すところまで来たんだぞ。 もうあと一歩で届くはずなんだ。 その一歩を踏み出すんだ。 さぁ、行くぞ――ヴァッシュ・ザ・スタンピード! 「ァアアアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!!」 くわ、と瞳を見開いた瞬間、絶叫と踵落としが襲いかかった。 「~~~~~っ!」 咄嗟の判断で、腰を落とす。 するりと滑り落ちるように、相手の股下を仰向けに抜ける。 はらり、と前髪が散ったのが分かった。 ぞわり、と首筋を悪寒が襲った。 おまけに、危うく舌を噛み切るところだった。 相手のスカートの中身は――OK、覚えてない。ということは見ていない。 この状況で考えるのもアレだが、紳士として最低限の礼儀と自制は務め上げることができたらしい。 なんて馬鹿なことを心配している場合じゃなかったことを思い出し、身を起こして姿勢を正す。 「こぉのおおぉぉぉぉぉっ!」 すぐさま第二撃が襲いかかった。 ぎゅるぎゅるとローラーブレードを回転させ、猛スピードでこちらへと加速。 ぎゅん、と唸る鉄拳は、風か嵐か稲妻か。 当然食らうわけにはいかない。 故に、身をよじって回避する。 そのまま勢いに身を任せ、ばっとその場から駆け出した。 とにかくなるべく遠く離れることだ。ついでに障害物があるとなおいい。 相手は近接戦特化型で、おまけに足も速いと来ている。接近戦を挑んでいては、命がいくらあっても足りない。 「OKOK、落ち着いたな……そのまま大人しくしといてくれよ」 軽く抑えた左腕は、今はすっかり静かになっている。主導権を取り戻すことは成功したようだ。 そうして確認をしているうちに、鉢植えを倒しソファを飛び越え、廊下に差しかかり、曲がり角にしゃがみ込む。 中腰の姿勢を作ると、壁越しに相手の様子を窺った。 「逃げるなァッ!!」 荒々しい語気と共に振りかぶられるのは、烈風のごとき打撃の応酬。 立ちはだかる障害物を粉微塵に砕きながら、じりじりとにじり寄るスバルの姿だ。 先ほどまで戦っていた相手とは、どうしても同一人物には思えない。 怒り狂った態度もそうだが、攻撃の破壊力にしたってそうだ。 ソファを一撃でぶち抜くのもどうかしてるし、よく見れば先ほどの踵落としを食らった床も、見事にクレーターを作っているではないか。 ぱらぱらと粉塵の舞うロビーの中、まさしく目の前のスバル・ナカジマは、憤怒の炎を燃やす悪鬼羅刹だ。 (さて、どうする) 考えていられる時間は残り僅かだ。 その僅かのうちに決めなければならなかった。 恐らく、もう拳銃の威嚇は当てにならない。アレを生身で組み伏せるのはどうやっても無理だ。 故に当初のプランではなく、新たな対策を講じなければならなくなった。 この場を殺さずに切り抜けるには、より強力な拘束力がいる。 この肉体以上に強靭なもので、相手の動きを封じる必要がある。 (……試してみるか!) そして幸いにも、その条件を満たすものは、既に己が右腕に宿されていた。 ぐ、と右手を前方に突き出す。 エンジェル・アームの砲弾を撃ち出す時のように、腕の中に“力”をイメージする。 脳裏に思い浮かべるのは、左腕に刻み込まれたナイブズの記憶だ。 力尽き死体と成り果てるまでに、数多くの敵を切り裂いてきた、刃の尖翼のイメージだ。 同じプラント自立種で、同じエンジェル・アームである。兄貴のナイブズにできたことが、弟の自分にできないはずがない。 兄の発現させた怒りが、殺意の剣であるというのなら。 人々を守るためのこの身には、外敵を阻む盾がほしい。 鋭く禍々しい刃を突き立て、誰かを傷つけることのないように。 されどあらゆる状況からでも、誰かを守れる強靭さと精密さを。 (もう、大丈夫だ) もちろん、不安がないわけではない。 この身体に宿された力への恐怖は、依然として心に残されている。 少しでも加減を間違えれば、また誰かを殺めてしまうのではないか。 自分が使い方を誤れば、またフェイトや新庄のように、犠牲を生んでしまうのではないか。 その心の乱れさえも引き金となって、再び暴走を招いてしまうのではないか、と。 未だ胸に残された罪悪は、ちくりちくりと痛覚を訴えている。 それでも。 だとしても、止まれない。 ここで立ち止まるわけにはいかない。 新庄達の死を悼むつもりがあるのなら、それこそ前に進まなければならないのだ。 自分が動くことで、死ぬかもしれない命もある。だがそれは、自分がそうならないように努めればいいだけのこと。 それ以上に問題なのは、自分が動かなかったことで、救えた命を救えずに終わってしまうことだ。 もう大丈夫だ。 二度と立ち止まることはしないし、立ち止まろうにも立ち止まれない。 ヴァッシュ・ザ・スタンピードの名が示すのは暴走。 たとえ困難が立ちはだかろうと、どんなドタバタがつきまとおうとも、ひたすらに突っ走るのが己の性分。 だから、進め。 歩みを止めるな。誓った覚悟をより強く固めろ。 そう。 「――迷うな!」 今が、その時だ。 刹那、右腕が眩い光を放つ。 光輝の中より顕現するのは、いい加減顔を合わせるのにも慣れてきた、危険で過激な天使の翼。 されど姿を現した力は、命を奪う大砲ではない。 兄のもの同様細かく枝分かれし、されど柔らかな羽毛の形を成した、ヴァッシュ・ザ・スタンピードオリジナルの尖翼だ。 ぎゅん、と唸って翼が羽ばたく。 大気をぶち抜いて羽が舞い躍る。 さながら雲の巣のように展開された翼の糸が、四方八方からスバルへと迫る。 「くっ……!」 反射的に飛び退いても手遅れだ。 本人の明確な意志のもとに、全力で展開された尖翼の速度は、先ほどまでのそれの比ではない。 制限が外れれば、知覚することすらかなわなくなるほどのスピード。 たった1枚きりであろうとも、幾百千の銃弾の雨にも耐えきる堅牢性。 首輪による制限下において、その性能を大幅に落とされたとしても。 不意を打たれたのであれば、未だ発展途上のスバル・ナカジマに、回避できる余地はない。 「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」 ヴァッシュが吼える。 人間台風が唸りを上げる。 文字通り翼という名の風を操り、一個の台風となって絶叫する。 持てる精神力と集中力の全てを注ぎ、無数の枝葉と化した尖翼を操作。 さながら魚を捕えるイソギンチャクだ。 360度全方位から伸びる純白の光輝が、標的の手を掴み、足を掴む。 握り潰すほど強固ではなく、されど逃げられるほど軟弱ではなく。 「う、うわああぁぁっ!」 僅か数秒の後には、全身を縛り上げられ空中に静止するスバルの姿があった。 Back 突っ走る女 時系列順で読む Next きみのたたかいのうた(後編) Back 突っ走る女 投下順で読む Back 突っ走る女 ヴァッシュ・ザ・スタンピード Back 突っ走る女 スバル・ナカジマ Back 突っ走る女 相川始 Back 突っ走る女 柊かがみ Back 破滅へのR/なまえをよんで ヴィヴィオ
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246 :1/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 35 08 ID ??? 「え……?」 ピジョットのその一言を聞いたゲラは、戸惑いの視線をこちらへ投げかける。 その視線に、私は確かに焦りを覚えた。 ……いくら普段は疎遠な弟はいえ、私の汚い部分を見せたくはない。 金の為に、人間様を売ったなどと……知られたくない。 そんなことを知られたら、余計に惨めな気持ちになってしまうじゃないか…… ……このピジョットが余計なことをぬかし始める前に、さっさとお金をもらいここを立ち去ろう。 そうだ。もう私にはそれ以外に道は残されていない。 迷っていては余計に惨めになるだけだ、こうなったら開き直ってしまえ……! 芽生え始めた三つ目の感情にも突き動かされ、私はすぐさまピジョットへとこう言った。 「ピジョット……さん。約束のものは? 持ってきたんですよね?」 手を差し出しながらそう言うと、ピジョットは嘴の端を歪めて笑みを浮かべ、こう言ってきた。 「まぁ、まぁ……そう急ぐな。確認ぐらいさせてくれないか。 ゲルくん…… 『人間は確かにこの都市にいるんだな』 ?」 「……!!」 ピジョットが発する容赦ないその言葉に、私は息を詰まらせる。 脇目でゲラを見やれば、その視線の困惑の色はより強まっている。 「は、はい……います、いますよ。ですから、約束のものを早く……!」 そう急かす私を焦らすように、ピジョットはゆっくりとこう言う。 「……どうした、一体何に焦っているんだ? 焦らずともワタシは逃げないよ」 「……!!」 だ か ら そういう問題じゃない!! お前が逃げてしまうことを恐れているんじゃあなくて、 この私が早くここを逃げたいんだっ!! ちくしょう、態度から判断しろよ、それくらい……!! ともすれば喉から捻り出てしまいそうな怒号を私はぐっと抑え―― ――それでも少し声が荒いでしまいながら、私は次の言葉を投げかけた。 「私は、時間が無いのです! ですから早く、早く、『約束のもの』……」 「 そ ん な も の は な い 」 247 :2/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 37 04 ID ??? 「えっ」 ピジョットのその言葉に私は耳を疑うが、 それに反し、その言葉の意味することを私は瞬時に理解する。 理解し、そして……時間が、凍りついた。 そんなものは無い……だって? そんなものは……無い…… 「……どうした、聞こえなかったか? 『キミにやるものは無い』と言ったのだ。 約束など反故だ、反故。『人間の存在をワタシに教えた』くらいで、 あんな『大金』をやれるか……ワタシは『魔王軍』だぞ? フフフ」 「あ……」 凍りついたワタシへと襲い掛かる、ピジョットの言葉。 まるでワタシの隣にいるゲラへと言い聞かせるように…… まるで私の心情を完全に見透かしているかのように…… 一片の容赦のない、吐露。 「え……あ、兄貴……!?」 そして、信じられないといった風なそのゲラの一言。 その二つの言葉が、凍りついた私の体を急激に溶解させていく。 「そ、それ以上……言わないでください……」 気が付けば、私は力なくそう搾り出していた。 ただし、ピジョットがその言葉に応じるわけもなく。 「常識的に考えてみたまえよ。確かに、ワタシたち魔王軍は人間を必要としているよ…… だがしかし、人間の存在を電話一つで教えてもらった程度で、誰が大金など出すものか」 嘲るようなピジョットの言葉。そのピジョットの表情は、嘲笑に満ちている。 「まさか、本当にあれだけの金がもらえると信じていたのか? 信じて期待していたのか? フフフ」 「う……ううぅっ……!!」 248 :3/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 38 28 ID ??? 「ちょっと、そこのキミ」 ピジョットは私からゲラへと視線を移し、そう呼びかける。 「!」 焦りが芽生える。ゲラへ何を言うつもりだ―― 「キミはこのユリル・ゲルの兄弟か何かかね? このゲルくんが何をしたか、 どんなに愚かしいことをしたか、せっかくだから懇切丁寧に教えてやろうか」 「なっ」 ピジョットは、信じられないことを言い始めた。ゲラに全てを言うだと? ――何で……何でそんな……っ!! 制止する間もなく、ピジョットは興奮したような声でゲラへ向かってこう言い始めた。 「このユリル・ゲルは大金欲しさに、何も知らぬ人間をワタシに売ったのだ! ワタシが魔王軍……あの魔王軍であるということを伝えたにも関わらずね」 「そ、そんな……」 ゲラの視線が、非難的な視線が、私を炙る。 ピジョットはそれにも構わず――むしろそれを楽しんでいるかのように、話を続ける。 「数十万ほどの金を見せ紳士的な態度をとれば、すぐさま協力的になってくれたよ。 血も涙もなく、慈悲も温情もない……そして何より、頭の出来が最高にお目出度いっ!」 ピジョットの言葉は、ねちねちと私の急所を的確に衝いていく。 そしてゲラは、眉尻を下げ口を半開きにしながら、その話を黙って聞いている。 一体ゲラは今、私に対してどれだけ失望しているのか…… ちくしょうピジョットめっ、黙れっ、黙れっ――! 「どう考えても、等価交換の体を為していないのにねェ! 考え方が甘ったれそのものだ! 自分に都合のよい現実だけは、一片の疑いも抱かずホイホイと受け入れる! ハハッ!!」 いかに心の中で叫ぼうが、ピジョットの口は止まらない。 私の精神を、プライドを、どん底へと導いていく陰険な言葉。 ……それは、罪悪感が何だの絶望が何だのと心内で後悔しておきながらも、 何だかんだで己に甘えきっていたという事を、はっきりと私に自覚させる言葉であり…… そしてそれを自覚していくと共に競り上がってきた感情は、どうしようもない怒り。 ピジョットへの怒り……!! 249 :4/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 42 04 ID ??? 「わ……私はっ!」 「ん?」 私の声に、ピジョットはこちらを振り向く。 「私はっ……人間様の存在をあなたに報告したことには変わりないじゃないか。 お金はもらえなくとも……ここまで卑下される筋合いは無いはずだァっ!!」 まだ嘲笑を浮かべたままのピジョットへ、私はそう訴えた。 そうだ。大金はともかく、立場的には私は有り難がられる側のはずなんだっ! 理不尽だっ。今この状況は、有り得ないほどに理不尽だっ!! 「……フフッ」 「!?」 なんとピジョットは、私のその訴えに再び笑みを漏らしたのだ。 「このワタシが、そんな礼節を弁えたモンスターに見えるか?」 「な、なにぃ……!?」 横暴でかつ理不尽な返答。それは、とても私の納得のいくものではない。 咄嗟に反論しようとすると、ピジョットは続けてこう言ってきた。 「そもそもキミに頼まなくとも、実際は部下に任せればよかったこと。 ワタシは、キミに対して有り難いとも何とも思っていないよ」 「え……!?」 私は、また耳を疑った。 こいつ、昨晩はいかにも『部下は使えない』といった風なことを言っていたはず。 ……嘘だったのか……!? 私を騙したのか……! そして同時に一つ、大きな疑問が浮かび上がる。 ……それなら一体、なぜ私を使ったのだ……!? 「じゃ、じゃあ何で、私を使ったんだ! 部下を使わずに私を使ったんだっ!! なぜ私を巻き込んだっ!! その理由は何だァっ!? 全く分からないっ!!」 浮かび上がった疑問を、すぐさま私はピジョットへと投げつけた。 ……一層深まるピジョットの笑み。その次の瞬間返ってきた答えは、こうだった。 「キミを見下すためだ」 250 :5/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 45 53 ID ??? 「な……なんだとォ……!?」 まったく理不尽極まる返答だった。こんな答えで誰が納得行くだろうか。 私を玩具か何かだと思っているのか、こいつは……!? 私の心中の怒りは、一層激しくなっていく。 そして、あたかもそれを煽るかのように、ピジョットはこう続ける。 「落胆、後悔、憤怒、羞恥……負の感情が複雑に絡み合ったキミのその表情が、ワタシを強くする。 ワタシが『高み』にいるのだという実感を与えさせてくれる……生きる上では、これが実に重要でね」 「なに……!?」 「他者を見下すことはワタシ達の最大の活力ッ!! そして遥か空に生きてきたワタシ達の習性さッ!! キミのそういうバカ丸出しな表情が、ワタシ達にとっては最高の『糧』なんだよっ!! ハハハハーッ!!」 「ぐ……ぐぐぐ……っ!!!」 狂ったように大声で笑い始めるピジョット。私を全力で見下すピジョット。 怒りに、悔しさに、羞恥心に、頭がぐちゃぐちゃに掻き回されていく。 ……このピジョットがあの時私の元へとやってきてから今までの、 私の悩みは……迷いは……期待は……行動は…… 全てが全て、この者に愉悦を与えるためだけのものに過ぎなかったのだ。 ……つまり、明るい未来を取るか、変化の無い未来を取るか、だの…… ……欲望と良心の狭間だの……幸せがなんだの、絶望がなんだの…… あれ、ぜんぶ完全な一人相撲で……思い込みに基づいた、完全な、一人、相撲でっ これじゃあ、本当に、本当に、本当に、私は単なるバカだったんじゃあないかアァっ!! 「フフッ……ハハハッ! どうしたどうした、そんな俯き気味では、よく顔が見えんぞ! もう少し顔を上げたらどうだ、キミたち虫けらは空を見上げるのが仕事だろう? なぁ そら、顔を見せたまえよ!! もォ~~~っとよォ~~~くゥ~~~見せたまえよォ~~~ン!!」 俯き歯を食いしばっている私の耳へと入ってくる、ピジョットの声。 その嬉しげな調子が、最高に耳障りだ。癇に障るどころの騒ぎではない。 いっそのこと舌を引っこ抜いて喉を潰してやりたい。そうだ、殺してやりたい、殺すっ、殺すっ、殺……!! 251 :6/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 47 29 ID ??? 「ピジョット貴様ァッ!! 黙ってれば調子に乗りやがってッ、ぶち殺してやるッ!!」 湧き上がる怒りによって、恐怖や建前などというものは消し飛んだ。 ピジョットが魔王軍であるというにも関わらず、ゲラの前だというのにも関わらず、 私はかつてないほどに声を荒げさせ、ピジョットへと暴言を投げつけていた。 「……おやおや、どうかしたのか? いきなり」 ピジョットは驚いたような様子も見せずに、虚仮にするような言葉を投げつける。 そのスカした顔と喉、ぐちゃぐちゃに潰してやる――ッ 怒りを、恨みを、感情を、強い視線と共にピジョットへと向ける。 ……念力は精神の力。私の怒りを全て念力に変え、こいつに味あわせてやる……!! 「……むっ? な、こ、これは……」 「な、なんだァ……!?」「あ、頭が……!」 数秒後、ピジョットとその部下達はすぐに異変を起こし始めた。 私の怒りが念力となり、奴らの脳みそに鈍痛を与えているのだ。 「そのまま頭痛で死ね、外道ども……ッ!!」 両の手をピジョットへらと向け、私はより力を込める。 もっと。もっとだ。もっと怒りを……奴らを、殺せ!! 「……やれやれ。まるで駄々っ子だな」 「!?」 ピジョットはまるで私の念力をものともしていないように 冷静にそう呟くと、ゆっくりとこちらへ歩み寄り始めた。 「だが、まぁ……そんな無様な姿も、ワタシの愉悦の一部であるのには変わりないがね」 ピジョットは一度溜め息をつくと、ゆっくりとその優雅な翼を大きく広げ始める。 「き……きさま、なにをするつもりだーッ!!」 怒りの中へと割り込んでくる不安と焦り。私は、より視線に念力を込める。 なぜだっ、あの部下どもは確かに頭痛で苦しんでいるのに、なぜこいつは……! ピジョットは、一度だけ力強く翼を扇いだ。 次の瞬間、猛烈な勢いの空気の壁が私を撥ね飛ばした。 252 :7/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 49 58 ID ??? 「がァっ!!」 空気の壁に押しやられ、私は遥か後方のジャングルジムへと叩きつけられた。 硬い鉄柱が背中と後頭部に強烈な衝撃を与え、私は地面へと崩れ落ちる。 痛みで、体に力が入らない。当たり所が悪かったか、意識が朦朧として眩暈がする。 ぼやけた視界の中、ピジョットがこちらへと歩み寄ってくるのが見える。 もう、念力を浴びせてやる余力は無い……結局、私はこいつを一つも苦しめられなかった。 「……ゲルくん。一つだけ、キミに教訓を与えてやろうか」 ピジョットは再び笑みを浮かべると、こう言い放った。 「世の中、理不尽なくらいで丁度いいものだ」 「坊やっ子は誰だって、痛みや理不尽さを知って成長するものさ…… キミにとって、この出来事はよい薬になったはずだ。よい教訓になったはずだ」 あまりに勝手な発言。だが、もはや何も言い返す気力が起きない。 「ワタシのせめてもの慈悲だ……キミはこのまましばらく眠っていたまえ。 そして今後はこの教訓を活かし、理想の未来を目指し頑張ってくれ……フフフ」 背中を向けるピジョット。それと同時に、私の視界は徐々に暗転していく。 ……薄れ、消え行く視界。 それまで怒りの対象だったピジョットが見えなくなっていくと共に、 私の怒りは、次第に私自身へと向けられていく。 ……私は、子供の頃からちぃっとも変わっていない…… いつかは幸せが転がり込んでくるのだと、知らぬ所で根拠も無く信じ込んでしまっていた。 だからピジョットがやってきた時に私は、心の奥底で『その時が来た』のだと判断し、 根本的に疑うことはしようとはせずに、アッサリと信じ込んだ……甘んじてしまった。 そうだ。今回の事態は、そんな私の常識知らずの甘えが導いた結果なのだ…… ……ようやく、ツケが来たということなのだ。『お坊ちゃま』で居続けていたツケが…… ……はは……もう、後悔しても……遅いやァ…… ――強烈な自己嫌悪と共に、私の意識は闇へと落ちていった。 253 :8/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 52 22 ID ??? ゲル兄貴は、今まで私があまり見たことのない怒りを露わにした姿を晒したが、 魔王軍のあの鳥(確かピジョットとか言ってたな)の一煽ぎによって、一瞬にして鉄柱へと叩きつけられた。 そして兄貴は今、鉄柱へ背を預けたまま項垂れている。気絶してしまったのだろう。 ……ゲル兄貴…… ――当然の報いだっ 魔王軍が犯罪集団であるということは、いかに頭の悪いあの兄貴でも知らないはずは無い。 その上であのゲル兄貴は、何も知らぬ人間様を魔王軍へと売ったのだ。 ただ、金に目が眩んだという理由のみで。 ……至極当然の報いだっ。至極当然の結果だっ。 仕事もせず苦労もせずニート一筋の兄貴が、そう楽して金を手に出来るはずが無い…… 最終的に痛い目を見るのは当然だ。 気絶してしまった兄貴を見ても、私は可哀相などとは一片も思わない。 あるのは、『ついに落ちる所まで落ちたな』という達観とした感情のみ。 私は、絶対にあのゲル兄貴のようにはならないぞ。 そう、あいつのような悪人には……!! 「ところで、キミ」 「!」 不意に耳に入ってきたあのピジョットの声に、私は心臓を跳ねさせる。 そしてそのピジョットの視線は、明らかに私へと向けられていた。 「わ……私のことを呼んだんですか」 「そうだ」 返事と共にこちらへ歩み寄ってくるピジョット。 ……しまった。逃げ遅れたか……? 一テンポ遅れて、己も危機に晒されているのだということを自覚する。 そして私の目の前に立ったピジョットは、私へとこう問いかけた。 「人間の居場所を知っているかね?」 254 :9/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 54 28 ID ??? 「実は、今から人間を迎えに行く所でね。あのゲルくんの報告によって 人間がこの都市にいることまでは分かっているのだが…… 肝心の詳細な居場所までは分かっていないのだ。教えてくれないか?」 「…………」 ……まるで、先ほど心中で唱えた誓いを試されているかのようだ。 私は、私だけは、人間様の詳細な居場所を知っている。 だが無論、こんなヤツにそれを教えるわけには行かない。 魔王軍は犯罪集団だ。言うまでもなく悪者だ。 こんなヤツに人間の居場所を教えては、私の善人してのプライドはバラバラに崩れ去る。 私の生き方においては断固として許されざる、バリバリの悪行。 誰が教えるかよ。あーん……? 「ひ……ひ……っ」 わざと、そしてなおかつ自然に息を乱れさせ、顎を震わせる。 あたかも心底恐怖しているかのように。心底怯えているように。 そして私は、ピジョットへと懇願するようにこう訴えた。 「し……知っていたら教えますよォーー! で、でも私は、そんなこと知らないし…… あ、あのっ、その、本当なんですよぅ! だ、だから命はっ、命だけはァっ!」 手をつき、涙で目を滲ませ、繰り返し「見逃してください」と懇願する私。 私はさも『生きるためなら何でもする』といった風な男を、ピジョットの前で演じてみせる。 私の今演じている人物像なら……知っている情報を教えないということは絶対に有り得ない。 人間様をわざわざ庇う必要などありゃしないのだから、それは全く意味のない事である。 ……このピジョットは私の本当の性格なんてこれっぽっちも知らないのだから、そのことを疑う余地は無いはずだ。 ……完璧だ。完璧な演技……完璧な虚構……完璧な欺瞞…… 尿意があらば、わざとオシッコ漏らしてやってもいいな。 ……必要ないな。今の時点でも、こんな鳥頭に私の演技が見切れるものか……! 「キミは、何をしているんだ?」 255 :10/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 55 54 ID ??? 「えっ」 ピジョットが口にしたその不自然な言葉に、私は呆気に取られた。 ……今、こいつ何と…… その言葉の意図を探ろうとすると、ピジョットは続けてこう言い放った。 「ワタシは、『命乞いしろ』とは一言も言っていないぞ。 ……ワタシは、『人間の居場所を教えろ』と言っているのだ」 ……なにぃ……!? 信じられない言葉に、私は驚愕する。 こいつ、私の言ったことをちゃんと聞いていなかったのか? それとも、私の言うことをちゃんと理解していないのか、この鳥頭はっ それとも―― 三つ目の推測は、ピジョット自身の口から語られた。 「ワタシのように高みにいる者は、虫けらの習性は全て分かりきっているものだ。 キミのそれは『演技』だな。なぜ隠すかは分からんが、キミは人間の居場所を知っている」 何――っ!! なんと、私の演技が見破られていたのだ。 いや、これはただの推測かもしれない。私をカマにかけようとしているだけなのかも…… 「え、演技なんてっ!! 何を言ってるんですか、私は人間様の居場所なんて……」 「何をうろたえているんだ? 別にキミ自身が損するわけでもないはずなのに、なぜそう頑なに隠し通す?」 「ぐっ……!」 こ……こいつっ! もはや私が嘘をついているということを前提に語っているっ! 己の考えに、己の推測に、一切の疑いを持っていないっ! そう信じ込む根拠は一体どこにあるんだ、一体何なんだコイツは……! くそう。なぜ、なぜ私がこんな目に……! 256 :11/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 19 58 08 ID ??? 「……言わぬというのなら」 ピジョットはふと、勢いよく息を吸い込み始めた。 張り出したピジョットの胸の筋肉が、更に膨張していく。 「……!?」 その意図の分からぬ動作に、私は焦りを覚える。何をするつもりだっ ……次の瞬間。 「うがっ!!」 一瞬のち肩へと激痛が走り、私は呻き声を上げた。 気がつけば、焼けつくような痛みが肩口に張り付いている。 そこに心臓があるかのように、肩に熱い脈動が走っている。 「な、なんだァ……!?」 肩に目をやると、まるで銃弾にでも撃たれたかののような穴が一つ開いている。 貫通はしていないみたいだが、傷口の中に異物感も感じない。 こ、こいつ……何をしたんだ……!? 胸を満たし始める不安と恐怖。 そしてそれを助長させるかのように、ピジョットはこう言い放った。 「言わぬというのなら、もう一度キミの体を貫いてやろう。次はどこがいい? また肩ではつまらないだろう……次は腕か? 手か? 腿か? 脇腹か? まぁ、いずれにせよキミが口を割らぬなら、順番など関係はなくなるがな。フフ、フッフフフ」 「ひっ……」 今度は、決して演技などではなく…… 純粋な感情のままに、私は小さく悲鳴を漏らした。 自然に乱れる息。自然と震える顎。自然と滲み出てくる涙。 肩口に確かに存在する痛み。激痛。そこだけ熱湯にでも浸っているかのような熱さ。 捻じ曲がっていく背景。ぼやけていく視界。消えてゆく現実感。 258 :12/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 20 02 44 ID ??? 「今ならまだ遅くないよ。キミの体に面倒くさい傷が増えていく前に、さっさと居場所を漏らすんだ。 サァ、早く。早く、早く、早く。今ならまだ遅くはない、いィ~~~まァ~~~なァ~~~らァ~~~」 追い詰めるようなピジョットの言葉。 ピジョット。ヤツは魔王軍、モンスターぐらい躊躇い無く殺す犯罪集団 人間様の居場所。誰が、誰が、誰が、誰が誰が誰が教えるか、そんなこと 私は私は善人だぞォ! このプライドに傷がつくぐらいなら体に傷がつくぐらいどうってことは 「聞き分けの悪い子だな」 そう呟くピジョットは、また大きく息を吸い込み始める。 「まぁ、例え最悪殺してしまったとしても……ワタシには構わん話だがね。フッフ フ フ」 耳を疑う。信じられない言葉。あってはならない現実。 最悪殺してしまったとしても? 何を言ってるんだこいつは、死ぬ? 殺す? そんな、横暴な 「や、やめろォォ!!! やめてください、やめてェェ!!!」 「やめて欲しいのなら人間の居場所を言うことだな。言わなかったら続ける、ただそれだけのこと」 「な……な……な……」 言えるかボケ、言えるわけねえだろカス、言ったら私は悪人になっちまうんだぞぉぉォ!! あの愚か者のゲル兄貴と同類になっちまう、私の善人像が消え去る、崩れ去る、朽ち果てる 私は善人なんだ……言えるか、言えるわけがない、言いたくない、言わない、 私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ! 私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ!私は善人だ! 積み重ねてきたんだこれまで、私が善人である所以、それを積み重ねて来たんだ だから言わない 言わない 言わない絶対言わない、言わない言わない言わ…… 言わなかったら? 言わなかったら、私は……死ぬ? 死んだら全部ムダになる、 これまでの全てがムダになる、しかも痛い、最高に痛い、とても痛い、 言ったら崩れるっ!! 言わなかったら痛いっ!! 崩れる、痛い、崩れる、痛い、痛い、崩れる、痛い、痛い、崩れる痛い痛い痛い痛い痛いいいィいィいィィいィ 「に、人間様はッ!! コサイン川沿いの屋敷ッ、マジシャンバリヤードの屋敷にッ!! 今はそのご子息マネネの住む屋敷に、居ますッ! 居るはずですうううッ!!!」 259 :13/13 ◆8z/U87HgHc :2008/03/29(土) 20 08 13 ID ??? 「あ……」 叫び終えた瞬間、人間様の居場所を完全に吐露し終わった瞬間、私は我に返った。 「……フフ、情報提供感謝するよ」 ピジョットはそれだけ言うと、さっと身を翻す。 そして何やら、部下であろう周りの小鳥達に指示をしていたと思うと、 一斉に大きく翼を広げ、再び空へと飛び立っていった。 再び影となってゆく鳥達。魔王軍。 止めようも無く、影の群れはぐんぐん私の視界から遠ざかっていく。 あの影達は、私の漏らした情報を元に人間様の元へと向かうのだろう。 人間様はおそらく魔王軍に捕まり、そして人間様の取り巻きであるあの二人も、 屋敷に居るであろうマネネ坊やも、そのお手伝いも、全員が犠牲になるのかもしれない。 全ては、私の一言のせいで。 そう、私は魔王軍に情報提供をしてしまったのだ。『加担』してしまったのだ。 自己弁護のしようが見つからない。 私は恐怖に負けた。痛みに負けた。負けて、あっさり従ってしまった。 結局私は、弱かった。目先の苦痛に負けてしまうような、弱い善人だった。 ……いや、元々私は善人でもなんでも無かったのかもしれない。 ただ善人ぶっていただけ…… 自分が善人なのだと意識し思い込んで、全ての行動を無理やり善行へとこじつけて、 ……責任を取ろうとしていなかっただけ……甘えていただけなのかもしれない。 ……考えてみれば、こんな事態を招いたのも全て私のせいだと言える。 私が人間様の存在を広く知らしめなければ……ゲル兄貴に教えなければ…… そもそもこんな事態にはならなかったのだ。なるはずがなかったのだ。 ……全て……私のせい…… 崩れ去ったプライドの中から現れる、膨大な自己嫌悪。 私はもはや、そのまま動くことが出来なかった。 つづく
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0,25%。 これは、地球上における日本の占める陸地面積の割合である。 陸地面積の僅か1%にも満たない国土でありながら、経済大国と呼ばれ他の大国と肩を並べる国、日本。その極東の小さな島国が世界に誇るものが二つある。 一つは、国外でジャパニメーションと呼ばれ世の東西を問わずに高い評価を受けるアニメーション技術。 そしてもう一つは、ロボット工学である。 日本最初のアニメである鉄腕アトムや、世にロボットアニメというジャンルを打ち立てたマジンガーZ。 綿密な時代背景を伴い、ロボット同士の戦争をリアルに描いた機動戦士ガンダム。 幼き日、瞳を輝かせて魅入ったテレビの中で縦横無尽に活躍するそんなロボット達に憧れ、そしてその誰もが思った『何時の日か、自分の手でこんなロボットを』。 そんな夢物語を何時までも抱え続けたまま成長した子供のような大人、あるいは、大人のような子供達が、今の日本という国の技術力を担っているのだ。 そして、この殺し合いの場に一人たたずむ黒いスーツ姿の人物もまた、そんな科学者の一人であった。 「ふむ」 スーツ姿の人物が、くぐもった声でつぶやく。 この人物の名は教授。かつてスパロワにおいて良作と名高い「The Game Must Go on」を書き上げた人物、通称イングラム死亡の人である。 「……因果なものだな」 教授とスパロワの出会いは、全くの偶然であった。 幼き日に見たロボットアニメの影響を受け科学者の道を歩んだ教授は、大人になった今でさえロボットアニメ鑑賞やロボットゲームのプレイを趣味とし続けている。 そんな教授が日課としていたのは、仕事の合間を縫ってのロボットゲー板閲覧だった。 その日も僅かな暇を利用してロボゲ板を訪れ、そしてスパロボキャラバトルロワイアルスレに出会ったのだ。 折りしも立ったばかりのそのスレに、教授は瞬く間に魅了された。 アニメに出てくるようなロボットを作りたいと科学者になった教授であったが、現実と理想の壁は余りにも高く、厚かった。 いかに最先端を行く日本の技術力とはいえ、教授の憧れである巨大ロボットなど、今の技術ではまだ実現には程遠いものだった。 だから教授は書き手の一人として名乗りを上げた。現実では実現出来なかった夢をせめて空想の中だけでも手に入れようと筆を執ったのだ。 しかし。 「まさか、このような事に巻き込まれるとは」 ため息混じりに教授は呟き、首を振る。 最近は仕事が忙しくなり、スパロワとも疎遠になっていた。正直に言ってあのスレのことは忘れかけていたのだ。 それがいきなりこのような場所に集められ、そして殺し合いをしろ、などと無茶な要求を吹っかけられることになるとは、全く持って迷惑以外のなにものでもない。 「まぁ……仕方あるまい」 眼鏡のズレを直すように顎の部分にかかる金属に手をかけて、踵を返す。 こんな事態に巻き込まれるのは甚だ不本意ではあるが、そのことに不平を述べたところで現状が変わるわけでもない。 抱く夢こそ空想の中でしか成し得ない産物だが、教授自身はリアリストでもある。 すでに賽は投げられてしまったのだ。ならば、自分に出来ることを成す以外に道などあろうはずもない。 幸い、自分は科学の造詣に長けている。設備とサンプルさえあれば、首輪の解析もできるはずだ。 そう考えた教授は、見知らぬ光景を眺めながら足を踏み出し、歩き出した。 (まずは解析が出来そうな設備を探そう。首輪は……後回しにするしかないだろうな) パロロワに携わる人間である以上、首輪を入手するために必要なことは理解している。理解しているからこそ、教授はそれを保留した。 ともかく、まずは設備を見つける。それに、出来れば仲間も欲しい。 何せ自分は科学者だ。パソコンと睨めっこばかりしていた身では、少し腕に覚えのある人間に襲われればひとたまりもないだろう。 「ム……?」 そうして当面の方針を定めた教授は、不意に右手の後方にある茂みから音が聞こえたような気がして立ち止まった。 目を凝らすと、僅かだが茂みが揺れているのがわかる。 (他の参加者、か?) 茂みを見つめたまま、教授は思案する。 ただの犬や猫であれば、それでいい。だが、もし参加者であれば、どうするべきか。 もしそうであるならば、うかつに接触するべきではない。もし相手が殺し合いに乗っているのならば、自分など瞬く間に殺されてしまうだろう。 (しかし……) そこで、教授は周囲を見渡した。あの茂みからここまで、あたりに遮蔽物はない。 向こうの位置からすれば、こちらなど丸見えのはずだ。 相手が殺し合いに賛同した参加者だったというのなら、既に自分の命など無くなっていてもおかしくはない。 ならば、あの参加者もこちらと同じく殺し合いを否定し、仲間を探しているのではないだろうか。 接触を避けているのは、こちらが殺し合いに乗っているかどうか探っているとすれば筋は通る。 (……接触してみるか) そうであるならば、こちらが敵意を見せなければとりあえず話すことだけは出来るはずだ。 もちろん、この憶測がまるで的外れである可能性も否定できないし、もしかしたら殺し合いに乗った上でこちらを利用しようとしている手合いである可能性もある。 その辺りは、自分の目で見極めるしかあるまい。 意を決し茂みに向かって歩き出したところで、教授は茂みの中で何かが光るのを見たような気がした。 その光の正体がなんであるか。それを考える時間も確かめる時間も無いままに、教授は眉間に強い衝撃を受けて倒れ伏した。 「ぁ……」 硝煙のたなびく拳銃を握り締め、◆X7WwwzkoUUは声とも呻きともつかない音を喉から搾り出した。 何が起こったのだろう。 生い茂る葉の向こうに除く視界には、黒いスーツを着た人間が倒れている。 いったい、何が起こったのだろう。 わけも分からないうちにこの場に連れてこられ、そして殺し合いの宣告を受けた彼は、殺し合いが始まるなり渡された支給品を胸に抱きすぐ近くにあった茂みに逃げ込んだ。 そんなバカな。冗談だろう。これは夢だ。誰かうそだと言ってくれ。 全身を震わせ、ガチガチと音を立てる顎をもてあましながら、彼の頭の中をそんな言葉がぐるぐると駆け巡っていた。 どれだけの時間をそうしていたのか。やがて彼の視界に映り込んだ人影に、◆X7WwwzkoUUは息を飲んだ。 自らの身を隠す茂みのすぐ向こう。距離にして10Mも無いような距離を、黒いスーツを身にまとった一人の人物が歩いている。 なんだ、あれは。 その姿を彼の脳が認識すると同時に、全身へとけたたましく警鐘が鳴らされる。 あれはだめだ。あれに近づいてはいけない。あれは俺の預かり知る場所に居て良いものではない――!! 全身から汗が噴出すのを◆X7WwwzkoUUは感じた。だが、不快感はない。あるのは、純然たる恐怖だけ。 見開いた目が食い入るように黒いスーツの人影を追う。瞬きをすることすら忘れたように見開かれたその目じりに涙が浮かんだ。 たとえ瞬きほどの間であろうと、一瞬でも目を離せばその瞬間にあの黒スーツが自分の目の前に現れるような気がして、◆X7WwwzkoUUの瞳はただただその姿を追い続ける。 このまま歩み去ってくれることを願う◆X7WwwzkoUUが、自らの震えによって茂みが揺れていることに気付いたのは黒スーツの人物がようやくこちらに背を向けた頃だった。 まずい。 慌てて自らを掻き抱くようにして無理やりに震えを鎮める。汗を吸い込んだシャツがぬるりと肌の上を滑った。その一瞬、彼は黒スーツの人物から、視線を外してしまったのだ。 鎮めようと思えば思うほど、震えはどんどんと強くなっていった。ガサガサと音を立てる葉が酷く耳障りだ。 大丈夫。だって、あいつはもうこっちに背を向けていた。 だから、大丈夫。きっとあいつは、俺の事なんか気付かないでもう何処かに行ってしまった。 自身の中の願望を事実と摩り替え、◆X7WwwzkoUUは必死に落ち着きを取り戻そうともがいた。 後は、顔を上げるだけ。そうすれば、もうあの黒スーツはどこにもいない。 都合のいい望みに縋りながら恐る恐る顔を上げる。 そうして顔を上げた◆X7WwwzkoUUは、先ほどの場所で立ち止まってじっとこちらを見つめる黒スーツの人物を認め、自らの脊髄が氷に変わったかのような錯覚を覚えた。 「……ぅ……ぁ……ぁ、あ……!!」 全身の汗が一瞬で消えうせ、氷と変わった脊髄から解けた冷水が血液の中をめぐっていくような寒気に背を押されるように、◆X7WwwzkoUUはほとんど意識しないままに傍らにおいてあったザックへと手を突っ込んだ。 指先に当たった硬質な何かを手繰り寄せるように引き抜いて、構える。 シグ・ザウエルP226。その自動拳銃が、彼へと渡された支給品だった。 照星の向こうで、黒スーツの男はいまだこちらを見つめ続けていた。 大丈夫。向こうからこっちのことは見えていない。 だから、大丈夫。きっとあいつは、俺の事なんか気付いていない。 頭の中でひたすらに大丈夫を繰り返す。そうでもしていなければ、直ぐにでも見えない何かに押しつぶされてしまいそうだった。 しかし、こちらを見つめる物言わぬ四つの瞳が、彼の縋りつく僅かな希望すらも音を立てずに削り取っていく。 「ぁ……あぁ、あ……!! あぅ……ぁぁあ……!!!」 不意に、男が足を踏み出した。まるで手術をする前の医者のように両手を掲げ、こちらへと歩み寄ってくる。 それが、限界だった。 あいつは、俺に気付いている。もうだめだ、これ以上ここには居られない。 全身を支配する恐怖に突き動かされるように、彼は逃げ出そうとして。 それは、起こった。 例えるなら、風船の割れたような音。 重厚さも、派手さもなにもない。あっけない乾いた破裂音。少なくとも、彼の耳にはそう聞こえた。 その音が響き渡ったと思った次の瞬間、こちらへと歩み寄っていた黒スーツの人物が地面へと倒れ伏したのだ。 「ぁ……」 硝煙のたなびく拳銃を握り締めたまま、◆X7WwwzkoUUは声とも呻きともつかない音を喉から搾り出した。 何が起こったのだろう。 目の前には倒れた黒スーツ。そして、自分の手には銃口から煙を上げる拳銃。 違う、俺じゃない。俺は撃ってなんかいない。 俺は撃つつもりなんか欠片もなかった。ただ、何かに縋っていたかったから銃を握っていただけ。 俺じゃない。俺じゃない。俺は撃ってなんか……。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 自らの握り締める拳銃を、その指で目いっぱいに引き金の引かれた拳銃を見下ろしながら、それが何を意味するか理解するまでの間彼は心の中で呟き続け、 「う……あぁ……ああ、あ……! あああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」 その意味を脳が理解したとき、彼は喉が壊れるほどの絶叫をあげその場から駆け出した。 どこからだ。どこから狂っていた。 あの黒スーツを見つけたときか。この殺し合いに巻き込まれたときか。それとも、スクロワで話を書き始めた時点でもう狂ってしまっていたのか。 俺の人生の歯車は、いったいどこから狂っていたというんだ。 走る。走る。走る。 胸を突き刺す痛みを忘れようと、人を撃ってしまった、殺してしまった痛みを忘れようと、ただただ走り続ける。 そうすれば、その痛みは消えるのか。それすらもわからないでただ衝動のままに走り続け、 「う……っああ!?」 ◆X7WwwzkoUUは茂みを抜けた先にあった崖に気付かず、そのまま切り立った断崖を転げ落ちていった。 「……ぅ」 「目が覚めたかね」 全身のあちこちが訴える鈍痛におぼろげな意識を取り戻した◆X7WwwzkoUUは、自身に向けられたその言葉で覚醒した。 うっすらと目を開き、 「う、うおおおぉぁあああ!?」 その視界にこちらを見下ろす黒スーツの人物が映ると同時、手と足をわさわさと蠢かせて全力で後退する。 「っつ!」 飛び退ったところで右ひじを地面に擦ってしまい、◆X7WwwzkoUUは思わず声を上げた。 僅かに触れただけにもかかわらず鋭い痛みを訴えた肘に目を向けてみると、じわりと血の滲む擦り傷が出来ている事に気付く。 「あまり無理をしないほうがいい。大した高さではないとはいえ、あそこから転げ落ちたのだからな」 手ごろな大きさの岩に腰掛けたまま、黒スーツが右手を指差した。見れば、3Mほどの高さの崖がある。自分はあそこから転げ落ちたのか。 「あぁ。それとすまんが、銃は没収させてもらったよ。流石に二度も撃たれるのはごめんなのでね」 呆然と崖を見上げるこちらにかまいもせず、黒スーツは自分に支給されたシグ・ザウエルの銃身を指でつまんでブラブラと弄んでいる。 崖と目の前の黒スーツを呆けたように交互に見比べ、いまだ正常な思考回路が復帰していない◆X7WwwzkoUUは、わけのわからないこの状況に戸惑うばかりだ。 「あ、あんた、さっき俺が撃……死んで……!? え、あれ、死者スレ? え!?」 「……まだ混乱しているのかね? もう少し落ち着きたまえ。ハイ、しんこきゅー。吸ってー。吐いてー」 大きく手を広げて息を吸うジェスチャーをする黒スーツにつられて、◆X7WwwzkoUUも大きく息を吸う。 何度かそれを繰り返すうち、昂ぶっていた感情が落ち着いていくのを◆X7WwwzkoUUは感じた。 「ふむ、落ち着いたようだね」 土がむき出しの地面に座り込んで俯いている◆X7WwwzkoUUの気持ちが完全に落ち着くのを待って、黒スーツの人物、教授が声をかける。 それに反応して、◆X7WwwzkoUUが顔を上げた。先ほど心を支配した恐怖は、完全に無くならないまでも目の前の人物と話をさせてもいいと思わせるほどになりを潜めている。 少なくとも、こちらに害意のある相手ではないとわかったのが大きかった。 「あ、あの……貴方、俺に……その、撃たれた……はず、じゃぁ……?」 恐る恐ると言った様子で、◆X7WwwzkoUUが問いかけた。 「あぁ、危ないところだった。ヘルメットが無ければ死んでいたな」 さらりとシャアの台詞を吐いて、教授はくつくつと肩を震わせる。怪訝そうに眉をひそめる◆X7WwwzkoUUに向き直り、続けた。 「安心したまえ、私はこんな殺し合いなど乗っていないよ。見たところ、君もそのようだな。私を撃ったのは、私を殺し合いに乗った殺人者と勘違いでもしたというわけかね」 「あ、その……すいませんでした。謝ってすむ問題じゃないでしょうけど……その、すいません」 「なに、気にしなくていい。こうして生きているのだからな。全く、人間の感情も1か0かで判断しようとするのは私の悪い癖だ。 少し考えれば、君のようにどっちつかずで怯えてしまっている参加者がいることにも気がついたというに」 「は、はぁ……」 教授が何を言っているのかイマイチ理解できなった◆X7WwwzkoUUは曖昧に頷く。なんとなくけなされているような気もしたが、口には出さなかった。 そんな◆X7WwwzkoUUの様子を微塵も意に介さず、教授は腕を振ってさらに続ける。 「ともかく、まずは自己紹介から始めようか。私は教授。科学者としてロボット工学の研究をしている。君は?」 「教授……って、まさか!? あのイングラム死亡の作者……!?」 黒スーツの名乗った名前に、◆X7WwwzkoUUは思わず立ち上がった。突如立ち上がった◆X7WwwzkoUUの尋常ではない様子に、教授が気圧されたように身を竦める。 「確かに、あの話を書いたのも私だが……何故君がそれを?」 「何故って……あんだけ交流所で話題にもされりゃ、そりゃ知ってるに決まってるじゃないですか! イングラム死亡って言えば、パロロワ関係者の殆どに知れ渡ってる作品ですよ!?」 「……交流所? パロロワ?」 首をかしげる。無駄に可愛らしい動作なのがなんだかすげぇムカついた。 「もしかして……知らないんですか、パロロワ交流所のこと?」 「む。ハハハ、何をバカな。私は知らないことなんか何もありはしないのだよ」 頼もしそうな言葉とは裏腹に、教授はそそくさと目を逸らした。何より台詞が棒読みだ。 「へぇ……それじゃ、他のロワのこともご存知なんですよね?」 「む。もちろんしっているとも。あぁしっているとも」 ついに台詞から漢字が消えた。次は句読点だろうか。 「じゃぁ、そのロワの名前、言ってみてくださいよ」 びしりと教授が硬直する。きっかり五秒の時間をかけて逸らしていた目線をギギギと戻すと、蚊の鳴くような声で囁く。 「……は、葉鍵ロワ?」 「そうですね、三大ロワのひとつに数えられてる有名なロワです。じゃぁ他は?」 「え、まだあるの?」 「……………」 「……………」 「知らないんですね?」 「すいません、見栄張りました。知りませんです。ハイ」 Winner ◆X7WwwzkoUU。 その後、◆X7WwwzkoUUは教授に現在の状況を説明した。スパロワのほかにも多数のパロロワが存在し、今回の事件はそこの読み手の一人が暴走した結果であること、その他諸々。 「なるほど……まさか私の去った後にそんなものが出来ていたとは」 ◆X7WwwzkoUUの説明を興味深そうに聞いていた教授が、頷きながら言った。 「いや、貴方の居たころから交流所はあったんですけど……しかし、本当に何も知らないんですね。スクールランブルバトルロワイアルスレも、知らないですか?」 「スクールランブル。ほほぅ。で、それにはどんなロボットが出るのかね」 「いませんよ、そんなモン」 「ぇー」 ぇー、じゃねぇ。 「僕はそのスクランロワで書き手をやってたんです。あぁ、そういえばまだ名乗ってませんでした。僕は◆X7WwwzkoUUです」 「ほうほう。で、どんなロボットを支給したんだね」 「だから出してませんよ、そんなモン」 「工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工」 うぜぇ。 変なのに捕まっちゃったなぁ、とこっそりため息をつく◆X7WwwzkoUUの肩を、ちょいちょいと教授がたたいた。今度はなんだ、と振り向いた◆X7WwwzkoUUに、今度は地面を指差してみせる。 「まぁ、とにかく状況は理解した。それで、君はこれからどうするつもりだね?」 言いながら、教授は近くに落ちていた枝で地面に何かを書き始めた。 「どうって……そりゃ、生きて家に帰りたいですけど……」 教授の言葉に答えながら、地面を覗き込む。そこにはこう書かれていた。 【おそらく、首輪には盗聴機能がついているはずだ。ここから先は主催者に聞かれたくない。質問があれば、君も筆談で頼む】 首輪の盗聴を警戒しての筆談。パロロワではありふれた光景だが、まさか、それを自分が体験することになるとは思わなかった。 なんだか不思議な気持ちで◆X7WwwzkoUUは教授が地面に綴る文章をじっと見下ろす。 【君を信用に足る人物だと判断してこの話をしよう。さっき言ったとおり、私は科学者だ。こう見えても機械には強い】 嘘だぁ。 思わず喉まで出掛かった言葉を飲み込んで、続きを読む。 「それは私もだ。だが恐らくこの殺し合いを生き残るには多くの苦難を伴うだろう。まだ明確な目的も定めては居ないのだが、どうだろう? 良ければ、私と行動を共にしないかね?」 主催者に悟られないように言葉を続けながら、教授は器用に地面へと文章を綴っていく。 「とにかく、私はこんなところで死ぬつもりは無い。最近は仕事が忙しくて、録画しておいた今週のグレンラガンをまだ観ていないのだ。 先週にあれだけの死亡フラグを積み重ねた兄貴の安否を確認するまでは死んでも死に切れるものではないからな。後、ヨーコは私の嫁。 それに、コードギアスの第二期だって楽しみにしている。私の嫁であるカレンがどうなるかも気掛かりだ。 ほかにもゲゲゲの鬼太郎、っていうかネコ娘にだってハァハァし足りないし、Yes! プリキュア5の続きも気になる。あー、しっかし最近増子さんでねーなチキショー!!」 うわぁ。 だんだんとヒートアップしていく教授の独り言にでかい汗を額に貼り付けつつ、聞こえない振りをして◆X7WwwzkoUUは地面の文面に集中することにした。 【首輪のサンプルと設備さえあれば、恐らく首輪解析することが出来るはずだ。君にはそれを手伝ってもらいたい。さし当たっては、まず設備を探そうと思う。 出来ればサンプルも手に入れたいところだが……君も書き手だったというのなら、首輪を手に入れるという事がどういうことかはわかるだろう。 とにかく、首輪は後回しにするとして設備探しだけでも手伝ってくれると有難いのだが】 そこまで書き終えると、教授は枝を放り投げて◆X7WwwzkoUUに向き直り、 「どうだろう、私と一緒に行ってくれるかね?」 と、問いかけた。 正直に言って、◆X7WwwzkoUUにとってこの提案は渡りに船だった。 この黒スーツの人物が自分に敵意を持っていないことははっきりしたし、何より脱出フラグを握っている存在と早々に出会えたのは幸運と言える。 なにも問題が無ければ、二つ返事で了承していただろう。 そう、何も問題が無ければ、だ。 「あの……その前にひとつ、いいですか?」 「ん、なんだね?」 この人物と行動を共にするというのなら、どうしても聞いておかねばならない問題がひとつあった。 「あ、いや、その……」 言葉がにごる。どうしても聞いておかねばならないことだが、それを聞くのはどうにも憚られた。 もしかしたら、あれはこの人物の意思でそうしているわけではないのかもしれないと思うと、尚更だ。 「どうしたというのだね? 聞きたいことがあるのなら遠慮することは無い、言ってみたまえ」 煮え切らない様子の◆X7WwwzkoUUを、教授が促す。それで彼は意を決した。 とにかく、これだけははっきりさせておかなければならない。この答え次第によっては、この人と一緒に行くわけにはいかないからだ。 「え、と……その……頭に被ってる変な仮面は、一体……?」 「あぁ、コレかね? フフ……」 ようやく◆X7WwwzkoUUが喉から搾り出した質問に、教授はその四つの目を輝かせてサムズアップした親指を得意げに自分へ突きつけた。 /`く´  ̄ `> 、 / / ヽ _ / ヽ / ,、 , ヽ ー┴ ス ヽ- 、 / V ヽ / / ヽ / / ヽ ヽ\、ヽ / 冫/ヽ. Y | | | l_, ..l _ ヽヽ\ l l lハ l l l _ l l lハヽ `ヽ! lヽヽ /{ l l l l l _,. _'´ l´ヽヽニイ トトヽ l ! ヽヽ / /ィスォj_!、_j j-ィテ∠ イ } j l llハヽ./ / ! l . / イ/ lーt、ヽ /´ ̄ィjァ'´! ト、,.イ ヽl ll | / /, ‐ ニヽ か っ こ い い だ ろ う ! ? i i { ! ト `ヽ ′/, ̄‐ ´/ l lヽヽ ヽ//// ` | ! l l ハヽ. l / / _/ -_ ニ フ /ト、j ハ lヘヽヽj_ i ! V i´ /- ' r‐', - ´ --ヽ | , イ7 ハ l ! ll ハ l lヽ | , -| / /イ ̄ / _l_ ,. - ― フ l ! | |' ト、l /j ヽ く l j | j/ ノ / , - ´ l ハー' | ヽゝ'ィ/ Yl / ! レ'l / / / i 、 ヽ、 \ ヽ \ ヽ 、 ヽ 、 ', / i| l ト、ヽ 、 ヽ 、 \ ヽ l ヽ i i ! / / ! ! | ヽ \ヽ 、 \ ヽ ヽ! i | ! ! !ハ | i l |心、 ヽ \ ヽ_\、\ ヽ |! | |i i、 ! | 、N{、ヒjヽゝ\ヾイ ヒj 、ヽi 、|! | l ヽ ! トヽ ̄ l! ` ` ̄´ | l | |j ,! ! 変態だこいつ ト、 ! u j | /lj !リ ヾ、 丶 - u リイ |リ 早く逃げださないと…… リヽ ‐、ー- 、_ /イ i rー'"ト l゙、  ̄ ./ , | ! / ヘ ヾ ヽ、 _,. ' / | ' 【開始一時間弱/E-3】 【教授(イングラム死亡の人)@スパロワ】 [装備]:ユーゼスの仮面(自前)ロジャーの黒スーツ(自前) [所持品] 支給品一式、ほか不明 [状態] 健康 [思考] 基本 首輪を解析して脱出した後、録画しておいたグレンラガンを観たい 1 首輪解析の為の施設を探す 2 戦闘がおきたとき頼りになる仲間を探す 3 どうにかして死人を出さずに首輪を手に入れたい 【備考】 交流所の存在を知らない。他のパロロワの知識は殆どありません グレンラガンのネタバレを警戒 CV:大友龍三郎 【◆X7WwwzkoUU@スクロワ】 [装備] シグ・ザウエルP226(残弾15発)予備弾装二個 [所持品] 支給品一式、ほか不明 [状態] 全身に軽い擦り傷、打撲。泥だらけ。 [思考] 基本 死にたくない。家に帰りたい 1 それはひょっとしてギャグで言っているのか 2 どうにかして目の前の変態から逃げたい
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ボーイ・ミーツ・トンデモ発射場ガール ep.2_PSI-Crystal 03 水遊び、湖畔の公園にて 前へ 戻る 次へ [19764] ep.2_PSI-Crystal 03 水遊び、湖畔の公園にて Name nubewo◆7cd982ae ID f1514200 Date 2011/05/13 00 54 「うん、春上さんはあれから何もないみたいだし、佐天さん、あなたももう包帯は外して大丈夫ね」 「やたっ!」 夏祭りの日、ポルターガイストに巻き込まれてから数日が経っていた。 災害現場のすぐ傍にいた先進状況救助隊の隊長、テレスティーナが病院に連れて行ってくれて、春上の介抱と、能力を使って右手を痛めた佐天の治療をしてくれたのだった。 春上はその日のうちに目を覚まして寮に戻れたし、佐天も幸い、軽いヒビで済んだ。 飲み薬を飲んで右手はほとんど完治していた。 そして今日で、ちょっと遠くて面倒だった通院も終わりになる。 目の前で優しくニッコリと笑うテレスティーナに微笑を返して、佐天はぐぐっと右手を握った。 もう鈍痛もない。 まあ、右手に渦を握りしめるのはまだ止めておいたほうがいいらしいけれど。 「よかったですね、佐天さん。これで無事にピクニックにいけますね」 「お弁当、楽しみなの」 「期待しててくださいね。気合入れて作りましたから!」 朝食からまだ一時間やそこらなのにもう昼食に思いをはせる春上に、初春が元気よく返事をしていた。 影で佐天はこっそり苦笑した。 今日、初春が作っていた海苔巻きは、以前佐天が初春に作ってやったものと同じレシピなのだ。 まあ、そのレシピは佐天も母親に教わったものだし、母親もきっと本で見たか、誰かに聞いたものだろう。 そう思えば誰にレシピを教わったかで優劣のつくものではないか。 佐天は調味料に間違いがないといいなと思いつつ、待合室のソファから腰を上げた。 「初春、春上さん、それじゃあ行こっか。テレスティーナさん、どうもお世話になりました」 「といっても私が診たわけじゃないし、通りすがりだけれどね」 くすっと苦笑いをしながら眼鏡を直して、テレスティーナは小脇に挟んだファイルを軽く揺らした。 「それじゃ、私も仕事があるからもう行くわね。学生さん達は良いわね、夏休みが長くて」 「それが学生の特権ですから」 「ありがとうございました、なの」 「失礼します」 初春も今日は風紀委員の腕章を外して、涼しげな私服姿だ。 当然、春上も佐天もだ。 とはいえピクニックにいこうと言いながらスカートを履くのはどうだろうと思いつつ、三人は電車の駅へと向かうため、病院の出口をくぐった。 三人であれこれと話をしながら電車を乗り継いで、第二一学区の自然公園にたどりつく。 前日のうちから計画を立てて朝早くに家を出たおかげで、昼ごはんまでにひと遊びできそうな時刻だった。 「さあ着きました! 春上さん! 何しましょうか」 「えっと……」 「初春、アンタ気合入り過ぎだって」 「そうは言いますけど佐天さん! あと遊べる時間はもう5時間くらいしか無いんですよ!」 「充分だと思うけど……」 春上と一緒にいる初春は、ずっとこうだった。 春上は転校したてで右も左も分からない状況だし、そもそも性格のせいか抜けたところがあるというか、ぽややんとした状態がデフォルトなので、初春がやたらとお姉さんぶって甲斐甲斐しく世話をするのだった。 「あれ」 「え?」 「あれに乗ってみたいかも、なの」 すっと春上が無表情に指を差した。 無表情というのは知らない人から見たらそう見えるという話で、実際にはいつもより楽しそうな感情が浮かんでいる。 指の先を初春と一緒に見つめると、公園の真ん中にある大きな池の対岸に、貸しボート屋が店を構えていた。 「ボートかぁ、いいね」 「三人ならお金も問題なさそうですね」 「じゃあ決まりっ!」 善は急げといわんばかりに、池の外周を歩いて貸しボート屋に行き、荷物を預けてボートを借りに行った。 中学生にしてみればここまでの交通費とボート代をあわせるとそこそこ手痛い出費なのだが、 春上の気晴らしにと企画したのだ、パーッと使ってやろうと佐天はむんずと財布から千円札を取り出した。 「おおっ、佐天さん奢ってくれるんですか?」 「えっ? いいの?」 「ちょ、ちょっとちょっと。いくらなんでもそれは酷いでしょ。あたしだって夏休みの軍資金はまだまだおいときたいんだから」 ボートは極普通の形で、アヒルさんのデザインなんてしていない。 なので、一時間でお札が一枚もあれば足りるのだった。 「それじゃ一時間後にここにボートを持ってきてね」 「わかりました」 「よーしいこっか!」 初春たちのいるこの公園は別段大きいところでもない。 サクサクと借りる手続きを済ませ、佐天はオールをかついでボートの縁に足をかけた。 「ほら、ボート支えてるから乗った乗った」 「ありがとうなの」 「すみません佐天さん」 スカート組を先に乗せて、初春にオールを渡す。 たぶん初春が漕ぎ役を買って出ると思ったからだ。 膝より下まである長めのスカートを履いた春上はどうということもなかったのだが、なんでそうしたのか、初春は膝上までの黄色いスカートなので、大股でボートに飛び移ると下着が良く見えた。 「初春ーぅ。そのパンツはじめて見たよ。スカートとあわせたの?」 「さ、佐天さん! あっちでおじさんが聞いてるじゃないですか……!」 貸しボート屋の主人がはっはっはと笑いながら手を振った。 よくある役得なのかもしれない。 もう、と呟きながら初春はぎゅっとスカートの裾を膝まで伸ばした。 その仕草を笑いながら、ぐっとボートを佐天は蹴り押した。 「え?! さ、佐天さん?」 「いってらっしゃーい、なんてね」 「初春さん。も、戻らないと」 春上も佐天が陸に残されたのに気づいて、慌てて初春に指示を出す。 しかし抵抗に乏しい水の上のこと、すぐにボートは陸から2メートルくらい離れた。 佐天の渾身の一押しだった。 「大丈夫だって。私もすぐに追いつくから」 「え?」 まさかもう一台ボートを借りる気なのか、と初春がいぶかしんだところで。 佐天が足元を気にした。見えない何かを踏むように。 ……いや、見えないと思ったのは一瞬だ。 土ぼこりを吸って、あっという間に渦が可視化された。 ぶよんぶよん、と佐天が踏みつけるたびに弾性変形する。 何をやろうとしているのか、咄嗟に初春には分からなかった。 春上も首を傾げるだけだった。 二人は、ついこないだ佐天が行ったそれを目撃していなかったから。 「んじゃ、いっくよー」 湖に来た時点で、佐天はやりたくてうずうずしていたのだ。 東洋の神秘、忍者の秘術。 水面歩行。 水流操作系の能力なら簡単だろう。 体重と同じ力を水面下からかければいい。 空力使いも、風で自重を支えれば擬似的に水面歩行は出来る。 他にも佐天の師である光子は足底に空気の膜を作り、水との界面張力をコントロールすることで、かなり苦手ではあるが最も正当な水面歩行が可能だそうだ。 佐天はそういうのと比べると、一番スマートさに欠ける。 ――水面近傍で渦を踏みつけ爆発させて、それで垂直方向の運動量を稼ぐ。 水面上で静止することの叶わない、ダイナミックな方法だった。 「ほっぷ、すてっぷ、じゃーんぷ、っと」 渦を3つ、70センチの間隔で。 湖面にさざ波を立てつつ生じた渦に目掛けて、佐天は足を踏み下ろした。 渦の下が硬い地面では無いから、その分渦の爆発で得られる力は小さいはずだ。 うっかり飛びすぎるのはいい。 だが出力不足で池に落ちることだけは避けなければならない。 心持ち大きめに渦を作る。 そしてぐぐっと踏むと同時にコントロールをストップ。 それで、渦の持っていたエネルギーが佐天の足に伝わった。 ……勿論、水面にも。 「え? わわっ、さ、佐天さん!」 「冷たいの……」 ばしゃん、ばしゃん、ばしゃん! と盛大に音が鳴る。 水溜りを容赦なく踏んだときの水跳ねをもっと酷くしたような感じだった。 佐天の移動のほうは問題なくて、無事ボートに着地した。 そして予想通り、滅茶苦茶に揺れた。 「お、落ちちゃう……」 「春上さん、掴まって!」 「って初春に掴まっても一緒に落ちるよ?」 「この揺れの張本人がのんきに言わないで下さい!」 この揺れなら大丈夫だ。 佐天の運動量を奪って、ボートはさらに沖のほうへと進みだした。 それにあわせて、そっと佐天もボートに腰掛ける。 場所は春上の後ろ。 ぴょこんとはえたアンテナみたいな一房の髪を眺めつつ、 正面の初春のパンツが拝める場所だった。 「さて、んさんっ、代わって下さいよ」 「えーやだ。汗かいたら春上さんとくっつけなくなるし」 「あはは……でもちょっと暑いかも」 後ろから春上は佐天に抱きしめられていた。 湖上で涼しいとはいえ真夏の昼前だ。 暑くないわけがない。 それを初春ははーはーと大きく肩を上下させながら恨めしげに見つめていた。 疲れて足がガクガクするたびにパンツが見えると佐天に指摘されるので、ただでさえ辛いボート漕ぎが何倍も大変だった。 「ほらっ、はるうえさん、も、嫌がってるじゃないですか」 「えっ? 春上さん、もしかして嫌だった?」 「え? そんなことはないけど……。佐天さん、優しいし」 「ほーら初春。春上さんは嫌じゃないって」 「もう、だめですよ、春上さん。佐天さんが付け上がり、ます」 もうこれ以上は腕が動かない、といった風情の初春を見て、さすがに佐天も悪いと思ったらしい。 「もう、それじゃあ代わってあげよう」 「お願いします。それじゃオール――」 「いらないよん。佐天さんは自分の力で泳ぐのだッ」 春上を抱きしめた手を離して、二人に背を向ける。 そしてサンダルを脱いでちゃぷんと足を池に浸す。 そして背中を春上に預け、手でしっかりとボートを押さえた。 「じゃあ、行きます!」 数日前に咄嗟に足元に渦を作ってから、佐天は渦の発生場所を手に限定しなくなった。 四肢の先端、つまり手に加えて足でも問題なく発動できるようになったのだ。 さらに言えばそういった「指し示すもの」を一切使わなくても目の前に渦は作れる。 手はあくまでも補助の一つだったということを、佐天は理解していた。 残念ながら、遠く離れたところには渦を作れないが。 両足元に、渦を作る。 そしてその空気塊を水に浸けて、すぐ解放する。 水のはねるじゃばっという音と泡の発生するぼわっという音が混じったような音がした。 「ひゃっ? ま、またですか?」 「でも冷たくないの」 「そりゃそうよ、さっきと違って水しぶきは全部後ろに流れてるからね」 「……それはいいんですけど、ほとんど動いてませんよ」 振り返るとジト目の初春と目が合った。 うーんと今の行いを反省する。 足に伝わった運動量は、渦の持っていたそれの二割程度。 ロスがあまりに大きかった。 人間三人分の質量を動かす運動量なのだから、もっと効率を上げるか渦の出力を上げるしかない。 「んー、この方式イマイチだね。これで足の骨にヒビ入れたら絶対怒られるし」 渦の暴発という瞬間的な現象で運動量をまかなおうとすると、瞬間的に佐天の足に大きな応力がかかる。 渦の出力が佐天の体の破壊に繋がるレベルに達していること、それがこの間初春を助けるときに怪我を負った原因でもあった。 ――やっぱり、連続的に仕事をする渦じゃないと駄目だよね。 「気液の二相混合流とかコントロールできるのかな……」 「え、佐天さん?」 「ああうん、ごめん、ちょっとコッチの話」 少しだけ、佐天は友達二人を忘れて自分の能力に没頭した。 佐天の作る渦は基本的に球形だ。 それは自然界によくある円筒状の渦とは大きく形が異なる。 だが円筒型のものも、別に作るのに苦労があるわけではない。 「円筒の渦を作ったら、あれなら色々吸い上げられるよね」 アメリカに発生する竜巻など、車や家畜ですら吸い上げるのだ。 ああいうイメージで、空気で作った渦の中に水を引き込めば、渦が水を吸い、吐き出すときの反作用で船が動かせるだろう。 「よっと」 足、というか骨が一番頑丈なかかとの先を基点に、竜巻を作る。そしてそれをほんの一部だけ、水に触れさせる。 空気の吸引口に水が混じりこむように。 「おっ、おっ、おっ」 「あのー、佐天さん?」 「ごめん初春いいところだから!」 「もう」 初春は自分の世界に入り込んだ佐天にため息をついた。 能力が急激に伸びていて嬉しそうな佐天を見るのは嫌ではないが、今日は春上の気晴らしにとここへ来たのだ。 春上と目が合ったので謝意を目線で伝えると、気にしていないという風に笑って首を振った。 「佐天さん。すごいね」 「ありがとー。んくっ、コントロールが難しい」 「あれでレベル2って嘘ですよね」 「うん、私もレベル2だけど、あんなにすごいことできないの」 「実用レベルってレベル3からですもんね、普通」 「柵川中学にはレベル3の人っていないんだよね?」 「はい。だからたぶん、佐天さんはうちで一番だと思います」 「すごいの」 後ろの会話をほとんど聞き流しながら、かかった、と佐天は感じた。 エンジンが始動から定常回転を始めるように、渦が水を噛む時の状態が、上手く安定した。 そして緩やかに、ボートが動き出す。 「あ、動いたの」 「ホントだ。佐天さん、上手くいったんですか?」 「うん。なんとか」 初春は再び春上と苦笑を交わす。 コントロールに必死なのか、佐天が会話に乗ってこなかった。 「さてそれじゃあ佐天さんが運転手をしてくれてる間、私達はこの空気を堪能しましょうか」 「はいなの」 うーんと初春は伸びをしながらそう宣言した……のだが。 後に佐天が方向転換は出来ないと知って対岸にぶつかりしたりしそうになって結局大変なのだった。 「ふいー、漕いだ漕いだ。もうお腹ぺっこぺこだよ」 「全部食べちゃ駄目ですからね」 「はいはい。っていうかそれは春上さんに言ったほうがいいんじゃないかな?」 「え?」 春上がきょとんとした顔で佐天を見た。 3人の中で飛びぬけて大食漢であることにまるで自覚がなかった。 貸しボートを満喫して、今はもう早めの昼食時だ。 早起きした三人にとってはもう待ちきれない時間だった。 さっそく初春の持ってきたボックスを開ける。 「おー」 「すごいの」 夏だからと酢を利かせた酢飯で巻いた海苔巻き。 定番の厚焼きやらキュウリやらで巻いたそれは、ちゃんとしたすし屋のには見劣りしても、そこいらにあるスーパーの出来合いの一品となら勝負になる出来上がりだった。 「朝から頑張りましたから。さ、それじゃ食べましょう」 「いただきますなの」 「ほら待った、春上さん手拭きなよ」 「ありがとう」 ウェットティッシュを春上と初春に渡して、自分も手を拭く。 そして6本も作られた海苔巻きの一つに丸のままかぶりついた。 佐天好み、というか佐天が母から教えてもらったあの味がする。 「んー、んまい」 「おいひいの」 両手で縦笛みたいに持った海苔巻きを春上がもっきゅもっきゅと食べていく。 失礼を承知で言うと、ちょっと食べ方が汚いというか、豪快なのだった。 ほっぺたにご飯粒がぽつりぽつりと付いている。 「もう、春上さん。ほっぺにご飯粒付いてますよ」 「うん」 「やっぱりこういうところで食べる海苔巻きはいいですね」 「うん。ピクニックって感じがするよね。夏のうちにまたやってもいいなぁ」 「じゃあまた計画しましょう。秋の紅葉とかも良いですし、二一学区は冬には雪が降るらしいですし、せっかく中学に上がったんですからこういうとこに旅行するのもいいですよね」 「うん……」 初春はこの先の計画に思いをはせて、ぐっとこぶしを握った。 しかし、それに対して佐天が淡く返した微笑が気になった。 「佐天さん?」 「いやさ、二学期から、どうしようかなって」 「あ……」 そのことを思い出して、初春は表情を翳らせた。 「初春さん、佐天さんって、2学期に何かあるの?」 「えっと……」 「転校、しようかなって思ってるんだ」 「転校?」 「うん」 自慢するように、手のひらに渦を集める。 そしてそれを池に投げ入れると、ばしゃんっ、と水音を立てた。 佐天の表情は、あまり誇らしげでなかった。 そしてどうしようか、ではなくて、転校しようかと佐天が言ったことに、初春は気づいた。 「あたしのレベル、これだったら3に行くんじゃないかなあ」 「そう思うの。だってこれ、レベル2の威力じゃないの」 「システムスキャン、受けたらあがるかも知れませんよ?」 「うん。多分上がると思う」 「じゃあ」 どうして受けないのかと言おうとして、なんとなく初春は理解した。 柵川中学にレベル3の学生はいない。 レベル0と1、そしてたまに2。 それが柵川のランクなのだ。 レベル3の認定をもし受けてしまったら、まず間違いなく柵川にはいられない。 だからきっと、佐天は先送りにしているのだ。 「……佐天さん、近いうち、システムスキャン受けましょう」 「え?」 「もっと能力を伸ばしたいって思ってるなら、ぜったいそうするべきです! それで出来るだけいい学校に行って、お小遣いで私と春上さんにパフェご馳走してください」 「パフェ? ……あは、もう、初春。いま結構シリアスな話だったよ?」 「私は大真面目です」 「うん。そっか」 「佐天さん。転校したって、私と友達でいてくれますか?」 「え? ……それは、私が言うことだよ」 「質問に答えてください。私は、ずっと佐天さんのこと友達だって思ってますから」 「ありがと、初春。私だって、初春のことずっと友達だって思ってるから」 「じゃ、今まで通りですね」 「そだね。うん、それじゃあ転校前に春上さんともっと仲良くなっとかないとね」 二人で春上を見つめると、にっこりと笑い返してくれた。 そして、どこか羨ましそうな響きを込めて、ぽつんとこぼした。 「佐天さんと初春さん、仲良いね」 「え? うーん、それはどうかなぁ」 「佐天さんなんか今さっきといってること違いませんか……」 いつの間にか完食した海苔巻きの容れ物から残ったご飯粒を摘み上げて、初春が佐天を見つめた。 そんな様子が、ますますやっぱり仲良さげに見える。 春上は胸から下げたペンダントに軽く触れた。 「私にもね、すっごく仲のいい友達がいたの」 「え?」 過去形のその言葉に、佐天と初春は返事をし損ねた。 その二人の様子に構わず、春上は言葉を続けていく。 「私とその子、どっちも置き去り(チャイルドエラー)で、施設で育ったの。ある日その子はどこかに引き取られて、離れ離れになったの。最後の日に、また会おうねって行ってくれたから、それをずっと待ってたの」 「春上さん……」 佐天自身も、そして友人にも、置き去りという境遇の人間はこれまでいなかった。 そのせいで、どんな言葉を返すべきなのか佐天はわからなかった。 春上は決して自分の境遇を悲観しているようには見えない。 その表情を曇らせているのは、友達と離れたこと、それだった。 「そのお友達、今は」 「分からないの。しばらくしたら、連絡も来なくなっちゃったから」 憂いを帯びた声で、春上が首を振る。 佐天はかけるべき声を見失って、しかし初春は春上と距離をとらなかった。 「探しましょう」 「え?」 「私、こう見えて情報収集とか検索とか、そういうのは得意なんです。だから」 「ありがとう」 初春の声に、春上が声を重ねた。 眩しそうに初春を見上げて、笑う。 「初春さんと佐天さんには、たくさん勇気を貰ったの。待ってるだけじゃ、だめだよね」 「みんなで探せば、きっとすぐ見つかりますよ。そのお友達も」 「何か手がかりとか、ある?」 自身もあまり積極的なほうとはいえなかった初春の気持ちの強さを嬉しく思うと同時に、自分もちゃんとしなきゃと省みつつ、佐天も春上に声をかけた。 だが、気楽にしたはずの質問が、春上の表情を暗くさせた。 「声がね、時々聞こえるの」 春上がスカートの裾をきゅっと握って、じっと地面の一点を見つめた。 思いつめたような雰囲気があった。 「声?」 「うん。私、精神感応者(テレパシスト)なんだけど、その子の声が時々聞こえるの」 「それなら、その子と話をすれば」 「私、受信しかできないし、それにあの子、何か変なの」 「変?」 「うん。なんだか、苦しそうで」 「春上さん、こないだの夏祭りの夜のって」 「うん、たぶんそう。あの子の声を聞いたらいつも私、何も他のことが分からないくらい、混乱しちゃって」 佐天は初春と顔を見合わせた。 あの日、鮮明に残っている記憶は二つ。 不意にふらふらと歩き出した春上と、そして地震。 結びつけるなというほうが、無理があった。 「もしかして、それってポルターガイストと――」 「ちょ、ちょっと佐天さん。いくらなんでもそんな、飛躍しすぎですよ」 「けど、春上さん。春上さんがその友達の声を聞く日って、地震とか――」 どうしてそんなことを尋ねるのか、と初春は佐天に問いたかった。 短い間に何度も学園都市を襲い、怪我人を出した局所地震。 春上がその犯人かのような言い分。 春上に、すぐ否定して欲しいと顔を向けた。 佐天も佐天で、この新しい友達が厄介ごとに無縁でいてくれるなら、それに越したことは無かった。 「……春上さん?」 「――」 予期せぬ長い間に、佐天と初春は戸惑う。 返事が、なかった。 あまりに唐突な、会話のやり取りの拒否。 春上はぼうっとどこかを見つめている。 意図しての無視とも違う、本当にいきなり佐天と初春が眼中に入らなくなったような、そんな自然な無視だった。 目線がやけに奇妙だ。 佐天とも初春とも違う、何も無い方向に向いていながら、焦点はすぐその辺りにあわせられている。 ――――まるで、すぐ傍にいる誰かを探すように。 「どこ? どこから呼んでるの?」 「春上さん……もしかして」 冗談が過ぎるような噛み合わせ。 ほんの数日前の焼き直し。 目の前の友人二人を意識の外に追いやって、春上は誰かの声に、意識の全てを奪われていた。 「春上さん! しっかりしてください、春上さん!」 「何をそんなに苦しんでいるの? ねえ、どこ?」 「ちょっと、春上さん。初春どうしよう」 風紀委員として怪我の応急処置や心臓発作などの対処は習っている。 だが、突然夢遊病にでもかかったような場合なんて、聴いたことも無い。 初春は呼びかけるほかに出来ることを知らなくて、ひたすら声をかけた。 「春上さん! こっち向いてください!」 だが佐天は、それを一瞬躊躇した。 友達と能力で交信していること自体には、何の問題もないのだ。 この呼びかけで二人が会えるなら、それは悪いことではない。 「お願い、何を言ってるのか、分からないよ」 どうしよう、止めるべきか、止めるとしてどうやって止められるか。 そんなことを逡巡していると、不意に、意識にノイズが走ったような違和感を覚えた。 なんとなく、自分の能力が自分から遊離していくような。 渦を出す意思なくしては発動しないはずの渦が、なぜかそこに現出してしまうような。 「――あ」 まずい、と佐天は思った。 池のほとり、草の刈り取られた広場に、佐天は渦を見出してしまった。 ちょうど、お昼時で地表が強く熱されて上昇気流が起こり、冷たい湖面の風が流れていく場所。 軽く舞った砂埃が、ゆらりと弧を描いた。 同時にシャラシャラと木々が葉をこすり合わせ始めた。 湖面はさざなみを打ち、そして突如、ドンと深く低い音と共に、公園全体が揺れだした。 人が危険を感じるレベルの揺れをもつ、地震だった。 「そんな! 地震?! 春上さん! とりあえず開けたところに――」 「待って! 駄目、初春」 「佐天さん?!」 慌てて佐天は初春を引き止める。 春上は相変わらず、茫然自失のままだ。 佐天は焦りを隠せない初春の向こう、広場を指差した。 そこには空へと向けて立ち上る、砂埃の柱。 「竜巻!? こんな時になんでっ」 竜巻、つまり空気の渦は自然界にも存在するものだ。 佐天が作ってしまったのは、小さな渦だけ。 だがそれは、種さえ与えてやれば、周りのエネルギー、すなわち気圧差や温度差を喰らって自然に成長する。 日本で生じる竜巻など規模は高が知れている。 数十秒もあれば、消えうせるだろう。 だが、地震の最中に広場を占有するそれは、間違いなく人を危険に晒しかねない危険物だった。 逃げ場を探して辺りを見回す。 宙に浮いたボート、不自然に回転するブランコ、木々の間を縫って現れる断層。 そらへと逃げ惑う鳥達の羽音が耳障りだった。 「とにかく! 木の隣は危ないからあっち行こう!」 少しでも安全なところへと、二人は春上の手を引いて必死に動いた。 前へ 戻る 次へ
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谷口「皆さんは人の生命という物を、どうお考えですか?」 谷口「人道的な意味でいうならば、大切な物。生物的な意味でいうならば、自己維持や増殖の総称」 谷口「倫理的な観点から言えば、人の命とは何よりも重要なものであり侵すべきではない絶対的なもの、ということでしょう」 谷口「命は大事なもの。だからそれを維持し、支える物も全て大事で重要なもの」 谷口「食料であったり、それを手に入れるためのお金であったり、あらゆる行動を執るための手足であったり」 谷口「もっと直接的なものを言うならば、臓器なども」 谷口「たとえば肝臓。肝臓をなくしてしまうと体内の毒素を分解できず、人は徐々に生命を失っていきます」 谷口「食料。金銭。四肢。臓器。それらに執着を持つことは生命の保持に執着する生物として当然の欲求です」 谷口「では人が生命への執着を捨て、死を望んだなら。やはりそれら全ては不要なだけの物になり下がるのでしょうか?」 谷口「今回ご紹介するお話は、そういった類のお話です」 谷口「ふほほwww」 鶴屋「うるさいにょろ! 誰だか知らないけど夜中に人の部屋でなにをごそごそと……って、なんであんたが私の部屋に!?」 谷口「へひん、やべえ、こそこそ忍んでたのにとうとう見つかってしまったにょろ!」 鶴屋「人のキャラ作りパクルな! 『にょろ』 は私が10年の苦心の末に編み出したアーキタイプの集大成なんだ! 安易にマネしたら訴えるにょろよ!」 鶴屋「って、おま、なにやってんの!? 夜中に人の部屋に忍び込んでると思ったら私の下着かぶってやがる!」 谷口「ああん、僕のひそかな楽しみが鶴屋さんに知られてしまった! 恥ずかしい! ゲスゲスゲスwwww」 鶴屋「てめぇ、ちょっと尻出せ!」 ~~~~~ 冷たい風が俺の頬をなでていく。世知辛い世の中に適応できなかった俺をあざ笑い厳しい言葉をぶつけるように肌を打つ冬の風が俺の涙までも奪い去っていく。 ぽっかりと風穴が空いた胸の中心をもえぐりとるように、空っ風は吹きつける。 くすんだ色のビルの屋上。暗い灰色の曇り空。その狭間で柳のようにゆらゆらと揺れながら立ち尽くす俺は、ぼーっと、呆けたように、目もくらむ眼下の光景を眺望していた。 ここから飛び降りれば、きっと俺は楽になれるんだ。きっとすごく痛いだろうし、それに、とても恐ろしい。でもそれは一瞬のことだろうし、これからも何十年もだらだらと続いていく苦難の人生に比べればはるかに楽なことで、慈悲深いことなのだろう。 心だけでなく身体からも芯が抜けてしまったかのように、おぼつかない足取りで俺はビルの屋上の端に立った。 遺書をそろえて靴を脱いだ。花束を墓前に供えるようにそうすることが自殺者のこの世で最期の礼儀作法に違いと思ったから。俺はテレビや漫画なんかを見よう見真似で、そっと靴を揃え、その上に白い封筒を載せた。 自分の魂が一足先に身体から抜け出し、天使の輪っかが頭上に浮遊するようにその場でゆらゆらと漂う感覚。ふわふわと魂が、今の俺の行動を逐一見下ろしている。 自分で自分の行いが客観的に伺える。これからビルの頂上から飛び降りようという直前に自分の靴を神経質なまでに整理する自分が、とても滑稽だった。 「よし」 自分を鼓舞するように小さくつぶやくと、俺はコンビニで買ってきたウィスキーの小瓶をぐっとあおり、のどの焼けるような痛みをこらえながら空を見上げた。 この世の見納めがこんな曇天なんて。ついてない。まさに俺の人生そのものじゃないか。いや、だからこそ、こんな空模様の下で逝けることが幸福なのかもしれないな。 思えばついてない人生だった。誰かのせいというわけじゃない。全ては俺自身のせいなんだ。自業自得ってやつさ。 苦しいとか辛いとか、嫌だとか面倒だとか。そんなことばっか言って非生産的で怠惰で反社会的で周囲を気にしない馬鹿な生活を送ってきた俺にふさわしい人生の終焉だ。 目を閉じれば家族や仲間たちのまぶしい笑顔、暖かい体温が記憶の断片からよみがえってくる。それらを思い出すたびに飛び降りを思いとどまりそうになる。 しかし無残で無慈悲な冷たい風が、そんな俺の甘えた思考をねじり取り、吹き飛ばしてくれる。 俺は目を開けた。 いい感じで酔いが回ってきた。頭の奥のあたりがヒリヒリと恍惚感に熟れている。悪くない。今なら気分よく死ねそうだ。 迷いはない。未練はあるが、もういい。もういいんだ。ショートカットの女の像が俺の頭の中で何事かを呼びかけていたが、それも俺の耳には届かなかった。 さあ。飛ぼう。 「お待ちください」 突然のことだったので、ひどく驚いた。不意をつかれたとはいえ、誰もいないと思い込んでいたビルの屋上に俺以外の人間がいたなんて。意外だった。 「どうも。お久しぶりです。僕のこと、覚えておいでですか?」 肩越しに振り返った俺は、わずかに酔いが醒めていくのを感じた。このにやけ顔には覚えがある。 お前……古泉か? 「はい。あなたの高校時代からの友人にして、つい先日まで同じSOS団の団員だった古泉一樹です」 グレーのスーツを肩にかけ、ダブルカフスのカッターシャツ。地味な色合いのネクタイに光る控えめな銀のネクタイピン。その商社マンのような姿が、不思議と古泉には似合いすぎるほど似合っていた。 「……何か用か? 残念だが、俺は忙しいんだ」 しばらく互いに視線を交し合った後、俺は苦笑まじりにそう言った。別に忙しくはないが、今この決意を誰かに抑止されるのはとても不愉快なことだと思った。 てっきり古泉は俺の飛び降りを思いとどまらせようと現れたのだと思っていたのだが、どうやら俺の予想は外れていたようだ。 「そう警戒しないでください。別に僕はあなたの決意を覆そうと思ってここにきたわけではありませんよ」 何の企みもないといった様子で、古泉はつかつかと俺の目の前まで歩み寄ってきた。 古泉に無理矢理屋上の中心まで引きづられるかもしれないと懸念したが、それは杞憂に終わった。古泉は胸ポケットから取り出した一枚の紙切れを俺の眼前に差し出した。 「あなたがそこから飛び降りようと思ったのなら、あなたの中に、それに見合う都合があってのことでしょうし、僕にそれを否定する権利はありません」 慇懃な態度の古泉の手から、俺は紙を受け取る。長方形のそれは厚紙で作られた、ごくごく一般的な名刺だった。 そこには、少しばかり格式ばった字体で古泉の肩書きが記されていた。 「……総合、プランナー?」 満足げに、古泉はそれを肯定してうなづいた。 「はい。今僕は、あらゆる物事をプロデュースさせていただく、トータルプランナーを生業とさせていただいております」 プランナー? 企画者? 確か、披露宴とか葬式とかの進行を企画する人のことだったっけ。 「その通りです。さらに私どもトータルプランナーは、あらゆる物事をよりすばらしいものに演出するお手伝いをさせていただいております」 ふん、と鼻を鳴らして俺は古泉に名刺をつき返した。そのプランナーが、これから飛び降りる俺に何の用があるってんだ? 金ならないぜ。 そう。金がないんだ。俺は自嘲気味にそう繰り返した。 俺は定職に就くこともなくふらふらし、ずっとニートやってきたボンクラだ。収入がないから貯金なんてありゃしない。 それだけならまだしも、中学の頃の友人である国木田が会社を興す時に借りた借金の連帯保証人になっちまって。今じゃ会社の経営に失敗して夜逃げした国木田の多額の債務を肩代わりする身だ。 家族に迷惑かけてる身で、さらにいわれのない、目が飛び出るほどの借金を作っちまったダメ男。 こんな俺に何を期待する? 生きていれば生きているだけ、蔓延する厄病のように害をまきちらす腐れ人間だぜ? 取り柄といえば健康なことくらいだ。学も無いコネも経験もない。俺には何もない。人様に役立てることなんて何もないんだ。 「だからいいのですよ」 俺は一瞬言葉につまり、ムッとした表情で古泉を見返した。世に絶望して死を決意した俺でも、こう言われると腹が立つんだな。 「身体は健康そのものなんでしょう? だったら何も言うことはございません」 どこからともなく取り出した電卓をタンタンと叩き、素早い手つきで古泉はそれを俺に見せた。 「この金額です。あなたの抱えている負債。あなたがご家族に抱いている後ろめたさを払拭するに値する金額。そしてあなたのご家族が今後何不自由なく暮らしていける額。これだけの額をご用意させていただきます」 唖然とする俺に向かって、古泉は感情の読めないニヤニヤ笑いを浮かべたままささやいた。 あなたの臓器を買い取りましょう。 目が覚めると、そこは白い壁に囲まれた病室だった。薬品くさい布団から身を起こすと、浅黄色のカーテンが風に翻った。 「お目覚めですか? ご気分はいかがです?」 とても爽やかだ。いい気分だぜ。 「それはよかったです。これから人生にピリオドを打とうと言う大切な時に気分がすぐれないのでは、未練が残りますからね」 部屋の隅のクローゼットに自分の衣服が収納されているのに気づき、俺はシンプルなガウンを着替えた。 「お約束通り金融会社には僕から負債を返金しておきますし、ご遺族にも残金をお渡ししておきますよ。あなたは、何も思い残すことなく気の済むように命を絶っていただいて結構ですよ」 目はすっかり冴えてしまった。しかし未だに夢の中にいるような心地だった。 いっそのこと、手術が終わった時点で安楽死させてくれりゃ、俺も楽でよかったのに。 「はっはっは。勘弁してくださいよ。臓器摘出だけでも危ない橋だというのに、その上、自殺幇助にまで手は出したくないですよ」 言えてるぜ。ま、自分の死に場所くらい自分で決めるさ。 俺と古泉は静かに窓外に目を向けた。空は、もうすっかり晴れていた。 「キョン! キョンじゃないか! こんなところにいたのか、探したよ!」 またあのビルに向かおうと思い、街道をふらついていた時のことだった。まるでテレビかラジオの向こう側の音のように身近に感じられなかった町の雑踏から、俺のあだ名を呼ぶ声がする。 俺のあだ名を指名してくるってことは、昔馴染みの知り合いか。この面倒な時に、一体誰だよ。 「ごめんね、本当に、ごめんね!」 息を弾ませて俺の背に追いついてきた人物を見て、俺は驚いた。そこにいたのは、俺に多額の負債をおしつけて蒸発したと思っていた中学時代からの知人、国木田だった。 生に執着を失い全てのことに無関心になっていた俺の心に、懐かしい感情、怒りが湧いてくる。こいつさえいなけりゃ、こいつさえいなけりゃ……! しかしその憤懣も、汗だくで微笑む国木田の笑顔の前に霧散してしまった。 「会社を立て直すための資金を集めるために金策にあちこち駆け回ってたんだ。キミに連絡するのをすっかり忘れていてね。ずいぶん迷惑をかけちゃったんだじゃないかと思ってる」 申し訳ないという様子で、国木田は荒い息を整えようともせずに背負い袋から茶封筒をひとつ取り出した。 「こんなのでキミにかけた迷惑を償いきれるとは思っていないけど、せめて僕にできるお詫びだよ。とっておいて」 茶封筒をあけると、そこには札帯のついた札束が5つほど入れられていた。 ……く、国木田? おま……これは? 「迷惑料だよ。とっといて。キミには本当にすまないことをしたからね。例の借金は、全部僕が自分で返したから。もうキミに心配はかけさせないよ」 何がなんだか分からず、俺はさっきまでとは違った意味で呆け、目を点にして立ち尽くしていた。 「僕の狙い通り、我が社で作った商品が市場で大きな反響を得てね。特需といってもいいくらいの莫大な資本ができたのさ! そのおかげで会社は軌道にのるし、株価も跳ね上がるし。いいこと尽くめだよ!」 これも全ては僕の会社興しに賛同して借金の連帯保証人になってくれたキミのおかげだよ!と言って、感極まった国木田は観衆の視線も気にならないという感じで男泣きに泣いた。 「だからね。そんなキミに、是非ともうちの会社の副社長になってもらいたいんだ!」 真っ青な空の下、俺の頭はますますシェイクされたようにこんがらがっていった。 俺はなりふりかまわず走っていた。身体がだるい。やはり臓器摘出の影響だろうか。息が上がるのが早い。 借金持ちだった俺は携帯も解約してしまっている。だから古泉に連絡をしようと思えば家に帰るか、最近じゃさっぱり見なくなった公衆電話を探すしかないのだ。 ようやく緑電話を発見した俺は、ふるえる手で10円玉を2,3枚投入し、焦りながら番号をプッシュした。 『もしもし、あなたの生活をきらびやかに彩るトータルプランナー、古泉一樹でございます』 こ、古泉か!? 俺だ。 『おやおや。どうされましたか? ずいぶんと慌てた様子ですが』 単刀直入に言おう! お前に出してもらった金はそっくり返すから、俺の臓器を返してくれないか!? 『唐突なお話ですね。一体何があったのですか?』 少し困惑気味の古泉に、俺は最初から事情を説明した。最初からといっても、偶然国木田と再会して借金を返す目処がついて就職先も決まったから死にたくなくなったってだけの説明内容だが。 俺が全てを話し終えてからも、古泉はしばらく電話の向こう側で黙りこくっていた。 『あのですね。あなたのおっしゃりたいことも分かりますよ。死ぬ意味が全て帳消しになったから、死にたくなくなった。だから生きるために臓器を返してもらいたくなった、と言うのでしょう?』 その通りだ。都合の良いことばかり言って申し訳ないんだが、腹に脱脂綿の詰まっている俺の身体じゃ、長くは生きられない。早いところ臓器を元に戻してもらいたいんだ。 『無理を言わないでください。僕も趣味でこんなことやっているわけじゃないんですよ。ちゃんと需要があって、その希望にあった物を用意して品を揃え、信用の名の下に取引する。返してください、はいそうですか、で通用することじゃないんですよ』 予想外の古泉の反応に俺は狼狽した。いや、よくよく考えてみればそれが当然なのかもしれない。臓器の密売なんて一般人の俺でも知ってるレベルの重罪だ。そこに個人の私情など挟めるはずもないに違いない。 いかに相手が長年の友人である古泉であっても、たかが友情ごときでどうこうできる問題じゃないのだろう。なんせ、下手を打てば手が後ろに回ることになりかねない事なのだから。 「それでも、それでも俺は生きたいんだ! 頼む古泉、俺の内臓返してくれ!」 ふぅ。と受話器越しに古泉のため息が聞こえた。あきれてるんだろうな。あきれればいいさ。とにかく俺は生きていたんだ。輝かしい未来が突然やってきたんだ。こんなところで死ねるかよ。 『あれはまっとうな取引じゃなかったことくらい、あなたも承知されているでしょう』 ああ。臓器密売なんて公にできる話じゃないしな。 『ですから、返してほしくなったから返してね。であっさり済ませられる話じゃないんですよ。僕にも顧客からの信頼というものがありますし』 お前には悪いと思ってる。本当にすまない。だが、俺だって命にかかわる一大事なんだ。引けないことは分かるだろ? 『仕方のない人ですね。まったく。それじゃ、こうしましょう。あなたが顧客として、自分が売りに出した臓器を買い戻す。客として商品を買う分には、問題ありませんからね』 ああ。古本屋に本を売ったけど、やっぱり手元に置いておきたくなったから改めて買い戻すみたいなものか。分かった。買おうじゃないか。 ふぅ。と、また古泉のため息が電話の向こうから聞こえてきた。 『あなたね。簡単にそう言いますが、分かってるんですか? 臓器各種はけっこうな値がするのですよ?』 お前から受け取った俺の腸、肝臓、膵臓、腎臓などの代金は、合計1億だったな。それを全部つぎ込むぜ。 『1億で買った物を1億で売ったら、純利益がないじゃないですか。手間賃や手術料、そっち方面への上納金などを含めても、1億ぽっちじゃ到底及びませんよ。話になりません』 じゃ、じゃあ、いくらあったら足りるってんだよ? 一応、国木田から500万もらったから、1億500万までなら出せるぜ。 『庶民にとっては大金でも、500万なんて屁の一発でふっとぶ端下金ですよ。そんなの、業者に払う手間賃にもなりません』 そ、そんな……じゃあいくらならいいって言うんだよ!? 『1億5000万。あなたと僕の仲です。割引に割引し、さらに勉強して、その値段で結構ですよ』 ば、馬鹿な! ニートで中流階級家庭の俺に、あと4500万も用意できるわけないじゃないか! 『1億500万なら、そうですね。肝臓と小腸大腸くらいは売ってあげられそうですよ。何せ若い男性の最高に健康な臓器ですからね。もっとも需要の高い、値段の張る商品なのですよ』 足が、ふるえる。頭からサーっと血が引いていくのが感じられる。受話器をつかむ指先も、5本全てがわなわなと痙攣している。 頭が痛い。耳が痛い。指が痛い。首が痛い。胸が痛い。腕が痛い。腹が痛い。内臓が痛い。足が痛い。きりきりと痛い。 体中から血が噴出しているような幻想にとらわれ、俺は力なく両膝をついた。 『死ねばいいじゃないですか』 笑いをこらえるようなくぐもった声で、古泉はそう言った。 死ぬ? 俺が? 何で? どうして? 死ねばいい? いやだ、死ぬのは、いやだ! 生きたい! 俺は、生きたい! あの日、ビルの上で死のうとしてたのは、あれはただの気の迷いだったんだ! そう、ヤケ酒を飲んで酔って、ついついあんな馬鹿げたことしちまっただけなんだ! 俺は死にたくないんだ! あなたもつくづく、調子の良い人ですね。と古泉が哂った。 ニートで負債をかかえて家族に迷惑をかけたから死ぬ、止めてくれるな、と喚いていたのは酔った勢いなのですか? 酔いが醒めて冷静になっていれば、事態を好転させられるだけの良案が思い浮かんでいたというのですか? 確かに死んで責任をまっとうしようなんて言い逃れは酔いのもたらす逃避思考だったのかもしれませんが、結局はなんとかしようと思えば、今のように身体を売るかそれに準じる何かをしなければいけなかったわけじゃないですか。 むしろあの場に僕が現れてあなたに臓器提供の話を持ち込んであげたから、本当に本当のバッドエンドにならずに済んだんじゃないですか? なのに、その臓器を買い戻すために大枚をはたく? また新しい負債を発生させようと言うのですか? ふふふ。結局は、ほら。あれですよ。あなたが死ねば万事解決するんですよ。 「それでも俺は、死にたくないよ!」 あらん限りの力を振りしぼった俺の声は、料金切れで自動的に通話の切れた受話器の向こうには届いていなかった。 俺は、人目もはばからず声をあげて泣いた。 まるで曇り空のあの日に逆戻りしたようだ。ゆらゆらと、さながら幽鬼のような足取り。呆けた頭。だらしなく弛緩した腕。 生に絶望してビルを登ったあの日。しかし、今は違う。死に抗うため、生に執着して、でもそれが叶わなくて、力およばず、力なく。ふらふらと。 気づくと、俺はあの病院の前に立っていた。斜陽が、まるで病院の白亜を巨大な地獄への門のように彩っていた。 ここで俺は臓器を抜き取られた。変わりに脱脂綿を腹の中に詰められた。まあ、それは俺が自分で望んだことだから誰にも文句は言えないのだが。 きっともうここには俺の内臓も、古泉も、いないだろう。ここに来たからといって奴の足取りが知れるはずもない。でも、再度古泉に連絡をとる勇気もなく。 ああ。腹が痛い。 「おや? どうされましたか?」 頭上から聞き覚えのある声がふってきた。それも、ごく最近聞いた声。この声は…… 「ずいぶんとしょぼくれて、どうされました? もうとっくにお亡くなりになったとばかり思っていたのですが?」 病院の2階の窓から、夕日に溶暗したように黒々とした古泉の顔がにゅっと突き出されていた。 突然、俺の身体に底をついていたはずのエネルギーが蘇ってきた! 腕に、足に、腹に、頭に、爆発しそうなほどの熱が、沸騰する! 気づくと俺は駆け出していた。病院の扉を突き飛ばすように開き、獣のような勢いで階段を駆け上る。痛みなど感じない。ただ、狂おしいほどの何かが、俺の内部で渦を巻いて猛っていた。 「古泉!」 視界が狭くなるような幻覚の中、俺は古泉がいたであろう部屋の前まで駆け上っていた。そこは大きな会議室のような部屋であろうと、閉じられた扉の規模からして想像がつく。 金属製のドアノブを乱暴にゆすってみるが、しっかり施錠された扉は容易には開かない。 『どうされました? 忘れ物ですか?』 扉の向こうから古泉の声が聞こえる。間違いない。古泉はここにいる。ということはもしかして、俺の身体の一部もこの向こうにあるのか!? 「頼む古泉、開けてくれ! 助けてくれ!」 あらんかぎりの声を張り上げる。死ぬか生きるかの瀬戸際だ。世間体なんて微塵も感じない。 『臓器の件ですか? それについては電話でお話していた通りですよ。1億5000万はご用意できたのですか?』 「ない。そんな金、逆さに振ったって出てきやしないさ。でも、それでも、俺の臓器を戻してくれないか?」 『おやおや。ずいぶんなことをおっしゃられる。代金もないのに、商品をよこせと? これは恐喝か強盗と解されてもしかたないことではないでしょうか?』 「違うな。俺はクーリングオフに来たんだ。強盗じゃなくて客だ」 『またまた。うちは取引から7日過ぎていなくても、クーリングオフは受け付けていないのですよ』 「なら力づくでもクーリングオフさせてもらうまでだ」 『ここへ押し入るつもりですか? 馬鹿な真似を。たとえここへやってきて臓器を取り戻したとしても、それをあなたの体内へ戻す医師がいなければ意味がないでしょうに』 「それでも、俺はやる! その時はその時だ! 臓器を取り戻すことで少しでも生きることへの可能性が生まれるのなら、俺はなんだってやってやる!」 『………。やれやれ。あの日、ビルの上に立っていたあなたはあんなにも弱弱しくて、ビルの上から飛び降りなくても死んでしまいそうな外見をしていたというのに。今はこんなにも生き生きと、生を望んでいらっしゃる』 「ああ、そうだ。あの時の俺はどうかしていた。絶望っていう一過性の毒にやられて、完全に頭がいっちまってた。だが、今なら言える! 俺は生きていたいんだ、と!」 しばらく、俺と古泉は、扉をはさんで黙り続けていた。こうしていると、目の前の分厚い扉も紙のように薄っぺらく、まるで手を差し出すだけで突きやぶれそうな気がしてくる。 『覚悟はあるのですか? もう、絶対に自殺などしない、寿命が尽きるその日まで、あがき続けると』 「ああ! もちろんだ!」 渾身の力をこめた俺の主張。最高に熱のこもった、熱をこめた声が、扉のむこうへ浸透して行った。古泉にその叫びは……伝わっただろうか。 『……分かりました。その言葉を、信じましょう。さあ。こちら側へいらしてください』 静かな古泉の声とともに、すっと巨大な扉が開いて行く。 ああ……明るい……白く、明るい光が……開き行く扉の向こうからさしてくる……まるで、そう。俺を別天地へといざなうかのような………え? 扉が完全に開ききったところで、パンッ!と乾いた破裂音がした。俺の頭上に、火薬くさい紙の束がふりそそぐ。 「遅かったじゃないの! まったく、なにやってたのよ、待ちくたびれちゃったわ!」 そこには、クラッカーの筒を持ったハルヒが立っていた。え? ハルヒ? なんで……ここに? よく見るとハルヒだけじゃない。俺のよく知っている人たちが大勢、大挙して扉の向こうに立っていた。 「もう、死ぬなんて軽々しく言っちゃダメですよ!」 朝比奈さん? なんで、これ、え? パーティー会場? え? え? 「死というものを曖昧にしか実感していなかった彼に時間を与え冷静さを取り戻させ、改めて明瞭な死を感じさせる。そこでクランケ自らに生への執着を抱かせる。見事な演出。さすがプランナー」 長門? なに言ってんだ、古泉の隣で? 扉の中から押し寄せる知人や家族たちに率いられ、放心状態の俺はパーティー会場の中へ連れ込まれる。 200人規模で会議が開けそうな広い部屋に、「生還おめでとうパーティー」 とヘタクソな字で書かれた大きな垂れ幕が吊り下げられている。 ここに至って、ようやく薄ぼんやりと俺は事の次第を理解し始めたのだった。 「いかがでしたか? プランナー古泉の企画は」 何故かお神輿の上にかつがれて上下に揺さぶられている俺は、どっと疲れが出たのを露骨に顔に出しながら、「最悪だったよ」 と答えてやった。 しかし内心では、まんざらでもないな……と少し思っていた。 「分かっているとは思いますが、安心してください。全ては僕の企画したプランです。あなたの内臓を摘出したというのも嘘ですよ。あなたのお腹の中には脱脂綿ではなく、ちゃんと自慢の臓器が詰まっているのでご安心を」 もうそれが分かっただけでも十分だよ。さっさと帰らせてくれ。今日はとっとと眠りたい気分だ。 「まあまあ、そういわず。全てが僕のプランだったわけですが、ひとつだけ真実もあるのですから」 そう言う古泉の隣で、はにかみながら手を振っていた国木田を見て、俺も思わず笑い返してしまった。これからよろしく頼むぜ、社長。 なんだかんだ言って、楽しいひと時だった。結局途中から俺の生還パーティーではなくただの同窓会になってしまったのだが、それはそれで文句ない。 古泉にずいぶん酷いことを言ってしまったが、悪かったな。騙されてたとはいえ。 「いえいえ。気にしていませんよ」 こんな時は、古泉のこのニヤケ顔もありがたく映る。そう言ってもらえると助かる。 「さてさて。これで僕の今回の仕事は完了です。それでは、最後にこれを」 そう言って、古泉は一枚の紙切れを俺に差し出した。以前同じように差し出した名刺よりも、薄く、大きな紙だ。 「今回のプランの総額ですよ。いろいろと手間がかかってしまったので、この金額になってしまったのですが、まあいくらか引かせていただいているのでご心配なく」 再び俺の腹に、きりきりとした鈍痛が走る。……え、これ、俺が払うの? その請求書に書かれていた金額を見て、また死にたくなってきた。 ~~~~~ 鶴屋「尻出せや!」 谷口「ほひぃん! かかか鰹節だけは、鰹節だけはッ!」 鶴屋「往生せぇやあああぁぁああぁぁ!」 谷口「アッー!」 おわり
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前ページNameless Archives/2ちゃんねる・エロパロ板/スーパーヒロイン系・総合スレ 題 無題1 作者 117(ID nN5Kl1J9,kaCWjEGf,wfKiSqv/,gUy+Dgrb) 取得元 スーパーヒロイン系・総合スレ,http //pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1071976937/ 取得日 2007年11月04日 タグ cb 概要&あらすじ バーンフォウスの戦いは続く…… ページ 1-2 ご注意:以後の作品の著作権は、作者(書き込み主)にあります。 148 :名無しさん@ピンキー:04/02/09 23 55 ID wfKiSqv/ 143 私立世衣木高等学校。現在四限目数学の授業、残り時間十三分。分かりやすく言えば 十二時三十七分である。 グラウンド側の席でぐっすり熟睡しているのは兵藤涼。すぐ隣では穂村煉が迷惑そうで 心配そうな、だがやはり迷惑な顔をしていた。気持ちよさそうな寝息が授業に対する彼女 の集中力を乱していた。 宿題の写しを授業開始直前に終え、それからたっぷり熟睡中。本当なら煉が叩き起こし てもいいのだが、寝ていてくれればまた宿題を見せてくれと頼まれる……。それが嬉しかっ たりする。 ブルッ―― 「ッ――! 先生、トイレ行ってきます」 挙手すると同時に煉は席を立ち、教師の言葉を待たずしてすたすたと教室のドアに向か った。 「ん? おお、いっといれ」 薄ら寒いギャグにあちこちから失笑ともとれる笑い声が起こった。いつものことだが、その 教師のギャグに背筋が震えるのを感じながら彼女は教室を後にした。 149 :名無しさん@ピンキー:04/02/09 23 56 ID wfKiSqv/ 足音を立てずに走るのは彼女の特技である。誰もいない廊下を疾走し、女子トイレの前 を素通りし、階段を長いストライドを生かして軽く六段近く飛ばして駆け上がる。左胸ポケッ トにまるで束縛されているかのようにぱっつんぱっつんに収められていた折り畳み式の携 帯電話を手にすると、それを開き耳に当て、 「私です」 ボタンを操作することなく会話を始めた。よく見るとその携帯電話にはボタンの類はなく、 上部に全面を覆う画面と通話に必要な部位しかない。そもそも彼女は授業中に携帯を鞄の 中に――しっかり電源まで切って――しまっている。 『こんにちは』 電話から聞こえてきたのは幼さを含む女性の声。日本防衛企業特務課のオペレーターの 女性である。何度か面識もあり、歳もあまり変わらない。 『エビル・ネイションの攻撃が確認されました』 「場所は」 『世衣木高校から南南西に五十五キロ。臨海都市予定地域周辺が被害を受けています』 「直接向かいます」 『気を付けて』 屋上へ通じる扉を開け放つと上方に跳躍し、給水タンクの上に着地し首を巡らす。 (南南西……五十五キロ……) 携帯電話らしきものを胸ポケットに戻し、受けた情報を頼りにその方角を視認する。身体が 次第に熱くなる。戦闘に向けて力が漲っていく。 「――見えた」 壇ッ、左足で踏み切ると、先程とは比較にならない跳躍を見せた。 「炎武ッ――」 振りかざす右腕に炎が蛇……いや龍のように渦を巻き、 「――超甲ぉぉッ!!」 炎龍が煉の頭から爪先までを見事に覆いつくす。 「っはぁ!!」 掛け声とともに火球から常識離れしたスピードで飛び出して行ったのは、紛れもなくバーン フォウスであった。一条の紅い線が世衣木高校上空数百メートルから南南西へと尾を引き、 瞬く間に消え去った。 150 :名無しさん@ピンキー:04/02/09 23 57 ID wfKiSqv/ それはまるで重戦車を髣髴とさせた。 「…………」 一見しただけでも分かる強固な外穀。ヒトに例えると頭部の、額に当たるところから生える 長大な角。さながらカブトムシである。 「…………」 エビル・ネイションの怪人は本能の趣くままに生きている。一匹一匹それぞれが曲者揃い であるが、圧倒的な『力』の元で怪人どもは統率・管理されている。 「…………」 そんな怪人の中で黙々と破壊を行うこのカブトムシは、特殊といえばそうである。だが、こ いつの後ろは灰塵となり、押し潰された人間の亡骸が電光に集まり死んだ小虫のように点在 していた。 「――そこまでだっっ!」 「…………?」 カブトムシ怪人の聴覚が遠方より迫り来る声を、見上げた視覚が紅く輝く光点を捉えた。 「バァァニングゥゥッッ」 バーンフォウスの拳から生じた炎が再び空を真っ赤に灼く線を創り出す。 「ナァァァァッッッックゥゥ!!」 マグマの熱を凝縮したような超高熱を誇る拳が怪人の角を瞬時に粉砕、蒸発させる。 ピキッ 「なにッ!?」 今までの戦闘からその結果を確信していた煉は状況が不利と判断すると背後に大きく飛び 退いた。 151 :名無しさん@ピンキー:04/02/09 23 58 ID wfKiSqv/ 「ちぃっ」 バーンフォウスの右手甲には小さなひびが走っていた。対して怪人の角は未だ健在。奇襲 からの懇親の一撃にも拘らず、だ。 (あ、でも奇襲は違うか。だって私から叫んでたし) などと呑気に考えている場合ではない。これは敵の硬度がバーンフォウスの超甲より勝って いるということを知らしめている。 「向こうは私を調べてる……ってことか」 そのせいで今回の怪人は苦戦しそうだと煉は直感した。が、彼女はできる限り早く始末し学校 に戻るつもりである。四限目終了まで、後十分。 「ッんぁ――ッッ!?」 バーンフォウスの身体が後方に弾け飛ぶ。勢いはひどく、一度後転してしまってから二つの脚 でようやく制動をかけた。粉塵を巻き上げ数十、百メートルいやそれ以上の距離を慣性に従い 飛ばされた。 「っっっ痛ぅ……、何を……」 されたかは至極単純であった。怪人の体当たりである。顔を上げた煉は先程まで自分がいた 位置に甲骨をまとう怪人がいるのを目にした。 「馬鹿っ速いじゃないか」 気を抜いていたわけではない。しかし距離を詰められた瞬間を目で捉えることができていなか った。 「…………」 「?」 絶対的に優位にいる怪人が自分を見据えたまま巨角を指で示すのを怪訝な表情――顔は 超甲で覆われて見えないが――で見返していると、 「…………」 「ッ――!」 バーンフォウスに、いや煉に対して中指を突き立てる仕草をして見せた。それはつまり、 あの角で煉の女性を貫くというやつなりの挑発であった。 「――――下衆が」 腹の深奥で何かが熱く滾った。超甲をまとい始めて数ヶ月も経たない煉はいとも簡単に理性の 箍が外れ、本能に任せるだけの攻撃的な戦闘スタイルにシフトした。 152 :名無しさん@ピンキー:04/02/09 23 59 ID wfKiSqv/ ――憎い 『……ん』 ――父を殺したあいつらが 『れ……ん』 ――母を殺したあいつらが 『煉……』 ――やつらを殺すことだけを考えているのに 『煉さ……』 ――さっきから耳に張り付く雑音は、何……? A.呼びかけに答える B.呼びかけに答えない 155 :名無しさん@ピンキー:04/02/16 01 42 ID ri/YzF8D 152 「――ダメです、応答ありません!」 オペレーターの叫びが防衛企業特務課作戦司令室に木霊した。 「トランス状態に堕ちました!」 報告を受け、社長の顔が険しくなる。こうなってしまうと戦闘を終えるまでこちらから できることは皆無である。煉を信じて待つしか、彼らにはできない。 今までも何度かトランスに陥っていたが、その都度危機を脱している煉の実績は驚嘆に 値するが、今度の相手は闘争本能に任せた戦い方では勝てないかもしれないと彼は考えて いた。 「社長。先程からの戦術兵器開発部の轟博士のエマージェンシーはどうされます?」 「私が出よう」 戦闘中に煉へ呼びかけたのは、轟博士が緊急に煉と連絡が取りたいと要求があったから である。攻撃が通用していないと兵器開発部へ即座に報告したところ、すぐさま返事があ った。 『そんなこともあろうかとこいつを開発しといたのじゃ』 最強の台詞とともにバーンフォウスの新型兵器のデータが送られ、いざこれから……と いう時になってのトランスであった。 煉の動向を見守りつつ、最悪の事態に備え何か手はないかと思案していた。 156 :名無しさん@ピンキー:04/02/16 01 43 ID ri/YzF8D 「はああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」 愚直とも思えるほど煉は真っ直ぐ突っ込んだ。カブトムシ怪人はその巨体に似つかわし く緩慢な動作で腕を振り上げ、煉が交差する一瞬を待った。 紅い弾丸が目にも止まらぬ速さで距離を詰める。タイミングを見計らう敵の腕が、まだ 待ち、待ち続け、そして、 「っ――」 轟音を上げ空気を切り裂き、いや空を切った。 「遅い!」 声がしたのは背後。踏み込む左足。捻る腰。振り返る暇も与えず力を込めた渾身の右拳が、 甲殻に覆われるカブトムシの背に突き刺さる。 「…………く」 突き刺さったと思われた拳は、怪人の固い外甲の表面で止められた。超甲に入る亀裂が 音を立てて一段と大きくなる。 もしその怪人が表情を浮かべるなら勝ち誇った笑みを顔中に滲ませているだろう。――が。 「うおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!」 止められた動きを強引に再動させる。左足はコンクリートを踏み砕き、腰は限界まで捻り回す。 「――」 怪人は微かな呻き声を残し、振り抜かれたバーンフォウスの右腕から弾け飛んでゆく。大地を 転がる巨躯を立て直して顔を上げると、そこには始めと同じく炎塊が弾丸のように迫っていた。 怪人が腰を落とし一撃に備えるのと、一撃が腹を捉えたのはほぼ同時だった。 確実な手応えが豪拳に伝わる、勝利を手にしたと確信した瞬間、右腕全体に亀裂が拡がった。 「な……っ!?」 驚愕。そして一瞬の隙。刹那、バーンフォウスの胴を怪人の腕が締めつける。 「かはっ――」 肺の中の空気が絞り出され頭が真っ白に塗りつぶされる。意識が途切れかけるが、ぎりぎりと 締めつけられる背部の鈍痛がそれを許さなかった。 「くぁ……、はっぁ」 鯖折りから逃れようとするも右腕は戦えるだけの力がない。左腕だけで外せるほど敵の力も弱く ない。 157 :名無しさん@ピンキー:04/02/16 01 44 ID ri/YzF8D この時、煉はトランス状態から回復していた。一瞬意識が遠のいたために興奮状態が 醒めていた。そして、自分の愚かしさを激しく悔やんだ。一時の感情に任せたための失態、 しかも今回は致命的な結果を招いている。 「く、そぉぉ……っ――!」 己の愚行に打ちひしがれるのに追い討ちをかけるように、煉の腰が鈍い音を立てた。 (背骨が、砕けた……?) 自覚するが、不思議と痛みは感じられなかった。だがこれでもう戦えないかもという絶望 の感が煉に重く圧し掛かった。 怪人が腕の力を緩めると、煉の身体が面白いように力なくコンクリートの大地に崩れ落ちた。 転がる煉を足蹴にして仰向けにさせたカブトムシ怪人は、まるで値踏みでもするかのように ねちっこい視線をその身体に落とした。その目に頭が熱くなるが、今度はぶち切れたりはしな かった。代わりにどうすればこいつを倒せるか、それだけを考える。 右腕は使い物にならない。下半身も、腰から下は動かないかもしれない。本当に感覚がない 気がする。残されたのは……左腕。 (どうする? これだけで、どう戦う?) いかにシミュレートしても有効な手は思い浮かばない。心は焦れ、自然と左拳に込められる力 も増し、それは見逃されはしなかった。 重量級の怪人の右足がコンクリート諸共煉の左腕を踏み砕いた。 「……はっ――」 一瞬間の後、断末魔の叫びが一帯の大気を震撼させた。 158 :名無しさん@ピンキー:04/02/16 01 44 ID ri/YzF8D その悲鳴に司令室の多くの者――特に女性は耳を塞ぎ、モニターに映る凄惨な光景から 目を背けた。 「ぐ……っ。せ、戦闘時間、五分突破。右腕、腰部中破。左腕……大破」 ざっくばらんにスーツを着こなす青年がいち早く気を持ち直し、現在の煉の状態を苦しげに 報告する。 「社長! これ以上は生命に危険が」 「分かっている。木崎くん、轟博士に繋いでくれ」 「あ……は、はい!」 社長の一声がきっかけとなり全員が気を取り直した。新人ばかりのこの課において、今しがた の映像は衝撃が大きかった。しかし、慣れてもらわなければ、困る。 「轟博士。例のあれは準備できましたか?」 『おお。ばっちりじゃ。今すぐにでもかっ飛ばせるぞい』 「頼みます」 それだけで通信を切る。司令の目はすでに正面の大画面モニターに映し出される怪人と煉の 姿に戻されていた。 「煉くん、あと少し……あと少しだけ耐えてくれ」 159 :名無しさん@ピンキー:04/02/16 01 45 ID ri/YzF8D 「――があああっっっっ!! っっっあああ!!」 左腕に走る激痛。頭を振り乱す煉の姿がその凄まじさを物語っている。 「……」 足元でもがき苦しむ彼女に向けられる視線はひどく落ち着き払っていた。冷静に煉のもがく 様を見ている。 「……」 ようやく動いたカブトムシ怪人の手が煉の腰、無数に亀裂が走る超甲へ伸ばされた。亀裂の 隙間に指を捻じ込み、力任せにそれを剥ぎ取った。 頼りない音を立てて剥ぎ取られた装甲が大地を転がる。白日の下に晒されたのは、女性らし い艶やかな肌をした。首から上で醜く騒ぎ立てる女性とこの肌の持ち主が同じだというギャップ。 その差が怪人の変態的な欲情を駆り立てる。 「……」 腰から下を覆う装甲に手をかけ飴細工のようにそれを容易く剥ぎ取ると、薄い恥毛が茂る女性 が現れた。 「あ……っ、あ、……」 そんな辱めを受けても、煉は苦しげに呻くことしかできない。左腕から全身に広がる痛苦に犯さ れ、もはや虫の息、といったところだ。 そんな状態に構うことなく、怪人の無骨で醜悪で汚らわしい指が彼女の女性部に這わされた。 撫で、さすり、強く抓りあげられようが煉の身体はまったく反応を示さなかった。 「……」 手を離したカブトムシの股間から長い肉塊がじゅるりと粘液を垂れ流しながら飛び出し、その身 を太く固く剛直にしていく。 未だ超甲に包まれる煉の脚を大きく開脚させ、すでに限界まで充血したものを彼女の秘孔へと 近づけた。 162 :名無しさん@ピンキー:04/02/20 01 02 ID 8DzCZU3B 159 (私……どうなった、の?) 霧散する意識。白く染まる視界。左腕を締めつける激痛……いや痛みは感じなくなり 始めていた。まるで肘から、肩から先までが消失してしまったような感覚に蝕まれ、彼女 は堕ちていく気分に襲われた。 (――あ。触られてる……) 闘争心の剥げ落ちた頭が、今何をされているのかを冷静に伝える。まだ誰にも晒した ことのない純潔な箇所をどんなに弄られても、闘う意思を忘却した彼女は立ち上がること ができなかった (……やだな。こんなところで終わるなんて) 心が拒んでも、身体がついてこない。敵に対する憎しみも、何もかもが消え失せていた。 しかし、せめて自分のバージンをここで喪失してしまうならいっそ、左腕と同じく何も感じな ければいいのにと心の片隅で願った。 (………………あ、れ……) そこで体感していることの喰い違いに気が付いた。左腕は潰された。だからあんなに痛か ったのに、じゃあどうして腰は痛みを教えてこないのか。 「――――ッグ」 痛くない……なら、動くんじゃないのか。鈍い音を聞いて腰が砕けたと思い込んだだけ じゃないのか。 「っあ、……く」 手にした一縷の望みは、彼女を奮い立たせるには十分すぎた。彼方に飛ばされた意識を、 闘うための勇気を引き寄せる。 163 :名無しさん@ピンキー:04/02/20 01 03 ID 8DzCZU3B 「くっ、ど――」 一度は死んだ心が甦った時、彼女の腰から下は思い通りに動いた。太腿の間に身を割り 込ませていた甲殻生物の腹回りに両足を絡ませ、 「退けええぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!」 「……!」 腰を巧みに捻り、脚に挟んだ怪人を開放し竜巻のように吹き飛ばした。超速で身体を弾き 出された甲虫は地面を削りながら欠損した道路をどこまでも転がっていった。 息を荒げる煉は立ち上がり、腰に小さな痛みを感じながらもまだ動くことをようやく意識した。 右腕だって超甲が損傷しただけだ、動かせる。左腕も力強く握り締める。 「――ぁああっ!!」 まだ動くじゃないか!痛みを感じる、神経は通ってる。……闘える! 「はっ、はは……はははっ」 彼女は笑った。痛みで気が触れたわけではない。まだ闘えることが、人のために闘える ことが、私怨を晴らせることが嬉しかった。 今度は感情に囚われない。溺れない。クールに冴え渡る意識に身を委ねる。ようやく自分 を取り戻したのと同時、通信が入った。 『煉くん』 聞き慣れた渋い男の声。戦闘中に聞くのはこれで何度目かである。 「社長!」 『説明している暇はない。轟博士に代わる』 『……よお煉くん、苦戦しとるようじゃのお』 「用件は何です? 急いでください」 『いやいや何とも魅力的な格好しとるじゃな』 「殴りますよ?」 『冗談じゃ。さて、そろそろ君の元に新たな力が届くはずじゃ』 「力……?」 164 :名無しさん@ピンキー:04/02/20 01 04 ID 8DzCZU3B 轟博士の言葉どおり、それはすぐにやってきた。彼女の聴覚が、遠方から聞こえてくる 甲高い音を捉え、次第にそれが近づいてくる。耳を劈くほどの音響をともなった時、彼女 の前にそれはを大気を振動させて落ちてきた。というより地面に突き刺さった。 「な……っ?」 銀色に輝く物体。高出力のブースターによって強大な推進力を得たそれは未だに火を噴 き出し、その先端……ではなく本体は高速で回転している。螺旋を描いて刻まれた溝が円 錐状の体に巻きつくその様はまさに、 「――ドリル……?」 『そうじゃ! これこそ敵の装甲を貫く破壊力と男のロマンを兼ね備えた最強の兵器・ブース タードリルじゃ!』 熱弁する轟博士に対し、いつもなら少し呆れ気味になる煉だが、今は心底感謝していた。 「これは……使える。ありがとう、博士」 目の前ですでに回転を止めたドリル、後部に取り付けられている火の噴きやんだブースター。 その中央に空けられている丸い空洞にひびだらけの右腕を突っ込んだ。中に挿し込んだ腕 が種々のケーブルに絡めとられ、きつく締め上げられる。 「んくっ……! き、つい……っ」 強度を失った超甲では耐え切れずに苦しげに漏らすが、腕を引き抜こうとは考えもしなかった。 完全に接続が終了した時、彼女の脳裏にこの兵器を扱うためのマニュアルが焼き付き、同時 に欠損、欠落していた超甲が活性化し、瞬時に再生していく。左腕の神経深くまで染み込んだ 痛み以外、違和は感じられない。 「セット!」 ドリルを装着した腕を振り上げて叫ぶと、一瞬にしてドリルが秒間五千回転という阿呆みたい な最高回転速度に達する。 「行くぞぉ……っ」 今しがた吹き飛ばしたばかりの敵めがけ、煉は勢いよく突き進んだ。 165 :名無しさん@ピンキー:04/02/20 01 05 ID 8DzCZU3B 「……」 どうにか体勢を立て直したカブトムシは、こちらに一直線に迫り来るバーンフォウスの姿を 捉えた。直線上から逃れようと身体を動かすが、思うように動かない。吹き飛ばされた衝撃で 身体の機能が狂ってしまったらしい。こうなってしまえば、後は自分が信じる強固な装甲で身 を守るしかない。 「……」 両腕を身体の前で交差させ、敵がどこを狙うのか確実に見極めて防ぐつもりだ。 「はあっ――」 引き絞られたバーンフォウスの右腕が突き出される。ドリルの切っ先、そこが狙っているのは ……胸。 「……」 冷静に対処する。切っ先が身体に触れる寸前、強靭な外穀に覆われる両腕を二人の隙間に 滑り込ませ、ドリルを完全に受け止めた。 瞬間、怪人の肘から先は粉砕された。 「……!」 「甘いっ!」 凶悪な回転を続けるドリルの先端が怪人の胸に捻じ込まれる。茶色がかった汚物が無数に 飛び散る。 「バーストッッ!」 怒号とともにドリル本体が爆炎に包まれる。貫かれた傷口が香ばしい音を立てて焼け爛れて いく。バーンフォウスの能力を生かした獄炎の味である。 「ブーストォッッ!」 再びブースターが火を噴き始める。その威勢は飛んできた時の倍、数倍以上に膨れ上がっ ている。 「吹き飛べ!!」 ブースタードリルは怪人の身体を貫いたまま、バーンフォウスの腕から飛び離れた。凄まじい 音を轟かせ空気を切り裂くその勢いに、強靭な外骨格に覆われていた怪人の身体は無残にも 粉となり、塵と化した。 「…………」 空に捧げる右腕に舞い戻ってきたのは、妖しいほどに光を放つ銀色の凶器だけだった。 168 :名無しさん@ピンキー:04/03/03 00 50 ID gUy+Dgrb 165 空が橙色に染まるかという時刻、煉は自宅へ帰り着いた。 戦闘終了後、本部に向かってから体の熱を鎮め、負い過ぎた傷の治療をしてもらった。 「……」 左腕は肘から先まで包帯が巻かれている。外傷はほとんど癒えているが、神経が未だに 悲鳴をあげていた。数日はこのまま過ごすようにと念を押されて注意された。 「…………」 ひどく反省していた。今回もなんとか切り抜けたが、もしあの兵装が間に合っていなければ 自分は犯され、生命も奪われていただろう。 「はぁ……」 もっと自身の感情の制御を上手くしなければ……それが彼女の最大の課題である。 自室に入るとベッドに大の字に寝っ転がった。 「――あ」 そこで鞄を学校に置きっ放しであることをようやく思い出した。午後の授業を欠席してしまっ ていたことも同時に。 「……参ったな」 これから取りに行こうかとも考えたが、すでに帰りのホームルームも終わっている時間だ。 今からのこのこと学校に出向くのも気が引けるし、何よりベッドに横になった瞬間から下腹部 がまた疼き始めていた。 「……ほんとに参った」 鞄は明日でいいか。今は腹の底で蠢く不快な欲求を解消しなきゃ――解消したい。 身体を丸め、水色縞柄のショーツを膝まで下げると、玄関からチャイムの音が聞こえてきた。 「――!」 さっとショーツを上げ制服の乱れを正すと、太一の部屋の前を通り階段を駆け下り玄関の 戸を開いた。 顔、ちょっと赤くないかな?という思いがよぎった時にはすでに戸を開け放っていた。 169 :名無しさん@ピンキー:04/03/03 00 51 ID gUy+Dgrb 「よう」 煉の前に立っていたのは、肩を上下させ額に汗を浮かばせる涼だった。彼の熱気が彼女 の鼻腔をくすぐった。 どうして彼がここにいるのか分からない彼女が目を丸くさせていると、視界が真っ暗に覆 われた。 「お前の鞄。持ってきたぞ」 「え……、あ、うん」 突き出されたのは煉の鞄だった。おずおずといった風に両手で受け取った。 「早退すんのはいいけどな、鞄忘れていくなんてポカやらかすんじゃねえよ」 「ご、ごめん」 「……いいけどさ、別に」 存外に素直にしおらしく謝られ、居心地の悪さを感じた涼が言葉を付け足した。 「でも今日は部活があるんじゃないの? 持ってきてくれるなら涼が帰る時でよかったのに」 「ん? ああ、まあ……うん」 困ったように目を泳がせる涼を不審に思い見ていたところ、彼の目が鞄を手にする彼女の 左手で留まった。 「その手どうした?」 「これ? ちょっと捻っちゃって」 「気を付けろよな。どれどれ」 「あ――」 涼が煉の手を取ると、不意のことに驚いた彼女はその手を振り解いた。 「わ、悪い! そんなに痛がるって思わなかったから……」 「ちっ、違……」 歯切れ悪くもじもじと黙り込み、気まずい沈黙が数秒だけ流れた。 170 :名無しさん@ピンキー:04/03/03 00 53 ID gUy+Dgrb 「俺……部活行くわ」 「う、うん……行ってらっしゃい」 じゃあと言い合い、煉は振り解いてしまった左手を振って涼を送り出した。彼が角を曲がり 完全に見えなくなったのを確認してから、煉は玄関の戸を閉めて家に戻った。 「はぁっ」 途端に腰が砕け、扉に背中からもたれかかった。最早立っていることさえ困難な状態である。 「やだ……」 スカートの中ではショーツがぐっしょりと濡れ、粘液が膝まで伝い流れていた。頭の中まで 刺激するような彼の汗の匂いと触れられた手の温もりが彼女の理性をがたがたにしてしまった。 自身の制御――を誓ったはずだが、これは、この想いだけは抑えることはできそうになかった。 今にも倒れそうな危な気な足取りで自室へと戻った。 (太一……帰ってこないよね?) 沸騰し蒸発し霧散しそうな意識の中で最後に思ったことは、唯一の家族にだけは自分の卑し い姿を見せたくないな。という顧慮であり、そう思ってもやめることのできない自分への蔑みの 念だった。 前ページNameless Archives/2ちゃんねる・エロパロ板/スーパーヒロイン系・総合スレ Counter today - ,yesterday - ,summary - . 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826. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 22 48 54.53 ID ilK9qszfo 2日目:開始 直後コンマ:夢判定 827. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/10/16(火) 22 49 00.74 ID uZB2ALhYo おk 828. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 22 55 19.28 ID ilK9qszfo 827 判定:4 結果:失敗 ―――ここは? カーテンから刺さる日光を感じて、貴方は意識を覚醒する 見覚えのある天井 どうやら、ここは自分の泊まっているホテルだ 貴方は、昨夜のことを思い出す ―――ッ! 途端に感じるのは頭蓋が焼けるような痛み …そうだ、自分は――― 『ライダー』との対戦で貴方は マスターの葛木宗一郎に手酷いダメージを負った 身体を動かすたびに鈍痛が全身を襲う ここ2日間は…痛みが響くだろう セイバー「お目覚めになったのですね、マスター」 貴方の覚醒に気付いたのか、椅子から立ち上がる『セイバー』 セイバー「少々お待ちください。ただ今、水を持ってきます」 貴方の行動選択 1.身体を休める 2.学校へ行く 3.自由安価 ↓3 829. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/10/16(火) 22 55 56.98 ID uZB2ALhYo 1 830. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 22 56 01.80 ID pd4pp9Vzo 1 831. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) 2012/10/16(火) 22 56 48.33 ID lz6rkRJp0 1 833. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 23 03 32.56 ID ilK9qszfo 831 選択: 貴方はベッドの上で身体を休める 正直言えば、身体が動かない ―――葛木宗一郎 貴方の担任にして、『ライダー』のマスター 彼の拳はあまりにも奇怪なものだった 宝具と化した自分の武器でさえ砕き、貴方を一撃で昏倒させた 独特の構えから放たれた剛拳 敢えて言うのであれば『蛇』 全く、軌道を読むことさえも叶わず、的確に貴方の身体と脳の命令を断ち切った 驚愕と言うしかない… 神秘の庇護も魔術師でもない人間が、己の武だけで神秘へと行き着くものなのか… あながち自分の『伝承』もそういったものなのかもしれない セイバー「どうぞ、水です」 貴方は『セイバー』に身体を起こしてもらって水を飲む 貴方の会話選択 1.昨日は助かりました 2.あれが私の『宝具』です 3.自由安価 ↓3 834. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 23 03 59.82 ID oz9tdoie0 1 835. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 23 04 29.84 ID MeskILIDO 1 836. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 23 04 30.67 ID pd4pp9Vzo 1 837. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 23 12 57.47 ID ilK9qszfo 836 選択: 冷たい水が全身に潤いを与える 貴方は、水を飲み干し身体を休める 『セイバー』もベッドの隣に座り貴方を見ている …あまりじっと見られるのは恥ずかしいかもしれない 「昨日は助かりました。ありがとうございます」 恥ずかしさを誤魔化すために貴方は、『セイバー』に感謝を伝える セイバー「そう思うのであれば、今後は無謀な行動は控えてください」 軽く釘を差す『セイバー』に貴方は苦笑する だが、そうとも言っていられない 無言でその意を伝える貴方に『セイバー』は溜息を吐く セイバー「なら、少しでも早く、回復してください」 貴方の昼の行動 自由安価 ↓3 ※貴方の行動が制限されます ※『セイバー』の行動を安価指定できます 838. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) 2012/10/16(火) 23 14 33.54 ID lz6rkRJp0 申し訳なさそうに家に有るインスタント食品を食べるよう言う 839. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 23 15 37.81 ID pd4pp9Vzo 申し訳なさそうに家に有るちくわを食べるよう言う 840. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/10/16(火) 23 18 15.45 ID OjPl8Mn80 セイバーで 疑問を聞いてみる? 842. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 23 23 34.53 ID ilK9qszfo 841 選択: こーいう意味ですか? 『セイバー』は椅子に座り、『マスター』である貴方の看病を続ける しかし、貴方は手間が掛かるわけでもなく、 大人しく体を休めているために、『セイバー』としては手持無沙汰だ 「私のことは気にせずに」 どうやら、自分の手持無沙汰に気付いたマスターに気を遣わせたみたいだ けが人のマスターに気を遣わせるわけにも行かない 丁度良い、『セイバー』も聞きたいことがあったのだ 少しでも話し合うことは重要だ 『セイバー』の会話選択 1.敬語は入りません 2.マスターの魔力について 3.マスターの宝具について 4.自由安価 ↓3 843. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) 2012/10/16(火) 23 24 02.45 ID lz6rkRJp0 3 844. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/10/16(火) 23 25 43.05 ID uZB2ALhYo 1 845. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 23 25 45.21 ID pd4pp9Vzo 3 846. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 23 33 16.55 ID ilK9qszfo 845 選択:3 結果:そんなに地雷の上でダンスをしたいのですか 『セイバー』は昨日の戦闘を思い出す 自身と同じように風を纏い魔力で武具を編んだこと 濃密な魔力に指向性を持たせたこと それこそ、『セイバー』に宿る魔力炉心たる竜炉と同じ働き だが、彼女にとってそれ以上に気になったのは彼の『業』だ その手に持ったあらゆるものは宝具のような輝きを持つ 否、あれは間違いなく宝具だった 信じられない、ただの木の棒が貴方が持てば宝具と化す だが、自分はそれを知っている… それを担う男を知っている セイバー「マスター…貴方は私の子孫ではないと言いました」 ―――貴方は、ランスロットの血族なのですか? 直後コンマ:貴方の感情判定 1-3:全く持って忌むべきものです 4-6:私の『宝具』です 7-9:私の誇りです 847. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 23 33 27.25 ID pd4pp9Vzo ほい 850. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 23 44 27.34 ID ilK9qszfo 847 判定:5 結果:普通 『セイバー』の言葉に貴方は事務的に答えた 「はい、私の先祖は湖の騎士『ランスロット』です」 貴方の一族が持ってきた魔術回路とは異なる魔術特性 それは、一つの時代で無双を手にした英雄の『業』そのものを『伝承』として保管してきた 簡単に言えばウイルスだ。 一族の血を苗床にして、共生し続ける 単に、貴方達の血族が、共生に適していたともいえる 貴方は生まれた時から、その菌を保有し続けた そして、菌が持ち続けた『伝承』は貴方の全身に行き渡され、 『伝承』は『宝具』と化した セイバー「…そうですか」 『セイバー』はどこか気を落としているように見える 貴方は考える 『セイバー』にとって『ランスロット』は自身の国を滅ぼした要因だ そんな男の子孫に出会ったのなら、それは胸中穏やかではないだろう ―――サー・ケイやガウェインの子孫と名乗った方が良かったのかもしれない 貴方は、そんな的外れなことを考えていた 貴方:【普通】取得 貴方の夕方の行動 自由安価 ↓3 ※貴方の行動が制限されます ※『セイバー』の行動を安価指定できます 851. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) 2012/10/16(火) 23 47 19.23 ID qesyix4Wo セイバー:ご飯作る 852. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/16(火) 23 47 50.94 ID oz9tdoie0 出前で食事 セイバーにリクエストがあれば聞いて 853. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/10/16(火) 23 49 14.96 ID uZB2ALhYo セイバーにリクエストを聞いてルームサービスを頼む 854. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/16(火) 23 54 15.43 ID ilK9qszfo 853 選択: 気付けば、日も暮れている 貴方はルームサービスを頼むことにする といっても、自分は食欲はそこまでない スープなどがあればいいが… 貴方はメニューを開ける ビジネスホテルのルームサービスだ 期待するようなものではない だが、貴方の懐的には多少はありがたいだろう 直後コンマ:『セイバー』判定 偶数で「私は牛ステーキセットを」 奇数で「マスターからの魔力供給は問題ありません」 855. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/10/16(火) 23 54 30.21 ID g7uGWhCjo つ 856. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/10/16(火) 23 58 09.21 ID OjPl8Mn80 リリィちゃんマジ最優だな 気は効くしマスター助けるし 食費も掛からない 857. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 00 04 17.97 ID k2vY55pdo 855 選択:奇数 貴方は『セイバー』にメニューを渡す ずっと看病をしてくれたのだ。小腹も空くだろう だが『セイバー』は柔らかく首を振る セイバー「マスターからの魔力供給は問題ありません」 霊体化出来ないからといっても『セイバー』はサーヴァントだ 魔力供給さえ保てれば、自身の竜炉で魔力を無尽蔵に回復できる 貴方としても、これほど運用に適したサーヴァントには助かるばかりだ そうして、運ばれたルームサービス 貴方は食事をする ―――少し困ったことがあるとすれば セイバー「好き嫌いはいけません!」 セイバー「食べ残しはいけません!」 セイバー「そんな小食では治る怪我も治りません!」 少し、甲斐甲斐しすぎるところだろうか ―――ブロッコリーは好きじゃないんだが… 貴方の夜の行動 自由安価 ↓3 ※貴方の行動が制限されます ※『セイバー』の行動を安価指定できます 858. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/10/17(水) 00 06 04.89 ID /bzJTIqb0 昔話を聞く 859. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/10/17(水) 00 06 50.18 ID Y8x5h7eyo 襲撃を警戒しつつセイバーと話す 860. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 00 07 39.30 ID GnuY2Cu30 互いに身の上話 862. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 00 21 24.52 ID k2vY55pdo 直後コンマ:身の上話判定 偶数で貴方の身の上話が主体 奇数で『セイバー』の身の上話が主体 863. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 00 21 39.49 ID gOd5F8TKo ほい 865. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 00 28 44.27 ID k2vY55pdo 860 選択: 貴方は夕食を済ませる頃には完全に日も暮れてた しかし、寝るにはまだ、早い 貴方と『セイバー』は、無言で時を過ごしていた だが、そんな無言の状態は貴方の一言で終わる 「『セイバー』にとって、『ランスロット』とはどんな人物でしたか?」 貴方の持つ伝承を聞いた後、気を落としていたように見える『セイバー』 貴方は、少し気になっていた 裏切りの騎士 『ランスロット』を一言で表せばこれに尽きる 円卓最強の騎士にして、アーサー王の唯一無二の友であり同胞 そんな男に裏切られた やはり、何世紀経った今でも、その怨恨は拭られないものであろう ―――だが『セイバー』の口から聞いたランスロットという人物は、貴方の知らない男であった 続く 本日はここで終了します お疲れ様でした。 ※『セイバー・リリィ』&『ランスロット』開放によりIFフラグが立ちました ※貴方の身の上は夢イベントにでもしようと思いましたが、安価選択すれば確定します 888. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 20 28 55.63 ID k2vY55pdo それは物語に綴られた話とは差異があった 召使だった少年が『選定の剣』を抜いた時、その物語は始まった 一〇の歳月をして不屈 一二の会戦を経て尚不敗 その勲は無双にして その誉は刻を越え不朽 そう…アーサー王物語 ただ、一つだけ史実と…物語とは違うこと それは、召使は少年では無く少女だったことと キング・アーサーではなく、 クイーン・アーサーであったことだ ―――私は、自分の身を偽ることなく王として駆け抜けました 貴方は、その言葉に少し驚きを感じた 事実は小説より奇なりというが あまりにも、奇天烈ではなかろうか 周りの人間は反対しなかったのですか―――? 貴方の質問に彼女は答えた ―――あの時代は、王を求めていました ―――故に、王の資格を満たした者であれば、誰でも良かったのでしょう どこか、苦笑交じりの声 ―――ですが、私がいつまでも少女のままだった所為か…臣下達は割と過保護でしたね 特に、サー・ガウェインとサー・ランスロットは凄かったらしい その他にもサー・ケイ、サー・ベディヴィエールの話も、物語でも味わえないような不思議なのに真実だと感じてしまう 貴方はその感覚を楽しんでいた ―――ランスロットの事ですが… 何故か、『セイバー』は貴方の顔を一瞬だけ見て伏せ目がちになった ―――彼は、何も悪くないのです。彼に落ち度はありませんでした。 それから、始まったのはランスロットとギネヴィアの物語 王の為に女の喜びを捨てたギネヴィア王妃を、誰よりも親身に接してくれたのがランスロットだ ギネヴィア王妃との逢引でさえ、『セイバー』にとってはその気持ちを肯定したかった 『王』としてではなく、『女王』として生きて来たからこそ――― セイバー「私は、ランスロットを裁いてしまった」 セイバー「そして、私は彼に罪を負わせてしまった」 セイバ-「ギネヴィアと共に去れと…ギネヴィアと幸せを得るまでは…この地を踏むことは許さんと」 それは、どの物語とも違う顛末 『女』王であったが故に感じた怒り ランスロットとギネヴィアを真に想っていたからこその裁き…そして彼に負わせた罪 ―――それからは史実の通りです その後円卓は分裂し、キャメロンにて息子であるモルドレッドの反乱を起こし、そしてブリテンの落日 セイバ-「きっと、貴方にしてみれば私は先祖の敵でしょう」 セイバー「今更、このような事を申すのは筋が違うと思いますが」 セイバー「どうか、彼を…貴方の先祖を誇ってほしい」 ―――彼は、誉ある円卓最高の騎士であり、私の親友でした 貴方の会話選択 1.彼も貴方を誇りに思っていた 2.彼は自分を悔やんでいた 3.自由安価 ↓4 889. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 20 29 29.82 ID GnuY2Cu30 880 このスレではいつものこと 890. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/10/17(水) 20 31 02.42 ID fX7e2nzwo 2 891. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 20 32 30.69 ID gOd5F8TKo 1 892. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 20 32 34.62 ID VgyBqAHDO 1 894. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 20 47 32.25 ID k2vY55pdo 892 選択:1 結果:フラグ解放条件1達成 ―――きっと、彼は私を恨んでいたでしょう そういって、自嘲する『セイバー』 貴方はその『セイバー』の憂いを帯びた表情を見たとき、どうしてだろうか… 胸が…焼けるように熱かった そして、とても…申し訳ないとそう想ってしまった だから、その焼ける思いを口にしてしまった ―――彼女のその想いはその後悔は違うんだと言えないとしても… 「それは…違います」 貴方から発せられたのは否定の言葉 それは貴方の口から『セイバー』に向けられた言葉 彼は、最後まで『セイバー』を…アーサー王を案じていた 例え、円卓が分裂しても、例え誰もが自分を肯定しても否定しても 顧みず、彼は王の元へと戻りたかっただろう 裁いてくれたのが貴女だったから 罪を与えたのが貴女だったから そして…贖罪を求めることが出来たのだから だから、彼は恨んでなどいない そして、彼も貴女のことを――― 「彼も、貴女を誇りに思っていました」 それは、根拠はないが、確信だと感じている セイバー「え…?」 「彼は貴女を誇りに思っています」 ―――だから、どうか…自分を責めないでください 貴方はそう言って目を閉じた 口下手な自分にとっては少し話し疲れたのもあるが 彼女の頬に伝わる涙を見ることはいけないと…勝手に思ったから それに…貴方は彼女に【真実】を告げることが出来なかった 彼は贖罪を求めたが結局見つけることは出来なかった そう…それは運命の歯車が狂ったのか、それともそれは避けようがない運命だった為か 彼が自分を許せなかった理由を… 彼の心が、ギネヴィアの心が追い込まれてしまった本当の理由を… ―――自分と言う存在が知っている ―――自分と言う存在がそれそのものが償えない【罪】なのだ 『セイバー』【友好】取得 二日目:終了 895. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 20 51 03.72 ID k2vY55pdo 1日目の情報が更新されました 貴方はその血に宿すものは異質にして異端故に魔法使いの家系に生まれ(家系判定 0) その才覚は魔法使いに及ばぬものの、神童と謳われた(才能判定 8) 才覚故か、特性の偏りは持たなかった(特性判定 失敗) 保有スキル: プライマリ:【伝承保菌者】 『宝具』を付与 家系値によって扱えるランクが異なる セカンダリ:【竜の因子】魔力不足による-補正を受けない。 竜に所縁のある英霊をサーヴァントにした場合、戦闘直前に判定 成功で補正:+1 【伝承保菌者】専用スキル:『騎士は徒手にて死せず』 戦闘補正:+1 手にする武器によって補正値変動 エクストラスキル:【破綻者】 破綻者専用スキル:【人の心が解らない】 感情による補正を全て無効 【友好】以上を取得出来ない(例外有り) 貴女の性格:中立・虚無 貴方の現状:戦闘により重傷 徐々に回復中(ダメージ補正:-1) 貴方のサーヴァント 白き百合騎士【感情:友好】 クラス:『セイバー』 対魔力(A):魔術師スキルの補正無効 魔術攻撃による攻撃判定:7以下まで無効 直感(A):奇襲攻撃の補正を完全無効 宝具:風王結界 攻撃判定:成功(大)以上で補正:+1追加 :??? ??? 貴方視点の感情一覧 『セイバー』:無関心 NPCマスター一覧 『アーチャー』:黄金の甲冑を身に纏った男 マスター:??? 『ライダー』 高潔で弱者をいたわる武人 マスター 葛木宗一郎 『バーサーカー』 巨人と見紛うほどの巨躯を持った、巌(いわお)のような男性 マスター ??? 『キャスター』 妖艶な半獣の女性 マスター:??? 『アサシン』 中華の武術家の服装の男性 マスター ??? 『???』 マスター:トワイス・H・ピースマン 脱落: 896. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 20 54 46.07 ID k2vY55pdo 各陣営行動判定 直後コンマ:『アーチャー』陣営 成功で活動開始 慢心:-3 ↓2『バーサーカー』陣営 活動判定 成功で活動開始 失敗でマスター生存判定 ↓3『アサシン』陣営 活動判定 成功で活動開始 897. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 20 55 05.48 ID gOd5F8TKo ほい 898. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 20 55 19.97 ID GnuY2Cu30 そい 899. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 20 55 48.37 ID gOd5F8TKo ほい 901. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 20 58 53.74 ID k2vY55pdo 897 判定:5 結果:活動開始 898 判定:7 結果:活動開始 899 判定:7 結果:活動開始 皆、アグレッシブやでぇ…! 直後コンマ:『キャスター』陣営 活動判定 成功で陣地作成完了 クリティカルで敵陣営行動捕捉 902. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 20 59 13.32 ID gOd5F8TKo ほい 904. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 21 00 52.70 ID k2vY55pdo 902 判定:2 結果:イチャイチャなう☆ 直後コンマ:敵マスター感情判定 成功で友好 失敗で嫌悪 クリティカルで… 1で… 905. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/17(水) 21 01 07.72 ID yUSzs+20o あ 906. ◆1Pf/z5mQfA 2012/10/17(水) 21 05 24.44 ID k2vY55pdo 905 判定:2 結果:嫌悪取得 2日目は如何でしたでしょうか? 1日中、コミュニケーションしても友好までしか上がらない貴方まじシャイな子 きっととても緊張しているのでしょうね 活動判定に『ライダー』が無かったのは初日で遭遇しているので活動済みになっています 3日目:いくかい? キャラメイク/一日目/二日目/三日目/四日目/五日目/六日目/七日目/八日目