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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ 3章 (57)シュペー卿の剣 メンヌヴィルという人間は、酷く簡単な価値観の中に生きている。 目を盲いた彼に感じられる世界とは、熱量にのみ左右される世界。 燃える熱、凍える熱、人の熱、石の熱、怒りの熱、喜びの熱。 全ては熱でできている。 そんな彼は、自身ら火のメイジを、他系統のメイジとは一線を画する存在だと考えている。 土のメイジは土と、水のメイジは水と、風のメイジは風と親しむ。 それは自然本来の摂理からすれば、至極当然の形だ。 生命とは元来そういうふうに作られている。 しかし、火だけは違う。 火と生命は本来相容れない。動物は本能的に火を恐怖するものだ。 だが、火のメイジは火を恐れたりはしない。火への恐怖心の克服は、火のメイジの基礎の基礎である。 相容れぬはずの火と親しむ、その一点でもって、火のメイジは他のメイジに比べてどこかが壊れている存在なのだと彼は考えている。 そして、そんな火のメイジの中でも更に一握り。 火に愛されている、そんな風にしか思えない人間がいるのだ。 熱にうかされ、火に魅せられ、精神を薪にして炎にくべてしまった人間がいるのだ。 たとえばこの少女のように、 たとえばあの背中のように、 ――たとえばこの自分のように。 キュルケが驚愕に目を見開く。 これ以上ない全力。間違いなく敵を葬るはずだった、必殺の一撃。 たが、メンヌヴィルはその絶攻を受けてなお、巌のように両の足で立っていた。 「かっ、かっ、はっ」 そしてメンヌヴィルの口から漏れる、呻きのようなかすれた笑い声。 男は倒れるどころか、途切れ途切れだが笑声を出す余裕すら見せたのである。 「心地よい温度だ、体が芯から温まる……その温度操作、今の炎。なるほど、軽くスクウェアクラスには達していると見える」 確かに魔法は直撃した。手応えもあった。だと言うのに、なぜこの男は笑っていられるのか。 疑問の答えを悠長に探している暇はない。 キュルケは接敵し続けている愚に気が付いて、一足飛びに距離をとった。 一方メンヌヴィルはというと、まだ低い笑い声を漏らし続けていた。 「貴様の魔法を扱う才は、この俺よりもよほど上のようだ。ならばここで一つ、戦いはクラスでは計れぬということを教えてやらねばならないな」 それを聞いた次の瞬間、キュルケの目にはメンヌヴィルの姿が掻き消えたように見えた。 「こっちだ」 不意に背後から響いた言葉。驚く余裕も与えられず、続けて彼女を襲ったのは重たい衝撃。 何事が起こったのかを理解する前に、キュルケは体をくの字に曲げて宙を舞っていた。 そうして軽く十メイル近くも吹き飛ばされて、彼女はその身を床に叩き付けた。 なにが起こったのかの理解が追いつかない。ただ痛みだけがいやに鮮烈だ。 「がっ、は、あ……っ!?」 腕に走った激痛と地面に全身を打った衝撃で、キュルケは思わず肺の中の空気を絞り出した。 体中を痛みが支配する中で、男の声だけがはっきりと意味をなした。 「ほう、あの一瞬で腕を折り曲げてガードしたのか。なるほど、悪くない反射神経だ」 憎い男の声を聞いて、キュルケは必死にメンヌヴィルを睨み付ける。 そして己の心に灯った火が、未だ燃えているのを確認する。 〝たかが一撃、まだやれる……〟 心の中でそれだけを繰り返し、彼女は無事なほうの腕を使って、笑う膝を支えながら立ち上がった。 「よし、それでいい。では続きといこう、簡単に死んでくれるなよ?」 メンヌヴィルはキュルケから数メイルは離れた距離で鉄杖を振りかぶった。 「……そらっ!」 裂帛の気合いと共に、鉄の塊であるそれを思い切り地面へと叩き付ける。 そしてメイスが地面と衝突するインパクトの瞬間に叫ばれる、火を意味するルーン。 「カーノ!」 轟音。 直後襲いかかってきたものを見て、キュルケは知らず、体中の毛が逆立つのを感じた。 恐るべき速度で向かってきたのは、赤熱したあまたの石片。 無論、それ自体がメンヌヴィルの魔法で生み出されたものではない。 床を砕いてできた無数つぶてを、魔法によって高熱の散弾化にしたのである。 「!?」 キュルケは咄嗟に攻撃のために唱えておいた呪文を、迎撃に切り替えて解き放つ。 ルーンの導きに応えてキュルケの前にごうと立ち上がったのは炎の竜巻。生み出されたそれが、紅蓮の盾となって飛び来た赤弾を悉く遮る。 まさに炎の壁。並の攻撃ならまず通すことのない強固な防護だ。 故に、キュルケは炎の嵐をそよ風を抜けるようにくぐり抜けて飛び込んできた男の姿に、反応することができなかった。 炎の壁を踏み越えて飛び込んできたメンヌヴィルは、キュルケの思考を置き去りにしたまま、見事なアッパーカットを彼女の顎に叩き込んだ。 再び、キュルケの体が宙を舞う。 「かっ……っ!?」 「なかなかいい腕だ。状況判断も悪くない。ただ、惜しむらくは炎の使い手との戦闘経験が、圧倒的に不足していたと言うことだな」 メンヌヴィルは軽く四メイルは吹き飛ばされたキュルケを見下ろしてそう言った。 キュルケは二度目のダウンから立ち上がろうとするが、脳震盪の起こした体は、手足に全く力を伝えてくれない。 それを見たメンヌヴィルは、仕切り直しを求めるように、キュルケに背をむけて距離を離していった。 「同系統のメイジ……特に火のメイジが火のメイジと戦う際には、ちょっとしたコツがいる」 地に伏したキュルケは、メンヌヴィルを殺意の籠もった視線で見つめていた。 視界に入るその姿は殆ど無傷。あれだけの炎に突っ込んだというのに軽い火傷一つ確認できない。 「特に炎の効きが悪い場合は、こうして物理的な攻撃を織り交ぜたほうが効率がよい」 キュルケは黙って男の言葉を聞いている。 「また、クラスが格上の者と相対する場合、距離を離した戦いよりも肉薄した接近戦が効果的だ」 そうして回復を待ちつつ、勝利のための糸口を必死に探す。 幸いにして、ハンデのつもりなのかメンヌヴィルが背を向けて離れてくれていったおかげで、彼我の距離はかなり開いていた。 これなら先ほどのように、一足飛びに懐に潜られることもない。 始めに接近戦に持ち込んだのは自分だというのは、実に皮肉的であったが。 「もちろん、お行儀のいい貴族の戦い方ではないがな……。さて、そろそろ十分だろう。休憩は終わりだ」 その言葉を聞くと同時、キュルケはかろうじて回復した手足を使い、体に鞭打ってその場から跳ね起きた。 そうやって立ち上がりながら一声叫ぶ。 「ファイアー・ボール!」 今日が始まってから、何度唱えたかもわからぬ魔法を放つ。 まずはあの異常な早さの正体を知らねば勝ち目はない。 それを見定めるための牽制攻撃である。 それを知ってか知らずか、 「無駄だ」 メンヌヴィルの姿が、またも忽然とかき消えた。 キュルケはわかっていながら目で追えないもどかしさに、きつく歯を噛みしめる。 だが、視覚ではない感覚的なもので、キュルケはメンヌヴィルが消えた場所に、輝く残滓を捕らえていた。 微かに残るそれは熱の残り香、炎の軌跡。 その意味するところはなにか。 いくつかの可能性がキュルケの頭を過ぎるが、直感的にその中の一つに当たりをつける。そしてその可能性に基づいて彼女は上を見上げた。 そして、見上げた先にはメイスを振りかぶって落ちてくる巨漢の姿。 キュルケが即座に転がってそこを離れる。 直後、派手に火の粉を爆ぜ散らしながら、肉弾がその場所を襲った。 「ちょこまかとよく逃げる……」 ゆっくりと立ち上がった男がくつくつと嗤う。 だが、体をふらふらとさせながら、キュルケはそんなことなど気にも留めない。 彼女が注視しているのはただ一点。 その足元。 無骨なブーツ。 「まさか、あなた……」 「……頭のめぐりも悪くない。たったこれだけの時間で大道芸のカラクリに気付いてくれるとは嬉しい限りだ」 また男が笑う。何処までも深い、暗く淀んだ笑いを漏らす。 「ならば今更出し惜しむ必要もない」 そう言ってメンヌヴィルが右足を一歩踏み出す。 その途端、 そのブーツの足元が爆ぜた。 足裏から噴出した炎。その直後に起こった爆発を、踏み蹴るようにして男は跳ぶ。 勢いに乗って、砲弾のように飛び込んでくる。 「くっ!」 恐るべき速さで迫る敵に対して、反射的な防御としてキュルケは杖を振って前方に向けて炎弾を撃つ。 咄嗟に放たれた炎の数は三、それぞれがメンヌヴィルの足元、胴体、頭を狙って飛ぶ。 「甘い!」 しかしそれと接触する直前、男は二歩目を地面に叩き付けるように踏み込んだ。 男の足裏、またしても爆発する白い炎。 一足目で一直線に飛んできたメンヌヴィル。それがなんと二足目で、上へとその指向を上へと変えた。 白光を迸らせながら、軽やかに宙へと駆け上がる巨体。炎弾はその変則的過ぎる動きを追随できずに、虚しく空で爆ぜて散る。 無論、それで終わるはずがない。 「はあああああああああっ!」 叫びと共に三歩目。なんとメンヌヴィルは、空中にあって三歩目を踏み込んだのである。 高さ五メイル。身を捻りながらオーバーヘッド気味に回転した男は、その高さで後方斜め上に白い炎を出現させた。 そしてその爆発を蹴る。 三度の進路変更。 今度こそは敵を仕留める一撃を見舞うためのもの。 引き絞った弓から放たれる、鋭き矢の如き蹴撃。それがキュルケを狙う。 「パイルパイルパイルパイル!」 「ゴブゴブゴブゴブゴブゴブゴブゴブ!」 「キョーッキョキョキョキョキョッ! ファナティーック!」 「俺のパイを食ったやつはどこだー!」 土煙を上げて、猛然と快走する赤い肌をした亜人達――ゴブリンの一団。 気のせいか先ほどまでよりも一回りほども規模が大きくなっている気がする集団の先、百メイルの距離を走る少年の姿があった。 「うわあああああああああああああああああああああっ!!」 逃げる、逃げる、逃げる。 おとぎ話の笛吹きよろしく、ゴブリン軍団を引き連れたギーシュ・ド・グラモンは自前の足で走って逃げる。 二本の腕を必死に振って、二本の足をせかせか動かし、それはもう力の限り全力で走る。 「ヒャッハー!」 と、追いかける集団からぽーんと一つ飛び出した影。 それはソリだ、 ゴブリンを乗せたソリが、ギーシュを追いかけて空を飛んだのだ。 ソリの踏み台にされたゴブリンが後続のゴブリン集団に踏みつぶされたのも気に留めず、宙を舞うソリ乗りゴブリン。 その一匹はサーファーのように空中で華麗にポーズをキメて、真っ逆さまにギーシュへ向かって落ちていく。 「うわわわわわわっ!」 と、たまたま後ろを振り返って気付いたギーシュが、慌てて体を横にずらす。 「ムギャア!」 目標を失って地面に激突したゴブリンは、ソリごと地面に衝突し、あまつさえそのまま地面に突き刺ささった。 そしてその少しあと、地面に刺さったままのソリとゴブリンは、やっぱり後続のゴブリン集団に巻き込まれて踏みつぶされた。 『ゴブ』 『ゴブ』『ゴブ』 『ゴブ』『ゴブ』『ゴブ』…… 振り返ったときにちらりと見えたゴブリンの集団は、先ほどよりも更に数が増しているように思えた。 ここまでくればギーシュにもわかる。彼らは時が経つにつれどんどんと増えているのだ。 「ひいいいいいいいいいいいい!!」 激走。産まれてこの方こんなに真剣に走ったことはないという勢いでギーシュは駆ける。 だが、次の瞬間、 「ひでぶっ!」 ギーシュは窪地に足を取られ、豪快に顔面から地面に激突した。 激突して、それでも勢い止まらず、そのまま体が一回転。 「はぎっ! うぶぉらっ! ぎゃああああああ!!」 ぐるんぐるんと更に一回りと半分も縦回転をして、地面に二度目のキスをしたギーシュは、そのままずざざと顔で地面を滑り、 『なんで僕がこんな目に……』 そんなことを思いながら気を失った。 ◇◇◇ ふと気付いたら真っ白な世界にいた。 なんだかふわふわして暖かい、ぬくぬく気持ちいい世界にギーシュはいた。 〝こ、ここは……〟 そんな風に呟いてみても答えは出ない。こんな光景を見るのは初めてだった。 「何処だっていいじゃない」 そんな声が聞こえて、ギーシュはぎょっとして声がしたほうを見た。 目をやったそちらも漂白の世界。ただ、そこに人の姿が在ることだけが先ほどまでと違う。 純白の世界に立っていたのは、裸に白い薄布を巻いてイケナイ部分だけ申し訳程度に隠した、世にも美しい女性だった。 そう、彼女は美しい。 とても美しくて……なんだかとっても見覚えがあった。 〝モ、モンモランシー?〟 美の化身の如き彼女の姿は、どこをどう見ても幼なじみのモンモランシーであった。 「いいえ、私は苺妖精のイチゴちゃんよ」 〝い、イチゴちゃん?〟 「ええ。私はあなたをイチゴの園に導くためにここに来たの」 〝……イチゴの、園?〟 頭がどうにかなりそうだった。 さっきまで戦場にいたというのに、どうして自分はこんなところに立っているのか。 そもそもここはどこだろうか? もしかしてここは天ご―― あまり考えたくない方向に思考が振れかける。 だが、そんな考えは瞬時に霧散霧消。泡となって吹っ飛んでいった。 「イチゴは嫌い?」 そう言って前屈みになった彼女の胸元が、ちらりと見えたからだ。 自然、ギーシュの視線と思考はモンモランシーそっくりの妖精さんのボディに引き寄せられていた。 彼女は同級生のキュルケを含めた一部の女性達のような、肉感的な体つきをしていない。むしろスレンダーと称して誤りはない。だが、それでも彼女の体はギーシュの目を捕らえて放さない。 だって彼女はあまりに薄着で、とても無防備で、ともすればいろいろ見えてしまいそうなのだ。 そんな状況で刮目せずにいられようか、いや、できない。 むしろ目を逸らすのは失礼にあたるに違いない。 そんな想いを抱いて、手に汗握ってもんもんとしているギーシュに、イチゴの妖精は妖しく微笑みかけた。 「私はね、あなたにイチゴを食べてもらいに来たの」 〝い、イチゴとな〟 「そう、イチゴをね。あなたは欲しくない? イ・チ・ゴ」 塗れた唇が動いて、彼女が悩ましげに体をくねらせると、体に巻いた薄布がわずかにずれた。 薄布一枚隔てた彼女の胸元に、一瞬肌とは違う色が透けて見える。 〝い、いいいいい、イチゴちゃん!?〟 「わたしのイチゴ、食べてみない?」 〝た、たべ、たべっ!?〟 イチゴちゃんが肩を震わせた。すると、肩に掛かっていた薄布がずり落ちる。 その姿がどんどん扇情的になる。 〝た、たたたた、食べたいっ!〟 ギーシュは煩悩とかいろいろなものの連合軍に白旗を振って、堪らず叫んだ。 「うふふっ、だったら私を捕まえて頂戴」 悪戯っぽく笑いかけたイチゴちゃんは、そう言って軽い足取りで白一面の世界を駆け出した。 〝に、逃がさないぞぅ!〟 続いてギーシュも彼女を追いかけ始める。 「捕まえてごーらーんーなーさーいー♪」 〝まーてーよー♪〟 あはは、うふふと笑い声。 それは幸せな ……とても幸せな夢であった。 ◇◇◇ 慣性に引きずられて数秒。 顔面で地を耕すように滑った末、崩れ落ちて動かなくなったギーシュの周りを取り囲む人影があった。 「見たか! 俺たちゴブリン穴掘り部隊!」 「掘って埋めるだけの作業は誰にも負けねぇ、ゴブリン穴掘り部隊!」 「む、無敵のゴブリン穴掘り部隊なんだなっ!」 取り囲んだ三体のゴブリン達が歓声を上げる。 ギーシュが足を取られた窪地、それは彼らが掘った落とし穴だったのである。 「よしっ、それじゃあ早速ゴブリンロードの貢ぎ物にするぞ!」 「きっと新しいスコップ貰えちまうぜぇ!」 「う、嬉しいんだな、だな」 と、ゴブリン達がギーシュを縛るために引きずり起こそうとしたときだった。 それまでぴくりとも動かなかったギーシュが、バネ仕掛けの人形のように飛び起きたのである。 そしてゴブリンに目もくれず、彼は天に届けと声を張り上げた。 「バナナくんイチゴちゃんとミルクまぜまぜしたいにゃん!」 戦場の中心で彼は叫んだ。 おお、人よ見よこの屹立を。 この瞬間、確かにギーシュ・ド・グラモンは漢となった。 跳ね起き、意識を覚醒させた彼が目にしたもの。 青い空、白い雲、目の前の亜人達。 耳に届くのは周囲の喧噪とゴブリン達のわめき声。 それで嫌でも全てが察せられる。 先ほどのアレは、ただの夢。 泡沫の幻。 だが、大切なものに気付かされる一時であった。 「嗚呼モンモランシー、僕は大切な物を見失うところだったよ」 天を仰いだまま目をつぶり、彼はそんなことを呟いた。 その頬を涙が一滴零れ落ちる。 何故こんな目に? 彼女のために自分が選んだからに決まっている。 他の誰でもない、自分で望んだからここに立っているのだ。 そのことに後悔があるのか? いや、有るはずがない。 だったら形ばかりの臆病者はもう終わりにしよう。 背筋を伸ばせ、前を向け、歯を食いしばれ。 今こそギーシュ・ド・グラモンの男を示すときだ。 彼は掴んだ。 人はなんのために戦うのかを。 男は誰のために戦うのかを。 「モンモランシー……」 ――瞳の裏に焼き付いいているのは彼女の姿。 全ては愛のために。 愛を勝ち取るため。愛を守るため。 その単純な理由のために男は戦うのだ。 そう、全ては愛ゆえに! 「……モンモランシー!」 ギーシュが視線を下に降ろすと、そこには先ほどまで抱えて走っていた大剣が転がっている。 彼はそれをゆっくりとした動作で拾い上げた。 引き離していた敵は、既に衝突が避けられぬ距離に迫っている。 しかし、それでももう彼に立ち向かうことへの迷いはない。 戦って、戦って、戦い抜いて彼女の元に帰る。 誰のためでもない。自分と彼女の物語のために、少年は剣を取る。 「僕は……戦う!」 決意と共に、ギーシュは鞘から剣を抜き放つ。 その瞬間、周囲のマナが爆発する。 そして少年の左手の甲から、目映い光が発せられた。 「来た! 上から来た! ええと、火の玉が一つ二つ三つ……たくさん!」 「た、たくさんじゃわからないのねっ!」 「いいから! 早く避けて!」 「りょ、了解!」 急速旋回。失速ギリギリまで減速してのターン。 そしてヒュゥッと音を立てて、先ほどまでの進路に降り注ぐ無数の火の玉。 シルフィードは何度目かになる危機を今度もなんとかやり過ごす。 モンモランシーはその背で息を吐いて、胸をなで下した。 空中の激突は続いていた。一方的な展開で。 それは勿論、モンモランシー達の圧倒的な不利という形である。 「カカッ。カカカッ」 竜はさもおもしろそうに笑う。 本来ならば彼はこのような嬲り殺しに近い展開に、愉悦を覚えたりはしない。 だが、この戦いは彼にとって、とても意義あるものであった。 彼にしてみれば、この戦いは試薬を入れた試験管を振っているのと一緒。結果がわからぬ実験であるのだ。 爪先を弾いて炎弾を飛ばす、氷弾を弾く、雷撃を走らせる。 その一つ一つが、未知なる結果を導くための行程。 元来彼が受けていた指示は、速やかに彼女達を抹殺して〝虚無の巫女〟の眼前にその屍を放り出してやることだった。 だが、竜はそれを無視する形で、こうして彼女達と戦っている。 それは好奇心による行動であった。 彼は見てみたいのだ。 己の手によって、生命が純化するその瞬間を。 命の限界。その果ての果て、選ばれた一握りのものだけがたどり着くことが許される極限。 そこに至る究極の一瞬。 彼はその〝転化〟の瞬間を、無邪気なまでの好奇心でもって、待ち望んでいるのだ。 「タバサ! 準備はいい!?」 風音にかき消されないようにするために、怒鳴りつけるようになってしまったモンモランシーの問いかけに、タバサは小さくコクンと頷いてみせる。 彼女のその動作は、反抗の機会が巡ってきたことを示していた。 彼女達はこれまで炎の雨を三度、氷の雨を二度、石の雨・雷撃・猛吹雪をそれぞれ一度ずつ、全てギリギリで回避している。 一撃でも貰えば非力な彼女達などひとたまりもないが、それでも彼女達は未だ健在である。 そこに、勝機があった。 正直、ドラゴンの攻撃は狙いが甘い。 派手さや威力に対して、精度や効果に関して非常にムラがある。 そこからはまるで本気が感じられない。 むしろ一連の攻撃からは、子供が遊んでいるかのような稚気すら感じられる。 ならばこそ、その油断が必殺を牙を隠した彼女達の勝機であった。 「それじゃ、手はず通りにいくわよ!」 「モンモンこそヘマしたら、丸かじりなんだからね!」 「……ごー」 モンモランシー、シルフィード、タバサ。 二人と一匹はそれぞれに気合いを込めて、命を預け合う仲間達に声をかけた。 なにせ、お互いの連携こそがこの反撃作戦の要なのである。 「ほう、仕掛けてくるか」 先ほどから機会を伺っていた様子の相手が動いたことで、竜がますます機嫌良く笑った。 その度、口元の牙の隙間からはチロチロと火の粉が舞い散る。 彼の視線の先には、氷の弾幕を張りながら上昇していく仔竜の姿。 太陽を背に急降下攻撃を仕掛けてくるつもりであることが容易に知れる。 だが、竜はあえてそれを許した。 「被験体No.11923号に対する、『絶望による心的影響による効果実験』を継続する」 彼は最初から、それがどのような形であれ、タバサ達の策略に乗るつもりであったのだ。そして、その上で叩きつぶすつもりなのである。 それは慢心と言えば慢心だ。だが、人が蟻を踏みつぶすという行為に、慢心があるだろうか? あまりに存在としての格が違う場合、そこには慢心すらも存在しないのだ。 タバサが渾身の力を込めて作り出した氷の弾雨が、竜の吐き出した赤い炎に相殺されて消える。 けれども、タバサ達に動揺はない。彼女達とて馬鹿ではない。これまでの短い交戦で、その程度の力の差が有ることは十分承知しているのだ。 間髪入れずに、第二第三の魔法が放たれる。 「無駄な足掻きを!」 最初に襲ったのは、周囲の大気を急激に撹拌させる恐るべき乱気流。 「ふんっ」 普通の竜ならば飛行不能に陥るその中を、竜は涼しい顔をして飛び続ける。風の流れを読むことなど。彼の知識と経験を持ってすれば造作もない。 続いて発生したのは氷刃を巻き込んだ巨大な竜巻。 竜は一瞬の思考を巡らせて、それから赤いマナを集めて翼に集中させた。そうして炎を纏わせた翼を羽ばたき、火炎迸る風を発生させて氷刃を次々打ち落とす。 続けざまに魔法が防がれるが、それでもタバサの攻撃は続く。 四度目。今度は頭上の死角から、真空の刃がいくつも奔る。 すると竜はそれを予期していたように首をそちらに向けると、遠く何リーグ先までも聞こえるような音量の咆吼を上げた。 そして豪吼によって生じた空気の振動とぶつかって、真空の刃は消滅してしまう。 「ふん、この程度で終わりか?」 最初の氷撃から始まった一連の波状攻撃を難なく防ぎ、期待と失望が入り交じった声で竜は言った。 彼が見ている方角には、目映い昼天の太陽が光を放っている。 流石の竜といえども、太陽光を相手にしては目を眇めるほかにない。 タバサ達がとった一連の行動から彼が読み取ったのは、彼女達が距離を縮めようとしていることだった。 逃げるつもりならば適度に距離を離して戦えばいい。だが、彼女達は今や陽光を背に急降下を仕掛けてようとしている。 これは明らかに接近戦、あるいは肉弾戦を仕掛けてくるつもりの動きである。 さしもの彼にも、タバサ達がどのような切り札を隠しているのかまではわからない。 けれど彼女達の行動から、近寄って放つその切り札に全てを賭けているであろうことは伺えた。 ならばこそ、竜はそれをおもしろいと思う。 先ほどまでの攻撃を自分が凌いだように、自分の攻撃を彼らは凌ぐつもりでいるのだ。 実に、不遜である。 不遜ではあるが、竜はそれを許すつもりでいた。 困難を突破した末に放つ切り札。それが破られたときの絶望はどれほどのものであろうか。 全身全霊を込めて放った切り札を、ジョーカーによって力任せにねじ伏せられた絶望は、如何ほどであろうか。 その絶望がもたらすかも知れない〝転化〟、彼はそれを心待ちにしているのだ。 かつて『始祖』と呼ばれるプレインズウォーカーがこの世界に施した魔法。彼が行った血統実験、竜はその結実を彼は見てみたいのだ。 『始祖』の直系に連なるもの、色濃く『始祖』の血を受け継いだ者の中に時折発現するという、虚無の系統。 だが虚無の系統の発現は副次的効果に過ぎないと、竜は確信している。副次効果として、プレーンとの高い親和を持つに過ぎない。 その本来の形は、偶然でしか世界に生まれ落ちることのない、久遠の闇と繋がる火花を持つ者を培養するという、数千年をかけた『始祖』の恐るべき血統実験の結果だ。 その成果を見届けた時に浴するであろう、探求の悦楽こそが、この竜の真の目的なのである。 そして、竜にとって幸いなことに、今やワルドはプレインズウォーカーが孕む狂気のために、一人の少女の虜となっている。 かのプレインズウォーカーの目には、既に他の王家に連なる者のことなど目に入っていまい。 それはつまり、彼女の近くにいて、強く彼女の影響を受けた王族の娘、「シャルロット・エレーヌ・オルレアン」に注意が向けられていないということを意味している。 竜にとってタバサは、最初に出会ったそのときから格好の実験対象であったのだ。 加えて、二人のプレインズウォーカーの気配がこの世界から消失していることも好都合だった。 なにもかもが都合のいいほうに転がっている。 今こそは、内に秘めたる欲望を解放する絶好の機会であった。 白炎を纏わせた魔人の蹴撃。 結局それがキュルケに届くことはなかった。 旋風を纏い、突如割り込んできた何者かが、手にした棒状のものでメンヌヴィルの跳び蹴りを受け止めたのである。 そして受け止めた杖を斜めにずらし、何者かはメンヌヴィルの力を受け流す。 すると、狙いがそれたメンヌヴィルが体勢を崩した。 だが、メンヌヴィルは空中でバランスを崩されたというのに、その驚異的な身体能力を使って体を捻り、豪腕を振るって反撃に移ろうとする。 けれどそれよりも速く、男が棒に伝わった力をてこの原理で利用し、コマのようにその場でくるりと一回転。そして遠心力まで加えた杖の一撃が、メンヌヴィルの攻撃が届くよりコンマ先に、その横頭部をしたたかに狙い打った。 流石のメンヌヴィルも、空中で追撃を受けて躱せない。頭部に受けた一撃によって勢いよく弾き飛ばされた。 けれど吹き飛ばされて、それでつけ入る隙を与えたりはしない。 彼は着地と同時に転がって、勢いそのまま跳ねるようにして飛び起きた。 そうやって立ち上がった、その顔に浮かぶは、 「おお、ついに……ついに……俺の前に立ちはだかるか」 歓喜。 一方、助けられたキュルケは呆然として、突如現れた者の姿を凝視した。 現れたのはマントを羽織った長身の男。 杖を手にした彼の顔には見覚えがある。 いや、少し前までは日常的に目にしていた。 彼の名は―― 「ミスタ・コルベール……」 そうして炎の熱に炙られる戦場に、教師コルベールはただ静かに立っていた。 英雄は、いつだって遅れてやってくる。 ―――ギーシュ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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前ページ次ページベール=ゼファーの休日 カウント6 昨日より今日、今日より明日 前からにやにや笑いと共に放たれる直射型の光の矢。 体の痛みを無視して、右前へと跳んでかわし――― 侵魔が、左の人差し指を引く。 ―――かわそうとした時、月匣にあらかじめプログラムされていたシステムが発動。着地予定地点から鉱石じみた槍が突き出される。 悪い予感を感じ取ると同時に空中で何とか身をひねり魔剣を下に向けて振りぬく。がぎんっ、と硬質な音が響き、串刺しを狙う槍から何とか逃れ――― 侵魔が、くるりと人差し指を回した。 ―――逃れて、完全に空中で体勢を崩した柊を、同じく鉱石に似た、彼の横合いからいきなり出現した人ほどの太さはある柱が、ビリヤードのキューのように打ち抜く。 なんとか魔剣を盾に体をかばうが、圧倒的な質量による衝撃までは緩和できない。空中では踏ん張ることもできず、成す術もなく吹き飛ばされる。そこへ。 侵魔が、再び光の矢を解き放った。 あまりの衝撃に手放しかけた意識を意思で強引にねじ伏せ、魔剣を振るう。 頭に直撃する軌道の光の矢を、先端が当たるのを感じてそのまま首を振って受け流す。 心臓を撃つ光の矢を、魔剣を振るって弾き散らす。 わき腹を貫く光の矢の軌道を、魔剣でそらす。 しかし、それが限界だ。 急に変質した体の感覚と、元のままの頭の感覚がかみ合わない。空中で体勢は最悪。そんな状態で雨のごとき掃射から逃れきるのは無理に過ぎた。 光の矢が、肩を、腕を、足を貫く。一つ一つの傷は小さく、焼きぬかれているため血も出ないが、確実に動きが鈍くなっていく。 「ぐ、ぅ……っ!」 光の矢に撃たれたことでさらに体勢を崩し、背中から地面に叩きつけられた。 すぐさま立ち上がろうとして、意識がぐらりと揺らぐ。 さすがに首の動きだけで光の矢を受け流すのは無理があったのか、軽い脳震盪を起こしたようだ。 起き上がることはできても立ち上がるのは難しく、魔剣を突き立て膝をつきながら、それでも敵の動向だけは見逃さぬよう目線だけは侵魔を見据える。 そんな様子を見て、侵魔は嘲った。 「くくく。なかなか不様な姿じゃないか、柊蓮司」 「……ガキ相手じゃなきゃ、強がれもしねぇ弱小エミュレーターが。フルネームで、呼ぶなっつーの」 「なんとでも言え。お前がここで死ぬことに代わりはない。それどころか、今の貴様は私に一太刀すら浴びせることは叶わん」 「たいした自信じゃねぇか、勝負に絶対はねぇんだぜ?」 「勝負になるのならな。 しかし、これは確定した未来だ。貴様は私に触れることすらできずに負ける。 これはすでに確定していることだ―――これまでの貴様の全てを知っている私には、貴様のあがきなど無駄にしかならん」 絶対の優位を確保した侵魔は、笑みをたたえたままそう告げた。 柊は体がいまだうまく動かないことを確認してから、時間稼ぎの意味も含め、侵魔にたずねる。 「確定した未来? 笑わせんな。『日記』でも持ってるってのかよ。 あと―――てめぇが俺の何を知ってるって?」 眼光は鋭く。 まさに射抜くという表現に相応しく、貫くような瞳に睨まれた侵魔は無意識に一歩退る。 それに気づいた瞬間、彼は顔を紅潮させ、ふん、と余裕を見せ付けるように鼻をならし胸の内の動揺を隠すようにしゃべりだす。 「ク―――強がるのもそのあたりにしておけ。 貴様は『逆巻凌』の影響下にある。貴様の肉体がこれまで体験してきた経験は私の手の中にある。 次の行動など手に取るようにわかるのだ、動きの全てが読まれている状況では何をしても無駄と知れ」 「俺の経験……? なんだそりゃ。別に今までのことなんて忘れてねぇぞ」 その言葉に、侵魔は笑みを深くする。 「は。なんだ、噂は本当のようだな。柊蓮司、貴様は本当に頭が―――」 「悪いって言うんだろうがっ!? お前みたいのまで知ってるってどんだけその噂広まってんだっ!? 裏界中か!?」 「当たり前だろう。今更何を言っている」 「今更ってなんだよ今更ってっ!?」 閑話休題。 侵魔は笑みを深めたまま答える。 「冥途の土産に一つ講釈をしてやろう。人間というのは、我々とは異なり肉の器(外)と精神(中)、魂(本質)を持つ。 我々は肉の器を持たない。もともとが精神体だからな、そんなわずらわしいものを持とうとすら思わん。 ともあれ。 通常は、外と中と本質は一つとなって人間を形成し、時を重ねていく。貴様らの言葉で言うところの経験や成長といったところか。 『逆巻凌』は外・中・魂のうちの肉体の経験のみを奪い、戦闘力を奪う魔道具だ」 「あ? お前が言うには体と心と魂ってのは一つなんだろ、その中で肉体の経験だけなんて奪えるのかよ」 「それを成すのが魔導具の魔導具たる所以だ。貴様の体から経験、すなわち成長そのものを奪い私の手にする。それが『逆巻凌』の力だ。 我々は肉の器を持たないゆえに実感としては理解できんがな。 人間は『体が覚える』という表現を使うらしいではないか。経験からくる、肉体がとる反射行動。 考えるでなく感覚が捉えるでもない完全なる反射行動。それは肉体に蓄積された経験からくるものだろう」 つまり、と侵魔は答えを口にした。 「これまで貴様が経験した戦闘において成された肉体の行動経験、それは全て私の手の中にある。 それさえあれば、貴様がどのように動くかを逆算し、あらかじめ月匣に仕掛けを作っておくことなどたやすい。 体が小さくなったのは、いわば副作用にすぎん。お前が頭で考えた行動も、お前の体の経験あってこそだ。 これまでの経験全ての記録があるのなら、貴様が次にどのような行動をとるかなど手にとるようにわかる。わかったか? ―――貴様に勝ち目など、万に一つもないということを」 要はこれまでの体の受けた経験を奪うことで、そのデータを解析してどういう時にどういう行動を取るかを知られている、ということだ。 相手が次に何をしてくるかがわかるのなら、いかに戦う力に差があろうともそれに対して対処ができる。 まして、この月匣のルーラーは侵魔である。先にトラップや仕掛けを作っておくのは造作もない。 そんな話を聞きながら、ようやくある程度体が動くようになったのを確認し、柊は立ち上がって大きく深く息をつく。 「……なるほどな、タネはわかった。土産ついでにもう一つ聞くぞ、そのなんとかって魔導具は。お前を斬れば、効果なくなるのか?」 「今の保有者は私だからな。 逆に言えばそれ以外に解除法はない、なんとかここから逃げ出して、守護者にでも連絡をつける気かも知れんが……そんなことを許すとでも思うか?」 「は。バカ言うな、あいつに今の姿さらすくらいなら異世界すっ飛ばされて魔王ぶった斬るほうが気が楽だぜ。 それに。 ―――勝ち目が0ってわけでもないしな」 大きく腰を落とし。大きく右足を後ろに退り。両手で魔剣を握って体よりも後方下段に構え。ただ強く侵魔を射抜く瞳とともに。 ―――まるで会の時を待つ矢のように。 言葉と立ち居振る舞いからは、相手は傷だらけの子供には見えはしない。 侵魔は魂を鷲づかみにされる悪寒を味わい、しかしその悪寒を彼は首を振ってそれをなんとか引き剥がす。 声を張り上げることで、自身を鼓舞し、魔法を放つ。 「なにを馬鹿なことをっ。貴様の動きの全ては私の手の中だっ、勝ち目など与えんっ! 死ね、<マテリアルシュート>っ!」 同時。 侵魔の前に生まれるのはダーツほどのサイズの鉱石の矢。数は15。それらが柊目掛けて一気に飛来、襲いかかる。 15本の矢は結構な間隔をあけて放たれた。群れを方向を変えることでかわすよりも、自身に当たるものだけを弾き前に進むと予測は答えを出した。 魔剣を跳ね上げた瞬間に地面を隆起、槍と成して貫く仕掛けの起動準備を整える。 しかし。 柊は、魔剣で矢を弾くことはしなかった。ただまっすぐに進んだだけ。 体を貫く鉱石の矢。 動きに支障がでる箇所だけ斜線からずらす。 矢の先端がもぐりこみ、発射の勢いのまま体内を抉り、同じように体の中をくぐりぬけて貫ききる。 ぱたぽたと血が雫となってこぼれて跡を刻む。痛みを飲み込みながら、前へ。 ごくり、と侵魔の喉が鳴る。 悪寒。そうとしか思えぬものが背筋を這い上がる。 歯を食いしばり、まだ無駄になったわけではない仕掛けを発動する。 その仕掛けの一歩前で、彼は体一つ分横へ飛び、槍は空を貫いた。 まるで罠が見えているかのようなその動きに、悪寒が再燃する。 柊は別に罠が見えているわけではない。 これまで放たれてきた仕掛けが設置型のものであると侵魔自身が言ったこと、そして仕掛けは侵魔がトリガーを引かない限り発動しないとこれまでの戦闘で理解している。 この月匣におびき寄せられてから、幾度となくいくつもの仕掛けを受け続けたのだ。仕掛けの配置と種別程度は理解している。 あとは最短のルートで考える時間も与えぬまま叩き斬るだけ。 経験とは今この瞬間も積み重ねられるものだ。 昨日より今日、今日より明日。今までの自分を奪われたのなら、今からの自分を叩きつけるだけ。 前へ、前へ、前へ、もっともっと、前へ。 その意思だけを目に宿し、ただ全力で走り抜ける。 こ、の。と呟いて、侵魔は剣指を振り下ろす。 「潰れろっ!」 言葉と同時に柊は上に視線を向ける。 頭上には、巨大な鉱石の槌。柊はこの距離まで侵魔に近づいたことはない。初見の仕掛けだ。 一つ舌打ち。 プラーナを解放、さらに加速。槌の範囲から逃れた。 侵魔まではすでに数歩の距離。たとえ動きを読まれていたとしても先に到達しさえすればそれで勝てる。 実のところ、柊の方もほとんど余裕はない。 最初の鉱石の矢を魔剣で受けなかったのは、『いつもの自分ならする行動』をしないことで相手の目を撹乱するため。 これまで何度も何度も魔法を受け、鉱石に打ちのめされてきた。子どもの体で魔剣を振り回し続け、体力もとっくに限界を迎えている。 これ以上のダメージを受ければ再び立つのも難しい。回復手段を持っていない以上、この交錯で決めなければならない。 今の槌は相手がご丁寧にも上からくるということを宣言してくれたからこそ回避できた一撃。そう何度も幸運は続かない。 それがわかっているからこそ、彼も一刻も早く決着をつけるために、わき目をふる余裕もなく、駈ける。 侵魔は猛烈な悪寒に襲われる。 彼を恐れさせたのは、彼があらかじめ作っておいた仕掛けをことごとく柊がかわしていくことだ。 まさか相手はこちらが何をするか読めているのではないか? なまじ自分が読めるがゆえに生まれる疑念。 ありえない、と理性が叫ぶ。しかし一度生まれた疑念は雪だるまのように膨らんでいく。 彼は圧倒的な恐怖に心を鷲づかみにされながら。この抵抗さえも無駄なのではないかと恐れながら。それでも、その圧倒的な恐怖と疑念から逃れるために、叫ぶ。 「ち、近づくなぁっ! <ラグナロック、ライト>ぉぉぉぉっ!」 侵魔が目を閉じたまま、破れかぶれに放つのは属性融合高位魔法。 目を灼くほどの陽光よりもなお強い光と、地獄の底からあふれでたような深遠なる暗い闇が渾然となった光の玉が放たれ―――はじける。 爆光。 あまりに至近距離で放たれたため、柊は完全には反応しきれない。できたことといえば光に目を灼かれぬように隠し、ありったけのプラーナを放出すること。 反射的にそれらができただけ、彼は膨れ上がる光に飲み込まれた。 焼かれる。切られる。貫かれる。砕かれる。打たれる。 ありとあらゆる方向から放たれる圧力によって、絶叫すら消し飛ばされる。 どこが痛いのかもわからない。小さな体に残されたプラーナなど、瞬時にかき消すほどの爆圧の嵐。 それでも彼は。その、滅びの爆光の中を。 ―――駆け抜けることだけはやめなかった。 光を抜けた。 そこは、すでに刃(かれ)の間合いだ。 ラストチャンス。今にも崩れそうな体を、たった一度の攻撃に全てを賭けて意志のみで振り回す。 「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」 体を軸に、思い切り魔剣を振り回し―――斬撃の手ごたえを感じながら、意識を手放した。 幕間 空を行くもの全ての主 <Beal-Zephyr> 赤い紅い、月の下。 そこにいるのは、力なく倒れている傷だらけの子供と―――腰を抜かしている、腕のない侵魔。 柊の正真正銘最後の一撃は、侵魔の腕を切り飛ばしただけに終わった。 すでに限界を迎えていたところに属性融合魔法など食らえば、この程度の損傷でいるのが奇跡とも言える。 魔法の範囲内を走り抜けたために最も短い時間で済んだわけなので、その疾走は無駄ではなかったのだが。 しかし、柊は今意識を失っている。 そして侵魔は生きている。それは、致命的に過ぎる隙だった。 侵魔はしばらく目の前の光景の意味が理解できずに硬直していたものの、唐突に笑い出した。 「く、くく。くははははははっ! 今、私は最高に気分がいい。ありとあらゆる魔王が、侵魔が、冥魔すらもが! 煮え湯を飲まされてきた小賢しい人間が! この私の下に屈した! あっははははっ!」 腹を抱え、彼は笑う。 命の安全を得たという安堵。敵を打倒したという満足感。自分よりも上位と認める者たちに勝った人間を倒したという自身への賛美。 それら全てを含んだがゆえの狂笑。禍り曲り捻れ歪み狂う笑み。 「あら。随分と楽しそうじゃない、何かいいことでもあったのかしら」 鈴を転がしたような少女の声が、それに割り込んだ。 ははは、とその声に答える侵魔。 「魔の王と呼ばれる者すら倒した神殺しを、私がこの手で倒したのだ。これで私の名は裏界に知れ渡る! もはや私は主を戴かずとも。いや、魔王と名乗ることすら可能なのだっ! これが喜ばずにいられるものか!」 歓喜とともにそう答える侵魔に、そう、と鈴の音が告げる。 「―――けど。それって、アンタの力じゃないじゃない」 わし、と。華奢な手のひらが彼の頭をつかんだ。 小さな手のひらのはずなのに、その手は万力のごとき力で締め付けてきて身動き一つ取れはしない。 引いたはずの冷や汗が、再び吹き上げる。 鈴の音は続く。 「あたし、そういうの大っ嫌いなのよ。 強大な存在として、こちら側がハンデをつけてあげることはいいとしても……自ら人間ごときにハンデを負わせる、その根性が気に食わない。 あたしの目の前でその無様な真似をさらそうとした、っていうのが一点。 あたしの楽しいはずの一日を邪魔してくれた、っていうのが一点。 あたしの獲物に手を出そうとした、っていうのが一点。 そしてなにより―――」 ふん、と大して面白くもなさそうに鼻を鳴らし、『彼女』は続けた。 「アンタは魔王の名をナメた。侵魔の王とは他の魔王に『世界を滅ぼす力』として認められることにより名乗ることを許されるもの。 好き勝手に名乗った、なんてことがバレたらどうなるか――― ―――その身に刻みなさい」 酷薄さの混じる鈴の音。 刹那。 ばさりっ、とローブだけがその場に落ちた。 赤い月の匣が、しゃらりしゃらりと硝子粉がこすれる音を立てながら、砕けていく――― カウント7 きちんとおこしてあげましょう。 風が頬を撫でていく感覚。 それがやけにくすぐったくて、意識が表層まで上ってくる。くすぐったいのをかわそうと顔を少しだけずらす。 ひゃうっ、と何やらかわいらしい声がした気がした。 けれど、そんな声よりも今は眠さの方が彼にとっては上位にくる。 体の中にずしりと残る重い疲れが意識を完全に表まで持ってくるのはためらわれた。 このまどろみを今手放すのが勿体なくて、無意識に口にする。 「……あと、5分」 沈黙。 静かになったことで、再び意識を深みへと持っていこうとする。 その時。 「そうは……いかないってのよこのすっとこどっこい―――っ!」 典雅さの欠片もない声。 ごすりっ、と重い音と共に星がまぶたの裏に飛ぶ。星が、星が飛んだスターっ! いや飛んでないけどっ! 閑話休題。 頭がじんじんとひどく痛む。すでに打った頭をその上から殴打されたような感覚。濁点だらけの情けないうめきが口をつく。 「いっづぅぅぅ……なんなんだっ!?」 「なんなんだ、じゃないわよ起きなさいこの馬鹿っ! 人がどれだけ……っ!」 痛みに思わず涙目になった瞳を開く。 柊がまず最初に目に映したのは、銀糸。 銀髪の知り合いは案外多いが、金目となれば一人しか心当たりはない。そこにいたのは頬を少し赤く染めたベルだった。 「……ベル?」 「そうよ。どうやら目は壊れてないみたいね」 ふん、と憮然とした表情のベルが柊を上から見下ろしている。 何かおかしい、と柊は思う。そういえば頭だけなにか柔らかいものの上にあるような気が……。 「……ひざまくら?」 「それ以外の何をしてあげてると思うのよアンタは」 不本意そうに柊を睨むベル。 彼は、ようやく正常に働いてきた頭でたずねる。 「なんでお前にひざ枕されてんだ俺」 「……へぇ。そういうことを言うのアンタ。今すぐ落とすわよ」 「まってください頭割れるから」 「ウィザードの頭が割れるわけないでしょうが。それとも何? あたしのひざ枕が不服だって言いたいのアンタ?」 「別にそういうわけじゃねぇが」 「だったら有り難くされてなさい」 ふん、とそっぽを向きながらのベルの言葉にはこの状況について有無を言わせぬ力があり、彼は口をつぐむしかないのだった。 ため息をついて―――ふと気づいた。 「おぉ? ……あれ、ひょっとして―――戻ってるっ!?」 声が低い。眠る前はやけに高くて違和感があった声が、元に戻っていたことに気づく。 あわてて身を起こして確認しようとして、その矢先にぺちんとベルに額を叩かれ、再びの鈍痛に襲われて悶絶する。 そんな様子を見ながら情けない、とため息と共にあきれたように呟いてベルが答える。 「まったく……当たり前じゃないの。アンタを小さくした奴は死んだんだもの、呪いは解けるでしょ」 「ん? いやそうじゃなくて、なんか……手ごたえが小さかったような気がしたんだけどなぁ」 手を持ち上げてまじまじと見ながら、もとに戻ったことを確認するものの釈然としないように首を傾げる柊。 ベルはその言葉に鼓動のギアが一段上がる気がするが、それを外に出さないようそっぽを向いて『そ、そう?』と顔の赤さを見られないようにごまかす。 しかし柊がそんなところに気づくはずもなく。 疲れたように笑って腕をおろした。 「まぁ、いいか。なんとか戻れたんだし」 「……この朴念仁」 「ん? なんか言ったか?」 「いーえ、なんにもっ!」 ふん、と完全に機嫌を損ねたようにため息のベル。 「そういえば、あんだけ暴れたのにだいぶ体が楽なんだが。お前なんかしたのか?」 「別に。体が元に戻ったんだから、その分回復力が上がっただけじゃない?」 不思議そうな柊に、空とぼけるベル。 別に回復魔法をかけてやったわけではない。そこまでの義理はない。 ほんのちょっと昼食の代金分の義理くらいは晴らしてやろうと思っただけ。昼食に食べた食事の分相当のプラーナを寝ている間に分け与えただけだ。方法までは口にしない。 借りは返す。義理は果たす。それくらいも守れずして何が王か、というだけの話。 プラーナさえ補填されれば、柊とてウィザード。安静にさえしていれば体力は戻る。 ふぅん? と不思議そうに頷きながら柊は今度はゆっくりと体を起こす。それに少し不満げに唇を尖らせながら、ベルはそれを許した。 「まぁいいや。とにかく、お前が起きるまで面倒見ててくれてたんだろ。ありがとうな」 「う……きょ、今日は一日アンタがあたしをエスコートするって約束でしょうがっ、起きるまで待ってただけよっ!」 具体的に言うと待っていただけではなかったりする。 体が元に戻った後、動かない柊に対してえんえんと愚痴ったり、大量に文句を言いながらプラーナを分けてやったり、起きるかドキドキしながら髪を撫でてみたり。 ……そんないたずらをしていたら起きかけて奇声を上げたのは失態だったが。 そんなそっぽをむいたベルに、だよな、とさも当然と言わんばかりの言葉をかける柊。 立ち上がりつつ、軽く体を動かすと血が止まっていることを確認。月衣から新しい薄手のロングコートを取り出して羽織る。 「さーて。そんじゃ約束の続きといくか」 「続きって……アンタね。そんなぼろっぼろでどこへ行こうってのよ」 「お前が行きたいところでいいんじゃねぇの?」 借りができたからな、とまったく意識をしない言葉とともに手を差し出してくる青年。 ベルは一つ大きくため息。 なんだか、エスコートさせてるはずなのにこっちばかりがあわてたり苦労したりしている気がする。 手を取る。 「……ちゃんとエスコートしなさいよ」 「へいへい、努力させてもらいますよっと」 「あたしのエスコートなんて、裏界じゃ億単位の下僕どもが願ってやまないのよ? 光栄に思いなさい」 「……この間ちらっと見たなんとかって魔王はお前らの後始末の顛末を延々と居酒屋で愚痴ってたが」 「なっ!? だ、誰がそんなことを……っ!?」 その手は、やっぱりやや乱暴で。けれど、小さいときとなんら変わらず暖かかった。 ラストカウント またあいましょう。 「で? 今日はどうだったよ大魔王様」 ビルの屋上。 月は白く白く輝くだけ。まだ満ちざるその月を眺めながら、ベルは背後からかけられたその声に、ため息をつきながら肩越しに一瞥。 「雑」 一言で切って捨てる。 柊は苦笑しつつ頬をかきながら答える。 「そりゃ、エスコートなんてもんやったことねぇしな。ある程度は大目に見てくれ」 「言い訳は見苦しいわよ。まともな男になるつもりならレディの前ではしないことね」 へいへい、とため息をつきつつ肩をすくめる。 とはいえ。 ベルは柊といて嫌な思いをしたわけではない。 車道側には必ず立つし、階段は必ず一歩先に歩く。ベルがミニスカートなのを考慮し忘れて2、3発スピットレイを0距離でぶち込まれもしたが。 大魔王相手に傷をつけるのは、ウィザードであっても難しい。ラビリンスシティ参照。 それでも柊はベルを「少女」として扱うのだ。 おそらくは魔王としてよりも少女として扱え、と言われたそれに従っている結果なのだろうが……ただそれだけでこの対応はできるものではない。 「まったく。馬鹿と思うべきなのか、頭が悪いと思うべきなのかはっきりしてくれないかしら?」 「それ同じ意味だろっ!?」 「違うわよ。具体的には水底の石ころと月くらい違うわ」 これだから柊蓮司は、といつもの言葉とともに彼女も肩をすくめる。 それでも彼女は極上の笑顔で柊を見ると、言った。 「まぁいいわ。色々と面白いところも教えてもらったしね」 「どっちかっつーと、お前の行きたいとこに引きずり回されたような気がするんだがな」 「ご満足いただけて光栄ですベール=ゼファー様くらいのことを言えないの?」 「言ったら気持ち悪がるだけじゃねぇか」 「それもそうね。 まぁ―――それなりに、楽しかったわよ」 「そいつはよかった」 その極上の笑みを変えることなく静かに目を閉じ、ベルは告げる。 「―――このへんにしましょうか、ねぇ。ウィザード?」 「そうだな。一応言っとくが、今日は見逃してくれるとありがたい。見逃してくれないなら―――それはそれで負ける気はねぇが」 今日一日のこの関係は、ベルの余興のようなものであると柊にはわかっている。 となれば、彼女の気まぐれで『今日』が終わった瞬間、彼らは敵対関係に戻るのだ。 だからこその返答。 ベルから放たれだした剣呑な気配と、柊の呼び方が変わったことで彼は自分の気を引き締めて、それでも一応弁解はした後。 いつでも相棒を引き抜けるよう、体を緊張状態に持っていく。 その状態を見て、ほんの少しも『遊んでいこう』という欲求が生まれなかったかといえば嘘になる。 しかし、ベルはその甘美な誘惑を一瞬で棄却。これだから柊蓮司は、と呟きながら肩をすくめた。 「まったく、自分の言ったことくらい覚えてなさいよ。本当に頭が悪いわね」 「うるせぇよっ!? ……って、俺なんか言ったか?」 「えぇ。このあたしに向けて『弱ってる相手を襲うなんて趣味じゃないこと、絶対やらないのがベール=ゼファーだ』ってね。 そんなこと言われたら見逃してあげるしかなくなっちゃうじゃない」 だから、と言いながら彼女はふわりと浮かびあがる。 白い月により生まれた薄墨色の月影が、彼女の足元からぷつりと接点を失う。 ベルは誇るように芝居がかった言葉をつむぐ。 「遊びの時間はおしまい。 今日は面白いものも見れたことだし、見逃してあげるわ柊蓮司。無愛想な顔も、子供の頃なら可愛らしく見えたわよ?」 「うるせぇ忘れろ今すぐっ!」 「イヤよ。リオンも映像まではわからないんですもの、あの子が知ってるのはアンタが今日一日子供になってたっていう事実だけ。 アンタを柊蓮司として今日一日見てたのはあたしだけなんだもの、そうそう忘れてたまるもんですか」 ふふ、と満足そうに笑って彼女は続きを口にする。 「今日は一日アンタに振り回されたけど、さっきのと今の無様なカッコでチャラにしてあげるって言ってるのよ、ありがたく受け取りなさいな」 「振り回したのはどっちだよ」 「アンタよ、柊蓮司。100%アンタ。たぶん他の誰に聞いてもアンタだって答えるわ。 ―――ま。どうせ自覚なんか死んでも生まれないでしょうけど」 ため息。やれやれ、というように彼女は首を振ると、その琥珀の純度を高めたかのような黄金の瞳で、柊を射抜く。 「それじゃあ―――またあいましょう。 次は、あたしの遊戯盤上(ゲーム)でまた思う存分踊ってもらうわ。 せいぜい踊り狂って、あたしを満足させてから死になさい。でないとコンティニューさせちゃうかもしれないわよ?」 「上等。 せいぜい高みの見物してりゃいい、俺がおとなしく踊ってると思うんだったらな。気づいた時には盤上ひっくり返して、お前を引きずりだしてるかもしれねぇぞ?」 「えぇ、それくらいの手応えを期待してるわ。 じゃあね柊蓮司、次のゲームまで……せいぜいその体を大事にすることね。首もよく洗っておきなさい?」 バイ、と呟いて。 刹那。月の像が揺らいで赤く染まり―――次の瞬間には再び皓々と照る欠けた月に戻る。 頭をかきつつ、柊は踵を返す。 さすがに色々あって疲れている。今日くらいは実家のベッドで眠れることを期待しつつ。 内心。また厄介な約束をしたな、なんてことを思いながら。 それでもその約束を反故にしないため、とりあえず彼は体を休めるための帰路についた。 前ページ次ページベール=ゼファーの休日
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Bad City 4 I Don’t Want to Miss a Thing ◆gry038wOvE (なんていうことだ……アインハルト……) 沖は、自分の目の前で遂にアインハルトがその命を絶ってしまった事実に、何も考えられないほどのショックを受けた。 目の前にはその殺戮者がいて、背後にはそれに怯える二人がいる事が、辛うじて沖に正常な判断を忘れさせずにいた。 (クッ…………もう、これ以上犠牲を出すわけにはいかない) 血飛沫を浴びたシンケンゴールドは、倒れ伏したアインハルトの死体に対して一片の同情もかけず、踏みつけながら前に歩いた。 沖は、目の前の敵に立ち向かわなければならない。 真後ろで、ドアがゆっくり閉まりかけていく。 次の瞬間── ドンッ!! ドアが別の誰かによって強く蹴られ、沖はその“別の誰か”に警戒した。 しかし、警戒すべきは当然、目の前のシンケンゴールドであった。複数の敵がいると思い込んで警戒したが、何より注意すべきは目の前のシンケンゴールドだ。 「はああぁぁぁぁぁぁああああっ!!!」 シンケンゴールドは掛け声とともに前進し、沖の首筋に向けてサカナマルを凪いだ。 沖は寸前でそれをかわして、右足を高く上げる。シンケンゴールドの右腕は蹴りあげられ、サカナマルを握る右手が真上に伸びる。 その隙に沖はシンケンゴールドの胸部に肘鉄を食らわせ、シンケンゴールドの体をよろめかせ、バック転で後退した。手には血の跡がついた。地面には、血が飛び散っていたのである。 「変ッ──」 沖は、仮面ライダースーパー1への変身の呼吸を行おうとする。 だが、それと同時に眼前に小さな物体が叩きつけられる。──それが何なのかを理解する前に、沖の呼吸を乱す強力な光と爆音が鳴った。 僅か一瞬だが、その光と音が沖の動きを止める。背後にいた二名も、その閃光に目をくらまされる。 (なっ……!) 変身の呼吸を乱したその物体が何だったのか、沖は考察する。 あの小さな物体は何だったのか。何かが投げられた後に視覚と聴覚が乱れた。 これは── (スタングレネードかっ!!) その瞬間、沖は先ほど地面に投げつけられたのがスタングレネードだと気づいた。 放ったのはシンケンゴールドではない。先ほど、このドアを蹴った誰かだろう。 スタングレネードは人の動きを止めるほどの閃光と爆音を鳴らす。殺傷を目的とした道具ではないが、こうして相手の動きを止める事ができる道具だ。 金属製のドアの向こうから投げつけられたゆえ、そのダメージを受けたのは沖たちだけであった。 相手方も耳元へのダメージは大きいだろうが、少なくとも閃光による視覚障害はない。 「……くっ……やられたっ!!」 沖が次に身動きが可能になり、前を向いた時、そこにあったのは、ゆっくりと閉まりかけていくドアだけだった。 廊下の先には誰もおらず、シンケンゴールドも、もう一人の何者かも、姿をくらました後だった。 「くそっ……!」 アインハルトの遺体と、少女の死体が廊下には転がっている。 血まみれの廊下が、あまりにも悲しい死の色を奏でていた。 沖は、この距離で誰も救えなかった無力を痛感する。 何度も。何度も。沖の周りでは人が殺され、そのたびに沖は強くなった。 この殺し合いもまた、人を殺す儀式であり、何人もの人間の命を奪った。 許せない。許していいわけがない。 「くそぉ……!! くそぉ!! くそぉっ!! くそぉぉぉぉっ!!」 沖の慟哭に、孤門と美希は絶句したままだったが、孤門は自分がすべき事を確認するために、沖のもとへと走り出した。 △ パペティアードーパントは沿岸まで来ていた。 普通の街ならば、漁業が盛んであったであろう港の姿。 そこで、自分が逃げ切った事を確信していた。 ダークプリキュアは源太の支給品であるスタングレネードで敵の自由を奪った一瞬で沖を操るつもりだったが、スタングレネードは近距離でダークプリキュアにも少しの耳鳴りを覚えさせていた。 その一瞬でシンケンゴールドを連れて逃走するのが精一杯だったし、いま現在も奴らが追ってきているかもしれないという恐怖を持っていた。 (……仮に今の奴を操ったところで、変身の方法がわからない以上、使いようもないか) 結局、沖がスーパー1に変身するのには「変身の呼吸」とポーズが要される。 ダークプリキュアはそれを知らないので、いま沖を操ったところで、変身ができず、沖の力を最大限引き出す事はできない。 惑星用改造人間という事は多少強いかもしれないが、やはりファイブハンドという特殊能力を持ったスーパー1を操った方が心強いのは確かだ。 (だが、この男は奴以上に使えそうもないな……) 以前の戦闘で、この男の強さの底は知れている。一度交戦したが、この男は大して強くはなかった。 実際、この男と同じような力を持つシンケンレッドとシンケンブルーは既に死んでいるらしいので、この力の持ち主が個々では本来の実力を出し切れない可能性は非常に高い。結局のところ、その程度の実力というわけだ。 この男の戦績を聞いても、ダークプリキュア、仮面ライダーエターナル、血祭ドウコクと全ての戦いにおいて、「運」でしか生き残っていないし、利用するには、少しばかり実力不足な存在であるように思えた。 一人だけ殺す事ができたのは、相手が変身していなかったからだろう。 (……この男には死んでもらおう) パペティアーは、シンケンゴールドを不要と判断した。 ここから先、シンケンゴールドを使って殺し合いを有利に進める事もできそうにない。厄介なのは、このままシンケンゴールドを操り続けると、他の参加者を操れない事、また、操作を外してもシンケンゴールドが意識を取り戻す事になり、確実に邪魔をされる事。 これを考えれば、パペティアーは今のうちにシンケンゴールドを手放し、次の参加者を得るべきだろう。 たとえば、この男が話した「血祭ドウコク」は相当な実力者で六人を相手に善戦したという話だし、そのドウコクを操るのも一つの手だ。 そうした場合、ドウコクを操るにはシンケンゴールドに張った糸を取り外し、隙を作ってからドウコクを操る事になる。シンケンゴールドには既にパペティアーの顔が知られているので、確実に攻撃をされるだろう。 パペティアーの状態では派手に暴れる事ができないので、相手がシンケンゴールドであっても敗北する可能性が出てくる。 「……」 シンケンゴールドは、サカナマルの刃を構え、あろうことか自分の腹に突き刺した。 強化スーツは簡単には切腹を許さないが、大きな火花を散らし、彼の身体にダメージを与える。 次に首筋を斬り、胸を刺し、頭から半分に自分の体を切り裂こうとした。 遂にスーツがダメージに耐えられなくなり、シンケンゴールドの変身が解除され、源太の姿になる。 (……もう外してやるか) 変身が解除されたところで、シンケンゴールドが反撃する事はできなくなった。 これでもう、糸を外しても問題はなくなった。 パペティアーはその指先から源太を繋いでいた糸を断ち切る。源太の体は、まさしく糸の切れた人形のように地面に向けて倒れ、体全体をアスファルトの地面に打ち付けた。 一瞬、「うわっ」と驚いて、突然地面に倒れた自分が一体どうしているのかわからない様子であった。 それを見て、パペティアーは自分も変身を解除し、ダークプリキュアの姿に戻る。あの姿である必要もなくなったのだ。 「いててててて………………ここは!?」 源太は、自分がどこにいるのかもわからないといった様子で、辺りをきょろきょろと見回す。 彼が最後に見たのは、あの霊安室の中であるはずだ。 何故、自分がこんなところにいるのだろうか。 そうだ、あの怪物に俺は襲われ……あいつが指先から何かを放ったのを……。 「……あっ……」 源太は、起き上がろうとしたが、もう一度地面にふらっと倒れた。 全身からとてつもない痛みがする。 体中が痛み出す。腹部が、首筋が、胸が……悲鳴をあげるような痛みを全身に流す。 もはや、どこが痛むのかもわからないほどの痛みだった。 そんな源太の首根っこを掴んで、ダークプリキュアは彼の身体を起こした。 「……ダークプリキュア。……サンキュー。よかった……生きてたんだな」 辛くも嬉しそうに、源太は目の前のダークプリキュアに笑顔を見せた。 何故、こんな事を言っているのかわからなかったが、そういえば自分はパペティアーとして行動していて、ダークプリキュアの姿を見ていないのだと思い出した。 この男は、ダークプリキュアこそがパペティアーである可能性を考えもしなかったのだろうか。 「……礼を言われる筋合いはない」 目の前の屈託のない笑顔に、ダークプリキュアは思わず目線を逸らす。 この辛そうながらも、精一杯の笑みを絞り出したような顔は今までも見たことが在る。 いや、過去に一度しかない。……そう、月影ゆりが死ぬ時だ。 あの時のゆりの姿と重なり、一度、ダークプリキュアはその手を放す。 「……ここはどこだよ……。俺達、もしかして死んだ後の世界にでも来ちまったのか……?」 源太は、全身の痛みを感じながらも、周囲の景色を眺めた。 源太は、今までこの場所を通った事がなかったのである。だから、見た事のない景色に映った。 あの霊安室はやはり、霊が潜んでいて、殺し合いなど関係なしに自分たちを死後の世界にでも連れ去ったのだろうかと、そんな在り得ないはずの事を源太は考えた。 それしか説明がつかないと思った。 「……死後の世界か。そんな物があれば良いのだがな」 どこまでもお気楽な思考の源太に、ダークプリキュアは羨望する。 死後の世界があるのなら、ダークプリキュアはこのまま死んでもいい。 そこでゆりやサバーク博士と出会えれば、ダークプリキュアはこれ以上殺す必要もないし、辛い思いをする事もない。 苦悩が消え、また永遠が始まる。 だが、死後の世界があるという確信など世界のどこにもなかった。 もし、死後の世界があるという確信があれば、生きている限り、死の恐怖など感じず、「いつ死んでもいい」という程度には気楽に生きられるかもしれない。 しかし、確信がないからこそ、出来うる限り生き、死を敬遠する。 ダークプリキュアも確信がないから、ゆりを生き返らせるために戦っているのだ。──それに、これまで死人と出会っても、死後の世界の話をされる事はなかった。 地獄。そういえば、エターナルはそんな言葉を口にしたが、そんなものでも何でも、あの言い方ではあるのかどうか、ダークプリキュアにはわからない。 「……ここにあるのは“殺し合い”だけだ。少なくとも、ここは死後の世界でも何でもない」 「……そうか。やっぱりまだ生きてるんだな。でも、どうして俺達はこんな所に?」 源太は正真正銘の疑問顔だったが、ダークプリキュアは彼が何も知らない事に同情を禁じ得ない。 このまま、彼は何も知らないまま……同時に何も守れないまま死ぬ。 彼の人生は、暗いままに終る。ダークプリキュアが殺した二人の少女も、あるいはそうだったかもしれない。 だが、自分の身体が人を殺していた事など、知らない方がいいかもしれない。 知らない方がいい事もいくつかは在るだろう。 「私がここに連れてきた」 「何だって?」 ダークプリキュアがここに連れてきたらしいが、どうしてこんな場所に連れてきたのだろう。 もしかすれば、気を失っていた源太を助けてくれたのかもしれない。 確か、目の前の怪物に向けて突っ込んで、糸が出てきて気を失って……。 しかし、そこまでで源太の記憶が終わっていた。 「……戦え、シンケンゴールド。殺し合いの真実。それは命をかけた戦いだ」 「ちょっと待てよ、それはどういう事だよ……」 「……少なくとも、私が願う事と、お前が望む事は合致しない。ならば戦うしかない」 少しばかり、卑怯なやり方を続けたダークプリキュアだったが、梅盛源太に対しては、少しだけ機会をあげたいと、彼女はそう思い始めていた。 人に信じられる悦びを、ダークプリキュアは少し感じた。 人に可愛いと言われる悦びを、ダークプリキュアは少し感じた。 それはいずれも、源太によるものだ。ほんの少しだけだが、その感覚を自分に味あわせた源太に、最後のチャンスを与えてやろうとダークプリキュアは思っていた。 「誰かを守りたいと願うのなら、私を倒す事でその力を証明しろ。私は、私の願いのために貴様と戦わせてもらう」 ダークプリキュアの手に、ダークタクトが発現する。 そんなダークプリキュアの様子を見て、源太は少し冷静に思考を巡らせた。 彼女の言っている事を考えれば、彼女のスタンスというのは見えてくる。 「おい、ちょっと待てよ。全然わかんねえよ。それは、お前が何か願いを一つ叶えるために……殺し合いに乗っているっていう事なのかよ。さっきのアレは、もしかして……」 「ああ。私はガイアメモリで変身してお前を操り、ここに連れてきた」 肯定だった。 源太が推測した嫌な予感は、あっさりと肯定したダークプリキュアによって、予感ではなく事実となってしまったのだ。それに対して、怒り狂う事もなかった。 ただ、少しだけ悲しい気分になった。 ダークプリキュアは、決してただ殺し合いに乗っているのではない。大事な何かがあるから殺し合いに乗っているのだ。 「わかった。……それなら、俺から、条件を一つ頼む」 源太は、すべてを理解して、深呼吸をした。 「もし、俺が勝ったら、お前はもう殺し合いには乗るのをやめろ。たとえ、どんな願いがあってもだ! 誰も死んでほしくないのが俺の願いだからな!」 ビシッと人差し指を突き付け、源太はダークプリキュアに言った。 「……なるほど。いいだろう」 ダークプリキュアは答えた。 それならば──源太は戦う。 目の前にいる敵は外道ではない。もっと人らしい心を持った人造人間なのだ。 プリキュアになれるかもしれない。彼女を人間にできるかもしれない。その可能性があるのなら、源太はその可能性を切り開くために戦える。 「一貫献上!」 スシチェンジャーによって、梅盛源太の体はシンケンゴールドのスーツに包まれた。 △ ──いま、警察署の霊安室は重大な局面に差し掛かろうとしていた。 孤門と美希と沖の三人は、四人の少女の体を前に、慌ただしく動いている。 孤門は、ヴィヴィオの体にしきりに胸骨圧迫を行っていた。 残りの三つの体は、アインハルトの遺体と、ほむらの死体、そして気絶したいつきだ。 いつきが生存している事はすぐに確認できたし、アインハルトやほむらの蘇生は絶対にありえないので、残りのヴィヴィオの方に三人の動きは集中していた。 (ヴィヴィオちゃんっ!! ヴィヴィオちゃんっ!!) 元レスキュー隊である孤門一輝は、一般人では完璧に行う事ができないかもしれない心肺蘇生法を、完璧に行っていた。 通常、警察署にはAEDがあるので、沖がそれを探し出し、持ってくるまで沖が胸骨圧迫と人工呼吸を連続して行っている。 ──そう、高町ヴィヴィオの呼吸は停止していたが、まだ、蘇生ができる可能性があったのだ。 孤門が部屋に駆けつけた時、ヴィヴィオは部屋の中央で倒れていた。いつきを見てみたが、彼女に関しては息があり、心肺蘇生法を行う必要はない。むしろ、胸骨圧迫は息のある人間にはやっては危険なものだ。 ヴィヴィオの悲鳴が聞こえてから、大きく見積もって、五分程度しか時間は経っていないはずだと思って時計を見た。 だが、助かる確率は百パーセントではない。死後どれだけの時間が経ったのかというのも重要になってくる。 酸素供給は心肺停止から二分以内ならば九十パーセントの確実で蘇生され、一分ごとにその蘇生率は半減していく。 心臓と肺が完全に停止していたとしても、二十五パーセントの確実で生存できる。 溺れた人間や、気絶した人間は、孤門の経験上何度も見た事があるし、その事例を知っている。死んだ人間もいれば、生きていた人間もいた。おそらく首の後から考えれば考察だが、絞殺されて間もないのなら、まだ希望はあるし、孤門たちが最後にヴィヴィオたちの姿を見てから、まだそう時間は経っていない。 アインハルトは無理だとしても、ヴィヴィオならばまだ蘇生する可能性がる。何度でも何度でも息を吹き返す可能性のために、孤門はヴィヴィオの胸部を圧迫し、心臓を動かすためのマッサージを行う。唇と唇を重ね、孤門の口内や肺の中から、微かな酸素を絞り出し、ヴィヴィオに分け与える。 普通の人間ならばすぐに疲れて腕が棒になるかもしれないが、孤門はレスキュー隊の訓練に加え、ナイトレイダーの訓練も受けていた。 (助かってくれ、ヴィヴィオちゃん……!) これは訓練で何度もやったし、実践した事も何度かあった。 何度でも、何度でも、孤門はその胸部を強く押す。相手の胸骨が折れるかもしれないが、それでも命を吹き返すだけマシだ。 彼女の命を救う。救ってみせる。 「あったぞ、孤門!」 沖は、警察署内に設置されていたAEDを持ってきた。 こういうのはだいたいどこの施設でも置いてある。特に、孤門は既にこの警察署を探検していたので、AEDの在り処を知っていた。 沖はそれをすぐに孤門に渡し、孤門はAEDの説明に冷静に目を通しながらヴィヴィオの体にシールのようなものを張り付けた。 このAEDは音声がアシストしている。大丈夫だ。その手順は、孤門の知っているものと何も変わらない。 「……美希ちゃん、こっちは大丈夫だ。美希ちゃんはいつきちゃんの方を起こして!」 ヴィヴィオの方を心配する美希を、いつきの方に向ける。 一応、そうした様子は手慣れてはいた。 きっと、沖たち仮面ライダーよりもずっと人命救助の方法を上手く行えるだろう。 「助かってくれ……! ヴィヴィオちゃん……!」 AEDでヴィヴィオの体にショックを与えながら、孤門はその願いを口に出していた。 △ 「シンケンゴールド、梅盛源太!!」 シンケンゴールドは、ダークプリキュアの前で初めてその名前を最後まで名乗った。 先ほどの自己紹介でちゃんと彼の名前は知っているし、名簿に載っている名前を知っている。しかし、戦士として戦場に立った男の名を、これまでダークプリキュアは聞かなかった。 「シンケンゴールド、梅盛源太か……良い名前だ。もっと早く聞いていれば良かったな」 シンケンゴールドの名乗りを聞いたダークプリキュアは、なんだか新鮮な気持ちになった。 名前。 それが、こんなに羨ましい事はない。 ダークプリキュアには名前がない。プリキュアのアンチの意味合いで「ダークプリキュア」と名乗らされているだけで、決して、それは親が真心を込めてつけた名前ではないのだ。 ダークプリキュアに人らしい名前はない。 月影博士に娘と認められ、月影ゆりに妹と認められたとしても、まだダークプリキュアには名前がなかったのだ。 きっと、月影博士は名前をつけてくれる。 それを知るまで、ダークプリキュアは死ねない。 「……サカナマル、百枚おろし!!」 シンケンゴールドがダークプリキュアに向けて駆けだす。 一歩一歩を着実に歩き、ダークプリキュアに向けてサカナマルで斬りかかる。 だが、その攻撃はあまりに鈍かった。ダークプリキュアは彼が攻撃する一枚目の斬撃を片腕で受け止め、攻撃を止めたその腹部に向けてダークタクトを翳した。 「食らえッッ!!」 その先端から、強烈なエネルギーが発され、シンケンゴールドの体は宙を舞った。 シンケンゴールドは既に、全身に途方もないダメージを負っていたのである。それはつい先ほど、ダークプリキュアによって操り人形にされ、全身を自分で痛めつけた時の話であった。 当然、その痛みは残留しており、源太も理由のわからぬ痛みに耐えながらダークプリキュアに向けて走っていたのだ。 「……ハァッ!!」 ダークプリキュアは、次の瞬間には宙を舞うシンケンゴールドの真横に居た。 シンケンゴールドがその姿に気づくよりも先に、ダークプリキュアの手刀がシンケンゴールドを海に向けて吹き飛ばす。 「何……だよ、コレ……」 次の瞬間、水しぶきとともに、波間にシンケンゴールドの姿は消えた。 直後、海上で光が発され、そこにシンケンゴールドがいたのだとダークプリキュアは気づいた。 そこには、人間が仰向けに浮いていた。 梅盛源太である。シンケンゴールドの変身が解けたのだ。その身体から、血の色が広がっていく。 △ (くそっ……) まるで打ち上げられた魚のように、源太は海に浮かんで空を見上げていた。 海に鮮血が広がっていく。 生臭いにおいがするが、源太はそれには慣れていた。懐かしいにおいである。 (……ダークプリキュア、本当にお前は、救いようのない奴なのかよ……? そうじゃ、ねえだろッ……) それが、源太には信じられなかった。 最後のあの言葉とあの表情は、人の心を持たないならば出てこないもののはずだ。 彼女は、まだ立ち直る機会がある。 (……あの娘ひとり止められずに……俺は侍を名乗れねえ……) 血の海が広がり、源太の意識も朦朧とし始める。 空には既に太陽は消えかかっているようで、東側にあるこの海は冷たくなっていた。 出血多量に加え、この冷たい海だ。あと数メートルのところに陸があるのに、そこに這い上がる力もない。 (……俺は、このまま誰も止められねえのかよ……) 十臓も、あかねも、ダークプリキュアも……誰も止められず、丈瑠も、いつきも、ヴィヴィオも、ダークプリキュアも……誰も助けられず。 それで侍になった意味はあるのだろうか。 源太は、くるりと回転し、空を見るのをやめ、陸に向けて顔を上げる。 あと数メートルの距離だ。 ……頑張れば泳げる。 これを泳ぎ切れば、ダークプリキュアのために戦える。 まだ間に合うはずだ。十臓は死んでしまったが、あかねやダークプリキュアを止める事ならばできるかもしれない。 源太は、力無い腕で海をかいた。波が源太の体を押す。 大丈夫だ。確かに、体の力は抜けているし、血も随分抜けているが、それでも行ける。 (……誰かのために……誰かの命を救えなきゃ……俺がシンケンゴールドになった意味がねえ……) 丈瑠のためにシンケンゴールドとなったが、丈瑠はもういない。今の源太にできるのは、彼の代わりに人を救う事だけなのだ。 自分がやりたいように、誰かを助ける。 それが源太の願いだった。 (丈ちゃん、流ノ介、力を貸してくれ……) 胸元に仕舞ってある丈瑠のショドウフォンにそれを願う。 その思いが、源太に力を貸し、何メートルも泳がせる。 水をかき、波に押され、源太は陸に近づいていく。 (待ってろよ……) 根性が、彼を泳がせた。 もう、眼前にタラップがある。 それを掴み、その先に昇れば、源太は初めてダークプリキュアたちを説得する土俵に立つ事ができるのだ。 源太は、波に押されながら、うまくタラップを掴んだ。 多少滑りそうになったが、力強く掴んで、水の抵抗などを消した。 左手もまた、その上のタラップを掴んだ。 (……ダークプリキュア。俺はまだ負けてねえぞ……俺は生きてる限り、お前と戦う……) もう一段。 源太はタラップを掴んで昇っていく。 (……そんで……俺が、お前の涙を、止めてやる……) ダークプリキュアはきっと、本心では殺し合いなどしたくはないのだ。 その心が泣いている。 女の子が泣いているのだ。源太は、それを拭いたい。 せめて、それさえできれば、源太は満足なのだ。 源太は、ついに足までタラップを掴み、着実に海から港へ上がろうとしていた。 (……俺が……) しかし、海水で足が滑り、源太はタラップを踏みまずす。バランスを崩した源太の顎がタラップにぶつかる。脳震盪を起こすほどの衝撃が体に走った。 源太の身体は、そのまま全身が揺れるような感覚とともに、体ごと海に落ちた。 源太の体重が落ちた海は、水飛沫を上げる。 再び、源太は海の魚になった。 (……くそぉ……) 源太は落ちてしまった。 いま、あともう少しで、再び願いを叶える土俵に立つ事ができたのに。 落ちずに飛びつづけろ──丈瑠の言葉も源太は守れなかったのだろうか。 それがこういう事ではないというのを、源太も理解している。 しかし、ここから落ちて、また這い上がるだけの余力はない。 体が冷え、血が抜けていく。 源太の服がはだけ、服の中にしまっていた丈瑠のショドウフォンと源太のスシチェンジャーが、海底深くに沈んでいく。 源太の体が、波に押されていく。 その体はもう、這い上がろうと必死に動く事はなかった。 【梅盛源太@侍戦隊シンケンジャー 死亡】 【残り25人】 △ 時系列順で読む Back Bad City 3 Ghost in the ShellNext Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- 投下順で読む Back Bad City 3 Ghost in the ShellNext Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell 蒼乃美希 Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell 梅盛源太 Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell アインハルト・ストラトス Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell 明堂院いつき Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell 沖一也 Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell 孤門一輝 Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell 高町ヴィヴィオ Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star- Back Bad City 3 Ghost in the Shell ダークプリキュア Next Bad City 5 星を継ぐ者-Shooting Star-
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(二日目)12時14分 第一二学区。 周囲には高層ビルが立ち並び、四車線の交通が可能な交差点の真ん中に彼女はいた。四ツ角にはそれぞれ歩道橋があり、中心くり抜いた四角形になっている。高層ビルと歩道の間には植林が立ち並んでいる。 七天七刀が舞う。 甲高い音を立てて、コンクリートの地面が抉れていく。六本の鉄線は、常人の目には映らない程の音速を超えた斬撃となり、『魔神』を襲った。 その斬撃を、『魔神』は音速を超えた速度で回避する。 神裂火織の眼前に、『魔神』は歪んだ笑みを浮かべて現れた。 彼女は反応する間もなく、豊満な胸囲がある胸元に、握りしめられた拳を叩きこまれた。 「――――ッ、ぶごっォオ!」 強烈な衝撃を受けた神裂火織は、五メートルほど吹き飛ばされ、息を整えながら距離を取った。 神裂は意識が薄れつつも、刀を構え、敵から視線を外さない。左手で口元に滴る血をに拭うと、両手で刀を握った。 「うおおおっ!!」 バスタードソードを握りしめた牛深が、大声を張り上げて、『魔神』の頭上にある歩道橋から飛び降りた。 腕力に思い切り力を入れて、一〇〇センチを超す刀剣を、迷いなく『魔神』の頭部に振り下ろす。 だが、 ガキィイン!という音がアスファルトとの衝突によって引き起こされた。長身の男性は、我が目を疑った。眼前に迫っていた『魔神』が視界から消えたのだ。 そして、足が地面に着く前に、彼は『魔神』との再会を果たす。 『魔神』の強烈なキックが、中年男の右頬を的確に捉えた。 剣を振り下ろした反動で猫背になった長身の体は、顔だけ左に仰け反るような格好でアスファルトに着地する。『魔神』の蹴りで意識が跳びかけた男は、体の条件反射ですぐさま立ち上がるが、バスタードソードは手から離れていた。 男は、『魔神』と正面を向き合いながらも、中枢線を晒すような無防備な状態になっていた。 ズンッ!と『魔神』を起点とした半径三メートルほどの円が、アスファルトに亀裂を刻んだ。常人を逸した『掌逓』をくらった長身の男は、約10ほどメートル吹き飛んだ。 枝々が折れる音と共に、植林に身を突っ込んだ男には、既に意識は無かった。 カラン、カラン…と、空しい金属音と共に、バスタードソードはひび割れたアスファルトに落ちた。 『魔神』は足でそれを蹴って、バスタードソードを手にする。 ヒュン!という音がなる亜音速の剣筋は、後ろに迫っていた老人の斧の根本を切断した。 斧の刃の部分だけが、宙を舞った。 一瞬の出来事で呆気にとられた諫早の顔面に、重い右ストレートが直撃する。 意識を失い、膝を着いて項垂れる老人の体躯に、『魔神』は容赦なく腹部に強烈なキックを突き刺した。 『魔神』は放射線を描いて、空を舞う老体を見上げた。 この間、僅か一〇秒足らず。 30メートル程の『魔神』の背後で、ダンッ!と地面を踏みしめる音が聞こえた。 一陣の風と共に、神裂火織は『魔神』との距離を一瞬にしてゼロにした。 『聖痕(スティグマ)』を発動し、斬撃が『魔神』を捉えた。 神裂の魔力が一気に跳ね上がる。 『魔神』はそれをバスタードソードで受け止めた。 ドバァン!と聖人の人間離れした攻撃力が『魔神』の生身を襲った。アスファルトの亀裂はさらに増し、生じた爆風が破片を巻き上げた。 二つの刃は火花を散らせ、ギィィイン!と大きな金属音ともに聖人と魔神は交差した。 一〇メートルほど距離に神裂火織は降り立った。 空中で数回転した刃が、聖人の傍に落ちた。 『魔神』は手元にある剣を見た。 バスタードソードは根本から折れていた。 「……ふむ」 何の感慨もない表情で、『魔神』は折れた剣を見つめていた。 そして、剣として役目を終えた物を『魔神』は捨て去った。無機質な音が鳴り響く。 だが、それは『魔神』だけでは無かった。カランッという音が同時になった。 七天七刀が地面に落ちる。 「ぐぅッ…!」 神裂は膝を折り、肩から血を流していた。 この間、僅か〇,一秒足らず。 右腕に深い切り傷を負った神裂は、腕にチカラが入らず、刀を落としてしまった。 それだけはない。神裂の発動した『聖痕(スティグマ)』は、『魔神』の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』によって強制的にキャンセルされてしまった。 水が噴き出している間欠泉に、いきなり蓋をされてしまったようなもので、神裂の魔力が暴走し、彼女の意識は朦朧としていた。 血が流れ落ちる右腕を無視して、左手で七天七刀を握り、立ち上がった。 こうして意識を保つだけで、彼女は精一杯だった。 その様子を見た『魔神』は呆れた口調を返した。 「『魔王』との余興で、右の肺を潰してしまってな。呼吸が少々苦しいのだ。その余を息一つ乱せないとは、貴様らに殺す価値も見出せぬぞ」 ゆっくりとした歩調で、『魔神』は彼女に近づいてくる。 (…私たちは、ただ…遊ばれている、だけなのですか…いくつもの戦場を駆け抜け、腕を上げてきたというのにっ…!) 天草式は、すでに戦闘不能に追い込まれていた。 『魔神』は右手に宿る『幻想殺し(イマジンブレイカー)』と、体術しか我々に使っていない。だが、それでも翻弄され続けた。 仲間たちは死んでいないが、意識が奪われて倒れている者が半数以上、他も何らかの傷を受け、万全の状態ではない。のらりくらりと策略や攻撃を回避され、確実に的確な一撃を叩き込まれていく。 連携は一〇分も経たずにズタズタにされた。 『魔神』と単体でやりあえる魔術師は聖人である神裂火織しかいない。 しかし、すでに彼女も手傷を負っており、次の攻撃で確実に戦闘不能にされる。 (私たちは…こんなものだったのですか?……私たちは…彼の…足元にすら…及ばなかったのですか?…) 「――――ってください…」 誰かの声が、神裂の耳に届いた。 それは『魔神』の耳にも聞こえたらしく、彼女に近づく足を止めた。 声がした方角を二人は見た。 神裂の四〇メートル程の視線の先には、『海軍用船上槍(フリウリスピア)』に体を預け、必死に立ち上がる少女の姿があった。 着ていた白のジャケットは、所々が破け、黒い汚れが付いている。破れているハーフジーンズはさらに傷みが広がり、彼女の素足は、膝の擦り傷の血で濡れている。 中に着込んでいるネットの黒シャツは破け、ピンク色のブラジャーと、白い素肌の胸が晒されていた。 五和は左手で、顔に付いた汚れと汗を拭い、敵を目視する。 『魔神』を睨みつける五和の眼光は鋭さを増していた。 大きな声が木霊した。 「当麻さんの体から、さっさと出て行ってください!!」 その殺気を感じ取った『魔神』は、何の感情もなく、彼女を見た。 五和の周囲には、数人の天草式のメンバーが倒れていた。 『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を構え、五和は破れた靴を脱ぎ去った。素足でアスファルトに立つ彼女は、大きな深呼吸をした後、言葉を紡いだ。 “Cuando los brillos de fuego, exigiré el agua.…El agua me rodea y me protegerá―――” (我が光り輝く炎を求める刻、我は凍てつく水を求めるだろう――) 神裂はゾッとした。 五和が唱え始めた魔術は、天草式のものではない。 彼女が単体として使う魔術だった。 「――五和ッ!」 神裂の叫びも、彼女には届かなかった。彼女の頭にあるのは、『魔神』ただ一人。 魔術の魔力を感じとった天草式メンバーの一人が、負傷している体を起して、叫んだ。 「五和ちゃんっ!」 “Cuando el agua me exige, exijo el agua!!” (我が凍てつく水を求める刻、凍てつく水は我を求める!) 五和の素足に『水』が巻きつき、水面を滑るがごとく、滑らかな動きで『魔神』に突進していった。 彼女の魔術と同時に、ヒュン!という疾風の攻撃が『魔神』を襲う。 七教七刃。 鋼糸を張り巡らせ、七方向から同時に攻撃するという、彼女が編みだしたオリジナルの技。 速度はますます加速し、五和はさらに言葉を紡いだ。 “Cuando el fuego me exige, exijo el fuego―――” (清らかなる炎が我を求める刻、我は炎を求め――) 両手で『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を一回転させ、上半身を大きく捻った。「突き」の姿勢をなし、氷の上を滑るような動きで、『魔神』との距離を一気に縮めた。 七教七刃は『魔神』を攻撃したが、七つの線撃は『魔神』の足元で消滅した。七教七刃が生じた風が、『魔神』の黒髪を揺らす。 “La llama de la purga pasa por usted!” (清らかなる炎は、全てを浄化する!) ボワッ!と『海軍用船上槍(フリウリスピア)』の矛に炎を纏った槍は、ついに射程距離範囲に入った。 五和は、全身の回転モーメントを注ぎ込んだ一撃を『魔神』の左胸に放つ。 バギンッ! 『魔神』の右手に『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を捉えられ、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』に、練りこまれた魔術の細工ごと、炎は打ち消された。 『魔神』はグイッと槍を翻し、五和のバランスを崩そうとした。 だが、既に彼女は『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を手放していた。 それだけではなかった。五和は『魔神』の視界から消え失せていた。 「っ!?」 『魔神』の目が初めて見開かれる。 そして、 “La llama de la purga pasa por usted!” (清らかなる炎は、全てを浄化する!) 五和は大声で、魔術を唱える。 炎を纏ったナイフを手に、五和は『魔神』の背後に回っていた。素早い動きで身を一回転させ、背中に隠し持っていたナイフを左手で握り、押し込むことを前提とした突きで、右手を柄に添える。 七天七刃と『海軍用船上槍(フリウリスピア)』の二重のフェイク。 完全に『魔神』の後ろを取った五和は、咆哮した。 腹の底から、絶叫する。 「当麻さんから、出て行けぇぇえエエッ!!」 掠れた彼女の声が、『魔神』の耳に届く。 五和は、上条当麻を愛していた。 一目惚れだった。 その恋は、内気な彼女を突き動かしてきた。昔も、そして今も。彼の力になりたいと願い、彼の為に強くなりたいと願い、人に見えない努力を積み重ねてきた。 「浄化の炎」は、邪悪なものを断ち切る魔術。 『魔神』は一瞬で身を翻し、彼女に振りかえった。 襲いかかる五和を見て、『魔神』は心の底から笑った。 炎を纏ったナイフは直進した。 ドスッ! という音が鳴り、五和のナイフは『魔神』の左胸に突き刺さった。 鮮血が顔に飛び散り、五和は驚愕した。 「―――えっ?!」 決死の手段だったとはいえ、自分の攻撃が当たるとは思っていなかった。 水を使う魔術は、かつて対峙したアックアの魔術を見よう見まねで編みだしたものであり、火の魔術はその術式の色彩を「赤」に変えたものである。 短剣から流れ落ちる『魔神』の血を見て、五和の喉は冷えあがった。 それは人間と同じ、赤い血。 人格は違うとはいえ、自分が愛する男の身体を傷つけたのだ。『魔神』の白いYシャツに、赤い血が徐々に広がっていく。 身を焦がしていた敵意は一瞬で消え去り、五和は凍りついた。肉を突き破った生々しい感覚と罪悪感から、身を引こうとした瞬間、 『魔神』は左手で、ドガッ!と五和の頭部を鷲掴みにした。 「うぐっ?!」 彼女は、軽い脳震盪に襲われた。 ナイフは衝撃で引き抜かれ、地に落ちる。 五和の意識が徐々にはっきりしてくる。 そして、眼前には愛しい男の顔が迫っていた。 「…良い目だ。気に入った」 『魔神』が微笑みを浮かべて、五和の顔を覗き込んでいた。 顔は、意中の男性とはいえ、精神はドラゴンに乗っ取られている。 恐怖に心を掬われた五和は、 「ッ!離せ!」 と、蹴りを叩き込もうとしたが、『魔神』右腕が腰に手を回され、胸から下の身体が密着した状態となって、五和の動きが封じられた。 五和は、『魔神』に抱きしめられていた。 彼女と『魔神』の顔の間は数センチの距離で、彼女の吐息が『魔神』の顔に当たるほど、接近していた。 五和はさらに驚く。 意中の男性の顔が、目の前にあるのだ。 戦闘中だというのに、五和の冷静な殺気は失われ、『魔神』は、不敵な笑顔を浮かべたまま告げた。 上条当麻には似つかわしくない、邪悪な笑顔と甘い囁きで。 「余の『僕(しもべ)』になれ。五和」 「――んッ?!」 五和の唇は唐突に奪われた。 熱い感覚が、彼女の口内にねじ込まれた。 ネチュ、という卑猥な水音が五和の思考を奪う。 乾いた唇を潤す、温かいキス。 右腕で彼女の身体は抱きしめられ、左手は彼女の顎を持ちあげ、顔を固定されていた。 五和はパニックに陥る。 彼女はキスをされている。 愛しい男の姿をした『魔神』に。 彼女はファーストキスは、唐突に奪われた。それも恋焦がれた男性の唇に奪われて、予期せぬ形で成しえてしまった。 奪われたのは彼女の唇だけではなく、口内まで蹂躙された。 クチャァ…と、粘着ある唾液を引き、二人の唇は離れた。 茫然自失としている五和の耳に、『魔神』の声が囁いた。 「上条当麻はお前と違う女を心底愛している。そなたに振り向くことなど、一度たりとも無い。そなたの一途な恋心が実を結ぶことなど、決して無いのだ」 「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――え?」 五和は、凍りついた。 そして、目の前が真っ暗になった。 見たこともない風景が映っていた。 自分と上条当麻が仲睦まじく、過ごしていた。 天草式の皆と、笑い合っている。 自分の手と上条当麻の手は指をからめ合って、繋がれていた。 一緒に映画館に出かけたり、 一緒にレストランに出かけたり、 皆に隠れてキスしたり、 二人で夜をベッドの上で過ごしたり、 他の女の子に好かれる上条当麻に嫉妬したり、 天草式のメンバーから二人の熱愛ぶりを冷やかされたり、 恋人となった上条当麻との日々が、目の前にあった。 それは自分が望んだ現実であり、その光景に心が満たされる。 しかし、その幻は一瞬で崩れ去った。 気づけば、五和は暗闇に一人佇んでいた。 (ここは…どこ?) 一筋の光があった。愛しい男の背を照らしていた。 あのツンツンとした髪型は、一日たりとも忘れたことは無い。 「!当麻さ…」 彼女の声はそこで途切れた。 周囲が徐々に明るくなるにつれて、彼が一人ではないことがわかった。 当麻の傍に他の女がいた。 他の女が手をつないでいた。 手を取り合いながら、彼女は当麻に微笑みかける。 彼も彼女に微笑みかける。 彼の笑顔は、自分と一緒にいた時よりも輝いて見えた。 なぜ、隣にいるのは自分ではない? こんなにも好きなのに。 誰よりも好きなのに。 彼の為に、誰よりも努力してきたのに。 彼の為に、可愛くなったのに。 彼の為だけに、尽くしてきたのに。 なんで、自分に振り向いてくれないのか。 五和は、叫んだ。 「…い、……いやああああああああ!!」 「―――――――――――――――――――――っ…―――あっ……」 気づけば、『上条当麻(ドラゴン)』は眼前にいた。 自分の瞳は、涙に濡れていた。 「それはお主が望んだ幻想。だが、それは有り得なかった現実ではない。お主と上条当麻が結ばれる運命は、確かに『在』ったのだ」 五和にはそれが、分かった。 先ほどのビジョンが真実であることが理解できた。 この世に「並行世界」というIFがあれば、自分と上条当麻が結ばれ、愛を語り合えた未来があったことは確かだった。 あのキスの感覚、抱擁された時の感覚。 愛の温もり。 芯から蕩けるような幸福の感情。 在ったことなのだ。 自分が、もうちょっと手を伸ばしていたなら、 もっと積極的に接していれば、 上条当麻と少しでも長く傍にいれば、 彼は私を見てくれた。 愛してくれた。 「……あ、ああ…ああ…あ、あああーっ……」 涙が止まらない。 感情が制御できない。 上条当麻が、御坂美琴を選んだことを知った時、自分は諦めると思ったのに。 あの時、彼を慕う人たちと一緒に思いっきり泣いたのに。 この涙は、まだ枯れていなかった。 彼女の涙を、『魔神』はそっと拭った。 愛しい男の顔が眼前にある。そして、甘い声が彼女の耳に囁かれた。 「『余』はお前を愛してやる。この身に抱かれることを光栄に思え」 もう一度、『魔神』は五和に唇を重ねた。 舌を入れ、彼女の口を再び蹂躙する。熱い感情が五和に湧き上がり、脳内を揺らすほど刺激する。 涙はそれでも止まらなかった。 だが、徐々に冷え切ったに生ぬるい温度が満たされていく。 何度も、彼女に濃厚なキスが襲ってくる。それを成すがままに五和は受けいれていた。 熱い。 温かい。 …欲しい。 手に入らなった愛情が欲しい。 彼女は、『魔神』の甘美な囁きに耳を傾けてしまった。 五和は自らの意思で、『魔神』の舌に、自分の舌を絡めた。 神裂火織は眼前で起こっている現象に絶句していた。 五和は『魔神』と唇を貪り合っていた。 だが、彼女が注目しているのはそれではない。 『魔神』の右肩から生えている巨大な『何か』だ。翼のような、腕のような…このようのものとは思えない、不思議な物質だった。 四本の長い指先のような先端から、一本の毛糸のようなものが出ており、それが五和の頭に繋がっていた。 五和は『魔神』に抱きしめられて、その異様な物体が見えていないだろう。 神裂火織は『それ』を『識』っていた。 この世全ての万物を操り、変換し、願望通りに物体を作りかえる神の領域の力を持つ腕。 かつて『神の右席』の『右方のフィアンマ』が所有していた、『ドラゴン』の一部。 『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』。 あの腕のせいで、『禁書目録(インデックス)』や自分たちがどのような被害をこうむったか、神裂の脳裏にまざまざと蘇った。 その事件は、「科学」と「魔術」との戦争の芽となり、「ドラゴン」が覚醒を始めることとなる事件だった。 彼女は力一杯に歯を食いしばり、唇を噛み切ってしまった。 「ドラゴンッ!!貴様、何をしているッ!!五和から離れろォォおおお!!!」 七天七刀を握り締め、神裂火織は何の考えもなしに突進した。 アスファルトは聖人の脚力で蹴り砕かれた。『聖痕(スティグマ)』を発動し、魔力を爆発させた。 石柱すら一刀両断する刃は、『魔神』を捉え、右腕の傷から血が飛び散ることも恐れず、両手で刀を握り、『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』の一指を斬り落とした。 『魔神』は五和から体を離すと、常人離れした脚力で跳び上がり、歩道橋の手すりに足を止めた。 斬り落とされた指と五和の頭に繋がっていた糸は霧散し、『魔神』の右肩から生え出ていた『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』はゴキゴキという音と共に、『魔神』の身体に潜り込み、その姿を消した。 神裂の腕に、五和は倒れこんだ。 傍には、術式が打ち消されたナイフと『海軍用船上槍(フリウリスピア)』が転がっている。 神裂は射殺しかねない視線で、『魔神』を睨みつける。 「ドラゴンッ!!五和に何をしたあああああああああ?!」 左手で七天七刀を振りかざし、太陽を背に立っている『魔神』に吼えた。 Yシャツの左胸あたりが血で赤く染まっており、『魔神』は唇をそっと舌で舐める。 不敵な笑顔を取りつくろい、神裂火織の神経を逆なでする口調で、 「何を言っている?貴様も見ていたであろう?余は、五和を余のモノにすると決めただけだ」 「ふざけるなっ!お前はただの下種だっ!神を名乗る資格も無い!」 「ふはははははっ!余は神を殺すための神だ。それ以外の義務は無い。人を殺そうが犯そうが蹂躙しようが所有しようが、余の気まぐれだ。余はその人間が気に入った。それだけだぞ?聖人よ」 神裂火織の頭は激怒で沸騰した。 『竜王(ドラゴン)』は神でも、例外中の例外であり、神を殺す権限と能力を与えられている『怪物(カイブツ)』である。 人には災いや破壊を齎す神でもあるが、それは邪悪なものにしか適応されない。偉人を導き、絶大な力を宿し、世に平定を齎す象徴ともなる神でもあるのだ。 だが、強すぎるがために人に畏怖され、そして、肉体をバラバラにされ、人間に封印された。 よって、人間という『穢れ』と『強欲』を知った『竜王(ドラゴン)』は、ただのカイブツに成り果てていた。 その原因が人間であり、人間はその罪を忘れて、ただ『竜王(ドラゴン)』を恐れていたのだ。真に罪深き者は人間である。 だが、神裂火織は『識』らない。 『魔神』は怒りに身を焦がす聖人を見据え、笑いながら、 「聖人よ。貴様は何か勘違いをしていないか?」 「ッ!!どういうことだ?!」 『魔神』の言葉に嫌悪感すら覚える彼女に、冷静な思考はとうに失われている。 心にあるのは、『魔神』に対する憎悪と、仲間を想う情のみだ。 (ちっくしょうッ!これ以上仲間を失ってたまるか!建宮も、対馬も、香焼も死なせて、私はッ!皆を守るためにここにいるのにっ!私の為に天草式があるんじゃない!天草式のために私がいるんです!) 神裂は自分の弱さと激情に駆られ、瞳には涙すら貯めていた。 『魔神』は顔を歪ませる神裂を笑いながら見つめ、 告げた。 「五和は、自ら余のモノになることを受け入れたのだぞ?」 ドスッ… 鈍い音が響いた。 赤い血の斑点が、アスファルトを濡らし始めた。 数秒、神裂は反応が遅れた。 「か――――はっ…」 彼女は、目の前の現実が受け入れらず、途切れ途切れに声を吐いた。 なぜなら、 彼女の腹に、 五和が『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を突き刺さしていたからだ。 喉から込み上げた血を手で抑えながら、神裂は呟く。 「……五、和?………何…をっ?…」 「なに、余に籠絡されただけのことだ」 『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を神裂の腹部から引き抜いた五和は、立ち上がって無機質な瞳で彼女を見つめた。 大量の血が流れ出る腹部を抑え、神裂火織はアスファルトの上をのたうった。 「きゃあああああああああああああああああああ!!」 「プ、『女教皇(プリエステス)』様ぁああ!」 「五和ぁあ!お、お前何をッ?!」 他の天草式十字凄教のメンバーはその光景に目を疑った。 ある者は悲鳴を上げ、またある者は言葉を失ったまま、茫然としているだけだった。 『魔神』は高らかに声を上げる。 「ふはははははははははははっ!良い!実に素晴らしい!五和!なかなかに愉快な景色ぞ!誇るがよい!」 ぺたぺた、と五和は素足でアスファルトの上を歩き、『魔神』が立っている歩道橋の下まで近寄った。彼女は『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を捨て、『魔神』を見上げた。 「ハイ…当麻、様」 無感情な五和の返答は、『魔神』をさらに悦ばせた。 「ふはっはっはっ!意識を嫉妬と欲望に流されながらもそれでもなお、上条当麻に恋焦がれるか!なんとも色欲に素直な人間か!だがそれで良い。それこそ人間のあるべき姿だ。気に入った! これは神の加護ぞ!心して身に受けるがよい!」 『魔神』の背中から白の翼が発現する。4メートルほどの大きな片翼が、五和の体を覆い尽くした。 翼の形をした『何か』は、外形を崩し、白い液体のような粘着性を持ったモノへと変貌した。グチャグチャと音を立てながら、五和を包み込んでいく。 フワリと、その『何か』地面から浮き上がり、『魔神』と同じ高さまでになると上昇を止めた。ボタボタと白い液体が垂れ落ちるが、みるみる硬化が始まり、楕円の繭のようなものが形成された。 全長は三メートルをで、幅は二メートルほどある。 歩道橋の手すりから『魔神』は離れ、ゆっくりと浮遊し、白い繭に近づいた。そして、『魔神』は右手を触れる。 パリンッ。 ガラスが割れたような音が鳴り、『魔神』の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が反応した。 白の繭に亀裂が走り、その隙間から強烈な光が漏れだした。 辺りは眩い光に包まれた。 太陽の光を浴びた羽が舞い降りる。 天草式十字凄教のメンバーは奇怪な現象に目を疑った。 「なんだ?…これ」 周囲が光に包まれ、五和や神裂火織の様子は分からない。ただ、無数の羽のような白い物体が空から降り注いでいることが分かった。傷ついた仲間に手を貸している者が多くいる中、一人がその羽のような物体を掴もうとして、 「熱っ?!これ、ただの羽じゃないぞ?!」 ジュウッ、と音を立てて掌に火傷を負った。 他の天草式のメンバーも被害を受けて、急ぎ早に物陰に避難した。 羽のような物体は、人間や植物には被害を及ぼすが、アスファルトや鉄で出来た信号や歩道橋には全く変化が見られなかった。まるで雪が解けるように霧散していく。その神秘的な光景に目を奪われつつ、天草式十字凄教のメンバーは『魔神』の方角に目をやった。彼は言葉を失った。 天使。 左胸のあたりを赤く血で濡らしたワイシャツを着て、両手を黒ズボンのポケットに入れている一人の『魔神』と、同じ高さに浮上している『天使』がいた。 白のローブを身に纏い、金色のラインが入った純白の甲冑を着ていた。銀色の金属ブーツが光沢を発していた。無機質な紫色の瞳を宿し、紫色の髪を靡かせている。 背中には大きい白の翼が生えていた。 天草式十字凄教のメンバーは息を飲んだ。 「………五、和?」 ガチャン!と白い繭は地面に落ちて、割れた。 空に浮かび、繭から生まれた『天使』は五和の容姿をした少女だった。 二重瞼が特徴的な瞳に、肩にかかる長さのショートヘアーをした容姿は、五和そのものだ。だが、彼女の表情に、感情は宿っていない。 『天使』は右腕を水平に突きだした。 彼女の周囲に散乱していた羽が急速に集まり、純白の槍を形成する。 少女の全身の二倍ほどある翼が動き出し、槍を天草式の人々に入る方角に向けた。 空気が戦慄する。 一帯を覆い尽くしている羽が、一斉に天草式のメンバーに襲いかかった。 「―――――――ッ!!?」 吹雪のように降り注ぐ白の無数の羽。 咄嗟に武器で身を防ごうとするが、間に合わない。 生物の肉体のみを焼き尽くす羽は容赦なく、彼らに向かっていった。 それは彼女も例外では無い。 交差点の中心で倒れていた神裂火織は、穴が開いた腹部を抑え、仰向けにその光景を見ていた。彼女は朝日に照らされる『天使』と『魔神』を見つめ、茫然としたまま死を悟った。
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名前とパンツ女史 678 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 23 13.61 ID oKs08fUz 手癖が悪い…かはわからないけど、ママに泥棒された話、 書きこんでいいでしょうか… 679 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 24 35.75 ID ZXccNlAy 子持ち泥なら何でもカモン。 680 :678:2011/07/14(木) 01 26 12.62 ID oKs08fUz はじめてなので読みづらかったらごめんなさい。長いです。 ところどころフェイク入れてます。 自分…20代♀ 彼氏…20代♂ 今回の主な被害者 私は彼氏と同棲していて、家事は分担してる。 室内で煙草を吸うので、洗濯物は全てベランダに干していた。 部屋は二階で、ベランダの低い位置(腰くらいの高さで外から見えないところ) に洗濯物をかけられるようになっているので、下着は私のも彼氏のも一緒に こに干してる。 ある時から、なぜか彼氏のボクサーパンツがなくなるようになった。 私のはそのまま。 681 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 27 32.72 ID Ybz/KEVG ヤローの使用済みパンツ狙い? キチママ案件じゃないの? 682 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 32 19.94 ID vh5kT21D 泥なんだからここでいいじゃん。 わざわざここじゃないんじゃないの?というのは何の為? 683 :678:2011/07/14(木) 01 32 42.16 ID oKs08fUz キチママさんなんでしょうか…わからないんです。 一応書きためてはあるんですがまとめると ・彼氏のパンツとか衣類盗まれる ・お隣りさんは妊娠中の一人暮らしの人 ・なぜか彼氏がそのママの出産に立ち会う(?)はめに ・その流れで泥発覚 →まだ病院から帰ってきてない泥ママ、どうすればいいか悩んでる状態 684 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 34 24.33 ID oC2n9bk5 えーと、泥されたのは彼氏本体ってオチ? 立ち会う羽目もなにも、子供は彼氏の子ってことはないの? 685 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 36 54.44 ID oj8qBsik いや、彼氏の子供で浮気相手だとしたら パンツ泥棒にはならないだろうw 686 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 37 26.53 ID gKARr7XC まとめ過ぎてわからん 687 :678:2011/07/14(木) 01 37 51.37 ID oKs08fUz 684 彼氏本体ってことはないですし、彼氏の子供ってことは100%ないです。 盗まれたのは下着とTシャツ、あと出してたゴミ。。。 でも泥ママさんはもしかしたらそのつもりでいるのかもしれないです。 なんかまだ謎に包まれています…スレ違いなら他に行きます!すみません。 688 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 37 51.28 ID dq5boV3t 681が変なことを書くから、はしょられちゃって話の内容が分からない。 690 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 38 59.71 ID Pr9YkJzV ・なぜか彼氏がそのママの出産に立ち会う(?)はめに ここが一番の謎 691 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 40 34.43 ID wnT0PuOa 683 とっとと通報しろ ほっといたら、出産に立ち会ってくれた仲でしょ>< って彼氏を父親ポジションに据えられるぞ 彼氏と円満破局したいならそのままでおkだけど 692 :678:2011/07/14(木) 01 41 40.12 ID oKs08fUz 690 泥ママはお隣りさんなのですが、休みの日(私は休日出勤)に ピンポン鳴らされ、 「破水したから救急車呼んで!誰もいなくて心細いからついてきて!」 と言われたそうです。 立ち会うっていうか分娩室の外?にいてた感じですが… 693 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 42 54.89 ID oj8qBsik 推測するに 病院に連れて行ってそのまま付き添い 入院グッズが必要でお隣りに入って盗まれた物発見ってところ? 694 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 43 31.93 ID 0plJhxpr 690 そこが一番kwsk!!なのにね。 つか立ち会っちゃったから、もう彼氏は私のもの!!になってないかい? 自分の旦那だって立ち会うの躊躇するのに、なんで立ち会ってんだよー??? シャツやパンツは、部屋の中で、 「彼の、借りちゃった(えへっ)」 みたいなシチュ用に使われていたかと。 695 :678:2011/07/14(木) 01 43 43.81 ID oKs08fUz 691 通報した方がよいのでしょうか。 まだ泥ママさん病院で、盗品が発覚した状況にもちょっと問題があるので 一度直接話したほうがいいかと思って待ってる状態です… 698 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 46 19.06 ID Mv54UVja 病室に泥妊婦の親族も来るだろうけど、 「この子はこの人の子なの!」と言い出して、 なし崩しにケコーンを狙ってたりして・・・そりゃ無いか。 「DNA検査!?酷い!貴方の子なのに!!」とマヤッて親族を騙して、 半ば脅迫の形で・・・。 699 :678:2011/07/14(木) 01 47 35.39 ID oKs08fUz 693 さんの感じが近いです。 戸締りするのを忘れたらしいと聞く→うちの前にキーケースを落としてた →戸締りしようとしたところベランダがあいてることに気付く →非常識だと思いながらも勝手にあがる →ベランダの戸締りしようとして盗品発見 って感じです。 許可なくあがって見てしまったので通報戸惑ってるところもあります。 全部ジップロックに入ってた… 700 :678:2011/07/14(木) 01 50 20.41 ID oKs08fUz 彼氏は子供つくることができない人なので、 「この子は私の子!!」っていうのは通用しませんし、そもそもそのママさん 妊娠した状態で私たちよりあとに入居したので… 一応そういうことになった時のための準備はしておきます。 701 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 53 02.70 ID RNum40dm 泥の相手は居るの?シングルがどっかで拾ってきた系子種なら高確率で 「彼氏くんの子(はぁと」になるから どっちにしろ警察呼べ ってジップロック? 触るなよ、そのまま触らず今すぐ警察呼べ 703 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 55 05.06 ID RNum40dm 699の流れを警察に説明すれば状況は理解してくれるはず 一応警察官の階級と名前はちゃんと控えておいて 704 :678:2011/07/14(木) 01 55 41.27 ID oKs08fUz 701 多分シングルで、たまに母親らしき中年女性が出入りしてた感じです。 男性は見たことありませんでした… 一応盗品の写メは撮ったんですが、警察行ったほうがいいですよね、 ありがとうございます。明日にでも行ってきます。 705 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 56 02.46 ID Ybz/KEVG いや、今から行けよ。 706 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 01 56 44.24 ID gKARr7XC ジップロックはストーカー。 今すぐ彼氏を帰宅させないと、とんでもない事になるよ。いや、マジで。 709 :678:2011/07/14(木) 01 59 10.89 ID oKs08fUz 703 警察官の階級と名前ですね、わかりました… 被害額は大したことないんですがやっぱりいい気持ちはしないので行きます。 「お子さん生まれたばかりだし…」 と若干腰引けてましたがやっぱりちゃんとした方がいいですよね。 それにしても身重の身体でうちのベランダから盗るにはかなりのリスクが伴うだろうに… なにか進展あったらまた書かせてもらいます。ありがとうございます。 710 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 02 01 33.31 ID Ybz/KEVG 鳥付け忘れないでねー 711 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 02 02 59.17 ID 9seRkSDa >身重の身体でうちのベランダから盗るにはかなりのリスクが伴うだろうに… 他人ですらそう思うのに、全くそう思わない泥はかなりの基地だとわかる 子供が生まれようがどうしようが、あなたには無関係、とっとと24 じゃないと被害が拡大するばかりだよ 715 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 02 06 58.35 ID RNum40dm 709 キチ発想パターンとして「この子を私達の子供として育てましょう」ってのもある 彼氏くんに子供が作れないとわかればこれ幸いとなるだろう 多分大丈夫だと思うけど一応不法侵入になるから警官によっては 態度悪いかもしれない そういう時に役立つし次に相談に行く際に受け持った人を呼び出しやすいから 聞くといいよ それから今すぐは動けないってなら電話でも十分 相手は一応病院ですぐに逃げられることはないからその辺は大丈夫だろう 警察に行く際は被害者である彼氏本人が行くこと 兎に角被害届は後でも出せるけど警察には今すぐ電話だけでもしておいたほうがいい 719 :678 ◆AuQWdLJMk2:2011/07/14(木) 02 16 30.56 ID oKs08fUz 希少な物件だし気に入っていたので引越しはできるなら避けたいですが、 やむを得ないかもしれませんね… アドバイス参考にします。 トリ一応つけておきます。 とりあえず彼氏が朝方仕事終わるので終わったら一緒に警察行きます。 ありがとうございました。失礼します。 722 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 02 22 32.89 ID oC2n9bk5 もう子供もいる。 あとは男がゲットできればいいだけだもんね。 好みの男だったんじゃね?彼氏さんが。 それ以外にあるとは思えんのだが。 723 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 02 28 28.00 ID RNum40dm 夫でもない他人の男に分娩室まで来てほしい、が既に普通の思考じゃないからな 彼氏にほれたストーカー物件の可能性は高いよ 盗品をジップロックはまずい、どう考えてもやばい 730 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 02 48 06.79 ID iPfXgNhL 彼氏くんは私が本命、お前が浮気! その証拠に彼氏くんが私とえっちした時に忘れてったパンツがあるもの! だから彼氏くんは私のもの☆ このお腹の子も当然彼氏くんとアタシの愛の結晶♪ とかかな 765 :678 ◆AuQWdLJMk2:2011/07/14(木) 10 42 03.17 ID omT3GKny とりこれかな… 768 :678 ◆AuQWdLJMk2:2011/07/14(木) 10 51 24.60 ID omT3GKny 携帯からで読みづらかったらすみません。 警察行ってきた帰り、家の前で泥ママの親族らしき男性に襲撃を受け彼氏が 顔ひどい怪我、私が脳震盪とかすり傷とiPhoneを使い物にならなくされる という大打撃をおう事態に… 親族男性は現行犯でつれてかれましたが診断書貰ったのでこれから事情を 説明しに行きます。 まさかと思っていましたが皆さんが推測されていた通りのことが起きてるみたいで 非常に狼狽しています。 またPCからでも投下します。 769 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 10 52 17.00 ID oC2n9bk5 うわあ。大丈夫?! 頭やってるのなら、しばらくの間は本当に気を付けてね! 773 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 10 59 56.71 ID 56zrukJa 678 顔に大けがって…! 774 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 11 01 18.50 ID 6jMO7lXp 768 彼氏かわいそすぎる! 傷害事件だねー。怪我大丈夫? これからひとモメふたモメしそうな予感だね… 779 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 11 12 06.80 ID gwXFKOek これはもう弁護士さんに入ってもらった方がいい物件ですね。 782 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 11 15 58.18 ID 2sz9NqIT ところで 768のトリ割れてない? 検索すると他のが出てくるお 809 :678 ◆AuQWdLJMk2:2011/07/14(木) 15 07 07.26 ID omT3GKny あら…トリ割れてしまってたんですね。 盗まれたぱんつの名前とか安易なものにしなければよかった。。。 変えた方がいいでしょうか。 ネタとかならよかったですが… ちなみに殴ったのは泥ママ(Aとします)の兄でした。 彼氏は頬骨にひびで入院、私はとりあえず動き回れます。 ご心配ありがとうございました。 やっぱりAは子供は彼氏の子と主張しているようです。 警察にはそれが絶対ありえないことを説明して納得してもらい、 警察から説明されたA兄が反省しているようで 謝罪したいとのこと… これから警察の人交えてA兄と話しますがなんか必要なことあるでしょうか。 いろいろはしょってしまってすみません。 811 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 12 19.22 ID TfcKglUd 809 向こうは減刑狙いで慰謝料払うから被害届を取り下げてくれみたいに 言ってくるだろうから簡単には応じないこと。 親御さんか誰か信頼できる第三者に同席してもらえるといいんだけど 急には無理ならとにかく向こうの話を聞いてくるだけにして 向こうの要求には一切応じないで帰ってくるといいよ。 813 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 15 53.42 ID 0+AdHmEa 謝罪を受ける必要だって無いんだよ? 顔を見るのすら怖いと言って断ったっていいんだし。 819 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 22 55.53 ID lenZD23j 今夜一晩くらい考える時間があった方がいいんじゃないの? 傷が痛み出したので、後日にして下さい(して欲しいではない) で延ばしなよ 顔が痛きゃ、頭だって正常に働かないんだし とにかく時間と味方になる第3者が必要だよ 若い女1人で立ち会う内容じゃないよ、例えKが居てもね 824 :678 ◆AuQWdLJMk2:2011/07/14(木) 15 37 57.46 ID omT3GKny すみません、おひとりずつレスしたいのですが… まず話をすることはどちらかと言うとこちらが望んだことであったりします。 Aはまだ病院で体調がよくないため話ができないとのことで、Aが 何と言っていたのかちゃんと聞きたいっていうのもあります。 あと、諸事情により私たちは二人ともあんまり大事にしたくないという 気持ちでいます。 このスレでは叩かれてしまいそうですが、正直かかったお金と謝罪、引越し費用 くらいもってもらって できるだけ関わらないようにしたいと思ってます… A兄はそれを支払うつもりだと言っているので。 とりあえず録音機器は用意しました。いってきます。 アドバイスありがとうございます。 825 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 40 10.88 ID ZXccNlAy これ以上こじれませんように。 南無。 826 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 40 26.30 ID iPfXgNhL まぁ、就職とか結婚とか、そういうのが控えてたら大事にするのはかえって 面倒だしね… 気をつけてね、身内の言い分だけで他人の顔面を躊躇なく殴れる人間なんだから。 女のあなたも傷物にされるかもしれないよ。 827 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 41 43.68 ID 26vhphhl 824 大ごとにしたくないのなら尚更、弁護士を頼んだ方が良いです。 よく素人が穏便にと動いて却って悪化させて、自ら大事にするケースが多いです。 弁護士はプロですから、速やかに穏便に片付けてくれますよ。 829 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 47 18.54 ID TfcKglUd ん? もしかしてビアンさんカップルかな?? 834 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 15 59 00.55 ID RNum40dm 829 掘り下げるな それ以上は下衆のする行為だよ 824 治療費と引越し費用とそれに毛が生えた程度のお金がもらえれば十分だよ A本人から謝罪などは要求しないほうが良い、A兄の謝罪はしてもらうべきだけど 様子から認知してくれないとか浮気されたとかそういう言い方をしていたの かもしれないね 案の定彼氏の子だと言っている様だから、謝罪よりカウンセリングを受けさせるように してもらって 一応母親になるんだからまともなほうに矯正チャレンジしてもらわないと 子供がかわいそうだから それから彼氏くんの戸籍にロックと婚姻届の不受理 引越しする場合は引越し先が漏れないように、近所周辺で引越し先を知らせる 場合は注意すること 電話番号やメアドもできれば変更しておいたほうがいいかも 835 :678 ◆AuQWdLJMk2:2011/07/14(木) 15 59 54.88 ID omT3GKny 弁護士さんじゃないですけど、知り合いになんていうか法律屋さんがいるので 間に入ってもらうつもりです。 ちなみに彼氏は男性です。 見た目が黙ってると水商売っぽいので…実際は鉄ヲタ理系職ですが。 子供を作れないっていうのは、彼氏はここ一年以上、病気で服薬しています。 その薬の副作用で何というかEDで。 性行為は身体的に非常に苦痛が伴うのでできないんです。 ちなみにAが妊娠したであろう時期彼氏は今の住居から遠い前の職場で 缶詰になってたのでありえないんです。 その時まずAを知らなかったし… と打ってたら衝撃の事実。 A、子供に彼氏の名前と関連した名前つけてました…しにたい… 840 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 16 10 01.88 ID 0plJhxpr 837 出生届は本人は今の段階では無理だから、誰かに行ってもらうしかない。 昨日の今日で速攻で出生届を出す、なんて考えられない。 このゴタゴタもあったことだし。 まだA兄の手の中で止まっていることを願うわ… 841 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 16 13 11.99 ID 8WjNTvY0 子供と彼氏は無関係。 一方的にAが窃盗(下着)をはたらき妄想話でA兄をけしかけ 彼氏と678に子供の父であると名誉毀損、暴行傷害を加えたこと キッチリしといた方がいい。 それと、必要ならDNA鑑定して争う姿勢をみせといた方がいい。 Aは精神鑑定とその他の窃盗余罪調べもね。 843 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 16 15 17.42 ID RNum40dm 835 プライバシーに関わるから書かなくてもいいよ 男です生えてますで十分だってw A兄と話し合う際に名前から彼氏の名前を使用禁止にしてもらって 何もなくても名前とられてるのは気持ち悪いだろうからね 法的には難しいかもしれないけど、届出を出す前ならなんとか回避させることは できるはず 846 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 16 21 10.80 ID 0plJhxpr トリ、変えとこうか? 862 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 17 23 46.17 ID e8rDCoCz 835 ちょっと、話が多岐に渡ってきたから、やるべき事、 やった方がいい事をまとめてみる。 ・彼氏の婚姻届が出てないか確認 ・彼氏の 婚姻届不受理の届出 提出 ・法律に詳しい友人に弁護士を紹介してもらう →詳しくても「職業 弁護士」の方が、経験的にも社会的にも力がある。 ・早急に引越し ・郵便物などを局留めにする ・引越し先は大家さんも管理会社にも教えない。 ・実際の引越しは一気におこなう ・彼氏入院の病院に、刑事案件だから誰にも病室を教えるなと頼む ・出来れば、病室だけでも偽名使用してもらう ・加害者家族とは、基本的に会わない。会う時は、録音と第三者の同席必須。 こんな感じかな?不足あれば皆さん頼みます。 897 :678 ◆ryFULrT30c:2011/07/14(木) 19 50 05.49 ID omT3GKny 一時帰宅。678です。 書き溜めて避難先PCから投下します。このトリで大丈夫でしょうか。 名前なんかつけようかな… 898 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 19 54 26.39 ID oicnX4nR 897 トリおk コテはパンツ関連だと誰かわかりやすいかも 900 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 02 18.42 ID s3Wkg4Xt 678です。 すみません。まだ解決に至ってないのですが途中経過を あとこのIDでトリは変えておきます。若干フェイクありです。 アドバイス参考にして、戸籍ロックとか婚姻届不受理とか出来る限り の 根回しはしました。 警察の人も力になってくれてよかった… ここは友達の法律屋さんが何故か嬉々として動いてます。 名前の件は警察の人に聞き、まだ出生届までは出してないと確認したのち、 ちょっと待って!!とストップかけました。 出生届はA母が提出する直前だったそうで、彼氏が父親にってことは ありませんでした。 903 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 05 17.34 ID s3Wkg4Xt 名前は彼氏が一郎だとしたらA子は二郎みたいな、どこにでもあるけど どう考えてもそこ繋がりだよねって名前。 彼氏に言ったらストレスからか盛大にゲロったらしい…ゴメン。 彼氏の方は高熱出てて病気の方も症状が出てしまい、しばらく動けない様子。 何もできなくてごめんと謝られたけど仕方ない。頼れる友人ととりあえず行動します。 急だけど、日曜には撤去できそうです。管理人さんは思い切り同情してました。 まさかこんなことになるとは…と若干途方にくれてますが。 A兄は案外まともな人で私の姿を見て土下座。 とりあえずA兄がなんて聞かされてたかを聞き、リアルメダマドコー状態になりました。 905 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 07 22.28 ID s3Wkg4Xt ・彼氏はホストで、私は孕まされてしまった。 今彼氏は隣の部屋に、貢いでくれる客(私のこと)と住んでいるの くやしいけど生活のためにあの女が必要だったのよ ・堂々と会えないけど、彼はうちに泊まりに来てたりもしたの! 証拠に家に着替えがあるわ(ここはスレの予想通りでビビりました) ・彼と私は見えない絆で結ばれているの、この子も彼にソックリ。 名前は彼から一文字とって二郎(仮)と名付けようって決めたの…キラキラ みたいな感じで言ってたらしく。もう胃が痛いでよ。 勿論嘘です。でもさりげにパンツ泥棒吐きましたね。 908 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 10 00.42 ID s3Wkg4Xt Aはとにかく彼氏を好きなんだそうです。 ちなみに私が外で会っても完全無視。 彼氏は普通の人と帰る時間とか違うけど、よく遭遇してあいさつくらいは 交わしていたそうです。 それって待ち伏せされてたのでは? ちなみにAの子の父親はA兄もA母も知らないみたいです。 A兄は警察から説明されたのと、私からの再度の説明で今度は泣きながら謝りだした… 妹かわいさによく考えたらありえない話を信じて、理不尽な暴力を振るってしまった、 申し訳ない、と。 ちなみにAは、なんていうかとても見目麗しい。美人なんです。箱入り娘なのかも。 そもそもの方針だったわけではあるけど、被害届は出さないが、 治療費やら引越し費用やらと慰謝料を持ってもらいたいが構わないか? と友人がかわりに確認すると、A兄はもちろんそうするつもりだし慰謝料 も 払い続ける、被害届を出さないでいてくれるだけで有り難いとまた泣いてました。 念書もつくってます。 911 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 12 50.10 ID s3Wkg4Xt ちなみに警察の人がAに事実を確認すると、あっさり嘘だと認めました。 私はスレの忠告を読んでたのもあり、長期化を覚悟していたので若干拍子抜け。 ファビョリはしなかったようだけど、A兄が彼氏の顔を殴ったことを知るとA兄に対して 怒り狂っていたらしいです。もう理解できん… ちなみに謝罪はなく、肝心の泥については 「だって好きだったから」「拾ったものだから」 「ほんとは彼がくれた」「こっちのベランダに落ちていた」 と二転三転したらしいです。マジキチ… A本人には私も彼氏も会わないようにしてます。彼氏んとこの病院にも根回し済。 ちなみに明日、A兄、私の立会いのもとA宅で盗品の確認をすることになりました。 (本人も家に彼氏のものがあると認めてるので大丈夫みたい) ぶっちゃけ汚部屋だったのでなにか対策考えとこう…マスクとか。 913 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 14 37.82 ID s3Wkg4Xt 名前についてはA兄、A母が必死で止めているが、 「好きな人の名前から一字貰うのも許されないのかー!!」 「その名前をつけられないなら二郎(もう呼んでる)と一緒に死ぬー!!」 とAが暴れてるらしいです。精神的に問題がありそう… でも、やっぱりその名前をつけさせないようにするっていうのは難しいらしく、 今悩んでるところではあります。 正直かなり気持ち悪いけど私も彼氏もちょっと諦めかけています… A母、A兄の説得がうまくいくことを祈っているところです。 私は友人についてきてもらって一時避難と彼氏の入院準備しました。 915 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 16 39.03 ID s3Wkg4Xt 色々ありすぎて疲れました… とりあえず愛猫2匹にごはんあげて近所のお友達宅に預ける準備をしなければ。 職場がおおらかな感じでよかった。 お付き合い下さってありがとうございます。アドバイスすごく助かってます… ていうかトリまちごうてる!?ちょっと携帯からもう一度試します。 今日はこれ以上覗けないかもしれません。 明日、盗品確認後もしかしたらご報告させて貰うかもしれません。 スレ消費してしまってごめんなさい。 他の方でこの流れに書き込むのを躊躇している方がいらっしゃったらどうぞです。。。。 916 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 20 16 52.33 ID dGSrXSCX 靴をビニールで包んであがるといいよ>汚部屋対策 918 :名前とパンツ ◆0UCCuzzX3g:2011/07/14(木) 20 17 55.74 ID omT3GKny とりてす 919 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 20 20 38.57 ID 6QGf02Sd 918 乙、そのトリでもいいんじゃないかな ゆっくり休んでくだされ 彼氏もお大事に(´・ω・`) 933 :名無しの心子知らず:2011/07/14(木) 20 39 03.18 ID f2qKwY+J この後におよんでも妹甘やかしてる駄目A兄とA母なんだから今後も要注意。 Aの監視とカウンセリング、こどもの名前も示談の内容に入れたらどうだろ。 Aがただの箱入り娘なら基地は振り撒かない。 見た目に騙されたら駄目だよ。 続きはこちら→名前とパンツ女史2 次のお話→お弁当女史(987)
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127 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 03 43 01.40 ID 2HPc1QEF (2/10) ……マジで気が狂いそうだった。 とにかく痛い。 痛すぎる。 激痛なんて日本語は、まさしくこの瞬間のために生み出されたんじゃないかと思えるほどだ。 具体的には、血が滴る傷口に固形物を無理やり突っ込まれて、さらに上下前後左右にえぐられる感じと言えば少しは想像できるだろうか? あまりに酷すぎる痛みの前には人間は無力になると、どこかの小説で読んだが、どうやらそれは正しかったらしい。 この拷問が始まって最初の数分は、痛さのあまり陸揚げされた魚みたく体をのたうたせることもできたが、今ではもう、腕も足も麻痺したかのように力が入らない。 出来ることと言えば、せいぜい歯を食いしばって、眉間が引きつるほどに目を閉じるくらいだ。 もっとも、見方を変えればこの激痛に助けられてるとも言える。 この非現実的な痛さのおかげで、俺はいま、自分の情況を冷静に認知するという、人間として当然の理性の働きから解放されているとさえ言えるのだから……。 「兄さん、誰が目をつぶっていいと言ったんですか? ちゃんと上目遣いに、あたしを見なさいと“命令”してあったでしょう?」 その声と同時に、傷口をえぐっていた固形物の動きが止まり、俺の髪は強引に引っ張り上げられる。 “あたし”という女言葉がまったく似合わない、変声期を経た男の低音ボイス。 それも当然と言うべきか、俺が瞼を開いて最初に視界に飛び込んできたのは、醜く歪んだ嗤いを浮かべる男の顔だった。 もっとも、この男の名誉のために言っておくと、彼はオカマでもゲイでも同性愛者でもない。 何故それが分かるかと言えば、俺はこいつをこれ以上ないほどよく知っているからだ。 いや……もう取り繕っても仕方が無いので、この際ハッキリ言ってしまおう。 眼前にいる男は「俺」――すなわち世間から俺自身と認識されているはずの存在だった。 俺はいまセックスをしている。 もっともそれは、いわゆる恋のときめきとか愛の営みなどといった情感とは完全に無縁な一方的な性行為――つまり、いわゆる強姦というやつだ。 俺はこの男に押さえつけられ、無理やりにチンコを挿入されている。 ……とだけ言えば、完全にホモによるホモレイプにしか聞こえない情況だが、そうではない。 なぜなら、俺の意識はいま女の――妹の肉体に封じ込められているからだ。 そして、妹の体になった俺の処女膜をレイプしているこの男の名は佐藤明――つまり、早い話が「俺」であり、さらに正確に言えばこいつも「俺」そのものではなく、俺と意識を交換した一歳下の妹――佐藤静香なのだ。 「自分の甘酸っぱい“初体験”の相手をちゃんと見なさいよ兄さん。せっかく女の子にしてあげたんだから、こんな一生に一度のイベントでそんなひどい顔されちゃ、殿方に失礼ってもんでしょ?」 そう言いながら妹――の憑依した「俺」――は、そのまま俺――の憑依した「妹」――の唇に、貪るようなディープキスをした。 それが自分自身のものである事を理解しながらも、初めて飲まされる「男」の唾液の気持ち悪さは、吐き気を催させるに充分なものだったが、これ以上こいつを挑発したくない一心で、俺は懸命に我慢し、その汚液を嚥下した。 128 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 03 50 01.15 ID 2HPc1QEF (3/10) 「「「「「「「「「「「「「「「「 俺の妹――静香は確かに“普通”の枠内に収まる女ではなかった。 静香はいわゆる“魔法少女”という存在であったらしく、俺とこいつがいま互いに肉体交換を成立させているのは、もちろん常識的な物理ではなく、静香の非常識な“魔力”とやらのおかげであるらしい。 らしい……というのは、そこら辺の詳細な事情は、こいつの兄である俺も知るところではないからだ。 もちろん俺は、自分の妹が生まれたときからこんな化物じみた超能力を発揮する存在ではなかった事を知っている。 だから、静香がこんなパワーを獲得した過程に関しては、俺は何も知らない。おおかた、どこぞの神か悪魔かフェレットかに貰ったとか、そんなところだろう。 しかし、妹のやつが小学生の頃から玩具めいたステッキを振り回して、近所の爺さん婆さんにお節介を焼いていた事や、クラスメートのトラブルを解決していた事は俺も知ってる。 まあ、こいつがここまでガチの魔法少女だったとは俺も今朝初めて知ったんだが。 もっとも妹が「リリカル~~」さんや「~~マギカ」さんみたく、変身してどっかの誰かとバトルするために魔法少女をやってたんだとしたら、さすがに兄として少しは心配しただろうけど、どうやらそうじゃないらしいという話なので、俺も安心してたんだが。 でも、その、なんだ……そこら辺はどうでもいい。 俺が静香に関して普通じゃないといいたい部分は、そんな“些細”なことではないからだ。 妹が明らかに常軌を逸している最大の点は、俺に向ける異様な情愛だった。 あいつが生まれながらの魔女ではないとさっき言ったが、とはいえ、このブラコン(という言葉で括るには妹の感情はあまりにも攻撃的だったが)に関しても実は、俺はまったく気付いていなかった。 というより、そこまで妹の存在に関心など無かったと言ってもいい。 だから数ヶ月前、こいつから、 「あたし、兄さんが好きなんです」 という、愛の告白めいたカミングアウトを聞かされても、俺としてはどういう顔をしていいかわからず、目をぱちくりさせながら、 「いやいや、何言ってるんだよオマエ、そりゃ人としてダメでしょ?」 と、半笑いで漫才のツッコミめいた拒絶をしてしまい、わんわん号泣されてしまったのだが、しかし当時普通にカノジョさえいた俺からすれば、他にどう答えればよかったのか、今でもわからない。 だからこいつが、その翌日から明らかに俺から距離をとるようになったのも、その方がまあ面倒臭くなくていいかな、とさえ考えていた程なのだ。 そりゃそうだろう。俺にだって気まずさはある。なにしろ俺は、妹をフッてしまった兄なのだから。 事態がおかしくなったのは、その一週間後からだった。 食事の時間にさえリビングに下りてこず、俺を避けていたはずの静香が、その日から全く何事も無かったかのような顔をして俺の前に顔を出すようになった。 それだけではない。 ことさら俺にべたべたとスキンシップを図るようになり、まるで幼児のような無邪気さで俺に甘えるようになった。 俺の登校下校に可能な限り自分も同伴しようとしたり、昼休みに弁当を持って俺の教室に現れたり、夕食時にわざわざ俺のテーブルの隣に座ろうとしたり……等々といった風にだ。 まあ、俺も一度は妹を拒絶してしまった身だ。これ以上こいつの泣き顔を見るのも本意ではなかったし、これでも一応兄貴である以上、人並みに家族愛も兄妹愛も持ち合わせてるつもりだった。 なにより、そんな程度のスキンシップなら、まだ俺としても全然許容範囲だったからだ。 だが……困った事に静香の言動は日増しにエスカレートしていった。 家族として同じ家に住んでいるにもかかわらず、俺の携帯に一日に何十件もメールをよこし、眠れないと言っては夜中に枕を持って俺の部屋に押しかけ、背中を流すといっては俺が入浴中の風呂に乗り込んできたりした。 挙句の果てに、俺のカノジョに嫉妬して暴言やら罵倒やらを吐くようになったとくれば、さすがにもう笑って済ませるわけにもいかない。 129 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 03 51 29.23 ID 2HPc1QEF (4/10) で、言っちまったんだよ。 「もういい加減にしようや」 ってさ。 「これ以上はもうシャレにならんぜ静香。どっちにしろ俺とオマエが結ばれるなんて結末は普通に在り得ないんだから、そろそろ前の俺たちに戻ろうや」 で、挙句がとどめの一言だ。 「ぼちぼち気も済んだろ?」 我ながら酷いことを言ったもんだと思う。 さすがに静香はショックを受けた顔をしてたが、それでも俺は発言を撤回する気にはならなかった。 なぜなら俺は何一つ間違った事は言ってないのだから。 あいつが俺の言葉を聞いて何を思ったかはわからない。 でも、多分泣いたんじゃないかとは思う。 多分……というのは、それから静香は自室に閉じこもったきり出てこなかったからだ。 晩飯も食わず、風呂にも入らず、部屋のドアに鍵をかけて、いくら呼びかけてもアイツは返事一つ寄越さなかったのさ。 それが昨日の夜の出来事だ。 で、今朝目が覚めたら、俺は女に――「妹」になってたってわけだ。 」」」」」」」」」」」」」」 驚いたかと訊かれれば、そらそうだと言うしかないが、それでも実は、前後不覚になるほど動揺を覚えていたというわけでもないんだ。 無論それは俺が鋼鉄の精神力を所有していた――などというわけではない。 たまげた――というより、あきらかに在り得なさ過ぎるシチュエーションに現実感が全く沸かず、なにか悪い夢を見てるような感覚しかなかったからだ。 この身を貫く破瓜の激痛も、むしろ現実感の喪失に一役買ってたと言ってもいいだろう。 だから何が言いたいかといえば、つまり、そんな野郎にパジャマのボタンを引きちぎられてベッドに突き飛ばされたとしても、ここにいたのが普段の俺だったなら当然のように反撃したはずだったってことなのさ。 実際DQNやヤンキーを気取るわけじゃないが、そこまで喧嘩と無縁な学生生活を送っているわけじゃない。十代後半の青少年として当たり前の血の気くらいは持ち合わせているつもりだ。 だがまあ……この体が思ったとおり動かないんだわ全く。 今から考えれば、朝イチの起きぬけってのも原因の一つなのかも知れないが、この妹の体ってのが、さっぱり動かねえ。まるで背骨に鉛でも詰まってるみたいだ。ギニュー隊長のボディチェンジよろしく慣れない体じゃ自由に動けないとか、そういう設定なのかも知れん。 まあ、もともと妹は体育会系の部活もやってないし、スポーツが得意だとも聞いてねえ。 むしろ家でポエムでも書いてるのが似合うようなキャラだと思ってたんだが……よくよく考えれば、俺は静香の事を本当に何も知らなかったんだなと心底思い知らされたよ。 (まあ、普段大人しいやつほどキレれば何するかわからんって言うけどさ) そう思いながら目を開ければ、そこには「俺」に覆いかぶさって懸命に腰を振る男がいる。 まあ、てめえの顔と言ったところで、一日数回鏡越しで見る程度の顔だ。付き合いこそ長いが、クラスメートや部活のチームメイトたちと比べても、さほど馴染みがあるツラというわけじゃない。 そんな見慣れぬ男が、必死にエクスタシーをこらえながら腰を使っているザマは、ある種の滑稽ささえ含んでおり、破瓜の激痛に身を晒しているさなかとはいえ、思わず笑えてくる。 (そういや、アイツとはじめてヤった時も、実際に突っ込んで五分と持たなかったっけな) 一応、カノジョ持ちの俺は、年頃の青少年のサガというか……早い話が童貞じゃない。 まあ、海千山千のおっさんというわけでもないので、何百回も経験があるわけじゃないが、それでも性行為に対する自分の肉体の感度も当然わかってる。つまり早い話が……俺は結構早いし、受けに回ると割と弱い。 だから、この眼前の男が(というか、その「中」にいる静香が)かなりの努力を費やしながら、射精をこらえているという想像が、たまらなく俺の笑いのツボを刺激する。 が、俺のその反応は、静香を必要以上に挑発しちまったらしい。 130 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 03 53 22.74 ID 2HPc1QEF (5/10) 「なによ、その顔……ッッ!!」 その声と同時に頬が張られた。 「何がおかしいのよ!! そんな人を小馬鹿にしたような顔して……兄さん、自分の立場がまだわからないの!?」 いや、わかんねえって。 こんな意味不明なシチュエーションで、冷静に状況判断なんて出来るわけねえだろ。 俺はどこにでもいる当たり前の高校生なんだぜ? 「つーかよ……俺のツラでその口調で喋るなよ……キモさが一周してもう笑うしかないんだよ……」 その瞬間、俺をレイプし続ける「妹」の顔色が変わった。 どうやら俺はこいつをからかい過ぎたらしい。眼の光が怒りから殺意と呼ぶべきものへと変化を遂げる。 「いい加減にしなさいよ……ッッ!!」 その言葉と同時に、正常位で俺に覆いかぶさっていた「妹」の左手が「俺」の首をガッキとつかみ、頚骨も砕けよとばかりに枕に押さえつけて、「俺」の呼吸とおしゃべりを封じてしまう。 いや、こいつの攻撃はそこで終わらない。 さらに残った右手を握り締めると、その拳を俺の鼻っ柱に叩き込んできやがったのだ。 「ふざけないでよッッ!! ふざけるんじゃないわよッッ!! なんで兄さんはいつもいつもそうやってッッ!! あたしの言うことを真剣にッッ!! 真剣に聞いてくれないのッッ!!」 三発目。 四発目。 五発目。 「兄さんがそんなだからッッ!! 兄さんがいつもいつもそんなだからッッ!! あたしはッッ!! あたしはこうするしかッッ!! こうするしかなかったんじゃないのッッ!!」 六発目。 七発目。 八発目。 「こうなったのは兄さんのせいなんだからねッッ!! 兄さんの自業自得なんだからねッッ!! あたしは悪くないんだからねッッ!! 兄さんが!! あたしの告白を笑った兄さんが全部悪いんだからねッッ!!」 ……まあ「中」にいるのが妹であるとはいえ、客観的な絵で言えば、平均的な体力を持つ男子高校生が、一歳年下の女の細首を押さえつけながら、ガチの下段突きを顔面に入れているのだ。 おそらくあと一分その状態のままだったら、俺は多分死んでいただろう。 状況描写が「死んでいただろう」という推測文なのは、俺は結果的に死ななかったからだ。 九発目のパンチを入れたその瞬間、射精をこらえていた「妹」の集中力が途切れたためだろうか……「俺」の膣内にねじ込まれていたペニスが一気に暴発しやがったのだ。 ――どくん!! どくんっ!! どくんっっ!! 「~~~~~~ッッッッ!!!」 眉間に皺を寄せ、歯を食いしばって懸命にエクスタシーをこらえた「妹」は、その後しばし瞑目していたかと思うと、そのまま「俺」の首を絞め続ける左手もろとも脱力し、荒い呼吸に身を震わせながら「俺」の体に覆いかぶさってきた。 重ね合わせるバスト越しに「妹」の心臓の鼓動が、まるで早鐘のように鳴りまくっているのがわかる。 131 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 03 56 01.87 ID 2HPc1QEF (6/10) (よっぽど良かったらしいな) などと冷静に考える余裕が、何故その時の「俺」にあったのか――それはもう、自分でもわからない。 処女膜破れたてのバージンまんこにチンコを突っ込まれて、ピストンされ続ける痛みなどとは全く異質な、直接的な“暴力”によるダメージにさらされ、俺はもう身動き一つ出来ない。 熱いザーメンを中出しされて気持ちよかったかって? それどころじゃねえよ、まったく。 切れた唇や鼻血は当然のこと、歯も何本か折れているだろうし、窒息しかけていた喉や気管も焼け付くように痛む。ぶん殴られた衝撃で脳震盪も起こってたのかもしれない。 が、そのとき俺の頭にあったのは暴力や強姦の痛みではなく(いや、それらの傷も充分痛かったが)たった一つの疑問だった。 ――静香のやつは、俺と肉体を交換した謎パワーを使って、なぜ俺の心を支配しないのか。 ――なぜ静香は、その“魔法”で、俺を自分に惚れさせないのか。 「……そんなことして、何の意味があるのよッッ!!」 その叫びと同時に「俺」の顔面がポッと温かくなり、鼻や唇や口内から痛みがみるみる消えていく。 重い瞼をむりやり開くと、「俺」に手をかざしてピンク色の魔力光を浴びせている「妹」が見える。 これはアレか、ホイミかべホイミか。 「魔法で好きになってもらっても!! 魔法でむりやり好きになってもらっても!! そんなの意味ないじゃないッッ!!」 おいおい、待て待て。 「だからあたしは……だからあたしは、兄さんの心にまでは手を出さないッッ!! 魔法で愛してもらっても、それはあたしにとっても兄さんにとっても――いや、あたしの魔力自体に対しても侮辱でしかないからッッ!! だから断じてそんな事はしないッッ!!」 いや、だからちょっと待てって静香……心には手を出さないとか何かいい台詞っぽく言ってるけど、それでお前が今やってるこの肉体交換の上のレイプって行為が、少しでも正当化できるとでも……。 「でもね……!!」 「妹」の口元がニヤリと歪んだ。 10発近くぶん殴られた顔の傷は、もうほとんど痛みを主張しない。口の中でカラカラ言ってた折れた奥歯もいつのまにか治っていたようだ。どうやら奴のホイミの威力は本物のようだ。 まあ、元をただせばこの顔は「妹」にとっては自分の顔なのだ。明日以降の日常生活に支障が出るような痕をそのままにしておくはずも無いだろう。 だが、こいつがホイミで回復させたのは、あくまで殴打の傷だけだ。 処女をぶち抜かれた内臓を引き裂かれたような激痛に関しては、まったく放置のままだ。 「兄さんにはあくまで、もっともとっと苦しんでもらいます。これからの日常は、今日の処女喪失なんて比較にならないくらい辛くて痛くて恥ずかしい目に遭ってもらいます。その上で兄さんを、あたしに惚れさせてみせます!」 「へ……?」 「兄さんを犯して犯して犯しぬいて、あたしなしでは生きていけない体にしてあげます!!」 妹が兄に告げるにはあまりにも異様な宣言ではあるが、しかし現に俺は、今やこいつに手も足も出ない。おそらく静香がその気になれば、ただの人間に過ぎない兄など、死体さえ残さず消し去る事も造作も無いのだろう。 「…………そっか」 132 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 03 59 11.20 ID 2HPc1QEF (7/10) かすれた声で俺も答える。 ならば、俺にできる事なぞ知れている。 せめて兄としての余裕を気取って苦笑を浮かべながら、気の利いた言葉の一つでも返してやるくらいか。 というより、この状況においてもなお、俺はこの「妹」に一分の恐怖も抱いていなかったのだ。 理由を訊かれれば、やはり静香に対する兄としての信頼があるとしか言いようが無い。 どれほど怒り狂っていようが、やはりこいつが俺に対して、取り返しのつかない真似をするはずが無いという、「家族の絆」とでも呼ぶべき無言の確信があるからだ。現にさっきの撲殺未遂のときも、最後の一線を越える寸前でこいつは俺を解放したじゃないか。 それに何より……俺には、こいつにどんな目に遭わされても仕方の無い理由がある。 俺はこいつを泣かせてしまったのだ。 静香に女性としての魅力を感じていたかと訊かれれば、真顔で俺は首を横に振るしかないだろう。だが、それでも兄として、妹を傷つけた男を許すわけには行かない。たとえそれが「俺自身」だとしてもだ。 だからこそ、安易に許されたいなどと思えるわけが無かったのだ。 「いいぜ……存分にやれよ……それでお前の気が済むならな……」 「妹」の目が、一瞬何かに射抜かれたように動揺する。 だが、さっきの会話で理解したが、こいつは魔法で俺の思考を読める。 俺の本音が静香への贖罪だと瞬時に知った妹は、さらに怒りに口元を歪ませると、 「上等よ……じゃあ思う存分好きにさせてもらうわ……!!」 と呟き、いまだ血まみれまんこに挿入しっぱなしになっているチンコをさらに激しく動かし始める。 (ぐうッッ!!) 再開された激痛に俺は思わず目を閉じ、歯を食いしばる。 いや、それだけではない。 「妹」は、ふたたび掌にピンク色の魔力光を溜め、「俺」の下腹部にそれを押し当てる。 その瞬間だった――。 「ひゃあああああああッッッ!!! なっ、なにこれ……ひぎいいいいいいいいッッ!!!」 下半身から俺の全身に向けて発信されていた激痛が、突如その姿を変えたのだ。 そう、男として知るセックス――射精感の数倍、いや数十倍のエクスタシーが、俺の全身をまるで嵐のように蹂躙し、翻弄したのだ。 生傷を木刀で直接えぐりまわされるような痛覚が、その瞬間に俺自身も未経験の膨大な快感に変換されたのだ。それこそ俺の理性などひとたまりも無かったと言うべきだろう。 「はひっっ!! はあああああああっっっ!!!」 あえぎ声など叫ぶ余裕も無い。「俺」の口から出るのはまさしく悲鳴だった。 もしも今この瞬間、この家の前を通りすがった通行人がいたなら、最悪の場合警察に通報されていたかも知れなかった。俺の声はまさしく理性をなくした者にしか出せない叫びのはずだったからだ。 『どう兄さん? いま兄さんが味わっているのが、いわゆる“女の悦び”というやつよ』 駄々をこねる幼児のように首を振り、息の続く限りわめき散らしてエクスタシーの海で溺れ続ける俺の脳髄に、静香の囁き声がダイレクトに届いてくる。 これもおそらく妹の魔法のなせる業なのだろうが、むろん俺に返事をする余裕などあろうはずがない。 『兄さんが泣いて許しを請うまで痛い目にあわせてやろうと思ってたけど……気が変わったわ。そんな単純な痛みなんかで許してあげない』 そうテレパシー(?)で俺に宣告しながら、「妹」はさらに深くチンコを突き立て、二度目の射精を容赦なく子宮にぶち込む。 133 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 04 01 01.16 ID 2HPc1QEF (8/10) その一撃――というより、まんこ深くに直接ぶち込まれた熱い生ザーメンの感触によって、これまでに倍する快感が俺の意識を襲い、とどめを刺す。 (これがいわゆる“絶頂”ってやつか) (中出しが気持ちいいってのは結構マジなんだな) ……などと考える余裕は、今度こそ無かった。 「~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」 もはや声すら出せず、口や瞼を閉じる事さえできずに涙やよだれを撒き散らしながら「俺」はエビのようにのけぞり返る。 『発狂寸前になるまで追い込んであげる。痛みの何十倍もの気持ちよさでね!!』 その声とともに、俺は意識を失った……。 「「「「「「「「「「「「「「「「「 口から泡を吹き、マラリヤ患者のように痙攣しながら失神した「兄」……いや、自分の肉体を見下ろしながら、あたしはそこで始めて血まみれのペニスを引き抜いた。 その途端、どろり――という形容詞が意図せず浮かぶほどの様々な液体が、あそこからこぼれ落ちる。その光景……というより、その大量の体液が発する臭気に、さすがの私も顔をしかめざるを得ない。 赤いのは初体験での出血として、白いのは二度の射精で排出された精液や、おそらく本気汁というやつであろうか。そして黄色いのはやはり尿なのだろう。気持ちよすぎると失神と同時に失禁してしまうことは珍しくないとレディースコミックに描いてあった通りだ。 魔法で多少は快感を増幅したとはいえ、ここまで自分の肉体が敏感だったとは、さすがに自分のことながら驚かずにはいられない。 でも……、 (あたしと兄さんの体が、こんなに相性がよかったなんて) そう思うと、あたしの心が何か暖かいもので満たされていく。 「$%&’>?”#」 脱ぎ捨てた服からステッキを取り出し、呪文を唱える。 立ちくらみのように目の前が真っ暗になり、次の瞬間、あたしは尻餅をついていた。 (肉体交換って初めて試してみたけど……結構くらくらするんだ) 目を開けてみてみると、元の姿に戻った兄さんは相変わらずベッドの上で失神したままだし、あたしの股間は、それはもうスゴイ事になってる。 なにより、さっき兄さんを失神させたアクメの余韻が、まだ体の芯に残ってる。意識の入れ替わりでそれも大分リセットされたはずだけど、それでもまだ足元がおぼつかないくらいだ。 (はやくシャワーを浴びよう……) そう思って引き出しから新しいショーツを取り出し、お風呂場に向かう。すでに全裸になってしまっていることだし、むしろ早く熱いお湯を浴びないとこのままじゃ風邪を引いちゃうかも知れない。 134 :魔法少女マジカルしずか [sage] :2012/06/05(火) 04 03 22.38 ID 2HPc1QEF (9/10) 股間から溢れるジュースはまだまだ止まらない。 振り返って見てみると、廊下に点々とこぼれた水滴みたいに光ってるのがわかる。 途端に恥ずかしさが溢れて、あたしはステッキを振って雑巾を出し、急いでそれらを拭き取る。 『!”#$%&’(?』 ステッキに搭載された人格AIのレイジューノ君が、魔法で蒸発させればいいじゃないかと念話で言ってくるけど、あたしは無言で首を振る。 この魔法というパワーはあまりにも便利すぎて、使い慣れすぎると日常にちょっと思わぬ支障が出そうなので、あたしはなるべく使わないようにしてるのだ。 もっとも、兄さん相手にこんな使い方ができるなんて、昨日までは思いつきもしなかったのだけど。 (兄さん……) いかんいかん、兄さんのことなんか思い出したら、とてもじゃないけど終わらない。雑巾がけをしながら水をこぼして回ってるみたいな状況になっちゃう。 あたしは構わず浴室に飛び込んでシャワーの蛇口をひねり、熱いお湯を頭から浴びた。 わかってる。 なんで興奮が収まらないのか。 これからのことを思わずにはいられないからだ。 魔法を使うなら、出来るプレイの選択肢はそれこそ無限だ。 二人とも透明人間になって授業中の教室でだって本番ができるし、審議中の国会や公演中のコンサートホールとか、リビングで夕食中の両親の前でだってできる。 あたしのクリをペニスサイズに巨大化させて兄さんのアナルに挿入することだってできるし……いやいや、兄さんの体を人形サイズに縮めて、一日中あそこにバイブレーター代わりに入れっぱなしにすることだってできる。 それこそ、どんな不可能なプレイだって無茶苦茶なプレイだって思いのままだ。なんといっても、あたしは“魔法少女”なのだから。 でも、魔法を使ってあたしを愛させるっていうのだけはNGだ。 そんなことで簡単に終わらせてなんてあげない。 兄さんが心からあたしを愛するようになるまでは、徹底的にやってやる。 その結果、兄さんがどうなったとしても許してなんかあげない。ストレスで心が壊れたら治せばいいし、自殺したとしてもすぐに生き返らせるだけの話だ。 (そうだ……どうせなら、兄さんをもっともっと追い込んでみよう) (兄さんの友達を全員洗脳しよう、みんなが兄さんに嫌うように) (いや、どうせなら兄さんを女にして、その友達全員にマワさせるっていうのもアリかな) (どっちにしろ兄さんのカノジョには、一番ひどいやり方で兄さんを裏切ってもらわないとね) べとべとだった体はとっくの昔にシャワーで洗い流されていたけど、考え始めたら、もう止まらない。 あたしの興奮は、どうやら当分収まる事は無さそうだ……。
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「また会ったな。科学で無知な少年。」 その一声と共に、不倶戴天の敵である尼乃昂焚は姿を現した。 あまりにも予想以上に斜め上の出来事に神谷稜は口に含んでいたジュースを彼に吹きかけた。 「昨日のリベンジをするのは別に構わないが、人にジュースを拭きかけてしまったら、まず言うことがあるだろ?」 「バラの香りがする豆乳しゃぶしゃぶコーラよりはマシじゃねえか。」 稜は片手に1本の閃光真剣を出す。今、昂焚はハンカチで顔を拭っている。完全に無防備であり、絶好のチャンスだった。すぐ目の前であることもあって、彼が気付いて回避する前に閃光真剣で斬ることが出来る距離だ。 しかし、稜は閃光真剣を振らない。 「そのプラズマブレードを振らないのは・・・都牟刈大刀の自動防御の方が早いと判断したのか。だとしたら、良い判断だ。あの戦いだけでそこまで見極められるなら、それなりに場数を踏んでいるとみた。」 昂焚が言っていることは全て当たっていた。閃光真剣がプラズマであることも、稜が閃光真剣を振らない理由も、何もかもお見通しだった。 「それに―――――」 昂焚が稜の腹部を軽く小突く。稜はグフッ!と声を出し、痛そうに腹を抱えてその場に蹲る。 「昨日の戦闘の傷はまだ完治していないみたいだな。これではろくに戦えまい。」 (それでもこうして出歩ける程度まで回復させるから、学園都市の医療技術は恐ろしいな。ニコライが欲しがるのもよく分かる。) 蹲る稜を昂焚は再び見下す。哀れみもある、だがそれ以上に静かな怒りが感じられる。 突如、稜の閃光真剣が屈折しながら伸長し、昂焚の頬を掠める。プラズマ、電荷、電磁波、電場などを精密に計算しなければ自分を殺しかねない非常に高度な攻撃だ。 (ちっ・・・外したか・・・。) 正確には外したわけではない。都牟刈大刀の枝の一つが布を突き破って現れ、剣から発生した電撃によって計算を狂わせ、閃光真剣をずらしたのだ。 「これは驚いたな。随分と面白い隠し玉があたのものだ。」 昂焚は一切回避しようとせず、絶対的な余裕を以って稜を圧倒する。戦闘力もそうだが、精神的な余裕の差も2人には大きかった。昨日の戦いの身体的ダメージと都牟刈大刀が与える恐怖が稜を鈍らせた。 「まぁ、攻撃するからにはその対策を講じさせてもらうがな。」 都牟刈大刀の枝がもう1本現れ、稜の掌に刃を突き刺した。貫通するほどではないが、深々と突き刺さった刃に肉を抉られ、血が流れる。稜はその痛みに悲鳴を上げたかったが、あまりの痛さに声にすらならなかった。 「諦めろ。少年。お前にだって家族や愛する人がいるだろ?次は手加減するつもりは無い。」 「ふざ・・・けんな。諦められるかよ・・・。」 両の掌と腹部の痛みに耐えながらも稜が立ち上がる。満身創痍というほどではないが、身体的ダメージはあるはずだ。稜に警戒し、都牟刈大刀の刃が稜の首元に刃先を向ける。しかし、それに一切動じることはない。その姿は溢れ出る力と勇気を感じさせる。 「お前の信じる正義は・・・そうまでする価値があるものなのか?」 「“己の信念に従い正しいと感じた行動をすべし”」 「・・・・」 「俺は風紀委員だ。俺の信念に従い、俺が正しいと信じたもののために行動する。お前は学園都市のルールを破った。俺の仲間を傷つけた。“俺たち”が信じる正義を否定した!俺がお前を追う理由なんて、それで十分だ!」 「なるほど・・・やはり、君に対する認識は間違っていなかった。」 昂焚は稜の腹部を膝蹴りし、怯んだ隙に彼の髪を掴み、彼の後頭部を背後の壁に打ちつける。 「つまらなくて――――― 頭から血を流し、倒れた稜に追い討ちをかけるように昂焚は彼を足蹴りし続ける。 「無知蒙昧で――――― 憎悪に満ちた表情を浮かべながら、彼の傷ついた手を踏み付け、頭を踏み付け、徹底的に稜に屈辱を与えた。 「見ていると吐き気がする。嫌悪感の塊のような存在だ。」 昂焚は、辛辣で憎悪に満ちた言葉を浴びせかけながら、このまま殺す勢いで稜に無慈悲な暴力を振るい続けた。普段の飄々とした姿など跡形も無い。今、尼乃昂焚という男を善か悪かで判断するのであれば、彼は確実に“悪”だった。 「て・・・・め・・・え・・・」 脳震盪を起こし、朦朧としたまま稜は立ちはだかる昂焚の足に手を伸ばす。しかし、決して届く事は無く、稜は意識を失った。 「随分と彼には辛く当たるのだな。」 稜の元から立ち去ろうとする昂焚の前に双鴉道化が姿を現した。ワイヤーに吊るされているかのように上空からゆっくりと地上に降り立つ。 「覗き見とは趣味が悪いな。いつから見ていたんだ?」 「最初からだ。」 ふふんと双鴉道化は鼻で笑うと、昂焚を通り抜けて稜の前に立つ。 「あれほどまでに感情を露にする君を見たのは初めてだよ。この少年はそんなに君の気に障ることを言ったのか?私には分からなったが・・・」 双鴉道化の問いかけに昂焚は黙秘し、彼から眼を逸らす。答えたくないという意思が表情と態度から読み取れる。その様は反抗期の子どものようだ。黙秘し、相手を困らせることで自分の我が儘を押し通そうとしている。 「黙秘か・・・。まぁ、良いだろう。人間、例え親友でも話したくないことの一つや二つある。だが、君に対する認識は少し変えなければならないようだ。」 双鴉道化は仮面の奥にある眼で気絶している稜の顔を凝視する。 「それにしても、この少年に興味が湧いて来た。」 「は?」 「ポーカーフェイス・・・とまでは言わないが、あまり本心を表に出さない君がここまで憎悪を露にした相手だ。彼の何が君をそうさせたのか、実に興味深い。しばらく、彼を私の管轄下に置いても構わないかい?」 「俺に許可を取ってどうする?それに強欲なる者の頭領なんだろ?許可なんて気にせず、好きなようにすればいい。」 「ふふっ・・・それもそうだな。」 そう言うと、双鴉道化のマントが変形し、巨大な3本指の巨大な腕、いや、鴉の脚のような形状になる。変形したマントが意識を失った稜を鷲掴みした。 「親友として、スポンサーとして、天地開闢計画の成功を祈る。」 そう言い放ち、双鴉道化と神谷稜は大量の黒い羽根に包まれながら消えて行った。 * * * 新作アニメ試写会&姫野七色ライブ 開始まであと2時間 完全屋内のライブ設備を持つオービタルホール。円形のドームの様な構造の建物だ。 日が暮れ始め、太陽が完全に沈みかける黄昏。メインゲートは既に開き、そこにあった長蛇の列はゾロゾロと中に入った。イベントの開始まではまだまだ時間があり、席も指定されているので座席争奪戦をする必要は無い。 オービタルホールの周囲には既に警備スタッフが立ち並び、駐車場のゲートにも既にスタッフが警備に当たっていた。 1台のワゴンと後続のバイク集団が駐車場のゲートに訪れる。 「すみません。ここは関係者専用の駐車場です。パスの提示をお願いします。」 警備服を着た警備スタッフの一人がワゴンの運転席の近くへと向かう。ワゴンの窓が開き、中から大学生ぐらいの男が現れる。 「クラヴマガ警備の学生スタッフです。」 男はそう言って、パスを出した。警備スタッフはそれを受け取ると、スキャナーのレーザーをパスに当ててパスをスキャンする。スキャナーの画面にはどこの所属でどこを担当するのかが表示される。 「あ・・・。申し訳ありませんが、警備の方に急遽変更がありまして、このパスはお通しすることが出来ません。」 運転手の男はふっと笑うと、後部座席の方を振り向いた。 「そうだとよ。お嬢さん。どうする?」 後部座席にいたのは軍隊蟻のメンバー樫閑恋嬢と他数名のメンバー達だった。 「おかしいわね・・・。」 すると、樫閑のスマホに連絡が入る。相手はクラヴマガ警備の部長、軍隊蟻を警備に無理矢理ねじ込んだ張本人だ。 「私よ。」 『突然のことで悪いですねぇ。パス使えないでしょう?』 「ええ。これはどういうことかしら?」 樫閑は少し怒り気味の口調で応対する。 『まぁまぁ、怒らずに聞いてください。あなたからの例の電話があった後、警備員がウチにやって来てね。客の中に指名手配中の逃亡犯がいるって、イベントと警備の全てを睨まれている状態なんだよぉ。そこに前科持ちで武装疑惑のあるスキルアウトを組み込んだら・・・』 「獅子の檻に頭を突っ込む羊ってわけね。」 『はい。そういうことなので・・・・』 「ありがとう。お金はそのまま受け取っていいわよ。今後とも御贔屓に。」 そう言って、樫閑は通話を切った。 「で?どうなったんスか?お嬢。」 樫閑の隣に座る迫華が訊いて来た。 「逃走中の犯人が客に紛れ込んで、会場は警備員の巣窟になっているそうよ。」 「マジすか!?私らヤバいんじゃないすか?」 「まぁ、今回は武装を会場内に持ち込むわけじゃないから、『即☆逮☆捕☆』なんてことは無いでしょうけど、問題は私たちが飛び入り参加ってこと。中に入り込んだ逃走犯を外部へ逃がす手助けをすると疑われる可能性があるわ。」 「で、どうするんだ?」 助手席に座っていた狼棺が樫閑の方に振り向く。 「仕方ないけど、会場入りはナシ。会場の外側、第六学区と他の学区を繋ぐ交通機関とこの学区の宿泊施設を押さえるわ。見張るだけなら許可なんて要らないでしょ?」 「でもこの人数じゃ足りねぇんじゃねえか?」 「一応、来れるメンバーを集めてみるわ。―――――ってことで、色々と尼乃さんを見つけ辛くなったわ。」 樫閑は後方を振り返り、三列目のシートに座るユマと智暁の方を見る。 ユマは黙り込んだまま、顎に手を当てて何かを考えていた。その仕草は高等な教育を受けた者のように感じられ、彼女がかつての恩人から受けた教育・教養の高さがうかがえる。 「昂焚は絶対に中に居る。」 「でしょうね。とにかくここで張り込むしか無いわ。寒いけど、みんな我慢してちょうだい。」 ワゴンとバイク集団は関係者駐車場を離れると、一般駐車場に車を停めた。そして、ホールを囲むように最初に選定された12人のメンバーが配置に付いた。 * * * オービタルホール 警備スタッフ室 そこそこの広さを持つ警備スタッフ室、壁の一面には大量の監視カメラの画面が配置され、監視スタッフがまじまじと画面を見つめている。数人の警備スタッフが椅子に座って休憩を取り、その部屋の端の方でスーツ姿の中年男性が携帯電話で小声で通話していた。周囲の目を気にしながらこそこそとして怪しかった。 「そこに前科持ちで武装疑惑のあるスキルアウトを組み込んだら・・・はい。そういうことなので・・・」 中年男性は通話を切った。 「どなたとお電話ですかな?」 背後から突然声をかけられ、男は「ヒッ!」と似合わない悲鳴を上げる。男が振り向くと、そこにはオールバックの金髪にサングラス、黒い堅実なスーツを着た男が立っていた。その容姿は持蒲鋭盛と瓜二つ・・・と言うより、持蒲鋭盛本人が変装した姿だ。 「か、蒲田さんですか。驚かせないで下さいよ。」 「で、どなたと電話ですか?」 「アルバイトの学生です。指示通り、学生の警備スタッフは退却させました。」 「分かりました。では、今からの警備は我々、警備員対テロ部隊“ATT(Anti Terrorism Tactics)”に一任、クラヴマガ社は我々のサポートに廻って下さい。」 「わ、分かりました。」 蒲田こと持蒲が連れてきたATT。存在するが誰も見たことの無い幽霊部署であり、これは死人部隊が警備員として活動する際に用いる部署の名前である。 持蒲がATTに扮する死人部隊とクラヴマガ社の警備スタッフに指示を出し、警備状況とセキリュティの確認、テロが発生した場合の誘導などの手順を確認する。綿密に何度もそれを繰り返し、1時間以上続いた。 すると持蒲のスーツの胸ポケットが小刻みに震える。 「少し失礼する。」 持蒲が警備室から出て行き、通路に誰もいないことを確認して電話に出る。 「俺だ。」 『持蒲さん。今良かと?』 電話の相手は星嶋だった。 「ああ。構わない。」 『とりあえず、メルトダウナーは出せる状態にしたばい。他の駆動鎧は今も整備中。』 「ああ。メルトダウナーだけでも出せると助かる。他の駆動鎧の整備は死人部隊に任せて、お前は待機。出撃直前まで身体を休めておけ。」 『分かった。あと、岬原は会話できる程度までには回復したばい。』 「そうか・・・。後は、上条当麻の生存が確認できる情報でもあれば良いんだがな。」 すると、壁の向こう側、ホールのメインステージの方から観客たちの拍手と歓声が漏れて聞こえ出す。 「そろそろ時間だ。」 『分かったばい。』 持蒲は通話を切ると、再び警備スタッフ室に戻ってきた。 「ついに・・・始まったな。」 * * * メインステージの方では壇上に主演を務める姫野と他2人の声優、監督とプロデューサーがパイプ椅子に座り、アニメに関するエピソードや収録秘話などを語る。 「そういえば、静香さん収録中に突然、姫ちゃんのおっぱい揉みしだいたらしいですね。俺、その現場にはいませんでしたけど。」 「だって、そこにおっぱいがあるなら揉むしかないじゃない!」 「いやいや、女の子同士でもそれはいけないでしょ。」 「揉まれた時、『これって拒否するべきなのかな・・・でも相手はベテランの方ですし・・・』ってちょっと迷っちゃったんですよね。」 「いやいや、そこは拒否するべきだよ君ぃ。静香くんは常習犯だからね。」 「この前、酔った勢いで僕にドロップキックをかましてましたよね。」 「監督とプロデューサーまで酷い!1日1揉みはちゃんと守ってますよ!」 「毎日やってるんかい!」 「出たー!ツッコミ役に定評のある浩志くんの生ツッコミー!」 「まさか、今日もこのステージで揉むつもりじゃないでしょうねぇ?」 「そこは大丈夫!もう楽屋で思う存分揉んだから!」 男女のベテラン声優と姫野、監督とプロデューサーの軽快なトークにHAHAHA!と笑いが溢れる。ほぼ満席の観客から出て来る笑いと拍手は壮大なものだ。 一般人の中に上手く紛れ込み、尼乃昂焚もトークショーを楽しんでいた。すると、ショーの途中に入場し、彼の隣の空席に一人の男性が座りこんだ。 金髪金目でシャツとスラックスを優雅に着こなしており、イギリス紳士のテンプレートを絵に描いたような優男だ。 「やっと来たか。ショーはもう始まっているぞ。ディアス=マクスター。」 「ついさっきまで計画の準備をしていたのだ。言い出しっぺのお前が呑気に学園都市観光をしている間、我々は通常、1ヶ月かかるであろう工程を2日で済ませたのだ。労いの言葉ぐらいは欲しいものだ。」 「ご苦労様。」 そう言うと、昂焚はディアスに1枚のメモ紙を差し出した。ディアスはそれが何かすぐに理解し、それを受け取ると握ったままポケットに手を突っ込んだ。 『言っておくが、その1ヶ月かかる工程を2日で済ませるための下準備を数年にわたって俺は続けていたがな。学園都市とその周囲の土地の地脈・龍脈、世界の力の流れの向きを観測し、尚且つ土地の建設・開発計画によって生じる流れの“狂い”を計算に入れなければならない。その上、これらの流れの予測方法には――――』 ディアスの頭の中に昂焚の声が直接流れ込んでくる。超能力者で言うテレパシーのようなものだ。これも初歩的な魔術の一種であり、昂焚が渡した紙をディアスが触れ続けることで互いの意思を声に出さずに伝達することが出来る。声を出さなくていい為、会話内容を誰かに聞かれることも読唇術で読まれることも無い。また、騒がしい場所でも滞りなく意思伝達できるメリットがある。 『開口一番(?)で超高度な魔術理論を展開させるな。頭がどうにかなりそうだ。』 『そんなに難しかったか?』 『並の魔術師なら発狂している。私でも理解するのがやっとだ。そもそも、貴様と双鴉道化の魔術の知識量が異常なのだ。貴様はあらゆる宗教の魔術に手を広げる日系魔術師、片や双鴉道化は強欲鴉魔《マモン》によるコピーだ。』 コピーをして、それを扱うということはコピーした対象を“どのようにして扱うか”を理解する必要がある。魔術ならばなおさらの話である。 『まぁ、俺も今の双鴉道化も同じ人から魔術を教えてもらったからな。』 昂焚の口からさらりと日常会話の様に驚愕の事実が放たれる。双鴉道化の素性はイルミナティの中では最上級の極秘事項であり、年齢も性別も誰も知らず、尼乃昂焚のみがその素性を知ると言われている。 そして、ディアスは尼乃がうっかり(それとも意図的に?)言ってしまった極秘情報を聞き逃さなかった。 (尼乃昂焚と双鴉道化の共通点・・・こいつの過去を探れば、もしかしたら・・・) 『ちなみに俺の過去を探っても無意味であることを付記しておく。』 (だろうな・・・。) 『ところで、天地開闢計画の準備はどこまで出来た?』 『ほとんど完成している。後は最終工程だけだ。リーリヤに至っては昨日の内に済ませたらしい。流石は元殲滅白書と言ったところか。』 『なるほど・・・。ご苦労。最終工程は俺がやる。後はこの学園都市で好きにすればいい。』 『言われずともそうさせて貰う。』 そう言って、ディアスは昂焚から渡された紙をポケットから出し、差し出された昂焚の手に置こうとする。 『―――と言いたいところだが、』と言ったと同時に昂焚の手の直前で紙を止め、再び自分のポケットに戻した。 『丸々2日も作業させられたのだ。我々にも天地開闢計画の全容を知る権利がある。』 『じゃあ、ここは魔術師らしく、作業工程から想像してみてはどうかな?』 不敵に笑みを浮かべる昂焚、ここ最近、彼の感情が顔に出ることが多くなったように思える。 ディアスは今までの作業工程、場所、わざわざ学園都市で行う理由、学園都市の外壁に書かされた隠匿魔法陣の宗派などを思い出し、自分なりの答えを導き出す。 (まず作業工程と魔法陣、あれらは錬金術の流れを汲んでいるのは間違いない。彼がひたすらローズと会っていたのもそのためだろう。彼女は優秀な錬金術師だからな。そして、“全ての強欲に終止符を打つ計画”これが重要なワードだ。強欲に終止符を打つということは、強欲が満たされる・・・何もかもが自分の思い通りになるということ。) そして、ディアスは気付いた。わざわざ学園都市を術式の場に選んだ理由はまだ分からなかったが、この都市と所縁のある錬金術が存在する。 『お前・・・まさか黄金錬成《アルス=マグナ》を再現するつもりか?』 黄金錬成《アルス=マグナ》 世界の全てを呪文と化し、それを詠唱完了することで行使可能となる錬金術の到達点。それを実現すれば、神や悪魔を含む『世界の全て』を己の手足として使役する事ができる。世界の完全なるシミュレーションを頭の中に構築することで、逆に頭の中で思い描いたものを現実に引っ張り出す魔術。端的に言えば、自分の思ったことは何でもかんでも現実にする魔術だ。 元ローマ正教の隠秘記録官《カンセラリウス》のアウレオルス=イザードが完成させ、この学園都市で行使したとされている。しかし、現在、アウレオルス=イザードは行方不明になっており、死亡したとも噂されている。そのため、黄金錬成の実現は再び膨大な時間をかける必要がある。 『全然。はずれだな。黄金錬成なんて無理無理。発動に何百年かかると思ってるんだ?その“途中過程”を利用する術式であることに間違いは無いんだけどな。』 『途中過程だと?』 『ああ。錬金術の―――――おっと、そろそろアニメ1話の試写会が始まるから、続きはライブが終わってからな。』 『おい。ふざけたことを言って―――――ブチン 回線の切れる様な音と共にディアスのポケットに入っていた紙はバラバラに千切れて自壊した。ディアスは昂焚を睨みつけるが、そんなことを気にせずに昂焚は新作アニメに釘づけだった。 * * * オービタルホールから少し離れたホテルの一室。豪華絢爛をそのまま体現したルームで双鴉道化はソファーに踏ん反り返り、目の前の戦利品を眺めていた。椅子に固定され、手錠を掛けられた神谷稜の姿だ。彼の椅子を中心として何かしらの術式が張られていた。 「さて、そろそろ起きたらどうかね?」 双鴉道化が指をパチンと鳴らすと、催眠術が解けたかのように稜が眼を覚ます。 「ん・・・あっ!クソ!待ちやが――――って、ここはどこだ?俺になにをするつもりだ?そんで、あんたは誰だ?」 意外と冷静に周囲の状況を把握し、稜は双鴉道化に問いかける。 「熱血漢だと思っていたが、意外と冷静なんだね。あと、手錠を壊そうとしたら君の身体が爆発するから気を付けるように。」 (身体が・・・爆発?) 別に身体にダイナマイトが括り付けられているわけではない。だが、目の前にいる不気味な人物の言葉は異様にそれを信じさせる。同時に稜は昨日、狐月に言われた「君は早急に爆発すべきだ。」というセリフを思い出した。 (狐月・・・。お前の言う通り、俺、爆発寸前だ。) 「とりあえず、君の質問に答えておこう。まず、ここはオービタルホテル。君が倒れていた場所のすぐそばだ。窓の外を見れば分かるだろう?」 双鴉道化が指さす先には巨大な窓があり、そこから第六学区を一望できる。オービタルホールもすぐ目の前だ。 「私の目的は君に興味が湧いたから、少しばかり話し合いがしたかった。そして、私の名は双鴉道化。まぁ、本名でないことは君の頭でも理解できるね?魔術結社イルミナティのリーダーを務めている。」 「魔術・・・結社?じゃあ、あんたも魔術師って奴か?」 稜の反応に双鴉道化は面を喰らった様なリアクションを取る。素顔は仮面で隠れているので本当に面食らった顔をしているのかどうかは分からない。 「驚いたね。学園都市の住人でありながら魔術を知っているのか。」 「昨日戦ったからな。あと、夏休み前にも。」 「ああ。そうか。昂焚なら君に魔術師だって自己紹介してそうだ。さて、今度は私からの質問だ。君の名前と所属を語ってもらおうか。」 「拒否権は?」 「あると思うかい?」 稜は深く息を吐いた。 「神谷稜。15歳。映倫中学3年。風紀委員一七六支部所属。」 「ほぅ、ここの治安維持組織に所属しているのか。だとすれば、君が彼を追う理由は“使命”というやつかね?」 「黙秘する。」 「ここで黙秘か。まぁ、良いだろう。使命とはっきり答えられない時点で察しはついた。君が昂焚を追うのは個人的な理由だろう?おそらく、昨日の戦いで昂焚は危険だと判断され、上位機関である警備員に捜査権が移った。だが、君は命令を無視して昂焚を追った。違うかい?」 稜は絶句した。何もかもをこの人物は言い当てたからだ。図星にも程がある。彼の仮面には人の心理を読み解く能力でも備わっているのかと考える。 「・・・・・・」 稜は再び、答えを拒絶した。これ以上、学園都市側の捜査情報を漏らすわけにはいかない。目の前にいるのは明確な敵であり、そして彼がこのまま自分に何もしない保証は無かった。 「また黙秘か。強情だな。まぁ、良いだろう。やはり刃を交えてこそ語り合えるものがあるということか。」 双鴉道化が再びパチンと指を鳴らすと、稜を拘束していた縄と手錠が解錠され、自由が取り戻される。稜は双鴉道化の対応に戸惑いながらも椅子を囲む術式の陣から出る。 「何故、俺を解放する。お前は、尼乃の仲間じゃないのか?」 「ああ。仲間だ。同時に旧友でもある。」 「俺は諦めるつもりは無いぞ?」 「むしろその方が助かる。ジャンジャンドシドシ彼と戦ってくれたまえ。また新しい昂焚の一面が見れそうだからね。」 稜は静かに舌打ちすると、双鴉道化の動きに警戒しながら恐る恐る部屋から出て行った。そして、部屋から出た途端、どっと大量の汗が噴き出して来た。 (何だ・・・あのプレッシャーは・・・。今まで戦ってきた奴らとは桁違いだ。尼乃って奴よりもヤバい。) 眼の前に敵軍の大将が居たのにもかかわらず、解放された後も彼に刃を向けなかった。風紀委員としての勘が戦うなと告げる。しかし、それ以上に生命としての本能が危険信号を爆発的に出していたのだ。 (駄目だ・・・あいつには手も足も出ない。俺でも・・・ウェイン・メディスンでも・・・界刺得世でも・・・。) * * * オービタルホール メインステージ 大画面に映されたアニメ1話の試写会が終わった。観客の反応はかなり好評だったようで、「今期の神アニメ決定だろ。」「これ切る奴とかアホの極み。」「うぉぉぉぉ!マジでバーニングな展開だぜ!」「おいおい。これから放送までお預けとか拷問じゃねえか。」等の声が上がっている。 客席にいた昂焚もアホみたいに口をあんぐりと開けたまま唖然とし、ただただ拍手していた。 隣席のディアスは凄いことは分かったが、何がどう凄いのかは分からなかった。 するとステージ全体の証明が消え、目の前が真っ暗になる。 『それでは!本日のトリを飾るのは人気急上昇中のアイドル声優、姫野七色!アニメ主題歌の『Next G』をどうぞ!』 ステージに響き渡るアナウンスと同時に観客がウォォォォォォォォ!と歓声を上げ、虹色のサイリウムを持ち出す。昂焚も例に漏れず、隣のディアスにもサイリウムを持たせようとするが、ディアスはそれを拒否する。 ステージのスポットライトが1つだけ点灯し、ステージ上に立つ姫野七色だけを輝かせる。 ぱっちりした目に長い睫毛、透き通るように白い肌の美少女。黒髪のボブスタイルで顔のサイドに垂らしてある房だけ少し長く、毛先が巻かれている。いかにもアイドルらしい衣装を着こなし、手にはマイクを握っていた。 彼女が歌うNext Gのイントロが流れ出す。それと同時に観客たちの高揚感も増していく。 ―――――が、突如、イントロが途切れ、全ての音響がストップする。 観客も、そして姫野本人も戸惑う。 そして、もう一つのスポットライトが点灯し、姫野の隣にいる少女を映し出した。 若干水色がかった銀髪にサイドポニー、柔和な顔つきをした高校生ぐらい少女の姿が映し出される。しかし、その表情は暗く、非常に思いつめていた。 「すげー美人。」 「女神?いや、妖精だ。」 「え?何?ユニットの発表?」 突如現れた美少女を前に観客は戸惑いを隠せず、同様に姫野七色×謎の美少女のユニットを密かに期待する。だが、これがユニット発表で無いことを一番理解していたのはディアスだった。 (あいつ・・・まさか、アリサ=アルガナン!なぜ、学園都市に!?) この状況が全く飲めず、姫野もステージ上で戸惑っていた。 「えっと・・・あなた、誰?」 姫野が声をかけるが、妖精のような少女はそれを無視し、自分が持っていたマイクを握った。 そして、復讐の惨歌は始まった。
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銃弾と人外が飛び交うこのバトル・ロワイアルも2時間が経ち、既にいたるところで殺し合いが行われている。 その殺伐さとこれまで無縁でいられたうちはサスケは、数百メートル離れた警察署を眺めながら思案していた。 (何も起きないと思ってたが、今度はいきなり起きすぎてるぜ。) 冷や汗が頬をつたうのをそのままにして、サスケは気を張る。 また一つ銃声がした。 サスケのこれまでの経過は全て吉永双葉の尾行で言い表せるものだった。 突然に拉致され、謎の生物に殺し合えと言われて、どことも知れぬ森の中に放り出される。まずは幻術を疑い、次に彼が所属する木の葉隠れのなんらかの抜き打ちテストを疑い、最終的に自分が謎の勢力に拉致されたと結論づけた。彼がいた木の葉隠れの里の警戒網を突破してそんな幻術をかけられるのならば、自分を拉致するのもさほど不可能ではない。あるいは考えにくいものの、自分が忍界でも名門中の名門であるうちは一族の末裔ためにどこかの里の陰謀を、そして復讐すると誓っている兄のイタチの関与を疑う。 そこまで考察したところで見かけたのが双葉だった。右も左もわからぬ森では他にあてもなく、ただその場にとどまり続けるよりはマシだと彼女をつけ始めた。その途中で寺の鐘のような音や街を見かけても彼女を追いかけ続けてたのは、惰性によるところが大きいだろう。他に目当てになりそうなものがあっても乗り換えることに恐怖と忌避感があった。これが中忍試験を経たあとのサスケならば、もっと積極的に動いたであろう。しかし今のサスケは波の国での再不斬たちとの戦いから帰ってきて日の浅い頃、まだ命のやり取りをする経験値がかけていた。 しかし、そのサスケが今は双葉の追跡をやめてビルの屋上の物陰から周囲を伺っている。原因は明白である。双葉が入っていた警察署から爆音が聞こえるのだ。 銃というものが皆無と言っていい忍界では、爆発音とは起爆札の存在と同義である。チャクラが無くても使えるそれはどこの里であっても使われるありふれたものだ。当然サスケもその存在は知っているが、そんな彼の下へと聞こえてくるのは『奇妙』な音。銃によって違う銃声というのはサスケからすると不審な起爆札の音として聞こえる。そして必然考えるのは、爆音を立てて戦う忍の存在。わざわざ大きい音を立ててまでの死闘をしているのではと考える。単に銃を持った参加者がいるという以上の脅威をサスケは感じていた。 (写輪眼!) しばらく眺めていたサスケの目の色が文字通りに変わる。赤い瞳には黒い紋様が浮かぶ。うちは一族に伝わる血継限界、写輪眼は類稀な視力と洞察力でサスケは戦場を見渡した。 続く爆音。即座に発生源と思わしき一画を見定める。するとそこから侍風の男が飛び出してきた。別のところではチャクラのような力を2ヶ所で感じる。そこでサスケの目の色が変わった。素早くビルの壁面を駆け下り、一気に走り出す。 目指すのは双葉が入っていった一画や侍らしき男が飛び出してきたのとはまた別の方向。警察署から少し離れた位置の路上へとひた走る。 息せき切って辿り着いたサスケの目の前には、2人の同年代の子供がいた。 「サスケェ!」 「チッ……お前も巻き込まれてたか。」 「だ、誰なん? 知り合い?」 「ああ、コイツがさっき言ってたサスケだってばよ!」 「忍が仲間の情報をペラペラ話すな。」 呼びかけられた声にクールに返しながらも、内心では安堵していた。 その金髪にオレンジのジャージは、まさしくサスケと同じく第七班の忍者、うずまきナルトであった。 (狙われたのは、木の葉の忍か?) 「……面倒な話になったな。お前がここにいるってことは、サクラやカカシもいるかもしれない。」 「? どういうことだってばよ?」 「このデスゲームの主催者は、適当に参加者を選んだんじゃなく、オレたち第七班を狙っているかもしれないってことだ。」 「マジかよ。それムチャクチャヤベえじゃねえか。」 担当上忍であるはたけカカシはともかく、春野サクラは単独で戦うには不安がある。いくら一般人よりは強いと言っても、天才である自分や波の国での意外な活躍を見せたナルトと比べると、直接的な戦闘力では劣るというのがサスケの見立てだ。もっとも世渡りという意味では一番得意そうであるし、なにより意外性がありすぎて何をしでかすかわからないナルトよりも遥かに安心できはするのだが、自分の目の届かない所となるとやはり心配になる。 「それで、ソイツは?」 一旦サクラから離れて棒立ちで戸惑っている少女に水を向ける。「実は……」と話しだしたナルトの話を聞いて、サクラの時とは比にならない頭の痛さをサスケは覚えた。 一般人の子供同士で撃ち合ってしまい幼児が死に、保護してくれそうな侍と出会ったが警察署で戦闘になったので彼女を連れて逃げてきた。話をまとめると、先程警察署から飛び出してきたのは、その侍が敗走してきたからだろう。 明らかにメンタルが通常ではないニ鳥に、危険人物と足止めで戦い逃げることになった五エ門なる侍、もとい五エ門をそこまで追い込んだ銀髪の男。サスケが森をさまよっている間に他の参加者は後戻りが難しくなるほどに殺し合っているらしい。ハッキリと主催者打倒を目指しているわけではないがこれには閉口した。 「……そういえば、その銃っていうのはそれか?」 とりあえずナルト話の中で気になったものについて聞いてみてお茶を濁す。そんなことしてる場合ではないだろうとサスケ自身思うが、子供でも人を殺せる武器というのは知っておく必要があると納得して聞く。 「ああ、ここを引くと。」 そして銃弾がサスケの脇を通り過ぎていった。 「危ねえなドアホ!!」 「ごめんってばよぉ!?」 サスケは思った、やっぱりサクラよりコイツと先に合流できて良かったと。 それはともかく、サスケは改めて銃を見る。なるほど先からやたら聞こえてくる爆音はこれかと理解した。小さな爆発を起こして礫を打ち出す武器だと、写輪眼で見切った。その上で思う。手裏剣で良くないか?と。 手裏剣術を得意とするサスケから見ると、銃というものの不便さが見て取れた。かさばり、音が大きく、臭いもする上に、弾道は単純。速さはスゴいが、これで使い物になるのかと。 それは比較的オーソドックスな忍者の視点だ。特に木の葉隠れのある火の国は森が多く、交戦距離も近い。そういえば波の国でガトーが似たような物を持っていた気もして、サスケから見るとますます忍向きではない武器に思えた。手裏剣を使う筋力が無くても打てそうだが、忍ならば近接戦闘ができる間合いでなければ当たりそうもなく思える。 (さっきコイツが打ち合いになったって言ってたが、コイツもその仲間も当たってないんじゃな。) 真っ青になっているニ鳥を見ながらそう結論付ける。どうやら今のでトラウマをフラッシュバックさせたらしい。パニックを起こされても困るのでどう落ち着かせるかということに思考を切り替えたところで、「なあこれってよ」とナルトの声がした。 このあとすぐにサスケはナルトの意外性に驚かされることになる。そしてそれは、警察署周辺の全ての参加者も同様だった。 一番早く気づいたのは、石川五エ門だった。 ナルトが二鳥を連れて警察署から離脱したことと雪代縁を園崎魅音から引き離すために、戦闘を切り上げた警察署の外に出た彼は、縁の様子を伺うために未だ警察署の近くにいた。魅音からは敵視されてはいるが縁の毒牙にかけさせていいとは思わない。というわけで囮半分怪我半分で飛び出た窓からわざと見える位置で縁の追撃を待った。 想定外だったのは、縁が魅音とも別方向の内部にいた誰かに襲いかかり戦闘になったことだ。それはサスケが見送った双葉と後からやってきた神楽だったのだが、そこまでは五エ門も見ることができず。もう一度内部に突入して助太刀をと考えたところで、視界の端にオレンジ色のものが複数見えた。 「なにっ。」 思わず二度見しかけて目を見開く。そこにいたのは『ナルト達』だった。手に手にライフルを抱えたナルトが計16人駆け寄ってきていた。 ──これさ、これさ、こんだけあるんなら打ちまくれば当たるんじゃね? ──打ってる間に手裏剣でもクナイでも投げられるだろ。 ──だったら一度に何人も打てばいいだろ。 ──オレたち2人しかいねえの忘れてんのかこのウスラトンカチ。 ──だから、人数増やせばいいんだろ! ──影分身の術! それはナルトの四人一組だった。影分身16人で1個中隊を作り、警察署周辺、警察署1階正面、警察署1階裏口、警察署屋上に合わせて4隊を展開、64人からなる1個大隊が警察署へと殺到した。 当のナルトは元の喫茶店までニ鳥を連れて戻り、1個中隊で卍の陣を組み、もう1個中隊を伝令兼増援に、自分を含む1個小隊でニ鳥を護衛する。総数100体のナルトが一度に警察署近辺へと現れたのだ。 「あ、いたぞ! 五エ門のオッチャン!」「大丈夫かー!?」「よし、伝令よろしく!」「オレじゃねえってばよ! コイツ、いやアイツか?」 「お主、いやお主たちは、ナルトか?」 「おうっ! 迎えに来たぜ。」「へへっ、チャクラすんげー使っちまったけど、これなら直ぐ見つかるからな。」「忍術使うチャクラはねーけど、銃なら撃てるからな。」「しょうがねえからオレが戻るってばよ。」 五エ門に元の調子でナルト達は返事をする。その様子に毒気を抜かれるどころか神妙な面持ちを崩さない。 五エ門はすぐに察した。銃を持った人間が突然多数現れる意味を。ナルトの分身術と銃がいくらでもある環境の組み合わせの脅威を。 (もし、ナルトのような忍でなくとも、次元のようなガンマンが分身したら……背筋が寒くなるな……) 次元ほどのガンマンもそういなければ分身できる人間もそういないだろうが、つい想像してしまう。ろくに銃を撃ったことのないナルトでもどこに飛ばすかわからない銃弾と高い身体能力という厄介さがあるのだ。これが確かな技量と戦闘経験のある同じ数のガンマンなら、いかに五エ門といえど無傷で切り抜けられるかは難しい。斬鉄剣を持ってしてもその制空権はせいぜい自分の周囲3mほど。銃撃に手榴弾などの搦手を混ぜられれば十分に危うい。とはいえ、これだけの技に何ら代償がないとも思えない。 「いや、警察署に戻らねばならん。さっきの男が別の参加者を襲っている。」 「大丈夫だって、そっちにも分身送ってるからよ。」 「すさまじい……随分と多いな。」 「まあそのかしあんま長く出してらんないんだけどな。」「チャクラほとんど使っちまったから術使えねえし。」「でもコレがありゃ戦えるだろ。」「だからオレらも着いて行くってばよ。」 時間制限に能力制限と、本来ならデメリットも多いのだろう。しかしそれを打ち消すほどに火力と手数がある。それを産んでいるのは、会場にばら撒かれた銃。主催者はここまで考えてナルトを参加者にしたのかと考えつつ警察署に向かってすぐに、激しい銃声と爆音が聞こえてきた。と同時にナルトの叫ぶ声。警戒を強めた五エ門の目が窓越しにナルトの姿を見つけ、直後にそれが煙に変わった。 「なんだ?」「おい今やられなかったか?」 「来るぞ、気をつけろっ。」 五エ門の言葉通りに、窓から人が飛び出してくる。銀髪に片手に持った番傘。 雪代縁はナルト16人を瞬殺し五エ門の前へと現れた。 警察署周辺のナルトたちが五エ門と合流した頃、警察署1階裏口から突入したナルトたちは、ほぼ同時に2グループの参加者と遭遇していた。 1つは山田奈緒子、天地神明の部屋に隠れていたグループ。もう1つは吉永双葉と神楽、そして彼女たちを殺さんとする雪代縁のグループである。 神楽が足止めする縁から這うように逃げる双葉、彼女がドタバタとした気配に気づき顔を上げ、「なにっ」と同じ顔が4人いることに驚いた次の瞬間、「なんだぁっ」と更に驚愕の声を上げざるを得なかった。 「おい! 大丈夫──」そうセリフを言い終わるより早く、縁の銃弾がナルト×4を射殺した。ナルトの登場で縁も神楽も一瞬意識をそちらに向けたが、敵か味方か判断する神楽に対して縁は自分以外全て敵である。狭い廊下という戦場もあり、適当に掃射するだけで瞬く間に駆逐する。 「な、なんだったんだアイツ……」 「……なんなのねアイツ?」 (何なのだあれは。) 各員が困惑しながらも戦闘は継続する。縁は二度三度の打ち合いで神楽の筋力を察したため倭刀術から銃撃を主体に変え、一方の神楽は後ろの双葉に弾が行かないようにいつでも傘を広げられるようにして戦う。戦況としてはほぼ互角。連戦でわずかに息の上がる縁と、そこそこの距離を徒歩で移動した直後の神楽、自分以外全て敵の縁と、守るべきものを背後に抱えての神楽。一進一退の攻防が続く。その均衡を破ったのは、またもナルトだった。 「行くってばよ!」「ギャフンと言わせてやるってばよ!」「おっしゃぁっ!」 気合いの雄叫びを上げながらまたナルトが現れる。しかし前の二度と違って、縁の背後からだ。 「ホントにナルトじゃねぇカ!?」 今度は神楽の判断が早かった。神楽はジャンプを読んでいるのでナルトを知っているが、縁にとっては妙なトリックを使う西洋人にしか見えない。その差で神楽の突然のグラップリングに対応できなかった。それまで振るってきた傘を手放し両手で掴みに行く。意表を突くその動きにこちらも武器を捨てなんとか捌く縁だが、それは背後に大きな隙を生む。 「サンキュー!」 「ぐあっ……!」 ギリギリでクナイは躱すが、蹴りがパンチが、縁に突き刺さる。一撃入れたら消えていったが、今度は体が振るわれる。手を掴んでのジャイアントスイングの体勢に入られた。 「ふんぬらばあっ!」 グルグルと回していた縁の身体が、それまでの横から縦へと振られ地面に叩きつけられる。これで決める。そう思って振るった神楽だったが。 ドン! 人間が床に叩きつけられて出た音とは思えない音が響く、が、神楽の顔に焦りが生まれた。 叩きつける瞬間に離した手を、縁は即座に受け身へと使った。同時に体勢を入れ替えて脚から落ちる。そして震脚の要領で衝撃を受け止め、流し、拳へと勢いを乗せる。無手での虎伏絶刀勢! 「オオォォォッ!」 「おおおおっ!?」 裂帛の気合いと共に放たれるそれが顎へと突き刺さる寸前で、神楽は両手を重ねて滑り込ませた。ギリギリで間に合ったガードごと殴られ頭が揺れる。しかし、脳震盪をなんとか免れる。かすむ視界で、ナルトが双葉をおぶっているのが見えた。 「やっべ! しっかりつかまれ!」 「逃さ、ムッ?」 「とっとと行くネ!」 先程殺し損ねた少女がまたも現れたナルトにおぶわれ逃される。さっきの3人はこのための陽動かと判断するも武器は無く、駆け出そうとしたところに神楽がまとわりつく。舌打ちをすると、手近にあった消火器を投擲した。それが何なのかも重いということもわからなかったのでこれを神楽に使っても殺しきれないと思ったが、ナルトが脆いことは既に把握済みだ。 「おい後ろ後ろ!」 「え、なにぃっ!?」 まるで砲丸でも投げたような勢いで消火器が飛ぶ。双葉の声で気づいたナルトは、目を白黒させながらも咄嗟に自分の体を盾にした。ボフンという気の抜けた音と一緒にナルトは消え、悲鳴を上げた双葉が投げ出される。これで奴は逃げられない。先に神楽を殺してから次はと算段を立てる縁の耳に、またナルトの声が聞こえてきた。 「悪ぃ、コイツ頼んだ!」 (何人いるんだ?) 痛みにうずくまる双葉が2人のナルトによって廊下の角へと引きずられていき、その横を2人のナルトが駆けてくる。これで警察署1階裏口の16人のナルトは全てだが、縁からすると無限湧きしてくるようにも思える。 (まずはコイツだ。) となると優先順位は完全に神楽が上に来た。羽交い締めされかけたのを倒れ込むことで振りほどき、ナルトへと駆け出す。双葉を引きずっていた2人も加わり4人になったナルトを狙う、というわけではない。欲しいのは、床に転がる神楽の傘。そしてこの位置取り。 手に取り引鉄を神楽に引いた。その威力を知る神楽は咄嗟に飛び退きながら両手を顔の前でクロスさせる。ガードした腕に、そして肩にと弾丸が突き刺さった。 「テメェ!」 後ろからナルトがアサルトライフルを乱射する。予想通りの行動に、縁は顔色を変えることなく体を反転させつつ横へとズレた。そして傘を広げる。これに防弾性があるのは既に把握している。ナルトの乱射した弾丸はその大多数が当たらず、残りも傘で防がれ、そして大多数の弾丸は。 「バッカ野郎ォォォォォォォォォ!!!」 「わっ、悪ぃ!」「撃つな撃つな撃つな!」 大多数の弾丸の何割かは後方の神楽へと向かった。バックステップを続けてギリギリのところで横っ飛び、廊下の角へと飛び込む。その短い間に縁は傘から銃撃を加える、1人また1人と倒されついに16人が全滅した。 だがナルトたちを倒しても縁の動きは止まらない。すぐさまに後ろに向き直り、神楽へと追撃を行おうとする。その視界が赤く塗り潰される寸前、縁は傘を振るった。反射的行動、傘が何かにぶつかる、その正体は、消火器。直後、雄叫びを上げながら迫る神楽が傘ごと窓の外へと縁を蹴り飛ばした。 意趣返し言わんばかりの一撃は、偶然にも五エ門が突き破った窓から縁を放り出す。それでも猫のように空中で体勢を立て直すが、目にした光景にそれまでの無表情が崩れた。 先程辛勝した五エ門、そしてさっきさんざん殺したはずのナルトが待ち構えていた。 「こいつさっきの奴だってばよ!」「みんなやられたのか?」 「チィッ……!」 混乱する声を上げるナルトをよそに突っ込んでくる五エ門に銃撃で足止めしながら警察署内へと退避しようとする。このままでは五エ門に勝ててもハチの巣にされてしまう。狭い廊下と違って屋外では傘のガードなど信用できない。しかし、ああ逃れられない、後ろから叩きつけられた気配に慌てて身を投げ出す。真上を赤いチャイナ服が通り過ぎていった。 「傘パクってんじゃねえぞ銀髪ブタ野郎。今謝るなら半殺しで済ませてやるネ。」 「助太刀しよう。拙者も奴には借りがある。」 「……邪魔ダ。」 五エ門と神楽、2人の猛者を前に縁の頬を汗が伝う。しかしそれでも微塵も闘争心が陰ることなく、戦いは新たな局面を迎えた。 同時刻、警察署1階正面側。 裏手での戦闘に1個小隊が向けられてもなお10人を超すナルト達はライフルを持って探索している。 同じ姿同じ顔の人間が銃を持って練り歩くという光景は、見る者によっては大きな恐怖を感じるだろう。 ましてそれが、つい先程撃ち殺したのと同じ相手ならば。 (なんで? なんで何人もいるの?) (わ、訳がわからねえ……幻覚でも見てるのか?) たまたまほとんど空のロッカーを見つけて、園崎魅音と前原圭一はそこに隠れ潜んでいた。 五エ門の一件で縁の存在に気づいた2人はすぐさま後退し、その後双葉たちと戦いだしたことで山田の回収に向かったのだが、その間にナルト達の突入を受けてしまった。最初は迎撃も考えたが自分たちが殺したはずの顔が何人も現れたことで一転逃げることになり、しかしそれもできずにロッカーに滑り込むのがやっとであった。 狭い空間にぎゅうぎゅう詰めになりながら、魅音と圭一は隙間から外を伺う。何度見直しても死んだはずの人間が10人以上に増えて銃まで持っているのだ。募るのは恐怖と困惑である。 互いの吐息が首筋にかかり、痒みを引き起こしても身動ぎできずに息を潜め続ける。2人とも何らかのトリックなのだろうとは思っている。思わなければやっていられない。これまでの殺し合いであれだけの人数と出会うことすら今までなかったのに、突然二桁の参加者が死人の顔をして現れたのだ。魅音は圭一の、圭一は魅音の心臓の早さで負の感情が煽られていく。 汗でじっとりと濡れた互いの肌が張り付く。無意識の内に互いを抱きしめるように回した腕には、冷たい銃が握られている。またこれを使うべきだろうか? そう考えだした魅音の前でナルト達に動きがあった。1か所に集まって何か話し出す。よく聞き取れないがいくつかの単語はなんとなくわかった。「撃たれた」、「銀髪」、「山田」と。 「山田さん、もしかして……」 小声で呟く圭一に咄嗟に注意しようとして、しかし魅音は無言で圭一と目を合わせた。魅音も同じことを考えてしまう。さっきからの銃撃戦と動けない山田、そして今のナルト達の言葉。「山田奈緒子は殺されたのではないか」と。 荒唐無稽な考え、とは思えない。既に2人の目の前でつい先程銃や爆弾を使った殺し合いがあったばかり。山田も巻き込まれたかもしれない、2人が名を知らぬ侍の五エ門に見つかって斬られたかもしれない、名前どころか姿すらろくに見えなかった縁が投げた手榴弾が当たったかもしれない、なによりナルト達に撃ち殺されたかもしれない、次々に嫌な想像が頭を巡る。 「落ち着いて、今出て行ったらヤられる。」 「わかってるぜ、でもよ。」 小さく言葉を交わす2人の耳にどかどかと足音が聞こえてきた。何があったのかはわからないが、10人ほどのナルト達が揃って駆け出す。実はこの時、縁との戦いの情報が入ったことでのナルト間での話し合いの末に、3個小隊が裏手への増援として向かった。残された4人は1人が本体へと伝令に向かい、残る3人で捜索を再開する。しかしナルト達が部屋から出て行っても魅音達は動けなかった。裏手へ向かったということは山田のいる方へ向かったということ。魅音達としては助かったがむしろ迎えに行くのは難しくなったとも言える。そして直ぐに銃声が聞こえ始めた。 「ダメだ、助けにはいけない。逃げよう圭ちゃん。」 「でも、それじゃあ山田さんが……」 「無理だよ。アイツら、みんな同じ顔に見えるんだ。何か毒を食らったみたい。」 「でも逃げるったって、どこに。」 「大丈夫、着いてきて。」 魅音はしっかりと圭一の目を見ながら言った。暗いロッカーの中でも圭一の顔がナルトでないことを確かめるように。 (忍者にヤクザ、何でもありだな……) 苦笑いするしかない。双葉をナルトから預けられた天地神明はとりあえずお姫様だっこしながら山田の車椅子を押していた。 縁の戦闘音は同じ階にいた2人にも当然聞こえていて。身動きがまともにできない山田がいる以上、その後のナルト達との遭遇も不可避のものだった。 事情が変わったのは、遭遇した裏口から突入したナルト達が神楽の援護に回ったことだ。1人のナルトと自己紹介しているうちにどんどんやられていき、最後には負傷した双葉を押し付けられることになった。 一体誰がこんな展開を予想できただろう。分身する金髪少年忍者にチャイナ服の片言少女、おまけに銀髪のヤクザときた。どう考えても少年漫画にでてきそうなメンツであって少女漫画にはでてこないタイプだ。自分が少女漫画のイケメンのようなキャラだと自覚のある天地からすると、ノリが違いすぎてお近づきにはなりたくない。彼らの中では強みが生かせないのだ。 (ただ、アイツらでも銃で殺せそうなのは幸いだな。不死身の化け物でないならやり方はある。話し合いにさえ持ち込めるのなら丸め込める。) しかしながら、状況の悪さは否めない。迂闊に逃げても流れ弾で死にかねないし、怪我人2人を置いていくのは悪評のリスクもある。それを避けるために口封じしようとすれば更にリスクを負うことになるし、現状としてはあの銀髪ヤクザに死んでもらうしかない。できれば共倒れしてもらいたいが流石にそれは望み薄だろう。 結局のところ、天地は少年漫画と上手く付き合うしかないという結論に達した。あのレベルのチートがありなら、他の参加者にも同レベルの化け物が入る可能性を無視できない。現に警察署に入る前には翼の生えたイケメンが空から降りてくるのも目撃している。だったらまだ話が通じそうな化け物を丸め込む方向で動こう。 (車椅子の美女に気絶した少女、カードとしては悪くない。これを足手まといだと言うような合理的な人間なら、自然と他の参加者から孤立していく。組むなら頭の少し悪いお人好しだな。) 「天地さん、あれ。」 「あれは、またナルトくんたちですね。」 「やばっ、同じ顔が3人に見える。」 「大丈夫です、僕も同じですから。」 【0217 『南部』 繁華街・警察署】 【うちはサスケ@NARUTO-ナルト-白の童子、血風の鬼人(NARUTOシリーズ)@集英社みらい文庫】 【目標】 ●大目標 殺し合いから脱出する。 ●小目標 ナルトと共に春野サクラを捜索する。 【うずまきナルト@NARUTO-ナルト-白の童子、血風の鬼人(NARUTOシリーズ)@集英社みらい文庫】 【目標】 ●大目標 殺し合いとかよくわかんねーけどとにかくあのウサギぶっ飛ばせばいいんだろ? ●中目標 サクラを探す。 ●小目標 ニ鳥を守る。 【宮美二鳥@四つ子ぐらし(1) ひみつの姉妹生活、スタート!(四つ子ぐらしシリーズ)@角川つばさ文庫】 【目標】 ●大目標 生き残る。 ●中目標 あの男子(圭一)を殺す。 ●小目標 忍者? 分身? なんやこの……なんや? 【石川五エ門@ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE(名探偵コナンシリーズ)@小学館ジュニア文庫】 【目標】 ●大目標 殺し合いからの脱出。 ●中目標 二鳥やナルトなどの巻き込まれた子供は守る。 ●小目標 縁を斬る。 【雪代縁@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】 ●大目標 人誅をなし緋村剣心を絶望させ生地獄を味合わせる。 ●中目標 緋村剣心と首輪を解除できる人間を探す。 ●小目標 侍(五エ門)と襲ってきた子供(神楽)を殺す。 【吉永双葉@吉永さん家のガーゴイル@角川つばさ文庫】 【目標】 ●大目標 こんなことしでかした奴をぶっ飛ばす! ●小目標 ??? 【神楽@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】 【目標】 ●大目標 バトルロワイヤルとその主催者を潰す。 ●中目標 病院と首輪を外せる人間を探す。 ●小目標 変態(縁)をぶちのめす。 【園崎魅音@双葉社ジュニア文庫 ひぐらしのなく頃に 第二話 綿流し編 上(ひぐらしのなく頃にシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】 【目標】 ●大目標 生き残る。 ●中目標 家族や部活メンバーが巻き込まれていたら合流する。 ●小目標 警察署から脱出する。 【前原圭一@双葉社ジュニア文庫 ひぐらしのなく頃に 第一話 鬼隠し編 上(ひぐらしのなく頃にシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】 【目標】 ●大目標 生き残る。 ●中目標 山田さんを助けたい。 ●小目標 魅音に着いていく。 【天地神明@トモダチデスゲーム(トモダチデスゲームシリーズ)@講談社青い鳥文庫】 【目標】 ●大目標 生き残る。 ●中目標 信頼されるように努めて、超人的な参加者から身を守れる立ち回りをする。 ●小目標 チート参加者を丸め込んでグループを立ち上げる。まずはナルトだ。 【山田奈緒子@劇場版トリック 霊能力者バトルロイヤル 角川つばさ文庫版@角川つばさ文庫】 【目標】 ●大目標 生き残る。 ●小目標 このトリックは…?
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LOG 1日目・1日目-2 2日目・2日目-2・2日目-3・2日目-4・2日目-5・2日目-6 報酬・Q A・報酬・Q A-2 ▼2日目-5 風の塔 <避難通路を進むと、係員による誘導のランプの光が見えた。その周りには他の避難者達の姿もある。> <避難者達は皆ざわざわと落ち着かないが、誘導する係員の姿もあり、全員が指示に従い風の塔内部から地上へ続く階段を上っていく。> KP(しこん):最後尾にいた皆さんも、階段を上るように指示されます。 宝条 豊(ミナカミ):「……よし、このまま、上って行けば……」 小鳩 アキ(二十日):「はあぁ……地上は安全、かな…」 鍵屋 怜(コトナ):「帰って、これたのか…?」 ハロルド(みちを):「真里亜、外に出られるよ」 <探索者達が階段を上っている最中、ふと横を見ると、地震でひび割れたのか外壁の一部がはがれ落ちていた。 はがれおちた場所には星を象った模様が刻まれているようだ。> 小鳩 アキ(二十日):「……??」星の模様見て KP(しこん):この模様に目星、アイデア、オカルトが振れます。 宝条 豊(ミナカミ):目星振ろうかな ハロルド(みちを):アイデアを。 鍵屋 怜(コトナ):アイディア振ってみようかな… 小鳩 アキ(二十日):じゃ目星いく 柏崎 真里亜(しこん):真里亜はオカルト振りましょう。 KP(しこん):では、皆さんどうぞ。 小鳩 アキ(二十日):そいえば唯一のオカルト持ちだったね… 宝条 豊(ミナカミ):1d100 =90 目星 Cthulhu :(1D100 =90) → 99 → 致命的失敗 小鳩 アキ(二十日):1d100 =80 目星 Cthulhu :(1D100 =80) → 2 → 決定的成功/スペシャル ハロルド(みちを):1d100 =85 アイデア Cthulhu :(1D100 =85) → 95 → 失敗 鍵屋 怜(コトナ):1d100 =55 アイディア Cthulhu :(1D100 =55) → 71 → 失敗 柏崎 真里亜(しこん):1d100 =30 オカルト Cthulhu :(1D100 =30) → 54 → 失敗 宝条 豊(ミナカミ):>>>オチた<<< ハロルド(みちを):くっそwwwwwww KP(しこん):おいオチ担当 小鳩 アキ(二十日):だから!!!オチを!!!!! 宝条 豊(ミナカミ):アキちゃん成功したからええねん 小鳩 アキ(二十日):そして2回目の目星クリティカル 鍵屋 怜(コトナ):ここでオチる宝条さん KP(しこん):ではアキちゃんの目星だけ成功ですね…うん…。 小鳩 アキ(二十日):アイデアも振れない…?(こじき) 宝条 豊(ミナカミ):スペシャルだし……ね? #チラッチラッ KP(しこん):いいですよ。>アイデア 小鳩 アキ(二十日):やった!オチで相殺されなかった!! 小鳩 アキ(二十日):1d100 =75 アイデア Cthulhu :(1D100 =75) → 90 → 失敗 KP(しこん):ワロタ ハロルド(みちを):oh… 鍵屋 怜(コトナ):oh… 小鳩 アキ(二十日):がッ…駄目ッッ…!! 鍵屋 怜(コトナ):しかたないよお… 宝条 豊(ミナカミ):くっそ 宝条で汚名返上してもいいです? ファンブルだしダメ? KP(しこん):宝条さんはファンブルなので…うん…(ほほえ) 宝条 豊(ミナカミ):はい(ほほえ) KP(しこん):代わりにハル君か先生、どちらか振り直ししていいですよ…? 鍵屋 怜(コトナ):じゃあ鍵屋がもう一回はどうかな??(チラッ 小鳩 アキ(二十日):KPのほほえ ハロルド(みちを):じゃあハロルドやる! ハロルド(みちを):どちらか、か。なら数値的に鍵屋先生に任せよう KP(しこん):>アイデア< ハロルド(みちを):アイデアならハロルドか 鍵屋 怜(コトナ):ハロルド君のがアイディア高いぞ!? どっちも振っちゃダメ?(チラッ #乞食 小鳩 アキ(二十日):なにげに一番高いからねハロルドさん KP(しこん):すいません片方だけで…(ほほえ) 鍵屋 怜(コトナ):でもどっちかならハロルドさんだよね!! ハロルド(みちを):1d100 =85 アイデア Cthulhu :(1D100 =85) → 7 → スペシャル ハロルド(みちを):おっ成功! 宝条 豊(ミナカミ):ヒューッ! KP(しこん):ファッ 小鳩 アキ(二十日):いい出目だーッ!! KP(しこん):では、先にアキちゃんの結果から。 鍵屋 怜(コトナ):おめおめ! KP(しこん):模様を観察したアキちゃんは【複雑なそれは何かの魔法陣のように感じられた。】 KP(しこん):そしてハル君。 ハロルド(みちを):はい! KP(しこん):【その印から不思議な力を感じるが、しかしそれが急速に力を失いつつあることに気付いた。】 鍵屋 怜(コトナ):おお…! KP(しこん):また、2人がクリティカルとスペシャルを出したのでオカルト結果も開示しましょう。 小鳩 アキ(二十日):すごいことに気づくなあ…っておお!やったぜ! 宝条 豊(ミナカミ):わぁいKPだいすき ハロルド(みちを):おお、ありがとうございます!やったね! 鍵屋 怜(コトナ):わあいわあい! 小鳩 アキ(二十日):「何あれ。魔法陣?」目を細めて見てます ハロルド(みちを):「…なんだか…力がある。けど…なくなっていってるみたいだ」 ぽつぽつ呟く 鍵屋 怜(コトナ):「…あれが、魔法陣?」とアキちゃんの言葉を聞きながら。 宝条 豊(ミナカミ):「魔法陣かぁ。オカルトやねぇ」 柏崎 真里亜(しこん):「安全祈願…なのかなぁ…」 KP(しこん):2人はその模様を、【おぞましくも邪悪な何かを封印しているものだと感じた。もし土産物…海産物を使ったものを持っている場合は、手荷物のおぞましさのあまりその場で捨てたくなるだろう。】 KP(しこん):(イカタコ案件ですね) ハロルド(みちを):竜宮そうめん捨てなくちゃ… 鍵屋 怜(コトナ):そうめんをゴミ箱へシューット! 宝条 豊(ミナカミ):超! エキサイティン! KP(しこん):ではそうめんをバトルドームのごとく捨てました。 鍵屋 怜(コトナ):吹いた ハロルド(みちを):「…これで何かをとじこめていた…かな」 小鳩 アキ(二十日):「……見てるとすっごく嫌な気分になるわ…あたしらが食わされたタコもあの魚類も地震も…思い出しちゃう、あれ見てると」 小鳩 アキ(二十日):竜宮そうめんとついでにストラップをゴミ箱にシュウゥーッ!超!エキサイティン!! 鍵屋 怜(コトナ):でもあの魔法陣が弱まってたらヤバくない?封印してるのに… 宝条 豊(ミナカミ):「ううっ……気持ち悪いなあもう、一週間ぐらいイカとタコ食べられへん……」 小鳩 アキ(二十日):うみほたる沈没かなあ… KP(しこん):それと宝条さんはファンブルなので、階段踏み外してアキちゃんにボディタッチしよう? KP(しこん):(我欲) ハロルド(みちを):きたっ!!!!!!! 宝条 豊(ミナカミ):やったー!1!!! 鍵屋 怜(コトナ):お?まさかこれは? 小鳩 アキ(二十日):KP!!!!??? KP(しこん):普通に滑り落ちて耐久下げてもいいですが、折角だしこう、ね!! 宝条 豊(ミナカミ):「あーまだ気持ち悪いの抜けへ……ってうおわっ!!」 階段踏み外してアキちゃんにボディタッチだヒャッハーーーーー!! 小鳩 アキ(二十日):「あたしもしばらく海山物はパスねぇーーええぇええ!!?」偽乳か!偽乳つかんだのかー!! 宝条 豊(ミナカミ):偽乳掴めた!? つかめたの!? KP(しこん):幸運どうぞ! KP(しこん):#こいつ 宝条 豊(ミナカミ):1d100 =70 幸運 Cthulhu :(1D100 =70) → 24 → 成功 小鳩 アキ(二十日):成功で殴られる幸運 #とは 宝条 豊(ミナカミ):やったでーーーーー!! ハロルド(みちを):やったぁ成功! 小鳩 アキ(二十日):「元気過ぎか!!!」拳振っていい? 鍵屋 怜(コトナ):「宝条なにやってんだテメェはよお!」 ハロルド(みちを):「!?」 目撃したぞ 柏崎 真里亜(しこん):「!!」 鍵屋 怜(コトナ):拳?拳??? KP(しこん):死なない程度にどうぞ! 小鳩 アキ(二十日):よっしゃ 宝条 豊(ミナカミ):「うおっわっ大丈夫大丈夫! モノホンには触ってへんから! ほら!」 デヘヘー 小鳩 アキ(二十日):「ニセモン言うな!!」 小鳩 アキ(二十日):1d100 =70 言ってない(こぶし) Cthulhu :(1D100 =70) → 2 → 決定的成功/スペシャル 小鳩 アキ(二十日):あっ 宝条 豊(ミナカミ):くっそwwwwwww KP(しこん):ワロタ ハロルド(みちを):あっ 鍵屋 怜(コトナ):「お前わざとか!?」 鍵屋 怜(コトナ):貫通するね… KP(しこん):1d3+1かな?(ほほえみ) 小鳩 アキ(二十日):ボ KP(しこん):貫通しないです>< 鍵屋 怜(コトナ):(知ってた)(でも言いたかった) 小鳩 アキ(二十日):さっき吐いてた宝条さんに腹パンするのかわいそうだから顎にするね>< ハロルド(みちを):ダメージ!ダメージ! 宝条 豊(ミナカミ):「わざとちゃうって! これは事故! わざとやったらもっと人目のない場所でなあ!」 宝条 豊(ミナカミ):脳震盪おこしちゃうよお 小鳩 アキ(二十日):1d3+1 無言で Cthulhu :(1D3+1) → 3[3]+1 → 4 鍵屋 怜(コトナ):アキちゃんの威力が凄すぎてもう鍵屋は見守ってるだけだね。 宝条 豊(ミナカミ):つよい 小鳩 アキ(二十日):>>最大<< KP(しこん):最大値ワロ 鍵屋 怜(コトナ):強いwwwwwwwwwwww ハロルド(みちを):最大wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww KP(しこん):では宝条さんに4のダメージです。 鍵屋 怜(コトナ):wwwwwwwwwwwwwwwwww 宝条 豊(ミナカミ):はい……減らしました……(満足げな顔) KP(しこん):ありがとうございました…KP幸せです…。 小鳩 アキ(二十日):「今度偽乳言ったら喋れなくするわよ」顎掴んで顔近づけてニッコリ 小鳩 アキ(二十日): ※ 言 っ て な い 宝条 豊(ミナカミ):「おぼふっ!」 顎殴られてぐったりしつつ 「はい……調子こいてすいませんでした……」 って謝ろう ハロルド(みちを):「…悪いけど同情できないよ、ホージョー」 軽蔑する目で KP(しこん):ではでは、皆さん階段を登り切りましょう。 風の塔/地上 <階段を登り切り、探索者達は地上に到着した。 風の塔内部から出ると、潮を含んだ風が探索者達を労わるようにそっと撫でた。> KP(しこん):暫く此処で待っていれば、救援のヘリが風の塔にやってきます。今の内に治療や精神分析などしていいですよ。 KP(しこん):夜の屋外ですが、手元が見える程度には明るいので、マイナス補正はかかりません。 ハロルド(みちを):とりあえず真里亜ちゃんを下ろして適当な所に座らせてあげよう。「よくがんばったね、真里亜。えらい」 柏崎 真里亜(しこん):「えへへ…ありがとう、ハル君」 宝条 豊(ミナカミ):「おーっ海の上やー! ヘリ来るまで夜の海の上とかロマンチックやなー!」 鍵屋 怜(コトナ):「宝条……」飽きれつつも、かなりのダメージを負った宝条さんが少し心配になります. 鍵屋 怜(コトナ):「小鳩も大丈夫か?」 小鳩 アキ(二十日):「助かった…はーっ」 小鳩 アキ(二十日):「見ての通り平気」さっき振るった拳を上げてニッと笑います「先生こそ。参っちゃってない?」 KP(しこん):ちなみに時刻ですが。 KP(しこん):夜の8時半くらいですね。 ハロルド(みちを):8時半ねぇ… 宝条 豊(ミナカミ):「マリちゃん大丈夫? 身体はもう動く?」 アキちゃんこわいからマリちゃんに声かけようねえ 小鳩 アキ(二十日):ロールおいしかったけど今更ながら4ダメも出しちゃってごめんね宝条さん…(怯えてるのカワイイ) 鍵屋 怜(コトナ):「…少し疲れた。」と正直に言いつつ「だが、それでもみんな無事でよかったよ。」 鍵屋 怜(コトナ):今のうちに精神分析しようかなあ。けっこうみんな削れてるよね。 柏崎 真里亜(しこん):「はい。まだちょっと痛いですが大丈夫ですぅ」 ハロルド(みちを):「おかげさまで。だから触らなくていいんだよ、ホージョー」 真里亜ちゃんに声かける宝条さんに肩ポンしとこ 宝条 豊(ミナカミ):「そっか。じゃあごめんやけどちょっとこれ、手当てしてもうてもええかな?」 鍵屋先生をチラッと見て 「アキちゃんと鍵屋センセの邪魔すんのもアレやし」 とマリちゃんに医学おねだり 宝条 豊(ミナカミ):ハル君バリア張られてるふええ ハロルド(みちを):今の偽乳タッチでな… 小鳩 アキ(二十日):バリアわろた 小鳩 アキ(二十日):「あははっ…今日は折角先生に羽を伸ばしてもらおうと思ったのに…上手くいかないね」 柏崎 真里亜(しこん):「怪我人は手当しないとですよぉ」 バリアを自分から超えて医学しますね。 宝条 豊(ミナカミ):やったーーーーーーマリちゃん天使やーーーーーーーー!! ハロルド(みちを):天使ゆえに、ちょっと面白くない顔。 柏崎 真里亜(しこん):1d100 =(70+10) 医学 応急キット補正 Cthulhu :(1D100 =80) → 99 → 致命的失敗 宝条 豊(ミナカミ):ワロタ 柏崎 真里亜(しこん):ごめん ハロルド(みちを):あ… 小鳩 アキ(二十日):天使のような ハロルド(みちを):どじっこなんだね!仕方ないね… 小鳩 アキ(二十日):宝条さんが関わる判定は必ずオチがつくシステム 宝条 豊(ミナカミ):女神超空気読んでる 鍵屋 怜(コトナ):「さっきまでのことは無しだ。予想外すぎるだろ。」と言いながら、一呼吸置いて「今日の観光、楽しかったよ。ありがとうな。」 鍵屋 怜(コトナ):ファンブルくっそ吹く 柏崎 真里亜(しこん):「あっ…!!」治療しようとしたらミスをして、自分の手を怪我しました。 KP(しこん):真里亜の耐久に-1です。 小鳩 アキ(二十日):宝条さんが削れるかと思ったら自分の手を…!天使…!!! 宝条 豊(ミナカミ):「わっわっ、マリちゃんいける?」 何故宝条が削れないのか KP(しこん):だって真里亜の技能失敗だし…。 柏崎 真里亜(しこん):「だ、大丈夫ですぅ……」 ハロルド(みちを):「真里亜、無理しちゃだめだよ」 慌ててやめさせますね! 「もう休んで、ね? ホージョーは元気だから。そうだよねホージョー?」 ハロルド(みちを):「ね」 宝条 豊(ミナカミ):「アッハイ僕は元気です」 ハロルド(みちを):「ホージョーは頑丈だよね。すごいよー」 肩ぽんぽん 小鳩 アキ(二十日):「あたしも先生のおかげで楽しかった。…かっこいいとこいっぱい見れたし思い返してみれば映画みたいで…ってのは不謹慎か。ごめん」 小鳩 アキ(二十日):「もう一日休みもらったら?せんせ」って言いつつ、そろそろみんなのとこ戻ろう!精神分析! KP(しこん):あと鍵屋先生が精神分析するのかな? 鍵屋 怜(コトナ):精神分析しよう! KP(しこん):誰に精神分析をしますか? 鍵屋 怜(コトナ):笑顔は一瞬だったと思います。アキちゃんの言葉を聞いて「そうだな。」と、いいつつみんなのところへ戻るよ! 小鳩 アキ(二十日):「さっきはごめんねー宝条くん」顎をツツツと撫でてあげよう「気が立っちゃっててついね。侘びは今度するわ」 小鳩 アキ(二十日):「また触ったら次はないけど」 宝条 豊(ミナカミ):「う、うん、侘び楽しみに……しとくわ……」 顎撫でられて嬉しいやら怖いやら 柏崎 真里亜(しこん):「仲良しさんですねぇ」 柏崎 真里亜(しこん):ほんわかオーラ出しながらアキちゃんと鍵屋先生に精神分析かけますね。 鍵屋 怜(コトナ):お願いします、わあい! 小鳩 アキ(二十日):「そ。飼い主だからね。スキンシップは大事なの」おねがいしまーす!! 柏崎 真里亜(しこん):1d100 =85 精神分析→鍵屋先生 Cthulhu :(1D100 =85) → 54 → 成功 柏崎 真里亜(しこん):1d100 =85 精神分析→アキちゃん Cthulhu :(1D100 =85) → 83 → 成功 ハロルド(みちを):宝条さんにだけダメなこの感じwww 小鳩 アキ(二十日):癒しパゥワー!! 柏崎 真里亜(しこん):1d3 SAN回復→先生 Cthulhu :(1D3) → 2 柏崎 真里亜(しこん):1d3 SAN回復→アキちゃん Cthulhu :(1D3) → 3 鍵屋 怜(コトナ):2人を癒してくれるマリアちゃんマジ天使 柏崎 真里亜(しこん):宝条さんにだけ成功しないのナンデ…? 小鳩 アキ(二十日):宝条さん…あなたの犠牲忘れない… しかも回復値もいいかんじだありがとう! ハロルド(みちを):ただし宝条テメーはダメだ 柏崎 真里亜(しこん):ではほんわかオーラを出しながら二人と対話しました。 小鳩 アキ(二十日):「真里亜ちゃんも無事でよかったー…!怪我人も助けたし立派だったわね」真里亜ちゃんを見ているだけでどんどん癒される~~~~ 小鳩 アキ(二十日):SAN67になりましたった! 柏崎 真里亜(しこん):「えへへ…皆さんが一緒だったお陰ですよぉ」 鍵屋 怜(コトナ):では鍵屋も振ろうかな。マリアちゃんと…鍵屋も2回振っていい感じですよね!? KP(しこん):どうぞ! ハロルド(みちを):「だいかつやくだったね」 にこにこ 鍵屋 怜(コトナ):「柏崎、ありがとうな。」といいつつ振りますー! 柏崎 真里亜(しこん):「ハル君や皆もかっこよかったよ」 といいつつドゾドゾ! 鍵屋 怜(コトナ):1d100 =76 精神分析→マリアちゃん Cthulhu :(1D100 =76) → 22 → 成功 鍵屋 怜(コトナ):1d100 =76 精神分析→アキちゃん Cthulhu :(1D100 =76) → 19 → 成功 KP(しこん):先生めっちゃいい数値じゃないですか… 小鳩 アキ(二十日):先生も…話してるだけで癒される…医者組しゅごい… 鍵屋 怜(コトナ):1d3 マリアちゃん Cthulhu :(1D3) → 1 鍵屋 怜(コトナ):1d3 アキちゃん Cthulhu :(1D3) → 1 鍵屋 怜(コトナ):ごめんね…(顔を覆う) ハロルド(みちを):ダブル1とは… 柏崎 真里亜(しこん):どんまい! 小鳩 アキ(二十日):いやありがとう先生!SANほぼ無傷くらいに回復しました! 柏崎 真里亜(しこん):では真里亜は58になりました。 小鳩 アキ(二十日):真里亜ちゃんがSAN50代で心配だけどこれでいくっきゃないな…! 鍵屋 怜(コトナ):「小鳩、お前もたまには休めよ。無茶ばっかしてると俺も心配だ。」 ハロルド(みちを):先生やさしいなぁ… 鍵屋 怜(コトナ):「柏崎にも本当に助けられた。…将来有望のいい看護師だな。」と会話している感じでしょうか。 小鳩 アキ(二十日):「んふふ、じゃあ一緒に休もっか。遠出はしばらくしたくないから、シロちゃん達とのんびりね」ごきげん 柏崎 真里亜(しこん):「ありがとうございます。えへへ…先パイみたいなお医者さんと一緒の所で働きたいですね」 ハロルド(みちを):【将来有望だってさ】 柏崎 真里亜(しこん):【うん。嬉しい】 小鳩 アキ(二十日):ああぁ^^~~~~~~~~~~~ #もえし 柏崎 真里亜(しこん):イ㌔ ハロルド(みちを):botくそwwwwww 小鳩 アキ(二十日):(かわいいやつらめ…)英語で通じ合う二人をみまもるスパイ 鍵屋 怜(コトナ):「そうだな。家でゆっくりするのもいいもんだ。」と返します。 宝条 豊(ミナカミ):「シロちゃん、鍵屋センセとアキちゃんのお土産貰ったらめっちゃ喜ぶんやろうなー、絶対可愛いわ、うん」 宝条 豊(ミナカミ):「そうなったら鍵屋センセの病院、ほんま可愛い子いっぱいおるから癒されまくるわぁ」 小鳩 アキ(二十日):「モフモフして喜ぶでしょうねー」 進もう! 小鳩 アキ(二十日):「真里亜ちゃんが看護師として来てくれたら大歓迎なんじゃない?せんせ。真里亜ちゃん居たら絶対癒されるもん」 鍵屋 怜(コトナ):「俺としては歓迎だが…、俺の病院は田舎だからな。なかなか若い奴が来たがらねえんだよな.」 KP(しこん):それでは、先に進みましょう。 宝条 豊(ミナカミ):おっおっ <やがて救急ヘリが到着した。そして救急隊と入れ違いに民間人がヘリに乗せられていく。> KP(しこん):ヘリに乗せられるのを待つ間に、皆さんは救急隊員の鮮やかなオレンジの制服とは異なる、【黒ずくめの装備で身を固めた男達】を目にします。 KP(しこん):その【黒ずくめの集団】は救急隊員達とは逆方向、風の塔の内部へと向かう様です。 KP(しこん):内部へ向かう扉は皆さんの近くにあるので、皆さんの方へ向かってるみたいですね。 KP(しこん):そして、皆さんの傍まで来ると、集団の一人が立ち止まりました。 ハロルド(みちを):「…?」 KP(しこん):男「……君達、此処に来るまでに腹部に違和感や痛みはなかったか?」 小鳩 アキ(二十日):(なにこいつら、怪し…) 宝条 豊(ミナカミ):「……?」 日頃の生活上のアレで黒ずくめこわいので警戒 鍵屋 怜(コトナ):(こいつら…救助隊じゃない…?) KP(しこん):男の袖には腕章があり、そこには風の塔の内部にあった模様と同じものが書かれています。 鍵屋 怜(コトナ):「あんたらは医者か?いったいなんなんだ?」 小鳩 アキ(二十日):「どういうこと?食中毒でもあったの?」そらっとぼけて聞いてみよう 小鳩 アキ(二十日):あわよくば言いくるめで情報聞き出し ハロルド(みちを):「あったのは地震だよ?」こっちも明言を避ける KP(しこん):男「いや…何もなければ、いいのだが」 鍵屋 怜(コトナ):「どうしたんだ?詳しく聞かせてくれ」 柏崎 真里亜(しこん):「えっと、そうですね。お腹痛くなったり、動けなくなったりしました」 と言っちゃいます。 小鳩 アキ(二十日):「あ」真里亜ちゃんの反応に 宝条 豊(ミナカミ):「マリちゃん」 KP(しこん):男「君達はあまり触れない方がいい内容だ」と鍵屋先生に言った後、「やはりそうか……」 ハロルド(みちを):「やはりってナニ?おじさんばっかり訊いてずるいよ。ボクらにも何かおしえてよ」 KP(しこん):少し考えた後、男は人数分の小さなお守り袋を渡します。「…この【お守り】を暫く持っておくといい。肌身離さずだ。これがあれば大丈夫だ。」 KP(しこん):男「すまない、知らない方がいい事もあるんだ。君達が此処で何か、信じ難い物の目撃や体験していたなら、早々と忘れた方が君達の為だ」 鍵屋 怜(コトナ):「お守り?」受け取って観察できますか? 宝条 豊(ミナカミ):「お守り……? はあ、ありがとうございます」 お守りなら危ない仕掛けもないだろう、という事で大人しく受け取ります 小鳩 アキ(二十日):「……解決方法を教えてくれたのは嬉しいわ。全然意味わからないけど」不審そうな目でお守り受け取ります ハロルド(みちを):「…?」受け取りつつキョトン KP(しこん):観察していいですよ。 KP(しこん):観察している間に男は風の塔を下っていくでしょう。 鍵屋 怜(コトナ):では観察します! KP(しこん):お守りは小さな布袋みたいです。触ってみると、中に何か硬い感触がします。 小鳩 アキ(二十日):「大量発生したタコとか、ここにあった魔法陣とか、あなたたちが何の団体かも……知らない方がいい事かしら?」 小鳩 アキ(二十日):あごめん下っていくの気づいてなかったwww その前にぽそっと発言してたってことで! 鍵屋 怜(コトナ):「…あの魔法陣。」さっきの服の紋章を思い出しながら「あれはなにかを封印している…、だが、力が弱まっている…。」独り言のように呟きます KP(しこん):中身を取り出してみますか? ハロルド(みちを):あ、見たい 宝条 豊(ミナカミ):見ようかな 小鳩 アキ(二十日):お守りの中身見てみますー 鍵屋 怜(コトナ):見てもいい? KP(しこん):いいですよ。 ハロルド(みちを):「何が入ってるんだろ」 では中身を取り出して見ます KP(しこん):袋から中身を取りだすと、中に入っていたのは白い石でした。 宝条 豊(ミナカミ):「白い石」 KP(しこん):その表面には先程の風の塔や男の腕章に書かれていた模様が刻まれています。 小鳩 アキ(二十日):「何から何までファンタジーだわ…」白い石をつまんで観察します ハロルド(みちを):「…何かを閉じ込めてた紋章と同じ… …なんとなくだけど、持ってていいもののような気がしない?」 宝条 豊(ミナカミ):「何か封印してる魔法陣と同じ模様やし、持ってて悪いもんちゃうやろうなあ」 鍵屋 怜(コトナ):(……。) 情報共有しなかったあのタコのことを思い出しています。(アレが消化されるまでの封印か?)掌で弄びながら KP(しこん):怪しすぎるからと投げ捨ててもいいですよ? 小鳩 アキ(二十日):それやるとSANがごっそり削れるんでしょう?/// KP(しこん):はい。 小鳩 アキ(二十日):ぶっちゃけすぎィ!! 宝条 豊(ミナカミ):捨てないよ/// ハロルド(みちを):大事に持っておくよ。お土産としてもね KP(しこん):時間がその、ね…///// 柏崎 真里亜(しこん):皆が持ってるなら真里亜も持ってます。 小鳩 アキ(二十日):「持ってて具合悪くなったら、あの黒い奴ら意地でも探し出して詳細吐かせる」納得してないけど、とりあえず石はお守りに仕舞います 持ち歩くよ! KP(しこん):じゃあ、全員所持になるかな? ハロルド(みちを):そうですね! 小鳩 アキ(二十日):はい! 宝条 豊(ミナカミ):所持ですね 鍵屋 怜(コトナ):所有しよう。 鍵屋 怜(コトナ):そのタコのことを思い出していたので「取りあえず持っておけ。」と皆に言いつつ「【ファンタジーは本当にあった】、か。成程ね。」と小説の一文を呟きます。 小鳩 アキ(二十日):ここで妹教わろた ハロルド(みちを):いい台詞だ、先生 KP(しこん):では、進みましょうか。 小鳩 アキ(二十日):「帰ったら神部先生に教えてあげよう」進みましょう 鍵屋 怜(コトナ):はい! <探索者達も救急ヘリに乗せられ、青い光に囲まれた風の塔から離れていった。> 【観光バス/8】
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(二日目)12時14分 第一二学区。 周囲には高層ビルが立ち並び、四車線の交通が可能な交差点の真ん中に彼女はいた。四ツ角にはそれぞれ歩道橋があり、中心くり抜いた四角形になっている。高層ビルと歩道の間には植林が立ち並んでいる。 七天七刀が舞う。 甲高い音を立てて、コンクリートの地面が抉れていく。六本の鉄線は、常人の目には映らない程の音速を超えた斬撃となり、『魔神』を襲った。 その斬撃を、『魔神』は音速を超えた速度で回避する。 神裂火織の眼前に、『魔神』は歪んだ笑みを浮かべて現れた。 彼女は反応する間もなく、豊満な胸囲がある胸元に、握りしめられた拳を叩きこまれた。 「――――ッ、ぶごっォオ!」 強烈な衝撃を受けた神裂火織は、五メートルほど吹き飛ばされ、息を整えながら距離を取った。 神裂は意識が薄れつつも、刀を構え、敵から視線を外さない。左手で口元に滴る血をに拭うと、両手で刀を握った。 「うおおおっ!!」 バスタードソードを握りしめた牛深が、大声を張り上げて、『魔神』の頭上にある歩道橋から飛び降りた。 腕力に思い切り力を入れて、一〇〇センチを超す刀剣を、迷いなく『魔神』の頭部に振り下ろす。 だが、 ガキィイン!という音がアスファルトとの衝突によって引き起こされた。長身の男性は、我が目を疑った。眼前に迫っていた『魔神』が視界から消えたのだ。 そして、足が地面に着く前に、彼は『魔神』との再会を果たす。 『魔神』の強烈なキックが、中年男の右頬を的確に捉えた。 剣を振り下ろした反動で猫背になった長身の体は、顔だけ左に仰け反るような格好でアスファルトに着地する。『魔神』の蹴りで意識が跳びかけた男は、体の条件反射ですぐさま立ち上がるが、バスタードソードは手から離れていた。 男は、『魔神』と正面を向き合いながらも、中枢線を晒すような無防備な状態になっていた。 ズンッ!と『魔神』を起点とした半径三メートルほどの円が、アスファルトに亀裂を刻んだ。常人を逸した『掌逓』をくらった長身の男は、約10ほどメートル吹き飛んだ。 枝々が折れる音と共に、植林に身を突っ込んだ男には、既に意識は無かった。 カラン、カラン…と、空しい金属音と共に、バスタードソードはひび割れたアスファルトに落ちた。 『魔神』は足でそれを蹴って、バスタードソードを手にする。 ヒュン!という音がなる亜音速の剣筋は、後ろに迫っていた老人の斧の根本を切断した。 斧の刃の部分だけが、宙を舞った。 一瞬の出来事で呆気にとられた諫早の顔面に、重い右ストレートが直撃する。 意識を失い、膝を着いて項垂れる老人の体躯に、『魔神』は容赦なく腹部に強烈なキックを突き刺した。 『魔神』は放射線を描いて、空を舞う老体を見上げた。 この間、僅か一〇秒足らず。 30メートル程の『魔神』の背後で、ダンッ!と地面を踏みしめる音が聞こえた。 一陣の風と共に、神裂火織は『魔神』との距離を一瞬にしてゼロにした。 『聖痕(スティグマ)』を発動し、斬撃が『魔神』を捉えた。 神裂の魔力が一気に跳ね上がる。 『魔神』はそれをバスタードソードで受け止めた。 ドバァン!と聖人の人間離れした攻撃力が『魔神』の生身を襲った。アスファルトの亀裂はさらに増し、生じた爆風が破片を巻き上げた。 二つの刃は火花を散らせ、ギィィイン!と大きな金属音ともに聖人と魔神は交差した。 一〇メートルほど距離に神裂火織は降り立った。 空中で数回転した刃が、聖人の傍に落ちた。 『魔神』は手元にある剣を見た。 バスタードソードは根本から折れていた。 「……ふむ」 何の感慨もない表情で、『魔神』は折れた剣を見つめていた。 そして、剣として役目を終えた物を『魔神』は捨て去った。無機質な音が鳴り響く。 だが、それは『魔神』だけでは無かった。カランッという音が同時になった。 七天七刀が地面に落ちる。 「ぐぅッ…!」 神裂は膝を折り、肩から血を流していた。 この間、僅か〇,一秒足らず。 右腕に深い切り傷を負った神裂は、腕にチカラが入らず、刀を落としてしまった。 それだけはない。神裂の発動した『聖痕(スティグマ)』は、『魔神』の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』によって強制的にキャンセルされてしまった。 水が噴き出している間欠泉に、いきなり蓋をされてしまったようなもので、神裂の魔力が暴走し、彼女の意識は朦朧としていた。 血が流れ落ちる右腕を無視して、左手で七天七刀を握り、立ち上がった。 こうして意識を保つだけで、彼女は精一杯だった。 その様子を見た『魔神』は呆れた口調を返した。 「『魔王』との余興で、右の肺を潰してしまってな。呼吸が少々苦しいのだ。その余を息一つ乱せないとは、貴様らに殺す価値も見出せぬぞ」 ゆっくりとした歩調で、『魔神』は彼女に近づいてくる。 (…私たちは、ただ…遊ばれている、だけなのですか…いくつもの戦場を駆け抜け、腕を上げてきたというのにっ…!) 天草式は、すでに戦闘不能に追い込まれていた。 『魔神』は右手に宿る『幻想殺し(イマジンブレイカー)』と、体術しか我々に使っていない。だが、それでも翻弄され続けた。 仲間たちは死んでいないが、意識が奪われて倒れている者が半数以上、他も何らかの傷を受け、万全の状態ではない。のらりくらりと策略や攻撃を回避され、確実に的確な一撃を叩き込まれていく。 連携は一〇分も経たずにズタズタにされた。 『魔神』と単体でやりあえる魔術師は聖人である神裂火織しかいない。 しかし、すでに彼女も手傷を負っており、次の攻撃で確実に戦闘不能にされる。 (私たちは…こんなものだったのですか?……私たちは…彼の…足元にすら…及ばなかったのですか?…) 「――――ってください…」 誰かの声が、神裂の耳に届いた。 それは『魔神』の耳にも聞こえたらしく、彼女に近づく足を止めた。 声がした方角を二人は見た。 神裂の四〇メートル程の視線の先には、『海軍用船上槍(フリウリスピア)』に体を預け、必死に立ち上がる少女の姿があった。 着ていた白のジャケットは、所々が破け、黒い汚れが付いている。破れているハーフジーンズはさらに傷みが広がり、彼女の素足は、膝の擦り傷の血で濡れている。 中に着込んでいるネットの黒シャツは破け、ピンク色のブラジャーと、白い素肌の胸が晒されていた。 五和は左手で、顔に付いた汚れと汗を拭い、敵を目視する。 『魔神』を睨みつける五和の眼光は鋭さを増していた。 大きな声が木霊した。 「当麻さんの体から、さっさと出て行ってください!!」 その殺気を感じ取った『魔神』は、何の感情もなく、彼女を見た。 五和の周囲には、数人の天草式のメンバーが倒れていた。 『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を構え、五和は破れた靴を脱ぎ去った。素足でアスファルトに立つ彼女は、大きな深呼吸をした後、言葉を紡いだ。 “Cuando los brillos de fuego, exigiré el agua.…El agua me rodea y me protegerá―――” (我が光り輝く炎を求める刻、我は凍てつく水を求めるだろう――) 神裂はゾッとした。 五和が唱え始めた魔術は、天草式のものではない。 彼女が単体として使う魔術だった。 「――五和ッ!」 神裂の叫びも、彼女には届かなかった。彼女の頭にあるのは、『魔神』ただ一人。 魔術の魔力を感じとった天草式メンバーの一人が、負傷している体を起して、叫んだ。 「五和ちゃんっ!」 “Cuando el agua me exige, exijo el agua!!” (我が凍てつく水を求める刻、凍てつく水は我を求める!) 五和の素足に『水』が巻きつき、水面を滑るがごとく、滑らかな動きで『魔神』に突進していった。 彼女の魔術と同時に、ヒュン!という疾風の攻撃が『魔神』を襲う。 七教七刃。 鋼糸を張り巡らせ、七方向から同時に攻撃するという、彼女が編みだしたオリジナルの技。 速度はますます加速し、五和はさらに言葉を紡いだ。 “Cuando el fuego me exige, exijo el fuego―――” (清らかなる炎が我を求める刻、我は炎を求め――) 両手で『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を一回転させ、上半身を大きく捻った。「突き」の姿勢をなし、氷の上を滑るような動きで、『魔神』との距離を一気に縮めた。 七教七刃は『魔神』を攻撃したが、七つの線撃は『魔神』の足元で消滅した。七教七刃が生じた風が、『魔神』の黒髪を揺らす。 “La llama de la purga pasa por usted!” (清らかなる炎は、全てを浄化する!) ボワッ!と『海軍用船上槍(フリウリスピア)』の矛に炎を纏った槍は、ついに射程距離範囲に入った。 五和は、全身の回転モーメントを注ぎ込んだ一撃を『魔神』の左胸に放つ。 バギンッ! 『魔神』の右手に『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を捉えられ、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』に、練りこまれた魔術の細工ごと、炎は打ち消された。 『魔神』はグイッと槍を翻し、五和のバランスを崩そうとした。 だが、既に彼女は『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を手放していた。 それだけではなかった。五和は『魔神』の視界から消え失せていた。 「っ!?」 『魔神』の目が初めて見開かれる。 そして、 “La llama de la purga pasa por usted!” (清らかなる炎は、全てを浄化する!) 五和は大声で、魔術を唱える。 炎を纏ったナイフを手に、五和は『魔神』の背後に回っていた。素早い動きで身を一回転させ、背中に隠し持っていたナイフを左手で握り、押し込むことを前提とした突きで、右手を柄に添える。 七天七刃と『海軍用船上槍(フリウリスピア)』の二重のフェイク。 完全に『魔神』の後ろを取った五和は、咆哮した。 腹の底から、絶叫する。 「当麻さんから、出て行けぇぇえエエッ!!」 掠れた彼女の声が、『魔神』の耳に届く。 五和は、上条当麻を愛していた。 一目惚れだった。 その恋は、内気な彼女を突き動かしてきた。昔も、そして今も。彼の力になりたいと願い、彼の為に強くなりたいと願い、人に見えない努力を積み重ねてきた。 「浄化の炎」は、邪悪なものを断ち切る魔術。 『魔神』は一瞬で身を翻し、彼女に振りかえった。 襲いかかる五和を見て、『魔神』は心の底から笑った。 炎を纏ったナイフは直進した。 ドスッ! という音が鳴り、五和のナイフは『魔神』の左胸に突き刺さった。 鮮血が顔に飛び散り、五和は驚愕した。 「―――えっ?!」 決死の手段だったとはいえ、自分の攻撃が当たるとは思っていなかった。 水を使う魔術は、かつて対峙したアックアの魔術を見よう見まねで編みだしたものであり、火の魔術はその術式の色彩を「赤」に変えたものである。 短剣から流れ落ちる『魔神』の血を見て、五和の喉は冷えあがった。 それは人間と同じ、赤い血。 人格は違うとはいえ、自分が愛する男の身体を傷つけたのだ。『魔神』の白いYシャツに、赤い血が徐々に広がっていく。 身を焦がしていた敵意は一瞬で消え去り、五和は凍りついた。肉を突き破った生々しい感覚と罪悪感から、身を引こうとした瞬間、 『魔神』は左手で、ドガッ!と五和の頭部を鷲掴みにした。 「うぐっ?!」 彼女は、軽い脳震盪に襲われた。 ナイフは衝撃で引き抜かれ、地に落ちる。 五和の意識が徐々にはっきりしてくる。 そして、眼前には愛しい男の顔が迫っていた。 「…良い目だ。気に入った」 『魔神』が微笑みを浮かべて、五和の顔を覗き込んでいた。 顔は、意中の男性とはいえ、精神はドラゴンに乗っ取られている。 恐怖に心を掬われた五和は、 「ッ!離せ!」 と、蹴りを叩き込もうとしたが、『魔神』右腕が腰に手を回され、胸から下の身体が密着した状態となって、五和の動きが封じられた。 五和は、『魔神』に抱きしめられていた。 彼女と『魔神』の顔の間は数センチの距離で、彼女の吐息が『魔神』の顔に当たるほど、接近していた。 五和はさらに驚く。 意中の男性の顔が、目の前にあるのだ。 戦闘中だというのに、五和の冷静な殺気は失われ、『魔神』は、不敵な笑顔を浮かべたまま告げた。 上条当麻には似つかわしくない、邪悪な笑顔と甘い囁きで。 「余の『僕(しもべ)』になれ。五和」 「――んッ?!」 五和の唇は唐突に奪われた。 熱い感覚が、彼女の口内にねじ込まれた。 ネチュ、という卑猥な水音が五和の思考を奪う。 乾いた唇を潤す、温かいキス。 右腕で彼女の身体は抱きしめられ、左手は彼女の顎を持ちあげ、顔を固定されていた。 五和はパニックに陥る。 彼女はキスをされている。 愛しい男の姿をした『魔神』に。 彼女はファーストキスは、唐突に奪われた。それも恋焦がれた男性の唇に奪われて、予期せぬ形で成しえてしまった。 奪われたのは彼女の唇だけではなく、口内まで蹂躙された。 クチャァ…と、粘着ある唾液を引き、二人の唇は離れた。 茫然自失としている五和の耳に、『魔神』の声が囁いた。 「上条当麻はお前と違う女を心底愛している。そなたに振り向くことなど、一度たりとも無い。そなたの一途な恋心が実を結ぶことなど、決して無いのだ」 「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――え?」 五和は、凍りついた。 そして、目の前が真っ暗になった。 見たこともない風景が映っていた。 自分と上条当麻が仲睦まじく、過ごしていた。 天草式の皆と、笑い合っている。 自分の手と上条当麻の手は指をからめ合って、繋がれていた。 一緒に映画館に出かけたり、 一緒にレストランに出かけたり、 皆に隠れてキスしたり、 二人で夜をベッドの上で過ごしたり、 他の女の子に好かれる上条当麻に嫉妬したり、 天草式のメンバーから二人の熱愛ぶりを冷やかされたり、 恋人となった上条当麻との日々が、目の前にあった。 それは自分が望んだ現実であり、その光景に心が満たされる。 しかし、その幻は一瞬で崩れ去った。 気づけば、五和は暗闇に一人佇んでいた。 (ここは…どこ?) 一筋の光があった。愛しい男の背を照らしていた。 あのツンツンとした髪型は、一日たりとも忘れたことは無い。 「!当麻さ…」 彼女の声はそこで途切れた。 周囲が徐々に明るくなるにつれて、彼が一人ではないことがわかった。 当麻の傍に他の女がいた。 他の女が手をつないでいた。 手を取り合いながら、彼女は当麻に微笑みかける。 彼も彼女に微笑みかける。 彼の笑顔は、自分と一緒にいた時よりも輝いて見えた。 なぜ、隣にいるのは自分ではない? こんなにも好きなのに。 誰よりも好きなのに。 彼の為に、誰よりも努力してきたのに。 彼の為に、可愛くなったのに。 彼の為だけに、尽くしてきたのに。 なんで、自分に振り向いてくれないのか。 五和は、叫んだ。 「…い、……いやああああああああ!!」 「―――――――――――――――――――――っ…―――あっ……」 気づけば、『上条当麻(ドラゴン)』は眼前にいた。 自分の瞳は、涙に濡れていた。 「それはお主が望んだ幻想。だが、それは有り得なかった現実ではない。お主と上条当麻が結ばれる運命は、確かに『在』ったのだ」 五和にはそれが、分かった。 先ほどのビジョンが真実であることが理解できた。 この世に「並行世界」というIFがあれば、自分と上条当麻が結ばれ、愛を語り合えた未来があったことは確かだった。 あのキスの感覚、抱擁された時の感覚。 愛の温もり。 芯から蕩けるような幸福の感情。 在ったことなのだ。 自分が、もうちょっと手を伸ばしていたなら、 もっと積極的に接していれば、 上条当麻と少しでも長く傍にいれば、 彼は私を見てくれた。 愛してくれた。 「……あ、ああ…ああ…あ、あああーっ……」 涙が止まらない。 感情が制御できない。 上条当麻が、御坂美琴を選んだことを知った時、自分は諦めると思ったのに。 あの時、彼を慕う人たちと一緒に思いっきり泣いたのに。 この涙は、まだ枯れていなかった。 彼女の涙を、『魔神』はそっと拭った。 愛しい男の顔が眼前にある。そして、甘い声が彼女の耳に囁かれた。 「『余』はお前を愛してやる。この身に抱かれることを光栄に思え」 もう一度、『魔神』は五和に唇を重ねた。 舌を入れ、彼女の口を再び蹂躙する。熱い感情が五和に湧き上がり、脳内を揺らすほど刺激する。 涙はそれでも止まらなかった。 だが、徐々に冷え切ったに生ぬるい温度が満たされていく。 何度も、彼女に濃厚なキスが襲ってくる。それを成すがままに五和は受けいれていた。 熱い。 温かい。 …欲しい。 手に入らなった愛情が欲しい。 彼女は、『魔神』の甘美な囁きに耳を傾けてしまった。 五和は自らの意思で、『魔神』の舌に、自分の舌を絡めた。 神裂火織は眼前で起こっている現象に絶句していた。 五和は『魔神』と唇を貪り合っていた。 だが、彼女が注目しているのはそれではない。 『魔神』の右肩から生えている巨大な『何か』だ。翼のような、腕のような…このようのものとは思えない、不思議な物質だった。 四本の長い指先のような先端から、一本の毛糸のようなものが出ており、それが五和の頭に繋がっていた。 五和は『魔神』に抱きしめられて、その異様な物体が見えていないだろう。 神裂火織は『それ』を『識』っていた。 この世全ての万物を操り、変換し、願望通りに物体を作りかえる神の領域の力を持つ腕。 かつて『神の右席』の『右方のフィアンマ』が所有していた、『ドラゴン』の一部。 『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』。 あの腕のせいで、『禁書目録(インデックス)』や自分たちがどのような被害をこうむったか、神裂の脳裏にまざまざと蘇った。 その事件は、「科学」と「魔術」との戦争の芽となり、「ドラゴン」が覚醒を始めることとなる事件だった。 彼女は力一杯に歯を食いしばり、唇を噛み切ってしまった。 「ドラゴンッ!!貴様、何をしているッ!!五和から離れろォォおおお!!!」 七天七刀を握り締め、神裂火織は何の考えもなしに突進した。 アスファルトは聖人の脚力で蹴り砕かれた。『聖痕(スティグマ)』を発動し、魔力を爆発させた。 石柱すら一刀両断する刃は、『魔神』を捉え、右腕の傷から血が飛び散ることも恐れず、両手で刀を握り、『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』の一指を斬り落とした。 『魔神』は五和から体を離すと、常人離れした脚力で跳び上がり、歩道橋の手すりに足を止めた。 斬り落とされた指と五和の頭に繋がっていた糸は霧散し、『魔神』の右肩から生え出ていた『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』はゴキゴキという音と共に、『魔神』の身体に潜り込み、その姿を消した。 神裂の腕に、五和は倒れこんだ。 傍には、術式が打ち消されたナイフと『海軍用船上槍(フリウリスピア)』が転がっている。 神裂は射殺しかねない視線で、『魔神』を睨みつける。 「ドラゴンッ!!五和に何をしたあああああああああ?!」 左手で七天七刀を振りかざし、太陽を背に立っている『魔神』に吼えた。 Yシャツの左胸あたりが血で赤く染まっており、『魔神』は唇をそっと舌で舐める。 不敵な笑顔を取りつくろい、神裂火織の神経を逆なでする口調で、 「何を言っている?貴様も見ていたであろう?余は、五和を余のモノにすると決めただけだ」 「ふざけるなっ!お前はただの下種だっ!神を名乗る資格も無い!」 「ふはははははっ!余は神を殺すための神だ。それ以外の義務は無い。人を殺そうが犯そうが蹂躙しようが所有しようが、余の気まぐれだ。余はその人間が気に入った。それだけだぞ?聖人よ」 神裂火織の頭は激怒で沸騰した。 『竜王(ドラゴン)』は神でも、例外中の例外であり、神を殺す権限と能力を与えられている『怪物(カイブツ)』である。 人には災いや破壊を齎す神でもあるが、それは邪悪なものにしか適応されない。偉人を導き、絶大な力を宿し、世に平定を齎す象徴ともなる神でもあるのだ。 だが、強すぎるがために人に畏怖され、そして、肉体をバラバラにされ、人間に封印された。 よって、人間という『穢れ』と『強欲』を知った『竜王(ドラゴン)』は、ただのカイブツに成り果てていた。 その原因が人間であり、人間はその罪を忘れて、ただ『竜王(ドラゴン)』を恐れていたのだ。真に罪深き者は人間である。 だが、神裂火織は『識』らない。 『魔神』は怒りに身を焦がす聖人を見据え、笑いながら、 「聖人よ。貴様は何か勘違いをしていないか?」 「ッ!!どういうことだ?!」 『魔神』の言葉に嫌悪感すら覚える彼女に、冷静な思考はとうに失われている。 心にあるのは、『魔神』に対する憎悪と、仲間を想う情のみだ。 (ちっくしょうッ!これ以上仲間を失ってたまるか!建宮も、対馬も、香焼も死なせて、私はッ!皆を守るためにここにいるのにっ!私の為に天草式があるんじゃない!天草式のために私がいるんです!) 神裂は自分の弱さと激情に駆られ、瞳には涙すら貯めていた。 『魔神』は顔を歪ませる神裂を笑いながら見つめ、 告げた。 「五和は、自ら余のモノになることを受け入れたのだぞ?」 ドスッ… 鈍い音が響いた。 赤い血の斑点が、アスファルトを濡らし始めた。 数秒、神裂は反応が遅れた。 「か――――はっ…」 彼女は、目の前の現実が受け入れらず、途切れ途切れに声を吐いた。 なぜなら、 彼女の腹に、 五和が『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を突き刺さしていたからだ。 喉から込み上げた血を手で抑えながら、神裂は呟く。 「……五、和?………何…をっ?…」 「なに、余に籠絡されただけのことだ」 『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を神裂の腹部から引き抜いた五和は、立ち上がって無機質な瞳で彼女を見つめた。 大量の血が流れ出る腹部を抑え、神裂火織はアスファルトの上をのたうった。 「きゃあああああああああああああああああああ!!」 「プ、『女教皇(プリエステス)』様ぁああ!」 「五和ぁあ!お、お前何をッ?!」 他の天草式十字凄教のメンバーはその光景に目を疑った。 ある者は悲鳴を上げ、またある者は言葉を失ったまま、茫然としているだけだった。 『魔神』は高らかに声を上げる。 「ふはははははははははははっ!良い!実に素晴らしい!五和!なかなかに愉快な景色ぞ!誇るがよい!」 ぺたぺた、と五和は素足でアスファルトの上を歩き、『魔神』が立っている歩道橋の下まで近寄った。彼女は『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を捨て、『魔神』を見上げた。 「ハイ…当麻、様」 無感情な五和の返答は、『魔神』をさらに悦ばせた。 「ふはっはっはっ!意識を嫉妬と欲望に流されながらもそれでもなお、上条当麻に恋焦がれるか!なんとも色欲に素直な人間か!だがそれで良い。それこそ人間のあるべき姿だ。気に入った! これは神の加護ぞ!心して身に受けるがよい!」 『魔神』の背中から白の翼が発現する。4メートルほどの大きな片翼が、五和の体を覆い尽くした。 翼の形をした『何か』は、外形を崩し、白い液体のような粘着性を持ったモノへと変貌した。グチャグチャと音を立てながら、五和を包み込んでいく。 フワリと、その『何か』地面から浮き上がり、『魔神』と同じ高さまでになると上昇を止めた。ボタボタと白い液体が垂れ落ちるが、みるみる硬化が始まり、楕円の繭のようなものが形成された。 全長は三メートルをで、幅は二メートルほどある。 歩道橋の手すりから『魔神』は離れ、ゆっくりと浮遊し、白い繭に近づいた。そして、『魔神』は右手を触れる。 パリンッ。 ガラスが割れたような音が鳴り、『魔神』の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が反応した。 白の繭に亀裂が走り、その隙間から強烈な光が漏れだした。 辺りは眩い光に包まれた。 太陽の光を浴びた羽が舞い降りる。 天草式十字凄教のメンバーは奇怪な現象に目を疑った。 「なんだ?…これ」 周囲が光に包まれ、五和や神裂火織の様子は分からない。ただ、無数の羽のような白い物体が空から降り注いでいることが分かった。傷ついた仲間に手を貸している者が多くいる中、一人がその羽のような物体を掴もうとして、 「熱っ?!これ、ただの羽じゃないぞ?!」 ジュウッ、と音を立てて掌に火傷を負った。 他の天草式のメンバーも被害を受けて、急ぎ早に物陰に避難した。 羽のような物体は、人間や植物には被害を及ぼすが、アスファルトや鉄で出来た信号や歩道橋には全く変化が見られなかった。まるで雪が解けるように霧散していく。その神秘的な光景に目を奪われつつ、天草式十字凄教のメンバーは『魔神』の方角に目をやった。彼は言葉を失った。 天使。 左胸のあたりを赤く血で濡らしたワイシャツを着て、両手を黒ズボンのポケットに入れている一人の『魔神』と、同じ高さに浮上している『天使』がいた。 白のローブを身に纏い、金色のラインが入った純白の甲冑を着ていた。銀色の金属ブーツが光沢を発していた。無機質な紫色の瞳を宿し、紫色の髪を靡かせている。 背中には大きい白の翼が生えていた。 天草式十字凄教のメンバーは息を飲んだ。 「………五、和?」 ガチャン!と白い繭は地面に落ちて、割れた。 空に浮かび、繭から生まれた『天使』は五和の容姿をした少女だった。 二重瞼が特徴的な瞳に、肩にかかる長さのショートヘアーをした容姿は、五和そのものだ。だが、彼女の表情に、感情は宿っていない。 『天使』は右腕を水平に突きだした。 彼女の周囲に散乱していた羽が急速に集まり、純白の槍を形成する。 少女の全身の二倍ほどある翼が動き出し、槍を天草式の人々に入る方角に向けた。 空気が戦慄する。 一帯を覆い尽くしている羽が、一斉に天草式のメンバーに襲いかかった。 「―――――――ッ!!?」 吹雪のように降り注ぐ白の無数の羽。 咄嗟に武器で身を防ごうとするが、間に合わない。 生物の肉体のみを焼き尽くす羽は容赦なく、彼らに向かっていった。 それは彼女も例外では無い。 交差点の中心で倒れていた神裂火織は、穴が開いた腹部を抑え、仰向けにその光景を見ていた。彼女は朝日に照らされる『天使』と『魔神』を見つめ、茫然としたまま死を悟った。