約 1,243 件
https://w.atwiki.jp/moedra/pages/222.html
翌朝、あたしはまたガチャリという入口の扉の音で目が覚めた。 だが今度は丁度扉を開けたところだったようで、朝食の豚を届けにきた人間と思わず目が合ってしまう。 「おはよう。昨日は楽しかったかい?」 至極当然のように人間にかけられた声に驚いて、あたしは言葉に詰まった。 そんな硬直したあたしを優しげな目で見つめながら、人間が1頭、2頭と豚を部屋の中へと運び入れている。 「は、はは・・・そうだな・・・まだ慣れるわけないよな・・・」 急に照れ臭そうに笑いながら言った彼の言葉は、あたしにはどこか自虐的に聞こえていた。 きっと彼は、もう1人いた別の人間とは違ってあたしをここに連れてくることに乗り気ではなかったのだろう。 この部屋へ向かって建物の中を歩いている時にも、彼があたしに向ける視線には常に同情というのか、ある種の後ろめたさのような感情が見え隠れしていた。 「じゃあね。今日はゆっくり休んでくれよ」 そう言いながら人間がガチャリと扉を閉めると、部屋の中に元の静寂が戻ってくる。 あたしはふと背後で寝ていたお姉さんの方を振り返ると、その赤毛に覆われた大きな体を揺すった。 「お、お姉さん、起きて」 「ん・・・どうしたの?」 「今日はその・・・外には出ないの?」 本当に今の今まで熟睡していたようで、お姉さんがさも眠そうな顔で半分だけ目を開ける。 昨日のように人間達と触れ合うことを密かに楽しみにしていたあたしは、思いがけず人間に言われた休んでくれという言葉の意味をお姉さんに尋ねていた。 「ええ、そうよ・・・今日は週に1度のお休み・・・どうして?」 「え?・・・う、ううん・・・何でもないの・・・」 何となく楽しみを奪われてしまったような気がして、あたしは再び眠りについたお姉さんを尻目に自分の分の食事を摂ると藁の上にパタッと倒れ込んだ。 正直、他にすることが見当たらない。 かといってもう1度眠る気にもなれず、あたしは悶々とした気分で何度も床の上をゴロゴロと転がっていた。 「う、う~ん・・・」 やがて午後になると、天高く昇った太陽が天窓から鋭い光の束を部屋の中へと突き刺し始めた。 その眩い光線を顔に直撃され、お姉さんが低く唸りながら寝返りを打つ。 お姉さん・・・休みの日はいつもこうして1日中寝ているのだろうか・・・? 日の当たらない部屋の隅で度々大きな体を翻すお姉さんの様子を観察しながら、あたしは小さく苦笑した。 そう言えばあたしも、することがない日はお母さんと一緒に1日中洞窟の暗がりの中で寝てばかりいたような気がする。 その時、再びゴロッという音とともにお姉さんが寝返りを打った。 だが途中で尻尾の付け根がつっかえたのか、完全には転がり切れずに仰向けで床の上に手足を広げている。 そして偶然こちらへ向けられていた両足の付け根の間に、あたしは赤い長毛で隠し切れなかったお姉さんの秘裂を見つけてしまっていた。 ぷっくりと膨らんだ真っ赤な唇がヒクヒクと戦慄いている様子を目の当たりにして、思わず自分はどうなっているのかと股間へ目を向けてしまう。 まだ幼いあたしの股間には、桃色の体毛に紛れるようにして薄く赤みがかった小さな割れ目が走っていた。 そして指の先から引っ込めていた爪を伸ばし、恐る恐るその割れ目を広げてみる。 クチュ・・・ 「わっ・・・」 きつく閉じていた膣が爪で押し広げられて口を開けた途端、淫らな水音が体内に弾ける。 その音に驚いて、あたしは爪の根元まで侵入させていた指を慌てて引き抜いた。 微かに、気持ちよかったような気がする。 これまで他の誰かの膣を見たことなどなかったせいで気にも止めたことはなかったというのに、あたしは急にこの雌の象徴が将来どうなるのかということに興味を掻き立てられてしまっていた。 サクッ・・・サクッ・・・ それがあまりよくないことだと本能で知っているのか、あたしは足音を殺しながら仰向けで眠っているお姉さんに近づいていった。 そしてお姉さんの両足をそっと左右に開き、これ以上寝返りを打てないように足を藁の上へと押し付ける。 そんなあたしの目の前で、お姉さんの大きな花びらが半分ほど口を開けてヒラヒラと揺れていた。 ムンとする甘い香りが鼻をつく度に、あたしの理性がゆっくりと溶かされていくような気がする。 「すごい・・・」 感嘆とともに吹き出したあたしの鼻息に反応したのか、お姉さんの膣がキュッと収縮する。 それと同時に、あの甘い香りを放つ桃色の愛液がトロリと淫唇の端から滴り落ちた。 ペロッ 「んっ・・・!」 つい反射的に、あたしはお姉さんの膣ごとその愛液を舐め掬ってしまっていた。 無防備に寝ていたところに不意打ちの快感を味わわされ、お姉さんの体がビクンと大きく跳ね上がる。 あたしはその瞬間しまったと思ったものの、同時に口内に広がった甘酸っぱさに激しい興奮が湧き上がっていくのを感じていた。 そっとお姉さんの顔を覗き込んで寝ていることを確認し、もう1度舐めてみようかという衝動に駆られてしまう。 奇しくもお姉さんの膣からは、あたしの決断を後押しするかのように再び愛液の雫が垂れ落ちようとしていた。 もう、我慢できない・・・! それがお姉さんの媚薬にも似た愛液のせいなのか、それとも雌としての性に目覚めた瞬間だったのか、あたしはついに我慢し切れなくなってお姉さんの膣に激しく吸いついていた。 暖かい肉洞の中に溢れる愛液を貪るように、真っ赤な割れ目を押し分けてお姉さんの中へ舌を突き入れる。 ズリュッ 「きゃあっ!」 ざらついた舌で敏感な肉壁をこそぎ上げられる強烈な快感に、お姉さんが大きな嬌声を上げながら飛び起きる。 だが既に最後の理性の箍が外れてしまっていたあたしは、そんなことにもお構いなしにお姉さんの中をひたすら舐め回し続けていた。 ジュルッ・・・チュルッ・・・ 「ちょ・・・ちょっとあなた何を・・・ひゃんっ・・・」 平穏な眠りの最中に突然背筋を駆け抜けた快感に目を覚ますと、いつの間にこんな体勢になっていたのか仔竜が私の両足を押さえ付けて秘所の奥深くへと舌を突き入れていた。 まるで私の声も聞こえていないかのように一心不乱に小さな舌を激しく出し入れしては、彼女が次々と溢れ出す恥ずかしい愛液を啜り上げている。 そしてピチャピチャと淫らな水音が辺りに響き渡る度に、私は体の内に何か熱いものが込み上げてくるのを感じていた。 ギュッ・・・ 「んっ・・・んっ・・・」 幼い仔竜の舌が快感にすぼめられた私の膣に吸い込まれた瞬間、彼女の喉から苦しげな声が上がる。 だが数年振りに味わう懐かしい快感に、私は彼女の舌を離してやるのも忘れてじっと身をまかせていた。 「うっ・・・あぅ・・・んん~!」 突然お姉さんの膣があたしの舌を吸い込んできつく締まり、あたしは必死に舌を引き抜こうと暴れていた。 だがいくら顔を引いてみたところで、柔らかい膣壁の弾力と更に粘り気を増す愛液に絡め取られてしまっては、とても逃れることなどできそうにない。 きっとこれがあたしの舌ではなく雄竜のいきり立った肉棒だったとしても、同じようにガッチリと咥え込んだまま決して離してはくれないのだろう。 鼻先には否応なく香り立つ媚薬を突きつけられ、お姉さんの膣に捕えられた舌にもトロトロと甘い愛液が纏わりついてくる。 ああ・・・だめ・・・あたし・・・もう何も考えられない・・・! 雌竜特有の強烈なフェロモンに酔わされて、あたしはまるで操られているかのようにお姉さんの中を舌先で何度も抉った。 グリュッズリュッ 「ああん!」 絶頂が近いのか、お姉さんが大きく背後に仰け反って激しく身をくねらせる。 あたしは何とかお姉さんの足だけは動かせないように全体重をかけて押さえつけると、根元まで吸い込まれた舌の先で彼女の敏感な突起をチロチロと舐め嬲った。 グギュッ 「ううっ・・・!」 その瞬間ついに絶頂を迎えてしまったのか、お姉さんの膣が突然あたしの舌を万力のように締め上げた。 ドバッと噴き出した愛液の海に舌全体が強制的に浸され、周囲の肉襞が何度も何度も前後に蠕動する。 並の雄竜がこんな責めを味わったら、とても耐えることなどできないだろう。 やがて痺れるような快楽の余韻を楽しむと、ようやくお姉さんがあたしの舌を解放してくれた。 お互いにはぁはぁと荒い息を吐きながら、しばらくの間クタッと力なく藁の上に横たわる。 そしてようやく息を落ち着けると、あたしは恐る恐るお姉さんの方へと視線を向けた。 寝ている間にいきなりこんなことをして、きっとお姉さんはひどく怒っているのに違いない。 「お、お姉さん・・・あたし・・・うぐ・・・ひぐ・・・」 怒られるという恐怖からか、それとも悪いことをしてしまったという後悔からなのか、ポロポロと大粒の涙が目から溢れてくる。 だが肝心のお姉さんの方はというと、泣きじゃくりながら嗚咽を上げるあたしを穏やかな表情で見下ろしていた。 「ふふ・・・怒らないから、そんなに泣かなくても大丈夫よ」 「ほ、ほんとに・・・?」 「あなたも結構大胆なところがあるのね。凄く気持ちよかったわ」 久し振りに迎えた絶頂の快楽を思い出しながら、お姉さんがうっとりとした表情で天を仰ぐ。 その様子に改めて自分のやったことの重大さを痛感して、あたしは力なく視線を落とした。 「あなたはどうだった?」 「え・・・あたし・・・?」 「ええ。あなたは気持ちよかったかしら?」 唐突に予想外の質問を浴びせられて、思わず言葉に詰まってしまう。 一体、何と答えればいいのだろう? 気持ちよくなかったといえば嘘になるが、お姉さんのフェロモンにこれでもかというほど酔わされたあたしには、到底満足できるような快感ではなかったこともまた事実だった。 だが流石にまだ満足できないなどとは口が裂けても言えず、もごもごと煮え切らない返事を返してしまう。 「あ、いや・・・あたしは・・・」 「ふふふ・・・口で言わなくたって顔に書いてあるわよ?まだ全然足りないって」 「あぅ・・・そ、その・・・・・・うん・・・」 いきなりお姉さんに図星を突かれて、あたしはついうんと頷いてしまった。 多分この時、あたしの顔は桃色の体毛にも負けないほど派手に紅潮していたことだろう。 「じゃあ今度は私の番ね。あなたがいつか雄のドラゴンと親しくなった時のために、私が色々と教えてあげるわ」 激しく興奮しているのか、あたしはお姉さんの体が赤色から紅色に変わっているような気がした。 妖艶とも言える微笑を浮かべながらこちらを見下ろすお姉さんの視線の前に、思わず体の力が抜けてしまう。 雄のドラゴンなら、きっとこれでイチコロなのだろう・・・ そんなことを考えながら、あたしはヘタッとその場に座り込んでいた。 何の魔力か自然と両足を広げて見せてしまったあたしに、お姉さんがそっと手を伸ばしてくる。 サワッ・・・ 「はぅ・・・」 曝け出された下腹の辺りをフサフサした手でまさぐられる度に、淡い快感が全身に広がっていった。 そして薄っすらと股間に入ったあたしの縦筋を探り当てると、遠慮なく爪の先がその中に捻じ込まれる。 クチュクチュッ 「あっ・・・お、お姉さん・・・」 突然背筋を駆け抜けた凄まじい快感にビクッと体を硬直させ、つい反射的にお姉さんの腕を掴んでしまう。 だがその瞬間小さな膣の中に挿し込まれた2本の指がコリコリと互い違いに擦り合わされ、あたしはお姉さんの腕を掴んだまま激しく仰け反った。 「ああ~!」 初めて感じる性感の威力に、口の端からだらしなくも唾液が漏れてしまう。 グネグネと身を捩って儚い抵抗を示している間にも、お姉さんの指はじりじりとあたしの中へ侵入を続けていた。 「ふふふ・・・どう?気持ちいいかしら?」 「あぅ・・・ぁ・・・」 頭の中が真っ白になってしまうような激しい快感に、あたしはまともに答えることもできずに力なく喘ぎ声を漏らしていた。 ズプッ・・・グブッ・・・ 「はぁんっ・・・ああ~~!」 やがてお姉さんの指が根元まであたしの中へと突き入れられ、その最奥にある秘密の蕾に指先が軽く触れる。 「ひゃうっ!」 その瞬間全身にパリッと電流が流れたかのような鋭い快感が走り、あたしは大きく目を見開いて背筋を伸ばした。 「ほら・・・あなたくらいの頃はここが一番感じるのよ・・・」 うふふっという含み笑いとともに、お姉さんが2本の指でその快楽を弾けさせる突起を摘もうと手を動かす。 「あっ・・・だ、だめぇ・・・お姉さんっ・・・そこはだめぇっ!」 あたし自身の愛液に濡れそぼったフサフサの指先がほんの少し触れただけでも飛び上がる程の快感だというのに、その蕾を直接摘まれてはとても耐えられないだろう。 だが必死でお姉さんの手を膣から引き抜こうとするあたしの抵抗も空しく、もぞもぞと蠢く2本の指先がついに触れてはならぬ禁断の蕾を捕えていた。 「ふあぁ・・・や、やめて、お姉さん・・・」 軽く蕾を摘まれているだけでもジンジンとした甘美な疼きが背筋を駆け上がり、あたしの中である種の破滅的な期待感を膨らませていく。 そんなあたしの葛藤を見透かしたかのように、お姉さんがこの上もなく色っぽい笑みを浮かべながら震える耳元へと囁いた。 「あら、雄と交尾なんかしたら、もっと激しくここを責められるのよ?」 そう言ってあたしの耳の中にふぅっと軽く息を吹き込みながら、楽しむように先を続ける。 「それに・・・あなたも本当は心の中で望んでるんでしょう・・・?」 「お、お姉・・・さん・・・」 全身で最も敏感な性感帯を握られて、あたしはどうすることもできずにゴクリと唾を飲み込んだ。 極度の不安と期待がない交ぜになって、何時の間にか顔に恍惚の表情を浮かべてしまっている。 「ふふふ・・・いい顔ね・・・とっても可愛いわよ。きっとその辺の雄なら、すぐにでも虜にできるでしょうね」 「はぁ・・・はぁ・・・は、早くぅ・・・」 お姉さんの腕をギュッと力一杯握り締めながら、あたしは来るべき快感に備えて体を縮めていた。 そんなあたしの覚悟を読み取ったのか、お姉さんが指先に捕えていた甘酸っぱい果実をキュッ捻り上げる。 「ああ~~~~~!」 次の瞬間荒波のように襲ってきた凄まじい快感に、あたしは耐える間もなく一瞬にして絶頂を迎えていた。 お姉さんの指が捻じ込まれた膣からはどこから溢れ出したのか甘く香り立つ愛液がドクドクと流れ出し、乾いた藁の上にポタポタと糸を引きながら垂れ落ちていく。 反射的に股間に力を入れると興奮にぷっくりと膨れ上がった膣の入口が小振りながらも真っ赤な花びらを形作り、躍動する小さな肉襞がお姉さんの指をギュッと絞り上げる。 「ふふふふ・・・凄く上手だわ・・・交尾の時は、そうやって雄の肉棒を力の限り搾ってあげるのよ」 「はぅ・・・はぅ~・・・」 止めど無く体内を駆け回る快感の嵐に、あたしはまるで何かに取り憑かれたかのようにお姉さんの指をきつく締め上げては決して放たれぬ熱い滾りを求めて必死に腰を振っていた。 グチュッグチュッヌチュッ 「はっ・・・はっ・・・はぁっ・・・も、もっとぉ・・・」 底の見えないめくるめく快楽の海に身を沈めながら、目の前の仔竜が上ずった声でそう喘いでいた。 グチュグチュと卑猥な音を立てながら小さな火所で扱き上げられている指先を動かす度に、恍惚とした表情で懸命に腰を揺すっている彼女の息遣いが更に荒くなっていく。 その様子を間近で眺めている内に、私も1度は収まりかけた興奮が再びぶり返してくるのを感じていた。 「ああ・・・いいわぁ・・・なんだか私も・・・また燃えてきちゃった・・・」 ポッと体が火照るような感触とともに、私はほとんど無意識の内に手近にあった仔竜の短い尻尾を掴んでいた。 そして手にしたその桃色の体毛が揺れる柔らかい尻尾の先を、おもむろに自分の秘所へと捻り込む。 ズリュッグリュグリュッ 「ああんっ!」 気がつくと、いつしか私は右手の指先で仔竜の中を犯しながら、彼女の尻尾で自慰を始めていた。 温かい膣の中で尻尾の先が扱かれる感触に彼女が更に艶のかかった声を上げるが、そんなことはお構いなしに何度も肉棒に見立てたそれを膣の中へと突き入れる。 クチュクチュッ・・・グリッゴリュッヌチャッ・・・ 「あ、あ~~!」 「はあぁぁん!」 西に傾いた夕日が空を朱に染めていく中、定休日を迎えた動物園の隅にある部屋に甲高い嬌声が響き渡った。 お互いに寄り添うようにして床の上に座っていた彼女達はいつしか互いの体を絡め合うようにして抱き合い、明かり取りの天窓から差し込む金色の光の閨でグネグネと身を捩っている。 初めは大きなドラゴンにされるがままだった仔竜の方も何時の間にか相手の首筋に小さな舌を這わせては、多量の湿り気を含んだ熱い吐息を浴びせかけていた。 燃え上がった火所から次々と溢れ出す愛液が部屋の中に何とも言えない咽返るような芳香を充満させ、幾度となく繰り返される甘美な絶頂の刺激に雌竜達が身を震わせる。 やがて西の稜線に沈んだ太陽の代わりに厳かな銀色の光を地上へと投げかける満月が姿を見せると、2匹の雌竜達の倒錯的な行為にもようやく終焉の時が訪れていた。 「はぁ・・・はぁ・・・お、お姉さん・・・満足した・・・?」 グッタリと藁の床の上に体を横たえたお姉さんを心配して、あたしは静かに声をかけてみた。 「ふふふ・・・あなたの方こそ・・・十分に楽しんでもらえたかしら・・・?」 「うん・・・とってもよかったよ。でも・・・お腹空いちゃった・・・」 ガチャッ・・・ 激しい行為に消耗して今にも唸り声を上げそうなお腹を抱えながらそう言った途端、丁度あたしの耳に入口の扉が開く金属質な音が聞こえてきた。 今日の朝にも聞いたはずなのに、何だか久し振りに聞く音のような気がする。 「わっ、なんだこの匂い!?」 夕食の豚を持ってきたあの人間が、部屋に充満していた甘い香りに驚いて声を上げた。 だが流石は感情豊かな人間というべきなのか、愛液に塗れて疲れ切ったあたし達の様子を一瞥して事態を察する。 「ははっ・・・君達・・・十分に楽しんだかい?」 その問に思わずコクコクと頷いてしまったあたしを嬉しそうに眺めながら2頭の豚を部屋の中へと運び入れると、人間は扉を閉める前に一言優しげな言葉を残していった。 「じゃあ、明日もまたよろしく頼むよ」 「ふふ・・・私達のこと、あの人間にバレちゃったわね」 「いいじゃない。隠したってしょうがないもの」 その言葉に、お姉さんが少しだけ驚いた顔を見せる。 「あらあなた、随分と大人っぽいこと言うようになったじゃないの」 体に残った疲れを癒してくれるようなおいしい食事を摂りながら、あたしとお姉さんはお互いに笑い合った。 つい数日前まで抱えていた不安や悩みが、今ではまるで嘘だったかのように跡形もなく消えている。 「じゃあ食べ終わったら、今日はもう寝ましょう。明日はまた、早く起きなきゃいけないものね」 「うん!」 そう返事をすると、あたしは格子のはめられた天窓の向こうで輝く満月を見上げながら最後の一口を頬張った。 お母さん・・・きっとあたしのことを心配していると思うけど、あたしは幸せに生きていける場所を見つけたわ。 いつかきっと立派に成長してお母さんに会いにいくから、それまで元気にしててね。 遥か遠くのお母さんに聞こえることを願いながら心の中でそう呟き、床の上に蹲ったお姉さんへと身を寄せる。 そして明日もまた楽しい時間が過ごせることを期待しながら、あたしは静かに目を閉じた。 「お休みなさい、お姉さん・・・お母さん・・・」 完 感想 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/443.html
第026話 「変調(後編)」 一部を除けば意外に片付いた部屋だ。 人の部屋をあれこれ詮索する癖のない秋水でも、素直に感じた。 ここにはひどく清浄な空気が漂っているようにも思われた。 部屋の右手には寄宿舎備え付けの木製ベッドが壁と平行に横づけさ れており、淡い無地のピンクで統一された寝具一式が、柔らかそうな 感触を放っている。秋水はそれに見覚えがある。寄宿舎転入後ほど なくして千歳がつきつけてきたブ厚いカタログだ。 新鮮なインクの匂いもすがすがしいカタログには、色とりどりの寝具が 幅やら長さやら価格やらの羅列とともに載っていた。 聞けば布団や枕などの安い備品については各自好きなモノを選べる らしい。 きっとその時、寝具のついでに選んだのだろう。 少なくても秋水の殺風景な自室にはない、余裕ある物体がベッドボー ドの間に挟まれている。 三段の引き出しから成る白いカラーボックスだ。 何が入っているかは詮索すべきではないが、一番上にカタツムリの プリントされたコップやアースカラーで彩られたアナログ式の目覚まし 時計が置かれている。 そこから細長い板を組み合わせた古めかしい床に視線を落とし、更に 左に這わせていくと、チリ一つゴミ一つ見当たらず、最後に壁際の学習 机へと到達する。 これは元々部屋に備え付けのモノで、秋水の部屋にあるものとそう変 わりはない。ただ、机の上で何冊ものノートや筆記用具、果てはなぜか コンパスまでもが開いたままで放置されているのはあまり感心できない。 桜花ならばすでにてきぱきと課題をこなして、通学鞄に放り込んでいる 時間だ。秋水も同じく。 けれどまひろのノートは、少し凝視すればネコが出来損なった生物が 何匹も飛びまわっており、秋水はさすがに軽く溜息をついた。ふだん接 している態度どおり、あまり勉強には向かない少女であるらしく、わざ わざ扉の前からまひろのノートを覗き見るのもいい趣味とはいいがた い。目の良さは時として命取りになるのだ。震える山にいるパイナップ ルならそういうだろう。正確には市街地でドンパチやらかしており、名前 も海産物じみているが、これまた本題ではない。 やるべきコトは、他にあるのだ。 薄い扉が濡れたように光る黄金の稜線を走り抜け、軽い衝突音を奏でる。 扉が閉じたようだ。 秋水に背を向けているまひろでもそれだけは分かった。 呼応するようにカーテンを閉めて、言葉を探し始めた。 後ろ手で部屋を外界と隔絶した動作に、何の意味があったか問われ ればきっと秋水は回答できなかっただろう。 新しい動きが連ならなければ一切活性せぬ無造作で反射的な動作。 口を開いたきり二の句を探しているような状態ともいえる。 寡黙な青年は懸命に言葉を紡がざるを得なかった。 窓と扉。部屋の両端に佇む二人の間で空気が張り詰めるコトしばし。 咳ばらい、ラジオ、CDケースの山がばらばらと床に落ちる音。 他の部屋からの生活音が二人を避けるように駆け抜け、ベッドや机す ら通り抜けていく。 無音という概念はあれど、実在するか定かではない。 沈黙にすら生活音が割り込み、それが止んだとていつ果てるとも分か らぬ耳鳴りが世界に響く。 フラットライナーじみた金切音とともに見る後ろ姿は、ただなる可憐の 少女の物であるのに、正体不明の重圧に揺らいで見える。 自分だけ足もとが崩れて奈落に落ちていきそうな錯覚すらある。 緊張、なのだろう。 他者の根幹に関わる言葉を吐く事の重大さを認識すればするほどそ の「重大さ」が精神的質量を帯びて足にへばりつき、動きを阻害し、ま たは前述の通り足もとを崩していきそうな錯覚を生産している。 それでも。 いかなる重圧をも跳ねのけ動かねばならない時がある。 カズキならば葛藤を葛藤のまま放置せず、必ず最後には取るべき行動 を取っていた。 秋水は違う。桜花の危機には何もできなかった。 だからカズキが眩しく見えるし、一つの実感へと帰結してもいる。 (終生及ぶ事はできないだろうな。それでも──…) 開いた拳を愁いの瞳で見る。 かつて彼の握ったそこは、今でも確かな感触を覚えている。 無力と咎の果てに与えられた、たった一つの確かな物。 拳を握る。彼に及ばぬとしても精いっぱい力強く。 秋水は微かに相好を崩し、それから瞳と頬を引き締めた。 「俺も姉さんを失いかけた事がある」 カーテンの前で振りむいたまひろの顔には、軽い驚きが上っていた。 「その時俺は姉さんに何もしてやれなかった。ただそばで弱っていく姉 さんを眺めているだけで、悲嘆に暮れていた。だから──…」 往時を思う青年に向く瞳は、ドロップのように丸く、はたと見張られ、ま るで雨に打たれた子犬が病人を心配するような色さえ浮かんでいた。 「だから、今の君の気持ちを少しは、理解……できると思う」 まだ言葉を告げるには不慣れで、背中に汗がにじむ。声が震える。 視線を合わせながら言葉を告げているだけの行為が、戦闘とはまるで 違う激しい緊張感をもたらしてくる。 「もしどうしても耐えられなくなったら、俺に話してくれないか。できるコト は少ないが、せめて聞き役ぐらいは務めてみせる」 やっとの思いで告げ終わっても、まだ終わりではない。 秋水は直立不動の姿勢を崩さぬよう努めながら、まひろの反応を見た。 剣同様、言葉にも相手がいる。ただ投げかけるだけでは不十分だとい うコトを、最近の秋水は知りつつある。 自分の行動に対する種々の反応に対し、原則から逸脱しない範囲で 更なる反応を返し、更に更に返されて、幾合もの応酬の末に相手が 納得できる結果をもたらさなくては意味がない。 力任せに竹刀を振って相手をいたぶり、時には真剣で背後から刺 し貫くような好き勝手は、本来世界の中では許されないのだ。 しばし、恐れた。 まひろの言葉を待つ間、秋水の心の中にある弱い部分が恐れていた。 傷つけていないかどうかをまず怖れ、次に頼られないコトを恐れていた。 時をほぼ同じくして、秋水の部屋の扉を叩く者がいた。 その者は数多くのノックの末、殴るような手つきで扉を一打し無遠慮に 引き開けると、誰もいない部屋の暗さに舌打ちした。 そして端正な顔に悪鬼のようなひきつりを浮かべて踵を返し、せわしな く歩きだした。 後ろにはひどく沈みこんだ同伴者が一名。 機械のような足取りで前の人間についていく──… 「実をいうと、ね」 窓際から一歩も動かないまま、まひろは秋水から軽く目線を外した。 「劇の練習をしてるのは、斗貴子さんのためなんだ」 回答はやや予想した方向よりズレてはいるが、まずは聞くコトにした。 だんだん秋水は、この少女のズレというモノを許容する癖が身について きたような気がする。 「……ほら、斗貴子さん、いま一番傷ついてるから、せめて何か面白い コトをやって励ましてあげたくて……えーと。変、かな。こういうの」 困ったように眉をハの字にするまひろに秋水はかぶりを振った。 「正しいと思う」 本音だ。 少々意外だったが、まひろの劇に対する真剣さだけは身近で見て知っ ている。ただ、それで斗貴子が納得するかどうかは別の話であるが。 「うん。そういって貰えると……嬉しい。喜んでくれたら、いいけど」 嬉しそうな微笑も、どこか弱々しい。 きっとまひろ自身も、劇一つやるだけで全てが好転するとは確信してい ないなのだろう。 「でね。昔……、夏になるとお兄ちゃんとよく一緒にかき氷を食べてたん だ」 回答としてはやや要領をえないが、口ぶりに籠った真剣さからすると 彼女なりに一生懸命筋道を立てているのだろう。 秋水は先を促すワケでもなく、ただ一頷きして沈黙を守った。 「お兄ちゃんは男のコだからメロンでね、私は女のコだからいちごだっ たんだ。……でもね、昔の私ってわがままで……」 お正月かクリスマスにも門松かツリーのコトでカズキを困らせてしまっ た記憶がある、と申し訳なさそうにまひろはいって、更に続けた。 「かき氷の時もそうで……私、女のコなのにメロンが食べたいっていっ たんだ。そしたらお兄ちゃん、食べさせてくれたんだけどワンピースにこ ぼれちゃって、私、すごく泣いたんだ。でね……お兄ちゃんがなだめて くれて何とか泣きやんだんだけど、その頃にはもうメロンもいちごも」 「溶けてたのか」 「……うん。だからもし、私があの時泣かなかったら、お兄ちゃん、ちゃ んと残りのメロンを食べれたと思うんだ」 脇道に逸れてもいるし、傍目から聞けば些細な何というコトのない話だ。 けれど秋水自身、幼いころの負い目は簡単には消えないと知悉して いる人物の一人である。何故ならば桜花を助けられなかったからこそ 彼女を守れるだけの力を求めて剣術修行にいそしんでいたからだ。 よってまひろの心理が少しずつ分かってきたし、その確証もまひろ自 身の吐露から得るコトができた。 「だからあの日以来ね、お兄ちゃんの前では泣かないコトにしたの。泣 いてワガママいったら、お兄ちゃんのしたいコトが、かき氷みたいに溶 けてなくなっちゃうような気がしたから…… 夏祭りの日だって”長いお 別れ”になるかも知れないっていわれたけど、お兄ちゃん、きっとみん なの味方だから、止めたらたくさんの人に迷惑がかかる気がして…… でも、でもね」 まひろは肩を落として、スカートの生地を握りしめた。 「そのせいで、斗貴子さんが今一番傷ついちゃってるんだ……」 同時に瞳の表面が俄かに湿った光を帯びるのを秋水は忸怩たる思い で見た。 「どうしてあの時、”斗貴子さんとだけは別れちゃダメだよ”っていえな かったのかなって。最近、そればかり思っちゃうんだ」 ああ、と秋水は眩しいものを見るような目つきをした。 最近のまひろの寂寥は、ただ単にカズキを失っただけではなく、斗貴 子の傷心を作り出してしまったという負い目も混じっていたのだろう。 そういう部分はカズキと限りなく似ている。 やはり兄妹なのだ。 それを実感すると、カズキへの敬意がこの少女への好ましさに転化する 反面、ひどく心痛を覚えてしまう。 秋水自身にそれを説明するコトはできない。 同情か共感なのか、もっとありきたりな、若々しい青年が純朴な少女に 対して覚えるべき感情なのかは、判別がつかないし、つけられたとしても それを推し進める資格はないと秋水が断ずるにあまりある過去の負債を 彼は未だもって抱えている。 「斗貴子さん、ああ見えて傷つきやすい所があるから、お兄ちゃんに置 き去りにされて平気なワケないよ。でも私は……お兄ちゃんにそういう コトをいえなくて……」 黒い瞳に滲出した涙が球状になって落ちている。 その光景に秋水はいてもたってもいられず、反射的にまひろへ歩み 寄っていた。 「君のせいじゃない」 学生服のポケットをさぐると洗いたてのハンカチがあった。実はそれは 事前に桜花が渡していた物だから、彼女はこういう事態を予測していた のかも知れない。 「一言でいえば不可抗力だ。あの時、武藤と津村は一緒にいれば津村 だけが死んでいた。だから彼は、置いていかざるを得なかったと思う」 カズキが月に消えた時の状況は、いろいろな要素が絡みあい過ぎて いた。 まず敵の存在。ヴィクトリアの父・ヴィクターはその数奇な運命の果て に得た能力と、果てしない憤怒によりひたすら強大であり、攻撃力だけ ならば戦団で一・二を誇る 【焼夷弾(ナパーム)の武装錬金・ブレイブオブグローリー】 【全身鎧(フルプレートアーマー)の武装錬金・バスターバロン】 の猛攻を軽くしのいでいた。 前者が瞬間的にだが周囲五百メートルもの範囲を五千百度の炎で燃 やし尽すコトができ、後者が身長五十メートルの巨大ロボットであるコ トを鑑みれば、いかに戦団が無力であったか分かるだろう。 その上厄介なコトにヴィクターは、周囲にある総ての生命からエネル ギーを吸収する生態を備えており、人海戦術で攻めたとしても打撃を与 える傍から回復されるという難点もあった。 よって次に対抗手段の欠乏があり、加えてヴィクターを人間に戻すため の切り札たる「白い核鉄」すら完全な効力を発揮しなかった。 そこでカズキは咄嗟にヴィクターを命無き月の世界へと放逐するコトを 思い立ったが、同伴の斗貴子を巻き込めば地球圏を離脱する時の重 力か宇宙の真空の中で彼女は息絶えていただろう。 カズキは違う。彼は「不可抗力」によってヴィクター同様の怪物の体質 を持っていた。 正直、上記の点は戦士とは無縁のまひろに説明するのにはあまりに 複雑な内容ではあるが…… 秋水は説明した。 額から汗が噴き出るほどに詳細に。 最後に至ってはネコまがいのクリーチャーが乱舞するノートを拝借すら して、カズキの置かれた状況をできうる限り精密に描きこんだ。 それを部屋中央の床に置き、二人して覗きこむ。 「……そうだったんだ」 「ああ、こういう状況でもなければ、武藤は一つの選択肢だけを選ぶ ようなコトはしなかった。だから君のせいじゃない」 まひろに続いて秋水が汗でぬめるボールペンを握ったまま視線を左 右させると、まひろはポケットからティッシュを取り出し拭ってくれた。 「感謝する」 「ううん。こっちこそ」 礼をいいあう二人が俄かにハっと顔を赤らめたのは、意外なほどに顔 が接近していたからだ。 ともに座ったまま肩が触れ合い、顔といえば互いの前髪が交差してその 匂いを味わえるほど近くにいる。 栗色でややぱさついた髪の質感が鼻にふれたような気がして、秋水は 彼らしくもなくどぎまぎした。 秋水は説明の後の虚脱状態で、まひろはそれによって汗ばんだ彼の 手を拭くのに気を取られていて、必要以上に距離を縮めすぎていたようだ。 少し涙で赤くなったまひろの瞳が秋水を映していた。 汗で前髪が濡れ光る秋水の瞳にまひろが捉われていた。 身を固くしながら秋水が横に移動する頃、盛大な音が上がった。 見れば勉強机の下の方、椅子がおかしな方に飛び出ていて、その中に まひろがおかしな体制で刺さっていた。 勢いよく飛び退くあまり、ミサイルのように勉強机に吶喊していたようだ。 「だ、大丈夫か」 「だ、大丈夫! 私ってけっこう頑丈だから」 というやり取りをしながら脱出を試みたまひろは、机の引出しにまず頭を 思いっきりぶつけた。 「痛い! 大変、もっと早く脱出しないと!」 「ちょっと待て落ち着くんだ。あまり暴れると──…」 「ダメだよこういう時こそ早く避難しな……きゃっ!?」 大きなコブのついた頭を振りまわし身もだえしながら机の下でじたばた するとどうなるか。 乱雑に散らかった机上から降るわ降るわ。 ノートは子ネコをいじめるカラスのようばらばらはばたきながら栗色で 丸っこい頭を叩きまくり、筆記用具も極小の丸太のようにふくよかな体 をぺしぺし打ちまくった。 さすがにコンパスが鋭い針を光らせながらまひろに向かった瞬間は 秋水は色を成した。 で、思わず手を伸ばして払いのけようとしたら、手の甲に刺さった。 幸い深さはそれほどでもない。 が、彼はコンパスを引き抜きながら困った。 痛みには慣れているが、傷を見られればどういう展開がくるか位は 予想できている。 ここは分からぬよう秘匿して、後で核鉄でも当てようと考えたが、それ も手遅れと知った。 机から脱出したまひろが、申し訳なさそうに秋水の手の甲とコンパス を見比べていた。 秋水は知らない。 ほぼ同時に、別の場所で、ひどく苛烈な人物に所在がつきとめられ、 その所在に対して恐ろしい情念を覚えられたとは。 「すまない」 それは核鉄を当てれば治る程度のケガに、手当をさせてしまったコトに 対してか。もっと別な意味を本来なら込めて、さらになぜ別な意味を込め るか詳細な説明をするべきなのだが、当面は四文字しか伝えられずに いる。 「大丈夫大丈夫。かばってもらったし、私は手当するの得意だから」 包帯を巻き終わったまひろは屈託なく笑った。 そこに先ほども影がないのに秋水は安堵したが、まひろの頭の上に 載っているナースキャップには首を傾げざるを得ない。 (そういえば再殺部隊の楯山さんも潜入捜査の際にセーラー服を着たと いう噂だし、衣装というものはそういうものかも知れない) 要するに女性というのは自らの内実を超えたモノを演じる時、衣装や 化粧といったものに力を借りるのだろう。 桜花などは化粧の他に、「体裁」というのをひどく重んじてその腹黒い 狡猾な気質を見事に「いい生徒会長」のイメージでコーティングしてい る。それと同じで、一女子高生たるまひろはナースキャップで医療従事 者と化し、二十代も後半に差しかかった千歳はセーラー服を着用する コトで八年というあまりにも大きな力の壁で世界な闇な年齢差の限界 越えて女子高生になっているのだろう。 「え? 違うよ。趣味だよ! うん」 思惑を告げるとまひろはゆったりとした胸の前で腕組みをしつつ頷いた。 「趣味なのか」 その回答によれば二十代後半のとある女性がひどく奇矯で哀れな存在 に思えてくるが、本題ではない。 「またありがとうね。秋水先輩」 「また?」 「うん。また。学校から送ってくれた時と一緒だよ」 ああ、と秋水は思い当たった。そういえばあの時、寄宿舎の下駄箱で 秋水をガクガクとゆすりながら「嬉しかった」とまひろはいっていたが、 それか。思い起こせばあの時、桜花の出現で答えが聞けなかったが…… まひろは包帯の残りを救急箱に詰めると立ち上がり、それをカラーボッ クスの一番下にしまった。 「あの時ね、 ──「彼は必ず戻ってくる。君の元へ戻るコトを諦めたりはしない」 っていってくれて、本当に嬉しかったんだよ」 ごく自然に秋水の隣に座ると、ひどくほぐれた笑みをまひろは浮かべた。 「……斗貴子さんのコトはまだ辛いけど、それでもお兄ちゃんが帰って くるって信じているから。そこだけは大丈夫だよ。本当」 「そうか。それなら、津村のコトは俺が──…」 といってみるものの、秋水はどうもまひろの顔が眩く、そして輝かしく思 えて目が合わせられない。 自分の言葉が何をもたらしたかいざ知ると、表情をいかにすべきか 見当がつかない。どういう感情がいま自分に渦巻いているかすら、 よく分からない。 「あ、もしかして秋水先輩、照れてる?」 ウェーブのかかった豊かな髪を揺らしながら、まひろはすり寄ってきた。 好奇心がそうさせるのだろうが、秋水としてはまたまひろが距離の近さ に驚いて机に突っ込んだりしてはたまったものではない。 「君がそういうのなら照れているんだろう」 わざとぶっきらぼうな声をだしながら後ずさる。 「じゃあそうだね。でも秋水先輩のそういう顔って珍しい~」 まひろはまひろで美麗極まる副生徒会長の変化が面白いらしく、膝立 ちで歩を進め──… 背後で扉が開く音がした。 秋水はその一瞬、莫大な殺気が爆ぜるのを感じた。 もし声がかけられなかったら、敵襲と錯覚しまひろをかばいながらソー ドサムライXを発動していただろう。 もっとも、その必要はなかった。 「探したぞ早坂秋水」 声の主は、当面の味方だ。 当面、というのは以前は敵対関係であり、今もなお相手の心情的には 秋水を敵とみなしているからである。 「……いい身分だな。こんな場所で」 彼女は腰に手を当てながら鋭い眼光で部屋を見回し、最後に秋水を 激しい敵意のこもった下目で睨みつけた。 まひろだけは敢えてその人が自分から目線を放したような気がした。 正確にいうと、申し訳なさと親愛に基づくなんらかの決意の光を本当 に一瞬だけまひろに這わせてから、殺気を爆発させ部屋を見回し秋水 を睨んだような気がした。 「話がある。彼女とともに管理人室まで来てもらおうか」 津村斗貴子は厳然たる面持ちと声でそう告げた。 背後にはヴィクトリア。彼女は彼女でひどく落胆と憔悴した表情である。
https://w.atwiki.jp/macross-lily/pages/74.html
もっと長引くと予想されていた収録。 でも、トントン拍子で進んで予定よりも早く終わった、そんな珍しいある日。 「これなら夕飯に間に合うわね~」 銀河の妖精は、トップスターには似合わない、だが「妖精」というにはぴったりな無邪気な笑みを零して、鼻歌交じりに車に乗り込んだ。 車が緩やかに揺れる度に、家の鍵がポケットの中でチャリチャリと鳴る。 コツコツとブーツの踵でリズムを取りながら、新曲を口ずさみ、たい焼き型の携帯を取り出して時刻を確認。 表示されたのは「18」と「38」の数字。 (確か17時には終わるっていってたわよね……) 昨夜交わした会話を思い出し、「なら今は夕食を作ってくれている頃かしら?」と推測する。 今日のご飯はなんだろ? 中華? 和食? それとも洋食? (個人的には洋食を希望ね……) 別に中華が嫌だとか、和食が嫌いだとか、そんなんじゃない。 ただ、その。 (だって……うまく使えないんだもの……) フォークとナイフだったらバッチリだ。 何せあのグレイスに教え込まれたのだから。 でも、あの二本の棒だけは、どうにもこうにも上手く使う事が出来ない。 (べ、別に使えるのよ? でも……えっと、ニギリバシ? だっけ? で、お子様がやる持ち方だって……アルトもミシェルもそう言うから、なんとかマスターしよと頑張ったんだけど……) アルトの呆れ顔と、ミシェルの小馬鹿にしたような顔が浮かんできて、シェリルはむっと口を尖らせた。 帰ったらランカちゃんに教えて貰って猛特訓をしよう。 そう決意していると、運転手の慇懃な言葉が目的地に到着したことを告げた。 礼と労いの言葉を述べ、車を降りる。 玄関は直ぐそこなのに、無意識の内に自然と急ぎ足になっているのか。 ストロベリーブロンドの髪が歩にあわせてふわりと舞った。 【 じゃのめでおむかえ 】 「ただいま」 玄関を開けると同時にシェリルが言い放つと、直ぐに返事が返ってきた。 「あぁ、おかえりなさい」 しかしそれはシェリルが予想していた明るくて元気な声ではなく、もっと落ち着いたトーンの声。 奥から顔を出して出迎えてくれたのは、赤いギンガムチェックのエプロンを纏った女性。 仕事中は厳しい眼差しで業務をこなす彼女だが、プライベートはやはり別。キャサリン・グラスは柔らかく笑ってシェリルを迎えた。 「あれ、キャシー?」 「なに、その残念そうな顔」 シェリルのきょとんとした顔を見て、キャシーがくすくす笑う。 そうして「ランカちゃんだと思ったの?」とイタズラに言った。 「なっ、別にそうじゃないわよ。ただ、こんなに早く帰ってくるの珍しいなって……」 「ふぅ~ん?」 キャシーのニコニコとした表情に対して、シェリルはむぅーと不機嫌そうな顔をする。 うっすらと赤くなった頬を、キャシーは愉快げに突ついた。 「ゴメンなさいね、ランカちゃんじゃなくて」 「もっ、キャシーのバカっ」 頬を突いたと思ったら今度は頭をくしゃくしゃと撫でたりと、好き勝手にやるキャシーの手を「いっつもそうやって子供扱いして」と言いながらペシペシ叩いて追い払おうとするシェリル。 その様子は構われ慣れていない子猫のようで可愛らしい。とか思ったが、でもそんな事いえば本気で照れて怒りかねないので、賢いキャシーはただ笑うだけで、大人しく手を退けた。 引き際をキッチリ心得ていてこそ大人の女である。 「というか、珍しいのは貴女でしょ。いつもなら貴女が一番遅いのに」 シェリルの脱いだコートと荷物を受け取り、廊下を先に歩くキャシーが言う。 仕事がないのならランカが一番早い(学校から寄り道せずに帰ってきた場合だけど)。 次いで帰ってくるのは、家庭に入ったからと定時に上がれる業務に異動したキャシーで、その次がオズマかブレラのどちらか。そして最後にシェリルが帰宅するというのが日常である。 シェリルはキャシーが言うことにも内心で納得せざるを得なかったが、ぶっきら棒に「まぁ、たまにはね」と呟くように答えて後に続いた。 キッチンの方から柔らかく甘い匂いが漂ってくる。 その匂いをシェリルは猫のようにすんすんと嗅いで、「ご飯なに?」と首を傾げた。 「あなたの好きなクリームシチュー」 「ほんと!?」 「嘘ついてどうするの?」と言う前に背中からシェリルにガバッと抱きつかれ、口から出る予定だったキャシーの言葉は「きゃっ」という可愛らしい奇声に変わった。 「こらこら」 「ねね、とうもころし入ってる?」 「ちゃんと入れたわ。でも、『とうもころし』じゃなくて『とうもろこし』でしょ」 「……とうもころし?」 シェリルの重みで少し前屈みになりながら歩くキャシー。 シェリルはキャシーの首根っこに捕まり、半分おんぶされているような形で足をブラブラさせた。 「ノー。とうもろこし。リピードアフタミー?」 「……とうもこ……もぅ! コーンでいいもん!」 足がバタバタ動かして、シェリルは頬を膨らませる。 キャシーは「はいはい」と笑いながら、「それにしても軽いわねぇ~」と呟いた。 「何が?」 「貴女が。相変わらず軽いわ。寧ろ軽すぎ」 「そう?」 「筋肉だって多少は付いてるし、結構食べてるのに……なんでかしらね?」 ――――ほんとに羽でも生えてるのかしら。 キャシーはそう呟こうとして、なんとなくやめた。 不意にもう一人の義妹の不安そうな顔が浮かんできて。 それで、その表情を意味がなんとなく分かって、キャシー自身もなんとなく不安になったから。 「キャシー?」 「……なぁに?」 きょとんとした顔で小首を傾げるシェリルに、キャシーは微笑み返す。 リビングの三人掛けソファーにシェリルを降ろして、荷物とコートを傍らに置いた。 「はい、到着。手洗いうがいしてきなさい」 「はーい」 シェリルはのんびりと返事をして洗面所に向かう。 その背を見送ってから、キャシーはキッチンに戻った。 * * * * 「遅いわねぇ」 「そうだなぁ」 自分の席に着いて、時計を見上げるキャシーとオズマ。 ソファーに座って雑誌を読んでいたブレラも、その膝でゴロゴロしたいたシェリルも、二人の言葉にチラリと時計を見上げた。 帰宅予定時刻をもう2時間程オーバーしている。 収録が長引いているのだろう。そうは分かっても、心配になってしまうのは仕方がない。 シェリルはのそりと起きて携帯を取り出す。 そこには新着メールも着信もなくて。シェリルは凛々しい眉を顰めて、白いタイ焼き型の携帯をソファーの隅に投げた。 「……ランカちゃん、おそい」 しゅんと項垂れるシェリルの頭に、ブレラがぽふっと手を置く。 不機嫌なシェリルを、どうにか宥めようとするブレラ。 そんなブレラに 「ねぇ、今日って確か、Nスタジオで収録って言ってたよね?」 「? あぁ、そうだったと思うが……」 そんなブレラにシェリルが問う。 ブレラが肯定すると、ふむと一人頷いて、 「……結構近いわね。ちょっと行ってくるわ」 シェリルはソファーから飛び降りた。 「え、シェリル!?」 キャシーが制止する声も届かず、シェリルは「直ぐ戻るから!」と残して玄関から飛び出していく。 小気味の良いリズムを刻みながら、走る速度を上げていく。 スタジオに着いた時には、シェリルは寒空の下にも関わらず、うっすらと汗をかいていた。 ふぅーっと息を吐くと、目の前で白くなって夜空に消えて行く。 (あ、そういえば帽子もサングラスも忘れちゃった……) そんなことに気付いたけど、「まぁ、いっか」と苦笑で誤魔化しておく。 遅くなる時は必ず連絡をくれるから、つい心配になって此処まで来てしまったけれど、どうしよう。 ちゃんと考えずに突っ走ってしまった自分が少し、いや、かなり恥ずかしくなったが、走って乱れた自身の髪を手櫛で梳いてやり過ごした。 「どうしよ……」 呟き、とりあえずポケットに手を入れる。 でも、そこにある筈の物なくて、シェリルはぎょっとした。 「……ケータイも忘れた」 その場に蹲るシェリル。 ちょっと泣きたくなってきたが、こんな所で一人で泣くなんて「シェリル・ノーム」はしない。 溜息をちょっと吐いて、とりあえず待っていようとNスタジオ前にある公園へ。 シェリルはブランコに腰掛けて、ぼんやりとスタジオの方を見た。 「……さむ~」 唐突に寒さを思い出して、シェリルは身を震わせた。 変装用の帽子も、目を保護する為のサングラスも、防寒用のコートも忘れて何をやっているんだろうか。 自分に自分で呆れてしまう。 「……なにやってんのかしら」 あの子のことが心配で思わず飛び出しちゃったけど。 これって、みんなの心配を増やしただけじゃない? ポツリ。と、頬に冷たさを感じる。 空を見上げると、厚い雲が頭上に広がっていて。 ポツポツ、ポタポタ、パラパラ……そうリズムは早くなって、冷たい雫が降り注いできた。 「……つめた」 ざぁーっという鞭みたいな雨じゃなくて、ぱらぱらとしっとり降ってくる雨。 冷たいけれど、不思議と不快には思わなかった。 幼い頃に体験した雨は、もっともっと冷たくて、あまり綺麗じゃなくて。 だからフロンティアにきて体験した雨は、あんまりにも綺麗で。 雨は嫌いじゃない。 晴れてるのも好きだけど、この瞳は強い光に弱いし。 「……何処で聞いたんだっけ………」 雨の歌。昔、何処かで聞いた、子供が歌っていた歌。 可愛らしくて、どうしてか羨ましくなって、妙に耳に残った歌。 雨のリズムを聞きながら、ゆっくりと思い出す。 あめ、あめ。ふれ、ふれ。じゃのめで。 (……えっと……こんな感じ?) 「……あめ あめ ふれ ふれ」 ――――かぁさんが。 「……ぁ」 そこで、なんで羨ましいと思ったのか思い出す。 シェリルはふっと力を抜いたように、微かに笑った。 「バカね……もう、おかあさんも……グレイスもいないのに……」 雨がじわじわと体温を奪って行く。 手足がだんだん悴んできて、感覚が薄くなっていくのが分かった。 冷たいのは、嫌いじゃないけれど。 寒いのは、あんまり好きじゃない。 携帯もなくて、コートもなくて。 サングラスもなくて、ランカちゃんもいなくて。 雨だけが降っていて、今は夜で。 明るすぎるのは得意じゃない。 でも、暗いのは好きじゃない。 不意に昔の感覚が蘇りそうになって、緩く頭を降る。 シェリルは、歌の続きを歌えなかった。 * * * * (うわ~! もっ、すっごく遅くなっちゃったよ~!!) ランカはスタジオの廊下を慌しく駆けながら、心の中で叫んだ。 バタバタと走りながら、オオサンショウウオ君を握って時刻を表示。 予想よりも遥かに時は進んでいて、ランカはぎょっとした。その拍子に足を絡ませて転びそうになったけど、壁に捕まってなんとかセーフ。 「あぅ~」 お兄ちゃん達怒ってるだろうな。 キャシーさんも怒ってるだろうな。 (……シェリルさんは……拗ねてる、かな?) 拗ねたシェリルさんのご機嫌を治すのは大変だけど、その拗ねた様子も可愛いから好きだなぁ~。 とかランカは内心で惚気つつ、再び走り出してオオサンショウウオ君で電話をかける。 オズマだと怒鳴られるし、ブレラは……携帯電話とか持ってないし、キャシーさんが一番冷静に対応してくれるだろう。 と、ランカなりに判断を下して、キャシーに電話をかけた。 「あ、キャシーさんですか? ご、ゴメンなさいっ。プロデューサーとディレクターが喧嘩しちゃって、それで色々長引いちゃって……」 キャシーのちょっと怒っているような、でも本当に心配そうな声が痛い。 ついでに電話越しで怒鳴り散らしているオズマの声も耳に痛い。 ランカはゴメンなさい~と平謝りしているような気分的でスタジオ内を駆けて行く。 「え、シェリルさんが!?」 が、キャシーがいった言葉に、ランカは思わず足を止めていた。 ランカちゃんを迎えに行くって言ったまま、帰ってこない上に、携帯電話も忘れたらしく連絡も取れない。という言葉に。 「え、えぇっ、う、うそぉ!!」 なんでそんなことになってるの!? ランカは大きな声で叫びそうになって、ぐっと唇を噛み締めた。 早く探しに行かなきゃ! ランカはまた走り出す。 でも今度はバタバタという落ち着きのない駆け方ではなく、グッグッと力強く進む駆け方で。 エントランスを抜けて外に出ると、パラパラという雨の音が耳に届いた。 風はないけれど、雨に濡れる空気はとても冷たくて、思わずぶるりと体が震える。 ランカちゃん、送って行くよ。 そうスタッフの一人から声がかかる。 それを丁重に辞退して、代わりに傘を借りて外に飛び出した。 雨だって嫌いじゃないけれど、濡れるのだって時には楽しんでいるけれど。 でも、冷たいの得意じゃないし、寒いのだって好きじゃないし。 こんなに暗い中で一人でいたら、心細くなっちゃうんでしょう? 知ってますよ、あなたはとても脆いところがあるって。 (シェリルさん……!) 強く呼んで、周囲を見回す。 一人で震えていたらどうしようとか、みつからなかったらどうしようとか。 そんな不安がよぎって、心臓が不整脈を奏でた。 でも、目当ての人物は直ぐに見つかった。 傘もなくて、上着も着てなくて、薄着で。帽子もサングラスもしてなくて、ただずぶ濡れになっているその人。 「シェリルさんっ!」 強く呼んだら、なんだか怒っているような声になってしまった。 ビクッと驚いたように跳ねる肩越しに、降り返ってくれる。 バシャバシャと水溜まりを蹴って、彼女の許に駆けて行く。 いつもふわふわしてる甘い色のストロベリーブロンド。 その綺麗な髪は雨水を吸って重そうに肌にはりついていて。 冷えて赤くなって悴んでいる指先とか、表面温度が低くて、もともと色白なのも相まって白くなりすぎてる頬や首筋とか。 それを見たら、「何をやってるんですか!?」なんて言えなくなって、ゴクッと言葉を丸ごと飲み込んでしまった。 シェリルの澄み切った青空のような瞳が泣いているように見えたけど、次の瞬間には柔らかく細まって。 そうして、嬉しそうに笑った。 「ふふ……」 「な、なんですか、もぉ……そんなことより、なんでこんな……ずぶ濡れじゃないですか……」 あんまりにも嬉しそうに笑うから、思わず心臓が跳ね上がって声の端がブレてしまった。 こっちの気も知らないで。と思ったけれど、それは自分も同じかと思って、言うのをやめる。 傘の中に入れてあげて、冷たくなった頬に触れてみた。 触れた肌は思った以上に冷たくて。本日二回目の「ぎょっとした」声を内心で上げる。 「どのくらいココにいたんですか!?」 なのに、シェリルさんは相変わらず嬉しそうに笑ったままで。 それはとても幼くて屈託な笑みで。 そんな顔のまま「わかんない」と返事をされてしまったから、ランカは言葉に詰まった。 そういう不意打ちの可愛い笑顔とか、やめて欲しい。 言葉を忘れてしまうから。 シェリルはにこにこしながら、ランカの手に頬を摺り寄せる。 あんまりにも嬉しそうに笑っているから、ランカは思わず小首を傾げてしまった。 「……あの、どうしたんですか?」 「ふふ。ないしょ」 ずぶ濡れの妖精は、やっぱり嬉しそうに笑って。 悪戯をするように「ないしょ」だと囁いた。 そういう顔も好きだけど、今はそれどころじゃない。 ランカは見蕩れかけた自分を押し留めて、シェリルの手を引いた。 濡れたままになんかさせておけない。 (早く帰らなきゃ。このままじゃ風邪ひかせちゃうし、それに……) ランカは手をしっかり握って早足で歩き出しながら、チラっとシェリルを見た。 髪と同じように雨を吸って重くなった服が、シェリルのカラダに張り付いていた。 でもそれが綺麗なカラダの稜線を浮き出させていて、正直目に毒だったりもしたけど、それはランカだけの内緒である。 雨が傘を打つ音に合わせて、シェリルが何かを口ずさむ。 メロディーは辛うじて聞き取れたけど、歌詞は雨の音に紛れてよく聞こえなかった。 半分鼻歌混じりの、短いフレーズの歌。 子供が歌うような小気味のいいリズムに、分かりやすい旋律。 それを口ずさむシェリルは、やっぱり嬉しそうで。 そんな風に笑いながら、シェリルは自由に速度を変えて、歩幅を変えて歩く。 だから、傘から何度も抜け出してしまって、ランカは困ってしまった。 「濡れちゃいますよ~」 「もうビショビショだもの。今更よ」 なんでそんなに楽しそうなんだろう? 寒くて、冷たくて、身体中冷え切ってしまっている筈なのに。 パシャパシャとシェリルがじゃのめを楽しげに蹴飛ばす。 ちっちゃい子みたいに、無邪気に。 家まであと三分の二という距離まで来ると、傘を差して歩いてくるブレラと会った。 ブレラもずぶ濡れのシェリルを見てぎょっとしたが、シェリルはブレラのそんな顔を見て楽しそうに笑った。 「お兄ちゃん! 早く帰ろっ!」 「あ、あぁ」 シェリルの空いている手をブレラが握って、自由に歩くシェリルの動きを制限して傘に入れる。 ランカの傘と、ブレラの傘。 ランカの手と、ブレラの手。 その二つの傘に入れられたシェリル。 その二つの手に握られる、シェリルの両手。 シェリルはやっぱり嬉しそうに笑っていた。 「オズマお兄ちゃんキャシーさん、ただいまぁ!」 「今帰った」 「遅いぞランカぁ!!」 「もぉ、ほんとよ。シェリルも勝手に飛び出し……」 玄関を開けると同時に叫ぶと、飛び出してくる怒声とちょっと怒っているような口調の声。 でもオズマもキャシーもずぶ濡れのシェリルを見て、目を見開いてぎょっとして。 いっぱい言いたい事があり過ぎて、口をパクパクさせている二人。 なのに、 「ただいま」 シェリルはただ嬉しそうに笑ったまま、そう言った。 (なんでそんなに嬉しそうなんだろ……?) ランカはそう考えながら、オズマとキャシーのお小言が始まる前にシェリルを連れて家の奥へ。 タタタッと廊下を小走りで進みながら「遅くなってゴメンなさい。とにかくお風呂入ってきますね!!」と叫んだ。 シェリルが歩いた後は水が滴って足跡を残していく。 これは後でキャシーさんに絶対に怒られるとか思ったが、そんな事に構ってられない。 ランカはシェリルの服を手際よく脱がせて、風呂場に押し込む。 自分もささっと脱いで、シェリルの後を追った。 「ほら、シェリルさん。肩までつかってください」 浴槽に半ば無理矢理引きずり込んで、後ろから抱き締める形で落ち着く。 「子供扱いしないでよ」とか「くすぐったい」だとか文句が聞こえたが、どれも笑い声と一緒で。 だからランカは気に留めずにシェリルをぎゅっと抱き締める。 シェリルのカラダは本当に冷え切っていて、手の先や足の先はほんとに凍ってしまうんじゃないかというくらいに冷たい。 ぎゅっと抱き締める腕を一旦解いて、指を絡める。 ちゃぷちゃぷとお湯に揺れる二人の体。 シェリルは相変わらず雨の中で歌っていた歌を口ずさんで、笑っていた。 「あの……ほんと、どうしたんですか?」 流石に様子がおかしい。 ネジがどっか緩んでいるというか、そう思えるくらいにずっとにこにこ嬉しそうに笑っている。 (雨の中にずっと一人でいたのに……なんでだろ?) 笑ってくれるのは嬉しいけれど、できれが理由を教えてほしいな。なんて思う。 でもシェリルは「なんでもなーい」と笑うばかりで。 そうしながらランカの指に、自分からも指を絡めた。 「え~」 「ふふふ」 頬を寄せて、顔の直ぐ近くで不満を漏らしてみるけれど。 それでもシェリルは教えてくれない。 ちゃぷちゃぷ揺れるお湯の中、背中越しに緩やかな心音が聞こえて。 壁越しには雨の音が聞こえた。 シェリルの身体がリズムを取るようにゆったりと揺れる。 血色が戻りつつある唇は、やっぱり例の歌を口ずさんでいた。 「 あめ あめ ふれ ふれ ランカちゃんがー じゃのめで おむかえ うれしーな 」 楽しげに嬉しげに、子供が歌うように歌う。 ランカはやっと聞き取れた歌詞に小首を傾げた。 「? 私、シェリルさんならどこだって迎えに行きますよ?」 そう言ったら、シェリルはきょとんとして。 そうして肩を震わせて、声を立てて笑い出した。 「そ、そんなに笑わなくても……」 「違うの。つい嬉しくて」 ――――ありがとう。 その言葉と共に、ちゅっと甘いキス。 そんな幸せそうな顔をされたら何も言えなくて。 代わりに、「あとでその歌、教えてくださいね」とだけ返して、ランカはシェリルの頬に口付けを返した。 あめあめ ふれふれ みぃんながー じゃのめで おむかえ うれしーな END
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/956.html
地球防衛戦線ダイガスト 第五話半 私論 戦略兵器孝 海に城が浮いている。 幾つもの鋼鉄の箱を積み重ねた艦橋構造物は、そんな錯覚を抱かせた。まさに『浮かべる城ぞ頼みなる』の歌詞に相違ない景観だった。 艦橋の前には二基、後背に一基、巨大な堡塁のような台が置かれ、そこからは長大な筒が三本づつ天を指していた。 それら鋼鉄の構造物はまるで一個の城砦のごとき形を成し、特徴的な稜線を海の上に形作っている。 何らかの悪意に満ちた色眼鏡を掛けない限り、美しさすら覚えるその力強い姿は、日本人であれば大抵がその名を知っている。 大和、或いは大和級…それを知らずとも、宇宙戦艦となら答えられるだろう。 そしてその映像の彼女もまた、大和級にまつわる絶望的な戦況のご他聞に漏れず、263mにおよぶ長大な総身から黒煙を立ち上らせていた。 奇妙なことに、そういった帝国海軍の黄昏に付き物のF6FやTBFといった寸胴のアメリカのレシプロ戦闘機の姿は、その映像には無かった。 しかし何者かが空を縦横無尽に飛びまわり、大和級に炎を、黒煙を吹かせている。 目を凝らしてみれば、その時、その空を支配していたのは、ブーメランに二本の足を付けた様な異形の航空機だと認められたろう。 ちょっと考えれば空に浮くには蛇足な二本の足は、自在に動き回ってまるで空中を蹴るような信じられない機動を実現していた。 空力など微塵も考えていない、ただ突き抜けた技術だけでそこに在る事をにおわせる辺り、何やらこの星の技術にあらざるモノを感じる。 と、異形の全翼機の中の一機が、腹の下に抱えていた長い筒を切り離した。その一機だけが持っていたことから特別な物であるのは想像に難くなく、 案の定、筒は大和級の二番砲塔に触れるや、眩い白光に変じる。 次の瞬間には二番砲塔の天蓋は溶けた飴細工のように赤熱してめくり返り、全機能を停止させていた。 よく見れば、既に大和級の全身には赤熱した大小の破孔や溝が掘り込まれ、海水を被るたびに溶けた鉄が大量の水蒸気を発生させている。 誰の目にも旗色は明らかだった。 しかし彼女が海の上に現出させた砦の向こう側には、徐々に遠ざかってゆく幾多の艦影が確認できる。 仔細は判らないが、大和級がそれら多数の艦艇の変わりに、その海域に留まっている事は容易に想像できた。 そして空を舞う異形の全翼機は、彼女を運用する乗組員達の決死の行動を嘲笑うかのように、次々とレーザー光を照射して巨艦を切り苛むのだった。 やがてひときわ大きな爆発が左舷から発生し、大和級の全体が大きく傾斜した。それはかつての坊ノ岬沖での戦いを想起させる光景だった。 そこに沈んだ大和は、彼女の姉に充たる。 そして、今、駿河湾沖で同じように左舷に傾斜する彼女の名も、海上自衛隊甲型護衛艦『やまと』。 産まれた時に着けられた名は『信濃』といった。 太平洋戦争。 大和級三番艦として生を受けた戦艦『信濃』は、悪化する戦況のなか航空母艦に改装される予定であったのだが、既存の空母の修理に船渠を明け渡し、未着工のままに終戦を迎えた。 その命運は戦艦長門ほか多数の艦と同じように、水爆実験の標的となって海の藻屑と消えるはずだった。 しかしソ連極東海軍に『史上最後の戦艦』ソビエツキー・ソユーズが配備されるにいたり、GHQは対抗策として信濃を軍籍にもどし、旧帝国海軍関係者に再召集をかけた。 勿論、時代は航空主兵であり、今更水上砲戦など起こるべくもない。 ただ捨て時を失ったソ連の戦艦のためだけに、アメリカが太平洋艦隊に戦艦を常駐させる気にはなれなかったのである。 だったら、残されたモノを持ち主に返し、その維持費を払わせせて睨み合わせれば良い。その莫大なコストは戦後の混乱にあえぐ日本にはちょうど良い足枷になろう。 必要なのは防共の楯であり、帝国海軍の再起ではないのだから。 やがてソ連の対艦ミサイル飽和攻撃を惹き付ける高価値目標――第7艦隊の楯――として存在を許された彼女は、 むざとは沈まぬために様々な新鋭技術を導入、冷戦期の日本海を凍りつかせた女王として君臨する。 が、呆気ないまでのソ連崩壊と共に、敵手であったソビエツキー・ソユーズは空母を含む『海に浮かぶ鉄くず』として中華人民共和国に売却され、 日本海の緊張もまた『デタント』されてゆく――中国共産党は購入した鉄くずの再生を指示しているとの公然の秘密があったが―― 近年では航続距離と甲板の広さを買われ、スマトラ沖大地震の支援物資を運ぶ輸送船団にも参加し、心無いマスコミから『やまと宅急便』などと揶揄されていた。 しかし歴史はここで彼女に新たな役割を強要する。 異星人の来寇である。 ツルギスタンとの緒戦における北海道での敗退…陸は北部方面隊、空は第二航空団の再編を要する大損害は、 海上自衛隊にお鉢が回ってきたセラン諸惑星連合との駿河沖の会戦において、彼らを奮起させるに十分すぎた。 各地に散らばった護衛艦隊から一時的に任を解かれた新鋭イージス艦『あたご』『あしがら』――彼女達には未だ弾道弾防衛能力が付与されて無いため――に加え、 多数の護衛艦、そして何より『やまと』。 更には航空自衛隊より築城基地第6飛行隊のF-2戦闘機と協調し、たった一隻でのこのこと現れたセラン諸惑星連合の『ディアマンテ』なる艦と対峙する。 細長い直方体の中央部に艦橋構造物らしき物を載せた全長800mにも及ぶ濃緑色の巨躯は、確かに一隻という数字以上の威圧感を与えてくる。 しかし、こちらも強大な共産軍――それと決めたら戦力を磨り潰す事に躊躇しない連中――を海上で封殺するために存在しているのだ。 海自の各艦からおびただしい量のミサイルが発射され、駿河沖をしばし白煙が煙らせる。 やまとも第二砲塔と艦橋の間に設置されたVLSから矢継ぎ早にミサイルを立ち昇らせ、煙と噴射炎で甲板の一部が見えなくなるほどだった。 同時に18機のF-2戦闘機も複合素材の翼に吊るした4発もの対艦ミサイルをリリース。72本の槍が一斉に敵を目がけて空を翔る。 ヘタな国の海軍ならその一撃で潰滅する、恐るべき火力の飽和だった。 だが、彼等もまた北海道の自衛隊員達と同じく、星を渡ってわざわざ侵略に来るという行為がどれ程のものであるのか、身をもって知る事となる。 ディアマンテ側舷の装甲シャッターが次々と開いて偏光レンズがあらわになる。 魚の眼球にも見えるおびただしい数のレンズは、巨艦の姿を百目の化け物のような不気味なものに見せた。 次の瞬間、レンズが一斉にその機能を発揮し、海の上を真っ白に染め上げた。 レーザー光の乱舞はすぐに止み、代わりに空に紅蓮の華が咲き乱れる。 全てのミサイルが迎撃されたことを自衛官達が理解するよりも早く、ディアマンテの上部甲板数箇所が下からせり上がって、高速で何かを射出し始めた。 あの足の付いたブーメランだ。 異形の全翼機は編隊も組まずにめいめいが勝手な機動を取りつつ、空間を蹴るようにして高度を稼ぐや、艦隊上空を旋回していたF-2の編隊へと襲い掛かった。 こう書くとパイロット達が周辺警戒を怠っていた様になってしまうが、実際は空中で更に高飛びをするような行動だ。常識を覆す機動は完全な奇襲になった。 全翼機の翼の一部が円柱状にせり上がる。そこにも偏光レンズが見てとれた。 レンズから照射された白光が蒼穹を裂く、と同時に全翼機は足を折りたたんで下方へと降下してゆく。追いすがろうと機を捻ったF-2が、次々と思い出したように爆炎へと変わった。 初撃を免れた幸運なF-2がダイブに移って全翼機を追うが、今度は前を向いたまま偏光レンズだけを後ろに向けてレーザーで薙ぎ払ってくる。 三度、空に紅い華が咲く。 それすらも外した強運か、はたまた後世に名人とうたわれるパイロット達は僅かに数名。 F-2の両翼端に取り付けられた短距離空対空ミサイルAAM-3が、彼らの怒りを乗せて発射された。 AAM-3は定められた仕事をこなし、数機の全翼機にダイブを断念させた。 避けようと空を蹴った物もいたが、彼らの予測を上回る誘導能力と近接信管による破片効果は、似たようなサイズの全翼機には十分なダメージとなった。 それでも爆散するような機体は出ず、片翼になってもゆるゆると海上に着水してゆく。 そして殆どの全翼機は、海上にたむろする標的へと牙を剥いて襲い掛かった。 偏光レンズのレーザー光は機動方向に影響されない。全翼機は海面すれすれまで降りると、アイスダンスのように海上を滑ってレーザーをスウィープさせた。 速度上で絶望的に劣る艦艇は据え物のように切り刻まれてゆくより無かった。すぐに単縦陣は崩壊し、各艦が思い思いに回避行動を執り始める。 壊乱の中にあって『あたご』と『あしがら』だけは冠した名の如く、女神の楯たらんと奮闘し、少しでも距離の離れた異形の全翼機にVLSから対空ミサイルを見舞っていた。 しかし増大する異常なレーダー波はすぐにセラン諸惑星連合側に察知され、頼みの綱である特徴的な形状のSPY-1レーダーをレーザーで溶断されてしまう。 迎撃手段を奪われた海上自衛隊の艦艇は至近での乱戦より逃れるために回頭を始めた。 ディアマンテの艦載機もそれを逃すまいと追撃に出るが、そこで彼らの行動に掣肘を加える事態が起こる。 母艦の目前の海が膨れ上がり、何百メーターにも達する水柱が立ち上っていた。 そして後退する艦艇の中から、逆に前に出るひときわ巨大な艦影。前部の二基の砲塔から延びる6本の巨砲は僅かに仰角をつけ、筒先からは発砲の後の黒煙がくゆっている。 海自艦艇の列から離れる『やまと』の姿は粛々とすら見えた。味方が後退してゆく中、それはどう贔屓目に見ても勝算あっての行動とは思えない。 そして絶望的な戦いが始まった。 甲板各所に設けられた卵のような形状をした自動迎撃システム、CIWSのガトリングガンが火を噴く。 対空機銃がアイスキャンディ-のような曳光弾を放ち始め、両舷に据え付けられたOTOメララ127mm単装砲、計6門が甲高い音と共に発砲を始めた。 VLSも次々と対空ミサイルを立ち昇らせる。 まるで噴火が起きたようだった。一時とはいえ、全翼機がやまとから離れるほどの弾幕が形成される。 そして、砲炎。 砲腔内を全ての爆圧が漏れなく駆け巡り、栓である1.4トンもの砲弾を押し出した証し。 彼女が殆どの同族が滅びた後もこの海に存在する証し。 戦艦という幻想じみた兵器が確かにそこにいたという証し。 その咆哮はくるおしく大気を震わせ、数千メーターを唸りをあげて山形に飛んだ徹甲弾がディアマンテの甲板にあやまたず降り注ぐ。 星から星を渡る船にとって原始の恐竜のごとき前時代の艦の放つ砲弾など、 不意の隕石を慣性制御フィールドで包み込み、第一次装甲で受け止めるという航宙常識を履行するに過ぎなかったのだが… それでも1.4トンもの砲弾は遅延信管を起爆させ、ディアマンテの慣性制御フィールドに負荷を与えた。 続く鋼鉄の雨は僅かではあるがフィ-ルドの網の目を潜り抜け、破片効果を甲板各所に及ぼした。 ほんの数えるほど、偏光レーザ-のレンズが叩き割られたくらいに。 蛮族の船に自分達の母艦が傷付けられる…艦載機が目の色を変えて襲い掛かるには、十分な理由になった。 左舷に傾いだ『やまと』は、もはや復舷する力を失っていた。 中に飲み込んだ海水は艦体をいつ横転させてもおかしくなく、挙句に再び艦尾にあの白光が輝いたとき、彼女の命運は、尽きた。 艦尾を熱で抉り取られたやまとは、そこから更に浸水し、艦尾方向から急速に海中に没してゆく。 総員退艦が発令され、甲板に上がってきた自衛隊員達が救命胴衣を頼みに次々と海中に飛び込む。既に艦首は海でなく空を仰ぎ始め、カッターを下ろす暇もない。 巨大な質量塊が沈降するときに発生する渦から逃れるため、飛び降りた隊員達は力の限り艦から離れねばならない。 それを諦めた者はやまとと共に海神(わだつみ)の元に召されるよりない。 だいぶ離れたところで一息をついた隊員達は、あの足の付いた全翼機を収容したディアマンテが、ゆっくりと海から離れてゆくところを目撃していた。 ああ、畜生、俺達は同じ土俵にすら立って無かったってことかよ。 眼下であがく原住民達に目もくれず、ディアマンテはゆっくりと空を滑り始める。日本の方へ、避退した僚艦の方へ。 そうだ、やまとが沈んだからとて、戦闘は終結していないのだ。撤退する敵軍を追撃し、戦果を拡張するのは兵家の常。彼らは基本を忠実にこなし、日本の領海を切り取ろうというのだ。 やまとから脱出した自衛隊員達に重苦しい現実が圧し掛かる。 ある者は絶望に俯き、ある者は怒りを込めて頭上の戦闘艦を睨み付けた。 またある者は戦意を失い、艦首が空を向いて半ば以上が海に引き込まれた『やまと』を呆けたように見つめていた。 ディアマンテはやまとの直上に差し掛かり、まるで彼らに見せ付けるかのように側舷の装甲シャッターを開放する。偏光レンズがクリアな洋上の太陽光を受けて無慈悲に輝く。 ――爆発音が轟いた。 俯いた者の頬を硝煙くさい風が打った。睨み上げていた者の目には赤い線が駆け上がってゆくのが見えた。呆けていた者だけが全てを目に収めていた。 やまとの第一砲塔が発砲したのだ。赤い発砲炎の華を、力強く咲かせて。 海水に浸った電路の漏電が何かを誤作動させたのか。機械的な理由がつかずとも、オカルトを信じておらずとも、その光景は彼女の意志のように感じられた。 天を駆け昇った3発の徹甲弾は、歯向かう者のいなくなった洋上でスペース・デブリ用のデフレクターの出力を下げていた ――それは一般に慢心と呼ばれる――ディアマンテの下部装甲に突入する。 高い硬度と張力を誇る異星技術の合金も、その構成物質だけで46センチ砲弾の衝力を止め切ることは不可能だった。 分厚い一時装甲を運動エネルギーで食い破り、対衝・耐熱ジェルの積層構造を押しのけ、二次装甲の奥でようやく止まると、そこで主砲弾は遅延信管を作動させる。 装甲内部で発生した爆発は更に構成材を破壊し尽くし、艦内に踊りこんだ圧力と熱は出口を求めて通廊や排気口を炎の蛇となって荒れ狂った。 それがどれ程の破壊をもたらしたのか、自衛隊員達に知る術は無い。 しかしディアマンテはついぞ追撃の砲火を放つ事は無く、満身創痍の海自艦艇と残存のF-2は指定された戦域外へと離脱した。 最期の仕事をやり遂げたやまとは、その巨大な質量からは想像出来ない位に静かに、素早く、海中へと没していった。遺体を含め200人以上がその中に残されたままに。 幾人かの自衛隊達が敬礼でもってやまとを見送っていた。 なお重防御区画であるCICで指揮を執っていた艦長は総員退艦を命じた後、自室に戻り、古来からの慣習に則って艦と命運を共にした。 こうして冷戦の象徴であった『やまと』は、新たな混迷の時代の先触れとなり消えていった。 戦艦―― 国家の命運をかけ、自らの砲力と防御力のみで同等の存在を打ち倒すために産み出された、冗長性や柔軟性という戦力の理想とは対極に存在する、一種いびつな存在。 現に彼女達は航空機という柔軟な兵科によって主戦力の座を奪われ、航空機の動く基地たる空母という新たな女王に取って代わられた。 それでも冷戦という構造に組み込まれたやまとは、僅かにその存在を約されていた。 そして最期の一瞬には、遥かな技術の差を埋め、敵手であり、おそらくは自らとそうは変わらない存在であろうディアマンテに一撃を刻み込んだのである。 この60年が無為でなかった証明として。 航空主兵に敗れた戦艦を後付けの知識で無意味と断じ、現在のイージスシステム搭載艦との用途の違いを意図的に無視したあげくに、 同じ軍艦だから無駄であると言い切る自称軍事評論家という輩もいる。 が、自らの色眼鏡で現実が見えなくなったような人間は、大和級を産み出したブロック工法が戦後の造船大国日本を支えていた事実を見据えるべきである。 ただ過去を否定し、反省を強制するだけなら、それこそが過去を省みないという行為に他ならない。 そう考える男達が二人、額を突きあわせるような距離で会話していた。 「戦艦の殴り合いが国家の命運を決めた戦いとは、実のところ日露戦争の日本海海戦が最後だと言われている。 その結果を元に戦艦の恐竜的進化が始まるわけだが、真価が問われることは無かった」 国場首相はバーコード頭をやれやれと横に振るう。 手狭な部屋には丸い窓が一つ。外は夜なのか、やけに暗い。 国場首相と向き合う大江戸博士の眉間には深いしわが寄っていた。 「しかしだ、やまとの主砲は航宙艦の基本的な構造材にも通用した。 地球文明の純粋衝撃力はやつらにも通用する事が証明されたんだ」 博士の手は胸ポケットを行ったり来たりしていた。むつかしい顔なのは、要はポケットの中の紫煙を吸うに吸えない事への苛立ちである。そこは全室禁煙だった。 「つまりは物理攻撃を伸ばしてゆく方向で、俺達は銀河列強に対応可能なんだよ。 問題は対デブリ・デフレクターのような防御装置だ」 「それを考えるのが君たち『地球防衛戦線』だろう?」 「はいはい…」 大江戸博士は頭の痛い問題に窓の外に目をやることで、心身の両方を逸らすという高等芸を見せる。 こういう所は昔から変わらんな。国場総理は妙なところに感心し、自分も黒一色の窓を見やる。 そろそろだった。 「『やまと』は誇りだった」 大江戸博士は誰にとでもなく呟く。 「戦力を否定され、古い教えは全て悪いものだと言われ、それでも俺たちの餓鬼の頃にゃ、やまとがあったんだ」 「第7艦隊の囮と嘲笑ったやつもいたが… それが無きゃソ連が怖いとアメリカが言う、その事実にどれだけの当時の子供が救われたことか」 「怖いぜ、それが『無かった世界』なんてな。きっと餓鬼の頃から日本は間違ってたと聞かされて、 目に見える証しは何も無く、金と自分の仕事だけを信じて捻くれてくのさ。 終いにゃ何が正しいのかも判らず、奇麗事と批判だけの左巻きどもと普通の政治家の違いも判らなくなっちまうんだ」 「生々しいな」 「人はパンのみで生きるにあらず、さ」 「ならサーカスもだな」 「矜持にも信仰にも娯楽にもなるさ、こいつは」 初老の男たちの目に、黒いヴェールの向こうに霞んだ塔が映った。 塔は見る見る高く伸びてゆき…いや、違う。塔は伸びているのでは無い。彼らが塔の頂から降りているのだ。 塔の基部が乗った長大なスロープの先。まるで断崖に突き出た舳先のような場所で、初めて、全景が明らかになった。 ライトアップされた巨大な塔の前に居並ぶ6本の筒。まるで首長竜の群れだ。 男たちはしばし息をのんで巨大な人工物に魅入った。 窓の外を巨大な眼球と口を供えた魚類がゆっくりと横切ってゆく。そこは駿河湾の底、水深2500mの闇の世界。 海の底に端然と正座するが如く、彼女は、やまとは居ずまいもそのままに待っていた。 遠目には今にも動き出しそうな偉容だ。 「いいぞ、これならすぐに使える」 ようやくに口を開いた大江戸博士の口ぶりは興奮していた。 大江戸先進科学研究所所有の深海作業用潜水艇――海洋惑星からの中古品で、バーター取引の末の密輸品――が、 天蓋の吹き飛んだ第二砲塔に取り付き、アームを延ばして作業を開始する。 程なくヤマト砲として復活を果たす地球人類史上最大の艦載砲は、このようにして手ずから取って行かれたのだった。 そして46センチの号砲がツルギスタンの儀仗兵を打ち砕いたあの光景は、 北海道と『やまと』という日本にとっての冷戦の象徴を立て続けに失ったある年代の人々に再び希望を与えた。 深き水底に沈んでなお、その砲の一つが戦果を挙げるたび、少なからぬ人々に自分達の居場所を思い起こさせる。 戦艦とは、まことに戦略兵器であった。 そしてやまとの遺影を手に、拭い難き技術と国力の差を前に奮闘するダイガスト。 その姿もまた人々の期待を集め、急速に敵味方に存在感を増してゆくのだった。 後世の人々は、その巨人を指してこう呼んだ。 護国の鋼、と。 つづく ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) + ... 名前
https://w.atwiki.jp/orimoe801/pages/300.html
Top 創作物投下スレまとめ 2 2-361 「At the time of dusk (黄昏時に)」 「At the time of dusk (黄昏時に)」 作者: SS 本スレ 1-200様 361 名前:オリキャラと名無しさん 投稿日: 2013/10/06(日) 21 45 44 こんばんは、1-200です。またもや懲りずにSSを投下しに参りました ハロウィンネタではないのですが、以前から書いていたものが完成しましたので…w 今回もwikiに直接投下という手法をとらせていただきます 以下の注意事項をお読みの上、もしよろしければお付き合い下さいませ ※1-200,201 のキャラ、アレス×ルーシェ(ルーシェル) ※世界観はベタファンタジー ※801ルートで両想いになった後の話、ぬるめのエロ有り ※回想ですが女キャラが出てきますので注意 ※暴力描写注意 ※厨文章、長文 ---------------------------------------- 「 At the time of dusk (黄昏時に) 」 その日はとりわけ暑く暑く、町全体がゆらゆらと揺れる陽炎に包まれていた。 人も動物も日陰を求めて身を潜め、通りを歩く人影はまばらで、辺りはしんと静まりかえっている。 だが朝に東から太陽が昇れば夕に西へ沈むのが自然の摂理である。 照りつけるだけ照り付けて満足した太陽が、ようやく山々の稜線のむこうにその姿を消す。 残された最後の光が空を橙色に照らし、雲を茜色に染め、地上にあるあらゆるものを 黒々とした影に沈み込ませる時刻。 熱気を冷ますように吹き始めた風を頬に感じながら、ルーシェルは目を細めた。 彼はこの時間の、毒々しい程の橙と茜と紫が混ざる空が好きだった。 窓枠の上で両腕を組み顎を乗せて、灯りのつきはじめた眼下の家々を眺める。 ひときわ明るい一角は、酒場や宿屋が集まる目抜き通りだろう。 冒険を生業とする様々な人々がそこで出会い、笑い合い、時に争い、別れの涙に頬を濡らす。 幾度となく繰り返し目にし、そしてかつては自分もその中に身を置いた、懐かしい場所だった。 町の酒場は単に酒や食事を提供するだけではなく、様々な情報や仕事や人手を仲介する役割も持つ。 ルーシェルにもかつて、そうやって出逢った心強い仲間達がいた。 彼らは今、どうしているだろう。 ザック。遠い異国生まれのソーサラー。多くは語らないが、赤ん坊の頃から壮絶な人生を歩んできた青年。 無口で無愛想だが、実は面倒見が良く仲間思い。ルーシェルが回復法術を使えなくなり パーティー離脱騒ぎを起した時も、彼の支えがあったから戻って来られた。 ナオミ。女性ながらに腕力とスピードを兼ねそろえたシーフ。後に格闘家へ転身した、 パーティーの切り込み隊長。気が強く、金といい男に目が無い、獅子もかくやの肉食系。 平和主義でお人好しなルーシェルとはしょっちゅう意見が対立したが、口でも腕力でも 彼は全く歯が立たず、いつも負けっぱなしだった。 そして―― 「なーにボーっとしてるのー?」 「…!!」 背後から突然抱き竦められ、ルーシェルの意識は今のこの場所へ引き戻された。 「アレス…またそんな格好で…。部屋着くらい着たらどうですか」 「えー、どうせ脱ぐんだしいいだろ?」 「………」 アレスはたった今湯浴みを終えて、髪から水滴を滴らせている。 石鹸の香りと湯の温もりが残る体には、肩から下げた布以外は何も着けていない。 もう何度も目にしている身体なのに、ルーシェルは目のやり場に困って視線を泳がせた。 アレスはわけのわからない鼻歌をうたいながら、濡れた髪を無造作に拭う。 大きく開け放たれた窓から入ってくる心地よい風が、彼の全身を隈なく撫でる。 幸いな事に、ここは町よりも大分高い切り立った岩山の上にあるから、 他人が不用意に見たくもないものを見てしまう可能性はほぼ無い。 アレスは世界各地に隠れ家を所有しているが、ここのように人目に付きにくい高所にある場合が多い。 もちろん安全性や隠密性を考えての事なのだが、何とかと煙は高い処が好き、という どこかの国の言葉がルーシェルの頭をよぎる。 「さすがに夕方は涼しいね。ルーシェもたまには風を通せば?」 …一体何に風を通せというのか。 真っ裸のまま腰に手を当てて得意気に胸をそらせるアレスの姿に、ルーシェルは思わずこめかみを押さえた。 ナントカと煙は…。 そんな様子を微笑みながら見つめていたアレスは、呆れ顔のルーシェルをなだめるようにもう一度抱き寄せた。 ところで、こう見えてもアレスは露出狂ではない。人前ではいつもきちんとした身なりをしている。 派手すぎるきらいはあるものの、ものは上等なフロックやジュストコール。 誂えたてのように清潔なシャツと磨き込まれたブーツ、しみ一つ無い礼装用の手袋。 襟元を緩めたり、素の手足を露出するような事は無い。 それは初対面の他人の前でも、親しいパーティー仲間の前でも同様で、 重い鎧に身を包んでの戦闘後でさえ、肌を見せる事は皆無に等しい。 更に言えば、人前で腰を据えて食事をしたり、眠る姿を見せる事もない。 当然、仲間と共に町の宿屋に泊まったり、共同浴場に行くような事も無かった。 要するに、油断した姿を晒す事が無いのである。 風呂上りの姿を堂々と晒すというのは、本当に例外的な事なのだ。 しかし彼を全く知らない者が偶然街でその姿を見かけただけならば、全く違った印象を懐くかもしれない。 性格がそうさせるのだろう、精悍なはずの眉目には緊張感というものがまるで無く、 くいと上がった口角の印象も手伝って、軽薄という言葉をそのまま顔に貼り付けたかのようだ。 酒場で、賭博場で、洋上を渡る客船の上で、美女と見れば鼻の下を伸ばして尻を追い回している。 木の上でゴロゴロとくつろぎ、道を歩けば路傍の山羊がマントの裾を食む。 はっきり言って、隙だらけである。 油断した姿を見せないという言葉は明らかに矛盾しているように思える。 にもかかわらず、彼と行動を共にする仲間達は、否応無しにその見えざる武装を常日頃から感じていた。 おそらくそれを決定付けている理由は、彼が徹底して弱った姿は見せないという点にあるだろう。 だがそれは、アレスが仲間を軽んじているとか、信用していないという事ではない。 あるいはそれは、彼の背中や掌に刻まれた、おぞましく禍々しいあの痕跡を 詮索されるのが面倒だからかもしれない。 彼を追う胡乱な追っ手の者から、仲間を遠ざけておきたいのかもしれない。 いずれにせよ、真相は本人にしか分からない事である。 仲間達も彼の人となりを知っているので、ことさら責めるような事はしなかった。 またアレスは、他人に裸体を晒す事に恥じらいを感じているわけではない。 無論である。言うまでもない。 鍛え抜かれた筋肉は太陽に灼かれた血色の良い膚の下で力強くうねり、 体躯の均整は非の打ち所の無い人体の黄金比。 余分な肉など一片たりとも無く、ぴんと張った肌には所々に古傷の痕跡が残るが、 彼の肉体の上にあってはそれすらも勲章の様相であった。 というのは本人による分析だが、あながち嘘というわけでもない。 今、下の町の往来を行き交う人々の前で、生まれたままの姿を晒す事になろうとも、 恥じ入る部分など何ひとつ無い。恐ろしい事に、彼は本気でそう思っている。 実行しないだけの社会性は身に付けているのがせめてもの救いである。 当然のように、その肉体は数多の女達の愛欲を欲しいままにしてきた。 だが。その完璧な肉体も、気を入れさえすれば十分に秀麗と表する事ができる面貌も、 本当に欲しい人の関心をそそる武器とは成り得なかった。 しかし今は違う。 以前は触れる事すら容易に許さなかったその人は、今アレスの腕の中で、 乱れた薄衣一枚というあられもない姿で喘いでいた。 そしてアレスもまた、目に見える武装も見えざる武装も全てをといて、 かの人が腕の中で窮屈そうに身をよじる感触を楽しんでいる。 外は宵闇に沈み始めている。 窓から差し込む茜色の光はいつの間にか消え、辺りは海底のように青く仄暗い。 部屋の隅に置かれたベッドが二人分の男の重みに軋み、鈍い音をたてている。 ルーシェルはアレスの膝の上に向かい合う形で座らせられ、乱れた薄衣から肌も露に、 その端正な顔を快楽と羞恥と罪悪の念によって歪ませていた。 この世で最も人に晒したくない最奥の恥部、そこに異物が入り込んでいる。 表面にたっぷりと香油を纏ったそれは、激しく締め付けてくる肉孔の内壁をなだめるように押し返す。 そうして徐々に開かせたそこに、更にまた異物が進入する。 「苦しい?」 左手の2本の指でルーシェルの中をゆっくりとかき回しながら、アレスはそう聞いてみた。 返事は無い。俯いて声を噛み殺しながら、必死に堪えている。 こういう場面において、黙する事はすなわち続行のサインである。 そう勝手に解釈して、アレスは左手をそのままに、相手の背中に回していた右手を後頭部に移して その面を引き寄せた。口元にかかる乱れた髪に構う事なく唇を近付け、一気に舌を滑り込ませる。 後孔に、口腔に、愛しい男の身体を受け入れながら、ルーシェルの脳裏にはある光景が浮かんでいた。 既に記憶の辺境に追いやったはずの、故郷の大聖堂。 祭壇と、整然と並ぶ神官達と、そこに重なるオルガンの音色。 過ぎし日にルーシェルがその身を捧げると誓った神は、壁の絵の中であり、祭壇の石像だった。 その神の前に、一人の罪人が進み出る。神の教えに背いた背徳者が、今裁かれようとしている。 聖水と祭壇に捧げられた炎で清められたナイフ、その刃が抉ったものは―― 「…ッ」 不意に胸のあたりを襲った感覚に、ルーシェルの思考は断ち切られた。 周囲の肌より赤みの強い突起部分に、アレスが舌を這わせている。 「くすぐったい…です…」 頭を押しやって吸い付いてくる唇を遠ざけようとするが、させまいと額で押し返してくる。 諦めて、ルーシェルは黒髪の頭に両腕を回した。 見た目よりは柔らかな髪の感触を鼻先に感じながら、今度は目の前の人だけに意識を集中させる。 汗ばんだ額にキスをし、背中の筋肉を指でなぞった。 その筋肉のふくらみの表面に、うっすらと蚯蚓腫れのようなものが張り付いている。 熱を持ったように表面が熱くなっているそれが、罪人の証とされるアレスの刻印だった。 なぜそんなものが彼の肉体に刻まれるに至ったのかは、ルーシェルは知らない。 (私と同じですね…) 声に出さずに、ルーシェルは口元に自嘲の笑みを浮かべた。 彼は既に神の御使いたる資格を剥奪されて久しい。 しかし信仰を捨てたわけではなかった。今でも朝に夕に、食物を口にする度に、敬虔な祈りを欠かさない。 だが彼は今、その神が禁じたはずの行為に耽り、溺れている。 穢れたこの身で祈りを捧げる資格はあるのか、何度そう思った事だろう。 頭が何度も否定してきた邪なる欲望、自然の摂理に反する背徳の行為。 今なら認める事が出来る。自分はこの人にこうして抱かれたいと、本当はずっと思っていた。 この体に触れたかったし、触れられたかった。獣にも劣るこの劣情を、神は決して許さないだろう。 ルーシェルの身には――踏み込めば性器には、背徳者の印たる傷痕が、 生涯消える事の無い烙印として刻まれている。 不倫、同性愛、近親相姦、小児性愛。こうした「人の道にはずれる」性愛を貪った罪人が、 戒めとして性器に烙印を刻まれるのだ。 にもかかわらず、彼は未だに神の加護を失ってはいなかった。 聖言も、聖歌も、法術は全て滞りなく効力を発揮している。いや、その効力は弱まるばかりか 近年では一層強まっていると言っていい。 これは何を意味するのか、神の慈悲とはかくも深きものなのか。彼自身にも分からない。 「…明かりは……消してください…」 「だめ」 アレスが手を触れずに枕元の明かりに火を灯すと、ルーシェルは嫌がる素振りを見せた。 他の同種族の者と違いアレスは夜目が効くが、羞恥と快楽にまみれたこの顔は、やはり明かりの元で見ていたい。 「こっち」 「……」 顔を上げさせ、汗で額や頬に張り付いた髪をそっと指ではがし、そのまま掻き上げて後ろへ撫で付ける。 やわらかな銀髪はひっかかる事無く滑らかに指の間をすり抜け、 波打つ度に淡いピンクやブルーの色彩を浮かび上がらせる。 まるで蛋白石のようだとアレスは思った。 髪を掻き分けて現れた目は、苦痛の為か快楽の為か僅かに赤く潤み、 しかし視線はどこか明後日の方向を見ていて、目の前の相手と合わせようとしない。 色素が薄い為に血の色と混じり紫色に見える虹彩には、よく見れば髪と同じような遊色の領域がある。 髪が蛋白石なら、瞳は紫水晶といったところか。 世界各地で様々な種類の人間や亜人を見てきたアレスでも、こんな色は見た事が無かった。 色素の欠乏による白皮症、いわゆるアルビノと似ているが少し違う。妖魔など人ならざるもののそれに近い。 故に、ルーシェルは時に祭り上げられ、気味悪がられ、人身売買を生業とする連中から追われてきた。 その色がどうやって出来上がったのかなど、彼らの知った事ではない。 この世界にはアルビノ信仰というものがあり、その体組織は宝石よりも高値がつくというが、 アルビノよりも更に稀なルーシェルならばさぞや高く売れるだろう。 もっとも、そんな連中にあっさり掴まる程今は愚かではないはずだが。 よい具合に解れてきたルーシェルの様子に、そろそろ追い込み時かとアレスが体勢を変えようとした時。 「…はね……」 「え?」 「羽根…出してくださ…」 「…いいよ」 大型の猛禽が羽ばたく時の音がして、アレスの背中に大きな翼が現れた。 炎のような明るいオレンジから血のように暗く沈んだ赤まで、 様々な種類の緋がグラデーションを描く美しい羽。 その色合いから、ある者達は彼の事を「黄昏の翼」と呼んだ。 黄金の翼を持つ彼の父親「暁の翼」との対比と、「罪人」である彼への揶揄が込められている。 しかしルーシェルは、そんな彼の翼を眺めながら交わる事を好んだ。 持ち主の方は、情事の時は正直邪魔なのでしまっておきたいのだが、 相手の反応が明らかに違うので、求められればばこうして出す事にしている。 舞い上がった小さな羽毛を掴もうと、ルーシェルは無意識にその方に手を伸ばす。 それを遮るようにアレスの右手が伸びてきて、手首を掴んで自分の首に回させた。 ルーシェルの両腕が自分にしっかりと掴まった事を確認してから、 アレスはその背中に手を回して彼を引き寄せ、体を自分に密着させる。 片腕で絞め殺せそうな程細く華奢な体――服を着た状態ではそういう印象を受けるルーシェルだが、 実際は少し違う。弓で鍛えている為か、胸も肩もそこまで薄くは無い。 腹には筋肉の存在を示す溝もうっすらとではあるが刻まれている。 ルーシェルは両腕をアレスの首に回したまま、相変わらず焦点の定まらない目で 彼の背中の翼の方を見つめている。 下半身に加えられる刺激は次第に深くなりつつあり、それに伴い腰から下腹にかけて 何かがたまるような感覚が強くなってゆく。思わず声が漏れそうになり、目を閉じて アレスの肩先に顔をうずめて堪える。その瞬間、不意に左の耳穴に何か熱いものが差し込まれて、 堪えきれずに声を上げた。 温かく濡れたアレスの舌が耳の中で水音を立て、柔らかな耳朶を吸い上げる。 首筋から鳩尾、背中にかけてを寒気にも似た感覚が走り、滑らかな肌がざらりと泡立つ。 不快なのか快感なのか、自分でも分からない。 ルーシェルは行為の最中にあまり声を出さないが、耳を攻めると悲しげで可愛らしい声を出す事があって、 アレスはその声が好きだった。執拗に攻めると、許しを請うような言葉を吐く事もある。 その言葉を引き出そうと、腕を突っ張って逃れようとするのを強引に抱き込む。 「…っ!」 次の瞬間、アレスは翼に鋭い痛みを感じて顔をしかめた。 何が起こったのかは考えるまでもなかった。手を止めてルーシェルの顔をこちらに向かせるが、 唇をなめながら視線を泳がせて目を合わせようとしない。 手をとると、掌の中央が赤く色付いている。血ではない。 それは赤い羽毛だった。アレスの翼から毟り取ったのだ。 「痛いだろ」 言うと同時に、アレスはルーシェルの頬を張った。 バチンと大きな音がして、ルーシェルの体はぐらりと後ろに傾く。 片手を後につき、尻餅をつくような格好でアレスの膝から落ちた彼の白い頬にはくっきりと赤い跡が残る。 しかし謝罪しない。肩で息をしながら、むしろ目には挑戦的な色を浮かべている。 アレスには分かっている。これはわざとだ。 耳を攻められるのを嫌がったわけではない。 ルーシェルは時々、こんな風にアレスを挑発する事がある。 雑に扱われる事を、自ら望んでいるのだ。 「何煽ってんの?後悔するよ?」 挑戦的な視線に高圧的な視線と言葉を返し、アレスはおもむろに手を伸ばしてルーシェルの髪を掴んだ。 ついさっき優しく撫でた美しい髪を、今度は殊更荒々しく掴んで頭を揺らす。 「痛い思いしたいんなら、させてあげるよ」 ゆっくりと胡坐の姿勢を崩し、尻餅をついた格好のままのルーシェルににじり寄る。 逃れようとしているが、髪を掴まれているので出来ない。 もう一度その頬を張り、腕を掴んで荒々しく引き倒した。 覆いかぶさって肘と体全体で押さえ付けながら、右手て顎を押さえ、口を開かせる。 その中に、さっきまでルーシェルの中に入っていた左手の指を突っ込んだ。 「………!」 進入してきた指を噛もうと必死で顎の筋肉を動かそうとするも、 しっかりと頬を挟みつけられて全く動かせない。 膝を立てて抵抗しているが、そんなものは何の役にも立たない。 指で舌を掴まれて、体を強張らせている。 「ほんと困った人だね君は」 「…………」 舌をヒクつかせ、だらしなく涎を垂らし始めた。 端正な顔が崩壊の様相を呈し始めたところで、指を放して解放してやる。 ルーシェルは涙を浮かべて激しく咳き込んだ。 アレスもここ数年で知った事だが、ルーシェルは乱暴に扱われる事で興奮する傾向があるらしい。 それでも真性のマゾヒストというわけではないようで、苦痛が長く続く事や、血が流れる程の痛みは嫌う。 また、言葉で攻撃されたり、尊厳を傷付けられるような行為も嫌う。 だからさっきも、左手は彼の口に入れる前にシーツで拭っていた。 そうやってアレスはその微妙なさじ加減を完璧に守り、彼が本当に嫌がる一線は決して越えないようにしている。 (…まったく、我侭な王子様の要望に応えるのも大変だよ) 相手の気分を高めたところで、そろそろこちらも本気になろう。 アレスはルーシェルの足首を掴んで両足を開かせ、腰の下に膝を差し込んで持ち上げさせた。 香油にまみれていやらしく濡れ光る恥部が露わになり、「烙印」を刻まれても機能を失っていない性器は 固くそそり立っている。ルーシェルは隠そうと手を伸ばした。 その手を払い退けて固くなった性器を撫でてやると、息遣いはいよいよ激しさを増し、 腰がゆっくりと波打ちはじめる。早く欲しい、声によらずにそう言っている。 アレスの眼が次第に嗜虐の色を帯び始め、血色の翼は相手を威嚇するように半分開かれ、 それはさながら人間を食そうとする悪魔の様相だった。 焦ってはいけない。何しろ久しぶりの事だ。 もし彼の血を見れば、本来の魔性を晒してしまいかねない。今はまだその時ではない。 アレスは自分にそう言い聞かせ、既に限界まで起ち上がった自らの欲望をもう少しだけ抑えながら、 先走り始めたルーシェルの性器に優しく口付けた。 「力抜いて。挿れるよ」 【end】 ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/moedra/pages/120.html
~プロローグ~ 時は中世・・・各国の臣民が武力にモノを言わせて自らの領土を広げんと活躍していた時代、北欧のあるところに他国からの侵略も全く受けつけなかった大国があった。 民の声を聞き善政を敷くマルケロス王をはじめとして、彼の国民達はみな争いを好まぬ静かな人々である。 そして周囲の国々の中でもずば抜けて広大な領土を持ちながらも他国と不可侵条約を取り交わす王の器の大きさに、固い忠誠を誓う者達が続々と集まってくるのだった。 だがそんな平和を望む王のもとに仕えながら、心中に不穏な企みを宿している者がいた。 マルケロス王の右腕とさえ言われている大臣、バローネである。 彼は子息のいない王を亡き者にして王位の座につこうと画策し、日夜仲間達とその計画を練っては柔和な物腰を装って王の隙を窺っていた。 ~第1章~エルガイアの式典 「おはよう、起きたか?」 自分自身も眠気眼を擦りながら、俺は寝室で静かに眠っていた妹のリリィを起こしにいった。 「う・・・ん・・・」 俺への返事なのかそれとも寝言なのか、毛布を巻き込んでベッドの上に転がる彼女の口からか細い声が漏れる。 「ほら起きろよ。今日はエルガイアの式典にいくんだろ?早くしないと遅れるぞ」 「ん・・・あ、お兄ちゃん、おはよう・・・ちょっと待ってて・・・」 ようやく、リリィが目を覚ました。 着替えがあるのだろうからと寝室を後にして、俺も外出の支度に取りかかる。 今日は、隣国のマルケロス王の妃が待望の子供を授かったとして開催される式典を見に行くのだ。 大勢の人々に慕われ、尊敬されている王のことだ。きっと式典もさぞ盛大で賑やかなものになることだろう。 俺は物心つく前、妹とともにこの村の入り口に捨てられていたらしい。 だが村に住むある親切な人に引き取られ、妹はリリィと、俺はレオンと名づけられた。 そして村人達の協力を得ながらお互いに支え合い、なんとかこれまで生き延びてくることができたのだ。 村の人々にはとても感謝しているが、それもこれも隣国のエルガイアが平和な政治を続けているお陰で受けられた恩恵なのだと思うと、偉大なマルケロス王を祝う式典にはなんとしても顔を出したいものだった。 「おまたせ」 ややあって、リリィが美しいドレスに身を包んで寝室から姿を現した。 白と淡いピンクの織り成す柔らかな雰囲気が、ふっと俺の緊張感を和らげていく。 「じゃあ、いこうか」 まだ16歳になったばかりの妹の手を取って家の外へ出ると、俺達はエルガイアへと続く細い林道を目指して歩き始めた。 昼過ぎになって式典の会場であるエルガイア城の前へと辿りつくと、既にそこは溢れんばかりの人々でごった返していた。 城の前に設けられた演壇が、無償で人々に振舞われるピールやワインが、そして楽奏隊が奏でる荘厳なファンファーレが、会場に集まった人々の熱気を際限なく煽り続けている。 やがてファンファーレが鳴り止むと、子を身篭った妃を従えたマルケロス王が民衆の前に姿を現した。 浮かれはしゃぐ人々の騒音にも負けずに、演壇の前に立った王が右手を高く上げる。 その瞬間、会場内が水を打ったようにシンと静まり返った。 「全ての愛すべき民達よ!今日は私の世継ぎを身篭った妻を祝うため、ここに集まってくれたことに感謝する!」 広い会場の隅々にまで行き渡るような王の澄んだ声が、波紋のように人々の間に広がった。 「今日はめでたい日だ。皆存分に浮かれ騒ぎ、日々の疲れを忘れて楽しんでくれ!」 王がそこまで言うと、会場内が再びざわついた。 「マルケロス王、万歳!!」 地鳴のような群集の声に、会場がビリビリと揺れる。 だがその次の瞬間、信じられないことが起こっていた。 辺り一帯を埋め尽くす群集の中から数本のナイフが放たれ、諸手を上げて人々の喝采に応えていた王の胸元に深々と突き刺さったのだ。 「うっ・・・ぐ・・・」 反射的に刺さったナイフの柄を握り締めながら、王が苦痛に呻き声を上げる。 辺りを支配していた喜びの声が全て悲鳴と怒号の嵐に変わるのに、それ程時間はかからなかった。 「ぐ・・・つ、妻よ・・・・・・」 王は一時我が子を孕んだ妃に手を差し伸べたものの、刃に塗られた毒によってそのまま息絶えてしまった。 だが呆然と立ち尽くす妃の元にバローネが現れて彼女を城の中へと下がらせると、彼は阿鼻叫喚のさなかにいる群衆に向かって呼びかけた。 「皆の者!静まれ!静まるのだ!」 王とは違う迫力の篭ったその声に、わずかながら騒ぎが収まる。 「誰か王に向けてナイフを投げた者を見てはおらぬか!?」 途端に、人々が顔を見合わせる。 しばしの逡巡の後、何人かがおずおずと手を上げ始めた。 「一体誰じゃ!?」 バローネの声とともに、手を上げた数人の人々が群衆の中に紛れていた3人の暗殺者を指差した。 「よ、よし、その者達を捕えよ!それと、今逆賊を訴えた者達には褒美を取らせる。後で城へくるがいい」 数分後、周囲の人々に捕えられていた3人の暗殺者が城の中へと連れていかれると、式典の会場に集まった人々は驚きの表情を隠せぬまま帰路へとついた。 中には、愛すべき王の死にすすり泣く者さえいる。 レオンとリリィも目の前で起こったことが信じられないといった様子で、しばらくの間その場から動くことができなかった。 「そんな・・・マルケロス王が・・・暗殺されるなんて・・・」 「と、とにかく・・・村へ帰ろう」 村へ帰る途中、レオンは悲しみに暮れる妹を慰めながら、激しい怒りとともになんとなく釈然としないものを感じていた。 「なあ・・・なぜバローネ大臣は、暗殺者を告発した人々に褒美を取らせるなどと言ったと思う?」 「え・・・?それは・・・暗殺者を見つけたんだから当然でしょう?」 「いや・・・」 俺はそこで言葉を切ると、少し頭の中の考えを整理していた。 暗殺者が見つかる前であれば話はわかるが、見つかった後に褒美を取らせる必要はないだろう。 「もしかしたら・・・この暗殺劇はあのバローネが仕組んだものなのかもしれないぞ」 「ど、どうしてそう思うの?」 「もし暗殺者と大臣が仲間だとすれば、多分妃も無事では済まないはずだ。そして・・・」 妹が、俺の顔を覗き込みながらゴクリと唾を飲み込む。 「褒美をもらうために城へ行った人達は城の中で殺されるか、生涯幽閉されるかのどちらかだろう」 「そんな・・・そんなのひどすぎるわ」 だがそう考えれば、王が殺されたというのに大臣のあの落ち着き払った態度も納得がいく。 「まあ、今にわかることさ。王子がまだ産まれていない以上、いずれにしろ政権はバローネが握ることになる」 リリィはそれきり押し黙ると、ずっと下を俯いたまま村に着くまで顔を上げなかった。 ~第2章~暴君の台頭 悪い予感というものほど、正確に的中するものは他にない。 マルケロス王の暗殺から数日経って、実質的に政権を握ったバローネは強大な軍事力を利用して周辺諸国への侵略に着手し始めていた。 前王が万が一の時のためにと自衛的な目的で鍛えていた騎士達が、無辜の民へ向けて牙を剥いたのである。 エルガイアの周辺に点在する町や村は次々と数十人からの騎士隊に襲われ、国家の統合へ賛成し服従しなければ家々に火をつけられて徹底的に蹂躙された。 また仮に服従に応じたとしても、村の資産は奪われ重い課税の苦を受けることになるのだ。 「どうしよう、お兄ちゃん・・・」 「ああ・・・今はまだ距離が離れているからいいが、バローネの軍はいずれこの村にもやってくるだろう」 そう言いながら家の窓から外を覗くと、村人達もいつ残虐な騎士達に襲われるかわからないといった怯えた表情で日々の日課をこなしていた。 「本当にこの村を守るつもりなら、バローネを倒す必要があるだろう」 「あいつを倒せば、元に戻るの?」 「エルガイアの人々は皆温和な前王を慕っていた。バローネの圧政さえなければ、こんなことはしないはずだ」 リリィの顔に微かな希望の色が浮かんだが、それはすぐに立ち消えた。 「でも・・・一体どうやって・・・」 「俺に考えがある。この近くの森に、巨大なドラゴンが棲んでいる洞窟があるんだ」 ドラゴンという言葉に、俯いていた妹が再び顔を上げた。 「そいつに力を借りることができれば、バローネを倒すこともできるはずだ」 「ドラゴンが私達の味方になってくれるっていうの?」 「それはわからない。危険な交渉になるだろう」 俺はそこまで言うと、相変わらず暗い雰囲気を放っている村の様子に目を向けた。 「場合によっては・・・戻って来れないかもしれない」 「そんな・・・だめよ、そんなこと・・・」 「いずれにしても、それ以外に生き残る方法はないんだ。俺達を育ててくれたこの村を、救いたいんだろ?」 それ以来、リリィは極端に口数が少なくなってしまった。まあ、それも仕方のないことだろう。 もしかしたら、バローネの軍に襲われる前にたった1人の兄を失ってしまうかもしれないのだ。 「明日の朝、森へ行ってくるよ。上手くいくように祈っててくれ」 遠くの空に上がる不運な村の黒煙を眺めながら、俺は妹に聞こえるように呟いた。 翌朝、俺は鉄製の胸当てと剣を身に着けると眠っているリリィを起こさないようにそっと家を出た。 これが最期の別れになるかもしれない。だが彼女に引き止められて、その決心が揺らぐのだけは避けたかった。 村の端に着くと、朝とはいえ薄暗い森が眼前に広がっていた。 ドラゴンの話は人づてに聞いたもので、実際にその姿を見たこともなければ、洞窟の正確な場所を知っているわけでもない。だが、やり遂げなければならないのだ。 さもなければ、この村は明日にでもバローネの魔の手に落ちることになるかもしれない。 襲われた村の中には、若い娘が連れ去られた所もあると聞く。 妹を守るためにも、方法はこれしかない。 俺は大きく深呼吸してから意を決すると、鬱蒼と木々の生い茂った森の中へと足を踏み入れた。 日光の届かぬ森の中は、奥へ行けば行くほどその暗さを増していく。 洞窟というからには、どこかの山肌に近い場所にあるはずだ。 そして村から近い場所にそんな岩の隆起がある場所は、精々数ヶ所に限られてくる。 遠くに見える山の稜線を確認しながら、俺は剣の柄を握ったまま慎重に森の中を歩き続けた。 1時間程歩き続けた頃、ようやく森の切れ間が見えてきた。 その奥に高い岩壁が連なっており、いかにも洞窟がいくつかありそうに見える。 逸る気持ちと高鳴る鼓動を抑えながらその岩壁まで辿りつくと、俺は洞窟を探し始めた。 「・・・あの洞窟か?」 見れば、少し離れた所に真っ暗な洞窟がぽっかりと口を空けている。 巨大なドラゴンが棲んでいるというのにこれほどぴったりな場所は、恐らく他にはないだろう。 入口の横に立って洞窟の中を見回してみるが、奥は真っ暗な上に相当入り組んでいるらしく、ここからではその全容を掴むことはできなかった。 「よし・・・行くぞ」 森に入った時のように大きく深呼吸をして気持ちを落ちつけると、俺はなるべく音を立てないように洞窟内へと入っていった。 ~第3章~森に棲む赤竜 落ちていた枯れ木に布を巻きつけた即席のトーチを頼りにしながら、俺は真っ暗な闇に包まれた洞窟の中をさ迷い歩いていた。 普通洞窟なんていうのは奥に行くに連れて道幅が狭くなるものなのだが、この洞窟はどこまで行っても広い幅と高さを保っている。 所々鋭利な何かで岩壁を掘ったような跡もあり、この洞窟が自然にできた物でないことには確信を持てた。 もっとも、人が作った物であるという確信には至らなかったのだが。 数分間迷いながらも洞窟の奥を目指して歩き続けると、俺はやがて広い広場のようになった所へと辿りついた。 数十メートルもの高さを有する天井のそこかしこに自然にできた穴が空いていて、そこから明るい陽光が漏れてきている。 そしてその広場の中央に、想像以上に巨大なドラゴンが静かに蹲って眠っていた。 全身を覆う赤銅色の鱗が、躯の大きさに見合った長い呼吸に応じて揺れる太い尻尾が、そして背中から生えた1対の巨大な赤い翼が、見る者を圧倒していた。 「う・・・」 そばで人間がたじろいだ気配を感じ取ったのか、ドラゴンがゆっくりと眼を開ける。 そして赤鱗と対照的なサファイアを彷彿とさせる透き通った青い瞳が、腰に剣を帯びた小さな人間の姿を捉えた。 「・・・何だ貴様は・・・我の眠りを妨げようというのか?」 怒声ではない。だが周囲の空気を揺らすようなその荘厳な声に、俺は心の底から震え上がった。 それでも勇気を振り絞り、ドラゴンに語りかける。 「そうじゃない。あんたの力を貸して欲しいんだ」 「フン・・・何故我が人間などに手を貸してやらねばならぬのだ。命を落とす前にさっさと消えるのだな」 地面に組んだ手の上に顎を乗せたまま、ドラゴンが俺を睨みつける。 仕方ない・・・勝ち目など到底あるはずもないが、ここまで来て退くわけにはいかないのだ。 俺は腰に身につけていた剣を引き抜くと、ドラゴンに向かって剣先を突きつけた。 「ならば、俺と戦え!そして俺が勝ったら、望みを聞くと約束しろ!」 目の前の人間が見せた意外な行動に驚いたのか、ドラゴンが初めて首をもたげた。 「ほう・・・面白い。貴様のような卑小な人間が、我に楯突くというのか」 さも可笑しそうに含み笑いを漏らしながらも、ドラゴンが再び地面の上に蹲る。 「やってみるがいい・・・己の無力さを思い知ることになるだけだろうがな」 嘲りの色を隠そうともしないドラゴンの態度に憤りを感じて、俺は雄叫びを上げながらドラゴンに向かって斬りかかっていった。 ガギィン! だがドラゴンの顔に向けて振り下ろした剣は硬い鱗に弾かれ、金属の震えが柄を握っていた両腕を痺れさせた。 その瞬間ドラゴンの背後から振り回された太い尾に足を掬われ、その場に倒れ込んでしまう。 「うぐっ・・・」 そして固い岩床に背を打ちつけた痛みに呻いた時には、もう勝負は決していた。 地面に身を伏せていたはずのドラゴンが素早く倒れた俺の上へと覆い被さり、俺の首筋に尖った爪の先を押しつけていたのだ。 「うう・・・」 「ククク・・・口ほどにもない・・・さっきまでの威勢はどこへ行ったのだ?」 ドラゴンが指先に少しだけ力を込めると、鋭い爪が俺の喉に食い込んだ。 「あう・・・ぅ・・・」 「どうした・・・貴様は今絶体絶命の窮地にいるのだぞ?命乞いはせぬのか?」 「も、もとよりそんなつもりはない。あんたの協力が得られなければ・・・どうせ俺達に未来はないんだ」 それを聞くと、ドラゴンは意外にも俺の喉に押しつけた爪を引っ込めた。 喉に与えられていた鈍い痛みの元が消え去り、深く安堵の息をつく。 「ほう・・・殺されるかもしれぬというのに、そんな非力な身で我に何を頼みにきたのか興味が湧いたぞ」 ドラゴンはそう言うと、灼熱の炎を吐き出すその口から熱い吐息を俺に吹きつけて後を続けた。 「聞くだけは聞いてやろう。お前をどうするかはその後に決めてやる」 「お、俺達の村を救って欲しいんだ。エルガイアの大臣、バローネを討ちたい」 視界を覆い尽くすドラゴンの迫力に怯えながらも、俺は何とか声を絞り出した。 「何故だ?あの大国はマルケロスとかいう王の善政で成り立っているはずであろう?」 「王は先日・・・暗殺されたんだ。今は大臣だったバローネが政権を握り、周辺の町や村を侵略している」 「そしていずれ貴様の村も・・・か。ならば、貴様だけでもどこかへ逃げ出せばよいであろうが?」 確かに、俺と妹が助かるためだけならそれでもいいかもしれない。 だが、それは今まで俺達を育ててくれた村の人々を裏切ることになる。 「あの村は・・・孤児だった俺を温かく迎えてくれた村なんだ。だから、自分だけ逃げ出すわけにはいかない」 「フン・・・人間同士のくだらん義理に躍らされて、我に助けを求めてきたというわけか」 ドラゴンはそこまで言うと、再び俺の首筋に爪を突き立てた。 「だが断る。貴様の話には我への見返りがなかろう?人間の為にタダ働きをするほど、我はお人よしではない!」 ググッと、爪先が更に押し込まれた。もう一押しされれば、ドラゴンの爪が俺の喉を突き破るだろう。 「ま、待て・・・こ、事が済んだら・・・あんたに若い娘を1人差し出そう。16歳になったばかりの処女だ」 「何だと?・・・嘘ではあるまいな?」 「ああ、本当だ・・・その娘というのは・・・俺の、実の妹だ・・・」 明らかに、ドラゴンの顔に衝撃の表情が浮かんだ。 「貴様は・・・村の平和のために己の妹を我に捧げるというのか!?」 「どうせ村が奴らに襲われたら、妹も無事では済まない。村のためだと言えば、彼女もわかってくれるはずだ」 ドラゴンは喉に突き刺さる爪の苦痛に喘ぐ俺の顔をじっと覗き込みながらしばらく何かを考え込んでいたものの、やがて静かに口を開いた。 「・・・・・・いいだろう。その望み、叶えてやる」 それだけ言うと、ドラゴンは俺の上からどいてくれた。 ~第4章~反撃の狼煙 絶望にも似た暗い雰囲気の漂う村の上空に、突如巨大な影が舞った。 数人の村人達が空を見上げ、その影の正体に気付いて愕然とした表情を浮かべている。 大きく翼を広げた赤いドラゴンが村の上空へ飛来し、激しい羽ばたきに伴う風を起こしながら降りてきたのだ。 「な、何だ!?」 「ドラゴンだ!ドラゴンが襲ってきたぞー!」 「早く!みんな家の中へ入るんだ!」 慌てた男達が口々に叫び、外に出ていた子供や女達を家の中へと押し込めていく。 だが村中を揺らすような地響きとともに村の中央へ着地したドラゴンの背中からレオンが姿を見せると、辺りの騒ぎが一瞬静まった。 「みんな!聞いてくれ!このドラゴンが俺達に力を貸してくれることになった!」 若干の間があって、村人の1人が呟くように声を絞り出した。 「ほ、本当か・・・?」 「ああ、本当だ。みんな、このままバローネのいいなりにはなりたくないはずだ!立ち上がって奴を討とう!」 ドラゴンの背に跨った青年の声に、数人の男達が呼応した。 「そ、そうだ、バローネを討とう。ドラゴンが味方になってくれるのなら心強い」 「よし、みんな、戦の準備だ!奴らは明日にでもこの村へ攻めてくるかもしれないぞ!」 「おー!やってやるぞ!」 にわかに、辺りに明るい活気が満ち溢れた。その様子に、ドラゴンがポツリと漏らす。 「なるほど・・・非力には違いないが、カリスマだけはあるようだな・・・」 ドラゴンの言葉に応えるようにニヤリと笑ったレオンを、リリィが家の窓から見つめていた。 「お兄ちゃん・・・やったのね・・・」 よもや自分の命がドラゴンの捧げられることになっているとは夢にも思ってはいなかった彼女は、胸の前で組んだ両手を固く握り締めながら自らの祈りが通じたことに感謝していた。 その日の夜、リリィを眠らせてから家を抜け出した俺は民家もほとんど建っていない村の端へと足を運んだ。 村人達を必要以上に恐れさせないように、ドラゴンがそこで静かに蹲っていたからだ。 「何か用か?」 暗闇の中で近づいてきた俺の姿を認めると、ドラゴンは首をもたげてそう聞いてきた。 「いや・・・ただ、何であんたが急に俺の頼みを聞いてくれるようになったのか不思議に思ってさ・・・」 「・・・村を守るために妹を我に捧げると言う貴様の覚悟の程を知りたかっただけだ」 ドラゴンは何だそんなことかという様子でそう答えると、少し不機嫌そうに鼻息をついて体を丸めた。 「そうか・・・それはそうと、俺はあんたのことを何と呼べばいいんだ?」 「・・・何故そんなことを聞くのだ?」 「名前がないと、お互いに不便だろ?」 その言葉にしばらくの間俺のことをじっと睨みつけていたドラゴンが、不意に顔を背ける。 「人間などに我が名を明かすつもりはない。どうしても名が必要だというのなら、貴様の好きに呼ぶがよかろう」 「それなら・・・ルースというのはどうだ?西欧の言葉で、光という意味だ」 「フン・・・光か。いかにも人間の好みそうな言葉だが・・・まあ、悪くない」 ドラゴン・・・いやルースは、どこか満足げな表情を浮かべたまま持ち上げていた首を地面に横たえた。 その場の思い付きだったのだが、意外と気に入ってくれたらしい。 「バローネの軍は明日にもここへやってくるかもしれない。その時は・・・頼りにしてるぞ、ルース」 眠りにつくために眼を閉じたドラゴンからは俺に対して何の返事もなかったものの、地面に無造作に投げ出された尻尾の先が照れ臭そうに揺れていた。 つづく
https://w.atwiki.jp/07th-umineko/pages/22.html
ロノウェの用意したクッキーを摘みながら、戦人は紅茶を味わう。縁寿は色々としがらみがあるとかで、今はこの場にいない。 紅茶の銘柄など、英語以下に興味が無く覚えちゃいないが、それでもこの香りの良さはなかなかのものだと戦人は思った。 ただ、これも所詮は魔女と悪魔の用意した代物。実はこう見えておぞましい過程を経て生み出されている可能性もないわけではないが。 無言のまま、戦人は一人佇む。 深い絶望も、熱い憤りももはや表には見せない。だが消えたわけではない。それらはすべて青白い氷のように冷え、凝固しより堅牢なものへと転換されただけだ。 と、テーブル脇の虚空から不意に少女の姿が現れた。 黒く艶やかな髪は癖が無く、肩を覆い隠すほどに長い。赤い上着の中、桃色のネクタイが胸の膨らみに沿って緩やかな稜線を描いていた。 黒い水着のような服から白く長い脚が挑発的に伸びている。彼女は悪魔そのものだが、醸し出される淫靡さはまさに悪魔的だった。 「まったく……だから何でいつもこの私がこんな雑用を……」 苛立たしげに彼女は不満を漏らす。 「よお姉ちゃん。……何の用だ? クッキーならまだあるぜ。ロノウェからなら、お代わりはまだいらねえとでも言っておいてくれ」 静かな戦人の口調。 だが、それもまた彼女の神経を逆撫でる。深紅の瞳がより赤く燃えた。 「ルシファーよ。……前にも言ったでしょう? それなりの敬意を払わないと後悔することになるって」 「ああ……そういえばそんなこと言っていたな」 すっかり忘れていたと言わんばかりに、戦人は薄く笑い肩を竦める。 その表情を見て、ルシファーは決めた。殺す。また殺す。用件を伝えたら、今度こそ二度とそんな軽薄な態度が取れないほどに後悔させてやる。どこまでも惨たらしく、心の奥の奥まで恐怖を刻み込んでやる。 彼女は目を細める。 「ベアトリーチェ様から伝言よ。次のゲームの準備にはもう少し時間が掛かりそうという話よ」 「ああそうかよ。分かった……ありがとな」 それだけ言って、戦人は一瞥もくれずに再び紅茶へと視線を戻す。 それは明らかに、彼女を小間使いか何かとしてしか感じていない態度。 ルシファーは心地よいほどに怒りが湧き上がるのを感じた。にたりと笑みを浮かべる。 「……さっきも言ったのにもうそれ? ふふっ……。本当に馬鹿な子ね。そんなに私が忘れられないの? いいわよ? 遊んであげる。丁度退屈していたところなの。ベアトリーチェ様からの用事は済んだもの。たっぷり遊んで貰うわよ。……覚悟しなさい?」 ぺろりと唇を舐め、これからどうしてやろうかと彼女は夢想する。じっくりたっぷりと嬲って、骨を砕き肉を抉り眼球を潰し皮を剥いで血を啜って……ああ、堪らないったらない。 今なら邪魔な妹達もいない。自分一人で彼と遊べる。 「へえ……そりゃ奇遇だな。丁度俺も退屈していたんだ。相手してくれよ」 だが、そんな何の気負いもない口調が戦人から返ってくる。優雅にも紅茶を飲みながら……。 今度こそ、ルシファーの表情が歪んだ。 「減らず口を……っ! くっ……ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふあははははははははははははははははははは。…………死ねえええぇぇぇぇっ!!」 その直後、彼女の体が弾け飛ぶ。 目にも映らぬスピードで室内を駆けめぐり、何十回目かの反射の後、戦人へと突き刺さる。 戦人の体から、花のように血しぶきが舞う。 「な……んだと?」 そのはずだった。戦人の心臓を貫くはずだった。 あり得ない……と彼女に戦慄が走る。 鈍い音を立てて彼女が突き刺さったのは、つい数瞬前まで戦人が座っていた椅子だった。 では戦人はどこに? ……無表情に、戦人は彼女を椅子の背もたれから抜く。いつのまにか、彼は椅子の脇に立っていた。 ルシファーが再び人へと姿を変える。丁度、戦人によって後ろから首を掴まれた格好だ。 「くっ……お、おのれ……人間風情が……」 彼女は唇を噛む。 嘉音のときといい、戦人といい。何かが間違っている。そうとしか思えなかった。何故だ? 何故自分がこんな屈辱を味わわされなければならない? 「じゃあ……遊んで貰おうか」 「何? 何だと?」 遊び? 人間がこれ以上何をするというのか? 予想もしない台詞に、ルシファーは困惑する。戦人がこの手を離した瞬間、今度こそ彼の胸を貫くつもりだった。 「ああ。前に言っただろ? 忘れたのかよ?」 「…………何の……事だ?」 彼女の返答に戦人は軽くため息を吐く。彼女が覚えてなかったことに対して呆れたが、それならそれで構わない。どうせ彼女らにしてみればそんな程度の意識だったのだろうし、所詮は些末ごとだ。 「言っただろ? 『押し倒して同じ台詞を言ってやる』ってよ。二度と忘れられないくらいに思いっきり俺をお前の奥の奥までねじ込んで、抉ってたっぷり楽しませてやるよ。俺もいい加減、こんなところに閉じ込められて苛々が溜まってんだ」 「なっ!?」 驚愕に彼女は目を見開く。犯すだと? 人間風情が? 悪魔の中でも有数の力を誇り、煉獄の七杭の長女たるルシファーを? 「ひっ!?」 彼女の背後から戦人が抱きつく。 両腕でがっちりと胴と胸を抱き締めていて、ルシファーは必死に藻掻くがその拘束から逃れることが出来ない。両腕の外から抱き締められているので、腕を動かすこともままならない。 「へえ。……なかなか可愛い声も出せるんじゃねえかよ」 「ひぅっ!? んな? あ……くっ」 戦人は彼女の耳を口に含む。 ぬらりとした感触がルシファーの耳を嬲る。 「やめ……止めろ。そんなこと……」 今まで経験したことのないその妖しい刺激に、彼女は恐怖を感じ身悶えする。必死に戦人から逃れようと顔を背けるが、それを逃がす戦人ではない。 「くっ……んんっ……んんんんんんんっ」 目を瞑りながら、ルシファーは耐えることしか出来ない。 と、戦人の右手がルシファーの上着の胸元を掴む。 「なっ!? あっ!? あああああぁぁぁ~~っ!?」 派手な音を立てて上着が引き千切られていく。 ボタンが弾け飛び、胸が大きく開かれた。 「止めろ……くそっ!! くそっ!!」 開かれた隙間から蛇のように戦人の腕が入り込み、ルシファーの左乳房を掴んだ。 欲望の赴くままに弄ぶ。 戦人の手から僅かに零れる豊かな膨らみは、若々しく張りのある弾力に溢れていた。 「殺す。……殺してやる。殺してやる……殺してやる……」 並の人間ならば聞いただけで逃げ出したくなるほどの怨嗟と殺意を込めてルシファーが吠えるが、戦人は平然と彼女の胸を揉み続ける。 「……いいおっぱいしてるじゃねぇか。さすがは太股姉ちゃん達の長女だけあるな」 「殺してやる……殺してやる……殺してやる……ううぅ……」 あまりの悔しさに、彼女の目から涙が浮かぶ。 けれど、どんなに嘘だと頭の中で繰り返しても、胸を揉まれるおぞましい感覚は消えて無くなってはくれない。それどころか、意識すればするほどかえってその感覚が大きなものへと変わっていくかのようだった。 戦人の手は荒々しく彼女の乳房を嬲り、弄び、そして貪るように蠢く。 自分の腕の中で体を屈め、肩を震わせるルシファーを見下ろしながら、戦人はほくそ笑む。 手の平で丹念に彼女の胸を撫で回し、指先で彼女の乳首を摘み、転がす。 「う……うぅ……絶対……殺して…………やるぅ」 その台詞に応えるように、戦人はルシファーの乳首を少しだけ強く潰し、引っ張った。 その痛みに、ルシファーはくぐもった声を漏らす。 「……そんなに胸が嫌なら、もう止めてやるよ」 「………………え……?」 戦人の手が彼女の胸から離れた。 ようやくこれで終わりかと、ルシファーは安堵の息を吐く。あまりにも突然のことだったので、すぐに彼を殺すということすら一瞬忘れてしまったくらいだ。 だが……。 「…………ひっ!?」 すぐに彼女は自分の甘さを思い知る。 この人間は自分をまだ解放する気ではなかったのだ。 戦人の手は、今度は彼女の股の間へと潜り込んでいく。 「やめ……やめろ……」 慌てて右手で戦人の手を押さえようとするが、遅かった。二の腕から先は幾ばくか自由が利くとはいえ、やはり思うようには動かせない。戦人の指は彼女の股下を掴んでずらし、そして露出した秘肉をなぞり始める。 「くっ…………うぁ………………あぁっ……」 敏感なところをまさぐられ、ルシファーは思わず背中を仰け反らせる。くすぐったいだけのようで、それでいてどこか苦さと甘さをもった刺激に、今度は秘部に神経が集中する。 その神経の集中は熱い疼きとなり、ルシファーの秘部を充血させていく。 「……………やめ……………やめ……」 羞恥に顔を赤らめながら、彼女は必死にこの感覚に飲まれまいと抵抗する。自分ではない誰かの手によって秘部を弄ばれる。……その生まれて初めて味わう未知の感覚は、彼女にとって恐怖だった。その恐怖は胸を弄ばれていたときの比ではなかった。 しかし、どれだけ彼女が身をよじらせようと、戦人はルシファーへの愛撫を止めない。執拗に彼女の秘唇をなぞり、そして……。 「……………くぁっ……」 ルシファーは若干の甘みを含んだ呻き声を漏らした。 戦人の指が彼女の秘裂へと入り込んだのだ。 「何だよ。これだけ抵抗しておいて感じてるのか姉ちゃん?」 「違う……違う……そんなわけ……ない……」 目を瞑りながらルシファーは首を横に振る。 だが、それでも彼女の秘部は僅かとはいえ確かに湿っていた。戦人の執拗な愛撫によって、熱い疼きは蜜へと姿を変えていく。 もし気持ちいいかどうかと問われたなら、絶対に気持ちよくなんかないと彼女は言い切っただろう。実際、快感だとは思っていない。けれど、無意識や本能というものは理性の司る領域ではない。故に体は意識とは別に反応してしまう。 「いい……加減にしろ。……今止めれば、許してやらないこともない。……だ……から……ひぁっ……」 彼女の入り口を戦人の指先がかき回すたび、湿っていたそこに新たな蜜が溢れだしていく。 じんじんとした疼きが伝わるたびに……理性の壁はまだ強固なつもりだが、それが少しずつ矧ぎ取られていくような気がする。 「本当だ……。嘘じゃ……ない……からぁっ! やっ……あぁっ!?」 それは彼女の本心だった。 ひょっとしたら、後でまた彼を殺すことはあるかも知れない。けれど、今この陵辱から解放してくれるなら、それをここで復讐するつもりはない。 数秒の沈黙。 その沈黙に、彼女はすがる。見下している人間の慈悲にすがる。 しかし、戦人の返事は酷薄なものだった。 “ダメだぜ? 全然ダメだぜ? 俺はまだお前を『抉って』ねぇんだぜ?” 「…………や…………ああ……」 そして戦人は一旦彼女の秘部から手を離し、自分のスラックスへと移動させる。 ジッパーが下がる音に、ルシファーは怯える。 右腕が完全に解放され、自分の胴を抱える戦人の左腕を外そうとするが……悪魔とはいえ単純な力では無力だった。 「…………ひっ!?」 ルシファーの体が震える。 戦人の男性器の先が彼女の入り口に当てられる。 涙を零しながら、恐る恐る彼女は後ろを振り返る。いかにも哀れっぽく……弱々しく。 だがそこには無表情で……青白い氷を瞳に宿した“人間”がいた。 「あ……ああ……」 その瞳を見た瞬間、彼女は悟る。無駄だ……何を言っても無駄だ。何をどう懇願しようと祈ろうとそれが届くことはない。悪夢のような光景に、彼女は恐怖に戦く。 “人間”がルシファーの中へと打ち込まれる。熱く堅い塊がずぶずぶと彼女を抉っていく……。 今自分が抉られているというその感触が……じわじわと波のように押し寄せてきて……その意味をルシファーはゆっくりと認めていく。 「嫌……あ…………嫌……あ、ああ……」 決して認めてはいけないと思いつつも、認めざるを得ない。 そしてそれが、彼女の理性の限界だった。 「嫌あああぁぁぁぁ~~っ!! 嫌っ!! 嫌ああぁぁぁ~~っ!! 人間なんかに犯されるなんて嫌ああぁぁ~~っ!! 抜いてっ!! 抜きなさいよおおぉぉ~~っ!!」 今度こそ、体面もプライドも投げ出して彼女は泣き叫んだ。 部屋に彼女の泣き声が響き渡る。 無駄だと理解したはずなのに、言わずにはいられない。 「嫌っ!! 嫌あああぁぁぁ~~~~っ!! 痛い…………痛いいいぃぃ~~っ!!」 だが、泣き喚くルシファーに容赦なく戦人は腰を打ち据え続ける。いくら彼女の秘部が湿っていたとはいえ、所詮は強引に掻き出したに過ぎない。男のものを受け入れるには、まだ準備が足りていなかった。 窮屈な膣を戦人のものが出入りするたび、ルシファーはまさしく抉られているような痛みを感じる。 「抜きなさい……。抜きなさいよ…………嫌………嫌あっ……」 掠れるようなルシファーのそれはもはや譫言に近かった。 その一方で、戦人は鬱屈した思いを彼女に叩き付けながらも、それがかえって更なる鬱屈を溜めてくるような矛盾を味わっていた。 そしてその鬱屈は戦人のものを更に膨れ上がらせ、益々苛烈にルシファーを抉っていく。 ルシファーの体は戦人のものをがっちりと締め上げ、強く刺激を伝えてくる。その快感は、凍った戦人の感情の中でも、青白く昏い恍惚として特に輝いていた。 「い……や……。あぁっ……はぁっ……抜い…………んっ……。嫌ああああぁぁぁ~~~~~っ!!」 ぐちゅりと粘っこい音が結合部から聞こえ始めてくる。 それに従って、より滑らかに戦人は彼女を抉る。 熱い打ち込みが、ルシファーの理性を暴力的に……いや、事実暴力か……苛烈にかき回す。 「助けて…………助けてよ……………もう嫌…………嫌ああ」 もう訳が分からない。彼女の頭の中はもうぐちゃぐちゃになっていた。抵抗する気力も、何もかもが喪われた。 結合部から聞こえる淫靡な水音が、まるで永遠に続くかのような錯覚に陥る。 「抜いて…………抜いて……えぇ……。んぐっ……んんっ……んぁっ……。嫌……許して…………助けて……えっ!」 ルシファーから涙が止まらない。 そして戦人からの責め苦も止まらない。 痛みと快感が入り交じった熱い疼きが収まってくれない。 激しく何度も腰を打ち据えながら、戦人は貪欲に快感を貪り続ける。生暖かい肉の感触が、芳醇なワインを熟成させるかのように、戦人の射精感を高めていった。 “そろそろ……だな” 果てしない陵辱の渦の中で、残り少ない理性で……ルシファーはそんな声を聞いた気がした。 何が? 何が『そろそろ』だというのだ? 嫌な予感がする。 いや……『予感』なんかじゃなくて……この後に残されたものといえば……。 「止めろ…………それだけは止めろ。うっく…………止めて…………下さい……うぅ。お願い……だからぁ……ふぁっ……止めて……よぉ。ねぇ? っく……はぁっ……あぁっ。ねぇ?」 悪魔として生まれて、彼女は初めて人間相手にはっきりと懇願を口にした。命令口調ではなく……。 だが……何度も繰り返すが今の戦人には慈悲は無い。 「…………悪いな。もう遅えよ」 「………………え? あ? 嘘…………嫌……。嫌よ…………こんなの……。あ……あぁっ……」 ルシファーの下腹の奥で、じわっと生暖かい感触が満ちていく。 自分は……人間の手でここまで堕とされ汚されたのだと……絶望に目の前が暗くなる。いっそのこと死んでしまいたいくらいだ。いや……もはや死ぬ気力すら喪ってしまった。 ルシファーの瞳から光が抜け落ち、彼女は脱力する。戦人の腕の中で、彼女は崩れ落ちた。 テーブルへとルシファーが倒れ込む。 戦人と彼女の結合部からは、精液と血の混じったピンク色の液体が溢れ、それは彼女の太股を伝って流れ落ちていった。 「それじゃあ。……第二ラウンドと洒落込もうか」 一度射精したにも拘わらず、萎えようとしない剛直。 それが打ち込まれる感触をルシファーは遠い意識で受け止めた。 彼が部屋を訪れたのは、ちょっとした思い付きのようなものだった。次の盤の準備にはまだ時間が掛かる。戦人にはクッキーと紅茶を用意して待って貰っていたが、それまでに菓子が保つかどうかは少々不安なところだ。 彼は執事だ。主人のゲームの相手である戦人を持て成すのも彼の仕事だ。それにあの客人は何だかんだ言いながら、自分のクッキーが気に入ったようだ。ひょっとしたら本当にクッキーが足りなくなっているかも知れない。 恐らく彼は暇を持て余していることだろう。ならばベアトリーチェに対する愚痴を共に吐くのも悪くない。それで彼の気力が少しでも回復するなら、次の盤面もまた面白いことになるかも知れない。 ゲームが面白いのは、あくまでも互いに打ち負かさんとする相手がいるからだ。その相手にやる気がなければ、それはもうゲームとして成立しない。手段としては相手の気力を折るのも戦略の内だろうが、それでは観戦者としても面白くない。 「失礼します」 ロノウェは戦人のいる部屋……そのテーブル脇に顕現した。 「よお。あんたか。丁度よかった。紅茶のお代わりを頼む。色々と遊んだら喉が渇いたんだが、切らしてしまって参ってたんだ」 椅子に座って戦人が笑いながらロノウェを出迎える。 「それは失礼致しました。すぐにお代わりを用意して――」 ロノウェもにこやかに笑い返したが、すぐに部屋の異様に気付く。部屋に立ちこめる濃密な雄と雌の匂いに気付かないわけがない。 「……なっ!?」 そしてその正体にもすぐに気付く。 彼の足下で、長髪の少女が無惨な姿で転がっていた。服は原型を思い出すのも難しいくらいに千切られ、もはや服とは呼べない。肌を隠すことも出来ないそれは、ただの布きれだ。 ほとんど全裸の状態で、ルシファーは気を失っていた。その秘部からは戦人の精液が溢れ出ている。どれほどの陵辱を彼女に与えたのか……。 「一体何を……なされたのですか?」 呆然としたロノウェの呟きに対し、戦人は軽く肩を竦める。 「その姉ちゃんが退屈だって言ってたから、遊んで貰ったのさ」 その答えを理解するのに、流石のロノウェといえども数秒の時間を要した。 「……なるほど。ぷっくっくっく……。そういうわけですか」 右代宮戦人が油断のならない存在だというのは理解していたが、まさかここまで力を付けるとは、ロノウェにしても驚きだった。 おそらく、この傲慢なる長女はいつまでも戦人が以前の彼と同じだと思い、油断していらぬちょっかいを出したのだろう。そして、彼に返り討ちに遭った。ロノウェはそう理解した。 「その様子だと、随分とお楽しみだったようですね」 「ああ、楽しかったぜ。気が付いたらまた相手して貰いたいくらいだ」 そして戦人は不敵に笑みを浮かべる。それに対し、ロノウェも軽く肩を竦めて笑みを返した。 「それは何よりです。では、私はそろそろ失礼します。すぐに紅茶のお代わりをお持ちいたしますので」 「ああ、ついでに菓子の方も頼む。それとその姉ちゃんも連れて行ってくれ」 「畏まりました」 恭しくロノウェは頭を下げた。 「ああそれとだ」 「……はい、何でございましょう?」 ロノウェが立ち去ろうとすると、不意に戦人に呼び止められた。 「ベアトリーチェの奴に伝えておいてくれ。『俺は絶対お前らなんかに屈しない』ってな。どうせ向こうも承知してると思うけどよ」 ロノウェはしばし戦人の瞳を見詰める。青白い氷を宿したその瞳は冷たく輝いていた。それを砕くのは……流石のベアトリーチェといえどもどうなることやら? どうやら次のゲームも面白くなりそうだ。 「ぷっくっくっくっ。……はい。確かに伝えさせて頂きます。それではまた後ほど」 思わず笑みを漏らし、そしてロノウェは部屋を立ち去った。彼の姿とルシファーの姿が同時に掻き消える。 戦人は一人、残り少ないクッキーを摘みながら、深く息を吐く。 いきり立った思いは、まるで萎えようとしなかった。 ―END― Next 傲慢の末路 - 七杭系を是非希望したい。 -- (名無しさん) 2009-09-22 17 58 32 杭みたいにカッチカチになりました -- (名無しさん) 2010-01-31 23 18 07 戦人とルシファーのカプは大好き☆ -- (玲菜) 2010-05-12 15 47 46 戦人、鬼畜すぎ、、 あのノロウェが驚くとはww -- (XI) 2010-06-06 21 11 50 もう最高です!!もっと弄んであげて下さい! -- (名無し) 2011-08-04 15 08 36 ルシ姉・・・いい声 -- (名無しさん) 2011-12-17 17 44 03 いいね☆ -- (。。。) 2012-01-31 22 45 29 気持ち悪くなってきた(ーー;) -- (ああああ) 2012-02-18 22 15 22 犯せ! 犯せ! -- (えよこ) 2012-05-29 20 18 23 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/miho34/pages/32.html
※投稿ルール※ 1.投稿者HNを記載の上で投稿して下さい。 2.投稿文の中で観戦レポ分は「古閑美保カレンダー」に転載させて頂きます。 3.他の方の投稿に加筆するのはOKですが変更は禁止です。(自分の投稿を変更、訂正するのはOKです) 4.投稿ボタンを押す前に「他人が不快な思いをしないか?」「他人を傷付けないか?」を今一度確認してから投稿して下さい・・・他人を思いやれる古閑美保のファンとして恥ずかしくない投稿をお願い致します。 5.「レポありがとうございます」等のコメントはブログの方でお願い致します。あくまでも情報のみの記載でお願い致します。 第35回ミヤギテレビ杯 ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント・最終日 完全版 利府ゴルフ倶楽部 ペアリング:川原由維・丁允珠 天 候 :曇り時々小雨 昨晩に『伊達の牛タン本舗』で皆と牛タン定食に舌鼓を打っていた頃には、雨が降っていいたこともあり肌寒くなってました。本日は多少湿気があるものの観戦日和になりましたね。ギャラプラのおじさん曰く『昨日はカキ氷が沢山売れたが、今日は牛すじ煮込みだね』と。僕は都合3杯食べましたね(^^; 【ドライビングレンジ】 その牛すじ煮込みなんぞを食べていたおかげで、レンジに行った7:40には美保師匠はすでに練習ちう。ウッドまで進んでました。(^^; 本日のウェアは黒のパンツ(裾がブーツカット気味に広がったヤツ)・黒の長袖で胸に白とターコイズブルーのプーマ18ホールロゴが横2列に入っているヤツ。 アプローチ練習場ではミキティーがやってきて美保師匠にご挨拶。 楽しそうにお話ちう。そこに委世。とかわいい瑠衣Pがやってくるとかなり盛り上がってましたので、きっとミホワールドが満載だった事でしょう。 僕は少し離れてましたので聞こえませんでした。 【1H 359Y PAR4】 ティーインググランドにやってきた美保師匠。 エアー懸垂でのストレッチから素振り・左で素振り・ピョンピョン跳ねといつものルーティーンで準備ちう。 『第7組の選手をティーオフ順に紹介します。コガ・ミホ!』 昨日もそうでしたが・・・何かもっとあるでしょうよ! ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! セカンドはエッジまで109Y・ピンまで130Yでピンは左奥が高い2段グリーンの上段左手前。バンカー越えでピンからエッジまでが狭いです。 これを 右の下段・ピン右下10mにオン。 バーディーパットはなんと!2mオーバーしてピンチ。 しかし返のスライスラインを決めて・・・パー。 【2H 520Y PAR5】 昨年よりも20Y延びたパー5。 ティーショットは引っ掛けて距離も出ず、左のラフへ。 モサモサラフからアイアンでレイアップ後、サードショットはエッジまで160Y・ピンまで185Y。これをピン左ワンピンにつけるスーパーショット! しかしバーディーパットが入らず・・・パー 【3H 351Y PAR4】 ティーショットはフェアウェイ左サイドにナイスショット! 続くセカンドはエッジまで112Y・ピンまで120Yでピンはセンターの手前。 これをピンの左7mにオン。 バーディーパットは惜しくも抜けて1.5mオーバーしました。 返しのパーセービングパットがカップの上側を抜け30cmオーバー・・・ボギー もったいなかったですねぇ。 【4H 166Y PAR3】 池越えのパー3。ピンは右の奥。 ティーショットはピンハイ2mに着けるナイスショット! バーディーパットは下りのスライスラインがカップ右を抜け1.2mオーバー。 カユイ返しを決めて・・・パー。 【5H 413Y PAR4】 最も長い左ドッグレッグのパー4。 ティーショットは打ってすぐに右手を放すも、ボールはフェアウェイ右サイドへ。 エッジまで157Y・ピンまで185Yでピンが左奥目のセカンドショットはグリーン手前のエッジ付近へ。 10mのアプをピン先10cmに寄せ、ギャラリーを唸らせて・・・パー。 【6H 377Y PAR4】 打ち下ろしの後セカンドがピンが見えない(パンフによる)パー4。 ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! グリーン面が見えない打ち上げ150Yをピン左手前6mに着けるナイスショット! バーディーパットは途中から下りになるフックライン。これがカップ左を僅かに抜けて、50cmを返して・・・パー。 【7H 204Y PAR3】 長いティーショットを軽いドローでピン右4.5mに着けるスーパーショット! しかしフックラインのバーディーパットがジャストタッチで、カップ間近で切れてタップイン・・・パー。 【8H 507Y PAR5】 やや右ドッグレッグのホール。 ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! 残り250Y程のセカンドが引っ掛けのミスで左のラフへ。 ピンからエッジまで8m程しかない70Yのサードをピン筋に狙い打つも、ピン手前のカラーへ。 7・5mのアプローチショットをウェッジで30cmに寄せて・・・パー。 【9H 377Y PAR4】 なだらかな打ち上げのパー4。 ティーショットはフェアウェイ左サイドにナイスショット! エッジまで140Y・ピンまで155Yのセカンドはピンがグリーン左サイド奥でバンカー越え。少し左の木がスタイミー気味です。 これを打ってすぐ右手を放し、ボールはピン右奥のカラーへ。 そこからピンまで10mを50cmに寄せて・・・パー。 【10H 383Y PAR4】 ティショットはフェアウェイ右サイドにナイスショット! セカンド地点に歩いてきたパーティーはキャディーも含め△マークが見当たらなくうろうろしてました。 それに気付いた美保師匠何気にマークを指差し 34『そこ・・』 キャディー達が一斉にマークに移動しました・・・^^; セカンドショットはエッジまで163Y・ピンまで180Yでピンは左の奥。 グリーンは左から右へ下っていますので『外しても右』のホールロケでしたが、打ってすぐ『?』顔の美保師匠。 ボールは左のラフへ。 ピンまで15mのアプローチショットはエッジ付近に軽く落としいい感じでしたがギュイーンと右に切れてワンピンほど離れてしまいました。 上りワンピンのスライスラインのパーセービングパットが右に抜けてしまい、20cmを返して・・・ボギー。 【11H 179Y PAR3】。 ピンは右奥。 ティーショットはウッドで打って少しダフッたか引っ掛け気味でピン左10mにオン。 バーディーパットはカップを掠めて1.5mオーバーし、カユイ下り1.5mを返して・・・パー。 【12H 386Y PAR4】 ティーショットはフェアウェ左サイドにナイスショット! エッジまで135Y・ピンまで140Yのセカンドはピンが横長グリーンの左サイドでエッジまでが非常に狭いホールロケーションとなっています。 これをピン右7mに。 バーディーパットは下りのスライスラインで、惜しくもカップ左を掠めながら抜け、1mを返して・・・パー。 【13H 378Y PAR4】 ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! 続くセカンドはエッジまで142Y・ピンまで155Yでピンが右サイド。 これをピン左6mにオン。 しかしバーディーパットは20cmイジ子で・・・歯がゆいパー。 【14H 517Y PAR5】 左ドッグレッグで距離のあるパー5。 ティーショットは打ってすぐ右手を放しチョイ左に出てバンカーに一度入ってから出ました。 ラフからうまく打ったセカンドを残り100Yへ。 そこからピン左4mにつけるもパットが入らず・・・パー。 ・・・なかなかパー5で旨くいきませんなぁ。 【15H 154Y PAR3】 池越えのパー3。 ピンは左が高い2段グリーンの上段センター。 ティーショットはピン左10mにオン。 カップがマウンドの頂上?稜線付近に切られていて、美保師匠のパットはカップから先が下りになります。 このバーディーパットは少しパンチが入ったか、明らかに打ち出しから強く、カップを過ぎてからトロトロとそのまま反対側のカラーまで行ってしまいました。順目に乗って止まりませんでしたね。 返しの上り4mのパーセービングパットは逆目になり、80cmのイジ子・・・一度マークして・・・ボギー。 【16H 386Y PAR4】 ティーショットはフェアウェイ右サイドにナイスショット! エッジまで110Y・ピンまで120Yのセカンドはピンが2段グリーン上段面の右手前。傾斜までギリギリ。 これをピン筋に放ちピン下6mにオン。 2段グリーン上段に打っていくフックラインのバーディーパットが惜しくもカップ右横にジャストタッチで止まり・・・タップインのパー。 【17H 347Y PAR4】 セカンド地点が絞られているやや打上げのパー4。 ティーショットはナイスショットでしたが珍しく右サイドのラフへ。 エッジまで105Y・ピンまで125Yでピンが左奥のセカンドを、ラフから打つランをキッチリ計算したショットでピン手前から転がりピン奥3mにナイスオン! 下りストレートラインを読みきって流し込み・・・ナイスバーディー!!! やっときましたね!!! 【18H 492Y PAR5】 なだらかな打ち上げの最終ホール。 ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! セカンドもフェアウェイセンター・残り90Yにナイスショット! サードショットはエッジまで66Y・ピンまで90Yでピンが2段グリーン上段の右奥。 これをフィニッシュを途中で止めるコントロールショットでピン右1.5m程にナイスショット! 鈴虫がリンリンリンと何匹も激しく鳴く中バーディーパットに臨みます。 アドレスに入ると何故か虫達の鳴き声がピタッと止みました。 まるで美保師匠の『気』を感じた様に・・・・。 バーディーパットはその静寂の中軽く合わせて打って、トロトロトロ・・・・コロン! ナイスバーディー!! 2レ・ン・ゾ・ク~!!! 完璧なマネージメントでした! こうして上がり2ホールを意地の連続バーディーで締めくくり、スコアをイーブンパーに戻してフィニッシュ! 最近では最も笑顔を持ってプレーをされたいた様に見えました。 ミスしても引きずらず伊能さんと前向きに次のプレーに臨んでいましたね。 最後にいいものを見せてもらいました!!(^^y きっと来週の女子オープンに繋がることでしょう。 お疲れさまでしたっ!来週も頑張れ!古閑美保!!! 第35回ミヤギテレビ杯 ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント 2日目 完全版 利府ゴルフ倶楽部 ペアリング:ゆうこりん・大久保亞紀 天 候 :晴れ後曇り一時小雨(めっちゃ暑い) 【ドライビングレンジ】 地球温暖化が恨めしいですな、とにかく暑いです! テレビ放送の冒頭のデコは紅葉ですよね。例年この時期は涼しくてゴルフ観戦にはもってこいの聞こうなのですが・・・。 8:35定刻通りに美保師匠は現れたようです。っちうのも友人達との楽しい語らいで時を忘れ気がついたら目の前で練習しておられました。 真後ろはギャラリーが3重4重に並んで見ているので、僕等はレンジ横の土手に上って見学となりました。 ですので調子の程は分かりませ~んm(_ _)m 本日のウェアは白の半そでシャツに黒のベスト・黒の前から見るとスカートになってるヤツですね。 それとウッドのヘッドカバーが全てゼクシオのヤツになっていました。 これはレポをするものにとっては由々しき事態ですな(^^; 番手がわかりませんねぇ。出球の角度と飛距離で判断するより他ありません。 アプローチ練習場に移動すると30Y→20Yのアプローチを。 その後20Y程のバンカーショットに移り終了。 パッティンググリーンへ移動です。 藤井Pと楽しそうに語らい、藤井Pが両脚もとい両腕を左右に広げて何かを話しますと、 34:『あ~あ~あ~』 のミホボイス。 【1H 359Y PAR4】 首コキコキ→ピョンピョンバネ→素振り→素振りのルーティーン。 『続きまして、コガミホ!』のシンプルなあなうんすで3番手に登場! っちうかもっとホステスプロに対して何かないんかい!(;`O´)o ティーショットは打ってすぐ右手を放し、ボールはクロスバンカーへ。 セカンドはエッジまで106Y・ピンまで125Yでピンは2段グリーンの上段右奥。 これを旨くクリーンに打ってピン右3mにナイスオン! チョイスラ3mのバーディパットは惜しくもカップの僅か右を抜けました。 50cmを返して・・・惜しいパー。 【2H 520Y PAR5】 昨年より20Y伸びてたパー4。 ティーショトはフェアウェイセンターにナイスショット! セカンドもセンターにナイスショット! エッジまで70Y・ピンまで85Yのサードショットがピン横に落下すると、バックスピンで1mバック! ボールはピン横チョイ下のワンピンにナイスオン! チョイフックラインのバーディーパットをしっかり目に打ってカップの真ん中からスコーン!! ナイスバーディー!!! 【3H 351Y PAR4】 ティーショットが打ち下ろしで、セカンドが打ち上げになるストレートなホール。 ティーショットはスプーンでレイアップ。フェアウェイセンターにナイスショット! エッジまで120Y・ピンまで145Yのセカンドショットは、ピンが右奥で打ち上げ。 これをピンの横に落下させるも奥のファーストカットまで転がりました。 ピン奥から7mのアプローチを『入れ!』の声が掛かり、15cmに寄せてタップイン・・・パー 【4H 166Y PAR3】 美保師匠は日陰を求めてティーインググランド右手の土手にチョコンと座り、前組のパットを眺めています。 ピンは左が高い2段グリーンのセンター。グリーン全体の左サイド。 ティーショットは打ってすぐ 34:『うわ~( ̄∩ ̄#)』 ボールはピンの右下15mにオン。少しプッシュ気味でしたね。 しかし下の段からの15mのバーディーパットをカップを覗くほどに寄せるとギャラリーが唸る! 『(10秒)待つ?』と声が掛かると、美保師匠は軽く微笑んで応えタップイン・・・パー。 【5H 413Y PAR4】 ティーショットはフェアウェイ右サイドにナイスショット! セカンドはエッジまで155Y・ピンまで175Yで打ち下ろし。 ピンはグリーンの右サイド。 これをピン筋に狙い打ちましたがほんの少し右にブレて、花道の右側のコブの様なマウンドに弾かれました。 ボールはグリーン右点前付近のモサモサしたラフへ。 グリーン面までチョイ打ち上げでピンまで15mのアプローチショット。 これを50cmに寄せるナイスな天才アプローチを披露してギャラリーを唸らせました。 一度マークしてパ・・・・・・・・えっ!! ハ・ズ・シ・タ?? 50cmを? チョー痛て~・・・・ボギー 【6H 377Y PAR4】 ティーショットが打ち下ろしでセカンドがグリーン面が見えない程の打ち上げになるホール。 ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! 引きずってませんね~! セカンドはエッジまで117Y・ピンまで135Yでピンがグリーンの左サイドで打上げ。 この距離感が難しいショットをピンハイ3.5mにナイスショット! バーディーパットは下り3.5mのスライスラインをトロトロトロ・・・・惜しくもカップのすぐ右側に・・・覗いてる。 またまた惜しいパー。 【7H 204Y PAR3】 長いパー3。 ティーショットはプッシュ気味に右に出てグリーン右手前のバンカーへ。 しかし15mのバンカーショットを80cmに寄せる天才バンカーショットを披露! 一度マークして・・・パー。 【8H 507Y PAR5】 軽い右ドッグレッグのパー5。 ティーショットはフェアウェイ右サイドにナイスショット! セカンドはアイアンでフェアウェイ左サイドの残り96Yにレイアップ。 エッジまで96Y・ピンまで12OYでピンが右奥のサードショットは横6mにしか寄らず。 バーディーパットも30cmショートして・・・パー。 【9H 377Y PAR4】 なだらかな打ち上げのパー4。 ティーショットは右のラフへ。 セカンドはエッジまで140Y・ピンまで150Yでピンが真ん中手前。 これはモサモサラフに負けたかピンまで12mのグリーン手前にショート。 しかしアプローチショットはカットに入れてフワリと浮かし、カップを掠めてピン先80cmに・・・ナイスパー。 【10H 383Y PAR4】 穏やかな打ち下ろしのパー4。 ティーショットはフェアウェイ左サイドにナイスショット! エッジまで150Y・ピンまで160Yのセカンドはピンが左サイド。 これを打ってすぐに上半身を左に傾けて『もっと左!』ポーズ。 ボールはグリーンの右点前付近のモサモサのラフへ。 12mのアプローチショットはモサモサに負けたか2m程残してしまいました。 フックライン2mのパーセービングパットかカップの左を抜けて・・・ボギー。 【11H 179Y PAR3】 この辺りから風がでてきました。 ティーショットはピン奥7.5mにオン。 バーディーパットを20cmによせて、タップイン・・・パー。 【12H 386Y PAR4】 池越えきれいな(パンフによると)パー4。 ティーショットはフェアウェイ左サイドにナイスショット! セカンドはエッジまで110Y・ピンまで135Yでピンは左奥。 これをほぼピン筋に打ちましたが、グリーンの傾斜で左にキック。 ボールはピン左5mにオン! 髪キュッ!の後のバーディーパットはスライスラインを読み切って・・・ナイスバーディー! カップの1m点前辺りでカップインを確信した様で、上半身を起こしてました。 ナイスバーディー!!! 【13H 378Y PAR4】 ティーショットは打ってすぐの『う~ん( ̄▽ ̄;) ?』顔。 ボールは左のラフへ。 ピンは右奥。このラフからの160Yのセカンドを、ランを読んでピン左点前5mにナイスオン! フックラインのバーディーパットは惜しくもカップ左先に止まり・・・惜しいパー。 【14H 517Y PAR5】 ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! セカンドはなんと!痛恨の天ぷら!・・・パー5なのに~。 師匠も苦笑い。 ボールは距離も出ず、エッジまで111Y程の左の斜面へ。 かなりのつま先下がりのサードショットはピンまで130Y程。 これがグリーンオーバーしてファーストカットのすぐ先のモサモサのラフへ。 ピンまで7mのアプローチショットが2mショートしてしまい、フックラインのパーパットもカップの左を抜け・・・ボギー。 【15H 154Y PAR3】 2組待たされました。ピンは2段グリーン上段の左サイド。 その左には池。 ティーショットはピン右8mにオン。 (今日の調子ではピンは狙っていけないんでしょうね・・・仕方ない。ここから頑張れ!) バーディーパットが思ったより走って『え~っ?』顔。 1mチョイオーバー。 しかし返しをキッチリきめて・・・パー。 (前組の藤井Pも同じ様にかなりオーバーしましたので池に向かって順目がきついのでしょうか) 【16H 386Y PAR4】 ティーショットは惜しくも左のモサモサラフへ少し入ってしまいました。 セカンドはエッジまで130Y・ピンまで150Yでピンは2段グリーンの上段左サイド。 モサモサからこれをピン左8mのモサモサへ。 アプローチショットをモサモサからうまく打って30cmに寄せ・・・パー。 【17H 347Y PAR4】 セカンド地点が最も絞られているパー4。 ティーショットはフェアウェイセンターにナイスショット! セカンドはエッジまで12OY・ピンまで140Yでピンは右奥。 これを見事にピン手前3mにナイスオン! バーディーチャンスでしたがパットは・・・15cmイジ子。 思わずパターのフェイスを手で叩き悔しがっていた美保師匠でしたね。 【18H 492Y PAR5】 ピンまで70Yにレイアップ。 サードショットは伊能さんがピンまで行って、そこから帰りながらボールまで全歩測。 ショットはピン手前5mにオン。 スライスラインのバーディーパットは惜しくもカップの右先に止まり・・・惜しいパー。 パットにも少し苦しんでいましたが、ミドル・ショートアイアンがなかなかピンに絡まず、バーディーチャンスが少なかったですね。 ショットのブレをアプでカバーしようにも、例年になく長く設定されたモサモサラフに邪魔されました。 それをパットでも補えず・・・。 と、書くとファンも意気消沈でしょうけれど、ほんの紙一重でパーセーブも出来たしバーディーも後2つは来ましたね。 5アンダーまでは伸ばせたと思います。 ショット・パットが微妙な調子の中、見ているものに可能性を感じさせてくれました。 本人もメディアにコメントが紹介されている様に『手応えを感じている』ので、スコアの割には伊能キャディーとにこやかに話をしたりしながらのラウンドでした。ドンヨリ消沈感や悲壮感などがなかったので少し安心しましたね。 大丈夫!もう少しでしょう! ラウンド後はすぐにショット練習をし、パッティンググリーンに向かいました。 1mのパット練習をしながらのひーちゃんと少し話してまして、両手を50~60cmに広げてのお喋りでしたので5番ホールの『50cmハズシ』の話でしょうかね。 パット練習を始めるとにわかに雨が・・・。 ひーちゃんはサッサと退散。 美保師匠はひーちゃんのキャディーさんに傘をさしてもらいながら少しパット練習をしました。 しかし、流石に本降りになってきたので美保師匠も閉店と相成りました。 (後ほど雨が上がったようですので、僕らが会場を後にした後に練習を再開したかもしれません)
https://w.atwiki.jp/fightingvipers2/pages/41.html
(C)SEGA デルソル使用条件 「龍が如く7外伝」版では初めから使用可能。 DC版ではランダムモードで登場するデルソルに勝ち、全ステージをクリアで解禁。 AC版はタイムリリース、もしくは稼働当初でも エミの左上、チャーリーの右上にカーソルを移動させることで使用可能。 基本的にはマーラーのコンパチキャラ。 (解禁されているなら)大会での使用も問題は無い。 技のほとんどがマーラーと同一だが、マーラーにしか使えない技が あり、逆にデルソルにしか使えない技がある。 とはいえ、デルソル専用の技はどれも魅せ技、お遊び技的な性能の ものばかりなので、そこは承知のうえで使っていこう。 技を出す際にその技の属性(上、下、中段、投げ)などと言う。 しかしよく嘘をつく。 例:PP6P(上、中、特中)「上、下、中段!!」 AC版稼働当時にはどの攻略本にも「技名」が記載されていなかったが、 後にDC版公式ホームページ(現在は消滅中…)により公表された。 ↓ ガード&アタック、テックガード ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 4P:太陽のブロックストレート / 特中(下段ガード外し、上段アーマー破壊技) 1K:干潮のブロックブレイク / 下、(下段アーマー破壊技) P+K+G(テックガード成功後)P / 特中(下段ガード外し、上段アーマー破壊技) P+K+G(テックガード成功後)4P / 特中(下段ガード外し、上段アーマー破壊技) P+K+G(テックガード成功後)K / 特中(下段ガード外し、上段アーマー破壊技) P+K+G(テックガード成功後)2K / 下 ↓ 通常技 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 P:太陽のストロングフィスト / 上 PP:突風のボディブロー / 上、中(ディレイ可) PPP:雷雲のアッパーカット / 上、中、中(ディレイ可) マーラーの場合は連続ヒットにならない技なのだが デルソルの場合はマーラーとの体格差の関係なのか、 相手の上下・両方のアーマーが無い場合は連続ヒットになりやすい。 PP6P:暗雲のアッパーカット / 上、中、特殊中段(下段ガード外し、ディレイ可) PPK:時雨コンボ・ハイキック / 上、中、上 マーラーの場合は空中コンボに使用する程度の技だが デルソルの場合は体格が異なり、腕も少し短い為か 1発目から全段連続ヒットする場合がある。 相手との足の位置が「ハの字」になっている場合は より確実に連続ヒットとなる。 PK:春雨チェンジアタック / 上、上 PKP:豪雨のスイッチアッパー / 上、上、特殊中段(下段ガード外し) 2P:湧水のローフィスト / 特殊下段 6P:突風エルボ / 中 6PP:疾風エルボ / 中、上 6PPP:ダブルスリップエルボー / 中、上、中(背を向ける) 46P:背を向ける / 特殊動作 46PP:トリックムーンサルトプレス / 特殊動作(背向け)、中(上段ガード外し) ※正式名称不明。技名はアクセラ本による仮称。 デルソル専用技。 46Pで自ら背を向けるので、ここで止めて振り向き攻撃を出せる。 2発目は非常にモーションが大きく、ガード外しの性能を持ってはいるが 技後は自らダウン状態となるという、デルソルお得意の魅せ技。 3P:夜空のストロングアッパー / 中 41236P:太陽拳 / 中 41236P(P押しっぱなし):太陽拳(ためMAX) / 中(上段ガード外し) デルソルはマーラーのハリケーンパンチを持たない代わりに HOLD溜めが可能な「太陽拳」を持つ。 しかし、ためMAXでようやく上段ガード外しの性能になるという程度なので 別に強力でも無いのだが、デルソルを使う以上は上手く狙っていきたい。 P+K:岩石フック / 特殊中段(下段ガード外し) P+KP:大樹のフックアッパー / 特殊中段、中 4P+K:稜線のスロウフック / 中(キャンセル可、DKキャンセル可) 4P+KP:連山スタイル・アッパ-カット / 中、中(ディレイ可) 4P+KPP:連山スタイル・ダブルアッパー / 中、中、中(ディレイ可) K:神木のハイキック / 上 6K:衛星のローテーション / 上(背を向ける) 6K(ヒット時)64P+G:恒星のレボリューション / 上、打撃投げ マーラーの6K(踏み込んでのストロングハイキック)とは異なり、 デルソル専用の側転蹴り&ヒット時は打撃投げを入れる事ができる。 (アクセラ本では「フランケンシュタイナーボム」の仮名称が付けられていた) 1発目はモーションが非常に大きいが、大きくかがむので相手の上段や 一部の中段攻撃をスカす事も可能。 発生が遅いので、相手のテックガードに合わせるのも良いかも。 ガードされた場合は2発目の打撃投げが出ないが、若干有利な状態になっている。 KP:金山のチェンジコンボI / 上、上 KPP:鉱山のチェンジコンボI(IIの誤植?) / 上、上、中(ディレイ可) KPPP:雪山のチェンジコンボIII / 上、上、中、中(ディレイ可) マーラーと同じ。 KP(金山のチェンジコンボI)からブ雷雲のアッパーカット (PPP)の連携。 KPP6P:火山のチェンジコンボIV / 上、上、中、特殊中段(下段ガード外し、ディレイ可) マーラーと同じ。 KP(金山のチェンジコンボI)から暗雲のアッパーカット(PP6P)の連携。 KPPK:竹林のアタックダンス / 上、上、中、上 KPK:密林のアタックコンボI / 上、上、上 KPKP:樹海のアタックコンボII / 上、上、上、特殊中段(下段ガード外し) KK:大河のハイサイドキック / 上、中 3K:急流のアクセルロール / 中 3KK:激流のハイダブルアクセル / 中、上(上段ガード外し) 2K:川底のローキック / 下 2KK:湖底のハイキックコンボ / 下、上 K+G:月夜のジョウクラック・キック / 中 6K+G:流星のヒールドロップキック / 特殊中段(下段ガード外し) 6K+G2KK:水星のハイキックコンボI / 特殊中段(下段ガード外し)、下、上 6K+G2KKK:金星のハイキックコンボII / 特殊中段(下段ガード外し)、下、上、上(ガード外し) 6K+G2KK3K:木星のハイキックコンボIII / 特殊中段(下段ガード外し)、下、上、中 6K+G2K:星窪のキックコンボ / 特殊中段(下段ガード外し)、下 3K+G:新月のスピンサイドキック / 中 66K+G:荒野のストロングレッグキャノン / 上(上段ガード外し) 1K+G:清水のスピンローキック / 下 2K+G:砂漠のボディプレス / 中(上段ガード外し、背を向ける) 壁背後44P:壁登り(技名不明) / 特殊移動 デルソル専用の壁登り。 一瞬かがむので相手の攻撃を避けそうな気もするが モーションが大きすぎるので大抵潰される。 ここからは更に派生技がある。 (魅せ技の域を出ないが…) 壁背後44PP:パニッシャー・ハング / 特殊移動、中(上段ガード外し) ※正式名称不明。技名はアクセラ本による仮称。 壁背後44PK:デルタ・キック / 特殊移動、中(上段ガード外し) ※正式名称不明。技名はアクセラ本による仮称。 どちらも相手との間合いによって飛距離が変化、技後はダウン状態に。 発生がものすごく遅く、空中投げを持つ相手に投げられる危険もある。 44PKのデルタ・キックに至っては、当ててもその後に相手からの2Kなどの 素早い小ダウン攻撃を受けてしまう。 しかし折角の専用技なので、たまに使ってみよう。 壁背後44K+G:ウォールウォーカー / 特殊移動 ※正式名称不明の為、マーラーの技名にて表記。 壁を背にした状態でのみ、使用可能。 壁によじ登って相手の横に着地する。 マーラー(&デルソル)はこの動作をキャンセルしたり、 ここから攻撃を出す事もできないので使用頻度は低い。 壁背後4K+G:ロケットミサイル / 中 ※正式名称不明の為、ピッキーの技名にて表記。 ピッキーのソレとよく似た攻撃。 マーラーは使用できない。 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 大ジャンプ中、壁に接触時8P:ウォールクライム / 特殊移動 壁に登り、専用技を出す事ができる。 技を出さなかった場合は、自動的に飛び降りる。 ウォールクライム(壁登り)中に8P:ウォールダイブ / 特殊中段(下段ガード外し) 壁登り時に出せる専用技。 特殊中段技だが、ダウンしている相手に当てる事もできる。 8(9,7)P:朝霧のジャンプハンマー / 中 8(9,7)K:原野のローリングソバット / 中 8(9,7)長押し(大ジャンプ)+P:霧雨のスラストパンチエア / 中(上段ガード外し) 8(9,7)長押し(大ジャンプ)+K:大陸のジャンプトー / 中 小ジャンプ中、着地ぎわK:小川のホッピングキック / 中 小ジャンプ中2K:落葉のローカットキック / 下 ほぼ全てのキャラが持つ、小ジャンプからの中段と下段の2択攻撃。 中段の代わりに、しゃがみ投げを入れるのも良い。 大ジャンプ中K:氷穴のエアローリングソバット / 空中 大ジャンプ中6K:雪山のフロントエアキック / 中(上段ガード外し) 大ジャンプ中4K:霊峰のバックエアキック / 中(上段ガード外し) 大ジャンプ中(高い位置で)2K:エアダイブ / 空中 大ジャンプ中(低い位置で)2K:フレアキック / 中 通称ライダーキック。 大ジャンプ中の頂点あたりで2Kを出すとエアダイブ、 下降中に2Kでフレアキックだが、見た目はあまり変わらない。 フレアキックは、空中受身を取った後にも出す事ができ、 発生が早い上に攻撃判定の持続時間も長く、そして下方向に強い為、 空中受身後に素早く出す事で、相手の追撃を潰せるので強力。 大ジャンプ中K:(着地ぎわ)フレアトー / 上 大ジャンプ後や空中受身後、着地ぎわにKを押した場合、レバーを どの方向に入れていても、この「フレアトー」しか出せなくなる。 大ジャンプ中P:青空のジャンプハンマー / 中 空中受身後にも出せる。 大ジャンプ中P+K+G:白夜のダウンハンマー 自分から大ジャンプした時に使ってもあまり意味は無い技だが、 受け身からも出す事ができ、その場合は相手の追撃をほぼ無効化する。 しかもヒットすると相手が浮くのでPP6Pなどで追撃可能。 通称、低空ハンマー。 空中で下受け身を取った場合も出す事ができるので、 レバーを下に入れながらP+K+Gをダダダッと入力しよう(笑) その時は、技が見えないほど発生が早い。 このおかげで相手はデルソルを浮かせても近づきにくく、 逆にデルソル側は相手の追撃を簡単に潰す事ができる。 また、相手が壁を背負っている場合の通常壁投げ(バックスロー系統) を食らった場合、壁に当たって浮いたデルソル側の下受け身からの ダウンンマーが相手の壁投げの硬直が切れる前に発生するため 「投げたのに浮かされた」という理不尽な状況が発生する。 強力すぎるので、当然読まれて相手に待たれるようにはなるが、 マーラー(とデルソル)のみに許された、全キャラ中、屈指の 空中受け身からの反撃性能を誇る技なので、使わない手は無いだろう。 ※DC版では、この「低空ハンマー」が出ない。 上受け身時など、高い位置では出る。 DC版では他キャラ同様、受け身後2Kのキックで代用しよう。 ↓ ダッシュ攻撃 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 ダッシュ中P:大海のランニングストレート / 特殊中段(下段ガード外し) 特殊中段で、下段のガードを外すがヒットはしない。 発生がダッシュ中K(ランニングニー)の次に早く、ヒットすれば うずくまりからのジョウクラックキック(K+G)などで追撃可能。 G Aにはあっさりと返されてしまうものの、 リーチも多少あり、他のダッシュ技がガード外しなので、 それらを読んできている相手には使いやすい技になる。 ダッシュ中K:津波のランニングニー / 中(上段ガード外し) ダッシュ中に出せる技としては最も発生が早いが、 ヒット時にデルソルが追撃できる技が思いつかない。 更には中段攻撃かつ上段ガード外しなのだが、ガードされた後は 硬直が大きく、最速での投げが返し技として入る。 ダッシュ中9K:高潮のランニングジャンプキック / 中(上段ガード外し) 相手の下段攻撃をかわしながらの攻撃をする事が可能。 ヒットした場合、相手は吹っ飛ぶが、当たった壁などの 状況次第ではバウンドコンボやダウン投げが狙える。 ダッシュ中P+G:赤潮のランニングタックル / 中(上段ガード外し、上段アーマー破壊技) 攻撃発生は遅いが、中段、アーマー破壊、上段ガード外しで、 ガードされても五分。 ダッシュ中2K:渦潮のスライディングキック / 下(下段アーマー破壊技) 他のダッシュ技のほとんどが中段なので、2択を迫れる上、 下段アーマーを破壊できる数少ない技でもある。 それ故に相手の警戒も大きく、ガードされれば大幅に不利。 ↓ 振り向き攻撃 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 背を向けた状態から8K:ターンソバット / 中 中段の振り向き攻撃はこれしか無いが、小ジャンプする為に 相手が下段を読んで下段GAを出してきた場合も潰す事ができる。 6PPPと同じく、技後に振り向くニールキック(2K+G)を相手にガードさせた 場合に、相手がよろけ回復に徹している所に置きにいくのも有効。 背を向けた状態から2K:石筍ダン・キック / 下 中段のターンソバット(背を向けた状態から8K)との2択攻撃。 他のキャラクターの振り向き下段パンチと攻撃発生は同じだが、 こちらの方が威力も高く、ダウンを奪える。 下段GAで返されなかった場合でも、ガードされた場合は不利。 背を向けた状態からP:闇夜のターンフィスト / 上 ヒット、ガード共に有利になるので、 ここから中段と投げの2択をかけていく。 ただし、上段なのでしゃがまれると当たらない。 背を向けた状態から2P:曇天のローターンフィスト / 下 ヒットした場合は五分。 ガードされた場合は最速の下段投げが入るが、実際にはかなり難しい。 デルソルの振り向き下段攻撃は石筍ダン・キック(背を向けた状態から2K)が あるので、あんまり使わないかも。 背を向けた状態からK:洞窟のターンハイキック / 上 攻撃発生が速く、ダメージも高いが、上段攻撃かつ ガード後の隙が大きいので、あまり使わない。 ↓ 脱衣&SKO、挑発 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 6464P+K+G:デルソルフラッシュ(アーマー脱衣) / 中(スーパーK.O.) SKO使用可能時6P+K+G :この星のファイナルメッセージ / 中(上段ガード外し、スーパーK.O.) アーマー脱衣は空中でも出せるが、それを当ててK.O.させてもスーパーK.O.にはならない。 SKO技は相手に与えるダメージが少ないものの、 デルソルのSKO技は他のキャラに比べれば高性能な部類に入る。 上段攻撃をすかしながら出す事ができるので、五分の状態で 相手が素早い上段攻撃を出したくなる場面などで使える。 湖底のハイキックコンボ(2KK)のカウンターヒット時や 流星のヒールドロップキック (6K+G)をガードされ、 少しだけ不利な状態から出したり、 テックエスケープしてから側面で出すのも面白い。 相手のテックガードの硬直に合わせたり、 ラクセルのデススピン・ローラー(6K+G236K41236K) などをしゃがみでかわした後も、狙い目かも。 ガード外しなので、G Aやテックで返される事は無く、 ガードされても反撃は受けない。 4スタートボタン(DC版は4Lボタンか4Rボタン):挑発 / 上 デルソルの挑発は1種類のみ。 わずかのダメージながらも打撃扱いだが、まず当たらない。 ↓ ダウン攻撃 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 相手がダウンしている状態で2P:隕石のエルボードロップ/ 小ダウン攻撃 小ダウン攻撃は、こちらでは無く主に2Kのほうを使用する。 相手がダウンしている状態で2K:泥沼のストライクスタンプ / 小ダウン攻撃 発生が早いので、最も多く使用する事になる。 この2Kは全キャラ共通で、振り向いている状態からでも出せる。 相手がダウンしている状態で8P:孤島のレッキングダイブ / 大ダウン攻撃 失敗モーションは回復できないので、確定する場面でだけ使おう。 相手が失敗した場合は、投げよりも打撃で確実に反撃していきたい。 ↓ 投げ技 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技 相手の横近くP+G(右):若葉のライトターンシュタイナー / 横投げ 相手の横近くP+G(左):深緑のレフトターンシュタイナー / 横投げ 主にテックエスケープ後に出せる側面投げ(通称:横投げ)。 投げ抜けする側は、 「自分のつかまれた方向+P+G(もしくは、つかまれた方向+P+K+G)」で抜ける。 相手の近くP+G:ウォールスロー / 投げ 相手を反対方向の壁に向かって走らせる通常投げ。 レバーニュートラルP+G (もしくはレバーニュートラルP+K+G)で投げ抜け。 投げられた後はよろけ扱いなので、壁に当たるまでの間にレバガチャ+ ボタン連打で回復できるが、かなりの速度で入力する必要がある。 壁までの距離が遠すぎた場合は、勝手に止まる。 相手の近く6P+G:木立のネックブリーカー / 投げ 投げ抜け方向は「前」。 相手の近く1P+G:平原のフロントスープレックス/ 投げ 投げ抜け方向は「斜め後ろ下」。 相手の近く2P+G:大瀑布ブレンバスター / 投げ 投げ抜け方向は「下」。 相手の近く236P+G:落雷のピーナッツクラッシュ / 投げ 投げ抜け方向は「前」。 相手の近く22P+G:草原のジャンプスープレックス / 投げ 相手の近く4P+G:雪原のスパインスープレックス / 投げ 投げ抜け方向は「後ろ」。 相手の近く464P+G:絶壁のアームボンバー / 投げ 投げ抜け方向は「後ろ」。 相手の近く63214P+G:ダークストール・ブレイカー / 投げ 投げ抜け方向は「後ろ」。 相手の近く41236P+G:彗星のヘッドロック / 投げ 相手の近く41236P+G82P+G:火星のローリングジャーマン / 投げコンボ 相手の近く41236P+G82P+G6P+G:土星のアクロバットジャーマン / 投げコンボ 1発目は前、2発目は下、3発目は前、で投げ抜け。 マーラーが持っていない投げコマンドで ラクセルのローリングストーンと同じ技。 投げコンボだが、分岐が無く1択なので、相手に知識があれば 2発目、3発目は確実に抜けられるので、抜けられる前提で入れるか 1発目で止めて有利を活かそう。 相手の近く壁正面P+G:石英のストロングヘッド / 壁投げ アクセラ版での仮名称は「ダークストール・ブレイカー」。 相手を壁に追い詰めた時に出せる壁投げ。 壁投げは、相手の攻撃の発生時間の半分を吸い、 普段は投げられないよろけ状態も投げる為、非常に強力。 さらにデルソルの場合はマーラーとは異なり、ここから ダウン投げが確定するので、ダメージを優先させるなら 46P+Gの壁投げよりもこちらを使おう。 相手の近く壁正面46P+G:深海のダイバースープレックス / 壁投げ 投げ抜け方向は「前」だが、壁投げは入力のタイミングがシビア。 さらにはマーラーと同様に投げ抜け不可の追加投げがある。 相手の近く壁正面46P+G21478P+G:奈落のケイバースープレックス / 投げコンボ 深海のダイバースープレックス(相手の近く壁正面46P+G)が入り、 壁に登りきった瞬間から素早く入力21478P+Gを追加入力すると ダメージが「10」上がる奈落のケイバースープレックスに。 この追加投げは投げ抜けできないので、1発目の投げが入ったら 常に狙っていこう。 追加入力のコツは「9」までレバーを回す「意識」。 相手の近く壁背面P+G:渓谷のブラックアーム / 壁投げ(背面) 自分が壁を背にした時に出せる背面壁投げ。 相手の近く壁背面4P+G:山脈のバックウォールスパインボム / 壁投げ(背面) 自分が壁を背にした時に出せる背面壁投げ。 相手の背後近くP+G:満月のジャーマンスープレックス / 背後投げ ごく一部の例外を除き、背後投げは投げ抜けできない。 相手の背後近く4P+G:山脈のバックウォールスパインボム / 背後投げ ごく一部の例外を除き、背後投げは投げ抜けできない。 相手近く、相手しゃがみ33P+G:雷鳴のココナッツクラッシュ / しゃがみ投げ しゃがみ投げは投げ抜けできない。 相手仰向けダウン足側41236P+G:流氷のインモラルスパイン / ダウン投げ 相手のダウン時に、「仰向け状態」かつ「足がデルソル側に向いている」 状態で成立するダウン投げ。 投げ抜けはできない。 両者空中近く4P+K+G:天空のジャンピングクランチ / 空中投げ 投げ発生まで1フレームしかかからず、相手の攻撃発生の1フレーム前まで吸える。 投げた後は、双方ともにダウン状態に。 投げ抜けはできない。 ページのTOPへ|GA&テック|通常技|ジャンプ攻撃|ダッシュ攻撃|振り向き攻撃|脱衣&SKO、挑発|ダウン攻撃|投げ技
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5530.html
前ページ次ページLouise and Little Familiar’s Order カフェテラスでの一件から数日の間は殆んど何事も無く時間が流れていった。 ミーはたまに泣き言を言いながらだが与えられた仕事をこなすようになったし、 シエスタと懇意になっているお陰かルイズから指示されていない仕事も自分から進んでやるようになった。 夜になって空に浮かぶ二つの月を見る度に、望郷の念が心に去来し目に涙を湛えてしまうが、優しくしてくれる人は沢山いた。 シエスタは洗濯の仕方を始め、掃除や貴族の人達に対する振る舞い方を教えてくれたし、 マルトーさんや厨房の人達はいつもにこやかにミーを招き入れ、暖かい食事とたわいも無いが楽しい会話を振る舞ってくれる。 隣の部屋にいるキュルケは、仕事がキツくてしょんぼりしている時などに、慰めてくれたり抱き締めてくれたりしてくれる。 おまけに出るべき所は出ているし引っ込むべき所は引っ込んでいる。暖かみもある為か宛ら姉か母親の中にいる様な心地がする。 そしてあの騒ぎ以来ギーシュはとっておきたまえと言ってこっそり菓子の入った包みを渡したり、青銅で出来た小さな玩具をあげたりしている。 因みに何処でそれらの様子を見られたのか定かではないが、ギーシュと同級生のマリコルヌはギーシュがモンモランシーに自室で尋問の末お仕置きを受けるのを密かに見たとの事。 ともあれ、様々な人のお陰でハルケギニアという異世界に来て五日目が終わる頃にはミーは少しはゆっくりした気分になれた。 しかし……自分の主人、ルイズは相変わらずだ。 事が一つ済むと十まで命令し、決められた時間内に終わってないと済んでなかった事の分だけ叱られる。 時間があった際にキュルケの元に引っ込んでいると、ルイズは物凄い形相で二人をひっ剥がし声を震わせてキュルケに怒鳴るだけ怒鳴った後ミーを部屋まで引き摺り戻す。 貰ってちょこちょこ食べていたお菓子等も、見つかった時にルイズはむすっとして不味そうに頬張った後それを砕いて外にいる白鳩に撒いてやった。 無論、それらの最後には必ず鞭のお仕置きが待っていた。 そもそもミーはルイズと初めて会った時から今まで、ルイズの笑った顔という物を一度たりとも見たことがない。 何時も透明感のある冷めた表情か怒った顔しか自分に向けてこない。 ご主人様はどうしたら笑ってくれるのだろう?そう思いながらミーは眠りについた。 この数日ルイズは苛々し通しだった。 今日に至っては昼餐前に我慢出来ない程お腹が痛くなったので医務室に駆け込んで水薬を貰ったぐらいだ。 それもこれも使い魔召喚の儀の時に、今自分の隣にいる使い魔がのこのこ召喚されたせいだ。ドラコンとかグリフォンなんてのは贅沢な望みだとしても、せめて鷲か梟の方がまだマシな気がする。 母親が風系統のメイジである事から尚更希望的観測はあったというものだ。 あの日以来自分の顔からは怒りの感情以外すっかり流れ出てしまったんじゃないかと思う時が度々ある。 本当は優しくしたい、幼いから親代わりになってあげたいという意識が粉微塵も無い訳でもない。 しかしどうにも平民の非力な子供を召喚したという事実が同級生に会った時に起きる嘲笑や授業中の実技失敗時に思い起こされる事、そして山より高い矜持の為か少しも素直になれずにいた。 またルイズには姉が二人居り、年が近い姉からは実家にいる間よくしてもらっていた。 だがそのルイズは年下の者に対してどう上手く接すれば良いのかが分からない。 だからこそシエスタやキュルケ、最近ではギーシュまでもがミーの姉や兄の様な役割をかって出て、尚且つ綺麗にそつ無くそれをこなしている事に反発していた。 しかも当のミーがそれに甘んじているので、ルイズは余計に自分の無力さを内心で密かに嗟嘆する。 私はシエスタみたいに平民がしなきゃいけない事を何一つ教えてあげられないし、 キュルケみたいに豊かな体躯でないから抱いてやっても年上の者が持つ温かみはないだろうし、 ギーシュみたいに魔法を使って何かを造り上げたり生み出したりなんか出来ない。 更には回避したものの、彼に対してはこの間の決闘騒ぎの時、感情的になって家の名前まで出すという失態を犯してしまっている。 考えれば考える程惨めになってきた。 それから暫くベッドの中でルイズは横になってぼんやりしていたが、不意に明日は虚無の曜日だという事を思い出す。 今日も今日とてキュルケと口論してしまったルイズは去り際にこう言われた。 『明日は虚無の曜日だから一日ぐらいあの子を休ませなさいな。なんなら私があの子を城下町まで連れて行ってあげましょうか?』 悔しいが前者は正論だし後者はされたら嫌だ。 ミーの心を少しでも自分に引き寄せるならば、明日は一日中自分の手で彼女を幸せな気分にしなくてはならない。 それが上手く出来るかどうか分からないが、とにかくやってみるより他は無いのだ。 自分の財布の中身と相談しつつ、ルイズは眠りにつくのだった。 Louise Little Familiar s Order「Brilliant and surprising deals in the market s auction」 翌朝ルイズが目を覚ますと、既に陽は山の稜線から大分高い所にあった。 横を見るとここ数日の疲れが溜まっていたのか、ミーは未だに軽い寝息をたてていた。 いつもなら寝過ごしているのを叩き起こすところだが、駄目に出来ない計画があるので今日の所はぐっと我慢する。 その内にルイズは下着を着け、制服に袖を通す。ミーが目を覚ましたのは丁度マントを羽織っていた時だった。 慌てて跳ね起き寝坊した事を詫びようとしたが、その言葉は途中で遮られる。 「今日は手伝わなくていいわ。それにせっかく虚無の曜日なのにあんたを働かせたら悪いもの。 き、今日は街まで、つ、連れてってあげるから、か、感謝しなさいよね……ほら、行くわよ。」 ルイズはそう言って部屋を出る。置いていかれないようにミーがその後をとことことついて行った。 自分に言い寄ってくる何人もの異性の相手をする事は大変か?と訊かれたら少なくともキュルケは笑うだろう。 とにかく昨日の夜は時間を有効に使いつつ、五人の男の子の御相手をしなければならなかったので仮眠はとったがまだ少々疲れていた。 しかし彼女にとっては鬱陶しい事に、無粋な太陽はいい加減に起きんかい!と言わんばかりに部屋の中を照らし出す。 仕方が無いので衝立を窓の近くに立てようかと気怠い雰囲気を漂わせつつ窓の側に行くと、学院の門から一頭の馬が外へ駆けていくのが見えた。 乗っているのは桃色の髪をした女の子。誰なのかは言わずもがなである。 眠気は一気に吹き飛んだ。キュルケは軽く化粧を済まし衣服を整えて隣にあるルイズの部屋をノックしてみる。 しかし応答は無い。鍵もかかっていた。そこで『アン・ロック』の呪文を使って解錠し中に入ってみる。 案の定中には誰もいなかった。 戸を閉め、キュルケはタバサの部屋に向かった。 扉に手をかけて押してみるが、やはりここも鍵がかかっているらしく開かない。 またもこれを『アン・ロック』で開けてみると、タバサは部屋の隅で何やら恐ろしく難しい本を読んでいる最中だった。 キュルケはタバサに話しかけるが全く反応が無い。そこで本を取りあげてみたがこれでも反応しない。 仕方が無いので肩を掴んでガクガクさせたところ、やっと音を遮る魔法『サイレント』を切って話を聞く姿勢をとってくれた。 しかしタバサはこういう場合一筋縄ではいかない。何事においてもきちんと理由を説明してくれなければ腰を上げないのである。 一分一秒も惜しいのでキュルケは捲し立てる様に言った。 「今日は虚無の曜日だし素敵な本を読むには最高の時間だと私も思うわ。でもタバサ、あのヴァリエールが使い魔を連れて馬で街まで行ったのよ! 私不安なのよ!たくさん人がいて色々止めてくれるここならまだしも、二人っきりで何処かに行くなんて!何か起きかねないわ!何か起きてからじゃ遅いのよ! それに今から行くんじゃあなたの使い魔じゃないと追いつかないの!お願い助けて!」 するとタバサはこくりと頷き、窓から自分の使い魔である風竜の幼生、シルフィードを口笛で呼び出した。 青い鱗は陽光の照り返しを受けてきらきらと輝き、はためく翼は見る者全てに力強さを与えているようでもある。 タバサとキュルケは窓からシルフィードに乗って街の方へ向かおうとしたが、間の悪い事にある者によってすぐ下から呼び止められた。 「おーい、二人共!ルイズの使い魔を見なかったかね?探しているんだが見当たらないんだ!」 はたしてそれはギーシュであった。キュルケは考える。彼を乗せて行っても支障は無いだろうかと。 まあ、今のところミーと懇意にしているのは貴族の内じゃ自分と彼ぐらいなものだ。 この間の騒ぎの際にも彼女の待遇について色々と話していたのでルイズに会い次第そこそこ良いブレーキ役にはなるだろう。 「あと一人ぐらい乗せられる?タバサ?」 「訳は無い。」 タバサはそう答えてシルフィードを地面に向かって降下するよう指示した。 その様子を見ながら当のギーシュは首を捻って質問した。 「ん?あの子はルイズと一緒にどこかへ行ったのかい?っていうか僕がこれに乗っても良いのかい?」 「乗っていい。」 タバサは短くそう答える。それを聞いたギーシュは二人の後ろに腰をかけた。 役者は揃ったので、シルフィードは翼を振り始める。 「馬一頭。食べちゃだめ。」 タバサがそう告げると、シルフィードは短く鳴いて勢い良く学院の外に飛び出した。 トリステインの城下町、ブルドンネ街の大通りをミーはルイズに手を引かれながら歩いていた。 両端には白石で出来ているこぢんまりとした商店が軒を連ね、様々な物を陳列している。 多種類の草の葉と根、色とりどりで形も大きさもバラバラな石、瓶詰めにされた小動物の肝や目玉に角等があるかと思えば、 新鮮な野菜や果物、凝った装飾が施された家具に、堆く積まれた書物等が置いてあったりもする。 そしてそれらを取り囲むように多くの老若男女が長い石畳の上を歩いている。 ミーにとっては生まれて初めて見る物ばかりなので、もっとじっくり見ていたかったがルイズが早足で歩くので止まる間も無かった。 他人とぶつかりそうになりながら、ミーはやっとのことで質問をする。 「ご主人様。どこに行くんですか?」 「中央広場よ。ここに来るまで今日はただの虚無の曜日じゃないのをすっかり忘れていたわ。 毎年この時期に東方やサハラから色々な物を持って来た商人が開催する大きな競り市があるの。 大抵は取るに足らないつまらない物ばかりだけど、たまに貴族も欲しがるような掘り出し物があるから無視出来ないのよ。 買う物は他にもあるけれど少しくらいなら持ち合わせの余裕があるから、欲しい物があったら競り落としてあげる。」 分からない言葉が半分近くを占めていたが、取り敢えず何か欲しい物を買ってくれるというのでミーは嬉しく感じる。 今まできちんと使い魔としての仕事をやってきた甲斐があるというものである。 暫く雑踏の中を進んでいると円形の開けた場所、中央広場が急に現れた。 その中心には少し高く作られた木製の競り市用即席舞台があった。 その上では商品を乗せるテーブルがあり、横では気取った服装をした男が大声で競り市開始前の口上を述べていた。 「さあさあ、紳士淑女の皆さん!見物するだけの人も寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 東方で怪物達の猛攻に立ち向かい、サハラでエルフ達との修羅場と死線を潜りまくってきた商人がこのトリステインにやって来た! 彼等がもたらす物はそこらの店に並ぶ様な物とは一癖も二癖も違う。正に!掘り出し物!いやいや、お宝がゴロゴロ! 一生お目にかかる事が無い様な物もあること間違いなしだ! 倹約に努める方々も今日だけは解禁日ですぞ!雨の様にエキュー金貨やスゥ銀貨を我等の元に降らして下さいませ! さて、盛り上がって来たところで先ずはこの商品から行きましょう!」 ルイズとミーは人だかりの真ん中辺りに場所を取る。 しかしそれだけではミーには何も見えないので、ルイズは思い切って肩車をしてやる事にする。 意外に重いので一瞬ちょっとふらついてしまうが、慣れればどうという事はなかった。 丁度その時、テーブルに一つ目の品物が置かれた。石造りで穴が開いている事から某かの楽器の様である。 司会の男がまたも大声を出して商品の紹介をする。 「商品番号一番。石造りの笛! 趣向も造りもハルケギニアの技術とは一線を画している!音は勿論はっきりしているし、音色も素晴らしい! おまけに持ち運びにも便利ときた! さあこの不思議な笛、十エキューから開始だ!始め!」 競り開始の合図と共にあちこちから値をつり上げる声が出される。 ルイズはミーの意見を聞いてみた。 「ミー、あれは欲しい?欲しくない?」 「えーと……欲しくないです。」 「そう。欲しい物が出てきたら言うのよ。」 その後も競りは続き、テーブルの上には奇妙な生物を描いた壁画、てっぺんに水晶の塊が付いた杖、美しいガラス製の記章等が上がった。 中でも人間の頭ぐらいはありそうな大きい紫石英が出てきた時はルイズの方が夢中になったが、 残念なことにそれは別の貴族が千エキュー払って自分の物にしていった。 商品の数はどんどん少なくなり、客もそれと共に減っていく。 そして遂に最後の商品となった。 「さあ、お待たせ致しました!今年の競り最後の商品にしてハイライト! お子様のプレゼントに困っている方はいらっしゃいますかぁ?可愛いペットの登場でーす!」 その声と共にテーブルに乗せられたのは子熊の入った小さな檻だった。 しかし子熊にしては小さすぎるというのがルイズの第一印象だった。 実家ですぐ上の姉、カトレアが飼っている子熊でも倍くらいはあるものである。 そもそもあれは本当に熊なのかしらと訝しんでいると、頭の上からミーの絶叫が聞こえてきた。 「ご主人様!ミー、あれが欲しいっ!あれが欲しいですっ!」 「分かったわ。取り敢えず私が告げる値段以上に高くならない事を祈りましょ。」 叫ぶからには余程欲しいのだろう。ルイズは財布をギュッと握りしめた。 始まりの値段は最初の品物と同じ十エキュー。それから次第に五エキューずつ値段が上がっていく。 ルイズにとっての問題は百五十エキューを越えるかどうかである。越えれば手出しは出来ない。 ところが値段上昇の打ち止めは意外に早くやって来た。 ルイズと同じくらいの年の少女が八十五エキューの値をつけると、値をつり上げようとする者はいなくなったのである。 「他にいらっしゃいませんか?金髪のお嬢さんが八十五エキューです!もう一声、どなたかいらっしゃいませんか? いらっしゃらないのならカウントいきます。八十五一回……八十五二回……」 その時、ルイズはすっと手を伸ばし値を告げた。 「九十!」 「はい、九十!有り難うございます!九十五はいませんか?」「百!百よ!」 「はい、百!有り難うございます!百五はいませんか?」 いちいち五エキューずつではいつまで経っても埒が開かない。焦れたルイズは安全圏まで十ずつ一人で上げ始める。 「百十、百二十、百三十、百四十……百五十!!」 「はい、百五十!有り難うございます!さあ、貴族のお嬢さんが百五十をつけましたよ!他に誰かいらっしゃいませんか? いらっしゃらないのなら子熊はお嬢さん!貴女の物です!それではカウントいきます! 百五十一回……百五十二回……」 ここで誰かの一声があれば目論見はパーになる。緊張しながらもルイズは祈る。 それは頭の上にいるミーも同じだった。 そして一瞬静かになった後、 「百五十三回!おめでとうございます!子熊はお嬢さんの物となりました! では、前の方へどうぞ!」 「やったあっ!!」 ルイズはミーを地面に下ろした後で手を取り合って喜ぶ。それから二人は晴れ晴れとした気分で舞台上に昇った。 ミーは目を輝かせる程夢中になって檻の中の子熊を見つめる。 子熊の方は始めかなり怯えていたが、次第にミーの近くに体をよせていった。 その様子をほっとした顔で見ていたルイズに、今回競りにかけられた品々を持って来たと思われる行商人が話しかけてきた。見たところ、年は二十代の後半くらい。 背は高くひょろりとしていたが、この競り市に実のある物を持って来るために東方やサハラへ行ったという話は満更嘘ではないらしく、体つきはとてもがっしりしている。 顔も精悍ななりをしており傷も幾つかあったが、逆にそれが格好の良さを引き立てていた。 そしてマントを羽織っていて杖を懐に携帯している事から彼は貴族である事が分かる。 貴族でありながら行商人をやっているだなんて物好きな人もいるものだとルイズは思った。 「お嬢さん。競り落とせて嬉しいとこ悪いんだけど、あの子熊には用心した方が良いぞ……」 「へっ?どうして?」 「あいつはな恐ろしい程知恵が回りやがる。力もそれなりにあるから、とてもじゃねぇけどあんなガキんちょには手懐けられやしないぜ。」 言われてミーの方を見たルイズは首を傾げた。 たった今、係員により檻から出されてミーにじゃれついている子熊はとてもそうには見えない。 するとルイズはミーの右手の甲にある異変が起きているのを認めた。 なんと右手の甲にあるルーンが輝いているのである。 どういう事なのか不思議に思っていると、その光景を見た行商人は、目が飛び出んばかりに見開かせ口をパクパクとさせた。 そんなに驚く事なのだろうかとルイズは思ったが、その理由は行商人から直に語られた。 「こ、こりゃあ、たまげた!お嬢さん!俺と一緒こっちにに来てくれ!」 「ええっ?どうしてよ?」 「訳は後で話す!いいから来るんだ!」 訳も分からぬままルイズはミーを連れて行商人と共に壇の裏に行った。 息も整ったところで行商人は真剣な顔つきでルイズに話しかける。 「いんやぁ、たまげた!あんた、その子に刻まれているのはヴィンダールブのルーンだぞ。」 「ヴィンダールブ?」 「そうだ。聞いたことは無いのかい?伝説の使い魔の印さ。“神の右手 ヴィンダールブ 心優しき神の笛 あらゆる獣を操りて 導きし我を運ぶは地海空”とな。 いやぁ、俺も伝説が書かれてる本は今までたんと読んだが、生ける伝説にあったのは初めてだよ!」 伝説の使い魔?こんな平民の子供が?この行商人はこっちを担ごうとしているのではないか? ルーンだって今は光を失い元の通りになっている。 行商人はルイズの感情など露知らず勿体をつけて話し出した。 「しかしな、お嬢さん。この子の事を考えるのなら、あまりこのルーンの事は公にしない方が良い。 君の使い魔が王政府や軍の戦争道具になるか、アカデミーで実験材料としてずんばらりになってもいいというなら話は別だがね。 強い力ってのは人を幸せにもするがその逆を引き起こす事もままあるからな。 おっ、そうだ。忘れるところだった。」 そう言って彼は荷物袋をごそごそと漁り、薄手の長剣を一本取り出した。 ただ見かけはボロボロで刀身には錆が浮いており、お世辞にも名刀とは言えない代物だ。使えるかどうかも怪しい。 だが行商人はニコニコしてルイズにそれを差し出して言った。 「こいつは旅の途中で拾ったんだが、なかなかに良い話し相手になってくれたんだ。 生ける伝説を見せてくれた礼だ。特別にタダでこれをやるよ!」 「ねえ、これ何?こんなのタダで貰っても嬉しくないんだけど。」 「そいつはインテリジェンスソードのデルフリンガーってんだ。今は鞘に収めているから喋りはしねえが必要な時に抜いてみな。 きっとお嬢さんの役に立つと思うぜ。」 ルイズとミーは行商人と別れ、再び大通りを歩き始める。 ミーはルイズの隣を子熊の手を握りながら上機嫌に歩いている。 だが当のルイズの頭の中では先程行商人に言われた事がぐるぐる回っていた。 本当にこの子は伝説の使い魔なのだろうか? それが本当だと仮定すれば、何故こんな少女がそんな大それた役を引き当てたのだろうか? 更に言えば魔法の才能なんて無いと思っていた自分が、いつからそんな使い魔を使役するに値する存在になったのか。 謎が謎を呼ぶこの状況で謎一つを解こうにも、まともな論証が何一つ無いのでどうにも仕様が無い。 まあ今あれこれ悩むよりは資料の充実している学院に戻ってから考え直した方が得策というものである。 先生方が何か知っているという可能性も否定出来ない。 そんな事を思っているとミーが「お腹が空いた」と言ったので近くにある喫茶店に足を運んでみる。 しかし……喫茶店には思わぬ先客がいた。 「ハーイ、ルイズ。こんな所で会うなんて奇遇ね。こっちに来なさいよ。」 「…………」 「や、ルイズ。最初に言っておくけど僕にとって用があるのは使い魔の彼女だからね。君にはこの間の事があるからね。さ、使い魔君、こっちにおいでー。」 神、いや空気が死んだ。 そう思っているのはルイズだけかもしれなかったが、とにかく空気は死んだのだ。 しかも彼女にとってよく見知った三人によって。 ルイズの心の中にあった幸福感も何もかもが一斉にガラガラと音を立てて崩れていく。 せっかくの虚無の曜日なのに。 ルイズは俯き加減に三人とは違うテーブルに座る。 直ぐ後で給仕の持って来たお茶は、何時も学院で飲んでいる物とは違いほんの少ししょっぱい味がした。 前ページ次ページLouise and Little Familiar’s Order