約 1,243 件
https://w.atwiki.jp/kobe/pages/18.html
藍より青し 全17巻 + 電脳絵巻 愛がゆく 全12巻 愛情表現 愛と誠 全10巻 (文庫版) 青き炎 全06巻 青空ふろっぴぃ 全06巻 蒼き炎 全12巻 蒼のサンクトゥス 全5巻 蒼の封印 全11巻 赤いペガサス 全14巻 赤い鳩~アピル~ 全6巻 燁姫 -あきひ- 全18巻 空室あります 全04巻 悪魔とラブソング 全13巻 悪魔なエロス 全04巻 悪魔事典 全06巻 明日泥棒 全04巻 暴れん坊少納言 全07巻 甘い生活 全26巻 綾。ホステス、18歳。 全7巻 艶姿純情BOY ワイド版 全02巻 荒川アンダーザブリッジ 全11巻 荒くれKNIGHT 高校爆走編 全11巻 荒くれKNIGHT 全28巻 現神姫 あらがみひめ 全09巻 伊賀の影丸 全15巻 行け!稲中卓球部 全13巻 池袋ウエストゲートパーク 全04巻 石の花 (文庫) 全5巻 稲川淳二 ■ 百物語-200話 妹 全2巻&妹-あかね-全14巻 犬・犬・犬 全5巻 犬神 全14巻 犬夜叉 全56巻 勤しめ! 仁岡先生 全7巻 殷周伝説 太公望伝奇 全22巻 怨み屋本舗 全20巻 怨み屋本舗 巣来間風介 全06巻 伝染るんです。 全4巻 海猿 全12巻 海の闇、月の影 全18巻 浦安鉄筋家族 全31巻+元祖浦安鉄筋家族 第01~02巻 栄光なき天才たち 全17巻 江戸前鮨職人 きららの仕事 全16巻 円卓の姫士! 全3巻 円盤皇女ワるきゅーレ 全11巻 美味しんぼ 全102集 鳳ボンバー 全05巻 王様ゲーム 全05巻 王様の仕立て屋 ~サルト・フィニート~ 全32巻 王道の狗 全6巻 乙女のホゾシタ 全05巻 鬼斬り十蔵 全4巻 鬼切丸 全20巻(完) 鬼灯さん家のアネキ 全03巻 鬼虫 全05巻 男樹四代目 全4巻 男組 全14巻 完 織田信長 全4巻 (文庫版) 鬼ごっこ 全4巻 鬼平犯科帳 01巻-70巻 帯をギュッとね! 全30巻 溺れる花火 全02巻 俺のマイボール 全03巻 俺の空 全9巻 俺の空 刑事編 全7巻 俺の空Ver.2001 全3巻 親父 全03巻 女大太郎 全06巻 温泉へゆこう! 13巻 怪・力・乱・神クワン 全7卷 魁!!男塾 全34巻 怪人ヒイロ 全19巻 怪盗セイントテール 全7巻 鎧亜騎譚-ガイアキタン 全03巻 凱羅 全04巻 学園王子 全12巻 学園創世 猫天! 全5巻 学園天国 全08巻 覚悟のススメ 全11巻 格闘美神 武龍 -ウーロン- 全18巻+外伝 影武者徳川家康 全6巻 学校怪談 全15巻 下弦の月 全3 家裁の人 全15巻 加治隆介の議(文庫版) 全10巻 火星人刑事 全06巻 風の谷のナウシカ 風使い 全17巻 風光る 全44巻 風を抜け! 全13巻 課長 島耕作 全17巻 家畜人ヤプー 全09巻 株 -Market- 全5巻 神to戦国生徒会 全10巻 神の左手悪魔の右手 文庫版 全4巻 神さまのつくりかた。 全14巻 神風怪盗ジャンヌ 全7巻 神々の山嶺 全5巻 神宿りのナギ 全03巻 仮面ティーチャー 全04巻 臥夢螺館 全02巻 寡黙の刻 全3巻 喰霊 Ga-Rei 全12巻 軽井沢シンドローム 全07巻 彼氏彼女の事情 全21巻 彼女を守る51の方法 全05巻 乾いて候 全7巻 監査役 野崎修平 銀行大合併編 全4巻 監査役 野崎修平 全12巻 完殺者 真魅 ジェノサイダーまみ 全03巻 神無 全04巻 官能小説 全5巻 観用少女 全4巻 企画アリ 全11巻 企業戦士YAMAZAKI 全12巻 危険がウォーキング全04巻 機工魔術士 全17巻 寄生獣 10巻(完) 奇跡の少年 全3巻 危機之介御免 全03巻 機動警察パトレイバー 全22巻 機動公務員かもしか! 全06巻 岸和田博士の科学的愛情 全12巻 吉祥天女 きつしょうてんにょ 全04巻 痕 全2巻 気分は形而上(うああ) 全19巻 逆境ナイン 全06巻 逆走少女 全02巻 究極!!変態仮面 全6巻 究極のシェフは美味しんぼパパ 全3巻 究極超人あ~る 全09巻 吸血姫 ヴァンパイア・プリンセス 全05巻 教科書にない 全18巻 凶刃者 -ブレイダー- 全02巻 狂四郎2030 全20巻 狂乱家族日記 全4巻 恐怖新聞 全5巻 今日、恋はじめます 全15巻 今日から俺は!! 全38巻 今日子 KYOKO 全02巻 侠客 全2巻 潔く柔く 全13巻 巨人の星 全11巻 巨乳ドラゴン 全7話 巨乳ハンター 全2巻 競艇少女 全14巻 嫌われ松子の一生 極めてかもしだ 全06巻 銀河戦国群雄伝ライ 全27巻+異聞+裏 銀と金 全11巻 金色のガッシュ!!全33巻 金魚屋古書店出納帳 上下巻 金田一少年の事件簿 全27巻 金正日入門 全2巻+最期の日 喰いしん坊! 全24巻 喰いタン 全3巻 空想科学エジソン 全3巻 孔雀王 全16巻 孔雀王・退魔聖伝 全11巻 首斬り朝 全10巻 雲の上のキスケさん 全05巻 雲盗り暫平 (文庫版) 全6巻 黒い太陽 全5巻 蔵人-クロード- 全10巻 黒塚-KUROZUKA-全10巻 黒幕お姉さん 全04巻 紅 くれない -PROWLING DEVIL- 全08巻 群青学舎 全04巻 警視正大門寺さくら子 全8巻 警視総監アサミ 全18巻 警死庁24時 全6巻 警視庁美人局 全04巻 刑務所の中 結界師 全35巻 結婚しようよ 全06巻 激!!極虎一家 全07巻 撃論 甘えるな、韓国! ふざけるな、北朝鮮.rar 血笑鴉 全1巻 月下の君 全07巻 月光 全5巻 月下の棋士 全32巻 月紅 全07巻 月館の殺人 全02巻 幻影夢想 全5巻 喧嘩商売 全24巻(完) 剣客商売 全3巻打切(文庫版) 拳神 全19巻 拳児 全21巻 拳銃神 全9巻 幻想水滸伝III 運命の継承者 全11巻 幻蔵人形鬼話 全5巻 健太やります! 全26巻 研修医ななこ 全7巻 県立地球防衛軍 全04巻 恋はミラクル! 全6巻 恋風 全5巻 恋花温泉 全09巻 御石神落とし 全8巻 御石神落とし 全8巻 神戸在住 全10巻 項羽と劉邦 (文庫版) 全12巻 高校アフロ田中 全10巻 上京アフロ田中178 皇国の守護者 全05巻 交響詩篇エウレカセブン 全6巻 鋼鉄天使くるみ 全11巻(完) 孔子暗黒伝 校内写生 全4巻 珈琲どりーむ 全5巻 悟空道 全13巻 極悪がんぼ 全16巻 極上ドロップス 全03巻(完) 極楽青春ホッケー部 全14巻 極楽丸 全3巻 国民クイズ 全04巻 国立博物館物語 全3巻 孤高の人 全17巻(完) 虎視眈々 全3巻 殺し屋イチ 全10巻 小早川伸木の恋 全5巻 小山荘のきらわれ者 全7巻+STEP(番外編) 紺碧の國 全2巻 さ 最強伝説 黒沢 全11巻 最強!都立あおい坂高校野球部 全26巻 最終兵器彼女 最上の命医 全11巻 裁判員の女神 全5巻 裁判長! ここは懲役4年でどうすか 全13巻 最遊記 全9巻 西遊妖猿伝 全16巻 櫻の一番 全05巻 桜通信 全20巻 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 全02巻 猿ロック 全22巻 残酷な神が支配する 全17巻 残像 全01巻 史記 全15巻 敷居の住人 全07巻 刺客 怨み葵 全4巻 死刑囚042 全5巻 死神の惑星 全3巻 不死者あぎと(しなずのあぎと) 全05巻 静かなるドン 全44巻 下町マドンナ食堂 全5巻 実験人形 ダミー・オスカー 全19巻 失楽園 白い戦士ヤマト 全26巻 白鳥麗子でございます! 全7巻 白兵武者 全12巻 地獄組の女 全7巻 地獄甲子園 全03巻 地獄少女 全5巻 地獄先生ぬ~べ~ 全31巻 地獄星レミナ 幸せレスラン 全05巻 幸せの時間 全19巻 旋風の橘 全5巻 疾風伝説 特攻の拓 全27巻+小説(完結) 士道 -SIDOOH- 全25巻(完) 渋谷ガーディアンガールズ 全03巻 司書とハサミと短い鉛筆 全06巻 島根の弁護士 全13巻 下苅り半次郎 全05巻 下北GLORY DAYS 全12巻 私立T女子学園 全10巻 私立彩陵高校超能力部 全07巻 遮那王 -義経- 全22巻 雀鬼北斗星 全03巻 銃姫 Sincerely Night 全04巻 将太の寿司 (文庫版) 全14巻 小類人-ちゃいるど- 全7巻 少年少女 全4巻 少年雀鬼 東 全06巻 少年の町ZF 全6巻 常務 島耕作 全06巻 食キング 全27巻 修羅がゆく 全41巻 修羅の刻 全14巻 修羅の刻 15巻.zip 修羅の門 全31巻(第一部~第四部完結まで) 修羅雪姫 全02巻 柔道部物語 全11巻 呪法解禁!!ハイド クローサー 全07巻 職業・殺し屋。 全15巻 諸葛孔明 時の地平線 全14巻 蛇衆 全02巻 上京アフロ田中 全10巻 高校アフロ220 女医レイカ 全18巻 女監察医 全04巻 女王騎士物語 全12巻 女王様の犬 全11巻 女子アナ魂 こはるON AIR 全05巻 女子アナ 七瀬 全3巻 女子大生家庭教師 濱中アイ 全6巻 女禍 JOKER 全4巻 嬢王 じょうおう 全12巻 女帝 全24巻 女帝薫子 全3巻 女優 全10巻 白雪ぱにみくす 全07巻 地雷震 全19巻 私立!美人坂女子高校 全3巻 仁 JIN 全20巻 真・カルラ舞う! 3 全8巻 新・カルラ舞う! 2 全18巻 新・男樹 全4巻 新・子連れ狼 全11巻 新・聖痕のジョカ 全5巻 新・闇の声 潰談 新コータローまかりとおる! 柔道編 全27巻 新レイプ 全4巻 新のぞき屋 全11巻 新暗行御史 全17巻 新学園天国 全07巻 新巨人の星 全6巻 新世紀エヴァンゲリオン 全8巻 新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド2nd 全6巻 仁義 -JINGI- 全33巻 陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!! 全15巻 真犯人!! 全03巻 人造人間キカイダー 全6巻 人類ネコ科 全3巻 紳士同盟クロス 全11巻 神ぷろ。 全3巻 神武 全5巻 水滸伝 全08巻(完結) 水惑星年代記 5作品 数学ガール 全02巻 姿三四郎 全3巻 凄ノ王 超完全完結版 全6巻 涼風 -すずか- 全18巻+おまけ2冊 鈴木先生 全11巻 砂時計 全10巻 砂の薔薇 全15巻 昴 全11巻 生徒諸君!全24巻+外伝 生存 Life 全3巻 聖 全9巻 正義の味方 全05巻 青春ビンタ! 全6巻 聖伝 全10巻 聖闘士星矢 文庫版 全15巻 聖域 -サンクチュアリ- 全05巻 聖戦記エルナサーガ 全13巻 青天大晴 全06巻 制服ぬいだら♪ 全6巻 青龍 ブルードラゴン 全17巻 精霊使い 全4巻 世界一さお師な男 伊達千蔵 全07巻 世界でいちばん大嫌い 全13巻 隻眼の竜 全6巻 女衒 ~ぜげん~ 全05巻 赤灯えれじい 全15巻 赤灯えれじい 東京物語 全01巻 絶対可憐チルドレン 全22巻+α 銭-ぜに- 全07巻 銭夜叉 全02巻 戦国獅子伝 全7巻 戦場ロマン・シリーズ 全8巻 戦場のヴァルキュリア 全4巻 戦線スパイクヒルズ 全7巻 全日本妹選手権!! 全07巻 洗礼 文庫版 全4巻 蒼天航路 全36巻 青天大晴 全06巻 空に太陽がある限りっ。 全03巻 空の昴 全21巻 反町くんには彼女がいない 全6巻 孫悟空 全06巻 多 た 代打屋トーゴー 全25巻 代紋TAKE2 全62巻 大甲子園 全26巻 大使閣下の料理人 全25巻(完) 大市民 全10巻 大東京ビンボー生活マニュアル 全5巻 大東京トイボックス 全05巻 代表人 全02巻 逮捕しちゃうぞ 全07巻 退魔針 全11巻 退魔針-魔針胎動篇- 全06巻 太陽の黙示録 -群雄編- 全17巻 武田勝頼 (文庫版) 全03巻 武田信玄 全10巻 打撃女医サオリ 全2巻 戦え!梁山泊 史上最強の弟子 全05巻 黄昏堂へようこそ 全07巻 他人の家 全2巻 多重人格探偵サイコ 全8巻 正しい恋愛のススメ 全05巻 畳捕り傘次郎 全02巻 伊達政宗 全4巻 七夕の国 全04巻 誰も寝てはならぬ 全17巻 太夫 Da-You! 全06巻 太郎 全24巻 弾-AMMO- 全05巻 男魂!! インポッシブル 全3巻 男子高校生の日常 全7卷 探偵になるための893の方法 全03巻 探偵学園Q 全22巻 探偵儀式 全06巻 小類人-ちゃいるど- 全7巻 中華一番! 全5巻 中退アフロ田中 全10巻 長男の時代 全7巻 超バージン! 全7巻 超少女明日香 MF版 全07巻 超常機動サイレーン 全4巻 超心理現象能力者 ナナキ 全03巻 超人ロック 全38巻 超三国志 覇 全15巻 超弩級空母 大和 全8巻 超弩級少女4946 全06巻 超爆魔道伝 スレイヤーズ 全08巻 沈黙の艦隊 愛蔵版 全11巻 珍遊記-太郎とゆかいな仲間たち- 全06巻 沈夫人の料理人 全04巻 月詠~MOON PHASE~ 全16巻 罪と罰 全10巻 釣りキチ三平 全37集+別集2冊 低俗霊DAYDREAM 全10巻 帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!? 全04巻(完) 鉄拳チンミ 全35巻 鉄子の旅 全6巻 鉄人28号 皇帝の紋章 全03巻 鉄鍋のジャン! 全27巻 鉄腕アトム 全18巻+別巻全2巻 鉄腕ガール 全9巻 哲也-雀聖と呼ばれた男 全41巻 出直しといで! 全6巻 出るトコ出ましょ! 全13巻 天からトルテ!全14巻+x3 天下無双 -江田島平八伝- 全10巻 天使禁猟区 全20巻 天使な小生意気 全20巻+外伝 天使なんかじゃない 完全版 全4巻 天は赤い河のほとり 全28巻 (完) 天上天下 全22巻 天上天下唯我独尊 全16巻 天地無用! 魎皇鬼 全12巻 天然コケッコー 全15巻完 天然パールピンク 全4巻 天然少女萬 全20巻 天 -天和通りの快男児 全18巻 天才ファミリーカンパニー スペシャル版 全06巻 天地を喰らう 全4巻 天馬の血族 完全版 全8巻 電影少女 愛蔵版 全09巻 東京BABYLON 全07巻 東京アンダーグラウンド 全14巻 東京クレイジーパラダイス 全19巻(完) 東京ナンパすとりーと 全04巻 東京ラブストーリー 全06巻 東京赤ずきん 全04巻 東亰異聞 全04巻 東京家族 全05巻 東京大学物語 全34巻 東周英雄伝 全3巻 東洋妖人伝 用神坊 全8巻 道士郎でござる 全08巻 動物のお医者さん 全12巻 咎狩 -白- 全03巻 度胸星 全4巻 時には薔薇の似合う少女のように 全13巻 時の行者 全3巻 時をかける少女 全2巻 年上ノ彼女 全06巻 斎女伝説 クラダルマ 全18巻 怒涛!ジャムカの大冒険 全5巻 特攻天女 全30巻 特撮天使 -とくてん- 全04巻 特務咆哮艦ユミハリ 全4巻 特命係長 只野 仁 全9巻 徳川家康 (文庫版) 全8 賭博黙示録カイジ 全13巻 賭博破戒録カイジ全13巻 賭博覇王伝 零 ゼロ 全08巻 友達100人できるかな 全05巻 取締役 島耕作 全08巻 都立水商! 全22巻 豊臣秀吉 (文庫版) 全7巻 な 永田町ストロベリィ全5巻 渚 全03巻 哭きの竜 全9巻 奈緒子 全33巻 奈緒子 新たなる疾風 全06巻 奈津の蔵 全4巻 夏のあらし! 全08巻 夏子の酒 全12巻 隠の王(なばりのおう) 全14巻 難波金融伝・ミナミの帝王 81-113 虹色とうがらし (ワイド版) 全6巻 虹色のトロツキー 全8巻 虹色town 全11巻 日露戦争物語 全22巻 人形草紙 あやつり左近 全04巻 人間交差点 全27巻 根こそぎフランケン 全8巻 熱笑!!花沢高校 全29巻 眠れる惑星 全04巻 乃木坂春香の秘密 全04巻 信長 全8巻 覇王伝説 驍(タケル) 全20巻 鋼 HAGANE 全16巻 破壊王ノリタカ! 全18巻 白兵武者 全12巻 白竜 全21巻 獏~BAKU~ 全04巻 爆れつハンター 全13巻 暴想処女 全10巻 爆麗音 全07巻 莫逆家族 全11巻 箱館妖人無頼帖 ヒメガミ 全5巻 初恋限定。ハツコイリミテッド 全4巻 花とみつばち 全07巻 花より男子 全36巻 花右京メイド隊 全14巻 花子と寓話のテラー 全04巻 花の慶次-雲のかなたに- 全18巻(見開き) 花図鑑 全05巻 花園メリーゴーランド 全5巻 花田少年史 全5巻 葉弥 HAYA 全04巻 春よ、来い 全11巻 春行きバス 全4巻 春美120% 全6巻 春道 全03巻 瑪羅門の家族 全04巻 半熟忍法帳 全9巻 半蔵の門 全15巻 蛮勇引力 全4巻 彼岸島 全33巻+ 陽あたり良好! ワイド版 全2巻 緋が走る 全15巻 緋の稜線(文庫版) 全16巻 聖☆高校生 全11巻 美女で野獣 全08巻 羊のうた 全07巻 鬼灯さん家のアネキ 全03巻 泌尿器科医 一本木守! 全11巻 秘密探偵JA 全15巻 姫君の条件 全08巻 貧乏姫ですが、何か? 全04巻 漂流ネットカフェ 全07巻 不安の種 全3巻 深川澪通り木戸番小屋 全02巻 封神演義 全23巻 風雲児たち ワイド版 全20巻 風子のいる店 全4巻 風俗店長物語 全06巻 風魔の小次郎 (文庫版) 全6巻 武士道シックスティーン 全03巻 武心 全05巻 武装錬金 全10巻 部長 島耕作 全13巻 部屋においでよ 全07巻 冬物語 全07巻 辺境警備 全6巻 変 HEN 全13巻 変幻戦忍アスカ 上下巻 弁天様には言わないで 全5巻 編集王 全16巻 紡!DRAGON DRIVE 全15巻 冒険してもいい頃 全11巻 忘却の旋律 全06巻 砲神エグザクソン 全7巻 包丁人味平 全12巻 放課後保健室 全10巻 訪問者(文庫版) 暴力の都 全12巻 僕といっしょ 全4巻 僕になった私 全05巻 僕の初恋をキミに捧ぐ 全12巻 僕は妹に恋をする 全10巻 僕はミニに恋してる 全6巻 僕はムコ養子 全10巻 僕らの飼い方教えます 全06巻 北斗の拳 全27巻 墨攻(文庫版) 全3巻 炎の転校生 全12巻 本気のしるし 全06巻 本気!サンダーナ 全07巻完 舞 全6巻 舞姫 テレプシコーラ 第一部全10巻 舞姫 ~ディーヴァ~ 全05巻 舞弥 全03巻 万祝-まいわい- 全11巻 魔王 JUVENILE REMIX 全10巻 魔界学園 全21巻 魔界衆全2巻 魔界都市ハンター 全17巻 魔界都市ハンターシリーズ 魔宮バビロン 全2巻 魔殺ノート 退魔針 全06巻 魔殺ノート 退魔針 魔針胎動篇 全11巻 魔人探偵脳噛ネウロ 全23巻 魔法騎士レイアース(1&2) 全6巻 魔法使いの娘 全08巻 魔法遣いに大切なこと ~ 太陽と風の坂道 全05巻 魔法使いと弟子の不適切なカンケイ 全04巻 魔法先生ネギま! 全38巻(完) 魔探偵ロキ 全07巻 本気!サンダーナ 全07巻 本気! マジ! 全50巻+番外編 本気!2 マジ! 全05巻 真夏の夜のユキオンナ 全04巻 右向け左! 文庫版 全06巻 右向け左 全06巻 巫女っす ! 全03巻 美咲の器 それからの緋が走る 全09巻 緑の王 VERDANT LORD 全9巻 水に棲む花 全05巻 未満れんあい 全05巻 未来のうてな 全11巻 未来日記 全12巻 夢幻紳士 全3巻 無間地獄 全05巻 蟲師 全10巻 胸キュン刑事 全03巻 無敵看板娘 全17巻 無頼男 -ブレーメン- 全9巻 無頼伝 涯 全5巻 迷彩君 全05巻 明治流星雨 明稜帝 全10巻 明稜帝梧桐勢十郎 全10巻 未コ 名探偵コナン 1-73 名探偵マダム・ホームズ 全03巻 名探偵 保健室のオバさん(文庫) 全4巻 無面目・太公望伝 (見開き) 魍魎戦記MADARAj摩陀羅 全22巻 諸星大二郎 コミック詰合せ 全22巻 桃色サバス 全12巻 桃香クリニックへようこそ 全4巻 焼きたて!!ジャぱん 全26巻 野球狂の詩 平成編 全3巻 夜王 全29巻 夜光雲 全3巻 夜叉鴉 全10巻 夜刀の神つかい 全12巻 山田太郎ものがたり 全14巻 闇狩人 全6巻+α 闇の土鬼 全3巻 有閑倶楽部 全19巻 遊撃宇宙戦艦ナデシコ 全04巻 勇午 全22巻 幽遊白書 全19巻 幽霊旅行代理店 ソウルメイトツーリスト 全4巻 湯けむりスナイパー 全16巻+花鳥風月編 全02巻 夢で逢えたら 全17巻 夢使い 全6巻 夢の掟 全2巻 宵闇眩燈草紙 全7巻 妖怪仕置人 全18巻 妖女伝説(文庫版) 全2巻 妖精事件 全5巻 傭兵ピエール 全4卷 欲情(C)MAX 全07巻 欲望という名のカラダ 全03巻 義経ちゃん剣風帖 全03巻 弱虫 チンピラ 全30巻 雷火 全21巻 楽勝!ハイパードール 全5巻 力王 全12巻 陸軍中野予備校 全6巻 龍-RON- 全42巻(完) 龍の砦 全2巻 龍狼伝 全37巻 陵子の心霊事件簿 全4巻 琉伽といた夏 全4巻 隣人13号 全3巻 瑠璃 全12巻 恋愛ジャンキー 全26巻 恋愛出世絵巻えん×むす 全6巻 霊能探偵ミコ 全12巻 黎明の艦隊 全10巻+外伝+新黎明の艦隊 全12巻 歴史劇画 大宰相 全10巻 烈火の炎 全33巻 浪漫倶楽部 全06巻 我が名は狼 全3巻(完) 我が名は海師 全15巻 惑星のさみだれ 全10巻 笑ゥせぇるすまん 全6巻
https://w.atwiki.jp/holycon/pages/21.html
冬木ハイアットホテル――その駐車場。 思い思い好き勝手に改造したオートバイを集め、下品なガニ股で座り込む若者たち。 彼らがふと顔をあげたのは、たまり場へ一台のオートバイが入ってきたからだった。 ついに製造終了となった名機、カワサキZシリーズ最後の車両。 しかし男どもが目を惹かれたのはバイクではない。ライダーの方だった。 赤い革製のジャケットを内から押し上げて自己主張するのは、果実のように実った豊かな乳房、 そこからすっと括れた腰に曲線が走り、しっかりと肉づいた尻へと稜線が流れていく。 ヘルメットを脱げば、汗で濡れた額に黒髪を張り付かせた、眼鏡をかけた美貌が顕になる。 有り体に言って美人――いや、美少女だった。 「ここで良かったのよね、浩一くん」 「ああ。学長から聞いたホテルだ」 誰にも、その少年がどこから現れたのかはわからなかった。 影の中から、ぬるりと自然に浮かび上がったかのようにさえ思えた。 特に何の変哲もない高校生。脱色でもしているのか、銀に近い白髪だ。 女の彼氏か何かだろうか。 普段の彼らならすぐにでも絡み、引き離し、女を囲んでお楽しみと行くだろう。 「うッ!?」 「ううう……!」 ――だが、動けなかった。 睨まれたわけでもない。 ただ少年がちらりと一瞥をくれただけで、彼らは動けなくなっていた。 今ここで飛び掛かって、返り討ちになる気がしたならまだ良い。やけっぱちにもなれる。 だがしかし、襲いかかったらどうなるか、彼らには想像もできなかった。 それが怖い。 たまらなく怖い。 「ありがと」 そんな暴走族たちの傍を抜けた時、少女が表情を和らげて少年へ囁いた。 「僕は何もしていない」 「でも、ああいう人たちはしつこいから」 「詳しいね」 「昔、ちょっとね」 暴走族たちは、そうして連れ立ってホテルへと入ってく二人を呆然と見送るしかなかった。 自分たちは運が良かったのだという事を、恐らくは本能的に察していたに違いない。 もし――もし、この場に国家保安局の局員か、さもなくばCIAの工作員がいたならば。 あの白髪の少年を見つけた途端「げぇッ」と呻いて動けなくなってしまっただろう。 その名は101(ワンゼロワン)。 かつてバビル2世と呼ばれた、最強の超能力者である。 * * * 押し寄せる学生運動の波は、外界から隔離された学園都市といえど例外なく襲った。 なまじ超能力などを持ち、開発の過程でエゴイズムを増強させてきていた学生たちは、 学生の解放という建前を得て、ここに公然と学園都市内部で能力を行使するようになった。 さらにそれに不満を抱いた無能力者たちが不良集団を結成して暴動を引き起こし、 あわや全面抗争か――――……と、ここ十年近く、緊張状態が続いている。 「風紀委員(ジャッジメント)」と呼ばれる学生主体の治安維持組織が誕生したのもその為で、 不良グループから足を洗った固法美偉(このり みい)はその一員――優秀な一員だ。 しかしそんな彼女でも、学園都市上層部から下された辞令には首を捻らざるを得なかった。 「出張?」 AppleIIのキーボードをパンチしていた後輩、初春飾利が驚いた様子で振り返った。 風紀委員第一七七支部の壁に掲示された異動辞令には、確かにそう書いてある。 「って、固法先輩がですか?」 「そうみたいね」 愛飲するムサシノ牛乳のパックにストローを差しながら、固法は信じがたいと頷いた。 学園都市で行われている超能力開発は、本来持ち出し厳禁の重要機密である。 旅行に行くのでさえ幾つもの許可を得た上で、監視用の極小機械群を注射されるほどだ。 ましてや都市内の治安維持組織である風紀委員の出張など、聞いたこともない。 「でも学園長の署名捺印があるし、正式な辞令でしょ、これ」 「行くんですか?」 「そりゃあ、風紀委員としての仕事だもの」 「冬木市ですよね? ちょっと待ってください、調べますから」 初春が事務椅子をくるりと回して筺体に向き直り、ぱちぱちとキーをパンチし始める。 PET2001じゃお話になりません!と叫んだ彼女がどうやって最先端マイコンを手に入れたのか、 固法にはわからないけれど、違法でない上に役立つなら口を挟むことでもなかった。 やがてプリンターがガタガタと音をたてて動いて紙を吐き出し、初春はそれを破り取った。 「どうぞ!」 「ありがと。……ふぅん、兵庫県なんだ」 初春からもらった資料と、出張用にと渡された資料を合わせてめくる。 冬木市で開催されようとしている聖杯戦争。 それは都市外に潜伏している能力者達による、大規模な実験であるらしい。 超能力の仕組が「無自覚拡散力場」によって発生する現実改変であることを鑑みれば、 強力な能力者たちを戦わせて力場を強化し、広範囲の現実改変を行う事は不可能ではない。 魔術的な用語を科学的な用語へ変換した内容であるからこそ、固法美偉は素直に納得する。 なぜなら彼女もまた、透視能力を有する能力者なのだから。 「あまり時間も無いし、準備をしたら出発しないと」 「はい、わかりました。引き継いでおかなきゃいけないこと、ありますか?」 「特にないと思う。あ、ただ白井さんの事、よろしくお願いね」 「はいっ それはもう!」 今この場にいない、独断専行と無茶が過ぎる後輩。 最近少しはマシになってきたとはいえ、まだまだ危なっかしくて仕方ない。 (御坂さんの影響かしら……) 常盤台中学の超電磁砲とあだ名される、学園都市における文字通りの「超能力者」。 白井黒子が憧れる「お姉さま」である彼女は、やはり破天荒で暴走しがちなところがあった。 能力を行使するためにエゴが強化されていく能力者、その中でも最上位のLV5ともなれば、 誰も彼もいずれ劣らぬ奇人変人ばかりで、比較的常識的とはいえ御坂も例外ではないのだろう。 (超能力者って皆ああだから、仕方ないのかもしれないけれど) そんなことを苦笑交じりに思いながら、出張用の資料を確認していく。 単純な所持品などは普通の旅行と同じで良いだろうが……。 「……同行者一名?」 「僕だ」 いったいいつ、どうやってその少年がその場に現れたのか、誰にもわからなかった。 足元に黒い豹を従えた、どこの高校かもわからないごく普通の学ランを着た少年。 年の頃は十七か、八。特徴的なのは脱色でもしたのか、銀に近い白い髪。 酷く落ち着き払った態度で、彼はさも当然のように支部の中央に佇んでいた。 固法が何かを言うよりも速く、初春が取り乱した様子で声を上げた。 「あ、あなた誰ですか!? ここは風紀委員以外立ち入り禁止ですよ! 「山野浩一。念動能力者(テレキネシス)だ。許可はもらっている」 「山野さん? ちょ、ちょっと待ってください、そんな人いた記憶が……」 確認しますと言って、初春はキーボードを叩いてディスプレイを睨みつける。 その間に「失礼」と言って、その少年は拒む間もなく固法の胸元に掌をかざした。 「あ、熱っ!?」 不意に胸元に熱を覚えた固法は、思わず服の上からそこを押さえてへたり込む。 同時に初春ががたりと椅子を鳴らして飛び上がり、少年へと食って掛かった。 「ちょっと、先輩に何するんですか! 痴漢ですか!?」 「待ってくれたまえ。僕に文句を言われても困る」 「ま、待って、初春さん。――本当に、そうみたい」 初春が警戒するのを手で制しつつ、固法は自身の能力――透視を発現させていた。 彼女の胸元、乳房の上あたりには刺青のように、三画の奇妙な紋様が浮かび上がっている。 先ほど読んだ資料にも書いてあった――令呪、とかいう奴だ。 「じゃあ、あなたが私のサーヴァント?」 「そうだ」 学ランの少年は、不可思議な言葉にも戸惑うことなく頷いた。 聖杯戦争に参加するには、二人一組でなければならない。 このチームはマスターとサーヴァントであり、マスターは強制命令権を持つ。 主人(マスター)というと忌避感はあったが、もともと風紀委員でも部下がいる身だ。 同僚に対して指示を飛ばす役目と思えば、固法にもすんなりと納得がいった。 ただ――…… 「キャスターとか101とか浩一とか、好きに呼んでくれ」 「えっと……」 彼女の瞳をまっすぐに見つめる少年の瞳が輝くと、何とも落ち着かなくなるだけで。 「じゃあ――――……」 * * * 「そういえば浩一くん、この痣……令呪って消えるの?」 「使いきればね」 「残ったら困るのよね。水着が着れないし、後輩にも示しがつかないし」 冬木ハイアットホテルの一室。 キャスター、バビル2世はバスルームから聞こえる水音を聞き流しながら思案に耽っていた。 ソファに身をゆだれた彼の足元には、影のようにぴったりと黒豹――ロデムが侍っている。 彼ら三つのしもべと出会ってから十年以上、バビル2世は走り続けてきた。 そしてヨミとの対決が終わった後、彼は止まれなくなってしまった自分に気がついた。 何もないのだ。 先祖バビル1世から受け継いだ超能力、三つのしもべ、バベルの塔を使うべき目的が。 自分に匹敵する能力を持った好敵手が世界征服を目論んだのも無理はない。 これほどまでに巨大な力を抱えたまま、密かに生きていくことなど不可能なのだ。 現にバビル2世自身、その血液から人工超能力者を製造できると築いたCIAに襲われ、 数年がかりの戦いと逃避行を終えたばかりである――今思えば、充実していたが。 最後にはまたしても復活したヨミとの対決に挑み、相討ちで死んだ。そのはずだった。 「しかし、僕は生きている」 いや、死んだ後で呼び出されたのか、死ぬ直前で呼びだされているのかもしれない。 あの謎めいたアレイスター・クロウリーという、魔術師を自称する男によって。 聖杯戦争とかいう、願いを叶える装置をめぐった殺し合いに参加させる駒として。 (ヨミが聞いたら喜びそうな事をいう……) 回りくどい話に、何度だまらっしゃいと叱り飛ばしてやろうかと思ったものだ。 しかしその一方、バビル2世の心のうちには燃え盛るような戦意が生まれていたのも事実。 でなくば、どうしてあんな奴の思惑に乗っかってやるだろう。 聖杯戦争に参加する英霊として自分を選んだからには、敵にも同種の存在がいるに違いない。 その中に邪悪な者がいないとどうして言えよう。いや、開催者こそが邪悪なのだろう。 (ならば僕はそいつを何としても倒さねばならない) 己が命を燃やすにたる目標があるというのは、これほどまでに人を滾らせるのか。 ヨミと敵対すると決めた時、ヨミが復活したと知った時、宇宙ビールスの存在を知った時。 使命感と共に覚えた高揚感を、今もまたバビル2世は自身の胸のうちに感じ取っていた。 バビル2世にとって、この聖杯戦争は今一度戦いを挑むに相応しい場だった。 「むむむ……」 「何がむむむよ」 いつの間にシャワーを浴び終えたのか、バスローブ一枚を纏った固法の姿があった。 ぺたぺたと裸足で歩き、バビル2世の対面に座る彼女の肌は淡く上気している。 僅かに牛乳を滴らせながらも紙パックを煽る仕草は、扇情的ですらあった。 「それで、作戦はどうしましょうか」 ムサシノ牛乳と書かれた紙パックをテーブルに置いて、固法が身を乗り出した。 その表情は真剣そのもの。来るべき戦いへの使命感が滲んでいる。 「固法さんには、ロデムと一緒に行動してもらいたい」 「ああ。この子をサーヴァントと思わせるのね?」 「そうすれば、僕はサーヴァントじゃなく君の同僚として動ける」 「わかった、任せて。それに頼りにしてるわよ、ロデム」 するりと音もなく立ち上がった黒豹が、固法の膝に頭を押し付けた。 彼女はにこりとして手を伸ばし、その顎を柔らかく撫でてやる。 相応に喧嘩慣れしているという固法なら多少のことは心配ないだろうが、 それでも戦闘力に欠けるのは明白で、それをロデムが補うのなら心強い。 「何としても、こんな実験を始めた人を逮捕しなくちゃ……」 「……」 ぽつりと呟かれた言葉に、バビル2世は何も言わなかった。 固法美偉の、あまりにも無防備な様子と仕草がその原因だった。 何も彼女は、バビル2世を異性として意識していないわけではない。 同年代の異性とホテルの同室で寝泊まりする事も、普段の固法なら忌避しただろう。 (だから催眠術をかけた) 自分に対する警戒心を薄めるように――でないと、色々とややこしくなる。 一方でバビル2世はそれ以上彼女の心を読むことも、弄ぶこともしていない。 (誰も彼も意のままに操るようになっては、それこそヨミと同じだ) しかし未だ彼女には明かしていない事は山程ある。 自分の持つ力はテレキネシスの他にも数多いこと。 そして呼べば応えるしもべは、あと二体いること。 (だが、すぐに使うべきじゃあない) 自分の保有する数多の能力は、過去の戦いで幾度も窮地を脱してきた。 怪鳥ロプロス、巨人ポセイドン。空もあり、海もある冬木なら幾らでも戦えるだろう。 しかし敵はヨミと同等の相手だと思わなければならない。それが複数名いる。 ならばまずは此方の手を隠したまま情報を探り、その上で奇襲攻撃で叩くのが手だ。 何も自分から声高に「バビル2世一番乗り!」と叫んでやる必要はない。 「頑張りましょうね、浩一くん」 「ああ」 にっこりと微笑みかける固法へ頷きかけながら、バビル2世は考える。 (そういえば、名前で呼ばれるのはいつ以来だろう?) バビル2世は十年近く前に捨て去った高校生としての日々に思いを馳せた。 しかし脳裏に蘇るのは優しい父や母、恩師や旧友たちの顔ではなかった。 浮かび上がるイメージはただひとつ。 砂の嵐に隠された、あの懐かしきバベルの塔――――……。 【CLASS】キャスター@バビル2世/その名は101 【真名】山野浩一/バビル2世/101(ワンゼロワン) 【サーヴァントとしての願い】 自らの全てを発揮できるような戦い。 黒幕の真意を確かめ、その野望を打ち砕く。 【性別】男性 【外見】学ランを着た白髪の少年 【属性】混沌・善 【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具A 【クラス別スキル】 陣地作成:- 道具作成:- キャスターは陣地作成スキル、道具作成スキルを保有しない。 かわりに陣地・道具として『バベルの塔』を所持している。 【固有スキル】 超能力:A+ 人間が人間であるからこそ行使できる、魔術とは異な能力。異能。 基本的に一人につきチャンネルは一つか二つだが、バビル2世は多数の力を保有する。 超能力の行使は体力を著しく消耗する。連続して使い続けた場合、最悪は衰弱死してしまう。 また精神に作用する能力は、Bランク以上の精神抵抗スキルがあれば対抗が可能。 超感覚:五感および第六感が極めて強化されている。 超再生:致命傷を負っても即死しない限り短時間で治癒できる。 テレパシー:精神感応。相手の心を読み取り、また此方の意思を伝える事もできる。 催眠術:視線をあわせた相手を催眠状態に陥らせ、意のままに操る。 肉体変化:あくまで外見と声だけだが、別人に成り済ます事ができる。 念動発火:全身から火炎を放射することができる。 テレキネシス:念動力。対軍規模の空爆を逸らし、ビル一つを容易く破壊する力がある。 エネルギー衝撃波:強力な衝撃波を放射する。接触した場合、相手の内蔵をズタズタにする。 エネルギー吸収能力:あらゆるエネルギー攻撃を吸収し、活力に変える。最大の切り札。 心眼(真):A 修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、 その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。 逆転の可能性がゼロではないなら、 その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。 単独行動:B マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 【宝具】 『三つのしもべ』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~60 最大捕捉:100人 バビル2世を守護する三体の忠実なしもべ。バビル2世最大の武器。 ・ロプロス:巨大な怪鳥。嘴から強力な超音波を発射し、音速で空を飛ぶ。 ・ポセイドン:鋼鉄の巨人。指先の熱線砲、装甲と怪力を武器に海を行く。 ・ロデム:あらゆる物に変身可能な不定形生命体。黒豹の姿で地を駆ける。 ロプロスとポセイドンは巨大なため、使用した場合は参加者全員に知られてしまう。 またランクB以上のテレパシーならば、バビル2世でなくても命令する事ができる。 バビル2世の命令とその命令が拮抗した場合、しもべ達は混乱して行動不能に陥る。 【Weapon】 バベルの塔 砂の嵐に隠され、コンピューターに守られ、宇宙の智慧を蓄えた古代の塔。 バベルの塔は最先端のスーパーコンピューターを遥かに凌駕する性能を有しており、 バビル2世の命令に従って侵入者を数々の罠で撃退し、様々な情報分析を行う。 また歯車式のため電磁波などの影響を受けることがなく、破壊されても自動修復が行われる。 冬木市から遥か彼方に存在するため、ロプロスを使用しなければ移動することができない。 【解説】 バビル2世、101、そして後にビッグファイアと呼ばれることになる最強の超能力者。 もともとは平凡な学生であったが、古代人バビル1世の血を引く末裔として覚醒。 初代の遺産であるバベルの塔と三つのしもべを受け継ぐ後継者に選ばれたバビル2世は、 同じく後継者候補だった超能力者ヨミの野望を打ち砕くため壮絶な戦いを繰り広げ、 さらには彼の血を狙うCIAとも激しく争い、最後は復活したヨミと相討つ形で消息を断った。 ヨミとの戦いに全てを注ぎ込んだ彼はバベルの塔で世捨て人として暮らすかに思えたが、 やがて帰還したバビル2世はビッグファイアを名乗り、秘密結社BF団を率いて世界へ挑む。 【行動方針】 強大な敵組織に個人で挑み続けてきたことから、極めて冷静かつ冷徹な戦術を取る。 一般人を巻き込まないようにはするが、犠牲についてはさっぱりと割り切っている。 情報を集め、先手先手で奇襲して相手の企みを潰し、後手に回った場合も慌てず撤退を図る。 切り札を最後まで隠し持っておくため、自分の正体と能力は隠匿する方向で動いている。 表向きは「山野浩一」として活動し、マスターにも「念動力」「ロデム」以外は伏せている。 いかなる時でも学ランは脱がない。 ※『バビル2世』『その名は101』終了後、『ジャイアントロボ』開始前の状態です。 彼は直近の昭和四六-四八年、五二年-五四年にかけてヨミ、CIAと対決していました。 なのでCIA他、国際諜報機関の関係者は101の存在を知っている可能性があります。 【マスター】 固法 美偉(このり みい)@とある科学の超電磁砲 【マスターとしての願い】 人々を守り、聖杯戦争の真実を突き止め、黒幕を逮捕する。 【性別】女 【年齢】18歳(高校3年生) 【外見】メガネをかけた黒髪セミロングの女子高生 【令呪の位置】胸元 【Weapon】 ・大型オートバイ(カワサキ・Z1000MKII) 【能力】 ・透視能力(クレアボイアンス)Lv3 衣服の下や鞄ひとつ、壁一枚程度ならば透視が可能。 ・風紀委員(ジャッジメント) あくまで学生レベルの治安維持組織に所属している。 なお他にマスター(サーヴァント)として参加している風紀委員キャラ以外、 本聖杯戦争においては組織の助力を得られないものとする。 【人物背景】 『学園都市』と呼ばれる超能力者を開発する巨大都市で暮らす女子高生。 2年前までは能力育成に伸び悩み、不良集団「ビッグスパイダー」に所属していたが、 先輩の説得で脱退、現在は治安維持組織「風紀委員」として後輩の指導を行っている。 性格は真面目で正義感が強く、また後輩に対しても丁寧に対応する良き先輩といった風。 また「治安維持と実力行使は別」といった考えから、直接戦闘は最終手段としている。 透視能力以外の身体能力は年齢相応だが、不良なら一蹴できる程度に喧嘩慣れしている。 不良時代の先輩の影響からバイクの運転が趣味で、緊急時などには活用する。 身長163cm・体重50kg、スリーサイズは85・60・81、プロポーションが良く着痩せする方。 【行動方針】 聖杯戦争について把握しており、人々の被害を防ぐために活動する。 キャスターについてもサーヴァントであることを理解してはいるものの、 「念動力と黒豹ロデムを保有する超能力者」という風に認識している。 【把握媒体】 キャスター(バビル2世) 『バビル2世』『その名は101』:原作コミック 『ジャイアントロボ 地球の静止する日』:OVA 秘密結社BF団首領ビッグファイアとして登場 『ジョジョの奇妙な冒険 第三部』:主人公 空条承太郎のモデルの1人 マスター(固法美偉) 『とある科学の超電磁砲』:原作コミック、アニメ第四話以降
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/341.html
354 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 20 59 34 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 1/9 ――1 濃淡あるの緑色の迷彩に彩られたUH-60Jが低空、地形を這うようにして飛ぶ。 出来る限り、攻撃を受けないようにと警戒しているのだ。 それは洋上にて、 大協約 海軍の 対空魔法の槍 と思しき攻撃によってUAVが撃墜されたが為の 事であった。 「アテンダント、“お客さん”はどうだ?」 海に出る前に立ちはだかった、最後の稜線を前に、機長がキャビンコマンダーとして、 機体後部のキャビンに詰めている副操縦士に確認する。 『大丈夫です。若干顔色の悪い人も居ますが、こんな操縦じゃ、誰だって気分が悪くなります』 「悪かったな、下手糞で」 『本気じゃないくせに』 「ったりまえだ、バカ野郎」 『じゃ、腕のお上手な機長殿は機体を安全に動かして下さい………カーゴドア、ロック確認。 各種機材、固定確認。幾らでも無茶な機動はやってください』 「良いぞ相棒。子供たちが遊園地に行ったら、アトラクションに“刺激が足りない”って 訴えるような奴をかましてやろうじゃないか」 ふと、視線を隣へと走らせる機長。 本来そこに居るはずの副操縦士は後部キャビンに座り、今、其処にはダークエルフ族の母親が、 まだ娘と言っても良い外見の女性が乳飲み子をしっかりと抱きしめていた。 顔面は真っ青となっていたが、我が子を抱く手は寸毫たりと緩んではいなかった。 否。 益々強い力で抱きしめていた。 護らんなな。 その親子に自身の家族を、まだ若い嫁と子とを重ねた機長は続ける。 「そんな未来があったって良いじゃないか?」 以心伝心。 機長との付き合いの永い副操縦士は、その気持ちを理解した。 こそ、だから笑って答える。 必ず届けましょう、と。 稜線を前に更に高度を下げる機体。 少しでも機体コントロールを誤れば墜落するような高度をだ。 これが通常のUH-60Jであれば、そんな飛行は自殺願望以外の何物でも無かったが、この機体では、 事情が違う。 現地改造でレーダーやその他、OH-1などの機体の予備部品を流用されて作られた、所謂M型、 マニアがMホークと呼ぶ機体にとっては、造作も無いとまでは言わないが、無茶では無かった。 M型のUH-60J機長として様々な特殊任務に就き、ベテランと呼ばれて良い飛行経験を積んだ機長は、 武装し、更に難民でも満載した事で鈍重となった機体を大胆にして慎重に操る。 機の状態が判っているのだろう。 機長の隣に座っている母親も、緊張の色を更に強める。 「大丈夫だ」 えっと、唐突に声を掛けられたダークエルフ族の母親が機長を見る。 その視線を感じながら機長は続ける。 「信じてな」 方頬を上げ、機長は男臭く笑った。 その時、機体は山を越える。 俊敏な動作で、機首を下げると一気に駆け下る。 その先には入り江の真ん中に存在する、緑の塊があった。 偽装ネットに囲まれた、竹だった。 355 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 00 06 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 2/9 木々の上を這う用な見事な挙動で、UH-60Jは竹の後部甲板へと着地する。 着地の衝撃に、難民たちの間から歓声が上がる。 彼らは漸く、自分たちが安全な場所へと到着できたとの感動を味わえたのだ。 その事を副操縦士も理解してはいたが、彼――UH-60Jにはまだ仕事が残っているのだ。 ガァバン王国領内に残っている者たちの回収だ。 だからこそ、彼はUH-60Jの扉を思いっ切り開いた。 「さぁ、暖かい食事と衣類が用意されています! ようこそ日本へ!!」 殊更に明るい声で、副操縦士は声を上げた。 竹の甲板士官に誘導され、飛行甲板下の多目的格納庫へと降りていく難民たち。 彼らは口々に感謝と、そしてまだ残っている自衛官やダークエルフの同胞を救って上げて 下さいと言いながら。 深い満足感を覚える機長と、副操縦士。 だが感慨に耽る暇など無かった。 急いで再出撃をせねばならないのだ。 UH-60Jには整備員が取り付く。 燃料の補給、そして機体各部と特にチャフ・フレアのチェックを行っていくのだ。 機体状態は良好であり、異常は発見されない。 航空燃料に関しては、竹の航空燃料タンクに残っていた分をありったけ注ぎ込んでいく。 満タンには届かないが、それでも8割程度には成った。 いざ、発信準備良し。 機長がエンジンを起動させようとした時、それを止める声があった。 「こちらハヤブサ02、何事ですか、発進するなってのは!?」 インカムに向けて怒鳴る機長。 『非常事態だ。どうやら、連中が此方の位置に気付いたらしい』 連中とは即ち、この近海で行動中の 大協約 艦隊だった。 敵対する意思がある事は、情報収集にと接近させたUAVハヤブサ03を問答無用で叩き落した経緯からも、 明白であった。 ハヤブサ03が撃墜された時点ではまだ、竹の位置は判明してはいなかったが、UH-60Jが 帰艦したが為、場所を突き止められたのだった。 竹が身を潜めている湾の外周に展開した竹臨検陸戦隊が、こちら側へと 大協約 艦隊が 接近を図っているのを察知したのだった。 竹に搭載されたUH-60Jは、(M)型として特殊戦向けに改造される際に只1機だけ、破損し 破棄される事と成っていたAH-64Dのエンジン周りの部品を流用することで実験的に、 IR(赤外線)ステルス能力を付与された機だったのだ。 故に通常、短時間であれば 大協約 の熱源探知魔法に捕捉される事は無い筈であったが、 今回は条件が悪かった。 ダークエルフ族難民を満載した事で速度が落ちていたが為、 大協約 の対熱源探知手段に 捉えられてしまったのだった。 『既に敵艦隊で此方に一番接近している艦は30km程度の所まで来ている。今、ハヤブサ02が飛び立てば、 即座に撃ち落される危険性がある』 マニュアルに沿っての勧告。 故に、否、だからこその反発。 「馬鹿な。なら見捨てろってのか!」 怒鳴り声を上げる機長。 今、ガァバン王国領内に残すという事は、死ねと言うのと同義だった。 WAiRの連中は、携帯していた食料の殆どを難民たちに分け与えていたのだ。 如何に精強を誇り、ダークエルフ族と居るとは云え、この状況で救援が来る迄のサバイバルは、 決して容易なものに成る筈が無かった。 『一時的に避難するだけだ』 「一時的? なら即座に救援に来れる目処はあるのか!!」 356 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 01 28 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 3/9 『………』 機長の剣幕に押し黙る通信相手。 その時、空電音と共に通信相手が変わった。 『威勢が良いな、機長』 「艦長?」 『ああ。余り彼を虐めるな。艦の決定権は俺にあるんだからな』 「じゃぁ艦長、何で行ったらいかんのですかっ! このままじゃ残ってる連中は………」 『………機長、君は無事に飛べるか?』 その問い掛けに、機長は手元の複合表示ディスプレイを眺める。 竹と敵艦隊の位置を確認。 「出来ます。少しばかり派手にはなりますが、この距離ならまだ行けます」 竹と 大協約 艦隊の距離は約30km。 対空用のAA型 魔法の槍 の射程に入りこんでいたが、同時に、30kmと云う数値は標準的な AA型 魔法の槍 にとっては有効射程どころか最大射程に近いものである為、チャフやフレアを 併用する事で安全に離脱出来る。 本UH-60Jを操って特殊作戦に従事し、幾度もの戦渦を乗り越えてきたベテラン機長は、 そう判断していた。 『行くなら今、か?』 「はい」 即答する機長に、艦長は苦笑を浮かべる。 怖くは無いのか、と。 対して機長は怖いことは怖いが、彼らを置いていく事の方がもっと嫌だと言い切った。 『………そうだな………』 言葉を濁した艦長、だがそれも一瞬の事であった。 時は金なり。 決断をするならば、速ければ速い方が良いのだから。 『ならば行きたまえ。合流は本海域の北方とする。一時間後にビーコン(誘導電波)を発信する』 「了解! 一時間以内には戻ってきます」 機長は寸毫の迷い無く、返答していた。 ――2 フレアとチャフをばら撒いて飛び立つUH-60J。 濛々とした煙に包まれた竹、その2000tと云うこの世界に於いては巨大と言って良い船体が 震えだす。 主発動機、ガスタービンエンジンが動き出したのだ。 錨が巻き上げられ、偽装ネットが乱暴ながらも手早い仕草で取り外されていく。 入り江の外周へと展開していた臨検陸戦隊を載せた小型のゴムボートを、艦の後部に 取り付けられていたクレーンで回収する。 全ての準備が終わると共に、ポッド式推進器が竹へと推力を与え、その船体を狭い入り江から 広い海原へと誘う。 出撃。 357 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 02 12 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 4/9 竹は、戦闘に備えて手早く準備が行われる。 レーダーだけでは無く、57㎜砲と20㎜CIWSとがグルグルと動く。 流石に対空ミサイルであるESSMの稼動試験をする事は無かったが、それでもシステム上の 確認だけは入念になされた。 準備は、兵装だけでは無い。 各部の水密ハッチも閉ざされる。 そんな竹の戦闘準備が整う様を、艦長はCICにて把握していた。 戦闘準備発令から、3分で全てを終えた竹。 「艦長! 竹の戦闘準備は完了です」 松型高速多機能艦の戦闘準備時間としては、平均値以上の数値に、艦長は満足げに頷いた。 それから1つ、確認する。 収容したばかりのダークエルフ族難民に、何か暖かいものは振る舞えたのかと。 一応は回収後に暖食を提供する様に準備をしていたのだが、事前の予定とは異なり、 即戦闘となりそうなのだ。 忘れられてはいないだろうかと、心配をしたのだ。 「……大丈夫みたいです、艦長」 確認した士官が笑顔を見せる。 どうやら、万事そつなくこなす先任下士官が、難民たちの弱まった胃の事まで考慮して、 粥を用意し、配っていたらしい。 「胃に優しく、でも卵入りで栄養価は十分。でも汁ものじゃ無いですから、零す心配は少なし。 流石は先任ですね」 「良くもまぁ、だな」 海上自衛隊の下士官は、日本帝国海軍以来の優秀さを誇っているのだ。 ある意味で、この程度は当然と呼ぶ範疇なのかもしれなかった。 「宜しい。ならば我々は派手に戦争をしようじゃ無いか」 ディスプレイを睨む艦長。 竹の進路、北手には3隻の帆船が展開しつつあった。 彼我の距離から見て、他の帆船がUH-60Jの帰艦までの間に脅威へと成る危険性は乏しかった。 マイクを取り、全艦への放送のスイッチを入れる。 「こちら艦長。総員、手を休める事無く聞け」 『我々は是より敵艦隊を突破する』 ブリッジにて双眼鏡を睨んでいた士官が、片頬を緩める。 『交戦規定は何時も通りだ。此方から攻撃は出来ず、敵から攻撃を受けるまでは何も出来ない』 格納庫で忙しく偽装ネットを畳んでいた航空科の乗組員達が、手を休める事無く聞いている。 『困難な状況だ。だが恐れる事は無い。何時もの事だ』 機関室にて、エンジンの具合を確認しながら機関士達は目配せしあう。 『このフネに乗り込む諸君が、その全力を発揮すれば、乗り越えられない苦難では無い』 イスに座った医官が、腕を組んだままスピーカーを見上げる。 『そして来賓の方々。我々は全力を尽くします。どうか安心して乗っていて下さい』 両手で粥の入ったお椀を抱えたダークエルフ族の幼女を、その母親が抱きしめる。 358 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 02 46 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 5/9 「大丈夫だよ」 母親の仕草に、母親の不安を感じた幼女は、あどけない顔で笑う幼女。 「お日様の国なんだもの」 只々信じる幼女、対して母親はそれ程に楽観的にはなれない。 当然だろう。 彼女は艱難辛苦、様々なものを乗り越えてきたのだから。 だが、信じる他は無い。 他に何も、ダークエルフ族には残されてはいないのだから。 世界中から敵視され、追い立てられ、種族としての力は衰えているのだから。 そう思うが故に、母親は娘を抱きしめた。 「そうね。信じましょう」 そう呟きながら。 ――3 風を背に進む帆船。 その艦後部の ブリッジで大男が顎鬚を撫でながら、鋭い目で前方を睨んでいた。 無論 大協約 の船、竹と相対する3隻の帆船で最大の船、1等戦列艦ベアルンの艦長だ。 名はバルロル。 列強海軍出身の指揮官だった。 「“帝國”、こんな所で何をしていると云うのか」 パイプから派手に煙を吐き出しながら、吐き捨てる様に言う。 「どうせロクでもない事ですよ」 断言するのは、その傍らに控えていたベアルンの副長。 彼は対“帝國”の諸戦争にて身内から戦死者を出しており、筋金入りの“帝國”嫌いであった。 「彼らは欲深く、そして狡猾ですから」 「だな、副長。ならば我々がなす事は簡単だな」 「はい。連中の陰謀を打ち砕くのです。一切を」 胸を張って言う副長に、バルロルは大きな満足感を覚えながら頷く。 「宜しい。秩序ある世界の為、1つ、汗を流すとしようじゃ無いか!!」 ベアルンを含めた3隻の帆船は、やや広がりながら竹に迫る。 各艦、距離を取っているのは竹の速力を勘案して逃さない為にであった。 そしてベアルンが竹と接触する。 「信号手、信号旗上げろ! [停船せよ。然らずんば攻撃す]」 するすると上げられる信号旗。 風に棚引く。 暫しの時間だけ待つバルロル。 唇の端を歪めながら彼は帝國艦、竹が反応を示さない事を期待していた。 何故なら、如何に 大協約 が反帝國――平成日本と対立しているとは云え、戦争状態に無い現状で、 何の法的根拠も無いままに砲門を開く訳には行かないからだ。 是は 大協約 内部での変化が主因だった。 バルロルの様な対“帝國”主戦派からすれば腹立たしい話ではあったが、 大協約 の中枢、 大議会でも最近は、徒に“帝國”と戦火を交えるのでは無く諸事に於いても、ある程度は、 交渉を行ってみるべきとの、言わば対“帝國”融和派が一定の影響力を持つ様に成っているのだ。 最も、これは理によっての事では無かった。 幾度もの対“帝國”戦での結果によるもの、信じられない程に浪費された戦費と、そして 低い勝率が原因であった。 言わば、利によってであった。 359 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 03 19 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 6/9 ある意味で当然であった。 大協約 も発足から長い年月を経た事で、利益誘導の為の組織へと変貌していたのだから。 利益の出ない戦争など、誰も望むものは居なかった。 故に、バルロルの様な人間にとっては腹立たしい状況へと成る。 即ち、もし無法によって“帝國”と砲を開かば、処罰されかねないと云う。 時間が流れる。 バルロルの期待に応じるかの様に、竹は反応を示さなかった。 後ろに控える従者に時間を確認する。 旗を上げてから2分が経過していた。 「どうやら連中は無視する――」 「敵艦、信号旗を上げます!」 マストの上からの言葉に、舌打ちを隠す事無く内容を尋ねるバルロル。 対する返事がマストから続く。 「舐めやがって!」 副長が怒気を振りまく。 竹の返事は単純であった。 曰く[本艦は貴艦の指示に従う義務無し]、そして続けて[攻撃は不法なり。この場は公海上]。 どちらとも正論ではあったが、ベアルンのブリッジ・クルーにとっては望んだ返答では 無かった。 「艦長!」 「………そうだな」 冷静な返事を返してきた敵艦に、頭を冷やされたバルロルは冷静に知恵を回す。 如何にして火蓋を切るか。 ベアルンを、竹の進路を塞ぐ様に操りながら考える。 「敵艦との距離、10里(10km)! 信号旗を上げました。内容[本艦の進路より退かれたし]」 「っ!」 憤怒の空気がブリッジを包む。 実際、竹の進路を妨害をしているベアルンではあったが、彼らは自分の正義を信じて 疑っていないのだ。 そんな人間にとって竹の上げた信号旗は、盗人の猛々しいものと見えていた。 「………返信。[貴船が湾に停泊していたのは………このままでは信号旗で組めぬな。 訂正![貴船は、協定に違反した疑いあり。調査する。停船せよ、然らずんば攻撃す]」 思わぬ長文に、信号旗を操る乗組員たちは数多い信号旗を急いで取り出し、ロープに 括り付けてマストに引き上げる。 「ふん、逃れられまい。全艦へ、戦闘準備!」 竹の返信を待つ事無く、戦闘準備を下命する。 ベアルンは一等戦列艦であり、両舷合わせて40門の大砲を備え、更には 大協約 の規定通り、 対艦 魔法の槍 を6発、対空の 魔法の槍 を12発搭載していた。 甲板スペースの問題(操艦に必要な面積もあり、甲板の3割程度しか 魔法の槍 の使用 スペースに取れないのだ)から、縮帆して準備をしてでもしていない限り、同時に全てを 使用出来る訳では無かったが、それでも対“帝國”艦船として ベアルンが侮りがたいのは 揺るがしがたい事実であった。 特に、竹の様な独航艦にとっては。 「やる気満々だな、敵艦の艦長は」 呆れた様に呟く竹の艦長。 覚悟をしていた事ではあったが、それでも出来れば回避したが、相手がここまでやる気を 出していては仕方が無かった。 対空システムを即応状態へと移行させる。 敵艦との距離が近すぎる為、システムの間に人間を介しては間に合わなく恐れが在ったのだ。 360 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 03 50 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 7/9 竹は、再び信号旗で[停船する必要は認めず。攻撃は不法なり]と掲げたが、誰もそんな 信号旗が効果を発揮する――この場を平和裏に切り抜けられる等と思わなかった。 緊張感が竹のCICに漂う。 いつ戦闘が始まるか判らないのだから当然だろう。 いっそ、此方から発砲出来れば楽なのだが、軍人というよりも自衛官としての教育を受けてきた 竹の艦長にとって、それは出来ない相談であった。 緊張感が更に高まっていく。 微音 誰かが生唾を飲み込んだ音が、意外な程に大きく響いた。 その時だった。 「敵艦発砲!」 それは正に絶叫であった。 戦闘。 ベアルンを含めて3隻の帆船が全て、対艦 魔法の槍 を放つ。 その数各2発、計6発。 比較的小型なベアルン以外の2隻の帆船にとっては全力射撃であったが、1等戦列艦である ベアルンにはまだ余裕があった。 大型の対艦 魔法の槍 でも最大で4発までなら同時に使用する事が可能なのだ。 にも関わらず2発しか撃ち出さない理由は、その残った甲板スペースをもって対空用の 魔法の槍 の射撃準備を整えているからであった。 竹からのSSMを警戒しての事だった。 平成日本の文民政府は、自衛艦が非戦時に於いて先制攻撃をする事は絶対に無いとの事を 宣伝してはいたが、人間は誰もが自分の基準で相手を見るものであり、そうであるが故に 大協約 の軍人――それもバルロルの様な人間たちは、平成日本を信用していなかったのだ。 即座に反応する竹。 ドイツで開発された三次元捜索レーダーをライセンス生産したTRD-3Dが、標的である 6発の対艦 魔法の槍 の諸元を把握し、その情報をVLSのミサイルへと伝達する。 そして艦の前部甲板のVLSは、諸元を得ると共に即座に対空ミサイルたるESSMを放った。 その数は4発。 システム的な限界、完全な自己誘導では無いが故にだった。 ESSMはある程度の自己誘導能力を持ったミサイルではあったが、着弾時にはまだ、母艦からの 支援を必要とするのだ。 TRD-3Dに導かれて飛ぶ4発のESSM。 空に生み出される4つの火球。 乗組員たちが熱心に整備したESSMは、その機能を十分に発揮したのだ。 初弾発射から約30秒。 だがまだ気は抜けない。 2発の対艦 魔法の槍 が竹を狙ってきているのだから。 この時点で残る2発は、竹から約4kmの場所まで迫っている。 近い。 が、まだ安全距離を割り込んではいない。 殆ど自動的に更に2発、ESSMを発射する。 連続的に打ち上げられた2発。 更なる白煙が、竹を包む。 共にその飛翔は安定している。 発射して10数秒。 竹から2kmの距離で、1発目のESSMが見事に対艦 魔法の槍 を無力化する。 四散する対艦 魔法の槍 。 が、それがアクシデントを呼んだ。 四散した対艦 魔法の槍 の破片が、残る1発のESSMに降り注ぎ、故障させたのだ。 飛翔していた2発の対艦 魔法の槍 、その距離が近かったが故に起きた事であった。 「なに!?」 ESSMのコントロール喪失、その報告に艦長は一瞬だけ声を上げた。 だが人間的な反応が出来たのはそれだけであった。 361 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 04 25 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 8/9 時速700km近い対艦 魔法の槍 にとって、2km近い距離など極僅かな距離でしかなかった。 人間が反応できる様なものでは無いのだ。 ベアルンの艦上では歓声が上がった。 中る。 大協約 の側の誰もが、そう思った。 だがしかし、現代の科学技術によってシステム化を推し進められた竹は、その自動化された システムをもって立ち向かう。 艦中央構造物の後部に設置された20㎜CIWSが火を噴く。 正に火を噴くが如き勢いで発射される20㎜タングステン弾。 機械によって良く誘導されたソレは、見事に対艦 魔法の槍 を貫く。 爆発、四散する対艦 魔法の槍 。 ただ問題は、その場所が余りにも竹に近すぎた事であった。 竹が揺れる。 CICの艦内情報を表示するディスプレイが黄色く、そして赤く染まっていく。 「被害報告!」 即座に艦内の被害情報を集める。 深刻ではないものの、それでも無視し得ない被害が竹に出ていた。 人的な被害も深刻では無い。 特に、竹の奥深い場所に居るダークエルフ族の難民たちには被害は無い。 その事に艦長は安堵を覚えつつ、増速と反撃準備を下命する。 ガスタービンエンジンが出力を上げ、速力が20ノットから一挙に30ノット以上へと増速する。 SSMを搭載していないものの、竹には反撃手段として57㎜砲があるのだ。 彼我の距離が10kmを切っているのだ。 後少しばかり、数分距離を詰めさえすれば、余裕で相手に有効打を与えられるだろう。 黒く表面が焦げ、細かい穴が開いた57㎜砲が獲物を求めて蠢く。 数分で戦闘開始。 比較的意味では小口径と言ってよい57㎜砲が射撃を開始。 対してベアルンは右へと回頭し、左舷の砲門を開く。 只の一門、しかし圧倒的な射撃速度と命中精度とを誇る57㎜砲の竹。 20門との圧倒的な手数があるど、数を揃えるが為に安価な前装式砲を採用しているが故、 各門の射撃速度も命中精度も劣るベアルン。 2500t型高速多機能艦と1等戦列艦、帆船が戦いを始める。 ――4 前傾姿勢で、力強く轟々とエンジン音を奏でながら飛ぶUH-60J。 ガァバン王国の軍事組織に発見されないように低空を。 竹との邂逅を求めて、急ぐ。 その後部キャビンでは、疲れ果てた男たちが身を寄せ合って休んでいる。 気楽な雰囲気は無い。 疲労に関しては、彼らはUH-60Jが救援に来るまでの間、現地の武装組織、自警団では無く 真っ当なガァバン王国の地方領主が手勢、領主自身が騎士として直率する10名の歩兵と 睨み合っていたのだ。 領主の手勢は小規模ではあったが規律は緩んでおらず、悪くは無い錬度であった。 只、始めてみる“帝國”軍に緊張は隠せないではいたが。 そんな領主の手勢が脅威かと問われれば、否と答えるのが至当だろう。 辺境の国の、更に辺鄙な地方の領主が手勢なのだから。 その武装は旧式の前装式小銃であり、豊富な火器を残しているWAiRの面々にとっては、 交戦をすれば鎧袖一触ではあったのだが、交戦する訳にはいかなかった。 当然だろう。 自衛は別としても自衛隊が、平成日本の軍が戦時でもないのに戦闘行為をするのは、 政治的に不味いのだ。 だからこそ緊張感と共に、領主の軍を睨んでいる。 362 :<平成日本召還拾遺物語 その2> ◆OZummJyEIo:2007/02/11(日) 21 05 03 ID Nz0LbtT60 ○高速多機能艦 竹の戦い7 9/9 但し、一触即発と云う訳では無い。 それはこの手勢を率いた地方領主が、比較的計算と云うか現実的判断力を備えた人間であった 事が理由であった。 現在自国で吹き荒れているダークエルフ族狩りと云う狂乱と、“帝國”が行っている ダークエルフ族保護政策と云う二つの事から、自衛官とダークエルフ族の混成部隊の目的を 正確に察知し、手を出す事を禁じたのだ。 其処には、新しい“帝國”――平成日本に対する信用もあった。 それは平成日本が常に実証してきた自らの行動理念、他国へと侵略する事は無いと云う物が、 自衛官たちの安全へと繋がったと言えるだろう。 にらみ合いはするものの、比較的、和やかな雰囲気で時間が流れる。 約40分。 それは濃緑色を基調としたUH-60Jが到着するまで続いたのだった。 そして帰路。 竹の状況は機長が話していた。 それ故に、空気が重苦しかった。 無事でいて欲しい。 誰もがそう思っていた。 「あっ!」 誰かが声を上げた。 目を覚ましていた男たちが後部キャビンの窓へと集まる。 竹が見える。 焼け焦げ、のろのろと海面を進む竹の姿が。 その周囲には、燃え上がっている3隻の帆船の姿があった。 『此方機長だ。竹から連絡があった――』 誰もがスピーカーを見上げた。 緊張と期待と共に。 続きを望んで。 『――“竹ハ沈マズ。乗員乗客共ニ健在ナリ。貴機ノ帰艦ヲ祝ス” ミンション・コンプリートだな』 爆発する様な歓声が上がった。
https://w.atwiki.jp/moedra/pages/290.html
「さあ、我を満足させるのだ・・・もし爪や牙を立てたりしたら、どうなるかわかっておるだろうな・・・?」 私はその言葉に震える両手で雄竜のモノをそっと掴むと、ゴクリと大きく息を呑んだ。 決して爪を立てないように柔らかな皮膜に覆われた指の腹でゆっくりと極太の肉棒を扱き上げながら、その先端を静かに口に含んでいく。 「ふ・・・ふぐ・・・」 やがて屈辱的な奉仕をさせられているというのに逆らうこともできない悔しさと情けなさに、きつく瞑った目からポロポロと大粒の涙が溢れてきた。 ともすれば抑え切れなくなった激情にまかせて思い切りこの肉棒を噛み千切ってしまいたくなるが、そんなことをすればまず間違いなく恐ろしい目に遭わされた挙句に殺されてしまうだろう。 何とか命を繋ぐためにも、今はひたすらに耐えるしか他に道はないらしい。 レロ・・・ヌチュ・・・シュル・・・ やがて心の中では強硬に反発しながらも、私は黒竜の肉棒に舌を巻き付けながらその先端を吸い上げた。 口に含み切れていない肉棒の根元は両手で包み込むようにして上下に摩りながら、無表情にこちらをを見つめている黒竜を悦ばせるべく不自由な体を必死に動かし続ける。 チュパ・・・ズ・・・ズリュ・・・ そんな頭の中で弾けるかのような淫らな水音だけが、胸の内で激しく燃え立つ憎しみの炎が延焼するのを辛うじて食い止めていた。 目の前に突き出された肉棒に泣きながらむしゃぶりついている幼い雌仔竜の痴態を眺めながら、我は次第に高まってくる快楽の波に身を委ねていた。 時折疲れからか雄の根元を摩る手の動きが鈍ることがあるものの、ほんの少し尾で締め付けてやるだけで仔竜が慌てて奉仕を再開する様は見ていて実に気分がいい。 恐らくは我に対して筆舌に尽くし難い程の憎しみを燃やしているのだろうが、我に命を握られている以上この小娘にそれを行動に移す度胸はないのだろう。 クチュッ・・・チュブッ・・・ か弱い雌を支配しているという優越感とともに、切ない快感が絶え間なく肉棒へと送り込まれてくる。 やがて心地よい全身の疼きが雄槍へと集中していく感覚に、我は巨大な手で小さな仔竜の頭を鷲掴みにすると自らの肉棒をその喉の奥まで強引に咥え込ませていた。 「クク・・・初めてにしてはなかなかに上手いではないか・・・その礼に、我の精もたっぷりと味わせてやろう」 「ん、んぐ・・・んぐぅ~!」 そして苦しげに呻く仔竜にも委細構わず、肉棒を咥え込ませたその小さな口の中へと遠慮なく熱い精を放出する。 ドブ・・・ドクッドクッ・・・ 「うきゅぶ・・・ふぐ、むぅ~!」 その瞬間、喉が焼けつくかのような凄まじい熱さが一瞬にして私の口内を満たしていた。 頭を押さえ込まれているせいで引き抜くこともできない肉棒の先から黒竜の精が勢いよく噴き上げ、飲み込み切れなかった白濁が私の顔や腕を熱く焼きながら汚していく。 「うぶ・・・ふきゅ・・・ぅ・・・」 「ククククク・・・クハハハハハ・・・」 そんな無慈悲な暴虐の前に成す術もなく悶える私の姿に、黒竜が勝ち誇った笑い声を洞窟中に轟かせていた。 「はぁ・・・はぁ・・・」 夜明け前の澄んだ冷たい空気が、森の中を静かに満たしていた。 ここは一体何処なのだろうか・・・? 微かに青みがかってきた空を背景に黒々とした木々のシルエットが浮かび上がり、夜の闇に包まれた姿とは打って変わって不気味な静寂と寂寥感が周囲を押し包んでいる。 あのドラゴンの洞窟を離れてから、俺はもうかれこれ3時間以上もの間孤独な森の中を彷徨っていた。 エルダを助けなければ・・・そんな思いが頭の中を埋め尽くし、かつて養ったはずの鋭い方向感覚はすっかりと鈍り切ってしまっているらしい。 だがやがてサファス山の稜線が日の出の予感に明るく輝き始める頃、俺はようやく麓の村へと通じる1本の道を見つけ出していた。 踏み拉かれた草や折れた木の枝などを見ても、採集のために森へ入る村人達が頻繁に往来していることが窺える。 その小道から見える村の中では、朝の早い数人の男達が早くも田畑の手入れを始めているようだった。 「おおーい・・・」 「おい見ろ・・・あれ・・・昨日この村に寄った旅の人じゃないか?」 「あ、ああ、そうだ、間違いない。それにどうやら、俺達のことを呼んでいるようだぞ」 やがて大きく手を振りながら森から出て行くと、すぐに数人の村人達が俺のそばに駆け寄ってきた。 「おお、あんたか・・・一体どうしたんだ?そんなに疲れ切って・・・」 「そ、村長に会わせてくれ・・・朝早くから申し訳ないが、大事な話があるんだ」 「それは、村の娘達が森から帰ってこないこととも関係があるのか?」 やはり、彼らにとって1番気になるのは消えた娘達の安否なのだろう。 だが俺はその返事に大きく1度頷いただけで、敢えて彼らに真相を打ち明けることはしなかった。 この村には何の関係もない俺の口から語って聞かせるには、余りに衝撃が大き過ぎることだからだ。 「村長があんたに会うそうだ。すぐに行くといい」 やがて俺の話を聞いた村人の1人が先に村長の所へ事情を説明しに行ってくれていたらしく、御目通りの許しが出たという連絡が俺の元へと届けられた。 俺の話はもしかしたらあの村長を更に苦しめることになるのかも知れないが、そうかといって話さない訳にもいかないだろう。 何しろ俺は、若い娘が目の前で命を落とすのを何もできずに傍観していたのだから。 その約10分後、俺は数人の村人達と一緒に村長の家へと集まっていた。 そして一段落したところで、村長が静かにお茶を濁す。 「それで・・・このワシに一体どういった御用ですかな?」 「まず最初に、1つだけ確認したいことがある。この村から、ドラゴンに生贄を出したことがあるかどうかだ」 だが俺がそう言った瞬間、辺りの空気がシンと静まり返っていた。 「ど、どうしてそれを・・・?」 俄かに震え出した声で村長にそう尋ねられ、まずは昨夜見たことを順を追って話していくことにする。 「昨晩、俺は森の中である広場を見つけた。麻縄で生贄を木に縛り付けた跡もね・・・知ってるだろう?」 「ええ、確かに・・・この村は、100年以上も前から山に棲む黒い竜へ5年置きに娘を生贄として出しております」 「最後に生贄を出したのは何時・・・?」 その問いに、村長が何かを思い出すかのようにほんの少しだけ頭を捻った。 「最後はそう・・・5ヶ月程前のことです。すぐそこに住んでいた18歳の美しい娘が犠牲になりましてな・・・」 「その時に、他に変わったことは?」 「そう言えば・・・その娘と一緒に住んでいたレオルという名の9歳になる弟も、同じ日に姿を消しました」 姉が生贄に出された日に、その弟までもが姿を消した・・・ 9歳という年齢を考えれば、多分姉が生贄に出されることはきちんと伝えられていなかったことだろう。 恐らくその真相は闇の中なのに違いないだろうが、俺には何となくその日村で起こった出来事が1つの流れとなって頭の中に鮮明に浮かび上がってくるのを感じていた。 森の中で見たあのドラゴンの性格は、少なくとも俺の目には極めて残忍なものに映っていた。 秘所が張り裂けんばかりの巨大な肉棒に貫かれながら泣き叫ぶ娘を尾で締め上げて更に責め嬲り、あまつさえその逃れ得ぬ口内で生きたまま弄ぶなど、様々なドラゴン達を目にしてきた俺でさえ見たことがない。 そしてこれはあくまで仮定の話だが、もし生贄に出されて木に縛り付けられた娘とそれを追って森に入った弟が同時にあのドラゴンに見つかったとしたら、恐らく真っ先に命を狙われるのは幼い弟の方だろう。 身動きの取れぬ姉に見せつけるように嬲り尽された挙げ句、成す術もなく暗い腹の底へと呑まれていく少年・・・ そんな例えようもない地獄絵図を目の当たりにして泣き叫ぶ娘の姿が目に浮かび、俺は推測の域を出ないその想像に黒竜への怒りを燃やさずにはいられなかった。 それと同時に、黒竜に囚われの身となっているエルダの身が案じられる。 「それで・・・この村から竜に生贄を出していたことが娘達の失踪にどう関わっているんだ?」 しばしの空想に耽っていた俺の様子に痺れを切らしたのか、同席していた村人の1人が話の先を促した。 「結論から言えば、消えた娘達は多分全員生きてはいないと思う。皆、その黒い竜に食い殺されたんだろう」 「なんですと!?」 当然というべきか、或いは意外にもというべきか、俺の言葉に最も激しく反応したのは他でもない村長だった。 「そんなはずは・・・あの黒竜には、いつも言われるままに若い命を差し出してきたのですぞ!」 「何が引き金になったかはわからないが、5年に1度の生贄だけじゃあ満足できなくなったということだろうな」 信じ難いドラゴンの裏切りに、その場にいた全員が押し黙ってしまう。 だが、俺から見ればそれは別に不思議でも何でもないことだった。 ドラゴンが人間の町や村に対して生贄を要求するのは、労せずして上等な獲物を手に入れることができるからだ。 極論を言えば、仮にドラゴンの側には人間の町や村を脅かすつもりなど毛頭なかったとしても、のそりとその巨体と威圧感を盾に姿を見せて獲物を要求するだけで若い娘が手に入ってしまう場合すらある。 だとすれば、老獪で狡猾なドラゴンがそれを利用しない手はないだろう。 つまりこの村も含めてドラゴンの住み処に近い人間の居住区が彼らに襲われずに済んでいるのは、決して望むがままに生贄を差し出しているからなどではなく・・・単にドラゴンの気紛れに過ぎないのだ。 「ワシらは、一体どうすればよいのだ?見ての通り、この村にはあの竜に太刀打ちできる者などおらぬのだぞ」 ドラゴンが森に入った娘達を無差別に喰らっている・・・ もしそれが事実だとすれば、いずれはこの村を滅ぼしにやってくる可能性も絶対に無いとは言い切れない。 村長もそれに気がついたのか、不安げな表情で俺の顔を覗き込んでくる。 「それでも、村を守るためにはいずれあのドラゴンを倒すしかない。これ以上被害が大きくならない内に・・・」 「何か方法でもあるのか?」 「いや、そんなものはない・・・でも、俺は数年前まで竜殺しの仕事をしていたんだ」 俺がそう言うと、竜殺しなどという言葉は初めて聞いたのかその場にいた村人全員が俄かに色めき立つ。 「竜殺しだって!?あんた・・・あいつを・・・あの黒竜を殺せるっていうのか!?」 「それはわからない。俺だって、あんなにでかくて残忍なドラゴンを見たのは今回が初めてだからね」 だがそうかと言って、彼らの期待を無碍に裏切るわけにもいかないだろう。 俺とともに村長の家に集まった数人の村人は、失踪したり生贄に出されたりして大切な娘を失った家族達だった。 つまり森に棲む黒竜は、いわばここにいる村人達にとって共通の仇敵。 それに連れて行かれたエルダのこともあって、黒竜打倒は俺にとって最早避けては通れない運命となっていた。 やがて俺の言葉に周りの誰もが何も口を挟まなかったのを確認すると、彼らを勇気付けるようにほんの少しだけ語調を強めて先を続ける。 「でもあんたたちが皆で協力してくれるというなら、俺もやれるだけのことはやってみようと思う」 「ああ、もちろんだ。ワシらにできることがあるのなら、何でも協力しよう」 「おおっ!」 元々結束力の強い彼らのこと、年老いた村長のその力強い一言に、村人全員がドラゴンの退治に向けてあっという間に意識を統一させていた。 その日の昼頃、数人の男達が村からやや南に下った所にある小さな町へ向けて出発していた。 彼らの一番の目的は、まずできるだけ多くの武器を手に入れることだ。 この村には武器になりそうなものは精々が農耕のための鋤や鍬、或いは木を伐採するための斧や鉈といった程度のものしかなく、あの黒竜を相手にするには余りにも心許無いと言わざるを得ない。 かつてあの黒竜が生贄の要求を始めて間もなかった頃はもっと強力な剣や槍のようなものもあったらしいが、血気に逸った男達がドラゴンの退治に乗り出して返り討ちに遭ってからは、それらも捨ててしまったのだそうだ。 確かに力の無い者達にとっては無抵抗が唯一の生き抜く術であることが少なくないものの、流石にあの無慈悲で残忍極まる巨竜を相手にそれは危険過ぎるというものだろう。 現に黒竜が生贄だけでは飽き足らずに森に入った娘達を次々と餌食にし始めた今となっても、武器の無い村人達はその許し難い裏切りに抗議の声を上げることすらままならないのが現実なのだ。 「彼らはどのくらいで村に戻ってこれる?」 「南の町までは2時間足らずで辿り着ける。武器の調達の時間を考えても、夕方頃には戻ってくるはずだ」 長い間村を苦しめていたドラゴンを退治する話が持ち上がったとなって、何時しか村中の男達が村長の家に集まって作戦を話し合っていた。 彼らもようやく、もうこれ以上ドラゴンの暴挙にひたすら怯えているのは無意味だということを悟ったのだろう。 「よし・・・それじゃあ、決行は今日の夜だ」 「ちょっと待ってくれ。夜にあいつと戦うのは、俺達の方が不利なんじゃないのか?」 「そうとは限らない。要は、夜の闇に乗じて奇襲を仕掛ければいいんだ」 人間以外に天敵と成り得る生物がいないドラゴンにとって、人間が寝静まる夜は唯一油断の生まれる時間帯だ。 流石に洞窟の中に足を踏み入れれば臭いや音で気付かれてしまうだろうが、警戒させないように外に誘き出して風下から襲うことができれば状況はかなり有利になる。 寧ろ今の俺にとって1番の気がかりは、黒竜に連れ去られたままのエルダの安否の方なのだが・・・ ブシュッ・・・ビュビュッ・・・ 「ふ・・・ふきゅ・・・」 もう・・・これで何度目になるのだろうか・・・? 何時まで経っても衰えることを知らない黒竜の雄槍に弄ばれ、私はもうほとんど赤い鱗が見えなくなる程の多量の精に塗れて荒い息をついていた。 さっきまで明るかったはずの外はすでに2度目の夜を迎え、濃厚な黒竜の精の匂いが真っ暗な闇に包まれた洞窟の中を満たしている。 「フン・・・何だ、もう限界なのか?」 黒竜はそう言いながら相変わらず下半身を屈強な尾に巻き取られたまま白濁の海に横たわる私の頭をグイッと引き起こすと、虚ろになった小さな蒼い瞳をじっと覗き込んできた。 すっかり使い古してぼろぼろになった玩具をどう処分しようかと考えているのか、そんな黒竜の真っ赤に輝く不気味な眼がゆらゆらと左右に揺れている。 ああ・・・お願い・・・もう止めてぇ・・・ 再び溢れ出した涙に潤む視界が、黒竜の顔をグニャリと歪めていった。 今の私の脳裏に浮かぶのは、産まれた時からずっと一緒に暮らしてきたあの人間の顔ばかり。 この黒竜は、私をここから生きて帰すつもりはないのだろう。 死に対する恐怖などよりも、あの人間ともう会えなくなってしまうという深い悲しみが私の胸を黒竜の尾などより何倍もきつく締め上げていく。 彼のためなら多少の危険など厭わないつもりでいたというのに、こんな所で最期を迎えることになるなんて・・・ 深い悲嘆と絶望に暮れた私の表情を見届けると、黒竜は先程まで短かった指先の鉤爪をニュッと伸ばしていた。 そして俄かに目の前に出現したその4本の鋭利な凶器が、ヒタリと私の無防備な首筋に当てられる。 「ふ・・・ひきゅ・・・」 喉元を含めて体の前面を覆った母親譲りのモチモチとした被膜が、尖った黒刃の前に頼りなく張り詰めていた。 今にも喉を切り裂かれてしまいそうだというのに、長時間に及ぶ黒竜の蹂躙の前に抗う力は欠片も残っていない。 「ククク・・・なすがままか・・・それもよかろう・・・」 やがてそれを聞いて思わずゴクリと唾を飲み込んでしまったのを私の覚悟の証とでも受け取ったのか、黒竜が喉元に押し付けていた鉤爪をゆっくりと振り上げていた。 だがきつく目を閉じてとどめの一撃が振り下ろされるのを待つこと数秒、不意に黒竜の視線が何処か別の場所へと振り向けられた気配が伝わってくる。 恐る恐る閉じていた目を薄っすらと開けてみると、何者かの存在を感じ取ったと見える黒竜がその赤眼で闇に沈んだ森の様子をじっと窺っているところだった。 暮れ泥む夕日の朱にサファス山が染まり始める頃、南の町に向かった男達が村へと帰ってきていた。 幾本もの剣や槍といった武器を調達する彼らの姿は向こうの町ではさぞ物騒に映ったことだろうが、これでようやくあのドラゴンと戦う準備が整ったことになる。 そろそろ中年に手が届くかというような決して若いとは言えない大勢の村人達も、ドラゴンとの戦いに対する緊張と闘争に赴く男としての本能の鬩ぎ合いに凛とした表情を浮かべていた。 失敗すれば村が滅ぶかも知れないというのに、そんな心配をしている者は1人としていないように見える。 およそ争いなどとは無縁な彼らでは余りに込み入った作戦を実行するのは難しいものの、何が何でもあのドラゴンを倒そうという彼らの意気込みこそが最大の武器になり得るのだ。 「いいか?俺達であの黒竜を倒そうと思ったら、これはもう目を狙うしかない」 「他に弱点はないのか?」 「心臓を狙おうにも胸は堅い胸郭で覆われているし、仮に心臓を一突きにしても死ぬのには時間がかかるんだ」 もしそうなれば、瀕死のドラゴンが暴れて村人達に予期せぬ被害を招く可能性がある。 自らの手で命を奪ってしまったかつてのエルダも、心臓を貫かれた苦しみの中で俺にあの仔竜を託したのだ。 だが、これが心臓ではなく脳となれば話は変わってくる。 あの紅に輝く恐ろしい双眸の裏に隠れた黒竜の脳を貫くことができれば、即死とまではいかないにしても速やかに意識を奪うことができるはずだ。 「よし・・・行くぞ」 必要以上に彼らを煽り立てぬように抑えた、それでいて力強い声で出発を告げると、今回の討伐に参加することとなった十数人の男達が一斉に頷く。 やがて完全にサファス山の陰へと沈んだ夕日が月明かりに照らされた幻想的な夜の気配を運んできた頃、俺達は皆そろそろと足音を殺しながら深い闇に沈んだ不気味な森の中へと入っていった。 森に足を踏み入れてから約1時間・・・流石に村人達は森の地理に明るいとあって、俺は1度も迷うことなく黒竜の住み処と思われる洞窟のそばに辿り着いていた。 エルダは・・・まだ無事なのだろうか・・・? 木々の間を通り抜ける低い風の音だけが、辺りを押し包んだ静寂の帳を切り裂いていく。 周囲の木に刻まれた無数の不吉な爪痕を初めて目にした者も多いのか、繁みの陰で洞窟の様子を窺っている村人達の間には微かに動揺の色が見え隠れしていた。 だが自らドラゴンを外に誘き出す役目を買って出た1人の村人が、そんな仲間達を落ち着かせようと肩を叩く。 そして巨竜の住み処へ向けてそっと不安げな視線を振り向けると、彼は大きく息を吸って俺に声をかけてきた。 「じゃあ・・・行ってきますよ・・・」 「絶対に慌てるんじゃないぞ。あんたは、飽くまで迷った挙句に偶然ここを通りかかっただけなんだからな」 「あ、ああ・・・わかってる」 恐らく自分では平静を装っているつもりなのだろうが、彼の膝は内心の恐怖で微かにフルフルと震えている。 だがそうかと言って今更どうすることもできず、彼はギュッと拳を握って意を決するとフラフラと黒竜の住み処に向かって近づいていった。 サク・・・サク・・・ 意図的に出しているとは言え、静まり返った辺りに草を踏む音が予想以上に大きく反響する。 今にもあの洞窟から殺意を滾らせたドラゴンが飛び出してくるのでは・・・ 十分現実に起こり得るそんな不吉な予感に、囮となった男を見つめる他の村人達の間にも緊張が漲っていった。 我に楯突いた小さな赤き仔竜にとどめの爪を振り下ろそうとした刹那、不意に何者かの足音が住み処の洞窟の中へと届いてきた。 サク・・・サク・・・ 特に何処かへ向かって歩いているわけではない迷いのある足音とともに、人間だけが放つ独特の雑多な臭いが微かに辺りに漂っている。 何故人間がこんな所に・・・? まさか、この我に何か用があって来たというわけではないだろう。 恐らくは森で迷った人間が、偶然に我の住み処の周りをうろついているだけに違いない。 我は外に感じる人間の気配の理由をそう結論付けると、眼下で最期の瞬間を待ち続けている仔竜に視線を戻した。 こやつは最早ここから逃げるどころか、腕1本動かす力も残ってはおらぬだろう。殺すのはいつでもできる。 それよりも今正に我の縄張りを侵している愚かな人間を、少し脅かしに行ってやるとしよう。 「クククク・・・」 新たな獲物が手に入るかも知れぬ喜びに、我は尾で巻き取った仔竜をポイッと岩の地面の上に放り投げると含み笑いを漏らしながらゆったりと起き上がっていた。 いつドラゴンが出てきてもいいように慎重に洞窟の周りを取り囲みながら囮となった男の様子を窺っていると、やがて重々しい足音とともに洞窟の暗がりの中から巨大な影が姿を現した。 森に迷った振りをしていた男がその禍々しい気配に気が付き、ゆっくりと背を向けていた洞窟の方を振り返る。 そしておぼろげな月明かりに照らし出された巨竜の燃えるような真っ赤な眼と視線を絡ませたその刹那、とても演技には見えない逼迫した悲鳴が森中に響き渡っていた。 「う、うわあああああああああっ!!」 ドサッ・・・ 心の中では予めその光景は予想していたはずなのだが、いざ暗い森の中で気休めの武器も持たぬままに恐ろしいドラゴンと対峙した彼は完全に冷静さを欠いてしまっていた。 彼の人間としての理性を捻じ伏せた野生の本能が強大すぎる敵に対して降参を告げたのか、まるで何者かに力を吸い取られてしまったかのように腰が砕けてしまう。 「ひ、ひぃ・・・た、助けてくれ・・・」 「クク・・・クククク・・・」 再び立ち上がる力も余裕も失ってズルズルと這うように後退さる男に、ドラゴンが実に楽しそうな笑みを浮かべながら少しずつ近づいていく。 やはり、あのドラゴンは縄張りを侵した人間に対してもいきなりその命を奪ったりするような奴ではないらしい。 まるで遊んでいるかのように少しずつ少しずつ獲物を追い詰めては、その狼狽を甘露として啜り上げているのだ。 だが・・・奴がそんな残虐な愉悦に浸っていられるのも、今夜が最後になる。 周囲に潜んだ俺と武器を持った村人達は気配を悟られぬようにじっと息を殺しながら、ドラゴンの意識が完全に囮の男に集中する瞬間を辛抱強く待ち続けていた。 ドッ・・・ その数秒後、緩慢な逃避行を続けていた囮の男の背が背後に聳え立っていた大木の幹へと突き当たる。 「あ・・・ああ・・・」 恐怖にカチカチと歯を鳴らす男の顔は、今にも泣き出しそうな程に醜く歪んでいた。 そんな逃げ場を失った小動物を手中に収めようと、ドラゴンが凶悪な鉤爪の生えた手をゆっくりと伸ばしていく。 だがもうだめだとばかりに男が顔を伏せたその直後、俺は手にしたナイフを黒竜の眼に向けて素早く投げつけた。 ヒュッ・・・ドスッ 「グヌアァッ!?」 月明かりに煌く白刃の切っ先が真っ赤に光る大きな左眼に見事に突き刺さり、今度は突然の痛みと驚きに満ちたドラゴンの悲鳴が辺りに響き渡る。 右眼で左方を見ることができない細長いドラゴンの顔では、片眼を潰しただけでも視界を半分以上奪うことができるのだ。 村人達に無用な犠牲者を出さずにドラゴンと戦うためには、今はこれだけでも十分に効果があることだろう。 やがて苦痛に悶えるドラゴンの声が消えぬ内に、それまで茂みや木の陰に隠れていた大勢の村人達が一斉にドラゴンを取り囲んでいた。 大木の根元で震えていた囮の男にも何時の間にか1本の長い槍が手渡され、彼もまた多少及び腰ながらドラゴンに向けてその鋭い穂先を突き付けている。 「お、おのれ貴様等・・・我にこのような真似をして・・・生きて帰れると思っているのではなかろうな!!」 怒りに燃えるドラゴンの巨口から咆哮にも似た激しい怒声が吐き出され、周囲の木々をザワザワと揺らしていく。 眼に突き刺さった小振りのナイフと滴り落ちる鮮血がその迫力に拍車を掛けたのか、数人の村人達が僅かに怯んだ気配が俺の所にまで伝わってきた。 だが、ここまで来たら最早後戻りすることはできない。 俺は辛うじて怯まずにドラゴンを睨め上げていた1人の男と咄嗟に視線を交わすと、長剣を腰に構えたままドラゴンに向かって走り出していた。 そして死角から何者かが迫ってくる気配にドラゴンがグルンとこちらに首を振り向けたその瞬間、先程俺と視線を交わした男が隠し持っていた別のナイフをドラゴンの顔に向かって投げつける。 「ウヌゥ!」 カキン! 再び飛来したその凶器に、ドラゴンは反射的に眼を伏せると顔を覆った堅い鱗でナイフを弾き返していた。 だが実に幸運なことに、ドラゴンが俺の方に潰れた眼を晒したまま完全に無防備になっている。 その機を見逃さず、俺は大きく息を吸い込むと手にした剣先をナイフの突き刺さったドラゴンの眼を目掛けて一気に突き出していた。 ドッ・・・ズガッ! だがとどめの一撃が傷ついた黒竜の眼に届こうかとしたその瞬間、突如俺の腹部に凄まじい衝撃が走っていた。 そして視界が一瞬にして流れ去り、数瞬遅れて2度目の衝撃が今度は背中へと叩き付けられる。 「がっ・・・はっ・・・」 激しく背を打ち付けたせいで呼吸が止まり、呻く以外に上手く声が出てこない。 黒竜が無造作に振るった尾に薙ぎ払われて木へ叩き付けられたのだと理解するのに、呼吸の断たれた脳がやけに長い時間を必要とする。 突然の出来事に周囲の村人達がざわつく中、ズルリと木の根元に崩れ落ちたまま視線を上げた俺の前ではまず1人目の獲物を踏み潰そうとドラゴンが巨大な足を振り上げている所だった。 「う・・・うあ・・・」 反射的に上げた助けを求める声も、周りにいる村人達までは届かない。 そして身を守ることもできずにいた俺を目掛けて、大きな鉤爪の生えたドラゴンの足が振り下ろされた。 ボゥ! 「ウヌゥッ!」 ドオォン! だがこれで最期かと思われたその時、突然地響きとともに周囲が一瞬明るく照らし出される。 標的を外した黒竜の足が激しく地面を踏み鳴らし、地面の上に大きな足跡を刻み込んだ。 「エ、エルダ・・・?」 やがて死の予感にきつく閉じていた目を開けてみると、洞窟から必死で這い出してきたのであろうエルダが黒竜に向かって盛大な炎を吹き上げている。 昨夜のような加減された小さな炎とは違って天を焦がすかのような激しい火炎が黒竜の視界を奪い、予期せぬ不意打ちに思わず仰け反った黒竜の腹が俺の眼前へと曝け出されていた。 「ん・・・?」 その堅牢な甲殻に覆われた雄竜の下腹部に、一瞬だけ隆々たる肉の巨塔が姿を覗かせる。 「ウゥヌ!またしても小娘めが!」 そして怒りとともに視界を紅蓮に染める炎を払った黒竜が足下にいたエルダをギラリと睨みつけたその瞬間、俺は手元に落ちていた剣を握るとその雄だけにある最大の弱点目掛けて鋭い切っ先を横薙ぎに振り払っていた。 スパッ 「グガァッ!?」 距離が遠かったお陰で剣先が掠った程度ではあったものの、敏感な肉棒を僅かに斬り付けられた痛みに黒竜が悲鳴を上げる。 そして苦し紛れなのか怒りにまかせた一撃なのか、再びブゥンという音とともに黒竜の尾が振り回された。 「うわっ!」 バキッベギキッ 咄嗟に身を伏せた俺の頭上を猛烈な勢いで丸太のような尾が通過したかと思った次の瞬間、背後にあった細い木が激しくひしゃげて圧し折れる。 危なかった・・・あんなものを食らったら、一溜まりもなかったことだろう。 周囲を取り囲んでいた村人達は暴れ狂うドラゴンの猛威に恐れをなしたのか、或いは新たに姿を現したエルダに驚いてしまったのか、少し離れた所に退いて様子を窺っている。 今や完全に俺とエルダだけがドラゴンの前へと取り残される形になってしまったものの、俺は尾撃を外した黒竜に再び大きな隙が生じていることに気がつくと体を起こして走り出していた。 トットット・・・ 尾を振った勢いでこちらに向けられていた山のように大きな巨竜の背を素早く駆け上り、黒竜の背後、その頭上から手にした剣を大きく振り被る。 そして黒竜が背中に感じた違和感に後ろを振り返ろうとした瞬間に、俺は潰れた赤眼の死角からその痛々しい傷口に深々と剣を突き刺していた。 ドスゥッ・・・! 「ガアアアァッ!!」 眼孔の奥に隠れた脳を正確に貫いた、確かな手応え。 だが咆哮とも悲鳴ともつかない耳を劈くような凄まじい轟音が辺りに響き渡り、暴れた黒竜の背に乗っていた俺は宙高く跳ね上げられて地面の上へと落下してしまっていた。 ドサッ 「うぐ・・・」 土に覆われているとはいえロクに受け身も取れずに落ちてしまったお陰で、体にほとんど力が入らない。 そんな俺の姿を片目で睨み付けながら、黒竜が恐ろしい凶器である長い鉤爪を振り上げる。 「おのれ・・・貴様だけは・・・貴様だけは許さぬぞ!」 く、くそ・・・あと少しでこいつを倒せるっていうのに・・・! だが心の中でついた悪態も空しく、身動きの取れない俺の上へと崩れ落ちるようにして力尽きたドラゴンが怒りの凶爪を振り下ろしていた。 ドン!ザグッ! 「ぐあぁっ!」 次の瞬間全身に走った激しい衝撃に跳ね飛ばされて、俺は闇に染まった視界の中をゴロゴロと転がっていた。 だが明らかに深手を負ったであろう一撃を受けたというのに、ほとんど痛みらしい痛みを感じない。 まずい兆候だ。 ああ・・・俺・・・死ぬのかな・・・ まるで感覚が麻痺してしまったかのようなその不思議な現象に、俺はしばらく地面の上に横たわったまま周囲の状況に聞き耳を立てていた。 やがて力尽きた黒竜の倒れ込むズウゥンという重々しい音が聞こえ、辺りに空しい静寂が戻ってくる。 「う・・・うぐ・・・」 そして傷の具合を確かめようと衝撃を感じた左の肩口に手を当ててみたその時、俺は初めて自分の体の異変に気が付いていた。 いや正確には、異変が無いことに気がついたというべきだろう。 どこにも・・・怪我をしていない・・・? 体のどこを触ってみても、血が流れている感触もなければ服が破けている様子すらない。 でも・・・あのドラゴンは最後の力を振り絞って確かに爪を振り下ろしたはずだ。 それに、俺がここまで跳ね飛ばされる程の衝撃を受けたことは紛れもない事実。 じゃああれは一体・・・? 頭の中の疑問が解決しないまま、地面からそっと体を起こして恐る恐る黒竜のいた方向へと目を向けてみる。 「エ、エルダ・・・!」 果たして、流れ出る血で全身を体色よりも深紅に染めたエルダが俺と黒竜の間にぐったりと横たわっていた。 エルダの背中には彼女の鱗でも防ぎ切ることができなかったのか3条の爪痕が深々と刻み付けられていて、その傷口からドクドクと真っ赤な血が大量に溢れ出している。 じゃあ俺があの瞬間に感じたのは・・・エルダが黒竜の爪撃から守ろうと俺を突き飛ばした衝撃だったのか? くそ・・・本当なら俺が・・・俺がエルダを守ってやらなきゃいけないっていうのに・・・! 「お、おい!誰か・・・誰か来てくれぇ!」 急いでエルダのもとへと駆け寄りながらそう大声で叫ぶと、ようやく黒竜という脅威が去ったことを確信したのか辺りにいた村人達が次々と集まってくる。 だがエルダの方はというと、まだ微かにハァハァと小さな息をしてはいるものの薄っすらと開けられたその蒼い眼からは徐々に命の輝きが失われつつあった。 「きゅ・・・きゅふ・・・」 そして短く詰まった声とともに血を吐き出したエルダが、俺の顔をゆっくりと見上げる。 「その竜の子供は一体何なんだ?この黒竜の子供なのか?」 「そうじゃない!頼むよ・・・訳は後でちゃんと話すから・・・今はこの仔を助けてくれ!」 長年村を苦しめてきたドラゴンの仲間を助けて欲しいというその願いに、俺は初め彼らが相当な難色を示すであろうことを予想していた。 「よし・・・何だかよくわからないが、とりあえず応急処置だけして村へ連れて行こう」 だがエルダが2度にわたって俺の命を救った所を見ていた村人の1人が、すぐにそれに応えてくれる。 「ありがとう・・・助かるよ・・・」 そして破った服の切れ端でエルダの怪我を何とか止血すると、仔竜とはいえずっしりと重量感のあるその体を村人達が数人がかりで持ち上げた。 エルダの母親との約束を守るためにも、何としても彼女を死の淵から救わなければならないだろう。 やがて千里の道にも感じる村への長い長い帰路を辿る間中、俺は今にもエルダがその弱々しげな命の灯火を消してしまうのではないかと気を揉み続けていた。 未だ夜明けの気配の感じられぬ暗い村に辿り着くと、エルダはすぐに村長の家へと運び込まれた。 そして一先ずエルダを村の娘達に任せ、隣の部屋で待っていた村長のところへと顔を出す。 怪我をしたエルダの身はもちろん心配だが、今はまず村長に事情を説明しに行くのが先だろう。 「あの仔竜は今、村の者が様子を看ておる。それよりもまず・・・一体森で何があったのかを教えてくれんか」 「エルダは・・・あの仔竜は俺の・・・俺の娘なんだ・・・」 村長から投げかけられた質問に俺がそう答えると、周囲の村人達が信じられないといった様子でどよめく。 「あの竜の子供が・・・あんたの娘だって・・・?そいつは、一体どういう訳だね?」 「2年程前まで、俺はドラゴンスレイヤーだった。その過程で俺は・・・ある1匹の巨大な火竜に出逢ったんだ」 そうして俺がかつてのエルダとの邂逅と悲しい結末を語り始めると、村長を初めとした村人達はほとんど一言も発さずにじっと俺の話を聞き入っていた。 「・・・それ以来、俺はエルダとともに旅をしながら幸せに暮らせる場所を探しているんだ」 やがて長い長い独白がようやく終わりを迎えた頃、エルダの看病をしていた村の娘の1人がそっと顔を出す。 「あの竜の子供、無事に目を覚ましたみたいよ」 「ほ、本当かい・・・?」 まるでその声に誘われるようにして、俺はその場に集まった村人達の中をヨロヨロとエルダの寝かされている部屋へと進んでいった。 東の稜線から顔を覗かせた朝日の光に照らされて、外は既に平和な明るさに満ち満ちている。 「エ・・・エルダ・・・?」 厚く敷かれた藁の上に横たえられたエルダの姿・・・ その無残だったはずの傷口には幾つもの薬草を練り合わせて作った独自の血止め薬が塗り込められていて、グルグルと幾重にも巻かれた白い包帯が真っ赤なエルダの体色に鮮やかなアクセントを加えていた。 流石に採集を生業にしているだけあってか、民間療法のレベルの高さにもなかなかに目を瞠るものがある。 やがて部屋に入っていった俺の姿を認めたのか、彼女がうつ伏せの姿勢のままこちらを見上げて小さな鳴き声を上げていた。 「ふきゅっ・・・きゅぅっ!」 「大丈夫か?エル・・・」 ペロッ 「わっ!?」 そして彼女の様子を窺おうと顔を近づけた次の瞬間、突然エルダが俺の頬を愛おしげに舐め上げる。 「きゅきゅっ!きゅふふっ!」 悪戯っぽくも嬉しげな声を上げる彼女は、きっと俺の無事を心の底から喜んでくれているのだろう。 全く・・・彼女にも彼女の母親にも、俺はエルダに守られっぱなしだな・・・ 「よかった・・・よかったな、エルダ」 これだけ元気にはしゃげるのならば、もう彼女は大丈夫に違いない。 「ありがとう・・・エルダを救ってくれて・・・俺、皆になんてを礼を言ったらいいか・・・」 「礼なんていらないさ。あんたは俺達の村を救ってくれた恩人なんだからな」 「そうだよ。もう誰も、生贄で娘を失うなんていう悲しい思いをしなくて済むんだ!」 背後で上がる村人達の喝采の声・・・やがてその合間を縫って、長年の呪縛から解き放たれた村長の明るい声が俺の耳へと届いてきた。 「そうじゃ・・・そなたさえよければ、この村に腰を落ち着けてみてはいかがですかな?」 「え・・・?」 「その仔竜と暮らせる土地を探しておられたのでしょう?村を救った人竜の親子なら、皆も歓迎することですて」 村長のその言葉に、大勢の村人達が即座に同調する。 「ああ、そいつはいい考えだ!あんた達なら大歓迎だよ!」 「い、いいのかい?」 「丁度すぐそこに空家がありますでな・・・例の、最後に生贄に出された娘とその弟が住んでおった家です」 そうか・・・それも・・・いいかも知れないな・・・ 俺はチラリとエルダの顔を見やってそこに母親譲りの満足げな笑みが浮かんでいるのを確認すると、彼女とともにこの村で暮らす決心を固めていた。 「それじゃあ・・・お言葉に甘えさせてもらうとするよ・・・」 やがて幸福な空気に満ち溢れた村を挙げての集会がようやく終わりを迎えると、村人達全員が村長の家の前へと集められていた。 昼を間近に迎えた明るい太陽が燦々と照り付ける中、賑やかな人の群れが静かに何かを待ち続けている。 そしてそこへ家の中から古びた小さな陶器の壷を持ち出してきた村長がゆっくり姿を見せたかと思うと、固唾を呑んで見守る大勢の前で村に平和が訪れたことを声高らかに宣言した。 「皆、よく聞くのじゃ!長い間この村を苦しめてきたあの黒き竜は、もうこの世にはおらぬ!」 「おお・・・!」 その村長の言葉に、今初めて黒竜討伐の事実を知った数人の村人達が驚きと歓喜の声を上げる。 「これからは村を救ってくれたそこの若者と小さき竜に感謝を捧げながら、皆で村の発展を願うとしようぞ!」 村長はそこまで言うと、手にしていた壷を空高く放り投げていた。 その数秒後、ガシャンという音とともに地面の上へと落下した壷が粉々に砕け散る。 「おおーー!!」 やがて壷の中に入っていた十数本もの白い籤の束が派手に辺りへと飛散すると、深い業ともいうべき村の悲しみが盛大な歓声とともに風に乗って忘却の彼方へと運び去られていった。 「う、うぅ~ん・・・」 それから数週間後のある晴れた日の朝、俺はかつて不幸な姉弟が住んでいた家のベッドでエルダとともに心地よい安眠を貪っていた。 いや正確には、エルダの柔らかな腹の下敷きにされながらと言った方がいいだろう。 彼女はあの黒竜との1件以来、何をする時にも決して俺のそばを離れようとはしなくなっていた。 それ故かここ数日、夜寝る時には確かにベッドの下で寝ていたはずのエルダが朝になるといつの間にかベッドの中に体を潜り込ませているということが続いている。 だが流石に1人用のベッドでは俺と彼女が並んで寝ることなどできるはずもなく、俺は必然的にエルダに押し潰されるような体勢で朝を迎えることになるのだった。 仔竜とは言えほとんど人間と同じくらいの体長に背中を覆った厚い鱗や長い尻尾の重量も相俟って、彼女の体重は軽く100キロを超えているに違いない。 「お、重いぞ・・・エルダ・・・」 だがそう言いながらエルダの体をどかそうとしても何だか上手く力が入らないのは、きっと彼女の可愛い寝顔を間近で見ているせいだろう。 「ふふ・・・ふきゅ・・・」 何か幸せな夢でも見ているのか、やがてエルダの口から小さな笑い声が漏れてくる。 「エルダ・・・お前・・・本当は起きてるんじゃないのか?」 試しにそう言ってみると、エルダが顔に浮かんだ笑みを消し切れないまま綺麗な蒼い目をパチリと開いていた。 不意に漏らしてしまった笑い声のせいで寝たフリをしていたのがバレてしまい、私は仕方なく悪戯っぽい表情を浮かべたまま目を開けると彼の顔をじっと覗き込んだ。 お返しに腹下に組み敷いた雄の獲物を値踏みするような妖しい艶のある視線を投げかけてみると、不思議な興奮にゴクリと唾を飲み込んだ彼の喉が小さな嚥下の蠢きを見せる。 何としても、彼だけは護ってあげなくては・・・ 1度も姿を見たことのない母親から受け継いだそんな母性本能とも言うべき衝動が、私の中を駆け巡っていた。 だが今は、もう少しこの心地よい時間に身を埋めていたい。 「エ、エル・・・うぶ・・・」 ペロッペロペロッ・・・ やがて何かを言おうとした彼を舐め付けて強引に黙らせると、私はその暖かい胸板にスリスリと顎を擦り付けた。 そして再びゆっくりと目を閉じながら、彼の顔にフッと鼻息を吹きかけてやる。 「ああ、わかったよエルダ・・・もう邪魔はしないよ・・・」 そう言いながら優しく鼻先を撫でてくれた彼の手は、私を今度こそ本当に幸せな夢の世界へと誘っていった。 完 感想 愛にBORDERなんて無いんだよねっ!? ところで”追憶の闇”に関連しているように思えますが…小生の気のせいでしょうか? -- Nakachik/UP (2007-11-20 09 51 24) 関連してますよ -- 名無しさん (2007-11-20 19 55 26) 続編希望。 -- 名無しさん (2009-03-27 18 07 09) 大きくなったエルダの話を作ってほしい。 -- 竜好き (2009-03-28 00 39 20) なんか思い付いたら書いてみます -- SS便乗者 (2009-03-30 03 08 21) エルダが雄の竜と結婚し、子供を産んで育てるぐらいまでお願いします。 -- 名無しさん (2009-04-08 08 09 57) 雄竜と結婚ですか・・・かなり先の話ですね その内書けたら書いてみます -- SS便乗者 (2009-04-12 03 56 06) 続編ありがとうございました。 -- 名無しさん (2009-04-18 12 33 01) 再びその赤鱗に抱かれての続編お願いします。 -- 竜好き (2009-04-25 08 13 36) いつもよいSSを書いてくださってありがとうございます。 -- 名無しさん (2009-05-07 12 24 19) 送り火へと注いだ滴でエルダの話は完結ですか? -- 竜好き (2009-05-16 18 01 01) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/bmrog/pages/1083.html
(CC_Yohane) ここは三恵市郊外の旅館。山麓の稜線がPW壁の光を程良く隠し、辺りには昔ながらの風情を残した田園が広がる、そんな「日本の原風景」を絵に描いたようなロケーション。長期休暇の時期ならば、家族連れで賑わうことも珍しくないものの、今ここを訪れているのは大人しげな少女が二人。かけ流しの露天風呂で騒ぐこともせず、部屋に備え付けられた小さな風呂場で、彼女たちはそっと連れ添っている…… (CC_Yohane) 【夜羽】「……」先に湯船に手を浸し、湯加減を確認する。熱さにムラがないよう、何度かかき混ぜると「……ん、大丈夫」親友の方に振り返って手招き (CC_Kotetsu) 【虎徹】「わぁ、かわいい湯船ですよぅ」招きよせられるままに夜羽ちゃんのもとへ歩み寄ります。長い髪は濡れないように結い上げて、胸元に添えた手には手ぬぐいを持って。 (CC_Yohane) 【夜羽】「……虎徹も、可愛い」魔鎧を着けている時とは違う、結い上げた髪型を目にして微笑み。先に湯船に入ると、滑らないようエスコートするように手を差し伸べて (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ふぇ、夜羽ちゃんったら……もう……恥ずかしいですよう」直球でかわいいだなんて、最近の夜羽ちゃんは積極的というかなんというか……とても恥ずかしいです。ともかくちゃぽんと波紋をたてて夜羽ちゃんのお隣に入るのです。もちろん恥ずかしがりつつも手は握って。 (CC_Yohane) 【夜羽】「あ……」そっと手を握り返しながらも、少し戸惑い気味に「……嫌、だった……?」夜羽自身、他人に対して、こんなにも積極的になったのは始めてのこと。大好きなのも、大切なのも、ずっと一緒にいたいのも全て本心、でもそれをどんな風に伝えたらいいのか、加減がわからない。もしかすると困らせてしまっているんじゃないかと、少なからず気がかりな様子で (CC_Kotetsu) 【虎徹】「嫌じゃ……ないですよぅ」嫌なわけなんてありません。頬を寄せてすりすり、甘えるのです。ここなら周りに誰もいないし、ちょっと恥ずかしいくらいが丁度いいのかもしれないかな、と思い直して。 (CC_Yohane) 【夜羽】「……よかった」安心したように、寄せられた顔に自分も頬を寄せた。繋いだ手もさらに少し近づけると、もう片方の手も添え、そっと抱くようにして (CC_Kotetsu) 【虎徹】「えへへ……」ぎゅっと頬を寄せて、手をつないで。夜羽ちゃんのぬくもりがいっぱいですよぅ。背中に手をまわしてもっと寄り添うのです。 (CC_Yohane) 【夜羽】「……あったかい、ね」湯船のせいだけではない、大切な人がすぐそばにいる温かみ。それを味わいながら、同じように背中に手を回そうとして……最近得たという障りのことを、思い出した。お互い座っている今、多分それは背中に沿わせてあるはずで「しっぽ……触っても、いい?」 (CC_Kotetsu) 【虎徹】「……ぅぁ…、いい…けど…どうしたの?」しっぽは敏感で、気持ちいいところ。虎徹にとっては性器と変わらない場所なのです。当然そこを触りたいという申し出には激しい抵抗があるけれど、ほかならぬ夜羽ちゃんなら…許しちゃいます。 (CC_Yohane) 【夜羽】「あ……嫌だったら、無理にじゃない、けど」ある日突然、知らない器官ができてしまう感覚。自分の一部なのに自分ではない、そんな不安を味わったのは夜羽も同じ。それを癒してくれたのが、ここにいる親友だから。「しっぽも……虎徹、だから」大切にしたい、可愛がりたい、そんな甘くて少し熱っぽい想いを耳元で囁き (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ん…」ふよふよっと尻尾を背中からはなして、お湯の中を泳がせます。さわられる前からお豆さんが気持ちいいことを期待して勃ちあがって……剥けちゃいました。それで、最近すぐに快楽を期待しちゃって駄目だな…って苦笑しながら夜羽ちゃんの胸に抱きついて上目遣いに見上げるのです。 (CC_Yohane) 【夜羽】「……可愛い」大事なことなので、もう一度言って。見上げてくる虎徹の瞼に、前髪越しにそっとキスをすると。「……優しくする、から」壊れ物でも扱うように、あるいは羽で触れるように、背中を離れたしっぽにそっと指を絡めて (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ゅっ……!」触れられた瞬間、目を閉じてぴくんと肩を震わせます。思わず抱きしめる腕に力が入って、やわらかな夜羽ちゃんのお胸を歪めるように顔を押し付けてしまうのです。 (CC_Yohane) 【夜羽】「……痛い、の?」胸に押し付けられた顔を抱きしめると、回した手で優しく頭を撫でて。しっぽに絡めた指先は、最初に触れた形のまま大人しく返事を待って (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ちが…ぅ…ぁ…気持ち…いいんです…よぅ」はもはもとお胸をアマガミしつつ、むずかって腰を左右へかわいらしく振るのです。 (CC_Yohane) 【夜羽】「ん……よかっ、た」胸を優しく弄ってもらうと、下の方にもきゅんと疼きを感じた。でも、もう少し愛撫を続けていたい。「じゃあ……もっと、触るね」むずかりながら一生懸命してくれる虎徹が、可愛くて、嬉しいから。掌でしっぽを包み込むようにすると、根元から節の形を一つ一つなぞるように優しく撫で上げて (CC_Kotetsu) 【虎徹】「あひぅ……、んやぁ……、尻尾…気持ちいいですよぅ……」撫でてくれる指先の感触を尻尾の全部で受け止めると、虎徹は快楽を我慢しきれなくて……。夜羽ちゃんを傷つけないように針をしまった先っぽから透明な雫が漏れてくるのです。 (CC_yohane) 【夜羽】「ふふ……しっぽも、濡れてる」湯の中に雫が溶けていくのを見て取ると、少しだけ悪戯めいた笑みを浮かべて。「大丈夫……我慢しなくて、いい」ここには、二人だけだから。そう囁くと、可愛らしい耳元にもちゅっと口付ける。しっぽの節の一つを軽く指先でつまむようにすると、くにくにっと揉むような愛撫に変えて (CC_Kotetsu) 【虎徹】「あぅ…夜羽ちゃん…」はうはう。くにくにされると力がどんどん抜けていっちゃいます。そして夜羽ちゃんへとより身体を預けるわけですが、丁度目の前に夜羽ちゃんの乳首があったのではむはむっと咥えるのです。 (CC_yohane) 【夜羽】「あ、んっ……」余人にはむやみに触らせない胸とはいえ、魔鎧の暴走で何度も開発された乳首はやはり敏感なもの。咥えられると、微かな吐息と共に、甘い声が漏れてしまう。そこへ、愛しい虎徹が吸ってくれているという光景が刺激を加えて……ぞくっと興奮を覚えた途端、勢い良く跳ね上がったペニスを下腹に押し当てる形になってしまって「……ご、ごめん」思わず愛撫の手を止め、かあっと顔を赤くして俯き (CC_Kotetsu) 【虎徹】「いいですよ……ふふ」いつもは見せないえっちな顔を浮かべて、おなかで夜羽ちゃんの先っぽをくるくると可愛がるのです。今日はなんだか責めたい気分……こういうところにきて解放的になっているのかなぁ。今のうちに尻尾は前にしまっちゃいましょう。 (CC_yohane) 【夜羽】「今日……いつもと違う、ね」見たことのない色香を漂わせる虎徹の表情に、思わずくらくらした。いつもと違う顔、でも決して嫌ではない。ペニスは弄られるたびに期待でぴくんと震え、本人も意識していないところで秘所もとろりと濡れ始めている。手の中にあったしっぽが消えていることに、気づいていないのは余裕のなさゆえ。く、と一度唾を飲み込むと、いつものようにそっとお願い「入れて……いい?」 (CC_Kotetsu) 【虎徹】「だめ♪」夜羽ちゃんの尻尾は両手で捕まえてくしゅくしゅって擦って、気持ちよさで動けないようにしておいて……なんだか今日は虎徹が入れたいですよぅ。「夜羽ちゃん、今日は虎徹がいれます……いいですよね♪」頬をぺろっと舐めてほっぺ同士をすり合わせながら耳元で囁くのです。 (CC_yohane) 【夜羽】「!?」だめと言われると、叱られた犬のように一瞬びくっとした。でも、いちばん気持ちいいところを優しく擦ってもらうと、どんなことでもしてあげたくなってしまう。入れられた経験なんて、それこそ最初の特活と魔鎧の暴走くらいしかないけれど。「ん……虎徹がそれで、気持ちいいなら、いい」でも、どうしたらいいんだろう。戸惑って、脚を湯船の中でうろうろと所在なげに彷徨わせ (CC_Kotetsu) 【虎徹】「いつもと違うから……私もちょっと違った気分なんです、よぅ。ふふ、今日の夜羽ちゃん、いつもより…もっと可愛いです」はむちゅ。と音を立てて今度は唇を奪ってしまうのです。いつものフレンチキスじゃなくてディープな大人の口付けです。 (CC_yohane) 【夜羽】「んむっ、ちゅ……」積極的なディープキスを受け入れると、それだけで背筋が震えてしまう。そして快楽への期待と同じくらい、ひとつに融け合ってしまいたいという想いが沸き上がってきて。入り込む舌を受け入れ、自分からも絡めてちゅうっと吸いながら、無意識に脚をゆるゆると開き始める。ちょうど初めての時、虎徹がそうして受け入れてくれたように (CC_Kotetsu) 【虎徹】「いきます…よ…と…あん?あ、あれ…これ…ゃん……ですよぅ」夜羽ちゃんの秘密の割れ目を掻き分けて、ずぷ。と切っ先を突き入れたところで違和感に気付きます。虎徹のペニスは尻尾を後ろから前に回したもの。つまり、虎徹の女の子の下にあるのです。そしてそれを夜羽ちゃんの女の子に入れようとすると、自然に夜羽ちゃんのものも虎徹の秘裂をつつくのです。 (CC_yohane) 【夜羽】「……っ!」先端が入ってきた時に、快楽を予感してぎゅっと目を閉じた。……しかし、いつまでも奥に入ってこないのを不思議に感じて、再びそろそろと目を開ける。そして、虎徹が困惑している理由も何となくわかった。抱き締めて、大丈夫だよ、というように背中を撫でながら「先に、入れてみる?それとも……」お互い、一緒に入れてみる?と、少しだけ悪戯めいた声で囁き (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ぅ……ゅ…ゆっく…り」ゆっくり入れよう、と言おうとして。でも言えなくて。でも、募る思いを我慢できなくて。一気に奥まで入れてしまいました。ぬるぬるの粘膜に過敏な尻尾が包まれるとあまりの快感に呼吸ができず、口をぱくぱくさせてしまうのです。 (CC_yohane) 【夜羽】「ん、っく……!」人間のペニスとも魔鎧の責めとも違う感触が一気に入ってくると、それだけで目の前が真っ白になるほど気持ちいい。ましてそれが大好きな虎徹のしっぽだと思うと、食べてしまいたいほど愛おしい気持ちになって。とろとろの肉襞できゅ、きゅっと包み込み、締め付ける動きを繰り返しながら、自分のペニスの先端も虎徹のそこにつぷりと潜り込ませ (CC_Kotetsu) 【虎徹】「あっ…はぁっ…気持ち…いい、よぅ……」駄目です、尻尾が夜羽ちゃんのあそこに包まれて……脳がとろとろに蕩けてしまってます。今日は夜羽ちゃんを気持ちよくさせてあげようと思ったのに……。虎徹、もう動けませんよぅ…… (CC_yohane) 【夜羽】「ん……私も、気持ちいい、よ」こちらもちゃんと繋がりたいと思っているけれど、奥まで届いて蠢く虎徹のしっぽが気持ちよくて思うように動けない。腰は小刻みに揺れ、少しずつ虎徹の中へ中へ進んでいくものの、いつものように勢いをつけて奥まで届かせることはなかなかできなくて「……とけそう……」奥まで至らないもどかしさと、お互いに受け入れ合っている満足感が入り交じって、ふわあっと熱い息を漏らして (CC_Kotetsu) 【虎徹】「っふ…ふぁぁぁ……」早くも快楽に負けた尻尾がとくっとくっ。と透明な粘液を分泌し始めています。これは虎徹の愛液、気持ちのいい証です。次第にそれは夜羽ちゃんの中を満たしていきます。それから…快楽に戦慄いた腰が勝手に振れてしまって、股間同士をあわせるように夜羽ちゃんに腰をぱちゅんと打ち付けてしまいます。もちろん夜羽ちゃんのおちんちんも奥まで飲み込んでしまいます。しかしそれは虎徹の中にはいささか長すぎるようで (CC_yohane) 【夜羽】「虎徹……しっぽまで、とろとろ、だね」小さく微笑んで脚を少し閉じると、細やかな肉襞の一つ一つが蠍のしっぽに纏わりつく。肌より少しだけ硬い感触を粘膜で感じ取ると、虎徹の中に入っているペニスの先端も同調するようにぴくんと脈打った。「何だか、食べちゃってる、みたい……」すぐにでも射精したいという欲求を堪えて快感を長引かせながら、ゆっくりと……しっぽの節を一つ、二つと数えられそうなほどのペースで、味わうように腰を動かし (CC_Kotetsu) 【虎徹】「はぅぅ…食べられちゃってます…よぅ」尻尾の節をぱくりぱくりと夜羽ちゃんのあそこに咥えられるたびに、ぴくりぴくりと小刻みに背筋を震わせて。同時に夜羽ちゃんの肉棒をきゅっきゅっとすがりつくように締め付けます。夜羽ちゃんに与えられる快感が虎徹の体を動かして、夜羽ちゃん自身を責めるのです。 (CC_yohane) 【夜羽】「虎徹……すごく甘くて、美味しい、よ……」逸物を包み込まれると、無意識に細かく揺れる腰。我慢していないと今にも出てしまいそうな媚薬精液で、頭の芯まで煮詰まったようになって。「……ごめん、もう」出したい、お願い、切羽詰まった様子でそう囁きながら、虎徹の耳朶にちゅうっと吸い付いて ▽ (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ほえ?……」もう、なんでしょうか。快楽に蕩けたぽえぽえの頭では夜羽ちゃんがどういう状況なのかわからないのです。耳を吸われてしまったらまた感じてあそこを締めてしまいますよぅ。「ひゃん…きゅう…夜羽ちゃぁん…、くすぐったいです…よぅ」 (CC_yohane) 【夜羽】「だ、だめ、出る……んん――、っ」そうして締められたのが、とどめになった。びゅるびゅるびゅる……っと、尾を引くように放たれた濃い精液が、たっぷりと時間をかけて夜羽の尿道を、そして次には虎徹の膣奥と子宮口を媚薬漬けにしてゆく。長い長い射精感に我を忘れると、全身がびくん、びくんと震えて、虎徹のしっぽにもその快感を直に伝えて (CC_Kotetsu) 【虎徹】「あうっ……夜羽ちゃん……射精すなら…そう言ってください…よぅ」おなかの奥からじわりと痺れが広がっていきます。甘い甘い夜羽ちゃんの媚薬精液がゆっくりと胎内を浸していくのです。思わず両手で抱えるようにして子宮をかばってしまいますが、体内で進行する事態は止めようがありません。 (CC_Kotetsu) 【虎徹】「あ……で、でちゃい……んんっ!」さらに夜羽ちゃんの痙攣を敏感に感じ取った尻尾が。同調して震え始めてしまいます。制御を失った先端の針を夜羽ちゃんの子宮口に突き刺して、激しく媚毒を撒き散らしながら…… (CC_yohane) 【夜羽】「あ……ご、ごめん……」申し訳ないという気持ちはあるものの、声は未だ快感の余韻が残るふわふわとしたもので。「こ、子供は、できないから……」そこは安心して、と言おうとした矢先。「い、っ――!?」子宮口に感じる鋭い痛みと、一瞬でそれをかき消す、灼けるような快感。 (CC_yohane) 【夜羽】「こ、こて、つ……これ、っ」熱くて、堪らない。反射的に爪先までぎゅっと引き攣らせ、息を切らしながら、がくがくと震える体中で初めての感覚を味わう。子宮の細胞一つ一つが、媚毒の味を喜んで染み込ませ、覚え込んで。そこで感じる初めてのアクメを虎徹のものにできた、そんなどこか歪な幸福感をも夜羽の意識にくっきりと刻みつける (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ご、ごめ…んんっ!だめっ、だよぅ…!尻尾、びくびくしちゃって…ひぁぁっ、と、とまらない…よぅ」とぷりとぷりと愛液まじりの媚毒を吐き続ける尻尾。虎徹が感じているのはクリトリスの中を熱い射精が駆け抜けるような激しい絶頂感で、次々と休む間もなく襲い来るアクメに次第に腰を大きく振りはじめて。 (CC_yohane) 【夜羽】「ん……うん、いいよ……」わずか一瞬で極上の性感帯に改造された子宮で迎え入れるように、自分からも腰を動かし。「全部、虎徹のに、して……」未だ硬さを失わないペニスも、それに合わせて虎徹の子宮をノックする。障りも何も関係ない、“普通の”少女同士では味わえないセックスが、気持ちよくて愛おしくて。「……愛して、る」柔らかい胸をふにゅっと合わせるように抱き締めながら、夢中で睦言を囁き (CC_Kotetsu) 【虎徹】「う…嬉しい…ですよぅ」夜羽ちゃんの言葉に頬を真っ赤に染めて、返事を返すようにこちらからも背に手を回してたっぷりと中身のつまったバスト同士をむぎゅむぎゅとあわせながら抱きしめるのです。お互いのもっとも脆い最奥を突き上げあいながら。 (CC_yohane) 【夜羽】「ずっと……ずっと、一緒」突き上げられるたびに軽い絶頂を迎えながら、囁く声は少しだけ涙を帯びて「ずっと……こうしてよう」いつまでも共に生きようとも、いつまでも交わっていようとも、どちらとも取れるような熱っぽい声で囁き。感極まったのか、目の前の唇にいつもより少しだけ強く吸いついて、ディープキスへと誘い (CC_Kotetsu) 【虎徹】「……はい、はい」ずっと一緒という言葉に、ずっとこうしていようという言葉に力強く答え。 (CC_Kotetsu) 【虎徹】「…ちゅ、んむ……ちゅ」それから夜羽ちゃんの唇を受け止めて、お互いの口の中で舌を激しく絡ませます。 (CC_Kotetsu) 【虎徹】「んは…夜羽ちゃんの奥……イって、ひくひく震えてます……」そうしている間もお互いのペニスの先端は相手の子宮口を捕らえてこりこりと嬲っていて、ゆったりとしたペースで絶頂を与えているのです。 (CC_yohane) 【夜羽】「ん……虎徹の、ここも」絡め合った舌の上で溶けて混じり合った、二人分の唾液をこくんと飲み込んで微笑み。「入れるたびにきゅってするの……気持ちいい、よ」誰の目も気にしなくていい、ゆっくり時間をかけて睦み合える……そんな解放感のためか、いつもより口数も多くなって。「もっと……気持ちよく、なろうか?」今日はまだ一度も触っていなかった虎徹の“お豆さん”に、そろそろと指先を近づけ (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ん……そこ…触るの?」夜羽ちゃんの指先を見つめて首をかしげます。 (CC_yohane) 【夜羽】「……嫌?」下腹の肌の上で指先を止めると、同じ角度で首を傾げて聞き返し (CC_Kotetsu) 【虎徹】「いい…よ、でも…そこ触るなら今のうちに…」ちゅっと夜羽ちゃんに改めて口づけをして。「好き、大好き。愛して、ます」恥ずかしさをこらえて、精一杯の気持ちを夜羽ちゃんに伝えます。「えへ…へ…、気絶しちゃう前に…ですよぅ」 (CC_yohane) 【夜羽】「……私も、だよ」気絶しても大丈夫。ちゃんと運んでいくし、何より触れ合っていれば、気持ちは嬉しいほど伝わってくる……そんな温かな気持ちを込めて、すりすりと頬を寄せ。「じゃあ……触る、ね」最初に剥けたきり触っていなかったクリに、羽のように優しく触れて小さな円を描くように、指先でリズムをつけて軽く撫で上げ (CC_Kotetsu) 【虎徹】「はふ……」熱い吐息を漏らして、淫核から伝わってくる激感をなんとか受け流そうとしますけれど……。開発されきって完全に堕ちたそこからの快楽は容赦なく虎徹の意識を一瞬で遥か天空の高みへ連れ去ってしまいました。クリトリスをいじられてしまってはアクメを耐えることなど不可能なのです。 (CC_Kotetsu) 【虎徹】目を白黒させながら、はふ…あひ…と切れぎれの喘ぎを漏らす虎徹。その尻尾は夜羽ちゃんのなかで乱暴に暴れるのです。どうやら連続絶頂による腰の筋肉の痙攣が影響しているようです。 (CC_Kotetsu) 【虎徹】「ふぁ…夜羽…ちゃ…あと、よろし……かひっ」かろうじてそれだけ言葉を紡ぐと、虎徹は瞳孔を拡散させて尻尾を暴れさせながらの連続絶頂に突入してしまいました。 (CC_yohane) 【夜羽】「ん……」大丈夫だよ、となでなでしようとした矢先に、膣内でしっぽが跳ね回る動きに背中を反らせ。たった今開発されたばかりの子宮に、虎徹が感じている絶頂をダイレクトに伝えられると、同じ感覚を分かちあえている幸福感で頭がいっぱいになって (CC_yohane) 【夜羽】「あ――こて、つ、虎徹……」愛しい少女の名前を呼びながら、シンクロした快感を何度も何度も味わって。気を失った虎徹を寝かせて、目覚めを見守るといういつもの大事なお仕事も、今日に限ってはもう少し先延ばしになりそうだった―― (CC_yohane) (CC_yohane) (CC_yohane) (CC_yohane) 前髪姉妹 ~二人の休暇の過ごし方~ (CC_yohane) 完
https://w.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/1039.html
一回戦 第十六試合 やまなし VS 無限桃花 作者 ◆SWkIug3/56 桃花は戸惑っていた。 突如身を包んだ光、抜け出した先に広がった光景。傍に居たはずの仲間の姿はなく、いつの間にか握っていた己宛の手紙。 それは噂に聞く大会への誘い。戦うさだめに生まれた彼女にとっては、終生縁のないものとは決して言えないそれ。 しかし―― 「……なんで?」 「……なんで?」 選手控え室。 突如掛けられた言葉を理解できず、やまなしは相手を見た。声の主は優しげで穏やかで、そしてちょっと頼りなさげな隣人だ。 「……なんでって。僕らは元々こんなことには向いてないよ」 「確かにそうね」 「それに相手は侍らしいよ。絶対怪我する、棄権しようよ」 そう言い募る彼の鼻先に、ぴたりと黒い軍配が止まる。 「為せば成る。為さねば、成らぬ」 己よりずっと背の高いしずおかをきりりとした目が見据える。言葉に詰まった彼を見て、やまなしは軍配を下ろし微笑んだ。 「――成る業を成らぬと捨つる人のはかなさ。信玄公の言葉よ。現代風に言えば――《諦めたらそこで試合終了だよ》!」 「違う人になってるよ!」 「意味は一緒でしょ。私は『山梨』だもの、信玄公に顔向けできないことはしたくない」 「でも」 「――何をイチャついておるかこのイケメンめええええ!」 なおも食い下がる彼を止めたのは青い影。咄嗟に身を引いたやまなしのピアスが揺れて頬を叩く。影はその横をすり抜けてしずおかにデコピン一発。 「痛っ! え、何?」 鼻息荒く宙に浮くそれはまるでハサミに人形の半身を乗せたようで。 そのハサミ人形――御馴染み元祖アイドルはさみさん――は、しずおかに一瞥を残してくるりと振りかえり、 「やまなっちゃん、時間です。闘技場へどうぞ」 「ああ……なんだ、呼び出し係の子ね。じゃあ行ってくるわね」 「子供ではありませんが」 「待って、止めようって……まったく! ねえ、セコンドは入ってもいいんだよね」 「まだイチャつく気かこのイケメンめ。……いいですよ、どうぞ」 「桃花さん、お時間ですー」 扉を翅を振るわせながら全身で押し開けて、頭巾の少女が声をかける。部屋にははたして、目当ての少女が一人静かに待機していた。 扉に背を向けている為、顔より先に結い上げた艶やかな黒髪が便利頭巾の視界に入る。灯りを弾く硬質ですべらかなそれはまるで。 (私たちの鞘翅みたいですーって言っちゃだめですか。だめですね!) こっそり一人ボケツッコミ。 そんな一人漫才に気づかないのか、桃花は応じずぼんやりと壁を見つめている。想いを馳せているのか、その表情はどこか寂しげ。 「桃花さーん大丈夫ですかーお腹痛いですかー」 「……大丈夫。でも置いてきた妹や仲間が心配で」 「お仲間さんですかー。……えっと、でも無限彼方さんはーこの大会に参加してますよー」 「……彼方、も?」 その言葉に意識を引き戻されたか、桃花の目に光が宿る。 「行きましょ」 確りとした動きで立ち上がり、黒いプリーツスカートを翻して部屋を出る。慌てて便利頭巾が飛び従う。 「ねえ」 「なんですかー?」 「何で、私だったのかな」 「何でって言われましてもー。貴女が無限桃花さんだから、じゃないでしょうかー」 「それは、そうだけど」 それきり無言でほの暗い廊下を行く。響いていた足音と羽音が次第に明かりと喧騒に飲まれていく。選手入場を彩る軽快なマーチのリズムが否応無く気持ちを高揚させる。 桃花はひとつ息を吐き、背筋を伸ばしてゲートをくぐった。 『――そして対するは、無限桃花選手。入場です!』 アナウンスが名前を告げると、ひときわ大きな歓声が会場を揺らした。先に入場したやまなしはその衝撃に苦笑い、持ち込んだ軍配をかたく握り相手を見やる。 リングに上ったのは黒いセーラー服のすらりとした少女だった。武器持ち込み禁止の試合ゆえ手は空だ。 『今試合はセーラー服姿での参戦となります桃花選手。柏木さん、どう見ますか?』 『彼女には色々な設定があるから一概には言えないね。ただどの設定であってもある程度は戦闘慣れしているだろう』 『なるほど、データ上は前歴の無いやまなし選手不利、ということでしょうか。なにやら赤い房の付いたうちわを持っているようですが』 『軍配団扇だね。武将が指揮を執る際に振るったものだ。殺傷能力は皆無なので武器にはあたらない』 『ステッキや呪符と同じ扱いというわけですね』 歓声と解説にBGMが混ざり溶ける中、対峙した二人の間に審判よし子が立ち、事前説明をてきぱきと進める。 「よし子かわいいよよし子!」 「五月蝿いぞ裏方ーっ! 邪魔するなよーっ!」 茶々いれにも忘れずツッコミ。しずおかに付いてちゃっかりとセコンド席にいる裏方はさみさん、これにはしょんぼり。周囲の緊張感がほんの少しほぐれる。 「……セコンドの男の人、彼氏?」 「だっちもねえ……っじゃなくって! 冗談言わないで。隣人よ、り・ん・じ・ん」 「そうなの? でもいいなぁ付いてきてくれる人がいて。私は妹とはぐれちゃって」 「確か妹さんも参加者だったかしら。……あなた案外普通の子なのね。もっと時代がかった子だと思ってた」 「いろいろ、居るんですよ」 「えーと、そろそろいいかー?」 きりの良いところでよし子が声を上げる。実況席に合図を送り―― 「――ファイッ!」 『試合開始です!』 やまなしが動く。一気に距離を詰め、左手の軍配で桃花の視界を遮りその陰から掌底を打ち込む。 胸元に吸い込まれそうな一撃を、桃花は左腕を絡めるように払いあげ、続けて右腕で軍配を払いのける。互いに両手を伸ばした状態、桃花が続けざまに足払いをかけるとやまなしはあっさりとバランスを崩し片膝をついた。 『これは予想外と言っていいのでしょうか! 序盤からスピーディな攻防!』 『桃花選手はやはり慣れているね。やまなし選手がどう切り抜けるかが……おや』 屈みこんだやまなしに向かって桃花が再び足技を仕掛ける。しかし距離をつめたその瞬間、振り上げられた軍配が桃花のスカートを引っ掛ける。 会場内の声援が若干野太さを増した。桃花は慌てて裾を押さえ、数歩下がる。その隙にやまなしは体勢を立て直した。 「きゃあっ!? ちょっと!」 「あら可愛い下着。試合にスカートだなんて事故起こすの目に見えてるじゃない」 『えー……なんと言いますか。やまなし選手、奇策で危機を脱しました!』 『まあ、若いお嬢さんを心理的に揺さぶるには手軽な作戦かな。先の試合を見た観客には物足りないかもしれないが』 『そ、そーですね……っ』 思い出してちょっと赤面するアンテナさん。顔を出さないお仕事でよかった。 「ありえなーい! オトナのクセにこんな子供じみたことするなんてっ」 「大丈夫よ、後ろの観客からは見えてないから」 「……やまなっちゃん、実は結構悪戯好きだよね」 「五月蝿いわよしぞーか!」 「素人さんには手加減しようと思ったけどやめた! ひきょーものはさっさと倒して彼方に会いに行くんだから!」 そう吐き出すと桃花はさらに後退り距離をとる。そして。 休憩中に用を済ませようとした水野晶は、女性特有の混雑に巻き込まれ遅れて観客席に戻った。しかし慣れぬ建物ゆえか通路を間違えてしまったらしい。連れの陽太の姿はおろか、周りの観客にすら見覚えが無い。 きょろきょろと周囲を見回して、晶は見慣れぬ光景をいくつか目撃した。 一つはジャージ姿の男女。蒼い髪の少女には見覚えがあった。陽太が(無事に二回戦に進めば)対戦する相手、クリーシェ。隣の無精ひげの男性には覚えが無い。何事かをクリーシェに頼み込んでいるようだが内容は聞こえなかった。 しかし晶の注意を引いたのは会話の内容ではなかった。 男の指先に黄色い光が灯るや、そこにみかんが出現している。クリーシェが丸ごと食べればすぐにまたみかんが現れる。 (陽太みたいな能力の人、他にも居るんだ) いま一つは観客席の最前列。そこに居たのは和装の少女。彼女にも見覚えがある、先んじて戦い、同名の相手を下した少女。 無限彼方が晶の気を引いた理由は単純明快。リングへ向かって叫んでいたからである。 「私はあんたの妹の彼方じゃなーーーーーーい!」 「ピーチ・プリズムパワー・メーイク・アーップ!」 『な、なんということでしょう! 桃花選手が……! 桃花選手が、変身、いたしました!』 アンテナさんが叫ぶ。歓声がざわめきに変わる。よし子とやまなしはぽかんと口をあけていた。セコンドの二人も同様だ。 目の前にいるのは間違いなく無限桃花。しかし平凡だった黒セーラー服はカラフルな色合いと妙に短いスカート丈、ボディラインの際立つタイトな上着に変化していた。 「愛と正義のセーラー魔法少女、ももか! 夕鶴さんに代わって御っ仕置きよ!」 「……って、お前かーっ!」 そのツッコミは、果たしてよし子一人のものであっただろうか。 『……な、なるほどそういうことか』 『知っているのか柏木っ!』 『魔法少女ももか……数多いる無限桃花のうちの一人で、確認されている中では数少ない、あるいは唯一の魔法少女……。まさか彼女が参加していたとはっ』 『な、なんだってー!』 もはや定着気味のやり取りである。 「……そりゃ、時代がかってないわけよね、侍じゃないんだもの」 漫才解説を聞いてようやくリアクション。こめかみに手を当てる。ああ頭痛がする気が抜ける。信玄公ごめんなさいこの試合捨てていいですか。 「な、何よそんな呆れた顔して! 呼ばれちゃったものは仕方がないじゃない。折角妹と一緒にクラスの男の子助けに行こうとしてたのに! えーい、ももかキーック!」 戦意を失いつつあるやまなしに問答無用のジャンピングキック。とっさに軍配を盾にするも身構えてすらいない彼女を、体重のかかった一撃が容赦なく突き飛ばし、石畳に叩き付ける。 「……イロモノかと思いきや、案外やりますね」 着地した桃花の耳に、観客席からの声が届く。はっとして視線を巡らせれば、記憶とは若干姿や印象は違えど愛おしい相手。なにより聞き間違えることなどない、この声は。 「彼方! 見ててくれたのね!」 「……ちょっと、名指ししないでよ……」 「見ててね彼方! お姉ちゃん頑張るから! 終わったらすぐそこへ行くからね!」 そして熱烈な投げキッス。観客席の無限彼方は思わず鳥肌。 「私はあんたの妹の彼方じゃなーーーーーーい!」 「……ったあ……」 カウント半ばで立ち上がる。蹴られた左肩をさすり、観客席に向かって――正確にはただ一人に対して――パフォーマンスをしている桃花を見据える。 「やっぱり正面からじゃ無理よね。そうすると……」 服の埃を払いながら独りごちる。今までの桃花の言動を思い返す。 「まだ続けるかー?」 「……やるわ」 「オッケー。……こらそこ色気飛ばしてんなーっ! 試合続行だーっ!」 「えー、まだ続けるの? もう降参してくれません?」 「だっちもねえこんいっちょし!」 「日本語でおkーっ! ――ファイッ!」 軍配をエプロンの紐に差し、やまなしが両の手でパンチを繰り出す。突き、あるいは払い。しかし桃花はそれを難なくかわし、受け止める。 『やまなし選手ラッシュ! ラッシュ! しかし桃花選手余裕の表情!』 『メイクアップ……つまり変身したことで身体能力が上昇している可能性があるね』 「寄生獣に比べたらワイン屋さんの攻撃なんて!」 「五月蝿いっ! あんたさっきの蹴りでピンクのギンガムだって完全にバレたわよっ!」 「っきゃー!?」 ぱっと頬に朱が差し、桃花の動きが鈍る。そこへ防御を潜り抜けた一撃。腹部に響く鈍痛に思わずよろめく。 「パンツじゃないからっ……恥ずかしくないもん!」 「その割に真っ赤よあなた」 「違うったら違うの!」 「じゃあなんなのよ、あのピンクのギンガムチェック白レース付き! 魔法少女も大変なのね、フ・ァ・ン・サ・ー・ビ・ス♪」 「そんなんじゃないわ!」 「大体ね、……その歳で魔法少女は、恥ずかしくない?」 「……! 信じらんない! バカにしないで! 彼方! 愛するお姉ちゃんに力を貸して!」 内心思っていたことを突かれて顔が熱くなる。桃花が両腕を突き上げると手首の周りに黒い靄が漂い、丸く輪を描く。程なくして現れたのは二枚の黒い円月輪。 『やまなし選手、挑発でしょうか! 桃花選手、円月輪を召喚しました!』 『武器は持ち込み不可だが召喚は可。あれは妹さん、つまり魔法少女かなたの武器・マルだね』 「そう、普段は彼方の武器。でも私が使えば――」 その一枚を掌に載せ脇に抱きこみ、背筋をバネに解き放つ。 「――ピーチ・ティアラ・アクショーーーーン!」 「ティアラじゃねーっ!」 よし子のツッコミを他所に、黒円月輪がやまなしに襲い掛かる。回避を試みるもかわしきれず、二の腕が切り裂かれ、白いシャツが赤く染まる。 「くっ……!」 「もう一発いくよ!」 痛みにひるむやまなしの正面に、二枚目の円月輪が襲い掛かる。 『これは避けられない! 万事休すかーっ!』 ギャリギャリギャリッ! 「!?」 誰もが感じた惨劇の予感は赤い光と異質な音によって否定される。 残像がちらつく目を擦れば、黒円月輪はやまなしの目の前で輝く壁によって弾かれ、転がり落ち、靄と消えるところであった。 『なんと! 突如やまなし選手の目の前に白い壁が出現しました!』 「な、何……これ、氷?」 白い壁のように見えるそれは、傍に居るものにははっきりと一つ一つを視認できる。大きさは小石から握りこぶし大、透明なものから色づいたもの、凹凸のあるものから研いだように鋭いもの――それらが彼女を護るように宙を漂い、照明を弾きながらなだらかな稜線を持つ三角形の板を形成している。 『まるで雪化粧した富士山のような壁です! 柏木さん、これは一体!?』 『……どうやら水晶のようだね』 「水晶!? どこから!?」 「――動かざること、山の如し。……危ないあぶない。真っ二つになるところだったわ」 必勝の一撃を防がれて動揺する桃花に、水晶富士の裏からやまなしの声が返る。 「何が起こったんだイケメン!」 「……いい加減その呼び方止めてくれないかなあ」 頭上でぴしぴし手刀を繰り返すはさみさんにしずおかがぼやく。 「僕ら、地元ゆかりのモノなら割と自由に呼び出せるんだよ。やまなっちゃんは昔から水晶細工が得意でさ」 「な、なんだってー!」 このはさみさんも大概ノリノリである。 「し、所詮砂利の山よっ! 謝らないならぼんがぼんがにしちゃうんだから!」 一枚になった黒円月輪を放つ桃花。でもちょっと勿体無いな、などと思いつつ。 軌道を変えて幾度も襲い掛かる刃を水晶富士が阻み続ける。円月輪の刃はさながらグラインダー。水晶は割れ、弾かれ、徐々にではあるがその身を薄くしていく。 『桃花選手の猛攻ーっ! やまなし選手手も足も出ない!』 「……くっ」 やまなしは動かない。挑発は意図したものだったが刃物を持ち出されたのは予定外だった。咄嗟に水晶を生むことで助かりはしたが、手の内を披露してしまった。 桃花がいかに興奮しているとはいえ、うかつに動けば狙われるのは目に見えている。 欠け行く富士の裏で鋭い視線を周囲に向ける。時間との勝負だ。 しかしやまなしが動くより早く、再びその身に痛みが走る。 『崩れた! 崩れました! 桃花選手の一念、水晶をも通しました!』 黒円月輪がついに水晶富士を突破した。浅く、ではあるがふくらはぎを裂き、小さなうめき声が上げる。 なおも攻め来る黒い刃を、急ぎ握った軍配で払いのける。力を込める度、腕から脚から、じわじわと血が流れ出る。 「やまなっちゃん! もう無理だよ!」 これ以上続けさせるわけにはいかない。しずおかがその手に白いタオルを呼び出した。しかし投げようと翻したその裾を、銀の刃が地面に繋ぎとめる。 「まったく過保護なイケメンだ」 「はさみさん! どうして邪魔を」 それには答えず小さな手が指し示すやまなしの横顔。刃をかわしつつ忙しなく周囲に視線を送るその姿は一見逃げ道を求めているようにも見える。 しかし、目の端に小さな赤い光が灯っては消える。同族であるしずおかにも馴染みの現象。 「止めるのは彼女の気が済んでからでも良いのではないですか」 あまりの鳥肌に一度は姉の姿の見知らぬ他人を拒絶した無限彼方だったが、観戦は続けていた。 姉と当たるまで負けるつもりは無かった。勿論、いずれ対戦するであろう姉にも負けるつもりは無かった。予想外にがっかりな姉っぽい他人ではあったが、相手の情報を得ておくことは彼方にはごく当然のことだった。 「……バカ」 観客の熱狂や悲鳴を他所に冷静に試合を分析していた。だからこそ本人より先に気づく。 ぐらり、とやまなしの身が傾いだ。慌てて踏ん張れば傷口がうずき、へたり込む。 「ダウン! カウント取るぞーっ!」 審判よし子の宣告。制止を受けとまる桃花の攻撃。 「はあ、はあ……っ! そろそろ、謝る気になった!?」 「……あなた、生まれはどちら?」 「何よ!?」 「出身地、よ。設定上の。……西日本かしら?」 「3! 4!」 「そ、そんなこと聞いてどうするのよ? 私が聞きたいのは!」 「忠告。しておこうと思って」 目を伏せて、開く。意思の強そうな茜色の瞳がきっと桃花を見据える。 視線に応じるように赤い光が灯り、拳よりやや大きな桃色の球体が二人の間に浮き上がった。 「うちの桃は西のよりも、かたいわよ」 ばっと、軍配を水平にかざす。 「――動くこと雷霆の如し!」 『なっ! なんでしょう! リングを幾重にも縁取るようにピンク色の球体が!』 『桃だね。しかしとんでもない数だ』 そう。殺風景で無骨な石畳のリングは突如現れた無数の桃に縁取られ、飾り立てられていた。満足そうにやまなしが立ち上がる。対する桃花は気勢を失う。この量、先程の水晶の比ではない。 「ちょっと……なんなのこれ!」 「桃よ。私の特産品なの」 「そうじゃなくって! いつの間にこんなに……っ」 「ずーっと作ってたんだけど? 興奮しすぎて気づかなかったかしら? ……何の変哲もない桃だけど、逃げ場はないわよ?」 にこり。 ピンクのポニーテールを翻し大人びた微笑。しかし細められた目にもあがった口角にも、いい知れぬ凄みが宿っている。 「子供じみてる? 卑怯者? 結構ね。私は格闘家でも魔法少女でもないもの、反則しない限り使えるものは使うわよ。……下着を暴露したことは謝ってあげるわ」 すい、と軍配が天を指す。ようやく冷静さを取り戻した桃花が黒円月輪を構えようとするが、目の前に一つだけ浮いていた桃が飛来し弾く。 軍配が振り下ろされ、まっすぐに桃花を示す。 「ちょっ、待っ……」 「審判、伏せなさい! 全軍、突撃!」 「きゃーっ!? きゃーっ!?!?!?」 「……お、終わった、か……っ」 さながら弾幕シューティングのような頭上の光景が治まったのを認め、そろりとよし子が頭を上げる。 「うわっ……甘ったるい」 視界より先に鼻が状況を把握する。周囲は甘い桃の香りで満たされていた。石畳はさほど汚れてはいない――一箇所を除いては。 大量の桃が山と積まれている一角。その山の麓では艶やかな黒髪を果肉と果汁でベタベタにした桃花がクルクルと目をまわしていた。 「カウントいらないなーっ! 無限桃花、ノックアウトー!」 宣言に会場が揺れる。歓声に混じる悲鳴は彼女のファンのものだろうか。 痛んだ軍配で肩を叩きながらやまなしは振り返る。複雑そうに見つめるしずおかと目が合った。 「ね、成る業だったでしょ?」 『やまなし選手の勝利です! なんと一瞬の形勢逆転劇でした!』 『いや、どうだろう。メンタル面を見れば桃花選手が劣勢だったようにも思えるね』 『なるほど、そうかもしれません! それでは早速、次の試合に参りたいと――』 興奮冷めやらぬ口調で進行を続けるアンテナさん。 しかしその熱心な仕事に申し訳なさそうに邪魔が入る。 『先輩~会場のあんてなです~。リングが桃でべったべたです~掃除するまで待ってください~』 「挑発に乗って負けるだなんて、あなたそれでも無限桃花なの?」 医務室を訪れた彼方は、桃花の意識があることを見るや労いより先に辛らつな言葉を投げかける。 「あ、彼方! 来てくれたのねお姉ちゃんうれしー」 「だから私はあなたの妹の彼方ではないと!」 痣だらけ果汁だらけの身体でハグを求めるも、彼方はするりと避けて距離を置く。しょんぼりとかわいらしくしょげる桃花の姿に呆れたようなため息ひとつ。 「格好つけて『対戦相手に挨拶してこい』なんて言ってたくせに。すっかり騙されたわ」 「え? そんなことしてないよー」 「……え?」 「だって私、いきなり変な光につつまれてここに連れてこられてから、ずっと一人だったもの。控え室に居ておトイレ以外出歩いてないし、彼方が居ることも案内係の子に聞くまで知らなかったよ」 きょとんとした顔で説明する桃花。 「で、でもさっきは……それに他の選手も桃花らしい侍を見てるって」 「あ! もしかしたらトウカさんかもしれない! あのね、私たち、ここに来る前は寄生獣のアジトに乗り込むところだったの。その時一緒に居たトウカさんって人がお侍さんっぽい格好した女の子でね」 「……それが私が話した桃花だったかもしれない、わけか」 一応、合点はいった。しかしなんとも、釈然としない彼方であった。 【一回戦 第16試合 やまなし VS 無限桃花】 《勝者 やまなし》 prev next 一回戦 第二試合 一回戦 第十六試合 一回戦 第六試合 - やまなし 二回戦 第八試合 - 無限桃花 -
https://w.atwiki.jp/momodoubt/pages/69.html
601. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 01 17 ID ??? ブログのコメントまたきた 602. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 04 12 ID ??? 601 うp 603. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 05 05 ID ??? 601 もうあったよ つらかったって 604. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 06 51 ID ??? 追求うんぬん別にして、これだけ大きな話題に なっているんだから、本人のコメントを聞きたい。 でも無視するんだろうな... 605. 谷原[0]2009/07/16(木) 09 12 38 ID ??? 桃ちゃん何かあったの? 606. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 13 16 ID ??? まだやってんのか? こんなことでしか盛り上がれないならゴルフやめろよ 上田が気付いてたとしたらそれでいいじゃないか 607. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 13 37 ID ??? たいして問題になってないよ 2ちゃんとゲットインザホールで騒いでるだけ つまらん話だし 608. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 14 18 ID ??? 606 賞金ネコババしたままでいいの? 609. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 16 50 ID ??? 607 気になってしかたがないのぅw 610. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 17 23 ID ??? 608 べつにいいだろ俺の金じゃねーし 611. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 18 50 ID ??? 609 あ~気になるねえw プロの目的は賞金稼ぎだけだし、それで不利益を被った 善良なプロがいるかと思うと気の毒でならないよ。 612. 名無野カントリー倶楽部[]2009/07/16(木) 09 19 09 ID MHREY0Xt 悔しい-ということを忘れないために、あの写真を公表したんでしょう。 もちろん、当人が一番悔しいと思います。 僕も悔しくて仕方ありません。 人間は、ムシのいい生き物です。得したと思い続ければ何でもないのです。 あの一打を引きずり、みだれた弱い精神を恥じないと、メジャーの勝利は ありません。 どんなことがあっても動かない「ぶっつぶれたボール」と精神が必要なのです。 613. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 20 47 ID ??? そんなにひどいのかと思って動画見たけど ディンプル1こ分で「動いた」「失格だ」とか言ってんのかwww ネタにマジレスしてるようなスレだな(笑) 614. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 22 15 ID ??? 賞金額というのは来年度のシードにも関わる問題だからな。 上位者は賞金女王を争うわけだし、それで泣く泣く全米出場を見送った選手だって 数人いるし、こういう不正が少なからず影響するわけだ。 普通のプロ選手だったら我慢できないだろう。 615. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 25 25 ID ??? 協会もいつまで黙っている気だろう。 616. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 25 41 ID ??? 上田さんはボールに線引いてますか? 解説では線がって 617. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 26 48 ID ??? 岡本綾子はセーフって思ってるよ だからセーフだよ 618. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 27 20 ID ??? 611 ああごめん。 607は関係ないね。 619. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 27 32 ID ??? 1打追加でも予選通ったんだし潔く申告すればよかったのに セコすぎ 620. 名無野カントリー倶楽部[]2009/07/16(木) 09 28 14 ID yFZYk1Dj オートリプライを読む限り3~4週かかる 621. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 28 22 ID ??? 根性ババ色 622. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 29 42 ID ??? 618 自演してるとわからなくなっちゃうよね 623. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 38 09 ID ??? 613 オジサンゴルファーが仲間内で握りやってんじゃないんだから、 ディンプル一個分だろうと動いたは動いた。 否定するなら、それはゴルフじゃ無い。 624. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 38 28 ID ??? なにかと問題になることが多いね また滝に打たれて清めてきたほうがいいよ 625. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 40 02 ID ??? 除霊してもらった方がいいかもね たぶんダックスフンドの霊が憑いてる 626. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 46 16 ID ??? 623 アホか?ディンプル1個分を上から見て「気づいた」かどうかだろ? 上田はあの映像目線では見てないんだぞ いつからゴルフはビデオ判定になった?ゴルフはプレイヤーの自己申告が大原則 否定するなら、それはゴルフじゃ無い。(キリッ 627. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 49 33 ID ??? 626 あんた天才だね 628. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 50 39 ID ??? 626 本人が自己申告しなくて、ビデオで判定されることはよくあるだろ。 最も情けない、判定ではある。 629. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 55 03 ID ??? ビデオ判定が無効ならさくらの失格も不当になるな 630. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 56 22 ID ??? テレ朝!しっかりしろ 631. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 57 00 ID ??? このスレでは上田だけ特別救済しようという動きがあるのは事実w 632. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 59 29 ID ??? ボールが動いちゃったから、反射的にパターを上げたように見える。 ティーショットでボールがティーから落ちちゃったみたいなもんかな。 もちろん、これはインプレーにはなってないから問題ないが。 633. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 09 59 40 ID ??? 629 さくらは間抜けなとこがあるからな 634. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 00 30 ID ??? 戸張に直接連絡する手段がないんだよな あいつ放送で何でも言える立場にありながら説明責任の場は設けてないんだな 635. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 02 29 ID ??? 今回のことをつまらんと言う 607みたいなファンを持つ上田桃子も気の毒だ 636. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 03 29 ID ??? 635 くやしいのぅw 637. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 04 18 ID ??? 607 つまらん話しではないだろ 638. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 04 23 ID ??? 今日のキーワードは「ディンプル1個分」の模様です。 639. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 06 07 ID ??? もう一度見てみる ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 640. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 09 31 ID ??? 『人生のコーチはいつもグリーン上にいた』戸張捷 http //item.rakuten.co.jp/book/1739015/ やはり戸張さんにコメント貰いたい。 641. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 11 09 ID ??? 607= 636 642. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 12 41 ID ??? 639 動いてないな 643. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 13 06 ID ??? しかしこうしている間に、Youtube高精度版が伸びている件。 644. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 15 40 ID ??? 639 ソールしてない件 645. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 15 54 ID ??? あらら、動いたのが良くわかるんだね スゲー高画質だ ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 646. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 17 08 ID ??? すげー ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 647. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 17 26 ID ??? 動いたというより 揺れただけだ。 648. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 18 33 ID ??? これみろよ。目瞭然じゃん ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 649. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 19 18 ID ??? なんだよ、こんなによくわかる 動画があるじゃないか 650. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 19 58 ID ??? 訂正 これみろよ。一目瞭然じゃん ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 651. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 20 41 ID ??? なんかしつこいヲタがいるな 652. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 21 55 ID ??? だろ、分かってもらえれば良いんだよ。こんな分かりやすい映像他に無いよ。 ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 653. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 22 15 ID ??? 終わったな キチガイが連投してら やっぱりヤッカミスレだったんだな 654. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 22 30 ID ??? 上田桃子 ~ 桃尻 桃子の「待ってろ世界!」 http //momokoueda.blog.so-net.ne.jp/ 655. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 24 16 ID ??? 626たしかに上田選手はTV映像のアングルから球を見ていたわけじゃない。 しかし、人間の目以上のレンズなどないのです。 you tubeの高画質で見てもピントの甘い画像なのがわかります。 ほぼ真上から見れる上田選手自身にはもっと明確に球の動きが見えるのです。 656. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 24 20 ID ??? 他の球技板で動いたかどうか、この動画を見てもらってくるか バスケやバレースレだと感情が入っちゃうから、それ以外で 657. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 25 59 ID ??? あれ 連投やめたんか 658. 名無野カントリー倶楽部[]2009/07/16(木) 10 26 09 ID MHREY0Xt タイガーあたりで、周辺が気付かない自己申告での一打加算が発生しないかなぁ。 テレ朝で、どんな解説聞かせてくれるのかな? 659. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 34 26 ID ??? 桃子ブログのコメント削除されないのか? 660. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 34 44 ID ??? 球にはディンプルがあるから、たまたま稜線が真下にくれば 座りの良い位置に球が回ることは考えられる。 今回はこのケース。 それを動いたと見るか、 動きそうになったと見るかは 個々の判断基準があるから、なんとも言えない 661. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 36 20 ID ??? 660 あほか 662. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 40 10 ID ??? いつもパターのフェイスとボールをピッタリつけているから ボールを押しちゃったんじゃねえの 663. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 42 07 ID ??? 協会やテレビ朝日は本当に無視するつもりか?許さんぞ。 返答がくるまで追求する 664. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 43 19 ID ??? 35 球が動く、球が動かされる(Move or Moved) 球が止まっている位置を離れ他の場所に行って止まったとき、その球は「動いた」ものとみなされる。 これから解釈すれば、今回のこのケースでは 止まっている位置を離れて他の場所には行ってないからセーフだな 665. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 43 42 ID ??? ソールしてないね 666. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 44 14 ID ??? ゆれただけ 667. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 44 20 ID ??? 664 あほか 668. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 46 19 ID ??? ようつべの再生回数が1万回こえたね 669. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 46 52 ID ??? 揺れただけか 全英でノーマルも何度も仕切り直してたね 670. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 47 00 ID ??? ゆれは動いた事にならないね 671. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 47 43 ID ??? あ、そうかこれは動いたことにならんのか いやー一本取られた 672. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 47 54 ID ??? 668 まじ? すげーな 673. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 48 52 ID ??? ブログのコメント完全に悪意丸出しじゃん。荒らし認定されそう 674. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 49 16 ID ??? ソールもしてないね 675. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 49 36 ID ??? 672 ttp //www.youtube.com/watch?v=bcmM4tZ-w6s feature=related この動画ね 676. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 49 47 ID ??? 本当だ ボールのラインの角度が変わって、動いてるんだね 677. 名無野カントリー倶楽部[]2009/07/16(木) 10 50 36 ID ZY9J0jCc 日本人選手の足を引っ張ろうとするチョンうぜ~~~~~ 678. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 51 53 ID ??? 逆だろ。日本人は自分に厳しい。 679. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 52 02 ID ??? また新鮮なのが出てきたな 680. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 55 24 ID ??? ゴルフやっている人なら、揺れてるのと動いているのは判断できるだろう。 681. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 56 22 ID ??? ようつべは100万越えたらすごいだろうが やっと1万って・・ 682. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 10 57 05 ID ??? 35 球が動く、球が動かされる(Move or Moved) 球が止まっている位置を離れ他の場所に行って止まったとき、その球は「動いた」ものとみなされる。 球は離れて他の場所には行ってないことは明らかだ 683. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 58 08 ID ??? 679 自演だけどね 684. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 58 34 ID ??? 654 ファン同士の馴れ合いが気持ち悪かった 685. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 10 58 39 ID ??? 682 ルール上はその解釈となるよね 686. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 00 21 ID ??? 真面目に揺れたという解釈でいいのかも 687. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 00 38 ID ??? 今回は、ラインが最初の位置からズレているからな。 688. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 11 00 43 ID ??? youtube1万wwwww 結構みてると思うw 689. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 01 45 ID ??? ビデオで見ると、ゴロっとしてるように見えるからな。 690. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 02 10 ID ??? 確かに揺れたよね 691. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 02 35 ID ??? 688 このスレだけでだから、スゴイんじゃない 692. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 04 12 ID ??? ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 これ見たら、ゴロっとなってるように見えるんだけど 693. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 11 05 58 ID ??? http //momokoueda.blog.so-net.ne.jp/2009-07-14#comments 誰かが上田のブログにコメントw 694. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 06 42 ID ??? ニュー速+に飛び火 61 名前:名無しさん@十周年[] 投稿日:2009/07/16(木) 10 50 34 ID qzERdcOK0 毎日は賠償。朝日はスルー。マスコミはどうなってんだろう ↓下記問題をゴルファーが問題提起しているがテレビ朝日からの回答はなし ご協力お願いします。 【失格】上田桃子 過少申告スレ3【USLPGA】 http //schiphol.2ch.net/test/read.cgi/golf/1247640647/ 695. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 07 05 ID ??? 仮にゴロッとなったとして、どっちにゴロってなったかが問題だよね。 ◎ボールが動いた”真実”の映像(高画質版) http //www.youtube.com/watch?v=KtVMJ3iMd1g 拡大 1 55~1 56 超拡大 2 09~2 10 スロー 2 18~2:20 696. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 11 10 21 ID ??? >ゴロっとなってるように見えるんだけど 止まった位置からは離れていないのでセーフ 止まった位置に接して揺れただけだ ルール的にはね 697. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 12 25 ID ??? 696 揺れるとアドレス外すよね。 698. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 13 10 ID ??? 694 芸スポ速報じゃないのか? 699. 名無野カントリー倶楽部[sage]2009/07/16(木) 11 13 41 ID ??? プロなら揺れても競技委員を呼ぶのが普通。 700. 名無野カントリー倶楽部[age]2009/07/16(木) 11 14 04 ID ??? youtube1万か、ふ~~~~~~~~ん す、す、すくねぇってレベルじゃねーーーーぞ!!! 続き↓ 【失格】上田桃子 過少申告スレ3【USLPGA】 701-800
https://w.atwiki.jp/f-konami/pages/60.html
雪返り 後編 「こんな所にいたのか。一言あってもいいんじゃないかな? 狭い村とは言え、二人しかいないんだ。君が一人の時は、必然的に私は一人ぼっちなんだよ。寂しいじゃないか」 「それは悪かったな」 さらに何日過ぎたか分からない頃、階段の下から祭壇まで見上げる深海に、ぶらりとやってきた鹿島が声をかけた。 「本当に悪いだなんて思ってないくせに」 「それは鹿島も同様だろ」 長い付き合いをしていなくても深海には分かっていた。鹿島はいつだって人の中心にいて輝いていた太陽みたいな人間だったが、同時に闇夜を一人照らす月みたいな孤高さも兼ね揃えた人間なのだ。 中学生の時に、そこまでの境地に達していた理由がなんなのかは、鹿島を聞いた深海も知らない。もしかしたら病気が原因だったのかも知れないが、人間はそこまで単純ではないものだ。 村道は深海の、往路と復路の足跡で踏み固められていた。その足跡を器用に辿るようにして鹿島は向かってくる。着物と下駄を着こなす鹿島は歩き慣れた調子で、悠々と深海の隣に並んだ。 「そんなに見つめたって、機会はこないよ。君が心から生き返りたいと思ったときが、その時さ」 その指摘はその通りだった。 積極的な願望は、今の深海にはない。 「……生き返るために、何か代償はないのか?」 「ないね。少なくとも私は知らない」 「それは妙だな。どんな蘇りの伝承だって、人が生き返る話には代償がある。そしてそれが破られてしまうと言うのも定石だ。例えそれが神話でもな」 イザナギは良いと言われるまで妻を見るな、であったし、オルフェウスは洞窟を抜けるまで後ろを振り返るな、であった。他には生き返るのに別の生け贄が必要とされたり、生き返ったとしても体が腐敗していたりと、蘇りには悲劇がつきものである。結局、急いて覗き見てしまったイザナギは、妻の腐った死体を見つけて逃げ出してしまい、妻が洞窟を抜ける前に振り返ってしまったオルフェウスは、二度と妻に会うことが能わなかった。 「深海くんの場合は、前提条件が違うだろう?」 「俺はまだ、完全には死んでいない……ということか」 「そう。だから生き返るのに代償はいらない。ついでに言うと、死に帰るにも代償はいらないってことだよ」 「黄泉比良坂か」 深海は自然と、入ってきた坂をそう読んでいた。振り返った視線の彼方には、登った先が霞む件の坂が見えた。あそこに行けば、死ぬ。鹿島の言葉が思い起こされる。 もちろん神話的な意味での黄泉比良坂ではないが、幽明相隔てるという意味では、同じ意味だろう。 「それに神話の話に代償が必要なのは、あれにはそもそも矛盾があるからだよ」 「矛盾ね……神話に訂正を入れるだなんて、大人げないな」 「私は十四歳だよ。十二分に子供さ」 ふと横を見てそこにいたのは、鹿島であって鹿島でなかった。正確に言えば、十四歳のあの頃のままの鹿島が居た。身長は少し縮んだ程度。中学の頃から大人びた風貌をしていたからそれほど変わった部分はないよう思えたが、全体的に痩せており、やはりそこにいたのは十四歳の鹿島だった。指に填められた指輪が、笑ったように光った。 「それが本来の姿なのか?」 「さあね。私にも分からないよ。私は深海くんの中の、鹿島雪菜だからね。意識(クオリア)があるのか無いのかも定かじゃないな」 「他人なんて、みんなそんなようなものだろ。誰だって自分の見た世界(マヨヒガ)を生きているんだ。だから俺にとって、鹿島はやっぱり鹿島だよ」 「人はみんな、自分のマヨヒガに夢中——か。相変わらず、深海は冷めているね。だからこの世界には他の人がいないのか。頷けるわけだよ。私はその言葉に喜んで良いのか……」 そういいつつも、遠くを見詰める鹿島の表情は、まんざらでもないように深海には見えた。 「神話の矛盾はこの世界の矛盾だ。気付けよ、深海くん」 「どういう意味だよ?」 「その意味は自分で考えるんだね。死者は言葉を持たない」 「またそれか。自分が死んでいるからって、その逃げ口上はずるいな」 「ははっ」 高笑いをする鹿島を横目に、もしかしたら鹿島自身もその答えがなんなのか、分かってないんじゃないだろうか、と思った。ここにいる鹿島は、鹿島であって鹿島でない存在。突然若返った場面からも分かるように、変幻する鹿島雪菜は深海の幻想の産物だ。だから、深海の気付いていないことは、鹿島も口にするわけにいかないのだろう。 対話の形を取りながらも、自らと向き合い、自らの無知と対面していくこと。 ——そうか、これが納得……ということなのか。 マヨヒガも、神話も、事の真相に気付いてしまったら、物語は終焉を迎える。深海はそろそろ決断の時期が近いのかも知れない、とそう感じていた。 ■ 人の死には二種類あると思う。 自覚した死。 しない死。 鹿島は前者。深海は後者だ。鹿島雪菜は病という形で、日々体を蝕んでいく病魔と対峙し、自らの死と折り合いをつけながら、死んでいった。深海は逆だ。事故という形で、自らの死にすら気付かず、死のうとしていた。しかし、両者は死という一点では一致している。正反対のように見えても、その実、根源は同じなのだ。 そして死も、人の名前や姿形と同じだ。普通、自分の死を自分で見ることは出来ない。いつだって死と対面するのは他人であり、生きている者だ。それでも幽明を漂う自分を自覚できると言うことは、もしかしたら生と死の境目というのは、それほど頑強なモノではないのかも知れない、と深海は思った。 「お前なら、どうしたかな」 深海の突然の問い掛けに、縁側に腰掛け足を上下に揺らしていた鹿島が、振り向いた。 「ん?」 その応えはただの返事だった。しかし、深海もはっきりとした回答が欲しかったわけではなかった。 深海と鹿島の今の立ち位置が真逆だったとき、鹿島ならどんな選択をするだろうか。 ……いや、鹿島は似たような選択問題に既に解答していたのか。鹿島にとっては、病気しているときが、深海のこの状況と同様だったからだ。鹿島には選択の数が深海ほど多くなかったのかも知れないが、彼女は折り合いをつけられたのだろう。それがたぶん、あの日の深夜、二人で話した病院前の公園—— あの頃の自分ならどうだっただろう? 生きることに何か意味がなければならないと、頑なになっていたあの頃。今だって似たようなものかも知れない。しかし生きる意味にたどり着けなかったにしても、あの日の鹿島との邂逅には、意味があったはずだった。 だから今は…… 「時間だ」 「そうかい」 世界の終わりを告げる深海の言葉にも、相変わらずの淡々とした返事で鹿島は応えた。 「驚かないんだな」 「そろそろ……だとは思っていたよ。でも、何よりも、雪が降り始めたからな」 停まっていた君の時間が動き出した証さ—— ちらちらと庭先に舞い降りてくる雪たちを見上げて、鹿島は白い息を吐いた。目を細めて、家垣の輪郭線の向こうを眺める。雪霞に煙りながらも、薄らぼんやりと光る尾根の稜線があった。蘇りの祭壇があるとされる辺りだ。 「俺が居なくなった後、鹿島はどうするんだ?」 「さてね。日々の雑踏に揉まれる記憶の中で、徐々にカタチを失って雪のように溶けて消えるかな。死者って言うのはそんなもんさ」 ここにいるのは、確かに記憶の中の鹿島雪菜かもしれない。しかしそれでも、真実の鹿島雪菜でもある。 「折り合いをつけてくるよ」 「いってらっしゃい」 深海は縁側から庭先に飛び降りると、鹿島に背を向けた。降り出した雪は落ちた先から溶け消えていき、まだ積もらない。元々あった積雪に足跡を付けるようにして、儀式の場所へと向かって歩き出す。 「深海くん。オルフェウスだ」 去っていく深海の背中に投げかけられる、鹿島の呼び声。 「——振り返るなよ」 「……」 振り返ることも、返事を返すこともせず、深海は右手を挙げてその場を立ち去った。 「これはまた、もったいぶった演出だな」 長い石段を登った先に待ち受けていたのは、暖かな光を放つ祭壇だった。鹿島も言っていたとおり、そんなに仰々しい装置があるわけではなかった。山の中腹に設けられた平たい台地に、魔方陣のような模様が描かれており、それに沿うよう光が走査線のようになぞっている。 降り続く雪の中も、台地の上には雪は積もっておらず、雪形のないむき出しの地面に陣は走っていた。そこから立ち上る光が頭上の雲まで届いており、反射する光で辺りをほのかに照らしていた。 魔方陣の光に右手をかざしてみると、柔らかな感触が甲と平を覆った。神々しい光と共にみる者を圧倒するその光景には、どこか誘い込むような演出があった。 「やっぱり……な。まぁ、鹿島に言わせれば、これは俺のイメージの産物だからな」 かざした手を引っ込めて外套のポケットにしまい込むと、深海はくつくつと笑った。立ち上る光に照らされた舞い降りる雪景色は、幻想的だ。きらきらと乱反射を続けるそれは、豪奢な舞台装置であった。 「生きることと死ぬこと。鹿島にとっては、どうだったのだろう」 いつかの問い掛けに、黙りを決め込んだ鹿島の姿が思い起こされる。鹿島にとっての現世は、つらいものだったのだろうか。そんな素振りは全く見せなかったし、再び問い掛けたとしても、言えないから言わない——などと、狐のように細めた目付きでかわされる事は目に見えていた。 それでも、 「やっぱりあいつは、一番大事なことを言わない癖があるからな」 死は彼女の救いになっていたのだろうか。それは推測するしかない。何しろ鹿島は、私の全てを語ったとかぬけぬけと言ったくせに、肝心な病気のことを、あの時の深海には話してくれなかったのだから。 「振り返るな……か」 最後に深海に投げかけられた一言、死者を自称する鹿島が発したその言葉には、どんな意味が込められていたのか。 死者を蘇らせるという力を持った祭壇を見上げた。 折り合いは付けた。 この光景を目の前にしても心揺るがないと言うことは、深海にとっても、完全に納得がいったのだろうと判断しても良いだろう。 深海は振り返った。 「この世界の矛盾——考えなかったわけ、ないだろう?」 そして深海は蘇りの祭壇に背を向けて、石段を下っていった。引き留めようとする柔らかな光の抱擁も、もはや深海には届かない。 「お帰り、深海くん。いや、ここで初めて、さようならと言うべきかな」 「どっちでもいいさ」 黄泉比良坂の上に立っている鹿島を、深海は見上げた。羽織った着物は白いため、そこからはどれくらい待っていたのかは分からない。しかし、彼女の頭に降り積もった数ミリの雪から、それは見て取れた。 「意外に遅かったじゃないか。本当にこの世界で蘇ってしまったのかと、思ったよ」 「それは俺のせいじゃないな。杞憂というんだ」 それにどちらかと言えば、蘇りの祭壇に向かって歩き出した深海を、引き留めなかった鹿島の方が人が悪いだろう。しかし、鹿島はやはり肝心なことを言わないからな……。 お互いに呆れた笑みを浮かべた。 深海と鹿島との距離は十数メートル。そこまでの距離には、相変わらずの穏やかさで雪が舞い降りている。しかし、彼女の後ろには猛吹雪が吹き荒れていた。 ともすれば鹿島背後の轟音にかき消されそうだが、不思議と二人の会話はお互いに届いていた。 「いつから気付いていたんだい? この世界の矛盾に」 「いつから——といえるほどの明確な機会は無いな。それにこれは鹿島も言っただろう。徐々に納得していくものだ、って」 ただし、鍵はあった。幾度となく鹿島が、言内外に示唆していた含意だ。深海自身も知らずに語っていたかも知れない。 「死者が生きているという矛盾。それがこの世界の矛盾だな」 「大正解」 はっきりとした笑みを浮かべて、鹿島はまばらな拍手を送った。深海に向けたその表情は、とても死者ではなかった。 鹿島は言った。 ——そうだね。死んだ人間が生き返るなんて事は、絶対にありえないさ。でもね、深海くん。確かにこの村で人は蘇るんだよ 死んだ人間が生き返ることは絶対にない。だから現世に鹿島が生き返ることはないだろう。しかし、この村になら死者は生きられる。蘇ったのは他でもない。鹿島だったのだ。 鹿島は言った。 ——後は安らかな安寧と共に、自分のカタチを失うのさ。どこかの山奥で、誰にも気付かれないまま降雪し溶けていく雪のようにね。そして地に還ってゆく…… この村に住む者の終わりは、雪のように溶け消えるという消滅だ。死は訪れない。 そして何よりも、深海がこの世界の矛盾とは何か、を尋ねたときに彼女は言った。 ——死者は言葉を持たない これはだんまりを決めたのでも、答えに窮したのでもなく、そのままの意味だったのだ。死者の世界が言葉通りの意味で存在していたとしたら、そこにいるのは死者のはずで、言葉を話すことは出来ないはずなのである。 人々が黄泉の国や死者の国を思い浮かべるとき、そこにはつい、あたかも死者が生きているような姿を思い描いてしまう。それは生者の視点で死者の国を映し見てしまうためだ。しかし、冷静に考えれば、これはおかしいことが分かる。人間は死んだからこそ死者になるはずなのに、死者の国では死者が生きて暮らしているという矛盾。 神話の中の死者の国も、鹿島の言うこの黄泉の国も、死者なのに生きて暮らしているという矛盾がある。 つまり死者の国では、生と死の意味が逆転しているのだった。この矛盾を前提にして、死者の国から生者の国にいくことを考える。そうすると、死者の国で生きていることが、生者の国での死ならば、死者の国で死ぬことこそが、生者の国に生き返ること——真の意味での蘇りになるのだ。 「蘇る本人が歩いて蘇りの祭壇に向かうって所でも、気付くべきだよな」 「確かに、それほど馬鹿馬鹿しい行為はないよね」 死者を生き返らせようとするのは、生者のはずだ。死者が自ら歩いて蘇りの祭壇に向かうなど、これほど滑稽なこともないだろう。これには二人とも笑い声を上げるしかなかった。 「この世界の矛盾は、あの神話の矛盾でもある。オルフェウスもイザナギも、死者の国で自分の妻が生きていることに、まず狐疑すべきだったんだよ。それに気が付かないから、肝心なところで過誤を犯してしまう」 現し身を十四歳の、あの頃の姿に変容させた鹿島は、同じ口調でそう言った。 「神話に対しては俺が言えることは何もないが、振り返るな——か。あれは生者の視点で死者を映し見てはいけない、という意味だろう?」 「だから生者の国から死者の国を振り返ったオルフェウスは、生者の視点から妻を殺してしまったし、死者の国で死のうとしていた妻を、途中で見てしまったイザナギは、イザナミを殺せなかったんだよ」 遠い目をする鹿島の瞳が、必ず失敗する蘇りの伝承の数々に、どんな思いを馳せているのか、深海にはとうとう分からなかった。 「深海くんは、やはりこの世界で死に、生き返ることを決めたんだね」 「……」 深海は返事をしない。この吹雪の先に進むこと。それがこの黄泉の世界で死ぬことになる。それは現実に生き返ることであり、ここにいることが既にその返答になってるからだ。 「あるいは、ここでずっと暮らすという選択肢も君にはあるよ。二人で雪に還っていくというのもそれはそれで綺麗じゃないか」 「鹿島はどうして欲しかったんだ?」 「さぁ、死者は言葉を持たないからね……」 どんなときも自分の死は、他人のものだ。生き返って欲しいという願いも、生者だけが持てる特権だ。しかし言葉を持たない鹿島でも、その仕草は雄弁だった。右手に填められた指輪が、寂しそうな煌めきを見せた。 「ただ一言だけ言えるのは……私は死んだ。それだけだよ」 その時の鹿島の表情は、あの日の公園で鹿島が見せたそれと同じだった。 「そうだな……それでも俺は、まだ生きているんだったな」 ゆっくりと雪が舞い漂う坂を上り、深海は鹿島の前に立った。彼女の背後に見えるのは、乱舞する無数の雪片と灰色の雪催い、その奥に霞む漆黒の闇。この世界の死への入り口だった。ここが境界線。 鹿島も振り返り、二人は横に並んだ。 「寒そうだな」 「生きるって言うのは、それだけで憂いき事だよ。だから深海くんが蘇りの祭壇に抱いた祝福の光景も、あながち間違いじゃないんだ」 「鹿島はこの先に帰ることは、出来ないのか?」 「出来るけどね。私もまた、この舞い落ちる雪片や、吹き荒ぶ雪結晶の一欠片だから。雪泥鴻爪(せつでいこうそう)……溶けて消えるまで、還ることはできないんだよ。これは摂理だ。だからそんな顔するなよ、深海くん」 鹿島が掬い取るように仰向けた手の平に、天空からの雪華がしめやかに乗った。 「綺麗な雪の花……。ねぇ、深海くん。雪という言の葉は、『生きる』とか『行く』って言の葉に重なると思わないかな?」 掬い手を左右に揺らし、拙い雪遊びをする鹿島。 「雪にとって、解けることが行くこと。雪消こそが生きること。解けた雪はやがて雪代になり、新しい生命の苗床を潤す。冷たく凜冽たるように思えても、雪は始まりの形。決して、ただの終わりではないんだよ」 遊ばれた雪は、やがて鹿島の体温に当てられて消散した。しかし、その上にはわずかな雪解が残っていた。それは手相に沿うよう指の隙間に流れると、月の指輪を滴り落ちていった。 「私の雪形は、望む限り深海くんの心を化粧するさ。そしていつか、ここで雪代に還っても、君の心を潤す身方となるだろう。だから——君も帰るんだ」 「……分かっているさ」 「さようなら。深海くん。振り返るなよ」 一歩を踏み出そうとする深海。目の前に広がるのは雪嵐。このまま進めば間違いなく、この世界の死をもたらしてくれる雪路だ。まだ後ろに感じられる寂しげな鹿島の気配。しかし、これ以上行くなら、今度こそ本当に振り返れない片道になるのだと、深海は悟った。 だからここで、深海は振り返った。 「おいおい、深海くん?」 「戻るつもりはないさ。ただ、忘れ物がな」 そして深海は鹿島の手を取り、彼女を引き寄せると—— ■ 真っ暗だった。 目蓋を開こうとしても、まるで鉛の錘をぶら下げでもしているかのように重い。体中を支配する気だるい感じから推し量って、それだけ自分が疲れているのだろうと深海は結論づけた。 両手足を動かそうとしたら、今度は鈍い痛みが体内を駆けめぐった。怪我をしているのだろう。それも程度の大きい傷、重傷にあたるものだ。しかし、感覚はあった。脳を刺激するこの鈍痛は、生きている証だ。続いて漂ってきたのは消毒の匂いだった。慣れた匂いではない。しかし深海の今いる場所を当てるには、十分な材料だった。ここは病室だ。 ——生き返ったのか。 安堵するわけでも、悲嘆に暮れるわけでもなく、深海は漠然とそう思った。 端から見れば、死にかけていた人間が生き返った、とそれだけのことだろう。奇跡的な復活と騒がれる出来事ではあるかも知れないが、深海が視た世界、深海がいた世界について語られることはない。 深海自身、あれはもしかしたらただの夢だったのかも知れない、との思いを抱かないわけではない。 しかし—— 「いや、死に帰ったんだな……」 深海は呟くように言い、目を閉じたまま笑みを浮かべた。握りしめた右手に残る感触が、心地良いものだったからだ。ただ、こんな体の状態で、うまく声を出せたのか、笑うことが出来たのか、それは自分では分からなかった。 気怠さを吹き飛ばすように、深海はもう一度ぐっと右手を握りしめた。右手が痛みを訴える中、そこには確かに、最後に鹿島から抜き取った月の指輪があった。 別れの際に振り返った深海は、彼女から指輪を奪ったのだ。最初は戸惑っていた鹿島も、納得のいった表情を浮かべると、お得意の皮肉げな様子で、それを深海の指に填めた。そして鹿島は深海を送り出したのだ。——最後は笑顔で。 ——鹿島も言っていたしな。黄泉の国とマヨヒガは、もしかしたら同じようなものなのかも知れないって。 例えば……そう、例えばあの村が、本当にあったマヨヒガだったとしたら。バスの事故で山中に投げ出された深海が、彷徨い歩く内に迷い込んだ、マヨヒガだったとしたなら——一つだけ、マヨヒガにあるものを持って帰れるのは、昔から許された決まり事だ。 「……」 再び目蓋を開けようとする。今度はすんなりと開いた。ぼんやりとした視界が、次第に焦点を結ぶ。辛うじて見えたのは、それでも暗い世界。 夜だった。 落とされた照明。暗い帳に翳りながらも分かる、白い天井。予想通りの病室には一筋の光が差し込んでいた。カーテンの隙間からわずかに零れている。 窓際に位置するベッドの足元に、その光はちらついていた、 その光がなんなのか知りたくて、軋み音すら立てそうな腕を何とか動かし、深海はぎこちなくもカーテンを開いた。 そして深海は見た。 満月を。 差し込む光が、深海の手にする指輪を煌めかせた。 その光は、あの日に公園で鹿島と見たものと同じ。思い出すのは、星の瞬く広い夜空。自然に還った緑の公園。肌寒く新鮮な空気で満たされたあの空間。全てを照らし出した月の光。 雲に閉ざされた雪返村では、決してみることの出来なかった光だ。 しかし深海は知っている。どんなに厚い雲に覆われてたどり着けない場所だったとしても、その雲の上にはいつだって月は輝いていることを。 だから…… ——思ったんだけどな、鹿島。 ——もしかしたら、生と死の境目ってのは、それほど厳密なものじゃ無いのかも知れない。 ——死ぬことと生きることっていうのは、鏡に映したような対立したものじゃなくて、もっと曖昧な、混じり合ったようなものなのかも知れない。 ——雪解け水が、やがて生命の苗床になるように、死んだ者が巡り回って生きるカタチを持っても、何も不思議なことはないんだ。 ——俺たちは生きる意味だとか、死ぬ意味だとかを考える前に、もっと気楽に生きて良いのかも知れない。 ——だからな、鹿島。 「ただいま」 ——おかえり。 まるで生者のような鹿島の声色が、耳朶をくすぐった気がした。 終わり ←雪返り 中編 作品一覧↑
https://w.atwiki.jp/dora-eroparo/pages/405.html
* * * 「んー、気持ちいいーっ、ほらほらみくるちゃーん」 「きゃんっ、気持ちいいですぅ」 撮影を切り上げて、 「チッポケット二次元カメラ」の写真に用意しておいた青いビニールシートを敷いて、 その上にタライを二つ置く。 そして、「温泉ロープ」からバケツでタライを満たしておく。 以上を「ウルトラストップウォッチ」の時間停止中に済ませて そこに行水の用意が出来ている事をハルヒと朝比奈さんにも「うそつ機」で納得して頂いた結果、 二人はこうしてぴちゃぴちゃと楽しそうに汗を流していると言う訳だ。 ハルヒと朝比奈さんに後の打ち合わせをしてから一度教室を出た俺は、 「石ころぼうし」と「かくれマント」と「ふわふわおび」を装着して教室に戻る。 軍手を装着した右手に釣り糸を巻き付け、 国木田の頭上に浮遊しながらその釣り糸の先を国木田が被っている「石ころぼうし」に引っかける。 釣り糸にぐいっと力を込めて国木田の頭から「石ころぼうし」を引っぱがし、しまい込む。 「なんだ、国木田じゃない」 きゃいきゃいと抵抗する朝比奈さんをバスタオルでくるんでいたハルヒが、 つかつかと国木田に近づいていく。 「こんな所で素っ裸で突っ立って何やってんのよあんた、覗き?」 「え?いや、あの…」 「で、マッパでガン見しながらしごいてたっての?なかなかいい趣味してるじゃない」 「ち、ちがっ、そ、それは勝手に…我慢出来なくて…」 周囲の床を見回してジロリと国木田を一瞥したハルヒに、国木田が反論しようとする。 だが、いかに頭脳明晰な国木田であっても、そもそも頭脳明晰であるが故に理論構築は不可能だろうし、 俺の経験上からも、突撃モードに入ったハルヒを生半可な理屈でどうこう出来るモンじゃない。 今のこの教室でこの位置で強制的に突っ立ってりゃあ、 この悲惨な床への飛散状況を現出するためには手を動かす事すら必要ない、それは理解出来る。 もごもごと弁明しようとする国木田をよそに、 ハルヒはそんな国木田の前に生まれたままの姿で平然と座り込む。 「ふーん、ナヨい顔して結構立派なモンおっ勃たせてるじゃない」 「へ?あ、涼宮さ…」 「いただきまーすっ」 ぺろりと唇を嘗めたハルヒは、そのまま目の前で自分が説明した通りの状態になっている 国木田の肉体の一部をはむっと一口にくわえ込んだ。 「は、ああんっ!」 「んっ、んむっ、んんんっ!!」 ハルヒの行動開始から、国木田が何秒かと言う時間差で目を閉じて声を絞り出しながら背筋を反らせ、 その下でじゅぽじゅぽと頭ごと口を動かしていたハルヒは目を白黒とさせた。 「んっ、んむっ、ぷあっ… ちょっと国木田ぁ、あんた二発目なのにこれってどんだけたまってんのよ、 毎晩ちゃんと抜いてんのっ!?」 「えっ、いや、あのっ」 ごくんと喉を鳴らしながらも唇の端からたらりと溢れさせたハルヒが 豊かな胸を上下させながら下から見上げて詰め寄る様に言う。 ああ、分かってるさ。理不尽だろうがなんだろうが、 誰がその猛火のただ中にガソリン抱えて突っ込めるもんか。 「ほら、みくるちゃん、みくるちゃんこっち」 「はーい」 天使の様な無邪気さとお姿でヨチヨチと接近する朝比奈さんを前に、 国木田は逃れようとするも背筋を反らすのが精々だ。 念のため、俺は背後で転倒防止にスタンバッておく。 「ほらほら国木田、まーた漲ってるじゃない。 分かってんのよあんただって映画の時から目ぇ付けてたんでしょ、 キョンと一緒よねー、ねーみくるちゃんほら」 「ひゃううぅ」 それはだなハルヒ、この朝比奈さんを目の当たりにして、 二発や三発や四発ごときでそうならない健全な男子高校生と言うのは お前の探索目標レベルにレアな存在だと思うぞ。と言うかお前だってそうなんだよ。 するりと後ろに回ったハルヒに生まれたまんまの姿でたわわな膨らみをすくい上げられて、 朝比奈さんは相変わらずの可愛い悲鳴、 国木田は顔の向きに関して重大な葛藤の末、略、としておこう男の仁義だ。 「ひゃうぅー…すごいですぅ」 「ふふっ、ほらぁ、みくるちゃんすっかりさかっちゃってるでしょ、ほらほらぁ もーぬるぬるびちょびちょ溢れてるってみくるちゃんったら」 「あんっ、だめぇ涼宮さぁんひゃううんっ」 左手でおっぱいゆさゆさ、挙げ句、締まった内ももにずぽっと右手を突っ込まれ、 その右手がすっぽ抜けて国木田の目の前でにちゃーっと糸を引いては、 それは朝比奈さん赤面して顔を伏せると言うものだ。 あ、国木田、お前もそうか別にいいけど。 「ほらほらどーお、みくるちゃーん。 みくるちゃんがエロエロで可愛過ぎるから国木田、 ビンビンおっ勃ててなんかたらたら垂らしちゃってるよぉ。 ね、国木田ったらあの顔で結構男で逞しいでしょう、ねぇ、みくるちゃん」 「はいぃ、すごいですぅ」 ぽーっとした口調の朝比奈さんの言葉を聞いて、国木田の喉がごくりと動く。 ニヤッと浮かんだハルヒの笑みに肩が縮こまる所まで、痛い程理解出来るからな。 潤んだ瞳で釘付けになっている朝比奈さんにハルヒが意地悪そうな目つきで何やら囁き、 ぽーっと上気していた。朝比奈さんの頬は益々赤くなる。 「あ、あんっ」 「ふふっ、女の私でさえたまんないんだから男なんてさー、 キョンもバレバレだっての国木田だってそうでしょー」 真っ白い豊満な膨らみは、両手を外側から添えられながら 既に言われるままその通りの状態の国木田の股間にぐにっと押し付けられる。 そうやって、朝比奈さんに押し付けられ、上下されながら、 既に唾液でぬらぬらと照明に照り返しているピンク色の先端が深い谷間から 出たり入ったりする度に、その上の方から切なげな喘ぎ声が漏れ聞こえる。 「ああっ!」 「ひゃううんっ!!」 国木田が声と共に背筋を反らし、朝比奈さんも本能的にのけ反っている所に、 その意思から全く独立した噴射だけが衰えぬ勢いで朝比奈さんを直撃していた。 「やってくれちゃったわねー国木田ー」 その様子を見て、座りながらも腕組みをして唇を嘗めてにやあっと笑みを浮かべる素っ裸のハルヒを見下ろし、 国木田の顔はどこか青ざめている。ああ、そりゃあな、悪い予感しかしないだろうよ。 「ひゃうぅー、あんっ」 「んふふっ、まぁたこんなに濃いの一杯出しちゃって、 みくるちゃんのおっぱい、おっきくってふわふわ柔らかで最高だもんねー。 ほら、みくるちゃんもぬるぬるびちょびちょになっちゃったじゃない。こっちだって」 「ひゃああっ!涼宮さぁんっ」 「ほらほらぁ」 まず、桃色の舌を伸ばして、国木田がぶちかまして今正に垂れ落ちようと言う その残骸を舐め取っていたハルヒは、そうやって豊かな白い丘から赤く染まったほっぺから ぺろぺろと舌先で、舌の腹で撫で回す。 そうしていたハルヒの右手が、 座り込んだ朝比奈さんの栗色がかった陰りの奥に、本当の秘密にして聖なる処に滑り込み ごそごそと腕にも伝わる動きを見せると、 くすぐったそうに舐められていた朝比奈さんはハッと目を剥いてピンと背筋を伸ばし、 その後もぷるぷる大盛りを振るわせながら座り込んで喘ぎ始める。 そりゃまあ、目の前でハルヒと朝比奈さんに、 ああ、随分と年季の入ったガールズじゃれ合いにアダルティー満載のこんなんやられたら、 頬を染めて呼吸を速めてガン見するしかなくなる、その国木田の心情察して余りある。 * * * 「は、ああんっ」 「んじゃ、今度は私ぃ」 自分の腕の中で、瞳が上瞼に隠れそうになりながらくてっとなった朝比奈さんを解放し、 ハルヒは熱い程の温かくむっちり柔らかな太股、ああ、俺の経験からして間違いない。 そこから引っこ抜いた右手を振ってぴっぴっと床に滴を落としてから 低い姿勢でじりじり国木田に近づく。 「あ、ああっ」 「ふふっ、どう?みくるちゃん程じゃないけど、こんぐらいはちゃんと出来るんだからね」 だろうな。ああ、少なくとも平均点は軽く超えてる。 朝比奈さんの豊満なる天使の柔らかさが最高なのは否定しない。 だが、十分飲み込めるたっぷりとした膨らみで、 あのむっちりもっちり弾けながら攻め込んで来るお前の感触も決して、 いや、非常に美味しいモンだって事は俺もよく知ってる。 「す、すずっ、ああんっ」 ましてやだ、その常勝万能才能を活用して、 そうやっていつの間にやらチロチロと舌を使ってしかも容易には暴発させないと言う高等技法を会得して、 総合点で高みを目指そうと言う辺り、涼宮ハルヒの涼宮ハルヒたる所だと思うね。 「あ、あっ、あぁーっ」 そこで、俺は「ウルトラストップウォッチ」で時間を停止しつつ腕時計を見る。 そのまま、1年6組に移動した俺は、 時間停止を解除して「ゴルゴンの首」を初めとした道具を色々と用意する。 「タイムテレビ」で少し前の1年5組の様子、 特に壁の時計と一緒に視覚出来るアングルで色々と確認して念のためメモに書き付ける。 「ソノウソホント」を装着してから目の前の「ゴルゴンの首」の光の有効時間に関する解説をした俺は、 「ソノウソホント」を外して「タイムホール」を稼動させる。 「タイムホール」と「タイムトリモチ」で 過去の1年5組の教卓の上から「ゴルゴンの首」を回収した俺は、 タイミングを見て、たった今「ソノウソホント」で時刻設定をした「ゴルゴンの首」を 「タイムホール」の向こうの教卓の上に乗せる。 「タイムベルト」でちょっとだけ過去に遡ってから「ウルトラストップウォッチ」で時間を停止し、 念のため壁に張り付いて廊下を歩きながら1年5組に戻る。 「ああ、あっ、あぁーっ」 「ウルトラストップウォッチ」の時間停止を解除すると、 国木田の前に座り込んで国木田の噴射する体液を浴びながらうっとりしているハルヒの前で、 国木田は膝が砕けてくたっと腰を抜かして俺が時間停止中に設置したクッションに尻餅を着いた所だった。 「あんなに出したのにまだぁ、ほら、国木田、じっとしてなさいよぉ」 豊満な膨らみの上を指で撫で、まだどろりとまとわりついたその指の腹までを すっぽりとくわえてじゅるりとしゅぶったハルヒに恍惚とした表情で言われりゃあ、 腰を抜かしたまんまフリーズしちまうのもそりゃ仕方が無い事さ。 「は、うっ」 そんな国木田に這いずりながらにじり寄り、 さすがにてろんと床方向に向き始めたモンに かぶりつく様に顔を寄せてれろれろと舐め回しているハルヒを相手に、 ゴルゴンの魔力から解放された筈の国木田ももっとドデカイ蛇霊にでも憑かれたかの様にされるがまま、 時折喘ぎ声を上げる事しか出来ない。 いや、確かにおっそろしい光景だとは思う。 だが、爛々と目を輝かせて一束の豊かな黒髪をぞろりと肩から垂らしたハルヒが、 やけにグラマー白い膨らみも何も丸出し真っ裸で目の前に這いつくばって、 形のいい白いヒップの稜線も丸見えでひたすらウィークポイントを舐め回して、 この凄絶な色気に打ち勝つには、最低でも十年は修行が足りない。それは同じ事の筈だ。 だからして、気付いた時には国木田の目の前でハルヒが並よりおっきいおっぱいをぶるんぶるん揺らして、 束ねた後ろ髪をぴょこぴょこ上下させながらよがり泣いている、 なんてシチュエーションになっていても不思議でもなんでもない。 なんせ、何度目だろうがハルヒの舌に撫でられながらガッチガチのビッキビキになってたのは 俺から見ても明らか過ぎるほど明らかだったからな。 そのバキバキに反り返って何度目かの膨張を果たしたものは、 今や溢れる蜜が滴りそうになってる鮮やかなピンク色の奥地にずっぽりと呑み込まれて、 そこから激しい上下運動の度にぐちゅぐちゅと淫靡な音が響き渡ってハルヒの喘ぎ声に熱い吐息、 ついでに何やら堪える様なうめき声ともう一つの吐息が複雑に入り交じってる。 「く、来るっ、ああっ、国木田のっあっ、ああっ、あっ」 「つっ、ん、涼宮さ、あ、あんっ」 いい顔してるぜ、ハルヒ。 ハルヒの腕で目の前の谷間にぎゅーっと埋められた国木田の顔までは分からないがな。 分かるのは、腰から下が別行動でそれと分かる痙攣に震えているって事ぐらいさ。 * * * 「く、んんっ」 一段落して一息ついた教室に、鼻に掛かった可愛らしいうめき声が小さく響いた。 「みーくーるーちゃん」 「ひゃっ、ひゃああんっ」 肉欲の満たされた優雅な一時を過ごしていたハルヒは、 その声を聞き視線を後ろに向けるや、 自分の体から既にこちらも満足げに縮小中のものをずりゅっといっぽ抜いてすたすたと歩き出す。 その視線の先では、くてっと座り込んだ朝比奈さんが小動物の様に怯えて逃げだそうとするが、 どうやら腰が抜けて動けないらしい。 「ああっ」 「ふーん、みくるちゃん私達の事見ながらこんなになるまで自分でしてたんだ」 「あうぅ」 ハルヒに右腕を取られて高々と掲げられ、 照明に手首までキラキラ輝かせた朝比奈さんが真っ赤な顔でしゅんと俯く。 悪魔の笑みを浮かべた背後のハルヒとは絶妙のコントラストだ。 「ひゃうっ!」 そんな朝比奈さんの耳朶を、ハルヒの舌がぺろっとくすぐった。 「ウルトラストップウォッチ」で時間を停止した俺は、そんな二人のすぐ側の床に 「チッポケット二次元カメラ」で保管しておいた体育用のマットを敷く。二本並べてだ。 本来教室には無いものだし別に予算制限がある訳でもないので ふかふか羽毛布団でもなんでも良さそうなものだがそこはそれ、 やはり教室での撮影は体育マットと言うのが仕様らしい。雰囲気の問題だ。 時間停止が解除されると、ハルヒはさっさと朝比奈さんの手を引いたまま、 マットの上に朝比奈さんを座らせる。 「んふふっ、みくるちゃんこのおっぱいこのおっぱいこのおっぱい」 「あひゃあああっあ、あんっ、いいっ」 後はもう、もみもみちゅうちゅうぺろぺろくちゅくちゅ、 見事な指使い舌使いで、これが男には真似できないって奴なんだろうな。 たぷたぷおっぱいに木の芽が硬く尖ってぐちゅぐちゅに溢れかえった女の泉、その辺はもちろんの事、 可愛らしいお顔も小柄で柔らかな全身も栗色の綺麗な髪の毛も何もかも、 ありとあらゆるポイントを繊細にして大胆にいじり回されて、 それでいて一線だけは守っているらしい。 煮え切らない様な泡を吹きそうな、大変な事になってるよ朝比奈さんが。 「どーお、みくるちゃん。これでもまだ我慢できるー?」 「あ、ああんっ、はああっ、あっ… く、国木田くん、国木田くんのぉ、国木田くんのおち○ちん、 逞しく勃起した国木田くんのおち○ちん、 濡れ濡れに発情したみくるのぬるぬるおま○こにぶち込んで下さいはうぅぅ」 朝比奈さんが言い終わろうとするタイミングで、 白く柔らかな内腿の間に半ば呑み込まれたハルヒの右手首がきゅっと動き、 朝比奈さんはひくっと顎を上げて体を震わせるが、 熱が抜ける前に逆戻りした、さっきから繰り返されるそんな表情で朝比奈さんは大きく胸を揺らしていた。 国木田がふらりと立ち上がり、幽鬼じみたオーラをまとって朝比奈さんに近づく。 ああ、いくらこんだけ美味し過ぎるシチュで貯金一杯だったって言っても限度があるからな。 それでも、例え枯れ果てようとも朝比奈さんにあのお顔で潤んだ瞳を向けられて 何一つ隠す事無い神々しいお姿で可愛らしいおねだり。 例え朽ち果てようとも男たるもの一片の悔いもないだろう。 「は、ああんっ、んふふっ」 朝比奈さんの甘い喘ぎと鼻に掛かったくすぐったそうな笑いが絶妙の可愛らしさで交錯する。 そんな朝比奈さんの上には国木田が覆い被さって、 見事な大盛りをぐにぐにと掴みながらひたすらむしゃぶりついている。 あの豊かさでありながらマットに仰向けに横たわっても ピンク色の頂きをピッと尖らせて緩みを見せない見事な膨らみが乱暴に歪んでも、 朝比奈さんは微かに顔を歪めるだけで丸で慈母の様に国木田を眺め、 そして柔らかな中にも見事な張りがちょっとしたお痛なら軽く弾き飛ばして見せる。 音を立てて恥も外聞も無くべとべとにしゃぶる国木田に優しい微笑みを向けながらも、 その表情、赤く染まった頬、 潤んだ瞳には女の表情がちょくちょく入り交じり、唇から熱い喘ぎと吐息が溢れる。 「あ、ああんっ」 そんな朝比奈さんの顎がガクンと揺れて一束に束ねた栗色の髪の毛がぴょこんと跳ねる。 朝比奈さんに覆い被さった国木田の腰から全身がずっ、ずっと前後し始める頃には、 朝比奈さんの顔からは天使も慈母観音もましてや聖母暮様も飛び去り、 ただ、それを受け容れ悦ぶ一人の、えらく魅力的な一人の女性、堕天使と言ってもいいだろう。 そんな素晴らしい女性が自らマットの上でその身を揺らして逞しいぐらいに貪っている。 「あんっ、いいっ、ああっ、あぁー」 それも程なく終わりを告げる。尾を引いていた最後の声が途切れた後は、 無言でぎゅーっと抱き合い互いの感触を確かめ合っていた。 * * * 「そう、そう国木田もっともっとあああっ あはっ、いいっ、すごっ、はああっいいっ国木田のぉ国木田のがあっ、ああっいいっ!!」 「あ、あんっ、国木田くぅん、あんっ、国木田くんのぉはああんっ すげぇおうっおおっこらあっああっいいっああっ国木田くんおぉおっ!!!」 たった今まで甲高くやかましかった教室内の音声ボリュームは一挙にがた減りした。 横一列に並べられた体育マットの上で仲良く横並びになっていたハルヒと朝比奈さん。 マットに両手両膝を着き、突き出した丸いお尻を縦横無尽に振り立てていたのもついさっきまでの話。 短く繰り返される切羽詰まった喘ぎ声は、 ズン、と、背後からの一際大きな一撃と共に一転長く一際甲高く後を引く。 顎を上向きに背筋をピンと伸ばしていた白く豊かな体がガクンと弛緩する。 そうやって、若干の時間差がありながらもマットの上にへにゃっと突っ伏したハルヒと朝比奈さんは、 とろけきった眼差しで隣を見るや、隣の美少女と唇を重ねてねっとりとした舌使いが早くもかいま見える。 ほとんど本能的な動きだ。既に唇の端から溢れて顎に筋になっている輝きを拭うつもりも無いらしい。 俺が「石ころぼうし」その他を装着するために一旦教室を出る直前、 「お前は実はスーパーウルトラカリスマAV女優であってSOS団もそのために存在している組織である。 と言う訳で、これから一つリハーサルをやってもらう。 コンセプトはこれから説明するが、 撮影は全て隠しカメラ、アドリブ上等でやってもらう。 スーパーウルトラデラックス天然淫乱H大好きカリスマAV女優であるお前が これからの撮影に使える実力があるのかを把握するためだ」 「超監督」の「職業テスト腕章」と「うそつ機」を装着した上でハルヒに囁いて ロクでもないコンセプトとやらを説明した、無論、朝比奈さんにももう少々丁寧に納得して頂いた。 ついでに、源氏名として名前の二つ目と三つ目を引っ繰り返そうとか 名字の二文字目に別の字を入れようとかも考えないでも無かったが、面倒だがやめておいた。 それは確かなのだが、全く何をやってもどこまでも才能に満ち溢れてるってのが、 改めてハルヒのハルヒたるゆえんだ。 まあ、半分近く当て書きみたいなモンだから楽って言えば楽だっただろうがな。 そんな二人に、こっちは全く説明無しヤラセ無しの素人参加の筈なのだが 背後から取っ替え引っ替えの圧倒的なラッシュで君臨していた国木田も ぐいっと最後の伸び上がりを見せて見事に撃沈だ。 白い背中と背中の間に埋もれながらも、相変わらず両手がその下に差さったままってのは分かるぞ、国木田。 最高級Wパイの両手揉み比べなんて機会、例え灰になっても逃せるモンじゃないからな。 既にうつらうつらとまどろんでいた三人に、俺はトドメの「ネムケスイトール」を撃ち込む。 「ゆめふうりん」を鳴らして、 「なんでもじゃ口」のぬるま湯で絞った何本ものフェイスタオルとバスタオルを三人に渡し、 自分の一応の後始末は付けさせる。服を着る事が出来る程度にはな。 「天才ヘルメット」と「技術手袋」で作った機械箱に仕込んだ「シナリオライター」を着火する。 シナリオに従い、俺は「チッポケット二次元カメラ」の写真に次々と湯を垂らし、 そこから現れた朝比奈さんとハルヒも直立不動になる。 「入れかえロープ」でハルヒとハルヒ、朝比奈さんと朝比奈さんが魂の交換を行った結果、 ハルヒ本体の肉体にハルヒ本体の精神、朝比奈さん本体の肉体に朝比奈さん本体の精神、 分身ハルヒの肉体に分身ハルヒの精神、分身朝比奈さんの肉体に分身朝比奈さんの精神が合致する。 ああ、国木田に就いても同じ事が行われたと書き添えておこう。 客船で分身と本体の精神が交換されて以来だからな、随分と長い事の様な気もするが、 その大半をノシイカの写真として過ごした本人にして見ればあっと言う間と言う事か。 もっとも、その過ごした時間の濃度は又別の話になろうがな。 そして、本体である三人は、少し離れた場所に移動して、 自ら「ペタンコアイロン」を押し付けてノシイカになる。 分身連中は俺の握る「分身ハンマー」で一撃されて消滅した。 1年5組の教室でこちらで用意したいくつかのものはこちらで撤去して、 三人分のノシイカと大きなものは「チッポケット二次元カメラ」で収納する。 こっちも色々体力勝負だったので、「みの虫式スリーピングバッグ」で一眠りしている間に、 教室内は「小人ロボット」が大方元通りに片付けを済ませていた。 「ウルトラストップウォッチ」で時間を止めている間に1年4組に設置した「人よけジャイロ」も片付ける。 そして、時間停止解除と同時に、予め開いておいた「どこでもドア」を通じて、 空き屋である事は確認済みのとあるマンションの一室へと移動する。 そこから、「タイムベルト」と「どこでもドア」を使って、 狼藉者の悪ガキを追跡せんとダッシュを試みた直後の時間と場所に運び込む。 そこで、霧吹きを吹き付けて二次元から三次元にその豊満な膨らみを回復させてから、 「メモリーディスク」で悪ガキに狼藉される直前から今の今までの記憶を消去する。 お陰で、ちょっとの間きょとんとしていただけで、二人とも素知らぬ顔で家路に就いた。 無人エリアから出るのを見届け、俺は「人よけジャイロ」の無効化バッジも二人から回収する。 その後で、「タイムベルト」と「どこでもドア」を駆使して客船のスイートに戻る。 「タイムテレビ」で予め確認した所では、 俺が「どこでもドア」でこの部屋を出て行ったのはつい何秒か前の筈だ。 そこで、軍手やら手術用のゴム手袋やらを用意した俺は、 「タイムふろしき」片手に「タイムテレビ」で一つ一つ確認して、 確実に俺達がこの部屋にいた痕跡を消去していく。 まあ、鑑識作業対策のレベルまでは必要ないだろうがな。 その後で、「石ころぼうし」を被ってから、 ベッドの上に「チッポケット二次元カメラ」の写真を置き、温水の霧吹きで二度吹きする。 かくして、「ペタンコアイロン」で圧縮されてから「チッポケット二次元カメラ」で撮影された 本来のこの部屋の借り主であるA氏の昼寝が無事再開される。 後は、この後A氏が立ち寄るホテルのフロントに予定通り封筒を預ける事だ。 その封筒はA氏からA氏の主人を経由して俺の手に戻る。 任務に忠実なA氏も「うそつ機」により俺に対して絶対的な恩義と友誼を覚えているその主人も、 封筒の中身に就いては決して詮索したりはしない事になっている。 したらしたでやりようもあるけどな。 次話へ進む 小説保管庫へ戻る
https://w.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1269.html
第1 渡嘉敷島の巻(2) 5 比嘉(安里)喜順 集団自決当時29歳、元渡嘉敷村の駐在巡査、赤松大尉の指示を村民に伝達する立場にあった。一貫して《赤松命令説》を否定する人物である。(Ⅱ) (1) 『週刊朝日1970年8月21日号「集団自決の島-沖縄・慶良間』(甲B20) 「艦砲に撃たれて、防衛隊員は戦意を失墜し大あわてでした。住民が集結したら、防衛隊員が『こりゃだめだ。捕虜になるより死んだ方がいい』と言い出したのです。そこで村長をはじめとする村役場の幹部5、6人が自決の相談をして、部隊へ1人を走らせたのです。わたしは傍らでそれを見ていたからよく覚えています。連絡が部隊に着くか着かないうちに、一角で米軍の機関銃がパンパンと鳴りはじめ、防衛隊員が手榴弾をかかえて家族とともに自決をしはじめたのです。早まったことをしたなと思いましたがもう手のつけようがなかった」 と証言した。(甲B20p22) (2) 『潮「集団自決を追って」』(星雅彦)【昭和46年11月発行】(甲B17) 作家星雅彦が証言をまとめたものである。 「3月27日夕方、西山の谷間の陣地で赤松隊長に会った安里巡査は、これからどうしたらよいかわからないので、軍のほうでなんとか保護する方法はないものか、どこか安全地帯はないものか、と相談を持ちかけたところ、赤松隊長は、次のようにいった。『軍は最後の一兵まで戦って島を死守するつもりだから、住民は一カ所に避難していたほうがよい。場所は軍陣地の北側の西山盆地がいいだろう』(安里証言・甲B17p208) 「およそ千人が西山盆地に集まった。集団の一角に、村長を中心にして、郵便局長や校長や助役や巡査や防衛隊の幹部らが集まってなにやらしきりに協議していた。『これからどうするかという意見を出し合ったが、話合っていくうちに、玉砕するほかはない、という結論になってしまった。しぜんに、玉砕ということになって、その恐怖感から逃げられなくなった』(安里らの証言・p210) そこで気丈な古波蔵村長は、具体的にどういうふうにするか、と話を進展させた。あれこれ意見がでたが、結局、みんなが死ぬにしては、手榴弾が足りないということになった。一人の防衛隊が、『友軍の爆薬貯蔵庫から、手榴弾を取ってきましょうか』と申し出たことから、それに一決して、不断から親しく兵隊と接触している防衛隊3人が出掛けることになった。(甲B17p210) 「『・・・どうせ死ぬならみんないっしょのほうがいい』とウシの弟の防衛隊が話しているとき、安里巡査がきて、『手榴弾が爆発するときは手にしっかり握っていたほうがよい』と助言した。それからまもなくして古波蔵村長がみんなの中央に立って、『敵に取り囲まれたてもう逃げられないから、玉砕しなければならない。大和魂をもって天皇陛下万歳をとなえ、笑って死のう』と、声をふるわせながらいった。 急にしーんと静まり返った。・・・遠くで誰かが『発火用意、打て!』と叫ぶと同時に、ぱあーん、ぱあーんと、続いて手榴弾の炸裂音が聞こえた。」(甲B17p211) 「村の指導者たちやその家族や防衛隊の幾人かは、そろって無事で、その集団にまじっていた。みんなひどく興奮していて、狂人のようになっていた。村長は狂ったように逆上して『女子供は足手まといになるから殺してしまえ。早く軍から機関銃を借りてこい!』と叫んだ。その意志を素直に受けて、防衛隊長の屋比久孟祥と役場の兵事主任の新城真順は、集団より先がけて日本軍陣地に駆け込み、『足手まといになる住民を撃ち殺すから、機関銃を貸して欲しい』と願い出て、赤松隊長から『そんな武器は持ち合わせていない』とどなりつけられた(安里、伊礼蓉子らの証言。その点、古波蔵村長は米軍に決死の戦闘を挑むつもりだったと、異議を申し立てている)。」(甲B17p212) 「阿波連の青年たちがワイワイ騒ぎ立てながら走ってきた。血の気のない顔で、彼らは何やら奇声をあげ、まだ生きている人を探し出しては、持っている棍棒で撲殺するのだった。その中の金城重明(現牧師)という16歳の少年がウシの側へ寄ってきた。学校で成績がよいと評判の少年だった。彼は立ち止まった。と、いきなり直径10センチぐらいの棍棒を振り上げ、「まだ生きているのか!」と叫び、妹を抱き押さえて後込みしている長女の頭へたたきつけた。・・・。」(甲B17p213) (3) 『ある神話の背景』(甲B18) 恩納河原へ行く前に分散していた村民を集めた理由について(甲B18p123~) 「私は地理がわからないので、赤松大尉を探すのに一日かかったわけです。私が、渡嘉敷島へ来てから赤松隊長に会ったのもその日が初めてですからね。」(甲B18p123) 「自決の日が!?」 「はい。二十二日に島へ着いて、二十三日がもう空襲ですから。そういうわけで(赤松)隊長さんに会った時はもう敵がぐるりと取り巻いておるでしょう。だから部落民をどうするか相談したんですよ。あの頃の考えとしては、日本人として捕虜になるのはいかんし、また、捕虜になる可能性はありましたからね。そしたら隊長さんの言われるには、我々は今のところは、最後まで(闘って)死んでもいいから、あんたたちは非戦闘員だから、最後まで生きて、生きられる限り生きてくれ。只、作戦の都合があって邪魔になるといけないから、部隊の近くのどこかに避難させておいてくれ、ということだったです。 しかし今は、砲煙弾雨の中で、部隊も今から陣地構築するところだし、何が何だかわからないせっぱつまった緊急事態のときですから、そうとしか処置できなったわけです。」 「それで恩納河原が比較的安全な場所だということになった訳ですか」 「私としては比較的安全な場所と思ったわけです、しかも友軍のいるところとそう離れていませんし」 「すると恩納河原へ避難せよという場所の指定はなかったんですか?」 「場所の指定はないですね。思い思いに避難小屋を作ってあったんですよ。」 「住民は恩納河原に集まれ、といわれた、ということになっているんですが」 「いや各々自分の思い思いのままの避難小屋という立派な小屋を作ってあったですよ。敵はもう上陸してくる。とにかく山の中で一応かくれておこうと、避難させたわけですよ。隊長も、生きられるまでは生きてくれ、そういう趣旨のもとに、部隊の隣のところに、状況を見ながら……そういうことだったですがね。戦争のどさくさにまぎれて、皆、あの時、おしつけなかったですからね。集めたら、こういう結果になってしまって、村長以下、皆、幹部もね、捕虜になるよりは死んだ方がいい、その時、私は生かすために、ここ迄苦労して、避難して来たのにね。雨の中を皆、つれて来たのに……敵もおらんのに、どうして死ぬことができるか、とわしは反対(したんです)……生かすために連れて来た、隊長もそういうお考えで、こっちに、近くで静かにしているように、戦闘の邪魔になるからですね。そういうこと、言うたわけですよね。 しかし皆、艦砲や飛行機からうちまくる弾の下で、群集心理で半狂乱になっていますからね。恐怖に駆られて……この戦争にあった人でないと(この恐怖は)わからんでしょう。だから、しいて死ぬという、自決しようという、部隊が最後だということの○○(一語不明)を受けて、死のうという。私は今のままなら死ねないなあ、と言ったんですがね。」 「村の主だった方はあの狭い沢の中で死ぬということについて相談をなさったんですか」 「はい、その人たちは、もう半狂乱になって、恐怖に駆られて、もうこれは当然、捕虜になるよりは死んだ方がましだということになって、日本人だという精神じゃっていって、やむを得なかったですね。ことに離島であって、離島になればなるほど、そういう精神が鞏固ですよ。私はあく迄生きるために来たんだから、しいてあれなら、アメリカ兵が来て、一人でも会って戦闘でもして(から死のうと思ったのです)、部隊がもう最後という時に、一人は部隊のレンラクに出た筈ですよ。その時に、敵の手榴弾、艦砲と共に手榴弾投げた音があったんですよ。それをもう友軍の最後だ、斬り込み総攻撃だと思って、ああなってしまったわけですよ」 「重大決定をなさろうとしていらした時はどういう方々がいらっしゃいましたか」 「自決する時ですか」 「はい」 「村長とか防衛隊の何人か、役場関係の人もおったと思いますが」 「それで、どうしても死ぬということに……」 「ええ、どうしても死ぬという意見が強かったもんで、わしはサジ投げて……わしはどうしても死ぬ前にアメリカに対抗してでなければ死ぬ気なかったです。それだけははっきりしています」 「レンラク員を部隊に出しました。その時に突然、友軍とアメリカ軍の射撃があったわけですが、それをもう部落の人は、友軍の最後の総攻撃だと思い違いしてですね、ひどかったもんですからね。死にたい死にたいということで……」 「きっかりと万歳を三唱なさったという説もありますが」 「とにかく、一たんは万歳といったわけです」 「それは誰かが万歳を主唱したという訳ではないんですね。なんとなく……」 「ええ、なんとなくやったわけじゃないですかねえ」(~甲B18p127) 「友軍の近くにいれば心強いというのはあの当時の誰もが持っていた気持だと」安里氏はいう。(甲B18p127)。 「自決の後はどうされましたか」 「重傷者は置いてですね。それから友軍の機関銃でも借りて、死のうということになって、残って歩ける人たちは行ったです。ところが部隊は、今うちこまれるから、危険だから……又、部隊だって機関銃かすわけはないですよ。その時に皆集まって、がやがやするもんだから、敵の探知器に知られて、ひどくうちこまれたですよ。それからはもう、皆死ぬ気持がなくなったわけですよ。今まで死のうとしたんですけど」 「第二玉砕場には、それからいらしたわけですね。」 「はいはい」(甲B18p127) 当時の赤松隊の状況を、『ある神話の背景』(甲B18)は、一隊員の証言を引きながら、次のように記載している。 「かりに、あの時、自決命令、出したとしても、とても、伝令が、あの場所まで辿りつけなかったんじゃないかな。皆稜線の上にへばりついていて、伏せながらも、まだ一糎でも体低くしようとして、木の枝なんかでお腹の下掘ってた状態ですからね。向こうも、整然と集まってたわけじゃないでしょうし。平和な時に、考えて、数百米離れたところにある、小学校の校庭で、整然と並んでいる生徒に何かを伝えに行くような訳にはいきませんからな」(甲B18p129) (4) 『沖縄県警察史第二巻(昭和前編)』(沖縄県警察本部)【平成5年3月発行】(甲B16) 「安里巡査は、住民の避難誘導について相談する為に赤松隊長に会い『これから戦争が始まるが、私たちにとっては初めてのことである。それで部落の住民はどうしたら良いかと右往左往している。このままでは捕虜になってしまうので、どうしたらいいのか』と相談した。すると赤松隊長は、『私たちもいまから陣地構築を始めるところだから、住民はできるだけ部隊の邪魔にならないように、どこか静かで安全な場所に避難し、しばらく情勢を見ていてはどうか』と助言してくれた。私はそれだけの相談ができたので、すぐ部落に引き返した。 赤松部隊から帰って村長や村の主だった人たちを集めて相談し、『なるべく今晩中に安全な場所を探してそこに避難しよう』と言った。・・・全員が軍の側がいいと言うことに決まり避難する事になった。」(甲B16p773~774) 「私は住民の命を守るために赤松大尉とも相談して、住民を避難誘導させたが、住民は平常心を失っていた。・・・集まった防衛隊員たちが、『もうこの戦争はだめだから、このまま敵の手にかかって死ぬより潔く自分達の手で家族一緒に死んだ方がいい』と言い出して、村の主だった人たちが集まって玉砕を決行しようという事になった。 私は住民を玉砕させる為にそこまで連れてきたのではないし、戦争は今始まったばかりだから玉砕することを当局としては認めるわけにはいかないと言った。しかし、当時の教育は『生きて虜囚の辱めを受けず』だったので、言っても聞かなかった。そこで、『じゃあそれを決行するのはまだ早いから、一応部隊長の所に連絡を取ってからその返事を待って、それからでも遅くはないのではないか』と言って部隊長の所へ伝令を出した。だがその伝令が帰って来ないうちに住民が避難している近くに迫撃砲か何かが落ちて、急に撃ち合いが激しくなった。 そしたら住民は友軍の総攻撃が始まったものと勘違いして、方々で『天皇陛下万歳、天皇陛下万歳』と始まった。その時、防衛隊員は全員が敵に遭遇した時の武器として手榴弾を持っていたと思う。その手榴弾を使って玉砕したが、幸か不幸かこの手榴弾は不発弾が多く玉砕できない人たちがいた。」(甲B16p774~775) 「玉砕できなかった人たちが集まって、友軍の陣地に行って機関銃を借りて自決しようと言うことになって、自分たちで歩ける者は一緒に友軍の陣地に行ったが、友軍はそれを貸すはずがない。そこでガヤガヤしているうちにまた迫撃砲が撃ち込まれ、多くの人たちがやられた。その時友軍に、『危険だから向こうに行け』と言われて、元の場所に帰ってきた。」(甲B16p775) 「玉砕してから恩納河原の避難小屋に集まり避難生活が始まった。食糧を探すのに必死だった。・・・赤松隊長は、『私たちは兵隊で戦って死ねばいいが、皆さんは生きられるだけ生きてください』と言って、自分たちの味噌や米を住民に分けてあげたりしていたこともあった。」(甲B16p775~776) (5) 『光の泉「沖縄・渡嘉敷島の集団自決戦後51年目の証言」』【1996年7月】(甲B43) 《赤松命令説》を明確に否定する証言をしている。 「米軍上陸の3月27日、比嘉(安里)は、ぐるりと米軍が取り囲んだ状況で、まず、赤松大尉に会うことだと考え、村民をどうしたらよいかを赤松大尉に相談した。赤松大尉は、これに対し、『我々は今、海から揚がって陣地構築を急いでおるところですから、作戦の邪魔にならない、部隊近くの安全な所に避難させておったらいいでしょう。我々は死んでもいいから最後まで戦う。あなたたち非戦闘員は生きられる限り生きてくれ』と言われました。 私たちも部隊の近くは安全ですから『じゃあ、そうしましょう』と、あちこちの避難小屋を歩きながら、部隊近くに集まるように伝令しました。」(甲B43p45上段~下段)。 ※ 住民が部隊近くに集まるようになった経緯が詳細に証言されている。「村民をどうしたらよいか」という「相談」に対する話し合いが、「命令」「強制」「誘導」等抽象的な「評価」としてではなく、その具体的な話の中身が「事実」として生々しく証言されている。「我々は死んでもいいから最後まで戦う。あなたたち非戦闘員は生きられる限り生きてくれ」という言葉には、どこにも強制性はない。 また、その後の経緯についても詳しく証言している。 「私は地理が分かりませんが、地元の人はよく知っております、どの部隊がどこにいるか、どこが一番安全か。村長さんも村民に伝え、それは人から人へと自然に伝わっていったんです。大雨の中、一晩かかって思い思いに集まったところが、玉砕の場所になったわけです。谷と谷の間のちょっとした広場でした。」(甲B43p45下段)。 「私は支那事変での戦争体験がありましたから少しは落ち着いておられましたが、離島の人たちには初めての戦争でしょう。心の動揺を来したと思うんです。村長さんも、防衛隊(現地召集兵、家族と一緒に戦っていた)も捕虜になるよりは自決したほうがましと、村の幹部がそういう意見になってしまったんです。それで私は村の幹部に言うたです。『戦争は今から始まる。まだ、敵も見ていないし、自決するためにみんなを集めたわけではない。生かすためにみんなを連れてきた。交戦もしていないのに、どうして早まったことをするんだ。死ぬのはまだ早い。』と、私も村の指導者ですから、自分ひとり死なないとは言えない。しかし、敵と交戦もしないうちに死ぬつもりはなかった。」(甲B43p45下段) 「皆、艦砲と飛行機から撃ちまくる弾の下で、半狂乱になっていますからね。どうしても死ぬ、死にたいという。日本人の精神じゃ、と言って。私もいつまでも一人我を通すわけにはいかず、『それなら、あんたたちに任そう』とサジを投げてしまって、側に退いて状況を見ておったわけです。私は部隊に報告する義務がありますからね。」(甲B43p46上段)。 ※ この後すぐに手榴弾による集団自決が始まるわけであるが、「不発が多くて死んだのは何名かでしょう」(甲B43p46上段)。その後、機関銃を借りにいって赤松隊長に断わられたことが証言されている。これは、「集団自決命令」とは相容れない行動である。 「それから友軍の機関銃でも借りて死のうと、生き残って歩ける者は部隊の陣地へ押し掛けていったんです。私もついていきましたが、向こうでも止められたですよ。部隊だって機関銃を貸すわけではないです。」(甲B43p46上段) 自決の報告を聞いた赤松大尉は、「早まったことをしてくれた」と言われた(甲B4346p下段)。 赤松大尉の人間性についても言及されている。 「部隊の食糧倉庫が海岸ばたにありました。そこに米が積んでありましたが、赤松さんは、その米を民間と軍とに半分分けしたんですよ。防衛隊も皆手伝って、私が立ち会って分配したんです。自分の食糧もないときに。『部隊は最後まで頑張る。あなたがたは、このあるだけを食べて、あとは蘇鉄でも食べて生きられるだけ生きなさい』となったわけです。」(甲B43p46下段~)。 そして、赤松大尉が命令を出していないと断言している。 「赤松さんは命令を出してもいない。命令を出せる時期でもなかった。海から揚がって、すぐ陣地構築、それで精一杯でしたから。赤松さんは非常に申し分のない人格者でした。」(甲B43p48上段)。 なお、赤松大尉は、これに関して、『ある神話の背景』で、次のとおり述べている(甲B18p103) 「安里さんの記憶では、西山の複廓陣地へ移ってから私を捜して来られたということになっているようですが、私はどうしても、旭沢で安里さんに会っているような気がしてならないんです。勿論、私の記憶違いかも知れませんが、複廓陣地へ移ってからは、村民の方と殆ど接触がなかったように思いましてね。 そこで初めて村の人の話が出たんです。 安里さんは、要するに私のところへ情報を聞きに来られた。敵はいつ上がるんだ。どこへ逃げたらいいんだ。もっともな質問です。しかし、私も正確には答えられない。 上陸は多分、明日だ。部隊はこれから、西山の方へ移って、そこへ陣地を作るつもりだから、と答えた。住民は-私は前にも申し上げたように、自分自身は今頃は出撃して死んでいる筈だったから、住民対策は誰かがやってくれると思って、実は殆ど考えたことがなかった。弱りました。 しかし、部隊が西山へ行くんだから、そちらも、近くの谷へ移ったらどうですか、と安里さんに言った。深い意味があった訳じゃありませんが、それが自然のなり行きだったような気がするんです。まあ陣地が作れる程度の所があれば、その陰に住民が隠れる、という感じでした。」 (6)『沖縄戦ショーダウン』(1~13)(上原正稔・訳注)【平成8年6月】(甲B44) 比嘉喜順さんに会って事件を聞くと、 「その通りです。世間の誤解をといて下さい」 と言う。 「赤松嘉次さんは人間の鑑です。渡嘉敷の住民のために一人で泥をかぶり、一切、弁明することなくこの世を去ったのです。私は本当に気の毒だと思います。家族のためにも本当のことを世間にお知らせください」(6・1段目) (7)『沖縄戦集団自決をめぐる歴史教科書の虚妄』(曽野綾子著)【平成15年9月発行】(甲B4) 安里喜順の証言が、再びまとめられている。内容的には、『ある神話の背景』(甲B18)と同内容である。 (8) 小括 安里巡査は、《赤松命令説》の有無を判断するにあたり、「知念朝睦」と並ぶ最重要証人である。安里は、《赤松命令説》を完全に否定する。証言も一切ぶれていない。 同じく両名が重要証人であるとの認識を抱いている曽野綾子は、次のような感想を述べている。 「その時に私は驚いたのだが、知念元副官と言い、安里元巡査といい、鍵を握る人物が現存していて、少しも面会を拒否していないのに、取材のために会いにきた沖縄側のジャーナリストは1人もなく、私より前に取材にきたのは『週刊朝日』の中西記者だけだという事実だった。ついでに言うと、大江氏も渡嘉敷島にさえ取材に来てはいなかった。当時渡嘉敷島には民宿が一軒しかなかったが、私が当然のように大江氏の名前を出しても宿の人はぽかんとしていた。」(甲B18・2枚目第3段)。