約 1,243 件
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1542.html
58 名前:UNNAMED 360[sage] 投稿日:2016/04/23(土) 04 13 36.78 ID Cy19yiWo 第72話 爆ぜる雨 無数の層になった様な連峰に囲まれたルーザニアの城塞都市からニッパニア軍を討つ為に、騎士団が出撃する。 大型の投石器から弦を馬や走竜に引かせるバリスタなどの攻城兵器を武器庫から運び出し、ニッパニア軍を撃破の後、各拠点から部隊を合流させ、ゴルグガニアに逆侵攻する、これが彼らの任務である。 「壮観な光景ではありませぬか、ジーン殿下。」 街道を馬に乗って進んでいると、装飾のされた鎧を着た釣り目の美女が白馬に跨り近付いてくる。 「むっ?セイーヌか、やはり討族隊に参加していたのか、父君の敵討ちがしたいのか?」 「えぇ、父上だけではありません、セヤックお爺様が父上の訃報を耳にされたその日に、怒りと悲しみのあまりに狂死してしまったのです。」 「何だと!?」 「狂った様に自室を荒らした後、口から泡を吐き、心の臓が止まり、そのまま亡くなりました。私は決して蛮族ニッパニアを許しません、一匹残らず駆逐してやります!!」 名門カーマ家の娘であるカーマ・セイーヌは、ニッパニアによって父と祖父を一度に失い、その復讐の為に討族隊に参加していた。多くの蛮族を殺す為に・・・手段を択ばず残酷に殺戮し尽す為に・・・。 「そうか・・・カーマ家もお前で最後の一人、流行病と戦で多くの貴族が没落してしまったが、名門であるカーマ家には残って欲しい物だ。」 「ゴルグガニアを陥落させた後は、海の向こう、即ちニッパニア本国に向かい蛮族共の王の首を跳ね、そして、カーマ家の再興を果たします。」 「くくくっ・・・頼もしい限りだ、しかし、人間一人には出来る範囲と言う物がある、小娘一人が粋がった所で、事は動かせぬものよ。」 「弁えております、今は目の前の敵を切り伏せるだけです。」 進軍を続け、山をいくつか超えた後、ニッパニアの軍勢が通ると思われる峡谷が見えて来た。 ルーザニアしか知らない天然洞窟を通り、近道をした甲斐もあり、まだニッパニア軍は予測地点には到達していない様だった。 「伝令はそろそろ、山頂の砦にたどり着いている筈だ、幾らか早くこちらが動く事になるが、直ぐに砦の援軍が来るだろう、狼煙を見逃すなよ。」 「しかし、鎧虫ですか・・・今回ばかりはこちらも多少の被害は免れないでしょうね。」 「それは仕方がないだろう、何せ相手は走竜の2倍も速いのだ、狭い峡谷ではその機動力を活かせないだろうが、それでも鎧虫の体格で暴れられたらそれだけで脅威だ。」 「最初の奇襲で如何に数を減らせるかが肝心な所ですね・・・腕が鳴ります。」 ルーザニアの討族隊は、山の稜線に隠れ、ニッパニアの軍を待ち伏せしていた・・・・しかし・・・。 肉眼で捉えるのが困難な程の高空に、電子の目を持ってルーザニアの軍を捉える者が存在した。 RQ-4グローバルホークが大地を這いずる者達を監視しているのである。 「遅いな・・・走竜の2倍と言う機動力ならば、もう既に姿が見えてもおかしくないと言うのに・・・。」 「ニッパ族も慎重なのでしょう、奴らも峡谷が奇襲を受けやすい地形だと理解している筈です。」 「遅いと言えば山頂の砦からの増援はまだなのか?これだけ長く待たされると伝令が戻ってきてもおかしくない筈だが・・・。」 対岸の山の頂上に建設された砦の動きが見られない事に疑問を感じていると、どこか遠くから聞きなれない音が聞こえた気がした。 「む?何か聞こえなかったか?」 「はて、何でしょうか?」 その直後、後列に並んでいた兵士たちが轟音と共に吹き飛ばされ、次々と爆発が起こり被害が広がって行く 「何事かぁぁぁぁぁっ!!!?」 「で・・・殿下!これは一体っ!?」 各陣は大混乱に陥っていた、風切り音が聞こえたと思うと、鼓膜を破裂させんばかりの轟音と爆風が発生し、臓物をまき散らしながら兵士達が千切れ飛んで行く。 「これは一体なんだ!?・・・っまさか、ニッパニアの攻撃魔法か!?」 「くそっ、何処にいる!?何時の間に接近を許したと言うのだ!?」 「何という威力の攻撃魔法だ・・・儀式級でもこれ程の威力は出せないぞ!!」 「撤退だ!洞窟まで一時撤退し・・っげぎぃ・・・きょっ」 再び爆発が発生すると、ジーン王子の少し前に居た兵士が爆風で飛ばされてきて、上半身のみ原型を留めた死体が転がる。 「ひぃっ!?」 白目を剥いて顔の穴と言う穴から血を吹き出した兵士の上半身を目にして情けない声を上げる。 「おのれっ卑怯な蛮族共め!姿を現さぬかっ!!」 「セイーヌ、被害は甚大だ、一時地下洞窟まで撤退するのだ、体勢を立て直そう。」 「ぐっ・・・致し方ありませぬ・・・撤っ。」 次の瞬間、近くで爆発が発生し、爆風に煽られてジーン王子は落馬してしまい、くぐもった悲鳴を上げる。 「ぐおっ・・・おのれぇ・・・・?・・・セイーヌ?」 「何・・何が・・なに・・・なにに・・にぃぃぇぇぇぇ・・。」 爆発で砕け散った戦斧や刀剣の破片が飛んできたのだろうか、カーマ・セイーヌの頭部を銀色に反射する金属片が通り過ぎた後、頭頂部がフリスビーの様に回転しながら跳ね飛び、目の焦点の合っていない彼女が転げ落ちる。 「あぃぅぇっ?・・・・うぃ・・・にゅぃぬぃ・・。」 落馬した衝撃で頭頂部を失った頭部の断面から脳の一部が溢れ出る、ついでに彼女の乗っていた白馬も首から先が無くなっていた。 「ひ・・ひぃいいいいいぃぃっ!!!」 それからジーン王子は死に物狂いで迫撃砲の雨から逃げ続けた、気が付けば一緒に逃げていた筈の兵士たちはその数を大きく減らし、地下洞窟にたどり着く頃には百人を下回っていた。 「あが・・・あががっ・・だずげ・・・だずげでぐ・・ぐぃっ」 地下洞窟に転がり込む様に逃げ込む事に成功したが、入り口に砲弾が直撃し、落石によって入り口が塞がれ、間に合わなかった兵士が岩に押しつぶされ暫くもがいた後に息絶える。 「あわ・・あわわ・・・ひぃぁぁっ・・・。」 洞窟に逃げ込んだ後も、爆発音が響き、悲鳴らしきものも聞こえてくる。しかも、度重なる砲撃によって両側の出入り口も落盤が発生し、洞窟を抜ける事が出来なくなってしまった。 「は・・・はひっ・・・はひひっ・・。」 ルーザニア方面に抜ける道は落盤によって塞がれてしまっている・・・先ほど逃げて来た入り口も塞がれているが、そちらに戻ると言う発想は浮かばない。 「逃げなければ、逃げなきゃ、殺される・・・殺される、皆殺しにされてしまう・・・。」 洞窟に閉じ込められた者達は、何かに憑りつかれた様に、落盤で塞がった通路の石や岩をどかし始めた、最初の内は斧や剣などを使って、岩をずらし、耐久限界を迎え折れてしまった後は素手で岩を運び・・・。 「逃げなきゃ・・・逃げないと・・・にげ・・ひぃぃっ」 幽鬼の如く、目をギラギラと輝かせ無心に岩をどかし続けた、既に爪は全て剥がれ落ち、手は見るも無残にズタズタに裂けてしまっている。 それでも、地位も階級も関係なく、閉じ込められた者達は岩をどかし続け、無限とも感じられる長い時間をかけて、辛うじて人が通り抜けられるほどの穴を開ける事が出来た。 気が付けば砲撃音は収まり、洞窟の外に出る頃には、星空が広がっていた・・・。 「はははっ・・・ひひひっ・・・駄目だ、外に出ても真っ暗だ・・・ひひひひっ・・・。」 爆ぜる雨を経験した者達は、命からがら祖国の在った地に帰る事が出来たが、まともに歩く事は出来ず、獣の様に這いずりながら戻った頃には既に祖国は存在しなかった。 彼らこそが、この世界で初のシェルショック患者であった。 あとがき ちなみに、ゴルグガニアではシェルショックが発生する前に殆ど死んでしまったので、発生する間もありませんでした。 残されたのは、何が起こったのかすら判らなく放心状態の市民くらいでした。むしろ公開火刑をやらかした自衛官の姿を見て、そっちの方に恐れを感じていたかもしれません。
https://w.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/266.html
名残りのような肌を刺す日差しとは裏腹に、風は既に心地よい涼感を含み始めていることに、その男は気付いていた。 年の頃こそまだ若そうだが、ゲルマン系の特徴を備えたその顔立ちは、スマートさを感じさせる彫りの深さで表情の読めない鉄面皮を保っており、独特の威圧感すらかもし出している。あたりを見回している、大柄な白人男性。 見慣れたものでなければそうとわからない、ほとんど雰囲気だけの変化で、彼は口元にかすかな笑みをほころばせると、ゆっくり歩を進めた。待ち合わせていた彼女はやわらかく微笑みそれへと手を振り、返す。 「もう、秋ですね」 「そうだな」 並べば頭2つは違うその男の、隣に並んで、萩野むつきはそう言った。ぐいと男は上着を脱ぎ捨て、引き締められた肉体の稜線をさらす。背の高さもさることながら、厚く、がっしりと実直そうな筋肉が、むつきの前に現れる。この肉体は、見た目以上の働きをすることはないが、決して期待を裏切ることもないはずだ。常に変わらぬ確実な力を発揮し続ける、等身大の誠実な印象が、そこに現れていた。男、そのものと変わらぬ肉体だとも言えただろう。 宇宙の、そして火星の海を文字通り潜り抜けた、元・太陽系総軍の騎士、カール=T=ドランジである。その本来の名をドラケンといい、ヨウヘイという、遠く、祖先に日本人の血を持ち、代々パイロットを輩出する家系に連なる男であった。 ドランジが水着だけになり、波打ち際から身をどんどんと海面に浸していくと、むつきもまたそれを追った。灰色の髪をまとめた、可愛らしい女性であった。どこか揺らがないところを持っており、それが自然とやわらかさになってあたりの空気を包むようなところのある、女性だった。 たった1組きりの男女は南国の海を思う様に泳ぎ、回る。 「――――…」 足の裏をちりちり焦がしていた砂粒が、踏み込むだけでゆるいぬかるみに拭い去られ、そしてやがてはそれすらなくなり、ただ、身を包み込み、流れる、清冽な力の世界一色になる。 水を掻く、手足が流れを生むのではない。流れを貫いていく、体のすべてが、感じる流れを生み出している。 ぐ、っと、頭の先が押されているような軽い抵抗感。弾けるほどの滑らかな動きに蹴散らされ、それが気持ちのよい爽快感に換えられる。 海の中で見た世界は、なぜだろう、ずっと色濃く水中眼鏡越しの瞳に感じ取られた。 鮮やかな、色。 空気よりもずっと濃い、空気の中を生きている魚達。その俊敏で何の抵抗もないかのような動き方は、自分の体が無性に悔しくなるようなものだった。 珊瑚の森は、海の森。ごつごつと武骨なほどにありのままの海底は大地。ここにはかつて人が遥かな昔に失った、とてつもなく広大な世界が、今、なお、変わることなくあり続けているのだ。 そこにある、なにもかもが変わっても、なにひとつたりとも変わらぬことがある。それは、命が命であることだ。そこに命がある限り、世界は何ひとつ変わっていない。命の織り成すきらめきこそ違えども、命の光に違いはない。 海は、光に満ちている。 心で感じる、光の海が、ほんの呼吸いくつか分の酸素が持つ間だけしか属せない、それほど遠い場所になっていることに、無意識に、自分の体が悔しがるのだ。体と、意識は、つながってはいても一つじゃない。自分は意識に依ってあるけれど、それっぽっちの小さな小さなものじゃない。ここにいると、それがわかる。 風よりも濃いものでつながった、命の光と光の、距離は近い。 瞳にそんな世界を写し込んでから、萩野むつきは浮上した。ほとんど同時で変わらない、けれどもほんのわずかに後につく、そういうやさしい動きでドランジは彼女が浜辺に上がるのをエスコートした。彼の意識はむつきを後ろからやさしく包んで追い越し、その行く道にすら伸びている。 深く、潜り込んだ体に、砂浜の熱が心地よい。ドランジはむつきの手荷物を取ってあげ、むつきはにこりと、その中から金色の小さなものを取り出し手渡した。丸い金色だった。粒を縒って紡いだ、その粒の丸さよりも丸いほど、それは穏やかに丸い色だった。やさしげな黄金色、タツノコの形をした、ストラップ。 眼鏡をかけるとむつきは、ストラップを脱ぎ捨てた服のポケットに、なくさないよう、踏まないよう、気付かないことのないよう、忘れないよう、大事にしまいこんだドランジの傍らに寄って、そっとその腕に抱きついた。 「………………」 微笑みあいが、通じ合う。ぐいとドランジは、ほんの少し腰を落としただけで、ほとんど体の片側だけの力でむつきを持ち上げ肩に乗せた。迷いなく、力強い、まっすぐな感触を、その時むつきは抱き上げられて触れた箇所から感じていた。 まぶしそうに濡れた二人は空を見る。日は天高く二人を見ている。青空は、白い雲に、今一時だけの濃い青の、その濃さを際立たされていて、雲は、青い空に、変わらぬ艶やかさを引き立てられている。 二人が見つめている間にも、空は、広く、濃く、強いものから、高く、透明へと姿を変えていく。まぶしいほどの昼下がりが、刹那に過ぎ去り、ほどけていくかのようだった。 むつきを肩に乗せたまま、防波堤を巡り、見える限りの景色の変化を一緒に楽しむと、ドランジはまた海辺に戻って彼女を砂の上に下ろした。 見える景色や、移り変わる季節のこと、海の中で見つけた珍しい魚や珊瑚のこと、そんな他愛のないことを、ゆったりとした時間の中で語り合った後のことだった。 肌には潮風と水着の吸った水の湿り気で気付かないほど薄く汗がにじんていて、それを洗い流すためにも二人は再び海に挑んでいった。どちらがどちらを導くわけでもなく、二人が一緒にリードしあう。意識する間もないほどに、自然に二人で過ごしあう。 くつろいだ時間だった。 ぎゅうっと濃く、疲労が感じられる前に、二人はどちらからともなくまた砂浜に上がり、用意してきた軽食や、ドリンクで体を潤した。 ドランジがたまに、これはどうやって作ったのかと聞いて、むつきがそれへと身振りを交えて簡単に説明してみせる。なるほど、自分もやってみよう、そんな風にドランジは真面目に聞いて、気がつくと話題がいつの間にか別のことへと流れている。ゆっくり腰を落ち着けて休んだ後は、今度は泳ぐでもなく波打ち際を、足を浸しながら、歩いていく。 いつしか夕暮れが、黄金色に世界を染め始めていた。 あのタツノコのストラップと同じ、とてもやわらかな丸い黄金の色を、空も、水平戦も、見せていた。 /*/ 「私、幸せだ」 ありがとうと満面の笑顔で見つめられながら言われる。 「自分もだ」 ドランジは、感じていた。 「自分も、今日はとても幸せだった。いつまでも、こうしていたい気分だ」 「はい。でも、もうそろそろ帰らなくちゃ」 「そうだな…国でも、また、あえる」 一緒に帰るか。そう、言いたくはない自分がいるのを、感じていた。 空気は肌に冷たいものを含み始めている。日が沈みきる前にここを発ち、政庁へと彼女を無事送り届けることが、今日の自分の最後の役目だ。それは重々わかっている。 「一緒に帰るか」 「はい!」 屈託なく笑うむつきを見て、ドランジは自分の言うべきことが正しかったことを改めて確かめる。 そうだな、今日は、もう、帰ろう。 置いていた上着から砂を払い袖を通すと、同じく手荷物を持って帰り支度が終わったむつきと共に、並んで海岸を後にしようとした。 と、くるりと先行したむつきがやにわに振り返る。 「―――また、来ましょうね」 「ここへか?」 それは、ドランジにしては珍しく迂闊な返しだった。そうだな、と頷くか、少なくとも、ただ聞き返すだけにして、拒んだようにも感じられる返事はしない。我にもあらず、考え事をしていたせいか、と瞬時に自省。だが、むつきは首を横に振った。 「一緒に休暇」 「―――――ああ」 今日、初めてとも言えるほど、ドランジは大きく微笑んだ。 やっぱりその表情の変化の度合いは、見慣れたものしかわからないほど、ささやかだった。 むつきはにっこり微笑み返し、そうして二人は後にする。 小笠原の水平線は、やわらかな薄墨色に包まれて、夜の訪れを安らいだ潮騒と共に、告げている。ずっと鳴り止むことのなかった昼間とも、まったく同じ響きでもって――― /*/ ~小笠原と宇宙の騎士~ 了 /*/ -The undersigned:Joker as a Clown:城 華一郎
https://w.atwiki.jp/frontlineinformation/pages/2501.html
待ちわびましたわ半年間~セッカッコーの歌~ はじめに 概要 全体図 設置施設一覧 プラント周辺のコメントEUSTベース プラントA(EUSTベース前、2本ある物見櫓) プラントB(EUST側洞窟内) プラントC(中央洞窟内): プラントD(GRF側にあるパイプライン接続基地): プラントE(GRFベース前・カタパルトのある小山そば): GRFベース 戦術北側:EUST戦術 南側:GRF戦術 はじめに 【副題改変案募集終了 ありがとうございました】 案はコメントアウトで残してあります。 トキはまさに世紀末!ゲーセンはナギッ、セッカッコー、テーレッテーetcの炎に包まれた! ( ゚д゚。)乙 <|..天..|\。 ノ ヽ ┿ ノvvvvヽ l _( |_ l ん?(AAを)間違ったかな・・・ 『雪濠』(せつごう) 高山の稜線(りょうせん)の窪地(くぼち)にできる雪がたまった濠状(ほりじょう)のもの。 (※デジタル大辞泉解説より) 概要 米極北に位置するマリナセドナ大雪山は「太陽の女神」と「極寒の女神」が会合する地として崇められている山岳地帯である。 その極めて過酷な環境の観測所付近にもニュードが多量に存在する事が発覚し、両陣営による戦いの火蓋が切られた。 中央の氷穴地帯を中心としたプラントが5つ配置がされており、Cプラントが両陣営にとっての最重要拠点となる。 Cプラントは最短距離となるために占拠した陣営は有利に戦局を運べるが、入り組んだ地形となっているので制圧には注意が必要だ。 また奇襲を行うにはマップ右側の巨大ニュード結晶エリアを通り抜ける必要があるが遠回りになるため多用はできないだろう。 (以上、公式HPのMAP概要) Ver4.5のロケテストでの戦場だったマリナセドナ大雪山。 ただ、本稼働最初のステージは「ベネヴィス高原地帯」になり、なんとVer4.5Bになるまでまるまる4ヶ月以上も放置されていた。 何か問題でもあったのだろうか 雪山ステージ。 同じ雪ステージな「放棄区画D51」よりも広く、MAP内高低差がかなりある印象。 ベルスクは基地内なのでry EUST側は両脇の高い崖に囲まれている。 GRF側は開けていて、とがった岩が高く高く伸びていたりする。 ここに限ったことではないが、見通しの良い場所悪い場所の把握が大事となるか 全体図 公式サイト で確認できる。 設置施設一覧 プラント 5つ。詳細は後述 リペアポッド EUSTベース内に3基、GRFベースにも3基。 他、プラントBとプラントEに1基ずつ。 カタパルト EUSTベースに2基、プラントAに1基。 GRFベースに2基、プラントEに1基。 リフト 11基。 自動砲台 EUSTベース内4基、ベース壁に4基。 GRFベース内5基、ベース壁に4基。 レーダー施設 EUSTベースはコア後方、GRFベースはコア後方左側に設置。 ガン・ターレット ガンタレG:2基。 プラントBのすぐそば(高台)、プラントD北側の建物屋上。 パワーバウンダー 5基。 黄色いパワーバウンダーは無い。 わふーポート、バンカーポート 最初のMAPだからまだ設置されてないよ D51A?知らない子ですね プラント周辺のコメント プラント柱は浮遊タイプ。 ベース前プラント以外は占拠範囲が複数設定されている。 公式HPのスクリーンショットも参照。 EUSTベース MAP南西側に位置。GRFベースと比べると簡素な感じがするが ベースが広めだからだろうか。 正面入り口前のパワーバウンダーが設置されてる場所は飛び越えるのがやや難。 すぐ横の入口までには坂道になっててすんなり入れるが… 一応ベース壁~コア間最短ルートであるので使うボーダーはそれなりにいると思われる 大外からも入れることを忘れると思わぬ奇襲を受けることに。 守るEUSTは: GRFベースと同じく高い場所から見下ろす形での迎撃となる。 概要には「奇襲を行うにはマップ右側の巨大ニュード結晶エリアを~」とあるが 正直な話、Bプラ南から強行突破してくるほうが断然早いため、そちらからくる相手の方が多い。 プラントA(EUSTベース前、2本ある物見櫓) アンカーは物見櫓の間に設置、この1ヵ所のみ。 乗り継ぎカタパルトがあるくらい。 EUSTは: 絶対防衛プラント。 開幕は脚自慢以外のBRでしっかり占拠。 GRFは: 奇襲目標プラント。 概要にあるように大外回りで行けると奇襲成功しやすい。 奪取できたら一斉にコア凸しようぜ! プラントB(EUST側洞窟内) アンカー設置場所と占拠範囲: 崖の上(広め・リフト終点あり、すぐそばに連動リペアポッドとガンタレG) 崖の下(狭め・リフト始点あり) 断面図になってるあたり、榴弾は落とせない? そんな場所で一番高くなっている場所にプラント柱あり。 EUSTは: 前線プラント。必ず開幕占拠。 Aプラの乗り継ぎカタパルトですぐ。 (Cプラに向かうついでに)通過するだけでも占拠ゲージ上がるので、しっかりと。 崖下占拠範囲に潜り込まれると上からは迎撃しづらい。 かといって崖下ばかり守ると南から凸屋が通過してしまう… GRFは: Cプラとったら次はココ。 そうでない場合奇襲目標。 Cプラが入り組んだ場所にあり、入り込むと外側が見づらくなるため。 奪取してもAプラが赤だと相手がカタパルトでビュンビュンとんでくるので 維持は難しいかもしれない プラントC(中央洞窟内): アンカー設置場所と占拠範囲: 北側リフトの終点(狭め) 北側リフトの始点(広め) 南側リフトの始点(狭め) 今MAPの中央、様々な方向から入っていけるけど中は広いようで狭い、 そんな洞窟内にプラント設置。 なんか『湧水の波紋』のCプラみたいだが あちらとは違い榴弾は降ってこない。 上層の占拠範囲は足場の狭さもあって回避がしづらい。 落下しても下に占拠範囲あるし、リフトですぐ戻って来れるけど。 共通: 双方の最初の占拠目標。 どれだけ維持できるかで勝利への道のりに差がでるか。 上の占拠範囲ではプラントの向こう側からの攻撃が意外と届くので注意。 EUSTは: Bプラ~Cプラ間のほうが短く先に到達しやすいので 開幕はなんとしても占拠。 GRFは: Dプラ~Cプラ間はやや長く、窪んでいるのもあってさらに遠く感じる。 プラントD(GRF側にあるパイプライン接続基地): アンカー設置場所と占拠範囲: pdfMAPでDプラ柱位置とされてる場所の すぐ東(狭め:円筒型の建物上、パイプライン坂の終点) すぐ南(広め:中にリフトのある建物、地表) の2ヶ所。 連動リペアポッドはすぐ西、(建物の外の)リフト始点のそば。 北側通信施設?の屋上ヘリポートにガンタレG。 EUSTは: 当面の占拠目標。Cプラを占拠したら次はここ。 GRFは: 前線プラント。開幕はすぐ占拠。 谷にある関係上取られてもすぐに危険ということはないが落とされたくはない。 通信施設屋上ガンタレGはCプラ上占拠範囲への牽制にも使える。 逆にCプラ上占拠範囲からの狙撃対象にもなる。乗りっぱなしは危険。 リスポン位置がやや使いづらい印象(階上占拠範囲のGRF寄り、パイプライン坂踊り場近く) Cプラ~Dプラ間南東側の高く高く伸びるとがった岩は昇れる。 その上から撃たれたりすることも。 パイプライン坂南東のとがった岩あたりも立ち入ることができる。 Dプラ周辺の低地が見渡せるので、牽制に使いたい。 プラントE(GRFベース前・カタパルトのある小山そば): アンカーは小山の壁沿いに設置。占拠範囲は1ヵ所のみ。 乗り継ぎカタパルトがあるくらい。 EUSTは: 奇襲目標プラント。 Cプラが取れていれば北西側からぐるっとまわって取れるかも。 Dプラ奪取してから順当に攻めていくと 坂の上にあるプラント周辺から相手の攻撃が降り注いでくるので 攻めづらい感じはあるかもしれない。 GRFは: 絶対防衛プラント。 でも奇襲されやすいので注意。Cプラが赤くDプラに前線がある場合、特に注意。 ガンタレGのある通信施設内部が通過可能だったり、すぐ横のパワーバウンダーでガンタレGのある屋上に乗れたり。 施設北側も手薄になりがち。 定期的に何らかの偵察行為を行いたい所。広いのでセンサーだけではカバーしきれない。 GRFベース こちらも山の高い所に設置。 一周ぐるっと壁が作られてる一般的ベース。 守るGRFは: こちらも高所から見下ろす形での防衛。 開けてるようには見えるが地形のでこぼこで射線が通りづらい。 戦術 北側:EUST戦術 南側:GRF戦術
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/993.html
『――今のお言葉は、どういう意味ですか笛吹警視?』 『そのままにお受け取りいただいて結構です』 レジャー施設から遠く離れたアジト。 テレビ画面の光だけがしらじらと灯る部屋で、蛭は唇を引き結んだまま液晶を睨んでいる。 映っているのは男が三人。いずれも警察上層部の錚々たるVIPたちだ。 『事件現場より、容疑者のものと思われる体毛と唾液を採取し、鑑識による分析を行いました。 それによって判明した事実です』 警察内の重鎮は勿論、有能な者のデータは全て頭に入れている。回答者は笛吹直大。 現刑事部長の無能を補ってあまりある逸材だ。 『前もって断っておきますが、これはDNA鑑定などとは異なります。より単純で、それ故に信頼性も より高い。鑑識によれば、ほぼ百パーセント事実と断定可能と見てよい結果とのことです』 『随分と自信を持って言い切られるのですね』 明らかに悪意がこもった突っ込み。 『現場から発見された足跡の形から、虎などの大型ネコ科動物と見る向きもありましたが?』 『……虎の染色体は十九対、ヒトのそれは二十三対。地上の動物には、ヒトと同数の染色体を持つ ものは存在しません』 しかし笛吹は揺らがない。 『採取された細胞を解析したところ、二十三対の染色体が確認されました。――それを踏まえて 先ほどの言葉を繰り返させていただきます。都内で連続して発生した大量虐殺事件は、紛れもなく ホモ・サピエンスの……』 画面の中の笛吹はここで、集った報道陣を見渡した。 『人間の手による犯行です』 虎を象ってはいるが、かつて確かにヒトであった生きもの。『人虎伝』の、そして『山月記』の 李徴がそうであったように。 『姿形は虎そのもの。虎にそっくり。虎にしか見えない。でも奴の細胞は確かに人間のものだった。 変異をどれだけうまく調整したって、細胞そのものの性質まで根本からは変えられない。 ……俺が前にドーベルマンになったときだって、さっき虎に化けたときだって、そうだった』 「そうでしょうね」 『つまり――』 熱に浮かされたような、サイの声。 『あいつは、俺と同じものだ』 変異する細胞を持つヒト科。 違いがあるとすればただひとつ、人間としての己を保っているか否か。 数日前、船の上で、サイが最初に≪我鬼≫を解体しかけたとき、彼はこう漏らした。 ――あんま人間と体内構造変わらないな、意外。 当たり前だ。≪我鬼≫はもともと人間だったのだから。 また、つい数時間前サイはこうも呟いている。 ――意外に近いところに隠れてたもんだね。助かったよ。 これも当たり前だ。 千キロという広大な行動範囲は、あくまでアムール虎の習性を前提としたもの。 ≪我鬼≫が人間と判明した時点で、そんなものは根本から崩れていたのだ。 サイは続ける。 『今はあんな姿だけど、元は俺と同じように人間の姿だったはずだ。人間の姿で、人間の心で、 人間として生活していたはずだ。でも年月の経過でそれを忘れた。脳細胞が変異して、自分が昔 人間だったことさえ忘れてしまった』 常に変異を続ける脳細胞。 名前も性別も年齢も忘れてしまった脳細胞。 自分の種さえも忘れてしまった脳細胞。 『……俺もいつかあんな風になるのかもしれない』 「サイ、落ち着いてください。≪我鬼≫の事例があなたに当てはまるとは限りません」 『当てはまらないかどうかも分からないだろ!』 まずい。 恐れていた事態が生じてしまった。 それも考えられる限り最悪の形で。 『二本足で歩くのも忘れて四つん這いで動くようになって、言葉も分からなくなって唸ったり 吼えたりするしかできなくなって』 「サイ、」 『そのうちきっと考えることもできなくなる。自分が誰なのかもどうでもよくなって、腹が減ったとか 寒いだとかそんな単純な本能だけが残って』 「サイ!」 『人間じゃなくなるんだ。今のあいつみたいに……』 東の空が白む。 長かった夜が明け始める。 ≪我鬼≫は高い視力を有している。わずかに差し始めた朝日を頼りに、数十メートル上空のヘリの 中をうかがうなど、彼にとっては造作もない。 ヘリコプターという物体についての知識を、彼は持っていなかった。かつては持っていたのかも しれないが、これまで忘れてきた多くのことがら同様、記憶の彼方に葬り去られてしまっていた。 今の彼の目にヘリは、天高く飛ぶ巨大な畸形の甲虫と映る。 その甲虫の内部に、彼はあるものを見た。 おやおや…… 甘みのある唾液がひろがっていくのを抑えられない。 歓喜の笑みに似た表情を浮かべて、≪我鬼≫は唇のない口をベロリと舐めずる。 あんなところに旨そうな雌。 ヘリのスティックを握るユキは、まだ状況を把握しきれていない。 ≪我鬼≫が一度倒れたのは理解できた。それがまた立ち上がって動き出したことも分かった。 先の戦いの影響か体は大幅に小振りになっているが、まだ充分な体力を残しているように見える。 しかしあの子供がそれを追わず、それどころか女と揉めているらしいのが解せなかった。 「成る程な」 兄はおぼろげながら状況を掴んだらしい。 「あの女、主人には伝えずにいたと見える」 「伝えずにって……」 「奴に会いに行く前に報告を受けたろう、細胞解析の結果の件さ」 『化物』と呼ばれただけであれだけ激昂するのだ。自分と≪我鬼≫の間にさして差がないことを 知ればどれだけ取り乱すか、ろくろく事情も知らぬ彼らでも想像に難くない。 ユキは舌打ちした。 「クソッ、肝心なときに役に立たねぇ!」 ≪我鬼≫が逃げる。 凄まじい速度で駆ける≪我鬼≫に追いすがるべく、ユキは握り締めたスティックに力を込めた。 女と子供がどうであろうが関係ない。彼ら兄弟は彼らの意志で、あの化物と化した人のなれのはてを 追うだけだ。 しかし加速をかけようとしたとき、≪我鬼≫は予想外の行動を見せた。 疾駆する巨体が目指すのは、園内に高くそびえるウォータースライダー。 天に向かって伸びたそれを、≪我鬼≫は駆け上がった。 目玉アトラクションというと大層だが、所詮は滑り台。あくまで人間が滑るのを前提として 造られている。 メリメリという不吉な響きとともにヒビが走る。 崩壊はあっけないほど簡単に始まり、そして連鎖する。 スライダーが崩れ落ちるより早く、≪我鬼≫は跳んだ。 崩落する滑り台を蹴り、ユキ達の乗るヘリめがけて飛びかかった。 「ユキッ!」 スティックを倒させたのは、兄の叫びではなくユキ自身の本能だった。 フロントウィンドウに火花が散る。 一瞬の浮遊感の直後、衝撃が襲ってきた。 轟音とともにヘリが揺れた。 機体の左半分が盛大にひしゃげた。歪んだドアの隙間から、隙間風というには凶悪すぎる風が吹き込んだ。 直前に後退したおかげで、致命的なダメージまでは免れた。だがまともにバランスを崩した機体は、 浮力の大半を失い傾きながら失速していく。 前脚と顎で取り付いた≪我鬼≫の重量に耐え切れずに。 「くっ……!」 薄れかける意識。歯を食いしばってそれに耐える。 操縦者の自分が倒れれば何もかも終わってしまう―― 手から離れかけたスティックを再び握り締めた。 「アニキ、頼んだっ!」 衝撃で口の中を切った早坂は、錆と塩の味を同時に味わいながらシートベルトを外した。 通常とはまるで見当違いな方向にかかる重力。中年にさしかからんとする体には拷問に等しい。 だが耐えられなければ死ぬしかない。 取り上げるのはマシンガン。 できればロケットランチャー辺りを使いたいところだが、下手な武器を使えば奴ごと心中になる。 威力と自衛の中間点をとれば、とるべき選択肢はこれしかない。 ユキは確かに『頼んだ』と言った。 彼が自分を信頼してそう言った以上、責任を持ってそれを全うするのが義務というものだ。 彼の兄としての。 それ以上に彼の上司としての。 足元の傾斜は数十度。しかも落下のせいで安定しない。 しかしその安定しない足元に、早坂はしっかと二本の脚で立った。 よろめきながら、バランスを失いながら、暴風吹き込む歪んだドアへと近づいていく。 ようやくドアに手が届いた。 車同様、事故防止のためそう簡単には開かない構造。そのうえ≪我鬼≫の突撃でひしゃげ、よけいに 開きにくくなっている。 渾身の力を込め、早坂はドアにタックルした。 機体ごと激しく揺さぶられたアイの耳から、通信機が転がり落ちた。 手を伸ばしたが間に合わない。単体だと玩具のようにチャチなそれは、機体の傾きに沿って滑るように 転がっていく。 三半規管の攪拌される感覚に喘いだ瞬間、フロントウィンドウから覗く金色の瞳と目が合う。 満月のような真円を描いてきらめく目は、確かに獣ではなく人間のそれだった。 かつては理性の光を宿していたろう瞳に、灯っているのは剥き出しの欲望。 その欲望は今、明らかに自分に向けられている。 ぞくり、と背筋に寒気が駆け抜けた。 ぽたりぽたりと歯の隙間から涎が落ちる。 裂けた口から息が吐かれ、ウィンドウを白く曇らせていく。 素晴らしい。 食欲の権化と化した脳で≪我鬼≫は狂喜した。 これほど素晴らしい雌は見たことがない。 柔らかそうな皮は白く滑らかで、それでいて内部の健康的な血色を透かしている。乳房は適度に 脂肪をたたえてふっくらと稜線を描き、それでいて腹や腿など締まるべきところは締まって噛みごたえも 充分。流れる黒髪は長く艶やかで、これも健康状態の良好さを示す材料。 小造りな顔にはこれまた黒い、冷たく輝く二つの目が嵌まっている。これをくり抜いて食すのも 一興だろう。 間違いない。この雌は、今まで彼が食らってきた中でも最上級の獲物だ。 何としても仕留めて食らって味わわなければ。 ≪我鬼≫は歯を剥き出す。 原始的な頭の中は既に、噛みちぎった肉から溢れる肉汁のイメージで満たされている。 鋼鉄のごとき頭蓋をフロントウィンドウに叩きつけた。 轟音とともにウィンドウに走る蜘蛛の巣。 一瞬気圧されたアイを我に返らせたのは、耳によみがえったサイの言葉だった。 『人間じゃなくなるんだ』 『今のあいつみたいに』 いけない。 アイは声を上げなかった。 心臓すら押し潰すような叫びは、彼女の胸の中だけで大きくこだまし反響した。 あなたはそこで止まってはいけない。 立ち止まって膝をついてもいけない。 高みを目指すことを放棄したらそこで、あなたはあなたでなくなってしまう。 シートベルトを引きむしった。落下時の危険など瑣末なことだった。 赤子のように這いつくばり、転がりながら落ちていく通信機に手を伸ばす。身を突っ張らせ、 肩を、肘を、手首を、指先をいっぱいに伸ばして拾い上げんとする。 関節がびりびりと痙攣する。 指先も震えて定まらない。 あと数センチ。あとほんの数センチで手が届く。 だが―― 轟音が耳をつんざいた。 またヘリが激しく揺さぶられた。 「っ!」 通信機は床を滑り、アイが手を伸ばせぬコックピットの隙間へと転がり込む。 届かない。 早坂は体重を乗せてドアに体当たりした。ガコン! とようやく隙間が広がり、白みはじめた 空の色が覗いた。 サングラスの奥から睨んだ先に、ヘリに取りついた黄金色の巨体。 太い喉から漏れるのは、唸りかはたまた咆哮か。空気を切り裂きながら落ちていく機体の上では、 それを知ることもままならない。 吹き荒ぶ突風への怯えは皆無だった。 マシンガンを肩に構え、衝撃に耐えながら狙いを定める。 無数の弾丸が吐き出された。 トリガーを引き続けるだけで屍山血河を築けるこの武器はかつて、『悪魔の兵器』と呼ばれ恐れられた。 時代が流れ、悪魔の称号はクラスター爆弾や核兵器に奪われても、その威力は変わらない。 一発一発が一撃必殺の魔弾を、標的めがけて雨あられと降りそそがせる。 むろん普通の人間に向ければこその『必殺』。≪我鬼≫に対しての決定打となりはしない。 だが、傾きながら落ちていく不安定なヘリの上でなら話は違ってくる。 ≪我鬼≫の上半身から血が噴き、フロントウィンドウに深紅の模様が滲んだ。 李徴のごとく虎と化した人の子は、果たして苦痛の唸りを上げたろうか。 渦巻く風が起こす音は、それを確かめることすら許さなかった。 機体にしがみついていた前脚が、血痕をなすりつけながらずり落ちはじめた。 傷は再生する。しかし、傷をつけること自体が不可能なわけではない。 破壊するのは一瞬でいい。ほんの一瞬、機体に取り付く支えを奪いさえすればそれで充分。 何だこれは。 一度は去ったはずの焦燥が、≪我鬼≫の胸に再び戻ってきた。先ほど感じた切実な死の恐怖より、 はるかに軽度でささやかなものではあったが、根源は間違いなく同じところにあった。 一粒一粒は小石のように小さく弱い。彼にとっては大した威力ではない。 ただいかんせん数が多すぎる。崖上から垂れる水滴が土を穿つように、着実に彼の体を抉っていく。 前脚から力が抜けた。鋭敏きわまる聴覚を、血のぬめりが混じったズズッという響きが刺激した。 爪を立てようにも力が入らない。筋肉繊維そのものが引きちぎられてしまっている。 それでも≪我鬼≫は諦めなかった。 振り落とされてなるものか。 あの雌を味わうまでは。 ≪我鬼≫は高らかに咆哮した。 狂気すらたたえた吼え声とともに、フロントウィンドウに頭突きを見舞った。 スティックを操作し浮上をはかっていたユキは、視界一杯に虎の巨大な口が広がるのを見た。 「なっ……!」 ウィンドウが激しく割り砕かれた。 ≪我鬼≫の頭がヘリに突っ込んできた。 ここまでか。 苦い唾を飲み込んだ。 きつく目を閉じ、力一杯にスティックを倒した。 せめて兄だけは。 たとえこの身は死しても。 寒風に入り混じる、生温かい息が顔にかかった。獣の唾液の匂いが肺腑いっぱいにひろがった。 「アニキ、すまねぇっ!」 スティックを倒しきれない。 間に合わない。 自分の頭が脳漿を撒き散らすのを覚悟した。 だがそのとき、スティックを掴む手に柔らかい別の手が重なった。 手は感触に似合わぬ強い力で、半ばで止まったスティックをぎりぎりまで倒しきった。 見えない力でぐわんと持ち上げられる感覚。 ヘリの急速な浮上。 開いた目に情景が流れ込んできた。 ユキの頭蓋を屠らんと迫った牙は、しかし結局は届かなかった。 突如として襲った上方向への力に、≪我鬼≫の前脚が機体からずり落ちた。 落下していく。 目を見開いたままユキは首を動かす。自分の命を紙一重で救った人間の顔を見つめる。 「お前……」 女がそこにいた。 片方の手で取り落とした通信機を、もう片方の手でユキの手のひらごとスティックを掴んでいた。 「退却しましょう」 抑揚のない声で言葉を紡ぐ、その頬は心なしか青白い。 「これ以上は無意味です」 落ちていく≪我鬼≫とは逆にぐんぐん舞い上がっていくヘリ。 呆気にとられたのは一瞬だった。浮力を取り戻した機体をすぐさま加速。 三十フィート、五十フィート、八十フィート。≪我鬼≫の跳躍力でもとうてい届かぬ高みを目指して。 グシャリと肉と骨が潰れる音が風音に混じった気がした。 どうでもいい。 上へ。ただひたすらに上へ。 地上の葛西は唇の端を歪め、憔悴しきったサイを見つめていた。 少年の姿をした彼の仮初めの主は、地に膝をついたままブツブツと呟き続けている。普段は 意志の輝きに満ちた瞳は、今やどんよりと澱んでいた。 そこにはもはや、さっきまでの覇気の欠片さえ残っていない。 葛西はマッチを擦る。夜明けの光に包まれ始めた世界で、肺腑の奥まで煙を吸い込んで一服する。 一つには、欠乏しはじめたニコチンを補給するためだった。また戦闘の緊張に強張った体を 解きほぐすためでもあり、更には口元にひろがる嘲笑を隠すためでもあった。 ぐわん、と、ひときわ大きな音が耳に響いた。 視線を投げると、傾き落下しかけていたヘリが浮上したところだった。 地に叩きつけられるギリギリで持ち直したか。 悪運の強い連中だ。 吸った煙を吐くだけ吐いて、葛西はまたサイに視線を戻す。 力の抜けた体は、糸一本が支えかのような危うさでそこに存在している。喘ぎに似た呼吸を くりかえしながら、薄く白い胸が上下していた。肌と肉と骨のすぐ下では、小さな心臓が早鐘を 打っているに違いなかった。 葛西は一部始終を聞いていた。 サイとの交信のために装着した通信機は、怪盗と従者とのやりとりを一語一句余すところなく彼に伝えた。 この場で一杯ひっかけられないのが残念だった。全てを知っている彼にとって、サイの慟哭は 極上の肴だった。細胞の超常の力に胡坐をかき、ふんぞり返っていたこの少年が別人のように苦悶する様。 これだけで、何杯でも旨い酒が楽しめただろう。 ――ざまあ見やがれ怪盗"X"。 キャップの鍔の影で葛西は嘲笑した。 ――お前はただの、彷徨える化物(モンスター)に過ぎないんだ。 葛西は見た目のわりに思慮深い。侮蔑の感情をわざわざ表に出すような、百害あって一利なしな 真似とは無縁だった。口元にひろがる笑みを必死におさえ、精一杯気遣わしげな顔を作って、サイの 肩を背後からトンと叩いた。 「よく分かりませんが、とにかく一度ズラかりましょう。これ以上ここにいてもどうにもなりやしません」 「……………」 「ほら、上の連中も退くつもりみてぇですよ。それに……」 葛西は耳朶に手を当てた。 聴き慣れたサイレンの音。ドップラー効果により変質したファンファンという響きが、微弱ながら 確かに接近してきていた。 「行きましょう。長居は無用です」 サイは答えなかった。 ただゆっくりと首を動かし葛西を見た。 その顔からは、一切の表情が消え去っていた。 地に叩きつけられた≪我鬼≫を尻目に、巨大な甲虫は空へと昇っていく。 落下の衝撃で四肢が潰れた。動くこと自体はまだ何とか可能だが、己の体長の百倍近いあの高さまで 跳ぶとなるとさすがに別問題だ。 見る間に小さくなる雌を乗せた甲虫。 ≪我鬼≫は声にならない唸り声を上げる。 これは敗北だった。 彼は記憶している限りで一度も、獲物に逃げられたことがなかった。どんなに逃げ足の速い獲物でも 確実に狙いを定めて屠ってきたからこそ、故郷の密林で王者として君臨していられたのだ。 由々しき事態だ。 グルリと≪我鬼≫は喉を鳴らす。 はるか昔に人間をやめた彼にも、彼なりのプライドというものがあった。それを踏みにじり 蹂躙した存在を、そのまま捨て置くことはできなかった。 それに―― あの雌。 ≪我鬼≫は彼女の肢体をまぶたの裏に刻み込んだ。 しなやかな体。それでいてまろやかなラインを描く稜線。芳香さえ醸すような若く柔らかい肉。 次は逃がすものか。 必ずその肉を食らってやる。骨の髄まで舌の上で味わってやる。 焼け野原と化した園内に響く吼え声一声。 迫り来るサイレンの音と入り混じって、そして消えた。
https://w.atwiki.jp/hnagashi/pages/20.html
(4月15日 捜索本部にて管理人撮影 (20120416)) (記録用としてしばらく残しておきます。20120430 管理人) 2/13捜索時の足跡(下記参照) _1060046.jpg 捜索隊員のK氏 2月12日(日)に 山口の木和田尾を 31歳の若者と二人で登った者です。 その時の 行動をお書きします。 2月12日(日) ふもとで風速8mのど。 カッパを着ようかどうしようか悩むほどの みぞれ が降っていました。 8時30分 山口の貯水場を出発。 9時頃 二人連れのパーティー(K氏の知り合い)を挨拶をして追い越す。 白瀬峠への分岐から白瀬峠へ向かうべくトラバースルートに入る。 トラバース中 水場がある谷へ向かわず トレースの通り小尾根に取り付く。 この時 水場がある谷へは トレースはなかった。 頭陀ヶ平らのから三重県側に一段降りたところにある鉄塔で 男女二人のパーティーに合う。 その人たちより先に 頭陀ヶ平らの鉄塔にトレースがない斜面を登る。 11時過ぎ 頭陀ヶ平らの鉄塔に到着。風速10~12メートル 視界100~150メートルだったが2度ほど対岸の御池岳が見えた。 頭陀の鉄塔から その西2~300mの鉄塔に向かう。 この間 踏みあとなし。 西の鉄塔から 三重県側の一段下の先ほど通った 鉄塔にツボ足で降りる。 鉄塔の西80mほどの所で イグルーを作り その中で昼食を摂る。 下山時 坂本谷分岐下200メトルノ平たくなった所で 登山口に居た6~7人の老人のパーティーがここで引 き帰したであろう 跡があった。 (捜索隊員のK様 情報ありがとうございました。20120416 管理人) 小屋番様のブログに書き込みをされた林様(11日に真の谷にテント泊し、翌日御池岳に登られた。) _ 林 幸一 ― 2012年02月18日 07時23分02秒 11日に白瀬峠を越えて真の谷でテント泊して12日御池大地まで登りましたが、ガスで視界がないのでそのまま下山しました。白瀬峠を11時すぎに通過し下山しましたが当日のトレースはなかったように思います。 やぶこぎネットの山日和様(12日に丸尾から御池を目指し、寒山で撤退された。) (Re 【鈴鹿】晴れのちガスのち晴れ 霊仙山西南尾根 by 山日和 » 2012年4月01日(日) 21 36 ) 私は遭難者が最後に家族に連絡を取った日、丸尾から御池を目指しながらモチ低下で寒山でやめてしまいました。見上げる御池方面は真っ白。雪が舞い、 風も吹いていましたが、頑張って上がっていれば何か消息をつかめるものがあったかもしれません。 hakusui様 65 名前 hakusui 2012/03/28(水) 23 39 46 ID d7ce89e08 はじめまして。11日に天狗岩でNさんと思われる方と話をした者です。 遅くなりましたが、私の12日のコースを連絡いたします。 12日は、国道306号をゲートから犬返し橋を過ぎた所まで歩き、 犬返し谷左岸尾根を登りました。 P801手前のコグルミ谷右岸尾根との合流点を過ぎたところまで行きましたが、 吹雪いており、天候の回復見込みが無いと判断し、そこで引き返しました。 ちなみに、そこまでの尾根筋に足跡は全くありませんでした。 2012年02月12日 犬返し谷左岸尾根 gps軌跡 (hakusui 2/11 11 00頃 藤原岳天狗岩で目撃情報の方) 2012年02月12日 犬返し谷左岸尾根 タイム (hakusui 2/11 11 00頃 藤原岳天狗岩で目撃情報の方) (hakusui様 連絡ありがとうございました。) 02/11 14 50頃 御池岳丸山山頂下: (りゅう太様) (日記)2012.03.25 Nさんのテン泊地は… (りゅう太の徒然日記(+鉄分少々)) 2012.02.26 2/26再び御池岳へ。そしてNさんの行動を推測する (りゅう太の徒然日記(+鉄分少々)) 2012.02.16 2012.2.11 の登山記録(2/20追記) (りゅう太の徒然日記(+鉄分少々)) 2012.02.11 カタクリ峠から御池岳頂上までの歩いたトレース フリーハンド (りゅう太) 14 50頃 御池岳丸山山頂下(真の谷付近):(多治見労山:2/11:御池岳登山者様) 2012年02月11日(土) 山頂はおとぎの国! 御池岳のルート地図 (2012年02月11日(土) 山頂はおとぎの国! 御池岳 (私の山と花日記 )) 『多治見労山:2/11:御池岳登山者からの情報』をいただきましたので、転載いたします。 (1) 2/11日の記録を残そうとしております。 このページにありますように、 http //flowerniwa.mond.jp/2012-f/2gatu/oike/oik.htm 2/11は、計5名(男性2名、女性3名)で登りました。 行動は 山口登山口(P)に7:40着~8:00発 すでに数台駐車してあり、用意しているうちもう1台車が来て、単独行の男性が先に出発していきました。 坂本谷分岐に10:35着。ここからは、踏み跡がなければ尾根へ登ることも考えていましたが、先行者の跡があったの で、いつものトラバースを通りました。 白瀬峠手前のトラバース地点の急斜面は、リーダーがロープを出して手がかりを作ってくれる程でした。 そこを登りきり、踏み跡が尾根へと続いていたのでその跡を辿ろうとして登っている時、ちょうど上から単独の男性が降りてきました。 そして、「登山道はこちらです。藤原岳から御池岳へ縦走してきました。踏み跡はなかったです」と言われました。 踏み跡の無い藤原岳~御池岳~白瀬峠を単独で歩くなんてすごい人だなあという印象を受けました。 そこで、尾根へ登りかけていたのを止めて、彼が降りてきたトラバース道をありがたく使わせてもらいました。 白瀬峠に11:40着~12:00発 軽い昼食をとりました。 コグルミ谷分岐(カタクリ峠)に12:50着 後ろの4人とはかなり離れて先を歩いていたリーダーは、このあたりで単独の男性と出会ったそうです。 7合目で後ろの4人は、先を行くリーダーに「ここで休憩するから~」と声をかけ5分ほど休憩しました。 8合目(真の谷に下りたところ)に13:25着 谷は雪が深いので避けようとしましたが、足が潜るようなことはなく歩けました。 御池岳(丸山)への踏み跡は、いつもの谷に沿う登山道ではなく、ずいぶんと左に振っているなあ・・・と思いながら歩いていました。といって、新しくトレースを付けるのは時間も労力もかかるので、ありがたく使わせてもらいました。 トップのリーダーと後ろの4名の間の距離がかなり離れていたので心配になったのか、中腹あたりで、リーダーは様子を見に下りてきてくれました。 山頂手前で、先程の単独行の男性が下山してくるのに出会いました。 「山頂はこちらですか?」と尋ねると、「もうちょっと先です」という返事が返ってきました。 山頂に14:15着、かなり予定をオーバーしているので写真を撮り行動食を食べるくらいですぐ出発しました。先に到着していたリーダーは、スコップで穴を掘りベンチを作っていました。 そして、14:30下山開始。同じルートで下りました。 14:50、もうすぐ真の谷に着く・・・という地点で単独行の男性に出会いました。 3人の女性は、えっ、今から?と思って「今から登るんですか?」「テントですか?」と声をかけたところ、「上に泊まります」の返事が返ってきました。そこで、「頂上に、穴を掘って休んできたのでそこで泊まるといいですよ」と返しました。 「風はありましたか?」の問いには「いいえ、ありませんでした」と答えました。 「今日はいいお天気だから、樹氷がよく見えますよ。素敵な夜空が見えますね」などと、声をかけてすれ違いました。 そのとき、銀色のマットがザックの左側に付いていたのを記憶している人もいました。 出会った時の印象については、 身長が高かった。(全員同じ) 30歳~40歳台(全員同じ) ワカンをはいていた(全員同じ) 服装は黒っぽい地味色(全員同じ) その他、個人的な意見として 長髪・パーマっぽい髪型 ブルーの上着・ズボンは灰色 彫りの深い顔で顔は浅黒い 疲れてはてているなあ・・・と感じた ヒゲがあった がっしりしていた メガネをかけていた。瞳が見えたので黒いサングラスでは無い テント泊にしてはコンパクトに収納している 大きなザックだった など、いろいろ出ました。が、「そうかなあ?」「そうだった?」と意見が一致しない印象もありました。 (2) 御池岳からの下山途中 別パーティーに会わなかったでしょうか? 山口の登山口まで誰とも会いませんでした。 ただ、白瀬峠下の私たちが難渋した辺りの急斜面には、ピッケルの跡がたくさん残り、かなりの人数がここを通ったことが分かりました。踏み跡がしっかりした階段になっていたので、登りの時よりは楽に降りることができました。 (情報ありがとうございました。20120411 管理人) 11日 11 10頃 天狗岩:(hakusui様) hakusuiです。 11日に天狗岩でNさんらしき人に会った時の状況を連絡します。 私は、天狗岩に11 00に到着しました。彼は、11 10頃到着しました。挨拶した後、彼が写真を撮り終わった頃を見計 らって、私から「シャッター押しましょうか?」と申し出ました。彼は、申し訳なさそうにして、それを辞退しまし た。その後、その場で少し話をしました。 <話した内容> 御池まで縦走するとのこと。 テント泊をするとのこと。 幕営地は、行ってみて判断するとのこと。(雪の上だからどこでも張れるねと同意) 下山は、鈴北から鞍掛かコグルミあたり?(今思うと私から誘導したような気もする) 車は、大貝戸に駐車しているとのこと。 車までは国道を歩いて戻る?(私の思い込みのような気もするが、ピストンするという話はなかった) 帰宅したら、ヤマレコにレポをアップするとのこと。(ヤマレコにというのは私から訊いた) トレースがあったからここに来れたとのお礼。(彼から自発的に出た言葉) 木和田尾コースについての話はなかった。 <彼の印象> 精悍な感じで、30代くらいに見えた。 ザックは、テント泊にしてはコンパクトにまとめられていた。 ワカンは履いていた気がするが、記憶は曖昧。 ウェアの色は、全体的に黄緑色と黒色のイメージはあるが、記憶は曖昧。 ザックの色は覚えていない。 <周囲の状況> 雪面は、堅雪に新雪が10cmくらい積もった状態で、比較的歩きやすかった。 展望丘は見えていたが、竜ヶ岳、御池岳は中腹までで、山頂付近は雲に隠れて見えなかった。 天気は悪くなく、時折日が差し、青空ものぞき、風もあまり無かった。 白瀬峠方面への縦走路には先行者数人のトレースがあった。 縦走路の近くで昼食休憩をしている間、縦走路では単独行者やパーティが行き来していた。 できるだけ事実のみを客観的にと心掛けたつもりですが、記憶が曖昧な部分や思い込みがあるかと思います。 その点をご理解の上参考にしていただければと思います。 (hakusui様 連絡ありがとうございました。) 11日 9時55分藤原岳展望丘と10時30分ごろ藤原山荘と天狗岩の中間地点:(日本300名山と鈴鹿の山の管理人様) 2012年02月11日 藤原岳~頭陀ヶ平 (日本300名山と鈴鹿の山 ) この日、山中で出会った人が行方不明ということでその時の状況をメモしておく。 9時55分藤原岳展望丘 9時55分少し前に十数人の団体が山頂から下山して来る。その少し後に私が山頂に到着。山頂には彼(行方不明者)が1人休憩をしていた。私が山頂写真を撮ろうとしていたら彼から写真を撮りましょうか。と声をかけられた。私は自身の写真はほとんど撮っていないので「いいですよ」と返答した。樹氷を入れて山頂写真を撮ったが右隅に彼が入っていた。顔が写っていないし、小さいこともあって第三者には彼とはわからないと思う。 私はすぐに下山し始め山頂を振り返ると彼も下山し始めた。その彼に藤原山荘と天狗岩のほぼ中間地点で再び彼と出会った。 10時30分ごろ藤原山荘と天狗岩の中間地点 私は藤原山荘で休憩後天狗岩に向かった。彼は荷物が大きいためかユックリ歩いていたようで藤原山荘と天狗岩のほぼ中間地点で彼に追いついた。そこはちょうど樹氷が綺麗だっため写真を撮ろうと立ち止まったところ。ここで彼から木和田尾根の状況と、ここを下山すれば国道にでられますか。と聞かれた。木和田尾根は歩く人もおりシッカリしています。そして、ここの登山口から国道は近いですよ。と答えた。また彼から少し前に国道306号のゲートから鞍掛峠まで約7km歩き鈴北岳に登り、山頂手前でテント泊。との話を聞かされた。この彼の山行は「ヤマレコ」で読んでいたのでこの人がそうかと思った。後日、この人が行方不明になったと知った。ここから天狗岳方面には自分が先行してこの後、彼には会わなかった。彼は天狗岩には立ち寄らず頭陀ヶ平方面に向かったと思われる 頭陀ヶ平へはこの人が先に通過していると思う。私が頭陀ヶ平に向かった時、白瀬峠分岐からは3人のトレースがあった。その内の一つが彼のものだと思っている。あとの二つは木和田尾根の下山途中で追い越した人だと思う。 木和田尾 根の下山途中でテント装備のおじさん、おばさん達の5人組と10人くらいのパーティ2組 に出会った。御池岳でテント泊とのことだが、それにしても元気な人達だ。 5人組と出会った場所は木和田尾根R201鉄塔付近、 10人くらいはさらに10分くらい下ったところで12;00~12:30くらいの間です。 時刻が遅く御池岳までは行けないのでテントは何処で張るのか不明とのこと。 二組とも真の谷から御池岳に直登するとのことだったので真の谷に降りてテント泊だったかも。 この人達とはすれ違いながらの会話だったため多くの話はしませんでした。 日本300名山と鈴鹿の山の管理人様より 遭難者についての情報 (アサケアルパインクラブ ) 2/11 大貝戸登山口に登山届け (内容)藤原岳←→御池岳もしくは鈴北岳 駐車場所:大貝戸登山センター駐車場 2/11 06 30頃 家族に藤原岳に入山の連絡 2/11 09 30頃 藤原岳展望台で目撃情報 2/11 11 00頃 藤原岳天狗岩で目撃情報 2/11 14 50頃 御池岳丸山山頂下で目撃情報 2/12 06 33 家族へ「これより下山する」とのメール発信 2/12 11 30頃 藤原岳7合~8合目間で目撃情報(但しヤッケの色が相違) 2/12 17 30 電話連絡ができなかった、以後不通 緑地に肩と袖が黒のヤッケ、灰色と緑の大型ザック(50~60㍑) GPSロガー、GPS携帯、ビーコン、プローブ、シュラフザック他の宿泊用具炊事用具 (遭難者の想定ルート) 2/11 大貝戸道~藤原岳~県境稜線~御池岳(テント泊) 2/12 御池岳~県境稜線~藤原岳~登山口 or 御池岳~鈴北岳~鞍掛峠~R306経由山口 遭難者自身が書いたこの山域での記録 (ヤマレコ) 2012年01月29日(日)~2012年01月30日(月) 鞍掛峠(三重県側)--鈴北岳(途中撤退) (雪山ハイキング / 霊仙・伊吹・藤原) 2011年04月29日(金) (日帰り) 鞍掛峠-鈴北岳-御池岳-コグルミ谷 (ハイキング / 霊仙・伊吹・藤原) 2011年03月13日(日) (日帰り) 鞍掛峠(三重県側)--鈴北岳 (雪山ハイキング / 霊仙・伊吹・藤原) コピペ 御池の遭難を考える はじめまして。岐阜市のJUNといいます。 2/19日山スキーにより、滋賀県側御池谷登山口から真北に伸びる尾根に乗り鈴ヶ岳まで行きました。僕の通ったルートはつぼ足トレース皆無でした。同日に数パーティー御池谷本流からや、北西への支尾根から入った方がいるようでした。何かあれば情報が入るでしょうから、恐らくこの方面ではないのでしょうね。 2012/2/28(火) 午後 1 18 [ ju*1***1 ] 鈴鹿 御池岳遭難関連情報 2012.03.04 【求む情報提供】 2012/3/4(日) 2月11日 藤原岳展望丘:写真撮影を依頼された方がいます。 天狗岩付近:声を交わされた方「御池まで縦走予定、帰りは鞍掛峠にするかも」 丸山直下:良く似た風貌の人とすれちがう(本人の確証なし) 2月12日 6 30頃、家族に「今から下山するとメール」 ※上記ニュースでは電話となっていますが、メール 大貝戸8合目から下付近で良く似た風貌の人を目撃(本人の確証なし) 2/10-2/11 鈴鹿:藤原岳~御池岳 加藤(欣) 一般 ( 千種アルパインクラブ) 2/11 御池岳 野田様 岩倉山岳会 小休止した後、下山することに決定。今来た道を下る勇気は無いので、尾根を冷川谷ノ頭の方に登り、L201鉄塔から下るルートを戻ることにした。下山ルートは赤ペンキが随所にあってルートは明確。真の谷でテン泊するパーティー2組と単独の登山者2名とすれ違った。12 15無事藤原簡易パーキングに帰着した。 2組のパーティーと、ルートの状況等の言葉はかわしたが、どのグループなのかはわからない。 (電話にて情報提供していただきました。ありがとうございました。20120413 管理人) 岡崎山岳会 2012年2月12日(日) 鈴北岳 途中撤退 2012年2月12日(日) 鈴北岳 途中撤退 詳細版 (岡崎山岳会様 ありがとうございました。20120424 管理人) Last Update 2012-05-18 10 35 02 (Fri) hnagashi Last Modified 0000-00-00 00 00 00
https://w.atwiki.jp/easytarget/pages/45.html
「AP貫通190とか…ゴミ戦車じゃんwww」 「APCR貫通268とか…え、何これ強いんだけど///」 戦車について知る まずは車両の基本スペックから見ていこう。 主砲:単発火力240/精度0.37/照準時間2.3/AP貫通190/APCR貫通264/DPM1757/仰角+20°/俯角-10° 耐久値:1440 車体装甲圧:101/76/50 砲塔装甲圧:127/76/63 最高速度:48km(後退時:20km) 重量:43t 実用出力重量比:16.40 エンジン出力:704 旋回性能:車体38/砲塔38 スペック全体を見渡したときの感じとしては、「地味」「普通」という何とも頼りない車両。まぁティア8MTとしては良くも悪くもないが、俯角が良いから地形をうまく使えばワンチャンあるかもなぁ…。ん?APCRの貫通268mm? 車両解説 スペックだけなら全体的に平凡そのもの。そう、課金弾がAPCRかつ268mmという高貫通であることを除けば。 このAPCRの貫通268mmというのはティア8MTで第1位。純粋な貫通力では3位だが、2位のSTA-1はHEATで275mmなので、Pershingの課金弾の性能は実質は0bj416に次いで2位である。弾速や空間装甲への強さを考えた場合は、オーバースペック気味のobjよりもPershingの方が大変扱いやすい性能になっている。DPMや単発火力は並だが、この高い貫通力のおかげで火力面では他の車両にはない非常に大きなアドバンテージを持っている。 あとはスペック上ではわからないのだが、コイツは実は砲塔が硬い。実質装甲厚は200mmほどで、貫通230~240mm以下ならば安定した防御力を発揮する。この値、実はティア8HTの弾を安定して弾くことができるばかりか、TDの弾も下振れすれば十分弾ける。ティア8MTとしては破格の防御力である。加えてアメ車らしい俯角-10°という数値もあいまってハルダウン戦法が捗る。 その他の性能は特別優れてもいなければ劣ってもいないというなんとも微妙なもの。しかし、裏を返せばこれといった弱点もないため、MTとして運用する上で困るような要素も持っていない。 高い火力に加えて、ハルダウン戦法が得意&強力というティア8MT随一の長所を持ちながら、明確な欠点を持たない稀有なMTである。 戦車運用の仕方 この車両の長所はハルダウンを駆使すれば最前線でダメージを稼げることである。つまりマップや地形を活かせば、HTのような運用が可能になる。敵HTと正面戦闘を行う場合ももちろんあるが、十分な貫通力を持つ課金弾のおかげで正面装甲も楽々撃ちぬける。 ティアトップの際は、丘などの高所をいち早く確保し、遅れて登坂してくる敵にハルダウンを駆使しながら前線を構築、味方の主力まで粘るとかそういう動きがすごく得意。MTの割りに前線での扱いが容易なのが非常に扱いやすい。チーム戦などでは足の速いT32のように使われることも。 かといってMT運用ができないわけではなく、一般的なMTとして使ったときにも十分すぎるほど活躍してくれる。DPMの低さや精度の悪さ等の不安材料もあるが、決定的な弱点ではない。ただし、T20の頃のような同格トップクラスの機動力や隠蔽、単発火力は、そのティアの平均レベルまで落ち込んでいるため、T20と同じような感覚で使っていると思わぬ落とし穴にはまる事も。ティアも上がりうまいプレイヤーも増えているので、T20のように大胆な立ち回りをするのは危険である。ティアトップの時はハルダウンを駆使して強気に出ることができるが、それ以外のときは一般的なMTとして無難に手堅く動かすほうがいいだろう。 よくPershingとT20の運用は似ているという人がいるが、実は似ているようであまり似ていない。T20は高い機動力と隠蔽を活かし、敵よりも早くかつ高い単発火力をお見舞いするという一撃離脱戦法が得意であった。課金弾の貫通力を活かし、後方でヘルキャットのようなTD運用もできる車両だった。反面、装甲の薄さやDPMの低さから、前線での継戦能力はそれほど高くなく、格下に対しても慎重な行動が求められた。 PershingはT20のような場を掻き乱すような高い機動力や、一撃離脱戦法を行えるほどの単発火力はない。しかし、優秀な装甲を手に入れたことでT20よりも格下や同格に対して強気に出られるようになっており、前線でも十分戦える性能を手に入れた。。そのため、T20よりもより攻撃的な運用が求められる。T20の扱いに慣れすぎていると、ティアトップのときにも前線に行くことをためらってしまって、せっかくの石頭を有効活用できなかったり、T20ならやすやすと入れていたポジションに入れなかったり、撤退するタイミングを逃して逃げ遅れてしまったりという事態が生じる。 どちらの車両もMTとしては高いレベルでまとまっている良車であるが、最も得意とする戦闘スタイルは異なるので気をつけよう。 ※先日のアップデートにより、APの貫通力が10mmアップ。これにより同格相手には一応そこそこ安定した貫通力を発揮できるようになった。とはいえ、やはりHT相手には課金弾がないと依然として厳しいので、課金弾がメインであることは代わらないと思われる。 弱点と対策 次にPershingの弱点と、その対処法について解説しよう。 金がかかる Pershingの最大の弱点である。これまで読んできてもらえればわかるが、Pershingの強さの50%は課金弾である。要するに課金弾を使わないPershingなんぞ怖くも何ともないただの並以下の戦車だということだ。ハルダウンしているPershingは同格の敵にとっては、「こっちは抜けないけど、相手は100%ぶち抜いてくる」という点が脅威なのであって、AP運用のPershingなどIS-3などからすれば単なるカモである。 そのため、通常弾がAPCRになるのだが、これがとにかく金がかかる。もともと精度はそこまでよくないのでよくはずす上、当たっても240dmgなので、課金弾の値段に対する見返りが少ない。というわけで、戦場によっては気がつけば4~5万クレジットが吹っ飛ぶことも珍しくない。とにかく、強さを金で買う典型的な車両である。 ⇒これといった解決策はないので、プレアカにするなり、課金戦車を買うなりして金策に励もう。無課金でこの車両を常時運用するのは自殺行為である。ただ、お金がかかるだけの性能はあるのでMTに興味がある人は作ることをお勧めする。筆者が初めて優等3及び、平均経験値1000を達成した車両であり、MT運用の基礎について学べたのは間違いなくコイツのおかげである。クレジットに見合う見返りはある(と思う) 砲塔が硬いのはティアトップまで コイツの長所に砲塔の硬さを上げておいて恐縮だが、実はその自慢の砲塔もティア9以上の相手にとってはないも同然である。貫通250mm以上の敵がウヨウヨいる高ティアではせっかくハルダウンしていてもほとんど跳弾を期待できない。最前線で活躍できるのはせいぜいティア8戦場までなので、砲塔の硬さを過信し過ぎないことも大切である。 ⇒今自分の前にいる敵の貫通力には常に気を配ろう。自分の砲塔で弾ける相手なら強気に、そうでないならおとなしくMTとしてコソコソ立ち回ろう。ただし、T20ほどの機動力はないので、ティアミドルやボトム時の応用の幅はT20に劣るのも事実である。T20は全てのマッチングで75~80点を出せる性能を持っているが、自分がトップでも同格以下に強気に出辛い。一方Pershingはトップのときは95点を出せるポテンシャルがあるものの、ミドル以上では65~70点止まりといった感じである。とはいえPershingは、課金弾で格上の正面装甲を十分抜けるので無理に側面を取らなくても何とかなるのだが。 砲塔にも弱点が。 また砲塔も全面が硬いわけではなく、硬いのは正面の防盾の覆っている部分のみである。つまり、側背面はペラペラで、正面も近距離なら防盾以外の弱点を十分狙える。頭の硬さを過信しすぎるとせっかくの防御力も意味がない。 ⇒敵に砲塔を晒す時間を極力短くする。全てのMTにいえることだが、稜線などから飛び出し撃ちをし、リロードに入ったのなら素直に下がるべきである。T32のようにずっと砲塔を晒していてもまず抜かれないような絶対的な装甲はないし、首振りも弱点を晒すだけである。とにかく頭が固いといっても砲塔を見せる時間は全てのMTと同じく短時間にすること。そうすれば弱点をじっくり狙われることもなく、かなりの跳弾を期待できる。いっぱい敵に撃たせて弾き続けるというよりも、「撃たれないのが一番、仮に撃たれてもほとんど弾ける」くらいの認識のほうが良いだろう。 ワンポイントアドバイス ※後日加筆修正予定
https://w.atwiki.jp/jaeger/pages/62.html
第10話 航空自衛隊は第203飛行隊のF-15J要撃戦闘機を中心に、輸送機やその他の連絡機を含め40機ほどが、イタリア空軍からペスカラ空軍基地の一部を借りて駐機されていた。 航空開発部に所属する安原高志二佐は航空自衛隊が使用しているハンガーからエプロンを見渡していた。アドリア海の風が吹くエプロンには実に様々に作戦用航空機が並んでいる。まったく壮観な光景だなと思った。何しろ、この空軍基地にいるのは自衛隊だけではない、ヨーロッパの部隊も入っている。 セルビアスポンサーに対応する最前線基地となったため、各国の飛行隊がペスカラ基地へ集まりイタリア軍はこの基地に急遽滑走路を増やしエプロンの拡張工事を行った。哨戒飛行にでるイギリス軍のトーネードF.3戦闘機が二機編隊を組んで暗闇の中を離陸していくのが見える。残念ながら噂のユーロ・ファイター・タイフーン戦闘機は、まだどの国も派遣していない。 「出撃はまだだぜ」 整備長の石神曹長が近づいてきた。 「落ち着きませんよ・・・」 「武者震いって奴かい。俺にもわかるよ。はじめて整備したマルヨンがスクランブルで出撃したとき、無事に着陸するまで手の振るえが止まらなかった」 「まぁ、それもありますが飛べないというのもツライものです」 「政治的な理由じゃ仕方ない、飛べないものは飛べないんだ。夜明けまでまだ数時間ある。そんなテンションじゃ、いざって時もたねぇぜ」 「陸じゃ仲間が死に物狂いで戦っているというのに・・・」 安原がポツリと漏らした。ラードゥガでは、陸自が自分達より遥かに多い敵と戦っているというのに、まったく、政治的理由というのはのん気なものだ。航空機による対地制圧攻撃は、敵の被害を悲劇的なものにするという理由で空自部隊の支援は夜明けまで禁止されていた。 武装制限は陸であっても同じで、96式多目的誘導弾は第1次攻撃をおこなった後に使用を禁止され、特科部隊は敵砲への応射のみ、航空科部隊の攻撃が許可されているのが奇跡のようだった。 ジェルゼレズ中尉はキューポラから身を乗りだし、前方に最大限の注意をはらって部隊を前進させていた。後方はしんがりの第三小隊が砲塔を後ろに回して警戒していた。奇襲を受け、第二小隊は一両減っていたがジェルゼレズ中尉は、敵からの追撃は無いだろうと判断し前進を続けた。普通襲撃を受けた場合は、追撃に最も注意をはらうが、今は歩兵の追撃部隊より戦力の不明な前方の主力部隊に注意しなければならなかった。 「無線からの情報では、敵戦車は最大約5000メートルの距離で初弾命中ができる戦車砲を備えてます。火器管制は我々のM-84以上でしょう。走行間射撃もできるようです。機動性、正面及び側面、背面の防御力不明…、これはまだ一両も仕留めていないからわかりませんね」 モーリッチ砲手がやれやれといった表情で話した。正面の戦車部隊はほぼアウトレンジで一方的な戦いを強いられていた。 「走行間射撃ならお前でも出来るだろ?」 「私のは人間火器管制ですよ、向こうはプレッシャー知らずのコンピュータ火器管制。私にゃコンマ単位で難しい計算が出来るわけじゃない。しくじる時もあります」 急に目の前に人影が現れ、ジェルゼレズ中尉のM-84戦車が急停止すると何かが車体をゴンゴン叩いた。 「ええい、誰だこんな時に…」 ジェルゼレズ中尉がキーポラから身を乗り出して車体の下を見渡すと、ドラグノフSDV狙撃銃を担いだ男が呼びかけた。 「第17戦車連隊、第365戦車中隊か!?」 「ああ、そうだ。あんたは?」 「第一落下傘連隊第三大隊のジェーオ・ハーシュミ中佐だ! 司令の命で支援にきた」 「中佐!?」 慌てて敬礼する。 「そういうのはあとだ、中尉。ちょっと降りてきてくれ」 ジェルゼレズ中尉が戦車から降りるとジェーオ中佐は一枚のペーパーを取りだし、赤色フィルムの張られた電灯で照らした。すぐに中佐の部下が集まってきて、光が漏れないようスラムを組んだ。 「中尉、英語は?」 「平和な頃は観光客相手に商売してましたよ」 「よし、では見てくれ」 ペーパーには、第三世代の戦車の写真の下に細かなデータが書かれていた。 「君達と向かい合っている戦車だ。すでに三キロほど前方に4輌小隊が待ち構えている。地形の高低さ激しく敵もこちらもかなりの至近距離で殴り合うことになるだろう」 「タイプ90タンク、キュウマルシキと読むのですか?」 「そうだ。1990年に採用されたから90シキと呼ばれている。君達がヴィシェグラードで破ったルクレール戦車とほぼ同期だと思ってくれ」 「こんなデータ何処から拾ってきたのです?」 ジェルゼレズ中尉が訝しげに尋ねた。 「なに、米国の軍事系Webサイトからだ。インターネットというばわかるかな。まぁ、話し半分で見てくれ。 主砲は、ラインメタル社製の120ミリ滑腔砲、ドイツ軍のレオパルト2と同じだ」 「全備重量が50トンと言うのが気になります。車体のサイズも同世代に比べて若干小さいが、装甲はそれほど厚いとも思えませんね。まぁ、人のことは言えませんが」 ジェルゼレズ中尉の乗るM-84戦車は僅か42トンだった。 「機関出力は1500hpで2,400rpmだが、これはどう思う?」 「私のM-84は780hp 2,000rpmです。重量と地形を利用すればカバーできない数値じゃないでしょう。この油気圧式サスペンションというのが凄いですね。砲塔を水平にしたまま車体を上下させたり、前後に傾けることが出来るという事は伏撃には有利です」 「うむ、日本という国家は常に専守防衛の姿勢を取っているらしく、攻勢をあまり考えていないようだ。この機構はその現われだろう」 「我々がこの戦車に勝っている点は?」 「そうだな、この砲口径の後ろに書かれた33というのが気にならないか」 「砲弾数ですか…」 「そうだ。彼らの戦車は同世代の戦車に比べて10発近く積弾数が少ない。かなり臭いが安全設計上、戦闘中に使えるのは16発という情報もある」 「敵は後方への補給ルートを確保しています。弾切れを待つなんて無理ですよ。敵を引き込んで補給線を断つにしても、連中は誘いにのらないでしょう」 「では、装填速度だ。90シキの自動装填装置による発射速度は4秒に1発だ。一発撃ったら4秒以内に仕留めなきゃならん」 「我々のカセトカとほぼ同じです。最近はこの位が普通です。チームを組ませれば問題無い」 「車高はどうだ。90シキより君のM-84の方が約15センチほど低い」 ジェルゼレズ中尉が初めて喜んだ顔をした。戦車戦において車高は重要かつ有機的な要素だった。 「それは嬉しい情報です。ですが中佐、敵戦力の基本的情報はわかりました。できれば戦闘中の情報を受け取りたいのですが」 「ああ、わかってる。我々もそのために来た」 ジェーオ中佐は近くの部下から無線を受け取ると、それをジェルゼレズ中尉にそのまま渡した。 「戦闘状態になったら、逐次敵の情報を流す。この手の至近戦に置いて情報戦は勝敗を左右することは百も承知だ」 ジェーオ中佐はもう一枚のペーパーを渡した。まるでミミズを這わせたような絵だったが、この辺りの地形が事細かに書かれていた。土地の高低はもちろん、風の向きや強さ、敵から死角になりこちらの姿を見せずに攻撃できるようなポイント、敵の予想配置がしっかりと書かれていた。ジェルゼレズ中尉にとっては90式戦車のデータより、欲しいと思っていた情報だった。 ジェルゼレズ中尉が2枚のペーパーを持って、戦車に戻ろうとするとなぜかジェーオ中佐が引きとめた。 「中尉少し休め、もうすぐ我々のトラックが補給物資を積んでやってくる。こちらも補給線を気にする必要はないぞ。だがな、全体から見ればこれはまだ緒戦だ。先遣部隊が日本隊を突破出来るとは思えない」 「師団長直属の部隊とは思えない発言ですね」 「師団長もそう思っている。思っていないのは馬鹿な参謀連中と上層部だけだ。私はこの戦闘は出過ぎたことだと思っている」 ジェルゼレズ中尉は呆気に取られて「はぁ」と生返事をした。 「中尉、我が軍にはまだまだ君のような優秀な兵士が必要だ。部下共々必ず生き残ってくれ」 ジェーオ中佐がポンとジェルゼレズ中尉の肩を叩く。ジェルゼレズ中尉は背筋を伸ばし踵を鳴らして最敬礼で「了解しました」と答えた。 ラードゥガで一人、ゲリラ部隊の指揮官を追っていた高鷲は選択を迫られていた。ゲリラ部隊の指揮官を含めたチームは町の奥へ奥へと進んでいるため、これ以上の追跡する事はリスクを増やすだけだった。 ここで強襲をかけるか、離脱して本隊との合流を目指すかで迷っていた。いつもならコンビを組む最先任の土岐が判断するが、今は自分一人しかいない。 「やるしかないか・・・」 高鷲はそう決断すると肩に掛けていたAKSライフルを外し、襲撃ポイントを慎重に選んだ。なるべく敵の逃げ場が無い場所で攻撃するのがベストだった。 敵集団が十字路を過ぎた瞬間、高鷲は背後からAKSライフルのマガジン一本分の銃弾を浴びせた。それだけで4、5人を射殺した。敵がバラバラに逃げ出し始める。 高鷲は路地裏に回り込むと、アースを伝って民家の屋根に上がりR93LSR2狙撃銃を構えた。 「一人見っけ、二人見っけ・・・」 その場から見えるだけで3人の兵士がいた。高鷲はまず背中に無線機を背負っている兵士の頭部に一発お見舞いした。後頭部が弾け、走っていた兵士の体から力が無くなり派手に転んだ。残りの二人も始末したところで煙幕手榴弾が投げられ辺りに濃い靄がかかった。 高鷲は屋根を降りると、無線機を背負った兵士に駆け寄った。視界はほとんど無い。 突然、手にナイフを握った男が「うぉー!」と叫びながら飛び出してきた。さっき見た隊長格の兵士だった。 高鷲はR93LSR2狙撃銃の銃床で、そのナイフを払いのけ反動で後ずさりして間合いを取った。 今度は高鷲もバヨネットを取った。この至近距離では長身の狙撃銃などあまり役にはたたない。次々と突き出されるナイフをかわしながら、チャンスを狙った。繰り出されたナイフがバヨネットの腹にあたって弾け、相手の体重移動にスキができた。次の瞬間、高鷲はバヨネットを相手の顔めがけ振り下ろした。 だが、浅かった。ナイフは兵士の右目を掠め向こう傷をつくり、致命傷には至らなかった。それでも右目の視力は完全に奪った。 止めを刺そうとしたところで銃弾が足元をはね、慌てて飛び退く。敵の援軍がやってきたらしい。煙幕も晴れてきて、これ以上敵を相手にする事は賢明ではない。高鷲は無線機を奪うとすぐにその場を逃げ去った。 村上機甲部隊長率いる別働隊はラードゥガへ続く山道から、数キロ入った森林地帯に布陣していた。布陣した場所の前はそこだけぽっかり開いた草地になっており、敵が前進するにはその草地を突破するしかないはずだった。 「村上ニ佐、歩兵を下ろすか?」 普通科部隊を率いる坂祝ニ佐が無線で尋ねる。 「後ろでいいぞ、下手の前にこられるとひき潰すかもしれん」 「わかった。側面から来るやつを任せてくれ」 8両の96式装甲車から普通科部隊員が飛び出した。 「ここを突破されたら後ろは山道に展開する第二FV中隊の89式装甲車だけになる。なんとしても死守してくれよ」 「そう思ったらまともな火力支援をよこせ」 ジェーオ中佐は偵察と敵戦力漸減のため、愛銃のドラグノフSDV狙撃銃を担ぎ草地を前進していた。ジェルゼレズ戦車中隊のネーベン曹長が赤外線探知機能付き双眼鏡を持って後ろを続いていた。ネーベン曹長はさきの奇襲で戦車を失って手持ち無沙汰になっていたところで、ジェーオ中佐が観測員を探していると聞いたジェルゼレズ中尉が推薦してジェーオ中佐の狙撃手付き観測員になっていた。 「ネーベン曹長、大丈夫かね」 ジェーオ中佐は少し遅れてついてくるネーベン曹長に問い掛けた。 「ええ、しかしこう動き回っても大丈夫なんでしょうか」 「今回は敵から1キロ以下に近づかないから、そんなに恐れなくていい」 「はぁ、先ほどからその中佐殿の隊員が見当たらないのでありますが」 「これでも特殊部隊だ。味方だろうと不用意に姿は晒さないよ」 ジェーオ中佐は草地の丘で歩を止めた。 「君は敵の戦力をどれほどと推測するかね?」 「そうですね。敵戦車が一個小隊だとすると、歩兵は二個小隊ほどでしょうか。歩兵装甲車は一個小隊につき4両ほどだと思われます」 「ベターな答えだが、正解だろう。ではどれほどの戦力を漸減すれば良いか?」 「それは敵の指揮官によってわかれます」 「うむ、よろしい」 ジェーオ中佐はその場に銃を置いて、石を集めて銃座を造ると射撃姿勢をとった。すぐ隣でネーベン曹長が双眼鏡を構える。日本軍まで一キロ以上距離があった。 「歩兵が展開しています。対戦車ミサイルを持ってますね。あれは厄介ですよ、我々の使うミサイルと違って照準ユニットと発射ユニットが分かれるんです。何処から狙っているかわからない」 「なら先に黙ってもらおう」 ジェーオ中佐は銃口を僅かに動かして狙いを定め引き金を引いた。かまど状の銃座がマズルフラッシュをほとんど消していた。7.62X54ミリR弾が日本兵の膝を貫いた。間髪を開けず2発目、3発目と次々狙い撃った。 自衛隊側は一瞬でパニックに陥った。僅か短時間で4人の普通科隊員がやられた。幸いまだ死者はいなかったが、全員腰から下を撃ち抜かれ後送は間違い無かった。 「とにかく全員、体を1センチでも低くしろ!」 坂祝ニ佐が無線機に向かって叫び散らしていた。 「いきなり狙撃兵を送り出してくるとは・・・地上監視レーダーは動いてないのか!」 「だめです、反応無し。敵が少数の歩兵だとすると1キロ以上のアウトレンジからです」 「坂祝、落ち着け!。指揮官が浮き足立ってどうする」 村上が横から割ってはいった。 「機甲部隊は援護してくれ、89式で出て敵の潜んでいる場所はつきとめる」 「無茶するな。戦車が出てきたら、この距離では89式の重MATより戦車砲のほうが有効だ」 坂祝はかまわず89式戦闘装甲車を出させた。草地に出た瞬間、銃撃が襲い掛かった。 「正面・・・、いや1時の方向」 砲手のアッキーが報告した。 「35ミリの扇状射撃で叩けないか」 「稜線すれすれですよ」 「やってみろ」 装甲車が出てくるとジェーオ中佐は装甲を知るため2、3発撃ってすぐ稜線の反対側へ逃げた。 「タイプ89FVだ。スイス製の強力な機関砲と自国生産の対戦車ミサイルを搭載している」 35ミリ機関砲が火を吹き、頭上を砲弾が舐めるように飛んできた。ネーベン曹長が「ひぇー!」と素っ頓狂な声を上げた。 掃射に晒された辺りは、まるで草刈機が通ったようにブッシュが刈り取られていた。 「ひきますか?」 「大丈夫、装甲車ぐらいなら戦いようがある」 ジェーオ中佐はドラグノフSDV狙撃銃を構え、89式戦闘装甲車の砲塔両サイドの取りつけられた装甲ボックスを狙った。 相手の意図に気付いた北濃車長はすぐさま右サイドの79式対舟艇対戦車誘導弾を目標も無く発射した。 「くそ、重MATのランチャーを狙い撃ってきやがった。奴は装甲車とでも戦る気だぞ」 「隊長、次はどうします?」 「また、誘き出そう。坂祝二佐、後方の普通科に96式グレネードで支援を要請してください。目標1時方向、距離1000プラス!」 後方の96式擲弾投射器陣地から40ミリ榴弾が降り注ぎ、ポツポツとキノコ雲をつくった。 「やったか!?」 答えは89式装甲車の車長用ペリスコープが撃ち抜かれることで知った。 「くそっ、目潰しだ。スモーク!」 スモークが放たれ視界が遮られる寸前、今度は砲手用ペリスコープがやられた。 「こっちもダメです」 「仕方ない、煙幕を利用して後退する。坂祝二佐いいですね?」 「わかった。よく頭が冷えた。あとは戦車に任せるとしよう」 装甲車が下がると一枚岩の影に隠れていたジェーオ中佐はジェルゼレズ戦車中隊を呼んだ。向こうも次は戦車を繰り出してくるだろう。 自分はそれをちょっと応援してやるつもりだった。 ジェルゼレズ中尉はジェーオ中佐から敵戦車部隊の動きを聞くと部隊を小隊ごとにV字に分け、自分は第三小隊を連れて左翼側を前進していた。起伏が激しく立林で視界が制限されている。おそらく敵部隊とは1500メートル前後での戦闘を予測していた。 「ヴィシェグラードの時みたいにいきますかね?」 「それは無理だろうな」 ロビンスキー操縦手が問いにジェルゼレズ中尉はあっさり答えた。 「嘘でも出来ると言ってくださいよ」 「嘘をついても無理は無理だ。慎重に1両ずつ仕留めよう」 ジェルゼレズ中尉は部隊を一時停止させると自分だけ進んで、なだらかな丘の影から砲塔だけ出して前方を眺めた。 「向こうは確か戦場監視レーダーとかいう奴を持ち込んでいたよな」 「あの無鉄砲な中佐さんの話ではそうでしたね」 モーリッチ砲手が答えた。 「こっちの動きは丸見えか・・・」 無線機がガリガリ鳴ってジェーオ中佐が呼びかけた。 「ジェルゼレズ中尉、戦車が動くぞ。二股になった木が見えるか? その辺りからだ」 「ハイ、見えます。中佐」 「これから敵レーダーを破壊する。じぁな」 無線が切られるとモーリッチ砲手が「じぁ、我々も行きますか」と声を掛けた。 「よし、第一、第三小隊前進! 第二小隊は援護!」 ジェルゼレズ中尉が突撃を開始すると、村上隊長率いる機甲小隊はすぐさま応戦体制を取った。 「前方台上、敵戦車、撃て!」 だがこちらの戦車砲が火を吹く前に敵戦車の前方で爆発が起こり、敵戦車が煙の中に消えた。 「なに!?」 「別方向から発射光! 煙幕弾です」 「チッ! 次弾、敵行動を予測して撃て! レーダーはどうした!?」 「ダメです。メカニカル部分を狙撃され機能停止しました」 ジェルゼレズ中尉は自衛隊の初弾が以外と近くに着弾した事に驚いていた。 「全車停止、援護しろ。ロビンスキー思いっきり吹かせ、モーリッチ走行間射撃だ!」 煙幕から抜けると、ポッと戦車砲とは違う光が瞬いた。 「ミサイル!」 89式戦闘装甲車の北濃が、砲塔左サイドのもう一基の79式対舟艇対戦車誘導弾を発射したのだ。 「中尉、そいつは有線だ。発射基を撃て!」 無線からジェーオ中佐が叫んだ。79式対舟艇対戦車誘導弾の飛翔速度は秒速200メートル、1500メートル飛ぶのに7秒以上かかる。戦場では短いようで恐ろしくも長い時間だった。 「目標、見えませんよ!」 モーリッチが叫んだ。 「飛んできた方向でいい。撃て!」 戦車砲を放ったが、手応えがない。ミサイルはぐんぐん向かってきた。 「次弾榴弾装填!」 M-84戦車が搭載するカセトカ自動装填装置は4秒で次弾を装填する。次がラストチャンスだ。 「撃てッ!」 二発目の榴弾は89式戦闘装甲車の前方で炸裂し、79式対舟艇対戦車誘導弾の光ファイバー・ケーブルを切断した。ジェルゼレズ中尉の目の前に迫っていた対戦車ミサイルは間一髪のところで照準を失って地面に激突した。 ジェルゼレズ中尉は息つく暇無く、すぐさま丘の影に戦車を隠した。まだ、緒戦だ。無理に突撃を掛けるほどでは無いのだ。 村上隊長は始終を見ながら、「奴だな・・・」と呟いた。 「全車に告ぐ、敵は高地で俺達に一泡食わせた奴らだ。90式よりスペックが低いからと舐めるな。戦車の戦力は乗り手と指揮官で決まる。肝に命じておけ」 戦車塹壕を掘る時間は無かったが、4両とも伏撃にベストな地形に配置しているつもりだった。これ以上敵が前進するのならば撃破できる。 だが、村上はあの戦車が指揮官なら、攻勢において犠牲を払うつもりがあるのだろうか疑問だった。 ジェーオ中佐は後方にジェルゼレズ中尉の戦車を認めると、後方に下げていた自分の部下に戦車の位置まで前進を命じた。 「RPGを持っているが、最近の戦車には効かんようでな。君ならどう攻める?」 ネーベン曹長は困った顔をしながら「それは士官の仕事ですよ」と答えた。 「まぁ、意見を聞かせてくれ」 「迫撃砲か自走砲で援護しつつ突撃がセオリーでしょう」 「君の指揮官は、どうもそのような考えではないようだがね」 「隊長は1両ずつ確実に潰す気でいますよ。慎重にね。敵戦車さえいなければ、装甲車程度の敵はこちらの戦車でいくらでも押し潰せます。しかし、我が方の自走砲部隊は何処にいるんです? さっきから長射砲は敵部隊だけの気がしますが」 最後の部分はネーベン曹長が不機嫌そうな顔だった。戦闘が始まってから、まだ一度も自走砲部隊の制圧射撃が行われていない。 「ああ、それは聞かないでくれ。日本軍に一泡ふかすため、不意打ちを食らわそうと行動中だ。まぁ、そのおかげで正面部隊の犠牲が増えているのは認めざるをえないがね」 ジェーオ中佐はちらりと腕時計を見た。カタストロフへのタイムリミットが迫っていた。 一方の ジェルゼレズ中尉はジェーオ中佐から渡された地図を睨みながら、味方戦車が互いを援護する陣形を整えた。突撃はともかく、戦場を膠着化するのはあまり良い判断では無いなと思っていた。本当はヴィシェグラードの時の様に敵を誘い込んで撃破したいところだったが、今度の敵にはどうもその戦術は効果が無いらしい。 ジェーオ中佐から地図と一緒に渡された無線機のスイッチを入れ中佐を呼んでみた。 「中佐、ジェルゼレズです。聞こえますか?」 応答はすぐに返ってきた。 「ああ、聞こえるぞ」 「敵戦車を1両ずつ潰していきます。位置を把握している車両はありますか?」 「二両わかっている。残り二両はその後ろで援護だろう」 ジェルゼレズ中尉はその二両の敵戦車の位置を地図に書き、スコープでその位置を確かめた。1両は稜線の影に完全に隠れていたが、もう1両はなだらかな丘を盾に身を潜めているという感じだった。 「まずはコイツからだな・・・」 「でも姿が見えませんよ」 「大丈夫、力技だが考えがある」 ジェルゼレズ中尉はそう断言すると、敵に悟られない様に部隊に移動を命じた。 ラードゥガでは麓から89式戦闘装甲車が上がって来ると第ニ普通中隊第一小隊の鹿間小隊長が、搭乗員を選抜し89式戦闘装甲車に乗り込もうとしたが、89式戦闘装甲車は停止せずそのまま自衛隊側の陣地から出ようとした。 仰々しい迷彩色のフード付きマスクが車長ハッチから顔を出し、鹿間に対して軽く敬礼すると、すぐに引っ込んで装甲車を発進させた。 「・・・さっきの三佐の部下ですかね?」 「そうだと思うけど・・・、いまの装備は化学科のものだった気がするぞ」 機動化学科中隊化学科小隊の藤橋一尉は7ヵ所ある89式戦闘装甲車のガンポートに部下を付かせ、そのまま装甲車を突っ込ませた。 「俺達の本分は先行の空挺と合流する事だ。全員、無駄撃ちに注意しろよ!」 自衛隊側の陣地を出ると、すぐに四方から銃弾が浴びせられた。 「機関砲でなぎ払え!!」 89式装甲車の35ミリ機関砲が正面の敵陣地を吹き飛ばした。 車体が陣地の残骸に乗り上がりジャンプする。敵は正面からは消えたが、すぐに学習し路地から回り込んで攻撃してきた。後ろの兵員室では89式小銃だけでなくミニミ軽機関銃まで持ち出して応戦していた。 「きりがないぞ。おい、後ろに残した奴らにMAGICで援護させろ!」 「ガスですか!?」 「空中起爆信管のやつだぞ。砲座の最先任は誰だっけ?」 「伊藤さんですよ」 「全員マスクチェック! ガスの中を突っ切るぞ」 89式戦闘装甲車の乗員は彼の部下の化学科部隊で、スクリュードライバー制圧ガスを至近距離で使うために全員に化学防護服を着せてきた。これは住民の避難誘導さいに威圧効果も高いので意外と役に立った。 藤橋はハッチを少し上げ、広域回線とリンクした火線視認装置を起動した。後方隊のMAGICから迫撃砲独特の急カーブを描いた予測ラインが頭上に現れる。真後ろに砲座があるので誤差は少なかった。 「伊藤。右に5、そこから30前だ」 「了解、中隊長によろしく」 60ミリ迫撃砲弾が放たれ、装甲車の前方で空中爆発した。試弾無しで効果弾が撃てるのが、この新型両用砲の魅力だった。藤橋は靄の中に車両を突っ込ませた。車内にもうっすらした靄がかかる。 「気分の悪くなった奴は報告しろ、解毒アンプルがある。ただし、うちの小隊からは放り出すぞ」 空挺が入っている保養所につくと、藤橋は装甲車の警備を置き、残りをつれてヘッドクォーターの置かれた2階へ駆け込んだ。 「さっきの爆発はあんたかい?」 第一空挺小隊長の川島一尉が机に置かれた市外図が目を離して藤橋のほうを見た。 「敵の攻撃が以外と激しいな、後退しているって聞いたぞ?」 「伏兵というより、物好きが残っているという感じだ。普通科隊の連中は迂闊に前進できない」 「連隊は高地がかたついたら戦力を増強して押し返すつもりだ。中隊長はどうした?」 「うちの若いのと、どっかから拾ってきたツッパリをつれて出ていった。行方不明者の捜索だそうだ」 「ツッパリ? いつの言葉だよ」 「ツッパリは無いでしょう。前田はうちのエースなんですから」 邪魔になら無い様、隅っこでおとなしくしていた森茂が言った。 「どう見たってついこの前までバリバリ夜露死苦やってましたって感じだぞ。あいつ」 「なんかよくわからないが、隊長の好きそうな奴なんだな。まったくそういうのばかり拾ってくる・・・」 「ま、そうだ。あいつと入れ換えさせるか・・・」 最後の言葉は舌打ちしながら言った。 「今ごろ化学屋が何しにきたいだい?」 「援軍に決まってるだろ」 「にしちゃ、随分遅くないか?」 「麓で住民の避難に当たってた。おかげで予定より早くすんだよ。89式をかっぱらって来た」 「そりゃ、頼もしいこって」 川島は地図に視線を戻した。敵の前線は後退しているがあちこちに兵が残っていて、片時も油断は出来なかった。 市街戦はジャングルと双璧する兎にも角にも厄介な戦場だった。 部隊の配置を終えたジェルゼレズ中尉は敵の注意がそれるきっかけを待っていた。このまま作戦を強行してもよかったが、チャンスがあればそれだけ成功確率が高くなる。 「やっぱり中佐さんには悪いけど、もう一度支援を要請します?」 モーリッチ砲手が尋ねた。 「迫撃砲の一発でもあればなぁ、ほんの一瞬でいいんだよな・・・」 「無いものねだりしてもしょうがないでしょう。あの人、前にいるのが好きみたいだし」 「仕方ない。胸借りるか」 ジェルゼレズ中尉はしぶしぶ無線機を取った。 「ジェーオ中佐、陽動をお願いできますか?」 「陽動? そう言うのは自分の部隊内でやるものじゃないか?」 「この作戦には中隊の全火力が必要です。一両も外せません」 「何をすればいい?」 「敵の注意をそらしてください。ほんの一瞬で結構です」 「そりゃまた、随分な支援要請だな」 「おねがいします」 「待て、もうすぐ時間だ」 「なんの事です?」 ジェーオ中佐が少し口ごもった。 「・・・第152砲兵大隊がラードゥガを砲撃する」 「な!?」 ジェルゼレズ中尉が絶句する。 「師団長は正気ですか!? 第3者の犠牲が出る事を何より嫌う人が、よりによって市街地へ榴弾砲撃なんて!」 「落ち着け、住民の避難は日本軍がおこなった。我々が確認している。いまは日本軍と我が軍の兵士しかいない。極めて戦術的な行動だ」 「そういう問題じゃない!」と言いたい事は山ほどあるが、ジェルゼレズ中尉は奥歯を噛んで堪えた。 「・・・わかりました。我々は兵隊です、命令一つで動く。引き続き待機します。以上」 ジェルゼレズは無線を切るとそれを握り締め、装甲板を殴った。 どんな理由にせよ、許されざる事だ。ひどく裏切られた気分だった。 前項 表紙 次項
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/2382.html
チリ車の俺 第三話「オールイン」 ―――アフリカ、第31統合戦闘飛行隊基地外周 ドォンドォンドォンドォン!!・・・パラパラパラ 稜線に伏せた俺の目の前の地面が爆ぜて頭上から砂が降り注ぐ。 ピピ―――ッ!! マイルズ「フォーワード!!」 ホイッスルの音と同時に匍匐していたウィッチ達が立ち上がり駆け出す。 ガキン!キュラキュラキュラキュラキュラキュラ 陸戦ストライカーの履帯を展開して砂丘を走行して下る。 ドォンドォンドォン!! さらに俺の周囲に着弾。 俺「うわっ!っぶねー!!」 驚いて速度を落とす。 マイルズ「コラー!!怯むな、俺中尉!止まったら当たるわよ!」 俺「ええい、こんちくしょう!」 ザザ―――ッ パトリシア「ムーブムーブムーブ!!」 アビゲイル「イェーハァ!!」 パットンガールズ達が砂塵を残して斜面を先行する。 北野「待ってください~、俺中尉~!」 俺「こっちだ!急げ!」 北野「は、はい~」 (チハ車のSA一二二〇〇VD魔道エンジンじゃ150呪力が限界だ。 こんな地形じゃ厳しいな・・・ これも後で報告書にまとめておくか) マリリン「インカミーン!!」 俺「伏せろ!」 ガバッ 咄嗟に古子に覆いかぶさって地面に伏せさせる。 ドォンドォンドォン!! またも至近弾で砂が舞い上がる。 またもまき上げられた砂が落ちてくる上に砂塵となって視界を奪った。 俺「近っ! 何考えてんだ、あいつらー! 当たっちまうぞ・・・ ほら行くぞ、北野軍そ―――」 なんとか古子を掴んで立ち上がらせようとしたとき、 ふにっ 俺「えっ?」 ふにふに なにか柔らかい物に指が触れた。 砂塵が濛々と舞っていて良く見えない。 (なんだこれ?) ふにふにふに 北野「んあっ・・・お、俺中尉さん・・・・そこはっ、んっ・・・///」 砂煙が晴れると、俺の手がしっかりと古子の控えめながら形のよい胸を捉えているのが見てとれた。 つまり、視界が晴れるまでの数十秒間おもいっきり乳を揉んでいたということになる。 慌てて手をどけて弁解する俺。 北野「お、俺中尉さん何するんですかっ・・・」 俺「あっ、いやこ、ここここれはその間違いでっ」 北野「あ、あはははは、そうですよね。びっくりしちゃいましたよー」 古子も顔を真赤にして乾いた笑いで応じた。 明らかにドン引きしている。 スパーン! マイルズ「真面目にやりなさい!」 強烈な張り手が後頭部にヒットした。 俺「はいスミマセン、マイルズ少佐殿」 現在第31統合戦闘飛行隊『アフリカ』陸戦隊は空地直接協同作戦、エアランドバトルの為に訓練中である。 カールスラントの「韋駄天ハインツ」ことグデーリアン将軍が推し進めた電撃戦を基にした戦闘教義だ。 的確な航空支援の元、地上部隊がその機動力を最大限に発揮し敵戦線を食い破る。 特に広大な戦場で戦うことになる砂漠戦では機動力が肝だ。 そのため、現在アフリカ戦線では空陸両ウィッチによる連携作戦が推し進められていた。 最終的な目標、スフィンクス作戦―――つまりスエズ運河の解放―――を達成するためには不可欠だろう。 マイルズ「もう一度やり直しよ。 今度は躍進800m、一気に砂丘を駆け上がるわ。 全員砂地でフットボール出来るまで訓練よ!」 マイルズ《上空の航空隊、聞こえる?》 加東《良好よ》 マイルズ《もっと近くにお願い。 出来るわね?》 加東《了解》 マイルズ「さぁもう一度行くわよ。 全員駆け足で麓まで下りなさい」 全員「イェス、メイジャー!」 ――――――――― ―――――― ――― モンティ「まだまだ、だな・・・」 モントゴメリーが双眼鏡を下ろしつつそう呟く。 訓練が行われている砂丘地帯から程遠くないまた一つの砂丘に砂漠の三将軍が佇んでいた。 もちろん目的は訓練の視察である。 パットン「まだ始めたばかりだ、仕方ないだろうが」 ロンメル「我がカールスラントの魔女達は既に戦闘教義段階から講習済みだ。 いつ実戦でも問題はない」 パットン「抜かせ。あの馬鹿でかいタイガーが付いてこれる訳ねぇだろ」 ロンメル「・・・ティーガーについては本国で新型歩行脚が試作中だ。 直にこっちにも回ってくる」 モンティ「・・・仕方あるまい。 それでは我らが新司令官殿をお出迎えに向かうとするかね、諸君?」 パットン「ああ、行くか」 丁度本日が件の「タスクフォース」指揮官に就任するシェパードの着任日である。 そして三人は駐車してあったキューベルワーゲンに乗り込んで走り去った。 ―――滑走路 パットン「それで、奴さんはまだか」 モンティ「すでにレーダーが補足した、じきに着くだろう」 パットン「ふん、何がタスクフォースだ。 急にやってきて指揮権を持ってくなんてアイクは何を考えてやがる」 ロンメル「なに、君の同国人だろう。せいぜい仲良くし給え」 パットン「ヤなこった」 モンティ「全く君らしいな」 パットン「結構!ズカズカと儂らのテリトリーに踏み込んできて勝手に全部持っていく輩など信用できるか!」 ロンメル「まあ、その点については我輩も同感と言わざるをえないな」 モンティ「私だって出来れば避けたい話ではあるが・・・連合軍総司令部からの意向では仕方が無いだろう?」 パットン「むぅ・・・」 そう押し黙ると懐から葉巻を取り出して愛用のジッポーで火をつけた。 モンティ「相変わらずシガーにオイルライター等と・・・これだからリベリアンは・・・」 パットン「黙っとれ」 ―――同時刻、アフリカ基地上空C-47スカイトレイン機内 輸送機内のベンチシートに一人の初老の男が腰掛けている。 厳しく締まった口元に蓄えられた髭も、陸軍のシンボルである黒いベレーからわずかに覗く髪も白い。 肩の特殊戦スクールインシグニアと帽子の三ツ星が彼の地位を物語る。 ガッチリとした長身に野戦服を纏い、脇に吊り下げたショルダーホルスターには愛用の.44口径リボルバーが収まっている。 シェパード「4年前、私は瞬きの間に三万もの兵を失った。 だが世界はそれをただ傍観するだけだった―――」 誰にともなく、低く太い声でシェパードがつぶやいた。 「SHEPHERD」のネームタグが付いた胸ポケットから葉巻を取り出し、吸口をナイフで切り落としてマッチで着火して咥えた。 シェパード「そして、世界最強の軍事国家たる我々リベリオンは戦う意志を失った―――」 マッチの火を消すと、それを機内の床に放り投げた。 シェパード「しかし・・・この計画が成功すれば我々は再び立ち上がる」 ゆっくりと硬い座席の背もたれに体を委ね、つぶやいた。 シェパード「歴史は勝者によって記される―――」 操縦士「閣下、まもなく到着です」 シェパード「分かった」 確認するとシェパードは目を閉じた。 そして『ゴールドイーグル』はアフリカの地に舞い降りた。 ―――第31統合戦闘航空団作戦司令部 シェパード「・・・諸君、私がシェパード大将―――いや、今は元帥だ。 現点を以て在アフリカ全兵力を私が総括指揮することになる。 第31統合戦闘飛行隊も私直轄のタスクフォース141として再編成されることになる。 その過程で諸君らも私の指揮下に編属してもらうことになった。 何か質問はあるかね?」 司令部、と言ってもただの天幕だが―――の前方にシェパードが立っている。 毅然と背筋を伸ばし、強くしかしゆっくりと三将軍に尋ねた。 そしてそれに答えた手が上げられる。 モンティ「理由は? 何故貴官がこのタスクフォースの指揮官に?」 シェパード「良い質問だ。 私が創設した特殊戦センターでは日夜新しい戦術の研究が行われている。 私が此処に来たのは、それをこの戦場にフィードバックするためだ。 そしてなにより、私は諸君らの誰よりも長く戦っている、それだけだ。 他には? ロンメル「当面の作戦方針はどうなるのかね?」 シェパード「現在のスフィンクス作戦発動までの下準備を継続する。 以降はタスクフォース単位による特殊作戦を展開する」 パットン「なんだ、その特殊作戦ってぇのは?」 シェパード「現時点では機密事項だ。 諸君らが知る必要はない」 パットン「そりゃどういう風の吹き回しだ?!」 シェパード「落ち着きたまえ、中将。 ニード・トゥ・ノウの原則だ。 『今』、『ここで』、『君が』知る必要のない情報だ」 パットン「ふん・・・」 モンティ「具体的に我々はどうなるのかね?」 シェパード「今まで通り通常部隊の指揮を担当してもらう。 主に戦線の維持と防衛だ。 だがタスクフォースに編入する一部戦力と全ウィッチ隊は私の直接指揮下に置く。」 パットン「美味しいところは自分が持って行くってことか?」 シェパード「好きなように捉えてもらって構わん。 私はこの戦争に勝つために来た。 その為には『いかなる』犠牲も厭わん。 覚えておけ」 ――――――――― ―――――― ――― 次回予告 アフリカに来てから訓練漬けで嫌になりそうな日々。 そんな時に久々の非番日が回ってくる。 マイルズ「ちょっと付き合いなさいよ」 お決まりの台詞でマイルズの買い物に付き合わされる俺。 ということは俺SSシリーズお約束のお買い物回だ! あんなトラブルやこんなハプニング、そしてもちろんチンピラに絡まれるのもお約束。 そしてマイルズにライバル出現? なんと俺が市場で運命の出会いを果たしてしまう! まさかの√変更か?! 次回 チリ車の俺第四話「嗚呼愛しの豹娘」 乞うご期待 - -
https://w.atwiki.jp/128_571/pages/46.html
+目次クリック展開 自走砲の基本操作このゲームの自走砲のシステム 車体の向きについて 自走砲による近接射撃について Bishopの運用4.5インチ榴弾砲 戦術的な狙い 終盤の立ち回り タイマンについて 同じ砲を搭載できる車両に関する考察 Crusader 5.5in.SPの運用車体特徴について 突っ込んできた相手の対応 豚飯 偵察 自走砲狩り 対カウンター WoT日本語wiki 大体は調べたり試したりすれば分かることだけど、ただの書きたがりなもんで(´∀`; ) 自走砲についてつらつら。 内容は随時追加。 ver9.8。 自走砲の基本操作 なんやら偉そうな項目やなぁ→その通りでございますごめんなさい。 とりあえずwikiだと具体的に書いてない所ら辺を初心者向けに書いておきます。 このゲームの自走砲のシステム プレイヤーが着弾点を選ぶと、そこに着弾するよう仰角が45度までの角度で決定される。 弾の軌道は恐らく正確な放物線。 仰角45度以上の砲スペックであっても地形に適応しやすいだけで、水平に対して45度までである。 すなわち、射出45度を超える弾道で近くへ落とす形の射撃は出来ない。 射程が近いほど低い弾道になり、射程ギリギリでは45度となる。 下記の関数のグラフを描くと、射程手前で急激に仰角が大きくなることが分かる。 高校物理思い出しながら計算した感じだとこんな感じ。(間違えているかも) 同標高平面への射撃において射程 l 距離sのとき、射出角θは となる。 また、wikiの装填時間の項目が古いままなので、現行の装填時間計算については以下の式となる。 ゲーム中の表記と微妙な誤差がみられるため、計算が少し異なる可能性あり。 tRT:実装填時間(秒) cRT:カタログ値の装填時間(自走砲以外は要計算?) R:装填棒(ラマー)ありなら0.9・無しなら1 lS:装填手スキル(例:換気扇と車長ボーナスで表記116%なら1.155) 車体の向きについて 自走砲乗りで使ってない人は少ないと思うが、Xキー(デフォルト)による車体固定は癖にして良い。 ただ、もちろん射角外に標的が出ることもあり、そんな時の車体旋回をする操作法は2つある。 まず、後述のBishopなど、射角が狭い自走砲でよく使うのは、車体固定解除による自動旋回である。 カーソルを少し余分に旋回する辺りに合わせ、車体固定を解除、レティクルがカーソル位置に戻ってきたら(旋回完了したら)再び車体固定する。 このようにすることで、射角の狭い自走砲でも、要求通りの旋回を上手く行うことが出来る。 もう一つの方法は、A/Dキー(デフォルト)による手動旋回である。 射角が広いものの砲旋回によるレティクル拡散が大きい車両や、そもそも砲旋回が遅い車両にとってはこちらの方が有用なケースも多々ある。(具体的には全周砲塔のBirchとか) これは砲旋回速度に車体旋回速度が加算されて迅速な向き変更が可能だが、大抵レティクルは最大まで拡散するので、レティクル収束時間との勝負になってくる。 そのため、砲旋回によるレティクル拡散量、車体旋回速度、レティクル収束時間、リロード残時間などから総合的に判断して、車体旋回を取り入れたい。 手動旋回を行うと車体固定は解除されるので、旋回後の車両固定も忘れずに。 自走砲による近接射撃について 至近距離射撃を狙う際も、曲射モード(俯瞰視点)を用いることをおすすめする。 仰角のミスがなく、偏差射撃もしやすい。 予測しうる相手の移動方向を考え、相手の移動方向を砲弾が通るよう照準を合わせる。 近距離曲射に限った話ではないが(むしろ殆どの自走砲がそうなんだけど)、低仰角の場合は特に敵の向こう側の地面に照準を合わせることを意識する。敵車体の遮蔽で赤い線が出来るなら要はそれ当たるということなので。 俯角の少ない(主にフラ車)ではレティクルがカーソルを合わせた近い地面にちゃんと表れないこともある。この時の射撃は敵頭上を越えやすいことに注意すること。俯瞰視点だと確認しにくい点ではある。 例外的に、頭上の敵に対する撃ち上げの形になる場合は、俯瞰視点だと手前の地面に照準されてしまいやすい。 この場合はTDモード(通常視点)を用いる。 自身の動きも大きい立ち回りの時は、オートエイムも悪くない。 ただしその場合はただでさえ大きいレティクルが拡大しきっているため、絞ることによる精度向上よりも近づくことによる精度向上を意識する。 近すぎると爆風で自身の損傷も大きくなるが、これが必要になる際はそもそもが緊急時なので「死ならばもろとも」ぐらいの勢いで構わない。もちろんAPやHEATを込めているなら爆風の心配もないのだが。 Bishopの運用 Bishopではそれなりに勝てて来たので未熟者ながら色々書いてみようと思う次第。 4.5インチ榴弾砲 Bishopの後期砲であるこの砲についての説明。 特徴 射程が500mと非常に短い 単発威力が低い(貫通57mm威力450) 装填時間が短い(具体的数値は後述) 照準時間も比較的短い この砲は射程が500mと非常に短いため、そもそも撃てる範囲に前進する必要がある。 ただしこの短射程は上述の高角射撃が行いやすく、上手く射程端にもっていくと少々の岩陰程度なら飛び越えて直撃を狙える。 つまり、「味方と撃ち合いが起きる場所」で「相手が隠れたくなる場所」を470m付近に構えられるとこの砲は強い。 開幕では大抵この位置を目指すことになる。 ただし、LT等の開幕走り偵に捕まると即退場があり得るので、マップによってはそれを考慮して、走り偵に捕まらず、むしろそれに対して砲弾を送り込める位置へ移動する。 味方の展開により前進できるようになったら、目的の開幕砲撃ポイントを目指す。 着弾が高角度になるということは、射出も高角度になるということなので、400m付近の射撃しかしないのであれば(というか大抵は)目の前に障害物があるような位置取りも可能。 前線に近い分、発砲で十分に発見されうる距離なので、障害物を利用した隠蔽を心がける。 その後も、砲撃地点に応じて適宜位置を調整する。 よくあるケースだと、射撃がギリギリ通らない岩陰の敵を撃ちたいという場合がある。 射程内であるならば、バックで距離を取り角度を上げてやることで、この問題を解決できるかもしれない。 それでも砲弾の届かない位置は存在するので、一つの敵に固執しないこと。 まぁほかの砲に比べれば格段に撃てる所が多いのだけど。 リロードの速い砲である故に、自分で撃って履帯切りしそのまま追撃することが可能なケースも少なくない。 そのため、発見状態が切れてももう一度同じ場所へ撃つ価値はある。 例えば、軽装甲車・体力が少ない・命中弾で撃破できなかった場合、履帯に吸われた可能性は高い。 流石にこの弾が履帯直撃すると無事では済まない。修理速度向上や消耗品利用をされてない場合は留まっているはずである。 このようなことから、砲撃後すぐに視点を変えず、着弾観測(榴弾の爆発が無ければ直撃)をするメリットは他の砲より高い。 着弾観測をする際は照準線を少しずらすようにすると砲弾の軌跡が見えやすい。 比較的近距離で高い弾道を取るため、停止中の大型車両相手だと曖昧な弱点狙いもできる。 装甲の厚い砲塔前面を避け、比較的薄い砲塔天面およびエンジンのありそうな車体後部を狙う、といった具合である。 流石にピンポイントでキューポラを狙うようなことは出来ない。 これが顕著に表れるのは重駆逐戦車(上から見ると大体四角いやつ)で、前面に当たった場合と後部に当たった場合ではダメージの通り方が全然違う。 このタイプの駆逐戦車は手前に落ちた爆風で腹を焼けることもあるが、狙って出来るものではない。 もちろん外してしまうと意味がないので、外さない程度に狙いを付けていくことが大切である。 戦術的な狙い 周辺tierの自走砲と比較して挙げられるこの砲の特徴は、威力が控えめであることと、装填時間・照準時間が短いことである。 装填棒+換気扇+搭乗員100%で装填時間が10.88秒ぐらい。 威力の低さから、軽装甲低HPの下位車両を除いて一撃大破はまずできない。爆風損傷も通れば儲けぐらいの気休め。 ただし直撃できると、搭乗員やモジュールの被害はそれなりに取れる。 手数が多い分その効果も大きくなり、モジュール加害による地味な支援も勝利に貢献する要因となる。 それ故、重戦車にはあまりダメージが通らないものの狙う意味はある。撃ちやすいのは然り。 ここからは心理的な面を述べる。 まず挙げられるのは、隠れたつもりの場所の敵に当てることで、意識の分散をさせ、味方の砲戦を有利にするということ。逃げ場はないぞというプレッシャーをかけていく。 というか、岩陰からの飛び出し(被発見)・照準・射撃・隠れるという一連の動作の中で、最も狙いやすいのは隠れる動きなので、隠れた先に弾を届けやすいこの砲ではよく利用することになる。 味方が発見してくれたら、その戻るべき位置にじっくり照準を合わせ、相手の射撃を合図に偏差射撃を行う。 隠れる動きは単調になりがちであり、着弾ラグの長いこの砲でも偏差射撃は比較的行いやすい。 また、射撃後に隠れる動きをしないならばもちろんそれは味方が撃ってくれるのは言うまでもない。 この被弾を嫌い、相手が岩陰での常時移動を取り入れるならば、それはすなわちレティクル拡散であり、味方の被害が減る。(はずである) 終盤の立ち回り Bishopの機動力は非常に弱いので、敵味方の配置を見つつ方針を決める必要がある。 劣勢で相手が味方自走砲を狩りにきそうな場合、いくらか離れた岩や稜線の向こう側からそれを狙う。 250mぐらいの近い射撃でもある程度の障害物は飛び越えられる。 一方で自分の視界しかない場合や、敵が自分のいるサイドからきた場合は、タイマンするしかない。 他方、優勢で味方が相手ベース付近の残党狩りに突っ込みそうな場合は、そこを撃てるようにしっかり前進する。 速力が無い分、これらの判断は早め早め、読みが外れるリスクを恐れず大胆に動こう。 タイマンについて 100m以内の近距離でも直射(TDモード)より曲射(俯瞰モード)を使った方が良い場合は多い。 真っ直ぐ突っ込んでくる相手(重戦車に多い)の場合、後退しながらハルダウンっぽい位置関係になると、割と有利が取れる。 発見状態維持時間中に、相手の視線は通らない位置で曲射を狙えるとグッド。 上述の通り、Bishopは後退が遅い代わりにレティクル拡散が少なく、割とすぐに高精度で撃てる。 相手に撃たれる状況でも、回避不能な位置であれば、敵に真正面を向けて同じことをする。 重戦車相手でも体力の350一気に削られることは稀で、1撃ぐらいなら反撃できる。 ただし榴弾砲には一撃でやられうる。特に敵自走砲が残っている場合は(遅いけれど)後退・前進の揺らしで直撃を避ける等の動きをしたい。至近弾は仕方ない。 相手が慌ててたり主砲損傷してたりして、弾を上にそらしてくれるケースもある。まぁBishopの下半分は傾斜もあって割と硬いし、上の垂直部狙うのはもっともな判断なのだけど。 あと、車体装甲の厚さとそれなりの車体重量の関係で、装甲が薄い相手の体当たりはむしろこっち有利になる。 相手が体当たりしそうな軌道で走ってきたらこっちからも合わせにいくというのもアリ。 いつぞやの市街戦マッチングで全速のELCが真横から突っ込んできたもので、後退して位置合わせたら向こうが190ダメージ受けて爆散したという、相手に気の毒なぐらいの出来事もあった。こっちは履帯で受けて履帯損傷したけども本体無傷。 余談だけど、車体重量は304の方が大きく、エンジン出力の高さもあってそれなりに威力は出る。 終盤でドットの中戦車を相手にして、撃たれる前に体当たりで潰した経験も。 ただし304は薄い故、被ダメージも大きいのは注意。 同じ砲を搭載できる車両に関する考察 FV304では勝率がひどいので、私自身、砲としての性能はそこまで引き出せてないかもしれない。 304の機動力は素晴らしく、ポイントを適宜変えていきたいこの砲との相性が良い。 ただし、Bishopの耐久力は近接戦闘で勝てる可能性を上げ、チーム貢献しやすくなっている。 また、直撃でこそ真価を発揮するこの砲は、304のレティクル絞りが(比較的)悪いということの影響をもろに受ける。前のバージョンの活躍は知らない。 一方のSPは、装填速度の向上が見られるが、さらにtierが上がったこともあり、直接的な活躍はしづらい。 ver9.6の散布界修正により、事実上、射撃精度が低下することとなった。 繰り返しになるが、この砲は直撃させる意味が大きい。 それ故、より一層絞りきった射撃が重要となる。 ちなみに、英国tier2の砲も同じ弾道を取るため、同じ位置で同じように撃ち込むことができる。 車両 条件 装填手 装填時間(s) Bishop 装填棒+換気扇 115.5% 10.88 Bishop 装填棒+換気扇+紅茶 126.5% 10.42 Bishop(戦友) 装填棒+換気扇+戦友 121.0% 10.65 Bishop(戦友) 装填棒+換気扇+戦友+紅茶 132.0% 10.21 FV304 装填棒+換気扇 115.5% 11.39 FV304 装填棒+換気扇+紅茶 126.5% 10.91 FV304 装填棒+換気扇+戦友 121.0% FV304 装填棒+換気扇+戦友+紅茶 131.0% CrusaderSP 装填棒 110% 10.35 CrusaderSP 装填棒+紅茶 121% 9.91 Crusader 5.5in.SPの運用 ただし使うのは4.5インチ砲である。なんという名前詐欺。 後期砲(5.5インチ砲)は5回ぐらい使って投げた。 逆に目立つので、味方から異様な目で見られたり舐めてんのかと思われたりするかもしれない。 味方にsmall dickだかなんだか言われたこともあったね。(悪気はなかったのかもしれないけどw) でもこの車体だからこそ輝く所もあるんだよ、この4.5インチ砲は。 ここに書いてあることは全部4.5インチ砲利用を前提。 もちろん、こんなの書くっていうのはそれなりに勝ててきたから。(運かもしれんけど) 車体特徴について 車体性能の違いが出るのは大体非常時、敵との近接戦なので、以降の項目は基本それについて。 大体wikiに書いてるままだけど、要点をまとめるとこのようになる。 後退が44km/hでやたら速い 重量出力比も22.8と加速力も悪くない(装填棒+射撃改良+レンズの場合) 履帯性能も高く32deg/sの旋回ができる(自走砲としては破格) 射界が右23度ある(左17度) 砲が車体最後部に付いている 突っ込んできた相手の対応 終盤など、自走砲狩りに突っ込んできた敵への対応。 味方の援護が見込めそうなときは、そちらへ逃げて誘導することが第一。 しかしながら敵が突っ込んでくる状況では味方の数も少ないことが多いし、逃げ切れず追いつかれることもある。 回り込んで射界外から撃ちたいであろう軽装甲車への対応。(装甲で受ける系戦車は相手に出来ない) 全周撃てない車体共通なんだけど、旋回しながら後退することで回り込まれにくくする動作がある。 後退速度も旋回速度もあるこの車体は、それがしやすい。 この時は至近距離なので、ちゃんと絞らずともほぼ直撃が見込める。(この砲は絞りも速いのだけど) また、相手が回り込みきれず並走気味になっている時も比較的撃ちやすい。 砲が後ろについているのも撃ちやすくなる一つの理由。 ただ注意して欲しいのは、4.5インチ砲使用時に正面最大俯角で撃つと自分に当たることである。 厳密に試験した訳ではないので、単に敵の主砲へ当たった爆風が返ってきただけかもしれないが、自分による射撃撃破の記録は何回も見たことがある。 非常時に慌てて自滅してしまうと元も子もないので、真正面の近接オートエイムは気をつけた方が良い。 豚飯 ヒメドとか割と使いやすい。一番役だったのはハリコフだけど。 射角の広さと後方についた砲、そして自走砲特権の俯瞰モードによって、(特に市街地では)豚飯のような動きもそれなりに利用価値がある。 もちろん装甲はペラペラなので防弾としての豚飯効果は期待できない。 あくまで車体隠し技術としての利用となる。 ただ、俯瞰モードのおかげで、瓦礫(盛り土?)のようなもので直接射線が通りにくいところでも安定した照準が可能になる。 具体的な説明に移ると、まず、建物裏で射角(出来れば少し広い右側)いっぱいの位置に敵を置き、俯瞰モードで照準を合わせておく。 この時は隠れた状態なので、射線表示は赤のはずである。 ここから後退をし、射線が緑になったら停止。レティクルを少しだけ絞って射撃、前進してまた隠れる。 俯瞰モードだと相手の砲塔の向きも観測しやすい。相手が明らかにこちらを狙っているときはすぐさま隠れれば良い。 偵察 もちろん自走砲の本業はその砲で撃つことなのだけど、終盤で自チームの目を増やしたい場合は偵察もまた必要になってくる。 視認範囲330m。レンズ皮膜なら363m、カニ目発動時なら412mとなる。(9.7で自走砲全体の視野範囲が狭くなった) またFV304に劣るものの静止時隠蔽率は高水準であり、スキルと茂み次第では発見されにくい置き偵察ができる。 というか100m付近でも発見されないケースもある。 これは待ち伏せ射撃にも利用できることなので、慌てて動いて茂みからはみ出さないことに注意する。 一方、この車両には走り偵察という択も存在する。 終盤で味方に自走砲や遅い車両ばかりが残った時などは自分自身が走る。 それなりの機動力があること、車高が低く稜線を使って退避しやすいことなどを最大限活用する。 装甲は無いに等しく、HP350で一撃爆散するリスクがあることは忘れずに。 対戦を重ねた感覚から、私はレンズ皮膜を採用している。 静止して偵察できるケースは少ないことと、また逃げながら撃つ場合にも効果があることが理由である。 静止で待ち伏せ射撃する時は茂みで隠れて発見されないことが大切であり、その距離は視認距離よりずっと短い。 余談だが、皮膜はカニ目と比べてほんのちょっとだけ重量が少ないので、気持ち程度機動力は上がっているかもしれない。 あ、4.5インチ砲は5.5インチ砲より1t以上軽いので体感レベルで変わるかも。 自走砲狩り カウンターのことではなく終盤に両軍自走砲ばかり残った時の話。 敵自走砲に対して、この車両では機動力を生かした接近戦も選択できる。 ほかの自走砲対自走砲と違って後退で突っ込んでいくため、撃ちながら近づくことはできない。 全速で真横を走り抜け、すれ違ってから射撃体勢に入る。 すれ違ったということは相手は後ろを向いており、撃つことはできない。 4.5インチ砲の低威力故に仕留めきれない場合もあるので、相手が旋回してくる前にまた回り込もう。 この砲の短照準時間・短装填時間はこういう接近戦に強い。 一発躱さなければいけないケースも多く、ギャンブル的要素は否定できないが、向かい合って撃ち合うのも結局撃たれやすいので五十歩百歩。 車高は低いので、敵自走砲の弾が上にそれるのを願うだけである。 対カウンター そもそも中tier帯、それも高弾道で定番位置も人それぞれになってくるこの砲に対してカウンターが飛んでくることはほぼ無い。 そもそもこの砲を扱える3両はそれほど車体も大きくなく、カウンターで確実に命中させることは難しい。 このようなことから、それに対することを考えず、射撃に集中するというのも正しい選択である。 しかしながら、マップによっては撃ちやすい位置が限られてきて、それを狙う人(すなわち私のような人)も稀に居る。 これに対して、カウンター対策の移動を行うと、大抵のケースで射撃間隔が延びてしまうのがつらい点である。 (以下執筆中)
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/467.html
チリ車の俺 第三話「オールイン」 ―――アフリカ、第31統合戦闘飛行隊基地外周 ドォンドォンドォンドォン!!・・・パラパラパラ 稜線に伏せた俺の目の前の地面が爆ぜて頭上から砂が降り注ぐ。 ピピ―――ッ!! マイルズ「フォーワード!!」 ホイッスルの音と同時に匍匐していたウィッチ達が立ち上がり駆け出す。 ガキン!キュラキュラキュラキュラキュラキュラ 陸戦ストライカーの履帯を展開して砂丘を走行して下る。 ドォンドォンドォン!! さらに俺の周囲に着弾。 俺「うわっ!っぶねー!!」 驚いて速度を落とす。 マイルズ「コラー!!怯むな、俺中尉!止まったら当たるわよ!」 俺「ええい、こんちくしょう!」 ザザ―――ッ パトリシア「ムーブムーブムーブ!!」 アビゲイル「イェーハァ!!」 パットンガールズ達が砂塵を残して斜面を先行する。 北野「待ってください~、俺中尉~!」 俺「こっちだ!急げ!」 北野「は、はい~」 (チハ車のSA一二二〇〇VD魔道エンジンじゃ150呪力が限界だ。 こんな地形じゃ厳しいな・・・ これも後で報告書にまとめておくか) マリリン「インカミーン!!」 俺「伏せろ!」 ガバッ 咄嗟に古子に覆いかぶさって地面に伏せさせる。 ドォンドォンドォン!! またも至近弾で砂が舞い上がる。 またもまき上げられた砂が落ちてくる上に砂塵となって視界を奪った。 俺「近っ! 何考えてんだ、あいつらー! 当たっちまうぞ・・・ ほら行くぞ、北野軍そ―――」 なんとか古子を掴んで立ち上がらせようとしたとき、 ふにっ 俺「えっ?」 ふにふに なにか柔らかい物に指が触れた。 砂塵が濛々と舞っていて良く見えない。 (なんだこれ?) ふにふにふに 北野「んあっ・・・お、俺中尉さん・・・・そこはっ、んっ・・・///」 砂煙が晴れると、俺の手がしっかりと古子の控えめながら形のよい胸を捉えているのが見てとれた。 つまり、視界が晴れるまでの数十秒間おもいっきり乳を揉んでいたということになる。 慌てて手をどけて弁解する俺。 北野「お、俺中尉さん何するんですかっ・・・」 俺「あっ、いやこ、ここここれはその間違いでっ」 北野「あ、あはははは、そうですよね。びっくりしちゃいましたよー」 古子も顔を真赤にして乾いた笑いで応じた。 明らかにドン引きしている。 スパーン! マイルズ「真面目にやりなさい!」 強烈な張り手が後頭部にヒットした。 俺「はいスミマセン、マイルズ少佐殿」 現在第31統合戦闘飛行隊『アフリカ』陸戦隊は空地直接協同作戦、エアランドバトルの為に訓練中である。 カールスラントの「韋駄天ハインツ」ことグデーリアン将軍が推し進めた電撃戦を基にした戦闘教義だ。 的確な航空支援の元、地上部隊がその機動力を最大限に発揮し敵戦線を食い破る。 特に広大な戦場で戦うことになる砂漠戦では機動力が肝だ。 そのため、現在アフリカ戦線では空陸両ウィッチによる連携作戦が推し進められていた。 最終的な目標、スフィンクス作戦―――つまりスエズ運河の解放―――を達成するためには不可欠だろう。 マイルズ「もう一度やり直しよ。 今度は躍進800m、一気に砂丘を駆け上がるわ。 全員砂地でフットボール出来るまで訓練よ!」 マイルズ《上空の航空隊、聞こえる?》 加東《良好よ》 マイルズ《もっと近くにお願い。 出来るわね?》 加東《了解》 マイルズ「さぁもう一度行くわよ。 全員駆け足で麓まで下りなさい」 全員「イェス、メイジャー!」 ――――――――― ―――――― ――― モンティ「まだまだ、だな・・・」 モントゴメリーが双眼鏡を下ろしつつそう呟く。 訓練が行われている砂丘地帯から程遠くないまた一つの砂丘に砂漠の三将軍が佇んでいた。 もちろん目的は訓練の視察である。 パットン「まだ始めたばかりだ、仕方ないだろうが」 ロンメル「我がカールスラントの魔女達は既に戦闘教義段階から講習済みだ。 いつ実戦でも問題はない」 パットン「抜かせ。あの馬鹿でかいタイガーが付いてこれる訳ねぇだろ」 ロンメル「・・・ティーガーについては本国で新型歩行脚が試作中だ。 直にこっちにも回ってくる」 モンティ「・・・仕方あるまい。 それでは我らが新司令官殿をお出迎えに向かうとするかね、諸君?」 パットン「ああ、行くか」 丁度本日が件の「タスクフォース」指揮官に就任するシェパードの着任日である。 そして三人は駐車してあったキューベルワーゲンに乗り込んで走り去った。 ―――滑走路 パットン「それで、奴さんはまだか」 モンティ「すでにレーダーが補足した、じきに着くだろう」 パットン「ふん、何がタスクフォースだ。 急にやってきて指揮権を持ってくなんてアイクは何を考えてやがる」 ロンメル「なに、君の同国人だろう。せいぜい仲良くし給え」 パットン「ヤなこった」 モンティ「全く君らしいな」 パットン「結構!ズカズカと儂らのテリトリーに踏み込んできて勝手に全部持っていく輩など信用できるか!」 ロンメル「まあ、その点については我輩も同感と言わざるをえないな」 モンティ「私だって出来れば避けたい話ではあるが・・・連合軍総司令部からの意向では仕方が無いだろう?」 パットン「むぅ・・・」 そう押し黙ると懐から葉巻を取り出して愛用のジッポーで火をつけた。 モンティ「相変わらずシガーにオイルライター等と・・・これだからリベリアンは・・・」 パットン「黙っとれ」 ―――同時刻、アフリカ基地上空C-47スカイトレイン機内 輸送機内のベンチシートに一人の初老の男が腰掛けている。 厳しく締まった口元に蓄えられた髭も、陸軍のシンボルである黒いベレーからわずかに覗く髪も白い。 肩の特殊戦スクールインシグニアと帽子の三ツ星が彼の地位を物語る。 ガッチリとした長身に野戦服を纏い、脇に吊り下げたショルダーホルスターには愛用の.44口径リボルバーが収まっている。 シェパード「4年前、私は瞬きの間に三万もの兵を失った。 だが世界はそれをただ傍観するだけだった―――」 誰にともなく、低く太い声でシェパードがつぶやいた。 「SHEPHERD」のネームタグが付いた胸ポケットから葉巻を取り出し、吸口をナイフで切り落としてマッチで着火して咥えた。 シェパード「そして、世界最強の軍事国家たる我々リベリオンは戦う意志を失った―――」 マッチの火を消すと、それを機内の床に放り投げた。 シェパード「しかし・・・この計画が成功すれば我々は再び立ち上がる」 ゆっくりと硬い座席の背もたれに体を委ね、つぶやいた。 シェパード「歴史は勝者によって記される―――」 操縦士「閣下、まもなく到着です」 シェパード「分かった」 確認するとシェパードは目を閉じた。 そして『ゴールドイーグル』はアフリカの地に舞い降りた。 ―――第31統合戦闘航空団作戦司令部 シェパード「・・・諸君、私がシェパード大将―――いや、今は元帥だ。 現点を以て在アフリカ全兵力を私が総括指揮することになる。 第31統合戦闘飛行隊も私直轄のタスクフォース141として再編成されることになる。 その過程で諸君らも私の指揮下に編属してもらうことになった。 何か質問はあるかね?」 司令部、と言ってもただの天幕だが―――の前方にシェパードが立っている。 毅然と背筋を伸ばし、強くしかしゆっくりと三将軍に尋ねた。 そしてそれに答えた手が上げられる。 モンティ「理由は? 何故貴官がこのタスクフォースの指揮官に?」 シェパード「良い質問だ。 私が創設した特殊戦センターでは日夜新しい戦術の研究が行われている。 私が此処に来たのは、それをこの戦場にフィードバックするためだ。 そしてなにより、私は諸君らの誰よりも長く戦っている、それだけだ。 他には? ロンメル「当面の作戦方針はどうなるのかね?」 シェパード「現在のスフィンクス作戦発動までの下準備を継続する。 以降はタスクフォース単位による特殊作戦を展開する」 パットン「なんだ、その特殊作戦ってぇのは?」 シェパード「現時点では機密事項だ。 諸君らが知る必要はない」 パットン「そりゃどういう風の吹き回しだ?!」 シェパード「落ち着きたまえ、中将。 ニード・トゥ・ノウの原則だ。 『今』、『ここで』、『君が』知る必要のない情報だ」 パットン「ふん・・・」 モンティ「具体的に我々はどうなるのかね?」 シェパード「今まで通り通常部隊の指揮を担当してもらう。 主に戦線の維持と防衛だ。 だがタスクフォースに編入する一部戦力と全ウィッチ隊は私の直接指揮下に置く。」 パットン「美味しいところは自分が持って行くってことか?」 シェパード「好きなように捉えてもらって構わん。 私はこの戦争に勝つために来た。 その為には『いかなる』犠牲も厭わん。 覚えておけ」 ――――――――― ―――――― ――― 次回予告 アフリカに来てから訓練漬けで嫌になりそうな日々。 そんな時に久々の非番日が回ってくる。 マイルズ「ちょっと付き合いなさいよ」 お決まりの台詞でマイルズの買い物に付き合わされる俺。 ということは俺SSシリーズお約束のお買い物回だ! あんなトラブルやこんなハプニング、そしてもちろんチンピラに絡まれるのもお約束。 そしてマイルズにライバル出現? なんと俺が市場で運命の出会いを果たしてしまう! まさかの√変更か?! 次回 チリ車の俺第四話「嗚呼愛しの豹娘」 乞うご期待 - -