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人物紹介 その他大勢 人物紹介 その他大勢美月 べるの(みつき? べるの) ノエル 美月 べるの(みつき? べるの) 性別:女 年齢:14 血液型:B さる大手のおもちゃ会社の社長令嬢 青いツインテールな髪をしており、普段着は父親の趣味かゴスロリである 性格は高飛車で唯我独尊な性格をしておりバトルでは金に物を言わせ神姫に最新やワンオフの兵装を装備させている ノエル タイプ:ツガル CSC:―・―・― ランク:C べるのがマスターであるサンタ型神姫 基本的にどの距離でも戦闘できるように調整されており、さらに武装も最新兵装を使っているため負けることはほぼなく常に常勝している しかし、実戦経験の少なさからか技量が浅さや突発的な状況に対する判断力が足りない部分等の問題点はある また上記のように最新兵装を使っているため標準のツガルセットを使うことは余りないようである 戻る
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第2部 「ミッドナイトブルー」 第10話 「night-10」 巨大な航空母艦型MMSのツラギの姿がはっきりと眼前に写る。 ツラギは左舷に備え付けてある大小さまざまな火砲でシュヴァル目掛けて対空射撃を開始する。甲板にいる砲台型や悪魔型もライフルや大砲で攻撃を行う。 急降下するシュヴァルの周りで砲弾が炸裂し、機関砲弾が装甲を貫く、シュヴァルは満身創痍になりながらも最後の駄目押しで、リアパーツの2門の素粒子砲を放った。 シュヴァル「うおおおおお!!」 ビッシュウウウン!! 青白い光がまっすぐにツラギの後部のスクリュー、舵部分に命中する。 ズズウウン・・・ 一瞬、グラリとツラギの巨体がひるむが、さして目に見えるようなダメージは食らっていない。 金川「ツラギ!損傷報告」 ツラギのマスターである金川がマイクを掴んで確認を取る。 ツラギ「左舷後方に命中!第2舵が破損、被害は軽微」 ナターリャ「ふん、バカめ・・・その程度で空母型神姫が沈むものか!」 ドンドンドンドン!! ツラギの艦橋ブロックに搭載されている連装機関砲が放った機関砲弾がシュヴァルのエンジンを貫いた。 シュヴァル「ぐっあ・・・エ、エンジンが!」 ボウウン!! 真っ黒な煙を吐いて、シュヴァルの体がバランスを崩してツラギの甲板に突っ込む。ツラギの甲板に叩きつけられるように不時着するシュヴァル。 シュヴァル「ぐああああ!!」 不時着のショックでシュヴァルの装甲がバラバラに砕け散り、脚部があらぬ方向に曲がる。 ツラギ「敵機!甲板に落着!」 悪魔型のニパラが強化アームでシュヴァルの頭部を鷲掴みにし、頭部に砲口を突きつける砲台型のルーシ。 ニパラ「ひゃはははっは!!捕まえたぜェ!!」 ルーシ「よくも好き勝手散々暴れまくりやがって」 シュヴァル「う・・・・ぐ・・・」 ニパラ「頭部を握りつぶしてCSCを抉り出して砕いてやる」 ナターリャ「待て!!」 ナターリャが弱ったシュヴァルに近づくと、もったいぶった言い方であざ笑う。 ナターリャ「敵ながらたった一人で私の指揮する機動MMS艦隊にここまで立ち向かったのだ。ここは天晴れと賞賛すべきだろう」 シュヴァル「ぐ・・・・」 ニパラはぐいとシュヴァルの頭部を無理やりナターリャに向けさせる。 ニパラ「ナターリャ将軍、どうするつもりで?」 ルーシ「へっへへ、ネットで公開しましょうよー夜帝の装甲や武装をひん剥いて、二度とふざけたことが出来ないように辱しめてやるんだ」 戦闘爆撃機型のマレズが甲板に降りてシュヴァルに機関砲を向ける。 マレズ「ヒュー、こいつなんだかんだいってけっこう可愛い顔してんじゃねえか、へっへへ」 ナターリャ「よく頑張ったが、オマエのおおげさな伝説も今日までだ!!!何が夜帝だ!!ふざけるな・・・夜のステージなら最強?それも今日までだ!!いいか、ネットのみんなにこういうんだ『私は敗北主義者です。優秀なナターリャ将軍の指揮する機動MMS艦隊に敗れた惨めな敗北者です』とな!!」 ナターリャは興奮して唾を飛ばす。 ツラギは艦橋から惨めに羽交い絞めにされているシュヴァルを見てニヤニヤしている。 シュヴァルは顔をうなだれて、ひくひくと体を振るわせる。 マレズ「おいおい、どーしたァ?あまりに惨め過ぎて怯えてるのか?」 ニパラ「うひひひ、八つ裂きにしてバラバラに砕いてやるぜ」 ナターリャ「まずは許してくださいと喚いて、情けないサレンダー宣告をもらおうか!!私の負けですってな」 シュヴァルはぶつぶつと何かつぶやく シュヴァル「・・・か・・・め・・・」 ナターリャ「どうした、何か言いたいことがあるなら言ってみたまえ、最後だ。何を言ってもいいぞ」 ニパラがぐいっとシュヴァルの顎を掴んで顔を向けさせる。 シュヴァルの顔は硝煙で薄汚れていたが、目は爛々と黄金色に光り生気に満ち溢れていた。シュヴァルはニヤニヤと笑いながら口を開く。 シュヴァル「・・・チェスと将棋の違いって知っているか?」 マレズ「は?」 ニパラ「へ・・・なんだ?」 唐突にまったく意味の分からないことを言うシュヴァルに周りは下卑た笑いをやめる。 ルーシ「チェスと将棋の違いだとォ?」 ナターリャは真顔で答える。 ナターリャ「一般的にだが・・・大きな違いは、チェスは取った駒を使うことはできないが、将棋は取った駒を味方の駒として使うことが可能だが・・・それがどうした?」 シュヴァルはふっと顔を歪ませる。 シュヴァル「ナターリャ、あんたはチェスが得意なんだって?このゲームをチェスに見立てて、私を狩ったつもりになっているが、それは大きな間違いだ。負けたのはあんたの方だ」 ルーシ「てめえッ!!!何を分けわかんないこと言ってやがるんだ!!このヤロウ!!」 ルーシはライフルの銃底でシュヴァルの柔らかいお腹を殴りつける。 シュヴァル「がはっ」 ズン・・・ズズン・・・ 上空で低い爆発音が鳴り、甲板が徐々に赤く明るくなってくる。 ナターリャ「・・・・・」 ナターリャはあることに気がつき、ゆっくりと真上を見上げる。 シュヴァルとの戦闘で被弾し操舵不能に陥っていた重巡洋戦艦型MMSの「マキシマ」がゆっくりと炎に包まれ小規模な爆発を繰り返しながら一直線に自分たちがいる空母型のツラギに降下してくる。 野木「姿勢安定装置を作動しろ!」 マキシマ「スタビライザー全損!!こ、高度が維持できません!だ、ダメです!!堕ちます!!」 遠くから重巡洋戦艦型のヴィクトリアがチカチカと発光信号を送ってツラギに退避命令を出している。 ヴィクトリア「至急、進路変更サレタシ、両艦は衝突ス」 金川が発光信号を見てツラギに指示を出す。 金川「ツラギ、至急進路変更だ!!おもかじ!」 ツラギ「あう・・ああ・・・か、舵が聞きません!!さきほどの攻撃で舵がァ!!」 ツラギはパクパクと口を開けて恐怖に引きつった顔を晒す。 シュヴァル「あんたの駒、使わせてもらった。所詮あんたは駒を駒としか見てなかったんだ」 ナターリャ「!!」 ナターリャは目を見開き、落下してくるマキシマの燃え盛る巨体を凝視する。 ニパラ「あ・・・うあああ・・」 ルーシ「ひ、ひいい!!何をしているんだ!舵を切れ!!」 マレズ「ぶつかるぞ!」 燃え盛るマキシマは必死で発光信号を発する。 マキシマ「我、操舵不能、我、操舵不能」 シュヴァル「このゲームはおまえの負けだ。ナターリャ。武装神姫の戦いはチェスほど単純じゃない」 シュヴァルがフッと笑う。 ツラギ「そ、総員退艦ッーーー」 ヴイイイイーンヴィイイーーーーン・・・ サイレンを鳴らすツラギ。 マレズ「うわあああああ!!」 ルーシ「に、逃げろ!!!」 ニパラ「ぎゃあああああああああああ!!」 恐怖で叫び声を上げながら逃げようとする甲板にいる神姫たち。 ナターリャはシュヴァルに向かってパチパチと拍手をする。 ナターリャ「ハラショー!!!すばらしい!!これは私の負けだな、さすがは夜帝だ・・・私の得意分野であるチェスにも勝利した。完璧だ・・・君のような武装神姫と一緒に滅ぶことが出来るとはうれしいよ」 シュヴァルはちらりと燃え盛るマキシマを見てつぶやく。 シュヴァル「あんたは逃げないのかい」 ナターリャ「間に合うものか・・・」 ゴオゴゴゴオオオ・・・ 燃え盛る巨大なマキシマの船体は突き刺さるようにツラギの甲板に墜落し、ツラギの格納庫にまで突き刺さり、内部の燃料や弾薬庫に火が引火し、強烈な大爆発を起す。 グッワッツワアアアアアアアアアアアアアアアアアーーン!!! 真っ赤な炎で出来た巨大なキノコ雲がツラギから立ち上り、強烈な爆風を引き起こす。 □将校型MMS 「ナターリャ」 SSSランク「演算」 撃破 □航空母艦型MMS「ツラギ」 SSランク 二つ名「アタックキャリア」 撃破 □重巡洋戦艦型MMS 「マキシマ」 SSランク「ワルキューレ」 撃破 □悪魔型MMS 「ニパラ」 Sランク 撃破 □戦闘爆撃機型MMS 「マレズ」 Sランク 撃破 □砲台型MMS 「ルーシ」Aランク 撃破 □夜間重戦闘機型「シュヴァル」 SSSランク 二つ名 「夜帝」 撃破 撃破のテロップが筐体に流れる。 呆然と大爆発を眺める、戦闘機型のアオイとツクヨミ。 アオイ「おい、俺たちの帰るところがなくなったぞ」 ツクヨミ「俺に言うなよアオイ」 重巡洋戦艦型のヴィクトリアがマスターの野木に報告する。 ヴィクトリア「マキシマ、ツラギと衝突し爆沈す、ツラギにのっていた神姫の生存はなし、ナターリャ将軍は爆死しました」 野木「つまり、このゲームの勝敗は?」 ヴィクトリア「敵の夜帝、シュヴァルの撃破を確認、されどこちらの指揮官であるナターリャ将軍が戦死されたので、この勝負は引き分けです」 野木「引き分け?冗談じゃない。私たちの負けだ。こちらは17体もの神姫がいたが、生き残ったのはお前を含めて3体のみ・・・奴は1個機動MMS艦隊を潰滅しやがった」 夜神はスーツから煙草を取り出し、火をつけて深く煙草の煙を吸い込む。 筐体の周りは真っ暗で煙草の火だけが赤く燃えている。 夜神「・・・・」 夜神は煙草についた赤い炎の灯火を、じっと見つめる。 じわじわと赤い明かりを失っていく煙草の火・・・・ 煙草の火が消えるとあたりは濃いブルーの闇に包まれる。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>第11話 「night-11」 前に戻る>第9話 「night-9」 トップページに戻る u
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ウサギのナミダ ACT 1-14 ■ 雨の街は、いつもとその様相を一変させていた。 あれほどに鮮やかだった風景は、色を失い、輪郭さえもぼやけている。 すべて水に濡れ、色褪せて見えた。 まるで、かつてわたしがいた場所のように、灰色の世界。 雨に追われ、人々は足早に過ぎ去っていく。 足下の神姫になど注意を払う人はいなかった。 降りしきる雨は、痛いほどにわたしを叩き、瞳からこぼれる涙さえも、洗い流されてゆく。 これは、あの空の涙なのだろうか。 空にも心があって、悲しくて辛いことがあるのだろうか。 上空を垂れ込める雲に、心を灰色に塗りつぶされて、涙をこぼすのだろうか。 今のわたしと同じように。 わたしはもう、悲しいとか辛いとか、そういう感情を通り越して、ただ、ぼうっとしていた。 瞳から流れる涙だけが止まらない。 だから、きっと、悲しいのだろう。 悲しすぎるのだろう。 だけど、その涙さえ、雨に混じってしまい、わからなくなる。 わたしはもう、泣くことさえも許されてはいないのだと思った。 わたしは、あの後、PCのワープロソフトを起動して置き手紙を残すと、マスターの家を出た。 お風呂場の窓は換気のために開けてあることは知っていたので、出るのは容易だった。 ……こんなときばかり、トリックはうまく行く。 衝動的に出てきてしまったけれど、行く当てなんてなかった。 はじめは、お店に戻ろうかと思った。 でも、お店の場所をよく知らない。 マスターのところに来るまで、お店を一歩も出たことがないのだから、当然だった。 それに、もう帰る気になれなかった。 お店に帰れば、またお客さんに奉仕する日々に戻るのだ。 それ以外の世界を知ってしまったわたしは、お店が神姫にとって地獄のような場所だと知ってしまった。 もう、戻りたくはなかった。戻れなかった。 あの、わたしを連れだしたお客さんのところはどうだろう。 ……結局は同じことだ。いや、お店にいるときよりもっとひどい仕打ちを受けるかも知れない。 そこには行きたくない。 ……わたしは、なんとわがままなのだろう。 マスターを自らの手で汚しておきながら、もう自分が汚れるのは嫌なのだ。 こんな神姫が一緒では、マスターが不幸になるのも当然だった。 いや、元から誰かの武装神姫になる資格なんてなかったんだ。 なんという身の程知らず。 取り返しがつかなくなって、やっと思い知るなんて。 もうこれ以上、マスターを汚すわけにはいかなかった。 だから、わたしは姿を消すことにした。 そう、このまま消えてしまおう。 この世から。 ふと見上げると、駅前の歩道橋が目に入る。 わたしはのろのろと、その歩道橋の上へと向かう。 □ 俺は走っていた。 雨の中をひたすらに、走っていた。 足下に注意を向けながら。 ティアを探す。 ティアがうちを出て行く先の心当たりなど、そう多くはない。 まして神姫の身であれば、そう遠くへ行ってはいないはずだ。 俺とティアがゲームセンターに次いで多く行った場所。 あの大きな公園だ。 俺は公園へと向かっていた。 この雨だというのに、傘も差していないから、全身ずぶぬれだった。 足が地面を着くたびに、がぽがぽと水が貯まった靴が音を立てる。 それでも、そんなことはかまっていられなかった。 雨の公園には人っ子一人いなかった。 遊歩道を取り巻く木々の緑も、今日ばかりは色褪せて見える。 動くものとてない静寂の中、静かな雨音だけが広大な空間を支配していた。 「……ティア!」 その静謐を破り、俺は何度も呼びかける。 遊歩道を何度もまわる。 しかし、ティアの姿を見つけることは出来ない。 ベンチの前で、俺は立ち止まった。 散歩に来て、ティアを走らせているときに、俺が座っている、いつものベンチ。 ここにもティアの姿はない。 晴れた日の情景が心に浮かんでくる。 ティアは朝の澄んだ空気の中を駆け抜ける。 ぐるりと遊歩道を周回してくると、トリックを決めて、ベンチの上に着地する。 そして、俺を見上げる。 嬉しそうに、少し恥ずかしそうに、笑うのだ。 「……なんでだっ!!」 俺は地面に膝を着き、ベンチの上にうなだれた。 なんでだ。 なんで「さようなら」なんだ。 なんで俺の前からいなくなるんだ。 なんで、なんで、なんでなんでなんでなんで!!! 「……ティア……」 神姫の名を呟く。 迷惑だなんて。 お前が側にいてくれれば、そんなものは気にするほどのことでもないのに。 お前以外に、俺が自分のパートナーにしたい神姫なんていないのに。 他のどんな神姫も、お前の代わりになどならないんだ。 やっと出会えた俺の神姫なんだ。 だから。 俺にどんな迷惑かけてもいいから。 側にいてくれ、ティア……。 ◆ 久住菜々子はゲームセンターの壁によりかかり、見るともなしに、バトルロンドの観戦をしていた。 腕を組み、やぶ睨みで、大型ディスプレイに鋭い視線を投げつけている。 いつものような親しみやすさとはかけ離れた緊張感が全身から漲っている。 宣戦布告から一日。 菜々子を待っていたのは「無視」という仕打ちだった。 エトランゼはティアを擁護すると知り、神姫プレイヤーは皆敵に回った。 しかし、面と向かって文句は言ってこない。いや、言えないのだろう。 なにしろ三強を三分かからずに倒してのけたのだから。 実力でかなわない相手に対し、示した態度は、徹底した無視だった。 まるでそこに存在しないかのように。 挨拶しても、話しかけても、振り向きさえしない。 常連の誰に話しかけても、そんな態度だった。 もちろん対戦は誰も乱入してこないし、こっちが乱入したら、一瞬でサレンダーされた。 すでに常連の間では、エトランゼに対してそういう態度をとることで話が通っているのかも知れない。 これで菜々子がゲーセンを出ていけばよかったのだろうが、彼女はかえって意地になった。 壁に張り付き、無言のプレッシャーを与え続けている。 これでは気になって仕方がない。 しかし、今日は週末で、ランキングバトルの開催日だ。常連達は帰るわけにも行かず、菜々子からの妙なプレッシャーに耐え続けなければならなかった。 「菜々子ちゃん……」 「ああ、大城くん……」 声をかけてくるのは大城だけだった。 大城は心配そうだ。 見かけによらず、人が良いのだろう。 「いいの? ランバト、始まるわよ」 「うん、まあ……でもよ、菜々子ちゃんも……ここにいないほうがいいんじゃねぇか? だったらさ……」 「だめ。遠野くんとティアを待っているから。この店からは動けない」 「でもよぅ……」 無視されている菜々子を気遣って声をかけてきてくれていることはわかっているし、ありがたい。 逆に言えば、大城以外の誰も、菜々子の味方はいないのだ。 だが、彼とてずっと菜々子と話していれば立場が悪くなる。 大城と虎実はランバトに参戦している。 常連達との関係を悪くしたくはないだろう。 「……ひとりくらいは」 「え?」 「他に一人くらいは、わたしに賛成してくれる人、いると思ったんだけどな……」 自嘲気味に笑う。 つい本音が出てしまった。 本当は、菜々子は心細かった。 大見栄切ってみたものの、味方をするべき本人達はいまや嘲笑の的であり、ゲームセンターにもやってこない。 孤立無援の戦いは始まったばかりだったが、こうあからさまに無視されると、菜々子の心の方が折れそうだった。 自分達こそ正しいはずなのに、どうしてこんなにもつらいのだろう。 菜々子は下唇を噛んだ。 一瞬、沈黙が降りた。 ゲームセンターの喧噪が耳を震わせる。 と、近くで、電子音が鳴った。 携帯電話だ。 目の前の大城が、ポケットから携帯電話を取り出す。 シンプルな機種だが、ストラップにアクセサリーがジャラジャラとついている。 「遠野からだ……もしもし、大城だけど」 菜々子は一瞬、息を飲んだ。 「……おい、大丈夫か? あ、いや、声が……ああ、いいぜ。気にすんな」 今度は大城が息を飲んだ。 「……ティアがいなくなった、だ!?」 その場にいた二人と、二人の神姫が同時に息を飲んだ。 「……で、心当たりは……ああ、うん、駅? そうか……ああ、わかった。わかったから、こっちはまかせろ。 気にすんな。お前はそっちの心当たりを探せよ。 わかった、連絡する。じゃあな」 携帯電話を切ると、厳しい顔で菜々子を見た。 「ティアがいなくなった。遠野が必死で探してる」 「そんな……」 「あいつ、聞いたこともないような……泣きそうな声で……くそっ!!」 大城は店のスタッフのところに行くと、手短にランバトの参加キャンセルを伝えて、そのまま店の出口へと急ぐ。 「待って、大城くん! わたしも行く!」 菜々子は反射的に答えていた。 が、大城は振り向いて、 「菜々子ちゃんは待っていてくれ。 もしティアがここに来て、井山と会ったりしたら、それこそ大変なことになる。だから……」 菜々子を押し止めた。 そう言われたら、菜々子は頷くしかなかった。 大城は雨の中、傘を差して駆け出していく。 菜々子は身体を抱くように腕組みをすると、再びゲームセンターの壁にもたれかかった。 「ティア……なにやってんの……」 いらだった口調で、ミスティが呟いた。 神姫がマスターの元を飛び出してどうするというのだ。 この雨の中、たった一人でどこへ行くというのだ。 神姫をなくしたマスターがどれほど心配するものなのか、わかっているのかしら、ティアは! ミスティが親指の爪を噛み、いらだちを増している。 菜々子はさっきからうつむいたままだった。 だが。 ……震えてる? 体重を預けている菜々子の肩が細かく震えている。 そして、かすかな声。 「だめよ、ティア……いなくなるなんて……」 「ナナコ……?」 菜々子は思い出す。 自らの神姫をロストした日のことを。 身も心も引き裂かれたあの日。 菜々子の瞳からは涙さえ枯れ果てた、あの時。 「ぜったいに、だめよ……」 あの時の気持ちは「心が引き裂かれた」なんて生やさしいものじゃない。 恐怖だ。 自分のせいで、神姫を帰らぬものにしてしまった、底知れない絶望だ。 あんな思いを、遠野にさせてはだめだ。 あんな思いを、自分に近しい人にしてほしくはない。 だから菜々子は痛切に願う。 ティア、無事でいて、戻ってきて、と。 菜々子が深い想いに沈んでいるそのとき、彼女の前に影が差した。 小柄な、四つの影。 「あなたたち……?」 ミスティの声に、菜々子はゆっくりと顔を上げた。 目に入ったのは、四人の女の子の姿だった。 菜々子より少し年下だろうか。思い詰めたような表情で、菜々子を見つめている。 菜々子の視線を感じてか、四人とも緊張に肩をすくめた。 「……なに?」 ごめんね、優しい声をかけてあげられなくて。 視線も不躾で、疑わしくて。 あなたたちも……ひどいことを言いに来たの? よく見れば、彼女たちは見かけたことがあった。 いつも四人でバトルロンドをプレイしている女の子のグループだ。 このゲーセンの常連で、和気藹々と仲間内でプレイしているのをよく見かけている。 いずれもライトアーマーの武装神姫のマスターだった。今も、自分の肩にそれぞれの神姫を座らせている。 一人の少女が、思い切ったように菜々子を見つめた。 セミロングの髪に、眼鏡をかけた、まじめそうな女の子。彼女がリーダー格なのだろう。 眼鏡の少女は必死の表情で、口を開いた。 「わたしたち、エトランゼさんの代わりに、ティアを捜してきますっ!」 「え……?」 「わたしたち、エトランゼさんに賛成です。味方です!」 菜々子は思わず言葉を失い、少女達を見た。 少女達は口々に話しはじめる。 「わたしたち、いままでのこと、全部見てました」 「雑誌のことも、ティアのマスターが怒ってるところも、昨日のエトランゼさんのバトルも……」 「それで、みんなで話し合ったんです。わたしたち、エトランゼさんのファンで、憧れてるんです」 「だから、一人で頑張ってるエトランゼさんを応援しようって……」 「ちょ、ちょっと待って?」 菜々子は驚いて、話を遮った。 「わ、わたしのファンだからって、わたしの味方することはないのよ? だって、いまのわたしは……」 「ちがうんです、それだけじゃないんです」 今度はリーダーの眼鏡の少女が話を遮った。 「わたしたち、ティアのマスターに、親切にしてもらったことがあるんです」 「わたしたちは、この四人でばかりバトルしてて、他の人達とバトルあんまりしないんですけど」 「対戦台が空いていなくて困っているとき……ティアのマスターに譲ってもらったんです」 「一人プレイで対戦待ちしてたのに、途中で中断して、『ここどうぞ』って……」 「それも、一回だけじゃないんです。一人でプレイしてるときは、必ず譲ってくれて……」 「でも、わたしたちがお礼を言うと『きにしないで』って言ってくれて、まるで当たり前のことをしてるって感じなんです」 すると、少女達の肩にいた神姫の一人、ポモック・タイプが無邪気な声を上げた。 「ティア、笑ってくれたよ!」 すると、他の少女達の神姫も、顔を見合わせて頷いた。 「うん、笑ってたね」 「ティアも優しく笑ってくれました」 「なにも話さなかったけど、『いいよ』って言ってくれてるみたいだった」 菜々子は何も言えず、四人の少女を見つめていた。 「それで……わたしたち、話し合ったんです。ひどいことされてる神姫が、あんな風には笑えないんじゃないか……」 「ティアのマスターは、いつも紳士的な態度でした。彼こそが、武装紳士というのにふさわしいんじゃないですか?」 「だったら、雑誌見て笑ってる人達は? ティアのマスターをあんな風に怒らせる人達こそ、間違っているんじゃないの? って……」 「誰が本当に正しいのか……わたしたちはわかってたはずなんですけど……言い出す勇気もなくて……」 「でも、憧れのエトランゼさんが、ティアにつくって言ってくれたから」 「わたしたち、バトルも強くないし、足手まといかも知れませんけど!」 「でも、わたしたちにできることくらい……ティアを代わりに捜しに行くことくらい、手伝わせてください!」 四人の少女は、菜々子に頭を下げた。 「お願いします!」 菜々子は、ゆっくりと一歩踏み出す。 そして、四人の少女をかき抱いた。 「エ、エトランゼさん……?」 「……お願いするのは、わたしのほう」 足手まといだなんて。 今の菜々子には、一騎当千の仲間を得た気持ちだ。 心が痛いほど嬉しくて、泣きそうだった。 でも、泣いてはだめだ。 今は、泣くよりも先に、やらなくてはいけないことがある。 「ティアを、捜して。遠野くんを助けて」 四人は、一瞬腕に力を込め、抱き返してくれた。 「まかせてください!」 菜々子は、リーダーらしき眼鏡の少女と携帯番号を交換する。 名前を八重樫美緒、という。ウェルクストラ・タイプのオーナーだった。 見つけたら美緒を通して連絡をもらえるように言うと、四人は雨の街に飛び出していった。 ■ 高いところから見下ろす道路は、まるで車が流れる川のようだ、と思った。 人が乗れるほどの大きな金属の固まりが、何台も何台も流れては過ぎていく。 ここから落ちれば、きっと車にはじかれて、わたしの身体は粉々に砕け散ってしまうだろう。 でも、わたしは、歩道橋の柵の間から下を見下ろしたまま、動けずにいた。 自分から身を投げる意気地もないのだった。 もうどうしようもない。 何一つできない自分に嫌気が差す。 だけど、もうすぐバッテリーが切れる。 そうしたら、わたしは姿勢を保持できなくなり、ここから落下するだろう。 わたしの意識がなくなった直後に。 わたしはそれを待っている。 その間に、わたしは思いを巡らせた。 わたしがいなくなったら、マスターは新しい神姫をお迎えするだろうか。 きっと、するだろう。 今度は、わたしみたいな面倒くさくて出来の悪い汚れた神姫ではなく、オフィシャルの新品の純粋な武装神姫を。 その子は間違いなく幸せになれる。 だって、マスターの祝福を一心に受け、成長することが出来るのだから。 マスターだって、きっと幸せになれる。 誰の目もかまうことなく、自分の神姫を連れ、堂々とバトルに挑める。 公式戦にだって参戦できる。 きっといい成績が残せるだろう。 ゲームセンターの人達にも認められ、きっと久住さんや大城さんとも、もっと仲良くやっていけるだろう。 ミスティさんは、新しい神姫を笑顔で迎えてくれるに違いない。 虎実さんだって、わたしのように避けることなんてしないはずだ。きっといいライバルになれるはず。 想像の中にいるわたしの大切な人達は、みんな明るい未来に向かって歩いている。 ああ、そうだ。 わたしがいなければ、大切な人達はみんな幸せになれる。 わたしなんか、最初からいなければよかったんだ。 『わたしなんか』って言ったら、マスターに怒られるけれど。 でも、もうマスターが怒ったりすることもありません。 わたしはもう消えますから。 だからマスター。 どうかどうか、幸せに……。 視界がぼんやりと霞んでいるのは、涙のせいなのか、雨のせいなのか、それとも、もう焦点を合わせられなくなったのか。 膝の力が抜ける。 ああ。 全身を浮遊感に抱かれて。 わたしの意識は暗転した。 次へ> トップページに戻る
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軽量級クラス用武装コンセプト:“EL DoLL”アドバンスド・ターミナル:“マビノギオン” 第二世代型補助アーマー:“シルフィード” ハイブリッド・アーマードレス:“レーラズ” 多重可変型戦術支援システム:“[魔女の箒(ブルーム)]アルファル” 専用統括制御プログラム:“W.I.N.K.” データ誘導システム:“W.I.N.G.S. Ver.ALC” 軽量級クラス用武装コンセプト:“EL DoLL” 槇野晶が、自らの“妹”たる三姉妹の生き様を補助する為に己の全てを 注ぎ込んで作り上げた、軽量級ランク用武装群を総称するカテゴリー。 攻撃を堪え忍ぶと言うよりは、致命傷を避け一撃を加える戦術を採る。 【コンポーネント一覧】 Ver.:6.5535-ALC [[Arch vaLkyrja Concept]] 武装:elMGS_KS999 “魔剣”(ライナスト/エルテリア/コライセル) elVTA_AL777 多重可変型戦術支援システム“アルファル” (フィオナ/モリアン/アルサス) elAAA_AL555 アドバンスド・ターミナル“マビノギオン” exMWU_AL123 共通武装(フェンリル/ヨルムンガルド/ヘル) 装備:elHAD_AL333 ハイブリッド・アーマードレス“レーラズ” elSSA_AL111 第二世代型補助アーマー“シルフィード” 情報:elTAS_AL000 専用統括制御プログラム“W.I.N.K.” exTWS_AL123 データ圧縮システム“W.I.N.G.S. Ver.ALC” 色調:装着する神姫専用のパーソナルカラーに合わせてある。 解説:三姉妹の軽量級ランク用装備として特別に開発された、 特殊武装。正真正銘、“三姉妹”の為だけに存在する。 製造コンセプトは「戦乙女を越え、大いなる者へッ!」 大型化により、神姫バトルにて重要な“速さ”を殺ぐ結果を招いていた “Valkyrja”の長所は生かしつつ、小型・軽量化を図っている。更に、 『追加武装の必要を無くす』為、“偏執狂”的な多機能化が施された。 武装と“レーラズ”は、サイドボードに合わせて設計した専用ケースに 纏められ、神姫は“シルフィード”等と好みの服飾を身につけるだけ。 三機が製作されロールアウトしたが、神浦琥珀嬢が作成した“魔剣”と 三種存在する“マビノギオン”以外は、色調や装飾等の違いしかない。 (なお“魔剣”及び共通武装に関する詳細についてはこちらを参照の事) コンセプト名は“Electro Lolita Dress of Light Lord”の略であり、 “Electro Lolita”の一つの頂点として、コスト度外視で生産された。 それ故に量産化の予定は一切無く、実行するには再設計が必要となる。 勿論その場合、今の性能を維持する事は極めて困難になると思われる。 またその運用は、専用のラーニングプログラムを考慮しても神姫本人に スキルが求められる。一方のオーナー側も、システムのメンテナンスは “職人”的直感が要求され、晶以外に個人での修理や調整は出来ない。 (但し高度な技術者で有れば、精密検査を経て各種修理等は可能である) アドバンスド・ターミナル:“マビノギオン” 槇野晶が、軽量級クラス用に開発した次世代武装コンセプトの一部分。 基本システムで補えない装着者の要望や戦闘スタイルに対応する為に、 追加武装等に変形する拡張武装ターミナルである。ガントレットとして 両腕に装着するが、利き腕側は電磁浮遊式の急加速ブースターである。 従って各機の特色は、MMS用ジョイントを備えた反対の腕に現れる。 【ガードタイプ:武装データ】 装備:hmAFS_AL000 複合多層型パワーシールド“バルドル”×1 ロッテのそれは“ガード”タイプと呼ばれ、腕上部に特殊なユニットが 埋め込まれている。これはポップアップする事で、莫大なエネルギーに よって、何層にも重ねた斥力場を発生させる。他の機能は存在しない。 しかしシンプルな分、構造強度や信頼性は他の2タイプよりも数段上。 また、外部からの電力供給により持続時間や斥力場の出力を伸ばす事が 可能な他、シールドの強靱性を活かした“体当たり”にも用いられる。 【アサルトタイプ:武装データ】 武装:hmSSB_AL222 特殊湾曲式スリーブ・ダガー“フィン”×2 hmHCS_AL444 電磁加熱機構付ロングスピア“ピーク”×1 hmLWE_AL666 十三節分割構造型エストック“テイル”×1 装備:hmEFS_AL888 電磁浮遊式急加速ブースター“フレイ”×4 アルマのそれは“アサルト”タイプと呼称する。これに搭載する武装は ブースターを備えた基部ガントレットへと、折り畳んで接続している。 中でもスリーブ・ダガーは、晶独自の特殊製法によって“しなる”為、 外周部に巻き付けて固定するという、特異な構造のソードブレイカー。 なお、ブースター以外の全武装は合体させて“スキーズブラズニル”と 呼称する大槍になる。また、これらは“エルテリア”の影響を受ける。 即ち、“魔剣”による遠隔操作(及びそれに付随する硬度強化)が可能。 【ウィザードタイプ:武装データ】 武器:hmSCU_AL666 小型魔術執行シークエンス“モイライ”×1 クララのそれは“ウィザード”タイプとされる。名前の通り、クララの 攻撃法である“魔術”の執行を『単独で補佐する』為の複合ユニット。 孔雀の翼風に展開するストレージパネル、ガントレットに埋め込まれた 情報処理補佐用コンパイラ、手袋の爪や掌に仕込んだ執行用アンテナ、 肘部分に搭載したリボルバー式緊急充電システム、の四つで成り立つ。 展開速度は前より向上しているが、出力と“魔術”の種類で若干劣る。 第二世代型補助アーマー:“シルフィード” 三姉妹用に仕立てた、次世代型のアーマードレス。基礎中の基礎として 晶所持の神姫には欠かさず着せる物であったが、以前はベスト風であり 単体で着るには若干野暮ったい印象があった。その通気性及び保温性は 折り紙付きだったが、デザインと機能面どちらでも問題を抱えていた。 そこで第二世代型では、“Electro Lolita”で培ったデザインセンスを 活かし、活動的な半袖・ミニスカートのドレスという意匠に変更した。 更に撥水加工を施し、共通装備として開発した急速移動用ブースターの “前進・スライド・後退”、三種類全ての同時搭載までも成し遂げた。 反面、防御力や衝撃吸収性は以前のバージョンよりも若干落ちている。 デザイン段階で胸が若干協調されており、スタイルがよく見えるという 副作用が存在する。構成はフリルのミニスカート及び薄手のスパッツ、 半袖ブラウスにジャケット、オーバーニーソックスとガーターベルト、 強化コードタイとアンダーウェア、胸部バッテリーに補助ブースター。 更に専用のカチューシャ(天使の輪・悪魔の角・犬種の耳の装飾入り)と 謎めいた意匠の十字架型ロザリオが揃って、初めてワンセットとなる。 色はアルマ:黒・銀・赤/ロッテ:白・金・青/クララ:灰・銅・翠。 ハイブリッド・アーマードレス:“レーラズ” 三姉妹用に仕立てた、次世代型アーマードレスの更なるパーツにして、 “真のドレス”である。“シルフィード”はあくまでも補助用な為に、 その上に着る“防御を高める服飾”はどうしても必須だったのである。 “Electro Lolita”の量産タイプ・“フィオラ”を製作する際に培った 様々なノウハウを活かし、可憐な外見と着やすさを重視している。更に 撥水性・通気性・保温性は勿論、耐刃・耐衝撃・耐弾性能も一応考慮。 その複雑怪奇な多機能性故、“シルフィード”との重ね着を考慮しても 純粋な防御力は並みの神姫バトル用装甲に及ぶか否か、というレベル。 しかし、回避機動を重視した当コンセプトでは問題ないとされている。 なお、後述する“アルファル”とは完全連動をする関係にあり、簡素な 可変機構や特殊ジョイントを内蔵する。更に、着用神姫の“タイプ”を 意識した装飾や体型調整を施す為、完全オーダーメイドとなっている。 色はアルマ:赤・黒・銀/ロッテ:青・白・金/クララ:翠・灰・銅。 多重可変型戦術支援システム:“[魔女の箒(ブルーム)]アルファル” 神浦琥珀嬢に依頼して作り出した“魔剣”が戦術の鍵ならば、こちらの “アルファル”は所謂“鍵穴”でも形容すべき、もう一つの要である。 これを投入する為に他の部分を敢えて軽装にした位には、重要な装備。 ぷちマスィーンズを参考にして槇野晶が、己の技術力全てを注ぎ込んで 三機のみ開発した、“EL DoLL”専用の特殊戦術支援システムである。 マスター登録された神姫との“接合”通信により、一心同体とも思える 連携を行う。会話機能は持たないが、YES/NOでの受け答えは一応可能。 なお、その開発に際してはゼンテックスマーズ社の所有していた技術を 余す事なく投入している。晶が“アルファル”を設計・製作出来たのは その技術的資料が有ればこそだが、案の定その入手経路は不明である。 【武装データ】 Ver.:4.268 [[コスト排除タイプ]] 武装:hmAGB_AL368 アクセラレート・ガンブレード“リディル”×2 hmPLD_AL497 レーザー・ダガー“フォトン・レイヤード”×2 hmTBG_AL152 三連ビーム・ガトリングポッド“セイバー”×2 hmARD_AL765 伸縮式ブレード“デストロイ・マチェット”×2 hmHHH_AL620 ハードヒートホーン“メタル・ストライド”×1 ※この他、可変形態に応じて様々な武装が神姫に提供される 装備:hmFAS_AL000 位相転換型装甲連動式フィールドアーマー×36 hmFSU_AL241 超小型フレキシブル・スラスターユニット×18 hmWBA_NO666 大型光学偏向式防御システム“ミラージュ”×2 hmGXD_AL999 電磁圧壊フィールド“スプライト・ボルト”×2 hmSSS_AL046 真空破断式防御外殻“ソニック・ブランド”×1 ※この他、可変形態に応じて様々な装備が神姫に提供される 色調:モノトーンとクロームが基本だが、使用者に応じて変色する。 アルマ 赤・黒・銀/ロッテ 青・白・金/クララ 翠・灰・銅。 解説:“ビルト・パンツァー”の試作品をヒントに開発した、 “十五の可変機構”を備える“偏執狂”多重複合装甲。 製造コンセプトは「単騎で、着用神姫を補佐せよッ!」 解説の欄にも書かれている通り、この“アルファル”は十五形態に及ぶ 複雑怪奇な可変・合体パターンを備えている。この為、基幹部品自体の 物理的な強度は、衝撃・荷重や空力特性に耐えうる最低限度しかない。 更に全身の装甲は、補助バッテリーを外殻とのサンドイッチ構造にした “Heiliges Kleid”由来の素材だが、薄さの為に防御性能は平均以下。 防御力は、位相転換型装甲連動式フィールドアーマーで補完している。 可変機構は、ジェネレータ内蔵のドラム型メインフレームを採用した。 従って全てのパーツが、精緻極まりないフレーム類で接続されている。 電磁結合システムとMMS汎用ジョイントだけでは不十分だったのだ。 その代わり、全身に隈無くエネルギーを供給する機能を獲得している。 それら設計段階からの無茶が祟った為か、最早“アルファル”その物に 部品を追加する事は(設計に組み込んだ“魔剣”を除き)不可能である。 また単独で用いる携行武装も、出力の大きな代物は採用出来なかった。 従って文字通り『単騎で、着用神姫を補佐』する事が求められており、 その為に変形機構をフル活用する事こそが、着用神姫には必須となる。 搭載された可変パターンと、その機能概要は以下の通りとなっている。 【三姉妹共用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 クルーザー :独立稼動用の飛行形態。円盤形をしており、文字通り UFOの様な機動性能で、ガトリングを用いて攻撃。 バトルフィールドに出現する時の基本形態でもある。 スライダー :独立稼動用のホバー形態。涙滴型のボードに、手足を 生やした様な形。搭載された武装で高速戦闘を行う。 水上を、ホバー性能により滑走する事も可能である。 ジェスター :独立稼動用の人型形態。“スプライト・ボルト”は、 この形態でのみ使用可能。神姫との連係攻撃を行う。 マスターの神姫に応じて、各機“クセ”が存在する。 アーマード :神姫の躯を覆う強化装甲形態。“魔剣”と共通武器の 使用を意識した、防御重視形態。大きな翼を備える。 “Valkyrja”と“SSS”にシルエットが酷似する。 マーメイド :神姫の躯を覆う潜水補助具形態。水中戦に対応する為 存在する形態だが、単体での攻撃力は皆無に等しい。 その代わり、人魚の様な姿に違わず潜水能力が高い。 ギガノイド :神姫の躯を覆うパワーローダー形態。三機を合体して 形成出来る姿。双振りのレーザー・カタールを始め、 円盾・レーザーガンランスと神姫の共通武装で戦う。 【アルマ専用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 シリンダー :神姫が使用する、ギガビームガトリング形態である。 莫大な速射性能を誇り、面制圧に強い力を発揮する。 “セイバー”の、装甲貫通力の弱さも克服している。 フライヤー :神姫が使用する飛行補助システム。水平翼を備えた、 大型バックパック。小回りと三次元機動性に優れる。 また、神姫の手足を一切束縛しない自由性も特徴的。 アクセプト :ブルームファミリアー“シームルグ”と呼称される。 “舞剣”での戦闘を補助する、光の翼を持つ鋼の鳥。 剣で作り上げた“神鳥エルディナス”とも共に戦う。 【ロッテ専用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 スナイパー :神姫が使用する、ロングレンジライフル形態である。 姿勢固定用の二脚を備えており、狙撃を得意とする。 有効射程千smを誇る物の、特性は極めてピーキー。 サーファー :神姫が使用する飛行補助システム。サーフボード型。 盾として使用出来る他、巡航速度は全形態中で最速。 形状故、水上を低空で高速疾走する事も可能とする。 アクセプト :ブルームキャリバー“カラドボルグ”と呼称される。 “閃牙”を内蔵出来る、光学砲搭載型巨大ブレード。 電力をレーザーに変換出来る他、加圧機能も備える。 【クララ専用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 スレイヤー :神姫が使用する、実体・光学併用型巨大デスサイズ。 各部のスラスターを駆使して、取り回しを補佐する。 身体能力は不要だが、推進器を制御する頭脳が必要。 クリーナー :神姫が使用する飛行補助システム。その姿は“箒”。 どこか“タイヤのないバイク風の乗物”にも見える。 実体槍になる他、直進性能とホバリング性能が優秀。 アクセプト :ブルームハンガー“メギンギョルド”と呼称される。 “魔奏”の余波を軽減可能な、緩衝用ガントレット。 機体装甲内には、当形態専用の補助刻印が存在する。 この様に変形可能パターン数は多いが、後述する“W.I.N.K.”の助けを 借りてもなお、神姫一人が扱える形態は九つがやっとである。これは、 超高コストになる事を予期していた晶が、一種類の機体設計で三姉妹の 戦闘パターン全てを補助する為、わざと計画していた“仕様”である。 ただこれは、チームバトルの際に互いの武装を貸せる利点ともなった。 以降は、搭載された武装や装備を解説していく。まず、主力兵装である ガンブレード“リディル”は、小型の電磁ジェネレータを搭載している 複合武装である。ライフル機能としてはビームとハンドガン用小型弾の 撃ち分けが可能である。その伸縮式バレルは、縁がエッジとなっており スタンブレードとしての運用も想定されている。更に二段可変機能付の クローアームやウィンチ、止めにブースターをも六つ組み込んである。 クローアームは、ヒートクローと拡張アームの切り替えまで行う逸品。 但し補助武器としての側面が強い為に、個々の機能は中途半端である。 ライフル時の実体弾カートリッジが“ハンドガン用”なのもその為で、 あくまでも“リディル”は、神姫を補佐する為に使う補助武器なのだ。 但し拡張アームの機能は割と優秀で、神姫が使用する武器を運用可能。 掌にエネルギー出力用丸形アダプターが存在し、武器としても使える。 レーザー・ダガー“フォトン・レイヤード”では、若干だがこの傾向が 改善されており、基本的には軍用ナイフ風の光刃を形成する単機能品。 但し、変形させて露出した専用丸形アダプターからエネルギーの供給を 行う事で、刃の長さを“日本刀”のレベルまで延ばす事が可能である。 更に三本を集めて合体させる事で、大型レーザー・カタールにもなる。 ビーム・ガトリング“セイバー”は、神姫素体の腕へとマウント可能。 その他、一部形態においてはビーム加速器の機能を発揮する事もある。 この武器は“アルファル”本体同様、中枢となっているドラム式の可変 フレームにアーム類で直結しており、エネルギーもそこから受け取る。 速射性能は高いが一発ごとの集束性能は低く、装甲貫通力が若干弱い。 大型ブレード“デストロイ・マチェット”は、一部形態で使用している 鉈状のパーツ(主翼やシールド)を分離、白兵武装に流用した物である。 単体では取り立てて特殊な力はないが、“リディル”の拡張アームにて ホールドした場合、エネルギー供給を受けて加熱する事が可能である。 更に双振りある剣を峰同士で繋げれば、アウトレイジ風の巨剣になる。 ハードヒートホーン“メタル・ストライド”とは、アンテナユニットの 外装を熱溶断式大型サバイバルナイフにした、一種の隠し武器である。 相手神姫やぷちマスィーンズを追尾するレーダー端子は必要だったが、 剥き身では“脆弱性”が払拭できなかった為、やむを得ず武器化した。 そんな経緯で搭載された武器であるが、熱効率と切断力はかなり高い。 但し搭載位置の関係でリーチが極めて短い為に、使いにくいのが欠点。 大型光学偏向式防御システム“ミラージュ”は、円柱の形をした比較的 大型のユニットであり、弱い磁場を用いて光学系ビームを偏向させる。 これにより射撃兵器を防御するのだが、実はその出力には限界がある。 それ以上の力を一遍に受けた場合、熱線をそのまま被弾する事になる。 位相転換型装甲連動式フィールドアーマーは、超小型ビームシールドと 装甲板の電離位相を利用した、物理的な装甲硬度強化システムである。 こちらも同様に、一秒ごとに減殺処理出来る圧力の限界を持っている。 即ち“アルファル”は、瞬間的に与えられる強い圧力には非常に脆弱。 それ故必然的に“避ける”戦術を求められるのが、最大の弱点となる。 なお使用者に応じ機体の配色が変わるのは、この機構の副作用である。 電磁圧壊フィールド“スプライト・ボルト”は、“ミラージュ”前部を 保護する装甲シャッターに組み込まれた電圧集積砲撃システムである。 “ミラージュ”の発生させる電磁力を圧縮・増幅し、前方に対し解放。 放散されたエネルギーは、巨大な雷の様に至近の敵を破砕してしまう為 白兵武器としても、ミサイル等への積極防御装置としても使用出来る。 真空破断式防御外殻“ソニック・ブランド”は、大気の流動性を用いて 敵の実体弾攻撃を反らす、積極防御装置。この機構をフルに活用して、 敵に接触した場合、カマイタチの様に装甲を切断する事も可能である。 しかしこれらを以てしても、避ける戦術が重要なのは変わっていない。 専用統括制御プログラム:“W.I.N.K.” “Weapon Integrated to Nerves frameworK(中枢構造への武装統合)”。 神姫をコアシステムとして、装備した全武装を有機的に活用する為の、 戦闘用拡張プログラム。但し、開発者である槇野晶の性格もあってか、 神姫の性格や戦闘パターンをダイレクトに変更する“力”は持たない。 例えるならばこれは“軍事教練用のデータDVD”であり、神姫自身が アクセス・解読して、自らを鍛えていく事で自然と身に付いていく物。 その為プログラムと言うよりは、リーダ付きデータライブラリに近い。 その上武装が損傷した時は、神器に痛みが伴うという副作用を備える。 非合理極まりない代物だが、晶は機械的に神姫達の“心”を書き換える 行為を嫌っている為に、彼女の神姫用プログラムは全てこの様な構造。 なお、作成に際しては日暮夏彦のプログラミング指導が役立っている。 データ誘導システム:“W.I.N.G.S. Ver.ALC” “Valkyrja”に搭載されていた“W.I.N.G.S.”の、最適化バージョン。 “EL DoLL”への導入に際して、拡張性と機能を極限まで絞り込んた。 その為、必要となるユニットは両耳のピアスだけとコンパクトな設計。 その機能とは“レーラズ”を展開・装備する事。ただそれだけである。 戦闘開始前、その日の気分に応じた神姫本人が望む衣装で出場させる。 たったそれだけの為に搭載されており、戦略上に於いて無意味である。 しかも“レーラズ”自体は、専用ケースに収める方式でサイドボードへ “アルファル”と共に入れる必要がある。従って現状、このシステムは 服の交換を武器転送以上の精度で執行する為の、補助装置に過ぎない。 但し副作用で、エントリー時に“レーラズ”を着る必要は無くなった。 しかしこれこそが、晶がマイスター(職人)たる所以である。戦闘以外に 衣服等の細かい拘りを如何なる時も追求する、その姿勢の現れなのだ。 なお“W.I.N.G.S.”自体の理論や仕様・経緯等は、こちらを参照の事。 メインメニューへ戻る
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デザイナー 声優 神姫解説 性格セリフ一覧 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 覚えるパッシブスキル一覧 神姫固有武器補正 神姫考察 総評・運用 神姫攻略法 お迎え方 アップデート履歴 コメント デザイナー 名前(作品、等) 声優 名前(作品:キャラ、他) 神姫解説 解説 名称: メーカー 素体: 武装: 型番: フィギュア発売: 主な武装: 神姫の解説・説明 性格 セリフ一覧 + 公式HPの台詞 ログイン時 通常(朝) 通常(昼) 通常(夕) 通常(夜) 通常(深夜) 年始 バレンタイン ホワイトデー エイプリルフール ゴールデンウィーク 夏季 水着キャンペーン 七夕 ハロウィン 冬季 クリスマス 神姫の発売日 オーナーの誕生日 神姫ハウス 命名時 呼び方変更 (→決定後) LvUP後 MVP獲得 3連勝後 3連敗後 専用スキル解放時 親密度Lv5後 親密度Lv10後 親密度Lv20後 親密度Lv30後 親密度Lv40後 親密度Lv50後 親密度Lv60後 親密度Lv70後 親密度Lv80後 親密度Lv90後 親密度Lv100後 親愛度Lv1~19限定 親愛度Lv20~39限定 親愛度Lv40~59限定 親愛度Lv60~79限定 親愛度Lv80以上 頭タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 胸タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 尻タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 通常会話 クリスマス限定 年始限定 武装カスタム 戦闘力UP・武器LvUP時 戦闘力Down時 素体カスタム 親密度LvUP時 限界突破時 出撃時 キャラ入れ替え バトル開始時 → バトル中 撃破時 コンテナ入手時 被弾時 オーバーヒート時 スタン時 デバフ被弾時 スキル発動時 (能力強化系) (HP回復系) (デバフ系) (攻撃スキル) (チャーミークリアボイス) 被撃破時 次出撃時 サイドモニター 応援時 交代時 被撃破時 バトル終了時 1位 → 2位 → 3位 → 4位 → 親密度LvUP時 マスターレベルUP時 コンテナ獲得後1位 コンテナ獲得後2位以下 レイド成功時 レイド失敗時 カラフルコンダクト 神姫ショップお迎え時 ゲームオーバー時 その他 + リセット開始 神姫の想い、大切に。 + 選択した神姫をリセットします。よろしいですか? リセット開始 はい を押す はい を押す(二回目) リセット完了 リセット取消 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 マスター・○・○ 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 親密度Lv1 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - 親密度Lv100 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - マスクステータス 1/s ジェム回収展開速度 ブースト回復量 ダッシュ速度 ダッシュ時ブースト消費量 ジャンプ時ブースト消費量 対空時ブースト消費量 防御時ブースト消費量 N 1500 150 960 85 70 20 90 R 1050 105 90 40 110 SR 1140 125 110 60 130 UR 1230 145 130 80 150 覚えるパッシブスキル一覧 スキル名【○○専用】説明 スキル名説明 早熟型のパターンで覚えるパッシブスキル スキル名説明 通常型のパターンで覚えるパッシブスキル スキル名説明 晩成型のパターンで覚えるパッシブスキル スキル名説明 神姫固有武器補正 ※レアリティが上がる毎に得意武器は-5%、苦手武器は+5%される。数字はレア度Nのもの。 得意武器 +% 武器・武器 苦手武器 -% 武器・武器 神姫考察 攻撃力 防御力 機動力 回収力 総評・運用 神姫攻略法 お迎え方 年/月/日~から神姫ショップに登場 アップデート履歴 コメント 名前 コメント
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「……3Sが斬る、なし崩しに始まり」 「今回は某企画に便乗して、ブレザーバージョンでお送りします」 「さすがにこのような服装は、気恥ずかしいですねワン」 「こういう時に言うべき台詞は二つに一つ」 「ほう?」 「と言いますとワン?」 「『七五三みたい』か、『どこのふーぞく?』」 「……どちらに該当すると言いたいのでしょうか?」 「言わぬが花」 「テッコさん、あとでじっくり話し合いましょうかワン」 「ええ、私も同席させていただきます。 それはそれとしまして、ですね。 それでせっかくの学校シチュエーションです、なにか学校っぽい事をやってみましょう」 「それはよいお考えですワン」 「(ぱちぱち)」 「それで、学校らしい事といいますとワン? 恥ずかしながら私は、既に社会人であるマスターの元に迎えられたため、学校と言う環境にはとんと馴染みがありませんでしてワン」 「そこはそれ、現役学生マスターをもつ私たちにお任せあれ」 「(えっへん)」 「おおー、頼もしい限りですワン。それで、具体的にはワン?」 「学校らしい事……不良のいじめ?」 「ああ、そうですね。そしてその不良も、教師側から煙たがれて事あるごとに退学させようと目論まれているという悪意の連鎖など定番ですね」 「そこから学級崩壊」 「そのまえに、登校拒否も忘れてはいけません」 「……うっかり」 「いえあの、学校と言う環境はもう少し穏便な場所ではないかと思いますがワン……」 「むむ?」 「ですが、マスターが学校に行ってる間に、私が暇潰しで見る学園ドラマなどは、多かれ少なかれこのような筋のものばかりですが?」 「(うんうん)」 「つまりあなた方も、学校の実情にはそれほど詳しくないとワン」 「なんでバレたのですか!」 「びっくり」 「……いえ、まぁ、その件は置いておくとしましてワン…… そうですね、無難なところで授業のマネなどをやってみましょうかワン」 「無難ですね、無難すぎます。なにかこう、ぐっと来るものがないと取り残されますよ」 「若者には無茶が必要」 「そこは素直に頷いておいてください、話が進みませんからワン……」 「ち、仕方ありませんね」 「一つ貸し」 「恩を押し付けられましたワン?! 気を取り直して……そうですね、国語でもしてみてはいかがでしょうワン」 「国語、ですか?」 「ええ、以前『秋物に凝ってナマズの服』などという、ひどい慣用表現を使った方もいますことですしワン」 「ナニソレ犬丸? 『羹に懲りて膾を吹く』の積もり? ありえない。ひどすぎ。ひょっとしてギャグ?」 「……今私は、非常に理不尽な気持ちを味わっていますワン」 「まぁまぁ。それじゃあ一つテキトーに、研究発表チックに慣用句についてでも語って見ましょうか」 「(こっくり)」 「ではそういうことでワン」 「言いだしっぺと言うことで、まずは私からいきましょう。そうですね…… 『情けは人のためならず』について」 「「(ぱちぱち)」」 「この慣用表現は、『安易に情けをかけると、その人のためにならない』と言う意味…… と、勘違いされることが多いですね」 「(うんうん)」 「おおー、お見事ですワン。まさにそのとおりですワン」 「ポイントは、『自分に返って来る』ということ。この要素を加味すれば、答えはおのずと見えてきます」 「隙の無い論理展開ですワン」 「やる……!」 「すなわち! この慣用表現の真の意味は、『反撃を受けないために、止めは刺せる時に容赦なく刺せ、それこそが慈悲』だと!」 「我々武装神姫には、必要な心構えですねワン」 「(うんうん)」 「スナイパーである私にとっては、特に重要な事です」 「お見事ですサラ(仮)さん」 「お疲れ」 「さて、では次は誰が行きますか?」 「(挙手)」 「おお、テッコさんが積極的ですワン」 「これは期待できそうですね」 「……『船頭多くして船山に登る』……」 「ほほう、それで来ましたかワン」 「それで、その心は?」 「『皆で力を合わせれば、一見不可能な事だって実現できる!』(握り拳)」 「うんうん、よい言葉です」 「もとより我ら武装神姫、マスターとの二人三脚が大前提ですワン」 「協力、とても大事」 「まさか、この殺伐が持ち味のこのコーナーで、こんな感慨深い言葉を聞けるとは」 「やりますねテッコさん」 「(えっへん)……最後、犬丸」 「承りましたワン。見事取りを務めてご覧に入れましょうワン。 では、私は……『死中に活を求める』について語らせていただきますワン」 「期待していますよ」 「がんばれ」 「ありがとうございますワン。 それで『死中に活を求める』はですね……かつてとあるスポーツ選手が試合前にトンカツとシチューを食べるのが定番だったのですが、ある日時間がなかった時に、店主に頼んでカツをシチューに入れてもって来て貰ったのですワン。 それを見た店主は、煮込み料理と揚げ物を組み合わせる着想を得て、そこから大ヒット商品……いえ今では定番と言うべきカツカレーを生み出したという故事に基づく、窮地においても最後まで諦めない事でそこから逆にチャンスを得ることを言います」 「最後まで諦めない事、これもまた我々には重要な事ですね」 「昔の偉い人は言った……『諦めたら、そこで試合終了だよ』」 「ご清聴ありがとうございましたワン、お粗末さまでしたワン」 「お疲れ」 「なんだか今回の3Sは、きれいにまとまりましたね」 「たまにはこういうことがあってもよろしいかとワン」 「(うんうん)」 (和やかな笑い声が満ち、それが徐々にフェードアウトしていく) 「……えーと」 「……うーん」 「ええと……これ、ツッコんだら負けとか、そういうゲーム?」 「そう、なのかもしれませんねぇ、もしかしたら……?」 「『情けは人のためならず』は、『誰かに優しくした事は、巡り巡って自分に返ってくる』という意味だね。 『船頭多くして船山に登る』は、『皆があれこれ口出しして、事態がとんでもない方向に行ってしまう』こと。 『死中に活を求める』は意味としては合ってるけど、説明されてる成立エピソードは、普通にカツカレーの起源として有力視されてる説だね。もっともそれでは、シチューじゃなくて普通にカレーとカツの注文だけど」 「ツッコミいったー!」 「しかも詳細に!」 「え? なに? 何かまずかったかな?」 「いえ、その、まずいというわけでもないんですが……」 「朴念仁て、時としてものすごく強いわねぇ……」 「ええ……」 「?」 <戻る> <進む> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
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・・・。 「・・・・・・」 ぽかーん、と。進入口を前にして、マーチは突っ立っていた。 「えーっと。そういうことになっちゃった。気楽にやってみよ? マーチ」 ヤヨイは笑いを浮かべて、その後ろに座っている。自分のポケスタの中に一緒に仕舞っていた小さな箱を取り出して置く。 ごとん。 「ノーヴスと、バトルするんですか?」 「あ。やっぱり嫌かな?」 「いえ・・・。その、ちょっと楽しみです」 てへへっと笑いながらそう言って、マーチはぐっと手に力を込めて見せた。 「私、武装神姫です!」 対面の席に座るレオ。ノーヴスはのそのそと、ようやくポケスタから体は出した。 ふらりっと立ち上がると首をぷんぷんっ、と左右に振る。合わせて羽根飾りが揺れて、肩に引っかかった。 「マスター・・・ありがとうございます」 「?」 「彼女とは・・・。戦ってみたかったから・・・」 眠そうな目のまま、彼女は笑った。 「へぇ。珍しいね、ノーヴスがそう言うなんて」 「はい。良い風を、感じました」 そう言いながら。ポケスタの小物入れから、何やら紙に包まれた長い棒を取り出す。 「神姫としてではなく。『武装神姫』として・・・彼女がどんな風を吹かせるか・・・知りたいのです」 じっと。その言葉の意味を介しているのかは解らないが、レオはノーヴスを見据えていた。 「私も・・・えぇ。武装神姫、ですから」 「・・・うん、がんばって」 「行って。参ります」 ・・・。 高低差のある石畳と階段。そこは遺跡のようなステージだった。いわゆるジュビジーのノーマル武装に身を包んだマーチは、その両手で大きな木製ハンマーを携えて周囲を見回す。 キュベレーアフェクションには一個だけ箱状のOPT-γと呼ばれるパーツが付いているが、他は純正パーツそのまま。大きく広がった羽のようなユニットが作り出す、自分の大きな影を踏みながら、マーチは歩みを進めた。 がっしょ、がっしょ。と、一歩進むたびに大きな足音が鳴る。だが、それは明らかに・・・。 と、足を止めて。マーチは体を屈めた。通路の向こう側から、対戦相手となる神姫がゆっくり身を揺らせて近づいてきていた。 『STOP !』 コンピュータボイスにノーヴスも足を止めた。数個のパネルウィンドスが空中に表示されていく。 眠そうな目を、一度閉じる。その膝から下、そして胸と腕にはサイフォスが誇る装甲。しかしながら軽装モデルであり。他の部位・・・腰回りや袖には何も装備していない。左腕には小さな盾が装備されており、そこにサイフォスモデルのデフォルトソード『コルヌ』が差し込まれていた。 「マスター。アレ」 コンピュータがお約束の注意事項を表示したり、互いに違法パーツなどが無いかを検索している間。マーチはぽつっと呟く。 『うわ、カッコいい。さすがサイフォス。軽装もいいなぁ』 「えええ、そうじゃなくてー」 耳に直接入ってくるマスターの声。わくわくしている事を隠さないヤヨイに、マーチは困ったような声を上げる。 「ノーヴスの背中です」 見れば、その背中には、長い紙包みを背負っている。 「あれ、何だと思いますか?」 『うーん?』 「・・・」 『秘密兵器とか』 ・・・。 「やっぱり、そうですよね」 ヤヨイのそういう夢見がちな物を肯定してしまうマーチ。 『よしっ、マーチ。アレを使わせたら勝ちにしようよ!』 「あ・・・はいっ!」 彼女達なりの『ルール』だ。 だって、普通にやっても彼女は『勝てない』から。 『GET READY』 くるくるっとコンピュータグラフィックが回転して消えていくと、ぐっと姿勢を低くする。 そして、普通にやって『負けない』。けど、それは『負け』になってしまう『負けない』だから。 ノーヴスはコルヌの柄に手をやり、抜き放った。 『BATTLE !』 がしょん、という音を立てながら。マーチはキュベレーを前面に展開する。こっちから飛びこむ気は最初から無い。 だって、そんな事をしたら・・・。 「・・・。これより!」 澄んだ声が凛と響いた。 (ノーヴス?) 先までの、のんびりとした声ではない。 「此処にあるは戦士の魂。そのいずれにも・・・」 かっ、と。目を見開き、コルヌを中段に構えなおすと、ノーヴスはマーチを鋭く睨みつけた。 「精霊の祝福が。あらんことを!」 そう言い終わるや否や青い鎧は視界から消えていた。いや、消えつつあった。何とかそれを目で追う。 自身の身の丈の数倍の高さの位置、右上方に跳躍すると。そこにある柱を一度足場として、三角飛びの要領でノーヴスは側面からマーチに落下するように接近する。紫色の髪留の羽根飾りで軌跡を描きながら。15cmの小さな神姫だからこその、アクロバティックな強襲。 「う。わわっ?」 真正面から飛び込んでくるとばかり思っていたマーチは、その派手だが的確なアクションに慌てて体の向きを変えた。 キュベレーアフェクションの「爪」がマーチの視界を覆うように展開する。ふっと眉をひそめたが、ノーヴスはそのままコルヌを振り抜いた。 響く低い音。しかし、弾かれたのはコルヌの方。 文字通り、勢いごと跳ね返され、ノーヴスは左手を支点にしながら着地した。HIT表示は出るが、ダメージアラートは表示されない。 全部、受けきったという事。 ノーヴスがはっと気づけば、マーチがハンマーを振り上げていた。 「えーいっ!!」 しかし文字通りにそれは『遅い』。その軽装よりも軽い鎧で、ぱっと後ろに下がってそれを容易く回避する。 「あっ」 どかんっ! めり込む先端。舞い散る破片。 振り下ろした勢いは止まらず、木製のハンマーは地面をしたたかに打ちつけた。それに呼応するようにノーヴスは再度、軽い足音だけしか響かせずにマーチに接近した。その動きは重いという印象のある騎士ではない。まるで、木の葉のようにふわりっ・・・と。 慌ててマーチはアフェクションで前を視界ごと全部塞いだ。だが。 一際大きな、だんっ! という音。 それは踏み込みの音。その刹那の後に。 「わぁっ!?」 耳を劈く重低音が衝撃を伴ってマーチに襲いかかる。その動きに似つかわず、斬り払いの一撃は凄まじく重くて。 それでも、彼女は一歩さえ下がる事は無かった。 (固い。・・・いや、これは。固いといよりも・・・) ノーヴスは僅かながら手が痺れるのを感じていた。 とんっ。と展開が遅れたキュベレーを蹴って間合いを開ける。先と同じようにハンマーが今までノーヴスがいた所に上段から振り下ろされ、音を立てて地面を叩いた。 「うぅ・・・」 困ったようにそれだけ呟くと、マーチはその石畳にヒビを入れたハンマーを再度持ち上げて、腰を落として体制を整えた。 がしゃ。 一歩前に出る度に聞こえる音。それは足音だ。それが『何』を意味するか。ノーヴスは考えて少々ぞっとした。 その姿勢は防御だけを考えている。防御の後に攻撃を出来ればいいな、くらいの気持ちなんだろうか。 などと思考していると。 「えいっ!」 いつ、どこから取り出したのか、マーチの手に銃が握られていた。 (!) しまった。 銃声に、ダメージを覚悟したのは一瞬。その弾丸はノーヴスの右肩の・・・結構離れた場所を掠めていった。 「あれ?」 OPT-γに隠していた、文字通り隠し玉。「隠し弾」だったのだが、それはあっさりと明後日の方向に飛んで行った。 『チャンスだよマーチ! 相手が止まってるんだから!』 「は、はい」 ヤヨイの声に慌てたマーチはそのハンドガン、FBモデルのピストルを二発、三発と速射した。が、そもそも当たる軌道ではなく。既にノーヴスは横飛びでそこにはいない。 もはや、筋金入りの下手さである。 「うわ、わ」 急いで構えたまま追いかけて、そっちに銃口を向けようとするが、そこには困った事に自分のキュベレーの羽根。そして。爪の間の視界に映る青い影。 「わ。ひっ!?」 がつん! ピストルを取り落す。耳が痛くなるような音。思わず目を閉じる強烈な衝撃。ぐぐっ、と。そのまま押し込もうとする力の圧迫。 だが、マーチは下がらない。それどころか、そのまま圧力の方に一歩踏み出した。 「んううー・・・っ!」 ずんっ。 という、足音を残して。 爪の間から見えるノーヴスの顔が驚愕に染まる。 だけど、この状態では何もこちらからは攻撃できない。ハンマーは振れないし、ピストルを拾っても間抜けにも自分の「盾」に阻まれてしまう。他のジュビジーならそれこそ、アフェクションで攻撃するだろう。 (けど・・・) だから、マーチは頑張って『押す』事にした。 「ぇー・・・いっ!」 ずんっ・・・。 「えーいっ!」 ・・・ずしんっ! 一歩、また一歩と押していく。それは二歩めから「圧す」に変わっていた。 「っ!」 返されて膝と肘を畳んでしまったノーヴスが、ばっと後ろに飛びずさる。 ガ、ガコン。何かが噛み合うような低い音と共に。ゆっくりとアフェクションを定位置に戻して、マーチはきょろきょろと周辺にその影を探す。やがて、彼女はその青い影を遺跡の柱の上に見つけた。 「いつの間に・・・。速いなぁ」 心底茫然として、そう呟きながら、その数分の一の距離でもピストルを当てる自信の無い彼女はまた姿勢を低くして動きを止めた。 「なんという」 『うん、まさに種の殻だ』 感心したようなレオの声。 「えぇ・・・素晴らしいですね」 打ち込みの威力に自信が無いわけではなかった。 だが、自分の・・・サイフォスである自分の渾身の一撃は。そのジュビジーの足を1センチ下げる事さえ出来なかった。 「・・・あのアフェクションは、攻撃しないようです。出来ない、と言った方が良いでしょうか。それに」 『ノーヴス?』 「・・・。はい」 『君の予想通りだと思うよ』 全幅の信頼を寄せられている。と身に感じる言葉。 「・・・」 ノーヴスは数秒何か考えていたが。 「う・・・っ?」 ぐら、っと眩暈に似た感覚を覚え、眉を顰める。 「・・・」 首を振ると。彼女は意を決したようにコルヌを左手に持ち替え、背負った紙の包みを右手に携えた。 「あ・・・マスター、使いますよ、ノーヴス」 『うん、『勝ち』だけど、気を付けてね』 「はい!」 ぱっ、とノーヴスが柱から飛んで逆方向の瓦礫に音もなく着地する。その軽業に驚きつつも、そっちに体を向けた。 真正面。 ノーヴスは紙の包みの封を切って翻す。と、そこから姿を見せたのは。 「?」 思わずマーチは首を傾げた。 青い鎧、金の縁取。美しく気高い騎士型の右腕。そこに握られた物。それはとてもじゃないが、似つかわしいとは言い難い物。 血を思わせる赤と、黒。槍と剣の中間ほどの長さの柄。そして、その先端には歪な曲線を描く、二つの刃が組み合わさった不気味な剣身。 「あ。アングルブレード?」 そうだ。あの刃の部分はアングルブレード。悪魔型ストラーフの主力格闘武器だ。それを二本組み合わせている。 でも、どうしてあんな・・・。 「エエンレラトゥラーノ」 妙な単語を、ノーヴスが口にした。 「ヤウヤウッテ」 どこか、知らない国の言語なのだろうか。などと考えるは一瞬。ノーヴスはその黒い刃を一振りすると、マーチに飛びかかった。 あの剣が何かは解らない。だけど。アングルブレードなら。 (止められる!) 両のアフェクションパーツを前面に集中させる。 一刀目。左手に握られたコルヌの一撃が大上段から振り下ろされる。これまでよりも更に大きな衝撃がマーチを襲った。 「ううっ!」 しかし彼女は片目を閉じながらも両足をしっかりと踏みしめ、それに耐えきる。 二撃目。あの黒い刃を、ノーヴスは袈裟に振りかざしていた。 「ザイルドバルハっ!」 空気を引き裂く裂帛の気合。共に振り落とされる漆黒の剣。 耳が痛くなるような轟音が近くで炸裂した。 破片が舞うのが見えた。が、マーチに衝撃が伝わってこない。 何が起きたか理解できないまま。視界は変化していく。そんなつもりはないのに、視線が上へ上へ向かって行き。右足が前に前に行ってしまう。 「わっ! わっ? わわわっ!?」 腕をぶんぶんと振るが、虚しい抗いに過ぎず。 がしゃーん・・・! マーチは凄い音と共に。その場に仰向けで引っくり返っていた。 「あいたた・・・」 頭をぶつけてしまって、それを擦るヒマもなく。 すっ、と。顔の横に、刃が差しだされる。 「あ・・・」 涼やかな視線に眠たそうな感じはない。ノーヴスは小さく笑みを浮かべながら、じっとマーチを見据えていた。 「・・・あは。・・・負けです」 こちらも困ったように笑って。マーチは降参を宣言した。 最初はコンピュータも困っていたようであったが、しばらくして。笑うドクロのマークがマーチの体の上で回り始めた。 ちらりと見れば。黒い刃が抉ったのは自分の足元。そう、右足のあった場所・・・足場にしていた所だ。 凄まじい斬撃の痕跡が残り、散らばっているのは遺跡の土台、石畳の破片。 (そっか・・・) その『重さ』が、仇になった事を理解して。 双方ともに、ダメージはゼロ。一度もダメージアラートを表示すること無く。バトルは終了した。 2037の彩 彩・第一話 第四幕
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前へ 先頭ページ 次へ 「固執」 仰向けに寝ながら、神姫スケール換算地上千メートルを、高速巡行するマイティ。 手足には軽量で対実弾防御力のあるカサハラ製鉄ヴァッフェシリーズのプロテクターを着込み、クリティカルな胸部には同梱装備のアーマー、頭にはヘッドセンサー・アネーロをかぶる。 右手はミニガンではなく、アルヴォPDW9。アーンヴァルの実弾射撃武装はどちらもケースレス方式をとっている。飛び出した薬莢が飛行機動を阻害する恐れがあるためだ。とくに高速移動時にその弊害が見られ、だからミニガンは飛行時に正面へ撃つことができない。 背中のウイングユニットには、ありとあらゆる推進装備がくっつけられている。エクステンドブースター、ランディングギア。そしてヴァッフェシリーズのスラスター。融通の利く動きはほとんどできないが、一方向に集中したノズルは莫大な推進力を生み出す。アラエル戦のバトルプルーブを経て、各パーツの配置が一新され、よりパワーロスが少なくなった。 翼の一方に、バランスの低下を承知で、LC3レーザーライフルを搭載していた。この装備方法では飛んでいる方向にしか撃てない。巡行武装だと割り切っている。 ここはホビーショップ・エルゴの対戦ブースである。このたびの大改装でセカンドリーグにも参加できるようになり、マスターは二駅をまたぐ必要がなくなったのだった。 スペースでは対戦相手がいない場合、こうして一人でテストモードが出きる。トレーニングマシンが普及してから使われなくなった機能だが、現在でも律儀に入れられている。 「どうしてトレーニングマシン、使わないんです?」 店長が訊いた時、 「実戦に使われるフィールドの方が役に立つ」 とマスターは答えた。 確かにトレーニングマシンと実際に試合に使用されるフィールドには若干の差がある。しかしそれは本当に若干なもので、だから皆将来的な経費が押さえられるトレーニングマシンを買うのである。 マスターの家にも無論、トレ-ニングマシンはある。 「マイティ、どうだ」 バーチャル空間の中を飛び回るマイティに話し掛ける。 『やっぱり空気の重さが違います。マシンでできたような無茶な機動が、たぶん出来ません』 バトルスペースのマシンパワーに、やはりトレーニングマシンはかなわない。戦闘中はだいたい高速で動く神姫には、この差は場合によっては致命的な差となる。 マスターもマイティも、今、一種のマンネリを覚えていた。 バトルの成績は悪くはない。ファーストへの昇格はいまだ高嶺の花だが、それでも順当に戦えている。 バトルのアクセス料金、マイティの武装代、メンテナンス料金、武装神姫というカテゴリにかかる料金はすべて、いわゆるファイトマネーでまなかうことが出来た。 余談ではあるが、この「勝てばそれなりに報酬がもらえる」という制度が実現したことが、武装神姫の世界的な発展につながった一翼を担っていると言っても過言ではない。実現にあたっては「ゲームがけがれる」とか「ギャンブルだ」などという辛辣な批判ももちろんあった。 しかし結果として、良い方向に実現した。 第三次世界大戦も起こらなかったし、宇宙人の侵略もなかったのだ。ゲームに報酬が設定された所で、なんのことがあろうか。と、人々が思ったかどうかは分からないが。 閑話休題。 ともかくそれでも、何か初期のキラキラした感覚が鈍くなってきていることは、お互いに分かっていた。 その対処法が分からない。 結局問題は棚上げで、今に至る。 『Here comes a new challenger』 ジャッジAIが挑戦者を告げる。 テストモード中はオンラインオフラインに関わらず、対戦受付はオープンにしてある。当たり前だがシャットアウト機能は無い。対戦スペースにいるのはすべからく対戦許可とみなされるのだ。 相手はオンラインからだった。 『よろしくお願いします』 当り障りの無い挨拶。女性らしい。 「よろしく」 マスターは適当に答える。 相手はセカンド。大体自分と同じような戦績。いや。 最近特に伸びてきている。 マイティがいったん待機スペースへとリターン。 『どうします?』 「例の機能を使ってみようと思う」 『じゃあ、初期装備はこのままですね』 「なるべく広いフィールドの方が良いが、狭くてもすぐ対応できる」 『分かりました』 マイティ、準備完了。 すぐに周囲のポリゴンがばらばらになり、フィールドが再構成される。 『バトルスタート。フィールド・地下空間01』 広大な空洞。高さもあるが、下は一面湖だった。所々に浮島があり、またいたるところに石の柱が立っている。 一方の入り口から、マイティが巡行飛行状態で入場。 もう一方から入ってきたのは、ストラーフタイプだった。 かなり軽装である。 ヴァッフェシリーズのブーツを履き、大腿と手首には同根装備のスパイクアーマーをそれぞれ取り付けている。胸部はハウリンの胸甲・心守。 頭部にフロストゥ・グフロートゥ、二の腕にフロストゥ・クレインを装備しているが、あれでは武器を使用できない。アクセサリーと割り切っているのだろうか。 主武装が新装備のサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと、二体のぷちマスィーン、肆号とオレにゃんしかなかった。プチマスィーンはどちらも射撃用のマシンガン。 何よりも特徴的なのは、メガネをかけていることだった。 「軽装備……?」 それに装飾が過ぎる。 マイティは疑問に思った。 『何か仕込んでいるのかもしれない。気をつけろ』 「了解」 そのまま巡航で近づく。ためしにレーザーライフルを二、三発撃ってみる。 ストラーフが消える。 「!?」 『光学迷彩だ。センサーをサーマルに切り替えろ』 「は、はい」 「はっずれ~♪」 真上から声が聞こえた。背筋が一気に凍りつき、マイティは慌てて後方にマシンガンの 銃口を向けようとする。 がごんっ 胸部をしたたかに打たれ、マイティは失速。落下した。 「な、なに?」 マイティは何が起こったのか分からず混乱した。姿勢を制御するのを忘れる。 『マイティ、機体を起こせ!』 はっ、と気づいてフラップを最大限に傾ける。 水面すれすれでマイティは水平飛行に移る。水しぶきが上がる。 胸部アーマーがべっこりとひしゃげていた。ストラーフは鎌の背でなく、刃で打った。アーマーが無ければ負けていた。 「マスター、今のは!?」 『分からん。瞬間移動に見えた。今解析している』 『調べても無駄よ』 相手のオーナーが言った。 『本当に瞬間移動ですもの』 『何?』 マスターのモニターに相手の画面が現れた。眼鏡を掛けた黒髪の女性。 『公式武装主義者(ノーマリズマー)のマイティに会えて嬉しいわ』 『もう二つ名がついているのか。光栄だな』 『セカンドながらあの鶴畑を倒した実力派ですもの。神姫に入れ込んでいる人間なら、だいたい知っているわ』 『さしずめそちらは特殊装備主義者(スペシャリズマー)というわけか。マイティ』 「は、はい」 『装備Bに切り替える』 「分かりました」 マスターがコンソールを操作する。 マイティはウイングユニットを丸ごと切り離すと、浮島の一つに着地。シロにゃんにコントロールが移ったウイングユニットは、ランディングギアを浮島に落とす。 『サイドボード展開。装備変更』 マイティの脚からブーツが消え、代わりにランディングギアが瞬時に装着される。肩と大腿のプロテクター、そしてひしゃげた胸部アーマーがポリゴンの塵と化し、ふくらはぎのアクセサリポケットが肩に移動。 武装にも変更が加えられた。アルヴォPDW9が消失し、カロッテTMPが出現。 左手首のガードプレートが、右手首同様ライトセイバーに代わる。 予備武装としてランディングギアにバグダント・アーミーブレードを装備。 最後に、天使のような翼が背中から生える。「白き翼」だ。 『飛び方は覚えているな』 「はい。さんざん練習しましたから」 『よし、行け』 ひと羽ばたき。それだけで、マイティは相手のストラーフの立つ浮島へ急速に接近した。 バララララララ 接近しつつTMPを撃つ。 ストラーフはまたもや消失。真左に反応。 左を向いて確認する隙も惜しんで、マイティは反射的に左手のライトセイバーをオン。そのまま切り付ける。 「おっと」 ストラーフは、上、に避けた。 間違いない。こいつは飛べるのだ。 どうやって? 『原理は不明だが瞬間移動が主な移動手段だ。姿勢制御による若干の移動を、頭と二の腕 のブレードと手足でやっている』 マスターが解析した。 なんて飛び方! 後方からがっちりと拘束される。 「おしまいね」 ストラーフがくすっ、と笑う。 鎌が首筋に当てられようとする。 マイティは両肘で相手の腹を打つ。 「やばーん!」 飛び去りながら、ストラーフが叫ぶ。 「うるさいっ」 マイティはTMPを精密射撃。 しかし鎌をくるくると回転させ盾にされる。 二体のぷちマスィーンズが反撃の連射。 マイティは白い翼を前方で閉じる。 翼の表面に銃弾が当たる。が、ダメージは無い。翼は盾にもなるのだ。 「ばあ」 翼を開いた途端、目の前に舌を出したストラーフ。瞬間移動だ。 ガキンッ! 突き出された鎌を、TMPで受ける。TMPは壊れて使い物にならなくなった。 ライトセイバーを伸ばす。ストラーフはあろうことかぷちマスィーンを盾にして後退。マスィーンズは爆砕。ポリゴンになって消える。 「マスター、瞬間移動のパターンは!?」 『今のところ直線距離でしか移動していない』 つまりいきなり後ろに回り込まれることは無いということ。だが、横に移動した後、後ろに、と二段階を踏めばそういった機動も出来てしまう。 あまり意味が無い。 「そうよ、この瞬間移動は自由自在なのよ」 マイティの懸念を見透かしたかのように。ストラーフは笑った。 「しかも」 真横。 「何度も使えちゃう」 真後ろ。 「くうっ……!」 マイティは宙返り。ランディングギアでオーバヘッドキックを浴びせる。 「きゃんっ!?」 頭に命中。ストラーフは急速に落下する。マイティはアーミーブレードを両手に装備。 「やったわねぇっ」 浮島を蹴り、目の前に瞬間移動。 予想通り! マイティはブレードを振り下ろす。f 瞬間移動した直後は瞬間移動できない。当てられる! しかし、ストラーフは消えていた。 「予想通り」 頭上から声。姿勢制御による限定機動! 「お返しよ♪」 頭をぶん殴られ、マイティは一瞬気を失う。 屈辱。殴られるのは一番そう。これは人間も神姫も変わらなかった。 「シロにゃん!」 「にゃーっ!」 いつのまにか接近していたウイングユニットがストラーフに体当たりを仕掛ける。 「そんなハッタリ無駄!」 ズバッ 鎌で一刀両断。ウイングユニットは消えてしまう。 『主義と固執は違うのよ』 ストラーフのオーナーが言う。 『何を……』 『通常装備だけではおのずと限界がある。あなたも薄々感づいているはず』 『何が言いたい』 マスターは苦虫を噛み潰したような顔をした。 『あなたの実力ならファーストには行けるでしょう。でも、ファーストでは固執は許されないわ。認められたあらゆる手段を使わなければ勝てない場所よ』 『アドバイスのつもりか』 『あなたがあの片足の悪魔と戦いたいのなら、ね』 『……!!』 その名前が出てきたことに、マスターは驚きを隠せなかった。 モニターから嫌な音がした。 ストラーフの鎌が、マイティの額を刺し貫いていた。 驚愕に目を見開くマイティ。ポリゴンの火花を撒き散らして、消滅。 『試合終了。Winner,クエンティン』 マスターは初めて、相手の神姫の名前を知った。 マスターはしばらく、コンソールに手をつきながら前を見つめていた。 ハッチの開いたポッドに座り込みながら、マイティはおどおどするしかない。 「帰るぞ」 唐突にそういわれたので、マイティは立ち上がる際転びそうになってしまう。 ねぎらいの言葉を掛ける店長も無視して、マスターは足早に店を出た。 了 前へ 先頭ページ 次へ
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飛翔、上昇。空、加速加速加速。 黒いわたくしのウイングが、デジタルの空気を裂いて飛ぶ。ここは丘陵ステージ、飛行を妨げる遮蔽物の無いこの開けたステージは、わたくしのようなアーンヴァルタイプが最も得意とする領域。程無くして、対戦相手を視認する。フォートブラッグタイプ、セカンドランカーのフォトンさん。マスターによれば彼女は空を飛ぶ者の“天敵”らしいのですが、今の彼女は、あまりにも無防備。高高度から接近したわたくしに気付いてすらおりません。 「今なら・・ですのっ!!」 急、降下加速、射撃銃撃乱射乱射乱射。掠、掠、直撃。 雹のように突き進む、わたくしの黒。霰のように撃ちつける、マシンガンの弾丸。彼女は直前で回避行動に移り、致命傷には出来なかったものの、よろめいたその姿は弱々しい。 「もう一度でっ!!!」 重、起動。歪。 「えっ!?」 彼女のバックパックが光を放った。刹那、“世界”が戦慄いた気が、して・・・ 重圧。侵略伝播制圧圧縮、重圧重圧重圧重圧重圧、墜落。 「あぁうっ!!?」 気付いた時、目の前にあったのは地平線・・・が逆さまに。わたくしはもう空ではなく地面にいて、地面に打ち付けられていたのだと、激痛の後に知りました。それでも尚、地面は沈み、空気が縮み、視界は歪んで、わたくしの意識も遠く・・・・・・。 『勝者、フォートブラッグ、フォトン!!!』 「もう、飛ぶのは嫌ですの」 トゥールー、私の神姫は擦り切るように言う。昨日、“絶空”フォトンに負けてからずっとそう呟いている。私は、彼女の事も心配だけど、丁度作業からも手が離せないところなので、手元への注意を半分だけ、彼女の声に向ける。 「そうは言っても、あんたって飛行型でしょ? 今更怖いとか言う? って言うより、今まであんな楽しそうに飛んでたじゃない」 「でも! あんな風に“堕ちる”なんて事、今までありませんでしたから・・・。まるで、空が重くなってわたくしを拒絶したみたいに・・・」 「・・・水泳好きが溺れて水恐怖症になるみたいなものか」 まあ無理も無いかもしれない。“絶空”フォトンの特殊装備は擬似重力発生装置だったらしく、バーチャルフィールドが歪んだ用に見えた瞬間、私の見ている目の前で、トゥールーはバトルフィールドの天井から地面まで一気に墜落した。そのまま、戦闘不能で勝負はおしまい。 武器詳細を知らなかったとは言え、うかつに戦わせた私も悪かった。自責の念から、今度は完全に手を止め、彼女の方に振り向く。 「トゥールー、今回は残念だったけれど、気分を変えればまた飛ぶ事だって・・・」 「そうですの! 良く考えたらスピード感を楽しむのに高く飛ぶ必要はありませんでしたの! 思えば、今までどうしてあんなに面倒な事をしていたのでしょう! 低く飛べば高度計算も気流観測も相対距離算出もかんたんですの♪」 「・・・It’s comfy・・・」 心配して損した。 「大体、今の装備では折角マスターが作って下さっている靴が履けませんもの」 すっかり機嫌を戻した彼女が、私の手元に顔を伸ばしてくる。今私が手掛けているのは、小さなルージュ色のピンヒール。店の仕事でたまに作る、オーダーメイドの靴の要領で製作しているトゥールー用の靴だ。彼女としては、これを試作品に神姫用の靴ブランドを立ち上げたいんだと言う。 「・・・って、こんな靴でバトルはやらないでしょ普通」 「え? でも、親切な殿方が『ヒールでぐりぐりは最高の攻撃力だ』って言っておられましたよ?」 ・・・何処のマゾ野郎だか知らないけれど、またこの子に変な知識を覚えさせて。見つけたら去勢してやる。 「・・・バトルで使いたいならそれ用に作ろうか? 走りやすくスニーカー・・・は作った事無いけれど頼めば型紙とか寄越してもらえるし出来ない事も無いよ」 「そうではありませんの! 一目に触れるバトルでこそ、美しく着飾る必要があるんですの!! ホラっ、わたくしが独自に調べたアンケートでも神姫の大多数がバトル前に最も身だしなみを気にすると回答しているですの!」 小さなフリップに描いた円グラフで熱弁するトゥールー。いつもの事ながらどうやって調べているんだか。まあ武装神姫にとってバトルはダンパみたいな感覚なのかな? それなら気持ちは判るけれど。 「でも、そうなると今の作りじゃ強度が危ないな。かと言ってこれ以上コスト高になったら量産しても捌けるか・・・」 「その点は心配ありませんの! わたくしのアンケートでは神姫ユーザーのおよそ半分が神姫用靴ブランドを待ち望んでいるという結果ですの! 特に殿方には『ローファーでオーバーニーソックスもあれば絶対ハアハァ』などと言った意見もあるのですから、後の商品展開も含めて売れないなんて事はまずありません! 何より、マスターの作る靴なんですもの」 素直に喜べない。トゥールーに誉められるのはいい、他の神姫に喜ばれるのもいい、けれどそれより圧倒的多数の野郎共の情欲の道具にされると思うと、どうしても。この子がそんな事には気付きもしない分、尚更ね。 武装神姫の主要ユーザーは男性。そういうニーズがあれば、メーカーもそれに合わせて作るのは当然。神姫の「心」は自由じゃない。例えば、このトゥールーの媚びたお嬢口調。 「・・・ねえトゥールー、前から言ってるけど、その言葉遣いどうにかならない? 今時“~わ”とかすら使う女なんて居ないのに“~ですの”なんて、野郎の幻想の中にしか居ないよ」 「ああ、ですからお優しくして下さる殿方が多いですのね」 「いやそうじゃなくて・・・」 どうしても彼女には私の危惧が伝わらない。只でさえこの子は限定カラーで目を引くんだから、その辺のキモオタ野郎共に拉致される可能性は低くないのに、何度言ってもトゥールーは男を警戒しない。これも、プログラミングなのだろうか。 「マスターは、殿方が嫌いなんですの? それでは恋愛も出来ませんわ」 「欲情だけで動いている連中とは死んでも嫌だね」 「ですけれど、男も女も同じ人間ではありませんの?」 ひたすらに無垢に、疑問の視線が返って来る。それは確かに天使の笑み。けれど邪な心じゃ触れられないとか言う便利な機能は付いてないんだから、もう少し自覚してもらわないと困る。声を整えて、少し強い口調で忠告を始める。 「・・・いい、トゥールー。男と女ってのはね、同じ人間って言ってもevenじゃないの。言わば足と靴なの! 触れ合って同じ感覚を共有する事があったって、本質的には別の存在なんだよ」 「靴が女性で、足が殿方ですの?」 「逆っ!! ・・・男ってのはね、量産された幻想の足型で女を測って、それに合わせさせようとするけれど、結局実際に足を動かして疲れるのは女ばっかりなの! 子孫を残すのも、家庭を支えるのも、結局女が全部やるんだから。男は靴底すり減らして給料稼ぐ位しか出来ないのに、女が下手に出る必要は全く無いの!! 靴が足を選ぶ道理なんて無いでしょ?」 「ですけれど、顔をオーダーメイドするのは女ばかりではないのですの?」 思いがけず反論を飛ばすトゥールー。表情は、穏やかなままで。 「・・・あれはエステの一種と思いなさい。ともかくね、生身と人工物程違いがあるんだから相容れなくて当然、無理して合わせて靴擦れして痛い思いするなんて馬鹿みたいじゃない」 「神姫と靴でしたら、どちらも人工物ですの。丁度いいのではありません?」 再度、彼女からの刺。思わず「さくっ!」と擬音語を叫びたい程に突き刺さる。そこまで、男を擁護したいの? それが、貴女の意思だと言うの? ・・・そうかもしれない。確かに相容れないとしても、歩み寄りたいと思う、それも男と女の本質かもしれない。逆に諭されたのか、私は。 「・・・ごめん、私も言いすぎた。そうだね、私がどう思っているにしろ、貴女が男とどう付き合うかなんて貴女自身が決める事であって・・・」 「それに、神姫なら足のサイズが皆同じですから、その分バリエーションにこだわれますし、お友達と履き替えっこしたりや、部屋用、お出かけ用、バトル用なんて風に何足も揃えても履けなくならないので困りませんの。あ、もし飽きて捨ててしまっても、神姫の使ったものなら別に汚くはありませんから中古価値も高いですの」 「・・・why?」 ちょっと待って、今、物凄い事を口走ったよ、この子。でももしかして靴の例えを神姫用靴の話と取り違えたのかも・・・でも話の流れからすると間違えるとも思えないし。それとも、トゥールーって無駄にマイペースな所があるから、今のも、今までの反論も他意のない思いつき? いやそれにしても・・・。 「ねえマスター、そう言えば、靴下は何に例えるんですの?」 「・・・結婚かな。摩擦を抑えるって意味で」 気にしないことにしよう。うん、それがいい、そうしよう(というか考えると怖い) 「あ、そう言えば。トゥールーはもう飛びたくないんでしょ? でもスピード感は欲しいと」 「でも、脚部換装して地上戦というのも、結局マスターの靴が履けないから嫌ですの」 「じゃあさ、面白い事考えたんだ。これなら靴は何履いてもいいし、スピード感はあるし、何よりit’s stylish!」 「それは、何ですの・・?」 「それはね・・・」 オムニバスなのに続く!!(え~) 目次へ
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-4 gavotte 「ヒューマノイド・インタフェイス?」 「そう。人によって呼び方は様々だが、ようは人体を模した駆動義体の総称さ」 現在の2030年代に入ってから、人は様々なロボットを実用化してきた。 武装神姫もそうしたロボット開発の中で創り出された、人のパートナーとしてのアンドロイドの一種だ。 武装神姫は日常生活におけるマスコットとしての要求から、その大きさは14から15センチとなった。その一方、医療における義肢・義体の研究、純粋労働力としての可能性の研究としてのロボット開発も行われていた。駆動義体とは、そうした目的で作られた人体、もしくはその部分的な要素を模した機器のことを指す。 「でも、等身大の駆動義体なんて存在するのかしら?」 ふたり仲良く首を傾げる伊吹に、神楽さんがちっちっちっと舌を鳴らす。 「何だってアンダーグランド……裏社会は存在するものさ。表向きにはないとされているものが、本当に存在しないとは限らないのだよ?」 神楽さんの話によると、一般レベルでは様々な法・倫理的な問題で人間大のアンドロイドは実在しないとされている。が、裏の社会ではすでにそういったものの開発に成功しているらしい。 驚くシュンたちだが「考えてもみたまえ。全高15センチのオート・マタが存在するんだ。だとしたら、それを等身大にしたものが開発されていても、何ら不思議なことはないだろう?」と神楽さんに言われると、なんとなく納得できる。 確かにたった全高15センチほどで、あれだけの機能を備えた武装神姫がすでにいるんだ。むしろ、技術的な面で言えば人間を模したロボットを作るなら、人間と同じ大きさの方がいろいろと面倒がないんじゃないか? 「早い話、そういうことだよ。実験目的、研究開発、または趣味嗜好などなど……アングラなところでは様々な需要があるのだよ」 具体的にはどんな?――試しにシュンが聞くと、神楽さんは「君は知らなくてもいいことだよ」といい笑顔で返された。 みんなの方を向くと「シュッちゃんにはまだ早いわよ」と伊吹にいい笑顔で肩を叩かれた。 「いや、待てよ? 何かすっげー気になるんですけど……」 「…………えいっ」 「イタタタタッ!? ちょっ……足っ、足踏まれてるんですけど、伊吹さん!? つーか本気でいたっ……痛い、痛いってのっ!?」 耕一とチカが苦笑する。なんかその心配する表情がグサッとくるのは何故だ? 「ま、戯れるおふたりはそっと無視しておくとして……そのヒューマノイド・インタフェイスというものを使えば、チカさんが本物のヴァイオリンを弾くことは可能なのですね?」 「そうさ。しかし何ぶん非合法……げふっげふん。あ~、あまり良い子のみんなはまねをしてはいけないよ的な代物なので、いくつか制限がある」 神楽さんは指をひとつ立てる。 「まず、このことに関しては他言無用とすること。ここに集まったメンバ以外には、秘密を厳守してもらう。これは君たちのためでもある、絶対に他には喋ってくれるなよ」 ふたつ目の指。 「ひとつ目から分かると思うが、この方法での演奏を一般人の前で行うものNGだ。あくまでも必要最低限の関係者だけを集めた……まあ、ごく内輪でのリサイタルということになるね」 みっつ目。 「この方法ができるのは、今回一回のみだ。……別にバトル前に言っていたことは、ハッタリという訳ではないのさ。調達できたといっても、引っ張り出す名目をでっち上げて今回限りという取り決めとなっている。つまり――」 そこで神楽さんは耕一とチカを見て、ニヤリと笑った。 「あとから、あの時やっぱり本物のヴァイオリンを弾いておけばよかった……なんて後悔の念を抱いても、残念ながらもう協力はできないよ?」 ギョッとした顔でみんながチカを見た。 みなの見つめる先で、チカは驚いた眼差しを神楽さんに向ける。 「そんな……いえ、そういうことじゃなくて……。でも……」 「チカさん、あなた自身が疑問に思ってしまっているのではないのですか?」 今まで黙っていたゼリスが、ゆっくりと口を開く。 「本物のヴァイオリンを弾くことが、本当に自分の音色を見つけることになるのだろうか――と」 ゼリスの言葉に、ビクリとチカが肩を振るわせる。 「本当はもう気づいているのでは? ――本物のヴァイオリンがなくとも、あなたの創るべき音色は、その胸の内にあるということに」 チカがギュッと自分の胸に手を当てる。そこに息づくもの――神姫の感情中枢たる機関〝CSC〝。そこから紡がれる彼女の心――自らのマスターを想う気持ち。 「例え私たちの手足が人を機械的に模した縮小に過ぎないとしても、ヴェイオリンの音が電子的に再現された複製に過ぎないとしても、それを奏でるあなた自身――CSCから産まれる私たちの感情は、心は。まぎれもない私たちの――あなた自身の本当の想いです」 「私自身の――想い」 ポツリとチカが呟いた。 ――それはとても大切なもの。でも、それが実際何なのかは分からない、見えないもの。 だから、みんな勘違いしたのだ。 ――それは人間だって、自分自身のことだって、何かと問われれば明確な答えなど返せない。すごくあやふやなもの。 チカ自身も勘違いしていたこと、手段と目的を取り違えていたことに。 ――心。 それにゼリスは気づいていたのだ。そのために独りで反対したり、ワザと邪魔をしてみせたりしたのだ。 すべては本当に大切なことを気づいてもらうために。 ――それは、確かに誰もが持っている。人も、神姫だって。 ゼリスは最初からチカのことを、同じ立場の親友として、誰よりも心配していたんだ。 「大切なのは、弾く楽器ではなく、誰かを想って音楽を奏でるあなた自身です。あなたは、あなたの音色を奏でればいいのですよ」 ゼリスはチカの肩に手を置き、瞳を真っ直ぐに見つめた。その彼女の瞳、朝露に濡れた新緑のようなそれは、優しい色。 「私は……」 チカがその唇から、言葉を搾り出す。彼女の小さな体の中では、様々な葛藤が駆け巡っているのだろう。 「そのくらいにしておきたまえよ、ゼリス君。その先は彼女が一番良く分かっているはずさ。後は彼女自身の問題だよ」 ぐるりと神楽さんが一堂を仰いだ。 この場にいる誰もが、温かい目でチカを見守っていた。 チカがどんな答えを出そうと、誰もがそれを肯定する……と。 「さあ、命題だ。仮初の人の身を得、真のヴァイオリンという名のイコンを求むるか、否か――。君はどちらを選ぶんだい?」 悩める少女は、側らに立つ、最も大切な人の顔を仰いだ。 そこにあるのは、彼女の大好きな優しい笑顔。どんな答えを出そうとも、その意思を尊重する。彼女を認めると言っていた。 それに勇気付けられ、チカは静かに口を開いた。 「私は――」 ♪♪♪ 開幕。 シックな装いに身を包んだ彼女を、燕尾服を着込んだ少年が付き添う。 優しく差し伸べられた手を、白い小さな両手で大切に包む。 招かれた場所は、とある屋敷の一室。 観客は少年少女とふたりの人形、黒い影法師。 彼らに囲まれて、車椅子に佇むひとりの老紳士。 五人は彼女に勇気と奇跡をくれた、魔法使い。 老紳士は大切な家族。彼女の隣に立つ少年にとっては師。 彼女にとって、音の素晴らしさを教えてくれた恩師。 緊張した彼女を察して、隣に立つ少年が笑む。 優しい笑顔、大好きな笑顔。それだけで体を包む緊張という鎖から解き放たれていくのを、彼女はその身に感じた。 彼女を想い集まってくれた人たちへ、今日という日を与えてくれた喜びに、感謝を込めて。 少年がタクトを取り出し、少女はヴェイオリンを手に取る。 それは今宵一夜限りの。 慎ましやかで温かな、彼と彼女の音色のリサイタル――。 ♪♪♪ 六月といえば梅雨だ。先週までの雨も途絶え、今週の日曜は朝から暖かな日差し。 梅雨前線と高気圧のおしくら饅頭も、どうやら軍配が上がるのはもうすぐそこだ。 「今年の夏は暑くなるかなぁ~」 「そうですね。記録的な事例から、空梅雨のあとは猛暑が訪れる確率が高いと言えます」 だかだらとベットに横になりながら、なんとなしのシュンの独り言に、机の上から返事が返ってくる。 どうやらゼリスはシュンの机の上に陣取っての、ネットサーフィンの最中らしい。 「ぢゃんぢゃぢゃ~ん、優ちゃん登場!」 ガチャリとドアが開き、妹の優が部屋に入ってきた。 そのままニコニコ、ささっと机に向かい「何してるの?」とゼリスに話しかける。 わいのわいのと今度は優も一緒になって、ふたりはキーボードをカチャカチャしだした。 「お前ら、人の部屋に勝手に入ってきて騒ぐなよ……」 無駄だと分かっての投げ槍な講義は、キャアキャア騒ぐふたりに黙殺される。 シュンは読んでいた雑誌を放り出して、ベットに身を投げ出した。 あ~あ。日曜の朝から騒がしいヤツらめ。 「あっ、新着メールが届いてる。差出人は……チカちゃん?」 「そのようですね」 その遣り取りにシュンはハッとベットから身を起した。 あの一見以来、耕一たちとはまだ一度も連絡を取っていなかった。今ふたりはどうしてるんだろう? 「……ふむ。おふたりともあれから元気にしていらっしゃるようですね。耕一さんの音楽の修養の方も、チカさんのヴァイオリンの方も、順調に励んでいらっしゃるようです」 「そうなのか?」 シュンも優の後ろから、PCモニタを覗き込む。三人一緒になって同じ画面を覗きながら、ゼリスが文面を読み上げる。 「それで……ほう。おふたりは今度ヨーロッパに旅立たれるそうですね」 「ヨーロッパ?」 「はい。どうやら本格的に音楽の勉強をするために、耕一さんが留学なさるそうです。それにチカさんも一緒なさるそうです」 モニタに映し出された文章では、以前から海外留学の話があり悩んでいたが、最近になってやっと決心がついたので、ふたりで欧州に旅立つことにした事。向こうでもお互いに支えあって頑張ることなどがしとやかな文面で綴られ、最後に『しばらく逢えなくなってしまうけど、帰ってきたら必ずまたみなさんをヴァイオリン演奏にご招待致します』と締めくくられていた。 「そっか……ふたりとも頑張ってるんだな」 シュンの言葉に、ゼリスがこくんと頷いた。 あの日見た、ふたりの互いに寄り添う姿。きっとふたりなら遠い異国の地だって、うまくやっていけるに違いない。 感慨深げに目蓋を閉じるシュンとゼリスに、ひとり優だけが憮然とした顔をする。 「チカちゃんって、前に家にやってきたヴァイオリンの神姫だよね? そういえば、私だけあの後何があったか聞いてない。私だけ仲間はずれ~えっ! 結局チカちゃんは本物のヴァイオリンを弾けたの?」 優がぷっくり頬を膨らませる。シュンは苦笑しながら優の頭をポンポン叩く。 「別に仲間はずれにしてないっての。あの後なあ……」 と、そのとき聞きなれたメロディがどこからともなく聞こえてきた。開けっ放しのドアから、優の部屋の細工時計が10時を告げる音色を運んできたのだ。 「あ――っ!? もうこんな時間。黒猫キッドが始まっちゃうよ~っ」 「うわっと?」 いきなり優は奇声を上げると、椅子の上でピーンッと飛び上がり、大急ぎでリビングへと駆けていく。 ……そんなに慌てるほど大事か、黒猫キッド。 「ふう、慌てて階段から転げ落ちるなよ……」 やれやれとシュンが椅子にかけると、ゼリスがジッとモニタを見つめていた。 やっぱりゼリスなりに、親友の旅立ちを想っているのか。あるいは、ひょっとしたら寂しさを感じてるのかも知れない。 「ゼリス……」 シュンが声をかけると、ゼリスはこちらを振り返り、そのままシュンの頭に飛び乗った。 「ほら、シュン。急がないと今週の黒猫キッドを見逃してしまいますよ」 「はいはい、了解~」 ったく。少しはしおらしいところもあるんじゃないかと思ったら、すぐこれだ。 まあ、しおらしい態度なんかされたら、それはそれで調子が狂っちゃうけどな。 ゼリスを頭に乗せ立ち上がりながら、シュンは窓の外に目を向ける。 いつも道理の日曜の午前、雨の恵みによって芽吹いた新緑を、爽やかな青空が照らしていた。 FINE & ……To be continued Next Phase. ▲BACK///NEXT▼ 戻る