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第2部 「ミッドナイトブルー」 第10話 「night-10」 巨大な航空母艦型MMSのツラギの姿がはっきりと眼前に写る。 ツラギは左舷に備え付けてある大小さまざまな火砲でシュヴァル目掛けて対空射撃を開始する。甲板にいる砲台型や悪魔型もライフルや大砲で攻撃を行う。 急降下するシュヴァルの周りで砲弾が炸裂し、機関砲弾が装甲を貫く、シュヴァルは満身創痍になりながらも最後の駄目押しで、リアパーツの2門の素粒子砲を放った。 シュヴァル「うおおおおお!!」 ビッシュウウウン!! 青白い光がまっすぐにツラギの後部のスクリュー、舵部分に命中する。 ズズウウン・・・ 一瞬、グラリとツラギの巨体がひるむが、さして目に見えるようなダメージは食らっていない。 金川「ツラギ!損傷報告」 ツラギのマスターである金川がマイクを掴んで確認を取る。 ツラギ「左舷後方に命中!第2舵が破損、被害は軽微」 ナターリャ「ふん、バカめ・・・その程度で空母型神姫が沈むものか!」 ドンドンドンドン!! ツラギの艦橋ブロックに搭載されている連装機関砲が放った機関砲弾がシュヴァルのエンジンを貫いた。 シュヴァル「ぐっあ・・・エ、エンジンが!」 ボウウン!! 真っ黒な煙を吐いて、シュヴァルの体がバランスを崩してツラギの甲板に突っ込む。ツラギの甲板に叩きつけられるように不時着するシュヴァル。 シュヴァル「ぐああああ!!」 不時着のショックでシュヴァルの装甲がバラバラに砕け散り、脚部があらぬ方向に曲がる。 ツラギ「敵機!甲板に落着!」 悪魔型のニパラが強化アームでシュヴァルの頭部を鷲掴みにし、頭部に砲口を突きつける砲台型のルーシ。 ニパラ「ひゃはははっは!!捕まえたぜェ!!」 ルーシ「よくも好き勝手散々暴れまくりやがって」 シュヴァル「う・・・・ぐ・・・」 ニパラ「頭部を握りつぶしてCSCを抉り出して砕いてやる」 ナターリャ「待て!!」 ナターリャが弱ったシュヴァルに近づくと、もったいぶった言い方であざ笑う。 ナターリャ「敵ながらたった一人で私の指揮する機動MMS艦隊にここまで立ち向かったのだ。ここは天晴れと賞賛すべきだろう」 シュヴァル「ぐ・・・・」 ニパラはぐいとシュヴァルの頭部を無理やりナターリャに向けさせる。 ニパラ「ナターリャ将軍、どうするつもりで?」 ルーシ「へっへへ、ネットで公開しましょうよー夜帝の装甲や武装をひん剥いて、二度とふざけたことが出来ないように辱しめてやるんだ」 戦闘爆撃機型のマレズが甲板に降りてシュヴァルに機関砲を向ける。 マレズ「ヒュー、こいつなんだかんだいってけっこう可愛い顔してんじゃねえか、へっへへ」 ナターリャ「よく頑張ったが、オマエのおおげさな伝説も今日までだ!!!何が夜帝だ!!ふざけるな・・・夜のステージなら最強?それも今日までだ!!いいか、ネットのみんなにこういうんだ『私は敗北主義者です。優秀なナターリャ将軍の指揮する機動MMS艦隊に敗れた惨めな敗北者です』とな!!」 ナターリャは興奮して唾を飛ばす。 ツラギは艦橋から惨めに羽交い絞めにされているシュヴァルを見てニヤニヤしている。 シュヴァルは顔をうなだれて、ひくひくと体を振るわせる。 マレズ「おいおい、どーしたァ?あまりに惨め過ぎて怯えてるのか?」 ニパラ「うひひひ、八つ裂きにしてバラバラに砕いてやるぜ」 ナターリャ「まずは許してくださいと喚いて、情けないサレンダー宣告をもらおうか!!私の負けですってな」 シュヴァルはぶつぶつと何かつぶやく シュヴァル「・・・か・・・め・・・」 ナターリャ「どうした、何か言いたいことがあるなら言ってみたまえ、最後だ。何を言ってもいいぞ」 ニパラがぐいっとシュヴァルの顎を掴んで顔を向けさせる。 シュヴァルの顔は硝煙で薄汚れていたが、目は爛々と黄金色に光り生気に満ち溢れていた。シュヴァルはニヤニヤと笑いながら口を開く。 シュヴァル「・・・チェスと将棋の違いって知っているか?」 マレズ「は?」 ニパラ「へ・・・なんだ?」 唐突にまったく意味の分からないことを言うシュヴァルに周りは下卑た笑いをやめる。 ルーシ「チェスと将棋の違いだとォ?」 ナターリャは真顔で答える。 ナターリャ「一般的にだが・・・大きな違いは、チェスは取った駒を使うことはできないが、将棋は取った駒を味方の駒として使うことが可能だが・・・それがどうした?」 シュヴァルはふっと顔を歪ませる。 シュヴァル「ナターリャ、あんたはチェスが得意なんだって?このゲームをチェスに見立てて、私を狩ったつもりになっているが、それは大きな間違いだ。負けたのはあんたの方だ」 ルーシ「てめえッ!!!何を分けわかんないこと言ってやがるんだ!!このヤロウ!!」 ルーシはライフルの銃底でシュヴァルの柔らかいお腹を殴りつける。 シュヴァル「がはっ」 ズン・・・ズズン・・・ 上空で低い爆発音が鳴り、甲板が徐々に赤く明るくなってくる。 ナターリャ「・・・・・」 ナターリャはあることに気がつき、ゆっくりと真上を見上げる。 シュヴァルとの戦闘で被弾し操舵不能に陥っていた重巡洋戦艦型MMSの「マキシマ」がゆっくりと炎に包まれ小規模な爆発を繰り返しながら一直線に自分たちがいる空母型のツラギに降下してくる。 野木「姿勢安定装置を作動しろ!」 マキシマ「スタビライザー全損!!こ、高度が維持できません!だ、ダメです!!堕ちます!!」 遠くから重巡洋戦艦型のヴィクトリアがチカチカと発光信号を送ってツラギに退避命令を出している。 ヴィクトリア「至急、進路変更サレタシ、両艦は衝突ス」 金川が発光信号を見てツラギに指示を出す。 金川「ツラギ、至急進路変更だ!!おもかじ!」 ツラギ「あう・・ああ・・・か、舵が聞きません!!さきほどの攻撃で舵がァ!!」 ツラギはパクパクと口を開けて恐怖に引きつった顔を晒す。 シュヴァル「あんたの駒、使わせてもらった。所詮あんたは駒を駒としか見てなかったんだ」 ナターリャ「!!」 ナターリャは目を見開き、落下してくるマキシマの燃え盛る巨体を凝視する。 ニパラ「あ・・・うあああ・・」 ルーシ「ひ、ひいい!!何をしているんだ!舵を切れ!!」 マレズ「ぶつかるぞ!」 燃え盛るマキシマは必死で発光信号を発する。 マキシマ「我、操舵不能、我、操舵不能」 シュヴァル「このゲームはおまえの負けだ。ナターリャ。武装神姫の戦いはチェスほど単純じゃない」 シュヴァルがフッと笑う。 ツラギ「そ、総員退艦ッーーー」 ヴイイイイーンヴィイイーーーーン・・・ サイレンを鳴らすツラギ。 マレズ「うわあああああ!!」 ルーシ「に、逃げろ!!!」 ニパラ「ぎゃあああああああああああ!!」 恐怖で叫び声を上げながら逃げようとする甲板にいる神姫たち。 ナターリャはシュヴァルに向かってパチパチと拍手をする。 ナターリャ「ハラショー!!!すばらしい!!これは私の負けだな、さすがは夜帝だ・・・私の得意分野であるチェスにも勝利した。完璧だ・・・君のような武装神姫と一緒に滅ぶことが出来るとはうれしいよ」 シュヴァルはちらりと燃え盛るマキシマを見てつぶやく。 シュヴァル「あんたは逃げないのかい」 ナターリャ「間に合うものか・・・」 ゴオゴゴゴオオオ・・・ 燃え盛る巨大なマキシマの船体は突き刺さるようにツラギの甲板に墜落し、ツラギの格納庫にまで突き刺さり、内部の燃料や弾薬庫に火が引火し、強烈な大爆発を起す。 グッワッツワアアアアアアアアアアアアアアアアアーーン!!! 真っ赤な炎で出来た巨大なキノコ雲がツラギから立ち上り、強烈な爆風を引き起こす。 □将校型MMS 「ナターリャ」 SSSランク「演算」 撃破 □航空母艦型MMS「ツラギ」 SSランク 二つ名「アタックキャリア」 撃破 □重巡洋戦艦型MMS 「マキシマ」 SSランク「ワルキューレ」 撃破 □悪魔型MMS 「ニパラ」 Sランク 撃破 □戦闘爆撃機型MMS 「マレズ」 Sランク 撃破 □砲台型MMS 「ルーシ」Aランク 撃破 □夜間重戦闘機型「シュヴァル」 SSSランク 二つ名 「夜帝」 撃破 撃破のテロップが筐体に流れる。 呆然と大爆発を眺める、戦闘機型のアオイとツクヨミ。 アオイ「おい、俺たちの帰るところがなくなったぞ」 ツクヨミ「俺に言うなよアオイ」 重巡洋戦艦型のヴィクトリアがマスターの野木に報告する。 ヴィクトリア「マキシマ、ツラギと衝突し爆沈す、ツラギにのっていた神姫の生存はなし、ナターリャ将軍は爆死しました」 野木「つまり、このゲームの勝敗は?」 ヴィクトリア「敵の夜帝、シュヴァルの撃破を確認、されどこちらの指揮官であるナターリャ将軍が戦死されたので、この勝負は引き分けです」 野木「引き分け?冗談じゃない。私たちの負けだ。こちらは17体もの神姫がいたが、生き残ったのはお前を含めて3体のみ・・・奴は1個機動MMS艦隊を潰滅しやがった」 夜神はスーツから煙草を取り出し、火をつけて深く煙草の煙を吸い込む。 筐体の周りは真っ暗で煙草の火だけが赤く燃えている。 夜神「・・・・」 夜神は煙草についた赤い炎の灯火を、じっと見つめる。 じわじわと赤い明かりを失っていく煙草の火・・・・ 煙草の火が消えるとあたりは濃いブルーの闇に包まれる。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>第11話 「night-11」 前に戻る>第9話 「night-9」 トップページに戻る u
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キズナのキセキ ACT1-6「招かれざる客」 ◆ 店の入り口から入ってきたその客に、最初に気が付いたのは、安藤智也だった。 火曜日の夕方、学校帰りのゲームセンターは、安藤にとってもはや習慣である。 平日は安藤とLAシスターズ、そして大城というメンバーが集う。 そう言えば、この週末は、遠野と菜々子が来なかった。実に珍しい。 大城が二人と連絡を取ろうとしたが、出来なかったという。 何かイヤな予感がする、と表情を暗くしたのは八重樫美緒であったが、 「二人で遠くにデートにでも行ってるんじゃない?」 などと、江崎梨々香は明るく言った。 少し心配ではあるが、二人にもそれぞれ事情があるのだろう。安藤はそう思った。 ゲームセンターは今日も盛況だ。 安藤が所属しているチームのメンバーも、こぞってバトルをしている。 一戦終えた安藤は、いつも遠野が定位置にしている壁に背をつけた。 隣には大城大介がいる。 彼は安藤とはまったく違うタイプの男で、歳も上であったが、なぜか気を許せる人物だった。 二人並んで缶コーヒーを飲みながら、バトルを観戦している。 そんな時、くだんの客が入ってきたのに、安藤は気が付いた。 落ち着いた色のコートと、えんじ色のベレー帽を身につけた女性。 かすかな微笑を浮かべたその美貌に、安藤でさえ、はっとさせられる。 手には、黒鉄色のアタッシュケース。神姫マスターか。 彼女はゆっくりとこちらへやってくる。 「大城さん、今入ってきた、あのお客……」 「ん? どの客だ……って、うほ!」 大城はあっと言う間に相好を崩した。この男、美女に目がない。 安藤は思わずため息をついた。大城に注意を促したのは、目をハートにさせるためではないのだが。 その女性を安藤は見たことがなかった。大城は知っているかと思って声をかけたのだが、 「何かお困りですか、お嬢さん?」 などと妙に格好つけた声で話しかけているところを見ると、どうやら知らない顔らしい。 その女性は、安藤たちの近くまでやってくると、うっすらと微笑んで、言った。 「ここに、久住菜々子は来ている?」 予想外の問いに、安藤も大城も、一瞬反応できない。 二人は顔を見合わせた後、大城が答えた。 「菜々子ちゃん? 今日は……というか、ここんとこ来てねえけど……」 「そう……残念ね」 「君は、菜々子ちゃんの知り合いかい?」 「ああ、ごめんなさい……わたしは桐島あおい。菜々子の昔なじみです」 名乗りながら、鮮やかに微笑む。 安藤はその笑顔に、一瞬、違和感を感じた。 なんだろう。おかしなところなど、何もないはずなのに。 「俺は大城大介」 「安藤智也です。菜々子さんとはチームメイトです、二人とも」 「チーム? あの子が?」 「そうさ! 久住菜々子所属のチーム『アクセル』と言えば、ここらじゃちょっとは知れたチームなんだぜ?」 桐島あおいと名乗った彼女は、とても驚いた様子だった。 菜々子さんがチームを組むことがそんなに意外だろうか。菜々子は社交的な性格だし、チーム結成を言い出したのも菜々子の方からだと聞いている。 昔の菜々子は、もっと違う性格だったのかな、などと安藤は思った。 「チーム『アクセル』ね……結構強いの?」 「そりゃあ強いさ。『エトランゼ』のミスティは説明はいらないよな。俺の虎実はこのゲーセンじゃランキングバトルのチャンプだし、この安藤とオルフェだって、バトル歴は浅いけど、結構な実力なんだぜ?」 「へえ……」 「まあ……チームリーダーが勝負にあんまりこだわらないってのが、困りものなんだが」 「勝負にこだわらない……?」 「ああ。遠野って男なんだが、驚くほど勝負に欲がないんだよなぁ。試合内容重視っつーか」 そのとき、あおいがまた、鮮やかに微笑んだ。 「だったら、わたしとバトルしません?」 「君も神姫マスターなのか?」 「ええ、もちろん。菜々子と知り合ったのも、武装神姫が縁なの」 「そりゃいい。菜々子ちゃんの昔なじみなら大歓迎だぜ」 しかも美人だし、と大城は付け加えた。安藤は苦笑する。大城さんは相変わらずだ。 ここで、大城の肩にいて話を聞いていたティグリース型の神姫が、桐島あおいに呼びかけた。 「おい、あんた……桐島あおい、だったっけか?」 「ええ。なに?」 「バトルすんのはかまわないけど、あんたの神姫は?」 「ああ……そうね、先に紹介するわ。出てきて、マグダレーナ」 あおいはアタッシュケースを取り出すと、取っ手のボタンを押した。 重い音を立ててケースが開く。 虎実は見た。 そこに佇むのは、闇のように真っ黒な神姫だった。 「……ハーモニーグレイス?」 塗装が微妙に違っているが、修道女をモチーフにした武装神姫・ハーモニーグレイス型に間違いない。 不機嫌そうな表情で、虎実をねめつけている。 「敵と慣れ合う気は、さらさらないのだがな」 ひどくしわがれた、老婆のような声。 なんだ、こいつは……。 通常のハーモニーグレイス型のような明るさ、愛想の良さなど、まるでない。 虎実は得体の知れない不気味さを、マグダレーナと名乗る神姫から感じていた。 虎実は警戒する。しかし、 「こんな美人とお近付きになれるとは、武装神姫様々だなぁ」 彼女のマスターはまったく緊張感がない。 虎実は怒り狂いたいのをこらえつつ、大城にだけ聞こえる声で囁いた。 「アニキ」 「何だよ、また妬いてんのか?」 「ばっ……! ちげーよ! ……まさかアニキ、相手を見くびってないだろーな?」 「まさか。菜々子ちゃんの昔なじみってんなら、気が抜ける相手じゃねーっての」 鼻歌交じりでそう言う大城の言葉は、まったく説得力がない。 ハーモニーグレイスと言えば、チームの少女たちの神姫と同様、武装を簡略化して低価格化を実現したライトアーマー・シリーズの一体だ。 戦闘力自体は、フル装備の武装神姫がおそれるほどではないが、ゲームセンターで戦うときには、油断は出来ない。 どんなカスタマイズが施されていても、おかしくはないのだ。素体がライトアーマー・シリーズでも、武装が要塞並ということだって、ないとは言えない。 だが、マグダレーナというこの黒い神姫の不気味さは、そんなことではないような気がする。だが、具体的に言葉に出来ない。 我がアニキのなんたる空気の読めなさ。 虎実はため息をついた。 ◆ ステージは「廃墟」が選択された。 虎実にとっては得意のステージである。 ティアやミスティと、何度もここで戦った。一番経験のあるステージである。 虎実は、高速タイプに組み替えた「ファスト・オーガ」に乗っている。 このファスト・オーガを手足のように操る操縦技術、それこそが虎実最大の武器であった。 虎実は砂埃舞うメインストリートを疾駆している。 相手がノーマルのハーモニーグレイス型なら、ライトアーマー・クラスの軽装備のはずだ。その場合、路地などに隠れながら様子をうかがうのが定石である。 それをおびき出すために、わざと目立つように走っているのだ。 小細工は虎実と大城が得意とするところではない。 自らを囮にして、一気に勝負を決める。 虎実は前方を注視する。 いた。 あの黒く不気味な修道女型。 特別な装備は、腰を取り巻くスカートアーマーくらいだろうか。手にしたキャンドルと十字架型のマシンガンは、ハーモニーグレイス型のデフォルト装備である。 虎実は気にせず、アクセルをふかし、一気にマグダレーナに迫った。 機首に取り付けたバルカン砲を撃つ。 マグダレーナがさらりとした動きでかわす。 しかし、砂煙と銃痕で動きは制限された。 ファスト・オーガでそのまま挽き潰すべく、突っ込む。 手応えは、ない。 マグダレーナは虎実の突撃を、紙一重でかわしていた。 だが、甘い。 マグダレーナの目前を通り過ぎた刹那、虎実は上体を上げ、ファスト・オーガの機首を持ち上げると、突進の勢いを回転に変えた。 フローティングユニットを軸に、コマのように回転する。 「吹き飛べっ!!」 バットのように振り出された機首が、マグダレーナに迫る。 虎実は確信する。この奇襲はかわせない。 だが、マグダレーナには慌てた様子もない。 ファスト・オーガの一撃が迫る。 「こうか?」 一言発し、マグダレーナは地面に身体を投げ出すように身体を傾けた。 地面スレスレまで身体を倒し込みながら、スライドするように飛ぶ。 頭上を、エアバイクの機首が駆け抜けた。 「なっ……ばかなっ!!」 再びファスト・オーガの機首が回ってきたときには、マグダレーナはその回転範囲から逃れていた。 今の回避方法を、虎実は知っている。 ビッテリーターン。 スキーのターン技術の一つだ。 ティアと初めて対戦したときに、彼女がかわすのに使った。 その技を、どうしてこの神姫が使う!? 得意の奇襲がかわされたことより、そのことに驚きを隠せない。 回転を立て直し、虎実はマグダレーナと対峙する。 マグダレーナはすでに立ち上がっていた。口元に不気味な笑みを浮かべて。 虎実は寒気に襲われた。 本当に、得体が知れない。 そんな思いを振り払うべく、虎実はバルカン砲を放った。 「おおおおおおぉぉっ!!」 吼える。 近距離からの弾丸の雨。ライトアーマー・クラスの装甲では持ちこたえることは不可能だ。 はたして、マグダレーナは宙にいた。 一挙動でジャンプし、砂煙から飛び出して、虎実の頭上を越えようとする。 マグダレーナは空中で虎実を狙い撃った。 しかし、虎実もそれは察知している。 その場でファスト・オーガを最小半径でターンさせ、射線をはずした。間髪入れず、アクセル・オン、エアバイクをダッシュさせる。 狙いは、マグダレーナの着地点。 黒い修道女は、ふわり、と宙を舞い、着地した。 やはり、あのスカートアーマーは装甲だけではない、特殊な装備のようだ。 再び向かい合う両者。 虎実も走りながら、大剣「朱天」を抜いた。身の丈ほどもあるこの剣は、ティグリース型のデフォルト装備である。それを片手で軽々と振る。 視界の中のマグダレーナが迫る。 彼女もまた、手にしたキャンドルを武器に選んだ。短い柄のついた三本のキャンドルの先から、光の刃が現れる。ライトセイバーの三つ叉槍。 「だあああああぁぁぁっ!!」 虎実の気合い声に対し、マグダレーナは無言。 高速ですれ違う瞬間、二人は同時におのが武器を振り抜いた。 はたして、虎実の大剣に手応えはなく、ファスト・オーガはフローティングユニットの接続部から真っ二つに断たれていた。 「う、わあああぁっ!?」 動力を失い、虎実を乗せたファスト・オーガの前半分がつんのめるように地面に接触した。 転倒し、虎実は地面に投げ出される。 「くそ……」 「朱天」を手に立ち上がろうとしたその時、黒い影が立ちはだかる。 マグダレーナ。 その闇のように黒い影は死神のように、虎実の瞳に映った。 三つ叉のビームランスを構えている。 それでも、虎実が立ち上がろうと勇気を振り絞った。 しかし。 「その魂、しばらく預かるぞ」 ためらいもなく、三つ叉槍が振り下ろされる。 マグダレーナの一撃は、虎実の身体を貫いた。 「ぐあああぁぁ……っ! ……あ……」 虎実の瞳から光が消える。身体から力が抜け、地に伏した。 バトルはマグダレーナの勝利で幕を閉じた。 この時は、まだ誰も、異常に気が付いてはいなかった。 ◆ 「虎実!? おい、虎実、どうした! おいっ!」 大城の必死の呼びかけにも、虎実が応じる気配はなかった。光の消えた瞳を開いたまま、大城の手のひらの上で、力なく横たわるばかりだ。 試合終了後。 アクセスポッドが開いても、虎実は身じろぎ一つしなかった。 大城は不審に思う。いつもなら、試合終了後に真っ先に飛び出してきて、口げんかが始まるのが常だったからだ。 大城はアクセスポッドをのぞき込む。 虎実はいる。 だが、何を言っても、触れても、何の反応も示さない。ただの人形になってしまったかのように。 大城は筐体の向こうを睨みつける。 えんじのベレーをかぶった神姫マスター。 桐島あおいは、穏やかな微笑みを浮かべていた。 「おい、お前……虎実に何をした!?」 大城の大きな声を聞きつけて、周りから神姫マスターたちが集まってくる。 それでも、桐島あおいは慌てる様子を見せない。 「大丈夫。虎実のAIを少し借りただけ。目的を果たしさえすれば、すぐに返すわ」 「AIを、借りた……?」 その不思議な物言いに、大城は首を傾げる。 神姫のAIを借り出すことなど、可能なのか……。 いや、一つ思い当たる節がある。 「AI移送接続ソフト、か……?」 「よく分かったわね」 「なんだって……そんなことをしやがるっ!?」 知らないはずがない。あの時のことを、忘れられるはずがない。 以前、このゲームセンターで、同じようにAI移送接続ソフトを使い、遠野とティアを大ピンチに陥れた奴がいた。 神姫のAIを取り出し、別のサーバーへと送る一種のウィルスソフト。それがAI移送接続ソフトだ。 もちろん、あの事件以来、そうしたウィルスソフトへの対策はしている。 しかし、今のバトルでは、そんな対策も意味を成していなかったようだ。 怒りに猛る大城は、そのことに気付く余裕もない。 拳を握りしめ、回答次第では殴りかからんと、怒りにたぎっている。 あおいは涼しい顔で、答えた。 「わたしのお願いを聞いてもらいたかったの。それを聞き届けてくれれば、虎実のAIはすぐに返すわ」 「なんだとぉ……?」 大城は、桐島あおいに足早に歩み寄ると、強引に胸ぐら掴もうと手を伸ばす。 「そこまでだ、大城大介」 しわがれた声が警告を発した。 あおいの肩にいる神姫が、こちらに向けてマシンガンを構えている。 大城は動けなくなった。 目を見開いて、銃口を見つめるしかできない。 まさか、神姫が人間に銃を向けるなど……常識ではあり得なかった。 大城の背中に冷たい汗が流れてゆく。 「あおいに手を出したら、貴様もただでは済まん」 「イリーガルかよ……」 「どうとでも呼ぶがいい。あおいの話を聞かぬ限り、虎実のAIは戻らんぞ」 あろうことか、この神姫は自らイリーガル……違法神姫であることを肯定した。 百戦錬磨の大城さえも、向けられる銃口にひるみつつあったその時、 「あんた、菜々子さんの師匠だろ? それなのに、イリーガルなんか使って……恥ずかしくねぇのかよ!」 果敢に声を発した少女がいた。 背が高く、少年のような雰囲気の美少女は、園田有希。久住菜々子の弟子を自称している。 「桐島あおいさん……あんたのことは、菜々子さんから聞いてた。菜々子さんの目標とする神姫マスターだって……。 なのに、イリーガルを自分の神姫にして、ウィルスソフトを使ってバトルして……何やってんだ、あんたは!!」 「元気がいいわね、菜々子の弟子は」 「んなこた、どーでもいい! 虎実のAIを返せよ!」 「いいわよ」 「へ?」 有希は間抜けな顔であおいを見た。 桐島あおいは、有希の剣幕にも動じず、柔らかな笑みを浮かべるばかりだ。 「わたしは何も、虎実のAIを消したいわけじゃないわ。なんだったら、わたしたちと勝負してみる? あなたが勝てば、すぐに虎実のAIを返してもいい」 「おもしれー」 腕まくりする有希のその腕を、八重樫美緒が押さえた。 「待って。冷静になりなさい。負けたら、カイのAIだって奪われるかも知れないわ」 「黙ってろよ、美緒。自分の師匠がこんなんじゃ、菜々子さんだってたまらねーだろ。あの人に知れる前に、あたしがオトシマエつけて……」 「あら、菜々子ならもう知ってるわよ」 口を挟んできたあおいの顔を、有希と美緒は見つめた。 「このあいだ、あの子を負かしたばかりだもの」 「なっ……!?」 チームのメンバーだけでなく、その会話を聞いていた『ノーザンクロス』の常連は皆絶句した。 『エトランゼ』のミスティはこのゲーセンで圧倒的実力を誇る神姫として認知されている。 その彼女が敗れた。 ということは、このゲーセンに集う神姫では、マグダレーナにかなわない、ということではないか。 マグダレーナは周囲の様子を見ながら一笑する。 「ミスティが敗れたと知って、気後れしたか?」 「く……」 「ならば、二対一でもかまわんぞ?」 「……それは本気?」 有希の背後から声がした。チームメイトの蓼科涼子である。 涼子は有希の隣に並び、マグダレーナを睨む。 その鋭い視線を、マグダレーナは悠々と受け流した。 「本気だとも。二人がかりで来るがいい」 「その言葉、後悔させてあげるわ」 「ちょっと……涼子!?」 慌てたのは美緒である。 有希だけでなく涼子まで、危険なバトルに挑もうというのか。 「あなた、わかってるの? 涼姫だってAIを奪われるかも知れないのよ?」 「かもしれない、でしょう? 涼姫とカイのコンビなら、虎実にだって……『エトランゼ』のミスティにだって、後れは取らない。美緒だって分かってるはずだわ」 そう言って、涼子は有希と視線を合わせた。二人は不適に笑い合う。 いつもはもっとも身近なライバル同士だが、コンビを組めば『ノーザンクロス』でも指折りの実力になっていた。 それは美緒もよく知っている。 しかし、それでも危険な賭けだと思う。 美緒はどうしても、マグダレーナという黒い神姫から警戒を解くことが出来ないでいた。 あの神姫には何かある。遠野さんなら、今のバトルを見たら分かっただろうか。 「どうした、話はまとまったか?」 老婆のようにしわがれた声が呼ぶ。 美緒は有希の腕から手を離した。 有希と涼子は頷くと、黒い神姫とそのマスターに向かい合った。 「虎実は返してもらうぜ、マグダレーナ」 「わたしたち二人を相手に、勝てると思わないことね」 自信たっぷりの二人に、美緒はただ、無事を祈るだけしかできなかった。 ◆ 大城はマグダレーナに、もはや畏怖すら感じていた。 バトルが始まってもう五分以上が経過していたが、二人の神姫を相手に、マグダレーナはダメージどころかかすり傷一つ負わずに、二人の攻撃をさばき続けていた。 園田有希のカイは、ストラーフ装備に加え、ヴァローナの鎌を持った重装備。 蓼科涼子の涼姫は、装備こそライトアーマー級だが、ワイヤーを使ったアクションは独特の機動で、初見の相手なら翻弄されることは確実だ。 対して、桐島あおいのマグダレーナは、先ほどと同様、スカートアーマー以外はノーマルのハーモニーグレイス型と変わらない軽装備に見える。 涼姫が翻弄し、カイがプレッシャーを与える。 この二人の組み合わせは、ティアとミスティのコンビによく似ていた。 二人の息が合っていれば、並の神姫では太刀打ちできないほどの実力が発揮される。 ましてやこのバトルは二対一。カイ&涼姫のコンビが圧倒的に有利だ。 しかし、マグダレーナは悠然とバトルに望んでいる。 マグダレーナは、攻撃を受け止めることをあまりしない。ほとんどかわしてみせる。 ある意味、ティアに近い戦い方と言えるが、その様子はまるで違っているように、大城には思えた。 ティアは攻撃を察知し、持ち前の機動力で回避する。 マグダレーナの動き出しはティアよりも早い。余裕を持って動き、攻撃範囲外へするり、と移動する。 まるで、何の攻撃が来るのか、事前に察知しているかのように……。 カイがマグダレーナを攻める。得意の近接攻撃は、手数で明らかにマグダレーナを上回る。 しかし、そのことごとくをかわされる。 カイはそれでも手を出し続ける。こいつを自分一人に引きつける。そうすればチャンスが回ってくる。 「はあっ!」 鎌を横に大きく振るう。 とっさに大きく間合いを取るマグダレーナ。 その瞬間、カイの背後を小さな影が追い抜いた。 涼姫が音もなく飛来し、マグダレーナに襲いかかる。 振り子のような独特の軌道と無音の飛翔は、涼姫の真骨頂である。 息もつかせぬ奇襲に、涼姫は成功を確信していた。 しかし。 「えっ?」 カイの背後から飛び出したとき、マグダレーナは地上にいなかった。 目標を見失い戸惑う涼姫の上空に影が差した。 上を仰ぎ見るより早く、涼姫は支えを失い、空中に投げ出された。 「きゃああぁぁっ!?」 無様に地面に転がり落ちる。 廃墟のビルを掴む左手から伸びたワイヤーが切断されていた。 背面跳びのように涼姫とカイを飛び越えたマグダレーナが、すれ違いざまにワイヤーを切ったのだ。 大きく跳ねたマグダレーナは、涼姫の視線の向こうで、着地しようとしている。 しかし、これはカイにとって好機。 短く跳ねて、反動を膝にためる。振り向きながら、膝をのばし、パワーを開放して突進した。 これぞミスティ直伝の必殺技、リバーサル・スクラッチ。 「うおおおおおぉぉ!!」 雄叫びをあげながら突進する。 相手は今着地。そして、あろうことか、こちらに向けて前に出た。 正気か。 リーチも速度もパワーも、こちらが上だ! カイはためらわずに攻撃を繰り出した。 右副腕の爪で裂く。マグダレーナは姿勢を低くして避ける。 左副腕のバックナックル。上体をスウェーさせて回避。 まだ終わらない。 カイは、右下に構えていた鎌を、超速度で斜めに振り上げる。 カイ・オリジナルのリバーサル・スクラッチ三連撃! しかし。 「なっ……!?」 カイは鎌を振り上げることが出来なかった。 さらに一歩踏み込んだマグダレーナが、手にした十字架型の銃器「クロスシンフォニー」で鎌の柄を止めていた。 両者は止まらない。 すれ違うその瞬間、マグダレーナはカイの胸に、ビームトライデントをたたき込んだ。 カイは驚愕の表情のまま、その攻撃を受ける。 そして、瞳から光が失われた。 「カイッ!!」 叫びともに、涼姫は残った右手を撃ち出した。 目標はマグダレーナ。こちらに背を向けている。それは涼姫最大のチャンスだった。 マグダレーナは動いた。 かわさずに、振り向かずに、持っていたマシンガンの銃口のみを背後に向け、涼姫の右手を狙い撃った。 乾いた音を立て、右手がはじかれる。 目標を掴めなかった武装手が地に落ちる。 「そんな……」 呆然とした涼姫の虚を突いて、マグダレーナが振り向く。 地面スレスレを飛翔し、滑るように涼姫に向かってくる。 カイに刺さったトライデントを抜き去り、正面に構えて突進してくる。 涼姫はブレイクダンスのような動きで、頭を下に回転しながら、その攻撃をかわそうとした。 旋回する両脚に隙は見えない。 だが、刹那の間隙を縫って、マグダレーナは三つ叉槍を突く。 涼姫の旋回が止まった。彼女の身体は、三つ叉槍によって、地面に縫い止められていた。 そして、涼姫の瞳から光が奪われる。 ジャッジが無慈悲にも、黒い神姫の勝利を確定した。 マグダレーナの完勝。二人の神姫を相手にかすり傷一つ負わないままでの勝利だった。 「こんなやつに……どうやって……勝つってんだ……」 大城は呆然とそう呟くしかなかった。 ◆ 「しょせん、リーダーが内容重視などとのたまうチームよ。この程度のレベルも当然か……」 マグダレーナの物言いに、誰も口を挟むことは出来なかった。 ミスティ、虎実、カイと涼姫のコンビに完勝できる神姫など、『ノーザンクロス』にはいない。 「……で、そっちの要求は、なんだ」 大城は固い声で言う。 彼女の要求を飲む以外に、三人の神姫のAIが戻ってくることはない。 大城はそう言う他なかった。 有希と涼子も表情を堅くして、桐島あおいとマグダレーナを見ていた。 あおいは満足したように頷くと、変わらぬ微笑を浮かべたまま、大城に答えた。 「菜々子をわたしのところまで連れてきて。わたしともう一度バトルするようにって……そう伝えて」 次へ> Topに戻る>
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白い天使に舞い降りた奇跡 年の瀬も迫るころ・・・街はクリスマスムード一色。 夕暮れ迫る頃にはイルミネーションの灯がともされ、より一層あでやかな表情となる。 そんな本通りの片隅、赤煉瓦作りを模した小洒落た外観を持つロボット専門店のショーケースに・・・凛々しいスタイルで飾られているアーンヴァルがいた。 両の手にサーベルを構え、白く輝く翼を背負い、今にも飛び出そうといわんばかりの格好・・・ではあったが。 どことなく、うつろな表情で。どこかしら、哀しい目つきで。 ショーケースの内側から、街の灯りを・・・行き交う人々を眺め続けていた。 彼女は、この店の武装神姫のディスプレイとして・・・発売されたその日から、いわば仮起動の形で置かれていた。 AIは起動しているものの、自らの意志で動くことは出来ず、焦点もディスプレイを覗いた人と目が合う位置で固定されて。 移りゆく季節をぼやけた視界で眺め続け、時折足を止めて自分を見てくれる人の顔を覚えるだけが楽しみの毎日。 今日も、いつもと同じ曖昧な景色を眺める・・・はずだった。 低い日差しの日が沈もうという頃、アーンヴァルの収まるショーケースを見ていたカップルが声を上げた。 -ホワイトクリスマスだ- 何のことか、わからないアーンヴァル。 だが視界には、ちらちらと白い物が映る。 一体なんなのだろう。確認したい・・・でも・・・。 そんな願いが通じたものか。 突如、センサーが・・・アイセンサーが動き、焦点を動かすことが出来るようになった。 ちらちらと舞うものは、雪。 道行く人が数年ぶりに積もりそうだと言いながら過ぎてゆく。 まだ浅いAIをフル作動させて雪というものを解析しようとしたアーンヴァルだったが。 目の前に広がる、初めて鮮明になった世界に、全てを奪われた。 様々な色と光が舞い踊り、幻想的な世界に・・・空からの小さな天使たちが舞い降りる。 街行く人々は皆幸せそうな笑みを浮かべながら白い便りを受け取っている。 店の前では買ってほしいと駄々をこねて泣く子供もいれば、胸にマオチャオ・ハウリンを収めてショーウインドウを眺めるサラリーマンの姿も。 だが、皆・・・その場を立ち去り、光あふれる世界へと消えていく。 サラリーマンの胸に収まったマオチャオが、手を振りながら遠ざかってゆくのを見たとき。 アーンヴァルの中に、今までには決して湧き上がらなかった感情が芽生えた。 仮起動させられたその時から、アーンヴァルは思っていた。自分には決して「マスター」は現れない。 妹たちの道しるべとなるべく、武装神姫たる姿を示し続けることが私の仕事。 ・・・そう思っていた。 深々と雪が降るにぎやかな世界を、ガラス越しに眺めながら・・・沸々と湧き上がる、もっと世界を知りたいという欲望と、取り残されているのではないかという不安。 そして。本当は自分も、自分にも・・・マスターが現れる事を待っていたのではないかと・・・。 いたたまれなくなり、アイセンサーのフォーカスをずらしてガラスに映る自分の姿に・・・今までと同じ位置に合わせ、見慣れた自分の姿を見つめていると。 じわり。 視界に、今までとは異なるゆがみが生じた。 ・・・涙。 仮起動のはずなのに、涙の機能も作動するなんて。 外を行き交う人の影よりもずっと小さく、いつもよりも自分の姿がもっと小さく見える・・・。 ふと、聴覚センサーに鐘の音が響いた。 時計塔の鐘・・・。 街の灯りがひとつ、またひとつと消え始めた。 人の気配は多いけれど、街はそろそろお休みの時間。 今日は悲しい気持ちのまま、寝ることになるのだろうか・・・。その前に、もう一度だけ、怖いけれども世界を見ておこう・・・フォーカスを再び動かし、ガラスの外にピントを合わせたそのときだった。 目の前に、ポケットにマオチャオとハウリンを入れた、あのサラリーマンが・・・白い息を吐きながら、肩には雪を載せて立っていた。 胸のハウリンがサラリーマンの襟を引っ張りながら、アーンヴァルの方を指して何か言っている。マオチャオはといえば、ニコニコしながら何かを伝えようとしているのか、ぶんぶんと手を振っている。 サラリーマンはすでに一部消灯されたショーウインドウに顔を近づけ、吐息で曇るガラスを時折きゅっきゅと袖で拭きながら、アーンヴァルをやさしげな瞳で見つめて・・・。 小さく頷くと、ショーウインドウの前を立ち去った。 お願い・・・行かないで・・・! 私を・・・私をいっしょに連れて行って! 声にならない、心の叫びを上げるアーンヴァル。 すると。 ショーウインドウの明かりが、再度点された。 何事なのか、驚くアーンヴァルの背後で、今度は扉が開けられる音に続き、視界が、景色がぐるりと廻り、久々に店内へと持ち込まれた。半分灯りの落とされた、薄暗い店内でまだ明るさの残るカウンターに載せられたアーンヴァル。 そうか、またポーズの変更なんだろう・・・と、アーンヴァルの立てた予測は大胆にもはずされた。 電源の通ったクレイドルに、起動前のスタンダードスタイルで載せられ、カタカタと背後でなにやら操作がなされてアイセンサーが、瞳が強制的に閉ざされた。 かちり。 アーンヴァルの脳裏に、いつもと違う感触が走る。 ・・・手足に、力が入る。 動く!! 間違いない、これは・・・。 ・・・高ぶる気持ちを抑えながら、おそるおそる目をあけた。 「やぁ、はじめまして。ウチが、君のマスターになるヒサトオっちゅーもんです。 で、こちらがハウリンのシンメイ、アタマにのっかっているのが見ての通りマオチャオのエル・・・ガーーーー!! こら、髪の毛ひっぱるなーーー!!!」 まるで外の世界の楽しみを丸ごと背負ってきたような雰囲気を漂わせた、あのサラリーマンが・・・自分が一目惚れしたひとが・・・!!! 店長となにやら楽しそうに会話するヒサトオと名乗った男。 話の内容から、アーンヴァルはすぐに理解した。このひとも、今の瞬間を待っていたのだ、と・・・! 「君の名前なんだけど・・・夕方に君を見たときにビビッと思いついたこの名前でもいいかなぁ。シンプルだけれど、奥が深いと思うんだ。 どうだい、『イオ』ちゃん。」 先とは違う涙がわきあがる。 「帰ってから起動させてあげてもよかったんだけれど、この街でホワイトクリスマスなんてそうそうあるもんじゃないからね。無理を言ってお願いして、ここで起動させたんだ。 ・・・じゃ、みんなで一緒に帰ろうか。奇跡の夜を存分に楽しみながらねっ!」 そっと手を差し伸べるマスターとなるひとの顔も、一緒にいる神姫たちの顔も滲んでしまった。 でも、自分の手で拭けばいい。 フォーカスだって、我慢することも無い。 眺めるだけだった世界へ、自らの脚で飛び込んでいける・・・! 差し伸べられた手にゆっくりと乗り、マスターの顔を見上げて。 初めて発する言葉に、今の思いをありったけ詰め込んで-。 「よろしくお願いいたします、マスター!」 白い天使が舞い踊る街で。 地に降りた小さな天使にも、 届けられた大きなプレゼント。 そう。今宵はクリスマス。 皆が、幸せあふれる夜となりますように・・・。 <トップ へ戻る<
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プロローグから時間は多少前後し、光矢は友人Fと共にホビーショップエルゴに居た。まだ彼の胸ポケットは空で、商品の陳列棚を見る目にも少々の呆れが見え隠れしている。 この日は友人Fの公式戦が組まれており、Fの提案によりライブで神姫のすばらしさを語ることに付き合うことになっていた。 「さ、始まるぞ。クリス、存分に暴れてやれ。光矢にも神姫の素晴しさを見せ付けてやれ」 『イエス、マスター』 普段はヘッドセットを着用して、周囲からの雑音を切り離し、マスターと神姫がセットになって戦うのだそうだ。しかしこの日Fは戦闘中継を光矢に全て見せるべく、ヘッドフォンなしで神姫ポッドの前に立っていた。当然、神姫の声は画面横のスピーカーから聞こえてくる。 光矢はFの横に立ち、3つ並んでいる画面の中央、一番大きなセンターディスプレイに目をやった。テロップが次の対戦カードを表示している。 サードリーグ 公式戦 フリッツ V アモーレ田中 クリス S ろべっち 制限時間制 ゴーストタウン 『GO』の文字が表示されると同時に、それまで静けさを保っていたフィールドが一気に加熱した。 砂埃を巻き上げ疾走するのはFのクリス。右は逆手にマチェット、左手にはサブマシンガンを携えたMMSで、頭部は赤いレンズのゴーグルと黒いガスマスクを着用している。頭から生えている(ように見える)細身の剣は、走る速度に比例して広報へと倒れていく。そして、そのシャープなシルエットに全身の黒系塗装が合わさり、疾走する姿は弾丸を彷彿とさせた。 それに対して相手のMMSは、同じく黒い色が特徴的なのだが、そのふいんき(なぜか変換できない)は真逆だった。 黒の生地に白のフリルがあちこちにあしらわれている布製の服をまとい、スカートはふんわりとした膨らみを保ったまま揺れている。頭部には同じくフリル付のカチューシャを装備し、ご丁寧に眼鏡までかけている。『メイド』を意識したその姿は、おおよそ戦闘とは無縁に思えるのだが、手にした黒い傘でクリスの連撃を捌く姿は確かに戦場に居る者の様子を備えていた。 初接敵の接近戦はビビアンに部があった。クリスの繰り出す連撃は尽く『傘』に防がれ、逆に相手はマチェットをいなしてはじいた後に、そのまま流れるような軌道で『傘』を振る。傘の石突の部分は通常のそれとは違い、研ぎ澄まされた刃になっている。近接戦闘を意識して改良された特別製らしい。 クリスの4度目の斬撃を避わしたメイドさんは次に、自分の背後にあった自分の背丈ほどの崩れたレンガの壁を宙返りをしながら飛び越えた。その際、ちらっと笑みを浮かべつつスカートを翻しその裾から何かを放った。 体勢を立て直したクリスが次に見たものは、目の前に落ちてくるボール状の物体。重い金属音を響かせて着地したソレは・・・ 「…手榴弾!?」 慌ててその場を離れるクリスだったが、あまりに唐突だった相手の『反撃』は完全には避け切れなかった。爆発した手榴弾はクリスのゴーグルを砕き、クリスからHUD(ゴーグル上に各種戦況データを示す機能)を奪った。 「ふざけた名前と格好のくせに、やるじゃん……」 初撃の失敗と報復に驚きと焦りを殺しきれないF。その横で光矢は初めて目にする武装神姫の戦いに魅入られ始めていた。 各所パーツにカスタマイズを施しているFの凄さは耳が痛くなるほど聞かされていた上、仮想戦闘プログラムでの画面も見せられていた。その時はまだ神姫に熱くなっているFへの軽い軽蔑があったが、ここでの対戦を見ればそのときのFの言動も理解できる気がしてきた。 クリスの攻撃をかわす相手のメイドは、以前どこかで読んだ漫画の人のようだ。レンガの壁の裏にふわりと着地した瞬間、壁に向けて傘を広げると、爆発で吹き飛んだレンガ片はその盾にはじかれて、本体には埃一つつかない。よく見ると、その傘の持ち手の部分も、通常とは明らかに違う形をしていた。傘の中に折りたたまれていたストックが開き、右の肩に押し付けられると同時にメイドさんはトリガーを引いた。瞬間、二度目の爆発が起きたような音と煙が上がった。ショットガンを花束に仕込むのと同じように、仕込みショットガンとでもいうのだろうか。先ほどの手榴弾といい、暗器をよく使う。 手榴弾によりHUDを失ったクリスは、ショットガンの射撃に反応がわずかに遅れ散弾を避けることができなくなり、やむなく背部のアームを展開し体の前で交差させその場で身構えた。着弾と同時に激しい衝撃が襲い、にわか構えの体勢は脆くも崩され、そのうえアームの隙間を縫ってきた細かな散弾が本体をも削っていく。頭の中をエラーメッセージが叫び、痛覚値が上昇していく。ショック状態にはならないものの、痛覚値を感覚値と切り離すための処理が大きくなり、長時間の戦闘は厳しくなった。 「クリス、物陰で機会を待て。相手に気づかれる前にマチェットを見舞ってやれ!」 『イエス、マスター。時間の余裕はあまりありませんし、早々に決めます』 相手のショットガンの銃声が6発目で止まったことを確認すると、砂埃に紛れて再び駆け出す。しかし、今度の方向は相手ではなくその左手側、無作為に投げ出されたコンテナが積みあがっている陰である。その際、移動の邪魔になると判断し、散弾で削られたアームを棄て去った。 相手のメイドは自らの作り出した砂煙で視界を失ったらしく、クリスがコンテナの陰に走りこんだ後も傘を正面に向けていた。 やがて砂煙が落ち着くと、メイドはゆっくりと傘を構えたまま前進し始めた。クリスの棄てたアームユニットに注意を払いつつ、周囲に気を張りながら臨戦態勢を崩さない。一歩毎に広がる視界を常にチェックしながら……12歩目に差し掛かったときに戦況が動いた。それまで息を殺し、コンテナの陰に隠れていたクリスが、マシンガンを放ちつつメイドの側面に飛び出したのだ。予想していた範囲とはいえ、右手に持った『傘』では防御が間に合わず、体勢を崩しながら後退した。 しかし、本業を接近戦に持つクリスの追撃は中途半端な間合いでは無いのと同等である。クリスは相手の体制が崩れるのを確認すると、左手のサブマシンガンを投げ捨て、代わりに左の太ももにぶら下げていたダガーを抜き取った。そのまま低い体勢を保ったまま、右手のマチェットと交差して傘に切りかかる。相変わらずマチェットは傘の幕を破れないが、左手のダガーは発熱設計になっており、紅くなった刃の触れた部分から一気に傘を切り裂いた。 仕込みショットガンの敗れたメイドはそのまま尻餅をつき、今度は反撃する間もなくマチェットの刃を鼻先に向けられた。 「参りましたわ、ギブアップです」 「…ハァ…ハァ、 中々手強い相手だったよ。アンタ」 * * * 「それを見て、君を買おうと思ったんだ」 「そうだったんですか、すみません気づかなくて……」 「いや、いいんだ。君が戦うの好きじゃないなら強要しないから」 殺風景な部屋で光矢とアーンヴァルの会話が続いていた。 初期起動からすぐ、光矢の見ていた武装神姫のアリーナ中継を見たアーンヴァル型神姫は「自分は争うのは好まない」と言ったのだ。それから二日間は、光矢はリーグのことを話さなかったが、アーンヴァルになぜ自分を買ったのかと聞かれ、今に至る。 「無理に戦うこともないしさ。今もこうしてライブ見てるだけでも……」 「……やります、マスター!」 「ボクは満足だし……え?」 それまで話を黙って聞いていた神姫は突然、声を上げリーグに参戦する意思を述べた。 「でも、この前は戦うのは嫌だって……」 「それはそうですけど……」 何故か顔を赤らめ、目線を泳がせる。手を握ったり指を合わせたり、俗に言う『もじもじポーズ』を取りながら、アーンヴァルは上目遣いで見上げた。 「とにかく!私出たいです。リーグ!その、戦うのは苦手だし、好きじゃないですけど…。ホラ、マスター、私のために武器とか色々作ってくれてますし、試し撃ちも家の中だけだと味気ないし、もしそれで勝てたら万々歳でマスターも私に何かうにうに……じゃなくて。とにかく、出してもらえませんか!?」 あまりに必死な懇願に、しかし自分のやりたかった希望を提案され、光矢は「よし、それじゃぁやってみようか」と答えた。 その翌日、リーグに参戦するに当たって神姫に名前をつける必要があることをFから聞いた光矢は、その日の夜に自分の神姫に名前を贈った。 「クラウ・ソナス。神話に出てくる光の剣で、絶対に負けないっていう由来なんだ」 その後の結果はプロローグでも触れたとおり、2週間経っても未だ勝ち星なしである。 彼らの挑戦はまだ始まったばかりである。 ~続く~
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飛翔、上昇。空、加速加速加速。 黒いわたくしのウイングが、デジタルの空気を裂いて飛ぶ。ここは丘陵ステージ、飛行を妨げる遮蔽物の無いこの開けたステージは、わたくしのようなアーンヴァルタイプが最も得意とする領域。程無くして、対戦相手を視認する。フォートブラッグタイプ、セカンドランカーのフォトンさん。マスターによれば彼女は空を飛ぶ者の“天敵”らしいのですが、今の彼女は、あまりにも無防備。高高度から接近したわたくしに気付いてすらおりません。 「今なら・・ですのっ!!」 急、降下加速、射撃銃撃乱射乱射乱射。掠、掠、直撃。 雹のように突き進む、わたくしの黒。霰のように撃ちつける、マシンガンの弾丸。彼女は直前で回避行動に移り、致命傷には出来なかったものの、よろめいたその姿は弱々しい。 「もう一度でっ!!!」 重、起動。歪。 「えっ!?」 彼女のバックパックが光を放った。刹那、“世界”が戦慄いた気が、して・・・ 重圧。侵略伝播制圧圧縮、重圧重圧重圧重圧重圧、墜落。 「あぁうっ!!?」 気付いた時、目の前にあったのは地平線・・・が逆さまに。わたくしはもう空ではなく地面にいて、地面に打ち付けられていたのだと、激痛の後に知りました。それでも尚、地面は沈み、空気が縮み、視界は歪んで、わたくしの意識も遠く・・・・・・。 『勝者、フォートブラッグ、フォトン!!!』 「もう、飛ぶのは嫌ですの」 トゥールー、私の神姫は擦り切るように言う。昨日、“絶空”フォトンに負けてからずっとそう呟いている。私は、彼女の事も心配だけど、丁度作業からも手が離せないところなので、手元への注意を半分だけ、彼女の声に向ける。 「そうは言っても、あんたって飛行型でしょ? 今更怖いとか言う? って言うより、今まであんな楽しそうに飛んでたじゃない」 「でも! あんな風に“堕ちる”なんて事、今までありませんでしたから・・・。まるで、空が重くなってわたくしを拒絶したみたいに・・・」 「・・・水泳好きが溺れて水恐怖症になるみたいなものか」 まあ無理も無いかもしれない。“絶空”フォトンの特殊装備は擬似重力発生装置だったらしく、バーチャルフィールドが歪んだ用に見えた瞬間、私の見ている目の前で、トゥールーはバトルフィールドの天井から地面まで一気に墜落した。そのまま、戦闘不能で勝負はおしまい。 武器詳細を知らなかったとは言え、うかつに戦わせた私も悪かった。自責の念から、今度は完全に手を止め、彼女の方に振り向く。 「トゥールー、今回は残念だったけれど、気分を変えればまた飛ぶ事だって・・・」 「そうですの! 良く考えたらスピード感を楽しむのに高く飛ぶ必要はありませんでしたの! 思えば、今までどうしてあんなに面倒な事をしていたのでしょう! 低く飛べば高度計算も気流観測も相対距離算出もかんたんですの♪」 「・・・It’s comfy・・・」 心配して損した。 「大体、今の装備では折角マスターが作って下さっている靴が履けませんもの」 すっかり機嫌を戻した彼女が、私の手元に顔を伸ばしてくる。今私が手掛けているのは、小さなルージュ色のピンヒール。店の仕事でたまに作る、オーダーメイドの靴の要領で製作しているトゥールー用の靴だ。彼女としては、これを試作品に神姫用の靴ブランドを立ち上げたいんだと言う。 「・・・って、こんな靴でバトルはやらないでしょ普通」 「え? でも、親切な殿方が『ヒールでぐりぐりは最高の攻撃力だ』って言っておられましたよ?」 ・・・何処のマゾ野郎だか知らないけれど、またこの子に変な知識を覚えさせて。見つけたら去勢してやる。 「・・・バトルで使いたいならそれ用に作ろうか? 走りやすくスニーカー・・・は作った事無いけれど頼めば型紙とか寄越してもらえるし出来ない事も無いよ」 「そうではありませんの! 一目に触れるバトルでこそ、美しく着飾る必要があるんですの!! ホラっ、わたくしが独自に調べたアンケートでも神姫の大多数がバトル前に最も身だしなみを気にすると回答しているですの!」 小さなフリップに描いた円グラフで熱弁するトゥールー。いつもの事ながらどうやって調べているんだか。まあ武装神姫にとってバトルはダンパみたいな感覚なのかな? それなら気持ちは判るけれど。 「でも、そうなると今の作りじゃ強度が危ないな。かと言ってこれ以上コスト高になったら量産しても捌けるか・・・」 「その点は心配ありませんの! わたくしのアンケートでは神姫ユーザーのおよそ半分が神姫用靴ブランドを待ち望んでいるという結果ですの! 特に殿方には『ローファーでオーバーニーソックスもあれば絶対ハアハァ』などと言った意見もあるのですから、後の商品展開も含めて売れないなんて事はまずありません! 何より、マスターの作る靴なんですもの」 素直に喜べない。トゥールーに誉められるのはいい、他の神姫に喜ばれるのもいい、けれどそれより圧倒的多数の野郎共の情欲の道具にされると思うと、どうしても。この子がそんな事には気付きもしない分、尚更ね。 武装神姫の主要ユーザーは男性。そういうニーズがあれば、メーカーもそれに合わせて作るのは当然。神姫の「心」は自由じゃない。例えば、このトゥールーの媚びたお嬢口調。 「・・・ねえトゥールー、前から言ってるけど、その言葉遣いどうにかならない? 今時“~わ”とかすら使う女なんて居ないのに“~ですの”なんて、野郎の幻想の中にしか居ないよ」 「ああ、ですからお優しくして下さる殿方が多いですのね」 「いやそうじゃなくて・・・」 どうしても彼女には私の危惧が伝わらない。只でさえこの子は限定カラーで目を引くんだから、その辺のキモオタ野郎共に拉致される可能性は低くないのに、何度言ってもトゥールーは男を警戒しない。これも、プログラミングなのだろうか。 「マスターは、殿方が嫌いなんですの? それでは恋愛も出来ませんわ」 「欲情だけで動いている連中とは死んでも嫌だね」 「ですけれど、男も女も同じ人間ではありませんの?」 ひたすらに無垢に、疑問の視線が返って来る。それは確かに天使の笑み。けれど邪な心じゃ触れられないとか言う便利な機能は付いてないんだから、もう少し自覚してもらわないと困る。声を整えて、少し強い口調で忠告を始める。 「・・・いい、トゥールー。男と女ってのはね、同じ人間って言ってもevenじゃないの。言わば足と靴なの! 触れ合って同じ感覚を共有する事があったって、本質的には別の存在なんだよ」 「靴が女性で、足が殿方ですの?」 「逆っ!! ・・・男ってのはね、量産された幻想の足型で女を測って、それに合わせさせようとするけれど、結局実際に足を動かして疲れるのは女ばっかりなの! 子孫を残すのも、家庭を支えるのも、結局女が全部やるんだから。男は靴底すり減らして給料稼ぐ位しか出来ないのに、女が下手に出る必要は全く無いの!! 靴が足を選ぶ道理なんて無いでしょ?」 「ですけれど、顔をオーダーメイドするのは女ばかりではないのですの?」 思いがけず反論を飛ばすトゥールー。表情は、穏やかなままで。 「・・・あれはエステの一種と思いなさい。ともかくね、生身と人工物程違いがあるんだから相容れなくて当然、無理して合わせて靴擦れして痛い思いするなんて馬鹿みたいじゃない」 「神姫と靴でしたら、どちらも人工物ですの。丁度いいのではありません?」 再度、彼女からの刺。思わず「さくっ!」と擬音語を叫びたい程に突き刺さる。そこまで、男を擁護したいの? それが、貴女の意思だと言うの? ・・・そうかもしれない。確かに相容れないとしても、歩み寄りたいと思う、それも男と女の本質かもしれない。逆に諭されたのか、私は。 「・・・ごめん、私も言いすぎた。そうだね、私がどう思っているにしろ、貴女が男とどう付き合うかなんて貴女自身が決める事であって・・・」 「それに、神姫なら足のサイズが皆同じですから、その分バリエーションにこだわれますし、お友達と履き替えっこしたりや、部屋用、お出かけ用、バトル用なんて風に何足も揃えても履けなくならないので困りませんの。あ、もし飽きて捨ててしまっても、神姫の使ったものなら別に汚くはありませんから中古価値も高いですの」 「・・・why?」 ちょっと待って、今、物凄い事を口走ったよ、この子。でももしかして靴の例えを神姫用靴の話と取り違えたのかも・・・でも話の流れからすると間違えるとも思えないし。それとも、トゥールーって無駄にマイペースな所があるから、今のも、今までの反論も他意のない思いつき? いやそれにしても・・・。 「ねえマスター、そう言えば、靴下は何に例えるんですの?」 「・・・結婚かな。摩擦を抑えるって意味で」 気にしないことにしよう。うん、それがいい、そうしよう(というか考えると怖い) 「あ、そう言えば。トゥールーはもう飛びたくないんでしょ? でもスピード感は欲しいと」 「でも、脚部換装して地上戦というのも、結局マスターの靴が履けないから嫌ですの」 「じゃあさ、面白い事考えたんだ。これなら靴は何履いてもいいし、スピード感はあるし、何よりit’s stylish!」 「それは、何ですの・・?」 「それはね・・・」 オムニバスなのに続く!!(え~) 目次へ
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武装神姫…今現在爆発的なブームを誇り、その老若男女を問わない人気は旧世紀の ヒット商品、ポケモンや遊戯王カードもかくや。いや、それ以上であろう。 かく言うオレ──日暮 夏彦も、もはや社会現象とさえ言えるそのヒット商品の恩恵に 与ってる一人だ。 「おし、掃き掃除終了…っとぉ」 ゆっくりと伸びをして、目の前の看板を見上げる。 「ホビーショップ エルゴ」三年前に親父の模型屋を改装して始めたオレの城だ。 玩具オタが高じて工学部に通った身の上としては、そのスキルを存分に活用出来る天職。 特に神姫関係には力を入れてて、販売、登録、修理、カスタマイズやオリジナルパーツ の製作まで何でも御座れだ。 そんなに大きな設備じゃないがバトルサービス用の筐体も借金して導入済み、 公式ショップにも登録してある。 そんな努力の甲斐もあってか商売としてはそこそこ快調。 近所の神姫ユーザーには結構支持されてるし、健全経営とは言えないが俺一人 生きていくには問題ない収入がある。 それに…ウチには他の店には無いウリがもう一つあるのだ。 「みなさん、家に帰るまでが学校とはよく言った物。無事にお家に帰る事は当たり前に 見えて大切な事です」 「特に、小さなマスターを持つ神姫はまだまだ充分な注意力を持たないマスターに 代わり、その安全を守る事も大切なお仕事です」 「ですから、マスターと逸れない様にして、しっかりお家に帰りましょうね」 『はーい!うさ大明神様ー!!』 自動ドアを開けて店内に戻る俺の耳に、凛とした女性の声と大勢の少女の声が響いた。 そして、大小さまざまなご主人様に連れられて神姫達が帰っていく。 「毎度ありがとう御座いましたー!」 愛想よくすれ違いに店外へ出て行く客に声を掛け、店内へ戻る。 「よ、御疲れ。大明神様」 声を掛けるのは店内に設えた1/12の教室、その教壇に設えられたハコ馬にのる胸像へ 向けてだ。 「マスター…貴方までその名で呼ぶのは止めて下さい」 非難がましく返事を返すその胸像こそがオレの神姫ジェニー。 所謂ヴァッフェバニータイプってヤツだ。 元々強化パーツとして販売されたこのタイプには素体が付いていない。 その代わりにディスプレイ目的の胸像パーツが付いてたのだが、 ある理由から素体の都合がつかなかったオレが間に合わせにその胸像パーツを チョチョイと改造してボディ代わりに使ってるのがコイツってワケだ。 その姿は旧世紀のバラエティで定番だった銅像コントのあのお方の如し。 その威容をして生徒達からは「ウサ大明神様」の名で親しまれている。 いや、子供の発想力ってのは素晴らしい。ソレが人間でも神姫でも。 っと、説明が前後した。ウチの他に無いウリってのはつまり…この神姫の学校だ。 事の起こりはオレがまだ学生の頃、バイトで塾講師をしていた頃に遡る。 当時塾では生徒の神姫持ち込みを禁止してたのだが、子供がそんな事守るワケもなく それなりに問題になっていた。 で、何をトチ狂ったか塾の方針として勉強中は神姫を預かり、 神姫にも人間社会について勉強を教える。なんて事になってしまったのだ。 そんでもって、白羽の矢が立ったのが既に塾講師内にも玩具オタが知れ渡っていた俺。 …ヨド○シに開店ダッシュは未だに若気の至りだったと思う。 あれさえ目撃されなければ。 とりあえず俺を呼び出した時の塾長の台詞「どうせ持ってるんでしょ?神姫」はかなり トサカに来た事を覚えている。 しかも確かあの時、あの親父は半笑いだった。畜生。 って、それは置いといて。 結局、俺と俺の神姫…ヴァッフェバニーのジェニーは神姫担当教師としてバイトを 辞めるまでの間、しこたま働かされたワケだ。 店を継いだ頃、まだ客足の少ない店への呼び水としてジェニーがもう一度教室を やったらどうかと提案して来た時は少し渋ったが、やってみれば事のほか評判も良く、 実際ウチの店を知って貰ういい切っ掛けになった。 多分オレ一人ではこうはいかなかったろう。 いや、実際腕さえ良ければなんとかなると思ってた俺としては、ジェニーへの感謝は してもしきれない。 「なら、新しい素体買って下さいよ」 「いや、大明神様が居なくなったら純真な子供達の夢が壊れるだろ?」 心を読んだかのようなジェニーの呟きに、即座に返す。なんかブツブツ言ってるけど メンドいので脳内スルー。 「さ、仕事仕事ー」 今日中にカスタマイズせにゃならん神姫が3体。いつまでも遊んでは居られんワケで。 大人は大変なのよ。 「今日も一日、良く働いたねー」 大きく伸びをして時計を見れば時間は午後8:56分。そろそろ閉店時間だ。 そんな平穏を破り、ドタバタと足音を響かせて客が店に転がり込んで来た。 文字通り、転がるように慌てて。 「すいません、まだやってますかっ!?」 …うん、もうしばらくは閉められそうにねぇや。 やって来た客は高校生ぐらいか? 話を聞けば彼のストラーフ「コラン」があるバトルを境にまったく動かなく なったという。 どのショップ、果てはメーカーに問い合わせてもどこにもハードの故障は無く、 プログラムだけがごっそりと無くなっているのだそうだ。 故障として新しいプログラムのインストールを推奨されたが、それはもはや彼の神姫 とは別の物になるという事。 彼はなんとか自分の神姫を救うべく、藁にもすがる思いでウチの評判を頼みに 尋ねて来たのだそうだ。 「少年、キミが最後にやったバトルってのはどんなバトルだったんだ?多分、原因は ソレだぜ」 さっきから、何度もした問い掛けを繰り返す。 この話になると歯切れが悪くなるのは…何だかな、察しは着くが。 「別にオレはメーカーの人間でも警察でもない。例えば…キミが非合法のバトルを やっててもソレで修理を断ったりはしない」 カマを掛けてみる。見る見る青ざめていく少年の顔が、複雑に表情を変えた。 「…ごめんなさいっ!」 開口一番大声で謝り、俯く少年。その肩を叩いて宥める。 ま、バトル派の神姫ユーザーにゃ意外とあるケースだ。 「僕…結構リーグでいいとこまで行ってて…自分の実力を確かめたくて… アンダーグラウンドのバトルに参加したんです」 「…その、最近パーツとかの遣り繰りに困ってて、賞金が欲しかったていうのは あるんですけど…」 申し訳無さそうに少しづつ言葉を絞る少年。頷き、黙って話しを聞く。 「…でも、こんな事を望んでたワケじゃない…バトルは勝ちました、賞金も出ました。 でも、僕のストラーフ…コランが帰って来ない…それじゃ意味が無いんです! 彼女が居ないと…何で…どうしてこんな事に…」 少年の肩が小刻みに震えている。…経緯はどうあれ、自分の神姫の為に泣ける…か。 「少年、そのバトルの参加方法とか解るか?」 「ネットワークのバーチャルバトルです。不具合を調べる時に、関係有るかと思って ログはとってます…」 「でも、そのサイト何時の間にか消えてて…裏バトルだから当たり前なんですけど…」 ログがあるなら話は早い。 「…そのログ貸してくれ。オレが必ず君のストラーフ──コランを直してやるから」 少年が目を見開いてこちらを見る。慌てて鞄からメモリーカードを取り出し。 「このカードに入ってます。あの…お願いしますっ!」 土下座せんばかりの勢いで頭を下げる少年に頷き、もう遅いからという理由で 今日のところは帰した。さて… PCのモニター上をとんでもない速さで流れていく文字の羅列を見ながら、嘆息する。 オレもそこそこやれるつもりなんだが…やっぱコンピュータ自身にゃ勝てんな。 …オレはオレの仕事しよう。携帯電話を取り出し、コールする。 「はい。KMEE神姫バトルサービスサポートセンターで御座います」 受付嬢の柔らかくも清潔感溢れる声が電話の向こうから響く。 いや、何を緊張してるのかオレ。 「あ、私日暮と申しますが。今米主幹いらっしゃいますか?」 「今米で御座いますね?少々お待ち下さい」 おお、良かった。不審がられたらどうしようかと思ったよ。 「もしもし?今米だ。お前か日暮?」 受話器から聞こえるゴツくてかつ加齢臭溢れる声に現実の無常さを感じる。 「うす、今米さん。今なんかトラブってる?神姫強奪事件とか」 「神姫狩りの事か?そりゃ困ってるが…今に始まった事じゃないだろ。 こっち側が噛んでるケースもあるしなぁ」 「いやいや、そういう必要悪じゃなくて。もっとどうしようもねーの」 歯切れの悪い答えを返す今米さんにさらに突っ込む。本気だかはぐらかしてんのか 読みにくいんだよなぁ、この人。 「まぁ、神姫絡みの犯罪やトラブルってのは悲しいかな右肩上がりだからな。しぼれんよ」 「ええと、一見故障じゃないんだけどデータだけごっそり無くなるってヤツなんだけど?」 受話器の向こうからキーボードを叩く音がする。 調べ始めて十数秒ほどか、返事が返って来た。 「ちょっと待て…それならカスタマーやウチを含めて18件来てる。何か掴んだのか?」 お、ビンゴ。 「ああ。ウチの客が被害にあった。今夜辺りなんとかするつもり」 「そうかそうか。そりゃいい、宜しく」 「で、いくら出す?」 「おい待て!?どうせウチとは関係なくやるんだろ?何で身銭切らなきゃならんのだ」 ちぃ、やっぱそう来るか。進歩ねぇな、オレも今米さんも。 「データ、そっちでサルベージした事にしたら評判上がるんじゃねーの? 企業イメージって大事よ、このご時勢」 「む…そりゃそうだが…しかしなぁ」 「どうせこれからたっちゃんに頼むし。嫌なら別にいいけど」 たっちゃんてのは古馴染みの警部さんだ。神姫関連犯罪の担当で色々と世話したり されたりのまぁ、腐れ縁である。 「あー、わかったわかった!そのかわりデータは大丈夫だろうな?」 「任せとけよ。んじゃ、報酬ヨロ」 電話を切る。おっしゃ。これで年末商戦向けの仕入れ費用は何とかなりそうだ。 「ジェニー、どうだ?」 アクセスログから例の違法バトルのサーバを探しているジェニーに声を掛ける。 「見つけてます。ウラも取れそうですよ」 「さっすが。しかし、人の神姫…しかもパーツじゃなくてデータだけなんてな」 「強力なランカー神姫だけ狙うってんならともかく、ランダムだろ?どうすんだか」 溜息混じりにジェニーが答える。 「他人の持ち物を所有したいなんて有り触れた願望だと思いますよ? 肥大した支配欲…とでも言えば的確ですかね」 「そういう向きに高額で販売する…愛玩用のボディにでも入れて。そんなトコでしょう」 冷静に説明してみせるその姿は一見クールだが…解る。 怒ってる、怒ってるよジェニーさん。 「ヘドが出るな」 ま…気分悪いのはオレも同じなんだが。 「準備、出来ているならそろそろ行きませんか?」 「まー待て、連中の潜伏先をたっちゃんに流す」 「猶予は…今23時か。2時間でいいな?」 「充分です」 力強く頷くジェニーに頷き返し、準備を始める。さぁ、久しぶりの副業だ。 >頭部パーツを複合レーダーユニットに換装。マルチバイザー装着。 >コアユニットパージ。メインボディに接続... >ヴァッフェバニーtypeE.S 「Genesis」起動..._ モニターに映し出される文字が彼女の目覚めを告げる。 オレの武装神姫。 Encount Strikerの名を持つカスタムヴァッフェバニー、ジェネシスが。 E.S…遭遇戦域対応を目的とした銀の可変アーマー「シャドウムーン」と背中の複合兵装 「ブラックサン」大型装備は背部ブースターから伸びるフレキシブルアームで全て接続。 移動は全てフライトユニットで行い、状況によって装備位置の変更、可変によりあらゆる 戦況に対応する特別仕様機。 全身フルカスタマイズ、武装も全てオレが玩具コレクションから厳選して改造した ワンオフ品。 本来のレギュレーションを逸脱したその姿はもはや公式戦に参加する事も適わない、 戦う為の神姫。 だが、俺達には必要な力だ。 そうオレとコイツ…「正義の味方」には。 ジェネシスをPCと接続し、ネットワークにダイブ。彼女の眼を介して広がる電脳世界を 駆け抜けていく。 意識を集中し、一心不乱にキーボードを叩くこと数分。例のサーバーに到着した。 情報を偽装しセキュリティホールを開けて侵入を開始。違法バトルのシステムに侵入。 公開ユーザー名には「G」とだけ入れる。コイツがオレの通り名だ。 「ジェニー…いや、ジェネシス。もうすぐ入り口が開く。今回のミッションはサーバーに 侵入後、軟禁状態の神姫を解放。オレの開けたセキュリティホールを経由して転送される 彼女達の護衛だ。行けるな?」 「了解」 「よし。ミッションカウントスタート!状況開始だぜ、相棒」 電脳世界とはいえ…その住人から見れば、往往にして実体を備える世界を形成して 見える。 サーバー内に広がる風景は鬱蒼と茂る森と光を遮る曇天。そして、その中心に聳える 重苦しい、監獄の様な屋敷のみ。 「雰囲気出してんなぁー…」 感心半分呆れ半分、呟く俺。 「マスター、索敵範囲に神姫一体。斥候でしょうか?」 「ちっ…調べられるか?」 「向こうにも気付かれました。近い…マシーンズ反応有り。波形からマオチャオタイプと 推察します。迎撃許可を」 「許可。マシーンズ撃退後本体は捕縛だ」「了解」 ブラックサンに積んだストフリ流用のドラグーンシステムが分離し、マシーンズを正確に 捉える。 相手の反応はまだ無い。レーダー反応精度はこちらが上か。 一度きりの発射音の後、ばたばたと倒れて目を回す、ぷちマスィーンズ。 「にゃにゃっ!?」 茂みから聞こえるその声に、指示を出すより早くジェネシスが反応した。 「其処ですか!」 腕部に装備したアムドラネオダークさん流用のワイヤークローデバイスがマオチャオを 掴み上げ、天高く引き上げる。 おー…猫の一本釣り。 「ひぃやぁーっ!?た、助けて欲しいのにゃー!リィリィお家に帰りたいのにゃー!」 ん?コイツ攫われた神姫か? ワイヤーを巻き取ったジェネシスが衝撃で跳ね上がるマオチャオ…リィリィだっけか。 …を抱き止めた。 「大丈夫。恐くないから…良く頑張ったわね?」 一瞬で柔らかい雰囲気を作り、リィリィの頭を撫でて優しく接する。慣れてるな大明神。 「ふえ?おねーさん…ダレにゃ?」 きょとんとした顔のまま尋ねるリィリィに、オレとジェネシスはここぞとばかりに 不敵に答えた。 『正義の味方…って事で』 「では、あの屋敷に皆捕らわれて居るんですね?」 「そうにゃ、バトル終わったのにリィリィ達ばとるふぃーるどから出られないのにゃ。 そしたらカタクてゴツイのがいっぱい出てきてみんなを捕まえて連れてったにゃ」 リィリィが俺達を案内しながら経緯を説明する。思い出してしまったのか元気がなく、 その声も悲しげだ。 「大丈夫…絶対に助けます」 決意のこもったジェネシスの声。固いヤツだと普段は思うが、こういう実直さは 誇らしくもある。 「はいにゃ…」 嬉しそうに微笑むリィリィの声が、オレの決意も新たにする。 その時だった。前方の地面が唐突に盛り上がる。いや、捕縛者…そいつらが現れたのだ。 「で、出たにゃ!アイツらにゃ!」 慌てふためくリィリィ。とりあえす置いといてそのプログラムを解析する。 神姫と思しき特長は無い。 「捕縛プログラムだな…改造してあるみたいだが、ベースはブロックウェアだ。 多分、特徴も見た目通り」 「つまり…硬い代わりに動きは遅いと」 ブラックサンを前方に構え、トリガーロックを解放する。 前方が展開しメガキャノンモードへ。 「シュート!」 ジェネシスの掛け声と共に放たれたビームの一撃が、一挙に二体を薙ぎ払う。 しかし、安心した瞬間今度はサイドから捕縛者が現れた。 潜行して距離を詰めたか、近い。 「おねーさん、遠距離攻撃型にゃ!?早く逃げるにゃ!」 リィリィが逃げる隙を作ろうとその爪を構える。 「心配後無用」 手品師の様な口調で呟くと、ジェネシスがモードを切り替える。 ブラックサンのサイドのビーム発振機から伸びるビームが重なり、繋がり… 巨大なビーム刃を形成する。 機構はフルスクラッチだが原理はムラマサブラスターと同じだ。 読んでて良かった、クロボン。 体ごと振り回すその巨大な刃に切り裂かれ、さらに周囲を囲んだ4体が破壊される。 「す…すごいにゃぁ…」 リィリィも呆気に取られるばかりだ。いや、ムリもないけど。厨装備でゴメン。 その後も散発的に敵は現れたが、特に問題になる様な事も無く屋敷まであと一歩と いうところまで辿り着いた。 ふと、暫く黙り込んでいたリィリィが口を開く。 「おねーさんのその装備は、どこで買ったのにゃ?」 「いえ、これは全てマスターのお手製なんですよ」 一瞬きょとんとした表情を浮かべるも、微笑みながら答える。 「そうなのにゃ…残念にゃ。リィリィも強力な装備さえあれば皆を助けて… あんなヤツらに負けないにゃ…」 「あ、そうだ!マスターさん、リィリィにも装備を作って下さいにゃ! 装備があれば負けないのにゃ!」 一瞬しょんぼりしつつも、すぐに持ち直したリィリィがなんとこちらに話しを 振ってくる。 ううむ…なんと答えたモンか。 「リィリィさん…それは違います」 オレが悩んで居るうちに、ジェネシスが会話に割って入る。 「装備は、神姫を助けてくれます。でも、神姫を強くしてはくれません。決して」 「そんな事ないにゃ!強いパーツを持ってる神姫は強いにゃ!」 「おねーさんは強いパーツを持ってるから解らないんだにゃ!」 「リィリィさん…」 諭すようなジェネシスの言葉に強く反論するリィリィ。 ジェネシスは悲しそうな瞳でリィリィを見詰めるのみ。 …やれやれ。 「リィリィちゃん、例えばマシーンズが今の3倍の数使えるとしたらどうかな? それは強い?」 「3倍!?それはきっと強いにゃ!でもひぃ、ふぅ、みぃ、はにゃ…混乱するにゃ~」 マシーンズの様な、遠隔操作を要する自律兵器を統率する事は簡単そうに見えて 実は非常に複雑なのだ。 一説にはその制御にリソースを食われてマオチャオシリーズはAI的に幼いなんて説も… いや、それは置いといて。 「ジェネシスはドラグーン6基、クローデバイス2基、フレキシブルアームが5本… コレらすべてを常時コントロールしなきゃいけない。腕が15本あるようなモンかな」 「じっ…じゅうごほん~…こんがらがるにゃあ~」 目を回すリィリィに多少は場の空気が和んだのを感じ、続ける。 「ジェネシスだって最初からこの装備を扱えたワケじゃない」 「というか、この装備自体が改良に改良を重ねて作り上げていった物だから、その過程 で身につけていったって所かな」 一拍置いて言葉を続ける。 「いいかい、リィリィちゃん。強力な武器を持つ神姫が強いんじゃない。 武器を使いこなしその性能を引き出せる神姫が強いんだ」 「今までだって、そんな神姫をリィリィちゃんも見てきた筈だ」 しばらく考えたリィリィが、おずおずと口を開く。 「じゃあ…リィリィも強くなれるかにゃ?おねーさんみたいに…」 「なれるさ。先ずは、一つの武器を極める。誰にも負けないぞってぐらい、その武器の 使い方を身につけるんだ」 リィリィが頷くのをモニタ越しに確認して、続ける。 「そしたら、次はその武器を生かせるような他の武器を選ぶんだ。組み合わせは いっぱいある。そうやって、武器を、戦い方をどんどん身につければ、どんどん 出来る事が増えていく。昨日は出来なかった事が出来るようになる」 「昨日より今日より明日。装備なんか無くたって、そんなリィリィちゃんはずっと 強いんじゃないかな?」 「昨日より…強いアタシ…」 ぱぁ、とリィリィに明るい笑顔が広がる。 「頑張るのにゃ!リィリィ頑張るのにゃ!」 「強い武器がなくたってリィリィは強くなれるのにゃ、皆を守れるにゃー!」 元気に飛び跳ねるリィリィ。自分の可能性に気付いたその表情は明るい。やれやれ。 「マスター…良い話しますね、偶に」 黙って聞いていたジェネシスが、誇らしげに微笑んでいる。 うわ。またやっちまった。オレ、凄い恥ずかしい事言ったよな今? 「いや、アレだ!好きなヒーロー物の受け売りだよ!? ほらヒーロー物はやっぱ人生のバイブルだろ!?」 やけっぱちで弁解する。あー、すっげぇ恥ずかしくなってきた。 「はいはい…」 ジェネシスのこちらを見て笑うその瞳が優しい。やめろ、オレをそんな暖かい目で見るな。 誰かオレを埋めろ。 「では…明日へ希望を繋ぐ為に、行きましょう!」 ジェネシスの呼びかけに屋敷の方を見る。屋敷は既にその威容を目の前に現していた。 薄暗い雑居ビルの一室、サーバー一台とPCが三台並ぶだけの殺風景な室内。 PCにはそれぞれ男達が張り付いてなにやら作業を行なっている。 その表情を一言で言えば…焦燥感。 「どうだ、神姫共は全員捕まえたか?」 ドアを開け、やさぐれた風貌の男が入ってくる。作業していた一人が慌てて腰を上げ。 「ア、アニキッ!それどころじゃねぇんですよ。見覚えの無い神姫が何時の間にか居て、 捕縛プログラムをどんどんブッ壊してるんですよ!」 「ああ?そういうのは登録の時に入れない設定になってるって、ブローカーが言ってた だろうが!テメェ、掴まされやがったな!?」 「ひっ!?いや、そんな事ねぇですよ!コイツ、昨日はいませんでしたって!」 「外から入ったってのか!?アレか、ハッカーってヤツか?どんなヤロウだ」 画面内を駆け回るのは銀色の神姫。アニキと呼ばれる男はユーザー情報を閲覧する。 >Type:WAFFEBUNNY >Name:Genesis >User:G 「…Gだと!?こいつ…あのGか!?って事はコレがウワサのE.Sか!?畜生!!」 「アニキ、コイツ何なんです?」 モニターとアニキと呼ばれるおそらく主犯の男とを交互に見詰める男。 「神姫犯罪が流行りだした頃、どっからともかく現れた自警団気取りのイカレ野郎だよ。 ブローカーから聞いた事がある」 唸るように低く呟く男は、続ける。 「コイツに目をつけられたヤツは必ずヒドイ目に合ったそうだ。神姫にしても コンピュータにしても、とんでもねぇ腕をしてていくつもの連中が被害にあってるって 話でな。神姫犯罪を嗅ぎ付けちゃ、幽霊みたいに現れるって話だ」 男達が話している間にも、銀のヴァッフェバニーは次々とプログラムを破壊していく。 「場合によっちゃタイプ名の後にE.Sって名前がついててな。なんちゃらストライクだか そんな名前だとよ」 「どういう意味か聞いたらよ、その中国人ブローカー漢字で見敵必殺と書きやがった。 笑えねぇ」 舌打ちし、憎々しげにモニターを見詰めて叫ぶ。 「おい、サーバー操作してとっととコイツを弾き出せ!」 「それが、さっきからやってんですけどサーバーをコントロール出来ねぇんですよ!」 「ああっ、畜生!」 部下の男の悲鳴に近い報告を聞き、主犯の男は近くの椅子を力任せに蹴り飛ばす。 追い出せないなら…後は潰すしかない。このままじゃ折角の儲け話がパーだ。 「くそ、こうなったらオレがあのGをブッ殺してやらぁ!例の神姫、使えるな!?」 「あ、へい!言われたとおりにやっときました!」 「よっしゃ…裏稼業でも音に聞こえた神姫のデータだ。強い神姫に目が無い金持ち連中に なら100万…いや、1000万単位でも売れるかもしれねぇ」 男が思考を切り替える。そう、こいつはチャンスだ。こないだも鶴畑とかいう金持ちが 大金積んだとかを自慢してるヤロウを苦々しく見てたが、今度は俺の番ってワケだ。 大金に目を輝かせる男達は、反撃の準備を始める。 「さぁ、儲けさせてくれよ…見敵必殺の武装神姫さんよぉ…」 下卑た男の笑いが、埃っぽいワンルームに低く響いていた。 屋敷内に無数に仕込まれたファイヤーウォールを破壊しつつ、先を急ぐ。 「皆の気配を感じるにゃ!こっちにゃっ!」 興奮気味にしっぽを揺らしながら走り抜けるリィリィに誘導される形で、 ジェネシスが続く。 「ここにゃ!」 叫ぶリィリィが大きな扉を開け放つ。中には不安そうな顔の武装神姫… おいおい、30ぐらいいないかコレ。 「皆、助けに来たにゃ!早く逃げるにゃ!」 わっと歓声を上げる神姫達。リィリィに先導される様に駆け出して行くその殿を ジェネシスが務める。 「マスター…抵抗が少な過ぎませんか?敵方の神姫が一体も出てこないというのは このテの犯罪としてはどうも…」 周囲を警戒しつつ、不安を煽らないように小声で問うジェネシス。 確かに、色々嫌な予感はしていた。 予想は色々出来るが…出来れば外れて欲しい。杞憂であって欲しい。 そういうのに限って当たるんだが。 「リィリィの方を警戒だ。門を開けたら、なんて事にならないように」 「了解」 大きな正門はもうそこまでという所まで来ている。ジェネシスがトリガーロックを外し、 そちらを注視した。 こちらの不安を知ってか知らずか、大きな声でリィリィが叫ぶ。 「開けるにゃ!」 ゆっくりと音を立てて開くその扉の向こうには…曇天が広がるばかりだった。 取り越し苦労か?いや…突如始まる地鳴りが不安を肯定する。地を割って現れたのは 今までとは明らかに異質な敵…神姫だった。 ストラーフの腕を無数に繋げていったようなその姿は、龍のようでもあり、 百足の様でもある。尾部には巨大なブレード、頭部は…その巨大さから良く見えないが 大きな目と爬虫類のような顎から覗く牙が伺える。 「私がやります!リィリィさんは皆を守って!」 ジェネシスが前に出る。確かに、とても普通の武装神姫が戦える相手じゃない。 「解ったにゃ!」 ジェネシスと入れ違いに下がるリィリィが、神姫達とジェネシスの間に入り、 神姫達を守るように立つ。 どうにも嫌な予感がして一声掛けようとしたその時。一瞬、ジェネシスの視界から見た リィリィの背後の神姫達。 ─その表情が消えていた。 「リィリィ!危ない!」 反射的に叫ぶ。だが…オレの叫びと、リィリィが背後のハウリンタイプにその身体を 貫かれるのはほぼ同時だった。 「リィリィさん!」 ジェネシスがハウリンにぶちかましをかけ、リィリィを抱いて上昇する。 地上には操られた神姫達、そして空にはこちらを睨みつける巨大な異形の神姫の頭。 それらと距離を取り、リィリィを安全な場所へ降ろすべく飛ぶ。 「にゃ…どうしたにゃ…痛いにゃ…体が、動かない…にゃぁ…」 「喋らないで…!」 苦痛に歪むリィリィの声を、心配そうなジェネシスの声が遮る。 「みんなは…どうしたのにゃ…?」 「操られています…おそらくウイルスによって」 逃走中の様子に不自然な点は無かった… とすれば、任意で起動する洗脳プログラムだろう。 …その可能性は充分考えられたのだ、罠を感じた時から。 過去にそんな経験が無かったわけでもない。 だが、リィリィにそれを告げる事がどうしても出来ずに、頭のどこかで可能性を 否定していた。 彼女が必死に守る、そんな仲間に気をつけろとは言えなかった。 「すまん、リィリィちゃん…オレが気をつけていれば」 「マスターさんの…せいじゃないにゃ…」 リィリィの微笑みに首を振り、言葉を続ける。 「いや、こんな事もあるかもってさ…心のどこかじゃ考えてたんだ」 「…言えなかったけどな」 不甲斐なさを噛み締め、彼女に謝罪する。 「解ってるにゃ…リィリィが、悲しい思いをしないようにって…言えなかったにゃ…? ありがとにゃ。悪くなんて…無いにゃ…」 何もいえない…言葉に詰まるオレを、ジェネシスが叱責する。 「マスター、私達は何ですか?ここで折れてはならない、負けてはならない。 正義は勝たなければならない」 「勝利する者が正義じゃない。だが、正義を語る者に負けは許されない。 諦めないから、正義は死なない。でしょう?」 …ジェネシスの言葉が、胸の奥を燃やす。そうだ、オレは…やらなきゃならない。 凹むのは、店長稼業だけで充分だ。 「…助けるぞ、全員だ」 「勿論です」 「にゃ。ファイトにゃ…おねーさんはつっよいにゃ…信じてるのにゃあ…」 力なく微笑むリィリィに頷き返す。 「しばらく眠っていて。目覚めた時には貴女は…貴女のマスターのお家に帰ってる。 約束します」 「うん、楽しみ…にゃ」 データ破損状態のまま活動するのは危険な事だ。セーフティが働きスリープモードに 移行したリィリィを丘に降ろし、こちらへ迫る神姫達を見る。 「ここが正念場だな」「はい」 気合を入れたジェネシスが、曇天の空へ飛翔した。 NEXT メニューへ
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貴女はまるで、童話の中の御姫様。 伏せられた瞳に動かない唇。 そんな貴女を見ながら、まだ起きない貴女を思い描く。 貴女は、花の様に笑い、風のように走るのかしら。 貴女は、月の様に佇み、影のように寄り添うのかしら。 貴女は、海の様に優しく、山のように大らかなのかしら。 貴女は、優しく微笑む天使かしら。 貴女は、意地悪く笑う悪魔かしら。 朝は私を起こしてくれるのかしら、それとも私が起こすのかしら。 ご飯を一緒に食べられるかしら、一緒に洗いものも出来るかしら。 私と一緒にお出かけ出来るかしら、一緒に買いも出来るかしら。 貴女は、こんな私を笑うかしら? まだ見ぬ貴女、まだ出会えぬ貴女。 そんな貴女を思い描く私を、笑うかしら。 馬鹿な主だと、愚かな主だと笑うかしら。 でも、良いわ。 貴女と笑って暮らせるのなら。 「お初にお目にかかる。私の識別名はエウクランテ。貴女が私の主であろうか?」 部屋の真ん中に置かれたテーブルの上で、彼女は言った。 一人用のテーブルの上でもなお、その小ささが目立つ彼女は当然人では無い。 武装神姫。 人類の科学の結晶、慎重15cmにして人と同じ外見と、人と同じ心持った機械仕掛けの御姫様。 「そうよ、私が貴女の主? になるの」 絨毯に直に腰を下した私と、彼女の目線にはやはり差がある。 テーブルの分を差し引いても、まだまだ彼女の方が低い。 「それでは主、僭越ながら主の名を聞かせて頂けるだろうか?」 貴女は至極冷静に振舞っているけれど、時折視線が部屋中に飛ぶのを私は見逃さない。 本棚、机、ぬいぐるみ。 どれもが初めて見るものばかりなのだろう。 それを考え、これからを考えると自然と笑みが浮かんでくる。 「私の名前は加奈美。戸坂加奈美よ」 私の笑みに釣られたのか、貴女もようやく笑ってくれた、 とても機械とは思えない。自然で和やかな微笑。 「加奈美……か。とても良い名だ、主。それでは私にも名を与えてはくれないだろうか?」 小首を傾げる動作も、とても機械には見えない。 その全てが新鮮で、愛おしくて、私は不思議な気持ちで貴女の為に考えた、貴女だけの名を呼ぶ。 「……シルフィ、それが貴女の名前よ」 それを聞いた瞬間の貴女の顔は、本当に嬉しそうで、幸せそうで。 私も釣られて嬉しくなるような、素敵な笑顔。 「素晴らしき名だ、主。感謝する」 これから始まる貴女と私の生活。 大きな事件も、胸躍る冒険もいらない。 ただ流れる毎日に、身を委ねて楽しみたい。 「これからよろしくね、シルフィ」 「こちらこそ、主」 先頭へ 次へ -
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前へ 先頭ページ 次へ 「固執」 仰向けに寝ながら、神姫スケール換算地上千メートルを、高速巡行するマイティ。 手足には軽量で対実弾防御力のあるカサハラ製鉄ヴァッフェシリーズのプロテクターを着込み、クリティカルな胸部には同梱装備のアーマー、頭にはヘッドセンサー・アネーロをかぶる。 右手はミニガンではなく、アルヴォPDW9。アーンヴァルの実弾射撃武装はどちらもケースレス方式をとっている。飛び出した薬莢が飛行機動を阻害する恐れがあるためだ。とくに高速移動時にその弊害が見られ、だからミニガンは飛行時に正面へ撃つことができない。 背中のウイングユニットには、ありとあらゆる推進装備がくっつけられている。エクステンドブースター、ランディングギア。そしてヴァッフェシリーズのスラスター。融通の利く動きはほとんどできないが、一方向に集中したノズルは莫大な推進力を生み出す。アラエル戦のバトルプルーブを経て、各パーツの配置が一新され、よりパワーロスが少なくなった。 翼の一方に、バランスの低下を承知で、LC3レーザーライフルを搭載していた。この装備方法では飛んでいる方向にしか撃てない。巡行武装だと割り切っている。 ここはホビーショップ・エルゴの対戦ブースである。このたびの大改装でセカンドリーグにも参加できるようになり、マスターは二駅をまたぐ必要がなくなったのだった。 スペースでは対戦相手がいない場合、こうして一人でテストモードが出きる。トレーニングマシンが普及してから使われなくなった機能だが、現在でも律儀に入れられている。 「どうしてトレーニングマシン、使わないんです?」 店長が訊いた時、 「実戦に使われるフィールドの方が役に立つ」 とマスターは答えた。 確かにトレーニングマシンと実際に試合に使用されるフィールドには若干の差がある。しかしそれは本当に若干なもので、だから皆将来的な経費が押さえられるトレーニングマシンを買うのである。 マスターの家にも無論、トレ-ニングマシンはある。 「マイティ、どうだ」 バーチャル空間の中を飛び回るマイティに話し掛ける。 『やっぱり空気の重さが違います。マシンでできたような無茶な機動が、たぶん出来ません』 バトルスペースのマシンパワーに、やはりトレーニングマシンはかなわない。戦闘中はだいたい高速で動く神姫には、この差は場合によっては致命的な差となる。 マスターもマイティも、今、一種のマンネリを覚えていた。 バトルの成績は悪くはない。ファーストへの昇格はいまだ高嶺の花だが、それでも順当に戦えている。 バトルのアクセス料金、マイティの武装代、メンテナンス料金、武装神姫というカテゴリにかかる料金はすべて、いわゆるファイトマネーでまなかうことが出来た。 余談ではあるが、この「勝てばそれなりに報酬がもらえる」という制度が実現したことが、武装神姫の世界的な発展につながった一翼を担っていると言っても過言ではない。実現にあたっては「ゲームがけがれる」とか「ギャンブルだ」などという辛辣な批判ももちろんあった。 しかし結果として、良い方向に実現した。 第三次世界大戦も起こらなかったし、宇宙人の侵略もなかったのだ。ゲームに報酬が設定された所で、なんのことがあろうか。と、人々が思ったかどうかは分からないが。 閑話休題。 ともかくそれでも、何か初期のキラキラした感覚が鈍くなってきていることは、お互いに分かっていた。 その対処法が分からない。 結局問題は棚上げで、今に至る。 『Here comes a new challenger』 ジャッジAIが挑戦者を告げる。 テストモード中はオンラインオフラインに関わらず、対戦受付はオープンにしてある。当たり前だがシャットアウト機能は無い。対戦スペースにいるのはすべからく対戦許可とみなされるのだ。 相手はオンラインからだった。 『よろしくお願いします』 当り障りの無い挨拶。女性らしい。 「よろしく」 マスターは適当に答える。 相手はセカンド。大体自分と同じような戦績。いや。 最近特に伸びてきている。 マイティがいったん待機スペースへとリターン。 『どうします?』 「例の機能を使ってみようと思う」 『じゃあ、初期装備はこのままですね』 「なるべく広いフィールドの方が良いが、狭くてもすぐ対応できる」 『分かりました』 マイティ、準備完了。 すぐに周囲のポリゴンがばらばらになり、フィールドが再構成される。 『バトルスタート。フィールド・地下空間01』 広大な空洞。高さもあるが、下は一面湖だった。所々に浮島があり、またいたるところに石の柱が立っている。 一方の入り口から、マイティが巡行飛行状態で入場。 もう一方から入ってきたのは、ストラーフタイプだった。 かなり軽装である。 ヴァッフェシリーズのブーツを履き、大腿と手首には同根装備のスパイクアーマーをそれぞれ取り付けている。胸部はハウリンの胸甲・心守。 頭部にフロストゥ・グフロートゥ、二の腕にフロストゥ・クレインを装備しているが、あれでは武器を使用できない。アクセサリーと割り切っているのだろうか。 主武装が新装備のサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと、二体のぷちマスィーン、肆号とオレにゃんしかなかった。プチマスィーンはどちらも射撃用のマシンガン。 何よりも特徴的なのは、メガネをかけていることだった。 「軽装備……?」 それに装飾が過ぎる。 マイティは疑問に思った。 『何か仕込んでいるのかもしれない。気をつけろ』 「了解」 そのまま巡航で近づく。ためしにレーザーライフルを二、三発撃ってみる。 ストラーフが消える。 「!?」 『光学迷彩だ。センサーをサーマルに切り替えろ』 「は、はい」 「はっずれ~♪」 真上から声が聞こえた。背筋が一気に凍りつき、マイティは慌てて後方にマシンガンの 銃口を向けようとする。 がごんっ 胸部をしたたかに打たれ、マイティは失速。落下した。 「な、なに?」 マイティは何が起こったのか分からず混乱した。姿勢を制御するのを忘れる。 『マイティ、機体を起こせ!』 はっ、と気づいてフラップを最大限に傾ける。 水面すれすれでマイティは水平飛行に移る。水しぶきが上がる。 胸部アーマーがべっこりとひしゃげていた。ストラーフは鎌の背でなく、刃で打った。アーマーが無ければ負けていた。 「マスター、今のは!?」 『分からん。瞬間移動に見えた。今解析している』 『調べても無駄よ』 相手のオーナーが言った。 『本当に瞬間移動ですもの』 『何?』 マスターのモニターに相手の画面が現れた。眼鏡を掛けた黒髪の女性。 『公式武装主義者(ノーマリズマー)のマイティに会えて嬉しいわ』 『もう二つ名がついているのか。光栄だな』 『セカンドながらあの鶴畑を倒した実力派ですもの。神姫に入れ込んでいる人間なら、だいたい知っているわ』 『さしずめそちらは特殊装備主義者(スペシャリズマー)というわけか。マイティ』 「は、はい」 『装備Bに切り替える』 「分かりました」 マスターがコンソールを操作する。 マイティはウイングユニットを丸ごと切り離すと、浮島の一つに着地。シロにゃんにコントロールが移ったウイングユニットは、ランディングギアを浮島に落とす。 『サイドボード展開。装備変更』 マイティの脚からブーツが消え、代わりにランディングギアが瞬時に装着される。肩と大腿のプロテクター、そしてひしゃげた胸部アーマーがポリゴンの塵と化し、ふくらはぎのアクセサリポケットが肩に移動。 武装にも変更が加えられた。アルヴォPDW9が消失し、カロッテTMPが出現。 左手首のガードプレートが、右手首同様ライトセイバーに代わる。 予備武装としてランディングギアにバグダント・アーミーブレードを装備。 最後に、天使のような翼が背中から生える。「白き翼」だ。 『飛び方は覚えているな』 「はい。さんざん練習しましたから」 『よし、行け』 ひと羽ばたき。それだけで、マイティは相手のストラーフの立つ浮島へ急速に接近した。 バララララララ 接近しつつTMPを撃つ。 ストラーフはまたもや消失。真左に反応。 左を向いて確認する隙も惜しんで、マイティは反射的に左手のライトセイバーをオン。そのまま切り付ける。 「おっと」 ストラーフは、上、に避けた。 間違いない。こいつは飛べるのだ。 どうやって? 『原理は不明だが瞬間移動が主な移動手段だ。姿勢制御による若干の移動を、頭と二の腕 のブレードと手足でやっている』 マスターが解析した。 なんて飛び方! 後方からがっちりと拘束される。 「おしまいね」 ストラーフがくすっ、と笑う。 鎌が首筋に当てられようとする。 マイティは両肘で相手の腹を打つ。 「やばーん!」 飛び去りながら、ストラーフが叫ぶ。 「うるさいっ」 マイティはTMPを精密射撃。 しかし鎌をくるくると回転させ盾にされる。 二体のぷちマスィーンズが反撃の連射。 マイティは白い翼を前方で閉じる。 翼の表面に銃弾が当たる。が、ダメージは無い。翼は盾にもなるのだ。 「ばあ」 翼を開いた途端、目の前に舌を出したストラーフ。瞬間移動だ。 ガキンッ! 突き出された鎌を、TMPで受ける。TMPは壊れて使い物にならなくなった。 ライトセイバーを伸ばす。ストラーフはあろうことかぷちマスィーンを盾にして後退。マスィーンズは爆砕。ポリゴンになって消える。 「マスター、瞬間移動のパターンは!?」 『今のところ直線距離でしか移動していない』 つまりいきなり後ろに回り込まれることは無いということ。だが、横に移動した後、後ろに、と二段階を踏めばそういった機動も出来てしまう。 あまり意味が無い。 「そうよ、この瞬間移動は自由自在なのよ」 マイティの懸念を見透かしたかのように。ストラーフは笑った。 「しかも」 真横。 「何度も使えちゃう」 真後ろ。 「くうっ……!」 マイティは宙返り。ランディングギアでオーバヘッドキックを浴びせる。 「きゃんっ!?」 頭に命中。ストラーフは急速に落下する。マイティはアーミーブレードを両手に装備。 「やったわねぇっ」 浮島を蹴り、目の前に瞬間移動。 予想通り! マイティはブレードを振り下ろす。f 瞬間移動した直後は瞬間移動できない。当てられる! しかし、ストラーフは消えていた。 「予想通り」 頭上から声。姿勢制御による限定機動! 「お返しよ♪」 頭をぶん殴られ、マイティは一瞬気を失う。 屈辱。殴られるのは一番そう。これは人間も神姫も変わらなかった。 「シロにゃん!」 「にゃーっ!」 いつのまにか接近していたウイングユニットがストラーフに体当たりを仕掛ける。 「そんなハッタリ無駄!」 ズバッ 鎌で一刀両断。ウイングユニットは消えてしまう。 『主義と固執は違うのよ』 ストラーフのオーナーが言う。 『何を……』 『通常装備だけではおのずと限界がある。あなたも薄々感づいているはず』 『何が言いたい』 マスターは苦虫を噛み潰したような顔をした。 『あなたの実力ならファーストには行けるでしょう。でも、ファーストでは固執は許されないわ。認められたあらゆる手段を使わなければ勝てない場所よ』 『アドバイスのつもりか』 『あなたがあの片足の悪魔と戦いたいのなら、ね』 『……!!』 その名前が出てきたことに、マスターは驚きを隠せなかった。 モニターから嫌な音がした。 ストラーフの鎌が、マイティの額を刺し貫いていた。 驚愕に目を見開くマイティ。ポリゴンの火花を撒き散らして、消滅。 『試合終了。Winner,クエンティン』 マスターは初めて、相手の神姫の名前を知った。 マスターはしばらく、コンソールに手をつきながら前を見つめていた。 ハッチの開いたポッドに座り込みながら、マイティはおどおどするしかない。 「帰るぞ」 唐突にそういわれたので、マイティは立ち上がる際転びそうになってしまう。 ねぎらいの言葉を掛ける店長も無視して、マスターは足早に店を出た。 了 前へ 先頭ページ 次へ
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キズナのキセキ ちょっと気が強い神姫と、理想を追い求めたマスターの、絆の物語。 著:トミすけ ○勝手な文章の改変はしないでください。大変迷惑です。 ○バトルロンドのバーチャルバトルの設定を『Mighty Magic』よりお借りしております。 ○一部、武装神姫の性能などを独自解釈している部分があります。ご了承下さい。 ○本作は前作「ウサギのナミダ」の続編です。前作からのキャラクターや設定が引き続き登場しますので、先に「ウサギのナミダ」をお読みになることをお勧めします。 ○コラボ歓迎です。この作品のキャラクターや設定は無理のない限り、自由にお使いいただいてかまいません。 登場人物紹介 (本編のネタバレを含みますのでご注意下さい) ~予告編~ ストーリー ACT0は過去編、ACT1は現在編となっています。 それぞれのACTごとの順番で、時系列順に追うことが出来ます。 お読みになる際には、下記リストの順番でお読みいただければ幸いです。 プロローグ ACT1-1 不機嫌の理由 ACT1-2 情けないほど何も知らない ACT0-1 悲劇の後 ACT0-2 ひどい顔 ACT1-3 かりそめの邂逅 ACT1-4 敗北の記憶 その2 ACT1-5 北斗七星 ACT0-3 アイスドール ACT0-4 二重螺旋 ACT0-5 敗北の記憶 その1 ACT1-6 招かれざる客 ACT1-7 聖女のルーツ その1 ACT1-8 聖女のルーツ その2 ACT1-9 雨音 ACT1-10 最悪の事態 ACT0-6 異邦人誕生 その1 ACT0-7 異邦人誕生 その2 ACT1-11 夕暮れの対峙 ACT1-12 ストリート・ファイト その1 ACT1-13 ストリート・ファイト その2 ACT1-14 謝ることさえ許されない ACT1-15 たった一つの真実 ACT1-16 男たち ACT1-17 遠野の企み ACT1-18 強者たちの宴 ACT1-19 親友だから その1 ACT1-20 親友だから その2 ACT1-21 キズナのキセキ ACT1-22 異邦人はあきらめない ACT1-23 決戦前夜 ACT0-8 理想の体現者 ACT1-24 武士道 ACT1-25 聖女の正体 ACT1-26 狂乱の聖女 ACT1-27 未知との対峙 ACT1-28 すべてがつながるとき ACT1-29 死闘の果て エピローグ 番外編 黒兎と盗賊姫 前編 後編 この物語は、以下の作品の設定やキャラクターをお借りしております。 深み填りと這上姫 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン ねここの飼い方 Mighty Magic ツガル戦術論 武装神姫のリン 凪さん家の十兵衛さん クラブハンド・フォートブラッグ 美咲さんと先生 15cm程度の死闘 武装食堂 感想などありましたら、こちらにコメントをお願いいたします。 過去ログはこちらにまとめました。↓ キズナのキセキ コメントログ キズナのキセキ コメントログ・2 キズナのキセキ コメントログ・3 キズナのキセキ コメントログ・4 初めてコメントします。 あおいお姉様のしてきた事を考えると手放しでハッピーエンドはやはり難しいですか… それでも私は二重螺旋が笑顔で迎えるエンディングを期待しながら、最終話の投稿を楽しみに待って居ります。 -- Yu (2012-08-16 01 55 08) アツい戦いでwktkです!! ついに最終話!!楽しみに待ってます~ -- 神姫中毒 (2012-08-16 10 39 54) 最終回、とても楽しみです! コラボしたいんですが、何分バトロンから8年も経ってるとコラボしづらいですよね…… -- ユキ (2012-08-16 12 08 53) 死ぬな! 生きて帰って来て欲しい -- げしもちゃん (2012-08-16 21 20 17) さて、遠野が何を考えているたのかの種明しが楽しみですね。 このまま終わったら奈々子が報われん。まああの刑事はおそらく……。 -- 第七スレの6 (2012-08-17 23 48 21) エピローグを投稿しました。最終回です。コメントログもまとめました。 初投稿をさかのぼりますと、なんと二年も経っていました。 執筆の遅い私の作品に長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。 また、多くのコラボ作品の筆者様、素晴らしい作品をありがとうございます。皆様の作品なくして、「キズナのキセキ」はありませんでした。 ……あとがきを書こうと思ったのですが、どうにも陳腐なものしか思い浮かばず、断念しました。 一つ私が言うならば、「キズナのキセキ」という作品は、完結を持って作者の手を離れ、読者の皆様のものになったということです。 願わくばこの物語が、皆様に気に入ってもらえることを祈りつつ、筆を置きたいと思います。 長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。 -- トミすけ (2012-08-23 23 15 12) コメントにお答えいたします。 Yu様>初コメントありがとうございます。嬉しいです(^^) エンディングはこのような感じになりましたが、いかがだったでしょうか。お楽しみいただけたなら、嬉しく思います。 神姫中毒様>戦闘シーンは、私も書いていてとても楽しかったです。最終回はいかがだったでしょうか。 げしもちゃんさん>まあ、死んだりはしなかったわけですがw 最終回もお読みいただければ幸いです。 第七スレの6様>長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。エピローグはいかがだったでしょうか。 -- トミすけ (2012-08-23 23 19 55) コラボの件があるので、別コメントで。 ユキ様>コメントありがとうございます。コラボはこのページの上にもあります通り、歓迎です。 時系列については……気にしなくていいんじゃないでしょうか(^^; そうじゃないと、バトマスから入った人の作品は、バトロン時代の作品とコラボできなくなってしまいますから。 そこは自由に考えていただいて、キャラ設定とかはそのままに、バトマスに合わせた戦術戦略なんてのを妄想するのも楽しいと思います。 -- トミすけ (2012-08-24 00 42 39) キズナのキセキ完結お疲れ様でした。 そして、おめでとうございます。 題名通りの「絆」が起こす様々な「奇跡」によって、この素晴らしい物語が完結しましたね~ この度、エピローグを読み終わったのでコメントをしてみたのですが、これから後の物語も外伝として是非読んでみたいです。 遠野さんと菜々子さんの今後。(警察へ連絡をしていた事による言い訳等の痴話喧嘩) ティアとミスティの会話。(ティアがミスティのメンテナンス中に聞いた初代ミスティからの伝言を伝えたり等の2人の絆の確認) 桐島あおいと久住菜々子のコンビプレイ復活劇。(往年の二重螺旋の復活とその活躍風景等) -- ウサギの (2012-08-24 01 13 42) 更に追記。 そして、今回のキズナのキセキのエピローグを読んでみて思ったのですが、マグダレーナは警察に逮捕され、丸亀重工への証拠物件として警察に保護されたままで終わるのか?と思いました。 マグダレーナ自身、イリーガルとして、裏バトルに参加し様々な違法改造された神姫を殺しているし、桐島あおいを助ける為に人を傷つけていたりするかもしれません。 それに、丸亀重工が軍事目的の為に開発した強力な神姫なので、普通には開放出来ないというのは分かるのですが、マグダレーナにも救いが欲しいと思いました。 意識と本人の記憶等、犯罪に繋がる部分を除去して、普通のシスター型として、桐島あおいの元に戻ってきてくれたら良いのにな~と、エピローグを読んでいる途中から思い続けています。 トミすけさんの中では、これで完全に完結しているのでしょうが、マグダレーナへの救いも欲しいと思いました。 桐島あおいとマグダレーナの為の「キズナのキセキ」があっても良いかな~と。 読者が、ウダウダと好き勝手に書いていて申し訳ありません。 大変素晴らしい物語をありがとうございました。 -- ウサギの (2012-08-24 01 14 17) ついに完結ですか。長かったようで実際に楽しんだ時間は短かったというか…。 これで残念ながら楽しみが一つ減ります。お疲れ様でした。 やっぱりあの刑事でしたか。もう店長と並びお馴染ですね。 この後どうなるのか、劇中では軽く流された遠野の家族関係の変化とかが気になります。 そこら辺も読んでみたいかなぁと思っちゃったりとか、そんな一ファンの感想でした。 -- 第七スレの6 (2012-08-24 10 57 18) くっ…仕事中に読んで不覚にも泣きそうになったです…あくびしたデスとごまかしておきましたが! 読みだした当初からとても大好きな作品で完結したこと、読めたことがとても嬉しく思います。 今後の作品を楽しみにしております! そして完結おめでとうございます!! -- 神姫中毒 (2012-08-24 11 44 17) 物語の完結、お疲れ様です。長い物語での起承転結がしっかりしており、伏線もしっかり回収された丁寧な作りこみは見る度に感心し、学ぶものが多かったです。 話の結末はしっかりとまとまった大団円で見ていて非常に気持ちのいいものでした。 誰にも打ち明けずに進めてきた計画の上での遠野の行動は菜々子を助けるだけでなく、あおいを救い、結果としてマクダレーナの心すらも変えましたな。 異なる三人の傷ついている心を開かせ、周りの人を変えていける遠野は本当に色々な意味で強い人ですね。 たった一人のためにここまでできて、その上、周りを動かしていける人なんてそうはいません。 素晴らしい物語をありがとうございました。トミすけさんの次回の作品を楽しみにしております。 -- 夜虹 (2012-08-24 21 50 59) ついに完結してしまいました……ッ! 読み終えた直後の感想がそれでした。完結、おめでとうございます。 物語の開始当初、あれだけ凶悪だったマグダレーナが、最後にはあおいに対してあれだけの変化を迎えましたね。それも、ミスティとのすべてをかけたぶつかり合いや、あおい、遠野君たちとの関わり合いがあったからでしょうね。 そして、遠野君や仲間たちの力を得て、全力で戦い抜いた菜々子さんとミスティ。彼女たちにも「お疲れ様です」と言いたいです(うちの食堂からも四人も出演させていただいて感激でした)。 トミすけさんの次回作も楽しみにしています。 ……いや、以前のトミすけさんのコメントから察するに、まだ番外編が残ってるんですよね? ね? -- ばるかん (2012-08-25 00 12 46) 完結おめでとう御座います。読んだ後、あぁ楽しかった。と思える本当に素晴らしいエンディングでした。 ただ一つだけ遠野君にツッコミを「気を使うなら、目なんて閉じてないで、菜々子さん分のドーナツをゆっくり選んで来なさい」…まぁソコまで気を回したら遠野君らしくない気もしますが…w もしあるのなら番外編や次回作も楽しみに待って居ます。 個人的には、あおいお姉様に「武装神姫を続けるから私にピッタリの子を選んでね♪」とか無茶ぶりされて右往左往する遠野君と菜々子さんがみたいな番外編がいいなぁとか妄想しておりますw -- Yu (2012-08-28 03 50 18) 読み返し中に怪しい文章ハッケン! 1-18 二つ目の「□」記号の直後「、八重樫さんくらいだ。彼女が考えたの対戦の組み合わせなら」 部分、「考えた対戦の組み合わせ~」なのかな?と思ってみたり・・・ -- 神姫中毒 (2012-08-28 14 17 36) 長い間の執筆ご苦労様でした。 一年半ほど前に神姫を知り、神姫とマスターとの絆を描いた前作 そしてマスターとマスターとの絆を編み上げた今作を、ときには可笑しく ときには大きな感動と共に読ませて頂きました。 やはり神姫の物語は彼女らの存在理由そのものである「絆」という テーマが似合いますね。 個人的に冒頭の桜吹雪に佇む美女二人のシーンや、前作よりも寡黙で 「当たり前の積み重ねだ」と難局を打開する主人公が私の好きな 某古本屋の主の作品とダブり、この先どんなサプライズがあるのだろうかと 妙にワクワクしてしまいました。 ともあれ、完結おめでとう御座いました。 次のエピソードは「女帝」との決戦? 次回作も楽しみにしています。 -- のらくろ (2012-09-03 00 19 35) 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。 多くの神姫とそのマスター達が紡いだ絆の物語堪能させていただきました。 他の方も仰っていますが個人的にはマグダレーナさんのその後が気なりますね、きっともう1つの奇跡が起こるのだろうと勝手に妄想しています。 次回作も楽しみにしています。 -- 紙白 (2012-09-04 21 40 54) ご無沙汰しております。 最終回のコメント、たくさんいただきまして本当に感謝しております。 遅くなりましたが、コメントにご返答させていただきます。 ウサギの様>コメントありがとうございます。見たいシーンをいろいろあげていただきましたが、それらは読者の皆様の想像にお任せいたします。 マグダレーナについては、作者からこれ以上申し上げることはありません。もしかしたら、どこか別の物語で登場してたりすると面白いかもしれませんね(笑) 第七スレの6様>投稿開始当時から長らくお付き合いいただきありがとうございました。遠野君の家族関係については……書けるといいなぁ。 -- トミすけ (2013-02-03 00 31 53) 神姫中毒様>当初から大好きと言っていただき、作者冥利に尽きます。ラストも気に入っていただけたならよいのですが。 夜虹様>過分なお言葉をいただき、大変恐縮です。そして、最新作では全面的に夜虹様のキャラクターに出てもらってしまいました。ご容赦いただければ幸いですm(_ _)m ばるかん様>武装食堂から四人出演いただいたこと、大変ありがたく思っております。お待ちかねの番外編、お楽しみいただけたら嬉しいです。 Yu様>お楽しみいただけたようで、胸をなで下ろしています。確かに遠野は気が利きませんねw のらくろ様>コメントありがとうございます。某古本屋の主といえば……京極堂でしょうか。思えば、桜吹雪に美女二人というシーンは、影響があったかもしれません。 紙白様>完結お祝いいただきありがとうございます。久々の投稿、お楽しみいただければと思います。 -- トミすけ (2013-02-03 00 32 35) さて、本編完結から半年近く経って、やっと投稿できます。 この番外編は相当難産でした。 ですが、本編の「特訓場」のシチュエーションにおいて、皆さんが見たい対戦カードではありませんでしたか? いや、私が一番読みたかった対戦なのですw ちょうど夜虹様が新作を投稿された、絶妙のタイミングで一人悦に入っております。 お楽しみいただければ幸いです。 -- トミすけ (2013-02-03 00 36 09) ティアと蒼貴は超一流の神姫ですね 2人のマスターはプロ級です すごいです -- げしもちゃん (2013-02-04 07 38 41) 番外編キター!!! もう待ちわびてましたよ~ 本編ではあまり絡まなかった二人だけに確かに気になるカードでした! 個人的には復帰したアクアとか、成長した虎実の活躍も見てみたいなー…とか 作中に登場する神姫も人間も魅力的過ぎるので見てみたい組み合わせがいっぱいです>< 今後の更新も楽しみにしてますっ!! -- 神姫中毒 (2013-02-04 15 39 53) おせっかいながら文章的な疑問点… 前編 尊氏の序盤のセリフ内 「つまり、ネットワークをに強い神姫ってことだな」 がありましたです。 -- 神姫中毒 (2013-02-04 16 06 44) 後編 2つ目の♦以下 装備を工夫し技を磨いき がありましたです。 -- 神姫中毒 (2013-02-04 16 29 58) 黒兎と盗賊姫、見させていただきました。互いの手札を全て出し尽くしての総力戦は見事でした。 武装奪取をこんな方法で防いでくるとは予想外でしたし、トミすけさんの描く蒼貴の戦い方、動きと学ぶ所も多かったです。 話の内容も最初から最後まで尊と遠野、蒼貴とティアと神姫とマスターの共通の点の光る展開でとても面白いかったです。 実際に対面してみると話し方、戦い方、性格と本当に近いもので、違いは戦い方と進む道ぐらいなものですね。それもまた個性という名の違いで、面白いものですよね。 それにしても尊と遠野が手を組んで立ち向かう事件……もし、あるとしたらいったい何が起きるのか……面白そうですね。 -- 夜虹 (2013-02-07 00 44 24) 何となくウサギのナミダから読み返してて気付いたんですが、一番最初のティアvsミスティ戦で既に二重螺旋って単語が出てたんですね…こんな所に伏線があるなんて…。 って今更気が付いたのかよって感じですね。 -- Yu (2013-02-10 15 18 53) ご無沙汰しております。トミすけです。 この一年ほどで、わたしの作品2作が誰かに加筆されております。 わたしの意図しない文章が入っているのは、正直気味が悪いです。 これより修正していきますが、現状ではわたしが意図しない文章や展開が含まれることをご了承下さい。 他のサイトでの公開も検討中です。 -- トミすけ (2023-02-05 00 19 15) 文章の修復が完了しました。 本来のキズナのキセキをお楽しみいただけます。 文章を自分の好みで勝手に改変するのは、作者にも読者にも迷惑ですのでおやめください。 -- 名無しさん (2023-02-05 11 51 52) 名前 コメント
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単発作品用トップページ このページは? このページは、『一発ネタを思いついたんだけど、どうにも本スレには投下しづらい。かといって連作にするかどうかもわかんないからwikiにも投下しづらいぜ!』という作者さん向けの単発作品用トップページです。ログイン不要で編集も出来ますので、お気軽にどうぞ。 そして続きを思いついたりそれを妄想のままに書き上げてしまったりすれば、その作品のトップページにリンクを張り直してください。 連載を持っておられる作者さんも、思いつきなどあれば遠慮無く! 以下のテンプレをコピー&ペーストして、作品へのリンクを張るだけの簡単仕様です(wikiの基本的な使い方はトップページを参照してください)。 テンプレ開始 タイトル ここに作品のページへのリンクをどうぞ 簡単な紹介などあればこちらに。登場人物紹介などは、単発の場合、本編の冒頭や巻末に書いた方が良いかも。 テンプレおわり ↓作品へのリンクはこれ以下に貼っていってください。 天使のたまご ひょんなことから神姫のマスターになった青年と、ちょっと(だいぶ?)おまぬけな神姫の物語 音声ファイル2036 単発妄想ネタです。なんだかMightyMagicの十話とネタ が被ってしまった。 三十路の独身男性、自営業の場合 実際に神姫がいたら、こーゆーコトをしてもらいたいな、と。 バトルだけではなく、多方面で活躍するんじゃなかろうか、と。 第五弾発表 ある天使型の場合 第五弾の鳥型。装備が完全に被ってます。これを見た天使型の反応は如何に。 本当に一発ネタです。 弾丸神姫 神姫バトル初期の頃には、少ない装備のなかでこんなコンセプトの神姫もいたんじゃないかなー、という話です。 騎士子のヴァレンタイン大作戦 時事ネタです しかしなぜか妄想全開のバトルモノに… うっかりページタイトルを「騎士子」にしてしまいました… ねここの飼い方からゲストを出演させていただいてます 目覚めればそこは 素体購入記念。組み替え最中にふと思い付いた一コマ。 花は咲き乱れて※注意!18禁です 花子えっち 買うときは中身を確認しましょう 花種きてから数日後・・・ R18指定 どうしようもない神姫オーナーのお話。 こんな事がポンポン浮かぶ俺って・・・救いようがないな(w 埋め騒動 ややR18指定 スレの埋めに端を発した小騒動。 きっかけは 615の一行だった。 615氏に最大級の感謝。 シラヌイと僕のこと かなり長いです。 神姫狩人からねこねこ団にご登場願いました。 ツーリング@2036 バイクと神姫ネタ。 30年後の道路を走っているモノって、どう進化しているんだろうか、と。 リセット(ギャグです) 役立たずのハウリンにリセットの危機が・・・。 一見残虐物、実はギャグ。 ゆめであえたら どこにでもありうる、とある武装神姫とオーナーのお話。 *注:暗いです。 ネコのマスターの誕生日 誕生日ネタ。 自分の誕生日って人に忘れられると悲しいですよね。とか言って人の誕生日はすぐ忘れますが。 203X年 とある新聞の神姫特集(カコミ) 御免なさい。例によって酒の勢いで書いちゃいました。第七弾ネタです。白黒兎以来の神姫購入になりそう。 チェイング! 鳥子三体が繰り広げる小ネタ。 黒子ときっしー(超適当) SS総合掲示板へ投稿したものの再録。単発ページ投稿にあたり、新規の方向けに固有名詞など調整。一年前のもの。 種子さんときっしー(超仮タイトル) 「黒子さんときっしー(超適当)」を書いた時に考えていたネタ。長いです。本来なら上中下か上下にわけるくらい。でも単発なので一本。 デレなきっしー(蝶適当) 「種子さんときっしー(超仮タイトル)」のスピンアウト、余り、っつーかおまけ。上記タイトルの本文だったのだけど、焦点がボケるので本文から削除したもの。でも面白い描写ができたかな?と思ったので、独立して投稿。 あるオーナーと神姫 どこかの誰かの話。絆っていつ繋がるかわからないもの。(残酷描写があります。ご注意を) 桜舞 もしかしたら、こんなことしてる人たちがいるかも、しれません。 あるオーナーと神姫 牙 どこかの犬とオーナーの話。自分を楽しむと敵が多いかも? アホ毛ネタ 「ねここの飼い方・光と影」に寄稿された漫画を読んで浮かんだ小ネタ。 ゼルノとぼくの初対面 ゼルノグラードを入手した「ぼく」と彼女とのショートショート。 本スレからの再録です。 ある「とても平和な」日の話。 彼女は真面目、オーナーは・・・ 雪国の風景 季節は冬、北海道にある実家へと里帰りしたオーナーと犬子のSS S-R-princess むるちーメインで書きたかった。それだけです。 皆様の作品に肩を並べられるかわからないので、こちらにいます。 神姫に願いを 神姫に願いをかけたなら…… トップページ