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「ふわぁ~、朝早く目が覚めたのはいいけど……な~んか暇だなぁ」 欠伸をしながらPCの電源を落とす。 春休みに入って数日が経った。 この数日間は、漫画・DVD・積ゲーの処理を寝る間も惜しんでやった。 もちろん、合間合間にネトゲもやった。 集中的に遊びすぎて、さすがにどれも飽きてきた感がある。 「今日はかがみ達と会って遊ぶかねぇ」 現在時刻は朝の8時30分。 今から誘いをかければ午後からたっぷり遊べるだろう。 もちろん、ただ遊ぶだけが目的ではないのだけれども。 今年はこの短い休みにも宿題がきっちりと出されていた。 できることなら、最終日までに余裕をもって写しておきたい。 宿題を写して憂いを絶つ、それもかがみを誘う目的のひとつだ。 それはそうとして、だ。 いったい今日は何月何日で、休みはあと何日残っているのだろうか。 確認するためにカレンダーを見る。 まあ、カレンダーは好きな絵師のところで止めてあり、ここ何ヶ月も捲っていないので見たところで無駄なのだが。 「あ。そういえば」 ベッドを置いてある方の壁を見る。 そこには日めくりカレンダーが掛かっていた。 『今日が何月何日かぐらい常に把握しろ』 とか言って、お節介にもかがみが勝手に掛けていったものだ。 まあ、自分が持て余してたのを持って来ただけなのかもしれない。 ちなみにこのカレンダー、私はまだ一度も捲ったことがない。 捲っているのはかがみだ。 この部屋に遊びに来るたび、文句を言いながら4~5枚捲っている。 『私がせっかくプレゼントした意味がないじゃないの!』 とかなんとか言いながら。 今は、かがみが最後に家に遊びにきた日――3月25日――で止まったままだ。 「たまには、自分でめくってみようかネ」 記憶をたどり、深夜アニメを見た回数分だけびりびりと捲る。 今期は割と良作が揃っていて、毎日アニメを見ているから捲る枚数を間違えることは絶対にない。 極めて私流ではあるが、このカウント方法に頼るのが1番確実だったりする。 捲ったカレンダーはくしゃくしゃにまるめて、ゴミ箱にポイだ。 「……ほほう」 カレンダーが示している日付を見て、ニヤリと笑う。 体のダルさが吹き飛び、頭の中が冴え渡ってくる。 その日付表示は、私のエンジンに火をつけたのだ。 4月1日。 そう、今日はエイプリルフール。 つまり、嘘をついていい日。 なんだか、よくわからない使命感で み な ぎ っ て き た 。 よし!毎日の勉強で疲れているだろう友人達に、最高のユーモアをプレゼントしてさしあげようじゃないか! かの有名な“ド○えもん”という作品において、源し○か氏はこのような事を言っていた。 『人を喜ばせておいて、がっかりさせるような嘘はよくない』 『だから、嘘とわかった時に喜べるような“親切な嘘”をつくべきだ』 ここに高らかに宣言する!私はつこう、親切な嘘を!! ☆ まずは、かがみからだ。 携帯に電話をかける。 休みだというのに既に起きて活動していたのであろう、数回のコールですぐに出た。 「もしもし、こなた?あんたにしては珍しく早起きね」 「……かがみ……」 「どうしたのよ、なんか元気ないわねー。休みボケかぁ?」 「はは……そんなとこ、かな」 「ちょ、ちょっと、ホントに大丈夫なの?」 かがみの声色が心配を含んだものに変わる。 ここまでは順調。 「う、うん。まあ、だいじょぶ」 「そう?ならいいけど。それで、用件は?」 「えっとね、実は、私……や、やっぱいいや!」 「はぁ?」 「うん、悪いけど今のナシ。忘れて!じゃあね!」 「あっ、待ちなさいよ!」 ここで一方的に電話を切る。 かがみの性格からしてすぐにでも電話が……よし、かかってきた! 少し間を置いてから電話にでる。 「も、もしもし?」 「ちょっと、こなた!さっきの電話は何なのよ!?一方的に切ったりして!」 「なんでもないよ」 「とりあえず用件を最後までちゃんと言いなさいよ!気になるじゃない!」 「だから、なんでもないって」 「だから、なんでもないなら最後まで言えばいいって言ってんでしょ!?」 「しつこいよ!!なんでもないんだってば!!!!」 「……」 「……ごめん。怒鳴ったりして」 「……ううん。私もちょっと、大人気なかったわ。えっと、もう切るわね」 「あ、待って!……ねえ、かがみはさ……私の友達、だよね?」 「何?急にどうしたのよ?」 「いいから答えて!言っとくけど、私、真剣だよ?ネタとかじゃないよ?」 「……もちろん友達よ。親友って言ってもいいわ」 さあ、盛り上がってまいりました。 かがみの声は真剣そのもの。 微塵も私が演技をしていると疑っていないことうけあい。 いやあ、私もなかなかの演技派だネ。 「ありがと、本当に嬉しいよ……実はね、私、虐められてるんだ」 「イジメ?そんな……ウソ、でしょ?」 「かがみには隠してたけど、同じクラスのみんなから、私……私ッ!」 「何よソレ!!許せない!!いつから!?いったい誰が!?」 「去年の11月くらいから、カナ。始めたのは……その……つかさ、だよ」 「なっ……!!」 さて、仕上げに移りますか。 「ね、かがみ。いろいろ相談したいからさ、できればウチに来てほしいんだ」 「……いいわ。いつ行けばいいの?」 「じゃあ、1時頃に来てくれる?もちろん、つかさとみゆきさんには内緒で」 「ええ。わかったわ」 「ねえ、かがみに電話したこと、2人には内緒にしといてもらえるよね?」 「大丈夫よ、安心して。何があっても、私はあんたの味方だから」 「ありがと。かがみ」 「お礼なんていらないわよ」 「ついでに、春休みの宿題を見せてくれると嬉しいんだけどなぁ」 「ふふっ、いつもの調子が戻ってきたじゃない。ま、考えとくわ。じゃあ1時にね」 これでよし。 ウチに来たら全てをばらして、その後は一緒に遊べばいい。 完璧な計画だ。 ☆ さて、ターゲットは残り2人。 次の狙いは当然つかさだ。 早めに攻略しておかないと、かがみへの嘘がバレるかもしれないしね。 携帯に電話をかける。 3回も留守番電話センターに接続され、諦めようかなんて思い始めた頃にやっと出てくれた。 「もしもし、つかさ?」 「もしもし~、こなちゃん?……ふわぁ~、おはよ~」 「おはよ。ごめんね、朝早くに電話しちゃって」 「ううん、いいよ~。今日は早く起きるつもりだったし」 「そうなんだ」 「うん。今日から宿題をがんばろうかな~って。えへへ」 つかさの声はまだ眠そうだ。 この様子だと、少しばかり荒唐無稽な嘘でも信じてくれるだろう。 「ねえ、つかさに相談したい事があるんだけど」 「え?相談?」 「うん。いいかな?」 「うん。いいよ~。でも、私よりお姉ちゃんやゆきちゃんの方が――」 「つかさじゃなきゃダメなんだよ」 「えっ?」 「あの2人には、相談できないんだ」 「えっ?ど、どういうこと?」 急に真剣みを帯びた私の声に、つかさが戸惑いをみせる。 我、機を得たり。 ここからは一気にたたみかけよう。 「実はね、私、みゆきさんのモルモットにされてるんだ」 「も、もるもっと?」 「うん。いわゆる実験動物。いろんな薬を飲まされたり、注射されたり……」 「へ、変な冗談はやめてよ、こなちゃん。ゆきちゃんは、そんなことするような――」 「かがみも被害者なんだよ?かがみは私よりずっと前からみゆきさんに遊ばれてたんだ」 「お、お姉ちゃんが?」 「私もかがみから同じように相談されてさ、その時は何かのネタだと思って信じなかった。でも、それが間違いだった」 「う、嘘!嘘だよね、こなちゃん!?ねえ――」 「私はかがみを救えなかったんだ……今のかがみはみゆきさんの命令に逆らえなくなってて、私を監視しているみたい」 「そんなの嘘だよ!こなちゃん、いくら私でもいいかげん怒るよ!?」 「お願いだから信じてよ、つかさ……ねえ、最近さ、かがみの様子に何か、その、違和感とか感じなかった?」 「あ……」 つかさが黙り込む。 なんたる幸運。 何かしら思い当たる事でもあったのだろう。 だとしたら、これ以上の演技は蛇足だ。 そろそろ仕上げに移ってもいいだろう。 「ね、つかさ。いろいろ相談したいからさ、できればウチに来てほしいんだ」 「……うん。いつ行けばいいの?」 「じゃあ、1時半頃に来てくれるかな?わかってるとは思うけど、かがみとみゆきさんには内緒だよ」 「うん」 「もちろん、私がこんな電話をしたことも内緒だよ?つかさだって無事じゃいられないかもしれないし」 「う、うん。わかった。気をつけるよ」 「ありがと。つかさ」 「お礼なんていいよ。私もひとりじゃ心細いし」 「それと、出かける時だけどさ、かがみには図書館で宿題してくるとか言ってごまかせばいいと思うよ」 「うん。そうするよ。えっと、1時半だよね」 これでよし。 これで、つかさがかがみに接近する可能性はぐっと低くなった。 かがみへの嘘もバレにくくなったという訳だ。 それに、つかさは宿題の道具を持って移動することになるから、ばらした後に一緒に宿題をすることもできる。 我ながら完璧な配慮だ。 先に着いているかがみと一緒になってネタばらしをして楽しめば、かがみの怒りもいくらか収まることだろう。 さてさて、ターゲットは残り1人。 ☆ 「それで、みゆきさんに相談したいことがあってさ。いいかな?」 「はい。私でよろしければ、遠慮なくどうぞ」 ラストバッターは陵桜の誇る秀才、みゆきさんだ。 かなり手ごわい相手といえるだろう。 嘘を信じさせるためには、相手のバランスを崩しスキをつくらなければならない。 かがみは、親友が虐められているという情報にカッとなりスキが生まれた。 つかさは、まあ、いつものとおりスキだらけだった。寝起きだったしね。 「つかさにはまだ内緒にしててほしいんだけどさ、私ね、去年の冬休み初日にかがみに告白されたんだ」 「はあ。告白、ですか?」 「うん。愛の告白ってやつ」 「ええっ!?し、しかし、泉さんとかがみさんは、その……」 「うん。女の子同士、なんだよね。もちろん私はそういった趣味ないからさ、きっぱり断ったんだ」 「は、はあ」 「翌日からはいつもどおりの関係に戻ろうねって話で決着がついたから、みんなは気が付かなかったと思うけど」 「そうですね。少なくとも私は、まったく気がつきませんでした」 「だよね。だから私は、かがみもちゃんと諦めてくれたんだ、と思って安心してたんだけどね……でも、そうじゃなかったんだ」 「ということは、かがみさんと何かあったのですか?」 「……襲われちゃったんだ」 「え?襲われ?え?……ええっ!?」 「春休みの前日、いつものようにかがみが家に遊びに来たんだ。その日は家に私しかいなかったんだけど――」 「い、泉さん!悪質な冗談はやめてください!私には、かがみさんがそのような事をするお方に思えません!」 「私だって!!!!私だって、かがみがそんなことするなんて思ってなかった!!!!」 「あ……」 「私はその日、写真まで撮られた。その日からかがみはその写真をネタに、私のことを毎日のように――」 「そんな……嘘……嘘です。そんな、ひどいこと……」 そこからは私の妄想を織り交ぜつつ、かがみが私を襲った状況を簡単に説明。 みゆきさんを崩すには、みゆきさんの知識・経験が乏しい世界を舞台にする必要がある。 つまり、18歳未満禁止かつアブノーマルな、とっても危ない世界。 バーチャルとは言え、私の方は経験豊富なのだ。 この土俵で闘えば、私が負ける要素はほとんどない。 「ね、みゆきさん。できれば会って相談したいんだ。ウチに来てくれないかな」 「……わかりました。いつ、お伺いすればよろしいのでしょうか?」 「急で悪いんだけど、今日の2時とかじゃダメかな?その時間、家は私ひとりになっちゃうし」 「わかりました。2時、ですね」 「それから、この話なんだけどさ」 「はい。誰にも話しませんので、安心してください」 「ありがと。みゆきさん」 「いえ。私でお力になれるかどうか」 「それと、かがみが感づいた時のために、表向きは今日は勉強会ってことにしてほしいんだ」 「わかりました。勉強会、ですね」 みゆきさんは『恐れ入りますが、まだ泉さんの言い分を全て信じた訳ではありませんので』と言ってから電話を切った。 ううむ。この辺りはさすがに手ごわい。 まあ、とりあえずミッションコンプリートだ。 これで、上手くいけば2時には4人が勉強道具持参で我が家に集うわけだ。 それまで何をして待っていようかなぁ。 あ、そうだ。 一応、嘘をついたおわびとして手作りお菓子でも用意して待っていよう。 そうと決まれば台所へ行きますかネ。 よっこいしょういち、っと。 ☆ まさか、こなたがイジメをうけていただなんて。 しかもつかさが、私の妹が、その犯人だなんて…… 一刻も早く事の詳細を知りたい。 いてもたってもいられない。 約束は1時だが、30分程度なら早めに行っても問題ないだろう。 お昼はパンでも買って食べて、さっさとこなたの家に向かおう。 手早くまとめた荷物をもって自分の部屋から出ると、つかさとばったり出会ってしまう。 つかさも出かけるところなのか、私と同じように荷物を持っている。 思わず睨みつけそうになるが、ぐっと我慢する。 私がイジメの事を知っていると悟られたら、情報源のこなたに迷惑がかかるかもしれない。 「おはよう、つかさ。今日は早起きね」 「おおお、おはよう。お、お姉ちゃん。え、え~っと、何だか目が覚めちゃって」 「何をそんなに慌ててるのかしら?」 「えっ!?あ、慌ててなんかないよ?お、お姉ちゃんこそ、恐い顔してどうしたの?」 いけない。怒りが顔に出てしまっていたようだ。 「な、なんでもないわ。宿題でわからない問題があって、少しイライラしてただけ」 「そ、そうなんだ」 「そういえば、つかさも出かけるところなの?」 「あ、うん。お姉ちゃんも?」 「そうだけど……ねえ、もしかして……つかさは、こなたの家に行くつもりだったりする?」 「え!?ううん、ち、違うよ!!……図書館!そう、私は図書館に宿題をしに行くんだよ!」 ☆ 最近、お姉ちゃんの様子がおかしい。 食事の量も減ったみたいだし、お菓子もあまり食べようとしない。 些細な事ですぐイライラするようになったみたいで、私も何度か怒鳴られたりした。 もちろん、その度に後から謝ってはくれるのだけど。 机にふせっていることが増えたし、夜こっそりと出かける回数も増えていた。 ――こなちゃんの言ってたことは、やっぱり本当なんだろうか。 こなちゃんは1時半って言ってたけど、もう行ってしまおうかな。 こんな状態でお姉ちゃんと同じ屋根の下にいたら、私の気持ちがまいっちゃうよ。 とりあえず、早く相談して、早く解決しなきゃ。 カモフラージュ用の勉強道具をバッグに詰めて部屋を出る。 しかしそこで、タイミング悪くお姉ちゃんと会ってしまった。 「――つかさは、こなたの家に行くつもりだったりする?」 「え!?ううん、ち、違うよ!!……図書館!そう、私は図書館に宿題をしに行くんだよ!」 「ふーん……珍しいわね」 「そ、そろそろ頑張ろうかな~って思って」 「それが本当なら、いいことなんだけどね」 こなちゃんの言った事は、やっぱり本当だ。 お姉ちゃんの様子はやっぱりおかしい。 私のことをじっと睨みつけてきたかと思えば、品定めするようにジロジロと見てくる。 それに何故か、私の行き先がこなちゃんの家かどうか、なんて質問を突然にしてきた。 こなちゃんの家に私が行くと都合が悪いのだろうか? もしかして、こなちゃんの身に何かが…… そうか!もしかしたら、まさに今、ゆきちゃんがこなちゃんのことを狙っているのかもしれない! だから、他の誰かがこなちゃん家に行ったら不都合なんだ。 お姉ちゃんは、私がこなちゃん家に行かないよう監視しているんだ。 そうだ!そうに違いない! 私がこなちゃんを救わなきゃ! 「お姉ちゃん、私いそいでるから!もう行くから!」 「え?あ、うん。気をつけていってらっしゃい」 私は家を飛び出し、全力で自転車をこぐ。 「待っててね、こなちゃん!」 ☆ 窓から外を見ると、つかさの自転車が猛スピードで遠ざかっていくのが見えた。 つかさってあんなに早く自転車をこげたんだ。 それにしても、さっきからのつかさの慌てっぷりは異常だ。 こなたの名前を出した瞬間、わずかに顔色が変わったのを私は見逃さなかった。 つかさが犯人だなんて思いたくなかったけど、まさか本当に…… そこまで考えてハッとする。 何故、つかさはあんなに慌てていたのか。急いで出かけたのか。 もしかして、つかさは私とこなたの電話でのやりとりを聞いてしまったのではないだろうか。 あの時は私も興奮して大きな声を出していたから、その可能性は十分にある。 だとしたら、今つかさが向かっている先は…… マズイ。 最悪の事態だ。 私も急いでこなたの家に向かわなくては! 私はすぐに家を飛び出し、妹を追いかけるように必死に自転車をこぐ。 「待ってなさいよ、こなた!」 ☆ 4月1日。 今日、私は友達に嘘をついた。 後は至福のネタばらしが残るのみ、ときたもんだ。 私はその瞬間を楽しみにしながら、お菓子作りに精を出していた。 「よっし。こんなもんかな」 程なく手作りクッキーが完成する。 つかさ程ではないにしろ、我ながらなかなかにいい出来だ。 やはり、気分がノッている時は何をやっても上手くいくものだ。 時計を確認。 おっと、もう12時を過ぎている。 かがみが来るまであと1時間もない。 あまり時間が無いので、今日のお昼はカップ麺ですませることにする。 お湯を注いで居間へと移動。 あと3分♪ 特にやる事もないので、とりあえずTVをつける。 お昼の時間ということで、どこも面白い番組はやっていない。 適当にチャンネルを変え、リモコンを放置する。 あと2分♪ お気に入りのマグカップにお茶を淹れ、ささやかな昼食の準備が整う。 いやぁ、日本茶は心が落ち着きますなぁ。 その時、つけっぱなしのTVから信じられない言葉が聞こえた。 『――こんにちは。3月31日、お昼のニュースです。本日、○○内閣の――』 なん……だと……!? 重力に惹かれ、鈍い音と共に不時着を敢行するマグカップ。 そして、景気よく床にぶちまけられる適温の緑茶。 馬鹿なッ!! 今日はエイプリルフールではなかったというのかッッ!! 頭が真っ白になる。 いままでかいたことのない類の嫌な汗が、体中からドッと噴き出す。 天国から地獄。 私の気分は真っ逆さまに光の世界から暗闇のどん底へと叩き落される。 麺がのびのびになってカップから溢れ出た頃、私はようやく我に返った。 ☆ 「待っていてください、泉さん」 泉さんのお宅まであと少し。 泉さんは2時と言っていましたが、1時間以上も早めに来てしまいました。 事の真偽を早く確かめたくて、どうしてもじっとしていられなかったのです。 それに、もし泉さんの話が全て本当だった場合、かがみさんの行動を警戒する必要があります。 かがみさんが休みに乗じて泉家に来る可能性は高いですから、ゆっくりしている暇はありません。 泉さんとの約束の時間を違えてしまうのは失礼かとは思いますが、事態は急を要します。 一応ですが、携帯の方には早めに伺う旨をメールで送っておきましたし―― 「ゆ、ゆきちゃん!?」 「え?……あ、つかささん?」 何やら慌てている様子のつかささんと出会いました。 何故でしょうか、大変驚かれているようです。 それにしても、ここで会ったという事は…… 「つかささんも、泉さんに会いに来たのですか?」 「え。えっとね、わたしは、その……」 「?」 「ぐ、偶然通りかかっただけだよ~」 「そうなのですか?」 「う、うん。そうそう、偶然なんだ」 つかささんが嘘をつく理由は無いでしょうから、本当に偶然なのでしょう。 何かとても不自然な気はしますが。 「ゆきちゃんは、こなちゃんの家に行くんだ?」 「はい。その、泉さんに勉強会をしようと誘われたものですから」 「そ、そっか」 「つかささんは、何をしていたのですか?」 「え。え~っとね……」 「2人とも、何の相談をしているのかしら?」 つかささんと話していると、突然、背後から声を掛けられました。 振り返ると、今は一番会いたくなかった人が腕を組んで立っていました。 ☆ 「お、お姉ちゃん!?」 「つかさ、あんた図書館に行ったんじゃなかったの?」 まさか、つかさとみゆきが合流するとは。 みゆきまでもがこなたイジメに参加していたとは思わなかった。 いや、思いたくなかった。 冷静に考えてみれば、みゆきが自分の身近で起きているイジメの兆候を見逃すはずなど無いのだ……自分がイジメる側でない限りは。 私という邪魔者が現れたことに機嫌を悪くしたのか、みゆきがこちらを軽く睨んだように見えた。 「こんにちは、かがみさん。こちらへは何をしに来られたのですか?」 「こんにちは、みゆき。私はこなたの家に遊びに来たの。一緒に勉強もする予定よ」 「あら、奇遇ですね。私も泉さんと勉強会をする予定なんですよ?」 「へえ。そうなんだ」 「ええ。そうなんです」 「私は、こなたに誘われてきたんだけど?」 「もちろん私も、泉さんに誘われたから来たんです」 心なしかみゆきの言動が余所余所しい、というか冷たい。 それにしても、よくもまあ堂々と嘘をつくものだ。 私には分かる。みゆきが言っている事は嘘だ。 今のこなたが、加害者サイドのこの2人を自宅へ誘うはずが無い。 そういえば、こなたが私に相談したことをみゆきは知っているのだろうか? つかさから既に情報を得ている可能性はあるが、まだ知らない可能性もある。 それに仮に情報を得ていたとしても、みゆきならばつかさからの情報を100%信じることはないだろう。 我が妹ながらつかさは少しばかりぬけているところがあるからだ。 とりあえず、みゆきを油断させるためにも、今は事情を知らないフリをした方が良さそうだ。 「そう。じゃあ、こなたは4人で勉強会を開くつもりだったのかしらね」 「それなんですが、つかささんは誘われて無いみたいですよ?」 そう言って、みゆきはつかさの方をチラリと見た。 これは……つかさに別行動をとるように促しているのか? よくわからないが、みゆきの作戦か何かなのだろうか? だとしたら、阻止しておいた方がいいのかもしれない。 最初の実行犯を逃がすわけにはいかないし、できれば4人が揃った状態でケリをつけたい。 私の目的はこなたを救うことだけでは無いのだから。 難しいかもしれないが、私はこの4人の間にあった友情を取り戻したいのだ。 「……それなんだけど、こなたから電話があったのって、つかさが出かけた後だったのよ」 ☆ 「それでつかさも誘おうかと思ったんだけど、図書館に行くって言ってたから携帯にかけるのは遠慮したの」 「そ、そうだったんだ」 「あんたマナーモードにしないでしょ?だから、頃合を見計らってメールでもするつもりだったんだけどね」 「メール?」 「そ、メール。つかさもこなたの家で一緒に勉強しないか、ってね。」 これは、どういう状況なんだろう。 ゆきちゃんとお姉ちゃんの間に、なにかトゲトゲしい空気が流れている。 お姉ちゃんはゆきちゃんに従わされているハズなのに。 もしかして、今のお姉ちゃんは薬がきれたりとかで正気に戻っているのだろうか? お姉ちゃんはなんでここに来たのかな? なんで私を誘ってるのかな? えっと……今、お姉ちゃんはこなちゃんと合流してゆきちゃんを何とかしようとしているところか何かで―― それで、私にも協力をしてほしがっている―― そうか。そういう事だったのか。 つまり、これは、千載一遇のチャンスなのだ。 「じゃ、じゃあさ、私も一緒に行っていいんだよね、お姉ちゃん?ほら、ちゃんと勉強道具も持ってるし」 「そうね。いいんじゃない?……ね、みゆき?」 「……そうですね。人数が多い方が、勉強会らしくていいのではないでしょうか?」 「じゃあ、決まりだね!」 ほんの僅かだけど、ゆきちゃんの表情が陰るのがわかった。 ゆきちゃんは、少し悲しそうな顔で私の方を見た。 ……ごめんね、ゆきちゃん。 でも、ゆきちゃんがやっていることは、良くない事なんだよ? 大丈夫。きっと明日からは、また前までのように4人で仲良くできるよ。 そうなれるように私が頑張るよ! 私は決意を胸に秘め、こなちゃん家への一歩を踏み出した。 ☆ かがみさんは頭の良い方です。 もしかしたら、私の態度から何か察するところがあったのかもしれません。 つかささんを勉強会に誘ったのは、私に対する牽制でしょうか。 つかささんがいれば、私はかがみさんのことを問い詰めにくくなります。 しかし、かがみさんの行為が泉さんの話すとおりであるならば、それは許される事ではありません。 こんな悲しい出来事は、一刻も早く、できれば今日の内にでも断ち切ってしまわなければなりません。 例えつかささんがいようと、私はそれをやらなければならないのです。 できれば、つかささんにはすべてが解決してからお話をしたかったのですが。 ……いえ、実の姉と友人との話ですから、つかささんも立ち会うべきなのでしょう。 つかささんには大変辛いお話になるかとは思いますが、これも運命なのでしょう。 ふと、つかささんの方を見ると、その顔は心なしか頼もしく見えました。 そして、つかささんは一歩一歩、泉さんのお宅へと歩んでいきます。 まるで迷える私を導くかのように。 ふふっ。いけませんね。私が弱気になっては。 泉さんにつかささん、そしてかがみさんを救うという役割が私にはあるのですから。 再びいつもの4人組として楽しく笑いあえるよう、私は頑張ります! 「では、参りましょうか。かがみさん」 ☆ 私は今日、わりと洒落にならない嘘をついた。 もし今日が4月1日なら、私にはまだ救いの道がある。 もし今日が3月31日なら、私に残された道はひとつしかない。 それは、間違いなく地獄に続く道。 慌てて家中のあらゆるモノで日付を確認する。 TV、ラジオ、携帯、パソコン……思いつく限りのモノで。 何を見ても3月31日。そう、まぎれもなく3月31日。 あの日めくりカレンダー以外の全てが、今日が最悪な1日になると告げていた。 どうしよう。 どうしたらいいんだろう。 といっても、もう、なるようにしかならないのだけど。 なんで、どうして、こんなことになったんだろう。 日めくりを捨てたゴミ箱を漁ってみる。 2枚重ねて捲る、などといった漫画のようなミスはしていない。 捲るべき枚数も絶対に間違っていない。 今朝の私の行動自体にミスは無かった筈だ。 それならば、何故? ……?? ……!? ……!! 思い出した!!そういうことだったのか!! そう、今朝の時点で私のカレンダーには1日分の誤差が生じていたのだ。 かがみが最後に遊びにきた日、こんなことがあった。 『ちょっと、こなた。またカレンダー捲ってないじゃないの』 『ん~、そだね~』 『そだねー、じゃないっての。もう、いい加減にしなさいよね』 『かがみの楽しみをとっておいてあげたのだよ』 『こんなのが楽しみなわけが無いっつーの!まったく!』 びり、びりびり……びりりっ! 『あれ、かがみ。今日は確か24日だよ?捲りすぎじゃない?』 『あ、あんたが横からいろいろ言うから変に力がはいっちゃったのよ!』 『あ~あ、これじゃあせっかくのカレンダーが台無しだよ~』 『ど、どうせ捲らないんだから1日くらいいいじゃない!そう、これは明日の分よ、明日の分!』 このことを忘れてきっちり捲ったせいで、日付を間違えてしまったということだ。 日付を間違えた原因はわかったが、だからといって何の解決になるわけじゃない。 覚悟を決めよう。 ここは潔く、1人1人、来た順に謝るしかない。 ☆ 「こなちゃん、少し早いけど来ちゃったよ~」 「こんにちは、泉さん。すみません、早く来てしまいました。メールは送ったのですが……」 「おーす、こなた。ちょっと早いけど、いいわよね?」 何 故 全 員 揃 っ て い る。 「いいいいいいい、いらっしゃいいいい、みみみみ、みんななな。ずずず、ずいぶん早かったたたネ」 「なに慌ててんのよ?……まあ、心配しなくても、大丈夫よ」 「そうですね。私がいますから何も心配しなくて大丈夫ですよ、泉さん」 「こ、こなちゃん、私がいるからね!」 あれ?何この雰囲気? そうか、お互いがお互いを牽制しあっているんだ。 主に私の嘘のせいで。 これは、本当の事を言い辛いってレベルじゃないよ。 何とかして1人ずつ相手をするようにしなきゃ。 とりあえずは、みんなに私の部屋まであがってもらって…… 「ええっと、ジュースでも持ってくるね。それで、誰か運ぶの手伝ってほしいんだけど」 「私が行くわ!」 「いえ。かがみさんはゆっくりしていてください。ここは私が」 「ゆきちゃんもお姉ちゃんとゆっくりしてなよ。私が行くから」 「2人とも、そんなに気を遣わなくていいわよ。ここは私が――」 「そうですね。かがみさんもつかささんも気を遣わないでください。やはり私が――」 「わ、私は気を遣ってないよ。ただ、こなちゃんを手伝いたいだけ。だから私が――」 「ちょ、みんな。落ち着いてよ。か、かがみ。かがみでいいよ」 「ほらね。こなたもこう言ってるし、私が行くわ」 「泉さん、遠慮なさらずにおっしゃっていただいてもいいんですよ?」 「こなちゃん、私じゃ頼りにならないかなぁ?」 「い、いや、そんな大したことじゃないし。それにすぐに戻ってくるから」 「じゃあ、早く行きましょ。こなた」 台所で人数分のジュースとクッキーを用意する。 とりあえず、この時間を利用してかがみに謝っておこう。 「あ、あのさ、かがみ」 「わかってる。ごめんね、こなた。びっくりしたでしょ?つかさとみゆきが一緒じゃやっぱり辛いよね」 「い、いや。そうじゃなくって――」 「でもね、こうなったら仕方ないわ。少し早いのかもしれないけど……私ね、今日決着をつけちゃおうと思ってるの」 「ちょ、かがみ、私の話を――」 「わかるわ、不安よね。でも大丈夫。私がついてるから。何があっても守ってあげるから。さあ、行きましょ!」 「あっ、待ってよ、かがみ――」 「いいから、ここは私に任せなさいって。とりあえず、2人に謝ってもらうところから始めなきゃね!」 あんまり遅くなると怪しまれるわよ、と言ってかがみはクッキーの皿を手に部屋へと戻っていった。 優しい笑顔を残して去るかがみを呆然と見送ることしかできない私。 かがみに謝るどころか、謝られちゃったよ。てへ☆ ……いや、そうでなくて。 今のかがみの様子からすると、1人ずつ相手をしていくという私の計画は難しそうだ。 何があったかのかは知らないが、かがみはテンションが上がりきっていた。 さっきの部屋でのやり取りから察するに、おそらく他の2人も似たような感じだろう。 私の話を聞いてくれる心の余裕がなさそうだ。 それに、3人とも私が他の誰かと2人きりになるような状況はなかなか許してくれなさそうだ。 ……こうなったらもう、みんながもめ始める前に土下座でも決めるしかない。 どこか遠いところへ逃げたくなる気持ちを抑え、私は地獄へと続く廊下をゆっくりと進む。 いつもの倍以上の時間をかけて自分の部屋の前までくると、既にヒートアップした3人の声が聞こえてきた。 「まだわかんないの!?まず、こなたに謝れって言ってんのよ!!あんた達、こなたが苦しんでるのがわからないの!?」 「ですから!何度も言うようですが、人のせいにしないでください!!かがみさんが泉さんを苦しめているのでしょう!?」 「やめなよ、ゆきちゃん!隠さなくても、もうみんなわかってるんだよ!?」 「そうよ!つかさの言うとおり、私はみんなわかってるのよ!?みゆき、あんた少しは反省したらどうなの!?」 「あくまで人のせいにすると言うのですか!?つかささんだって、苦しんでいるのですよ!?」 「はぁ!?だからなんだってのよ!つかさは自業自得じゃない!!元はと言えば、つかさのせいなんだから!」 「ひどい!相談もしてくれずにそんな言い方ってないよ!ねえ、なんで最初がこなちゃんだったの!?なんで、私じゃなかったの!?」 「何よ!?私があんたのことを一番にかまわなかったのが原因だとでも言いたいの!?甘ったれんじゃないわよっ!!」 「つかささんにまで当たらないで下さい!!かがみさん、見損ないました!……あなたは間違っていますッ!!」 「っ!?……みゆきぃっ!よくもっ!よくも、ぶったわねっ!!このっ!!」 「きゃあっ!?」 「や、やめなよ、お姉ちゃん!ゆきちゃんも!暴力はよくないよ!!……ひゃあっ!?」 うん。わかっているとも。 今すぐ部屋に飛び込んで土下座、それ以外に選択肢はないよね。 ☆ 「ごめんなさい」 「おまっ……謝って許されるとでも……!!」 「泉さん。いくらなんでも、これは……!!」 「ひどいよ。私、本気で信じたのに……!!」 事情はひととおり説明したが、当然笑って許してくれる筈もなく。 三者三様の絶句の後は、ただただ、重苦しい沈黙が場を支配する。 私は土下座したままの姿勢で固まることしかできない。 穴が開くのではないかと思えるほどに、じっと床の一点を見つめ続ける。 申し訳なさ過ぎて、みんなにあわせる顔なんてない。 あんなに仲の良いみんなが、勘違いとは言え私のせいで喧嘩までしたのだ。 みゆきさんはかがみの頬を平手で打ち、かがみはみゆきさんに掴みかかった。 あと一歩間違えれば、私達の友情は消えてなくなっていたかもしれない。 床にシミがひとつ、ふたつ……あれ?私、泣いてる? 床のシミはみるみるうちに数を増やしていく。 「……泉さんに悪意が無かったという事は、わかりました」 「……そうだね。もともと、こなちゃんは私達と遊びたかっただけなんだよね」 「……こなたらしいいたずら、ってとこね。あまりにも度が過ぎてたけど」 優しい言葉。 勇気を振り絞って顔をあげると、みんな少し呆れたように笑っていた。 私は胸がいっぱいになる。 「ごめん、本当にごめんなさい、ごめんね、みんな。うあ、うわああああああん」 「ほら、泣かないの」 「ぐすっ。だって、こんな私を笑って許してくれるなんて、なんだか嬉しくって」 「あら、誰が許すって言ったかしら?」 「ふぇ?」 「もちろん、それなりのお礼はさせてもらうわよ?」 「そうですね。1回は1回ですよ、泉さん」 「あはは、こなちゃん。これで終わりだと思ってるだなんて、どんだけ~」 「ちょっ、みんな、目がこわいデスヨ?……いったい何を……」 「そうね、私達もこれからひとつずつ嘘をつかせてもらうわ」 「う、嘘を?……あれ?それだけ?」 「はい。それだけです」 「なぁんだ。びっくりさせないでよ。そんな簡単なことなら――」 「ねえ、こなた。あんた今日は、とっ~ても平和に過ごすわ。嫌と言うほどね」 「泉さん。泉さんは今日という日を、驚くほど簡単に忘れてしまえるでしょう」 「こなちゃん。こなちゃんにとって、今日がいっちばん幸せな日になるんだよ」 「え?……も、もしかして、それが嘘?……ってことは……あ……やめっ――!!!!」 ☆ 今日は正真正銘の4月1日、エイプリルフールだ。 せっかくだから、嘘をついてみようと思う。 『昨日はとても楽しかった。 突然遊びに来たかがみとつかさとみゆきさんが、私に素敵なプレゼントをくれたのだ。 昨日という日は、私にとって今までで一番幸せな日だったんじゃないかと思う。 でも、きっとそれもすぐに忘れてしまうことになるんだろう。 とても平和だったという点においては、いつもとなんら変わらないただの1日だったから。 そしてまた、素敵な1日が始まろうとしている。 私はかがみから呼び出しなんかされていないし、つかさも一緒に待ち構えていないし、集合場所はみゆきさんの家ではない。 まあ、偶然にもみんなと会うことがあれば、たぶん昨日の事について幸せな気分で笑いながら語り合うことになるだろうね。 ああ、できることなら、誰も私の事を助けないでほしい。神様が本当にいるのなら、どうか私の事を救わないでほしい』 うん。我ながら上出来だ。
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【GM】 よろしくおねがいします 【GM】 2d6 【GM】 ……しまった!? 【GM】 1d6 【GM】 1d8 【GM】 1d100 【GM】 くっ!? 【GM】 それでは、あらためてよろしくお願いします。 【ゼルル】 よろしくおねがいしまーっす! 【GM】 2d6 【ゼルル】 nanaGM - 2D6 = [5,2] = 7 【Dice】 nanaGM - 2D6 = [1,1] = 2 【ゼルル】 撤退! 【GM】 D100 【GM】 1d100 【Dice】 nanaGM - 1D100 = [73] = 73 【GM】 ちょっと成長したらしい(違 【ゼルル】 w 【GM】 さて。自己紹介をお願いします。 【ゼルル】 りょーかいですわ! 【ゼルル】 【ゼルル】 自信を取り戻すために受けた依頼で難なくオークを倒し村に逗留するゼルルへ、ありえない再会が齎される。 【ゼルル】 倒したはずのオークが、再びあの忌まわしい花の香りを漂わせながら村に現れ、村人全員を誘引してしまう。 【ゼルル】 悪戦苦闘しつつも何とかオークを撃退したゼルル。だが村人に囲まれ、魔物に犯される快感と興奮は残り続けて…。 【ゼルル】「ワタクシはゼルルと申します。森の外には恐ろしい魔物だらけなのですね…負けていられません。」 【ゼルル】「もっと強い力と武器が必要ですね…どんな魔物がきても、二度と、あのような無様を晒さない為に!」 【ゼルル】 決意を新たにするも、あの日からうずき続ける身体を揺らして、無自覚に人目を引く踊子衣装の豊満ボディなエロフのお姫さま。 【ゼルル】 衣装は変えるわけにもいかない為、世話役メイド達と協力しつつ新たな依頼やゼルルに相応しい弓の存在を探しています。 【ゼルル】 http //www.usagi-o.sakura.ne.jp/TRPG/wiki/wiki.cgi/HC?page=%A5%BC%A5%EB%A5%EB%28%A5%E9%A5%F3%A5%C9%A5%EB%29 【GM】 では、そんなゼルルのもとに、ある日、知らせがやってきます―― 【GM】 情報屋「はい、お求めの情報。持ってきたよ」 【GM】 帝都のメイデンたちが集う酒場兼宿屋「乙女たちの純情」亭にて。 【GM】 いかにも、裏事情に通じてそうな露出度の低い胸薄めの偵察兵っぽい運動系メイデンが、キミの席へとやって来る。 【GM】 彼女は、情報屋、あらゆる情報に通じた、冒険者メイデンだ。 【GM】 情報屋「強い弓、がお求めだよね? しっかり、見つけて来たよ」 【GM】 ▽ 【ゼルル】「まぁ!本当ですか?ぜひ、お話をきかせてくださいな♪」同じくらい露出度が高いのに運動は最低限、動くのにジャマそうな胸を揺らして席にエスコート。テーブルに胸を載せながら前のめりになってお話を伺います! 【ゼルル】 ▽ 【GM】 情報屋(ストレート系)「………」 突き出された胸を見ている 【GM】 情報屋「……でも、まぁ、かなりやばいネタであることは確かなんだよねー。 【GM】 なにせ、あのオークシティが噂の出どころだし」 【GM】 情報屋「それでも、聞きたい?」 【GM】 ▽ 【ゼルル】「お、オークですか・・・?///」オークと聞いて、つい先日の出来事を思い出し、フェイスベールの下の表情を曇らせる・・・無意識にぎゅっと肩を寄せた防御姿勢は、逆に視線を吸い寄せる谷間をつくりつつも・・・数秒の沈黙の後 【ゼルル】「えぇ、お願いいたしますわ・・・わたくしには、力が必要ですの。」そういって胸元…というか谷間から代価の硬貨を取り出すと覚悟を決めた顔で情報屋さんに差し出します。途中でなかったことにーなんていわないよという誠意と覚悟の表れだ。 【ゼルル】 ▽ 【GM】 情報屋「……なんでも、伝説級の魔法の弓、神々の武器かってくらいのいわくつきの聖弓 ゾディアック ってのが、オークシティに持ち込まれた、って話」 【GM】 情報屋「かつて、百年前の戦争で山を撃っただの魔族を滅ぼしただの伝説があって、でも、今じゃ誰も使えないから神殿に飾られていたんだけどね」 【GM】 情報屋「でも、そいつがオークシティのオークどもに略奪された、って話よ」 【GM】 情報屋「……なにせ、伝説によれば、あの弓は今のオークシティと関係があるとか、ないとか」 【GM】 情報屋「偶然ならいいけど、伝説付きの魔武器だし、何があってもおかしくはないと思うわ」 【GM】 情報屋「いって、見る?」 【GM】 ▽ 【ゼルル】 最初は驚き、続いて興奮気味にふんふんvっと頷き、最後にはちょっと気後れしたように俯いていたけれど・・・情報屋さんの声に顔を上げて 【ゼルル】「ゾディアックという弓、たしかにお兄様が若い頃のお話にでてきた事があったとおもいますわ。王家でも魔法の弓はめったに触れられなかったのですが・・・そのような物が森の外にある事にも驚いた事を思い出しましたわ。ぜひ、拝見したいとおもいます・・・オークシティへの順路、お教えくださいな。」そういって追加の情報料をチャリンチャリン、谷間から出して積み上げるよ! 【ゼルル】 ▽ 【GM】 情報屋「まっとうな手段じゃ入れないわ。 あの街は高い城壁に、古代魔術を利用した防御兵器までそろっているくらいだから」 【GM】 情報屋「でも、西側にある港は、城壁と比べればずいぶんとマシよ」 【GM】 情報屋「その、港に出入りする奴らとは、ちょっとした伝手があるから、そこから荷物に紛れて密航することなるわ」 【GM】 情報屋「……上陸したら、スラム街にクリスって名前の男が潜んでいるわ。あたしの紹介といえば、多少は力になってくれるはずよ」 【GM】 ▽ 【ゼルル】「密航ですか・・・心苦しいですが、しかたありませんわね。お話、大変興味深く聞かせていただけました。その差配にも満足しております。魔法の弓を手にすることが叶いましたら、細やかながら祝宴を開きたいと思っております。どうかご招待に応じてくださいね?その、クリス様も含めて♪」法を犯すことに少し憂いを覚えつつもそこは割り切り、情報や手配への感謝に応える為と、自信の表れとして成功した時の祝杯へのお誘いまで添えておきます。 【ゼルル】 冒険者の人たちがたまにやっているこのやり取りにちょっと憧れていて、ついいってみたくなったっていうのはほんの少しだけです。 【ゼルル】「では、さっそく出立の準備を整えてきますね?席を外すことをお許しください。では。」そういって丁寧すぎる挨拶で席を立つ・・・その所作一つ一つが洗練されているのに自然すぎるので高貴さは隠せていない・・・恰好とのアンバランスさは最近どんどん顕著になっているのでした。 【ゼルル】 ▽ 【GM】 情報屋「ま、がんばってね」(あの町から戻ったメイデンって、聞いたことないけど) 【GM】 というわけで、情報屋さんが手配してくれた船に乗り、オークシティへと向かうことになりました。 【GM】 空は良く張れ、波も穏やかで、絶好の公開日和です。 【GM】 客船というには少々武骨すぎる、戦船のような船に乗って数日。 【GM】 はるか向こうに、うっすらと霧に閉ざされた街、オークシティが見えてきました。 【GM】 船長「そろそろだ、見えるか?」 【GM】 日に焼けた顔に、いくつもの古傷を刻んだ、中年の船長が船室にいる貴方に声をかけました。 【GM】 船長「もっとも、見たらすぐに、荷物に偽装してもらわなきゃならねぇけどな、がっはっはっはっは!」 【GM】 ▽ 【ゼルル】「はい!初めての船旅で随分ご迷惑をおかけしてしまった事お詫びと感謝を・・・荷物に紛れるのは、森での伏せ方とは違うのでちゃんとできているかご教授くださいね?」初めての船で最初はぐったり、いろいろお世話をされた・・・けど世話され慣れているお姫様は存分に便り、いろいろ赤裸々な部分をみせつつも旅を楽しみ、目的地への到着に胸を高鳴らせるのでした! 【ゼルル】「それにしても・・・あの霧は不自然ですわね?潮風にも吹き散らせないとは、あれがあの街の防壁魔術でしょうか?」興味深そうに霧をみつめ、エルフの森の結界とは違う様子に船の縁に乗り上げながら観察と分析をしちゃってます。無防備にお尻を振りながら。 【ゼルル】 ▽ 【GM】 船長「ああ、なんでもミアスマがおかしくなっているって話だ。そのせいで、まともに軍隊も送り込めやしない。俺たちも、港に入ったらすぐに出るしかしかたないのさ。 耐性のないやつがあまり長くいたら、無気力になっちまう」 【GM】 船長「まぁ、あんたは大丈夫だって話は聞いている。安心しな」 そういって、船倉に案内してくれます。いくつもの木箱や樽がありますが、そのうちの一つが、貴方が隠れて入り込むためのものです。 【GM】 ▽ 【ゼルル】「えぇ、森の加護はあの程度の霧など吹き散らせますもの♪この中にはいればいいんですわね?んしょ、んしょ・・・ちょっと、息苦しいですね?」自慢の加護をドヤっと胸張りしつつ案内されたタルの一つに入り込んでみるよ!体育座りする様に入ると胸とお尻がつっかえそうですね・・・! 【ゼルル】 ▽ 【GM】 船長(いい眺めだ) 【GM】 船長「んっ、んん。閉めるぜ。 じゃあ、幸運を祈る」 ばたん、そうして、箱の蓋が閉じられました。しばらくの時間のあと、貴方の入った箱が持ち上げられ――周囲の空気の気配が変わり―― 【GM】 ――そして、運び終わったのか。貴方の入った箱は、どこかへと降ろされました。 【GM】 周囲からは、荷物を運ぶ何人もの足音が近づいては、遠ざかり、そして―― 【GM】 知力判定:難易度10です 【GM】 ▽ 【ゼルル】 楽勝楽勝! 【ゼルル】 2d6+7 知力7 ファンブル以外成功! 【Dice】 N07_zerr - 2D6+7 = [2,1]+7 = 10 【ゼルル】 あっぶない!? 【ゼルル】 フラグのパワーが影響しているのかにゃ・・・? 【GM】 遠ざかる足音。 【GM】 誰かの近づいてくる足音。 【GM】 箱の前で立ち止まった足音。 【GM】 そして、 【GM】 呟かれる言葉が、箱越しにも聞こえてきました。 【GM】 ???「ぐふふふ、これが、例の荷物か」 【GM】 ▽ 【ゼルル】「・・・?(例の荷物・・・とはワタクシの事をしっている?…クリス様でしょうか?でも、ちがったらたいへんですわね・・・)」と、声を出すか出さないか悩みつつもひとまず静観の構えで息を殺して潜み続けるのだ! 【ゼルル】 ▽ 【GM】 ――では、箱の中にいる貴方に向かって、攻撃を仕掛けてきます。 戦闘を開始します。 【GM】 一発、???の攻撃を受けてから、通常の戦闘行動に入りましょう。 【ゼルル】 ひえーー?! 【GM】 1d6+15 ダメージ 【Dice】 nanaGM - 1D6+15 = [5]+15 = 20 【GM】 20点ダメージ、箱の外から冷気が次々に襲い掛かってくる――! ▽ 【ゼルル】 ちゅよい! 【ゼルル】 -5 受動/単体 魔力分ダメージ軽減 シールド(MP3)で15点を胸に受ける!!1点のこった! 【ゼルル】 あくとはないよ! 【GM】 では、その衝撃でばらばらとなった箱の外、港の倉庫らしき建物の中に、一匹のオークがいます。 【GM】 目の前には、双角帽をかぶり、 【GM】 左手が鉤爪となった、いかにも海賊といった様子のオークが、 【GM】 獲物を狙う瞳で、現れたキミの様子を見ています。 【GM】 海賊オーク「なかなかの上玉じゃあねぇか! こういう貢物を最初に受け取れるってんだから、やっぱり役得だよなぁっ!」 ▽ 【ゼルル】「っ!?これは、、きゃぁぁぁっ///な、何者ですか、無礼者!名を名乗りなさい!///」ひやりとした瞬間、ぎりぎりで展開した魔力障壁が破られるわずかな時間で樽からとびだしました!・・・だけど、攻撃がかすったのか、胸元を覆う下着はほとんど破り取られて、先っぽをわずかに隠せているていどしかのこってません///羞恥に胸元を隠す…のは悪手と気付き、羞恥を堪えて弓を構え、凛とした声で喋るオークに問いかけます。 【ゼルル】 ▽ 【GM】 ドラッド「俺様はオーク船長 ドラッド――!」 【GM】 ドラッド「このオークシティの、海賊の頭! この俺こそが、海を支配するもの!」 【GM】 ドラッド「その証拠に、お前の密航も、ちゃあんと知っていて迎え入れたのさ――お前も、戦利品だからな!」 【GM】 ▽ 【GM】topic 【ドラッド IV6】【ゼルル】 【ゼルル】「くっ・・・まさかオークたちにそれほどの知性があるなんて・・・!」オークといえば怪力だが不潔で愚鈍、性交と暴力、餌の事しか考えないともっぱらの噂。密航がばれるなど想定外でした・・・けれど、最後の一言だけは強く否定します。 【ゼルル】「残念ですが、戦利品にはなり得ません・・・先ほどの一撃、ワタクシを倒す千載一遇のチャンスを逃した事、後悔なさいませ!」流れる所作で大きくのけぞり胸の上で弓を引く独特の構え。わずかな布で支えられた胸は今にも零れそうですが、弓は殺気を纏ってぎりぎり弦を鳴らしています! 【ゼルル】 ▽ 【ドラッド】「お前こそ、後悔するがいい。オークシティの最底辺、一匹の奴隷に堕ちる己の運命を、な――!」 【GM】 ドラッドはボスです。勝利した場合は、成長処理が入ります。 【GM】 ▽ 【ゼルル】 まけない!! 【GM】 では、改めて戦闘再開です。どうぞ。 【ゼルル】 開幕ナシだよ! 【GM】 ありません。ゼルルの行動からですね 【ゼルル】 らじゃー! 【ゼルル】 では、強化された弓技をくらえ――! 【ゼルル】 4d6+3-3 白兵/単体/3回攻撃 マルチプルスナップ&ファントムサード&ツイスター(MP6+2+2)いち! 【Dice】 N07_zerr - 4D6+3-3 = [3,5,5,2]+3-3 = 15 【ゼルル】 4d6+3-3 白兵/単体/3回攻撃 マルチプルスナップ&ファントムサード&ツイスター(MP6+2+2)にぃ! 【Dice】 N07_zerr - 4D6+3-3 = [1,4,2,6]+3-3 = 13 【ゼルル】 4d6+3-3 白兵/単体/3回攻撃 マルチプルスナップ&ファントムサード&ツイスター(MP6+2+2)さん! 【Dice】 N07_zerr - 4D6+3-3 = [6,2,3,5]+3-3 = 16 【ゼルル】 15・13・16点のダメージだよ! 【GM】 ドラッド「くぅっ!?」次々に矢を受けて、驚きの声を上げます。 【ゼルル】 弓を引きながら、下腹部にズグン!っと疼きにも似た熱を感じつつ・・・高まった魔力を込めた螺旋の弓術三連射!オークの脂肪も貫通する強力な矢だ! 【ドラッド】「――だが、まだまだぁっ! 海よ、白く輝く大いなる北の海よ! 俺に力をかせぇっ!」 矢を引き抜き、血を流しながらも、反撃してきます。 【GM】 《能 ヘイルストーム 4~》 【ゼルル】 ひえぇぇぇ!? 【GM】 1d6+15 【ゼルル】 nanaGM - 1D6+15 = [3]+15 = 18 【GM】 《能 ヘイルストーム 4~》 【GM】 1d6+15 【ゼルル】 nanaGM - 1D6+15 = [1]+15 = 16 【GM】 《能 ヘイルストーム 4~》 【GM】 1d6+15 【ゼルル】 nanaGM - 1D6+15 = [4]+15 = 19 【ゼルル】 わひーv 【GM】 最初の3つ、18、16、19点です。 【ゼルル】 では18点を胸に受けて、胸を飛ばし! 16点を腰で受けて2点になって19点が腰を飛ばして 胸腰AP0です! 【ゼルル】 絡みつく舌/大きすぎる胸EX/魔性の果実/過敏な突起 で CP7SP4 もらう! 【GM】 ドラッドの魔力――そう、オークでありながら、剣ではなく打ち出された魔力が、箱から姿を現したばかりの貴方を打ち据え、身にまとっていた衣服を濡らし、吹き飛ばしていきます。 【GM】 気が付いた時には、倒れ込んだ貴方の視界いっぱいに、オークの顔が近づいていました。 【GM】 ドラッド「どうだ? このオレの、三連砲は……?」 貴方の顎を強引につかみ、さらに顔が近づいていき――その唇と、唇が重ねられていく。 【GM】 ▽ 【ゼルル】 まるで津波の様な水弾を3連続で受けてしまい、地上に居ながらおぼれてしまうゼルル・・・口に入った水を吐き出すのに必死で気づいた時にはオークに接近を許してしまっていて・・・ 【ゼルル】「…水遊びが得意な豚がいるとは、思いませんでしたわ。くっ///放しなさい!やめ・・・むぅぅっっ///」ジトリ、睨みつける様にこちらをのぞき込む鋭い視線を飛ばそうとしますが・・・顎にて当てられ強引に唇を奪われた瞬間、水で冷え切ったはずの身体が一気に燃え上がってしまいます・・・必死に引きはがそうとする両手も、逃げ出そうとする足も、渾身と呼べるほど力が入らず・・・重なった唇の熱が伝わるほどにちからがぬけていき・・・唇がうっすら、開いてしまいます・・・ 【ゼルル】 ▽ 【ドラッド】「口でなんといっても、こっちは正直だなぁ……!」 たっぷりと唇を舐め挙げたオークは、荒い呼吸を繰り返しながら、貴方の顔を見下ろしました。 【GM】 そして、その手は、衝撃で下着から零れ落ち、豊かな丸みを見せる乳房へと延びていきます。 【GM】 水魔術を放った冷たいオークの手が、熱を帯び始めた乳房の上を撫で回し、尖り始めつた乳首を玩具のように弄びます。 【GM】 まるで、そうするのが、貴方にとって快感であることを、わかっているかのように――▽ 【ゼルル】「んむっvむぅ・・・っぁ・・・///」必死に我慢するように唇を閉じていたのに、それがほどけて、薄く開いた唇から声が漏れる・・・そんな状態で話された唇は、オークの唾液にぬれてかりながらどこか物悲しそうにこえをあげて、離れた唇を追いかける様に舌がぴろんと伸びていて、間抜けな顔になってしまっています。そんな自分の顔をそらす為に顔を背ければ無防備になった胸元に伸びる手・・・ 【ゼルル】 どくんどくん!っと高鳴る鼓動で震えているのかぷるぷるvかわいい振動で揺れる巨乳は、寒さのせいかびん!っと勃った先端をオークに向けてピン!っと尖らせていて… 【ゼルル】「んくぅぁっぁんっ///ふ、くぅうっ・・・ひんっ・・・オークの、愛撫など・・・感じ、、、ないっ///わたくしは、エルフの、、、一員として・・・立派にっ・・・きゃぅんっ///」弓を手放さないまま、無意識に引き抜いていた矢を掴んだままの手、その甲で漏れそうになる声を必死に隠そうと唇に押し付けて我慢する・・・そう、我慢してしまいます・・・今すぐはねのけて反撃すればいいのに・・・下腹部からの熱に抗えず、オークの、 【ゼルル】 ドラッドの愛撫をうけいれてしまったのです・・・素直に 【ゼルル】 ▽ 【GM】 オークの指先が、ぴんと尖り切った乳首を弄りながら、囁きます。 【ドラッド】「足を、広げな――。そこが、熱く燃えているんだろ?」 【GM】 淫らな囁きとともに、貴方の耳朶をオークのぬめった舌先が舐めあげていきました。 【GM】 ▽ 【ゼルル】「ひんっvひきゅぁぁんvだめ・・・まだ、、、だめですわ・・・この程度、で、屈するなど、、、姫として、、、ありえませんっ///」一瞬、開きかけた膝を再びぎゅっと閉じると背けていた顔を正面にむけて、堂々と、姫を名乗ります・・・なめれた耳は真っ赤になり、どろりとした唾液が垂れる最中でも、凛とした表情は極上の美でキラキラ輝き・・・次の瞬間台無しになる。 【ゼルル】「まだ、この程度の・・・愛撫と接吻では・・・あの、蔦のオークに及ばないではないですか・・・もっと、激しく、乱暴に・・・されなければ・・・屈する事など、できませんわ///」キラキラ輝くひとみの奥には、二度の淫香と中出しで根付いた被虐の快感がべっとりこびりついていて・・・ぎりぎり、っと頭上で弓を構えながら、無防備に唇と胸を出しだしている・・・ 【ゼルル】 ▽ 【ドラッド】「激しく――か?」 にやり、オークの豚面に、いやらし笑みが浮かんだ、次の瞬間――。 【GM】 オークの両腕が、無造作に伸びて―― 【GM】 《特:淫らな遊戯(強):0》 【ゼルル】 ひーん/// 【GM】 ――策士入りましたっけ? 【ゼルル】 こういうのは入るはず! 【ゼルル】 一般判定全般だから 【GM】 2d6+6+2+4 【Dice】 nanaGM - 2D6+6+2+4 = [4,6]+6+2+4 = 22 【ゼルル】 ひーーん/// 【ゼルル】 2d6+7 知力7 絶対成功でも足りない/// 【Dice】 N07_zerr - 2D6+7 = [6,5]+7 = 18 【ゼルル】 にゃーん!/// 【GM】 2d6+2 ダメージ 【Dice】 nanaGM - 2D6+2 = [3,4]+2 = 9 【ゼルル】 その他を飛ばします!・・・乱暴されたければ、邪魔な風止めろっていわれちゃうのかな・・・v 【GM】 ――その腕は、強引に風を引き裂き、ゼルルの両足を大きく持ち上げながら、二つ折りにしていく。 【GM】 隠されていたはずの秘所も、尻穴までも、強引に割広げられ、曝け出されたまんぐり返し――! 【GM】 ▽ 【ゼルル】「かふっ!?くぎぅ・・・あ、ひぎゅぅ・・・苦しいっ///なんて、強引な・・・女性の扱いが、なって、いませんわ!///」屈辱的な恰好で固められ、不自由なまま真上に見えるオークに向けて怒鳴る・・・けれど、その声音はどこか甘ったるく、まんぐり返しされ丸見えになった秘所はどぷりvと悦びの淫蜜をたっぷりこぼして垂れてしまいます・・・まっとうな女性なら痛みか恐怖が勝り、それこそ扱いを間違えているような行為をされているのに・・・ 【ゼルル】 ゼルルの身体はそれが正解だという様に膣を開き、アナルがひくつき、むわり!と加護の風の中に閉じ込めていた雌の香りをときはなってしまいました。 【ゼルル】 ▽ 【ドラッド】「女の扱い? 雌の扱いとしては、十分だろう? 今にも、あふれ出してきそうじゃねぇか――!」 【GM】 襞腕の鋭い金属光沢の柿爪が、むき出しの秘肉の狭間をゆっくりと掻きまわし、蜜の糸を引かせながら引き抜かれていく。 【GM】 濡れ具合を、ゼルル自身に見せつけるように―― 【GM】 ▽ 【ゼルル】「んぎゅぅv冷たいvそんなもの、で、かき回さないでください・・・vあっvあっvあっvんひきゅぅぁっぁあんっ///ぁ、ああぁぁん///そんな、いやらしい、蜜、沢山、、、わたくしのおまんこから・・・なんて///」指ですらない、鋭い金属の爪相手に足をピン!っと伸ばして快楽に悶え、ぷしゅ!っと蜜が膣から吹き出す・・・オークの肘まで飛び散るほどの蜜を吐き出したおマンコからホカホカと湯気を出すほど熱せられたかぎづめをみせつけられて・・・羞恥に真っ赤になった顔がフェイスベール越しにもわかるほどだった・・・ 【ゼルル】 ▽ 【ドレッド】「いい貌じゃねぇか。このまま、雌奴隷になるのがふさわしいくらいに、な」 【GM】 鉤爪についた蜜をぺろりと舐めあげながら、オークは嗤った。 【ドレッド】「さぁて、そろそろこいつをぶち込んで、やるかぁ……!」 【GM】 片手で器用にズボンの前を開くと、すでに勃起しきったオークのちんぽが、ゼルルの視界の先、濡れ光る雌肉の先に、その雌を犯したがって震える姿を見せた。 【GM】 ▽ 【ゼルル】「だ・・・れが、雌奴隷・・・なんかにぃ///」オークに蜜を舐められ、悔しさにうなりつつも、オークの怪力に逆らえずマンぐり返しのまま、手探りで3本目の矢を手に集める・・・至近距離で放てばさすがのオークも耐えきれないと、まだ、まだ、引き付けなければならないと・・・誰に聞かせるでもなく考え、実行する。 【ゼルル】「っ・・・おおきぃ・・・おーくのおちんぽvそんな、ぶっといのvおまんこされたらvわたくしのvエルフの狭い膣、もどらなくなってしまいます・・・どうか、やめてくださいまし///あぁ/// 【ゼルル】「っ・・・おおきぃ・・・おーくのおちんぽvそんな、ぶっといのvおまんこされたらvわたくしのvエルフの狭い膣、もどらなくなってしまいます・・・どうか、やめてくださいまし///あぁ///難でも、致しますから、どうか・・・それだけはぁぁ///」どこか演技っぽい、けれど、使う言葉は実に情けなさを醸し出し、プライドの高いエルフの美女が言うだけで、男の理性は簡単に崩せる・・・ 【ゼルル】 ただし、エルフの王族が使うには文字通りプライドを捨てた誘惑だった・・・その奥に、自らの欲望を隠しきれないままそんな王族の恥じを利用し、機会をうかがい・・・それ以上に興奮をおぼえてしまっている・・・ 【ゼルル】 ▽(プライドの崩壊T CP3 SP3 宣言します・・・/// 【ドレッド】「そうだなぁ……雌奴隷になったが最後、ペットになるか、娼婦になるか、はたまた一匹の家畜となって乳を搾られるか――どんな飼い主になろうが、おまえのおまんこは濡れっぱなしだろうなぁ……!」 【ドレッド】「俺様は、そいつを案内してやるだけだ。いやらしくまんこを広げて、発情してるお前と違って、なぁ…!」 【GM】 鉤爪の先端で、肉襞からぷっくりと姿を見せた肉真珠を突きながら、にやりと楽し気に笑みを浮かべている。 【GM】 ▽ 【ゼルル】 奴隷・ペット・娼婦・家畜・・・乳しぼりをされる自分を想像した。 それぞれの自分を思い描くだけできゅんきゅんvっと子宮がうずき、うねうねと膣がうごめいておまんこがくぱくぱv物欲しそうに口を動かす・・・頭上のドレッドの言葉がそのおマンコの動きだけで真実だと証明されてしまうのを感じて、かぁぁぁぁっvっと羞恥に顔が熱くなる。 【ゼルル】「んひぅvあひゅvんくぅぁぁんv案内、など、不要・・・ですわ・・・今、欲しいのはオークの、、、貴方のv、ドレッドのぉっvオークちんぽだけですvどうか、この、えるふおまんこに・・・どうか、ぶちこんで、くださいましぃ///」どきり!と図星を突かれたタイミングで弄り回されるクリトリス・・・こちらの意図がばれているのではないか、密航もばれていた、その焦りから、ここまで言うつもりのなかった直接的過ぎるおねだりまで使って。 【ゼルル】 とうとうオーク呼ばわりもやめ、ドラッドの事を、「男」と認める発言をしながらマンぐり返しになった足から力を抜き、迎え入れる様に腰を振り誘惑し始めます・・・とびちる愛液を自分で浴びながらv 一度崩壊した矜持はどんどん堕ちていく速度をはやめてしまうのです。 【ゼルル】 ▽ 【ドレッド】「ぶちこんでください、かぁ……! くっくっく、いい格好だなぁ……! このオレに、雌穴の奥までされして、まるで犯されたがっているみたいだな」 【GM】 ぶしつけな視線が、堕ちたゼルルの肢体を、曝け出された雌穴の奥を覗き込みながら、楽しげに笑う。 【GM】 だがー― 【ドレッド】「そんな言葉は、武器を手にして言うもんじゃあないな、雌。もっとも、身体のほうは、今すぐになにもかも手放して、一匹の雌になりたがっているみたいだがな!」 【GM】 ▽ 【ゼルル】 びくん!っとあと1センチで矢を番えることができた弓を握る腕が振るえる・・・やはり、見透かされていた・・屈辱を堪えて、悶える身体から手綱を離さないように必死に我慢し続けたすべてが無駄だったと理解すると同時に・・・ここで抵抗しても無駄だと理解できてしまい・・・フェイスベールの下で唇を噛みながら、何でもないように装い、会話を続ける・・・ 【ゼルル】「何のことでしょう?御覧の通り、弓は、ただ、、、ドレッド様の責めが良すぎて、握りしめていないと気がくるってしまいそうだっただけの事・・・弓も無意識に握ってしまっていたのは、エルフの宿命ですわ・・・ほら、これで、ワタクシは無防備な雌///そんな事より、はやく、このいやらしい雌エルフに、オークの立派なおちんぽvぶちこんでくださいましv」図星を突かれた人物と特有のまくしたてるような勢いを隠しきれないまま 【ゼルル】 動揺しつつも弓を手から落とし、矢もぽとり、ぽとり、床に落とす。一糸まとわず、無手のエルフ姫は、かくかくとマンぐり返しのまま、頭上で手を組み無防備に秘所を晒して揺らしますv 【ゼルル】 ▽ 【ドレッド】「ならば、狂ってしまえばいいさ――一匹の雌に、なぁ!」 【GM】 無防備に曝け出されたゼルルの身体に、オーク船長の巨体がのしかかっていく。 【GM】 頭上で組まれた両腕を鋭い鋼の鉤爪で抑えつけながら、 【GM】 たっぷりと脂肪のついた身体が、大きく広がった両足を間に割り込んでいく。 【GM】 剛毛の間からにょっきりと姿を見せる勃起した肉が、ゼルルの濡れた肉襞の狭間へ、入り込もうと―― 【GM】 ▽ 【ゼルル】「あぁvくるvきちゃうvオークちんぽv犯されてから、忘れられないvおちんぽの味vまた、きちゃうv今度は、耐えられない・・・狂っちゃう!///・・・だから、絶対に・・・ハメさせては、いけないのですっ!!」とろけ切った顔が、一瞬で切り替わり、マンぐり返しのまま背後に組んだ腕で描いた魔法陣を起動させる。 【ゼルル】 弓が壊れた時の為の緊急手段、魔力で矢を打ち出す力技は狙いなどつけれないけれど・・・子の近さなら関係ないとばかりに一気に魔力を放出させる! 【ゼルル】 【ゼルル】 9d6+3-3 白兵/単体/3回攻撃 マルチプルスナップ&ファントムサード&ツイスター&ファイナルストライク*3(MP6+2+2+CP9) いーち! 【ゼルル】 N07_zerr - 9D6+3-3 = [1,6,6,5,4,2,6,6,6]+3-3 = 42 【ゼルル】 9d6+3-3 白兵/単体/3回攻撃 マルチプルスナップ&ファントムサード&ツイスター&ファイナルストライク*3(MP6+2+2+CP9) にーい!! 【ゼルル】 N07_zerr - 9D6+3-3 = [6,1,1,1,1,6,6,3,6]+3-3 = 31 【ゼルル】 9d6+3-3 白兵/単体/3回攻撃 マルチプルスナップ&ファントムサード&ツイスター&ファイナルストライク*3(MP6+2+2+CP9) さーん!! 【ゼルル】 N07_zerr - 9D6+3-3 = [5,6,2,1,1,6,1,5,6]+3-3 = 33 【ゼルル】 42・31・33点のダメージ!どうだーー! 【GM】 その反撃の最中――! 【ゼルル】 ひにゃ!? 【GM】 ここで、一瞬、手心を加えれば――一匹の雌になれるという願望が、過る――! 【GM】 調教刻印による、判定―8 ×2回です。 【ゼルル】 ひにゃぁぁん/// 【GM】 抵抗しますか? 【ゼルル】 2回のうち、最初の一回は受け入れて・・・二つ目をCP3で抵抗します! 【GM】 どうぞ 【ゼルル】 一瞬、めり込んだおちんぽの事を考えて、、、でも、ダメ!って意志を強く持とうとする! 【ゼルル】 3d6 調教抵抗! 【ゼルル】 N07_zerr - 3D6 = [6,5,1] = 12 【ゼルル】 あふーー!耐えた! 【ドレッド】「ばか、なー―」 【GM】 その一撃をみて、信じられないものを見たような表情で、ドレッドは倒れます。 【GM】 それと同時に、倉庫の外側が次第に、騒がしくなっていきます、 【???】「ドレッド様はどこだー!?」 【???】「今の爆発音は何だー!?」 【GM】 ▽ 【ゼルル】「た、倒れた・・・のですよね・・・?」過去にゼルルが倒したオークが復活し襲われた経験から、外が騒がしくなっているのを知りつつも、拾い集めた弓で三連射、しっかりとドレッドに止めを刺し、動かないか確認をします! 【ドレッド】(びくびくっ、矢を打ち込まれて痙攣するのみ) 【ゼルル】 ほっと胸をなでおろすと・・・引きちぎれた服の残骸と、適当な布を一枚とって その場から離れます! 【ゼルル】 ただ最後の一瞬・・・ちらりとドレッドのほうを見て・・・きゅんvっとおまたをうずかせながら 【ゼルル】「あの時、、、もし、あの誘惑にのっていたら・・・どんな、結果になっていたのでしょうね///」と笑いながら目礼と、股から垂れた蜜を残して立ち去るのです。 【GM】 逃げ出したところで、本日のセッションは終了となります。お疲れさまでした。 【ゼルル】 はぁいv 【GM】 総獲得CPと獲得SPを申告して下さい。 【ゼルル】 あ、それでそうだんなのですが 【GM】 はい、何でしょうか? 【ゼルル】 途中のRPでクリちゃんいじりされたので・・・シーンアクトとして淫肉の真珠 使用したことにしていいですか? 【GM】 はい、OKです 【ゼルル】 ありがたやー! 【ゼルル】 総獲得CP14 SPは8 です! 【GM】 経験点+64点、ミアスマ+8点 名声+1 です。 【ゼルル】 わーい! 【ゼルル】 Lv3になって上位武器になれる! 【ゼルル】 次回のセッションの結果次第で 伝説の弓を装備できるかも?v 【ゼルル】 あ、今回のシナリオタイトルってなんですかね? 【オーク都市からの脱出:1】です。 【ゼルル】 らじゃー! 【GM】 あと、申し訳ありません、装備の変更は、オークシティで補給ができないので、現在一時的にできない状況です。 【ゼルル】 うんvなので次回のシナリオ次第っと・・・v 【ゼルル】 とりあえず~ 1時間オーバーしちゃってるので・・・また来週 ごそーだんいいかしら? 【GM】 はい。 本日はありがとうございました。 【ゼルル】 今夜はログ上げしつつ解散!でv 【ゼルル】 こちらこそなの! 【ゼルル】 とってもエッチな誘惑RPできたの たのしかったーw 【ゼルル】 駆け引きのあれこれもめったにできないのですごくよかったのーv 【ゼルル】 ありがとーv 【GM】 こちらも、駆け引きができたのは楽しかったです。ストレート以外もいいものですね。 【GM】 おやすみなさいませ 【ゼルル】 おやすみなさーいv(むぎゅ~v
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リグル1 1スレ目 102 リグル「~~♪~♪♪ ~♪~~~♪」 満天の星空… 川沿いを散歩していると、小川に足を浸して鼻歌を歌うリグル=ナイトバグに遭遇! このシチュエーション…どうやら神は俺に微笑んでいるらしい。 今こそこの胸にたぎる思いをかの虫姫に打ち明けなければ! さあ、いくYo! 俺「すぅ~…ヘイ!メェーン!!」 リグ「ッ!!!」 俺「俺のソウル溢れるこのFankyな思いを受け取ってくれYo!」 「Yo!メン、俺はお前のそのプリティーな触覚が大好k」 リグ「…嫌者『黒光羽蟲(ごきぶり)夜行』!」 俺「iだ?え?!ぐほふぁbんしお…」 Bad-End … 最初の一声 夢子「どうなさいました神綺様?」 神「うふふ…ちょっとバカな男の散りザマを見て笑ってただけよ。」 夢「左様でございましたか。そろそろお休み下さいませ。」 スレ汚してゴメン…_| ̄|○○| ̄|_ ─────────────────────────────────────────────────────────── 1スレ目 432 「(百足、蜘蛛、蛆、蛭を見せて)君、この子たちのこと嫌いでしょ。じゃあ駄目」 「そんなことない、この子たちだって大好きだ!」 虫たちを頭にやさしくのせ、リグルの手をとりとびっきりの笑顔。 →ハッピーエンド 「そんなことはない、この子たちだって大好きだ!」 虫たちを頭からおいしくいただき、リグルの手をとってとびっきりの笑顔。 →バットエンド ─────────────────────────────────────────────────────────── 1スレ目 884 この幻想郷ってとこに来てかなりの年月がたつ……んだが、日本に帰ろうって気も起きないんで幻想郷で暮らしてる。 そう思うようになった頃から、俺は夜には散歩に出るようになった。 お目当てはもちろん…… 「……あ、アンタまた来たんだ?」 「おう、こっちの水は甘いぞ~、ってな」 蛍を連れ、川に素足をつけて涼んでるこの蛍少女、リグル・ナイトバグ、である。 俺を見つけると笑いながら手を振る彼女。 幻想郷には外の世界じゃ絶対に見られないものがいくつかあったりして、 そのひとつがこんな妖怪さんたちってわけで…。 最初に出会ったのは迷い込んだときだったか。 気がつけば夜になってて、蛍の明かりを頼りにたどり着いたのがこの小川で、 そのときに彼女と出会った。 隣に座って、コップに入れた白い飲み物を渡す。蛍には甘い水。 「今日はどんなの?」 「ああ、特製健康飲料、『白汁』」 ……………静寂。 「……何だって?」 「乳酸飲料に蜂蜜とレモン汁を混ぜたものでございます」 つい昔聴いた言い回しを使ってしまって思いっきり白い目で見られた。ごめんねリグル。 「ふ~ん。そのにゅうさんいんりょうってアンタの世界のものだよね。どうやってもってきてるの?」 「こーりんが時々持ってきてくれるんだ。『いいブツが出に入ったぞ』って」 白汁を飲みながら聞く彼女。甘い飲み物はやはり好きらしい。 妖怪に効くかは知らないけど人には疲労回復とかに効果がある。だって乳酸飲料とレモン汁だし。 そんな馬鹿なことをやりながらしばらく涼んでいた。 「……ねぇ」 「ん?どうしたリグル?」 ふと、目線をやると、彼女はコップを両手で抱えたままこちらを見つめていた。 目線をやった拍子に目線がはっきりと合う。 「その……アンタ、蛍とか…好き?」 今更と言えば今更な話だ。嫌いならここにくる事も、ましてやリグルに会うこともなかったし 「………ああ、蛍は昔っからよく探し回ったもんだ」 笑いながら、見つめてくるリグルに答える。 「でも……一番好きなのは、お前だけど」 「え!?」 「………あ」 ……しまった、いつも以上に可愛かったから つい口をついてそんな言葉が出てきてしまった。 強烈に驚いた表情のまま凍り付き、コップを川に落とすリグル。 「な……あ、の…」 「あ……あ~………」 互いにあたふたする俺ら。 ……心臓が何か別の生物にでもなったかのようにドクドク言っていた。 「そ、それ……ほんき?」 「お、おう…」 「もしかして…愛情のほう……?」 「……ああ」 それ以上目をあわせられず、明後日の方向へ緊急退避する俺。 きっと、今の自分は下戸が酒をのんだように真っ赤なのだろう。 「……私も、好き……だよ」 そんな俺の背中にかけられる声。 見れば、リグルは頬を朱に染めながらこちらを上目遣いに見ていて、 そしていつの間にやら俺の服の袖をしっかりとつかんでいて… 「……あっ」 そっ、と 抱き寄せる。 抵抗もなく、すっと、腕の中に納まるリグル。 衣服を通して感じるささやかなふくらみ。 ……いや、それはともかくまずは… 「好きだ、リグル……」 「うん………」 … …… ……… ……気持ちをしっかりと伝えるのって大事だよな。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 2スレ目 98-102 所詮虫じゃねぇ…… ボロボロの私に追い討ちをかける言葉 たまたま見知らぬ妖怪と喧嘩になって、そして私は弾幕勝負に負けた。 その言葉は、所詮人間じゃ妖怪には勝てない、とかその程度のニュアンスだったんだと思う。 けど、私はひどくナイーブになっていて、必要以上に傷ついて泣いてしまった。 それは虫だからという理由だけで心ない言葉をかけてくる輩が少なからずいたから。 もちろん私の光をきれいだと言って眺めてくれるひともいる。 けれどそんなひとでも私に近づいて直接触れて可愛がってくれるひとはいない。 結局のところ私は嫌われているんじゃないか、そんな風に考えだしたらもう止まらなかった。 夜の森、木々に囲まれて星の光も届かない草むらの上にぺたんと座って 淡い私の光だけがぼんやりとあたりを浮かび上がらせていた。 「お、なんか明るいと思ってきてみたら、こんなとこで何泣いてんだよ辛気くさいなぁ」 そんな私にその人は実に無遠慮に声をかけてきた。 少ししゃがれてて無粋な大声、けれど何処か暖かい、それが第一印象だった。 「迷子かぁ? ママのおっぱいが恋しくなったのかこいつ、ハハハ」 前言撤回、ただの無神経馬鹿。 「そんな分けない! あんた何? 私になンノよ、用よ!」 ヤバ、声がうわずっちゃった……だってこんなときに声かけてくるんだもん。 もう、うっとうしい人間、憂さ晴らしに弾幕で追っ払ってやろうかとも考えた。 キッと睨みつける。けれど彼は私の視線なんてまるでおかまいなしの笑顔で私に近づいてきた。 「え、ちょと何するの」 「いいから黙って、ほらよっと」 彼は軽々と私を持ち上げると自分の肩の上に私を乗せた。 いわゆる肩車。 動作があまりにも自然であっという間だったので私の体をつかむ手を振り払えなかった。 何より、初めて男の人に触れられて抱き上げられた瞬間だった。 「コラ、変態、おろせ!」 「おいおい、変態はないだろ、やんちゃだなぁ。それよりも回り見て、意外といい景色だろ」 彼はそう言って私を肩に乗せたままぐるっとその場で回転した。 それも超高速で。 「わわわ、ひぇぇ」 振り落とされないように無意識に彼の頭をつかみ眼を瞑る。 やがて速度が落ちてきて、こわごわと眼を開けると、それは確かに意外な景色だった。 初めての、背の高い男の人の背中の上から見るいつもより少し線の高い風景。 それは、もっと高く飛べる私からしたらいつもと些細な違いでしかなかったけれど 普段見ない木の枝の付け根とか葉っぱの裏から見る空とか、何気ない物が新鮮に見えた。 そう、ほんのちょっと視線を変えるだけでまだまだ気がつかなかった新しいことが見えてくる。 いつの間にか、私が落ちないようにしっかりと彼が私の足をつかんでくれていることに気がついた。 首を上向けて私の顔を覗き込みニッと笑う彼。 ドキッとした。その笑顔に、初めて私を嫌悪の情もよこしまな考えもなくしっかりとつかんでくれた彼に。 「泣き止んだみたいだな。俺もさ小さい頃親父にこうしてもらったんだよ」 「……」 彼はかがんでそっと私を地面におろした。 「あ……」 「ん? 何? もっとやる?」 「い、いいよもう」 「そっか」 「そ、それよりも、あなたこの辺じゃ見ない人間だよね」 「ハハハ、じっつはさぁ、最近こことは違う世界から紛れ込んじゃったみたいでさ。この森の外れに空き家があったから 勝手に住み着いたんだけど、冷蔵庫とかないわけよ、あったらあったでおかしいけどさ。んで、こうして食べ物を探しに森を散歩してたのさ」 大きな声、だけど明るくて人懐っこくて可愛い話し方。なんだか放っておけない。 「この辺は危ないんだよ、夜は妖怪が出るから」 「んー、そう言う君も妖怪だろ? 実は! なんて? あれ、俺食べられちゃうとか」 「そんなことしないよ、でも本当にそう言う妖怪もいるんだから、出歩いちゃだめ!」 「ハハハ、わかったわかった、君みたいな恐い妖怪もいるからね」 もう、この人全然私のこと信じてない。というか完全に子供扱いっぽい。 悔しいから恩を売って私の方がすごいって所見せつけてやろう。 「この辺の森のことなら私が詳しいから、あなたがどうしてもって言うなら案内してあげようか?」 「マジ?! それすげー助かる! ありがとーーーぅ」 素っ気なく言ったつもりだが、彼はもう満面の笑顔で私の手を取り大きくぶんぶんと振った。 ぎゅっと握られる。思わず顔が赤くなる。 そんなことおかまいなしに私の手をつかんだままどんどん歩き出す彼。 「さぁ行こう、どんどん行こう、実は俺おなかぺこぺこだったっんだよねー」 言葉通り彼のおなかがグゥと鳴った。 それから、食べられる野草やキノコの生えている場所、きれいな泉、木の実の在処なんかを案内して回った。 いちいち子供みたいにはしゃぎ回る彼。 毒キノコを股間に挟んだり私に水をかけてきたり熟れた木の実をぶつけてきた時はどうしてやろうかとも思ったけれど。 でも、こんなに自然にひととふれあったのは初めてで、とにかく時間を忘れるくらい楽しかった。 それから彼とは森で何度も会うようになった。 一度など私が水浴び中に後ろから目隠ししてきたから思わず本気の弾幕で吹き飛ばしてしまった。 もう、まったく……馬鹿なんだから。 それから少しして、彼がやってこないので反省してるのかと思って私から彼の家を訪ねた。 まだ昼だというのに、枯れ草を集めた布団の上で彼は思いっきり気持ち良さそうに寝ていた。 ムカついたので蹴っ飛ばしてみたがムニャムニャとよくわからない寝言を言って起きる気配はない。 私は彼のベットの横に座り、そっと彼の顔に触れてみた。 かわいい寝顔…… !! よく見ると掛け布団がわりの薄布一枚の下は上半身裸だった。 つくづくこの男は、私が来ることなどこれっぽっちも考えてなかったのだろうか。 いや、そんなこと関係ないか。今までだってこんな感じだった。多分これからもこの人は変わらないだろう。 そっと布越しに彼の胸板に手をやる、思った以上に厚くてかたい。 そして暖かい。 壊れた窓から差し込む太陽の光がぽかぽかと心地よい。 私はそっと彼の胸板に頭をのせ、一度ぐいぐいと後頭部を押し付けたりしてみた後 彼の心臓の音を聞きながら一緒に寝てしまうことにした。 起きたらびっくりするかな? これで驚かれなかったらショックだなぁ……あれ、なんでそんなにショックなんだろう…… そっか……きっと私は……この人が…… ………… 日が傾いて部屋を真っ赤に染めている。 声が自慢の仲間たちの歌が聞こえる。 ここは、いつもの私のねぐらじゃない。 頭を優しくなぜる大きな手を感じた。彼が私の顔を覗き込んでいる。 じっと見つめている。だって私は寝ぼけていたし、彼の笑顔はもう私にとってなくてはならない自然だったから。 ぐっと両手を伸ばして彼の首に巻き付けて当たり前のように言葉が出た。 好き 自分でも不思議なくらいの自然な笑顔ができた。 彼は、ちょっと驚いたようだ。やった、なんだか勝った気分。 ぐいっと首を引っ張って顔を近づける。 まさかここまで来て、彼が私を裏切るなんてないだろう。 もうそこまで信じれるほど私は彼に夢中だった。変なの、自分じゃないみたい。 ゆっくり顔が近づいておでこがあたる。 そのまましばらくの間0距離で見つめ合った。 彼は意外にも何かためらっているようだった。もう、今更もどかしい! 私は自分から唇を重ねた。 ふわふわふわふわ。 しばらくして彼の反応も柔らかくなった。きっと緊張してたんだ、ウブなんだからっ。 たっぷり時間をかけてそっと唇を話した。 「ね、私のことどう思ってる?」 キスの後にきくなんて我ながら卑怯だと思ったけど、いいじゃない、この人に遠慮はいらないの。 彼は私の肩に手を置いて、まっすぐ私の眼を見てる。だから私も見つめ返す。 甘いにらめっこの後彼はハァと一息ため息をついた。 まるで何かに観念したかのよう。そして言ってくれた。 「俺もお前が好きだよ、コンチクショウ!」 言ってしまって放心したのか彼は別途にパタンと仰向けに倒れて天井を見た。 私も彼の胸板のを枕にして一緒に天井を見た。 そっと彼の手を握る、彼は握り返してくれた。 真っ赤な部屋でふわふわぎゅぅぅって。 「しかし、俺がこんな趣味だったなんて思わなかったよ、お前のせいだぞ」 なんだか悔しそう、もしかして私の見た目のこと言ってるのかな、最初から子供扱いだったしね。 「でも、本当はあなたより私のが年上だよ」 「いや、見た目の問題だからさ、もし君がもっと年上に見えたら正直こんな気持ちにならなかった」 あれ、真性のロリコンなのカナこの人は。まいいや、それならそれで問題なーい……いや ここ幻想郷じゃそれは大問題かもしれない。早くもこんな心配してる私が新鮮で恥ずかしい。 「でも、そう言う趣味は私だけにしてね、私だってこんなこと言えるのあなただけなんだから」 「ハハハ、もちろんだよ、しかしまさか 俺がショタコンだとは思いもしなかった超びっくり。 」 ん、今何つった? 「美少年ハァハァ」 あぁそうか、いろんな謎が今解けた。 「この大バカ!!!私は女だ!!!!」 思わず彼の手をつかんでぐいっと私の胸に押し付けた。 ほら、確かにちょっとわかりにくいけどこれでも立派な乙女なの! 「びみょぅ」 ゲシ!! ふぅ。 人間にこのキックを使ったのはずいぶん久しぶりだ。 反対側の壁に吹き飛んだ彼は複雑な表情でダウンしている。 はぁ。 はぁぁぁぁぁ。 ため息が出た。 そして 涙が止まらない。 だって、せっかく好きだって気がついて気持ちが通じたのに、こんなことって、こんなのひどいよ…… 「ぅぅぅ……グスン」 ベットで泣く私を突然大きくて暖かい物が包み込んだ。 「泣かないでよ、ごめん俺が馬鹿だったことは認めるよ」 「もう、いいよ! 言い訳なんてきかない!」 彼の手を払って逃げ出そうとするが、初めてつかまれた時のように、いやそれ以上に強く抱きしめられ 私は動けなかった。 「君も誤解してる。だって、俺は君が男とか女とかそんなことを通り越して君自身が好きだっていったんだぜ。それはあの時も今も変わらない。むしろ、今ならもう何の遠慮もなく君を愛せるよ。だから泣き止んで」 今度は彼の方から私の唇は奪われた。 それは激しいキス。ぎゅうぅぅっと何も考えられないほどに抱きしめられ唇を押し付けられた。 ふわふわした気持ちまでギュゥッと引き締められ、ただただ強く彼を感じた。 もう私は、自分が虫だとか、男の子に見えるとかそんなことは気にしない。 彼はありのままの私だけを見て受け入れてくれたから。 ね、あなた、ずっと幸せでいようね happy end うん、リグルきゅんかわいいよりグルきゅん 95の望みとは違う気がしたが だが俺は謝らない!! 女の子視点の方が書きやすいと思い始めた今日この頃。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 2スレ目 113 172 空を眺めていた 空は煌びやかな色で埋め尽くされ 其に惚れた 時刻は子の刻――もう少し遅いか 何かが一つ、落ちてきた しかも、こちらの上に 「いきなり……」 後ろの言葉を言おうとして、相手を見て止める 言ったら殺される、心の中でそれに気づいた 「あー、もしもし起きてる?」 どうやら気絶しているらしい 「空から降ってくるなんて普通じゃないよな…… 妖怪――なら貴重なものなんだけれども……」 生きた妖怪――ならものすごく貴重だろう 連れて帰る事にした 「さて、と貴重なサンプルだし……絵にでも描き写しておくか」 沢山の色を取り出す 「うぅん」 殆ど描き終わった所で目覚められてしまう ……出来るなら描き終わってから元の場所に戻そうかと思ったのだが 「ここは……」 即座に絵を隠してから話しかける 「ここは適当な人里だよ」 「なんで人里なんかに?」 混乱しているらしい、最も混乱しないはずが無いが 仕方が無いので誤魔化して見る事にした 「気にするな、俺は気にしない」 「普通気にするって」 「あー悪い悪い、それより帰るのか?」 「そうするつもりよ」 「ならこれでも持って行くか?」 そう言って帽子を渡す 「これ付けてないと妖怪だってバレるだろ?」 向こうはきょとんとしている 「意思疎通が出来る妖怪を失うのは痛いと思うんだけど?」 「そういう理由なのね」 「じゃあね」 どうやら本当に帰るようだ 「今度は落ちるなよ」 そういう皮肉を返してみる ……彼女が去った後、少々寂しさが残る 「全く、彼女いない暦=年齢の俺が初恋とはね……しかも妖怪相手に」 一人で愚痴を言う 「ここはあの噂を確かめさせてもらうかな」 そう言って駆け出した 白昼の時 其の家に向かった 彼らに聞けば真相は分かる 故の策 家の扉を勢いよく開ける 見知った顔が二つ出る、だが必要なのは店主じゃない 「この辺の地図一枚、後……そこの人間を借りて行くよ」 そして少女の方へ向き直り、地図を見せる 「ここまで連れて行ってくれないか?」 「しかたないな、乗れよ」 少しすると、少女のほうから話しかけてきた 「なんでこんな人間の里まで行きたがるんだ?」 答えない理由も無いので答えてみる 「ちょっと噂の真相を確かめにな、元はお前から聞いたものだし」 「そんな事言ったか?」 「とりあえず運んでくれれば問題ないからな」 「お前達、空から何の様だ」 「如何やら噂通りのようで」 多少おどけて言って見る 「妖怪は此処から先へは通せん」 「私は善良な普通の人間だぜ?」 多分話しても無駄だと直感する 「魔理沙、引き返そう。もう十分だ」 「空を高速で駆けているのが普通の人間なのか?」 「人間を襲ったりはしないぜ」 多少諦めながらも呟いてみる 「お前ら、人の話を聞けよ」 ……結局その後、論議では決着が付かず 弾幕で勝負する事となった こちら、後に乗っている人間からしたら良い迷惑だ 「結局帰れたのが夜で、しかも気持ち悪いのは誰のせいだ?」 愚痴を言う、恐らくは聞いてても無駄だと思うが 「まぁ、真実は見た、後は説得か……」 その後、あの「落ちてきた」少女と出会った所に行けたのは 数週間後となった 「久しぶりだな、帽子を大事にしててくれて有難うな」 さらに続けて言う 「良ければ、だけど……村に来てくれないか?」 「妖怪は駄目なんじゃないの?」 「頭の固い人たちを説得したんだ…妖怪と人間が共存している村があるって ……それから」 自分の持ってきた紙を広げる 「指輪は……駄目だったから……せめてこれ受け取ってくれないかな」 「これって…私の絵?何時の間に描いたのよ?」 無言で居る事にする 「分かった……受け取るわよ」 「良かった」 次の言葉をさらに言う 「実は……指輪作れないのも君の名前を聞き忘れてて」 「馬鹿なのね」 彼女は答えてくれた、彼女の名前を 「リグル……リグル・ナイトバグよ…そっちの名前はなんなの?」 「俺は……」 その時だった、何か明るい光を横から感じたのは 「人間と妖怪が愛を語っているなんて珍しい事です ばっちり新聞に書かせていただきます」 ……迂闊だった、としか言えない 天狗には追いつけないだろうし、明日にはこれが周知の事実になっているだろう 「一日で周りにばれる恋って言うのも面白いわね?」 それから、交換のように帽子を返される 「この帽子、返すね」 月並みかもしれないけどその後は幸せに暮らした ……指輪も、ちゃんと送りなおした Ring Was Inscribed On " To W" ─────────────────────────────────────────────────────────── 246 今日はいい天気、散歩するには最高の日和だ。 ってなわけで僕は自分の住んでいる森を散歩することにした。 でもこういうときに限ってなんかあるんだよな・・・ 「ひぇぇ」 ん?今変な悲鳴が聞こえたような・・・気のせいか。 「わーっ!いやーっ!来るなーっ!」 ・・・行ってみるか 僕が見たのは触角をつけ、マントを羽織った妖怪が随分とデカい妖怪に追いかけられているところだった。 「おーい・・・大丈夫か?」 「これが大丈夫に見えるのーっ!?助けてーっ!」 「いや、助けてーって言われても・・・僕は普通の人間・・・」 「いやーっ!喰われるーっ!」 ・・・仕方が無い、役に立つかは分からないが・・・おとりぐらいは出来るな・・・ 「すぅ・・・オイコラそこのウドの大木!!獲物はこっちだぞ!!やーい、のろま!!悔しかったらこっちまで来てみろってんだ!!」 「グゥゥ・・・ガァァァァァァァァ!!!!」 「ほらほらどうしたぁ!(尻を叩いて)バッチ来ーい!フォー!」 「ガァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」 「っと、やべっ!逃げろーっ!」 逃げ足には自信があるのでその妖怪は簡単に撒くことが出来た。 さて、さっきの場所に戻ってと・・・ 「もう大丈夫だぞ、出て来いよ」 「うう・・・本当に?」 「ああ、妖怪は撒いたぞ」 「ふぅ・・・良かった~」 「こっちは死ぬとこだったぞ・・・で、何であんなのに追っかけられてたんだ?」 「うん、綺麗な水を探してたんだけど何故かあの妖怪の尻尾を踏んじゃったの」 「・・・おっちょこちょいだな・・・」 「えへへ・・・」 「ハァ・・・ああ、そういえば君の名前は?」 「私?私はリグル、リグル=ナイトバグだよ」 「僕は○○、今後仲良くしような」 「うん!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「おーい、リグル?」 ・・・どこ行ったんだ?アイツ・・・ 「ったく・・・せっかく綺麗な泉を見つけてやったのに・・・」 思わず愚痴がこぼれてしまう。 僕はそこに座ってしばらく森を眺めていたが、急に視点が暗転した。 「ふふっ、だーれだ?」 「・・・こんなことする奴は一人しかいない・・・リグル、お前か・・・」 「あらら・・・やっぱり分かっちゃったか。うーん、残念」 「ったく、声でわかるっつーの・・・綺麗な泉を見つけたから行くぞ」 「本当!?やったぁ!」 ~蟲少女&青年移動中~ 「ほら、ここだ」 「わぁーっ、すごい綺麗!」 「これぐらい綺麗なら泳げるかな?」 「え、○○泳ぐの?」 「ん、まぁたまにはいいかなって」 「じゃあ私も泳ごうかな」 「いやちょっと待て、お前水着を持っているのか?」 「・・・?そんなの無いよ」 「・・・じゃあ、どういうカッコで泳ぐつもりなんだよ!」 「裸」 「・・・いや、即答されても困るんだが・・・僕がいるのに裸で泳ぐのか?」 「いいじゃん別に、私と○○の仲なんだしさ」 「そういう問題じゃ・・・」 「とにかく!私はここで泳ぐからね!」 そういうとリグルはいきなり服を脱ぎだした。 「いや、ちょっ、待てリグル、早まるな」 「○○も早く脱ぎなよ!一緒に泳ご♪」 「い、いや、遠慮しtってオイ脱がすな!こ、こらよせ!やーめーれぇーっ!」 ・・・結局、生まれたときと同じ状態に・・・ ちなみに服はリグルが呼んだ虫によって運ばれていきました・・・何処逝ったんだろ・・・ 「・・・うう・・・(木陰に隠れて)」 「どうしたの~?早く泳ぎなよ」 「・・・年頃の女の子とスッパで一緒に泳げるかっつーの」 「もったいないよ。こんなに綺麗なのに」 「・・・じゃああれだ、僕が入ったら水が汚れる」 「そんなことないってばぁ。んもう、じれったいな(水からあがる)」 「ふわっ!リグル、やめれ!そんなカッコで僕に近づくな!」 「フフフ・・・捕まえた~(抱きつき)」 「んあっ!リ、リグル?何をしt」 「さぁ、一緒に泳ごっ♪(抱き上げそのまま泉へDASH!!)」 「ちょっまっ、うわぁぁぁぁぁ!(ドボーン)」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ったく・・・なんだってこんな目に・・・(ぶくぶく)」 「○○~、気持ちいいねぇ~」 「・・・まぁ、気持ちいいっちゃいいんだけどさ・・・(本当にお尻が光るんだ・・・って何を見てんだ僕は)」 「どうしたの?早く泳ぎなよ。さっきからずっと岸に掴まりっぱなしじゃん」 「・・・恥ずかしいんだよ・・・」 「そんなこと言わないで泳ごうよ・・・(ニヤリ)」 「い、いいよ。僕はここに浸かっているだけで」 「・・・わっ!キャーッ、助けて○○ーっ、溺れるーっ」 「なっ!?今行くぞリグル!!大丈夫か!?」 「んふふ・・・引っかかった~♪(ガシッ)」 「は?」 「ここまで来ちゃったね○○、もう逃げられないよぉ~」 「えっ?じゃあ今のは・・・」 「溺れたフリしてただけだよ」 「・・・汚ねェ・・・」 「(抱きつき)ん~っ、○○の体ってあったかい・・・」 「うう・・・」 ・・・結局、リグルと○○は半刻ほど泳ぎ続け、二人そろって唇が紫になったとか・・・ リグルと泳ぎたかった。それだけだ。 ・・・なんつうかその・・・いろいろとスイマセンでした・・・ ─────────────────────────────────────────────────────────── 253 「未練はないが……故郷を思い出すなぁ。 毎年ドカ雪が降らないと冬と思えない」 カーテンを開けると、暗い外が見渡せる。そして、降り積もる雪。長い冬が始まっているのだ。 雪の量はかまくら作りにも申し分ないほど積もってきている。 ……リグルと一緒に住むようになってから、ようやく落ち着いた。 住まいはこーりんの家のすぐ隣。魔理沙から引き取ったガラクタを 転売してかなり儲けているらしく、家を建てるなど造作もないことらしい。 「リグル~、夕飯にしよう」 「ん、は~い…」 寝室で寝ているリグルを呼ぶ。 どうやら寒くなると活動が鈍るらしく、部屋の電気毛布の布団に包まってもぞもぞしているか あるいは居間にある掘りごたつに入ってお昼寝をしていることが多くなった。 虫の習性かは知らないが、布団つむりとか、こたつむりのリグルはかわいいので良しとしよう。 そして家事全般はそのリグルのため俺がやる。朝から晩まで、冬に備えて溜め込んだ作物から、 どんなメニューを作ろうか考え、そして実行する。洗濯などもあるが。 暮らしてて解ったことだが、蛍はきれいな水のある場所を好む。それは蛍少女であるリグルも同じらしい。 ただし、通常、羽化した成虫の蛍は夜露のみでわずかな命を生きるが、蛍とはいえ妖怪なので 寿命は人間の比ではなく、普通の食事も食べれないわけじゃないようだ。 … …… ……… 食事の後、片付けるのも無論俺。 リグルはストーブの真ん前のコタツに座って(椅子ではなく。そもそも無い。)白汁を飲んでたりする。 行儀が悪いが、彼女くらい軽ければ簡素なコタツもゆがむことはあるまい。 「どこかの冬の忘れ物とか、真っ赤な館のメイド長ならともかk……」 ―――ガッ! 「な、なに今の音!?」 「…あ~、せっかくの家に穴開いた」 ……地獄耳かあのDIO様は。 にしてもなんだ、このレールガンか何かで加速したかのような貫通力は。 壁を突き破ってさらに反対側の壁に突き刺さってるぞコラ。 「まぁ、幸い風も強くないから今塞いどくよ。 リグルは冷えないうちに部屋に戻った方がいいかな」 「うん、じゃぁ、おやすみ……」 ――ほどなくして壊れた穴を修繕。 こーりん、怒るだろうなぁ…… 部屋に戻ると、電気はすでに消え、月の光を雪が反射してリグルの緑色の髪が布団の隙間から覗いていた。 ……ふむ、眠っちゃったか。となると、これは…… にア 千載一遇のチャンス到来! おとなしく寝るか… やっぱり、王道と言うか……いやいやいや と言うわけで、布団が4枚重ねになっているリグルの寝床にもぐりこんで添い寝を図る。 …布団の中には、先ほど眠ったばかりと思われるリグルがすうすう寝息を立てていた。 あどけない顔が心底安心しきった表情で、それにささやかな喜びを感じ、 同時に、この少女の笑顔が自分は何より好きで、何よりも守りたいものだと実感する。 「ん……」 と、目前で見つめていたせいか、薄目を開けて俺をちらりと見てきた。 もう夢の中だったらしいが、気がつかず、目前にいた俺に抱きついてきて、一言 「す…き……ずっと、いっしょ…」 ……じわり、と暖かいぬくもりがココロに感じられる。 たとえ寝ぼけていても、うれしかった。変わらず好きでいてくれたこと。 だから、そのちいさい額にキスをして 「ああ……いっしょだからな」 「ん~」 夜が明けるまで一緒にいよう。 夜が明けてからも一緒にいよう。 喧嘩しても仲良く共に在ることを誓おう。 ……さて、明日の朝、目が覚めたらどんな顔するかな、愛しい君は。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 513 眠る草木にいたずらし放題な丑三つ時の森の中。 とある男女が、小川で向き合っていた。 「こ、これ……」 そういって鮮やかな緑色の髪に、触覚が似合う少女が男に差し出されたのは小さな袋。 ――男も決して鈍感ではない。この日、この時にこのようなものが出ることの意味ぐらいわかっている。 差し出す少女の顔は真っ赤で、上目遣いにちろちろと男を見ていて、 そして、少女の手には絆創膏がいくつもついており、袋の中身のために如何に苦心したか察するに余りある。 「リグル…」 「人間って、こういうのプレゼント……する…んでしょ?」 「ああ。…いただくぞ?」 「うん……どうぞ…」 開けた袋の中には、丸い小さなチョコが4つ。 いただいたのだから、その場で食べなければという意思の下、男はそれを食べる。 ……少し苦味が強いが、ちゃんとしたチョコレートの味がした。 蟲の妖であるリグル。自分が本来忌み嫌う火を使うのもなれない……いや おそらくは初めてだったろうに、必死で頑張ったのだろう。 おそらくは、この日のために。 「どう……かな?」 それ心配げに見守るリグル。 「ああ……美味い。美味いぞ」 そして、それに答えるように男はやさしく微笑み、リグルは花が咲いたように表情を喜一色にする。 ――どちらからでもなく、互いに手を伸ばし、リグルが男の胸の中に納まる。 「…ありがとうな、こんなになるまで……。大変だったろ?」 「でも、喜んでくれたからいいの」 それこそが全てであるように、彼女は応える。 「……ホワイトデイ、待っててくれ。 絶対、気合入ったもの作って、プレゼントする」 「うん……今から楽しみ」 半ば本気に笑って言う男と、それに花のような微笑で返す少女がそこにいた。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 4スレ目 187 189-198 187 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 08 39 44 [ sI.Rk0Jw ] 「これを、貰っていただけますか?」 夕暮れの湖畔、リグルが僕に差し出したのは小瓶に蜂の巣の欠片が入った蜂蜜だった。 「仲良しの蜂たちから特別に分けてもらったんです。甘くて美味しいです」 そう言うリグルの顔は夕日に照らされ紅く染まっていた。 「良いのかい? こんなに貴重な物を貰ってしまって」 僕が訊くと、蟲の姿をした少女は微笑みながら喋りだす。 「はい。いつもお世話になってますから、そのお礼です」 「そう、それならありがたく戴きます」 彼女の小さな手から小瓶を受け取る。触れ合う指が柔らかい。 「あと、それからこれも……」 少女はポケットの中から小さな笛を出した。細長く、丸い。 本来は銀色なのだろうけど、今は西日が反射し、朱色に輝いてとても綺麗だ。 「これは?」 「蟲笛。これを吹けば空気が震えて私の翅に伝わります。 これで私を呼んで下さい。必ずあなたのもとへ参ります」 「わかった。大事に使わせてもらうよ」 笛を受け取ると、少女は首をフルフルと振った。 「だめ……。『大事に』では嫌です。毎日吹いて欲しい……」 鈴虫が鳴く様に小さな声で彼女は言う。頬に紅みが増したのは、夕焼けの所為では無さそうで、 「そうだね」 その儚さに、僕は彼女を抱きしめる。華奢で小さなその肩を、壊さないように、愛しむように、そっと。 吐息の音さえ聴こえる距離で、葉のざわめきも水面の揺らめきも聴こえず、二人の影法師は一つになった。 おしまい 189 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 21 47 45 [ YwOdBeoI ] 187 一回吹くとリグルが、 二回吹くとリグルのおかんが、 三回吹くとリグルのおとんが呼ばれて飛び出るわけだな! 190 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 21 49 29 [ YNGQ2Mm. ] 189 つまり「お父さん。娘さんを僕に…」ってわけだな 191 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 21 58 09 [ tySV9rvQ ] 190 君にお父さんと呼ばれる筋合いは無い。帰りたまえ! 192 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 22 39 24 [ yKwEmETo ] 191 待ってくださいお父さん!僕は真剣にリグルさんの事を愛しているんです! 193 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 22 50 24 [ ftU0au1w ] 192 君の気持ちが本当だというなら……まずは私を愛してみせろ! 194 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 22 51 34 [ QTvUmnNw ] 193 お父さん……普通に無関係の方向に話が飛んでます。 195 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 22 55 42 [ ftU0au1w ] 194 君に言われるまでも無く、判った上でやってるのだよ。名も知らぬ青年 196 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 23 00 06 [ YNGQ2Mm. ] ここら辺で「もう、お父さんいいかげんにしてよ!!」って言いながらリグルが飛んでくるんですね。 197 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 23 21 56 [ 1VYp/8gM ] もう、お父さんいいかげんに 死 ね ィ ッ !! ガ ッ シ ィ ィ ン ッ ぬぅッ 流石は我が父! よくぞ今の蹴撃を止めた! こうですか? 分からなくてもいいような気がしています。 198 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/06/22(木) 23 25 05 [ QwQk25/Q ] 196 リグル! お前は向こうの部屋へ行っていなさい! これは男と男の話し合いだ! ……今時こんな堅物親父は現存するのか。まあ幻想郷だしいいか ───────────────────────────────────────────────────────────
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活人剣の道険し ◆cNVX6DYRQU その女をはじめて見た時から、甚助には嫌な予感があった。 しかし、甚助はその予感を特に深刻には捉えなかった。そもそも、甚助は女人が苦手なのだ。 幼い頃から剣の修行にのみ打ち込んで来て、母以外の女人と接した事が碌にないのだからそれも当然だろう。 まして、このような場で正体不明の、それでいて無腰の女と出会えば戸惑って当然。 故に、甚助はその女を見た瞬間の嫌な感覚について深く考えはしなかった。 もしも、甚助がもう少し剣客としての経験を積んでいたならば、その感覚の正体もわかったのだろうが…… 甚助をその女の元に導いたのは、同行していた上泉伊勢守である。 と言っても、信綱がその女を目指していた訳ではない。 甚助と出会った時から、信綱が第一に目指していたのは、一度はこの剣聖を退けたという獣のような剣士。 あの凄まじい獣性から他の剣士達を、そして彼自身をも救う事を、信綱は己に課している。 その為に、信綱と甚助は服部と別れた後、城下町へと入っていた。 他者への憎しみに囚われたあの男は、人の気配が多い城下町へ向かった可能性が高いと判断したからだ。 そして、城下に入った二人を真っ先に出迎えたのは無惨に首を切られた少年の遺体。 これは百万の言よりも雄弁に、この殺し合いの危険性を物語っていた。 しかも、信綱の見立てによれば、下手人は彼等が追っている「獣」とは別人であろうという。 信綱によれば、彼と戦った「獣」の剣は、技も理もない正に野性の剣であったとか。 対してこの死体を作った者の剣筋は、荒々しくはあるが正当な剣術を修めた跡がくっきりと見られる。 とすると、城下には彼等が追っている男以外にも「いぞう」なる危険人物がいるという事だ。 いや、それだけではない。 城下のあちこちから感じられる鋭い殺気と血の臭い……この地が既に修羅界に呑まれている事は甚助にもはっきり感じられた。 さすがの伊勢守も城下の異様な雰囲気に戸惑ったのか、しばらく瞑想していたが、急に眼を開くと、 「こちらだ」 と甚助を促して、傷と老体を感じさせない早足で歩き出す。 最初は信綱が急に目的地を定めた事を訝る甚助だったが、しばらく進むとかれもその殺気に気付いた。 殺気と言っても、他に幾つもある籠もった殺気とは質が違う。 現在進行形で斬り合いを行っているかのように、激しく鋭い殺気が断続的に発せられているのだ。 しかし、斬り合っているのならば当然あるべき、対手側の殺気あるいは剣気は全く感じられない。 という事は、戦う気が、あるいはその手段がない者を誰かが一方的に攻撃している、という事態も考えられる。 そう悟った甚助は、足を速めて信綱の先に立ち、殺気目掛けて進んで行った。 結論から言えば、甚助はそこまで急ぐ必要はなかった。 二人の前に現れたのは、熱心に剣の素振りをする男。剣を振る度に凄まじい殺気が放出されている。 どうやら、仮想の敵を想定して、それを相手に鍛錬をしているらしい。 女物の小袖を着た華奢な男だが、剣を振る姿を見れば相当の修羅場をくぐって来た一流の剣客である事は一目瞭然。 甚助はこんな状況でも修行を怠らない男に尊敬の念を覚えたが、気配に気付いた男がこちらを見るとそれも吹き飛ぶ。 その禍々しき眼、加えて甚助達を確認しても剣気を抑えず、逆に呑んで掛かろうとするかの如き不遜な態度。 先程の稽古を見るに、この男も一目で伊勢守の剣聖たる格を見抜く程度の腕前はある筈。 にもかかわらず、この大先達に対して挑みかかろうとする素振りすら見られる。 恐らくは剣の正道を外れた邪剣士……そう見究めた甚助の手が刀の柄に伸びるが、それを見た男は嘲るように笑う。 つられた甚助が激発しようとした瞬間、機先を制して信綱が男に声を掛けた。 「見事な太刀筋。一手、お相手願えぬか?」 互いに剣を構えて向かい合った瞬間、小袖の男……武田赤音は礼もせずに横合いに向けて走り出す。 しばし駆け続けた後に立ち止まって振り向くと、そこには年を感じさせぬ動きで追って来る老人の姿。 暫時そのまま睨み合うが、もう一人の男が追いついて来る様子はない。 (上手く引き離せたな) 心の中でそう呟く赤音。いきなり駆け出したのは、敵の二人を引き離すのが狙いで、その狙いの通りになったと。 だが、本当にそうなのだろうか。それにしては、赤音の表情からは策が図に当たった爽快感は見られない。 或いは、老人と供の男が揃って追い掛けて来るというのが赤音の見込みだったのではなかろうか。 そうして、彼等をあの場から、あの女から引き離すのが本来の目的ではなかったのか。 最早この問いへの答えが得られる事はないだろう。元来、人の心とは複雑怪奇で移ろい易く矛盾に満ちたもの。 ましてや、武田赤音のような歪みきった人間の本心など、余人は無論、赤音本人ですら、把握するのは困難だ。 何より、赤音の心からは既にこの件に関する事はすっかり拭い去られてしまっている。 仮に赤音の本意があの女を守る所にあったとしても、事ここに到っては赤音にこれ以上できる事は何もない。 加えて、赤音が対峙している老人は、おそらく剣士としての格では赤音を数段上回る強敵。 余計な雑念を捨てて、全身全霊で掛からねば勝ち目はないだろう。 それを悟った瞬間から、赤音の心は刃のように研ぎ澄まされ、気まぐれで拾った女の事などすぐに忘れ去ってしまった。 一度は助けた女の事を心から捨て去り、全力で目の前の老人を葬らんとする赤音。 しかし、猛る心とは裏腹に、その身体は老人と対峙したまま動けずにいた。 本来ならば、如何に相手が強敵であろうとも、積極的に攻め込むのが赤音の戦い方だ。 実際、それで体力勝負に持ち込めれば、若く睡眠をとって体力を回復したばかりの赤音が絶対に有利だろう。 にもかかわらず、赤音は動けない。 どのような技で攻めようとしても、全て相手に読まれている感覚を覚え、技を繰り出す事が出来ないのだ。 実際に老人が赤音の技を読みきっているのか、それとも全て剣客としての格の違いが見せる幻想なのか。 どちらにせよ、相手に技を読まれているという感覚は必然的に赤音の心に動揺を生み、 動揺を抱えたまま攻撃を繰り出せば、どうしても技は乱れ、隙を作る事になる。 それ故に赤音は攻勢に出ることが出来ず、ならばと隙を見せて攻撃を釣り出そうとしても老人は乗って来る気配がない。 結果、赤音は身動きが出来ないまま、空しく殺気だけを放ち続ける事となった。 格上の相手との対峙で神経を消耗しつつある赤音の脳裏に、一人の老人の姿が浮かぶ。 目の前にいる、静かに佇んだまま格の違いで威してくる老人とは対照的な、神速の剛剣の使い手を。 自分にもあの老人のような雲耀の剣が使えたならば、技を読まれているなどという疑いは無視して攻め込めただろう。 だが、今の赤音の剣にはそこまでの速さはない。軌道を完璧に読まれても尚、防御を許さず達人を切り捨てる程の疾さは。 とはいえ、それで諦めるほど武田赤音は甘い剣士ではない。 これが完全に一対一の試合ならさしもの赤音も打つ手がなかったかもしれぬが、実際は数十人が入り乱れての殺し合い。 一対一で戦っていても、常に他の剣士が不確定要素として紛れ込む余地が残されている。 そして、予想外の事態が起きれば、役に立つのは老人の経験よりも赤音の即応能力の方。 故に、赤音は先程から、精神力の浪費とも思える殺気の放出を繰り返しているのだ。 赤音が稽古で発した殺気に誘われてこの老人達が現れたように、今発している殺気が別の剣士を呼ぶ事に賭けて。 あっさり結果を言ってしまうと、赤音はこの賭けに勝った。それも、かなり恵まれた形で。 岡田以蔵は孤独であった。 四乃森蒼紫との戦いの中で取り戻した理性は、己が受けている傷がどれだけ危険な物かを教えてくれた。 そして、自身が複数の気配に追われており、この状態でその者達に出会えば勝ち目はないだろう事も。 理性の声に従い、民家に隠れて傷の手当てをする以蔵だったが、そうして追われ隠れる体験が過去の記憶を呼び覚ます。 政変によって土佐勤王党が勢いを失い、京で一人潜伏していた日々の記憶だ。 その記憶は、幕吏によって捕えられ、武士ではなく無宿者として扱われた屈辱の体験へと繋がって行く。 更に土佐藩に引き渡されての拷問、最後には敬愛する師の裏切り……いずれも以蔵を深く苛む記憶ばかりだ。 なまじ理性を取り戻してしまったが故に、以蔵の苦しみは増し、胸の奥に燃える炎はより激しく猛り狂い、以蔵の身を焦がす。 そんな以蔵が、赤音の剣気を感じて、追われているのも忘れて姿を現したのは当然と言える。 師によって己も一端の志士であるという自覚を真っ向から否定された以蔵にとって、残されたのは剣だけだ。 斬り合いの場では家柄も学問も思想も関係ない。誰もが以蔵を畏れ、或いは頼った。 人斬りの記憶が、今となっては蔑まれ続けた以蔵の人生の中の唯一の光芒となっているのだ。 それ故、岡田以蔵は姿を現した。剣以外の何も持たずとも、剣においては己こそが最強である事を示す為に。 以蔵が現れると、睨み合っていた二人の剣士は、ただならぬ気配を感じてそちらに目を向ける。 中でも年老いた方の剣士……上泉信綱は、以蔵を見た瞬間に瞠目して気を乱す。 単に岡田以蔵と再会しただけなら、信綱が動揺する事はなかったろう。そもそも彼を追って城下にやって来たのだから。 問題は以蔵の腕に施された応急処置。傷の手当てをしたという事は、彼の理性が戻っている事を示す。 以前は理性を失って暴れる以蔵に対し退くしかなかった信綱だが、理性が戻ったのなら打つ手はいくらでもある。 予期せずして千載一遇の好機に出会い、信綱の注意が一瞬、対手である赤音からそれたのも無理ないだろう。 無論、それを見逃す赤音ではない。信綱の動揺を察知すると同時に、突進して最速の剣を叩き付けた。 赤音の剣が走り、一瞬遅れてその軌道に赤い線が現れる。 信綱が赤音の振り下ろしを避けきれず、逆刃刀の切っ先が信綱の顔をかすめ、負傷させたのだ。 これは、信綱の気が逸れた瞬間に赤音が仕掛けた為という事も勿論あるが、それだけで一撃を受ける程、剣聖は甘くない。 にもかかわらず信綱が負傷したのは、赤音の剣が予想より……赤音自身の予想よりも更に速かった為である。 その為、赤音の動きから剣速を予測した信綱の目算が狂い、回避が遅れたのだ。 とはいえ、剣速が己の目論見と狂うのは、速いにせよ遅いにせよ、利は少なく害が多い。 今回の赤音も、予想以上の神速の振り下ろしで信綱に手傷を負わせたのは良いものの、己の激しすぎる勢いに体勢を崩す。 そこに襲い掛かる凄まじい殺気……対峙する二人に馳せ寄った以蔵が、折り良く隙を見せた赤音に斬り付けたのだ。 赤音もただではやられぬと、素早く刃を翻し、以蔵を切り上げる。 そして、二人の得物が交錯する瞬間、信綱の刀が割って入り、三本の剣は数瞬からみ合った後、三方に弾き飛ばされた。 弾かれた三人は間を置かずに駆け寄ると、激しく斬り合う。 しかし、それぞれの思惑……そしてそこから導かれる戦い方には大きなずれがあった。 この戦いを最も楽しんでいるのは赤音だろう。 先程は自身の剣が速すぎた為に危機を招いたが、把握さえしてしまえば速さが増すのが剣士にとって悪い事の筈がない。 どうも、東郷重位の雲耀の剣に触発されての稽古が、赤音本人の予想を超える成果を上げているようだ。 ここで二人の達人を実験台として更なる修練を積めば、予想よりもずっと早く雲耀の域にまで達せるかもしれない。 そんな剣士としての高揚感を胸に、赤音は刃の間で躍っていた。 以蔵の必殺剣が迫れば信綱を盾にし、信綱が押さえ込もうとして来れば以蔵をけしかける。 上手く立ち回って危険を避けつつ、機会を捉えて技を試す。ある意味、剣客の鑑のような振る舞いと言えようか。 対して以蔵の動機は単純明快。信綱と赤音の両者を殺す事だけを狙い、必殺の剣を振るい続けるのみ。 彼にとっては、二人が何者なのかも、どんな剣を使うのかも関係ない。 信綱がこの島で初めて戦った相手だという事すら気付いているかどうか。 仮に気付いていたとしても、以蔵にとってそんな事は無意味。彼は人斬り。天災の如く無差別に、ただ殺すだけだ。 信綱はそれとは全く対照的。哀しみと狂気を秘めた二人の若者を何としても救う。それが剣聖の目的である。 老いた信綱にとっては、若き達人二人との立ち回りは相当の難事だ。 以蔵が理性を取り戻した事や、赤音が自身の予想以上の剣速を完全には扱いきれていない事に最大限に付け込んだとして、 それでもこの二人を殺さずして制圧し、彼等を救う端緒を作るのが如何に困難か。 加えて、赤音と以蔵が互いに殺し合うのをも信綱は止めなくてはならないのだ。 おそらく、三人の中で最も危険な立場にいるのが信綱であろう。それでもやるしかない。それが活人剣の道なのだから。 三者三様の剣が交錯し、城下町の剣気は更に色濃く、熟成されて行く。 【へノ参 城下町/一日目/早朝】 【上泉信綱@史実】 【状態】疲労、足に軽傷(治療済み)、腹部に打撲、爪一つ破損、指一本負傷、顔にかすり傷 【装備】オボロの刀@うたわれるもの 【所持品】なし 【思考】基本:他の参加者を殺すことなく優勝する。 一:岡田以蔵と武田赤音を殺さずに制圧する 二:甚助と合流し、導く 【備考】※岡田以蔵と武田赤音の名前を知りません。 ※服部武雄から坂本竜馬、伊東甲子太郎、近藤勇、土方歳三の人物像を聞きました。 【岡田以蔵@史実】 【状態】左腕に重傷(回復する見込み薄し、応急処置済み)、全身に裂傷打撲多数、この世への深い憎悪と怒り 【装備】野太刀 【所持品】なし 【思考】基本:目に付く者は皆殺し。 一:上泉信綱と武田赤音を殺す。 【備考】※理性は取り戻しましたが、尋常の精神状態にありません ※上泉信綱と武田赤音の名前を知りません。 【武田赤音@刃鳴散らす】 【状態】:健康、疲労(中) 【装備】:逆刃刀・真打@るろうに剣心 現地調達した木の棒(丈は三尺二寸余り) 竹光 殺戮幼稚園@刃鳴散らす 【所持品】:支給品一式 【思考】基本:気の赴くままに行動する。とりあえずは老人(東郷重位)の打倒が目標。 一:上泉信綱と岡田以蔵を実験台に剣を練磨する。 二:強そうな剣者がいれば仕合ってみたい。 三:女が相手なら戦って勝利すれば、“戦場での戦利品”として扱う。 四:この“御前試合”の主催者と観客達は皆殺しにする。 五:己に見合った剣(できれば「かぜ」)が欲しい。 【備考】 ※人別帖をまだ読んでません。その上うわの空で白州にいたので、 ※伊烏義阿がこの御前試合に参戦している事を未だ知りません。 ※道着より、神谷活心流と神谷薫の名を把握しました。 ※上泉信綱と岡田以蔵の名前を知りません。 武田赤音と上泉信綱が走り去った後、林崎甚助は訝しげな顔で辺りを見回した。 甚助としては、自分も信綱と共に赤音を追うつもりだったのだ。しかし、走り出そうとした甚助に信綱が一言。 「この場は任せる」 この場に何があるのか、何を任せると言うのか。甚助は不得要領のまま辺りを見回した。 と、信綱と赤音の気配が完全に消えてから、甚助はその場、民家の中にもう一つ気配が残っていることに気付く。 赤音の禍々しい剣気があまりに強烈で、それに紛れてもう一つの気配を感じ取れなかったようだ。 戸を開けて中に入ろうかとも思ったが、両手が自由にならない状態で襲われたら甚助には為す術がない。 「そこに居るのは何者だ!」 声を掛け、警戒していると、家の中で人が緩慢に動く物音がし、戸を開けて出て来たのが、神谷薫であった。 先にも述べたが、甚助は女人が苦手。ましてこのような特殊な状況で出会った女にどう接すれば良いのか。 無腰の女、しかも、今眠りから醒めたばかりの様子の女に必要以上の警戒を見せてしまった事を恥じる気持ちもあり、 同時に、あの見るからに危険な男の連れである以上、この女に対しても気を許すべきではないとも思える。 女の方はそんな甚助の逡巡を気にする様子もなく、無邪気に問いかけて来る。 「あの、剣心は?」 剣心などという名は知らなかった甚助だが、状況から武田赤音がそれだと考えたのも無理はあるまい。 「剣心?あの優男か」 武田赤音を評したこの表現が緋村剣心にも当てはまるものだったのは誰の不運であろうか。 甚助とて、どちらかと言えば優男の部類なのだが、彼は華奢な体格による剣腕の不足を必死の修練で克服して来た。 そんな彼が、女物の小袖という赤音の姿に反感を持つのも当然で、それが棘のある言い方に繋がったのかもしれない。 「今頃は伊勢守様に打ち倒されているであろう」 その言葉を聞き、顔色を変えて駆け出そうとする薫に対し、甚助は素早く抜刀して首に刀を突き付けて動きを封じる。 ああは言ったものの、小袖の男は油断ならぬ剣士。 この女が乱入して戦場が混乱すれば、まさかの番狂わせがないとも言えない。 もっとも、素手の女に刀を突き付けるような所業は甚助の望むところではないのも事実。 「心配せずとも伊勢守様は有情の方。あの優男の高慢をへし折りはしても傷付けはしない筈だ」 そう言って薫を静めようとする甚助だが、それは遅かった。 甚助の口からその言葉が発せられる直前に、叫び声が辺りを圧したからだ。 「薫殿!!」 そう大音声で叫びながら剣心は走っていた。 わざわざこんな大きな音を立てて自身の存在を触れ回れば、危険人物を招き寄せる危険がある。 危険人物でなくても、殺気立って走り回る剣心を見れば警戒するだろう。 それを承知の上で剣心は駆け回っていた。何としても薫を見付け、保護しなくては。 薫が剣心にとって大切な存在だというのもあるが、薫がこんな事に巻き込まれたのは己のせいだという責任感もある。 この御前試合の場で出会った剣士達は、いずれ劣らぬ超一流の剣士ばかりであった。 他にも名簿に載っていた幕末の動乱で活躍した剣士達や、伝説でのみ知る戦国から江戸期の剣豪達。 彼等が本物だとすれば……志々雄真実の存在を考えると本物の可能性が高いと思われるが……やはり最高峰の剣客ばかり。 そんな中、神谷薫の存在は、この御前試合の中で明らかに浮いている。 確かに彼女も剣客ではあるが、その実力は、天下無双を争える域には遠く及ばない。 にもかかわらず、どうして薫がこの島に呼ばれたのか。 考えられる事はただ一つ。薫を危機に曝す事で剣心の中の人斬りを呼び覚まそうというのだろう。 つまり、彼が薫を巻き込んだ事になる。その認識が薫への想いと相まって、剣心を追い詰めていた。 どれくらい捜し回ったか、剣心は遂に見付けた。喉元に刀を擬せられて絶体絶命の薫を。 その瞬間、剣心の中で何かが膨れ上がり、叫びながら駆け出していた。 「薫殿!!」 女を鎮める為に発そうとした言葉をかき消して叫び声が木霊する。 そちらを振り向いた甚助の目に飛び込んで来たのは、刀に手をかけて走って来る血まみれの男。 「剣心!」 男の叫びに呼応して女も叫ぶ。すると、女が言っていた剣心とはあの男か。では、小袖の男は一体…… 甚助が不審に思っている間にも男は凄まじい走力で近付き、間合いに入ろうとしていた。 居合いの本義は納刀した状態から一挙動で切り付ける事で、相手が応戦の準備を整える前に倒す事にある。 裏を返せば、攻撃の機を逃せば先制されて無防備のまま攻撃を受ける危険があるという事だ。 それだけに、甚助は危険が迫れば事情がどうあれ自動的に居合いを使えるよう訓練を積んである。 素早く剣を引いて納刀し、居合いの構えを取るとそれだけで神経が研ぎ澄まされ、最適の行動が啓示の如く思い浮かぶのだ。 甚助は納刀して抜刀術の構えを取るが、限界以上の速度で走って来た剣心は既に間合いの間近まで迫っている。 このまま居合いを放っても剣心に対して振り遅れるのは必定……だが、そこは甚助も居合いの中興祖と言われる程の使い手。 疾走して来る剣心に対して自身も駆け寄り、相対速度を思い切り上げる。 居合いを奥義とする流派だけあって飛天御剣流の剣士は間合いの見切りに優れており、剣心も例外ではない。 とはいえ、限界を超える速度で疾走中に相手にも駆け寄られれば、流石に抜き打ちが間に合わず、振り遅れた。 互いに振り遅れた同士ならば事態は一転、後から動く甚助の方が有利になる。 抜き掛けた剣の柄を剣心の柄にぶつけて弾き、反動で横を向いて距離を確保すると、素早く納刀し、今度こそ抜刀術! 剣心も素早く刀を納めるが、弾かれた分だけ挙動が遅れて抜刀術は間に合わない。 その時、刀を抜こうとする甚助の耳に異音が届き、精神集中が失われて一瞬だけ動きが止まる。 剣心の神速の納刀によって凄まじい鍔鳴りが発生し、甚助の聴覚を揺さぶったのだ。 甚助はすぐに立ち直って居合いを放つが、その間に剣心も体勢を整えており、結果、二人の抜刀術が真っ向からぶつかり合う。 ギイイィィィン! 抜き打たれた二人の刀が衝突し、負荷に耐えかねた二本の武器が悲鳴を上げる。 耐え切れずにどちらかの得物が砕けるかと思えた時、二人の身体が同時に吹き飛ぶ。 剣心は鞘による抜き打ちを、甚助は鞘を半ば抜きかけての突きを、それぞれ相手に叩き込んだのだ。 全身への衝撃に耐えつつ着地し、素早く納刀する甚助。 鞘による攻撃を叩き込んだ点では両者同様だが、鞘を抜き放った剣心は再び居合いの構えを取るのに一挙動余計に掛かる筈。 その隙に抜刀術を叩き込もうと剣心の方を向いた甚助の前には、既に攻撃準備を整えた剣心の姿が。 緋村剣心と林崎甚助。剣の腕では優劣つけがたいが、強敵と戦って傷を受けた経験では剣心が遥かに勝る。 加えて、薫の危機で精神が高揚している剣心は、甚助の打撃の痛みを無視して即座に攻撃に出たのだ。 無論、再び抜刀術の体勢を整える暇はなかったが、彼の剣術は抜刀術以外も超一流、問題はない。 「九頭龍閃!」 突進しつつの九連撃が甚助を襲う。余程の剣士でなければ回避も防御も不可能な飛天御剣流の大技だ。 だが、欲を言えば剣心は土龍閃のような技で、甚助が居合いの構えを取る前に攻撃を仕掛けるべきだったかもしれない。 林崎甚助は、熊野明神に居合いの奥義を神授されたという、居合いに関しては神懸かった達人。 納刀して柄に手を掛けるだけで、正に神に憑かれたかのような冴えた動きを見せるのだ。 甚助は、剣心が乱撃術で襲って来るのを見るや、大地に転げて剣心に近付く。 九頭龍閃は九種の異なる斬撃を同時に放つ技。しかし、地に転げた相手に横薙ぎや切り上げは通用しない。 その上、乱撃術はどうしても一撃一撃の深さに欠ける為、切り下げや突きでも十分な打撃は与えられないだろう。 このまま九頭龍閃を強行すればいたずらに隙を作るだけの結果になりかねない、そう考えた剣心は技を止める。 その間に甚助は剣心の足元まで転がり寄ると膝を着き、十分な鞘引きを伴う座居合で真上にいる剣心を狙った。 (居ない!?) 必殺の居合いを放った甚助だが、その時点で剣心の姿はそこにはない。 甚助は一瞬動揺しかけるが、どうにかそれを抑え込んで刀を引き戻し、再び抜刀術の構えを取った。 そうして感覚が冴え渡ると、すぐに真上に剣心の気配が感じられる。 迷わず真上に向かって居合いを放つと、ちょうど上空から甚助を狙った剣が振り下ろされ、再び両者の剣はぶつかり合う。 甚助が足元に潜り込んだ瞬間、剣心が天狗の如き跳躍力で上空に逃げ真上からの反撃を狙って来たのだ。 剣を咬み合わせたまま剣心は着地し、甚助の剣を絡み取って武器破壊技を仕掛けてくる。 ギリッ 己の剣の軋みを聞き取った甚助はその峰に手を添えて守り、そこを支点に身体を回転させ、柄で剣心を狙う。 しかし、剣を抜いた後の立ち回りではやはり剣心が数段上手。 甚助の動きに合わせて自身の身体を回転させると背後に回りこみ、その背中を峰打ちで強打した。 背中に衝撃を受けて吹き飛ぶ甚助。 吹き飛びながらも辛うじて剣を鞘に納め、背後から追って来る気配に向けて居合いを放つ! 対して、吹き飛んだ甚助を追っていた剣心は、甚助がこちらの位置を十分に確認せずに居合いを放つのを見て足を緩める。 甚助は頻繁に居合いを使って来るが、そもそも居合はかわされると敵に大きな隙を見せる諸刃の剣。 しかも、敵に背を見せた状態からの居合では、外した後に先程のような鞘による突きを放っても相手に届かない。 ここで剣心が甚助の居合いを見切ってかわせば、急所にもう一撃を叩き込んで打ち倒す事ができるだろう。 そう見込んで刀を構えた剣心だが、次の瞬間、腹部に衝撃を受けて逆に吹き飛ばされる。 背後の敵への居合いでは確実に相手を捉えるのは不可能と見た甚助が、鞘ごとの抜き打ちを放ったのだ。 結果、振られる刀の遠心力によって鞘が半ば抜け、剣の間合いの外に居た剣心を強かに打った。 吹き飛ばされながらも超人的な身ごなしで着地した剣心は、再び甚助に突進しようとし…… 「うぐっ!?」 吐血してその場に膝を付く。 剣心は甚助に一撃を受けたが、その打撃自体は中空の鞘による物なのだから、高が知れている。 だが、それ以前に剣心の身体はもう限界に達しようとしていたのだ。 志々雄真実、三合目陶器師、林崎甚助と強敵との三連戦。 しかも、戦いの合間は休みも傷の手当てもせずに全速力で駆け回っていたのだ。 如何に武術の達人とはいえ、剣心も人の子。 これまでは薫への強い想いで痛みも疲労も無視して来たが、如何に思いが強くても生物学的限界をも無視できる筈はない。 その生物としての限界が間近に迫っているのだ。 それでも何とか立ち上がり、甚助を見ると、鞘を半ばまで抜いての異様な居合いの構えを取っている。 「卍抜けか……」 緋村剣心はかつて、抜刀術の全てを知り極めたと称して抜刀斎を名乗った程の剣士。 甚助が林崎流の剣客だという事はとうに悟っているし、その奥義である卍抜けについても知っている。 そして、甚助ほどの達人が使う卍抜けに対抗し得る技は、飛天御剣流の多彩な技の中でも一つしかないという事も。 飛天御剣流奥義――天翔龍閃。この技ならば卍抜けにも十分対抗可能だという自信が剣心にはあった。 だが、今の傷付き疲労した身体で、完全な天翔龍閃を放つ事が出来るかどうか…… 「剣心!」 声に振り向くと、薫がこちらに向かって駆け寄って来ていた。 同時に、こちらの注意が逸れたのを感じた甚助も駆け寄り、卍抜けを放とうとする。 もし剣心が避ければ、代わりに薫が卍抜けの餌食になるかもしれない。 こうなれば剣心の選択肢はただ一つ。全身全霊を賭けた奥義で卍抜けを打ち破るのみ! その交錯は常人には……いや、剣士として一通りの修練を積んだ神谷薫にすら感じ取れない刹那の出来事であった。 飛天御剣流「天翔龍閃」と神夢想林崎流「卍抜け」。二つの奥義が真っ向からぶつかり合い、倒れたのは緋村剣心の方。 傷や疲労のせいで天翔龍閃が不完全だった……という訳ではない。 むしろ、大切な人への強い思いが籠もった天翔龍閃は、師の比古清十郎すら眼を瞠るであろう程の超々神速を発揮した。 実際、単純な速度だけならば天翔龍閃が卍抜けを一枚上回っていたであろう。 しかし、林崎流の居合いは相手が戦闘態勢を整える前に討つ為の技であり、より重視されるのは速さよりも早さ。 天翔龍閃は左足の踏み込みで剣を加速するが、それは剣が鞘から抜けるまでの必要距離が長くなる事に繋がる。 対して、卍抜けでは天翔龍閃とは対称的に、抜刀の際に鞘を引く。 これによって鞘走りによる加速距離が短くなり、最終的な速度が抑えられる代わりに、剣が鞘から離れる瞬間は速くなる。 速度では天翔龍閃には及ばない為、もしも剣心が防御に徹していたならば、或いは凌ぎ切られた可能性も零ではない。 しかし、抜刀術の撃ち合いという事になれば、相手より一瞬でも早く刃を敵の身体に届かせる事が全て。 そういう勝負ならば、甚助の卍抜けはこの御前試合の参加者の誰にも負ける事はないだろう。 もっとも、甚助も無傷ではない。剣心の天翔龍閃によって右腕に深手を受けている。 卍抜けが剣心に届くのがあとほんの少し遅れていたら、骨にまで達していたかもしれない。 甚助は素早く刀を左手に持ち替え、剣心にとどめを刺そうとするが、ここで薫が二人の元に辿り着いた。 「やめて!」 そう叫び、神谷薫は無謀にも素手で林崎甚助に躍り掛かる。対して甚助は、薫に向けて何とも散漫な一撃を放ってしまった。 甚助が負傷した為に、剣心に対する卍抜けの一撃は完全ではなく、致命傷は与えていない。 腕に深傷を負って居合いが使えない状態で、もしも剣心が立ち上がって来れば、甚助の勝ちは覚束ないだろう。 よって、すぐに薫を排除して剣心の息の根を止める必要があるのだが、だからと言って素手の女を斬るのは主義に反する。 その辺りの葛藤が甚助に中途半端な一撃を放たせる要因となったのであろうが、これは剣客にあるまじき油断だ。 まあ、甚助にも言い分はあるだろう。動きを見れば明らかなように、甚助と薫では竜と子猫ほどの実力差があった。 仮に竜が油断したとしても、子猫がどうにかできる筈もない。竜にとっては気のない一撃でも、子猫は肉塊になるしかない。 しかし、ここは蠱毒の島。中で剣が打ち合わされ、血が流れる度に剣士達に邪なる力が流れ込む。 その結果、竜は大海を治める龍王にも勝る大竜となったが、子猫も猛虎ほどの力を手に入れた。 まともに戦えば勝敗は揺るがないが、猫も竜が油断をすれば眼球に牙を突き立てる程度の事は出来るようになっているのだ。 今回、猫は竜がいい加減に繰り出した尾を加え、牙を突き立てた。つまり、薫が甚助の刀を白羽取りで止めたのである。 「何!?」 実力差を考えれば有り得ない現象に動揺した甚助は剣を捻って薫を振り払おうとするが…… ギンッ 剣心との激闘で既に限界が来ていたのだろう。剣はあっさりとへし折れ、甚助と薫は揃って体勢を崩した。 そして、ここで倒れた龍の牙が風を巻き起こす。 天翔龍閃はただ速いだけの抜刀術ではない。その超神速の剣が真空の空間を作り、それが第一撃を凌いだ敵を縛る。 剣心は卍抜けに倒れたとはいえ、その時には既に、天翔龍閃は普段以上の速度で放たれていた。 それによってできた真空が、一拍の間を置いた今になって漸く元に戻ろうとしているのだ。 無論、剣心が斃れている以上、風に動きを封じられた甚助を切り裂く爪は存在しない。 その代わり、甚助と薫は真空を埋めようとする空気の流れに引き寄せられ…… 神谷薫は信じられない思いで己の手を見詰めていた。林崎甚助の末期の血に染まった手を。 天翔龍閃で生まれた真空に引き寄せられた時、偶然にも薫が持っていた刀の切っ先が甚助の喉元に突き刺さったのだ。 自らの手で人を殺してしまうという、活人剣を標榜する者としてはありうべからざる大不祥事。 如何に偶然の事故とは言え、殺人という事実は、薫の活人剣士としての道を、非常に険しい物とする事だろう。 だが、今はそれを考えている時ではない。早く安全な所に行って剣心を手当てしなくては。 薫はそう思い直すと、剣心を抱えて歩き出す。血の臭いが充満した城下に、更なる血化粧を施しながら。 ここで疑問が一つ。今回の件は本当に偶然の事故なのだろうか。 甚助の負傷と蠱毒による力があったとはいえ、薫が林崎甚助のような剣豪を討つなどという事はまず有り得ぬ事だ。 無論、普通なら有り得ない番狂わせが時に起きるのが真剣勝負というものではある。 しかし、参加者の中で場違いなほどに技量で劣る薫が、たまたま金星を挙げるというのは少し出来過ぎではないか。 そもそも、神谷薫は何故もっと腕の立つ剣士達を押しのけてこの御前試合に招かれたのか。 緋村剣心は自身を追い詰めて積極的に戦わせる為の駒として薫が呼ばれたと推測していたようだが、 それなら剣心を呼んで妙な小細工をせずとも、歴代の比古清十郎の中から好戦的な者を呼んで来れば良い筈だろう。 薫には何か別の役割が期待されているのか、それとも普通に参加者の一人として招かれたのか。 どちらにせよ、薫が他の剣士と戦い、実力通りにあっさり殺されてはわざわざ呼んだ意味がないというものだ。 現に甚助を破った事と考え合わせると、薫には何らかの庇護が与えられているのかもしれない。 例えば、技量に劣る分を埋め合わせる分だけ幸運に恵まれているとか。 だとすると、今回の甚助の死も偶然ではなく、薫の意志が介在している可能性がある。 その場合、薫は二度と活人剣などと言えなくなるが。 果たして真実は何処にあるのか。そして、それが明らかになる日は来るのであろうか。 【林崎甚助@史実 死亡】 【残り六十四名】 【へノ肆 城下町/一日目/早朝】 【緋村剣心@るろうに剣心】 【状態】気絶、全身に打撲裂傷、肩に重傷、疲労大 【装備】打刀 【所持品】なし 【思考】基本:この殺し合いを止め、東京へ帰る。 一:川に落ちた神谷薫を探す。 二:志士雄真実と対峙している仲間と合流する。 三:三合目陶物師はいずれ倒す。 【備考】 ※京都編終了後からの参加です。 ※三合目陶物師の存在に危険を感じましたが名前を知りません。 【神谷薫@るろうに剣心】 【状態】打撲(軽症) 精神的ショック 【装備】なし 【道具】なし 【思考】基本:死合を止める。主催者に対する怒り。 一:安全な場所で剣心を手当てする。 二:人は殺さない。 【備考】 ※京都編終了後、人誅編以前からの参戦です。 ※人別帖は確認しました。 ※へノ肆に、林崎甚助の行李と折れた長柄刀が放置されています。 時系列順で読む 前話 霊珠に導かれて 次話 すれ違う師弟 投下順で読む 前話 霊珠に導かれて 次話 すれ違う師弟 戦慄の活人剣 上泉信綱 すくいきれないもの 戦慄の活人剣 林崎甚助 【死亡】 血だるま剣法/おのれらに告ぐ 岡田以蔵 すくいきれないもの 真宵 武田赤音 すくいきれないもの 真宵 神谷薫 すれ違い続ける剣士達 真宵 緋村剣心 すれ違い続ける剣士達
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試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(前編) ◆0hZtgB0vFY 水飛沫を浴びた裸体は昇ったばかりの陽光を照り返し、夜を徹して動き続けた目に眩しく映る。 一糸纏わぬ姿で腰まで水に浸かり、ゆっくりと水面に沿うよう手を伸ばす。 火照り赤みを帯びた肌に、染み渡るような冷たさが心地良い。 「……うぁっ……」 時折全身を貫く痺れるような感覚は、苦痛ではなく悦楽を誘う。 全身を水下に埋める。 興奮と歓喜に上気していた頬が、今度は刺すような冷たさに怯え震える。 左手の甲に右手の平を置く。 ゆっくりと滑り上げ、肘裏、二の腕、肩、そして胸元を這わせた後、今度は下へとずれ動く。 体の正中を嘗め下り、鳩尾、腹部、そして…… 「んふぅっ……」 水中より顔を上げると、右手の平に、愛おしげに舌を這わせる。 動くのに飽いたのか体中を弛緩させ、全てを流れるに任せた。 ぽかっと顔のみが浮いていたのが、徐々に胸元から下へ、下へと浮かび上がる。 完全に水平になる頃には長髪は大輪の花のように広がり、くすんだ青に彩を添える。 世の女性が揃って羨む程の白き肌を惜しげもなく陽光に曝け出すが、惜しいかな白磁には月こそが相応しい。 「……んっくっ……」 僅かな刺激すら拾ってしまう敏感な体は都度僅かに水面下へと沈み込むが、それもまた雅なりと逆らう事もせず為されるがまま漂う。 どれ程そうしていただろうか。 頃合は良しと身を起こし、ざぶざぶと水から上がる。 均整の取れた肉体は装飾など不要とその美しさをひけらかす。 不健康とすら思える程の白い肌の下には、しなやかでいて強い筋肉が脈打っている。 ただ歩いているだけで猛きバネを予感させる両の足や、何気なく振られる腕の位置が武術の理にのっとっていたりと、わかる者が見ればただものならずと見てとれよう。 局部を隠す事すらせぬのは余程の自信があるせいか。 確かに、それは繊細な容姿に似合わぬ剛直、聳え立つ五重塔、天をも貫く神の槍であろう。 全身に痛々しい打撲傷を負っていながらも、その男、明智光秀は確かに美しかったのだ。 明智は近くの民家にあった衣服を身につけると、どうにも収まりが悪いのか首を何度も傾げる。 上下濃い黒のスーツ、中には律儀に白いワイシャツを着込んでいるが、流石にネクタイまではしていない。そもそもやり方がわからぬのかもしれない。 部屋に張ってあったポスターを参考に身につけてみたが、着物より随分と着易いし、何より生地が良い。 どう織ってあるのかもわからぬ細かな織り目といい、まるでざらつく事のないすべすべの触れ心地といい、明智の知る衣服より数段上等な造りとなっていた。 襟元は少し苦しいせいかボタンを二つ外している。 当人に良し悪しの判別はつかないが、細身の体のせいか、すらっと伸びた長い足のせいか、はたまた背なにかかる程の長髪故か、ラフに着こなしたスーツはこれ以外無いというぐらい明智に似合っていた。 「さ、て、どうしたものでしょうか」 荷物を手に取った明智は、そう一人ごちた。 ◇ 利根川は意を決して扉を開いた。 案の定、まさか人が居るなどと想像もしていなかった衛宮士郎は、驚き大きく後ずさる。 「うわっ! 人!?」 「ああそうだ。わしの名は利根川幸雄。このゲームの参加者の一人だ。お前は?」 うろたえながらも士郎はしかしきちっと名乗り返す。 「え、衛宮士郎です。えっと……そ、そうだ。利根川さんは、その、殺しあって生き残ろうと思っていますか?」 「わしのような老人に殺し合いなど出来てたまるか。お前もそうであってくれるとありがたいのだが」 「も、もちろんですよ! 殺し合いなんてしてたまるか!」 相貌を崩した利根川は、隣の部屋に居た事と申し訳ないが聞き耳を立てていた事を正直に口にする。 事情を察した士郎は快くこれを許し、部屋の中にいる黒子と澪に声をかけ、四人での話し合いの場が設けられた。 激しい動揺を見せていた澪も、黒子の慰めのおかげか既に随分と落ち着いていた。 簡単な自己紹介を交わした後、利根川は皆が先走った行動など起さぬよう注意深く話し始めた。 「まず最初に明言しておきたい。わしには人殺しなぞ出来んし、そのつもりもない。それでも死にたくは無いので何とかこの地を脱出したいと思っている」 改めてそう口にした後、核心に入る。 「わしはこのゲームを企画進行している『帝愛グループ』に所属していた」 三人が息を呑むのが利根川にもわかったが、すぐに畳み掛けるように言葉を繋ぐ。 「だが、奴等にとって好ましくない存在であったわしは、今こうしてこの地に首輪付きで放り出されている。もしお前達が脱出をと考えているのであれば、わしの知識が役に立つかもしれん」 すぐに黒子が口を開こうとしたが、利根川はそれを手だけで制する。 僅かに腰を落とし、震える澪の前に立つ。 「驚かしてしまったな、すまない。だが最初に言った通り、わしは誰も傷つけるつもりはないし何とか皆で脱出をと考えておる。信じては、もらえんか?」 先程士郎にも見せた笑み、人の心をくすぐるあけっぴろげな笑顔には、親しみや友愛といった感情が満ち溢れていた。 「え……えと……」 「はははっ、構わぬよ。無理はせずとも少しづつわかってもらえればいい」 利根川幸雄は生まれながらにして帝愛のナンバー2であったわけでは無論無い。 彼にも若い頃はあり、下積みの時代があり、部下より上司の方が多い時代はあったのだ。 下手な会社なぞ比較にならぬ程厳しい競争を勝ち抜いてきた彼が、ギャンブルに強いだの、会長の機嫌取りが優れているだののみの男なはずはないのだ。 事に人をまとめるといったスキルを、膨大な配下を抱える帝愛のナンバー2まで上り詰めた男が苦手としているはずがない。 それは、非現実を日常としていた黒子や、歪んでいると評される士郎が相手でも通用する、いや、人間が相手であるのなら通じぬ相手など居ない応用力に富んだスキルだ。 集団の中で自分の望むポジションを得るよう立ち回るなど、彼にとっては息をするのと同じぐらい自然に行える事であろう。 「利根川さん、それで帝愛というグループはそもそもどういった存在なのか……」 「あの遠藤とかインデックスっていうのは……」 「…………(もじもじおどおど)」 三人(二人?)の質問にも丁寧に答え、簡単な自己紹介と共に四人は帝愛に関する共通認識を得た。 帝愛グループとは財閥のような利益を追求する集団であり、関わる事業は多岐に渡る。 カジノなどのギャンブルも範疇であったが、それが高じてのゲームである可能性が高い。 ただ利根川が居た頃は少なくとも魔法などという話は無かったし、ましてやここまで露骨な形で法を犯すような事もなかった。 遠藤もインデックスも聞いた事の無い名前であり、二人はあくまで表に出る顔であって恐らく企画運営している者は他に居るだろうと。 「随分と悪趣味なグループにいらっしゃったのですね」 黒子の言葉に利根川は苦笑で返す。 「事業は多岐に渡ると言ったろう。右手と左手が何をやっているのか知っているのは極一部のみだ。元々ギャンブル部門と金貸し部門はリスキーすぎてわしは好かんかった」 「後ろ暗い気配ぐらいはわかりそうなものですけど」 「だとしても家族や部下の生活を放って仕事を投げ出す真似も出来ないし、確たる証拠を手にしているわけでもないしな。まだ……若い君達には難しい話かもしれんが」 利根川の世知辛い話に重苦しい空気が漂うが、殊更に明るく利根川は続ける。 「だが、事ここに至ってはそんな事も言ってられん。大人は、大人の責任を果たすとしよう」 「アテにさせていただきますわ」 利根川に非難出来る部分はあるにせよ、彼の立場も理解出来た黒子はそれ以上の追求を行わなかった。 無論全てを無条件で信用するつもりもないが、少なくともこうして堂々と姿を現し、自らに不利とも思える情報をすら忌憚無く提示する姿勢からは、疑わしき所作は見受けられなかったのだ。 「あっ、あのっ……」 不意に、今にも消え入りそうな声が聞こえた。 澪は熱心に利根川から様々な事を聞きだそうとしている黒子と士郎を見ている内に、自分が何も出来ず怯えるのみな事を恥ずかしいと思うようになっていた。 同い年の士郎はこんな信じられない事件に巻き込まれているというのに、自分の意見をはっきりと持っていて、相手が大人でも物怖じせずに話しかけている。 同じ女の子でしかも年下の黒子に至っては、あの怖い黒服の人相手に堂々と渡り合うなんて真似までしていた。 翻って自分はどうだと考えた時、これを恥じる程度には澪は自尊心を持ち合わせていた。 だから、ともかく、口を開こうと思った。 「あっ、あのっ……わ、私も、手伝う。何が出来るか、わかんないけど……その……」 何と言ったものかわからぬままに、どもりがちにぽつりぽつりと告げる澪。 黒子と士郎は同時に笑みを見せ頷くと、澪はやはり顔を赤らめるが、今度は俯いたりはせず照れた顔のまままっすぐに三人を見返していた。 放送が、船内に響き渡ったのはこの直後である。 ◇ 黒服からギャンブルの内容を確認したグラハムと衣は、利根川が帝愛の人間であるとの言葉は真実だと確信する。 そもそも、こんなゲームに無理矢理参加させられた者達の前で、帝愛の人間であったなどと口にしたらいきなり袋叩きにされてもおかしくはない。 黒服のように自身を守る何かが無ければ、到底出来る事ではなかろう。 ついでとばかりに利根川という人物について訊ねてみたが、やはり「知らん」とにべもない返事である。 ではと戻ろうとした二人の足を止めたのは、ギャンブル中でも聞き落とす事のないよう、備え付けの船内放送からも聞こえるようになっていた定時放送であった。 グラハムは問題無い。未掲載の人物にも死者にも知り合いは居ないのだから。 衣はどうかと様子を伺ったグラハムは、彼女が両手をきゅっと握り締めたまま震えているのを目にする。 「……知り合いが居たのか?」 すぐに返事があったのがグラハムには意外であった。 「つい先日、大会で戦った者の名が……池田は、あまり覚えておらぬが、加治木は中々に猪口才な奴であった……」 「麻雀の大会か?」 「うむ……正直、信じられぬ。あの時卓を共にした者が既におらぬなどと……」 透華を失った瞬間を思い出したのか僅かに身震いすると、すがるようにグラハムを見上げる。 潤んだ瞳で、しかし訊ねる事すら憚られるのか口を真一文字に引いたまま、グラハムの瞳をじっと見据える。 グラハムは、なるほど、子供を持つというのはこういう事かと小さく息を吐く。 「私の名はグラハム・エーカー。フラッグファイターにして、宿敵ガンダムを倒す者。愛成就するその日まで、決して倒れぬ者の名だ」 昂然と胸を張るグラハムに、ただそれだけで衣が笑みを取り戻せたのは、為した男がグラハム・エーカーであるからだろう。 例え言葉の真意はわからなくても、グラハムが自らに刻んできた生き様が、発する言葉に覇気をもたらす。 ガンダムを倒す、その為だけに幾たびも死線を潜り抜け、更なる死地へと身を躍らす勇猛果敢なる兵士の言葉が、凡百のソレと同等であろうはずがない。 恐れる気も無く死地へと向かう勇敢な軍人達の信頼を一身に受けて尚、小揺るぎもせずグラハム・エーカーであり続けた男は、このゲームの中にあっても、やはりグラハム・エーカーのままであった。 「無用な心配は兵士への侮辱だぞ衣」 「……うんっ!」 戦友からの信頼とはまた別種であるが、衣が向ける希望に満ちた視線は、グラハムに新たな力を与えてくれると信じられたのだ。 とても居心地悪そうにしている黒服を他所に、ほほえましく見つめ合う二人。 頼むから他所でやってくれと嘆く黒服へのフォローは、思わぬ所からなされた。 「む?」 グラハムがその気配に気付いて目をやると、少女が階段を駆け下りギャンブルルームへと姿を現したのだ。 「ひっ!?」 グラハム達の姿を認めるや、小さい悲鳴をあげギャンブルルームを通り過ぎ、更に下へと逃げていく。 恐怖に歪んだ顔が印象的であった少女。咄嗟の事にどう判断したものかグラハムが迷っていると、上から更に別の人間が駆け下りてくる。 「秋山! おい秋山待てって!」 少女と同い年ぐらいの男が現れると、迷っていたグラハムも行動を起す。 銃を抜き、強い口調で静止するよう警告すると彼は足を止めた。 「君が誰かは知らないが、怯え惑う少女を追いかけるのは一体どういう理由からだ?」 男、衛宮士郎は人が居た事に驚いた様子だったが、慌ててグラハムの行動を咎める。 「お、おいっ! ここで戦闘は厳禁だろ! それ撃ったらアンタが危ないぞ!」 「民間人を守るのが軍人の役目だ」 ちらっと黒服を見て動く様子が無い事を確かめたグラハムは、薄笑いを浮かべ士郎に向き直る。 「……やはり相打ちに持ち込む程度の猶予はあるようだな」 「待ってくれ! 誤解だって! あの子知り合いが放送で呼ばれたせいで錯乱してるんだ! 今の状態で外になんて出たら彼女が危ない!」 与えられた情報は少ないが、時間も無い事を理解したグラハムは衣を見下ろす。 「わかった。衣はここで隠れているんだ。黒服が何を言おうとギャンブルには手を出すんじゃないぞ」 衣もまた状況を把握したのか、何かを言いたそうにしつつも口をへの字に曲げて我慢する。 グラハムは良い子だと衣の頬に手をやると銃を懐に収める。 「すぐに戻る。急ぐぞ少年」 「え?」 「私も共に行く。君が不埒な行為をせぬよう監視する意味でもな」 「え? え? あ、ああっ、えっと、……はい」 急な展開に頭がついていってない士郎であったが、急がないと彼女が危険であるので色々聞きたい事を後回しにして一緒に追う事にした。 ◇ 部屋に残るは二人。白井黒子と利根川幸雄。 衛宮士郎に後を任せた黒子は、改めて放送の内容を間違えぬようメモ帳に書き記す。 ただえんぴつの走る音のみが妙に大きく部屋に響く。 ぱきっ 芯が折れた音。 こちらは名簿に直接書いていた利根川が音に気付き顔を上げるが、シャープペンに持ち替える黒子を見て、問題無しと作業を続ける。 利根川は随分と筆の遅い黒子に合わせて時を待ち、メモ帳をしまった所で声をかけた。 「そちらで知人が呼ばれるような事は無かったのか?」 利根川は黒子への評価を一段階下げる。 予期されていたはずの質問なのに返事が遅すぎた。 「……いえ」 「そうか」 以降言葉を発する事もなく、中野梓の名が続けて呼ばれた事で大きく取り乱し部屋から逃げ出していった澪を待つ。 衛宮士郎は健康そうな若い男性であり、同い年とはいえ澪に追いつくのも難しくは無いだろうと、その点に関して特に心配はしていなかった利根川は、にも関わらず無用に不安を感じているのか無言になった黒子に僅かながら失望する。 賢すぎるのも良くないが、かといって愚かすぎるのも考え物だ。 小娘一人が喚き逃げ出した程度でここまで大人しくなるなどと精神が脆すぎる。今までは強がっていただけか。 無言のままでいれば向こうから耐え切れず発言すると踏んでいたのだが、どうやら利根川の方から話を振らねば進まないと口を開きかけた所で、黒子はぼそっと呟く。 「一人、居ました。すみません」 「ん?」 「御坂美琴14才、エレクトロマスターのレベル5、極めて強力な電撃を操ります。破れ死亡したという……言葉が信じられぬ程に」 「電撃? エレクトロ……何だって?」 「自在に電気を操る超能力です」 素っ気無くそれだけを伝えると、席を立って一言だけ利根川に断る。 「顔を、洗ってきます」 有無を言わせず立ち去る黒子に、利根川は良いとも悪いとも答えず見送った。 廊下の足音に聞き耳を立て、不審な挙動が無い事を確認すると、トイレにでも行ったかと思考を継続する。 考えるべき事は山ほどあるのだから。 客室にトイレは備え付けられていたが、年頃の少女が出会って間もない男性が居る中これを使用出来ぬのも道理であろう。 自身の持つ超能力に関して一切伝えられていない利根川は、走り去った澪を追うのに黒子の能力が適しているにも関わらず使用しなかった点も追求しようが無いはずだ。 そんな言い訳を自分に施し、ここでならばと今にも破裂しそうであった理性の檻の封を切る。 こんな状態で、瞬間移動など出来るはずがない。 女子用トイレ洗面台の前に立ち、溜めに溜め込んでいた毒気を肺が空になる勢いで吐き出す。 目の焦点が合わず、呼吸も千々に乱れ、恐らく脈拍すら正常を保ててはいまい。 血管が浮き出る程に充血した目、荒々しく上下するもいからせたまま落ち着く気配すら感じられぬ両肩、可憐さと美しさを伴った容貌は見る影もない程醜く歪んだまま凝固している。 爪が食い込む程握り締めた手、黒子はこれを振り上げ、正面の鏡に叩きつける。 手の甲ではなく並んだ四本の指側を鏡にぶつけると、歯止めが利かなくなったのか逆の腕でも同じ事を始める。 「馬鹿っ!」 壁にすえつけられた鏡は、破壊を目的とせぬ打撃では微動だにせず。 「馬鹿っ! 馬鹿っ! 馬鹿嘘つきっ!」 続いて放たれた左手は、それと意識せず拳槌にて行われ、みしっと鏡は音を立てる。 「嘘ですわっ! こんなヒドイ嘘っ! ひどすぎる嘘をっ!」 繰り返される衝突は、黒子の意識によらず効果的な打撃を生み出す時もある。 「どうしてあんな事言うんですの!? お姉さまは、私は、そこまで恨まれるような事をしましたか!?」 手ごたえが変わる。そこからは早かった。 「嘘つきっ!」 一筋の亀裂。 「嘘つきっ!」 四つ又に別れ、更に八つに。 「嘘つきいいいいいいっ!!」 粉々に砕けた鏡。黒子は、洗面台に縋りつくように崩れ落ちる。 呼吸をすら放棄した運動は容易く限界を迎え、後に意識の空白を残す。 失われた酸素を充分に取り戻した黒子が、最初に思ったのは両手に感じる鈍い痛み。 「……どう、しましょう、これ」 砕けたガラスの破片で切れた両手。 激昂が収まりまず気にかかったのは、自身の痛みと他人から見られる自分の姿である事が、黒子は無性に悲しかった。 ◇ グラハム達が去った後、残された衣はというと誰が来ても良いように隠れる場所を探していた。 まず目に付いたのはルーレットを行う台の下。 大きめの台は彼女の小柄な体が隠れるに充分であったが、下の柱が随分と太く、台自体も低く作られているせいかうまく入りきる事が出来ない。 それでも苦労して奥へと入り込むと、ようやく一安心とばかりに息をつく。 黒服男は参加者達に味方する事を当然禁じられていた。 だが、あまりといえばあまりにすぎるので思わず口をついて出る。 「……おい、尻が丸見えだぞ」 スカートで覆われてはいるが、身をかがめているせいかお尻のラインが綺麗に写る。 無論こんなガキに興味なぞない黒服にそういった意図は無いし、むしろあったら放置しているだろう。 「うひゃうっ!」 大慌てでもぞもぞと動くが、やはり隠れきれず、逆にスカートがたくしあげられてその下がほのかに見え隠れしはじめた。 「こ、これでどうだ?」 繰り返すが黒服はガキなぞに興味は無い。 例え世に幾百幾千とこの状況を、素敵なパライソラッキースケベを期待しているロリコン共が居ようと、彼にとっては死ぬ程どうでも良かった。 「……それ以上入れないのならそこは諦めろ」 黒服は黒服なりにこの場で参加者を待ち構える間、恐らく繰り広げられるだろうコンゲームを期待していた。 命を賭けた必死なやりとりを、一部の隙すら許さぬギリギリの戦いを、と心構えを整えていたらコレである。 注意深い者達が容易くギャンブルに手を出さないのは予測出来た事だが、その為にこの場に居る人間としては、是非ギャンブルに挑んで欲しいとも思う。 そんな黒服の願いは即座に叶えられる。 「おいっ! そこの黒服! ここは本当にエスポワールなのか!」 衣が慌ててルーレット台に隠れようとして失敗している。 最早こんなガキに用なぞ無くなった黒服は、期待に満ちた心が表に出ぬよう自制しつつ用意してある言葉を紡ぐ。 「そうだ! ギャンブル船、希望の船『エスポワール』のギャンブルルームへようこそ!」 帝愛でも有名であった他に類を見ない常識外れの男。 身一つで利根川を破り、当時の会長兵藤和尊にまで手をかけた奇跡のギャンブラー、伊藤開司のような男を、黒服は待っていたのだ。 なので、その後ろにひっついている衣より小さい子供の存在はさらっと無視する事にした。 カイジが黒服からギャンブルルームの説明を受けている間、真宵は暇そうに足をぶらぶらと振っていた。 衣は、これぞ千載一遇、審念熟慮も必要であるが、機を逃しては道は開けぬと前へ進む。 友達は作れる、そう信じ続けていればとグラハムも言ってくれたのだ。 衣は彼を信じるように、彼の言葉もまた、信じてみる。 「わ、私は天江こよも……じゃ、じゃなくってころも、衣だ!」 真宵に向かって自己紹介。 返事を期待していると察した真宵は、つまらなそうに視線を向ける。 「話しかけないでください。あなたのことが嫌いです」 大きく真後ろにのけぞった後、衣はへなへなとしりもちをつき、ここに第一ラウンド終了と相成ったわけで。 黒服との会話の途中であったカイジは見るからに嫌そうな顔をする。 「……お前それ会う奴全員に言ってるのか?」 「うるさいですカイイジさん」 「名前を間違えるなと何度言わせる気だ……」 「失礼、かみました。カジさん」 「完全に別人だろそれ……」 つっこみスキルというには甚だ心許ないが、それでもこの数時間でそれなりに返事はするようになったらしいカイジ。 「誰しも失敗はあります。こよもさんも間違えてころもと名乗っておりましたし……」 涙目でしゃくりあげかけていた衣は、何くそと不屈の闘志で立ち上がる。 「違う! ころもはころもだ!」 「ほら、またかんだ」 「かんだのはこよもの方だ! ころもはころもで! それ以外に名など無いっ!」 「わかりましたころもさん。それと繰り返しになりますが、あなたが嫌いなので話かけるのは遠慮してください」 痛烈なカウンターにより二ラウンドKO。 完全にやる気を削ぎ取られた衣は、俯き加減にひっくひっくとしゃくりあげる。 目の端からこぼれる雫は敗北の証。 大慌てなのはカイジである。いきなり出会った少女を泣かすなぞ、まともな人間なら心が痛んでしかるべきである。 「こ、こらお前! 何て事言い出すっ! あー、えっと、ご、ごめんなさい」 しかしカイジ、幼女を慰める術なぞ知らぬ。 そもそも対人折衝能力も著しく低い、社会不適合者である。 女っ気なぞと無縁なカイジが、同世代の人間とのスムーズな交流すら為せぬカイジが、接点すら存在せぬ子供を相手にしたカイジが、どうして衣を慰められよう、いや出来まい。 際物なれど、社会人として立派に成立していたグラハムとは比べるべくもないのである。 案の定、びえーんと泣き出してしまう衣。 「あー、カイジさん最低です。女の子を、それもこんな小さな子を泣かすなんて貴方は本当に人の子ですか? いや変質者なのは知っていますが」 「誰がどう見てもお前が原因だろうが!」 わいわいと騒々しいギャンブルルーム。 呆れ顔の黒服のみが、新たな乱入者の登場に気付けた。 「ようこそ、ギャンブル船エスポワール、ギャンブルルームへ」 乱入者は黒服に一瞥をくれた後、唯一居る顔見知りに向け、黒服同様呆れ顔で問うた。 「……お前は一体、何をしているんだカイジ?」 聞き覚えのある声に顔を上げるカイジは、その先に、捜し求めていた相手を見つける。 「やっぱりここに居やがったか利根川っ!」 ◇ ギャンブル船を下りた士郎とグラハムの二人は、桟橋から離れた角を曲がる人影を見つけ、これを追う。 グラハムは軍人であり、パイロットとして訓練も重ねており、並の男では太刀打ち出来ぬ体力を誇る。 並ぶ士郎はというと流石にそこまでの訓練は望めないにしても、剣の英霊をして体力は充分と言わしめる程常日頃から鍛錬を行っていた。 なればこそ、走りながら会話というより疲労を増すような事も平然と行えるのだろう。 「名は?」 「衛宮士郎。あんたは?」 「グラハム・エーカーだ。彼女は足が速いのか?」 「そこまで彼女を知ってるわけじゃないけど、俺達より早いって事は無い……と思う」 あちらこちらと二人で走り回り澪の姿を探すが、どんな逃げ方をしたものか彼女の姿を見つける事は出来なかった。 先に足を止めたのはグラハムだ。 「ここまでだ士郎」 いきなりファーストネームで呼ばれた事に少し驚いたが、さして気にする事でもないので黙認する。 「ここまでって……」 「連れを残してこれ以上船から離れるわけにはいかん」 「そりゃ……そうだけど、秋山はどうするんだよ」 「単に動転しただけなら落ち着けば戻ってくるだろう。お前が彼女を脅すような真似をしていなければだが」 「しないよそんな事。でもそれまでに危ない奴に出会ったらどうすんだよ」 「地図にある目立つ船だという事を考慮に入れれば、どちらがより危険かは自明だろう」 士郎も残してきた黒子や利根川が心配ではある。 不承不承であるが、グラハムの提案を受け入れた。 「一度戻って白井達に断ったら、俺はもう一度探しに出るぞ」 と条件を付けはしたが。 グラハムは微笑で答える。既に士郎が悪辣な人間ではないとグラハムは見ていた。 そして士郎もまた、見ず知らずの少女の為、ギャンブルルームで銃を抜くなんて真似をしてくれたグラハムを、まるで疑っていなかったのだ。 もし、後少しグラハムの判断が遅かったなら。 家を一軒挟んだ所で疲れきって座る澪を見つけられたかもしれない。 無論彼を責める事など誰にも出来はしない。 神ならぬ身のグラハムが全てにおいて最善を選びうるはずもないのだから。 だから、息の整った澪が、驚きに目を見開いているのも、グラハムに責任のある事ではない。 「どうかしましたか、お嬢さん?」 そう声をかけてきた大剣を背負ったスーツ姿の男。明智光秀に澪が見つかってしまったのも、全ては間が悪かった故、それだけである。 「あ……わ、私……」 長身の彼にすら大きすぎる剣を無造作に肩に背負う姿は、澪にとって馴染みの深いスーツという現代衣装をまとってすら、畏怖と恐慌の対象となろう。 「なるほど、その首輪……あなたも殺し合いに参加している方ですね」 「ち、ちがっ……わ、わたし、は……」 「貴女のような年端も行かぬ少女まで……業の深い事です」 背なに陽光を受けるせいで明智の表情まで見えぬのが、澪にとって幸運であったかどうかなど、この出会い同様見極められる者などいはしなかった。 ◇ 利根川は伝えるべき事を伝えきれずなし崩しに半数が欠落してしまい、どうしたものかと思案にくれていた。 そうこうしている間に黒子も部屋を出てしまい、一向に戻ってくる気配が無い。 もし三人に騙されているとするなら、これは由々しき事態であろう。 だが利根川は心底それは無いと確信している。 三人の善意を信じているわけでは無く、自身の人物眼に自信があるだけだが。 部下を使って仕事をするのに慣れすぎたのか、こうして自分が動く感覚がまだ思い出しきれずにいる。 ガキ共の機嫌取りなど本来利根川の仕事ではない、とはもう考えない。 覚悟を決めたのだ。壇上から見下ろすのではなく、自らも会場に降り立ち、泥に塗れ、手間を、労苦を重ね、勝利に至ると。 自己暗示の一つや二つ、容易く出来ずして帝愛でのし上がるなど夢のまた夢よ。 数十年の時を社会の暗部にて生き抜いた男は、暗き誇りを胸に部屋を出る。 戻らぬ黒子にメモを残し、再度グラハム、衣と対決する為に。 階段を降り、ギャンブルルームに至った利根川は、その場に居た人物を見て幸運は我にありとほくそ笑む。 伊藤開司、絶望的な生存率のギャンブルを、不屈の闘志と見事な機転で乗り切った超がつくイレギュラー。 この男も参加していると聞いた利根川は、是非とも手駒、いや、共に戦う同志としてカイジを欲した。 のだが、こうして出会えたカイジはというと、子供相手にぎゃーぎゃーと場も弁えず騒いでいた。 失望の大きさは察してあまりある。 それでも自制が利いていたおかげで、乱暴なコケにするような口調は避けられた。 「……お前は一体、何をしているんだカイジ?」 すぐに気付いたのか怒鳴り返してくるが、そこに死地を乗り越えた圧倒的なまでの生命力は感じられない。 「やっぱりここに居やがったか利根川っ!」 グラハムの姿は見えず衣は何だか知らんがガキっぽくぴーぴー泣いているし、もう一人ガキが増えている。 武装の有無と、室内の隠れ得る場所に注意しつつ、利根川はカイジに歩み寄る。 「何をしている、と聞いたんだ。カイジ、このゲームに参加させられたお前は、一体何をしているのだ」 意図が察しきれぬのか睨みつけながらも、カイジの怒鳴り声が止む。 利根川は言下の意味すら取れぬカイジを見て、今の利根川をして自制が難しい程の怒りを覚えた。 「平和を享受しぬるま湯に生きた余人ならいざしらず、お前までもがまだ『本気』になっていないというのか!?」 「な、何を言って……」 突如現れた利根川の怒声に、衣は驚き泣くのをやめ、真宵もまた呆気に取られたまま利根川とカイジを交互に見るのみ。 「予想は出来ていた! ああ、出来ていたとも! あれほどの集中力と勝負強さ、ここ一番の覚悟がありながらエスポワールへと墜ちてきたお前には、決定的でどうにもならぬ弱点があるだろうとな!」 黒子達との邂逅では完全な自制に成功したが、利根川を地獄の底に叩き落した張本人であるカイジを前に、その無様な姿を目にして冷静でなどいられなかった。 「お前は追い詰められるまで、いや、お前の精神が限界と認めるまでは例え追い詰められていようと決して動かない! いや、体は動いている。だがっ! 肝心要のお前の脳が働いていないのだ! 白痴のごとく状況に流されるのみで、 状況改善に動こうとしない! お前は! どうしようもない程に! 社会生活が困難なレベルで怠惰な人間なのだよ! それだけならばただ他人の餌として無様に飲み込まれていくだけだ。だがっ! お前はもう知っているのだろう! 自分にどれだけの力があるのか! 戦いさえすれば誰にも負けぬ覚悟を自身にすら見せ付けているのだろう! なのに何故まだそんな惚けた顔で遊んでいるっ! 何時まで眠っているつもりだ! さっさと目を覚ませカイジ! ここは既に何時死んでもおかしくない戦場の只中だぞ! 本気を出す前に死ぬ真のクズに成り下がるつもりか!? お前ならば! とうに脱出に向けてプランの一つや二つ、実行に移していてもおかしくはないはずだろう!」 利根川は一方的にカイジを弾劾する。その気迫は、コンビニで店長に逆らう程度が関の山であるカイジに抗えるレベルではない。 「そ、それは……お、お前を見つけて、聞くべき事を聞きだしてから……」 弱腰なカイジの言葉が燃え盛る利根川の怒りに油を注ぐ。 「このっ……馬鹿者が! わしを見つけてどうする!? 何故そこから思考を進めない! ハナっからわしを頼るだと!? こんな、こんな大馬鹿にこのわしが…………わしが全てを知っているとでも!? わしにさえ会えれば脱出出来るだと!? これは帝愛の仕掛けた死のゲームだぞ! そんな安易で甘えた思考が通用しないのはお前も良く知っているだろう! こうして説教を受ける事自体ありえぬ幸運だと何故わからん! ああっ、くそっ! 目覚めてから出直せと言いたい所だが、 今のわしにもそんな猶予は無いっ。だからそのままでも構わん。わしが貴様を叩き起こしてやるっ……」 「お前、一体何を言ってる……」 「わしと共に来いと言っているんだ! 目覚めたお前とわしならば! 事がギャンブルなら絶対に負けんっ!」 まさかまさかの共闘の申し出。 「はっ、ははっ、利根川。まるでお前も単なる一参加者だと言っているように聞こえるぞっ……! それを、信じろというのか利根川!」 「会長の死、わしの首輪、あくまで判断材料の一つであって、決定的な証拠たりえぬ…… しかし、その決定的な証拠とやらをこの場にて一体誰が証明してくれる。 何か一つでも確証を持てるような事柄がこのゲームにおいて存在すると思っているのか? 万事に確証を得られぬリスキーな戦いっ……! なればこそのギャンブルだろうっ……!」 利根川の言葉を遮るように、カイジはルーレット台に拳をたたきつける。 「ふざけるなっ……! 俺は、お前がやった事を決して忘れないっ……! 石田さんや佐川の無念を! 犠牲になった者達の絶望を! 俺の命を弄んだ怒りを! 俺は、お前の口車にだけは金輪際乗ってやらんっ……!」 カイジに向け、ゆっくりと歩を進める利根川。 その眼前に憤怒の顔を突き出す。 「そうだカイジ。ようやく、らしくなって来たではないか……野良犬には野良犬の誇りがある。 如何に強大な相手であろうと決して怯まぬ、考えられぬ捨て身っ……! 自暴自棄とは似て非なる、奴隷が皇帝を滅ぼすそれが最後の、絶望の光だっ……!」 至近距離にて睨みあう二人。既にカイジは利根川に気圧されてなどいない。 「俺がお前を監視する。ここが例え地の底、地獄の最奥であろうと、お前の好きにだけはさせないっ……!」 「やってみろ。お前という抑止力がわしの逃げ道を塞いでくれる。この地を圧倒的な勝利と共に脱出する。その為だけに全てを注ぎ込めるよう、わしを抑え続けてみせろ!」 カイジは利根川をいまだ倒すべき強大な敵であると考えていた。 そして利根川もまた、カイジに敗北し、その実力を自らに匹敵すると認めている。 互いが互いを、全てを賭して倒すに足る相手であると信じていればこそ、極限のゲームにおいて、信用ではなく信頼に足る相手として見られるのだ。 「このゲームの真髄、それは……『信じる事』だ。わかるかカイジ」 「全てを疑うのではなく、信じられる部分のみを信じる。帝愛のルール、出会った人間達、お前の言葉……全てに嘘がある。しかし、同時にある真実を掬い出し、見極めるっ……!」 「全てを疑い、同時に全てを信じる……僅かでも間合いを見誤れば死だ。そこまで踏み込んで、初めて勝利の道が見えて来るっ……!」 唐突にカイジは振り返り、真宵をまっすぐに見据える。 「真宵、お前が幽霊だったって話、俺は信じよう。帝愛が言う魔法も、全てを俺は受け入れてやるっ! その上でっ!」 誰よりも自身に向けてカイジは言い放つ。 「このゲームに……ふざけた人殺し共に……俺は勝つっ!」 時系列順で読む Back 夢を過ぎても(後編) Next 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 投下順で読む Back 夢を過ぎても(後編) Next 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) 天江衣 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) グラハム・エーカー 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) 利根川幸雄 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) 白井黒子 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) 秋山澪 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) 衛宮士郎 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) 伊藤開司 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 094 試練/どうあがけば希望?(後編) 八九寺真宵 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) 088 届かなかった言葉 明智光秀 試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編)
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『借金苦』 31KB いじめ 虐待 野良ゆ 赤ゆ 都会 現代 虐待人間 うんしー 借金怖い。長さの割に、今回も微妙かも? 借金苦 ポマギあき 街の歩道。人が行き交う交差点に、鬼威参は居た。ゆっくりを虐待する為に、散歩をしているのだ。 そうやって道を歩いていると、ゆっくりと出くわした。道端で歌を歌っているのは、れいむ親子。 「ゆっくりのひ~」 「「まっちゃりのひ~」」 親れいむ、赤れいむ、赤まりさの二匹だった。周囲には人はいたが、皆、親子の前を通り過ぎていく。 「ゆゆ! まってね! れいむたちのおうた…ゆぅ…またいっちゃったよ…」 「ゆ…ぢゃれも、れいみゅたちのおうちゃきいちぇにゃいんぢゃにゃい?」 「ゆぅ…まりしゃはきょんなにゆっくちしちぇるにょに…」 三匹は揃って愚痴をこぼした。もっとも、歌声は騒音以外の何物でもないのだが。 鬼威参はそっと親子に近づくと、屈んだ。親子はそれに反応して、騒ぎ出す。 「ゆ! れいむたちのおうたをきいてたんだね! おかねはらってね!」 「はらっちぇにぇ!」 「いっぴゃいぢぇいいよ!」 金を払えと宣う親子に、鬼威参は首を横に振って答えた。 「ダメだね。そんな歌で金はあげられないよ」 「ゆうううううう!!? くそじじいはゆごべっ!」 親れいむは、鬼威参に飛びかかった。しかし、宙を舞った瞬間鬼威参の右手によってはたき落とされた。 親れいむは、地面に突っ伏すとプルプル震えながら起き上がった。 「いだいいいいいいいいいい!! なにずるのおおおおおおおおお!!?」 赤ゆ達も抗議の声を上げる。 「ひぢょいこちょしにゃいぢぇにぇえええええええ!!」 「おきゃにぇはりゃええええええええええ!!」 対して鬼威参は、冷静に言葉を続けた。 「いいか? そんな歌じゃ金は貰えないんだ」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおお!!?」 親れいむが鬼威参の言葉に狼狽える。鬼威参は特に気にすることなく、話しを再開した。 「だからな、お前の歌声では人間はゆっくりできないの」 「ゆうううううううううう!!?」 「だから、金は払えない」 「ぞんなあああああああああ!!」 絶望の淵に追いやられる親れいむ。鬼威参はそんな親れいむに優しく言葉を掛けた。 「でもな、貸す事は出来る」 「ゆ?」 目が点になるとはこの事か。親れいむは鬼威参の言葉に目を丸くしていた。 「金を貸す事は出来るんだ。ただし、担保が必要だがね」 「たんぽ…? たんぽってなあに?」 鬼威参は担保の説明を始める。借金をするのに必要なもの。もし、返済できなかった場合はそれらを没収される事。 それらを踏まえた上で、鬼威参は金を借りるかどうかを親れいむに問いかけた。 「どうする? 借りるか?」 「ゆ…で、でも…たんぽなんて…」 鬼威参は親れいむの側で、訳が分からないと云った表情で佇む赤ゆ達を指さした。 「あれを担保にすればいいじゃないか」 「ゆ!?」 驚愕の表情を浮かべる親れいむ。赤ゆ達は自分達が指さされた事に、戸惑っていた。 「ゆぅ? ゆっくちぢぇきるにょ?」 「ゆ? ゆ? なんのこちょ?」 親れいむは狼狽えた。大事な赤ゆを担保にする訳にはいかない。しかし、鬼威参の言葉によってその心は揺らいだ。 「あのな、よく考えてみろ…担保になるって事は、俺の物になるって事だろ?」 「ゆん…」 「俺の物になるって事は、どういう事かよく考えてみろ」 親れいむは目を瞑って考え始める。赤ゆ達が人間の物になるという事。それは、自分の赤ゆを引き渡すという事。 そもそも親れいむはシングルマザーで、育児も大変。そこにゆっくりを担保に金を貸してくれる人間が出てきた。 これは千載一遇のチャンス。人間の物になるという事は、飼われるという事。飼われるという事は、念願の飼いゆっくりになるチャンス。 「ゆ! たんぽにするよ! せめて…おちびちゃんだけでも…ゆ!」 「決まり…だな」 鬼威参はニヤリとした。どうせ、ゆっくりなんて自分にとって都合の良い方向にしか、物事を考えない奴等だ。 騙されたと知った時の絶望した顔。あれは非常にエクスタシーを感じるというもの。 鬼威参は、財布から百円玉を三枚取り出すと、親れいむの目の前に置いた。 「さあ、これが金だ」 「ゆ…お、おかね!」 親れいむは、金をペロペロと舐め始める。そもそも使い方を分かっているのかどうかすら怪しい。 赤ゆ達も目を輝かせながら、百円玉を見ていた。 「ゆわあああああ!! ちょっちぇもゆっくちしちぇるよおおおお!!」 「きょれがありぇば、ゆっくちぢぇきるんぢゃにぇ!」 鬼威参は微笑みながら、それに答えた。 「ああ、でもその代わりお前らは担保として貰っていくからな」 「「ゆ!?」」 赤ゆ達はその餡子の容量のせいか、自分達が担保にされたことを理解していなかったらしい。 鬼威参にとってはそんな物は関係ない。赤ゆ達を引っ掴むと、自分のブルゾンのポケットに仕舞い込んだ。 「ゆ! だしちぇにぇ!」 「くりゃいよ! ゆっくちぢぇきにゃいよ!」 ポケットの中で暴れる赤ゆ達に、鬼威参は親れいむから説明するよう求めた。 「ゆ! あのね! おちびちゃんたちは、たんぽさんになったんだよ!」 「「たんぽっちぇにゃにいいいいいい!!?」」 ポケットの中で狼狽する赤ゆ達に、親れいむは言葉を続ける。 「ゆ! たんぽっていうのはね、とってもゆっくりできるんだよ! かいゆっくりとおなじだよ!」 その言葉を聞いた赤ゆ達は、ピタッと暴れるのを止めた。しばしの沈黙の後、ポケット越しに喋り始める。 「ゆ…やっちゃあああああああ!!」 「ゆわああああああい!!」 喜ぶ赤ゆっくり達に、親れいむも満面の笑顔で答えた。 「よかったねおちびちゃん! これで、ずーっと、いーっぱいゆっくりできるよ!」 「「ゆん!」」 鬼威参はポケットから赤ゆ達が落ちないように、そっと手でポケットを覆った。 そして親れいむに背中を向けて去ろうとした。だが、言い忘れた事があったので迷わず伝えた。 「金を返す気になったら、ここで会おう。利子は一日で、十パーセントだ」 「ゆぅ?」 一体何の事かと訝しげな顔をする親れいむ。 「お前は三百円借りたからな。二十四時間経過する度に、三十円の利子が発生する。明日また、ここにくるから、三百三十円を用意しておけ」 「ゆ? おかねさんかえしたら、おちびちゃんたちどうなるの?」 「勿論、これは担保だ。お前の下に返すさ」 親れいむは全身をブルブルと横に振って、それを否定した。 「だめだよ! おちびちゃんはたんぽなんだよ! おかねはぜったいにかえさないよ!」 その声を聞いて、ポケットの中の赤ゆ達も声を連ねる。 「しょーぢゃしょーぢゃ!」 「まりしゃはたんぽなんぢゃじょー!」 鬼威参はクスッと笑うと、分かったと頷いて家へと帰っていった。 残された親れいむは、満足そうな顔をしていたが、すぐに歌を歌い始めた。 「ゆ~ゆゆ~」 鬼威参は家に帰ると早々に、透明な箱に赤ゆ達を放り込んだ。 「ゆぺっ!」 「ゆべっ!」 透明な箱の底に叩きつけられると、赤ゆ達は奇妙な呻き声を上げた。 そしてムクッと起き上がると、鬼威参に抗議し始めた。 「ゆううううううう!! いちゃいぢぇしょおおおおおお!!」 「もっちょやさしくしちぇにぇええええ!! まりしゃちゃちは、たんぽにゃんぢゃよおおおおおお!!?」 鬼威参はフッと笑うと、担保について説明し始める。 「あのな、担保ってのは俺が好き勝手に出来るって事なんだよ」 人間社会に於いて、実際はそうではない。赤ゆ達は疑問に感じて、問いかけた。 「しゅきかってって…にゃあに?」 「ゆぅ? まりしゃをゆっくちさせちぇくれりゅんぢぇしょ?」 鬼威参は腹を抱えて笑い出した。赤ゆ達はその様子を見て怒り出す。 「ゆううううう!! にゃにがおかちいにょおおおお!!?」 「ゆっくちさせちぇにぇ! いっぴゃいぢぇいいよ! ぷんぷん!」 鬼威参は笑うのを止めると、赤ゆ達に再び説明し始めた。 「あのな、俺はゆっくりさせるなんて一言も言ってない。その上、担保ってのは俺が好き勝手に出来るってことだ。 それはつまり、お前らを好きなように出来ると言う事。つまり…分かるな?」 鬼威参は赤ゆ達に目を向けた。その冷たい目は、赤ゆ達に状況を理解させた。そしてパニックに陥らせた。 「ゆ…ゆわあああああああああああ!! ゆやぢゃあああああああああああ!!」 「ゆっぐぢぢゃぢぇぢぇぐれるんぢゃにゃいにょおおおおおおおおおお!!?」 鬼威参は鼻で笑って答える。 「そんな訳無いだろう」 赤ゆ達は更に絶叫した。 「ゆやああああああああん! うしょつきいいいいいい!!」 「おきゃあしゃんのばきゃああああああああああ!!!」 鬼威参は泣き叫ぶ赤ゆ達を面白く思った。そして、透明な箱にそっと近づくと、語りかける。 「でも大丈夫だ。お前らのお母さんが、明日金を返してくれれば、お前らはお母さんと、またゆっくりできるぞ」 鬼威参の言葉を聞いて、赤ゆ達は安堵した。 「ゆふぅ…しょれなら…」 「だいじょうびゅ…ぢゃね…」 鬼威参は笑顔のままで言葉を続けた。 「でもなぁ、お前らのお母さんは金を返す気が無いって云ってたしなぁ」 「「ゆ!?」」 驚愕の表情を浮かべる赤ゆ達に、鬼威参は更に言葉を続けた。 「それに、お前らは金を貰ったことが実際にあるのか?」 「「ゆ…」」 歌という名前の騒音で金を貰った事は無かった。親子が貰ったものと云えば、罵声と唾ぐらいな物だ。 さすがに赤ゆ達でも、これがどういう状況か理解できた。赤ゆ達は、しくしくと泣き始める。 「ゆぐ…ゆぐ…どぼぢぢぇ…ごんなごぢょに…」 「ゆぐ…まじじゃ…まじじゃのゆっぐぢ…おぎゃあじゃんのぜいぢぇ…」 赤ゆ達は嘆いていた。鬼威参はそっと透明な箱から離れると、リビングでテレビを見始めていた。 下らないバラエティ番組に、鬼威参は腹を抱えて笑い続けた。 やがて夕方になった。赤ゆ達は腹が減っている。しかし、食事の催促をすれば何をされるか分かったものではない。 赤ゆ達は腹の虫が鳴るのを、ジッと堪えていた。それから少しして、なんだか美味そうな匂いが漂ってきた。 「ゆ…おいちちょうなにおい…」 赤れいむが反応した。赤まりさが赤れいむに近寄って、云った。 「きっちょ…きのせいぢゃよ…じぇったいに、きのせいぢゃよ…」 「ゆ…そうぢゃね…おいちいものにゃんか、にゃいよ…そうぢゃよ…」 赤ゆ達は現実逃避を始めた。腹の虫と、漂う美味い匂いに心が張り裂けそうになる。 泣き喚いて、食事をさせてくれと暴れたくなる。しかし、それでは自らがゆっくりできなくなるだろう。 赤ゆ達はそう考えて、この匂いは偽物だ。嘘っぱちだと思い込む事にした。 やがて、美味そうな匂いは段々と強くなってくる。赤ゆ達の我慢が限界に近づく頃、鬼威参がナポリタンスパゲティを持って、透明な箱に近づいた。 「やあやあ、お腹減ったかい」 鬼威参は赤ゆ達の前でスパゲティをボソボソと食べ始めた。赤ゆ達の我慢の糸が、ついに切れた。 「ゆやあああああああああ!! おにゃかへっちゃああああああああああああ!!」 「ちゃべたいよおおおおおおお!! まりちゃにもたべちゃちぇちぇええええええええええ!!」 泣き喚く赤ゆ達を余所に、鬼威参は舌鼓を打ちながら、スパゲティを平らげた。 「ごちそうさまでした」 空っぽの皿を見つめて、涙を流す赤ゆ達。 「ゆぐ…ゆぐ…ごはんしゃん…」 「まじじゃのぉ…まじじゃのなのぉ…」 鬼威参は腹をさすると、満足した顔でリビングに去った。赤ゆ達は涙を流しながら、呻いていた。 翌朝、赤ゆ達はすっかりと衰弱しきっていた。無理もない。赤ゆはエネルギー変換の効率が、著しく悪いのだ。 それは人間とて同じ事。狩りも満足に出来ない小児を保護するのは、親の役目だ。しかし、肝心要の親は側にいない。 親れいむが、担保について大きく勘違いをしていたのが原因だ。そのしわ寄せは真っ先に、赤ゆ達へと来ている。 「ゆぐ…おにゃがへっぢゃよぉ…」 「まじじゃ…あみゃあみゃ…」 鬼威参は昨日とは違う服装で、湯上がりの顔で出てきた。シャワーを浴びてきたのだ。 「あーあ、すっきりした。さて、返済できるか確かめてこようか」 鬼威参は透明な箱から赤ゆ達を取り出すと、昨日のようにブルゾンのポケットに突っ込んだ。 赤ゆ達が逃げ出さないように、そっと手でポケットを押さえるのも昨日と同じだ。 鬼威参は昨日来た、道端へとやってきた。相変わらず親れいむは下手くそな歌を歌っていた。 「ゆ~ゆゆ~」 鬼威参は、そんな親れいむに声を掛けた。 「やあ、金を返す気になったか?」 「ゆ? おにいさん! やだよ! おかねさんはかえせないよ!」 親れいむは微笑みながら答えた。鬼威参も微笑んで切り返した。 「お前のおチビちゃんが、虐待されてもか?」 「ゆ?」 鬼威参はポケットから赤ゆを取り出して、親れいむに見せつけた。 「ゆやああああああああ!! たしゅけちぇええええええええ!!」 「きょのくしょおやあああああああ! まりしゃをだましちゃにゃああああああ!!」 親れいむはキョトンとした顔をしてから、狼狽えた。 「ど、どういうごどなのおおおおおお!!?」 「昨日は何も食べさせなかったよ」 「ど、どぼぢでえええええええええ!!?」 「だって、こいつらは俺の担保だからな。 俺の物は、俺がどうしようと勝手だろう」 「ゆうううううううううううう!!?」 親れいむはここに来て、ようやく担保の意味を理解した。鬼威参は金の返済を求めた。 「さあ、金を返しておくれ」 「ゆ゙…あ、あまあまにつかっちゃったから…」 言葉に詰まる親れいむ。鬼威参は親れいむに問いかけた。赤ゆ達は体を捻って、掌から抜け出そうと奮闘している。 「甘々? 何に使ったんだ?」 「ゆ…ちょこれーとさん…」 驚く事に、親れいむは金をチョコレートに換えていた。ゆっくりを相手に商品を売りつける人間が居る事に、鬼威参は少々驚いた。 そして、その言葉を聞いた赤ゆ達は激昂した。 「なにやっちぇるにょおおおおおおおおおお!!?」 「おきゃねかえしゃなかっちゃら、まりしゃはいじめられちゃうんぢゃよおおおおおお!!?」 親れいむは更に狼狽えた。 「ど、どぼぢでごんなごどに…おがねざんがえずがら! がえずがら、おぢびぢゃんゆっぐじがえじでね!」 鬼威参は答える。 「それは分かってる。最初からそういう約束だからな。で、金はどこだ?」 親れいむは狼狽しつつ云った。 「ぞ、ぞれはあどでがえずがら!」 鬼威参は首を横に振って、それではダメだと答える。 「ど、どぼじでぇ!?」 当然の事だが、親れいむに信頼はない。赤ゆを先に親れいむに返したとしよう。 すぐに逃げるに決まってる。従って、金と赤ゆは同時交換せねばならない。鬼威参は、そのように説明した。 「じんじでよ! れいぶ、ぢゃんどおがねがえずがら!」 「いいや、ダメだ。現時点で無いなら、赤ゆは返せない」 「ど、どぼずればいいのおおおおおお!!?」 「簡単だ。金を稼いで金を返済すればいい。今日は三百三十円…明日は三百六十円だな」 親れいむは金額を聞いて、涙を浮かべた。そもそも、ゆっくりは三の数までしか数えられない。 それ以上は沢山として認識される。沢山が、もっと沢山になっているのだ。今まで稼いできた金額はタカが知れている。 「れ、れいぶがわるがっだでずうううううう!! あやばりばずがら、おぢびぢゃんがえじでぐだざいいいいいい!!」 親れいむは地面に額を擦りつけて、謝罪した。しかし、鬼威参は首を振ってダメだと答える。 よじる赤ゆ達をポケットに戻すと、鬼威参は云った。 「また、明日来る。三百六十円。雁首揃えて用意しておけ。それが無理なら、お前のおチビちゃんは酷い目に会う」 親れいむは待って下さいと云った。鬼威参はそれを無視して、人混みに消えていった。 赤ゆ達の声は張り裂けんばかりの悲鳴であった。 「ゆやあああああああああ!! ゆっくぢぢゃぢぇぢぇえええええええ!!」 「ゆんやあああああ!! おきゃあしゃんのばきゃああああああああ!!」 親れいむは謝った。何度も何度も、目の前に居ない赤ゆ達に対して、何度も謝った。 「ごべんね…ごべんね…ぜっだいに…ぜっだいにだずげであげるがらね…」 絶対に助ける。親れいむは、強い意志を持った。そして、再び歌い始めた。 「ゆ゙~ゆ゙ゆ゙~」 涙声のそれは、人々の興味を誘った。 「さて、どうしようかな」 家に帰った鬼威参は、震える赤ゆ達を透明な箱に入れた。そして、どうやって虐待をしようか考えていた。 目玉を抉る。あんよを焼いて、動きを封じる。単純に針を刺す。或いは熱湯に浸けてやろうか。 様々な考えが浮かんだ。鬼威参はまず、あんよを焼く事にした。 「お前ら喜べ」 「「ゆ…」」 「これから、あんよを焼いてやる」 その言葉を聞いて、赤ゆ達は一瞬だけ沈黙した。そして、泣き喚く。 「ゆやあああああああああああ!! やべぢぇにぇえええええええええ!!」 「ゆやぢゃああああああ!! まじじゃのしゅんそくしゃんぎゃああああああああ!!」 まだ焼かれていないというのに、赤ゆ達は既に焼かれた様な騒ぎになっていた。 鬼威参は二匹を透明な箱から取り出すと、キッチンまで連れて行った。二匹をシンクの上に置く。 「ゆやあああああああああ!! やぢゃやぢゃああああああああ!!」 「ゆっぐぢにげ…どぼぢでにげらりぇにゃいにょおおおおおおおお!!?」 赤ゆにとって、シンクから床までの高さは致命的に高かった。この高度から落下すれば、命はないだろう。 赤ゆ達の中枢餡が警告を発した。そして、鬼威参はマッチ棒を取り出して、それを擦った。 ボスッという音がすると、マッチの先端から火が出た。失禁しながら、怯える赤ゆ達。 鬼威参は赤れいむを持つと、マッチの先端をあんよに近づけた。火が、あんよを覆った。 「ゆぎゃああああああああああああ!! あぢゅいいいいいいいいいいいいいいい!!」 「やべぢぇええええええええ!! れいみゅにひぢょいごぢょじにゃいぢぇえええええええ!!」 あれよあれよという間に、赤れいむのあんよは黒こげになっていった。マッチの長さは半分になっていた。 鬼威参は赤れいむをシンクに置くと、再びマッチを擦って火を灯そうとする。 「ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!」 「れいみゅ! れいみゅ!」 痙攣する赤れいむを、赤まりさは舐めて慰めた。鬼威参はというと、マッチに火を灯すのに苦労している。 中々、火が点かない事にイライラしていると、赤まりさはある決断をする。 ここから飛び降りて、一か八か逃げてやろう。そう思うと、赤まりさは赤れいむを置いてシンクから飛び降りた。 「おしょらとんぢぇぶぎゅっ!」 赤まりさは床に着地した。中枢餡の警告を無視して、飛び降りたのだ。当然、無事であるはずがない。 赤まりさの皮が裂け、餡子が大量に漏れ出ていた。鬼威参はそれを見ると慌てて、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。 「ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!」 「ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!」 姉妹揃って仲良く痙攣している。しかし、とりわけ赤まりさは深刻な事態だ。 今、赤まりさが死んでもつまらない。鬼威参は、そう思った。 赤まりさは側面に大きな亀裂を作っていた。鬼威参は、それを指で閉じるとオレンジジュースをたっぷりと掛けた。 見る見るうちに赤まりさの傷は塞がっていった。やがて、痙攣も収まってくる。 「ゆっ…! ゆっ…! ゆっ… ど、どぼぢぢぇにげらりぇぢぇにゃいにょおおおおおおお!!?」 赤まりさは絶叫した。前後の記憶がないらしい。鬼威参はオレンジジュースを冷蔵庫にしまうと、今度こそマッチ棒に火を灯した。 赤まりさを手に持ち、赤まりさのあんよをマッチの火で焼いていく。 「ゆぎゃああああああああああああああああ!! あぢゅいよおおおおおおおおおおおお!!!」 しばしの絶叫。マッチが一本、燃え尽きる頃に赤まりさのあんよは黒こげになった。 先程のオレンジジュースが関係のないところまで、回復を促しているかと思うと鬼威参は不快に思った。 「まじしゃのあんよぎゃあ…あんよしゃんぎゃあ…しゅんそくしゃんぎゃあ…」 俊足と自称する赤まりさも、このあんよでは歩く事すらままならない。 鬼威参は痙攣する赤れいむと、狼狽える赤まりさを手に持って透明な箱へと戻した。 直後に、赤れいむが目を覚ました。周囲を確認して、自分のあんよが動かない事に気付くと涙を浮かべた。 「どぼぢぢぇ…どぼぢぢぇ…れいみゅのあんよしゃんうごきゃにゃいにょ…?」 赤れいむの嘆きに、赤まりさが呼応した。 「れいみゅぅ…れいみゅぅ…」 「まりしゃぁ…まりしゃぁ…」 二匹の間に開いた微妙な間隔。僅か十センチにも満たないそれは、今の二匹にとって、とても長い距離だった。 二匹は埋められる事のない距離を埋めるが如く、それぞれの名前をか細い声で呼び続けていた。 「れいみゅ…れいみゅぅ…」 「まりしゃぁ…まりしゃぁ…」 それから昼になった。この頃になると、それぞれの名前を呼び合う体力もないらしい。 赤ゆ達はぐったりとしていた。視線は下を向いており、口をあんぐりと開けている。 「ゆぅ…」 「ゆ…」 時たま放つ言葉は、これだけだった。絶望と悲しみに囚われた声は、鬼威参の心をくすぐった。 鬼威参はキッチンへと向かった。そこから人間には刺せない、尖っていない注射針の付いた注射器を取り出した。 そして、オレンジジュースをコップに移す。コップに注がれたオレンジジュースを注射器で吸い上げると、透明な箱へと向かっていった。 「ゆぅ…ゆぅ…」 「ゆ…ゆ…」 鬼威参は衰弱しきった二匹に近づくと、透明な箱の前で語りかける。 「やあ、元気してるか?」 二匹は返事なのか呻きなのか分からない位に、か細い声で答えた。 「ゆ…」 「ゆぅ…」 鬼威参は満面の笑みを浮かべると、オレンジジュースが入った注射器を二匹に注射した。 「ゆぴゃあああああああああああ!!」 「ゆぴいいいいいいいいいいいい!!」 二匹は刺さった針の痛さで絶叫した。オレンジジュースが注射器から無くなると、二匹の体力はみるみる内に回復していった。 「ゆ…だしちぇにぇ! きょきょからだしちぇにぇ!」 「ゆっくちしにゃいぢぇ、たしゅけちぇにぇ!」 助けろと喚く二匹を、鬼威参は無視した。鬼威参は注射器とオレンジジュース、コップを片付けるとリビングへと向かった。 何度も体をよじったが、全く動かなかった。あんよは役立たずで、透明な箱からは出られそうもない。 その事実を知ると、二匹は静かに涙を流した。ただひたすら、親れいむの助けを待つしかないのだ。 「ゆっぐりのひ~! まっだりの゙ひ~!」 その頃、親れいむは相変わらず路上で歌っていた。何としてでも赤ゆを取り返さねばならない。 愛するわが子を取り戻すべく必死で歌うが、思うように上手く歌えない。涙声でしか歌えないが、それでも必死に歌った。 目を瞑り、愛しの我が子とゆっくりしている未来を想像した。とめどなく涙が溢れ出てくる。 「ゆぐっ…ゆぐっ…ゆぐりのひ~!」 滅茶苦茶な歌を歌っていると、カランと、何かが転がる音がした。親れいむが目を開くと、そこには百円玉が転がっていた。 そしてその先にいるのは、見知らぬ男だった。親れいむは額を擦りつけて、感謝の意を表した。 「あじがどうございばず! あじがどうございばず!」 男は答えた。 「いや、泣きながら歌うゆっくりなんて滅多に見ないからな。これぐらいはいいだろ」 男はそういうと、額を擦り続ける親れいむを背に去っていった。 親れいむは、それからも啜り泣きながら歌い続けていた。何だかんだで、金は集まった。 「それで、たった三百円か?」 翌日になって、鬼威参は赤ゆをポケットに詰めて、親れいむのいる道端までやって来ていた。 親れいむが集めたのはたった三百円。鬼威参が利子とついて、返済を求めているのは三百六十円。 六十円の差は大きかった。親れいむは必死に値切り交渉をした。 「おでがいじばず! これでがんべんじでぐだざい!」 三百円を鬼威参の足下に、舌で押しやって額を擦り続ける親れいむ。鬼威参の手には二匹が握られていた。 「たぢゅげぢぇえええええええええええ!!」 「あんよしゃんうごきゃにゃいにょおおおおおお!!」 親れいむは、そんな赤ゆを眼前に必死に頭を下げ続けていた。 「おでがいじばず! おでがいじばず!」 鬼威参は答える。 「無理だな。三百円を稼いできたのは偉いぞ。しかし、六十円足りない。足りないという事はどういうことか。 それは、赤ゆを返せないという事だ。お前が返さないなら、赤ゆは俺の物であることに変わりはない」 親れいむは涙声で狼狽した。 「ぞ、ぞんなぁ…どぼぢで…」 「じゃあ、そんな訳で、明日は九十円稼いでこいよ」 鬼威参は赤ゆと小銭をポケットに詰めると、その場を後にした。帰宅すると、透明な箱に赤ゆ達を放り込む。 「ゆぴぇっ!」 「ゆぴっ!」 赤ゆ達は痛がった。焼かれたあんよでは、起きるのもやっとなぐらいだ。 二匹はただただ、痛みと恐怖にブルブルと震えていることしかできなかった。 やがてしばらくすると、鬼威参がマイナスドライバーを片手に透明な箱の前にやってきた。 赤れいむを掴み上げると、その右目に突き立てた。素っ頓狂な悲鳴を、赤れいむは上げた。 「ゆっぴゃあああああああああああああああ!!」 赤まりさが突然起きた出来事に、悲鳴を上げた。 「ゆやああああああああああああああああ!!!」 そのままグリグリとマイナスドライバーを、あちこちの方向に動かし続けていた。 目玉は完全に潰れ、抉り取られた。鬼威参はその目玉を口にした。ゴクンと嚥下する音が響いた。 そして絶叫がこだまする。 「ゆっぎゃああああああああああああ!! れいみゅのおびぇびぇぎゃあああああああああああ!!」 「ゆやあああああああああああ!! 」 鬼威参は赤れいむを透明な箱に投げ入れると、今度は赤まりさを掴み上げた。そして右目にマイナスドライバーを刺した。 「ゆっぎょおおおおおおおおおおお!!!」 赤まりさも、赤れいむ同様に痛みに打ちひしがれた。左目があちこちに動く。 涙が鬼威参の手を伝ったが、鬼威参は気にすることなく作業を続けた。そして赤まりさの目玉を抉り取ると、口に頬張った。 「ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…! まじじゃの…まじじゃのおびぇびぇぎゃあああああああああああ!!!」 赤まりさの絶叫の後、赤れいむが再び叫んだ。 「ゆんやああああああああ!! もうやぢゃおうちかえりゅうううううううう!! かえりゅっちゃらかえりゅうううううう!!」 鬼威参はそれに答えるかのように話し始めた。 「いいや、ダメだよ。君達のお母さんがお金を返してくれないとね。九十円だぞ? チョコレート一枚ぐらいの価値があるんだ」 二匹は狼狽えた。 「むりにきまっちぇるううううううううう!!」 「もうやべぢぇえええええええ!! どぼぢぢぇぎょんなひぢょいごぢょじゅるにょおおおおおお!!?」 鬼威参は鼻で笑うと、リビングへと行ってしまった。取り残された二匹はというと、何もする事がなかった。 出来る事も無い。出来ると言えば、文句や歌う事ぐらいだ。しかし、そんな事をする余裕は二匹には残されていなかった。 それに、余裕があっても、叫ぼうものならばすぐさま鬼威参に舌を抜かれるだろう。二匹はゾッとした。 鬼威参はリビングでテレビを見ながら、考えていた。 金を借りずに、そのまま頑張って歌っていれば金を稼げたのにと。担保の意味も分からないまま、易々と赤ゆを差し出した事も。 まったく、自分達にとって都合の良い方にしか考えられない。ゆっくりとはお花畑の塊だ。いざ、自分に危機が迫った時にしか、物事を考えられない。 鬼威参は、いつしか眠りに就いていた。気付いた時には夕方を回っていた。 鬼威参は起き上がると、透明な箱へと近づいた。赤ゆ達はブルブルと怯えていた。 「やめ…やめちぇにぇ…」 「きょわいよぉ…きょわいよぉ…」 怯えながら後ずさりしようとする赤ゆ達。しかし、焼かれたあんよは言う事を聞かない。 鬼威参はそれを見ると微笑んだ。やがてキッチンへ向かうと、料理を作り始めた。 美味そうな匂いが、再び漂ってきた。赤ゆ達はグッと堪えて、その日を過ごした。 夜になる頃には、再びオレンジジュースの注射をされた。赤ゆ達の心は、限界だった。 翌朝を迎えて、鬼威参は赤ゆをポケットに詰めた。そして親れいむのいる道端までやってくる。 親れいむは鬼威参を目の当たりにすると、ボロボロと涙を流し始めた。 「おでがいじばず…おでがいじばず…」 鬼威参はそれを無視して、言葉を発した。 「で、いくら儲けたんだ? 九十円は返して貰うぞ?」 親れいむが舌を使ってお兄さんの前に差し出したのは、五十円玉が一枚だけだった。 鬼威参は鼻で笑うと、ポケットから赤ゆを取り出した。 「おきゃあしゃん…たしゅけちぇぇ…」 「おみぇみぇ…みえにゃいよぉ…まじしゃの…まじしゃの…」 親れいむは、愛する子供達の右目が潰れている事に驚愕した。 「ゆううううううううう!!? どぼぢでおぢびぢゃんのおべべがづぶれでるのおおおおおおお!!?」 「丁寧なご解説をどうも。明日は七十円を用意しておけよ」 鬼威参は茶々を入れると、五十円を拾ってとっとと家に帰った。親れいむは自分の不甲斐なさを嘆くように、シクシクと泣いていた。 お兄さんは帰宅すると、手を洗う事もせずに赤ゆをキッチンへと連れて行った。いつもと違う場所に、あんよを焼かれた場所に赤ゆ達は恐怖していた。 「なに…なにしゅるにょおおおおおおお!!?」 「やめちぇにぇええええええええ!!」 鬼威参は赤ゆの悲鳴などお構いなしに、赤ゆの髪の毛を毟り取り始めた。ビリビリと音がする。 毛穴の辺りからは微量の餡子が滲み出ていた。 「ゆっぴゃああああああああああああ!!」 「ゆぎゃぎいいいいいいいいいいいいいい!!」 二匹の悲鳴が張り裂けんばかりに、キッチンに響いた。鬼威参が一通り毟り終えると、二匹はすっかり丸坊主になっていた。 「れいみゅの…れいみゅのしゃらしゃらへあーじゃんぎゃあああああああああ!!」 「まじじゃの…ぶろんぢょへあーしゃんぎゃあああああああああ!!」 鬼威参は赤れいむにだけ、飾りのリボンを結び直した。それはハチマキのように、某アクション映画の俳優を連想させた。 鬼威参は思わず笑ってしまう。赤ゆ達はそれを見て、怒鳴った。 「にゃにぎゃおかちいにょおおおおおおおお!!?」 「どぼぢぢぇぎょんなごぢょしゅるにょおおおおおおお!!?」 鬼威参は笑いながら答える。 「それはだって、君達は担保だから」 鬼威参は、アハハと笑うと赤ゆ達を透明な箱に投げ入れた。そのままリビングに向かって、テレビを点けるとくつろぎ始めた。 赤ゆ達は透明な箱でプルプルと、ブルブルと震えている。 「まりしゃぁ…どうなっちゃうにょ…」 「わきゃらにゃいよ…きっちょ…きっちょおかあしゃんがたしゅけちぇくれりゅよ…」 その願いが果たして叶うかどうか、総ては親れいむの稼ぎに掛かっていた。 「おでがいじばずううううう!!」 この頃になると、親れいむは歌うのを止めて、金をくれと人々にせがんでいた。 人々が親れいむをチラチラとは見る物の、金をくれる人間はいなかった。 「おでがいじばず! おぢびぢゃんをがえじでもらうのにひづようなんでず!」 「詳しく説明してくれないか?」 通りがかった男が、親れいむに声を掛けた。男は屈んで、親れいむの話しに聞き入った。 それなりにゆっくりしていた事。金貸しに酷い目にあっている事を、親れいむは伝えた。 「ぞういうごどなんでず!」 「そういう事なのか…」 男は顎に手をやって考え始めた。 「幾らか分かるかい?」 「わがじばぜん…おがねざん、いっばいひづようなんでず!」 親れいむが狼狽した。男はまたしばらく、考えに耽った。 「まあ、借りるのはいいけど、返せなきゃダメじゃないか。今回は百円をやるよ。それで解決できたらいいけどな」 男が財布から百円玉を取り出した。親れいむの目の前に置かれる。親れいむは額を擦りつけて、感謝の意を表した。 「あじがどうございばず!」 「まあ、いいんだけどさ。きっと、上手くいかないだろうし」 男はそれだけいうと、去ってしまった。上手くいかないとは一体何の事なのか。 親れいむには今の時点では、分からなかった。それよりも、金が入った事で今度こそ返済できるかも知れない。 親れいむは、心の中で赤ゆ達に詫びると同時に、ようやく救えると安堵した。 「ゆっ! ゆっ! ゆっ!」 百円玉を咥えて、植え込みのダンボールまで持って行く。そこにあるのは、食いかけのチョコレートだけだった。 チョコレートは親れいむが、その甘さ、美味さから殆どを食い尽くしてしまっていた。 親れいむは、赤ゆ達と一緒に食べようと考えていた。しかし、いざ食べてみると止まらない。 食べる事を止められなかった。気付けばチョコレートは殆どが無くなっていた。狩りも全くしていない。 親れいむは歌を歌い続け、赤ゆを取り戻す為だから仕方ないと、自分に言い聞かせた。それは赤ゆ達への言い訳でもあった。 「なるほど、よくやったじゃないか」 鬼威参は親れいむのいる道端まで来ていた。無論、ポケットには赤ゆが詰め込まれている。 「おでがいじばず! おぢびぢゃんがえじでぐだざい!」 親れいむが狼狽えながらも、赤ゆを返すように迫った。鬼威参はポケットから赤ゆを取り出して、親れいむの前に置いた。 「はい、返したっと」 親れいむは、その姿に愕然とした。あれほどゆっくりしていた、赤ゆ達。しかし、今は右目を潰され、あんよを焼かれている。 挙げ句には髪の毛を全て毟られて、飾りが申し訳程度に乗せられているだけ。親れいむは叫んだ。 「ゆんやああああああああああ!! どぼぢでおぢびぢゃんがごんなごどにいいいいいいいいい!!?」 親れいむが叫んでいる間に、鬼威参は金を回収した。過払いの金など、返す気は毛頭無い。 「ゆっ…おきゃあしゃん…たしゅけちぇ…」 「まりしゃを…ゆっくちさせちぇ…」 衰弱しきった赤ゆ達。オレンジジュースの注射から大分時間が経っている。このまま放置しておけば、死ぬ事は確実だろう。 「どぼずればいいのおおおおおお!!?」 ダンボールに僅かに残されたチョコレートの事も忘れて、親れいむは叫んだ。 そこに鬼威参が、良い提案があると言葉にした。 「いいていあん…なんなの!? はやぐおじえでねえええええええ!!」 二日後、親れいむは道端でまりさとすっきりしていた。側には赤ゆはいなかった。 「すっきりぃ!」 「…すっきりぃ…」 親れいむは売春をしていた。ニョキニョキと緑々しい茎が、親れいむの額から生えてくる。 「ゆゆ! それじゃあ、まりさはかえるのぜ!」 「ゆん…」 親れいむはそのまま、鬼威参宅へとやって来た。 「ゆっくりただいまだよ…」 鬼威参が出迎えてくれた。玄関付近の透明な箱に、赤ゆ達は入っていた。 「ゆっくちおきゃえりなしゃい…」 「うぎょけにゃいよぉ…ぽんぽんへっちゃよぉ…」 衰弱した赤ゆ達に、親れいむは少し待ってくれと云った。鬼威参は親れいむに近づくと、額に生えた茎を毟り取った。 「ゆぎっ!」 親れいむの若干の悲鳴の後、茎に実った実ゆっくり達の表情は苦しげになる。 鬼威参はそれを透明な箱に放り込んだ。赤ゆ達は茎を、実ゆごと食べ始める。 「むーちゃむーちゃ…ちあわちぇー…」 「ちあわちぇー…」 鬼威参は、それを見て親れいむに言った。 「じゃあ、俺の分もよろしくな」 「ゆ…はい…」 親れいむはトボトボと玄関を出て行った。再び売春をするのだ。 鬼威参の提案とは、売春だった。家賃代わりとして実ゆっくりを、鬼威参に払うよう持ちかけたのだ。 赤ゆ達の食事も実ゆっくり。それは厳しい都会に於いて、オアシスを提供してくれるようなものだった。 雨風は凌げ、寒い思いもしない。れみりゃに襲われる危険性もない。それは動けぬ赤ゆ達にとっては、生き延びる為に必要な環境だった。 鬼威参はそれを提示した。そして、親れいむはそれを呑んだ。今まで棲んでいたダンボールを引き払い、鬼威参宅で暮らす事になったのだ。 暮らすといっても、許されたスペースは玄関脇だけ。それより奥は、鬼威参に蹴飛ばされてしまう。 あまりに酷いようならば、外に追い出すとも云っている。親れいむは売春を続けるしかない。 一つは赤ゆ達の食事の為。そして二つ目は鬼威参への家賃として。 親れいむには未来がなかった。このまま産む機械同然の働きを行って、赤ゆ達をゆっくりさせるしかない。 赤ゆ達は今はゆっくりしてないが、いつしかゆっくり出来る事だろう。親れいむはそう考えていた。 唯一、自分が死んだ後の事は考えていなかった。親れいむが死んだら、一体誰が赤ゆの世話をするのか。一体、誰が家賃を払うのか。 鬼威参は、親れいむの寿命が迫った時に、その事実を伝えるつもりだった。 なぜならば、騙され、裏切られたと知った時のゆっくりの表情は、とってもゆっくりできるから。 終 あとがき 最近あったこと。 医者「ウォッカはやめてください」 俺「安定剤もやめていいですか? 眠くて眠くて…」 医者「分かりましたから、ウォッカはやめてください」 俺「じゃあ、ワインはオッケー?」 医者「……じゃあ、まあ、ワインなら…」 俺「ハラショー!! ウラー!」 医者「飲み過ぎないで下さいね」 俺「うん」 独り言 ハードディスクがカッコンするねん。なんなのねん。本当に心臓に悪いからやめてほしいねん。 お前seagateやろ。seagateやったら、海の男いうイメージあるやろ。そんなにカッコンしてどないすんねん。 新しいHDD買わないとあかんなぁ。
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荒木を殺して帰り吸血鬼となる。 そう決心した後、再び持ち物の確認を進める…… ストレイツォは歓喜した。 最初はハズレと断定した支給品の釣り針と糸、そしてメガネ。 しかし、よくよく考えればこれほどの当たりアイテムは無い。 彼の能力―波紋―これを使う上で糸という武器は非常に有効だからだ。 肉体を武器とする波紋。 対吸血鬼用の技とはいっても人間を気絶させる位なら朝飯前であるこの能力の最大の弱点はリーチの短さにある。 通常は波紋というのは己の手や足から流し込む物だ。 つまり、吸血鬼の気化冷凍法等といった一部の技には非常に弱い。 だが、道具を介して波紋を流せれば? それも糸のような長くて変化に富む物であったら? ――敵に接近せずに戦える上に暗殺や罠を仕掛けることも可能となる。 しかし荒木もそんな万能な武器を無条件で渡すわけが無く、一つだけ悩みがあった。 それは――― (この糸は波紋が通りにくい…) そう、ナイロン製の釣り糸は波紋を通し辛く現状では武器としての用途を果たせないのである。 だが、そんな致命的な弱点をあっさりと解決できる裏技が一つだけ存在した。 (仕方ない、油でも探す事にするか) 油等の液体を塗る、こうする事によって本来波紋を通さない物質からも波紋を流す事が出来る。 彼はバッグの確認が終わったらひとまず油を探す事を決定した。 次にストレイツォは驚愕した。 ジョナサン・ジョースター、ディオ・ブランドー、ウィル・A・ツェペリ、ダイアー この四名の名を名簿に見つけてしまったからだ。 (荒木は吸血鬼で彼らは屍生人なのか?) こんな疑問が脳裏を掠めてすぐに消えた。 (ありえん話だ。彼らの他にこの名簿に載っている黒騎士ブラフォード、タルカスは波紋で塵も残さずに消えたはず。 又聞きではあるが、波紋で消えたのは事実。 いくら吸血鬼であろうともカスすら残っていない残骸を屍生人にはできまい。) 荒木は吸血鬼では無い。そんな結論を自らの脳内で導いたストレイツォ。 (しかし、吸血鬼でもないのにこんな事ができるとは。 荒木…貴様の素性に興味が湧いてきたぞっ!!) 荒木の存在に好奇心を抑えられないストレイツォ。 だが、ストレイツォは絶望した。 リサリサこと“エリザベス・ジョースター”の名を見つけてしまった事によって―――― ☆ ★ ☆ 何故だ!何故あの子を巻き込んだ!? 吸血鬼となり、人間としての自分を捨てようとした自身の最後の心残り。 自分の愛弟子であり、娘でもあった彼女。 二十年、人生において四分の一以下ではあったものの彼女と過ごした年月はこれほどまでに無く長く充実していた。 初めての赤ん坊の世話に戸惑いながらも、手探りで進み続けたあの頃。 幼い彼女の一挙動にもはらはらしながら過ごしたあの日々。 波紋の厳しい修行にも文句も言わずに取り組んでいた彼女。 確かにあの素晴しい才能には嫉妬してしまう事はあったが、むしろ親として誇らしく思っていた方が多い気がする。 そして結婚した彼女は私の下から飛び立って行った。 私には弟子がいる、だから私は孤独ではないはずなのだ。 なのに、彼女が去ってからは日々に魅力を感じなくなっていた。 確かに、数年もすれば彼女がいない生活に嫌でも慣れたものだ。 ただ……時々物足りない気分になってしまうだけ…… これから吸血鬼となる私は永遠を手に入れる事ができる。 それでも彼女と過ごした年月に勝るような時間を手に入れることはできないのだろう。 私はそう考えてしまうほどに深く彼女を愛してしまっていた。 しかし、人としての愛や幸せを捨ててしまうほどに若さを欲した。 いや、違う。 こんな事になってやっと理解する事ができた。 確かに若さが欲しかったのは本音であり、矛盾した表現であるが今までなら若さを手に入れたら死んでもよかったはず…… だけど、その若さを求めようと思った最大の原因に気が付くことは無かった。 いや、私は気が付いていたのだろう。 私の頭がそれを無かったことにしようとしてるだけ。 私が若さを求めたのは逃避、なまじ幸せな時間を過ごしたせいでその快感を再び得ることが出来ない現実からの逃げであった。 手に入るのは空白の時間だけだというのに…… ただ、彼女の変わりに永久を求める決意をしても彼女を殺す決心がつくことはなかった。 吸血鬼になる上で彼女のような優れた波紋使いは生かしておいては厄介すぎる。 なのに吸血鬼になってからのプランに彼女の殺害を入れることが出来なかった。 いくら彼女が優れた波紋使いでも、私なら不意を突いて殺せるにも関わらずだ。 そんな彼女がこのゲームに参加させられている。 ゲームに乗るということは自分の命と彼女の命を天秤に掛ける事。 私にそれができるのか? ―分からない 彼女は生き残る事が出来るのか? ―分からない 彼女に仲間はいるのか? ―分からない だが、彼女に仲間が出来たら私の事を間違いなく紹介するはず…… そんな中で私がゲームに乗ったことがばれたら? 当然彼女は信用を失ってしまうはず。 いや、それどころか誰かが彼女に危害を加える可能性まである。 人殺しの娘の評判がいいはずがない。 最悪、暴走した仲間に殺される可能性も…… ならば私はゲームに乗るべきではないのか? ―分からない 分からないことばかりだが、唯一分かった事。 それは自分と彼女が助かるための手段はただ一つ、荒木を殺して脱出するしかないという事だった。 ……その答えを出した彼の瞳は濁っていた。 自分の心の中で結論を出したのはいいが、彼はまだ吸血鬼になる事を諦め切れていない。 実際、このゲームを脱出した所で彼はあの幸せな時間を忘れる事が出来ないであろう。 だから彼は逃避の手段として吸血鬼になる事だけは変えれない。 ストレィツオの目の色は濁りきっている。 先ほどまでの澄んだ邪悪の色に愛といった不純物が混じった事によって、純粋な正義でも、純粋な悪でもない曖昧な色に―― ★ ☆ ★ 「おい、そこにいるお前!ちょっと止まりな!!」 ベンジャミン・ブンブーンが自分達の前方二十メートルほどを歩いていた男を止めようと声をかけた。 そして立ち止まった男であったが、非日常的な会場に置いても彼の格好は異様と思わざるを得ないものであった。 具体的に言えば全裸、腰に布が~~~とかそういうレベルじゃなくてまさに全裸。 しかも、男はそれを気にした様子がなく、少なくとも三人の目には堂々としているように見えた 殺し合いの会場で堂々と闊歩する全裸の巨人。 それは殺人の経験すらある現代日本に置いては重犯罪者の音石明でさえ、コイツとは関わりたくねぇ……と思わせる圧倒的破壊力を持つ。 「殺し合いに乗ってないなら荷物をこっちに投げろ!」 そんな音石の考えをあっさりスルーしてブンブーンは全裸の男に話しかける。 一見すれば、人のいい対主催。 相手に完全に猶予を与えてしまう甘ちゃんの行動にも見えてしまうかも知れない。 だが、口では相手と仲間になりたいと言ってはいるが、実際はこれっぽっちも彼のことを信用していなかった。 ブンブーンは保険を掛ける為にミセス・ロビンスンにこっそりと耳打ちをする。 「おいロビンスン」 「どうしたんだブンブーン?」 「オメェが最初に俺たちに攻撃したあれがあんだろ? 保険のためにいつでもそれでアイツに攻撃できるようにしときなっ。 万が一の時は……殺してもかまわねぇ」 「承った。だが俺の力はお世辞にも殺傷能力が高いとはいえないからあんまり期待すんなよ?」 「その辺は分かってる。足止めさえ出来れば……ってやつだ。 で、ちぢくれボーズ。お前の出した変な像、アレの能力は遠くの敵に有効なのか?」 「いや…俺のスタンドは戦闘向けじゃない……」 「かぁ~使えねぇなぁ、本当にLAのほうがまだマシだぜ」 (だからLAってだれだっつーの!?) 能力が戦闘向きで無いと嘘を付いた自分が悪いのだが、使えない発言みイラッときて、早々と同じ突込みを心の中でする音石であった。 けれども心中のツッコミが通じるはずが無く、ブンブーンは会話を打ち切って再び全裸に話しかける。 「おい!もう一回言うぜ?荷物をこっちに投げな!!」 残念な事に全裸こと“サンタナ”はブンブーンの警告を受ける気がなかった。 彼は完全にゲームに乗っていて既に一人を『食って』いる。 しかし、長い間の絶食生活が開けたと思いきや再び絶食生活を送る羽目になった彼は非常に餓えていた。 一応さっきの女で体力は回復したものの彼の欲求は止まらない。 食べたい、人を、吸血鬼を、生き物なら何でも良かった。 そして腹をある程度満たしたら“ナチス”とやらの基地から脱出したように、ここからも脱出するつもりであった。 ここにいる、仲間のカーズ達と共に――― リーダーが脱出派の集団と脱出する気の個人、ある意味では彼らは志を共にしているのかもしれない。 だが彼ら全員の認識は全くバラバラだった。 サンタナは目の前の三人を仲間や敵ではなく『餌』とみなしていた。 ブンブーンは脱出派だったが、息子の救出を参加者の命より優先している。 音石は意志が弱く、自分のスタンスすら明らかになっていない。 ロビンスンに至っては優勝する気が満々である。 ブンブーンの警告を完全に無視して三人の下に走ってくるサンタナ。 この姿を見た三人の意識は共通していた。 ――やつは、ゲームに乗っている―― ロビンスンが虫で攻撃する 飛ぶ小さなゴミ 全弾命中 気にせずに向かってくるサンタナ 虫に目潰しをさせようと飛ばす 全てをキャッチするサンタナ 驚愕するロビンスンを他所にスタンドを発動するブンブーン 立ち向かう黒い蜥蜴 それは一瞬、一瞬であったがサンタナの動きを止めてみせた。 だがサンタナがその手足に力を込めて抵抗すると、爆発するかのように蜥蜴の姿が崩れて辺りに砂鉄が飛び散る。 磁力によって再結合を図るも、柱の男の瞬発力には敵わない。 そしてサンタナは三人の目の前で腕を薙いだ――――― ★ ☆ ★ 町一つの電力を使えば敵はいない…そう考えていた時期が俺にもあったよ畜生! あんな化け物に勝てるわけねぇだろうが…… 半泣きの俺は涙を拭ってこれからの事を考えることにした。 さっきの怪物、アイツは正真正銘の怪物だ。 確かに力やスピードのみなら恐らくフルパワー時の俺のスタンドのほうが上だ。いや、そう信じたい。 だけどヤツには勝てる気がしねぇ。 あの得体の知れない能力に関わるのはもう懲り懲りだ!! 全速力で走ったおかげで荒れまくっていた息が少しずつ整っていく。 しかし未だに足の震えは止まらないし、心臓も痛いほど鳴っているのが分かる。 初めて人を殺っちまった時もここまでは焦んなかったぜ… いや実際、問題は切実だ。 この殺し合い、もしかしたらヤツよりも強いやつがいるのかもしれない。 そんなヤツがいた時に俺はどうやって生き残ればいい? 大体電気すらない会場で俺はどうすればいいんだ? ―――これからの方針は案外アッサリと決まった。 荒木飛呂彦、ヤツの能力は底が知れなさ過ぎる。 承太郎やあんな化け物を一度に連れて来る能力。 多分、ヤツは時を止める以上に凶悪なスタンド能力を持っているのだろう。 そんなのに対して、ちょっと仲間がいる程度で勝てると思うか? 俺は絶対に思わねぇ…… かといって、この殺し合いで次々と殺していって優勝できる気もしない俺に残された方法は? ………やっぱり仲間は必要だよな。 多少落ち着いた俺の頭が導き出した答えはそれだった。 承太郎や仗助ならあの化け物をぶっ殺してくれるかもしれない。 それに承太郎の判断力は異常だし、仗助の能力も仲間になったら頼りになりすぎる! 億泰の野郎も頭はあれだが一応スタンドは強いしな。 だが、奴らが俺の仲間になってくれるんだろうか? 億泰の兄貴をぶっ殺して、ついさっきまで仗助の親を殺そうとしていた俺が… そんな都合のいい話がある訳ねぇよな~ それどころか俺を危険人物として広げてるかもしんねぇ…… ブンブーンのおっさんみてぇな人がいいヤツもまだまだいるだろうしな。 あいつらがチームを作ってたってなんら不思議はねぇぜ。 と、なると俺は承太郎達と接触してないヤツを探して仲間になるのが先決ってやつか? 兎に角信用を得なければどうにもならねぇ。頼むから乗ってないやつに会わせてくれよ…… まぁ、俺は乗っているんだけどな ジャリッ 「ヒッ!!」 自分で踏んだ砂利の音にビビリまくる彼。 ヘタレな彼のステルスマーダー道は険しい? 【現在地不明/一日目・深夜】 【音石明】 [時間軸] チリ・ペッパーが海に落ちた直後 [スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(ほとんど戦えない状態) [状態] 健康、酷く焦っている [装備] なし [道具] 基本支給品、不明支給品 [思考・状況]基本行動方針:優勝狙い 1.優勝を狙う 2.とりあえず仲間が欲しい 3.チャンスがあれば民家に立ち寄ってパワーを充電をしたい 4.ミセス・ロビンスンをスタンド使いだと思っています 5.サンタナ怖いよサンタナ ★ ☆ ★ クソっ! どうなってやがる!! 俺の虫を全て潰された時点で俺はアイツとの間にある絶望的な力の差を感じてしまった。 ジャイロ・ツェペリが使ったチャチな鉄球なんかじゃねぇ純粋な身体能力。 それは高速で飛ぶ虫、しかも1匹2匹なんて数字じゃすまねぇ数、それを全て捕捉した上に掴みとりやがった! しかも、こちらへ走ってくるスピード。 これもまた人智を超えたものであり、野生の獣でも出せないような圧倒的な速さであった。 つまりヤツは動体視力、反射神経、脚力がずば抜けてるってことだ。 ……だけど“それだけ”なら俺らが負ける事はなかったかもしれねぇ。 ここからが本当の地獄ってやつだった… こっちに走ってきたあいつが何かやったのは分かった。 ただ…理解できたときはもう完全に手遅れってヤツだ…… ブンブーンの足が消し飛ばされたって分かったときにはな…… そっからの記憶? んなもんねぇよ! こちとら自分一人を守るので精一杯だったってのによ~ あ、これだけは見えたぜ。 音石の野郎が一目散に逃げる姿だけはな。 まぁ、俺も人のことが言えないがな…… 【現在地不明/一日目・深夜】 【ミセス・ロビンスン】 [現在地] 不明 [時間軸] チョヤッを全弾喰らって落馬した直後 [状態] 健康 [装備] なし [道具] 基本支給品 [思考・状況]基本行動方針:優勝してレースに戻る 1.アイツはやばすぎる! 2.何とか生き残って優勝したい 3.サンドマンやマウンテン・ティムなどの優勝候補を率先的に潰す ※虫の数が激減してます ★ ☆ ★ オトイシとロビンスンの野郎共が逃げていくのが、半分薄れていく意識の中でやけにクッキリと見えた。 畜生!ワシはここで終わっちまうのか? ヤツにやられた時、自分が“食われた”のだと理解する。 無くなった右足に不思議と痛みは無い。 ただ、自分の足から命が流れて行く実感だけがあるのみだ。 意識が少し遠のいてゆく、そんな中でワシは無意識の内に“銃弾”を掴んでいた。 ―――銃弾?アンドレの血がついた銃弾? 遠のいた意識がハッキリとしてゆく。 目の前にはあの化け物が俺に覆いかぶさろうとしているのが分かった。 食われる!?いや、食われるわけにはいかない!! アンドレがワシの助けを待ってる以上諦めるわけにはいかねぇ。 とっさに自分の能力“スタンド”だったかを発動する。 再び現れる砂鉄製の大蜥蜴、さっきはパワー負けしちまったが今回は勝つ! それは、気合でも根性でも奇跡でもねぇ。 俺“達”の能力が成し遂げることなんだ!! 地面から湧き上がるように出現する大蜥蜴。 先ほどよりも遥かに機敏な動きで化け物に組み付く。 さっきの様に化け物は俺のスタンドを振り払おうと力を入れる。 だが、離れない。 明らかに先ほどより力を入れているようで、全身に血管が浮いているのが見える。 それでも離れない。 一部が弾け飛んだが、俺の呪いに嵌った今ではその程度なんでもない。 弾け飛んだ砂鉄が銃弾の様な勢いで化け物に張り付いていく。 これは…いけるんじゃねぇか? いや、現実はそんなに簡単に物事を解決させてはくれない。 「MMMMMMMMM!OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」 雄たけびを上げた化け物が更に力を入れて、衝撃で砂鉄を吹き飛ばそうとする。 ちっ!ちょっと厳しくなってきやがった。 黒い蜥蜴のあちこちに罅割れが生まれてくるのを見てワシは焦燥感に狩られた。 一部であったらすぐに再生できるが、一気に吹き飛ばされたら再生前にあの瞬発力であっという間に間を埋められて即アウト!本当にふざけた化け物だな畜生ッ! 本当ならこの隙に逃げてぇ所なんだけどよ、この足の所為で逃げらんね~んだよな。 だから生き残る為にはここでヤツをぶっ殺すしかねぇ! 俺は切り札であった銃弾をヤツに投げた。 血液が飛び、ヤツの脇腹辺りに付着して一瞬で吸い取られるかのように消えた。 だが、それでもアンドレの分はキッチリ発動したらしい。 再び力の増した大蜥蜴にヤツは為すすべなく取り押さえられる。 さて…傷口でも塞ぐか。 顎のプロテクターの一部を使って傷口を完全に覆う。 当然一時的な処置であって長持ちするとは思えねぇ、だがなっ!こいつを倒すまでには余裕だぜ! ★ ☆ ★ ブンブーン一家の能力は磁力。 更に一人より二人、二人より三人といった形で人数に比例して強くなってゆく。 その特性ゆえに、べンジャミン個人での発動、支給品であったアンドレの分の発動と徐々にサンタナの磁力は増していった。 磁力が増す。 つまり鉄を引き寄せる力が強くなり、砂鉄でできた蜥蜴がより強い力でサンタナに張り付こうとすると言う事だ。 大蜥蜴との格闘を続けるサンタナ。 振りほどこうとしても振りほどけない。 だが彼は気が付いていた。この蜥蜴が目の前の男によって生み出されているということを。 何も身体能力と触れるだけで人間を食う事が柱の男の能ではない。 多彩な技、これも柱の男達の真価の一つである。 だが、彼らが人間の上の存在である所以をブンブーンは知らない。 唐突なことだった。 サンタナの体を突き破った肋骨が蜥蜴を易々と貫通しブンブーンを襲う。 あくまでもサンタナから発生する磁力を力としている大蜥蜴にはそれを止めるパワーは無く、 更には右足が無い彼にそれを避ける術がある筈もなく、胴体に二本突き刺さった。 サンタナが吸っている所為か突き刺さった腹部からの出血は少ない。 だが内臓の一部をやられて倒れたまま痙攣するブンブーン。 この怪我ではきっと長くは持たないはず… しかし、ブンブーンの抵抗はまだ終わらなかった。 それは生への執着?それとも息子を助けるため? 重症の彼を動かしたのがどっちであるかは本人にしか分からない。 兎に角、彼は自分の死という結果には納得する気が無いらしい。 蜥蜴をサンタナの後ろへ回りこませて再び取り押さえさせる。 纏わり付く砂鉄にバランスを崩してそのまま後ろへ倒れるサンタナ。 半分無理矢理抜けた肋骨により広がった傷口に顔をしかめながらも、砂鉄でサンタナを覆い地面に貼り付けにする。 (畜生!この怪我は流石にヤべーんじゃねぇか? でもよぉ、ついさっきアンドレに“あんな”事言っちまったからな…弱音を吐くわけにはいかねー!) 貼り付けにしたサンタナにこれ以上近寄りたくもないし、かといって放置し続けるのも辛い。 しかも止めを刺すにも、自分の能力で直接的な殺傷能力を持つ技は一つもない。 つまりは完全に詰んでしまったというわけだ。 いや、正確に言うと一つだけ方法はある。 彼に回ってきた支給品の一つ拡声器、これを使って助けを呼ぶ事だ。 確かに、誰が来てもサンタナの始末をするのを手伝う位はやってくれるだろう。 この会場に来てから出会った参加者が二人とも異能を持っている上に、 おかしな能力を見せたマウンテン・ティムまで参加している事から彼はこの殺し合いに参加するメンバーが常人ではないことに薄々勘付いていた。 だから、動きを封じたコイツを安全に殺せる連中はいると確信している。 だが、そのメンバーがサンタナを殺した後どうするか? その懸念がブンブーンに拡声器を使わせる事を躊躇わせていた。 しかし、彼は使う事を決心した。 自身の体力が限界に近づいている事を悟ったから。 もぞもぞと砂鉄が動きだしているのがハッキリと視認できるようになったから。 そう、その後を考える余裕など彼には残っていないからだ。 ★ ☆ ★ 「すまねぇっ!誰くぁッハーハァ助けてくれ!人をハァ人を食う化け物に襲われちまったんだ!! まっ、まだ俺が食い止めてるが状況は最悪だ!誰でもいい!助けに…グッ」 明らかに中年男性のものであろう大声が聞こえた。 方角から察するに恐らく南西。 内容によると助けを求めているようだったが行くべきか否か? あの声から察するに嘘を付いている様子は無い。 それに、人を食ったのが本当なら相手は吸血鬼か屍生人であろう… ならば私が行くべきなのか? いや……しかし、私はこの殺し合いでどう生きていくか決まっていない。 だが、吸血鬼達は私の方針がどうなろうとも敵として立ちはだかるだけなのでは? あいつらは殺し合いに抵抗を持つどころか嬉々として乗るだろう。 ならば、私が万全な今の内に仕留めておくべきなのでは? 助けを求める事が出来る時点で、その男はある程度抵抗出来ていると言うわけだ。 つまり、多少なりとも吸血鬼は消耗している! この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない! もしかしたら石仮面の手がかりを握っている可能性もある。 いや!それどころか支給品が石仮面だった可能性だって十分ありうる!! どっちにしろ、私の野望への第一歩にはなるわけだ。 さて、向かわせてもらおうか。 ★ ☆ ★ ストレイツォがたどり着いた時、既にブンブーンは限界であった。 だが、彼は賭けに勝ったのである。 息も絶え絶えになってしまっているが、その瞳からは希望の色が見えた。 しかし、彼のそれはぬか喜びに終わる。 「あんた…逃げな……ここにいるやつは危険すぎヒュッ。 この足を見ろよ…あいフー、あいつに触れられただけでこの様だ。」 老人が来たことに落胆しながらも、ストレイツォに逃げるよう促すブンブーン、 しかし、ストレイツォは引いたりしない。 「逃げろ?私は君が生まれる前から化け物の退治を生業としてきた。 安心しろ、ここは私が引き受ける」 そういって構えを取るストレイツォ。 彼の口から流れ出る呼吸音を聞いてサンタナの反応が一変する。 先ほどまでの抵抗とは違うまさに必死の抵抗が見られた。 そう、彼は覚えていた。 絶対的強者であった彼に初の敗北をもたらしたジョセフ・ジョースター。 彼の使う波紋と呼ばれる技の存在を。 当たったらダメージは必至。 そんな極限下で彼が下した判断は 上が駄目なら下。 この一見シンプルな考えは実際には実現が難しい。 何故なら、地面と言うものは意外と硬くて掘りづらい物だからだ。 ただし、これには普通の人間だったらいう条件が付属する。 そう、サンタナの柱の男の身体能力は重し付きでそれを成し遂げる位の力は優にある。 手足や肋骨で少しスペースを作り、その後はドリルのように体を回転させて掘り進む。 ある程度離れた所為かブンブーンの能力も解除されたようで、体に纏わりつく砂鉄は消えていた。 だが彼は引かない。 自身のプライド、食事を邪魔された怒り。 このドス黒い復讐心が彼の体を突き動かす。 突如、ストレイツォの後ろから飛び出すサンタナ。 ストレイツォはそれに反応して蹴りを繰り出す。 「爺さん、アイツに直接攻撃は止めろっ!!」 ……ブンブーンの助言は空しく響くだけ ストレイツォのキックは止まらない。 これから起こる惨劇に目を背けそうになるブンブーン。 しかし目を背ける前に、失血やスタンドの酷使で気絶してしまったが…… だが、彼が恐れていた事態は一向に訪れなかった。 普通にヒットするキック。 成人男性と比較しても、遜色が無いどころか遥かに鋭いであろうその蹴りを食らったサンタナは倒れこむ。 が、立ち上がった彼に致命傷を負った気配は全く無い。 いや、キックを喰らった箇所が多少融けてはいるが動きに支障は無さそうだった。 (なにぃ!?波紋を直撃で喰らって死なないだと?こいつは吸血鬼じゃないのか?) しかし、それではさっき見た異常なスピードでの地中堀りが納得できなくなる。 それに、波紋が全くノーダメージという訳でもない。 つまりこいつは吸血鬼の上位の様な存在なのでは?と推測するストレイツォ。 その推測をろくに考える間は無かった。 サンタナの猛攻が始まったからだ――― ストレイツォは焦っている。 先ほどからヤツの攻撃をさばき続けているが一向に隙が見えない。 いや、隙はある。 ただ、自分の体がそれを突いていけないだけだ。 本当に醜く老いたこの体が憎い。 早く吸血鬼となって若さを取り戻したい。 そんな邪念が災いしたか、強力な一撃を脇腹に貰う。 「ぐっ!」 内臓がやられたか、自分の血が口から垂れてゆくのを感じた。 この身体能力…… 接近戦でやりあうには相当キツイ…… 先ほどの釣り糸に己の血を垂らして波紋の伝導率を上げる。 打撃よりは威力には劣るものの仕方あるまい。 不慣れな武器でどこまでやれるか…… まぁいい。いざという時はこの男を犠牲にして逃げればイイだけだ。 ★ ☆ ★ ワシは……寝てたのか? 目の前でジジイと化け物が戦っている。 糸で戦ってるジジイ。 化け物にもその攻撃が効いてるというのが驚きだが、やはり致命的ダメージにはならねぇ。 あっ!一撃喰らいやがった!! 吹き飛ぶジジイ。 俺は見た。やつの持っている糸の先に付いた小さな針を。 それが夜の闇のなかで金属特有の光の反射を見せた事を。 どうやら……俺の出番ってヤツか? 既に俺の体はボロボロで、能力一つでも致命傷になりかねない。 だがそれがどうした? さっきもいったが、あそこでジジイが負けたら俺は死ぬしかねぇ。 ならば一か八かでも生き残るほうに掛けてぇに決まってるじゃねぇか。 渾身の力を振り絞った能力発動。 今の磁力はブンブーン一家勢揃い並みには出てるんじゃね~のか? ★ ☆ ★ 急に釣り針の軌道が変わった。 まるで引き寄せられるかのように、サンタナの元へと飛んでゆく針。 さっきまで飛ぶ方向が微妙で苦戦していたストレイツォは思わぬ援軍に驚く。 (これは……あの男の能力なのか? いや、今はそんな事を気にしている場合ではないな) くっ付いた針を支点としてサンタナを簀巻きにするかの如く糸を操作するストレイツォ。 全身の力をフルに使って抵抗するサンタナ。 軍配はストレイツォに上がった。 ナイロンの頑丈さ、波紋。 この二重の縛りから逃げることはたとえサンタナの力を以ってしても不可能である。 そしてストレイツォは呼吸を溜める!溜める!!溜める!!! 「このストレイツォ!容赦せん!!」 ベストの時に限りなく近付いた波紋。 それがサンタナの体を焼いてゆく。 「UOOOOOOOOOHHHHHHHHHH!!」 苦悶の表情を見せるサンタナ。 既に彼の上半身と下半身は泣き別れていて、更にそこから波紋がサンタナの体を蝕んでゆく。 これを見て、決着は付いたものだと思い、ストレイツォはブンブーンの元へ行った。 「おい、まだ生きてるか?」 息遣いが非常に危ういがギリギリの状態で生きているブンブーンは弱弱しく頷いた。 「すまないが、一つだけ聞かせてもらいたい――――」 ストレイツォは本当は 「今のはお前の能力だな。あれは一体なんなのだ?」と聞きたかった。 しかし、明らかに能力の所為で弱ってしまっているブンブーンを見て、口から思わず出た言葉はこれであった。 「お前は何で命を懸けるんだ?今の能力はお前の生命力を削って出したんだろ?」 「そりゃあ…爺さんが負けたら……俺も死ぬからじゃねぇか」 安堵したか、苦しそうながらも軽口を叩くブンブーン。 ストレイツォにとってブンブーンの返事はある程度予想の範囲内。 それでもストレイツォは質問を続ける。 「だが今のお前は相当辛そうではないか?そこまでして生に執着する理由があるのか?」 相当な愚問であるとストレイツォは自覚していた。 吸血鬼になるために、どんな思いをしても生きようとしているのは自分なのに…… 何となく、本当に何となくの質問であった。 「あぁ…おクハッ、俺の息子が荒木に……利用さ…されててな…… 絶対に…助けに…行かなきゃならねぇんだよ……」 雷が落ちた。 このような表現はよく聞くが、実際に体験する羽目になるとは夢にも思っていなかった。 息子がいる。 つまり、この中年男性は父親なのだ。 自分と同じ父親。 その上、自分の息子が荒木に利用されているらしい。 彼になら、この胸の内を打ち明けられるのでは? 別の父親からの意見が聞きたい。 そんなストレイツォの望みが叶う事は無かった。 上半身から肉片を飛ばして来るサンタナ。 波紋を帯びたストレイツォにとってはその程度問題にならず、一瞬で肉片を塵へと変える。 しかしブンブーンは? 波紋使いではない彼は、当然肉片の餌食となる。 徐々に侵食されてゆく感触を感じとりながらも、限界を更に超えてブンブーンは自らのスタンドを発動させた。 グジャア 二人には何が起こったのか分からなかった。 特に、磁力によって肉片を引き剥がそうとしたブンブーンにとっては予想外すぎる結果である。 引き剥がそうとしたら飛んできた。 この超常現象の答えを説明するために少し前に戻ろう。 上半身と下半身が真っ二つになった状況でサンタナは考える。 人を食って回復しなければ死にかねないと。 しかし、波紋使いであるストレイツォの所為で接近はできない。 それに肉片を飛ばしてもブンブーンの能力で引き離されてしまう。 ならば、その能力を逆手にとればいい。 サンタナの知能がその策を即座に生み出す。 下半身をこっそりと二人の裏へと移動させる。 奴らは会話をしているのか、サンタナの下半身に気が付く様子は無い。 ちゃんと目的地に着いた下半身を確認して、サンタナは自らの体から肉片を飛び散らせる。 肩の下辺りまでを犠牲にしたこの攻撃をストレイツォはあっさりと塵にしてしまった。 が、ここまでは計算内。 問題のブンブーンの方は能力を発動させて―――― 予測通りに引き付け合う上半身と下半身によってプレスされた。 ★ ☆ ★ サンタナはブンブーンの体に入ろうと、右足の切断面を狙う。 止血に使っていた鉄を軽々と引き剥がし、痛がるブンブーンを無視して体内へともぐりこんだ。 「!?」 ストレイツォは完全に出遅れた。 気が付いた次の瞬間にはサンタナに操られたブンブーンの拳を喰らって吹き飛んでいる。 サンタナに食われてゆくブンブーン。 彼の執念が最後に一言残すのを神に許させた。 「なぁ…爺さんよ……息子を………アンドレをた……」 途中で途切れた遺言。 だが、その意思は確かにストレイツォへと届いた。 そしてそれはかつて彼が持っていた黄金の精神を揺り動かす。 (名も知らぬ男性よ!お前の遺言は波紋戦士ストレイツォが確かに受け継いだ!) 自らを波紋戦士と呼んだストレイツォ。 彼の瞳に迷いはもうない。 若き日に持った、吸血鬼から人々を守るという決意。 コイツを倒す、その熱き思いが彼に再び力をもたらす。 接近戦。 人の皮を被ったサンタナには釣り糸からの波紋は通じにくいと判断したストレイツォの唯一取れる手段である。 波紋を帯びたパンチ。 それを普通に手で受け止めるサンタナ。 やはり波紋が中までしっかり通らないらしく、怯んだ様子すら見られない。 だけどもストレイツォは焦らない。 掴まれた手を支点にして――唯一むき出しの部分である右足に波紋を帯びたドロップキックを叩き込む。 「GUUUUUUU!」 効いた。 ブンブーンの顔をしたサンタナが苦痛に悶えている。 追撃として足に蹴りの嵐を食らわせるストレイツォ。 そこでサンタナが取った行動は、波紋に蝕まれた足を切り離す事だった。 足を失って、互いのハンディは無くなる。 いや、サンタナは右足が無いとはいえ十分な戦闘能力はある。 しかしストレイツォは波紋が効きにくい今、常人より上程度の能力しか残ってない。 片足で器用にバランスを取りながら両腕、肋骨と計十本の攻撃をしかけるサンタナ。 まず右手を左手で受け止める。 続いて飛んでくる左手を次は右手で受け止める。 肋骨の内四本は足でガードする。 残りの四本の内三本は胴体で止めた。 だが残りの一本が――――― 肺に突き刺さった! 「がっ、がはっごほっ」 先ほどの喀血よりも酷い流血。 そして、肺へのダメージ。 波紋使いにおいて肺へのダメージは致命的なものである。 ジョセフとの戦いでそれを学んだサンタナは迷い無くストレイツォの肺を狙ったのであった。 バリッ!バリバリバリ 裂けたような音を出して、脱皮したかのようにサンタナがブンブーンの中から出てくる。 抜け殻となったブンブーンの体がシナシナと崩れ落ちる。 弱点となる柱の男の部分をさらけ出した理由。 そう、それはもうストレイツォは波紋を練れまいと見切ったからだ。 一歩、また一歩。 徐々にサンタナが近付いてくるのがストレイツォも理解できている。 (ここで俺も食われるのか?すまない!すまないッ!!) 心の中で名も知らぬ男に心からの謝罪を繰り返す。 だが、最期はやって来ない。 サンタナの警戒心。 ジョセフにしてやられた経験が、彼に慎重さを与えてくれた。 取り込む前に確実に息の根を止めるっ! これが苦い敗北で得た、波紋使いへの対処法であった。 重い蹴りが一発、ストレイツォの胴体へと食い込む。 ギリギリで練り上げた波紋により致命傷は防いだものの、肺が一つ潰れている状態で練った波紋では碌な防御になるはずも無く、木の葉の如く吹き飛ばされていった。 致命傷。 この攻撃で死なないとしても、彼にはもう体力も気力も残っていない。 嬲り殺しにされるのは秒読みかに思えた。 駆け寄ってくるサンタナ。 その姿はほぼ完璧のフォルムを保っていて、美しくも見えた。 そして後五メートル、四メートル―――― 美しいフォルムを維持したまま見事にサンタナは後ろにずっこけた。 同時に宙を舞う黒い粒子。 ストレイツォは理解した。 ブンブーンの砂鉄に足を取られてサンタナが滑ったと言う事を。 ★ ☆ ★ これが偶然の産物であると言う事は分かっている。 だけど、私はこれをあの男からの贈り物だと思いたい。 ――あの最期まで息子の事を思って死んだ男からの。 そう考えると不思議に力が湧いてくる。 それは、残った肺が生み出している波紋の力なのだろうか? いや違う。 私には波紋を練るだけの力は既に残っていなかった…… あの男が教えてくれた力。 大事な何かを守るための力。 それが私に再起を促す力となったのだ。 そうだ、私も命を懸けなくては。 ここで逃げたら自分をエリザベスの父親と誇れなくなるではないか。 よろよろと立ち上がる。 相手も立ち上がったが問題ではない。 深仙脈疾走(デイーパス・オーバードライブ) 呼吸すらままならない私が唯一使える切り札。 当然、これの行使は命懸けとなるがやる価値はある。 ヤツがこっちへ近寄ってくる。 私は自らの生命エネルギーを右腕へと集中させた。 老いぼれの上に死にかけてる体にもここまでの力は宿るのだな…… これを見ると、若さを求めた自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。 いや、無駄な考えは止めよう。 ヤツが目の前に立った。 「究…極ッ!深…仙……脈…疾……走ッッ……!」 私は足に力を入れて右手をヤツに叩きつける。 型もへったくれもない、乱雑な一撃。 それがヤツの肩をブチ抜いて――― ★ ☆ ★ 「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」 傷口から体の肉が蒸発してゆくサンタナ。 それを霞んだ目で見つめるストレイツォ。 悶え苦しもうが、一部の傷口を切り離そうが波紋の勢いが途絶える事は無い。 そして、波紋傷が頭部へと昇り……サンタナは消滅した。 カララァン 金属音を放ちながら持ち主を失くした首輪が落下する。 この戦闘に勝ち残ったストレイツォ。 しかし、彼には足りていなかった。 生きてゆくために必要な力が。 生命を保つ上で必要不可欠なものを使ってサンタナを倒した彼には余力など微塵も無い。 だが彼は歩いてゆく。 もう一人の父親、ブンブーンの元へ。 「子供とは……いいものだな……」 そう言い残してストレイツォはブンブーンの傍らへと倒れこんだ。 ★ ☆ ★ あぁ、私はもう駄目なのだな。 しかし、今では一欠片の後悔も私の心には無い。 今思えば、中々の人生でなかったのではないか? 空を仰げば……エリザベスが迎えに来ている? いや、見間違いだろう。 彼女は強く、そして私の様に道を踏み外すはずもない。 この殺し合いでも生き残って―――― 幸せになってくれエリザベス。これが父親としての最期の願いだ。 ★ ☆ ★ 二人の父親は元の世界で目的のためには殺人すら厭わないような人物であった。 それでも彼らは子供の為に命懸けで戦い、散っていった。 彼らの精神は何処かへ繋がれて行くのだろうか? この会場に残る親達は彼らの様に子供の事を思う者ばかりである。 彼らの意思はきっと何処かに受け継がれてゆく。 【ストレイツォ 死亡】 【サンタナ 死亡】 【ベンジャミン・ブンブーン 死亡】 【残り 72人】 ※戦いはE-6でありました ※二人の死体のすぐ傍にサンタナの首輪があります ※ブンブーンのデイバッグも落ちています。支給品は拡声器、その他不明支給品が0~2個です ※アバッキオの現在地は不明です。 もしかしたら、決着を見たのかもしれないし、全然追いついて無いのかもしれません ※ストレイツォの支給品は拷問セット(5部)でした 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 15 第一章 ストレイツォ ―その穢れたる野望― ストレイツォ 29 未来からの/未来への伝言 サンタナ 36 灰色い(あやしい) 音石明 60 おかしな3人 36 灰色い(あやしい) ミセス・ロビンスン 84 虫と恐竜 36 灰色い(あやしい) ベンジャミン・ブンブーン
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【希望崎学園】STAGE 試合SSその1 Opening 1『俺の勝手』 「ママは私を産んだわけじゃなくて、私を造ったの。人造生命体(ホムンクルス)っていうやつ」 カレンの無感情な声を、グレイタウルは呆然と聞いた。 「……なんだそりゃ」 「ええと、ママの細胞を高速培養して、魔導成形して、圧縮情報呪文を詰め込んで教育を」 「造り方を聞いてるわけじゃねえよバカ!」 怒鳴られてもカレンはきょとんとしている。 それがまたグレイタウルを苛立たせた。 「道理で、母親が空から降ってくるにしちゃ反応が薄いと思ったぜ。何がママだ。娘どころかお前、あのクソ魔女の劣化コピーじゃねえか!」 無謀な相手に挑み大敗した母親の最期の始末を、娘が付ける。 そういう物語なのだと思っていた。 ならば、賭けに負けた以上力を貸すのもやぶさかでは無い。 グレイタウルはそう思っていた。 その前提が崩れたのだ。 「一人でてめえの尻拭いしてるようなモンだろうが。付き合わされる方の身にもなりやがれ」 「おお、お黙りなさい馬鹿狼!」 カレンの帽子に一つ目が開き、甘やかしの悪魔フェリテが激しい声を上げる。 「何という暴言でしょう。何も知らずに勝手なことを!」 「何も知らずに? 当たり前だろうが、黙ってやがったんだからよ! てめえら信用できねえんだよ!」 ランタンに姿を変えている道しるべの悪魔シアランが、不安げにキシキシと軋む音を出す。 同時に、カレンの周囲の風景がぼやけ始めた。 「みんな落ち着いて。もう転送が終わる。話はまた後」 探索者の準備が整おうが整うまいが、迷宮は待ってくれないものだ。 気持ちはバラバラのまま、カレンと、契約する悪魔達は次の戦場へと転移した。 Opening 2『LEGACY』 私立希望崎学園。 東京湾に浮かぶ巨大な人工島に建てられたこの学校は、次第に全国から手の付けられない魔人生徒を呼び集め、生徒会と番長グループに分かれて激しい衝突を繰り返した。 誰が呼んだか、戦闘破壊学園ダンゲロス。 それがこの危険地帯につけられた異名である。 もっとも、今この場に存在する魔人はわずか二人。 何らかの力で無関係な人物を排除しているのか、それともここが本来の希望崎学園を模した別の空間なのか、判断する術は誰にもない。 「がっこうだー!!」 魔人の一人、場違いに明るく健やかな柏木エリの歓声が教室内に響き渡った。 「きりーつ! れい! ちゃくせき!」 「……よく知ってるな」 灰色のトレンチコートを羽織ったスーツの男、島津徹矢は感心する。 任侠の世界にどっぷり浸かった島津にしてみれば、高校の教室などもはや遠い異世界のようなもの。非現実感で頭がくらくらする。 はしゃぐエリの声は一種の救いだ。 「根性おじちゃん、出席をとってください!」 「そんなことまで知ってんのか」 真似事とはいえ、教壇に立って出席を取る自分など想像したこともない。 島津は柄にもなく緊張しながら声を出した。 「あー……柏木」 それはエリの本当の苗字ではない。柏木というのは、あくまでエリが世話になっていた柏木園の園長の姓だ。 他に呼びようもなく、そう呼ぶしかなかった。 「はーい!」 元気な返事が返ってくる。 エリは聡明な子だ。 あるいはこの茶番も、再び戦いに臨む島津の緊張を少しでも和ませようという無意識の産物なのかもしれなかった。 「にょろにょろさーん、次の時間当てられそうだから宿題見せてー」 「どこで覚えてくるんだ、そういうの……というか、宿題は自分でやるもんだ」 ヘビのぬいぐるみを動かし、学生にありがちな言動を真似て遊ぶエリに、島津は目を細めた。 エリがこんな風に普通に学校に通い、友達と笑いあい、まっとうに生きる。 そういう未来を用意してやりたい、とは思っている。 ただ、正直に言えば不安は尽きない。 願いを叶えて再び生を得たとしても、その先はどうするか。 ヤクザ以外の稼業などやっていける気もしないが、今さら元の組には戻れまい。 他の組でも受け入れてもらえるかどうか。 島津が信じるもの――すなわち仁義は、世間から失われていく一方に思える。 もはや義理と人情を重んじる任侠など絶滅危惧種なのだ。 「あいきゃんすぴーく、いんぐりっしゅー」 「きゅきゅきゅー」 にょろにょろさんと戯れるエリの声に、島津は我に返る。 とにかく今は目の前の一戦を乗り越える事だ。 それなくしては全てが皮算用にすぎない。 (……しかし、学校とはな) 本来魔人ひしめく希望崎学園とはいえ、学校と言う場が戦場に選ばれたことが島津に一つの懸念を与えている。 武田信玄は稀有な存在だった。 根本的に、生き物としての格が違った。 そんな印象を受けたからこそ、子供の外観を持っていても全力で戦えた。 だが、もしも次の相手が、願いを叶えるために勇気を振り絞って、必死に挑みかかってくる子供だったりしたら――それを叩き伏せられるだろうか。 (子供と戦わせるのは勘弁してくれ) 島津は願う。願うとは、誰に? 苦笑せずにはいられなかった。 神にしろ悪魔にしろ、こんな時ばかり都合よく発せられた願いに応える義理はないだろう。 「エリ。そろそろ行こうや」 「はぁーい」 教室を出て、その扉を注意深く後ろ手に閉めたところで島津は気が付いた。 エリもまた、遠く渡り廊下の先に人影を見出し、にょろにょろさんを強く握りしめている。 (……やってくれるぜ) 思わず神の采配に文句の一つも言いたくなる。 あろうことか、現れた対戦相手はエリと同じ金髪の、少女だったのだから。 かくして、私立希望崎学園、本校舎三階――東西渡り廊下。 二人の魔人と、魔人に与する者達は邂逅した。 Round 1『SUKIKATTE』 屋内では、採石場での戦いのように上空からの奇襲は難しい。 カレンはシアランの炎を頼りに注意深く索敵を行っていたが、運悪く渡り廊下の先に居る相手に見つかってしまった形だった。 「アア? なんで向こうは二人居やがる」 「幻覚かも。もしくは、どっちかは能力で作ってるのかもしれない」 「ケッ。俺だって一人で戦えるならそうすんのによォ」 カレンの分析にも聞く耳持たず、グレイタウルは不満げな声を上げる。 一歩、また一歩と、会敵した両者は歩いて近づいた。 それは互いに遠距離からの攻撃手段を持っていないことを示している。 お互いの声が十分に届く間合いまで接近すると、先手を取ってエリが叫んだ。 「こんにちは!! 柏木エリ!! です!!」 エリは聡明な子だ。 得体の知れない相手であっても臆さずに挨拶ができる。 むしろ、絵本で見るような魔女の格好をした女の子を相手に、普段よりちょっとテンションが上がっていた。 「カレンです」 カレンがぺこりと頭を下げると、かぶっている三角帽子がふわりと揺れる。 テンションの上がりきったエリは、勢い余ってそのまま島津を紹介した。 「こっちは根性おじちゃんです!」 「根性おじちゃん……」 「し、島津だ!」 島津は慌てて名乗った。戦う相手に延々と『根性おじちゃん』と認識され続けるのはキツい。 それは島津のキャラではない。 なんとなく紹介の量にアンバランスさを感じたのか、カレンは手に持った箒を紹介した。 「こっちの箒は、皆殺しの悪魔グレイタウルさん」 「や……やめろ! この姿で俺の名を広めんな!」 言い争う箒と持ち主の声を聴き、島津は察した。 (悪魔ってのはよく分からんが……なるほど、向こうも一人じゃねえわけか。なら、やりようはあるな) 島津はエリを庇うように一歩前に進み出る。 「エリ!」 「ヘイ!」 エリは聡明な子だ。 一声かけられただけで、島津がこの場面で何を要求しているか察したのである。 にょろにょろさんの口に手を突っ込み、わさわさと胴体をまさぐって取り出したものを手渡す。 島津の愛刀、白鞘に収められた長ドスだ。 そしてエリは、島津だけを戦わせはしない。 一緒に頑張ると約束したのだ。故に、エリは叫ぶ。 「学校の廊下、すごいつるつるですごいね!」 エリの魔人能力『花まる金メダル』は、声援を送った対象がちょっと背伸びする(がんばる)ことができる。 学校の廊下はワックスが塗られ滑りやすい……そんな床が、ちょっと背伸びする(がんばる)とどうなるか。 それはもう、ハチャメチャに滑る。下手に動けば転倒間違いなしである。 「うっ……!」 床のつるつる具合に気が付いたカレンは箒を下に着き、内股になってプルプル震えていた。 まるでゲートボール大会終盤に体力を使い果たした老人のような姿勢! 箒に乗って空を飛べば良い、と思うかもしれない。 甘い! そんな一瞬の気の緩みすら許されないほど逼迫した状況なのだ! 対戦相手にとってはまさに千載一遇の好機。 島津は何をしているのか!? 「くっ……くうっ!」 島津もまた、ガニ股の状態で一歩も動けずにいた! 額にはじっとりと汗がにじんでいる。 すごいつるつるの床は誰に対しても平等に牙を剥くのだ! 「エリ! ちょっと、ちょっとアレだ、いったん止めよう! 床をつるつるにすると話が進まねえ!」 「がってん!」 エリは聡明な子だ。 聡明な子だけど、まあ、こういう事もあるよね。 床のつるつるが解除され、カレンと島津は足の屈伸運動に勤しんだ。 島津は思わずうめいた。 絶妙にしまらない、ゆるい空気が流れている。 直ちにこの場をシリアスな空間に引き戻さねばならない。それが島津の役割だ。 島津は長ドスを腰だめに構え、突進した。 狙いはあくまでカレンの武器。武器を破壊して、降参を促す。 それならば子供相手でも何とかやれる。 しかし、長ドスの刃は箒とかち合い、甲高い音を立てた。 「なるほど。喋る箒は、やっぱりただの箒じゃあねえわけだ」 島津は膂力に任せて刃を押し込もうとするが、カレンは箒に捻りを加えてその勢いを流す。 上体の崩れた島津を箒の穂が薙ぐが、これは空を切った。 そのまま刃と牙のぶつかり合う音が二度、三度と響く。 「おじちゃん、負けないでー! ボディボディ! オフサイド!」 エリが跳ねるたびに、にょろにょろさんがビタンビタンと床に叩きつけられる。 多分ルールが分かっていない……! しかしそれでも、エリがほぼ無意識に発している『花まる金メダル』の力は、島津の動きを加速する。 応援してくれる限り、島津はちょっと背伸びできる。 全力からちょっと背伸びできるということは、常に限界を超えられるということなのだ。 その証拠に、カレンは受けに回る回数が増え、次第に押され始めた。 「ああ、クソッ! おいガキ! もっと速く振りやがれ!」 「これが限界。グレイタウルさん、勝手に動かないで」 「テメェの動きがすっトロいからだ!」 先の戦いで得たはずの経験値はどこへやら、カレンとグレイタウルは息の合わないちぐはぐな動きを繰り返していた。 当然、それは致命的な隙を生む。 「おらあ!」 受け止められた長ドスに力を込めながら、島津はあえて素拳で箒を打った。 拳の肉が抉れ、白骨が露出する。 だが、しかし。 「がはッ!?」 折れた牙がバラバラと床に落ちた。ダメージが大きいのはグレイタウルの方だ。 根性をキメた侠気の拳は、鋭利な凶器に勝る。 「ク……ソ、が! 腐ってやがる。こいつ、屍人(ゾンビ)かよ!」 「おじちゃんは腐ってないよ! 新鮮ですよー!」 グレイタウルが毒づくのを聞き逃さずに、エリが猛抗議する。 「ああ、そうだな。まあ、魂までは腐っちゃいねえつもりだ」 「うるせえ、クソッ! おいガキ! 何か策を出しやがれ!」 叱責を受けたその瞬間、カレンは渡り廊下の窓ガラスを破って外へと飛び出していた。 「――は?」 箒にまたがり、手短な詠唱と共に魔女は飛行を開始する。 対戦相手に背を向けて。 「おい、おいお前! 何やってんだ! 逃げんのかよォ!?」 グレイタウルの怒号が遠ざかっていくのを見送り、島津はエリと顔を見合わせる。 「おトイレかな?」 「それは無いと思うが……とにかく、追うぞ」 緊張した状態が長引けば、エリが消耗する。 島津としては短期決戦を望んでいるのだ。 「あ、待っておじちゃん」 エリがにょろにょろさんの中に手を突っ込んで、うんせ、うんせと何やら取り出した。 ゆるいネコのイラストが描かれた絆創膏である。 「ばい菌が入ったら大変!」 「……」 島津の眉が八の字になるが、エリには敵わない。 観念して、任侠に生きる男はネコと肉球マークが描かれた絆創膏を拳に貼り付けた。 ファンシー! Round 2『ONCE AGAIN』 本校舎の渡り廊下から遠く離れ、カレンは半ば箒から振り落とされるようにして地面に降りた。 SSダンジョンでの戦いは戦闘領域を離脱すれば敗北扱いとなるが、希望崎学園の校舎は本校舎、旧校舎、芸術校舎と、いくつにも分かれている。 その全てが戦場の内だ。敷地は広大である。 「どういうつもりだテメエ! 」 怒りに満ちたグレイタウルの声を受けて、カレンはぽつりと呟いた。 「あの子の願いがわかった」 「ハ?」 「エリちゃんは、あのゾンビの……島津さんを、生き返らせたいんだと思う」 確かに、そうだったとしてもおかしくはない。 だが、それが何だというのか。 「ああ。そうかもな。だから何だよ?」 グレイタウルは思ったままを口にした。 「私が勝ったら、エリちゃんの願いは叶わない」 「だ・か・ら! 今更何言ってんだよテメェはァ!?」 ダンジョンで願いを叶えるためには、約四戦を勝ち抜く必要がある。 カレンが負かした相手は願いを叶える権利を失う。 そんな事は当然承知のはずだ。 一戦を終え、二戦目に挑んでいる今になって言い始めるのは不可解だった。 依然としてカレンに表情はなく、言い知れない違和感が募る。 (何なんだよ、こいつは。何を考えてんだ?) 思わず黙り込んだグレイタウルの前で、カレンの帽子に一つ眼が浮かぶ。 「おお、おお……可哀そうなカレン」 敵にその存在を伏せておくため、フェリテはなるべく口を開かない。 それでも、この場は自分が出て語るべきだと判断したのだろう。 「もう誰も、死なないと思っていたのでしょう。運命とは何と意地の悪いもの」 「何?」 「このダンジョンなら――大丈夫だと思った。協力してくれる悪魔も、道具として持ち込めば元に戻る。負けた人も生き返る。だから、誰も死なないと思ったのに」 (何だ、これは? 俺は、何を間違えてる?) 何かが違っている。 語られている内容と、グレイタウルがカレンに抱いている印象がかみ合わない。 「お前……」 ようやく、グレイタウルは飲み込めた。 カレンの行動原理はシンプルだった。 「誰にも任せねえで、自分でやることに拘ってんのは……誰も犠牲にしないように、だったのか?」 「それでも、ママを遠隔視した人は、呪い殺されちゃった。私が見てって頼んだから。私は失敗した」 グレイタウルはようやく違和感の正体を悟った。 人造生命体であるカレンに、おそらく『悲しむ』という挙動が教育(インストール)されていない。 本来ならば成長と共に身に着くはずの、その動作、表情が欠落しているのだ。 そう見えないからわからないだけだった。 カレンはずっと悲しんでいたのだ。 母の運命が決まった時。自分と関わった者が死んだ時。 普通の少女が悲しむように、胸を痛めていたのだ。 怒髪天を突く勢いで箒の穂先が逆立ち、バリバリと音を立てて裂けた。 「あの、クソ魔女が……中途半端なモン、造りやがって……!」 理由のはっきりしない怒りがこみ上げ、グレイタウルの中に渦巻いていた。 「バカがよ! 何で最初からそれを言わねえんだよ!?」 「おやめなさい、馬鹿狼。最初から正直にすべてを話したら、あなたはカレンのことを信じたのですか? そうではないでしょう!」 そう言われると返す言葉がない。 最初からカレンが大魔女ヴェナリスのコピーだと知っていれば、何を企んでいるのかと警戒するばかりだっただろう。 現に、この戦いが始まった時のグレイタウルはカレンの事が全く信じられなくなっていた。 敵前逃亡するほど追い詰められている姿を目にして、カレンの言葉にようやく信憑性が湧いているのだ。 「クソ……結局、どうすんだ。諦めんのか」 「……諦めない。五秒待って」 カレンは深呼吸をした。 原門りんごの願いを断ったことについても、命を奪わなかったから許されるわけではない。 ならば同じように、柏木エリの願いをも断たなければならない。 それが結果として、島津の命を取り戻す道を断つことであっても。 たとえば、島津を宇宙最強のヤクザとして生き返らせる、というような願いにしてもらって、勝ちを譲ってもいいだろうか。 確実に四戦を勝ち抜いてくれる保証がない。 それに、彼らのその後の生活まで、全てを変える決断をさせなくてはならない。 九つの薬草の魔法で、島津の命を救えるだろうか? 無理だろう。万能の薬も、失われた命までは取り戻せない。 この先、DANGEROUS――命の保証なし。 カレンは罪を背負う覚悟をキメた。 「シアランに、探してほしいものがある」 ランタンはカタカタ鳴って了解の意を示した。 「フェリテは、私の指示した時以外に能力を使わないで。私がどんな傷を負っても」 「おお、おお、カレン……誓いましょうとも」 帽子に開いた一つ眼が、一度大きく瞬きした。 「それから、グレイタウルさん」 「……オウ」 三つ編みの先端を握りしめ、小さな魔女は狼に一つ頼みごとをする。 「保険を作っておきたいから、ちょっと爪を貸してくれる?」 エリと島津は敷地内を走り回り、芸術校舎の屋上にようやくカレンの姿を発見した。 非常用階段を伝って屋上まで上がり、エリを引っ張り上げて、島津は息を呑んだ。 先ほどまでとはカレンの顔つきが違う。 理由は不明だが、少女の顔が戦士の顔へと変貌している。 戦意を喪失し逃亡したのならば、降参を促して終わらせるつもりだった。 それは甘い考えだった。 「こいつは、さっきよりよっぽど根性キメなきゃならねえな……」 「根性おじちゃんは、いっつも根性ですね!」 「俺はそれしか知らねえ。だが、結局いつだって根性は必要になるもんだ」 カレンは箒を構え、島津は長ドスを構える。 再び斬り合いが始まった。 (やっぱりな。さっきとは何もかも違う) カレンの打ち込みが重く、鋭くなっている。 意思を持って動く武器との連携も段違いだ。 気を抜けば一瞬で殺られる。 島津が再び拳を箒に打ち込もうとした、その時だった。 カレンは、自分の身体をあえて島津の攻撃の軌道上へ投げ出した。 必殺の拳がカレンの頭蓋を叩き割り、予想外の動作と感触に島津は動きを止めた。 カレンが悪魔フェリテによって三度まで攻撃を無効化できる事など、一回のヤクザである島津が知る由もない。 故に、それは絶好の好機。 「残り二回です。今!」 「言われるまでもねえ!」 綺麗に振りぬかれた箒の一閃は、正中線に沿って島津の肉体を縦に両断した。 「うわー! おじちゃーん! おじちゃんがー!」 島津へ駆け寄るエリの姿を、グレイタウルとフェリテは陰鬱な目で見た。 その表情が絶望に歪むのを予感したからだ。 カレンもまた、表情を変えないままに罪の痛みに耐える覚悟をした。 用意した仕込みは使わずじまいとなったが、これで決着だ。 と、思ったら甘いぞ! エリは聡明な子だ。 だから、自分が為すべき事を本能で知る。 二つに分かれてしまった島津の身体を、どうすべきかを知る! 「おじちゃんが、へ~ん! しん! とぉおー!」 島津の胴ににょろにょろさんが巻き付き、零れ落ちかけた内臓ごとキュッと締め上げた! 「おおおおおお……ッ!?」 島津は胸を張り、ちょっと背伸びして(がんばって)吼えた。 祝え! 花まる金メダルが結びつけ、深く根性がキマッた新たな魔人。 にょろ島津、生誕の瞬間である! 「時はきた! みゅーじっく、すたーと!」 エリは吹き口を咥え、鍵盤ハーモニカを吹き鳴らす! ロックンロールの始まりだ! 「きゅきゅー!」「行くぜ……!」 にょろ島津は掛け声とともに地を蹴り、一瞬でカレンへと肉薄した! 「ウ、ウワー!? 何だこいつら! 来んなァアアア!」 さすがのグレイタウルも怯んでいる。 カレンは無表情だが、これはヘビのぬいぐるみと真っ二つにしたゾンビが合体した時の表情が教育(インストール)されていないからだ。 それは当たり前じゃないか……? そんな表情がインストールされてる奴、この世に居るか? そして次々と繰り出されるにょろ島津のパンチ! キック! ジャンプ&ターン! 「ぐ、ぐああ! なんだコイツらァ!」 「さっきまでと、動きが……違う……!」 重傷を負ったにも関わらず、島津のパワーとスピードは明らかに先ほどより跳ね上がっている。 何故なのか!? その理由は第一に、縦に二分割されたことで島津の右脳と左脳が独立し、完全なる並列動作が可能となっているためである。 つまり今の島津は情報の処理能力が通常の二倍! そうはならんやろ――と思うかもしれない。 だが、あなたは経験したことがあるのだろうか? ゾンビヤクザになった上で頭を半分に割られた経験がおありなのか? 無いのならば、目の前の現実を否定するのはやめていただこう! 第二に、エリが吹き鳴らしている鍵盤ハーモニカだ。 トランス状態となったエリの演奏テクニックは神業の領域。 指さばきはあまりに高速であり、かえってスロー(Slowhand)に見えるほどだ。 吹き鳴らされるのは熱い情熱と激励のメロディー。 島津の全身に高効率のバフを叩きこむ! なお、エリが演奏している曲『にょろにょろさんっていいな』には歌詞が存在する。 しかし、口で吹く鍵盤ハーモニカを演奏中のエリは歌う事ができない。 ならば誰が歌うのか……? 無論、画面の前のあなた達だ! 『♪にょろにょろさんっていいな』 さくし・うた 柏木エリ いいな いいな にょろにょろさん にょろにょろさんってい・い・な いいな いいな にょろにょろさん にょろにょろさんってい・い・な 体長くてにょろにょろ とても長くてにょろにょろ かわいいね すてきだね 意外にソフトなてざわり 夢 希望 三おく円 何でも入るよ その体 神のみわざか あくまのしわざか それとも~ N・Y・ORO N・Y・ORO 何がいいのか聞かれると こんな感じに落ち着くけれど いいな いいな にょろにょろさん にょろにょろさんってい・い・な あんまり長くほめ続けると トーンダウンはまぬがれないよ いいな いいな にょろにょろさん にょろにょろさんってい・い・な にょろにょろさんってい・い・な 「ロック・ユー!」 みんなが歌う専用BGMをバックに襲い掛かってくるやつに勝てるわけないだろ! 島津(右)の拳が唸りを上げて振り下ろされる。 グレイタウルは咄嗟にしなり、それを弾いた。 間髪入れず島津(左)の拳が地面すれすれから飛び上がるように襲い掛かる。 グレイタウルは無理やり身体を捻り、それを捕らえた。 「ぐっ、ううッ!」 さらに島津(右・左)の拳がまとめて叩き込まれ、ついにグレイタウルはへし折れた。 「がああッ!」 「グレイタウルさん……!」 グレイタウルは無残にも穂と柄に分かたれ、地に転がる。 柄にひっかけていたランタンのシアランもまた、地に落ちてがしゃりと音を立てた。 契約の効果で道具に変わっているため、グレイタウルが即座に死ぬことはない。 しかし、体を真っ二つに引き裂かれる痛みまで消えてくれるわけではない。 (痛ッてえええええ! 嘘だろ!? あのゾンビはこんな痛みに耐えてんのか? それともゾンビに痛みはねえのか? があああああ! 痛てェ! 痛てェー!) みるみるうちに、グレイタウルの胸の内に灯った戦意が消えていく。 あれほど猛り狂っていた炎が消えていく。 皆殺しの悪魔に、”死不(しなず)の島津”ほどの根性はキマっていない。 得物を失ったカレンは後ずさり、すぐに屋上のへりを背にして立ち止まった。 もはや逃げ道はない。 残り二度の無敵など、島津がその気になれば瞬きの間に使い果たすだろう。 「降参は、してくれねえんだろうな」 長ドスを手にした島津がゆらりと動き、構える。 エリが半狂乱で演奏に熱中しているのは幸いだった。 島津はエリのために戦っているが、丸腰の少女を切り刻む姿など見せたくはない。 (クソ痛ェ……何で俺がこんな目に遭わなきゃなんねえんだ。ガキのお守りなんざ、ガラじゃねえんだ……) 朦朧とした意識の中で、グレイタウルは自分に視線が向けられていることに気が付いた。 絶体絶命の窮地にあって、カレンはただグレイタウルを見ていた。 もはや作戦は瓦解している。それでも何かを信じ待っている、深いグリーンの瞳。 (あのガキ……!) 態度がどうであれ、過程がどうであれ、今の自分はカレンが縋りついた希望の糸だ。 グレイタウルに”死不の島津”ほどの根性はない。 ただ、自負と、意地と、怒りはあった。 (俺を、誰だと思ってやがる。皆殺しの悪魔グレイタウルだ。ナメるんじゃねえ。このまま終わってたまるか!) 「グアオォオオオオオオオッ!!!」 グレイタウルは雄たけびを上げた。 空気がびりびりと震え、ほんの一瞬、柏木エリの演奏をもかき消した。 にょろ島津も一瞬注意を奪われた。 その一瞬で充分! 「風渡り、秘儀の枝、エーテルを掴め!」 詠唱と共に、カレンは地を這うように低く飛ぶ。 にょろ島津の脇を通り抜け、二つに折れたグレイタウルの穂の部分、そして床に落ちたシアランを手に取った。 箒を持っていないカレンがどのようにして飛行を可能にしたのか? 種は、カレンのブーツの中にあった。 先刻切り落とした三つ編みの先端をボールペンに結わえて作った、小さな箒である。 箒が有れば魔女は空を飛べる。それが急ごしらえの、即席の箒であっても。 仮にグレイタウルを手放す羽目になっても機動力を失わないための、保険だった。 髪を切って使うアイディアは、先の戦いにヒントを得たものだ。 グレイタウルを右手に、シアランを左手に、カレンは高く空へと舞い上がった。 青空に小さく浮かぶ黒衣の魔女を見上げ、島津は自問する。 上空からの攻撃。エリを守りながら撃ち落とせるか。 島津(右)はエリを守り、島津(左)は魔女を落とす。 それでいい。相打ちになれば島津は引き裂かれるだろうが、そうなれば残ったエリの勝ちだ。 (違う。待て。そうじゃねえ) 一度カレンを確かにとらえたはずの拳は、何のダメージも与えられなかった。 あの時、帽子から聞こえた「あと二回です」という言葉。 あれが能力の回数制限を意味しているのならば、相打ちになどならない。 こちらの攻撃はあと二回無効化されるのだ。 「……エリ。頑張れ、って言ってくれるか」 「うん!」 エリは聡明な子だ。 島津がこんなことを頼むのがどういう意図なのか、理解している。 エリは島津にしがみつき、両手で頬を掴んで叫んだ。 「頑張れ。頑張れおじちゃん! いっぱい大丈夫だよ! 絶対負けないよ!」 ネコの絵が描かれた拳の絆創膏に触れ、島津はイメージする。 この身が鉄の壁であれと、鋼の城であれと願う。 あらゆる災厄からエリを守れる存在であれと、深く、深く心に刻み込む。 真上から落下してくるカレンを前に、ビキビキと音を立てて島津の肉体が硬化する。 『花まる金メダル』の効果は、対象の想いの強さに比例する。 島津がエリを守ろうとする思いは何より強い。 果たしてそれは、魔女と悪魔の力に勝るのか。 カレンは激突した。 その攻撃は最初からエリも島津も狙っていなかった。 目指していた落下地点(・・・・)は、床。 箒を振るいながら砲弾と化したカレンが激突することで、屋上の床が割れた。 「残り一回です……カレン!」 フェリテのアナウンスと共に、全員がそのまま校舎の中へと落下する。 島津が鼻をつく異臭の正体を察した時には、既に手遅れだった。 (ガス……!?) エリ達と再会する前にカレンがシアランを使って探したのは、家庭科室の位置。 ガスの元栓は全て開き、部屋の中に可燃性の気体を充満させている。 そして今、カレンが飛び込んだことにより――ランタンの炎が引火する。 カレンの表情に余裕はなかった。 仕掛けが成功したなどという高揚はなかった。 ガス爆発の衝撃は二度発生する。 まず、爆風によって生じる強大な空気圧が人体を容易に破壊する。 そして、爆心地に発生した真空状態に空気が戻ろうとすることで起こる爆風もまた、同程度の衝撃をもたらす。 フェリテの力を使うことで、カレンは一度目の衝撃を無効化できる。 しかし、二度目の衝撃は無効化できない。 故に命の保証はない。これは一種の賭けであった。 「ごめんね。みんな」 カレンは改めて、こんな無茶へ巻き込んでしまう仲間たちに詫びた。 音と、熱と、光が弾けた。 Round 3『I REP』 「おい! 目ぇ開けろ! 聞こえるか! おい! しっかりしろ! カレン!」 初めてグレイタウルに名前を呼ばれた。 鼓膜が片方破れているのか、その声が妙に遠く、聞こえにくい。 視界も半分赤黒く染まっていた。 何より、呼吸一つ、指先一つ動かすだけで、信じられないほどの痛みが全身を貫く。 一瞬でも気を抜けばそのまま意識が闇に飲まれそうだ。 ぐらぐらと揺れながらカレンは身を起こす。激痛に耐えて立ち上がる。 吐き気がするのは何か所か骨が折れているのだろう。 それでも、自分を呼ぶ声に向かってのろのろと歩み始める。 その眼前に、人影が立ちはだかった。 カレンはそこに信じられないものを見た。 島津の頭は半分欠け、右肩、脇腹、右足も半ば吹き飛んでいる。 あちこち焼け焦げ、ヘビのぬいぐるみも、トレンチコートもスーツもずたぼろになっている。 だというのに。 島津は、エリを庇うように抱きしめたまま立っていた。 エリにはかすり傷一つついていなかった。 目を閉じて、ただ静かに意識を失っている。 まるで島津が、エリの分まですべての痛みを一人で引き受けたようだった。 あり得ないこと。不可能なこと。 島津は己の信念によってそれを実現したのだ。 再び前に歩き始めたカレンの足に、床に転がった長ドスが触れた。 カレンはそれを拾い上げる。 島津はエリを床に横たえ、骨がむき出しになった足で歩み、グレイタウルを拾い上げる。 「何だてめえ! 触んなボケ!」 グレイタウルは喚き声をあげて島津の手に噛みつこうとしたが、牙が届かない。 得物が入れ替わったまま両者は歩み寄った。 そうして互いに斬りかかれる距離に達した時、カレンは長ドスの柄を島津に向けて差し出していた。 おそらく、そのまま斬りかかった方がカレンは有利だっただろう。 グレイタウルの爪は本人の意思に応じて出し入れできる。島津が振るっても、ただの箒にしかならないのだ。 それでも、こうするべきだとカレンは感じていた。 目の前の男から、命以外のものを奪うことはしたくなかった。 島津の口角がわずかに上がった。 島津は無言で差し出された長ドスを受け取り、カレンもまた、無言で島津から差し出された箒の穂を受け取る。 一瞬の間をおいて、何の合図もなく、二人は同時に斬りかかった。 カレンの胸、島津の頭部、両方から血飛沫が上がる。 島津の斬撃の方がわずかに深い。 斬られながらも懐に入ったカレンは、手にした箒に振り回されるように回転していた。 二、三、四、五。続けざまの斬撃が島津を切り刻む。 島津の肉体は、たとえばらばらの肉片になろうとも生前と同じように動く。 いくら斬られようとも問題ない。 だが、初撃によって両目を失っていた。 剣を振るうべき相手がどこに居るのかつかめない。 長ドスが再び地に落ち、胴、腰、足が地に落ちた。 荒い息を吐くカレンの体からは血液とともに力が抜け、全細胞がこれ以上の稼働を放棄したがっている。 (まだ、終わってない) この迷宮におけるカレンの対戦相手は、あくまで島津徹矢ではなく柏木エリだ。 エリは意識を失っているが、戦闘不能とは見なされていないらしい。 目を覚ましたところで降参などするはずもない。 戦闘領域から追いやるのも、今のカレンには不可能だ。 故に、殺さなければならない。 近づくと、エリは安らかに、眠るように呼吸をしている。 カレンの背後からは島津が必死に床を這う音が複数聞こえていた。 体をバラバラに引き裂かれてなお、島津はエリを守ろうとしている。 カレンは震えていた。 島津の執念に震えていた。 こうまでして守られているものを――かけがえのない尊いものを、今から自分が手にかけなくてはならないという事実に震えていた。 「……悪魔の仕業だ」 グレイタウルはぽつりと呟く。 「お前じゃねえ。これからやることは、お前が下僕にした、悪魔の仕業だ」 「ううん」 その甘言をカレンは拒んだ。 カレンの傷は深く、意識もおそらくあと数秒ともたない。決断の時だ。 「私がやることは、私の罪だよ」 人も、悪魔も、それ以外も、何も変わらない。 夢を果たすために迷宮を訪れ、大切なもののために命を賭ける。 けれど、勝ち残るのは一方だけだ。それは残酷な絶対のルール。 だから。 (私は今、あなたを殺す。――でも、その先の未来は守ってみせる) カレンは手にした箒の穂を振るい、エリの身体を切り裂いた。 何の痛みも苦しみも感じることのないように、一瞬で終わらせた。 瓦礫が散乱する床に、ぽつりと赤い雫が落ちる。 それはカレンの潰れた右目から滴った血の雫だった。 【STAGE:希望崎学園】 勝者……冬知らずの魔女、カレン Ending 1『GO ON』 「……負けちまったか」 目を覚ました島津は、自分が洞窟の内部ではなく入り口に戻されている事に気が付いていた。 すぐ傍にはエリが居て、にょろにょろさんをぎゅっと握っていて。 島津が戦いで負った傷は何一つ残っていない。 ズタボロになったはずの衣服まで元に戻っている。 しかし同時に、自分の身体に生命が無いということも島津は実感した。 願いを叶えることができなかった以上、それも今まで通りだ。 「すまねえな。エリ」 そう言い終わるか終わらないかのうちに、エリは島津に飛びついて胸に顔を埋め、肩を震わせ始めた。 「……泣くなよ」 これが一番応える。 体を真っ二つにされようが、切り刻まれようが、島津は平気だ。 そんなものは所詮知覚だ。根性で耐えられる。 だが、自分のものでない痛みはそうはいかない。 エリの痛みは殊更に耐えがたい。 「だって、言ったのに。おじちゃん、また約束忘れちゃうんだもん……」 俯いてそう言うエリの声に、島津は胸が締め付けられるような気持になる。 『もう、一人で動かなくなっちゃだめだよ』 『私の為に動かなくなるのは、やめてください』 エリは言った。 島津はその言葉を聞き、約束をしながら、本当は聞く気などなかった。 (馬鹿だな。俺は) エリは聡明な子だ。 島津の約束が口先ばかりのものだと知っていて、何度もそれを破らせて、平気なはずもない。 (約束ってのは、守らなきゃならねえもんだよな) それは、宿題を自分でやらなければならないのと同じくらい当然のことだ。 今更になってそんなことを学び直した。 エリから教えられることはたくさんある。 もしかしたら、島津がエリに教えてやれることと同じか、それ以上に。 島津は、自分が戦った魔女の事を思った。 あの時、長ドスを返したカレンという少女の中に、島津は仁義を感じた。 失われていくばかりだと思っていたそれは、広く世界に目を向けてみれば意外にあちこちに転がっているのかもしれない。 エリが生きていく世界がそういう世界であるならば、島津は嬉しい。 「……行くか」 「どこに?」 トレンチコートの襟を立て、島津は薄く微笑む。 この身体がいつまでもつのかは知らない。 永遠にエリを守り続けることはできないだろう、と思う。 そもそも大人は子供より先に死ぬものだ。 だが、まだ終わりじゃない。 「根性キメて、次の手を探しにだよ」 エリは涙をぬぐった。 にょろにょろさんを高々と掲げ、元気よく返事をした。 「行くー!」 「きゅっきゅっきゅー」 柏木エリと、にょろにょろさんと、死不の島津は立ち上がる。 敗北は、所詮強靭な意思に勝てない。 たとえ折れても根性キメて、何度だって立ち上がればいい。 花まるの未来を掴むために、二人と一匹の戦いは続くのだ。 Ending 2『YELL』 戦いを終えたカレンは、押し黙ったまま次のフロアへの転送を待っていた。 「おい、カレン。次で三戦目だ。やる気なくしてんじゃねえぞ」 洞窟の中ではどの程度時間が経っているのかわからない。 空間的に様々な場所と接続されているこのダンジョンと外では、時間の流れさえ異なっていてもおかしくはない。 だが、少なくともまだ世界は滅んでいない。 だからまだ終わりではない。 「大丈夫だよ。ありがとう、グレイタウルさん」 「待てコラ。何がありがとうなんだ」 礼を言われたグレイタウルが居心地悪そうに聞き返すと、カレンは目をぱちくりさせて首を傾げた。 「だって今の、心配して言ってくれたんでしょ?」 「ハッ! お前はどうしても俺をお人よしにしたいんだな! 『皆殺しの悪魔』を信じて、どんな結果になっても知らねえぞ!」 カレンはもう一度首を傾げ、口を開く。 「でもグレイタウルさんの『皆殺しの悪魔』っていう二つ名は、ただの自称だって、ママが……」 「あっのクソ魔女が……余計な情報ばっか教育しやがって……!」 身もだえするグレイタウルを見て、カレンはくすりと笑う。 「クソ、もうその話はいい。そうだ、お前結局歳いくつなんだよ!」 無理やり話題を変えようとすると、カレンが指を四本立てたのでグレイタウルはぎょっとした。 「ま……まさかお前、四歳……!?」 「ううん」 冬知らずの魔女カレンは、なんでもない事のように涼しい顔で答えた。 「四ヶ月だよ」 【大魔女ヴェナリス 地球到着まであと三日】 このページのトップに戻る|トップページに戻る
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Let s_sing_a_song ◆YOtBuxuP4U 十、二十、三十。 一斉に降ってくるそれらは、流星群か、はたまた散弾銃か。 答えを確かめる暇は無い。地面にいる二人は後ろに飛んで、その攻撃を回避する。 砂地に落ちたそれらはどどど、と鈍い音を立てて地面にめり込み。 あるいは林立するクルミの木にぶつかって、ばこんと大小の枝を折る。 衝撃で巻き上がる砂が晴れれば、あちこちに出来たクレーターの中心にはそれの正体が見えてくる。 何の変哲もない、ごくありふれた普通のクルミ。 しかしこれは知る人が見れば、沢山の人々を無差別に殺してきた正真正銘の凶器なのだ。 ほんの些細な誤解から始まった不毛な戦いは、いまだに続いている。 クルミが渦巻く世界の中、地面の二人を見下ろすように竜と竜に乗った男は空に居た。 飛ばしたクルミを避けられて、竜の背中に乗る男はまた眉間の皺の数を増やす。 緑の体を揺らして空を泳ぐ竜は、それを見かねて男に言葉をかける。 「……かがみさん、かっがーみさん」 「なに? 竜」 「大丈夫アルか? さっきから吐く息が妙に荒いアル。 もしかして、疲れてるんじゃないアルか。この固有結界、確かに凄い魔法アルけど…… それだけに、かがみさんに負担がかかっているように見えるアル。もうずっと発動してるアルし」 「疲れてなんかないわよ。これは――興奮よ、興奮してるの。 ふふ。だってあの二人、どちらもとっても可愛いんだもの。お人形みたいでさ。 あっちの金髪の娘はいい声で鳴いてくれそうだし、紫っぽい娘の方はいい表情をしてくれそう。 絶対に○してやるわ……」 大きく深呼吸をして、柊かがみ(6/)は怒鳴るように叫ぶ。 「だからあんた達! いい加減に抵抗を諦めて、さっさとその尻(ケツ)差し出しなさいよ!」 「お断りです」 「お断りだよ!」 答えたのは、飛んできたクルミをやり過ごし、いまだ地面を踏みしめる二人の戦士。 正義のプリキュア、キュアフルムーンとキュアヴィントブルームである。 二人は拳を突き上げながら、上空のかがみと竜に言葉を返す。 「僕たちに言うことを聞かせたいのなら――」 「あなたたちこそ、こっちの言い分を呑むべきよ! いい加減、降りてきて戦いなさい!」 「……あんた達ほんとバカね! そんなの呑むはずがないでしょーが。 降りて来い降りて来いってね、肉弾戦相手に距離を取るのなんてあったりまえよ!」 「そうアル。勝負ごとは自分が有利になるように進めるのが定石アルヨ。 正々堂々真正面から戦おう、なんて、日本昔ばなしでもあんまりないアル」 「う。 でもさ、こっちは遠距離攻撃なんてできないんだよ? これじゃ勝負にならないよ!」 「それにあなたの攻撃もずっと単調だし。なんというか、絵にならないと思う」 「まあ確かにそれはそうアルが」 「ちょ……竜まで味方すんな! ぐぬぬ、言わせておけばなによ! こっちはあんた達の顔に傷が付かないように手加減してあげてんのに!」 露骨に悪評を叩かれて、かがみ(6/)はテンプレっぽく額に青筋を浮かべた。 「だいたいあんた達も正義の味方気取りならこう、遠くでも攻撃できる必殺技とか持ってなさいよね! 手からビーム的な何かくらい出せるでしょ普通! ドラゴンボールだってそんな肉弾戦ばっかじゃないわよ!」 「そう言われても……必殺技。あるのかな、ヴィントブルーム」 「分からないよね、えーっと、フルムーン。結局、なんでこう呼んじゃうのかも分からないままだし」 あったら教えて欲しいよ、と、プリキュア二人は口を尖らせる。 その間も、ジェット機かと思うような速度で竜(とその背中のかがみ)は飛び回り続ける。 戦闘が始まって、すでに一時間半。 通常放送の三倍もの時間ずっと膠着状態では、視聴者もとい読者も飽きてしまう。 実際、今回の戦闘には完全に巻き込まれた形の竜は、完全に飽きが来てあくびをしてしまう有様だった。 「ふああアル」 しかしながら、竜は思う。 みんなちょっと真剣にやりすぎじゃないかアル、と。 どうせ人間なんて矮小な存在、百年やそこらで死んでしまうものなのに。 上に乗せているかがみ(6/)も、地面のプリキュア二人も、 方向性や信条は違えど、まだ瞳に炎を宿らせて言い争いをし続けている。争い、続けている。 (ホント……もし生まれ変わったとしても、人間にだけはなりたくないアルネ) 竜が飛び続けないと死ぬ生き物なんだとしたら。 きっと人間は、争い続けないと死んでしまう生き物だ。 だからこそ――誰とも知れない他人が殺し合う姿を見て、何か感情を揺さぶられることもあるのだろう。 竜は楽しくはなかった。面白くもないし、ひどいとも思わないし、怒りさえ覚えない。 ただ、早くこのつまらない遊戯が終わらないかなあと、それだけを考えていた。 「ちょっと竜。あんた何あくびなんかしてんのよ。スピードちょっと下げなさい、もう一回攻撃するわよ」 「またアルか? どうせさっきまでみたいに避けられるだけアルよ。無駄無駄アル」 「無駄かどうかはあたしが決めることだわ。それに……」 「アル?」 「あたしもそろそろ、『飽きてきた』わ。物語を、動かすわよ」 「おや。そいつは嬉しい話でアルアル」 「アルは一回」 「はーいアル……アルッ☆」 「うぜえー!? ああもう、あんた達! あと十秒! あと十秒でいい返事しなかったら、今度こそ殺す気でいくからね!」 じゅーう、きゅーう、と間延びしたカウントダウンが、固有結界の隅々まで響きわたる。 さっきからこんなやりとりが繰り返されること、実に10回目。 かがみ(6/)のクルミ攻撃は確かに、回数を重ねるごとにだんだんその激しさを増している。 しかしプリキュアの力で常人よりも高いスピードを出せるキュアフルムーンとキュアヴィントブルームにとって、 直線的なクルミの雨を避けることは容易い。 そして。今回はそれだけでは、ない。 (満月ちゃん) (うん、分かってる、マシロくん) キュアフルムーン――満月と、 キュアヴィントブルーム――マシロは目で言葉を交わす。 この一時間半。アニメでいえば三話分の戦闘を耐え抜いて、二人のプリキュアとしての経験値はさらに上がっていた。 ゆえに、分かっていた。 この固有結界、敵の男が『無限の胡桃』と呼ぶこの空間が、本当は無限に続くものではないということを。 いつか必ず、終わりの時が訪れることを。 ごー、よん。カウントダウンの数字が減っていく。 そう。ほんの少しずつ、気づかれないほどにゆっくりと、この場からはいろんなものが減っている。 クルミが飛んでくる速度、相手の攻撃のパターン数。 あるいは、こちらに向けて放たれる挑発の言葉の勢い。それと……周りにあるクルミの木の数。 (最初は二十本以上あった。それが、今はたったの四本しかない。 攻撃の余波で枝が折れることはあっても、消えるなんてことはないはずなのに。 もし、あれがクルミの在庫量をつかさどってるとしたら。そろそろ向こうは、限界が近いってことだ) (あの男はたぶん、これに気付いていない。 ずっと竜の背中に乗ってめまぐるしく視界を移動させてるんだもの、気付かないのも無理はないわ。 仕組みに気づいてるのは、私たちだけ。これは大きなアドバンテージよ) にー、いち。 マシロと満月は、キュアフルムーンとキュアヴィントブルームは、静かに空を見上げる。 これ以上ないくらい不快そうな顔をした男の顔が、地面からでも確認できた。 あの男を。まるで何かのついでのように目の前で人を殺した男を、二人は止めなければならない。 プリキュアとしての正義感だけではない。二人の、神山満月とマシロの意思として。 答えは無言、戦闘体勢だけを取る、 「ぜろ」 かがみのカウントダウンが、終わる。 「ぜろ。ぜろ。ぜろぜろ、ぜろぜろぜろ! 0よ! ったく懲りないわねぇあんた達……。 さあて、それじゃあ殺してやる! 食らえ、クルミの斉射――全方位バージョン!」 「なっ」 「え、」 「言ったでしょ? 殺す気で行くって」 一、十、百? 二百? いやもっとだ、 これまでのクルミの最大顕現数を遙かに上回るクルミが、ドーム状になって二人の回りを取り囲む。 かと思えば、二人に向かって発射されてゆく。 しかもご丁寧に、いっぺんに対処できないよう微妙にタイミングをずらしながら! 「フルムーン!」 「分かってる! 数が多くても――軌道が一直線なのは変わらないわ!」 二人は地面を蹴りあげ跳ぶ。 遅れてクルミ群が元いたところに集中して着弾、爆音と砂塵が舞う。 かろうじて避けた……が、息吐くヒマはまるでない。 上から、横から、前後から。クルミの雨が、矢のような速度で二人に迫る。 「はぁぁぁあああ!」 「やぁあああ!」 いくつか弾きながら走る。 二人の足音を追うように、クルミが着弾して足跡をクレーターに変えていく。 なるほど――今までのクルミはすべて、最初に動き始めた方向に一直線に加速していた。 それが今回は、発射時にプリキュア二人の近くを狙うようになっているのだ。 取れる最善の行動は、移動し続けて狙いを定まらせないこと。 それもルートが読める単調なものじゃなく、複雑に、読まれないように動かないといけない。 (ここにきてこんな――でもこの数。クルミの木は?) 後ろからのクルミをデイパックで受け流し、ヴィントブルームは辺りをちらと見回す。 クルミの木はやはり0本。よし、これなら、 「ヴィント……ヴィントブルーム、二手に!」 「あ、ああ!」 「ほらほら、ほらほらあ! 墜ちろ落ちろ倒れろ死ね! まだまだクルミはたくさんあるわよ!」 怒号というか気がふれているかのようなかがみ(6/)の叫びが空間を脅す。 竜はさっきから無表情。 二手に分かれたプリキュアは無軌道に駆ける、 が、追いづらくなったはずのそれらを難なくクルミは捕捉してくる。 それでも。二手に分かれたぶん、相手が使わないといけないクルミの数は二倍となり――消耗を誘える。 肘で。 膝で。 爪先で。 拳で。 避けきれないクルミを迎撃しながら、狙うは弾切れただ一つ。 (あの男は間違いなくこの攻撃に賭けてる。だから、ここさえ乗り切れば。戦況は一気にこっちに傾く。 だけど、僕たちも消耗してるのは同じだ。どうにかここで……!) ヴィントブルームは右に飛んだ。風を切る音とその大きさで、次のクルミの方向を予測。 デイパックで受け流すしかない――が、そもそも何度もクルミの攻撃を耐えられるようなものじゃない。 案の定、次に飛んできたクルミを受けると、デイパックが軽くなった。 裂けてぶちまけられた中身は、基本支給品の水入りペットボトルに、裁縫セットと、一枚のカード。 『六芒星の呪縛』という名前のカードは、確かフルムーンのほうに『融合』という名前の似たカードがあったな、 と思ってフルムーンの方を見れば、ほぼ同時に彼女のデイパックも宙を舞っていた。 こちらは中身が入ったまま、デイバック自体が吹っ飛ばされている。 とはいえ、ヴィントブルームのものと同様、使い道が分からないものが入っていたのは確認済みだ。 問題は、防御に使える物がもう無いこと。地面にクレーターを作るほどの威力を持っているクルミを、 ここからはどうしても体で受けなければならないこと。 「う、がはっ……!」 「ヴィント――きゃ……うう!」 空中に残るクルミはあと僅か。 しかし、かすめたクルミが服を裂き、当たったクルミが肌にアザを作る。 手が、足が、思うように動かなくなっていく。視界がかすんで、世界がぼやける。 当たり前だ。 ずっと竜に乗って動いていないかがみ(6/)と違って、二人は一時間半の間クルミを避け続けていたのだ。 どちらがより疲れているかなんて議論するまでもない。 「でも……負けられない!」 擦り傷、切り傷をあちこちに作りながら、少年少女はまだ倒れない。 走り続ける。クルミの海の中を泳ぎ続ける。 なぜ負けられないのか。自分が生き残るため? 貞操を守るため? どちらも、違う。 自分の意思を、みんなを守るという志を貫くため。 どんなに無謀でも、どんなに理不尽な相手でも、マシロと満月は負けるわけにはいかなかった。 走って、ぶつかって、転んで、起き上がって、また走って。 そして、クルミの攻撃が、ついに止んだ。 「……ふぅん、やるじゃない」 竜の上から身を乗り出し。 クレーターだらけになった地面を見て、かがみ(6/)は思わず賞賛の言葉を漏らす。 聞こえる息の音は、二つ。 「褒めてあげるわ。あのクルミの攻撃を受けて、まだ意識を保っているだなんてね。 でも勝負はあたしの勝ち。あんた達はもう、動けない」 「はぁ、はぁ……っ」 「っう……くそぉ……」 キュアフルムーンとキュアヴィントブルームは――生きていた。 そしてしっかりと大地を踏みしめ、上空のかがみ(6/)を見据えながら立っていた。 ただし、ヴィントブルームの肩をフルムーンが借りる形で、だ。 「ごめ、ん、ヴィントブルー、ム。わた、し……はぁ、足、引っ張っちゃ、った」 「謝らないで、フルムーン。大丈夫、僕がついてる」 「竜、地面スレスレで。降りるわ。ふふ、ちょっとピンクな展開になるから、嫌なら上空を飛んでなさい」 「……いいアルカ? ジェリーに噛まれても知らないアルヨ?」 「あたしはトムじゃないわ。ほら早く」 「はいはいアル」 「……はい、は一回よ」 「はいアルアル☆」 「もう突っ込む気も失せたわ」 ゆるゆると高度を落とし、竜の背中からかがみ(6/)が地面に降り立つ。 竜はけんぜんなシーンを視界に入れたくないのか、単に興味がないのか、再び空へと昇っていく。 勝敗は決し、ここからはワンマンショー。舌舐めずりを一つして、悪魔は天使に問いかける。 「さて――どんな気分かしら? これから犯されると分かっているのに、一歩も動けず反抗もできない気分は」 絶対の自信を表すように胸を張って、一歩一歩獲物との差を詰めていくかがみ(6/)。 男の姿をしながら女口調で喋るその姿は、まるで何かに取り憑かれているようで。 「悔しい? 苦しい? 痛い? それとも怖い? 大丈夫、心配する必要なんてないわ。嫌な感情はぜんぶ忘れさせてあげる。カオス仕込みの快楽でね」 ぞっとするようなことを言う。即興で作ったような笑顔を浮かべる。 迫りくる男の行動ひとつひとつが、プリキュア二人には理解できなかった。 「……なんで、こんなことをするんだ」 言葉を返したのはキュアヴィントブルーム。 単純な疑問と、ある種の諦めが混じった声だ。 「はあ? 意味わかんないこと言わないでよね。理由なんてないわ、むしゃくしゃしたからやってるだけよ?」 担いでいたフルムーンを一旦地面に座らせて。 ヴィントブルームは彼女を守るように矢面に立つ。 だが彼も、フルムーンと比べれば多少マシとはいえ、立っているのがやっと、というほどふらついている。 それでも。拳を握りしめながら、ヴィントブルームは語り始める。 「意味わかんないのは、こっちだよ。正直いって僕には、あなたのことが理解できない。 ここに来る前の生活で僕はいろんな戦いを見てきた。 でも……それは自分の正義のため、誰かのため、 あるいは、生きるため。どんな人でも、そうしなければいけない理由があって戦っていたよ。 僕は殺人は否定しない。こんな場所なら、仕方なくってこともある。 もちろんできればそんなことしてほしくないけど、願うだけでゼロにできるはずがない。 世界はそんなに甘くないよ。綺麗事を並べるには、広すぎる」 「へぇ、ただの正義馬鹿にしては珍しく、ものわかりが良いじゃない。 それで? あたしのことが理解できないのは、いったいどうしてなのかしら?」 「……それは、あなたに戦う理由がないからだ。分かってるはずだよ、あなたは、殺すのを何とも思ってない。 まるで、殺し合いが義務づけられてる世界から来たみたいだ。理由もなしに人を殺していいと思ってる。 生きたいとか誰かのためとかじゃない、ただ自分の利己のために。そんなのは、僕は許されないと思う」 「――敢えて突っ込まないわよ。続けて?」 にやけ顔で歩いていたかがみ(6/)が、ぴくりと眉を動かして不快そうな表情をした。 ヴィントブルームは続ける。顔を上げて、前を見る。 「僕は、誰かを守るためなら自分の命もかえりみない人たちを知っている。 僕のために戦ってくれる子たちを、知っている。ここには僕しかいないけれど、 だからこそ、僕は彼女たちのように、誰かを守るために戦おうと思う。 それをあなたが邪魔するというなら。誰かを襲い続けるというなら。 僕はあなたを止めなきゃいけない――たとえあなたを、殺してでも!!」 瞬間。 もう動かない『ように見せかけていた』、足を動かしてヴィントブルームは駆けた。 「いっけええ、ヴィントブルーム!」 「ああ! かがみさん、やっぱり罠だったアルヨ!」 「あらホント」 すべてはこの瞬間を作るための策だった。 負けたように見せかけ、かがみ(6/)に降りてきてもらってからの、不意打ち。 本当にギリギリだったけれど――ヴィントブルームはどうにか余力を残せたのだ。 前方、かがみ(6/)との距離はそう大きくない。クルミの木が無い以上、迎撃は不可能。 一撃。たった一撃、それだけ入れることができれば優位に立てる。 後ろからフルムーンの声援を受け、千載一遇のチャンスに乗って、ヴィントブルームは拳を振り上げた。 突然のことにかがみ(6/)はぽかんとしている。ように見える。 一時間半ずっと能力を使い続けて、やはり同じように消耗していたのだろう。反応が遅い。 これならいける、勝つことが出来る、はず。 きっと。たぶん。おそらく。 「はああああああああああ!!」 そう、数々の推論のもとに立てられた仮説に則って。それが間違いである可能性も、考えず。 例えば、いまだ地面にびっしりとおちたままのクルミにも気づかずに――、 ヴィントブルームは咆哮した。 柊かがみは、心からの笑顔を見せた。 「爆発しろ☆」 ひとこと。 そう言い放ったのを、ヴィントブルームの耳が捉えたかと思えば。 ばん! ばん! ばん! と、爆竹が爆ぜるような音がばん! ばん! ばばばばん! と地面からばん! とそれはそれは大量にばばばばばば! と響き、 気がつけばヴィントブルームは……いや、変身が解けたマシロ・ブラン・ド・ヴィントブルームは、 地面に情けなくうつ伏せになって砂に顔を埋めてしまっていた。 「が……はっ?」 「マシロくん――!!」 「あー、あんたちょっと黙ってろ。はい、クルミのツタ」 驚愕するマシロ、助けようと立ち上がろうとしたフルムーンに、地面から現れたクルミのツタが絡みつく。 四肢の自由を奪い、地面から少し浮かせて拘束。 かがみ(6/)が人差し指を振るうと、大きなクルミがどこからともなく現れ、 何か叫ぼうとしていたフルムーンの鳩尾へクリーンヒットする。変身が解け、神山満月がぐったりと項垂れた。 この間、二秒。 「なん……で……?」 「あんた達が犯した間違いは、四つ」 思わず疑問符を口に出してしまったマシロを見下ろしながら、かがみ(6/)は解説を始める。 「一つ目は、この固有結界に関して。 あんたはどうやら、この結界の維持にはそれなりのリスクがかかると思い込んでいたらしいけど。 そんなものは無いわ。この技は基本ノーコスト。カオスロワのチート力を舐めてもらっちゃ困るわね。 二つ目は、クルミが爆発しないと思っていたこと。 爆発するわよ、クルミだもの」 いや爆発しないだろう、というツッコミは通じない。 実際に地面のクルミはマシロの近くのものだけ爆発し、中の身や破片がマシロを襲ったのだから。 「じ、じゃあ! クルミの木がだんだん減ってたのは何だったんだ! あれがあったから僕らは……」 「クルミの木? 減ってたかしら? ふふ……もう一度周りを見回してみたら?」 言われてマシロはもう一度辺りを見回す。そして驚きで目を見開く。 クルミの木が、元の本数に戻っている。 いや、むしろ増えている。まるで閑散としていた砂地が、林に変わり森になり、樹海へと変わるくらいに。 「クルミを創造できるってことはね、消滅も再生も自由自在ってことよ? クルミの木だってクルミだわ」 「あ……ああ……」 「三つ目の間違い。あたしに勝てると思っていたこと。対等な戦いをしていると思っていたことよ。 あたしはずーっと、最初から、あんたたちをいじめてただけ。 いつでもヤれるのを、あんた達が万策尽きるまで遊んでやってただけなのよ。 分っかりやすぅいフラグを立ててあげて、それっぽいバトルを演出してあげて……楽しかったわよ?」 虫籠から出ようと足掻いてるバッタみたいで、とっても愛おしかったわ。 そう言うとかがみ(6/)は、6/の、男性の体を最大限に生かして、伏しているマシロの胴体を蹴り飛ばす。 うつ伏せの体があお向けになるくらいに、思いっきり。 「うぁ……! げっ、あ、……か、はっ!」 「さてもう一度聞こうかしら。ねぇ、今、どんな気持ち?」 「く……く、そ……」 「何にもできずに踊らされて、そんで犯されちゃうわけだけど。 それでもまだ懲りずにあたしを否定するのかしら? 自分の利己のための殺しはダメ、許されない? はぁ? あんた根本的に勘違いしてるわよ。 これが四つ目の間違いね。 殺しはねぇ? どんだけもっともらしい理由を付けようが、やりたいからやるもんなのよ? 誰かのためだとか。生きるためだとか。あたしを止めるためだとかさあ。 それは結局、自分のためだろ? あんたは、お前らはさ。自分が人を殺す理由を、何かのせいにしてるだけだろうが! ……あたしは偽らない。正当化なんて糞食らえ。やりたいからやる、それだけのこと。 殺したら殺されるって、分かっててやってるわ」 好き勝手に放たれる言葉が、マシロの心に突き刺さっていく。反論したいのに、できない。 確かに、どんな理由があったとしても、殺すことは殺すことだ。 それでもそこに正当な理由があってほしいなんていうのは、マシロの一方的な願いでしかない。 二つの主張が、ぶつかるとき。 通って正義になるのは、戦いに勝ったほうの主張だ。 そしてもはや、マシロにここから勝つ策はない。さらに満月はクルミのツタに捉われ、意識を失っている。 命を握られているのと同義だ。……抗うことは、できない。 「……満月ちゃんには、手を出すな。その代わり、僕は何でもする」 「話が分かる子は嫌いじゃないわ。まぁ――その願いは聞かないけどね! あははは!」 「そん、な」 手が伸びた。救いを求めて天へ伸びるマシロの手、獲物をいたぶらんと、地へと伸びるかがみ(6/)の手。 少年の手は、空を切り。青年の姿をした変態少女が、己のエゴのために少年の服の襟をつかんだ。 引き上げて、はだけられた胸を観察する。 「あら? 思ったより肩幅が広いし、胸筋もあるわね……あ。男の臭いだ。 へえ。そういう趣味だったのねぇ。ま、あたしはどっちでもいいけど。穴があれば」 「頼むから……満月ちゃんには……」 「うっせぇ黙れ」 かがみ(6/)はポケットからパンツを一つ取り出して、マシロの口に詰めた。 「むが! むが……む、う!」 「さてさて、これで口の中を切る心配も無くなったことだし……一発いっとこっか♪」 「……!?」 「この握りこぶし。何に使うか分かるわよね」 返事は聞いてない。かがみ(6/)はマシロの頬骨あたりを狙って、素早くジャブを放つ。 ぱぁん、と小気味よい音がして、マシロの鼻からつつ、と血が垂れていく。 「がっ……」 「あんたホントいい顔するわね。まずその表情、分かんなくなるまでぼっこぼこにしてあげるからね! そら!」 二発目は下からのアッパー。 衝撃は顎から後ろに向かって脳を揺さぶり、一瞬白目をむいたマシロは再び仰向けに倒れる。 すかさず馬乗りになって、マウントポジションをとったかがみ(6/)はニタニタと笑いながら、 「おら! おらおら、さっきまでの威勢は? どこ行ったの? ほらほらしっかりしないと連れの両穴がっばがばになるまで○しちゃうけどいいのかしら? あはは、不細工な顔! アンパンマンみたいよ! ふふ、ヒーローになれて良かったじゃない!」 左から、右から、無遠慮に無慈悲に、マシロの顔に殴打の雨を浴びせる。 終わらない。止まらない。 唯一止められる立場にある竜は、かがみ(6/)が逆転してからもう地上を見てすらいない。 マシロの整った顔立ちはたちまち腫れ上がっていく、目がまともに開かなくなって、呼吸が辛くなっていく。 薄れていく世界の中で、ぼやけてかすれていく頭の中、マシロはふと思う。 ああ、これじゃあ。こんな顔になってしまったら、もう王女の影武者なんて出来ないじゃないか。 苦しい――辛い――でも、くっするのだけはいやだ。 そしたらもう――し、……、 「あら? あらあらら? ねぇねぇどうしちゃったの? もう口答えできなくなった? え? 死ぬの? バカなの? 死なせないわよ? そんなに簡単に、あたしがあんたを殺すとでも思ってたの?」 「――うぅが、あがっあ!」 次は首を絞められる。飛びかけていた意識が、生命の危機を感じて引き戻される。 かがみ(6/)は殺すとはひとことも言ってない。犯す、と言ったのだ。 つまりそれは、身体だけでなく、精神まで支配する、ということ。 柊かがみの心の飢え。 6/と仲違いしたことから生まれたそれは、知らず知らずのうちに自分に服従してくれる忠実な犬を求めていた。 自分の言いなりになって、何があってもそばにいてくれて、何をしても文句を言わない。 そんな都合のいい存在を、強欲にも求めてしまっている。 「……ほら」 だから、首を絞めて。 「観念しなさい」 生きるか死ぬかの瀬戸際で放す。立場を、認識させる。 「あんたの生殺与奪は――あたしが握ってるんだ」 「う……あ、ぁ」 繰り返し、繰り返し。続けられる虐待じみた行為によって、マシロの心はどんどん消耗していった。 七回、八回、一度呼吸をするごとに、沈められた海から這い上がる感覚。 したはずの決意、想ったはずの正義、全部水に流されていくようなひどいノイズが頭を埋めて、 マシロの心を黒く塗りつぶしていく。 揺れる、揺れる。気持ちが、揺れる。いのちごい、なんて選択肢が、 泣きそうなほどに頭の中で大きくなって。 「た……す……」 「あら、何よ? くすくす」 「……、け、」 その言葉をマシロが発そうとした、そのときだった。 (――Let s……sing a song――) 歌。 穢れきった場の空気を浄化するかのような、澄んだ歌声が固有結界内に満ちた。 小さくて、かぼそい声。でもとても優しくて、張りつめた空気を弛緩させるような柔らかな声。 それでいて、どこか力強さも感じられる声。 広い広いクルミの世界のすみずみまで浸透していったその声は、どこから生まれてきたのか。 マシロにも、 かがみ(6/)にも、 空でゆっくりと遊泳していた竜にも、 歌声の発生源はすでに特定できていた。 「……アル?」 竜は不思議に思う。なんで今になって、歌なんて歌うのか。 「なんのつもり……?」 かがみ(6/)も同じだった。 ボコられてる相棒を尻目に歌を歌い始めるなんて、ついに気でも違えたのかと思った。 「…………満月ちゃん!?」 ただ一人。 マシロだけが、『キュアヴィントブルーム』だけが、声の主の意図するところを体で感じ取っていた。 遅れて二人と一体は、声の主がいる場所へ目を向ける。 そこにはクルミのツタに囚われた神山満月がいて――いつのまにかキュアフルムーンに再度変身している。 しかしどうにも様子がおかしい。マシロが話しかけても、歌を歌い続けるばかりで全く反応を示さないのだ。 ただ目を閉じて、歌うことだけに集中している。代わりにマシロの体から、不思議と力が溢れてくる。 (これは……? まさか、この歌が?) 歌に乗せて、力が流れ込んでくる。 ぽかぽかと体が暖かくなって、壊れかけていたマシロの心を癒していく。 伝わってくる――満月ちゃんは、僕のために歌ってくれている。この絶望的な状況でも、諦めずに信じている。 僕を、僕たちの勝利を、信じてくれている。 そうだ、何を弱気になっていたんだ。僕は一人じゃないのに。月が欠けることはないって、言ったのに。 満月ちゃんが、力を貸してくれている。あとはそれに、僕が応えるだけだ。 「――――あぁあアァあアぁああアアッ!!」 「ん、なっ!?」 どこからそんな力が湧いてきたのか。 吹っ飛ばすようにしてマシロはかがみ(6/)を退ける。 立ち上がって、乱れた髪を軽く振ると、恐怖に濡れていた瞳はもう勇気を取り戻していた。 クルミに切り裂かれたはずの服や肌、殴られて腫れ上がったはずの頬が、どんどん元に戻っていく。 光に包まれたマシロの体が、再びキュアヴィントブルームへ変身した時には、 戦いが始まる前より元気なほどに、身体も精神も回復していた。 「フルムーンの……乙HiME(オトメ)の力、受け取ったよ」 自分の意思とは無関係に呟いた言葉は、さらにヴィントブルームの姿を変化させる。 王族衣装に似たコスチュームから、元居た世界で彼を守ってくれていた、乙HiMEに似た服装へ。 守られる側から、守るために戦う側へ。 「もう一度だ。まだ僕らは負けてない。もう一度、あなたを止めるために僕らは戦う。 いつまでもあなたってのも他人行儀かな。ねえ、教えてよ。名前」 「なぜ回復したのかしら? ……そっか、この歌の効果ってやつか。 イヤボーンなんて都合いいわねえ、あんた達愛されてるわよ。でもね、名前を人に聞くときは――、 自分がまず名乗るもんじゃないかしら?」 かがみ(6/)は皮肉を吐きながら、フルムーンを捕らえているクルミのツタに命令を送る。 ツタはしゅるしゅると伸びてフルムーンの口へ。首を絞めることも考えたが、差し当たってはこっちの方が確実。 どんな効力だか知らないが、歌がこの状況を生んでいるのは明らかだ。口さえ塞げば、 「そうだね、そうするよ。だから、もっと正々堂々やろう。騙し合いはなしだ」 阻止された。 かがみ(6/)がフルムーンの口を塞ごうとした瞬間、ヴィントブルームの姿がその場から消え、 かと思えばクルミのツタはずたずたに切り裂かれた。 砂塵の中から現れたのは、フルムーンをお姫様だっこしたヴィントブルーム。 姿はさらに変化していた――背中に光の羽を生やし、大きな長剣を携えたその姿は、 必殺技どころか第二形態と呼ぶに相応しい姿だった。 (ちょっと遊びすぎたかしら。やっべーの呼び起こしちゃったわね) 冷や汗を一滴流しながらも、かがみ(6/)はあわてずに周囲の様子を観察した。 視界の隅を竜が悠々自適に飛んでいる。これは変化なし。 発現させたクルミの森、クルミの砲弾。これも変化なし。 攻めの手はまだ、死んでいない。 ただ――気絶させたフルムーンの方に意識を向けていなかったのはミスだった。 祈るように目を閉じ、ヴィントブルームに抱き上げられながら、 綺麗なメロディを詠唱するフルムーンにはなぜか隙がない。 どこから攻めても『なにか』に阻まれてしまう、そういうビジョンが頭の中で組みあがる。 今の状況からも分かるように、こっちにちょっかいを出すのは負けフラグ。 ……今までの経験からくるフラグ勘のようなものが、かがみ(6/)の脳内で警告のブザーを鳴らす。 続けて前を見る。 紫銀の髪を揺らしながら、さっきまでとは別人のようにしてかがみ(6/)の前に立ちふさがる少年。 フルムーンを静かに地面に立たせ、すっと息を吸い込んで、 「僕はマシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム。といっても、これも偽名だけどね。 本当の名前は、教えちゃいけないことになってる」 と片目を瞑る動作なんか、強者の余裕さえ感じられる。 支えだ。 不安定になっていた心、精神を、あの歌が支えている。 もはや今までのような絡め手は効かないだろう。正々堂々、正面から力で打ち負かさない限り、 二人のプリキュアの信念を曲げることはできない。服従させることも。 「あははは、このあたしが正々堂々だなんて。お笑い種もいいとこね。 ――ようやく、退屈しなさそうじゃない。 オーケー、教えてあげるわ。あたしの名前は、柊かがみ。ロワに呪われたツンデレコンビの片割れよ」 ヴィントブルームに羽根が生えた以上、竜に乗って空には逃げられない。 かがみ(6/)に残された選択肢は、目の前の正義の味方と戦う悪へとなりきることだけだった。 でも、それは。今までとなにか違うことをするとか、そういうことじゃない。 いつだってかがみ(6/)は悪であり、そうなることで目立ってきたのだから。 目立つことで、死を逃れてきたのだから。 後悔なんて、一つもない。 「クルミの大剣」 ここは『クルミの固有結界』。……なにもかもがクルミで演出できる空間。 かがみ(6/)は右の手へとクルミを集めていく。 自在に形を変えるクルミは次第に、ある一つの形へと収束していく。 巨大な、剣。まがまがしいオーラを放つ、クルミの大剣へと。 かがみ(6/)が剣を構えたのを見て、ヴィントブルームも地面に差していた長剣を引き抜く。 そして同時に、呟いた。 「「二つの主張が、ぶつかるとき。 通って正義になるのは、戦いに勝ったほうの主張だ!」」 火花散る。 空間を満たす歌の中、二人の思いが剣となって――戦いは乱戦から、一騎打ちへと進行した。 (おおー、かっこいいアル。BGMもいい演出アルネ。 と、まあそれはいいんアルけど……いつ終わるんアルヨ、この戦い?) その戦い上空から眺める立場の竜は、また一つ欠伸の数を増やすのだったが。 ぼーっとしすぎていたからか、竜もこの空間に起きていた異変には気づかなかった。 ぴし――、と、クルミの天井がほんの少し割れて。 青く晴れ渡った空がそこから、わずかに覗き始めたことに。 柊かがみは一つだけ嘘をついている。 カオスロワで許されるチートが、オールロワで同じように許されるとは、限らない。 【1日目 午前/C-5 クルミの固有結界内】 【柊かがみ(変態仮面)@パロロワクロスネタ投下スレ】 【服装】上半身裸 【状態】ほぼ健康、外見は◆6/w氏(クロス) 【装備】大量の下着、クルミの大剣 【持ち物】支給品一式、不明支給品0~1 【思考】基本:やりたいようにやる 1:6/の代わりに服従してくれる犬を作る 2:目の前の2人を正々堂々犯す 3:脱出方法を探す 【備考】 ※クルミの固有結界の維持限界が近いことを隠しています。 【竜@まんが日本昔話】 【服装】全裸 【状態】健康 【装備】なし 【持ち物】支給品一式、不明支給品0~1 【思考】基本:ロワはどうでもいいアル 1:いつになったらバトルは終わるアル? 2:かがみよりも6/さんが心配アル 3:生まれ変わっても人間にだけはなりたくないアル 【備考】 ※飛び続けないと死にます。 【神山満月@満月をさがして】 【服装】プリキュアっぽい服 【状態】軽傷、疲労(大) 【装備】ピンキーキャッチュ@Yes! プリキュア5 【持ち物】 【思考】 1:いろいろと危険な人(かがみ)を止める 2:マシロとアカギ(零)と一緒に都市で殺し合いを止めるための仲間を探す 【備考】 ※ピンキーキャッチュ@Yes! プリキュア5でキュアフルムーンに変身可能。変身中は病気が悪化することは無いようです。 ※キュアフルムーンの容姿は原作のフルムーン状態です(金髪ツーサイドアップの16才ver、ステージ衣装っぽいプリキュアっぽい服) ※必殺技「キュアフルムーンソング」歌ってる間味方を支援する技。回復効果(中)。 【マシロ@舞-乙HiME(漫画)】 【服装】乙HiME仕様のプリキュアっぽい服 【状態】健康 【装備】ピンキーキャッチュ@Yes! プリキュア5、長剣、光の羽 【持ち物】なし 【思考】 1:いろいろと危険な人(かがみ)を止める 2:満月とアカギ(零)と一緒に都市で殺し合いを止めるための仲間を探す。 3:満月が心配。 【備考】 ※ピンキーキャッチュ@Yes! プリキュア5でキュアヴィントブルームに変身可能。 ※キュアヴィントブルームの容姿はマシロとの違いは特になし(髪はカツラではなくなる。王族衣装みたいなプリキュアっぽい服) ※必殺技「キュアダイヤモンドヴァルキリー」味方の支援を受けて乙HiMEの力を使う技。 光の羽と長剣を生成し、原作5巻の最後みたいな感じに服も変化する(支援する仲間が多ければ多いほど強くなる) ※マシロのデイパックが破れ、DMカード「六芒星の呪縛」@ニコロワと裁縫セット@現実が固有結界内に落ちています ※神山満月のデイパック(中身はDMカード「融合」@ニコロワ、不明支給品1)が固有結界内に落ちています ※クルミの固有結界にヒビが入り、外から見えるようになりました。 時系列順で読む Back 笑う蛇 Next それはとっても嬉しいなって 投下順で読む Back ねえ、キスして Next ユメノアト 【誤解連鎖】 柊かがみ(変態仮面) きっと奇跡も、魔法も、あります! 【誤解連鎖】 竜 きっと奇跡も、魔法も、あります! 【誤解連鎖】 マシロ きっと奇跡も、魔法も、あります! 【誤解連鎖】 神山満月 きっと奇跡も、魔法も、あります!
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『シャア専用』が領土を獲得するまでの歩みをギルマス目線で紹介 「勝利の栄光を君に!」 ○STEP1 アルデバランサーバーの最強ギルドPRIDEに戦法を学ぶ (※PRIDEに恨み等は一切ございません) 第1回 【テーマ】 領土戦を体験しよう! 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 11月25日21 06 侵攻 PRIDE 夢見る峰 LV3 500,000 ? × 【宣戦コメント】 特に無し 【参戦メンバー】 1.mappoi 2.rioa 3.STEED 4.もも花 【領土戦を終えてのコメント】 7倍近くの相手に何も出来ませんでした。動きが止められて攻撃すら出来なかったです。 収穫は領土戦を体験できた事、薬が必須である事、STEEDが矢倉を建てる事に成功した事。 戦が終わった時のPRIDEのリーダーの「やめ!」という白チャにメンバーがきちんと従う様は、ギルドとしてまとまっているなと感心させられました。STEEDを見て、ウチには無理だと思ったのはオレだけかな?w 「またお願いしま~す」との発言に、「またくるの?」との返答が・・・オレのハートに火がついたのは言うまでもない。 第2回 【テーマ】 矢倉を建ててみよう! 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 12月02日21 06 侵攻 PRIDE 夢見る峰 LV3 500,000 359,842 × 【宣戦コメント】 「先週の敗戦を踏まえ2機の新たなモビルスーツの投入を決定!皆で夢をみようぜ!『シャア専用』は夢見る峰に宣戦します。星」 【参戦メンバー】 1.rioa 2.もも花 【領土戦を終えてのコメント】 仕事でもともと参加できませんでしたが、リオとももちゃんの2名が代表して戦ってくれました。精霊2名で攻めるってどうなの?という内部批判もありましたが、オレからしたら伝説達成おめでとう! PRIDEの方々も優しく相手をしてくれたみたいで、感謝です^^ 第3回 【テーマ】 矢倉を建ててみよう!(継続) 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 12月09日20 03 侵攻 PRIDE 夢見る峰 LV3 500,000 1,603,276 × 【宣戦コメント】 「連敗してしまいましたが、やっぱり皆で夢をみようぜ!今回も『シャア専用』は夢見る峰に宣戦します。」 【参戦メンバー】 1.STEED 2.もも花 3.アスナス 【領土戦を終えてのコメント】 週に一度の楽しみも残業で参加できず(涙) STEEDが矢倉を建てるもやはり、圧倒的な戦力の前に為す術が無かったとの事。 ももちゃんが最近getした白馬で「戦場を駆け回れたから良かった」という話が唯一の明日への希望の光だ。 第4回 【テーマ】 矢倉を建ててみよう!(継続) 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 12月16日21 00 侵攻 PRIDE 夢見る峰 LV3 500,000 2,285,237 × 【宣戦コメント】 3連敗中です、連敗の疲労を取る為に「休息の丘」にバケーションへ行こう!→やっぱり『シャア専用』は夢見る峰に宣戦します。」 【参戦メンバー】 1.mappoi 2.rioa 3.STEED 4.もも花 5.アスナス 6.あとるしゃん 7.フィグオノア 8.Uザク(応援) 【領土戦を終えてのコメント】 夢の2PTで臨む事ができました!え?7名だって。いや正真正銘の2PTです!! 城外・城内に矢倉を建てる事に成功!課題達成です^^ 個人的には悔いの残る領土戦となりました、開戦後、間もなく家のブレーカーが落ちて、戦場にいたのは実質1分ちょいでした(涙)再起動してINしましたが、既に領土戦は終了していましたとさ。 マスターの駄目っぷりとは逆に活躍を見せたのは、サブマスのSTEED!この男、領土戦時には一歩先いきます! 投石機の操り方を習得し、一人で敵陣へ特攻!敵10人に追いかけ回されている姿は、まさに「男前」の一言に尽きる。その後タコ殴りにあったのは言うまでもないが... メンバー・傭兵とも徐々に増えてきています!来週こそ10分以上戦おう♪ 第5回 【テーマ】 耐えろ!10分以上戦おう★ 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 12月22日21 15 侵攻 PRIDE 夢見る峰 LV3 500,000 12,157,683 × 【宣戦コメント】 【参戦メンバー】 ギルマス不参戦につき、現在調査中orz 【領土戦を終えてのコメント】 非常に残念ながら、仕事の都合により参戦できませんでした。 メンバーの報告では、今回のテーマは達成されなかったとの事で、誠に遺憾であります。 しかしながら、相手側の主力部隊に対して8分戦闘できた事は、パチスロ『北斗の拳』でいう所の、白オーラでラオウのゴウショウ破2発に耐えて6連したのと同じ価値があると、私の中では思っております! 「微妙~~~~~~~~♪」 ※PRIDEギルマス部隊=主力部隊と勝手にこちらで推測しているだけですので、情報に誤りがあったとしても許してねw また、名物STEED日記に記載のある「昨日の領土戦の一番は最後のあとるんの白チャが最高でしたけどねww詳しくは本人に聞いてねんw」につきましては、判明次第報告できればと思います。 来週は今年最後の領土になります、2007年の良い思い出を作りましょう^^b 【備考】 あとるんの白チャが判明しましたので、ご報告致します。 「よわぞう(RIDEギルマス)だけを倒せ~w」って打ったそうです。 白チャで、二枚も三枚も巧い返しを喰らったそうでw やっぱり、相手は格が違うかもw 第6回 【テーマ】 今年最後だ!テーマなんていらねぇ~よ★ 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 12月29日21 15 侵攻 PRIDE 夢見る峰 LV3 500,000 13,200,979 × 【宣戦コメント】 【参戦メンバー】 1.mappoi 2.rioa 3.もも花 4.狛狼 5.あとるしゃん 6.フィグオノア 7.*エマ* 8.Uザク 9.ドズル・ザビ 10.るいあ 11.ちょこべびー 12.月隠 刹那 13.カレーナ 14.ラクロワ 15.xxレイルxx 16.一歩 【領土戦を終えてのコメント】 今回、同時刻にPRIDEはELYSIONとB・BLUEとの戦いもあり、どちらも大きなギルドである為、PRIDEはそちらに戦力を傾けていたのでしょう、領土戦開始時に『シャア専用』が実際に戦った相手戦力は1PT弱でした。人数はこちらのが上!チャーンス♪やばいよ、やばいよ(出川風)領土getできちゃうよ! 攻撃側なのにいつも守備を強いられている状態の為、初めて相手側に攻撃しにいくと相手兵力いないのに矢倉にバンバン倒されていくレッドスター軍団の精鋭達。矢倉硬いし威力強す!!こうなったら投石器投入だ!と操作を試みるが相手側まで運べねぇ~orz 千載一遇のチャンスは長いはずはありません。B・BLUEとの戦いが終わったメンバーが合流(それでも10名弱だったと思いますけどw)し、獣を中心に投石機をこちらの陣まで持ち込まれ、あとはいつもの展開です(TT)。クリスタルが~~~ 実質、獣族2匹と戦士1名と精霊1名の4名に撃破される形となりましたとさ!凄い連携で倒したくても倒せないww 投石機の使い方と、メンバー連携が非常に大事だと強く感じさせられた今年最後の領土戦でした。 でも最後に言わせて下さい。「皆最高です!!」負けたのに何が最高だって?オレにとっちゃ勝ち負けなんて大した問題でなく、メンバーがリアル忙しいのに領土戦にかけつけ参加してくれた事が最高でした^^b LV制限無しでLV24~LV95の幅広いLV帯の領土戦初心者のメンバーで「こうしよう!ああしよう!」と試行錯誤しながら領土戦を皆で作っていくって面白いよね♪ 何と3PT!!!2007年最後の領土戦、最高♪ 来年も楽しもうぜ! 第7回 【テーマ】 新年1発目タイマン勝負!!どうせ倒れるなら前に倒れろ★ 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 1月6日21 03 侵攻 PRIDE 夢見る峰 LV3 500,000 21,423,789 × 【宣戦コメント】 【参戦メンバー】 1.mappoi 2.らっこくん 3.STEED 4.狛狼 5.あとるしゃん 6.フィグオノア 7.ドズル・ザビ 8.るいあ 9.カレーナ 10.大串君 11.王昭君 12.xxレイルxx 13.tonytony1(応援) 14.西施(応援) 【領土戦を終えてのコメント】 いや~PRIDE強す! 新年早々から強さ見せ付けられて、8分で撃沈ですorz こっちのクリスタルの前に何人いるんですか?並びすぎだっちゅ~のw 今日の領土の為にレベル上げたのに、全く無意味でしたよ(TT)責任とってください♪ メンバーが増えて来ましたが、今の『シャア専用』の力はまだまだです、それを再認識できた事を今回の収穫として、また今年も抵抗勢力としてメンバ-諸君!がんばろうじゃあ~りませんか!!! だってさ「壁は高ければ高いほど、登れた時に達成感があるものだよ!」 皆前に倒れてたから、テーマ達成♪ね^^次回に続く。。。 ○STEP2 アルデバランサーバーの強豪ギルドに挑む! (※PRIDEが強すぎるからじゃないよ(TT)w) 第8回 【テーマ】 PRIDE戦で培った防御力を見せろorz★ 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 1月11日21 18 侵攻 不夜城 凍骨の氷原 LV3 30,000,000 56,562,386 × 【宣戦コメント】 【参戦メンバー】 100時間制限が解除されていないメンバー3名の応援を含め、26名位?でした!人数多くなってる上、ギリギリに皆INするんでPT編成で一杯一杯の為、チェックするの無理ポ~~~♪名前明記出来ずに、申し訳ございませんでしたorz 平日にも関わらず、嬉しい誤算でした^^ 【領土戦を終えてのコメント】 いや~またまた記録更新しちゃいましたよ!何と4PTでございます!!!!領土戦には負けましたが、ある意味勝利でしょ~~♪ PRIDEよりは、やはり少し力は下って思いましたが、領土もってるギルドはどこも強いってのが感想ですねTT、圧倒的な数で負けているって感じではなかったですけど、やっぱ強す!ま~簡単に勝っても喜びが少ないんで、こうでなくっちゃw はうザク(弓使)がコッソリ投石器運んで仕掛けていたり、フィグ(精霊)が領土で初めて相手を倒したり、ドズル(戦士)が相手の弓使を頑張って追い回してたり(逃げられて最後はやられていたようですけどw)、それぞれが自由に楽しく遊べていたし、それでいて勝利を目指していたし、今週も素敵な領土となったのではと思います。 それにしても相手側の「グフ」はインパクト大でしたねw矢倉と大きさ変わらなかったもんねww 来週はどこいっちゃいましょうかね~~♪ 第9回 【テーマ】 60Mの価値ある戦いをせよ~ギルマスは風隊に勝利~★ 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 1月19日21 18 侵攻 猫まっしぐら 戦場ヶ原 LV3 60,000,000 64,202,522 × 【宣戦コメント】 初めて領土オークションで競合しちゃいましたorz風隊とw 25M→60Mで勝利♪メンバーからは安い場所に変更しよう!なんて意見も出ましたけど、「何人もオレの邪魔はさせん!!!」。カッコいい事書いてますけど、もう1回上乗せされてたら負けてましたwwいや~痛い出費っす(涙) 【参戦メンバー】 仕事の都合上参戦出来ず(TT)、参謀からの情報では26名(参加者名までは聞いておりませんorz)!! 今は亡きノリックだけど「きてます、きてます♪5PT」 ↑ノリックとマリックの勘違いですorz 【領土戦を終えてのコメント】 参加できていないので、以下伝聞になりますけどw 領土戦は30分近くに渡って繰り広げられたとか!記録更新じゃん♪でもね、よくよく聞いてみると、数でも26対70(おおよそねw)、その上、転生者の数も違けりゃ、非転生者のレベルも格段に違かったらしくて、速攻でクリスタルを破壊できる戦力にも関わらず、実践訓練相手にされたとの情報が。。。。 キャットフードだけじゃ足らずに、誉れ高いRedStar軍団をも舐めるとは...この屈辱は倍にして返してやりますとも!合言葉は「猫真っ青ら♪」orz 冗談はさておきw、敵は多いだけじゃなくて、PT毎にまとまって行動し連携をとって攻撃してくるそうで、チームワーク抜群だったとの事!メンバーの中には「勉強になった」との声も上がるほどに。 前々からメンバーに知って欲しいと思っていた、『チームワークの大切さ』を知るいい機会になったのではと思います。ほら60M出した甲斐あったでしょ?やっぱりオレってセンスあるわorz 今回もテーマ達成ですねww ここから下はメンバー向けになりますが、領土に勝つ為にはチームワークが必須と強く思ってるメンバーもいると思います(あとるんを筆頭にww)。それはそれで良いと思います!練習して領土で実践してみるのもOK。領土前のPT編成で今回は練習したメンバーで組みたいと申し出てもらえば勿論優先させて頂きます。(いつも適当なんでw) ただオレ様としては、前から言ってる様に、PT練習してセオリー通りの動きをして勝ちたいとは思っていません!それじゃ大手ギルドとかわらないからねw色がないんだよ♪それにね!ゲームで練習なんてしてられっか~~~~。 ここで、なぜPT連携に捕らわれない領土をしようとオレが思ったのかエピソードを紹介しよう!遡る事4ヶ月前、『シャア専用』設立の少し前だったかな、前のギルドに所属していた当時のオレは抜群のチームワークを誇る白熊隊に所属し、数々のギルドを撃破していた。ある日、弱小ギルドとの領土戦があった、そこで見たものは『衝撃』であった!!一人縦横無尽に戦場を駆け回って暴れている戦士がオレの視界に入ってきたのだ。戦士といえばスタンで相手の動きを止めるってのが役割だが、彼は違っていた。いきなりドラゴン、斧から素手にチェンジしてタコ殴りと思いきや、今度は剣でスキルを連発。当時のオレにはセオリーを無視した無茶な戦いをするアフォな戦士としか思えなかった。高レベルの戦士だったのであろう、1対1の白兵戦では無類の強さを見せていた彼だが、我が白熊隊のチームワークには勝てるはずもなく目の前で力尽きた。戦場で相手にササなどしないオレが、なぜかは分からないが、その戦士に「なぜ、貴方はそんな戦い方をするんだ?」とササをしていた。彼からの返答は... 「オレ海賊王になる!!」 その一言であったが、戦争には勝ったがPTチームの中の一つの歯車になっていた自分と、戦争には負けたが戦場の主人公になっていた彼を比べた時に、本当の勝利者は彼だった事を認識させられたのである。それからオレは、一人一人が輝けるそんなギルドを作ろうと、最強白熊隊より脱隊した。ちなみに、その戦士の名前は「STEED」、今の『シャア専用』のサブマスだ。 ここまで読んだ人、さ~せんorz 上のエピソードは作り話ですorz 前のギルドで領土に出た事もなけりゃ、STEEDが強い戦士なわけもありませんwただ一つ真実なのは「オレ海賊王になる」って台詞をSTEEDが言ってた事かなwww コメント欄だったのに、つい悪ふざけをorz 本題に戻りますが、チームワーク無しで、自由に動いて勝つ?どうやって?答えは簡単!!!数で圧倒w 勧誘やってこ~~~ぜ♪ 来週も、色々経験して楽しみましょうね^^ ※あとるんからの情報だと、猫まっしぐらより、PT戦の模擬練習などを合同でやってもいいよ。みたいな話をくれた様で、なかなか好意的に見てくれてとの事でした。いいギルドです!「猫まっしぐら」。機会作って、イベントできればいいかもしれないですね。 メンバー諸君忘れるなよ、やられたらやり返す!合言葉は「猫真っ青ら♪」www 第10回 【テーマ】 アルデバラン3強ギルドに赤(Redstar軍団)の衝撃を与えろ★ 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 1月25日21 06 侵攻 ELYSION 疾風平原 LV3 500,000 119,001,920 × 見てやって下さい返金上限が100M超えてますよ!ウチもやっと中堅ギルドの仲間入りだと思われます^^ 20M超えた時にSTEEDが「ウチも中堅だぜ!」って、おいお前は割り算もできねぇ~のかwそんな素敵なサブマスです♪ 【宣戦コメント】 いつもはオレの単独で決める宣戦相手ですが、ロード第3弾からは4強相手という事で、はっきり言ってどこでも同じwメンバーに「希望あるかな?」、フィグから「エリザベスのエリで!」、即採用でしたw 【参戦メンバー数】 26名とかそんなもん! 絶対数増えたけど、金曜日はリアル都合で参加できない人もいて、6PT無理でしたorz らっこみたいに土・日と思い込んでギルドページみないヤツは論外ですけどw メンバー増加につき、全員は把握しきれないので、今後は数でいきま~~すorz 【領土戦を終えてのコメント】 他のギルドとは違って、速攻をしかけてくるのではなく、最初は空中からの偵察をしてきた上で、Aルートで何PTかが仕掛けてきつつ、Bルートで投石器PTが突っ込んできていました。そのお陰でタイマン勝負(牛乳もいたかorz)にも関わらず15分の領土戦時間となり、いつもより少し長く領土戦を楽しめました♪ 某領土ギルドから移籍してきてくれたメンバーから、「Aルートから攻めて来てるよ!」というギルチャが流れてきたんですけどね、Aルート?どこじゃ~そりゃorz。。。「マップ見て下さい!」との回答、私勉強不足でした(TT) ELYSIONの印象は、手堅い作戦と後衛が強す!って感じがしました。いつもは前線で硬い戦士と合間見える形ですが、それほど硬い戦士がいないにも関わらず、どこからか攻撃を喰らって、はい!もどり~~~orzでしたねw 投石器が多かったのか、そこまでは良く覚えてないですが、クリスタル付近まで攻め込まれてから、他の対戦したギルドの中で一番最速でクリスタルを壊された感じがしましたねorz そんな相手にRedstar軍団ですが、成長の姿が著しい!!今まではPT毎にまとまって移動なんて事はなかったのに、今回は適当に決めたPTにも関わらず、PT毎にまとまっていた感じがします!!オレ反省。。過去振り返るとオレが開始時に馬で特攻して、メンバーを振り切ってた事を。。。orz 個人的に一番の収穫は、流れの中で自陣の入り口にて、STEEDと鉢合わせる場面があって、敵の戦士を二人で殴ってたら、結構あっさり倒せちゃいました♪いつもは一人で殴っていて、強豪Gメンは個々が強いと思っておりましたが、複数で敵に攻撃を仕掛けると、こんなに簡単に倒せるものなんだ!という連携の大切さを実感できた事です。 実際殴ってる途中、これは卑怯な構図だと思って、別の敵を殴ろうかと一瞬思いましたwでもSTEEDがタイマンで勝てる訳が無いという情けから生まれた出来事というのは内緒ですけどwwwこれまでは一人で敵を倒すという美学に重きをおいておりましたが、協力して敵を倒すのも悪くないと思った瞬間でした^^ この戦いにおいて記憶に残るといえば、あとるんの「ニルでてこいや~~♪」の白チャ(もはや恒例のあとるんの白チャとなっておりますけどw)でしたね。フレが敵同士で戦うってのも非常に面白いモノだと思います^^あいにくオレのフレはINしておらず、戦えなかったのは残念でしたけど あとは、敗北がほぼ決まりかけていた時の新加入アーシェの白チャが最高でした!!!! 「本当のコアはオレだ!オレを狙え」 男ながら惚れましたねw 領土は操作に必死で、なかなかチャットを打つ事ができないのですが、流石です!領土経験豊富な方は違います! 来週は負けそうになったら、メンバー全員で「本当のコアはオレだ!オレを狙え」という予定ですw少しは相手も惑うかな?wwww 負けてしまいましたが、今回も色々収穫はあった領土戦となりました^^少しずつでもメンバー全員で成長できればいいですね!その先にはきっと勝利があるはずさ♪ 残念ながら赤の衝撃を敵に知らしめるとまではいかなかったと思うので、課題は未達成とし、来週に持ち越しにしま~~~すww 第11回 【テーマ】 アルデバラン3強ギルドに赤(Redstar軍団)の衝撃を与えろ★(継続) 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 2月2日21 09 侵攻 沙羅双樹 安息の丘 LV3 500,000 139,468,092 × 【宣戦コメント】 特に無し 仕事の都合で、参謀に領土オークお願いしました。ありがとう!よくやった^^b 【参戦メンバー数】 30名!惜しい、6PTに届かず。でも時間制限で参加できないメンバーが居たので、来週こそは フフフフ。。 【領土戦を終えてのコメント】 今回の敵は沙羅双樹さん。新たな課題を2つも提供してくれましたorz 敵はゆっくりと正面から確実に侵攻してきました。(実際はこちらが攻める側なんですけどねw現状仕方ないww) 先週の領土戦後に実施したPT練習(厳密には遊びですけどw)の成果を見せる時だ!城門で纏まって敵を倒せ~~~~♪ おや?梅雨の時期でも無いのに空から青白い雨の様な光が降ってきました?? ドゥ~~~~~~~~~~~ン 周りにはRedStar軍団の亡骸が無数、自分のHPも残りわずか。。。 後からメンバーに教えてもらいましたが、その青白い雨の正体は魔道師の「レイニー?」という範囲攻撃でした。 いやねぇ~ これがまた汚い位の破壊力でして、相手PTに近づけないorz それからは死に戻り→切り込み→遠距離からのレイニー→相手PTまで後一歩→死に戻りのループでございましたorz 敵も同時防衛が無く時間に余裕があったのでしょう、クリスタル攻撃は少な目の人数で左右両矢倉撃破を狙うという、なかなかナメた事を。。。私思い出しましたよ!1980年代初頭のなめ猫ブームをw なんとか一矢報いる為にと、護符が回りに回りながらも、魔道に切り込み、攻撃範囲までたどり着き、魔道を叩くが・・・精霊がきちんとヒールいれている事もあるのでしょうが、異常に硬え~~~~~w どんな装備かとプレイデータを覗きみようとしましたが、死亡してると見れないんすねw オレの目に映った他のメンバーはというと、投石器を引いて敵に突進していく、弓使いのはうんどw 同じ戦士で魔道に特攻して、攻撃レンジまでたどり着けないドズルw 死に戻り場所で「バフくださ~い」と叫ぶるいあ、「バフありがとう^^」と領土中でもお礼をきちんとするティアラ。 ウチのカラーまるだし!最高です♪ 今の『シャア専用』が例え読売ヴェルディーにあしらわれる昔の浦和レッズだとしても、いつかは強くなれると信じて疑わないギルマスですw 遠距離攻撃に対する対処方法という課題の他、もう1点が、タゲ妨害のペットの存在。本当に邪魔w 勝つ為にそこまでやらなくても。。。次回は抗議してやろうかと思ったら、あとるんが「オレも出してたよ!」。。。おいおい、抗議できねぇ~じゃんw なので対処方法募集中! テーマである赤(Redstar軍団)の衝撃を与えろですが、逆に緑の衝撃を与えられちゃいましたw このテーマはレベル高かったかな? とりあえず未達成ですw 第12回 【テーマ】 猫真っ青ら♪★ ※継続となっているテーマ「アルデバラン3強ギルドに赤(Redstar軍団)の衝撃を与えろ★」は、現在の戦力では、ちとハードルが高いので、もう少し後にとっておく事にしました。私、先走り過ぎですorz 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 2月9日21 06 侵攻 猫まっしぐら 疾風平原 LV3 20,000,000 180,000,000 × 【宣戦コメント】 特に無し ここを選んだ理由は、風隊に上乗せしたかったから!いつぞやの出費の恨みを晴らしました!オレって人間できてないですorz いいんです!メンバーが「ソレ微妙」とか言っても、STEEDが支持してくれればw 次回はBudsに上乗せしちゃる♪領土戦で勝てなくても、領土オークじゃ負けなしよww 結果的に、猫まっしぐらへのリベンジとなるし、宣戦費用高い&弱いから放棄の可能性も少ないし、抵抗勢力としては良い宣戦になったはず!w 【参戦メンバー数】 仕事につき不参加でしたので、把握しておりませんが、5PT以上はいたらしいよ! 【領土戦を終えてのコメント】 交流もなけりゃ~、フレもいない、おまけに同時刻の領土戦でもないですが、B・BLUE領土獲得おめでとう♪ 関係ない冒頭で申し訳ございませんw 新しいギルド名が勢力図に載った事が、なぜか嬉しい今週の領土戦。 んで、我がRedStar軍団はというと!。。。 負けたかw 同時刻に領土戦のあったELYSIONとRecallerはというと、ELYSIONのみ領土獲得でした。猫まっしぐらは2領土防衛成功。 つまり、猫まっしぐらはウチとRecallerにメンバーを分散して戦ったというわけで、速攻を喰らって負けない限りは、負けたとしても楽しめたはず!そこでメンバーに領土戦についてヒアリング♪ 返ってきた言葉は、「すぐ負けちゃいましたw」 やっぱり、速攻でやられてしまったのかorz まだまだメンバー数が足りないのかorz と思っていると、新たな情報が! 実際はというと、敵が居ないと思って、自陣クリスタルに誰も残らずに、3ルートの内、2ルートを使って投石機を相手陣地に運び込んで相手クリスタルを攻撃。これが放棄ってヤツか、内容はともかく念願の領土getできちゃう♪なんて浮かれるRedStar軍団 すると画面に良く無い事だが見慣れてしまった『敗北』の二文字が… そうなんです!3ルートの内、残りの1ルートから1PTで攻め込まれていたのに気づかなかったというオチだったらしいのですorz ま~これもある意味速攻負けですね>< この敗北の原因はオレの一言だったのかも知れません。オレの予想では相手はウチのみの防衛だと踏んでいたので、戦力が上の相手に一泡ふかす為には、全てのPTで固まって突進!例え勝てなくともテーマは達成できるだろうと思い、メンバーには前日に「何があっても守るなよ!ひたすらに攻めろ~♪攻めずに勝利の文字はない!」なんて話してた訳で。。。いけないのはオレですよorz やっぱりイイ味出してるな~、I LOVE RedStars♪ また、翌日猫まっしぐらでウチとの戦いの指揮をとっていたRさんと霜振PTで偶然一緒になって聞いた話しだと、2PTのみでウチと戦っていたらしく1つは守備PT、もう一つは攻撃PT。8番塔に矢倉が建っていたら、勝っていたかわからなかったとの事でした。 メンバー諸君!今回の失敗で学んだ教訓(①矢倉を建て忘れるな!②相手の全体的な動きを把握すべし!)を活かして、次の領土をやってやろ~ではありませんか! 今週のテーマは見事にクリア^^b タイマン勝負じゃなく、勝ってもいないけど、相手に敗北を少しでもチラつかせたと思うのでねw そもそも、オレが居ない時に初勝利なんて、まっぴら御免だwww 第13回 【テーマ】 偵察部隊導入で相手の動きを把握しろ★ 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 2月16日21 15 侵攻 Gullfaxi 天照す鏡 LV3 500,000 179,168,908 × 【宣戦コメント】 特に無し ロードも終わりに近づいてきました^^b これで領土を持つPRIDEを除く強豪5ギルド全てと対戦です! B・BLUEに宣戦ってのも有りだったんですけど、いきなり2億って@@ 財力あるギルドは違うな>< 今ではPRIDEと肩をはるGullfaxi。どんな戦いが待ってる事やらw 「受けてたとうフルボッコ!」。弱くても、勝てなくとも、いつも上から目線は忘れないw 風隊かBudsに上乗せ計画は、周囲からの批判により、お預けとなりましたとさww 【参戦メンバー数】 5PT 【領土戦を終えてのコメント】 はい出た!速攻負けorz あっという間でした>< では振り返ってみよう! 先週の苦い経験を踏まえ、初めて役割分担(偵察部隊、矢倉部隊、クリスタル防衛部隊、投石部隊、遊撃部隊)を決めて戦いに臨んだ。とはいえ、出来る範囲でやればいいだけであり、自由にやりたくなったら好きにやっていいというスタンスに変わりはないのであるがw その割に偵察部隊からは、それっぽい情報が流れてくるし、矢倉部隊からも建設完了の報告がきちんと入ってくる♪ 様になってるじゃん@@ 相手の情報はBルートから1PTちょいの部隊がまとまってくるのみ、今回は猫まっしぐら、不夜城が同時にGullfaxiに攻めている状況の為、弱小のウチには最小のPTしか送り込んでこなかったのであろう♪ 数は圧倒的にウチのが上、今までの反省を活かせば、負けるはずが無い ニヤッ Bルートから獣3匹が投石機を引いてやってきました、その周辺には戦士や精霊が数人見えるだけ、セオリー通り獣以外の敵をやっておしまい!と迎撃開始、獣以外の4人をあっさりに倒す! 残るは投石機でクリスタルを攻撃している獣のみ。いくら硬いとされる獣といえど、タゲを合わせて攻撃すれば倒せるはず。この時点でクリスタルは30%弱削られているが、この攻撃を凌げば我が投石部隊と全員総攻撃で一気に形勢逆転だ♪ 「削ってやるで~~~~、いつもやられているフルボッコを味わうといい」心の中でオレの悪の魂が踊る踊る!! ・・・・・・ がび~~んorz 獣にタゲあわせられねぇ~~~~ 獣が投石機の間にスッポリ入っていて。。。私色々な角度から挑戦しましたよ、ソリャもう。一つのモノに対して、あんなに色々な角度から見たのは、最初に友達からエロ本をもらった時以来ですわ>< どうしても投石機にタゲがいってしまうorz 獣3匹で投石機3機、クリスタルの削られるスピードは予想以上に早い。 横では、ゆずかりんちゃんが必死に獣を攻撃している模様、でも、ゆずってLV50代のオムツ戦士、相手は転生している獣...多分無理w でもね、ゆずのその勇ましい姿は印象的でしたw なんとかしなければ!ワイルドなアイデアが閃きましたよ!! 投石機ごとやってしまえ!ってね。 獣を攻撃すると投石機HP減るかどうか知りませんが、1台HPが減っている投石機が確かにそこにあったのです。範囲だせば獣にも攻撃与えられるし、ひたすらにワイルドにオレ様叩きましたよ。 でもね、硬え~~~~~~~orz そうこうしている内に「敗北」の文字が... 敗因は経験の無さと個のLVの違いですねww 後から聞きましたが、ALTを押しながらだとタゲが取れるって事と、タゲが取りづらい場合はタゲが取れているメンバーに「協力体制」する事でタゲを取れるって事でした。 あとは、地上ばかりに眼がいってましたが、空中からきちんと精霊がヒールかけていたとの事でした。 領土の基本知識って色々あるのね。。。 リアル忙しい中、領土に参加してくれているメンバーや、領土初体験のメノスと一緒に長い戦闘時間を楽しめなかったのは残念でしたが、今回も勉強となる領土でした。 次回は今回の教訓を活かして、投石機の獣を倒しちゃります!!! 「がおぉぉお~~」(一歩風)w 第14回 【テーマ】 成長したRedStar軍団を魅せつけてやれ!あくまでも魅せろw 戦争時間 侵攻・防衛 対戦ギルド名 領土名 領土レベル 宣戦費用 返金上限 勝敗 2月24日21 00 侵攻 PRIDE 風砂の峰 LV3 500,000 174,897,514 × 【宣戦コメント】 特に無し 仕事の都合で、参謀にお願いし見事に入札成功! どこに入札したのかと思ったら、原点回帰のPRIDEかよwしかもタイマンってw 色々考えて決めたらしいのですが、なかなか男前な選択で! 久々に味わってやろ~~ぜ♪フルボッコ! 新人の皆さん、これも貴重な経験になるよb 個人的な目標は、4人と同時に戦い、一名を道連れにしてやるぜ! 【参戦メンバー数】 5PT 【領土戦を終えてのコメント】 書かなくてもいいかな結果?w 負けましたよ>< どいつもこいつも転生してやがってw 最強軍団と呼ばれる事はあるわw 自陣クリスタル前の敵転生者の壁を久しぶりに見ましたわ、あの壁はベルリンの壁より、確実に硬いはずw崩れる気配すらねぇ~~w 数的には、それほどいなかったと思うけど、個々がやっぱり強すぎって印象でした。 強いだけじゃなく、攻めてくるスピードも尋常じゃないってのが凄い!ウチは矢倉建て終わってなかったとかorz むしろ、ウチが矢倉建てるスピード遅いって話もあるけどねw しかしね、単純に敗北するだけの誉れ高いRedstar軍団ではありませんよ!! いつもと違ったのは、攻める姿勢でごわす! 非転生獣2しかいないという状況でも、転生戦士が投石引っ張って攻めましたよ♪ STEEDとオレ様が投石引っ張ってAルートから、相手クリスタルに向けて、そして勝利に向かって進む進む♪ 相手は油断して矢倉は建ててないはず、そして真正面のBルートから来ると予想し、Aルートをチョイス! 半分過ぎた辺りで相手1PTと遭遇@@流石に誰にも見つからないとはいきませんでしたけど、こちらは投石PTと援護PTの2PT。数的有利 負けるはずねぇ~ ニヤニヤ オレの前を行くSTEEDは攻撃されるも、果敢に進む進む、最近装備した90防具が輝いてますわw っと、ここまでは良かったのですが。。。 相手1PTに一人一人倒されていくRedstarの精鋭達orz PTメンバーのHP見てると一撃でのHPの減りが半端じゃない>< 後から聞いた話だと1撃で死んだメンバーもいるほどの火力だったとか。。メンバーの口からは「ウルトラが~」「ウルトラが~」とw そんなスキルあったっけ? オレは知らなかったんですけど、アルデバラン屈指の弓使の名前だそうで、ほとんどのメンバーがその猛者にやられたらしいです>< 頑張っていたSTEEDも魔法集中砲火を受けて、あえなく撃沈。。 良くやったSTEED!あとはオレに任せろ!っとSTEEDの屍を躊躇無く踏みつけて、援護PTと相手PTが戦っている隙を見て、投石機を引っ張って進むオレ様。 見えましたよ相手の城が!それはまさにディズニーランドのシンデレラ城を京葉線から見た風景 城外には精霊と妖精の2名が待ち受けてましたが、動きを止められない薬を使って特攻! 2名位で倒れるオレ様ではありませんからね ほ~ほっほほほw クリスタル発見!削ってやる~~♪ が、薬が切れて、クリスタルの直前で動きを止められてしまったorz 周りには相手が一人増えて3名、3名なら耐えられる!援護PTが来ればこっちのもの ニヤ ・・・ 援護メンバーが誰もいねぇ~~~~w レーダーにも誰の影もない→誰もこねぇ~~~~w それでも薬・スキルを駆使して、動きを止められながらも、クリスタルへ進みましたよ! あともう少しで攻撃範囲まで辿り着け・・・ 見てしまいましたよ!衝撃の事実を! ウチのメンバーも自陣で頑張っていたのでしょう、何名か相手が死に戻ってオレに向かってくる様をww メンバー諸君、変な所で頑張るなwww 結局最後は1PTにフルボッコにされて、あともう一歩の所で死亡>< 諦めきれないオレは復活の巻物で生き返りを計りましたが、速攻やられましたw 1回死んでも投石器の巻物あれば再度その場で使用できるのかな? 死に戻りの後は、壁との戦いです! えぇ~い1体でもヌッコロしてやる!相手精霊が絶妙なヒール、無理ぽ~~w そんなこんなで終了となりました今回の領土戦、テーマは見事達成♪ なぜって? 参謀が相手からササで「強くなったね」って言われたから!テーマ達成で、間違いないでしょ~b オレ的には、PRIDEに上から目線で「強くなったね」なんて言われる事自体が屈辱以外の何者でもないのだがw 今度こそ見てろよ~~~~^^ ギルドとしては領土戦未体験のメンバーが領土戦を経験できたし、個人的には獣戦士として覚醒できたし、意味のある今週の領土戦だったと思いました。 何の根拠も無いが、来週は勝つ!