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「足元気を付けてね」 「う、ん。あっ」 「ほら、言ってるそばから」 階段の段差に躓きかけたブロンド美女の手を、ベリーショートの長身な少女が取った。 その手を引いて最後の階段を登り切る。 手を引く少女は背丈こそかなりの長身だがその顔付きにはまだ幼さを残っていた。 肉付きも成熟した女性とは言い難く、まだ成長途中の年頃であることがうかがえた。 手を引かれる女はブロンドの髪に豊満なバスト、成熟した大人の女性と言った外見である。 しかしどこか呆けたような表情をしており、それは幼さと言うより危うさを感じさせた。 手を引く少女と手を引かれる女、未成熟な少女と成熟した女性。 傍から見てどちらが保護者かと問われれば答えに窮する事だろう。 だが、アバターの外見は自由に設定できるため中身とが意見が一致しないこともある。 巨乳ブロンドの中身が3歳児であることだって、あり得るだろう。 少なくとも高井丈美はそう認識している。 高井丈美とヴィラス・ハークの二人は水の塔の最上階にたどり着いていた。 これからどうしたモノかと思案していたところに、どういう訳かヴィラスが遠くに見える塔に強い興味を示した。 丈美としても行く当てがなかったため、とりあえずやってきたのだが。 これでよかったのかという後悔は拭えなかった。 水の塔は30mくらいの石造りの円柱の塔で、まっすぐなピサの斜塔と言った風な外観だった。 塔の内部には螺旋階段が敷かれており、その横幅は他の人間が逆方向から来たらすれ違うのも難しいくらいに狭い。 階段は入り口から最上部までの一本道であり、逃げ場のない構造だった。 避難するには所々ある窓枠から外に飛び降りるくらいしかないだろう。 階段を登っている間、もし本当に上から誰か来たらどうしようと不安だった。 どうにか階段を登り切り最上部へとたどり着いたが、フロア中央にそびえる台座に祭られたオーブ以外に特に何もない。 他にあると言えば、半楕円に切り抜かれた窓から見える景色くらいのものだろうか。 丈美は高い所から見る景色が好きだ。 バレーが高さのスポーツだからと言うのもあるだろう。 それとも高さが好きだからバレーを選んだのか。 その辺はもうよくわからない。 高く、より高く。 全力で跳躍した最高到達点から見る景色は最高に気持ちがいい。 だからこそ、塔の頂上からの景色にも少しだけ期待していたのだが。 「うーん。ちょっと残念だなぁ」 昼間だったら島中を一望できたかもしれないが、夜では景色がほとんど見えない。 街の明かりもないから暗闇が広がるばかりで、南にそびえる灯台の光が見てとれるくらいである。 あれは火山エリアのマグマだろうか、目を凝らせば遥か遠くの方で僅かに赤くにじんで見えた。 「……いっ。だからかじらないでよ」 夜景を眺めていた丈美の肩をヴィラスがかじった。 別にたいして痛くはないが、涎が付くので少し汚い。 繰り返されると、わずらわしく思ってしまう。 3歳児ってかじり癖があるんだろうか? とも思ったが丈美は一人っ子だからその辺はよく分からなかった。 「あレ」 そう言ってヴィラスが指さしたのは中央。 どうやらオーブに興味を示しているようである。 オーブは電源を落とした電球のように光を失っており、誰かに灯されるのを待っているようにも見えた。 丈美は一通りのルールは熟読した。 確か、中央を除く各エリアの塔はオーブに触れることで支配することができるとか言うルールだったはずである。 それがヴィラスが塔に興味を示した目的なのだろうか? 3歳児にそんな判断ができるとも思えないが。 「おーぶ」 「あ、待って」 ふらふらと中央のオーブに近づいてゆくヴィラスを慌てて止める。 あれに触れればこの塔の支配者はヴィラスという事になるだろう。 やらせていいのか? そんな疑問が頭をよぎる。 塔の支配者はたしか名前が表示されてしまうはずである。 正直、ゲームの事はよくわからないので、これがメリットなのかデメリットなのかいまいち判断がつかない。 そもそも面識のない相手の名前が出たから何なんだとも思う。 実際、砂の塔と雪の塔の支配者が表示されているが、そうなんだ、くらいの感想しかない。 意味があるとしたら知り合いの名前が表示された時くらいだろう。 仮に今表示されているのが陣野先輩や青山さんだったら、丈美もそこに向かっていくかもしれない。 「――――そうだ」 仮に参加者の中に彼女を知る人間――もしかしたら保護者なんか――がいれば、この子がここにいるというメッセージになるのではないだろうか? うん。それはいいかもしれない。 自分の発想を褒め称える。 正直、子供の世話なんてしたことがないので持て余しつつある。 預けれる人がいるなら預けてしまいたい、というのが丈美の本音であった。 「ぅう」 ヴィラスが自らの動きを制する丈美に恨めし気な視線を送る。 丈美は少しだけ思案したが、結局好きにさせることにした。 解放されたヴィラスが中央のオーブに近づいてゆき、手を伸ばす。 伸ばされた手でそのまま台座にしがみ付いて、カジカジとオーブをかじった。 「こらこら」 「あぅう…………」 引きはがす。 唸る姿はとっても悲しそうだった。 どうやらかじった歯の方が痛かったらしい 「仕方ないなぁ。こうやって……こう、かな?」 ヴィラスの手を取ってオーブの上にのせる。 すると、それが認証の合図だったのかオーブが淡い光を放ち始めた。 夜に美しい青が灯る。 光を放つオーブの中で波打つように水が揺らめいた。 まるで水晶の中のアクアリウムのようだ。 これには丈美も目を奪われる。 ヴィラスも同じく目を輝かせながらオーブを見つめていた。 だが、その興味は光というより中で揺れる水に向けられてる様子である。 水が好きなんだろうか? もしかしたら海に近い所で育った子なのかもしれない。 「ん…………?」 目の錯覚か。 一瞬、オーブを見つめるヴィラスの体にノイズのようなようなものが奔った気がした。 チラつくように見えたのは。 「…………サ、メ?」 何故、そう思えたのか。 否定するように首を振って目を擦る。 再び彼女の姿を見てみれば、そこにあったのはこれまで通りのヴィラスの姿だった。 「疲れてるのかな…………?」 部活動でくたくたになってもこんなことはなかったのだが。 色々あった精神的疲労だろうか? 「満足した?」 「しタ」 それならば、もうこの塔に用はない。 ヴィラスの名に気づいた人間を待つにしても、逃げ場のない塔で待つよりは外で待てばいいだろう。 丈美としては誰か来る前に一刻も早く降りてしまいたかった。 ヴィラスの手を取って、歩き出す。 「痛っ! 強いってば。噛まないでって!」 指をかまれて思わず振り払う。 これまではたいして痛みのない甘噛みだったが、今回はよっぽど強く噛んだのか、噛まれた指に鋭い痛みがはしった。 「もう噛んだらダメだってば! 次やったら本当に怒るからね!」 痛みと溜まっていた物もあり、強めに叱りつけた。 ヴィラスは少しだけシュンとしたようにうつむく。 どこまでこの説教が届いているのか分からなかったが、そうシュンとされるとこっちが悪かったように思えてしまう。 「…………大声出してゴメン。ほら、行こう」 そう言って手を差し出す。 今度は歯ではなく、ちゃんと手で握り返された。 ※水の塔の支配者が[ヴィラス・ハーク]に書き換わりました。 この情報はマップ上から確認できます。 [F-8/水の塔/1日目・黎明] [高井 丈美] [パラメータ]:STR:B VIT:B AGI:B DEX:C LUK:C [ステータス]:健康、指に痛み [アイテム]:不明支給品×3 [GP]:10pt [プロセス] 基本行動方針:ヴィラスの保護者を探して預けたい 1.とりあえず塔の周辺で待ってみる 2.陣野先輩も探したい。 3.出来れば青山さんとも合流したい。 ※ヴィラス・ハークの正体を3歳の子供だと考えています [VRシャーク(ヴィラス・ハーク)] [パラメータ]:STR:E→D VIT:E AGI:E→D DEX:E LUK:E [ステータス]:健康、鼻が少し赤くなっている [アイテム]:不明支給品×3 [GP]:150pt [プロセス] 基本行動方針:??? 1.食べたい ※水の塔の支配権を得たことにより水属性を得て本来の力を僅かに取り戻しました 029.「楽しくなってきた」 投下順で読む 031.それは転がる岩のように 時系列順で読む 彼女の戸惑い、あるいは金魚鉢の中のサメ 高井 丈美 虎尾春氷――序章 VRシャーク
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プレイヤー名 もちゅりー わっきー すぺらんかー キャラクター名 三芳 詞陽 碧 かなで フィル・グレーム 種族 人間 狐の半妖 妖怪 性別 男 女 男 年齢 18歳 (16)歳 (16)歳 カバー 魔法使い(見習い) -------- -------- 身長 174cm (小柄) 158cm 体重 65kg 44kg 特徴:髪の色 赤 漆黒 白銀 特徴:肌の色 肌色 色白 白 特徴:瞳の色 黒 深い藍 濃紺 シャード:形状 円柱 八面 八面 シャード:彩色 青 エメラルドグリーン 白 シャード:場所 防具 衣服 ペンダント ライフパス:出自 格闘家 指導者 権力者 ライフパス:経験 悩み多き人生 大病 ディレッタント ライフパス:境遇 記憶:記憶を取り戻す 略奪:奈落に報復する 実験:虚無感 コネクション アリス:貸し 河城 にとり:同志 アリス:恩人 パチュリー:師匠 八雲 紫:秘密 博麗 霊夢:借り リグル:貸し クエスターレベル 6 6 5 使用経験点/残り経験点 45/13 40/7 20/1 クラスレベル レジェンド:3 フォックステイル:2 ミスティック:2 サイキック:2 ブラックマジシャン:2 サモナー:3 ファイター:1 ホワイトメイジ:2 -------- 加護 ガイア ツクヨミ アラカナータ ニョルド オーディン ブラギ トール イドゥン ブラギ 登場判定/コネクション 4/+6 4/+6 4/+6 体力/能力ボーナス 14/+4 9/+3 9/+3 反射/能力ボーナス 13/+4 9/+3 9/+3 知覚/能力ボーナス 12/+4 11/+3 12/+4 理知/能力ボーナス 10/+3 15/+5 15/+5 意志/能力ボーナス 12/+4 16/+5 16/+5 幸運/能力ボーナス 12/+4 13/+4 12/+4 命中/合計値 4/9 3/7 3/6 回避/合計値 4/7 3/7 3/3 魔導/合計値 3/7 4/10 4/9 抗魔/合計値 3/6 4/9 4/9 行動/合計値 7/10+1 8/13 8/8 耐久/合計値 14/29+2 9/21 9/18 最大HP 31 21 18 精神/合計値 12/28 16/33 16/30 最大MP 28 33 30 攻撃力 右:斬+15左:+ 右:殴+1左:+ 右:殴+0左:+ 防御力:物理 斬:8/刺:8/叩:7 斬:3/刺:3/叩:3 斬:3/刺:2/叩:2 防御力:魔法 炎:0/氷:0/雷:0光:0/闇:0 炎:0/氷:0/雷:0光:0/闇:0 炎:1/氷:1/雷:0光:0/闇:0 戦闘移動 16m 18m 13m 全力移動 32m 36m 26m アイテム 衣服 衣服(着物) 衣服 携帯電話 携帯電話 携帯電話 ハイポーション MPポーションx2 武装法衣 マジックバリアリング ハイMPポーション ホーリーアミュレット ラウンドシールド マジックバリアリング スクリーンリング 装飾品(花の簪) 住宅 個室・神聖 一般住宅 隠れ家 ライフスタイル 臨時収入 当主 中流家庭 財産ポイント 2 3 1 特技 運命の予感 千差万別 サモンカード 剣王の城:神将剣 綾取る夢 スペルブック クレアボワイアンス 纏う因果 マルチドロー トリックライン 地脈の輪 小悪魔の哄笑 戦士の手 ヒール パワーエンハンスド 猛攻 マジックシールド 祈念・鼓舞 サイコバリア ムーンライト 法力弾 受け継ぎし者 ライトニードル 法具所持:ホーリーアミュレット 勝利の風 ファイアアロー 高速結印 アイスブリット 羅漢法 クイック カードコンボ シールエリア ファイアランス ファインアート キュア シンパシー プレイヤー名 重力 おっけーね Ric キャラクター名 崎口 階二郎 無論斗 クリスティーナ・レセプトル 種族 元人間 人間のような人間 ホムンクルス 性別 男 男 女 年齢 39歳 (20)歳 (16)歳 カバー 里の何でも屋 -------- 永遠亭医院受付嬢 身長 172cm 165cm 150cm 体重 59kg 50kg 38kg 特徴:髪の色 黒 赤 紫がかった白 特徴:肌の色 肌色 紅っぽい肌色 白 特徴:瞳の色 黒 緋 赤 シャード:形状 涙滴 直方体 立方体 シャード:彩色 青 水 薔薇色 シャード:場所 喉仏 防具 キーホルダー ライフパス:出自 古き血族 原罪無き者 天涯孤独 ライフパス:経験 逃亡者 生ける伝説 マシンライフ ライフパス:境遇 探索:理想の追求 正義:人を救う 出会い:運命に出会う コネクション 上白沢 慧音:恩人 藤原 妹紅:同志 稗田 阿求:恩人 八雲 紫:同志 アンドラス:宿敵 八意 永琳:恩人 クエスターレベル 8 7 使用経験点/残り経験点 74/1 / 61/12 クラスレベル オーヴァーランダー:3 ルーンナイト ファイター:2 マシンヘッド:2 ファイター: スカウト:1 ガンスリンガー:3 ソードマスター: ホムンクルス:4 加護 マリーシ フレイ トール ヘルモード トール ヘイムダル フレイヤ タケミカヅチ ネルガル 登場判定/コネクション 3/+5 /+ 4/+6 体力/能力ボーナス 12/+4 /+ 15/+5 反射/能力ボーナス 15/+5 /+ 15/+5 知覚/能力ボーナス 14/+4 /+ 15/+5 理知/能力ボーナス 10/+3 /+ 7/+2 意志/能力ボーナス 11/+3 /+ 9/+3 幸運/能力ボーナス 11/+3 /+ 12/+4 命中/合計値 4/13 / 5/13 回避/合計値 4/6 / 4/12 魔導/合計値 3/8 / 3/6 抗魔/合計値 3/2 / 3/6 行動/合計値 8/16 / 7/13 耐久/合計値 12/30 / 15/36 最大HP 30 36 精神/合計値 11/20 / 9/20 最大MP 20 20 攻撃力 右:刺+22左:刺し+18両手:刺し+26 右:+左:+ 右:殴+13左:殴刺+15 防御力:物理 斬:11/刺:10/叩:8 斬:/刺:/叩: 斬:2/刺:1/叩:0 防御力:魔法 炎:6/氷:6/雷:6光:0/闇:3 炎:/氷:/雷:光:/闇: 炎:0/氷:0/雷:0光:0/闇:0 戦闘移動 21m m 18m 全力移動 63m m 36m アイテム 衣服 衣服 衣服 携帯電話 携帯電話 携帯電話 時空鞘 兎の足 フレイムブラスター MPポーションx3 PD-サブマシンガンx2 神官服 骸の鎧 プロテクションリング 小さな戦友 結界子 結界子 リボン(2個1組) ヘビィクリスタル スネイクレイド 住宅 小型施設 一般住宅 隠れ家・神聖 ライフスタイル 臨時収入 臨時収入 中流家庭 財産ポイント 2 2 1 特技 異世界の理:命中 戦士の手 戦闘技術:物理 猛攻 タイプヒューマン 感覚強化 マシンアームズ 奇襲攻撃 ハードポイント パワーチャージ 携帯許可 独立型 銃腕 バイオウェポン スナイピング バトルフォーム 異世界の技:ダブルウェポン なぎ払い クイックドロー バイオウェポン カスタマイズ ハーモナイズ 死の力 バリアシステム プレイヤー名 AUG キャラクター名 久遠 泉 種族 人間 性別 男 年齢 19歳 カバー 学生 身長 175cm 体重 57kg 特徴:髪の色 黒 特徴:肌の色 やや白い肌色 特徴:瞳の色 ダークブラウン シャード:形状 球形 シャード:彩色 千歳緑 シャード:場所 ブレスレット ライフパス:出自 聖職者 ライフパス:経験 素行不良 ライフパス:境遇 蘇生:借りを返す コネクション 博麗 霊夢:同志 クエスターレベル 5 使用経験点/残り経験点 23/7 クラスレベル ホワイトメイジ:3 サモナー:1 ミスティック:1 加護 イドゥン ブラギ アカラナータ 登場判定/コネクション 4/+6 体力/能力ボーナス 9/+3 反射/能力ボーナス 10/+3 知覚/能力ボーナス 12/+4 理知/能力ボーナス 15/+5 意志/能力ボーナス 15/+5 幸運/能力ボーナス 12/+4 命中/合計値 3/7 回避/合計値 3/5 魔導/合計値 4-1/10 抗魔/合計値 4+1/11 行動/合計値 8/10 耐久/合計値 9/18 最大HP 18 精神/合計値 15/29 最大MP 29 攻撃力 右:斬+5左:斬+5 防御力:物理 斬:3/刺:2/叩:2 防御力:魔法 炎:1/氷:1/雷:0光:0/闇:0 戦闘移動 15m 全力移動 30m アイテム 衣服(和服) 携帯電話 玉串x2(金剛剣相当) 武装法衣 MPポーション 時空鞘 天眼の帽子 四輪 住宅 小型施設・神聖 ライフスタイル 当主 財産ポイント 3 特技 ヒール マジックアーマー マジックシールド ムーンライト キュア スロウ サモンカード マルチドロー 百銀の斬撃 祈念・鼓舞 法具所持:金剛剣 法力弾 エンチャントブレイドⅡ エナジーフォース
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眼鏡を外してぐっと伸びをする。 機械と向き合うのは、余計な会話をしなくて済むので嫌いではない。が、疲れるのは対人と同じだと思う。 すっかり冷えた珈琲を片手に立ち上がると、タイミング良く人が入ってきた。 「ちょっとさー、なんかイイのないの?」 挨拶もなしに私に向かってそう言い放つこの人は、昔から苦手だ。 口には出さないけれど態度には出ているだろうので、彼女もそれは分かっているのかもしれない。 「イイの、と言いますと?」 「アイツらを一発でやつけられるような武器とかさ!そーゆーの開発すんのがお前の役目じゃん!」 小さいくせによく喚く人だ。しかも声が大きくてうるさい。私の役目はそんなものじゃありませんと反論するのも面倒なので黙っておく。 インスタント珈琲を新たにカップに注ぎ、椅子に座る。お目当てのものを探すフリをする。当然、ないのだけれど。 「でも、武器があってもいま行くのは危険かもしれませんよ?」 「なんで?」 「ここ数ヶ月で彼女たちは急成長してます。単独で乗り込むのは自殺行為かと」 私がそう言うと、彼女はドンと勢いよく机を叩いた。 「私が負けるって…?」 「違います。最近の彼女たちの動向を見る限り、成長が著しく、ハッキリ言って、だれが単独で向かっても同じ結果になります」 私の分析が気に食わないのか、彼女は苦虫を噛み潰したような顔を向ける。 だが、この分析には自信があった。 リゾナンター結成当時を知る人間は、もはや道重さゆみと田中れいなしかいない。残り8人は新人であり、おおよそ戦力とは呼べるものではなかった。 しかし、それはあくまでも数ヶ月前の話であり、過去のものだ。 いまの彼女たちの急成長は目を見張るものがある。油断してかかれば、死も避けられない。 そう考えると、先日、彼女が生きて帰ってこれたのはある意味で奇蹟だったのかもしれない。 先日彼女はリゾナンターと対峙した。相手は確か、佐藤優樹と工藤遥だと報告書には記載があった。 最初こそ優勢であったものの、途中から現れたれいなとさゆみの前に敗北、逃亡したようだ。 だから余計に、彼女は焦っているのかもしれないけれど。 「とにかくなんかないの?!」 なんか、と言われてもなあと私は頭を掻いた。 そう都合良くホイホイと武器が開発できれば苦労はしない。こちらの苦労も分かってほしいものだとパソコンを弄り始めた。 「そういえば、この前言ってたやつは?」 「この前……?」 「ほら。タイムマシンだよ」 半笑いの彼女を見て思い出した。2ヶ月ほど前、私がこの研究室にいるときに彼女は「なにつくってんの?」と聞いてきた。 だから私は素直に答えたのだ。「タイムマシン」だと。 思い切り彼女は笑い飛ばしていたから、ムッとしたのをいまでも覚えている。屈辱と言えば屈辱だった。それもまた、言わないけれど。 「できてますよ」 そうさらりと答えると彼女は勢いよく「は?!」と返した。 だから私はもういちど、今度は先ほどよりもはっきりと答えた。 「完成してますよ、タイムマシン」 その言葉は嘘ではない。実際にそれは完成していた。 私の言うことが俄かには信じられないのか、また小馬鹿にしたように笑う彼女がいる。 2ヶ月前にも言ったのだが、タイムマシンは理論上では製作可能なのだ。いままで存在しなかったのは、倫理的な問題が大きく絡んでいるだけだ。 もしくは実際には存在しているのかもしれないが、その存在が公にならない理由は、“修正力”のせいだと私は睨んでいる。確証はないけれど。 「どこにあんのさ?」 珈琲を飲む手を止めた。 人と会話中に思考に走るのは良くないなと立ち上がる。白衣の皺が目立った。そろそろ替えがほしい。 研究室の壁に設置されたボタンを押すと、奥の扉がゆっくりと開く。そこに、それはあった。 「実用型の航時機、通称タイムマシンですよ」 私の言葉に彼女は声を失った。 果たして彼女は、これが本物であるかどうかは分からないはずだが、物々しい空気を醸し出していることくらい分かるはずだ。 時間と空間の両方を超える箱舟だ。それくらいの風格がなくては困るのだが。 「……使えんの?」 「残念ながら過去にしか行けません。私の力では5年前までが限度でした」 これはほんの少しだけ、嘘が混じっている。 未来に行くことも一応は可能なのだが、問題は、現代の科学力では、片道タイムマシンにしかならない。未来へ行ったっきり、戻って来れなくなる。 それは非常にまずいので、「未来へは行けない」と断定しておく必要がある。 また、10年以上前の過去へ行っても、戻れなくなる可能性が高くなるので、5年と安全策を取る必要があった。 随分と限定的なものではあるのだが、時空を超えるというのは、それほどの力を必要とするのかと納得させられた。 「へー……」 彼女は感心しているのか、それとも疑っているのか分からないが、その機械を見つめた。 別にこれが完成したところで、私はあまり嬉しくなかった。この人を見返したかったのは事実だが、此処に戻れなくては意味がない。 もっと確実に、何千何万年の時空を超えて現在へ戻れる機械を作りたい。それにはあまりにも、私と科学が無力なのだけれど。 「じゃーさ、使って良い?」 「……」 「試乗したんでしょ?じゃ私が使っても良いじゃん」 それは強引でムチャクチャなロジックだとは思うが、使う分には構わない。 彼女はこの機械を信じたと見て良いのだろうか。まあ、どっちでも良いやと私は眼鏡をかけ直した。 「いつに行きたいんですか?」 「そーだなー。5年前まででしょ?微妙だなー」 いつの時代に行くかを考えている彼女をよそに、私は機械の点検を始める。 彼女はただ過去に行きたいだけのような気がするが、そんな理由でこの機械を動かすのは納得できない。 いちどに使うエネルギー量は飛行機やロケットの比ではない。しかも時間を遡れば遡るほどに、その量は多くなる。 貴重な往復分のエネルギー量を無駄には使いたくないと思っていると、彼女は「そーだ!」と言った。 「2年前の冬とかは?場所はー……」 場所はよく聞き取れなかったが、とりあえず私は航時機のパネルを確認する。 2年前だと使用するエネルギー量は多少は減るのでありがたい。しかし、なぜその時期なのだ? 「あの時期って、あいつら人数減って新人が入るか入らないかって揉めてたじゃん」 「その新人を叩くと?」 「てか入る前の新人をぶっ潰すよ。鞘師だっけ?あいつがいまの主戦力だけど、入る前ならド素人じゃん」 考え方がこの人らしい、と私は思った。 確かに限定的な過去にしか行けない時点で闘い方は決まってくるのだが、それをはっきり言い切るところが、この人だ。 だけど、と思う。 果たしてそれが可能かどうかは、微妙だった。 「行くのは構いませんけど、相手を殺せるかは分かりませんよ」 「はぁ?相手はガキだよ?なんの能力もないし余裕じゃん」 「そうじゃないです。歴史を変えるというのは、あなたが思っている以上に困難で凄まじいことなんです」 私が“修正力”の話をしようとしたときには、既に彼女は機械に乗り込んでいた。 人の話を聞こうとしない彼女に言っても無駄かと肩を落とし、「これだけは覚えておいて下さい」と口を出す。 「タイムリミットは3時間です。それ以上経つと戻れなくなります」 「はぁ?そんな制約もあんの?」 「あくまでもこれは限定的な航時機なんです。それまでに戻ってきてください。操作はパネルに従えば簡単ですから」 「はいはい」 彼女はそう言うと目をキラキラとさせて画面を操作する。 本当に分かっているのか甚だ疑問だが、もう私はなにも言わずに機械から離れた。時の波に呑まれては敵わない。 「じゃ、行ってくるよー!」 その声のあと、機械が光りを帯びてきた。私は慌てて眼鏡を外し、サングラスをかけ直す。 時流がぼんやりと見え、航時機の周囲の時空が歪んでいるのが分かる。別のモニターを見ながら、エネルギー量を確認する。 小声で「take off」と呟くと、光が世界を満たし、直後に激しい耳鳴りが襲い掛かってきた。 数秒後、いままで目の前に存在していた機械は、彼女とともに忽然と姿を消した。どうやら無事に「飛んだ」らしい。 「へー。行かせたんだ」 その声に振り返ると、そこには「氷の魔女」とリゾナンターには呼ばれている彼女が立っていた。 私は肩を竦め「はい」と答えると、彼女は「なんで?」と返した。 「良いの?“修正力”の話、してないんじゃん?」 「……あくまでも仮定の話ですから」 「でもさ、私は結構あり得ると思うんだよね、“歴史の修正力”ってやつ」 彼女はそう言って椅子に座り、いままで航時機があった空間を見た。 「実際どうなるかは、あの人の口から聞けば良いことですから」 「フフ、それもそっか。楽しみだね、帰ってくるの。帰って来れたら、の話だけど」 そうして彼女は笑ってくるりと椅子を回転させた。 果たして、歴史は何処まで彼女の行動を赦すのか、私自身、興味があった。 ------- 「里保っ、里保ー!」 友人の声に私はハッと目を覚ました。 どうやらまた眠っていたらしい。目をごしごしと擦り「ごめん、なに?」と聞くと、彼女は深くため息をついた。 「授業終わってるよ、帰ろ」 「え。うそ?」 外はもう真っ暗だった。時計を見ると現在18時37分。うわー、また寝すぎたと立ち上がる。 塾に来て勉強しているのになにやってるんだろと落ち込んだのも束の間、「里保、最近だいじょうぶ?」と友人に聞かれた。 「また変な夢見た?」 「んー…うん。まあ……」 椅子に掛けていたコートを羽織り、鞄を持って友人と並んで教室をあとにした。 外へ出ると冬特有の空っ風が身に突き刺さり、マフラーで顔を隠す。これだから冬は苦手だ。 「大したことじゃないよ」 「いや、大したことだって。暗闇に里保が独りでいて、『求めよ』なんて言うんでしょ?」 友人の言葉に私は曖昧に笑った。 私がその夢を見始めたのは1ヶ月ほど前のことだった。 夢の中の私は暗闇に独りで佇んでいた。それは妙にリアルな夢で、哀しいとか冷たいとか、そういう感覚も分かるものだった。 暗闇を歩き続けるが出口はなく、私は途方に暮れて下を向き、泣き出しそうになる。そんなとき、決まって呼ぶ声がするのだ。 ―――光を求めよ。そのチカラを解き放て。己を信じよ だれの声か、よく分からずに私が顔を上げると、闇は崩壊し、光が射し込んだ。 あまりの眩しさに目を細めると、そこにはだれかが立っている。先日漸く人数を数えられたが、全部で9人だった。 しかし不思議なことに、5人は真っ直ぐにこちらを見ているが、4人は背を向けつつ、微かに振り返っていた。 その瞳がなにを語っているのかは分からない。真ん中に立った人がこちらに手を伸ばしていたが、私が取ろうとするといつも目が覚める。 「求めよ、なんて数学かっつーの」 彼女の言葉にまた私は笑う。 確かに、あの夢の言葉がなにを意味しているのか、そして9人の女性たちがだれなのか、私には分からない。 そこであれ?と思い、そしてハッとする。今日の夢でまた分かったことがあった。あの9人は皆、女性なのだ。 だが結局、情報はそれだけで真実は分からない。予知夢、なんていうものを私は信じないけれど、なぜかあの夢を見ると、決まって祖父の言葉を思い出す。 ―――光在るところに闇は在る。だが、闇在るところに必ず光も在る 晩年、祖父はよく私にそう言い聞かせていた。 床の間に飾ってある日本刀をゆっくりと鞘から引き抜き、その刀身をじっと睨みつける姿は、いつもの優しい祖父からは考えられないものだった。 なぜ祖父がそんな話をするのか、私には分からなかった。そして、この夢を見るたびに祖父の言葉を思い出す理由も、分からなかった。 「じゃ、また明日ね里保!」 「あ、うん。ありがとね、心配してくれて」 「いいっていいって。じゃあ、ちゃんと寝るんだよー」 いつの間に分かれ道に来ていたのか、彼女は私に手を振って背を向けた。 随分心配をかけてしまっているのだなと反省しつつ、私も帰路へ着く。 それにしても、寒い。冬は嫌いだ。寒いのは嫌いだ。でも10日後にやって来るクリスマスは好きだ。矛盾だ。良いや。 思考までも凍らないように、私はそうして無駄なことを考えつつ歩く。 そのまま人気のない路地裏に入った瞬間だった。 自分の遥か上空に、なにかイヤなものを感じた。とてつもなくイヤなその感じに背筋は凍り、思わず立ち止まって見上げる。 暗闇が広がる夜の空から、それは降ってきた。 思わず身を引くと、それは私のほんの数メートル先に着地した。 「みーっけ!やっぱあいつ凄いな、ホントに飛んできたんじゃん!」 声の主が“それ”だと気付いたのはそのときだった。高さから判別するに、女性だろう。 随分と体の小さい女性だが、なぜか、彼女の発するオーラは圧倒的なもので、思わずもう一歩引く。 というか、何処から落ちてきた? 「鞘師里保だよね?そーだよね!時間ないから本題いくね!」 実に楽しそうに、まるでマシンガンのように言葉を発する彼女に再び一歩引いた。 自分の心にずかずかと土足で入ってくるような人はどうも苦手だ。だが、この人はそれ以上に苦手だ。 なにか、判断はできないけれど、とてつもなくイヤな“なにか”を感じる。直感が教える。この人は、普通ではないと。 実際、何処からか落ちてきている時点で、普通ではないのだけれど。 「鞘師里保!いま此処で死ね!」 ああ、やっぱり普通じゃない、なんて冷静に思ってる場合じゃなくなったのは、その人が明らかに拳銃を手にしていたからだ。 そしてそれを、迷うことなく私に向けていたからだ。 気付いたときには駆け出していた。 まるで運動会の短距離走、審判のスタートの合図を聞いた直後のように、その人に背を向けて走り出した。 後ろから声が追い駆けてくる。ヤバい、ヤバい、ヤバい。逃げろ、逃げろ、逃げろ! 「待てこらぁ!」 甲高い声が夜の閑静な住宅街に響く。もう寝ている家庭も多いだろうのにごめんなさい。 え。てかあの人だれ?なんで追われてんの私?なんで名前知ってたの?あの拳銃本物?映画の撮影?なに?人違い? 思考を必死に走らせるけれど、答えは出てこない。ただ、その人は迷うことなく私を追い駆けてきた。たぶん、只事ではない。 私は速度を落とさずに振り返る。彼女は薄ら笑いを浮かべながら拳銃を構えた。 撃たれると瞬間的に確信した直後、「ぱん」と高い音が響いた。間髪入れずに地面が抉れる。銃弾が突き刺さったのだと気付き、ぞわぞわと悪寒が走る。 目を見開き、必死に走る。長い髪とマフラーが揺れる。 右に曲がり、大通りに出た。もうすぐ19時とはいえ、師走の平日、まだ人は多い。週の真ん中だからか、コートを着込んだサラリーマンが目立った。 「な、なんなのあれ……」 人混みの中、私はゆっくりと速度を落とした。息を整えると同時に、散乱した思考を必死に整理する。 あの人はだれだ?なぜ私を撃った?なぜ私の名前を知っていた? 出てくる疑問の柱はこの3本だ。いちばん知るべき情報は、真ん中の「なぜ撃ったか」というものだ。 いままで12年間生きてきて、人にそこそこの迷惑はかけてきたかもしれないが、命を狙われる理由はない。 「だーめだよ逃げちゃ」 思考が止まったのは、目の前に彼女が現れたからだ。 人混みの数メートル先で、金髪の短い髪を揺らした彼女は銃を構えた。 撃つのか?此処で?と思ったが、気付いたときには左へと駆け出していた。 直後、銃声が鳴り、悲鳴が聞こえた。撃ったのだと、理解する。振り返らず、私は走る。 「きゅ、救急車!」 「どうした?」 「え、なに、なにがあった?」 「うるさいねー、あれ」 様々な声が聞こえてくるのを無視して、走る。 撃ったんだ。あの人混みで。私じゃない人を。関係ないのに。 「鞘師が逃げたからだよ?」 すぐ後ろからの声に振り返る。既に彼女は1メートル後ろまで迫っていて、銃口を向けていた。 撃たれるのが怖くて、私は反射的に鞄を投げつけた。 「うわっ!?」 見事にそれは彼女にヒットし、私はまた走る。 離れよう。此処じゃ人が多すぎる。これ以上だれかを巻き込んではいけないと、私は変な正義感を覚えていた。 「クソガキぃ!!」 声が遠くなるが、どうせすぐに追いつかれる。いまはとにかく、逃げるしかない。 逃げてどうする?どうするのが正解だ?警察に行くべきか?なんて説明する?拳銃を持った金髪チビ女が撃ってきますとでも? 「どうしよう……どうしよう……」 暗い路地裏を、必死に走り抜ける。 なにをするべきか、何処へ行くべきか、なにも妙案が思い浮かばない。それどころか最悪の結末が頭をよぎる。 必死にだいじょうぶだと言い聞かせようとするが、全く効果はない。脚が震える。寒さのせいではない。 圧倒的な死の恐怖に怯える。どうしてこんな目に遭うのだ?ドッキリなのか?ああ、そうか。同級生の仕掛けたドッキリなのだ。 何処かでカメラを回して私が怖がる様子を録画してからかっているのだ。そうだ、そうだ、そうに違いない…… 「そうだよね……?」 私はゆっくりと速度を落とし、立ち止まった。膝に手をついて息を整える。震える体をぎゅうと抱きしめながらズルズルと蹲った。 肯定してくれる人はだれもいない。否定するだけの材料は大量にある。どうすべきか、分からない。イヤだ。怖い。泣きたい。帰りたい。 ―――光を求めよ そのときまた、声がした。私は顔を上げる。これもまた、夢なのだろうかと思うが、目の前にはあの9人はいない。 現実なのか夢なのか、ハッキリとした確証は得られなかったが、私は立ち上がり、また走り出す。 ―――光在るところに闇は在る。だが、闇在るところに必ず光も在る 祖父の言葉が頭をよぎる。もし仮に、あの9人が光だとすれば、私を追いかけるあの女の人は闇なのだろうか。 随分と勝手な憶測だけれど、あの9人から感じる不思議な温かさを、私は直感的に「光」だと認識していた。 光の射す方に彼女たちはいた。その瞳は見えなかったけれど、何処となく、笑っていた気がした。 彼女たちは何者なのだろう?私を追い駆け回すあの人と関係があるのだろうか。 「何処だー!さっさと出て来ーい!」 声がまた聞こえた。今度は現実の声で私は振り返らずに速度を上げた。 「出て来ないと所構わず撃つぞ!」 一瞬だけ、振り返りたくなる欲望が顔を出したが、必死に堪える。往来で銃を放った彼女だ。恐らく嘘ではあるまい。だが、止まるわけにはいかない。 膝と心臓が痛み悲鳴を上げるが、なんとか抑えこんで走り続けると、いつの間にか学校まで来ていた。 ほとんどなにも考えずにフェンスを攀じ登る。マフラーが引っかかって邪魔だった。もう寒くはないが、落とすとバレるので噛んで登る。 フェンスを越え、グラウンドに着地し、また走る。夜の校舎は不気味だが、文句を言う場合ではない。 なぜ袋小路ともいえる此処に逃げ込んだのかと自問し、なにか武器があるはずだと自答する。 「闘う気かよ……」 私は思わず口をついた。私はどうやら、銃を持った相手に対決を挑む気らしい。 勝てる見込みもない闘いなのになと苦笑しながら玄関を開けようとする。が、開かない。当然と言えば当然だ。戸締りしていない学校なんてない。 考えている暇はない。私は迂回し、武道場を目指す。 「さーやーしぃ!」 声の主がグラウンドまで来たようだ。武道場の扉を開けようとする。が、此処も閉まっている。 此処になら木刀や竹刀があると踏んでいたのにと下唇を噛むが、すぐ傍にあったゴミ捨て場に目をやる。 古びたデッキブラシを手に取り、ブラシの部分を取り外した。ないよりマシだと柄をくるくると振り回す。 「見つけたぁ!」 女が、来た。 私は迷うことなく、すぐさま左脚で踏み込んだ。 「うわぁぁぁ!!」 気合を入れるように、恐怖を振り払うように、私は叫び、デッキブラシの柄を振り翳した。 まさか向かってくると思っていなかったのか、虚を突かれた彼女は一瞬だけ躊躇する。私は迷わずに振り下ろした。 彼女が反射的に避ける。しかし、柄はしっかりと左肩を捉えていた。一本、とは言えないが、悪くはない一撃だった。 「な、に、すんだよぉ!」 彼女が右脚を蹴り上げてきたので、私は距離を取る。 間合いを取りつつ、柄の切っ先を上げ、息を整える。心臓が走って落ち着かない。短く吐かれた息が重い。肩が大きく上下する。 「生意気だなぁー…大人しく殺されろっつーの」 痛むのか、殴られた左肩を押さえながら女は言った。 「なんで、私を、狙うんですか?」 「はぁ?決まってんじゃん……って、お前はまだ知らないか。とにかくさぁ、邪魔なの。ウチらにとって」 女はやれやれと言わんばかりに両手を広げて話す。 「お前が此処で死ねばそれでいーの。私も時間ないからさ。さっさと死んでよ」 「嫌です。り、理由も分かんないのに、殺されるなんて…」 「あー……面倒だな。んじゃ理由言えば死んでくれる?」 冗談じゃない。まだやりたいこともたくさんあるのに。 全国のご当地サイダーを飲み歩くとか、好きなものを思い切り食べるとか、恋とか、やりたいことは山積みなのに。 だが、彼女の頭には私を殺すことしか頭にないようだ。 「あのね、鞘師。鞘師は未来に害を及ぼす悪党なの。分かる?世界を滅ぼす存在なの。だから私が未来から来たの。オッケー?」 彼女の口から出た言葉に私は眉を顰める。 拳銃なんて非現実的なものを見たあとだったから、ある程度のものは受け入れられると思ったが、全くその言葉は受け入れられない。 なにを言っているのだ?私が世界を滅ぼす存在?未来から来た?なんの話だ? 「キャハハ!ビビってんじゃんうけるー!」 「……嘘、なんですね」 「半分はねー。まあ死んじゃうのに教えてもしょうがないじゃん」 半分、ということは半分ホントなの?嘘でしょ?なんて思っても仕方ない。 問題は銃からどう逃げるかということだ。弾の速度なんて知らないけれど、引き鉄を引いた直後に避けてもたぶん当たってしまう。 かと言って背中を向けては撃って下さいと言っているようなもので、やはり、撃たれる前にこちらから仕掛けるべきだろうか。 ああ、もう考えてる暇ない。さっき一撃当たったんだし、行くのが筋でしょ。 「勝てる、とか思ってる?」 私が踏み込もうとした直前に言葉が発せられ、直後、私の体は数メートル後退した。 というよりも、吹き飛ばされた。 感じたことのない風圧が、私の体を押し戻していた。 「ってぇ!」 「キャハハハ!無様だねー!」 背中を武道場の扉に打ち付けた。 目を開くと、木の葉が舞っていることに気付く。漫画なんかでよく見る光景だ。いよいよこれが現実か疑わしくなる。 だが、女が私の腹部を思い切り蹴り上げたことで生じたその痛みは本物だった。 「ねえねえ、痛い?痛い?」 もういちど、蹴り上げる。あまりの痛みに赤子のように体を丸めた。 だが女はやめようとはせず、再び蹴った。二度、三度、四度と踏み付けられる。痛みが全身を襲うが、動けない。 「すっげー気持ちいい!だっせー!キャハハハ!」 女はひとしきり私の体を蹴ったあと、しゃがみ込んだ。 痛みに襲われながら息を吐くと、ぐいと髪を引っ張り上げられた。強制的に女と目が合う。 実に楽しそうに笑う女だ。とにかく、腹が立つ。恐怖よりそれが先行する。しかし、睨み返すだけの気力しかなかった。 「怖い?ねえ、怖い?怖いよねー。死んじゃうんだよもうすぐ!」 女は左手で私の髪を掴んだまま、顎に拳銃をぐりぐりと押し付けた。地味に痛い。ムカつく。 「どうする?まずは右腕撃っちゃう?そいで次は左腕ね。そして右脚って順々に撃ってあげるよ」 ニヤニヤと笑う女は勝利を確信しているようだ。 私は黙って睨み返しながら祖父、いや、「師範」の言葉を反芻する。 剣道には「乾坤一擲」という言葉がある。最後のその瞬間まで、生を諦めてはならない。 「じゃあ、撃っちゃ―――!?」 瞬間、私は握っていたデッキブラシの柄を女の脇腹に突き立てた。 油断しきっていた女の顔が苦痛に歪み、髪を掴んでいた手が緩む。 この機を逃さずに私は悲鳴を上げる体に耳を塞ぎ、再び柄を振り下ろした。 「ぐはっ!」 ほぼ同じ箇所にもう一撃を喰らわせたあと、デッキブラシは折れた。次の武器を探す暇はない。私はまた走り出す。 「こ……クソガキ死ねぇ!!」 銃声のあと、私の右脹脛に熱と痛みが同時に襲ってきた。撃ち抜かれたのだと気付いたが立ち止まることなく私は走る。 とはいえその状態で長く走れるはずもなく、再び無様に地に伏した。指先を必死に動かして生きようとする。 全身を痛みが駆け巡るなか、両腕に力を込め、地面を這うとフェンスに突き当たった。鼻を掠めた塩素の匂いにプールだと気付く。さすがにこのフェンスはもう登れない。 「随分舐めてくれた……ねぇ!」 「ごふっ!」 半分に折れた柄を脇腹に突き立てられた。内臓が破裂したのか喉を血がせり上がってきて吐いた。 「もう遊びはここまでだよ」 女は真っ直ぐに私に銃を向けた。先を失くした柄を、私はそれでも離さない。これを振り回したところで、相手に届くことはないけれど。 ああ、さすがにもう無理だと、私は死を悟った。武器は壊れ、体力もなく、相手は銃を持っている。勝ち目はもうない。死ぬしかない。 死ぬ。死ぬ。死ぬ。死んでしまう――― ―――光を求めよ そこでまた声がした。 光?光ってなんだよ?あなただれなの?私は死ぬの?ねえ、だれ?だれか… ねえ、ねえ、だれか――― ―――光を求めよ。そのチカラを解き放て。己を信じよ 信じる、か。そういえば「師範」も言ってたね。最後は信念だと。人の想いが時代を動かすのだと。 ああ、もう…… 「……たくない……」 「え?なんだって?」 小声で呟く声を女が聞き返す。別にお前に言ったわけじゃない。だけど私は呟いた。 聞こえようが聞こえまいがどうでも良い。笑われたっていいや。その笑い声は不快だけどさ。やっぱこれが、私の本心だから。 「―――死にたくない!」 女の笑い声が降ってくるだろうと覚悟した。が、女は笑わない。 なぜだろう?と思いながら目を開けると、女はあらぬ方向を見ていた。正確に言えば、私の後方、ちょうど、プールの方だ。 「な……なんで……?」 なにが?と聞き返そうとしたが声にはならない。 私がもういちど、まるで呪文のように「死にたくない」と呟くと、女はじりっと後退した。 瞬間、女のそのすぐ左になにかが勢いよく突き刺さった。撥ね返り、頬に付着したそれは、水だった。え、水?なんで? 「だって、まだ……」 なにに女が怯えているのか私には理解できなかった。 私は無意識のうちに強く柄を握りしめると、再び地面に突き刺さる。女は慌てて避けた。また撥ね返る。それは、水。 なんで水?と思いながらも、痛む腹を押さえフェンスを掴み、ゆっくりと体を起こす。 「な、なんで使えるんだ?」 使える?なにを? 「水……なんで水が……」 水?と私は猛烈に鼻を突いた塩素の匂いに誘われるように振り返る。 先ほどよりも強くなったそれの正体が分かったとき、私は目を見開いた。 半年以上使用されずに濁りきったプールの水はもはや緑色だった。 そんな緑の水が高々と立っていた。そう、文字通り、立っていたのだ。まるで竜巻のように円柱を模っている。 「あ、あ、あ……在り得ない……うわあああ!!」 女は狂乱したように水に向かって銃を放った。だが、所詮相手は水。弾は通過するだけに終わる。 そのうち弾が切れたのか、ガキンという金属音のあと、引き鉄は止まった。だが女の震えは止まらない。 私はただぼんやりと水の円柱を見ていた。どういうわけか、私にはこの水を「動かせる」と確信していた。 恐怖も驚愕もしない。どうしてだろう。なんだか、優しい感じがする。 「水―――」 私はひとつ呟くと、瞬間に、小さいころに海で溺れた記憶が甦り、洪水のように脳を駆け巡った。 深く海に沈み、死の深淵に包まれる中、私は“なにか”に押されるように、水面に戻された。 どうしてそれを思い出したのか、分からない。だが、円柱を模ったプールの水は、不思議と怖くないことだけは理解していた。 私は女を見据える。女はびくっと肩を震わせた。 黙って柄を握り直す。距離も、長さも、圧倒的に足りないのに、私は構えた。 ゆっくりと振り上げる。剣道の基本動作、中段の構えから上段の構えへの意向。 女は「ひいいっ!」と逃げる。背を向けて走り出すが私は追わない。そのまま一気に振り下ろした。 瞬間、水が、走った。 水砲とも呼ぶべきそれは真っ直ぐに女に向かって突き刺さる。そのまま女を勢いよく押し流し、地面に伏せさせた。塩素の匂いが鼻をつく。 一気に押し寄せた疲労に私はズルズルと跪いた。 「はぁっ……はぁっ……はっ」 肩で息をしながら振り返る。既に円柱の水はなく、ただのプールに戻っていた。 次に女に攻撃する際には別の武器が必要だった。だが、もう立ち上がる気力はない。この折れたブラシだけでなんとかするしかない。 私がそんなことを考えていると女がゆっくりと立ち上がろうとしていた。 まずい、まだ体力が回復してないのに…と考えているときだった。女の体がゆっくりと光り始めた。 「え……?」 突然のことに私は眉を顰めるが、それは女も同じようだった。 光り始めた体を見ながら「なんで?ねえなんで?!まだ勝負はついてない!」とだれかに叫んでいる。 だが、そのだれかは答えない。大きな衝撃波のあと、女の体はそのまま消滅した。グラウンドが一部陥没している。 なにが起きたのか、全く理解できなかった。 なぜ女が急に消えたのか?なぜ光を帯びたのか?いや、そんなことよりも…… 「なんで……水が……?」 私はもういちど振り返ろうとするがそんな力はもうなかった。そのまま無様に地面に伏す。 短く息を吐きながら、未だに血が流れる脚をぼんやりと見た。痛みはないが、痺れている。 いまさらになって体が震えてきた。相当怖かったようだ。それは当然なのだけれど。 このまま死ぬのだろうか、なんて思ったところで私はゆっくりと首を振って、もういちど、強く叫んだ。 「死にたくないっ―――!」 そのとき、冬の風が吹いた。 冷たい風を覚悟したのに、肌を撫でたのは優しくて温かい風だった。 春を思わせるような心地良い南風は、私の全身を包み込む。そのまま私は目を閉じ、深く深く、闇の中に落ちて行った。 ------- 「里保っ、里保ー!」 友人の声に私はハッと目を覚ました。 どうやらまた眠っていたらしい。目をごしごしと擦り「ごめん、なに?」と聞くと、彼女は深くため息をついた。 「授業終わってるよ、帰ろ」 「え。うそ?」 外はもう真っ暗だった。時計を見ると現在21時47分。うわー、また寝すぎたと立ち上がる。 塾に来て勉強しているのになにやってるんだろと落ち込んだのも束の間、「里保、最近だいじょうぶ?」と友人に聞かれた。 「また変な夢見た?」 「んー…うん。まあ……」 椅子に掛けていたコートを羽織り、鞄を持って友人と並んで教室をあとにした。 外へ出ると冬特有の空っ風が身に突き刺さり、マフラーで顔を隠す。これだから冬は苦手だ。 「大したことじゃないよ」 「いや、大したことだって。暗闇に里保が独りでいて、『求めよ』なんて言うんでしょ?」 友人の言葉に私は曖昧に笑ったが、あれ?となにかが引っかかった。 いや、確かにその夢も見たのだけれど、なにか他の夢も見ていた気がする。 もっと怖くて、だけど優しい夢を見たような……なんだろう?思い出せない。 「求めよ、なんて数学かっつーの」 彼女の言葉にまた私は笑う。 まあ良いや。夢は夢だ。現実ではない。私は冬の風を感じながら友人とふたりで夜の街を歩き出した。 コートの襟を立てると、どういうわけか、プール特有の塩素の匂いが微かに香った気がした。 ------- 「危なかったですよ、あと少しで帰れないところでした」 私がそう言いつつ手当てをしようとすると、彼女はその手を振り払って叫んだ。 「なんだよ!2年前に飛んだんじゃないの?!なんであいつ……“水限定念動力(アクアキネシス)”使えるんだよ!」 私も正直驚いた。 彼女の行動はこっそり忍ばせていた盗聴器とカメラで監視していたため、彼女の行った2年前でなにが起きたかは把握している。 しかし、想定外だった。まさか鞘師里保が己の能力を解放できたとは…… 「ま、それが“歴史の修正力”ってやつじゃないの?」 「はぁ?なに言ってんの?」 その場にいた氷の魔女の軽口に彼女は噛みつく。ここで喧嘩に発展されると面倒だったので私は口を挟んだ。 「“歴史の修正力”―――つまり、タイムパラドックスを防ぐために及ぼす歴史の力ですよ」 「……なによ、それ」 ひとつ息を吐いて、私はホワイトボードに文字を書いて説明を始めた。 「簡単に言うとこういうことです」 「私」という存在が此処に居るのは、私の両親が私を産んだからである。 では、過去に行き、私の両親が私を産む前に死んでしまったら?私という存在は、存在しなくなる。それが、タイムパラドックス。 しかし、歴史とはそう容易いものではない。 積み重ねられてきた過去のブロックは、そう簡単に“存在”を消すことを赦さない。 理論的に、航時機は存在可能な代物なのに、なぜ存在しない、もしくはその存在が隠匿されているか。 それは、航時機が存在したとしても、歴史に影響を及ぼすほどの大きな力にはならないから。ただ歴史を傍観する以外に方法がないからだと私は考えている。 航時機を利用し、たとえば戦国武将、織田信長を本能寺の変から救出しようとすると、豊臣秀吉は天下を統一せず、その後の歴史に大きな変化をもたらす。 だが、1582年から航時機を使用する今日まで積み重ねてきた500年以上の歴史はその崩壊を赦さない。 ブロックを崩すことなく元に戻す方法、それが“歴史の修正力”だ。 「歴史はそう簡単に、変わることを赦さないんですよ」 「……じゃあ、鞘師が能力を使えたのは偶然ってこと?」 「恐らくそうでしょう。鞘師里保が死ねば、いまのリゾナンターは存在しない。それを歴史は赦さなかった、ということですかね」 「でも、あいつがいま能力使えたらそれこそ歴史が…」 「だから、“時の風”が吹くんですよ」 “歴史の修正力”は確かに絶大なものだ。その修正によって起こった歪をただす力、それを“時の風”と私は呼んでいる。 恐らく、いまの鞘師里保、正確に言えば2年前の鞘師里保は、彼女に襲われた記憶はもう持っていない。 自分の能力が解放されたのは、リゾナンターに入ってからだと鞘師里保は考えているはずだ。 それに伴って、今回の一件に深く関係した人間の記憶も改竄されているだろう。今日の出来事は、あの時代ではなかったことになっている。 「“時の風”に吹かれることで、その記憶を消し、日常に戻るんです。これで歴史にはなんの影響も持たない」 「……それ知ってて私を行かせたの?!」 「歴史の力を侮らない方が良いとは言いましたよ。でも、能力が解放されるなんて想像は尽きませんでしたけど」 私の言葉に彼女はまた苦虫を噛み潰したような顔をする。 氷の魔女は私の後ろで笑いをこらえているが、その口角は上がっているので恐らくバレているだろう。 それも気に食わないのか、彼女は頭を掻き毟り、痛む体のまま研究室を出て行った。 「つかこっちからも操作できんだね」 彼女が出て行ったのを確認してから、氷の魔女は私の捜査していたモニターを見た。 「万が一、戻って来れなくなると困りますから……」 私はひとつ息を吐いて航時機の点検を始めた。 しかし、“歴史の修正力”も“時の風”も恐ろしいものだ。あっさりと鞘師里保の能力を解放させた。 この分だと、航時機が一般化するのなんて本当に夢のまた夢なのだろうなと私はぼんやり思った。 「大事なんだねー、あんな奴のことが」 彼女はそうして皮肉を言ったので、私は振り返らずに答えた。 「大事なのは、タイムマシンの方ですよ。2年前に置き去りにしたら、“歴史の修正力”のせいで壊れちゃいますから」 私の返答に彼女はとうとう堪えられなくなったのか、手を叩いて笑った。
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ケメル・ゼーの廃墟 ロナルド・ノードセン 著 帝都協会で浴びた拍手喝采がまだ耳に残っているうちから、私はもうモロウウィンドへ戻る決心をしていた。帝都での贅沢な暮らしが名残惜しくないと言ったら嘘になるが、ラレド・マカイから持ち帰った驚きなど、モロウウィンドにあるドワーフの遺跡の上っ面をなぞっただけのものでしかない。あそこにはまだ目を見張るような宝が埋もれていて、掘り起こされるのを待っているのだ。出発しないわけにはいかなかった。それに、哀れなバナーマンの示唆に富む前例もあった。二十年前、ブラック・マーシュで一度きりの発掘を行い、今になってもそのおこぼれで食いつないでいるような男になるつもりなどない。私はそう誓ったのだ。 女王の手紙を持っていたので、今回ばかりは帝都政府も全面的に協力してくれそうだった。もう、迷信深い地元民に襲われる心配もない。が、いったい次はどこを探せばいいのだろう? ケメル・ゼーの廃墟は妥当な選択だった。ラレド・マカイのように廃墟にたどりつくまでが苦しいということもない。“崖の街”としても知られるケメル・ゼーはヴァーデンフェル断層の本土側にあって、断崖絶壁の海岸線のたもとに広がっている。ヴァーデンフェルの東海岸からなら海路で訪れるのが一般的だが、近くの村から陸をとっても、余計な苦労を背負い込むことなくたどりつける。 探検チームがセイダ・ニーンに集結すると、こうした文明の遅れた土地での作業につきものの面倒をうんざりするほど抱えたまま、私たちは廃墟にほど近いマログの村へと出発した。発掘の作業員はその村で雇えばいいだろう。私の通訳を担当するツエン・パナイはダークエルフらしからぬ陽気な男で、地元の軍司令官から推薦されてセイダ・ニーンで雇ったのだった。パナイいわく、ケメル・ゼーを熟知しているマログの村人たちは、祖先の代からあの廃墟を荒らしているらしい。ついでだが、テン・ペニー(その場でつけた彼のあだ名で、本人も気に入っていた)は雇っても後悔させない男で、モロウウィンドの原野への似たような探検を考えている同僚がいたら、ためらうことなく彼を推薦しようと思う。 マログ村で最初の困難にぶつかった。控えめで気品のある村の長は快く協力してくれそうだったが、村の僧侶(この地で信仰されている、モロウウィンドの王宮に住んでいるという法廷なる存在を崇拝するくだらない宗教の代表者)が廃墟の発掘に対して激しく抗議してきたのだ。この僧侶は、この発掘が“宗教的禁忌”にあたると訴えかけることで村人を懐柔しにかかったが、私が女王の手紙を彼の鼻先で振ってみせ、セイダ・ニーンに詰めている軍司令官の友人のことを口に出すと、たちまち静かになった。この猿芝居が、村人が画策した賃上げ交渉の基本戦術であることは疑いようがない。とにもかくにも、僧侶は何やらつぶやきながら歩き去った。外国からやってきた魔性のリーダーに呪いをかけているのだろう。ほどなくして、なんとしても作業員の職につきたいという顔をした村人が列を成した。 契約条件や支給品などの委細を煮つめるのは助手に任せておいて、私とアルム師は廃墟まで馬を駆った。陸路から廃墟へ向かうには、断崖の壁面に沿って上からうねうねと伸びている小道を通らなければならず、一歩間違えば、眼下のいかつい岩場で渦巻いている海へと転がり落ちていくことになる。街への入口はもともと北東にあったに違いない。はるか昔、赤き山の噴火によってこの度肝を抜かれる火口が生まれたときに、それは海面下に沈んでしまっていたのだが。足場のぐらつく小道を首尾よく突破すると、大部屋のような場所へやってきた。片側は吹き抜けになっていて大空が広がり、もう片側は闇の中へ消えていた。歩を進めていくと、鉄くずの山をブーツで踏みつけた。古代遺跡で見かける陶片のように、ドワーフの廃墟ではお馴染みのものだ。略奪者たちはきっとこの場所で、遺跡の奥から見つけてきたドワーフ製の機械から金になる外殻だけをはぎ取り、無駄な部品を置き去りにしたのだろう。そのほうが、機械を分解しないまま崖のてっぺんまで運ぶよりはずっと楽だろう。何人もの戦士が知らず知らずのうちにドワーフ製の機械の一部を背負いながらタムリエルを歩きまわっている姿が浮かんできて、私はほくそ笑んだ。もちろん、それがたいていの“ドワーフの鎧”の正体、つまり、古代の機械人間の強化外骨格にすぎないのだ。完全な姿の機械であったら、どのくらいの値がつくのだろうと思い、ふと我に返った。大広間の床を埋めつくす鉄くずの量から判断するに、この廃墟がドワーフ製の機械装置の宝庫であることは確実だろう、いや、確実だったろう。何世紀もかけて、略奪者はここを荒らしまくってきた。外殻だけでも、鎧として売れば、まとまった金になるのだ。たいていのドワーフの鎧は雑多な部品の寄せ集めのため、かさばって扱いにくいというのが通説だ。が、完全な一体の機械から作られる鎧一式なら、金に換えられる以上の価値があるだろう。すべての部品が滑らかに重なり合い、そのいかつさがほとんど気にならなくなるのだから。もちろん、どんなに価値があろうとも、見つけた鎧を壊すつもりなど毛頭ない。科学的研究のために協会に持ち帰るつもりだった。今度の講義で鎧をお披露目したときの同僚たちの驚嘆ぶりを思い描いて、私はまた微笑んだ。 私は足元の鉄くずの山から、捨てられた歯車を拾った。まだ新品のように輝いていた。ドワーフ製の合金は時が経っても腐食しない。目の前に横たわる空洞の迷宮にはいったいどんな秘密が眠ったままになっているのだろうか。略奪者の企みを寄せつけないまま、気の遠くなるような時間を経て再び光のもとにさらされ、輝く時を待っている。私のことを待っている。私が見つけるためだけにとどまっている。急き立てるようにアルム師を手で呼んでから、私は暗がりに歩を進めた。 アルム師、テン・ペニー、そして私は数日間かけて廃墟を探検した。助手が崖のてっぺんに野営地を設営し、村から物質や装備品を運んできてくれた。私は実りの多そうな場所が見つかればいつでも発掘に取りかかるつもりでいた。廃墟内の前人未到の場所へと続く、略奪者の触れていない封鎖された通路や廊下が見つかれば。 そういった場所はすでにふたつほど見つけていたが、すぐに、何本かの曲がりくねった通路が封鎖地点を迂回して背後にある部屋へと通じていることがわかった。こうした外縁地域にも略奪者の手は伸びており、何世紀にもわたる発掘でほとんど秘宝は奪われていたものの、目に映るものすべてに考古学者の興味はそそられた。はるか昔の地殻変動で蝶番がふっ飛んでしまった巨大な青銅の扉の背後に、壮麗な彫刻が壁に施された大部屋を発見した。疲れ果てていたテン・ペニーでさえも目を見張っていた。彼はモロウウィンドのドワーフの廃墟なら完全踏破したと豪語していたのだが。壁の彫刻はなんらかの古代の儀式を描いたものらしかった。古典的なあごひげを生やしたドワーフの長老が長い列を成して横の壁を行進していた。どのドワーフも、正面の壁に彫刻された巨大な神らしきシルエットにお辞儀をしているように見えた。そのシルエットは山の火口から一歩踏み出し、煙か水蒸気の雲に飛び込もうとしていた。アルム師の話では、これまでにドワーフの宗教儀式が描かれたことはなく、とても刺激的な発見だと述べた。私は作業班に命じて、彫刻された石版を壁からはぎ取らせようとしたが、表面を傷つけることさえできなかった。詳しく調べてみると、この大部屋は手触りも見た目も石に模した金属性物質で表面加工されているため、手持ちのツールではまったく歯が立たなかったのだ。アルム師の魔法で壁を爆破してもらおうかと考えたが、彫刻そのものを破壊してしまうリスクを負うことはできず、諦めた。これらの彫刻を帝都に持ち帰りたいのはやまやまだったが、石ずりをとるだけで我慢した。協会の同僚が興味を示せば、石版を安全に取り外せるだけの知識が備わった、名人級の錬金術師のような専門家を紹介してもらえるだろう。 私は変わった部屋をもう一つ、蛇行する長い階段のてっぺんに見つけた。天井から落っこちた瓦礫をかき分けてなんとか進んだ。階段を上がりきると丸天井の部屋になっていて、大がかりな壊れた装置が中央に据えてあった。丸天井の表面のところどころに星座が描かれているのが今もまだ見てとれた。この部屋は天文台のようなもので、中央の装置はドワーフ式天体望遠鏡の残骸だろうということで、アルム師と私の意見は一致した。装置を取り外して狭い階段で運び下ろすには、完全に分解する必要があった。(だからこそこの装置は略奪者の目に留まらずに済んだのだろう)ため、ひとまずは持ち帰るのを諦めることにした。が、この天文台の存在が、この部屋がかつて地上に出ていたことを示唆していた。構造を細かく調べてみると、この部屋は堀り穿たれたわけではなく、実際の建物であることがわかった。もう一つの出口は完全に塞がれていた。崖のてっぺんから最初の部屋まで、さらにこの天文台までの深さを慎重に測定してみたところ、私たちは現在の地表から250フィート以上も地下にいることがわかった。もはや忘れられているが、赤き山の噴火はそこまで凄まじいものであったのだ。 この発見によって、私たちの意識はさらなる地下へと向けられた。古代の地表のおおよその位置がわかった今、それよりも上にあるふさがれた通路は無視してもよくなった。私の興味をとらえたのは、模様の彫られた円柱が両端に並んだ幅広の通路だった。はなはだしい落石のせいで行き止まりになっていたが、略奪者の掘ったトンネルが瓦礫の山の途中まで続いていた。発掘チームとアルム師の魔法が揃えば、先駆者が諦めた地点から作業を引き継ぐことができそうだった。ダークエルフのチームを呼んで通路を片づけさせ、ようやくケメル・ゼーの本格的な発掘にとりかかれる。私は安堵した。じきにこのブーツで、世界が始まってから一度も踏みつけられたことのない埃を巻き上げることになるのだろう。 こうした期待感に興奮しすぎたのか、私は採掘人をいささか追い立てすぎてしまったようだ。テン・ペニーの報告によると、彼らは労働時間の長さに文句をつけはじめ、こんな仕事はやってられないと口にする者までいるらしい。ダークエルフに気合を入れ直させるには鞭で脅すのが一番だというこを経験上学んでいたので、私は彼らのリーダーを鞭打って、通路が確保されるまで残りの採掘人たちを働かせた。セイダ・ニーンから数名の帝都兵を同道させたのは正解だった。採掘人たちは最初こそ渋い顔をしていたが、トンネルが貫通したさいには一日分のボーナスを与えると約束すると、意気揚々と作業に取りかかった。文明生活に慣れてしまっている読者には野蛮なやり方に聞こえるかもしれないが、こういう人種を作業に従事させるにはこうするより他はないのだ。 落石の規模は思ったよりもひどかった。結局、通路を確保するまでにほぼ二週間を要した。採掘人のつるはしが最後の穴を開けて反対側の空洞へと抜けたときには、私も彼らに混じって大喜びし、終わりよければすべてよしという意味で地元の酒をまわし飲みした(ひどい味だったが)。採掘人が向こうの部屋に進めるよう穴を広げるのを見ながら、私ははやる気持ちを抑えられなかった。この通路は古代都市の新たな階層へ続いていて、そこには消息を絶ったドワーフの残した秘法が埋まっているのだろうか。それともただの袋小路で、どこにも続いていない横道にすぎないのだろうか。私は興奮に打ち震えながら穴をくぐり抜け、その先の暗闇でしばらくしゃがんでいた、足元で砂利が擦れる音がして、あたりに鳴り響いた。大きな部屋にいるらしかった。それもかなり大きな部屋だ。私はゆっくりと立ち上がり、ランタンの覆いを取り払った。灯りが部屋を満たし、呆気に取られながら部屋を見渡した。それは想像を遥かに超える驚愕すべき光景だった。 ランタンの漏らす光が落石地点の向こうの部屋を満たしていき、私はまたもや驚きの眼差しをぐるりと投げかけた。ドワーフ製の合金の放つほのかな輝きで満ちていた。古代都市の未知の領域に足を踏み入れたのだ! 興奮のあまり心臓が早鐘を打っていた。私はあたりを見渡した。部屋はあきれるほど巨大で、天井はランタンの光が届かない闇まで突き抜けていた。部屋の奥は暗くてよく見えないが、思わせぶりな光のまたたきが、まだ見ぬ宝物の存在をほのめかしていた。両側の壁に沿って機械人間が立ち並んでいて、荒らされた様子はなかったが、奇妙な点がひとつだけあった。儀式的な意味でもあるように、その頭部が取り外されて足元に置かれていたのだ。考えられることはただひとつ。私は偉大なドワーフの貴族の墓を発見したのだ。ひょっとすると、ドワーフの王のだ! この種の墓所は何度か発見されていて、もっとも有名なのはランサム率いるハンマーフェルの発掘で出土したものだろう。が、完ぺきな状態の墓は未発見だった。そう、今までは。 が、これが本当に王族の墓所だとしたら、その主はどこにいるのだろう? 私はそろそろと前進した。時代を超えてそうしてきたように、頭のない人形の列が静かに立ちすくんでいる。取り外された頭部の瞳で見つめられているような気になった。ドワーフの呪いに関する突拍子もない話ならさんざん聞かされていたが、私はそのたびに迷信だと笑い飛ばしていた。が、今こうして、この都市を作った謎の建築家が吸ったのと同じく空気を吸っていると、そして彼らに災いをもたらした天変地異が起きてからひっそりと眠りつづけていた都市に立っていると、恐怖心がわいてきた。何らかの力が漂っている。私の存在に立腹している邪悪な力が。私はしばらく立ち止まって耳をすませた。ひっそりと静まり返っていた。 いや…… かすれるような音が聞こえてきた。呼吸するように一定の間隔で。私はパニックに襲われそうになるのを懸命にこらえた。武器もない。塞がれた通路の向こうを探検したいと気が急くあまり、危険が待っているなどはつゆほども思わなかった。脂汗をたらしながら、気配を感じようと暗がりに視線を這わせた。部屋は暖かい。ふと気づいた。これまでのどの部屋よりもかなり暖かく感じる。興奮が舞い戻ってきた。いまだに機能している蒸気パイプ網につながっている区画を見つけたのだろうか? 廃墟のいたるところで見かけた配管が壁沿いに走っていた。私は配管に近づいて触れてみた。ほとんどさわれないほど熱かった。古代の配管のあちこちが腐食して、か細い蒸気が噴き出しているのがわかった。私が聞いた音はこれだったのだ。みずからの早計さを笑った。 さて、私はさっそうと奥まで進んだ。ついさっきまでは気圧されそうな迫力があった機械戦士たちに笑顔で敬礼をしながら。光が数世紀ぶんの闇を追い払っていき、台座にそびえるドワーフ王の巨大な彫像が露わになっていくにつれて、私は勝利の笑みを浮かべた。ドワーフ王はその鉄の手に錫杖をにぎっていた。これまでの苦労が報われたぞ! 私は台座をゆっくりとひと回りし、古代ドワーフの職人芸にため息をもらした。黄金の王は高さが20フィートほどで、ドーム型のクーポラの下に立っていた。先端が反り返った長いあごひげを威厳たっぷりにたくわえていた。ぎらつく鉄の視線にずっと追われているような気がしたが、私の迷信深さはもう消えていた。私は慈しむように古代ドワーフ王を眺めた。わが王、既にそんなふうに思いはじめていた。台座に乗っかって彫刻された鎧を間近で観察しようとした。と、彫像の眼が開き、篭手をつけた拳を振りあげて殴りかかってきた! 黄金の腕が振り下ろされ、私は身を翻してかわした。直前まで立っていた場所から火花が飛び散った。蒸気を吹き、歯車をきしませながら、彫像はぎこちない動きでクーポラの天蓋から歩み出ると、ものすごい勢いで私のほうへ迫ってきた。慌てて後ずさりをする私の姿をその眼が迫っていた。またもや拳が振り下ろされると、私は円柱の陰にさっと隠れた。うろたえるあまりランタンを落としてしまい、光の池から闇の中へとすべり込んだ。あわよくば、顔のない像の間をすり抜けて安全な通路まで逃げられるようにと。怪物はどこにいったんだ? 20フィートもある黄金の彫像を見失うなんてありえないと思うだろうが、王の姿はどこにもなかった。弱々しいランタンの火がわずかに部屋を照らしていた。暗がりのどこに王がいてもおかしくなかった。私は這うように進んだ。何の前触れもなく、目の前に並んだつやのないドワーフ戦士が飛び上がるや、怪物のような守護神が目の前にそびえ立っていた。逃げ道をふさがれた! 執念深い機械が矢継ぎ早にパンチを繰り出しながら追ってきて、私は後方へかわしながら逃げた。やがて、部屋の片隅に追いつめられた。逃げ場所も絶たれてしまった。壁を背にして立っていた。私は敵をにらみつけて覚悟を決めた。巨大な腕から最後の一撃が振り下ろされた。 そのとき、広間に閃光が殺到してきた。紫のエネルギー弾がドワーフの怪物の鋼鉄の殻を引き裂いた。怪物の動きが止まった。新たな敵の姿を認めようとして半分振り向いたところだった。アルム師が駆けつけてくれた! 私が歓喜の声をあげかけた時、巨像がこちらへ振り向いた。アルム師の放った稲妻の魔法にもびくともせず、最初の侵入者を叩きつぶそうと決心していた。私は叫んだ。「蒸気だ、蒸気を使え!」巨像は拳を振り上げて私を地面にめり込ませようとした。しゅっという音とともに冷気が吹き抜け、私は顔を上げた。怪物が氷の殻に覆われていた。今まさに私に仕留めようとする姿で。アルム師はわかってくれたのだ。私はほっとして壁にもたれた。 氷がひび割れた。巨大な黄金の王が目前にそびえていた。氷の殻がはがれ落ちると、勝ち誇ったような顔で私のほうを向いた。このドワーフの怪物を止める手立てはないのだろうか? と、彫像の眼から光が消え、腕をだらりと下げた。氷の魔法が奏功し、蒸気機関が冷やされたのだ。 アルム師と採掘人がやってきて私を取り囲み、奇跡の生還を祝福した。私はぼんやりとしていた。帝都に帰還したらどうなるだろうか。きっと最大級の賛辞を浴びることだろう。越えることのできない発見をしてしまったのだ。次の道を模索する時なのかもしれない。伝説の“アルゴニアの瞳”を探し当てたら…… またもや大騒ぎになるぞ! 私はほくそ笑んだ。この瞬間の栄光を満喫しながらも、次の冒険に思いを馳せていた。 白1 随筆・ルポルタージュ
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栗悟飯とカメハメ波 (登場人物) 牧瀬紅莉栖 ◇ ある日、泣き声がしゃくに障ったので妹を殺した、死体は井戸に捨てた。 次の日見に行くと死体は消えていた。 5年後、些細なけんかで友達を殺した、死体は井戸に捨てた。 次の日見に行くと死体は消えていた。 10年後、酔った勢いで孕ませてしまった女を殺した、死体は井戸に捨てた。 次の日見に行くと死体は消えていた。 15年後、嫌な上司を殺した、死体は井戸に捨てた。 次の日見に行くと死体は消えていた。 20年後、介護が必要になった母が邪魔なので殺した、死体は井戸に捨てた。 次の日見に行くと────…。 ◇ 最初の印象は狭い、だった。 高く見上げれば円形に切り取られた夜空が無機質な暗さを見せる。 辺りは円柱状の石垣が自分をぐるりと囲む。 そして、腰を降ろす石畳の床は古水で数センチほど満たされていた。そのせいで下半身の衣服は冷たくぐっしょりと濡れている。 水面が満月を反射させ、この狭い空間を光り散らしていた。 「百万歩ゆずって…殺し合いをすることは認めてやるわ………」 その空間にただ一人鎮座する女──牧瀬紅莉栖は、肩をプルプルと微動させながらそう呟く。 彼女が震えているのはなにも水の温度の低さ故凍えているわけではない。 その表情は眉間にシワを寄せ、沸き立つ怒りを抑えた感情が込められていた。 そんな紅莉栖は未来ガジェット研究所においては相対的に常識人、肩書で言うのなら云わばツッコミポジションである。 そのため、今自分が置かれている状況、現在地に対する的確な突っ込みを声を荒げて叫んだ。 「それにしてもなんで私の初期位置が『井戸の底』なのよぉ────────っっ!!!!!!! おかしいでしょうが常識的に考えてええ────────っっ!!!!!!!」 クリスティーナ。 彼女が飛ばされた先は、深い深い井戸の中。 ランダムにも程がある配置に、最悪な気分を吐露するまでであった。 真上の遥か高い穴以外、出口の確認できないこの古井戸。 もしも我々がバトル・ロワイヤルに参加させられ、そしてワープされた先がこの場所であった立場ならどう考えるだろうか。 人によっては物凄いラッキーと楽観的に考えるかもしれない。 何故なら隠れ場所としてはこの上ないくらいに優れている場ではあるからだ。 声を殺してじっとしていれば第三者が覗きに来ることなどほぼないに等しい。なにせ、普通井戸の底に生きた人間がいるなどと思うはずないのだから。 だが、もしも仮に覗き込まれたとしたら。 袋のネズミとはこのことで、この畳一畳ほどの広さもない井戸の底で、ただ無抵抗に殺される他ないだろう。 すなわちこの場は安全地帯でもあり絶体絶命でもある、矛盾の狭間に位置した場所なのだ。 今まさに井戸に身を置く紅莉栖が、自分の置かれてる状況をどう判断したかというと、 「はぁ…………、どう見ても詰みです。本当にありがとうございました……………」 後述の『絶体絶命』。 彼女はガックリとうなだれつつも、一刻も早い脱出に向けて頭脳労働を開始するのであった。 紅莉栖はふと辺りに手を置く。 石を積み上げて練成された、高く反り立つ周囲の壁。 その壁は一寸のよじ登る隙もないほどまっ平…という訳ではなく、ところどころ欠けた箇所を伝って行けばクライミングすることも不可能ではない。 しかし華奢な体の紅莉栖では、それは実現性に乏しい。 優れた知性の頭脳はあれど、体力は人並み以下の彼女にとっては確実たる脱出方法とは言えなかった。 ならば、他にどう動くべきだろうか。 事態の打開を求めた彼女の目に飛び込んだのは、床に放りっぱなしのデイパックだった。 紅莉栖はあのカスタマーサービスと名乗る主催者が、参加者全員に支給したのであろうデイパックの中身を広げる。 井戸水を吸い上げ、水滴をしたたらせるバッグであったが、幸いにも中までは浸水していなかった。 その証拠に、手あたり次第まず取り出した白い紙──参加者名簿はふやけた様子がなく、その乾いた表面を維持している。 彼女は一応の名前の確認を、速読で完了する。 ──『橋田 至』に、『鳳凰院 凶真』。 …岡部の名が何故中二チックな表記で印字されていたのか不可解だったが、ラボの仲間二人も巻き込まれていることに関して、紅莉栖は特に悶々とする様子はなかった。 彼女は決して岡部らに愛着が無いわけではない。 だが、今は井戸脱出第一の状況であるため、現状不要な心配という感情は即座に封じ込めたのだ。ある種の現実逃避といえる思考だが、最善の判断ではあるだろう。 紅莉栖は同じく不要と判断した参加者名簿の紙きれを水面に沈め捨て、次の物色に向かう。 バッグから伸ばした手に握られていたのは鳥の姿を模したようにも見える──青いクリスタルだった。 恐らく支給武器の類なのだろう、四つの突起が鋭利に伸びる。 一見にして何の変哲もない石。井戸から這い上がるのに不要な、どうでもいい品。 …だったのだが、紅莉栖はそれに対し、唐突に妙な既視感を覚えた。 「…………これって、確か…」 彼女は確かめるように、記憶を辿ってみる。 この石を見たのはたしか…、二年ほど前の、ビジネスホテルの一室にて。 いや、見たというより『閲覧した』という表現すべきか。 デスク上のパソコンの画面にこのクリスタルは映っていた。 紅莉栖にとっての唯一の趣味は@ちゃんねるでのレスバトル。 躍起になるネット民を自慢の頭脳で言い負かし学歴の差を見せつけるのが快感なのだという。 そんな彼女にとってパソコンは@ちゃんを開くための道具でしかなく、必然的にどういうサイトでクリスタルを目にしたかは限られてくる。 そう、あれは確か@ちゃんの、コラ画像スレにて。 コラ職人たちが作っていた、なんだかランス………モロトフ…だかいうアニメのキャラの。 ──ボルテッカでブチ壊してやるっ!! 宇宙の騎士をなめるなよっ!! テーック、セッターーー!! 「あっ!」 紅莉栖は思い出した。 「……間違いないわ。某アニメキャラが変身するために使う水晶体……ね。」 あの時スレ内の画像にあった二次元のクリスタルが、まんま手中に収められていたのだ。 石の正体を再確認した時、紅莉栖の中で馬鹿馬鹿しい考えがこみ上げてくる。 そう、馬鹿な考えである。 徹底的なリアリストで、タイムマシンの存在や時間の逆流を完全否定する普段の彼女ならしない稚拙な考えが、頭に浮びあがった。 「これで『変身』…、できるんじゃないかしら?」 アニメキャラ同様自分も変身することができる──そんな小学生じみた発言をしたのは何もとち狂ったわけでも、冗談というわけでも、無根拠でもない。 何せ自分が今いるこの殺し合いの世界は『非常識的』そのものなのだから。 ファイナル・ウォーズという狂った舞台に加え、先ほどのオープニングで見せられた喋るペンギンに等身大のカタツムリ、奇妙すぎる外観の参戦者たち。 まさに常識の範囲外の世界で、紅莉栖の考えもあながち荒唐無稽ではないのである。 変身できる可能性は絶対とは言えないが、脱出の一手をとにかく欲しかった紅莉栖は、馬鹿みたいとは思いながらもすがってみることにした。 「確か、こう掲げて…、こんなポーズになってから………」 紅莉栖は、@ちゃんで見た変身のやり方をよく思い出し、できる限り忠実に再現。 足を肩幅くらいに開き、青く輝く水晶を天高く掲げると、 「…テ、テック、セッタァァーーーーーーー!!」 と、大きな声で叫び上げた。 暗い井戸全体に響き渡る、紅莉栖の声。 発せられた変身の決めセリフはしばらくはただ反響するのみだったが、やがて応えを提示してきた。 「…………………………………」 応えは沈黙。何も起こらなかった。 いくら夢おとぎなこの世界下とはいえ変身はさすがに出来ない様子だった。 大の大人が、密室で、一人……ポーズを取りながら、絶叫。 赤面で染まった紅莉栖は目をつぶってプルプル震えながら、ただのアクアマリン宝石を床にぶん投げた。 「って、なに馬鹿なことさせてんのよっっーー!」 水しぶきが飛び散り、水面が虚しく揺れ動く。 光り輝く宝石が水の底へ沈む中、紅莉栖はすぐさま次の支給品の取り出しを急ぐ。 バッグの中にて手が触れたのは、筒状の、金属のような物。 割と軽いそれを取り出し、脱出の糸口になりそうなキーアイテムなのかどうかを確認する。 「……………はぁ、バカらしいわ」 取り出したのは缶飲料・ドクターペッパー350mLであった。 武器でも井戸を登るのに使うような便利な道具でもない、ただの支給食料の一つであったのだが、彼女にとってこれは不幸であったのか否か。 怒りを見せた顔をしつつも、まんざらではなさそうな表情で、ドクペを口内に流し込んだ。 尻は濡れ衣で冷たい感触に包まれていたが、とりあえずは熱くなった頭を冷やすことにした紅莉栖であった。 ◇ ある時の事でございます。何気なく、カンダタが頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、 そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。 カンダタはこれを見ると、思わず手を拍って喜びました。 この糸にすがりついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。 ◇ 紅莉栖は、今最後の支給品であるタッパーを凝視している。 いや、厳密に言えば彼女はタッパーの中身を怪訝な顔で見ていた。 透明で封をされた容器の中には、なにも作り置きの料理が入っているわけではない。 カサカサカサッ… 容器の中で、悠長ながらも動き回る黒い八本の節足。 腫れ上がるようにパンパンな状態の腹部には赤い柄が染みついていた。 幽閉されるが様にタッパーに入っていたのは、真っ黒いボディで掌ほどのサイズの一匹のクモであった。 「セアカコケグモ…、の突然変異体ってとこかしらねぇ…………」 クモの容態から、紅莉栖はぼそっと呟く。 参加者名簿も青い宝石もドクペも食料のレーションも取り出し、最後までディパック内を一人鎮座していたのが、この虫かごだった。 不可解かつ、意図の判らぬ支給品。 紅莉栖も当然こいつの使い勝手に頭を悩ませたが、取扱説明はご丁寧にもタッパーの側面に張り付いていた。 『クリたんへ。コイツに嚙まれたらスパイダーマンに変身できるよ~~~ん。』 『勇気を出してかまれてみよう☆ 追伸)武器発注ミスっちゃったからコイツがクリりんの武器代わりです。ごめんち!( ・`ω・´)』 「………………………」 純白に白けた表情をせざるを得ない牧瀬紅莉栖であった。 冷笑すらできぬ凍り付いたその視線は、説明になっていない説明文と文末の愛おしい絵文字に向かれている。 まあ、阿保な文体は置いておくとして、この説明自体には気になる箇所はあると紅莉栖は思う。 妖々しい見た目のこのクモが武器。 しかも、他参戦者を毒殺するために使役する毒グモというわけでなく、『スパイダーマン』なる未知の者に変身するために使う道具とのことだ。 「変身…………………………」 さっきまでの自分と妙にシンクロしている支給品だ、と紅莉栖は感想を呆れながら抱いた。 不意に、水に沈んだアクアマリン宝石を見下ろす。 已然、満月の光を反射して輝く宝石であったが、ところどころメッキが剥がれて無機質な灰色のプラスチック面を見せていた。 「って、これ宝石ですらないんかいっー!! オモチャかい!」 宝石改めプラスチックゴミに最後の突っ込みを飛ばしてしまったが、今はもうどうでもいい。 紅莉栖の中で再び、あの馬鹿馬鹿しい考えが支配しようと蘇ってきたのだ。 そう、本当に馬鹿な考えで普段の彼女なら絶対にしない、小学生の発想のそれである。 その考えをまた再び実行する為、そっと、タッパーの蓋を開ける。クモの真上の天井がどこまでも広く切り開かれた。 確かにさっきのテックセッター変身は完全なる失敗、予測の大外れで終わった。 ネット掲示板で見知ったアニメと同様の物だから、という浅はかな考えで実行したものはただ馬鹿な真似をしただけという結果を残すだけだった。 だが、それは『変身できる可能性』を否定するものではない。 このバトル・ロワイヤルという世界は前述したとおり、ペンギンが喋りカタツムリが爆ぜり狂う荒唐無稽もいいところのファンタジーな世界なのだ。 自分が何故そんなイカれた世界にいるのか今はまだ分からないが、とにかく変身をすることは十分可能かもしれない。 「スパイダーマン…、何に変身されるかは見当付かないけども…。いいわ。この武器、使わせてもらうわねっ…」 変身-Royal-。 そんな未知の領域へと踏み込むため、ゆっくりウロウロするクモへと手を伸ばす。 全てはこの井戸から這い上がり地上を目指す、それだけの為に。 とりあえず、クモの胸部を掴もうとした、その時だった。 クモの眼には、自分に向かって手を伸ばす巨大な赤髪の生命体をどう映ったか。 本能的危機感からか、これまで大人しかったクモは逃げ出すように素早く、紅莉栖の手から腕をよじ登った。 「…ちょ、きゃっ!!」 八本の細い足がタイピングを打つように高速で上り詰めていく。 「ちょっと、あー…もうっ!!」 紅莉栖は慌てて、何度も抑えようとするも、のらりくらりとかわされ捕らえることができない。 クモの全力ダッシュは、その体長を人間の身長に換算した場合、時速300Km以上だという。並みの長距離列車とほぼ同じくらいの素早さだ。 そんな機動力に紅莉栖は焦れど掴むことはできず、そうこうしている内にクモは彼女の服の中に素早く潜り込んでしまった。 襟からの侵入である。 「あっ………あれ…ちょ、何処に行って…」 彼女が気づいたときにはもう視界にはクモは映っていなかった。 面を食らいつつも、全身、果ては壁や眼下の水まで色々見回しを始める紅莉栖であったが。 「…んぃやあっっ!! きゃ…ぁ……んっ…!! んぁ…! あっ…ぁ…あっ! んっ…」 突然首から胸にかけて撫でまわすような寒気のする感触に襲われ、うずいてしまう。 クモが下地から彼女の白い肌を全速力で駆け巡っているためである。 服の下をもぞもぞと動く奴。紅莉栖はかなりの嫌な顔をしながら、むず痒いそいつを捕まえるためバンバンと胸を叩く。 「あっ…ぁ…あっ! …って! ちょっと止まって…って… ひゃあっ!!」 無論、手はクモを捕まえれず空振りを続けたのは言うまでもない。 這いずり回る虫の節足と、捕まえることのできないもどかしさから心中イライラであった。 こんな状況にもかかわらず、彼女はふと脳裏に能天気なことが思い浮かぶ。 脳内に描かれたのは自分と岡部倫太郎による妄想、というか仮定。 安っぽい言葉遊びみたいなもんだが、あの岡部が仮に今の自分の醜態を見た時こんなことを言うに違いない。 ────ふーはっはっはっはっは! これぞまさしく『雲をつかむような思い』、だな…? チクッ 折しもそのタイミングでクモが突然動きを停止。 目の前にあったぷるるんっと豊満な右胸に向かって一噛み、歯を差し込む。 「…って、いっだああっ!!」 遺伝子改良を施された新種の蜘蛛『スーパースパイダー』。 クモの鋭い刃から、彼女の体内へと『その力の源』となるエネルギーがクモの唾液と共に流れ込んでいく。 エネルギーは体内を瞬時に駆け巡り、胸から全身へと血管中を瞬時に把握していった。 外観は変えずとも、彼女の体内構造は大きく強化、作り変わられていく。形は違えど、筋肉強化剤注射とほぼ同等である。 不本意ながらも、今、彼女は変身する権利を手に入れたのだ。 夜の幕が降りた廃村は、暗闇に包まれていた。 建物の残骸や草叢が、静寂の中に立ち並んでいる。 深い沈黙が辺りを支配し、ただ風のささやきと、遠くで響く虫の音が聞こえるだけだ。 そんな村でポツンと佇む古井戸。 今はもう使われていないだろう、ツルが巻き付く円柱の石塀にて、突如、静寂を切り裂く音が発せられた。 深い井戸の底から、急速に何かが飛び出して、井戸のすぐ近くに着地する音だ。 井戸の暗闇から現れ、不安げな表情で辺りを見回す者。 デイパッグを下げながら、深紅の長い髪を垂らすその井戸の者は、女であった。 「どう見ても貞子ですね、ありがとうございました…」 井戸娘──牧瀬紅莉栖は、自身と客観的事実を踏まえてぼそっとツッコミを入れた。 にしても、ホラー映画つながりでこのバトル・ロワイヤル…<ファイナルなんだか>もまるでB級映画のようなグロテスクリアルだ、と彼女は思う。 自分は映画のエキストラで、役に引きこもり過ぎたが故に映画の出演者であることを忘れているのでは、と思ってしまうほどだ。 そして、同じく映画のような荒唐無稽がここに一つ。 紅莉栖は自身の掌を見る。 蜘蛛が放出する真っ白くてどこまでも伸びるその糸が、そこにはネバネバと生成を続けていた。 「これがスパイダーマン…ね」 突然変異の蜘蛛に噛まれ力を手に入れた紅莉栖は糸を天高く伸ばしここまで登り切ったのだ。 変身できるかもしれない、という夢絵空事のような仮定。 その証明を終えた今、彼女は途方に暮れてため息を漏らしてしまう。 「はぁ……この先どうなることやら………一般的常識は捨てた方が身の為なのかもしれないわね」 自分が何故この科学とは無縁の世界に迷い込んだのかは今は不可解なまま。 常識を盾に論破を得意とする自分が、『普通』の通じないこの殺し合いで生き抜けるかどうか。それを考えたら不安な面もある。 だが、もはやしょうがないので、とりあえずは紅莉栖は動いてみることにした。 木々が風でざわめきだす。 廃村の静けさと相まって、幽玄な雰囲気を醸し出している。 「岡部、橋田……なんだろう、殺されるとかするのはやめて…よねっ!」 そう言うと、蜘蛛娘・紅莉栖は両の手から近くの建物や木に向かって糸を引っ張り付け、それを高速で巻き取ることで起こる、素早い空中移動を開始する。 夜空を闊歩するように駆け抜ける紅莉栖。 彼女が今とった一連のアクションは、侵攻する巨人たちを相手に戦い続ける兵団達の『立体機動装置』のそれと一緒であることはまだ知る由もない。 【B4/1日目/深夜】 【牧瀬紅莉栖@Steins;Gate】 [状態]:健康(『スパイダー・ねらー』)、胸にかみ跡 [装備]:なし [道具]:食料一式(レーション、ドクペ1/2) [思考]基本:対主催 1:殺し合いという運命を打破 2:とりあえずHENTAI二名(特に岡部)に会いたい ※参戦時期はラボメンになってからのどこかです。 ※井戸の底にはアクアマリンの石@推しの子が沈んでいます。 ちなみに、一方でもう一匹。井戸から這い出てきた生命体がいることを付け加える。 壁をよじ登ってきたスーパースパイダーは、また、獲物を求めて夜の草原を歩き出した。 奴に思いも考えもない。ただ本能のままこのバトル・ロワイヤルの空間を自由に生きるまでである。 ◇ With great power comes great responsibility. ◇ 【蜘蛛@スパイダーマン スパイダーバース】 [思考]基本:本能のままどこかに移動 ←前回 登場人物 次回→ 013:ようかい体操 015:ミオリネが死ぬ雰囲気 牧瀬紅莉栖
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戦前の本 この荒廃したD.C.に現存する戦前の本は98冊!収集の旅に出てみましょう! 繰り返し系イベントPre-War Book Collection アーリントン図書館にいるスクライブ・ヤーリングに戦前の本を持ってゆくと、戦前の本を買い取ってくれる戦前の本は、アイコンが本の物のみ買い取ってくれる 商人が販売するアイコンがスクラップな物は買い取ってくれない 報酬戦前の本1冊につき、100キャップと経験値10XP 最寄FTポイント 場所 場所詳細および備考 Valut-Tec本社 Vault-Tecオフィスフロア 下層の北西奥、床置き金庫と黒板がある部屋、円柱型のゴミ箱の上 VAPL-58発電所 ~の北 柵のついた鉄塔の土台。近くの本棚にケラー家の写し1/5、個人用の小型ロッカー(VERY HARD) Vault 92 Vault 92 入口すぐ近く小部屋、机の上 Vault 92 Vault 92監督官のオフィス 監督官のオフィス中央、リチャード・ルビンのターミナルがある部屋 Vault 92 サウンドテスト 北側の部屋、2つ並んだ楽譜立ての隣にある本棚 Vault 92 サウンドテスト 東側の部屋、ゾーイ・ハマースタインのターミナルの隣 Vault 92 サウンドテスト 北西、階段を下った先の十字路を北、ジュークボックスと自動販売機のある部屋 アーリントン図書館 アーリントン図書館公共ロビー 2F北側の廊下、西の突き当たりに2つ並んだテーブルの上 アーリントン図書館 アーリントン図書館公共ロビー 2Fアーリントン図書館・メディア資料入口の真上、弾薬箱2つの脇の本棚、計2冊 アーリントン図書館 アーリントン図書館・メディア資料 北東のインク入れがある部屋、北東端にある機械に付いたコンベアの上 アーリントン図書館 アーリントン図書館・メディア資料 南西のアーリントン公共図書館公共ターミナルがある部屋、ターミナルの隣 アーリントン図書館 アーリントン図書館・児童ウィング メディア資料最上階から入った児童ウィング内の部屋。本棚、計3冊 アーリントン図書館 アーリントン図書館・児童ウィング 自動販売機、イートマチック3000が近くにあるテーブルの上 アーリントン図書館 アーリントン図書館・児童ウィング 北西の弾薬箱、五線紙がある小部屋、机の上。爆発するターミナルによる消失に注意。 アレクサンドリア武器店 アレクサンドリア武器店 2F、自販機のあるテラス、弾薬庫が2つ乗ったカウンターの上、傍に銃と弾丸 アンカレッジ記念館 アンカレッジ記念館 上の階、ウェイストランド人の遺体と壊れたベッドがある部屋、机の上 遺体安置所 ~の西、排水チャンバー 無線信号パパ・ノヴェンバーの電波塔から北の崖下。チャンバー内のハシゴ脇。近くにボクシング入門 インディペンデンス砦 ~の北西 またはVAPL-84発電所の東北東。スカベンジャーのいる壊れた家(赤字ベッド2台あり)、机の上。盗む。 オアシス 沈んだチャンバー 西のトランクがある行き止まり、野球グローブの入った木箱の中 がけの上の小屋 捨てられた家(北側) 入ってすぐ左側の丸テーブル上 がけ側の洞くつ レイダー前哨基地 下層の北西、床置きの金庫が2つあるテント、テーブルの上 議事堂 議事堂エントランス・東 中央の机と仕切りが並んだ部屋、ファイルキャビネットの上。隣の机にゴミの町の馬鹿な商人の話 クライスラスビル クライスラスビル下層フロア 北側、南北にロック(VERY HARD)された小部屋にある棚の上 下水中間局/郡の下水ライン 郡の下水ライン 北(下水中間局)側のガロのいる部屋、棚に計2冊 下水中間局/郡の下水ライン 郡の下水ライン 中央、ロックEASYのゲート内、下水管理アクセス端末の机、計2冊。隣に科学の大きな本 公文書館 公文書館 モール出口(マップ南)のすぐ西の部屋、2Fに上がるドアの脇、東側の本棚 公文書館 公文書館 モール・北東出口(マップ北)のすぐ西の部屋、本棚に重なって計4冊 コンスタンティン砦 CO宿舎 FT地点寄りの入口から入ってすぐ、斜めに倒れた本棚の上 コンスタンティン砦 CO宿舎 クイーンサイズベッドの脇、電話機の乗った丸テーブルの上 コンスタンティン砦 発射コントロールバンカー 南東の部屋、ラジオの乗った机の上 ジャーマンタウン警察本部 警察本部-1F レッドのいる檻の隣、封鎖ターミナル(VERY HARD)のある机の上 ジュリー通りメトロ駅 ~の南 排水チャンバー内、無線信号オスカー・タンゴの机の上 地雷原 ギリアムの家 1F入って左の部屋、計2冊 地雷原 ギブソンの家 1F入口すぐ近く、テーブルの上 地雷原 ギブソンの家 2F階段登って近くの部屋、棚 地雷原 ギブソンの家 2F奥、クイーンサイズベッドのある部屋、ベッド脇の小机 地雷原 ギブソンの家 2F奥、クイーンサイズベッドのある部屋の隣室、バスタブの中 地雷原 ベンソンの家 1F入って左の部屋、棚の上 地雷原 ベンソンの家 2F奥、クイーンサイズベッドのある部屋、机の上 地雷原 ゼーンの家 1F入ってすぐ、棚の上 デイブ共和国 デイブ博物館 デイブ博物館の本棚 デュポン・北東 デュポン・北東 デュポン・北東のメトロ・ジャンクションと、干上がった下水の中間にある廃墟2F、救急箱の乗った本棚の中 ナショナルガード補給所 ナショナルガード補給所 2F東側端の壁にある本棚、計2冊 ナショナルガード補給所 発電所オフィス 上階の小部屋、金庫の上にある棚 ナショナルガード補給所 オフィス倉庫 南西の部屋、大きな四角い柱に付いた本棚、最上階の足場から西を向いて取る、計3冊 ナショナルガード補給所 オフィス倉庫 南西の部屋、大きな四角い柱に付いた本棚、最上階の足場から西を向いて取る、計4冊 ナショナルガード補給所 オフィス倉庫 南西の部屋、大きな四角い柱に付いた本棚、最上階の足場から西を向いて取る、計5冊 ぬるい下水 ぬるい下水 中央西側、レイダーが地雷を設置して陣取っている区域。最西の部屋、二段ベッド脇の本棚 ぬるい下水 ぬるい下水 北東側、ロックEASY(ロックソルトのカギで開錠可)の扉の小部屋。木箱の中、焼けた本の下 ハブリス・コミック ハブリス・コミック出版社 入口の奥「HUBRIS COMICS」の壁の左にある本棚 ハブリス・コミック ハブリス・コミック印刷所 下層、南東、ハブリス・コミックの出版ターミナルの右隣にある本棚 パラダイス・フォールズ 奴隷の家 奥の丸テーブルの上 ファラガット西メトロ駅 ファラガット西メトロ駅 テンリータウン/フレンドシップ駅側の出口近く、下層のロック(NORMAL)された扉の先、計3冊 フォールズ教会/メイソン地区メトロ フォールズ教会/メイソン地区メトロ 中央広間の上層、レイダーのいる食堂、火の付いたドラム缶脇の机の上 フォールズ教会・東 L.O.B.エンタプライズ L.O.B.エンタプライズ東ウィング、上階の北西の部屋、VERY HARDのターミナルの隣、計2冊 フォールズ教会メトロ フランクリン・メトロの公共施設 入口近くの金庫に向かって左手奥、ドラム缶の乗ったゴミ箱の隣にある棚、計2冊 ブロードキャスト塔KB5 ~の東南東 排水チャンバー奥の部屋の棚 ブロードキャスト塔KT8 排水チャンバー 鉄塔から北東にある排水チャンバーの小部屋、ドア近くの棚 ブロードキャスト塔KT8 排水チャンバー 鉄塔から北東にある排水チャンバーの小部屋、壊れたターミナルの隣 ベセスダ廃墟 ベセスダオフィス・西、 階段の踊り場の先にある部屋、ファイルキャビネットの上 ベセスダ廃墟 ベセスダオフィス・西 階段の踊り場の先にある部屋、低いロッカーの上 ママ・ドルス ママ・ドルスの倉庫 入口北のドアを開け左手の階段を登った2F小部屋、スレッジハンマーの乗った机の上 ママ・ドルス ママ・ドルスの発送所 2F中央の小部屋、デスクターミナルやクァンタムがある机の上 メガトン ビリー・クリールの家 入ってすぐ右の丸テーブルの上。盗む。計3冊 メガトン ビリー・クリールの家 二階の机の上。盗む ヤオ・グアイトンネル ヤオ・グアイトンネル 入口近くの机の上 ユニオン・テンプル ケイレブの家 ベッドの上。盗む ユニオン・テンプル ~の南西 高速道路の高架上、レイダー又はエンクレイヴ拠点。上って右手の小屋の床上(Head of State完了後?) ルーズベルト学院 ルーズベルト学院 FT地点近くの入口から入ってすぐ東、校長のターミナル(VERY EASY)のある机の上 ルーズベルト学院 ルーズベルト芸術と運動競技館 1F北端中央、DANGERラベルの付いた機械がある部屋、棚の上 ルーズベルト学院 ~の東 板張りの上にベッド、隣のテーブルの上。傍に弾薬箱とハンテンングライフル、ミニニュークもある レディーの希望病院 レディーの希望病院 1F北、ゴアバッグの吊り下がった広間、西側のカウンター机の上 ロックブレイカー最後の給油地 ~の西 捨てられた家、ベッド脇のテーブルの上、他にケラー家の写し4/5、銃と弾丸、学部長の電子技術 ロブコ施設 ロブコ社の工場内部 「ロブコ社の工場内部」入ってすぐの部屋。壊れた端末の奥にある棚 ロブコ施設 ロブコ社の工場内部 北東、背後に3つ並んだプロテクトロンのポッド(カラ)がある機械の上、近くに科学の大きな本 ロブコ施設 オフィスとカフェテリア 最上階、ロブコ生産メインフレームのある部屋の入口 遺体安置所 ~の北 暖炉のあるボロ家(スカベンジャーの住みか:不在の時もあり)、2枚並んだベッド脇のテーブル上、計2冊 中継タワーKX-B8-11 ~の南南東 排水チャンバー(同じ机の上にD.C.内科医学に関する日誌も)
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新幹線脱線批判のいい加減理論2:畑村教授批判に見るイカサマ理論 畑村洋太郎「失敗学なき組織は滅びる」 (『文藝春秋』2005年7月号) に見るイカサマ議論 において、桜井氏は、「失敗学」の畑村洋太郎教授をして、 随所に事実に反する記述が目立ち、同氏の調査・検討能力の浅さを感じ、興ざめした。 こいつの議論はイカサマだ。 と、断じている。 畑村教授と言えば、NTV系の「世界一受けたい授業」においても、上越新幹線の脱線は極めて良い失敗であったと述べている。 JR各社は、阪神大震災での桁落下や、柱の損傷を踏まえ、的確に弱点を強化し(強化が間に合っていた事を「運が良かった」といえばそのとおりだが。)液状化で下水管が浮き上がる状態にも拘わらず、高架をささえる柱が傾くことも、桁や柱が致命的なまでに壊れることもなかった。つまり、適切な対策はとってあったのである。(要旨は、ここ、日経BP社のページでも読める。) また、確かにとき325号は脱線したが、残る新幹線は全て安全に停止した。(無論、トンネル内で缶詰になって外部との通信途絶状態になったという問題もあるが(参考)) では、桜井氏の論調のどこがイカサマか? 氏は明確に自らの理論のあやふやさを露呈している。 同氏は現場をよく見ていないのであろう。私は、事故直後、テレビ朝日「スーパーJチャンネル」取材班と一緒に震源地だけでなく、その脱線現場にも入った。その後のJR東日本の公式発表によれば、脱線した下り新幹線は、トンネル出口を起点に、500メートルの位置で脱線し、それから緊急ブレーキがかかったまま1300メートルも直進して停止したとされている。 桜井氏は、滑走距離の記述が一向に一定しない。 脱線後の滑走距離を、初めは2kmと記し、次には脱線起点から停車した先頭車両の先端までの距離は約1300メートルである。全車両の長さは約200メートルである。(1100メートル)となり、今度は1300メートル。 このことだけをもってしても素人レベルの間違いに違いはないが、本題ではない。事実、「滑走距離1300メートル」は、事故調査委員会の中間報告(pdf)と比較して、このデータは正当であると見なして問題はない。 問題は、 トンネル出口から停止位置の1800メートルの区間に、橋脚は約200組あり、そのうち耐震補強の鉄板巻き付け補修工事が行われていたものは、トンネル出口から数十メートルの高架橋の下の4メートル道路のすぐわきのものから数十メートル区間のわずか5組だけだった。脱線起点の400メートルも手前の5組である。1800メートルの区間の残り約195組は、補修していなかったものの、注意深く観察しても、亀裂ひとつ生じていなかった。 脱線起点の400メートルも手前の5組が、補修工事をうけたとある。一方の事故調査委員会の報告書では、同付図にある、 206.07Km~206.15Km地点の柱が強化工事を受けたことが読み取れる。 さらに報告書を読むと、脱線の痕跡が残るのは、206.191Km地点から。 =強化した柱が並ぶのは、脱線地点の40m~120m手前。 どの車輪が206.191km地点のレールに傷を付けたかは、現在の所不明なれど、時速200km/hで通過中に地震に遭遇(これは中間報告書・桜井氏の主張、ともに合致)=秒速55.6m/s=一番後ろの車輪だったとしても強化済橋脚を全て通過した、その約1秒後に脱線が始まっていて、これでは、「イカサマ」と称した畑村教授の 実は新幹線が脱線したのは、まさに補修を終えた橋脚の上であった。・・・もし新幹線の橋脚の補修工事がなされていなければ、脱線どころではすまなかっただろう。高架自体が崩れ大惨事になっていた可能性がある という発言の正しさを証明してしまっている。 では、桜井氏は何故このような計算間違いを起こしたか? 滝谷トンネルには出口から約200mスノーシェッドがある。 スノーシェッドの出口=トンネルの出口と考えたのであろう。 ならば「スノーシェッドの出口数十メートルの柱が補強工事」というのは矛盾する発言ではない。 たしかに、スノーシェッドの出口=トンネルの出口と勘違いすること自体は、土木関係者でもない限りやむを得ない。しかし、中間報告書も、鉄道ファン2005年10月号の永瀬教授の記事(参考)もある今、桜井氏は現場と図面との比較対象を、まるでおこなっていないという誹りは免れまい。そんなインチキ話が世の中に通用するとでも思っているのだろうか。 さらに、桜井氏は次のように述べている。 河岸の直径2メートルくらいの耐震補強なしの円柱橋脚は、中間高さ付近の表面にわずかに膨れ亀裂が生じていたものの、強度的には何の問題もなかった。それは、私だけの判断ではなく、新聞にも写真入で報道されていた。JR東日本が的確な地震危機管理を行い、橋脚を補修したために、大惨事を回避できたとするのは、誤りである。よって5組を耐震補強してもしなくても結果は変わらなかったのだ。 桜井氏は、「すべての柱を補強しないといけない」と勘違いしている。耐震診断の結果、補強の必要なものはそれをおこない、そうでないものはそのままにする。そして、その診断は正確かつ的確であった。安全性が保障されるものまでもムダなコストをかけて補強せよというのは、「あなた、ガンになるかもしれないから、事前に危険性のある臓器を摘出しておきましょう」という、アホ話と一緒だ。 耐震補強必要無しとの診断結果がでた柱だったからこそ、強度的に問題ない、ひび程度の損傷ですんだ。 ここで、コンクリート構造物に関する一知識を挿入させていただく、桜井氏はその本質を理解しているかどうかはわからないが、「コンクリートは圧縮には強いものの、せん断・引張には弱い」ことはご存じのようであるらしい。 だが、鉄筋コンクリート構造物が破壊・崩壊に至ることとと、引張応力によりひび割れが生じることとは、根本的に違うことだけを知らなければいけない。 鉄筋コンクリート構造物は、基本的に引張力には鉄筋による応力負担で、圧縮力にはコンクリートと鉄筋との応力負担でまかなうことで設計されている。 桜井氏は、「ひび割れ!ひび割れ!」とわめいているが、ひび割れだけで破壊・崩壊に至らなかったと言うことは、想定されていたコンクリートの応力負担限界を、鉄筋による応力負担でまかない、破壊に至らなかった言うことなのである。 コンクリート工学を真剣に学んでほしいとは申しません。しかし、なまじ「工学博士」である以上、無責任な発言はなさらないことです。 一方耐震補強必要有りと診断され、補強した柱は、それにより無傷、あるいは強度的に問題のない程度の損傷ですんだ。 (参考資料:長岡技術科学大 下村助教授の報告書より。pdf) また、やたらと「柱の強化」について執拗に述べてはいるが、柱の立っている「根本」について無視・あるいは軽視している論調にも問題がある。柱は壊れなくても、土台から傾いて倒れました、というのでは柱が壊れるのと結果は同じになってしまう。 「建築の専門家」と「土木の専門家」とで意見が食い違うことも、あり得るので、断言は危険である。 専門家であるならば、結果を見て解説するようなことはしない方がよいだろう。 とのことだが、その台詞そっくりそのまま返却させていただく。あまり世の中をなめてはいけない。 普通は、起きてしまったことを検証するためには、結果とその結果を生み出す原因を類推し、その過程を詳細に見直していくことが、「通常の」専門家の行う常套である。 http //www.jsce.or.jp/report/32/index.html を、良く読んでから桜井氏の論調を吟味してほしい。アルミ・ステンレス車両を鋼製車両にしろと言うのど同様に、高架橋を完全なる構造物とすべきだと論ずるのは、コスト・採算を度外視せよということとおなじである。設計強度とは、本来の強度に変動係数を割り増しして作ってある。しかし、その割増率についての見直しをせざるを得ない現実を突きつけたのが、阪神・淡路震災であったのは確かだ。 確かに、補強が間に合わなかったいくつかの構造物がせん断による破壊をうけたことは憂慮すべきことであるが、これを持ってしてすべての構造物を補強せよというのは間違いだ。彼の論調をすればいったいどれだけの割り増し設計が必要なのかと言えば、その割り増し率は無限大になってしまう。そんなことを社会が要求するだろうか。 また、構造物を支える基礎構造や現場の土質改良も当然ながら必要となる。砂丘の真ん中にいくら強固な構造物を作ったとしても意味はあるまい。 鉄道は様々な学術が集積した産業といってよい。当然、彼の専門とする原子力分野も同じである。もし、この指摘についてムダなものだと判断するならば、彼はまさに「アマチャ」以下である。
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プラ材に比べると強度が低く、重い場合が多いのでどちらかというとボディの補修やドレスアップ目的の形状変更向け。 ●ラッカーパテ 塗料などと同じく、溶剤が揮発することで硬化するパテ。 通称プラパテ。 サーフェイサーの粒子を荒くして溶剤を少なくし、粘り気を強くした感じのもの。 定着力・加工性が良好で硬化剤がいらず、安価なため、1番手軽なパテ。 ラッカーシンナーを加えることで硬さを調節でき(標準状態ではペースト状)、筆で塗ることを目的とした「溶きパテ」にすることも可能。 但しサーフェイサーのようなものと思って使うと痛い目を見るので注意が必要(粒子が粗いので塗膜が厚くなる、エアブラシで塗ろうとすると詰まる) 反面、溶剤が揮発して硬化する特性上、多量に使うとなかなか硬化せず(最悪硬化しない、硬化してもクラックが入る)、ヒケも起こる。 硬化したと思って加工してみたら、ヒケにより後々段差が浮き上がってくることがあるので根気よく、十分な乾燥期間をおく必要がある。 また、硬化・完全乾燥後も溶剤に可溶なため、塗装を落とそうと思ってラッカーシンナーにドボンしたらラッカーパテまで溶けてしまう。 そういう場合はIPA(イソピロプレンアルコール)による塗装落しがお勧め。 プラも痛めないし。 瞬間接着剤を混ぜてやると速く硬化する。ただし、溶剤まで固まるわけではなく、硬化後も揮発し続けるので乾燥期間を置くのは一緒。また、「ス(巣)」も発生しやすい。 あらかたの加工を速く終わらせたい場合向き。 いくつかの模型関連企業から出ているが、タミヤ製のものがお勧め(比較的乾燥が速い) ●ポリエステルパテ 熱硬化樹脂を利用したもので、主剤と硬化剤を混ぜ、化学反応で硬化させるタイプ。 通称ポリパテ。 硬さはラッカーパテと同じくらいで、定着力・加工性も良好。 化学反応で硬化するため、(硬化剤さえしっかり混ざっていれば)いくら盛っても硬化してくれる。 また、熱硬化樹脂の特性上、過熱すると硬化が早まる。 逆に気温が低いとなかなか固まらない。 比較的軟らかい(ラッカーパテと同じくらい)ので細かいところにも届いてくれる。 しかし軟らかい分、溶剤もラッカーパテと同じくらい含まれているため当然ヒケが起こる。 やはり荒削りの後、しばらく乾燥期間を取ってやるのが無難。 また、ペースト状のものをこねて使う分、特に多く盛った場合は内部にスが発生しやすい。 削っていくと表面化するので、現れたらナイフ等で穴を広げて(こうしないとちゃんと埋まらない場合が多い)もう一度ポリパテで埋めるか、プラパテ・瞬着パテ・光硬化パテなどのペースト状パテ(若しくは瞬着)で埋めてやればいい。 盛り付ける部分にあらかじめプラ材や要らないランナーで嵩を増しておけば、パテの節約と同時に軽量化(上記の通りパテは結構重い)とヒケの抑制(使う量が少ない分揮発する溶剤も少ない)が出来る。プラボードを使えばなおのこと軽くなる。 ラッカー溶剤で軟化させることも出来るが、使う溶剤によっては硬化不良を起こすので注意(スチレンモノマーという専用の軟化剤もある)。また溶剤を増やす分、当然ヒケが大きくなるのでその点を考慮する必要がある。 接着には瞬間接着剤を使うが、ポリエステルのためか、接着面を適切に整えないと剥がれやすい。 こちらも各社から発売されていて、ワークアソシエイションのモリモリ・スベスベ・ドロドロや、タミヤ製のものが有名。 模型用のものが手に入らなくても、ホームセンターやカー用品店に行けば自動車修理用のものが手に入る。 ●エポキシパテ ポリエステルパテと同じく熱硬化樹脂を利用したもので、化学反応で硬化する。 通称エポパテ。 上記二種と違い、こちらは粘土状で手でこねて使用する。また、ポリパテと違い主剤と硬化剤がほぼ同量である。 粘土状で扱いが容易、汎用性も高いためかいろいろな種類があり、性能・特性もさまざま。 複数種類のものを混ぜても硬化してくれるため、特性の違うエポパテ同士を混ぜて中間的な性能のものを作ることが出来る。 粘土のような粘りがあり、硬化するまでの間にある程度形状出しをしておくことが出来る(大抵はそういう使い方をされる) 溶剤が殆ど含まれていないため、ヒケがほぼ皆無なのも魅力の一つ。また、スの発生も少ない(但し練り方が悪いと混入することもある) だが他のパテと比べて定着力が低い場合が多く(特殊なものでは強力なものがある)、細かいところに届きにくい。 ポリパテと同じく、過熱すると硬化が早まり、逆に気温が低いとなかなか固まらない。 ラッカー溶剤で軟化させる事は可能だが、それではこのパテの特性が失われるので、そういう場合は他のパテが使われる(但し接着面だけ定着力増加を狙って溶剤を使うことはある) 専用のケースやフィルム・ビニール袋に包んで保管するが、空気に触れている部分は変質・硬化してしまう。そういうところは不良(変色や硬化・定着不良)の原因になるので、こねる前に切り取ってしまおう。 接着には瞬間接着剤を使う。こちらは割とくっつきやすい。 プラスチック用 パテとしては強度が高く、細かい造形に向く。 タミヤ・GSI製では通常版と軽量タイプが出ている。密度の関係か、強度は通常版のほうが高め(但しやはり重い) セメダイン製のものは柔軟性が高く強度は高い(粘り強い)が、素材感が独特で塩ビやPVCのような質感になり、硬化後の切削や表面処理にコツや慣れが必要なので、癖が強いといえる。 ミリプット製は量と比較して価格が安いのが魅力だが、カリカリとした削り具合で脆いので、セメダイン製のものと混ぜて使うのがお勧め。 木工、木部用 セメダイン製やダイソーで売っている円柱状ものは硬化後、木に近い質感になり、そして何より軽いのが特徴。下手したら通常プラより軽い。 硬化も比較的速い。 物によってはかなり木に近い質感と削り具合を持つ。 反面、目が荒く細かい造形には向かない。 ダイソーで売っている緑色(の主剤と白の硬化剤)のものはタミヤ・GSI製の通常タイプとセメダイン製プラスチック用の中間くらいの特性。 金属・コンクリ用 硬くてかなり重い。 さらに完全硬化後は硬すぎてまともに加工できない。 工具を傷める可能性さえある。 ミニ四駆やプラモには全くと言っていいほど向かないので、バキュームフォーム用の原型や錘など、特殊な用途以外には買わないほうがいい。 購入の際にはしっかり確認しよう。 ●瞬間接着パテ アルテコから出ている瞬間接着パテ SPP-HG。通称瞬着パテ、アルテコ。 瞬間接着剤とパテの特性を併せ持ったような素材(そのためか硬化促進剤が効く) 瞬間接着剤の特性を持っているため定着力が非常に高く、加工性も良好。 しかし粘りが低い(中粘度の瞬着より少し粘りがあるくらい)分流れやすく、スが発生しやすいので厚盛りには向かない。 湿度が高い日はスが発生しやすいが、出来てしまった場合はポリパテと同じ要領でリカバーしてやればいい。 薬液の方が早く無くなる場合が多く、粉が余りがちだが、シアノン(色つき)で代替できる(薬液のみ通販あり)。 薬液の色が気に入らないときもシアノンをどうぞ。シアノンの方が粘り強く仕上がるらしい。 また値段が少々お高い(定価1838円)。 何度かマイナーチェンジが行われている。現在店頭に並んでいるのは3代目。 ●光硬化パテ もともとは自動車修理用に用いられていたもので、模型業界にはタミヤが持ち込んだもの。 その名の通り光(厳密には紫外線らしい)に反応して硬化する。1液性の素材なため、比較的気軽に使える。 但し他のペースト状パテと比べて定着力が劣るため、盛る場所を予め目の粗いヤスリ類などで荒らしておくなど工夫が必要。 光で硬化すると言ってもある程度の光を当てないと硬化しない(普通の部屋の照明程度では近づけないと固まらない)ため、それまでいくらでも形を変えられる。 太陽光での硬化がかなり早く、蛍光灯を至近距離で当てるだけでも数秒~数十秒で硬化する。 また、ブラックライトや紫外線ダイオードの光を当てれば太陽光と同じかそれ以上の速度で固まる。 光が届かないと硬化しないので、あまり厚盛りできない(タミヤでは2mmまで保障している。また、紫外線光を当てれば3mm程度まで硬化したという話もある) その特性を生かして文字やディティールを対象物表面に貼り付けることが可能(詳しくは「光 パテ 文字」でググってくれ) こねる必要がなく硬化時間も短いため、スが殆ど発生しないのも魅力の一つ。 硬化した後、表面がべたつく(空気に触れているところが硬化しないらしい)ため、ラッカー溶剤などでふき取る必要がある。 性能の高さと引き換えに少々値が張る(ラッカーパテとほぼ同量で定価1260円)。 ポリパテと同じく、模型用のものが手に入らなくてもホームセンターやカー用品店に行けば自動車修理用のものが手に入る。
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佐天「えっと、地上のビルがこうだから……」 答えに近づいたとて、相手は秘匿機関である。そう簡単には入口を提示してくれない 地下空間と言うのは、人の空間認識能力をかなり歪める。大阪梅田の地下街は、頻繁に工事などで経路が変更になることに加 え、その地上の街並みと相成って慣れているハズの人間ですら時折迷う程だ 当然、一般的に使用する人間が迷うようでは不便なので、地下駐車場の到る所に地図は掲載されている 毎日のルーチンとして使う人間はその様な地図を見ることは少なく、駐車して付近のエレベーターを使うので不便さを感じることは無い こうしてこの地下に何かあるはず、と探す人間にだけ牙をむくのだ もう何回目になるだろうか、壁にかかったこの地図を見るのは。ため息が出る 周りには車が多く停車されており、また入口 へ堂々巡りをしたという落胆が彼女を苦しめる 佐天(隠す目的があるならこの地図が正確に描かれているはず無いもんね) 佐天(しかし車多いな。深夜だってのに、みんな残業?お疲れ様すぎるなぁ) 広い上に無駄に区切りが多いこの空間は、幾度となく既視感を感じさせる。わざとそういう風に造っているのであろう 佐天(考えろ。この学園都市にはたくさんの能力者が居るんだ。私にはそれが無いんだから、考えて答えを見つけるしかない んだ) 佐天(でも御坂さんとかは自分の能力使って空間構造把握とかできるんだよね。やっぱり無能力者と違いがあり過ぎる) 佐天(はぁ、こんなところでコンプレックス出しても仕方が無いか。考えなきゃ。向うは能力者の襲来も考えてるはずなんだし) 佐天(そうだ、ここは学園都市なんだ。能力者の対策が無いわけないじゃん。構造を把握することが出来る能力者への対策装置があるハズ) 佐天(でも能力そのものをどうこうする装置じゃ、気付かれて偶然にここに何かが有るのが分かってしまう可能性もある) 佐天(てことは、無意識的に関係の無い方向へ誘導させるような仕組みが有るはず) 佐天(つまり、能力者への対策にもなって無能力者にも気付かれない) 佐天(そしてそれは、もし何かの影響を受けていると感じた能力者が居ても、簡単には気付かれない様に、あっても全く不思議の無いような隠れ蓑をしていると) 佐天(その上、仮にゴールが近くなると意識を強引に捻じ曲げるために、その効果を当然増やすように出来ている……) 自分の周りを見渡した。今自分が居る場所は車両が多く正確には分からないが、一見すれば、入口の付近だろう どんな駐車場でもそうだが、利便性の高い場所に多くの車が集まっている。この場合は地上へのエレベーターが近かったり、地下駐車場の入り口付近がそれに当るだろう。これは少しでも親などと一緒に巨大総合小売店に行った経験があればおのずと身に付く常識だ もう一度、地図を見る。付近には地上へ出る経路は近くにない。ということは、ここは出入り口の付近となる。地図上も、そのように描かれている 少女自身も、さっきまではそう思っており、また迷って同じところに出たのか、という感覚に陥ったのだ 思わず口がにやける。無能力者にとっては単純な罠だったのだ 佐天(わかっちゃいました分かっちゃいました分かっちゃいました!!もぉし能力者なら、きっとこの辺に設置されてる車に偽装した装置とかで干渉受けて見つけることが出来ない様になってたんだろうけど、) 停車している車両を膝で蹴る。普通の車両なら表面が凹むだろうが、へこみは見られず、足に伝わる感覚は重く固い感触だった 痛いが、嬉しい 佐天(アタシ、無能力者ですから!そんな物には引っ掛かからないのだ!!) 思わず出た笑みを何とか押さえて、道路にあるタイヤ跡を探す。もしここが本当に入り口付近ならば、タイヤ跡は目立たない だが、もしここが地下施設の出入り口の付近ならば、大型車のタイヤ跡が目立つハズだ 際立つ太く曲がりの無いゴムの跡が目に留まる 押さえられない笑みを浮かべて跡に沿って足を向けた 彼女にとって幸いだったのは、高度な電子機器を使用しなったこともある。相互情報共有装置を標準搭載している警備員以上の、つまり都市の部隊の大半は、防衛のシステムに完全に知らずの内に掌握され、彼女の様に手掛かりを発見することなく通り過ぎてしまうのだ どうせ地下駐車場だしと、手元にある高性能機器、携帯なんて時計がわりにしか使わなかったため、その仕組みにも引っ掛からない だが、彼女は見落としていることがあった。自らに付けられた、発信器の事を 乗っ取り対策を施された機器ですら紛れさせる空間で、そのような単調なシステムはもちろん無効化されてしまう 彼女を泳がせて探っていた側からすれば、これでは意味が無い。当然、人間を派遣して追いかけさせるという判断を下す 彼らからすれば、噂話程度しか考えていなかった地下施設の事実は、他の理事員を攻め立てる取引カードになり、噂どおりなら脅威である そこがアメリカとつるんでいるならば、なおさら見過ごすことは出来ない 破壊兵装を整えた少数精鋭部隊として、ブロックと呼ばれる部隊が、彼女の足跡を辿るべく、招集を受けていた 表面的には唯の睨みあいで終わったドーバー海峡での戦いの講和は、思った以上に早く終わった イギリス側であったアメリカが関与国の思惑通りに、第三国としての立場で場を仕切ったことが一つの大きな要因である イギリスもアメリカが味方に居なければ魔術師戦闘で押し切ることもできなかったし、フランスもそのアメリカが仲立ちして、イギリスに肩入れせず、無条件で終える事が出来るなら望ましいことである 表面的には事も無しで終わった戦いだが、イギリスとしては勝利国としてゴネたい所であるし、フランスとしても街が一つ焼かれた代償をどうにかしたい所ではあった つまり、裏の事情を知っている人間からすれば、簡単には終わらないだろうという予測が立っていたのだ しかし、それはことのほか早く終わった そのことが病院の一室で身を休めていた騎士団長に伝えられた時、当然彼も驚いた。だが、その理由として伝えられた情報が更に彼を驚かせる 騎士団長「IRAのテロだと?」※IRA=アイルランド共和軍 「はい。規模から、現在武装の確認されているリアルIRA150名以外の活動も見られます。可能性としては、武装解除して時間の経ってない暫定派の関与もあるかと」 団長「魔術師系統の動きはどうなっている?」 「確認が取れている者から予測するに、およそ100名規模のバックアップよう魔術師が有るかと。現在は陸軍SASが対応しております」 団長「IRAと長年戦ってきたSASは対IRAの専門家とも言える。故に血生臭い過去を持つ為、相手を挑発させることにならなければいいのだが」 「我々が戦っている間は大人しかったのですが、向うにも魔術に精通する者も居ます。恐らく我々が傷ついて動けないと知っての事かと」 団長「それでも、女王陛下と議会の寛容対話政策で近年ようやく力を削ぐことに成功したばかりだ。有る程度の備蓄武装があるとはいえ、まともにぶつかり合っては今のSASにIRAは対抗できない。それを補うために人道的でない方法を取れば世論が付かず自滅するだけだというのに」 「それが、彼らは公共機関を占拠し主張を繰り返し発表してはいるものの、人質などは採っていない模様で」 団長「馬鹿な!?いくら魔術師の援護があるとはいえ、彼らの武装程度ではすぐにSASに押しつぶされるはずだ!SASは何をやっているのか?!」 腹部に力が入り、傷口から溢れた血が滲むが彼は気にしない 「……どういう経路で入手したのか判明しておりませんが、SASの突入を6回凌ぐ程度の装備を持っていることだけは事実です」 6回という数字を聞いて、驚きは更に大きくなった。なるほど、それだけの戦力があれば人質など必要ないだろう。そしてSAS側には結構な被害が出ていることになる。現場は及び腰になって慎重になり、能動さに欠けるようになってもおかしくない 「北アイルランドは騒然としています。突入6回失敗という情報はまだ押さえられていますが、メディアに漏れるのも時間の問題。これまでIRAのテロ行為はイングランドでも行われました。もしメディアにSASの苦戦が伝われば、少なからず本島の市民をも混乱させることは確実かと」 団長「女王陛下やリメエア様は講和に加え、早期にそれらにも対応せねばならぬというか。これでは申し訳が立たない。今すぐにでも現地へ向かう」 「お待ちを。騎士団長殿がその様におっしゃられるであろうとあらかじめ予測しておられた様で、陛下からお言葉が。”ともかく先に傷を癒せ。最前列に怪我人を加えるほどの余裕は、我が国には無いからな”とのことです」 彼の傷は、科学的に見れば十分に重傷だがそこまでのものでは無い。しかしフランス方の装備していた剣や槍・矢じりなどの直接傷を付ける部位に込められた魔術が、彼の傷の治りを妨げている 団長「……そこまで仰られていては、動けんな。だが、軍事を統べる者としてただ休むわけにもいかない。今ある限りの情報をここへ。頼めるか?」 「了解。参謀官と共に用意いたします。しばらくお待ちを」 頼んだ、という言葉を背に広い病室から部下の騎士が出てゆく。彼もまた傷ついていた 皆疲弊しているのだ、騎士として頂点に配列する者がこの様でどうする、などと考えていたところへ、ノックの音。準備にしても早過ぎる どうぞ、と定型文を述べると、男が入ってきた 団長「確か、天草式の」 建宮「教皇代理、建宮斎字です。少々熱心にお話していたようですが、今、お時間は?」 団長「先程の者はしばらく戻ってこない。その間程度なら大丈夫だ。要件を聞こう」 建宮「それでは。この度は、内の女教皇を守りぬいて頂き、ありがとうございました。参ったのは、その礼です」 団長「そう固くならなくていい。それに、淑女を守るのは騎士の役割でもある」 建宮「いえ、我々も参戦していたんですが、他に手を取られていたので」 団長「天草式の奮戦は聞いている。感謝の言葉を言うのはこちらの方だ。私を含め、後方のアックア率いる相手に生き残っただけでも十分な戦果だろう」 自らが述べた後方のアックア、という言葉が頭のなかで反響する。あいつは一体何をしているのだろうか。まさか停戦と同時に帰った訳でもないだろう。イギリスに目的があるようだったが 団長「そう言えば、彼女、神裂火織の様子はどうなっている?意識は回復したのか?」 尋ねた騎士団長の言葉に、建宮斎字の表情が変わる 建宮「そのことで、少し。というよりそれが今日来た本当の目的でして」 団長「どうした?……まさか」 建宮「いえ、騎士団長殿が恐らく考えている様な状態では無いでしょうな」 団長「ならば、どうしたというのだ?」 建宮「……ひとつ、質問をば。我らの女教皇は 一 体 誰 の 手 で 前線から後退しました?」 団長「誰の手、と言われてもな。あの場に駆け付けた、恐らく米国の駆動鎧兵の一人としか言えん」 建宮「やはり、ですか」 考えるように視線を僅かに動かして、数秒の後彼は言葉をつづけた 建宮「実はですね、全英どの病院や教会にも帰還していないのです、我らの女教皇は」 タイヤの跡を辿った先に有った大きなシャッターの側の非常口の扉を潜ると、短い廊下があった 持っていたライトを点けて照らすと先にまた扉がある その扉には取っ手のようなものは存在していない。横に何かのパネルがあるだけだ。おおよそ、非常口にあるべきではないロック機構と言えるだろう 佐天(映画とかだったら、こう、銃弾で壊したら大概開くんだけど、ありえないよなー) 試しに銃を向けたが、これで壊れて二度と開かなかった場合が恐ろしく、諦める さりとて、持ってきてもいない爆薬などで吹き飛ばすことも出来ず、少女は立ちつくし、なんだかよくわからないパネルを操作する 佐天(こんなとき御坂さんが居ればちゃっちゃと開けてくれるんだろうけど。いや、どう考えてもそういうのは対策されてるよね。電気系統能力者は結構数が居るんだし) 佐天(初春なら、あー、いやあのこはコンピュータには強いけど機械に直接触れるのは向いてないよね) 佐天(ふむ、これ、指紋認証?いや、違う。指の血管で判別するタイプとの複合型?全然わっかんないけど、本人以外駄目なやつだよねぇ) 音ともに唐突に電子パネルに浮かんだ Matched and just opening please wait の文字 お、お、あぇ?とだらしのない気の抜けた声を挙げ、彼女の目の前で扉が動きだした 恐らくは廊下の一つなのだろうが、両側の壁で光の線がリズミカルに踊っている。聞こえる重い機械駆動音 明らかに異質な空間であるが、彼女はそれを不思議にも違和感なく受け入れる。まるで経験したことがあるかのように。まるで知っている場所であるかのように 少し複数に道が分かれる場面もあったが、迷わず廊下を抜けて次に有ったのは少し広い空間。そこは薄暗く何かの支柱が多く突き出ている 持ってきた懐中電灯でその中の一つを照らし上げる。無機質な金属の円柱 佐天(なんだろう、これ。知らないはずなのに 中 身 を あんまり見たくないような) 彼女自身、なぜ中身が有るということを知っていたのか分からなかったが、そこまで頭が回らなかった 小さなモニターに浮かぶ幾らかの英語の中から適当に選択・操作し、円柱が動き出した 金属で覆われていた部分が上がり、現れたのは何かの培養液に浸かった複数の脳。各脳には電極と線が刺さり、それが上下に走っている 佐天(あ、あ、あ、やっぱり見たいものじゃなかった。この部屋に有る奴、きっと全部こうなんだろうな) 視線を円柱から避けて、他の部屋に繋がる扉のようなものが無いか見まわす。有った その扉をくぐって有った先は同じように広い空間 所々に同じような円柱形のものが見えるが、大きさは所々違っていたりする 複数のモニターと一つの大きなデスクに向かって、白衣を着た何者かが座っていた 少女にはその見た目に覚えが有る その人物へ向けて、左脇から取り出した拳銃をまっすぐに向ける 銃なんて扱うのは初めてのはずだが、右腕を少し伸ばし目にして左手を右手に添えるその持ち方は、命中率と即応性を備えた持ち方であり、少なくとも中学生の1少女が知るべきものではない だが、そんなことは当然彼女の脳内で疑問としても浮かばない ?「予測より随分と早いが、やはり来たのだな」 白衣の老人がゆっくりと呟き、佐天の方を向く。その顔はやはりあの老人だった。恐らく、木原幻生と呼ばれる老人 幻生「その動作まで予想通り。だが時間は早過ぎる。内積した疑問も少ないのだろうなぁ。なぜ、私に銃を向ける?」 佐天「とぼけないで欲しいですね。私のクローン使って研究したり、戦いの道具にしてるのは一体誰ですか?」 幻生「……それが君をここまで連れてきた理由かい。ふむ、時間的には相応だ、仕方ない。それでも予想を破ったのは興味深いといえるか」 佐天「とにかく、今すぐに研究と製造を止めなさい!!既に生まれた子は解き放って!!」 幻生「こんな狭い空間じゃ、怒鳴らずとも聞こえている。もっと賢くなるべきだ」 何かの飲み物をすすり、マイペースに老人は口を開く 幻生「今の君では程度が低すぎる。ふふ、外はもう朝方か。鈍った思考ではなおさら気付きもしないだろうさ」 振り返って、老人は簡単にキーを叩く。同時に、佐天の意識は急速に睡眠状態へ移行した 太陽が昇り始める時間帯。文字通り頭がお花畑の少女は目を覚ます どうやら随分と長い時間寝ていたようで、記憶があやふやだ。自分は一体いくら寝ていたのだろうか 初春(えっと、昨日は非番で佐天さんと一緒に……?) 初春(あれ、そこからの記憶が無いや) 起きた状態が机の上のパソコンを前にしてうつ伏せだったので、いわゆる寝落ちしたのだろう しかし不自然だ。寝落ちならば、なぜ目の前のパソコンは落ちているのだろうか 少し汗臭い自分の体も気になったが、まずは目の前の端末に電源を入れる 数秒で立ち上がったそれを操作して、異変に気が付く 初春(おかしいなぁ。昨日このPC立ち上げてないことになってますね) 基本的に毎日立ち上げているので、学校から帰っての数時間にログが残っていないことなどまず無いのだが、そうなっていた 違和感を感じて、パソコンの履歴では無く、ネットワークの履歴を調べる 同じように昨日の使用履歴は無かった。だが、それでも違和感は拭いきれない 初春(なら、使用ログの編集履歴は……) 当り。本来の彼女なら、完全に使っていないことにするならば、ここも分からない様に手を加えて有るはずだ 手抜きとも考えられるそれは、自分らしくない。というより命取りだ こんなことをする場合と言うのは確実に学園都市の機密内容に踏み込んだときということになる だが余程眠かったのか、全く記憶が残っていない。何を調べたのか。どうして調べたのか。なぜ中途半端な工作をしたのか。なぜ 起きたときPCが落ちていたのか 記憶が無いにしては不自然すぎる。せめて昨日何を調べたのか分かればコレは解決するだろうか とりあえず書庫にアクセスしてみる。今まで対ハッカーの手法として確立させた方法で自分の動きを洗い出す 書庫で佐天涙子についての情報に触れ、そこから全く権限の違う場所へとんだようだ 初春(なんでわざわざ書庫まで開いて佐天さんの情報なんかを調べたんでしょう?) 調べた先に現れた組織名には見覚えがある。異様に権限が厳しく、というよりこのサーバー管理者しかアクセスできない様に設定されているデータベースに辿り着いた こんな所へアクセスした記憶は、やはりなかった。どうして佐天涙子などというどこにでもいる無能力者から、こんな堅牢に辿り着くのか 昨日行ったことをもう一度繰り返し、それでも思い出されない記憶 こうなってくると残す手掛かりは佐天涙子本人だ。学園都市の機密に手を付けた証拠を片っ端から消し去り、可能性的には起きているかもしれないので、友人に電話をかける。だが 『おかけになった番号は、現在電波が……』 「せっかく俺様が手をかけた術式を援護に出したというのに、使えんな」 言葉に怒気を孕んで、右方と呼ばれる男はなじる 傾国「使えないのはどちらでしょうか。指揮をとっていた側にも問題があるのでは?」 負けじとその前にたたずむ女も言葉を突きつける フィアンマ「自国戦力の不甲斐なさを押し付けるな。だが、確かに俺様の予想に反してメリケン野郎が強力だったのは事実だ。それは認める」 傾国「……わざわざ貴方がこんな戦いに参加したのは、ローマ正教の援護という形式だけでない理由が有ると見受けていましたが」 フィ「あぁ、それな。どこかの不甲斐ない部隊が原因で潰れた、と言えるかな」 目の前の女が、腰にかかる剣に手をかけた フィ「そんなどこの国にでもあるナマクラなんぞ俺様には脅しになんねぇよ。抜いてはそこが知れるぞ、フランスの切り札さんよ」 瞳に怒りを浮かべるも、その可能性は否定できない。フランスの聖剣がこの物には通じないという可能性は 傾国「バチカンの動きはこちらも把握しております。が、二度目の戦火は期待できぬかと。外圧に対処していたら、内政が疎かになったようで」 フィ「面倒だな、移民の国も。例え7割がカソリックでも、2割のイスラムに乱されるようでは」 講和が早期にまとまったのは、英国同様仏国も国内で問題が起きたからだ。旧仏領からきたイスラム系アフリカ移民の不満の爆発したというのが原因だが、どうも背後に大きな影を窺う事が出来る 傾国「それら不満の方向性を変えるための戦いでも有りましたから、一都市を焼かれたままで賠償も無しでは、悪化もおかしくは無いかと」 フィ「まぁ、馬鹿馬鹿しい両者無条件なんてものの原因のアメリカも欧州での海軍戦力を同じ攻撃で焼かれたようだがな。関与しなければ被害などなかったろうに」 傾国「あら、ご存じないので?撃沈とみられた第6艦隊の旗艦、同型艦が大西洋を本国へ向けての航行途中を確認されていますよ」 無論、無傷で。一体どこ所属の船なんでしょうねと付け加える フィ「……やってくれやがった。いや、乗せられたのは俺様じゃないが、間接的には含まれるか。思い通りにされるというのも気に食わないな」 フン、と息を吐いて頭脳を回転させる フィ「どうやら時代遅れの大国って評価は改める必要が有るようだな。姑息とも言えるがこの時勢だ、評価を改めた以上、回りくどい方法はかえって危険か」 女の前から身を離す。それを止めるかのように女が声をかけた。最大の疑問の真意を問いたかったのだ 傾国「……この戦いの事といい、バチカンが躍起になっているようですが、やはりあれは事実と?」 フィ「馬鹿か?フランスの聖女様が聞いてあきれるぞ。そうでなければ俺様が慌てて出てくるような羽目にはならないだろう。どこぞの教皇は必死になってまとめを図ろうとしているが、急過ぎる。イギリスとの戦いもこの様だ。間に合わないだろうな。せいぜい巻き込まれない様に、いや、結果は同じか。ま、頑張ることだ。じゃあな」 蛙医師「やぁ、おはよう。10時半、うん、予測より少し早いくらいかな」 医師の問いかけに、だが、彼の目の前の上条当麻は答えない もう一度体を見回し、脈や内臓の有るべき場所を擦る。元通りだ。恐ろしいほどに 頭をひねって原因を考えていると、目の前の男はようやく意識が有るような仕草をする 上条「あー、すんません。ちょっと集中してて」 蛙「ふぅん。まぁ、意識がはっきりしてるんなら良いんだけど……大丈夫かい?」 上条「まだ万全、って訳じゃないけど、こうやって会話する程度は」 蛙「予定より早いんだ、当然かな。ん、その様子なら大丈夫そうだ。面会謝絶も解除しておこう。表向き、君は階段から落ちて検査入院しているということになっているから、それで対応してくれるかい」 言って、ふと、上条の横にある総合的に人間の生命反応を示す機器にもう一度視線を移した 蛙「……質問していいかい?」 上条「っ、はい」 蛙「君はまだ、だね?」 上条「………………、はい」 蛙「そうか。ま、ここは君の部屋みたいなものだから好きなだけ居ると良いよ。何か協力できることとか、欲しい物とか有るかい? 」 上条「いや、そんな長居する訳でもないんで」 蛙「うーん。君からは偉く良い物を貰ったんだし、その対価だと思ってくれていいんだがね」 上条「えっと、んじゃあ、付近の無線ネットワークに接続できるような端末とか、そんなやつを。有ったらでいいです」 蛙「君のスペックじゃあ、既製品はついていけないだろうからね。そうだ、彼に作った物の予備があったから、それを調整したものを譲ろう」 上条「じゃあ、それで」 蛙「今日中には調整を終えるから、待ってくれるね?動きたいのは分かるけど、この数字じゃあ退院は認められない。君の驚異的な回復幅を見積もっても、とりあえず完成するまではここで休んでで欲しい。なに、退屈はしないだろうさ」 言い残し、部屋を出る蛙面の医師 残された上条は、さりとてやることも無く、ただ視線をうろつかせるだけ 部屋にノックの音が響く。看護師だと思ってどうぞと述べる 「お、お邪魔します。気分は良いでしょうか?とミサカは具合を窺います」「ちょっと、抜け駆けは許しませんよ、とミサカ は単独行動に目を光らせます」「ち、考えることは同じですか、とミサカは」「あの、私も居ますからねと(ry」 一方「ほォう。そいつはめでてェなァ」 打止「それで私もわざわざ病院で定期健診する回数が減らせるの、ってミサカはミサカは大喜び! 」 彼にとっては久々の休日だった どこかへ消えた第二位の削除が当面不可能となり打ち切られた為に休みとなったのだ 一方「他にも患者ばっかりなハズなンだが、片手間でそンな微小機械を開発しちまうたァ、流石としか言いようがねェな。先端機械開発者としてもトップクラスだ」 打止「でも開発に専念されると私達の調整してくれる人が減っちゃう事になるし、貴方のそれが壊れたとき、捕まらなくてどうしようもなくなっちゃうかもね、ってミサカはミサカは真面目に考えてみたり」 首にかかるチョーカーを指差しながら、幼い少女は応えた 一方「こいつの調整、ねェ。そう言えば、昨晩瞬断が頻発してたが、なンか有ったのか?」 打止「え、ホントに?!ってミサカはミサカは新事実に驚きを隠せない!」 頭に指を当てて、軽く左右に振る。どうやら少し考えているようだ 打止「ホントだ。学園都市の妹達だけネットワークから切り離されてる瞬間が所々に有ったみたい。でもなんでだろうってミサカはミサカは原因不明って顔に表してみる 」 一方「管理者のお前が理由分かンねェなら、どうしようもねェな。まァ、微笑機械を打たれる時についでに頭、見てもらうことにしろよォ」 打止「あれ、心配してくれてるの?ってミサカはミサカはあなたのちょっとした気配りに喜んでみたり」 一方「ハァ?お前が不調だとMNWに影響出て俺の行動に支障が出るかもしらねェからに決まってんだろ」 明らかに視線を逸らして言った一方通行を見て、打ち止めは頬を緩める 打止「素直じゃないなぁ。そんな悪い子にはお仕置き、ってミサカはミサカはネットワーク管理者権限を乱用してみる」 一方「天下の往来で死んだ魚のモノマネさせようってか?止めろ馬鹿、止めてください」 打止「それじゃ、今日一日は私の言うこと聞いてね、ってミサカはミサカは脅してみたり」 一方「ハァ、仕方ねえな。付き合ってやらァよ」 打止「わぁい。見たい映画があったんだよーってミサカはミサカははしゃいでみる」 一方「あーあー、でもまずは病院に行きましょーねェ」 元気な子供の後ろ姿を見守るように、彼はすごすごとその子供の後ろをついて歩いた 上条「おお、妹達か。ちょうどいいや、暇なんで話し相手になってくれるか?」 部屋の入り口で留まる賑やかな妹達を、上条当麻は招き入れた 土御門「この都市自体の破壊を狙う連中?冗談にしても、もっと捻ってほしいぜよ 」 アレイスター「残念ながら冗談のつもりは無いのだよ」 土御門「そんなことが可能なら今頃バチカン連中が大挙して押し寄せてる。冗談でなければ何だ」 アレ「君たちも心当たりは有るだろう?」 土御門「クローンみたいな連中を言ってるなら筋違いだ。あのレベルの兵隊をそろえるのが都市外で無理なのは一番お前が知っているはずだろう」 アレ「……ふむ。では少し外堀から説明しようか。私は統括理事長という肩書きで彼らを管理している。彼らのパワーバランスを操作する事で維持している保守構造は君も理解している通りだろう」 アレ「しかし、そのバランスを保って来れたのは、私という権限に肩を並べる存在が無かったから、という限定下だったからでね」 土御門「つまり、比類する者が現れると、統括理事達を抑え込めないとでも言いたいのか」 アレ「その通りだ。察しが良いな」 土御門「それこそ冗談だろう。この地球上、どこにそんな奴がいる。造反が増えているのは事実だろうが、だからと言ってこの都市自体の破壊をもたらすような戦力が背景であるとは言えないだろう」 アレ「そう言えるのは、学園都市がこの世界中で最も科学が発展し、巨大魔術組織に狙われても押し返すことが出来る程の戦力と経済力を保持している、という前提を君が持っているからだな」 土御門「なにが言いたい? 」 アレ「君の想像を超える存在がこの学園都市に干渉している、と言えば話が早いか」 アレ「その存在は最近科学に飽き足らず、魔術にも食指を伸ばしている。土御門元春、君は先のイギリスとフランスでのいざこざについて詳しく知っているかな?」 土御門「お前の言う存在が原因の仕事がせわしなくあったおかげで、その辺の学生と変わらない程度だ」 アレ「ではまず、君の本国と連絡を取ることだな。そうすれば、君にも見えてくる現実があるだろう」 土御門「じゃあ、そうさせてもらう。呼び出しておいて、核心を隠した言い方。全く持っていちいち気に障る」 アレ「すまない。だが、君はあまりにも情報不足のようだ。少々この場所に染まり過ぎたか」 ビーカーの中に浮かぶ人間が視界から消えた。というよりむしろ、土御門の方が彼の目の前から消えたのだ 結標「今日は結構長かったんじゃない?」 土御門「ここの住人と話をすると気疲れするのが難点だにゃー」 結標「私も話してる間中待たなきゃならないし、面倒ったらありゃしないわ。こっちもこっちの用事があるっての」 土御門「本当にアイツは他人に迷惑をかけるのが得意ぜよ。ま、俺も話終わったし、あわきんもよーじとやらに行けばいいんじゃないかにゃー」 結標「そうさせてもらうわ。これでまた急に呼び出し食らったら、私が乗り込んで奴の心臓に杭を埋め込んでやる」 土御門「物騒だにゃー。だが女の子を急に呼び出すなんてアイツも良い御身分ぜよ。ま、俺も俺でやることできたっし、駅まで飛ばしてくれ ると助かるんだがにゃー」 結標「人をタクシー代わりに利用しようとするあんたも十分良い身分だと思い知りなさい。ま、特別に許したげるわ」 海原「人払い、ですか」 某女子中学生の登校を見送って、やることも無くなった海原(仮)は消費しかねた生活雑貨を捨て、買い換えようと街を歩い ていた そして、あからさまに周りの人間がいなくなった空間に突入した 海原「わざわざ自分を狙うなんて。さて、誰でしょうか。出てきたらどうです」 彼の後ろに有った建物の自動ドアが開く ドアの駆動音が聞こえるとすぐに懐に隠し持つナイフ形の霊装に手を伸ばした 正確に標的だけを絞らなければならない彼の装備は、性質上一発の攻撃を外すわけにはいかない ドアから距離を取るように前へ跳びつつ体を反転させて自動ドアの有る建物の方へ体を向ける ?「簡単に背中を取らせすぎだ。貴様を頼るのはやはり無駄なようだな、裏切り者」 海原「その声は、ショチトルでしたか。良かった。もう少しでバラバラにしてしまうところでしたよ」 言葉を聞いて少女は彼の左脇の辺りを見る。なるほど、黒曜石のナイフの先端が少しだけ上着を切り裂き、その切っ先は彼女に向いていた ショチトル「なるほど、組織を裏切るだけの技量は有るということだな」 海原「眼鏡にかなってうれしいところですね。それで、あなた今頼る、と言いましたか?」 ショ「そうだ。組織を裏切り、学園都市で安穏と暮らしているだけの貴様にな」 海原「寝首を掻くにしても、もっといいやり方があるでしょうに」 ショ「その通りだ。だが、頼る、と言ったのは間違いではない」 海原「自分は組織の裏切り者なんでしょう?なぜ頼ることに?」 ショ「……組織の連中が前にアメリカの学芸都市を襲撃したのだ。それは成功したが、報復が先日あって…… 」 ショ「国境沿いの前線基地はもちろん、本部まで一気に制圧された」 ショ「場所は完全に秘匿のハズだったのだが、資金源の麻薬取引から手が伸びてきて」 ショ「奴らの開発した駆動鎧で一気に、だそうだ。そして私と同様に学園都市に潜入していたテクパトルとトチトリからも、本部陥落の連絡の後からずっと音信不通になった」 ショ「彼らがやられたとすると、持っていた原典が奪われた可能性もある」 海原「原典?!なんでそんな代物を持って前線に繰り出したりしだんです?なにが起きたらそんなことに」 ショ「老人は死んでテクパトルが実権を握ってしまったからな。本拠地を失い、迷走していたとはいえ指導者を失い、翼ある 者の帰還は事実上完全崩壊だ」 ショ「身分自体は貴様も私も同じものとなった。……だが、私はこれを持っている」 少女が褐色の肌をグイッと押し付ける 皮膚に覆われている肉が有るであろう部分が怪しく光を発し、皮膚の内側に書かれた文字が海原の衣服に照らし写される 何気なく、その文字を読もうと脳が行動を起こした瞬間、彼の頭脳に途方も無い衝撃が走る 「ぐ、う、ァァあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」 耐えられず、彼は叫び、文字から視線をそらす 海原「ッ、な、なぜあなたがこれを、こんなものを!?」 ショ「全て貴様を粛清する為だ。だが、皮肉にもこれを貴様に使わずに済んだことで、安心しているんだ、私は」 海原「こんな物の力を借りれば、自己崩壊します。あなたは私を殺す為に自分をも殺すつもりだったんですか?! 」 ショ「そんなこと、決まってるじゃない……。貴様が、お兄ちゃんが裏切ったから、こうなった!!私はどうしようもなかった!!」 海原「……テクパトルですか?いや、もう誰が原典に体を取り込ませるなんてことをやったかなどは関係ないですが」 ショ「……貴様を殺す為に、学園都市に入ったテクパトル達をわざわざ追って殺したとすれば、アメリカの連中は原典に目を付けて ることになる」 ショ「裏切り者を粛正する為ならともかく、私達に益無く奴らにただ奪われるだけなんて許されない、許したくない」 ショ「だから貴様を頼ったんだ。もう、私には貴様しか居ない。……だから助けて、お兄ちゃん……」 少女の最後の呟きのような声は、だが確かに、男には伝わった 土御門を移動させて別れた後、結標は連絡のあった所へ向かっていた 連絡の主は不明。しかしその内容が、彼女の心を揺らす 【仲間を解放したくは無いか】 たった一言のその内容が、彼女は無視できない 彼女の事を調べれば、それなりの力のある組織ならば、彼女がなぜ暗部などに居るのかわかる。それは不思議でない だが、少し考えればわかることだが、学園都市内の組織が彼女にこのように言ってくること自体が危険なのだ 彼らは彼女にとって最高の人質であり、学園都市最高クラスの空間移動能力者を好き勝手できるツールとして、学園都市は失いたくない 故に、彼女にそんな連絡をとってくる組織は学園都市にはない。仮に現れても、その組織は一瞬で潰れてきた 彼女の能力に目を付けた連中はたくさんいたが、故に目を付けられ、暗部の手によってこの世から消されてきた。彼女自身、暗部の仕事で自分を引き抜こうとしてきた組織を潰したこともある そういうことがいくらかあり、最近では彼女にそういった手を出してくる組織などいなくなった。同時にそれは彼女に学園都市の管理下でしか彼らを救う事が出来ないという確固たる事実を知らしめる働きをももたらした 結標(ほんと久しぶりだわ。またどうせくだらない結果に終わりそうだけど) 結標(手紙、なんて古典的な方法を取ってきたのはあなた達が初めてよ。ご丁寧にサラシの中に捻りこんでくるなんて、一体 どうやったのかしら) つまり、彼女が気になったのはそこだった 自分が女性であるということを圧倒的に他人へ知らしめるその部位へ、メモのような紙が入っていた事である 彼女自身、そんなところを触れられたことなどここしばらく無い 手品のようななんらかの方法で無いならば、それはかなりの精度を持った空間移動能力者が勧誘側にいるということだ そんな存在が居るとすれば、もちろん結標という存在は改めて必要でないということになる つまりその組織の目的がグループの結標淡希を、つまるところ学園都市を牛耳る者たちの結標淡希を奪い、その戦力を低下させようとたくらんでいるということになる 自分を戦力に取り入れることが目的では無く、敵の戦力を削ぐためという目的は今までにない そこまで胸元に挟まっていたメモから考えて、そこに同時に記されていた場所へ、彼女は向かった 結標(もしかしたら、今回は本当にうまくいったりなんて、期待するだけ無駄よね) その程度に彼女は考えを留めていた 昼。昼食が終わったころに後輩は現れた 「御坂ー。またあの子来てるわよー」 そう言われて教室の入り口を見ると、後輩がうれしそうな表情で手招きしていた 御坂「はいよー、何の用?」 白井「いえちょっと。こんなところで立ち話もなんですので、すこし歩きませんか?」 御坂「うーん。まーいいわよ。次の授業移動教室じゃないしね」 白井「それでは」 白井に連れられ、しばらく他愛のない会話を続ける すこし人が少なくなったところで、白井が話題を変えた 白井「お姉さま、当麻さんの面会謝絶が、今朝解除されたようですわ」 御坂「え、ホントに?! 」 白井「はい。表向きは階段から落ちたので頭脳検査の為に入院したということになっていますが」 御坂「その方がアイツらしいけど、それなら逆に今朝まで面会謝絶だった理由にならないわね」 白井「ええ。あの現場で大怪我をして入院、の方がよっぽどしっくりきますわ」 御坂「だと今度は、大怪我ってのが噛み合わないのよね。こんなに早く面会謝絶が解かれる訳ないし」 白井「まぁ、それは実際に会って見て、判断をしたらいいではありませんか」 御坂「そうね。放課後にでも会いに行きましょ。黒子、今日は非番だったわよね」 白井「私の予定を覚えていて下さるなんて感激ですの。放課後は校門でお待ちしておりますわ」 御坂「わかったわ。で、それで、こんな人気のないところに連れてきた理由は何?」 白井「佐天さんが、今日登校していないそうです 」 御坂「そう。それで?」 白井「初春の調べでは、昨日、第一学区で男性と共に路地裏から出てくるのをカメラがとらえております。ちなみに佐天さんは私服で」 御坂「……状況だけで考えたら、買春して帰れなくなってのが妥当ね」 白井「性格を考えたらそんなことは無いと思うんですがね。でもそれだけじゃありませんの」 白井「昨日学校から佐天さんと共に帰った初春が、今朝までの記憶を無くしており、その間に初春自身と思われる者の手で第一学区について調べていたそうです」 御坂「……それも聞いたら、まるで三流の推理小説じゃない。最悪なのは、佐天さんが何かに巻き込まれたことが現実ってことね」 つづく
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夜食 突然の頭痛に、草加雅人は足を止めた。 それは硝子を引っ掻く様な甲高い幻聴を伴い、彼の意識を責め苛む。 「…………っ」 思わず右手を額に当て、顔を顰めてしまう。と、その様子に気付いたのか同行者がこちらへ振り向いた。 「雅人、どうかしたのか?」 同行者、城戸真司。 この“ゲーム”において草加が最初に出会った、自分以外の参加者。 もう一つの言い方をするなら、草加が最初に手に入れた“駒”か。 「…いや、ちょっとめまいがしてね。気にしないでくれ」 そう言って草加はごまかしと共に笑みを返す。だがそれは“本当は大丈夫ではない”という事を匂わせる、苦笑に近いものだった。 「本当に大丈夫か? どっか部屋に入って休むか?」 思惑通り、城戸はこちらを気遣って休憩を提案してきた。その事に、相変わらず単純な奴だ、と感想を抱き、と同時に城戸が見渡した自分達の周囲を再確認する。 そこは白亜の廊下だった。 清潔さを主張する為か壁や天井が白の壁紙で包装され、床は黒のタイルが敷かれている。向かって左の壁にはスライド式の扉が、右の壁には窓硝子が並列し、施設の2階という高地故に地上を見渡せる。 典型的な病院の廊下だった。 「休む部屋には事欠かないぞ。何たってここは病院なんだからな」 励まそうとしているのか笑みを向けてくる城戸に、そうだね、と草加は相づちをうつ。 ……馬鹿な男だ…… 再三になる城戸への評価を草加は抱く。 参加者同士が殺し合うこの“バトルロワイヤル”、その中にあって無心に自分以外の参加者を助けようとする男。これを馬鹿と言わずして何と言うのか。 ……まあ、だからこそ扱い易いんだけどな…… 相づちと共に浮かんだ草加の笑み、それが嘲笑であったと城戸は気付かないだろう。 「本当に大した事じゃないんだ、気にしないでくれ」 「……本当か?」 殺し合いという状況に不安を抱き、些末な事にも過剰な対応をしてしまうのだろう。歯切れの悪い城戸の態度に、草加は内心で鬱陶しく思う。 そうして、何か話題を変えるか、と視線を上げれば丁度いいものを目に入った。 「じゃあ…城戸君、あの部屋で休まないか?」 草加が前方を指差し、城戸はその先を見る。 やや斜めに向かう指先は左手の壁、つまり並列する病室の扉を向いている。指が定めるのはその内の一つ、扉の脇に無数のネームプレート入れが張り付いた扉だ。 無数のネームプレートが必要になる病室、それは複数の病人が寝る大部屋だと言う事だ。 その扉を開いて中を見た時、草加はその予想が正しかった事を確認した。 「おお、ベットが沢山ある」 一歩後ろに立つ城戸が内装を口にする。 大部屋に置かれたベットは全部6つ、向かって左に3つと右に3つ、全て枕のある側を壁に密着させた配置だ。シーツや壁は白く、正面の壁一面に嵌められた窓硝子が夜の野外を見せている。 「ここを拠点にしよう、城戸君」 言いつつ草加は室内に歩を進めた。 「部屋は大きくベットもある。出入り口は一つだけ、窓は大きくて開放感があり、しかも2階だから敵に入られる心配もない」 まあオルフェノクみたいな化け物がこの“ゲーム”にいた場合、その限りではないだろうが。 「……ここで一休みして、それから病院内を探索しようか。それから、傷付いた参加者に出会ったらここへ連れてこよう。ここでならきっと守れる」 そんなつもりは一切無いがな、と草加は内心で付け加える。傷付いている奴がいたら始末する、そうでなくとも利用する、助けるという行動は論外だ。 「成る程な……、やっぱり雅人は頭が良いな!」 「それ程でもないよ」 ……お前が馬鹿なだけさ…… 城戸に背を向けているのを良い事に草加は露骨な嘲笑を浮かべる。そのまま一番奥の左側に並ぶベットへと腰を下ろし、 「俺はこのベットを使わせてもらうよ。城戸君も、好きな所を使うと良い」 城戸に行動を促す。 言われた城戸はどこか嬉しげに室内へと足を踏み入れ、 「そうだな、俺はどのベットを使わせてもらおうか――」 た瞬間、盛大にずっこけた。 「……………………」 その結果に草加は呆然とする。それ程までに見事な転倒ぶりだったのだ。 一切の受身を取る事無く、全身の全面を大振りにして床へと叩き付けられる。その遠心力のせいなのか両腕は上に伸びきり、城戸は一直線の姿勢で床に倒れている。 ……馬鹿の上に、阿呆だったのか…… その感想を内心に収めるのは、非常な労力が必要となった。あらゆる嘲笑の動作を殺し終えた所で、草加は口を開く。 「……大丈夫か、城戸君?」 心配する振りをして草加はベットから腰を浮かせる。直後、 「っ!?」 何かが病室の床に飛来した。飛来物は衝突の衝撃に砕け散り、甲高い音を立てて破片を周囲に散らす。 突然の異変に草加は両腕で頭を庇い、腰を引かせた。それを解除するのは、破砕発生から数拍後だ。 「一体、何が」 恐る恐ると腕を下ろし、飛来した何かを草加は見る。 衝突によって砕け散ったそれは、原型を影も形も留めていない。だが霧散した破片からそれを予想する事は出来る。 透明度の高い硬質な破片、大多数は粒子と呼べる程に細分化されている。そこから草加が想像する原型は、 「……瓶?」 それは瓶だったのだろう。辛うじて残っていた大きな破片、それが円柱を象っていた事からそう思う。 しかし何故そんなものがここにある、否、飛来したのか。 考えようとした草加は面を上げた。 「――!?」 そして見た。 視線の先、倒れた城戸の背を踏みつける人物を。巨大な鉄槌を右手に持ったその男を。 「動くな」 男は城戸を踏みにじり、軽く苦悶を上げさせる。 その事で草加は、新たに現れた事が敵にしかなりえない事を悟った。 そしてその男が三度目の言葉を放つ。 「――お前らが“ゼロ”の手下か?」 放たれた声色は、まるで悪魔の様だ、と草加は思った。 ● はんたがその男達を見つけたのは、丁度そいつ等が病室に入っていく所だった。 ……奴らか……? 二人組の男、その後ろ姿にはんたは疑惑を抱く。つい先ほど、自分をこけにしたゼロなる男の手下なのだろうか、という疑惑を。 ゼロ、思い起こすのも忌々しい男。それを思い起こしてはんたの内心が荒れる。 ……借りは必ず返してやる…… この自分を相手にし、小細工で逃げ延びた口の達者な男だった。奴に曰く、この病院には“黒き騎士達”なる手下が潜んでいるらしい。ゼロが病院に仕込まれた爆薬を操る以上、奴の手下を狙うしかない。 目の前の2人が“黒き騎士達”なのか、それとも違うのか。 ……どちらでも構わないがな…… その思いによってはんたは考察を断ち切る。 はんたがこの殺し合いにおいて選んだスタンスは“皆殺し”だ。 自分を除く全ての参加者、その末には主催者である2人の男も殺す。そうやって全てを終わらせる。 それこそがはんたの選んだ道だった。 故にはんたは、二人組の男を強襲する事にした。 「成る程な……、やっぱり雅人は頭が良いな!」 「それ程でもないよ」 二人組の片割、“雅人”なる男はすでに部屋の奥だ。もう一人の方は出入り口の辺りに立っている。 通路の暗がりによって身を隠したはんたは息を殺し、もう一人が動くのを待つ。そして、 「俺はこのベットを使わせてもらうよ。城戸君も、好きな所を使うと良い」 部屋の奥から響いた“雅人”の声、それによって動作を作った。 「そうだな」 “雅人”の言葉にもう一人が歩を進め、 「俺はどのベットを」 通路がもう一人の男の死角になった所で走り込み、 「使わせてもらおう」 扉の縁に背を付け、そして後ろ手に一つの物品を室内に投げた。 投げ入れたのは院内で手に入れた空の酒瓶。円柱型のそれは室内を転がり、もう一人の男が持ち上げた男の片足を潜り、下ろされた足裏と床の間に割り込んだ。 それによって生じるのは、円柱を踏んだ事による着地の不安定、 「か――」 そして転倒だ。 男は豪快にも前のめりに倒れ、その前面を床に叩き付ける。 「……大丈夫か、城戸君?」 どうやら“城戸”というらしい転倒した男、それを気遣ってか“草加”が動いたのをはんたは悟る。 しかし“城戸”を転倒させ、宙へと跳び上がった酒瓶がそれを止める。 「っ!?」 中空を下る酒瓶が床に落ち、その衝撃によって炸裂した。破片を室内にまき散らし、“雅人”を驚愕によって停止させる。 その隙をついて、はんたは動く。 起立と疾走は同時に発生、扉を回り込んで室内に入り、左足を持って転倒する“城戸”の背を踏みつける。 「――!?」 「動くな」 “城戸”は踏みつけられた事によって、“雅人”は視界を広げた事によって、はんたに気付く。 だがはんたはそれを無視して問う。殺すべき相手に、気遣う必要などない。 「――お前らが“ゼロ”の手下か?」 ● 「……ゼロ? 誰の事だ?」 突如現れ、城戸を踏みつけた男の問い。それに対して草加は率直な感想を口にする。 ……人の名前か? しかし名簿を見た限りでは“ゼロ”という名前の参加者はいなかった筈だ。ならば偽名という事か。そしてこの男は“ゼロ”と敵対関係にあるという事か。 ……まさか、もう衝突が始まっているのか? “ゲーム”が始まって2時間が過ぎた。 自分や、おそらく目の前の男の様に“ゲーム”に乗った者達が既に争い始めていても可笑しくはない。 ただ、今ここで襲われる、というのは想定外だった。 「質問に質問で返すな。訊いているのは俺だ」 現状の主導権は男が握っている。どうやら男は、こちらのあらゆる行動を許すつもりはなさそうだ。 「お前は“ゼロ”の手下か? 違うのか?」 再度の問い。 もしここで男の意にそぐわぬ事をすれば、どうなるか。 城戸にそれが行けば良いが、自分に来る可能性もある。よしんば城戸に行ったとしても、次に来るのは草加だろう。 故に草加は正直に答える事にした。 「……違う」 「そ、そうだそうだ! 俺達はゼロなんて奴、知らないぞ!?」 男に踏みつけられた城戸が便乗して喚く。が、黙れ、という男の一言と共に踏みにじられて押し黙った。 「とぼけているのか? それとも、本当にそうなのか?」 まあどちらでも良いが、と男は区切る。そして、 「――お前らを殺す事に変わりは無い」 断言した。 ……頭おかしいんじゃないか!? この殺人鬼が!! 自身の指針を棚上げして草加は内心罵倒する。 殺人という行動に耐える方法は、主に二つある。 誤摩化すか、軽視するか、だ。 自分はこうした理由があったから人を殺した、という理由付けが“誤摩化し”。 人を殺す程度の事が一体なんだというのか、という理由付けが“軽視”。 自分は前者だが、この男は恐らく後者にあたるのだろう。 ……こんな糞野郎を相手にしてやれるか! 何か、何か対応策を…… 最初から城戸の救出という行いを除外し、草加の思考は巡る。 「お前の支給品を寄越せ。さもなければ、この男の脚を砕く」 「……雅人! 俺に構わず逃げろ!!」 ……当たり前だ! 誰がお前を助けるか!! 城戸を踏みつける男の要求、踏みつけられた城戸の言葉、そのどちらも草加は罵倒する。城戸の救出を最初から考えない草加にとって、それはどれ程の価値も無いからだ。 ……糞野郎……俺を殺す前に、こっちの全てを奪い取ろうという判断か! 考える。 何とか自分だけでも生き残る方法は無いか、と。しかし男はその猶予を与えるつもりはない様だ。 「俺がやらない、と思っているのか?」 こちらの不動に痺れを切らして男は動く。 背に置いていた足を城戸の右足首に移し、右手に持った巨大な鉄槌を高々と振り上げ、そして、 城戸の右膝を粉砕した。 「――――――――――――――――――――――――――っッっ!!!」 城戸の口から溢れるのは獣声。大き過ぎる痛みが、本能としての反応が、城戸の声から人間らしさを消失させた。 そして男が鉄槌を持ち上げた時、そこに城戸の膝は無かった。否、“膝だったもの”ならばあった。 圧倒的な腕力と重量によって振り落とされた一撃によって平たく潰れ、さながら薄いハンバークのとなった肉体を“膝”と定義出来るならば、の話だが。 圧縮されたのが原因か、皮膚から血液が噴出し、平面化した肉皮に砕かれた骨の輪郭が浮き出ている。 「お前が望むなら、或は遅いなら、あと三回は繰り返せるな」 男の言葉は忠告だ。仲間の四肢を守りたければさっさと言う事をきけ、と。 ……下らない、俺が言う事を聞いたらまとめて殺す気だろうが!? だが男にとって、そして城戸にとって不幸な事は、“草加が城戸をどれ程も助けたいとは思っていない”という事だった。 男の忠告は草加にとっては幸運、“あと3回分の猶予が出来た”と思うだけだ。 だから、 ……何か、何か考えなければ…… 「――左脚」 ……早く考えろ……生き残る術を……! 「――右腕」 ……ああ時間が無い、早く早く早く早く……ッ!! 「――左腕」 城戸の四肢が全て粉砕されても、草加の思考に乱れは無かった。焦りもあって良案は浮かばなかったが。 「……っ……ぁ…………」 四肢の関節を平たい肉片に変えられた城戸は、陸に上げられた魚の様に喘いでいた。目は血走り、脂汗に濡れ、全身を浮かせて呼吸し、喉を傷付けたのか僅かな血痕が周囲に散っていた。 そして男は、最早城戸に価値は無しと見たのか、足を退けてこちらを見やる。 「何だ、お前そうだったのか。……だったら最初から言え、無駄な労力を使った」 そうして男は、草加に対する感想を一言にした。 「――お前は、誰がどんな目に遭っても無視出来る糞野郎か」 それと共に男はこちらへと歩んできた。 「糞野郎相手じゃあ、この手は通じないな」 城戸の四肢を肉片に変えた鉄槌を下げて。 「鎮圧する手間を避けようと思ったが……結局二度手間か」 後退りする草加だったが、その背中は直ぐに窓に衝突する。逃げ場は無い。 「――糞野郎の相手は、本当に面倒だ」 そして男は鉄槌を振り上げた。今度は時間をかけるつもりは無いのだろう。鉄槌は、草加の額を狙っている。 ……死、ぬ…… 逃げ場を失い、致死の攻撃に迫られ、草加から一切の感情が消えた。 冷えきった脳髄と意思。そして、 「――死ね」 「うああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!! 真理いぃぃぃぃっっ!!!」 鉄槌は振り下ろされた。 ● どうやら気絶していたらしい。 四肢に感じる激痛、それによって城戸は目を覚ました。 「……ぎ、…っ、………ぐぅ……」 それぞれの関節が全て叩き潰されていた。血管、骨格、神経、筋肉、その全てがただの肉屑となり、手足は全く動かない。 まるで虫けらにでもなった様な感覚、それに城戸の感情は波打つ。 だが、この“ゲーム”においても助け合いを望んだ城戸の意思は、喚く事よりも心配する事を望んだ。 「――雅人!? 草加はどうした!?」 唯一動く首を回して城戸は周囲を確認する。自分の体をここまで痛めつけた犯人、そいつが残る草加雅人を狙わない筈が無い。 必死になって首を回し、そして城戸は雅人を発見した。 「……雅人! 雅人、大丈夫か!?」 雅人は床に尻をつき、その背をベットの格子に預けていた。その表情は驚愕と恐怖、双眸を最大限に剥き出し、一つ所を凝視している。 「雅人っ! おい、雅人、どうしたんだよ!?」 「……ば、ばけものが……ばけものが……っ!!」 震える声を漏らし、雅人は凝視する方向を指差した。一体何を、と思い見たものは、 背から4対の三角の突起を生やした、男の後ろ姿だった。 「……な、何だよ、これ」 男は、確かに城戸の四肢を粉々に砕いた男だった。 その男が何故、体内から三角の突起を、爪を生やしているのか。 「――ぉ」 とその時、男が僅かに苦悶した。身じろぎし、今まで隠れていたその向こう側が見える。 そこにあったのは、窓硝子から両腕を生やす人型の虎だった。太い両腕に生えた4対の爪が男の胴を貫き、その先端を背から露出させていたのだ。 そして城戸には、その怪物を見た事があった。 「――ミラーモンスター」 白に青で彩られた、虎型のミラーモンスターがそこにいる。獰猛な双眸は両腕によって貫いた男を凝視し、獰猛な気配が硝子越しにでも伝わってきた。 ……なんでコイツがここに……!? 「ぐ……ぉ…」 男は首をもたげ、窓硝子に移るモンスターを睨む。 その表情は城戸から見る事は出来ない。しかし、そこに込められた感情の強さは解る。何故なら、有り余る怒気が男の背から滲み出していたのだから。 「……おま、えぇ…っ!!」 強靭な両腕がモンスターの両腕を掴む。強靭な握力が強固な腕を握り締め、圧壊させようとする。しかし、臓腑を貫かれたその状態でどれ程の力が入る筈も無く、男はそのまま、窓硝子に引きずり込まれた。 窓硝子は割れる事も無く、まるで水面の様に男を引きずり込む。そして響くのは、猛獣が獣を補食する生々しい音。城戸にとって、疎みながらも聞き覚えてしまった音だった。 皮を裂き、肉を喰らい、血を啜り、骨を咀嚼し、命というものを一滴残らず摂取する音が響く。 それが途絶えた後に、ようやく病室へと静寂が戻ってきた。 残されたのは、四肢を潰された城戸と、未だ抜けきらない恐慌に呆然とする草加、そして散乱した男の所持品。 「――一体、何だったんだ」 雅人の呟きが、やけに大きく聞こえた。 「あの化け物は一体何なんだ……? どうして窓硝子の中にいた……?」 『――教えて欲しいか』 その瞬間、声がした。 城戸のものでも雅人のものでもなく、ましてや喰われた男のものでもない、新たな声。それが強い耳鳴りを引き連れて、窓硝子に現れた。 モンスターと同様に、病室の窓硝子に現れた男。 「――神崎!!」 城戸にとっては馴染み深く、雅人にとってはこの“ゲーム”に巻き込まれた元凶とも言える存在。そんな男が、突如として城戸達の前に出現した。 『いい様だな、城戸真司』 「うるせぇ! それより何なんだ、このゲームは!? これも……ライダー同士の戦いの戦いだっていうのか!?」 こちらを見下す神崎に城戸は吠え、しかし神崎の興味は城戸に向かなかった。おそらくその一言だけが言いたかったのだろう。 神崎が視線を向けた相手は、草加雅人だ。 『草加雅人。城戸や浅倉とは違う種の仮面ライダーに変身する男。……お前には、カードデッキを預けた』 「……な、何!?」 城戸の驚愕、だが目前の二人はそれを無視して話を進める。 草加は震えつつも自身のデイバックを開き、中から支給品を取り出す。取り出されたそれは、深い青をした長方形の箱、中央には虎を模した紋章があった。 城戸は見た事のない物だったが、カードデッキの一つである事はすぐに解った。 ……雅人に…カードデッキが支給されてたのか…… 予想だにしなかった事実だが、それならば先ほどの出来事も納得出来る。 カードデッキの持ち主、契約者の危機に契約モンスターが防衛行動をとったのだ。 「これが、何だと言うんだ」 タイガのカードデッキを片手にし、草加は神崎へと問い掛ける。 『それがカードデッキ。お前の知るライダーベルトとは完全に機構の異なる……俺が造ったライダーベルトの様なものだ。鏡や硝子にかざす事で、仮面ライダーに変身する事が出来る』 神崎の言葉に雅人が押し黙る。 話しているうちに頭が冷えてきたのか、値踏みする様な目で神崎を見返し、 「……どうして俺にそれを教える? 参加者同士を殺し合わせる事が、お前の目的じゃないのか?」 『そうだ。故にこの戦いにおいて、カードデッキには戦いを促す機能を持たせた』 何、と問い掛ける雅人に神崎は語る。 『カードデッキには、持ち主に力を貸す契約モンスターがついている。だが契約モンスターに長期間人間を喰わせないと、契約違反となってそのモンスターは持ち主を襲う』 そして、 『――この戦いで配るにあたり、カードデッキにはその猶予期間を12時間にまで短縮しておいた』 「な、何だと!!?」 城戸と雅人が同時に驚愕する。 それはつまり、12時間に1人、契約モンスターに喰わせなければ自分が喰われるという事だ。 『加えて言えば、変身や契約モンスターへの命令を1分持続する毎に、その猶予時間は10分消耗される。つまり最長でも……変身や命令は1時間12分しか維持出来ない』 もしもそれ以上行い続ければ、その瞬間に変身が解けて契約モンスターに襲われる。 「だ、だったらカードデッキなんか捨てれば良い!」 『それも無駄だ。カードデッキを捨てた場合も、契約モンスターは持ち主を襲うようにしてある』 「……そんな」 それでは八方ふさがりではないか。 自分が生き残る為には、自分以外を殺さなければならないではないか。 『そうだ。生き残りたければ殺せ、自分以外の参加者を。それ以外にお前が生き残る術は無い』 窓硝子の向こうで、神崎が雅人を指差す。 『――戦え、戦わなければ生き残れない』 戦え、戦え、戦え、戦え。 その言葉だけを反響させ、神崎の姿は窓硝子から遠のいていった。 ● 神崎が消えた病室、そこには静寂だけが残された。 城戸は部屋の出入り口辺りに倒れ、そして草加は俯いてしゃがみ込んでいた。 ……神崎……この戦いを仕組んだ、“主催者”の片割…… とんだ糞野郎だ、と草加は毒気づく。 自分をこんな場所に連れ込み、人間の四肢をああも無惨に潰せる男と戦わせ、その果てには、窓硝子に潜む化け物の飼い主に仕立て上げた。 ……それも、時限爆弾付きとはな…… 成る程、よく出来た仕組みだ。 1日に1人を喰わせろ、さもなくば自分が喰われる。使用すればその分だけ猶予が減るから確実に相手を喰わせる必要がある。そして、カードデッキとやらを捨てても自分は喰われる。 成る程、これまで徹底されては、 ……殺し合うしか、無いよなぁ……? 自分が生き残る為、自分が帰還する為、その為に他の参加者を犠牲にするしかない。 「おい、雅人……雅人!」 と、城戸の呼びかけに草加は思考の奥に沈んでいた意識を取り戻した。 「大丈夫か…?」 四肢の関節を潰され、床に這いつくばる城戸。頭だけを持ち上げてこちらを心配そうに見る。 「神崎の口車なんか気になよ。大丈夫、何か方法はあるって!」 城戸はこちらへと励ましを送る。 這いつくばったまま励ますその姿を、草加はまじまじと見つめた。 「ど、どうした?」 ……あぁ、何だ…… どうやら当面、あの虎型の化け物に喰われる心配はなさそうだ。何故なら、 ……こんな所に、都合の良い“餌”があったじゃないか…… 四肢を潰されて身動き出来ない、格好の獲物が。 「お、おい雅人?」 城戸の窺いを無視して草加は立ち上がり、城戸へと歩み寄る。そして城戸の胴を担ぎ上げ、近場のベットへと投げ捨てた。 「…ぎ、ぐぁ……っ!!」 粉砕された四肢が刺激されて城戸が悲鳴を上げる。 だがそれさえも草加は無視し、隣のベットから剥がしたシーツで城戸の体をベットに縛りつけた。 「――雅人! 一体何のつもりだ!?」 驚きに問い詰める城戸を、そこに至ってようやく草加は応対する。 「……“餌”だよ」 暗く残忍な笑みを浮かべて、草加は呟く。 「時間になったらモンスターに喰わせる……“餌”が無いとヤバいだろ? それを保存してるのさ」 「“餌”って……俺の事か!?」 その言葉は無視する。当然の事を改めて言う無駄を草加は好まない。 だから草加は城戸に背を向け、病室を後にした。新たな“餌”を捕獲する為に。 廊下に出れば、並列した窓硝子がある。そしてそこには、獰猛な両眼でこちらを見る虎型の怪物もいた。 「――待っていろ化け物、すぐに“餌”を捕まえてやる」 期間限定の下僕となったその化け物に笑いかけ、草加は病院の廊下を行く。 「――雅人っ!! 雅人おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」 背後に響く城戸の叫びを、やはり無視しながら。 草加雅人、残る猶予は――11時間59分。 【緑の悪魔はんた@メタルサーガStS 死亡】 【一日目 AM2 33】 【現在地 H-4 病院内】 【草加雅人@マスカレード】 [参戦時間軸]ACT.14終了後くらい。 [状態]健康 [装備]カードデッキ(タイガ)@リリカル龍騎 [道具]支給品一式・デュエルディスク@リリカル遊戯王GX・拡声器(メガホン)・ウェットティッシュ・城戸のデイバック [思考・状況] 基本 利用出来る物は全て利用し、最後の一人になる 1.病院に来た奴は全員“餌”だ…… 2.早く参加者を捕まえないとな 4.カイザギアも探さないとなぁ 5.北崎は俺が殺す 備考 ※病院を拠点兼“食料庫”と定義しました ※城戸真司に対する認識が“馬鹿”から“餌”に変わりました ※ゲーム中盤くらいまでは演技を続けるつもりです ※名前は知りませんが地獄兄弟、特に「影山瞬」を怨んでいます。天道総司も同様です ※ウェットティッシュは元からの草加の持ち物です。没収漏れです 【城戸真司@リリカル龍騎】 [参戦時間軸]第二十話~第二十一話あたり。オーディンを殴った後 [状態]両肘・両膝部が粉砕・ベットの上に拘束 [装備]無し [道具]無し [思考・状況] 基本 神崎の思い通りにはさせない。絶対にこんな戦い止めさせてやる! 1.雅人、正気に戻ってくれ!! 2.体中が痛ぇ……っ! 3.なのはちゃん達と合流したい 備考 ※名簿のなのはやフェイトを自分の良く知るなのはやフェイトだと勘違いしてます。 共通の備考 ※まだ草加は、自分がなのは達の知り合いである事は明かしていません。 故に真司は、草加がなのは達の知り合いである事は知りません ※病院の2階にある大部屋病室に、“四肢を砕かれた城戸真司”が拘束されています。また同室に、“はんたが持っていた全ての所持品”が散乱しています 【カードデッキについて】 支給品化に際しての制限は以下の5つです ・12時間毎に1人、契約モンスターに“生きた参加者”を喰わせないと所有者が襲われるようになります ・参加者を1人喰わせると、猶予が12時間に補充されます。猶予は12時間より増えません ・変身や契約モンスターへの命令を1分継続させる毎に、10分の猶予を消費します。つまり変身・命令は最長で1時間12分間維持出来ます ・猶予を使い切るとその瞬間に変身が解除され、契約モンスターに襲われるようになります ・所有者が自らの意思でカードデッキを捨てた場合、その所有者は契約モンスターに喰われます。無意識・譲渡・強奪の場合は適用されません 032 本編投下順 034