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「ちょっと違った未来11」 ※原作IF 京介×桐乃 ~~☆ 「あ!京介さん、あれ…!」 「ん?おっ、あれは…。」 帰りの車中、後部座席に座っている桐乃が声をかける。 「あれは…結婚式、かしら。」 教会での結婚式。 車の中からでもわかるくらい結構派手だな。 バックミラーで後ろを見ると桐乃がうずうずしていた。…よし。 「ちょっと寄ってみるか。何かの縁だ、盛大に祝ってやろーぜ。」 「この辺りだと…あそこの駐車場に車を寄せれば…。」 「そうだな…。」 教会の後ろに駐車場らしき場所がある。完全に部外者だけど、ちょっとぐらいかまわねーよな? 駐車場の空いたスペースに車を停車させ、ロックする。 車の中から外に出ると新郎新婦の登場を待ちわびているのか、たくさんの人たちが扉の前で待ちわびている。 どうやら聖書に倣った夫婦の誓いの儀式はすでに終わっているようだ。 「あ、花嫁さんだ!」 桐乃が嬉しそうにぴょんぴょん小さく飛び跳ねる。 俺達はいいタイミングに来れたらしい。ちょうど新郎新婦が出てくるところで、 「綺麗…。」 隣にいる瑠璃がうっとりと呟く。 純白のウエディングドレス。ドレスの種類なんて俺にはわからねーけど、よくCMとかで見かけるタイプのものだ。それでも…。 「実物を見るとやっぱ違うな。」 確かに綺麗だった。日の光に照らされてドレスが白銀に輝いている。教会の屋根にいる鳥達も祝福してくれているのか、静かに見下ろしている。 桐乃といい瑠璃といい、女の子は皆こういう綺麗なものが好きなんだよな…。 名前もしらない人だけど、これからの幸多いであろう未来をめいっぱい感じているのだろう。 夫をつかむ腕は全幅の信頼と愛情を寄せていた。 見れば花嫁さんが白いブーケを投げようとしていた。 「桐乃桐乃、あのブーケ!」 瑠璃が少し慌てたように言う、 「え?」 「花嫁さんが投げるあのブーケ、あれを取ってらっしゃい。あれが取れた人が次に花嫁衣裳が着れるって言われているのよ。」 「え、そ、そうなんですか!?じゃ、じゃああたしも…!」 桐乃は前に並ぶ人達に入っていく。周りの人たちも同じ考えらしく、そろってブーケを受け取ろうとしていた。 きゃいきゃいとはしゃぐ桐乃。あの姿を見れただけでもこの教会に立ち寄ってよかった。やっぱあいつは笑ってる姿が一番だよ。 瑠璃の横顔を見ると同じ事を考えているのか、桐乃の後姿を見ながら微笑んでいた。 「ふふ…。」 「今日はありがとな、瑠璃。」 「え?」 「やっぱさ、アイツも内にばっかしいると気が滅入っちまうだろ?あれからほとんど自分ひとりで外出にも出かけないし…。」 「そう…大学にも?」 「行ってはいるんだけど、ほとんど大学の友達と話してないみたいだ。あくまで桐乃の反応からの推測だけどな…。昔みたいにあやせや加奈子が一緒ならあいつらに話聞けばわかるんだけどな…。」 残念ながら三人とも大学が違うし…。 あの事故前は大学でもファッションリーダーみたいに自然となっていて、サークルとかからの勧誘も凄まじかった。メールや電話が来るたびに丁寧に断っていた。 『ま、あんたにはこんな経験ないだろうからわかるわけないけどね~。』 ぐぬぬ。腹立つあのアマ。そんな女にぞっこんで尻にひかれる俺は一体なんなのか。そんな俺にも腹立つ。過去の俺に言ってやりたい。もっと亭主関白になれ、と。 そんなことを考えていると、 「…痛ぅ…。」 え? 瑠璃が眉間を指で押さえていた。真っ白い肌に脂汗が滲み出ている。 「おい瑠璃、大丈夫か!?」 「…ご、ごめんなさい先輩…はあはあ…、す、少しどこかで休ま、せて…。」 「わかった。ここじゃなんだから、あの木陰に…。」 教会の裏に木陰があった筈。あそこだったら人もそういない。 「…ごめんなさい。こんな日に。」 瑠璃の肩を抱えてゆっくりと結婚式の場を離れる。教会裏は綺麗に整理されていて、近くにちょうどいい大きさのベンチがあった。 「あそこで休もう。大丈夫か?」 「だい、じょうぶよ…。はあはあ…。」 顔を見ると蒼白だった。普段色白な分、もはや病的ともいえるその顔色。整った顔立ちは頭痛の痛みで歪んでいた。 「水とか要るか?…いや、いっそのこと病院に…。」 「大丈夫…すこしだけ…すこしだけ休ませて頂戴…。そうすればこんなくらい…。」 本当に具合が悪そうだ。 俺の胸にしな垂れかかってくる瑠璃。彼女の甘い体臭と髪の匂いが鼻に入ってくる。 「先輩…ごめんなさい…。」 「何をだよ。いいから今はゆっくりと…。」 「違うの、そうじゃないの…。」 「え?」 「私…ずっと…心のどこかで貴方達が…桐乃のことを羨んでた…。」 なにを…? 「貴方があの時、私じゃなくてあの子を選んで…。それでもそれはまだ『妹』としてだった…。だから私にもまだチャンスが…大好きな先輩の心に私を映すチャンスがまだあるかもって、あの時はそう、思ってた…。」 …。 「だけど貴方は桐乃を選んで…私は何も出来なくて…。ううん、それでもいいって思ってた…。それが本当の気持ち。本当よ。だってあの子は私にとっても大事な…。でもあの子が記憶を失って…、痛ぅ…!」 「瑠璃!?」 ~~~ やったやった♪花嫁さんのブーケが取れた♪ 周りの人たちがおめでとうって言ってくれる。部外者だけどいいのかな? 「あ、ありがとうございます。ありがとうございます。」 ぺこぺこと頭を下げる。 「あら、とっても可愛らしい子。私にも娘がいたらこんな可愛い子にしたいわ~。」 「あなた将来いいお嫁さんになれるわよ~。そのブーケ、大事に取っときなさい。」 はしばしにそう声がかかる。えへへ…嬉しいなぁ…。 あたしはブーケが取れたことを報告したくて後ろを向いた。 「京介さん、黒猫さん!…あれ?」 きょろきょろと周りを見てもどこにもいない。あれ?どこに行ったんだろう…。 あたしが二人を探しているのをみて、参列してたお爺さんが、 「お嬢ちゃんの連れのとっぽい兄ちゃんと綺麗な姉ちゃんなら裏手に行ったよ。」 あれ? 「肩寄せ合ってたが…なんかあったのかい?」 …。 「…ありがとう、ございます…。」 嫌な予感がする…。 なんだろうこの胸騒ぎ…。 ~~~ 心に曇る暗雲を否定出来ないままあたしは教会の裏手に向かった。そこのベンチに二人は寄り添って座っていた。そこから話し声が聞こえてくる…。 ーーー『…桐乃のことを羨んでた…』 え? ーーー『…だから私にも…大好きな…思って…』 え?大、好き?誰が誰を? ーーー『…それで…いいっ…思ってた…』 ここからじゃ二人の声がよく聞き取れない。京介さんの顔が見れない。黒猫さんが京介さんの胸元に顔を埋めている。その二人はどうみても…。 パキッ あたしは小さな木の枝を踏んだみたいだ。全く見えていなかった。だって…。 「桐乃!?」 「…。」 京介さんが慌てて振り返る。 黒猫さんは顔を埋めたままだ。こちらを見ようともしない。 「はは…。」 馬鹿みたいだ…あたし…。 京介さんの妹だ彼女だと言われて…。彼の好意に甘えて、その気になって…。一人で舞い上がって…。 そうだよね…。京介さんもこんなめんどくさい女なんかより黒猫さんみたいな綺麗な人のほうが…。 もう、わけわかんないよ…。 「…ッ!」 たまらなくなり、あたしはその場を駆け出した。 ~~~ この光景を見て何を思ったのか、桐乃が駆け出していく。 ばか、あいつ何を勘違いしてんだ!?それどころじゃねえってのに!? 「はあはあ…先輩…。」 「瑠璃…とりあえず病院に…。」 「はあはあ…あの子を追いかけなさい…。」 「で、でもよ…。それじゃおまえが…。」 「いいから行きなさい!呪い殺されたいの!?」 物凄い剣幕だった。それだけ彼女も必死なのか。かつての厨二フレーズも全く違う性質を帯びていた。 「わかった!すぐに戻るからな…!」 ベンチに瑠璃を横たわらせ、俺は桐乃の後を追いかけた。 ~~~ 桐乃はどこだ…あいつに本気で走られたら俺じゃ追いつけない…。なんとか見失わないようにしないと…っていた! 「おい、桐乃!」 後ろから桐乃の背中に向かって叫ぶ。 ビクッ、と桐乃は身体を一瞬硬直させる。 「…っ!」 俺のほうに一回振り返るとそのまま全力で走って駆けていく。 ここで逃したらもう…。って…。 (お、遅っ!?) あいつ走り方まで忘れてんのか!?そう思わせるほど桐乃の走るスピードは遅かった。 これじゃそこらの女の子とそう変わらない。のたのたした女の子走り。 「っ!待てよ、桐乃!」 以前なら比較にもならないであろうスピードの差が今は逆転している。 一般的な成人男性の俺が今のこの桐乃の走る速度に追いつけない筈もなく…。 「桐乃、待てって!」 ものの数秒で彼女は捕らえられた。 「桐乃、待てって!話を聞…。」 彼女の左手首を捕まえ振り向かせたら、俺は言葉を一瞬失ってしまった。 「…。」 彼女は、桐乃は泣いていた。大きな瞳に大粒の涙をためて。 「おい桐乃、落ち着けよ。いいか、さっきのは…。」 「…して…。」 「え?」 「離して!!」 桐乃は掴まれていた手首を振りほどく。 一歩二歩後方に距離を置く。 肩を震わせ、いからせて、野生動物みたいに腰を落として俺を睨みつける。 「あなたも…。」 「え…?」 「あなたもあたしの前から消えちゃうんでしょ!?めんどくさい女だ、何をしてもとろくさい女だ、って…!」 「何、を…。」 桐乃は泣きながら大声で、 「あたし知らない!あたし全然綺麗じゃない!モデルなんか、服のことなんか何にも知らない!あたし知らない!あんなに勉強なんか出来ない!出来っこない!!」 「…。」 「陸上だってそう…!小説だって…!なんなの…!?そんなのあたしに出来るわけないじゃない…!そんなのあたし知らない…!知らないのに皆して…皆して…!」 ーーー『相当負担がある筈よ。特に心に…。皆が言うことが全く記憶にない。しかも相手は自分のことを知っている。…葛藤がそこにあることは容易にわかるわ。』 大学のカフェテリアで瑠璃と会った時に言われたことを思い出す。 クソッ。俺は馬鹿だ。どこまで鈍いんだ!? 桐乃の心がこんだけ追い詰められていたってのに…。 当たり前じゃねえか!?周りが知らない人だらけで…。 それでもこいつは俺に嫌われたくなくて、あれだけ健気に振舞って…。 俺は一度でも本気でこいつの立場になって考えたことがあったか!?こいつの悩みを感じようとしたか!? こんなんで、何が、兄貴、だよ。 過去の俺をぶん殴りたくなる。 「知らない人たちが皆近づいてきて離れてく…!あたしには何にもないのに…何にもない事に勝手に落胆して失望して…!皆誰の事を言ってるの!?知らない!あたし『そんな人』知らない!」 もう桐乃の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。 「…皆誰の事を見てるの…?…あたしのことを見てよぉ…。あたしを無視しないで…。無視、しないでよぉ…。」 桐乃は膝から崩れ、そのまま肩を震わせ嗚咽する。 「無視しないで…無視しないでぇ…。」 「…桐乃。」 もう見てられなくて、俺は…。 「ぇ?」 幼子のように泣きじゃくる桐乃を、そっと抱きしめた。 「桐乃…おまえの気持ちに気づいてやれなくて、ごめん…。」 「…ぁ…。」 「俺、今までおまえを守る、おまえを離さないって思ってたけど…全然おまえのことわかってなかった…。」 「…。」 「俺は大馬鹿だよ。大馬鹿兄貴だ。妹がこんなに苦しんでるのに…。気づきもしないで…。」 「…。」 「桐乃。」 俺は腕にすっぽり収まった華奢な桐乃の身体を抱きしめながら、 「おまえのことを、もっと知りたい。知りたいんだ。昔の桐乃じゃない。今のおまえの事が…今の桐乃の事が、俺は知りたい。」 「京介…さん…。」 「なんたっておまえは俺の大事な大事な世界にたった一人の妹だからな…。ダメか…?」 「で、でも…。でも…!く、黒猫さんは…!?」 「…今、黒猫は体調を壊してるんだ…。」 「…え?」 「おまえの考えてることは勘違いだよ。さっきはあいつの介抱をしていたんだ。あいつとは恋人でも何でもない…。だって…。」 …いずれ瑠璃との、黒猫との想い出を俺は桐乃に話さなくちゃいけないだろう。 確かに俺はあいつの事が大好きだった。 愛してた。恋してた。 いつも痛くて尊大な芝居がかった口調で、だけど誰よりも優しいお人よしの、ありし日のあいつ。 でも俺が女性として黒猫を愛したのは、恋したのは過去の話だ。 今の俺のこの気持ちは、想いは、たった一人に向けられている。 …この想いはきっとこの先も変わらない。二人でその愛を育んでいけるって信じてる。 「京介さん…。」 「…これからお互いのことを知っていこう。それに…。」 俺はニッと笑顔で、 「おまえには瑠璃だって沙織だってあやせだっている。おまえを支えてくれるやつはいっぱいいるんだぜ?」 「京介さん…。」 「も、もちろん、俺を第一に頼ってくれて…いいんだからな。」 ごほん、と咳払いをする。…ちょっと語りすぎたかな? 「…ちゃ、ん…。」 「え?」 「こ、これからは、きょ、京介さんのこと、…お、お兄ちゃんって、よ、呼びますから…。」 「うぇ!?」 「だ、だって、その…。あ、あたし達、きょ、兄妹ですし…その…。」 桐乃が顔を赤らめながら上目づかいで、 「…だ、ダメ、ですか…?」 「い、いいに…。」 「はい…。」 「いいに決まってんだろ…。」 俺の返答を聞いた桐乃はパアッ顔を明らめた。 「んふふ…お兄ちゃん…お兄ちゃん…。」 おい、連呼はやめろ。…くすぐったいじゃねーか…。 …。 おいちょっと待て。 周りからひそひそ声が聞こえる。 周りを見ると俺達を取り囲むように人が巻いていた。 皆してニヤニヤしている。 ヤベ!すっかり忘れてたけど、ここ往来のド真ん中だ。 …今までよく車にクラクション鳴らされなかったな…。 「ごほん。き、桐乃、行くぞ?」 「あ、お兄ちゃん…。」 「ここは危険なのだ、妹よ。ここは危険。」 「…ぁ…。」 桐乃も俺から顔を上げ、周りの状況をようやく把握したみたいだ。 カアア… 急速湯沸かし器みたいに顔を赤らめる桐乃。 「いくぞ、桐乃。…瑠璃が待ってる。行こう。」 今はすこしでも離れたくない…。俺は桐乃に手を差し出した。 「…はい、お兄ちゃん♪」 ぎゅっと俺の手を握り締める。 男なら思わず見惚れてしまう笑顔で、俺の最愛の妹はうなずいた。 ~~~ んふふ♪んふふ♪ あたしの心の暗雲は京介さんの言葉で一掃された。 まだ戻らない記憶。モヤがかかる記憶。それでも…。 『今のおまえの事が…今の桐乃の事が、俺は知りたい。』 えへへ…。 お兄ちゃんは今のあたしを見てくれている。今のあたしを大事にしてくれている。 そのことは彼の体温から、言葉から、痛いほど伝わってきた。 (あたし、ここにいていいんだ…。) 一時期どうしようかと思っていた。外に出るのが怖くて怖くてたまらなくて…。でもここ以外に居場所なんかなくって…。 そんなあたしをお兄ちゃんは…。 『おまえは俺の大事な大事な世界にたった一人の妹だからな。』 (…ありがとう。ありがとう、お兄ちゃん。) あたしはお兄ちゃんに手を引かれ、教会の裏手を目指す。 もう結婚式は終わっていて、人もまばらだった。 つないだ手をぎゅっと握り返す。 男の人の手っておっきいな…。おっきくて、あったかい…。 ーーー『桐乃、帰ろう。』 一瞬、何かの光景がフラッシュバックする。 …あれ?いつか誰かにもこうやって誰かについて行って…。 一瞬頭の中で見えたその光景が何なのか、考えようとすると…。 「瑠璃!?」 裏手につくと、黒猫さんが…。 「瑠璃!?おい、瑠璃!?」 お兄ちゃんが声を張り上げる。 黒猫さんの顔は蒼白だった。浅く呼吸をし、ぐったりしていた。 ーーー瞬間、何かの光景があたしの頭の中に蘇る。 ーーー誰かの顔をそっと撫でる。 ーーーもう、還らない、誰か。 身体の震えが止まらない。嫌…嫌…。 「お、おにいちゃん…。」 お兄ちゃんは救急車を手配している。 その声が、音が聞こえないのにカチカチという自分の歯を鳴らす音だけが嫌に鮮明に響く。 寒い…。寒いよ…。あたしは自分の両腕を強く抱きしめる。 「桐乃!!」 肩を両手でつかまれる。 ビクッ あたしの身体は反応し、心はすぐさま元の世界に戻る。 「今からすぐに救急車が来てくれるそうだ。俺は瑠璃の家族に連絡を入れる。」 「ぁ…。」 「もしかしたら救急車には身内は一人しか乗れないかもしれない。ここに二万ある。後でタクシーを拾って来るんだ。」 「ぁ…。」 「桐乃、大変だけどしっかりするんだ…。俺達が頑張らないと瑠璃は…。」 黒猫さん、黒猫さん…。 「桐乃、大丈夫だ。大丈夫だから…。今俺達に出来ることをしよう。」 …遠くのサイレンの音が聞こえる。 その音は彼女を一体どこに連れて行こうとする音なのか…。 あたしはただ、祈るしかなかった。
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527 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/29(水) 20 26 18.26 ID HNBFGTJ2P [4/8] ここ最近、俺に日課になりつつことがある。 プシュッ、ゴクッゴクッ、ぷはぁ~。 「けっ、相変わらずうまくねえな。こんなもんが好きなやつの気が知れねえぜ」 所謂、寝る前の一杯というやつだ。 どうしてこんなものが俺の日課になりつつあるかといえば、それなりの理由がある。 ここ最近俺はひじょ~に寝つきが悪かった。 あることが頭をグルグルと渦巻いて、それが解決できずに朝まで悶々と悩み続けていたのだ。 しかもそれが連日だからタチが悪い。毎回同じことを考えて、結論が出ずに悩み続け、そうして気がつけば朝になっている。そんなことの繰り返す日々。 そしてそんなときに思いついたのがこれだった。 アルコールが入れば少しぐらい寝つきがよくなるんじゃないか。そんな安直な考えだったが、それがぴたりと嵌ってくれた。 親父がアルコールに強いだけに心配ではあったが、俺にはその遺伝子は受け継がれていなかったようだ。缶1本空ければ無理矢理にでも寝ることが出来る。それぐらい俺は酒に弱かった。 正直、警察官の息子が未成年での飲酒をすることに抵抗がないわけじゃない。でも背に腹は変えられないというだろう? 俺はそこまで追い詰められてたってことだ。 今じゃこれがないと眠りにつくことすら出来やしない。それぐらいに今俺がかかえている悩みは深刻なのだ。 「はっ、情けねえ話だな」 思わずポツリとぼやいてしまう。 こんなもんに逃げなきゃならんほど弱い自分に腹が立つ。 とん、とベッドに沿うように立つ壁に背を預けた。そうして自然と意識の向かう先は壁の向こう。 「あいつはもう寝ちまったか」 壁越しに聞こえる音に耳を澄ませるがたいした音は拾えない。時間も時間だし寝てても何も不思議はない。 ゴクリ、と缶チューハイをあおる。ジュースのような味の中に混じるアルコールが酷く不味かった。 「はぁ、俺は一体どうすればいいんだろうな」 白状しよう。俺が悩んでることってのは、他ならぬ妹の桐乃のことだ。 俺はこの夏、めでたく彼女が出来た。そして紆余曲折の末、夏の終わりに別れることとなった。―――彼女よりも、妹を選んで。 ああ、わかってるさ。それがどれだけおかしいってことはさ。 でも俺には耐えられなかったんだよ。桐乃が我慢して、苦しんで、影で泣いてるあいつの姿を考えると、それに耐えられなかった。 桐乃が我慢できるって言っても、俺が我慢できなかった。 妹の健気な思いやりを踏みにじって妹を選んじまった俺は、あいつに彼氏が出来るまでは俺も彼女をつくらない。そんな馬鹿な約束もしちまった。それが間違いだって言われても今更訂正する気もないけどな。 「大嫌い、か」 桐乃が元彼女と俺を復縁させようとした際、桐乃が言った言葉。 ずっとわかっていたはずだった。頭では理解していたはずだった。 けど、実際に言葉にされて、漸く実感した。そしてそのことに俺は思った以上にダメージを受けていた。 それこそ、桐乃に対する態度に出てしまうぐらいに。 俺にとっての一番でありたい。けれど俺のことが桐乃は大嫌いだという。 なんとも矛盾した話だ。大嫌いな相手の一番であって、あいつは何が嬉しいと言うんだろうか。 ああ、ああ、そうとも。今の俺にとって桐乃は何を差し置いても一番大事なやつだといえるだろうさ。じゃなけりゃ彼女をふってまで妹のことを選ぶわけがない。だけど、だけどだ。桐乃は俺のことが大嫌いなんだよ。 確かに俺は桐乃が大事だ。心配だ。大切にしたいと思ってる。出来れば仲良くしたいとも。 けれど、大嫌いなやつに仲良くしようと歩み寄られて、あいつは嬉しいと思うだろうか? 鬱陶しいと思わないだろうか? 大事だと思ってる相手に拒絶される。それが怖くて俺は桐乃に一歩引いた態度をとってしまっている。 これまでなら踏み込めた場所に踏み込めない。 今までの俺なら、そんなことを考えてても今まで通りの態度をとっていただろう。だからこそ、今の俺の状態がわからない。俺は何故、ここまで桐乃に拒まれることを恐れているのか。 それが俺の悩み。どうやっても答えの出ない螺旋階段。 グイッと喉に酒を流し込む。中身は半分を過ぎたぐらいまで減っていて、いい感じにほろ酔いになってきた。これならじきに寝れるだろう。 そんな時だった。何の前触れもなく部屋の戸が開いたのは。 きぃ、と音を立てて開いた戸の向こうには、もう寝ていただろうと思っていた桐乃の姿。 一瞬その姿に動揺するが、今更取り繕ったところで手遅れだと気付いた。ならもう普通に振舞うほかないか。 「よう。どうした、こんな深夜に」 「あんたに、いいたいことがあってきたんだケド……なにあんた、酒飲んでるの?」 「ん? おお、1本だけだよ1本だけ。別にいーじゃねーか。自分の金使ってんだしよ」 「そういう問題じゃないじゃん。何考えてんのあんた」 「うっせえよ。俺の勝手だ。んで? 話したいこととやらはなんだよ?」 いつも通りいつも通りと自分に念じながら桐乃に接する。 既に酒が入ってる状態でいつも通りもくそもないんだろうがそれそれこれはこれだ。 「チッ……あんたさ、最近あたしのこと避けてない?」 「んなわけねーだろ。何言ってんだ。俺はふつーだよ。フツーフツー」 バリバリ全開で怪しかった。酒が入ってるにしてもこれはあんまりだろう。 これじゃ桐乃のことをバカにできん。 「ウソ。絶対に避けてるじゃん。目をあわせようとしないし、合ってもすぐにそらすし。あたしが傍によるとちょっと遠ざかったりするし」 ……バレバレじゃん俺。なんてわかりやすい。今更ながら自分の迂闊さに頭が痛いぜ。 その程度のことにすら頭が回ってなかったとは。本当に重症だな。 「いいじゃねーか。いつものことだろ?」 「よくない! あたしはそんなあんたの態度にムカついてるの! 急にちょっかいかけてくるようになったかと思ったらいきなりあたしのこと避けだして……意味わかんない。 あんたは一体あたしに何がしたいのよ!?」 あーあー、うるせえなぁこいつはよぅ。こちとらお前のことで頭かかえてるってのに。 ホントに自分勝手なお姫様だよ。そこまで言うなら全部ぶちまけてやるよ。もうどうなってもしらねえぞ? アルコールが回りつつある頭は正常な判断が出来なくなりつつあるせいか、しらふならまずありえない選択肢を実行した。 「俺さ、結構傷ついてるんだぜ? お前に大嫌いって言われてさ」 いつだって桐乃に対する感情はぐちゃぐちゃで、まるで蓋をしたかのように頑なな俺の本音は、追い詰められて漸くその顔を覗かせる。そうして顔を見せる本音は、いつも俺が気付いてないことを俺自身に気付かせてくれる。 そんな本音をしまいこんだ箪笥が、酒が入ってるせいか、今は少しだけ開いてるようだった。 そしてやはり、俺の気付かない、気付けない想いが俺の口をついてでた。 「俺はさ、お前が好きなんだ」 目の前まできていた桐乃の瞳が見開かれた。 自分でも思ってもみなかった吐き出された言葉は、驚く程自然に心に収まった。 まるでぽっかりと開いていた穴がうまったように、足りなかったパズルのピースがはまったように。 酒で朦朧としている頭では、それがどういった意味での好きかはよくわからない。でもそれは確かな答えだった。 ああ、そうか。と不思議な納得が俺の心に浮かんだ。 だからか。だから俺は、あんなに桐乃に嫌われるのが怖かったのか。 もう嫌われてるのがわかってても、更に嫌われるのが怖くて、嫌いだといわれるのが怖くて。 「でもお前はさ、俺が嫌いなんだろ? 俺はお前が大事だ。心配だ。何よりも大切にしたい。でもな、そんなお前に嫌われてるって、きついんだぜ? 大事なお前だから、もっと仲良くなりたい。俺を好きになってほしい」 溢れた言葉はとどまる事を知らず、次々と信じられない言葉を紡いでいく。 頬に冷たいものが流れた気がした。 「けどさ、嫌われてるやつに何されたって、嬉しくねーじゃんか。むしろ傷つけるだけかもしれねー。 それじゃ俺は、どうしたらいいかわかんねーよ。お前に嫌われてる俺は、お前に何をしたらいい?」 最後に残った酒を一気に飲み込んだ。朦朧としていた意識が襲い掛かる睡魔に一気にあやふやになる。 それでも、俺の溢れる気持ちはやむことなく漏れていく。そして 「なあ、桐乃。俺はお前が何をして欲しいのか、さっぱりわからねえんだよ。 お前はどうしたら喜んでくれるんだ? どうしたら嬉しいんだ? どうしたら笑ってくれるんだ? 俺は――」 ――どうしたらお前に好いてもらえるんだ? 俺の意識は眠りに落ちた。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「京介?」 いきなりまくし立てるように言いたいことを言うだけ言った京介はかくんと頭を下げて押し黙ってしまった。 うなだれるように壁に背を預けて、俯いたたままの京介のそばに寄ってみると、その口からはスースーと寝息が聞こえていた。 もしかして寝ちゃったの? そんな京介の前に回り、足の間に身を収めるように座り込んだ。覗き込んだ顔には、一筋の涙の跡。 そのままトン、と頭をその胸に預けた。 「ばか」 トスン、と片手で京介の胸を打つ。 「バカ」 トスン、トスンと京介を起こさないように、繰り返し胸を叩く。 「ばかっ…!」 何が、『お前のことが好き』よ。何が、『好いてもらえるんだ?』よ。 あたしがどうしたら喜ぶ? 嬉しい ?笑える? そんなの――決まってるのに。 京介があたしにしてくれることが、そばにいてくれることが嬉しくないはずがない。喜ばないはずがない。 そんな簡単なことが、なんであんたはわかんないの? あたしの言葉ばっかりを真に受けて、どうしてその真意をわかろうとしてくれないの? 「嫌いよ」 言葉にしないとわかってくれないあんたが。 「嫌い」 言葉にしても伝わらないあんたが。 そして何より、こうやって全部京介のせいにして甘えてるあたしが―― 「大嫌いっ」 縋りつくように京介の服を掴んで、その胸に顔をうずめた。 本当に、あたしはバカだ。 兄貴の泣いてるのがイヤだと、あれほど強く言ったのに結局あたしが兄貴を泣かしてる。 あたしが素直じゃないせいで、京介を泣かせてしまっている。 バカで、ヘタレで、鈍感で、不器用で―――そして誰よりもあたしを大事に想ってくれてる京介。 「ごめんね」 いつも素直じゃなくて。無茶ばっかりを押し付けて。嘘ばっかりついて。 「ありがとう」 どんな時もあたしの味方でいてくれて。大切なものを守ってくれて。あたしを選んでくれて。 いつの間にか流れていた涙が、京介の服を濡らしていた。 それから十分ほどしてから、あたしは京介の部屋を後にした。 京介はあのままの体勢じゃ明日辛いだろうから、横にして布団をかぶせておいた。アレなら風邪を引くこともないはず。 それにしても、あたしはどうしたらいいんだろう。 まさかあの言葉が、あそこまで京介を傷つけると思ってなかった。わかりきっていると、そう思ってたから。 あの言葉に嘘はない。けれど、全てが本当だとも言えない。 これ以上京介を傷つけないためには、どうしたらいいんだろう。 『俺は、お前に何をしたらいい?』 ああ、そっか。簡単なことだった。 京介は、あたしがして欲しいことがわからないっていった。 わからないから、教えてほしいって、そう言ってた。 嫌いな自分が何をしてもあたしを傷つけるかもって、バカな心配をしてた。 だったら教えてあげればいいんだ。あたしが京介にして欲しいことを。 素直になるのはちょっと怖くて、くやしいけど、あたしも京介に傷ついてほしくないから。 少しだけ、素直になってみよう。きっと、意地を張って上手くいかないだろうケド、少しづつ。 そうと決まれば今日は早く寝てしまおう。 丁度明日はお休みだ。 京介を誘って二人で出かけて、うんと京介を引っ張りまわしてやろう。 そこでたっぷりと教えてやればいい。 あんたは何も気にせずあたしに接すればいいんだって。何も心配する必要はないんだって。 「あは。あいつ、どんな顔するかな?」 少しだけ、それが楽しみだ。もし気持ち悪そうな顔をしたらひっぱたいてやるから。 「おやすみ、京介」 壁越しにかけた声が、優しく闇に溶けていった。 END -------------
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長谷川氏の行為は何が問題なのか? Q.アナログ作品なのにどうやってトレースするの? 言い掛かりじゃない? A.長谷川氏は下書きまでをフォトショップで行っていることが氏の投稿画像から判明しています。 詳しくは無断トレース疑惑の検証内の画像をご覧ください。 Q.重ね合わせたらたまたま線が重なることだってあるんじゃない? A.輪郭のみならず、目と目の間の間隔、口や鼻の位置、前髪のラインまでもが「偶然にも一致」する確率はきわめて低いです。 詳しくは下記のまとめなどをご参照ください。 「なぜ『線画が一致するとトレス疑惑を持たれるか』をかいつまんで説明」-togetterまとめ http //togetter.com/li/330991 「『他人が書いた線と重なることは珍しい』を検証してみた」-togetterまとめ http //togetter.com/li/331656 Q.写真のトレースがいけないことなの? A.写真をトレースする行為そのものが問題なのではなく、長谷川氏に著作権のない写真をトレースし、「オリジナル作品として」「有償で販売」していることが問題です。 Blue Fairy社が「商用利用の禁止」「無断使用の禁止」を宣言しているため、長谷川氏の行為はBlue Fairy社の著作権を侵害しているということになります。 参考:トレパクってなに?トレースの問題点【同人・二次創作】-NEVERまとめ http //matome.naver.jp/odai/2137318874481097901 Q.トレースをしていても手を加えてアナログイラストにしているのだからいいのでは? A.長谷川氏のように、大元の写真をトレースして独自の要素を付け加えイラストにする行為は「二次的著作物」にあたると考えられます。 クラシックの曲をジャズ化したり、小説を脚本にしたり、脚本を映画化したものなど、ある著作物を原作として新たな創作性を加えたものは、原作とは別に著作物として保護されます。著作物である写真にモンタージュしたり、コンピュータグラフィックスのように合成したものも同様です。これを二次的著作物といいますが、既存の著作物に用語の変更など、多少の修正を加えただけでは、二次的著作物とは認められません。 なお、このような二次的著作物を創作する場合には、原作者の許可が必要ですし、二次的著作物を利用する(使う)場合には、二次的著作物の作者の許可と原作者の許可とが必要です。 原作者の許可がない二次的著作物は、著作権のうち「複製権」や「翻案権」の侵害になります。 Q:写真をそっくりそのまま絵に描いて公表すると違法になりますか? A:写真家に無断で写真そっくりに絵を描いて公表すれば、著作権(複製権)の侵害になります。 (第2条1-15・第21条・第30条) ただし、私的複製の範囲で、描いた絵を自分の部屋に飾ったり、家庭内で楽しむことは違法ではありません。 公益社団法人日本写真家協会 ホームページより http //www.jps.gr.jp/rights-2/ 「翻案権」とは 翻案権は「二次的著作物を創出する権利」のことで、翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案する権利のことです。翻案権はもとの著作物を創出した著作権者に帰属する権利なので、著作権者の承諾なく二次的著作物を創出することはできません。 アマナイメージズ 写真を安全に使う10の方法 より https //amanaimages.com/topics/rights-service/9/ この「複製権」や「二次的著作物」の考え方についてはこちらにとてもわかりやすくまとめられています。 特許業務法人 中川国際特許事務所 なるほど著作権セミナー Season.3 「Vol.2:複製と翻案」 http //www.nakagawa.gr.jp/lecture/naruhodo1008.pdf 長谷川氏の作品はBlue Fairy社の公式写真に対して「類似性」と「依拠性」のどちらもが高いと思われます。 Q.もし無断トレースが本当でもファンアートなのでは? 目くじらを立てなくてもいいんじゃない? A.はじめにのページを見ていただければわかる通り長谷川氏は写真の無断トレースをベースにしたと思われるイラストをグッズ化し、国内外で広く有償販売しています。アートコンプレックスセンター(ACT)の通販ページでは原画一枚につき数万円単位の値が付けられていました。これはれっきとした「商業活動」です。 Q.著作権は親告罪なのだから第三者が口を出すべきではないのでは? A.第三者が著作権違反を訴えることはできませんが、現在も長谷川氏は無断トレースを行ったのか、行っていないのかの正式な説明もなくグッズ類の販売を続けています。氏の作品を「オリジナル」と思い購入してしまう人もいるかもしれません。 このまとめを見た上で、作品が素敵だから購入する。長谷川氏の潔白を信じるというのは個人の自由ですが、このような疑惑があると知らずに購入してしまい、後悔する人が出ないよう周知することもまた必要だと思います。 デジタル作画環境の発達やSNSの浸透などにより、誰もが著作権違反をする側にも、される側にもなり得る状況になっています。「無断トレース」の何がいけないのかを一緒に考えていただければ幸いです。
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235 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/21(水) 21 57 42.92 ID WweXFcaTO [1/2] 京介のことを想いながらウキウキ買い物するきりりんを、陳列棚の陰から眺めたい 239 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/21(水) 22 10 46.33 ID UuizB8wr0 235 文章書くのはうまくないが、こういう妄想を受信した 今日は京介受験勉強で遅くなるから、あたしが京介のとこいって料理作ってあげよっと♪ フンフフーン♪なにつくろっかな~? そういえば、京介って何が好物だったっけ?んー、これといって思いつかないな~ でも、京介のことだから、「桐乃の作るものならなんでも好物だぜ!」とかいいそう・・ ほんっとにキモい!キモすぎ!マジシスコン♪ そんなシスコンのためにカレーでも作ってあげようかな?やっぱりうちの料理っていったら カレーだもんね! あ、そうだ!材料買うまえに京介にメールしとかないと! 勉強するっていってたけど・・・多分地味子と一緒に勉強してるよね フヒヒwwじゃあ、ちょっと驚かせてあげようかなww 「今日はあたしが夕飯作ってあげるから、勉強終わったらすぐ帰ってくること! 待ってるからね(ハートマーク)」ピッ これでヨシ! あいつがどんな風にうろたえるか、フヒヒww楽しみ♪ さぁーてとっ、買い物いこーっと! まだ買い物していないが、買い物に出かけるときはこんなカンジかなぁ? ちょっとデレになりすぎてるかもだが -------------
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「ちょっと違った未来36」 ※原作IF 京介×桐乃 <第三部・現実世界> ――京介と桐乃の結婚式から10年後 「そうですか、そうですか…。はい、はい…。ありがとうございます」 「…」ウズウズ 「わかりました…。はい、はい、では失礼します」 ピッ 「京介、どうだった!?」 「ああ。受かってたよ、試験」 「はああああ~~~!!良かったぁ~~~~!!」 「はは!ありがとな!桐乃!」 目の前にいるのは俺の義理の妹であり妻である高坂桐乃。今は自らが所属していた美咲さんの事務所の一部の運営と後輩の育成を任せられている自慢のお嫁さんだ。 ここは俺達で暮らすマンション。今は二人とも実家から出ている。 10年前、俺達は結婚をした。俺は卒業と同時に警察学校に入る前に。桐乃は当時学生結婚だった。 その後俺は無事半人前とはいえ警察官に任官され、国民の生命と安全を守るお仕事をしているってわけだ。 未だに市民に嫌われまくってる上にちょっと職質したらこの顔を見てか、舐められっ放しだけどな!トホホ…。 「でも良かったね!これでようやく肩の荷が降りたっていうかさぁ~」 「ああ…」 今の電話は俺の上司に当たる警部補からの連絡だ。 俺は此度の警察の内部の昇進試験で見事、巡査部長の試験に合格を果たした。 試験は法律の試験に加え、警察実務の試験が多数ある。 巡査部長の上にも警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監…と順に並んでいるが、競争率等諸々の事情を考えたら巡査部長の試験が一番難しい。 その厳しい難関に見事合格を果たした、ってわけだ。 …ちなみに俺のようなノンキャリアの警察官だと、上がれる階級は良く頑張って警部・警視レベルだと思う。大体は巡査部長・警部補止まりだ。実際親父も警部補でその昇進を終えている。そこから上は国Ⅰを突破した東大閥の警察官僚達が席巻しているからだ。 とは言っても彼らは霞ヶ関の警察庁に籍を置く人達で、警察官というよりは法律制定や予算を扱う行政官といった色が非常に強い。だから俺達千葉県警のような地方の現場にまで出向いてくることはほとんどありえないし、実際警察官になってからのこの10年間、一緒に仕事をした事もない。 完全に違う人種、ってわけだ。 「今日はお祝いしなくちゃね!もう夜だしどっかで食事でもする?」 「そうだな…。よし、今日は皆でパーッと食べに行くか!」 そうして俺は俺の『家族』に声を掛ける。 「涼介、優乃!パパとママは今から一緒に外でご飯食べようと思うんだけど、どうだ?何か食べたいものとかあるか?」 俺は最愛の息子の涼介と優乃…まだまだ小さい幼子の二人の目線にあわせて声を掛けた。 「ハンバーグ~」 息子の涼介が元気よく答える。 「お~ハンバーグかぁ~!野菜も沢山食べようなぁ~!」 「ピーマンにがい~」 「はは!慣れたら上手いって!優乃は~!」 「けーき~」 「よーしわかった!栄養のあるご飯をしっかり食べたらデザートに食べような!」 「あい~」 二人は宝石のような瞳を輝かせて俺達を見詰める。 結婚式の後、俺達は二人の子宝に恵まれた。 一人目は桐乃が大学を卒業してからすぐに。その時の子供が涼介。そして続けて優乃が。 「ママ~」 「はいはい。涼介はいつまで経っても甘えんぼなんだから」 桐乃が抱っこをねだる涼介を抱える。本当に涼介はいつまで経っても甘えん坊だ。こんなんでこの先やっていけんのかと不安を感じる。…だがこの涼介の雰囲気といい言葉の受け答えといいどっちかと言えば桐乃似のような気がするんだよな…。 俺がそのことをいうと瑠璃達は、 『何がどちらかというと、よ。涼介は顔は貴方似だけど、頭の中身は明らかに桐乃似じゃない』 と、子煩悩ここに極まれりといった顔でやれやれと言って受け答えしてくる。ぐぬぬ…。てめーは未だに独身だろうが! 逆に優乃は見た目と性格こそ桐乃そっくりだが、その他の中身は完全に俺似だという。 桐乃と涼介のやりとりをを見た優乃は、 「まま~」 「はいはい。優乃も。京介、優乃が抱っこしてほしいみたい。お願い」 「おう」 そうやって俺が優乃を抱っこして、ってあら? 「ママ~。優乃のこと、抱っこしてあげて~?」 「あらあら。涼介はいつもいつも妹想いのお兄ちゃんですね~?」 「そんなんじゃないもん」 プイッと顔を背ける我が息子。この年から既にツンデレの兆候が見事に見えていた。恐ろしき我が血脈…。 「おにいたん~」 「うん~?」 「えへへ~。ありがとう~」 「…おう」 地面に降りた涼介は、照れくさそうに鼻を人差し指ですりすりしている。 …全くこいつらは。 「ほんとにこの子大丈夫かな?どっかの誰かさんみたいなシスコンに育たなきゃいいんだけど?」 「おい?!そりゃねーよ?!」 大体お前もお前で相当なブラコンだろうが?! 「ふふ…冗談だって。あーあ、こうしているとあたし達の小さい頃を思い出すね~」 「ああ。そうだな。小さい頃からおまえも可愛かったな~。涼介が優乃にしてやってるみたいにしてやって…」 「ふ~ん…。い、一応聞いてあげるけど何してくれたの?あんた」 「おしめの取替え」 バキッ! 「いてえっ?!」 「乙女に向かって何てこと言うのよ?!」 「乙女って齢か?!年齢を考えろ、年齢を?!この経産婦!」 ブチッ 「あ、ああああんた…!い、今言ってはならないことを言ったわね…?!」 「ひいっ?!」 プルプルと背後に地獄の業火を煮えたぎらせるは我が妹妻(2×)。年齢のことを心の中でも言及するとますます暴れかねないので伏せておく。 それを見た涼介と優乃は。 「きゃはははは!!」 「ぱぱおもしろ~い!」 …我が息子娘にも笑われる高坂家におけるこの父の扱い…。こんなのが世間に知れたら…。普段指導してる職場の後輩に何ていえばいいんだよ…。 …その時心の中から知人の声の記憶がこだまする。 『あら?凶介さんが情けないシスコンであることなんて周知の事実ではなくて?』 うるせーよ?!てめーだって姉さんにシスコンだろうが?!あと名前を間違えるな、名前を!不吉なんだよ! …なんで30越えてもこんなノリなの?俺…。 誤解のないように言っておくけど、こいつらの前だけだから!職場だとしっかりしてるから! でもこんな昔のノリをしてるからか、よく世間の皆さまから「若いですね~」って言われるんだぜ?ふっふっふ!警察の夜勤での痛めつけにも負けない肌年齢!溢れる若さ! …三人目頑張っちゃおっかな~。 「…」じ~っと。 そうして俺がじっとりとした目線を桐乃に向けると、桐乃は、 「ちょ、ちょっと!?何て目でこっち見てんの?!」 「いや~。優乃を抱えるお前を見てると幸せだなぁって」 「ウソ!絶対ウソ!今のはあたしの身体を狙ったいやらしい視線だった!背筋が凍ったもん!!もう!ホントやめてよね?!」 「んなことねーよ!」 「夫婦間でも強姦罪は成立するんだからね?!今度そんなねちっこい嫌らしい視線送ってきたらあやせ呼ぶから!!」 「それだけはやめてっ?!」 『桐乃に何かあったその時の為に…お兄さんを…ふっふっふ…!』 この前夜にスポーツバッグを持った(大魔王)あやせに道端で会った。 どこに行くんだ?って尋ねたら、キックボクシングのジムだという。 その場で華麗なシャドーを始めるあやせ。驚く通行人。 何の為にって尋ねたら…。そりゃあ…。 (ごくり…) 俺は恐怖からかその夜は『あやせがジム通いしてるのは体型維持の為…あやせがジム通いしてるのは体系維持の為…』って念仏のように繰り返してたよ…。気づけば朝になってたけど…。 「…。もう、ばかなことばっかり言ってないで、行く準備するよ?」 「へいへい…」 「店にも予約していないし、今からだと…。皆で仲良く近くのファミレスにでも行かない?」 「そうだな。よっし!行くか!」 涼介と優乃を余所行きの服に着替えさせて、4人で仲良く歩き出す。 桐乃は優乃を抱っこして。俺は涼介の手を握って。 車や自転車に注意しながら4人で仲良く歩き出す。 「パパ~」 「ん~?」 「パパのお手手大っきくてあったかい~」 「そっかそっか」 俺は涼介の、愛するわが子の手をぎゅっと握り返す。 「僕も大きくなったらパパみたいになる~」 「はは!涼介はパパなんかよりずっと凄い男になれるさ!」 「ほんと~?」 「ああ!何しろ俺と桐乃の息子だからな!」 「あたしはともかくなんであんたが自信満々なのよ…」 後ろから優乃を抱えながら着いてくる桐乃が嘆息する音が聞こえた。 「父親の意義を否定するな!」 まったくこの女は!いくつになっても話しの腰を折って! そしたら桐乃は楽しそうに。 「あはは♪ウソウソ!あんたの凄さはあたしが一番よくわかってるって!」 そう、我が事のように自慢気に笑った。 「ぱぱすごい~?」 桐乃に抱っこされている優乃がそう尋ねる。 「うん。涼介や優乃ちゃんはまだまだ小さいからわからないかもしれないけどね…。パパは、お父さんは本当に凄い人なんだよ~」 「パパすごい~!僕大きくなったらパパみたいになる!」 「おう!もっと言ってやれ桐乃!」 「調子に乗るなっての…」 ぼそっと呟く桐乃。 「僕もパパみたいに大きくなって~」 「うんうん」 「将来優乃のお婿さんになる~」 「ぶぼっ!?」 「ちょっ?!」 俺と桐乃は慌てて目をむく。空気が口から二人同時に勢いよく漏れた。 「えへへ~。おにいたん~」 優乃は優乃で満足げに照れている。 ふんす、と何故か誇らしげなシスコン涼介。 それを見て俺と桐乃は慌てて目を合わせる。 「ちょ…慌てすぎだっつの…」 「お、お前もだろうが…」 「ち、小さい子供の言葉でしょ…。ここは大人の余裕を持って…」 「お、俺達のことを考えてみろ…。んな悠長なこと言ってられるか…」 「で、でもぉ…」 にこにこ見つめ合う仲睦まじき兄妹である我が息子達。それを尻目に早々の気苦労を背負い込む俺と桐乃。 ああ…『まともじゃない子供達』ってこんなに気苦労するもんなんだな…。何の過ちもないように祈ろう…。 俺だって桐乃とは血が繋がっていないから結婚したんだ。女として愛したんだ。 これが血の繋がった実の妹だったらって? …。 ごほん。まあ、そういう世界(原作12巻)もあるかもな。 この件はもうやめよう。 そうして俺達は夜の街を4人仲良く歩いていった。 ~~~ ファミレスから戻ると涼介と優乃はお腹が一杯になったからか、すぐにベットに寝てしまった。 涼介は兄の意地からか、ファミレスの席でもなかなか眠ろうとしなかったが、優乃はケーキを食べるとすぐにこてん、と眠ってしまった。 二人を子供部屋に寝かせた後、今は夫婦に寝室にいる。 「お疲れ様。あなた」 「ああ。ありがとう、桐乃」 桐乃は俺の上着を脱がしてくれる。 もうこの10年結婚してからずっとこいつは妻としての役目をしっかり全うしてくれている。こうして二人きりの時はたまに『あなた』と俺のことを呼ぶ。 愛する桐乃が俺の妻…。 その事実が、何年経っても、俺は愛おしくって愛おしくってたまらない。 「あれから…」 俺は俺の上着をハンガーにかけてくれている桐乃に向かって、 「10年前のあの日から…随分色んなことがあったな…」 「…」 「あいつが…もう一人のお前がいなくなったあの日から、さ…」 「ええ…。そうね…」 10年前のあの日…もう一人の黒髪の妹がこの世界を去ったあの日から、俺達の生活は一変した。 桐乃との結婚。就職。厳しい警察学校での日々。仕事の為の法律実務の勉強。 桐乃のモデルの引退と経営陣への参加。たまの執筆活動。 刑事の試験。昇進試験。格闘技の訓練。 ところで俺に警察官が務まるのかね?という疑問を持っている諸君。実は俺には格闘術の適性が思ったよりもあったらしく、今じゃいっぱしの刑事で現場からも上司・後輩問わず頼りにされていた。 特に1対1の捕縛には誰よりも負けない自負がある。実際、県警から逮捕術の大会から優勝の賞ももらっている。今じゃ親父にも負けないほど強くなった。マル暴にいた時は突入の段取りから全て任されていたこともある。 おほん。まあ、自慢は置いといて。 そして。 そして愛するわが子たちとの出会い。 涼介を初めて見たときは…本当に可愛かった。これが俺の息子なのか?って。俺と桐乃の息子なのか?って。 仕事が終わった親父や桐乃にずっとついてくれていたお袋、瑠璃に沙織に麻奈実にあやせに加奈子。 赤城や瀬菜、それにゲー研の皆。日向ちゃんや珠希ちゃん。御鏡にブリジットにリア…。 皆、皆来てくれた。 そんな皆も、もう学生じゃない。皆社会に出て働く社会人だ。 瑠璃はあれからシステムエンジニアとして相変わらずあの会社で働いている。現場はあいつが回しているらしい。あいかわらず休みになると俺達の家に遊びに来る。涼介や優乃のための手作りのお菓子やおもちゃを持って。 優乃もだが、特に涼介が瑠璃に凄くよく懐いていて…。瑠璃お姉ちゃん瑠璃お姉ちゃん、って。それを見るたびに優乃がふくれっ面でむくれている。ははは…。 あ、そうそう。瑠璃は独り身かって?ははは! 彼氏?そんなもの い る わ け が な い で し ょ う ! ! (爆) ! ! …。ごほん。 沙織は自分の会社の仕事を手伝っている。社長であるお父さんの秘書兼片腕ってわけだ。 …意外だった。あいつはてっきり誰かと結婚するもんだと。だってあれだけ見合いしてたんだもんよ。 その事を聞くと沙織には『女の心は海より深いのですわ。卿介さん』だとよ。(漢字、いいかげん直してくんねーすか?) しっかしあの女、齢を重ねる毎にますます美しさに磨きがかかってるんだよな~。あんなんじゃ周りの男が放っとかねえだろ。 …それはそれで複雑だけどよ。 …。 あやせは会社のOLをしている。相変わらずその綺麗なおみ足を婚活の為にではなく男(誰かは言わねー。うう…)を抹殺するために磨いているようだ…。 なんだよあの女まじこえーよ…。でも天使…(2×でも)。 あやせもよく俺達の家に遊びに来てくれる。 俺と桐乃が仕事で手が一杯の時なんかはお袋とあやせでよく涼介と優乃の面倒を見てもらったもんだ。 二人ともあやせのことを『おばちゃんおばちゃん』と言って嬉しそうに懐いている。 その度にあやせは『私はまだ二十歳代です!!』と顔を真っ赤にして叫んでいるが…。 瑠璃や沙織がお姉さんなのに私はあやせおばちゃん、と言われるのは納得いきません!まるで私だけ老けているようじゃないですか!?とご機嫌斜めだ。 これには理由がある。 実は涼介が小さい頃、俺達は自分達の仕事も忙しかったからあやせやお袋によく預けていた。 いつもいつも面倒見てくれるものだから、涼介はあやせのことを『親戚の叔母ちゃん』と勘違いしたのが事の発端。 それが優乃にも口から口へと伝わって…。南無…。 まあ色々言うことはあるんだけど、これくらいにしとこうと思う。加奈子や瀬菜にゲー研の皆と挙げたらキリがない。 あ、でもこれだけは言っとかなきゃな。 「へへ…」 麻奈実は俺達の結婚式の1年後に結婚した。 相手?相手はそう、俺と同じどうしようもないシスコンのイケメン商社マン、赤城だ。 実は赤城は大学卒業のその年の就職活動に失敗した。一方麻奈実は地元の市役所の試験に合格しており、内定が決まっていた。 それでも麻奈実は待った。 就職浪人と新社会人という互いの温度差をモロともせずに、だ。 そして次の年、赤城はようやく大手の商社にて内定を取り付けた。 麻奈実に男として認められたい、一緒にこの先も手を繋いで歩いていきたい、という思いからだ。 そしてやっと就職することが出来、その時にあいつはプロポーズをした。 キメ台詞は『一緒に仲良く齢を重ねていきませんか』だとよ。おお、くさいくさい。何てくさい。 でもあのイケメンボイスで言ったらたちまち神なんだろうな~。なんという差別社会。 それに麻奈実はもちろん『はい』と返事をし、大学からの交際の、赤城にとっちゃ、高校1年からの一目ぼれの片想いがようやく成就したというわけだ。 本当に、本当によかったと思う。 麻奈実は俺にとっちゃ大切な大切な幼馴染で、赤城も俺の高校からの大事な、今や腹を割って話せる親友で…。 「…」 もう1つの世界の桐乃が元の世界に戻ったあの日から…。あれから相変わらず慌しい日々を俺も桐乃も過ごしていた。 あれから俺達はあいつのことを忘れたことがない。 あいつが『大好き』といってくれた世界は今日もまた旬欄と輝いてる。 「ねえ?」 「うん?どうした、桐乃」 今は俺の配偶者となった、俺の妹が俺の傍にすっと寄り添う。 「あたし達…幸せだね…」 「…。ああ」 「すっごくすっごく…幸せだね」 「ああ…幸せすぎてどうにかなりそうだぜ…」 そうして俺は桐乃を抱きしめ、キスをする。 「ん…」 「…」 想いを遂げて結ばれた、中学生の頃からいつまでも変わらない、しっとりとした彼女の唇。 そ、っと唇を重ねるだけの、キス。それは今まで育んできた愛情を確かめ、そしてまだ見ぬ未来への喜びを現す夫婦のキスだった。 「あんたはさ…」 「ん?」 「あんたは長生きしてよね…」 「…」 俺の腕の中で抱きしめられながら、彼女は言う。 「あたしより…あたしより…ずっと…。ずっとずっと長生きしてよね…」 「…」 「あの子の世界のあんたみたいに…ならないで…」 「…」 「あたしを…あたし達を…置いていかないでね…」 「…ああ」 ぎゅ、っと俺は俺の妻を抱きしめる。 彼女は俺に全幅の信頼を寄せているのか、全ての体重を俺に預けてくる。 事件の現場や暴力団の鉄火場で鍛え上げられた俺の肉体はそんな彼女の体重を難なく受け止めている。ハードな刑事の仕事にも耐えうる強い体と精神力。毎日のウエイトトレーニングと勤務後の道場での鍛錬で鍛え上げたタフな体。 もう、10年前の小僧で無力だった大学生の俺じゃない。ましてや、高校生の時の心折られた俺じゃない。 「決して、死んだりしない」 「うん…」 「お前よりも長生きもしない…」 「…」 「一緒に…仲良く齢を取ろう…。そして、そして…願わくば一緒に…」 「…はい」 再び最愛の妻をぎゅっと抱きしめ、その唇にキスをする。 …一生をかけて守ると誓った、妹の…桐乃の体の体温と唇は、暖かかった。
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7 名前: ◆ujI5ti/TD4Mo[saga] 投稿日:2011/06/29(水) 17 27 48.38 ID VI0bNXsQo 「てっきり鬼畜安価が来るかと思ったぜ」 あれだけフラグびんびんだったのに。 珍しいこともあるもんだ。 ……勘違いしないように言っておくが、鬼畜安価が欲しいわけじゃないぞ。 「お~い、桐乃。ちょっと用があるんだけど」 桐乃の部屋の前に立ち、ノックと同時に室内の桐乃にそう呼びかけた。 「なに? どうしたの?」 ほどなくして桐乃が部屋から顔を出す。 俺は桐乃の問いにはなにも答えず、そのまま桐乃を抱き寄せ、そして―― 「桐乃! 桐乃! 桐乃! 桐乃ぉぉおおおわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!桐乃桐乃桐乃ぉおおぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ! マイシスター・桐乃たんの綺麗な栗色の髪をクンカクンカしてるお! クンカクンカ! あぁあ!! 間違えた! モフモフもしないと! モフモフ! モフモフ! 髪髪モフモフ! カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 『ありがとう』って言ってきた桐乃たんかわいかったよぅ!! あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! アニメ2期はまだですか桐乃たん! あぁあああああ! かわいい! 桐乃たん!かわいい!あっああぁああ! デレ分増大がマッハすぎて嬉し…いやぁああああああ!!! にゃああああああああん!! ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!! ブラコンじゃない桐乃なんて現実じゃない!!!! あ…デレない桐乃も暴力的な桐乃もよく考えたら… 兄 嫌 い の 桐 乃 ち ゃ ん は 現 実 じ ゃ な い? にゃあああああああああああああん!! うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!! いやぁぁぁあああああああああ!! はぁああああああん!! 隣の部屋ぁああああ!! この! ちきしょー! やめてやる!! シスコンなんかやめ…て…え!? 聞い…てる? 目の前の桐乃ちゃんがこれを聞いてる? 目の前の桐乃ちゃんがこれを聞いてるぞ! 桐乃ちゃんがこれを聞いてるぞ! 目の前の桐乃ちゃんがこれを聞いてるぞ!! ブラコンの桐乃ちゃんが僕に抱かれてるぞ!!! よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!! 僕には桐乃ちゃんがいる!! やったよ黒猫!! ひとりでできるもん!!! あ、兄貴大好きの桐乃ちゃああああああああああああああん!! いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんさ沙織様ぁあ!! ま、麻奈実!! あやせぇえええええ!!! ブリジットぉおおお!! ううっうぅうう!! 俺の想いよ桐乃へ届け!! 俺の腕の中の桐乃へ届け!」 夏休み、二十日目。昼パート 安価成功 名前:兄貴[] 投稿日:2011/08/10(水) xx xx xx.xx ID xxxxxxxxx 安価+αを実行したら妹が固まった いったい何がいけなかったのか…… 懲りずに次いってみようか ≫15 15 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/06/29(水) 17 34 28.08 ID LfoPs/yYo 沙織に「また沙織の家に泊まってお前の背中を流したいけどいつがいいかな?」というメールを送る 桐乃とこの安価の下の安価で悪戯対象になっているキャラにも同じ文章のメールを送る 22 名前: ◆5yGS6snSLSFg[saga] 投稿日:2011/06/29(水) 18 44 58.48 ID VI0bNXsQo 「なにこの微妙に鬼畜な安価」 桐乃と加奈子に送る必要性が全く見当たらないんだけど。 加奈子は沙織のこと知らないし、問題ないっちゃないけどな。 「問題は桐乃だよなあ……」 メール見た途端、怒り狂いそうだ。 『また沙織の家に泊まってお前の背中を流したいけどいつがいいかな?』 宛先に桐乃、沙織、加奈子のアドレスを入力し、送信ボタンに手をかける。 このボタンを押してしまえば、楽に……楽になれるんだ! 「ええい、ままよ!」 悩むこと20分。 俺は清水の舞台から飛び降りるような心境で、ついに送信ボタンを押した。 <ソンナーヤサシクシナイデ♪ バン! バタバタバタ! バン! 「ちょっと、あんたこれどういうこと!?」 送ってからまだ1分も経っていないというのに、鬼の形相で俺の部屋へと乗り込んでくる桐乃。 「ど、どうもこうも……そういう意味だ」 ここでとぼけるような真似はしない。 ネタが上がってるんだからとぼけるだけ無駄なのだ。 って言うか、ネタが上がってなくても俺は素直に白状していただろう。 今の桐乃は目が血走っていて、有無を言わさない迫力がある。 まるで親父そっくりだ。……こんなところまで似ないでくれ。 だが、ここからは俺のターンだ。 言い訳なら、既に考えてあるんだぜ! 「実はな……俺、巨乳好きなんだ」 「は? いきなり何を……」 「俺、前に沙織に飛びついたことがあったろ?」 秋葉の駅で、「おまえの胸が一番好きだ」と叫んで沙織に飛びかかったあれだ。 「それがなんなの!? っていうか、今思い出した! 余計今回の件に関して追及しなきゃいけなくなったんだけど!?」 「いいか、一度しか言わねえからよく聞けよ! 俺は! 巨乳な桐乃が見たいんだよ!」 「うえぇ!? な、何言ってんの!?」 「桐乃だって小さくはないが、サイズ的には沙織のがベストだ! 俺の好みど真ん中なんだよ! だがなあ、俺が見たいのは沙織の胸じゃない! 桐乃、おまえの胸が見たいんだ! だけど、兄妹でそんなこと頼めるわけがない! だから俺は沙織に頼んだんだ! あ、別に直接見たわけじゃないぞ。水着着てたし。……沙織にとっては失礼な話さ! だけど、あいつは笑って許してくれた! 俺が妹に手を出してしまわないように! 俺が道を踏み外してしまわないように!」 ここまで、一息で言い終えた俺は、息も絶え絶え、ハアハアと肩で息をしている。 もはや、支離滅裂で何が言いたいかも定まらない。 「……要はなあ! 俺は巨乳なおまえが見たいんだ! わかったかああああ!」 「…………だ、だって……まだ中学生だもん」 桐乃は真っすぐ下を向き、なにやらぶつぶつと呟いている。 「兄貴のばかあああ!」 「あっ! ま、待つんだ桐乃!」 桐乃はそのまま部屋を飛び出すと、自分の部屋ではなく、1階へと降りて行った。 「桐乃…………ん?」 気が付くと、携帯に2件のメールの着信があった。 携帯を操作し、メールを開く。一つ目のメールの差出人は加奈子だった。 『おい、沙織って誰だよ。女か? 加奈子よりかわいいなんてありえねーとは思うけど、沙織って誰だよ。ていうか背中流したってどういうことだ、コラ? ていうか沙織って――』 「……沙織の正体について食いつきすぎだろ」 いったい何がそんなに気になるのか……。 もう一つのメールを開くと、それは沙織からの返信だった。 『拙者はいつでも構わないでござる。むふふ、どうやら京介氏も拙者の身体の虜になってしまったようでござるな』 「……ああ、こいつはそんな奴だったよな」 23 名前: ◆5yGS6snSLSFg[saga] 投稿日:2011/06/29(水) 18 45 25.41 ID VI0bNXsQo 翌日。 「京介、ちょっと買い物行ってきて」 「えぇ、俺が行くの?」 「カリビア――」 「行ってきます! ……で、何買って来ればいいんだ?」 「牛乳。この間買っといたはずなのに、もうなくなってるのよ」 そんなわけねえだろ。……お袋のことだから、この間っつってもどうせ1週間前とかなんだろうな。 夏休み、二十日目。夕方パート 安価成功 夏休み二十日目終了。 本日の好感度変動 桐乃 朝 +1 昼 +0.5 夕 +0.5(嫉妬補正) ―――――――――── 計 +2 沙織 +1 加奈子 ±0 佳乃 +2 夏休み二十日目終了時の好感度 桐乃 +9 ※嫉妬心を自覚。今後のやりようによっては……? 麻奈実 +6 黒猫 +1 ※覚醒済み 沙織 +5 あやせ +1 加奈子 +6 ブリジット +4 日向 +3 ※眼鏡をかけるようになっている 珠希 +2 瀬菜 +5 フェイト +2 佳乃 +1 赤城 +2 大介 ※殺意の波動の気配がする「仏の顔も3度まで」残り…1回
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そんなことしねーよ! バッと振り返る 「愛の証」どこまで本気なのか メールの違和感 壁越しのお喋りの判別 そんなことしねーよ! たとえば将来……俺に彼女ができたりしたら、麻奈実を避けるようになったりするのだろうか? そんなことしねーよ!と、今の俺は思った。(p123) シンプルな死亡フラグなのだが、一度の死亡フラグを二度回収すると誰が予測できただろうか バッと振り返る p366でせいせいするなどと語っているが、声をかけられたときの反応がどう見ても嫌々の対応ではない。 体は正直だな(ゲス顔) 「愛の証」どこまで本気なのか 演技で言っているのか、本気で言っているのか、境界が曖昧になってくる。(p357) ウソなんかじゃねえ(p358) 「どの辺まで本心なわけ?」「ど、どうでもいいだろ」(p367) 嘘だと確定させる要素は存在しないどころか、ヤバいところが強調表示になっている。 桐乃の告白キャンセル法も「と言うとでも思ったァ?」であるため、嘘とは言っていない。 メールの違和感 妄想/新垣あやせを参照 壁越しのお喋りの判別 加奈子 「うそだぁ~、じゃーケータイ見してみ?」 加奈子 「……やっぱアヤシイ~。……桐乃ぉ……いい加減白状したらぁ~?」 加奈子 「もう、とぼけて! ねえ、ねえってばあ! 桐乃ぉ~~、相手はどんな男なのぉっ?」 加奈子 「うそだあ! 信じらんないよ! 絶対男だって! いいじゃん別に、誰も友達の彼氏取ったりしないからさあ。ね? あたしたちだけに、こっそり教えてよ~う」 加奈子 「えー? だって桐乃、ガッコーですっごいモテるじゃん、男の子たちからさー」 加奈子 「だって最近おかしーじゃん、桐乃!」 友達A。 ランちん 「そうそう! すっごい変ーっ!」 友達B。 加奈子 「最近いきなり付き合い悪くなったしぃ~、ガッコでもこそこそメールしてるみたいだしぃ~」 コミック版では語尾の延ばしをなくしてあやせの台詞にしている。 ランちん 「あ、あたし電話してるとこ見た! なんか痴話喧嘩してるような感じだった!」 ランちん 「うん、なんかぁ、すっごい怒鳴ってるんだけどぉ、でも、それなのになんか嬉しそうなの。そんで電話切ったあと、にやにやしてんの。絶対彼氏でしょアレぇ――」 加奈子 「だよねー?」 加奈子 「あ、ホラあ。思い当たることあったんでしょ?」 加奈子 「ふーん? あくまで彼氏なんていないってゆーんだあ、桐乃は?」 加奈子 「じゃー最近のおかしな行動について、セートーなリユーを説明してよ」 京介の反応から発言のほとんどが加奈子。 加奈子 「えーそんなぁ……アタシらは桐乃のことを心配してぇ……いたた、叩かないでよ桐乃ぉ~」 加奈子 「やぁだぁ~、も~っ。痛いってばっ♡」 加奈子 「そんなぁ~」 あやせ 「ま、まぁまぁ……桐乃、そのへんでやめときなよ。ほら、この子も反省してるし……ね?」 また別の声。=ここまであやせの台詞なし。 あやせ 「そうそう。ところでさ。桐乃って、お兄さんいたんだね? 知らなかったよ」 あやせ 「なんでそこで嫌そうな顔するの。優しそうな人じゃない?」 あやせ 「そ、そんなことないと思うけど…………たぶん」 ランちん?加奈子? 「あたしも見た見た。チラッとだけど。なんかぁ、桐乃にぜんっぜん似てなかったよね?」 京介がクソガキと言ってるので加奈子の可能性もあり。コミック版ではランちん。 ランちん 「むしろ地味っていうかぁ――」 加奈子 「あはは、言えてる言えてるーっ。なんていったらいっかなぁ……あ、アレアレ。十年後とかぁ、フッツーにしょぼい中小企業とかに勤めて、課長とかやってそうじゃね?」 ランちん 「うっわビミョー……でも分かる。あの顔はそんな感じだった」 加奈子 「あれ? 桐乃ぉ……なに黙り込んでんの?」 なお1階は 加奈子・あやせ・ランちん 「「「キャ――――――――――――――ッ!?」」」 あやせ 「き、桐乃……?」 加奈子 「うっわ~……ちょっとコレは引くよ~~ぅ?」 意見・批判等 名前 コメント すべてのコメントを見る
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「苗木君、恋してる?」 窓の外に広がる景色を眺めながら、霧切さんは唐突にそう切り出した。 「こい?」 僕はただオウム返しに呟き返す。 「そう、恋愛の、恋」 今度は真っ直ぐ僕の方を見ながら再びそう問いかけた。 明日のテストが心配だったから居残っただけだったはずなのに、何だろう、この雰囲気は。 放課後の教室。 教室を出て行くみんなをよそに、霧切さんは僕の席にやってきた。 いつも通り探偵助手のお誘いだろうか。 流石にテスト前だからと断ろうとしたところで、彼女は僕の前――朝比奈さんの席に座った。 「苗木君、勉強していくの?」 「え、ああ、うん……」 帰り支度をしていなかったことから察したのか、予想外の質問にちょっと慌ててしまう。 「だから、今日は――」 「私も一緒にしても構わない?」 捜査の誘いを断ろうとしたところで、予想外の方向からパンチが飛んできた。 僕の知ってる霧切さんは、自分からそんなことを言うキャラじゃない。 でも、流石にそんなこと言えないので、とりあえず、目を白黒させてみた。 「今は何をやっているの?」 「え、古文の復習だけど……」 ちょうど良かったわ、と言いながら、霧切さんは朝比奈さんの机の向きを変え、僕の机と合わせる。 周りを見ると、既にみんなそれぞれ教室を出て行ったようだ。 「……ひとつ、良い?」 鞄からノートなどを取り出す霧切さんに問いかける。 「何でまた、霧切さんが僕なんかと勉強を?」 霧切さんは、無言で古文のノートを差し出す。 中を開いてみると――所々空いているページがあった。 「捜査の所為で何度か授業に出そびれたのよ。あなたが教えてくれないかしら?」 こうして、不思議な二人っきりの勉強会が始まった。 「恋、って言われても……」 いきなり何を訊くんだ、この人は。 ここまでの勉強会はいたって普通だった。 霧切さんの古文力は至って優秀で(僕が教えるまでもないくらいに)、僕が「好きだ」などと囁いたわけじゃないし、古文の内容が愛を綴ったものだったということもない。 だから、僕には何でこんな話になったか理解できない。 「【質問の意図】が……」 とりあえず、普通に返すことにする。 霧切さんはため息を吐いた。 「(言弾:恋話)それは違うわ」 「えっ?」 普段の表情から一瞬で鋭い視線に変え、僕に向ける。 「舞園さんや江ノ島さんが言っていたわ。男子も女子も高校生なら一つや二つする、って」 何か予想外のところでゲームの要素を無理やり取り込まれた気がするが、僕が論破されたのは事実だ。 「霧切さんも、舞園さんたちとそういう話するんだ」 僕がそう返すと、霧切さんの顔が一瞬だけ赤く染まった。 「た、たまたまそういう機会があったのよ。同じクラス男子と付き合うなら誰か、ってね」 赤面した霧切さんも可愛いな、なんて思いつつも、女子たちがどんな話をしたのかが気になった。 「まあ、今現在、私が訊きたいのはそんなところじゃないわ」 しかし、すぐに机に両肘を立てて組み、口元を隠す霧切さん。 その表情はどこか作ったように無表情だ。 「恋の話、だっけ」 「そう、苗木君は誰が好きなの?」 何故、誰かが好きということは確定なんですか。 「ここには色んな人がいるじゃない。これで好きな人がいなかったら、苗木君は間違いなくイ●ポよ。専門医に相談することをお勧めするわ」 確かに個性的なメンバーだということは認める。それ以前に、その表現はどーなんですか。 不名誉な称号を頂きたくないので、ここは真面目に考えることにする。 「私の勘は【舞園さん】か【朝比奈さん】ね。守りたくなるような女子は人気がある、って言ってたわ」 確かに、彼女達は守ってやりたくなる。 舞園さんは何てったって超高校級のアイドルだし、朝比奈さんは天然なところがあって危なっかしい。 「一方、頼れるって意味で【セレスさん】や【大神さん】、【戦刃さん】も捨てがたいんじゃないかしら?」 セレスさんは時々恐ろしいまでのキャラでみんなを引っ張ってくれるし、大神さんや戦刃さんは体力面でも本当に頼りになる。 「【江ノ島さん】や【腐川さん】だってファンクラブがある程の人気だって聞いたわ」 今時、ファンクラブなんてあるんですか? まあ、確かに江ノ島さんはカリスマモデルだし、腐川さんも喋らなければ十分可愛いだろう。 「誰なのかしら、苗木君の【好きな人】は?」 だけど……どうもピンとこない。 彼女達は、何処か遠いのだ。 超高校級の彼女たちと、極々普通の高校生である僕。 「……眩しいんだよね」 「……そう」 僕には、ちょっと眩しすぎる。 僕はこれまで、普通の人生しか送ってこなかった。 それを知って彼女達がどう思うのかが、怖いのだ。 退屈だと思われるか、無駄だと思われるか、残念だと思われるか。 「そうね、でも、彼女達は問題なく受け入れてくれると思うわ」 そういって、霧切さんも苦笑いを浮かべる。 この展開は考えていなかったのだろう。珍しくちょっと焦った様子だ。 そういえば、霧切さんは彼女自身を選択肢に入れなかった。 いつも通り一歩引いたところから僕たちを見てるのだろうか。 「霧切さんは、何で僕の好きな人を知りたいの?」 「そ、それは……今後、私の捜査を手伝ってくれるあなたの好きな人が、犯人に狙われないとも限らないからよ」 論破するまでもなく、霧切さんの言葉は嘘だと分かった。 声は震えていたし、目は逸らしている。 そんな彼女が愛おしいと思ったのは、いつからだろうか。 霧切さんの捜査を手伝っているとき? 霧切さんとよく話すようになったとき? 霧切さんと初めて話したとき? 霧切さんを初めて見たとき? 分からない、でも、いつの間にか僕は――。 (“言弾:霧切さん”を入手しました) 「僕が一番好きな人は――」 それは何処からきた感情だろうか。 羨望か、連帯感か。 「【好きな人】は?」 そうじゃない。 もっと、言葉では言い表せない何かから生まれた感情だ。 長く伸びた髪とワンポイントの三つ編み、瞳に真実を見つめる光を溜め、手には悲しい思い出を手袋で封じ込んでいる、一番僕を必要としてくれる女の子。 「(言弾:霧切さん)――霧切さんかも、しれない」 好きという感情がこれで正しいのなら、僕は彼女が好きなのだろう。 一方の霧切さんは、一瞬、ぽかんとした後、凄く困ったような表情を浮かべた。 「そういう冗談はよろしくないわ、苗木君」 「いや、冗談じゃないんだよね」 今の一言で動揺したのが手に取るように分かった。 いつもは見られない一面、といった感じか。 なるほど、先人の言うとおり、それには恋するだけの魅力がある。 困った表情に若干の笑みが混じる。どうやら僕は嫌われてはいなかったようだ。 「いや、でも、そんな……」 照れているのだろう、だんだんとその顔に朱が差してくる。 「予想外だった?」 「ええ、完全にね」 どこか嬉しそうに彼女は答えた。 「私も、苗木君は嫌いじゃないわ。むしろ好意を持っていると言って良いかもしれない」 だけど、と彼女は少し表情を強張らせて続ける。 「あなたには、私よりも舞園さんたちを好きになって欲しいわ」 「え?」 「彼女たちは、それぞれの夢に向かって全力で進んでいる。そして、彼女達には支えが必要なのよ」 何故だろう。 何故この人は、ここまで自分を追い詰められるのだろう。 「苗木君、ここまで言えば分かるわね?」 何故もっと、自分の幸せを望まないのだろう……。 「ごめんなさい、変なことを訊いて。私、そろそろ帰るわ」 霧切さんは、そう言ってそそくさと勉強道具をしまい始める。 焦っているのだろう。手が若干震えている。 僕は彼女に何も声をかけなかった。いや、かけられなかったのだ。 何と言えば良いのか分からなかった。 否定すればいいのか、肯定すれば良いのか、でも――。 そう考えているうちに、霧切さんは鞄に勉強道具をしまい終えていた。 「また明日、苗木君」 それだけ言って、逃げるように教室を出て行ってしまう。 彼女が見えなくなってから、大きくため息を吐いて椅子にもたれかかった。 窓の外はいつの間にかザアザアと雨が降り始めていた。 そういえば、天気予報が嵐が来ると告げていたはずだ。成る程、みんながそそくさと帰るわけだ。 僕は霧切さんを――。 ・追う ・追わない
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691 : ◆36m41V4qpU [sage saga]:2013/05/24(金) 22 52 41.47 ID 7ipQRA2L0 "僕のビアンカ" 俺様の名は高坂京介 人は俺のことをこう呼ぶ―――北関東のハイエナ ハイエナは狙った獲物は絶対に逃さない 「キャァー」 「うりゃ―――よし苺のパンツか」 狙った同級生の女子のスカートは必ずめくる それがハイエナの掟(お・き・て・) 「フフハハハ………これで後一人―――って痛ってぇ」 後頭部を思いっきり蹴られる俺様 「何すんだ!誰だっコラ?!」 「高坂 ―――アンタこそ何をやってる?」 「ゲッ………団子」 俺が『団子』と呼ぶ―――俺様の頭にケリをいれた不届きな奴 怖い物なしの俺にすれば唯一の天敵だった。 みたらし団子の様な髪の色に みたらし団子のような団子を頭の上に乗っけたような髪型に、 長い足に―――これ見よがしの短いスカート クラス委員で、クラスの中心にいつも居る、クラスのまとめ役 集団行動の群れた羊共のリーダー、否、猿山のメスボスザルなんだ。 要するに 一匹ハイエナである俺様はもちろん群れるのを好まない ――――独りで生きていけない権力に屈した羊共はもちろん俺様に 逆らったりしないのだが、この団子だけは別だった。 そして、クラスで俺様がスカートめくってないのもこの男女だけだった。 「誰が団子? 高坂、ちゃんと名前で呼ぶ」 「………………………………う、ぅるせぇ」 「えー?何か言った? 全然聞こえない」 「な、な、なんもねぇよ。 俺は先を急ぐからよ。アディオス―――あっ」 「待って ―――こっちの話は終わってない。高坂くん!」 団子は、威圧的に俺の名前を君付けした。 「こっちはねぇんだよ!」 「口で話出来ないなら、こっちで訊くしかない?」 『ボキボキ』と 団子は俺を威嚇するように首や拳の関節を鳴らした 「す、スカートめくって、本当にすいませんでした」 結局、団子に凄まれて――脅されて何度も何度も土下座をさせられた。 「も、もう大丈夫だから―――私はこれでっ」 最期にはスカートをめくられた当の女の子の方が恐縮していた。 「これに懲りたら少しは反省する 良(よ)い?高坂―――」 俺が土下座の格好ままで下から団子を見上げていた刹那 「―――甘いぜ、団子っ! 大将討ち取ったりっ―――ってあれ?」 記念すべきコンプリートのパンツは密かにこの小生意気な同級生と 決めていた俺様だったのだが、ヒラヒラしている短いスカートを いくら強くめくってもお目当てのパンツは見えなかった。 「こ・う・さ・か!!!」 鬼の形相の団子を放置して俺は一目山に走って逃げ出した。 逃げ足だけには自信があるつもりだった ―――しかし団子は簡単に追いつくと思いっきり俺を蹴り飛ばして 「アンタ、少しは足速いみたいだけど、わたしほどじゃない」 「く、くそ………なんで、いつも負けんだよ! それにスカートめくれねぇし」 「これからは覚えておくと良(よ)いよ! ―――これはキュロットスカートって言う そして、やっぱりアンタってバカ、バカ、バカ、バカ高坂!」 と言って 『バカ』のかけ声に合わせて何発も何発も俺の頭を踏み砕いた。 「………グハ」 「痛てて………あの男女覚えてろよ!」 「もうきょうちゃんって、ホントにおバカだね」 おっとりした口調で彼女が言った。 「痛いって………ちょっと手当するなら、もう少し優しくしてよ」 「そんなにパンツが見たいならさ、わたしがいくらでも見せてあげるのに♪」 「え?」 「ふふ、あっれ~?本気にしちゃった?」 彼女はショートカットの髪を振るわせながらニッコリと笑った。 そして彼女が振るえるように笑うと大きな胸も一緒に揺れた。 「そんな ふとましい太ももとか、そんなパンツとか別に見たくねぇって」 俺は何となく恥ずかしくなって軽口を叩く 「ぶーもうっ、きょうちゃん、ちょっと言葉が過ぎるぞ ぷんぷん 親しき仲にも礼儀ありだからねっ?」 怒ってるのか笑ってるのか分からない ―――俺が好きな優しい微笑みを浮かべながら、 幾分芝居がかった口調で(でも自然な表情で)頬を膨らませつつ 彼女は言った。 ―――本当にどんな時も全然変わらないなと思う。 こんな風に話しているだけで、俺は何となく落ちついた気分になれるんだ。 「はいはい」 「ところで、きょうちゃんって女の子のスカートめくって何が楽しいのー?」 「別に楽しくねぇよ、暇潰し」 「でも大人達に怒られるんだから、もう辞めた方が良いと思うよ」 「そういや、最近親父に殴られてないや」 「そのお団子ちゃんが一緒に謝ってくれてるから、めくられた当の女の子も 先生や親に言ってないのかも知れないね」 「そっか、だから 帰りのホームルームで問題になったり、親父に殴られたりはしてねぇんだ」 でもあの男女に殴られてるなら一緒じゃねぇかと俺様は思った。 「でも、もうしちゃダメだよ? 次にしたら、わたし本当に怒るから、分かりましたか? きょうちゃん」 「はい、はい」 同じ女は二度狙わないのはハイエナの掟だ。 そしてあの団子の野郎が例の絶対防御(キャロットスカート)を装備してる限り 俺の狩り(スカートめくり)が成功する確率は一㍉もない! この狩りは暇潰しで始めたんだし、(当然)誰に褒められるわけでもない でも何となく、このミッションがコンプリート出来なくて悔しい気持ちと ―――同時に、(エロい意味ではなく)何がなんでもやってやろうって ワクワク感が俺様の中に拡がった気がした。 そう―――ハイエナは狙った獲物は絶対に逃さないんだ。 「ねぇ、きょうちゃん………わたしのお部屋でゲームする?」 「するする、ドラクエやりたかったんだ」 『うかんだぞ! トンヌラというのはどうだろうかっ!?』 「うげぇ………どっかで見たことある顔だな、これ。 ってかさ、俺一人でやってても良いの?」 「うん♪ わたしはきょうちゃんが遊んでるの………見てるだけでも 楽しいから」 『あなた、だあれ? え?お父さんといっしょに旅してるの? わたしもお父さまといっしょに来たのよ。 海ってなんだか広くてこわいのね。』 『ちょっとあなた。 勝手に入ってこないでくれる? ここは私の部屋なの。 わかったら早く出て行って。』 『ねえ、 大人の話って長くなるから上にいかない? わたしはビアンカ。 わたしのことおぼえてる?』 『きまったわ! 今日からあなたはチロルよ!』 次の日、学校 「えっと、今日は運動会のリレーの選手を決めたいと思います」 自習の時間に団子が教壇の前に立って、何やら話している。 あの男女………今日はズボンかよ、くっそ 「誰か立候補する人はいる?他薦でももちろん良いよ」 運動会のリレーなんぞ俺様にはどうでも良いんだ。 本当に何が楽しいんだか。 あーあ、こいつらマジで下らねぇな。 『委員長が良いと思います』 と誰かが言った。 『確かに一番足速いし、賛成』 『俺も賛成』 クラスの羊共がこぞって団子を推薦している。 そりゃ、あの男女の足が速いのは俺様が一番知ってるさ。 「他に誰かいる?居ない?」 『おまえ、やれ』 『無理無理』 などクラスの男共は言い合っていた。 全く、群れたがる羊はひ弱なモヤシが多いらしい。 その後、団子がいくら問いかけても最期の一人の選手が決まらなかった。 俺は完全に興味を無くして窓から見える空を見ていた。 今頃、俺の妹は病室の窓から、この空を見てるのだろうか? 「―――が良いと思う」 少し眠くなりながら窓から教壇に目線を戻した時、 何やら大勢の視線を感じた。 教壇にいる団子は笑顔で、他のクラスの奴等は困惑気味に俺の顔を見ていた。 「わたしは高坂くんが良いと思います。どうかな?」 「は?」 「だから、わたしはリレーの選手に高坂くんを推薦してる。」 『………………』 さっきまでとうって変わって、クラスの中が気まずい雰囲気に包まれる。 そりゃ、俺様を前にすりゃ羊共は畏怖して、ビビるよな、当然だ。 「断る! なんで俺様が、この愚民共の為に走らなきゃいけねぇんだよ 参加者が居ないとか知るか、走る奴がいねぇなら棄権でも何でもしろよ」 『………………』 一瞬、氷の様にクラスの羊共の顔が固まったのが見えた。 俺は本当に良い気分だった。 何で俺がおまえらの為に何かしなきゃいけないんだよ。 知るか―――トロい奴が参加してボロ負けしちまえば良いんだ。 へへ………ざまぁみろ 『……………………………………』 「う~ん、困った―――困った」 その雰囲気の中、団子はただ一人だけ場違いな感じで 『困った』と言いつつも、ニコニコ笑顔を崩さずに続ける 「ちょっと………高坂くん、お話があるから来てください」 と言って 教壇から最後尾にある俺の席までステップでも踏んでるかの如く 飛んでやってくると、団子は俺の手を無理矢引っ張った。 そして俺は教室を出て、誰も居ない廊下に連れ出された。 「ちょ………おまえ」 「あれ? どうしたの………高坂、アンタ顔が赤い」 「う、うるせぇ!一体どういうつもりだよ!」 「いや、だからリレーの選手になってくんない? わたし達、困ってる。 アンタって逃げ足速いじゃん、今度はリレーでそれ使って欲しい」 「だからイヤだって言ってるよな?」 「冷たいこと言わない アンタ………女の子がこんなにお願いしてる」 「し、知らねぇし ………俺には、おまえらがどうなろう関係ねぇだろ」 教室の廊下側の窓からクラスの奴等が奇異の目で俺等を見ている。 俺は思いっきり睨み返してやった。 「関係ないわけない。 だって、高坂はうちのクラスなんだから」 「俺はおまえらとクラスメートになったつもりなんか………ねぇ」 そして―――それは俺だけじゃない お・ま・え・ら・だって、そう思ってるんだろ? 俺はおまえらが嫌いだ、だからおまえだってそれは同じだろう。 「出席番7 高坂京介くん 住所は千葉県―――で、 趣味はパズルと植物観賞。尊敬する人は………………」 「だぁぁ………何で俺のトップシークレットを知ってるんだよ?!」 「これくらいの情報はクラスメートなら当然知ってる」 「………………」 俺はクラスの奴等の情報なんて それどころか―――名前すらあやふやだった。 当然、相手だってそうだと思っていた。 「アンタにそのつもりないって言われても、わたしは困る。 ―――わたしは普通にクラスメートと思ってるし 何よりも実際、高坂はわたしと同じクラス。 アンタ、何をワケの分かんないこと言ってる?」 「………………う、うるせぇ、とにかく知るか」 俺は団子の言葉に動揺していた。 こんな風に一方的に関わってくる、こいつが相手だと どうしても、俺様のペースはかき乱されちまう。 「あー、逃げる?」 「は、はぁ? おまえ………何言ってる―――」 「だ・か・ら・わたしはアンタをクラスメートと思って頼んでる。 うんって早く言ってくんない?」 俺は思わず、団子から目を逸らした。 教室の奴等は俺に冷たい目を向け居た。 俺が、おまえら羊共と同じクラスなわけがねぇだろ。 そうだ、俺がこいつらの為に何かするなんて絶対お断りだ。 団子の野郎もきっと同じだ。 ―――こいつは優等生だから点数稼ぎで色々俺に構ってくるだけだ。 ただそれだけだ―――そうに決まってる。 「―――くれたら、良いぜ?」 どうせ、おまえもあいつらの仲間なんだろ? 「………?」 「おまえのパンツ、見せてくれたら 走ってやっても良いって言ってるんだよ!」 「………」 俺らのやり取りを見ていたクラスメートが一斉に騒ぎ始めた。 ―――知ってるさ、ワザとやってやったんだ。 おまえらがいくら騒いだって痛くも痒くもねぇさ。 「…………………ふぅん」 「おまえこそ逃げるのかよ?」 ほら、早く正体見せろよ? おまえは所詮、あいつらの中の一人に過ぎないって事をな 「アハハ………高坂ってやっぱり面白い」 団子の反応は ―――俺の予想と違う大きく違うものだった。 何で、おまえはあ・い・つ・ら・と一緒に、俺を糾弾しないんだよ? 「ふ、ふざけるな! 誤魔化してるんじゃねぇよ、無理なら無理って言え!」 俺は尚も諦めずに団子に迫った。 「いいよ。見せてあげる」 「え゛?」 「その代わり、高坂もパンツ見せる。良(よ)い?」 「はぁ? お、おまえ一体何を言って―――」 「―――だ・か・ら・ アンタが見せてくれるなら、わたしのも見せてあげるって言ってる」 「何でおまえが俺のパンツ見たがるんだよ?」 「高坂と同じ理由かもね?」 「う、うそつけ 俺がやらないからって脅してるんだな?」 「さぁ?どうでしょうね」 「おまえ、ふざけるなよ………やってやるさ」 「っ………!」 流石の団子もこの時ばかりは驚いた顔で、茫然と俺のパンツを見ていた。 ほら、どうだ!ふん、これで俺の勝ちだ クラスの奴等に笑われたのはシャクに障るが 団子の野郎が、大嘘吐きであいつらの仲間だって分かっただけでも 俺様の大勝利に違いなかった ―――その筈だった 「よし、うん分かった。 ほら………今度は、高坂よく見る」 団子はズボンのベルトを外すと、一番上に止めてあったボタンも外した。 「ちょっと………待っ」 「ほら注目―――」 「―――このバカ野郎! 何、本当にズボンを降ろそうとしてるんだよ!!!!!」 俺はとっさに団子に飛びついて、こいつが降ろそうとしていたズボンを ―――そのズボンを、降ろそうとしていたこいつの両手もろとも無理矢理 思いっきり上に引っ張り上げた。 こいつの一連の行為がズボンを降ろす振り(ふ・り・)で してなかったことは明らかだった。 何故なら、俺が団子の両手を握って引っ張りあげた時 その手の力のベクトルは確かに下の方向に向いていたからだ。 しかも教室の奴らには、角度的には見えてないかも知れないが、 俺には下着の生地の一部が色だけだが少しだけ見えていた。 「あれ? 見なくて良(よ)いの? アンタはちゃんと見せてくれたのに、わたしはちゃんと約束は守るつもり」 「バカ野郎!おまえは女だろ!」 「高坂、いつも女子のスカートめくってるじゃん」 「今はクラスのほとんどの男共も見てるんだぞ!」 「高坂………顔真っ赤かだ」 「う、うるせぇ」 「何で、アンタが照れてる? それにアンタが邪魔するから脱げなかったじゃん」 「と、とにかく………もういい」 「何が良(よ)い?」 「わ、分かったから ―――おまえの気持ちは分かったから、ズボン下げんなよ」 「高坂ってさ―――」 団子は俺に近づくと、ヒソヒソ話の要領で俺の耳元に―――……… 「―――実は優しい」 ………―――と言った。 「う、うるさい!うるさい!」 「別にうるさくはない。わたしは小声で言ってる」 「………」 俺は絶句して、もう何も言えなかった。 目を逸らして教室の方を見るとクラスの奴らも静まり返っていた。 「とにかく高坂には約束守って貰う」 「へ?」 「だって、アンタが見せなくても良いって言ったんだから 今更、ナシとかはナシ」 「………く」 「高坂はちゃんと走る、わたし達はリレーで勝つ。 うちの組が優勝する、結果めでたし――めでたし」 「………くそ」 「あと、リレーの選手は練習あるから、ちゃんと来る。 良(よ)い?」 「ちいっ」 「返事聞こえない」 「あーあー」 俺は両耳を両手で押さえて、奇声を上げた。 「返事」 『ボキボキ』と関節を鳴らして団子が問いかけた。 悔しいが、今はこいつの言う事の方が正論だった。 賭けをして負けたのに約束を反故にするのは、俺様の流儀に反する。 「ちぃ分かったよ!やりゃ良いんだろやりゃ」 「うんうん、期待してる。 他のクラスには速いの多いからね。 わたしはアンタの逃げ足だけが頼りです♪」 こいつが周りの状況・雰囲気・流れ、 そんなの完全無視で、ニコニコと笑ってるのを見ていると、 俺は腹立つより呆れて、それ以上何か言うのが面倒くさくなってしまった。 ―――本当にいつも、いつもそうだったんだ。 「ちくしょう、ちくしょう! あの団子のやろう、まんまと俺をハメやがって!」 「きょうちゃん、リレーの選手になったんだ、凄い凄い」 「マジで………最悪過ぎる」 「でもお団子ちゃん、結構な策士の女の子だね わたし、ちょっと会ってみたいかも?」 「単なる変わり者なんだ、あいつ ―――俺にいつもちょっかいかけやがって、マジで腹立つ」 「きょうちゃんのことが好きなの………かもね?♪」 「じょ、冗談キツ過ぎる」 「全然………冗談じゃないよ」 「何で分かるの?」 「女のカン………かな?」 「そのカン大外れだよ、絶対 大体、女のカンって………適当過ぎる」 「適当じゃないよ わたし、きょうちゃんの事なら何でも分かるもん」 「何で分かるの? ってそれも女のカンで、以下無限ループで―――」 「―――わたしはね、きょうちゃん好きだから♪」 「なっ………」 「これは将来、大惨事が起きるかもね お団子ちゃんと、わたしできょうちゃん取り合いかぁ ―――わたし、二人が付き合っても別れて欲しいとか言ったりして」 「ハァ まったく………何をワケの分からないことを言ってるんだよ」 「とにかく大会の時はわたし、応援しに来るね お団子ちゃんにも会ってみたいし、きょうちゃんの活躍も見たいし」 「こ、来なくて良いよ」 「お弁当作ってくるからね♪」 「何で、俺よりはしゃぐのさ?」 「あのね………きょうちゃん、よぉ~く覚えておきなさい 女の子はね、自分が好きな男の子が頑張る姿にはしゃぐ生き物なんだよ」 ―――そして、俺よりはしゃいでる女の子がもう一人居た。 「わぁーお兄ちゃん、 リレーに出るのすごぉい、すごぉい」 「ふふ、クラスの奴らがどうしてもってお願いしやがったからな」 「えぇー? そーなんだ………みんながおねがい したんだぁ! みんなに、たよりにされてるんだねー」 「俺ってさ頼られたら、断れないからな ―――まったく、北関東を守護するハイエナは苦労が多いぜ」 「キリちゃん、ぜぇ~たいっおうえんに行く♪」 「うん、でもその前に早く良くなれよ? そしたら、俺様の超絶スペシャルな活躍が見られるからな!」 「うん! はやく よくなって………ぜったいぃみにいく!」 「でもキリちゃんごめんな、 俺、その練習で放課後とかあんま来れなくなるかも」 「う、うん………………だいじょうぶだよ ―――でもぜったい、ぜったい一番になってね、お兄ちゃん♪」 「ああ、当日はキリちゃんの為に走ってやるからな」 「うん♪ぜったぁいやくそく!」 俺の妹は病気だ 物心ついた時から、ずっと入院していた。 だから両親は当然、俺の妹につきっきりで看病。 と言うよりも、家族の優先順位は常に妹の事で占められていた。 そして家族の中で、 ―――何故か一番妹に懐かれてる俺は(たかだか小学生だが) 何を犠牲にしても、妹に会って看病したり、あやしたり、話し相手になったりした。 そう………俺には、あの羊共の様に群れたり連むダチは居なかった。 あの通り、学校では一匹ハイエナだし―――俺は孤高の存在なんだ。 別に、弱っちぃクラスの羊共と連みたくなんて無いから それは別にどうでも良いが でもあの団子だけが突っ掛かってくるから、話がややこしくなってる。 俺は入院生活で辛い思いをしている妹が少しでも喜んでくれたら嬉しいだけ。 出来ればその笑顔のまま、病気を乗り越えて欲しいと思っているだけだ。 だから現実の学校での俺様と、妹に今話してる俺に、 ちょっとばかりギャップが有ったって別に何の問題も無いさ。 それに学校ではあんな俺でも 家に帰れば、俺のことをちゃんと待っててくれる人が居る。 だから不平なんてない―――不満なんて無い。 俺はこのままで良い―――絶対に変わるつもりなんて無かったんだ。 「ほら、きょうちゃん、お紅茶煎れたから。それにお菓子もどうぞ」 「うん、有り難う」 『こんな私でいいの? フローラさんみたいに女らしくないのに。』 『私は守ってもらうことしかできない女ですのよ。 それでも私を選んで下さるの?』 『なにしてるの?早く私を選びなさいよ。』 「結構、きょうちゃんゲーム結構先まで進んだね。 きょうちゃんの人生最大の選択かな?」 「何か、滅茶苦茶………選びづれぇな」 『なんとこの私が好きと申すか!? そ、それはいかん!もう1度考えてみなさい』 「ふふ………何回それやってるの? もう、きょうちゃんったら♪」 "しかし選んだ花嫁にプロポーズせずここを出てゆけば 皆をがっかりさせることになるだろう" ―――逃げ出したくても"ルーラ"は肝心な時には使えないって事 と合わせて 何となくこの言葉が、その後 俺の心の中にずっと引っかかった。 俺の学校での生活は相変わらず でも、前にもまして団子の奴が色々話しかけてきやがる。 ったく あの女、面倒くせぇったらありゃしねぇ。 いつもの様に、妹の見舞いを終えて帰ろうとしていると 何故か、団子が突き当たりの病室の前で困った顔をしていた。 俺は興味本位で、その様子をしばらく遠くから眺めていた。 団子が病室へ入っていった後、部屋から声が聞こえる。 「わし、薬とかいらんし飲まんからね」 「お爺さん………我が侭を言ったらいけませんよ。 これはお医者さまが―――」 「―――大体、医者なぞ病院なぞ来たくは無かったんじゃ」 どうやら、団子のじいさんが我が侭を言って、家族を困らせてるらしい。 何でだろう? 学校でいつもちょっかいをかけられていたから その意趣返しのつもりだったのか? それとも別の理由だったのか? 大好きな祖父母のことを思い出しながら 俺は本当に何の躊躇もなく、病室の入り口から団子に挨拶した。 「よっ! こんな所で会うなんて随分奇遇じゃねぇか?」 「誰じゃ、この小僧は?」 「こ、高坂――アンタ、ここで何してる?」 「何じゃ、わしの孫娘の友達か とにかく、わしの可愛い孫はおまえにはやらんぞ」 このじいさんは陽気なタイプのようだ。 こういうじじいの転がし方は、大体分かっている。 「お爺さん、そう言わず是非、僕にください 絶対に幸せにしますから」 「小僧、マジか?」 「嘘だよ、じいさん」 「クク………面白い坊主じゃな。茶でも飲んでくかい?」 「おう、玉露で良いよ」 全くの他人で初対面にかかわらず 俺とじいさんは、普通にうち解けて茶を飲んで世間話をした。 「じいさん、何だから知らねぇが薬は飲んだ方が良いと思う」 「だって苦いし不味いし、嫌じゃ」 子供か、このじじい 「じゃ、勝負しねぇか?じいさん 将棋やって、俺が勝ったら素直にじいさんは薬を飲む」 病室の机に置いてあった将棋盤を指差しながら、俺は言った。 「小僧が負けたら、どうするんじゃ? わし、薬飲まされるだけの勝負とか受けるつもりはないぞ」 「団子と―――じいさんの孫と結婚するのは 泣く泣く諦める」 「ほう………気に入った、よし勝負じゃ! でもわし強いからハンデをやろうかのう」 「そんなのいらないぜ」 「―――ふむ、その意気潔し!! 」 「いざ………尋常に」 「「お願いします」」 俺は自慢じゃないが、ガキにしては結構 将棋強い方だと思っていた。 でもこのじじい、とぼけてる割りに滅茶苦茶強い。 「ほらほら、どうした王手、飛車取りじゃぞ」 こんな所にノコノコやってきてボロ負けしちゃ 俺の格好つかねぇんだよ。 ………………………! まぁ………このじいさんなら洒落は分かるよな 「あっ、じいさん………窓、窓にUFO!!!」 「え?! 何処じゃ?何処にも見えんぞ」 ―――この隙に将棋盤をそっくりひっくり返して 「あれ?どうやら俺の勝ちみたいだぞ」 「あーわし負けとる」 「いや、良い勝負だったぜ」 俺は、団子と団子のおばあさんにウインクして、 じいさんに見えない様にピースサインを出した。 「わたしが優勢だった筈なんじゃが、何でかのう」 本当にボケてないだろうな? ………このじじい 「とにかく、約束守って貰うぜ」 「しょうがないのう」 じいさんは約束通り、薬を飲んでくれた。 「じいさん、早く良くなれよ」 「うむ、また遊びにおいで」 「高坂、あんがと うちのおじいちゃんって頑固だから、本当に助かった」 「俺は、年寄りあしらいはプロ級なんだぜ 暇なら、また茶でもご馳走になるわ んじゃ、帰るわ―――」 「―――あの高坂………」 「アディオス!」 「ちょっと待ってくれる?」 「な、何だよ?」 「アンタさ、お菓子好き?」 「おまえんち、菓子屋だったのかよ。 マジでイイよな、菓子食い放題でさ………羨ましいぜ」 その後、俺は何故かこいつに連れられて団子の家に案内された。 考えてみりゃ、俺って女の子の家なんて上がったことなかったな。 つーか、友達の家なんて随分行ったこと無かった。 「わたしの予想通りの高坂らしい発想 でもわたしは和菓子よりも、洋菓子の方が好き」 「おいおい………おまえ酷いな それでも和菓子屋の娘かよ?」 「ふふ だったらアンタ、ここの子になる?」 「毎日、菓子食えるなら結構良いな、それ」 「ふぅん 本当に美味しそうに食べてる お茶飲んで、お菓子食べてる姿がうちのおじいちゃんにそっくり」 「あんま嬉しくねぇな、それ ところで、物陰に隠れてるガキに、俺、睨まれてるんだけど?」 「あれはね………わたしの弟。こら、挨拶は?」 「逃げやがった。 おいおい、躾けと教育がなってねぇぞ………ここの家は」 「アンタがそれ言う?」 「そりゃ………そうだな」 『アハハハ』 『クク……フハハ』 その後、俺らは何が面白いのかも分からず ずっと二人でクスクス笑っていた。 俺がこんなに無邪気に笑ったのは―――……… "姉ちゃん"や妹と話してる時以外で、 ………―――俺がこんなに笑ったのは、どれくらい前だっただろう? 「高坂の妹って入院してるね?」 「何で知ってるんだよ?」 「だって、うちのおじいちゃんも入院してるから アンタって妹のお見舞いに何度も――何度も行ってる」 「おまえ 見てたのかよ………?」 「ちゃんとお兄ちゃんしてて偉い。 アンタが早退したり、学校来なかったりする原因って やっぱり―――」 ああ………そっか。 だからこいつは、そんな俺に同情してただけ だったのか。 何故だか、俺はさっき一緒に笑っていた自分が無性に恥ずかしくなった。 「別に、そんなんじゃねぇよ」 「わたし、高坂と走るの楽しみにしてる アンタがスカートめくって逃げるのを追っかけるよりは バトンを渡す方が絶対に良(よ)いよ。 うんうん♪」 「………あっそ」 「何? 高坂、どうかした?」 「俺、帰るから」 「ちょっと待って―――」 団子が何か言うのも聞かずに 俺はなるべく早く、この場から立ち去ろうと駆けて外に飛び出した。 俺は一体、これ以上………この親切なクラスメートに何を期待してたんだよ? こいつは他の奴らとは違う。 それで―――それだけで、もう充分じゃねぇか? 無性に姉ちゃんが恋しくなって、 俺は脇目もふらずに家路に向かって出鱈目に走った。 俺は思った。 ―――あのドアを開けたら、またいつもの俺に戻れるんだ 「ハァハァハァ………もうっ高坂! ―――だから、わたし ちょっと待ってって言ったでしょうに」 「な、な、何で、 おまえは………俺の家の目の前まで追っかけてくるんだよ?!」 「挨拶」 「あ、挨拶………?」 「忘れてる」 「え?」 「高坂、またね」 「お、おまえ………」 「高坂、リレー頑張ろう」 「………」 「返事」 「あ、ああ………やろうぜ!」 夕陽に照らされた、こいつの顔を見ていると 何故か、ポカポカと暖かくて懐かしい気分になって 俺は何の気も衒わず―――本当に素直な気持ちになって、そう答えていた。 「高坂、アディオス♪」 とニッコリ笑って団子がそう言ったかと思うと まるで背中から羽根でも生えてるみたいに 本当につむじ風の様に―――団子は俺の視界から消えていった。 気付くと俺は いつまでも――いつまでも、団子が見えなくなっても手を振っていた。 あーあ、俺って何………青春してんだか その時、俺の頭の中で 何故か、ゲームの場面が再生される。 『きまったわ! 今日からあなたはチロルよ!』 北関東のハイエナだろうが、"地獄の殺し屋"だろうが ―――こうなっちまったら、もう形無しだ。 「………………………ったくよ」 ―――本当に、最近の俺ってバカみたいだ 俺はそう自嘲しながら、もう暫くの間 ―――団子が居なくなった路地を、家のドアの前で ずっと――ずっと、見つめていた。 おわり
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私と会うのはデートなの? ネタなの? わたしとあうのはでーとなのねたなの (慣・ANN, 89)東京ディズニーランドでのデートが散々に終わったことをフリートークで話した時、それを聴いていた当時の彼女から電話がかかって来て言われた言葉。伊集院が「ネタ」と返答した為、その女性には振られた。