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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/35-40 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない 俺はやっとの思いで家へと帰宅した。 家まで帰る道中は身体が鉛のように重たく感じて、まっすぐ歩くことすらままならなかった。 ときおり壁に手をついて身体を休めなければ家にたどり着くこともできなかったかもしれない。 玄関の扉に手をかけて開けるという日常の当たり前の動作にすら気だるさを感じつつ、ゆったりと家の中へと入る。 するとまるで計ったかのようなタイミングで桐乃とはちあわせになった。ちょうど階段から降りてきていたであろう桐乃は俺の姿を確認するなり何かを言おうと口を開いたが、すぐに俺の異変に気付き驚いたように口元を手で覆ってみせた。 手で隠れる前に見えた口の形から、きっと「おかえり」の四文字を言おうとしていたのだろう。少し前なら桐乃の口からは到底聞くことが出来ないであろう貴重な四文字であったが、 あいにく今の俺にはそれの返答である「ただいま」という四文字を言う気力も残っていないため、途中で桐乃の口が止まってくれたのはありがたかった。 そして俺は、顔をうつむき加減にしてゆっくりと桐乃から視線を外す。 「ちょっ……! えっ、えぇっ!?」 俺は何も言わずに桐乃の横を通り抜けていく。 一度飲み込んだ言葉のせいで二の句がつげないでいるのか、桐乃は口元をおさえ狼狽したまま言葉にならない言葉をこぼしている。 俺はそんな桐乃の様子を気に止めることもなく……もとい気に止める余裕も無く、階段を上ってゆく。家の扉を開ける動作ですら気だるさを感じた俺にとって、 階段を上るという作業は偉い修行僧に科された厳格な試練に匹敵するほどの苦行であった。しかしさすがに、この俺の精神的に疲れ果てた身体を何のプライバシーも無いリビングで癒すことはできそうにない。 ひとまず誰にも聞かれることなく誰の視線も届かない場所で、ため息を一つぐらい吐かせてもらいたい。 「……ちょっと、あんた。と、とっ……止まりなさいよ!」 それでも妹様は何とか言葉を紡いできて、アメリカから帰ってきても昔と変わらぬ高圧的な命令口調で俺を呼び止める。アメリカで説得したときに似たような罵声を食らったが、日本で喰らったのは数ヶ月ぶりだった。 どことなく歯切れが悪いのは俺と同じ帰国疲れのせいか、俺の様子がおかしいことに気付いた戸惑いか、はたまたその両方からか。 俺は階段の途中で足を止めたが、決して振り返らない。一歩でも振り返ればバランスを崩して階段から転げ落ちてしまう予感がするほど、自分が心の底からガタガタになっていることがわかっていたからだ。 「……なんか用か?」 覇気の無い声色だった。一瞬これは本当に自分の声なのかと、自分自身でも疑ってしまうほどに生気がない。 「いやっ、用っていうか……。ど、どうしたのよ?」 俺の覇気の無さが乗り移ったのだろうか。主語の無い、それでいて歯切れの悪い質問が階段すら上るのに億劫となっている俺の足にまとわりつく。 これがいつもの桐乃の勢いに任せた態度だったなら何の後腐れも無く足を進めていただろう。 「…………」 それでも今の俺に桐乃と長く会話をする自信は無かったので、ひとまず無言のままゆったりと階段を上りきる。その間、桐乃はずっと黙って待っていた。 そうしてから俺は身体を半分だけ階段下の桐乃に向けて一瞥する。何かを問いたげな瞳がライトブラウンの前髪の奥からじっと俺を捉えている。 「……疲れた」 「えっ?」 唐突に俺の口からこぼれた言葉に、桐乃は一瞬呆気に取られた表情をする。 「カバンを持ってくのも面倒なくらい、疲れてんだよ。だから……カバンここに置いとくから、後で部屋に持ってきてくれ」 俺はそう言いながら無造作に、それでも勢い余って階段から桐乃が居る下へと落ちないよう心配りをしながらカバンを自分の足元近くに放り捨てる。 まぁなんだ、さっきの俺の一文の中に含まれた、『疲れてるから、話はひとまず後で俺の部屋で』という意図ぐらいは桐乃なら読み取ってくれるだろう。 俺はカバンを置くとすぐに自分の部屋へと歩き出す。それでもまだ階段の下の方から桐乃が俺を制止しようとする声が聞こえたてきたが、決して立ち止まったりも振り返ったりもしない。 もう本当にそんな余裕は今の俺に無いのだ。俺は自分の部屋の前にたどり着くと、素早い動作で部屋に入りトビラをしっかり閉めて、あたかもそれで最後の力を使い果たしたかのようにすぐさま力無くベッドへと突っ伏したのだった。 空白の時間とはまさしくこのこと。いろいろな意味で衝撃の連続であった今日、俺の頭は今までの反省だとかこれからどうするだとか考える余裕はなく、ひとまず何も考えない時間を欲していた。 意識はあったので眠っていたわけではないと思うが、部屋に入ってからの俺は何も言葉を発せず考えず、ただベッドの上で静寂を保っていた。 そんな半ば夢心地の俺を現実へと引き返したのは、コンコンッという最近では聞きなれぬ木を叩くどこか小気味良い音。それは扉をノックする音であった。 「…………」 俺は無言でベッドから体を起こす。へとへとだった体力も幾分か回復している。 「誰だ?」 扉の外にいる人物はおそらく桐乃であろうと半分確信しながら、俺は部屋の外にいる人物にそう話しかけた。お袋はノックなどしないし、親父に至ってはまだ帰ってきてもないだろうから、桐乃以外の人物が俺の部屋の前にいるなどありえない。 それでも、奇跡を期待して良いのなら。ひょっとしたら――― 「あたしよ。入るからね」 聞きなれた、それでもアメリカから帰ってきたばかりで少し懐かしさも感じる強気な声色。それはまごうことなき俺の妹の声だ。 そうして俺の扉がガチャリと開いて、片手に俺の学生カバンを持ち、もう片方の腕に何かを乗せたお盆を持った桐乃が部屋に入ってきたのを目で確認する。ベッドに座る俺に微妙な視線を向けつつも、桐乃は俺が先ほど預けたカバンを無造作に床へ置き捨てた。 予想通りの展開に驚くことはせず、それでも俺は一瞬だけ残念だと思ってしまう。 ひょっとしたら、俺の心配をしてくれた麻奈実が―――、という展開を、無意識で期待してしまっていたのだ。 現実を知ってからだと、これほど馬鹿みたいな妄想もない。くだらなすぎて、心の中で嘲笑すら出来ないレベルの冗談だ。 「はぁ」 「チッ。ため息つきたいのはこっちだっての」 辛気臭い顔を浮かべていた俺が気に食わないのか、桐乃は舌打ちまじりに毒づく。昨夜の晩餐で見た桐乃の姿は今やあとかたもなく、ある意味で本当の俺の妹が戻ってきたでも言うべきだろうか。 「……で、何があったのよ?」 そう言いながら桐乃はベッド上で項垂れている俺に視線を合わせてきた。それと同時に桐乃から手渡されるコップ一杯の水。どうやら先ほど片手に持っていたお盆にはこれを乗せていたらしい。 「……何もねぇよ」 「そんなに声嗄らしといてよく言うわ。……良いから話しなさいよ」 麻奈実の家を出る辺りからずっと涙を流していたからだろう、俺の声は確かに嗄れて掠れた声になっている。 発声するたびに喉のいがらっぽさが自分でも気になるし、こんな声で何もないなどと言っても説得力は皆無。ずっと涙が流れつづけていた顔の方はもっと酷いことになっているかもしれない。 「…………」 だからこそ俺は無言を決め込んだ。冷静に考えたら桐乃は俺がつい先日アメリカから連れ戻してきたばっかでまだまだ不安定だし、なにより今回の一件には麻奈実が深く絡んでいる。 どうしてかさっぱりわかんねぇが、とにかく桐乃は麻奈実のことを大が付くほど嫌っている。もしもいま俺が麻奈実のことで泣くほど悩んでいるなんて知ったら、不機嫌を軽く通り越して憤慨し、そのままの勢いで再びアメリカに行ってしまうかもしれない。 さすがに本気でアメリカへ戻るなどとは考えにくいが、ひとまず桐乃のためを考えたらここは今日の田村家での出来事は黙っておくべきだ。 「ねぇ、何か言いなさいよ」 桐乃の翡翠色の瞳が真っ直ぐに俺の両眼を捉えてくる。留学前より伸びたライトブラウンの前髪の隙間からのぞくそれに映る俺は、一体どんな顔をして対峙しているのだろうか。 少なくとも兄としての威厳がある姿ではないだろう。 目の前に差し出されたままのコップに映る自分の顔が歪んで見えるのは決して動揺のせいではないと、まるで強がりのように俺は桐乃の手からコップを奪い取り飲み干してみせる。 キンッと冷えた水が喉を一瞬で潤し、またしても限界ギリギリまで削れていた俺の体力を僅かにだが回復させてくれる。 「桐乃、お前には関係ねえことだ。まぁいろいろあったわけだが……お前が気にすることじゃない」 ゲームで言うなら瀕死状態から肉眼で確認できるまで回復した体力ゲージだけを頼りに、俺は桐乃の追及に一切答えないという強行策に打って出た。 喉が潤ったことで、声色も普段とあまり変わらないぐらいに戻った気がする。顔の崩れっぷりは確認できないのでどうかわからないが、麻奈実に殴られて未だヒリヒリとしている顔の痛みが今じゃ気付け薬となっているのは不幸中の幸いか。 とにもかくにも、俺はアメリカから帰ってきてまだまだ不安定で無茶をさせられない桐乃に、今日の出来事を何一つとして漏らすつもりはなかった。 「…………あっそ、そういう態度とるんだ」 その一方で桐乃はというと、俺の言葉を聞いてからたっぷりと間を置いてから、目にも止まらぬ速さで空になった俺の手中のコップを奪いさる。 それは桐乃の怒りの意思表示だったのか、しかし俺がその一瞬で垣間見た桐乃の顔には、どこか悲しげな色が浮かんでいた気がした。 「わかった、もういいわ。でも一つだけ答えなさい。これだけは答えてくれないと、あたしこの部屋から出ないから」 俺がそんなことを感じていたのも束の間に、桐乃は俺が数か月前まで見慣れていた高圧的で眉を吊り上げた不機嫌そうな表情に戻っていた。 しかしこのとき、俺は桐乃の言葉に内心ホッとした。自分の納得できないことはとことん追求する桐乃のことだから、 俺がいくらはぐらかしても言うことを聞かず長期戦になることを心のどこかで覚悟していた。ところが桐乃は意外にもあっさりと手を引いてくれるらしい。 さすがにここまでへこんでいる俺の姿に情が移ってでもくれたのか、何はともあれ助かった。ひとまずこの桐乃の一つだけ答えろという質問を乗り切れば、今の所は万事オーケーだ。 まだまだ休みたりていない俺の身体と精神が、早くもう一度一人で何もすることのない安らぎの時間を求めている。 それでも百里を行く者は九十里をなんとやら。次の瞬間、神妙な顔つきの桐乃が問いかけてきた質問に、俺は平静を保つことなど出来ず驚いてしまった。 「その殴られた顔は、一体誰にやられたのよ……?」 心の底から俺を心配しているような、そんな優しげな声色。それと共に向けられてくる憂いを込めた視線にほだされてしまう。何となく、それは卑怯だろうと言いたくなる。 そんな顔をされたら、兄として平静を保てやしない。……というか、ちょっと待てよ!? 「なっ! なにを急に……ていうか、なんでおまえ俺が殴られたって知ってんだよ!?」 俺の身体が酷くボロボロと言っても、何か特別目立った外傷があるわけではなく、それはあくまで精神的ショックで俺がそう感じているだけに過ぎない。 それじゃなんで桐乃は、俺が麻奈実に顔を殴られたことを知っているんだ? 俺が突然の自体に目を丸くしていると、桐乃はなんてことはないといった様子で返事を紡ぐ。 「あっそう。ひょっとして転んだだけかとも思ったけど、やっぱり殴られたんだ。その青アザ」 さっき俺が聞いた優しげな桐乃の声はやはり空耳だったのであろうか。今では飄々とした口調で、俺の口からあっさりともれた自白内容をなぞっている。 「っ!? き、汚ぇぞ桐乃!」 かまかけてやがったなこいつ! ていうか、青アザ出来てたのかよ。桐乃に言われるまで全く気付かなかった。 麻奈実の家に帰るまでに鏡張りのショーウィンドウなんておしゃれなものがある店は近所にないし、家に帰っても一直線に俺は部屋に入ったから、洗面台の鏡も見ていない。気付いてなくて当然といえば当然だ。 桐乃に指摘されたアザが出来ている頬をさすっていると、いつの間にか俺に視線を合わせることを止めて、腰に手を当てながらまるで貧乏人を見る成金のように俺を見下ろしていた。 「汚いのはどっちよ、このバカ兄貴」 そうして放たれた、いわれのない罵倒。 何を突然言い出すんだこいつは? 俺がいつ汚いことをしたと言うのか? はっきり何か言い返そうかと思考を巡らすが、桐乃の二の句の方が早かった。 「……あたしはね、前も言ったけどあんたに、その……け、けっこうどころじゃなくて……かなり感謝してるの。 私のオタク趣味がお父さんとかあやせにばれたときとか……今回のアメリカの件だって、あっちじゃ強がってたけど……日本に帰ってこれて、本当に良かったと思ってる」 声色はいたって普通。でもどこか顔色は赤みがかっていて、その普通の声が必死に照れ隠しをしているようにも思える。 罵倒から一転して桐乃の突然の感謝に、俺は内心とまどった。 「それもこれも、全部あんたの……兄貴のおかげだから」 ゆっくりと告げられる言葉に、少しずつ、ほんの少しずつなのだが。傷ついた俺の何かがいろいろと癒されていくのを感じる。 「だからあたしは、何ていうか……恩返しがしたいのよ。あたしに出来ることがあるのなら、何でも言って欲しい。あんたほどうまくできるかわからないけど、話を聞くことぐらいは、……人生相談にのってあげることぐらいなら出来るし」 あの桐乃の口から出た言葉に俺は正直耳を疑ったね。いろいろ精神的に参ってたところもあるし、最初は俺の生み出した幻影が話す幻聴かとも思った。でも俺のことを見下ろしながらそう言ってくれる人影は、確かに俺の妹の桐乃であった。 わざわざアメリカにまで迎えに行ったんだ、見間違えるはずがない。 「それなのにあんたってば、自分が困っててもあたしに全然相談しないし。それどころか、あたしには何も関係ない。これは自分の問題だ。とかなんとか言っちゃってさ、あたしに何も話そうとしないじゃない。……それって、卑怯とか思わないワケ?」 「いや、卑怯って言われても……。俺はお前の兄貴だから、助けるのは当然っていうか、俺が助けたかったから助けただけで」 「それが卑怯って言ってるの。あたし、ずっとあんたに助けれっぱなしで、いい加減に借りの一つや二つぐらい返したいの。だからね、あたしにもあんたが何で悩んでるかぐらい話しなさいよ。 ……あたしは、あたしはね。あたしがあんたを助けたいから、助けるだけなんだから」 おぉっ、おぉぅ……。何ということだ。俺は今、心の内から湧き上がる感動の涙が止まらない。さっき桐乃から貰ったコップの水が全て涙に変わり、心の中で滝となって壮大に流れているビジョンが俺の瞼の裏には映っている。 桐乃の口から俺のためになどという言葉を聞けて、それだけでも今までこいつのために使ってきた体力が全てカムバックしてきそうだ。 その気持ちだけで十分だと言いたかったが、せっかく桐乃の法からここまで言ってくれてるんだ。例え兄貴だろうと、たまにはその厚意にあずかっても良いだろう。 「じ、実はだな…………麻奈実と」 「ハァ? その怪我、ひょっとしてあの地味子との痴話喧嘩が原因なワケ? ……………………やっぱなし。さっきの相談がどうのこうのっての、全部無し。ていうか、ウザッ」 頭の中で劇的ビフォーアフターのBGMが流れたような気がした。まぁなんということでしょう。 麻奈実の名を聞いた途端、俺の妹の顔は滅多に見れない優しげな表情からいつもの無愛想で侮蔑するような視線の顔色に、天使の歌声のような声色はたちまち不機嫌な声色に。 前言撤回だ。さっき流した心の涙を返してくれ。人間の涙ってのは血液から出来てるんだぞ。ただでさえ精神と肉体がボロボロの上に貧血まで起こさせる気かよ。 というか、あいかわらずお前はどんだけ麻奈実のこと嫌いなんだよ。いやもうこれは嫌いとかいうレベルじゃないね。もうお前末代まで麻奈実のこと祟るつもりだろうよ? 「つうかさぁ、さっきその顔殴られたって自白してたケド、まさか地味子に殴られたワケ? あの超お人好しに殴られるって、逆に何すれば殴られるのよって聞きたいわ。まっ、多分あんたが十割悪いんだろうケドさ」 あぁそうだよ。ついさっき俺の相談を聞くと言っておきながら、今やお前は俺が一番気にしているデリケートゾーンをハイヒールで踏み躙ってきたよ。元々似てない兄妹なんだから、無理矢理そんなところ似せてこなくて良いって。 麻奈実のことをずっと傷つけていて、今日もまた傷つけて、そして殴られた。もう二度と普通に話せなくなったであろう幼馴染の姿が、今や涙も干ばつした瞼裏に浮かび途端に身体中を寒気が走った。 俺はもう桐乃と話す気力を完全に失い、寝返りを打って桐乃に背を向けた。 「…………チッ。なんか言いなさいよ。ウザッ」 すると桐乃は俺が何の反応もしないのが気に食わないのか、それだけ言い残して桐乃はドタドタと音を立て部屋から出て行った。 怒りにまかせてドアを思い切り閉めたバタンッという音が、アザが残る頬に小さく響いた。 「ほんと、ウザすぎっ。なんで悩み事となるといつも全部アイツの事なのワケ? ……助けたいのに、助けたくなくなるじゃん。バカ兄貴」 ドアを挟んでもなお俺を罵倒する桐乃の声がする。後半部分は何やら口ごもっていたのでよく聞こえなかったが、きっとろくでもない罵倒の一部であろう。 そんなものを聞取るために体力を使う気など俺にはさらさらなく、再び目を閉じて思考も完全停止させることで、ひとまずの体力回復をはかるのだった、
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メンバーの好きな車両を載せていきます Wildschweinさん:パンター。かっこいいは正義。 tomato0817:ルクス。偵察よし貫通よし速度よしのドイツ軽戦車。あとかわいい(確信)よな、な!! chacha_maru:E-75。タイガーシリーズの中で一番かっこいいと思う。見てて飽きない上に使いやすい。 Rankaichou:チハ。チハたん∩(・ω・)∩ばんじゃーい Saruweid: Rhm.-B. WT。 紙装甲高火力で、その他性能も良好。見た目もかっこいい。たぶんこいつが一番強いと思います。 nikomi_wokayu:センチュリオン1。名前がかっこいいからw。 Plasma_Goliathon:Skoda T 50。 最強オートローダー砲、お椀型砲塔が好き。 mirabo:KV-1。がんばれば最高7も行けるし、維持費が少ないのが◎。その代わり与ダメが少ないが・・・ gongon777:Object 268。スナイプしやすいから。 Pumpkin777:T-34-85。バランスがとれている。 rensuretto:SU-100。相手の弾薬庫爆破する確率が高いし使いやすいからです。 simausa ヤークトパンター。初めての駆逐ルートなのと使いやすいから。 yasu2001:Luchs。速い、強い、かわいい。 まだまだひとり一車両募集中です。ばしばし言ってください(tomato0817)
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「ちょっと違った未来14」 ※原作IF 京介×桐乃 日向ちゃんに連れられて俺達は瑠璃が寝ている部屋に着いた。時間が時間だからかほとんど一般の人とすれ違わなかった。ドアを開けるとそこには規則正しく小さく呼吸を繰り返して胸の上のタオルケットを上下させている瑠璃がいた。 「あ…」 後ろに控えていた桐乃に若干怯えの色が顔に出る。無理もなかった。こいつのこんな弱弱しい姿はここ4年間俺達の誰一人見てなかったからな。 「…桐乃?」 左腕に注射針を刺し点滴薬を上から落としている。顔を見れば先ほどまでとはいかないまでもやはり弱々しい。完全に体力が回復していないのは明らかだった。 「あ、あたし外で待ってるね。あたしがいたら色々話せないこともあるだろうしさ。何かあったら呼んでね」 「わかった。ありがとう」 気を利かせてくれたのか、そう言って日向ちゃんは瑠璃が寝ている病室から出て行く。 「桐乃?そこにいるの?目を開けるのがまだ辛いわね…。眩しいわ」 「黒猫さん…」 「先輩も…沙織も来てくれたのね…。けれどいいのかしら、貴女今日は…」 「いえいえ。あの件ならとっくにすんだでござるよ。なーに、安い用件でござった」 「またあなたは…。そんなおめかししてたら説得力皆無よ」 「最近は着物女子が流行でござってな~。これで一ついぶし銀な殿方でもと」 いつものような冗談を言う沙織。そんな沙織に瑠璃は笑みを浮かべた。 「まったく貴女は…。ありがとうね」 「なんのなんの」 「それから…先輩も」 「おう。ここにいるぜ」 「ごめんなさい、こんな夜にまで」 瑠璃は申し訳なさそうにその長い睫を下げる。 「そんなこと気にすんなよ。当たり前のことだろ。友達なんだから」 「…ありがとう」 「それより、ほら」 俺は後ろにじっとしていた桐乃を瑠璃の前に出す。 「あ…」 「ほら、桐乃」 「…」 桐乃は俯きながらぎゅっと両手を握り締めていた。 「あ、あの。あたし…あたしのせいで…」 「何が?」 「あた、あたしが我侭ばっかり言って…み、皆に迷惑ばかりかけるから…」 「…」 「み、皆がやっぱり必要としてるのは、前のあたしの方で…。だから今の何も出来ないあたしなんて、」 「それは違うわ」 瑠璃は強い口調できっぱりと言った。 「あなたはあなた。高坂桐乃以外の何者でもないわ。それに何が出来るとか出来ないとか、誰もそんなこと気にしていないしこれからも気にしないわ」 「…」 「ねえ。貴女と先輩がこの前事故に巻き込まれたと私達に連絡があった時、どれほど貴女のことを考えたかわかる?どれほど心配したかわかる?それほど貴女は私達にとってかけがえのない存在なのよ」 「…」 「それに…構わないじゃないの」 「え?」 「確かに貴女が私達との思い出を忘れてしまったというのは悲しいわ。すごく悲しい。でもね、そんなに思いつめなくてもいいじゃない。本当に貴女が大切にすべきなのは過ぎ去った過去じゃないわ。私達と共にいる事が出来る今この瞬間なのよ」 「黒猫さん…」 「今の貴女を誰も否定しないわ。少なくともここにいる先輩と沙織は。そして…私も」 「黒猫さん黒猫さん…。うわぁ~ん!」 感極まって涙をこらえることに耐えきれなくなった桐乃は瑠璃の胸元に顔をうずめなきじゃくる。そんな桐乃に優しい眼差しで見つめながら瑠璃は桐乃の黒い髪を撫で続ける。なきじゃくる桐乃を優しくなだめながら、 「…一つ年下、か。ふふ…、長いことお姉ちゃん頑張りすぎたかしらね」 遠くを見ながら誰に向けたものでもなく瑠璃はぽつりとそう漏らす。そしてそれはこの空間において同じ年長者で同じ妹を持つもの…俺と瑠璃だからこそ共有出来る感覚だった。 ――俺はいまだに、妹が泣くたんび、ガラガラ振ってあやしてんだ。必死こいてな。 高校の頃缶ジュース片手に聞かされた高校からの悪友の懐かしいあの言葉を思い出す。 まったく妹ってやつは卑怯だよ。どうやったって勝てないように出来てやがる。そしてこれからもずっとそうなんだろう。普段からいくらぞんざいに扱われようが、いくら邪険にされようが、妹が泣いていたら兄として黙ってはいられない。いつだってどこに居たってそこに駆けつける。それが兄として、そして姉として生まれた者の責任であり義務なんだろうよ。 普段は同い年の親友同士のように振る舞い合う桐乃と瑠璃。だけれども、桐乃に何か起こるとやっぱりいつも折れるのは瑠璃の方だった。それは瑠璃にとって桐乃は大事な親友であると同時に大事な「妹」でもあるんだろう。 「えぐっえぐっ…。黒猫さん黒猫さぁん…。ありがとうありがとう…」 その日の面会時間終了まで桐乃は泣き続けた。 ――面会時間の終了を白い服を着た男の看護師に告げられ、俺達は部屋を出た。泣きはらした桐乃の顔は晴れやかで、またいつもの明るさを取り戻していた。 「よかったですなぁ~きりりん氏~」 むぎゅ~、と桐乃に抱きつく沙織。「あうあう」と声を出しされるがままになっている桐乃。というより沙織よ、素顔のおまえがするそのハグは男からすれば本当に目に毒だからやめてくれ。どう見ても百合的な何かにしか見えないから。 俺はなるたけその風景を見ないようにしつつ(いくら沙織といっても友達に欲情したくない)、エレベーターの降下ボタンを押す。…ってあれ? 「運転停止中?」 面会が終了したからだろうか。一般用のエレベーターはその運転を停止するという表示つきのランプが上に光っていた。 「仕方ねえな。そこの非常階段から下まで降りるか」 行こうぜ二人とも、と声をかけると…桐乃の様子がおかしい。 「…」 さっきまで沙織にほっぺをむにむにとされておろおろとしていた様子はどこへいったのか…じっと一つの方向へ視線を向けている。その顔は半ば夢遊病者のようでもあった。 「桐乃?」 桐乃の瞳には非常階段のランプが、そしてその先にある階段が映っていた。桐乃はふらふらとした足取りで非常階段の方へと足を向ける。 「おまえ一体どうして、って!危ない!」 ふ、と桐乃は意識を失い階段の上から体を宙に浮かせた。今まさにそのまま転落せんとしている。沙織も思わず息を呑んだ。 「くそっ!」 俺は考えるより速く反射的に桐乃を後ろから抱え込んだ。でも… (間にあわねえ…!) 人一人が宙に浮いた状態を後から抱え込もうとしてもそう簡単に支えきれるものではなかった。その一瞬の内に俺の身体は自分よりも桐乃の身体を守ることを優先していた。 (今度こそ、こいつのことを…!) 今度こそ守る。俺のことはどうでもいい、せめて桐乃だけは…!そう決意した俺は桐乃の身体を抱きしめて二人して階段の下へ転落していった。
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りかるど!ふぇざーちゃんぴおん 唯「というわけでこれ使ってください」 犬「わんおっ」 さや「こ、こんなものすごいもの、ホントにいいの?」 唯「はいっ、犬さんもね?」 犬「わんわんおっ!」 唯「必要な人が使ってくれたほうがいいと犬さんも」 さや「本当に…ありがとう…」ぽろぽろ さや「じゃあ、大切に使わせてもらうわね」 唯「はいっ」 さや「じゃあ明日お店見に来てくれる?」 唯「あした?」 さや「ええ、一晩でお店を改装してくれる大工さんがいるの、友達 なんだけどね。友人価格半額で100万円、ぜひお店見に来て!」 唯「ひ、一晩…」 犬「がうおっ…」 さや「その大工さんの名前ジェv 犬「がうおがうおがうおがうおがうおがうおっ」 唯「?犬さんどしたの」 さや「いえ、今のはわたしがけいそつ!だったわ」 唯「??」 唯「あした楽しみだね!」 犬「わふおっ」 憂「おねーちゃーん!」 唯「うい?」 憂「もうっ、急にいなくなって!」 憂「…この子が前に話してた犬さん?」 唯「そうだよ!ちゃんとさんぽ部員なんだっ、さっきも犬さんの おかげで元気がでたのっ」 憂「そうだったんだ…」 憂「お姉ちゃんに付いててくれてありがとね?犬さんっ」なでなで 犬「わんおっ」 唯「俺は大したことしてないよ、、って」 憂「ふふっ、変なのっ」 憂「じゃあ帰ろっ、お姉ちゃん」 唯「うん、今日はありがとねっ犬さん!」 犬「わおおっ」 唯憂「ふふっ」 つぎのひ! 唯「いってきますっ」 憂「うん、いってらっしゃい!はいこれましゅまろたまご弁当っ」 唯「わあっ、ありがとう!だいじに食べるからっ」 唯「ふふっ、楽しみだな~」 唯「あそうだっ、お店見に行くんだった!」 唯「時間はだいじょうぶだっ、行こう!」 りかるど!前 唯「…」 唯「すごい…」 唯「すっごくっ 和「きれいになったわね、ちゃんとおしゃれだし」 唯「!!」 唯「!」だっ 和「まちなさいっ!!」 唯「!」びくっ 和「あんた…最近どうしたの?急に暗くなったり逃げたり 学校やすんだり」 唯「…」 和「一応心配してるんだけど、わたし」 唯「っっ」うる 和「あんたは…わたしにはとっても大切な人なんだから、 かなり心配したわ」 唯「…」うるる 唯「でも…のどかちゃんにはもっと大切な人がいるでしょ?」 和「え、それは 唯「いいよっ、弁解しなくて」 和「…」 唯「愛する人ができたんだもんね、わたしなんて」 和「えっと、なんの話?さっぱりなんだけど」 唯「?」 唯「え、だから!告白されたじゃんっこの前!」 和「え?唯告白されたの?」 唯「えっ」 和「えっ」 \ 唯「こ、この前だよっ!ちょっと人気のないところでかわいい女の子 につ、付きあってって!」 和「わたしが?…??」 唯「でのどかちゃん、責任もって付きあうって…?」 和「あー!生徒会の手伝いの話だわ、それ」 唯「…」 唯「い、いまなんと?」 和「だからそれ、わたしが急にやめたせいで終わんなかった 生徒会の残業の話よ」 唯「」 和「まあ、迷惑かけたのは確かだから自分の後始末ぐらいは 責任もって付きあってあげないとでしょ?」 唯「じゃ、じゃあわたし…////」 和「完璧に勘違いしてたのね、見事なまでに」 唯「~~~っっ」 和「もしかしてそれがイヤで休んでたの?あんた…」 唯「い、いやぁっ////」 和「じゃああんた」 和「わたしのことが好きなの?」 唯「…っ」うるうる 和「…やれやれ」 唯「の、どかちゃ」 和「ホントにわたしのこと好きなの?唯」 唯「…」 唯「うん、すきになっちゃったんだよ」 和「…そっか」 和「じゃあわたしも唯のこと好きなのかも」 唯「え?どゆ、こと?」 和「唯がわたしのこと好いててくれたんなら、わたしも唯のこと 好いてたんだと思うのよ」 和「ほら、恋愛ってけっこうそんなもんって言うじゃない?」 唯「そんな、でもそれじゃあのどかちゃんの気持ちが本物か わかんないよ…」 唯「ほんとにわたしのこと好きなのか…」 和「知りたいの?」 唯「うん、じゃないとこわいよ…」 和「じゃ、目つぶって?」 唯「?」すっ 和「…」 和「んっ」ちゅっ 唯「~~~っ」 和「どう?わたしの気持、わかるでしょ?」 唯「う、うん」 唯「わたしと、同じ気持ちだ」 和「…好きだよ、唯」にこっ 唯「のどかちゃんっ、わたしもだよ」 唯「いつもこんなにわたしを幸せにしてくれる 和ちゃんを」 唯「好きになれてよかった」 唯「のどかちゃん」うるうる 和「唯」うる さや「…」 犬「…」 唯和「…」 唯和「!?」 さや「あら?おじゃまだったかしらっ?」 犬「わんおっ」 和「いいい、いつからっ」 さや「まちなさいっ、からよ!」 唯「最初から////」 さや「いいわね~、せいしゅん!って感じで」 犬「おっ!」 和「な、ななな」 さや「あ、そうだわ!お店に来て?朝からすっごいお客さんなんだからっ」 唯「//ほんとですか!?」 さや「ええ、全部さんぽ部さんのおかげね!」 さや「ほら早くっ」 さや「みなさーん!この2人といっぴきがっ、素敵なお店を わたしに」 さや「そしてみんなに素敵なさやさんを出会わせてくれた、 さんぽ部さんでーす!」 お客さんたち「さんぽ部ありがとーーーっ」 唯「ええ、そ、そんな!」 和「ていうかわたしホントに何がなんだか」 憂「なんだかすごくにぎやかだな、あのカフェ」 憂「??あれお姉ちゃんたちじゃん」 憂「おねえちゃーんっ」 唯「あ、ういぃ!」 おわり 戻る
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917. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01 12 00.60 ID sXuewvQo 「あ、そう言えば京介氏、拙者と付き合って欲しいでござる」 俺達がいつもの4人で集まって遊んでいると、何の脈絡もなく唐突に沙織がそう切り出した。 「は?」 いきなり何言ってんだおまえは!? なんでそんな“明日ちょっと買い物付き合って”みたいな軽いノリなんだよ! 「ちょ、ちょっとあんた何言ってんの!?ふざけんじゃないっての!」 「わ、わわわわ、私の妖気にあてられて気でも狂ったのかしら?」 そしておまえらは怒りすぎ 慌てすぎだ。ちょっと落ち着け。 なんでおまえらが俺以上に反応してんだよ。 「あの…駄目ですか?」 いつのまにか眼鏡を外し、真っすぐに俺を見つめてくる沙織。 両手は胸の前で組まれており、祈るようなポーズで俺の返事をまっている。 おい…こんな時に眼鏡を外すんじゃない! 「いや……いくらなんでも突然すぎるだろ…一体どうしたんだよ」 返事をごまかしつつ、沙織の腹の内を探る。 すると、沙織は何かに気付いたような顔をして、 「あ……これは失敬。拙者ともあろうものが少しテンパっていたようでござる。経過を省いて結論だけ伝えてしまうとは」 沙織は片手で頬をかきつつ、申し訳ないと謝る。 それにしてもこいつがテンパるだと?珍しいこともあるもんだ。 「実は……最近ちょっと困ったことに巻き込まれておりまして、京介氏のお力を是非お借りしたいのです」 あぁ、なるほど。ようやく話が見えてきた。 付き合ってくれってのは力をかしてくれって意味か。俺、完全に勘違いしちゃってたよ。 それなら“買い物に付き合って”みたいなノリだったのにも納得だ。 918. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01 13 14.59 ID sXuewvQo 「わかった。俺でよければ付き合うよ」 「ほんとですか?ありがとうございます京介さん!」 だけどあの沙織がテンパるような事態って……一体どんなやばい事件に巻き込まれてるんだ? あれから数日後、俺は真新しいスーツに身を包み、地図を頼りにとあるホテルまでやってきた。 「高坂京介様ですね、お待ちしておりました。お嬢様からお話は伺っております」 「はぁ、どうもっす」 ホテルのロビーに入ると、槇島家のメイドさんらしき人が声をかけてきた。どうやら俺を待っていたようだ。 っていうかリアルにメイドさんなんているんだな。俺は秋葉原でしか見たことないよ。 メイドさんに連れられ最上階のレストランへと辿り着く。 「本日貸し切り?」 え?貸し切り?入っちゃって大丈夫なの? 「ふふ、大丈夫ですよ。貸し切っておられるのは槇島家ですから」 困惑顔の俺を見て、クスリと笑うメイドさん。 やべ、超恥ずかしい。でも俺達一般人にとって貸し切りなんてのは無縁のものなんだからしょうがない。 「お嬢様はあちらで既にお待ちです」 メイドさんに促されレストラン内の一角を見やる。 すると外の景色を眺めている沙織の姿を確認できた。 恐らくあの席が最も展望がよく、このレストランでも特等席にあたるのだろう。 919. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01 14 51.40 ID sXuewvQo 「あの…高坂様」 沙織のもとへ歩いて行こうとするとメイドさんが俺を呼び止めた。 「はい?なんでしょう?」 「お嬢様のこと、よろしくお願いいたします」 そう言って深々と頭を下げるメイドさん。 ここまで心配してもらえるのも、ひとえに沙織や沙織の両親の人徳ゆえだろう。 「はい。うまくやれるかはわからないけど…精一杯がんばりますよ」 ――――――――――― 「で、力をかして欲しいって俺はいったい何をすればいいんだ?」 「はい、それなんでござるが…」 沙織が言うには、なんでも以前お見合いした相手がなかなか諦めてくれないんだそうだ。 「一度はお断りしたのですがなかなか納得していただけなくて…」 「キモッ、まるっきりストーカーじゃん」 見ず知らずの相手をばっさりと切り捨てる桐乃。 だが、今回ばかりは俺も同意見だ。 「仕方ない、今回だけは兄貴貸してあげる。」 おい、なんで俺がおまえの持ち物っぽくなってるんだよ。 まあ、いいや。 「それで?俺はお見合いの場に殴り込めばいいのか?」 「そ、それはダメでござる!相手はお父様の取引先のご子息ですからできるだけ穏便に……」 まじか…やりにくいな……。 ってことはあれだろ?以前俺が親父に対してやったような説教はできないってことだろ? 「じゃあ一体どうするんだ?」 「拙者の彼氏役として同席していただければそれで大丈夫です。 さすがに相手の方も拙者に彼氏がいれば諦めてくれるでしょう。この役、京介氏にお願いしても?」 920. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01 16 00.47 ID sXuewvQo 普段あれだけ世話になってる沙織からのお願いだ、断れるわけがないだろう? それでなくても友達が困ってるんだ。助けないわけにはいかないさ。 俺は一も二もなく了承したよ。 「おう、まかせろ」 俺が了承してから沙織が桐乃と黒猫とにしきりに謝っていのが印象的だった。 なんでそいつらに謝ってるんだ?謝るべきは俺じゃないの? いや、別に謝ってほしいわけじゃないんだけどさ。 ―――――――――――― 「よう沙織」 「こんばんは京介さん、お待ちしておりました。こちらにどうぞ」 そう言って自分の隣の席を指し示す沙織。 今日の沙織はいつものグルグル眼鏡を外し、ドレスに身を包んでいる。 くっ…これはやばい。なにこの破壊力。 こんなにかわいけりゃ相手が諦めきれないのも無理ねえよ。 これで眼鏡でもかけようものなら俺だってストーカーしちゃうぜ。あのぐるぐる眼鏡のことじゃないよ? 「京介さん?」 棒立ちになっている俺を心配したのか沙織がこちらを見上ていた。 ぐ…これはやばい。普段こいつの上目使いなんて全く見ないもんだから耐性がついてない分さらにやばい。 まぁ、例の眼鏡のせいでどのみち目は見えないんだけどさ。 「お、おう。わりぃわりぃ」 席に着いて相手の到着を待つ。 沙織によると、相手との約束の時間は21時らしい。 今の時刻は20時30分。一応早めに着いておいた方がいいだろうということでこの時間にやってきたわけだ。 「ところで沙織、沙織のご両親は?」 見渡したところ俺達の他に誰かがいる気配はない。 「なにぶん忙しい方たちですから」 そう言って微笑む沙織はどこか寂しげだった。 ……お金持ちはお金持ちなりの苦労があるのかもしれねえな。 「そっか。大変なんだな、おまえも」 こいつがなにかと俺達の世話を焼いてくれるのは、沙織自身が寂しかったってのもあったのかもしれない。 921. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01 17 27.08 ID sXuewvQo 「ふふふ、最近はそうでもないんですよ?これもきりりんさんや黒猫さん、そして京介さん…あなた達のおかげです」 「そっか、そりゃあ……よかった」 沙織との会話も盛り上がってきた頃、噂のお相手が到着した。 「もういらしてたんですね。お待たせしてしまったようで申し訳ありません」 あれ?なんかいい奴っぽくない?しかもやたらイケメンだし。年は20歳くらいか? そういえば金持ちってやたらイケメン多い気がするんだけど気のせいかな。…今なんの関係もないけど。 「……そちらが例のお相手ですか?」 「はい。私が想いを寄せている高坂さんです」 「初めまして。高坂京介です」 「初めまして高坂君。僕は城戸星矢」 そう言うと星矢は右手を差し出してきた。俺も右手を差出し握手をかわす。 しかし、星矢ってすげえ名前だな。そのうちペガサス流星拳とか放ちかねない名前だ。 「ははは、父が聖闘士星矢の大ファンでね。この名前もそのせいさ」 なるほど、フェイトさんみたいなもんか。 …はっきり言って第一印象は悪くない。人柄は良さそうだし、なによりイケメンだしな。 沙織はこいつのどこが駄目だったんだろう。 「さて、沙織さん。この際ですから単刀直入に申し上げます。僕はやはりあなたを諦めることはできそうにない」 「…どうしてですか?」 そりゃそうだよな。 俺もここにくるまでは、内心相手のことをストーカーまがいの野郎だと思ってた。 だけど、そうじゃなかった。俺の人を見る目を信じるならばこいつはそんな男じゃない。 少しばかりの化粧とドレスで着飾った沙織を見たら大半の男はそうなっちまうよ。 それくらい今日の沙織は美しくて、男を惑わせる魅力を持っているように見えた。 「以前僕はこう言いましたね。あなたが連れてくる相手が僕以上の人間であれば、僕以上にあなたを幸せにできる人間であれば素直に諦めると」 そんなこと言ってたなんて聞いてねえぞ!? 沙織!これはどう考えても人選ミスだろ!? 「はい、確かにおっしゃいました」 だが、沙織は少しも動じる様子はない。 922. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01 18 55.80 ID sXuewvQo 「彼を馬鹿にするつもりは毛頭ありませんが、僕にもプライドがある。そこらの男には負けていないという自負も」 星矢は、ギリと拳を握りしめた。 そりゃそうだろう。沙織が自分以上の人間として連れてきたのが俺みたいな凡人じゃ、怒りたくもなるってもんだ。 「何故ですか!?僕のどこが彼より劣るというんです!?そこの地味目の男のどこが僕より勝っているというんですか!?」 「お黙りなさい!!」 「え?」 「え……」 星矢も俺同様に呆気にとられているようで、目を丸くして沙織を見つめていた。 「この方は私が選んだ方です!その彼を貶めるような物言いは私が許しません!」 ちょ、ちょっと沙織!?いくらなんでもキレすぎだろ!? っていうかおまえがキレるとこなんて初めて見たわ! 「あ………」 星矢も自分が言ってしまったことを理解したのか、何かに気付いたような表情を見せた。 「すみません、高坂君。とても失礼なことを……」 自分に非があると理解すれば年下のはずの俺にも素直に頭をさげる。 やっぱり俺の人を見る目は間違ってなかった。こいつは本当にいい奴なのだ。 ただ、沙織がそれを狂わせるような魅力を持ってたってだけでさ。 「あ、頭を上げてください!そもそも別に俺は怒ってないし、あなたが言ってることって事実っすから!」 「でも、ようやくわかりました」 「え?」 頭を上げた星矢は妙にさっぱりした顔をしていた。 「貶められたのが僕であれば沙織さんは今ほど怒ってはくれなかったでしょう。沙織さんがあんなに怒ったのはあなたが貶められたからです」 「は、はぁ……」 こいつは一体何を言ってるんだ?確かに今の状況はそうだけどさ。 単純に現状確認してるだけなのか? 「ふっ、その様子だとよくわかってないようですね。……人間、好きな人と結ばれるのが一番幸せってことですよ」 「き、城戸さん!?」 「ははは。では、僕はこれで失礼します。沙織さん、今までご迷惑をおかけしてすいませんでした。 923. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01 20 33.96 ID sXuewvQo そう言って沙織に頭を下げる星矢。 そして星矢は俺の方を振り向くと、 「高坂君、僕が言えた義理ではないけれど…沙織さんをよろしくお願いしますね」 そんな言葉を残して去って行った。 「終わった……のか?」 「はい、お疲れ様でした京介さん」 はぁ〜〜超緊張した………。 やっぱり上流階級の人間と話すってのはそれだけで緊張するもんだな。 もうしばらくこんなマネは遠慮したい。 「でも、なんであいつは諦めたんだろ?」 緊張が解け、リラックスしてきたせいか頭がさっきの言葉の意味を考え出す。 『人間、好きな人と結ばれるのが一番幸せってことですよ』 「ま、まさか……沙織?」 ありえるか?こんな綺麗なお嬢様が? 沙織の方を振り返ると何やらうつむきがちになって申し訳なさそうな顔をしていた。 俯いている人間の顔がなぜ見えるかって? ははは、そんな野暮なこと聞くなよ。 「あ、あれ?どうしたんだ沙織?」 「あ、あの実は、両親にも同じ言い訳を使っちゃってて……」 「え?」 ってことはまさか…… 「もう少し……私にお付き合い頂いても?」 くそっ!こうなったらとことんやってやるよ!! 「まかせろ!どこまででも付いてってやるぜ!」 「ありがとうございます!大好きです京介さん!!」 「ぐお、お、重い!いきなり抱き着かないでくれ!俺にも心の準備ってもんがあああ!?」 バターン おわり
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引越し祝いのパーティーから数日後 五更家の黒猫の部屋にて 桐乃 「うりうり~」プニプニ 黒猫 「な、何よ……人の頬を気安くつつかないで頂戴」 桐乃 「あんたさ~、こないだから何拗ねてんの?」 黒猫 「……別に。拗ねてなんかいないわ」 桐乃 「あたしがあやせに京介の監視を頼んだのが、そんなに不満?」 黒猫 「………………」 桐乃 「やっぱね。そうだとは思ってたケド」 黒猫 「……私は」 桐乃 「ぷっ、何アンタ、そんなにあいつのお世話したかったのォ~?」 黒猫 「……そういうわけではないわ。いえ、それもあるけれど」 桐乃 「うんうん、正直なのは褒めてあげる」 黒猫 「どうして上から目線なのよ。……面倒を見るにしろ、極力先輩の勉強の邪魔にはならないようにするつもりだったし。 無論、今更あなたに隠れて京介とどうこうなろうなんて考えは微塵も無いわ」 桐乃 「うん、あんたならそうするよね。ちゃんと分かってるし、その点では一番黒猫のこと信頼してるつもり」 黒猫 「……それなら、何故……私を選んで貰えなかったのかしら……?」 桐乃 「大人の事情」 黒猫 「身も蓋も無いわね」 桐乃 「ま、それは冗談として。黒猫のことは信頼してるけど――『京介のほうがダメ』だから」 黒猫 「駄目ってあなた……、京介だってその辺はちゃんと弁えているわ。桐乃にも“誓い”は立てたでしょう?」 桐乃 「うん、まぁ……それはそうなんだケド。それを信じてないわけじゃなくて、勿論信じてるんだけど、なんて言うか……」 黒猫 「……何よ」 桐乃 「だ、だから、その……信じる信じない以前の問題というか……モニョモニョ」 黒猫 「この上まだ疑念があると言うのならはっきり言いなさい。あなたらしくもない」 桐乃 「――ッあーもー! 分ッかんないかなァ! 『好きな女の子と二人きりになって、意識しない男なんていない』ってコト!!」 黒猫 「っす……!?」 桐乃 「どれだけ理性が働いていたって、男ってのはそういうモンらしーのッ! どーしよーもない『男の本能』ってヤツなんだってさ! あいつが仙人か賢者でもない限り、そんな環境で勉強に集中できるワケないっしょ!? だからダメなの! 絶ーッ対にダメ!!」 黒猫 「……ほ、本能って……あ、あなた……どこでそんな」 桐乃 「ソースはエロゲー!!」 黒猫 「……でしょうね。ごめんなさい、訊いた私が莫迦だったわ」 桐乃 「はぁはぁはぁ」 黒猫 「ソースは兎も角、取り敢えずはあなたの考えに納得するとして。 それで? その理屈で言うなら、『あの女』ならその心配は無いという根拠でもあるのかしら?」 桐乃 「根拠ってほどのことでもないけどさ。まず、麻奈実……さんがダメな理由はあの時言ったよね。 加奈子はそもそも性格的にどーやったって勉強の邪魔になりそうだから論外。 沙織は……バジーナのときならいざ知らず、今の槙島さんモードのキャラがまだ掴みきれないから今回は除外。 残ったのがあやせ、ってだけ」 黒猫 「見事なまでの消去法ね」 桐乃 「まーそうなんだけどさ。あの時も言ったけど、あやせってあいつのことめちゃくちゃ嫌ってるし。 そもそもあの子、潔癖っていうか、ちょっと融通が利かないくらい真面目だから、超ガード固いし。 京介のほうもあやせには前に痛い目に遭ってるから、まず妙な気は起こさないでしょ」 黒猫 「……成程。概ね同意するところかしらね」 桐乃 「おおむね? あたしの言ってることどっか変?」 黒猫 「いえ……出逢って高々数日の私が口に出せることではないわ。付き合いの長いあなたがそう言うのなら、そうなんでしょう」 桐乃 「何その意味深なセリフ。ったく、そんなに心配なら様子を見に行けばいいじゃん」 黒猫 「そうね……あなたの了承を得られるのであれば。……とりあえず、差し当たってはその必要は無さそうだけれど」 桐乃 「ん? なんで?」 黒猫 「フッ……今頃はこの“堕天聖”の“使い魔”が彼の地へ赴いていることでしょう……」 桐乃 「……ひなちゃんか(^ω^#)」 黒猫 「言っておくけれど、今回は私が命じたわけではないわよ。 ……気付いたときにはもう、置き手紙を残して姿を消していたのよ……」 桐乃 「ひなちゃん好奇心旺盛だからなァ~。一応釘刺したつもりだったんだけど、甘かったか」 黒猫 「全く、困ったものね。帰ってきたら少しお灸を据えてやらないと」 桐乃 「お灸……お仕置き……? はっ! そういえば『おしおき☆まいしすたー』っていう神ゲーがあってさ! そのヒロインがお下げ髪で、見様によってはひなちゃんに……ふひ、ふひひ……♥」 黒猫 「……そこの変態妹、私の可愛い妹で穢れた妄想をしたらその神ゲーとやらのディスクを叩き割るわよ?」 -END-(拗ね猫)
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君が僕のこと好きなくらい 僕も好きだから 涙よりも 笑顔こぼしていよう 君に会うと いつもケンカばかりで お互いに 意地を張るの やめにしようよ 寒い夜に 初めて手をつないだ あの頃を 思い出して 胸がふるえた 三年付き合う 信頼関係なのに SO 君の気持ちを わかっているつもりで見過ごした 君が僕のこと好きなくらい 君がすきなのに やさしくせずに 甘えていたね 同じポケットに アイノタネ詰め込んで 温めあおう 素敵な恋 二人で咲かせよう あの日のように あいかわらず冷たい 君のゆび 不意にとって 温めてみた 驚いたあと 照れ笑いをくれた 今君も 思い出した? 胸につたわる 三年付き合う 信頼関係なのに SO ゆずり合う気持ち お互いに忘れて過ごしてた 君が僕のこと好きなくらい 僕も好きだから 大切に守ることを誓う 同じポケットに アイノタネ詰め込んで 育てようよ 素敵な恋 二人で咲かせよう ポケットに詰め込んだ 小さなアイノタネは SO 君におくるよ 指にひかる きれいな石にかえて 君が僕のこと好きなくらい 君がすきなのに やさしくせずに 甘えていたね 同じポケットに アイノタネ詰め込んで 温めあおう 素敵な恋 二人で咲かせよう
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/116-121 部屋は心の鏡とはよく言ったものだ。 どこの部屋にも置いてるであろう生活用品以外に特筆して目立つ物のない俺の部屋は、俺の心をよく現している。 自室というものは、自分の有り体であり、心そのものであると俺は思うわけだ。 妹の部屋は俺の部屋なんかより、より心の有り様が見て取れる。 一見すると、なるほど近頃の女子中学生らしくぬいぐるみや、可愛らしい柄のカーテンが窓にひかれ 本棚には参考書や陸上の本が陳列しており、部屋はよく片付いている。やるべき事はキッチリとやり、 他人に負い目を見せない妹の性格がよくよく現れている妹の部屋。 そう、それは間違いなく俺の妹・高坂桐乃らしい空間であり、妹を普段からよく知る人間がこの部屋を見て 「高坂桐乃の部屋」だと言われたら、誰もが信じて疑わないだろう。 でも他人の心なんて実は誰もわからないものだ。妹は確かにそういう人間であるけれども、それは一面でしかない。 妹の部屋は和室を無理やり洋室にリフォームした為か、洋室には不似合いな押入れが存在する。 そしてそこには、桐乃の普段は見る事のできない、オタ趣味満載の面が詰め込まれている。 オタ趣味を理解してくれて、なおかつ信用の置ける人間にしかそれを公にしない桐乃の心を その部屋は如実に物語っているわけだ。まあ俺がその秘密を知っちゃったのは奴にとってイレギュラーの事態が起こり 仕方なく公開した訳で、俺をまるごと信用して見せてくれた訳じゃないと思うんだけどね。 つまりその、なんだ、部屋が心であるなら、そこに土足でズカズカ踏み込むような真似は慎むべきだってことを俺は言いたいんだね。 特に思春期の少年少女の部屋なんて注意しなきゃ駄目なんだから‥‥ ここまで言って俺の言いたい事の分からない人間なんていないだろ??え?いるの? だからさあ‥ 人の部屋に入る時はノックをしろってことだよ!!! 「~~~~~~~~!!」 「あれ?アンタこのくそ暑いのに毛布かぶって何やってんの?」 季節は夏―――外ではセミがにぎやかに鳴いており、間違っても頭から毛布なんてかぶる事のない心躍る季節‥ 「な、何でもねえよ。いや、何でもない事はなくて、凄まじい寒気と悪寒が俺を襲ってるんだよ!」 ああ‥我ながらなんて苦しい言い訳なんだろう‥ 俺、高坂京介は何も予定のない夏の休日、この日は朝からやる気を出してひとり勉強に励んでいたのだが、 途中でちょっと調べたい事があったので、妹から借りたノートPCを起動したのが全ての間違いだった。 いや、違うんだよ?もちろんWINDOWSが起動した後はプラウザを起動しようとしたさ! でも、プラウザの横に昨日寝る前にダウンロードしたアダルト動画のファイルが燦然と輝いていたんだよ。 あれ?何でこんなファイルが?と思ったけど、何の事はない。いつもは見終わったら消去するんだけど、 これがなかなかどうして上玉の眼鏡ッ子AV女優の動画でね‥うへへ!昨夜は二回も抜いちまった。 だから消すには惜しくて、もう一度見てから消そうと思ってたのさ。ああ、その時からもう地獄へのカウントダウンは始まってたんだ。 ベッドの上で横向きに寝ながら自家発電に励んでいたところ、妹がノック無しに部屋に入ってきやがった。 こういう事態に陥ったことが無いわけではない。でもそれは相手が母親の場合だ。 母親だったらこんな時は俺が何をしていたかすぐに察知して撤退してくれるのだが、いかんせん今回は相手が違う。 「え?なに、夏風邪にでもかかったの?どうなるの?死ぬの?」 「死なねえよ!」 絶対に見つかりたくねええ!何でかわからんが、桐乃には絶対に見つかりたくない! ベッドの上で饅頭のように毛布にくるまった俺を見て、桐乃はさぞ訝しげに思ったのか、不審そうに色々伺ってくる。 「何でそんな丸まった体勢で寝てんの?」 「それはね、こうすると気分転換になるからだよ」 「何で毛布の中にコードが繋がってんの?」 「それはね、電気湯たんぽで暖をとっているからだよ」 「何でそんな声が震えてんの?」 「それはね、あまりの寒気に発声もままならなくなってきたからだよ」 赤頭巾ちゃんのようなやり取りを、外の世界からシャットアウトされた半ケツ状態の俺と交わす妹。 俺は毛布にくるまっているので、外の様子が確認できないのだが、桐乃は俺の様子が尋常じゃないと見てさすがに心配になってきたようだ 。 「ちょっと大丈夫なのそれ?」 「だ、大丈夫だ。何の問題もねえ」 「キモ!全然大丈夫そうに聞こえないんですけどー!?声がガタガタしてるよアンタ!?」 「だ、だから大丈夫だっつってんだろ!寝てれば治るから出てけよ!ゴホゴホ!!」 ぐぅぅ‥‥!いつもは俺がどうなろうと心配のひとつもしねえくせに、どうしてこういう時だけ‥! ちょっと演技が迫真に迫りすぎちまったみたいだ。声がガタガタしてるのは本当に恐怖におののいているからだけどね! とりあえず何とかして桐乃を外に追い出さなくては。一瞬で良いんだ。十秒あればパンツを履いて、 PCの電源を落として、その後はどうにでもなる。この現在の毛布の中の状況だけは知られる訳にはいかない。 何か上手く桐乃を外に追い出す方法はないものか‥そうだ! 「うう‥‥どんどん調子が悪くなってきた‥桐乃、悪いが体温計を一階から持ってきてくれないか」 なんというナイスアイディア。幸いなことに、今日の桐乃は柄にもなく俺を心配しているようだし、これぐらいは聞いてくれるだろう。 まったく、普段からもう少しこの兄を気にかけてくれるようならいいんだが。 「そ、そうね。ちょっと待ってて。今持ってきてあげるから」 はあ‥‥何とかこの場を切り抜けられそうだ。さて、とりあえずパンツを履かないとな。 毛布の中でひとり勝利を確信していた俺だが、桐乃が部屋から出ていく気配が感じられないので、毛布越しに見えない妹に声をかける。 「‥‥桐乃?どうした?早く体温計を‥」 やっぱりろくな作戦じゃなかったか?ぐぅ、確かにこんな時にまず熱測ってる場合じゃないか‥ と、思っていたらいきなりベッドの上に自分以外の人間の体重がかかり、ギシッと音を鳴らした。 「お、おい!桐乃っ!?」 「ね、熱、測ってあげるからちょっと出てきて!」 なんと桐乃が俺の毛布を剥がしにかかってきた。もはや俺の最終防衛線といえる毛布を、だ。 もちろん俺は最大限の抵抗を試みる。亀の子のように丸まり、四肢で毛布を巻き込む。 「はぁ?何言ってんだよ!熱測るなら体温計があるだろ!どうする気だよ!」 「い、一階のどこに体温計あるのか忘れちゃったの!あ、あああたしが測ってやるって、言ってんの!」 何言ってんだ!陸上の大会の日の朝に欠かさず熱測ってんじゃねーかよ!それに測るって、どうやって!? 「ほ、本当は死ぬほどイヤなんだけどね??緊急みたいだからおでこで測ってあげる!」 何だと!?いや、ヤバイってっそれはヤバイって!それもヤバイって! 全力で俺の毛布を引き剥がしにかかる桐乃。 「し、仕方ないじゃん!?アンタ、けっこーヤバそうなカンジだし!?ふ、不可抗力っての!?」 ヤバいのはこの状況なんだよ!毛布にくるまりながらPCを抱え込む体勢では、両手で毛布を引っ張る桐乃に対し、 だんだん分が悪くなってくる。俺、風前の灯火。もはや最後の牙城は崩れ去ろうとしていた。 「やめろ!この毛布を剥がすと恐ろしいことになるぞ!」 俺の必死の抵抗もむなしく、桐乃は鼻息をフンフン鳴らしながら毛布をめくりさろうとする。 「う‥るさい!いいから出てこいっ!」 やめろ、いま毛布を剥がすと本当に恐ろしいことになる。何故なら、お前の位置から毛布をめくると――。 「え‥‥えっ?」 俺の半ケツが出てくるからだ。 「ぎゃ、ぎゃぁあああ!!何してんのアンタ!!へ、変態!露出狂!!」 「い、いやこれは‥!」 桐乃は俺の半ケツを見るや否や、悲鳴をあげながら俺と逆方向のベッドの端まで退いた。パンツ見えてるぞ。 涙目でパンツを上げる俺に、同じく涙目で顔をゆでダコのようにした桐乃が真っ赤にしながら抗議する。 俺が何をしていたのか、こいつもどうやらようやく、ようやく分かったらしい。 「あ~最悪!今日の夢に出たらどうしてくれんの!?最悪最悪最悪最悪‥‥」 あああ、俺だって最悪だよ。今日は何て最悪な日なんだ。よりによって、妹にオナニーの現場を抑えられるなんて‥ その後も、桐乃はブツブツと俺に批難をぶつけていたようだが、放心状態の俺の耳にはもう何も入ってこない。 ただ俺は目の前の虚空を眺め、この後の人生の身の振り方を考えていた‥もう死にたいよぅ。 いやいや‥ただオナニーを見つかったことぐらい、どうだと言うんだ‥そうだよ、世の中にはもっと辛い事だってあるさ。 「ね‥ねえ」 そうだ、こんな事は苦じゃないんだ。親父にぶん殴られた時に比べれば 「ねえってば」 あ~そうだ、今日は麻奈美と図書館に行って勉強しよう。うん。もうそうしよう。 「ねえ!!」 「何だよ!!」 うるせえな、こいつまだいたのかよ。俺をどこまで追い詰める気なんだ。もう頼むから部屋から出て行ってほしい。 俺はそうお願いするべく、横から声をかけてくる桐乃様のほうを見やった。 「‥‥‥」 はて?こいつはどうして、俺の服の裾を掴んで顔を赤らめているのだろう。 俺も細かいことを思考するのをやめ、妹と間近から見つめ合う事にした。何だこの状況。 しばしの静寂の後、妹の方が先に口を開いて聞いてきた。 「で‥どうだった?」 「は?何が?」 こいつは一体何を聞いてくるんだ?Tシャツとパンツ姿の俺は、訳も分からずただ妹と見つめ合う。するとさらに妹は聞いてきた。 「だから‥どうだった‥って聞いてんの‥!やってて、こ、興奮してたの?」 ああ?エロ動画のことか?そりゃあもう赤フレームの眼鏡のAV女優は俺のストライクゾーンを捉えたね。 こうなればヤケだ。もうどうにでもなぁ~~れ♪ 「ああ、興奮した!」 俺は心中涙目ながら胸を張ってそう答えた。すると桐乃は「ふ、ふうん‥」とつぶやいて顔を赤らめたまま目を伏せる。 おいおい、何だその態度は。そりゃ目も伏せたくなるだろうけどさ、そろそろ勘弁してくれよ。 顔を上気させたまま俯いていた桐乃だったが、数瞬の後、意を決したようにいきなり顔を上げ、再び詰問してくる。 「やっぱり、兄貴は‥ああいうの好きなの?」 「――す、好きだよ。好きなんだから仕方ないじゃんかよ」 「い、いつもああいうので‥その、ひとりで‥してるの?」 「ぐっ!ああ、そうさ!いつも同じようなジャンルでオナニーしてるよ!!」 「ほんとに?ほんと?」 「本当の本当だよ!」 ああもう何を聞いてくんのコイツ!?しかもそれにことごとく答えちゃう俺って何なの!? それに、こいつはこいつで「へ、へ~‥そうなんだ‥」とか言いながら頷いてるし‥ ふと気付くと、桐乃の視線が俺の視線と交わらず、俺の顔より下に向けられている。んん?俺の体に何か‥? 「なんかパンツに染み出来てるけど‥何それ?」 桐乃がそう言って指をさした先には、良い所でオナニー中断された為か、悲しそうに小さくカウパー汁が先っちょに染みている俺の股間のテント。 「こ、これはお前が途中で入ってくるから!」 もうこれ以上の恥はないと思っていたが、さらに恥の上塗りをされた。 きゃあとかキモいとか言いながら顔を両手で隠す桐乃。もう耳は真っ赤である。もちろん俺も真っ赤っ赤。 ぐう!もう泣いてもいいよね?頑張ったよね俺?もう完走(ゴール)してもいいよね? はあ‥もう今日は厄日だ。これ以上まともに桐乃と顔を合わせられる気力はない。 俺は今度こそ、桐乃に部屋から出て行って欲しいと頼むべく、桐乃の方を見て、たまげた。 股間から顔を上げると、鼻息のかかりそうな距離に桐乃の顔があったからだ。 その刹那、電流のような感覚が俺の下半身に走った。月並みだけど、本当に電気が走ったかと思ったよ。 桐乃が俺の股間に手を置いていたからだ。口をパクパクさせてる俺に、桐乃が顔を紅潮させたまま言った。 「途中で中断されるのって、辛いんでしょ?よ、よかったらあたしが抜いてあげよっか?」 「な、何言ってんの!?そんなのダメに決まってんだろ!!」 こいつは何て事を言い出すんだ。いま自分が何を言ったのか分かっているのだろうか。 我が耳を疑ったが、桐乃の方は大真面目なようで、俺の股間をさすり始めていた。 「だ、だって確かにノックしなかったのはあたしがほん~~~~の少しだけ悪かったかも知れないし‥」 ほんの少しどころじゃねーよ!お前さえ気を付ければこんな事にならずに済んだんだよ! 実の妹に股間を触られてドン引きしている俺とは裏腹に、桐乃は顔をうっとりさせながら体を密着させてくる。 いくら実妹とはいえ、ティーンズ誌のモデルをやっているような妹だ。そんな奴が 俺のチンチンをさすりながら俺を押し倒してるときたもんだ。たまったもんじゃない。てかヤバいでしょこの状況? 気付けば俺は完全に桐乃に組み伏せられていた。いつかと同じ状況だ。 「それに、あたしの貸したやつでオナニーしてくれてたのって、う、嬉しい‥かな?」 何が嬉しいの?え、自分のPCをオナニーに使われると嬉しいって、ごめんぜんぜん意味わかんねえよ‥ 俺の妹はとんだ変態ということなのだろうか?どこの世界に自分のPCを貸し出して、 オナニーに使われたら興奮する性癖の輩がいるというのだろうか。いや、目の前にいるんだけどさ。 これが俺の立場だったら、嬉しいどころかキレる場面だと思う。だが、妹は嬉しいと言う。 「あのね、本当にしてくれてるとは思わなかったんだ。もしかしたら‥もしかしたら、してくれてるかなって そんな風に期待してたの――。あ!でも今日のは本当に事故だよ??わざとオナニーの現場を見ようって思ったわけじゃなくて‥ その‥ちゃんとやってるかな~って思って。だって、アンタ言わないとやらないじゃん?で、ちょっと様子見にきてあげたら‥ や、やっぱり兄貴ってそういうの好きだったんだね‥?あたしだけ思い込んでたワケじゃないんだ‥」 なんて奴だ。俺にPCを貸し与えて、それでオナニーしてるかどうか期待していたというのかよ。 桐乃は俺にのしかかりがら、俺の胸の上に指を置いて、のの字を書きながらもじもじしている。 やべえ‥やはりこの状況は不味い。さっきから桐乃はいつになくしおらしいもんだから、俺もちょっと調子が狂う。 「そ、それで!どんなシーンで抜いてたの!?」 何聞いてくるんですかアンタ!?しかし、その勢いを留めぬままに俺のフィニッシュシーンを聞き出そうとしてくる桐乃。 「今回貸したやつって、いわゆる『おしかけもの』ってやつだからさ、そ、その‥例えば今のあたし達みたいな状況の シーンとか沢山あったでしょ??それで凄い興奮したんだよね!?や、やっぱり今みたいな状況って興奮しちゃうの‥?」 「‥は?そんなシーンなかったけど‥」 「え?」 俺の見ていた動画は、眼鏡ッ子AV女優のハメ撮りもので、物語仕立てであったり、シナリオのある作品ではなかったのだが。 桐乃は自分の期待していた返答と、俺の返事の内容がかなり違っていたようで、とたんに表情を曇らせる。 「そ、そ、それじゃ何ちゃんを攻略したの!?それだけでいいから言ってみて」 「こ、攻略って!えっと‥鈴木ありすって娘だけど‥」 「鈴木ありす?そんな子いたっけ?」 「いや、お前は知らないと思うよ。そもそもそのAVダウンロードしたの昨日だし‥」 『ビシッ』という音がどこからか聞こえた気がした。一瞬にして部屋の空気が張り詰めた。 そして、気のせいじゃなければその緊張の発信源は、おそらく目の前の妹である。 「え、‥AV‥?」 「借りてたPCをオナニーに使ってたのは謝るよ‥けど、お前も嬉しかったんだろ?俺もさっきのお前のことは忘れるからお前も― ん?どうした桐乃?ノートPCなんて持ち上げてどう‥」 「嬉しいわけ‥あるかーーっ!!死ね!」 ガシッ!ボカッ!俺は死んだ。
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好きなPV 好きな音楽家 group_inou zabadak 上野洋子 好きな芸術家 牧野邦夫 佐藤玄々 草間彌生 William Adolphe Bouguereau Hans Rudolf Giger 好きな生物 テズルモズル
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「ちょっと違った未来36」 ※原作IF 京介×桐乃 <第三部・現実世界> ――京介と桐乃の結婚式から10年後 「そうですか、そうですか…。はい、はい…。ありがとうございます」 「…」ウズウズ 「わかりました…。はい、はい、では失礼します」 ピッ 「京介、どうだった!?」 「ああ。受かってたよ、試験」 「はああああ~~~!!良かったぁ~~~~!!」 「はは!ありがとな!桐乃!」 目の前にいるのは俺の義理の妹であり妻である高坂桐乃。今は自らが所属していた美咲さんの事務所の一部の運営と後輩の育成を任せられている自慢のお嫁さんだ。 ここは俺達で暮らすマンション。今は二人とも実家から出ている。 10年前、俺達は結婚をした。俺は卒業と同時に警察学校に入る前に。桐乃は当時学生結婚だった。 その後俺は無事半人前とはいえ警察官に任官され、国民の生命と安全を守るお仕事をしているってわけだ。 未だに市民に嫌われまくってる上にちょっと職質したらこの顔を見てか、舐められっ放しだけどな!トホホ…。 「でも良かったね!これでようやく肩の荷が降りたっていうかさぁ~」 「ああ…」 今の電話は俺の上司に当たる警部補からの連絡だ。 俺は此度の警察の内部の昇進試験で見事、巡査部長の試験に合格を果たした。 試験は法律の試験に加え、警察実務の試験が多数ある。 巡査部長の上にも警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監…と順に並んでいるが、競争率等諸々の事情を考えたら巡査部長の試験が一番難しい。 その厳しい難関に見事合格を果たした、ってわけだ。 …ちなみに俺のようなノンキャリアの警察官だと、上がれる階級は良く頑張って警部・警視レベルだと思う。大体は巡査部長・警部補止まりだ。実際親父も警部補でその昇進を終えている。そこから上は国Ⅰを突破した東大閥の警察官僚達が席巻しているからだ。 とは言っても彼らは霞ヶ関の警察庁に籍を置く人達で、警察官というよりは法律制定や予算を扱う行政官といった色が非常に強い。だから俺達千葉県警のような地方の現場にまで出向いてくることはほとんどありえないし、実際警察官になってからのこの10年間、一緒に仕事をした事もない。 完全に違う人種、ってわけだ。 「今日はお祝いしなくちゃね!もう夜だしどっかで食事でもする?」 「そうだな…。よし、今日は皆でパーッと食べに行くか!」 そうして俺は俺の『家族』に声を掛ける。 「涼介、優乃!パパとママは今から一緒に外でご飯食べようと思うんだけど、どうだ?何か食べたいものとかあるか?」 俺は最愛の息子の涼介と優乃…まだまだ小さい幼子の二人の目線にあわせて声を掛けた。 「ハンバーグ~」 息子の涼介が元気よく答える。 「お~ハンバーグかぁ~!野菜も沢山食べようなぁ~!」 「ピーマンにがい~」 「はは!慣れたら上手いって!優乃は~!」 「けーき~」 「よーしわかった!栄養のあるご飯をしっかり食べたらデザートに食べような!」 「あい~」 二人は宝石のような瞳を輝かせて俺達を見詰める。 結婚式の後、俺達は二人の子宝に恵まれた。 一人目は桐乃が大学を卒業してからすぐに。その時の子供が涼介。そして続けて優乃が。 「ママ~」 「はいはい。涼介はいつまで経っても甘えんぼなんだから」 桐乃が抱っこをねだる涼介を抱える。本当に涼介はいつまで経っても甘えん坊だ。こんなんでこの先やっていけんのかと不安を感じる。…だがこの涼介の雰囲気といい言葉の受け答えといいどっちかと言えば桐乃似のような気がするんだよな…。 俺がそのことをいうと瑠璃達は、 『何がどちらかというと、よ。涼介は顔は貴方似だけど、頭の中身は明らかに桐乃似じゃない』 と、子煩悩ここに極まれりといった顔でやれやれと言って受け答えしてくる。ぐぬぬ…。てめーは未だに独身だろうが! 逆に優乃は見た目と性格こそ桐乃そっくりだが、その他の中身は完全に俺似だという。 桐乃と涼介のやりとりをを見た優乃は、 「まま~」 「はいはい。優乃も。京介、優乃が抱っこしてほしいみたい。お願い」 「おう」 そうやって俺が優乃を抱っこして、ってあら? 「ママ~。優乃のこと、抱っこしてあげて~?」 「あらあら。涼介はいつもいつも妹想いのお兄ちゃんですね~?」 「そんなんじゃないもん」 プイッと顔を背ける我が息子。この年から既にツンデレの兆候が見事に見えていた。恐ろしき我が血脈…。 「おにいたん~」 「うん~?」 「えへへ~。ありがとう~」 「…おう」 地面に降りた涼介は、照れくさそうに鼻を人差し指ですりすりしている。 …全くこいつらは。 「ほんとにこの子大丈夫かな?どっかの誰かさんみたいなシスコンに育たなきゃいいんだけど?」 「おい?!そりゃねーよ?!」 大体お前もお前で相当なブラコンだろうが?! 「ふふ…冗談だって。あーあ、こうしているとあたし達の小さい頃を思い出すね~」 「ああ。そうだな。小さい頃からおまえも可愛かったな~。涼介が優乃にしてやってるみたいにしてやって…」 「ふ~ん…。い、一応聞いてあげるけど何してくれたの?あんた」 「おしめの取替え」 バキッ! 「いてえっ?!」 「乙女に向かって何てこと言うのよ?!」 「乙女って齢か?!年齢を考えろ、年齢を?!この経産婦!」 ブチッ 「あ、ああああんた…!い、今言ってはならないことを言ったわね…?!」 「ひいっ?!」 プルプルと背後に地獄の業火を煮えたぎらせるは我が妹妻(2×)。年齢のことを心の中でも言及するとますます暴れかねないので伏せておく。 それを見た涼介と優乃は。 「きゃはははは!!」 「ぱぱおもしろ~い!」 …我が息子娘にも笑われる高坂家におけるこの父の扱い…。こんなのが世間に知れたら…。普段指導してる職場の後輩に何ていえばいいんだよ…。 …その時心の中から知人の声の記憶がこだまする。 『あら?凶介さんが情けないシスコンであることなんて周知の事実ではなくて?』 うるせーよ?!てめーだって姉さんにシスコンだろうが?!あと名前を間違えるな、名前を!不吉なんだよ! …なんで30越えてもこんなノリなの?俺…。 誤解のないように言っておくけど、こいつらの前だけだから!職場だとしっかりしてるから! でもこんな昔のノリをしてるからか、よく世間の皆さまから「若いですね~」って言われるんだぜ?ふっふっふ!警察の夜勤での痛めつけにも負けない肌年齢!溢れる若さ! …三人目頑張っちゃおっかな~。 「…」じ~っと。 そうして俺がじっとりとした目線を桐乃に向けると、桐乃は、 「ちょ、ちょっと!?何て目でこっち見てんの?!」 「いや~。優乃を抱えるお前を見てると幸せだなぁって」 「ウソ!絶対ウソ!今のはあたしの身体を狙ったいやらしい視線だった!背筋が凍ったもん!!もう!ホントやめてよね?!」 「んなことねーよ!」 「夫婦間でも強姦罪は成立するんだからね?!今度そんなねちっこい嫌らしい視線送ってきたらあやせ呼ぶから!!」 「それだけはやめてっ?!」 『桐乃に何かあったその時の為に…お兄さんを…ふっふっふ…!』 この前夜にスポーツバッグを持った(大魔王)あやせに道端で会った。 どこに行くんだ?って尋ねたら、キックボクシングのジムだという。 その場で華麗なシャドーを始めるあやせ。驚く通行人。 何の為にって尋ねたら…。そりゃあ…。 (ごくり…) 俺は恐怖からかその夜は『あやせがジム通いしてるのは体型維持の為…あやせがジム通いしてるのは体系維持の為…』って念仏のように繰り返してたよ…。気づけば朝になってたけど…。 「…。もう、ばかなことばっかり言ってないで、行く準備するよ?」 「へいへい…」 「店にも予約していないし、今からだと…。皆で仲良く近くのファミレスにでも行かない?」 「そうだな。よっし!行くか!」 涼介と優乃を余所行きの服に着替えさせて、4人で仲良く歩き出す。 桐乃は優乃を抱っこして。俺は涼介の手を握って。 車や自転車に注意しながら4人で仲良く歩き出す。 「パパ~」 「ん~?」 「パパのお手手大っきくてあったかい~」 「そっかそっか」 俺は涼介の、愛するわが子の手をぎゅっと握り返す。 「僕も大きくなったらパパみたいになる~」 「はは!涼介はパパなんかよりずっと凄い男になれるさ!」 「ほんと~?」 「ああ!何しろ俺と桐乃の息子だからな!」 「あたしはともかくなんであんたが自信満々なのよ…」 後ろから優乃を抱えながら着いてくる桐乃が嘆息する音が聞こえた。 「父親の意義を否定するな!」 まったくこの女は!いくつになっても話しの腰を折って! そしたら桐乃は楽しそうに。 「あはは♪ウソウソ!あんたの凄さはあたしが一番よくわかってるって!」 そう、我が事のように自慢気に笑った。 「ぱぱすごい~?」 桐乃に抱っこされている優乃がそう尋ねる。 「うん。涼介や優乃ちゃんはまだまだ小さいからわからないかもしれないけどね…。パパは、お父さんは本当に凄い人なんだよ~」 「パパすごい~!僕大きくなったらパパみたいになる!」 「おう!もっと言ってやれ桐乃!」 「調子に乗るなっての…」 ぼそっと呟く桐乃。 「僕もパパみたいに大きくなって~」 「うんうん」 「将来優乃のお婿さんになる~」 「ぶぼっ!?」 「ちょっ?!」 俺と桐乃は慌てて目をむく。空気が口から二人同時に勢いよく漏れた。 「えへへ~。おにいたん~」 優乃は優乃で満足げに照れている。 ふんす、と何故か誇らしげなシスコン涼介。 それを見て俺と桐乃は慌てて目を合わせる。 「ちょ…慌てすぎだっつの…」 「お、お前もだろうが…」 「ち、小さい子供の言葉でしょ…。ここは大人の余裕を持って…」 「お、俺達のことを考えてみろ…。んな悠長なこと言ってられるか…」 「で、でもぉ…」 にこにこ見つめ合う仲睦まじき兄妹である我が息子達。それを尻目に早々の気苦労を背負い込む俺と桐乃。 ああ…『まともじゃない子供達』ってこんなに気苦労するもんなんだな…。何の過ちもないように祈ろう…。 俺だって桐乃とは血が繋がっていないから結婚したんだ。女として愛したんだ。 これが血の繋がった実の妹だったらって? …。 ごほん。まあ、そういう世界(原作12巻)もあるかもな。 この件はもうやめよう。 そうして俺達は夜の街を4人仲良く歩いていった。 ~~~ ファミレスから戻ると涼介と優乃はお腹が一杯になったからか、すぐにベットに寝てしまった。 涼介は兄の意地からか、ファミレスの席でもなかなか眠ろうとしなかったが、優乃はケーキを食べるとすぐにこてん、と眠ってしまった。 二人を子供部屋に寝かせた後、今は夫婦に寝室にいる。 「お疲れ様。あなた」 「ああ。ありがとう、桐乃」 桐乃は俺の上着を脱がしてくれる。 もうこの10年結婚してからずっとこいつは妻としての役目をしっかり全うしてくれている。こうして二人きりの時はたまに『あなた』と俺のことを呼ぶ。 愛する桐乃が俺の妻…。 その事実が、何年経っても、俺は愛おしくって愛おしくってたまらない。 「あれから…」 俺は俺の上着をハンガーにかけてくれている桐乃に向かって、 「10年前のあの日から…随分色んなことがあったな…」 「…」 「あいつが…もう一人のお前がいなくなったあの日から、さ…」 「ええ…。そうね…」 10年前のあの日…もう一人の黒髪の妹がこの世界を去ったあの日から、俺達の生活は一変した。 桐乃との結婚。就職。厳しい警察学校での日々。仕事の為の法律実務の勉強。 桐乃のモデルの引退と経営陣への参加。たまの執筆活動。 刑事の試験。昇進試験。格闘技の訓練。 ところで俺に警察官が務まるのかね?という疑問を持っている諸君。実は俺には格闘術の適性が思ったよりもあったらしく、今じゃいっぱしの刑事で現場からも上司・後輩問わず頼りにされていた。 特に1対1の捕縛には誰よりも負けない自負がある。実際、県警から逮捕術の大会から優勝の賞ももらっている。今じゃ親父にも負けないほど強くなった。マル暴にいた時は突入の段取りから全て任されていたこともある。 おほん。まあ、自慢は置いといて。 そして。 そして愛するわが子たちとの出会い。 涼介を初めて見たときは…本当に可愛かった。これが俺の息子なのか?って。俺と桐乃の息子なのか?って。 仕事が終わった親父や桐乃にずっとついてくれていたお袋、瑠璃に沙織に麻奈実にあやせに加奈子。 赤城や瀬菜、それにゲー研の皆。日向ちゃんや珠希ちゃん。御鏡にブリジットにリア…。 皆、皆来てくれた。 そんな皆も、もう学生じゃない。皆社会に出て働く社会人だ。 瑠璃はあれからシステムエンジニアとして相変わらずあの会社で働いている。現場はあいつが回しているらしい。あいかわらず休みになると俺達の家に遊びに来る。涼介や優乃のための手作りのお菓子やおもちゃを持って。 優乃もだが、特に涼介が瑠璃に凄くよく懐いていて…。瑠璃お姉ちゃん瑠璃お姉ちゃん、って。それを見るたびに優乃がふくれっ面でむくれている。ははは…。 あ、そうそう。瑠璃は独り身かって?ははは! 彼氏?そんなもの い る わ け が な い で し ょ う ! ! (爆) ! ! …。ごほん。 沙織は自分の会社の仕事を手伝っている。社長であるお父さんの秘書兼片腕ってわけだ。 …意外だった。あいつはてっきり誰かと結婚するもんだと。だってあれだけ見合いしてたんだもんよ。 その事を聞くと沙織には『女の心は海より深いのですわ。卿介さん』だとよ。(漢字、いいかげん直してくんねーすか?) しっかしあの女、齢を重ねる毎にますます美しさに磨きがかかってるんだよな~。あんなんじゃ周りの男が放っとかねえだろ。 …それはそれで複雑だけどよ。 …。 あやせは会社のOLをしている。相変わらずその綺麗なおみ足を婚活の為にではなく男(誰かは言わねー。うう…)を抹殺するために磨いているようだ…。 なんだよあの女まじこえーよ…。でも天使…(2×でも)。 あやせもよく俺達の家に遊びに来てくれる。 俺と桐乃が仕事で手が一杯の時なんかはお袋とあやせでよく涼介と優乃の面倒を見てもらったもんだ。 二人ともあやせのことを『おばちゃんおばちゃん』と言って嬉しそうに懐いている。 その度にあやせは『私はまだ二十歳代です!!』と顔を真っ赤にして叫んでいるが…。 瑠璃や沙織がお姉さんなのに私はあやせおばちゃん、と言われるのは納得いきません!まるで私だけ老けているようじゃないですか!?とご機嫌斜めだ。 これには理由がある。 実は涼介が小さい頃、俺達は自分達の仕事も忙しかったからあやせやお袋によく預けていた。 いつもいつも面倒見てくれるものだから、涼介はあやせのことを『親戚の叔母ちゃん』と勘違いしたのが事の発端。 それが優乃にも口から口へと伝わって…。南無…。 まあ色々言うことはあるんだけど、これくらいにしとこうと思う。加奈子や瀬菜にゲー研の皆と挙げたらキリがない。 あ、でもこれだけは言っとかなきゃな。 「へへ…」 麻奈実は俺達の結婚式の1年後に結婚した。 相手?相手はそう、俺と同じどうしようもないシスコンのイケメン商社マン、赤城だ。 実は赤城は大学卒業のその年の就職活動に失敗した。一方麻奈実は地元の市役所の試験に合格しており、内定が決まっていた。 それでも麻奈実は待った。 就職浪人と新社会人という互いの温度差をモロともせずに、だ。 そして次の年、赤城はようやく大手の商社にて内定を取り付けた。 麻奈実に男として認められたい、一緒にこの先も手を繋いで歩いていきたい、という思いからだ。 そしてやっと就職することが出来、その時にあいつはプロポーズをした。 キメ台詞は『一緒に仲良く齢を重ねていきませんか』だとよ。おお、くさいくさい。何てくさい。 でもあのイケメンボイスで言ったらたちまち神なんだろうな~。なんという差別社会。 それに麻奈実はもちろん『はい』と返事をし、大学からの交際の、赤城にとっちゃ、高校1年からの一目ぼれの片想いがようやく成就したというわけだ。 本当に、本当によかったと思う。 麻奈実は俺にとっちゃ大切な大切な幼馴染で、赤城も俺の高校からの大事な、今や腹を割って話せる親友で…。 「…」 もう1つの世界の桐乃が元の世界に戻ったあの日から…。あれから相変わらず慌しい日々を俺も桐乃も過ごしていた。 あれから俺達はあいつのことを忘れたことがない。 あいつが『大好き』といってくれた世界は今日もまた旬欄と輝いてる。 「ねえ?」 「うん?どうした、桐乃」 今は俺の配偶者となった、俺の妹が俺の傍にすっと寄り添う。 「あたし達…幸せだね…」 「…。ああ」 「すっごくすっごく…幸せだね」 「ああ…幸せすぎてどうにかなりそうだぜ…」 そうして俺は桐乃を抱きしめ、キスをする。 「ん…」 「…」 想いを遂げて結ばれた、中学生の頃からいつまでも変わらない、しっとりとした彼女の唇。 そ、っと唇を重ねるだけの、キス。それは今まで育んできた愛情を確かめ、そしてまだ見ぬ未来への喜びを現す夫婦のキスだった。 「あんたはさ…」 「ん?」 「あんたは長生きしてよね…」 「…」 俺の腕の中で抱きしめられながら、彼女は言う。 「あたしより…あたしより…ずっと…。ずっとずっと長生きしてよね…」 「…」 「あの子の世界のあんたみたいに…ならないで…」 「…」 「あたしを…あたし達を…置いていかないでね…」 「…ああ」 ぎゅ、っと俺は俺の妻を抱きしめる。 彼女は俺に全幅の信頼を寄せているのか、全ての体重を俺に預けてくる。 事件の現場や暴力団の鉄火場で鍛え上げられた俺の肉体はそんな彼女の体重を難なく受け止めている。ハードな刑事の仕事にも耐えうる強い体と精神力。毎日のウエイトトレーニングと勤務後の道場での鍛錬で鍛え上げたタフな体。 もう、10年前の小僧で無力だった大学生の俺じゃない。ましてや、高校生の時の心折られた俺じゃない。 「決して、死んだりしない」 「うん…」 「お前よりも長生きもしない…」 「…」 「一緒に…仲良く齢を取ろう…。そして、そして…願わくば一緒に…」 「…はい」 再び最愛の妻をぎゅっと抱きしめ、その唇にキスをする。 …一生をかけて守ると誓った、妹の…桐乃の体の体温と唇は、暖かかった。