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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1316537661/783-801 暗闇はやっぱり苦手…いつも、わたしの忘れた記憶を呼び起こさせる……… 『さようなら』とメールした後、それでもわたしは更に、闇を求めて目を閉じた。 「お母さん、わたしね………」 『あやせ、あなたは良い子でしょう、何で言う事が聞けないの? わたしはあなたをそんな子に育てた覚えはありません』 「………でも、わたし」 お母さんの悲しそうな顔、いけない 「ごめんなさい、ごめんなさい。お母さん、ごめんなさい」 お母さんを悲しませたらいけない、いけない 『あやせは本当に良い子ね、お母さんとても嬉しいわ』 おもちゃもいらない、お菓子もいらない、おねだりなんてしないもん 「バイエル、弾ける様になったの」 「先生がね、新垣さんは頑張り屋さんだって褒めてくれたの」 「お父さんがプレゼントしてくれたご本、もう全部読んだよ」 だから 今度、お父さんとお母さん……わたしを動物園に連れて行って…… 「お父さん、お仕事頑張ってください。ちゃんと、わたし、お留守番出来るから」 わがまま言わない……… 絶対、わたし……泣かない…… 『新垣さん、一緒に帰らない?』 「え?」 髪を染めてる女の子、不良だ!仲良くしちゃいけない 『あやせちゃんに一目置いてんだよね、あたしって。あん(た)あやせちゃんに 勝手に親近感抱いてるって言うかさ、ぶっちゃけ迷惑だった?』 …………… 『ほら、あやせ、こうすると美人度上がるっしょ?あやせは黒髪が綺麗だし、スタイル も良いから、絶対に似合うと思ったんだよね、ほんとバッチリ。それにさ、メイクだけじゃなくて、 服もピッタリじゃん。まぁその服あたしのだけどね、にゃはは』 「桐乃さん、有り難う」 『ちょっとぉ、どんだけ他人行儀、あんた?うちら、もう親友でしょ!』 「う、うん……あ、ありがとう、桐乃」 『って何で(驚)?せっかくメイクしたのにさ………。あ~じゃぁさ、ほら、ほら、 やり方教えてあげるから自分でやってみぃ、ね?』 本当に、本当に、ありがとう桐乃 「お母さん、わたし、モデルのお仕事したいの!」 お母さんの悲しそうな顔…… それでも……わたしは 「学業と両立させます。ちゃんと責任感を持って一生懸命に頑張るから。 だからお父さん、お母さん認めてください!」 『やったじゃん!あやせ。まぁこれからはライバルだから、敵同士…だかんね! な~んてね………冗談、冗談、心配いらないって、全部、あたしに任せとけって!』 ライバル……なんて、敵同士なんて絶対にならない、なる筈ないよ、桐乃 でも 『俺は高坂京介------そっちは?』 『あやせ、結婚してくれ』 『------冗談だと分かっててもさ、ほんとごめんな』 「-----いってらっしゃい、お兄さん」 さようなら、お兄さん 『あやせ、、、、これが本当のあたしなの』 「お兄さん、わたし、桐乃よりも可愛くないですか? 桐乃よりもわたし魅力ない、、、ですか? わたしなんかじゃ桐乃よりも…すき…になれないですか?」 『俺が見た中で、あやせのウエディングドレスが一番似合ってたし、一番綺麗だ』 『あんた、、、あたしの気持ち知ってる癖に、、何でこんな酷い事すんの? うちら、ずっと一番の友達だったのに!!絶交した時、京介が仲直りさせてくれた時、 約束したでしょ、それなのに、、、裏切ってさ、あたしの気持ち裏切って!!!』 『あやせちゃん、しっかり、きょうちゃんを捕まえててあげなさい。 わたしね、あやせちゃんなら、きょうちゃんと一緒に幸せになれると思ってるんだ。 きっとね、わたしって、きょうちゃんが黒猫さんとお付き合いした時に、あの時に 応援してしまったから、多分………あの時点で、もう』 『自分の心に言い訳しすぎて、その言い訳に結局、自分自身が説得されちゃった。 誰かを好きって気持ちにも賞味期限があるんだ、きっと。 だから、わたしはずっと勇気がなかった、情けないよね、め! だよ。 だから、あやせちゃんは、こんなお姉ちゃんになっちゃ、ダメだよぉ? だから、あやせちゃんは今の自分の気持ちを、ちゃんと大切にしてあげなさい』 『よし、じゃぁ付き合うか。何か照れくさいな……ってこれじゃダメだ! 俺の馬鹿!、馬鹿!、馬鹿!大切な事を忘れるなんて本当に、情けねぇ。 え?あ~こっちの事だよ、気にするなって。 別に、おまえにSMプレイを強要してるわけじゃねぇって、おい! 彼氏に向かって初めて言う台詞がそれかよ! あ?……い…き』 『なり、、お、おまえ…滅茶苦茶、大胆だな……全然嫌じゃねぇけど。 えっと………………何だっけ?あ、そうだ! 俺ら、付き合うって決めた以上は、俺はずっとおまえの彼氏でいるつもりだからな! でも俺は、自分で言うのもなんだが、ヘタレのシスコンで、致命的に鈍いときてる。 だ、だから自虐プレイじゃないんだって(汗) こんな俺だけどよ、あやせの為にもっと、ちゃんとした立派な彼氏になるから! あやせを必ず幸せにするから、だからさ……何だ…とにかく、これからよろしくな』 『あやせ好き、あやせ愛してる、俺はあやせのものだ』 『ああ、ずっとずっと好きだ、ずっと前から好きだ』 『あやせ、これからはいつでも好きな時に来てくれて良いからさ。 いや違うな、俺がいつでも来て欲しいから渡すよ』 *** *** *** 「はぁはぁ」 俺は息をきらせて、走っていた。 ついさっき、俺が感傷的に、色々な事を追憶していた時に、加奈子から電話があったの だが……… 『京介、ひっさしぶり!じゃーん』 「よぉ、本当に久しぶりだな、元気してたか?」 『京介、誰か男紹介してくれよぉー。加奈子にはいつも超お世話になってんだろお? だから、少なくとも、おまえよりもイケメン限定で!』 「おいおい、いきなり何を言い出してるんだ、おまえ…訳分からん奴だな」 『ばっくれんなよ。ネタはちゃんと上がってるんだっつーの。 しかも、加奈子をダシに使いやがって、おまえらどんだけお盛んなんだョ(笑)』 加奈子は、俺とあやせが付き合った事を最初から知っている。 そして、一番最初に祝福してくれたのも加奈子だった。 こいつは案外(と言うと悪いが)良い奴で、今回の件で分かる通り、あやせとも仲が良いし、 桐乃ともちゃんと今まで通りに付き合ってるらしい。 加奈子が俺の存在をどういう形で捉えてるのかは分からないが…あやせがどれほど 加奈子のお陰で救われたのかは容易に想像出来る。 「へ?」 『おいおい、もうとぼけんなって。しっかし、あやせがねー意外過ぎるつーか、 イヤ、意外なのは京介の方か。イヤ、セクハラマネージャーだからむしろ当然だナ』 どうやら、加奈子の話を聞く限りでは、あやせは親に、今夜は加奈子の家に泊まると 言って嘘をつき、その口裏を加奈子に合わせて欲しいと頼んだ(命令した)らしい。 考えてみれば、あやせはまだ高校生なのだ。門限ってものがある。愚かにも、俺は 桐乃と喧嘩して、妹を家に残し、自分が頭を冷やしに外に出てきた感覚で考えていた。 「……………………まぁーな」 『ったく、頼んだ本人の携帯には繋がらないしよぉー。とにかくちゃんと誤魔化した かんな。京介が伝えとけよ。いちゃつきやがって、幸せを加奈子にもお裾分けしろっ』 「本当にいつも有り難うな。おまえにゃ、マジで感謝してっからよ」 どう考えても、そんな素敵な夜になるとは思えないのだが……加奈子に余計な心配を かけたくはないから、こう言うしかなかった。 何であやせの奴は、俺に『さようなら』とメールした癖に、門限の時間になっても、 帰宅しなかったんだ? あやせの携帯にかけたが、当然繋がらない。 『このままわたしを置き去りにして……………今、わたしを見捨てたら、 本当に、本当に、、わたしは何をするか分かりませんよ、お兄さん』 さっき、部屋であやせが言っていた言葉を思い出す。 俺が勝手に信じていただけで、あやせは本当に、俺に見捨てられたと思っていたのか? とにかく俺は急いで部屋に戻ると、ドアを開けたのだが………… 多少は、期待していた俺の希望は見事に裏切られ、部屋の照明は消えたままで、 辺りはしんと静まりかえっていた。 当然、あやせも、あやせの靴や大きなバックや歯ブラシなんかも……ここにあやせが 実存した事を本質的に証明するものは、何ひとつ残っていなかった。 俺がプレゼントしたチョーカーを除いては……。 あいつは本当に………親にも、加奈子にも嘘をついて何処かに行ってしまった。 俺は無意識に、そのチョーカーをポケットに突っ込むと、部屋を飛び出した。 あやせが行きそうな所を考えながら走り出したのだが全くと言って良いほど 検討がつかなかった。 あやせの知り合いに確認しようにも、そんな人物は誰一人、思い浮かばない。 俺はあやせの事が、性格云々じゃなくて………本当に何も分かってなかった。 分からないなんてレベルじゃない、あいつの事を何も知らなかったんだ。 加奈子に何度も連絡しようかどうか迷ったが、多分それは余計な心配をかけるだけで 何の解決にもならないと直感して辞めた。 あやせが言った通り、刹那的にでも抱いてやれば良かったんだ。 あいつに、ちゃんと捕まえててやるなんて偉そうな事を言って、結局心どころか あいつの身体さえ……掴み損ねて、あやせは消えた。 さっき誘惑してきた時のあやせが思い浮かぶ。 あの目も眩みそうな美貌で、理性さえ麻痺させる媚態に満ちたあやせの顔と あいつと喧嘩した時、他の男の話をして俺を嫉妬で狂わせようとした時の声が 頭の中で共鳴して、どんどん悪い事を、嫌な事を、最悪の事を考えそうになる。 俺はなるべく別の事を考えようとして、結局さっきの追憶の続きをはじめた。 麻奈実が学校を休んだ時、桐乃が突然留学してしまった時、黒猫が俺に 別れを告げて転校してしまった時……… 麻奈実の時は、桐乃に相談したんだった。 桐乃が留学した時は、黒猫が色々気を遣ってくれた。 黒猫が失踪した時は、麻奈実に相談しようとして結局、桐乃に助けられた。 俺はあいつらの為にいつも頑張ってきたつもりだったけど、実はあいつらに いつも助けられていたんだ。 俺は、誰にかけるのかも分からず、ポケットの中の携帯を掴もうとした………… 多分掴んでいれば、また泣き言を言った筈だ、いつもの様に………間違いなく。 でも携帯の代わりに俺が掴んだのは偶然にも、チョーカーだった。 無意識に、あやせが持って行ってしまった手錠の代わりに、右の手首にチョーカーを巻く。 俺は頭の中で何度も反芻する 麻奈実が居なくなった時、麻奈実を信じて自分で行動してたら? 桐乃が留学した時に、桐乃を信じて自分で行動してたら? 黒猫が失踪した時に、黒猫を信じて自分で行動してたら? チョーカーを眺めながら、あやせが握っていてくれた右手を思いっきり握りしめると 微かに温もりを感じる。 あいつは言った 『わたしは………自分から……居なくなったり……しない』 と……。 あやせが消えた今こそ、あいつを信じるんだ。もうあの時とは違う。 あやせの為に、追憶した過去の為にも……今度こそ、絶対に失うわけにはいかない。 それは奇跡や宿命なんて大げさなものではない………とても静かで、優しくて、 暖かい予感みたいなもの、俺があやせを好きになった理由そのものなのだ。 もう二度と戻らない(戻れない)"もしも"が、俺の中で本当に過去のものになった事を その瞬間に実感した。 その事実は俺をとても切なく、悲しい気持ちにさせたが、立ち止まってるつもりは もう無かった。 だから…………俺は静かに歩き出した。 *** *** *** どれくらい時間が経ったのだろう……わたしは目を閉じたまま眠っていた。 『おまえは何もしない、そして俺は必ず戻ってくるから…さ』 『さようなら』と自分でメールした癖に、京介さんの言葉が頭の中を何度も過ぎる そして、その思い出が強烈に、わたしの後ろ髪を引く。 悲しいと吠える癖に、構って貰うと尻尾を振ってしまう、まるで寂しがり屋の犬みたいに。 それが漠然と思い浮かんだ、自分のイメージ。京介さんに手錠をされてエッチな事を された時、チョーカーをプレゼントされた時から、、、あの時も全然嫌じゃなかった。 そして、わたしは………。 わたしがもっと素直で良い子なら、お兄さんは頭を撫でてくれたのかな? 「………ワ…………ン…」とかすれた小さな声を出して苦笑した。 "猫"なら、彼女はきまぐれだったのかな?と何の意味も無く、、ふと考える。 それにやっぱり猫の方が可愛い気がして、ちょっぴり嫉妬………したけど……… 今日一日……彼女と電話で話していた時の京介さんの顔が一番楽しそうだった。 そして、それはわたしが好きな京介さんの顔だった。 わたしは 幼い頃に、飼っていた青い小鳥の事を思い出す。 あの時、桐乃の手を強く掴んだ事を思い出す。 あの時、京介さんの腕を指が食い込むほど握りしめた事を思い出す。 好きという感情が抑えられない、失う事を恐れて自分から壊してしまいそうになる…… 小鳥を籠から出して逃がした様に、 桐乃の趣味を認めて自分の友情を押しつけるのを辞めたように、 だから、今度は、京介さんを自由にしてあげよう………… もう、こんなわたしの事なんて、どんなに嫌らわれて、拒否されて、振られても、 きっとわたしは京介さんに対して、感謝以外の感情は、何も残らないのだから。 だから、なるべく笑って、さよならしよう…わたしの大切な人をこれ以上傷つけない為に。 京介さんとの思い出があれば、沢山泣いても、きっといつかは笑顔になれるから……… でも……突然、眩しい光に照らされる。唖然としていた、わたしを大きな手が引き寄せる。 まるで、光そのものが強い意思を持っていると錯覚をするほど、優しくて、確かな温もりが わたしの身体を、優しく包み込んだ。 「……………やっと捕まえた」とクローゼットのドアの先から声が聞こえた。 『どうして………?』と言おうとしたが、強引に……今までに無いほど…強引に…… 抱き寄せられて、口を塞がれた。 ついさっき決心した事を言おうとしたけど、彼の本気の力で押さえつけられた わたしは何も出来なかった。 お互いの歯が何度かぶつかるほど激しく口唇を押しつけられる、わたしの舌が 何度も貪られる……唾液も、吐息も…わたしの全部が京介さんに吸い取られてしまう。 身体が熱くなって、意識が麻痺してきたわたしは、吸い取られた言葉の事も忘れて、 危うく、自分から京介さんを何度も求めようとしてしまった……。 どれくらいの時間が経ったのか、やっと押さえつけていた手を緩めてくれて、 唇を強引にわたしに押しつけるのも辞めてくれたのだけど(でも唇同士はふれたままで) 腰に手を回されて、半ば強引に京介さんの膝の上に座らされた。 だから京介さんの声は音と言うよりも、触れたままの、唇から振動で伝わる。 「俺はおまえの言いたいことが分かってるつもりだ。でもそれだけはダメだ。 その代わり、おまえがして欲しい事なら、"儀式"でも何でもしてやる! もうカッコつけるのは辞めた……からさ」 あんなに我が侭を言って、いつも困らせて…だからこんな風になる事を………… 期待なんてしてなかった、でも京介さんはわたしを見つけてくれた。 そして、ここまで言ってくれてるのに……こんなに求めてくれてるのに………… "でも"わたしは……。 「最初は、同情で付き合った癖に!本当のわたしの事はずっと、見て無かった癖にっ! さっきだって、わたしを見捨てた癖に!だからもう遅い、、全部、遅いんだから!!!」 まだ足りない、やっぱり足りない………いくら求めても、求めれば、求めるほど カラカラに渇いて、余計に欲しくなって…………際限がどうしてもない…………だから そう思った時、そう言おうとした時、わたしの渇いた心を、わたしの頬を雫が濡らした。 京介さんは何も言わず、音も立てず静かに泣いていた。 ただ、わたしに触れたままの唇が微かに震えだして、その震えは段々大きくなって ついには肩まで揺らしながら、号泣した。 男の人がこんな風に、人前で泣くなんて、信じられなかった。 沈黙した嗚咽は、わたしから完全に言葉を奪って、ただ彼を何とかし(てあげ)たい と思う動機と暖かい涙を、わたしに与えた。 同時に、わたしは京介さんのしょんぼりした背中が好きだった記憶が蘇る。 ヘタレでも、情けなくても、シスコンでも……鈍くても、エッチで浮気性でも それでも構わない…だから、わたしは別に、欲くて、求めてただけじゃない……… 不器用で歪な、"まごころ"だけど………あなたに、ずっと、ずっとあげたかった。 *** *** *** 俺は何で泣いてるんだろう?原因も分からず、ただ羞恥心もプライドも無く、 俺はあやせの前で、嗚咽していた。 桐乃の前で何度か泣いた事が微かに頭を過ぎったけれど、もうそれが理由で今のこの涙を 止める事は、どうしても出来なかった。 あやせは何も言わなかった。ずっと黙って、ただ俺の背中をさすってくれていた。 それでも泣きやまない俺に対して、彼女は…………… 「ちゅっ……ぺろ……レロ…むちゅ…ベロ……」 最初はキスされているのかと思ったが……そうじゃなかった。 あやせは、唇を押しつけると舌を出して、俺の頬を、頬に流れた涙の雫を舐めだした。 必死に、何度も、何度も、何度も…………滑稽な筈なのに、俺の胸は熱くなり…… ますます涙が止まらなくなったが、それでもあやせは、俺の頬が全部あやせの唾液に 変わるまで、決して辞めなかった。 俺はやっと「ありがとう」と言い、あやせの髪と頬を横から撫でた。 「京介さん、それ好き…だ、だから、もっと………してっ………く…ださい」 さっきは、桐乃にするみたいに頭を撫でる事をあれほど拒絶したのだが、今回は 何故か、ごく自然にあやせに触れる事が出来たし、彼女の嬉しそうな笑顔を見て…… 俺の変な拘りが、このあやせの笑顔を曇らせてたのかも知れないと反省した。 「俺はあやせとずっと一緒に居たい。もう理屈も理由もないんだ。だから……さ……」 「ねぇ、京介さん、何でわたしがクローゼットの中にいるって分かったんですか?」 「本当に何の理屈も理由もない。ただ居て欲しいと………信じただけだ。 まぁ………鈍い俺だから何度か回り道したし、おまえを随分待たせちゃったけどな」 「わたしを信じてたのに、さっきは何で泣いたの?結局、振られると思って悲しくなった んでしょ?本当に信頼してたら……」 「麻奈実がさ、さっき話してた赤城と付き合う事になりそうなんだ。 そして俺の妹とはちゃんと良い兄貴になるって話してきた。 黒猫とも、ちゃんとある約束している。 俺には本当にあやせしか居なくなった。 だから泣いたのかは分からないけどさ………こんな話って、やっぱ俺って情けないよな」 「そうですね、凄くみっともなくて、情けないから、ほっとけなくなっちゃいました…… ………わたし」 「実際、不安だったのかもな。おまえの言う様に、最初は、あやせが危なっかしくて 心配で付き合う事にした。そして、俺の勝手なイメージでおまえの事を見てた。 さっき、おまえを捜し回って、走り回ったけど、でも俺はあやせの事を何も 知らなかったって痛感させられた。 だからおまえに、見た目だけとか、身体だけでも良いって言われた時に……… 俺は何も言えなくて、ちゃんと反論も出来なくて、あやせを余計に傷つけた。 だからその事については謝るよ。変に誤魔化したり、カッコつけたりして、すまなかった」 「でもさっきは見捨てたわけじゃない、おまえを信じてたつもりだったんだ」 これだけの事を言う為に、本当に、随分遠回りしたが、やっと言えて良かった。 「そんなに、わたしを信じてるなら、わたしのコトがちゃんと分かってるって言うなら、 わたしが今して欲しいコ・ト・…当ててください。当ったら仲直りしましょう、ね?」 ウインクして、魅惑的な顔になったあやせが、挑発する様に俺にクイズを出した。 俺はさっきしたみたいに強引にキスする、もう自分が風邪だった事なんてすっかり 忘れていた。理屈も、理由も、クイズも関係なく……純粋にしたいから、した。 「それもして欲しいコトですけど、一番じゃないから………ハズレですね。 やっぱり……わたし達って相性悪いのかなぁ。残念です…ねぇ、京介さん?」」 こいつがずっと"京介さん"としか呼ばない事に違和感を感じた。 "儀式"なのかとも考えたが、俺に髪を撫でられている、あやせにはもうそんな気配は 微塵も感じられなかった。本当にただ、ただ美しい俺の彼女だった。 「んじゃ、また尻ぶった叩くか……アレはあやせのお気に入りだからな」 やっと余裕が出てきた俺は、何とか冗談を言ったつもりだったのだが…… 「それもして欲しいコトですけど、一番じゃないから………ハズレ」 冗談とも本気とも取れぬ態度に対して、いささか俺の理性は、失われ始めて…… やっぱりあやせの言う様に、俺らが変態なのは、間違いないのかも知れない。 変な性癖に目覚めないか心配した将来の不安は、既にリアルな懸念に変わっていた。 「もう本当に強情ですね、京介さんの、、が、わたしにずぅっと当たってるのにっ! それとも処女厨なのは…………冗談だった事が、実は的を射てましたか? はぁ~でも、良いんです……それでもわたしの気持ちは変わりませんから。 あなたがどんな変態でも、応える自信……わたしにはちゃんとありますからっ!」 こいつが何を言ってるのか皆目検討はつかないが、何か相当ヤバイ匂いがするのは 確実に分かった。 「あ、あのさ、、おまえがもう"儀式"を求めてないのは、何となく分かるんだけど それって結局どういう事だったのか、教えてくれないか? それが分からないと、ちゃんとクイズに答えられないと言うか……」 『…桐…………3つ……の……処女………………』と耳打ちされた。 「ははは……あ、あやせさん、そんなの、おかしいですよ!って言うかさ。 キ○ガイみたいなフリをするのは、もう良いからね!だ、だ、だから本当の事を言おうぜ。 俺ら、ちゃんとした恋人だろ?全く……冗談ばっかり、どっちが変態だよ、もう(戦慄)」 あやせは無言で、さっき隠れていたクローゼットから、最近よく持ち歩いている 大きなバックを取り出すと、おもむろに俺に中身を見せる。 ………メイド服、ブラウンのウッグ、眼鏡があった(様な気がするだけの事にしておく) 「もし、わたしが無理やり儀式実行したら、京介さんは、わたしの事が嫌いになって 逃げ出して、わたしの事を捨てましたか?正直に言ってくださいね? わたし……絶対に、もうどんな些細な嘘も、誤魔化しも、許すつもりないから……」 「一回全力で逃げ出して、それでもおまえがやるって言うなら付き合ってやったと思う。 あやせは困ったちゃんなのは分かってるけど、同情以外の感情があるのは今なら分かる。 ぶっちゃけおまえが、NTRの話しなくなったのは儀式とか言い出してからだもんな。 おまえと別れるくらいなら、おまえが他の男の話をするくらいなら、もう超変態で あやせと一緒に何処までも堕ちるやるさ」 半分は本気で、半分賭けで………俺はそう言った。 さっきみたいに、いくら諭してもダメなんだ、あやせを全部受け入れて、もしこいつが 傷つくなら、俺も一緒に痛みを感じてやる。 俺の彼女が堕天使で、地獄の案内人………だとしても、もう離れるつもりはない。 もう、絶対にあやせを一人にはしないって決めたんだ。 でも同時に、『とても静かで、優しくて、暖かい予感みたいなもの』を今なら 信じられる気がした。 「ふふ、京介さん……良いコ・ト・しましょう?もうしちゃいましょう……ねっ?」 そう言った時のあやせの笑顔は純真で、清純で、純粋でとても気高く感じられて、 本当に天使を見たら、こんな気分になるのかもなと俺は、不思議な感慨に耽った。 どうやら、何とか………賭けには勝てたらしい。 何でこいつは、あんな悪魔の発想する癖に……こんなに可愛く笑えるんだよ、全く。 「本当に、儀式はもう良いのか?」 「儀式ならもう終わりました。魔法ならちゃんと、京介さんにかけられちゃった…から」 こっちだって、ずっと魔法も、あやせ菌にもかかりっぱなしだったんだ。 でもあやせには伝わってなかった。だからこれからは、今からはもう照れは捨てて 全部あやせの望み通りにしてやろう。 誰かに聞かれて見られたら恥ずかしくて、死にたくなる様な事でも平気でやってやるさ。 「そっか…………分かった。で、おまえのお気に入りの手錠はどうする?」 あ~ついに、こいつとするんだなと考えると緊張で声は上ずるし、さっきは別れるか どうかの瀬戸際だったのに、今はあやせが目を潤ませて、頬を高揚させてる姿を見ると、 更に俺に胸や臀部を押しつけてる状況を鑑みると、自然の摂理で当然痛いほど硬くなる。 「もう!お兄さ…(ん)…あっ、京介さんは…本当に、何も分かってないんですねっ!」 そういう事か…全く、、、何でそんなに俺に魅惑の魔法を重ねがけしようとするんだ? 「可良いな、あやせは…良いんだぜ?おまえが癖で言ってしまう"お兄さん"のままでさ。 おまえしか見てないんだから………今更、何ズレた心配してるんだよ、ったく」 「……ご、ごめんなさい……で、でも、でも……………」 「手錠はプレイで使うなら良いけど(もう立派な変態だ)、今は必要ないで良いんだな? 心はちゃんと繋がってる。今は…身体は身体同士で繋がりたい、、、で合ってるか?」 恥ずかしそうに、ぎこちなく、でもしっかりとあやせはコクリと肯いた。 こんな最高に可愛い彼女が相手なんだから、今だけは、俺も全力で"男"にならなきゃな。 俺はキスしながら、あやせをお姫様だっこしてベットに運ぶ。 何でだろう、あやせの裸なら本当に何度も、何度も見た筈だが……… DVD事件の時は、自分で全裸になってたし(長時間クローゼットでそのままだった) あやせの部屋ではいきなり下半身を脱がせたのに、今は服を着たままのあやせを 目の前にしているだけで、今までと比べものにならないくらい興奮して、緊張して 完全硬直しちまった、やっぱ情けねぇ………。 自称"男"改め、単なる童貞小僧に成り下がった俺は、キョトンとした表情で見ていた あやせに 「ふふ、良いですよ…ほら…………ボク………お姉さんとエッチなお勉強しましょう? ほらぁ……こっちにおいで」 と誘われた。
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527 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/29(水) 20 26 18.26 ID HNBFGTJ2P [4/8] ここ最近、俺に日課になりつつことがある。 プシュッ、ゴクッゴクッ、ぷはぁ~。 「けっ、相変わらずうまくねえな。こんなもんが好きなやつの気が知れねえぜ」 所謂、寝る前の一杯というやつだ。 どうしてこんなものが俺の日課になりつつあるかといえば、それなりの理由がある。 ここ最近俺はひじょ~に寝つきが悪かった。 あることが頭をグルグルと渦巻いて、それが解決できずに朝まで悶々と悩み続けていたのだ。 しかもそれが連日だからタチが悪い。毎回同じことを考えて、結論が出ずに悩み続け、そうして気がつけば朝になっている。そんなことの繰り返す日々。 そしてそんなときに思いついたのがこれだった。 アルコールが入れば少しぐらい寝つきがよくなるんじゃないか。そんな安直な考えだったが、それがぴたりと嵌ってくれた。 親父がアルコールに強いだけに心配ではあったが、俺にはその遺伝子は受け継がれていなかったようだ。缶1本空ければ無理矢理にでも寝ることが出来る。それぐらい俺は酒に弱かった。 正直、警察官の息子が未成年での飲酒をすることに抵抗がないわけじゃない。でも背に腹は変えられないというだろう? 俺はそこまで追い詰められてたってことだ。 今じゃこれがないと眠りにつくことすら出来やしない。それぐらいに今俺がかかえている悩みは深刻なのだ。 「はっ、情けねえ話だな」 思わずポツリとぼやいてしまう。 こんなもんに逃げなきゃならんほど弱い自分に腹が立つ。 とん、とベッドに沿うように立つ壁に背を預けた。そうして自然と意識の向かう先は壁の向こう。 「あいつはもう寝ちまったか」 壁越しに聞こえる音に耳を澄ませるがたいした音は拾えない。時間も時間だし寝てても何も不思議はない。 ゴクリ、と缶チューハイをあおる。ジュースのような味の中に混じるアルコールが酷く不味かった。 「はぁ、俺は一体どうすればいいんだろうな」 白状しよう。俺が悩んでることってのは、他ならぬ妹の桐乃のことだ。 俺はこの夏、めでたく彼女が出来た。そして紆余曲折の末、夏の終わりに別れることとなった。―――彼女よりも、妹を選んで。 ああ、わかってるさ。それがどれだけおかしいってことはさ。 でも俺には耐えられなかったんだよ。桐乃が我慢して、苦しんで、影で泣いてるあいつの姿を考えると、それに耐えられなかった。 桐乃が我慢できるって言っても、俺が我慢できなかった。 妹の健気な思いやりを踏みにじって妹を選んじまった俺は、あいつに彼氏が出来るまでは俺も彼女をつくらない。そんな馬鹿な約束もしちまった。それが間違いだって言われても今更訂正する気もないけどな。 「大嫌い、か」 桐乃が元彼女と俺を復縁させようとした際、桐乃が言った言葉。 ずっとわかっていたはずだった。頭では理解していたはずだった。 けど、実際に言葉にされて、漸く実感した。そしてそのことに俺は思った以上にダメージを受けていた。 それこそ、桐乃に対する態度に出てしまうぐらいに。 俺にとっての一番でありたい。けれど俺のことが桐乃は大嫌いだという。 なんとも矛盾した話だ。大嫌いな相手の一番であって、あいつは何が嬉しいと言うんだろうか。 ああ、ああ、そうとも。今の俺にとって桐乃は何を差し置いても一番大事なやつだといえるだろうさ。じゃなけりゃ彼女をふってまで妹のことを選ぶわけがない。だけど、だけどだ。桐乃は俺のことが大嫌いなんだよ。 確かに俺は桐乃が大事だ。心配だ。大切にしたいと思ってる。出来れば仲良くしたいとも。 けれど、大嫌いなやつに仲良くしようと歩み寄られて、あいつは嬉しいと思うだろうか? 鬱陶しいと思わないだろうか? 大事だと思ってる相手に拒絶される。それが怖くて俺は桐乃に一歩引いた態度をとってしまっている。 これまでなら踏み込めた場所に踏み込めない。 今までの俺なら、そんなことを考えてても今まで通りの態度をとっていただろう。だからこそ、今の俺の状態がわからない。俺は何故、ここまで桐乃に拒まれることを恐れているのか。 それが俺の悩み。どうやっても答えの出ない螺旋階段。 グイッと喉に酒を流し込む。中身は半分を過ぎたぐらいまで減っていて、いい感じにほろ酔いになってきた。これならじきに寝れるだろう。 そんな時だった。何の前触れもなく部屋の戸が開いたのは。 きぃ、と音を立てて開いた戸の向こうには、もう寝ていただろうと思っていた桐乃の姿。 一瞬その姿に動揺するが、今更取り繕ったところで手遅れだと気付いた。ならもう普通に振舞うほかないか。 「よう。どうした、こんな深夜に」 「あんたに、いいたいことがあってきたんだケド……なにあんた、酒飲んでるの?」 「ん? おお、1本だけだよ1本だけ。別にいーじゃねーか。自分の金使ってんだしよ」 「そういう問題じゃないじゃん。何考えてんのあんた」 「うっせえよ。俺の勝手だ。んで? 話したいこととやらはなんだよ?」 いつも通りいつも通りと自分に念じながら桐乃に接する。 既に酒が入ってる状態でいつも通りもくそもないんだろうがそれそれこれはこれだ。 「チッ……あんたさ、最近あたしのこと避けてない?」 「んなわけねーだろ。何言ってんだ。俺はふつーだよ。フツーフツー」 バリバリ全開で怪しかった。酒が入ってるにしてもこれはあんまりだろう。 これじゃ桐乃のことをバカにできん。 「ウソ。絶対に避けてるじゃん。目をあわせようとしないし、合ってもすぐにそらすし。あたしが傍によるとちょっと遠ざかったりするし」 ……バレバレじゃん俺。なんてわかりやすい。今更ながら自分の迂闊さに頭が痛いぜ。 その程度のことにすら頭が回ってなかったとは。本当に重症だな。 「いいじゃねーか。いつものことだろ?」 「よくない! あたしはそんなあんたの態度にムカついてるの! 急にちょっかいかけてくるようになったかと思ったらいきなりあたしのこと避けだして……意味わかんない。 あんたは一体あたしに何がしたいのよ!?」 あーあー、うるせえなぁこいつはよぅ。こちとらお前のことで頭かかえてるってのに。 ホントに自分勝手なお姫様だよ。そこまで言うなら全部ぶちまけてやるよ。もうどうなってもしらねえぞ? アルコールが回りつつある頭は正常な判断が出来なくなりつつあるせいか、しらふならまずありえない選択肢を実行した。 「俺さ、結構傷ついてるんだぜ? お前に大嫌いって言われてさ」 いつだって桐乃に対する感情はぐちゃぐちゃで、まるで蓋をしたかのように頑なな俺の本音は、追い詰められて漸くその顔を覗かせる。そうして顔を見せる本音は、いつも俺が気付いてないことを俺自身に気付かせてくれる。 そんな本音をしまいこんだ箪笥が、酒が入ってるせいか、今は少しだけ開いてるようだった。 そしてやはり、俺の気付かない、気付けない想いが俺の口をついてでた。 「俺はさ、お前が好きなんだ」 目の前まできていた桐乃の瞳が見開かれた。 自分でも思ってもみなかった吐き出された言葉は、驚く程自然に心に収まった。 まるでぽっかりと開いていた穴がうまったように、足りなかったパズルのピースがはまったように。 酒で朦朧としている頭では、それがどういった意味での好きかはよくわからない。でもそれは確かな答えだった。 ああ、そうか。と不思議な納得が俺の心に浮かんだ。 だからか。だから俺は、あんなに桐乃に嫌われるのが怖かったのか。 もう嫌われてるのがわかってても、更に嫌われるのが怖くて、嫌いだといわれるのが怖くて。 「でもお前はさ、俺が嫌いなんだろ? 俺はお前が大事だ。心配だ。何よりも大切にしたい。でもな、そんなお前に嫌われてるって、きついんだぜ? 大事なお前だから、もっと仲良くなりたい。俺を好きになってほしい」 溢れた言葉はとどまる事を知らず、次々と信じられない言葉を紡いでいく。 頬に冷たいものが流れた気がした。 「けどさ、嫌われてるやつに何されたって、嬉しくねーじゃんか。むしろ傷つけるだけかもしれねー。 それじゃ俺は、どうしたらいいかわかんねーよ。お前に嫌われてる俺は、お前に何をしたらいい?」 最後に残った酒を一気に飲み込んだ。朦朧としていた意識が襲い掛かる睡魔に一気にあやふやになる。 それでも、俺の溢れる気持ちはやむことなく漏れていく。そして 「なあ、桐乃。俺はお前が何をして欲しいのか、さっぱりわからねえんだよ。 お前はどうしたら喜んでくれるんだ? どうしたら嬉しいんだ? どうしたら笑ってくれるんだ? 俺は――」 ――どうしたらお前に好いてもらえるんだ? 俺の意識は眠りに落ちた。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「京介?」 いきなりまくし立てるように言いたいことを言うだけ言った京介はかくんと頭を下げて押し黙ってしまった。 うなだれるように壁に背を預けて、俯いたたままの京介のそばに寄ってみると、その口からはスースーと寝息が聞こえていた。 もしかして寝ちゃったの? そんな京介の前に回り、足の間に身を収めるように座り込んだ。覗き込んだ顔には、一筋の涙の跡。 そのままトン、と頭をその胸に預けた。 「ばか」 トスン、と片手で京介の胸を打つ。 「バカ」 トスン、トスンと京介を起こさないように、繰り返し胸を叩く。 「ばかっ…!」 何が、『お前のことが好き』よ。何が、『好いてもらえるんだ?』よ。 あたしがどうしたら喜ぶ? 嬉しい ?笑える? そんなの――決まってるのに。 京介があたしにしてくれることが、そばにいてくれることが嬉しくないはずがない。喜ばないはずがない。 そんな簡単なことが、なんであんたはわかんないの? あたしの言葉ばっかりを真に受けて、どうしてその真意をわかろうとしてくれないの? 「嫌いよ」 言葉にしないとわかってくれないあんたが。 「嫌い」 言葉にしても伝わらないあんたが。 そして何より、こうやって全部京介のせいにして甘えてるあたしが―― 「大嫌いっ」 縋りつくように京介の服を掴んで、その胸に顔をうずめた。 本当に、あたしはバカだ。 兄貴の泣いてるのがイヤだと、あれほど強く言ったのに結局あたしが兄貴を泣かしてる。 あたしが素直じゃないせいで、京介を泣かせてしまっている。 バカで、ヘタレで、鈍感で、不器用で―――そして誰よりもあたしを大事に想ってくれてる京介。 「ごめんね」 いつも素直じゃなくて。無茶ばっかりを押し付けて。嘘ばっかりついて。 「ありがとう」 どんな時もあたしの味方でいてくれて。大切なものを守ってくれて。あたしを選んでくれて。 いつの間にか流れていた涙が、京介の服を濡らしていた。 それから十分ほどしてから、あたしは京介の部屋を後にした。 京介はあのままの体勢じゃ明日辛いだろうから、横にして布団をかぶせておいた。アレなら風邪を引くこともないはず。 それにしても、あたしはどうしたらいいんだろう。 まさかあの言葉が、あそこまで京介を傷つけると思ってなかった。わかりきっていると、そう思ってたから。 あの言葉に嘘はない。けれど、全てが本当だとも言えない。 これ以上京介を傷つけないためには、どうしたらいいんだろう。 『俺は、お前に何をしたらいい?』 ああ、そっか。簡単なことだった。 京介は、あたしがして欲しいことがわからないっていった。 わからないから、教えてほしいって、そう言ってた。 嫌いな自分が何をしてもあたしを傷つけるかもって、バカな心配をしてた。 だったら教えてあげればいいんだ。あたしが京介にして欲しいことを。 素直になるのはちょっと怖くて、くやしいけど、あたしも京介に傷ついてほしくないから。 少しだけ、素直になってみよう。きっと、意地を張って上手くいかないだろうケド、少しづつ。 そうと決まれば今日は早く寝てしまおう。 丁度明日はお休みだ。 京介を誘って二人で出かけて、うんと京介を引っ張りまわしてやろう。 そこでたっぷりと教えてやればいい。 あんたは何も気にせずあたしに接すればいいんだって。何も心配する必要はないんだって。 「あは。あいつ、どんな顔するかな?」 少しだけ、それが楽しみだ。もし気持ち悪そうな顔をしたらひっぱたいてやるから。 「おやすみ、京介」 壁越しにかけた声が、優しく闇に溶けていった。 END -------------
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好きなPV 好きな音楽家 group_inou zabadak 上野洋子 好きな芸術家 牧野邦夫 佐藤玄々 草間彌生 William Adolphe Bouguereau Hans Rudolf Giger 好きな生物 テズルモズル
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「ちょっと違った未来36」 ※原作IF 京介×桐乃 <第三部・現実世界> ――京介と桐乃の結婚式から10年後 「そうですか、そうですか…。はい、はい…。ありがとうございます」 「…」ウズウズ 「わかりました…。はい、はい、では失礼します」 ピッ 「京介、どうだった!?」 「ああ。受かってたよ、試験」 「はああああ~~~!!良かったぁ~~~~!!」 「はは!ありがとな!桐乃!」 目の前にいるのは俺の義理の妹であり妻である高坂桐乃。今は自らが所属していた美咲さんの事務所の一部の運営と後輩の育成を任せられている自慢のお嫁さんだ。 ここは俺達で暮らすマンション。今は二人とも実家から出ている。 10年前、俺達は結婚をした。俺は卒業と同時に警察学校に入る前に。桐乃は当時学生結婚だった。 その後俺は無事半人前とはいえ警察官に任官され、国民の生命と安全を守るお仕事をしているってわけだ。 未だに市民に嫌われまくってる上にちょっと職質したらこの顔を見てか、舐められっ放しだけどな!トホホ…。 「でも良かったね!これでようやく肩の荷が降りたっていうかさぁ~」 「ああ…」 今の電話は俺の上司に当たる警部補からの連絡だ。 俺は此度の警察の内部の昇進試験で見事、巡査部長の試験に合格を果たした。 試験は法律の試験に加え、警察実務の試験が多数ある。 巡査部長の上にも警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監…と順に並んでいるが、競争率等諸々の事情を考えたら巡査部長の試験が一番難しい。 その厳しい難関に見事合格を果たした、ってわけだ。 …ちなみに俺のようなノンキャリアの警察官だと、上がれる階級は良く頑張って警部・警視レベルだと思う。大体は巡査部長・警部補止まりだ。実際親父も警部補でその昇進を終えている。そこから上は国Ⅰを突破した東大閥の警察官僚達が席巻しているからだ。 とは言っても彼らは霞ヶ関の警察庁に籍を置く人達で、警察官というよりは法律制定や予算を扱う行政官といった色が非常に強い。だから俺達千葉県警のような地方の現場にまで出向いてくることはほとんどありえないし、実際警察官になってからのこの10年間、一緒に仕事をした事もない。 完全に違う人種、ってわけだ。 「今日はお祝いしなくちゃね!もう夜だしどっかで食事でもする?」 「そうだな…。よし、今日は皆でパーッと食べに行くか!」 そうして俺は俺の『家族』に声を掛ける。 「涼介、優乃!パパとママは今から一緒に外でご飯食べようと思うんだけど、どうだ?何か食べたいものとかあるか?」 俺は最愛の息子の涼介と優乃…まだまだ小さい幼子の二人の目線にあわせて声を掛けた。 「ハンバーグ~」 息子の涼介が元気よく答える。 「お~ハンバーグかぁ~!野菜も沢山食べようなぁ~!」 「ピーマンにがい~」 「はは!慣れたら上手いって!優乃は~!」 「けーき~」 「よーしわかった!栄養のあるご飯をしっかり食べたらデザートに食べような!」 「あい~」 二人は宝石のような瞳を輝かせて俺達を見詰める。 結婚式の後、俺達は二人の子宝に恵まれた。 一人目は桐乃が大学を卒業してからすぐに。その時の子供が涼介。そして続けて優乃が。 「ママ~」 「はいはい。涼介はいつまで経っても甘えんぼなんだから」 桐乃が抱っこをねだる涼介を抱える。本当に涼介はいつまで経っても甘えん坊だ。こんなんでこの先やっていけんのかと不安を感じる。…だがこの涼介の雰囲気といい言葉の受け答えといいどっちかと言えば桐乃似のような気がするんだよな…。 俺がそのことをいうと瑠璃達は、 『何がどちらかというと、よ。涼介は顔は貴方似だけど、頭の中身は明らかに桐乃似じゃない』 と、子煩悩ここに極まれりといった顔でやれやれと言って受け答えしてくる。ぐぬぬ…。てめーは未だに独身だろうが! 逆に優乃は見た目と性格こそ桐乃そっくりだが、その他の中身は完全に俺似だという。 桐乃と涼介のやりとりをを見た優乃は、 「まま~」 「はいはい。優乃も。京介、優乃が抱っこしてほしいみたい。お願い」 「おう」 そうやって俺が優乃を抱っこして、ってあら? 「ママ~。優乃のこと、抱っこしてあげて~?」 「あらあら。涼介はいつもいつも妹想いのお兄ちゃんですね~?」 「そんなんじゃないもん」 プイッと顔を背ける我が息子。この年から既にツンデレの兆候が見事に見えていた。恐ろしき我が血脈…。 「おにいたん~」 「うん~?」 「えへへ~。ありがとう~」 「…おう」 地面に降りた涼介は、照れくさそうに鼻を人差し指ですりすりしている。 …全くこいつらは。 「ほんとにこの子大丈夫かな?どっかの誰かさんみたいなシスコンに育たなきゃいいんだけど?」 「おい?!そりゃねーよ?!」 大体お前もお前で相当なブラコンだろうが?! 「ふふ…冗談だって。あーあ、こうしているとあたし達の小さい頃を思い出すね~」 「ああ。そうだな。小さい頃からおまえも可愛かったな~。涼介が優乃にしてやってるみたいにしてやって…」 「ふ~ん…。い、一応聞いてあげるけど何してくれたの?あんた」 「おしめの取替え」 バキッ! 「いてえっ?!」 「乙女に向かって何てこと言うのよ?!」 「乙女って齢か?!年齢を考えろ、年齢を?!この経産婦!」 ブチッ 「あ、ああああんた…!い、今言ってはならないことを言ったわね…?!」 「ひいっ?!」 プルプルと背後に地獄の業火を煮えたぎらせるは我が妹妻(2×)。年齢のことを心の中でも言及するとますます暴れかねないので伏せておく。 それを見た涼介と優乃は。 「きゃはははは!!」 「ぱぱおもしろ~い!」 …我が息子娘にも笑われる高坂家におけるこの父の扱い…。こんなのが世間に知れたら…。普段指導してる職場の後輩に何ていえばいいんだよ…。 …その時心の中から知人の声の記憶がこだまする。 『あら?凶介さんが情けないシスコンであることなんて周知の事実ではなくて?』 うるせーよ?!てめーだって姉さんにシスコンだろうが?!あと名前を間違えるな、名前を!不吉なんだよ! …なんで30越えてもこんなノリなの?俺…。 誤解のないように言っておくけど、こいつらの前だけだから!職場だとしっかりしてるから! でもこんな昔のノリをしてるからか、よく世間の皆さまから「若いですね~」って言われるんだぜ?ふっふっふ!警察の夜勤での痛めつけにも負けない肌年齢!溢れる若さ! …三人目頑張っちゃおっかな~。 「…」じ~っと。 そうして俺がじっとりとした目線を桐乃に向けると、桐乃は、 「ちょ、ちょっと!?何て目でこっち見てんの?!」 「いや~。優乃を抱えるお前を見てると幸せだなぁって」 「ウソ!絶対ウソ!今のはあたしの身体を狙ったいやらしい視線だった!背筋が凍ったもん!!もう!ホントやめてよね?!」 「んなことねーよ!」 「夫婦間でも強姦罪は成立するんだからね?!今度そんなねちっこい嫌らしい視線送ってきたらあやせ呼ぶから!!」 「それだけはやめてっ?!」 『桐乃に何かあったその時の為に…お兄さんを…ふっふっふ…!』 この前夜にスポーツバッグを持った(大魔王)あやせに道端で会った。 どこに行くんだ?って尋ねたら、キックボクシングのジムだという。 その場で華麗なシャドーを始めるあやせ。驚く通行人。 何の為にって尋ねたら…。そりゃあ…。 (ごくり…) 俺は恐怖からかその夜は『あやせがジム通いしてるのは体型維持の為…あやせがジム通いしてるのは体系維持の為…』って念仏のように繰り返してたよ…。気づけば朝になってたけど…。 「…。もう、ばかなことばっかり言ってないで、行く準備するよ?」 「へいへい…」 「店にも予約していないし、今からだと…。皆で仲良く近くのファミレスにでも行かない?」 「そうだな。よっし!行くか!」 涼介と優乃を余所行きの服に着替えさせて、4人で仲良く歩き出す。 桐乃は優乃を抱っこして。俺は涼介の手を握って。 車や自転車に注意しながら4人で仲良く歩き出す。 「パパ~」 「ん~?」 「パパのお手手大っきくてあったかい~」 「そっかそっか」 俺は涼介の、愛するわが子の手をぎゅっと握り返す。 「僕も大きくなったらパパみたいになる~」 「はは!涼介はパパなんかよりずっと凄い男になれるさ!」 「ほんと~?」 「ああ!何しろ俺と桐乃の息子だからな!」 「あたしはともかくなんであんたが自信満々なのよ…」 後ろから優乃を抱えながら着いてくる桐乃が嘆息する音が聞こえた。 「父親の意義を否定するな!」 まったくこの女は!いくつになっても話しの腰を折って! そしたら桐乃は楽しそうに。 「あはは♪ウソウソ!あんたの凄さはあたしが一番よくわかってるって!」 そう、我が事のように自慢気に笑った。 「ぱぱすごい~?」 桐乃に抱っこされている優乃がそう尋ねる。 「うん。涼介や優乃ちゃんはまだまだ小さいからわからないかもしれないけどね…。パパは、お父さんは本当に凄い人なんだよ~」 「パパすごい~!僕大きくなったらパパみたいになる!」 「おう!もっと言ってやれ桐乃!」 「調子に乗るなっての…」 ぼそっと呟く桐乃。 「僕もパパみたいに大きくなって~」 「うんうん」 「将来優乃のお婿さんになる~」 「ぶぼっ!?」 「ちょっ?!」 俺と桐乃は慌てて目をむく。空気が口から二人同時に勢いよく漏れた。 「えへへ~。おにいたん~」 優乃は優乃で満足げに照れている。 ふんす、と何故か誇らしげなシスコン涼介。 それを見て俺と桐乃は慌てて目を合わせる。 「ちょ…慌てすぎだっつの…」 「お、お前もだろうが…」 「ち、小さい子供の言葉でしょ…。ここは大人の余裕を持って…」 「お、俺達のことを考えてみろ…。んな悠長なこと言ってられるか…」 「で、でもぉ…」 にこにこ見つめ合う仲睦まじき兄妹である我が息子達。それを尻目に早々の気苦労を背負い込む俺と桐乃。 ああ…『まともじゃない子供達』ってこんなに気苦労するもんなんだな…。何の過ちもないように祈ろう…。 俺だって桐乃とは血が繋がっていないから結婚したんだ。女として愛したんだ。 これが血の繋がった実の妹だったらって? …。 ごほん。まあ、そういう世界(原作12巻)もあるかもな。 この件はもうやめよう。 そうして俺達は夜の街を4人仲良く歩いていった。 ~~~ ファミレスから戻ると涼介と優乃はお腹が一杯になったからか、すぐにベットに寝てしまった。 涼介は兄の意地からか、ファミレスの席でもなかなか眠ろうとしなかったが、優乃はケーキを食べるとすぐにこてん、と眠ってしまった。 二人を子供部屋に寝かせた後、今は夫婦に寝室にいる。 「お疲れ様。あなた」 「ああ。ありがとう、桐乃」 桐乃は俺の上着を脱がしてくれる。 もうこの10年結婚してからずっとこいつは妻としての役目をしっかり全うしてくれている。こうして二人きりの時はたまに『あなた』と俺のことを呼ぶ。 愛する桐乃が俺の妻…。 その事実が、何年経っても、俺は愛おしくって愛おしくってたまらない。 「あれから…」 俺は俺の上着をハンガーにかけてくれている桐乃に向かって、 「10年前のあの日から…随分色んなことがあったな…」 「…」 「あいつが…もう一人のお前がいなくなったあの日から、さ…」 「ええ…。そうね…」 10年前のあの日…もう一人の黒髪の妹がこの世界を去ったあの日から、俺達の生活は一変した。 桐乃との結婚。就職。厳しい警察学校での日々。仕事の為の法律実務の勉強。 桐乃のモデルの引退と経営陣への参加。たまの執筆活動。 刑事の試験。昇進試験。格闘技の訓練。 ところで俺に警察官が務まるのかね?という疑問を持っている諸君。実は俺には格闘術の適性が思ったよりもあったらしく、今じゃいっぱしの刑事で現場からも上司・後輩問わず頼りにされていた。 特に1対1の捕縛には誰よりも負けない自負がある。実際、県警から逮捕術の大会から優勝の賞ももらっている。今じゃ親父にも負けないほど強くなった。マル暴にいた時は突入の段取りから全て任されていたこともある。 おほん。まあ、自慢は置いといて。 そして。 そして愛するわが子たちとの出会い。 涼介を初めて見たときは…本当に可愛かった。これが俺の息子なのか?って。俺と桐乃の息子なのか?って。 仕事が終わった親父や桐乃にずっとついてくれていたお袋、瑠璃に沙織に麻奈実にあやせに加奈子。 赤城や瀬菜、それにゲー研の皆。日向ちゃんや珠希ちゃん。御鏡にブリジットにリア…。 皆、皆来てくれた。 そんな皆も、もう学生じゃない。皆社会に出て働く社会人だ。 瑠璃はあれからシステムエンジニアとして相変わらずあの会社で働いている。現場はあいつが回しているらしい。あいかわらず休みになると俺達の家に遊びに来る。涼介や優乃のための手作りのお菓子やおもちゃを持って。 優乃もだが、特に涼介が瑠璃に凄くよく懐いていて…。瑠璃お姉ちゃん瑠璃お姉ちゃん、って。それを見るたびに優乃がふくれっ面でむくれている。ははは…。 あ、そうそう。瑠璃は独り身かって?ははは! 彼氏?そんなもの い る わ け が な い で し ょ う ! ! (爆) ! ! …。ごほん。 沙織は自分の会社の仕事を手伝っている。社長であるお父さんの秘書兼片腕ってわけだ。 …意外だった。あいつはてっきり誰かと結婚するもんだと。だってあれだけ見合いしてたんだもんよ。 その事を聞くと沙織には『女の心は海より深いのですわ。卿介さん』だとよ。(漢字、いいかげん直してくんねーすか?) しっかしあの女、齢を重ねる毎にますます美しさに磨きがかかってるんだよな~。あんなんじゃ周りの男が放っとかねえだろ。 …それはそれで複雑だけどよ。 …。 あやせは会社のOLをしている。相変わらずその綺麗なおみ足を婚活の為にではなく男(誰かは言わねー。うう…)を抹殺するために磨いているようだ…。 なんだよあの女まじこえーよ…。でも天使…(2×でも)。 あやせもよく俺達の家に遊びに来てくれる。 俺と桐乃が仕事で手が一杯の時なんかはお袋とあやせでよく涼介と優乃の面倒を見てもらったもんだ。 二人ともあやせのことを『おばちゃんおばちゃん』と言って嬉しそうに懐いている。 その度にあやせは『私はまだ二十歳代です!!』と顔を真っ赤にして叫んでいるが…。 瑠璃や沙織がお姉さんなのに私はあやせおばちゃん、と言われるのは納得いきません!まるで私だけ老けているようじゃないですか!?とご機嫌斜めだ。 これには理由がある。 実は涼介が小さい頃、俺達は自分達の仕事も忙しかったからあやせやお袋によく預けていた。 いつもいつも面倒見てくれるものだから、涼介はあやせのことを『親戚の叔母ちゃん』と勘違いしたのが事の発端。 それが優乃にも口から口へと伝わって…。南無…。 まあ色々言うことはあるんだけど、これくらいにしとこうと思う。加奈子や瀬菜にゲー研の皆と挙げたらキリがない。 あ、でもこれだけは言っとかなきゃな。 「へへ…」 麻奈実は俺達の結婚式の1年後に結婚した。 相手?相手はそう、俺と同じどうしようもないシスコンのイケメン商社マン、赤城だ。 実は赤城は大学卒業のその年の就職活動に失敗した。一方麻奈実は地元の市役所の試験に合格しており、内定が決まっていた。 それでも麻奈実は待った。 就職浪人と新社会人という互いの温度差をモロともせずに、だ。 そして次の年、赤城はようやく大手の商社にて内定を取り付けた。 麻奈実に男として認められたい、一緒にこの先も手を繋いで歩いていきたい、という思いからだ。 そしてやっと就職することが出来、その時にあいつはプロポーズをした。 キメ台詞は『一緒に仲良く齢を重ねていきませんか』だとよ。おお、くさいくさい。何てくさい。 でもあのイケメンボイスで言ったらたちまち神なんだろうな~。なんという差別社会。 それに麻奈実はもちろん『はい』と返事をし、大学からの交際の、赤城にとっちゃ、高校1年からの一目ぼれの片想いがようやく成就したというわけだ。 本当に、本当によかったと思う。 麻奈実は俺にとっちゃ大切な大切な幼馴染で、赤城も俺の高校からの大事な、今や腹を割って話せる親友で…。 「…」 もう1つの世界の桐乃が元の世界に戻ったあの日から…。あれから相変わらず慌しい日々を俺も桐乃も過ごしていた。 あれから俺達はあいつのことを忘れたことがない。 あいつが『大好き』といってくれた世界は今日もまた旬欄と輝いてる。 「ねえ?」 「うん?どうした、桐乃」 今は俺の配偶者となった、俺の妹が俺の傍にすっと寄り添う。 「あたし達…幸せだね…」 「…。ああ」 「すっごくすっごく…幸せだね」 「ああ…幸せすぎてどうにかなりそうだぜ…」 そうして俺は桐乃を抱きしめ、キスをする。 「ん…」 「…」 想いを遂げて結ばれた、中学生の頃からいつまでも変わらない、しっとりとした彼女の唇。 そ、っと唇を重ねるだけの、キス。それは今まで育んできた愛情を確かめ、そしてまだ見ぬ未来への喜びを現す夫婦のキスだった。 「あんたはさ…」 「ん?」 「あんたは長生きしてよね…」 「…」 俺の腕の中で抱きしめられながら、彼女は言う。 「あたしより…あたしより…ずっと…。ずっとずっと長生きしてよね…」 「…」 「あの子の世界のあんたみたいに…ならないで…」 「…」 「あたしを…あたし達を…置いていかないでね…」 「…ああ」 ぎゅ、っと俺は俺の妻を抱きしめる。 彼女は俺に全幅の信頼を寄せているのか、全ての体重を俺に預けてくる。 事件の現場や暴力団の鉄火場で鍛え上げられた俺の肉体はそんな彼女の体重を難なく受け止めている。ハードな刑事の仕事にも耐えうる強い体と精神力。毎日のウエイトトレーニングと勤務後の道場での鍛錬で鍛え上げたタフな体。 もう、10年前の小僧で無力だった大学生の俺じゃない。ましてや、高校生の時の心折られた俺じゃない。 「決して、死んだりしない」 「うん…」 「お前よりも長生きもしない…」 「…」 「一緒に…仲良く齢を取ろう…。そして、そして…願わくば一緒に…」 「…はい」 再び最愛の妻をぎゅっと抱きしめ、その唇にキスをする。 …一生をかけて守ると誓った、妹の…桐乃の体の体温と唇は、暖かかった。
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「ちょっと違った未来11」 ※原作IF 京介×桐乃 ~~☆ 「あ!京介さん、あれ…!」 「ん?おっ、あれは…。」 帰りの車中、後部座席に座っている桐乃が声をかける。 「あれは…結婚式、かしら。」 教会での結婚式。 車の中からでもわかるくらい結構派手だな。 バックミラーで後ろを見ると桐乃がうずうずしていた。…よし。 「ちょっと寄ってみるか。何かの縁だ、盛大に祝ってやろーぜ。」 「この辺りだと…あそこの駐車場に車を寄せれば…。」 「そうだな…。」 教会の後ろに駐車場らしき場所がある。完全に部外者だけど、ちょっとぐらいかまわねーよな? 駐車場の空いたスペースに車を停車させ、ロックする。 車の中から外に出ると新郎新婦の登場を待ちわびているのか、たくさんの人たちが扉の前で待ちわびている。 どうやら聖書に倣った夫婦の誓いの儀式はすでに終わっているようだ。 「あ、花嫁さんだ!」 桐乃が嬉しそうにぴょんぴょん小さく飛び跳ねる。 俺達はいいタイミングに来れたらしい。ちょうど新郎新婦が出てくるところで、 「綺麗…。」 隣にいる瑠璃がうっとりと呟く。 純白のウエディングドレス。ドレスの種類なんて俺にはわからねーけど、よくCMとかで見かけるタイプのものだ。それでも…。 「実物を見るとやっぱ違うな。」 確かに綺麗だった。日の光に照らされてドレスが白銀に輝いている。教会の屋根にいる鳥達も祝福してくれているのか、静かに見下ろしている。 桐乃といい瑠璃といい、女の子は皆こういう綺麗なものが好きなんだよな…。 名前もしらない人だけど、これからの幸多いであろう未来をめいっぱい感じているのだろう。 夫をつかむ腕は全幅の信頼と愛情を寄せていた。 見れば花嫁さんが白いブーケを投げようとしていた。 「桐乃桐乃、あのブーケ!」 瑠璃が少し慌てたように言う、 「え?」 「花嫁さんが投げるあのブーケ、あれを取ってらっしゃい。あれが取れた人が次に花嫁衣裳が着れるって言われているのよ。」 「え、そ、そうなんですか!?じゃ、じゃああたしも…!」 桐乃は前に並ぶ人達に入っていく。周りの人たちも同じ考えらしく、そろってブーケを受け取ろうとしていた。 きゃいきゃいとはしゃぐ桐乃。あの姿を見れただけでもこの教会に立ち寄ってよかった。やっぱあいつは笑ってる姿が一番だよ。 瑠璃の横顔を見ると同じ事を考えているのか、桐乃の後姿を見ながら微笑んでいた。 「ふふ…。」 「今日はありがとな、瑠璃。」 「え?」 「やっぱさ、アイツも内にばっかしいると気が滅入っちまうだろ?あれからほとんど自分ひとりで外出にも出かけないし…。」 「そう…大学にも?」 「行ってはいるんだけど、ほとんど大学の友達と話してないみたいだ。あくまで桐乃の反応からの推測だけどな…。昔みたいにあやせや加奈子が一緒ならあいつらに話聞けばわかるんだけどな…。」 残念ながら三人とも大学が違うし…。 あの事故前は大学でもファッションリーダーみたいに自然となっていて、サークルとかからの勧誘も凄まじかった。メールや電話が来るたびに丁寧に断っていた。 『ま、あんたにはこんな経験ないだろうからわかるわけないけどね~。』 ぐぬぬ。腹立つあのアマ。そんな女にぞっこんで尻にひかれる俺は一体なんなのか。そんな俺にも腹立つ。過去の俺に言ってやりたい。もっと亭主関白になれ、と。 そんなことを考えていると、 「…痛ぅ…。」 え? 瑠璃が眉間を指で押さえていた。真っ白い肌に脂汗が滲み出ている。 「おい瑠璃、大丈夫か!?」 「…ご、ごめんなさい先輩…はあはあ…、す、少しどこかで休ま、せて…。」 「わかった。ここじゃなんだから、あの木陰に…。」 教会の裏に木陰があった筈。あそこだったら人もそういない。 「…ごめんなさい。こんな日に。」 瑠璃の肩を抱えてゆっくりと結婚式の場を離れる。教会裏は綺麗に整理されていて、近くにちょうどいい大きさのベンチがあった。 「あそこで休もう。大丈夫か?」 「だい、じょうぶよ…。はあはあ…。」 顔を見ると蒼白だった。普段色白な分、もはや病的ともいえるその顔色。整った顔立ちは頭痛の痛みで歪んでいた。 「水とか要るか?…いや、いっそのこと病院に…。」 「大丈夫…すこしだけ…すこしだけ休ませて頂戴…。そうすればこんなくらい…。」 本当に具合が悪そうだ。 俺の胸にしな垂れかかってくる瑠璃。彼女の甘い体臭と髪の匂いが鼻に入ってくる。 「先輩…ごめんなさい…。」 「何をだよ。いいから今はゆっくりと…。」 「違うの、そうじゃないの…。」 「え?」 「私…ずっと…心のどこかで貴方達が…桐乃のことを羨んでた…。」 なにを…? 「貴方があの時、私じゃなくてあの子を選んで…。それでもそれはまだ『妹』としてだった…。だから私にもまだチャンスが…大好きな先輩の心に私を映すチャンスがまだあるかもって、あの時はそう、思ってた…。」 …。 「だけど貴方は桐乃を選んで…私は何も出来なくて…。ううん、それでもいいって思ってた…。それが本当の気持ち。本当よ。だってあの子は私にとっても大事な…。でもあの子が記憶を失って…、痛ぅ…!」 「瑠璃!?」 ~~~ やったやった♪花嫁さんのブーケが取れた♪ 周りの人たちがおめでとうって言ってくれる。部外者だけどいいのかな? 「あ、ありがとうございます。ありがとうございます。」 ぺこぺこと頭を下げる。 「あら、とっても可愛らしい子。私にも娘がいたらこんな可愛い子にしたいわ~。」 「あなた将来いいお嫁さんになれるわよ~。そのブーケ、大事に取っときなさい。」 はしばしにそう声がかかる。えへへ…嬉しいなぁ…。 あたしはブーケが取れたことを報告したくて後ろを向いた。 「京介さん、黒猫さん!…あれ?」 きょろきょろと周りを見てもどこにもいない。あれ?どこに行ったんだろう…。 あたしが二人を探しているのをみて、参列してたお爺さんが、 「お嬢ちゃんの連れのとっぽい兄ちゃんと綺麗な姉ちゃんなら裏手に行ったよ。」 あれ? 「肩寄せ合ってたが…なんかあったのかい?」 …。 「…ありがとう、ございます…。」 嫌な予感がする…。 なんだろうこの胸騒ぎ…。 ~~~ 心に曇る暗雲を否定出来ないままあたしは教会の裏手に向かった。そこのベンチに二人は寄り添って座っていた。そこから話し声が聞こえてくる…。 ーーー『…桐乃のことを羨んでた…』 え? ーーー『…だから私にも…大好きな…思って…』 え?大、好き?誰が誰を? ーーー『…それで…いいっ…思ってた…』 ここからじゃ二人の声がよく聞き取れない。京介さんの顔が見れない。黒猫さんが京介さんの胸元に顔を埋めている。その二人はどうみても…。 パキッ あたしは小さな木の枝を踏んだみたいだ。全く見えていなかった。だって…。 「桐乃!?」 「…。」 京介さんが慌てて振り返る。 黒猫さんは顔を埋めたままだ。こちらを見ようともしない。 「はは…。」 馬鹿みたいだ…あたし…。 京介さんの妹だ彼女だと言われて…。彼の好意に甘えて、その気になって…。一人で舞い上がって…。 そうだよね…。京介さんもこんなめんどくさい女なんかより黒猫さんみたいな綺麗な人のほうが…。 もう、わけわかんないよ…。 「…ッ!」 たまらなくなり、あたしはその場を駆け出した。 ~~~ この光景を見て何を思ったのか、桐乃が駆け出していく。 ばか、あいつ何を勘違いしてんだ!?それどころじゃねえってのに!? 「はあはあ…先輩…。」 「瑠璃…とりあえず病院に…。」 「はあはあ…あの子を追いかけなさい…。」 「で、でもよ…。それじゃおまえが…。」 「いいから行きなさい!呪い殺されたいの!?」 物凄い剣幕だった。それだけ彼女も必死なのか。かつての厨二フレーズも全く違う性質を帯びていた。 「わかった!すぐに戻るからな…!」 ベンチに瑠璃を横たわらせ、俺は桐乃の後を追いかけた。 ~~~ 桐乃はどこだ…あいつに本気で走られたら俺じゃ追いつけない…。なんとか見失わないようにしないと…っていた! 「おい、桐乃!」 後ろから桐乃の背中に向かって叫ぶ。 ビクッ、と桐乃は身体を一瞬硬直させる。 「…っ!」 俺のほうに一回振り返るとそのまま全力で走って駆けていく。 ここで逃したらもう…。って…。 (お、遅っ!?) あいつ走り方まで忘れてんのか!?そう思わせるほど桐乃の走るスピードは遅かった。 これじゃそこらの女の子とそう変わらない。のたのたした女の子走り。 「っ!待てよ、桐乃!」 以前なら比較にもならないであろうスピードの差が今は逆転している。 一般的な成人男性の俺が今のこの桐乃の走る速度に追いつけない筈もなく…。 「桐乃、待てって!」 ものの数秒で彼女は捕らえられた。 「桐乃、待てって!話を聞…。」 彼女の左手首を捕まえ振り向かせたら、俺は言葉を一瞬失ってしまった。 「…。」 彼女は、桐乃は泣いていた。大きな瞳に大粒の涙をためて。 「おい桐乃、落ち着けよ。いいか、さっきのは…。」 「…して…。」 「え?」 「離して!!」 桐乃は掴まれていた手首を振りほどく。 一歩二歩後方に距離を置く。 肩を震わせ、いからせて、野生動物みたいに腰を落として俺を睨みつける。 「あなたも…。」 「え…?」 「あなたもあたしの前から消えちゃうんでしょ!?めんどくさい女だ、何をしてもとろくさい女だ、って…!」 「何、を…。」 桐乃は泣きながら大声で、 「あたし知らない!あたし全然綺麗じゃない!モデルなんか、服のことなんか何にも知らない!あたし知らない!あんなに勉強なんか出来ない!出来っこない!!」 「…。」 「陸上だってそう…!小説だって…!なんなの…!?そんなのあたしに出来るわけないじゃない…!そんなのあたし知らない…!知らないのに皆して…皆して…!」 ーーー『相当負担がある筈よ。特に心に…。皆が言うことが全く記憶にない。しかも相手は自分のことを知っている。…葛藤がそこにあることは容易にわかるわ。』 大学のカフェテリアで瑠璃と会った時に言われたことを思い出す。 クソッ。俺は馬鹿だ。どこまで鈍いんだ!? 桐乃の心がこんだけ追い詰められていたってのに…。 当たり前じゃねえか!?周りが知らない人だらけで…。 それでもこいつは俺に嫌われたくなくて、あれだけ健気に振舞って…。 俺は一度でも本気でこいつの立場になって考えたことがあったか!?こいつの悩みを感じようとしたか!? こんなんで、何が、兄貴、だよ。 過去の俺をぶん殴りたくなる。 「知らない人たちが皆近づいてきて離れてく…!あたしには何にもないのに…何にもない事に勝手に落胆して失望して…!皆誰の事を言ってるの!?知らない!あたし『そんな人』知らない!」 もう桐乃の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。 「…皆誰の事を見てるの…?…あたしのことを見てよぉ…。あたしを無視しないで…。無視、しないでよぉ…。」 桐乃は膝から崩れ、そのまま肩を震わせ嗚咽する。 「無視しないで…無視しないでぇ…。」 「…桐乃。」 もう見てられなくて、俺は…。 「ぇ?」 幼子のように泣きじゃくる桐乃を、そっと抱きしめた。 「桐乃…おまえの気持ちに気づいてやれなくて、ごめん…。」 「…ぁ…。」 「俺、今までおまえを守る、おまえを離さないって思ってたけど…全然おまえのことわかってなかった…。」 「…。」 「俺は大馬鹿だよ。大馬鹿兄貴だ。妹がこんなに苦しんでるのに…。気づきもしないで…。」 「…。」 「桐乃。」 俺は腕にすっぽり収まった華奢な桐乃の身体を抱きしめながら、 「おまえのことを、もっと知りたい。知りたいんだ。昔の桐乃じゃない。今のおまえの事が…今の桐乃の事が、俺は知りたい。」 「京介…さん…。」 「なんたっておまえは俺の大事な大事な世界にたった一人の妹だからな…。ダメか…?」 「で、でも…。でも…!く、黒猫さんは…!?」 「…今、黒猫は体調を壊してるんだ…。」 「…え?」 「おまえの考えてることは勘違いだよ。さっきはあいつの介抱をしていたんだ。あいつとは恋人でも何でもない…。だって…。」 …いずれ瑠璃との、黒猫との想い出を俺は桐乃に話さなくちゃいけないだろう。 確かに俺はあいつの事が大好きだった。 愛してた。恋してた。 いつも痛くて尊大な芝居がかった口調で、だけど誰よりも優しいお人よしの、ありし日のあいつ。 でも俺が女性として黒猫を愛したのは、恋したのは過去の話だ。 今の俺のこの気持ちは、想いは、たった一人に向けられている。 …この想いはきっとこの先も変わらない。二人でその愛を育んでいけるって信じてる。 「京介さん…。」 「…これからお互いのことを知っていこう。それに…。」 俺はニッと笑顔で、 「おまえには瑠璃だって沙織だってあやせだっている。おまえを支えてくれるやつはいっぱいいるんだぜ?」 「京介さん…。」 「も、もちろん、俺を第一に頼ってくれて…いいんだからな。」 ごほん、と咳払いをする。…ちょっと語りすぎたかな? 「…ちゃ、ん…。」 「え?」 「こ、これからは、きょ、京介さんのこと、…お、お兄ちゃんって、よ、呼びますから…。」 「うぇ!?」 「だ、だって、その…。あ、あたし達、きょ、兄妹ですし…その…。」 桐乃が顔を赤らめながら上目づかいで、 「…だ、ダメ、ですか…?」 「い、いいに…。」 「はい…。」 「いいに決まってんだろ…。」 俺の返答を聞いた桐乃はパアッ顔を明らめた。 「んふふ…お兄ちゃん…お兄ちゃん…。」 おい、連呼はやめろ。…くすぐったいじゃねーか…。 …。 おいちょっと待て。 周りからひそひそ声が聞こえる。 周りを見ると俺達を取り囲むように人が巻いていた。 皆してニヤニヤしている。 ヤベ!すっかり忘れてたけど、ここ往来のド真ん中だ。 …今までよく車にクラクション鳴らされなかったな…。 「ごほん。き、桐乃、行くぞ?」 「あ、お兄ちゃん…。」 「ここは危険なのだ、妹よ。ここは危険。」 「…ぁ…。」 桐乃も俺から顔を上げ、周りの状況をようやく把握したみたいだ。 カアア… 急速湯沸かし器みたいに顔を赤らめる桐乃。 「いくぞ、桐乃。…瑠璃が待ってる。行こう。」 今はすこしでも離れたくない…。俺は桐乃に手を差し出した。 「…はい、お兄ちゃん♪」 ぎゅっと俺の手を握り締める。 男なら思わず見惚れてしまう笑顔で、俺の最愛の妹はうなずいた。 ~~~ んふふ♪んふふ♪ あたしの心の暗雲は京介さんの言葉で一掃された。 まだ戻らない記憶。モヤがかかる記憶。それでも…。 『今のおまえの事が…今の桐乃の事が、俺は知りたい。』 えへへ…。 お兄ちゃんは今のあたしを見てくれている。今のあたしを大事にしてくれている。 そのことは彼の体温から、言葉から、痛いほど伝わってきた。 (あたし、ここにいていいんだ…。) 一時期どうしようかと思っていた。外に出るのが怖くて怖くてたまらなくて…。でもここ以外に居場所なんかなくって…。 そんなあたしをお兄ちゃんは…。 『おまえは俺の大事な大事な世界にたった一人の妹だからな。』 (…ありがとう。ありがとう、お兄ちゃん。) あたしはお兄ちゃんに手を引かれ、教会の裏手を目指す。 もう結婚式は終わっていて、人もまばらだった。 つないだ手をぎゅっと握り返す。 男の人の手っておっきいな…。おっきくて、あったかい…。 ーーー『桐乃、帰ろう。』 一瞬、何かの光景がフラッシュバックする。 …あれ?いつか誰かにもこうやって誰かについて行って…。 一瞬頭の中で見えたその光景が何なのか、考えようとすると…。 「瑠璃!?」 裏手につくと、黒猫さんが…。 「瑠璃!?おい、瑠璃!?」 お兄ちゃんが声を張り上げる。 黒猫さんの顔は蒼白だった。浅く呼吸をし、ぐったりしていた。 ーーー瞬間、何かの光景があたしの頭の中に蘇る。 ーーー誰かの顔をそっと撫でる。 ーーーもう、還らない、誰か。 身体の震えが止まらない。嫌…嫌…。 「お、おにいちゃん…。」 お兄ちゃんは救急車を手配している。 その声が、音が聞こえないのにカチカチという自分の歯を鳴らす音だけが嫌に鮮明に響く。 寒い…。寒いよ…。あたしは自分の両腕を強く抱きしめる。 「桐乃!!」 肩を両手でつかまれる。 ビクッ あたしの身体は反応し、心はすぐさま元の世界に戻る。 「今からすぐに救急車が来てくれるそうだ。俺は瑠璃の家族に連絡を入れる。」 「ぁ…。」 「もしかしたら救急車には身内は一人しか乗れないかもしれない。ここに二万ある。後でタクシーを拾って来るんだ。」 「ぁ…。」 「桐乃、大変だけどしっかりするんだ…。俺達が頑張らないと瑠璃は…。」 黒猫さん、黒猫さん…。 「桐乃、大丈夫だ。大丈夫だから…。今俺達に出来ることをしよう。」 …遠くのサイレンの音が聞こえる。 その音は彼女を一体どこに連れて行こうとする音なのか…。 あたしはただ、祈るしかなかった。
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りかるど!ふぇざーちゃんぴおん 唯「というわけでこれ使ってください」 犬「わんおっ」 さや「こ、こんなものすごいもの、ホントにいいの?」 唯「はいっ、犬さんもね?」 犬「わんわんおっ!」 唯「必要な人が使ってくれたほうがいいと犬さんも」 さや「本当に…ありがとう…」ぽろぽろ さや「じゃあ、大切に使わせてもらうわね」 唯「はいっ」 さや「じゃあ明日お店見に来てくれる?」 唯「あした?」 さや「ええ、一晩でお店を改装してくれる大工さんがいるの、友達 なんだけどね。友人価格半額で100万円、ぜひお店見に来て!」 唯「ひ、一晩…」 犬「がうおっ…」 さや「その大工さんの名前ジェv 犬「がうおがうおがうおがうおがうおがうおっ」 唯「?犬さんどしたの」 さや「いえ、今のはわたしがけいそつ!だったわ」 唯「??」 唯「あした楽しみだね!」 犬「わふおっ」 憂「おねーちゃーん!」 唯「うい?」 憂「もうっ、急にいなくなって!」 憂「…この子が前に話してた犬さん?」 唯「そうだよ!ちゃんとさんぽ部員なんだっ、さっきも犬さんの おかげで元気がでたのっ」 憂「そうだったんだ…」 憂「お姉ちゃんに付いててくれてありがとね?犬さんっ」なでなで 犬「わんおっ」 唯「俺は大したことしてないよ、、って」 憂「ふふっ、変なのっ」 憂「じゃあ帰ろっ、お姉ちゃん」 唯「うん、今日はありがとねっ犬さん!」 犬「わおおっ」 唯憂「ふふっ」 つぎのひ! 唯「いってきますっ」 憂「うん、いってらっしゃい!はいこれましゅまろたまご弁当っ」 唯「わあっ、ありがとう!だいじに食べるからっ」 唯「ふふっ、楽しみだな~」 唯「あそうだっ、お店見に行くんだった!」 唯「時間はだいじょうぶだっ、行こう!」 りかるど!前 唯「…」 唯「すごい…」 唯「すっごくっ 和「きれいになったわね、ちゃんとおしゃれだし」 唯「!!」 唯「!」だっ 和「まちなさいっ!!」 唯「!」びくっ 和「あんた…最近どうしたの?急に暗くなったり逃げたり 学校やすんだり」 唯「…」 和「一応心配してるんだけど、わたし」 唯「っっ」うる 和「あんたは…わたしにはとっても大切な人なんだから、 かなり心配したわ」 唯「…」うるる 唯「でも…のどかちゃんにはもっと大切な人がいるでしょ?」 和「え、それは 唯「いいよっ、弁解しなくて」 和「…」 唯「愛する人ができたんだもんね、わたしなんて」 和「えっと、なんの話?さっぱりなんだけど」 唯「?」 唯「え、だから!告白されたじゃんっこの前!」 和「え?唯告白されたの?」 唯「えっ」 和「えっ」 \ 唯「こ、この前だよっ!ちょっと人気のないところでかわいい女の子 につ、付きあってって!」 和「わたしが?…??」 唯「でのどかちゃん、責任もって付きあうって…?」 和「あー!生徒会の手伝いの話だわ、それ」 唯「…」 唯「い、いまなんと?」 和「だからそれ、わたしが急にやめたせいで終わんなかった 生徒会の残業の話よ」 唯「」 和「まあ、迷惑かけたのは確かだから自分の後始末ぐらいは 責任もって付きあってあげないとでしょ?」 唯「じゃ、じゃあわたし…////」 和「完璧に勘違いしてたのね、見事なまでに」 唯「~~~っっ」 和「もしかしてそれがイヤで休んでたの?あんた…」 唯「い、いやぁっ////」 和「じゃああんた」 和「わたしのことが好きなの?」 唯「…っ」うるうる 和「…やれやれ」 唯「の、どかちゃ」 和「ホントにわたしのこと好きなの?唯」 唯「…」 唯「うん、すきになっちゃったんだよ」 和「…そっか」 和「じゃあわたしも唯のこと好きなのかも」 唯「え?どゆ、こと?」 和「唯がわたしのこと好いててくれたんなら、わたしも唯のこと 好いてたんだと思うのよ」 和「ほら、恋愛ってけっこうそんなもんって言うじゃない?」 唯「そんな、でもそれじゃあのどかちゃんの気持ちが本物か わかんないよ…」 唯「ほんとにわたしのこと好きなのか…」 和「知りたいの?」 唯「うん、じゃないとこわいよ…」 和「じゃ、目つぶって?」 唯「?」すっ 和「…」 和「んっ」ちゅっ 唯「~~~っ」 和「どう?わたしの気持、わかるでしょ?」 唯「う、うん」 唯「わたしと、同じ気持ちだ」 和「…好きだよ、唯」にこっ 唯「のどかちゃんっ、わたしもだよ」 唯「いつもこんなにわたしを幸せにしてくれる 和ちゃんを」 唯「好きになれてよかった」 唯「のどかちゃん」うるうる 和「唯」うる さや「…」 犬「…」 唯和「…」 唯和「!?」 さや「あら?おじゃまだったかしらっ?」 犬「わんおっ」 和「いいい、いつからっ」 さや「まちなさいっ、からよ!」 唯「最初から////」 さや「いいわね~、せいしゅん!って感じで」 犬「おっ!」 和「な、ななな」 さや「あ、そうだわ!お店に来て?朝からすっごいお客さんなんだからっ」 唯「//ほんとですか!?」 さや「ええ、全部さんぽ部さんのおかげね!」 さや「ほら早くっ」 さや「みなさーん!この2人といっぴきがっ、素敵なお店を わたしに」 さや「そしてみんなに素敵なさやさんを出会わせてくれた、 さんぽ部さんでーす!」 お客さんたち「さんぽ部ありがとーーーっ」 唯「ええ、そ、そんな!」 和「ていうかわたしホントに何がなんだか」 憂「なんだかすごくにぎやかだな、あのカフェ」 憂「??あれお姉ちゃんたちじゃん」 憂「おねえちゃーんっ」 唯「あ、ういぃ!」 おわり 戻る
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120 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) 2011/03/29(火) 02 09 11.79 ID uH4czZPg0 俺の名前は高坂京介。ごくごく平凡な高校生だった。 だったというのは、この春、俺は高校を卒業し、大学生となるからだ。 そして今日は、大学で使う(予定)の電子辞書を買うために、幼馴染である田村麻奈実と近所の電気屋へ向かう予定だ。 ……いかんいかん、こんなこと話してる間に時刻は12時55分。約束の時間に遅れちまう。 俺は自室のベットから立ち上がり、下へ降りて行った。 『なんであんたが出てくんのよ!?』 電話でもしているのだろうか、リビングのほうから馬鹿でかい声が聞こえてくる。 声の主は高坂桐乃。俺の妹だ。 この妹には何度も何度も困らされてだな……いや、やめておこう。この話をすると文庫本7冊ぐらいはかかりそうだから。 そして今も、関わるとまずいことになりそうな予感でいっぱいだ。 ここは関わらぬのが得策っ!長年の経験がそう言っている! 「行ってきます」 俺はさっさと家を出た。 自宅から歩いて数分、田村屋へと到着し、俺は押しなれたインターホンを押す。 ピンポーン ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきて扉があいた。 「ハイよっ!ってなんだアンちゃんか」 「ようロック、久しぶりだな。麻奈実はいるか?」 「オウいるぜ、ねぇちゃーん!!アンちゃんが来たぞぉい!!」 「今いくよぉ」 今度はパタパタと足音が聞こえてきて、俺の幼馴染でありお婆ちゃんでもある麻奈実が出てきた。 「少し早かったか?」 「そんなことないよぉ」 「そうか、じゃあとっとと行っちまうか」 「うん、そうしよっか」 俺たちは田村屋を後にし、電気屋へと向かった。 121 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) 2011/03/29(火) 02 10 50.43 ID uH4czZPg0 俺たちは三十分ほど歩き、電気屋についた。 運がいいことに、渡った信号はすべて青で、30分ほど早くつき、時刻は14時ちょうど。 「電子辞書は2階に売ってるみてぇだな」 俺は店内案内板を見て言った。 まぁアキバの電気屋を散々見た俺は、案内板など見なくてもどこに何があるのかなんて感覚でわかるけどなっ! ……なんか悲しくなってきた。 「どうしたの?京ちゃん」 「なんでもねぇよ」 電気屋のことを詳しく知りすぎてて悲しくなってました、なんていえるか!! 「はぁ~、電子辞書って言ってもいっぱい種類があるんだねぇ」 「まぁどれ選んでも大した違いはねぇだろ」 と言ったものの、どれを選んだらいいものか全くわからず、結局店員のお世話になったのは内緒だ。 時刻は14時45分。 俺は真っ黒の電子辞書、麻奈実は俺と同じ機種の真っ白の電子辞書を購入し、本日の予定はこれで終了だ。 一階へ降りる途中、さっきまで俺たちがいた電子辞書のコーナーに桐乃がいたような気がしたが……まぁ気のせいだろう。あいつがこんな小さな電気屋に来る訳もないしな。 「……キ……ア…………キィ!!」 店を出て数分歩いたところで誰かが俺を呼んだ気がした。 振り向く →振り向かない 気のせいだろうと俺は再び歩き出そうとした瞬間 「うぉっ!?」 俺は後ろから誰かに突き飛ばされた。慌てて後ろを振り向くと―― ドン!!! 脳まで響き渡る鈍い音が聞こえ、喉が一瞬にしてカラカラになる。 俺は目の前で起こった出来事を全く理解することができなかった。 「桐……乃?」 小さな声でゆっくりと呼びかけた。 なんだ?どういうことだ?目の前で妹が桐乃が車に轢かれた? 「桐乃!!」 俺は倒れている桐乃へ再び声をかける。今度は強く大きく。 返事は返ってこなかった…… 122 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) 2011/03/29(火) 02 12 34.19 ID uH4czZPg0 俺の妹が死んで一週間が経った。死因は交通事故、酔っ払い運転。 ……そう、分かっているのに実感が湧かない。「妹」が死んだという実感が。 いや分かりたくないだけなのかもしれない。 親父、お袋、麻奈実、黒猫、沙織、あやせ、みんな口をそろえてこう言う。 「お前は悪くない……悪いのは加害者だ」 「アンタは悪くないわ……」 「京ちゃんはわるくないよっ!」 「先輩…貴方は悪くないわ。自分を責めないで?」 「京介氏!京介氏は決して悪くございませぬ。どうか自分を責めないでください」 「お兄さんはっ……悪くないですから……」 なんでだ?俺があの時「振り向いて」いれば桐乃は……助かったのかもしれないのに。 俺がまた深い深い自己嫌悪に陥りそうになったとき―― Prrrrrr prrrrr prrrrrr 電話が鳴った。 「誰だよ……」 俺は誰からの着信かも確認せず、電話に出た。 『あっ、もしもしあやせ?たしか今日暇だったよね?』 聞き間違えか? いや聞き間違えるわけがねぇ! 「桐乃……なのか?」 『なんであんたが出てくんのよ!?』 「っ!?なんつー馬鹿でかい声をだしやがる!?鼓膜が破れるかと思ったわ!」 『うっさい!!あやせの携帯から、なんであんたが出てくんのよっ!!』 落ちつけ……俺がいま電話している相手は、死んだはずの桐乃。 ……どうなってやがる? 『早く答えなさいよっ!』 「ちょっと待て、これは俺の携帯だぞ?」 俺は現状に戸惑いながらも真面目な声で言った。 「今から俺の質問に答えてくれ」 『な、なんなの?』 「お前は今生きているのか?」 ……なんつーアホな質問だこれっ!? 『はぁ?何言ってんの。アンタ頭大丈夫?』 うぐっ、さすがに今回ばかりは否定できねぇぜ。 「じゃあ今日は何日だ?」 『チッ……いい加減にしてよね?』 「いいから。何日だ?」 『3月の20日だけど、それがなに?』 「マジかよ……」 俺は思わずそうつぶやいていた。 だって信じられるか?今日は27日だぜ? すなわちこの電話は過去から繋ってきたことになるんだぞ? そんなのアニメやマンガの話だろ? ……だけどこれは違う。現実だ。 『で?なんなの?どういうことなのか説明してくれる?』 「桐乃、黙って俺の話を聞いてくれないか?バカなこと言ってると思うだろうが嘘じゃない」 『……言ってみなさいよ』 「俺の今日の日付は27日なんだ……たぶんこの電話は過去から未来へと繋がっている」 『アンタ自分が何言ってんのか分かってんの?』 桐乃から呆れたような声が聞こえてくる。いや実際に呆れてるのだろう。 俺だって今自分で言ったことが信じきれてねぇ。 だけど―― 「ああ、分かっている。嘘じゃねえ。頼む信じてくれ」 『そんなの信じれるわけn「20日にオメェが死んじまったんだよ!!俺は今死んだはずの奴と今電話してんだよ!」 『何……言ってんの?え?アタシが死んだ?』 「…………」 『ちょっと?え?』 「交通事故で……俺をかばって……」 気づくと俺は泣いて桐乃に頼んでいた。 「頼むっ!今日1日家から出ないでくれ、そしたら未来が今が変わるかもしれねぇ。俺はお前に死んでほしくなんかねぇんだよ!」 ブツッ、ザザーー 電話が切れた―― 123 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) 2011/03/29(火) 02 15 07.20 ID uH4czZPg0 『もしもし桐乃?』 「えっあ、あやせ?」 『どうしたの?桐乃?』 「えっと……あっと……や、やっぱ後で話すね!」 『え?あ、うん』 ……夢だったのだろうか? 未来の兄貴に電話がつながって?アタシが死んで???? 冷静になり、兄貴の言ったことを考える…… アタシの兄貴は冗談であんなことを言う人間ではない。ましてや泣きながらなど。 つまり“あの”兄貴の言ったことは本当のことなの? 考えたところで答えが見つかるはずもなかった。 兄貴曰く、アタシは兄貴をかばって死んだらしい。 そこでひとつの疑問が頭の中に浮かび上がってきた。じゃあアタシが兄貴をかばわなかったら? 最悪の結末を考えてしまい、アタシはリビングを飛び出し、兄貴たちが向かった電気屋へ走っていった。 時刻は13時45分。 アタシの脚なら走って15分あればつくはずだった。 「なんでこんな時に限って信号が赤ばっかなのよ!?」 運が悪いことに、渡った信号はすべて赤。 30分ほど遅れて時刻は14時30分、ようやく電気屋へとついた。 兄貴たちが何を買いに来たのか知らないアタシは、まずは一階をしらみつぶしに探すことにしたけど全くみつからない。 この階にはいないのだろうか。アタシは二階を探すことにした。 時刻は14時45分。 エスカレーターに乗っている時間が惜しい。 アタシはエスカレーターを一気に駆け上がり、目についた電子辞書のコーナーへと向かった。 しかしここにも兄貴たちの姿はない、だんだん不安と焦りが募り、口から弱音がこぼれていた。 「ダメだ、見つからないよぉ」 アタシは頭をぶんぶんと振り、泣いてしまいそうになった自分を奮い立たせ、再び兄貴を探し始めた。 「あっ、あれ!」 二階の窓からふと外を見ると、兄貴らしき人物が地味子らしき人物と歩いている。 間違いない!アタシがあの二人とほかの誰かと見間違えるわけがない。 今まで何度も見てきたあの二人の後ろ姿……。絶対……絶対見間違えるわけがない。 アタシは店を飛び出し、二人のもとへ急いだ。 「はぁ……はぁ……はぁはぁっ……」 やっと……追い……ついたっ…… アタシはカラカラになった喉を振り絞り大声で叫んだ。 「アニキ……アニキィイィィイイ」 124 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) 2011/03/29(火) 02 17 40.17 ID uH4czZPg0 桐乃が……俺を呼んだ気がした。 →振り向く 振り向かない っ!? なんだあの車!?こっちに突っ込んで来てやがる!? 俺は考えるよりも先に桐乃のもとへ向かい、桐乃を抱え、ハリウッドもびっくりな動きを繰り出し、突っ込んできた車から回避することに成功した。 「大丈夫か桐乃!?」 「だいじょうぶだよ……あんたは?」 「ああ、大丈夫だ」 少し腰をひねったけどなっ!慣れないことはするもんじゃねーな。 ……だけどもし俺が「振り向かなかった」ら考えただけでぞっとする。 だが、これだって相当な事故だろう。あ~あ、電子辞書がつぶれてやがる。 「きょうちゃん、桐乃ちゃんだいじょうぶ!?」 「ああ、俺も桐乃も怪我はねぇよ。お前は大丈夫か?」 「うん、だいじょうぶ」 この交通事故はどうやら運転手の酔っ払い運転が原因だったらしい。翌日の新聞に小さいながらも記事が載っていた。 事故の日の夜、俺は桐乃からこんな話を聞かされた。 「実はね……」 まったくアニメやマンガじゃねぇんだから、そんな話があるわけねぇだろ。 ……しかし、俺には桐乃が嘘を言っているようには不思議と聞こえなかった。 ~end~
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/35-40 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない 俺はやっとの思いで家へと帰宅した。 家まで帰る道中は身体が鉛のように重たく感じて、まっすぐ歩くことすらままならなかった。 ときおり壁に手をついて身体を休めなければ家にたどり着くこともできなかったかもしれない。 玄関の扉に手をかけて開けるという日常の当たり前の動作にすら気だるさを感じつつ、ゆったりと家の中へと入る。 するとまるで計ったかのようなタイミングで桐乃とはちあわせになった。ちょうど階段から降りてきていたであろう桐乃は俺の姿を確認するなり何かを言おうと口を開いたが、すぐに俺の異変に気付き驚いたように口元を手で覆ってみせた。 手で隠れる前に見えた口の形から、きっと「おかえり」の四文字を言おうとしていたのだろう。少し前なら桐乃の口からは到底聞くことが出来ないであろう貴重な四文字であったが、 あいにく今の俺にはそれの返答である「ただいま」という四文字を言う気力も残っていないため、途中で桐乃の口が止まってくれたのはありがたかった。 そして俺は、顔をうつむき加減にしてゆっくりと桐乃から視線を外す。 「ちょっ……! えっ、えぇっ!?」 俺は何も言わずに桐乃の横を通り抜けていく。 一度飲み込んだ言葉のせいで二の句がつげないでいるのか、桐乃は口元をおさえ狼狽したまま言葉にならない言葉をこぼしている。 俺はそんな桐乃の様子を気に止めることもなく……もとい気に止める余裕も無く、階段を上ってゆく。家の扉を開ける動作ですら気だるさを感じた俺にとって、 階段を上るという作業は偉い修行僧に科された厳格な試練に匹敵するほどの苦行であった。しかしさすがに、この俺の精神的に疲れ果てた身体を何のプライバシーも無いリビングで癒すことはできそうにない。 ひとまず誰にも聞かれることなく誰の視線も届かない場所で、ため息を一つぐらい吐かせてもらいたい。 「……ちょっと、あんた。と、とっ……止まりなさいよ!」 それでも妹様は何とか言葉を紡いできて、アメリカから帰ってきても昔と変わらぬ高圧的な命令口調で俺を呼び止める。アメリカで説得したときに似たような罵声を食らったが、日本で喰らったのは数ヶ月ぶりだった。 どことなく歯切れが悪いのは俺と同じ帰国疲れのせいか、俺の様子がおかしいことに気付いた戸惑いか、はたまたその両方からか。 俺は階段の途中で足を止めたが、決して振り返らない。一歩でも振り返ればバランスを崩して階段から転げ落ちてしまう予感がするほど、自分が心の底からガタガタになっていることがわかっていたからだ。 「……なんか用か?」 覇気の無い声色だった。一瞬これは本当に自分の声なのかと、自分自身でも疑ってしまうほどに生気がない。 「いやっ、用っていうか……。ど、どうしたのよ?」 俺の覇気の無さが乗り移ったのだろうか。主語の無い、それでいて歯切れの悪い質問が階段すら上るのに億劫となっている俺の足にまとわりつく。 これがいつもの桐乃の勢いに任せた態度だったなら何の後腐れも無く足を進めていただろう。 「…………」 それでも今の俺に桐乃と長く会話をする自信は無かったので、ひとまず無言のままゆったりと階段を上りきる。その間、桐乃はずっと黙って待っていた。 そうしてから俺は身体を半分だけ階段下の桐乃に向けて一瞥する。何かを問いたげな瞳がライトブラウンの前髪の奥からじっと俺を捉えている。 「……疲れた」 「えっ?」 唐突に俺の口からこぼれた言葉に、桐乃は一瞬呆気に取られた表情をする。 「カバンを持ってくのも面倒なくらい、疲れてんだよ。だから……カバンここに置いとくから、後で部屋に持ってきてくれ」 俺はそう言いながら無造作に、それでも勢い余って階段から桐乃が居る下へと落ちないよう心配りをしながらカバンを自分の足元近くに放り捨てる。 まぁなんだ、さっきの俺の一文の中に含まれた、『疲れてるから、話はひとまず後で俺の部屋で』という意図ぐらいは桐乃なら読み取ってくれるだろう。 俺はカバンを置くとすぐに自分の部屋へと歩き出す。それでもまだ階段の下の方から桐乃が俺を制止しようとする声が聞こえたてきたが、決して立ち止まったりも振り返ったりもしない。 もう本当にそんな余裕は今の俺に無いのだ。俺は自分の部屋の前にたどり着くと、素早い動作で部屋に入りトビラをしっかり閉めて、あたかもそれで最後の力を使い果たしたかのようにすぐさま力無くベッドへと突っ伏したのだった。 空白の時間とはまさしくこのこと。いろいろな意味で衝撃の連続であった今日、俺の頭は今までの反省だとかこれからどうするだとか考える余裕はなく、ひとまず何も考えない時間を欲していた。 意識はあったので眠っていたわけではないと思うが、部屋に入ってからの俺は何も言葉を発せず考えず、ただベッドの上で静寂を保っていた。 そんな半ば夢心地の俺を現実へと引き返したのは、コンコンッという最近では聞きなれぬ木を叩くどこか小気味良い音。それは扉をノックする音であった。 「…………」 俺は無言でベッドから体を起こす。へとへとだった体力も幾分か回復している。 「誰だ?」 扉の外にいる人物はおそらく桐乃であろうと半分確信しながら、俺は部屋の外にいる人物にそう話しかけた。お袋はノックなどしないし、親父に至ってはまだ帰ってきてもないだろうから、桐乃以外の人物が俺の部屋の前にいるなどありえない。 それでも、奇跡を期待して良いのなら。ひょっとしたら――― 「あたしよ。入るからね」 聞きなれた、それでもアメリカから帰ってきたばかりで少し懐かしさも感じる強気な声色。それはまごうことなき俺の妹の声だ。 そうして俺の扉がガチャリと開いて、片手に俺の学生カバンを持ち、もう片方の腕に何かを乗せたお盆を持った桐乃が部屋に入ってきたのを目で確認する。ベッドに座る俺に微妙な視線を向けつつも、桐乃は俺が先ほど預けたカバンを無造作に床へ置き捨てた。 予想通りの展開に驚くことはせず、それでも俺は一瞬だけ残念だと思ってしまう。 ひょっとしたら、俺の心配をしてくれた麻奈実が―――、という展開を、無意識で期待してしまっていたのだ。 現実を知ってからだと、これほど馬鹿みたいな妄想もない。くだらなすぎて、心の中で嘲笑すら出来ないレベルの冗談だ。 「はぁ」 「チッ。ため息つきたいのはこっちだっての」 辛気臭い顔を浮かべていた俺が気に食わないのか、桐乃は舌打ちまじりに毒づく。昨夜の晩餐で見た桐乃の姿は今やあとかたもなく、ある意味で本当の俺の妹が戻ってきたでも言うべきだろうか。 「……で、何があったのよ?」 そう言いながら桐乃はベッド上で項垂れている俺に視線を合わせてきた。それと同時に桐乃から手渡されるコップ一杯の水。どうやら先ほど片手に持っていたお盆にはこれを乗せていたらしい。 「……何もねぇよ」 「そんなに声嗄らしといてよく言うわ。……良いから話しなさいよ」 麻奈実の家を出る辺りからずっと涙を流していたからだろう、俺の声は確かに嗄れて掠れた声になっている。 発声するたびに喉のいがらっぽさが自分でも気になるし、こんな声で何もないなどと言っても説得力は皆無。ずっと涙が流れつづけていた顔の方はもっと酷いことになっているかもしれない。 「…………」 だからこそ俺は無言を決め込んだ。冷静に考えたら桐乃は俺がつい先日アメリカから連れ戻してきたばっかでまだまだ不安定だし、なにより今回の一件には麻奈実が深く絡んでいる。 どうしてかさっぱりわかんねぇが、とにかく桐乃は麻奈実のことを大が付くほど嫌っている。もしもいま俺が麻奈実のことで泣くほど悩んでいるなんて知ったら、不機嫌を軽く通り越して憤慨し、そのままの勢いで再びアメリカに行ってしまうかもしれない。 さすがに本気でアメリカへ戻るなどとは考えにくいが、ひとまず桐乃のためを考えたらここは今日の田村家での出来事は黙っておくべきだ。 「ねぇ、何か言いなさいよ」 桐乃の翡翠色の瞳が真っ直ぐに俺の両眼を捉えてくる。留学前より伸びたライトブラウンの前髪の隙間からのぞくそれに映る俺は、一体どんな顔をして対峙しているのだろうか。 少なくとも兄としての威厳がある姿ではないだろう。 目の前に差し出されたままのコップに映る自分の顔が歪んで見えるのは決して動揺のせいではないと、まるで強がりのように俺は桐乃の手からコップを奪い取り飲み干してみせる。 キンッと冷えた水が喉を一瞬で潤し、またしても限界ギリギリまで削れていた俺の体力を僅かにだが回復させてくれる。 「桐乃、お前には関係ねえことだ。まぁいろいろあったわけだが……お前が気にすることじゃない」 ゲームで言うなら瀕死状態から肉眼で確認できるまで回復した体力ゲージだけを頼りに、俺は桐乃の追及に一切答えないという強行策に打って出た。 喉が潤ったことで、声色も普段とあまり変わらないぐらいに戻った気がする。顔の崩れっぷりは確認できないのでどうかわからないが、麻奈実に殴られて未だヒリヒリとしている顔の痛みが今じゃ気付け薬となっているのは不幸中の幸いか。 とにもかくにも、俺はアメリカから帰ってきてまだまだ不安定で無茶をさせられない桐乃に、今日の出来事を何一つとして漏らすつもりはなかった。 「…………あっそ、そういう態度とるんだ」 その一方で桐乃はというと、俺の言葉を聞いてからたっぷりと間を置いてから、目にも止まらぬ速さで空になった俺の手中のコップを奪いさる。 それは桐乃の怒りの意思表示だったのか、しかし俺がその一瞬で垣間見た桐乃の顔には、どこか悲しげな色が浮かんでいた気がした。 「わかった、もういいわ。でも一つだけ答えなさい。これだけは答えてくれないと、あたしこの部屋から出ないから」 俺がそんなことを感じていたのも束の間に、桐乃は俺が数か月前まで見慣れていた高圧的で眉を吊り上げた不機嫌そうな表情に戻っていた。 しかしこのとき、俺は桐乃の言葉に内心ホッとした。自分の納得できないことはとことん追求する桐乃のことだから、 俺がいくらはぐらかしても言うことを聞かず長期戦になることを心のどこかで覚悟していた。ところが桐乃は意外にもあっさりと手を引いてくれるらしい。 さすがにここまでへこんでいる俺の姿に情が移ってでもくれたのか、何はともあれ助かった。ひとまずこの桐乃の一つだけ答えろという質問を乗り切れば、今の所は万事オーケーだ。 まだまだ休みたりていない俺の身体と精神が、早くもう一度一人で何もすることのない安らぎの時間を求めている。 それでも百里を行く者は九十里をなんとやら。次の瞬間、神妙な顔つきの桐乃が問いかけてきた質問に、俺は平静を保つことなど出来ず驚いてしまった。 「その殴られた顔は、一体誰にやられたのよ……?」 心の底から俺を心配しているような、そんな優しげな声色。それと共に向けられてくる憂いを込めた視線にほだされてしまう。何となく、それは卑怯だろうと言いたくなる。 そんな顔をされたら、兄として平静を保てやしない。……というか、ちょっと待てよ!? 「なっ! なにを急に……ていうか、なんでおまえ俺が殴られたって知ってんだよ!?」 俺の身体が酷くボロボロと言っても、何か特別目立った外傷があるわけではなく、それはあくまで精神的ショックで俺がそう感じているだけに過ぎない。 それじゃなんで桐乃は、俺が麻奈実に顔を殴られたことを知っているんだ? 俺が突然の自体に目を丸くしていると、桐乃はなんてことはないといった様子で返事を紡ぐ。 「あっそう。ひょっとして転んだだけかとも思ったけど、やっぱり殴られたんだ。その青アザ」 さっき俺が聞いた優しげな桐乃の声はやはり空耳だったのであろうか。今では飄々とした口調で、俺の口からあっさりともれた自白内容をなぞっている。 「っ!? き、汚ぇぞ桐乃!」 かまかけてやがったなこいつ! ていうか、青アザ出来てたのかよ。桐乃に言われるまで全く気付かなかった。 麻奈実の家に帰るまでに鏡張りのショーウィンドウなんておしゃれなものがある店は近所にないし、家に帰っても一直線に俺は部屋に入ったから、洗面台の鏡も見ていない。気付いてなくて当然といえば当然だ。 桐乃に指摘されたアザが出来ている頬をさすっていると、いつの間にか俺に視線を合わせることを止めて、腰に手を当てながらまるで貧乏人を見る成金のように俺を見下ろしていた。 「汚いのはどっちよ、このバカ兄貴」 そうして放たれた、いわれのない罵倒。 何を突然言い出すんだこいつは? 俺がいつ汚いことをしたと言うのか? はっきり何か言い返そうかと思考を巡らすが、桐乃の二の句の方が早かった。 「……あたしはね、前も言ったけどあんたに、その……け、けっこうどころじゃなくて……かなり感謝してるの。 私のオタク趣味がお父さんとかあやせにばれたときとか……今回のアメリカの件だって、あっちじゃ強がってたけど……日本に帰ってこれて、本当に良かったと思ってる」 声色はいたって普通。でもどこか顔色は赤みがかっていて、その普通の声が必死に照れ隠しをしているようにも思える。 罵倒から一転して桐乃の突然の感謝に、俺は内心とまどった。 「それもこれも、全部あんたの……兄貴のおかげだから」 ゆっくりと告げられる言葉に、少しずつ、ほんの少しずつなのだが。傷ついた俺の何かがいろいろと癒されていくのを感じる。 「だからあたしは、何ていうか……恩返しがしたいのよ。あたしに出来ることがあるのなら、何でも言って欲しい。あんたほどうまくできるかわからないけど、話を聞くことぐらいは、……人生相談にのってあげることぐらいなら出来るし」 あの桐乃の口から出た言葉に俺は正直耳を疑ったね。いろいろ精神的に参ってたところもあるし、最初は俺の生み出した幻影が話す幻聴かとも思った。でも俺のことを見下ろしながらそう言ってくれる人影は、確かに俺の妹の桐乃であった。 わざわざアメリカにまで迎えに行ったんだ、見間違えるはずがない。 「それなのにあんたってば、自分が困っててもあたしに全然相談しないし。それどころか、あたしには何も関係ない。これは自分の問題だ。とかなんとか言っちゃってさ、あたしに何も話そうとしないじゃない。……それって、卑怯とか思わないワケ?」 「いや、卑怯って言われても……。俺はお前の兄貴だから、助けるのは当然っていうか、俺が助けたかったから助けただけで」 「それが卑怯って言ってるの。あたし、ずっとあんたに助けれっぱなしで、いい加減に借りの一つや二つぐらい返したいの。だからね、あたしにもあんたが何で悩んでるかぐらい話しなさいよ。 ……あたしは、あたしはね。あたしがあんたを助けたいから、助けるだけなんだから」 おぉっ、おぉぅ……。何ということだ。俺は今、心の内から湧き上がる感動の涙が止まらない。さっき桐乃から貰ったコップの水が全て涙に変わり、心の中で滝となって壮大に流れているビジョンが俺の瞼の裏には映っている。 桐乃の口から俺のためになどという言葉を聞けて、それだけでも今までこいつのために使ってきた体力が全てカムバックしてきそうだ。 その気持ちだけで十分だと言いたかったが、せっかく桐乃の法からここまで言ってくれてるんだ。例え兄貴だろうと、たまにはその厚意にあずかっても良いだろう。 「じ、実はだな…………麻奈実と」 「ハァ? その怪我、ひょっとしてあの地味子との痴話喧嘩が原因なワケ? ……………………やっぱなし。さっきの相談がどうのこうのっての、全部無し。ていうか、ウザッ」 頭の中で劇的ビフォーアフターのBGMが流れたような気がした。まぁなんということでしょう。 麻奈実の名を聞いた途端、俺の妹の顔は滅多に見れない優しげな表情からいつもの無愛想で侮蔑するような視線の顔色に、天使の歌声のような声色はたちまち不機嫌な声色に。 前言撤回だ。さっき流した心の涙を返してくれ。人間の涙ってのは血液から出来てるんだぞ。ただでさえ精神と肉体がボロボロの上に貧血まで起こさせる気かよ。 というか、あいかわらずお前はどんだけ麻奈実のこと嫌いなんだよ。いやもうこれは嫌いとかいうレベルじゃないね。もうお前末代まで麻奈実のこと祟るつもりだろうよ? 「つうかさぁ、さっきその顔殴られたって自白してたケド、まさか地味子に殴られたワケ? あの超お人好しに殴られるって、逆に何すれば殴られるのよって聞きたいわ。まっ、多分あんたが十割悪いんだろうケドさ」 あぁそうだよ。ついさっき俺の相談を聞くと言っておきながら、今やお前は俺が一番気にしているデリケートゾーンをハイヒールで踏み躙ってきたよ。元々似てない兄妹なんだから、無理矢理そんなところ似せてこなくて良いって。 麻奈実のことをずっと傷つけていて、今日もまた傷つけて、そして殴られた。もう二度と普通に話せなくなったであろう幼馴染の姿が、今や涙も干ばつした瞼裏に浮かび途端に身体中を寒気が走った。 俺はもう桐乃と話す気力を完全に失い、寝返りを打って桐乃に背を向けた。 「…………チッ。なんか言いなさいよ。ウザッ」 すると桐乃は俺が何の反応もしないのが気に食わないのか、それだけ言い残して桐乃はドタドタと音を立て部屋から出て行った。 怒りにまかせてドアを思い切り閉めたバタンッという音が、アザが残る頬に小さく響いた。 「ほんと、ウザすぎっ。なんで悩み事となるといつも全部アイツの事なのワケ? ……助けたいのに、助けたくなくなるじゃん。バカ兄貴」 ドアを挟んでもなお俺を罵倒する桐乃の声がする。後半部分は何やら口ごもっていたのでよく聞こえなかったが、きっとろくでもない罵倒の一部であろう。 そんなものを聞取るために体力を使う気など俺にはさらさらなく、再び目を閉じて思考も完全停止させることで、ひとまずの体力回復をはかるのだった、
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アッー!リスちゃんの好きな言葉一覧 大まかに列挙したつもりですが、リストにないものもいっぱいありますので追加オナシャス! 淫夢シリーズ系 登場人物 TDN TNOK DB HTN KYN YJSNPI SBR 名言 アッー! オナシャス! クルルァ よつんばい 汚い○○だなぁ ここはお前初めてか?力抜けよ オゥ おう早くしろよ 犬の真似 オフッ! ンギモッヂイイ!! イグッ! スンマセンでした! やべぇよやべぇよ・・・ しゃぶる そんなんじゃ甘いよ アツゥイ! 自分を売る その他 淫夢 免許証 一転攻勢 あずま寿し (棒読み)、(棒) たまげたなぁ うわぁこれは○○ですね・・・ なぜ、○○なんだ これは夢なのか現実なのか・・・ 危険な領域 893 くそみそテクニック系 くそみそ ヤマジュン 阿部さん うートイレトイレ 公園のトイレ ウホッ! いい男 やらないか ハッテン場 ホイホイ ノンケ、ノン気 食っちまう いいこと思いついた ションベン あぁ・・・次は○○だ パンパン ところで○○を見てくれ こいつをどう思う? すごく・・・○○です し~ましぇ~ん その他 ホモセックスを連想させる言葉 ホモ、ゲイ、GAY 男性器、またはそれを連想させる言葉(記号) ケツの穴、またはそれを連想させる言葉(記号) ホモ同士が合体してることを連想させる言葉 BL ショタ、男の娘 アニメキャラ 海東 ヤン 古泉 うさぎさん サム 山田 アニメより ロマンチカ 赤いスポーツカー 西洋骨董洋菓子店 ミラクルトレイン その他・元ネタ不明のもの 阿部マリア ペルノ 浣腸に抗うなよ ヘブン状態 僧衣を脱ぐ 薔薇族 蘇民祭 あったかいなりぃ・・・ ガチムチ 兄貴 イサキ はよう糞まみれになろうや 歪みねぇな 精霊会議 括約 オッスオッス
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235 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/21(水) 21 57 42.92 ID WweXFcaTO [1/2] 京介のことを想いながらウキウキ買い物するきりりんを、陳列棚の陰から眺めたい 239 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/21(水) 22 10 46.33 ID UuizB8wr0 235 文章書くのはうまくないが、こういう妄想を受信した 今日は京介受験勉強で遅くなるから、あたしが京介のとこいって料理作ってあげよっと♪ フンフフーン♪なにつくろっかな~? そういえば、京介って何が好物だったっけ?んー、これといって思いつかないな~ でも、京介のことだから、「桐乃の作るものならなんでも好物だぜ!」とかいいそう・・ ほんっとにキモい!キモすぎ!マジシスコン♪ そんなシスコンのためにカレーでも作ってあげようかな?やっぱりうちの料理っていったら カレーだもんね! あ、そうだ!材料買うまえに京介にメールしとかないと! 勉強するっていってたけど・・・多分地味子と一緒に勉強してるよね フヒヒwwじゃあ、ちょっと驚かせてあげようかなww 「今日はあたしが夕飯作ってあげるから、勉強終わったらすぐ帰ってくること! 待ってるからね(ハートマーク)」ピッ これでヨシ! あいつがどんな風にうろたえるか、フヒヒww楽しみ♪ さぁーてとっ、買い物いこーっと! まだ買い物していないが、買い物に出かけるときはこんなカンジかなぁ? ちょっとデレになりすぎてるかもだが -------------