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前ページ次ページ重攻の使い魔 第10話『高貴なる空賊』 空賊に捕らえられ、ルイズたち一行は雑然と荷物が積まれた船倉へと押し込められていた。メイジである彼らは皆同様に杖を取り上げられ、手も足も出ない。扉には鍵が掛けられ、押しても引いてもびくとも動かなかった。マリーガラント号の船員達は自らの船を曳航させる作業を強要されているらしい。貴族と平民を隔離する目的もあるのだろう。ここには平民の姿は見えなかった。 皆が押し黙る中、海賊船にしては随分としっかりと造られた扉が軋みを上げながら開かれる。薄暗い船倉の中に海賊の一人であろう、小太りの男が入ってきた。男はルイズの前まで来ると、細い腕を無造作に掴んだ。 「おい、桃色頭のチビ。頭がてめぇをご指名だ。ついてこい」 「ま、待ってくれ。彼女は僕の婚約者なんだ。手荒なことはしないでくれ、頼む」 自らの婚約者である少女が単独連れて行かれそうになり、流石にワルドが割って入る。しかし、空賊の男はそんなワルドの顔を見ると、小馬鹿にした表情となり端正な顔に唾を吐いた。 「俺に指図できる立場だと思ってんのか、ええ? 他人のことより自分の未来でも心配しやがれ」 そう言い放ち、男はワルドを足蹴にする。ルイズはさっと男の手を振り払うと、無言で立ち上がった。船倉を出ろという命令に逆らうこともなく大人しくついていく。 「……ルイズ、諦めてはいけない。絶対、絶対にだ」 腹を蹴り上げられ、呻いていたワルドが発した言葉にもルイズは何ら反応しなかった。ギーシュらは扉が開いた瞬間に脱出しようかとも考えたが、見張りがいないなどということもなく、あえなく断念することとなった。 扉は再び軋みを上げながら閉じられ、船室は薄暗さを取り戻した。キュルケとタバサがとりあえずワルドの応急処置をする。とはいえ杖も持ち物も全て取り上げられてしまった以上、大したことができる訳もない。どうにか反乱軍の追っ手を振り切ったと思った所でのこの事態。ギーシュは思わず歯噛みする。 後ろから空賊に押しやられ、狭い通路を通り、細い階段を上り、ルイズが連れて行かれた先は空賊に似つかわしくない程に立派な調度が施された部屋であった。甲板上に設けられたその部屋こそが船長室であるらしい。 がちゃりと重々しい音を立てながら扉が開かれると、商人に見せればどれほどの値が付くか分からないような、精緻なエングレーブに飾られたディナーテーブルが置かれていた。最上座には先ほどの頭が尊大な態度で腰掛けている。 頭は足をテーブルの上に投げ出し、大きな水晶が取り付けられた杖を弄っていた。粗野な身なりとは裏腹に、それなりのメイジであるようだ。室内には頭以外にも多くの空賊がおり、入室してきたルイズをにやにやと下品な笑を顔に貼り付けながら眺めている。 後ろから挨拶をするように急かされるが、ルイズは頭を睨みつけるばかりで、口はきっと引き結ばれていた。そんなルイズを見ても、頭はなんら感じ入る所はない、むしろますます面白いとばかりに含み笑いを漏らす。 「くくっ、気の強い女は好きだぜ。たとえガキだとしてもな。さて、てめぇは今日から俺の嫁にすることにした。名前ぐらいは教えてもらわねぇとな」 「……黙りなさいよ。わたしがあんたの嫁ですって? 笑わせるわ」 ライデンを奪われたことで怒り心頭となっていたルイズは、自らの身を顧みることもなく、敵対的な態度を取り続けた。しかし意外なことに、空賊たちは特別ルイズに危害を加えようとはしない。 「大体、どんぱちやってるアルビオンにトリステイン貴族様が何の用だ? 戦争に巻き込まれてぇのか?」 「あんたたちに話すことなんて何もないわ」 頭はそこで、それまで纏っていた粗野な態度を若干改める。獲物を狙う鷲のように鋭い視線を向けた。それは幾度も危険な綱渡りをしてきたであろう、空賊を束ねる男に相応しい瞳だった。 「この時期にメイジがアルビオンへ渡るとすれば、それは戦争に何らかの形で関わるもの以外にない、と俺は考えている。……大方てめぇらもその口なんじゃねぇのか?」 頭の言葉にルイズは無言を貫いた。今の今まで怒りで冷静さを失っていたが、自分がアルビオンへ向かうのは正にそれが目的だったからだ。何も言わないルイズをよそに、頭は話し続ける。 「そしてわざわざ王党派に味方するような馬鹿がいるはずはねぇ。自分から死にに行くようなもんだからな。あんたたちは貴族派の応援にいくつもりなんだろう?」 「……何ですって?」 「ああ、とぼけなくてもいい。実はな、俺達は貴族派の連中相手に商売させてもらってるのさ。ついでに王党派に味方しようとする馬鹿を捕らえるのも請負ってるんだが、あいつらが言うような王党派に味方する馬鹿なんて一人もいねぇ」 「あんたたち反乱軍だったのね……!?」 「あくまで対等な立場ってやつさ。まああんたらには悪いことをしたな。こっちとしても馬鹿を捕まえるっていう建前があるんでな。ちょいとばかり乱暴なやりかたをしちまったが勘弁願おうか」 頭の話を聞いているうちに、ルイズの顔はみるみる真赤になっていく。ただでさえ怒りが許容量を超えていたところにこの話を聞いたことで、ルイズの怒りは大河が氾濫するが如く爆発する。 「ふざけるんじゃないわよっ! わたしたちが貴族派……? 馬鹿にするなっ!」 「へぇ、ってことはあんたらは王党派に味方する馬鹿の記念すべき第一号ってことか。おい、てめぇら聞いたか! こんな馬鹿がまだいたようだぜ!」 頭の言葉に空賊たちは大口を開けて笑い始める。腹を抱えて、これ以上おかしなことはないとでも言いたげな笑い方であった。 その様子を見て、ルイズはますます怒りを加速させる。 「あんたたちみたいな屑がいるからっ。ライデンも姫様もっ……!」 そう、反乱軍さえいなければアンリエッタが苦しむことも、ライデンが雷撃を受けて動かなくなることもなかった。ずっと平和な時間を過ごすことができたのだ。それを思い出し、ルイズの目尻にはかすかな涙が溜まる。 目の前の少女が思わず零してしまったであろう言葉を頭は聞き逃さなかった。席を立つと悠然とルイズの前へとやってくる。 「まあ王党派だってんなら予定通り捕らえなけりゃあな。ただ、お前を貴族派に引き渡して殺しちまうのはもったいない。あの赤毛の女と青髪のガキもだ。慰み者として生かしておいてやる。感謝するんだな」 「……っ! だ、誰が慰み者だっての!? そんな脅しが効くもんですか!」 慰み者という言葉にルイズの体は一瞬恐怖に凍りつく。自分だけでなくキュルケとタバサまでもが男達の玩具にされるという未来を予想し、思わず顔が青ざめてしまう。しかし気丈にも屈することはしなかった。 あくまで抵抗するルイズに、頭はにやにやと笑い続ける。 「くくっ、脅しじゃねぇぜ。貴族派につくってんなら話は別だが、そんなつもりは毛頭ねぇんだろ?」 「当たり前よっ! あんな連中に味方するくらいなら今ここで死んでやるわっ!」 頭は下卑た笑いを収めると、再度ルイズに質問する。 「あくまで王党派だってんだな?」 「何度も言わせるんじゃないわよっ!」 そこで頭は後ろを振り向き、湧き上がってくる笑いを抑えられないとばかりに肩を震わせる。そしてそれまでの品のない笑い方とは一転して、朗らかな、それでいて高貴な雰囲気を漂わせた笑い声を張り上げる。 ルイズが豹変した頭に呆然としていると、頭は優雅な動きで結んでいた布を取ると、爽やかな笑顔で語り掛けた。 「失礼した。どうやら君達は本当に王党派に味方してくれるらしい」 頭の豹変と同時に、それまで優雅さとはかけ離れていた雰囲気を漂わせていた空賊たちは一斉に直立不動の姿勢となる。 頭は縮れた黒い長髪を剥ぐと、下からは美しい金髪が現れる。眼帯を取り外し、作り物らしい髭を剥ぎ取り、顔に塗りたくっていた塗料を拭き取ると、そこにいたのは金髪の凛々しい青年であった。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……、そしてアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。といっても今となっては意味のない肩書きだがね」 突然の事態に完全に置いてきぼりとなっているルイズに、ウェールズは申し訳なさそうに謝罪する。 「色々と手荒な真似をして誠に申し訳ない。こちらとしても迂闊に正体を現すわけにはいかなくてね。君の本心を聞くまで、どうしても疑念を捨て切れなかったのだ」 空賊から王国の兵士と姿を変えた部下達にワルド達を連れてくるように命令すると、苦々しげな表情を浮かべ、皇太子は更に話を続けた。 「全くもって情けない話だ。空賊を装うことでかろうじて貴族派の目から逃れられている。王族でありながら空賊稼業に身をやつした人間は私だけだろうね」 そこにワルド、ギーシュを連れた男が戻ってきた。キュルケとタバサがいないのは、少なくとも表向きはこの任務と無関係だからだ。事情を聞いたワルドが部屋の外で待っているように言ったらしかった。自己紹介をしたワルドとギーシュを見て、ウェールズは改めて謝罪する。 「ジャン・ジャック・ワルド子爵、ギーシュ君。今回は誠に申し訳ないことをした。部下のしたことは全て私に責任がある」 「いえ、殿下のなさることに私ごときが異論を唱えられるはずもありませぬ。殿下には何ら非はございません」 「本当にすまない子爵……。して、君達は何故戦乱吹き荒れるアルビオンへ向かっていたのだ?」 未だ呆けたままのルイズを見てワルドは内心溜息を付いたが、気を取り直して優雅な態度でウェールズへ自らが承った任務を話す。 「アンリエッタ姫殿下より、アルビオン王家への大使として密書を言付かって参りました」 「ふむ、姫殿下とな。と、そういえば、未だそちらのお嬢さんの名を聞いていないのだが」 そこでようやく、ルイズは正気を取り戻した。放心・激怒・放心と短期間に余りに感情を激しく起伏させてしまったので、ある種毒気を抜かれることとなった。 「も、申し訳ありません。わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールでございます」 「なるほど、ラ・ヴァリエール公爵のご息女か。私の親衛隊に君達のようなメイジがもう十人ほどいれば、もう少し違った今があったかもしれないな。して、その密書とやらはどこにあるのだね?」 ルイズは自らの胸ポケットに収められたアンリエッタの手紙を取り出し、ウェールズへと渡す為に恭しく跪こうとしたところでふと尋ねた。 「あの、このようなことをお尋ねするのはあるまじき失礼であると存じ上げますが、……本当に皇太子殿下なのですか?」 「まあ、先ほどまでの顔と態度を見れば、そう思うのも致し方ない。でも僕は正真正銘の皇太子だよ。疑うのなら証拠をお見せしよう」 ウェールズは苦笑しながら自らの左薬指から透き通った宝石は嵌められた指輪を引き抜くと、ルイズの手を取り『水のルビー』に近づけた。二つの宝石は共鳴し合い、船長室に小さな虹の架け橋が現れる。 「この指輪はアルビオン王家に伝わる『風のルビー』だ。君がその指に嵌めているのはアンリエッタの『水のルビー』だね?」 ルイズが頷いたのを見ると、皇太子は軽く頭をかきながらきまりが悪そうに告げた。 「実はね、先ほど甲板で君がこの『水のルビー』を身に着けているのを見て、我が目を疑ったんだよ。なぜアンリエッタの指輪を君が付けているのだろう、とね。だから先に君だけを呼び出したんだが、全く、婦女子に対してあるまじき行いをしてしまった。怖かっただろう?」 「い、いえ! わ、わたしはその、ええと、……はい、怖かったです」 皇太子に頭を下げられ、ルイズは慌てて取り繕おうとしたが、安堵した心が本音を言うように強制した。 そんな少女を見て、皇太子は涼しげな笑顔を見せる。 「ははは、君は正直な女の子だな。それでいいんだよ」 それから、皇太子はルイズから手紙を受け取ると、愛おしそうにトリステイン王家の花押をなぞり接吻した。破らないよう慎重に封を解き、中に収められた便箋を取り出すと、真剣な表情で読み始める。徐々に表情は暗くなっていき、最後の一文に目を通すと、まるでアンリエッタがそこにいるかのように記された署名を指でなぞった。 「姫は結婚するのか? あの愛らしいアンリエッタが。私の可愛い……従妹は……」 ワルドら三人は無言で頭を下げ、肯定の意を表した。ルイズは皇太子が最後、少し言い留まったことが気になった。皇太子の声には紛れもない悲しみとやるせなさが含まれていたことを、少女は敏感に感じ取っていたのだ。 皇太子は軽く目を瞑り、しばらくの間黙りこくっていると、先ほどの憂いを感じさせない声音で告げる。 「了解した。姫はあの手紙を返して欲しいと、この私に告げている。何より大切な姫から貰った手紙だが、姫の望みは私の望みだ。その通りにしよう」 「それでは……」 ワルドが顔を上げるが、皇太子は手で制する。 「しかしながら、今は手元にない。ニューカッスル城の私の私室に置いてある。よもや大切な姫の手紙を空賊船に持ってくるわけにはいかないのでね。多少面倒だが、我が居城までご足労願いたい」 未だ任務が終わることはなかった。 前ページ次ページ重攻の使い魔
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前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~ ある日 これは、ある日の物語である。 恐怖とは耐えるものではなく、克服するモノである。とは誰の言葉だったか。 誰だかわからないが、たぶん本当の勇気を知る人だったのだろう。 そんなわけで私は恐怖を克服するために留守中の記録ディスク、例の3本を調べて見ることにしたのである。 べ、別にイケない好奇心が沸いて沸いて仕方がないんじゃないんだからねっ!! そんなこんなで窓閉めてドア閉めてカーテン閉めて、×BOXにDISCを放り込んでスイッチオン。 モニターに映像が映し出される。 四角の中にあの字の入ったロゴが出る。凝ってるな。 尋問中のロングビルが映し出される。尋問しているのはワルド様だ。 ハズレだ。ちっ カツ丼を奨められてる。アレっておごりじゃないのよね。 フーケがふくれっつらでカツ丼を突っ返すと、 ワルド様は懐からマヨネーズを取り出してぶっかけて自分で食べてしまった。 ワルドさま・・・・・。ナニやってんのかしら。私恥ずかしい。 その後、レコンキスタの使いを名乗る傘をかぶった鎧の男WDによって牢獄から解放されるフーケ。 隠密用『うぉーどれす』:『静寂』とテロップが入った。 そしてそのままラ・ロシェーヌで待ち伏せを命じられる。 命令はやってくるピンク髪、つまり私たちを襲えというものだ。 命を救われ、復讐でき、大金を弾まれ、よいパトロンもつくと言われ、了解するフーケ。 ラ・ロシェーヌの宿屋の一室を借り切り、街道を見張っているフーケ。 5分後 フーケに動きなし。 10分後 動きなし。アホらしくなったので早送りすることにする。 1時間後 動きなし 半日後 ダレてきている。 1日後 傘の男が現れて、いらただしげに命令の変更が命じられた。『大木』を盗めというのだ。 さすがに躊躇するフーケ。 貴族を襲うならともかく、歴史的な港を破壊するのは貴族だけではなく平民にも影響が出る。 盗賊としてのお尋ね者から、国の威信をかけたテロ犯にランクアップしてしまう。軍や憲兵に追われることになる。 男が実名で呼びかけるマチルダ・オブ・サウスゴータ。フーケはアルビオン人だったのか。 そして彼女の家族はティファニアというそうだ。 家族がどこにいるのかはまだ知らない、だが私はBALLSの網の一部を握っているので、見つけるのは時間の問題だ、と脅されてる。 ボイスチェンジャーで声を変えているが、私にはわかる。こいつは悪党だ。メイジの風上にも置けない。 フーケがあきらめて折れた。 ゴーレム出して、ラ・ロシェーヌの木の枝をもぐの手伝わされてた。 なんてことだ。 2日後 フーケが悪態つきながらいなくなった。 なるほど………これはたしかに放置プレイだ。 始めだけは。私はネタ動画見るテンションで見てましたよ。 後半は裏事情の暴露だ。 ミス・ロングビル、もといフーケが脱獄したのか、これは注意しないといけないかもしれない。 あと、家族のために脅されていた。傘の男のBALLSの情報網を握っているという言葉も気になる。 あの傘の男には貴族としての誇りはないのだろうか。 あと、姫様の手紙の件がいつのまにか情報漏れしていたことも気になる。 フーケは尻尾をつかまれることになったことが原因でBALLSが嫌いになり、BALLS排斥論者になってるらしいが、余計に嫌いになってるだろうな。 次だ、気を取り直して次いってみよう!確立2分の1! さあ、百合が出るか、蛇が出るか…………。 画面一面に映る肌色のもの。ちょっとかぶりつき。 カメラがゆっくりと引きになっていく。だんだんと見えてくる。前ふり長い、はよしろ。 だんだんと見えてくる、汗ばんだ肌。躍動的に動いている。 だんだんと見えてくる上半身裸の背中。 なんだかいけないもの見てる気がしてきた。そわそわ。 肌がキレイでつるっとしてる。 だんだんと見えてくる上半身裸のつるっとしたハゲアタマ。 ………………………………………。 ………………………………………。 蛇がでた。コッパゲだ。しかも何故か髪の毛を植える前のコッパゲだ。何故脱いでる。 「おはよう!ミス・ヴァリエール!!」 おいおい、いきなり名指しで呼ばれましたよ。一体どういうことですかコレは。 「今回の任務を伝えよう。」 何の任務ですか。それはいいから画面に顔近づけすぎです。マイク吹いてますよ。 「魔法学園中の靴下を集めろ!」 いやです。いやすぎます。もう勘弁してください。 そもそも学園中の靴下はアンタが狩り集めて品薄状態です。 「なお、このDISCは自動的に消滅する」 な 爆発 …………………………。 わ、わたしの×BOXが・・・これでは最後の一枚が見れない。 そんな光景を見ていたグランパ曰く、これは仕様です。なめんな。 …………………………。 ってアンタ見てたの!?ドアが開いていた!?しまった鍵かけ忘れてた!! ナニ見てんのよ! 出て行きなさい!!出て行かないなら私が出て行くわぁ!! 衝動的に杖と本を引っつかんでダッシュ。 寮から出て、最近なんか近代的になっている研究室に飛び込む。 エオルー・スーヌ…… くねくね踊ってるもじゃ毛コッパゲ上半身裸(ら)に爆発! 轟音 発明は爆発だ アフロになって散るヅラ頭。 ああ、夢にまで見た初めて系統に目覚める瞬間を、まさかこんな形で迎えることになろうとは…………。 …………。…………。…………。…………。 系統に目覚めたけど別にどうってことはないわね。私が悪いのか、場所と時が悪いのか…………。 ともかく、これで明日から安心して靴下が履ける。 アレ?そもそも私は何してたんだっけ? 次の日 コルベール先生はアタマも性格も元のコッパゲに戻りましたが、くつした狩人なのは変わりませんでした。 最後の一枚のDISCもいつの間にかどこかに消えていた。 私が18歳未満だったかららしい。なら最初から出すな。 ある日 モンモランシーが水兵ふくにスカートとマントという格好で授業に来ていた。 ギーシュはメロメロだ。マリコヌルは息が荒い。コルベール先生はカモメのアップリケ靴下に釘付けだ。自重自重。 私が授業でコモンマジックを成功させたらみんなビビッていた。失礼な。 すると、まっさきにキュルケが拍手し始めた。 続いてグランパ、ギーシュ、タバサ、先生、モグラ、竜と拍手し始めた。 みんなも拍手し始めた。集団心理というヤツだ。大勢がやってるのなら、自分もやらないと居心地が悪くなるというアレだ。 最後にシブイ顔でモンモランシーも拍手し始めた。だからギーシュとはなんでもないんだって。 「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」「おめでとうきゅいきゅい(CV若本)」 「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」「きゅいきゅい」 「べ、別にうれしくなんかないんだからね………」 拍手が続く。 「……………ありがとう」 私は補完された。 さて、めでたく補完はなされたものの、私が系統魔法を使えないという事実は残るわけで、どうにかならないものだろうか? 虚無の魔法を使いこなせるようになったら、他の属性の魔法も使えるようにならないだろうか? フライとか、フライとか、フライとか 錬金とか、錬金とか、錬金とか せめて見かけだけでも普通のメイジらしく見せたいものだ。 そんなことを考えながら私は机にペンを置いた。 お、脳年齢がエレオノール姉さまと同い年になった。 翌日 BALLSたちが何故かHAYAKAZEと金延べ棒を持ってきた。 コレで私に何をしろと言うのだろう? モンモランシーの服装は水兵ふくのままだったが、ギーシュが失言して怒らせると、元の学園制服に戻っていた。 どうもギーシュとの仲の進展に関係があるらしい。 ちなみに、ドキドキしてじらされて外されたからこそ虚無が発動したのでした グランパの性格が悪ければ計画通り!といっていただろう 前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~
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前ページ次ページアクマがこんにちわ ラ・ヴァリエール家の屋敷、裏庭。 練兵場として使われている一角に、すり鉢状の穴があった。 その縁にはラ・ヴァリエール公爵夫人、カリーヌ・デジレが立ちつくしている。 彼女の着る、過度な装飾を廃した浅紫色のドレスは、貴族婦人と言うより、家庭教師を思わせる凛とした雰囲気を漂わせている。 「ここに居たのか」 公爵が、カリーヌの後ろから声をかけた。 カリーヌは返事をせず、じっと地面を見つめている。 「凄まじいものだな」 公爵が隣に並び、呟く。 数分の沈黙の後、カリーヌが口を開いた。 「……最初、ルイズが連れてきた使い魔を見たとき、ルイズが騙されているのではないかと思ってしまいました」 「わしもだ。…それどころか、今でも彼がルイズの使い魔なのか、疑問に思っている」 公爵はどこか寂しそうに呟く、それはまるで、娘が戦地に向かっていると知りつつ、止めることのできない悔しさが滲み出ているようだった。 「あの少年は、どんな思惑でルイズと接しているのでしょうね」 「彼の言葉を信じるなら、自身のためなのだろう。彼は家族も友人も失って、ルイズに召喚されたようだ」 「戦いの虚しさを知っているのなら、ルイズを力に溺れさせることはないかもしれません。ですが私には、彼の力に群がる者達が現れる気がしてなりません、ルイズがそれに耐えられるでしょうか…」 「カリーヌ…それは、私も同じだ」 二人は、強大な力に不釣り合いなほど、純朴な性格の少年…人修羅の姿を思い浮かべた。 ディティクト・マジックで計りきれぬ強大な魔力、系統魔法とは違う、先住魔法らしき魔法。 そして別の文化圏という、ハルケギニアを冷静に判断する視点の持ちよう。 彼が戦争を望むのなら、ハルケギニアを戦乱の渦に陥れ、世界を破滅させることも可能かもしれない。 彼が戦争を望まなくとも、その力を欲する様々な者達が、彼とルイズを混乱へと導くかもしれない……。 「メイジとして一人前になれなくとも、せめて貴族として社交を身につけて欲しいと、そう思って魔法学院に行かせた。だが、ルイズは、とんでもないモノを召喚してしまった」 そう呟いた公爵を、カリーヌが諫めた。 「女々しいですよ、あなた。ルイズは私たちが思っているよりもずっと困難な道を歩むのかもしれませんが…これも始祖のお導きかもしれないのですから」 「うむ…そうだな、そうだな。カトレアを診てくれたミスタ・人修羅に対しても、些か失礼な物言いになってしまった」 そう言って公爵は空を見上げた。 あまりにも強大過ぎる力の出現は、ハルケギニアにどんな影響をもたらすのか…… 二人は、その力がルイズと人修羅自身を傷つけることにならぬよう、祈る以外に無かった。 ◆◆◆◆◆◆ 朝早くラ・ヴァリエールの屋敷を出たルイズと人修羅は、ゴーレムの御者が手綱を握るブルーム・スタイルの馬車に乗ってトリステイン魔法学院を目指していた。 ルイズは揺れる馬車の座席に座り、人修羅に寄りかかって夢を見ている、人修羅は実家に帰っても気の休まる暇がないルイズを案じて、魔法学院に到着するまで余計な声はかけないように勤めていた。 ごとん、という地面からの衝撃で、ルイズの体が前へと傾きそうになると、人修羅はそっとルイズの肩を押さえて体を支える。 ラ・ヴァリエールの領地にある屋敷と、魔法学院の間はそれなりの距離がある。 平均的な馬で三日ほどの距離があるのだが、帰りは馬でなく竜を使って馬車を引かせているため、移動時間を大幅に短縮できるとのことだった。 その見返りとして、ちょっとした地面の凹凸が大きく響くいてしまう、人修羅は、ふと中世の戦車はこのような物だったのか?と考えた。 古い時代の武将や、レギオンを召喚できたら聞いてみよう…そう考えて、またルイズに目を向けた。 安心して眠るルイズの姿は、妹が居たらこんな感じだったのか、と想像させるに十分な可愛らしさがあった。 ◆◆◆◆◆◆ ルイズは夢を見ていた、舞台はラ・ヴァリエールの領地にある屋敷、つい先ほどまで一時帰省していたはずなのだが、どこか雰囲気が違っていた。 夢の中のルイズは、屋敷の中庭を逃げ回っていた。 背丈と同じぐらいの高さだった植え込みが、まるで迷宮のようで、ルイズは誰かから逃げるようにその陰に隠れていた。 二つの月のうち、片方が隠れてしまう夕方のひととき、一つの太陽と一つの月が交差する時間。 「ルイズ!どこに行ったの? まだお説教は終わっていないのですよ!」 その声でルイズは、これが夢なのだと悟った。 聞こえてきた声は母。 ルイズはデキのいい姉たちと魔法の成績を比べられ、物覚えが悪いと叱られていた。 実際は母に叱られたことなど殆ど無い、だが、母の恐ろしさといったら家庭教師のそれとは比べものにもならない。 だから夢の中にも登場し、ルイズを叱りつけては、魔法のできが悪いと怒るのだろうか。 (これは、子供の頃の夢…) そう思いながらも、夢から抜け出すことは出来ない。 だんだんと辺りが暗くなる頃、植え込みの下から、誰かの靴が見えた。 「ルイズお嬢様は難儀だねえ」 「まったくだ。上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……」 召使い達が自分のうわさ話をしている、それがとても悔しくて悲しくて、ルイズは両手を強く握りしめ、歯がみした。 召使い達が植え込みの中をがさごそと捜し始めたので、ルイズは植え込みの隙間を器用にくぐり抜け、中庭へと逃げ出した。 中庭にはあまり人が寄りつかない、が、その場所こそがルイズにとって最も落ち着ける場所だった。 池を中心に様々な花が咲き乱れ、小鳥が集う。石のアーチをくぐり抜けベンチの脇を通り過ぎ、池遊び用の小舟に乗り込むと、小さなオールを使って池の中心へと向かう。 池の真ん中には小さな島があり、そこには白い石で作られた東屋が建っている、ルイズはこの場所を『秘密の場所』と呼んでいた。 成長し、大人になった姉二人も、軍務を退いた両親も、昔はこの小さな池で船遊びをしていた。 だが今は忘れさられたのか、そこに浮かぶ小船を気に留めるものは、この屋敷にルイズ以外居ない。 ルイズは叱りを受けると、決まってこの中庭の池に浮かぶ小船の中に逃げ込み、一人でぼっちでただ時間が過ぎるのを待っていた。 幼いルイズは小船の中に忍び込むと、以前から用意してあった毛布に潜り込む。 毛布にくるまって顔だけを出していると、不意に誰かの姿が思い浮かんだ。 全身に入れ墨を入れた青年、人修羅の姿が、脳裏に浮かんだのだ。 すると不思議なことに、体に優しい暖かさが感じられた、人修羅が自分の肩を抱いてくれてくれている……そう思うと、ルイズの寂しさはいつの間にか暖かさに変わっていった。 「……?」 人修羅とは違う誰かの気配に、ふと顔を上げる。 いつの間にか小島には霧がかかっており、その向こうから誰かが近づいてくる。 その姿はマントを羽織った立派な貴族のようで、年のころは十六歳ぐらいに見える、人修羅と同じぐらいの男性だ。 「泣いているのかい? ルイズ」 その人物はつばの広い、羽根つきの帽子を被っていたので、顔を見ることができなかった。 だが、ルイズはその声を良く知っていた、彼が誰なのかすぐにわかったのだ。 夢の中で、ルイズは胸が熱くなるのを感じた。 すぐ隣の領地を相続した、憧れの子爵であり、晩餐会をよく共にし、自分を気にかけてくれる人である。 ルイズは、子爵と、父の間で交わされた約束を思い出した。 「子爵さま、いらしてたのですか?」 幼いルイズは慌てて毛布で顔を隠す、憧れの人にみっともないところを見られてしまった、その恥ずかしさでルイズの顔はますます赤くなった。 「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あのお話のことでね」 「まあ!」 ルイズはさらに頬を染めて、俯いた。 「いけない人ですわ。子爵さまは……」 「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」 ほんの少しおどけた様子で子爵が言う、すると夢の中のルイズは、小さく左右に首を振った。 「いえ、そんなことはありませんわ。でも。わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」 そう言って、ルイズははにかんだ。 子爵もにっこりと笑い、ルイズにそっと手をさしのべてくる。 「子爵さま」 「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。もうじき晩餐会が始まるよ。さあ、掴まって」 ルイズは差し出された手に、自分の手を重ねようとしたが、母親に怒られていたことを思い出し手を引っ込めてしまった。 「でも、わたし」 「また怒られたんだね? 大丈夫だ、ぼくからお父上にとりなしてあげよう」 小さな島の岸辺、から小船に乗るルイズに手が差し伸べられる。 その手は大きな手で、憧れの手だった。 ルイズは立ち上がると、そっと…子爵の手を握った。 その時、風が吹いて子爵の帽子が飛んだ。 飛んでいった帽子を見ていると、その先に、人修羅の姿が見えた。 「ひとしゅら!」 霧のかかった池は、いつの間にか巨大な湖と化していた。 その向こうで人修羅が立っている。 まるで…ルイズを祝福するように笑顔を向けていた。 それがたまらなく寂しくて、ルイズは子爵の手を離し、人修羅へと向き直った。 「人修羅! ……ついてきて、くれないの」 ◆◆◆◆◆◆ 夕方。 魔法学院に到着したルイズと人修羅は、学院長に一時帰省の内容を報告した。 カトレアの治癒についていくつか報告した後、アンリエッタ姫殿下からの手紙を預かっているとのことで、ルイズだけが学院長室に残された。 人修羅が学院長室から出て、本塔の階段を下りていくと、途中でコルベールとロングビルの二人を見かけた。 「おやミスタ人修羅、いつの間に戻られたのですか」とコルベール。 「つい先ほどですよ」人修羅は笑顔で返す。 「ラ・ヴァリエール公爵にもお会いできましたかな?」 コルベールがそう聞くと、人修羅は顔を引きつらせた。 「むっちゃくちゃ緊張しました」 「ははは、まあ仕方ないでしょう」 と、そこで人修羅はあることを思いついた。 「あ、そうだ。ちょっと相談があるんですが」 「何でしょう?」 「実はまたルイズさんと外出することになりそうなんです。それで護衛に必要な道具が欲しくて」 「ほう。道具ですか…」 コルベールがううむと唸る。 「…道具を必要とするんですか?貴方が?」 ロングビルが不思議そうな顔で聞いてくる、すると、人修羅は苦笑いして答えた。 「手加減のために必要なんですよ」 「そ、そうですか…」 気のせいかロングビルの笑顔は、引きつっていた。 ◆◆◆◆◆◆ しばらく後。 部屋に戻ったルイズは、人修羅の姿がないことに気が付き、ふん、と鼻を鳴らした。 「まったく、何処に行ったのかしら、人修羅ったら」 ぐるりと部屋を見渡すと、壁に立てかけているはずのデルフリンガーが無い。 また外で訓練をしているのだろうか?ルイズはそんなことを考えながら、窓から外を見た。 辺りを見回すと、魔法学院の塀の上に座っている影が見えた、よく見ると背中に剣らしきモノを背負っている…人修羅だ。 その隣には小柄な誰かが座っている、おそらくタバサだろう。 ルイズは驚いて口を開けたまま、並んで座る二人を凝視した。 「……っ!」 カーッと頭に血が上る、ご主人様を放っておいて何をやってるの!と叫びそうになるが、かろうじてそれを押しとどめ、ばたーんと勢いよく扉を開けて外へと駆けだしていった。 「ちょっとー!人修羅ー!」 「あ、ルイズさーん」 外壁の下からかけられた声に、人修羅はのんきな調子で答えた。 「ご主人様を放っておいて何やってるのよー!」 「ああ、ごめん。すぐ降りるよ」 そう言うと、人修羅は手の力だけで跳躍し、ルイズの隣へと着地した。 「ごめんごめん、ちょっと相談を受けててさ」 「相談ですって?……タバサが、貴方に?」 タバサという少女は、寡黙でしかも人付き合いが少ない。 自分から何かを相談するとは思えなかったが、人修羅が嘘を言っているようにも思えなかった。 人修羅は上を見上げると、塀の上からこちらを見下ろしているタバサに声をかける。 「タバサさん。さっき言った通り、ルイズさんにも説明してくれないかなあ」 「……わかった」 タバサは少し大げさに頷くと、レビテーションを使ってふわりと地面に降り立っち、服に付いた埃を払って、ルイズの瞳を見つめた。 「な、何よ」 「人修羅が。貴方の姉を治癒して、一定の効果があったと聞いた……どうか、お願い。私にも治癒の力を貸して欲しい。母を、治したい」 「え?」 ルイズは、タバサの口から紡がれた言葉があまりにも意外だったので、言葉を失った。 そして、もしかしたら彼女の無口の理由はそこにあるのではないか…と勝手な想像を働かせてしまい、目をぱちくりとさせた。 「ルイズさん、ちょっと話はややこしいんだが…タバサさんの身内は、どうも普通の病気じゃないらしいんだ。 今までにも治癒のメイジに頼んだり、治癒の文献を読みあさって調べたらしいけど、全く原因もわからないらしい」 人修羅が説明をくわえる、と、ルイズは納得いったかのように頷いた。 「…そう、そうだったの。解ったわ、家族が病気なのは辛いわよね。でもしばらく待って貰えないかしら、私、明日からまたしばらく魔法学院を離れることになりそうなの。 帰ってきたら具体的な話を聞かせて、それで協力するかどうか決めるから」 「わかった」 タバサは小さく頷いて、そのまま魔法学院の寮塔へと戻っていった。 人修羅はタバサを見送った後、ルイズに促されて近くのベンチに座る。 「はあ…、そっか。タバサもそうだったんだ」 ルイズがため息を漏らす。 人修羅は少し間をおいてから、ルイズに声をかけた。 「ルイズさん、当分魔法学院を離れるって事は、王女様に会いに行くのと関係してるの?」 「え? そうなんだけど、ちょっと大変なことになりそうなの。オールド・オスマンが仰るには、明日にでもお忍びで姫殿下が来訪されるとか…」 どこか納得のいかなそうな顔で、ルイズはため息をついた。 「お姫様が来訪?ってことは、この魔法学院に?」 「そうよ…どうしても私と話したかったみたいなの……。なんか、私、複雑だわ」 幼なじみが政略結婚する…そんな経験は、人修羅にあるはずが無かった、かける言葉が見つからず、俯いたルイズを見守ることしかできない。 「あのね…姫様と会って、どんな話をすればいいのか解らないのもそうだけど… 私、立派なメイジになって姫様を助けたいって思ってたの。 お母様みたいに立派なメイジになれれば、何でもできるって思ってたのに、私はまだ何もできないのよ」 「だけどルイズさんは、俺を召喚したじゃないか」 「そうだけど、そうだけど……そうじゃないのよ。誰よりも強くて何よりも凄い使い魔を欲しがったのは私だけど。 だけど、オールド・オスマンも、お父様もお母様もお姉様も、人修羅を怖がるじゃないの。誰も、褒めてくれないわ…」 ずしりと、肩が重くなる気がした。 もし、ルイズが『もっと凄い使い魔が欲しかった』と駄々をこねたなら、人修羅は苦笑だけで済ませただろう。 もし、ルイズが『人修羅は最高の使い魔だからどんな敵も倒せる』と言ったなら、人修羅は怒っただろう。 もし、ルイズが『人修羅なんかいらない』と言ったなら、仕方ないと言ってそのまま旅に出ただろう。 しかしルイズは、ただひたすらに自分の不甲斐なさを責めていた。 「さっき、タバサがレビテーションを使って、外壁の上から降りてきたわ、私はまだレビテーションだって、アンロックだって確実にできないのに。なんだろう、私、悔しい……」 人修羅の出現で、皆の注目がルイズから人修羅へと移ってしまった。 その事で人修羅を責めるのは筋違いだと理解しているから、ルイズは自分を責めることを選んだ。 「ルイズさん」 そう言って、人修羅はルイズの肩を掴み、振り向かせた。 「悔しがらない人間はいない。悩まない人間は居ない。いや……何の悩みもなしに行動する人間より、悩んで、悩んで、それを乗り越えた人こそ、本当に尊敬されるべきだと思う」 ルイズはきょとん、とした顔で人修羅の言葉に耳を傾けている。 「ルイズさん、俺の力をどう使うか、ルイズさんの肩にかかってるんだ。俺は無闇に人を殺すつもりもないし争うつもりもない。 もしルイズさんが残酷な人だったら、俺はルイズさんの元に居ないよ、そうやって悩むことができるから、俺はルイズさんの元にいられるんだ」 「悩む…」 「そうだ。ルイズさんが悩んでいるのは、俺という存在がルイズさんの肩にかかっているからだろ、それは俺の行動の責任を取ろうとしてくれるからだろう。俺がもし他人の使い魔ならルイズさんはそんなに悩まないはずだ」 「うん…そう、そうよ、でも人修羅が嫌いって訳じゃないわ、今までと私の扱いが違って…だから……人修羅にふさわしい主人になりたいのよ」 「それこそ貴族じゃないか。ノーブレス・オブ…何だっけ。ええと、とにかくルイズさんは、貴族って立場の責任を取ろうとしているんだろ。その悩みこそ貴族の悩みじゃないか、立場と責任ある人の悩みじゃないか。 『ふさわしい』とか『ふさわしくない』じゃないんだ。ルイズさんが俺をどうしたいのか、自分がどうなりたいのかを決めるんだ。今はそれを決めるために悩んでいるんだろう?それこそ……貴族じゃないのかなあ」 ルイズは、頭の中でぐちゃぐちゃになっていたものが、少しずつ解けていく気がした。 ラ・ヴァリエール家の人間として教育を受け、領地を持つ貴族がどんな仕事をするのか理解しているつもりだったが、実は何も解っていなかったのだと、気づいてしまった。 大貴族は『領地』の管理を地方太守に任せているが、それはあくまでも現状維持を任せているだけである。 領地を発展させるには、領主がしっかりと方針を定めなくてはならない、例え部下が失敗したとしても、部下に仕事を任せた責任が付きまとう。 人修羅は、自分にとって唯一の『領地』であり『領民』なのかもしれない。 人修羅だけでもこんなに悩むのに、魔法学院を預かるオールド・オスマンは、領地を預かる父母は、王女たるアンリエッタ姫殿下はどれほどの苦悩の中にいるのだろうか。 ルイズはそこまで考えると、両肩に置かれていた人修羅の手をどかし、目に力を込めて人修羅を見返した。 「人修羅、ごめんなさい。私、泣き言を言っちゃったわ。 私が領主で、人修羅が領民なら、私の言葉は領民を不安にさせる失言だったわよね。 私より悩んでいる人なんていっぱい居るのに、それに今更人修羅の主人として相応しいか悩むなんて…駄目ね」 そう言ってルイズは笑顔を見せる、つられて人修羅の表情も軟らかくなり、二人で微笑みあった。 「しっかりしてくれよ」 「解っているわよ。…とりあえず、そろそろ部屋に戻りましょう」 ルイズが立ち上がる、が、人修羅はベンチに座ったまま近くの花壇に視線を向けた。 「悪いけど先に戻っていてくれないか?」 「…いいけど、早く戻ってきなさいよね」 そう言って、ルイズは早足で寮塔へと戻っていった。 ルイズを見送った後、人修羅は唐突に身をかがめ、まるでカエルのようにびょーんと跳躍し、10メイルほど離れた花壇の裏側へと着地する。 「のぞき見かっ?」 「うわああっ!?」 花壇の裏側にいたのは、マリコルヌだった。 人修羅が真後ろに着地したので、マリコルは驚き、丸っこい体で地面を転がる。 「デバガメか!覗きか!つーか何してるんだよ」 「わ、わ、いや、別に。ちょっとスカートがめくれ上がってベンチの後ろからパンティが見えていたとかそんなことは絶対にないよ!」 人修羅はコケた。 「マリコルヌ…その情熱は凄いと思うけど、みっともないとは思わないのかよ」 人修羅が呆れたように呟くと、マリコルヌは立ち上ってふんぞり返り、偉そうに口を開いた。 「何言ってるのさ、最近のヴァリエールは、いや、君が召喚されてからのヴァリエールはツンとしたところが半減してどこか物憂げな感じで、これはこれで良いんだ。 そんなパンツを覗かずにいられると思うかい?偶然見てしまうよ!これは事故だよ」 「どこが事故だよ…」 人修羅は頭を抱えたが、ふと何かを思いついて、マリコルヌに小声で話しかけた。 「ところでさ、話は聞こえていた?」 「ま、まあ不本意ながら」 申し訳なさそうにするマリコルヌを見て、人修羅は苦笑いした。 「一応秘密らしいから、黙っててくれないか」 「もちろんだ。女の子のスリーサイズと同じぐらい大事な秘密だからね。決して口外しないよ」 「やっぱり、バカだろうお前」 前ページ次ページアクマがこんにちわ
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俺の嫁 ~あなただけの花嫁~ 項目数:25 総ポイント:1000 難易度:★☆☆☆☆ スキップせずともゲーム開始から2時間足らずで500前後まで解除できる。 オートスキップを駆使して手順通りにやれば5時間足らずで、強制スキップだと1時間ほどでコンプ可。 (オプションで「解除」→「選択」に変更しておくこと) 嫁編がやや長い。 嫁編が始まった際定休日の設定をデフォルトだと土日だが無しにすると デートイベントが起こらなくなり進行が速くなる 恋人ができた 恋人編を開始しましょう 50 初めてのデート デートに誘ってみませんか? 50 初めてのキス 雰囲気作りが大切です 50 恋人と1週間過ごした まずは、1週間 20 恋人と1ヶ月過ごした まだまだ、1ヶ月 30 恋人と年を越した ようやく、年越し 50 プロポーズ成功 プロポーズのセリフは決まりましたか? 50 誕生日を祝ってあげた 彼女の誕生日はいつですか? 50 誕生日を祝ってもらった あなたの誕生日はいつですか? 50 結婚しました 嫁編を開始しましょう 50 新婚生活1週間目 新婚、1週間目 50 新婚生活1ヶ月目 新婚、1ヶ月目 50 嫁と年を越した 無事に年が越せましたね 50 結婚記念日 大切な記念日です 150 愛情に包まれて 目指せ、100LP 50 ベストパートナー 食後にクイズ番組でも…… 20 トランプで勝負 トランプで遊んでみませんか? 20 ジュースを仲良く 1つのジュースを2人で…… 20 洗濯のお手伝い 洗濯のお手伝いをしましょう 20 夫婦の食卓 システムコマンドから食事モードへ…… 20 夫婦の寝室 システムコマンドから添い寝モードへ…… 20 夫婦の絆 システムコマンドから応援モードへ…… 20 夫婦喧嘩 システムコマンドから痴話喧嘩モードへ…… 20 メイドさんと遊ぼう システムコマンドからメイドさんモードへ…… 20 お色直し システムコマンドから秘密のモードへ…… 20 嫁編は、200日以上経過させてから結婚記念日を迎えることで「1周クリア」となる。 現実の時間とリンクしているわけではないので、誕生日はいつに設定してもOK。 愛情に包まれて 狙ってLPを貯めたい場合、嫁編のカレンダーで12月31日に飛び、初詣で「嫁と仲良く」の選択肢を選ぶ→またカレンダーで12月31日に飛ぶを繰り返せば簡単に貯まる。 ゲーム中の解説によれば、LPはこの実績解除のためだけに存在するパラメータであるとのこと。 夫婦の食卓、夫婦の寝室、夫婦の絆、夫婦喧嘩、お色直し 嫁編を1度クリアすると、Yボタンメニューの各項目が解放されるので、それらを選択すれば解除。 なぜか「夫婦の絆」のみ、特定時期に発生する応援モードでも解除される模様。 メイドさんと遊ぼう 新婚生活2周目をクリアするとメイドさんモードがアンロックされる。 なお、1周クリア後容姿等まったく違う設定で恋人編からもう1周クリアしても、2周とカウントされる模様。 同じ嫁で2周しなくても構わない。 1週目の結婚記念日にセーブしておき、2週目開始後に先程のデータをロードしてスタッフロール後の 画面に行ってもメイドさんモードがアンロックされる。(コスチュームは貰えない) ベストパートナー、トランプで勝負、ジュースを仲良く、洗濯のお手伝い ランダムで発生するミニゲームで解除。(発生した時点で解除される) ジュースは商店街デートで発生。 洗濯はカレンダー機能で6月と7月を繰り返すと発生しやすい模様。休日に発生するため、全ての曜日を定休日に設定しておくと良い。
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前ページ次ページ悪魔の虹 ここ、トリステイン魔法学院では今年二年生となった生徒達が 春の使い魔召喚 の儀式で様々な使い魔達を呼び出し、契約していた。 ある生徒は火竜山脈に棲むとされるサラマンダーやら絶滅したとされている古代の幻種に属する風韻竜を召喚したり、またある生徒は仕草などが微妙に愛らしいジャイアントモールを召喚したりと賑やかだった。 そんな中ただ一人、どれだけ時間をかけても使い魔を召喚できない者がいる……。 「いつまで経かってるんだ、あいつは……」 「所詮はゼロのルイズだ。あいつなんかにサモン・サーヴァントが成功するもんか」 既に使い魔を召喚し終えていた生徒達からぼそぼそと、陰湿な悪口が飛ぶ。 桃色のブロンドを揺らす少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは幾度もの召喚の儀式に失敗していた。生徒達はもちろん、初めは彼女を励ましてくれていた教師コルベールも今では彼女の失敗に辟易としていた。 コルベールがまた後日に行おう、と持ちかけてもルイズは諦めずに続ける。 しかし、いくらやっても爆発が起きるだけで使い魔は召喚されない。 他の生徒達にもこれ以上、時間を割く訳にもいかない。コルベールはルイズに「次で最後ですよ」と通告する。 これで最後だと言われ、ルイズも息を飲みながら杖を構える。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!」 もう失敗は許されない。このまま、ゼロのままで終わる訳にはいかない。 「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」 この際、どんなものが呼び出されても構わない。魔物だろうが悪魔だろうが。 「私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!!」 ――お願い! 出てきて! あたしの使い魔!! ルイズは杖を振り、そしてまた爆発は起きた。 また失敗か、と誰もが思っていた。が、今度は違うようだった。 爆発の煙の中から現れたのは――人のようだった。それも、ただの平民。見た事のない変な服を着ているのだから間違いない。 「見ろよ! ルイズが召喚したのは平民だぜ!?」 「さすがはゼロのルイズだな! 平民を呼び出すとは!」 ドッ、と生徒達が爆笑していた。そして、召喚したルイズを馬鹿にしたように野次が飛ぶ。 多くの生徒達が爆笑する中、たった一人だけ笑っていない生徒がいた。 青い髪をした眼鏡をかける小柄な少女。風韻竜を召喚したタバサは興味も無さげに読書を続けていたが、野次を耳にしてちらりとそちらへ視線をやる。 青い変な服を着た平民の少年だった。召喚したルイズがコルベールにもう一度だけやらせて欲しいとかみついているが、一度呼び出したからもうやり直しは認められない、と言って彼女を諭している。 ルイズは渋々と平民にコントラクト・サーヴァントの儀式を行おうと口付けをしている。一応、儀式は成功したようだ。苦痛に喘ぐ彼の左手にもルーンが浮かんでいる。 別にどうという訳ではない。……ただ、彼の足元に転がっている小さな物体がタバサは気になっていた。 「ふむ、珍しいルーンですね……。では皆さん、教室に戻りましょう!」 コルベールはルイズが召喚した使い魔(といっても平民だが)の少年の左手のルーンを確認すると、生徒達を促す。 「わぁー、何これ?」 「きれーい」 すると、女子生徒達が見惚れたような声を上げている。 コルベールはそちらを振り向き、顔を顰めた。 「綺麗なオパールね……」 赤髪に褐色の肌をした女子生徒、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーも見惚れたようにそれを手にし、指先でなぞっていた。 「しかも、こんなに大きい……」 彼女の手にあるのは、ちょうど手の平程度の大きさをした虹色の光沢を放つ卵上の物体だった。 多くの女子生徒達がその物体に惹かれて集まり、取り合いになっている。 あれは、ただの宝石とは思えない。コルベールはそう感じた。 「君達、ちょっと待ちなさい!」 コルベールは慌てて彼女らの元へと駆け寄り、虹色の物体を取り上げる。 自分の手の中にあるその物体を近くで凝視するコルベール。 確かに、見た目は美しく大きな宝石に見えるが……。 「……これは、宝石ではないな」 「ええ? それでは、何なのですか」 取り合いに混じっていたルイズが尋ねてきた。 眼鏡を掴み、さらにじっと睨み付けるように観察するコルベールはその形状、大きさなどからこの物体が何なのかを断定する。 「……何かの、卵だね」 「卵?」 「あ、そいつは俺の傍に転がってたやつ……」 ルイズが召喚した使い魔の少年が、コルベールの手にするそれを不思議そうな目で見つめてくる。 そういえば彼がルーンを刻まれている時に苦しんでいた際、彼の傍らに虹色の光沢を放つ物体があった。それがこれだろう。 「と、いう事はこれは君と一緒に召喚された物なのかな」 「そ、それじゃあ!」 顎をつまみながら推測するコルベールだが、召喚したルイズ本人は途端に狂喜乱舞したようにはしゃぎだす。 「この中に、凄い幻獣とかが眠っているんですね!?」 コルベールの手からその物体を引ったくり、愛おしそうに間近でそれを見つめている。 「卵のままじゃ、孵化するのにどれだけ経かると思ってるの……」 「やっぱり、ゼロのルイズだな。卵のまま召喚しちまうとは……」 そんな陰口が野次馬達の中から飛ぶのが聞こえた。 「何をしているんだ、君達。教室に戻りなさいと言っただろう?」 すぐ様コルベールが野次馬の生徒達を再度、叱るように促していた。生徒達は次々と中庭を後にしていく。 そして、ルイズの手から虹色の物体を取り上げる。 「ミズ・ヴァリエール。たとえこれが君が召喚した物だとしても、君は既に使い魔と契約をしている」 「いいえ! こんな平民は、使い魔じゃありません!」 平民の少年を指差し、喚くルイズ。 「その幻獣が、あたしの本当の使い魔なんです! こいつは間違って召喚されてしまっただけです!」 「しかし、二体も使い魔を持つなんて特例は許されないし、そもそもこれがまだ幻獣の卵だと決まった訳ではないのだよ?」 と、諭されてルイズも低く唸りながら不満そうにしていた。 「とにかく……これが何なのか分からない以上、私達が預かっておくから、君も教室に戻りなさい」 渋々とした顔で頬を膨らませるルイズはようやく納得したのか、平民の使い魔を連れて中庭を後にしていた。 同じように中庭を後にしていくコルベールは、手の中に納まる物体を睨んでいた。 こんな卵は、見た事がない。動物なのか幻獣なのかは分からないが、綿密に調べてみる必要がありそうだ。 もし本当にミス・ヴァリエールの言うようにとてつもない幻獣か何かだとしたら……。 前ページ次ページ悪魔の虹
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2013年冬アニメも終盤にさしかかると、いよいよスレ民も柳田には賢者モードで接し、まじめに 分別を説く場面が多くなりました。 母親を騙った自演など、堕ちるところまで堕ちた感にいよいよ「祭りの終わり」が見えはじめた のですが、アスペ柳田はそんな温度差にはお構い無し。恥知らずな成り済ましはまだまだ続いた のでした。 恒例となったアンチスレ民の説教から始まり、結局予想通り親に完全依存のガチニートである事 が明らかになって、自演キャラをフル動員するもあっさり看破されてしまうまでを収録しました。 リトルバスターズ!は糞原作をトレースし切った糞アニメ16 青字ID=赤字ID=橙ID=緑ID=柳田 714 : 忍法帖【Lv=5,xxxP】(1+0:5) [sage] :投稿日:2013/03/18 21 28 48 ID Q0IYtdcO0 [1/1回(PC)] エロゲッティ柳田は学生時代「自分の容姿のせいで悲惨な目にあった」って言ってたよね? でも2ちゃんねるっていう相手の容姿が全く見えない場所で毎日フルボッコにされてwiki作られるまで嫌われてるじゃん 容姿関係ないよね?だって俺たちお前の姿見えないし 性格がどうしようもなくどす黒く濁って捻くれてるからだろ?だから忌み嫌われてたんだよ 容姿のせいもあるかもしれないけど本質はその人間性の問題ね だからね 容姿のせいで親を逆恨みするのは全くの間違いなの お前の逃げの言い訳にするのは止めな 715 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 22 43 01 ID TK4sFTlXP [1/1回(p2.2ch.net)] それはフツメンの意見だろ 俺も不細工だから言えるが、容姿悪いだけで周りの目は奇異に見て来るし、 常に絶望を顔に宿しているようなもんだぞ だから柳田の苦しみも少しわかるは 716 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 22 45 51 ID Cq/eESva0 [1/1回(PC)] 柳田君ちょっと君気持ち悪いよ あ、いや容姿だけってわけじゃなく・・・ 717 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 02 41 ID hugr6Np+P [1/1回(p2.2ch.net)] 715 顔関係なくお前がアスペかつ性格捻じ曲がってるからだよ 顔の見えないねっとで鍵信者にすら嫌われてる柳田よ いい加減自己弁護して逃避すんのやめて現実見ろよ 718 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 02 53 ID qLgkLniuO [1/1回(携帯)] 自動車工場の班長はもう辞めたのか?w ※以前に演じた自演キャラの設定です 719 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 08 55 ID Nt9bIcUS0 [3/3回(PC)] 715 柳田の場合ブサメンを言い訳に努力を怠ってるだけ まぁそうやっていつまでも言い訳して逃げ続けてればいいよ 困るのは本人だけだし正直どうでもいい 720 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 16 45 ID EolFsrZnO [3/3回(携帯)] お、久しぶりにだはだはキャラ使ってんのか でもな、そのキャラを末尾Pの書き込みに使うと過去の設定と矛盾するぞ ※以前に演じた携帯用自演キャラについてです 自分で作った設定忘れてんじゃねーよ 721 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 22 28 ID Y1UF6EVP0 [2/2回(PC)] お前の親が可哀想だよ。少ない年金や貯金を崩しながら 30越したおっさん糞ニートを養わさせられるなんてさ。 722 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 22 46 ID juyTd+NQ0 [1/1回(PC)] 柳田おじさん、母親の書き込みについての言い訳はまだですか? ※以前に演じた自演キャラについてです 723 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 49 39 ID 2Ad9+wfJ0 [1/1回(PC)] おい柳田 リアルでもネットでも不満撒き散らしてるだけじゃ何も変わらないぞ 文句垂れてたら救いの手が差し伸べられると思ってるなら大間違いだ 変わりたかったら自分が頑張るしかない というか自立するのに顔は関係ないぞ なんでもかんでもブサメンを理由に逃げるのやめろ 724 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 08 27 ID IygHhgqi0 [1/5回(PC)] 柳田ゲッティいい加減にしないとお前の知名度が増々あがるぞ 本当に取り返しのつかなくなることが起きる前にアンチスレ荒らしなんてやめろ vipにwikiを貼る奴とかが出る前にやめろ 725 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 15 43 ID pNwtDaJX0 [1/5回(PC)] 柳田に対する嫌悪感はもちろんあるんだが、俺も忠告で言っといてやるよ もう(リトバスに限らず)アンチスレ荒らしは止めとけ お前はもう2ch住民から反感買ったら お前の人生自体がどうにかされる可能性があるところまで来てんだよ 726 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 37 25 ID 5gsO4saCO [1/3回(携帯)] 725 はい、脅迫罪でタイーホ 727 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 40 48 ID 5gsO4saCO [2/3回(携帯)] これで俺は脅迫罪という武器を手にした そして弁護士権を使われたくないならアンチをやめることだ 俺は寛大な心を持っているが、仏にも限界がある 柳田は悲しからずや空の青海の青にも染まず漂う 728 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 40 55 ID qeNNzyKA0 [1/1回(PC)] ちょwww柳田wwww 729 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 48 13 ID VyAVsBnQ0 [1/4回(PC)] 30歳職歴無ニートが弁護士雇う金あんのか?w 730 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 50 27 ID cNTbSScFO [1/2回(携帯)] 弁護士権とか狙いすぎててツマンネ 731 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 51 36 ID VyAVsBnQ0 [2/4回(PC)] さっさと仏さんになっちまえよw 親も大喜びだぞw 732 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 02 33 ID jHexRgg50 [1/1回(PC)] 弁護料は親御さんに払わせるとか情けない事を言わないでくれよ柳田くん 733 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 09 22 ID 5gsO4saCO[3/3回(携帯)] 732 あいつらに払わせてやるわ 俺の金でもあるから当然 弁護士様にびびってアンチのカキコ減ってて笑い止まらんわ 笑いながら寝るか 734 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 15 01 ID qCDq9vrL0 [1/1回(PC)] 偽ゲッティがいるな あのアスぺ特有のキレがない お前つまんねぇから 735 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 17 28 ID pNwtDaJX0 [2/5回(PC)] 727 「俺が」お前の人生をどうにかするなんて 725には一言も書いてないのに 俺の書き込みに対してどうやって脅迫罪を適用するの? 世間知らずもいい加減にしとけ 736 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 18 16 ID VyAVsBnQ0 [3/4回(PC)] これがウンコと無駄な精液製造してるだけの憐れな30歳職歴無糞ニート、柳田ゲッティであるw 737 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 18 25 ID pNwtDaJX0 [3/5回(PC)] 特定にびびって柳田のカキコ減ってて笑い止まらんわ 笑いながら寝るか 738 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 22 08 ID IygHhgqi0 [2/5回(PC)] 法律の知識や社会常識がないってのがまるわかり 中学でいじめにあいそれからひきこもり歴10年の人間の思考だな はやく病院を受診しな、楽になれるぞ 739 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 22 20 ID pNwtDaJX0 [4/5回(PC)] まぁこんだけ親切に忠告してやっても聞く耳持たない様だし もうどうしようもないな 苗字バレしただけでも偽おかんに成り済ますくらいビビりまくってる奴が マジで本人特定されたらどうするんだろうな? 万が一特定されてから慌てて泣き入っても全てが手遅れなんだぞ? 740 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 58 01 ID eu3OT/l/P [1/4回(p2.2ch.net)] 釈明のために弁明すれば、吉田ッティは携帯持ってない メールで聞いたが取り上げられたってさ なのでなりすましだし彼は書き込んでない 741 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 59 27 ID pA4Zs4Y00 [1/1回(PC)] 釈明のために弁明 742 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 08 54 ID RiE1tpa8P [1/1回(p2.2ch.net)] 740 ホントもう色々酷いなお前wwww 743 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 12 25 ID VyAVsBnQ0 [4/4回(PC)] 30歳ガンバレヨw 744 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 15 05 ID rUuW3u+qO [1/1回(携帯)] 今日の昼あたり日本語が不自由でアスペな自称弁護士が出てきそうだな 末尾0で 745 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 33 17 ID wwL0PrkQ0 [1/3回(PC)] あいつらに払わせてやるわ 俺の金でもあるから当然 終わってんなこいつ 746 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 41 53 ID IygHhgqi0 [3/5回(PC)] いまだに柳田はスレに書き込むことによってスレ民を困らせてやってるとか考えてるんだろ おもちゃにして楽しんでる奴か、憐れみの視線を向ける奴しかいないのに リトバスは糞作品だがましに見えるほどに、柳田の糞さが凄すぎる よって柳田は糞以下、ゴキか北朝鮮と同等 747 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 44 00 ID zT2uJfiX0 [1/1回(PC)] 740 日本語になってないし吉田さんの知り合いっていうなら仮のコテハンくらい名乗ってくれw 748 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 03 09 06 ID znS71fs+0 [1/1回(PC)] 柳田、つまんねえよお前 下らん設定や別人の振りはいいから、もっと素のクズっぷり見せろや お前みたいなゴミは俺らに笑われるしか価値ねえんだから 749 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 05 27 55 ID O5X4eQl60 [1/1回(PC)] ID 5gsO4saCOはさすがになりすましだろ 750 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 05 55 33 ID MO7feDi10 [1/1回(PC)] 普通ならなりすましかな?ぐらいは思うけどこれまでの行いがあまりにアレなので… 751 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 05 59 02 ID wwL0PrkQ0 [2/3回(PC)] 例の如く通りすがりのP( 740=柳田)があり得ん嘘ついて擁護してるんだから ID 5gsO4saCOは柳田 思いつくまま本音で書き殴ったけど、後でビビって引っ込めるいつもの腰抜けパターン 大体、あのレベルの常識の無さとキチガイじみた日本語は 真似しようと思って出来るもんじゃないんだよ 752 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 03 48 ID eu3OT/l/P [2/4回(p2.2ch.net)] だから何度も言ってるだろ 所詮アンチスレ民なんて性格捻くれたのばっかなんだし、 エロゲッティ騙って何度レスしてるか計り知れなし ゲッティが好きなのは佳奈多や姉御、さささであって クドや鈴を一度でも好きと言ったか? 753 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 06 57 ID wwL0PrkQ0 [3/3回(PC)] 752 ID 5gsO4saCO はキャラに関することは一言も言っていない。話そらすなよ それで、”お前”は柳田から「携帯取り上げられた」ってメール貰えるような関係なんだ?w 馬鹿かよオッサンw 754 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 37 55 ID 5qvRhJTJ0 [1/1回(PC)] カスニート柳田はアンチ民にぼろかすに叩かれて相当悔しいらしいな 755 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 42 39 ID Ei5ZyI4d0 [1/2回(PC)] この必死ぶりはもしもしの書き込みがヤバかったってようやく気づいたのかw 「自分の金」でオタ生活満喫して何が悪いとか言ってたのも 結局ぜんぶ親の金だったのがバレちゃったもんな。クズ過ぎ。 自分の為にもう出てくんなって散々言われてるのに何やってるんだよ 756 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 07 48 15 ID eu3OT/l/P [3/4回(p2.2ch.net)] 別にモシモシのアホがどうなろうが知ったことないってさ 趣味の金はちゃんとバイトで稼いだ金だとも言ってるし、 どうやら今まで仕事したことないって思われてて甚だ心外だそうだ 757 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 08 24 40 ID kMPuMSow0 [1/1回(PC)] まあ発言に責任を持てと言ったのは俺ら自身だしな 今頃ID 5gsO4saCOはガクブル状態で布団に篭ってるだろうよ 758 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 09 00 05 ID eu3OT/l/P [4/4回(p2.2ch.net)] 了解 ID 5gsO4saCOはアンチでも儲でもない真のクズってことでFAだわ 759 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[] :投稿日:2013/03/19 09 03 08 ID EWIt/ATZ0 [1/1回(PC)] 自演くさいなあ 760 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 09 50 11 ID 9Sao43e80 [1/1回(PC)] 友達設定ふいたw 761 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 10 09 41 ID Ei5ZyI4d0 [2/2回(PC)] 758 アホかお前 762 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 11 07 16 ID cNTbSScFO [2/2回(携帯)] 屑はお前だろ 柳田ッティさんよ 763 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 12 14 24 ID pNwtDaJX0 [5/5回(PC)] 「甚だ心外」って言葉使うのは柳田本人しかいない ボキャブラリー貧困すぎて別人の振りもままならないという現実 764 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 14 45 37 ID bAbACego0 [1/1回(PC)] 別人の振りが成功した事がただの一度もないから今更すぎる とことん無能っすなあ 765 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 14 52 24 ID IygHhgqi0 [4/5回(PC)] 別人のフリなんて成功するわけないから病院にいけ
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前ページ次ページゼロと波動 「おお!”我らの拳”よ!よく来た!さあ、じゃんじゃん食ってくれ!」 厨房に入ったリュウを、マルトーを筆頭に皆が迎える。 特にマルトーなど超のつく上機嫌だ。 「リュウさん!」 ドオオォンッ!! 奥にいたシエスタもリュウに気づき、満面の笑みを浮かべながら飛びついてきた。 「おおっ!シエスタのハグを受け止めたぞ!」 「俺たちなら数メイルは吹っ飛ぶのにな!」 「流石は”我らの拳”だ!」 ルイズは一緒にアルヴィーズの食堂で食べるように薦めたのだが、 堅苦しい場所が苦手なリュウはそれをやんわり断り、厨房で食べることにした。 それで昼食をとりに厨房に来たところ、この大歓迎である。 「何だこの騒ぎは?」 ギシギシとリュウの胴を締め上げながら顔と胸を擦り付けてくるシエスタを困惑しつつ引き剥がして席に着く。 リュウの前に次々と運び込まれる、明らかに賄いとは思えない豪華な料理たち。 「なあに、祝勝会みたいなもんさ!まさかお前さん、貴族に勝っちまうとはな!」 「俺も見てたぞー!なんて強さだ!惚れ惚れしたぜ!!」 「よっ!我ら平民の希望!!」 貴族嫌いで有名なマルトーを中心に次々と囃し立てる。 「よしてくれ・・・」 ああだこうだと奉りたてられて辟易するリュウ。 こんなことならルイズと一緒に食堂で食べた方がマシだったと後悔するがもう遅い。 「シエスタに聞いたぜ、”ブドー”ってヤツを使ったんだろ?」 「まあ、そんなところだ」 一刻も早く開放してもらえることを祈りながら答えるリュウ。 「シエスタの爺さんも”ブドー”ってのをやってたらしいが、”ブドー”ってのはすげえんだな。あっさりメイジに勝っちまうんだもんなぁ!」 「そんなことはない、彼は強敵だった」 「おお!やはり達人は言うことが違う!達人は謙虚だ!あれだけ実力の違いを見せていながら決して偉そうにしない!」 「いや、別にそういうことでは・・・」 これはもうダメだと諦めるリュウ。 散々騒ぎ立てたあと、マルトーが急に真面目な顔になった。 「なんでも馬鹿貴族からシエスタを庇ってくれたんだってな。俺からも礼を言うぜ」 と言って頭を下げる。 隣でシエスタもそれに倣う。 「よしてくれ。そんなんじゃないんだ。俺はおかしいと思ったからそう言っただけだ」 「やっぱり達人は言うことが違う!!」 再び大喝采。 「ルイズ・・・助けてくれ・・・」 リュウの魂の呟きは喧騒に掻き消され誰の耳にも届かなかった。 ようやく開放されたリュウは中庭で一人立っていた。 足を肩幅に、肩と平行に開いて爪先を若干内側に向け、膝を軽く曲げて左の拳を前に、右の拳を腰に据える。 「ふんっ!」 パアンッと言う風を切り裂く鋭い音と共に凄まじい速度で突き出される拳。 一瞬、拳の先の空気が揺らぐ。 あまりに速いため、拳の先の気圧が跳ね上がって蜃気楼のような現象がおこる。 そこに近づく一人の少女。 碧い髪に碧い瞳でルイズよりも一回りほど小さい身体に、自分の身の丈ほどもある大きな杖を持っている。 確かキュルケと一緒にいた少女だ。 「君は・・・」 「タバサ・・・」 「そうか、で、どうしたんだ?タバサ」 「聞きたいことがある・・・」 年齢に似つかわしくない、全てを見透かすような瞳でリュウを見つめるタバサ。 顔には一切の表情がない。この齢にして、きっと幾つもの辛い思いや修羅場を経験したのであろう。 そしてまた、この少女が強さを求めるあまり、自ら修羅の道に進もうとしていることをもリュウは感じ取っていた。 「なんだい?」 「あなたは決闘のとき手加減はしないと言った」 「ああ、手加減はしなかった」 「でもあなたはまったく本気じゃなかった。なぜ?」 表情の無い顔のまま問うタバサ。 「本気じゃなかったワケじゃない。あれは俺の求める答えなんだ」 「答え?」 タバサが繰り返す。 ―― 一撃必殺 風の拳 ―― この少女には伝えてやりたい。 そう思い、リュウは静かに語り始めた。 「俺は”真の格闘家”を目指して生きてきた。 そして、その道の中で俺の前に立ちはだかったのは”拳を極めし者”と呼ばれる男だった」 黙って耳を傾けるタバサ。 「彼は無類の強さで全てを破壊しつくした。”殺意の波動”と共に。 ひとたび拳を振るえば全てが終わる。正に”一撃必殺”を具現した男だ。 その強さといい、生き様といい、確かに彼は”真の格闘家”だった」 「サツイノ・・・ハドウ・・・」 タバサが尋ねる。 「ああ、彼や・・・俺の中にもいる。あまねく全てを破壊しつくす、魂の化け物みたいなものだ。 それに取り込まれると・・・まあ、一言で言えば修羅になる。」 「修羅・・・」 タバサが繰り返す。 「そう、修羅だ。だがそれは俺の求める強さとは違った。」 自分の拳を見つめながら続けるリュウ。 「最初、俺は”殺意の波動”を俺の中から追い出そうと思った。 だが、それはできなかった。 ”殺意の波動”は俺の中に流れているんだ。それを消し去ることはできない。 だったら飼い慣らすしかないだろう? 暴走する力を抑えつけるのもまた修行だな・・・ おかげでほんの入り口程度なら、なんとか理性を保ったまま扱えるようになった。 もっとも、あまり好き好んで使うような力ではないがな。 ただ、残念ながら単純な破壊力として”殺意の波動”を上回るモノが今の俺にはまだない。 だから、使うべきときには使う」 そう言いつつ複雑な表情で自分の拳を見つめるリュウ。 「だが、破壊することが全てではない。現に俺の暴走した”殺意の波動”によって一度倒れた男は、再び俺の前に立ちはだかってくれた。 ”殺意の波動”では『倒す』ことはできても『勝つ』ことはできないんだ」 リュウの話に引き込まれていくタバサ。 「そして、俺は真の強さとは何かを考えるようになった。 それを教えてくれたのが一本の大木だった」 「大木・・・」 タバサが呟く。 「風には色も形もない。 じゃあ風はどうすれば自分の存在を知らしめることができると思う? 大木をなぎ倒せばいいのか・・・?全てを吹き飛ばせばいいのか?」 タバサは首をかしげ、しばらく考え込む。 「ほんの少し、ほんの少し木の葉を揺らしてやればいい。それで十分だ」 リュウの言葉を聞いてタバサの顔が、何かに気づいたようにはっとする。 「それが俺の一撃必殺”風の拳”なんだ」 改めて自分の拳を握り締めるリュウ。 「ただ、魔法を相手に闘うのは初めてだったから上手くいかなかったけどな。 だから、俺が未熟だっただけで手加減してたワケではないんだ」 笑いながらタバサの頭をクシャクシャと撫でる。 その大きな手に、タバサは自分の中にある氷のようなものが溶けていくような気がした。 タバサがリュウに対して心を開き始めていた頃、その一部始終を建物の陰から見ていた人影があった。 「何の話をしてるのかしら?ま、それはいいとして、ええと・・・確か・・・」 足を肩幅に開き膝を軽く曲げ、左手を前に、右手を腰に据える。 「こう・・・だったかしら・・・?見よう見まねで・・・」 腰を回転させ、同時に握り締めた右手を思いっきり突き出してみる。 「えいっ!」 グボンッ! 可愛らしい掛け声とは対照的に響き渡る轟音。 「ひっ!?」 驚いた人影は慌ててその場を離れた。 スカートの両端を指で摘み上げ、一目散に逃げる。 「なんだ!?今の音は?」 急いで音のした方へ向かうリュウとタバサ。 そこで見たものは、驚異的な速さで走り去っていくメイドの後姿と 建物の壁に開いた大きな穴だった。 後日談としては、固定化の魔法がかかった壁に穴を穿つなどという常識外れなことができるのはリュウぐらいしかいないとルイズに疑われたが、 同席していたタバサが彼の無実を証明してくれてほっと胸を撫でおろすリュウであった。 その日の晩のルイズの部屋 「・・・やっぱりわたしと一緒にアルヴィーズの食堂で食べれば良かったじゃない」 一通り話を聞いてふてくされたように言うルイズ。 「まったくルイズの言う通りだ」 厨房での扱いを思い出して苦笑いを浮かべるリュウ。 「それにしても・・・その服をまずなんとかしたいわね」 リュウの全身を見渡す。 「服もボロ布だし、だいたい裸足だなんて平民云々以前に蛮人よ・・・ ホント、物乞いと言われても仕方ない格好ね。どれだけ貧乏人だったのよ」 歯に衣着せぬ物言いのルイズ。 「これは道着と言ってな、これを着てると気が引き締まる。ボロなのは俺と一緒に修行の日々を過ごしてきたからだ。本当にダメになったら新調するさ。 それに、靴は好きで履かないんだ。買えない訳じゃない」 「ダメ。とにかく、そんなんじゃヴァリエール家の使い魔として相応しくないわ。 今度の虚無の曜日は授業がないから、町にアンタの服を買いに行くわよ」 「いや、だから、これは道着でだな・・・」 「ダメったらダメ!!買いに行くの!!ついでにアンタの剣も買いたいしね」 「剣?それはいらん。俺は剣の使い方なんて知らんしな」 リュウが困惑気味に答える。 「え?アンタ、それだけ強いのに剣の扱い方も知らないの?」 驚くルイズ。 「ああ、握ったこともない」 「へぇ・・・もったいないわねぇ・・・せっかくなんだしこの際、剣も覚えたら?」 ――ううむ・・・ルイズはどうしても俺に剣を持たせたいらしい―― 確かに何も知らない少女に格闘家のなんたるかを説明しても理解してもらえるとは思えない。 どうしたものかと考えた末、良い言い訳を思いついた。 「それにな、自分で言うのもなんだが、俺は割りと力が強い。俺が振り回したら剣の方が折れると思うんだが・・・」 青銅製のゴーレムをまるで紙細工のように扱っていたことを思い出し、ルイズも渋々納得する。 「確かにそうかもね・・・でも、やっぱり剣は買うわ。使わなくてもいいから持ってなさい」 結局、見た目を優先するルイズなのだった。 ルイズとリュウの二人はトリステインの城下町を歩いていた。 すれ違う人々がマントを羽織ったルイズを見て、貴族に絡まれてはたまらないと道を空け その斜め後ろを歩くリュウを見てその肉体の見事さに溜息をつく。 「ここがブルドンネ街よ。トリステインで一番の大通りなの」 自慢気にルイズが説明する。 「なるほど、確かに賑やかだな」 確かに人通りは多いがリュウの感覚としてはどちらかと言うと狭い通りだ。 機械技術など皆無のこの国でそれほど大掛かりな都市整備はできないのだろう。 だが一応、ルイズの機嫌を損ねないように話を合わせておく。 普段は学院内で生活している上、必要なものは全て揃っているので街まで来ることは滅多にないのだろう、ルイズも楽しそうにしている。 っていうか、これってデートってヤツなんじゃない周りからはわたしたちってカップルに見えてるのかしら平民のクセに貴族とデートできるなんて生意気ね などと思いながら頬が緩みっぱなしのルイズ。 冷静に見てみると結構気持ち悪い。 幸いリュウはルイズの斜め後ろについているので、ルイズのニヤけた顔が見えていなかったが。 「じゃあまず、服屋さんね、アンタの服を見繕うわ」 「だから、何度も言うがこれは大事な服で、これ以外の・・・」 「しつこい!ダメ!買うの!」 がっくりと項垂れるリュウを連れてご機嫌で服屋に入るルイズ。 「いやぁ・・・旦那の体型に合う服なんてちょっと置いてませんねぇ・・・」 規格外の筋肉質であるリュウに合う服など置いているはずもない。 「じゃあ、仕立てて頂戴。デザインは・・・そうねぇ」 チラリとリュウの方を見る。 「今着てるのと同じデザインのでお願いするわ。できる限り頑丈な素材で作って頂戴」 どうやら道着を作ってくれるらしい ほっと胸をなでおろし、「ゆったりと作ってくれれば、後は適当でいい」と言いながら店の主人の採寸に応じるリュウ。 採寸するために道着の上を脱ぐと、そこから現れたのは改めて主人の度肝を抜くような盛り上がった筋肉と そしてルイズの度肝を抜くような大きな傷跡だった。 「ちょ・・・ちょっとリュウ?何、この傷跡・・・」 胸の辺り、ギリギリ道着で隠れるか隠れないかという辺りと、その丁度裏側にあたる背中の大きな傷跡。 どうみても身体を貫通しているようにしか見えない。 「ああ、ちょっと前にな」 こともなげに言うリュウ。 身体のこんな場所を貫かれても、人間は死なないものなのだろうか? それ以前に、何をしたらこの途轍もなく強い男にこれだけの傷を負わせることができるのだろう。 ルイズのリュウに対する疑問、興味は増す一方だった。 そしてその興味と畏敬の念が、年頃の少女の例の漏れず恋愛感情を加速させつつある。 もっとも本人はそれを認めようとしなかったが。 次にルイズが目指したのは武器屋だった。 小さな路地裏に入り、どんどん奥の方に進んでいく。 ゴミや汚物が道端に転がり、すえた臭いが鼻をつく。 リュウは辺りに気を配りながらルイズの後をついていった。 物陰から手にナイフやら手斧やらを持った目つきの悪い男たちがルイズの頭から爪先までを舐めるように値踏みする。 「ありゃあ、どこぞの貴族の娘だな。あれだけの上玉だ、相当な額になるぜ。笑いが止まんねぇな・・・」 下卑た笑いを浮かべ、目配せし合う男たち。 それに気づいたリュウはルイズに危険が及ばないように、わざと抜き身の剣のような気迫を、それでもルイズでは気づかない程度に漂わせる。 それだけで危険に対しては鼻の利くゴロツキ共には十分に効果があった。 獲物のすぐ後ろにいるリュウの身体つきやそこから発せられる猛者の放つ気迫に諦め、舌打ちしながら去っていく。 「あまりいい場所とは言えんな」 「ホントはあまり来たくないのよ・・・」 苦い顔をしたルイズが辺りを見回す。 「確か・・・ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺りのはずなんだけど・・・」 それから剣を模した看板を見つけ、嬉しそうにつぶやいた。 「あったあった」 リュウとルイズは扉を開けて中に入った。 「らっしゃい・・・ととと!?お、お貴族さまがなんの御用で?うちはマットウな商売やってますぜ」 カウンターに肘をつき、気だるげにしていた店主は入ってきたのが貴族だと判るや否や背筋を伸ばして揉手し、冷や汗をかきながら愛想を振りまく。 「客よ。剣が欲しいの」 愛想を振りまく店主とは対照的に無愛想に応じるルイズ。 難癖つけられてはたまらないとペコペコしていた店主は相手が客と聞いて素早く商売モードに切り替えた。 面倒くさい相手ではあるが、何しろ貴族は金を持っている。 しかも、金を持っている上に世間の常識に欠けている。 相場の2倍3倍・・・いや、上手くすれば桁ひとつ増やしたところで買っていく貴族もいる。 こんな葱を背負った鴨を見逃す手はない。 「ああ・・・なるほど、後ろの従者の方に持たせるんですね。最近、”土くれのフーケ”やなんやで物騒ですからねェ」 後ろに控えるリュウの身体を見て納得したように頷く店主。 「土くれのフーケ?」 首をかしげるルイズに答える店主。 「へぇ、最近巷を賑わしてる盗人でさぁ。金持ちの貴族しか狙わないってんで、平民の間ではちょっとしたヒーローでさあね。ちょいとお待ちくだせぇ」 そう言って店主は奥に引っ込んだ。 「盗人がヒーローだなんて不謹慎だわ!!リュウもそう思うでしょ!?」 プリプリと怒りながらリュウに同意を求めるルイズ。 「人間は権力に抑圧されると、その権力に歯向かう者を応援するもんだ。 街の人々が如何に貴族という権力に抑圧されているかということだ。とはいえ、確かに盗人とは褒められたもんではないな。」 尚プリプリ怒っているルイズをリュウが諌めていると、店主がゴソゴソと1本の剣を持って出てきた。 「こいつぁ、かの有名なシュペー卿が鍛えた逸品ものでさぁ。 並の人間じゃあとても扱いきれやせんが、そちらの従者の方にはお似合いの剣ですぜ」 2メイルはあろうかという刀身に宝石などで飾り立てられた煌びやかな剣を得意げに説明する。 「魔法がかかってますからね、鉄だって切れますぜ」 剣を見た瞬間、ルイズは魔法云々よりも見た目の豪華さに心打たれた。 「ねぇ、リュウ、これなんか良くない?」 一発で気に入り、すっかり買う気になっているルイズ。 「俺としてはもっと飾り気の無いものの方がいいんだが」 『質実剛健』や『実直』などの言葉をそのまま人間にしたようなリュウの趣味嗜好からは遠くかけ離れている剣を見て思わず呟く。 「却下。わたしが気に入ったから、これに決めた」 どうやらリュウの意見など端から聞く気は無かったらしい。 勝手に決める。 「これ、おいくら?」 「へぇエキュー金貨で2000でさぁ」 「高いわねぇ・・・それだけあれば森付きのお屋敷が買えるじゃない・・・」 剣の相場など知らないルイズは絶句する。 もっとも、相場を知っていればその金額が桁一つ多いことに気づけたのだが。 「命を預けるのが剣ですからね、命は金では買えませんや。しかも、名工シュペー卿の作ですから、これぐらいはしますやね」 言って愛想笑いを浮かべる店主。 「困ったわね。今日はエキュー金貨で100しか持ってきてないわ」 アッサリ所持金を白状する。 ルイズは自分で買い物をすることなどない大貴族なので、こういう交渉はしたことがない。 そして、ハルケギニアの相場を知らない上に交渉が下手ということに関しては、リュウも一緒だった。 ただ、剣一本に森付きの屋敷という値段には違和感を覚えたが、魔法が関わってくると全く見当がつかないので、そういうものなのかと納得せざるをえない。 「それじゃあ碌な剣は買えませんやねぇ・・・」 困った顔をした店主はそういうと再び奥に入っていく。 後ろを向いた店主の顔はニヤニヤしていた。 「せいぜいカモらせてもらうか・・・」誰にも聞こえないように呟くと、奥から別の一本を持ってきた。 「それでしたら、これなんかどうですかい?本当は120エキューなんですが、100にまけときますぜ」 ルイズの前に差し出されたのは1メイルほどの刀身の、何の意匠も凝らされていない細身の剣だった。 「なんか貧相ね・・・」 先ほどの剣が頭から離れず、あからさまに落胆の色が見えるルイズ。 「いや、俺はむしろこっちの方がいいと思うがな」 リュウが感想を漏らすと、背後から声が聞こえた。 「けっ。おめえみてーなド素人が剣なんざ持ったところで死ぬだけだ、やめとけ」 思わず振り返るリュウとルイズ。 だが、そこには誰もいない。あるのは所狭しと並べられた剣や槍などの武器。 「やいデル公!お客様になんて口利きやがる!!」 誰もいない場所に向かって文句を言う店主。 リュウとルイズの二人が頭に「?」を浮かべていると、またしても誰もいない場所から声が聞こえた。 「な~にがお客様だ!そんなカスみてーな剣売りつけやがって!どーみたって金貨10枚もしねーよーなガラクタじゃねーか」 目を凝らすが、やはり誰もいない。 しかし、姿は見えずとも声はしっかりと聞こえてくる。 「おめえもこんなガラクタ見せられて『こっちの方がいいと思う』とか言ってんじゃねー。 ガラクタかどうかの見分けもつかねーヤツが剣なんて持ったって早死にするだけだっつーの」 リュウは剣が並べられた一角に行くと、錆の浮いた一本の古い剣を取り出した。 「お前が・・・喋ってるのか・・・?」 驚きながら、手にした剣に話しかける。 傍から見れば危ない人に見えなくもないが、近くで見れば彼が精神的にも健康であることが判る。 なぜなら、彼が手にしている錆びてボロボロの剣が喋ったからだ。 「おうよ。俺っちが喋ってるのよ。判ったか、ド素人」 剣の柄の部分をカチカチ言わせながら喋る剣。 「イ・・・インテリジェンス・ソード・・・?」 ルイズは噂で聞いたことがあった。高位のメイジが剣に人格を付与することがあると。 そしてそれはインテリジェンス・ソードと呼ばれている。 「おうよ!俺っちがインテリジェンス・ソードのデルフリンガーさまだ!おきやがれ!!」 まくし立てるように喋る剣。 後ろから飛ぶ店主の怒り声。 「いい加減黙ってろデル公!!溶かして鉄くずにしちまうぞ!」 「ああ!やれるもんならやってみろってーの! どーせ6000年も生きてきて飽き飽きしてたところだ!いっそ溶かしてくれた方がせいせいするってーの!」 「お前・・・6000年も生きてるのか?」 「おうよ!最近はとんとつまんねーしな!もうこの世に未練なんてねーっての・・・ってか、おい・・・」 「ん?どうしたんだ?」 突然押し黙っってしまった喋る剣に尋ねるリュウ。 「おでれーた・・・おめえ・・・”使い手”か・・・」 「使い手・・・?何の話だ?」 いぶかしむリュウ。 「よし、おめえ、俺っちを買え」 それには答えず自分を買えという剣。 「わかった。親父、この剣はいくらだい?」 リュウは躊躇い無く答えると、店主に尋ねた。 「へぇ、それでしたらエキュー金貨100で結構ですぜ。うちとしても厄介払いができてせいせいしやすからね。 煩いときは鞘に閉まっちまえば大人しくなりまさぁ」 「っというわけだ、ルイズ。俺はこの剣がいい」 あまりの急展開に目を白黒させるルイズ。 「ちょ・・・ちょっとリュウ!!もうちょっとちゃんと選びなさいよ!だいたい、そのボロ剣、錆びちゃってるじゃないの!」 「ああ、ちゃんと選んださ。この剣が買えと言ったからな。年長者の言うことは聞くもんだ」 ボロ剣とはなんだ!と文句を言うデルフリンガーを鞘に収め リュウは笑いながら、ルイズから預かっている財布の中から100エキューを取り出し店主に支払った。 前ページ次ページゼロと波動
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前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ 「んだてめぇっ、じろじろ見やがって何か用でもあんのかよっ」 「ひぃぃっ」 イザベラは頭を抱えた。つくづく何故こんなのを呼び出してしまったのだろう自分は。 全てはあの、あの、あの、クソ忌々しい鉄面皮・・・名を出すのも憚られるからtbs(仮名)としておこう。 そうあのtbsが呼び出したという青い風竜。あれの姿に一瞬でも心奪われてしまった自分が憎らしい。その思いが背中を押しまくり、 だからして「どーせオマエにゃ無理だよだってオレの娘だし(プ」とほざくクソ親父の制止も意に介さず、 イケイケドンドンな感じで自室でサモン・サーヴァントを実行したのである。そして出てきたのが、 『あ?・・・なんだこりゃ。おいお前、何処だここ。お前もあのバカどもの仲間って訳か?』 まず目に付いたのが頭部全てを覆う赤いマスク。・・・いや兜と言ったほうがいいのかもしれない。イザベラの持ち合わせる常識ではそう言えた。 そして着ている物はその頭部の重装(?)に比してあまりにも貧弱な・・・少なくともイザベラには平民が着るだけの服に見えた。 もちろん、実際そうであり、それはサンレッドにとってあまりいい気がしない認識だった。彼も一時は自分を養う彼女の為に定職に就こうとしたのだ・・・。 『へ、平民・・・何であいつは竜で・・・このあたしにあんたみたいなボンクラが!!』 『あぁ?』 正義のヒーローは子供に手を出してはいけない。そんな事は常識も常識、社会の大原則だ。 だがこの日パチンコで完敗していたサンレッドの怒りはまさにこの瞬間頂点に達し、そして「目の前のガキ=フロシャイムの何か」というあまりにも不条理な方程式が完成する。 悪の組織の一員ならガキでも容赦する必要は無い。悪の組織のガキは容赦してほしくて悪の組織のガキをやっているのに違いないからだ。 日頃あのアニマルソルジャーども相手に辛酸を舐めさせられている(?)サンレッドの決断は早かった。 『きゃあああっ』 『イザベラ様っ、如何しm・・・何だ貴様は!平民風情がこんなk』 悲鳴を聞き扉を開けて入ってきた守衛は王女のデコを掴んで持ち上げている狼藉者に挑みかかるも、 哀れな一兵卒は正義のヒーローの正義の一撃の前に地に臥した。追撃のローキックをこめかみに叩き込まれ動かなくなるカステルモール。 『あぁ、あ・・・』 あー私終わったな。自分がサモン・サーヴァントで呼び出した平民(よりによって!)にブッ殺される王女なんぞお笑い種だ。 自分の葬儀の席で大爆笑するクソ親父の、顔を伏せながら必死で笑いを堪えるtbsの姿がありありと・・・ちくしょうお前ら絶対枕元に立ってやる。 全く表情の読み取れないその男がへたり込んだ自分を見おろしている最中、イザベラの頭の中ではそんな思いが駆け巡り・・・ 『くそっ、泣くこたぁねーだろ。これだからガキは・・・』 サンレッドはこれでも大人だった。かなりどうしようもない部類には入るが、ビビりまくって泣きじゃくる子供を脅す趣味も性癖も無かった。 とりあえず泣き止まないその少女を引っ掴み、部屋を出て責任者と思しきこの趣味の悪い家の家主を恐喝・・・もとい事情を窺う事に。 『ブッハハハハハハハハ!さっすが俺の娘だ!よりによってそんなボンクラ平民を呼び出s』 『悪かったなボンクラでよぉっ』 ヤクザキック一撃で黙りこくる自称国王。国王て。自称将軍のあのヒゲがどれほど謙虚かサンレッドは理解した。 しかし一撃とは意外と拍子抜けである。コンクリート片で殴打してもアパートに這って帰る連中はやっぱり身体の造りが違うのか。 『貴様、そのお方が誰k』 『蛮人め!狙いは何だ!?まさか貴様があのガンd』 女をじわじわといたぶる趣味も無いし、客間で平然とコスプレしている変態に手加減するほどの慈悲も持っていないのがサンレッドだった。 それぞれ下アゴへの一撃で白目を剥いてKOする様にちょっぴり罪悪感を覚えたが、どうせ死なないだろう悪の組織の奴なんだし、とも思った。 『ったく、何だよこの家は。まともに客の話聞こうって奴ぁいねぇのかよ。おいガキ!何とか言えっての』 前々からいけ好かなかったあの女とエルフを簀巻きにして井戸に叩き込んだ後(蓋はしなかった。なんて慈悲深いあたし)に目を覚ましたクソ親父は、このチンピラをいたくお気に入りあそばされたようだった。 一通りの事情を聞いて「元の世界に戻せ」とクソ親父の首をガンガン振るチンピラ―――サンレッドと言った―――を宥めすかし、 とりあえず戻す算段がつくまで私の使い魔・・・なんて言ったらまたキレるだろうから、召使いでいろ、と言ってみたところ、 『ていの良い事言ってるけど「使い魔」ってやつだろ。ジジイが言ってたぞ。・・・まあ暇潰し程度に付き合ってやるよ』 で、「とりあえずここがどんな世界なのか見せてくれや」とお願いされ・・・お願いであって命令とか脅しとかじゃ断じてない、とイザベラは必死で自分に言い聞かせる。 こいつを呼び出したのは自分だ。私が主。こいつは使い魔。だからこいつに引け目なんて感じる必要は無い! だからイザベラはこうやってサンレッドを連れて城下をぶらついてるのであるが・・・。 「おいっ、何か用かって聞いてんだよっ。ガン飛ばしてんじゃねぇぞこらぁっ」 「うわぁぁっすいませんっすいませんっ」 「何でこいつはこう・・・」 チンピラだ。チンピラ丸出しだ。 『名前?サンレッド。向こうで正義の味方やってた』 嘘だろこれ。絶対嘘だ。どう考えても退治される側のチンピラAだろこいつ。 だがイザベラの脳裏によぎるのは先程の、あの化物・・・メイジ数人がかりでようやく仕留められる実力を秘めるというエルフ、 その中でも更に戦いの為に身を研ぎ澄ましたあの化物を一瞬で、一撃で地に這いつくばらせたあの姿。 (実は自称正義の味方で、周りからは悪の帝王とか呼ばれてるんじゃないのか?) そんな疑念が湧き出てくるのは至極当然の事だった。 「あんたっ、正義の味方が一般人にそんな事して恥ずかしくないのかいっ」 「どーせ俺はここじゃ治外法権なんだからいいだろがっ」 「法律がどうとか以前に、人として踏み外しちゃいけない道理ってもんもわかんないのかいっ」 「ちっ、かよ子と同じような事言いやがってガキのくせに・・・」 ハッキリ言ってイザベラ自身こんな台詞を言えた義理では無かったが、 何しろこいつのボンクラぶりを見るにつけとても放置していいものとは思えず、 湧き上がる恐怖を押さえ込みつつどうにかこの使い魔の手綱を握ろうと苦心していた。 (このあたしがまさか他人の為に心を砕くなんてね。因果応報ってやつかね) くくっ、と口の端が歪む。ひたすら己に降りかかる運命を恨み抜き、ひたすら部下とtbs相手に鬱憤を晴らすだけの日々。 その行為はいつだって終わった後に猛烈な罪悪感という重圧に変わり自分の心に圧し掛かってきた。 だが、この暴君を相手にしているこの瞬間は、そんなしがらみの一切から解き放たれている事にイザベラは気付いた。 (・・・ひょっとして、こいつはあたしの心を救いに来てくれたのか?) そんな事を思い至るイザベラだったが、 「~~~貴っ様~~~もう勘弁ならん!このデコ娘ならまだしも城下の民に手を出すなd」 「うるせえよっ」 固定化されている石の塀に穴が空く勢いで頭をぶつけられたカステルモールを見て、その考えを全力で否定するのであった。 前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ
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前ページ次ページGIFT 虚無の曜日。 ブルドンネ街に出向いたルイズが最初に入った店は、床屋だった。 「さっぱり短く切ってちょうだい」 どのようにいたしましょうか、と聞かれたルイズは迷うことなくそう言った。 「短くともうしますと、どの程度に?」 「そうね」 ちょっと考え、 「あの子と同じくらい」 そう言ってルイズが指したのは、店で働いている十一、二ほどの少年だった。 スポーティーな短髪である。 「よろしいのですか?」 床屋のほうはとまどった様子で、 「こんな綺麗な髪の毛を……もったいない」 「いいの」 確かにその髪は、コンプレックスだらけのルイズにとって、誇れるものの一つだった。 しかし、今のルイズには、そんな小さなものにすがる必要などまったくない。 むしろあのクールなコスチュームを完全にまとう時、長い髪は邪魔になるだけだ。 「早くしてちょうだい。それとも、私が後で難癖つけるとでも思ってるの?」 鋭い声でルイズはせかした。 せっかくの休日の時間を、つまらないことで無駄に浪費したくはないのだ。 「い、いえ! まさか、そのような……」 あわてた床屋は、すぐさま散髪にとりかかった。 散髪が行なわれる間、ルイズは目を閉じていた。 闇の中で、数日前の出来事を思い出された。 今ではまるではるかな昔のことのように思えるが。 使い魔召喚の儀式前日の夜を……。 きたるべき明日に備え、ルイズは幾度もリハーサルを繰り返した後、腕を組み机の上に突っ伏していた。 やっているのは、偉大なる始祖への祈りであり、願いであった。 ……血の出るような思いのこめられた。 「ルイズ……。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 ルイズは自分の名をつぶやき、神話の存在である始祖へ問いかけていた。 お尋ねします。 ルイズは唇を噛んだ。 どうして、私は魔法が使えないのですか? コモン・マジックすら満足に扱えず、いまだ自分の系統すらわからないのです……。 努力や勉強が足らないのですか? しかし、偉大なる始祖ブリミル……。 あなたは、これを自画自賛だとお笑いになられるでしょうが……。 私はこれまで身を削り、心を削って、励んできました。 しかし、その全てがまるで意味を成さないのです。これは、どういうわけでしょうか? 私は貴族に相応しくないからですか? でも、では、どのようにすれば貴族らしいといえるのでしょう? わかりません、もう、何もわかりません。 魔法が使えないために、私はあらゆる人間から軽蔑されています。 これが、貴族の生きかたですか? どうして、これほどまでに恥辱を受け続けねばならないのです……。 私がどんな罪を犯したと? 魔法の才能がゼロなのは、何故なのですか。 いえ、どうして私は貴族の、それも名門ヴァリエールの家に生まれついたのです。 私のような出来損ないが、どうして。 何かの間違いですか? あるいは、始祖よ。あなたの気まぐれなのですか? 平民として生まれていたなら、こんな思いをするなどなかったのに……。 なまじ、貴族などに生まれてしまったばかりに、私はどこまでも蔑まれ続けねばならない……。 まるで毒の茨で覆われた道を、ひたすらに歩き続けるようです。 私は貴族としての誇りを守るため、全てを費やしてきました。 魔法が使えないのなら、せめて心だけでもと。 しかし、それはどうやら愚かな自己満足にすぎないということを思い知らせてきました。 今までの、人生の中で。 恥の多い人生を送ってきました。 でも、もう力つきそうです。 明日、もしも使い魔の召喚ができなかったら……。 私はこれまで以上に、屈辱にまみれて生きていかねばならないでしょう。 そうであるなら、もはや私には生きていく意味などありません。 屈辱を受けるだけの人生など……。 いつ家名を剥奪され、あらゆる人から唾を吐きかけられることに脅えるだけの人生なら……。 願わくば、始祖よ。 どうか、私に使い魔を……。忠実なるしもべを……。 それがかなわないのなら―― 誰にも聞こえない小さな声。 でも、ルイズははっきりと口に出して言った。 「どうか、私を殺してください……」 そして……。 願いは、かなえられた。 ルイズは、神聖で美しく、強大な力を持った忠実な使い魔を得たのだ。 偉大なる、毒の名を持つ贈り物を得た―― 散髪が終わった後、そこにはまるで違うルイズがいた。 もともと人並外れた美貌のルイズである。短髪になったからといって魅力がなくなるわけではなかった。 これはこれでよい。まるで男装でもしているかのような趣がある。 「けっこう。いいできだわ」 ルイズは不安げな床屋に料金を少し多めに払ってやり、上機嫌で店を出た。 次に入ったのは、靴屋だった。 頑丈で動きやすく、黒いものを選ぶ。 その次は服屋だった。 前から考えていたように、黒い服、それに革製の黒いズボンを買った。 店主のいうところ、通気性もよく、破れにくく、丈夫らしい。 確かに着心地はいいし、動きやすかった。 それに、これならあのコスチューム……手袋ともよくあいそうだ。 試着室で、ルイズは密かに持って来たブラック・コスチュームを、マスクをのぞく全てを着こんだ。 その上に服、ズボン。それに、新調したばかりの靴をはいた。 鏡に映る自分。 その姿に、ルイズは非常に満足した。 新しきルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、もはや傷つくことはない。 まわりから馬鹿にされ、平民にすら蔑まれるような存在ではない。 その努力や誇りが、何の意味もないことのように踏みつけにされることもない。 ルイズは残るマスクをつけて、さらに完全な状態になりたい気持ちになった。 さすがにそれは思いとどまったが……。 服屋を後にしたルイズは、颯爽というよりも傲慢な雰囲気をまとって街を歩いた。 まるで自分がこの街の主であるかのように。 制服やマントは店がサービスでつけてくれた小さなショルダーバックにまとめて放り込んだ。 もはや、まず貴族の令嬢には見えない。 もっとも、目のある者なら、すぐにぴんとくるだろうが。 ルイズは広い場所を全力で走りまわりたい衝動にかられながら、以前はあまり細部を見ていなかった街を観察してみた。 こうしてみると、以前は見ているつもりで多くのものを見過ごしていたことに気づく。 街というのは人間と同じでいくつもの別の顔を持っているものらしい。 露店を見ているうちに、ルイズはちくりと警戒信号を感じた。 ルイズの見えない糸に何者かが触れたのだ。 マントをつけていなくても、その立ち振る舞いで『お嬢様』とわかったのか、悪意を持った者が近づいてくる。 おそらく、スリか何かだ。 目で見ていなくても、ルイズには全てが感じ取れた。 どうやってさり気なく近づき、どうやってルイズの懐に手を入れるつもりなのか、全てわかった。 ルイズはタイミングを見計らい、すっと露店から離れた。 そのとたんに一人の男がつんのめり、露天の中に頭から突っこんでいった。 怒号と悲鳴が飛び交い、野次馬たちが群がる中、ルイズはさっさと歩き出していた。 ぶらぶら歩いていると、また別の視線が向けられていることを察知する。 それも、今度は複数。 おかしな相手に目をつけられたのかもしれない。 ルイズは使い魔の力を試してみたくなったが、さすがに人通りの多い場所ではまずいと思い、路地裏のほうに入った。 適当な場所を探すうちに、銅製の武器屋の看板が目に映った。 すぐに通り過ぎようと思ったが、何となく惹かれるものがあり、ルイズは武器屋に入ってみた。 店の親父はルイズをじろりと見るとドスのきいた声で、 「坊や、ここにゃお菓子やオモチャはおいてないぜ」 ルイズは一瞬何のことかと思ったが、よく考えれば今のルイズの服装は少年と間違われても仕方がない。 ムッとしかけるが、すぐにそれが利点であることに気づく。 自分をつけてくる相手も、少年だと勘違いしているのかもしれない。 ……少年だと思われるのなら、少女であるルイズには目が向きにくくなる。 あれ? ルイズは、少し奇妙に思った。 店の中には、気配が二つある。 一つはまぎれもなく店の親父のものだが、もう一つはよくわからなかった。 始めて感じる気配だった。 人間や獣、ドラゴンやサラマンダーなどの幻獣とも違っていた。 まあ、いい。 特に殺気や危険は感じないので、ここは知らん顔してもいいだろう。 ルイズは並んでいる商品を見たり、つついたりし始めた。 「おい、坊主。聞こえねえのか? そういうことはママのおっぱいを卒業してから…………」 店主は脅すように言ったが、すぐさま顔から血の気が引き始めた。 ルイズが商品の一つを片手に持って、近づいてきたからだ。 それは、バトルアックス……戦斧と呼ばれる武器の一種だが―― 通常のものよりも刃を大きくした分、重量も跳ね上がり、鍛えた大の男でも扱うのに苦労する代物だ。 『華奢な少年』には扱うどころか、持ち運ぶことすらできかねる。 そのはずなのに、目の前の子供はニヤニヤしながら、まるで軽い棒切れのように軽々と振り回しながら、こっち向かってくる。 しかも―― このガキ、本気だ……。 長年の勘で、店主は相手が迷うことなく、自分の脳天に斧を振り下ろすことを予測した。 店主は自分が悪い夢でも見ているのではないかと、いや、夢であることを切に願った。 ぶんぶんという斧が発する不気味な音を聞きながら。 この時、『少年』の左にはめた手袋が淡く光っていることに、すっかり動転した気づきもしなかった。 「おい、ちょ、やめ……まて……まって!」 店主は必死で制止しようとするが、まるで意味がなかった。 ルイズはどんどん店主に近づいていく。 やがて――店主は気づく。 どうして、この『少年』がこれほど恐ろしいのかを。 商売柄、いかつい大男やゴロツキどもの相手は慣れており、少々の脅しでがたつくような玉ではなかった。 だが、今相手にしているのは、過去に見たどんな傭兵や腕自慢とも違っていた。 得体の知れない、はるか遠方の秘境からきた魔物でも相手にしているような気分だった。 直感する。 こいつは、人間じゃない。 姿こそ、少女のような顔をした『こせがれ』だが……。 その雰囲気にもっとも近いものは、まだガキの頃、最初に見たオーガ鬼だ。 あの人に似て、人とはまるで異なる筋肉の塊みたいな化け物に震えあがった、その恐怖はいまだに忘れられない。 きっと、死ぬまで忘れることはかなわないだろう。 お前はなんだ。 店主は悲鳴にならない、悲鳴をあげた。 そして、カウンターに近づいたルイズは、無造作に斧を振り下ろした。 「ひいい!」 女みたいな声を出して、店主は頭を抱えてうずくまる。 しかし、痛みもショックがなかった。 恐る恐る目を開けると、カウンターを真っ二つにし、床に刃を叩き込んだバトルアックスが見えた。 「はずれちゃった……」 ルイズはニヤリとして、羽根ペンでも持ち上げるみたいに、バトルアックスを持ち上げる。 その笑みから、わざと外したことがわかった。 「でも、次こそは!」 ルイズは構え直し、じろりと店主を見下ろした。 冗談じゃねえよ!! 店主はゴキブリみたいに壁際まで這って逃げた。 ルイズはそれを追い、バトルアックスを持ったまま、ひょいとカウンターをジャンプで飛び越え、店主の前に立った。 もはや、店主は生きた心地さえしなかった。 「カンベンしてくれぇッッ!! カンベンしてくれぇッッ!! 俺が悪かったあああッッ!!」 店主は土下座し、必死で許しを乞う。 「ふん」 その態度にルイズは冷笑する。 「おいおい、そこまでにしとけや! そんな親父殺したってしょうがねーだろうが!!」 予期せぬ声が、ルイズを制止した。 「誰?」 ルイズは声のほうを振り向き、すぐに一本の錆びついた薄手の長剣を見つけた。 こいつが…? いや、もしかすると。 「あんた、インテリジェンスソード?」 声をかけると、剣は応えた。 「おう、そうとも。俺様ことデルフリンガー! 通称クレイジーモンキー!」 「はあ?」 「しょっぱなの軽いギャグよ。気にするな。それよりあんちゃん……」 剣は笑みを含んだ声で、 「見かけのわりにてーした馬鹿力じゃねーかい。どうだ、俺を買わねえか? 損はさせねーぞ?」 「生憎剣なんか使ったことないんだけど」 言いながら、ルイズはおしゃべりソードの柄を握る。 また左手袋が、正しくはそれに刻まれた使い魔のルーンが輝く。 すると、剣はいきなり黙りこんだ。 「なに? おしゃべりはおしまい?」 「おでれーた。おめ、『使い手』か? いや、違う……のか? いや、間違いねえ。間違いねえが……。ま、いいやな。おい、俺を買え」 「やだ」 ルイズは断った。 「にゃにおう?!」 「なんであんたみたいなボロ剣……。贈り物っていうのなら、もらわなくもないけど」 ルイズはちらりと店主を見る。 「ひ…! さ、さしあげます! そんな剣でよろしけりゃあ、いくらでもさしあげますんで。命ばっかりは……」 店主は床に膝をついたまま両手を合わす。 「なに、それ。それじゃまるで強奪してるみたい……」 「いえ、とんでもない! どうぞ、お受け取りくださいませ!」 店主はあわてて首を振った。 「こんなボロ小屋で埃かぶってるよか、あなた様のようなお強いおかたにもらっていただけるほうが何倍も幸せです!」 「そこまで言われたら、断るわけにもいかない」 ルイズはふっと微笑んだ。 店主はほっと胸を撫でおろしたが、その矢先、錆びた剣先を鼻面に突きつけられた。 悲鳴をあげることもできず硬直しているところへ、 「抜き身で往来に出るわけにもいかない。鞘もプレゼントしてくれると大感激なんだけど」 『少女』のような、優しい声が上から降ってきた。 「容赦ねえなあ……。だが、気に入ったぜ、相棒!」 デルフリンガーの嬉しそうな声が、ひどく遠くに聞こえた。 「人を見かけで判断して、うかつな言動をするとろくでもない目にあう。勉強になった?」 ルイズは鞘におさまったデルフリンガーを受け取ると、ちゅっと店主に投げキッスをして店を出ていった。 「……………てめーは俺の親父の名にかけてクソッタレだ、ちきしょう」 一人になった店主は、破壊されたカウンターを見ながら、半泣きでつぶやいた。 「こんな商売、もうやめだあ……!!」 「いたか」 「いねえ」 数人の男たちが互いにしかめっつらを見せ合いながら路地裏で話していた。 いずれも人相の良くない男たちだ。 俗にゴロツキとかいわれるような連中だった。 街で金持ちのお坊ちゃんらしい『少年』を見かけ、鴨にしようと追っていたのだが……。 武器屋から剣を手に出てきた後、ふいに姿が見えなくなってしまった。 まるで、天に昇ったか、地に潜ったか。 「あいつ、メイジだったんじゃねえのか?」 「でも、マントつけてなかったぜ」 「馬鹿か。そんなやつはいくらでもいるさ」 ゴロツキたちは憶測を飛ばし合いながら、ぼやいていた。 あれが少年であれ、少女であれ、捕まえてその筋に流せば、好事家が高い値で買ってくれる。 場合によっては――美少年は絶世の美女よりもはるかに高い値がつくのだ。 それを逃したとなると、非常に悔しいことだった。 男たちはぼやき続ける。 自分たちが追っていた相手が、すぐ近くで自分を観察しているとも知らずに。 ルイズは愉しげにその会話を聞いていたが、口元に残忍な笑みを浮かべ、背負った長剣に手を伸ばす。 だが、すぐに思い直したように手を止めた。 そして、ポケットから大事そうに黒いマスクを取り出した……。 「ママとはぐれちゃったの、仔猫ちゃんたち?」 頭上から陽気な声をかけられ、ゴロツキたちは身をすくませた。 どこから現れたのか、上の壁に真っ黒な怪人が張りついていた。 まるで、巨大な蜘蛛のように。 「あ……?」 「なんだあ……」 驚く男たちの前、怪人は音もなく飛び降りると、いきなり手近な相手を殴り倒した。 男は壁に叩きつけられ、動かなくなる。 死んではいないが、下顎が見事に砕けていた。 当分の間、悪くすると一生ステーキは食えないだろう。 いきなりの展開にぽかんとしているところに、次の犠牲者が出た。 胸倉をつかまれ、放り投げられたのだ。 投げられた男はくるくる回転しながら踏み潰されたガマガエルのように地面に叩きつけられた。 「て、てめえ!」 「なんだ、おめえはッッ!!」 やっと男たちは臨戦体勢に入った。 しかし黒い怪人はかすかに小首をかしげ、蜘蛛のようなポーズで男たちを見ている。 マスクをして表情が見えないが、雰囲気から明らかに馬鹿にしているのがわかった。 男の一人が小剣をつかみ、踊りかかるが、剣を振り下ろす前に顎にハイキックを受けて昏倒した。 黒い影は風のよう動き、矢継ぎ早にゴロツキに襲いかかった。 次に停止した時、たっているゴロツキは一人もいなかった。 時間にして一分もたってはいない。 「蜘蛛の糸を使う必要もなかったわねえ……」 少々不満そうな声でつぶやき、黒い怪人はさっと姿を消した。 この後、街はにおかしな噂がたつことになる。 壁を這いまわる不気味な黒い化け物の噂が……。 「相棒もつれねえよなあ」 女子寮の部屋。鞘から三分の一ほど刀身を出したデルフリンガーは不満そうな声でルイズに呼びかける。 「早速に活躍できるかと思ったのに、俺様ぬきでやっつけちまうんだもの」 「血でも吸いたかったわけ?」 ルイズは机で予習復習をしながら、返事だけする。 「俺様は吸血鬼じゃねえよ。でも、剣として造られたからにはなあ……」 「私も使おうかと思ったんだけど」 ルイズは手を休め、 「武器を持った状態じゃ、全員殺してたかもしれないから」 何でもないことのように、物騒な発言をする。 「ふーん。気を使ったってわけかい」 「別に? あの連中が死のうが知ったことじゃないけど、素晴らしい発見をして嬉しかったら……ね?」 ルイズは左手袋のルーンを見て、微笑む。 あの店でバトルアックスを持った瞬間、体が異様に軽くなり、パワーが数倍、それ以上に増幅されるのを感じた。 まったく驚きだ。 この優れた使い魔はまだ素敵な能力を秘めていたのである。 その気になれば、一国の軍隊とも戦えそうに思えた。 無論勝利することも。 「気分が良かったから、見逃してやったってえわけね……」 デルフリンガーがかちかちと音をたてる。 ルイズはそれに応えず、ニッと笑っただけだった。 「しかし、おでれーた。使い魔とメイジは一心同体ってえけど、まさかそこまでに一つになってるなんてなあ」 デルフリンガーは感心したようにつぶやく。 「それにしても、変わった生き物だよなあ。ぱっと見布切れみてえなのに……」 「生き物。やっぱり、生き物なのね」 ルイズは服ごしにコスチュームをなでた。 「ああ、それだけは間違いねえな。俺みてえに魔法で造られたもんでもねーよ、きっと」 この使い魔がどこからきたのか考えると、実に不思議な気分になった。 まあ、いい。 ルイズは肩を揺する。 問題は、ないのだ。 「言っとくけど……」 「わかってらあな。こいつは秘密だ。相棒の秘密は絶対にもらさねえ」 「よろしい」 会話も途切れ、ルイズは改めて勉強に専念しようと机に向かう。 が。 ぴくり、と健康や育ちの良さを示すその頬が動いた。 ルイズはペンを置き、椅子を動かしてドアのほうへと体を向ける。 どんどんと粗雑な音が響いた。 「開いてるわ」 乱暴にドアが開かれ、金髪の少年が入ってきた。 目つきが物騒で、下手をすれば刃物でも取り出しそうだった。 「デートのお誘いかしら、ギーシュ・ド・グラモン」 ルイズは足を組みながら客を出迎えた。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 来客の声は殺気に満ちていたが、ルイズは笑みを消そうとしない。 ギーシュはルイズを見て一瞬ぽかんとした。 え? 誰? そんな表情だった。 長い髪の少女が少年のような短髪になっていたのだから、しょうがなくもあるが。 ギーシュはすぐにキッと表情をこわばらせ、 「僕と、決闘しろ……」 「また、それ?」 ルイズは息を吐き、 「女の子を前にして、物騒なことね。薔薇の存在意義はどうしたの? ああ、身のほどを知って返上したのかしら」 「黙れっ!!」 ギーシュは顔を歪めて杖を突きつける。 その表情に、へらへらと女子の尻を追いかけ、プレイボーイを気取っていた時の余裕はなかった。 追いつめられ、逃げ場を失ったドブネズミのようだった。 ルイズは立ち上がり、息がかかるほどの距離まで顔を近づけた。 「ゼロのルイズに虚仮にされたのが、それほど恥ずかしかった――?」 「……!」 ギーシュは一瞬驚いて飛びすさる。 あの食堂で恥辱を受けて以来、ギーシュは一分も安らいだ時間が得られなかった。 仲間内では馬鹿にされ、女子からも軽蔑の目で見られるようになった。 ルイズにやられる直前、二股がバレて二人の少女から別れのビンタとワインの洗礼を受けたことも相乗効果となっていた。 先にルイズに平手を受けたマリコルヌは部屋に引きこもっている。 噂ではまだ寝こんでいるそうだ。 目の前で杖を折られて捨てられた上、その憎い相手に一矢報いることさえできなかったことがショックだったのだろう。 それも、相手は学院始まって以来の劣等生、ゼロのルイズ。 しかし――自分は違う。 こんな相手に、ヴァリエールとは名ばかりのゼロに馬鹿にされてたまるものか。 「決闘だ……。ヴァリエール」 杖を握りしめ、ギーシュはうなった 「……やめておいたほうがいいと思うけど?」 ルイズはステップでも踏むように後ろにさがってから、またギーシュに顔を近づけ、耳もとで囁いた。 「恥の上塗りって言葉知ってる?」 くすくすとルイズは笑った。 その言葉を受け、ギーシュの目から理性の炎が消失していく。 ルイズはそれを観察しながら、 「まあ……。それほどまでにいうのなら、受けてあげていいわよ?」 「明日の昼休み……ヴェストリの広場だ」 「いいわ。素敵なお花を用意してきてよね?」 うなるギーシュに、ルイズはまるでデートのOKを出すかのように、花のような笑みを浮かべた。 美しく、可憐な容姿とは裏腹に、人を蝕み、死に至らしめる毒花のような微笑を。 そんな相棒を見ながら、 どーせ、決闘でも俺の出番はねえんだろうなあ……。 デルフリンガーはちょっとセンチになっていた。 前ページ次ページGIFT
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前ページ次ページ虚無と金の卵 時間は、キュルケ達の出発前に遡る。 ロングビルが準備を整えるまでの間、ルイズ、キュルケ、タバサ、ウフコックの三人と一匹は、オスマンの指示で学院のすぐ外の草原で待機することとなった。 まさに快晴。草原は見渡す限り平和そのもの。だが刻一刻と時間は減り行く。 宝物を手に入れたフーケは逃げる算段など当然打っているだろう――ルイズは苛々とロングビルを待つ。 そんな折、ルイズの肩に乗ったウフコックが口を挟んだ。 「ルイズ……いや、キュルケ、タバサもだ。我々だけで話がある」 「何よウフコック、止める気?」 やれやれ、とウフコックは肩をすくめる。 「止められるのならばな。だが聞き入れてはくれないだろう?」 「わかってるじゃないの」と、ルイズは強気に応じる。 「ま、それは俺もわかっている。だからこそ話がある」 「ヴァリエール、そんな苛ついたって仕方ないじゃない。で、ウフコック、なに?」 キュルケが話を促す。 「フーケについて……と言うより、先ほどの場で、敢えて俺が言わなかったことについて、だ」 「……何ですって?」 「あの場に途中からやってきた女性、彼女がフーケだろう。昨日のあの場に居た人間と匂いが全く一致する」 「ミス・ロングビルが!?」 ルイズは驚いて声を上げる――すぐさまタバサが口を抑えた。 「もがっ……ご、ごめんなさい。周りに聞こえて……ないわよね?」 「まだ来る様子は無いわね……」 キュルケが周囲を見回す。人の気配が無いのを確認し、ウフコックに疑問をぶつけた。 「でも、なんであの場で問い質さなかったの?」 「言い逃れする算段か、あるいは確実に逃げるための算段が付いたのだと思った。 そうでなければ現場に戻ってくるといったリスクを負う必要は無かろうし、そこには強い自信を感じているようだった」 「でも、それでも敢えて戻ってくる理由がわからないわね」 と、ルイズが疑問を呈す。 「盗みを完遂させたという達成感は、味わっていないようだったな。眠りの鐘が目当てではなかったのかもしれん」 「別の目的ねぇ……そういえば、破壊の杖がどうとか言ってたわね」 キュルケの指摘にウフコックは頷く。 「コルベールがその話を持ち出した瞬間、ロングビルから『怒り』の気配が強く発せられた。 だが、破壊の杖の在り処を口に出した瞬間は、それが強い『喜び』と『何かを実行する決意』に転じていた。 元々はこれが狙いだったのだと思う」 「……ずいぶん詳しくわかるのね?」 興味深げに微笑むキュルケ。心配げにルイズはウフコックを見つめる。 「……そんなに話しちゃって良いの、ウフコック?」 「まあこうなってしまえば、俺達はチームのようなものだ。この能力が役立つならば隠す道理は無い。 もっとも薄々気付いていたとは思うが」 「教えてくれるなら、貴方の口から聞きたいわ」 「俺は、感情を匂いで嗅ぐことができる」 タバサ――ぴくり、とまぶたが揺れる。彼女なりの驚き。 キュルケ――ますます笑みが強くなる。何とはなしの予感が当たった表情。 「『サンク』のときは……その、正直、誤魔化した。まあ、半分は当たっているようなものなんだが。 実際はもっと直接に、人の『怒り』や『喜び』といった感情を嗅ぎ、その上で視線やちょっとした動作などを手がかりに人の思考を読み取る」 「……へえ、やっぱりそういうわけね」 「気付いてたの?」 ルイズが驚いた声で尋ねる。 「妙に匂いを気にするし、ウフコックと話す限り、気持ちとか感情に凄く敏感なのはわかってたから。 気付いてたわけじゃないけど、不思議とも感じないわね」 と、キュルケは自慢げに指を立てて答えた。 「……皆、驚かないものなんだな。 ともあれ俺がロングビルと話すことができれば、彼女の素性を聞き出すなり、盗んだ宝物の隠し場所を引き出すなり、できるだろう」 「ま、貴方に隠し事できる人間なんてそうそういないわ」 と、ルイズのもっともな指摘。 「もっとも、大きな問題が残っている。 ロングビルが実はフーケ、という話はあくまで俺の認識というだけで、人に見せられる証拠など何一つ無い。 髪の毛や指紋などを拾っても、ここで有用な証拠とはなりえないし……」 「指紋?」 タバサが興味深そうに尋ねた。 「人間の指の皺のことだ。 例えばガラスを触ったとき、手の脂のせいでガラスの表面に指の皺が写ることがあるだろう? あれは、ガラスのみならず、実際は手に触れた様々な箇所に付着する。目には見えないことが多いが。 それを浮き上がらせて、皺の形状、分岐や端などの特徴点を調べることで、かなりの確率で個人を特定できる」 「初めて聞いた。実に興味深い……」 「俺のいたところでは一般的な捜査手法だった。だが、この国で認知されていない方法で証明したところで何の効力もない。 そして、それは俺の嗅覚も然り。そうだろう?」 「私にはそれで十分だけどね」 ルイズは既にウフコックを信じている。当然じゃないの、と付け足すようにルイズは言い放つ。 キュルケとタバサは、嗅覚云々を抜きにしても、サンクを通してウフコックの慎重さ、善良さを認識していた。 それに結局はのるかそるか一蓮托生であり、ならば二人とも、賭けに出ることが信条であった。 「うん、私も信じるわよ」 「右に同じく」 三人の言葉に、ウフコックは喜びを覚える――だがそれもすぐに隠し、冷静に答える。 「そうか……だがそれでも、赤の他人にとっては根拠の無い戯言に過ぎない。 俺の言葉を信じたところで、フーケが一枚上手だったら君らが貧乏籤を引くだけだ」 「なら結局、やることは一つじゃないの」 「そうよね」 「その通り」 「「「私らがフーケを捕らえて証拠を見つければいい」」」 三人の重なる声――杖を掲げたときほどの緊張は無く、その代わりとても明るく力強い唱和。 「構わないんだな?」 「ウフコックも優柔不断よねー。そんなんじゃ女の子は付いてこないわよ?」 「全くよ。臆病でもエスコートするくらいの勇気がほしいわ」 うら若き乙女の辛口批評/本気で面白がっている。 「勘弁してくれ……。俺はただのネズミであって、いわゆる男性的な観念を期待されても困るんだ」 「もう、そういうところが情けないのよ。 こういうときはバシっと決めなさいよ。私らはもう杖を掲げて、覚悟決めたんだからね」 ルイズの不敵な微笑み。見る者の不安を払拭させる魅力に満ち溢れている。 ウフコックは、敵わないな、とばかりに頷く。 「ああ、十二分に分かったとも。 盗人と臆病風に吹かれた教師たちに、君達の行動がどれだけ正しく、そして誇り高いか、ご覧じてもらおうじゃないか。 そのために俺も全力を尽くす。誓って、誰にも君達を傷つけさせず、そして君達の名誉を汚させはしない」 「それで良し」 ウフコックの宣誓に、ルイズは満足げに頷いた。 「で、具体的にはどうする? 今からでも『破壊の杖』が取られないように何とかしたいところだけど……。 まずはロングビルを先に探しましょうか? 一応は私たちの馬車を用意しておくって話になってるから、 もし準備していないようなら良い口実になるわ」 そうキュルケが話を持ち出したとき、タバサが口を挟んだ。 「……あ、来た」 タバサが指を刺す方向に、蒼髪の女性が馬車を曳いているのが遠目に見える。 ミス・ロングビル/フーケであるはずの女性。 「ふむ、こちらにやってくるようだ。ということは、今すぐ破壊の杖を探して盗む気は無いな。 恐らく、フーケは逃げ出してしまった……という既成事実を作る気なのだろう」 「なら、逆に言えば今こそチャンスよ。こちらが先にフーケと、『破壊の杖』を押さえる。 あとは眠りの鐘の所在さえウフコックが聞き出せば何とかなるわ」 と、ルイズが提案する。 「じゃ、私とタバサがミス・ロングビルについていって捕らえるわ。ルイズとウフコック、貴女は『破壊の杖』をお願いね」 「大丈夫か?」 「メイジ相手の喧嘩なら私もタバサも慣れてるし、今この瞬間ならフーケの正体を知ってる私達が有利よ。 ま、上手く騙すわ。できるだけ危険も避ける」 ウフコックの心配を宥めるように、キュルケは答えた。 「でもオールド・オスマンには3人で行くってことで話が決まったから、言い訳なり何なり考えなきゃ」 「そうねぇ……ミス・ロングビルに不自然に見えない理由がほしいところね」 「貴女達は、仲が悪い。良く知らない他人からすれば」 タバサが口を挟む――示唆に飛んだ一言。 「何よ、本当は仲良いみたいな口されても困るわよ! ……で、つまり?」 「喧嘩別れすれば良い」 そうしてルイズは、キュルケ達と喧嘩別れしたかに見せかけ、馬車が走るのを見届けてから学院内に戻っていた。 ウフコックと相談しながら校舎を駆ける。 「全くキュルケのやつ、途中から本気になってたわ。後で言い返してやらないと」 「その……それを君が言うのか……?」 「何よウフコック、文句あるの?」 「いや、無い。無いとも。それよりも早く行こう」 ウフコックの戦略的撤退。 「そうね、早くオールド・オスマンに話を通さないと……何て伝えようかしら」 「うむ、それもあるが、まずはコルベールに話して、その『破壊の杖』とやらが盗まれないよう対策を取ろう。 それからでも遅くは無い」 「そうね……。じゃあ、コルベール先生の研究室に行きましょう」 ルイズは学院内を駆ける。たまに教師に目撃され驚かれたが、気にも留めずルイズはまっすぐコルベールの研究室へと向かった。 そして遠慮もなく飛び込むように、コルベールの研究室の扉を開く。 「コルベール先生、お話が!」 入室の許可も聞かずにルイズは足を踏み入れた。 そして中に居る人物と目が合う。 「……ミス・ヴァリエール?」 「え、ええっ!」 中に居たのはロングビル=状況的に土くれのフーケ。 明かりもつけず、引出や棚に収められた物を引っ掻き回していたようだ。 乱雑な部屋の中、宝石か何かを手にとって見つめている=どうみても泥棒の所業。 「くっ……!」 ロングビルが杖を振るう=床板を突き破り、ルイズの背丈ほどの“手”が出現。 昨日のゴーレムほどの大きさはないが、相手取るには十分な脅威。明瞭な敵意を持ってルイズに接近する。 「ルイズ、右手で『ぶん殴れ』!」 ウフコックが叫び、ルイズの肩から右手へと器用に移動/黒光りする篭手へとターン。 「な、殴るって言ったって……!」 「俺を信じろ! この右手ならば何の問題も無い、思い切りやるんだ!」 「ええいっ!」 ルイズの細腕から繰り出されるストレート――になっちゃいない、へっぴり腰のパンチ。 だがその衝撃でルイズも“手”も一歩分ほど後ろに下がる。 轟音と共に土くれでできた手の平が陥没している。そこを中心にクラッキングが拡大/威力は絶大。 「……あれ?」 「そういう機能の『篭手』だ! もっとだ、もっと殴れ!」 「わ、わかったわ!」 ルイズの右手の篭手/実際は高性能な超振動型粉砕機。 拳の握り、関節のブレはウフコックが調整/何も気にせずルイズは連打。 土でできた手など何の問題にもせず粉砕/爆砕/木っ端微塵。 「す、凄いわコレ……」 「……う、嘘でしょ? くっ、畜生っ……」 盗人の合理的な判断――逃げるが勝ち。 「逃げる気だ! ルイズ、俺を“構えろ”!」 フーケがルイズの方向に駆けてくる。 錬金で作られた手を破壊されたが故の判断/盗人の嗅覚。だがウフコックの咄嗟の行動が間に合う。 ウフコックは篭手から銀色の杖――スタンロッドへと反転変身。 ルイズの手にぴたりと納まる。ルイズはとにかくウフコックの言葉に倣い杖先を向ける。 その先はウフコックの仕事。杖先/電撃の放出部を伸張。フーケは当然回避――ルイズの素人同然の手捌きなど問題無しのはず。 だがウフコックがそれを許さない。杖自身が長さと方向を調整。相手の避ける方向へ追従、接触。 ざらついた刺激音/スタンロッドからの放電――失神レベルの電圧。 「きゃああああっ!」 フーケは叫び声を上げて倒れる。 「や、やった、の……?」 「失神させただけだ」 ルイズに説明するウフコック。この一瞬の行動に、ルイズはやっと頭が追いついてきた。 状況を整理――引き出しや棚が荒らされたコルベールの研究室。そのコルベールの研究室に居たロングビル。 ロングビルがフーケであり、部屋を荒らして『破壊の杖』を探しに来ていたと述べるに十分な状況証拠。 「しかし、凄いのに変身したわね……。破壊の杖ならぬ、破壊の拳、そして電撃の杖ってところかしら」 ルイズは興味深げに手にした杖を眺める。 トリステインでは滅多にお目にかかれぬほど奇妙な金属。ルイズが片手で簡単に触れるほど軽いのに頑丈で、艶やかな銀色をしている。 「実際は振動型粉砕機とスタンロッドと呼ばれる。それより、ルイズ」 「そ、そうね。まずはミス・ロングビルよね。でもどうして……? キュルケとタバサと一緒に行ったはずなのに……」 「ああ、その通りだ。何らかの手段で帰ってきたのか……? ともあれ、確かに彼女の匂いと昨日ゴーレムを操っていた人間の匂いは一致する。 ……しかし、彼女の匂いが妙に強いな。ずいぶん部屋を探し回ったのだろうか」 ウフコックはスタンロッドの柄の一部を自切し、ネズミの姿に戻る。そして周囲の匂いを嗅ぎ、怪訝な表情を浮かべた。 「また起き上がるかもしれない。杖は君が持っていてくれ。……くそ、匂いがごたついているな。 火薬や薬品の匂いもきつい。それに、まるでフーケと同じ匂いが二つあるような……ううむ……」 確かに、コルベールの研究室は妙な匂いがした。燃料油の研究をしているという話をルイズは聞いていたが、それは真実だったらしい。 妙に揮発臭が強く、それがウフコックの鼻を混乱させているようだった。 「……ともかく、ミス・ロングビルが破壊の杖を狙っていたことには違いなさそうね。 まずはオールド・オスマンとコルベール先生にこの有様を見せないと」 「それもそうだな……」 「そうは問屋が卸さないよ」 その言葉と共に、研究室の破れた床板から再び土が盛り上がり、先ほどと同じ程度の大きな手を模る。 完全な奇襲。華奢なルイズの体を背後から容易に捕縛――強い力で胴体ごと握り締められ、ルイズはスタンロッドを手放す。 「いやあっ!」「ルイズ!」 ルイズの悲鳴、そしてウフコックの行動を抑えるようにもう一本の手の出現――ルイズを捕らえたものよりは幾分細い腕が現れ、ウフコックを捕らえる。 「……まさかここでネタが割れちまうとはね。驚いたよ」 研究室の奥から、足音も立てずに近づく人影――土くれのフーケ。 興味深そうに、ウフコックの作り出したスタンロッドを拾う。 「さて、ネズミちゃん、貴女の主人が大事なら、下手に動くんじゃないよ。ちょっとでも妙な動きを見せたら握りつぶす」 「な、何で何人もあんたが居るのよ!」 微笑を浮かべ、捕らわれていない方のフーケは杖を振るう。 それに応じるように、捕らえたはずのフーケが煙と消える――残ったのは小さな魔法の人形。 「このガーゴイルさ。スキルニルって言って便利な奴でね」 フーケは人形を拾い、愛しげに撫でる。 「血を与えれば、その血の持ち主そっくりの姿・性格に変身して、それを操る人間の命令を何でも聞くのさ。 私程度のメイジでも2、3体くらいは操りながら魔法も使える。さっきはこのお人形に見せかけて、私が隠れて杖を振るってたわけ。 囮に使って良し、芝居に使って良し。まったく、泥棒稼業にはもってこいの道具だよ」 「……そんなものすらあるのか……! くっ、それも宝物庫から盗んだものだな!」 フーケはまるで出来の良い生徒を褒めるように、ウフコックに優しげな声で答えた。 「勘が良いじゃないか、ネズミちゃん。なかなか賢いし、珍しいマジックアイテムを持ってるようね。 一体どうやって私の行動を知ったんだい?」 「余計なお世話よ! 盗人に褒められたって何よ!」 「口の減らない娘だね。ちょっと黙ってな」 人間の胴ほどもありそうなゴーレムの指先が、ルイズの口を塞いだ。 「むがっ…………!」 「ま、なるべく殺しはしないよ。でも骨の一本や二本なら躊躇わないし、私の手先が狂うことだってあるだろう?」 「乱暴はよせ……それだけ口を開くんだ、俺と話す気なのだろう?」 「話のわかるネズミちゃんね」 艶然とフーケは微笑む。 「残念ながら、この状況ならば俺には話をするくらいしかできないからな。要求は何だ?」 「そうね。出来れば私の行動を読んだ手口なんか、ゆっくり茶か酒でも持ち出して話したいところだけど……生憎と多忙な身の上でね。 まず、この杖の使い方を教えてもらおうか」 フーケは、床に落ちたスタンロッドを慎重に拾い上げる――宝物を見つけ出した盗人の喜悦の表情。 「それを?」 「……ええ。まさかこんな一品が手に入るなんてね。無名だとしても十分に盗む価値があるわ。 ああ、何となく使い方はわかるわよ。私のコピーがやられるのは見てたんだからね。 ただ、ちゃんとした使い方を教えておいてほしいのよ」 「……取っ手のスイッチを押せば杖先から電撃が出る。柄の下の目盛りで電撃の強さを調整することが可能だ。 長さは鍔元のネジを緩めればある程度伸び縮みする。 電撃の威力はさほど強くはない。目盛りが最大でも失神させる程度だ」 「なんだ……。ま、あんまり強すぎても取り回しに困るからね、構わないさ。 さっきの篭手もほしいところだけど……。本当に残念さ。変身を許したらこっちが不意打ちを食らいかねないからね」 フーケはウフコックの指示の通り操作し、電撃を放出――素直に驚きを覚えたようだ。 だが、やがて興味をなくしたようにフーケは鞄に仕舞う。それに代わるように、古めかしい小さな鐘を取り出した。 「さて。要求はもう一つ。そう難しいことじゃないよ。……私が逃げ出すまで、気持ち良く眠ってもらおうかしらね」 眠りの鐘――学園の秘宝たるマジックアイテム。 それが今、ウフコックの目の前にあった。 ふと湧き上る額の熱。目の前の道具と何かが通じ合う。 まるで目の前の鐘が、自分の身体の延長のような感覚。 それの構造や使用法が、手に取るように頭へと流れ込む。 (なんだ……これは……? まるで、反転変身を覚えたときのような……) 「この学院の秘宝、『眠りの鐘』さ。流石に使い勝手の良い道具だよ……さあ、お眠り……」 ウフコックの脈動を裏切るように鐘は鳴らされ、眠りへの誘いが襲い掛かる。 魔法の力が込められた音色が、小さく、だが段々と大きく響き渡る。 フーケが鐘の操作に集中していた瞬間――爆音。 「勝手にぃ……話を進めてるんじゃないわよ!」 ウフコックが話している間、体も締め付けられたままルイズはもがき、締め付けられた口を開放させる。 そしてルーンも全く滅茶苦茶に詠唱――当然の失敗魔法/失敗こそが正解。 固定化すら吹き飛ばす爆発がウフコックを掴んでいる手を襲う。 衝撃で土くれの手は半壊し、ウフコックが這い出られる程度には緩んだ。 「今よ! ウフコック!」 ルイズには何も具体的な考えなど無い。 だが自分がどうにかなっても、ウフコックが無事ならば手段はあるはずだった。 ルイズは一縷の希望だけ託し、自分を掴む手を敢えて狙わなかった。 そしてウフコックには、手段など幾らでも用意されていた。 「くそっ! ……な、何っ?」 ウフコックの飛びついた先――眠りの鐘。 マジックアイテムはメイジにしか使用できない。それが不文律。 だが、ウフコックが飛びついた瞬間に眠りの鐘が輝く。フーケが手にしたとき以上に力強い光。 小さな鐘の鳴動――先ほどの音色とは異なる響きがフーケを襲う。 「そ、んな……?」 がくり、とフーケは膝を付く/ばたりと倒れ、規則的な寝息を立て始める。 「や、やったの……?」 意識の消えた証拠――ルイズを掴む手が、手としての形を保てずただの土となり、崩れていく。 つっぷしたフーケの上に土が降り注がれる――土くれと呼ばれた盗人の末路。 二人はあたりを確認し、倒れた人間こそ本物のフーケであることを確認した。 前ページ次ページ虚無と金の卵