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前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「はっ…!…はっ!」 陽の光が届かぬ薄暗い森の中に、鳥の囀りと共に規則正しい息づかいが響く。 それについで小さな足でトンットンッと地面を蹴る音も続く。 その二つの音を出していたのは、まだ十代そこそこに見える黒髪の少女であった。 まるで軽業師のように地面を蹴って森の中を走り回る少女の顔は全く苦しそうに見えない。 それどころか辺りに目を配るほどの余裕をもっており、ついで背負っている一人の女の子に目をやる。 そこには、少女の背中にしがみついたまま気を失っているニナがいた。 あの時山小屋から逃げた後もずっと気絶したままで、かといって山中に放置することも出来ずこうして数十分も背負い続けて走っている。 少女は、この子を背負ってなければもう少し足を速められるかなと一時は思ったが、すぐに首を横に振った。 仮に連れて行かず、小屋に放置していたら間違いなくあの怪物の餌食になっていたであろう。 (何処かに村か何かあれば…そこに預ければいいわね) 少女はいまの状況を前向きに考えつつ、更に足を速めようとした。 その時…ふと近くから誰かの気配を感じ、動かしていた足を止めた。 走るのを止めた少女はスー…と頭を動かして辺りを見回し、木々に覆われてハッキリと見えない森の中を見透かすかのように目をこらす。 気配からして人間だとわかったが、その人間が放っている雰囲気は少し異質であった。 それは例えれば外は冷たく内が熱い、どうも曖昧な感じが否めない気配なのである。 一体誰なのかと訝しんだ少女は更に目をこらし、気配の主を捜そうとする。 だがその行為は、少女の゛命゛を狙わんとする暗殺者にとって絶好のチャンスであった。 ―――ビュウッ…ドッ! まるで風を切るかのような音が響いた後、少女の体に風系統の魔法『ウインド・ブレイク』が襲いかかった。 「ウァッ…!?」 風の塊を直接ぶつけるシンプルな魔法は辺りに注意を向けていた彼女の体にぶつかり、勢いよく吹き飛んだ。 気を失っていたニナは吹き飛ばされる直前に『ウインド・ブレイク』の衝撃で少女の背中からはじき飛ばされ、地面に転がった。 何本かの枝が折れる音が響くと共に、吹き飛ばされた少女が数秒間の時を置いて上から落ちてくる。 「ク…!」 しかし地面に激突するまであと五メイルというところでネコのようにうまく体勢を変え、なんとか着地する。 着地した少女は自分が連れてきたニナがすぐ近くにいることを確認すると、鋭い目つきでキッと頭上を睨み付ける。 その視線の先には、少女の着地した場所から数十メイルほど離れたところに生えた大木の枝の上に立つ青髪の少女がいた。 彼女の着ている白いブラウスと白のニーソックス、そしてグレーのプリーツスカートはこの森の中では酷いくらいに目立っている。 高価なアンティークドールを思わせる顔は無表情であり、掛けている眼鏡がその色のない顔に言いようのない冷たさを醸し出している。 そして背中には自分が何者であるのか証明する黒いマントを羽織り、右手には自身の背丈よりも大きい杖を持っていた。 杖とマント。その二つはこの世界に置いて゛貴族゛と呼ばれる者達のシルエットだ。 そしてこの青髪の少女は、今この山中にいる貴族の中でも特に戦いに長けた者であった。 青髪の少女―タバサは左手の人差し指でクイッと眼鏡を持ち上げる。 その眼には、目の前にいる少女を゛標的゛として見つめる冷酷な感情が見えた。 ◆ 人は誰でも間違い犯す。 しかし時と場合によっては、それが命取りになる事を忘れてはいけない。 「やっべ…八卦路はルイズが持ったままだったの忘れてたぜ!」 魔理沙が素っ頓狂な声を上げて叫んだ瞬間、目の前にいた怪物が飛びかかってきた。 指先に爪の生えた両手を前に突きだし両足もピンと張って飛ぶ姿は、正に白昼の悪魔である。 目の前の異形が攻撃を仕掛けてきた事に気づいた魔理沙は驚いた表情を浮かべたまま左手の箒をその場に放り投げると、勢いよく前転した。 自慢の洋服が土にまみれ被っていた帽子も吹っ飛んでいったが、飛びかかってきた怪物の攻撃を避けることには成功した。 「おらっ!」 すぐに立ち上がった魔理沙はこちらに背中を見せている怪物に、素早い回し蹴りをお見舞いした。 比較的運動神経が良い魔理沙の蹴りが若干効いたのか、背中に一撃を喰らった怪物は呻き声を上げて数歩よろめいた。 「ヴヴヴ…ギィ!」 しかし自分の後ろに敵がいる事を知った怪物は振り向きざまに引っ掻いてきた。 反撃を予想していた魔理沙はスッと後ろに下がると、足下に転がっていた自分の箒を手に取る。 そして、次こそはと勢いよく振り下ろしてきた怪物の爪を箒の柄で見事受け止めた。 だが箒で敵の攻撃を防いだのはいいものの、予想以上に怪物の力は強かった。 箒を持つ魔理沙の手が小刻みに震えているのに対し怪物は振り下ろした爪に力を入れて、確実に魔理沙の方へ近づけていく。 「く…頭が悪いかわりに力がヤケに強いんだよな…――こういう奴って!」 このままではやられると感じた魔理沙は苦しそうに呟くと、二撃目となる蹴りを怪物の腹に入れる。 蹴りをまともに喰らった怪物は紙を勢いよく破った時の音みたいな叫び声を上げて後ろに下がった。 敵を下がらせる事に成功した魔理沙も後ろに下がると懐に手を伸ばし、小さな小瓶を取り出した。 小瓶の中にはサイコロを小さくしたような物体が一個入っているだけであった。 「下手に力勝負しても勝ち目がないし…こいつで片づけるか」 そう言うと魔理沙は小瓶を持った右手に力を込めたかと思うと、それを勢いよく放り投げた。 投げられた小瓶はクルクルと回転しながら、腹を押さえて呻いている怪物の頭上目がけて落ちていく。 そして後二メイルという所で怪物が気づいてしまい右手の爪ではじき飛ばそうとしたが、魔理沙にとってそれはどうでも良かった。 あの投げた小瓶の゛中身゛は、かなり強い衝撃さえ与えれば…華やかで盛大な゛花火゛へと昇華するのだ。 パキィ! 横に振った怪物の爪は見事落ちてきた小瓶を砕き、その゛中身゛も粉々に砕いた。 サイコロの形から無数の欠片へと変化した゛中身゛は粉々になった際の衝撃をモロに受けて…爆発した。 瓶を割った怪物をも巻き込んだその爆発はまるで、祝祭の時に打ち上げられる花火の様に色鮮やかであった。 流石に本物の花火みたいに大きくは無いが、色鮮やかな星の形をした花火が爆発と共に打ち上がる。 爆発音もドド、ドドン、パン!…とまるで花火のような何処かおめでたい雰囲気が漂うものだ。 そんな綺麗な爆発は僅か十秒ほどで終わり、後に残ったのは薄い灰色の煙だけであった。 ※ 瓶の中に入っていた物体…それは魔理沙が作りだした゛魔法゛の一つであった。 魔法の森などに生えている化け物茸などを独自の調理法でスープを数種類作り、それをブレンドする。 そして数日掛けて乾燥させて固形物にした後、その固形物を投げつけたり加熱したりと色々実験をする。 そうすることでごく稀に魔法らしい魔法が発動することがある。 成功しても失敗しても本に纏め、また茸狩りからスタート…といったループが続く。 先程怪物に投げつけた固形物は威力が強すぎた成功例の一つを、ある程度弱めたものであった。 ※ 煙はその場に数秒ほど留まったが、初夏の香りが漂う突風に乗って空へと消えていく。 本当ならば煙の留まっていた場所にいる筈の怪物の姿は無く、代わりに小さなクレーターができていた。 魔理沙は用心しつつもそこへ近づき、クレーターを調べた。 「ふぅむ…まさか木っ端微塵になるとは予想外だったぜ。まだまだ威力が強すぎるな」 一通り調べ終えた魔理沙はすぐ傍に落ちている帽子を拾い、パパッと土を払い落とす。 そしてある程度綺麗になったソレを頭に被ると、苦笑いのような表情を浮かべて先程の爆発の事を思い出した。 「それにしても…思ってたより衝撃に対しては弱かったな。砕けた直後に反応してたし…完成までもうちょっとのところか」 彼女はひとり呟きながら、腰に付けた革袋から一冊のメモ帳を取り出した。 もう何年も使い続けているのか、そのメモ帳からは大分くたびれた雰囲気が漂っている。 魔理沙はメモ帳を開くとパラパラとページをめくろうとしたが、その前にピタリと手の動きが止まった。 苦虫を踏んだよう表情を浮かべる彼女の視線の先には、半開きのドアから山小屋の中が少しだけ見えていた。 そしてそこから、ツン鼻にくる鉄のソレと似た臭いが漂ってきている。 「まぁでも…その前にする事があるか…」 魔理沙は軽い溜め息をつくとメモ帳をしまい、小屋の中へと入ろうとしたとき… 「何処かで見た事ある花火が上がったと思ったら、やっぱりアンタだったわね」 ふと背後から着地する音共に聞き覚えのある声が聞こえ、咄嗟に後ろを振り返る。 振り返った彼女の視線にいたのは紅白の服と別離した白い袖を付けた腕を組み、いつもと変わらぬ姿と態度で佇む゛彼女゛がいた。 いつもは神社の縁側でお茶を飲んでいて、暇さえあれば話の相手や弾幕ごっこもしてくれる友人みたいな゛彼女゛。 異変が起これば、どちらが先に解決出来るかを競い合うライバルになる゛彼女゛。 そして―――゛彼女゛にとって自分が、『最初に出会った気の許せる人間』だということ。 魔理沙にとって゛彼女゛は―――博麗霊夢はそんな人間であった。 いつもはグータラとお茶を飲んでいるような彼女がどのような用事でここに来たのか、魔理沙はわかっていた。 そしてそれを知ったうえで、自らの勝利を誇る戦士のような晴れ晴れとした笑顔で霊夢の顔を見た。 「よっ、遅かったな。何処かで昼寝でもしてたのか?」 「その昼寝を邪魔する輩がいたからここまで来たんだけど。とんだ無駄足だったようね」 霊夢はそんな魔理沙とは正反対の、何処か陰のある苦笑いの表情を浮かべていた。 ◆ …一方、山小屋から大分離れた所にある街道。 首都トリスタニアと魔法学院を繋ぐ道の上を、一台の馬車がゆっくりとした速度で走っていた。 二頭の馬が引く台車の中には、学院にとって必要な食料や物資がこれでもかと詰め込まれている。 そしてその中に混じるかのように、その荷物を責任持って運ぶ業者の姿も見受けられた。 「っと…もうそろそろ学院かな?」 ガタゴトと揺れる荷台の上に座っていた一人の男が、前方にある塔を見てポツリと呟く。 その後ろでは仕事仲間の四人が、持参したチーズやライ麦パンを食べていた。 いつもは首都の出入り口にある駅で食べるのだが、今日は生憎仕事の量が多かった。 しかもその中にはいつも自分たちに依頼してくれている魔法学院への運送もあったので、いつも以上に張り切っていた。 仕事柄、何かトラブルがあって運送が遅れればそれだけで築き上げた顧客への信用が吹き飛んでしまう。 無論信用を上げるということがどれ程大変なことなのか、彼らは皆知っていた。 「よしっお前ら。昼飯中断運ぶ準備に入れ。モタモタするなよ!」 リーダーである男の一言に、後ろで食事をとっていた男達は「うーっす!」や「へ~い…」など…気合いの入っていないような返事をする。 それでも動きはテキパキとしており、食べかけであった食事を急いで口の中に入れ込み、ゆっくりと腰を上げる。 四人は足下に置いていた使い古しのカーキ色のベレー帽を被ると、思いっきり深呼吸をした。 「ん~…。それにしても、さっきの変な音やら爆発音は何だったんですかねぇ」 ふと仲間の一人が、帽子を被りながらポツリと呟いた。 彼の言う゛変な音゛に覚えのあった他の者達は顔を見合わせた後、仲間の誰かがからかうように言った。 「なんだよお前?さっきのアレにびびってるのか?」 「ちょっ…別にそんなんじゃねぇよ!」 彼の言葉に男は慌てた風に言い返すと、今度はリーダーが口を開く。 「ま、例え山の中で異変が起きようとも俺たちのする事に変わりはないさ。だろ?」 リーダーの頼りがいのあるその言葉に四人全員が彼の方へと視線を向き、頷いた。 タッタッタッタッ… その時であった、蹄と台車が軋む音と一緒に右側の森林から足音が聞こえてきたのは。 「ん?なんだ、また音が聞こえてきたぞ…これは足音か?」 リーダーは周りから聞こえてくる他の音と一緒くたにしないよう気をつけつつ、耳を澄ます。 足音は規則正しいがとても速く、どうやら森の中を全力疾走しているらしい。 「あ、兄貴…一体何なんですかこの足音」 「走っているようだが…おかしい。これは人間の足音なのか?」 うろたえている仲間の言葉に、リーダーは怪訝な表情を浮かべて足音を聞いていた。 ここら一帯の森林は走ることはおろか歩くことすら困難な程地形が複雑ではない。 やろうと思えば走ることだって出来る。しかし今聞こえてくる足音は何処かおかしかった。 聞いた感じではとても人が走っているとは思えぬほど速く、狼か野犬の足音だと思えばカンタンだった。 しかしそれよりも先に山の中から聞こえてきた甲高い声のような奇妙な音の所為で、彼らの頭の中に不気味な想像が蠢いていた。 ◆ ツン、と鼻にくる血の匂いが鬱陶しい… 山小屋に入った霊夢がまず最初に思ったことはそれであった。 僅かに開いていたドアから中に入りまず最初に感じたのは、血の匂いであった。 レミリアやフランの様な吸血鬼とか悪魔なら少しは気分を良くするかも知れないが、博麗霊夢はれっきとした人間である。 血の臭いを嗅いで気分を良くする人間など滅多にいないし、いるとすればかなりの変わり者だ。 残念ながら、変わり者は変わり者でもそれとは別のベクトルを行く霊夢にとって血の臭いは不快な代物である。 ましてや、血なまぐさい事なら霊夢より遠い存在である魔理沙にとっては尚更であった。 「ま、こんな死体を見て目の前で吐かれるよりマシ。…か」 霊夢は小屋の外で待っている魔理沙を思い出しながら呟き、足下の゛死体゛へと目を向ける。 大きな暖炉とテーブルが置かれたその部屋に、血の匂いを発する元凶である一人の死体が転がっていた。 麓に住む村人であろうかその服装は質素ではあるが丈夫な作りをしている。 逞しい体つきと手に持っている大鉈を見ればすぐに男だと判別できるが、どんな顔をしているかまでは分からなかった。 何故ならその死体は、丁度下顎から上が『切断されたように無くなっている』のだから。 まるで専用の器具スライスされたように断面がハッキリと見え、下手な人体模型よりもリアルであった。 血はもう流れてはいないが、その代わり頭を中心にして赤い水たまりが出来ている。 「アタシも何回か幻想郷で惨い死体を見たことはあるけど…こんなのは初めてね」 霊夢は一度に大量の毛虫を踏みつぶしてしまったような表情を浮かべ、死体を見つめていた。 妖怪退治と異変解決のプロである博麗の巫女である霊夢にとっても、こんな死体をお目に掛けるのは初めてであった。 頭の上半分が切断されていたところ以外の外傷はなく、無論囓られた後もない。 恐らくこの男は、『食べられるために殺された』のではなくただ『殺されるために殺された』のだろう。 魔法学院で感じたあの気配の持ち主が、魔理沙と戦った怪物であるならば…。 最初こそは上の部分だけ食べられたのだと思っていたが、すぐに前言撤回をすることとなった。 何故なら部屋の中央に置かれた大きなテーブルの真下に、もう半分が転がっていたのだから。 「全く、どうせ置くならもっと目立つところに置きなさいよ」 一人愚痴をもらした霊夢は、これからの事をもう考え始めた。 この死体の男性の事を思えば少し可哀想ではあるが、仇(だと思う)怪物は魔理沙が倒したと(思うから)問題はない。 「まぁとりあえず近くの村の人にでも教えて、埋めてもらった方が良いわね」 流石にこういう事に慣れてはいるのか、余りにも早く考えるのを終えた。 そんでもっていざ魔理沙の待つ外へ出ようとしたとき… 「 見 っ つ け た わ よ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」 …聞き慣れた少女の声が霊夢の耳に突き刺さった。 ただその聞き慣れた声は魔理沙の物ではなく、時間にしてみればつい一月前に知り合った者の声であった。 しかし、その声の持ち主が本物であれば幾つか疑問が浮かび上がってきた。 どうしてその持ち主がここにいるのか、どのような手段でここまで来たのか。 そんな疑問が次から次へと湧いてきたが、それを一つ一つ時間を掛けて解決するほど霊夢は暇でなかった。 「ホント、厄介事は向こうからやってくるモノね」 霊夢は頭を掻きむしりながらどう対応したら良いか考えつつ、ドアの方へと向かってゆっくりと歩き出す。 半開きになったドアの向こうから、魔理沙の慌てた声と少女―ルイズの怒鳴り声が聞こえてきた。 前ページ次ページルイズと無重力巫女さん
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前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ 拝啓、私の王子様 すごいです。私、王子様の顔を見ただけですごくどきどきしてしまうんです。 この思いを王子様に伝えたい………でも私は臆病だからそれをいまだに伝えられずにいたんです。 だから私、この思いをチョコレートにこめました。私の愛の手作りをどうか召し上がってください。 しらとりく……死神ももえ 「で、それが愛の手作りチョコなわけ? 明らかにシエスタに作ってもらってたけど。」 「そーだよ。これが愛の手作りチョコレート 私料理下手だから。」 リボンで梱包されたチョコレートをさも自分のものかのように扱うももえであった。 「いいんですよ。私はモモエさんのお世話をすることが数少ない生きがいなのですから。」 「………! ねぇちょっと、あんたシエスタに何したのよ! 何したのよーーー!!!!」 にっこりと曇りない表情で微笑むシエスタをよそに、ルイズはももえの襟首をつかんでがくがくと上下させ続けた。 これが投稿されたらうどん食べて寝る「ゼロの使い魔死神フレイムデルフリンガーシルフィード二年生ももえサイズ」 馬に乗って帰ってきたルイズは、先に帰ってきてたももえ達から自分達が学院内でしばらくの謹慎を命じられたことを知った。 仕方ないとはいえルイズは思わず肩を落とした。しかしももえは相変わらずの様子だ。悪魔はこの学院内にまだ潜んでいるらしいが……… 「洗濯をしてきなさい。」 翌日、ももえの前に大量の下着やら何やらが渡された。御主人様と使い魔の主従関係を示すのが先決だとルイズは考えたのだ。 「これは?」 「見れば分かるでしょ。私の下着よ」 「………」 「こらぁ! いきなり臭いを嗅ごうとするなぁ!」 思わずルイズは下着をひったくった。 「………ったく、いい加減にしなさい! その洗濯が終わるまでこの部屋に戻ってきちゃだめだから。いいわね?」 「とはいっても………」 大量の洗濯物を持ってももえは頭を抱えた。ももえは洗濯などしたこと無いのだ。メイドのメイちゃんが全部してくれたから。 「メイド、メイド、メイド…………メイド!」 するとたまたまメイドがちょうど通りかかってきたのでその娘にお願いすることにした。 「そこのおっぱい星人!」 「誰がおっぱい星人ですか! しかもなんで初対面の人にいきなりそんな事を言われなきゃいけないんですか!」 メイドは胸をぷるんぷるんとゆらしながらももえに近づいた。 「どうでもいいけどとりあえず名前を聞いておくわ。そうしないと話進まないし」 「私の名前はシエスタで、このトリステイン魔法学院で給仕を中心にメイドの仕事をしています。で、あなたはミス・ヴァリエールの………」「生き別れになった双子」 「いやいやいやいや、確かあなたはミス・ヴァリエールの使い魔のモモエさんだったはずでは……」 「だから早くこの下着を洗ってね☆」 「だから って何ですか! この下着を私に洗えと!?」 「だってあんたさー、本編のみならず幾多数多のSSで召喚されてた奴と友情やらなんやら育んでたし」 ???ものしり館??? ※幾多数多のSS【いくたあまたのえすえす】 「幾多」とは数多くの、「数多」とは数の雅語的な表現。つまり数多くのという意味で今回は使われている。 ゼロ魔本編でのヒロインぶりは勿論のこと、「召喚されました」SSでもシエスタが召喚された者の味方になるケースが多い。 そして今回の場合幾多(ryでのルイズとシエスタとの友情も含まれていたため、イメージ図での大きさは5mぐらいの大きさと思われる。 「いきなり何わけのわかんないこと言ってるんですか! いくら私が人のいいメイドとはいえ、こんな勝手な人の頼みなんて知りません!」 シエスタは怒ってしまってこの場を去ろうとしている。 その時ももえには『幾多数多のSSで培ってきた友情』のイメージ図がシエスタの体からふわふわと離れていくのが見えた。 「あ、そうだ!!」 ももえはカマを取り出すとそれをばっさりと真っ二つに斬った。すると、 「モモエさん だーい好き!」 くるりと振り返ったシエスタはももえに抱きついたのであった。 『ももえのカマで斬られた物の存在はももえが肩代わり』 「じゃあ、洗濯してくれる?」 「はい! 下着からミス・ヴァリエールとの鬱陶しい関係までなんでも洗い流して差し上げますよ!」 「あははははは」 「あははははは」 シエスタを抱きかかえたももえはしばらくその場を回り続けた。 翌朝、ルイズの部屋の元にシエスタがチョコを持って訪れた。それを受け取ったももえはたいそう喜んだのだけど、 「それで、このチョコレートは誰にあげるつもりなのかしら?」 ルイズは作られたチョコを見てそう尋ねた。形も整っていて真心が感じられる物だと思う。その相手に向けられてないのは確かだが 「憧れのギーシュさまに………」 「ぶっ! あっ、あんたみたいなのがあんなのに興味を持つなんて、い、意外ね。」 ルイズの声は上ずっていた。正直驚きを隠せなかったのだ。趣味を疑う的な意味で 「実は昨日、女の子を一人斬っちゃってさー」 「え」 「いやー、でもあれは仕方なかったよ。ねー、シエスタちゃんもそう思わない?」 「思います、思います。 本当あれは相手が圧倒的に悪かったですから。」 ルイズはこの二人が真実を語っているとは到底思えなかった。そして腕組みをして考え込んでいたら、ある答えがひらめいた。 「その娘って、もしかしてケティの事じゃないかしら?」 ケティはルイズたちの1年後輩で最近ギーシュと付き合っている女子のことである。 「あー確かそんな名前だったような」 「すごい洞察力ですね、ミス・ヴァリエール。」 シエスタはルイズのことをほめたのだが、明らかに棒読みだったのでルイズを苛立たせただけだった。 「それが臭くってさ~」 「あははー臭いですよねー」 二人が別次元の会話をしているのをよそにルイズはまた腕組みをして考え込んでいた。 「たしかにギーシュはもてるわよねぇ………」 ギーシュは女の子に甘ったるい言葉をかけたりするなど、女子には優しかったから人気はある。 しかしギーシュには前から恋仲であるモンモランシーという女子がいたはずだ。恐らくあいつの事だから二股でもかけてたんだろうかと思いをめぐらせてるとまたある答えがひらめいた。 「もし、あんたが後輩を斬ったって事は………下級生?」 「「あ」」 「わあ、超人的洞察力ですね、ミス・ヴァリエール」 『ももえのカマで斬られたものの存在はももえが肩代わり 後輩のケティが斬られたのでももえの学年が1年下がります』 ???ものしり館??? ※肩代わり【かたがわり】 本来他人が背負わなければならないものを自分が代わりに背負うこと。 このSSでの「肩代わり」の解釈は能力的なものから肩書き的なもの、物理的なもの等、時と場合と都合に応じて変化する。 つまり前々回は上級生の「称号」だけ肩代わりされたにもかかわらず今回性格的なものも肩代わりされているというのは作者のご都合主義に他ならない。 しかしクロス先の「ももえサイズ」はそのような枝葉末節など吹き飛ばしてしまうような漫画なのでそれに倣ったまでである。ご容赦いただきたい。 とうとうその時がやってきた。ももえはいてもたってもいられなくなって空を飛んでギーシュの元へと向かった。 「きゅいきゅい」 『シルフィードの能力』 そして上にはシエスタとルイズが乗っていた。 ルイズも結局この騒動に巻き込まれたからには必ず元を取ってやろうと思うようになったのでももえについてきたのだ。 「わぁ、私達って今、空をとんでいるんですね。」 「言いたいことはそれだけなの!?」 シルフィードの能力を無駄遣いしつつも素早くギーシュを発見し急降下した。 「いやああああああぁぁぁあぁぁ!!!!」 「あはははははは。あっははははははははは」 「むしろそれは中原よね………」 ギーシュは友人達に恋人とはなんであるかを偉そうに解釈していた。 「…………であるからして僕は薔薇一族を作るのが夢なんだよ。」 ???ものしり館??? ※薔薇一族 【ばらいちぞく】 ローザネイから派生する競走馬一族である。ローズやローザなど薔薇に関する名前が付けられることからきている。 GⅡ、GⅢは勝てるのにGⅠになるといまいち勝てなくなることで有名。 そんな成績のためか、この牝系にはファンが多い事で知られている。 友人達が上空の異変に気づき逃げようとするものの時すでに遅し。ももえ達は思いっきり突っ込んだ。 「うわあああああああ!!!!!」 「きゃあああああああ!!!!!」 そしてそんないざこざの間にギーシュの胸ポケットから香水の瓶が飛び出した。 「落ちる!」 ももえはおもわず手にしたカマでそれをキャッチしようとしたが、 ざしゅっ 小さな瓶はきれいにまっぷたつに割れた。 「つまり、これは………」 いち早く立ち上がったルイズが横になったまま動かないももえを見てまたしてもあることに気づく。 「ギーシュさまぁ」 「ごほっ………ごほっ、なっなんだい君は。」 「私、ギーシュさまの落とした香水ですよー。だから拾ってくださーい」←使い魔死神友情フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生 「なっ、何を言っておるのだ。僕はこんな大きな香水は落としてないぞ。じゃ、じゃあ僕は用事があるからこれで」 そんな事を言うとギーシュは逃げるように去ってしまった。 「じゃ俺も用事があるし。」 「あっ、俺も。」 「俺も俺も」 ギーシュの友人達もそれに続いた。後に残されたのは寝転がったままのももえとそれをじっと見つめるルイズとシエスタだけだった。 ももえは懐から取り出したプラカードとマジックで「拾ってください」と書いて自分の首に巻きつけたのだが一向に効果は見られなかった。 そしてルイズがあきらめかけたその瞬間! 「あら、こんなところに私の香水が落ちてるわ」 たまたま通りかかったのはギーシュの香水を作った女子、モンモランシーであった。 「でも、こんなに大きい香水ははじめてみたわ。どうやって持って帰ろうかしら。」 モンモランシーはももえの前でうんうんと唸り始めた。見かねたシエスタが声をかける。 「あの、これって実は 「私が手伝うわ。」 「あら、いいの? ミス・ヴァリエールが人の手伝いを進んでしてくれるなんて珍しいわね。」 「私の気が変わらないうちにとっとと済ませるわよ。」 モンモランシーの憎まれ口にも反応する暇など無い、ルイズは渡りに船とばかりに実行に移すことにした。 とりあえずモンモランシーは足を持ってルイズは首を持った。試しに持ち上げてみると意外と軽かった。これならいけそうだ。 「いっち、に、さん、し」 「えっほ、えっほ」 「いっち、に、さん、し」 「えっほ、えっほ」 遠くに連れて行かれるももえを見てシエスタはとりあえず大声で聞いてみることにした。 「その香水今度使わせてもらってもいいですかーー?」 「ええ、いいわよーー!」 すぐさまルイズの返事が返ってきたのであった。 「ただいまー!」翌朝、何事も無かったかのようにももえがルイズの部屋に戻ってきた。 「モンモランシーとの生活はどうしたのよ」 「いや、私より彼女のほうが香水"向け"だったから。」 「?」 「ところでさー、知ってる? エッチな気分になる香水って女の子の脇の臭いとおっさんの脇の臭いを混合させて作ってるんだよ。」 「知らないわよ、そんなこと。」 するとももえが急にルイズの脇元に鼻を近づけた。 「なっ、なな何するのよ!」 「いやー………やっぱりあんたのほうが香水向けね。マニアックな臭いがする。」 「マニアックな臭いってどんなのよ! って私の脇を指差すなぁ!! わ、私の脇はそんなに臭ってないわよ。臭ってないんだからね!」 ※おわり これまでのご愛読、ご支援ありがとうございました。 ※次回からはじまる「ゼロの使い魔死神友情フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生ももえサイズ」に乞うご期待!!! 前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ
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《俺は俺のやりかたで》 イベントカード 使用コスト0/発生コスト2/緑 [アプローチ/相手] 自分の任意の枚数の「比企谷 八幡」を任意の順番でデッキの下に移す。その場合、移した枚数1枚につき、相手のキャラ1枚は、このターン、アプローチでポイントを与えることができない。 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。で登場した緑色のイベントカード。 自分の比企谷 八幡を任意の枚数デッキの下に移すことで、その枚数分相手キャラのアプローチでポイントを与えるのを封印する効果を持つ。 バウンスした枚数分、相手キャラのアプローチを必ず失敗させられるため強力。 コンバットトリックなので、いきなり発動してアプローチを無駄にさせることが可能。 比企谷 八幡5枚を戻せば、アプローチを完全に封じることができる。 さらにデッキ操作も可能。自由に並べ替えられるので強力。 カードイラストは第12話「それでも彼と彼女と彼女の青春はまちがい続ける。」のワンシーン。 関連項目 《大人の世界》 《初音 ミク(085)》 収録 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 01-117 パラレル やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。スターターデッキ 01-117 編集
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前ページ次ページルイズVSマジク~史上最哀の会合~ 第2話『音声魔術とは』 マジクは驚いた。何を驚いたかと聞かれれば今ギーシュの言った 『ゴーレム』についてである。 (確か記憶が正しければ――ゴーレムそれはドラゴン種族が1つ「天人≪ノルニル≫」がかつて作ったものだ。) (そうだよ。アレンハタムで地人兄弟がクリーオウにぶんどられたアレだ。) あのときマジクではなく彼の師がこともなく,本当にこともなくぶっつぶしたアレ。 (アレに比べると小さすぎるけど,代わりになんか無駄に細かいな?) てっとりばやく魔術を使って終わりにしようと思ったが,マジクはそれをしなかった。 (でも,あれくらいのサイズなら魔術をつかわなくてもコレを使えば何とかなるよね?) マジクは自分のブーツに目線をやる。 「ふっ。どーした平民?今さら怖気づいたのかね。何今回のことに…」 ギーシュはまだ戦ってもないのにすでに勝った気でいた。 (お師さまなら――やる。絶対にやる。それにさっきいってたよね。) 「懲りてこれから貴族に対する態度を改めるなら…」 (あれ青銅なんだよね。) マジクは突然走りだす。ギーシュ自慢の青銅のゴーレム『ワルキューレ』に向かって。 ワルキューレはマジクに向かって大ぶりに右の拳を繰り出す。 それなりに速度はあるがあまりにも単純に,そして正直に。 これが魔法に頼りっぱなしの魔法学院の生徒や,メイジというだけで恐れをなす平民なら 十分だっただろう。 だが仮にも世界を滅ぼす戦いに関係ないのに巻き込まれ,また世界は違えど 大陸一の魔術士養成機関で年間首席をとった者にはぬる過ぎた。 紙一重というにはやや遠すぎる――経験不足ゆえにひきつけるのが足りなかったが なんとかマジクは右に避ける。そしてそのまま反転して拳をふるため重心を寄せていた ワルキューレの左足に自分の右足の踵をぶち当てた――鉄骨をしこんだブーツで。 「許さないわけでもないよ。うん。あれっ?」 ギーシュが気づいたときにはワルキューレは左足を粉々に砕かれていた。 【注】ほんとに鉄骨ブーツで青銅が粉々になるかはしりません。 誰かが言ったように,世界いろいろ神様いろいろ,ついでに金属いろいろ,な方向で 思い描いたとうりになってふぅとマジクは息をつく。 (いつか旅にでるときは僕も買おうと思ったけどこのブーツ高いよなぁ。) 牙の塔をでてマジクが最初にやったことは持ち金はたいて特注のブーツを作ることだった。 「ねぇ,今の動きみた?まだぎこちないけどそれなりじゃなかった?」 野次馬が一人で誰かとは正反対の胸をもつキュルケが隣の青い髪のタバサに話しかける。 「ビックリあったくには程遠い…」 「何?それ…」 「知らない。言ってみただけ。」 「あら,そう。」 ギーシュはやっと事態をのみこんでキレた。 「ぐぬううう。いや,まずは誉めよう。よくそんな動きで僕のワルキューレを とめたものだと。」 「だが君は…僕を本気にさせたのだよ。」 ギーシュは冷たく微笑み,手に持ったバラをふった。 花びらが舞い,こんどは6体のゴーレムが現れた。 最高で7体までしかギーシュは呼び出せないのである。 「もういいでしょっ。早く謝りなさいよ。あんな動きで,今度は6体も… 相手にできるわけないじゃない。」 「おおっと。ヴァリエール残念だが今さら謝っても許しはしないよ。」 ギーシュの残酷な宣言に凍りつくルイズ。 いよいよクライマックスだと騒ぐ野次馬達をマジクは他人事のように見ていた。 ギーシュが新たなゴーレムをだした時点ですでにある決心をしていた。 ――魔術を使うと。 (そういえば,こっちにきてから使ってなかったな。) こちらで言う魔法とマジク達の世界でいう魔法。ならびに魔術が違うものだと いうのは数日来の生活で分かっていた。 なるべくなら使いたくはなかった。先ほど魔術を選ばなかったのにも関係している。 だが,いい加減ガマンするのも限界だった。 (実際僕は我慢した方なんだ。そうに違いない。お師さまを含めて 僕の知ってる魔術士ならとうの昔に使っているに違いない。) 魔法とは,神々の使う力。 魔術とは,神々からドラゴン種族とよばれる力ある種族が盗みだし, 自分達に使えるようにしたもの。 魔術とは,魔力により限定された空間に自らの理想の事象を起こすこと。 音声魔術とは,人間種族が使う力。 魔術の設計図――構成を編み,声を媒介にして発動する。 そのため魔術の効果は声が届く範囲でしか発動しない。 又,声が霧散したら効果が消えるため効果は長くて数秒。 そんなことは関係なくマジクは意識を集中する。 もっとも使い慣れた構成を―― まだ意識をしなくても使えるわけではないあの構成を。 右手を上げ,高らかに叫ぶ。 「我は放つ光の白刃っ!」 光の帯がのびる。高熱と衝撃波の渦が,6体のゴーレムのもとへ到達した。 瞬間,つんざくような轟音と跳ね返る光が,熱が,あたりすべてを純白に焼き尽くす。 光が消えたあとにはかろうじて燃え残った何かの小さな破片があるだけだった。 あたりは静まりかえる。 マジクはゆっくりギーシュのもとへ歩いて行く。震える彼のもとへ。 「えっと,こういうとき何ていうのか分からないけど。」 いったん区切ってから 「続ける?」 つぶやくようにマジクはいった。 「ま,参った」 ギーシュは犬どころか狼に噛まれた気持ちになった。 …絶対に忘れられない,と思ったかはさだかではない。 次回予告 シエスタ「ビームで簡単にミスタ・グラモンを倒したマジクさん。」 「だけど,すぐにミス・ヴァリエールに連れていかれ…」 ルイズ「きっちりかっちり説明してもらうわよ。」 マジク「うぅっ。面倒だなぁ。」 「こんなとき…都合よく説明してくれる神様がいたらなぁ。」 ???「そうであろ。そうであろ。」 「余のありがたみが,こう…背筋のあたりからゾクゾクっとのぼってきたであろ?」 シエスタ「そんなことは放っといて。」 「次回,第3話『今になって分かる説明役っぽいものの大切さ』に…」 コルベール「我は癒す斜陽の傷痕。」 前ページ次ページルイズVSマジク~史上最哀の会合~
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前ページ次ページ蒼い使い魔 ルイズは夢を見ていた。まだ小さい頃、トリステイン魔法学院に行く前の頃の…。 「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの? ルイズ! まだお説教は終わっていませんよ!」 ルイズは、生まれた故郷、ラ・ヴァリエールの屋敷の中庭を逃げ回っていた。 騒いでいるのは母、追ってくるのは召使である。理由は簡単、デキのいい姉達と魔法の成績を比べられ、 物覚えが悪いと叱られていた最中逃げ出したからだ。 「ルイズお嬢様は難儀だねえ」 「まったくだ、上の2人のお嬢様は魔法があんなにおできになるというのに」 召使達の陰口が聞こえてくる、ギリと歯噛みしルイズはいつもの場所に向かう。 そう、彼女の唯一安心出来る場所、『秘密の場所』と呼ぶ中庭の池へと。 あまり人が寄りつかない、うらぶれた中庭。池の周りには季節の花が咲き乱れ、小鳥が集う石のアーチとベンチ。 池の真ん中には小さな島があり、そこには白い石で造られた東屋が建っている。 その小さな島のほとりに小船が一艘浮いていた。船遊びを楽しむ為の小船も、今は使われていない そんなわけで、この忘れられた中庭の島のほとりにある小船を気に留めるのはルイズ以外誰もいない。 ルイズは叱られると、いつもこの中に隠れてやり過ごしていた。 予め用意してあった毛布に潜り込み、のんびり時間を過ごそうとしていると…… 一人のマントを羽織った立派な青年の貴族が、ルイズの小さな視界に写りこむ。 年は大体十代後半、このルイズは六、七歳であるから、十ばかり年上だろうと感じる。 「泣いているのかい? ルイズ」 つばの広い帽子に顔が隠されても、ルイズは声でわかる。子爵様だ。最近、近所の領地を相続した年上の貴族。 「子爵様、いらしてたの?」 「今日は君のお父上に呼ばれたのさ。あの話のことでね」 「まあ!」 それを聞いてルイズは頬を赤く染めうつむく。 「いけない人ですわ。子爵様は……」 「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」 おどけた調子で言う子爵の言葉にルイズは首を振る。 「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」 そんなルイズに子爵はにこりと笑い手を差し伸べる。 「子爵様・・・」 「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじきパーティが始まるよ」 「でも・・・」 「また怒られたんだね? 安心しなさい。ぼくからお父上にとりなしてあげよう」 ルイズはその子爵の手をとろうとする。 雨が、降り始めた 「(あら…?雨…?)」 雨が降り始めるのと当時に、一陣の風が吹き、貴族の帽子とマントが飛んだ。 帽子とマントがなくなり、覗きでてきた顔と姿を見て、ルイズは思わず驚きの声をあげる。 オールバックの銀髪に氷の様に蒼いコート、手はさしのべられておらず、左手には閻魔刀を握っている。 「なっ…なっ…なんでっ!?なんであんたが…」 そう、子爵だと思った人物はいつのまにかルイズの使い魔、バージルにすり変わっていた。ルイズも元の十六の今の歳の姿に戻っている。 だがいつものバージルとは様子が違う、顔はいつものように仏頂面だがいつも以上に恐ろしい雰囲気を纏っている。 「ひっ…」 思わず声にならない悲鳴を上げる、当のバージルは目の前のルイズの存在が目に入っていないように遠くを見ていた。 「来たか」 バージルは小さく言うと静かに後を振り返る、 「全く大したパーティだな」 バージルの振り向いた方向から声がする 「酒もねえ、食い物もねえ―おまけに女も逃げちまった」 その声のする方向をルイズが見るとバージルとは対極な血のように赤いコートを羽織った男が立っていた 「(―えっ…?バージルが二人!?)」 男の顔はバージルと髪形こそ違えど瓜二つ、ルイズは二人の姿を交互に見比べる。 「(まさか…バージルの弟…?)」 「それはすまなかったな…気が急いて準備もままならなかった」 「まあいいさ、ざっと一年ぶりの再会だ、まずはキスの一つでもしてやろうか?それとも―」 赤いコートの男は手に持った銃の様なものをバージルに突き付け言い放つ。 「こっちのキスの方がいいか」 二人の間に一触即発の雰囲気が流れる、その恐ろしい空気にルイズの全身に鳥肌が立つ、ここにいたくない、でも動けない。 「…感動の再会って言うらしいぜ、こういうの」 「―らしいな」 そう言うと閻魔刀の鍔を押し上げるバージル 「(いやいやいや!ぜんっぜん感動的じゃないわよ!)」 ルイズの心の底のツッコミは二人に届くはずもなく、 二人の殺し合いが始まった。 いつの間にか、ヴァリエール家の屋敷の秘密の場所から手を伸ばせばなぜか一つしかない月にまで手が届きそうな塔の上に切り替わっていた。 凄まじい速度と威力で打ち合わされる剣と剣、男が両手に持った銃を撃てばバージルはそれを閻魔刀で受け止め斬り飛ばす。 人間では永遠に届かない、悪魔の戦い。二人の顔は兄弟同士で殺し合っているにもかかわらず、どこか、笑っているようだった。 二人は切り結ぶ。二人の剣が打ち合わされる度に、火花とすさまじい力が流れてくる。 場面が、切り換わる、ここは河だろうか?だが何かが違う、空気が淀んでいて禍々しい雰囲気・・・ 異界――魔界。そう、そう呼ぶに相応しい場所だ。 それでも二人の戦いは続いている、ルイズはただ呆然とそれを見ることしか出来なかった。 「そんなに力が欲しいのか!?」 ダンテと呼ばれた男がバージルに向かって叫ぶ 「力を手に入れても父さんにはなれない!」 「貴様は黙ってろ!」 バージルが手にした大剣で斬りかかる、ダンテも同時に大剣を振りおろす、 その剣は打ち合うことなく、お互いの剣を手で受け止めていた。 「俺達がスパーダの息子なら…受け継ぐべきなのは力なんかじゃない!」 二人の手に力がこもる、 「もっと大切な―誇り高き魂だ!!」 ダンテがそう叫ぶのと同時に二人は距離を取り睨みあう 「その魂が叫んでる―あんたを止めろってな!!」 ―それを受けたバージルの笑い声が木霊する。 「悪いが俺の魂はこう言ってる―もっと力を!」 「双子だってのにな…」 「あぁ―そうだな」 二人の悪魔がぶつかり合う、誇り高き魂を持つ赤い悪魔が、何よりも強い力を求める蒼い悪魔が 父への誇りを胸に、己の魂の叫びに従い剣を振う。 だがそれは心から憎しみ合うというより、兄弟の争いに見えた。 そして、決着がついた…。 ダンテが剣を振うのを待つかのように剣を振るったバージル、致命傷を負い手から落ちる父の形見の大剣と母の形見、 そして手に取ったのは…母の形見のアミュレット… 「バージル!!!!」 ルイズはそれを見て心の底から声を上げる、だが彼らに声が届かない。 「これは渡さない…これは俺の物だ…スパーダの真の後継者が持つべき物―」 そう言いながらバージルは後ろへと後ずさる、それ以上進めば深い闇へと落ちてしまうだろう。 それを止めようとダンテが駆け寄ると、バージルは閻魔刀を抜き放ちダンテの喉元へと突き付ける。 「お前は行け…!魔界に飲み込まれたくはあるまい…、俺はここでいい、親父の故郷の…この場所が…」 そう言うと最後まで兄を救おうと手を伸ばすダンテを拒否するかのように手のひらを閻魔刀で斬る、 そのままバージルは深い闇の中へと堕ちて行った。 「バージル!バージル!!」 ルイズは涙を流しながら淵から闇の中を覗き込む、だがそこにはもう見渡す限りの闇しか見えない 「よくもっ!よくもバージルを!あんた!バージルと兄弟なんでしょ!?双子なんでしょ!?この悪魔ぁッ!」 そのままダンテを睨むとすぐさま飛びかかった、だがダンテの身体にぶつかることはなく、そのまますり抜けて転んでしまった、 転んだままダンテを睨むルイズ、だがその目に飛び込んだものは 「…泣いてる…の?」 ダンテが泣いている、兄を救えなかった、家族を想う涙。 「悪魔が…泣いている…」 「はっ!!」 ルイズがベッドから飛び起きる、あたりを見渡せば、そこはもはや見慣れた寮塔の自室だった 目がしょぼしょぼする、どうやら夢を見ながら泣いていたようだ…。 「(あの夢って…)」 ぼんやりとだが懸命に先ほどみた夢を思いかえす、もはや最初の子爵のくだりなどどうでもよい。 あの夢ではバージルは最期、兄として魔界に散った、もしかしたら心のどこかで弟に止めて欲しかったのかも知れない… 「バージル…?」 夢に出て来た己が使い魔の名を呼び、あたりを見渡す そこには窓辺に立ち外を眺めるバージルの姿があった、 その姿を見て安堵のため息をつく、 「どうした…」 こちらを見ずにバージルは言う 「その…あの…変なこと…聞いていい?」 「なんだ」 「家族を想うことってある…?」 「っ…」 バージルの目が一瞬、今までに見たことも無い色を映した。すぐに元の仏頂面に戻ってしまったが 「…なぜそんなことを聞く」 「あ…う…その…ごめん、忘れて…」 「フン…」 そう言うとルイズはベッドに潜り込み目を瞑る 「(家族を想い涙をながす悪魔…バージルもきっとそうなのかも…)」 一瞬見せたバージルの優しい目、それが強く印象に残った。 一方その頃、フーケが囚われているチェルノボーグの監獄 「うぅっ…女の命である髪の毛をっ…よくもっ!あの使い魔め!」 牢屋の中ではフーケが悪態をついていた。 バージルに反吐が出るほど強烈に腹を殴られ、しかも気を失ってる間に 髪の毛まで毟り取られたのだ、頭の一部分が心なしか薄くなっている。 「なんとかしてあの使い魔に復讐してやりたいもんだけど…これじゃもう無理かねぇ…」 そう呟くとため息を吐く、ここから脱獄しようにも杖がない為魔法も使えない。 使えたとしてもあの宝物庫よりも強力な固定化がかかっているこの牢獄に自分の錬金が通用するはずもない。 あきらめて今はもう寝よう、そう考え横になる、するとコツコツと誰かが近づいてくる音が聞こえる。 見回りの看守の足音にしては妙だ。 現れたのは白い仮面をかぶった貴族の男だった。 「『土くれ』だな?お前の願い叶えてもいいぞ」 「聞いてたのかい、もうすこしマシな趣味をもちな」 男はそのまま両手を広げて敵意のない事を示す。 「我らに仕えて欲しい。マチルダ・オブ・サウスゴータ」 「…っ!!」 かつて自分が捨てざるを得なかった名、それを耳にしフーケは言葉を失った 「何が目的だい…」 「なに、革命を起こすのさ、アルビオンにな。その為には優秀なメイジが欲しい。協力して欲しいのだがどうかね? 『土くれ』よ」 「随分ペラペラと喋るんだね? 私が断らない理由でもあるのかい?」 「もし断ったら―――」 「分かってるわよ、どうせ殺すんでしょ?」 フーケが割って答える。仮面ごしではあるが、恐らく笑ったであろうと感じた。 「さぁ、どうする?」 「乗ったわ、あの使い魔の男に復讐してやる!…っと、その前に、その組織の名前を教えてくれないかい?」 フーケの問いに白仮面の男は鍵を開けながら答えた。 「レコン・キスタ」 前ページ次ページ蒼い使い魔
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前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 例えばの話だが、ある所に命を懸けた戦いをしている戦士がいるとしよう。 限られた武器と足手纏いとも言える者たちが周りにいる中、戦士の相手は凶悪な怪物。 明確な殺意をもって戦士の命を仕留めようとする、無慈悲な殺人マシーンだ。 戦士は足手纏いな者たちを守りつつ怪物を倒すことになるが、それはとても大変な事である。 戦う必要のない者たちは自分たちも戦える豪語しつつ、各々が勝手に行動しようとするからだ。 そうすれば戦士はいつものペースで動くことができないが、一方の怪物は戦いを有利に進めることができる。 例え向こうが多人数であっても、足並みを揃える事が出来なけれ文字通り単なる烏合の衆と化す。 結果向かってくる奴だけを順々に片付ければ良いし、運が良ければ思い通りの戦いができない戦士をも殺せる。 しかし、足手まといな者たちが一致団結して戦う事が出来るとすれば話は変わる。 訓練された軍隊のように足並み揃えて一斉に襲ってくると、さしもの怪物も対処しづらくなるのだ。 更にその隙を縫って戦士が強力な一撃仕掛けてくるとなれば、もはや勝ち目などない。 一見すれば怪物側が有利な戦いは、実際のところたった一つの駆け引きで勝敗が左右する大接戦。 相手の腹を探りつつどう動くべきかと考えあぐねるその時間は、当人たちにとっては命を懸けた大博打である。 しかしそれを空の上から眺めてみれば、とても面白いゲームだとも思えるだろう。 そう、自分たちが傷つくことのない場所から見れば、命を懸けた勝負すら単なるゲームになる。 「ふーん―――何だか見ないうちに、随分とややこしい事になってるじゃないか」 旧市街地に並ぶ廃屋の屋上に佇む金髪の青年が、やけに楽しそうな調子で一人呟く。 左右別々の色を持つ眼には、この廃墟群の出入り口で大騒ぎを繰り広げ始めた五人の少女達が映っている。 彼が今いる位置ではやや遠すぎるかもしれないが、そんな事を気にもせず彼女たちの姿を見つめていた。 旧市街地の入り口から少し進んだ先で、まるで決闘の場で対峙するかのように向かい合っている紅白の少女が二人。 青年から見て旧市街地側に佇む紅白の少女の傍に、腰を抜かしているピンクブロンドが目立つ少女。 そして少し離れた場所には、まるで野次馬の様に三人の様子を眺めている黒白の少女と燃えるような赤い髪の少女がいた。 日も暮れ始めて来た為か肌の色までは良くわからなかったが、青年にとってそれは些細な事に過ぎない。 今の彼にとって最も重要なのは、『三人』の姿が見れた事だけであった。 五人いる内の中ですぐに安否が確認できるのは二人。黒白の金髪少女とピンクブロンドの少女だけ。 三人目となる紅白の少女は二人いるせいで、どちらを見ればいいのか未だにわからない。 「一体どういう経緯で二人になったのかは知らないけど困るよなぁ~、あんな事勝手にされちゃあ…」 僕の目が回っちゃうじゃないか、最後にそう付け加えた彼は軽く口笛を吹く。 まるで観戦中の決闘に予期せぬ乱入者が現れた時の様に、興醒めするどころか楽しんでいるようだ。 それは正に、安全かつ他人同士の殺し合いをしっかりと見届けられる場所で歓声を上げる観客そのものである。 「しっかし何でだろうな…一人しかいない筈の彼女に二人目がいるだなんて」 落下防止にと付けられた鉄柵の上に両肘をつけた青年は、またもや呟く。 彼以外にその疑問を聞く者はいないし、当然返事が来ることも無い。 生まれた時代が違えば、目の色だけで見世物小屋にいたかもしれない青年にとって、単なる独り言であった。 そう…単なる独り言だったのだ。 「私も良くは知らないが、アレに関してはお前たちの方は心当たりがあるんじゃないか?」 気づかぬうちに、自分の後ろにいた゛者゛の言葉を聞くまでは。 「――は?」 突然背後から耳に入ってきた声に、青年はその目を見開かせてしまう。 しかし驚きはしたものの、数時間前に似たような事を経験をした彼は声が誰のものなのかを分析しようとする。 良く透き通るうえに大人びた女性の声は、想像の範囲だがきっと二十代後半なのだろう。 あるいはマジックアイテムが魔法で細工しているかもしれないが、実際のところは良くわからない。 それよりも今の青年が気になる所はたった一つだけ。それは、どうやって自分の背後に近づいたのかという事だ。 青年が経験した「数時間前に似たような事」というのは、正にそれであった。 ◆ 時間をさかのぼり今日のお昼頃であったか。 彼はちょっとした用事でブルドンネ街で買い物を楽しんでいた三人の少女を、旧市街地の教会から観察していた。 その三人こそ、今の彼が屋上から眺めている「ピンクブロンドの貴族少女」と「黒白の金髪少女」。そして何故か二人いる「紅白の黒髪少女」である。 望遠鏡を使ってわざわざ遠くから見ていた青年の姿は、他人から見れば通報されても仕方がないであろう。 そのリスクを避ける為に人気のない旧市街地から覗いていたのだが、そこで変な事が起こった。 何と誰もいなかった筈だというのに、突如自分の後ろから女の声が聞こえてきたのである。 その後は色々とありその場は置き土産を置いて後にしたが、青年は観察事態を諦めてはいなかった。 そもそも彼が三人を覗いてた理由である「ちょっとした用事」というのは、彼にとって「仕事の内の一つ」なのだ。 だからその場を去った後は、三人の動きをしっかりと見張れる所に移動していたのである。 そして三人が導かれるようにブルドンネ街からチクトンネ街へ行くところはバッチリと見ていた。 不幸か否かチクトンネ街へ行った際に一時的に見失ってしまったが、数分前にこうして再開すことができた。 偶然にも自分が昼頃にいた旧市街地へ舞い戻る事になったのは、一種の皮肉と言えるかもしれない。 ◆ そうこうして、良からぬ展開に巻き込まれた三人の様子を観察していて、今に至る。 (一瞬聞き間違いかと思ったが…どうやら僕の予想は正しかったようだ) 彼は先程聞こえたものと、昼に聞いた声がそれぞれ別々のモノであると既に理解していた。 今聞こえた声からは、昼頃に聞いたものとは違う゛凛々しさ゛を感じていた。 昼の声は「貴婦人さ」というものが漂っていたが、今の声にはそれとは逆の…俗にいう「働く女性」というイメージがぴったりと合う。 しっかりとした性格の持ち主で、上司に対しちゃんとした敬意を払うキャリアウーマンだ。 自分とは正反対だな。月目の青年は一人そう思いながら、ゆっくりと後ろを振り返る。 彼は予想していた。振り返った先には誰もいないし、それが当然なのだと。 ただ見えるのは、落ちていく夕日と共に影に蝕まれる寂れた床だけなのだと。 昼頃の体験もそうであったし、それと似通った部分が多い今の事も同じような結末を辿るのだと、勝手に決めつけていた。 しかし、現実というのは時に奇妙で刺激的な事を不特定多数の人間に体感させる。 一人から数十人、下手すれば数百から千単位に万単位、もっともっと大きければ国家単位の人口が奇妙な体験をするのだ。 今回、現実という日常的な神様は月目の青年に奇妙な「存在」を目にする機会を与えてくれた。 そう…国を傾けかねない美貌と、この世界に不釣り合いな衣服を纏う「存在」と、彼は出会ったのである。 「君が口にしたややこしいという言葉は…残念だが私たち側も吐露したいんだがね」 距離にして四メイル程離れた所に、明らかに場違いな金髪の美女が、腰を手を当ててそう呟いた。 明らかにハルケギニア大陸の文明から作りえない青と白を基調にした衣装を身に纏った体は、まだ二十代前半といったところか。 これまで生きてきた中で数々の女性と付き合ってきた彼が直感的に思いつつも、次いでその視線を美女の衣装に注いでいく。 一目見ただけでもハルケギニアの民族衣装とも異なるが、蛮族領域に住む亜人たちや砂漠に住まうエルフたちの衣装とも印象が違う。 どちらかと言えば東方の地から時折流れてくる衣服のカタログで、似たようなものを見たことがあったと彼は思い出す。 白い服の上に着ている青い前掛けには、大した意味が無さそうに見えてその実難解そうな記号が踊っている。 もしかするとあれが東方の地で用いられる言葉なのかもしれないが、今の青年にはそれよりも気がかりな事が二つほど合った。 「――――コイツは驚いたね。さっきまで誰もいなかった場所に、僕好みの美人さんが立っているとは」 見開いていた月目をスッと細めた彼は、両腕をすっと横に伸ばし冗談めいた言葉を放つ。 大げさすぎるその動作を見た異国情緒漂う女性もまた目を細め、その口から小さな吐息を漏らす。 反応だけ見ても呆れているのかこちらの動きを読んでいるのか、それすらハッキリとしない。 こういう相手は綺麗でも付き合うのはちょっと遠慮したいな。彼がそう思おうとした直前、女性の口が開いた。 「良く言うよ…君は知っているんだろう?―――私がそこら辺にいる゛ニンゲン゛とは違うって事を」 「……?それは一体―――――!」 夕闇の中、金色の瞳を光らせた彼女がそう言ったのに対し、ジュリオは怪訝な表情を浮かべようとする。 だがその瞬間。目の前の女性を中心に、この場所ではやや不釣り合いと思える程度の匂いが突如漂い始めた。 その匂いはこの建物を降りて適当な路地裏を歩けば出会いそうな連中が放っているモノと似通っている所がある。 青年は仕事上そういう連中と接する機会が多いため、唐突に自分の鼻を刺激した匂いの正体を断定できる自信もあった。 群れを成して路地裏に屯し、時として真夜中の街へ繰り出し生ごみを漁る大都市の掃除屋。 おおよそ武器を持たなければ人間でも太刀打ちできない゛奴ら゛と似たような匂いを放つ金髪の女。 それが意味するものはたった一つ――――――文字通りの意味で、女は人間ではないという事だ。 「もしかして君、常に体を清潔にしないタイプの人かい?」 匂いの根源と、その理由を何となく把握できた青年は、ふと冗談を放つ。 プロポーズどころかデートのお誘いですらない言葉に不快なものを感じたか、目を瞑った女はこう返す。 「生憎ですが私は主人と違い、そういうお話にはあまりお付き合いできませんよ?」 「そいつは残念だ。――――…おっと、ここまで話し合ったんだから名前ぐらい教えておこうか」 女性の辛辣な返事に青年も素っ気ない言葉で対応したかと思えば、笑顔を崩さぬまま唐突な名乗りを上げた。 「僕はジュリオ…ジュリオ・チェザーレ。気軽に呼んでくれてもいいし様づけしたっていいよ?」 青年、ジュリオの名前を知った女性は呆れた風なため息をつきつつ、その口を開ける。 「―――――八雲藍だ。別にどんな風に呼んでくれたって構いはしない」 憂鬱気味な吐息を漏らした口から出た言葉は、今の彼女を作り上げた主からの贈り物。 遠い昔の時代に、東の大陸で跳梁跋扈した妖獣の一族である彼女の今が、八雲藍という存在であった。 ★ 「おぉ…。さっきとは打って変わって、奴さん積極的じゃないか」 明らかに先程とは動きの違う偽レイムの後姿を眺めつつ、魔理沙が気楽そうに言った。 先程までこちらに背を向けている相手に殺されかけたというのに、その言葉から緊張感というものを殆ど感じられない。 流石に物凄い勢いでナイフを放り投げ、口論を続けていた霊夢とルイズに急接近した時は軽く驚いたが、今はその顔にうっすらと笑みを浮かべている。 箒を右手に持ち、キュルケの隣に佇むその姿はすぐに戦えるという気配が全く見えない。 自分に危害が及ぶ事が無いと分かっているのか、それとも知り合いである巫女が勝つことを予想しているのだろう。 とにもかくにも、この場には不釣り合いと言えるくらいに、魔理沙は霊夢達の動きを傍観していた。 「さて、この似た者同士の勝負。どちらが最後まで立ってられるかな」 「三人して同じ部屋で暮らしているというのに、観客様の気分で見ているのね貴女は…」 すっかり回復し、楽しげな言葉を放つ魔理沙とは対照的に、その隣にいるキュルケは安堵することができなかった。 下手すれば死んでいたかもしれない黒白がどんな態度を見せようとも、彼女とって今の状況は゛非日常的な危機゛であることに変わりはない。 急な動きを見せた偽レイムの傍には抜かした腰に力を入れて立とうとするルイズがおり、そんな二人から少し離れた所に本物の霊夢がいる。 もし立ち上がったルイズが下手に動こうとすれば、突然殴り掛かってくるような相手に何をそれるのかわからない。 その事をキュルケ自身が察する前に霊夢も気づいているのだろうか、ナイフを片手に身構えた状態からその場を一歩も動いていない。 一方の偽レイムも先程まで霊夢達がいた場所から動いてはいないものの、いつでも仕掛けられるよう腰を低くしている。 正に先に動いたら負けという状況の中にいる三人を不安そうな目で見つめているのが、今のキュルケであった。 (本当に参ったわね…いつもとは全く違う刺激があるのは良い事だけど…あぁでもこういうのは良くないわ) 少しだけ似合っていない魔理沙の微笑を横目でチラチラ見つめつつ、手に持った杖をゆっくりと頭上に掲げていく。 それと同時に多くの男を虜にする艶やかな声でもって素早くかつ正確に、呪文の詠唱を始める。 別にあの三人の戦いの輪に巻き込まれたいという、自殺願望に近い何かを胸中に抱いているワケでは無い。 ただキュルケ本人としてはどうしてこんな事になっているのか知りたいし、その目的を達成するためにはルイズの存在が必要だ。 恐らく、自分が巻き込まれたであろう刺激に満ちた今の事態の発端を詳しく話せるのは彼女しかいないであろう。 なら彼女の使い魔と居候となっている黒白でもいいかもしれないが、部外者である自分に話してくれる可能性はかなり低い。 そこでワザと彼女らが直面している事態に首を突っ込み、彼女らと同じ場所に立つ。そんな計画がキュルケの脳内で出来上がっていた。 故に彼女は決断していた。この刺激的な一日の最後を飾るであろう魔法を、偽レイムにお見舞いしてやろうと。 幼少の頃に覚えたスペルの発言は数秒で済み、短くとも今この場で最適と思える魔法の発動が準備できた時、魔理沙が声を上げた。 「あ、お前も混じるのか。何だか随分と賑やかになってきたじゃないか」 まるでこれから起ころうとしている事を知っているのか、彼女の顔にはその場にそぐわない喜色が浮かんでいる。 実際、この世界へ来て数週間ほどしか立ってない魔理沙にとってキュルケの魔法を見るのはこれが初めてなのだ。 しかしそんな彼女にとうとう嫌気がさしたのか、嬉しそうな黒白に向けてゲルマニアの留学生魔理沙の方へ顔を向け、目を細めて言う。 「本当に呆れるわね貴女。…こんな状況でそんな表情と態度を出せるのは一種の才能なの?」 「私から見れば、これから死出の行軍に出ようとしているようなアンタの顔が、ちょっと見てられないぜ」 遠まわしに空気を読めという解釈にも取れるキュルケの言葉を聞いても、魔理沙の態度は変わりはしない。 それどころか、緊張しすぎている彼女を笑わせようと灰色の冗談を飛ばしてくる始末であった。 もはや怒るどころか呆れるしかないキュルケは、ため息つく気にもなれず相手を見下すかのような表情を浮かべる。 「そう…じゃあそこでずっと見ていなさいよ?何が起こっても私は助けないけどね」 私にとって貴女は、まだ得体の知れない相手なんだから。最後にそう付け加え、キュルケは偽レイムの方へ顔を向ける。 「生憎だがアレは不意打ちだったんだぜ。それにお前が手を出すと霊夢が嫌がるかもよ?」 まぁそれはそれで見ものだけどね。魔理沙もまたそんな言葉を付け加え、キュルケに助言を送る。 しかし魔法使いからの言葉を聞き流したキュルケは、今か今かと攻撃のタイミングを伺っている時であった。 日常からやや抜けた刺激を活性化させる為に、常人では考えもしない異世界の事件に首を突っ込もうとしている。 その結果に何が待ち受けているのかは知らないが、キュルケ自身は後悔しない筈だろう。 後戻りができそうにない、非日常的な刺激こそ……彼女が求めてやまぬ心身の特効薬なのだから。 前ページ次ページルイズと無重力巫女さん
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No.220 / まかいの 人形 ちびルイズ 基本データ 説明 いとめが チャームポイントのかんこうが すきな ようじょ。 タイプ ノーマル 特性 めんえき タマゴグループ ひとがたりくじょう 種族値 HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ 合計 55 40 40 40 55 30 260 獲得努力値 HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ 0 0 0 0 1 0 分布 場所 階層 Lv 備考 かえらずのあな 15~18 その他の入手方法 なし 進化系統 ちびルイズ ┗Lv20でルイズ ┗Lv38でEルイズ 育成例 レベルアップ技 Lv 技名 001 はたく 007 まるくなる 011 たまなげ 015 かげぶんしん 019 うたう 023 アンコール 027 バリアー 031 たたきつける 035 ピヨピヨパンチ 039 おだてる 043 ミラーコート 047 じたばた 技・秘伝マシン技 No 技マシン名 06 どくどく 07 あられ 09 めいそう 10 よめしゅぎょう 11 にほんばれ 12 ちょうはつ 15 LUNATIC 16 ひかりのかべ 17 まもる 20 しんぴのまもり 27 おんがえし 32 かげぶんしん 33 リフレクタ- 37 すなあらし 39 がんせきふうじ 42 からげんき 44 ねむる 45 あさのひざし 49 よこどり No 秘伝マシン名 なし タマゴ技 技名 くすぐる あまいかおり しろいきり マッドボム キノコのほうし てだすけ 人から教えてもらえる技 場所 技名 未実装
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ゼロの番鳥外伝『ルイズ最強伝説』 Q.ペットショップとギーシュが決闘してる間、逃げたキュルケとそれを追い駆けたルイズは何をしていたんですか? A.こんな事をやっていました ドカーン!バゴーン!ドカーン!バゴーン! 学院に爆発音が響き渡る。勿論、その原因は私の魔法だ 「あはははははははははは!!!!!」 口から溢れる笑いを止める事が出来ない。得体の知れない恍惚感が体を震わせる!何かカ・イ・カ・ン!最高にハイ!ってやつよ! 脳が破壊と破壊と破壊を求めて矢継ぎ早に指示を出す。 私の笑いに反応したのか、逃げているキュルケが振り返ってこっちを見た。ん?何で脅えたような顔をするんだろ? 悪鬼を見たような顔をするなんて、私の繊細な神経が酷く傷ついたわ! 「大人しく吹っ飛ばされなさい!」 魔力を注ぎ呪を紡ぎ、発動の引き鉄となる杖を振って、私が唯一使える大得意な魔法を放つ! ドン! やった!ドンピシャのタイミングで爆発が起こった! キュルケが予期したように回避行動を取ったが、私の狙いはキュルケでは無く、その頭上! ガラガラガラガラ・・・・・・・・・「うひゃぁっ!?」 みっとも無い叫び声を出しながら天井の崩落に巻き込まれるキュルケ キュルケの生き埋めの出来あがり♪と小躍りしそうになったが、下半身しか埋もれてないのに気付いた。チッ。 瓦礫の下から何とか抜け出そうと足掻いてる。くふふふ、無様ね。トドメをさしてあげるわ。 「んふふふふふ・・・・・・」 わざとらしく足音と笑い声を立てながらキュルケの前に立つ。 キュルケは慌てて床に転がった杖を取ろうとしたが、その手が届くより先に、私の足が廊下の彼方に杖を蹴り飛ばす。 顔面が蒼白になるキュルケ、私の狙いに気付いたようだ。 「ル、ルイズ、もう冗談は止めましょ?ね?杖なんか掲げてると危ないわよ?私達友達でしょ?」 先程までとは一変して哀願口調になる。ふん、それで男は騙せるとは思うけどこのルイズ様にはそんなの通用しないわよ 死刑を執行しようと、杖を振って呪文を唱え―――そこで私は気付いた!キュルケの目が私では無く、私の後ろを見ている事に! 「エアハンマー!」 刹那、転がって回避した私の横を空気の槌が通過――――そして ドゴン!「ふげっ!」 私が回避した事により、直線状に並んでいたキュルケに当たった。身動きできないんだからどうやっても避ける事は出来ないわよね。 潰れた蛙のよう声を出して気絶するキュルケ。ああ、何て可哀想なの!とても嬉しいわ私!うふふふふふ 大声で笑いたかったが。それよりも私に攻撃しようとした不埒者にお仕置きするのが先。 「ミス・ヴァリエール!杖を捨てろ!!」 下手人は魔法学院の先生の一人だった。生徒に魔法を使うなんて野蛮にも程があるわよ。 「杖を早く捨てて!頭の上で手を組んで床に跪け!早く!」 私は声を聞き流して、その先生に近づく。 どうせ教師の職権を乱用して、世界三大美少女に入るほど可憐な私に性的な悪戯をする気満々だろうし!命令を聞く気は無いのよ! 「ヴァリエール!指示に従え!!」 焦れたように叫ぶが私はそんなのを聞く気は一切無い。 距離が5メイルを切ってから―――私は一気に走り出した。 「くそっ!どうなっても知らんぞ!?エアハンマー!」 先生が杖を振り空気の槌が私の腹部に直撃―――する寸前! 私は滑るような足捌きで突如体を平行移動させる。ドガッ!「ひげぇ!」 後ろからキュルケの声が聞こえた、どうやらまた私が回避したことにより外れた弾の直撃をくらったらしい。 いい気味ね 「はぁぁぁ!?」 回避するとは思わなかったのか、化物を見るような眼で私を見つめる先生。 あんなんで倒せると思うとは甘い甘い。ココアにミルクと砂糖をたっぷり入れて生クリームを乗っけたより甘いわよ! 時が止まって見えるほど集中した私には、服の下の筋肉の微細な動きまで見えたんだから! 「おおおお!?」 魔法を放つ余裕が無いのか無我夢中に杖を振って私を殴り付けようとするが。 私は身を屈めてそれを回避!その動きのままに先生の懐に潜りこんだ!顔に驚愕の表情を張り付けているのが良く見える。 そして―――その身を屈めた運動による腰と足の力は腕に伝えられ!突き出される拳! 当たる寸前にその拳を柔らかく開き!粘りつくような掌を目標に捻り込む!狙いは先生の鳩尾! ドン! 破壊的な音が私の腕を通じて脳に聞こえた!カ・イ・カ・ン! 強烈な一撃をくらった先生は息を吐いてその場に崩れ落―――駄目押しぃぃ! 捻りを加えた足が顎を真上に蹴り飛ばす、上体が浮いて無防備な体を一瞬硬直させた。 私はその場でくるりと回ると、持っている杖を胴体に突き付け!即座に魔法を使い爆発を起こす! ドゴォォォン! 零距離で起きた爆発をまともにくらい、吹っ飛ばされて壁にめり込む先生。白目を向いて気絶してる。んん?泡まで吹いてる。軟いわね と言うか、ほぼ至近距離で爆発起こしたから私も煤塗れになっちゃった。後でペットショップに洗濯させないといけないわね なんて事を私が考えていると。 「ヴァリエール!!!!」 叫び声が聞こえた方向を見ると新手の先生の姿が!敵が増えた! モタモタしてられないわ! 「それぇ!」 倒した敵の杖を拾って思いきり投げ付ける。自分でも100点満点と思う程に洗練された投球フォームだ。 メイジにとって杖は命の次に大事な物。魔法学院の先生方がそれを知らないわけがない。 凄いスピードで一直線に飛ぶ凶器となった杖を、他人の物だからと言って魔法で撃ち落すわけにもいかず、私の目論見通りにしゃがんで回避する。 それを見てほくそ笑む私。その判断は、この戦いにおいて致命傷となる隙を作り出すわよ! 「!?」 飛ぶ杖に続いて突進していた私に気付いた先生が慌てた動作で杖を振り上げる。 だけど遅い遅い。気付くのが数秒遅いわね! ゴガッ! 私の頭突きが先生の顔面にクリーンヒット!噴水のように鼻血を噴出した!・・・うひゃっ!鼻血が頭にかかった!許せない! 反射的に顔を押さえる先生に、私の渾身の体当りが決まる。 倒れた先生の上に馬乗りになる私。俗に言うマウントポジションってやつだ。 鼻を押さえる先生の顔が恐怖に歪む。私が何をするか理解したようだ・・・・・・それも哀れに思うほど遅いんだけどね。 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!! 顔面に拳の連打をおみまいする。先生は狂ったように暴れるが、重心をピンポイントで押える私から逃れる事は出来ない。 それから十数秒後、ピクリとも動かなくなった先生の体の上から立ち上がる私。 目の端に又人影が見えた。敵ね!?敵は皆殺しの全殺しでズタズタのグチャグチャのミンチの刑よ!あははははははははは! 振り向くと、腰が抜けたような格好で後退りする女教師の姿を発見。補足して全速突進! 私が走ってくるに気付いたのか、泣きそうな顔が更に泣きそうになって持っている杖を振り、火を飛ばす。 「遅い!」 走りを止めずに首を曲げてその攻撃を回避。遅い遅い遅すぎる!集中している私にはスローすぎて欠伸が出るわよ! 絶望的な表情でそれを見た先生は悲鳴を上げながら、再度杖を振り巨大な火球を発射した。 それは『火』と『火』を使った攻撃呪文『フレイム・ボール』!小型の太陽が私を襲う! その火球が、体に当たって私を炭にするだろう一瞬前――――床を蹴り、壁を蹴って天井に届くほど高く跳躍しスーパーにビューティフルな形で回避。 それにしても『フレイム・ボール』なんて・・・・・・・生徒に向けて使うものじゃないわよ!危ないわね!これはお仕置きね! 「天誅!」 そのまま天井を蹴った勢いと重力加速を加えた私の蹴りが女教師の腹に決まった。 まあ、肋骨が粉砕して、内臓が破裂しかける程度に手加減しちゃったけど。私も甘いわね 甘美な勝利の感覚が脳に伝わり、知らず知らずの内に顔の表情が笑みを形作る。 「私が最強よぉぉぉぉぉっ!!!!」 ガッツポーズをとって叫び声を上げようとした所で、何かが鳴る音が聞こえて・・・・・・ 私の・・・・・・意識は・・・闇に落ちて・・行った・・・・・・zzzzz 倒れたルイズを見てやっと安心するコルベール、その手には秘宝の一つである『眠りの鐘』が。 コルベールは滅茶苦茶になった廊下や、打倒された教師達を見回すと、魂も吐き出すかのような溜息を突いた。頭髪が更に少なくなった。 この後、ちょっとばかり洒落にならない額の弁償金をルイズが払う事となったのは、物語とは更に関係無い話である。
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前ページ次ページ蒼い使い魔 「あれ…?」 ルイズは見知らぬ場所で一人ぽつりと佇んでいた、 ここはどこだろうか? ヴァリエール家の秘密の場所? いや…違う、まるで見覚えのない場所、 辺りには板状に切りだされた不気味な石のオブジェが不規則にいくつもいくつも並んでいる。 「なにここ…なんだか不気味…」 そう言いながらとぼとぼと歩きだす。辺りは薄暗いが空には血のように紅い月が不気味に輝き 足元を照らしているため転ばずに済んだ。 周囲は静寂に包まれており、ルイズの足音だけがさみしく響き渡る。 「誰かいないの? ねぇ? バージル!? いたら返事してよ!」 孤独感に耐えられなくなり大声で己が使い魔の名前を叫ぶ、 だがその声は闇の中に吸い込まれ誰も返事をする者はいなかった。 「もう…なんで誰もいないの…? バージル…どこにいっちゃったのよ…」 ルイズはさみしさに押しつぶされそうになりながら、また歩き出す、だが歩けど歩けど一向に周囲の景色が変わることはなかった。 「なんなのよ! ここは!」 ついに我慢しきれなくなり大声を上げる、そして地面にへたり込むとあたりを見渡した。 「それにしても…なんなのかしら、この石のオブジェは…まさか墓石だったりとか…」 ルイズはそう呟きながらふらふらと立ち上がりオブジェへと近づいて行く、 調べてみると何やら馴染みのない異国の文字が書いてある。 そこになんと書いてあるのかはルイズには読むことができなかった。 「やだ…これってやっぱり墓石…」 だがそれだけでも墓石と判断するには十分だった、ルイズは呻くように後ずさると再び地面にへたり込む。 「じゃ…じゃあ…こ…これ全部…?」 ルイズはとたんに恐ろしくなり周囲を見渡す、そこにはまるでルイズをぐるりと取り囲むように墓石が並んでいた。 「あ…あぁ…こ…これは夢よ…! そう…夢…! だ…だからすぐ醒める…こんなっ…!」 ルイズは恐怖心にかられながら、頭を抱えうずくまる。 そうだ、昔ちいねぇさまに教えてもらったことがある、怖い夢を見た時は楽しい事を考えるんだ、 そうすれば自然に怖い夢が楽しい夢に変わる。 思い出したルイズは必死に楽しい事を考えようと努力する。だが… ―ボコッ…ボコボコッ… 何かが、地面から這い出る音がする。 ルイズが思わずその方向へ顔を向けると… 手に大鎌や槍、大剣などを持った悪魔の群れが、墓石の下から這い出てくるのが見えてしまった。 「ひっ…!!」 恐怖に身体がすくみあがる。周囲に存在するすべての墓石から悪魔達が這い出てくる。 見渡す限り悪魔、悪魔、悪魔、その全てがルイズへとにじり寄ってくる。 「こ…こないで! こないで!」 ルイズが杖を抜こうとすると。いつも杖があるべき場所に杖がない。 「う…嘘っ!? そんな…い…いや…た…助けて…バージル…」 ルイズの体を絶望と恐怖が支配する、このまま悪魔に殺されてしまうのだろうか? にじり寄る悪魔の一体がルイズに向け剣を振り上げる、ルイズは恐怖で目をつむった。 「ッ…!」 ―ガキィンッ! と言う剣と剣がカチ合う音が響く。 ルイズが恐る恐る目をあけると… 目の前にはルイズよりも小さい銀髪の少年が悪魔の振り下ろした剣を刀で受け止めていた。 「逃げろ! ×××!」 少年は振り向くとルイズに向け叫ぶ、誰かの名前を呼んだ気がしたがよく聞き取れなかった。 「え…だ…だれ…?」 ルイズは驚き少年を見るが髪の毛が目元を隠しており誰だか識別することはできない。 腰を抜かしたルイズはそのまま少年を見守るしかできなかった。 十歳くらいの少年が、自分の背丈よりも遥かに長い刀を振りまわし必死に悪魔を斬り倒している。 その刀にルイズは見覚えがある、閻魔刀だ、ではあの少年は…? 「バー…ジル…?」 悪魔達はすでにルイズのことは視えていないらしく次々少年へ襲いかかる。 斬り飛ばされた悪魔の首が少年の腕にガブリと噛みつく、 ―ベキッ…! ベギッバキッ! という骨が噛み砕かれる嫌な音、 「がっ…!」 短い悲鳴をあげ、右手から閻魔刀を取りこぼす、が、すぐさま左手で受け止めると 柄頭で腕に噛みついた悪魔の頭を叩き潰す。 「ハァッ…! ハァッ…! ハァッ…!」 少年の息は荒い、すでに満身創痍だ。 ―ボコッ… 少年の足もとの土が盛り上がる。 「っ!?」 少年が気がついた時には遅く、地面から生えた槍が深々と少年の胸部を貫いた。 「ぐあっ…!」 短い悲鳴をあげながら少年は地面に倒れ伏す、 ―ヒューッ…ヒュッ…ヒューッ… 肺から空気が漏れる音がする、少年は墓石に背中を預けながらも地面に突き刺さった閻魔刀へと必死に手を伸ばそうとする… だがその少年の眼に映ったものは閻魔刀ではなかった、手を伸ばした閻魔刀のさらに先にあるもの… 小高い丘の上に建つ一軒の家屋、それが勢いよく炎を上げ燃え盛っている様子が目に入った… 少年の眼が絶望で染まる、おそらくは彼の家なのだろう、 「ぁ…ぁ…か…ぁ…さん…」 彼が消え入りそうな声で母を呼ぶ。 悪魔達が彼を取り囲む、その中の一体が地面に突き刺さった閻魔刀を引き抜くと… 彼の心臓目がけ突き刺す、それを合図とするように次々と悪魔達は彼の体に武器を突き刺していった。 その様子をみながらルイズは声にならない悲鳴を上げることしかできない… 墓石にはりつけられた少年の指がピクリと動く… 「か……かあ…さん…××…×…」 少年はゴブッと大量の血を吐き出しながら燃え盛る家屋に向け弱弱しく手を伸ばすと…ガクリと崩れ落ちる。 奇しくもルイズは彼が寄り掛かる墓石に刻まれた文字を読むことができた… そこに刻まれていたのは ‐ VERGIL ‐ 「いやぁああああああ!!!!!」 ルイズはあらん限りの声をあげて涙を流す。今すぐにでも倒れ伏した少年のもとへと走っていきたい…! だがルイズの足は動かない、動かす事が出来ない、まるで過去の映像を見るかのように 場面が切り替わるのをただただ見ているしかできないのだ。 「もうヤダ! やめて! おねがいやめて! こんなの見たくない!」 ルイズは涙を流しながら頭を振りまわす、しかし夢は一向にさめることはなかった 「う…うぅ…う…もうヤダぁ…ヤダよぉ…こんなの…バージル…助けて…」 目の前で起きたことにルイズは蹲った。 ―クッ…ククッ…クククククク…ハッ…ハハッ…ハハハハハハハ!!! 突如墓石にはりつけられ息絶えたかに見えた少年が声をあげて笑いだす。 ルイズが驚いて顔を上げると、少年が自身の体に刺さった武器など意に介さないように立ち上がり、 一本一本抜き取っていく、少年の眼はまるで血のように紅く染まり、口元を大きく歪め…笑っていた… そして最後に心臓に突き刺さった閻魔刀を引き抜と、自分に襲い掛かった悪魔の群れに猛然と走りだした。 悪魔の群れを斬り倒し、薙ぎ払い、殺しつくす、目の前で行われているのはただただ一方的な殺戮。 悪魔達は抵抗らしい抵抗もできず少年に斬り殺されていく。その中で少年は、楽しそうに笑っていた、 ルイズはそれを、『恐ろしい』と感じる。やがて全ての悪魔を殺し終えた少年がふらふらと歩きだした。 そして不意に立ち止まると…燃え落ちた民家の方向を見て、場面はそこで停止した。 呆然と紅い月をバックに立ち尽くす少年を見ていたルイズの頭に突然声が響く。 ―力は素晴らしい ―どんな悪魔もスパーダの力の前にはひれ伏す ―凡百の悪魔などスパーダの力の前では赤子と同じ ―無残に母を殺し、残酷に弟を害した悪魔に死を ―憤怒、後悔、哀惜、絶望、疑問、戸惑い ―その『痛み』が快感であり、その『痛み』こそが力となる ―全てを守るために選んだ道 ―暴虐に終止符を打たせる力 ―父の名に誓い、俺はそれを求めている ―俺の決意も力も、決して壊せはしない 『更なる力を望むや否や?』 「失せろ」 ―ガシャァン!! というまるでガラスが砕け散るような音が響きわたる。 見るとあたりの風景がその音とともに崩れ落ち漆黒の闇に閉ざされる。 ルイズが驚いて周囲を見回す、すると闇の中に誰かが立っている。 そこには閻魔刀を抜き放ったバージルが立っていた。 「バージル!!」 ようやく見つけた、この悪夢から救い出してくれる己が使い魔 ルイズは使い魔の名前を叫びながら駆けだす、 そしてバージルにおもいっきり抱きついた。 「どこに行ってたのよ! 呼んだらすぐに来なさいよ! このばかぁ!」 ルイズは泣き叫びながらバージルの胸板を叩く。 バージルは微動だにせず、ただ自分の胸で泣くルイズを見下ろし…静かに口を開いた、 「ルイズ…お前も…俺の邪魔をするのか?」 「えっ…?」 その言葉にルイズが顔を上げる、言葉の意味が分からない。 バージルの髪は垂れ下がり目元を隠しているためその表情をうかがうことはできなかった。 「邪魔だなんてそんな…。私はただ…」 そこまで言うとルイズの頭の中に再び声が響く。 ―あの日、『人間の』俺は死んだ ―俺の決意はなにも変わってはいない、俺は俺の道を征くだけだ ―邪魔をする者は、誰だろうと斬る 「な…なに…? なんなの…これ…」 ルイズがバージルから離れるようにふらふらと後ずさる、すると…目の前で何かが光った、 ―ポタッ…ポタッ… となにかが滴り落ちる音が聞こえる 「え…?」 ルイズが恐る恐る視線を下へ向ける…そこにあったのは… バージルの手に握られた閻魔刀が自分の腹を深々と刺し貫いていた。 あぁ、さっきの音は血の音か…ルイズはまるで他人事のように考える、 夢だからだろうか? 不思議と痛みは感じない、だが、閻魔刀の冷たい感触が体を貫いているのだけは感じることができた。 「な…なん…で…バージル…」 ルイズが何が起こったかわからないといった表情でバージルを見る、 二つの視線が交錯した。 ルイズの瞳は起こったことが信じられないと言いたげに時折歪み、バージルはルイズをただ冷たく見下ろしている。 一拍置いた後、ルイズの腹から情け容赦なく刃を引き抜いた、 ルイズは一瞬大きく身体を泳がせて、後はそれきり硬直し…膝をつき前のめりに倒れこんだ。 バージルはそれを見た後、暫し額に片手の指先を這わせ… 何やらもの思わしげな風情だったが、すぐにその考えを振り払うようにそのまま前髪を掻きあげる。 そうすることにより現れた彼の顔は、表情などカケラも無い冷たい空気を纏っていた。 「ど…どうして…? バー…ジル…」 ルイズが振り絞るように声を出す、 「ルイズ…警告だ、俺の邪魔をしないでくれ」 彼には珍しく―それこそ一度も聞いたことがないほど静かな口調でそう言うと、閻魔刀に付着した血を振りはらう。 そして後ろを振り返ると右手の閻魔刀を強く握りしめ、強い歩調で歩きだす。 彼の視線の先には紅く輝く三つの眼、そして視界を埋め尽くすほどの悪魔の軍勢があった。 「だめ…行っちゃ…だめ…お願い…行かないで!」 ルイズはバージルに腹部を貫かれながらも必死に這いつくばりバージルを追おうと足掻いた、 だが彼の背中はどんどん遠くなる。眼が霞む、瞼が…重い…、闇が…降りてくる…。 「バージルッ!!」 ―ガバッ、とルイズが勢いよくベッドから跳ね起きる。 「ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…!」 心臓がうるさいほど高鳴っている。息が苦しい… 全身は汗でぐっしょり濡れており、眼がしょぼしょぼする、夢を見ながら泣いていたらしい 「夢…」 ルイズは呟きながら部屋の中を眺めまわす、そこはいつもと同じ、自分の部屋。 少し離れたところにあるソファにはバージルが横になっている。 「(あの夢って…バージルの…過去…?)」 とにかく落ち着こう、そう思いテーブルの上の水差しからコップに水を注ぎ、飲みほす。 今まで見たことがないほどの、過去最悪の悪夢だ。今でも鮮烈に思い出せる、あの恐怖。腹部を貫いた閻魔刀の冷たさ。 ルイズは自分のお腹をさする、夢の中とはいえ、バージルに刺されたのはかなりショックだった。 「…バージル?」 ルイズはソファで横になっている自分の使い魔に声をかけてみる するとバージルは静かに目を開いた。 「どうした?」 「あ…う…その…夢…そう…夢を見たの…そのなかでね…わたし…あんたに殺されちゃった…」 ルイズは絞り出すように今見た悪夢の内容をバージルに話す。 普段なら「夢の中でご主人さまを殺すなんてどういうつもりよ!」と癇癪を起こすところだが あまりにも悲惨で壮絶な彼の過去と覚悟を目の当たりにしたせいかそんな気力は消え去っていた。 「これも…ルーンの効果か? くだらんことを…ますます気に入らん…」 それを聞いたバージルは眉間に深い皺を寄せ左手のルーンを睨みつける。 バージルはルーンによって過去を心を勝手に覗き見られたことに強い不快感を示す。当然だ。 彼にとっては最も触れてほしくない記憶… かといってルイズも自ら望んでそれを見たわけではないので責めるわけにもいかない。 自傷防止の効果がなければ即座に閻魔刀でルーンを左手の肉ごと削ぎ落としているだろう。 「その…ごめんね…」 険しい表情のバージルにルイズが恐る恐る謝る。 「なぜお前が謝る必要がある。すべてはこのルーンが原因だ。 …元をたどればお前にも責任はあるが、そこまで責める気は無い。 夢の中で俺に殺されたのなら、それでチャラにしておいてやる」 「もう…人が謝れば調子にのって…すごく怖かったんだから…」 ルイズはそう呟くとベッドの中へと戻る、 そしてシーツをかぶると再びバージルを見る。 「ねぇ、ちょっとこっち来なさい」 「なんだ…」 「あ…あんたのせいで怖くて寝れなくなっちゃったのよ! だから…その…そ…そばにいてほしいの!」 「殺された相手にか? 変わった女だ」 バージルは呆れたようにソファから立ち上がるとベッドに寄りかかるようにドカッと腰を下ろす。 「朝までここにいてやる」 「…ありがと」 「世話が焼ける…」 ルイズはバージルの背中に身体を寄せると、静かに寝息を立て始めた。 翌日 トリステインの王宮でアンリエッタは客を待っていた。 女王へ位を上げたとはいえ、のんびり玉座に腰をかけているわけではない 王の仕事は主に接待である。戴冠式を終え女王となってからは国内外の客と会うことが多くなった。 内容は何かしらの訴えや要求、ただのご機嫌うかがい、 アンリエッタは朝から晩まで誰かと会わなければならない羽目になっていた しかも不幸なことに今は戦時中のため普段より客が多い、 どのような相手であれ威厳を見せねばならないため大変に気疲れしていた。 マザリーニの補佐がなければとっくにダウンしているだろう。 しかし、次に自分の目の前に現れる客は違う。先のような対応をしなくてもいい、だけどとても大事な客。 部屋の外で待機している呼び出しの声が聞こえた。客がこの場に到着したのである。 アンリエッタは溢れる嬉しさを少しばかし我慢した。もう少しだけ女王の態度をとらなければ。 無理矢理作った口調で、「通して」と告げる。すると、固く閉ざされていた扉がゆっくりと開いた。 ルイズが立って恭しく頭を下げる、その隣には彼女の使い魔、バージルの姿が―見えなかった。 「ルイズ! あぁルイズ! 会えて嬉しいわ!」 ルイズは頭を下げたまま、応える。 「姫さま……、いえ、陛下とお呼びせねばいけませんね」 「そのような他人行儀を申したら承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。 あなたはわたくしから最愛のお友達を取り上げてしまうつもりなの?」 「ならば…、いつものように姫さまとお呼びいたしますわ」 「そうしてちょうだい。ねえルイズ、ホント女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍。窮屈は三倍。そして気苦労は十倍よ…」 アンリエッタは疲れ切った表情を浮かべながらため息を吐く。 「そういえば…ルイズ、あなたの使い魔の方は?」 「あ…えと…バージルは別室で待機させています、その…そう! た…体調が悪いとかで…!」 その問いかけにルイズは目をすごい勢いで泳がせながら答える。 「そう…一言お礼を申し上げたかったのだけれど…」 無論ルイズは嘘をついている、まさかバージルがアンリエッタとの謁見を拒否した、とは言えない。 「あの女に膝をつくのは死んでも御免だ」 とバッサリ言われあきらめることにした。アンリエッタの前で空気を読まない発言を連発されるよりは遥かにいい。 バージルがアンリエッタをあまりよく思ってないのは確かだ、そもそもあの男に気に入られる人間がいるかどうかは甚だ疑問だが…。 「あの…姫様? お礼…と仰いましたが…?」 ルイズは先のアンリエッタの言葉を聞き返す。 そもそもここに呼ばれた理由はなんだろうか? 今朝がた急にアンリエッタからの使者が魔法学院にやってきたのである、 二人は授業を休みこうしてアンリエッタが用意した馬車に乗りここまでやってきたのだった。 やはり呼ばれた理由は『虚無』のことなのだろうか? するとアンリエッタはルイズの手を握る、 「先のタルブでの勝利は、あなたと彼のおかげだもの、お礼をしなくちゃ」 ルイズはアンリエッタの表情をはっとした表情で見つめる。 「わたくしに隠し事はしなくて結構よ。ルイズ」 「わたし…なんのことだか……」 それでもとぼけようとするルイズにアンリエッタはほほ笑むと羊皮紙の報告書をルイズに手渡した。 その報告書をかいつまむとこう書いてあった。 『所属不明の風竜から飛び出した蒼い衣を纏った銀髪の騎士が次々と敵竜騎士隊を撃墜、駆逐』 「(あれだけムチャクチャやればそりゃ目立つわよね…)」 それを読んでルイズは大きくため息を吐く 「ここまでお調べなんですね…といっても、この蒼い衣の剣士って時点でバレバレですよね…」 「あれだけ派手な戦果をあげておいて隠し通せるわけがないじゃないの。 兵たちの間では黙示録の騎士とも呼ばれていますが、わたくしにはすぐにわかりましたわ。 だから彼にもお礼と恩賞を与えたかったのですけれど…」 アンリエッタはそこでクスクスと笑うと、もう一度ルイズの目を見て言った。 「多大な…本当に大きな戦果ですわ、ルイズ・フランソワーズ。あなたとその使い魔が成し遂げた戦果は、 このトリステインはおろか、ハルケギニアの歴史の中でも類を見ないほどのものです。 本来ならあなたに領地どころか小国を与えて大公の位をあたえてもよいくらい。 そして使い魔さんにも特例で爵位を与えることもできましょう」 「わ…わたしはなにも…手柄を立てたのはあいつ…使い魔で…」 ルイズはぼそぼそと言いづらそうに呟く。 「あの光はあなたなのでしょう? ルイズ、城下では奇跡の光だと噂されていますが 私は奇跡を信じません。あの光が膨れ上がった場所にあなたたちが乗った風竜がいた、 あれはあなたなのでしょう?」 ルイズはアンリエッタに見つめられこれ以上は隠せないと判断し、 「実は…」と始祖の祈祷書のことを話し始めた。 「では…間違いなく私は『虚無』の担い手なのですか?」 「そう考えるのが正しいようね」 ルイズは溜息をついた。 「これであなたに、勲章や恩賞を授けることができなくなった理由はわかるわね? ルイズ」 「はい」 「だからルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。これはわたしと、あなたとの秘密よ」 すると、考え込んでいたルイズが何か決心したかのように、アンリエッタを見つめ口を開く。 「おそれながら姫さまに、わたしの『虚無』を捧げたいと思います」 「いえ…、いいのです。あなたはその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」 「神は…、姫さまを…トリステインをお助けするためにこの力を授けたはずなのです!」 しかし、アンリエッタは首を振る。 「母が申しておしました。過ぎたる力は人を狂わせると。『虚無』の協力を手にしたわたくしがそうならぬと、誰が言いきれるのでしょうか?」 ルイズは昂然と顔を上げる、自分の使命に気がついたような、そんな顔であった。しかしその顔はどこか危うい。 「わたしは、姫さまと祖国のためにこの力と体を捧げなさいとしつけられ、信じて育って参りました。 しかし、わたしの魔法は常に失敗しておりました、ついた二つ名は『ゼロ』。嘲りと侮蔑の中、いつも口惜しさに体を震わせておりました」 ルイズはきっぱりと言い切る、 「しかし、そんなわたしに神は力を与えてくださいました。わたしは自分の信じるものに、この力を使いとう存じます。 それでも陛下がいらぬとおっしゃるなら杖を陛下にお返しせねばなりません」 そんなルイズの口上にアンリエッタは心を打たれた。 「わかったわ…ルイズ、あなたは今でもわたくしの一番のお友達、 あなたがわたくしを信じてくれている限り、わたくしもあなたを信じ決して裏切らないことを始祖に誓いますわ…」 「姫様…」 ルイズとアンリエッタはひしと抱き合った。 謁見を終えたルイズがバージルを迎えに別室へと向かう。 ルイズがドアをあけると、部屋の中に『体調不良』で休んでいるはずの男が 優雅にティーカップ片手に足を組みながら本を読んでいる光景が目に入った。 「バージル、終わったわ、帰るわよ」 バージルはその言葉を聞くとテーブルにティーカップを置き、部屋を出た。 王城の廊下を二人で歩いているとルイズがバージルの横腹を肘でつつく。 「姫様があんたに『お体にお気をつけてくださいね』ですってよ」 「……ふん」 バージルはつまらなそうに鼻を鳴らすと横目でルイズを見ながら話しかける、 「ルイズ、なにか下らんことを言ったのではないだろうな?」 「何よ下らないことって、ただこれからも変わらず姫様に忠誠と『虚無』をささげるって誓っただけよ」 「それが下らんと言うのだ…」 呆れたように吐き捨てるバージルにルイズはキッとなって睨みつける。 「貴族が陛下に忠誠を誓うのは当然のことよ! 姫様も私が信じている限り決して裏切らないと始祖に誓ってくれたわ!」 ツンと胸を張って答えるルイズはなにやら書面を取り出した 「何だそれは」 「許可証よ、女王陛下公認のね、簡単にいえば女王の権利を行使する権利書ってところね、 あぁ…姫様はそれほど私を信頼してくださってるんだわ…私もそれに答える、姫様のためにね」 そう言いながら悦に入るルイズを見ると、バージルは小さくため息を吐いた。 「あ、そうそう、忘れるところだったわ、はいこれ」 ブルドンネ街に入ったところでルイズは思い出したかのようにバージルに何やら皮袋を手渡す、掌に収まる大きさだがなかなかに重量がある。 「…これは?」 「姫様からあんたにだって、タルブでの恩賞、ありがたく受け取っておきなさい」 「金と…宝石か、まぁいいだろう」 バージルが袋の中を確認するとコートのなかにしまい込む、彼にとっては地位よりも価値のあるものだ。 「あんたも姫様のご期待にちゃんと答えるのよ! 私の使い魔なんだから!」 「断る、俺はお前とは違ってあの女に忠誠を誓う気など毛頭ない。今回はたまたま利害が一致しただけだ」 やっぱりこいつをアンリエッタに合わせなくて正解だった、その言葉を聞きルイズは心底そう思った。 「何言ってるの!? ご主人様が生涯忠誠を誓う相手には使い魔も忠誠を誓うのは当然でしょ?」 「知らんな、俺は魔界に行く。いつまでもここに留まる気はない」 「口を開けば魔界魔界! 勝手に行けばいいじゃない!だれも残ってほしいなんて頼んでないわ」 ルイズはぷいっと顔をそらすとバージルより歩調を速めて歩き出した 「そうか、ではそうさせてもらおう」 バージルは事もなげに言う、まるでその言葉を待っていた、と言わんばかりだ。 「えっ!?」 その言葉が聞こえたのかルイズが立ち止まり振り返る、あまりにあっさりバージルがその言葉を受け入れたからだ。 「なっ…て…手がかりはあるの!? ないんでしょ? 行けないかもしれないじゃない…! そんな場所にどうやって行こうっていうのよ!?」 「手がかりならある」 バージルはそう言うとコートから一冊の本を取り出す、それは昨晩読んでいた本だ。 「な…なんの本?」 「『魔剣文書』。スパーダが封じた魔界への道が書かれている。この世界にもあるとは思わなかったが、 つい先日見つけた、この世界にも魔界への道が存在するのは確かだ」 「う…そ…」 「解読が終わればすぐにでもここを発つつもりだ、路銀もこの通りだ」 バージルはにべもなくそう言うと呆然と立ちすくむルイズの横を通り過ぎ、人込みをかき分け消えていった。 バージルは歩調を緩ませることなく人込みをかき分け歩いて行く。 城下は戦勝祝いで未だにお祭り騒ぎ、酔っぱらった一団がワインやエールの入った盃を掲げ 口々に乾杯! と叫んではカラにしている。 ルイズはバージルの口から出た言葉にしばし立ち尽くしていたが、バージルの姿がないことに気がつく、 長身で銀髪にロングコートという割と目立つ格好とは言え人ごみに紛れてしまい、まるで姿が見えない。 ルイズは慌てて駆けだした。 「いてぇな!」 勢いあまって、ルイズは男にぶつかってしまった。 どうやら傭兵崩れらしい、手には酒の壜をもって、それをぐびぐびラッパ飲みしている、 相当出来上がっているようだ。 ルイズはそれを無視し男の脇を通り抜けようとしたが、腕を掴まれた。 「待ちなよ、お嬢さん、人にぶつかって謝りもしねぇで通り抜けるって法はねぇ」 傍らの傭兵仲間らしき男が、ルイズの羽織ったマントに気がつき 「貴族じゃねぇか」と呟いた。 だが男は動じず、まだルイズの腕を強く握っている。 「今日はタルブの戦勝祝いのお祭りさ、無礼講だ! 貴族も兵隊も町人もねぇよ。 ほれ、貴族のお嬢さん、ぶつかったわびに俺に一杯ついでくれ」 男はそう言うとワインの壜を突き出した。 「離しなさい! 無礼者!」 ルイズが叫ぶと男の顔が凶悪に歪んだ 「なんでぇ、俺にはつげねぇってか。おい! 誰がタルブでアルビオン軍をやっつけたとおもってるんでぇ! 『聖女』でもてめぇら貴族でもねぇ! 俺達兵隊さ!」 男はそういうとルイズの髪をがしりと掴もうとしたその時 男の頭の上からワインがどぼどぼと浴びせられる。 いつの間にか男の後ろに立っていたバージルがワインの壜を奪い男の頭の上から浴びせかけていたのだった。 「ぶっ…なっ…なんだテメェ! なにしやがっ―」 男がそこまで言い切る間もなくバージルの手が男の首をガシリと掴み上へと持ち上げる。 首を掴まれ立つべき地面を失った男がジタバタともがく、がバージルの手はまるで万力のように男の首を締めあげた。 「あ…がっ…ごっ…」 「お…おい! てめぇ! 何しやがる! は…離しやがれ!」 締め上げられた男が顔を蒼白にしながら泡を吹き始め、それを見て慌てた傭兵仲間達がバージルを取り囲む。 バージルは首を掴んでいた手をパッと離し、男を地面に放り出す。 地面に放り出された男はビクビクと痙攣し口から泡を吐いている。 「お…おい…コイツはやばい…」 バージルの眼をみた傭兵の一人が顔を蒼くして呟く、 長年戦場を生き抜いてきた長年の勘が、いや、生命の本能部分が告げる。 ―この闇と戦ってはならない。 今まで味わったことのない濃厚な死の気配、この男は数多の死を振りまいてきた魔人だと直感する。 その恐怖は周囲を取り囲んだ傭兵達に伝染したのかじりじりと後ずさる。 「ひっ…ひぃいい…」 その中の一人が逃げ出すと傭兵達は気絶した男を無視し蜘蛛の子を散らすように逃げだした。 「………」 それを見送ったバージルは無言のままルイズの横を通り過ぎて行ってしまった。 ルイズはハッと我にかえるとバージルを追いかけコートの袖をぎゅっと握る、 離したら今度こそどこかに消えてしまいそうで不安になったからだ。 「その…ごめん…」 「何故謝る」 「………」 怒ってるのかな? そう考えたルイズはバージルの顔を覗き込む その横顔は、やはりというべきか、氷のように無表情だった。 引きずられるようにルイズは歩く。助けに来てくれたことはこれが初めてではない。 けれど来てくれたときは本当にうれしかった。冷たくされた分だけ気持ちは弾んだが、 それを悟られたくないと思ってしまうルイズだった。 気がつけばルイズはバージルの手を握っていた。バージル自身が握り返してくることはなかったが、 振り払いはしなかった。 ルイズはそんなバージルと歩くうちにだんだんと楽しくなり始めた。 街はお祭り騒ぎで華やかだし、楽しそうな見世物や珍しい品々を取りそろえた屋台や露店が通りを埋めている。 その中をバージルとルイズが手をつないで歩いて行く。バージルは相変わらず前のみを見て歩いているが、 ルイズは物珍しそうにあたりを見回していた。 もしこの場に彼の弟―ダンテがいたらなんと言うだろうか? 『オイオイ…俺は夢でも見てんのか? あのバージルが女と手をつないで歩いてるよ! どうりで妙な天気なわけだ…こりゃ空から女の子が降ってきそうだな!』 その言葉を皮切りに壮絶な兄弟喧嘩が幕を開けるだろう。 …それは置いておいて、辺りを見回していたルイズが「わぁっ」と叫んで立ち止まる 「……?」 バージルがルイズの見ている方向を見ると、そこには宝石商の露店があった。 建てられた羅紗の布に指輪やネックレスなんかが並べられている。 バージルが視線を感じ下を見るとルイズが頬を染め上目遣いでみつめていた。 「ねぇ…見てもいい?」 「好きにしろ」 ルイズは顔をぱぁっと輝かせるとバージルの手を引き露天へと近づく。 すると商人が客だと判断たのか、声をかける。 「おや! いらっしゃい! 見てください貴族のお嬢さん! 珍しい石を取り揃えましたよ。『錬金』なんかで作られたまがい物じゃございません!」 並んだ宝石は貴族がつけるにしては少々派手すぎて、お世辞にも趣味がいいとはいえないものだった。 ルイズはペンダントを手に取る、貝殻を彫って作られた真っ白なペンダント、 周りには大きな宝石がたくさん埋め込まれている。 しかしよく見ると少々ちゃちな作りである、宝石もあまり上質なものは使っていない、安物の水晶だろう。 でもルイズはそのペンダントが気に入ってしまったようだ。 バージルが目ざとくそのペンダントに張られている値札を見る、そこには小さく4エキューと書かれていた。 スッとバージルがルイズの横に出る、ルイズが少し驚いたようにバージルを見る。 するとバージルは一つのペンダントを手に取った。 それは珊瑚色の細長い石を包み込むように絡んだ一対の金の羽、そしてその上にもう一対、 広げた金の羽があしらわれたペンダント。 ルイズが手に取ったペンダントと比べると幾分おとなしめな装飾だがその分上品で洗練されている。 値札を見ると1エキューと小さく書かれていた。それを素早く外すと店主に1エキューを指ではじき飛ばす。 「これをくれ、金はこれでいいな?」 「へぇ、まいど」 「くれてやる、それで我慢しろ」 「えっ…えっ…? あ…」 バージルは突然の出来事に呆然とするルイズにポイとペンダントを放り投げると 人込みをかき分けさっさと歩いていってしまった。 ルイズはしばし呆気にとられていたが、思わず頬が緩んだ。 "あの"バージルが自分のために買ってくれた、それがとてもうれしかった、 ペンダントを愛おしそうになでると、ウキウキ気分で首に巻いた。 「お似合いですよ」と商人が愛想を言った。 バージルに見てもらいたい、そう思い人ごみの中のバージルの背中を追いかける、今度は見失わない。 一方そのころ、歩き去るバージルに一部始終を見ていた背中のデルフが声をかける。 「相棒…お前意外とケチだな…」 「………あの空気だと支払わせられるのは俺だ。出費と時間は最小限に抑えるに限る」 バージルの本音は人ごみの喧騒にまぎれ、消えていった。 前ページ次ページ蒼い使い魔
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ケースファンのサイズは? Inspiron 530は9cm 一例 model type DSB0912M DC 12V 0.19 A 92mm fan Inspiron 530s 上部のケースファンの詳細 DS08015R12H 3700RPM 37.78CFM 36.68db Inspiron 531リア、ケースファンも9cm 純正CPUクーラーのファンは8センチ、ファンのみ交換も可能だが、 ファン代を考えるとファン付きの社外品CPUクーラーに交換した方がお得かも ファン総合スレ Part58 http //pc11.2ch.net/test/read.cgi/jisaku/1274611467/l50