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前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第59話 平和と出会いと流れ星 宇宙怪獣 ザランガ 登場! ルイズたちの旅も、そろそろ前半が終わろうとしていた。 内戦状態のアルビオン大陸も、戦場以外では治安はなかなかよく、盗賊だのなんのには会わずに、 目的地であるウェストウッド村まであと一時間ほどの距離まで来ていた。 「内乱中だっていうから用心してたのに、結局平和なもんだったな」 「そーだな、俺っちも出番あるかもと思ってわくわくしてたのに、期待はずれだったわ、つまんね」 才人とデルフが仲良く髀肉の嘆を囲っている。馬車の旅というのも慣れれば退屈なもので、ラジオや カーステレオがあるわけでもなく、豊かな自然も逆に変化がなくて飽きが早い。カードゲームをしたり 本を読もうかと思ったりもしたが、馬車はけっこう揺れてカードが飛び散るし、この際こっちの文字にも 慣れようかとタバサに借りた本を開いたが、すぐに酔ってしまってやめた。 ルイズやキュルケなどは例によって先祖の誰彼がどうだとか、よく飽きもせずに言い争いを続けているが、 寝疲れてもしまった以上、退屈は最高の敵だった。仕方がないので御者をしているロングビルといっしょに 行き先を眺めた。街道は、旅人や商人が行きかい、こちらも平和そのものだった。 「この調子だと、予定より早く着きそうですね」 「そうですね……うーん」 「? どうかしたんですか」 予定が早くなりそうなのに、なぜか納得のいかない顔をしているロングビルに、才人は不思議そうに 尋ねると、彼女は首をかしげながら答えた。 「いやね。いくらなんでも平和すぎるなって、普段なら一、二度は盗賊に、特にこんな女子供ばっかりの 一行なんてすぐにでも襲われると警戒してたんだけどね」 「そりゃ物騒な。けど、王党派ってのが治安維持に力を入れてるって聞きましたが」 「かといっても、内戦中にそんなに兵力を裂けるはずがないんだけど」 「なるほど、でも襲われるよりは襲われないほうがましでしょ」 才人としても、悪人とはいえあまり人は斬りたくない。だからといって宇宙人や怪獣は殺してもいいのか といわれると困るが、更正の余地があるなら生きてもらいたい。もっとも、「こらしめてやりなさい」の パターンでギッタギタにしてやりたいとは、是非願うところだが。 そうしてまた一〇分ほど馬車を進めていくと、街道の先に槍や剣を持った一団がたむろしているのを 見つけた。最初は盗賊かと思ったが、身なりを見ると役人のようだ。彼らは一〇名ほどで、道端に 転がっている汚い身なりの男たちを縛り上げている。どうやら盗賊の一団が捕まっているようで、 街道を一時的に封鎖されることになった一行は、馬車から降りて役人の一人に話しかけて事の 次第を聞くことにした。 「実は、ここのところあちらこちらで盗賊集団が次々と壊滅させられていて、我々が通報を受けたときには すでに全員気絶させられて見つかるんです。おかげで、ここ最近は盗賊の被害が以前の一〇分の一 くらいに減りましたよ」 こちらが貴族の一行だとわかったようで、役人の対応はていねいなものだった。 「盗賊が次々と? どういうことですの」 「それが、盗賊たちの供述では一人旅をしている女を襲ったら、これがめっぽう強くて気がついたら 気絶させられて捕まった後だったとか」 「たった一人で!? そんな凄腕のメイジがいるんですか」 「いいえ、それが魔法は一切使わずに、盗賊のメイジも体術だけで片付けてしまったとか。もうアルビオンの 全土で数百人の盗賊や傭兵くずれが半殺しで捕縛されています。平民たちの間では、『黒服の盗賊狩り』と 呼ばれてもっぱらの噂になってるくらいですよ」 「『黒服の盗賊狩り』……体術だけでメイジを含む盗賊団を壊滅させるなんて、サイトみたいな人がほかにも いるものねえ」 ルイズは世の中は広いものだと、しみじみ思った。自分の母である『烈風』カリンもしかり、世の中には いくらでもすごい人がいるものだ。 なお、この噂の人物の正体は旅を続けているジュリなのであるが、別に好き好んで盗賊狩りをしている わけではない。若い女性があんまり無防備に一人旅をしているものだから、身の程を知らない盗賊たちが 喜んで集まってきて、その挙句返り討ちにあっているというわけである。この盗賊団にしても、昨日 似たような行為をしたあげく、丸一日野外に放置されて、気がついたときには縛り上げられていたのだが、 この時点では当然ルイズたちがそれを知るよしはない。 顔をボコボコにされて肋骨を二、三本はへし折られたいかつい男たちは、いったい自分たちに何が起こった のかわからないまま、役人に連行されていった。傷の手当てもろくにされずに、この酷暑の中を歩かされて いくのは死ぬような思いだろうが、所詮は盗賊働きをしようとしての自業自得なので同情には値しない。 「失礼しました。どうぞお通りください」 役人たちの事後処理が終わって、馬車は再び走り出した。役人は去り際に、この近辺の盗賊団はこいつらで ほぼ一掃されました。ごゆるりと、旅をお続けくださいと、まるで自分の手柄のように言っていたが、それもまた 彼の顔といっしょに忘却の沼地への直行となった。 一行を乗せた馬車は、それから街道の本筋を離れた森の中の脇道に入っていった。こちらに入ると、 本道のにぎやかさも嘘の様で、自分たち以外にはほとんど人とすれ違うこともなかった。木々の張った枝は 広く、昼間だというのに小さな道は木漏れ日がわずかに射すだけで薄暗い。しかしその分涼しくはあり、 これでやぶ蚊さえいなければ天国といえた。 馬車は、そんな木々のトンネルの中をわだちの跡をたどりながら進んでいく。 「つきましたわよ」 ロングビルに言われて馬車から身を乗り出したとき、一行はそこに村があるのかすらすぐにはわからなかった。 よくよく見てみれば、森の中に数件の小屋と、畑らしきものが見え隠れしている。 その後、ロングビルの言う村の中央に馬車を停め、一行はようやく到着したウェストウッド村を見渡した。 本当に、村というよりは山小屋の集まりといったほうがいい。家々は、この森の中ではたいした存在感を持たず、 畑も自給自足というレベルに達しているのかどうかすら疑わしい。 「ここが、ウェストウッド村……ね」 自分自身に確認する意味も込めて、ルイズは村の名前を復唱した。はっきり言えば、タルブ村より少し小さい 程度を想像していたのだが、その予測は完全に裏切られた。これでは村という呼び方すら過大に見えてしまう。 産業などある気配はまったくなく、ロングビルの仕送りがなければあっという間に森に飲み込まれてしまうのは 疑いようもない。ただ、村の裏手の森が台風に合ったみたいに広範囲に渡ってなぎ倒され、中途半端な平地に なっているのには、前はこんなことはなかったのにとロングビルも合わせて不思議に思ったが、とにかくも 村であるなら住人がいるはずである。 「テファー! 今帰ったわよーっ!」 そうロングビルが、目の前の一軒の丸木の家に向かって叫ぶと、数秒待ってから樫の木作りのドアが 内側から開き、中から緑色の簡素な服と、幅広の帽子をかぶった少女が飛び出してきた。 「マチルダ姉さん!」 「ただいま、テファ」 ティファニアと、マチルダと呼ばれたロングビルはおよそ一年近くになる再会を手を取り合って喜び合った。 けれど、ティファニアと初対面となるルイズ、才人たち一同は感動の再会を見て素直にお涙頂戴とは いかなかった。ティファニアが、ロングビルから聞いていた以上の、妖精という表現をそのまま使える、 美の女神の寵愛を一身に受けたような美少女だったから、というのもあるが、最大の、そう最大の問題は 彼女の胸部の二つの膨らみにあったのだ。 「バ、バストレヴォリューション!?」 と、平静であれば本人でさえ自己嫌悪したと思える頭の悪い台詞を、才人が呆然としてつぶやいたとき、 残った女性一同の中で、その台詞に怒りを覚える者はいても、否定できる者は誰一人としていなかったのだ。 「な……なに、アレ?」 「た、多分……胸」 と、ルイズとシエスタ。 「ね、ねえタバサ、わたし夢を見てるの?」 「現実……」 青ざめて絶句しているキュルケをタバサがなだめている。唯一、年長者たちが何に驚いているのか わからずにアイだけがきょとんとしている。まぁ、阿呆な思春期真っ盛りな一同の気持ちを代弁するとすれば、 ティファニアの胸が彼らの常識を逸して大きかった。それで男の子の才人は思わず見とれてしまい、女子 一同の場合は、胸に自信のないルイズは逆立ちしても勝てない相手に絶望感を味わわされ、バストサイズに 優越感を抱いていたキュルケとシエスタは、完全に自信を打ち砕かれて天から地へ打ち落とされ、タバサは 一見平静を保っているように見えたが、内心では勝ち目〇パーセントの相手に、冷静な判断力を持って 敗北を認めていた。ただし、一時の激情も過ぎれば、それを埋めるための代償行為を要求する。 「このエロ犬! あんた何に見とれてんのよ!」 と、才人に蹴りを入れたルイズなどはその際たるものだろう。ほかの者たちも、小さくても形がよければ とかなんとかぶつぶつと言っているが、現実逃避以外の何者でもない。 けれど、いくら現実を拒否しても時間の流れを停止も逆流させることもできない。ロングビルと再会を 喜んでいたティファニアが、いっしょに付いてきた奇妙な一団に気づいて尋ねてくると、言葉尻を震わせながら 自己紹介をせざるを得なくなった。 「ト、トリステイン魔法学院二年生の、る、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。あ、 あなたのお姉さんには、い、いつもお世話になってるわっ!」 他の者たちもだいたいはこんな調子である。ティファニア本人は、何故この客人たちが動揺しているのか さっぱりわからなかったが、自分も陽光のように明るく無邪気な笑みを浮かべて、自分の名を名乗った。 そうして、一同はそれぞれ大まかなことを語り合った。ロングビルの名前が偽名であることはフーケ事件の 時から一同は察しをつけていたが、本名はマチルダといい、ずっとティファニアのために仕送りをしていたこと、 ティファニアも今はマチルダが魔法学院で秘書をしており、その縁で仲良くなった生徒たちだと聞かされた。 むろん、土くれのフーケについては一言も触れられてはいない。 それから、マチルダはアイを前に出して、この子を預かってほしいと頼んだ。すると、ティファニアは 自分の腰ほどの身長しかない少女の視線にまで腰を下ろして。 「はじめまして、アイちゃん。小さなところでがっかりしちゃったかな」 ティファニアは、「今日からここがあなたの家よ」などと押し付けがましいことは言わなかった。元々、 子供の育成に理想的な環境などではないことくらい彼女も承知している。来るものは拒まないが、 いくら幼かろうと相手の意思を無視してはいけない。しかし、ティファニアの懸念は無用のものとなった。 「いいえ、これからよろしくお願いします。テファお姉さん」 はつらつとアイは答えた。よき親を持った子供はよく育つ、ロングビルが育ての親となって暮らした この数ヶ月、純粋な子供は水と日差しを貪欲に得て伸びる朝顔のように成長していた。単に自由に育てたり、 勉強を押し付けたりするだけが教育ではなく、人はそれを躾といい、ティファニアに快い初印象を与えていた。 「こちらこそよろしくね。よーし、じゃあみんな出ておいで!」 ティファニアがドアを開けっ放しだった家に向かって手を振ると、中からいっせいに歓声をあげて 子供たちが飛び出てきて、一行に群がっていった。 「わっ、こ、こんなにいたのか!?」 才人たちは、この村の住人にとってちょっと久しぶりの歓迎すべき客人になる者たちを、喜んで 出迎えてくる十数人の子供たちに囲まれて、またもうろたえていた。どの子たちも、身なりこそみすぼらしいが、 瞳は明るく強く輝いている。むしろ大人に近いはずの才人たちのほうが力負けしてしまいそうな勢いだった。 「こらこらあなたたち、お客さんを困らせるんじゃないの。それじゃあ皆さん、狭いところですけど、自分の家だと 思ってくつろいでください」 はしゃぐ子供たちを落ち着かせて、ティファニアは困惑する一同を、家の中に誘った。まだまだ話したい ことは山ほどあるが、とりあえず立ち話もなんであった。時間はまだたっぷりとある。こうして、夏休み旅行の 本番は、小さいながらもいろいろハプニングの種がありそうな村で、革命的な胸の持ち主の美少女との 出会いによって始まったのだった。 それから、場所を室内に移して、子供たちにまかれながらいろいろと話し合った結果、一行はこの数ヶ月分の 驚きをいっぺんに使い果たすくらいの驚愕を味わうことになった。 「エ、エルフぅぅっ!?」 と、ルイズとキュルケとシエスタの絶叫が響いたのが、その際たるものだっただろう。ティファニアの正体が エルフであることは、ロングビルが隠す必要がないと言ったおかげで早々に明かされることになったのだが、 ティファニアは驚く三人におびえた様子を見せていたが、一時の興奮が収まると。 「なにを怯えてるんだお前ら、アホか?」 白けた口調でつぶやいた才人の声もあり、落ち着きを取り戻していった。けれども、エルフがハルケギニアの 人間にとって恐怖の対象だということは変わりない。以前ジュリと話したときもティファニアは怯えていたが、 ジュリはエルフなど、文字通り星の数ほどいる宇宙生物の一つとしか思っていなかったために、すぐに 打ち解けられていた。また、才人は地球人であるために、エルフとはゲームの中で出てくる人間以外の 種族という印象しかない。けれど今回はあからさまな恐怖を向けられて、彼女は自分が大勢の人から 見たら忌まわしいものなのではと、泣きそうになっていたが、子供たちが怒りの声で糾弾をはじめた。 「テファおねえちゃんをいじめるな!」 その数々の声が、ルイズたちを攻め立て、ティファニアは慌てて子供たちを止めようとしたが、それより 早くルイズが謝罪した。 「ご、ごめんなさい。あんまり突然だったものだから驚いてしまって、失礼したわ」 キュルケとシエスタもルイズに次いで謝罪した。冷静になると、どう見ても弱い者いじめをしているようにしか 見えないし、才人の侮蔑するような視線が痛かった。むしろティファニアに「やっぱり、エルフは怖いですよね」 と、涙ながらに言われると、罪悪感ばかりが湧いてくる。 「いえ、悪かったのはわたしたちよ。エルフなんて見たことないから、怪物みたいなものかと先入観を 持ってたけど、案外人間とさして変わらないのね。けれど、なんでエルフがアルビオンに?」 ティファニアは、訥々と自分の素性についてルイズたちに語った。自分の母はエルフで、東の地から来て、 父は昔はこのサウスゴータ地方一帯を治める大公だったが、ある日エルフをかこっていたことが王政府に ばれて、追われる身となり、両親をその混乱で失い。親戚筋で、彼女を幼い頃から可愛がっていた マチルダにかくまわれてこの森で過ごしていることなどを、途中何度かロングビルの助けを借りながら 話しきった。 「ハーフエルフ……可能性だけは聞いていたけど、本当に可能だったのね」 「母が、なぜアルビオンに来て、父と結ばれたのかは何も語ってはくれませんでした。それでも、母は わたしが生まれてからずっと、国政に関わることもなく、隠遁生活を続けていました」 何故ティファニアの母がアルビオンにやってきたについては、結局娘であるティファニア本人にも わからないということだった。話し終わると、ぐっとティファニアは喉をつまらせた。ルイズたちは、悪いことを 思い出させてしまったと後悔したが、彼女に悪いものは感じられずに、ちょっと無理をして微笑んだ。 「顔を上げて、ミス・ティファニア、あなたが悪に属するものではないということはよくわかりました。 夏の間の短い期間ですけど、しばらくよろしくお願いするわ。そうでしょ、キュルケ」 「ちょっとルイズ、あたしが言おうとしてたこともっていかないでよね。ま、いいわ。休暇の間、仲良く やりましょう。友達としてね……ある意味ライバルだけど」 「わ、わたしも負けませんよって、なに言ってるんだろうわたし!? と、とにかく人間……いえ、エルフも 人間も中身で勝負です! よろしくお願いします、ティファニアさん」 ルイズ、キュルケ、シエスタがそれぞれ、自らの内にあった偏見との別れを告げるべく、強く、そして 親愛を込めて笑いかけると、落ち込んでいたティファニアの顔に紅がさした。 「わ、わたしこそよろしくお願いします。それではわたしのことも、テファと呼んでください。マチルダ 姉さんのお友達なら、わたしにとってもお友達です!」 一同の間に、春の陽気のような暖かな空気が流れた。先程まで恐怖と警戒心を向けていたルイズたちと ティファニアは、仲良く手を取り合って旧知のように笑いあっている。それを静かに眺め見ていたロングビルは、 にこりと微笑んだ。 「よかったわね、テファ」 「姉さん、ありがとう。今までで最高の贈り物よ」 いきなりこんなに大勢の友達を得れて、ティファニアは今さっきとは別の意味を持つ涙を流していた。 元々、ルイズもシエスタもキュルケも、陰より陽に属する性格の持ち主なのである。それは怒りも憎しみも 存在するが、いわれもなく他者を貶めることに快楽を求めたことはない。しかし、そんな様子を同じように 見ていて、後一歩で飛び出そうかと思っていた才人はロングビルに軽く耳打ちした。 「ちょっと、無用心じゃないですか? もし、誰かが激発して彼女に危害を加えたり、秘密を漏らしたり するようなことがあっちゃ、大変じゃないですか?」 「大丈夫よ、オスマンのセクハラじじいのところに入って後悔したときから、人を見る目は磨いてきた つもりなの、じゃあ逆に聞くけどこの面子の中に一人でも恐怖や偏見に従って裏切るような人がいるの?」 そう言われると、ルイズやキュルケが裏切りなどという貴族の誇りを真っ向から否定する行為に手を 染める姿は想像できないし、シエスタも人一倍友愛や人情には厚いタイプだ。一度決めた友情を、 自分から裏切るようなことは絶対にするまい。ただ、三人の誰もまったく全然、どうしようもなく敵わない 二つの巨峰の持ち主に、冷たくすれば返って敗北を認めることになるという、負け惜しみの悪あがきに 近い屈折した感情があったのも事実であるが、それでも彼女たちは宇宙人とでも親交を持った稀有な 経験の持ち主である。エルフであるということを回避すれば、仲良くしない理由のかけらも存在しなかった。 「それでも、秘密を知る者は少ないに越したことはないでしょ」 なぜ、そんなリスクを犯してまでと聞く才人に、ロングビルは古びた木製のワイングラスから一口すすると、 自嘲げに才人に話した。 「実を言うとね。そろそろ私一人でこの子たちを守っていくのが限界になってきてたんだよ。子供はいずれ 大人になるものだしね。いつまでもこの森に隠しておけるはずもないし、今のうちに信頼できる味方を 与えてやりたいと思ったのさ。本来こんなことを頼めた義理じゃないかもしれないが、あの子の力に なってやってくれないか?」 「そういうことすか……でも、さっきのあなたの台詞を借りれば、おれたちが万一にも断ると思ってたんですか?」 才人は、投げられた変化球を同じ形でロングビルのミットにめがけて投げ返した。エルフの血を引く少女と たくさんの子供たち、自分の力だけではどうにもならず、多分ルイズやキュルケたちの地位や財力を頼る ことにもなるかと思うが、できるだけのことはしてやろうと彼は思った。 「まっ、ティファニアくらい可愛い子だったら、守って腐るほどおつりがくるわな」 「サイトくん、嫁にはあげないわよ」 「そういうとこだけは親バカですね。ま、無関心よりゃずっといいか」 親バカなロングビルというのもなかなか親しみが持てると、才人は苦笑しながらも、タバサを巻き込んで 輪に入っていった。 それから、一行は薄暗くなってきた外に合わせるように、夕食の準備を始め、最終的にティファニアの家で 二十人以上が一つの卓を囲んでの大宴会をおこなって、終わる頃にはもうなんらの屈託もなくティファニアや 子供たちと交流できていた。 やがて夜も更けて、子供たちはそれぞれの家に帰って早めの就寝についた。アイは、早めにこの村に 慣れるためということで、エマという子といっしょの家で寝ることになった。 さて、子供たちが大人しくなると、今度は夜更かし大好きな少女たちの時間である。ルイズたちは ティファニアと女同士の話し合い、というか、どうすればどこが大きくなるかという重要会議を始めて、 男性である才人は外に追い出されて、同じように外で涼をとりながら酔いを醒ましていたロングビルと、 ぽつりぽつりと話し合っていた。 「やれやれ、雁首揃えて何を話し合ってんだか」 今、ランプの明かりをこうこうと照らした室内では、”ティファニア嬢との親交と友愛を深めるための会談” が、おこなわれているはずであったが、実際に中から聞こえてくるのは、何を食べているのかとか、 普段どういう運動をしているのかとか、根掘り葉掘りティファニアに尋問する言葉ばかり聞こえてきて、 持たざる者の哀愁を感じざるを得ない。特にルイズは、今後成長期が奇跡的にめぐってきたとしても ティファニアを超えることは物理的に不可能なので、なおさら哀れを感じてしまう。あれはあれでいいもの なのだが…… 「サイトくんには、胸の小さな子の悩みはわからないのかしら?」 「正直あんまりわかりません。けど、やたら大きけりゃいいってもんじゃないと思うがなあ。誰も彼も大きければ 個性がねえし……それよりも、ロングビル……えーっと、マチルダさん」 「どっちでもいいわよ。どのみち帰ったらロングビルで通すんだし。それで、私に何か用?」 ロングビルも、久々の里帰りで機嫌がよいようだ。 「じゃあロングビルさん。あの連中、ほっといていいんですか? どーもテファの教育上よくない気がするんすが」 「なあに、いずれ外で暮らすようになれば嫌でもそういうことは関わっていくことになるから、予行演習には ちょうどいいわ。あの子はちょっと純粋すぎるところがあるからね」 要は、無菌室で育てはしないということか、それに比べて、世の大人には子供にはいつまでも天使の ように純粋でいてほしいと、子供の一挙一頭足まで厳しく制限する親がいるが、それは子供への愛ではなく 自らの妄想が作り出した理想の子供像への執着に過ぎない。そして、親の幻想を押し付けられる子供には かえって有害でしかない。悪魔どもが天使を陥れようと跋扈するのが世の中なのだから。 「純粋すぎますか。けど、テファがあいつらに感化されたらそれはそれで問題な気がしますが」 「……」 誇り高く尊大で暴力的なテファ、お色気ムンムンで男あさりをするテファ、妄想爆発でイケナイ子なテファ、 果ては無口で本ばかり読んでいるテファ、思わず想像してみた二人はぞっとするものを感じた。 「ま、まあそのことは、あとでテファに注意しておきましょう……」 朱に染まれば赤くなるというが、あの連中の個性は朱というよりカレーのしみのようなものだ。一度 ついてしまえば洗っても落ちない。ロングビルは、この際積もる話もあるということで寝る前に悪い影響を 受けてはいないかと確認することにした。 だが、先程の話ではあえて出さなかったが、アルビオンにいるエルフということで、才人は一つ心当たりを つけていた。けれど、それを直接ティファニアに聞くことははばかられたので、ロングビルにそれとなく 話を振ってみようと思っていたのだが、せっかくの再開で機嫌がいいときにそんなときに話を振って よいものかと、才人は今更ながら少々迷っていた。 「ところで、ロングビルさん」 「なに?」 「実は……えーっと」 やはり、いざとなると簡単には踏ん切りがつかなかった。それに、エルフであるからと迫害されてきた ティファニアの素性のことを思うと、聞きたくないという気持ちも同じくらいある。しかし、彼の心境を読んで 先手を取ったのはロングビルのほうだった。 「まあ、言わなくてもだいたいの予測はつくけどね。あの子の母親のことでしょ?」 「えっ!? あ、はい」 こういうところは、さすが元盗賊だなと才人はロングビルの読心術に感心した。とはいえ、そうなれば 話は早い。才人は、覚悟を決めると一気に疑問を口にした。 「タルブ村で聞いた、アルビオンに旅立ったエルフの少女、もしかしてテファのお母さんは……」 「察しがいいわね。私も、タルブでその話を聞いたときは驚いたけど、間違いないわ。あの子の母は、 三〇年前にタルブを訪れたエルフの少女、ティリーよ」 やっぱり、と、才人は予測が当たったことに心中で喝采したが。 「なんで、あのときにすぐおっしゃってくれなかったんですか?」 「時期を見て、順にと思っただけよ。あのとき全部話したら、あなたたちパニックになったでしょう」 「まあ、そりゃそうですね」 才人はロングビルの気遣いに感謝した。けれど、才人の目的はティリーではなく、彼女といっしょに アルビオンに旅立ったもう一人のほうだ。 「ですが、こうなったらもう単刀直入に聞きます。ティリーさんといっしょに、ここにはもう一人、異世界からの 来訪者、アスカ・シンさんがいたはずです。彼がこちらに来てからどうしたのか、知っていたら教えてください」 誠心誠意を込めて、才人はぐっと頭を下げた。しかし、ロングビルから帰ってきた答えは、彼の期待には 副えないものだった。 「ごめんなさい、残念だけど何もわからないの」 「そんな……」 「知っていたら教えてあげたいわ。けれど、何分私はティリーさんと会ったことは何度もあるけど、私が あの人と会ったころに、アスカさんはすでにいませんでしたし、私の実家が没落する際に彼女に関する ものは全て消失してしまって、今となっては……」 「そうですか……わかりました」 残念だが、三〇年も昔であれば仕方がない。だが、才人は同時に運命というもののめぐり合わせの奇妙さに ついて、思いをはせずにはいられなかった。 「それにしても、まさかと思ったけど……こんな簡単に出会えるとはなあ」 元々、アルビオンについた後は可能な限りアスカの、ダイナの足跡を探そうと決意していたが、あんまりの あっけなさには怒る気も湧いてこない。しかし才人は絶望はしていなかった。以前、完全に消息不明と オスマン学院長に言われたアスカの足跡が、今回はこんな簡単に見つかっている。今は途切れてしまったが、 運命というものがあるのだとすれば、その歩調は時代の流れと比例して停滞から速歩、疾走へと進んでいる のかもしれない。ならば、次のステップに進めるのも、そう遠い話ではないかもしれないと、才人は自分に 言い聞かせた。 「さあ、そろそろ子供は寝る時間よ」 「へーい」 気づいてみたら夜も更けて、月は天頂に今日は赤い光を輝かせている。室内では、飽きもせずに女子 五人がわいわいとやっていたが、ロングビルに一喝されてベッドの準備を始めた。この村にいる間は 貴族といえども自分のことは自分でやるというのが、最初にルールで決められていた。でなければ、 子供たちの見本にはならない。 「おやすみなさーい!」 一斉にした合図とともに、一行は昼間の疲れも重なって急速に眠りの世界へと落ちていった。後には、 鈴虫の鳴き声と、風の音だけが夏の夜の平穏さを彩り、朝までの安らかな天国を約束していた。 ただ、約一名、いや一匹、理不尽な不幸に身を焦がす者が存在していた。 「きゅーい! おなかすいたのねーっ!!」 村の上空をグルグルと旋回しながら、シルフィードは朝からずっと悲鳴を上げ続けている胃袋の叫びに 呼応して、自分にまったく声をかけようとしない主人に抗議していた。 「まさかお姉さま、シルフィのこと忘れてる? そんなの嫌なのねーっ!」 ここにも、バストレヴォリューションの犠牲者が一人……タバサがティファニアにショックを受けて、 シルフィードにエサをやるのをすっかり忘れていたのだ。けれども、空の上で月を囲んで回りながら叫んでも、 タバサはとっくにすやすやと安眠モードに入っていて、朝まではてこでも動かないだろう。 そんなとき、悲しげに空を見上げたシルフィードの目に、月のそばを横切るように飛んでいく小さな光が 見えてきた。 「きゅい? 流れ星?」 光り輝く小さな点は、夜空を横切って次第に遠ざかっていく。シルフィードは、しばしぼおっとその流れ星を 眺めていたが、ふと前にタバサから流れ星が消える前に願い事を言うとかなうという言い伝えを聞かされたのを 思い出して、前足を合わせて祈るようにつぶやいた。 「おなかいっぱいお肉が食べられますように、おなかいっぱいお魚が食べられますように、おなかいっぱい ごちそうが食べられますように」 なんともはや、自分の欲求にストレートなことである。けれども、シルフィードがたとえば「世界が平和に なりますように」とか願っても、みんな気持ち悪がるだけだろう。シルフィードの幼さもまた、シルフィードの 個性であり魅力でもある。ルイズにしたって「胸が大きくなりますように」と願ったに違いないのだから。 「きゅーい、お星様、シルフィのお願い聞いてなのね……ね?」 そのとき、シルフィードは自分の目をこすって、見えているものを確かめた。なんと、どういうわけか いつの間に流れ星の傍に、もう一つ小さな流れ星が寄り添うようにして飛んでいるではないか。 「きゅいーっ、お星様のお母さんと子供なのね。これなら、シルフィのお願いもよく聞いてくれるかもね。きゅいきゅい」 シルフィードは、このときだけは空腹を忘れて空の上ではしゃいでいた。 だが、残念ながらシルフィードの願いは届くことはないだろう。なぜなら、シルフィードから見て流れ星に見えたのは、 この星の大気圏ギリギリを高速で飛んでいく怪獣の姿だったからだ。 その正体は、宇宙のかなたからやってきた、丸っこい体つきをした、カモノハシとイタチとカエルの あいの子のようなユーモラスな姿の怪獣、ザランガだった。そしてそのかたわらには、ひとまわり小さな ピンク色の怪獣が元気に飛び回り、ときたま前に飛び出ていっていたが、やがて疲れて後ろに下がって休み、 大きなほうは、小さなほうが遅れないようにその間速度を緩めてゆっくりといっしょに飛んで、疲れが癒えたら、 また一生懸命飛び回っていた。そう、それはザランガの子供だった。 ザランガの一族は、この広大な宇宙を時が来れば長い年月をかけて旅をして子供を生み、また元の場所へと 親子で帰っていく渡りの性質を持っている。彼らも今から何年も前に、ここからはるかに離れたある星で親子になり、 子育てをするための元の星へと帰る途中だった。その彼らがこの星に寄ったのも、この惑星が今は宇宙の果ての 水と自然にあふれたその星によく似ていたからかもしれない。 やがて親子は、旅の間のわずかな寄り道にきりをつけて、また宇宙のかなたへと飛び去っていった。 もしかしたら、何百年か先にこの子供か、別のザランガがこの星を訪れるかもしれない。けれども、 ザランガは美しい水が大量にある星でしか子供を生めない。果たしてそのとき、この星はザランガが安心して 子供を生める平和な星であり続けられるのか。流れ星に願いがかけられるように、流れ星もまた願いを かけていた。 ずっと平和でありますように、と。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
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クロP(kuro氏) 変態作品を制作。倒れるときは前かがみ! 最新動画 代表作 ココハカイギシツデスヨ? 続き アイドルマスター セクハラさん、ついに・・・ プレグナンツの法則 ガチMADだってすごいんだぜ ニコ動一覧 タグ-クロP【注】名義上、くろPの動画も、一緒に検出されます。 マイリスト-作成リスト 公開投稿動画 公開プロフィール タグ一覧:P名 P名_く デビュー2007.8上旬
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「職業はガンダールヴとありますが?」 「はい。ガンダールヴです。」 「ガンダールヴとは何のことですか?」 「使い魔です。」 「え、使い魔?」 「はい。使い魔です。武器を取ると覚醒します。」 「・・・で、そのガンダールヴは当社において働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」 「はい。敵が襲って来ても守れます。」 「いや、当社には襲ってくるような輩はいません。それに人に危害を加えるのは犯罪ですよね。」 「でも、ワルドにも勝てますよ。」 「いや、ワルドごときとかね・・・」 「竜の羽衣にも乗れるんですよ。」 「ふざけないでください。それに竜の羽衣って何ですか。だいたい・・・」 「人殺しの道具です。ゼロ戦とも書きます。ゼロ戦というのは・・・」 「聞いてません。帰って下さい。」 「あれあれ?怒らせていいんですか?帰りますよ。日本。」 「……いなくなったらやだ。……なにしてもいいけど、それだけはダメなんだから。」 「運がよかったな。12巻は東方に行かないみたいだ。」 「あんたの忠誠に報いるところが必要ね!めめ、面接官の体、一箇所だけ、好きなとこ、ささ、触ってもいいわ!」 あの作品のキャラがルイズに召喚されました part63 - 134
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もし全世界からお菓子が消えてしまった場合、僕達はどうなってしまうのか。 そんなことを考えるのは象がタマゴから生まれた場合の殻の厚さを考察する行為に似て無意味なもので、僕達はもっと他の、先に繋がっていくようなことに頭を使っていくべきなのです。 しかし、それが実際に起きてしまえばそうも言ってられません。 つまり現在、僕達の大切なお菓子がその姿をくらましてしまっているのです。もっともこれは世界規模の話ではなく、極小規模な僕の周囲でのみ発生しているだけなのですが。 話を戻すと、僕個人としては通常お菓子が消え去ろうとも特に支障はありません。元々甘いものに頓着はありませんし、それが誰かに食べられてしまったからといって声を荒げたりなんかも僕はしない。 ですが、今だけは非常に困るんです。 何故ならば、今日はハロウィンなのですから。 そして僕は現在、お菓子を何処かへ持ち去ってしまった犯人を一人で追い詰めているという実にカッコイイ場面を迎えています。そして、その犯人とは…………。 「どうやら……もう嘘は通りそうにないみたいだな。どこから俺があやしいと睨んでいたんだ?」 「簡単ですよ。お菓子がなくなってしまっては、僕達のハロウィンは成立しません。なのにあなた一人だけはずっと、早くパーティを始めようと訴えていました。みんながお菓子を探しているのはそのためだというのにね。いえ……むしろあなたは、お菓子がない状態でパーティを始めようとしているかのようだった。目的はわかりませんが、そもそもこの状況を作ったのはあなた自身なのではないかと僕は思ったのですよ」 「さすがだな古泉。そう、俺がお菓子を隠した犯人だ!」 「……あなただけは暴走などしないと思っていましたよ。なぜ、こんなことをしたんです?」 「ふ。決まってるだろ? 今日は待ちに待った楽しいハロウィンじゃないか」 「その答えは理解しかねますが。そう、今日は楽しいハロウィンになるはずだった。なぜ、あなたはお菓子を奪うようなことをしたのかと聞いているんです」 「馬鹿だな古泉。少し考えればわかるじゃないか」 「お菓子がなかったら、おっぱいが揉めるじゃねえか!」 古泉「……って、なんというバタフライ理論を持ち出すんですか! 雰囲気台無しですよ!」 キョン「ヒャッハハー! お前は実に馬鹿だな古泉!」 キョン「これはミステリーでもサスペンスでもない! 元々俺がおっぱいを揉むためのSSなんだよ!」 古泉「だから意味が分かりませんって! なんであなたがおっぱいを揉むんですか!」 キョン「簡単なことさ。トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃいたずらされる日に、いたずらの免罪符となるお菓子がなかったらどうだ? いたずらし放題だろうが!」 キョン「俺にとってのトリックとはたわわに実った乳を揉むこと! もみもみだ! そしてトリックアンドトリック! それすなわちもみもみもみもみだ!」 古泉「ば、馬鹿な! あなたがお菓子を隠してしまったことによってこっちがどれほどの被害を受けるとおもっているんですか!?」 古泉「子供達はお菓子がもらえずに、別にやりたくもないイタズラを不満顔でやらなければならない! そしてイタズラされる側は只でさえ理不尽な要求を受けているのにも関わらず、対して面白くなさそうに部屋を散らかす子供の姿を見ていなければならないのです! 誰も幸せになんかなりませんよ!」 キョン「うるさい! やっぱりお前はわかってないな! 今はこの周囲だけしかお菓子は消えちゃいないが、全世界のお菓子が消失するのも時間の問題だ!」 古泉「なんてことだ……」 国木田「どうしたのキョン! 古泉くんも!?」 長門「…………」 古泉「ああ! 国木田くんと長門さんじゃないですか! いいところに来てくれました!」 古泉「お菓子を隠した犯人が分かりましたよ! それは、なんだか良い感じにトリップしてしまっているあの彼がやったことのようです!」 国木田「なんだって!? どうしてそんなことをしたのさキョン!」 キョン「国木田。お前、おっぱい揉みたいと思わないか?」 国木田「な……なにを言ってるんだい!? そんな……キョンが、キョンが! なんだか面白い状態になってるよ!?」 古泉「そうですよ! それに一つだけ言わせてください……」 古泉「そんなにおっぱいが好きなら、一人でピンクな店に行けばいいじゃない!」 キョン「……古泉。お前は子供だな。まるでわかっちゃいない」 キョン「ハロウィンこそ、えっちぃことをするのに適した日なんだよ!」 古泉「また出た! トンデモ理論! さっきから全然意味分かりませんって!」 キョン「ほう。意味がわからないと。全然? まるっきり? じゃあそんなおバカボンなお前に教えてやろう」 キョン「大人のお店でそういった行為をするのは、お化け屋敷にお化けが出るくらい当たり前なことだ! そんなのはつまらないんだよ!」 キョン「考えてもみるんだ。お前がお化け屋敷に入ったとき、そこにお化けがいてもなんのことはないだろう?」 キョン「だが、そこに現れる血まみれのナース役のお姉さんのおっぱいを揉んでいる人がいたらどうだ? お前は沸き出る興奮を禁じえないだろう? もし、大人のお店にお化けが出たりなんかしてみろ! めちゃめちゃ怖いじゃねえか!」 キョン「つまりだ! お乳様というものは、ハロウィンの無礼講でいたずらっぽく拝ませてもらったほうが絶対に良いものなんだよ!」 キョン「そして男はみんな変態だ。いずれ世界中のお菓子がなくなり俺の思想が世界に広まったとき、そこにはパラダイスがまっているに違いないだろう! ふはは! これぞまさに桃源郷! これを楽園といわずしてなんと言う!?」 古泉「狂ってる……」 古泉「いい加減にしてください! そんなものは狂ってる! あなたは、ただのセクハラを妙な理屈で正当化したいだけじゃないですか!」 国木田「そうだよキョン! キミは間違ってる! 男がみんな変態なんて偏見だ!」 古泉「そうです国木田くん! もっとあのチチグルイに罵声を浴びせるんです! 旧友のあなたの言葉なら僕よりも効果があるはずだ! ほら、早く早く!」 国木田「キョン。男はみんな変態じゃない。それは分かって欲しい。でもね……」 国木田「少なくとも僕は変☆態だよ! だからキミには大いに同調するよ! キミの理論は正しい!」 国木田「キョン万歳! キョン万歳!」 古泉「ぎゃふん!? なにを喜んでるんですか!? 信じていたのに!」 国木田「この世におっぱいに勝るものなし!」 古泉「それがあんたらの組合の標語だというんですか!?」 キョン「ふふふ」 キョン「んん? どうした古泉? もう他に何もいうことはないのか?」 国木田「ほらキョン! あのイケメンに、社会では多数派が正義なんだってことを教えてあげてよ!」 キョン「くっ国木田!?」 古泉「ええい、しかしまだこちらにだって仲間はいます!」 キョン「ほう。一応聞くが、それは誰なんだ?」 古泉「決まっています! 長門さん! いまこそ彼を…………鹿に! 鹿に変えるときです!」 古泉「そして国木田くんを馬に変えて、二人の生涯をしょーもないダジャレコンビとして終えさせるときなのです! ささ、遠慮せずに! ひと思いにちょろろーんとやっちゃってください!」 長門「……それは出来ない」 古泉「な……ナンダッテ-!!」 キョン「はっははー! 当たり前だ古泉!」 キョン「なんせお菓子を消している実行犯は、この長門なんだからな!」 古泉「な……まさかっ! 長門さん……何故っ! なぜなんです!?」 長門「……あたしは楽園で、彼としあわせになるから」 古泉「100パーセント騙されきってるじゃないですか!?」 古泉「正気に戻って下さい! それはマジなほうの天国にいたる道ですよ!」 古泉「しかし……これはまずいことになりました」 古泉「このままでは、みんなのハロウィンが台無しになってしまいます」 古泉「どうすれば……?」 国木田「古泉くん……」 国木田「いっそのこと快楽に飲まれちゃいなよ」 古泉「あんたが一番危ないんじゃないか!?」 古泉「だがしかし……おかげで閃きましたよ。あなたたちに勝つ方法が!」 キョン「ふん、強がりもたいがいにしろ古泉。お前はガチホモだから俺達に逆らうのかも知れんが……」 キョン「って、まさか!? お前世界中のガチホモを一挙に集めて俺達を粉砕するつもりか!? ……やめろ! それだけはやめてくれ!」 古泉「ふふ。あなたのアナルが悲鳴をあげるのもそろそろです……」 古泉「って、だいたい僕はガチホモじゃありませんよ! そんなけったいなネットワークもありません!」 古泉「……あなたはパンドラを招き入れた。それによって、あなたは自ら崩壊を迎えるのです」 キョン「……なんのことだ?」 古泉「災厄の詰まった箱を持たされたゼウスの使者パンドラを招き入れたのは、エピメウスという人物なのです。エピローグという言葉があるように、彼は、物事を後で考える人でした」 古泉「彼は兄であるプロメテウスからゼウスの贈り物には手を出すなといわれていたのですが、始めて見る女性という存在、パンドラの誘惑に勝てずに彼女を家へと招き入れてしまいました」 古泉「そう! エピメテウスは『おっぱいスゲェ』と思ってしまったがゆえにパンドラを迎え入れ、それゆえに世界には災いが舞い降りてしまったのです! あなたがおっぱいを好きだと言うことは、男の罪の象徴だ! それの魅力に取り付かれてしまったあなたを待っているのは、女性による制裁です!」 キョン「……なにを言い出すのかと思ったら、なんの具体性もない詭弁じゃねえか。ところで、俺に制裁を下す女性とやらは何処にいるってんだ?」 古泉「それは長門さんです」 キョン「…………」 キョン「長門が? 俺に? 制裁?」 キョン「はっ! 何を言い出すかと思ったらこの反乳野郎! それこそありえないだろうが!!」 キョン「俺は長門と楽園で暮らすんだ! そうだよな長門!?」 長門「……悪いこととは知っている。でも、彼がそう言ってくれるのなら……」 古泉「長門さん! 今こそ目を覚ますときなのです! あなたは……彼の楽園には居られないんだ!」 長門「……!? 何故!?」 古泉「だって長門さんには……揉むものがないのだから!」 長門「!!!!?????」 古泉「パンドラは確かにこの世に災いをもたらした」 古泉「だけど僕らは、その災いを乗り越えることで世界の表と裏を知り、普通でいることの幸せに気づいたのです」 古泉「だから決しておっぱい自体に罪はない。長門さんのように笑うほど小さくても、あの未来人のようにひくほど大きくても良いんです。僕は好きです」 古泉「だがあなたは長門さんを利用し、『あんたのやっていることはセクハラだ』という僕の正論にまったく耳を貸さなかった。 ……乳に溺れてしまったあなたは、乳の中で静かに眠っているべきなのですよ」 キョン「お……俺はなんてことを……」 キョン「しちまったんだ……ガクッ」 国木田「……ああ! キョンの体が消えていく!? キョンは一体どこにいくの!?」 長門「……彼は、自分のいるべき場所気づいただけ」 古泉「ええ。彼はプリンスレに還っていったのです。本来、アナルでの彼は僕に掘られるだけの存在。ですが、ハロウィンという日が彼を変えてしまった。そう。軽犯罪者という悪魔にね」 古泉「…………」 長門「…………」 国木田「…………」 古泉「……テンションだけで動いていたら、とんでもない結果になってしまいましたね」 国木田「なんだか、僕はハロウィンの恐ろしさを垣間見た気がするよ」 長門「……これはgdgdになる前に終わらせるべき」 古泉「みんなも、ハロウィンだからっていたずらは程々にしようね!」 ちゃんちゃん☆
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前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ ロサイスに対する奇襲作戦は成功し、トリステイン・ゲルマニア連合軍は遂にアルビオン大陸に上陸する。 ダータルネスに艦隊が出現したとの急報を受け、3万の兵を率いて首都ロンディニウムから北上したホーキンス将軍は、 青空へゆっくりと消えていく幻影の艦隊を見て愕然とした。 とは言え、ロサイスからアルビオンの中心部に位置する首都までは300リーグあまり。 細長い大陸を縦断する街道はあるが、途中いくつもの都市や要塞があり、 すぐにアルビオン全土を制圧するわけには行かないだろう。 特にロサイスとロンディニウムの中間点、古都サウスゴータには亜人混じりの革命防衛軍がいる。 水際防衛線があっさり破られた以上、そこで押しとどめねばなるまい。あるいは今度こそ北から回り込んでくるやも知れぬ。 ホーキンスは下唇を噛み締め、ダータルネスの防備を固めさせてからロンディニウムへ戻った。 松下とルイズは3隻の『千年王国艦隊』に戻り、ロサイスへ向かう。その船室で、二人は戦況報告を受けていた。 「ロサイス上陸作戦では、味方の損害は比較的軽微だったようだな。教団兵にもさしたる死傷者はいない。 我々の陽動も功を奏したが、ゲルマニア軍にも新兵器があったというし」 「ふーーーっ、とにかく休みたいわ。『虚無』の魔法は強力で独特だけど、魔力の消耗が激しいのよ。 まだ私は『虚無のドット』ってとこね……」 「ふむ、『虚無』か。伝説によれば、始祖ブリミルには四人の僕がおり、 三人の御子と一人の弟子が指輪と秘宝を授かり、四大王国を作ったと言うが……」 「そうよ。三人の御子はガリア・トリステイン・アルビオンの、弟子はロマリアの王。 アルビオンの王統は、今回の革命騒ぎでほとんど途絶えてしまったし、 ロマリアも王国ではなくなって、教皇聖下が治める都市国家連合になったけど。 ゲルマニアはブリミルの正統を引いていない、成り上がりの集まりよ」 「四人の僕と王国の祖は、違うのだな? 疲れているところ悪いが」 ルイズは怒りもせず、溜め込んだ知識を披露する。実技以外では、彼女は優等生なのだった。 「ちょっと横にならせて。……いろんな説があるけど、まあ、そうでしょうね。 王国の祖が『虚無の担い手』で、四人の僕は『虚無の使い魔』よ。私とあんたみたいにね。 あんたは『神の右手、神の笛』ヴィンダールヴだったわよね? 他には『神の左手、神の盾』ガンダールヴ、これはあらゆる武器の使い手。 『神の頭脳、神の本』ミョズニトニルン、これはあらゆる魔法具を操るそうよ。 もう一人は『名を記すのも憚られる』として、失伝しているらしいわ」 「ふうむ……笛と盾と本、もう一つ、か。四大王国に四大系統、四つの指輪に四つの秘宝。 四人の『虚無の担い手』に四人の『虚無の使い魔』……」 「メシア、ミス・ヴァリエール、もうすぐロサイスに到着します。ご準備を」 シエスタとマルトーが伝令に来た。さて、ロサイスからアルビオン本土をどう攻めるか。 戦いは、これからが本番だ。 一方、その日の深夜。1隻の小さなフリゲート船が、アルビオンから密かにトリステインへ降下していた。 傭兵メンヌヴィルとその部下たち、ベアードやフーケを乗せた、奇襲用のフネだ。 「よーし、どうにか警戒線を抜けたぞ。攻めている側は、案外自分が攻められるとは思わんものなのかな。 ……いや、学院上空には、やはり探知結界が張ってあるな。直接侵入は出来ない。 付近の森林に空き地がある、そこに降ろそう」 操船しているのは、風のスクウェアメイジ・ワルド子爵……に取り付いた、妖怪バックベアードだ。 暴走しかねないメンヌヴィルの目付け役であり、情報収集も担う。 彼の周囲には小さな黒い球体がいくつも漂っていた。それには各々『魔眼』が付き、ベアードの視覚とリンクしている。 到着を前に、メンヌヴィルは檄を飛ばし、部下の士気を高める。 「さあて、野郎ども! 目的はトリステイン魔法学院の制圧と衛兵の始末、 そして貴族のメスガキと教師どもの生け捕りだ! なるべく殺すなよ! 制圧が完了したら、人質以外は殺すなりなんなり、好きにしろ」 うっひひひひひ、と下卑た笑いが起きた。 「……あのさあ、一応レディの目の前で、そういうセリフは自重してくんない?」 「そりゃ悪かったな、『土くれ』のフーケさんよ。まあ、荒くれをまとめるにゃこれが一番さ。 俺は盗みや犯しはしねえ、焼き殺すだけだ。老若男女、平等にな」 ベアードが振り向き、メンヌヴィルに尋ねる。 「好奇心で聞くんだが、なぜそんな物騒な性格になった? 生まれつきか?」 「そうじゃあねえ、この目玉が焼かれちまってからさ……」 到着するまで、ちょっと昔話をしよう。 元々俺はトリステインの下級貴族でね、アカデミーの『実験小隊』ってとこに士官として所属していた。 あんたのいた魔法衛士隊みてえな華やかな仕事じゃねえ、ま、裏方の何でも屋だ。 あれはもう20年も前になる。俺は二十歳になったばかりだった。 トリステインの北の海岸に、ダングルテール(アングル地方)って小さな漁村があった。 アルビオンからの移民が住み着いていた、ちんけで辛気臭ぇ村だ。牡蠣を拾うぐれえしか金目のものはねえ。 で、上の方から、そこで疫病が流行っているから『焼き尽くせ』って命令がきた。 疫病、確かにそうさ! そこは新教徒の巣窟だったんだ。まあ、俺は神様なんぞ信じちゃいねえが。 ……でよ、隊長が俺より少し年上の男だったんだが、こいつが凄い。 酷薄非情で狙った者は皆殺し、火を使うくせに酷く冷てえ、蛇みてえな奴だった。 そのダングルテールを焼き滅ぼしたのも、そいつなのさ。それも一人で! ああ、今でもあの美しい炎の竜巻が、脳裏に浮かぶぜ。夜の海に映って、すげえ綺麗だった。 それにあの、たくさんの人間が焼け焦げる香りと来たら! 何にも代えられない、素晴らしい芳香だった! お蔭で俺は、すっかりイカれちまった。隊長のことが大好きになって、思わず焼き殺したくなった! 咄嗟に杖を向けて、呪文を唱えた。次の瞬間、俺の目玉はこの通りさ。 フーケが、実にいやそうな顔をしている。 「……酷い話だね。よく殺されずに済んだもんだ。まぁ、あんたがイカれてるってのはよーく分かったよ」 「へへへ、こういう仕事は、ちょっとイカれてねえとできないのさ。 それに俺は鼻が利くようになったし、耳も鋭い。ついでに頭もすっきり冴え渡って、 熱の位置や微妙な変化が手にとるように分かるようになったよ。目明きよりよっぽど便利だぜ、この能力は」 「私のような『魔眼』の使い手には、結構いろんなものも見えるんだがな。 まあ、杖を突いて歩くのではなく、振って歩けるのは大したもんだ」 メンヌヴィルが、狼のような口で『にやっ』と笑う。 「ありがとよ。それから俺はトリステインを飛び出して、ゲルマニアで傭兵稼業を始めたよ。 実に天職だね。なにしろゲルマニアやロマリアあたりじゃあしょっちゅう戦争してるし、 あぶれ者やちんけな村を焼き尽くしたって、別に誰も文句を言わねえ。都市を襲えば大金持ちだ。 強いものが自由と富を得て、弱いものはサクサク死んでいく。坊主どもだってそうなんだもんよ」 「なんとも、楽しげだな」 「ああ、実に愉快だ。飯も酒も美味いし、わりと財産も築いた。俺はこうなったのをまったく後悔してねえ。 唯一気に食わねえのは、例の隊長があの後すぐに行方をくらましたと聞いていることだ。 俺はこんなに強く、あいつよりも激しく炎を繰り出せるようになったのに! ああ、あいつを焼きてえ! あいつが焼け焦げて消し炭になる匂いを、胸いっぱいに吸い込みてえ! それだけが、俺の最大の望みであり、悩みなのさ。はは、はははははははははは、ひいはははははは……」 メンヌヴィルは、気が触れたように笑い始めた。いや、彼はとっくに気が触れているのだろう。 ベアードは珍しくもなさそうに見ているが、フーケはぶるっと身震いした。鳥肌が立っている。 こんな妖怪や狂人の同類には、絶対になりたくない。 《彼らはバアルのために高き祭壇を築き、息子たちを火で焼き、『焼き尽くす献げ物(ホロコースト)』として捧げた。 私はこのようなことを命じもせず、定めもせず、心に思い浮かべもしなかった。 …この所をトペテや、ベンヒンノムの谷と呼ばず、『虐殺の谷(ゲヘナ、地獄)』と呼ぶ日が来るであろう》 (旧約聖書『エレミヤ書』第十九章より) 夜明け前、メンヌヴィルたちは魔法学院の裏門に近付いた。 しばらく学院に勤めていたフーケの話から、内部の構造などは知れている。 居眠りしている衛兵を永久に眠らせ、フーケが『錬金』で門扉に穴を空ける。 音も立てず、十数人の小部隊は学院に潜入した。フネは森の中に隠してあり、人質を連れて脱出する手筈だ。 物陰に隠れると、ベアードがふよふよと『魔眼』たちを内部へ飛ばし、衛兵や生徒の居場所を偵察する。 「……ふむ、一般の衛兵が20人ばかり、女子銃士隊が同数。そこそこだな。 衛兵どもは気を抜いているが、銃士は『火の塔』に駐屯して、二交代制で不寝番をしているようだぞ。 教師が数人、オールド・オスマンの姿は見えないな。教師と女子生徒の総数は、情報によれば90人ほど……。 む、あれはタバサ! あの『雪風』のタバサが目を覚ましたぞ!」 フーケがぴくっと反応する。確か、あのルイズやマツシタの仲間だ。 「あのガリア出身のちびメイジか。トライアングル級で風竜も使い魔にしてるし、手強い相手だね。 感づかれたか、どうなのか……他はどうだい? ヤバイ相手は起きているかい?」 「いや待て、今いいところなんだ。よーし、集まれ魔眼ども……」 「何デバガメやってんだい、このロリコン妖怪!!(ばきっ)」 「漫才やってねえで、さっさと情報をよこしな、ミスタ・ベアード」 ともあれ、学院内に大した動きはない。タバサはまたベッドに戻ったようだ。 「……じゃ、内部の構造と衛兵・銃士の配置はこんなところだね。使用人どもは、まあいいか」 「うっし、制圧戦の開始だ。セレスタン、四人連れて銃士のいる『火の塔』を抑えろ。 ジョヴァンニ、てめえらは寮塔だ。俺らは本塔を抑えておくから、メスガキどもをこの食堂に集めて来い!」 突入した分隊は、次々と女子寮の部屋のドアを蹴破り、女子生徒や教師を集める。 寝込みを襲われ、杖も奪われ、皆なすすべなく捕縛された。すすり泣くばかりで抵抗もしない。 衛兵たちは警笛を吹き鳴らし、剣や槍で応戦するが、歴戦の傭兵メイジたちには敵わない。 メンヌヴィル・ベアード・フーケは、占拠した本塔の『アルヴィーズの食堂』で待機している。 続々と人質が集められ、食堂の床に座らされていく。メンヌヴィルが眠たそうに欠伸をした。 「……あーあ、簡単すぎて欠伸が出ちまうぜ。こういうやわな仕事は俺向きじゃあねえな。 もうちょっと歯ごたえのある奴はいねぇのかよ? 俺、まだ誰も焼いてねえし」 「じゃあ、もうちょっと上に行ってみるか。学院長も探し出して、捕らえておかねばな」 「しょうがないね、道案内にあたしも付き合うよ」 人質たちが集められた食堂の壁際を、ちょろっと白いハツカネズミが駆け抜けた。 その頃、傭兵メイジのセレスタンは、『火の塔』を守るアニエスと戦っていた。 戦槌のような『杖』と、平民の磨いた牙である『剣』が交錯する。 「チェッ、いい女なのに勿体ねぇなあ! その牙、引っこ抜いてやらあ」 セレスタンは元ガリアの『北花壇騎士』、その実力はメンヌヴィルに次ぐ。 杖から火球が飛び、アニエスの剣が灼かれて折れ曲がった。 「きさま、火のメイジか! 私はメイジが嫌いだ、特に火を使うやつはな!」 アニエスは曲がった剣をセレスタンに投げつけ、言葉とは裏腹に逃げ出した。 「『騎士』が背中を見せるとは、さすがは平民出身じゃねぇか! その背中、がら空きだぜ!」 セレスタンが『魔法の矢』を放つが、アニエスは身を伏せて避け、振り返り様に拳銃を撃つ! 「私は、『銃士』だ」 「ぶがっ……」 醜い呻き声を立て、セレスタンが額に銃弾を受けて、どさっと斃れる。 彼の率いていた傭兵たちも、銃士隊に追い詰められて討伐された。そこへ、ハツカネズミが走ってくる。 アニエスはそれを見て、にっと笑った。 「よし、この塔は守った。ついて来い、作戦通り残りを掃討する! 耳栓をしろ!」 本塔を昇っていたメンヌヴィル・ベアード・フーケは、急に眠気に襲われた。 塔の上から鳴り響くのは、鐘の音だ。 「チッ、オールド・オスマンのじじい、『眠りの鐘』を使ってやがるね……」 フーケは手早く『錬金』を唱え、耳栓を作った。 「この耳栓を使えば多少は防げる、さっさと学院長室に殴りこもう!」 「狸寝入りでもしていたのか? ミスタ・ベアードの魔眼にも、見抜けないもんはあるようだな」 「やかましい。お前は盲目だからいいが、私の魔眼と目を合わせたら命はないぞ。 オスマンのじじいも睨み殺してやるさ」 三人は耳栓をして、階段を駆け上がる。 だが、鐘の音は『下』……さっきまでいた食堂の周囲からも、響いていた。 三人はバアンと学院長室に殴りこむが、誰もいない。 「隠れていても分かるぜ、そこだァ!」 メンヌヴィルが天井を火球で貫くと、オールド・オスマンがふわりと降りてきた。手には『眠りの鐘』がある。 オスマンが鐘を床に投げたので、三人はひとまず耳栓を外した。 「久し振りじゃの、三人とも。まだ生きておったか」 「そいつぁこっちのセリフだぜ。二十年以上前からじじいのくせに、あんた何百年生きてんだ? まあ、あんたなら相手に不足はねえ。確か『土のスクウェア』級だよな?」 「好戦的な男じゃのう。そこのフーケとワルドの実力も知っておる、生半なメイジでは相手にならんな。 では、わしがおぬしら三人をまとめて相手にしてやる。かかってこい!」 オスマンが杖で床を叩くと、床は溶岩のように煮えたぎって激しく渦を巻き、三人を窓の外へ吹き飛ばす。 三人は『フライ』で宙に留まるが、オスマンのいる部屋には、地面や他の塔から砂や石材が飛んできて集まる。 ゴゴゴゴゴゴと物凄い地響きがして、土砂は本塔の上半分を包み、獅子の体を備えた巨大な石の獣の姿となる! その顔は、内部にいるオールド・オスマンそっくりだ!! 「「うわっははははは、これぞ我がゴーレム『スフィンクス』じゃ!! スクウェアメイジを甘く見るでないぞ!! そおおれ、メガトンパンチを食らえい!!」」 スフィンクスの顔がオスマンの声で高笑いし、塔のように巨大な腕が振り回される。 三人は青褪める。まさか、いきなりここまでやるとは! 「てっ、てめえじじい、状況が分かってんのか? 俺らは学院の貴族の子女を人質にしてるんだぞ? 殺さねえまでも、攻撃をやめねえとそいつらの耳や鼻や指を……」 「「分かっちょるわい、おぬしらの奇襲なんぞ全部まるっとお見通しよ。わしの使い魔モートソグニルくんがのう。 それに食堂に集まった傭兵どもは、隠れさせておいたミセス・シュヴルーズの『眠りの鐘』でとっくに夢の中じゃ。 今頃は耳栓をした銃士隊に捕縛されているじゃろう。戦いは情報網と物量じゃよ諸君、ひょひょひょ」」 オールド・オスマンとアニエスたちは、学院のテロ対策をしっかりしていたようだ。 モートソグニルとネズミたちが学院内外を警戒し、非常時には合図を送って連絡する。 そして敵が一箇所に集まったところを、二つの『眠りの鐘』で人質ごと一網打尽。さらには、これだ。 「じょ、冗談じゃないよ! あのセクハラじじい、こんなバケモノだったなんて!!」 「ええいフーケ、気休めかも知れんが、お前もゴーレムを出せ! 私は『魔眼』の姿に戻る!」 「しゃあねえ、俺は食堂に戻るぜ。……いや、『火の塔』から銃士が出て来たな、あれから片付けるか」 バックベアードが黒煙とともに現れ、フーケのゴーレムがスフィンクスのパンチを受け止める。 スフィンクスは目から怪光線を放ち、ウオーーーッと咆哮する。妖怪・怪獣大決戦の始まりだ!! その頃、『火の塔』の傍らにあるコルベールの研究小屋では。 「これは『神秘幻想数学』、これは古代サハラの数学書、アリストテレスなる哲学者の著書、 『光輝(ゾハル)の書』に『東方魔法大全』! ああ、一生かかっても読み切れない! これを解読できれば、ハルケギニアはまさに革命的変化を……!!」 コルベールは感涙に咽びながら、『薔薇十字団』から送られてきた注釈付きの魔法科学書に没頭している。 そこへ、二人の生徒が駆けこんできた。外からズズズズズという地響きもする。 「コルベール先生! 未だにこんなところで何をしているんですか、大変なんですよ!」 「おお、ミス・ツェルプストーにミス・タバサ、こんな深夜に何事かね」 「敵襲。アルビオンの傭兵団が学院を急襲し、生徒及び教職員約90名を人質に取った。 我々は脱出して無事。反撃の体勢を整えるため、あなたを捜していた」 「な、なんだって!? ……時に二人とも、アレは何かね?」 「は?」 二人がコルベールの指差す方を振り返ると、バックベアードとゴーレムが巨大なスフィンクスと戦っている!! 「きゃーーーーーーーっ!!? な、何よアレ!?」 「あの黒い眼は、以前ニューカッスル上空に出現したものと同じ。ゴーレムはフーケのものと同じデザイン。 ならばあのスフィンクスは、恐らくオールド・オスマンのもの」 「そうだ。我々銃士隊と学院長が連携し、テロリストの大半は作戦通り捕縛した。 残るはあのバケモノどもと……こいつだ」 いつの間にか、アニエスも近くに来ていた。体にいくつか火傷を負っている。 そして向こうから歩いて来る大柄な男に、銃を向けた。キュルケとタバサも、杖を構える。 「おやおや、熱と硝煙の匂いを頼りに追ってきてみれば、かすかに懐かしい香りがするなァ。 さっきの女銃士が一人、火メイジと風メイジの女、それにもう一人。おい、おまえの名前は何だ?」 男を見たコルベールの表情が、さっと変わった。温和で臆病な普段からは想像できない、冷たい顔だ。 「……久し振りだな、『白炎』のメンヌヴィル」 その声音を聞いて、メンヌヴィルはあっと驚くと、両手を広げて心底嬉しそうに笑った。 「おお! おおお!! お前は『炎蛇』! 『炎蛇』のコルベールではないか!! 覚えていてくれたのか! 久し振りだな隊長殿、20年振りだ! あのダングルテール以来だ!!」 「!!」 アニエスは、対峙する二人を物凄い表情で睨み付けた……。 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
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完全に無関係の荒らしなのでこのページ消したいんですが管理者もしくはメンバー権限ある方いませんか?
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続き 楽しみにしてます -- 名無しさん (2008-08-09 20 28 11) うめぇ。原作よりこっちのセラスのが好み -- 名無しさん (2008-08-09 21 18 57) 遂にリップ、セラス、ルイズの揃い踏みですか、絵師様に感謝 -- 名無しさん (2008-08-10 00 29 38) 遂にリップも入った絵が投稿、ありがとうございます! -- スナゼロ作者 (2008-08-15 23 54 11) うまぁあああーーーい!レベル高ぇwww -- 名無しさん (2008-08-16 00 43 33) リップ!リップ! -- 名無しさん (2008-08-16 14 53 38) セラスなんかかっけぇ!スゲェ!感激過ぎて血吐きそうwww -- タカラ (2008-08-18 13 51 56) この絵めちゃくちゃうまい -- 名無しさん (2008-08-20 15 26 59) 凛々しい三人娘に感動した。 -- 名無しさん (2008-08-27 01 26 17) R-18な関係の二人 -- 名無しさん (2008-08-27 02 16 20) リップとセラスをよぶssってあったの? -- 名無しさん (2009-03-29 14 18 05) スナイピング・ゼロだよ。ここに無かったら「HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました」にある。 -- 名無しさん (2009-03-29 16 08 27) これは良い三人娘 -- 名無しさん (2009-04-27 23 10 21) 表情がいいね -- 名無しさん (2010-02-08 11 15 13) 名前 コメント
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スレ233より 47 名前:1[] 投稿日:2011/02/04(金) 10 51 01 0 離婚することにして残りの荷物をひきあげてきました。 娘の学校の先生にも話をしてきました。 役所の相談窓口の人にも親切にしてもらえました。 ことの起こりは娘の学校の担任の先生からの電話でした。 娘が悩んでる、と。 この頃娘の様子がおかしかったので、できるだけ話を聞こうとしたりしてました。 でも娘はなんでもないと言うばかりで、夫ともどうしたものかと話し合ってました。 内容は夫側の親戚からのセクハラでした。 近所にすむ親戚はセクハラが酷く、ターゲットはもっぱら私でした。 抗議したり夫に言ったりして、夫がそれとなく注意してくれてたはずでした。 この頃セクハラが無くなったと思っていたら、ターゲットが娘になっていました。 そうならないように、娘一人で会うことは絶対させず、私か夫がいないところでは接触がないはずでした。 46 名前:名無しさん@HOME[] 投稿日:2011/02/04(金) 10 50 12 0 あまりにセクハラが酷いので、その親戚とはもう絶縁という手前でセクハラが無くなったので、 向こうもそれなりに反省したのだとばかり思っていましたが、そうではなくターゲット変更しただけでした。 うちの家は出入り禁止にしてましたし、娘がその親戚の家に一人で行くことはまず無かったのですが、メールや電話で娘にセクハラしてました。 着信拒否にすれば良いことだと思いますが、中学生の娘にとっては親戚を着信拒否していいものかどうか迷っていたようです。 私が今までセクハラで、嫌な思いをしてきてるのを知ってたので言えず、父親に相談したようです。 ところが父親は、そのくらいいいじゃないかという対応をして、ますます娘は悩んだようです。 母親には話せなくて父親にはお前が大げさと言われて友達にそんな親戚がいると知られたくなくて、本当に辛かったと思います。 夫が敵だと思うようになったのは、娘のアドレスをその親戚に教えたのが夫だったということと、その親戚から夫が内緒でお金を借りていたことです。 それと私の下着が頻繁に無くなっていたので、そのセクハラが盗んだのではないかということで警察に届けようとしましたら夫が、自分が持ち出したと白状しました。 抽斗から私の下着を盗んでその男に、娘の下着だと偽って渡していました。 「娘を守るためだからお前も下着くらい我慢しろよ。下着と娘どっちが大事かわかるだろ」と言われもうダメだと思いました。 言葉でセクハラして下着を要求して、大げさかもしれませんが次は下着の中身も要求するようになるのではという恐怖がありました。 49 名前:3[] 投稿日:2011/02/04(金) 10 51 45 0 私にこれ以上セクハラをすれば、私が逆上して報復に出ると分かったから、代わりに娘を差し出した夫を許せそうにありません。 セクハラがエスカレートしたその男に、私がマグライトで反撃して暴れ、シャンデリアなど壊したりしました。 口でもかなり反撃してきましたが、実力行使に出たり次は警察と告げたのは少し前の出来事でした。 今まで絶縁にならなかったのは、夫が一生懸命セクハラをやめさせようとしてくれてるから、夫の面目を潰したくない一心でした。 結果、夫はセクハラを止めるようには言ってなく、まあまあこれ以上はやりすぎないようにねとか、シャレにならないところはダメだよとか言ってただけでした。 一応俺の嫁さんだから手加減は忘れないで下さいよ~、ちょっとあいつこの頃神経質ですからねとか何を考えてそんなメールをしてたのかを問い詰めましたが、冷静に中立を守っただけと寝言を言ってきました。 娘をターゲットにするのを提案したのも夫でした。 本人は絶対そんなことはしてないと言い張りますが、ある程度年食った女は図太いし図々しいからもっと若い娘の方がゴチャゴチャ言わないですむよみたいなメールをしてるので、娘へのセクハラを焚きつけたも同然です。 しかも、子供相手だって向こうも分かってるからそれほど酷いことしてないはずだよとあまりにも呑気すぎます。 セクハラの程度の問題ではないと何度言っても分からないのはバカすぎます。 夫の両親は、トメの方はセクハラは酷いと言ってますが「息子(夫)も●君も根は良い子なのよ」と言うし、ウトは「最近はなんでもセクハラと言えば男に勝てると思ってるだろう」とどうしようもありません。 唯一守ってくれてると信じてた夫がそうでなかった以上、なりふり構わず私が戦わなければなりません。 受験間近のこんな時期にするのはどうかとも思いますが、1日でも1時間でももうあの近くに娘を置くことはできません。 決意表明です。 50 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 10 53 14 0 すみません。 sage忘れた上に、1番目と2番目を間違えて貼ってしまいました。 47→46→49の順です。(編集注:修正しました) 54 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 00 32 0 「セクハラ」というと軽く聞こえちゃうけど、「性的虐待」でしょこれ。 一歩間違えば「近親相姦」だし。 55 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 02 41 0 これ普通に虐待で離婚できるだろ。弁護士と児童相談所の出番だな。 60 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 17 01 0 夫と「親戚」のやり取りメールが文中に出てきてるけど、そういう証拠はきっちり 保存できてますか? 1日でも1時間でもつーか、1秒でも無理だわ。 受験間近だからこそ、今動くべき。 頑張って戦ってください。 その後いかがですか?53より 399 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/02/26(土) 15 01 41.05 0 以前エネミースレで書き込んだ者です。 夫側の親戚から娘と私がセクハラを受けていたと書き込みました。 周囲の協力もあり今は無事に家を離れました。 夫からは「何か誤解があるはず」という連絡が来ますが、 今はそっとしておいてほしいと返事しています。 娘の携帯には相変わらずセクハラメールが来るので 携帯は私が預かり娘には見せていません。 大変だろうからと生活費を余分に送ってきてくれましたが そんな気遣いが出来る半面 なぜあそこまで無神経になれるのでしょうか。 (出産の時に)複数に(医師看護師)大股開きしといて何今さら純情ぶるんだかと言われ 血が逆流しそうでした。 報告と言うよりも愚痴になってしまいましたが、 もう再構築が無理だと思うと同時に 離婚になったとしても なんとか父親として女の子である娘への思いやりを取り戻して欲しいと思います。 404 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/02/26(土) 16 05 08.83 0 >(出産の時に)複数に(医師看護師)大股開きしといて何今さら純情ぶるんだか 命がけの出産をそんな風にしか捉えられない奴に 娘への思いやりを期待しても無駄だよ。 405 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/02/26(土) 16 11 26.96 0 気遣いというより、親戚への生け贄が逃げると 自分が親戚から責められるからと 餌をあげて懐柔しようとしているだけと感じる。 娘さんを守れるのは399さんだけだから その旦那の真意を見て、離婚後も惑わされないようにね。
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前ページ次ページゼロの使い魔人 『土くれ』のフーケ……。 今やトリステインに住まう貴族達の間では、畏怖と憤激を込めてその名を囁 かれるメイジの盗賊である。 正体は元より、性別も経歴も不明。 その手口としては、強力な『錬金』の魔術を駆使し、防犯対策として予め施さ れた『固定化』の魔術……経年劣化ないし酸化や腐敗による物体の破損を防止 する特性を持つ……をも無力化せしめ、それが掛かった壁や扉を只の土へと還 し侵入するという物であり、其れゆえの二つ名である。 そして一度、目的の場へと侵入すれば各々の貴族等が所蔵する至宝や逸品の悉く を掠め取り、盗み出すのみならず、時には下手な城郭程の高さを持つ巨大ゴーレム を伴い目的の物を強奪し、駈け付けた治安組織の追っ手をも軽くあしらい、蹴散ら してのけるという傍若無人ぶりを阻む者は無く、被害者の数と被害総額は日々、 右肩上がりを続けていく……。といった有様である。 そして……今、フーケが新たに獲物と見なした物とは……。 国内外の貴族の子弟が通う、名門と名高いトリステイン魔法学院が収蔵し、珍品 名品問わず存在する幾多のマジックアイテムの中でも一際変わった品と言わ れる、『破壊の杖』であった。 名と出自を騙り、まんまと内部に潜り込む事に成功した後。表向きは忠実かつ 優秀な秘書・職員として学院に溶け込み。 自身の羞恥心と忍耐を鑢で削り取らんばかりに繰り返される、直接の上司からの セクハラにも堪えつつ学院内の教員等に取り入り、学院の建物の間取りや警備の 配置や数等を調べ上げ、機を見ては仕事に託けて目的のモノが保管されている 宝物庫にも探りを入れる。 ……これまでの自分の常套手段を全く寄せ付けない、堅固な守りを持つ宝物庫 に手をつかねていたが、つい先日、知己である教員の一人が洩らした『構造上 の欠点』を知りえた事が状況を変えた。 ――即ち。外部からの魔法による干渉はまず不可能と云えるが、しかしながら 大質量物による直接的な衝撃・負荷が加わった場合の対策までは考慮されてはいない……。 ――との情報を聞き出すや、遂にフーケは人畜無害を装って幾重にも被ってい た毛皮を剥ぎ取り、行動に移った。 宵闇に紛れ、宝物庫が置かれている学院の本塔へと忍び寄ると、迅速に『仕事』 に取り掛かる筈が、二つの想定外の事態に出くわす事になった。 ……一つは『直接的な物理的衝撃には弱い』とはいえど、壁自体の厚みが相当 なモノであり、自慢のゴーレムの力を持ってしても突破出来ない事。 今一つは……、複数の人間が本塔のすぐ下にある中庭に現れた事だが、それに は若干の事情が存在した。 ――当人らにとっては真剣だろうが、第三者から見れば真に無意味かつ傍迷惑。 幼稚さも此処に極まれリないざこざに因る物とはいえ。 時間は少し遡る……。 ゴタゴタの大本は、学院生寮の一室。 街での買い物から帰ったその晩。ルイズの部屋を招かれざる客人が訪れ、そこ から騒ぎは一気に沸点に達した。 部屋で睨み合うのはルイズとキュルケの二人。キュルケのオマケといえるタバ サは我関せずとばかりにベッドに腰掛け本を広げており。龍麻は龍麻で、部屋 の隅にて結跏趺坐を組み、静かに 氣 を錬っていた。 「どういう意味? ツェルプストー」 精一杯胸を張り、両手を腰に当てた姿勢で不倶戴天の敵に向かい、ルイズは先 制のジャブを繰り出す。 「だから、ヒユウに相応しい剣を手に入れたから、そっち使いなさいって言って るのよ」放たれたソレを柳に風と受け流したキュルケは、艶然たる笑みを自身の 情熱の対象へと向ける。 彼女が言うところの相応しい剣とやらは、言うまでも無く件の武器屋にあった、 ゲルマニア謹製の派手な大剣である。 「おあいにくさま。使い魔の使う道具なら間に合ってるの。ねえ、ヒユウ」 水を向けられた龍麻は、姿勢を保ったまま目を開けると、二人を見やる。 「そうだな。アンタから物を貰うような理由はないし、それを欲しいとも思わ ない。悪いが、そのまま持って帰ってくれ」 声や表情にも余分な感情を交えず、さらっと断る。 「だ、そうよツェルプストー。使う剣はもう、こいつにはあるんだし。例え麦 の一粒だってあんたからは恵んで貰いたくないわ!」 まず、壁に立て掛けられている剣を指差すと、ついでにこれが言いたかったと ばかりに大声を張り上げる。 「あら。そんなサビサビのボロボロの剣なんかより、使うならこの綺麗な方が いいに決まってるじゃない。……ねえ、いくらご主人様といっても、そこまで 義理立てしなくてもいいのよ?これは、あなたの為に用立てたのだから」 やはり剣を見たキュルケだが、鼻先で笑うと熱っぽい流し目を向けつつ、甘え かかる様な口調で龍麻に語りかける。 「わかるでしょ? 剣も女も、生まれはゲルマニアに限るわよ? トリステイ ンの女ときたら、このルイズみたいに嫉妬深くって、気が短くて、ヒステリー で、プライドばかり高くって、どうしようも無いんだから」 ……その一言毎に湯気の如く吹き上がる怒気、突き刺さる毒針の様な視線の 元は言うまでも無い、が。 龍麻をうんざりさせるのは、そういった負の感情の矛先はキュルケだけでは無く、 自分の方にも向けられているっぽいという点にある。 話がややこしくなる前に今一度、龍麻が断り文句を口にしようとしたその時。 「へ、へんだ。あんたなんかただの色ボケじゃない! なあに? ゲルマニア で男を漁り過ぎて相手にされなくなったから、トリステインまで留学してきた んでしょ?」 「―――言ってくれるわね。ヴァリエール……」 澄ましたような表情とは裏腹にルイズの声は震えており、相当アタマに来て いるようだが、声の形をした悪意という名の『爆弾』をぶつけられた、キュ ルケの方とて負けず劣らずである。 ……実際、その目元や口元からは笑みは消え失せ、その身には抑え切れない 憤怒の気配を漂わせている。 「なによ。ホントの事でしょう?」 尚も挑発気味に言い放つ、ルイズの声が交戦開始の合図となる……筈だった が、それより速く動いたのは傍観者その一こと、タバサであった。 本に目を落としたまま、手にした杖を振り魔術を発動させる。 俄かに捲き起こった旋風が、睨み合う両者の手から杖を弾き飛ばした。 「室内」 抑揚の無い声で短く告げる……が、それは仲裁等ではなく、単に部屋の中で 戦り合うのは危ないという事を指摘したに留まる。 実際、一旦火の付いた導火線はなかなか消せないモノであり。 「そろそろ、決着を付けませんこと?」 「そうね」 「あたしね、あんたの事、大っ嫌いなのよ」 「わたしもよ」 「気が合うわね」 交互に口を開く度、室温が急低下して行く様な感覚。 剣呑極まる雰囲気の中で、殺気に昇華される寸前の怒気を声に乗せ、同時に 二人は吠えた。 「「決闘よ!!」」 「阿呆らし」 一部始終を目の当たりにし、昨晩の痴話喧嘩にも劣る余りのしょうもなさに 呆れる気すら失せたとはいえ、龍麻はそう呟かずには居られなかった。 しかし、今にも取っ組み合いを始めそうな程にいきり立つ二人が聞いてる訳も無く。 「もちろん、魔法でよ?」 キュルケの一言に、ルイズは一瞬たじろぐも、即座に言い返す。 「ええ。望む所よ」 「いいの? ゼロのルイズ。魔法で決闘で、大丈夫なの?」 端から相手を呑んで掛かった様な口調でキュルケが言い放つ。 その、あからさまな挑発を前にルイズは反射的に頷くも、内心歯噛みし、怯み を自覚せずにはおれなかった。 ――相手は若年ながら、既にトライアングル級。片や自分は、何をしてもモノ にならず、ただ爆発させるだけのドットともいえない『ゼロ』。 実力差は――歴然。 自信なぞ、有る訳も無い。 ――それでも、やらねばならない。 積年の因縁を持つ、ツェルプストー家の人間に挑まれたというのに、ヴァリ エールの血に繋がる自分が何もせずに引き下がり、負けを認めるなぞ出来よ う筈が無い。 ――舐められてなるものか。 ――自分は貴族だ。 ――受け継ぐべき名と、伝えられし勲(いさおし)を汚しはしない。 ――『ゼロ』がなんだ! きっと勝ってみせる……! その思い込みと衝動“だけ”を糧に、只々、感情の赴くままに腹の底から声 を搾り出す。 「もちろんよ! 誰が負けるもんですか!!」 ――そして。龍麻は、いつもの洗濯仕事をする水汲み場にいた。 『決闘』に向かう面々には同行しないと言うなり、ルイズは『勝手な事するな』 と難詰してきたが、ここで制止した所で両者共に聞き入れる筈も無く、止める べき理由も無い。 大体、決闘とやらに踏み切る程に話を拗らせたのは、キュルケの体面に泥を塗 ったルイズの言葉が原因であり、非は完全にルイズの側にあると、龍麻は受け止 めている。 そもそも他人を貶め、嘲ったりすればそのしっぺ返しは、確実に倍になって返って くるのが世の常な訳で。 あれだけの言葉を口にしたからには、負けた後笑われようが、何らかの条件を突きつ けられたとしても仕方ない。発言に伴う責任等を当人が背負うのは当然の理である。 耳をつんざく罵声を背にさっさとその場から立ち去ると、それからはもう月明かり を頼りに、デルフリンガーにこびりついた汚れを落とすのに専心していた。 鞘から抜き出すや、お喋りを始める自称相棒に釘を刺し黙らせるが、それと同時に 左手に有る例の紋章が輝きだす。 ――持ち込んだ武器の手入れをする際に決まって起こる状況であり、そうなる事で 自身が駆使する『氣』とは異なる、別種の 力 が満ち潮の如く瞬時に躯の裡を 満たし、渦巻くのを実感しつつ、思考を巡らす。 (やっぱり、か……。この現象は、単に『使い魔のルーン』なんてモノで説明がつく ような代物じゃありえないぞ。一体、こいつの正体は何なんだ……?) 脳裏に浮かぶ疑問と違和感を改めて自覚しつつ、ひたすら手だけを動かす事に努めていた所へ。 彼方にて轟く、遠雷を思わせる重々しさを含んだ低音が大気を震わせ、伝播する。 「やっぱりやったか……」 一旦手を止め、立ち上がって目を凝らせば、二色の月を背後にタバサが騎乗る 風竜が上空を遊弋する姿と、そして学院の中央に聳え立つ主塔の中程から、 うっすらと煙が上がるのが認められた。 「さて、続き続き」 口内で呟き、踵を返そうとしたその時。龍麻は今の自分が正気か否か、真剣に 疑いたくなる様なモノを目の当たりにした。 「………………。今日は、四月一日じゃないよな?」 ――それは僥倖と言う他、なかっただろう。 近寄って来る複数の人の気配を感じ、素早く身を隠し息を殺して状況を見守る フーケの前に現れたのは、学院(ここ)の女子生徒である。 此処に来る迄に何やらいざこざが有ったのか、睨み合いと言い争いを繰り返し、 果ては学院の塔から吊り下げた小さい板切れをどっちが撃ち落すか等と言う、 子供じみた競争を始めると来た。 それはいい。いや、良くは無いが兎に角、さっさと終らせて何処へなりと行け ばいい……と、近くの植え込みの陰から舌打ちしたくなる気分を堪えながら、 フーケはじっと様子を伺っていた。 ……そうこうする内に邪魔者達が始めた『勝負』だが、そこで起こった事は フーケにとっても全くの予想外だった。 唱えていた魔法は、詠唱の内容からして『火』の魔法の基本たる、『ファイ ヤーボール』である。 確かに呪文は完成し、発動した。 だが……、出る筈の火弾は現れず、何故か目標にした木片の後ろの壁がいき おい破裂し、派手な爆音と煙に破片までも飛び散らせる。 しかもそれで、自分の『錬金』すら受け付けなかったあの壁に、深々と亀裂 を入れたのだ。 その、始めて見た魔法の効果に驚き怪しみはしたフーケであったが、予定外 に次ぐ予定外の出来事に便乗すべく、素早く思考を切り替える。 杖を取り出し、意識を集中。 早口で紡ぐ呪の一言一言に己が意識と気力を注ぎ込み、『力有る言葉』と して組み上げ、形とする。 長い詠唱を済ませ、杖を振る。 其れにより、此れまでの自分の『仕事』を成功させてきた最大の“切り札” が急速にその形を現す。 深く被ったフードの下で、フーケはその整った面立ちにこの仕事が成功した 将来(さき)にもたらされる利潤と、地団駄を踏む貴族共の姿を想像し、 我知らず笑みを浮かべていた。 「残念ね! ヴァリエール!」 宵闇の宙にそんな、甲高い笑い声が響き渡る。 勝負自体はあっさりと、当初の予想を覆す事無く終った。 先に的を狙ったルイズの魔法は、あらぬ方を爆発させたに止まり、続けて キュルケの放った火球は狙い過たず、的である板切れを焼き落とす。 落胆も露に項垂れ、地面に座り込む敗者と満面の笑みでそっくり返る勝者。 なにかと気に喰わない相手をやり込めて、勝利の余韻に浸るキュルケであっ たが、それはそう長く続かなかった。 ふっ、と不意に自分の周りが何かの影に入ったかの様に暗くなる。 「……?」 不審に思い、振り向いた瞬間。それまでの余裕の笑いは消し飛び、恥も外聞 も無い悲鳴が飛び出す。 ……まあ、全高が軽く数十メイルを超えるサイズの巨大ゴーレムが突如、眼前 に現れ自分の方へと向かって来たなら驚き逃げたくなるのが人の常であり、 此れをもって臆病だなんだと他人が嗤うのは、公平を欠くと言う物だろう。 慌てに慌て、泡を食って逃げ出すキュルケ。 驚いたのはその辺で凹んでいたルイズも同じだが、こっちは逃げ出すので はなく突然の事にただ唖然とし、巨大ゴーレムが塔の外壁を殴り付けるのを 眺めていた所へ。 「おい! 何処に居るんだ!? 返事しろ!」 闇の向こうからの声に振り返れば、身勝手な不忠者の遅刻野郎が今更の様に 走ってくるではないか。 「あ、あんたねぇ……! 今までどこで遊んでたのよ、このグズ! ごくつぶし!」 驚きから立ち直るや開口一番、悪罵が飛ぶがそんな瑣末事に逐一反応しない。 「なんと言おうがいいけどな、それより何なんだ奴は? 何だってあんなデ カブツがこんな所に現れる?」 「わたしにもわかんないわよ! ……けど、あんな大きい土ゴーレムを操れる なんて、トライアングル級のメイジに間違いないわ」 「ンな事まで出来るのか……! ――全く、インチキってレベルじゃないぞ」 ……中層ビルに相当するサイズの物体が自在に移動するだけでも驚異だが、 あまつさえそれが人型を取った上に、人間とそう変わらない動きを行うのである。 等身大を超える、二足歩行ロボットの成立と実用化を困難たらしめている法則 の存在を、真っ向から無視している。 ちょうどそこで一際デカイ音が響き、ゴーレムの拳によって壁の一部が砕かれ、 穴が開くのが見えた。 「なにが狙いか知らんが、とりあえず当番の警備兵なり、教師に連絡しないと 拙いだろ」 取りあえず、妥当な方策を龍麻が口にした時。 「何いってんのよ! わたしたちの学院に出た狼藉者よ、ここの生徒たるわた したちが取り押さえなくて誰がやるのよ!!」 予想通りといえば予想通りのルイズの声に、龍麻は勘弁してくれといいたげな 顔をする。 「……あのな。それをする為に此処の教師や衛兵が給料貰って仕事してんだろ。 そいつ等にまかせときゃいい。ド素人が先走って横から口や手を出しても、ロク な事になら……ん?」 龍麻が言葉を途中で切ったのは、ゴーレムの肩辺りに突っ立っていた黒のロー ブで全身を覆った不審者が、腕を伝って先程開いた穴へと滑り込むのを見て取 ったからだ。 「って、誰か中に潜りこみやがっ……」 その語尾を掻き消すかのように、鈍い爆発音が重なった。 腕をめりこませたままのゴーレムの肩口が煙に包まれ、幾らかの土が剥離している。 何者の仕業かは考えるまでも無く、 「なにグズグズしてるのよ! ほら、あんたもやんなさい! ご主人様に従う のが使い魔なんでしょ!!」 奴に向かい、杖を突きつけているルイズが吠える。 「ええぃ畜生! “また”このパターンかっ!!」 あくまで本人は無関係であり、ましてや事態の原因でも無く、何より責任を求 められる筋でもないのに周りの人間が勝手にやらかした事の後始末をやらざる を得ないという、自分が持っているっぽい巻き込まれ体質を心底怨みつつ、 龍麻も精神を戦闘態勢に切り替える。 ――ルイズの爆発魔術と龍麻が放つ氣弾は、ゴーレムに命中し続けるも一撃で 擱坐・行動不能とするには至らず、建物内から戻ってきた不審者を再度肩に 乗せたゴーレムが動き出すと、どうにも止めようが無い。 「畜生め……。的がデカいのもあるが、何よりも火力が足りん。手詰まりだ」 十発近い『掌底・発剄』を撃ち付けるも、取り立てて目に見えた効果は現れず、 部屋に置きっぱなしの道具類があればと、思わず龍麻は舌打ちをする。 「この、逃がすもんですか……! タバサ! 降りてきてちょうだい!」 二人に遅れて、風竜に乗ったまま上空から間欠的に『風』の魔術を放ってい たタバサに向かい、ルイズが力一杯叫ぶ。 声が届いたか、けたたましい羽音を伴い風竜が着地すると、タバサが何用 なの? と言いたげな視線を向けてくる。 「お願い! わたしたちを乗せて、あいつを追いかけてほしいのよ!」 「――まあ、こうも言ってるし、一方的な頼みを押し付けるようで本当に 申し訳ないんだが、この場は協力して貰えないだろうか?」 ルイズの横で、龍麻も軽くだが頭を下げて頼み込む。 暫し、タバサは二人の顔を交互に見やった後、 「乗って」 そう促され、礼もそこそこに風竜に乗り込み、その客となる二人。 既に学院の敷地を出て、無人の野を行くゴーレムを空から追走する。 「そういや……。奴が潜り込んだ場所には、何があるっていうんだ?」 眼下にゴーレムを見下ろしつつ、龍麻が独り言に近い呟きを洩らすのに、 宝物庫と、短くタバサが応じる。 「あの黒ローブのメイジ、壁の穴から出て来た時に、何かを握ってたみたい だけど……」 「強盗か。にしてもえらく荒っぽいやり口だな。よっぽど自信があるのか、 よっぽど馬鹿なのか、よっぽど相手を舐めてるのか……」 思い出したようにルイズが言うのを聞き龍麻がごちていた所、我が物顔で 闊歩していたゴーレムが、不意にその動きを止めた。 辺りは一面、見晴らしの良いただっ広い平原である。 「止まったか……。しかし、こんな何もない場所で観念した訳でもあるま いし、何故だ?」 意図を図れず、龍麻はつい疑問を口にし、そのまま上空から様子を窺う一行 の目の前でゴーレムの全身が俄かに震えるや、見る間に人型の形を失い、四肢 は元より全体が完全に瓦解し、只の土砂の山と化すまでほんの十何秒である。 ――それから暫く、一行は地上に降り立つと元ゴーレムだった特大土まんじゅ う並びに、それを操っていただろうメイジの捜索を行うもなんら手掛かりらしき ものは得られずに終わり。 更にそこから徒労感だけを手土産に、学院へと帰還した三人が見たのは事が済 んでから騒ぎ出した学院関係者ご一同の姿と、被害にあった宝物庫に残された 『置き土産』から襲撃者の正体は例の『土くれ』であり、保管されていた秘宝 の一つである『破壊の杖』が奪われたという事を知るに至る。 前ページ次ページゼロの使い魔人
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夏の鍾乳洞 この前、奥多摩あたりの鍾乳洞にいって来ました。 暑いので少しでも涼しいところへと思って。 車で3時間くらいで着きました。 行くまでの道が細くって運転手(夫)は大変そうでした。 入場料を払ってから入口に立つと、寒いくらいの温度です。 これは上着が必要だったかもと思ったのですが、とんでもなかったです。 そこの鍾乳洞思っていたよりとっても長くって、かなり急な階段を上がったり下がったりが多く途中でもう出たいと思ってしまったくらいでした。 外に出たときはもう体も熱くなっていて、折角涼みにきたのに間違いだったと思いました。 鍾乳洞って冬行くといいかもなんて思ってしまった日でした。 http //www.fashionbagsworld.com/