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父さま、母さま、姉さま、ちい姉さま。 先立つ不幸をお許しください。私ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは命を絶ちます。これは遺書です。 私に何があったのか、とお聞きになるでしょうが、御理解頂けるか自信がありません。 或いは私はこうして何かに書き残す事で、いつか誰かが、これを読んだとき、私の 不明、塗り潰されている 想いを理解してくれる、そんな期待もあるのでしょう。 だから私はこの身に何が起こったのか、私がそれに何を思ったのか。 私を蝕むものに怯えながらも、これを書かずに要られないのです。 筆を取って手紙をしたためている今ですら、何から話してよいのか分かりません。 切欠は、思えば生まれた時からだったのでしょうが、要領を得ないでしょう。 使い魔を召還したのです。そこが私の区切りとして、また歴史の始まりとしても良いでしょう。 奇妙な男です。とても奇妙な、大柄の男でした。 この手紙に彼のことを悪く書くの良くありません。 せめてこの手紙が残る事で私の死の決意を残したいのです。彼は私が呼んだのです。 奇妙と申し上げたのは、悪く言うつもりでは有りません。 彼は、違う国から来た、いえ違う所(それがどこかは良くわかりません。彼も上手く説明できないようです)から来たと言い張っていたのです。 初めは嘘だと思っていましたが、今となっては真実だと確信しています。それはきっと、私でも彼でもなく、他の誰かがいつか証明する事だと思います。 彼はとても強く、私を守ってすらくれました。 級友の魔法も、盗賊の作り出した巨大なゴーレムも彼の前では全て意味を成しません。 スクウェアの遍在ですら、彼の前に屈するのです。 詳しい事はここで書くことが出来ないのが残念なのですが、困難な任務も彼の御蔭で、無事達成できました。皇太子様を助けたのは、実は私達なのです。自慢なんてくだらない物ではありません。罪もきっとあるのだと私は思います。 何を書けばよいのか迷ってきました。 どうかこの手紙を読む人は、私の心を読んで欲しいのです。 彼との出会い、彼の強さ、それは私を分かってくれるための一つの欠片に過ぎないのです。 父さま、母さま、姉さま、ちい姉さま。 最初にそう書きました。大事な家族です。でもこの手紙は他の人にも読んでもらいたいのだと気がつきました。 何故命を絶とうと思ったのか、と言う事をやはり書かねばならないのでしょう。いえ、書きたいのです。しかし全てを語ることは出来ません。それはこの手紙を残すためであり、この手紙を読んで正しく私の事を理解してくれる人がいずれ現れる、それこそが天に昇った私の魂への慰めなのですから。 戦争へ参加いたしました。アルビオンを攻める、恥知らずな貴族から白の国を取り戻すための戦いです。 一つ、大事な事 同じく塗り潰されている 二行ほど解読不能 彼と共に、その戦に参加したのです。使者の魂すら弄ぶ、彼らの卑劣な魔法により、トリステインは撤退を余儀なくされました。 私と彼は押し寄せる七万の大群から、我が軍の撤退を助けるために、その殿を務めることになったのです。 恥知らず、なぞと言う言葉を使いましたが、私も恥知らずです。結局私は殿を務めなかったのです。殿は彼一人でした。言い訳も何も有りません。卑怯な私は今逃げ出して命を永らえています(ですが私はこれを書き終えれば直ぐに自ら命を絶ちます)。 学院に帰ってきて、まず始めに行ったのは、人望の厚い彼の死を、周囲に伝える事でした。しかし、誰一人として、私の話は聞いてはくれません。 頑なに、彼は生きている、と力強く、妄信的(この手紙で彼を責めるつもりは有りません)な瞳で私を見返してくるのです。 私は諦めたくありませんでしたが、しかし私の拙い言葉では、誰一人として頷いてはくれません。 彼が生きているか確かめるために、再びサモン・サーヴァントを行いました。 結果は、この手紙を読んでいる頃には誰もが知ることとなるのでしょう。 『聖人』 そんな言葉が既に広まっているのです。彼は強く、そしてとても何かに満ちているのです。 誰も、きっとここにいる誰も、私のことを分かってくれません。それはこの手紙で伝えきれるものではありません。私の心を、どうか読んで欲しいのです。私の最後を、私の短い歴史を、そこから私を読んで欲しいのです。 きっと私を理解してくださった方は、この言葉の足りない手紙から、今、筆を取るに至る私の感情を正確に理解してくださってるのでしょう。 私は悲しいのです。 私は恐ろしいのです。 ~ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール~ 「待ちなさい、ルイズっ!!」 「キュルケ? どうして?」 「死んでも何も良いことなんて無いのよ?」 「お願い、止めないで。あんたになんか分かんない」 「読んだのよっ!!」 読んだ? あぁ、あたしの遺書をもうこいつは読んだのか。でも、ヴァリエール家の敵になんか、あたしの気持ちがわかるわけなんか無い。 塔の天辺まで、わざわざご苦労なことだ。 「お願い、ルイズッ!! やめて頂戴、あなたがいないとあたしまで……」 「知ったかぶりなんてしないでっ!! 慰めなんか」 「聞いて、きっとあたしも、いえ、絶対に同じ気持ちなの」 「嘘っ、黙ってツェルプストー!!」 「ルイズ、ねぇっ!! ヴァリエールもツェルプストーも何も関係ないのっ!! あたしも一人じゃ耐えられないっ!!」 その言葉に少しだけ、ほんの少しだけ期待を持つが、どうせこれまで何度も裏切られてきたのだ。 「この子を見て頂戴っ!!」 「タバ……サ?」 あたしよりもちっちゃくて、でもメイジとしては優秀な、青い髪の小さな女の子。 美しかったその青い髪も、今は……。 「 」 その言葉に怖気が走った。涙が止まらない。 「ねぇ、ルイズお願い。今ならあたし達、お友達になれると思うのよ」 「だったらどうなるの?傷の、舐め合いでもしようって言うのッ!?」 「そうよ、お願い、何でもいいの。死なないで」 「じゃぁ、どうするって言うのよ!!」 「逃げましょう? ね、あたしの実家なら、いえ、人の居ないところでも良い。ロマリアもゲルマニアもきっともう駄目。ガリアだってどうなるか。だったら人の居ないところまで逃げましょう?」 淡い期待は確信に変わった。そうか、あたし一人じゃなかったんだ。でも、逃げても、いや、人の居ないところまで逃げるのなら。 「お願いよ、すぐにでも逃げましょう? 早くしないと人が来るわっ」 言うや否や、塔の下からコルベール先生が飛んできた。声が大きすぎたらしい。 「おお、ミス・ヴァリエール。命を絶とうなどと愚かしい」 「駄目」 二人の言葉はもっともらしいが、でもきっとあたしの言葉なんかもう通じない。 「祈りましょう……気休めくらいにはなります」 「愛」 駄目だ。やっぱり駄目だ。もう、涙が、涙が。 枯れるなんて言葉は只の飾りだ。一生分はとうの昔に流しきっている。 あたしは、でもキュルケが、今なら分かってくれるかもしれない。 一人じゃないんだ。 「彼もお帰りです。共に喜びましょう」 「そんなっ、もう帰ってきたのっ!?」 「逃げるのよ、ルイズ!! 一緒に逃げるのっ!!」 ごうごう、と何かが噴出すような音と共に、塔の下から明かりが浮かび上がってきた。 見慣れた姿がぐんぐんと目の目を通り越し、上から見下ろす。 光がタバサの頭を照らす。天辺だけ髪の毛のそり落とされた、小さな頭が光る。 「オマーたせしまシタッ!! 世界人類、愛ミナギッテ、ニエタギレッ!!」 「おお、ザビー様。今日も愛に溢れてますねぇ」 「愛」 「どうです、信者は増えましたか?」 「大分増えたヨ。何人か死人もマギレテルけど、ん~魔法ってフシギ」 「愛」 あんたの方がよっぽど不思議よ。 「ではハンサム・ウェールズ君、新しい幹部を紹介しちゃっテ」 「ええ、こちら我がザビー教の広報として新たに愛の宣教師を務めます」 「始めましてクロムウェルです。パッション・クロムウェル、とお呼び下さい」 「愛」 「そして彼女が」 「技術開発のシェフィールドです。洗礼名はポン太郎」 「愛」 もう無理。 戦国BASARA2より ザビーを召還
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∥ソロモン72姫 ルーシー マイケルを上手い具合に言い包めて何時もカモッてる賭場の経営者。 マイケルをカモッた分の金はと言うとアラ不思議 他の客がごっそり持っていってしまうので何時も利益は雀の涙である ルーシーの物凄いプライドの高さが単純にギャンブルに向いてないだけなのだが 指摘すると余計にお金を吐き出してくれるので利用者は後を絶たない 実はなんか凄いエライ悪魔らしいのだが方々に作った借金の所為で 他の悪魔に大きい顔ができなくなってしまった 因みにマイケルにセクハラされて唯一手を出さなかった実績がある (代わりに肘と膝とドロップキックが出た) 時代が時代ならモク吹かして朝からパチ台の前に居座っているであろう事請け合いなヒトだが なんだかんだで面倒見は良く、甥のメフィ?を目に掛けてたり72姫の恋の相談なんかにも乗ったりする (070216a初出) ∥関連事項 甥⇒メフィ? ⇒マイケル ⇒ソロモン72姫
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前ページ次ページThe Legendary Dark Zero 夜明けと共に起床したスパーダは、まだ眠っているルイズを起こさぬように、洗濯物を手にしながら窓から飛び降りる。 水場の場所は先日、学院を回っている時に見つけたので分かる。 庭へ行ってみると、そこには既に先客がいた。どうやらメイドのようだ。 「そこのメイド」 「は、はい!? な、なんでございましょう!?」 その黒髪のメイドは何故かうわずった声で反応する。 大げさだな、と思いつつスパーダは「すまんが、これも一緒に頼めるか?」と頼みかける。 「は、はい! かしこまりました!」 そして、黒髪のメイドはいそいそと水場で洗濯を始める。 スパーダはその横でじっと見つめているのだが、メイドの様子がおかしい事に気づいて声をかける。 「何を緊張している」 「いえ、お気になさらずに」 「私が怖いのか」 その言葉にメイドがビクリと反応する。 「昼にも見かけたが、他のメイド達も私のことを怖がっていたな」 「それは……」 スパーダに顔も向けず言葉を詰まらせるメイド。 「私が貴族のようだから。そして、貴族を怒らせれば自分達は仕打ちを受けてしまう。そんな所か」 まるでメイドの心を見透かすかのように、だが淡々とスパーダは言葉を続ける。メイドは怯え、緊張しきった様子で洗濯の手を止めていた。 スパーダは屈んでメイドの肩に手を置く。 「そんなに怯えるな。今の私は君らと同じただの平民で、ここの生徒のパートナーなだけだ」 「あの、もしかしてミス・ヴァリエールが召喚したという……」 「スパーダだ」 メイドの表情から段々と怯えが消えていき、はっきりとこちらに顔を向けてくれた。 年頃の娘にふさわしい、清純で愛嬌のある顔立ちをした少女だ。 「あ、わたしはシエスタと申します。ミスタ・スパーダ」 それからスパーダはシエスタの洗濯を終わるまでじっと見守り、ルイズの衣類を受け取った。 「あの、よろしければ朝食は厨房へ来てもらえませんか? どうしてもお詫びをしたいんです」 「君は何もしていない」 「でも……何も知らないのにスパーダさんの事を、少しでも怖いだなんて思ってしまうなんて……失礼です。ですから……」 健気なシエスタの姿に、スパーダが細く溜め息を吐く。 「……いいだろう、その申し出は受けよう」 帰るついでに洗濯物を入れていた桶に水を入れて、スパーダはルイズの部屋へと戻ろうとする。 (気のせい……か) シエスタからほんの僅かに感じられた気配――妙な懐かしさも感じられるものであったが、 それはすぐに消え失せていた。 スパーダは気を取り直してルイズの部屋へと戻る。 ルイズはまだ眠っている。しかも先ほどと違ってだらしない格好で。 「起きろ。ミス・ヴァリエール」 スパーダがルイズの体を揺すってやると、最初は「むにゃむにゃ」とか「もう少し……」などと返されるだけだったが、寝ぼけ目ながらもようやく起きだした。 「うーん。……誰、あんた?」 「水は汲んでおいたぞ」 スパーダは寝ぼけていたその言葉を無視して、水の汲まれた桶を差し出す。 ルイズは段々と意識をはっきりさせて、「そうだ、自分が召喚したんだっけ」などと呟いて水で顔を洗う。 「服を――」 服を出して着替えさせて欲しい、という前にスパーダは椅子に立て掛けていた長剣を手にし、黙って部屋を出て行ってしまった。 よく見るとすぐ目の前、ベッドの上にいつのまにか自分の制服が置いてある。 「自分で着替えろ」そういう事か。 いそいそと制服に着替え、それから部屋の外へ出ると、スパーダが扉の横で腕を組んだまま壁にもたれ掛っていた。 「自分でできる事は最低限自分ですることだな」 「わ、分かったわよ……」 本当ならば自分が主……のはずだが、彼とは一方的な主従関係は結べない。 彼はあくまでパートナー。常に自分と対等な関係であるべきだ。 故に、文句もあまり強く言えない。 ……しかし、プライドの高いルイズは、本来ならば使い魔である彼と対等な関係でいなければならない、というこの状況をまだ完全に受け入れる事はできなかった。 それに、主導権を彼に握られているというのが気に入らない。本来ならばそれは自分が握るべきだというのに。 不満そうに顔を歪めているルイズだが、スパーダを伴いアルヴィーズの食堂へと向かう。 「どこへ行くのよ」 食堂へ着いた途端、スパーダは厨房の方へと歩き出すので、ルイズは困惑する。 本来ならば、使い魔に対して躾の目的でみすぼらしい食事を用意し、自分にお願いすれば鳥の皮一枚でも恵んでやろうと考えていたのだが、今はちゃんとした食事を用意させている。 「厨房で賄いを出してくれるようでな。私はそちらへ行かせてもらう」 「……そ、そう。それじゃあ、食べたらここで待っていて。今日は一緒に教室で授業を受けるから」 軽く頷いたスパーダは愛刀を片手に、厨房へと向かう。 「あ、お待ちしていました! スパーダさん!」 厨房へ入った途端、シエスタが満面の笑みでスパーダを出迎えてくれた。 彼女以外にも何人か他にメイドがいるのだが、彼女達はスパーダに向かって突然頭を下げだす。 「ご、ごめんなさい。シエスタから話は聞きました」 「あたし達、失礼な事を……」 「本当に申し訳ありませんでした」 「別に構わん。第一、私は貴族などではない」 口々に謝りだすメイド達に、スパーダは表情を変えぬまま返す。 出で立ちや物腰はまるっきり貴族そのものだというのに、スパーダの性格は彼女達がよく知る貴族の傲慢さとはあまりにも無縁であった。 貴族の全てが、彼みたいな人達ばかりならいいのに。そんな事も考えてしまうほどに。 スパーダはテーブルに案内され、用意されていたシチューとパンを静かに口にする。 シエスタやメイド達は、スパーダの食事をする動作一つ一つが洗練され、優雅さに満ちている事に感嘆する。 これで本当に貴族ではないというのが逆に信じられない。 「おいしいですか? スパーダさん」 「ああ」 無表情ながらも満足そうに答えるスパーダにシエスタは嬉しそうな笑顔を浮かべる。 「またいつでもいらしてください。歓迎しますよ」 「うむ。そうさせてもらう。世話になった」 賄いを完食し、厨房を後にするスパーダ。 すぐにルイズと合流し、彼女に連れられて教室へと向かった。 教室に着いたルイズは席につき、スパーダは彼女の背後で腕を組んだまま控える。すぐ近くにはキュルケやタバサとかいう少女までいる。 そのタバサという少女は昨日と同じ、スパーダに対して警戒の眼差しを送ってきているがスパーダは無視する。 教室には他の生徒達の使い魔がたくさんおり、フクロウやらネコやらカエルといった動物から、スパーダも魔界では見た事のない生き物も多かった。 その使い魔達はスパーダの出現と共に突然強張りだし、大人しく静まる。 一部の生徒達が「どうしたんだ?」と己の使い魔を心配しだすが、使い魔達の緊張は解かれない。 その内、扉が開き教壇の上に紫のローブを着た中年の女が現れた。おそらくは教師なのだろう。 「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。この赤土のシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 満足そうに生徒と使い魔を眺めるシュヴルーズ。その視線がスパーダと、ルイズに合った。 「あらあら、中々変わった使い魔を召喚したようですね。ミス・ヴァリエール」 その言葉にクラス中の生徒達からクスクスと笑いが漏れる。 「召喚に失敗したからってどこかの貴族なんて連れてくるなよな! ゼロのルイズ!」 小太りの生徒が茶化すように煽ると、笑いが余計大きくなった。 「違うわ! 私がサモンサーヴァントで召喚した、れっきとした私の使い魔……パートナーよ!」 立ち上がり、野次を飛ばした少年、マリコルヌに食ってかかるルイズ。 そこにスパーダは彼女の肩を掴み、押さえつけた。 「好きに言わせておけ」 悔しそうに唇を噛み締めるルイズであったが、そのまま大人しく席につく。 スパーダは無表情のままマリコルヌの方をじっと睨んでいるのだが、その視線は鋭い刃のように研ぎ澄まされており、相手を貫いてしまうかと思える程に恐ろしく、冷たい瞳だった。 スパーダに睨まれるマリコルヌは蛇に睨まれたカエルのように震え、へなへなと力を無くして机に突っ伏す。 「ミスタ・マリコルヌ。お友達を馬鹿にするものではありませんよ」 シュヴルーズが注意し、それからの授業は問題なく進められていった。 〝火〟〝水〟〝土〟〝風〟の魔法の四大系統。失われた系統である〝虚無〟それら魔法と生活との密接な繋がりなどが説明される。 そして、それらの魔法は組み合わせる事が可能であり、単体のみの〝ドット〟から〝ライン〟〝トライアングル〟〝スクウェア〟というランクに分けられている事も話される。 この世界の魔法というものに興味があったスパーダは真剣にシュヴルーズの講義を聞いていた。 シュヴルーズはスパーダが真剣に講義を聞いているのに感嘆し、満足しているようである。 そして、『土』の魔法の初歩中の初歩、という錬金の実演を行い、シュヴルーズはただの石を魔法で全く別の物質に変えてみせた。 「ゴゴ、ゴールドですか?ミス・シュヴルーズ!」 キュルケが身を乗り出すが、あれは真鍮であり、金を錬金するには〝スクウェア〟のメイジだけ、〝トライアングル〟であるシュヴルーズには無理だとのこと。 そして、誰かに実演をしてもらおうという事でシュヴルーズはルイズを指名した。 その途端、キュルケが「先生、止めといた方がいいと思いますけど……」と言い出し、生徒達からも「危険です!」などと言われる。 しかし、ルイズは肩を微かに震わせながら「やります」と言って教壇へと向かっていく。 すると、生徒達は次々に机の下へと隠れ始める。 スパーダは不審に思いながらも、ルイズの実演を見守る。 (そういえば、彼女の魔力は他の者とは違うな) ルイズは杖を振り上げ、ルーンを唱えながら机上の石に向かって振り下ろす。 (……!?) 彼女からとてつもない魔力を感じ、スパーダは身構えた。 その瞬間、教壇が爆発を起こし、爆風をもろに受けたシュヴルーズが黒板に叩きつけられる。 その爆風はスパーダ達の方にも及ぶが、机や椅子が軽く吹き飛ぶ程度でそれほどでもなかった。 やがて煙が晴れるとそこには、服装は少し傷ついてはいるものの、無事なルイズが立っていた。 「ちょっと失敗したみたいね」 「ちょっとじゃないだろ!ゼロのルイズ!」 「なにがちょっとだ!」 「いつだって魔法の成功率、ゼロじゃないか!」 「だから言ったんだ、ゼロのルイズにやらせるといつもこうだ!」 次々と彼女に誹謗中傷が飛ぶ。 なるほど。彼らにとっての〝ゼロ〟とはそういうことか。だが…… (ゼロだと? ……お前達は勘違いしているな) 彼女はゼロどころではない。 それが分からないお前達の方がゼロだ。そう呟いてやりたい所だった。 その後、講義は中止。己の不始末ということでルイズは教室の片づけを命じられた。 スパーダも彼女の手伝いを黙々と手伝う。 ふと、机を拭いていたルイズの手が止まった。 「どうした? 手を動かさんと終わらん」 「……何で、何も言わないの?」 不意に震えた声で呟くルイズ。 「何の事だ? それより、さっさと終わらせた方が良い」 「……気を遣わなくたっていいわ! 言いたいなら言いなさいよ!」 突然にして喚きだすルイズを不思議そうに見るスパーダ。 「パートナーだからって、対等の関係だからってあたしを馬鹿にしてるの!? 良いわよ! 言ってやるわ! あたしの二つ名は〝ゼロ〟! 魔法の成功確率ゼロ! それで付けられたあだ名が〝ゼロ〟のルイズよ!」 自暴自棄に叫びだすルイズはスパーダに食ってかかり、彼の胸を叩きだす。 「馬鹿にしたいならすれば良いじゃない! 魔法も使えない癖に何を偉そうにしてるんだとか! 何で何も言わないのよ!?」 涙を目に溜めながらルイズは叫ぶ。そして、スパーダの胸に顔をうずめて泣き出した。 「君の目は節穴か」 「何ですって!」 スパーダは顎をしゃくり、教室中を差す。 「この爆発を起こしたのは、一体誰だ?」 「それがどうしたのよ! やっぱりあたしを馬鹿にする気!?」 「まだ分からんのか? 君が立派に魔法を使えている証拠だろう」 「何言ってるのよ! 爆発を起こす魔法だなんて聞いた事ないわ!」 スパーダはルイズの肩に手を置いてを押し剥がす。 「……ならば聞こう。君が〝魔法を使えない〟というのであれば、君は〝平民〟だとでもいうのか?」 スパーダの言葉に、ルイズは震えながら黙り込む。 「その平民が魔法を使おうとすれば、先ほどのように爆発が起きるというのか」 「そんな訳ないじゃない……貴族を先祖に持たない人間が魔法を使おうとしたって、何も起きやしないわ」 「ならば君が魔法を使えるメイジである証ではないか。結果はどうあれ、あの爆発は君がメイジである何よりの証拠だ。私を召喚してみせたのだからな。あの爆発も君次第で色々な使い方ができる。……もっと自分を肯定しろ。常識に囚われるな」 そう言って、スパーダは愛刀を手にして教室を後にした。 呆然としながら、ルイズは自分の手を見つめ続けていた。 「オールド・オスマン! 一大事ですぞ!」 一方、学院長室へと飛び込んできたコルベールは、オールド・オスマンが秘書のロングビルに対してセクハラをしたせいで、彼女の鉄拳を喰らっている所を見てしまった。 「またですか……オールド・オスマン」 「な、なんじゃね……コルベール君。やかましいのぉ」 殴られた頭を摩りながらオスマンは席に戻り、コルベールと向かい合う。 「これを見てください」 コルベールがオスマンに見せたのは『始祖ブリミルの使い魔たち』と書かれた書物。 そして、先日スパーダの左手からスケッチしたルーン。 それを目にしたオスマンの眼光は鋭くなり、ロングビルを退室させた。 退室したロングビルはこっそり中の話を聞き、 「詳しく説明するんじゃ、コルベール君」 「彼のあのルーンはこれによく似ている……」 などというオスマンらの会話を耳にした。 スパーダは昼食も厨房で、シエスタらに賄い食を振る舞われた。 (これでアイスがあればな……) さすがにそんな贅沢は言えないので、すぐに昼食を済ませて厨房を後にするが、ルイズはまだ目元を真っ赤に腫らして泣きながら食事をしているので、それが終わるまで壁に寄りかかり、待つ事にする。 胸のスカーフに飾られたアミュレットを弄っていると、何やら食堂の一角が騒がしくなる。 そして、「申し訳ありません!」という聞き慣れた少女の声が耳に入る。 スパーダがすぐに群集が集まっている所へ向かうと、そこには涙声になりながら必死に頭を下げるシエスタの姿があった。 「いや、許さないぞ!」 尊大にも彼女を叱り付けるキザったらしい金髪の少年。頬は平手打ちでも喰らったのか、赤く腫れている。 「何事だ?」 すぐ近くの生徒に聞いてみると、シエスタが彼――ギーシュ・ド・グラモンの落とした香水を拾ったために彼の二股がバレてしまい、 彼は二人の女生徒から平手打ちと絶交宣言を受けてしまった。シエスタはその事でギーシュから八つ当たりを受けているらしい。 顔を顰めたスパーダは人混みを掻き分け、二人の間に立つ。 「そこまでだ」 「な、何だね! 君は!?」 驚きの声をあげ、不愉快に顔を顰めるギーシュ。 「スパーダさん……!」 シエスタもスパーダの介入に驚いている。 「ああ、君は確かミス・ヴァリエールの……。話は聞いているよ。どこの馬の骨かも分からない異国の没落貴族が出しゃばらないでくれたまえ」 「そんな事はどうでもいい。自分の責任を彼女に擦り付ける暇があるなら、さっさと二人の女生徒へ謝りに行け。第一、お前が彼女を叱る理由などどこにもない」 「何を言っているんだ? 僕は瓶を拾われたあの時、知らないと言った。それを受けたら平民である彼女は知らない振りをするべきだ。それくらいの機転を見せてくれても良いのではないか?」 「彼女は自分の役目を果たしたに過ぎん。お前の身勝手な都合で傷つけられる彼女の身にもなれ」 スパーダの言葉に周りの生徒達からも「そうだそうだ!」「そのメイドに謝れ!」という声が飛んでくる。 ギーシュはメイドを叱りつける事で自分の立場を少しでも良くしようとしたのだが、その思惑がスパーダの介入で狂わされてしまったために相当不愉快な顔をしていた。 もちろん、この程度で引き下がる訳にはいかない。自分のプライドが許さない。こんな没落貴族相手に。 「没落貴族風情が……良い度胸だな。――ならば、僕は君に決闘を申し込む!」 (肩慣らしにはちょうどいいか……) 異世界である以上、いつかは戦いに身を委ねなければならない時がくる。この少年は魔力がそんなに強くないといえど、メイジである事には違いない。この世界の人間のレベルがどの程度のものか確かめる良い機会だ。 もちろん、あんな子供を殺す気はない……折檻くらいはしてやるが。 「ヴェストリ広場で待つ、逃げることは許さない!!」 そう言って、取り巻きを連れて食堂を去るギーシュ。スパーダは腕を組んだままその背中を見届けていた。 「ちょっと! 何で勝手に決闘なんか受けてるの!?」 ルイズがスパーダの元にやってきて叫ぶ。 「私が受けた訳ではない。向こうから申し入れてきただけだ」 「だからって……貴族と決闘するなんて許されないわ! すぐギーシュに謝って!」 「それは無理だ」 スパーダの声は、今までの紳士で優雅さに溢れていたものとは全く異なる、冷酷で氷のように冷たい声音だった。 「私の故郷では、戦いを申し込まれれば必ずそれを受けるのが掟だ。彼が言ったように、決して逃げる事は許されん」 ルイズの横を通り過ぎ、食堂の入り口に向かって歩き出した。 「……何、殺したりはせん」 振り返りながら、ルイズには見えないようにやりと笑ったスパーダは愛刀を手に食堂を去ろうとする。 その彼の背中にシエスタが声をかけた。 「あっ……あのっ、スパーダさん! 申し訳ございません! 私のせいで!」 「気にするな。何も悪くない」 ルイズはスパーダが剣を持っている以上、それなりに戦う力があるのだろうと理解はしていたが、それでも剣で魔法に挑むなどあまりに無謀としか言いようがなかった。 元貴族のスパーダの実力がどんなものであろうと、魔法に敵うはずがない。 (絶対に死なないでよ……) 親身になって自分を励ましてくれたパートナー。 それを今、ここで失う訳にはいかないのだ。 前ページ次ページThe Legendary Dark Zero
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恐竜絶滅の謎について推理してみませんか? 私は風邪が最大の原因ではないかと思っているんですよ。 恐竜絶滅の謎 その1 その2 その3 その4 その5 その6? その7? その8? その9? その10? その11?
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前ページ次ページ異世界BASARA 「ひょわあぁー!持病の腰痛じゃあぁぁ!!!!」 夜、ほとんどの学院の生徒は夕食も終わって部屋に戻っていた。 グルルウウゥゥゥゥ… と、誰もいない筈の廊下から、唸り声のような音が聞こえてくる。 「…くっ、空腹がこれ程辛いものとは…」 音の根源は真田幸村の腹からだった。 昼間のルイズの言葉通り、彼は昼食を食べる事が出来なかったのである。 さらに夜になってもルイズの許しは出ず、夕食にも有り付けなかったのだ。 グウウゥゥゥゥ~ 苦しんでいる幸村へ追い討ちを掛けるようにもう一度腹が鳴った。 「い、今なら前田殿の気持ちが分かりそうな気がするぞ…」 「あの、ユキムラさん…大丈夫ですか?」 そんな幸村を心配したのか、シエスタがやって来た。 「シ、シエスタ殿か……何の、断食もまた鍛錬の1つと思えば…」 グギュルルル… 「…ユ、ユキムラさん…」 「…面目ござらん…」 「あの、今から厨房に来られますか?」 気の毒に思ったシエスタは、ここである事を切り出した。 幸村は今だ鳴り続ける腹を押さえ、シエスタに連れられて厨房へやって来た。 厨房に入ると、そこで働く給仕達が幸村を待っていた。 「よぉ!来てくれたか!!」 その中で貫禄のある男が幸村に声を掛ける。 ここを任されているコック長、マルトーである。 「シエスタから聞いたぞ、何でも御主人様に飯抜きにされたそうじゃねえか!」 そう言いながら豪快に笑う。 「な…何、武士は食わねど高楊枝、これしきの苦しみ耐えなければ…」 幸村のその言葉にマルトーはほう…と感心したような声を上げる。が…… グギュウウウウルル… 「だはは!腹の虫は正直みたいだな!よし、ちょっとそこに座って待ってな」 その音を聞き、マルトーは幸村をテーブルに座らせて皿を置いた。 皿の中には肉や野菜がたっぷりと入ったシチューが入っている。おそらく余った材料で作ったのだろう。 「こんなまかない料理しか出せないけどよ、食っていってくれ!」 「し、しかしルイズ殿は…」 「へっ、我侭な御主人様の事なんか気にすんなって。それによ…腹が減っては戦は出来ねぇって言うだろ?大事な時に倒れたらそれこそ恩を仇で返すようなもんじゃねえか」 確かにマルトーの言う事に一理ある。この状態で敵襲に遭っていたら本来の力を出せないかもしれない。 何より、自分の為に彼が用意してくれた料理を断るのが申し訳なかった。 「…かたじけない、有り難く頂戴いたす」 マルトーの作ったシチューは格別に美味かった。 思えば、この世界に来て初めてまともな食事に有り付いた気がする。幸村はすぐに平らげてしまった。 「馳走になった!そなたの作った飯は実に美味でござるな!」 「嬉しい事言ってくれるじゃねえか、腹が減ったらまた来な!我らの剣!」 「我らの…剣?」 「そうだ!お前さんは平民なのにいけ好かない貴族をぶっ倒してくれた。俺達の誇りだぜ!」 どうやらギーシュとの一件が学院に広まり、働く給仕達の耳にも入ったようだ。 「いや、拙者はまだまだ未熟者…ルイズ殿の役に立つにはもっと己を磨かねばならぬ」 「聞いたか!真の英雄ってのはこういう風に慢心しねぇ奴の事を言うんだ!お前達も見習えよ!」 「すまぬなシエスタ殿、そなたにも礼を言っておく」 食べ終えた幸村はシエスタにも頭を下げる。 「い、いえお礼だなんて!また来て下さい、皆待っていますから」 「…時に、シエスタ殿に頼みがあるのだがよいか?」 その頃、主人のルイズは学院中を歩き回っていた。 「まったく…主人の側から離れて何処ほっつき歩いているのかしら…」 幸村がシエスタに連れられて行ったその後、ルイズはそろそろ許してやろうと思い立ったのだ。 ところが廊下を見てみれば使い魔の姿が見当たらない。 そして今、幸村を探し歩いているという訳である。 「ではユキムラさん、準備はいいですか?」 「う、うむ!何分手慣れてない故、どうか頼む」 と、何処からか幸村と女の声が聞こえてくる。 「ユキムラ?何やってるのかしら…」 気になったルイズは声のする方へと足を運ぶ。近づくにつれて話し声もはっきり聞こえてくるようになる。 「よし!いざ参る!うおりゃぁ!」 「きゃ!ユ、ユキムラさん…もっと力を抜いて…」 「す、すまぬ…中々難しいものだな…」 「そう…いいですよ、そうやって優しく…」 「おお…よい感じでござるか?」 「はい。あ…もっと入れても大丈夫です…」 「承知いたした!どりゃああぁぁー!!」 「きゃあ!ダ、ダメ!強過ぎですー!!」 「な、なななななななななな!?!?」 やり取りを物陰から聞いていたルイズの顔は真っ赤になっていく。 「あ、あ、あいつったらこここ、こんな所で一体ナニを…!!」 聞いてられなくなったルイズは思わず飛び出してしまった。 「何してるのこのバカムラアァァァーー!!!」 「ミ、ミス・ヴァリエール!?」 「うわあルイズ殿!?こ、これはその…!」 突然現れたルイズに2人は驚いて声を上げる。 「…………は?」 ところがルイズの方はというと、呆気に取られていた。 2人の足元にあるのは水の入った洗濯桶。 そしてその中にある服…よく見ると自分のものである。 「洗濯……していただけ?」 「申し訳ありませぬ!自分でするなという禁を破ってしまい申し訳ありませぬうぅ!」 「あ、あの…ユキムラさんにどうやったら上手く出来るか教えて欲しいと言われまして…」 要するにこういう事だ。 幸村はただ洗濯の仕方をシエスタから教えて貰っていただけで、「強過ぎ」というのは手に力を込め過ぎている事だったのだ。 自分の完全な誤解だった事が分かり、体から怒りが抜けていくのをルイズは感じた。 「ルイズ殿?いかがなされた?」 黙っているルイズが気になり、幸村は声を掛ける。 「…へ、部屋に戻るわ。あんたも来なさい」 「は、ははっ!」 前ページ次ページ異世界BASARA
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前ページ次ページゼロと魔王 ゼロと魔王 第5話 決闘! 後編 「諸君!決闘だ!!」 ヴェストリの広場でギーシュが観客に高々と宣言する。 「前置きはいい!とっとと掛かってこい!!」 ラハールは心底気に入らないという風にギーシュに言い放つ。 なぜこのような事になったのか・・・事の発端はこうである。 ラハールは食堂で飯を食った後、あてもなく学院内を適当に散策していた。 だが、どうやら男子寮の方へ来てしまったようだ。 「・・・ここに用はないな」 そう言い歩き出そうとしたところである。 金髪のいかにも軽そうな男がラハールを呼びかけてきた。 「そこの君!待ちたまえ」 「・・・」 無言で相手を見た後、こんな奴に関わらん方が身のためと思い、無視して歩き出した。 「待てと言っているのがわからないのかね?」 「・・・オレ様になんの用だ?」 一応反応はしたがとても面倒くさそうに対応している。 「何、ここは神聖な貴族の子供が学ぶ学び舎だ。君のような子供が来る場所ではないと注意しようとしただけさ」 (こいつ、ぶち殺してやろうか?) そう思ったが、さすがにこんな所で騒ぎを起こすほどラハールも馬鹿ではない。 昨日こういう時にこう言えと言われている言葉を思い出し、相手に言った。 「オレ様は東の方のメイジだ」 「ああ、なるほど・・・君が噂の東の方のメイジか。さすがルイズ!東の方のメイジを召喚したと聞いたから一体どんなのを召喚したと思ったら、ただの子供ではないか!!」 (こいつ・・・ぶち殺す!!) ラハールは無言で相手の近くに行き、右手を差し出す。 「ん?握手かい?本来なら君のような子供とはしないのだがね。今日は本当に機嫌がいいんだ、してやろう」 そう言い、ラハールが差し出した右手に握手しようとした時、 「一回死んでろ!!」 ラハールは手を引込め、拳を作り、思いっきり相手の腹に突きだした。 「ぐふぅ!」 正拳突きが相手の腹に深々とメリこみ、さっと手を引き抜く。 ギーシュはあまりの痛さに悶絶する。 殴った当の本人は・・・ 「昨日棺桶を運んだ時にも思ったが、身体能力まで落ちてるのか・・・」 忌々しそうに刻まれたルーンをにらみつけていた。 「き、貴様・・・貴族相手に・・・手をだして・・・ぶ・・・じで・・・すむと思って・・・いるのか・・・」 「貴族だ~?そんなものオレ様には関係ない!」 「決闘だ・・・!」 「ハァ?」 「決闘だと言ったのだ!!貴族が舐められるわけにはいかない!ゆえに、君に決闘を申し込む!!」 「なぜオレ様がそんなものをしなければならない。それに、オレ様と戦いたいのなら今ここでやればよかろう?」 「貴族というのは、昔から決闘で物事を決めるのでね。それとも何かい?あれだけ大見得をきっておいて自信がないのか?」 「ほ~う、いい度胸だ、いいだろう。その決闘、受けてやろう」 「それでは、四半刻後に「ヴェストリの広場」に来るように」 いう事は言ったと歩き出そうとしたギーシュであったが、ラハールはそこに待ったをかける。 「まあ待て」 「どうした?怖気づいたから許してほしいのか?」 「いいや、この決闘に負けたものは相手の言う事をなんでもきくという事にしようではないか、その方が面白い」 ギーシュは少し考えると、こう答える。 「・・・いいだろう。その提案を受け入れよう」 「言ったな?」 「貴族に二言はない」 「よし、それではまたな」 そして両者は別れた。 「さて、ああは言ったが・・・どうするか・・・」 別に勝てないと思ってはいない、ただ力を制限された状態では少し心許ないというだけである。 「魔王剣は出んし、かと言ってあんなガキ相手にエクスカリバーを持ち出すのもな・・・」 ラハールが使っているからかもしれないが、エクスカリバーと対等に渡り合える魔王剣を持ち出すのも相当ではある。 「どっかからか、適当に剣でも盗ってくるか?それとも魔法だけで相手するか・・・」 しばらく考えたが、相手がどういった魔法を使ってくるかわからないため保険として剣を使おうと決めた。 「決めたまではいいが、肝心の剣がなければ話にならんな。あのじじいあたりに武器庫がどこか聞くか」 オールド・オスマンに武器庫の場所を聞きに行くラハールであった。 「やれやれ、朝から書類整理とは・・・やりきれんな」 「そんな事を言ってないではやく書類を片付けてください、オールド・オスマン」 「しかしのうミス・ロングビルよ、わしも年じゃし・・・」 「よくそんな事が言えますね」 ロングビルと呼ばれた女性は呆れた風に応答する。 いや、実際に呆れているのだろう。 「本当の事じゃ」 「はいはい、そういう事は毎日のセクハラをなくしてから言いましょうね。おじいさん」 笑顔で言ってはいるが目が笑っていない、さすがにこれは旗色が悪いとみて仕事に戻ろうとするが、そこで突然扉が開かれた。 「じじいはいるか?」 入ってきて早々、ロングビルを見て嫌そうな顔をしたが、すぐにオスマンに向き直る。 「なんですかな?」 「武器庫はどこにある?」 「武器庫?あるにはありますが・・・一体どうして?」 「少しな・・・」 なぜいるのか分からなかったが、別にいいかと思う事にした。 伝説のガンダールヴとやらがどういった物か知りたいのも少しはあるが・・・ 「ふむ、それではミス・ロングビル、案内してあげなさい」 「はぁ、それは別に構いませんが」 「い、いや、それなら場所を教えろ、自分で行く」 「そうは言っても、鍵の問題があるからな」 「なら鍵を貸せ!」 「たいしたものが無いとはいえ、そうホイホイ鍵を貸し出すことは出来ませんしな」 「ぐっ!・・・わかった」 「それでは案内してきますがオールド・オスマン、ちゃんと仕事をしてくださいね」 「わ、わかっておるわい」 そう言い残して、ラハールを案内していくロングビルであったが、しかし、ラハールは少し離れて歩いている。 「なぜじゃろうか・・・まあいい、してモートソグニル!ロングビルの下着は見れたのであろうな!!」 このじじいは・・・ ラハールが案内された場所武器庫には、剣・槍・弓・斧やらがかなり置いてあったが、どれもあまりいいものではなさそうな物ばかりであった。 貴族ばかりいる所に好き好んで攻め入るやつがいないし、なによりたとえいたとしても魔法でどうにかできるのだから当然と言えば当然ではあるが。 「・・・ロクなものが無いな」 「まあ、武器なんてなくても魔法がありますしね。必要が無いんですよ」 もっとも、ラハールの魔王城にもロクなものがないのだから文句は言えないのだが。 そうして、適当に物色しているととある物品を見つけ出した。 「ん?この剣、魔力が通っているな」 取り出した剣を抜いてみると、錆び付いていて一見使えそうにないがどうやら芯の部分は生きているようだ。 「しかし変な形だな、サクラが使っていた日本刀とやらに似ておるが、少し違うな・・・まあいい、どうせここにはロクなものが無さそうだしな。これで我慢するか」 「本当にいいんですか?」 「魔力が通っている分他の剣なんかよりずっとましだ、別に構わん」 「そうですか・・・(魔力が通っている?あのクソボロイ剣が?まあ金にはなりそうにないね)」 (さっき剣を抜いた時にこれが光ったような気がしたが・・・気のせいか) 目的の物は手に入ったので武器庫から出る。 それ以外にもこれ以上ここに居たくないのでとっとと退散することにした。 「しかし、それで何をするつもりなんですか?」 「気にするな、たいしたことではない。それではな」 「あ。・・・落ち着きがない子だね」 とラハールに対して評価をするロングビルであった。 そして最初に繋がる。 「言っておくが、僕は魔法を使わせてもらうよ。君もそのどこから持ってきたか知らないが剣で存分に戦ってくれ」 「もとよりそのつもりだ」 両者が構えて決闘が始まるかと思った時に、観客を押しのけてやってきた少女がいた。 「その決闘待った!!」 「ん?なんだお前か」 「なんだじゃないわよ!なんで決闘なんて受けちゃうわけ!?」 「勝手もなにも、オレ様は初めに言っただろう?オレ様は誰の指図も受けん!」 周りからどっと笑いが出た。 さすがゼロのルイズだの色々な中傷が聞こえるが今は気にしていられない。 ラハールが悪魔だという事を知られると自分の命が危ないのだから、いつも言われている事を気にしていられない。 「ギーシュ!貴族の決闘は禁止でしょ!?」 ラハールに何を言っても無駄だと思い、目標をギーシュに変更する。 「禁止されているのは貴族同士の決闘さ、今回は適応されない」 こちらも何を言っても無駄なようだ。 力で分からせるにしても、そんな事が出来るはずもない。 「あんたどうなっても知らないわよ・・・」 「何か言ったかい?」 「別に」 こうなってしまった以上仕方ない、後はバレない事を祈るだけである。 (あとギーシュはボコボコにされろ) 「~~~!なんだ今の悪寒は・・・まあいい、さっさと始めよう」 そう言うと自分が持っていた造花のバラを振る。 振った時に花びらが舞、花びらがいきなり人の形に変形した。 それも7体もである。 「悪いが、最初から本気でいかせてもらうよ」 「お前が戦わんのか?」 「これは僕の魔法さ、それなら僕が戦っているようなものだろう?」 「そうだろうが・・・お前はそれでいいのか?」 「なんとでも言うがいい!さあ行けワルキューレ!!」 ワルキューレと呼ばれた人型のゴーレムは各々の武器が武器を持っている。 それに対して、ラハールは剣が一本だけ・・・何も知らない物が見たらそれこそラハールが勝つとは思わないだろう。 ワルキューレの一体がラハールに槍を振り下ろす。 周りの人間は目を覆うものやあわれそうに見るものなど様々な反応だ。 だが・・・次の光景はワルキューレが吹っ飛んでいくものだった。 「な!?僕のワルキューレが・・・」 やった事は簡単だ、振り下ろされた槍を体を左にスライドさせて避けた後に、ワルキューレを蹴り飛ばしたのだ。 「なんだこの程度か」 さすが力は制限されても魔王である。 本気の殺し合いをしたことのないギーシュとは決定的に経験値が違う。 「くっ!まだだ!!まだ僕にはワルキューレが残っている!!!」 どうやら自分のワルキューレが見た目が子供のラハールに、自分のワルキューレが蹴り飛ばされたのが効いたのか、威勢はいいが完全に冷静さは無い。 ワルキューレ達をラハールに突撃させるだけである。 「ほれほれどうした!威勢はいいがその程度ではオレ様は倒せんぞ?」 そもそも操作するものがそこまで上手くないのだ、冷静さを失ってはロクな結果を残さないのは明白である。 そうこうしている内にラハールが放った魔法の直撃を受けて一体倒される。 (残り5体か・・・さすがに魔法と格闘だけでは辛いな・・・) そうである、かなり余裕そうに戦っているラハールだが、結構本気を出している。 何より金属の中でも比較的に柔らかい青銅を蹴っただけで結構痛いのである。 魔法だって後撃てて3、4発程度だろう。 ギーシュを狙おうにも、一か所に固まっていて突破は難しい。 もっとも、それだと負けた気がするのでやるつもりはない、ワルキューレを全部倒した後に一発殴る予定である。 (仕方ない・・・こいつを使うか・・・) 武器庫から持ってきた剣の柄に手を伸ばし掴む。 すると、左手のルーンが光り出す。 「なんだ?」 光り出したらなぜか体が軽くなった。 力が戻ったのかと思ったが、あきらかに自分の力ではない何かがラハールの力や魔力が強化されているという事がわかる。 「よく分からんがまあいい、さて覚悟してもらおうか?」 「何を言っているんだ、僕のゴーレムは後5体も残っているぞ?」 さすがにギーシュもこれ以上やると自分が負けるのは分かる。 だがここで降参をすればただの負け犬になってしまうので精一杯強がって見せる。 「そうかそうか、自分から降参しなかったことは褒めてやろう。・・・だが、容赦はせんぞ!」 そこからのラハールの行動は素早かった。 ワルキューレの一体の体を両断する。 「そんなにまとまって居たら格好の的だぞ?『一文字スラッシュ』!」 ほぼ一列に並んでいた残り4体のワルキューレを一文字スラッシュで薙ぎ払う。 あと残ったのは、ギーシュ1人である。 ラハールはギーシュに近づき、拳を握る。 「ま、待て!もう降参だ!!」 もうギーシュには戦う力が残っていないのだから降参しかない。 「安心しろ・・・」 その言葉を聞いて、安心した次の瞬間である。 「一発殴るだけだ!」 ギーシュの顔面に拳が入り、吹っ飛ぶ。 手加減して殴ったから死んではいないだろう。 「オレ様の勝ちだな」 ラハールがそう宣言する。 周りからは色々言っている奴がいるが、誰もが驚いた感じではあった。 東の方のメイジと言われてはいるが、明らかに見た目が13,4ぐらいなのだから当然だろう。 そんな喧騒のなかで2人の少女がギーシュに駆け寄る。 「「ギーシュ(様)大丈夫!(ですか!)」」 「・・・あんた誰よ」 「・・・あなたこそ」 一瞬でその場の誰もが黙り込む。 その中でかなり焦っている人物が1人いた。 さっき殴り飛ばされたギーシュである。 当然だ、二股がバレるのだから焦りもするだろう。 「ギーシュ・・・」 「ギーシュ様・・・」 「これは一体、どういう事かしら?」 「きちんと説明してくださいね」 「こ、これは何かの間違いだ!」 ギーシュはそう言うが、今この場の誰もが分かっている・・・間違ったのはお前だろう? 2人の少女はその言葉にブチギレて両サイドから強烈なビンタを同じタイミングで放つ。 「がっ!」 ビンタをした後、2人はその場を何事もなかったように去っていく。 「待ってくれ!モンモランシ―!ケティ!」 聞く気が無いとばかりに両者共に無反応である。 がっくりとしていると、ラハールがとどめをさす。 「お前忘れておらんだろうな?貴様は負けたから今日からお前はオレ様の家来だぞ」 「な!?家来だって!?」 「当然だ、なんでもいう事をきくのだろう?だからお前はオレ様の家来だ」 この日ギーシュは、生涯これほど泣くことはないだろうというぐらいに泣いた・・・ 「ふむ、あれがガンダールヴの力か・・・」 学院長室でオールド・オスマンが深く唸る。 コルベールが知らせに来た時から遠見の鏡ですべて見ていたのだ。 「剣を握ったあたりからあきらかにスピードが上がりましたな」 「スピードだけではなかろうな・・・とにかく今回の事であの者がヴァリエール嬢の言う事を聞かんと言う事がわかったな」 「複雑ですな・・・もし暴走した時にヴァリエール嬢がストッパーにならないのですからな」 「かと言って、ただいう事を聞くのならヴァリエール嬢が野心を持った時には彼がストッパーにならん」 「ではどうすれば・・・」 「彼を敵に回すのは得策ではない、それに使い魔を取り上げるわけにもいかん・・・信じるしかあるまい」 「それしか・・・ないですかな・・・」 「ほれ、この話はお終いじゃ、さっさと授業の準備でもするがいい」 「・・・それでは失礼します」 コルベールは、理解は出来るが納得できないといった感じで学院長室から出て行った。 「しかし、本当に生徒を信じるしかないとは・・・情けない話じゃな」 そう思っても仕方ないのにそう思いたくなるのは、腐っても教師であるからであろう。 そして、自分の仕事に戻るのであった。 前ページ次ページゼロと魔王