約 1,871,778 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1655.html
夕食は楽しいものだった。 昨日の雰囲気などどこにも存在しない。 鍋を囲みながら、みんなが笑い、食べ、また笑う。 シエスタの学院での生活や、ルイズの学院での生活、最近村であった出来事などをはなし大いに盛り上がった。 「はい、ヨシカゲさん。どうぞ」 「ああ、ありがとう」 「シエスタ、それとってくれない?」 「これですか?」 「あー!それぼくもほしい!」 「ダーメ。これはミス・ヴァリエールのよ」 「いいわよシエスタ。その子にあげて」 普段の私ならこんな雰囲気でも、ちっとも楽しいと思わなかっただろう。 しかし、今私はこの状況を楽しいと思っている。 なぜだろうか? 駄々をこねるガキは見ただけで鬱陶しく思えるし、食事は静かに食べたい。 そんなことを常々思っているはずなのに。 「ほんと、あの景色はきれいだったわよね」 「そうですね。私も見慣れてたはずなのに感動しました」 やはりあの景色だろう。 何もかもが茜色に染まるあの景色が自分の心に焼け付いて離れることがない。 あの景色が自分の心にどんな影響を及ぼしたのかは予測はつかない。 ただ、人の笑顔や感動を綺麗だと、美しいと思えたのは、凄まじい変化だと感じている。 今、ルイズやシエスタの顔を見てもそれほど綺麗だとは思わない。 やはりあのときの一時的な気の迷いだったのだろう。 しかし、ルイズが、シエスタが喋るたび、それを面白いと思う。 私はルイズを見下していた。シエスタを都合よく動かせる女だと思っていた。 そんな彼女らと共にいて楽しいと思っているということは、私は今そう思っていないということだろう。 「どうしたの?そんなにやにやしちゃって?」 ルイズが本当にどうしたのだ?といった具合でこちらを見てくる。 「いや、楽しいな、思ってな。どうだ?ルイズも来てよかったと思わないか?」 「……実は初めそんなに期待してなかったの。どうせ田舎だろうし、そんな面白いものないだろうって思ってたわ」 「その口ぶりだと見事に期待を裏切られたらしいな」 そう言うとルイズが素直に頷く。 「ほんとに来てよかったと思ってるわ。心の底から。わたし、今ならきっと最高の詔を考えられるわ」 「そうか。よかったな」 「ヨシカゲ、誘ってくれてありがとう」 「こっちも、連れてきてくれてありがとう」 きっと普段ならありえない二人の会話。 普段のルイズなら、絶対に私にこんなことを言ったりしないだろう。 私も絶対に、こんなことを言ったりしない。 でも今夜は特別だった。 「わたし、りっぱな貴族になるわ。それで守るの。ここの人たちを、国のみんなを。アルビオンみたいに守ってもらうだけ、見てるだけはもうしたくない」 「安心しろ。そう思ってるだけで立派な貴族だ。あとはその思いを心に何時までも留めておければ、かならずなりたい自分になれるさ」 私はそう言ってルイズに笑いかけた。 夕食も終わり、皆がそれぞれの部屋にいるであろうこの時間。 私も例に漏れず自分の部屋にいた。 「で、ヨシェナヴェを食べたんだけど、こう、なんというか懐かしい味がしたな。きっと昔私も寄せ鍋食べてたんだよ」 「そりゃ相棒の国の一般的な料理だろ?食ったことあって当然なんじゃねえのか?」 「そうかもしれないな」 そしていつものようにデルフと喋っていた。 猫はここが定位置だというように私の肩に乗っている。 「しかし相棒、今日はなんだか活き活きしてんな。なんかいいことでもあったのか?」 「ああ、もうすぐ空が飛べるかもしれないしな。いつかお前も乗せてやる。一番乗りでな。それと素晴らしい景色をみたんだよ」 「……おでれーた。相棒がこんなにも素直にぺらぺら喋るなんてよ」 「それにしても今日は疲れたな。結構移動したからな。さっさと眠るか」 デルフを鞘におさめ、ベッドの横に立てかける。 そして猫をベッドに放り投げ、自分もベッドに寝転ぶ。 それからまもなく、私は眠りに落ちていくのを感じた。 そのとき、思い浮かんだのは、忘れたはずのあの人影だった。 誰そ?彼? ひどい頭痛によって目が覚める。 身体を起こし、頭を振り、頭痛を紛らわす。 さっきまで本当にいやな夢を見ていた。 私の身体を砕くあの腕が再び私の身体を砕くのだ。 しかもあの杉本鈴美が私に喋りかけてくる。 貴様に安心は訪れないのだと。 やがて頭痛もなくなり、頭がようやく周囲の状況を飲み込み始める。 自分の隣に丸まっている猫。 立てかけられている剣。 簡素なつくりのベッド。 同じく簡素な机。 そして少し小さめの洋風の部屋。 ……どういうことだ!? さっきいた場所と全然違うぞ!? 手を見る。 そこにさっきまでいたはずの恋人たちの姿がそこにはなかった。 それを確認したとたん、自分の身体に酷く抗い難い衝動が駆け巡るのを感じた。 川尻浩作として暮らしていたあの日々のように、長い間我慢しているような感じだった。 人を殺さずにはいられないという、自分の性を。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8936.html
前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 「………ウーン、これも特に問題は無いみたいだね」 ここはトリステイン魔法学院近くの森の中。 予定していた最後の呪文を調べ終わると、ディーキンは一息ついて傍にあった手ごろな大きさの石に腰を下ろした。 最初は学院の中庭らしき場所で作業をしようと思っていたのだが、行ってみると召喚の儀式の時に見た青い竜が中央に寝そべっていた。 そのため、予定を変えてここまで足を運んだのである。 フェイルーンのコボルドは、一般的に自分達がドラゴンの末裔であると同時に、その奉仕種族でもあると考えている。 大抵のコボルドはドラゴンを畏敬し、もしドラゴンに出会えれば採掘と収奪で溜め込んだ宝を惜しげも無く差し出して忠実に仕えようとするものだ。 ディーキンが生まれた“血染めの牙”族のコボルドたちも、主人と仰ぐ白竜のタイモファラールにはみな忠実に仕えていた。 もちろんディーキンはコボルドの典型からは大きく外れているのだが、彼もまたドラゴンに対しては強い憧れを抱いている。 と同時に、前の主人の影響もあって、ドラゴンを恐れる気持ちも同じくらい強い。 中庭に寝ているイルククゥを避けたのも、ひとつにはそのドラゴンに対する畏怖心からである。 まあ今では自身もドラゴンなのだし、アンダーマウンテンでは仲間と共に強力なドラゴンを倒した経験もあるので、絶対的に怖いというほどでもないのだが。 そうはいっても、普通の人間だって用もないのに無闇に寝ているドラゴンを起こしたいとは思わないだろう。 第一、せっかく気持ちよさそうに寝ているのを意味も無く近くで作業して起こしても申し訳ない。 ディーキンは一息入れながら、改めて先程見たドラゴンの姿を思い返してみる。 あのドラゴンは体色はブルー・ドラゴン(青竜)に若干似ていたが……、額に角は無かったし、明らかに見たことのない種類だった。 昨夜見た本の記載からすれば、あれはおそらくウィンド・ドラゴン(風竜)とかいうこちらに住む種の竜だろう。 流石に一回通し読んだ程度では全体的にうろ覚えだが、竜族に関しては特に個人的に関心が強いのでよく覚えている。 この世界には、トーリルで一般的にドラゴンと呼ばれる、トゥルー・ドラゴン(真竜)族はいないらしい。 過去に存在した韻竜とかいう種類の竜は、知能が高く言葉を解し、魔法を使ったとあるのでトゥルー・ドラゴン族だったのかもしれないが……。 彼らは遥か昔に絶滅し、今では動物としては賢い部類と言う程度の、言葉を解すことさえできないドラゴンしか残っていないのだという。 同様にワイヴァーンのような亜竜族も、ほぼ動物並みの知能しか持っていないらしい。 コボルドと同様、ここでは同じ名称の種族でも随分な違いがあるようだ。 まだまだ知らない生物も多いだろうし、時間を見て図書館へ足を運び、さまざまな本を繰り返し読んでおく必要があるだろう。 さておき、ディーキンは先程、暫しの精神集中によって呪文の力を回復させた後、自分の使える様々な呪文を順々に試していってみた。 それらはいずれも、フェイルーンで使った時と同じように、問題なく機能していた。 女神ミスタラの“織”が存在しないであろうこの世界で、果たして全ての魔法が問題なく機能するのか若干不安だったが、杞憂だったようだ。 以前に読んだ本によれば、“織”は魔法というテーブルの上に掛けられたテーブルクロスのようなものであるらしい。 テーブルクロスという魔法の彩りが無くなっても、テーブルそれ自体が無くなるわけではない、ということだろうか。 無論そうはいっても、いきなり“織”が無くなったら……、 つまり突然テーブルクロスが引き抜かれでもしたら、上に乗っているものはみな酷い影響を受けるだろう。 あちこちで物が転倒したり割れたりして、テーブルのそこら中で酷い惨事が起こるに違いない。 だが今の場合は、ディーキンは“織”の無い世界に……、いわば別のテーブルの上に、手で持ち上げて穏便に移された食器のようなもの。 ゆえに特にこれといった悪影響は受けなかったのだろう、と推測する。 どうやらハルケギニアは基本的にはトーリルと同じような性質の物質界らしい。 特定の元素や属性への偏りはないし、影界やエーテル界、アストラル界などの中継界ともちゃんと接しているようだ。 おそらくは別の宇宙に属するであろうこの世界でも招来呪文が正しく機能するかは、昨夜のエンセリックの話もあって特に念入りに調べたのだが……、 ルイズがディーキンを別宇宙から招請したのと同様に、ディーキンも中継界を通じて元の世界から同じクリーチャーを招来できるようだ。 「ちゃんと魔法が使えるみたいでよかったの、こっちにいる間、ずーっと魔法が使えなかったりしたら不安だもの。 それに魔法が使えないとボスに連絡もできないし、ルイズの仕事もうまくやれないかもしれないしね」 呪文で問題なくトーリルの宇宙に接続できるなら、仲間と連絡を取る手段などいくらでもある。 ただまあ、こちらの事もだいぶわかってきたとはいえ、まだ本で読んだだけだし……。 とりあえず数日実際に経験してみて、暮らしが落ち着いてきたら一度報告を入れるのがよいだろう。 もちろん連絡だけではなく、帰還して直接報告することもできるだろうが……、 それはまだ避けた方がいい、とディーキンは判断した。 こちらでの魔法の使用には制限がないようだが、外から自力で入ってくる来訪者の類がいないという点からしてまだ安心はできない。 仮に昨夜のエンセリックの説の通りこの世界全体に障壁のようなものがあるとすれば、その障壁には随分と奇妙な性質があるに違いない。 例えば一方通行の性質があって、こちらかから召喚したり出て行ったりは自由でも、外から入ることはできないというような事だってあり得るだろう。 フェイルーンに一旦報告に戻ったはいいが、さてハルケギニアに引き返そうとしたらできなかった、などということになっては困る。 それに関しては試してみるわけにもいかないし、何かの手段で確信が得られるか、戻ってもよくなるまではこの世界からの出入りは避けるべきだ。 もしも戻れなければ自分もガッカリするし、ルイズや、やオスマンら教師達にも迷惑が掛かってしまう。 ルイズにもう一度招請してもらえれば問題ないのだが、召喚する対象は自由に選べないという事なので彼女をあてにするわけにもいくまい。 「さて呪文を試すのは終わったから、次は……、 アア、洗濯に行かないとね」 いきなり寝ているドラゴンに出会ったのでそちらに気をとられていて記憶が曖昧だが、確か中庭で水場らしきものを見たような気がした。 森の中で小川でも探して洗ってもいいが、水場で洗う方が綺麗だろうし干す場所にも困らないだろう。 自分の洗い物なら別に小川でも気にしないし、ドラゴンの寝ていた中庭に戻って洗うよりむしろそっちを選んだだろうが……。 使い魔として仕事をすると約束した以上、ドラゴンが怖くて洗い場でちゃんと洗えませんでしたなどといういい加減なわけにはいかない。 「……うーん、ディーキンは心配なの。ちょっと胃が痛いかも……、 (ゲップ!)―――あ、大丈夫だ」 平気な以上、使い魔として行かなくてはならないだろう。 行くべきだ。行くしかない。 「……うう……。 ♪ あ~、不運なディーキン、だけどとっても勇敢~。 ディーキンはとっても勇敢なディーキン、ディーキンは……」 内心、あのドラゴンがもう起きてどこかに行ってるといいなあ~……、と考えつつも、 ディーキンは洗濯物を入れた鞄を背負って、景気づけに鼻歌など歌いながら学院の方へ戻って行った。 「うんしょ、うんしょ……、」 場所は変わって、ここはトリステイン魔法学院の敷地内。 教師生徒らが起きてくる前に掃除洗濯や朝食の準備などの雑務を終えなくてはならないため、学院で働く平民たちの朝は早い。 今日もエプロンドレスとホワイトブリムを着た若いメイドが一人、早朝から大量の洗濯物を運んでいる。 彼女の名はシエスタ。 少し長めのボブカットにした艶やかにきらめく漆黒の髪と瞳を持ち、素朴だが愛嬌のある顔立ちをしている。 輝くような白い肌にはシミ一つなく、そのきめ細かさは貴族の子女にさえ早々及ぶものはいないだろう。 「うんしょ……、っと。 さあ、早く洗ってしまわないと―――」 「♪ 靴下はいて、苦しみもとめて、幸せすてて~。 ディーキンはイカすコボルドだから~……」 「……え? ―――っ!?」 シエスタは唐突に後ろから妙な歌が聞こえてきたために振り向き……、 ぎょっとして、思わず洗濯物を取り落とした。 歌声の主は、見たこともない異様な姿の亜人だったのだ。 小さな子どもくらいの身長しかないものの、ドラゴンのような大きな赤い翼と剣呑そうな鋭い爪を持つ、人型の爬虫類めいた姿。 しかも革の鎧を着こんでおり、腰には小剣を帯びるなどして武装している。 シエスタは咄嗟に亜人の傍から飛び退くと何か身を守るものを求めてあたふたと懐を探りながら、声を上げて人を呼ぼうとした。 が、亜人の方はその様子を見ると慌てて両手を広げ、首を横に振った。 「アー、待って、待って! ディーキンはあんたも、誰も傷つけるつもりはないよ。 どうかディーキンを殺さないで。ディーキンはただ、水場を探していただけなの」 「た、………あ、……ええ、と……?」 シエスタはその様子を見て困惑し、どう行動するべきだろうかと考えた。 ここは学院なので使い魔の類である猛獣や幻獣は珍しくないが、亜人などを見たのは初めてだった。 それゆえいきなりの遭遇で驚いたが、もし友好的な相手ならば敵意を向けるべきではない。 それは、正しくないことだから。 ……だが、しかし……、学院内に何故、亜人が入り込んでいるのだろう? 人間、それも多数のメイジが住むこんな場所へ、何が目的で? (に、人間の言葉を話す亜人は、先住魔法を使うって聞いたことがあるし……) あるいは、こちらを油断させる罠なのかも知れない。 シエスタは動きを止めながらも懐の果物ナイフからは手を離さず、困惑と緊張とが入り混じった表情で油断なくディーキンの動きを見つめ続けた。 そんなシエスタの様子を見て、ディーキンは軽く溜息を吐く。 「……ふう。ディーキンはね、よくこんなことを言うんだよ。たくさん、何度もね。 ディーキンは、ディーキンに話しかける代わりに棒とか鋤とかで攻撃しようとする人には慣れてるの。 でも、たまに一日中そんなことをして、すごく疲れる時があるよ」 「え、ええと……、あの、あなたは?」 「ン? ディーキンはディーキンだけど、もしかして名前を言うのを忘れた? それならディーキンは謝るよ。ディーキンはディーキンだよ」 「え? あ、あの……」 「……ウーン、あんたは耳が悪い人なの? ならもう一度言うよ、ディーキンはディーキンだよ。 それともあんたは、ディーキンのフルネームとか、もっと教えてほしいの? ディーキンはディーキン・スケイルシンガー、バードで、ウロコのある歌い手、危険を切り抜ける冒険者、そして物語の著者だよ」 「……そ、そうではなくて……、あ、いえ、ご丁寧にどうも……」 シエスタはディーキンの大人しい態度と奇妙な話し方に戸惑いながらも、懐から手を抜いてお辞儀をする。 そうしながらまた、この亜人の子ども(たぶん)をどう扱ったらいいものかと考えた。 依然として状況はよくわからないが、とりあえずこの亜人にはどう見ても悪意はなさそうに思える。 となると、まずはここに来た事情を聴くべきだろうか? だがどんな事情があるにせよ、この子が他の人間に見つかれば騒ぎになる。 ここには大勢のメイジがいるのだ、不審な亜人の子などは見かけ次第、弁明の暇も無く魔法で始末されてしまいかねない。 ここは事情がどうあれ、すぐにここから立ち去ってもらう方がお互いのためだ、とシエスタは判断した。 「……あの、ディーキン、さん? いきなり失礼な態度をとってしまってすみません、あなたが悪い人でないのはよく分かりました。 私はシエスタといいます、この学院のメイドをやってます」 シエスタはそう言って、謝意を示すために一度軽く頭を下げてから言葉を続ける。 「でも、ディーキンさんは何の用でここに来られたんですか? ここは、その、人間の住む魔法学院で……、メイジの方に見つかったら、魔法で殺されてしまうかもしれませんよ? もしあなたが迷い込んでここにきたのなら、他の人が起き出してこないうちに出口まで案内します、けど」 ディーキンはそれを聞くと、ちょっと首を傾けた。 「ンー……、ディーキンは水場を探してここに来たの。 ディーキンは普段は人間が入るなっていうところには入らないよ、でも今日はちょっと理由があって……」 「あー、いえ、私はあなたを咎めているわけじゃないですよ? でもですね、どんな理由かは知らないですけれど、他の人があなたを見たら、……?」 シエスタはそこまで言いかけて、ふと彼の喋った妙な単語に気が付いた。 「………え? コボルド?」 「そうだよ、ディーキンはまさにコボルドだよ。 少なくとも、最後にディーキンが鏡を見たときはね。 ディーキンはあんまり鏡を見ないの。ディーキンには、人間が使う鏡の位置はたいてい高すぎるからね」 シエスタはきょとんとして、まじまじとディーキンの顔を見つめた。 コボルドを見たことはまだないが、聞いた話では犬に似た頭部を持つ亜人のはず。 目の前の亜人はどう見ても姿は犬とは似ても似つかない……が、そういえば喋り方や何かに仔犬を思わせるような部分もあると言えばある。 「……、あ………」 シエスタはふと、ディーキンの左手の甲にヘビがのたくっているような奇妙な模様があるのに気が付いた。 それを見て唐突に、あることに思い当たる。 「……もしかして、コボルド……の、使い魔……? 昨夜、ミス・ヴァリエールが召喚したって噂になってた……」 「オオ、ディーキンはここでもう噂になってるの? なのに誰もケチなコボルド野郎を追い出せとか言ってこないんだね、ここは本当にいいところだとディーキンは感動するよ。 ……うーん、そういえばさっきの挨拶に、ルイズの使い魔っていうのを入れ忘れたかな? それじゃあ、ディーキンはあんたとルイズに失礼したよ。今度からは忘れないようにするね」 シエスタはそれを聞くと、慌てて姿勢を正してお辞儀をする。 「そ、それは失礼しました! 貴族の使い魔の方とは思わず、失礼なことを……」 シエスタは貴族の使い魔とは知らずに不適切な要求をしたことで彼の機嫌を損ね、そのために彼の主の怒りを買うのではないかと心配しているのだ。 ディーキンはその様子を見てきょとんとする。 それからとことことシエスタの方に歩み寄り、下げた頭の更に下から彼女の顔を見上げた。 「ディーキンは別に、あんたたちがいろんな所に住んでコボルドに出ていけって言うとしても非難したりはしないよ。 ディーキンだって普通のコボルドはあんまり好きじゃないし、ディーキンは違うって、みんながすぐに分かってくれるとは思わないもの。 それにディーキンはあんたが失礼な人だとも思わないの。コボルドに謝ってくれる人は滅多にいないからね」 見慣れない爬虫類の笑みは一見して意地悪そうなものにも思えたが、その瞳には言葉通り純粋に穏やかな歓びが浮かんでいることにシエスタは気が付いた。 一方ディーキンは、シエスタの顔を間近で覗き込んであることに気が付き、内心で首を傾げた。 しかしまずは本題をいい加減に片付けようと考え、それを確かめることは後回しにする。 「ええと、それで、さっきも言ったけど。 ディーキンはルイズから洗濯を頼まれて水場を探してるの。 もしかしてあんたもこれから洗濯だったら、案内してくれないかな?」 「……それじゃあ、ディーキンさんは詩人として遠くを旅してきて、物書きもされてるんですね。 これまでにどんな物語を書かれたんですか?」 「ディーキンは主に叙事詩物語とか、旅の長編大作を書くよ。 一緒に旅してきた英雄のボスと助手のコボルド、それにみんなの物語をね」 シエスタは水場で洗濯を干しながら、ディーキンと雑談を楽しんでいた。 初対面では驚かされたものの、話してみるとシエスタはすぐにディーキンと打ち解けて、彼の異様な外見も気にならなくなっていた。 最初シエスタは、お詫びも兼ねて洗い物は自分が引き受けると申し出た。 だが、ディーキンは自分が頼まれたことだし、やり方も覚えたかったのでコツだけ教えてほしいと言ってそれを断った。 貴族の高価で繊細な下着を爪でひっかけて破いたりしないかと、シエスタは指示を出しながらも内心ハラハラして見守っていたのだが……。 いざ始めてみるとディーキンはほんの少しコツを教わっただけで、シエスタとほぼ同じくらい早く上手に、てきぱきと洗い物を片付けてしまったのだ。 ただ、ディーキンでは背が低すぎて難儀するため、洗い終わった洗濯物を物干し台に干す作業はシエスタがすべて引き受けている。 その代わりに、暇な時間ができたディーキンからお礼代わりにいろいろと話を聞かせてもらっているというわけだ。 なお、中庭にいた青い竜は既に目が覚めて主人の少女を乗せ、どこかへ飛び立っていったためにいなくなっていた。 「……ふふ、私、英雄なんて物語の中の、自分には縁のないものだと思ってました。 だけどディーキンさんは、英雄と旅をしてきたんですね」 「ディーキンも最初は本の中でしか英雄を知らなかったの。コボルドの小さな洞窟で暮らしてた時にはね。 でもディーキンは、洞窟の外にはもっと広い世界があって、どこかに英雄がいて、新しく英雄になる人もいることは本で読んで知ってたよ。 だからボスを初めて見た時、『ああ、この人が英雄だ』ってわかったの。 もしも彼がディーキンを導いてくれたら、ディーキンもいつか彼のような冒険者に、英雄になれるかも知れないって思ったんだ」 シエスタはその言葉に何か思うところがあったのか、ふと手を止めてディーキンをじっと見つめると首を傾げて微笑んだ。 「……ディーキンさんは体は小さいけど、私よりずっと大人なんですね。 私もいつか、そんな英雄さんに会ってみたいなあ……」 「ン? それは分からないの、ディーキンはシエスタの年齢を知らないもの。 ……ウーン、でもたぶん、あんまり違わないんじゃないかな?」 ディーキンはシエスタの言葉を聞いて首を傾げながら考えた。 シエスタは、外見から判断すると20歳にはなっていないくらいだろうか? まあ、たぶん自分と大差はない程度だろう。 「ディーキンもシエスタにボスの事を知って欲しいと思うよ。ここに棲んでいる大勢の人たちにもね。 ウーン、ディーキンは前に出版した本を一冊持ってるけど……、文字が違うみたいだからここの人たちには読めないね。 今は新しい物語を書くのが先だけど、落ち着いたらディーキンはいつかきっと翻訳するつもりなの。 もしシエスタがボスの事を早く知りたいのなら、先に読んで聞かせてあげるよ」 「わあ、いいんですか? じゃあ、残念ですけど今はまだ仕事がありますから、今度是非ゆっくり聞かせてくださいね」 シエスタは洗濯物を干し終えると、少し屈み込むようにしてディーキンに丁寧にお辞儀をし、学院の方へと戻って行った。 ディーキンはぶんぶんと手を振ってそれを見送り、ふと首を傾げた。 そういえば初対面のシエスタからまともな扱いを受けてちゃんと会話できたことが嬉しくて、彼女の出自について確認を取るのを忘れていた。 あの、まるでアダマンティンのように艶やかな、金属めいた光沢を帯びた漆黒の髪。 奥底に星のような煌めきを宿した、深みのある黒い瞳。 ただきめ細かいというばかりでなく、一点の曇りも無く仄かに輝く白い肌。 愛想がよく親しみやすい優しげな雰囲気を満身に纏っていながら、凡百の貴族にも勝る名状しがたい高貴さをも同時に感じさせる。 それらのささやかながら常人離れした特徴から見て、シエスタはおそらく――――。 「……ウーン、でもまあ、今考えても仕方ないね」 別段急ぐ話でもないし、そもそも彼女が自分の血筋について知っているという保証もないのだ。 仕事があるシエスタを引き留めてまで、今聞き出すほどの事ではないだろう。 今度ボスの話をするときにでも、ついでに聞くとしよう。 ディーキンはそう結論すると考えを打ち切り、リュートをしまうなどの後片付けをして、ルイズを起こすために自分も学院へ戻って行った………。 「………ウーン、そろそろルイズを起こした方がいいのかな?」 洗濯から帰ってきても、ルイズはまだ寝ていた。 なのでディーキンは、しばらく部屋の隅で本を読み返したり、物語をまとめたりして静かに過ごしていたのだが……。 冒険者としての生活やドラゴンへの変化によって得た鋭敏な感覚は、他の部屋の生徒たちが既に大方起きて動き出しているらしいことを伝えてくる。 ルイズが食事や授業に遅れては申し訳ないし、使い魔として起こすべきだろうか。 毎日学生として過ごしているのだからちゃんと間に合う時間に起きるだろうとは思うが、昨夜は遅かったし、今日に限って寝過ごしているのかもしれない。 ディーキンはベッドの上でいまだにすやすやと寝息を立てているルイズのあどけない寝顔を眺めつつ、首を傾げた。 窓からはすがすがしい朝の光が差し込んでおり、暗闇に適応した種族であるディーキンにとってはやや眩しすぎるくらいだ。 よくこんな明るい中で平気で寝ていられるものだなあ、と少し呆れた。 というか、ルイズは貴族とはいえ修行中の見習いメイジなのに、こんなのんびりした生活を送っていていいのだろうか? フェイルーンでは大抵のメイジは弟子の育成など面倒だと考え、自分の関心事に注力したがるものだ。 そのため、見習いメイジは師匠から教授の見返りとして相当の対価を要求されたり、雑務を大量に命じられたりするのが普通である。 悪名高いサーイのレッド・ウィザードなどは、弟子をまるで奴隷のように扱い、日常的に虐待しているという。 こっちの世界の見習いメイジは、どうやらずいぶんと気楽な修行生活を送っているらしい。 ここではフェイルーンとは違って不公平な一対一の師弟関係は一般的ではなく、多くの生徒に組織的で公平な教授を与える制度が整っているのだろう。 それ自体はとても素晴らしいことだと思う……が。 それにしても見習いならば普通は多少の雑務ぐらい与えられ、こなして然るべきではなかろうか。 ボスだって、ドワーフのウィザード・ドローガンの下で修業していた時にはそれなりに雑務もこなしていたというし。 雑用は雇い人や使い魔に任せて見習いの身分でぐうたら惰眠を貪っていても咎められないというのは、フェイルーンの基準で見れば甘やかしすぎに思える。 まあディーキンには人間の文化、それも異世界のそれに口出しをする気など毛頭ないし、別にどうでもいいことである。 軽く首を振って取りとめのない考えを振り払うと、とりあえずやはりルイズを起こそうと決めた。 気持ちよく寝ているのを起こすのも気が引けるが、まあ遅刻でもする方がもっと問題だろうし、仕方あるまい。 ディーキンはベッドにぴょんと跳び乗ると、ルイズの枕元あたりをぼふぼふと手で叩いて揺さぶりながら耳元で声をかけた。 「ルイズ起きて、朝なの。 今、ディーキンは、うるさいオンドリなの。ルイズを起こすよ! ♪ コッカ ドゥ ドゥル ドゥ~~~~!!」 「ZZZ……、………!? な、なななによ! なにごと? ……ひっ!? あ、亜人っ!?!」 ルイズはいきなり耳元で妙な音響を鳴らされて、あわてて飛び起き……、 すぐそばで爬虫類めいた顔が自分を覗き込んでいるのに気付いて小さく悲鳴を上げ、毛布を引き寄せて身を隠すようにしながらベッドの上を後ずさる。 ディーキンはその反応に首を傾げたが、すぐに起き上がった時のルイズの眠そうな目とふにゃふにゃした痛々しい顔を思い出して状況を察した。 「ンー、もしかしてまだ寝ぼけてるの? もし忘れたのなら自己紹介するよ、ルイズ。 ディーキンはディーキンだよ。バードで冒険者、物語の著者、そして昨夜からはルイズの使い魔だよ。 ついでにさっきは、あんたを起こしたうるさいオンドリだったよ」 「……あー……、そうね、昨日召喚したんだっけ。 っていうかニワトリってなによ。ディーキン、さっきの妙な鳴き声はあんたの仕業ね? 起こしてくれるのはいいけど、明日からはもう少しましな起こし方にしなさい!」 「ウーン? ……わかったの。 ニワトリは嫌なんだね、ディーキンは何か他の事を考えておくよ」 「……変わった事はしなくていいから、普通にそっと肩を揺さぶるとかしてくれればいいのよ」 溜息を吐いてそういうと、ディーキンの左手の甲にルーンがあるのに気が付いた。 「あ……、ルーン、左手に入れたのね」 ディーキンは少しばかり自慢げにルーンを差し出して見せびらかしながら、こくこくと頷いた。 手の甲にルーンを入れたのは、衣服に隠れる胸部や足の裏などより皆の目につきやすく、使い魔だと分かってもらいやすいだろうという思惑からである。 皆がルーンの事など気にも留めなくなった頃に隠しやすい場所なら更に都合がよく、その意味でも手の甲の方が、同じ目立つ場所でも額などよりよいだろう。 ディーキンは普段グラブを装備しているので、しばらくの間はグラブを外して皆にルーンを見せ、誰も気にしなくなった頃にまたグラブで隠せばいい。 《秘術印(アーケイン・マーク)》は、生物に刻むと徐々にかすれて一か月程度で消えてしまう。 ゆえに、誰も使い魔であることを疑わなくなった後はなるべく衆目に晒し続けたくないのだ。 また、ルーンは既存の物を 呪文学 に照らしてディーキンなりに分析し、蜥蜴や竜などに刻まれるものと類似した特徴・様式のオリジナルを創作した。 既存のルーンをそのまま刻んで『このルーンは蜥蜴に刻まれるはずなのに何故未知の亜人に?』ということになってはまずいだろうという考えからだ。 参考にしたルーンにはメイジの属性を示すらしい特徴が表れているものが多かったが、主のルイズの属性がよくわからないのでそこはぼかしておいた。 ディーキンが赤竜の血を引くことを考えれば属性は[火]かもしれないが、その力は後天的に訓練で目覚めさせたものなので断定まではし難い。 コボルドは洞窟に住み、どちらかと言えば[地]に親和性の高い生き物だし、音を扱うバードであることを考えれば[風]だってありえる。 早計に判断して、後でルイズの属性が判明したときにそれと違っていたら疑いを招く恐れがある。 そんなわけで、偽物ひとつ刻むのにも、結構頭と時間を使ったのである。 ちょっとは自慢したくもなるというものだ。 「そう、まあ偽物とはいえ、あとでコルベール先生に報告しておかないとね。 じゃあ……、ディーキン、着替えるから私の服と下着を出して」 ディーキンはそれを聞くと、首を傾げた。 「ンー……、いいけど、どこにあるの? ディーキンは場所を知らないし、そのくらいなら自分でできるでしょ? 説明してもらって探すよりも、ルイズが自分で取る方が早いんじゃないかな」 「亜人のあんたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいる時は自分で服なんて着ないのよ」 「ディーキンは下僕じゃなくて、使い魔なの。 命令なら取るけど、別に怠けたいとかじゃなくて、本当にルイズが自分でやった方が早いと思うよ?」 ルイズはそれを聞くと拗ねたように唇を少し尖らせ、指をぴっと立てて説明する。 「そりゃそうだけど……、普通は貴族なら、着替えみたいなちょっとした物は召使いに用意させるか、魔法で取るのが嗜みなのよ。 だから私は、使い魔のあんたに取って来てもらいたいの。 ……自分が召喚した使い魔に持って来させれば、つまり自分の魔法で取ったのと同じことになるんだから」 ディーキンはそれを聞いて昨日の話を思い出し、納得した。 にわかには信じがたい話ではあるが、ルイズは異世界から自分を招請するほどの高等魔法を使っていながら、今までは魔法が使えなかったらしい。 あたりまえの貴族、あたりまえのメイジらしい事を、初めて成功した魔法の成果である使い魔を使ってやってみたいということか。 「わかったの、ディーキンはルイズのために取って来るよ。それで、どこにあるの?」 「服はその椅子に掛かってる制服を取ってくれればいいの、下着はそこのクローゼットの一番下の引き出しに入ってるわ。 これからは毎日同じように用意してもらうからね、覚えときなさい」 「わかったの、ディーキンはルイズの指示を了解したよ」 ディーキンは返事をすると、とことことクローゼットまで歩いて行って下着を一枚取り出す。 それから椅子の所へ行くと、少しだけ背伸びするようにして制服を取り外すと、下着と一緒にルイズの所へ持っていった。 「着せて、……っていうのは難しそうね。まあいいわ」 ルイズは脚をぴんとのばしても1メイルあるかないか程度のディーキンの身長や、手に生えた爪やウロコを鑑みて、着替えさせるのは断念した。 まだ体が目覚めきっていないのか、だるそうにしながら自分でネグリジェを脱ぎ、新しい下着と制服に着替えはじめる。 「……にしても、何も背伸びなんかして椅子から服を外さなくてもいいじゃない。 あんたは昨日魔法で物を動かしてたでしょ、それで取りなさいよ」 「ディーキンのいたところでは、普通は服を取るくらいのことで魔法を使わないの。 魔法を使わなくても取れるものは手で取るし、歩いていけるところに行くのに飛んだりはしないんだよ。 ウーン……、けど、ルイズがどうしても魔法で取る方がいいのなら、なんとか考えてみるけど」 「ふーん。魔法でできることを体を使ってやるほうがいいなんて、変わってるわね」 ハルケギニアのメイジは、高貴な貴族としての血統の証である魔法の力に誇りを持っている。 そして、魔法は社会に浸透していて、日常的に用いられることが当然になっている。 ルイズがそうであるように、普段からまったく魔法を使わず平民と同じように体を使って歩いたり運んだりするメイジはむしろ嘲笑される。 そのような常識の元で生まれ育ったルイズが、ディーキンの説明したような社会を変わっていると思うのは無理もないだろう。 「……まあ、あんたは随分離れたところから来たみたいだし、場所が違えば習慣も違うのかも知れないわね。 そうね、いつもかもとは言わないけど、大変じゃなければ魔法を使ってくれる方がいいわ。 ちょっとした雑用みたいなことはメイジならちょくちょく魔法でやるの、それが私たちの嗜みよ」 「そうなの? ウーン、魔法で雑用とかはあんまりしたことがないけど……。 ルイズがそういうなら、ディーキンはなんとかしてみるよ」 ディーキンは請け負ったものの、さてどうしたものかと考え込む。 昨夜読んだ本によれば、ここのメイジたちは『精神力』という概念を持っており、それを消費して呪文を使うのだという。 高レベルの呪文ほど精神力を大量に消費してしまうが、ちょっとした雑用に使う程度の低レベルの魔法なら気軽に何度も唱えられるらしい。 フェイルーンにおけるメイジはそれとは違い、呪文のレベル別に『スロット』を持っている。 下位のスロットをいくら潰しても上位のスロットの代替にはならず、上位のスロットは下位のスロットの代わりに使えるものの、一対一交換しかできない。 4レベル呪文のスロットを潰して1レベルの呪文に当てても、使えるのはスロット1つあたり1回で固定だ。 こちらにはこちらの利点もあるものの、総合的に見ておそらくハルケギニアの魔法よりも燃費の悪いシステムだといえよう。 まあ、そういった不便な点をある程度解消できる特技などもあるのだが……、ディーキンは今のところそういった技術は習得していない。 それゆえ雑用で頻繁に呪文を唱えていたらスロットがあっという間に枯渇してしまい、本当に呪文が必要な時に困ったことになるだろう。 ……となると、魔法の使い方を少々効率よく工夫しなくてはなるまい。 そもそも日常生活で魔法を使わなければいいだけの事であって正直考えるのが面倒だが、それが使い魔としての仕事なら仕方ない。 ルイズがさっき言っていたように《奇術(プレスティディジテイション)》を使えば、1回唱えるだけで1時間の間は何回でも効果を発揮できるのだが……。 しかしあの呪文では、おそらく効果が微弱すぎて出来ない雑用の方が多いだろう。 たとえば念動ならば持ち上げられる最大重量は1ポンド(約400グラム)で、しかもゆっくりとしか動かせないのだ。 それではかろうじて制服の上着を運べるかどうか程度の力しか出せまい。 (ウーン……、けどまあ、どうとでもなるかな……?) 「ほら、ディーキン。着替え終わったから食堂に行くわ、ついてきなさい」 「わかったの。ディーキンは金魚のフンみたいに、ルイズにしっかりくっついていくよ」 ディーキンはいくつかの案を頭の中でぼんやりと練りながら、着替えの終わったルイズに続いて部屋を出た………。 前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1867.html
すっかり慣れた、しかしこの場にそぐわぬどこか甘い香りが鼻腔を くすぐり――ギアッチョの意識はゆっくりと眠りの海から浮かび上がる。 「・・・・・・ああ?」 開ききらない瞳で仰向けのまま左右を探ったギアッチョの、それが 最初の言葉だった。 第三章 その先にあるもの ゆるゆると上体を起こして、ギアッチョはいささかぼんやりした 視線を下に向ける。視界に入ったものは、見間違えようも無くルイズの ベッドだった。そしてその持ち主は―― 「・・・・・・」 ギアッチョの隣で、すやすやと寝息を立てている。 「ここにブッ倒れて・・・そのままっつーわけか」 「我ながら情けねーな」と呟いて、ギアッチョは小さく溜息をついた。 何とか途中で気力が切れずに済んだが、もしもガキ共の前で倒れて いたらと考えると心底自分が腹立たしくなる。 「少々かったりぃが・・・鍛え直すとするか」 立ち上がろうと身体に力を入れるが、上着の裾が何かに引っ張られて ギアッチョは再び腰を下ろす。何事かとそちらを見れば、ルイズの 小さな手が服の端を掴んでいた。引きはがそうと服を引っ張るが、 一体どんな夢を見ているものか、ルイズは頑なに手を離そうとしない。 「・・・おい」 声をかけてみるが、少女が眼を覚ます様子はない。 「・・・クソガキ、起き――」 頭を掴んで揺さぶろうと伸ばした手を、ギアッチョはピタリと止めた。 考えてみれば一日以上寝ていなかったのだ。自分と違って、ルイズは そういうことに慣れてはいないだろう。そう考えると、無理矢理起こして しまうことも少々躊躇われる。 「・・・チッ」 まあいい、特に急ぐ理由もない。相変わらずの凶相で一つ舌打ちして、 ギアッチョは再びベッドに背を預けた。 「・・・ぅん・・・」 浅いまどろみの中で、ルイズは一日ぶりの睡眠を噛み締めていた。枕に 頬をうずめて、毛布を胸に抱き締める。いつもと同じそれが、今日は 何故だかとても幸せに感じられた。そんなわけだったから、 「・・・・・・ギアッチョ・・・」 等とうっかり寝言を洩らしてしまっても、それは仕方のないことで。 「ああ?」 しっかり聞こえていたギアッチョに無愛想に言葉を返されてしまったと しても、やはり仕方のないことだった。 ただ、ルイズ本人はそうは思わなかった。自分の言葉で微かに目覚めた 彼女の心臓は、ギアッチョの声で跳ね上がった。 「ようやくお目覚めか」 「えっ、な、ち・・・ちちち違うの!違うんだからね!!」 「・・・何か知らんが落ち着け」 「・・・う、うん・・・」 答えたところでギアッチョの服を掴んでいることに気付き、ルイズは 慌てて手を離した。ギアッチョはそれを眼だけで眺めると、もう用は 無いと言わんばかりにベッドから降りる。 「厨房行ってくるぜ」 「あっ・・・」 デルフリンガーを担いですたすたと扉に向かうギアッチョに一抹の寂しさを 覚えて、ルイズは身体を起こした状態のままその背中を見つめる。そんな 視線に気付く様子もないギアッチョがドアに手を伸ばした瞬間、 「・・・?」 ドアは外側から開かれた。 「あら、おはようギアッチョ」 ギアッチョが口を開く前に、キュルケは驚いた顔も見せずに挨拶する。 「昨日の今日で元気だなおめーは ルイズに用か?」 「ええ、それと貴方にもね ちょっと待っててちょうだい」 ギアッチョの肩越しに室内を覗き込みながらそう言うと、怪訝な顔の 彼をそのままにキュルケはルイズの前へとやって来た。 「おはようルイズ やっぱりまだ寝てたわね」 「お、おはよう」 「あら、ちょっと顔が赤いんじゃない?風邪でもひいた?」 「べっ、べべべ別にああ赤くなんかないわよ!」 わたわたと手を振って否定すると、ルイズは話を逸らそうと言葉を継ぐ。 「そ、それより何か用?」 「何って・・・忘れたの?」 呆れ顔のキュルケに、ルイズはようやく今朝交わした約束を思い出した。 「あ!」 「食事、行くんでしょう?タバサとギーシュはもう厨房で待ってるわよ」 「ごっ、ごめん!すぐ着替えるから――」 言いかけたところではっとドアに眼を向けると、ギアッチョは既に 廊下へ姿を消していた。 「私達でシエスタを送って行った時に、今日の昼食を厨房でって話に なったのよ」 扉横の壁に背中を預けるギアッチョを見つけて、キュルケは問われる 前にそう言った。 「ま、そんなところだろうとは思ったがよォォォ~~~~・・・ そりゃ何だ、このオレも一緒に着いてくことになってんのか」 「当ったり前でしょう?あなたが主役なんだから」 「オレぁそんなガラじゃねーんだがな」 若干首をすくめて答えるギアッチョを面白そうに眺めて、キュルケは その隣に背をもたれさせる。 「あなたが来ないとシエスタ泣いちゃうかも知れないわよ?あの子 随分あなたに感謝してるみたいだし・・・惚れられちゃったりしてね」 「こんな化け物に惚れる人間が一体どこにいんだよ」 「あら、いつもの自信がないじゃない あなたって結構イイ男だと 思うわよ?まあ私のタイプとはちょっと違うけどね」 半分茶化して笑うが、ギアッチョは詰まらなそうに首を振る。 「・・・そういう意味じゃあねーよ 得体の知れねえ力で無数の人間を 殺して来た野郎が化け物でなくて何なんだ?・・・全く今更だが、 オレは本来他人と関わっていい人間じゃあ――」 「ストーップ、ギアッチョ一点減点よ」 声と共に突き出されたキュルケの掌に、ギアッチョの言葉は中断された。 「いい?あなたが過去に人の命を奪ってきたこと、それは事実かも 知れないわ だけどね、こう言うと冷たく聞こえるかもしれないけど、 私達はそんなこと知らないの 知ってるのは、いつでも何度でも私達を 救ってくれたヒーローだけなのよ」 「・・・・・・」 「罪を認めることは勿論大切だわ だけど人を殺す一方で、あなたは 私達の命を、人生を救ってくれた・・・その重さも知っていいんじゃ ないかしら?」 キュルケは小さく笑みを浮かべてそう言うと、躊躇いがちに開きかけた ギアッチョの口にスッと人差し指を当てる。 「だからネガティブな発言は一切禁止!次に言ったら三点減点するわよ」 あくまでも茶化した態度のキュルケに小さく溜息をついて、ギアッチョは 諦めたように彼女を見た。 「・・・で、ポイントオーバーでどんな罰ゲームを頂けるんだ」 「そうねぇ・・・十点マイナスで三食はしばみ草ってのはどうかしら?」 「・・・・・・そいつは勘弁願いてぇな」 再度の深い溜息と共に、ギアッチョは両手を上げて降参の意を示した。 「ごめん、お待たせ!」 マントを胸に抱えて、ルイズは急いで部屋から飛び出した。確認する ようにこちらに一瞥を向けて、ギアッチョは「行くぞ」という一言と共に すたすたと歩き出す。 後を追おうとするルイズの頭に、スッとキュルケの片手が置かれた。 「頑張りなさいルイズ きっとチャンスはあるわ・・・多分」 「・・・へ?」 生温かい笑みのキュルケを、ルイズはきょとんと見返した。 「本ッ当に済まなかったッ!!」 厨房へ着いたルイズ達を出迎えたのは、マルトーの猛烈な謝罪だった。 シエスタから仔細を聞いたのだろう、「やりたくてやったことだから」と 首を振るルイズ達にマルトーはまるで懺悔のような表情で謝り続ける。 設えられた質素なテーブルにこっそりと眼を向けると、本を開いて己の 世界に逃避しているタバサの横でギーシュが苦笑交じりに肩をすくめた。 どうやら自分達が到着する前から、この大柄なコック長は大音量の謝罪を 繰り返していたらしい。マルトーに視線を戻すと、謝り続けるうちに 感極まったのか、彼はとうとう漢泣きに泣き出した。 「おっ、俺は誤解していたッ!あんたらみてぇな貴族がいることを 知ろうともせずに、この世の摂理を理解でもしたような気になって いたんだ・・・ッ!!本当に、詫びのしようもねえ!!俺は、お、俺はッ!」 「・・・おいマルトー」 咆哮の如き大声のマルトーを見かねてか、ギアッチョが気だるげに声を かけるが、マルトーはギアッチョに標的を変えて尚も喋り続ける。 「おおギアッチョ・・・お前さんにも一体何て謝りゃあいいのかッ!! モットの野郎が悪魔なら、こんな傷だらけの人間を死地に向かわせた俺は 堕獄の罪人よ!!こんなもので償い切れるとは思わねぇが、どうか気の 済むまで俺を殴ってくれッ!!」 「ああ?」 「「コック長、それは・・・!」」 ギアッチョと外野、双方がそれぞれ声を上げるが、マルトーはそれに 首を振ると漢らしく両手を広げて怒鳴る。 「気にするこたぁねえ!これは俺の罪滅ぼしなんだ!!さあッ! いくらでも殴ってくれ!!さあ!さあッ!早く!!はやげふゥゥウッ!!」 「「殴ったーーーーー!?」」 ギアッチョの躊躇無い一撃を顔面に受けて、マルトーは派手に吹っ飛んだ。 やれやれと言わんばかりに溜息をついて彼を引き起こす。 「眼ェ醒めたかマルトー」 マルトーをしっかりと立たせてから、ギアッチョはそう口を開いた。 「何度も言うがよォォ~~~ オレ達がやると決めたからやったんだ 謝罪なんぞ受ける気もねーし権利もねぇ そんなもんよりオレ達はメシが 食いてーんだがな」 「お、おお・・・ギアッチョ・・・!」 マルトーの顔に、明らかな感動の色が浮かぶ。様子を見守っていた コック達を見回して、マルトーはいつもの威勢を取り戻した声で叫んだ。 「聞いたかお前達!真の英雄は己の行為に代償を求めたりはしねぇ!! 俺達がするべきはとびきりの御馳走を振舞ってやることだ!!さあ お前達、調理を再開しようじゃねぇか!!」 「「おおぉおぉおーーーーーーーーーっ!!」」 ていうか殴れと言われたから殴っただけだろうなと思うルイズ達を よそに、マルトー達は大盛り上がりで料理にとりかかった。 ほどなくして、テーブルに種々の料理が運ばれて来た。肉や野菜、色 とりどりの果実が惜しみなく使われたそれらは、正に御馳走と呼ぶに 相応しい代物であった。ルイズ達にはさほど珍しいものではなかったが、 ギアッチョにとってはそうではないようで、先ほどからルイズの隣で 小さく感嘆の声を上げている。 料理が運び終わるまでの間、キュルケ達としばし談笑していたルイズ だったが、ふと気付いて顔を上げた。と、手馴れた様子で配膳する シエスタと眼が合う。 「もうすぐ全部運び終わりますから、もう少々お待ちくださいね」 シエスタは普段着では無く、いつものメイド服を着ていた。にこりと笑う シエスタと対照的に、ルイズは少し心配げな顔を見せる。 「シエスタ、休んでなくて大丈夫なの?」 その言葉に場の視線がシエスタに集中するが、シエスタは笑みを絶やさず 応じた。 「いえ・・・自分のことなんかよりも、私は一秒でも早く皆さんにお礼を したいんです 私に出来るのは、少々の料理の手伝いぐらいですから・・・」 「それに」シエスタは少し厨房を見渡して言葉を継ぐ。 「またここで働くことが出来るんだって思うと、休んでることなんて 出来なくって」 「シエスタ・・・」 屈託の無い笑顔を見せるシエスタに、ルイズ達はこの娘を助けてよかったと 改めて思う。互いに顔を見合わせて、つられるように笑った。 「・・・おいしい」 口に運んだ料理は違えど、彼女達の感想はみな賞賛の一言だった。 「いつもうめぇが・・・今日はそれ以上だな」 ギアッチョまでが珍しく素直な賛辞を口にする。 「俺にも使える魔法がある」いつかマルトーが言った言葉だが、成る程 こいつは確かにその通りだとギアッチョは柄にも無く独白した。 「そうかい、そいつぁよかった!こんな料理でよけりゃあいつでも食いに 来てくんな!あんたらにならいつでも御馳走を振舞わせてもらうぜ!」 マルトーはガキ大将のような笑顔を見せる。その隣で、シエスタも クスクスと楽しそうに微笑んだ。 「・・・次ははしばみ」 「却下だ」 誰よりも旺盛な健啖ぶりを現在進行形で発揮しているタバサの提案を、 ギアッチョは一瞬で棄却する。 トリステイン魔法学院――その厨房を、わだかまりの無い笑いが満たした。
https://w.atwiki.jp/gensouutage_net/pages/6555.html
びく:夢葛マジ強い。あといはかさで受けられるかと思ったら受けられなかった。 入ってなかったのだろうか びく//夢で逢えたら//紅 美鈴-紅 美鈴-紅 美鈴-小野塚 小町- ジャム//まりもっこり//霧雨 魔理沙-霧雨 魔理沙-藤原 妹紅-藤原 妹紅- ジャムは山札をシャッフルしました。 びく いきますね ジャム はい 配置:投銭「宵越しの銭」 Turn 2 - ジャム//体力20( 21) 呪力1( 1) 手札7( 6) 山33( 34) スペル0( 1) タイマー00 02(00 33) 配置:光撃「シュート・ザ・ムーン」 Turn 3 - びく//体力21( 20) 呪力3( 1) 手札6( 6) 山33( 33) スペル1( 1) タイマー00 37(00 09) 手札:彩華「虹色太極拳」//シエスタ//三華「崩山彩極砲」//彩符「極彩颱風」//幻符「華想夢葛」//連環撃// 配置:三華「崩山彩極砲」 Turn 4 - ジャム//体力20( 21) 呪力3( 3) 手札7( 5) 山32( 33) スペル1( 2) タイマー00 14(00 48) 配置:魔空「アステロイドベルト」 Turn 5 - びく//体力21( 20) 呪力6( 3) 手札6( 6) 山32( 32) スペル2( 2) タイマー00 56(00 17) 手札:彩華「虹色太極拳」//シエスタ//彩符「極彩颱風」//幻符「華想夢葛」//連環撃//三華「崩山彩極砲」// 配置:幻符「華想夢葛」 Turn 6 - ジャム//体力20( 21) 呪力6( 6) 手札7( 5) 山31( 32) スペル2( 3) タイマー00 21(01 11) 配置:蓬莱「凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-」 ジャムは蓬莱「凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-」を場から手札に戻しました。 配置:不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」 起動:不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」 Turn 7 - びく//体力21( 20) 呪力10( 4) 手札6( 6) 山31( 31) スペル3( 3) タイマー01 17(00 52) 手札:彩華「虹色太極拳」//シエスタ//彩符「極彩颱風」//連環撃//三華「崩山彩極砲」//華符「破山砲」// 起動:三華「崩山彩極砲」 びくは連環撃をびくの三華「崩山彩極砲」につけました。 配置:彩華「虹色太極拳」 起動:投銭「宵越しの銭」 Turn 8 - ジャム//体力20( 21) 呪力7( 2) 手札7( 4) 山30( 31) スペル3( 4) タイマー00 54(01 50) 戦闘:ジャム - 不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」 vs 投銭「宵越しの銭」 - びく 結果:ジャム - Dmg 1 2 Dmg - びく 配置:蓬莱「凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-」 起動:光撃「シュート・ザ・ムーン」 Turn 9 - びく//体力19( 19) 呪力6( 3) 手札5( 6) 山30( 30) スペル4( 4) タイマー02 00(01 46) 手札:シエスタ//彩符「極彩颱風」//三華「崩山彩極砲」//華符「破山砲」//紅砲// 戦闘:びく - 三華「崩山彩極砲」 vs 光撃「シュート・ザ・ムーン」 - ジャム 結果:びく - Dmg 1 6 Dmg - ジャム 起動:三華「崩山彩極砲」 配置:華符「破山砲」 Turn 10 - ジャム//体力13( 18) 呪力8( 1) 手札7( 4) 山29( 30) スペル4( 5) タイマー01 47(02 32) 配置:魔符「スターダストレヴァリエ」 起動:光撃「シュート・ザ・ムーン」 ジャムはオーレリーズソーラーシステムをジャムの光撃「シュート・ザ・ムーン」につけました。 ジャムはオーレリーズソーラーシステムを場から手札に戻しました。 ジャムの呪力が+1 (3) ジャムの呪力が+1 (4) Turn 11 - びく//体力18( 13) 呪力6( 4) 手札5( 6) 山29( 29) スペル5( 5) タイマー02 41(02 58) 手札:シエスタ//彩符「極彩颱風」//三華「崩山彩極砲」//紅砲//根性避け// 戦闘:びく - 三華「崩山彩極砲」 vs 光撃「シュート・ザ・ムーン」 - ジャム イベント(ジャム):疾風怒濤 ジャムは疾風怒濤を場から捨札に送りました。 イベント(びく):根性避け 結果:びく - 回避 回避 - ジャム びくは根性避けを場から捨札に送りました。 配置:彩符「極彩颱風」 Turn 12 - ジャム//体力13( 18) 呪力5( 3) 手札6( 3) 山28( 29) スペル5( 6) タイマー02 59(03 02) びくは幻符「華想夢葛」の『能力発動』を選択しました。 起動:幻符「華想夢葛」 戦闘:ジャム - 光撃「シュート・ザ・ムーン」 vs 幻符「華想夢葛」 - びく 結果:ジャム - Dmg 2 4 Dmg - びく 配置:蓬莱「凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-」 起動:魔空「アステロイドベルト」 Turn 13 - びく//体力14( 11) 呪力7( 1) 手札4( 5) 山28( 28) スペル6( 6) タイマー03 26(03 38) 手札:シエスタ//三華「崩山彩極砲」//紅砲//光符「華光玉」// 戦闘:びく - 三華「崩山彩極砲」 vs 魔空「アステロイドベルト」 - ジャム ジャムは魔空「アステロイドベルト」の1番目の特殊能力を使いました。 結果:びく - Dmg 1 5 Dmg - ジャム 起動:三華「崩山彩極砲」 配置:光符「華光玉」 Turn 14 - ジャム//体力6( 13) 呪力7( 2) 手札6( 3) 山27( 28) スペル6( 7) タイマー03 30(03 39) 起動:魔符「スターダストレヴァリエ」 ジャムは宿敵をジャムのリーダーにつけました。 Turn 15 - びく//体力13( 6) 呪力9( 2) 手札4( 5) 山27( 27) スペル7( 6) タイマー03 52(04 37) 手札:シエスタ//三華「崩山彩極砲」//紅砲//彩翔「飛花落葉」// 戦闘:びく - 三華「崩山彩極砲」 vs 魔符「スターダストレヴァリエ」 - ジャム イベント(ジャム):ピンポイント ジャムはピンポイントを場から捨札に送りました。 結果:びく - Dmg 1 6 Dmg - ジャム びく ありがとうございました ジャム おつでした~ びく では、もどりますね びく ノシ ジャム ノシ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/652.html
back / next 一話 『林檎をかむと歯茎が痛い』 朝、起床したルイズが初めに行ったことは、鏡を見ることだった。 額が焼けたようにジンジンと熱く、それが絶え間ない頭痛を与えてくる。 袋にパンパンに物を詰め込むようなおかしな痛みを感じながら、鏡に映った己を見る。 その額にはルーンと思しきものが浮かび上がっていた。 ルーン? そう認識した瞬間熱量が急速に増加する。 熱い! 熱い! 痛い! 死ぬのだろうか? ぼんやりとそんなことを考えながらルイズは部屋をのた打ち回った。 数分後ようやく熱と痛みが引き、よろよろと立ち上がる。 鏡台に手を突いた瞬間、頭の中に何かの情報が流れ込む。 ―名前:魔法のチェスト ―分類:家具 ―機能:自動で開閉する。 ―使用方法:杖を介して魔力を流す。 ―追記事項:特になし。 それは彼女が手を置いている鏡台の情報に他ならなかった。 ルーンが刻まれたのはおそらく使い魔のあの実を食らったからだろう。 ならばこの流れ込む知識は何なのか? 恐る恐るといった様子でルイズは己の杖を手に取る。 ―名前:魔法の杖 ―分類:魔法補助器具 ―機能:魔法を行使する際の補助器具。 ―使用方法:魔法を行使する際片手に持つ。 ―追記事項:特になし。 つまりこれはルーンの効果だろう。 ほんの少しの幸運に、ルイズは嬉々としながら振り返る。 その目に昨夜食べちらかしら実の上1/3が止まった。 そういえば、と思考する。 使い魔を食らってそのルーンの機能を取り込む、などという話は過去に存在しない。 ならばこの実の何らかの効能か? とその残りの部分を拾い上げた。 ―名前:悪魔の実・ボムボムの実 ―分類:魔法植物 思わず手を離す。これは魔法生物だったのか!? 恐る恐る実を拾い上げた。 ―名前:悪魔の実・ボムボムの実 ―分類:魔法植物 ―機能:食したものに特殊な能力を付与し、代償として海に嫌われ泳げなくなる。ボムボムの実の場合、爆弾人間になる。 ―使用方法:食する ―追記事項:爆弾人間とは、その全身および装飾品、排出物(吐息や唾液、涙や血液など)を爆発物に変え行使できる…… 次々と流れ込む情報。実の使用法だけでなく栽培方法、そのための必要な環境、他の実の情報、その効能。 あらゆる悪魔の実の情報がルイズの頭に流れ込む。 「あは、あはは、あはははははははは!」 ルイズは知らず、歓声を上げた。 キュルケにとってルイズのテンションの高さは異常にしか思えなかった。 朝の食事では周りのいやみを気にすることなくメイドに話しかけ談笑、授業では錬金の実習を命じられて「できません!」とはっきり。 ああ、かわいそうなルイズ! とよろめきかけたキュルケが見方を変えたのは、ルイズがコルベールに話しかけたときだった。 「ミスタ・コルベール、秘薬の材料の栽培を行いたいのですが……」 「ん? ああ、栽培するスペースかな? それならこの中から好きな場所を選ぶといい。必要ならメイドあたりを一人つけてもらえるが」 「いえ、その……」 「何かね?」 少しためらったあと、ルイズはコルベールに目を向けた。 「育てたいのは木なんです。それもかなり大きな」 手伝うメイドにはシエスタが指名された。 植えられているのは悪魔の木、さまざまな実を宿す呪われた木。 ルイズは心底楽しそうに、地面から飛び出た実のヘタを撫でた。 いさかいのきっかけは些細なものだった。 ギーシュの落とした香水のビンをシエスタが拾ったのがきっかけ。 場をごまかそうとギーシュがシエスタに責任を押し付けようとしたのだ。 仮にも女性を尊重するグラモン家の三男がそれはどうかと思うが、彼もおそらく本気ではなかったのだろう。 だが周りがそれをはやしたて、場はシエスタへの仕置きの流れに変わっていた。 「やめなさいよ、みっともない」 ルイズの声がなければ、シエスタはきっと恐怖で気絶していたことだろう。 「ミス・ヴァリエール、君とは関係ないだろう?」 「黙りなさい。仮にも貴族ともあろうものが自分の失敗を人に擦り付けるんじゃないわよ、情けない」 「っ! やけに彼女をかばうねえ」 「その子は私の使用人も兼ねてるの。暴挙は許さないわ」 シエスタはルイズにすがるような目を向ける。 「……ふん、流石はゼロのルイズ、魔法が使えないもの同士仲がいいとみえ……」 ギーシュの真後ろにあったグラスが轟音を立てて爆発した。 「それ以上は許さないわ」 「……だったら何だというんだい?」 その爆発の大きさに冷や汗をかきながらも、ギーシュは見栄を張る。 あ、マリコルヌが破片をぶつけられて目をまわしてる。 「それ以上ふざけたことを言ったらその頭を爆破してあげるわ、ギーシュ」 「面白い。ならば決闘だヴァリエール! ヴェストリの広場で待つ!」 そう言うとギーシュは足早に去っていった。 本心では離れたかったのだ、妙な威圧感を放つルイズから。 ルイズは黙って席を立つと、破片の一つを握り込む。 手のひらが切れ軽い出血を起こす。 それを確認し、ルイズは食堂を後にした。 ヴェストリの広場には、すでにたくさんの観客という名の野次馬が集まっていた。 「よく逃げずに来たね、ヴァリエール!」 「あなたごときに逃げる必要が?」 ピクリとギーシュの額に血管が浮かび上がる。 ギーシュは思い直す、相手は所詮ゼロだ、僕が負けるわけがない! ギーシュ、それ死亡フラグ! もしくは敗北フラグ! と叫ぶ声も無視して、彼はそのバラの造花を握り締める。 「ではミス・ヴァリエール! 僕のワルキューレがお相手しよう!」 杖が振るわれ一体の青銅製の戦女神の人形が錬金される。 「うらやましいわね……」 ルイズはひっそりと、ゆがんだ笑みを浮かべた。 「さあヴァリエール! 今なら降参も……」 その言葉は続かなかった。 ルイズの体が前へ傾き地面を蹴る。 格好をつけていたギーシュが反応するまもなく、ルイズはワルキューレの懐へもぐりこんだ。 手のひらが切れた左手をそれに押し付ける。 慌ててワルキューレを動かすが、既にルイズは退避済み。 ルイズが杖を振るう。 杖に反応するようにワルキューレが盛大に爆発した。 唖然とするギーシュに、ルイズは年不相応な妖艶な笑みを浮かべる。 「もうおしまい?」 「ま、まだだ!」 慌てて杖を振るうギーシュ。 杖にあわせ出現する六体のゴーレム。 だがそれに慌てることもなく、ルイズは足元の破片を拾い上げた。 それを握り込み、手のひらの傷を深くする。 その手を振った。 飛び散る血のしぶきがギーシュにも降りかかる。 「ヒッ!」 小さく悲鳴を上げるギーシュを視界からのけると、ルイズは右手の杖をギーシュに向け左手をパチンとならした。 轟音と共に六体のワルキューレが吹き飛んだ。 「まだ、やるの?」 ことここにいたってルイズが何をしたかその場にいたものの想像は結論に達していた。 つまりルイズはばら撒いた血を介して何かをしているのだろう、と。 もちろんそうではない。単に血をボムボムの実の能力で爆破しただけだ。 だがそうとはわからないギーシュは己についた血を必死にぬぐう。 「ギーシュ、負けを認めるなら杖をこっちに放りなさい。まだやるならあなたはきれいな花火を咲かせて、ボンッ」 ギーシュは黙って杖を捨てた。 ところで諸氏は人の好意に類する感情がどう構築されるかご存知だろうか? それは落差である。 空腹のときに食べるジャンクフードは満腹のときの高級フレンチよりはるかにうまい。 そう、落差である。 「ミス・ヴァリエール! 左手の治療を!」 「あ、ありがとう……ルイズでいいわよシエスタ」 「ははははい! ルイズ様!」 シエスタのルイズを見る目は好意以上の何かがあった。 そう、落差である。 ギーシュにより死の恐怖まで味わいかけたシエスタにとって、同じ位置にいるルイズの好意は通常より大きなものとなったのだ。 「何かいやな予感がするわ……」 back / next
https://w.atwiki.jp/cosmicbreak/pages/1974.html
補でありながら補ビット使用向きなカートリッジを一切持ってなかったりする -- (名無しさん) 2010-04-02 21 47 21 まず補っぽいのがバンプぐらいしかないか。 クイックショトブ+ステルスで弱点の無い射陸的な運用もアリか? -- (名無しさん) 2010-04-02 21 57 19 シエス曰く、命は投げ捨てるものではないらしい。 格ゲーの北斗の拳までネタに出してくるとか、流石に玄人向け過ぎる気がするぞCSよ。 -- (名無しさん) 2010-04-02 22 18 55 自爆テロのお知らせか?低コスト自爆機になりそうな予感! -- (名無しさん) 2010-04-02 23 00 23 公式の絵を後ろから回り込んで見るとパンツが見えそうなんだg(殴 こやつはパンツをはいt(吐血 -- (名無しさん) 2010-04-02 23 06 26 ミッションで自爆を使うと、次の自ロボが透明化した。 -- (名無しさん) 2010-04-03 00 00 54 最低コストで620、自爆強化で+60 敵陣へ乗り込むリスクの低減や威力強化のためのwlk,TEC上げにカートリッジetcetc... 特に補助で特攻するリスクに見合う成果を期待するなら結局コスト1000超え確実 拠点に近づく敵補助=まず確実にコイツなので索敵、事前警戒も楽 自爆を主軸に据えるのはほぼ無理だろう カートリッジが射陸紛いのラインアップなので バーストビットを主軸に考慮した前線構築を担当するのが吉か 何度も狙えば当然警戒されるので、自爆はあくまで弾切れ特攻時の置き土産程度に考える方が良いだろう -- (名無しさん) 2010-04-03 10 19 26 無制限でリペアの背後から自爆して8人一気に撃破して戦場覆したのは吹いた。タイミング合わせると恐ろしいな。 -- (名無しさん) 2010-04-03 14 16 53 各所で見られる「CS爆発しろ」に対し、マジで自爆を初めてしまったCSの擬人化ロボ(ホントにそうかは分からないが 延々自爆してるだけの工作員が出るかと思ったが・・・ 入手がウィークリーの金と候補が多く、入手のしにくさを考えるとそうそう現れないか。 -- (名無しさん) 2010-04-03 21 24 32 こいつ・・・腕壊れると腕千切れた -- (名無しさん) 2010-04-03 22 29 12 ↑3 リペ中ならブロレ持ちがマップ見てそうなもんだがな・・・補助だから油断してたのか? WLKチューンして、起爆までのカウント把握してたらできるということか、とにかくかなりの離れ技であることは間違いない。 -- (名無しさん) 2010-04-04 00 45 22 たしか発動してから爆発するのが5秒くらいだったはず -- (名無しさん) 2010-04-04 00 50 55 起爆までのカウントは楽にわかるよ。 炎上状態になった時の効果音が5回鳴ったら爆発だ。 ステルスも持てるしそこまで敷居が高いわけでもなさそうだが・・・ -- (名無しさん) 2010-04-04 00 55 52 今のアリーナではアンチレーダーもあるし 前の相手ばかりに気を取られていると 場合によっては背後からのステルス自爆で リペ団子が全滅する…ピラーよりも性質が悪い。 内蔵強化で範囲が広くなるので気づいた相手が 逃げ遅れる可能性も一応ある。 自爆よしショトブクイランよしと敷居の高さを除けば 怖い機体だがカートリッジの問題で補のくせに リペ等には向いてないのが問題か。 -- (名無しさん) 2010-04-04 07 32 46 ベル系でリペしてる場合には自己の判断で警戒する必要があるか ブロレ持ちのベスカ・エランがガラポン+Lv9以降なので取得していない可能性もある ベル系で一番リペ向きな無印がブロレを取れないのは痛い所… バスタガントのシエスと同じ持続時間ならビット抜け出来るから 「爆発しちゃーう!」が聞こえたら下手に逃げるよりビット格納の方が安全か -- (名無しさん) 2010-04-04 12 03 34 自爆後、しばらくたってから死亡した扱いになる。 つまり、自爆で相打ちすると、その若干のタイムラグによりシエスの勝ちになる。 -- (名無しさん) 2010-04-04 13 18 50 自社擬人化とのことだが髪型といい頭飾りといいどことなくリリと被る やはりリリは糖類のお気に入(ry -- (名無しさん) 2010-04-04 17 51 10 極稀に自爆で自陣のBPにトドメを刺すシエスがいる それはそれで美味しいが… -- (名無しさん) 2010-04-05 07 24 25 上 負ける直前に誰もいない所で爆発してBP減らさせる工作員出そうだな真面目に -- (名無しさん) 2010-04-05 07 27 35 さっき久々にガラポンやったら1回目でこれが出た あまりの奇跡に焦って梅昆布茶をモニターにぶっかけてしまった -- (名無しさん) 2010-04-05 16 01 15 上2 むしろ工作用アカウントでこれが出るまでガラを回して、それで自爆を繰り返す筋金入りの工作員とかいるんだろうか? そういう意味ではRtやUC売りではなくガラ専用で良かったと思える。まさかガラ専用ロボで良かったと思える日が来るとは。 -- (名無しさん) 2010-04-05 16 05 18 上3 わざわざ自爆しなくてもサボテンに刺さればおk -- (名無しさん) 2010-04-05 21 44 46 補でショトブにクイックランディング所持の稀な機体 しかし余剰が380でワースト2位 射陸のスタイルで運用しようとしても余剰の少なさから厳しい 後、目立つのか特攻に良く粘着される -- (名無しさん) 2010-04-06 05 20 22 カートリッジの取り方も悩ましいな… 自爆を視野に入れるなら内蔵強化したいところだが、 そうするとキャパを削るかショトブやガード系を外してブーランステルスだけにするか… というか自爆を使わないなら他で良いからなぁ まぁハイキャパ辺りを複数挿すという手もあるが… ちなみにGキャパ3枚挿しすればショトブクイランブーランステルス内蔵2枚でSTR4TEC40WLK30FLY9とかできるよ! それでも手持ちはハンマグ改2挺だがな… 現実的なアセン?自爆特化か自殺出来る射陸化かのどっちかしか無いだろうね -- (名無しさん) 2010-04-06 10 06 17 相手のリペ団子での自爆を成功させるためには 相手のリペにブロレがないこと リペに不慣れなことが条件となる。 また、機動力的に不利な補で裏取りするには それなりの機動力チューンも必要になるため 威力のためのTECチューンと合わせると かなりの高コストになってしまう。 基本的に成功率の低い自爆特攻のために フルチューンのコスト1100オーバーを消費するのは かなりリスクが高く 求められるチューンの敷居の高さの割に 通常はネタ機の枠を超えるのが難しいと思われる。 上に書いてあるように クイランショトブを生かして レーザーに強い射陸運用が現実的だと思う。 -- (名無しさん) 2010-04-06 11 05 52 自己バーストにクイランショトブの3WAYビームで動き回り一人弾幕なのー。 スコアはでないけどね。 -- (名無しさん) 2010-04-06 12 34 43 希少というか、おそらく補唯一のクイランショトブ機 横幅が非常に細くジアス系では随一の小ささも相まって WLK30程度でも殆ど攻撃があたらない。 格闘陸にからまれたら諸共に自爆するという嫌な置き土産も可能。 自爆エフェクトで警戒して引いてくれたら自爆解除で仕切りなおせる。 カスマグ等が使用できない代わりに、ワイドビームやビームマシンガン エンシェントバズーカといった武器を使用できる。 格陸相手でも多少は抵抗できるショトブ射陸、といった感覚でした。 -- (名無しさん) 2010-04-07 00 42 54 天敵はレーザー空か。ブーラン速度の問題で振り切るの難しいです。 -- (名無しさん) 2010-04-07 00 46 39 いつもの癖で一斉射撃多用してると気がついたら 自爆してたということが良くある。 -- (名無しさん) 2010-04-07 16 24 40 一瞬績利って誰だよって思ったわ… -- (名無しさん) 2010-04-08 00 15 39 肝心の内蔵の自爆だが空戦相手には200とかダメージ出るが 陸相手だとタフ9のブラガ付陸相手でも体力MAXでも20~30程度しか ダメージ与えられない為あんまし自爆する意味もなかったりする。 あとバイパーシールド敵が持ってたりすると貫通せずに 盾に塞がれて自爆のダメージ与えられない。 -- (名無しさん) 2010-04-08 14 35 32 もしかして自爆の爆風ってバルバリアにブロックされるのか?乱戦で自爆したときに効いてた気がしなかったから -- (名無しさん) 2010-04-10 09 30 25 必要経験値いれました。 -- (名無しさん) 2010-04-13 01 05 47 自爆はバズ系と同じじゃないのか? 外からじゃ無効化されて、バリアの内側に潜り込めば当たるって感じだろう。 -- (名無しさん) 2010-04-13 01 54 36 バルのバリアでは爆風は防げない 「内側でバズーカ撃てば当たる」って表現が間違っていて、正しくは「爆風が当たる距離(バリアの内側)で撃てば当たる」 ウィズダムの波動砲やドストレックスのバーニング弾を相手にするとダメージが通る なので、シエス内蔵が爆風判定ならバリアは意味を成さない -- (名無しさん) 2010-04-13 03 54 07 内蔵強化の意味はいかほどで? -- (名無しさん) 2010-04-14 17 02 16 内蔵二枚取れば爆発範囲が1.5倍位にはなるが ゼロ距離で自爆してもバイパーシールド一枚相手が持ってるだけで カーンと当らない。 -- (名無しさん) 2010-04-16 02 53 32 今回のメンテで腕がもげなくなった? あと自爆使用時に時にスタンすると爆発が不発で爆発する? -- (名無しさん) 2010-04-16 21 50 53 ↑不発で爆発って矛盾してるだろ -- (名無しさん) 2010-04-17 18 45 51 爆発動作も無くダメージも与えない無い爆発って意味です。 -- (名無しさん) 2010-04-17 20 21 38 なるほど理解した エフェクトだけ発生するってことかな -- (名無しさん) 2010-04-18 02 17 52 HP十分なのにドクロ爆発直前に死亡ウィンドウが 出たり、弾数消費して自爆起動したのに弾数消費 無しで勝手にキャンセルされてたりするね。 -- (名無しさん) 2010-04-18 16 28 37 明日のメンテでシエスの新カラーがガラポンに追加決定。 どうなる事やら -- (名無しさん) 2010-04-21 21 38 00 新シエス二体には新ビット「シエスビット」搭載 旧型にはそれは無し -- (名無しさん) 2010-04-22 17 26 55 なんか軽量型シエスと元のシエスの足のスキン見比べると 元のシエスにもリボンの部分のスキンがある為 元は変身能力備える予定だったのか? -- (名無しさん) 2010-04-22 21 27 59 簡単にいうとボスクエのシエスの第2形態。 流石に第3形態は実装されないよね -- (名無しさん) 2010-05-01 23 31 47 UWで自爆で最後の敵を倒すとコスト消費なし。 -- (名無しさん) 2010-05-09 01 25 37 シエスビットは射程が比較的長いが弾速、威力はお察し 弾が長時間存在して適度に拡散、弾幕としては優秀だがシングルなのでやはりお察し デフォルトでダブルだったら結構嫌らしい攻撃性ビットだったかもしれない -- (名無しさん) 2010-05-10 17 49 27 シエスビットすごく気になってましたありがとう!! CSはどんな風に使ってほしかったのだろう? -- (名無しさん) 2010-05-10 18 09 03 敵陣地付近で爆発した結果 3体同時巻き込みました。 今回は成功したからいいけど絶対避けられるわオーラで -- (名無しさん) 2011-04-20 19 59 16 ダーティウォータとかの壁際密集に自爆するとスゴイ事に・・・ -- (名無しさん) 2011-08-18 23 43 56 これ手に入れたんだけどどうすりゃいいの? -- (名無しさん) 2012-04-01 00 20 42 愛がありゃ射補でも格補でも出来るかもしれない。 普通の補助として動くにはアセンほぼ無理だし、カトも少ないから難しいかも。 特に自爆はもはや化石装備の類になってるから封印した方がいいだろうなぁ…。 -- (名無しさん) 2012-04-02 20 22 18 安定のリペア展開→バクハツシチャーウ!→味方(°Д°) -- (幸運E-の名無し) 2012-04-05 14 42 08 バルテオン、及びそれに群がる敵を狙って自爆してみるとスコアになるかも。 ルーシェにも通用するけど、ブラガがついてると悲しいダメージ表示を見ることになる。 -- (名無しさん) 2012-04-05 19 16 01 正直自爆の威力を100とかにしてほしいよな・・・ 最高火力の点については、何度でも打てる上に鬼命中率のリーシャの槍に持っていかれてるし、 HP量で威力減退するペナルティ付きなんだから、それくらいしても罰は当たらないと思う。 -- (名無しさん) 2012-04-06 01 44 09 槍にシエスの自爆が威力で負けるだと?槍のダメージ400↑も出たら怖すぎるわ -- (名無しさん) 2013-03-28 03 48 28 自爆はHP全快、TEC30くらいで空戦に250程度だった 400は見たことない 空以外には30~50が基本 -- (名無しさん) 2013-03-28 07 18 17 ↑残HP430以上、TEC40で空に412ダメージ、その他には178ダメージが最大。 それ以上HPを増やしても基本威力は120で頭打ちになる。 あと爆風100%なのでブラガ持ちにはきっちり半減される。 -- (名無しさん) 2013-03-28 19 19 18 そういう意味ではRtやUC売りではなくガラ専用で良かったと思える。 後にRt売りされる事になるとはこの時誰も思わなかった -- (名無しさん) 2013-04-29 13 15 52 普通に使おうと思った場合、 低キャパ・アセン不可・スロット少ない(Rt売りならなおさら)なうえ、 ブロレとかも無しだからWB変更可否以外は正直「杖封印の」ニコルに劣るレベル。 よ○ばスキンでもして遊ぶのが正解か? -- (名無しさん) 2013-04-29 13 59 06 HP200以下 HP201~400 HP401以上でダメージが変わる模様。またHP697ではHP401とダメージが変わらないため200刻みではないようだ。HP800↑はそのうちもう一機シエスが手に入ったら検証する予定 -- (名無しさん) 2013-04-30 13 32 55 ↑追記 HP702では威力に変化なし -- (名無しさん) 2013-05-01 01 14 17 HP802 威力変化なし -- (名無しさん) 2014-12-19 02 51 16
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2970.html
前ページ次ページベルセルク・ゼロ ルイズはベッドに腰掛け、パックの話を聞いていた。 パックからガッツの事情をかいつまんで聞かされたルイズは本日何度目かのため息をついた。 「異世界からきた…ね…とても信じられないけど……」 先ほどのガッツの剣幕を思い出す。実際あれほどの激情を目の前で見せられては疑うわけにはいかない。 「とても嘘をついている風じゃなかったものね……その、とても怖かったし……」 「必死だったんだよあいつも。普段はあそこまで取り乱すことそんなにないんだよ…そんなに、だけど」 苦笑いを浮かべるパックの脳裏には出会ったばかりのころのガッツが思い出されていた。 あの当時のガッツをこのルイズが召喚してしまっていたとしたらどうなっていたか―――想像に難くない。 「不幸中の幸いってやつだね~」 「?」 たはは、とパックは笑う。 ルイズはそんなパックをきょとんと見つめていた。 やがて――― 「よし…!」 ぱんっ、と膝を掴んでルイズは立ち上がる。そのまま勉強机に腰掛けた。 さんざん弱音は吐いた。泣くだけ泣いた。 あとは前に進まなきゃ。 とりあえず新しい使い魔をどうするか、自分の立場がどうなるかは後回し。 自分の失敗魔法のせいでガッツに迷惑をかけてしまった。 ならば、その責任をとらなければならない。 ひょっとするとそれは償い切れないほどのものかもしれない。 それでも、逃げ出すことは許されない。 失敗を見ないことにして放り出すことなど到底許容できない。 それがルイズの考える貴族の在り方―――これからも貫く、自分の生き方だった。 どすんっ! 机の上に「コレ頭叩き割れるんじゃね?」というほどの厚みのある本が置かれた。 2000ページは優に超えていると思われる。 それは古今東西、ハルケギニアに存在した、『フライ』を始めとする移動形魔法の種類とその詳細が書かれた、いわゆる『辞典』だった。 パラリ―――とページをめくる。 一枚一枚、一言一句逃さず、ルイズはその本を読み続けた。 二時間後――― 「ぐぅ…むにゅ……すやすや……」 ルイズは開かれたままの本に突っ伏して寝息を立てていた。 「ルイズ~、寝るならちゃんと布団で眠りなよ~~」 パックが苦笑しながらルイズの頭をぽんぽんと叩く。 完全に寝ぼけたまま、それでも何とか目をあけたルイズは椅子から立ち上がると、もそもそと服を脱ぎ始めた。 「わわわぁ~~!! ルイズ、ちょ、ちょっと待った! なななにしてんのッ!?」 「む~? なぁにってぇ~、きがえてるにきまってるでしょ~~? せいふくぅ~しわになったらぁ……むにゃ」 「はわわわわ」 ルイズの手が下着に伸びる。緩慢な動作でそれも脱ぎ捨てると、ルイズはネグリジェを頭からかぶり始めた。 無論、その間ルイズは丸出しである。 エルフが人間に欲情するかは定かでは無いが―――少なくともパックはガン見だった。 ルイズはネグリジェに着替えるとぼさっ!とベッドに飛び込む。 「むぅ~~…ん……すぅ~すぅ~」 そのまますぐに寝息を立て始めた。 パックはルイズの顔を覗き込み、眠りにつくのを見届けてから部屋を出ようとした。 むんず。 「ほえ?」 ルイズの手が飛び去ろうとしたパックを握り締める。 「んむぅ…むにゃむにゃ、ちいねえさまのつくったまろんけーきおいしい」 そのままパックはルイズの口の中にinした。 「のおおおお!! オレの体からは栗の匂いでも出てるとですかーーーー!?」 はぐはぐと頭頂部をルイズに咀嚼されながら、パックは心の叫びを上げた。 ―――夜が明ける。 あまりにも異様だった双月はその姿を潜め、太陽がトリステインを照らし始める。 その輝きだけは自分が見慣れたものとそう変わらないように思えた。 ガッツは剣を抱き、壁に背を預けて座ったまま首筋を指でなぞる。 なぞった指を確認するが―――やはり一滴の血もついてはいない。 いつもの世界では考えられないほど穏やかな夜に、しかしガッツは背筋が凍る思いだった。 いくら悪霊が現れず、穏やかな夜だったとはいえ、ガッツが眠りにつくことはない。 神経が高ぶっていて寝付けるようなものではなかったということもあるが―――根本的に、ガッツはもはや夜に眠ることは出来ない。 安全だとわかっていてもどうしても落ち着かないのだ。 これから先も、夜に穏やかに眠れることはおそらくないだろう。 まあこの世界に召喚された際、随分と長い間気絶していたことが幸いして、わりと頭はシャンとしているようではあった。 太陽が覗くまで長い間自問自答を繰り返していた甲斐があって、沸騰した頭は幾分落ち着いてくれたらしい。 ガッツはこれからの自分の行動を決めることにした。 (ルイズとかいうガキはあてにしちゃいらんねえ…やはり、自分の足で探すか) まだここが本当に異世界だと確定したわけではない。 その辺のこともじっくり調べてみる必要がある。 とすると、やはり町に向かう必要があるだろうか? そんなことを考えていると―――― ぐう。 お腹がなった。 そういえば最後に飯を食べてもうそろそろ丸一日経つ。 「まずは腹ごしらえか……」 さて、どこに行けば飯にありつけるのか。 まあとりあえず適当に建物内を散策してみるか―――とガッツが腰を上げると一人の少女が目に入った。 清楚な黒髪をカチューシャで纏めた女の子が、大量の洗濯物を抱えて歩いていた。 その服装には少し見覚えがある。確か、貴族に仕える侍女が似たようなものを着ていたはずだ。 (この学院に居る者は―――) ルイズの言葉を思い出した。 この学院の生徒とやらは全員が貴族。 つまり、なるほど、あの少女はおそらくここで侍女として雇われているのだ。 であるならば、彼女に聞けば飯の在り処もわかろうというものである。 ガッツは立ち上がり、少女のもとへと歩み寄った。 「おい」 「はい? きゃあ!」 少女はガッツの声に振り向いた拍子にバランスを崩し、抱えていた洗濯物を盛大にぶちまけてしまった。 「…悪い」 「いえ、私の不注意ですから…あら、あなたは学院の生徒じゃないですよね?」 当たり前だ。見たらわかる。 身の丈を超える大剣を担ぎ、黒尽くめの甲冑に身を包み、極めつけに左手は鉄の義手(大砲オプション付)だ。 そんな生徒はどこの学校を探したって存在しない。 「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」 ミス・ヴァリエール? ガッツはしばらく考えてから「あぁ、あの桃髪のことか」と思い当たった。 「ずいぶんと広まってるんだな」 「ええ、ミス・ヴァリエールは平民を召喚してしまったってすっかり噂になってます」 まあそれはどうでもいい。噂したけりゃすればいい。それよりも。 ガッツは少し気になったことを聞いてみた。 「あんたも魔法使いなのか?」 「いえ、私はあなたと同じ平民です。貴族の方々をお世話するためにここで奉公させていただいてるんです」 明らかに自分を貴族より下の位置に定めている者の口ぶりだ。 貴族がいる前ならまだしも、周りには同じ平民だと認識しているガッツしかいないのに、ここまでへりくだったしゃべり方をするとは。 どうやらこの娘は心の底から貴族を自分より上位の存在だと考えているらしい。 (こら仕込みがいいわ) そんなことを考えながらガッツは少女が落とした洗濯物をひょいひょいと集め始めた。 「あ、ありがとうございます」 ガッツの行動が意外だったのか、少女は少し驚きながら礼を述べた。 「どこまで運べばいいんだ?」 「そ、そんな! 大丈夫ですよ! ミス・ヴァリエールの使い魔の方にそこまでしていただくわけにはいきません!!」 少女はガッツが集めた分の洗濯物を受け取ろうとするが、そうすると持ちきれない分がまた落ちるのは目に見えている。 「気にすんな。俺もあんたに頼みたいことがあるからな」 「う…それじゃあお願いします。あそこの井戸の方まで運んでもらえますか」 「あいよ」 少女が指差した方向に二人肩を並べて歩き出す。 少女は隣を歩くガッツを少し不思議そうに見上げてから、 「あの、お名前はなんておっしゃるんですか?」 「ガッツだ」 「ガッツさん……私は、シエスタっていいます。どうぞよろしく」 シエスタはそう言ってガッツを見上げたまま微笑み――― こけた。 「ガッツさん黒髪ですよね。私と同じです」 「ん…まあ、そうだな」 ガッツはシエスタの洗濯を手伝っていた。 シエスタが桶で洗い上げた物をガッツが木の枝同士に張られたロープに干していく。 ガッツがシエスタに飯を食うにはどこに行けばいい、と尋ねたところ、シエスタの厚意によりいつも厨房で出ているという賄い食を出してもらえることになった。 洗濯が終わった後に連れて行ってもらえることになったのだが―――ただ突っ立って待っているのも手持ち無沙汰なので、ガッツから手伝いを申し出たのである。 じゃぶじゃぶと洗濯板を使って洗濯を進めるシエスタの言葉に、ガッツは自分の前髪を少し指でいじった。 右側の前髪だけ白い。狂戦士の甲冑を身に纏った反動だ。 ちょびっと白い剣士。 ほぼ黒い剣士。 パックとイシドロに叩かれた軽口を思い出す。 まあしかし、黒髪と言って問題はなかろう。故にガッツは曖昧に頷いた。 「トリステインでは黒髪って珍しいんですよ? 私、家族以外で黒髪の方に会ったのは初めてです。ガッツさん、出身はどちらなんですか?」 「言ったってわかんねえだろうし、本当のところは俺もわからねえさ」 実際ガッツは自分の生まれを知らない。 昔、かつて自分の親代わりをしてくれた男は、自分のことを『死体の股から生まれた呪われた子』と言った。 自分の出自について知っているのはそれだけだ。 あるいはミッドランドと答えてもよかったかも知れないが、シエスタにはわからなかったろう。 ガッツの答えに「なんですか、それ」とシエスタは笑った。 洗濯を終え、シエスタに連れられた厨房で、ガッツは賄いのスープを口にしていた。 ここでもガッツは驚くことになる。 ―――スープが、うまい。 狂戦士の甲冑の反動によって失われていたはずの味覚が戻っていた。 (つくづく魔法ってのは…すげえもんだな) もしかすると死者を甦らせる魔法なんてのもあるのかもしれない。 そんなことを考えているとコック長のマルトーがガッツに話しかけてきた。 「よう、兄ちゃん! くそったれな貴族に召喚されちまったんだって!? 難儀なことだなあ! おめえの気持ちはよ~くわかるよ! 貴族たちに使った食材の余り物だってのが癪にさわるが、今日は好きなだけ食ってくれ!!」 陽気にがははと笑いかけてくる。 マルトー自身もがっしりとした体躯をしているためか、ガッツに対して恐れというものは抱いていないようだった。 「ところでよ~…お前さんのそれ…剣かい?」 マルトーがガッツの傍らで壁に立てかけられたドラゴンころしを指差した。 「ちょっと持たせてくれよ」 言いながらマルトーはドラゴンころしの柄に手をかける。 「ふんッ!! ……んぅううあ!! 無理ッ!! 剣っていうかただの鉄板じゃねえか!! こんなもん振ったら肩がぶっ壊れちまうぜ!! 兄ちゃんコレ本当に振れんのかい?」 「……ああ」 「ホントかよッ!! そりゃあすげえや! な、振って見せてくれよ!!」 ……ここでか? ガッツは若干呆れながら厨房を見回した。 広い厨房だとは思うが―――こんなところでドラゴンころしを振り回したらえらいことになる。 「なんだよ! やっぱりこりゃ虚仮脅しなのかい!? 兄ちゃん、見栄を張るのはいいが武器はちゃんと自分になじむものを使いな! その辺は剣士も料理人も一緒だぜ!!」 否定するのも面倒なので、ガッツは適当に流して黙々とスープを口に運び続けた。 「ガッツさん、どうぞゆっくりしていって下さいね」 貴族に出す分なのだろうデザートをトレイに乗せて、シエスタはガッツの前を通り過ぎ、生徒用の食堂だという部屋に入っていった。 軽く手を上げてそれに応えてから、ガッツはスープを平らげる。 マルトーに礼を言って厨房から出ようとドアに手をかけた時――― 食堂の方が騒がしいことに気がついた。 食堂ではシエスタが金髪の少年に頭を下げていた。平伏し、頭を地面にこすり付けるほどに。 そのシエスタを、薔薇を片手に見下ろす金髪の少年の顔はなぜかワインまみれだった。 「君のおかげで二人のレディーの名誉が傷付いてしまったよ。どうしてくれるんだい?」 「申し訳ございません、申し訳ございません…!」 「申し訳ないですんだら銃士隊はいらないんだよ! 僕はどうするのかと聞いているんだ平民!!」 「ひっ…! ごめんなさい…! ごめんなさい……!!」 金髪の少年は別に償いを求めているわけではない。 こうやってシエスタを追い詰めることでストレスを発散しているだけだ。 「なにあいつ、かんじわる~~。今の悪いの完全にあいつじゃん!」 「ギーシュのやつ…朝っぱらから見苦しい真似してるわね…」 そんな二人の様子をルイズとパックは苦々しげに眺めていた。 事の顛末はこうである。 デザートを配膳していたシエスタは金髪の少年・ギーシュが香水のビンを落としたことに気がついた。 元々奉仕精神の強い彼女である。当然それを見過ごすことは出来ず、ビンを拾い上げるとギーシュに差し出した。 しかしギーシュはそのビンを受け取ろうとはしなかった。その真意を彼女に汲み取れというのは酷な話だ。 結局その香水がきっかけで彼の二股が明るみになり、彼は二股をかけていた少女二人から見事な制裁を受けた。 ギーシュはその責任をこともあろうかシエスタに押し付けたのである。 「まったく、これは教育が必要なようだね……」 「お許しください…お許しください…!」 シエスタは目に涙を浮かべている。 ギーシュはそんなことお構いなしとばかりに彼が魔法の杖として使用している薔薇の花を高々と掲げた。 ひい…!とシエスタは頭を抱えて蹲る。 ギーシュはそれを見て大変ご満悦な様子だった。 「もう許さん! この怪傑スパックが制裁を与えてくれる!!」 「こら! 面倒なことに首突っ込まないの!!」 どこからか毬栗を取り出し突貫しようとするパックをルイズは捕まえる。 ちょうどその時だった。 ギーシュは床に大きな影が差していることに気がついた。 何事かと後ろを振り向き――― 「うわあ!」 いつのまにか現れていた巨躯の男に、驚きの声をあげた。 驚いたのはギーシュだけではない。 「ガッツ!?」 「あいつあんなとこでなにしてんの!?」 「ガッツさん……!?」 ルイズも、パックも、シエスタも思いがけない乱入者に思わず声をあげていた。 ギーシュはその男がルイズの召喚した平民だということに遅まきながら気がついた。 「何のつもりだ…平民。貴族である僕を見下ろすなどと随分と不遜な態度じゃないか」 「何があったか知らねえが……もう勘弁してやっちゃくんねえか?」 ガッツとしては一応、シエスタには恩がある。 シエスタがここまで追い詰められているのを放っておくのは、さすがに夢見が悪かった。 「頭が高いと言っているんだ平民ッ!!」 ギーシュが一喝する。 自分を見下ろすこの男は貴族に対してなんら敬意を払っていない。 それどころか―――この男は自分を見下してすらいる。 ギーシュはそう感じていた。 ガッツは―――ギーシュの傲岸な態度に、抑えていたものが噴出しそうになっていた。 「やれやれ…貴族ってなぁどいつもこいつも……聞くが、お前はそんなに偉いのか?」 「よかろう。名乗ってやる。我が名はギーシュ! ギーシュ・ド・グラモン!! かのグラモン伯爵家の第三子だ…わかったら平民! さっさと頭(こうべ)を垂れるがいい!!」 両手を大きく開き、ギーシュは大仰に名乗りを上げた。 グラモン家は最近お金の面で苦労しているとはいえ、それでもトリステイン有数の大貴族だ。 平民に対するその威光、推して知るべしである。 しかしガッツはそんなことは知らない。否、たとえ相手がミッドランドの大諸侯だったとしても、その態度は変わらない。 ふっ…とガッツの口が皮肉げに笑いの形を作った。 「俺は『お前』が偉いのかと聞いたんだ。啖呵をきるのに親の名前がいるってんならずっとママと手をつないで一緒にいてもらえ、ガキ」 シン…と食堂の空気が凍った。 もはやガッツを敵視しているのはギーシュだけではない。 ガッツの今の発言はギーシュの家名を馬鹿にした―――だけではない。 親から子へと連綿と受け継がれていく貴族の名誉、その在り方そのものをあざ笑ったのだ。 家名に誇りを持つ全ての貴族たちがガッツを睨み付けていた。 シエスタの顔は蒼白だった。 「よかろう……そこまで貴族を馬鹿にするんだ。覚悟は出来ているだろう! 決闘だ!! 平民ッ!!」 ギーシュがそう言い放つと周りの生徒たちから歓声が上がった。 「ヴェストリ広場に来い! ここを君の血で汚すわけにはいかないからな…!」 そう言い捨てるとギーシュは食堂を出て行った。 「ギーシュが生意気な平民に粛清を与えるぞ!!」 「あいつは貴族を馬鹿にした!! 八つ裂きだ!!」 食堂にいた生徒たちは是非決闘を見物しようとギーシュの後について続々と食堂を後にする。 2,3人ほどの生徒は残り、どうやらガッツが逃げないか監視しているようだった。 普段のガッツであればこんな決闘に乗ることは無い。どれだけギーシュ達がわめこうがまったく取り合わないだろう。 しかし今回ばかりは―――事情が違った。 胸のうちから噴出す黒い炎を誰彼構わずぶちまけたい気分だった。 「ガッツさん……だめ、殺されちゃう……」 シエスタはガタガタ震えている。 「あんた何馬鹿なことしてんのよ!!」 ルイズがガッツに駆け寄ってきた。 「早く謝ってきちゃいなさい!! 確かにギーシュにも悪いところあるけど、今のは絶対にアンタが悪いわ!!」 ルイズとて典型的な貴族だ。先ほどのガッツの発言は正直度し難い。 「メイジとやりあっちゃ、無事じゃすまないわ…! ほら、早く―――ッ!?」 ルイズはそれ以上続けることが出来なかった。 ガッツの目を見て、続けられなくなった。 ガッツがルイズに向ける目は、ギーシュに向けていたソレとはレベルが違う。 その目が直接ルイズに語りかけてくるようだった。 ―――てめえはこんなところで何をしてやがる ガッツの目はそう言っている気がした。 ヴェストリ広場で、ガッツとギーシュは向かい合って立っていた。 「ギーシュー!! 遠慮はいらねえぞーー!!」 「身の程知らずの平民め!!」 向かい合う二人に周囲の生徒から歓声と野次が浴びせられる。 ギャラリーの数は学院中の生徒たちが集まったのではないかというほどの人だかりだった。 そのギャラリーの中にルイズはいた。その頭の上にはパックが立っている。 いざとなれば、自分が出て行って決闘を中止させるつもりだった。 こんなことになったのは、大本を正せば自分のせいなのだ。 パックからガッツの事情は聞いている。 大事な旅の途中であったろうガッツに、こんなところで怪我をさせるわけにはいかなかった。 「よくぞ逃げずに来た! 平民!!」 ギーシュは胸のポケットに挿しておいた薔薇の花を抜き取り、振るった。 そこから零れ落ちた花びらが宙を舞うと―――甲冑を纏った女剣士を模したゴーレムへと変化した。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 「……好きにすりゃあいい」 「……いい度胸だ。改めて名乗ろう! 我が名はギーシュ! 『青銅のギーシュ』!! 名乗れッ! 平民ッ!!」 ギャラリーの歓声が絶え間なく聞こえている。 ガッツは一拍の間を置いて――― 「ガッツ。ただのガッツだ……ガキ」 そう、名乗った。 二人の様子をルイズはハラハラしながら見守っていた。 「ああ、もう、またあんな挑発して……しおらしくしてれば、ギーシュも本気出さないかもしれないのに……」 「ルイズさあ……」 ルイズの頭の上でパックが口を開く。 「何? パック」 「相手のほうの心配したほうがいいと思うぞ」 「え?」 なにか、いま、パックが信じがたいことを言ったような―――ルイズがパックの言葉の意味を理解しようとしていると、周りの喧騒がそれを妨害した。 「何だアレ!! ホントに剣なのかよ!!」 「あんなもん振れるわけがないぜ!!」 「わかったぞ! あれは剣じゃなくて盾なんだ!!」 「な~るほど!! 戦いが始まったらすぐさまあれの後ろに隠れるわけだな!!」 「そりゃあい~や!! 身の程知らずの平民にはふさわしい戦い方だぜ!!」 ガッツの背中に担がれたドラゴンころしを指差して生徒たちは口々にガッツを罵った。 実のところ、ルイズもガッツに対する認識は周りの連中とそう変わらないものだった。 大剣を持ち上げているのは見たけれど、とてもアレを普通の剣のように振り回せるとは思えなかった。 せいぜい、振り上げて、落とす。 その程度の使い方しか、ルイズには想像することが出来なかった。 無理もない。アレは、剣の範疇に収まりきるものではないのだから。 ―――決闘が開始される。 「行け! ワルキューレ!!」 ―――ギーシュの号令と共に青銅の女剣士が動き出す 「「「やっちまえギーシュ! ヴァリエールに遠慮はいらねえぞ!!」」」 ―――ワルキューレがガッツに迫る 「「「あいつは全ての貴族を虚仮(こけ)にした!! これは粛清だ!!」」」 ―――ガッツの足が一歩前へ 「「「おいおい平民がなんかやる気だぞ!」」」 ―――ワルキューレがランスを振りかぶる 「「「無駄な努力ごくろーさんだぜ!!」」」 ―――ガッツの手がドラゴンころしの柄を握り ボ ォ ン ! ! ! ! ワルキューレの胴が舞った。 きれいに上下に分かたれたワルキューレの胴が宙を舞う。 一回、二回、三回。 ぐるんぐるんと回ったワルキューレの残骸は、そのままドシャリとヴェストリ広場に転がった。 ヴェストリ広場に静寂が満ちる。 誰も声を出すことが出来なかった。 目の前の光景が、自分たちの知る常識からあまりにかけ離れすぎていて。 ルイズも、目を大きく開き、固まって。 目の前に対峙するギーシュは最も信じがたく。自らのゴーレムが宙を舞う姿を呆然と見送っていた。 「振った………」 誰かが漏らしたその声を皮切りに。 ヴェストリ広場に歓声とも悲鳴ともつかない叫びが木霊した。 前ページ次ページベルセルク・ゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1410.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ ゴーレムの打ち下ろす一撃をシールドで受けたユーノは片膝をついた。 その一撃は見た目よりは遙かに強力だ。 魔力のために単に腕を振り下ろしたときよりも何倍も威力を増している。 一方、ユーノの魔力は傷を治すために使っていたので余裕がない。 シールドもいつまでも待たない。 ゴーレムが両腕を組んで振り下ろしてきた。 それも防ぐ。 衝撃が治りきっていない傷に響いた。 今度はゴーレムが腕を横に振る。 建物が巻き込まれて崩れる。 ユーノはその中に、落ちる瓦礫を見上げるシエスタを見た。 シエスタはルイズを追いかけていたが途中で見失ってしまった。 仕方なく探していたらヴェストリの広場まで来てしまった。 大きな音がしたので来たらゴーレムが暴れていた。 ゴーレムが建物を崩壊させシエスタはそれに巻き込まれる。 「おじいちゃん……」 いつもスカートのポケットに入れている祖父からもらったお守りを掴んだ。 周りで怖い音がする。 上から重いものが迫ってくる。 もう一度お守りを掴んだ。 その時、体がふわりと浮いた。 「大丈夫?怪我はない?」 見知らぬ小さな子どものメイジがシエスタを抱いて空を飛んでいた。 落ちそうになったシエスタは子どものメイジに抱きついた。 痛む頭を押さえながらギーシュは目を冷ました。 当たりには土煙が舞っている。 離れたところで音がしたので、そっちを見た。 「なんだ……あれは」 10メイルくらいのゴーレムが暴れていた。 青銅の色をしているが自分のゴーレムではない。 あんなに大きなゴーレムは作れない。 それに自分は動かしてない。 ゴーレムの足下を見てまた驚く。 「なんだ、あいつは」 とにかくすごい防御魔法の使い手だった。 あんなゴーレムの攻撃を弾くような防御魔法を使えるメイジはこの学園でも少ないだろう。 「リリカル……マジカル」 後ろで声がした。 呪文のようだが聞いたことのない呪文だ。 だが、魔力の高まりは感じるので呪文であることは間違いない。 「リリカル……マジカル」 ギーシュは好奇心で振り向いた。 が、それを後悔した。 光がギーシュを包んだからだ。 前より調子がいい。 1回唱えるごとに魔力がずっと多く貯まっていく。 だけど、それでも足りない。 「リリカル……マジカル」 10メイルある巨人を倒すにはまだ足りない。 それでも急がないといけない。 念話で聞こえるユーノの声が弱っていく。 「リリカル……マジカル」 来た。 魔力が十分に貯まった充足感。 今ならいける。 「Shooting Mode.Set up」 杖が別の形に変わっていく。 より強い魔力をより遠くへ飛ばすための形に。 翼の生えた杖はどこまでも魔力を飛ばす。 杖を握りなおし、狙うのはゴーレムの頭。 「行きなさい!行って、捕まえなさい!」 魔力の光が撃ち出される。 光はゴーレム頭部のジュエルシードを射抜く。 途中で何かあったような気もしたけど気にしない。 「Stand by Ready」 「リリカルマジカル ジュエルシードシリアル10 封印!!」 第2射。 さらに強い光はゴーレムの頭に直撃し粉砕し、ジュエルシードをあらわにした。 「Sealing」 剥き出しのジュエルシードが光の筋となってレイジングハートに吸い込まれる。 「Receipt Number X」 頭のなくなったゴーレムが金属のねじれる甲高い音を立てながら崩れていく。 「Mode Release」 「ありがとう。レイジングハート」 役目を終えたレイジングハートは熱い水蒸気を吹き出し形を戻す。 「Good Bye」 ルイズは赤い宝石に戻ったレイジングハートをポケットに入れた。 「ふうー」 できた。 ユーノの言ったとおりミッドチルダ式の魔法は使えた。 思っていたよりもずっとうまく。 (ユーノ、封印終わったわ。こっちに来て) 返事がない。 (ユーノ、返事しなさい。どこにいるの?) やっぱり返事がない。 興奮していた頭がすっと冷めていく。 ルイズはユーノを念話で呼びながらどこかに走っていった。 残されたギーシュはまだ気絶していた。 オールドオスマンが現場にたどり着いたのはゴーレムが崩れた後だった。 現場に生徒達を近寄らせないようにして、錬金でゴーレムの残骸を調べて分かったのは、これは魔法で作られた青銅ではあるということだけで特に不自然な点はない。 「そういえば、そこで気絶しとったグラモンのバカ息子は青銅の2つ名じゃったな……」 水のメイジが連れて行ったギーシュがゴーレムの主ではないかと考えるが首を振る。 ドットのメイジにはどうやっても無理な代物だ。 「それに、あれはなんじゃったんじゃろうな」 遠見の鏡で見たゴーレムの額には青いものがあった。 青銅に色をつけただけかも知れないが同じものは見つからない。 だが、あの青い石は気になった。 学院の生徒達は建物の陰に隠れてゴーレムを粉砕した桃色の光を放つ魔法を使った謎のメイジについて様々な憶測を建てていた。 学院の天才メイジである いや、先住魔法かも知れない いやいや、正義の味方に違いない!! だがキュルケはそんなことどーでもよかった。 キュルケが問題にしているのはゴーレムを粉砕した魔法を使ったメイジではなく、ゴーレムと戦っていた風変わりな防御魔法を使う一年生だった。 「あの後ろ姿……どこかで見覚えがあるのよね」 裾がほつれたマント。 学院ではあまり見ない半ズボンと半袖の上着。 指の部分を切り取った手袋。 茶色の髪。 あれは確か…… 「ルイズの男じゃない!!やっぱりいたのね」 ルイズがひた隠しにする男の子の正体。 それが誰か、ますます気になるキュルケだった。 ルイズはユーノを探して学園中を走り回る。 ゴーレムが暴れた近くにもいなかったので少し離れた場所も探してみる。 それでもユーノは見つからない。 (ユーノ、ユーノ。どこ、返事して) 「ユーノ、ユーノ。どこ、返事して」 念話と一緒に声が出る。 どこにもいない。見つからない。 「あの、ミス・ヴァリエール」 メイドがいた。 確か落ちたときに湿布を頼んだメイドだ。 「ミス・ヴァリエール。この人……」 メイドはフェレットを抱いていた。 間違いない。 「ユーノ!」 ルイズはユーノを奪うように取る。 ぐったりしていたが息をしていた。 「よかった」 ほっとしたら気づいた。 確か、このメイドは今「人」といわなかっただろうか。 フェレットのユーノを「人」といわなかっただろうか。 「あなた、なにか知ってるの?」 「あの、そのメイジの方……ユーノさんに助けていただいて……そのあと、ユーノさんがその姿に」 ルイズはとぎれとぎれに話すメイドの腕を掴む。 「あなた、名前は?」 「シ、シエスタといいます」 「シエスタ。ユーノのことは秘密にするのよ。いいわね?」 「え?……あのそれって」 ルイズは目に力を入れた。 「いいわね?」 「は、はい」 シエスタは背を仰け反らせて答えた。 「あ、それから。ミス・ヴァリエール。これ、頼まれていたものです」 ルイズはシエスタの出した湿布を取って、部屋に戻っていった。 部屋に戻ったルイズはユーノを机に寝かせた。 残っていた薬をユーノに塗る。 初めてジュエルシードを回収した後のようにユーノはぐったりして動かない。 「なんでこんなになって、平民なんか助けたのよ」 ──平民なんか 最初にユーノと会った時を思い出す。 ユーノは自分の責任じゃないのにジュエルシードを回収しにここに来た。 責任とかそういうのじゃないのかも知れない。 「そっか」 少しユーノの考え方が解るような気がした。 ユーノの譲れないところなのかも知れない。 「あなたには、ほっておけ言ってもできないかもね」 納得はできなかったけど。 だからルイズはユーノが起きたらまず私のことを考えなさいと命令することにした。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4347.html
532 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 19 04 00 ID 58qVfhNd オレは七万のアルビオン軍を止めた 「死ね」と命令されたご主人様を守るために… ご主人様も、大切な人達も助けることができた だけどオレは失った… 大好きなご主人様を守る力を… アルビオン軍を止めてから三週間 サイトはティファニアの水の指輪のおかげでギリギリで生き延びた 村に来た商人に聞くと、トリステイン軍はアルビオン軍から何とか逃げ出すことが出来たらしい 多分ルイズも無事だろう だがその代償として左手の紋章と「ガンダールヴ」としての力を失ってしまった ガンダールヴでなくなってしまった自分にはもうルイズの側にはいられない… ルイズに必要なのはガンダールヴであり、平賀才人ではないからだ もう会えない…そう考えると、どうしても涙が溢れた そうしている内に銃士隊のアニエスが現れ姫様が自分を探している事を知った だが…行けるない 「あの…、姫様には、オレが死んだと伝えてくれませんか?」 「何故だ?平民の身分で陛下に捜索願を出されるなど、ありえない名誉だぞ?」 サイトは言った 「姫様はルイズに伝えると思います」 「そりゃそうだろう。貴様はミス・ヴァリエールの使い魔なんだから」 「もう、違うんです」 サイトはアニエスに自分がもうルイズの使い魔ではないことを説明した 「使い魔じゃないオレは、誰にとっても必要のない人間です。だから、死んだと伝えて下さい」 アニエスはその願いを聞き入れてくれた そしてアニエスに剣の稽古をつけてもらったり、テファや子供達とご飯を食べたり…そんな日々を過ごしていたある日… 大好きなご主人様がオレを探しに、すぐ近くに来ていることを知った 会いたい…どうしようもなく会いたい。 自分の命を賭けて守ったご主人様… 世界で一番大切なオレの好きな人… だからサイトはこう言った… 「テファ…ルイズの記憶を消してくれないか…?」 533 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 19 39 59 ID 58qVfhNd 彼女はルイズと同じ虚無の担い手であった 「どうして?大切な人なんじゃ…」 サイトは答えた 「オレじゃダメなんだ。」 本当は今すぐに出ていって思いっきり抱きしめたい でも自分はルイズの側にいるべき人間じゃないから 「本当に良いのね?」 サイトは辛そうな顔をしながらも頷いた 死んで…ないよね? 生きてる…よね? ルイズは自分にそう言い聞かせながらシエスタと森を歩いていた 「大丈夫です!きっと生きていますよ!」 シエスタは自分に笑顔でそう言ってくれた シエスタも自分と同じように辛いはずなのに… しばらく歩くと、大きな帽子を被った少女が茂みから出てきた 「あの、ちょっとお尋ねしたいんだけど」 「ルイズさんとシエスタさんですね?」 ルイズは驚きに目を見開いた 「どうして私の名前を…サイトがいるのね!?どこ?どこにいるの!?」 ルイズは我を忘れて金髪の少女に詰め寄った その時 「落ち着け!ルイズ」 後ろからどうしても会いたかった使い魔の声が聞こえた 「え…」 驚いて振り向くと背中に大剣を背負った黒髪の少年、夢にまで見た使い魔が立っていた 「どこ…行ってたのよ」 すぐに走り出し、思いっきり抱きついた ずっと我慢し続けていた涙が一気に溢れる 「バカぁ…生きてるなら、なんで早く帰ってこないのよ…」 サイトは何も喋らない ただ辛そうに俯くだけだ 「どうしたの?」 「オレは…もうお前の側にはいられない」 何を言い出すんだこの使い魔は 「もうオレはお前を守れない」 「何言ってるのよ!アンタはガンダールヴでしょ!?なら私をずっと守って…」 「オレはもうガンダールヴじゃないんだ…だから…」 ティファニアが呪文を詠唱し始める 「アンタがガンダールヴじゃなくたって私は…」 「だから…忘れてくれ…」 サイトはルイズを抱きしめながら、最後に言った 「大好きだ…ルイズ…」 ティファニアの虚無が発動し、ルイズからサイトという存在を奪った 572 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/18(土) 14 14 47 ID J5J8eS4Z 虚無の魔法は容赦なくルイズからサイトを奪った ルイズは、サイトを探すために歩き回った疲労と、自分の大部分を占める「大切な人」を失った反動で、サイトの腕の中で気を失う 驚いてパニックになりながらもシエスタが口を開く 「な、何をしたんですか!?サイトさん」 ルイズを、まるで水晶のように腕に抱えながらサイトは言った 「ルイズの記憶からオレを消したんだ…」 「なんでそんなことを!?」 「もうルイズを守れなくなったから…」 「なんでですか!?ミス・ヴァリエールはサイトさんを探してここまで!」 「だからだよ…もうオレはルイズの使い魔じゃない。ルイズに必要なのは、ルイズを守れる使い魔なんだ…」 サイトはシエスタにルイズを預けた 「オレのことは話さないでやってくれ。学院のみんなにもオレは死んだって言っといて…」 「待って!」 呼び止める声も聞かず、サイトは森の中に消えて行った 「相棒…」 「何だよ」 「オレは相棒の味方だかんね。誰が相棒のことを忘れようが死ぬまで側にいてやるよ」 しばらく何も言えなかったが、小さな…震える声で、優しい伝説の剣に感謝の言葉を言う 「ありがとな…」 もう元には戻れないという悲哀がサイトの心を押しつぶそうとしていた 573 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/18(土) 14 58 24 ID J5J8eS4Z ルイズは目を覚ますとシティ・オブ・サウスゴータに作ったテントの中にいた 周りを見渡すとシエスタが料理をしている 「シエスタ?」 彼女はビクッと驚いたような反応をしたが、すぐにいつもの笑顔を作った 「やっと起きましたか、ミス・ヴァリエール」 自分はかなり長い時間眠っていたようだった 「心配したんですよ?半日も目を覚まさなかったんですから」 シエスタはついさっきまで作っていたヨシェナヴェ持ってきてくれた 「ありがとう」 「いえ、気にしないで下さい」 ルイズは暖かいスープを啜りながら何故半日も寝ていたか考えていた (確か…森を歩いていて、そしたら…) その後の記憶が全くない 「ねぇシエスタ?私、何で半日も寝ていたの?」 どうしても思い出せない… それどころか、何故自分はあの森に入っていったか…いや、何故アルビオンに来ているのかすらも思い出せなかった 何かを探しに来た…でも何を探しに来たか全くわからない 「えぇと…い、今は疲れてますから!ゆっくり休みましょう!」 返答に困ってしまったシエスタはその場をなんとか凌ぐように言った 「そう…ね…」 とにかく今日は疲れた 考えるのはこの疲れが取れてからにしよう そう思った時に不意に涙が流れ落ちた 「あれ?あれ?」 心に空いた大きな穴 その穴の意味が判らずに、ただただ涙を流すしかなかった 「泣かないで下さい…泣かないで下さい」 シエスタが自分を抱きしめてくれた 「その涙を…忘れないであげて下さい」 もう好きな人を思い出すことすら出来ない少女を抱きしめる 2人は2つの月に見守られながら眠りに落ちていった 668 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 23 46 21 ID wrhKFw51 ルイズは次の日、学院に戻る船に載っていた シエスタは自分が半日も寝ていた理由を教えてはくれなかったが、そこまで気にすることはないだろう 「それにしても…」 何故自分は急に泣き出してしまったんだろうか… 悲しかったわけではないし、ましてどこかケガをしたわけでもない 「ミス・ヴァリエール、到着は夕方頃になるらしいです」 「夕方なら学院に着くのは明日になるわね」 「私は学院に連絡して来ますので、少しここで待っていて下さい!」 と言って走って行った 「やっぱり良い娘よね…」 優しさ…素直さ…清楚さがにじみ出ている 自分には何もない ただ下手なプライドをかざしてワガママを言ったりするだけだ 「これじゃあ…」 と考えた所で、何故彼女に対抗しようとしているのか全くわからないことに気付いた 「なによ…これ…」 ルイズは自分に何が起こっているかわからずパニックになった 「なんで?なんで思い出せないの!?」 わけがわからない 無理やりにでも思い出そうとした時、ルイズを激しい頭痛が襲った 頭が割れるんじゃないかという頭痛でルイズはその場に座りこんでしまった そこに連絡を終えたシエスタが駆け寄ってきた 「どうしたんですか!?ミス・ヴァリエール!」 「なん…で?いない…思い出せない…」 「ダメです!何も考えないで下さい!!」 頭痛で薄れていく意識の中、シエスタの黒髪を見た時、たった一つの映像が… 記憶が無くなっても心が覚えていた映像 左手に大剣を持った黒髪の剣士の背中… その背中を見た時ルイズは極度の安心感と頭痛による疲労で気を失った… 18 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 01 06 45 ID id+BY6ci その頃サイトは日課となったアニエスとの剣の修行を終え、デルフリンガーを横に置き、木の下で丸くなっていた これでよかったんだ…ルイズはオレに必要ないんだと言い聞かせながら必死に後悔の念を抑える 「相棒、これからどうするんだい?」 デルフリンガーがいつものくだけた話し方で聞いてきた 「相棒よぉ、なんで娘っ子の記憶を消したんだい?」 「オレはガンダールヴじゃないから」 「だからもう守れないと?」 「あぁ…だからオレはルイズの前から消えなきゃいけないんだよ」 「ならなんで相棒は剣の修行なんかしてるんだい?」 サイトは答えられなかった 「代わりに答えてやろうか?相棒はまだあの娘っ子を忘れきれてないんだよ」 「…」 「どんなに自分に言い聞かせようが、相棒の心に迷いがある。欲と言っていいだろうね。」 「でもオレは!」 「あぁ、ガンダールヴじゃないな!だからルイズは守れない、だから一緒にいられない、でも諦められない!違うかい?」 完璧に図星だった 「どうしようもねぇだろ…」 自分はもう誰からも必要とされてない 「良いことを一つ教えてやる。あの娘っ子も相棒と同じようなことで悩んでたんだぜ?」 「え?」 そんなこと聞いたことがなかった 「本当さ。更に言えば無理やりこっちに連れて来ておいて、使い魔は伝説のガンダールヴなのに、自分はゼロ…口には出さなかったが、かなり悩んでた」 さらにデルフは続ける 「そんでやっとの思いで使えた魔法が「虚無」。あの娘っ子はそりゃ喜んだだろうさ。やっと相棒に見合う貴族になれたってね。まぁ悪魔で多分だけど…」 サイトは何も言わずに聞いていた 「そんな娘っ子がガンダールヴの力が無くなったくらいで相棒を捨てるはずが無いだろ?」 「でも!ルイズに必要なのはガンダールヴで!!」 「ガンダールヴがどうした?今まで娘っ子を守りきれたのはガンダールヴの力だけかい?違うだろ、相棒の想いそれが無きゃ、今頃どっちも死んでたね」 「…」 「相棒のその想いに勝てるヤツなんかいやしないさ。そんなヤツらにあの娘っ子を任して良いのかい?」 「でも!今のオレじゃ守れなくて…」 「大切なのは想いさ、強さはそれからでいい!」 サイトは目を瞑り考える そして… 「もう一回…最初から出きるかな…」 震える声で…別れの森とは違う声で呟く 「出来るさ、相棒には誰より強い想いがある」 19 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 01 08 10 ID id+BY6ci 「でもやっぱりダメだ」 「なんだよ拍子抜けだな…次はなんだい?」 「ルイズの記憶を消したんだ…今更やり直すなんて…」 後悔の念がサイトを襲う なぜ自分はあんなことを!? ガンダールヴなんか気にせず守るって言ってやれば… 「あ〜それ…治せるかもしれんよ」 クソっ!なんで…って 「治せるのか!?」 ルイズが気がついたのは自室のベットの上だった まだ頭が酷く痛む そしてそれと共に頭に焼き付いた一人の剣士の背中… 「誰なの?」 その背中を見るだけでとてつもない安心感が生まれる 「あなたは私の何?」 その背中を見るだけで心の奥の暖かい何かが疼く 「あなたは…」 そして机の上にある、いくつかの見慣れぬ物に目がいく 一つは黒い箱、一つは買った事のない貝のペンダント、そして誰に編んだかわからないセーター しかしルイズはそれが要らぬ物とは思えなかった もしサイトとの思い出が全て消えていたなら迷わず全て捨てていただろう だがルイズの記憶ではなく、心…そこに刻み込まれた愛しい人への想いが、ルイズの大切な物の消滅を拒んだ それと同時に底の無い絶望感が溢れ出す 「なんで…いないのよ…」 誰に言った言葉かもわからず、ルイズは泣き出した… 何が何だかわからない だが2つわかったことがある 自分は一人だということ そして 「私が…殺した…」 愛する者が死んだという事実 27 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 08 38 55 ID id+BY6ci 少し更新 シエスタがルイズの部屋に入った時、目を覚ましたルイズが泣いているのを見つけた 「どうしたんですか!?ミス・ヴァリエール!」 また記憶を戻そうとしているのかもしれない 「シエスタ…」 ルイズはシエスタに崩れるようにもたれた 「私が…私が殺したんでしょ?」 「違います、あなたは誰も殺したりしていません!」 「でも…私のせいで…それなのに私…その人の顔もわからない」 シエスタは驚愕した サイトは確かに記憶を消したと言っていた だがどうだろう この小さな貴族はそれを覚えているではないか そして自分を守ってくれた使い魔のために涙を流している なら… 「ミス・ヴァリエール、今から私の言うことをしっかりと聞いて下さい」 ルイズは涙を拭い、シエスタの方を見た 「この話はとっても辛いお話しです。ミス・ヴァリエールは耐えきれなくなるかもしれません。それでも…それでも聞きたいですか?」 ルイズは頷く 目には先の涙の跡があったが、しっかりと自分を保とうという強い意志が感じられる 「では…」 シエスタは話した 私には使い魔がいたこと その使い魔が人間でいつも私の側に居てくれたこと 「大丈夫ですか!?」 「大丈夫…続けて…」 また酷い頭痛がする 気を失いそうだ でも聞かなきゃ 自分を守ってくれた人のことを 「…わかりました。ミス・ヴァリエールはアルビオンの軍隊を足止めするように命令されました」 そう、自分は確かに「死ね」と命令された 「そう命令されたあなたを守ったのがミス・ヴァリエールの使い魔さんです」 黒髪の剣士の背中が今までで一番激しい頭痛のなか蘇る 「その使い魔さんはあなたを睡眠薬で眠らせました。そして一人、アルビオン軍へ…」 そこまで話すとシエスタは泣き出してしまった 彼女も辛くて辛くてどうしようもないのである 好きな人が生きていることが分かっていても、自分にはどうしようもない そんな無力感に必死に耐えていたのだ 「ごめんなさい…」 「謝らないで…教えてくれてありがとう」 「まだあるんです。その使い魔さんはまだ生きてるんです」 「え!?どこにいるの?」 「今はわかりません…」 酷い頭痛の中、深い絶望感と悲壮感の中に光が生まれた 会いたい…顔も…声も…何もわからないけど あなたの背中しかわからないけど 会いたい…会いたい… 28 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 10 38 25 ID id+BY6ci 自分の代わりに命を賭けてくれた優しい使い魔 「その使い魔の名前は…なんて言うの?」 シエスタはちょっと考えて 「教えません!」 「なっ、なんでよ!?」 「ちょっとイジワルです♪本人に会ったときに聞いてあげて下さい」 多分2人は会うだろう こんなにも想い合ってるんだから だからほんの少しのイジワル 「うん、わかった」 「それと…」 シエスタは記憶を消したのはその使い魔だと言おうか悩んだ 自分が言うことで2人を引き裂かないだろうか そう悩んでいるとルイズの目を見る 鳶色の真っ直ぐな目 決心に満ちた信念の目 悩む必要なんてなかった 「ミス・ヴァリエールの記憶を消したのはその使い魔さんです」 ルイズは驚かなかった なんとなく気付いていたのだろう 「それでも会いに行く、あっちが会いたくないって言っても…せめて御礼を言うまでは絶対に諦めない!」 ルイズはそう言って立ち上がった 「無理です、ミス・ヴァリエール…」 「なによ!不可能なんかないわ!絶対できる!!」 「お金が…」 2人の所持金はすでに底をついていた 34 名前:純粋センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 22 29 21 ID id+BY6ci チマチマとしか更新できなくてスマン… 毎日更新はするから許してくれ ってことでチョット投下 35 名前:純粋センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 22 31 23 ID id+BY6ci ルイズは顔もわからない使い魔に会いに行くことを決心したが、大きな壁が立ちはだかった 「アルビオンに行った時に全部使っちゃって、今はもう…」 『お金』である ドラゴンやグリフォンが使い魔でない限り、アルビオンに行くには船しかない だが2人の持つ全てのお金をかき集めても雀の涙程度 誰かから借りようにも、ギーシュ、モンモンは貧乏貴族。アンリエッタに借りようにも私財を投げ売らなければならないほど国庫が枯渇したと聞いていたので、自分に出せるような金などないだろう 「せめてアルビオンに行ければ手もあるのに」 ルイズは爪を噛んだ 「あるには…ありますよ?」 シエスタが迷いながら言う 「ただ…使える人が居ればの話しですが」 「何!?どうすれば良いの!?」 「多分、ミス・ヴァリエールには無理です。っていうかあれを使えるのはこの学院には…」 「だから何なの!?はっきり言って!」 シエスタは自分が考えている、限りなく不可能に近い方法を言った 「…」 「ね?無理でしょう?あぁ、ならどうしよう…」 「あんた、アレ使えないの?」 シエスタは世界の終わりが来たかのような怯えた目で言う 「むむむむむむ無理ですよ!操縦の仕方は教わってますが…」 「なんで?元々はあんたの家の物じゃない」 「でも飛ばしたことなんて無いですもん!」 「物は試しよ!お金は無いし時間も無いの!私の使い魔がどっか行っちゃうじゃない」 あぁサイトさん…戻って来ても尻に敷かれるのは間違いないです シエスタは目線を伏せて申し訳なさそうに言う 「でも無理な物は無理ですよ…一度も飛ばしたことないですし…」 確かにルイズの力にはなりたい がっ、それでもし自分が操縦に失敗すれば元も子もない 罪悪感にさいなまれながら目線を戻すとルイズは有り得ない行動をしていた 「お願い…一回だけで良いから…お金だって…今は無いけどいつか払うから!一回だけで良いから…」 ルイズは頭と膝を床につき、震える声でシエスタに懇願していた 「やめて下さい!ミス・ヴァリエール!」 貴族が平民に土下座したなど聞いたことがない 「なぜ顔も知らない人の為にそこまで出来るんですか…」 ルイズはその姿勢を続けて答える 「会いたいの…なんでかわからない…けど、どうしようもなく会いたいの…だから…」 あぁそうか… 「拒絶されるかもしれませんよ…?」 顔が思い出せなくてもこのコは… 「それでも…会いたいの…」 サイトさんを愛してるんだ 65 名前:コピーミスった…[sage] 投稿日:2006/11/22(水) 22 57 53 ID Ljha/dsJ スマン!!コピーミスったんでこっちを見てくださいm(_ _)m 「あぁ、あれが魔法なら大丈夫さ」 「どうすりゃいいんだ!?」 驚いて声を上げるサイトをデルフはなだめるように言った 「あれは要するに水の洗脳魔法と同じようなもんさ。」 デルフの説明によると、あの魔法は記憶そのものを奪うものではなく、その記憶を取り出そうという信号を消すものだということだった 「記憶本体を奪うなら虚無の力なら脳みそごと消せばいいだけさ。ブリミルがそうしなかったのは、後でそれを解除できるようにってことで信号を消すって手段をとったんだろうね」 「ディスペル・マジック…」 「そうさね。それであの娘っコの記憶は戻るさ」 また大好きなご主人様の所へ…ルイズの所へ戻りたい しかし記憶を奪ったという罪悪感がその欲救を抑え前に踏み出せない… 「あとは相棒が決めな。オレはもう何も言わんさ」 一方、トリステイン魔法学院ではシエスタが必死になってゼロ戦を整備していた 「ミスタ・コルベールが設計図を残してくれて助かりました」 彼はゼロ戦にとても深く興味を持っていたので、分解した時に書き記したであろうメモや設計図が見つかったのだ ルイズが操縦席の後ろの隙間から声をかける 「飛びそう?」 ルイズは最初は手伝おうとしていたが、操縦席から転げ落ちそうになったので後ろで小さくなっていた 「はい!軍の方でもしっかり整備されていたみたいですし、固定化の魔法のおかげで部品の劣化もないので大丈夫だと思います。ただ…」 「ただ?」 「燃料が保たないと思います…せめてあと樽が3本分は必要かと」 コルベールが予備のガソリンを置いておいてくれたが、なにしろ目的地は空である たどり着くにはかなりの燃料が必要であった 「どうしましょうか?」 「「土」の系統のメイジに頼むしかないわね。手頃な「土」系統のメイジといったら…」 いるではないか、頭のネジが10本は抜けた「土」系統のメイジが! 「ちょっと待ってて!」 ギーシュが暖炉の前でとてつもない寒気を感じたのは言うまでもない 121 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/23(木) 22 13 18 ID N3Z4Crs7 ギーシュは屍と化していた 前にモンモラシーに秘密で後輩に手を出したことをダシにされ、精神力を限界以上に使わされたのだ 「ほら、早く練成しなさいよ!」 「も、もう無理だっ…」 ルイズはこれまでサイトに向かっていた、溜まりに溜まったドSっ気をギーシュへ発散しまくっていた 「へー。モンモラシーにバラしても良いのね?」 そんなことをされたら今以上にヒドい目に会うだろう 「わ、わかった!わかったからそれだけは…」 「ならさっさと仕事する!」 ギーシュは文句を言いながらも協力を惜しまなかった シエスタからルイズの記憶からサイトが消えてしまったと聞いた時は出来るだけ触れないでおこうと思ったが、そのルイズがサイトを探すと言ったのである。協力しないわけがない 「まったく…彼も果報者だね」 「いいからさっさと呪文を唱える!」 ルイズの鞭が生物のように襲いかかる 「ギャァァァァ!!!!」 ギーシュの夜は長い… サイトは森から戻っていた 「サイト」 ティファニアが声をかけて来た 「どうしたの?テファ」 「実は…いつも来てくれていた商人さんが急に倒れちゃったらしくって」 「えっ!?大丈夫なの?」 「うん、ただ少しの間来れないみたいで…」 ティファニアの村は食料や日常生活に必要な物の殆どをその商人から買っていた 「だから街まで買い物に行かなきゃいけないんだけど…」 サイトはティファニアが言いたいことを理解した 「いいよ、オレが行く!」 ティファニアはハーフエルフである。街へ出ていけば何をされるかわからない かと言って子供達に街まで行かせられるハズもない 「本当!?」 「うん、やることっていっても剣の修行しかないし」 「じゃあ明日、サウスゴータまでお願いね」 「わかった」 運命の歯車は動きだす… 122 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/23(木) 22 15 34 ID N3Z4Crs7 「で、できたぞぉ…」 ルイズの脅迫と鞭を体に受け満身創痍の中、ギーシュは樽三本分のガソリンを完成させた 「ありがと、助かったわ」 ルイズは素直にお礼を言った 「まったく…これで見つからなかったら君を呪うからね!」 「大丈夫。必ず見つけるから!」 できたガソリンをゼロ戦の中に入れる 「入ったわよ!シエスタ」 「わかりました。エンジンをかけるので乗って下さい!」 ルイズは操縦席の後ろに乗り込んだ 「ミス・ヴァリエール、エンジンをかけるので魔法でプロペラをお願いします」 ルイズは軽くルーンを描きプロペラの前の空間を爆発させプロペラを回転させる それを見てシエスタは操縦桿を握る 「さぁしっかり捕まってなよルイズ!」 口調がおかしい… 「シエスタ?」 「この振動…この緊迫感…私はこのために生きている!」 「ちょ…落ち着きなさいよ!」 「私は風よ!!風になるのよ!!」 「待ちなさい、ってキャー!!!!!」 二人を載せたゼロ戦はアルビオンへ向かって空に飛んだ ルイズの悲鳴とシエスタの狂声を発しながら… 184 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/24(金) 23 37 42 ID YqH/Cp8C 「じゃあ、これお願い」 そう言ってティファニアは食品や生活用品などが書かれたメモを取り出した 「往復するのに1日かかっちゃうだろうから明日の夜あたりに戻ってくるね。」 「うん、わかった」 そしてティファニアから買い物分の金貨と宿代をもらい、サイトはサウスゴータへ歩きだした 二人はロサイス近くの平原に降り立っていた 「し、死ぬかと思ったわ…」 ルイズはゼロ戦の操縦席の後ろでモグラのようになっていた 「えっと…私、何しましたか?」 とゼロ戦を操縦していたシエスタが聞いてきた どうやら本人は操縦していた時のことを全く覚えていないらしい… 「あんたはねぇ!「私は風になる女!こんなガラスなんていらないわ!」とか言い出して海のど真ん中で周防を割り出したの!死ぬかと思ったんだから」 他にも「私はトリステインの守護神フェニックス!不死鳥のシエスタに勝てるものなどいないわ!!」とか言い出して貴族の船に空からガソリンをバラまこうとした… 急に泣き出して「私も後を追います」とか言い出して、操縦席の後ろに積んであるガソリンに火をつけようとした… 他にも…etc. その度にルイズがシエスタを必死になって抑えたのでルイズは疲労困憊していた 「ご、ごめんなさい!ひいおじいちゃんに操縦を教わった時も記憶が飛んじゃったらしくて…気づいたら隣に息をしてないひいおじいちゃんがいて…」 ルイズは金輪際、シエスタの運転するゼロ戦には絶対に乗らないことに決めた 「ま、まぁアルビオンにつけたんですし!早くサウスゴータへ行きましょう!」 「そ、そうね。」 「じゃあ早くゼロ戦に…」 「絶対にイヤァァ!!!!!!」 ルイズのワガママ、及び自己防衛のために二人はサウスゴータまで歩くことになった 二人はまだ気付いていない 小さな人形が二人を追いかけていることに 185 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/24(金) 23 39 26 ID YqH/Cp8C 「さて、どうするか…」 サイトは夕方にはサウスゴータの街についていた しかしこの世界の店じまいは早い… すでに食料品を買えるような時間ではなく、仕方がないので宿を探すことにした ティファニアは余裕をもってお金を渡してくれたので安宿だが宿を見つけることは出来た しかし安宿は安宿…前にどこぞのお姫様と泊まった宿よりも汚い… 部屋に入り体に染み着いた使用人根性で掃除を始めるとデルフリンガーが口を開いた 「相棒、あの隊長様に何も言わずに出てきたみたいだが…大丈夫かね?」 忘れてた… 「あの姉ちゃんはヘタすりゃあの娘っ子よりドSだからねぇ。帰ったら相棒、死ぬかもしらんね」 ぷるぷる震えながら言う。恐らく笑われている… やはりいつか溶かすしかない 「なぁデルフ…」 「なんだね、相棒」 「散歩…行かないか?」 「オレぁ、相棒の行くところならどこだって行くさ」 ルイズとシエスタもサウスゴータの街へ着いていた が、お金が無いので前と同じように広場にテントを張る 「じゃあ私は晩御飯を用意しますので」 と言ってシエスタは料理を始めた こうなるとルイズはすることがない… 貴族の習性というヤツで自分から何かするということをするような人間ではないのだが、いくらなんでもシエスタに任せすぎた 自分も何かしないと…という気持ちになる 「シエスタ、私何かすることある?」 シエスタはそんな自分の不安を汲んでくれたのだろう 「ではかまどの火を見ていて下さい。私はもう少し食材を調達してきますね」 「うん、わかった!」 シエスタは街の外へ歩いて行った 周知の事実だが、ルイズは料理がダメである。 貴族だからというのもあるかもしれないが、それに輪をかけた料理オンチである… そんな娘に「火を見ていて下さい」と言えばどうなるかは想像に難くない 案の定、ハリキリ過ぎたルイズはかまどの火を消してはならないと思い、薪を入れすぎる 「キャー!!何よコレー!!」 すると次に「火を消さないと」と躍起になる もちろん天性の才能から水ではなく油をぶっかけてさらに火は大きくなる 痛感させられた 私はやっぱり一人じゃ何も出来ない… 意地ばっかり張って、最後には人に泣きつくばかり… 「ごめん…なさい…」 燃え盛る炎の前で、ルイズは泣き出してしまった 自分が何も出来ない悔しさ…それからくる涙だった そして本格的に火事になりかけた時 「大丈夫か!?」 一人の平民が私を救い出してくれた 238 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/26(日) 01 25 01 ID jZje8mnM しかもsage忘れ…orz 夜の街はまだ少し肌触かった 「前歩いた時は…シエスタに泣かれちゃったんだっけ」 降臨際の夜に一人あてどなく歩いていた時に泣きながら自分を引き止めてくれた そして自分に「生きて」と言って眠り薬をくれた優しい女の子 「眠り薬のお礼…してなかったな」 そのおかげで大事な人を守ることが出来た そんなことを考えていると、デルフリンガーが話しかけてきた 「相棒」 「どうした?」 「実はよぉ。言おうか迷ってたんだが…」 「なんだよ、早く言えばいいだろ」 「いや、もう遅かったみたいだ」 「へ?」 「サイトさん!!」 その声が聞こえた瞬間、ハルケギニアでは珍しい黒髪のメイド服を着た少女に腕を掴まれた 「シ、シエスタ!?」 「見つけ…ました…」 肩で息をして涙目になりながらも握った腕は離さない 「な、なんでここに…」 「探しに来たに決まってるじゃないですか!」 自分を?なんで… 「オレは誰からも必要とされてないよ…」 だからご主人様の記憶も奪った 「それにオレはキミが憧れた貴族に勝てる平民じゃない…ルイズを守る力も無いんだ」 パァーーン! 左頬をひっぱたかれた 「何を言ってるんですか!ミス・ヴァリエールはあなたが死んだと思っていた時、自分も後を追おうとしたんですよ!?」 ルイズが…オレの? 「それだけじゃありません!サイトさんに記憶を奪われた後、ミス・ヴァリエールは泣きました!記憶も無いのに…サイトさんの顔もわからないのにですよ!?」 「な…んで…」 「それに私が好きなのは貴族に勝てるサイトさんじゃありません。どんなことがあっても諦めないサイトさんが好きなんです!」 シエスタは息もつかずにまくし立てた そして最後に… 「少しは自分が他人にどう想われてるか…考えて…」 そう言ってサイトの胸に頭を預け、泣き出してしまった 239 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/26(日) 01 28 18 ID jZje8mnM シエスタはしばらくサイトの胸に顔をうずめ泣いていた サイトは思った このどうしようもなく優しい子は自分を好いてくれている 今も自分を好きだと言ってくれた でも… 「ルイズも…来てるの?」 命を賭けると決めた人がいるから シエスタはそれだけでわかってくれたらしい 「やっぱり…私じゃダメですよね…」 何も言えない。この優しい女の子を悲しませたくはない… でも自分の心にこれ以上嘘はつけない 「ミス・ヴァリエールは広場にいます。サイトさんのことは忘れたままですが…」 「シエスタ…」 「早く行ってあげて下さい!」 「うん…ありがと」 サイトはそう言って駆け出して行った 「もうちょっとだけ…好きでいても良いですよね…」 広場ではちょっとした混乱が起きていた 混乱のヒドい方向から歩いてきた男を引き止める 「どうしたんですか?」 「ボヤ騒ぎさ。どっかの貴族がかまどを燃やしちまったらしい」 そう聞いた瞬間、サイトは走り出していた 魔法が使える貴族がボヤ騒ぎなんて起こすはずがない 考えられる人物は一人しかいない そして 見つけた オレの大事な 全てを賭けて守りたいと願った 大好きなご主人様… 「大丈夫か!?」 彼女は泣いていた 317 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 01 13 31 ID BYDRGXFY 黒髪の彼は私を救ってくれた 燃え盛る炎からではない 孤独、不安、無力感から… 大剣を背負ったその背中は与えてくれた 安心、歓喜そして希望を… サイトが火を消し止め後もルイズはずっと泣いていた その涙はさっきまで流していた孤独の涙ではない 歓喜の涙… しばらくして泣き止んだルイズが口を開く 「アンタ誰よ?」 「お前…恩人に「アンタ誰」は無いだろ!?」 「アンタ平民でしょ?なら貴族に名前を聞かれるだけでも光栄に思いなさい!」 すっかりサイトと出会う以前のルイズである 「ヒラガ…っておい何泣いてんだよ?」 「うるさい!アンタ見てると…」 心が喜んでいる 記憶になくともサイトともう一度会えた、また話せる、その溢れ出す喜びをルイズは止めることが出来なかった 「もう、アンタ訳わかんない…」 サイトはルイズの頭を左手で抱えた 「な、何すんのよ…」 だが言葉とは正反対に体全体に心地よさが走る 「泣いてる女の子はほっとけねぇよ。」 ルイズの精神は不安や緊張で固く強ばっていた が、この平民の腕に抱えて貰っただけで、それら全ての物が溶けていく 「なんでかしら…アンタがそばにいるだけで…」 「安心して眠くなっちゃうってか?」 「なっ!?ち、ちち違うんだから!へへへへ平民の前で眠るわけないじゃない!」 サイトは吹き出した やっぱりルイズだ 「なら貴族がこんな所で野宿なんかしちゃダメだろ?」 ルイズは懐かしい…真っ赤にした顔で反論する 「さ、探し物を探しに来たのよ!それでこの街に着いて宿を借りようとしたら満室で…」 「オレは借りれたぞ?」 「わ、わわわ私は貴族よ!アンタ達みたいな平民が泊まる安宿なんかに泊まれるわけないじゃない!」 (ヤバい…可愛いすぎる…) 興奮やら怒りやらで言葉を震わせながら反論するルイズがどうしようもなく可愛い だからもう少しイジワルをしてみたくなるのも仕方ない うん、絶対仕方ない 「オレの宿に泊めてあげようかと思ったけど…泊まれないんじゃ仕方ない…」 そう言うと、あわあわと口を開きながら 「で、ででででもどうしてもって言うんなら泊まってあげないこともないわ!」 サイトの予想通りの答えが返ってくる 「いえいえ、平民が泊まる安宿に貴族様を泊めることなど…このしがない平民にはとても…」 「き、気にしなくていいわ!たまには平民の生活を体験するのも良いことだし…」 この言い合いは裏で我慢していたシエスタが出てくるまで続いた 318 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 01 15 14 ID BYDRGXFY 「もう、何やってるんですか!」 およそ30分に渡る不毛な言い合いに痺れを切らしたシエスタがそれを止めた (シ、シエスタ!?まだ言ってないから黙っててくれ) という信号をジェスチャーでシエスタに送る シエスタはその信号をなんとか理解してくれたらしい 「ミス・ヴァリエール、この方は?」 「ただの平民。宿に泊めさせてくれるって」 「ちょ、まだ泊めるとは…」 「ありがとうございますね!」 シエスタが大きな声でハッキリと、サイトの声を遮るように言った 後ろから何か黒い物が出ている… 逆らっちゃいけない 逆らっちゃいけない 「どうぞご自由にお使い下さいませ…」 「よかったわ。じゃあ早く案内なさい!」 サイトが奴隷扱いなのはもう彼の運命なのだろう… 宿に案内するとサイトはルイズに追い出された 「平民が貴族と同じ部屋で寝ようなんて何考えてるのかしら」 仕方がないのでサイトがルイズ達が張ったテントの中で野宿することになった 「相棒、楽しそうだねぇ」 「そう見えるか?」 「あぁ。あの娘っ子にどやされてる時なんか至福の顔だった。叩かれて嬉しそうにするなんて相棒はやっぱり変態だねぇ」 「まぁ…確かに楽しかったしな。…やっぱりオレはルイズが好きだわ」 「戻すのかい?」 「…まだ迷ってる」 「言っておくが相棒…娘っ子のあの涙は相棒が流させたんだからな」 「うん…わかってる」 ルイズは部屋のベッドの上でボーっとしていた 「よかったですね。親切な方がいて」 シエスタが話しかけても反応がない… 「ミス・ヴァリエール?」 やっぱり何も反応がない… シエスタは諦めて、さっき蒸発してしまったヨシェナヴェをもう一度作り直しに行った ルイズは混乱していた (なんなのよ!さっきのアイツは!) 楽しかった…あの平民と会うまではどうしようもなくギリギリまで心が追い詰められていたのに あの平民と話してからは安らかな安心感が溢れてくる (名前…聞いてなかったな…) と思った所で本来の目的が頭から飛んでいたことに気がついた 絶対に見つけてやるんだから! 明日はあそこへ行こう 戦争の時に何故行ったか覚えていない… けど心に一番強く残っているあそこへ… 402 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 22 18 04 ID N3KDcKKL 「起きなさい!平民」 「ひでぶっ!」 サイトは寝起きに北斗…ではなくトーンキックを鳩尾にくらい悶絶していた 目を開けると桃色の少女が仁王立ちしていた 「ごめんなさい、ご主人様!今すぐに洗面器を用意するから飯抜きだけは…」 サイトの奴隷根性は二、三ヶ月では抜けないらしい 「洗面器はいいから。アンタこれから暇なの?」 サイトはまだ半分寝ぼけた頭を使って考える (なんだ急に…これから暇かってオレには買い物が…イヤ、ちょっと待て。女の子が男に暇を聞くって…まさか!?) いや、有り得なくはない。あっちはオレのことわからない訳だし、昨日のオレの格好良さに惚れて… 参ったなぁ。ルイズさんオレに一目惚れですか。一目じゃないけど… 「暇なの?暇じゃないの?どっち!?」 「はい!暇でしゅ!」 「ならついてきなさい」 と言って向かった先は昨日サイトが追い出された宿屋だった (おいおい、まさかいきなりGo To The Bet!?まだ朝だぜ!?ルイズさん、ちょっと大胆すぎ…って鼻血があぁぁぁああ!) 「ハイ、これ」 鼻血を吹き出していたサイトにルイズがとても大きな荷物を渡した 「これからロサイスに行くから。アンタ荷物持ち兼用心棒。いちおう剣士みたいだし」 サイトはやはり奴隷だった 406 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 23 02 15 ID N3KDcKKL サイトとルイズはロサイスへ続く道を歩いていた 「なぁ、ルイズ」 「何よ、っていうか何でアンタ私の名前知ってんのよ」 「そこは気にするな。なんでシエスタは連れてこなかったんだ?」 「これから行くとこはシエスタには見られたくないの」 あそこは…私の一番大事な場所だから 「オレはついてきてよかったのか?」 「荷物持ちと護衛はいないと不安じゃない」 でもそれだけじゃない… この平民が側にいてくれるだけで安心する 街にいるもっと強そうな傭兵を雇わなかったのはお金の問題だけではない この人なら絶対に私を守ってくれる そう感じたからこそ彼を選んだのだ サイトはもちろん行き先はわかっていた だから敢えて聞く 「そこに何しに行くんだ?」 「前言った探し物を探しに来たの。正確には人だけど…」 「どんな人なんだ?」 ルイズは考えた どんな人だったんだろう… わかるのはその人の背中とシエスタが話してくれたことだけ 「顔は思い出せない…けど大事な人」 サイトは「オレがそうだ」と言いたい衝動にかられながらも必死にそれに耐え、言葉を紡ぐ 「もし会えなかったら?」 「会うまで探す。」 「会ってどうすんだ?」 「…決めてない」 サイトは心で願った そして誓った 神様…イヤ、ブリミル様か? ガンダールヴにしろなんか言わない オレとルイズをくっつけろなんかも言わない 「なら…」 どんな辛いことされたっていい 次こそ、この命をあげたっていいから だから… 「お前がソイツに会えるまで」 このワガママだけは許してくれ 「オレがお前を守ってやる」 もう一度…命を賭けて… 592 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 23 13 53 ID ohcY1ndg そろそろクリスマスネタを考えないといけない時期に… ちょっと更新 この平民は何を言っているんだろう。 自分とこの平民はほぼ初対面であるはずだ。 だが彼は。 「オレがお前を守ってやる」 そう言った。 なんでこんなことが言えるのだろうか… しかし、ルイズにはさらにわからないことがあった。 彼が守ると言った時…心の奥の方に生まれた懐かしいような、嬉しいような気持ち… これはなに? ルイズは何も言わずに走って行ってしまった。 「あ〜やっぱり急すぎたかな…」 背中のデルフが口を開く。 「相棒、2つほど聞いていいかい?」 「なんだよ?」 「相棒が名乗らないのはあの娘っこの中に残らないようにするためかい?」 記憶を戻せばまたルイズと一緒にいられる。 だが自分はもうガンダールヴではない…。 そんな自分がルイズと一緒にいれば恐らく…いや、確実に自分は死ぬだろう。 そうなればまたルイズが深く傷つく… 優しいご主人様のことだ…今度こそ虚無の運命に押しつぶされるかもしれない。 なら自分は「平賀才人」という名を捨てる。 名前も知らない平民であれば、もし自分が死ぬことがあっても代わりがきく。 「今のオレは代わりがいるからな。」 全てはルイズを守るため… 「もう一つ…相棒があの娘っこの記憶を戻すとすればどんな時だい?」 少し考えて… 「オレがガンダールヴだった時みたいにルイズを絶対に守れるようになってからだ。」 いくら側にいたくても、自分には力が無い… ルイズの前に平賀才人が現れて良いのはルイズを絶対に守れるようになった時だけ。 「その道は辛いぜ…相棒」 「一回死んでんだ。なんとかなるさ。」 そして走り出す。 愛する人のもとへ… 255 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00 58 07 ID YT0Rn6oc 寺院の中はほとんど変わってはいなかった。 夕日に照らされたステンドグラス、荘厳な雰囲気をかもし出している祭壇、そして最奥に二人を歓迎するかのように立つ始祖の像。 だが変わっているものも見つかった。 少しだけ埃を被ったイス、旅人が訪れでもしたのだろうか、ロウが溶けきってしまったロウソク、そして落ちている二つのグラス。 「ここ…」 私はしっかりと覚えている。戦場から味方を逃がす、そのために敵軍に特攻する直前、最後に来た場所。最後にいようとした大切な場所。 なぜ自分はこんなところを最後の場所になどしようとしたのだろうか。 なんのためにこんなところに来たのだろうか。 わからないその理由。わからないからわかる。 ここは私とあの背中の人最後にいた場所なのだと。 寺院奥、祭壇近くまで進む。 「ここはね、私の一番大事な場所なの」 町から連れてきた平民に、ただの気まぐれで声をかけた。 「なんで…一番大事な場所なんだ」 男も寺院の奥にまで歩いてきた。 私は始祖の像を見上げながら質問に答えてやる。 「ここが最後に会った場所だから」 「そんな場所にオレなんかを連れてきてよかったのかよ」 バカ 「あんたは私のことを守るんでしょうが!離れてちゃ意味ないじゃない!」 256 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01 00 14 ID YT0Rn6oc 「そうだな」 後悔が心で渦巻く。 もしあの時に記憶を消していなかったら。 そんな思いを無理やり頭の中から追い出す。 ルイズの記憶を戻したい。でもそれをすればガンダールヴでない自分は必ず死ぬ。また自分が死んでルイズを泣かせるような真似はできないし、もとより自分が決めたことだから。 オレは強くならなきゃならない。ガンダールヴじゃなくてもルイズを守れるくらいに。 わかってる。理解している。 ―そんなことは不可能だ― これまでルイズを守ることができたのは虚無の力、ガンダールヴの力があったからである。 『平賀才斗』なんかになにができよう。どんなに修行しようと、どんなに時間をかけようと不可能は不可能、せいぜいそこいらの兵士一人を相手にするのが精一杯である。 できることと言えば次のルイズを守る者、次のガンダールヴが現れるまで命を賭けてルイズを守ることくらい。 それでも…なにかの拍子で、いつの日かルイズを守ることができる力が手に入るかもしれない…そうして記憶を戻せばまた前みたいに… そんなくだらない希望、妄想に心が縋りつこうとする。 「お前方向音痴っぽそうだしじゃじゃ馬っぽいし、近くにいてやらないとどこ行くかわかったもんじゃないしな」 「あんですってぇ!?」 「ここに来る時もさんざん迷って迷ってだったしな」 「ああああああやって来るのが一番の近道だったのよ!」 怒ってる。 「へいへい、わかりやしたよ貴族様」 「なんか感じ悪いわねぇ」 むくれてる。 やっぱ無理。 「ちょ!!!ああああああああんたなにすんのよ!!!」 気づいたら腕の中にルイズがいた。 257 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01 04 58 ID YT0Rn6oc 「悪い…悪い…」 耐えられるわけがない…我慢など出来ようはずがない。 半年。半年一緒にいて、寝て、食べて、歩いて、生きた好きな人がそこにいるんだ。そこからいなくなっちゃうかもしれないんだ。いらないと言われるかもしれないんだ。 会った瞬間は我慢したんだ。二人っきりになっても我慢したんだ。 だから、許されないかもしれないけど。 でも…それでも… 「今だけ、もうしないしお前にも半径十メートル以内には近づかない!雑用だろうが奴隷だろうが犬だろうがなんだってするから…」 気づいたら泣いていた。 「許してくれ…」 その懇願はどこに向けたものなのだろうか。 今自分を抱きしめていること? それとも全く違うこと? 男は滝のように涙を流し自分を抱きしめる。 不思議と嫌悪感はなかった。平民にだきしめられているのに、男のだれにも抱きしめられたことなんてなかったのに。 さらには心地良さまで感じてしまう。安心感という名の。 だから 「うん、許したげるわ」 男の肩がビクンと震えたが気にせず続ける。 「その変わり!あんたはこれから一生私を守りなさい!わかった!?」 男は驚いた顔をして 「オレで…いいのか?」 とかきいてきた。 聞かれてからなぜかのすごく恥ずかしくなってきた。 一生ってなんかプロポーズみたいじゃない!!ダメダメ!!ダメなんだから! 貴族が平民なんかと結婚できるわけがないんだから!! 「べべべべ別にあんた以外のやつでもいいんだけど探すの面倒だし、高貴な物のなかに一つくらいは汚い物があったっていいじゃない!」 「ルイズ…」 「そそそそそれに家に一匹くらいペットがいたっていいじゃない!よかったわねぇ、私がまだペットを飼ってなくって」 「ルイズ!」 男の顔には涙の跡など微塵もない。あるのは… 「オレ、守るから…」 揺るぎのない覚悟だけ。 「お前を一生…命を賭けて」 そうして数分、二人の間に会話が生まれなかった。 瞬間 その静寂を破る者が現れた。 「あら、もう茶番は終わり?」 冷たい女の声と無数のガーゴイルの群。 248 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22 55 29 ID IhPYOVUi とっさにルイズを背に隠し剣を構える。 「こいつぁ…かなりヤバいことになっとるねぇ」 幾度も共に死線をくぐってきた相棒が最大限の注意、警告を発する。 「あいつらは人間じゃねぇ。人っぽい形はしているがアルヴィー、つまりメイジやそこいらの戦士を倒すことに特化したガーゴイルみたいなもんだ」 周りには剣で武装したもの、銃のようなものを構えているもの、果てには人間の形ですらなくトラと鷹を合体させたようなものまでいた。 「ごめんなさいねぇ。もうすこしだけ付き合ってあげてもよかったんだけど、中睦まじいカップルが自分達の世界に入ってるのを見るとどうにも抑えがきかなくって」 と乱入者は笑いながら、というより口の端を吊り上げて睨みつけるような顔で言い放つ。 「この無礼者!!貴族にも関わらず、名も名乗らずに貴剣を向けるとは!万死に当たると思いなさい!」 アルヴィーといえばれっきとしたマジックアイテム。もちろん平民などに扱える代物ではなく、当然ルイズは「相手は貴族」と考えた。 しかし 「あら、悪いわねぇ。私、貴族なんかじゃないの」 「馬鹿言わないで。これだけの数のアルヴィーを平民が使えるはずがないじゃない」 「ええ、だから私が平民だと言ったおぼえもないわよ」 女は楽しそうにそう言って前髪をたくしあげた。 「お初にお目にかかりますわぁ。虚無の使い魔ミョズニトニルン。以後お見知り置きを…」 額には使い魔である証、古代文字のルーンが浮かび上がり、強い光を放ち続けている。 サイトにはあのルーンに見覚えがある…この半年の間ルイズを守り切ることができた一番の理由。そして今もっとも欲しているものと同じものを忘れられるはずがない。 「ほんとのことらしいな…」 「ええ、もちろん」 人を馬鹿にしているのか、それともこちらの予想通りの驚きに笑いをこらえられないのか、邪悪に声を弾ませている。 「でその虚無の使い魔さんが俺達に何のようがあるんですかね」 もちろん、あちらさんが友好的な行動をとってくれるかもなどという考えは接触した瞬間から捨てている。話し合いをしようという人間が剣を持ってくるはずがない。 これは相手がどの程度自分達に敵意を持ち、どの程度の攻撃を受ける可能性があるのかを計るためのもの。それによりこれからの行動が変わってくる。 相手が自分たちを捕獲、誘拐しようというのであれば抵抗さえしなければ、すぐに殺されるということはない。 しかし、もしも相手が自分たちを殺す目的で襲ってきているのだとすれば… (最低、ルイズだけでも) と考えたところでルイズの様子がおかしいことに気がついた。 249 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22 56 10 ID IhPYOVUi 肩を震わせて必死になにかを呟いている。 「虚無の使い魔…なんで…」 としばらく考えたあと堰を切ったように大声でミョズニトニルンへと詰め寄った。 「ミョズニトニルン!!あなたは私の使い魔であったことがあったかどうか、答えなさい!!」 ルイズは自分が虚無の使い手であることは覚えており、そして自分の使い魔が虚無の使い魔であるということも、普段の勉強による知識から理解していた。 しかし肝心の使い魔がガンダールヴであるのか、ヴィンダールヴなのか、それとも他の二つのどちらかなのか… 自分が理由もわからなく覚えている場所に現れた虚無の使い魔が自分の探している人であると考えるのは自然の摂理である。 女はそれを聞いて、弾んでいた声をさらに震わせて話す。 「さ〜あどうかしら。もしかしたらそうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれないわよ」 「ふざけてんじゃないわよ!」 「あら、ふざけてなんかいないわよ?からかってるだけ♪」 「なっ!?」 先まで困惑と期待で震えていた肩が列火の怒りで震える。今すぐあの女に飛びかかりたいがそれでも… (あれが私の使い魔かもしれない) その希望が消えない。どんなに嫌な奴であったとしても自分の命を救ってくれた人である。7万の軍隊から身を挺して、命を賭けて救ってくれた人である。 その人かもしれない人物に襲いかかるなど誰が出来ようか。 「ついでにボウヤの質問にも答えてあげるわね」 楽しそうな悪魔が死の宣告を告げる。 「もちろん『殺しに』に決まってるじゃない」 250 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22 56 52 ID IhPYOVUi (左からの胴への斬撃。相手の持つ武器は大剣、間合いは読みやすい) 前足で地面を蹴り斬線が通るであろう場から逃れる。 唸る風、1ミリ前を通り過ぎる刃。 大剣が通り過ぎた刹那、後ろ足を蹴り懐に入る。 死の特等席。ひとつの間違い、読み違いが生の方程式を死のそれへと連れていく場所。 (剣を振っても間合い不足…!) 「うらぁああああ!!」 そのまま力任せの当身をくらわせる。懐に潜りこんだ後の不自由な体勢、不十分な間合いで剣を振っていれば敵を切り裂くどころか皮一枚を切り裂くのが精いっぱい、ガーゴイルの返しの太刀で胴ごと一刀両断されていただろう。 アニエスとの修行のなかで戦いで散々狙い打たれた点である。そしてこれまでの教えを死の最前線で思い返す。 (いいかサイト。相手が重量の重い武器、斧や大剣だな。あれを相手にするときは敵の体勢を崩すことを考えろ。やつらは…) 当身によって体勢を崩された敵はわずかな時間、持つ武器の重さからそれを振る余裕がなくなる。 そしてその刹那を見逃さず首を一太刀のもと跳ね飛ばす。 「その武器の重さから二の太刀が遅く、体勢を崩されると決定的な隙が生まれる…だったな」 「あら、やるじゃない」 関心したようにつぶやく。自分のガーゴイルが倒されたことな蚊に刺されたこと程度にも気にしちゃいない。 「なら今度はどうかしらね?」 すると今度は二体のガーゴイル。一人は対の短剣を、一人は先と同じ型の大剣を持っている。 「くっ…」 まず短剣を持つ死が襲いかかってくる。 斬撃の暴風、死の雨。先のように前に出て避けられる隙間などあろうはずがない。 それを下がりながら大きめにかわす。 (一、二、三…) 短剣には弱点が二つある。ひとつは長所でもあるその重量の重さ。 その軽すぎる剣は相手の斬撃を受けるに細すぎるのである。 そしてもうひとつ… (一、二) 「三!!」 サイトは避けられるはずのない剣線をかいくぐり、デルフリンガーを思い切り敵に振りぬいた。 (短剣は相手が未熟なものであればあるほど対処はた易い。その斬撃の多さから本人は全く意識しなくとも回数、斬撃の種類にリズムが生まれる。そこをつけ) その剣は一対一であれば確実に敵を両断するものであった。しかし… ギィン!! それは重たい鉄と鉄がぶつかり合う音で遮られる。今の彼の敵は一人ではなく二人。簡単に倒せるはずがない。 そして斬撃を止められたことによる硬直で二の太刀が振るえないサイトに死神がその身を切り裂こうとその凶刃を振り降ろす。 (まずい!!) その時、秒にも満たないその瞬間、耳に入った聞きなれた声、呪文。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ サイトはすぐさま後退、短剣による斬撃を左腕にもらうも、衣服を少し裂かれる程度ですんだ。 その数瞬後サイトのいた場所が爆発しそこにいたガーゴイル達は塵と化した。 251 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22 57 40 ID IhPYOVUi 「ハアハア…ありがとな、ルイズ」 切れる息を整えながら守るべきご主人様に声をかける。 「そんなことはどうでもいいから!いまはあっちに集中しなさい」 いつもの気丈な声。しかしどこか不安そうな声だ。 「はいはい、まかせとけって」 その声に明るく答えてやる。誰が聞いてもカラ元気に聞こえる声で。 二人ともすでに理解している。 このまま戦いが進めば確実に殺される。 それがわかっていながらもどうすることもできない。 正面入り口はすでに幾重にもガーゴイルの包囲が完成している。 虚無の魔法で窓、壁をぶち抜いても、相手のガーゴイルの数だ、外側の包囲も完成していると判断すべきであろう。突破するにはそれこそガンダールヴの力でもない限り不可能である。 「どうにかできんかね。伝説の剣様」 「こういう時だけ伝説扱いなんて…という冗談は後回しにして。あちらさんがこっちを殺す気満々ってなら助かる道は一つしかないね」 剣は無情に告げる。 「あのねーちゃんをぶっ倒す。それしかないわ」 不可能な話である。 この剣はこの平民に数百の剣撃、弓、敵の中に単騎で突っ込めと言っている。 この剣はこの男にその数百の剣、矢、凶刃を全てかわし敵の頭を落とせと言っている。 この剣はこの人にかわしきったあとに一撃のもとに敵を屠れと言っている。 確かに生きるためにはあの女を倒すしかない。 あの女を倒すにはあのガーゴイルの攻撃を全てかわさねばならない。 そしてそのすべてをかわせたとしても、おそらくチャンスは一刀。そのあとに斬撃を繰り出したとしても…否、繰り出せずしてガーゴイルに葬られるのがオチだろう。 「なに無茶言ってんのよ!!この馬鹿剣!!」 「そうは言ってもねぇ…これしか手はないんだよ」 そんなことはわかりきったことである。しかしこれでは 「あの時と…同じじゃない…」 あの背中の剣士と…自分を助けるために7万の軍隊に突っ込んだというあの人と… また自分は同じことを繰り返すのか。 それ以前にこの平民が自分を守るはずが、会って一日しか経っていない剣士が、自分のために命を張るはずがない。 そうルイズは思っていた。 だが、その考えには間違いである。確かにこの状況はそこいらの剣士、使い魔ですら逃げ出すものである。 ならばなぜ逃げないのか なぜならそこにいるのは 「きっついなぁ…」 虚無の担い手を半年の間守り通し、今もその身の盾となっている男である。 「…よっしゃ」 主人を守るために7万の軍隊に単騎による突撃をかけ、それを止めた使い魔である。 「しゃあないな」 そしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールに 「指示をくれ、デルフ」 世界で唯一、ただ一人、心から 「突っ込むぞ!」 好きだと言い、愛していると告げられる者であるから。 252 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22 58 39 ID IhPYOVUi 「待ちなさい!!」 少女は剣士を呼びとめる。 少年は目線を敵から魔法使いへと移す。 「なんで!?なんでそこまでするのよ!!あんたはただの平民、さっさと逃げなさい!今ならまだ見逃してもらえるわ!!」 寺院の中に少女の怒号が響く。 「えぇ、見逃してあげるわよ♪用があるのは虚無のお譲ちゃんだけだし。それにね」 女は舌舐めずりをし、冷たい眼、冷たい笑いでこちらを一瞥し告げる。 「味方を見捨てて逃げていく輩を眺めてるのがとおおおっても大好きなの♪」 冷酷な告白は続く。 「この小さいアルヴィーを使ってね。逃げた相手を観察するの。逃げたヤツは大体が『俺が殺した』とか『なんで逃げたんだ』とか言ってボロボロになっていくの。そこにね、見捨てられた人間の骨とか髪の毛を送りつけてね、こう書き置きしておくの」 そして女はこみ上げる笑いを堪え切れないかのように一気にセリフを吐きだす。 「『あなたが殺したお友達です』ってねえええ!!アハハハハハハハハハハハ!!」 (あの女、狂ってる…) ルイズは恐怖に震えた。このような狂った頭の持ち主の人間会ったことがない。こいつと関りたくないという気持ちが一気に増大する。 そしてあの狂人に向かおうとしているバカに思い出すように告げる。 「聞いたでしょ?あんたは今すぐ逃げなさい。運が悪くても命だけは助かるから。大丈夫、私もなんとかはぐらかして「黙ってろ」 剣士はその言葉とは裏腹に、温かく、包み込むように呟いた。 「オレは何があっても逃げない、見捨てない。そんでお前は殺させない。俺も死なない」 その眼はもう私を見ていない。 「な、何言ってんのよ!バカ剣、あんたも伝説の剣なら止めなさ…」 そこでルイズは気がついた。 私はこの剣を知っている。私が買ったインテリジェンスソード。 それを持つ剣士つまり… 「だとよ相棒。やめとくかい?」 デルフリンガーは軽く剣士に喋りかけた。 「冗談、約束したからな」 目は敵の方を向いたまま。 「ずっと守るってな」 サイトは死へと駈け出した。 駆け出す直前の背中は少女が見た背中よりも大きかった。 144 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 20 37 51 ID DzgO0N+T 「はあああああああああああああああああああああああああ!!」 敵を一声で粉砕せんと轟き敵陣に突っ込む。その声に委縮したのかアルヴィーたちの出足が遅れる。 (守るんだ。オレが!!) 目の前の敵を一刀のもとに切り伏せ、走る速度を落とさずに目標への最短距離を突っ切る。 剣が槍が矢が数瞬前の自分を切り殺す。彼は走る走る走る。 (誓ったんだ!ルイズに!!) 前に二人のガーゴイル。 「どぉけええええええええええええええええええええええええ!!」 走りながらデルフリンガーを横なぎに払い、一体を胴から切り裂く。 しかしもう一体は仕留められない。剣の切っ先が少しずつ、停止した時間のなかで迫ってくる。それを返しの刀で受け止める。そのまま鍔迫り合い持ち込もうとするが 「ダメだ相棒!止まるな!!」 突き抜けてきた敵達が集まってくる。 ここは敵陣、サイトからしてみれば死が生を侵食している場所である。すなわち停止は自らの生を諦める行為に他ならない。 だがここで剣を離せば間違いなく目の前のガーゴイルが自分を殺す。八方塞がり、絶体絶命である。どんな戦士であってもここから無傷で離脱することはできないであろう。それはサイトにとっても同義。彼の身は背から放たれた矢に確実に貫かれる。 サイトの持つ剣が普通の剣であったならば。 145 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 20 39 29 ID DzgO0N+T 迫りくる凶器の渦 (くそ!だめかよ…かっこわりぃ…) 痛みへの恐怖で体を強張らせたそのとき。にまるで羽根になったような、そしてあの時の、ルイズの使い魔であったときのような懐かしい感覚が全身を駆け抜ける。 (これ、なら!!) 相手の剣を巻き込み地面へ叩きつけ、上段回し蹴りを叩き込む。 「そのまま走んな!」 デルフリンガーが檄を飛ばす。 彼の体が軽くなったのはこの剣の「魔法を吸い込めば吸い込んだだけ持ち主の体を動かすことができる」のおかげである。 しかしここには普通の魔法使いはいない。ルイズは虚無の使い手であり、サイトとミョズニトニルンなどは魔法使いですらない。ではどこからサイトの体を動かすだけの魔力を蓄えていたというのか。 答えは敵であるアルヴィー。 アルヴィーはマジックアイテムである。メイジが人形の魔力を込め、込めた分だけそれを動かすことが出来るというもの。 デルフリンガーはその込められた魔力を吸い込み、彼を体を動かす補助を行っているということである。あくまで補助なのは彼の体を操り切るだけの魔力が足りないから。 また、切りあっている最中に魔力を吸い込めないのか。これは出来ない。 いくら切りあっているとはいえアルヴィーとの距離がある。 デルフリンガーが吸い込めるのはむき出しの魔力だけ。つまり魔力がそのまま顕現したウインディアイシクルやエアーハンマーなどなら吸い込める。 しかし間に魔力ではないものが挟まっていたり覆われていたりすると、たちまちその効力は力をなくす。彼がアルヴィーの魔力を吸い込むことができたのはサイトが剣を振るい、敵に刃を刺すことができたため、剣と魔力の間に仕切りがなくなったためである。 「ちぃい!」 女は急に速度、力、正確さが段違いにあがった敵にたじろく。 そして心の中で笑う。 146 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 20 40 11 ID DzgO0N+T はああああああああああああああああ!!」 昔と同じような力があるのなら。 これまで数多の敵を撃退してきたこの力があるのなら。 7万の大軍すら止めて見せた力があるのなら。 数百の戦士の集まりなど紙屑に等しい。 「そのまま突っ切れ!相棒!」 残り10M程度。目標は目と鼻の先。残るアルヴィーは三体。 先の瞬間までは死と隣り合わせ、敵がまさに悪魔であった。 しかし今は違う。こんな愚鈍な奴らに負けるはずがない。 一人目は剣を振り降ろす…いや、剣を振り上げたところで頭が飛んだ。 二人目は一人目がやられたことを気にもせず槍を突き出す。目標は舞い落ちる葉や柳のようにそれをすり抜ける。そのまま横を通り過ぎたかと思うと既に足がついていなかった。 三人目は少し離れた位置から弓を構える。この距離からならば一息の間に殺されることはない。一本目の矢が外れても相手の体勢が崩れた所に二本目の矢を放てる。つまりここからなら殺せる。そして弓を撃とうとしたとき… 「いっけええええええええ!!」 大きな砲孔と共にまったく予期していなかった攻撃が…というより剣が鳩尾に突き刺さる。 残りは一人!! 三人目のガーゴイルを倒した。残りはあの女のみ。 デルフは投げてしまったが相手は女一人、アニエスと無手の場合の訓練もしている自分が負けるわけがない。 サイトは思い切り右の拳を叩きつけた。 「さすがはガンダールヴ。主を守るためならば力を失っても盾となるか」 殴られた女はそう呟きこう続けた。 「ぜひ欲しい。その力、私のために使ってもらうぞ」 すると教会の出入り口が開く。 中に入ってきた女の指輪が青く鈍く光りサイトの意志は消えた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3846.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ ムスタディオは、村人やシエスタの家への挨拶もそこそこに飛空挺の調査を始めた。 取るべき選択肢は幾つかあった。 シエスタの家で「祖母」の遺品を見せてもらう。 話を聞く。 「祖母」の墓へ赴く。 それらを選ばなかったのは、まず自分の世界で最後に居た場所を見たかった、というだけではない。 ムスタディオは他の選択をしたほうが効率的だと感じながらも、後回しにしてしまった。 仲間の一人が死んでいるかもしれない。 箱の蓋を開けるのはあまりにも恐ろしく、確認する覚悟が未だ、つかなかったからだった。 「ブレイブストーリー/ゼロ」-09 「地に墜ちた箱舟」の表面は、乾いた色の苔で覆われていた。 三隻の内二隻はかなり損傷が激しく、今にも倒壊しそうだったが、六十年もの間崩れずにいたようだ。 シエスタに話をいくらか聞いてきたが、どうも墜落直後に大規模な調査隊が派遣され、大勢のメイジによる「固形化」の処置が行なわれたのだという。それによって墜落直後の状態を保っており、苔などが付着してもそこから成長できずにいる。 『当時はなんだか、すごい騒ぎだったみたいですよ。アルビオンくんだりからもわざわざ調べに来た方がいたみたいで。 村では我が物顔の貴族達がたくさん闊歩して、迷惑をかけられたみたいです。すごい発見だって貴族の方々ははしゃいでいたけど、この地に生きる自分たちにはいい迷惑だった、って祖父が言っていましたわ。 ……けど、すぐに調査の方々が来てくださったおかげで、祖母は一命を取り留めたんです』 「祖母」はかなり酷い火傷を負って倒れていたのを見つけられた。 しかし二日もしない内に駆けつけた調査隊の水メイジによって治療を施された。 それはいくら何でも早すぎる気がする、と普段のムスタディオなら思っただろう。 しかし今の彼はそんなところに気を回す余裕がなかった。別のことに混乱していた。 その「祖母」が、あの決戦の場、またはその周辺に居た人間なのは間違いない。 しかし、六十年前というのは何故だ。 そのことについてしばらく考えようとして、首を振った。何故六十年前。ひいては何故召還されたか。自分には窺い知れないことだろう。ただ事実としてあること。 ムスタディオは考えを飛躍させ、可能性を考える。 まず、あの戦いの場そのものがこの地に呼び出されていることを鑑みると、この地には爆心地に居た人間、周辺の人間が自分のように召還されているかもしれない、ということ。生物、物、もしかすると敵味方も関係なしに。 そして、ムスタディオがトリステイン魔法学院に、「箱舟」と「祖母」がそれなりに離れたタルブの村に、六十年もの時間差を置いて呼び出されたことを考えると――皆場所・時間をばらばらにして召還されているのかもしれない、ということ。 (……なんだか、空想魔学小説みたいだな) 現実味がない想像。しかしそれは、ムスタディオにとっては恐ろしい実感を伴っていた。 皆、「祖母」のように天寿を全うしているかもしれない。 そもそも、召還直後に火傷から死亡しているかもしれない。 「……くそ」 箱舟の入り口で足を止めている自分に気付く。 あれこれ考えることがある。しかしそれを言い訳にして調べることすら後回しにしようとする自分がいた。 何を怖がっているのか、心当たりが多すぎて考えるほどにうずもれてしまう。 ムスタディオは両頬を思い切り張ると、ブレイズガンを構えて朽ちた飛空挺へ足を踏み入れる。 ◇ それは一番原型を留めている飛空挺だった。 帆柱もプロペラも落ちていないし、船体もそこまで破損していない。 ハッチを探し当て、中に進入してもその印象は変わらなかった。 船底から少しずつ上がっていくが、動物や魔獣が住み着いている様子もない。 隣接した船で炸裂したアルテマの余波、次いだ墜落の衝撃でそこかしこが歪んではいるものの、ゴーグの地下で発見される機械たちよりよっぽど状態が良く、基本の骨格はほぼ保たれている。聖石があれば、案外動くかもしれないな、とすら思った。 甲板への扉を開くと、陽光に目を焼かれた。ぷは、と深呼吸をして船内の淀んだ空気を肺から追い出す。 しかし、日の当たる場所にでたというのに陰鬱な雰囲気は消えない。それどころか悪寒にまで変わりつつあった。 甲板も比較的綺麗な状態を保っていた。剣や魔法で削られた痕もなければ、血痕もない。 ムスタディオは、それだけ確認すると隣の飛空挺を見据えた。 「……やっぱり、あれか」 隣の飛空挺は損傷が一番激しく、半分ほどしか原型を留めていない。火事の後みたいに黒焦げで、ここから見える甲板は周辺部分を残して崩落していた。 陰鬱な雰囲気は、そちらから漂っている。 船底から上がっていくのは損傷の酷さから諦め、ムスタディオは甲板から甲板へと飛び移ることにした。バランスを崩してこの船に寄り掛かるように建っていたので、比較的容易だった。 欄干に掴まりながら、崩落した甲板を覗き込む。 「うわあ……」 墜落直後にかけられた「固形化」のために、炸裂当初の生々しさがそのままそこに残されていた。 しかしそこから見える船の形は――記憶の中にある、最後の戦いの場に何か被る。何よりもこの雰囲気が、「あの場所」であることを物語っていた。 中心部、陥没の一番激しい場所の中空を見る。 血塗られた天使が炸裂した瞬間がフィードバックする。 そしてその際に、仲間達の前に銀色の鏡が浮いていたことも。 『調査隊の方々によると……ええっと、家族からの又聞きの又聞きなんですけど、人型の魔獣みたいな死骸はいくつか見つかった、と思います。でも、人の死体は箱舟の上や、中からは見つからなかったって』 ――やっぱり、皆この地に召還されているかもしれない、と思った。 しかしムスタディオには、その可能性と希望は抱き合わせではないように感じられてならない。 ◇ 穴の底にも降りてみたが、目ぼしい物は何もなかった。 ヴァルゴの聖石はどうなっただろう、と思う。聖天使が倒されたなら、この場所に残っていたはずだ。調査隊が持っていってしまっただろうか。それとも自分が紛失したように、どこかに消えたか。あの石なら足がついていても不思議ではない。 やはり、探さなければ、と思った。 しかしそのためには学院に戻り、まずタウロスとサーペンタリウスの消息を突き止める必要がある。 「…………」 疲労を感じたムスタディオが甲板へ上がると、自分を呼ぶ声が聞こえた。 「ムスタディオさーん!」 ムスタディオが登ってきた飛空挺の甲板の入り口で、シエスタが手を振っている。 「どうしたんだい?」 甲板から甲板へ飛び移り、尋ねる。返事の代わりに、両手に掴んだバスケットが差し出された。 「ええっとですね、お昼になっても戻ってこないから、うちの家族が心配してました。これ、一緒に食べませんか?」 明るい様子のシエスタは、しかしどこか一歩引きたいのを我慢しているように思えた。 それに、と思う。彼女の家族はこんなどこの馬の骨とも知れない自分を心配してくれているのか。その言葉は、シエスタの気遣いではないだろうか。 「……ありがとう。優しいね」 疲れた頭が、柄にもないことを口走らさせる。 「え? あ、いや、そんなことは……ムスタディオさんを連れてきたの、わたしですし。目的地に着いたんだから後は勝手に、なんてできませんし」 「……あはは、そうか」 シエスタのしどろもどろな様子に、笑ってしまった。 気遣いはありがたかった。 シエスタから見れば、自分は脅迫者もいいところだろう。 おびえながらも気を使ってくれていることを申し訳なく思う一方で、何の制限もなく他人と接することを気持ちが良く感じる自分がいた。 「ここ、見晴らしいいですよね」 ムスタディオにバスケットを渡すと、シエスタは欄干を両手で掴んで身を乗り出す。ムスタディオもそれにならう。 そこからは、タルブの村が一望できた。 ムスタディオは目を細めて、しばらく地上を眺めていた。 頭に浮かぶのは「祖母」のことだ。 彼女は、この村で、どんな気持ちで一生を終えたのだろう。 調査隊について行くことだって出来たはずだ。というか恐らく調査隊の方から彼女へ申し出があったと予想がつく。 しかし彼女はそれを断ったのだろう。この村で結婚し、子を産み、農耕に励み、異国の地に眠った。 それは、この地で生きていくと腹を括ったからこその行動だったのではないだろうか。 (……オレは、まだ腹は括れないな) けど、戻れるとも思ってないや。 なのに手がかりに縋りつかざるを得ない、自分の半端さが情けない。 ――「祖母」は、誰だったんだろう、と思う。 名前はまだ聞いていなかった。それすら、後回しにしていた。 「――けど、普段誰も来ないんです。なんだか薄気味悪くって。子供達も、いい遊び場になりそうなものですけど」 「そうだな……ここには良くないものが漂ってるんだ」 「そんなの分かるんですか?」 「ああ、なんとなくだけどね」 そんな会話をしながら、何か、今なら聞く覚悟が持てそうな気がした。 ムスタディオは表情を引き締め、シエスタに問う。 「あのさ、君のおばあさんのこと、改めて聞かせて欲しいんだ」 ◇ ――まず、シエスタから聞いた名前は、全く聞き覚えのないものだった。 敵の神殿騎士だったのかと、思う。これだけ広範囲に渡って大規模な召還が起こっているのだ。周辺に居た女神殿騎士が巻き込まれていても、不思議ではない。 思うのに。 恐ろしい予感は消えないのは、何故だろう。 (――偽名かもしれないんだ) シエスタの口から語られる、祖母のこと。 『箱舟』が60年前に落ちてきた時に、傍らに重症で倒れていた。緊急で到着した調査隊の水メイジにより九死に一生を得る。 変なことを口走るので皆信用しなかった。それ以外は毅然とした働き者で器量もよく、元貴族ではないかと噂される村の人気者。 剣技に長け、何種類かの「おまじない」――白魔法だろう――を用いた。 「先住魔法かって驚かれるし、研究のために誘拐されたり「アカデミー」というところに連れて行かれるかもしれないからって、本当は秘密になってるんですけどね」 ……ムスタディオは考える。 白魔法の心得があり、剣を用いる女性の仲間は四人。 どんな剣技を用いていたのか、訊こうと思った。もしそれが特殊な物なら、さらに二人に絞られる。髪の色でもいい。なんでもいい。 「箱舟の上で見つかった物はどうしたんだい?」 口から飛び出たのは違う質問だった。何をしてるんだ、と思って、自分が酷く緊張していることに気付いた。背中に大量の汗が滲み、服が張りつきかけていた。 「あ、はい、祖母の持ち物や祖母がこれは自分の仲間の物だって言ったものは私の実家にあります。その他は調査隊の方々が持っていったそうですわ」 「そうなんだ。ところでさ、あ、」 核心を尋ねようとして、喉が干上がっていてどもり、それでも無理に言おうとして、 「その品々を、よかったら見せてくれないかい」 やっぱり口から出たのは遠まわしな方法だ。 嫌なことを、考えている。 「彼女」だけではあってほしくない、と願う自分がいる。 同時に、彼女かもしれないと予感する自分がいる。 「え……いいですけど、でもそんなに多くありませんよ」 「そうなのか。じゃあ今、持ってこれるかな?」 「大丈夫ですけど……ご飯を食べてからにしませんか?」 「いや、今がいいんだ。今すぐに確かめたいんだ、頼むよ」 どことなく嫌そうなシエスタに畳み掛ける。そうでもしないと叫びだしそうだった。少しおびえたようになったシエスタが分かりました、と言って船の中に消えようとするが、彼女が家を往復する時間すら耐えられそうにないムスタディオは彼女を呼び止める。 「おばあさんのお墓は、どこにあるんだ?」 あそこですと指差されたのは村の外れだった。 白い墓石の群が見える。 「あの一番外れにあるし、変わったお墓だからすぐに分かると思います」 「そうか。そこでどうしても確認したいことがあるんだ。よかったら、そこに遺品を持ってきてくれないか。頼む。――頼むよ」 身体が居ても立ってもいられなくなっている。その勢いに任せて土下座まですると、何かを察したのかシエスタは慌てて踵を返して行った。内部から反響する足音が聞こえなくなるまで、ムスタディオは身体を震わせながら、待った。 誰かといたら、逆に何かに屈服してしまいそうだった。 誰かの口から証言を取るのは、恐ろしすぎた。 覚悟がついた気がしていたのに。 ――しかし、それでも。 どうしても確認しなければいけない。 嫌な予感に嘔吐しそうだった。 一歩一歩が果てしなく重い。 ◇ タルブの村の外れにある墓地。白く幅広の墓石が並び、人影はなく、どこか閑散としている。 そのまた外れで、ムスタディオは立ち尽くす。 そこには、一振りの剣が突き刺さっていた。 「…………あ」 ムスタディオはもはや声もでない。 焼けていくらか変色し、雨風にさらされて錆の浮いた刀身。 しかし、それは、確かに、今や記憶の中だけに居る、ある騎士が握っていたものだった。 膝が落ちる。剣にすがりつく。錆びた刃は肌を傷つけない。心を抉る。 墓石に目線が下りる。よく分からない、こちらの文字でその人の名前が書いてある。 そしてその傍らに。見慣れた文字が、厳粛に刻まれていた。 「……う、ぁ」 意味のないうめきが口から漏れる。イヴァリースの文字をこんな地でお目にかかるとは夢にも思わなかった。 こんなもの、見たくなかった。 ムスタディオは目をきつく閉じた。 それでも、網膜にその光景が焼き付いて離れない。 その碑文は、たった三文。 ――アグリアス・オークス。享年八十二歳。異界に眠る。 とだけ。記されていた。 わけが分からない、と何度も頭の中で繰り返した。 自分と同じ時を生き、戦い抜いた人間が何故八十二歳なんて老婆で、それどころか骸となって墓の下で眠っているのか。 意味は分かっているのに実感が湧かない。――湧かない。湧かないと思い込もうとしている。 しかしあがく心とは裏腹に、身体が、目から涙を流させ始める。 アグリアスさんは死んだのか、と思った。 そう思った瞬間、何かが嫌な音を立てて正しく嵌ったような気がして。 ムスタディオは口からほとばしる泣き声を止められなかった。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ