約 1,871,778 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9054.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第十七話「タルブ村の宝物」 黄金怪獣ゴルドン 登場 アルビオンからの帰還後、ルイズと才人はキュルケに誘われて、宝探しの旅につき合うことになった。 しかしどれだけ危険を冒そうと、見つかるのはガラクタばかり。嫌気が差してきたところで、 キュルケは次を最後にするという。その対象はタルブ村の『竜の羽衣』というお宝。それは、何の巡り合わせか、 シエスタの祖父がタルブ村にもたらしたものなのだという。 だが一行が訪問した時には、タルブ村は壊滅状態に陥っていた。近くの山に怪獣ゴルドンが棲みつき、 餌の黄金を探しに行く際の通り道にされたことで、村が蹂躙されてしまったのだった。 こうなっては『竜の羽衣』どころではない。キュルケはタルブ村を救うために、 自分たちでゴルドンを誘き出すことを提案した。そしてルイズたちは、彼女に押し切られる形で、 ゴルドンの巣穴を探しにシルフィードに跨って飛び立った……。 「見て、あそこ。あんなに大きな穴が開いてる。あそこが巣穴に違いないわよ」 タルブ村から飛び立ち、ゴルドンが棲みついているという山まで飛んできた一行は、 案外あっさりとゴルドンの巣穴らしき穴を発見した。何せ山のふもとに、大空洞といっても 差しつかえないほどの大きな穴が開いているのだ。あまりに目立つので、見逃すのが難しいほどだった。 「あれだけの大きさなら、シルフィードに乗ったまま中に入れるわね」 「むしろ、降りて入らなくちゃいけないんだったら、僕は帰るところだったよ。自分の足で 怪獣から逃げるような危険な真似は、絶対したくない」 キュルケのひと言で、ギーシュが情けないため息を吐いた。 穴は翼を広げたシルフィードが五匹横並びになっても、まだ十分な余裕があるほど広かった。 まぁ、40メイル級の巨大怪獣が掘ったのだから、それで当たり前なのかもしれないが。 「ねぇ、入るといっても、どっちの穴に入るの?」 ここでルイズがそんな質問をする。何故なら、彼らの見下ろす先にある穴は、二箇所あるからだ。 「ていうか、何で二つもあるのよ」 「別に巣の入り口が一つだけって決まってる訳じゃないでしょ。どっちに入っても、同じ場所に 通じてるんじゃない? だからどっちでも同じよ、きっと」 ルイズの疑問に、キュルケは適当に答えた。 「そんないい加減な……これから危険を冒すんだから、もっとよく考えた方が……」 「考えたって何も変わらないわよ。さッ、タバサ、シルフィードに穴に潜るよう指示して」 ルイズの意見を無視して、キュルケが頼む。それを受けたタバサの命令で、シルフィードが 斜め下に降下して穴の中に突入した。 「大丈夫かしら……?」 ルイズの懸念を置いて、シルフィードが進む。キュルケ、タバサ、ギーシュの三人掛かりの『ライト』で、 広大な穴の中が照らされて、巣穴のどこかにいるはずの怪獣ゴルドンの姿を探す。 しばらくは、誰もが緊張した面持ちで黙ったままでいる時間が続いた。しかしその内に、 彼らの目に土肌ではない、魔法の光を反射して煌びやかに輝く何かが映った。 「止まって!」 すぐにタバサはシルフィードを急停止させる。そして視界に映ったものの全貌が、一行の前に露わになった。 「間違いない。こいつがゴルドンだ……!」 才人が言い放つ。彼らの前に横たわっているのは、黄金色の肌を持つ、才人が写真で見たものと 寸分も違わぬ巨大怪獣、ゴルドンだった。 しかし今は熟睡して、いびきを立てている。一行がやってきたのにも気づいてない様子だ。 巨大生物のいびきなので音量もそれに見合うほどのものがあり、キュルケやルイズは思わず耳をふさいだ。 「こいつがタルブ村を滅茶苦茶にした奴なのね……。こんな呑気に眠り込んでるなんて、 腹立たしいわ……!」 ルイズがいら立ちまぎれにつぶやいた。ゴルドンは野生の怪獣なので、タルブ村を踏みにじったことに 罪悪感すら覚えていないのだろう。しかしタルブ村の住人の絶望した表情を思い返すと、 のんびり眠りこけている姿に怒りが湧いてくる。 「でも寝てるんじゃ、誘き出すことなんて出来ないわ。叩き起こしましょう」 「し、慎重にやってくれたまえよ!」 杖を向けるキュルケに、血相を抱えたギーシュが懇願した。 「分かってるって。『ファイアー・ボール』!」 本当に分かっているのか、キュルケは本気の火球を撃ち込んだ。だが体表で火球が炸裂しても、 ゴルドンは目を開ける気配すら見せなかった。寝転がったまま、先がハサミのように二又に分かれた 長い尻尾を鬱陶しそうに振ってきたので、シルフィードは慌てて後退した。丸で羽虫を追い払うかのような素振りだ。 「あ、あいつ……! たかが野獣のくせに、わたしたちをハエ扱い!? あったま来た!」 この所作に、貴族らしくプライドが高いルイズが激昂した。杖を抜くと、先端を寝そべったまま 動こうとしないゴルドンに向けて呪文を唱える。 「『ファイアー・ボール』!」 キュルケと同じ呪文だが、火球は飛び出ず、爆発がゴルドンの側面に発生する。その威力は、 火球の炸裂の何倍もあった。 「キョーキョキョキョキョ!」 今度ばかりはたまらず、ゴルドンは飛び起きた。そしてギロリとルイズたちをにらみつけると、 身体の向きを変えてシルフィードに向かってきた! 「! シルフィード!」 「きゅい! きゅいー!」 タバサが急いで指示を出すと、シルフィードはクルリと反転し、元来た道を引き返し出した。 ゴルドンは逃げるシルフィードを追いかけてくる。 「キョーキョキョキョキョ!」 「うわあぁぁ! 何てことをしてくれたんだねルイズ! 怒らせてしまったじゃないか!」 「け、結果オーライって奴よ! 元々こうやって地上に誘き出す予定だったじゃない!」 パニックになったギーシュが非難すると、ルイズは開き直った。 しかし実際、事態はさほど悪くはなかった。ゴルドンは鉱物の金を食べているからかどうかは定かではないが、 移動速度は大して速くはなかった。シルフィードが追いつかれるようなスピードは出せないようだ。 しかも怒りで我を忘れているようなので、地上に誘導されていることにも気づいてない様子だった。 「いい調子だわ。地上に出たら、みんなで精一杯声を張り上げてウルトラマンゼロを呼びましょう」 キュルケは己の立てた計画が順調に進んでいることに気を良くした。だが巣穴の途中で、 ゴルドンの動きに変化が起こった。 「キョーキョキョキョキョ!」 急に追いかけるのをやめて、首を振ってけたたましく鳴き声を出し続けたのだ。 「ちょっと、止まっちゃったわよ! ちゃんと追ってきてくれなきゃ困るじゃない! ルイズ、 もう一発ぶちかましてやりなさいよ」 ゴルドンに合わせてシルフィードも停止すると、キュルケがルイズをけしかけようとした。 その一方で、タバサはゴルドンの行動の変化に、悪寒を覚える。 「まさか……」 そして彼女の感じた悪い予感は、直後に的中したことが明らかになった。 「キョーキョキョキョキョキョ!」 シルフィードの背後、つまり地上側の地面がいきなり下から爆発したかのように弾け、 ゴルドンが這い出てきたのだ! 「えっ!!? 嘘!?」 これに目を見張る一同。何故なら、ゴルドンは既に、彼らの前方にいるからである。 ここで、ルイズたちが一つ勘違いをしていたことを説明せねばなるまい。彼らは「怪獣」という生物について、 一度に「複数の種」を目にすることはあったが、一度に「同一の種を複数」確認したことは今までに一度もなかったので、 「怪獣が一種につき一体きり」と、そんな誤解を心の奥底で覚えてしまっていた。才人もまた、 実際に同じ種の怪獣が複数いるところを目撃したことがなかったので、その可能性をすっかり失念していた。 だからこそ、はっきりと明記する。ゴルドンは二体いた! ルイズたちは挟み撃ちにされてしまったのだ! 「じ、冗談でしょう!? 二匹いるなんて反則よ!」 認めがたい現実を前にして、キュルケが思わずわめいた。だがそんなもので、二体のゴルドンが消えるはずがない。 「まずい……!」 才人や普段は冷静沈着なタバサも、この状況には顔を青ざめた。二体目のゴルドンの巨体により、 逃げ道が塞がれてしまったのだ。一行は怪獣の巣穴でにっちもさっちも行かなくなった。 「キョーキョキョキョキョ!」 「キョーキョキョキョキョキョ!」 二体のゴルドンは、前進も後退も出来ず狼狽しているシルフィードにじりじりと近寄っていく。 「き、きゃああああああッ! やめて! こっち来ないでよ!」 「ひぃぃぃぃぃぃ! ぼ、僕たちが悪かった! だから許しておくれぇ!」 プレッシャーに耐え切れずにルイズやギーシュが悲鳴を上げるが、怪獣に言葉が通じる訳もない。 ゴルドンたちが尻尾を振ってシルフィードを叩き落とそうとするのを、シルフィードは必死にかいくぐってかわす。 だがいつまでもよけ続けることは出来なかった。尻尾のひと振りが翼をかすめ、その際の衝撃で シルフィードは地面へ叩き落とされる。 「きゅーい!」 「わああああああああああッ!」 「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 当然騎乗しているルイズたちも転落し、地面に落下したことでほとんどが意識を失ってしまった。 そこに、怒りの収まらないゴルドンたちが容赦なく接近してくる。確実にペシャンコに押し潰すつもりだ。 「くそッ……! そうはさせるかぁッ!」 だがこの場面で立ち上がる者がいた。才人だ。かろうじて意識を繋いだ彼は、仲間たちを守るため、 延いてはタルブ村をこれ以上蹂躙させないために、ウルトラゼロアイを取り出す。 「デュワッ!」 ゼロアイを顔に装着し、たちまちウルトラマンゼロに変身して二体のゴルドンの前に立ちはだかった! 「キョーキョキョキョキョ!?」 突然40メイルの巨人が立ちはだかったことでひるんだゴルドンたちだが、そこは闘争心の塊の怪獣。 すぐに尻尾や長い首を棍棒のように振るって攻撃を仕掛ける。 「ハッ!」 ゼロは二体の打撃を、腕を盾にすることで弾き返す。ゴルドンは光線や火炎など、特別な攻撃方法を持たない。 重い巨体を活かした直接攻撃しか武器を持ち合わせていないのだ。だが単純な打撃は、ウルトラマンレオに 徹底的にしごかれて強靭な肉体を築き上げたゼロには通用しない。 『くッ……だがこいつは厄介な状況だぜ……』 しかしゼロの方も、無闇に反撃に転ずることが出来ないでいた。何故なら、彼のすぐ後ろには 気を失ったルイズたちが横たわっているからだ。下手に立ち位置を変えたら、彼らがゴルドンに 踏み潰されてしまうかもしれない。光線技や大技も、巻き込む恐れがある。しかも現在の場所は、 ゼロの巨体には狭すぎる怪獣の巣穴。よってゴルドンたちを別の場所へ引き寄せることも出来ないのだ。 と言っても、いつまでもこのままでいる訳にもいかない。ゼロのエネルギーはハルケギニアでは 三分しか持たないのだ。三分を越えれば、才人の姿に戻ってしまう。そうなったら結局は全滅だろう。 『こんな狭い場所じゃミラーナイトも呼べねぇし、どうすりゃいいんだ……!』 圧倒的不利の状況に悩みながらも、ゴルドン二体の攻撃をさばくゼロ。だが打撃をはね返した直後の わずかな隙を突かれて、一体目の尻尾が首に巻きついてしまった。 「キョーキョキョキョキョ!」 『ぐッ!? しまった!』 更に二体目の尻尾も首に巻きつけられる。二体に首を絞められて、さしものゼロもたまらずに悶絶した。 「キョーキョキョキョキョキョ!」 『ぐおおおお……! く、苦しい……!』 怪獣の怪力が首に掛かり、ゼロはその場で膝を突いた。それに気を良くしたのか、ゴルドンたちがもっと力を強める。 『くッ……そぉッ! あんまり調子づくんじゃねぇよ!』 その時、ゼロが遂に怒りを解放した。ウルティメイトブレスレットを叩くと全身が赤く染まり、 力ずくで尻尾の拘束を振りほどく。超パワーの戦士、ストロングコロナゼロに変身したのだ! 「キョーキョキョキョキョ!」 尻尾を解かれたゴルドンたちは、代わりのように頭突きを繰り出すが、 『せいッ!』 その脳天にゼロの鉄拳が炸裂した。頭部に激突した拳の衝撃はゴルドンたちの頭蓋骨を通り抜けて 脳まで伝わり、軽い脳震盪を起こさせる。 「キョーキョキョキョキョキョ……!」 『ふんッ!』 グロッキー状態になった二体の首根っこを、ゼロがむんずと掴む。そして、 『どぉぉぉりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』 ストロングコロナの怪力の本領を発揮して、二体の巨体を地上へ向けて投げ飛ばした! ゴルドンたちはまっすぐ吹っ飛んでいき、巣穴を飛び出して大地に転がった。 『はッ!』 ゴルドンたちを一旦排除したゼロは、ストロングコロナからルナミラクルゼロに変身し直す。 そして両手で気絶中のルイズたち全員をすくい上げると、精神を集中して、ルナミラクルの得意とする 超能力を発動してテレポートした。 移動先は、巣穴の外。ゴルドンたちが這いつくばっているのを尻目に、ゼロは山林の中にルイズたちを降ろした。 『よぉし、これで目いっぱい戦えるぜ! ゴルドンども、年貢の納め時だ!』 窮地を見事切り抜けたゼロは、ルナミラクルから通常の状態に戻った。と同時に、持ち直した ゴルドンたちがゼロに押し寄せてくる。 「キョーキョキョキョキョ!」 『ふんッ! はッ!』 相変わらず尻尾や首を振り回して攻撃してくる二体のゴルドンに、ゼロは防御しつつカウンターで 首筋にチョップを見舞う。 「キョーキョキョキョキョキョ!」 攻撃を繰り出しているゴルドンたちの方が、一方的に痛めつけられる結果となった。 開放されている太陽の下では、ゴルドン側に勝ち目がある訳がないのだ。 「キョーキョキョキョキョ!」 それでも怪獣の意地なのか、背中は見せない。一体目が先ほどのように尻尾をゼロの首目掛け伸ばし、 二体目は突進して頭部の角を突き刺そうとする。 『同じ攻撃を二度も食らうかよ!』 しかし尻尾はゼロに易々とキャッチされ、それだけでなく、瞬時に二体目の首に巻きつけられた。 「キョーキョキョキョキョキョ!」 まさかの事態に目を白黒させた二体目も尻尾をゼロに伸ばすがそれも掴まれて、同じように 一体目の首に巻きつけられた。二体のゴルドンは互いの首を絞め合う形になる。 「キョーキョキョキョキョ!」 「キョーキョキョキョキョキョ!」 二体ともほどこうともがくが、互いに勝手に暴れ回ることで余計に絡み、もつれ合う。 激しくのたうち回った末にようやく尻尾がほどけると、両者ともひどく体力を消耗してしまった。 「シャッ!」 この瞬間に、ゼロがゼロスラッガーを投擲した。スラッガーは二体目の首と尻尾の付け根を切断する。 二体目は綺麗に三分割され、たちまち絶命して大地に転がった。胴体の切断面からは、 砂金が零れ落ちる。 「キョーキョキョキョキョ!」 これに激怒した一体目は、仲間の仇を取ろうとしているのか、猛然とゼロに突進していく。 「シェアッ!」 「キョーキョキョキョキョ!!」 しかしその首元にエメリウムスラッシュが撃ち込まれると、爆発とともにゴルドンの命の灯火が消え、 その場に倒れ伏した。タルブ村を踏みにじり、トリステインから黄金を奪っていたゴルドンは二体とも ゼロによって倒されたのだ。 戦いに勝利すると、ゼロは森の中に降ろしたルイズたちに視線をやる。 『やれやれ……何とかなったからよかったが、一時はどうなるもんかと思ったぜ。もう下手に 危険に手を出すような真似は控えてもらいたいな』 主にキュルケに向けて、肩をすくめながら独白すると、空に飛び上がってタルブ村から去っていった。 後日のことだが、黄金怪獣ゴルドンの死体からは、150tの純金が採れた。その黄金は、 タルブ村とトリスタニア、そしてトリステイン軍の復興資金に充てられた。これにより 復興の目途が全く立たずに途方に暮れていたトリステイン軍は、瞬く間に以前の規模を 軽々と超越するほどまでに復活し、トリスタニアとタルブ村も常識外のスピードで復興が成された。 このことにより、タルブ村は怪獣に蹂躙された悲劇の村から一転、トリステインに救いをもたらした 「奇跡の村」と呼ばれるようになった。 「あ~……ホント、ひどい目に遭ったわ……」 そうなることは露知らず、ゼロに救出された後のキュルケは、げっそりとした表情でそうつぶやいた。 無理に虎穴に手を突っ込むような真似をして、危うくゴルドンに殺されかけたことが相当応えたようだ。 「もうあんな、怪獣を甘く見た行動は取らないでよね。次もまた助かるなんて保証はないんだから」 「分かったわ……。あたしだって死ぬのはごめんよ。やっぱり、怪獣は近寄るもんじゃないわね……」 ルイズが注意すると、キュルケは珍しく素直に聞き入れた。それほど骨身に染みたということだろう。 ルイズと才人は何だかおかしくなって、クスッと笑い合った。 それはともかく、これでタルブ村は救われたということで、一行は早速シエスタに本来の目的である 『竜の羽衣』の下へ案内してもらうことになった。怪獣が倒されたと聞いたシエスタは感激のあまり、 何故か才人に抱きついて、ルイズの癇癪を招いたのだが、それはまぁいいだろう。 一行が案内された場所は、タルブ村の近くに建てられた寺院である。この場所は村はずれということもあって ゴルドンの被害を受けておらず、家を踏み潰された人々が身を寄せていたのだが、もう大丈夫だと知ると 皆村の修復のために大喜びで帰っていった。 そしてその寺院なのだが、造りをひと目見た才人は驚きを見せた。丸木が組み合わされた門の形。 石の代わりに、板と漆喰で作られた壁。木の柱……。白い紙と、縄で作られた紐飾り……。 それはどう見ても、ハルケギニアの文化には似つかわしくない建築物で、地球の日本特有の祭殿 『神社』だったのだ。 それだけではない。その神社に祭られている『竜の羽衣』を目にすると、言葉をなくした。 深い緑色の胴体の左右に、鉄板の翼が取りつけられ、前にはプロペラという、ハルケギニア社会では お目に掛かったことのないものが存在する。シエスタが「壊れている」と言った通り、 一度バラバラになったのを形だけでも元の通り繋ぎ合わせただけでもう飛ぶことは出来ないだろうが、 これが本当に空を飛べたことを、才人は理解していた。 「サイト、どうしたの? さっきから固まってるけど……」 ルイズが様子のおかしい才人に向けて尋ねかけるが、才人は何も答えず、代わりにシエスタに向き合って 肩をつかんだ。ルイズはムッと顔をしかめるが、気づきもせずに才人が質問する。 「シエスタ、お前のひいおじいちゃんが遺したものは、ほかにないのか?」 シエスタは頬を染めて、才人の目を見つめ返した。 「えっと……、あとはたいしたものは……、お墓と、遺品が少しですけど」 「それを見せてくれ」 シエスタは才人の頼みで、村の共同墓地へ連れていった。ルイズも主に二人を監視する目的でついてきた。 シエスタの曽祖父のお墓は、共同墓地の一画にあった。白い石でできた、幅広の墓石の中、 一個だけ違うかたちのお墓があった。黒い石で作られたその墓石は、他の墓石と趣を異にしている。 墓石には、墓碑銘が刻まれていた。 「ひいおじいちゃんが、死ぬ前に自分で作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、 誰も銘が読めなくって」 シエスタが呟いた。才人はその字を読み上げた。 「海軍少尉佐々木武雄、異界ニ眠ル」 才人がスラスラ読み上げたことで、シエスタもルイズも目を丸くした。 「サイト……それが読めるってことは、シエスタのひいおじいさんは……」 ルイズがシエスタの曽祖父の正体に勘付いた。その一方で、シエスタは驚きのあまり口を両手で覆っている。 「サイトさん……それを読んだということは、サイトさんがもう一つの『竜の羽衣』を 目にすることの出来る人だったんですね……」 「え……?」 妙なことを口走ったシエスタに、ルイズが振り返る。 「ちょっと、今のどういうこと? 『竜の羽衣』って、もう一つあったの?」 「はい」 ルイズの問い返しに、シエスタがコクリとうなずく。 「ただ、もう一つの方は、みだりに村の外の人に話すなと口止めされてたので教えませんでした。 けれど、今は別です。ひいおじいちゃんの遺言に、この銘が読める人にその存在を教えて、 それがある場所へ案内すべしとありますから」 才人は、先に見せられた『竜の羽衣』の正体を知っていた。それは、20世紀の太平洋戦争時に 日本が製造した戦闘機、ゼロ戦だ。それをタルブ村にもたらしたシエスタの曽祖父は、その時代の 日本人ということになる。 しかし、『もう一つの竜の羽衣』というものは、全く見当がつかなかった。そう何機も戦闘機を こちらの世界に持ち込むことは出来ないはずだ。一体何なのだろうか? 「もう一つの方は、寺院の裏の山に隠されてあります。ご案内しますね」 シエスタは、遺言に従って才人をその場所へと案内し出した。 「この洞窟の中です」 シエスタに連れてこられたところは、神社の背後にある山の、切り立った崖。その一箇所に、 やたらと大きく開いた入り口がある。だが山の陰になる場所にあるので、土地勘のない者は 簡単には見つけられないだろう。 ルイズも当然の如くついてきていた。シエスタは、ルイズが読んだ訳ではないと同行を反対したが、 「使い魔の権利は主人のわたしの権利でもあるわ!」と強硬に主張し、結局押し通したのだった。 「こっちの『竜の羽衣』の方は、もっととんでもない話なんです。空を飛んだというのはもちろん、 巨人に変身したとか。当然信じてる人はいませんが、『固定化』を掛けてないのに何十年も老朽化せず そのままの状態を保ってることから、想像がつかないほどすごいものであることには違いないということで、 みんなひいおじいちゃんの言いつけ通り、これを隠して今日まで守ってきました」 入り口の前で、シエスタが事前説明をする。それを聞いたゼロが、ひと言ボソッとつぶやく。 『巨人に変身……まさか……』 「とても大きくて、さっきのよりおかしな形をしてるので、見ても驚かないで下さいね。 それじゃあ、中に入ります」 松明に火を灯して、シエスタが先導する。それに続いた才人とルイズの目に、炎の明かりに照らされた 巨大な人工物が映った。 『もう一つの竜の羽衣』は、あまりに大きくて視界に収まり切らないのではっきりとは分からないが、 全体的に渡り鳥に似た形状をしているようだった。白い下地を、赤い縁取りで彩っている。 ゼロ戦はすぐに分かった才人も、これが何なのかは心当たりがなかった。 代わりに、ゼロが叫ぶ。 『こいつは!? な、何でこんなところにいるんだよ!』 「きゃっ!? ちょっと、急に大声出さないでよ。ビックリするじゃない」 ルイズが、ゼロの声はシエスタには聞こえてないことも忘れて抗議した。急に口を開いたルイズに、 シエスタが怪訝な目を向けているのが、構わずにルイズが囁く。 「それで、あなたはこれが何なのか分かったの?」 ゼロはすぐに答えた。 『ああ……。こいつはスターコルベット・ジャンバード。俺の仲間……つまり、ウルティメイトフォースゼロの ジャンボットのもう一つの姿だ!』 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/whentheycry3-4/pages/129.html
キャストベアトリーチェ右代宮戦人(第十の晩に死亡)右代宮縁寿(1998年に死亡)右代宮真里亞(第十の晩に死亡)さくたろう右代宮金蔵(第九の晩に死亡)右代宮蔵臼(第七の晩に死亡)右代宮夏妃(第一の晩に死亡)右代宮朱志香(第二の晩に死亡)右代宮絵羽(第一の晩に死亡)右代宮秀吉(第一の晩に死亡)右代宮譲治(第二の晩に死亡)右代宮留弗夫(第一の晩に死亡)右代宮霧江(第八の晩に死亡)右代宮楼座(第一の晩に死亡)南條輝正(第六の晩に死亡)呂ノ上源次(第一の晩に死亡)紗音(第五の晩に死亡)嘉音(第四の晩に死亡)郷田俊朗(第九の晩に死亡)熊沢チヨ(第九の晩に死亡)エヴァ・ベアトリーチェワルギリアロノウェガァプルシファーレヴィアタンサタンベルフェゴールマモンベルゼブブアスモデウスシエスタ00シエスタ45シエスタ410山羊の皆さん小此木鉄郎天草十三須磨寺霞大月教授南條雅行熊沢鯖吉川畑船長ラムダデルタベルンカステル4th game"Alliance of the golden witch"
https://w.atwiki.jp/moejinro/pages/1816.html
6日目 あらぐむ 夜が明け、朝となりました。痛ましくも cozyさん の無残な死体が見つかったようです あらぐむ chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ------会話STOP------- あらぐむ 6日目の朝です 1 (もぐら村) あらぐむ -----------スタート-------------- 3 (天界部屋) オペこ ほええ cozy 助かった 3 (天界部屋) オペこ こんなキチガイみたいな狩人 いないよぉ・・・ 3 (天界部屋) ミクかわいい cozyさん・・・ホロリ 1 (もぐら村) ニキハウス 続いた 1 (もぐら村) いあん おはようございます 3 (天界部屋) ラスフィーノ 5人か 1 (もぐら村) シエスタBC つづいた 1 (もぐら村) Mrチキン おはようございます 3 (天界部屋) BBL やっぱりcozyさんは村か 1 (もぐら村) Linstant おはようございます 3 (天界部屋) かこちん 続くわなー 1 (もぐら村) ニキハウス 嘘だったようですね 1 (もぐら村) シエスタBC 大恥かくとこだったわ 3 (天界部屋) ラスフィーノ 狼生存ですな 3 (天界部屋) オペこ CozyさんWWWWWWWWWWWWWWWWWWW (T) ワルノス > もう一匹いるね 3 (天界部屋) ブロクター さあ殴り合いか (T) ワルノス > 間違えました 3 (天界部屋) かこちん まぁもうすぐ終わるわな 3 (天界部屋) ラスフィーノ あぁまだ6か 1 (もぐら村) ワルノス さてどうしますかと 1 (もぐら村) いあん うん 3 (天界部屋) BBL yukoさんへの指摘からそんな気はした 3 (天界部屋) オペこ ニキハウス>シエスタ この順で黒い さぁどうだ! 1 (もぐら村) Mrチキン とりあえず方針としては暫定○、さらにいうならグレー吊り発言のいあんさんに疑いであります 3 (天界部屋) ミクかわいい チキンさん吊りましょうチキンさん 1 (もぐら村) ワルノス ニキハウスさん グレー吊り提案ありよん 1 (もぐら村) いあん かこちん●だとLWか 3 (天界部屋) オペこ チキンさんは私のメモに+って書いてあるけど理由は不明 3 (天界部屋) かこちん わたしは 3 (天界部屋) ミクかわいい 筋肉量+ 1 (もぐら村) ニキハウス ありよん?とはなんでしょうか 1 (もぐら村) シエスタBC あそっか 3 (天界部屋) かこちん 吊りたいのはあらぐむだな 3 (天界部屋) ラスフィーノ いやー、このグレラン大会に残りたくないなぁw 3 (天界部屋) オペこ ムキッ 3 (天界部屋) cozy こんばんは 3 (天界部屋) ミクかわいい いらしゃんせ~ 3 (天界部屋) ラスフィーノ おつかれーw 1 (もぐら村) ワルノス あれ グレー吊り発言してなかったっけ? 3 (天界部屋) かこちん やぁこじー 3 (天界部屋) オペこ cozyさん!やりましたね!助かったんですよ! 3 (天界部屋) BBL ワルノス>=シエスタ>ニキハウス>Listant>Mrチキン さんかなあ 1 (もぐら村) いあん ん? グレー吊り発言は確認しただけよ~ん 3 (天界部屋) かこちん こじーめ 3 (天界部屋) cozy 噛んでくれてありがとう 3 (天界部屋) BBL お疲れ様でした 3 (天界部屋) ミクかわいい w 1 (もぐら村) シエスタBC かってにかこちん○確定させてたわ 1 (もぐら村) ニキハウス はい、発言しました。ありよんの単語がわからなかったので… 3 (天界部屋) かこちん こじーさん 3 (天界部屋) オペこ えー ワルノスさん私のメモだと++ってなってる 1 (もぐら村) ワルノス あ あったっすってだけね 3 (天界部屋) かこちん 私狼じゃないんですよ 3 (天界部屋) BBL うーん 3 (天界部屋) ミクかわいい 筋肉量++ 3 (天界部屋) オペこ ムキキッ 1 (もぐら村) ニキハウス あ、了解です。すみません 3 (天界部屋) ラスフィーノ ワルノスさんは、内訳把握があやしい村人とみます! 1 (もぐら村) ワルノス あの時点でグレー吊りは村だとないんじゃないかなーと 3 (天界部屋) BBL 占い真狂狐とか言い出しちゃったからなあ 3 (天界部屋) cozy かこちんさんLWかと思ったのに、騙されました 3 (天界部屋) BBL 気になっちゃう 3 (天界部屋) オペこ Listantさんはやっぱ白いね~ 1 (もぐら村) Mrチキン とりあえず暫定○吊りに一票 1 (もぐら村) ワルノス いあんさんのグレー吊り発言は見損ねてた 3 (天界部屋) かこちん だって狼発言しろっていうから 3 (天界部屋) かこちん LW発言して遊んでみようかと 1 (もぐら村) Mrチキン 間違ってたら戦犯確定発言してるなーw 1 (もぐら村) シエスタBC グレー釣りってそんなに悪手? 3 (天界部屋) BBL 村で見るならシエスタさんが怪しいかなあ 1 (もぐら村) Linstant 私は逆にあそこまで疑われた状態で仲間に○出しはしないかな?と思ってます 3 (天界部屋) かこちん 暫定○つりなんて 1 (もぐら村) いあん だからその前の発言みて聞いただけだっちゅうのw 3 (天界部屋) BBL というか一番村でミテタcozy 3 (天界部屋) cozy 真占いなら、私の責任です 1 (もぐら村) Mrチキン いえ、単にもはやこっから殴り合いに近いので 3 (天界部屋) かこちん 狼に○出すわけ無いだろwww 3 (天界部屋) ラスフィーノ もうね、○をみてる時点で 1 (もぐら村) Mrチキン 囲いにかけてるだけです 3 (天界部屋) オペこ シエスタさん、ニキハウスさんはメモに -って書いてあるね 3 (天界部屋) BBL 見てたcozyさん噛まれちゃった 3 (天界部屋) ラスフィーノ ダメw 3 (天界部屋) ラスフィーノ ダイス振って決めればいいんだ、こんなのw 1 (もぐら村) ワルノス んだね ただの殴り合いなので 3 (天界部屋) かこちん あそこまでいったら囲わないからなー私 1 (もぐら村) シエスタBC うーむ 1 (もぐら村) シエスタBC ヒント少ないな 3 (天界部屋) かこちん 占い結果?ごめん全部阿弥陀なんだ 3 (天界部屋) cozy ありがとう。村人で見てくれて>BBLさん 1 (もぐら村) Mrチキン グレー吊り発言が意図がなかったなら 1 (もぐら村) Linstant むしろ囲いを疑われて吊られる可能性があるので囮として選ばれたんじゃないかと 3 (天界部屋) かこちん リンスさん占ったの寡黙占いじゃナインdな 1 (もぐら村) ニキハウス んー、一応狂真も一応あるので、グレー吊り発言でしたが。 3 (天界部屋) BBL yukoさんへの指摘が村ぽかったです 1 (もぐら村) Mrチキン 潜伏気味なLinstantさんが候補にしたいかなーくらい 3 (天界部屋) オペこ このむらで唯一cozyさんにだけ何のメモも書いてない・・・ 1 (もぐら村) ニキハウス 一応二回いっとる… 3 (天界部屋) ミクかわいい cozyさんノリノリだなあーって思ってました! 1 (もぐら村) ワルノス 狂はあるんだっけ?? 1 (もぐら村) いあん どうだろ 3 (天界部屋) BBL がそれに相槌したからなのか噛まれたw 3 (天界部屋) cozy 誰も気付いてないのかと思ってました>BBLさん 1 (もぐら村) ワルノス ないような・・・人外一人多くなんね? 3 (天界部屋) かこちん 囲い疑惑かけるために○出しました^^ 1 (もぐら村) ワルノス 占い食われてるんで 3 (天界部屋) BBL 言われて気が付きました 3 (天界部屋) BBL だからcozyさん冷静に見れてる村だなあと 1 (もぐら村) ワルノス 計算ミスの可能性はございます そしたらすみませんn 1 (もぐら村) Mrチキン かこさん狂人パターンだともあるけど、霊媒狼入りになる可能性の問題 1 (もぐら村) ニキハウス 霊に狼の場合ってもう完全になかったでしたっけ? 3 (天界部屋) オペこ あ もしかして霊媒の視点だと占いは偽なのに~って あらぐむ 残り時間2分です 1 (もぐら村) Mrチキン いえ、全部可能性ならあり 3 (天界部屋) オペこ cozyさんの発言ですか? 3 (天界部屋) かこちん 霊狼はありえるのよね 3 (天界部屋) BBL です 3 (天界部屋) オペこ おおお 1 (もぐら村) ワルノス そうかぁすまぬ 3 (天界部屋) cozy ミクかわいいさんへ。私、2回目の投票はyukomacさんに入れましたよ 1 (もぐら村) Mrチキン あくまで高確率なの選んでるだけです 1 (もぐら村) Linstant 危険性が高いのでやらないだろうって感じでしたね 3 (天界部屋) オペこ あれは白かった 3 (天界部屋) BBL ですよね 3 (天界部屋) かこちん そして15人要るはずなのに 3 (天界部屋) ミクかわいい おぉ~(*>ω<) 3 (天界部屋) かこちん 同数投票って誰よ犯人 1 (もぐら村) ワルノス 狂人だけはないんじゃない?かこちんさん 1 (もぐら村) Mrチキン 私は暫定○吊りしかもうわからないのでそっち推進します 3 (天界部屋) BBL 私もyukoさんにずっと入れてました 3 (天界部屋) ラスフィーノ すいません6日目ってことは 3 (天界部屋) ブロクター 2回目は関係ない人に入れました 3 (天界部屋) ラスフィーノ 吊りは4回終了? 3 (天界部屋) かこちん ミクかわが真だと思って入れてました^^ 1 (もぐら村) シエスタBC 策としては 3 (天界部屋) ラスフィーノ 5回? あらぐむ 残り時間あと1分です 3 (天界部屋) BBL 明日最終日のはず 1 (もぐら村) ワルノス 狐とけたりゆうがひっかかる 1 (もぐら村) いあん かこちんの○だし・・・ログみないと思い出せないw 3 (天界部屋) ラスフィーノ 4回終わって、今日5回目の吊り? 1 (もぐら村) Mrチキン いあんさんとLinさん 3 (天界部屋) BBL 吊りは全部で6のはず 1 (もぐら村) いあん 自分はもらってるけど 1 (もぐら村) シエスタBC 白釣りが一番だと思う 3 (天界部屋) ラスフィーノ なるほど 1 (もぐら村) いあん そか二人か 3 (天界部屋) オペこ ニキハウス>シエスタの順に吊って終わりだ!カット スイカを賭けよう あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) BBL 呪殺で釣吊り減りましたからね 1 (もぐら村) Linstant 個人的には黒によっているかちこんさんを存命させようとしたニキハウスさんがちょっと怪しかったり 3 (天界部屋) ラスフィーノ あぁそうか 1 (もぐら村) ワルノス いあんさんにきはうすさんつりたいかも 3 (天界部屋) cozy 正直、あと1匹わかりませんね 3 (天界部屋) ラスフィーノ 俺の案だと銃殺がでないから 3 (天界部屋) BBL 狩人頑張って 1 (もぐら村) ニキハウス 過去に私はかこちんさん黒よりでみてると発言してますが 3 (天界部屋) ラスフィーノ 最後5人なはずだったんdな 3 (天界部屋) かこちん じゃあ私もシャンプーリンス→いあんでおわりでかける (T) BBL > もういないけどね… 3 (天界部屋) ラスフィーノ まぁどっちがいいかだよなぁ あらぐむ 日は落ちて、村人たちは今日の処刑者を決めなくてはいけません。 あらぐむ 各人は処刑する人の名をTELLでお願いします 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ----会話可能時間です---- 3 (天界部屋) cozy シエスタさん狼だと予想してました (T) ワルノス > ニキハウスさんで 3 (天界部屋) BBL みなさんの意見も参考にすると (T) シエスタBC > Linstantさんでおわりだあああ (T) Linstant > ニキハウスさんに投票します 3 (天界部屋) BBL シエスタ>ニキハウス さんかなあ 3 (天界部屋) かこちん 仕切ってる人が狼だったらこれ怖いねー (T) いあん > む~、チキンさん吊りで 3 (天界部屋) かこちん 心強いわー 3 (天界部屋) ラスフィーノ まぁそうだねえ、あんまり発言できない人は狼でしょ 3 (天界部屋) オペこ しきってる人、つまりチキンーワルノスかな? (T) Mrチキン > いあんさんでお願いします 3 (天界部屋) ブロクター 私は初めからシエスタさん一択だったんですけど、さてどうなるか 3 (天界部屋) ラスフィーノ で論理なりたつもんなぁ 3 (天界部屋) オペこ (のどっちか) 3 (天界部屋) かこちん ちなみに 3 (天界部屋) かこちん 私は狼?狂人? 3 (天界部屋) オペこ 狂 3 (天界部屋) ラスフィーノ ワルノスさんはどっちもあるから吊りたいけど、 3 (天界部屋) BBL 狼かと 3 (天界部屋) ラスフィーノ 村ならSG候補だ 3 (天界部屋) かこちん 真なのに>< 3 (天界部屋) オペこ 選択肢に真ないっすよwwwwwwwwwwwwwww 3 (天界部屋) かこちん とか言って村騙りでした ごめんなさい 3 (天界部屋) オペこ はい あらぐむ 残り時間あと1分です 3 (天界部屋) BBL 真(狼)なのにですね! 3 (天界部屋) オペこ 吊ります (T) ニキハウス > いあんさんに投票お願いします ニキハウス2 Linstant1 Mrチキン1 いあん2 (T) シエスタBC > じぇんじぇんわからん 3 (天界部屋) ラスフィーノ かこちん狂人はあるよ 3 (天界部屋) かこちん 村騙りだったらどうするよ 3 (天界部屋) ラスフィーノ でも、狼が霊でるのはないか 3 (天界部屋) cozy あらぐむさん、お忙しいでしょうか・・・ 3 (天界部屋) ラスフィーノ 村語りは重罪w あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) オペこ YukoMAXさんならあるいは 霊能に狼で来てくれる! 3 (天界部屋) かこちん え?いいことだよ 3 (天界部屋) あらぐむ うん? 2 (狼がぶがぶ) いあん こら、吊られるかもなあ 3 (天界部屋) かこちん むしろミクかわが狼 3 (天界部屋) ミクかわいい [ガーン] 3 (天界部屋) ミクかわいい わざわざ5人目で狼は出ないでしょう・・・ あらぐむ 同一票のため、村人は再度話し合ってください あらぐむ 3分間再度村人ははなしあってください 1 (もぐら村) あらぐむ ------------START------------- 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ----------STOP---------- 3 (天界部屋) ミクかわいい ぉー熱い戦い 1 (もぐら村) ニキハウス あら 1 (もぐら村) シエスタBC むむむ 3 (天界部屋) BBL そう言えば独り言たくさん送るかもとか言ってたけどすぐ噛まれたからほとんど意味なくなっちゃったなあw 1 (もぐら村) Mrチキン おや 1 (もぐら村) いあん おっと 3 (天界部屋) かこちん あついねー 1 (もぐら村) いあん 同数か 1 (もぐら村) Mrチキン いあんさんに入れました 1 (もぐら村) ワルノス 速報 吊り縄数計算ミスアリ すまぬ すまぬ 1 (もぐら村) シエスタBC Linさん 1 (もぐら村) ニキハウス いあんさんに入れました 1 (もぐら村) Linstant 言ったとおりニキハウスさんに 1 (もぐら村) ワルノス にきさんで 3 (天界部屋) cozy 以前、撮っていただいたSSですが、サイアさんにお渡ししていただけましたでしょうか? 1 (もぐら村) いあん Linさん 3 (天界部屋) ミクかわいい きれいに割れた~ 1 (もぐら村) シエスタBC 狩人ってまだおる? 1 (もぐら村) ワルノス これいれてあと3本だ 1 (もぐら村) Mrチキン 狩人COしてもいいかもな 1 (もぐら村) Linstant GJしてない以上いても信頼性が 3 (天界部屋) cozy サイアさんにお会いする機会がなくて 3 (天界部屋) BBL シエスタさんに票が入っていないだと!? 3 (天界部屋) かこちん 3本ちゃう 3 (天界部屋) かこちん 2本や 1 (もぐら村) ワルノス P鯖のツール借りてきたら まちがってた マジですまんす 3 (天界部屋) あらぐむ !? 1 (もぐら村) ニキハウス 私なのか、白囲い吊るって話だったんじゃ 1 (もぐら村) ワルノス 狩人はやめてほしいー 1 (もぐら村) いあん チキンさん狩人COってこと? 1 (もぐら村) ワルノス 乗っ取りありうるし 1 (もぐら村) Mrチキン いえ、いたらしてくれないか?です 1 (もぐら村) いあん 違うか 3 (天界部屋) あらぐむ しまった、そういや渡したっけな・・・今日にはきょうにはあああ 1 (もぐら村) Mrチキン のっとりOKだとおもうけど 3 (天界部屋) かこちん 狼COするなし 1 (もぐら村) ワルノス 乗っ取られてたら両吊りできぬー 3 (天界部屋) BBL ツリ候補じゃないならでなくてもいいような 1 (もぐら村) Mrチキン かまれなかったらつっちまえ 1 (もぐら村) ワルノス あれ COさせて吊るだけ? 1 (もぐら村) Mrチキン 3吊りじゃないのか? 3 (天界部屋) かこちん 2つりだから 1 (もぐら村) ワルノス そうです残りですごめんなさい 3 (天界部屋) かこちん ざんえん 1 (もぐら村) ワルノス 3です 3 (天界部屋) cozy そろそろ、私も動画に登場するかもしれませんので。お手数おかけします・・・。 3 (天界部屋) かこちん ワルノスさん狼だな 1 (もぐら村) ニキハウス 信用できないんであれば出なくてもいいかと あらぐむ 残り時間あと1分です 3 (天界部屋) BBL シエスタさんじゃない? 1 (もぐら村) Linstant 6人だからあと2回じゃ? 3 (天界部屋) かこちん りんすさんがつっこんだw 1 (もぐら村) シエスタBC 2かいだな 1 (もぐら村) ワルノス あれ 1 (もぐら村) いあん ってか、いないんじゃないかなもう狩人 1 (もぐら村) ワルノス あってる?? 3 (天界部屋) ミクかわいい 5人に見える 3 (天界部屋) BBL 吊り候補に狩人候補がいる場合のみCOさせるべき あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) かこちん 一人寝てる 1 (もぐら村) ワルノス 土下座しかねぇ 3 (天界部屋) ミクかわいい ww 1 (もぐら村) Linstant 6>4>2=終わりです 3 (天界部屋) かこちん カモフラージュしてる 1 (もぐら村) ワルノス げざります 1 (もぐら村) ニキハウス というか、投票どうしましょう 1 (もぐら村) Mrチキン とりあえず今回Linさんに変えます 1 (もぐら村) いあん だよなw 3 (天界部屋) あらぐむ 今、早急に渡しましたハイ 1 (もぐら村) Mrチキン 私はもう自分の考えと心中する! 3 (天界部屋) BBL Linstantさん噛まれるかも 3 (天界部屋) あらぐむ すみませんすみません あらぐむ 日は落ちて、村人たちは今日の処刑者を決めなくてはいけません。 3 (天界部屋) オペこ Linさん白いぞおおおおおおお 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ----会話可能時間です---- 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ あらぐむ 各人は処刑する人の名をTELLでお願いします (T) シエスタBC > Linさんで~ 3 (天界部屋) かこちん 渡した=投げ入れた (T) Mrチキン > Linstantさんでお願いします 3 (天界部屋) かこちん おぺこよ 3 (天界部屋) かこちん 私の勝ちだな 3 (天界部屋) かこちん カットスイカ貰うぜ! 3 (天界部屋) BBL いあんさんの姿がようやく見えた (T) いあん > ニキさんで (T) ニキハウス > Linstantさんに投票お願いします。白囲い吊りに乗っかってみよう 3 (天界部屋) オペこ まだだ!まだしょうぶはおわっていない! 3 (天界部屋) BBL 隣にいたのに鳥しか見えませんでした 3 (天界部屋) かこちん 鳥なのよね あのこ 3 (天界部屋) cozy ありがとうございます。本来なら私がやるべきことなんですが、申し訳ありません。>あらぐむさん 3 (天界部屋) BBL あ、あれ? 3 (天界部屋) かこちん いあんは鳥だよ (T) Linstant > ○押し強いMrチキンさんも怪しいですが、「ニキハウスさんに投票します」 3 (天界部屋) BBL もにこはニキハウスさんだった 3 (天界部屋) ミクかわいい リンスさんがあらぐむさんとかぶってた・・w (T) ワルノス > うーん もう少し話したい。。。いあんさんに入れて何とかならんか Linstant3 ニキハウス2 いあん1 3 (天界部屋) かこちん 奥にみえるちっこい黒い塊がリンスさん 2 (狼がぶがぶ) いあん 今回りんすさん吊りで次回自分か・・・おわた 3 (天界部屋) かこちん 保護色だ 3 (天界部屋) かこちん とどけ!この思い! 3 (天界部屋) ミクかわいい ちっこい黒い塊w 3 (天界部屋) かこちん そこちゃうそっちや! 3 (天界部屋) かこちん かこちんは村人におもちゃにされた挙句吊られました あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) cozy いいおもちゃだった あらぐむ 村人たちの話し合いにより Linstantさん は処刑されてしまいました あらぐむ /chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください あらぐむ 役職の方はTELLをお願いします あらぐむ まもなく夜となり狼たちの時間です。各々狼に怯えつつも推理し、明日の昼へと備えましょう 3 (天界部屋) ミクかわいい は、ハエわいてたかな 3 (天界部屋) BBL ミクわかさんと久々に同村だったのにすぐミクわかさん吊られちゃうとはなあ 3 (天界部屋) かこちん 何かにおってた 3 (天界部屋) ミクかわいい 基本的に真っ先に退場しますので。。 3 (天界部屋) BBL 自分もすぐに噛まれちゃったし… 3 (天界部屋) ミクかわいい [ガーン] 3 (天界部屋) BBL フラグ立ててしまったのか 3 (天界部屋) Linstant お邪魔しますー 3 (天界部屋) ミクかわいい いらしゃんせ~ 3 (天界部屋) BBL お疲れ様でした 3 (天界部屋) かこちん いらしゃい 3 (天界部屋) オペこ お疲れさまでした 3 (天界部屋) ブロクター おつかれさまー 3 (天界部屋) オペこ Listantさんめっちゃ喋ってくれて助かりました 3 (天界部屋) Linstant 変なこと話すぎて話し合いを止めてしまった感が、申し訳ないです 3 (天界部屋) かこちん りんすさんものびてるねー 3 (天界部屋) ラスフィーノ おつかれさまー 3 (天界部屋) かこちん 後で床屋しよう 3 (天界部屋) オペこ かなり白いと僕は思いましたがつられちゃいましたね 3 (天界部屋) Linstant ぼさぼさ好きなのに!? 3 (天界部屋) BBL リンスさんはLinsさんのことか (T) Mrチキン > ○吊り反対してるからLinさんにしたけど・・・間違ってたら本当に戦犯ですね(=◇=;) 3 (天界部屋) かこちん うむ 3 (天界部屋) BBL ようやく気が付きました (T) いあん > Mrチキンさんを蒸し焼きにするのが夢です! わけてあげますえ^^ 3 (天界部屋) かこちん ぼさぼさかー 3 (天界部屋) cozy 村人を経験すると、人狼の楽しみが増えます 3 (天界部屋) ミクかわいい 最終日の胃のキリキリも増えます 3 (天界部屋) オペこ 墓さ最高 3 (天界部屋) かこちん みくかわは6番でいいよね 3 (天界部屋) オペこ ボサ 3 (天界部屋) BBL 最終日まで残ったことないなあ 3 (天界部屋) ミクかわいい ポニポニは6髪ですね~ ラスフィーノ 村人楽しいよねー、結局w ラスフィーノ 誤爆w 3 (天界部屋) BBL まあ実質最終日は何回か有りましたが 3 (天界部屋) ラスフィーノ やってもた 3 (天界部屋) Linstant 私も村側で最終日まで残ったこと無いですねー あらぐむ 残り時間2分です 3 (天界部屋) オペこ 好きなこと・思ったことを喋れるからね 3 (天界部屋) かこちん よしあえてわざと失敗してハゲに (T) > いあん 塩味が最高 3 (天界部屋) オペこ ナナツさんよんできて!!! 3 (天界部屋) ラスフィーノ 最近村側で最終日とか 3 (天界部屋) BBL 残り4人とか3人は経験したことないや 3 (天界部屋) ミクかわいい (([ガーン])) 3 (天界部屋) ラスフィーノ 全然ないなぁ。。。。。。 3 (天界部屋) オペこ ラスさんはメタで狐のイメージががが 3 (天界部屋) かこちん 最後まで残って勝った事あるよ!狼で 3 (天界部屋) ラスフィーノ SG候補で残してくれるように 3 (天界部屋) ラスフィーノ 振舞わないとだめだね。。。 3 (天界部屋) かこちん ラスさんはなぜCOしてきたんだろう あらぐむ 残り時間あと1分です 3 (天界部屋) オペこ 「あ、あっちに蝶々が」「そっちにいきましたわ」 これでSG候補いけるで 3 (天界部屋) ラスフィーノ 昨日、ステで完全勝利したんだ、狐w 3 (天界部屋) かこちん 3COくれば対抗占いがほぼ確定なのに 3 (天界部屋) BBL エルレイナさんは狙ってSGになろうとしている気がたまにしてしまう あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) BBL 狼が霊媒噛んじゃうんだもん!! 3 (天界部屋) オペこ 昨日のあれは悔しかったなぁ 3 (天界部屋) ミクかわいい SGになれば長くプレイできますし、ありえそう・・w 3 (天界部屋) ラスフィーノ 二日連続、狐やって同じ手法じゃつまらんじゃん 3 (天界部屋) オペこ 明らかにラスさん狐で 本人からも狐COあったのに 3 (天界部屋) BBL 確かに 3 (天界部屋) かこちん はい 狐宣言いただきました 3 (天界部屋) Linstant なるほど 3 (天界部屋) オペこ 勝っちゃったもんね 3 (天界部屋) ラスフィーノ 告発されたのにねw 5日目へ 7日目へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7596.html
前ページ次ページゼロニスター ――ゴオオオオ…… 深夜の空を空船が風を切って飛行する。 その中の一室に設置されたラウンジでは、シエスタがバーカウンター内の男に話しかけていた。 「あの……、食券使いたいんですけど」 「見せな!」 「『虚無壺の会』のミスタ・クロムウェルから貰ったんです。これと引き換えでごはんが貰えるからって……」 「ふん……」 バーカウンターの男は流しから取り出した三角コーナーを3人の目の前に置く。 「これだけしか残ってねーな」 「………」 ルイズ・サタニスターが三角コーナーを睨みつけた時、 「へっへっへ……」 「ふん……」 髪とあごひげを逆立てた筋肉質の男が薄ら笑いを浮かべつつサタニスターのあごを指で撫で、そばかすの女とチェックの帽子の男も3人に値踏みするような視線を向けていた。 「『サタニスター』っつったっけなあ、お前の名前……。知ってるぜ~」 そう言いつつ、チェックの帽子の男はサタニスターに頭から酒を浴びせかけた。 「『殺人鬼を狩る』そうじゃねえかよ。そんな女がこの空船に乗り込んでくるとはいい度胸だぜ!! テーブルを空けろお!!」 「あいよ」 筋肉質の男の言葉にそばかすの女が手近なテーブルを傾け、上に置いてあったグラスや酒瓶を落とす。 ――ドンッ 筋肉質の男はその上に肘を突き腕相撲の体勢を取った。 「てめーの怪力はなかなかのものらしいじゃねえか。こいよ~!! このエイモスとの勝負を拒むんなら、てめーのメシは三角コーナーの残飯だ……。しかあし、俺に勝てたらまともなメシにありつけるぜ。係のやつにもそう話を通してある」 「ミス・ナックルスター……、私サンドイッチ作ってきたので……」 「………」 話しかけてきたシエスタに何も答えず、サタニスターは片手を上げて挑戦に応じる。 「念のため尋ねるわ。途中で勝負をやめるのはナシよね?」 「当ったり前だろ、バカヤロ~!! 野暮な事言ってんじゃねえぞ、コラ」 「………」 筋肉質の男・エイモスもサタニスターに応えてテーブルに肘を突いた。 「READY!! GO!!」 「ふうんっ!」 日焼けした男の合図で2人の勝負が開始され、組まれた腕はサタニスターの側に大きく傾く。 「始まったあーっ!! 早くも修道女が劣勢だぜえ!! みんな笑ってやれ!!」 「やっちまえ、エイモス!! そのまま叩きつけろーっ!!」 「ふんっ!! ふんっ!!」 エイモスと呼ばれた筋肉質の男は血管の浮かんだ顔を引きつらせて力を入れ、サタニスターも汗を流しつつ歯を食いしばる。 そんな中、サタニスター・エイモス戦のなりゆきを見守っていたルイズ・シエスタに、そばかすの女とチェックの帽子の男が歩み寄っていた。 「おおっと、小鹿を発見~♪」 「!!」 「うふふ……、サタニスターが負けたらどうなるかわかってんだろうね?」 「この空船に『弱虫(チキン)』は必要無え。よってたかってぐしゃぐしゃに痛めつけられるぜ~!!」 「そうなればお嬢ちゃん達も無事ではすまないねえ。……意味わかるよね? ふふふ……」 2人の言葉にルイズは怒りも露わに彼らを睨みつけ、シエスタは固唾を飲んで戦いの行方を見守っていた。 「ぶっつぶせ、エイモス!!」 「エイモス!!」 「エイモス!!」 「エイモ……」 エイモスコールを上げていた観客達が、ふと違和感を覚えた。 「……エイモス?」 「ん~!! ん~!!」 圧倒的優位に立っているはずのエイモスの腕がその場からまったく動かず、本人も苦痛の呻きを上げているのだ。 そして次の瞬間、 ――ゴッシャア! 鈍い音を立ててエイモスの手が握り潰された。 「ぎゃあああ!! 放せ!! 放せ!! 手え放せ、ちくしょう~っ!!」 「エ……、エイモスの手があ~っ!!」 「つっ、潰されたあ~っ!!」 「どちらかの手がテーブルに付くまで勝負は終わらなくてよ!! 『お前もそれに同意したはず』!!」 「ぎゃひいい~っ!!」 激痛のあまり悶絶して椅子から転げ落ちるエイモス。 「エイモス!?」 『………!!』 サタニスターの手に握られたままのエイモスの右手首に、ルイズ・シエスタを含め観客全員が言葉を失った。 そしてその手首をテーブルに叩きつけ、 「私の勝ちよ……。文句がある奴は1歩前に出なさい」 「ひっ……」 バーカウンター内の男は、慌てて缶詰やら果物やらハムやらをカウンター上に並べだす。 そしてサタニスターはルイズ・シエスタに……正確には彼女達のすぐ傍まで来た男女に視線を向ける。 「あ……」 「い……、いや、アタシ達は……」 歩み寄ってくる自分を何とか誤魔化そうとする男女のしどろもどろの弁明に耳を貸さず、サタニスターは4人に歩み寄る。 「私の頭に酒を浴びせたのは……、どっちの手だい」 「は……!?」 「どっちよ」 さらに1歩接近するサタニスター。 「ひ……、左かな?」 ――ドゴオッ!! サタニスターの左アッパーがそばかすの女の顔の下半分を粉砕した。 「ぶぎっ!!」 「うおおっ」 「ひいいいい! ひいいいい!」 目の前で人間の顔が半分ちぎれかける様を目の当たりにしたチェックの帽子の男が、服を返り血で染めて悲鳴を上げた。 泣き喚く男にサタニスターは最早興味を示さず、背中を向け居並ぶ面々を指差して宣言する。 「ここにいる連中全員に告ぐ……。私の使命はお前達『殺人鬼』を『狩りつくす』事。この使命は私の母から譲り受け、母は祖母から譲り受けている。先祖代々受け継がれる。殺人鬼の怨霊を無数に蓄えたこのナックルと共にね……!! しかしこれはあくまでも先代から伝えられた使命『だけ』の話。私の本音は別にある……!! 私はね……、単にお前達が嫌いなのよ。金が欲しくて誰かを殺すは、特別な自分になりたくて誰かを殺すは、人をいじめるのが楽しいから誰かを殺すは……。そして捕まれば今度は言い訳三昧。『病気だった』、『酒を飲んでいた』。極刑を免れる事ができないと見るや、世間や遺族にからかい文句を投げかける!! そんなみっともない害獣になりながら生きさらばえるくらいなら、あたしが楽にしてあげる」 手近な女性の着ている服の胸元でナックルを拭い、サタニスターはルイズと共にラウンジを後にする。 「行くわよ、シエスタ。食べ物持ってきて」 「あっ……、はっ、はい!!」 シエスタは慌てて愛想笑いを浮かべつつバーカウンターの男から食料を受け取り、ルイズ達の後を追った。 翌朝、どこかの桟橋に横付けされた空船の船内にアナウンスが流れる。 『これよりは徒歩となります。各自愛用の武器をお持ちになってください。それ以外のお荷物はこちらでお預かりします』 既に到着していた参加者達が新たに到着していた空船を見て、思い思いに雑談を交わし合う。 「空船が来たぞ!」 「予選に参加予定の殺人鬼達がまたまた新たにご到着だぜ」 「これで参加者は100人越えか」 「本選に出られるのはおそらく1~2割……。ここからは完全に弱肉強食の世界だ」 そんな時、ある一団が空船から一緒に下りてきた3人の女性らしい人影を発見する。 「……おい、何か顔色の悪い連中がいるぞ。泣きそうな面してやがる」 「さっきあれに乗ってるダチから連絡があった。『修道服を着た女とは戦うな』だとよ……」 その一団に噂されているとも知らず、ルイズ・サタニスター・シエスタも桟橋を歩いていく。 「ミス・サタニスター、結局私達缶詰しか食べませんでしたね……」 「毒入り牛乳うっかり飲んだ件があったからね」 「嫌な事思い出させるんじゃないよ」 「ところで……、ここってハルケギニアですか?」 桟橋のある建物の周囲は見渡す限りの原生林で、遠くに霞む山並みまでの間に人工建造物らしい物はまったく見えなかった。 「……さあ」 桟橋のある建物から程近い広場に参加者達を集め、クロムウェルがマジックアイテムを使用して全員に声をかける。 『「ハルケギニア最強殺人鬼決定戦」の予選をこれより開始致します。私「虚無壺の会」のクロムウェルがルールをご説明致します。……と、その前に……』 クロムウェルの後方から揃いの服に身を包んだ女性達が何人も現れ、参加者達の方に向かっていく。 「こちらをお受け取りください」 「どーぞ」 女性達は参加者達に鞄から取り出した何かを手渡していく。 『皆様にお配りしている物は「革製ホルダー」でございます。ホルダーには10個のくぼみが空いております』 ホルダーを受け取ったルイズは、くぼみの1つに金属製の小さな円盤がはめ込まれている事に気付いた。 (これは……、メダル……?) 『「虚無壺の会」の紋章が刻まれたメダルが、ホルダーに1枚だけはまっているのがおわかりいただけますかな? それと同じメダルが森の中のあちこちに隠されております。それらを探し当てて……、ホルダーにはめていってくださいませ。3枚集めれば合格!! 大会本選に出場できます』 「な~んだ、たった3枚かよ」 「案外優しいぜ」 ホルダーを腕にはめるルイズ達3人の後ろで、メイスと拳銃を持った2人組が薄ら笑いを浮かべつつそう軽口を叩いていたが、 『ただし!! 武器を持って本選に出るならば、メダルは5枚必要となります。銃火器類や爆発物等構造が複雑な武器・メイジの杖の場合はメダル8枚!! 本選での戦いを勝ち抜くには……、メダル3枚の成績では「地獄を見る」とお考え下さいませ。なおメダル10枚完全収集(コンプリート)された方は、本選においてシード選手として扱われます。シードの特典は――』 「待ちな、おっさん」 そこまで言ったところで、背後から迫ってきた巨大な人影がクロムウェルの首根っこをつかんだ。 「あっ」 「『サイト』……!!」 「何か用かね」 「『森の中でメダルを集めろ』だと!? 殺人鬼に宝探しさせて何の意味があるんだ? 小学生のキャンプと同じに考えてねえか、この野郎……!!」 「単なる宝探しではございません」 苛立たしげに叫ぶ才人をホルダーを配布していた女性達が制する。 「メダルを弱い者から力ずくで奪い取る行為も『あり』でございます」 「たとえ奪い取る際に相手を殺そうとも」 「やはり『あり』でございます」 「……それを早く言えよ」 クロムウェルの首根っこから手を放し、才人は元いた場所に戻っていく。 「ふふ……、血の気の多いのは実に結構」 「……本選における『シードの特典』って?」 「途中で変な邪魔が入ったからわからなかったわ」 サタニスター・ルイズの言葉に才人がぴくりと反応したが、それにかまわずクロムウェルは説明を再開する。 『試合条件について注文をつけられる権利が発生します。ある程度の「わがまま」が利くようになるとお考えください。もちろんそれなりの説得力も要求されますが』 立ち止まった才人はちらりと振り返りサタニスター達を睨みつけたが、すぐに他の面々のいる所に向かう。 (覚悟しとけ……、サタニスター……!!) サタニスター達に露骨な敵意を向ける才人に彼の仲間は、 「あんまり熱くなるなよ、サイト」 「なってねえよ」 「なってるでしょ」 「なってるな」 『予選の制限時間は12時間。それまでにここに帰ってこれなかった者は失格となります。なお1時間ごとにこの場所から花火を打ち上げるので、帰る際の目安にしてください』 全ての説明を終えたクロムウェルが懐から取り出した拳銃を構える。 「それでは用意……ドーン!! ……と言ったら始まるんですよ!!」 クロムウェルの軽口に参加者たちは全員沈黙でもって応えたのだった。 「ふふふ……、流石は冷酷な殺人鬼達。ギャグで笑う明るい感情などとうに捨て去ったというわけか……」 「すべっただけなのでは」 女性の1人からのツッコミを聞き流し、クロムウェルは改めて拳銃を構える。 ――パアンッ! 「予選『メダル探し』、スタート!!」 銃声と叫びを合図に、参加者達は一斉に走り出した。 「流石に今ここでメダルを奪い合う連中はいないようだな!!」 「当然だぜ!! 相手がメダルを貯めてから狙う方が効率がいい!! 今喧嘩を始める馬鹿はいねえよ!!」 メンヌヴィルにそう答えた才人のすぐ横までサタニスターが駆け寄り……、 ──バギャス!! 突然の右ストレートが才人の顔面を襲った。 「うごおおおっ!」 才人はたまらずもんどりうって倒れる。 「サイト~っ!!」 「あ、あいつ~っ!!」 サタニスターはさらに倒れた才人に馬乗りになって顔面に連打を浴びせる。 「てめー、よくも教会ぶっ壊してくれたわねえ~っ!! 許さんっ!!」 「行くよっ!! サイトはもう駄目だ!! それに元々はあいつが撒いた種!!」 飴姫のその言葉に、3人は一路森の中へと向かっていったのだった。 「サタニスタ~ッ!!」 絶叫と共に才人は起き上がった。 その頭部は各所がへこんでいて、「バカ」だの「うんこ」だのといった落書きもされている。 「どこ行った!! がああ~っ!! ……あっ!! 俺のメダルが無いっ!! ポケットに入れてたのに!!」 「おおっ、君まだ動けたのかい! 凄いねえ」 才人の復活に気付いて、女性達とカードゲームをしていたクロムウェルが声をかけた。 「既に6時間経過しているが、頑張ってメダルを集めてくれ。本戦への参加には3枚必要……いや、君の場合は8枚だな」」 「8……、何だそれ!? 不公平だろ!!」 「機械類等の使用者は8枚必要と説明したぞ。君の体は機械じゃないのかね?」 「じゃあ聞くが、義手や義足を付けてるやつも8枚要るのか!?」 「ははは、そーゆうのはまた別だろう」 「それなら間を取って5枚にしろ!!」 それからしばらく経って、1人原生林の中を行く才人の姿があった。 彼はまだ知らない。 (くそっ……、結局8枚かよ。仲間達は俺を置き去りにしやがるし、ついてないぜ……。どこ行った、あいつら?) 仲間達と出会う事は2度と無いという事を……。 前ページ次ページゼロニスター
https://w.atwiki.jp/gensouutage_net/pages/11713.html
FFO Replay Version 2.1 冥加//昏睡//紅 美鈴-紅 美鈴-紅 美鈴-小野塚 小町- 田之上//小町3紫1//小野塚 小町-小野塚 小町-小野塚 小町-八雲 紫- 賽が投げられて、田之上の先攻になりました。 田之上 では 冥加 どうぞ #配置:《魂符「魂の遊戯」》 オートドローがスキップされました。 Turn 2 - 冥加//体力21( 23) 呪力1( 1) 手札6( 5) 山34( 34) スペル0( 1) タイマー00 04(00 11) シーン なし 手札:彩符「彩雨」//霊符「古き自縛霊の目覚め」//三華「崩山彩極砲」//シエスタ//彩翔「飛花落葉」//彩符「彩雨」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 #配置:《彩翔「飛花落葉」》 ↑起動:《彩翔「飛花落葉」》 Turn 3 - 田之上//体力23( 21) 呪力3( 0) 手札6( 6) 山33( 33) スペル1( 1) タイマー00 12(00 11) シーン なし #配置:《換命「不惜身命、可惜身命」》 オートドローがスキップされました。 Turn 4 - 冥加//体力21( 23) 呪力1( 3) 手札6( 5) 山33( 33) スペル1( 2) タイマー00 10(00 16) シーン なし 手札:彩符「彩雨」//霊符「古き自縛霊の目覚め」//三華「崩山彩極砲」//シエスタ//彩符「彩雨」//三華「崩山彩極砲」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《彩翔「飛花落葉」》(相手スルー) ★戦闘結果:冥加 - === 2 dmg - 田之上 #配置:《彩符「彩雨」》 Turn 5 - 田之上//体力21( 21) 呪力6( 1) 手札6( 6) 山32( 32) スペル2( 2) タイマー00 16(00 20) シーン なし #配置:《死価「プライス・オブ・ライフ」》 オートドローがスキップされました。 Turn 6 - 冥加//体力21( 21) 呪力3( 6) 手札6( 5) 山32( 32) スペル2( 3) タイマー00 14(00 57) シーン なし 手札:彩符「彩雨」//霊符「古き自縛霊の目覚め」//三華「崩山彩極砲」//シエスタ//三華「崩山彩極砲」//投銭「宵越しの銭」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《彩翔「飛花落葉」》(相手スルー) ★戦闘結果:冥加 - === 2 dmg - 田之上 #配置:《彩符「彩雨」》 Turn 7 - 田之上//体力19( 21) 呪力10( 3) 手札6( 6) 山31( 31) スペル3( 3) タイマー00 50(00 36) シーン なし #配置:《投銭「宵越しの銭」》 田之上は《未練がましい緊縛霊》を冥加の《彩翔「飛花落葉」》に配置しました。 田之上は《死者選別の鎌》を手札から田之上のリーダーに配置しました。 ↑起動:《死価「プライス・オブ・ライフ」》 オートドローがスキップされました。 Turn 8 - 冥加//体力21( 19) 呪力6( 2) 手札6( 3) 山31( 31) スペル3( 4) タイマー00 27(01 19) シーン なし 手札:霊符「古き自縛霊の目覚め」//三華「崩山彩極砲」//シエスタ//三華「崩山彩極砲」//投銭「宵越しの銭」//香霖堂// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《彩翔「飛花落葉」》 vs 《死価「プライス・オブ・ライフ」》 - 田之上 ★戦闘結果:冥加 - dmg 2 0 dmg - 田之上 #配置:《三華「崩山彩極砲」》 ↑起動:《三華「崩山彩極砲」》 Turn 9 - 田之上//体力19( 19) 呪力7( 1) 手札4( 6) 山30( 30) スペル4( 4) タイマー01 14(01 00) シーン なし #配置:《魂符「魂の遊戯」》 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 オートドローがスキップされました。 Turn 10 - 冥加//体力19( 19) 呪力5( 2) 手札6( 3) 山30( 30) スペル4( 5) タイマー00 53(01 48) シーン なし 手札:霊符「古き自縛霊の目覚め」//三華「崩山彩極砲」//シエスタ//投銭「宵越しの銭」//香霖堂//彩符「極彩颱風」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《三華「崩山彩極砲」》 vs 《換命「不惜身命、可惜身命」》 - 田之上 ★戦闘結果:冥加 - dmg 2 3 dmg - 田之上 #配置:《彩符「極彩颱風」》 ↑起動:《三華「崩山彩極砲」》 Turn 11 - 田之上//体力16( 17) 呪力8( 0) 手札4( 6) 山29( 29) スペル5( 5) タイマー01 44(01 24) シーン なし #配置:《魂符「魂の遊戯」》 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 オートドローがスキップされました。 Turn 12 - 冥加//体力17( 16) 呪力5( 3) 手札6( 3) 山29( 29) スペル5( 6) タイマー01 17(01 57) シーン なし 手札:霊符「古き自縛霊の目覚め」//三華「崩山彩極砲」//シエスタ//投銭「宵越しの銭」//香霖堂//彩華「虹色太極拳」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《三華「崩山彩極砲」》 vs 《換命「不惜身命、可惜身命」》 - 田之上 ★戦闘結果:冥加 - dmg 2 3 dmg - 田之上 #配置:《彩華「虹色太極拳」》 ↑起動:《三華「崩山彩極砲」》 Turn 13 - 田之上//体力13( 15) 呪力10( 0) 手札4( 6) 山28( 28) スペル6( 6) タイマー01 51(01 42) シーン なし #配置:《死価「プライス・オブ・ライフ」》 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 ↑起動:《魂符「魂の遊戯」》 オートドローがスキップされました。 Turn 14 - 冥加//体力15( 13) 呪力6( 1) 手札6( 3) 山28( 28) スペル6( 7) タイマー01 33(02 15) シーン なし 手札:霊符「古き自縛霊の目覚め」//三華「崩山彩極砲」//シエスタ//投銭「宵越しの銭」//香霖堂//肉弾戦// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《三華「崩山彩極砲」》 vs 《換命「不惜身命、可惜身命」》 - 田之上 ★戦闘結果:冥加 - dmg 2 3 dmg - 田之上 #配置:《三華「崩山彩極砲」》 ↑起動:《彩符「彩雨」》 Turn 15 - 田之上//体力10( 13) 呪力8( 3) 手札4( 6) 山27( 27) スペル7( 7) タイマー02 09(02 03) シーン なし 田之上の呪力が-2 (6) - 魂符「魂の遊戯」 ☆戦闘:田之上 - 《魂符「魂の遊戯」》 vs 《彩符「彩雨」》 - 冥加 ★戦闘結果:田之上 - dmg 1 4 dmg - 冥加 #配置:《霊符「古き自縛霊の目覚め」》 田之上 考えます 冥加 はい。 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 オートドローがスキップされました。 Turn 16 - 冥加//体力9( 9) 呪力11( 1) 手札6( 3) 山27( 27) スペル7( 8) タイマー01 55(03 46) シーン なし 手札:霊符「古き自縛霊の目覚め」//シエスタ//投銭「宵越しの銭」//香霖堂//肉弾戦//彩翔「飛花落葉」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 イベント(冥加):《シエスタ》 冥加の体力が+5 (14) - シエスタ 冥加は《投銭「宵越しの銭」》を手札から捨て札に置きました。 #配置:《霊符「古き自縛霊の目覚め」》 ↑起動:《霊符「古き自縛霊の目覚め」》 Turn 17 - 田之上//体力9( 14) 呪力9( 4) 手札4( 4) 山26( 26) スペル8( 8) タイマー03 39(02 34) シーン なし 田之上は《お迎え体験版》を山札の一番上から捨て札に送りました。 - お迎え体験版 田之上は《迷わず生きた人霊》を山札の一番上から捨て札に送りました。 - お迎え体験版 田之上は《投銭「宵越しの銭」》を山札の一番上から捨て札に送りました。 - お迎え体験版 田之上は《神隠し》を山札の一番上から捨て札に送りました。 - お迎え体験版 田之上は《無間の道》を山札の一番上から捨て札に送りました。 - お迎え体験版 イベント(田之上):《お迎え体験版》 田之上は《迷わず生きた人霊》を捨て札から手札に置きました。 田之上は《迷わず生きた人霊》を冥加の《霊符「古き自縛霊の目覚め」》に配置しました。 #配置:《投銭「宵越しの銭」》 オートドローがスキップされました。 Turn 18 - 冥加//体力14( 9) 呪力12( 5) 手札4( 2) 山26( 21) スペル8( 9) タイマー02 35(04 34) シーン なし 手札:シエスタ//香霖堂//肉弾戦//彩翔「飛花落葉」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 #配置:《彩符「極彩颱風」》 ↑起動:《三華「崩山彩極砲」》 ↑起動:《彩符「彩雨」》 Turn 19 - 田之上//体力9( 14) 呪力14( 4) 手札3( 4) 山20( 25) スペル9( 9) タイマー04 23(03 40) シーン なし ☆戦闘:田之上 - 《換命「不惜身命、可惜身命」》 vs 《彩符「彩雨」》 - 冥加 ★戦闘結果:田之上 - dmg 0 2 dmg - 冥加 #配置:《結界「夢と現の呪」》 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 ↑起動:《魂符「魂の遊戯」》 オートドローがスキップされました。 Turn 20 - 冥加//体力12( 9) 呪力12( 5) 手札4( 2) 山25( 20) スペル9( 10) タイマー03 31(05 38) シーン なし 手札:シエスタ//香霖堂//肉弾戦//彩翔「飛花落葉」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《三華「崩山彩極砲」》 vs 《換命「不惜身命、可惜身命」》 - 田之上 ★戦闘結果:冥加 - dmg 2 3 dmg - 田之上 #配置:《幻符「華想夢葛」》 ↑起動:《三華「崩山彩極砲」》 ↑起動:《彩符「極彩颱風」》 Turn 21 - 田之上//体力6( 10) 呪力15( 3) 手札3( 4) 山19( 24) スペル10( 10) タイマー05 28(04 26) シーン なし 田之上は《死者選別の鎌》の2番目の特殊能力を使いました。 田之上は《浮かばれない地縛霊》を手札から捨て札に置きました。 田之上は《未練がましい緊縛霊》を場から手札に置きました。 冥加は《香霖堂》を無作為に捨てました。 - 未練がましい緊縛霊 田之上は《浮かばれない地縛霊》を冥加の《彩符「極彩颱風」》に配置しました。 田之上の呪力が-1 (11) - 魂符「魂の遊戯」 冥加の体力が-1 (9) - 浮かばれない地縛霊 ☆戦闘:田之上 - 《魂符「魂の遊戯」》 vs 《彩符「極彩颱風」》 - 冥加 冥加の呪力が+1 (2) - 彩符「極彩颱風」 冥加は《彩符「極彩颱風」》の1番目の特殊能力を使いました。 ★戦闘結果:田之上 - dmg 1 3 dmg - 冥加 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 田之上は《未練がましい緊縛霊》を冥加の《彩符「極彩颱風」》に配置しました。 オートドローがスキップされました。 Turn 22 - 冥加//体力6( 5) 呪力11( 4) 手札3( 2) 山24( 19) スペル10( 10) タイマー04 32(07 01) シーン なし 手札:シエスタ//肉弾戦//彩翔「飛花落葉」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 冥加 (考え中) 田之上 どうぞ tk9が観戦を始めました。 haiが観戦を始めました。 冥加 決定 イベント(冥加):《シエスタ》 冥加の体力が+5 (11) - シエスタ 冥加は《彩翔「飛花落葉」》を手札から捨て札に置きました。 砂井裏鍵が観戦を始めました。 ↑起動:《彩符「極彩颱風」》 Turn 23 - 田之上//体力5( 11) 呪力14( 2) 手札3( 2) 山18( 23) スペル10( 10) タイマー06 51(07 53) シーン なし ☆戦闘:田之上 - 《換命「不惜身命、可惜身命」》 vs 《彩符「極彩颱風」》 - 冥加 冥加の呪力が+1 (1) - 彩符「極彩颱風」 冥加は《彩符「極彩颱風」》の1番目の特殊能力を使いました。 ★戦闘結果:田之上 - dmg 0 1 dmg - 冥加 #配置:《霊符「何処にでもいる浮遊霊」》 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 ↑起動:《魂符「魂の遊戯」》 オートドローがスキップされました。 Turn 24 - 冥加//体力10( 5) 呪力10( 5) 手札2( 2) 山23( 18) スペル10( 11) タイマー07 42(07 55) シーン なし 手札:肉弾戦//彩翔「飛花落葉」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 ☆戦闘:冥加 - 《三華「崩山彩極砲」》 vs 《換命「不惜身命、可惜身命」》 - 田之上 田之上は《換命「不惜身命、可惜身命」》の1番目の特殊能力を使いました。 ★戦闘結果:冥加 - dmg 2 3 dmg - 田之上 冥加の体力は今5 (-3)です。 田之上は《換命「不惜身命、可惜身命」》を場から捨て札に置きました。 田之上の体力は今5 (+3)です。 ↑起動:《彩符「極彩颱風」》 冥加は《彩符「極彩颱風」》を準備状態にしました。 冥加の呪力は今10 (+4)です。 ↑起動:《彩符「極彩颱風」》 冥加は《連環撃》を冥加の《彩翔「飛花落葉」》に配置しました。 冥加の呪力は今5 (+1)です。 ↑起動:《彩翔「飛花落葉」》 Turn 25 - 田之上//体力5( 5) 呪力12( 4) 手札3( 2) 山17( 22) スペル10( 10) タイマー07 44(11 27) シーン なし 田之上 考えます 冥加 はい。 ☆戦闘:田之上 - 《魂符「魂の遊戯」》 vs 《彩符「極彩颱風」》 - 冥加 冥加の呪力が+1 (3) - 彩符「極彩颱風」 冥加は《彩符「極彩颱風」》の1番目の特殊能力を使いました。 冥加は《紅 美鈴》の2番目の特殊能力を使いました。 ★戦闘結果:田之上 - dmg 0 2 dmg - 冥加 #配置:《換命「不惜身命、可惜身命」》 ↑起動:《換命「不惜身命、可惜身命」》 オートドローがスキップされました。 Turn 26 - 冥加//体力3( 5) 呪力9( 7) 手札2( 2) 山22( 17) スペル10( 11) タイマー11 25(10 09) シーン なし 手札:肉弾戦//彩翔「飛花落葉」// 冥加はカードを 1 枚引きました。 冥加 流石に3枚目は来ないか・・・ 冥加 投了です。 田之上 ありがとうございました 冥加 ありでした。 冥加 神隠しは何時ごろからありました? 田之上 序盤から 冥加 ・・・1枚引いただけでは潰されるだけか・・・ 田之上は《神隠し》を手札から捨て札に置きました。 田之上は《お迎え体験版》を手札から捨て札に置きました。 冥加は山札を丸ごと見ました。 田之上 戻ります 冥加 スペル内容は兎も角、サポが維持出来なかった以上は・・・ 冥加 ノシ 田之上 ノシ
https://w.atwiki.jp/xbox360score/pages/1360.html
黄金夢想曲X 項目数:50 総ポイント:1000 難易度:★☆☆☆☆~925 ★★☆☆☆~1000 うみねーこ、うみねこぉっ! うみねこコンボ!、誰かこの俺を止めてみろ!、 名ストッパー! (誰かこの俺を止めてみろ! 名ストッパー!は自力なら★+α) 六軒島にようこそ!! アーケードモードを初めてプレイする 10 これでトドメだっ! 全てを穿つ青き真実! 戦人のメタ必殺技でフィニッシュする 10 じゃあまたね、シーユーアゲイン? 縁寿のメタ必殺技でフィニッシュする 10 願いを叶えて! 契約の落雷! 紗音のメタ必殺技でフィニッシュする 10 バカバカしい・・・赤き軌跡の弧月連斬! 嘉音のメタ必殺技でフィニッシュする 10 行くよ、お前たち! 煉獄の七姉妹、ここに! ルシファーのメタ必殺技でフィニッシュする 10 抉ってやるにぇ? 射撃誘導システム起動! シエスタ410のメタ必殺技でフィニッシュする 10 嫌いではないですよ? デビルオブデビルズ! ロノウェのメタ必殺技でフィニッシュする 10 捕まっちゃえヴァ? 蜘蛛の巣の密室! エヴァ・ベアトリーチェのメタ必殺技でフィニッシュする 10 これでチェックメイトです! オーディン召喚! ワルギリアのメタ必殺技でフィニッシュする 10 出でよ双肩の戦塔! バリスタ弾一斉射撃! ベアトリーチェのメタ必殺技でフィニッシュする 10 権力、財力、暴力! 王者の教え! 譲治のメタ必殺技でフィニッシュする 10 スイーツ! 今日は集まってくれてありがとォ! 朱志香のメタ必殺技でフィニッシュする 10 来いよォオオオォ! 真里亞の込めてくれた銃弾! 楼座のメタ必殺技でフィニッシュする 10 だーれが一番強いかな? ランクマッチで初めて対戦する 10 見知らぬアイツに会いに行く! プレイヤーマッチで初めて対戦する 10 ウォーミングアップ! トレーニングモードを初めてプレイする 10 秘密の実績 戦人 ロノウェクリア アーケードモードを戦人 ロノウェでクリアした 25 コングラチュレーションズ! アーケードモードで全てのエンディングを見た 30 戦人 ベアトリーチェクリア アーケードモードを戦人 ベアトリーチェでクリアした 25 紗音 嘉音クリア アーケードモードを紗音 嘉音でクリアした 25 譲治 紗音クリア アーケードモードを譲治 紗音でクリアした 25 朱志香 嘉音クリア アーケードモードを朱志香 嘉音でクリアした 25 ロノウェ ベアトリーチェクリア アーケードモードをロノウェ ベアトリーチェでクリアした 25 戦人 縁寿クリア アーケードモードを戦人 縁寿でクリアした 25 ロノウェ エヴァクリア アーケードモードをロノウェ エヴァ・ベアトリーチェでクリアした 25 ワルギリア ベアトリーチェクリア アーケードモードをワルギリア ベアトリーチェでクリアした 25 ルシファー シエスタ410クリア アーケードモードをルシファー シエスタ410でクリアした 25 ワルギリア ロノウェクリア アーケードモードをワルギリア ロノウェでクリアした 25 エヴァ シエスタ410クリア アーケードモードをエヴァ・ベアトリーチェ シエスタ410でクリアした 25 縁寿 ルシファークリア アーケードモードを縁寿 ルシファーでクリアした 25 譲治 朱志香クリア アーケードモードを譲治 朱志香でクリアした 25 戦人&ルシファークリア アーケードモードを戦人&ルシファーでクリアした 25 ベアトリーチェ&ルシファークリア アーケードモードをベアトリーチェ&ルシファーでクリアした 25 ルシファー&嘉音クリア アーケードモードをルシファー&嘉音でクリアした 25 戦人 嘉音クリア アーケードモードを戦人&嘉音でクリアした 25 ベアトリーチェ エヴァクリア アーケードモードをベアトリーチェ エヴァ・ベアトリーチェでクリアした 25 戦人 紗音クリア アーケードモードを戦人&紗音でクリアした 25 ワルギリア シエスタ410クリア アーケードモードをワルギリア シエスタ410でクリアした 25 楼座&ベアトリーチェクリア アーケードモードを楼座&ベアトリーチェでクリアした 25 楼座&戦人クリア アーケードモードを楼座&戦人でクリアした 25 縁寿&エヴァクリア アーケードモードを縁寿&エヴァ・ベアトリーチェでクリアした 25 朱志香 紗音クリア アーケードモードを朱志香 紗音でクリアした 25 縁寿 ワルギリアクリア アーケードモードを縁寿&ワルギリアでクリアした 25 こいつはお宝だ! 全てのCGを集めた 25 メタフィニッシュ祭りじゃー! メタ必殺技で50回以上相手を倒した 25 うみねーこ、うみねこぉっ! うみねこコンボ! 実戦で5000ダメージ以上のコンボを決めた 25 battle of the goldenwitch ランクマッチで50回以上対戦した 25 誰かこの俺を止めてみろ! ランクマッチで10連勝以上した 25 名ストッパー! ランクマッチで10連勝以上しているプレイヤーに勝利した 25 メタ必殺技でフィニッシュ系の実績 VERSUSモードでも解除可能。 アーケードモードクリア系の実績 難易度は設定変更しても解除可能。 コンティニューしてもOK。 ランクマッチ系の実績 このゲームのランクマッチは、過去一定時間内に対戦したことがあるプレイヤーだと 結果がランキングに反映されない仕様となっている。 互いのプレイヤーがダッシュボードに戻り、 ゲームを起動し直すことで再びカウントされるので、 50回、対戦と再起動を繰り返せば日をまたぐことなく談合で解除可能。 オン対戦は過疎っているため容易に談合可能。 うみねーこ、うみねこぉっ! うみねこコンボ! VERSUSモードで解除可能、トレーニングモードでは解除不可。 実績解除のタイミングは、条件達成して対戦終了した後のキャラクターセレクト画面なので注意。 コンボ一例 ジェシカ・エヴァ 相手画面端 要ジェシカ4ゲージ2P側に挑発させてカウンターを狙う。エヴァから交代し、バーサーク発動後以下のコンボを開始22C JC JB 2A 2B 5B 5C メタ発動 ダッシュ5A 5B 2B 5C 2C 214C 623SP 6C 641236C(気絶) 22C JC JB 2A 2B 5B 5C 236SP 2A 2B 5B 5C~さらに交代からコンボは継続するが、二回目の236SPあたりで5000ダメージを超える。参考動画 ジェシカ・ロノウェ 相手画面端 要ジェシカ1ゲージ、ロノウェ2ゲージ2P側に挑発させてカウンターを狙う。ロノウェから交代し、カウンターブースト発動後以下のコンボを開始22C JC JB 2A 5B 5C 236SP 2A 5B 5C AT 5B 5C 623SP 微ダッシュ6C メタ発動 2C 6C 641236C(気絶) 641236C下記動画のコンボからメタ発動後の6C 623SPを抜いたもの。ラストの二発目のSP2は、動画のコンボよりメタ世界終了までの猶予が長いので楽。参考動画
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1471.html
重なりかけた二つの月が、科学の匂いを感じさせないハルケギニア大陸を仄かに照らす。 無事にラ・ロシェールに到着した一行は、ワルドの提案により、 その街で最上等の宿である『女神の杵』亭に泊まることとなった。 殆ど貴族達しか利用しないこの宿は、顧客層に合わせて、大層豪華な作りをしており、貴族達の自尊心を十分に満たすものであった。 その『女神の杵』亭のロビーの一角に、DIOはいた。 貴族の証であるマントを纏っていないにもかかわらず、使用人を従えているこの男の存在に、 他の客たちは揃って訝しげな表情をした。 しかし、それもほんの一時のことであった。 男の振る舞いが余りに堂々としていたことが、主な理由であった。 顔が映るほどピカピカに磨かれたテーブルを前にして、気後れするどころかふんぞり返るなんて、平民に出来るはずはなかったからだ。 テーブルに置かれたワインボトルが、DIOという存在感に軽いアクセントを加える。 周りの客達はそれぞれ、思い思いに想像を巡らせ、勝手に納得をしてその場を去ってゆくのであった。 そして、客達が納得をした理由はもう一つあった。 DIOの傍で、彼とは全く対照的な、暗鬱なオーラを全開にして突っ伏しているギーシュがそれであった。 もう何本も酒を飲んでいるのか、彼の周りには瓶が幾つも転がっていた。 マントを纏っていなければ、誰も彼が貴族であるなどと信じはしなかっただろう。 それくらい、ギーシュはやさぐれていた。 一体何が彼をそこまで追い込んでいるのか誰にも分からなかったが、 理由はどうあれ、彼が傍で情けなく酔いつぶれてくれていたこともあって、 客達はますますもってDIOの貴族性を認めるに至っていた。 夜も更けてゆくにつれて、徐々にロビーにいる人の姿が疎らになってゆく。 そんな『女神の杵』亭に、ワルドとルイズが帰ってきた。 桟橋へアルビオンへ向かう船の乗船の交渉に行っていた二人の顔は、一様に沈痛であった。 ルイズは不機嫌さを隠しもせずに、DIOのテーブルへと向かい、彼の反対側に腰を下ろした。 一つしか置かれていないグラスにワインを注ぎ、一息に飲み干す。 勿論それは、ついさっきDIOが使っていたグラスであった。 DIOの後ろで控えていたシエスタが、それを見てピクリと片眉を上げた。 しかし、シエスタはルイズを止めるには至らなかったし、ルイズもまた、そんなシエスタを無視した。 空になったグラスをテーブルに"ガン!"と叩きつけて、ルイズは溜息をついた。 「どうした、ルイズ。旅はいたって順調なのだろう。 何を浮かない顔をしている」 言葉とは全く裏腹な、冷ややかな笑みを浮かべているDIOに、ルイズはふてくされたまま何も答えない。 場を取り繕うように、ワルドが代わりに説明した。 「アルビオンに渡る船は、明後日にならないと出ないそうなんだ」 「全く話にならないわ! 急ぎの任務だっていうのに……」 二人の言葉に、キュルケは首をかしげた。 ゲルマニア出身の彼女は、アルビオンに関する知識をあまり持ち合わせていなかったのだ。 「あたしはアルビオンに行ったこと無いから分からないんだけれど、どうして明日は船が出ないの?」 キュルケの方を向いて、ワルドが答えた。 「明日の夜は月が重なるだろう。『スヴェルの夜』だ。 その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づくのだ」 つまり、明日丸一日は休めるということらしい。 自然と気が緩み、欠伸をしてしまうキュルケの内心を悟って、ワルドは頷いた。 「さて、来るべき戦いに備えて、今晩と明日はゆっくりと休息をとることにしよう。 部屋はそれぞれもう取ってある」 ワルドは懐から鍵束を取り出し、机の上に置いた。 「キュルケとタバサは相部屋だ。そして、ギーシュとルイズの使い魔君が相べ…」 「DIO様の御部屋は、わたくしが別に御用意しております」 スムーズに事を運んでいたワルドの言葉に、シエスタが割り込んだ。 勝手に部屋を予約ししていたと聞いて、ワルドは戸惑った表情を浮かべた。 「しかしね、君……えぇっと、シエスタだったかね。残念だがそうはいかないよ。 いつまた賊どもが襲ってくるか判らないこの状況で、そんな勝手な真似を……」 「別に、御用意して、おりますので」 取り付く島もないシエスタによって、ワルドの言葉は再び遮られた。 彼女の言葉には、僅かながらも確かな怒りが表れている。 普段の無機質なシエスタらしからぬ剣幕に圧され、ワルドは肩をすくめるしかなかった。 ワルドに噛み付くそんなシエスタの様子を、ルイズはワインを飲みながらぼんやりと見ていた。 相変わらずDIOの事となると、梃子でも動かないような頑固さだと、ルイズは半ば感心していた。 ルイズは思う。 そのひたむきな忠誠心には頭が下がるが、どうしてその心遣いを他の人間にも見せてやらないのやら、と。 DIOに対するそれの、千分の一でもいいから他人に示すべきだ。主に私に。 チクショウあのメイド、一体どういう了見なわけ? 私はDIOの主人、マスター、御主人様なの。 つまり私はDIOより偉いのだ。アイアムナンバーワン。そこらの貴族とは、ワケが違うのよ。 こちとらちゃきちゃきのトリステイン生まれの公爵っ娘なんだから。……てやんでぇ。 と、そんなこんなで大分シエスタ論評にも熱が入ってきたルイズに、ワルドが声をかけてきた。 「ルイズ、良いのかい? 君の使い魔のメイドはああ言っているが……」 「えぇ、えぇ、良いのよ。ほっといてあげて。 寧ろ、アイツと相部屋にしたら、ギーシュが可哀相だわ」 ルイズは諦めたように手を振ってワルドに応じた。 ワルドはまだ納得していない様子だったが、DIOの傍で突っ伏しているギーシュをチラリと見て、その惨状に溜め息をついた。 気を取り直し、ワルドは、ルイズに鍵を差し出す。 「僕とルイズは同室だ」 ルイズは弾かれたようにワルドの方に振り向いた。 「婚約者だからね。当然だろう」 「でも私たち、まだ結婚しているというわけではないのよ?」 ワルドは首を振って、ルイズの肩に手を置き、真っ直ぐにルイズを見つめた。 「大事な話があるんだ。二人きりで話がしたい」 肩に置かれたワルドの手に、力が籠もる。 いつになく真剣なワルドの視線に、ルイズは渋々了承することにしたのだった。 こうして、ルイズはキュルケに冷やかされながらも、ワルドと一緒に部屋へと消えていった。 ルイズの姿が消えた後もキュルケは暫く一人で何やら楽しんでいたが、やがて飽きたのか、タバサを引き連れて割り当てられた部屋へと消えていった。 DIOとシエスタも、さっさと部屋へと消えてしまい、ロビーに残ったのはギーシュ一人となった。 しかし、今のギーシュにとってはそんなことはどうでもよく、寧ろ一人になれただけ好都合だとも思っていた。 暫くテーブルに突っ伏して、時々思い出したように酒を呷る。その繰り返し。 「僕は…うぃっく! ……トリステインの薔薇なんだ。 ひゃっく! 薔薇は皆を…楽しませるために存在するのであって……えっく! ……決して一人のレイディのためにあるわけでは……!!」 アルコールが回り、酩酊状態に陥ったギーシュの脳裏に、これまで付き合ってきた(遊んできたとも言う)女生徒の顔が、泡のように次々と浮かんでは消えていった。 それは一年生のとある生徒の顔であったり、上級生である三年生の生徒の顔であったり、思い出す限り様々であった。 やがて、一年生のケティという女生徒の顔が浮かんで、消えていった。 そして最後に…………モンモランシーの顔が浮かんだ。 見事な金髪を縦ロールにした、トリステイン生まれであることを別にしてもなお勝ち気と言えた、けれどやはり可愛らしかった同級生の少女。 不思議なことに、いくら酒を飲んでも、ギーシュの頭からモンモランシーの顔が拭い去られることはなかった。 その理由がわからないことが、ギーシュの苛立ちを加速させる結果となり、ギーシュはますます酔いつぶれていくのであった。 しかし、例えやり切れない思いに限りはなくとも、酒には限りがある。 とうとう最後の一本を飲み干してしまったギーシュは、名残惜しそうに溜め息をつき、 やがて諦めたようにロビーを後にして、割り当てられた自分の部屋へと向かったのだった。 相方のいないダブルルーム。何だか今の自分にはピッタリではないか。 部屋に続く階段を、フラつく足取りで一歩一歩上がりながら、ギーシュは皮肉げに笑った。 いつから自分はこんなに厭世的になってしまったのだろうと、激しい自己嫌悪に陥りつつ、ギーシュはドアノブを回す。 おかしなことに、鍵はあいていた。 普段のギーシュだったら、あるいはほんの少しくらいなら疑ったかもしれなかったが、何しろ今は酔いつぶれている状態である。 夢と現の区別もついていない彼には、なぜ部屋の鍵があいているか、なんてどうでもよかった。 倒れ込むようにして部屋に入るギーシュ。 「お疲れ様でございます、ミスタ・グラモン」 部屋の鍵があいていた原因が、目の前にいた。 いつものメイド服こそ脱いで、寝間着に着替えてはいるが、 澄ました態度を崩さぬ目の前の少女は間違い無くシエスタであった。 「あぁ……君か。 ……どうしてこの部屋にいるんだ? 主人のところにいなくていいのか」 「DIO様は既にお休みになられました。 わたくしのような者が、あの方と同じ御部屋で一夜を明かすなど、許されないことです。 従って、不躾ながら相部屋を仕ることになりました」 普段のギーシュだったら、『貴族が平民と同じ部屋で寝られるか!』くらいの文句は言っていただろうが、 今現在無気力状態にあるギーシュは、何も言わずに自分のベッドに倒れ伏した。 飲み過ぎで判然としない頭を持て余しながら、ギーシュは横目でシエスタを見た。 「君は随分とあの男に忠実なんだな……」 酔った勢いか、気がつけばギーシュはそんなことを口走っていた。 返事など期待してはいなかったが、意外なことに、シエスタはいつもの真面目な顔をギーシュに向けた。 「それがわたくしの仕事であり、唯一の幸せでもあるのです」 ギーシュはフンッと鼻で笑った。 他人に従うことが幸せであるなどと、貴族である彼には到底理解できなかったからだった。 「本当にそれが君の幸せなのか? あの男の命令にほいほい従うことが?」 「幸せの在り方とは、人それぞれで御座いましょう。 ある人の幸せが、別の人にとっては不幸せである、などという話はよくあるでしょうし」 事務的なシエスタの回答だったが、何故か彼女の言葉はギーシュの胸を打った。 「幸せ、か……」 ギーシュは思い出す。 さっき飲んできたワインよりもはるかに濃厚だったこの一日を。 その始めに見たモンモランシーは、まさに幸せに包まれていたようにギーシュには映った。 モンモランシーのあんなにも輝いた表情を見たことは、少なくとも学院に入学してからの二年間、ギーシュは見たことがなかった。 ということはあれが、彼女の幸せなのだろうか? あの男の傍にいることが……。 ギーシュには全く分からなかった。貴族として生きてきたせいもあり、ギーシュは他人の立場に立って考えるということが絶望的に不得意だった。 しかし今回、何の因果か、ギーシュはそのことについて考えてみる機会を得た。 ……では、自分にとっての幸せとは、何なのだろう。 そう考えて直ぐに頭に浮かんだのは、自分と同じく好色な父の教えでもあり、己のモットーともいえる言葉であった。 『グラモンの男たるもの、常に多くの女性を楽しませる薔薇であれ』 ギーシュは今まで、このモットーに沿って行動してきた。 色々な女の子にモーションをかけてきたし、女の子を巡って、男子生徒と決闘の真似事をしたことも多々あった。 そうしていた頃の自分は凄く楽しかったし、満たされてもいた。……幸せだった。 だが、それに巻き込まれた他の人は、幸せだったのだろうか。 そう考えて、ギーシュはハッとなった。 多くの人を喜ばせるのが己のモットーだと思っていたが、その実は自分の欲望を満たすことしか頭になかったのではないだろうか。 ケティの涙を思い出す。 何人もの女の子をとっかえひっかえにすることが、どれだけ女の子の尊厳を傷つけるか、自分は理解していなかったのではないだろうか。 ただ自分のモットーが満たされればそれでよかっのでは? 本当に他人を喜ばせるということがどういうことなのか……自分は分かっていなかったのだ。 ルイズほどではないが、それなりにプライドの高いギーシュにとって、それは認めたくない事実であった。 しかし、モンモランシーとの一件が、彼を幾分謙虚な気持ちにさせていた。 「僕は……自分勝手だったのかな?」 不安げな口調で問うギーシュに、シエスタは首を横に振った。 「わたくしの口からは申し上げかねます」 「そうだろうね。少し意地が悪い質問だったよ」 貴族であるギーシュに対して、平民のシエスタが、『あなたは自分勝手です』なんて言えるはずもない。 場を繕って否定して見せても、白々しく見えるだけだ。 ギーシュは珍しく、シエスタの立場を鑑みていた。 「ですが……」 「?」 「間違っているとお思いなのでしたら、自分を変えてみるのも一つの方法かと存じます」 「ハハ……それができたら苦労はしないよ」 自分を変えるということは、つまり、今までの生き方を捨てるということである。 たった一人の女の子のために、これまでの楽しい暮らしを投げ出して未知への一歩を踏み出すには、ギーシュはまだ若すぎたし、臆病すぎた。 (幸せ、か……) ギーシュはひとしきり笑った後、やがて瞑目して、夢の世界へと旅立っていった。 ――――――――――― 深夜の『女神の杵』亭。 殆ど全ての客が各自室に引っ込んだ今、扉の連なる廊下は人けが無く、静寂が支配している。 その静寂というルールを破らぬようにして、廊下を進む一人の少女がいた。 トリステインではまず見かけない蒼色の髪に、自身の身長よりも大きな、節くれ立った杖を持つ彼女の名は、タバサといった。 キュルケが寝込んだ隙をついて、こっそり部屋を抜け出したのであった。 スルスルと、物音一つたてずに廊下を移動する様子は、実に手慣れたものであった。 気配も殆ど感じさせない彼女の存在は、誰にも気づかれまい。 やがて、タバサは一つの扉の前でその歩みを止めた。 廊下に扉は数多くあったが、その一つだけは何とも異様な雰囲気を放っていた。 DIOの部屋であった。 シエスタが用意したというその部屋は、一人だけで使用するには些か豪華過ぎるものであった。 本来なら、相応の煌びやかな空気を醸し出してくれるはずの豪華な扉は、 獲物を待ちかまえて、大口をあけている化け物のように、タバサには思えた。 ならば、今ここに立っている自分は、獲物ということになるのだろうか? 心の片隅で浮かんだ嫌な想像を無理やり抑え込んで、タバサは自分の杖をギュッと握りしめた。 タバサがキュルケとともにラ・ロシェールくんだりまで来たのには、もちろん理由があった。 その理由のために、こっそりDIOの部屋に向かったタバサだったが、 この扉の向こうにDIOがいると思うと、自然と浮き足立ってしまうのだった。 「…………………」 暫くDIOの部屋の前で逡巡したのち、タバサは深呼吸をした。 会う前から、場の空気に飲み込まれては駄目だ。 決心したタバサは、それでも恐る恐るといった仕草でドアをノックしようと手を伸ばした。 だがその瞬間――――― 『何を迷う』 おどろおどろしく扉の向こうから響いた声に、タバサはぎょっとした。 慌てて扉から数歩距離をとる。 全身から嫌な汗が吹き出してきた。 すぐにこの場を立ち去るべきだと、全身が警告を発していたが、 タバサは一歩も動くことができなかった。 気がついたら扉の方に意識を飛ばしている自分がいた。 この扉をあければ……。ゴクリと唾を飲み込む。 『どうした、早く入ってくるがいい』 だが、再び響いた身の毛もよだつ声に、抑えきれなくなったタバサの感情が爆発した。 自分はさっきまで、何ということをしでかそうとしていたのだろうか。 「…………いや!」 耐えられなくなり、次の瞬間タバサは駆けだしていた。 誰かに見られるかもしれないなんてことは、頭から吹き飛んでいた。 幸運なことに、バタバタと騒がしく廊下を走るタバサに気づいた客はいなかった。 自室に戻ったタバサは、そのままの勢いでベッドに飛び込み、布団を被った。 しかし、どれだけ物理的に離れていようが意味はなかった。 精神面から襲い来る何かに、タバサは少し震えた。 夜にアイツに会うのは駄目だ。夜に来たのは間違いだった。夜は取り返しがつかなくなる。夜は駄目だ。 夜は………………………………………… ……………………………けど、昼なら? 理性が感じる恐怖とは裏腹に、タバサの心は確実にDIOを求めていた。 to be continued……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1516.html
漆黒のキャンバスに、赤の月が満ち、もう一方の月の色を侵食する夜。 闇色と朱色に彩られた庭園を、一人の幼い少女が駆けていた。 ―――はぁ……はぁ……はぁ…… 少女は、逃げていた。 嘲笑、蔑み、劣等感。 ありとあらゆる不の感情から逃げていた少女は、やがて一艘の船に辿り着いた。 ―――はぁ……はぁ、はあ…… 短く呼吸を正し、船に乗り予め用意されていた毛布に包まった少女は、みっともなく泣き腫らしている。 「―――無様ね」 少女しか居ないはずの船の上に声が響く。 苛立ったようなその声は、思い出したくも無い過去の失敗を穿り返された人間のそれに似ている。 誰にも見つからぬよう、声を押し殺し泣く少女だったが、不意にその顔が笑顔へと変化した。 頬を紅く染め上げ、はにかみながら笑う少女の視線の先には羽根つき帽子を目深に被った一人の男性が立っていた。 「子爵……様」 少女がその男性を知っているように、声の主もその男性を知っていた。 幼き恋心の対象。 そして、父と男性によって交わされている約束。 男性に手を引かれ、恥ずかしそうに船から降りた少女は庭園を後にする。 自分達を見つめている者の視線にまったく気がつかずに…… それもそのはず。 今、此処に展開されているのは、一人の少女の『記憶』 普段は日常に埋もれ、決して掘り起こされない、過去の事象。 それが、夢と言う幻燈機械に掛けられ、ただ一人の為に上映されているのだ。 観客はただ一人。 主役であり、脇役であり、脚本家であり、監督でもある存在。 その存在は、自らの過去である少女に侮蔑と決別の溜め息を吐きだして、幻燈機械を停止した。 「夢……か」 まどろみと陽射しに包まれ、何処と無く朦朧とした視線を漂わせる。 視界にあるのは、木々が生え、涼しげな池が存在する庭園では無く、一年間住み続けている自分の部屋であった。 「ホゥ、今日ハ、ヤケニ早イ目覚メダナ」 「存外に失礼ね、あんた」 椅子に座って、一枚のDISCを手で弄んでいるホワイトスネイクの軽口を適当に返事を返しながら、着替えをするルイズ。 性別不詳のホワイトスネイクを前にして裸になる事に、微塵の羞恥心すら無い事が、そこから窺い知れる。 手早く着替えを終えたルイズは、飽きずDISCを弄りとおしているホワイトスネイクに声を掛けて、さっさと食堂へと出かけていった。 食堂で、やたらと豪勢な朝食を食べたルイズは、その足で今日の授業が行われる教室へと向かう。 確か、今日の授業は、ミスタ・ギトーが講師を務めるはずだと思い出すと、朝からあまり良くは無かった機嫌が、一段と悪くなるのが分かった。 ミスタ・ギトーは『風』が最強と言う持論を生徒達にも強要する先生であり、その冷たい論調と傲慢な態度に嫌っている生徒も少なくない。 と言うより、ギトーを好きな奴を探すとなるとこの学院を、それこそ掘り返しても探さないと発見できないぐらいに嫌われている。 ルイズも、その例に漏れず、ギトーの事を嫌っている生徒の一人だ。 別に、何が最強と思うのは個人の勝手だ。 しかし、その考えを無理矢理他人に強要するところが、ルイズは好きにはなれなかったのである。 「あら、今日は早いのね。ルイズ」 「ちょっとね……そういう貴方も早いのね」 挨拶をしながら欠伸をするキュルケに、ルイズはそう聞き返すと、女の嗜みよ、となんだか良く分からない返答が帰ってきた。 ともあれ、教室の隣同士の席に座って話をしていると、暫くしてタバサも教室に現れ、キュルケに誘われ、同じ机に席を置いた。 女三人寄れば姦しいとは言ったもので、普段お喋りなキュルケはともかくとして、人並みに話すルイズと、普段まったく会話をしないタバサも、ぺちゃくちゃとお喋りに花を咲かせていた。 そうこうしている内に、授業の始業時間となり、ミスタ・ギトーが髪色と同じ真っ黒なローブを揺らしながら教室の扉を開け、教壇に立った。 「では授業を始める」 何の面白みも無く、淡々とした言葉遣いで始まりの挨拶をしたギトーに、生徒の大半は心の中で溜め息を吐いた。 学生と言う身分は勉強しなければならないと言う事は分かっているが、どうしてもそこに娯楽性を求めてしまうものである。 他の授業―――例えば、火の魔法の授業であるコルベールなどは、時々変な発明を授業で発表したりするが、 あれはあれで、そこそこ受けが良い。無論、外す時もあるが。 ともあれ、この授業は、娯楽性と言う点で言えば最低ランクのさらに下のランク外であり、生徒達はこの苦痛な時間が早く過ぎる事を祈っていた。 この時までは――― 「骨が燃え残るか心配なんですけど、私」 「何、心配には及ばない。君の炎は私のマントの切れ端すら燃やせないだろうからな」 睨みあうキュルケとギトー。 お互いに杖を引き抜き、すでに臨戦態勢だ。 こうなった理由は簡単である。 炎が最強であると言ったキュルケに、ギトーが、ならば君の力で証明してみせろとキュルケを挑発したのだ。 始めは乗り気で無かったが、家の事を引き合いに出されると彼女としても本気を出すしかない。 魔力で編まれた焔を、さらに巨大にさせた直径1メイルもの炎の弾は、喰らえば大火傷、下手をすれば命まで燃やし尽くされる程の火力を有している。 勝利を確信して焔を放つキュルケだったが、満を持して放った炎が掻き消され、自身もまた疾風によって吹き飛ばされた。 その光景に誰もが息を呑む。 普段、おちゃらけた態度で居る事の多いキュルケであるが、その実力は折り紙つきで、誰もが認める程であったからだ。 だと言うのに、ギトーは、キュルケに勝った事が規定事実のように、 少しの高揚も感じさせない声で『風』が最強であると言う、偉ぶった演説を始めた。 ルイズは、そんな演説などクソ喰らえだった。 吹き飛ばされるキュルケの身体を受け止めるように出現させたホワイトスネイクに彼女の身体を受け止めさせると、愛用の杖を握り締めて、こつこつと甲高い足音を響かせギトーへと向かっていった。 ギトーは突然立ち上がった生徒に眉を顰めたが、今、自分が吹き飛ばした生徒と同じくフーケ討伐で名を上げた生徒だと知ると、特に注意もせず、教壇と同じ高さに降りてくるまで待ってから、先程と同じように挑発から会話を始める。 「ほぅ、どうやら、君も『風』が最強と言う事に異論があるらしいな、ミス・ヴァリエール。 異論があるなら、先程の彼女のように私に魔法をぶつけてくると良い。 何、君に使える魔法があればの話だがね」 ギトーは、ホワイトスネイクの能力を知らない。 基本的に生徒に関して無関心である為に、生徒よりもさらに重要度の低い使い魔の事など、どうでも良いからだ。 その為、ギトーの中では、ルイズは魔法の使えない無能な生徒のままで時が止まっている。 ルイズは、とりあえずギトーの挑発を無視してキュルケの傍へと歩み寄る。 ギトーを如何こうするより、キュルケの体調の方が、重要度が高い為に。 「大丈夫、キュルケ?」 「平気よ。それにしても、ほんと、貴方の使い魔って有能ね。 あんなちょっとの時間で、私を受け止めてくれるなんて」 キュルケの言葉にルイズは、ちょっとだけムッとした。 確かに助けたのはホワイトスネイクだが、そうなるように位置やタイミングを合わせたのは、自分だからだ。 自分が行った行為に対する正当な賛美が無いと機嫌が悪くなる所は、まだ子供なルイズであるが、物事の切り替えの早さは、すでに他の人間と比べて特出するにまで至っている。 「それじゃ、ちょっと、あいつをとっちめて来るわね」 杖の矛先をギトーへと向けるルイズに、キュルケは、にんまりと笑った。 「手加減ぐらいしてあげなさいよ」 「あら、目上の人に手心を加えるなんて失礼じゃない?」 ルイズも釣られてニヤリと口元を吊り上げると、制服のポケットから一枚のDISCを取り出し、自分の頭へと差し込む。 巻き添えを食らわないように自分の席へと戻ったキュルケは、タバサに耳打ちをして、学生席を全て風の防護膜で覆う。 万が一の事態に備えた上の行動である。 ギトーは、風の防護膜に素晴らしいと言葉を漏らして、興味深げにタバサの魔法を観察していた。 彼にとって、ルイズなど眼中にすら入っていない。 典型的なメイジの思想を持っている彼にしてみれば、メイジ以外など下等も下等。 魔法を使えないルイズも、ご多分に漏れず下等に分類されている。 そんな事を知ってか知らずか、ルイズは詠唱を完了させると足元の地面を変換させる。 ルイズの魔法に、誰もが、『風』以外の属性を見下しているギトーですら唖然としてしまった。 石造りの床を錬金よって、質量保存の法則とかを強引に無視させ、天井までの大きさを持つ岩にルイズは創り変えたのだ 「先に行っておきますけど、死なないでくださいね?」 気持ち悪いぐらいに優しげな響きを持ったルイズの言葉と共に、その岩がギトーの方へと倒れていく。 もはや、魔法だとかそういう次元の話では無い。 相手は、火の玉でも無ければ氷の矢でも無く、土のゴーレですら無い、ただの岩の塊。 圧倒的な質量で自分に倒れてくる、その塊に必死で魔法をぶつけるギトーであったが、吹き飛ばそうにも、あんな質量の物体を弾き飛ばす事など彼には出来ない。 出来るのは、風によって、倒れてくる時間を引き延ばす事だけである。 「ぐっ、ぐぐ!!」 魔法の連続使用による負荷によって、ギトーは精神が飛びそうになったが、必死に意識を繋ぎとめる。 今、ここで意識を失えば自分の身体は………… その先は、考えたくも無い事柄だった。 「助け―――」 「命乞いなんてみっともないですよ、先生」 醜く、命乞いをしようと声を上げようとしたが、岩の向こう側に居たルイズが、何時の間にかギトーの隣で、チェシャ猫のように耳元まで裂けた笑みを浮かべて立っている。 ギトーは悟った。 こんな笑みを浮かべる者に、命乞いなど意味が無い事を。 そして、後悔した。 自分は、こんな化け物みたいな哂いを浮かべる者に、戦いを挑んでしまったと言う事を。 「うっ、うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 すでに限界は来ていた。その限界を死にたくない一心で騙し続けていたギトーであったが、とうとう魔法の発動が止まり、岩の動きを遅くしていた風が無くなる。すると、岩は凄まじい速度でギトーに倒れこんだ。 ルイズは、その叫び声を、まるでフルオーケストラを聴いているように、うっとりとした顔で耳に刻みながら、タクトの如く杖を振る。 「ぉぉぉぉぉおおおお…………お?」 こつんと、ギトーの頭に石が当たった。 岩がギトーを押しつぶす寸前、ルイズが錬金を解除した為に、元の質量に戻ったのだ。 ルイズは、ギトーの先程までの醜態に満足したのか、何も言わずにキュルケとタバサが座っている席へと戻っていく。 「ちょっとやり過ぎだったんじゃない?」 「あれぐらいなら良い薬よ」 「良薬口に苦し」 席へと戻ったルイズに少し困ったような調子で注意するキュルケと、ルイズの行動を肯定しているのか良く分からない言葉を呟くタバサ。 そんな三人の様子を見ながら、ギトーはふらふらと教室を出て行く。 「やや! どうされました、ミスタ・ギトー、まだ授業中ですぞ!?」 廊下に出ると妙に着飾ったコルベールと鉢合わせたので、授業の代役を頼むと、返事も聞かずにギトーは自室へと戻っていく。 今日は、もう、誰とも話す気にはならなかった。 ケツの穴に氷柱を突っ込まれかのように、おとなくしなってしまったギトーの態度は、『風』を最強と自負していた頃と比べると、見る影も無い程に衰えてしまっていた。 同じ頃、燦々と太陽の光が降り注ぐ中、ご主人様から預かった洗濯物を干している才人は、同じく、洗濯物を干そうとしているシエスタと話し込んでいた。 本来なら生真面目な性格であり、仕事中の雑談などしないシエスタであったが、 才人と一緒の時だけは、どうしても仕事が疎かになり、会話を楽しんでしまう。 それが駄目な事だと理解はしているが、どうしてもそれに『幸福』を感じてしまうシエスタは、それを直そうとは思わなかった。 「へぇ、シエスタの故郷って、そんなに良いところなんだ」 「はい。片田舎ですけど、村の人は優しくて、山には色々な果実が実ってて、ほんと、平穏なところですよ」 二人の会話は、何時の間にか故郷に関する話となっていた。 自分の故郷、タルブ村を事細やかに説明するシエスタに、才人は楽しそうに笑っていたが、不意にシエスタの表情が曇る。 「あれ……どうかした?」 「あっ、いえ……あの、すいません、無神経な事を話して」 申し訳そうに謝るシエスタに、はてと才人は首を傾げた。 一体、今の何処に無神経な事があったと言うのか。 「えっと……なんで、シエスタは俺に謝ってるの?」 疑問をそのまま口にすると、シエスタは益々、身を縮めて悲しそうな顔をする。 正直、グッときた。 「だって……サイトさん……自分の故郷に帰れないのに、私、故郷の話をして……」 シエスタの言葉に、才人は、手をぽんと叩いた。 そうか、確かに帰れない人に、帰れる人間が自慢するのは失礼にあたる行為かもしれないが、特に自分はその事に対して何も感じていない。 「いや、俺、そういうのあんまり気にならないからさ。 むしろ、シエスタが故郷の話を聞かせてくれるのは、凄く楽しいから、もっと聞きたいなぁ、とか思ってるけど」 才人の返答に、シエスタは良かったぁと安堵の溜め息を吐き、豊満な胸をほっと撫で下ろした。 「でも――――――とか思わないんですか?」 「え?」 聞こえなかった訳では無い。 ただ、どうしてかその単語が脳内で理解できなかったので、才人はもう一度聞き返す。 シエスタは、不思議そうに先程と同じ内容を繰り返した。 「ですから、故郷に帰りたいとか思わないんですか?」 「――――――――――――あっ」 帰りたい――――――才人は、自分の中に在り得なかった、その発想に愕然とした。 思えば、異世界である此処に迷い込み、シエスタの曽祖父が自分と同じ世界の人間かも知れないと聞かされた時でも、 自分の頭に『帰る』と言う考えは浮かばなかった。 何故ならその考えは………………無駄だから? 「サイトさん?」 「あっ……れ?……」 シエスタの怪訝そうな声に、今まで考えていた事柄が思い出せなくなる。 「えっと……何の話だっけ……あぁ、そうだ、シエスタの故郷の話だったっけ?」 何処と無く不自然な顔をした才人に、シエスタは何も言わず、心配そうな視線を向けてくる。 才人は、自分の中に何か釈然としないものがあるのを感じながら、それについて考える事を放棄した。 放棄せざるをえなかった 「そういえば、前、聞かせてくれたけど、シエスタの故郷に秘宝みたいなのがあるとか言ってたよね? それって、どんなものなの?」 才人の何事も無かったかのような態度に、シエスタは何かを言おうとしたが、軽く頭を振ってから質問に答える。 「うちの曾御爺ちゃんが残したモノなんですけど……その『悪魔の牙』って―――」 「あっ、シエシエ、見つけた~!」 シエスタの口から、なんだか物騒な単語が出るのと同時に、シエスタと同じメイド服に身を包んだ少女が、才人とシエスタの近くまで走ってきた。 「どうしたんですか、そんなに急いで?」 同僚の慌しい雰囲気に、シエスタが尋ねると帰ってきた答えは意外なモノであった。 「王女様! アンリエッタ王女様が此処に来るんだって!!」 メイドが息を切らしながら伝えた内容に、才人とシエスタはお互いの顔を見合わせた。 四頭のユニコーンに引かれた特別製の馬車が、魔法学院の正門を通過し、姿を現すと、王女の到着を今か今かと待ち侘びていた生徒達は、一斉に杖を掲げた。 件の三人組も、他の生徒達と同じように杖を掲げていたが、心情は他の生徒とは若干違いがあった。 キュルケは、清楚で穏やかな王女よりも自分の方が綺麗じゃないかと詰まらなそうな顔をしていた。 タバサは、トリステインの王女自体にそこまで興味が無かったので、杖を掲げているだけで何も考えていない。 強いて言うならば、今日の晩餐は、王女が来たお陰で豪勢になると考えていた。 ルイズは、何か……遠い何かを見るような目でアンリエッタを見つめていた。 「思ウ所ガアルト言ッタ顔ダナ」 「別に……時間の流れって、無情って思っただけよ」 隣に立つホワイトスネイクの声に、返答したルイズは、馬車が見えなくなると同時に部屋へと戻る為に、踵を返した。 今のアンリエッタに、昔のような、見ると安心するような笑みは無かった。 彼女の顔にあったのは、張り付いたかのような作り笑いのみ。 幼少のみぎりに共に遊んだ少女は、あそこには居なかった。 あそこには、ただの王女が居るだけ。 「ほんと……無情ね」 ぽつりと、誰に言うでもなく呟いた言葉にホワイトスネイクは何も言わずに、ルイズの後に続くのだった。 その夜、夢と同じような赤色の月が光を提供する部屋の中で、ルイズは熱心にホワイトスネイクと会話するタバサを見ていた。 夜分遅いと言うのに、部屋に留まる蒼髪の少女にルイズは、頑張るものねぇ、と呟く。 「挑戦」 一通りホワイトスネイクとの会話を終え、手に持っていた一枚のDISCをタバサは、何の躊躇いもなくDISCを挿し込み―――案の定苦しみ始めた。 「はぁ……ホワイトスネイク」 落胆したかのようなルイズの声は、もう三度目だ。 ホワイトスネイクは、その声に反応し、これもまた三度目となるDISCの強制排除を実行する。 「……失敗」 自分の頭から抜き取られたDISCを渡されながら、苦々しげに呟くタバサだったが、何処と無く声に覇気が感じられない。 「今日ハココマデダ。ソロソロ、精神力ガ限界ダロウ」 ホワイトスネイクの言葉に頷くタバサは、ルイズに一礼をしてから、よろよろとおぼつかない足取りで部屋から出て行こうと扉に手を掛け、掴まれた。 「そんな危なっかしい歩き方しか出来ないのに、部屋を追い出したんじゃ、私がキュルケに叱られるわ。 少し、休んでいきなさいよ」 語尾を強めるルイズに、タバサは思わず頷いてしまう。 そのまま勧められるままに、テーブルの椅子に座るタバサだが、この申し出はありがたい。 正直、眩暈と吐き気によって気分が最悪で、部屋まで歩けるか分からなかったからだ。 「でも、あんたも頑張るわよね……初日から、こんなに気合入れるなんて」 「…………」 「まぁ、『力』を使いこなせるようになれば、便利だから頑張るのは分かるけどね」 あふ、と欠伸をして、眠たげにベッドに横になるルイズを見るタバサの瞳は、何時も通りの無感動を映している。 「相変わらず、人間味の無い眼をしているわね、あんた」 「自覚は無い」 「でしょうね。そんな眼、自覚してやってるとしたら、相当、性質が悪い奴だから」 タバサの体調が回復するまで、取り留めの無い話を振っていたルイズであったが、扉のノック音が部屋に響くと同時に、半分閉じかけていた目を強制的に開かせ、扉の方へと視線を向けた。 始めに長く二回、その後、短く三回ノックされたのを確認してから、ルイズは立ち上がり、扉を開けた。 扉を開けると、そこには黒頭巾を被った少女が、頭巾と同じ色のマントを羽織って立っていた。 「まさか……」 頭巾越しに分かる少女の顔立ちに、ルイズは驚きからか、言葉を漏らす。 少女は、ルイズの言葉に反応するように部屋へと入り、扉を閉めてから杖を振るった。 ホワイトスネイクが警戒の色を濃くし、何時でも少女の頭蓋を砕ける位置に立っている事に気がついたタバサは、声を掛ける。 「魔法での仕掛けが無いか確認しただけ」 その説明に、頭巾の少女は頷きながら頭に被った布を取り去る。 「驚いた」 本当に驚いているのか、激しく疑う程に単調に呟かれたタバサの言葉は、頭巾を取り去った少女―――アンリエッタ王女へと向けられたものだった。 「姫殿下」 アンリエッタ王女の眼前に居たルイズ、恭しく膝をついた。 そこに、タバサは違和感を感じた。 貴族たる事を、絶対として扱っているルイズにしては珍しく、その仕草に何処と無く不自然さが付き纏っていたからだ。 「あっ、ほら、あんたもさっさと―――」 「良いのよ、ルイズ。貴方のお友達なら、私にとってもお友達だもの。 ルイズも、ほら、立ち上がって。友達に対して膝をつく人なんて居ないでしょう?」 優しげであり、母親に抱かれるような抱擁感を覚えさせる声に、タバサは思わず息を呑む。 なるほど、確かに王女と言うだけはある。 風格と仕草、それに何者をも癒すかのような声には、カリスマに満ち溢れていた。 普段から、トリステインの王族は執政者としては他の王族に格段に劣っていると聞き及んでいたタバサは、よくそれで国が動いていると思っていたが、なるほど、このカリスマは、王族としては一流だ。 そこまで考えて、不意にタバサの顔に影が落ちた。 それは如何なる思考の果てなのか、無感動を歌うはずの彼女の瞳は、その時ばかりは揺れに揺れていた。 幸い、昔話に花を咲かせている、ルイズとアンリエッタは気付かなく、気付いたホワイトスネイクも別に声を掛ける義理も無いので放っておいた為に、彼女の思いが外に出る事は無かった。 「あの頃は……本当に楽しかったわね、ルイズ」 昔話が一頻り済んだ時に、アンリエッタはぽつりと懐かしむように呟いた。 「えぇ、本当に……」 それに対して相槌を打つルイズは、今朝見たアンリエッタと、今のアンリエッタの違いに内心、物凄く驚いていた。 あの時は、作り笑いを浮かべ、民に対して手を振るうだけの人間になってしまったと思っていたが、今、こうして目の前で話すと、昔のままのアンリエッタが存在している。 (人間って、凄く便利な生き物なのね) (何ヲ今更。人ハ、誰彼モ欺イテ生キテイケル、唯一ノ生キ物ダゾ?) 呆れたようなニュアンスを含んだホワイトスネイクからの返答に、そうなのかしら、と思いながら、ルイズはアンリエッタの言葉に返答していく。 だが、話の合間に溜め息を吐き続けるアンリエッタに、ルイズは眉を顰めた。 タバサに顔を向けると、彼女もまたルイズと同じ結論なのか首を縦に振る。 「あの……姫様、どうかなさったんですか?」 「えっ?」 「先程から溜め息ばかりを……何か、悩み事があるのでは?」 疑問系で聞いたルイズだったが、アンリエッタに何か悩み事が存在する事は確信していた。 思えば、もう何年も会っていない友人に会いに来て昔の話をしたのも、恐らくはその悩みで磨耗した気を紛らわす為だったのだろう。 「あぁ、ルイズ……やはり、貴方には分かってしまうのね。昔から友達である貴方には……」 誰でもあんなに溜め息を吐けば分かると言うものだが、それに突っ込むものは居ない。 ともあれ、アンリエッタは、眼を真っ直ぐルイズへと向けようとしたが、その前に、椅子に座っているタバサへと視線が逸れた。 「すいません。この話は国の重要事項であり、信頼の置ける人物にしか……」 「分かった」 申し訳無さそうに述べるアンリエッタに、タバサは立ち上がり、一礼してから部屋の扉に手を掛ける。 調子の悪さも、きちんと歩けるぐらいには回復していた。 「じゃあね、また明日……かしら」 後ろから掛けられたルイズの言葉に、振り返らずに頷いたタバサは、服のポケットに入っているDISCの重さを確かめながら、部屋を後にした。 「これで、今、この部屋に居るのは、私と私の使い魔のみ……話していただけますか、姫様」 タバサが完全に遠のいたのを確認してから、ルイズがそう言うと、アンリエッタは重々しく頷き口を開いた。 「そうですね…………では、話しましょう。私が、夜も眠れぬ程に悩む事柄を―――」 憂いを張り付かせ、笑みが掻き消えたアンリエッタの表情に、今更ながら、厄介事に巻き込まれる事になると気が付いたルイズであった。 第十話 後編 戻る 第11.4話
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1646.html
空は段々と茜色が増し、それに比例し木々の陰は大きく、そして長く伸びる。 その黒い影は茜色の空と対比してとても綺麗な模様を大地に描いていた。 しかし、黒い影は模様を描くだけではない。 何かを飲み込むような、そして何かが潜んでいるような、そんな何か悪いものがそこに佇んでいるような感じがする。 実際、この時間帯のことを『逢魔が時』という。 『逢魔が時』とは大禍時が転じたと言われている。 何故ならこの時間帯が一日のうちのもっとも禍々しい時間帯と言われているからだ。 忌まわしく、不吉な感じの漂う時間帯、物陰に潜む魔物のような何かの気配、禍々しいと言われても仕方ないだろう。 そう言われている理由は恐らく日が沈み、それまで明らかだったものの輪郭がぼやけて見えなくなっていく、その覚束なさから生まれる不安なのだ。 少なくとも一般的にはそう考えられている。 だが実際、稀にだが、本当にそういうところに本物の魔物がいたりすることもある。 魔物とは言ったが、本当のところは人間の幽霊だ。 しかしその姿は魔物と呼ぶに相応しいほどの異形に成り果てている。 実際にその異形を見たときは本当に驚いたものだ。 なにか強い執念を持っていたりするとそういう風になりやすいらしい。 私から言わせてもらえばそんな姿をしている時点で人間とは言えない。 幽霊はそいつの精神が直に反映され、自分の形を作る。 そんな姿になってる時点で人間の精神じゃないって言ってるようなものだ。 草原への道すがら、あの尼から聞いたことを思い出しながらそんなことを思っていた。 なぜそんなことを思い出したのかは自分でもよくわからない。 おそらく、この夕暮れと、そこらに生えている木々が思い出させたのだろう。 今となってはもう懐かしいと言えるほどの思い出だ。 「ヨシカゲさん?どうかしたんですか?なんだか遠い目をしてましたけど」 「え?」 「そうよ。あんまりこっちの話も聞いてなかったみたいだし」 そうだろうか? いや、確かにそうかもしれないな。 きっと過去の思い出に自分でも気づかないほどにどっぷり嵌っていたのだろう。 「……日本にいたときのことを思い出していた」 私はルイズたちの問いに素直に答えることにした。 別に知ってほしいとは思わないが、隠す理由もない。 この思い出はただの知識だ。 私のそのときに感じた感情、考え、思いを話さなければそれは客観的な知識になる。 何かの役に立つわけでもない、人に知られて困ることもない、どうでもいい知識だ。 そんな知識を隠すことに何の意味があるのだろうか? あるわけがない。 「へえ、どんなこと思い出してたの?」 「この時間帯についてのことさ。日本じゃ逢魔が時って言ってな。黄昏時とも言って……」 ふと木々の陰の中に人影を見た。 その人影は私に酷く似ていて、しかし全く違う。 直感的にだが、そう感じた。 しかし次の瞬間には消えていた。 あれ?見間違いだったのか? いくら見てもそこには誰もいなかった。どんな生き物もいなかった。 本当に見間違いだったらしい。 しかし、あの人影は何故かくもの巣のように私の頭に引っかかっていた。 何だかんだでルイズたちと話しているとやがて草原に着いた。 草原がよく見える位置に連れて行くと言うシエスタのあとについて行く。 そして私とルイズはそこから草原を眺めてみた。 「これは……」 「すごい、きれい……」 シエスタが私に見せたいといったその草原は、私たちの視線を捕らえて離さなかった。 頭に引っかかっていた人影のことなど、それこそ初めからなかったのごとく消し飛んだ。 ただただ広いその草原はシエスタが言っていたようにありとあらゆるところに花が咲いている。 草原の向こうに見える山上にある夕日は美しく、そして儚げに輝きは、その草原をまるで染め上げるかのように草花を優しく茜色に輝かせていた。 たったそれだけの光景が、私たちの心を支配していたのだ。 何て綺麗なのだろうか。 こんな景色を見たことがあるか? あるわけがない。 元の世界では、電車に乗りながら、窓から見る空が晴れ渡っているだけで、私はその光景がとても大事なものだと思うことができていた。 この世界に来て、晴れ渡る空を見ながら木々に囲まれ風を感じることに、私は喜びを見出すことができていた。 しかしそれらが色あせてしまう。 自分の中でどんどんと色あせていく。 言葉でなかった。発することができなかった。 ただ、この光景を何時までも見ていたい。心がそう訴えていた。 隣にいたルイズも言葉を発することはなった。 ただ暖かな風の音だけが聞こえていた。 しかし、時というのは止まることなどない。 人間のことなんて考えないで何時までも動き続ける。 やがて、夕日は山上から山の間へと沈んでいく。 茜色に染め上げられていた景色も段々と、鮮やかなその色を失っていく。 風も暖かみを失い始める。 そして、あれほど美しかった夕日は完全に山に沈んでしまった。 「シエスタ」 「はい」 「……ありがとう。こんな素晴らしいものをみせてくれて」 自分でも驚くほど自然にそんな言葉が漏れていた。 「わたしも始めてあんなきれいな景色を見たわ」 ルイズも私のことに追従する。 シエスタの方を振り返るとシエスタの顔にはこれまで見たことのないほどの笑顔を称えていた。 その表情から見て取れるものは自分の故郷に対する限りない誇りと自信、そしてそれを認められた嬉しさだった。 「そう言ってもらうのが一番嬉しいです。私の一番気に入ってる場所ですから」 そう言って私たちに笑いかけるシエスタの笑顔を私は草原に劣らないほど綺麗だと感じた。 隣にいるルイズの感動した顔も、やはり草原に劣らず綺麗だと感じた。 別にそれがあの景色に影響されて一時的な気の迷いでそう見えるだけでも構わない。 ただこの言葉にし難い感情を何時までも胸に閉じ込めておきたかった。 「それじゃあ帰るか」 それだけ言うと、誰も反応を返さず、しかしみんな足を動かし村へ戻り始める。 帰り道、私たち3人の間には何の会話もなかった。しかしそれは苦痛ではなかった。 ただ穏やかなな時が流れていた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4068.html
前ページ次ページKNIGHT-ZERO 「こうやるから退治ってんだよ!」 望月三起也 「ワイルド7」より 夕暮れの少し後、モット伯爵の別邸前に並ぶ炎魔法ランプがデトロイト製の黒いボディに映りこんでいた 揺れる橙色の踊り子は曲面に添った奇妙な光球となって、走る車体の前方から後方へと静かに流れていく シエスタが普段から磨き上げていたKITTの黒い分子結合殻の肌は東洋美女の濡れ髪のような艶を放ち KITTを操るルイズは、出撃前の貴重な時間に珍しく車体の雑巾がけをした自分の判断を自賛していた トリスタニアから馬で一日の都市リエージュ、かつて小さな独立国だったままの町並と自然を保つ古都は 清冽な湧き水を湛える渓谷と冷涼な気候に恵まれ、トリスティン貴族の保養地としても名高い場所だった 「帰れ小娘!、ここにはモット伯爵なんて居ねぇよ!」 まるでマイアミ・ヴァイスの1シーンのようにコンバーチブルのKITTで別邸に乗り付けたルイズは マントをだらしなく着けた下級貴族の門衛に威嚇的に追い払われた、吐く息からは安酒の悪臭が漂う 粗野なゲルマニア東部訛りの怒鳴り声に竦み上がり、泣きそうな顔でKITTに駆け戻ったルイズは 彼らに背を向けた途端、善良な人間から小金を騙し取る刑事ドラマのケチな悪党のような笑みを浮かべる 「…くっくっくっ…しょーがないわねぇKITT、じゃあ…ふたつめの作戦を実行しましょうか?」 「ルイズ…あなたは最初からそうする積もりでしたね?貴族のマントを外し、女官の証明書さえ見せずに」 馬車のようなマジックアイテムのような黒い物体に乗ってやってきた、ミニスカートに黒いベレーの少女 奇妙な革服を着た姿は、怪しい発明貴族の使い走りで小遣いを稼ぐ頭の弱い平民少女にしか見えなかった 「まぁね~、でもモット伯爵の身辺警戒がザルだってことがわかっただけでも無意味じゃなかったわ」 ルイズの操るKITTはタイヤを鳴らし、モット伯爵の別邸正門に面した堤防道路を下流方面に走り去った 門衛には走り去るKITTが悪趣味な魔法馬車にしか見えず、金に飽かせた貴族の道楽に舌打ちをしたが KITTが残していった直管マフラーを模した低く力強い排気音に自分でも気づかない内に耳を傾けていた V8エンジンが発する無限の力を約束するかのような音には、世のならず者を惹きつける魔法があるらしい モット伯爵が地方官吏の公務のために建設した別宅は、リエージュ渓谷の斜面に沿って建てられていた 渓谷の堤を走る馬車道路に面した床面積の最も大きい最上階から、下階が階段状に延びる全5階の構造 地球の海岸沿いで時々見かける海に張り出したレストランを思い切り大きくしたような奇異な建物 数多くの柱に支えられた斜面の邸は、リエージュ渓谷に陽が落ちる絶景を一望出来るのが自慢だった そしてモット伯爵がその建築困難な別邸の建設を強行した理由が、渓谷の向こう岸で湯気を立てている リエージュの観光の目玉である温泉地、そこは平民や貴族の女達が裸のまま無礼講の湯治を楽しむ天国 お抱えの職人に作らせた望遠鏡で湯治場の女湯を覗くことを何よりの楽しみとしていたモット伯爵は 巨費を投じ渓谷に建てた別邸に詰め、地方行政を管轄する窓際貴族の閑職を文字通り窓際で楽しんでいた モット伯爵の別邸から門衛に追い払われたルイズは、土を均しただけの堤防道路をKITTで流していた ルイズの立案した第二の作戦を実行するには、渓谷の底まで斜面を降りた後、邸に接近する必要がある KITTは現在地から10kmほど先にある、河川工事の人間が荷車を通す傾斜路をナヴィゲーションした ルイズは頷くと、傾斜路のずっと手前で操縦桿を鋭く切り、急角度の渓谷に向けKITTの鼻先を向けた 巨岩が崖を落ちていくような騒がしい音をたてながら、KITTは木を折り岩にぶつかりながら降りていく ビートルズの歌を口ずさみながら、転落事故と見分けがつかないような方法で渓谷を駆け降りるルイズ KITTはルイズがこれほどまで苛立ち、怒り狂ってるのを見るのは召喚以来初めてかもしれないと思った ルイズとの長く短い付き合い、ジョン・レノンの歌が彼女にとって罵りと同義語だということは知っていた 渓谷の底、岩を噛む深い急流を流れに逆らって進んでいたKITTは、川岸から渓谷の堤を登攀していく KITTを駆って渓谷の底を流れる川沿いに邸の下部へと接近したルイズは、斜面の邸を見上げた サーモグラフィー・センサーの画像が、邸の中に居る生命体の場所と状態を余す所なく捉えている 最上階の寝室と思われる部屋にモット伯爵が居る、護衛と使用人は無防備にも寝室と数部屋を隔てた 控えの部屋に集まり、飲酒しながらカード遊びをしているようだった、そして最上階からひとつ下にある 浴室にシエスタは居た、体温を形にした人影は入浴を終え着衣し、浴室の脱衣場を出ようとしていた 「…到着して早速お楽しみの時間ってわけ?どんだけスケベなのよ…わざわざメイド服まで着せてるし・・・」 口調とはうらはらにシエスタの心中を思い頬を噛むルイズ、時間優先で強引に渓谷を降りて正解だった ルイズはバックでKITTを邸に寄せると、前部と後部に一組づつ備わった鋼索巻上げ装置を起動させた コントロールパネル右下部、ルイズ流に言えば右膝のチョイ横にあるワイヤーウインチの操作コンソール スイッチに触れると、メインモニター上で装備の自己診断プログラムが起動し、各種の数値が表示される フックや高圧吸盤等のワイヤー先端につける各種のパーツの中からコンクリート・アンカーを選び装着する メインモニターに映る邸の太い柱の中心に赤いドットを合わせて照準を定め、KITTに微量補正させると 操縦桿の親指の位置にある、マウスの左ボタンに似た起動コマンドの実行キーを押し、アンカーを発射した 大規模な天災や戦乱の時、緊急車両が通行するための道を拓くウニモグの災害工作車でも実用化済みの 射出式アンカーには、分子結合殻による強度向上を始めとしたナイト財団の様々な技術が付与されていた ドンッ!という機関砲のような衝撃の後、幾重にも固定化の魔法を施した大理石の柱に小さな埃が上がる 戦車の複合装甲に撃ち込んでそのまま吊り上げる事を想定して設計、開発されたコンクリートアンカーは 鉛筆程の大きさの本体のほとんどをモース硬度15相当に硬化した柱に突き立て、抜け防止の爪を立てる 有線誘導ミサイルのモーターウインチを更に進化させたKITTのワイヤードラムが音も無く巻き上げられ 髪の毛ほどの細さのワイヤーを一度ピンと張ったのち、KITTが力学的に割り出した長さで弛ませられる ルイズは発射から1秒少々で行われた一連の動作が終わり、各種数値が赤から緑色になるのを確かめると 間髪入れずKITTのアクセルを床まで踏み込んだ、グッドイヤーのタイヤが花崗岩質の斜面を鋭く抉る 邸の柱にワイヤーで繋がった状態で急発進したKITTによって、大理石の柱に急激な衝撃が叩きこまれた モット伯爵の別邸に、地震が起きた 急発進したKITTのトルクで強く張られたワイヤーの反動によって、車体が激しく邸に引き戻される ターボジャンプで鍛えた首がムチ打ちを起こしそうになるが、ルイズは怯まず再びアクセルを蹴りつけた 土メイジの丹精によって作られた強固な斜面の邸、しかしKITTとルイズには三回の攻撃で充分だった 「・・・波濤のモット伯爵、ごらんあれ、わたしとKITTが今から…本物の波濤を見せてあげるわ」 三度に渡って張られたワイヤーが急激にそのテンションを失う、柱の上下がゴッと鈍い音を発てて折れた ルイズは折れた柱を引きずったまま走り、操縦桿を切りながらサイドブレーキを引きスキッドターンする 柱に深く撃ち込まれたアンカーはその周囲を低周波で破砕して穴径を拡大する抜杭機能で柱から抜け そのまま一瞬でウインチに巻き取られた、太い柱は遠心力で渓谷の川を挟んだ向こう側まで飛んでいく ルイズとKITTは知らなかったが、その柱は渓谷の対岸にあった浴場の女湯を狙ったように転がりこみ 突然降ってきた柱から裸体のまま逃げ惑うことになった入浴中の女や、その美景を拝観した浴場の客から その円柱は「スケベ柱」と言われ、後にモット伯爵の名が好色と変態の代名詞になるのに一役を買った ルイズとKITTにより支柱を叩き折られた渓谷の別邸はその上部で小さなヒビ割れ音をたて始めた 柱を折られた衝撃で損傷した上部構造の小さな剥離が、重みによる連鎖的な崩壊を起こしていく 伯爵が巨費を投じ、多数の土メイジを使役して建てた大理石造りの邸が、下階から順に崩れていった 斜面の邸が巨大な獣に食い散らかされたように、大理石と高価な家具類の瓦礫となって斜面を埋めた サーモグラフィー画像には最上階に居るモット伯爵とシエスタ、そして従卒達が慌しく動く姿が映る KITTで邸を全壊させる方法は他にいくらでもあったが、最上階に集まる邸の住人達を一人も傷つけず 邸の最深部への突入路を拓いたのはルイズの思い切った方法と、KITTによる微調整の結果だった ルイズがただ柱を叩き折るために操作したアンカーやアクセル、その他の作動量を制御したKITTは 崩壊した邸が描く最初に想定した通りの破断線と、その瓦礫による人的被害が無い事を確認し安堵する ルイズはKITTの気苦労も知らずに斜面を見上げ、景気よくブっ壊れた豪邸に大はしゃぎしていた 「どうよ!どうよKITT!あんたの世界にはクルマでこんな事する奴なんて居なかったでしょ?」 「一人知ってます、『リーサルウエポン2』という映画で、メル・ギブソン演じるリッグス刑事が…」 ルイズは軽く鼻を鳴らしたが、とりあえず意識を邸への突入とシエスタ救助の方向へ切り替えた 「へ~、そのリッグスとかいう奴は、こんな事もしたのかしら」 ルイズは瓦礫の斜面に突っ込むと、突き出た柱の残骸に左前輪を乗せ、トルクをそのタイヤに集中させた 駆動力とエアサスで跳び上がったKITTはロッククライマーのように別の出っ張りにタイヤを引っ掛ける ナイト財団によるKITTの仕様説明書によれば、急斜面を安全かつ最小の周辺被害で登攀するためには タイヤに内臓されたスタッド・スパイクと前部のワイヤーウィンチを併用する方法が記載されていた ルイズはその方法を豪快に無視し、KITTをトライアルバイクのように操り瓦礫の山を駆け登っていった 説明書の文中にある「周辺被害」という文言をKITTは思い出す、被害も何も邸は全部メチャクチャだ 「ルイズ、私はこんな真似をする人間をあなた一人しか知りません、二人も居れば世界さえ壊してしまう」 最上階のひとつ下、半壊し大きく開いた4階にKITTを突っ込ませる、中は舞踏会を楽しむメインホール ホールの外縁を囲う階段を登り切った先に最上階に面した広い廊下、その中心にモット伯爵の私室がある そこから数部屋を隔てた並びには控えの部屋があった、その部屋に集まる伯爵の護衛やメイド、執事達は 伯爵の下に駆けつけることも忘れてポーカーテーブルの下に隠れ、始祖ブリミルへの祈りを唱えている 地球の欧州と異なり、火竜山脈との位置関係で数十年に一度激しい地震に襲われるハルケギニア各国 当時の貴族の間で地震や大規模災害は悪魔の所業と言われ、その後の火災や疫病で大量に発生する死者を 悪行を働いた者の地獄への導きと信じていた、彼らは今さら必死になって自らの不道徳を始祖に詫びた 幼い頃から曽祖父の私塾で大地震への物理的な対処を教わっていたシエスタのほうがよっぽど冷静だった ルイズは外縁の階段を叩き壊しながら一気に昇った、手すりが吹っ飛び壁が崩れ、絵画が轢き潰される ホールを半周して最上階に面した廊下に飛び込んだルイズは、モット伯爵の私室をモニターで探る 途中、控え部屋の前でアクセルを吹かしてテールを振り、リアバンパーでドア横の壁に一撃を食らわした 少し開いてたドアが衝撃で勢いよく閉まった途端に石積みの壁の接合が緩み、ドアが重みを受けて歪む これで控えの部屋の唯一の出入り口であるドアは塞がれ、護衛や使用人達をしばらく足止め出来る 出来れば今回の騒動の目撃者はあまり残したくなかったし、さっき臭い息を吐かれた仕返しもしたかった 控え部屋の中では騒動が起きていた、悪魔の咆哮のような音が近づいてきた途端に、部屋を揺るがす衝撃 そして勢いよく閉められ、慌てて開けようにも開かなくなったドア、密室の使用人達はパニックに陥った 指向性音響ソナーを使わずとも控え部屋の中から聞こえてくる男女の阿鼻叫喚にルイズはニヤリとした KITTはといえばルイズの要求を満たすために、またしても古風な邸の面倒な構造強度計算をさせられた トヨタのトラクションコントロールと三菱のAYCを合わせ、更にスペックアップされたKITTの制御装置で アクセル開度からタイヤの滑り量、バンパーの当て角度とその衝撃までもを調整したのもKITTだった KITTが学院で観測していた演算機能の不調は完全に、あるいは仕様よりも高度な形で回復しつつあった これがこの世界において契約を交わしたメイジと使い魔が宿すという、互いの力を分け合う魔法だろうか あるいは命あるものなら誰にでも存在する力、二人の力を合わせ、その力を倍以上にする生命の力 ルイズとKITTは無敵だった、シエスタを助けるためなら何でも出来る、"二人"はそう思っていた ルイズは廊下の幅を一杯に使いKITTを横滑りさせながらモット伯爵の私室前につけ、ドアに鼻先を向けた ドアの向こう側ではモット伯爵が、巨大なベッドに横たわらせたシエスタに向かって鼻息荒く近づいている 邸を半壊させる大地震も近づいてくるKITTの音も意に介さぬスケベっぷりはある意味賞賛に値する ルイズはその助平への敬意を表すべく魔法よりも先にパンチで鼻っ柱に一撃を食らわせてやりたくなった とりあえず校長室のドアのように叩き壊してやろう決めた時、右手の傷を思い出したが、まだ左がある 無傷の左拳を握り、ぶんぶんと振りながらKITTから降りようとするルイズをKITTは慌てて止めた 怒りの弾丸と化しているルイズが心配で、それに晒されるモット伯爵の生命がそれ以上に心配だった 「ルイズ、あのドアは一時的に石壁と同一化しています、この世界で言う所の『ロックの魔法』です」 ロックの魔法のかかったドアなんて殴れば手が折れる、意外とそうでもなさそうな声でルイズは嘲笑った 「ふ~ん、"ロック"の魔法ならわたしも知ってるわ、あんなチャチな魔法よりヘヴィでクールな奴をね」 ルイズは拳を握っていた左手でサウンドシステムのボリュームを上げた、選曲はローリング・ストーンズ 唐突に始まるイントロ、まるでルイズがKITTを扱うように手荒くギターを弾くのは、ジャガーという男 モット伯爵の魔法で石壁と同一の硬度を得た目の前の扉が「サティスファクション」のリズムで痺れ始める 硬くて厚い権威と体制の壁を拳と度胸でブっ壊す、ミック・ジャガーが1960年代に発したメッセージは 時代を超え時空を越え、一人のメイジ、黒いベレーを被った小さな女の子にちょっぴり歪んで継承された 地球のジャガーがギターで、異世界の山猫のような少女がKITTを駆って破壊せんと挑んだのは 権威でなく体制でなく、若者の限りないエネルギーの抑えきれぬ爆発を阻む、目の前のドアだった ルイズは制動配分機能で前輪にがっちりとブレーキをかけたままアクセルを踏みつけた、後輪が空転する グッドイヤー・イーグルの後輪が怪鳥の悲鳴のような音を発し、刺激性の白煙を半壊した屋敷に充満させた 真っ当な人間が聞いたら不快を感じる音、しかしルイズはその音に共鳴するように桃色の産毛を逆立てる KITTは非常に困難な演算をしていた、モット伯の施したロックの魔法によって硬度を増大させたドアは 分子結合殻のボディをもってすれば容易に破れる、しかしそれは同時に鋭利な破片を部屋中に撒き散らす ドアにノーズをゆっくり押し当ててこじ開ければ、半壊した邸の壁に負荷がかかり建物全体が崩壊する ルイズの目論見はわかっていた、今までにルイズが廃城を練習台に何度となく行った壁破りを超越した 極めて速いスピードで壁を突破すれば、ドアの破壊は最小限に抑えられ、計算上放射状に飛散する破片は 室内の人間に被害を及ぼさない、しかしその方法の実行に必要なエネルギーの物量とその緻密な制御には 狭い廊下からの突入の一瞬にKITTの制御能力とルイズの操縦技量を最大限に絞り出す必要があった アクセルプレートの端でスロットル開度を表示する緑色のインジケーターは全て点きっ放しになっている ルイズは一点の迷いもなく、その右足に筋を浮き立たせ、KITTのアクセルを力の限り踏みしめていた 震える右足の隣、左足はSの女が哀れなM男の秘部に足で悪戯をするように繊細にブレーキを踏んでいた 厚いアルビオン杉を張られた床で後輪を激しくバーンナウトさせながら、KITTは尻を左右に振っている ルイズにはドラッグ・レースの勝者がスタート前に見るという瞬の女神が目前を横切るのが見えた気がした ルイズはその左足を、達する寸前の男にお預けを食わせるようにそっとブレーキペダルから抜くと同時に ドラゴンさえ蹴り殺せるほどに逞しくアクセルを踏んでいた右足を一瞬離し、再び力の限り踏みつけた グッドイヤーのタイヤが屋敷の床を獣の後足のように掴み、距離数センチのドアに向けて急速前進させた KITTの今までの走行内容を記録したデータログは、過去の停止からの加速の記録を容易に塗り替える ミック・ジャガーは再びギターを乱暴に鳴らし、文法的に間違った英語で「I can't get no !」と叫んだ ルイズはミック・ジャガーとシド・ヴィシャス、クィーンとかまやつひろしのロックの魔法を信じていた KITTはこの時ばかりはハルケギニアの始祖ブリミルと祖国アメリカの神と仏と預言者の加護を祈った 車両の激突よりも弾丸が貫通する時に近い、甲高く短い音の後で、分厚いドアはKITTの形に穿たれる ルイズはKITTを室内に飛び込ませ、同時に左足でヤワな男の睾丸が潰れるほどにブレーキを踏んだ 京劇の円舞のように美しくスピンさせて突入の速度を殺したKITTのノーズを室内のモット伯爵に向ける 女の素足でタマをいじくられ、いい所で突然蹴り潰されたような顔をしていたのは室内の変態男だった わざわざ好物のメイド服を着せたシエスタとのお楽しみを奇怪な曲者に中断させられた伯爵は目を見開く ルイズはリトラクタブル・ライトをホップアップさせた、バンパー下の四灯式補助ライトを一度、減光する KITTは少々間の抜けた声で「シエスタさん…そろそろ夜が明けます、おやすみなさい」と言った 妙に場違いな、意味の通る文章になってないKITTの言葉、ルイズの頭上に?のマークが浮かんだが すぐにKITTの意図を察したシエスタは素早くベッドの上にうつ伏せになり、羽根布団を頭から被った こんな二人だけの暗号のような言葉で通じ合うKITTとシエスタの間に一体何があったのかを ルイズは問い詰めてやりたかったが、とりあえず後回しにする、後回しにするが絶対忘れないと思った ルイズはKITTのヘッドライトを点灯させた、800万カンデラの白光がモット伯を視界を白く焼く KITTの居た世界で、犯罪者追跡や人質救出のために開発された強力なディスチャージ・ライトは その強烈な光の直撃を受けた人間の視神経に強い刺激を与え、犯罪者を数十秒から一分間動けなくする スタン・グレネードやティーザー、CSガスに替わる非致死性で後遺症を残さぬ新世代の逮捕器具だった 羽毛布団をはねのけたシエスタの瞳とKITTの赤いフロント・インジケーター、互いを熱く見つめあう 「KITTさん……もういちど会えるなんて夢みたいです・・・わたしは馬鹿な事をしようとしてました……」 絵本の勇者のようにシエスタを助けに来たKITTの中から、何かギャンギャンうるさい人間の声がする そのうるさい人間は桃色の髪を振り、ルーフから出てボンネットの上を走り、ベッドに駆け寄ってきた 「ちょっとシエスタ!誰か忘れてるんじゃない?わたしよ!わたしが助けに来たんだから!恩に着なさい!」 ルイズはそう言いながらもベッドのシエスタの肩に手を添えて立たせた、体を弄ばれてない事に安心する 「ミス・ヴァリエールにも感謝していますわ、だから帰りはわたくしが学院までお送りして差し上げます」 シエスタはルイズの横をクルっと回ってKITTの操縦席に駆け込み、勝手に操縦システムの操作を始めた 読み書きとは別に曽祖父から習っていた"ソロバン"というデジタル計算機の操法に熟達していたおかげで シエスタがKITTの各種電子装置の操作になじむのは誰よりも早かった、当然、理由はそれだけではない 彼女は慣れ親しんだKITTの操作コンソールのキーを、それが恋人との触れ合いであるかのように叩いた 護衛が控え部屋のドアを内部から破ろうとしている音が聞こえる、ルイズは渋々助手席のドアを開けた メイド服のままのシエスタは編み上げ靴の紐をほどくと、白いハイソックスと共に脱ぎ捨て、後席に放る いつもシエスタが本気でKITTを操る時にそうしてるように、裸足でKITTの二つのペダルに触れた シエスタはアクセルとブレーキを、KITTの一番敏感な所を確かめるように、足裏で官能的に撫で回した KITTは、ルイズが今まで一度も聞いたことのないトーンの声で「…シエスタ…さん…」と声を漏らす 顔を両手で覆い、蹲ったまま動けなかったモット伯爵が目をしばたかせながらふらふらと起き上がった 「……私は…貴族だ…杖を交えて決着をつけねばなるまい…ヴァリエールの娘、ゼロのルイズよ」 ベッドの傍らに大事に置いてあった杖を取ったモット伯爵を、ルイズはKITTの中から面倒臭そうに見る 「ハァ?杖ェ?そんなもん置き忘れてきたわよ…っと、あったあった、無くしたと思ったらこんな所に…」 ルイズの杖はKITTのドアポケット、シエスタから借りパクした恋愛小説のしおり替わりに挟んでいた 猥褻な表紙絵の本からタクト・タイプの杖を引き抜いて、挟んであったページに適当に折り目をつけると 慎重に操縦桿とシートの位置決めをしていたシエスタが「55スゥもしたのに!」と抗議の声を上げた モット伯爵は杖を構える、ルイズは唱えられる波濤のスペルを鼻で笑いながら自分の杖をクルリと回した ついさっきKITTでブチ開けたドアから下に広がる、半壊したメインホールを細身の杖で無造作に指す ごく短いルーンを唱えた、詠唱をマイアミ・サウンドマシーンのリズムで唱えたのはちょっとしたお茶目 パン、と子供の手叩きのような音が鳴ったかと思うと、階下のメインホールの中心に黒が広がっていた 薄く爆発の煙を発てる深くて暗い穴、小さな穴の周囲にある家具やアルヴィーズには傷ひとつついてない 床とその下にある岩盤の山肌をそっくり消し去った、地獄の入り口のような穴をモット伯爵は見つめた KITTはたった今目前で起きた、あらゆる科学や自然現象を超越した事象を観測し、直裁に報告する 「邸とその基礎を構成する物質が半径2m、深さ800mに渡って原子結合を失い…消滅しました…」 ルイズは自分が開けた穴を眺め意外そうな顔をしていた、温泉のひとつも湧き出ると思ってたのに 既知のいかなる魔法とも異なるモノに詠唱すら忘れ、杖を垂れるモット伯爵にルイズは指を突きつける 「ゼロに、するわよ」 助手席の上に土足で立ち上がってルーフから上半身を出し、見得を切ってキメの台詞を吐いたルイズは ドライバーの個人差に合わせた設定変更のデータ入力を終えたシエスタがKITTを急発進させた途端に 後ろに転げ落ちそうになり、「はうううあぁぁ!」と情けない悲鳴を上げながら助手席にかじりついた ルイズが学院の裏庭で人知れず行っていた虚無魔法の修行中に偶然発動した、物質をゼロと化す魔法 虚無魔法に必須といわれた祈祷書があっても無くても同じような結果を出すインチキ臭い魔法だった 消去する物質との相性や発動条件など、成功の確率はあまり高くなかったが、気をよくしたルイズは 魔法の成功率を高める修行よりも熱心に、カッコいいキメ台詞とポーズを鏡の前で何度も練習した 以後ルイズは幾度となくこの台詞を口にしたが、そのたびに足を滑らせたりスカートがめくれあがったり 彼女が想像していたようなカッコよく言えるようなシーンはその後のルイズには一度も訪れなかった 前ページ次ページKNIGHT-ZERO