約 1,871,631 件
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4634.html
投票所機能のテストです。 選択肢 投票 [ルイズ] (77) [シエスタ] (47) #vote(項目A[],項目B[]) 項目追加可能 #tvote(項目A[],項目B[]) 順位 選択肢 得票数 得票率 投票 1 アンリエッタ[486] 2 (40%) 2 アニエス[111] 1 (20%) 3 エレオノール[29] 1 (20%) 4 ルイズ[737] 1 (20%) 5 カトレア[166] 0 (0%) 6 カリーヌ[4] 0 (0%) 7 キュルケ[8] 0 (0%) 8 ギーシュ[1] 0 (0%) 9 サイト[79] 0 (0%) 10 シェフィールド[1] 0 (0%) 11 シエスタ[169] 0 (0%) 12 シルフィード[180] 0 (0%) 13 ジェシカ[26] 0 (0%) 14 ジョセフ[2] 0 (0%) 15 タニア[2] 0 (0%) 16 タバサ[562] 0 (0%) 17 テファニア[326] 0 (0%) 18 フーケ[3] 0 (0%) 19 マリコルヌ[44] 0 (0%) 20 マルトー[1] 0 (0%) 21 ミ・マドモワゼル[1] 0 (0%) 22 モンモランシー[17] 0 (0%) 23 ヴィットーリオ[2] 0 (0%) その他 投票総数 5 コメント機能による投票なら以下のようになります。 ルイズに1票 -- シエスタに1票 -- シエスタに! -- シエスタに一票 -- 蒼蛇? #tvote() 異動してから時間がない……それはさておき、プラグインはこちらを使うと項目追加可能です……追加しないほうが良いかもですけど -- 261 アンリエッタに一票 -- で、これ何の投票?w -- これはテスト投票だという事は分かっているのだが…。ベスト5入り+ティファの上位と言う事はそうそうないだろうから、真剣にシルフィに1票www -- タバサに1票!テストとはいえ負けられぬ! -- タバサに1票!テストとはいえ負けられぬ! -- 何のために投票してるのか教えてくれないか?w -- ルイズのツンデレ激萌え -- かすみ? けなげなアンリエッタ萌え! -- めす竜3位だよ、めす竜ww -- あんなにあったシエスタ票は何処へ…?? アニエスに一票 -- ダーナガ? タバサに一票…テストと言えともダントツだ!タバサ最高だよ! -- サイトを影で見るタバサ? 絶対タバサ! ナニガなんでも!! -- つき? 微妙にきゅいきゅいがルイズの背後に着いて来てる…。得票率10%超えてるし。w -- もちろんタバサに一票ですね!てか、タバサ以外に誰を投票すればいいのかと -- 自由な旅人? ・・・そろそろ ここ消さないか? -- 雛形として使う人もいるだろうし、消すのはアレかと -- アホの子には抜かれまいと、ルイズが2位を驀進中。w やっぱ13巻効果もあるのかな? -- キャラ以外の選択肢が「整理」されてるw? キャラも一旦整理した方がいいかもね、数字直で触ったのをずっと残してあるのも無意味(トータル5000ちょいビューのページの投票数が何だこれわっ) -- キャラの投票数をいったん消してやりなおしたほうがいいのは間違いないな。 -- 一旦リセットされて、再スタートのようなのねー。 -- タバサが良い・・・。ツンが強すぎるルイズなんて目じゃないっす! タバサが圧勝すればそれで良しっ!! -- マイセン? ダレか知らんが、懲りろよ・・・ だから何で ビューの伸びより投票数の方が多いんだよw みりゃ分かる事だろ馬鹿か? -- アンリエッタ女王に一票ですね。 -- 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6219.html
前ページゼロのヒットマン 「あっ、獄寺に頼みたいことがあったわ。」 「用件はなんだよ。」 「獄寺、あんたにやってもらうのはこれよ。」 獄寺はルイズの後をついてゆく、その先にはルイズの洋服と下着がある。 「まさか俺に洗濯をやれと言うのかよ。」 「そうよ。」 「ふざけんじゃねぇ!てめーのモンくらいてめーでやれよ!それに俺洗濯やったことねーんだよ。」 「あんたは私の使い魔なの!だから主人の言う事は聞く!それに私と一緒に元の世界に帰る方法を探すんでしょ。」 「分かったよ、やりゃーいいんだろやりゃ。」 仕方なく獄寺はルイズの洗濯物を持って外へ出た。 「これ結構重てーな。うわっ!」 「きゃっ!」 獄寺はバランスを崩し、近くにいたメイドにぶつかった。それと共にルイズの洗濯物も散らばる。 「痛てーな、おめーも気をつけろよ」 「すいません。私も外で洗濯をしようと思ったので。あなたの方こそ大丈夫ですか?」 「当たりめーだ。俺はこの程度で怪我をしたりしねーよ。」 「あなたって、ミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」 「ああそうだぜ。俺は訳あってルイズの使い魔になった獄寺隼人だ。おめーの名前はなんていうんだよ。」 「私ですか?私はここの魔法学校でメイドをしているシエスタと申します。それにしても洗濯物散らかりましたね、私も拾うの手伝っていいですか。」 「助かるぜ、ルイズの奴俺をこき使いやがるからな。」 「いいんですか、貴族を呼び捨てで呼んでて。」 「いいんだよ。貴族だろーが何だろーが、俺はルイズって呼んでんだ。」 そう言うとシエスタは喜びの笑顔を浮かべた。 「すごいですね!獄寺さんは貴族に媚びたり、諂ったりしない立派な姿勢!尊敬します!」 そして散らばった洗濯物をシエスタと一緒に集め始める。獄寺が洗濯物に手をやった瞬間、 同時にシエスタの手も獄寺の手元にある洗濯物に近き、そして獄寺とシエスタの手が触れ合った。 「あっ、すいません。」 「この程度で動揺すんな。さっさと片付けるぞ。」 シエスタは顔を真っ赤にしながら言った。 「はい。」 その後、水場に着いた2人は洗濯を始める。 しかし獄寺は戸惑っている。 「おいシエスタ、俺洗濯の仕方分かんねーんだ。さっさと片付けないとルイズの奴・・・ ・・・」 獄寺の頭の中に鬼ルイズのような形相が浮かんだ。 「洗濯の仕方なら私が教えますから安心して下さい。」 シエスタに洗濯を教わりながら獄寺は慣れない手つきで洗濯を始め、洗濯が終わったあとは部屋に戻って 獄寺はルイズの着替えを手伝う。 その後、獄寺とルイズは食堂についた。既に食堂は生徒達で賑わっている。 「ここで飯が食えんのかルイズ。」 「そうよ。だけどあんたのご飯はあっちよ。」 ルイズが指を向けた先には固いパンと質素なスープが並んであった。 獄寺は不満な表情を浮かべる。 「ふざけんじゃねぇ!俺にこんな朝食を食わせる気か!」 「平民のあんたが『アルヴィースの食堂』で食事ができる事だけでも感謝することなんだからね!」 「少しぐらい、飯よこせー!」 獄寺はルイズに飛びついてきた、しかしルイズは獄寺を跳ね返した。 仕方なく獄寺は固いパンと質素なスープを口にした。 「ちくしょう、なんで俺がこんな飯食わなきゃいけねぇんだよ。」 その一方獄寺の近くでなにやら生徒達が会話しているようです。 「ギーシュ、お前誰と付き合ってんだよ」 「付き合うって、僕にそんな特定の彼女なんて~」 ギーシュと生徒の会話が気になって獄寺は近くに行く、するとギーシュのポケットから香水が落ち、獄寺はそれを拾い上げて それをギーシュに渡す。 「おい、てめーのポケットからこれ落としたぜ。」 その香水の瓶に気づいたギーシュの友人達が騒ぎ始める。 「ギーシュ、お前二股かけてたなんて最低だな。」 そこから二股がばれたギーシュは・・・ 「君が僕に香水を渡したせいで、二股がばれてしぱったよ。」 「ふざけんな!二股かけてたのはてめーだろ!ばれたら俺のせいにするのかよ!」 「この貴族である僕に向かってそんな態度をとるなんて、外に出ろ!僕が貴族に対する礼儀を教えてやろう。」 「やってやろうじゃねぇか、その勝負受けてたつぜ!」 ギーシュが外に出た後、ルイズが後ろから駆け寄ってきた。 「何やってんのよ!さっさと決闘なんてやめなさい!」 「うるせぇな、俺は売られた喧嘩は買う主義なんだよ。それに俺はあんな二股ヤローには負けねーから。」 早速広場にて決闘が始まる。決闘が始まると同時にギーシュはゴーレムを出す。 「僕はメイジだ、だから魔法で勝負する。『青銅』のゴーレム、ワルキューレが相手になるよ。」 「その程度のゴーレムなんてぶっ壊してやるよ。」 ワルキューレは獄寺に近づき、拳を繰り出すも獄寺は易々とかわしてくのであった。 「その程度じゃ俺は倒せねーぜ。喰らえ!2倍ボム!」 大量のダイナマイトがワルキューレに降り注ぎ、ダイナマイトがワルキューレの近くで爆発した。 広場に大きな煙が巻き上がった。そして煙が消えていくと、そこにはバラバラになったワルキューレの姿があった。 「そんな・・・ 僕のワルキューレが敗れるなんて・・・」 「これで分かっただろ。おめーじゃ俺には勝てないって。」 獄寺はポケットからダイナマイトを取り出し、ギーシュに向けて放とうとする。その時ルイズが獄寺に向かって飛び出してきた。 「やめて!獄寺!」 「何だよ、勝負の邪魔すんじゃねーよ!」 「もしギーシュがそれで大怪我でもしたら、ギーシュの家の人だって黙ってないし、それにギーシュはクラスメイトだし、 とにかくそれをギーシュに放つのだけはやめて!」 「分かったよ。だけど俺はあの二股ヤローと話しがしてーんだ。いいか。」 獄寺はルイズにそう伝えると、ギーシュに近づいた。 「おいそこの二股ヤロー、二度とみっともねぇ真似すんなよ!」 「分かったよ。今回は僕の負けだね。」 獄寺はそう言うと、広場へと戻る。 「ルイズの使い魔の平民、ギーシュに勝っちまうなんて。」 「あの平民強いなぁ、俺だったら戦いたくないぜ。」 「あ、いたいた、獄寺さん。」 そう言いながらシエスタが獄寺に向かってきた 「どうしたんだよ、シエスタ。」 「昼間の決闘見ましたよ!ビックリです。貴族を倒してしまうなんて。」 「当たりめーだ。俺があいつに負けるとでも思ってんのか。」 「いえいえ、とんでもございません。そういえば厨房のみんなで祝勝パーティを開くんです。それで獄寺さんを探してたんですよ。 早く行きましょう。みんな待ってますよ。」 シエスタは獄寺の腕を引っ張っていき、厨房に連れて行く。 その夜、厨房では獄寺の祝勝パーティが行われていた。 「いやぁー昼間の決闘は驚いたねぇ、俺、見たよ!貴族と決闘して負かす平民がいるなんて感動だよ。」 厨房に入ると、コック長のマルトーが獄寺を歓迎している。 前ページゼロのヒットマン
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2484.html
前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ ここはどこだろう。 トリステイン魔法学院じゃないみたいだけど、そうだ、私はタルブの村に来たはず。 ……タルブの村ってこんな景色だったっけ? 昨日散歩したはずなんだけど。 何だか建物の雰囲気が違う。屋根が藁でできてるなんて、変なの。 でも、何でだろう。懐かしい。 あ、誰か来た。小さな女の子。胸に白い猫を抱いている。 「おと~さん!」 え? 女の子が駆け寄ってきて、獣の耳と尻尾が生えているのが解った。 獣の耳と尻尾、オールド・オスマンの恩人がそういう種の亜人だ。 そういえば着ている服もハクオロに似てる。前にもこんな夢を見たけど……。 この女の子は誰だろう? 「アルルゥ」 私は低い男の声で女の子の名前を呼び、大きな手のひらで女の子の黒い髪を撫でた。 「ムックルの面倒はちゃんと見ているようだな。偉いぞ」 「んふ~」 可愛い子。本当の娘じゃない、でも本当の娘のように思ってる。 この人は優しい人。大地のように広大な包容力を持っている。 この人は誰だろう? 「ハクオロ、お疲れ様。それからアンタもね」 「カァちゃん、俺はついでかよ」 「うちの宿六なんかついでで十分だよ」 アルルゥの後ろから獣の耳を生やした女性が、 私の後ろからヒゲを生やしたおじさんが出てきた。 えっと、今この女の人、ハクオロって言ったけど……どこにハクオロがいるの? 「まぁまぁ、オヤジさんも今日は真面目に働いてくれましたし」 「アンちゃん、それじゃまるで俺が普段サボってるみてぇじゃねぇか」 「違うのかい? こないだだって、昼間っから酒を飲んで」 ははは、とみんなが笑う。とても平和で、心安らぐ光景。 ハクオロはどこ? 「さぁアルルゥ。早く帰ろう、エルルゥとトゥスクルさんが夕飯を用意して待っている」 「うん!」 そう言って私はアルルゥと一緒に歩き出した。 トゥス……クル……? その名前をどこで誰から聞いたかを思い出すより早く、視界が黒に染まる。 待って。もっと見せて。これは何? 教えて! 火傷しそうなほどの熱さが胸を焦がした。 第11話 永遠の約束 飛び起きたルイズは、荒い呼吸のまま胸を押さえた。 熱い、痛い、苦しい。激しい動悸が、目覚めたばかりの意識を遠のかせる。 「うっ、く……何なのよいったい。まさか変な病気じゃ……ちい姉様……」 ゆっくりと胸の痛みがおさまっていくのを待ったルイズは、自分が汗をかいてる事に気づく。 朝だけど浴場に行こうか、そう思ってから、ここがシエスタの家だと思い出した。 平民の家にお風呂はあるのだろうか? 昨日見た限りそういう場所は無かった。 仕方ない。シエスタに濡れタオルでも用意させて身体を拭こう。着替えるのはそれからだ。 寝巻きのままシエスタのベッドから降りたルイズは、 隣のベッドで寝巻きをはだけさせ大口を開けて眠るキュルケの姿を見た。 男が見ていないところではずいぶんとだらしないらしい。 そういえばシエスタは? 昨晩同じベッドで眠ったはず、姿が見えない。 もう起きているのだろうか。ルイズはシエスタの部屋を出た。 寝汗をかいたからと濡れタオルを用意してもらったルイズがシエスタの部屋に戻り、 しばらくしてから着替えを終えたルイズがキュルケと一緒に居間へやって来た。 すでにシエスタが作った料理がテーブルに並んでおり、 ハクオロもオヤジさんもすでに席に着いていた。 平民らしい質素な食事ながらも、味は十分おいしくルイズもキュルケも不満は無い。 朝食を終えて、ハクオロは突然意味不明な事を言い出した。 「シエスタ。食事の用意で灰や骨が出ていたら、それを集めてくれないか? できれば量があるといい。それから……そうだな、この辺りに貝殻はあるか?」 「は……? えっと、貝殻は無いですけど、灰や骨ならまだ捨ててない分が」 「そうか、それじゃ集めておいてくれ。それからキュルケ、力を借りたい」 「あら? 何かしら」 キュルケへの頼みは錬金だった。 その辺の石をに硝石に変えて欲しいと頼んだのだが、 火のメイジであるキュルケは錬金が得意という訳ではなく作業はやや難航した。 ルイズは手伝える事がなかったので、シエスタの部屋でのんびりする。 ベッドに寝転がって天井を見ながら、夢を思い返していた。 「やけにはっきり覚えてるのよねぇ……」 変な夢だった。多分、自分は夢の中でハクオロになっていたんだろう。 ハクオロになった自分が、獣の耳と尻尾の亜人達といた。 「……使い魔は主人の目となる……事もある……」 まさかあれは、ハクオロが見ていた夢だったのだろうか? だとしたら彼は記憶を取り戻しつつある? 「……まさかね」 否定したい気持ちがふくれ上がってから、なぜ、と思う。 記憶が戻るなら、戻ればいい。 その方がいい。 その方が、いいはずなのに。 「何だか嫌な気持ち」 目を閉じて、開いたら、いつの間にかお昼になっていた。 変な夢で目が覚めたから寝不足だったのだろうか? ルイズは昼食に向かう。 昼食後、ハクオロはシエスタとオヤジさんを連れて畑に向かった。 やる事のないルイズは、自習のため持って来ていた本でも読もうかと思ったが、 キュルケがハクオロについていくと言い出したので仕方なく自分も同行した。 耕された畑からする土の匂いに、ハクオロはつい微笑を漏らす。 柔らかい土はオヤジさんが丹精込めてくわを振るったのだと解る。 聞けば、この新しい畑を作るための作業で腰を痛めてしまったそうな。 「タルブは年々不作になってきていてな。そこで畑を広げようって話になったんだ」 畑の側の土手に腰を下ろしているオヤジさんのすぐ前で、 ハクオロがシエスタと一緒に畑の土をいじっている。 キュルケは農作業など間近で見るのは初めてで、ハクオロの一挙手一投足を見守っている。 ルイズはつまらなそう、というより今朝の夢を思い返していた。 オヤジさんはハクオロの背中を見つめながら溜め息をつく。 「しかし日の光も水もたっぷりやってるんだが、なぜか作物の育ちが悪くてなー」 「いえ、これは土が枯れ細っているのです。芽がしなびているのはそのせいだ。 シエスタ、私がさっき作った物を」 シエスタに持ってきてもらったかごを受け取ったハクオロは、 その中から灰色の粉末を手のひらですくうと畑の中に振り撒いた。 「あの、ハクオロさん。それってさっきすり潰していた物ですよね?」 「ああ」 シエスタの問いを肯定すると、キュルケも興味を持ったのか畑に入ってきた。 「これって、アレよね。灰と、骨と、石を砕いて混ぜてたやつ。何なの?」 「植物が生育するには色々と必要な成分があって、 特に窒素、リン、カリウムの補充は必要不可欠なんだ。 他にもマグネシウム、硫黄、カルシウム、マンガン、亜鉛……」 「……は?」 意味不明の単語に戸惑うキュルケ達。農業を生業とするオヤジさんもさっぱりのようだ。 「……つまりこれは、土に栄養を与える薬のようなものだ」 「でもそれ、灰と骨と石を混ぜただけでしょ? そんな秘薬、聞いた事ないわ」 「メイジの行う調合とは違うからな。これは化学……そう、化学肥料だ」 「カガク?」 やっぱり理解できてないキュルケ達に困り果てるハクオロだが、意外なところから助け舟が。 「ようするに、ハクオロの国の魔法みたいなものって事でしょ」 ルイズだった。 「ハクオロの故郷は、魔法の在り方とかがハルケギニアとは違うみたいだから」 「そうなの? っていうか、ハルケギニアとは違うって……まさか東方?」 「多分、東方より遠い国よ。ケナシコウルペとかオンカミヤムカイあたりじゃないの?」 「ケナ……?」 ルイズからも意味不明の単語が出てきてキュルケとシエスタの混乱は加速する。 が、オヤジさんはその単語の奇妙な響きに目を細めていた。 一方ハクオロも、ルイズの言に眉根を寄せる。 「オンカミヤムカイ……? ルイズ、その言葉をどこで?」 言われて、ルイズは思い出す。確か今日の夢じゃなく、タルブに来る前に見た夢だ。 「……違ったっけ? オンカミ何とかっていうのをオールド・オスマンが言ってたじゃない」 「それはオンカミヤリューだ。しかし……」 「何よ?」 「……何でもない」 もしルイズがハクオロの夢を覗き見ていたのだとしたら、 当然あの夢はハクオロが見ていた夢であって、 鉄扇の女との会話やアルルゥという少女の夢も覚えているだろう。 夢を盗み見てしまっているというのは、秘密にした方がいいとルイズは考えた。 夢の事をハクオロが話したいなら自分から話してくるだろうし、 話したくないなら「実は夢を盗み見てました」なんて言って気を悪くさせたくない。 それに正直に話したとて、夢を見なくする方法なんて解らないから対策もできない。 余計な心労を与えるのもどうかと思う、という考えは言い訳だろうか。 しばし、視線を交じらせていたルイズとハクオロだが、 ふいにハクオロがあくびをして視線をそらす。 「ハクオロさん、昨夜は眠れませんでしたか?」 「いや、ちょっと奇妙な夢を見て、そのせいかな。 ともかく、こうして化学肥料……薬を撒けば、作物の育ちがよくなりますよ」 「ハクオロさんって博識なんですね。そんなすごい薬の作り方を知ってるなんて」 どうやらシエスタはハクオロの言をすっかり信じているようだ。 他の者は半信半疑といったところか。 ルイズもハクオロを庇護したものの、実のところ化学肥料とやらはあまり信じてない。 とはいえ、本当に効果があったとしてもせいぜい感心する程度で驚きはすまいが。 「ところで、聞いた話じゃその薬、材料も調合も簡単なようだな」 ハクオロが畑に肥料を撒く姿を見ながら、オヤジさんは思いついたように言った。 肥料を撒く手を止めてハクオロは振り返る。 「ええ。粉になるまですり潰して、後は混ぜるだけですから」 「それな、村のみんなにも教えてやってくれねぇか?」 「村のみんなに、ですか?」 「ああそうだ。その薬がどれだけ効果があるかは知らねぇが、何もしないよりはいいだろう。 不作で困ってんのはうちだけじゃないからな、村全体が潤うに越した事はねぇ」 「そうですね。後で村長さんに人を集めてもらって、その場で話しましょう」 オヤジさんの提案を受け入れたハクオロに、今度はキュルケがすり寄る。 「ねえハクオロ。その薬の製法、うちの実家に教えてもいいかしら?」 「うん? 別に構わないが……」 「うふふ。これでまたツェルプストー家の財が増えるわね」 「……民の収穫が増えたからといって、税を増やすというのは感心しないな」 「全体の収穫量が増えればそれに見合った分だけ税は増すでしょうけど、 あくまで見合った分しか要求しないわよ。領主も領民も儲けてこそ豊かになるもの」 その解答を聞きハクオロは満足気にうなずいた。 奔放に見えてキュルケはしっかりとした教育を受けているらしい。 どうも貴族としての在り方が他の生徒達と違う、 理由は彼女がゲルマニアからの留学生という点にあるのかもしれない。 オヤジさんの畑に化学肥料を撒き終えたハクオロは、さっそく村長に人を集めてもらい、 農作業を生業とする村人達に化学肥料の作り方と使い方を教えた。 ルイズやキュルケと違い、彼等はシエスタ同様化学肥料の効果をあっさり信じる。 最たる理由は貴族であるルイズとキュルケのお墨付きがあったからだが、 その二人が化学肥料に対して半信半疑である事実を知られたらどうなるやら。 化学肥料のお礼にと村長はまたもや宴を提案したが、またもや断るハクオロ。 シエスタ宅でのんびり彼女の作った家庭料理を味わった後の一服で平和な雑談をする。 「ほう、ゲルマニアでは平民でも貴族になれるのか」 「ようするに実力主義って事。稼げないメイジより稼げる平民! ハクオロがゲルマニアに来ればすぐ貴族になれるわね。 そのための軍資金ならツェルプストー家が金利ゼロで融資するわよ」 「ちょっとキュルケ! ハクオロを野蛮なゲルマニアに引き込もうとしないでよ!」 ルイズがテーブルを叩き、カップの中の紅茶が揺れた。 葉はもちろん安物だったが、キュルケは構わず優雅に艶やかな唇で飲む。 「んー、おいし。ねえシエスタ、魔法学院のメイドをやめてツェルプストー家に来ない? 私専属のメイドにして上げてもよくってよ」 「え、ええっ? そ、それは、あの、とても光栄です。でも、私はトリステインに……」 「ハクオロとシエスタ、両方ツェルプストーに連れ帰ったら楽しくなりそうねえ」 「……ハクオロさんも……」 シエスタの目の色が変わるのを見て焦ったハクオロが慌てて口を開く。 「いや、私はキュルケの所に行くつもりは無いぞ。 平民でも出世できるゲルマニアの体制は好ましく思うが、私はルイズの使い魔だ」 メイジにとって使い魔は一心同体であり、その使い魔に逃げられたとあっては、 ヴァリエール公爵家のルイズの身分と誇りに一生物の傷をつけてしまう。 元の國に帰る手段が解るまで、あるいは完全に記憶を取り戻すまでは、 ルイズの使い魔で在り続けようと思っているのだ。 元の國に帰る手段が見つかったら? 記憶をすべて思い出したら? (そうなったら、どうするかな) ふいに、目の前で微笑ましい光景を繰り広げている少女達を遠くに感じるハクオロ。 家族、父娘、使い魔、契約者、様々な単語が脳裏をよぎったが結局自分は異邦人なのだ。 翌日、ハクオロは畑仕事を手早くすませると近隣の山を調べに行き、昼に帰ってきた。 「鉄を造れば売れるんじゃないか」 ここでようやくハクオロは知ったのだが、 キュルケによると平民の鍛冶師もゲルマニアやアルビオンでは珍しくないらしい。 貴族主義のトリステインでは平民が貴族の仕事に手を出すなどあってはならない事で、 その分技術力や生産力が遅れて国力を弱めているとか。 そんな訳でトリステインで平民が鉄を作っても品質の信用などまったくされず、 実際売れたとしても相当値切られるのは確実だそうだ。 「トリステインでの製鉄業は基盤から問題があるという事か……」 「でもハクオロったら、製鉄の方法を知ってるなんて、本当に博識なのねー」 さらに翌日、オヤジさんの腰が一人で歩ける程度に回復した。 まだ農作業は難しいがシエスタと一緒にリハビリの散歩に出かけたりする。 シエスタも久々に父親と穏やかな時間を持てて嬉しがっていた。 その間にハクオロは村の地図と睨めっこをして、 新しい水路を引く案を作成すると村長の元へ交渉に行った。 人手も時間もかかるが、完成すれば作業効率は抜群に上がる。 すっかり感心した村長は、宴が駄目ならせめてこれをとブドウ酒を渡してきた。 オヤジさんと一杯やるのも悪くないと思ったハクオロはそれを受け取り、 その晩はシエスタの家で酒盛りが行われた。 タルブの村で作ったというそのワインの味にルイズもキュルケも酔いしれ、 今度タルブからワインを買い取ろうかという話も出てきた。 シエスタも学院への奉公で貯めたお金でブドウ畑を買ってワイン作りをしたいと、 珍しく自分の夢を饒舌に語ってみせた。素面で。 ハクオロとキュルケがシエスタにもワインを勧めたのだが、 オヤジさんが断固阻止と瞳をギラつかせたのだ。聞けば酒癖が相当悪いそうな。 そんなこんなで楽しく忙しく充実した日々がすぎていく。 そしてタバサが迎えに来る虚無の曜日になって、オヤジさんはすっかり元気になった。 朝は畑仕事に精を出し、昼には誰よりも多く昼ご飯を食べた。 シエスタの手料理を当分食べられなくなるから、という理由もあっただろう。 ともかくオヤジさん完全復活である。 そんなオヤジさんが、危険だから入ってはいけないという森へ入っていくのを見つけたのは、 まさに偶然だった。水路の確認をしていたハクオロと、同伴していたシエスタは、 声をかけようかどうか迷った後、こっそりついていってみる事に。 ちなみにルイズは前日好奇心から畑仕事を手伝ってみて、筋肉痛を起こし眠っている。 キュルケはその看病と言いつつ同室で惰眠をむさぼってたりする。 「お父さん、どこに行くんだろう。腰が治ったばかりだっていうのに……。 それに、森は危ないから絶対に入るなって、いつも口を酸っぱくして言っているんです」 それなのに森に入っていくオヤジさん。 随分と慣れているらしく、木の根や岩などを物ともせず進んで行った。 置いてかれまいと慌てて、しかし見つからないようにと追跡するハクオロ達。 見失うのは時間の問題だった。そして見失った。 「……どうしましょう?」 「帰り道は覚えているし、もう少し奥に入ってみても大丈夫だと思うが」 しばらく森を歩いて、二人はオヤジさんの声に気づいた。 誰かと話しているような口調だが、聞こえる声はオヤジさんのものだけだ。 ゆっくりこっそり、近づいてみる。 「……でな、そのハクオロって奴がなかなかしっかりした男でな。 シエスタも随分とご執心みたいでよぉ、俺は嬉しいやらさみしいやら……ダッハッハッ」 そして声の方へ声の方へと向かっていくと、黒い岩の前に立つオヤジさんの姿があった。 誰に対して、何に対して話しているんだろう、と二人は目を凝らす。 オヤジさんの前にある黒い岩、金属のように見える、というか、人工物に見える。 あれは何だろう。 木陰からちょっと身を乗り出して、それの全貌が見えて、シエスタは小さな悲鳴を上げた。 「キャッ!?」 オヤジさんが振り向く。呆然とそれを見上げているシエスタと、ハクオロに気づく。 「……何してんだ、おめぇ等」 「ご、ごめんなさいお父さん。でも、あの、あ……」 シエスタは父と、父の話しかけていた物を交互に見て、口ごもってしまった。 おろおろと視線を泳がせ、助けを請うようにハクオロを見る。 ハクオロは見つかってしまったからか、堂々とオヤジさんの前に姿を現す。 そして、オヤジさんが話していたそれに近づき、その表面、足に、手を当てる。 「おい、こいつに触ると危な……」 「アヴ・カムゥ」 ハクオロは、それの名を口にした。 「……ナニィッ?」 「なぜ、アヴ・カムゥがこの國に」 ――アヴ・カムゥ? 変な名前。これは、クスカミの腕輪のように、ハクオロの世界の物? 「やいハクオロ。おめぇ、記憶喪失の癖にアヴ・カムゥの名前を知ってるのか」 オヤジさんは自然にアブ・カムゥという単語を口にした。 まるで以前からその名前を知っていたような口振りで。 「……お父さん? ハクオロさん? いったい……」 困惑気味のシエスタが、恐る恐る二人とアヴ・カムゥに近づく。 そして、シエスタは間近で見るアヴ・カムゥの迫力に息を呑んだ。 それは巨人だった。 黒い鉄の鎧を着た巨人が、木々の間に膝をついている。 その大きさは十数メイルほどにも及び、明らかに『人が着る鎧』ではないと理解できる。 が、ならばこの鎧はいったい何だというのか。 「これは、眷属たるシャクコポル族にのみ与え、た、られた、力。 クンネカムンがラルマニオヌを滅ぼす際に、我等が再び争った時に使われていた物。 という事は、クスカミの腕輪同様、アヴ・カムゥもこの地に流れ着いていたか」 「……ハクオロさん?」 人が変わったように、淡々と言葉をつむぐハクオロに、シエスタは不安を覚えた。 今、手を伸ばせば届く距離にいる彼に、どれだけ手を伸ばしても届かないようにさえ思える。 ――知っている。そう、私は知っている……でも、こいつは、誰? 「しかし、そうなると、如何にしてこのような場所にアヴ・カムゥを隠したのか。 平民の力では到底動かせるものではない。 かといってメイジがこれを見れば、興味を持ち調べようとするに違いない。 となると眷属……シャクコポルの者が乗っていたと考えるのが妥当か。 子は母の血を継ぐ。なるほど、この娘に耳が無い真の理由……納得がいく」 「え? えっ? 私の、耳? ハクオロさん、いったい何を……」 不安が、恐怖に変わり、震えそうになった肩に父の大きな手が置かれた。 「まあ、そうだな、シエスタが子供を作る前には教えなきゃならんかった事だ。 ハクオロも色々と知ってるみてぇだし、今ここで説明すべきかもなぁ」 「聞かせてもらおうか、アブ・カムゥがなぜここにあるか、そしてシエスタの正体を」 ――正体? 平民のメイドの? この巨人アヴ・カムゥと何か関係が? 時は二十年近く前にさかのぼる。 若く働き盛りだったオヤジさんは、ある日、とある衝動に駆られた。 「ハチミツ食いてぇ」 が、甘い物のお値段は高い。そこで彼は森へ行き、自分で蜂の巣を取ろうとした。 遭難した。 「……ここは、どこでぇ」 夜の森。右も左も解らず途方に暮れたオヤジさんは、とりあえず焚き火をした。 そうしたらその灯りに引かれてやってきたのが……黒い鋼の巨人。 オヤジさんはしばし呆然とそれを見上げ、慌てて駆け出した。 『あっ! ま、待ってぇー! 置いてかないでー!』 鎧の中から聞こえるくぐもった、けれど女の子のものと解る声。 余計に驚いたオヤジさんが立ち止まると、巨人は彼を掴まえようと手を伸ばした。 バキベキボキ。指が、木に触れて、折れる。 「ぎゃー」 下敷きになったオヤジさん。もう逃げられない。 取って食われるんじゃないかと怯えるオヤジさんだったが、 巨人は「わー! ごごご、ごめんなさいごめんなさーい!」と、 大慌てで倒木を持ち上げてオヤジさんを助けた。 そして。 『あの……つかぬ事をお聞きしますが、ここ、どこですか? それから……えっと……あなたは誰ですか? ここはどこの國ですか?』 「こ、ここぁトリステイン王国、タルブの村の近くにある森ん中だ」 『と、とりすてーん皇國? じゃあ、クンネカムンはどっちですか?』 「くんくんかむん? 何でぇ、そりゃ」 『えー! クンネカムンを知らないんですか!? ま、まあ弱小國だから仕方ないですけど……じゃあ、ラルマニオヌは?』 「らるるにおん? だから知らねぇってそんな国」 『……うわーん! おとーさーん! おかーさーん! ここどこですかー! ゲンジマル様は何処におられますかー! うぇえぇぇぇん!』 巨人との話は全然先が見えず、双方困り果ててしまった。 とりあえずデカいナリの割には小心者のようなので安心したオヤジさんは、 弁当にと持ってきていた果物を一緒に食べないかと相談した。 すると、巨人は恐る恐る訊ねてくる。 『あ、あの……シャクコポル族ってどう思いますか?』 「は? しゃくれあご族? 知らんなー」 『じゃあギリヤギナは? エヴェンクルガは? オンカミヤリューは?』 「ぎりぎりやぎ、えべんるが、おんかみゅーりゅー? 全部知らんぞ」 『じゃあ、私の事、いじめませんよね?』 「いじめる訳ねーだろ」 安心した巨人はその場に腰を下ろし、そして、その背中から人が出てきた。 「ふーっ。外の空気はおいしいです。もうお腹ペコペコー」 オヤジさんとそう違いのない歳の彼女は、 軽い足取りで焚き火の前まで降りてきた。そして顔がはっきり解るようになる。 パッチリとした大きな目に、黒く艶やかな髪、白い肌。 奇妙な衣装の上からでも解る大きな胸。でも、それらはとても些細な事で。 耳。 白い耳が横にピョーンと伸びてます。 「え、え、え……」 「ほえ?」 「エルフどぁぁぁぁぁぁあっ!?」 腰を抜かして尻餅をついたオヤジさんは、完全にパニックに陥ってしまった。 きっと『しゃここぽる』とか『ぎりやぎやぎ』とかはエルフが使う言葉で、 そしてこのエルフは焚き火を使って自分を焼いて食べちゃったりしつつ、 この鉄の巨人で村に下りていって子供をさらって身代金要求とかするのだ。 「そんな事しません!」 混乱のあまり考えを口にしていたオヤジさんをの言葉を否定する彼女。 「だいたいエルフって何ですか? 私はシャクコポル族です!」 不幸中の幸いというか、オヤジさんが腰を抜かしたため、 その場でじっくりたっぷり時間をかけて誤解を解く事ができた。 彼女はクンネカムンという小國の村に住む農民の娘らしい。 ラルマニオヌという大國の弾圧を受けひもじい思いをしていたとか。 「く、クンネカムンとラルマニオヌが国の名前って事は解ったが、 そんな国聞いた事ねぇぞ。もしかして東方の国か?」 「多分そうだと思います。私は國の名前は詳しくありませんが、 あなたの着ている服なんて初めて見るとても奇妙な物ですから。 それに耳も尻尾も無いなんて……すっごく変です」 「……亜人か? お前?」 「違います。亜人って何ですか、私はシャクコポル族です。 シャクコポル族はクンネカムンに住んでいる弱い民です。 ラルマニオヌを納めるギリヤギナの弾圧を受けていて、 あのアヴ・カムゥに乗った兵士さんが村を助けにきてくれたんです。 でも村は私を残して全滅しちゃって……。 兵士さんは私を助けるためにアヴ・カムゥを降りた隙をつかれて、 半死半生だったギリヤギナの兵の放った弓に倒れてしまいました。 私は、アヴ・カムゥの遺言を受けたんです。 このアヴ・カムゥをクンネカムンの皇か兵か、 ゲンジマルというエヴェンクルガのもののふに届けて欲しいと」 ――ゲンジマルという名前を聞いて『彼』の胸がざわめくのを感じた。 しかし彼女はその遺言を果たせずに終わった。 彼女はアヴ・カムゥに乗って届けに行こうとしたが、 村から出た事がないため道に迷ってしまいうろうろしていたら夜になり、 気づいたら月がふたつに増えていて、木々も見慣れぬ物になっていて、 お腹は空いたし身内はもういないし悲しくなってくるし。 そんな時に、オヤジさんの焚き火に気づいたそうだ。 それから遭難者二人は、三日ほど森ですごした。 協力して食べ物を探し、一緒に食べ、他愛の無い話をしたり。 気がついたら、恋に落ちていた。 アヴ・カムゥの手に乗って木の上に出してもらうなどして、 オヤジさんはようやくタルブの村を発見した。 彼女は喜んだが、オヤジさんは悩んだ。 彼女を置いては行けない。 彼女を連れても行けない。 この白く長い耳を見れば、みんなエルフだと思う。 何とかエルフでないと誤解を解いても、亜人を受け入れる村など無い。 かといって森の中で彼女を匿うのも困難だ。 だから、彼女が「耳を落とそう」と提案した時、心から迷った。 耳を落とせば人のフリができる、一緒に暮らす事ができる。 だが、誰が耳を落とす? 決まっている、自分だ。 恐怖に震えながらも、一生懸命笑顔を作って提案してきた彼女に、 自ら耳を落とすなどという恐ろしい行いをさせられはしない。 だから、落とすなら、それは自分の役目。 オヤジさんは、山狩りように持ってきていた鉈を火であぶり、 彼女は、悲鳴を上げないよう手頃な大きさの枝を咥えて、 やけに双月が明るいのが印象的だった夜、耳を切り落とした。 彼女を連れ帰ったオヤジさんは、遭難中に彼女と出会ったと村人に紹介した。 どこの村の者か、名前は何というのか、すべて誤魔化すため、 彼女には記憶喪失という事になってもらって。 夫婦となった二人は、後年、一人の女児を授かる。 だが。 「子供は母親の血を継ぐから、生まれてくる子もきっとシャクコポル……」 危惧していた彼女は産婆を断り、夫と二人で出産に臨んだ。 そして生まれたばかりの女児の、白く長い耳を、オヤジさんは隠した。 布で包んで、絶対に耳が見えないようにして、 村の女達が赤子の世話を手伝おうと言ってきても断って。 そして、産婆無しで子を産んだ彼女は、産後の肥立ちが悪く弱っていった。 シエスタと名づけられた女児がある程度元気に育った頃、 オヤジさんは自らの手で再び、妻にそうしたように、愛娘の耳を削いだ。 その時のシエスタは、かつてないほど泣き喚き、熱も出して大騒ぎになった。 シエスタの体調が落ち着くとほぼ同時に、彼女は息を引き取った。 「子供は母親の血を継ぐ。シエスタもいつかお嫁さんになる日がくる。 ……この子が幸せになれるように、後は、お願いね」 それが最期の言葉。 「そんな事が……お母さんが、亜人だったなんて……」 ショックを隠せない様子のシエスタを、オヤジさんは優しく抱きしめた。 ハクオロは無言でオヤジさんの昔語りを聞いていて、視線はアヴ・カムゥに向けている。 「おめぇの服を見た時、すぐ解ったぜ。あいつと同じ國から来た奴だってな。 けど仮面はともかく、耳は俺達と同じだし、尻尾も見当たらねぇ。 だからただ同じ服を着ただけの、関係ない奴かとも思ったが、 このアヴ・カムゥの名前を知ってるんなら、やっぱり同じ國から来たんだなぁ」 「……確かにかつて、クンネカムンについていた時もある。 しかし、シャクコポルの娘から聞いた話、それだけではあるまい?」 「シャクコポル族は、敬ってる神様が他の民族とは違って迫害されてるだとか、 アヴ・カムゥはシャクコポル族しか動かせないとか、 まあだいたいそんな事も聞いたがな。何分、あいつも元はただの農民。 何でトリステインに来ちまったのか、何で月の数が違って見えるのか、 なんもかんも解らねぇ事ばかりだったよ。なぁ、クンネカムンって国は――」 「滅んだ」 残酷な一言を、ハクオロは淡々とした口調で告げた。 「クンネカムンは他との共存を拒み、全土統一へと踏み出し……滅んだ。 我が友、ゲンジマルも楔に抗い、その命を主君に捧げた。 残されたシャクコポル族の数、そう多くはあるまい」 「……そうか。参ったなぁ、アヴ・カムゥをいつかクンネカムンに返すって、 あいつと約束してたんだが……もう約束は守れねぇってこった」 ――それからしばらく、三人は押し黙ったままだった。そして、私は。 頭に走る激痛でルイズは目を覚ました。 「いった~い……な、何?」 「いつまで寝てるのよ。もう来てるわよ」 「え?」 頭をさすりながらルイズは窓の外を見た。シルフィードが、部屋を覗き見ている。 「あ……タバサ、もう来たんだ」 「せっかくだから、こっちで夕食を食べて行きたいみたい。 ハクオロ達はまだ帰ってこないのかしら? っていうか何してんのかしら?」 「のんびり昔話してるわよ」 言いながらルイズはベッドから降り、うんと背伸びをした。 目はもうすっかり覚めている。元々の睡眠が浅かったのも理由のひとつだが、 焼けたような胸の痛みが一番の理由だろう。 「ねえ、ルイズ」 そんな彼女にキュルケは問う。 「どうして昔話してるって解るのよ」 夢で見た。 なんて正直に答えずに、「そう思っただけよ」と言ってルイズは部屋を出た。 しばらくして帰ってきたハクオロ達は、迎えに来てくれたタバサを歓迎し、 さっそくシエスタがタバサ好みの料理を振舞ってくれた。 「今日の芋粥にははしばみ草も入ってますよー。たーんと召し上がれ!」 「おお! 今日ははしばみ草入りか、この苦味がいいんだよなぁ」 「……美味」 ハクオロとルイズとキュルケは芋粥以外の料理をたーんと召し上がったそうな。 夕食後、タバサのシルフィードに乗ってみんなは魔法学院への帰路につく。 何か悩み事があるような素振りを見せるシエスタの肩をハクオロが抱いていたが、 ルイズは「今日は特別」とぼやいて見逃してやる。 まさか夢だけでなく、オヤジさんとの秘密の話まで盗み見てしまったなんて、 もうどう説明していいやらとルイズ自身悩んでいたのもあるが、もうひとつ。 (アヴ・カムゥを見てからのハクオロは、何だか雰囲気が違って見えた……) ハクオロを見るものを見、聞くものを聞く、この能力。 ハクオロの胸に刻まれた使い魔のルーンの仕業で間違いないだろう。 予感がした。 いつか、とんでもないものを見る日が来るという予感。 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4078.html
前ページ次ページゼロの軌跡 第十話 蝕、繋がる世界 「ヴァリエール様、レンちゃん。ようこそ、タルブ村へ!」 「久しぶり、シエスタ。元気そうで嬉しいわ」 「紅茶とデザートが楽しみで飛んできたのよ」 「今日は村を挙げて歓迎しますから。覚悟しておいてくださいね」 タルブ村に着いたルイズとレンはシエスタの歓迎を受けた。 覚悟?と首を捻る二人だったが、それを問う間もなく腕を引かれ彼女の家へと押し込まれる。村人の歓声が、二人の後ろで閉じた扉をこじ開けんばかりに揺るがした。 「来たぞ、われら平民の救世主!」 「ミス・ヴァリエール!気高くも偉大な公爵令嬢!」 「ミス・レン!可愛らしくも異才の天才戦士!」 「新しい貴族。平民を守る女神の来訪だ!」 「村の人達に一体何て伝えたのよ、シエスタ」 「いえ、私のせいだけではないんですよ。だけ、では…」 恰幅のよい女性がいきなり抱きついてくるのをかわすことも出来ず、ルイズは右腕にレンは左腕にそれぞれかき抱かれた。二人よりも遥かに豊満な胸。濃厚な木と草の香りが立ち込める。 ひとしきり揉みくちゃにされながらもどうにか解放されたルイズとレンの周りにはたちまち人垣が出来る。口々に褒め称える村人への対応に苦慮しながら、後でシエスタを問い詰めようと固く決意する二人だった。 遠いところを旅されてお疲れだから、とシエスタのとりなしの甲斐あってかやっと落ち着くことの出来たルイズとレン。客間へとあがり、淹れてもらったお茶を飲みながら話を聞くことにした。 「で、シエスタ。どんな英雄譚を村中にばら撒いたのかしら?レンは何匹のドラゴン相手に大立ち回りをやってのけたことになってるの?」 「そんな人聞きの悪いことを言わないで、レンちゃん。あの、ルイズ様もそんな目で見ないでください。 ありのままを話しただけですよ。他の貴族が徒党を組む中で彼らに喧嘩を売って、平民の私を助けてくれたんだって」 悪びれずに答えるシエスタ。思わず頭を抱えるルイズ。一人優雅にカップを傾けるレン。 「それにしたってあの熱狂振りはねぇ…。なんでも私は気高くて偉大な公爵令嬢らしいじゃない」 「レンは天才戦士なんですって。まあ間違いじゃないけどね」 「そうですよ、ルイズ様ももっと堂々と振舞ってください」 ゼロであることを認めたとはいえ、ルイズから劣等感が完全に払拭されたわけでは無論なかった。 最後まで一人で彼らに立ち向かえたのならばまだしも、レンに助けてもらったと認めているルイズは素直にその賛辞を受けることが出来なかった。しかも、肝心の決闘は全てレン一人の実力ではないか。 そう考えるとやはり自分はその賞賛に値しない。ルイズは懊悩する。 結果、行き場のない戸惑いは糾弾にその姿を変えて矛先をシエスタに向けた。 「それだけでああも歓迎されるとは思えないけど。大方、覚えのない善行を二、三十創りあげたでしょう。今なら正直に話せば許してあげるわよ」 「そんなことしてないですって。本当ですよ。ヴァリエール様。 もう一つの理由は、あれです。ヴァリエール様とレンちゃんが町や村を周って平民の力になってるっていうじゃないですか。その話を何人もの旅の方が触れ回ってるらしくて。うちの村にも来て熱く語っていましたよ」 その答えにルイズは目を見開き、レンはカップを持つ手を止めた。 二人ともそこまで評判になることをやっていたという自覚はなかったのだ。 メイジではなくとも立派な貴族としての、その自らの修行の一環としてそれを行っていたのだし、 レンはといえばその理由の多くを、帰還の手がかりを探すことが占めていた。無論のこと、ルイズとの旅は楽しかったし、行く先々で感謝されるのには確かに喜びを感じてはいたが。 「あのね、シエスタ。私別にそんなつもりでいたわけじゃ…」 「なら更に素晴らしいじゃないですか!意図しての人気取りでなく、その自らの望む姿にかくあろうとした、無為から生まれた行為だなんて。流石はヴァリエール様です。これはみんなに伝えないと!」 「…もう何を言っても駄目みたいよ、ルイズ」 早速新たなルイズ伝を広めようと立ち上がったシエスタを押し留める。 尾ひれ背びれをつけないよう厳重に釘を刺し、給仕のために下に降りていくシエスタを見送る二人。 「大丈夫かしら…」 「レンはシエスタが大騒ぎする方にナサロークの皮三枚賭けるわ」 「私も同じ方にペレグリンの羽五枚」 賭けにならないじゃない、とレンが口を尖らせた時、階下の拍手と喝采が床を震わせた。 「なんていうか…」 「良くも悪くも田舎よねぇ…」 夕食までの時間を釣りや散策でのんびり過ごしたルイズとレンを待っていたのは、シエスタが腕によりをかけた料理だった。 ヨシェナヴェという奇妙な語感のそれは名前と同じく二人の舌には馴染みのないものであったが、美食を食べなれているルイズをも存分に満足させた。 が、久方ぶりの村の宴がそのまま大人しく終わりを迎えるはずもなく。 「なるほど。覚悟、ね」 思わずレンは一人ごちる。 皿に大盛りにされた具もなくなり鍋の底が見え始めた頃には、場は惨状を呈していた。 周りに赤い顔をしていない人間は一人もいないし、既に足元には酔いつぶれた男たちで立錐の余地もない。 誰も彼もが相手を選ばずに踊り狂い、歓声と嬌声は途切れずに広間を飛び交う。誰かが歌を口ずさめばたちまちソロはデュエットになり、コーラスへとその場の人間を巻き込み広がっていく。 主人も客も上座も下座も貴族も平民もなく手を鳴らし足を打ちつけ、笑顔で開かれた口は決して閉じることはない。 その喧騒の中でも一際大きく響くのはグラスが打ち鳴らされる音。乾杯の声は一瞬たりとも途切れてはいなかった。 レンは年齢を理由に差し出される酒を断ることも出来たが、ルイズはそうもいかず。一杯飲み干せば二杯の酒が、二杯を空にすれば五杯のグラスが、息つく暇もなく更に多くのワインが注がれた。 シエスタにいたっては完全に出来上がって、先ほどから少佐もかくやという演説をぶちかましていた。 「私はレンちゃんが好きだ。私はレンちゃんが好きだ。私はレンちゃんが大好きだ」 酒と料理で熱く火照ったレンの身を貫く悪寒、首に冷たく氷の柱。夜のシエスタには気をつけろと囁く本能に従い、倒れる寸前のルイズを引き摺って外に出る。 その背中に突き刺さる、シエスタの恐ろしいまでにうららかな宣誓。 「我が家の名物特製ヤムィナヴェ、行きますよー!」 魔女の釜はまだまだその蓋を開けたばかりのようだった。 「有難う、レン。助かったわ」 「ルイズがまたアンロックでも唱えるのはいただけないからよ」 涼しい風が二人を優しく撫でる。回った酒も心地いい冷気に醒めていくようだった。 そういえば数日前にもこうやってレンと歩いたことをルイズは思い出す。 その時はレンが少しだけ、その外見に相応しい少女らしさを垣間見せた気がする。 もしかすると今夜も彼女の話を聞けないだろうか。 「ねぇ、レン」 「なあに、ルイズ」 「その…、元の世界にはやっぱり帰りたいのよね」 直接的に聞くことも躊躇われ、かといって話の接ぎ穂にも困り、ルイズは今まで隠してきた自分の願望交じりの言葉を吐き出してしまう。 今のルイズにとって、レンはかけがえのない親友でもあり盟友でもある。少なくともルイズはそう思っていた。レンがルイズのことをどう思っているかは未だ確たる答えを得てはいなかったが。 これを聞いてしまうと、ルイズは自分の心が覗かれてしまうような気がしていたのだ。 「どうかしらね。よくわからないわ」 返ってきた声は冷静で、以前見せた緩みはなかった。 レンなりに先日の失態を、勿論ルイズは失態などとは思っていないが、気にしているのかもしれなかった。 「トリステインでの暮らしも悪くないし、リベールに戻って何かするわけではないのだけど」 レンの答えはそこで途切れる。 否定で終わったその言葉の続きが気になったが、ルイズにそれを問うことは出来なかった。 会話がとまり、不自然な沈黙から目をそらす様に向けた視線の先。村の外れ、一角だけ不自然に整理された木立がルイズの目を引いた。 そこにまるで祀られているかのように、石碑が置かれていた。 「あれ、なにかしら?タルブ村の守り神か何「…ッ!!」」 ルイズの言葉に視線をそちらに向けた時、レンのつぶらな瞳は大きく見開かれた。 そしてレンはルイズの言葉を聞かずに石碑に向かって走り出した。 間違いない。あれだ、あの石碑だ。 アンカー。アーティファクトによって作られた揺らぐ虚構世界の中で、庭園と星層を繋ぎとめていたそれ。 あれこそが、トリステインを含むこの世界とリベールを含むあちらの世界を結ぶ鎖。 遂に見つけた、元の世界に帰るための通行証。 レンは脇目もふらずに石碑に走り寄る。 「ちょっと、レン。どうしたのよ」 「ティータ、クローゼ。聞こえる?レンはここよ。オリビエ、アガット、ジン。誰か返事をして」 ルイズの声も耳には入らないのか、闇に佇む石碑に向かってレンは必死に呼びかける。 「シェラザード、ミュラー、ユリア、リシャール、ケビン、リース」 それでも石碑は何の反応も見せなかった。 それをわかっていながらも、レンは叫ばずにはいられなかった。 「…エステル!ヨシュア!」 かそけきその祈りが女神に届いたのか、その名前こそに込められていたものがあったのか。 石碑は青い輝きと共に、佇む人影をを映し出した。 中空に描き出されるスクリーンにはエステルとヨシュアの姿があった。 場所はどこかの湖畔だろうか。雲一つない青空の下、釣り糸をたれるエステルと少し離れて火を熾すヨシュア。 しかし、姿は見えども声はせず。届けられるのは映像だけで、魚の跳ねる音はおろか、火の爆ぜる音も二人の声一つすら聞こえてはこなかった。 「あの人がエステル…」 「ねぇ、エステル!こっちを向いて!」 叫べども叫べども、声は辺りの闇に吸い込まれるばかり。 石碑が青い光を失い、次第に朧げになっていくその姿に耐え切れず、遂にレンは悲鳴のように彼女にすがった。 「助けて!レンを助けて!エステルッ!!」 その時、エステルが振り向いた。 無邪気なその顔には驚愕が彩られ、レンに手を伸ばす。 レンもその短い腕を、あらんかぎりに伸べる。 しかし、その手は繋がることなく、石碑が光を失うと同時にエステルとヨシュアの姿も溶けるように消えていった。 伸ばしたその腕を力なく下ろし、レンは膝をついた。 ルイズもまた、言葉もなく立ち尽くすばかりだった。 このままではいけないと、一歩踏み出したルイズにレンは一言、彼女を拒絶した。 「来ないで。…しばらく一人にしておいて」 前ページ次ページゼロの軌跡
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1128.html
第二陣のすすぎも完了し、汚れの少ない第三陣と落っことした第四陣の洗濯物へ取り掛かる。 あれから三十分近く正座で説教を受けさせようやく落ち着いたのか、シエスタも頑固な汚れの 取れた洗濯物を干せて上機嫌だ。 ちなみに正座で説教は経験がある(主にjojoの巻き添えで)ので癖になっていたようだ。 「…で進級したメイジが己の力量や系統を示すために使い魔を召喚する伝統行事、まぁ一人前だってことを示す儀式みたいなものね」 二つ並んでそびえる泡の山のそばで手頃なところに腰掛けたキュルケがシーザーに解説していく。 「成る程。俺にのしかかっていたのはその類か」 かつてシーザーは貧民街で野宿の毎日を送っていたこともある。そのとき野良犬や猫、 たまに鳥などが彼を枕にして眠り、お陰でシーザーは二日に一回は脱水症状と酸欠の ツープラトンで苦しみ最悪な目覚めを味わっていた。 波紋の力で安眠枕に。嫌な体質である。 もっとも、童話でしか見たことのない生物に囲まれたのは初めてのことだが。 「で例年通り全員通り召喚できたんだけど一人だけ問題児がいたのよ。」 「問題児?」 「その娘ったら座学はできるのに肝心の実技が駄目駄目でね~。 『召喚』も何度やっても爆発して何十回とやってようやく成功したんだけど」 「だけど?」 オウム返しに尋ねるシーザー、話に耳を傾けながら干していくシエスタに焦らす様にためるキュルケ。 「今までにない大爆発を起こして出てきたのは、なんとただの平民だったのよ! いや~、体中プルプルして先生に助けを求めて泣きそうで泣かないあの娘の顔は 額縁に収めたいくらいだったわ」 「(よく見てるな)」 シーザーはほくそ笑んだ。内容こそ悪口だがまるでつい先ほど起きたかのように事細かに 話す様子はその娘を気にかけている証拠。気の置けない友人まで推定あと三十八歩ぐらいだろう。 …意外と遠いな。 とシーザーの中で何かが引っかかった。 召喚?遠くのものを呼び出す魔法。そして呼び出された平民=人間?ここは見知らぬ土地。 「しかもその娘ったら契約の時顔真っ赤にしてキスしようとしたら、逆に情熱的にキスで返されたもん だから貴族の面目なんてどっかに吹っ飛ばして使い魔に蹴りいれてたのよ、多分あの娘初めてだったんじゃない?」 初キスで舌まで入れられるなんて黄金体験よね、とケラケラ笑うキュルケの声がシーザーには遠く聞こえた。 何か覚えがある、特に脇腹と鳩尾の辺りに。 「参考までに聞こう。その使い魔ってどんな奴なんだ?」 できればそうあって欲しくないと泡がついたままの手を額に当てるシーザーをキュルケが指差した。 お約束の如く後ろを振り返り、目が合ったシエスタが洗濯物握り締めたまま千切らんばかりに首を高速で横に振る。 それはそれで残念だと思いつつ念のためシーザーは自分を指差しキュルケに向き直ると、したり顔で 一回だけ頷いた。 「…やっぱ俺なのか」 なんとなく予想していただけショックはないが同時にどっから反省すべきかシーザーは悩んだ。 彼の心の奥から湧き上がる覚えのない恐怖はきっと悪夢の名残だろう。 「あきれた。女の子の初めて奪っといて覚えてないの?」 「シーザーさん、不潔です」 苦笑するキュルケとジト目で睨むシエスタにシーザーは慌てて弁解する。 「いやだって無意識だったからな」 「無意識で舌まで入れたのに覚えてないんですか?」 「いやだから」 「無意識だから女の子の初めて奪って舌入れて押し倒したんですか?」 「(ボディブローで)倒されたのは俺だ」 「無意識だから初めての女の子押し倒して舌入れてかき回して覚えていないんですか?」 そんな妄想何処で覚えたんだシエスタ。というか誰かに聞かれたら誤解されるからヤメロ。 既にシエスタに完全に誤解されてることはさておき、このままだと小一時間問い詰められかねないシーザーは必死に考えた。 ①:冷静なシーザーはいや無意識だったら覚えるの無理だろ?と知的に突っ込みをいれる ②:経験豊富なシーザーはベッドの上で奪ったんじゃないからいいだろと開き直る ③:現実は非情である。「フヒヒ、サーセン」と詫びつつ逆転の発想でシエスタを押し倒す。 「(③は死亡確認じゃねーかっ?!)」 心の中に浮かんだ選択肢に突っ込みをいれつつすぐさま行動に移る。 「すんませんこれ以上は勘弁してください」 恥も外聞も空気も知ったこっちゃなく土下座。暴走している女性はこれぐらいぶっ飛んだ行動をしなくては正気を取り戻してもらえない。 男のプライド?誇り?そんなものありませんよファンタジーやメルヘンじゃないんですから。 「格好悪」うるせぇぞキュルケ。 「…はぁ、まぁ悪気もなかったようですし、許してあげます」 究極的に情けない格好のシーザーを見て頭が冷えたのか、ため息まじりにようやく許した。 シーザー・A・ツェペリ、なんというかこの世界に来てからまったくいいところがない。 「で、俺を召喚したその女ってのはドコのどいつだ?」 遠くからナチスの科学力は世界一ーッ、って声が聞こえたが気のせいだろう。 せめてその女に文句の一つや二つは叩き込みたいと、シーザーはキュルケに尋ねた。 「ああ、それならあとで連れてってあげる。目的の半分を達成したしね」 「目的?」 「召喚された平民ってのがどんな奴なのか。もっとも洗濯が巧くて面白い奴だと思わなかったけど」 「洗濯は特技じゃねぇ…」 不平を漏らすシーザーの視界の先に、のっしのっしと歩いてくるやたらでかい蜥蜴が見えた。 その蜥蜴はキュルケの横に来ると嬉しそうに喉を鳴らす。 「この子があたしの使い魔”火蜥蜴”のフレイムよ。もう半分はこの子を呼び戻して早起きついでにあ たしも散歩に出たって訳」 「こいつ、お前の使い魔だったのか」 きらきらと鱗を輝かせるフレイムを愛しそうになでるキュルケに対しシーザーに嫌な記憶が蘇ってきた。 ボロ切れのようになったシーザーを枕にしてのしかかる奇妙な畜生たち、そのせいで三本くらい疲労 骨折したのだが中でも腹に寝そべる感触。 やけに体温が暑く、いや熱く腹部の大部分が低温やけどになってしまった。波紋で治すまで痒くてかゆくて、川の上で波紋を集中しながら練ってなんとか治せたのだ。 「何、この子なんかした?」 「いや、とても情熱的な抱擁をもらってね」 シーザーは若干皮肉をこめたが、ふーんと興味なさそうにキュルケに返された。 …コノカユサ ハラサデオクベキカ。 心の中で復讐の炎を燃え上がらせるシーザーを尻目にフレイムが甘えたように鳴いた。 「どうしたのフレイム…あ、そっか」 その様子を不思議に思ったが、すぐに合点がいきシエスタに話しかける。 「ねぇそろそろ朝食の時間じゃない?この子がお腹すいたって催促しているんだけど」 「あ、そうですね。私も厨房の手伝いに戻らないと」 幾分か硬い表情のとれたメイドの態度を見てシーザーのおかげかな、とキュルケは思った。 「でも…」 困った表情を浮かべるシエスタに合点がいったシーザーが笑って言った。 「ああ、残りは僕がやっておくよ」 「有難うございます!残ってるのは貴族の方に頼まれたものだけですから気をつけてくださいね?」 了解、と返すシーザーに意味有り気な笑みをキュルケが浮かべた。 「何だ?」 「べっつにー。ねぇひょっとしてゼロの?」 シーザーの質問を無視してキュルケは尋ね、シエスタが困ったような笑みを浮かべた。 「何なんだよ一体…」 シーザーの当然の疑問に、二人は無言で眼を合わせ苦笑し蜥蜴は喉を鳴らした。 「それじゃあ先に失礼しますね」 シエスタは二人に礼をして駆け出し、ふと思い出したようにシーザーに尋ねた。 「シーザーさん、その不思議な力はなんていうんですか?」 桶に手を突っ込んで泡の塔を作り上げるシーザーはごく普通に、少しだけ格好つけて答えた。 「俺の力は”波紋”。あらゆる生命のもつ勇気が生みだす誇りさ」 「波紋ですか…とっても素敵な力ですね」 シエスタはそういい残し走り出した。 シエスタは今日初めて出会った青年に不思議な魅力を感じていた。 水の上に立ち集中するその不思議な姿は朝日に照らされ神々しく、刃物のように鋭い空気を纏って。 けれどボロボロになって戻ってきた時は怖がる私を心配するように大きな体なのにオロオロしていて、 不思議な力で洗濯を手伝ってくれたり砕けた様子で話をしてくれる様子は面白くて、凄く怖い眼をして 貴族の人に喧嘩を売ったかと思えば土下座したりしょんぼりする様子はすごく可愛くて。 くるくると変わるその青年はシエスタには今まで見たこともない人間であった。 そしてほんの少しだけ興味が沸いてきた。 (彼は何者なのだろう?) 貴族ではないと彼は言った。では私たちと同じ平民なのか?違うだろう。 彼は遠いところから来たといっていた。どんなところなんだろう? そして…あの力。あれは何なのだろう? 吸血鬼を倒して水に浮いて洗濯をして、そんな風に軽く言っていたけど多分それだけじゃない。 もっとすごい確かなもの。『波紋』と彼は言った。 (あらゆる生命の持つ、勇気が生み出す誇り) きっと彼の全てがそこにあり、その強さもそこから生まれるのだろうとシエスタは感じた。 (私にもそんな力があるのかな) きっととても遠いのだけど、追いついてみたい。彼のように振舞ってみたい。 厨房に駆けながらシエスタは心の中で頑張ろうと決意した。 一方そのころ。 (波紋…ですか…とっても素敵な力ですね) 特殊能力【波紋】:洗濯がとても快適に。水の上に立てます。 「(嫌過ぎる…)」 シエスタの中で間違いなく誇り高い力を誤解されているであろう事にシーザーは嘆いた。 こういう事は強引に修正しても印象深いことと混同してしまいかえって良くない。 が、せめて洗濯が巧くなるという誤解はどうにかして欲しい。 「(その辺に吸血鬼が二、三匹いねーかな…柱の男でもいいや)」 いたら困るのはお前だ、シーザー。というか波紋使いの誇りはどうした。 「じゃああたしも行くわね。終わったらあそこの建物を尋ねて。キュルケ様の部屋って尋ねたら誰か教え てくれるから」 両手を地面について落ち込んでいるシーザーを特に慰めようと思わずキュルケも部屋に戻ろうとした。 彼女の指差した先には大きな建物が見えた。 「蜥蜴を連れた火炎のような女、だな。覚えたぞ」 キュルケの非難がましい視線を無視して気を取り直したシーザーは最後の洗濯に取り掛かる。 「まぁいいわ。そこであなたのご主人さまに引き合わせてあげる」 「自分が召喚した人間を地べたに放置するようなご主人様に仕える気はないがな」 ため息交じりのシーザーの皮肉にキュルケが苦笑しマントを翻した。 「ねぇ?」 ふと思い出したようにキュルケがシーザーに尋ねた。 「あの時あたしがそのまま杖を振るう人間だったらどうしてたの?」 「そうだな…信用はしてたし、万が一お前が暴力を振るう人間なら戦っていた」 「じゃああたしが弱そうなあの娘を狙っていたら?」 自分の中ではありえなかったが、他の貴族があの娘を虐げないとも限らない。 そう考えたキュルケにシーザーはごく当たり前のように答えた。 「決まってるだろ?あの娘を命に代えても守って、敵を打ち破るだけだ」 過剰な自信などではなく確かな意思を持ったまなざしでシーザーは宣言した。 「友人の命とあらゆる生命に対する侮辱は、俺が許さねぇ」 力強く、故に危険な意思を秘めたシーザーにキュルケがため息をついた。 「いずれ死ぬわよアナタ…?あんまり他の連中に喧嘩ふっかけないでね?」 あいつらもガキなんだから、と言い残してキュルケは去っていった。 「るせー」 遠ざかるキュルケの皮肉に悪態をついて洗濯に集中する。 先ほどの洗濯物より明らかに上質な生地を使っているのが判った。 「(連中のはやりたくねーが、シエスタが怒られるしな)」 石鹸が溶けきってしまうため水から取り出し、振動数を調整するため両手を突っ込んだ。 「(ん…?)」 両手から発せられる振動でたらいの中を暴れる洗濯物の一つがシーザーの手に絡まった。 「(軽い、小さいな…形状は…三角?ふちが…やわらかい…)」 ぼふぉ!! 石鹸は取り出したにもかかわらず泡山は大きく膨れ上がり、空に浮かぶ師はサングラスをかけメッシ ーナとロギンズ師範代がそろって舌出してギィーッ!ってやっていた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4800.html
前ページ次ページゼロのロリカード 「あれがそうですよ」 「あ~あ、安置されてるんじゃお宝もくそもないわね~」 キュルケら一行はシエスタの家から寺院が目視で確認できるところまで歩いていた。 タルブの村に到着し、シエスタを訪ね事情を話す。すると『竜の羽衣』は呆気なく見つかることとなった。 『竜の羽衣』はシエスタの曾祖父の物だそうで、村の近くに立てられた寺院に飾られているらしい。 そのまま帰るのも難だったので、とりあえず見るだけ見て帰るという話になった。 寺院の中に入ると竜とは似ても似つかない金属の塊があった。大きさはかなりのもので固定化の魔法がかかっている。 「なにこれ?」 キュルケが浮かび上がった疑問の言葉をそのまま呟く。キュルケだけではなくただの一人を除いて全員が疑問に思った。 そのただの一人であるアーカードだけは驚きの表情の後に笑みを浮かべた。 「む、誰かいるのかね?」 寺院の奥の方の陰になってる方向から人影が近付いてくる、顔が見えた瞬間全員が驚いた。 「コ・・・コルベール先生ッ!?」 いち早くギーシュが見知った顔の人物の名を叫んだ。 「き・・・君達、何をやっているのかね?」 「それはこっちの台詞ですわ、ミスタ・コルベール」 素直に答えてはマズいと思い、咄嗟にキュルケは問い返す。 「私は研究だよ、ミス・ツェルプストー。この『竜の羽衣』の所在を知ったので是非とも調べたいと思ってね、勿論休暇も貰っている」 コルベールは答えたあと、眉間に皺を寄せながら再度問う。 「それで、君達はなんでここにいるのかね。授業は一体どうしたのだ」 そう言ったあと、コルベールは全員を見ながら誰がいるのかを確認する。 「いやぁ~・・・その~・・・」 ギーシュが口ごもる、キュルケはなんて言い訳をしたらいいか必死に考え、ルイズはバツが悪そうに目をそむけていた。 タバサはいつも通りで、アーカードはぺたぺたと『竜の羽衣』を触っていた。 「なるほどなるほど・・・・クク・・クックック、くはッはははははッ!」 突然アーカードが笑い出す、アーカードがこうまで感情を顕にして笑うのは珍しい。 コルベールも含め、思わず全員がアーカードを注視した。 「どうしたい、相棒」 デルフリンガーが鞘から顔を出しアーカードに聞いた。目尻に溜まった涙を指で拭いながらアーカードは口を開く。 「ははっ、いやなに。『これ』がここにあるとは思わなくてな」 アーカードがポンポンと『竜の羽衣』を叩く。それに呼応するかのように左手のルーンも光っていた。 「ミス・アーカード・・・これを知っているのかね?」 コルベールの言葉にアーカードはギラっと笑って答える。 「ああ、知っている。これは私がいた世界のモノだ。SR-71、ブラックバードと言われた超音速高高度偵察機。そうだな・・・クク、私にとってはこれもある意味『武器』に違いない」 コルベールは頭だけでなく瞳も輝かせた。アーカードの世界の産物をと聞いて、驚きつつも興奮が抑え切れていない様子である。 ルイズとキュルケは改めて『竜の羽衣』を見る、破壊の杖よりも遥かに大きくそれ以上に用途がわからない。 アーカードのいた世界とは一体どんなところなのか、そもそもなんでこんなところにあるのか、ハルケギニアでは見られないその塊を見つめる。 タバサも知的好奇心が多少なりと疼いたのか、『竜の羽衣』を興味深そうに見つめていた。 一方、事情が全く飲み込めていないギーシュとシエスタは、アーカードがいた世界のモノと言われても意味がわからずただポカンとしていた。 「なんと!おお・・・これは君の世界のモノなのか!」 そう言うとコルベールは我を忘れて再度『竜の羽衣』を観察し始める。 そのコルベールの様子を見て、キュルケは言及を回避できたとほっとしつつ口を開く。 「それで、アーカードの世界ではこんなもん何に使うわけ?」 「言ったろう、偵察機だ。これで高高度を超音速で飛行して地表を撮影したりする」 「ほほお!これが飛ぶのかね!?」 コルベールが興奮しながら叫ぶ。飛ぶと言われてキュルケ達も凝視し始める。 ハルケギニアの住人である彼女達には、当然目の前の金属の塊が飛行するなんて到底信じられない。 「シエスタ、曾祖父の遺品とかはあるか?」 「あっ・・・はい、ありますよ」 「少し見せて欲しい」 ◇ シエスタの曾祖父はアーカードが元いた世界の日本人であった。 アーカードとシエスタの最初の出会い、血を少し飲んだ時に感じた違和感の正体はそれであった。 自分が吸った命の中には日本人も含まれている、それ故に感じたほんのわずかな差異。 シエスタの曾祖父が残した遺書には英語と日本語の二言語で書かれていた。 日本人だがアメリカで訓練し、SR-71に乗っていたということ。しかしテスト飛行中にいつの間にかこの世界に迷い込んでしまっていた。 複座型である為、当然パイロットと偵察機器操作担当がいて、シエスタの曾祖父は後者であった。 なんとか草原に不時着するものの、たった二人でSR-71を動かすことは到底不可能である。 二人の異邦人は、言語や文化の違いに四苦八苦しながらも暮らし始める。しかしパイロットの方のアメリカ人は帰る為の情報を収集すると言って旅立った。 一方シエスタの曾祖父はタルブの村に住むことを決め、必死に働いてお金を稼いでSR-71に固定化をかけたのだ。 アメリカ人の方はタルブへと帰ってくることはなく、一人待ち続けながらもシエスタの曾祖父はその人生を終えることとなった。 そしてもし自分の残した遺書を読める者が現れたら、SR-71を譲り渡すという遺言を残したという。 遺書の他にも、丁寧に描かれた手書きの図面や操作方法などの様々な資料が残されていた。 「異世界の住人だったとはなぁ、なるほど僕が負けるわけだ」 「いやアンタが弱過ぎただけよ」 キュルケの容赦のないツッコミにギーシュは言い返せず呻く、キュルケの実力は今回の宝探しで嫌になるほど実感した。 キュルケと特にタバサは同期の中でも飛び抜けた実力を持っている、魔法だけでなく戦術にも長けていた。 「・・・私のひいおじいちゃん、アーカードさんの世界の人だったんですねぇ」 しみじみとシエスタが呟く、横でコルベールが口を開いた。 「それでこの『竜の羽衣』はどうするのかね?」 遺書を読んだものにこれを譲渡するとの遺言である、つまりその権利はアーカードにあった。 「とっても大きいし管理も大変ですし、何よりもひいおじいちゃんの意思です。アーカードさんが貰ってくれていいと思いますよ」 シエスタにそう言われるも、アーカードは考える。 「ん~む・・・、そうは言われても使う予定もなければ置く場所もない。こんなもの貰っても困りものだ」 「ならば!」 コルベールが嬉々とした表情で叫ぶ。すぐにはっとして咳払いをしてから、コルベールは再度口を開いた。 「これほどのものを譲渡してくれると言うんだ。素直に貰ったほうがいいと私は思うんだが・・・。 ・・・いや、正直に言おう。是非とも私が研究したい。場所は学院長に言ってなんとかしてもらおう、運搬も管理も全て私が請け負う。 だからその、ミス・アーカード。この通り!『竜の羽衣』を譲り受けてもらえないだろうか!」 頭を下げて懇願するコルベールを見て、アーカードは再度思考する。 「いいんじゃない?コルベール先生が全部責任持ってくれるって言うし」 ルイズがアーカードに言う。腕を組んで右手の人差し指をトントンと叩きながらアーカードは考える。 『ガンダールヴ』が教えてくれる。おかげで残された資料を見ずとも整備方法は完璧にわかるし、現在の状態を見るにSR-71は動かせないことはない。 当然一度乗ってるから操縦法はわかっていた、それでなくとも『ガンダールヴ』の能力で操縦できる。 固定化がかけられた与圧服も二着残されていたが、吸血鬼の頑強な体には特に必要ない。 シエスタの曾祖父らはSR-71から漏れ出す残りの燃料を予め別途保存し、そちらにも化学変化が起きないように固定化をかけていた。 しかしお金を稼いで固定化をかけるまでにある程度時間が経過していたようで、かなり劣化していたのである。 仮に使用できても長時間飛行するには心許ない残量であった。偵察機器を使っても現像する手段もない。 つまるところ使い道のないデカブツなのだ。 シエスタの曾祖父は、自分たちの世界からハルケギニアにやってきた者の為にこれを残し、譲り渡すという意思を伝えた。 だのにコルベールの研究心を満たす為に譲り受けるのは、曾祖父の本意とは違うだろう。 とは言っても、燃料が少ない上に劣化している。資料が残されてるとはいえSR-71を動かすなんて素人が出来るわけがない。 また一応SR-71内にしまわれているようだが、一度使用されたパラシュートは着陸の際の再度使用には信頼性に欠ける。 そもそも現在SR-71は退役している、まともに動かせる人材がたまたまこれを見つける可能性など限りなく低い。 なればシエスタも管理が面倒と言っていることだし、譲り受けるのもよいのかもしれない。 アーカードが思考を巡らせている中、キュルケが何かを思いついた表情を見せる。 次にニヤ~っと笑うとアーカードに近付き耳打ちしてきた。アーカードは聞きながらうんうんと頷く。 「コルベール」 考えを決めたアーカードはコルベールの名を呼ぶ。コルベールは頭髪の寂しい頭を上げアーカードを見る。 「実は我々は授業をサボって宝探しをしていた、このまま帰れば恐らく叱られることになるだろう。 まぁ私には直接関係のない話なのだが・・・。とりあえずその際にフォローをして欲しい、とのことだ」 突然のカミングアウトと持ちかけられた取引に、コルベールの顔が葛藤で歪む。 コルベールは少しの間考え、そして決めた。 「・・・・・・わかりました、私の方から学院の方に言っておきましょう。恐らくこのまま帰ればあなた達には相応の罰が待っているでしょうしね」 コルベールのその受諾の言葉に、やった!とキュルケが小さくガッツポーズをする。 ギーシュとルイズもほっとした顔になる、タバサは相変わらず表情が読めなかった。 「ただし!今この場であなた達にお説教をします。私は教師です、宝探しなどという動機で授業をサボタージュした生徒を黙認することなどできません」 「そんな!」 キュルケが抗議の声をあげようとするも、コルベールは遮った。 「取引の内容は、『竜の羽衣』の研究と学院への弁解です。私個人が教師としてあなた方を叱るのは含まれていません」 「ぐっ・・・」 キュルケは言葉に詰まりさきの会話の内容を思い出す、・・・やられた。 「諦めなさいキュルケ。悪いのは私達なんだから、この場で叱られるくらい当然よ」 そうルイズが口を開く。ギーシュもそれに続き、タバサも無言でキュルケを促した。 さすがにキュルケも諦めたのか、四人は立ったままコルベールの説教を黙って聞き始めた。 そんな様子にアーカードは声に出さず笑いながらSR-71へと飛び乗る。はしっこに腰掛け、足を組んでふんぞり返る。 長くなりそうな説教に、シエスタは夕食の準備をしてきますと言って家に戻って行った。 普段から温厚で滅多に叱ることのないコルベールの説教は陽が落ちるまで続き、四人はもう二度とコルベールに叱られることはしないと心に誓った。 前ページ次ページゼロのロリカード
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5284.html
前ページ次ページスナイピング ゼロ トリステインの某所。かつて開拓民が森を切り開いて作り、今は誰一人として住む者が居ない村。 その中に、廃墟と化した寺院があった。普段は明るい日差しに照らされ、牧歌的な雰囲気が漂う場所だ。だが今は、 そんな雰囲気は霞のように消し飛んでいる。なぜなら今、その場所は 「ぷぎっ、ぴぎぃ、んぎぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」逃げ惑うオーク鬼達の悲鳴と 「あはははは、ブタのような悲鳴をあげろ~!」追掛ける魔弾の射手の歓声が ゴチャマゼに入り混じった、まさに混沌と呼ぶに相応しい状況となっているから。 「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪」 どこぞの撲殺天使みたいな歌を響かせながら、リップは手にしたシャベルに力を込める。寺院に辿り着く時に拾った、 先が尖った物だ。一頭のオーク鬼に追いつくと、飛び上がってシャベルを振り払う。切断され、オーク鬼は頭と胴体が オサラバした。 即座に次の標的を捉え、一気に間合いを詰める。横合いからオーク鬼の脇腹に目掛けて、シャベルの先を叩きこんだ。 数本の肋骨が折れ、オーク鬼はその場に倒れた。その直後、振り上げられたシャベルによって頭を叩き潰され、絶命した。 仲間が次々と殺されていく非常事態に、生き残った二頭のオーク鬼達はパニック状態となった。もはや縄張りに 入って来た人間を喰い殺すなどと言う考えは吹っ飛び、黒髪の女から逃れようと、森の奥へ向けて走り出す。 シャベルを地面に突き刺すと、リップは一本の木に向かって叫んだ。 「セラス、直接火砲支援!」 木の上に隠れていたセラスは、ハルコンネンを構えた。逃げるオーク鬼の二頭の内、一頭に狙いを定める。 「ヤー!」 返答の叫びと同時に、徹鋼弾を発射した。背後から腰に直撃を受け、オーク鬼は上半身と下半身が引き千切れる。 数秒ほど呻き声をあげ、絶命した。 即座に薬莢を排出し、弾薬箱から劣化ウラン弾を取り出す。薬室に装填し、残りの一頭に照準を合わせる。最初の一頭を 仕留めるまでの間に、かなりの距離が開いている。だがそんなものは、吸血鬼には大した問題では無い。 「距離500・・・600・・・・・・今!」 発射された弾丸は木や枝などを容易に貫通し、標的の心臓を撃ち抜いた。オーク鬼はうつ伏せに倒れ、生い茂った 雑草の中に血溜まりを作り即死した。 魔法の援護を受けず、リップとセラスはオーク鬼の群れを殲滅した。微塵の躊躇も、一片の後悔も無く・・・。 上空を旋回していたウィンドドラゴンが地上に着地する。背中からキュルケが降りると、驚きの顔を二人に向けた。 「凄いわね二人とも、流石は吸血鬼だわ。私達の出番が無いのは、ちょっと残念だけどね」 「全くだよ。僕のワルキューレの出番が無いのは、とても残念だ」 そう言いながら後から降りてきたギーシュは、ホッとしていた。キュルケは即座にツッコミを入れる。 「なに言ってるのよ、さっきまで怯えながらオーク鬼を見下ろしてた人がよく言うわ」 「キュルケ、出来ればその話は止めてほしいんだが・・・」 言い合いをする二人に気付かれないよう、セラスは口元を抑えて小さく笑った。リップはオーク鬼の血と脂で汚れた シャベルを、ポイッと野原に捨てた。背中に布で縛り付けていたマスケット銃を手にし、弾丸を銃口に入れた。 「えっと、あの、その・・・や、やっぱり吸血鬼って強いんですね。凄かったです、本当に・・・・・・」 キュルケの背後で震えていたシエスタが、リップを怯えた目で見ながら呟いた。リップは黙ったまま、シエスタを見返す。 セラスに背負われているデルフリンガーが、口を開く。 「そりゃそうだろ娘っ子、なんてったって黒服と相棒はハルケギニアの吸血鬼より強いんだからな」 「心臓を貫かない限り、死なない・・・」 デルフの説明に、本を読んでいたタバサが補足を加えた。セラスが歩み寄り、シエスタに頭を下げた。 「すいませんシエスタさん、本当は出会った時に言うべきだったんですけど・・・この世界じゃ、吸血鬼は恐れられる存在 だと聞いたんで」 「そんな、セラスさんが謝ること無いですよ! 立場が逆だったら、私だって正体を言ったりしなかっただろうし・・・」 シエスタは両手を左右に振りながら、ペコペコと頭を下げる。そこへリップが近づくと、軽くウィンクをした。 「これからも貴女と友好な関係を続けたいんだけど・・・よろしいかしら、シエスタさん?」 「あ、はい。これからも、宜しくお願いします!」 握手をしながら今後の交友を確かめ合うシエスタ達に、寺院の入口の階段に足を乗せたキュルケが手招きする。 「三人とも、早く来なさい。もうすぐ日が暮れるわ、さっさと宝物を確認しましょう!」 走って来る三人を見ながら、隣に立つギーシュが尋ねる。 「所で、この寺院にはどんな宝が有るんだい?」 「えっとね、『炎の黄金』で作られたと言われる首飾りが有るらしいわ。場所は、祭壇の下みたいね」 その言葉に、ギーシュは唾を飲み込む。 「これで七件目なんだ、今度こそ宝を見つけて姫殿下に・・・」 ◇ 二つの月によって照らされる、村の寺院。キュルケ達は入り口の階段に座り、燃え盛る焚き火を眺めていた。 ギーシュは薔薇の造花を指先で揺らしながら、毛布に仰向けになって溜息をつく。 「キュルケ、確認のため聞きたいんだが・・・『炎の黄金』で作られた首飾りとは、それかね?」 ギーシュが見つめる先には、キュルケの手に握られる色褪せた装飾品。それは、安物の真鍮で出来たネックレスだった。 足元に置かれたチェストと呼ばれる宝箱には、耳飾りや銅貨が入っていた。 キュルケは黙って首を縦に振ると、ネックレスをチェストに入れる。そして懐から化粧道具を出すと、爪の手入れを始めた。 その様子を、タバサは本から視線を外して見つめている。セラスとリップは、隣り合って階段に腰を下ろしていた。 「どうするんだいキュルケ、これで君の持っていた宝の地図は全て外れたよ。僕はもう、帰った方が良いと思うんだけどね。 他の皆も、廃墟や洞窟で化物や猛獣と戦ったりしたから、疲れてるだろうし・・・」 化粧道具を懐に戻しながら、キュルケは振り向く。 「そりゃそうだけど、だからと言って手振らで帰る訳にもいかないわ」 「じゃあ何かい、帰りに土産でも買っていくのかい? 銅貨が何枚かあるから、それを使えば良いけど」 「あの~、それでしたら」 二人の会話に、焚き火でシチューを作っていたシエスタが割り込んだ。お玉を使い、鍋のシチューを器に入れ皆に配る。 「私の生まれ故郷、タルブ村って言うんです。そこはワインの原産地なんですけど、宜しければ、皆さん行ってみませんか? 港町のラ・ロシェールから近いんで、ここからでも近いですし」 それを聞いたキュルケは、ポンと手を叩く。 「ワインか、良いわねそれ。学園に帰ったら一杯やりたいし、どうするギーシュ?」 「別にかまわないよ、何も無しで帰るってのもなんだしね」 「タバサは?」 「・・・問題無い」 「お二人は異論は無いかしら?」 セラスは笑顔で答える。 「良いですよ、ワインは好きですから。リップさん、良いですよね」 「良いわよ」 風に揺れる髪を優しく撫でるリップの姿に、セラスは心臓がキュンと震えた。そんな事に気付く訳も無く、キュルケは器を 持って立ち上がる。 「じゃあ決まりね、明日の朝タルブ村に出発よ! それにしても美味しいわね、このシチュー」 ◇ その頃、魔法学園ではルイズが部屋に籠って始祖の祈祷書(以後、始祖本と略する)と睨めっこしていた。 食事と入浴と睡眠、それ以外はずっと椅子に座って始祖本と睨めっこ。このルイズ、とても頑張り屋さんである。 「う~ん、なかなか良いのが思いつかないわね」 腕を組んで、素晴らしい詩を思い浮かべようとする・・・その時、ルイズに電撃が走った! 「そうだ、何かの文面を書き換えて詩っぽくしちゃえば良いんだわ! そうと決まれば図書室に直行!」 始祖本を掴んで扉を開けて、廊下を全力で疾走。階段を駆け降り、図書館へ突撃。図書委員は不在のため、勝手に入る。 すると、そこで見知った人物に遭遇した。 「オスマン校長?」 そこに居たのは学園長のオスマンだった。椅子に座って、何やら分厚い本を読んでいたようだ。ルイズに気付くと、席を 立った。 「誰かと思えば、ミス・ヴァリエールじゃったか。何か調べ物かね?」 「はい。詔の詩を考えるのに苦戦してまして、何か参考になる資料が無いかと。オスマン校長は何を?」 「君と同じじゃよ。姫様や偉いさんの前で、喋る事になっておっての。そのために、良い言葉が見つからないかと図書室に 来とる訳なんじゃ」 ルイズは関心した。普段は秘書に対するセクハラしかしないエロジジイだと思っていたが、やる時はやる人らしい。 学園長が頑張っているのだから、生徒である自分も頑張らなくてはならない。 始祖本を持たない左手を握り締めていると、オスマンに肩を叩かれた。顔を上げると、オスマンが優しい目で自分を 見つめていた。 「ミス・ヴァリエール、ちょいと肩に力が入り過ぎておるようじゃぞ。肩を回して、リラックスしなさい」 「あ、すいません。姫殿下の事を思うと、つい力んでしまって・・・」 両型を交互に回すルイズに、オスマンは笑顔を浮かべる。 「それは、お主が友達を大事にしておる良い証拠じゃ」 そう言うと、オスマンは机に置いてある本を持って図書室を出て行った。残されたルイズは、ボソリと呟く。 「頑張ろう」 始祖本を机に置き、本棚の前に移動する。フライが使えないため、上の方には手が届かない。下にある本に出来る限り目を 通し、詩に使えそうな材料を集める。 「さて、いっちょやりますか・・・あ、面白そうなの発見」 目の前にあった『ロードス島戦記』と書かれた本を、ルイズは手に取った。 シチューを食べた次の日の朝、キュルケ達はウィンドドラゴンに乗ってタルブ村に向かっていた。 シエスタの説明によると、タルブ村で生産されているワインは位の高い貴族や軍人も好んで飲んでいるらしい。 魔法学園の食事に出されるワインより値が高い一品と聞いて、キュルケのテンションは2~3倍に高まった。 「楽しみだわ、着いたら真っ先にワインを味見させてもらうわよ」 子供みたいに騒ぐキュルケに、シエスタはコッソリと笑う。前に座って地表を見下ろしているタバサが振り返った。 「見えてきた・・・」 キュルケ達は、前方に目を凝らす。その先には、整然とブドウ畑が連なる村が有った。その中の一つの家を指差して、 シエスタはタバサに尋ねる。 「あれが私の家です、近くに降りられます?」 「任せて」 タバサはウィンドドラゴンの頭を杖で軽く叩き、シエスタの家に降りるよう声をかける。了承を意味する鳴き声を一声 あげると、高度を下げ始めた。その時、シエスタが呟く。 「あれ?」 「どうかしたの?」 キュルケが問う。 「いえ、自宅の庭に見慣れない物が有ってビックリしまして・・・」 「見慣れない物?」 キュルケに習って、ギーシュやセラス、リップも庭を見る。そこには、大きな布で覆われた馬車ほどの大きさを持つ物体が 有った。 「雨除けのために、馬車を布で覆ってるんじゃないのかね?」 「恐らく違うわね、平民が使う馬車より遥かに大きいわ」 ギーシュの予想をキュルケが否定している内に、ドラゴンは地面に着地した。シエスタは一番に飛び降りると、自宅の 扉を叩く。室内からガタゴトと音がして、扉が開いた。出てきたのは、シエスタの父親であった。 「おや、シエスタじゃないか。予定より早く休みを貰えたのかい?」 「そうなの、だから長く家に居られるわ。あ、お客様を紹介するわね」 「こんばんわ。私、トリステイン魔法学園から来ましたキュルケと申しますわ」 いきなり現れたキュルケに、父親は驚いた。見ると、他にも四人の客が来ている。娘に目を向けると、シエスタは微笑んだ。 「村のワインを購入したいって、わざわざ村に来てくれたの。まだワインは残ってる?」 娘の問いを聞いて、父は急いで家に戻って行った。 布が取り去られた物体を、キュルケ達は取り囲んで見つめていた。 全体を漆黒で覆われた物体を、ギーシュやタバサは不思議そうな顔をしながら、見たり触ったりしている。そんな二人の 後ろ姿を、キュルケはコップにワインを注ぎながら眺めていた。そしてセラスは唖然とした顔で、リップは呆然とした顔で、 その物体を見ていた。シエスタが近寄り、心配そうに声をかけた。 「あの、お二人とも大丈夫ですか? これって、何か悪い物なんでしょうか?」 「・・・・・・」 「おい相棒、質問されてるぜ。どうしたんだよ、ヘンテコな物体にボ~ッとしちまって」 デルフの声に、セラスはゆっくりと顔を右に向ける。シエスタの父親に向けて、たとたどしく尋ねた。 「あの、ちょっと聞きたいんですけど・・・これ、どうしたんですか?」 キュルケとセラスの胸を交互に凝視していた父親はハッとした顔をすると、思い出すかのように説明を始めた。 「一月ほど前にですね、この物体を馬車に乗せた行商人が村を訪れまして。それで手綱を握る男に『この物体を食糧と 交換してくれないか』と言われたんです。珍しそうな物だったんで、リンゴやワインと交換して・・・そしたら後ろから 狼の耳と尻尾をもった亜人が現われて『何をしとるんじゃ、早くエーブを懲らしめに行くぞ!』と叫びながら男の首を 絞めて言い争いをしまして。それで、あっと言う間に馬車は村を去って行ったんです」 どこかで聞いたような説明に、セラスは何とも言えない気持ちになっていた。そうこうしている内に意識が戻ったのか、 リップは物体に手を触れる。凹みを掴み、横に引っ張る。ガララララ~ッと言う音と共に、扉らしき物が開いた。 中を覗き込み、鼻を抑える。 「リンゴと獣の臭いがするけど、異常は無いみたいね。まさか、異世界で『ドーファン』に再び出会うなんてね・・・」 「リップさんは、これが何か知ってるんですか!?」 シエスタに顔を向け、リップは物体の正体を明かす。 「この物体の名はAS365、フランスのユーロコプター社が開発したヘリコプター。ドーファンとは、フランス語で イルカのことよ」 「えーえす? へりこぷたー? え~と・・・」 脳内が混乱しているシエスタに、セラスが補足する。 「簡単に言えば、空を飛ぶ機械みたいなものです。所でリップさん、何故ヘリの名前を?」 両腕を左右に広げ、リップは苦笑いで答える。 「理由は簡単、これは私の物だから。ライミーの帝国海軍空母『イーグル』を乗っ取る時に用いたのが、このヘリだからよ!」 「「「「「「な、なんだって~!?」」」」」」 リップの衝撃の事実に、キュルケ達は大声で叫んだ。 前ページ次ページスナイピング ゼロ
https://w.atwiki.jp/gensouutage_net/pages/4000.html
こっち2//奇襲作戦No.4 ~肉弾戦//八雲 紫-紅 美鈴-紅 美鈴-小野塚 小町- kin//永琳なんて知らない//魂魄 妖夢-レミリア-レミリア-レミリア- こっち2は山札をシャッフルしました。 kinがデッキ(1b0f5bb4)をロードし、ニューゲームが始まりました。 kinは山札をシャッフルしました。 賽が投げられて、kinの先攻になった。 kin 手札OKっす こっち2 dz kin でわ 配置:天罰「スターオブダビデ」 起動:天罰「スターオブダビデ」 Turn 2 - こっち2//体力21( 24) 呪力1( 1) 手札7( 6) 山33( 34) スペル0( 1) 手札:彩華「虹色太極拳」//明治十七年の上海アリス//結界「夢と現の呪」//式神「八雲藍」//華符「破山砲」//霊撃//香霖堂// 配置:結界「夢と現の呪」 起動:結界「夢と現の呪」 Turn 3 - kin//体力24( 21) 呪力1( 0) 手札6( 6) 山33( 33) スペル1( 1) 戦闘:kin - 天罰「スターオブダビデ」 vs 結界「夢と現の呪」 - こっち2 結果:kin - Dmg 1 2 Dmg - こっち2 配置:獄界剣「二百由旬の一閃」 起動:天罰「スターオブダビデ」 Turn 4 - こっち2//体力19( 23) 呪力2( 0) 手札7( 5) 山32( 33) スペル1( 2) 手札:彩華「虹色太極拳」//明治十七年の上海アリス//式神「八雲藍」//華符「破山砲」//霊撃//香霖堂//肉弾戦// 配置:華符「破山砲」 起動:結界「夢と現の呪」 Turn 5 - kin//体力23( 19) 呪力2( 1) 手札6( 6) 山32( 32) スペル2( 2) 戦闘:kin - 天罰「スターオブダビデ」 vs 結界「夢と現の呪」 - こっち2 結果:kin - Dmg 1 2 Dmg - こっち2 配置:紅蝙蝠「ヴァンピリッシュナイト」 起動:天罰「スターオブダビデ」 Turn 6 - こっち2//体力17( 22) 呪力4( 1) 手札7( 5) 山31( 32) スペル2( 3) 手札:彩華「虹色太極拳」//明治十七年の上海アリス//式神「八雲藍」//霊撃//香霖堂//肉弾戦//シエスタ// 配置:彩華「虹色太極拳」 起動:彩華「虹色太極拳」 Turn 7 - kin//体力22( 17) 呪力4( 0) 手札6( 6) 山31( 31) スペル3( 3) 配置:天罰「スターオブダビデ」 Turn 8 - こっち2//体力17( 22) 呪力3( 4) 手札7( 5) 山30( 31) スペル3( 4) 手札:明治十七年の上海アリス//式神「八雲藍」//霊撃//香霖堂//肉弾戦//シエスタ//彩華「虹色太極拳」// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 天罰「スターオブダビデ」 - kin 結果:こっち2 - 回避 3 Dmg - kin こっち2の体力が+1 (18) - 彩華「虹色太極拳」 配置:彩華「虹色太極拳」 Turn 9 - kin//体力19( 18) 呪力9( 3) 手札6( 6) 山30( 30) スペル4( 4) 配置:紅魔「スカーレットデビル」 起動:紅魔「スカーレットデビル」 起動:獄界剣「二百由旬の一閃」 Turn 10 - こっち2//体力18( 19) 呪力7( 3) 手札7( 5) 山29( 30) スペル4( 5) 手札:明治十七年の上海アリス//式神「八雲藍」//霊撃//香霖堂//肉弾戦//シエスタ//紅砲// こっち2は紅砲をこっち2の彩華「虹色太極拳」につけました。 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 獄界剣「二百由旬の一閃」 - kin 結果:こっち2 - 回避 3 Dmg - kin こっち2の体力が+1 (19) - 彩華「虹色太極拳」 配置:式神「八雲藍」 起動:結界「夢と現の呪」 Turn 11 - kin//体力16( 19) 呪力8( 4) 手札6( 5) 山29( 29) スペル5( 5) 戦闘:kin - 紅魔「スカーレットデビル」 vs 結界「夢と現の呪」 - こっち2 こっち2は結界「夢と現の呪」の1番目の特殊能力を使いました。 結果:kin - Dmg 1 5 Dmg - こっち2 配置:人符「現世斬」 起動:紅魔「スカーレットデビル」 起動:人符「現世斬」 Turn 12 - こっち2//体力14( 15) 呪力7( 2) 手札6( 5) 山28( 29) スペル5( 6) 手札:明治十七年の上海アリス//霊撃//香霖堂//肉弾戦//シエスタ//連環撃// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 人符「現世斬」 - kin 結果:こっち2 - 回避 4 Dmg - kin こっち2の体力が+1 (15) - 彩華「虹色太極拳」 起動:結界「夢と現の呪」 Turn 13 - kin//体力11( 15) 呪力8( 3) 手札6( 6) 山28( 28) スペル6( 5) 戦闘:kin - 紅魔「スカーレットデビル」 vs 結界「夢と現の呪」 - こっち2 こっち2は結界「夢と現の呪」の1番目の特殊能力を使いました。 結果:kin - Dmg 1 5 Dmg - こっち2 配置:必殺「ハートブレイク」 起動:紅魔「スカーレットデビル」 起動:人符「現世斬」 Turn 14 - こっち2//体力10( 10) 呪力6( 2) 手札7( 5) 山27( 28) スペル5( 7) 手札:明治十七年の上海アリス//霊撃//香霖堂//肉弾戦//シエスタ//連環撃//シエスタ// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 人符「現世斬」 - kin 結果:こっち2 - 回避 4 Dmg - kin こっち2の体力が+1 (11) - 彩華「虹色太極拳」 起動:結界「夢と現の呪」 Turn 15 - kin//体力6( 11) 呪力9( 2) 手札6( 7) 山27( 27) スペル7( 5) 戦闘:kin - 紅魔「スカーレットデビル」 vs 結界「夢と現の呪」 - こっち2 こっち2は結界「夢と現の呪」の1番目の特殊能力を使いました。 結果:kin - Dmg 1 5 Dmg - こっち2 配置:獄界剣「二百由旬の一閃」 起動:紅魔「スカーレットデビル」 Spirit_Kが観戦を始めました。 Ping sent. 起動:獄界剣「二百由旬の一閃」 Turn 16 - こっち2//体力6( 5) 呪力5( 3) 手札8( 5) 山26( 27) スペル5( 8) 手札:明治十七年の上海アリス//霊撃//香霖堂//肉弾戦//シエスタ//連環撃//シエスタ//彩翔「飛花落葉」// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 獄界剣「二百由旬の一閃」 - kin イベント(kin):運命操作 kinは運命操作を場から捨札に送りました。 kinは必殺「ハートブレイク」を場から捨札に送りました。 結果:こっち2 - 回避 1 Dmg - kin こっち2の体力が+1 (7) - 彩華「虹色太極拳」 配置:彩翔「飛花落葉」 Turn 17 - kin//体力4( 7) 呪力7( 5) 手札5( 7) 山26( 26) スペル7( 6) イベント(こっち2):シエスタ こっち2は香霖堂を手札から捨てました。 こっち2はシエスタを場から捨札に送りました。 配置:必殺「ハートブレイク」 起動:獄界剣「二百由旬の一閃」 Turn 18 - こっち2//体力7( 4) 呪力6( 5) 手札6( 4) 山25( 26) スペル6( 8) 手札:明治十七年の上海アリス//霊撃//肉弾戦//連環撃//シエスタ//明治十七年の上海アリス// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 獄界剣「二百由旬の一閃」 - kin 結果:こっち2 - 回避 3 Dmg - kin こっち2の体力が+1 (8) - 彩華「虹色太極拳」 起動:結界「夢と現の呪」 Turn 19 - kin//体力1( 8) 呪力13( 5) 手札5( 6) 山25( 25) スペル8( 6) イベント(こっち2):シエスタ こっち2は明治十七年の上海アリスを手札から捨てました。 こっち2はシエスタを場から捨札に送りました。 配置:人符「現世斬」 起動:獄界剣「二百由旬の一閃」 kinは半幽霊をkinの獄界剣「二百由旬の一閃」につけました。 Turn 20 - こっち2//体力8( 1) 呪力5( 9) 手札5( 3) 山24( 25) スペル6( 9) 手札:明治十七年の上海アリス//霊撃//肉弾戦//連環撃//結界「夢と現の呪」// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 獄界剣「二百由旬の一閃」 - kin 結果:こっち2 - 回避 3 Dmg - kin こっち2の体力が+1 (9) - 彩華「虹色太極拳」 kin ありっすー こっち2 ありがとうございましたー kin 貫通つかないことに気づいたのが遅すぎた(´Д`) こっち2 w kin 一発分くらい稼げたに違いない(´・ω・`) こっち2 何かあったら嫌で霊撃打てなかった俺チキン こっち2 呪力5はキープしたかった kin しかし、今日は太極拳に泣かされる日だ(つД`)>さっきも似たような負け方をした こっち2 低速移動に結構泣きますからねw kin しかし、妖夢セットは命中が低いのが難点だ(´Д`) kin ゆかれみにしたほうがよかったのかもしれない(´・ω・`) こっち2 壁よりもしかしたらw こっち2 ところで威厳握ってます? kin 積んでません^p^ こっち2 Σ こっち2 太極拳で受けて肉弾で回避とかやれたな こっち2 ピンポは? kin 引かず こっち2 ブワッ kin いや、太極拳がなかったらなんとでもなった気がするんだw こっち2 あったからなっぁ こっち2 なぁ こっち2は山札を丸ごと見ました。 こっち2は山札をシャッフルしました。 こっち2は山札を見るのをやめて、山札をシャッフルしました。 kin 今日の負け試合が二つとも太極拳な罠 こっち2 あとシエスタ無かったら死んでた kin もうレミリア使わないでおこう(´Д`) こっち2 >< こっち2 さて、戻りますねー kin ういっす こっち2 乙ノシ kin おつー(・ω・)ノシ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/711.html
「……駄目よ、殺される。アズマさん、殺されちゃうわ」 「そこのメイドの言う通りよ! さっさとあやまりなさいってば!」 アズマの背後でがたがたと震えながら言うシエスタの言葉に乗り、ルイズは言ったのだが、返って来たのは憮然とした態度での一言だった。 「やだね」 「ちょっと! あんた……」 「大体俺は決闘なんてするつもりはないよ」 「「へ?」」 続けざまのアズマの言葉に、一同は間抜けな声を上げ、ポカンと固まってしまった。 いつもの冗談めかした口調に戻ったアズマは、さらに言葉を続けた。 「道理がないだろ。俺はただ、こいつに対してシエスタにあやまれ、と要求してるだけなんだ。恥とかは知らないよ」 そう言ってへらっと笑ったアズマに、あからさまな落胆の溜息が投げかけられる。既に場は白けつつあった。 だが、そう言われて納得出来ない人間がいるのも事実。一部の生徒達の中には、「腰抜け野郎」「弱虫野郎」と言った誹謗中傷をアズマに投げかける者もいた。 「決闘、なんて言葉は、軽々しく使うもんじゃあない……殺したり殺されたり、おまえにそういう覚悟があるのか? 怖くないのか? 感情の昂ぶりに任せて物を言うのはよくないぜ」 今度はふざけた様子を見せず、真剣な面持ちで言い放ったアズマの言葉に、感じ入った者も多少はいたようで、場は白けから重苦しい空気を放ち始めた。 だが、目の前にいるギーシュは違った。アズマの言葉を、更なる侮辱のそれと捉えたのだ。 「貴族に覚悟の是非を問うとは、君も愚かな男だ。ヴェストリの広場で待つ。臆病風に吹かれないのなら来るのだね」 敢えて表面上は感情を見せず、ギーシュはそう言い残してアズマの前から去った。 どよめくギャラリー達は、最初はおずおずと言った様子だったが、やがて再び盛り上がり始め、ギーシュの後を追った。 「やれやれ」 ギーシュの言う覚悟と、自分の言う覚悟との認識の食い違いに、アズマは肩を竦めて呟いた。 だが、あそこまで言ってしまっては引き返せないのも、何となくは分かる。 「ねぇ、アズマ……あんた行く気?」 「……どうしようかな。正直、あの鼻っ柱は一度叩き折った方がいい気はするけど」 人気の少なくなった食堂に残った三人。 ルイズはアズマの服の裾をつまみながら、尋ねるのだが、微妙に自信ありげな彼の言葉に、若干の期待が無くもなかった。 だが、やり取りの最中、終始おろおろしていたシエスタは、かぶりを振ってアズマに言う。 「む、無理ですよそんなの! アズマさん、決闘なんて止めてください!」 「んー、シエスタに言われたら、止めた方がいいんかなぁ、って思っちまうな」 「何よそれ!」 シエスタの心配げな言葉に、とぼけた声で答えたアズマの頭をルイズは思わずはたいた。どうもシエスタに対しては甘いではないか、この男は。 「……ま、これはきっと決闘なんかじゃないから、そう心配しないでくれ」 そう言って、アズマは何でも無い、と言った風に手を振って食堂を後にしようとし、 「って、なぁ、ルイズ?」 「?」 「ヴェストリの広場って、どこだ?」 「ちょ……締まらないわねぇっ! もうっ!」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3886.html
前ページドSな使い魔 決闘から日が経つにつれ、ルイズの二つ名、いやあだ名は多様な物になっていった。 例を挙げると、鋼鉄の腕を持つ女、「豪腕」のルイズ、「強肩」のルイズ、鋼の魔法術士、鉄腕ルイズ、まさにレーザービーム…… 一体あの場に何人人が居たのかと思うほど、好き勝手に呼ばれている。話の伝播速度も当然凄まじく、今では学年を超えて、学院のほぼ全員が噂のことを知っている。 とはいえ、直接現場を見ていない者には信じがたい噂なだけに、噂自体も形を様々に変えている。 「私が聞いたのなんて、広場にクレーターを作って半殺しにしたギーシュを生き埋めにしたっていうヤツよ?」 「……熊相手に素手で立ち向かって倒した」 「そんなのすぐに嘘だって分かりそうな物じゃない!」 激興するルイズに呆れたような視線を送り、キュルケはポツリと漏らした。 「いや、貴女のやった事も十分嘘っぽいんだけど……」 「ちょっとネウロ! 一体どうしてくれるのよ! 完全に色物扱いじゃない!」 「元々色物だったのだろう。大して変わらないではないか」 ――自室にて、ネウロを責めるルイズ。しかしネウロは馬耳東風といった感じで、軽くいなす。 「大体、もう蔑称で呼ばれることなどないぞ? それに、皆に力を認められたではないか。十分すぎるだろう」 「どこがよ! 変な噂が変わりにたったんじゃ、意味ないじゃない! それに、あれは私の力じゃないわ。ネウロ、あんたが何かしたんでしょ!」 「ほう、よく気がついたな。あれも我が輩の能力の一つだ。ゾウリムシの割にはやるではないか」 涼しい顔で火に油を注ぐネウロ。だがルイズは別の箇所に反応を示した。 「ゾウリムシってなによ! よくわかんないけど、絶対良い意味で使ってないでしょ! それと、あの状況で変な事をできそうなのは、あんたしかいないじゃない。これくらい、すぐ気付くわよ! 全く……。いいわ、とりあえず洗濯物を渡してこなきゃ……」 そう呟いて、立ち上がるルイズ。本当はネウロにやらせたいとこだが、そんな事をすると洗濯物が悲惨な事になるのは間違いない。 部屋を出て、顔見知りのメイドを探す。だが、探し人はなかなか見つからない。そうこうしてる内に、とうとう厨房まで来てしまった。 ここならば、シエスタの居場所も分かるはず。そう思って中を見回すが、一向に見つからない。 尚も見回していると、逆に、コック長マルトーが話しかけてきた。 「何か、用ですかい?」 「あ……。シエスタはどこ? 頼みたい事があるのよ」 「シエスタ……シエスタはここにはいませんよ」 何故か憂鬱そうな顔で答えるマルトー。 「そう。そうみたいね。で、どこなの? もしかして、病気で寝てるの?」 「いや、そうじゃないんでさ。シエスタは学院を辞めて、ジュール・ド・モットとかいう貴族の許に連れてかれちまったんでさ」 「モット伯!? よりによって……。あそこで働いていたメイドは、高給にもかかわらずすぐ辞めてくって噂になってるじゃないの」 いきり立つルイズに、マルトーは冷水を浴びせるかのごとく声をかけた。 「そうは言いますがね、結局、平民は貴族の言いなりになるしか無いんですぜ?」 「……ああ、ネウロか。どうしたんだい。あんたのご主人様なら、さっき妙な顔して出て行ったぞ? 寸胴のことなら、一月は待ってくれんと交換の予定は……」 「いえ、寸胴な先生の為に都合してくださって、ありがとうございました」 そのまま厨房を出ると、ネウロは辺りを見回し、超人的なスピードで何処かへ駆けていった。 その頃、モット伯邸の前で、ルイズは今まさに屋敷に乗り込まんとしていた。 (なんであたし、シエスタの為にここまでしてるんだろう。平民の、メイドなんかの為に。 ……あの娘のことなんて、ちょっと前まではたまに洗濯を頼んだりするだけのメイドとしか思っていなかったのに。 でも、あの決闘の後、周りが異星人を見るような目付きで私を見てくる中、あの娘が本来だったら私が香水を拾っていた筈だったなんて言ってきて、その顔が余りに必死だったので―― そうよ。私は私のやりたい様にやるだけだわ。細かい事なんてゴチャゴチャ考えなくても良いじゃない。 どうせ、これ以上何かしでかしたとしても、今の噂に新しいものが混じるだけよ。だったら……) そうしてルイズは一歩、足を進めた。 ――いざ、モット伯。 30分後、ルイズは屋敷の応接室で考え込んでいた。 途中、衛兵とちょっとしたいざこざがあったものの、何とかモット伯に会うことはできた。だが、既に雇用契約を正式に結んでいた為、感情論をぶつけても、契約書を盾にされて埒が明かなかった。 唯一交渉条件となりそうなのは、話の中で出てきた召喚されし書物というフレーズだ。ゲルマニアの貴族が所有しているという事も漏れ聞こえてきた。 ゲルマニアの知り合いは、ルイズの周りには一人しかいない。だが、その一人が都合良く情報を持っているなんて事は、小説じゃ無いんだし有り得ないだろうと半ば諦めていた。 そうなると、実力行使で連れ帰るという方法に辿り着くのだが、相手は水のトライアングルメイジで、王宮の勅使だ。いくら後先考えずに行動する事の多いルイズでも、その場の勢いでも無ければ迂闊に挑めない。 これからどうするべきか手を拱いている時に、誰かが入ってくる気配を感じてルイズは顔を上げた。 「ルイズ様……」 そこにいたのは、シエスタだった。 「シエスタ! 大丈夫だったの!?」 急いで駆け寄るルイズに、シエスタは儚げな笑顔を見せて、 「はい。今はまだ何も。ただ、これから寝室に呼ばれて……」 「だ、駄目よ! そんな事される前に、早く何とかしないと」 「仕方が無いんです。平民は、そういう存在なんですから……」 「そんな……そんな、事は……」 「では、失礼します。――私のことを気にかけて下さって、本当に嬉しかったです」 (まさか、ここまで追いかけてきて下さるなんて……。貴族にも、こういう方はいるんですね。でも、私はもう……) シエスタは、ゴクリと唾を飲み込むと、寝室の扉を開けた。 そして、室内のメイド達の様子に絶句した。 (貴族……こんな事する者が、貴族なんておこがましい。貴族っていうのは、領民の手本となる存在よ。こんなことを繰り返していては……) 「……たか…度は………って………だ?………」 考え込んでいたルイズだったが、ふと隣の部屋から話し声が聞こえてくるのに気付いた。 「……が……魔して………いかと…………まし………」 「………と?……………フム…………」 「………………の…………は…………いう訳なんですよ」 ――ネウロ? まさしくその声は、ルイズの使い魔、ネウロだった。 (まさか、私を追って?) 急いで聞き耳を立てるルイズ。会話の内容はあまり聞こえないが…… 「……従順な……より………的な………そそる…ですよ…………を僕は………ンデレと……付けて……」 「ほう! して、そのツン…………一体…ういう………だ…」 「……とは、つまり………の………た態度か………転し………デレデ…………た状態………で……… 例え………ルヒ…ョン………シャ…………院ナ…………かが…………釘………山ゆか……… 別例に……原雄山…烈海………藤巻十………も…」 「…るほど……れは………な。しか…実物を見な………には…」 「ネウロ! 何しに来たのよ! 助けに来てくれなんて、言ってないじゃない! ……何二人して顔見合わせてるのよ」 扉を開けて乱入してきたルイズに意味深な視線を向ける二人。ネウロに至っては指差しして何事か囁いている。 「……どいい所に……………あれが………」 「…ほど……れが……」 「…つ実例を…て………」 「貴様は我が輩の主人だからな。何かあっては困るのだ。探しにいくのは当然だろう」 「え? え? ……な、なによ。別にあんたなんかに心配されなくても、平気なんだからねっ!」 「……がツン……の第…段階で………」 「………ど……かに………」 「どうでしょうか?」 「素晴らしい! いいねそのプレイ。こんな世界があったとは……。大変勉強になったよ」 「お役に立てて光栄です。このジャンルの典型例にお嬢様型というのがありますが、貴族の方なら、そちらから入ってみるのも良いんじゃないでしょうか」 「なるほど。試してみよう。いや~、君とは本当に気が合うな。見込んだとおりだったよ」 「僕も初めて会った時から同志だと思っていました。ところで、例の話ですが……」 「おお、そうだったな。いいだろう。まだ家具は余裕がある。連れて帰りたまえ」 「そういうわけだ。帰るぞ」 そう言って、踵を返すネウロ。 唐突な展開についていけないルイズは、戸惑いながらも質問を返した。 「はぁ? どういう流れよ。全然わかんないわよ!?」 「なに、新天地を教えただけだ。それより、シエスタを連れて帰るぞ」 「え、だって……いいの? モット伯は……」 「問題無い。許可は取った」 「でも……強引に人を連れてった人のことなんて信じれないわよ?」 「ほう? 強引に我が輩を呼んでおいて、使い魔になるよう強制したのは貴様ではないか。人の事を言えるのか?」 「う……。だけど、メイドを手篭めにするような人なのよ?」 尚も納得しきれない様子で食って掛かるルイズ。だが直後、新たな人物の登場で気勢を一気に削がれた。 「あの……」 「シ、シエスタ!?」 「シエスタ、どうしてここに? モット伯に何かされなかった?」 唐突に現れたシエスタに、無事を確かめるルイズ。だが、シエスタはいたって平気そうで、僅かに不安が顔に表れている程度だ。 「えっと、モット伯が来客で行ってしまわれて、なかなか帰ってこないので様子を見に……」 「そうなの? ってことは、まだヤられてないのね。間に合った……」 その言葉に顔を赤らめるシエスタ。 「ルイズ様、そんな、ヤるだなんてはしたない……。 それに、その、先輩のメイドの方に聞いたんですけど、ルイズ様が想像されている事とは少し違うみたいなんです」 一方のルイズも違った意味で顔を赤らめ、必死になって否定の言葉を吐く。 「えっ、な、ななな何いってるのよ! べっ別に変な事想像したわけじゃないわよ! ……で、どんな事されるの? アレをされるのかしら。それとも、アレを使ってあんな事をされるのかしら。ねえ、どうなのよ」 十分変な事想像してますよ。という言葉を飲み込み、真相を語ろうとするシエスタ。 「その、所謂性的な事をされる訳じゃないんですけど、どちらかというと、もっと酷い事を、数々の悪評に納得がいくほどの事をされるというか……」 だが、その言葉を耳にしたモット伯が反応を示した。。 「何もしてねーよ。土下座させてクッション敷いてイスになれって言っただけさ。」 「え……。は?」 (涼しい顔して……。やっぱりこの人外道だ。辞めたい……) (初見から感じていたが、やはり同属か……) 三者三様な感想だが、モット伯の性格については全員一致で把握したようだ。 そう。基本ドSだ。 「ってことは、ここのメイドがすぐに辞めてくっていうのはつまり……」 ようやく状況を理解したルイズの言葉に、モット伯が答えた。 「ああ。あいつら雇用欄の待遇見たときはサイコーって言うくせに、いざ現場に入るとサイテーって言ってすぐ辞めてしまう。 ったく最近のメイドは……。家具になる根性もないのか」 「ねーよ!」 即答の突っ込みに、シエスタもこっそり頷く。 「まったく。今まで来たメイドの内、半分は夜逃げして、半分は二期目の契約の更新をせずに辞めていきおった。 これでは執務室の家具フルセットが揃わないではないか!」 「自業自得じゃない!」 「どんだけ揃える気だったんですか!」 モット伯の嘆きには全く共感できない。そんな思いは共通のようだ。 そんな叫びを半ば無視し、モット伯は終了宣言を口にする。 「まあ、最低限の家具は居ることだし、ネウロ君が言ったとおり、そのメイドはこの場で雇用契約を白紙に戻そう。これで良いかね?」 「ありがとうございます。そうして頂けると、こちらとしても非常に助かります」 「なに、助かったのはこちらのほうだよ。私としたことが、こんな一大ジャンルに気付かなかったとは……」 「ネウロ、最後の台詞の意味が分からないんだけど?」 「つまり病気に感染したということだ」 「余計に分からないわよ。……でも、シエスタを助け出せたって事は確かみたいね。や、やややればできるじゃない。ととと特別に、ほ、褒めてあげるわ」 顔を赤らめて、つっかえつつ話すルイズを見て、モット伯が何事かネウロに話しかける。 「……あの落差がいいという事だな? 段々分かってきた。さすがくぎみー」 「流石です。では、これからもよしなに……」 モット伯邸からの帰路、不意にシエスタが口を開いた。 「ネウロさん。それにルイズ様。本当にありがとうございました。でも、私これからどこに行けば良いのか……」 「大丈夫よ。皆あなたの事を気にかけていたから、経緯を話せば必ず元の職に戻ることができるわ」 「え? 何ですか先生? 働く場所が無いのなら、私専属のメイドになればいい? さすが先生。おっしゃることが違います」 その言葉にどうしていいか分からず、シエスタは何とも言えない表情で当たり障りの無い言葉を返した。 「えっ……。はっ、はい。ありがとうございます、ルイズ様……」 「…フガ…フガフガ……(勝手に変な事を決めるんじゃ……ってか、この手をさっさと離せー!)」 応えるべきルイズは口を塞がれて何も言えず、ただ暴れるばかりだった。 結局、シエスタと(ルイズの代弁という形の)ネウロとの間で、様々な取り決めが起こり、ルイズに対して最大限のサポートを行う旨を一筆認めることとなった。 ルイズは一頻り怒りを振りまいたものの、シエスタとの契約内容を聞くと少しおとなしくなり、壮絶な舌戦を繰り広げるだけにとどまったようだ。 その後、喫茶店経営に手を出したモット伯は、一部の固定客をガッチリ掴み全国チェーン店化を成し遂げたという。 その勢いは、店員の育成に時間を取られなければ国外進出も夢ではなかった程だ。 今日も喫茶店「ツンデレラ」には貴族平民問わず多くの客が詰め掛けている……。 「ところで、なんで私の行動が分かったの?」 「我が輩の魔界777ツ能力は世界一ィィィだからな」 そう言って、額のルーンを光らせながら、目玉のついた奇妙な生き物を見せた。 「……何これ、バグベアーの子供?」 おまけ NGシーン Take 5 ある学院のメイドが貴族の許に身請けされたと聞いて、様子を見にやってきたルイズ。何故かキュルケとタバサもついてきている。 だって面白そうじゃない、とはキュルケの談だ。 「何を期待してるのよ、アンタは! 大体、身請け許のモット伯は、私費で孤児院を経営している篤志家なのよ? 子供好きとも聞くし、変な事なんて起こるわけないじゃない」 「やぁ~ねぇ。トラブルメーカー行く所、トラブル有りよ。それに、問題が無いのなら、わざわざ様子を見に行く必要は無いんじゃない?」 「それは……何となく、虫の知らせと言うか……」 そんなこんなでたどり着いたモット伯邸。先日来たメイドの知り合いだと告げると、門番は快く中に通してくれた。 「流石はモット伯邸ね。門番の対応もしっかりしてるわ」 「……そんなに褒めてると、かえって不気味ね」 「何か言った?」 「何も~? あ、ほら、あそこじゃない? 言われた部屋って」 確かにそこは説明を受けたとおり、シエスタのいる部屋だった。 すぐさま何気なくノックして扉を開けたルイズ一行は、その場に泣き崩れるシエスタに出くわして硬直した。 「ど、どうしたのよ、ちょっと。……ま、まさか、モット伯になにかされたの!? あの好色ジジイがっ! いつかこんな事やると思ってたわ!」 「……言ってることがさっきと180度違ってるんだけど?」 「ル、ルイズ様~」 ルイズの呼びかけに反応し、涙を眼に溜めながら抱きついてきたシエスタ。しばらくしてようやく落ち着いたのか、慌てて身体を離した。 「す、すみません。取り乱してしまって……」 「いいのよ。それより、泣いていた訳を話して頂戴」 「は、はい……。私、私モット伯に……」 「年老いた、発育過剰の家政婦の相手なぞしないって言われたんですっ!」 「――は?」 「私、お屋敷での仕事なんて初めてで、よく分からなかったから……本に書いてあったみたいに、その、つまみ食いされるんじゃないかって心配で。 だから、冗談めかして聞いてみたんです。そしたら――」 「よ、よく分からないけど……年老いたとか、発育過剰とか、酷い言い草よね。何か気に障るようなことでもしたの?」 「全然心当たりはありません。なんであんな事を言われたのか、サッパリで……」 「だったら直接本人を問いただしましょ! モット伯は何処なの?」 「キュ、キュルケ? ちょっと力が入りすぎじゃない?」 「何よ、貴女は何とも思わないの? 発育過剰だの何だのと酷いことを……。 ああ、そうね。発育過剰なんて無縁なワケね。いいわ、私だけで――」 「何言ってるの! そ、そんな事無いわよ! シエスタ、モット伯の居場所を教えなさい! 文句言ってやるわ!」 「こ、こちらです。この書斎に居られると思います」 「分かったわ。……頼もーっ! モット伯、いるのは分かってるのよ!」 「何じゃ、煩い」 言って、一人の老人が現れた。見る限り人畜無害そうで、その顔はさしずめ某チキン屋のサンダース軍曹といったところだ。 本当に彼がそんな発言をしたのだろうか? ルイズ達の脳裏にそんな疑問がよぎった。 「あの……あなた、シエスタに酷い事を言ったって……」 「酷い事? ――何のことじゃ。わしは本当の事を言ったまでじゃが」 さも当然のごとく返答する老人。偽りでなく、心から本気で言っているようだ。 その様子に戸惑いを覚えるものの、暴言を吐いたこと自体は認めているため、一気に攻めの姿勢に入るルイズ。 「やっぱり言ったのね!? 年頃の女の子にそんな事言うなんて、信じられない!」 「年頃? フン、そんなの、わしの好みから大幅に外れておるわい」 「なっ! じゃあ、貴方のストライクゾーンは何処なのよ!」 「決まっておる。わしは子供が大好きなんじゃ。君のような老婆に用は無い」 ゴォッ ――この瞬間、ルイズは確かに炎の立ち昇る音を聞いた。 「……じゃあ、貴方は彼女みたいなタイプが好みだと?」 「なっ、キュルケ! アンタ――」 「君は、初老だ。 なんでわしが年増の相手するんじゃ。ゴーレムの方がまだそそるわい」 この言葉を聞いて、ルイズの怒りは臨界点まで達した。次に何かが起きたら一気に爆発してしまうだろう。 続いて老人――モット伯は、タバサに視線を巡らせ…… 「そこそこじゃが、適齢期過ぎじゃな」 ビキッ その場の空気を凍結させた。 般若の顔となった三人に気付かず、モット伯は続けた。 「全く、勝手に人の書斎に入り込んで戯言を言いおって……」 「……」 「……」 「……」 「「「トリプルブレイカー!!!」」」 その日、モット伯の領地内で大規模な水蒸気爆発が発生し、モット伯の屋敷があった場所はペンペン草一本生えない更地となった。 当時屋敷内にいたと思われるモット伯の行方は、今以て要として知れない。 「とんでもない趣味の人も、世の中には居るのね。勉強になったわ。 ……どうしたの、タバサ?」 「……年より大人に見られたのは初めて」 「……(私も、否定できない)」 前ページドSな使い魔