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テンプレ ほのぼのから悲恋物まで、あらゆるクリアリの行く末を語り合っていきましょう! 職人さんによるSS投稿、常時募集! 【投稿内容に関するお願い】 原作や投下された作品など、他人の作品を悪く言うのは控えましょう。 趣向の合わない作品やレスはスルーしましょう。 性描写を含むもの、あるいはグロネタ801ネタ百合ネタ等は、相応の板でお願いします。 読む人を選ぶ作品(死ネタ、悲恋、鬱ネタ等)を投下する時には、先に注意書きをお願いします。 個人のサイトやサークルなどを特定する投稿(画像などへのリンク含む)はご遠慮下さい。 【進行に関するお願い】 原則、投稿はsage進行(E-mail欄にsageと入力)でお願いします。 次スレは980の人が立てて下さい。反応がない場合は、できそうな人が宣言をして立てましょう。 ,. --、 | |田|| 姫様、お気をつけて |__,|_|| __△__ L..、_,i ヽ___/ . 。ぐ/|.゚.ー゚ノゝ / ,ノノハ)) クリフトがいるから `K~キチス (9ノ ノ(,゚.ヮ゚ノi. 大丈夫よ! ∪i÷-|j @〃とヾ二)つ Li_,_/」 ん vく/___iゝ し `J じ i_ノ クリフトとアリーナへの想いは@wiki(携帯可) ttp //www13.atwiki.jp/kuriari/ 前スレ クリフトとアリーナの想いは Part15 [転載禁止]©2ch.net http //wktk.2ch.net/test/read.cgi/ff/1423118611/l50 過去スレは 2 2 過去スレ↓ 【クリアリ】クリフトとアリーナの想いは Part14【アリクリ】 http //wktk.2ch.net/test/read.cgi/ff/1405439851/ 【クリアリ】クリフトとアリーナの想いは Part13【アリクリ】 http //kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1366979958/ http //wktk.2ch.net/test/read.cgi/ff/1366979958/ クリフトとアリーナの想いは Part12.5 http //kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1324882176/ クリフトとアリーナの想いは Part12 http //kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1294626561/ クリフトとアリーナの想いは Part11 http //yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ff/1263220200/ クリフトのアリーナへの想いはPart6 http //game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1154693017/ クリフトのアリーナへの想いはPart5 http //game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1145158924/ クリフトとアリーナの想いは Part4.2 http //game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137763522/ 【片想】クリフトとアリーナの想いは Part4【両想】 http //game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1127912729/ 【脳筋】クリフトとアリーナの想いは3【ヘタレ】 http //game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1107964272/ クリフトとアリーナの想いは その2 http //game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1054024302/ クリフトのアリーナへの想いは http //game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1027954353/
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クリフトのアリーナへの想いはPart5 292 :【結婚承諾秘話】1/18 ◆cbox66Yxk6 :2006/05/23(火) 20 25 43 ID DpCbqtoT0 渦中の人物が大広間に姿を現した時、そこにいた誰もが息を呑み、そしてざわめいた。 細身でありながらも脆弱さを感じさせない均整の取れた体。不思議な色合いの艶やかな蒼髪と深い青の瞳。真新しい服を颯爽と着こなし瑠璃色のマントを翻して王の御前に向かうは、救国の英雄の誉れ高き青年。 先の魔軍襲撃より三年。 すっかり大人の落ち着きを身につけた彼の名はクリフトといい、先頃まで王宮付神官として、またサントハイムの復興の一翼を担ってきた人物であった。 頭脳明晰、容姿端麗と誉れ高い彼だが、その穏やかな物腰からは想像も出来ぬほどの剣術の達人でもあり、さらに回復呪文や致死呪文といった高等魔法も操る世界屈指の猛者でもある。それに加え、見かけによらぬ堅固な意志と豪胆な実行力を兼ね備え、近隣諸国の老練な政務官を相手に、はたまた海千山千の商人連を相手に一歩も引かない駆け引きのうまさを遺憾なく発揮し、ここ最近敏腕政務官の称号を得、密かに恐れられているという。 クリフトは己に向けられる好意の視線と、それに倍する羨望の眼差し、そして悪意に満ちた眼光をひしひしと感じつつ、ゆっくりと赤い絨毯を踏みしめ、前に進んだ。 彼の見つめる先には、彼の敬愛する王と、彼が何よりも大切に思う姫の姿。 その脇にうっそりと佇む老人は、幼い頃から目をかけてきた青年の晴れの姿に、僅かながらに鼻を赤くさせていた。 やがて大臣の声が響き、クリフトが御前で跪くと広間は水を打ったように静まり返った。 「これよりサントハイム王宮付神官兼政務官クリフトの叙爵式を執り行う」 大臣の声に玉座を立ち上がったサントハイム王は、伝家の宝刀を掲げると、クリフトの肩口に押し当てた。 サントハイム王国における叙爵は、先王のとき以来簡略化が図られ、本人の希望があれば非公開で行うことも可能であったが、この度の叙爵には多くの貴族からの要望があり公開となった。しかしそれは、平民出身のクリフトを公の場で貶めるために意図されたものでもある。いくら王宮の一角で育ったとはいえ、貴族の社会とは無縁の生活をしてきたクリフト。当然のことながら貴族のしきたりなど知りはしないだろうと、高をくくっていた貴族の一派は、衆人環視の中物怖じひとつせず、粛々と儀式をこなしていくクリフトに苛立ちを感じ始めていた。だが、国王の朗々とした声が広間を満たすと、好奇も露にクリフトを見やった。 サントハイムが定める爵位は、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の5爵。それに名誉国民に値する準男爵、士爵、騎士の称号がある。本来であれば、式の前にどの位が与えられるのか公表されるのであるが、此度の叙爵ではあえて事前公表をせず、式での発表となっていた。それ故、クリフトがどの爵位を賜ることになるのかは、誰もが注目すべきことであったし、また若い貴族の子息たちにとっては別の意味でも気になることでもあった。おそらく、クリフトの功績から言えば、男爵以上を授与されることは疑いないとは思いつつも、それが伯爵以上であった場合、貴族の未婚の子息にとっては、正直歓迎せざる事態を招くのである。サントハイムにおける伯爵位、それは王族との婚姻が可能になることをさす。 国王の声が響き渡り、クリフトが一段とこうべを垂れた。 「此度の功績を以って、そなたに『男爵』の位を授与する」 その瞬間、アリーナは思わず身を乗りだしかけ、傍らに控えていたブライに無言で止められた。 抗議の声をあげかけたものの、ブライが僅かに首を振るのを見ると、姿勢を元に戻し、心配げにクリフトを見つめた。 己の爵位が明らかにされた時、クリフトは青く澄んだ瞳を伏せ、僅かに身動ぎした。 (間に合わなかった・・・) 国王から言い渡されていた期限は3年。 アリーナが他国と婚姻を結ばなくてはならない状況を回避すべく、寝る間も惜しんでサントハイムの復興に尽力をしてきた。そしていま、サントハイムの復興は軌道に乗り、アリーナの縁談はある程度の自由を得た。しかし、クリフト自身が、それに追いつくことができなかった。 予感はあった。 クリフトはともすれば虚ろになりがちな己が心を叱咤し、答辞を述べる。 爵位は国王の采配ひとつで決まるものではない。 何人かの重鎮と話し合いを重ね、そして与えられるもの。その重鎮たちが特に何かことを起こすことなく、今日の日を臨んできたことから、おそらくは伯爵位を望めないであろうことはうすうす勘付いていた。そう、下位の爵位をクリフトが得たところで、何もできないことはわかっていたから。 貴族の位は簡単に得られるものではない。頭では理解していた。しかし、現実になると虚しさと憤りで自身が押しつぶされそうな気持ちになる。 クリフトは答辞を述べ終えると、ただ一度だけちらりと愛するものへ視線を送った。 心配げに見守るアリーナと視線が絡まる。 一瞬のうちに胸を満たした苦しさに思わず息を詰まらせ、クリフトはアリーナから視線をはずした。 これ以上彼女を見つめることは到底できなかった。 己の不甲斐なさを彼女の前でさらけ出してしまった。 どの爵位が与えられるかを決めるのはクリフトではない。しかし、徒に彼女を惑わせ、それでいて別離の苦しみを与えてしまったのは、己の罪するところであったとクリフトは自戒する。 先の戦いの折、彼は愛する姫君と共に何度となく死線を潜り抜けてきた。それは辛く苦しい旅路であったけれども、共有する時間が増えるほど、ふたりの距離は縮まっていった。それは、若いクリフトを錯覚に陥らせてしまっていた。姫君と神官、ふたりの距離は縮まっていなかったというのに、縮められるのではないかと、淡い期待を抱いてしまったのだ。そしてそれは、ふたりを相思相愛の間柄に押し上げたものの、立ちはだかる現実の壁の前に敢え無く玉砕してしまった。 クリフトは苦しい息のもと、かすかに唇を噛み締めた。 (姫様に、期待を持たせるべきではなかった) たとえ彼女から想いをぶつけてきたとしても、かわし続けるべきであったのだ。 クリフトが悔恨の念に囚われている間にも、式は滞りなく進行していき、そして終わりを迎えた。 クリフトは大臣の合図に、ゆっくりと面を上げる。 広間を満たす安堵の空気と、年頃の娘を持つ貴族たちの思惑がクリフトを貫き、その居心地の悪さに、今更ながらに吐気を催した。 それでも、ただひたすらに自制心を働かせ、御前を辞そうと身体に力を入れたその時だった。 妙な緊張感に溢れたその場にそぐわない、飄々とした声がクリフトの鼓膜を打った。 「陛下、この場を借りてひとつ御許しいただきたいことがございます」 それは、長く苦しい旅を共に駆け抜けてきた矍鑠とした老人のもの。 誰もが一目置きながら、その詳細を知るものがほとんどいないという謎の老人。王の教育係として、そして王女の教育係として、はるかな昔からサントハイム王家の傍らに位置してきたその者の発言に、広間の誰もが注目していた。 老人はゆっくりと身体を動かすと、誰にもわからぬようにアリーナに小さく笑みを送り、クリフトのもとへと歩み寄った。そして、クリフトの傍らに立ち、玉座に向かい合うと、そのまま言葉を続けた。 「このクリフトめを、わしの養子として正式に迎えようと思っております」 この発言には、当のクリフトも驚き、不敬に値することも忘れ思わず声を上げていた。 「ブライ様・・・」 小さく呟かれた言葉にブライは呵呵と笑う。 「そんなに驚いた顔をするな。ただでさえ締まらないおぬしの顔が、よけいに阿呆に見えるぞ」 それは妙に威厳を感じさせる笑いで、そして誰かを思わせる顔であった。 クリフトがそれを不審がる暇もなく、広間の一角から糾弾の声が上がった。 「王の御前、無礼であるぞ!!」 それはまだ年若い貴族の青年から発せられた。 彼の言うことは正しい。 王が臨席するその席で、如何に重鎮として扱われていようとも、臣下が王に物申すことは火急の事態でもない限り不敬罪に値する。 この糾弾に勇気を得たのか。もともとこの得体の知れない老人を快く思っていなかった貴族の面々がそれに呼応した。 「越権行為ですぞ」 「なんたる不敬!」 「即刻立ち去られよ!」 非難の的とされたブライは、それでも平然と佇み、国王を見つめていた。 その悪びれない態度に、さらなる怒号が重なりそうになる瞬間、玉座に腰掛けていた人物からため息混じりの声が響いた。 「叔父上も、お人が悪い」 「え?」 驚きの声をあげたのは、国王の横で事の成り行きをはらはらしながらも、いつでも飛びかかれる体制で見守っていたアリーナだった。 アリーナの疑問は広間にいた人々の疑問でもあったらしい。口を開きかけていた青年貴族たちはそのままぽかんと口を開けていた。しかしそれは、年若い者たちだけでなく、サントハイムの重鎮とされていた何人かも同様であった。 国王が叔父上とよぶ存在。それの意味するところは、先々王の遺児、先王の兄弟を指す。水面下で囁きが交わされる。先々王の私生児が存在するという噂は本当であったのか、と。そういった噂は以前から囁かれていたけれども、王の側近たちの口は堅く、確証を得るまでにいたれなかったのである。 突如現れた王族。その驚愕の事実も他所に、当の本人たちはいたってのんびりと会話を繰り返す。 「はじめっからそのおつもりだったのですな」 「ほっほっほ」 「またそうやって煙に巻く。どうりで落ち着き払っていると思いました」 「うむ?そうだったかのう」 「本当にお人が悪い。最初からそう言っていただければ、私の気分も幾分か楽でしたのに」 「なんでも楽をしようとするのは、おぬしの子供のときからの悪いくせだったのう。苦労せい、苦労せい」 かっかっかと笑い飛ばすブライに、ばつの悪そうな顔をした国王がわざとらしく咳く。 その様子に目を細めたブライが、言葉を重ねる。 「で、養子の件はお許しいただけるのですかな?」 ピクリと体を震わしたクリフトの肩に手を置き、ブライは問う。 国王は肝心なことを言いそびれていたことに気づき、重々しく頷いた。 「うむ、許そう」 威厳を持って答えた国王ににやりと笑うと、ブライは慇懃に答える。 「ありがたき幸せにございます」 そして目をまん丸にして驚いているアリーナに優しく微笑みかけると、クリフトの肩をバシッと叩いた。 「ほれ、許可が下りたぞ。ということで今日からわしはおぬしの父親じゃ。かっかっか」 クリフトは、しばしどう答えてよいものか迷っていた。展開が速すぎてどう反応していいのか、戸惑っているようでもあった。それでも何かを答えなければ失礼に当たると口を開きかけたところ、またしても抗議の声が上がった。 「陛下、そのような重要なことを何の相談もなしに決められては困りますぞ!」 それはサントハイムの重鎮の中でも保守的な考えを強く持っていた侯爵位の大貴族であった。 彼は立派な髭を震わせながら、憤りも露にクリフトを睨む。 「陛下、物事には秩序というものがございます。このクリフトめは平民の子供。そのようなどこの馬の骨ともわからぬ血の流れているものを、由緒正しきサントハイム王家の血を引くブライ翁の養子になどと・・・正気の沙汰とは思えませぬ」 彼の弾劾は、一時は国王の心を動かしたかのように見えた。なぜなら、国王は彼の方をまっすぐに見据えたから。しかし、国王から漏れた言葉に彼は己の失態を知る。 「そなたは、クリフトがアリーナの乳兄弟であることを知った上で、そのような発言をしたのか?」 「え?」 唐突に投げかけられた言葉に、疑問を覚えるも、それを深く追求する間もなく国王が睨んだ。 「確かそなたにはアリーナと同じ年の娘がおったな」 その言葉に、侯爵ははっとする。そしてあいまいな笑みを浮かべると、阿るように言葉をつむぐ。 「はい。しかし、妻は病弱でして・・・」 「アリーナが産まれた時、余は国王に即位して間もなかった」 侯爵の言葉を遮り、国王は滔々と続ける。 「王妃は身分の低く、確たる後ろ盾をもっておらなんだ。それでも、出産で身体を壊した王妃は乳飲み子を抱え毎日必死になって頑張っておった。そう、だれぞに乳母を頼もうとしても、その年に限って『病弱』なものが多く断られ続けていたからのう」 まっすぐに向けられた視線に居心地の悪さを感じた侯爵は、身動ぎをすると俯いた。そんな侯爵に構うこともせず、国王は言葉をつむぐ。 「その時じゃった。エンドールへ遊学していた折に知り合った友人が、妻を連れて訪ねてきたのは。彼は余の窮状を知り、最愛の妻を乳母にと危険も顧みず申し出てくれた。・・・それが、クリフトの父母じゃ」 国王は遠い昔に思いを馳せながら、当時の友人にますます似てきたクリフトに笑みを送る。 そして傍らで固唾を呑んで見守っていた娘に微笑みかけると、打って変わって静かな口調で述べた。 「親子二代にわたる国家への献身を、身分だけで貶めることは許さぬ」 静まり返った広間を見渡すと、国王は件の侯爵の姿に目を留める。 「そなたはクリフトをどこの馬の骨かわからぬ者の子と言ったが、そもそも乳は血液から作られるものと聞く。ならば、その乳を飲んで育ったアリーナはどこの馬の骨ともわからぬ者の血によってつくられていると言ってもよいのであろうかな?」 やや意地の悪さを含んだ質問に、いままで血統至上主義できたものたちは一斉に視線を逸らし、さりげなく後方へ下がった。侯爵にいたっては今にも倒れそうなほど顔色が悪くなっていた。 国王は再度広間を見渡すと、低く押し殺した声で訊く。 「まだ何か異議のあるものはいるか?」 聞くぞ? 旗色の悪さを悟ったものたちは俯いたまま、その視線をやり過ごす。 息をするのも気詰まりなほどの静けさが、あたりを支配していた。 すべてが萎縮する中、ゆっくりと自慢の髭をしごいていたブライが、そのような空気を物ともせず口を開き、クリフトの頭を杖の先で小突いた。 「ほれ、しゃきっとせぬか。そんなんではこのわしの・・・フレノール公ブライの跡を継げぬぞ!」 ブライの声が響くと、貴族の中の何人かが泡を食ったように声をあげた。 「フレノール公!?」 「あの流浪の公爵と言われた?」 「いや、しかし、実在していたのか?」 「私も単なる噂だと思っていました」 それらの言葉を煩そうに聞き流していたブライだったが、己の身分を告げたにも拘らず驚きのひとつもみせぬ養い子に不服そうに眉をひそめた。 「おぬしは驚かぬのじゃな」 つまらぬのう。 心底つまらながっているブライに、それまで畏まってきたクリフトは思わず笑みを漏らしていた。 「確証を得たのはいまですが、薄々はそうではないかと・・・」 「うむ?」 「先の旅の折、フレノールに立ち寄ったあのときから、ずっと疑問に思っていましたから。どうしてこれほどの規模の町が、『姫様』のお顔を存じ上げないのか、と」 例え公式行事に姿を現さない王女の顔が広く知れ渡っていないとはいえ、絵姿ひとつないというのは、少しおかしいのではないか。 まるで誰かが意図的に『姫様』の姿を隠しているかのように。 「あれは、やはりブライ様のお心遣いだったのですね」 姫様が、ただ一人の人間として、ただのアリーナとして存在できる場所を作るために。 そしてそれを行っているのは恐らく姫様を心から大切に思っている人物。 耳に届く『幻のフレノール公爵』、水面下でささやき続けられている『先々王の遺児』の存在。 ブライが時折国王に対してみせていた倣岸な態度。ブライの年齢。それらから推測するは・・・。 「ほっ、まさかそんなことで見抜かれるとは」 侮れぬのう。 そうひとりごち、それでも頼もしい跡取りの誕生に、ブライは相好を崩した。 そしてクリフトの手をとり立ち上がらせると、そっと背中を押した。 「ほれ、姫様のところへ行かんか」 「え?」 ブライの意図することがつかめずクリフトが首を傾げると、ブライは眉をあげて「よもや・・・」 と呟く。 「おぬし、まだ自分のおかれた立場を理解しておらんのか?」 わかっておらんようじゃのう。 へんなところで頭が切れるくせに、自分のこととなると全く頭の働かなくなるクリフトに深々とため息を漏らすと、疑問符で頭をいっぱいにしている青年に問いかけた。 「クリフト、貴族の爵位についてはある程度知識はあろうな?」 突然問われた内容に戸惑いつつも頷くと、ブライはにやりと笑った。 「父親が公爵の場合、息子の爵位は?」 「爵位を受け継ぐまでは一階下の侯爵を名乗ることができます。また、養子など特殊な事情を持っている場合は、正式に爵位を譲られるまでは二階下の伯爵・・・」 そこまで言って思い当たったのか、クリフトははっと顔を上げた。 「そう、おぬしは今日から『フレノール伯クリフト』じゃ」 駄目押しとばかりに突きつけられた事実に、クリフトは僅かに体を震わせた。 ちらりと玉座を窺うと、国王が傍らに腰掛けていた娘になにやら囁いている。 アリーナが弾かれたようにこちらを見た。 正面から視線が絡む。 アリーナの瞳が揺れ、声にならぬ呟きがクリフトに届く。 「クリフト・・・」 「姫様」 欲しくて得られなかったもの。 全身全霊をかけて求め続けてきた存在。 それがいま・・・。 「ほれ、行った行った」 女人を待たせるものではないぞ。 くだけた調子で急かすブライの目尻にも、僅かな光がともる。 ずっと二人を見守ってきたブライは、彼らの知らぬところで何度となく心を痛めてきた。 クリフトを養子に迎えることは容易い。しかし、実績が伴わなければ認められない。 度重なる苦難と葛藤。ブライが見守る中、それらを乗り越え、クリフトは自力で爵位を手に入れた。それは、男爵という格下ではあったけれども、何の後ろ盾もない青年が得るには並大抵の努力ではなかったであろう。だからこそブライは、自力で爵位を手に入れたクリフトだったからこそ、己の養子に迎える決断を下した。それでも、クリフトを取り巻く苦難は形を変えて襲いかかってくるであろう。たとえどんなに本人が努力をしても、それが通用しない相手も存在するからだ。 しかし、とブライは思う。 ひとりであったらくじけてしまう道のりであろうとも、ふたりであったならば乗り越えてゆけるかもしれない。 教育係として長く仕えてきたアリーナは、多少破天荒なことろはあるものの、その実芯の強い女性である。彼女ならば、クリフトを支え、共に苦難の道を乗り切ってくれる。そう信じている。 衆人が固唾を呑んで見守る中、蒼髪の青年が歩みを進めた。 アリーナが椅子から立ち上がり、クリフトのもとへと駆け寄る。 大臣が、どうしたものかと窺うと、国王は目線だけで頷き、黙認を決め込んだ。 後に、この場に居合わせたものたちは、物語の一節を読み上げるかのようにうっとりと語る。 それはまさにロマンス。 「姫様」 「クリフト」 互いに距離をつめ、手を取り合ったふたりは暫し見つめ合い、微笑んだ。 やがて蒼髪の青年は片膝をつき、王女の手を取ったまま真摯に語りかけた。 「姫様、ずっとずっとお慕い申し上げておりました」 紡がれる一言一言に万感の意を込めて、青年は愛する姫君を見上げる。 姫君は緋色の瞳を微かに潤ませ、小さく頷く。 「もし、お心に叶いますれば、私と永久の契りを交わしていただけませぬか?」 それは、クリフトがずっとずっと告げたくて告げられなかった想い。 初めは苦しい片恋だった。 次に待っていたのは、すれ違う心だった。 そして互いの想いを知りつつ、ただひたすらに想いを隠し続けた日々。 両想いゆえの苦難の数々。 それでも、そこに諦めという言葉はなかった。 ずっとずっと求め続け、喘ぎ続けた。 アリーナの手が震えていた。 それを支えるクリフトの手も。 ふたりの想いが交錯し、そして形を結んだ瞬間だった。 「喜んで、お受けいたします」 桜色の唇から紡ぎだされた言葉。 クリフトはアリーナを見つめた。 アリーナはクリフトに微笑みかけた。 クリフトが立ち上がり、アリーナがそれに寄り添った。 アリーナの手にクリフトの唇が落ち、アリーナがはにかんだ。 穏やかで幸福な時間が流れ、緊張を繰り返してきた広間に、不思議な安らぎを与えた。 あるものは思った。「これは天の采配だ」と。 あるものは思った。「赤い糸は存在するのだ」と。 あるものは思った。「運命だったのだ」と。 どこからともなく拍手が沸き起こり、ふたりを包み込んだ。 驚いたふたりが、自分たちの世界に浸っていたことに改めて気づき、赤面する。 そんな初々しいふたりをある老夫婦は微笑ましげに見つめていたし、アリーナの婿の座を狙っていた青年貴族はむっとしたように視線を逸らした。 劇的な展開にため息を禁じえなかった大臣が、国王に耳打ちすると、重々しく頷いた国王が、玉座から立ち上がりふたりのもとへと向かった。 それに気づいたふたりは国王の方へ向き直ると、礼をとる。それを片手で制しながら、国王は問いかけた。 「アリーナ、彼でいいのだな」 まっすぐに射抜くように見つめてくる父王に、アリーナは迷いのない目で答える。 「はい」 アリーナの言葉に、「そうか」と短く頷くと、クリフトの方へ向き直る。 片膝をついて畏まろうとしたクリフトの手を握ると、僅かに首を振り立ち上がるように促す。 クリフトは若干の戸惑いを見せたものの、国王の意図に従い背筋を伸ばして姿勢を正した。 「クリフト、立派な青年になったな」 それは父親から息子にかけられる言葉のように情愛に満ちていて。 背の高さからやや見下ろす格好となってしまった国王にクリフトは改めて親愛の情を覚えた。 国王はクリフトの気持ちを察したか、少しだけ人懐っこい笑みを見せ、そして真剣な眼差しを向けると厳かに告げた。 「娘を、頼む」 「はい」 それは、クリフトがアリーナの婚約者として正式に認められたことであり、長年サントハイムの首脳部を悩ませてきた問題が解決した瞬間でもあった。 胸にこみ上げてきた思いに、思わず涙したブライだったが、その直後に響いた声に激しい頭痛を覚えた。 「よかった~。ほんとどうしようかと思っていたのよ。クリフトが相手なら喧嘩しても手加減する必要はないわね~」 万が一負傷しても、クリフトなら自分で治せるしね。 アリーナの切実な言葉はしかし、多くの者たちにさまざまな反応を呼び起こした。 事実、父親であるサントハイム国王は眉間を押さえて深々と嘆息したし、クリフトは「それはよかったですね」とやや引きつった笑みを浮かべた。また、クリフトとアリーナの婚約にいつ異議を唱えようかと画策していた青年貴族たちは皆、一様に視線を逸らし、一拍おいてクリフトとアリーナに惜しみない祝福と盛大な拍手をおくった。 アリーナの意図がどこにあったかはわからないが、期せずして反対派を押さえ込むことに成功したようである。 こうしてクリフトの叙爵式は、一部波乱の様相はみせたものの終了し、近日中に国内外にアリーナとクリフトの婚約の報が伝えられた。 後日、旅の仲間たちがふたりを祝福するために駆けつけた。 当初はからかう気満々だった面々だったが、次のクリフトの言葉に誰もが押し黙る。 「皆様の『あたたかい』ご協力のおかげで、姫様と婚約することができました。本当にありがとうございます。そして、これからも『よろしく』お願いしますね」 ソロは、「友情」という名のもとの、辛く苦しい無償労働の日々を思い、マーニャはカジノのコインに釣られて、分厚い岩盤を吹き飛ばすため攻撃呪文を連呼した日々を思った。 また、ミネアは「ミネアさんしか頼ることができないのです」と真摯に訴えかけてきたクリフトを思い出して頬を赤らめ、ライアンは「とある調査」のためにクリフトと共にイムルを訪れた時のことを思い返して思わず咳払いをした。 そして、トルネコは・・・・・・いつもの陽気さを潜め、ただ一言呟いた。 「もうこりごりです・・・」 それぞれの胸に何を秘めているのかそれはわからなかったが、ブライはこの様子を見て少しだけ 胸が痛んだ。 「クリフト・・・おぬし」 一体何をやらかしたのじゃ? 破竹の勢いで進められたサントハイム復興の裏側で、何が起こったのか。 関係者の口は堅く、その内容は杳として知れない。 (終)
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クリフトのアリーナの想いはPart12.5 662 名前 人気投票1/3 Mail sage 投稿日 2013/01/21(月) 22 32 54.92 ID XX9PyRYU0 「こんな…ありえません…。」 クリフトは、無機質な文字が並んだ書面を凝視して呟いた。 ここは、サントハイム城の賓客用の間。 大きく開け放たれた窓際にはティーテーブルが用意され、そこでは 客人である緑の髪の青年がのんびりと午後のお茶を楽しんでいた。 「ん?今メイドさんが持ってきてくれた手紙か?何かあったのか?」 勇者はテーブルから立ち上がると、クリフトの手元を覗き込んだ。 「ああ何だ、人気投票結果のお知らせか。ずいぶん遅いな。 俺のところには、確か先週あたりには届いてたぞ。」 「え…。」 勇者はクリフトの顔を見てニッと笑った。 「栄えある1位獲得、おめでとさん!」 クリフトは慌てた様子で手にした紙をくしゃりと握りしめた。 「い、いえ、そんな、この結果はおかしいですよ!」 「どこがおかしいんだよ。」 「だって、私が1位なんて…ソロさんの方が上のはずなのに…。」 肩を落としてうつむくクリフトの背中を、勇者はポンポンと叩いた。 「ああ、そっちか。いいんだよ、俺は何位だろうが。 むしろ下位の方が気楽でいいや。」 「ソロさん…。」 長い間、世界を救う勇者であり、天空の民であるという特異な存在として 計り知れない重責を背負い続けた青年は、現在の「単なる村人」としての 平凡な日常を、心行くまで満喫しているようだった。 しかしクリフトは大きく首を振った。 「やはり駄目です!」 「な、何だよ、耳元で大声出すなよ!」 勇者は耳に手を当てるとクリフトから飛びのいた。 「ソロさんの順位以上に、姫様が私などの下にランキングされるなんて あり得ません!この投票には何か手違いがあったに違いないんです!」 「…俺の順位以上に、って、おい。…まあ、分かってたけどね…。」 馬鹿が付くほど姫様大事の神官が、キャラクターの人気投票で その姫よりも上の順位を獲得してしまったらどうなるか。 「あのな、お前は認めたくないかもしれないが、 これは商業雑誌が主催した公正なる投票の神聖なる結果だからな。」 勇者が諭すように言うと、クリフトは蒼ざめた。 「そんな…私は姫様に何と失礼なことをしてしまったんでしょう…!」 「だーかーらー、お前自身が何かしたわけじゃないだろーがっ! それより、お前、その通知よく読めよ。人気投票は他にも…。」 そのときバン、と扉が開く音がして、明るい声が客間に響いた。 「ソロ!久しぶりね!来てたんだったら言っ…て…。」 満面の笑みを浮かべて部屋に入ってきたアリーナは、そこで固まった。 その視線の先には蒼ざめたクリフトが立ちすくんでいる。 勇者はどこか面白がっているような表情を浮かべて2人を見比べた。 「~~~!」 次の瞬間、アリーナの顔がパパパ、と熟れたリンゴのように紅くなった。 そして何も言わずにくるりと踵を返すと、脱兎のごとく部屋から出て行った。 「姫様!?姫様!!お待ちください!」 クリフトはアリーナを追おうとしたが、部屋の扉は目の前で音を立てて 閉められてしまった。 「…姫様…。」 クリフトは絶望的な表情でその場に崩れ落ちた。 「おーい、大丈夫か?」 勇者はクリフトの横によっこらせ、としゃがみこんだ。 クリフトは床に両手をついて頭を垂れていた。 「あのご様子…。姫様もあの結果をご覧になられたんですね…。 姫様がお怒りになるのもごもっともです。私は何と不遜なことを…。」 「……ん、まあ、あの反応は、『結果』を見たんだろうなぁ…。」 勇者は呟くとクリフトを覗き込んだ。 「で?どうすんの?こんなとこでへたり込んでる暇があったら、 アリーナのこと追いかけた方がよくね?」 ハッとクリフトが顔を上げた。 「そ、そうでした!とにかく、姫様にはお詫びを申し上げなければっ!」 クリフトがすごい勢いで部屋を飛び出して行ったあと、勇者は、 やれやれとため息をつきながらテーブルに戻っていった。 テーブルの上には、くしゃくしゃに丸まった紙が放り出されている。 勇者はそれを手に取ると、丁寧に皺を伸ばした。 「クリフト…あの馬鹿、単独キャラの投票結果でパニックになって こっちの方に全く気が付いてないな…。」 単独キャラの投票結果の下方には「カップリング人気投票結果」との記載があり 一番上には、ダントツで1位を獲得したカップリングの名が印字してあった。 「クリフト×アリーナ」 「まーったく、俺とシンシアより上ってのはなぁ…。」 ブツブツ言いながらも、勇者の顔は微笑んでいた。 「いずれにせよ、あいつらがどんな顔で戻って来るか楽しみだ。」
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 668 :【姫様がいっぱい!?】1/5 ◆cbox66Yxk6 :2006/03/22(水) 21 24 13 ID 6JsiJkcp0 アリーナとクリフトの仲を邪魔したいサントハイム王は今日も玉座で唸っていた。 「・・・なんか、こう、あやつをぎゃふんと言わせられるような・・・」 眉間に寄せられたしわの深さに、苦悩の一端が垣間見える。 しばし、うんうんと唸っていた王だったが、急に立ち上がるとブライを呼びつけた。 何事かと慌ててやってきたブライに、王はにこやかに告げた。 「ちと悪いが、勇者殿を呼んできてくれんかのう」 ブライは、また陛下のご病気が始まったと内心ため息をついたが、賢明にも表情に出すことはしなかった。 「陛下、準備が整いましてございます」 「うむ」 ブライの声に重々しく頷いたサントハイム王は、傍らに控える人影に視線を送る。 「頼みましたぞ、勇者殿。いや、アリーナたちよ」 「は~い、お父様」 サントハイムの傍らに控えていたのは、アリーナにモシャスをした勇者ソロと、そのソロの口添えでピサロから借りてきたマネマネ数匹。こちらもアリーナにモシャス済みだ。 サントハイム王が画策したこと。それは偽のアリーナをたくさん仕立てて、クリフトに本物を当てさせようというものだ。しかも、その中には本物はいない。 単純な思いつきとはいえ、王は自分の考えに悦にいっていた。 アリーナにモシャスした勇者を見たとき、王は本人と思わず間違えかけた。さすがに長く共に旅をしてきただけのことはあり、アリーナの癖や仕草もよく知っている。その他のマネマネ集団は若干不安が残るものの、見た目は完璧だ。 王は内心高笑いをしていた。 父親である自分でさえこうなのだから、クリフトなどひとたまりもないだろう。 (やっとクリフトのすまし顔に泥を塗ってやれるわい) 王の表情から何を悟ったのか、ブライが深々とため息をついた。 そして頭を振ると、疲れの滲む声で奏上した。 「陛下、姫様がただいま城を抜け出したとのことですじゃ」 わざわざ警備まで甘くして、何も知らないアリーナの脱走を促す。 本来なら部屋にでも閉じ込めておければよいのだろうが、あの『アリーナ』がおとなしく閉じ込められているとは考えにくい。というか、閉じ込めることすら不可能である。 ならば、いっそのこと城から出ていてもらおう、というのが王の考えであった。 (普段ならば、姫様が脱走しただけで怒鳴り散らすというのに) ブライはその報告に嬉々としている王を見つめ、複雑な顔をした。 (はたして、うまくいくものかのう) ブライの呟きはサントハイム王の喜びの前にむなしくかき消された。 「のう、クリフト。ちょっとわしの座興に付き合ってくれんか」 なに、お前にとってはそんなに難しいことじゃなかろうて。 含み笑いをするサントハイム王にクリフトは何やらよからぬ予感を覚えたが、それを押し隠し王の次なる言葉を待った。 「そなたがどの程度アリーナのことを理解しておるか、知りたくてな。この中から本物を見つけてほしいだけじゃよ」 ずらりと並ぶアリーナにクリフトは軽いめまいを覚える。 偽者とわかっていても、愛する人がずらりと並ぶ光景は圧巻である。 仕方なく、ひととおり視線を送ったクリフトは、おもむろに口を開いた。 「申し上げます。この中に本物の姫様はいらっしゃいません」 クリフトの声と同時に、アリーナの怒鳴り声が響き渡る。 「ひどいわ、クリフト!!」 目を吊り上げて怒る『アリーナ』にクリフトは冷たい視線を向ける。 そしてにこやかに笑った。 「こんなところで何をなさっておいでです?ソロさん」 「げ、ばれてる」 思わず呟いたソロに、クリフトは追い討ちをかけるように言い募る。 「わざわざピサロさんに『マネマネ』までお借りしてきたのですか」 クリフトの言葉にモシャスを解くと、ソロは両手を上げた。 「降参」 クリフトは満足げに頷くと、王に向かって礼をとる。 「用件は以上でございますか?」 あまりにもあっさりと見破られてしまい、あっけに取られていた王は「うむ」と応じると、クリフトに退室を促した。が、クリフトが扉の前まで行ったとき、躊躇ったように呼び止めた。 「クリフト、そなたはそこまでアリーナのことを・・・いや、なんでもない。行ってよいぞ」 王の言葉に扉の前で優雅に一礼すると、クリフトは静かに退出した。 「あ、クリフト、待ってくれよ」 ソロは、王にぺこりと頭を下げるとクリフトのあとを追いかけていく。その後姿を見つめながらブライが口を開いた。 「陛下、いかがですじゃ」 ブライの言葉すら耳に届いていないのか、王は片手を額に当ててうつむくと、深々とため息をついた。そして少し切なげに呟く。 「あんなにあっさりと見破られたのでは、認めるしかないではないか」 自分ですら一瞬戸惑ったというのに、あやつは躊躇いもしなかった。 それはすなわち、それだけアリーナのことを理解しているわけで。 悔しいと思いつつも、そこまで娘をわかっていてくれるとなると、男として認めざるを得ない。 非常に不本意だが、王はすこし感動していた。 だが・・・・・・。 「えぇい、かわいげがなさすぎるわ!!!」 急に声を荒げた王にびっくりしたマネマネの何匹かがモシャスを解き、まごまごした。 「やっぱり、いやじゃ、いやじゃ、いやじゃ・・・認めとうないわい」 泣きじゃくる王を、はじめのうちは遠巻きに見ていたマネマネたちだったが、次第に一匹、二匹と集まってくると、代わる代わる王の肩をぽんぽんと叩いた。 「おぉ、そなたたちはわしの気持ちをわかってくれるのか」 魔物に同情され、あまつさえ慰められてしまった王にブライは頭痛を覚えた。 「陛下、頼みますからそろそろ大人になってくだされ」 アリーナの姿を保ったままのマネマネをわざわざ選んで、縋り付いて泣く王は、なんだかすこし幸せそうであった。 「お~い、クリフト、待ってくれよ」 長い廊下の先で立ち止まり振り返ったクリフトに、ソロは不思議そうに訊く。 「なぁ、お前さ、どうしてわかったんだ」 おれ、結構自信あったんだぜ? ブライから話を聞いたソロは、実は密かに何度も練習を積み重ねてきた。 そして、ブライにさえお墨付きをもらえるようになったというのに、ああもあっさりと見抜かれたのでは納得できない。 ソロの問いにクリフトは頷いた。 「そうですね。ソロさんはとても上手に化けていらっしゃったと思いますよ」 「じゃ、何でだよ?」 ソロが繰り返して聞くと、クリフトはすこし悪戯っぽく笑った。 「ヒントをあげましょう。外出された姫様はそのあと、どこへ向かったのでしょう」 お城の外に一度出たからといって、お城の外だとは限りませんよね。 クリフトの言葉に、一度は首を傾げたソロだったが、その意味に思い当たって吹き出した。 「そういうことか」 「そういうことですよ」 そうじゃなかったら、結構危なかったかもしれませんね。 照れたように付け足したクリフトに、ソロは微笑んだ。 「そっか」 うまくやってるんだな。 旅の間、ぜんぜん進展しないふたりにやきもきしたこともあったけど、それは杞憂だったようだ。 「よろしかったら、私の部屋でお茶でもしていきませんか?」 「おう」 勢いよく答えたソロだったが、次の瞬間「あっ」と口を押さえた。 「どうしたのです?」 クリフトが驚くと、ソロは少し顔を赤くした。 「もしかして、おれ、お邪魔虫?」 ソロの言葉にクリフトは声を上げて笑った。 「大丈夫ですよ。今日はまだ、そこまでいっていませんから・・・って何て顔をなさっているので す。冗談ですよ、冗談」 おいおい、全然冗談に聞こえないんですけど。 (終)
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 909 :【暑がり・寒がり】1/2 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/14(金) 17 33 26 ID 1LJiWNv+0 「う~、あーつーいー・・・」 真夏の行軍は、かなり過酷である。 暑さしのぎのためにピンクのレオタードを装備したアリーナがうんざりしたように天を仰ぎ、ぎらぎらと照りつける太陽を恨めしげに睨む。暑がりのアリーナにとっては辛い季節だ。 「ほんと、暑いわね」 同じく暑がりのマーニャが鉄の扇をパタパタさせながら同意する。こちらもアリーナと同じくピンクのレオタードを装備していたが、踊り子の服に比べると布地が多いため、暑さしのぎといってよいのか微妙なところだ。 ふたりでさんざん暑い暑いと呻いていると、見ているだけで暑苦しいクリフトが水筒を差し出した。 「ありがと」 「あら、気が利くじゃない」 お礼を言いつつ水筒を受け取ったアリーナだったが、ふと目の前の青年の服を掴んだ。 「ね、クリフト、暑くないの?」 真夏の日差しの中でも神官服。それも全く着崩したところがない。 「いくらあなたが寒がりだからって、これじゃ暑いわよね」 脱いじゃえばいいのに。 アリーナの言葉に、クリフトはやんわりと笑うとわざとらしく祈りのポーズをする。 「これも神のご加護・・・ではなく、慣れですね」 精神修練のひとつですから。 事も無げに言い切る。 その言葉を聞いたマーニャが、鼻の頭にしわを寄せた。 「精神修練ね」 ふ~ん、私が一番苦手なことだわ。 何気なく聞き流しかけたマーニャだったが、はたとクリフトの衣に視線を移した。 そしてしげしげと分厚い神官衣を見つめると、にやりと笑う。 その笑いになにやら不吉な予感を覚えたクリフトが、知らず身を引く。 マーニャはそんなクリフトの腕を取ると、からかいの色を滲ませて耳元で囁いた。 「もしかして『あの状態』を隠すために厚着してるんじゃないの?」 視線だけでアリーナを指し示し、マーニャが聞いてくる。 瞬間、クリフトの顔がこわばる。が、それこそ精神修練の賜物か。即座に笑顔を作るとシラをきる。 「まさか」 「嘘」 「違いますよ」 「ほんとに?」 「本当です」 クリフトのその言葉に、マーニャはにんまりとする。 「じゃ、証拠みせて」 言うや否や、アリーナを呼び寄せる。 「なぁに」 小首をかしげてやってきたアリーナにマーニャが微笑む。 「アリーナ、ちょっと膝に手を当てて屈んでみてくれる?」 「こう?」 腕に押し上げられ強調されたアリーナの胸が、クリフトの視界に映し出される。 同時に、クリフトの笑顔が凍りつき、身体が硬直した。 マーニャはその様子を満足げに眺めると、満面の笑みを浮かべた。 「じゃ、見せてもらいましょうか?」 力なく歩み去るクリフトの背を見送りながら、マーニャは思った。 「そういえば」 ステテコパンツってクリフトとソロ、つまり『若者』は装備できないのよね。 「つまり、そういうことか」 ―――いま、ドラクエ世界の、最大にしてどうでもいい謎が解けた。 (終)
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 797 :隙間風1/1:2006/04/04(火) 16 16 19 ID wPcTlD/d0 ー隙間風ー その日は夕方から風が強かった。 そんな中山小屋を見つけられたのは幸運だった。 資材置き場として使われていたのだろうが生憎と火を起こせる様な場所は無かったが この強風が避けられるだけでもありがたいことだった。 「ふ~すごい風~」 アリーナ姫の美しい髪も今日は砂埃や葉っぱが絡みついている。 ようやく風を避けられ、ほっと一息つきながら手串を通して必死に髪を整えていた。 何とか3人が横になれる場所はあったのだが粗末なつくりの山小屋隙間風が吹き込んでくる。 季節外れの強風、寒さ対策をするには早い季節で手持ちの防寒具が少なかった。 クリフトはお歳を召してるブライ様を心配して自分の分を渡して就寝した。 「クッシュン」 深夜可愛いクシャミで目を覚ました。 いまだに風が吹き止まずギシギシを山小屋を揺すり、隙間風が体温を奪っていく。 「姫さま眠れませんか?」 クリフトが毛布を渡したかい合ってか、寝息を立ててるブライを起こさぬようにそっと声をかける。 声をかけられたアリーナはマントと毛布を自分の体に巻きつけながらモゾモゾと身を起こした。 「そうね、小屋なのにけっこう風吹き込むわね」 動きにくいと言って厚着を嫌うアリーナは薄着なのでこの隙間風は堪える様だった。 「私どもの準備が悪く、姫さまにご不便をおかけして申し訳ございません。」 「ん、クリフトのせいじゃないわよ。」 そう入ったもののアリーナの肩は小刻みに震えていた。 自分の毛布はすでにブライに渡してしまっいて他に渡せるようなものはない。 何か方法は無いかと考えをめぐらせるクリフト。 あっ、この自分のコートみたいな上着なら姫さまを包めるかもしれない。 必着することになってしまうけど、ここは仕方ありません! そう他に方法が無いんだし、不本意ではありますがこの不肖クリフトが姫様を あっためて差し上げるしかないんです!!! クリフトはプチプチと早急に上着のボタンを外していく 「ちょっ、ちょっと、な、なに!?」 「ひ、ひめ・・・」 明らかに暴走した考えに取り付かれてるクリフト いきなり服を大きく広げ、覆い被さって来ようとする。 その姿はなんというか・・・・コートを広げて見せてくる変態っぽかった。 しかしクリフトがアリーナまで達することは無かった。 「なに考えてるのよーー!!!」 ドガッ!! アリーナの強烈な鉄拳が決まってクリフトは壁まで吹っ飛ばされた。 「ぐ、ぐえ・・・」 断末魔を残してクリフトは気絶した。 「ったく、突然なにしようとするのよ!」 大きく肩で息をしながらアリーナは突然のクリフトの行動に今でもドキドキして胸が熱かった。 クリフトの本意とは違ったがとりあえずアリーナは暖まったようだった。
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本当はクリアリが好き 270 名前: とびねずみ ◆NezmymcE 投稿日: 02/06/05 10 07 ID ??? アリーナのケーキ この間、台所を覗いたら、クリフトが、エプロンをしてケーキを作っていた。 教会のバザーに出して、お金を集めるんだって。メイドに一所懸命教わって、 額に汗いっぱいかいてた。普段は女性の前では涼しい顔してるのにね。メイドだ って女の子なのに、その前であんなに汗をかいて、しかもその汗をふいてもらったり してさ……。あ、ええと、そんな事はどうでもよくって。 それがね、味見したら、すごく美味しかったの。びっくりするくらい。 だから、私はコックにケーキ作りを教わったの。クリフトに(どんな事でも) 負けるのは悔しいし。それに、クリフトに教えたメイドに教わるのも悔しかった んだもん。 だけどねえ、なんだか、やきあがったのって、真っ黒なの。クリフトのは綺 麗なきつね色に焼き上がっていたのにな~~。コックも不思議そうな顔してた。 でも、いいわ。クリフトが作った時よりもいい材料だって言ってたもの、きっと 美味しいはずよね。 「クリフト、食べてみて? クリフトのケーキに負けないはずよ」 「姫さまがこれを? 私の為に作ってくださったのですか?」 「う~ん……クリフトの為に作った、といえなくもないかな~」 「感激ですっ。もちろんいただきますっっっ」 がちっ。 クリフトのケーキにフォークを入れた時とは、随分違う音がしたわね……。 「ぐわっっ」 「な、なに??? どうしたの???」 「ひ、姫さま、これは薬用なんですか??」 ……………。これって、どっちの勝ちなのかしら?
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ペギー,◆e.sLpeggy2クリフトのアリーナの想いはPart12 425 名前 戦う理由 1/4 Mail sage 投稿日 2011/10/17(月) 23 53 41.96 ID 9GJ7VNi00 「クリフトー、稽古しようぜ、稽古。」 「またですか、あなたも元気ですね。」 クリフトは剣を振り回す俺を、苦笑しながら眺めた。 「たまにはライアンさんと練習したらどうです?」 自分の剣を取りに行きながらも尋ねてくるクリフトに、俺は首を振った。 「いや、ライアンさんの剣は重いから、体調万全じゃないとしんどい。」 「調子が悪い時は、私程度がちょうど良いと言うわけですか。」 クリフトは、ちょっと傷ついた顔をしたが、それでも剣を構えてくれた。 「ふぃーっ、疲れたーーー!!」 ひと通りの打ち合いを終えると、俺は、その場に座り込んだ。 「お疲れ様です。」 クリフトが笑いながら長剣を拭って鞘にしまう。 俺はクリフトを見上げた。 「お前、よくそんな長い剣使ってるよな。扱いづらくないか?」 前々から思っていたことだ。 しかしクリフトは、手に持った剣を眺めて首を傾げた。 「そうですか?…私は、初めて習ったのが長剣でしたから…。」 「へえ?珍しいな。」 普通は短めの剣から入るもんだけど。 と、クリフトが苦笑した。 「私が最初に習ったのは実戦ではなく、剣舞の方でしたので。」 「ああ、なるほど。」 以前アリーナから聞いたことがある。 神官は皆、神に納めるための剣舞を習うんだって。 「お祭りの日には飾りのついた長い剣を持って皆で舞うんだけど、 それがね、すっごい綺麗でカッコいいの!」 アリーナはそう言って目をキラキラさせていたっけ。 「そういわれると確かに、お前の剣の動きって舞みたいだよな。 何だかこう、流れるみたいで。」 俺は褒めたつもりだったんだけど、クリフトは嫌な顔をした。 「…まだ、そう見えますか?」 どうやらクリフトは、自分の剣が実戦向きでないと言われているように 感じているらしい。 「何だよ、別にいいじゃないか、動きは綺麗な方が。」 しかしクリフトは首を振った。 「剣舞のために習う剣技は、あくまでも舞であって 人を傷つけることがあってはならないんです。 切っ先で人を傷つけないように剣を引いてしまう癖を直すのに 随分苦労しました…もう克服したつもりだったんですが。」 「へぇ…。」 俺は、クリフトを見上げながら、ふと考えた。 神に捧げる技としてしか剣に触れたことのなかった神官。 サントハイムがあんなことになってなければ、こいつはきっと 戦いとは縁遠い場所に身を置いて一生を過ごしたに違いない。 俺は山奥で育ったせいか、魔物とやり合うのも日常茶飯事だった。 物心ついた頃には、短剣を握ってスライムとやり合っていたものだ。 でも、クリフトにはそういう攻撃的なニオイを全く感じない。 むしろ、こいつの能力は命を生かす方に発揮される類のものだ。 そんなこいつが、今のように平然と魔物を屠るようになるまでには、 きっと俺には想像もできないような葛藤があったに違いない。 長くて重い長剣を実戦で使えるようになるまでにも、 血のにじむような努力をしてきたんだろう。 そして、こいつがそんなにも努力する、その理由はもちろん…。 「クリフトー!」 明るく響く声に、クリフトがすごい勢いで振り返った。 「姫様!」 そして、手を振るアリーナのもとに笑顔で駆け寄っていく。 毎度の光景を眺めながら、俺はごろんと草の上に横になった。 たとえ想いが届かないとしても。 たとえ単なる独りよがりだとしても。 その人を守るためなら、自分の生き方を変えることも厭わない。 クリフトは、そうやって強くなってきた。 今のあいつの太刀筋は、決して俺やライアンさんに劣らない。 だったら、俺はいったい何のために強くなっているんだろう。 太陽がまぶしくて、俺は目を閉じた。 脳裏に、羽帽子をかぶって微笑む、懐かしい顔が浮かぶ。 強くなって、戦って、その後、俺にはいったい何が残るんだろう。 不意に、そのまま大地に溶けてしまいそうな疲労感が俺を襲った。 目を閉じてもまだ太陽はまぶしかったけれど、顔を背けるのも億劫で 俺はそのままじっと横たわっていた。 と、不意に目の前が翳って、俺は目を開けた。 そこには頬を膨らませてこちらを覗き込むアリーナの顔があった。 「ソロったら、稽古するんなら、私も呼んでくれればよかったのに!」 俺はゆるゆると首を振った。 「無理。今晩は俺が不寝番だもん。お前とやり合う体力はないの。」 「…どうも先ほどから、そこらへんが引っ掛かるんですよね…。」 アリーナの後ろでクリフトがブツブツ言っている。 「それよりも、ソロ、クリフトがお茶淹れてくれるって!行こう? 稽古して喉渇いてるでしょう?私、何だかお腹も空いちゃった。」 「でしたら、昨日街で買ったクッキーがあるので、 それをお出ししましょうか。」 「やったー、クリフト大好き!ほら、ソロ、早く起きて!」 アリーナが俺の手をつかんで、ぐい、と引っ張り上げた。 さすが力は抜群だ。俺はあっという間に引き起こされた。 「稽古ではライアンさんや姫様に比べて力不足かもしれませんが、 あなたの喉の渇きを癒すくらいは、お役に立てると思いますよ。」 そう言って笑うクリフトに、アリーナが笑いかけた。 「うん、クリフトのお茶はどこのお店よりも一番美味しいものね!」 「ひ、姫様にそう言っていただけるなんて、光栄です…。」 「…。」 ―――ああ、そうか…。 笑顔で言葉を交わす2人を見ながら 俺はふいに目の前が開けたような気がした。 俺の戦う理由。 俺が強くなる理由。 それは目の前にあるじゃないか。 大切な友人たちの愛する者が奪われないように。 あんな悲劇を二度と繰り返さないために。 そして戦いが終わった後に、こいつらが変わらず笑顔でいてくれたら そうしたら、きっと、俺も何かを掴める気がする。 俺は2人に向かって手を差し伸べた。 「よし、お茶も飲むしクッキーも食べるぞ! そしてたくさん修行して、俺はもっと、もっと強くなるからな!!」
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組織・人物 組織・団体 人物PC シャハール王国 ベルクリフ砦 メルトランド王国 過去の人物 組織・団体 ホワイトシルエット シャハール王国王女イリアお抱えの私設密偵部隊。 隊員は皆、純白のタキシードを身にまとっている。 ベルクリフ傭兵団 ベルクリフ砦の傭兵団。 団長はジャスパー。 セカンドサバイバー 10年前の魔界ゲート事件(通称セカンド)を生き延びた歴戦の兵につけられた通称。 ベルクリフ傭兵団の団長、ジャスパーが代表的なメンバー。 人物 PC エリクシール ヒューリンのシーフ/フォーキャスター。 怪盗軍師の異名を持ち、義賊として名を馳せていた。 現在はイリア王女の私設部隊、ホワイトシルエットの隊長。 実は魔族。 イリアが好きだから人間についている。 シルバー(10番) エクスマキナのアコライト/メイジ。 メルトランド王国の密偵で、現在はベルクリフ傭兵団にて諜報活動を行っている。 10番はメルトランドでの呼称。 イーガル ヒューリンのシーフ/レンジャー。 ベルクリフ傭兵団の隊員。リカル部隊所属。 ロバート・アクセルロッド ヒューリンのウォーリア/プリーチャー。 (第2話終了後、モンクへクラスチェンジ) ベルクリフ傭兵団の幹部。 プリーチャーとして神竜王セフィロスの加護を受けており、 ベルクリフ傭兵団の盾として殿を務めることが多い。 その昔、シャハール王国に見捨てられ、部隊が全滅したことがある。 それと時を同じくして、シャハール王国の解体を示唆する啓示を受け取っている。 PC間コネクション:→シルバー(貸し) カイラ エルダナーンのメイジ/サモナー。 イリア王女の従者。 PC間コネクション:→イーガル(友人) シャハール王国 イリア王女 シャハール王国の第1王女。 若干12歳ながらも国政に口を出し、兄に煙たがられている。 国民の人気は絶大。 ラザート王 シャハール王国の国王。 イリア王女の兄にあたる。 現在、側近の入れ替えを行い、軍事力の強化を国家の方針として進めている。 ベルクリフ砦 ジャスパー ベルクリフ傭兵団のギルドマスター。 かのセカンドの事件を生き延びた歴戦の傭兵。 傭兵としての実務能力は高いが、デスクワークは下の下である。 リカル ベルクリフ傭兵団の幹部。 イーガルの直属の上司である。 ロバートが嫌い。 メルトランド王国 ローバーン伯 メルトランドの南西端に位置する都市、ネールストラを治める。 専守防衛のメルトランドにあって珍しい野心家で、密偵を用いて他国の情報を積極的に収集している。 エンリケ ローバーン伯の部下。 メルトランド本国とベルクリフの密偵シルバー(10番)の連絡係をつとめる。 機械人形ごときに会うためにわざわざベルクリフくんだりまで来るのが不満。 過去の人物 レイモンド シャハール王国建国王。 ベルリール王国の北東部を治める伯爵であった。 ベルリール王国の崩壊に合わせる形でシャハール王国を建国する。
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クリフトのアリーナの想いはPart11 445 :従者の心主知らず さえずりの塔 前編 2/8 :2010/12/02(木) 06 15 11 ID gn7Vs5mP0 「お父さまが大変ってどういうこと!?」 砂漠のバザーで楽しい時間を過ごしている中、突然私たちを呼び止めたお城の兵士。 次に出てきた言葉はお父さまが大変だという一言。 「も、申し訳ありません。急使を承り、すぐに城を出たもので、私も詳しくは、存じないのです……。 とにかく、すぐにお城に戻るようにと、承っております……」 息を切らして答える兵士。よっぽど走り回って私たちをさがしてたんだということがいやでもわかった。 「もしや、王さまの身に何かあったのではっ!?ここはいったんお城に戻るべきではないでしょうか?」 「おお!わが王が!?これはいかん。いかんですぞ。のんきに旅をしている場合ではございません。すぐに城へ戻りましょう!」 じいとクリフトも口々にまくし立てる。荷物をまとめる音。落ち着かない空気。私は…… 「お父さま……」 「王さまは国のかなめ。王に一大事あらば国もまた……ひ、姫さま!?」 クリフトが言い終わらないうちに私はもう走り出してた。お城へ、早くお城へ。 「姫さま!お待ちください!!」 「姫!!待たれよ!!」 「姫さま!!」 私は走りながら考える。お城からここに来るまでどれくらいかかった?今から走って帰れば何日でお城につける? 早く、少しでも早く。 「姫さまーーっ!!!」 クリフトの声は聞こえないふりをした。 遠い。まだフレノールに着かないの?私はずっと走り続けた。疲れて少し歩いてはまた走って。 まだ見えない。私、知らない間にこんなに遠くに来てたのね……。 途中で足がもつれて何回も転んだ。転んでる場合じゃない。急がなきゃ。急がなきゃ……。 「姫さま!!お待ちください!!!」 起き上がって砂を払ってたら声が聞こえた。もう顔を見なくてもわかる。クリフトの声。なんでだろう、泣きたくなってきた。 「なによクリフト、待てるわけないでしょ!お父さまが大変だっていうのに」 私は振り返らないで言った。 「ひ、姫さ……ちょ……ま……っ」 クリフトはなかなか次の言葉を言わない。私はイライラして振り返った。 「こうしてる間にもお父さまはっ!……クリフト?」 クリフトはかがみこんでた。やけに息切れしてせきこんで。とっても苦しそう。片手を上げてるのは待っての合図? そっか……。クリフトも休まずに走ってきたんだ。私より足が遅いのに、体力もないのに、私を追いかけてきたんだ。 ばかクリフト……。私はクリフトの息が整うまで待った。少ししてクリフトは顔を上げる。 「姫さま、申し訳ありません……。お城へですが、走って戻るより早い方法がございます」 「え?」 「こちらを」 渡されたのは1枚の翼。 キメラっていう魔物の翼の力を封じ込めたもので、一度行ったところならどこへでもひとっとびで行けるっていう。 ああ……。テンペの村の道具屋さんで初めてこれを見たとき、そんなのうそよねって笑って、 でもこれがあれば今度はかんたんにお城を抜け出せるわねってふざけて言って、じいもクリフトも困ってて。 それが今目の前に……。 「こんなのうそよ!」 「このような大変なときにうそなどつきませんよ」 「うそ、だってこんな……本当にこんなのですぐお城に帰れるの……?」 「はい。ですからこうして追いかけてきたのではありませんか」 「っ…………」 もうなんでもよかった。早くお城に帰れるのなら。一日でも早く帰りたい。帰りたい……。 私はクリフトから翼の使い方を教わった。 鳥が空を飛ぶみたいに山を超えて一直線に行けるんですって。 でも使い方を間違えると違う場所にもいっしゅんで行ってしまうんですって。 私はいっしょうけんめい説明を聞いた。なんでかこれは自分で使いたかったから。 私は翼をぎゅっとする。 「よかった……本当にこれですぐ帰れるんだ……よかった……。私、もしお父さまの身に何かあったらって……」 お父さまの身に何かあったら。自分で言っておいてはっとした。もしお父さまの身に何かあったら……? ううん、ダメよ。大丈夫。それにこういうときこそ私がしっかりしなくっちゃ。大丈夫。 そう、たとえ何があってもびっくりしない私でいるのよ。うん。よし。大丈夫。 気づいたらクリフトの説明が終わってた。クリフトは……なんでかうつむいてた。小さくため息をついた気がする。 ため息っていうか、なんだろう。よくわかんない。クリフトもお父さまのこと、心配してくれてるのかな。 「クリフト?」 「……姫さま……」 クリフトが私を見た。なんで……なんでそんなに寂しそうな顔してるんだろう。少しだけ胸がずきっとした。 クリフトが私に手を伸ばしてきた。でも、つかむようでつかまない、宙ぶらりんの手。なんだろう。 「クリフト、どうしたの?」 「…………」 クリフトの伸ばした手をつかもうとしたら先に手をとられた。何かささやいてる。最後に聞こえたのはホイミ。あ。 「あせりは禁物です。この上われわれまでケガをしてはなりません」 「うん……ありがと……」 さっき何回も転んで手のひらにできたすり傷がいっしゅんで治った。クリフトはひざにもホイミしてくれた。 からだがほわっとあったかくなる。クリフトがホイミしてくれるときはいっつもそう。魔法ってほんとに不思議だなー。 きっとクリフトは、私やお父さまのことを心配してくれてたのね。 ちっちゃなころから自分のことより人のことばっかり優先するクリフト。私のことばっかり優先してくれるクリフト。 優しいクリフト……。 なんだかさっきまでの緊張がうそみたいにとけてからだが軽くなった。少しだけ元気も出てきた。 「っもう、せっかくこれから旅が面白くなるっていうところだったのに!でもしかたないわ。お父さまのほうが大事だもの。 旅はいつでもできるんだから、今はがまんよね!」 ちょっと大げさに言ってみせる。 「旅はいつでも…………そうですね」 「そうよ!」 あ、やっとクリフトが笑った。少しだけだけど。でもそう、その笑顔よ。私最近クリフトが笑ってくれないと気になるんだから。 じいはもう先にお城に戻ってるんですって。気を取り直して私たちもお城に向かった。そう、キメラの翼で! 久しぶりに戻ったお城。いつもの風景。変わらない兵士たち。よくぞ戻られましたって言われた。 私にお説教しないし閉じ込めようともしない。お父さまはほんとうに私が外に出るのを許してくれたんだってわかった。 お父さま……。 まっすぐお父さまのもとへ向かう。勇気を出して階段を上がったら、玉座にお父さまの姿を見つけた。 お父さまがゆっくりこちらを向く。いつものお父さま……? なんだ……なんだ!お元気そうじゃない!私は心からほっとした。 大臣や兵士がよくぞご無事でって私たちを迎える。でも、かんじんのお父さまが私たちに話しかけてくれることはなかった。 お声が……お父さまのお声が出ない。出なくなった。突然。前触れもなく。 どんなにお父さまに話しかけても、お父さまは何かを言いたそうにこっちを見るだけ。なんて苦しそうなお顔なの? 大臣が筆談で少しお話したみたいなのだけど、風邪ではないんですって。原因はわからないんですって。 もう、3日もたつんですって……。 そしたらじいが。じいが、何者かのしわざかもしれないって。お父さまのまわりにまがまがしき気配が見えるって言って。 私は思わずお父さまの手をぎゅっとした。お父さまも私の手をぎゅってしてくれた。ごつごつしてておっきなお父さまの手。 でも、お父さまは何も言ってくれない。何も……。 いっつもお説教とお小言と難しい話。でもたまにお優しい言葉もかけてくれる。あんなにうるさかったお父さまなのに……。 なんだかたまらなく寂しくなってきた。私は思わず大声で叫ぶ。 「お父さまはどうして何もおっしゃってくれないの?何があったの?ねえ!」 「……………………がはっ!げほっ!!」 「王様!!」 お父さまが何かを言おうとしてせきこんだ。手で口を押さえて。お顔を押さえて。とっても苦しそう。苦しい。お父さま……! 「王様、ただ今原因を調べているところです。今しばらくご辛抱を……」 大臣がかけ寄ってきてお飲み物を渡す。私…… 私、どうすれば。どうすればいいの?どうすれば……。教えて。教えてお父さま……。 私はまた叫んでた。 「悪いやつらも私だけをねらえばいいのよ!私は強いもの。私なら……。お父さま……っ」 気づいたら私は泣いてた。後ろでじいか誰かが何かお話してたみたいだけどもう耳に入らなかった。 私はずっとお父さまを見てた……。 お父さまは私を見たあと、ぼんやりと遠くをながめた。寂しそうな、つらそうなお顔……。 お父さまは今、何をご覧になっているの?何をお考えになっているの?何を伝えたいの?何を…… 「……姫さまは私が命にかえてもお守りいたします!」 ふいに聞こえたのはクリフトの声。私ははっとした。振り返るとクリフトが片ひざをついてお父さまを見てた。 やけに真剣な顔。お父さまもクリフトを見てた。まるでその声にご返事しているかのような、真剣なお顔……。 私はなんでか顔が熱くなった。 「ち、ちがうわ!私がクリフトを守るのよ!」 「姫さま……」 すっかり現実に戻った。そうよ、悲しんでる場合じゃないわ。私はもう一度お父さまの手をぎゅっとして言った。 「お父さま。もう少しだけ待っててね。次に帰ってきた時はきっと。きっとアリーナがお父さまのご病気を治してさしあげます!」 お父さまももう一度私を見て、手をぎゅってしてくれた。少しだけ目がうるんでるように見えた。 悔しい。なんでだろう、悔しい。なんだかもやもやする。落ち着かない。 私は今じいといっしょに裏庭に向かってる。大臣が裏庭のゴンじいなら何かわかるかもしれないって言ってくれて。 じいがゴンじいのこと知ってるみたいだったからいっしょについてくことにしたの。 でもクリフトは他に手がかりがないか探してきますって言って。何か進展があったらお互いに報告しようってことで別れた。 私が今もやもやしてるのはきっとクリフトのせい。 クリフトが大きな声を出さなければ私はきっとずっとお父さまを見てた。何があってもびっくりしないって決めてたのに……。 クリフトにお守りいたしますなんて言われたのもいやだった。私がクリフトを守るんだから。そう、私が守るんだから……。 「フム。ごくつぶしの詩人もたまには役に立つと。マローニに会いにゆきますか」 気づいたら私はゴンじいのとこにいて話が勝手に進んでた。 「マローニってあのサランの町にいるマローニ?歌ばっかり歌ってるあの人が何か知ってるとでもいうの?」 「ひとつの可能性ですがのう。しかし、姫さまもなかなかおっしゃいますな」 あ、ちょっと失礼な言い方になっちゃってたかな。でも今はあんまり気分がすぐれないの。 ゴンじいにもう一度くわしく聞いたら、マローニも昔のどを痛めたことがあって、でも今はこの国いちばんの美しい声だから、 もしかしたら何か知ってるかもしれないんだって。うーん。微妙。 「……でも他に手がかりはないわね。行ってみましょう!」 ゴンじいにお礼を言って私たちはサランへ向かった。クリフトは呼ばなかった。 「フム。この者の声はエルフの薬のせいだったと。まあ多くは語るまいて。今は砂漠のバザーにてさえずりの蜜を手に入れるが先」 マローニに話を聞いたら、さえずりの蜜というエルフの薬を飲んだために美しい声になったんですって。 その蜜は昔砂漠のバザーの道具屋で見つけたんですって。 砂漠のバザーって……あそこじゃない!だって世界中を旅してるからあそこでバザーを開くのはひさしぶりだって……。 「そうですね。もう5年以上は前のことですよ」 「5年以上も前……?」 「ええ。またあそこでバザーが開かれているのですか。なつかしいですね」 そんなに前のことだなんて……私はやっぱり運がいいのね。 マローニにもお礼を言って私たちは教会をあとにした。 「他にお父さまを治す手がかりはないわ。さえずりの蜜にかけてみましょう。じい、キメラの翼をちょうだい」 さっきゴンじいの部屋に行ったとき、何かのお役に立つかもしれないからってキメラの翼をもらったの。 さっそく役に立つわ。もうその効力は実証ずみだもの。悔しいけど、うそでもいんちきでもなかった、魔法のアイテム。 「キメラの翼?ほっほっ。そのような道具に頼らずともこのじいめの魔法でひとっとびですぞ」 「うそ!じいったらそんな魔法使えるの!?」 「姫さまが城へ戻る決意をしてくださればすぐにでも披露できたんですがのう……」 「っもう、お説教はいいわよ。じゃあ早く行きましょう」 「はて、姫さま。金の管理はクリフトのアホめに任せております。あやつを連れてこなければ買えませんぞ」 「え?」 クリフトの名前を出されてドキッとした。って、なんでドキッとするのよ。 「えっと……そっか。ただで手に入るわけじゃないものね」 「詩人など何の役にも立たぬと思っておりましたがたまには良いこともしますな。ささ、早くクリフトのアホタレを呼びに行きますぞ」 じいのほうがもっと失礼ね。じいも気分がすぐれないのかな。 お城に戻ったときには日がもう傾きかけてた。早く行かないと道具屋さんがしまっちゃうかも。 クリフトは教会かしら。私は勢いよく扉を開けた。 「おや姫さま。クリフトでしたら奥の部屋にいますよ」 「あ、ありがとう神父さま」 「いえいえ、お元気そうで何よりです」 いつもと変わらないやりとり。でもすっごく久しぶりな気がする。そう、神父さまは私が行くと真っ先にクリフトの居場所を教えてくれるの。 神父さまもお元気そう。うん、何も気にすることはないわ。私は奥の扉も勢いよく開けた。本が散らばってる先にクリフトがいた。 「ひ、姫さま!扉の開閉は静かにと常々申し上げているでは……ああ、また入り口もそのような勢いでお開けになったのですね?」 「しょうがないじゃない、こうなっちゃうんだもん」 いつもと変わらないやりとり。でもすっごく久しぶりな……あ、いつものお説教クリフトだ。 少しだけほっとした。だってさっきのクリフトはまるで別人みたいに見えたから。うん、ほんとに何も気にすることないわ。 「クリフト、バザーに戻るわよ」 「え?……何か手がかりが見つかったのですね!?」 「そう、早くバザーに戻るわよ」 「ああ、お待ちくださいすぐに片づけますので」 クリフトはバタバタと本を片づけ始めた。ちらっとタイトルを見ると「聖歌の歩み」とか「解呪の手引き」とか「信仰と祈り」とか。 ああ、難しそうなのばっかだわ。どうせならこう「格闘技の歩み」とか「護身術の手引き」とか「パンチとキック」とか。 そういうのなら私だって読んでみようかなって気になるのに。 片づけを手伝おうとして一番手前の「信仰と祈り」って本を取ろうとしたらクリフトに先にとられた。すぐ終わるから大丈夫だって。 だからって私が取ろうとしたのを取らなくてもいいじゃない。ちょっと気分悪いわ。 「クリフト、私も少し調べ物をしたいので書物はそのままにしておきなさい」 神父さまがひょいっと顔を出して言った。 「神父様、ですが」 「それよりも、何やら急ぎのようではありませんか。さあ、早く出かける準備をなさい」 「は、はいっ」 急いで荷物をまとめるクリフト。あ、そうだ。そうだった。私は神父さまに頭を下げる。 「神父さまごめんなさい。もう少しだけクリフトをお借りしていきます」 「姫さま、人を物みたいに言わないでください」 「ええ、ええ、構いませんよ。クリフトのひとりやふたり、どんどん持ってゆきなさい」 「神父様……」 「ですが、また東に行かれるのですね」 あ。そういえばお城を出る前神父さまは東の空からあやしげな気配がどうのこうのって言ってたんだっけ。 神父さま、近ごろは胸さわぎがして眠れないんですって。もしかして、神父さまは何か知ってるのかな。 大臣がお父さまのことは他のみんなには知られないようにしたって言ってたから神父さまも知らないはずだけど。 お父さまのことはみんな知らない……心配をかけないように気をつかうだなんて。お父さま……。 お父さまはきっと私が治してみせるわ。ぜったいに治してみせるわ。 教会を出るとき神父さまは気をつけて行ってらっしゃいって言ってくれただけで他にはなんにも言わなかった。 私たちに事情も聞かなかった。 だから私たちもお父さまのことは話さなかった。 「ほほう、ニブい神父でも何かを感じとっているというわけですな。これ以上国のものを不安にさせぬためにも王さまを!」 「ブライ様、神父様はニブくありませんよ。むしろとても鋭い方です。 ですが、エルフの薬ですか。なるほどそれなら王の病気も!さあ行きましょう。砂漠のバザーへ」 準備は万端。時間はギリギリ。でももし道具屋さんが開いてなくても実力行使でさえずりの蜜を売ってもらうわ。 「お父さま、すぐにアリーナが病気を治してさしあげます。だからそれまでお元気でいてください……」 「さあさ、急ぎましょう!」 じいが何かささやいた後、大きく叫んだ。ルーラ。私たちは再び砂漠のバザーへ。 さあ、目指すはさえずりの蜜! ただひとつ気になったのは、さっきまで喜んでたクリフトがまた寂しそうな顔でうつむいたことだった。