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クリフトのアリーナへの想いはPart5 長編3/12 1へ2006.03.09 115 :1/8(前スレ506):2006/05/01(月) 01 28 11 ID sqYiRxji0 少し埃っぽい空気の中に漂うインクの匂い。 クリフトはこの匂いが好きだ。幼いころから親しんできた様々な書物はみんな、この匂いでクリフトの鼻をくすぐっていた。成長した今でもこの匂いの中にいると落ち着きを感じるし、ひとりで本と対面して過ごす時間を楽しむことができる。 ここはサントハイム城の書庫。書庫と言っても雰囲気は図書館といった感じで、城の南側の一角に設けられており、天窓もありとても明るい。所狭しと備えられたいくつもの本棚のせいで風通しが悪いのが難点なのだが、クリフトはこの書庫がとても気に入っている。 ここ最近は忙しい日々が続いていたが、今日は午後からは何も仕事がない。クリフトは久しぶりに書庫へと脚を向けた。 「懐かしいな」 以前に読んだことのある本を手にしてクリフトは微笑む。昔は本当によくここに出入りしていたものだ。この書庫の中のどれだけの本を今まで読んだだろう。子供向けの絵本から世界各地の地図まで揃うこの書庫の中にいれば退屈しない。それほどクリフトは本の好きな少年だった。 手に取った本を携え広い書庫の中をゆっくりと歩く。書庫の中にはいくつかのテーブル席があり、ちょっとした読書スペースになっている。腰を落ち着けて読もうと考えたのだ。 「姫さま…!」 書庫の一番南側。天窓を真上にし、出窓のそばにあるテーブルに見えたのはサントハイムの姫君、アリーナの姿だった。あまりの日当たりのよさについうとうととしてしまったのか、テーブルの上に伏せるようにしてよく眠っているようだ。長いオレンジ色の髪の毛 がふんわりとその華奢な肩を覆いテーブルの上に流れている。 クリフトは少々ためらったが、静かに向かい合う席に腰を下ろした。テーブルに上には先日アリーナがメイドから進められたという恋愛小説があった。本を読んでいる途中に眠くなってしまったのだろう。クリフトの渡した栞が本の間に挟まっている。アリーナはかなり終盤まで読み進めたようだ。 「……姫さま?」 そっとそう呼びかける。アリーナは目を覚まさない。本当によく寝入っているらしい。頬のラインに沿うようにして落ちる髪の隙間から愛らしい寝顔が見てとれて、クリフトは微笑まずにはいられない。気持ちよさそうに眠るアリーナの様子は、ただそれだけでクリフトの心を和ませる。 向かい合い、こんなにも近い距離にいれば、自然と漂ってくるよい香り。香水でもつけているのだろうか。最近の忙しさの中、アリーナと顔を合わす機会も減ってきている中で彼女の姿を久しぶりに目にすると、不思議なほど大人びて見えるときがありクリフトは少し戸惑いさえする。見張りの兵士の目を盗んでは城の外に出てドレスを泥だらけにしたり、悪ふざけをしているうちに城の噴水の中に落ちてしまったり、挙句の果てには樹に登り落ちかけてドレスの裾を破いてしまったり。そんな風だったアリーナが懐かしい。おてんばな行動やいたずらを繰り返すが、怒られるときはいつもクリフトと一緒だった。この書庫で勉強をしているクリフトに泣きついては、一緒に怒られてくれと頼むのだ。国王や大臣、ブライのお説教を一緒に聞いていたあのころが急に懐かしまれる。いつしかアリーナは自分を必要としなくなってしまったのではないかという不安に襲われさえして、クリフトはついいたたまれない気持ちになってしまう。 栞を手渡したあの時、アリーナは「置いていかないでね」と言ったが、置いていかれそうなのはこっちのほうだと。 「はぁ……」 クリフトはため息のような吐息を漏らした。 先日のお見合いは結局なし崩しのような形となり、また機会を改めてと言うなんとも後味の悪い、すっきりしない形で幕を閉じたのだが、クリフトにとっては思い知らされた感があった。アリーナのそばに長年仕えてきたと言えども、それはやはりひとりの家臣と言う身分の上での話。エンドールからのお相手を目の前に、恭しく接待する自分はやはりアリーナからは遠いのだ。身分、家柄、血筋… …何をとってもそれは自分に備わっているものではなく、そしてそれを望むことはこの命を与えた神を否定していることであり、神官としてのクリフトを苦しめた。 それでも……。 「お風邪を召されますよ」 少しだけ開いている窓から吹く風が少し冷たく感じられ、クリフトは立ち上がり上着を脱ぐとアリーナの肩に羽織らせた。 こうしてあの旅のときのように安心しきった寝顔を見せてくれいる。無防備なアリーナの様子が微笑ましい。大切なのは、今この時間。こうしてこの安らかな寝顔を見ているだけでも幸せではないか。 そういう風にクリフトは思い直す。 『好きです』と繰り返すのはいつも心の中。ふと心のたがを緩めてしまえば口をついて出てしまいそうだ。今でさえ、そっと手を伸ばしその滑らかな頬や髪に触れたいと思ってやまないのだから。 ふわっと浮き上がるような不思議な感覚と共にアリーナは目を覚ました。どれくらい眠ってしまっていたのだろう。外はまだ明るい。 そんなに遅い時間ではないことは察せれるのだが……。 「クリフト!?」 壁にかけてあるはずの時計を探そうと視線をあたりにめぐらせれば、真正面にクリフトの姿を捉えた。アリーナが来たときにはこの書庫には誰もいなかったはずなのにいつの間に来たのだろう。 「クリフト、寝てるの?」 肩にはクリフトの神官服がかけられている。ずれ落ちないように両手で引っ張りながらアリーナは問いかけた。 帽子を脱ぎ出窓に少々体重を預けるようにしてクリフトは眠っていた。アリーナが問いかけても返ってくるのは規則正しい寝息のみだ。わずかに開いた窓から吹いてくる風がクリフトの髪の毛を揺らしている。 「クリフト……」 アリーナがクリフトの寝顔を見るのは初めてのことだ。あの旅の間でも一度も見たことはなかった。お互い何の差もない、旅の仲間だ。アリーナも当然野宿の際に寝ずの番をすることがあった。もちろんアリーナはそれを不服に思うことはなかったし、自分の務めと責任を果たすつもりでいた。それでもクリフトだけは、アリーナが見張り番のときは交代を申し出た。仲間であるとはいえ、姫を差し置いて寝てはいられない。だからアリーナは旅の間も一度もクリフトが眠っているところを見たことがなかった。 それが今はなんとも穏やかに、心地よさそうに眠っているではないか。アリーナはついついその寝顔をじっと見つめてしまう。城にいる間はもちろんのこと、旅の最中でもクリフトはいつもピシッとしていて服装にしろ姿勢にしろ乱れたところを見たことがない。そんな彼がこちらの視線にも呼びかけにも気づかないまま、ぐっすりと眠っている様子はとても新鮮だ。 アリーナはそんな様子のクリフトを見つめ、色味のよい唇の端をキュッとあげて笑う。あどけない寝顔を見ながら、アリーナは少し安心した気持ちになる。いつもきっちりとしているクリフトの少しだらしのない一面を見れたこともそうだが、この距離感がなんとも心地良い。忙しい中で顔を合わす機会も少なくなり、遠く感じていたクリフトの存在が物理的にだけではなく精神的にも近づいたように感じる。 「ねぇ、クリフト。起きないの?」 起こそうと言うわけではないが、少し退屈に感じてしまったアリーナはそんな風に優しく声をかける。クリフトからの返答はやっぱりなくて、落ち着いた寝息が聞こえてくるのがおかしい。 傍らに置いた恋愛小説のように激しく盛り上がるものが恋愛ではなく、ただ静かに穏やかに、日々の平穏の中で育まれる恋もあるのだと言うことにアリーナは気づいていない。そして自分の心の中に小さな恋の芽が芽吹いていることにも気づいてはいないのだ。アリーナの心はまだほころび始めた蕾でしかない。 それでも、なんとも不思議な安心感と居心地の良さ。お互いのする呼吸のリズムがぴったりと合うかのような、計らずとも揃う波長のようなものなのだろうか。クリフトといるときの空気がアリーナは好きだ。なんだかとても、落ち着いた気持ちになる。つい比較してしまうのは先日、とりあえず形だけお見合いをしたエンドールからの訪問者の男性だ。より一層、この空気のよさを感じられる。 「ねぇ、何かおしゃべりしてよ」 小さく笑いながらアリーナは催促する。やっぱりクリフトは眠っている。アリーナは再びテーブルの上に両腕を置き、伏せるように身体をかがめてクリフトを見上げる。 *** 「やれやれ、どこに行ったのかと思えば……」 すっかり日が傾いた夕暮れ時。城内ではアリーナ姫の姿が見えないとちょっとした騒ぎになっていた。メイドや兵士たちが城内のあちこちを探し回り、数名の兵士たちが城の外まで探しに出ようかという事態にまでなりかけていた。 半隠居生活を送るブライもそんな騒ぎとなってしまっては引っ張り出されざるを得ない。メイドから話を聞いたブライは、城の中の思い当たる場所を順に探し始め、程なくしてこの書庫にたどり着いた。 ひとつのテーブルに向かい合い昼寝を続ける男女。男は幼いころから面倒を見てきたまだまだ未熟な神官で、女は自分の仕えている主君の姫君であった。 「まったく…、世話の焼ける姫様じゃ」 吹き込む風が冷たくなってきたのを感じ、ブライは出窓を静かに閉めた。 クリフトの秘めたる想いにブライは気づいている。そしてアリーナがクリフトにだけは心を許すと言う部分があると言うことも察している。いいのか悪いのか、許されるのか許されないのか、ブライのような老獪にも判断しかねることでありただ静観しているのみだ。 ふたりとも愛おしい。願わくばこの行く先に、あふれるほどの幸せが待っていて欲しいと思う。 願わくば、願わくば……。 「これ、起きぬか。このバカ者めが」 ブライは杖の柄でクリフトのこめかみを小突いた。 END. 前2006.04.26 続き2006.07.05_2
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秩序の聖霊ララ・クリフォン R 光文明 (5) クリーチャー:エンジェル・コマンド 5500 ■ブロッカー ■このクリーチャーが進化した時、このクリーチャーをその進化クリーチャーの下からバトルゾーンに出す。 ■このクリーチャーは相手プレイヤーを攻撃できない。 作者:テーメノン フレーバーテキスト 第二次大陸崩落後、世界には想像すらできないような悲劇ががあった。 評価 名前 コメント
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クリフトとアリーナの想いはPart7 2007.04.28の詩よりインスパイア 321 :【詩】1/9 ◆cbox66Yxk6 :2007/05/04(金) 03 16 02 ID dfejicMU0 「まだ……残っていたのですね」 古ぼけた机の引き出しの底板をはずすと、微かにかび臭さの漂う紙の束が姿を現した。 『日記』と題字されたそれは、クリフトが旅に出る前まで日課としてつけていたものだ。 いや、正確にいえば、裏日記といったところか。 人知れず保管されていたその日記帳には、誰にも吐露できない、まだ青い春の中を彷徨っていた頃のクリフトの思い出が詰まっている。 「懐かしいですね」 ぱらぱらと頁をめくれば、苦悩と情熱でかき乱れる己の姿が垣間見え、自然、苦笑混じりの微笑を浮かべる事になる。 「しかし、よく残っていたものですね」 しみじみと呟き、つい一月ほど前までのサントハイム城の姿を脳裏に描き出す。 数年にわたる魔物の占拠、そして無人の荒城……。 決して短いとは言い難い月日の間、誰の手入れもされずに放置されていた城は、至る所が傷み、破壊されていた。 その中にあって、城内の教会とそれに隣接していたクリフトの部屋は、まさに神の奇蹟か、殆どあらされた形跡も無く、以前の姿を保ち続けていた。 「神聖な空気を嫌ったのでしょうね」 サントハイム城の復興を手伝いにやってきてくれたトルネコが、教会の祭壇に飾られたご神体に目を光らせながら、そう呟いていたのを思い出す。 「このご神体の指にはめ込まれていた指輪に、魔を退ける力があったのでしょう」 もっと早く気づいていれば、旅の間も楽ができたかも、とため息混じりにそう言った希代の大商人。その言葉に聖職者であるクリフトが難色を示すと、彼はいつもの優しい微笑を浮かべたままこう続けた。 「でも、この指輪がここに存在していたから、お城の人たちも無事に戻って来られたの かもしれませんね」 指輪の存在に気がつかなかったからこそ魔に打ち勝つだけの実力を手に入れることができ、また、この指輪の存在がサントハイム城の人々を魔の手から守り抜いていたのではないか。 「この指輪がここに存在したこと、それこそが神の奇蹟ですよね」 ―――信仰に厚いサントハイムの人々に示された神の恩恵ですよね。 そう彼は締めくくった。 その恩恵に与ったもののひとつが、いまクリフトの手元にある。 面映いような嬉しいような不思議な感覚に、頁をめくる手を早めれば、遂に最後の日付となる記述に行き当たった。 「……そういえばこんなものも書きましたね」 そこに書かれているもの。 それは、一篇の詩―――自由を求めていまにも飛び出していかんとする敬愛する姫君を、サントハイムの王女アリーナを想って詠んだ詩だった。 「……見つからなくてよかったかも」 その一字一字を目で追いながら、クリフトは思わずくすりと笑う。 比喩が施されているとはいえ、それは明らかに恋心を彷彿とさせる。 「……仕舞っておこう」 少し照れくさくなって冊子を閉じようとすれば、それを横合いから素早く奪う手があった。 「え?」 驚いて振り返ると、そこには華やかな正装に身を包んだ美しい姫君がつい先頃までクリフトの持っていた冊子を手に立っていた。 「もうクリフトったら、ずるいわよ。自分だけ宴を抜け出して」 「ひ、姫様?」 突然の来訪者に驚きと戸惑いを隠せない。 「どうしてこちらに?」 よりにもよって一番まずい相手が目の前に現れ、クリフトは内心かなり強い動揺と焦りを感じていた。 が、クリフトの心など知る由もないアリーナはぷうっと頬を膨らませる。 「それはこちらの台詞ね。サントハイム城復興記念の祝宴を抜け出して、どうしてここにいるのよ。ソロたちだってまだ広間にいるのよ」 「それは……華やかな席が苦手だからです」 常だったらうまいかわし方も思いつくであろうに、アリーナの手にする冊子が気になり受け答えに集中できず、つい馬鹿正直に答えてしまう。 「クリフト、あなたね、私が宴を抜け出すたびいつも言っていたじゃない。 『主役が席をはずしてどうするのですか』って。今日はあなたも主役の一人でしょ」 案の定、揚げ足をとられ、クリフトは言葉に窮した。 「そ、それはそうなのですが……」 ちらちらと冊子に視線を送りながら口ごもれば、アリーナは漸くその存在に気づく。 そして『日記』という文字を目にするや、にんまりと笑い頁を繰った。 「おもしろそうね。じゃ、これと交換に、ひとりで抜け出したことを不問に付してあげるわ」 「えっ」 思いもかけない事態にクリフトが硬直すれば、アリーナは嬉しそうに読み進める。 「えーっと、なになに……『今日、サランの町で写真が売られていた。被写体を見れば姫様のお姿……なんとけしからぬ事だ。仕方がないので私はそこにあった全ての写真を買い占めた。これで、姫様のお写真で妙な気を起こすものもいないことであろう。 おぉ神よ。お導きをありがとうございました。 ……とはいえ、かなりの出費を要してしまった。今月こそは『新・信仰と祈り』が買える と思っていたのに……来月に持ち越しのようだ』って何これ?写真?そんなの見たことないわ。 クリフト、後で出しなさいよ……次は」 次々と読みあげていくアリーナに、我に返ったクリフトは必死の思いで冊子を取り返そう と試みる。 「姫様、お返しください」 「いいじゃない」 ひらりひらりとクリフトをかわしながら、アリーナは器用に目を通していく。 「姫様っ」 経験が物を言うのか。 正装に妨げられ、思うように動けないクリフトに対し、こちらは盛装とも言える華やかな衣装を身に纏っているにもかかわらず、アリーナの動きは留まるところを知らない。 次々と頁をめくっては、焦るクリフトをからかうようにひらりと身をかわす。 とはいえ、やはり動きながら冊子をめくるのは難しいようで、読む頁は飛び飛びになっている。そのせいであろうか、クリフトが見られては困ると思っているようなものは意外と避けられているようだ。 不幸中の幸いといって良いのかは判らないが、それがクリフトにとって救いであるのは今のところ確かだった。 だが、その幸運にクリフトが感謝する暇があらばこそ。彼が長年信仰してきた神は、彼に試練を突きつける。 ふいに、動きを止め、アリーナがしげしげと冊子に見入った。 そして小首を傾げたと思うと彼女はその華の顔を引きつらせ、次の瞬間、お腹を抱えて笑い出した。 「姫様、返してくださいっ」 漸く動きの止まったアリーナの手から冊子をもぎ取ったクリフトだったが、肩を震わせ、目に涙をためて笑い続けるアリーナの姿に、不審なものを感じた。 「そんなに大笑いされるようなものがございましたか?」 恥ずかしいというよりはあっけに取られ、そう問えば、アリーナは涙の滲む目をこすりながら開きっぱなしになっていた日記を指差した。 「その頁……」 アリーナが見ていた頁に視線を落とせば、そこには彼が記した『詩』が載っていた。 「ご、ごめん。笑うつもりじゃなかったんだけど……なんだかその」 笑いの滲む声に、クリフトはそこはかとない寂寥感を覚える。 見つかると困る、そう思っていた『詩』。 それは、如何に比喩が用いられているとはいえども、見る人が見れば誰が誰を思って書いたものかは一目瞭然の代物だった。 だからこそ危惧していた。 秘めたる想いを、彼女に知られてしまうのではないかと。 それなのに、彼女はこの詩を読んでただ笑うに留まっている。 即ち、彼女はこの詩の真意に気づいていないということなのだろう。 クリフトの、彼女への恋心に気づいていないということなのだろう。 ―――これほど赤裸々な想いにすら気がついてもくれないのか。 肩透かしを食らったように思えて項垂れれば、笑いをおさめたアリーナが、クリフトの顔をのぞきこむようにして微笑んだ。 「ごめんね。本当に笑うつもりじゃなかったのよ。だってとても素敵な詩なんですもの」 だけどね、と彼女は赤らんだ頬を押さえながら続ける。 「何だか少し照れくさいかも」 「照れくさい?」 不思議に思って問い返したものの、自作の詩を見遣れば、若すぎる感性が妙な羞恥心をあおる事に納得する。 「まぁ、確かに、照れくさいかもしれないですね」 冷静に分析し頷くと、アリーナが怪訝そうにこちらを見上げてくる。 いったい、何だというのだろう。 目線で訊ねると、彼女は困ったように眉根を寄せ、口を開いた。 「ねぇ、クリフト。私の言葉の意味、わかってる?」 「え?それはどういう……」 唐突な言葉に、首を捻る。 先程の言葉に、どんな意味があったというのか。 もう一度考えてみるもののさっぱり見当がつかず、お手上げとばかりにアリーナを見れば、彼女はやれやれといった様子でため息を漏らした。 「わかってないのね」 そのあきれた様子に、クリフトはますます当惑を深める。 一体全体、なんだというのだろう。 謎かけのようなアリーナの態度に混迷を繰り返す。 ―――自作の詩、姫様の笑い、照れくさい。 焦れば焦るほど、訳がわからなくなりクリフトは心底困惑する。 「姫様……」 答えを求めて声を発せば、それまでじっとクリフトを見つめていたアリーナがその言葉を遮った。 「ねぇ、クリフトは自分のことを書かれた詩を読んでも照れくさくないの?」 ―――彼女は一体、何と言ったのだろう。 混乱する頭を小馬鹿にするかのごとく、いち早く反応したのは彼の胸だった。 「あ……」 信じられないほど鼓動が早まり、息苦しささえ感じる。 何故?と思う間もなく、全身が熱くなる。 「姫様、それは……」 思考より先に言葉が漏れる。 どくどくと脈打つ音が耳に響き、頬が火を噴くのではないかと心配になるほど熱くなる。 自分の体はどうなってしまったのかと疑いたくなる。 冷静になるんだ、と己に言い聞かせてみるものの、思うようにならない。 自分の意志とは関係なく、胸が高鳴り、頬が熱をおびる。 潤む瞳でアリーナを見遣れば、こちらを見上げていた彼女と正面から視線が絡んだ。 「姫様……もしかして私の詩の意味を?」 掠れた声でそう呟くと、彼女は先程よりもはるかに赤くなった頬を押さえながら恨めしげに睨んだ。 「やぁね、もう。どうしてさらっと流せないのよ。……そんな反応されたら、こっちまで恥ずかしくなっちゃうじゃない」 そう文句を言いながらも、アリーナは律儀に頷く。 「わからないわけないじゃない」 アリーナは笑う。 「だってね、私もクリフトと同じ気持ちだから」 自身も白磁の肌を薔薇色に色づかせながら、彼女はクリフトの赤くなった頬へ手を伸ばす。 「クリフトに比べたら、まだ短い想いかも知れないけど」 それでもね、と迷いのない瞳でクリフトの目を覗き込む。 「想いの深さなら、負けないわよ」 生来の勝気さすら覗かせて、アリーナはますます艶やかに微笑む。 「クリフト。私、あなたが好きよ」 ―――素敵な告白を、ありがとう。 ―――誰かが呼ぶ声がする。 そう知覚すると同時に背後で扉が勢いよく開け放たれ、酒瓶をかざしたソロとマーニャが なだれ込んできた。 「おい、クリフト。おまえ、ずりーぞ。すこしはおまえものめよな~」 「宴はさ、もう終わりらしいんだけど、ブライが秘蔵の酒を出すから、部屋で飲みなおさないかって~」 「おまえ、こんどはさんかしろよなー。さっきろうかですれちがったアリーナにもさんかするようにいっといてやったんだからさ~」 「そうそう、酔った勢いで……なーんてこともあるかもよ~」 相当酒を過ごしたのか。呂律が怪しい。 それでも妙な使命感に駆られたふたりは、クリフトを誘うべく歩みを進める。 「ちょっとぉ~」 「クリフトってばよ~」 ふらふらと覚束ない足取りでクリフトに近づいてきたふたりだったが、次の瞬間、酔いなど忘れてしまったかのような俊敏な動きを見せた。 「ちょっと、クリフト。あんた、大丈夫なの?」 「まじ、ふつーじゃねーぞ、その顔色。飲みすぎたんか?」 「そんなことどうでもいいから、ソロ、水よ」 「お、おう」 「クリフトも遠慮なんかしなくてもいいから横になんなさいよ」 急にどたばたと立ち回り始めたふたりを前に、クリフトは不思議そうに小首を傾げた。 「御酒は……ほとんど召しておりませんが?」 どこかぼんやりとしてはいるものの、酔いの見られないしっかりとした口調で告げられ、慌てていたふたりは怪訝そうに振り返った。 「お酒を?」 「飲んでない?」 「えぇ。ほとんど口にしておりませんが?」 クリフトが頷くと、ふたりは顔を見合わせ、いままで以上に慌てた様子でクリフトに駆け寄ってきた。 「ちょっと、なんかの病気じゃない?」 「パデキアいるか?」 真剣そのもののふたりに迫られ、クリフトは思わず仰け反る。 「いえ、別に病気って訳では……姫様に日記を見られただけ……」 思わず正直に答えかけ、慌てて口を噤む。 が、ふたりがそれを聞き逃してくれるはずも無く――。 「ちょ、なに?なんかあったの?そこんとこ、詳しく話しなさいよ」 「え、まじ?っておまえ、手に何もってんのさ」 「あら?日記帳?ちょっと貸してごらんなさいよ」 「あ、ちょっと、それは……」 「ほら、マーニャ。いまだ」 「あ、そ、そんな……あぁぁぁ」 妙に連携の取れたふたりの攻めにあえなく撃沈したクリフトを残し、ソロとマーニャは日記を手に廊下を走り去る。 そして―――クリフトの裏日記は、見たくもない陽の目を見ることとなる。 「ふぉふぉふぉ、若いっていいのう」 真っ白な髭をしごきながら、ブライが柱の影から姿を現す。 それを聞こえない振りでやり過ごせば、目の前に桃色の鎧を纏った戦士が立ちふさがる。 「なんと情熱的な……いやいや、拙者、クリフト殿を見直しましたぞ」 褒めているのか、からかっているのかわからない口調。クリフトは即座に踵を返し、人影の少なそうな中庭に足を踏み入れる。 「あら、クリフトさん。ごきげんよう」 いつもと変わらぬ笑顔でミネアが近寄ってくる。 一瞬身構えたものの、あまりに普段どおりの彼女にほっと力を抜く。が、直後クリフトは顔を赤らめて全力疾走する羽目になる。 「クリフトさん。この水晶玉ならアリーナさんの○○も××も覗き放題ですよ? おいくらで買われます?」 一行の良心と思っていたミネアにまで、ソロとマーニャの手は伸びていた。 その衝撃に打ちひしがれながら中庭を突っ切れば、前方に丸っこい影が現れた。 「やぁ、クリフト君。大変そうですね」 一行の中で唯一の妻帯者、トルネコ。 彼は穏やかな微笑を浮かべて、クリフトを労う。 「でも、よかったじゃないですか。アリーナさんと両想いになれて。クリフト君、頑張っていましたからね。神様がきっと恩恵を与えてくださったのですよ」 からかいも冷やかしの色もない、優しい言葉。 クリフトが思わず頭をさげると、彼はクリフトの肩をぽんぽんと叩きつつ、囁いた。 「―――で、私にも神の恩恵のおすそわけを。アリーナさんとの婚儀がまとまったら、ぜひあの日記を出版しましょう。絶対売れますよ」 ―――世界を救った勇者たちに、神は恩恵を与え給う。 神の恩返し―――クリフト編・完
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アルム オーバーロード セリカ エイヴ グレイ ソードナイト ロビン ボウナイト クリフ ダークナイト エフィ ゴールドナイト クレーベ ゴールドナイト増援 ルカ バロン増援 パイソン ボウナイト増援 フォルス バロン増援 シルク ホーリィナイト増援 リュート ダークナイト増援 メイ ホーリィナイト ボーイ ダークナイト ジェニー ホーリィナイト セーバー ソードナイト バルボ バロン増援 カムイ ソードナイト増援 レオ ボウナイト増援 アトラス バトルモンク増援 ジェシー マスターアサシン増援 と戦います。必ず自軍の所だけ回復床があります。心配しないでも勝てるように敵のステータスは、大体、最上級兵種レベル10ぐらいなので大丈夫だと思います。
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クリフトのアリーナの想いはPart12.5 614 1 名前 悲しみをにんじんに込めて 1 Mail sage 投稿日 2012/12/30(日) 04 35 35.48 ID 8UEu6zPa0 サントハイムではにんじんが大豊作。 育てやすい品種が開発され、農家が一斉に植えたせいで、にんじんが供給過剰になっていた。 どうにかにんじんを消費しようと、国を挙げてにんじん料理コンテストを開催中。 サントハイム城の教会を訪れたソロは、クリフトと部屋でティータイム。 「悪いな、デザートまで作らせてさ。」 「いえ、有り合わせで作っただけですので。」 にんじんの素揚げに塩を振り、融かしたチョコとバニラアイスを絡めたデザート。 「にんじんだけでも甘いんだな…砂糖でも加えたのか?」 「いえ、素揚げにすると甘みが増すんですよ。」 「へぇ、さすが、にんじんの魅力を引き出してるな!」 ソロのはじけるような笑顔に、クリフトの顔が曇った。 「今回はこのデザートで応募するのか?」 「ソロさん…勘弁してください…応募なんてしませんよ。」 うんざりした様子のクリフトに、上機嫌のソロが続ける。 「にんじんと言えばアリーナの色だろ。みんな期待してるぜ?」 クリフトは、深いため息をついた。 「きゅうりクッキーの件で、周囲の視線がおかしくなっているんです。 姫様ご自身も、よそよそしくなられて…」 頭を抱えるクリフト。 「気のせいじゃないのか?」 「町を歩いていると見知らぬ人から、がんばれとか声をかけられますし。 兵士や侍女は、姫様と私が近づくと寄って来ますし。」 「寄って来る?」 「ふたりっきりにさせないよう、命令を受けているのでしょうね。 教会の入り口にも兵士さんがいたでしょう? 私、一人で出歩けないんですよ。」 「そりゃ、ほとんど軟禁だな」 「ええ、そうですね。」 クリフトは、疲れたような乾いた笑みを見せた。 「そっか…大変なんだな…」 ソロはクリフトの境遇を聞いて、心が痛んだ。 「万が一、私が姫様のお心を惑わせたら、国益を損ねますからね… 私ごときが姫様のお心を惑わせることなど、ないと思いますが。」 「……」 紅茶を飲みながら、ソロはクリフトの表情を見ていた。 クリフトは、本当にアリーナの気持ちに気づいていないらしい。 いや、脈がないと自分に言い聞かせてるんだろうな… 教会を後にしたソロは、泣きそうな気持ちになっていた。 クリフトの恋を応援してやりたい。 でも、それはクリフトを追いつめるだけなのかも知れない。 現実的に考えたら、叶うわけのない恋でしかないから。 クリフトの悲しげな表情が、まぶたを離れない。 俺、親切のつもりで、すごく残酷なことをしてるんだろうな… クリフトにもアリーナにも幸せになって欲しいのに。 「シンシア……お前なら、どうする?」 問いかけた空は、どこまでも澄みきっていた。 暫く後。 「はあ…」 アリーナのため息に、ブライもため息をつく。 「少しは元気をお出しくだされ。」 「私は元気よ…」 クリフトに会いづらくなって、アリーナはぼーっとすることが増えていた。 理由を察しているブライには、どうすることもできなかった。 「今日のお茶請けは、にんじんのアイスですぞ」 「へえ、そう…」 上の空のアリーナの前に、ブライはデザートのお皿を置いた。 アリーナの耳に届いているかはともかく、ブライはデザートの説明を始める。 「にんじんのアイスをミルクアイスと層にして、ハチミツのソースをかけたものです。 にんじんの素揚げを添えておりますので、お好みでアイスを付けてお召し上がりください。 にんじん料理コンテストの入賞作品ですじゃ。」 「やっぱり今日もにんじんかー」 「仕方がないですな。」 スプーンを手に取ったアリーナが、ふとつぶやいた。 「料理コンテストかぁ…」 「……」 ブライが黙っていると、アリーナはアイスを口にした。 「…優しい味ね。」 「マーマレードを加えておるそうですな。」 「ふーん…」 「クリフトに会いたいな…」 「急にどうされましたかな?」 アリーナのつぶやきに、ブライはそっと問いかけた。 クリフトに会いづらくなってから、アリーナは会いたいと言わなかった。 ずっと我慢してきたことを、ブライはよく分かっていた。 だから、会いたいと呟いたアリーナを、ブライは心配した。 「クリフトは遠くに転勤になるみたいね。 最近はソロと一緒に他の国に出かけての仕事が多いみたいだし。」 「確かにソロ殿との出張が多いようですな。 転勤の話もあるようですが、何も分かりませぬわ。」 「そう…」 表情を見せないアリーナに、ブライはさらに心配になった。 「このデザート、応募したのって、クリフトじゃない?」 「…そうですが、何故そう思われたのですかな?」 「うーん、なんとなくねー」 ぼーっと窓の外を見るアリーナを見ながら、ブライは深いため息をついた。 「ソロ!」 サントハイム城の教会から出てきたソロを呼び止めたのは、アリーナだった。 「よう、アリーナ、元気か?」 「元気に見える?」 暫く会わないうちに覇気がなくなっていたアリーナに、ソロは戸惑った。 「うーん、なんか落ち込んでるみたいだな。」 「ちょっと話を聞いて欲しいんだけど…」 「いいぜ、俺で良ければ。」 広い中庭に2人きり。 少しの沈黙の時間も、ソロには重苦しく感じられる。 アリーナが口を開いた。 「最近、クリフトと全然会えないのよ…」 「そうらしいな。」 「あのね、クリフトと会えなくなって気づいたの。 私、クリフトに恋してるんだって。」 「へ、へぇ…」 ソロは驚いていた。 恋愛関係に鈍いアリーナが、自分の恋愛感情に気づくなんて。 「でも分かってるよ。 どれだけ好きでも、結ばれることは許されないの。 いつか私は国のために、知らないどこかの王子と結婚しなきゃいけない。 クリフトも、いつか他の誰かと結ばれるんだろうなって。」 「…クリフトは聖職者だから、結婚しないかも知れないけどな。」 話が重くなって、ソロの気も重くなってきた。 「クリフトがコンテストに応募したにんじんのデザート、見た?」 「ああ、また入賞してたな。」 「にんじんを、緑じゃなくて白と合わせてたよね。」 「…そうだな。」 アリーナは黙り込んだ。 その様子から、ソロはクリフトのメッセージが伝わっていることを知った。 「諦めなきゃと思ってるけど、難しいの。 私、クリフトのこと、相当好きになってるんだもの。 他の女の人と一緒にいることを想像するだけで、泣けてきちゃうの。 その場に出くわしたら私、殴りかかっちゃうかも。」 「怖ぇー」 話が重すぎて、ソロは気の利いた言葉を返せない。 「だいたい、クリフトに見合う女の人なんて、いるわけないじゃない。」 「ああ、そうかもな。」 「私、クリフトが出かけるとき、よく窓から見てるの。 ちょっと前は元気なかったけど、最近はソロと一緒で楽しそうで、安心してる。 クリフトを元気づけてくれて、ありがとね。」 不意にお礼を言われ、ソロは照れてしまった。 「そんなんじゃねーよ…」 ソロの顔が赤くなる。 こんなところをクリフトに見られたら、ザキられるかもな… 「これからもずっと、私の分までクリフトを笑顔にしてあげてね。」 アリーナが見せた精一杯の笑顔に、ソロの胸が締め付けられる。 必死でクリフトのことを諦めようと、心の整理をつけようとしてるんだな… 「おう、クリフトのことは任せとけ。」 泣きそうな気持ちのまま、ソロは精一杯の笑顔を返した。 「ソロには感謝してるの。 私、ソロなら仕方ないって、諦めがつきそうなんだ。」 ソロには、その言葉の意味が分からなかった。 「ソロだったらクリフトに見合う相手だもの。 それに、女の人に取られるくらいなら、男の人の方が諦めがつくわ。」 「へっ?」 話についていけていないソロをよそに、アリーナは言葉を続ける。 「さっきの約束、忘れないでね。 これからもずっと、私の分までクリフトを笑顔にしてあげてね。 ずっと一緒にいて、幸せにしてあげてね。」 「おい…」 焦ったソロがアリーナの顔を見ると、アリーナは泣きそうだった。 ソロは、それ以上の言葉を続けられなかった。 「ありがとう、ソロのおかげで吹っ切れそうだよ。 私のためにも、クリフトと幸せになってね!」 一方的に言葉を残し、アリーナは猛ダッシュで走り去っていった。 ソロは後を追うこともできず、その場で固まっていた。 「シンシア……お前なら、どうする?」 問いかけた空は、どこまでも澄みきっていた。
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クリフトとアリーナの想いはPart7 39 :トルネコさんと1/5 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/03/07(水) 11 56 57 ID JBc0rd1S0 クリフトは、トルネコと2人、星空の下、無言でレイクナバの街を歩いていた。 古い友人と共に教会に行く、と言うトルネコに付き合ったクリフトだったが、その古い友人の息子が、教会のシスターと結婚していることを知り、驚愕した。 神に仕える身でありながらこの人を愛してしまったと、しかし、幸せそうに夫を見つめて微笑むシスターの姿は、いつまでもクリフトの脳裏を離れなかった。 沈黙をやぶって、トルネコがクリフトに話しかけた。 「クリフトさんは…結婚なさらないのですか?」 トルネコも、先ほどの夫婦のことを考えていたらしい。 「私は、神に仕える身で…。」 クリフトは、その種の質問に対し、いつも用いている常套句を口にしかけて、今回に限ってはそれが通用しないことに気づいた。 トルネコは、顔をしかめたクリフトにくすくす笑った。 「そうそう、だめですよ、クリフトさん。今回はいつもの決まり文句では逃げられませんよ。 たった今、神に仕えながら素晴らしい家庭を築いている人にお会いしてきたばかりですからね。」 「…私は、不器用ですから…。信仰と家庭の両立などできません…。」 クリフトはトルネコから顔をそらすと、苦しげに言った。 トルネコは、笑い顔を引っ込めた。 再び2人の間に沈黙が落ちる。 夜のレイクナバには人影もなく、石畳に、2人の足音だけが響いた。 トルネコは、しばらく無言で歩いていたが、やがてポツリと呟いた。 「…家庭を持つと言うことは、いいものですよ。」 さっきの話を蒸し返すつもりか。 クリフトは、逆にトルネコに質問することで攻撃をかわすことにした。 「だったら、トルネコさんは、なぜご家族を置いて旅に出ていらっしゃるのですか。」 実際のところ、以前から不思議だった。 エンドールの大商人であるトルネコが、どうしてこんな危険な旅に出たのか。 街にいれば、愛する妻と子と、何不自由なく豊かな生活が送れるというのに。 「そうですね、もし、私とネネだけだったら、旅に出てなかったかもしれません。 でも、ポポロが生まれたから…だから、私は旅に出たんです。」 クリフトは不思議そうな顔をした。 逆ではないのか。家族が増えれば、逆に家を離れられなくなるのが普通だろう。 トルネコは、満天の星空を仰ぐように上を向いた。 「私はね、ポポロに、平和な世の中を残してやりたいと思ったんですよ。 そのために、勇者さんたちと一緒に旅をすることにしたんです。」 「…でも、それだったら、他の方法だって…。何も、こんな危険な旅をしなくても。」 「おや、私はこのパーティでは、お役に立ってませんか?」 「いえ、そんなことは…。」 確かに、トルネコは戦闘能力こそ低いものの、その宝を探す能力、武器の目利き、行く先々の街での人脈など、今の一行にはなくてはならない人物であった。 「私は、世界を良くするために、自分を一番効率的に使える方法を選んだだけなんですよ。」 効率は大事ですよ、と商人の顔でトルネコは笑った。 「子供のために、親は、世界をより平和に、住みやすいようにしようと自分の持てる力を尽くす。 そうやって世界は少しずつ良い方向に変わっていくと思うんです。」 そう言って、トルネコは、クリフトを正面から見据えた。 トルネコは、もう笑っていなかった。 「クリフトさん。確かに、神様にお仕えすることも、大事なお仕事です。 でも、自分の子供に平和な世界を残してやるという喜びは、親にしか経験できません。 私は、クリフトさんにも、その喜びを経験して欲しいんです。」 クリフトは、トルネコの真剣さに気圧されたように顎を引いた。 「どうして、私に…?」 「クリフトさんだけじゃない、ソロさんもアリーナさんも、マーニャさん、ミネアさん…、お若い皆さんには、全員、幸せになってほしいんです。 傷ついて、戦って、その先には、あなたたち皆に、幸せな生活が待っていると信じたいんです。」 「トルネコさん…。」 「私の夢は、クリフトさん、あなた達が、いつかは愛する人と結婚して幸せな家庭を作る、 そんな平和な世界が来ることなんです。」 「…トルネコさんの夢……いつかは、私も、愛する人と…。」 クリフトは、トルネコの言葉をつぶやくように繰り返していたが、やがて、静かに首を振った。 「トルネコさん、ありがとうございます。」 「…。」 「でも、私は…。 …トルネコさんは、私の気持ちをご存じだから、こんなことを言われるのでしょう?」 トルネコは驚いたようにクリフトを見た。 クリフトが自分の想いを他人にあからさまにすることは今までなかったことだ。 クリフトの表情は、星明りの下、どこか儚げに見えた。 「確かに、私は、姫様をお慕いしております。」 トルネコは、言葉もなくうなずいた。 「でも、だからと言って、私は自分が姫様と結ばれたいとは思っておりません。」 何か言いたそうに口を開けたトルネコを、クリフトはさえぎった。 「いや、それは、私も弱き人間ですから、そうなったらどんなにか…と夢見ることはあります。 しかし、姫様には、誰もが祝福するふさわしい相手と、幸せな結婚をしていただきたいのです。」 そして、それは私ではあり得ないんです、とつぶやいた。 「だから、アリーナさんとの結婚は望まないと…?クリフトさんは、それでいいんですか?」 「胸が全く痛まないと言ったら嘘になりますが…。」 クリフトは、以前、勇者とアリーナのことを誤解したときのことを思い出し、苦笑した。 「でも、これは、私の、偽らざる気持ちです。」 きっぱりといった。 「…そうですか。」 トルネコは、それ以上クリフトを追及することはなかった。 十字路に来た。 クリフトは、トルネコに向き直った。 「トルネコさん、やはり、私はもう少し教会で祈りを捧げてから帰ります。」 そして、分かれ道を、ゆっくりと丘に向かって登っていった。 トルネコは、そのクリフトの後姿を愛情溢れる表情で見つめると、独り言を言った。 「クリフトさん。あなたは、アリーナさんが幸せになるために一番大切なことを忘れてますよ。」 一番大切なのは、アリーナの気持ち。 そして、トルネコは、アリーナ自身、気づいていないかもしれないその気持ちが、 誰に向かっているのか、分かっているような気がした。 「私は、アリーナさんの父上のような予知能力はないですがね。」 ―――ここ一番というときの、私の勘は、外れたことはないんですよ。 トルネコは微笑むと、ゆっくりと宿への道を向かった。
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クリフトのアリーナへの想いはPart5 372 :【月のかけら】1/5 ◆cbox66Yxk6 :2006/05/29(月) 22 02 59 ID ING++uwj0 「あれ、これって」 とある町で行われた夜祭でのこと。 その露天で売られていた子供向けのおもちゃにアリーナの視線が釘付けになった。 「どうしたの?」 その背後からひょいと顔を覗かせたマーニャが、アリーナの視線の先にある少し濁った水晶のかけらを手にとり懐かしげに目を細めた。 「へぇ、月のかけら・・・まだ売っているのね」 マーニャの声にアリーナは、「やっぱり・・・」と呟く。 王族として生まれ育ったアリーナが、こういうおもちゃに触れる機会はそうそうなかった。 しかし、目の前にあるこの水晶のかけらには確かに見覚えがあった。 そうあれは確か・・・。 アリーナの脳裏にいまよりずっと幼い顔をしたクリフトが浮かび、月のかけらと重なった。 「そうだわ、あの時の」 クリフトがくれた『おつきさま』。 その言葉がきっかけとなったのか、アリーナの中の記憶が鮮明によみがえった。 「いやいや、おつきさまが欲しいの!」 こんなのイラナイ~。 外国製の人形を振り回して癇癪を起こすアリーナに、父王とブライが困り果てた顔をする。 そんな中、蒼い髪をした少年が遠慮がちに声をかけてきた。 「ひめさま、そんなにおつきさまがほしいのですか?」 アリーナの乳兄弟として、そして学友として城勤めをしていたクリフトが大人たちの視線を一身に浴びながら申し出る。アリーナが「ほしい!」と大きな声で答えると、年より大人びた印象をもつ少年はやんわりと笑いながら頷いた。 「わかりました。でも、おつきさまはみんなのものです。一日だけ、とおやくそくしてくれますか?」 そうしたら、ひめさまにおつきさまをとってさしあげます。 一日だけと聞いて、ちょっとだけ迷ったものの、月がどうしてもほしかったアリーナは何度も頷く。 「おつきさま、とって!」 夜空を指し示し、「いますぐとって」と言い募るアリーナに、クリフトはかぶりを振る。 「きょうはむりです。あと3日まってください」 かならずとってさしあげますから。 そう言い切ったクリフトにサントハイム王とブライが心配げな視線を送るが、クリフトは何も言わず、ただまっすぐに見返した。その瞳はとても穏やかで自信に満ち溢れていた。 「では、3日間、いい子にしていてくださいね」 いい子にしていないとおつきさまは会いにきてくれませんよ。 クリフトの言葉に、アリーナは「わかったわ」と元気よく答えると小指を突き出した。 「やくそくね」 3日後、クリフトに誘われて城の中庭に立ったアリーナは、クリフトの手に握られたものと空を見比べ、目を輝かせた。 見上げた空に月はなく、クリフトの手に小さな銀色のかけら。 「ほんとうに、おつきさま、とってくれたんだ」 満面の笑みを浮かべたアリーナの手にそっとかけらを握らせると、クリフトは庭の片隅に腰をおろす。 「よかったですね、ひめさま」 これも、ひめさまがいい子にしていたからですよ。 3つしか違わないのに、妙に大人びたことを言うクリフトにアリーナは少し不満を覚えたが、それ以上に『おつきさま』が嬉しくて、クリフトの横に座ると一緒にかけらを眺めた。 「きれい」 「きれいですね」 「でも、いちにちだけなのよね」 「えぇ、いちにちだけです」 「つまんないのー」 「ひめさま、わがままをおっしゃると、おつきさまはおそらにかえってしまいますよ」 思わず口元を押さえたアリーナにクリフトは小さく笑うと、星だけが瞬く夜空を見上げた。 月のない夜。それは新月と呼ばれる。 ふたりはその晩、いつまでも飽きることなく『おつきさま』を眺め続けた。 そして東の空が白み始める頃。 クリフトに促されたアリーナはそっと草陰に『おつきさま』を置いた。 「これで『おつきさま』は、おそらにかえれるの?」 「はい、でも、おつきさまは、はずかしがりやさんなのでみていちゃだめですよ」 いきましょう、と背中を押されアリーナは一度だけ『おつきさま』を振り返ると、小さく手を振った。 「ばいばい」 そしてクリフトの横に並ぶと、その手をぎゅっと握った。 あんなにほしかった『おつきさま』だったのに、お別れと聞いてもそれほど悲しくないのが不思議だった。 複雑な思いに、クリフトのぬくもりが重なる。 驚いたようにこちらを向いたクリフトだったが、やがてとても優しい微笑を浮かべると、アリーナの小さな手をそっと握り返した。 「いきましょうか」 クリフトの穏やかで透明な微笑み。アリーナの大好きなクリフトの笑顔。 それは『おつきさま』を思わせるやさしいもので。 「どうしました?」 心配げな顔をして、クリフトがぼんやりとしていたアリーナの顔をのぞきこむ。 「ねむくなっちゃいましたか?」 クリフトの言葉に我に返ると、アリーナは屈託のない笑みでこう言った。 「クリフトっておつきさまみたいね」 だからおわかれがさびしくないんだわ。 アリーナの言葉に目を丸くしたクリフトだったが、少し頬を赤らめると小さく「ありがとうございます」と呟いた。 記憶の海に沈みこんでいたアリーナを、マーニャの声が現実に引き戻した。 「おじさん、これいくら?」 「30G」 「あいかわらず高いわね~」 それじゃ、子供のお小遣いなくなっちゃうわよ! マーニャの呆れたような言葉に、露天商のおじさんが朗らかに笑った。 「だって、安売りしちゃったら、夢が壊れるだろ?」 だからこれくらいがちょうどいいのさ。 そう陽気に言い放ち、アリーナの方へウィンクする。 「お嬢ちゃんもそう思うだろ?」 アリーナは突然話を振られ、少し驚いたが、やがてとても優しい笑みを浮かべて頷いた。 「そうね」 その表情の美しさに、思わずマーニャが息を呑んだ。そしてアリーナに『おつきさま』の話を聞くと、さも納得したかのように頷いた。 「なるほど、ね」 素敵な思い出ね。 「ありがとう」 少しはにかんで答えるアリーナの視線の先には、あの頃と変わらずに自分を見守ってくれている 『おつきさま』 自分の方を見ていたアリーナに気づいた彼は、小首を傾げると柔らかな笑みを浮かべる。 今ならわかる。どうしてあんなに月がほしかったのか。 「わたし、あんなに小さい頃から」 クリフトのことが好きだったのね。 胸のうちで囁かれた言葉は、誰に聞こえることもなかったけれども、夜空から見守ってくれる月だけがその想いを温かく包み込んでくれた。 暗い闇の中でも、私は大丈夫。だって私には『おつきさま』が傍にいてくれるから。 (終)
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 897 :【強がり】その1 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/13(木) 12 34 41 ID 7pZgGDPt0 「おい、クリフト。さっきの戦闘で怪我しただろう?」 回復呪文かけてやるから。 ソロの言葉にクリフトはやんわりと笑った。 「大丈夫ですよ」 敵の爪が掠めたわき腹は、服が破れ血が滲んでいる。にも拘らず、クリフトは平気だという。 「おまえさ、強がるのも大概にしておかないと」 ため息混じりに呟くソロに、かなり頑固な一面を併せ持つ神官は笑いながらかぶりを振る。 「本当に、大丈夫ですから」 そんなやり取りを聞いていたアリーナが、無言でクリフトのわき腹を『小突いた』! その瞬間、辺りに意地っ張り神官の悲鳴が響き渡る。 「お、おい」 わき腹を押さえて蹲ったクリフトの肩に手をかけながら、ソロが慌てた。 青ざめた額に脂汗が滲んでいる。 思わず息を呑んだソロの横から、この場にそぐわないのんびりした声が発せられる。 「ほら~、やっぱり痛むんじゃない。強がってないでソロに治療してもらいなさいよ」 クリフトってホントは痛みに弱いのよね~。 けらけらと笑いながら、アリーナはその場を立ち去っていく。 その後ろ姿を眺めながら、ソロは思わず呻いた。 「アリーナ。おまえが止めを刺してどうする・・・」 自分の馬鹿力、そろそろ認識した方がいいぞ・・・。 ホイミで終わるはずだった怪我が、ベホマになってしまったことは、心優しい神官の希望もあって、ソロの胸のうちに収められた。 どうやらクリフトの「強がり」も、アリーナの前では形無しらしい。 (終) 898 :【強がり】その2 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/13(木) 12 36 19 ID 7pZgGDPt0 「だ、大丈夫です。まだ、いけます・・・」 額にびっしりと脂汗を浮かべたクリフトが、青い顔で笑う。 「お、おい」 もうやめておけ。 そういうソロにかぶりを振り、クリフトは果敢にも目の前の『物体』に手を伸ばす。 その腕を脇から、しわだらけの手が掴んだ。 「やめておけ、クリフト。無茶をするでない」 ミントスの二の舞になるぞ。 小さく囁かれた言葉に、ソロは恐れおののく。 (おいおい、ミントスでのクリフトの病気って・・・) 「ただの・・・食あたり?」 そう口にしてみてソロは目の前の物体に、改めて今までに感じたことのない恐怖と悪寒を感じた。 クリフトが挑もうとしているのは、アリーナの手作り料理。ただし、人が食べるものには見えない。しかし、本人曰く、愛情のこもった料理とのことなので、そう言われたクリフトが食べないわけにはいかない。ある意味、モンスターより性質が悪い。 ブライの制止を振り切り、震える手でアリーナの愛情を噛み締めるクリフトに、ソロは深々とため息をついた。 「おまえ、『強がり』も程々にしないと・・・」 命を落とすぞ。 この日、ミントスを震撼させた謎の病の正体がわかり、関係者は胸をなでおろすと同時に、得も言われぬ恐怖を覚えたという。 (終) 900 :【強がり】その3 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/13(木) 13 18 28 ID 7pZgGDPt0 「なぁに、わしは姫様の御子を見るまでは、簡単にはくたばりませぬぞ」 心の底からそう言って笑ったのは、いつの日のことだったか・・・。 「いい加減にしてくれぬかのう・・・」 旅を終えて10年、未だに晩熟な神官と姫の仲は発展していなかった。 「はたして、いつまで強がれるものやら・・・」 頼むから、早くしてくれ。 ブライの『強がり』はまだまだ続く。 (終) 901 :【強がり】その4 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/13(木) 13 19 26 ID 7pZgGDPt0 「いいわよ、別に」 クリフトなんかいなくたって、大丈夫よ。 そう言ったアリーナだったが、次の台詞を聞いて満面の笑みを浮かべた。 「わかりました。私も行きましょう」 「ホントに?」 「はい」 アリーナはクリフトの首に飛びついた。 「ありがとう!」 さっきの台詞は嘘。ホントはあそこから見える景色を、あなたとふたりで見たかったの。 ふたりの頭上に、青々とした葉を茂らせる世界樹がそびえたっていた。 (終) 905 :【強がり】その5-1/2 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/13(木) 17 47 42 ID 7pZgGDPt0 「嫌って言ったら嫌なの!!」 扉越しにアリーナの声が響く。 やれ勉強しろだの、やれ礼儀作法がなっていないだの、小言ばかり並べ立てられたアリーナがついに切れて、自室に閉じこもること丸一日。 なだめすかす教育係の面々にも濃い疲労の影が見える。 「お願いですから、出てきてくださいよ~」 歴史学だかなんだかの先生が泣き崩れる。それでもアリーナの反応は「いや」の一言。 「姫様、いま料理長がおいしいお菓子を作っておりますぞ」 「・・・いや」 昨日からまともに食事を取っていないせいだろうか。ほんの僅かな間があった。 しかし返った答えは同じだった。 「姫様、以前欲しがっていた『サントハイム武闘家大全』が手に入ったのですけど」 なかなか手に入らない逸品ですよ。 「・・・・・・いやよ」 今度はさっきより若干沈黙が長かった。 「姫様、本日サランの町に旅の武闘家なるものがやってきておりますが」 「・・・・・・・・・出ないっていったら、出ないわよ!!」 いつもであったらとっくに扉を開けているだろうに、今回の癇癪は相当根が深いようである。 疲れ果てた人々が顔を見合わせてため息をついていると、ブライに呼ばれて青年神官がやってき た。 「姫様?いらっしゃるのですか?」 クリフトの呼び掛けに、イライラとした声が返る。 「クリフトまで・・・何しに来たのよ!!私はね、一切の勉強をしなくていいと約束してくれるまでここを出ないわ!!」 私の意志は固いんだから!! クリフトは大仰にため息をつくと、少し悲しげに呟いた。 「そうですか。聖地巡礼の旅に出ることになったので、最後に姫様にご挨拶を、と思ったのですが・・・」 残念です。 クリフトの言葉が終わるや否や、扉が荒々しく開き、アリーナが飛び出してきた。 「ちょっと待ってよ!そんな話聞いてないわよ!!」 クリフトの襟に手をかけたアリーナに、クリフトはクスクスと笑った。 「また引っかかりましたね」 「あっ」 すかさず周りを取り囲まれたアリーナは自分の失態に気づく。 「クリフト~」 ぎりぎりと悔しそうに歯噛みするアリーナの頭をぽんぽんと叩くと、クリフトはにっこりと笑った。 「さ、私も一緒にお小言を聞いて差し上げますから」 むっとした顔のままアリーナが耳元で囁いた。 「で、巡礼の話は本当に嘘なのね」 「はい」 クリフトが頷くと、アリーナは少しほっとしたように笑った。 アリーナの強がりはこれが限界のようである。 (終)
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サクリファイス・フュージョン(OCG) 速攻魔法 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):「アイズ・サクリファイス」融合モンスターカードの融合素材モンスターを自分の手札・フィールド・墓地から除外し、 その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。 (2):自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、 相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。 自分フィールドの「アイズ・サクリファイス」融合モンスターまたは「サクリファイス」1体を選び、 その効果による装備カード扱いとして対象の相手の効果モンスターを装備する。 アイズ・サクリファイス補助 コントロール モンスター除外 融合 融合モンスター補助 装備 魔法 魔法除外 関連カード サクリファイス サクリファイス(OCG) サクリファイス(DM7)
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クリフトとアリーナの想いはPart7 20 :【勝負】1/6 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/02/27(火) 12 39 03 ID LUTvY6IV0 旅の途中で魔物に遭遇した勇者一行は、勇者、ライアン、マーニャ、アリーナのパーティで応戦した。 しかし、魔物の中にデビルプラントがおり、マホトーンを唱えられてしまったためマーニャは後手に回り、ライアンとアリーナが中心、勇者がサブとなって連携を組むことになった。 そして、魔物を全滅させた後、アリーナが晴れ晴れとした表情で言った言葉が事の発端となった。 「うーん、やっぱり、最後に信じられるのは自分の腕よね!」 アリーナに悪気はなかったのであるが、魔法を封じられて充分に攻撃に参加できず、ストレスの溜まっていたらしいマーニャは、この言葉にムッとした顔をした。 これで済めばその場は適当に収まったのであろうが、これにライアンが余計な相槌を打ってしまった。 「うむ。やはり、鍛錬と汗によって身につけたものは、決して自分を裏切らないからの。」 ライアンとしては、「努力すれば報われる」程度の意味で言ったのであろうが、選んだ言葉とタイミングが悪かった。 その場にいた全員が、マーニャのこめかみあたりで、ブチっと音がするのを聞いた。 「ちょっと何よ、その言い方!魔法は、信じられない役に立たずってわけ!?」 「い、いや、マーニャ殿の鉄扇は、魔法がなくても充分脅威であるぞ!」 ライアンが慌ててフォローしようとするが遅かった。しかも、 「ライアンさん、今の場合はそれじゃフォローになってないよ…。」 勇者は呟いた。 マーニャはアリーナとライアンにびしっと指を突きつけた。 「こうなったら、勝負よ!ライアン!アリーナ!魔法とあんたたちの武術と、どっちが強いか試してみようじゃないの!!」 「マーニャさん!困ります!姫様にそんなことけしかけないでください…!」 慌ててクリフトが前に出る。 「そうそう、マーニャさん、そんな、仲間内で勝負だなんて、やめましょうよ。」 トルネコがとりなし顔に頷いた。 しかし、アリーナは目をきらきらと光らせて、ガッツポーズを作った。 「面白そうじゃない!やるわよね!ライアン!」 ライアンも、困ったように髭をなでていたが、何しろ、勝負事は大好きな王宮戦士、 「しかし、そうだとすると、拙者達2人対マーニャ殿1人では、ちと不公平…。」 頭の中では既に段取りに入っているようだった。 「何言ってるのよ。あんた達の腰抜け武術なんか、あたし1人で充分よ!」 「なんですって!あたしだって、1人で充分よ!」 マーニャの言葉にアリーナが色めき立つ。 闘いが日常である勇者一行の間では、戦闘能力の向上は最大の関心事の一つであり、互いの腕を競い合うこともないではない。 特に、負けず嫌いのアリーナとマーニャが角つき合わせることはしょっちゅうであった。 しかし、今回はいつもとは違い、何やら抜き差しならない雰囲気となってきている。 こういうときに頼りになるはずのブライは、腰痛で馬車の中で寝込んでいた。 既に、アリーナとマーニャはお互いの間合いを取り始めており、ミネアとトルネコは、もはや説得は無駄とみて、黙々と薬草と包帯を準備し始めた。 「ちょっと、2人とも…ソロさん、何とかしてください!」 クリフトは勇者の袖を引っ張ったが、勇者はあさっての方向を見ていた。 「無理無理。あの2人がああなったら、誰にも止められない。」 それに、2人とも、たまには痛い目に合った方がいいって、と苦々しげに言う勇者に、クリフトは唇を噛み締めた。 マーニャの魔法に、アリーナの武術。 本気でぶつかりあえば、互いに軽くはない傷を負うのは必定である。 クリフトは、意を決したようにアリーナ達の方へ歩み寄った。 「そういうことならば、強さ比べのルールは、第三者である私が決めさせていただきます。」 突然割り込んできたクリフトを、2人は胡乱な顔で見やる。 「強さを試す方法として、お互いに戦うのではなく、私を倒してみてください。 マーニャさん、姫様がそれぞれ交替に攻撃をして、私を先に倒した方の勝ちです。 傷を負えば、交替のときに自分に回復呪文をかけますから不公平にはなりません。」 アリーナは、驚いた顔で首を振った。 「そんな!クリフト、危なすぎるわ!」 「そうよ、あんた何考えてるのよ!」 マーニャもアリーナに同調する。 クリフトは、そんな2人を見てほがらかに笑って見せた。 「お2人とも、随分な自信がおありのようですね。私としては、太陽が地平線に沈むまでに どちらかが私を倒せることができたら、お慰みだと思いますけども。」 太陽は中天を過ぎたと言っても、入日には程遠いところにある。 らしくないクリフトの挑戦的な発言に、勇者は驚いた顔で振り向き、ミネアとトルネコも、薬草を持ったまま手を止めて目を見張った。 ライアンは、何か言いたげに眉を上げたが、口は閉じたままだった。 しかし、アリーナとマーニャは、クリフトの口調にカチンと来たらしい。 「言ったわね!クリフト!もう許さないんだから!」 「後悔するんじゃないわよ、その言葉!」 2人はクリフトに向かって構えを取った。 「はあ、はあ、なんで、クリフト1人ごときを倒せないのよ!」 既に太陽は地平線に沈もうとしていた。 ギャラリーは、ミネアが入れたお茶を飲みながら座って観戦している。 アリーナもマーニャも、肩で息をしていたが、クリフトはまだ、たいした傷もなく立っていた。 クリフトは、アリーナの攻撃にはスクルト、マーニャの攻撃にはマホトーンを唱え、あとは剣と体術で躱わすという非常にシンプルな方法で対応していたのみであったが、 なんといっても、クリフトの補助呪文のタイミングは、常日頃の実戦で鍛え抜かれている。 2人がそれぞれ、呪文の詠唱の隙を狙って攻撃しようとしても、うまく急所を外され、気づいたときにはすでに呪文は完成し、主な攻撃の手が封じられている、という状態であった。 加えて、クリフトは、攻撃をかわしながら絶えず2人を挑発し続けており、それが2人の冷静な判断力を失わせていた。 今も、悔しげにクリフトを睨む2人に対し、クリフトは馬鹿にしたような薄笑いを浮かべた。 「そろそろ日が沈みますよ。所詮、あなたの魔法なんて、そんなものですか、マーニャさん! 姫様も、武術大会で優勝された割には、攻撃がお粗末でしたね!」 2人の顔が赤く染まった。 「~~~!もう許せない!」 「く~~!むかつく~!!」 「マーニャ!」 「やっちゃいましょう、アリーナ!」 2人は同時にクリフトに向かって突進した。 「わ、ルール違反。」 お茶をすすりながら勇者が呟く。 ミネアは黙って用意した薬草を取り上げた。 クリフトとて、同時に複数の呪文を唱えられるわけではない。 とりあえずマホトーンを唱えることに成功し、黒焦げはまぬがれたものの、その間に間合いに入ったアリーナの突きが見事に決まり、遠く宙に舞った。 「アリーナ、よっしゃーー!」 「やったわ!マーニャ!」 手を取り合って喜ぶ2人の横を、ミネアと勇者が通り過ぎ、クリフトを覗き込む 「ザオラル、必要そう?」 「いえ、べホマで何とかなりそうですわ。」 あとで、薬草の包帯もしておきましょう、とミネアがクリフトに手をかざした。 「あっつ…、ありがとうございます、ミネアさん。姫様の突きは、相変わらずきついですね。」 クリフトが苦笑しながら体を起こした。 そんなクリフトにマーニャとアリーナが駆け寄って来た。 「どう!クリフト!」 「あんまり女をバカにするもんじゃないわよ!」 肩を組んでブイサインを決める2人を見て、勇者とミネアが静かに言葉を交わす。 「俺、こいつら殴ってもいいかな。」 「むしろ、クリフトさんにザラキしてもらって放置した方が静かですわよ。」 ライアンとトルネコも近寄ってきた。 「いや、クリフト殿、体を張ってのご仲裁、見事でしたな。」 「私にはとてもまねできません。クリフトさんならではの方法ですね。」 その言葉に、アリーナが我に返った。 「そういえば、私、マーニャと勝負してたのよね。」 「でも、全部クリフトによけられちゃった。クリフト、いつの間にそんなに強くなったの?」 「ホントよ~。相変わらず、隅に置けない男よね~。」 全く反省の色を見せずにあっけらかんとしている2人の言葉に、クリフトは首を振った。 「私が強くなったわけではありません。今回の攻撃は、マーニャさんは魔法、姫様は打撃と、あなた方がどんな攻撃をしかけてくるか、事前に分かっていましたから、防御する側としてはこんなに簡単な戦いはありませんでした。」 お2人が力を合わせない限り、私はいつまでもあなた方を防ぎ続けられましたよ、と続けると、クリフトは、2人を厳しい目で見据えた。 「そして、それは、魔物にとっても同じことが言えます。」 2人は、ハッとした顔をした。 「分かりましたか、お2人とも。魔法と武術のどちらが上か、なんて全く意味のないことです。 それぞれが、互いに足りないところを補い合ってこそ、本当の強さが生まれるんですよ。」 2人はバツが悪そうに目を見合わせる。 クリフトは、そんな2人を見て表情を緩めると、優しく声をかけた。 「…それが、仲間でいるってことじゃないですか。」 その言葉にマーニャは照れくさそうに頬をかき、アリーナは満面の笑みで顔を上げると、思い切りクリフトに抱きついた。 「クリフト!クリフトって、やっぱりすごい!」 「え?え?ひ、姫様!!??」 とたんに今までの威厳はどこへやら、真っ赤になってオロオロし始める神官を見て、周囲は明るい笑い声を上げた。 ―――それが、仲間でいるってことじゃないですか。 暮れなずむ空の下、クリフトの言葉は、仲間達の胸の中に暖かい炎をともしたのだった。