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まりさのいる生活 18KB 愛で いじめ 日常模様 追放 番い 飼いゆ 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 捕食種 都会 現代 最後有りきで書いたので、久しぶりに最後まで勢いが続いた 「まりさのいる生活」 その日、私はいつも通り仕事を終え、家路を歩いていた。 空はすでに薄暗く、西空は綺麗な茜色に染まっていた。 角を曲がる。 周りに人影がなくなり、歩いているのは私だけになる。 どこかの家の夕食だろうか? 風に乗ってカレーの匂いが私の鼻をくすぐっていった。 ああ、とてもゆっくりした時間が流れている。 と、そんな私に話しかけるものがいた。 「おねがいします!!たすけてくださいぃぃ!!」 見れば、小汚いボロボロのれいむが電柱の影にいた。 「にんげんさん!おねがいします!!れいむはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 そう言うとれいむはこちらに向かって土下座をするように倒れ、 2本のもみあげを器用に差し出すように持ち上げた。 差し出されたのは1匹の子まりさ。 衰弱しているのか、虚ろな目をしており、呼吸も荒い。 適切な治療を受けなければ今夜にでも永遠にゆっくりしてしまう、そんな状態だった。 「れいむはかいゆっくりでした!!このこにはしっかりとしつけをしました! まりさによくにたとってもゆっくりしたいいこなんです!!だから・・・!」 黙っている私を、話を聞いてくれる人間さんだと勝手に判断したのだろう。 矢継ぎ早に説明を始めるれいむ。 その姿は全くゆっくりしていない。 だが、おおよその事態は把握できた。 れいむは自分を飼いゆっくりと言ったが、「元」飼いゆっくりだろう。 でなければこんなにボロボロな訳がない。 おそらく野良まりさと勝手に赤ゆを作り、飼い主に捨てられた類のゆっくり。 『れいむ、番はどうした?子供は一匹だけか?』 どれだけこの子まりさがゆっくりできる存在か無駄にしゃべり続けるれいむを遮り、私は短く質問をした。 「ゆ・・・まりさはかりにいったままかえってこなかったんです・・・。 おちびちゃんはたくさんいたけど・・・」 そこまで聞けばもう十分だ。 野良生活に慣れていないれいむは番のまりさを何らかの理由で失なった。 元飼いゆっくりで狩りも、身を守る術も十分に行えないれいむは 次々に我が子を失っていったのだろう。 そして最後の1匹も衰弱し、最終手段として人間を頼った・・・。 『・・・ありきたりだな』 「ゆ゛!?」 そう、ありきたりだ。こんなゆっくりなどそこら中にたくさんいる。 (・・・まぁ、ゲスやでいぶでないだけマシな部類だが、な) 『で、この子まりさを私にどうして欲しいんだ?永遠にゆっくりさせればいいのか?』 「ゆ゛!!?ち、ちがうよ!!たすけてほしいんです!!」 ふむ、違うのか。 そうした方がこちらとしても楽だし、長く苦しむよりはいいと思うのだが。 「おねがいします!!れいむはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 このとおりですから!と、再び土下座らしきポーズをとる。 (ふむ・・・) 『・・・れいむはどうなってもいいんだな?』 「ゆ、ぐ・・・はい!れいむ゛ばどうなっでもがまいばぜん!!」 まだどこか覚悟できていないのだろう。半泣きになりながらそう宣言するれいむ。 だが、まあいい。半泣きとはいえ断言できる程度の覚悟があるのなら十分だろう。 『いいだろう、助けてやろう』 「ゆ!ほんとうですか!!」 『・・・線引きはしておこう。助けるだけでいいんだな?』 「ゆぅ・・・で、できればかいゆにしてあげてください! のらはゆっくりできないんです! このままだといつかまたおちびちゃんはまたゆっくりできなくなります!!」 こいつ・・・要求を上げやがった。 『・・・飼いゆねぇ・・・まぁいいだろう』 「ゆ!?ほ、ほんとうですか!?」 『ああ、本当だ。・・・ただし、本ゆんが飼いゆになることを拒否したらその時は飼わんぞ』 「ゆ、それでかまいません!!」 ふむ、まぁこんなところか。 『では最終確認だ』 1つ、れいむはどうなってもいいから子まりさを助ける。 2つ、子まりさが希望すれば、飼いゆにする。 3つ、拒否した場合は飼わない。 「ゆ・・・ゆっくりりかいしました・・・」 『よろしい。ではまずは治療だが、ここでは無理だ。家まで案内しよう』 そうして私は子まりさを飼うことになった。 「おにいさん!ゆっくりおはよう!」 『ああ、おはよう、まりさ』 いつも通り、2階で目を覚ました私は、1階のリビングでまりさと挨拶をし、 まりさのおうちとして与えたケージの扉を開けてやる。 あの日、一晩オレンジジュースの点滴を受けたまりさは朝には元気になっていた。 そして、『飼いゆになるか?』という質問に「なる」と答えた。 『ゆっくり眠れたかい?』 「ゆ!ゆっくりできたよ!べっどさん、ふかふかさんでありがとうね!」 元気よくケージを飛び出たまりさは自分のおうちにそう、声を掛ける。 飼いゆっくりとなった最初の頃は、親が恋しかったのだろう。 巣として与えたケージの中、毎晩ひとりの寝床を涙でぬらしていたが、今ではそんなこともない。 『ほら、朝ご飯だ』 「ゆっくりただきます!」 また、れいむの言うとおり、一通りの躾はされていたらしく、行儀良く餌を食べ、決まったところをトイレにするなど、私を困らせることも少なかった。 『では、行ってくる』 「ゆっくりいってらっしゃい!」 そうして私はいつも通り、再び2階に上がり、用事を済ませてから仕事に出かける。 これがまりさを飼い始めてからの、いつもどおりの朝。 いつもどおりのまりさのいる生活。 そして、これが最後の朝だった。 いつも通り仕事を終え、帰宅した私を迎えたのは、まりさともう1匹、薄汚いれいむだった。 「「ゆっくりしていってね!」」 『・・・・・・』 「ゆ?おにいさん、どうしたの?」 「ゆふふふふ、きっとあまりのゆっくりさにことぼをうしなっているんだよ!」 「ゆ!きっとそうだね!れいむはとってもゆっくりしてるからね!」 そう言うと2匹はゆんゆんとお互いをすりすりし始めた。 薄汚いれいむの頭には赤ゆが5匹実り、ゆらゆらと揺れてる。 『・・・ああ、そういうこと』 それを見た私は、すぐさま状況を理解した、 これまたありきたりの展開なのだろう。 「おにいさん!れいむはまりさのはにーだよ!れいむもかいゆっくりにしてね!」 ほらきた。 『まりさ、野良はゆっくりしてないから、一緒にゆっくりしてはいけないと言っていただろう?』 「ゆぅ・・・で、でもれいむはとってもゆっくりしたれいむで・・・!」 『しかも勝手に赤ゆっくりまで作って。約束を破ったね?』 「で、でもあかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!!」 「ゆぷぷ、そんなこともわからないなんて。ばかなの?しぬの?」 ・・・しかもゲス気質のあるれいむか。 やはり約束させたとはいえ、まりさの望むままに、自由に外に出られるようにしていたのがまずかったのだろう。 優秀なゆっくりとはいえ、所詮は欲望に正直なゆっくり。 まりさは約束を破り、 禁じられた野良ゆっくりに恋をして、 ゆっくりできるからと禁じられた赤ゆを作り、 それを理由にれいむも飼いゆにしてみんなでゆっくりしようとしたのだろう。 ・・・ありきたりだ。実にありきたりだ。 「・・・ゆ?おにいさん?」 『・・・まりさ。れいむを飼いゆっくりにすることはできない』 「「ゆ゛!?」」 『だから、まりさ、選べ。 れいむと赤ゆのことを捨てて忘れて、飼いゆっくりで居続けるか れいむと赤ゆとゆっくりするために、飼いゆっくりをやめるか』 「ゆ゛っ!!?どぼじでぞんなごというの゛!?」 「ま、まりさ!れいむかいゆっくりになれるんじゃないの!?」 『選ぶんだ、まりさ。本当なら約束を破ったお前を問答無用で捨てても良いし、殺してもいい。だが、お前の母れいむとの約束があるから選択はさせてやる』 あの時、私は母れいむに約束した。まりさを助けると。まりさが望むのならば飼いゆにすると。 約束を破ったまりさを罰するのに、私が約束を破るわけにはいかない。 だから、選ばせる。 まりさが希望すれば飼いゆにする。 まりさが拒否すれば飼わない。 母れいむとの約束だ。 「ゆ・・・ゆぐ・・・ま、まりさは・・・」 「まりさぁ・・・」 『選ぶんだ、まりさ』 結局、まりさはれいむと赤ゆを選んだ。 野良はゆっくりできないと飼いゆになるよう望まれたまりさは、 まりさが拒否したことで野良となった。 母れいむと約束した日からずいぶんと日は経っていたが、約束は約束だ。 その日のうちにわずかばかりの選別とともに、まりさは私の家から去っていった。 意気消沈したまりさと、まりさを「うそつき」とわめき散らすれいむはあの日と同じ、茜色の空の下に消えていった。 私といえば、まぁ、それなりに可愛がっていたまりさに裏切られ、数日は落ち込みもしたが、今ではすっかりと前の、まりさののいなかった頃の生活に戻っている。 今日も私はいつも通り仕事を終え、家路を歩いていた。 最近は日が落ちるのも早くなり、空は綺麗な茜色から藍色に変わりつつあった。 色々あったが、季節はゆっくりと巡っていっている。 角を曲がる。 相変わらずここからは周りに人影がなくなり、歩いているのは私だけになる。 どこかの家の夕食だろうか? 風に乗って焼き魚の匂いが私の鼻をくすぐっていった。 ああ、とてもゆっくりした時間が流れている。 と、そんな私に話しかけるものがいた。 「おねがいします!!たすけてくださいぃぃ!!」 見れば、小汚いボロボロのあのまりさが電柱の影にいた。 「おにいさん!おねがいします!!まりさはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 そう言うとまりさはこちらに向かって土下座をするように倒れ、 脱いだ帽子をおさげで器用に差し出すように持ち上げた。 差し出されたのは1匹の子まりさ。 衰弱しているのか、虚ろな目をしており、呼吸も荒い。 適切な治療を受けなければ今夜にでも永遠にゆっくりしてしまう、そんな状態だった。 「まりさがばかでした!!のらはぜんっぜんゆっくりできません!! このこにはしっかりとしつけをしました! とってもゆっくりしたいいこなんです!!だから・・・!」 黙っている私を、話を聞いてくれていると勝手に判断したのだろう。 矢継ぎ早に説明を始めるまりさ。 その姿は全くゆっくりしていない。 『まりさ、愛しのれいむはどうした?子供は一匹だけか?』 どれだけこの子まりさがゆっくりできる存在か無駄にしゃべり続けるまりさを遮り、私は短く質問をした。 「ゆ・・・れいむはでいぶになっちゃって、もうぜんぜんゆっくりできないんだよ・・・。 おちびちゃんはれいむによくにたこはたくさんいたけど・・・」 そこまで聞けばもう十分だ。 元々ゲス気質のあったれいむは、子を産み、でいぶと化した。 れいむは自分と同じれいむ種だけを優遇し、1匹だけ生まれた子まりさを冷遇したのだろう。 そして、野良生活に慣れていないまりさは満足に狩りもできず、得られる餌は少ない。 愚図、全然ゆっくりできないと罵倒され、自分によく似た子はどんどん衰弱していく。 全くゆっくりできなくなったまりさは子まりさを連れて巣を飛び出し、最終手段として人間を、元飼い主の私を頼った・・・こんなところだろう。 『・・・ありきたりだな』 「ゆ゛!?」 そう、ありきたりだ。しかもほぼ母れいむと同じ会話展開だ。 いやはや、親子というのはこんなところまで似るのかと感心する。 『で、この子まりさを私にどうして欲しいんだ?永遠にゆっくりさせればいいのか?』 「ゆ゛!!?ち、ちがうよ!!たすけてほしいんです!!」 ふむ、違うのか。 そうした方がこちらとしても楽だし、長く苦しむよりはいいと思うのだが。 それに、もうまりさは自分の意志で野良になっているのだ。母れいむとの約束は果たされていて、もう守る必要もない。 「おねがいします!!まりさはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 このとおりですから!と、再び土下座らしきポーズをとる。 (ふむ・・・) 『・・・まりさはどうなってもいいんだな?』 「ゆ、ぐ・・・はい!までぃざばどうなっでもがまいばぜん!!」 まだどこか覚悟できていないのだろう。半泣きになりながらそう宣言するまりさ。 さすが親子。ここまで似るか。 ゆん生の大半を私と過ごしたはずなのだが「3つ子の魂、百まで」ということか・・・。 いいだろう。ここまで同じ展開なのだ。興が乗った。 私も同じことをしてやろう。 『いいだろう、助けてやる』 「ゆ!ほんとうですか!!」 『・・・線引きはしておこう。助けるだけでいいんだな?』 「ゆぅ・・・で、できればかいゆにしてあげてください! のらはゆっくりできないんです! このままだといつかまたおちびちゃんはまたゆっくりできなくなります!!」 ははははは!また一緒だ! こみ上げる笑いを必死に押さえつける。 『・・・飼いゆねぇ・・・まぁいいだろう』 「ゆ!?ほ、ほんとうですか!?」 『ああ、本当だ。・・・ただし、本ゆんが飼いゆになることを拒否したらその時は飼わんぞ』 「ゆ、それでかまいません!!」 『では最終確認だ』 1つ、まりさはどうなってもいいから子まりさを助ける。 2つ、子まりさが希望すれば、飼いゆにする。 3つ、拒否した場合は飼わない。 「ゆ・・・ゆっくりりかいしました・・・」 『よろしい。ではまずは治療だが、ここでは無理だ。家まで案内しよう』 ・・・すばらしい。たまらない! ここまで、ここまで一緒か!まりさ! いいだろう!あの時と同じように約束は守ろう! そしてお前は知ることになる! お前が飼いゆになるのと引き替えに母れいむがどうなったのかを! 家に着き、まずあの時と同じように、オレンジジュースの点滴を用意し、子まりさの治療を始める。 『・・・これで明日の朝には元気になっているはずだ』 「ゆ・・・よかったよ。ありがとう!おにいさん!」 目に見えて顔色の良くなった子まりさを見て、ほっとしたのだろう。 まりさの顔にも笑顔が戻った。 『さて、まりさ。お前はどうなっても構わないんだったな?』 「ゆぐっ!?・・・ゆ、か、かまわないよ・・・」 ははは、本当に素晴らしい。 まりさ、お前は知らないだろうけど、母れいむもそんな顔をしていたよ。 『ではこっちだ、まりさ』 「おそらをとんでるみたい!?」 まりさを持ち上げ、リビングを出る。 目指すは、2階。まりさが入ったことのない場所だ。 『お前は2階に上ったことがなかったよな?』 「ゆ?そうだよ。のぼっちゃだめっていわれたし、かいだんさんはゆっくりできないよ・・・」 そうだ、その通り。 2階に上がってはいけない。それもまりさとした約束の一つだった。 まぁ、まりさの場合、1度だけ約束を破って上ったことがあったが、派手に転がり落ちて餡子を吐くほど床に叩きつけられ、それ以来近づこうともしなかったが。 『懐かしいな。お前の母親もこうやって2階に連れていったよ』 「ゆ!? おかあさん!?」 『ああ、そうさ』 2階の1室。寝室の隣のドアを開ける。 『ただいま、いい子にしていたかい?』 「「うー☆」」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・どぼじでれみりゃがいるの゛ーーーーーー!!!」 そこにいたのは、れみりゃ。金バッチをつけた成体が1匹と銀バッチの子が2匹。 3匹ともうれしそうに部屋を飛び回っている。 『何でって・・・飼ってるからだよ』 私の言葉に呆然とするまりさ。 「まさかまりさのかわりに!?」 『馬鹿言うな。あの成体が子ゆっくりの時からずっと飼い続けているんだ。お前は関係ない』 そう、私はれみりゃを飼っている。子ゆっくりからここまで育て上げた。 「で、でも、あかちゃんはだめって・・・!」 『お前も我慢していればそのうち許してやったさ。同じ飼いゆの番を探してね』 「ゆぅーーーーーーーーーーーー!!?」 「うー☆」 と、子れみりゃが1匹、近づいてきた。 「ゆわわわわ! こないでね!? こないでね!?」 『よしよし、待て!』 「「うー☆」」 私の「待て」を聞き、3匹とも床に着陸し、こちらにキラキラと催促するような目を向けてくる。 「ゆわ、ゆわ・・・!」 未だ逃げ出そうとするまりさを左手でしっかりと押さえつけ、私は部屋にある防音ケースからあるものを取り出し、床に放り投げる。 「ゆべっ!!いちゃいよ!ゆっきゅりしちぇにゃいにぇ!」 それはれいむ種の赤ゆ。 「ゆ!?」 まりさが混乱しているようだが、放っておく。 『よし!』 「「うー☆」」 「ゆ?ゆぴぃーーーーーー!!れみりゃだーーーー!!こっちこにゃいでにぇ!」 「うー☆」 「ゆぴぃ!!?」 「うー☆」 「ゆべぇ!?」 「うー☆」 「ちゃべ・・・ゆべぇ!・・・にゃいでにぇ!・・・れい・・おいじぎゅ・・にゃ・・!!」 私の号令を聞き、赤れいむに群がるれみりゃ達。 「・・ゆ゛・・・・・もっちょ、ゆっきゅ・・・」 「「うー☆」」 あっというまに赤れいむはれみりゃ達の餌となって皮だけを残し、消えた。 「ゆ・・・ゆぅ!?おにいざん!!なんなのごれ!!?」 『れみりゃにご飯をあげたのさ』 「ゆぅ!?」 れみりゃは捕食種だ。最初はゆっくりフードで育てていたのだが、ある時から生き餌に替えた。 生き餌の方が食事毎の狩りが運動になるのか、元気で調子も良くなるのだ。 「うー」 『足りないのか?まぁ待て。今日は特別なごちそうがあるからな』 「「うー☆」」 「お、おにいざん!?まざがばでぃざがぞのごぢぞうじゃないよね!!?」 ほう、勘が良いな。だが、残念。 『はずれだ、まりさ』 「ゆ?」 『ほら、これがごちそうだぞ』 「「うー☆」」 「ー・・・ー・・・」 ケースから取り出したそれは成体のれいむ。 身体にはいくつものチューブが繋がっている。 「ゆ?なんなの、このれいむ・・・」 チューブはオレンジジュースや精子餡の詰まった容器に繋がっている。 これはれみりゃ達のための、生き餌を作る赤ゆ製造器。 「ぜんぜんゆっくりしてないよ・・・」 足は動かぬように焼かれ、口も縫いつけられ、目だけが虚ろに光っている。 と、その虚ろな目が驚きに見開かれ、光を取り戻す。 「ゆ?なんなの?」 「ーーーー!!?ーーーーー!!?」 光を取り戻した目は、まりさを見ている。 必死に何かを伝えようとしているようだ。 『・・・それ、お前の母親な』 「ゆ゛!?」 そう、このれいむはあの母れいむだ。 あの日、自分はどうなってもいいと言ったれいむは赤ゆ製造器となった。 1匹の自分の子を救うために、それよりも多く、自分の子を生き餌として産んだれいむ。 「ーーーーーーーー!!ーーーー!!」 その身体はもうボロボロで、皮はひび割れている。 『・・・対面はこれぐらいで良いか。れみりゃ』 「ゆ゛!?まってね!?おにいさんまってね!?」 「ーーーーーー!!ーーーーーーーー!!」 『よし!』 「「うー☆」」 れみりゃ達がれいむに飛びかかる。 「ーーーーーー!!??」 「やめてね!?おにいさん!?やめてね!?」 ゆっくりと中身を吸われていくれいむ。 長い間、全くゆっくりできていなかったその中身はさぞかし甘くなっていることだろう。 『・・・れいむ、私は約束を守ったよ。まりさは飼いゆっくりになって、ここまで大きくなった。残念ながら勝手に野良と番になって飼いゆでいることを拒否して野良に戻ってしまったけどね』 「ーーーーー!!??」 れいむが暴れ出す。 それは痛みのせいか、それとも我が子の現状を聞いたからか。 『そしたら今日、まりさが私に助けを求めてきたんだよ。あの日の君のように』 「ーーー!?」 繋がっていたチューブが外れていく。 オレンジジュースが、精子餡が飛び散るが、気にせず独白を続ける。 『そう、あの日の君のように、だ。さすが親子だね。細部は違うものの、まったく同じ展開だったよ』 「ーーーーーーーゆがべへぇ!?」 暴れたからだろうか?縫いつけていた口が開いた。 これにも構わず続ける。 『台詞も同じだったよ。自分はどうなってもいいから、子供を助けてくださいってね。大丈夫、君の孫にあたる子まりさは助けたよ』 「ゆがっ!?ぐべっ!?」 ふと見れば、まりさはおそろしーしーを漏らしていた。 『あまりにも一緒すぎてね。感動すら覚えたよ。だから』 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 痙攣が始まる。もう長くはない。 『だから同じ約束をした。この「野良まりさ」は君と同じになる』 「「ーーーーーーーーーーー!!」」 最後の叫びはれいむとまりさ、親子のものだ。 れいむは中身が無くなった断末魔の叫び。その中に我が子の末路を知った絶望も混じっていただろうか? そしてまりさは自分のこれからを知った叫び。 「「うー☆」」 れみりゃ達が満足そうに飛び回っている。 さぞかし、甘いごちそうだったのだろう。 『よかったな、れみりゃ・・・さぁ、「野良まりさ」君』 「ゆ゛!?やめでね!?ゆっぐりざぜでね!!? ゆ、ゆ、ゆわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 「・・・ゆ?きょきょは?」 『ゆっくりおはよう、まりさ』 「ゆ?にんんげんしゃん?」 『昨日のことを覚えているかな?君のお父さんに頼まれて君を助けたんだけど』 「ゆっ!おぼえちぇるよ!ゆっくちありがちょう!」 『なに、感謝するならお父さんにしなさい。自分はどうなってもいいから、子供を助けてくださいって言って、君を助けるために頑張った・・・いや、「頑張っている」んだから、ね』 「ゆ!?そうぢゃよ!おちょうしゃんは!?」 『別の場所で「頑張って」いるよ。・・・ところでまりさ』 「ゆ?」 『私の飼いゆっくりになるかい?』 そうして私は「まりさ」を飼うことになった。 さて、2階に上がってれみりゃ達に生き餌をあげよう。 それからまたいつも通り、仕事に出かけよう。 そう、前と同じ、「まりさ」のいる生活だ。 〈了〉 今までに書いたもの 『おねぇさんのゆっくりプレイス』 『詰める』 『れっつびぎん』 『ぱぺっとショウ』 『おねぇさんのゆっくりプレイス・2』 再開後の作品 『「まりさ」が好きな人』 『ドスまりさになれる授業』 『饅頭(マントウ)』
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「狭間に見た夢」 羽付きあき ・理不尽物です ・第三者視点です ・いくつかの独自設定を盛り込んでありますご注意を ・視点がコロコロ変わります。ご注意を ・・・子れいむの眼下には煌びやかな街の光が映し出されていた。 イルミネーションが星の様にキラキラと輝き、車のライトが流れる光の河を形作っている。 「ゆゆーんちょっちぇもきらきらしちぇきれいぢゃね!」 感嘆の声を上げる子れいむ。 後ろを振り向けば、フカフカの毛布のベッド、より取り見取りのあまあまの数々。 おうたを歌うステージ。底部に履く「おようふくさん」は子れいむのお気に入りばかりを何十着も用意されていた。 そう、自分は金バッジゆっくりなのだ。 子れいむはクッキーやチョコレート、ケーキなどのあまあまを夢中になって食べた。 「む~しゃむ~しゃ!ちあわちぇー!」 口の周りはチョコやクリームだらけ、幸せだった。はじける様な笑顔を浮かべ、次はステージの上で体をくーねくーねと動かして「おうた」を歌う。 「ゆ~ん♪ゆゆ~ん♪ゆっきゅり~♪ゆっきゅりしちぇいっちぇ~ね~♪」 子れいむは今、幸せだった。 快適な「おうち」頬っぺたが落ちるほどの甘い「あまあま」ふわふわの「べっど」 そして飾りに輝く金バッジ。 「ゆふふ!おちびちゃんとってもゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!おきゃあしゃん!ゆっくりしちぇいっちぇね!」 「ゆっくりしていってね!」 親れいむが声をかける。モチモチの小麦粉の肌にしっとりとした砂糖細工の髪、そして皺ひとつない飾りに輝く金バッジ。 子れいむ自慢の母親だ。 「おきゃあしゃんしゅーりしゅーり!」 「すーりすーり!おちびちゃんはこれからずっとゆっくりしたまいにちをおくるんだよ!」 「れいみゅちょっちぇもしあわちぇぢゃよ!」 「れいむもとってもしあわせだよ!」 ・・・子れいむはこれから、親れいむに見守られ育ち、同じ金バッジの番いのまりさと「ずっといっしょにゆっくり」して、かわいいかわいい子ゆっくり達を育み、笑顔いっぱいの「家族」と永遠にゆっくりするのだ。ずっと・・・きっとずっと・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・・・不気味な音を立てた風がビュービューと流れていく。 風はまだあまり強くないが、空は鉛色に染まっており、夏のはずなのに不気味なほどの静寂さを醸し出していた。 そう、台風が近づいてきている。 と言っても、明後日やそこらの話だ。まだ雨も降っていないし、ただ曇っているだけである。 この街には曇り空がお似合いではないかと思う。 そう考えるのは私が街ゆっくりに焦点を当てているからだろうか・・・? いずれにせよ、街は相も変わらず寂しい、荒涼とした感じを醸し出している様に思えた。 羽付きが横を跳ねて追いついてきた。 「羽付き、もうすぐ台風だけど"おうち"に居なくていいのかい?」 「まだほんかくてきになるのはさきのはなしだぜ。それに」 「それに?」 「たいふうやふぶきみたいなひのまえは、まりさのおうちによくくるんだぜ。あぶれたゆっくりが・・・」 「じゃあ尚更戻った方がいいんじゃないか?」 「いまもどってるところなんだぜ」 「え?」 「このさきのろじうらにまりさのおうちがあるんだぜ」 私と羽付きは今にも落ちてきそうな曇天の下を歩く。 風はただ不気味に、そして寂しく音を立てて流れていくだけだった。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ こじんまりとした路地裏に、ひと際立派なダンボール箱がある。 ビニールシートをかぶせ、大きさがバスケットボールサイズのゆっくりなら3~4体は入れそうな程の大きさだ。 「ここが羽付きの?」 「いつつめのおうちだぜ」 「五つ目?」 「そうだぜ。このきせつとつぜんあめとかがふってきたりとか、いらいをうけたところがとおかったりしたときになんこかおうちをてんざいさせてあるんだぜ」 「でも、勝手に住み着かれたりしないのか?」 「かってにすみついてもらったほうがけっこうなんだぜ。かってにおそうじをしたりしてくれるからわりかしべんりなんだぜ」 ・・・羽付きはどうやら全部で10個近くの「おうち」を持っていると言う。 街の各所に点在しているそれらを使って長丁場の依頼や地域ゆっくりの一時的な避難場所の提供等に羽付きは使っていると言う。 重要な所は普段は地域ゆっくりの住まいとして提供しており、それ以外の所は勝手に街ゆっくりに住み着かせていると言う。 街ゆっくりの最重要物資である食料等はおいていないので勝手に食い荒らされる心配は無いと言う。 また、羽付きがよく使用している「おうち」は食料も相当数貯めているが、南京錠を使った簡易的かつ堅牢な「きんこ」を作っており、破られる心配は無いと言う。 ・・・羽付きの「おうち」の前に二体のゆっくりがいる。 先客だろうか?パッと見た限り地域ゆっくりと言った感じではなさそうだ。 「先客がいるね」 「れいむのおやこかぜ・・・」 羽付きと私は少し近づいて様子を伺う。 バスケットボール大のれいむと、ソフトボールほどの子れいむ。合わせて二体の様だ。 風貌は汚く、ボロボロの飾りと砂糖細工の髪、いくつか擦り切れて駆けているリボンは街ゆっくりと言う事を否応なしに現していた。 煤や泥にまみれた小麦粉の皮は生傷だらけで、底部に近づくにつれ多くなっていく。底部も真っ黒くカチカチになっているようだ。 「ゆゆー!ちょっちぇもすてきなおうちがありゅよ!おきゃあしゃん!ここをおうちにしちゃいよ!」 「・・・ここはほかにすんでるゆっくりがいるよ。でもたいふうさんがどこかへいくまでちょっとだけやすませてもらおうね」 どうやら先ほどここを見つけたようだ。 恐らく食料も住処も持っていないれいむなのだろう。 こんな天気にまで外に出ていると言う事は「おうち」を探しながら食料をあてどなく探して街をふらついていたのだろう。 「じゃあ、なかでゆっくりやすもうね」 「ゆっくりわかっちゃよ!」 親れいむがビニールシートを捲った時に、羽付きが飛び出した。 「かってにはいってもらっちゃこまるんだぜ」 「「ゆゆ!?」」 驚くれいむ親子をしり目に羽付きが意にも介さず淡々としゃべる。 「ここはまりさのおうちなんだぜ。あまやどりならおうちのなかにまではいらなくてもこのろじうらならあめもかぜもはいらないんだぜ」 「ゆ!?れいみゅゆっくりやしゅみちゃいよ!いじわりゅしにゃいぢぇいれちぇね!」 「ゆゆう・・・しかたないよ・・・おちびちゃん・・・」 食らい下がる子れいむを宥める親れいむ。 グズっていた子れいむも親れいむが粘り強く宥めてようやく落ち着いた様だ。 「そこにすきまがあるからねるときはそこにすればいいぜ。あとこれからにんげんさんがくるけどべつにまりさやれいむたちにはなにもしないからほっといてもらってけっこうなんだぜ」 「ゆっくりわかったよ」 私が近付いて行くと、少しおびえた表情をした物の、そこまでの事だった。 ビールケースなどが積まれたその隙間に、すっぽりと体を押し込め、じっとしているれいむ親子を見ずに、羽付きは帽子の中から一口ゼリーやアーモンドチョコ等を取り出すと、黙々と食べ始めた。 「む~しゃむ~しゃ・・・」 「ゆうう・・・」 「おいししょうぢゃよ・・・」 それを見ていた親れいむが恐る恐る羽付きに話しかける。 「ま、まりさ!」 「なにかぜ?」 ・・・羽付きが目玉だけを動かしてれいむを見据える。 「その・・・ち、ちょっとだけでいいかられいむたちにもわけてほしいよ!」 羽付きの動きがとまった。それをYESと見たのか親れいむが捲し立てるように話す。 「れいむたちはゆっくりできないにんげんさんにおうちをこわされてからずっとゆっくりできないせいかつをしていえるんだよ!」 「だからなんだぜ?」 「ご、ごはんさんもあんまりたべられないでおちびちゃんもおなかをすかせてるよ!れいむがだめならせめておちびちゃんにごはんさんをちょうだいね!」 「いやにきまってるんだぜ」 「ゆ・・・ほんのちょっとでいいから・・・ち、ちょうだいね!」 「いやっていってるのがきこえないのかぜ!!」 「ゆぅ!?」 羽付きが声を荒げてどなりつけた。 ビクリと小麦粉の体を震わせてれいむがひるむ。 「まりさはじぶんがかわいそうとかいってだれかからなにかをもらおうとするゆっくりがだいっきらいなんだぜ!かわいそうなのはおまえのせいだぜ!じごうじとくのぐずになさけをかけてやるほどまりさもよゆうはないんだぜ!」 「ゆびぇえええん!きょわいよぉぉ!」 ・・・羽付きの声に驚いた子れいむが泣きだしている。 親れいむそれを見て子れいむに寄り添い、すーりすーりで宥めている。 「おちびちゃんだいじょうだよ!こわくないよ!すーりすーり!」 「ゆぇええええん!ゆびぇぇええええん!!」 羽付きはその光景を冷めた目で見ながら、帽子をかぶり直している。 「言いすぎじゃないか?」 「にんげんさんはあまいんだぜ。どこかのゆっくりのえさばをしらずにかりをしてるとかならまりさだってごはんさんはあげるけど、こんなやつらにやってたらきりがないんだぜ」 「悪いゆっくりには見えないけどなぁ」 「ゆっくりにいいわるいがあるとすればそれはかいゆっくりだけだぜ。まりさたちはまちゆっくり、そもそもがわるいというぜんていにいるんだぜ」 「しかし泣きやまなかったらうるさくって仕方がないんじゃないかい?」 私がれいむ親子に目を向ける。火がついた様に泣き喚く子れいむを必死になだめるれいむであったがあまり意味は無い様だ。 「ゆびぇええええん!おなかすいちゃよぉぉおおお!どぼじぢぇえええ!?れいみゅたちにゃにもわりゅきょちょしちぇにゃいにょにいいいい!きょんなにょっちぇないよおおおおお!」 「おちびちゃんゆっくりなきやんでね!すーりすーり!」 「どぼじじぇきんばっじのれいみゅちょおきゃあしゃんぎゃきょんなゆっきゅりきにゃいにょおおおおおお!?」 「おちびちゃん!きんばっじでもゆっくりできないときがあるんだよ!?」 「ゆえええええん!きんばっじさんはいつになっちゃらもらえりゅにょおおおお!?」 「おちびちゃんがゆっくりしたゆっくりになったらだよ!だからなきやんでね!ゆっくりしていってね!」 「ゆびえええええええええん!」 ・・・ダメだ。キリがない。 私はバッグの中から板チョコレートを取り出し、小さく割るとれいむ親子の方に投げつけた。 「ゆ?」 「ゆっく・・・ひっく・・・ゆゆぅ・・・?」 「お腹がすいてるから泣くんだよ。それ食べていいよ」 ・・・途端に親子れいむの顔が明るくなる。 何度も親れいむがお礼を言って、子れいむが貪る様に食べている。 「ゆっくりありがとうね!おにーさん!」 「はふっ!むしゃむしゃ!はぐっ!しあわしぇええええ!!おにーさんゆっきゅりありがちょう!」 「でも、あげるのはこれっきりだからね?」 「「ゆっくりわかったよ!」」 先ほどとは打って変わって明るくなったれいむ親子を見ると、私は再び羽付きの方へと歩んでいった。 「いただけないんだぜ。にんげんさん」 「いいじゃないか、うるくなくなっただけでもさ」 「・・・ゆぅ」 「それにしても金バッジとか言ってたね。あのれいむ親子」 「ふいてるだけだぜ。きっとほんとうのきんばっじならまちゆっくりになるはずないんだぜ・・・ほんとうにゆっくりしていれば・・・」 羽付きの表情が曇った。すぐに帽子の唾を下げたため表情が隠れてしまったが、何か嫌な事でも思い出したかのように私は見えた。 「おにーさん!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 私が振り返るとそこにはれいむ親子が近付いていた。 「ああ、別にいいよ」 「おにーさんはとってもゆっくりできるね!」 「れいみゅきょんにゃおいしいあみゃあみゃをたべちゃのはじめちぇぢゃよ!」 「所で、さっき金バッジがどうのこうのって言ってたけど、れいむ達は金バッジだったのかい?」 「ゆぅ・・・」 ・・・れいむが口をもごもごとさせている。 半面、子れいむの方は明朗快活に答えている。 「そうぢゃよ!おきゃあしゃんはきんばっじのゆっきゅりだっちゃっちぇいっちぇちゃよ!だきゃられいみゅもきんばっじのゆっくりになりゅんぢゃよ!」 「ゆ・・・おちびちゃん・・・」 「きんばっじになればとっちぇもゆっきゅりできりゅんぢゃよ!れいみゅがあとちょっとおおきくなっちゃらおきゃあしゃんもきんばっじになっちぇゆっきゅりできりゅっちぇいっちぇちゃよ」 「へぇ・・・金バッジにねぇ」 「おにーさん・・・」 れいむの顔が焦りに陰る。 ・・・都合の良い方便に金バッジを使ったと言う事はありありとわかった。 羽付きもウンザリと言った顔をしている。 目をキラキラと輝かせて輝かしい未来を信じている子れいむに、私はこう言った。 「凄いね。きっと金バッジになれるよ・・・ゆっくりしたね」 「ゆ!おにーしゃんありがちょうね!」 「・・・おちびちゃん。ごはんさんをたべたらあんまりうごかないようにしようね。きょうはもうねようね」 「ゆ!?でみょ・・・」 「寝た方がいいよ、疲れてるんだろう?」 「ゆゆ!しょうじゃね!ゆっきゅりちゅーやちゅーやしゅりゅよ!」 「・・・じゃあ、しっかりれいむにくっついてね」 「ゆゆ!わかっちゃよ!」 ・・・この子れいむの信じている未来が来る事は、おそらく永遠にないだろう。 羽付きも怒りを込めて目でれいむを見ていた。 私も正直言ってkのれいむのしている事に感心しない。 何時かウソもばれる日が来るだろう。その時はどうするのだろうか・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「すーやすーや・・・」 「ちゅーやちゅーや・・・」 15分もするとすぐにれいむ親子は小麦粉の皮を寄せ合って眠り始めた。 ・・・寝顔だけは金バッジ級だ。 「このれいむ親子はどうなるんだろうな・・・」 「さあ・・・まりさにはかんけいないことだぜ」 「この子れいむは金バッジを何かよく知らないで信じ込んでる節があるなぁ・・・かわいそうに」 「・・・きんばっじなんてあのれいむがおもってるほどいいものじゃないんだぜ」 「だろうね」 ・・・羽付きの顔が曇る。 きっと何かを思い出しているのだろう。 だがそれを聞く勇気は私には無かった。 そう考えていると、微かに遠くでゆっくりの悲鳴が聞こえた。「ゆんやあ」と それを聞いて羽付きが急いで「おうち」から飛び出す。 「すぐにここをはなれるんだぜ!」 「なんでだい?」 「かこうじょだぜ。いっせいほかくにきたんだぜ!」 「何だって!?」 「はやく!はやくいくんだぜ!」 「でももう表には・・・」 そう、私と一緒に居ても羽付きは「街ゆっくり」 見つかればつかまってしまうだろう。しかも、すぐそこまで来ている。 そう考えた私の考えを見抜く様に、羽付きが帽子の中から、ほんの少しだけ鈍く光る金色の丸い何かを取り出した。 「まりさはだいじょうぶだぜ!きんばっじをこうやってつけたら・・・」 「よかった!じゃあ・・・」 「はやくいくんだぜ!」 「ちょっとまって!れいむ達は!?」 「・・・ざんねんだけどおいていくんだぜ。それに、もうばっじのよびはないんだぜ」 「・・・!・・・しょうがないか」 ・・・私と羽付きは路地裏を一気に飛び出した。 表では袋に詰められて泣き叫び、苦しむ街ゆっくりがそこらかしこに現れている。 「 わがらないよぉぉぉ!!らんじゃまああああ!」 「むぎゅううう・・・!ぐるじぃぃ・・・えれえれ・・・!」 「どがいばっ!どがいばあああ!までぃざあああああ!」 「でいぶうううう!おぢびぢゃああああん!にげっ!にげるんだぜえええええ!」 棒の先にフックを付けた物を持ってゆっくりを引っかけて捕まえる加工所職員達。 路地裏から飛び出した、私と羽付きを一瞥するが、すぐに路地裏へと通り過ぎて行った。 あのれいむ達は・・・私と羽付きが振り返り、れいむ親子のいた場所を眺める。 未だすーやすーやと眠り続けていたれいむ親子だったが、表の騒音にようやく目覚めたようだ。 「ゆゆ!?」 「ゆぅ・・・おきゃあしゃんどうしちゃの・・・?」 「・・・そとのようすがおかしいよ!おちびちゃん!いますぐいどうするよ!」 「ゆ・・・ゆっくりかわっちゃよ!」 ・・・親れいむの只ならぬ様子に感ずいたのか、素直に言う事を聞いて隙間から飛び出すれいむ親子、だがその目前に、加工所職員がいた。 「ゆううううう!おちびちゃん!いそいでにげてねっ!」 「ゆ!ゆ!」 足元を掻い潜って逃げようと跳ねた親れいむの小麦粉の顔がゆがんだ。 その瞬間、凄まじい勢いで蹴っ飛ばされ、壁面に叩きつけられる。 「ゆげぇっ!」 「おぎゃあじゃああああああああん!?」 「おぢびぢゃ・・・にげ・・・ゆぐぇっ!」 跳ね寄る子れいむに逃げろと言う親れいむ、だが言葉半ばに加工所職員がれいむの底部辺りを思いっきり踏みつけた。 ゴボリと口か餡子が吐き出される。 「ゆげぼっ!ゆごぼっ!おぢびぢゃん・・・!おでがい・・・にげっ・・・ゆぐぉおっ!」 「おぎゃあじゃん!おぎゃあじゃああああん!ゆっぎゅりじじぇええええええ!」 親れいむが再び踏みつけを食らう。 勢いよく転がって、地面に這いつくばりながら、せき込み、餡子を吐き出した。 「ゆぐっ・・・!ゆげぇぇぇぇええええ…!ゆげぼっ・・・!ゆご・・・お”ぅ”げえ”え”え”え”え”・・・!」 ビチャビチャと餡子と砂糖水が吐瀉物のごとく口からダラダラと流れ出る。 「おきゃあしゃんをゆっきゅちいじめにゃいぢぇね!れいみゅおきょりゅよ!」 「ゆげっ・・・!げぇっ・・・!お、おぢびぢゃん・・・!」 ・・・加工所職員の目の前に立ち、大きく膨らみピコピコを激しくふって威嚇する子れいむ。 加工所職員がひきつった笑みを浮かべると、棒の柄で、子れいむを突こうとした。 その刹那、親れいむが背中を向けて子れいむをかばい、柄の棒での突きを受けた。 ゴチッと音がしてれいむの後部に棒の柄がめり込む。 「ゆぐっ・・・ゆぐぅぅぅっ!」 「おぎゃあじゃん!?」 「おぢびぢゃん・・・は・・・れいむ・・・が・・・まも・・・まもるよ・・・!」 加工所職員が棒の柄で何度も何度もれいむを突き続ける。 そのたびにれいむは屈んで子れいむを守り続けた。 「ゆぐっ!ゆがっ!ゆぎっ!」 「おぎゃあじゃんぼうやべぢぇ!おぎゃあじゃんすっぎょきゅいちゃがっちぇりゅよ!?」 「ゆっぐぅ!べいぎ・・・!だよ・・・!おぢびぢゃん・・・は・・・!れいぶが・・・れいぶが・・・!まもるがらねっ・・・!ゆぐぇっ!」 ・・何度突いても屈んで耐え続けるれいむに業を煮やしたのか、フックで引っかけると、こちらに引っ張ってこようとする。 「おぢびぢゃんっ・・・!れいぶのおぐぢのながにばいっでね・・・!ゆぎっ・・・!」 「ゆ!ゆっくりわかっちゃよ!」 ・・・ここからではそこまでしか見えなかった。 恐らくフックで引っ掛けられて袋に詰め込まれてしまったのだろう。 加工所職員が路地裏から出てきた時には、れいむ親子が入っていたであろう袋がグネグネと蠢いているのを私は見た。 あっという間に加工所の捕獲は終わった。 後に残ったのは隠れて無事だった子ゆっくり達や赤ゆっくり達の親ゆっくりを呼ぶ慟哭。 そして破壊された「おうち」の数々。 まだこの子ゆっくり達はまだマシな方だろう。 捕まったゆっくり達は明日までのゆん生なのだから・・・ 羽付きと私は、ただその光景を眺めている事しかできなかった。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 「ゆうー!」 「ゆゆ!」 子れいむ達の目の前に広がっていたのは、まさしく「ゆっくりプレイス」ともいうべきものだった。 どこかの大きなビルの上の階なのだろう。絶景が子れいむ達の眼下に広がっている。 あの後、親切な人間さんが子れいむ達を助け出してくれたのだ。 一目見て金バッジのゆっくりだとわかったと言う。 そしてけがをした親れいむを治療してくれた。 小麦粉を水で溶いた物をハケで塗ってくれて、すっかり子れいむを守るために受けた傷は治ってしまった。 すっかり元気になった親れいむを見て、何故か子れいむは涙が止まらなかった。 そんな子れいむを見て人間さんは、チョコレートをお皿一杯に持ってきてこう言ってくれた。 「お腹がすいてるから泣くんだよ・・・それ食べていいよ」 にっこりとほほ笑む人間さんを見て、お礼を言いながら、チョコレートをほおばった。今まで食べた事のない様な味だった。 ・・・そして子れいむ達は汚れを洗って綺麗にしてもらった後は「おようふく」を着せてもらったのだ。 「とっても似合ってるよ」 そうほほ笑む人間さんに親れいむと子れいむはこう言った 「「にんげんさん!ゆっくりありがとうね!!」」 そう、子れいむは今、幸せだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「おぎゃあじゃああああああああああああん!!」 「おぢびぢゃんっ・・・!おぢびぢゃぁぁんっ・・・!」 ・・・捕まった後、れいむ親子はトラックに載せられ、「加工所」に入れられた。 餡子脳の奥深くに刻まれているのだ。加工所はとてもゆっくりできないものだと。 戦々恐々とする親子れいむは、せまくるしい籠の中に入れられ、一夜を明かした。 怖がりながらも小麦粉の皮を寄せ合って寝た。親れいむの温もりだけが子れいむを包み込む優しい祐樹だった。 ・・・それが最後の親れいむの温もりとなる事も知らずに そして今、籠から親れいむが引っ張り出されようとしている。 何とか食らいついていたが、とうとう引っ張り出されてしまった。 加工所の職員にピコピコを掴まれて連れて行かれる時に、親れいむはひたすら子れいむに語りかけていた。 「おちびちゃんっ!れいむがいなくなってもつよくてゆっくりしたゆっくりになってねっ!まけないでっ!まけないでねっ!おちびちゃんんんんんっ…!」 「おぎゃあじゃんっ!おぎゃあじゃんっ!!おぎゃあじゃあああああん!!」 ・・・そして、扉がバタンと大きく音を立てて閉められた。 子れいむは、それ以降親れいむを見ていない。 そして今子れいむは真っ暗やみの狭い狭い「箱」の中に居る。 何もない、本当に何もないところだ。 ・・・餌だけはほんの少しだけ毎日小さな窓からポロリと落ちてくる。 食にこまる事は無かった。だが子れいむは「しあわせー」と叫べない。親れいむがいないから・・・ 今日も子れいむは夢を見る。儚い夢だ。 あの羽根のついたまりさの横にいた人間さんが助けだしてくれる夢。 その中で、子れいむは全てを手に入れる。金バッジをくれて、あまあまも、親れいむも、「おようふく」も・・・ 淀みゆく空虚な思考の「ゆっくりプレイス」の中で、子れいむは今日も夢を見る。 たとえそれが叶う事のない夢だとしても ここには真っ暗で狭くて、冷たくて、本当に、何も、無い。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 夏の夕暮れが全てをオレンジ色に染め上げていく。 台風は去り、再び夏はうだるほどに太陽を照らしつける。 私は、夕暮れの街に居た。 あの後、羽付きは「おうち」を転々と変えて街にいる。 時にはバッジを付けて、時には「かざり」を変えて・・・ 少なくとも羽付きが捕まる事は無いだろう。 私はなぜかそう確信していた。 ・・・あの親子れいむの事を何故かよく思い出す。 金バッジの事を何も知らず、あるはずのない空虚な未来を信じていたあの子れいむは幸せだったのだろうか? 本当のあの親れいむは金バッジだったのだろうか・・・ 全てをする術はもうどこにも無かった。 日はまた沈み、また昇っていく。 昨日もまた、明日もまた・・・ あの子れいむにも親れいむにも太陽は光を照らし続けてくれるだろう。 きっと・・・ずっと・・・
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まりさのいる生活 18KB 愛で いじめ 日常模様 追放 番い 飼いゆ 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 捕食種 都会 現代 最後有りきで書いたので、久しぶりに最後まで勢いが続いた 「まりさのいる生活」 その日、私はいつも通り仕事を終え、家路を歩いていた。 空はすでに薄暗く、西空は綺麗な茜色に染まっていた。 角を曲がる。 周りに人影がなくなり、歩いているのは私だけになる。 どこかの家の夕食だろうか? 風に乗ってカレーの匂いが私の鼻をくすぐっていった。 ああ、とてもゆっくりした時間が流れている。 と、そんな私に話しかけるものがいた。 「おねがいします!!たすけてくださいぃぃ!!」 見れば、小汚いボロボロのれいむが電柱の影にいた。 「にんげんさん!おねがいします!!れいむはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 そう言うとれいむはこちらに向かって土下座をするように倒れ、 2本のもみあげを器用に差し出すように持ち上げた。 差し出されたのは1匹の子まりさ。 衰弱しているのか、虚ろな目をしており、呼吸も荒い。 適切な治療を受けなければ今夜にでも永遠にゆっくりしてしまう、そんな状態だった。 「れいむはかいゆっくりでした!!このこにはしっかりとしつけをしました! まりさによくにたとってもゆっくりしたいいこなんです!!だから・・・!」 黙っている私を、話を聞いてくれる人間さんだと勝手に判断したのだろう。 矢継ぎ早に説明を始めるれいむ。 その姿は全くゆっくりしていない。 だが、おおよその事態は把握できた。 れいむは自分を飼いゆっくりと言ったが、「元」飼いゆっくりだろう。 でなければこんなにボロボロな訳がない。 おそらく野良まりさと勝手に赤ゆを作り、飼い主に捨てられた類のゆっくり。 『れいむ、番はどうした?子供は一匹だけか?』 どれだけこの子まりさがゆっくりできる存在か無駄にしゃべり続けるれいむを遮り、私は短く質問をした。 「ゆ・・・まりさはかりにいったままかえってこなかったんです・・・。 おちびちゃんはたくさんいたけど・・・」 そこまで聞けばもう十分だ。 野良生活に慣れていないれいむは番のまりさを何らかの理由で失なった。 元飼いゆっくりで狩りも、身を守る術も十分に行えないれいむは 次々に我が子を失っていったのだろう。 そして最後の1匹も衰弱し、最終手段として人間を頼った・・・。 『・・・ありきたりだな』 「ゆ゛!?」 そう、ありきたりだ。こんなゆっくりなどそこら中にたくさんいる。 (・・・まぁ、ゲスやでいぶでないだけマシな部類だが、な) 『で、この子まりさを私にどうして欲しいんだ?永遠にゆっくりさせればいいのか?』 「ゆ゛!!?ち、ちがうよ!!たすけてほしいんです!!」 ふむ、違うのか。 そうした方がこちらとしても楽だし、長く苦しむよりはいいと思うのだが。 「おねがいします!!れいむはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 このとおりですから!と、再び土下座らしきポーズをとる。 (ふむ・・・) 『・・・れいむはどうなってもいいんだな?』 「ゆ、ぐ・・・はい!れいむ゛ばどうなっでもがまいばぜん!!」 まだどこか覚悟できていないのだろう。半泣きになりながらそう宣言するれいむ。 だが、まあいい。半泣きとはいえ断言できる程度の覚悟があるのなら十分だろう。 『いいだろう、助けてやろう』 「ゆ!ほんとうですか!!」 『・・・線引きはしておこう。助けるだけでいいんだな?』 「ゆぅ・・・で、できればかいゆにしてあげてください! のらはゆっくりできないんです! このままだといつかまたおちびちゃんはまたゆっくりできなくなります!!」 こいつ・・・要求を上げやがった。 『・・・飼いゆねぇ・・・まぁいいだろう』 「ゆ!?ほ、ほんとうですか!?」 『ああ、本当だ。・・・ただし、本ゆんが飼いゆになることを拒否したらその時は飼わんぞ』 「ゆ、それでかまいません!!」 ふむ、まぁこんなところか。 『では最終確認だ』 1つ、れいむはどうなってもいいから子まりさを助ける。 2つ、子まりさが希望すれば、飼いゆにする。 3つ、拒否した場合は飼わない。 「ゆ・・・ゆっくりりかいしました・・・」 『よろしい。ではまずは治療だが、ここでは無理だ。家まで案内しよう』 そうして私は子まりさを飼うことになった。 「おにいさん!ゆっくりおはよう!」 『ああ、おはよう、まりさ』 いつも通り、2階で目を覚ました私は、1階のリビングでまりさと挨拶をし、 まりさのおうちとして与えたケージの扉を開けてやる。 あの日、一晩オレンジジュースの点滴を受けたまりさは朝には元気になっていた。 そして、『飼いゆになるか?』という質問に「なる」と答えた。 『ゆっくり眠れたかい?』 「ゆ!ゆっくりできたよ!べっどさん、ふかふかさんでありがとうね!」 元気よくケージを飛び出たまりさは自分のおうちにそう、声を掛ける。 飼いゆっくりとなった最初の頃は、親が恋しかったのだろう。 巣として与えたケージの中、毎晩ひとりの寝床を涙でぬらしていたが、今ではそんなこともない。 『ほら、朝ご飯だ』 「ゆっくりただきます!」 また、れいむの言うとおり、一通りの躾はされていたらしく、行儀良く餌を食べ、決まったところをトイレにするなど、私を困らせることも少なかった。 『では、行ってくる』 「ゆっくりいってらっしゃい!」 そうして私はいつも通り、再び2階に上がり、用事を済ませてから仕事に出かける。 これがまりさを飼い始めてからの、いつもどおりの朝。 いつもどおりのまりさのいる生活。 そして、これが最後の朝だった。 いつも通り仕事を終え、帰宅した私を迎えたのは、まりさともう1匹、薄汚いれいむだった。 「「ゆっくりしていってね!」」 『・・・・・・』 「ゆ?おにいさん、どうしたの?」 「ゆふふふふ、きっとあまりのゆっくりさにことぼをうしなっているんだよ!」 「ゆ!きっとそうだね!れいむはとってもゆっくりしてるからね!」 そう言うと2匹はゆんゆんとお互いをすりすりし始めた。 薄汚いれいむの頭には赤ゆが5匹実り、ゆらゆらと揺れてる。 『・・・ああ、そういうこと』 それを見た私は、すぐさま状況を理解した、 これまたありきたりの展開なのだろう。 「おにいさん!れいむはまりさのはにーだよ!れいむもかいゆっくりにしてね!」 ほらきた。 『まりさ、野良はゆっくりしてないから、一緒にゆっくりしてはいけないと言っていただろう?』 「ゆぅ・・・で、でもれいむはとってもゆっくりしたれいむで・・・!」 『しかも勝手に赤ゆっくりまで作って。約束を破ったね?』 「で、でもあかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!!」 「ゆぷぷ、そんなこともわからないなんて。ばかなの?しぬの?」 ・・・しかもゲス気質のあるれいむか。 やはり約束させたとはいえ、まりさの望むままに、自由に外に出られるようにしていたのがまずかったのだろう。 優秀なゆっくりとはいえ、所詮は欲望に正直なゆっくり。 まりさは約束を破り、 禁じられた野良ゆっくりに恋をして、 ゆっくりできるからと禁じられた赤ゆを作り、 それを理由にれいむも飼いゆにしてみんなでゆっくりしようとしたのだろう。 ・・・ありきたりだ。実にありきたりだ。 「・・・ゆ?おにいさん?」 『・・・まりさ。れいむを飼いゆっくりにすることはできない』 「「ゆ゛!?」」 『だから、まりさ、選べ。 れいむと赤ゆのことを捨てて忘れて、飼いゆっくりで居続けるか れいむと赤ゆとゆっくりするために、飼いゆっくりをやめるか』 「ゆ゛っ!!?どぼじでぞんなごというの゛!?」 「ま、まりさ!れいむかいゆっくりになれるんじゃないの!?」 『選ぶんだ、まりさ。本当なら約束を破ったお前を問答無用で捨てても良いし、殺してもいい。だが、お前の母れいむとの約束があるから選択はさせてやる』 あの時、私は母れいむに約束した。まりさを助けると。まりさが望むのならば飼いゆにすると。 約束を破ったまりさを罰するのに、私が約束を破るわけにはいかない。 だから、選ばせる。 まりさが希望すれば飼いゆにする。 まりさが拒否すれば飼わない。 母れいむとの約束だ。 「ゆ・・・ゆぐ・・・ま、まりさは・・・」 「まりさぁ・・・」 『選ぶんだ、まりさ』 結局、まりさはれいむと赤ゆを選んだ。 野良はゆっくりできないと飼いゆになるよう望まれたまりさは、 まりさが拒否したことで野良となった。 母れいむと約束した日からずいぶんと日は経っていたが、約束は約束だ。 その日のうちにわずかばかりの選別とともに、まりさは私の家から去っていった。 意気消沈したまりさと、まりさを「うそつき」とわめき散らすれいむはあの日と同じ、茜色の空の下に消えていった。 私といえば、まぁ、それなりに可愛がっていたまりさに裏切られ、数日は落ち込みもしたが、今ではすっかりと前の、まりさののいなかった頃の生活に戻っている。 今日も私はいつも通り仕事を終え、家路を歩いていた。 最近は日が落ちるのも早くなり、空は綺麗な茜色から藍色に変わりつつあった。 色々あったが、季節はゆっくりと巡っていっている。 角を曲がる。 相変わらずここからは周りに人影がなくなり、歩いているのは私だけになる。 どこかの家の夕食だろうか? 風に乗って焼き魚の匂いが私の鼻をくすぐっていった。 ああ、とてもゆっくりした時間が流れている。 と、そんな私に話しかけるものがいた。 「おねがいします!!たすけてくださいぃぃ!!」 見れば、小汚いボロボロのあのまりさが電柱の影にいた。 「おにいさん!おねがいします!!まりさはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 そう言うとまりさはこちらに向かって土下座をするように倒れ、 脱いだ帽子をおさげで器用に差し出すように持ち上げた。 差し出されたのは1匹の子まりさ。 衰弱しているのか、虚ろな目をしており、呼吸も荒い。 適切な治療を受けなければ今夜にでも永遠にゆっくりしてしまう、そんな状態だった。 「まりさがばかでした!!のらはぜんっぜんゆっくりできません!! このこにはしっかりとしつけをしました! とってもゆっくりしたいいこなんです!!だから・・・!」 黙っている私を、話を聞いてくれていると勝手に判断したのだろう。 矢継ぎ早に説明を始めるまりさ。 その姿は全くゆっくりしていない。 『まりさ、愛しのれいむはどうした?子供は一匹だけか?』 どれだけこの子まりさがゆっくりできる存在か無駄にしゃべり続けるまりさを遮り、私は短く質問をした。 「ゆ・・・れいむはでいぶになっちゃって、もうぜんぜんゆっくりできないんだよ・・・。 おちびちゃんはれいむによくにたこはたくさんいたけど・・・」 そこまで聞けばもう十分だ。 元々ゲス気質のあったれいむは、子を産み、でいぶと化した。 れいむは自分と同じれいむ種だけを優遇し、1匹だけ生まれた子まりさを冷遇したのだろう。 そして、野良生活に慣れていないまりさは満足に狩りもできず、得られる餌は少ない。 愚図、全然ゆっくりできないと罵倒され、自分によく似た子はどんどん衰弱していく。 全くゆっくりできなくなったまりさは子まりさを連れて巣を飛び出し、最終手段として人間を、元飼い主の私を頼った・・・こんなところだろう。 『・・・ありきたりだな』 「ゆ゛!?」 そう、ありきたりだ。しかもほぼ母れいむと同じ会話展開だ。 いやはや、親子というのはこんなところまで似るのかと感心する。 『で、この子まりさを私にどうして欲しいんだ?永遠にゆっくりさせればいいのか?』 「ゆ゛!!?ち、ちがうよ!!たすけてほしいんです!!」 ふむ、違うのか。 そうした方がこちらとしても楽だし、長く苦しむよりはいいと思うのだが。 それに、もうまりさは自分の意志で野良になっているのだ。母れいむとの約束は果たされていて、もう守る必要もない。 「おねがいします!!まりさはどうなってもいいから!! おちびちゃんだけでもたすけてください!」 このとおりですから!と、再び土下座らしきポーズをとる。 (ふむ・・・) 『・・・まりさはどうなってもいいんだな?』 「ゆ、ぐ・・・はい!までぃざばどうなっでもがまいばぜん!!」 まだどこか覚悟できていないのだろう。半泣きになりながらそう宣言するまりさ。 さすが親子。ここまで似るか。 ゆん生の大半を私と過ごしたはずなのだが「3つ子の魂、百まで」ということか・・・。 いいだろう。ここまで同じ展開なのだ。興が乗った。 私も同じことをしてやろう。 『いいだろう、助けてやる』 「ゆ!ほんとうですか!!」 『・・・線引きはしておこう。助けるだけでいいんだな?』 「ゆぅ・・・で、できればかいゆにしてあげてください! のらはゆっくりできないんです! このままだといつかまたおちびちゃんはまたゆっくりできなくなります!!」 ははははは!また一緒だ! こみ上げる笑いを必死に押さえつける。 『・・・飼いゆねぇ・・・まぁいいだろう』 「ゆ!?ほ、ほんとうですか!?」 『ああ、本当だ。・・・ただし、本ゆんが飼いゆになることを拒否したらその時は飼わんぞ』 「ゆ、それでかまいません!!」 『では最終確認だ』 1つ、まりさはどうなってもいいから子まりさを助ける。 2つ、子まりさが希望すれば、飼いゆにする。 3つ、拒否した場合は飼わない。 「ゆ・・・ゆっくりりかいしました・・・」 『よろしい。ではまずは治療だが、ここでは無理だ。家まで案内しよう』 ・・・すばらしい。たまらない! ここまで、ここまで一緒か!まりさ! いいだろう!あの時と同じように約束は守ろう! そしてお前は知ることになる! お前が飼いゆになるのと引き替えに母れいむがどうなったのかを! 家に着き、まずあの時と同じように、オレンジジュースの点滴を用意し、子まりさの治療を始める。 『・・・これで明日の朝には元気になっているはずだ』 「ゆ・・・よかったよ。ありがとう!おにいさん!」 目に見えて顔色の良くなった子まりさを見て、ほっとしたのだろう。 まりさの顔にも笑顔が戻った。 『さて、まりさ。お前はどうなっても構わないんだったな?』 「ゆぐっ!?・・・ゆ、か、かまわないよ・・・」 ははは、本当に素晴らしい。 まりさ、お前は知らないだろうけど、母れいむもそんな顔をしていたよ。 『ではこっちだ、まりさ』 「おそらをとんでるみたい!?」 まりさを持ち上げ、リビングを出る。 目指すは、2階。まりさが入ったことのない場所だ。 『お前は2階に上ったことがなかったよな?』 「ゆ?そうだよ。のぼっちゃだめっていわれたし、かいだんさんはゆっくりできないよ・・・」 そうだ、その通り。 2階に上がってはいけない。それもまりさとした約束の一つだった。 まぁ、まりさの場合、1度だけ約束を破って上ったことがあったが、派手に転がり落ちて餡子を吐くほど床に叩きつけられ、それ以来近づこうともしなかったが。 『懐かしいな。お前の母親もこうやって2階に連れていったよ』 「ゆ!? おかあさん!?」 『ああ、そうさ』 2階の1室。寝室の隣のドアを開ける。 『ただいま、いい子にしていたかい?』 「「うー☆」」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・どぼじでれみりゃがいるの゛ーーーーーー!!!」 そこにいたのは、れみりゃ。金バッチをつけた成体が1匹と銀バッチの子が2匹。 3匹ともうれしそうに部屋を飛び回っている。 『何でって・・・飼ってるからだよ』 私の言葉に呆然とするまりさ。 「まさかまりさのかわりに!?」 『馬鹿言うな。あの成体が子ゆっくりの時からずっと飼い続けているんだ。お前は関係ない』 そう、私はれみりゃを飼っている。子ゆっくりからここまで育て上げた。 「で、でも、あかちゃんはだめって・・・!」 『お前も我慢していればそのうち許してやったさ。同じ飼いゆの番を探してね』 「ゆぅーーーーーーーーーーーー!!?」 「うー☆」 と、子れみりゃが1匹、近づいてきた。 「ゆわわわわ! こないでね!? こないでね!?」 『よしよし、待て!』 「「うー☆」」 私の「待て」を聞き、3匹とも床に着陸し、こちらにキラキラと催促するような目を向けてくる。 「ゆわ、ゆわ・・・!」 未だ逃げ出そうとするまりさを左手でしっかりと押さえつけ、私は部屋にある防音ケースからあるものを取り出し、床に放り投げる。 「ゆべっ!!いちゃいよ!ゆっきゅりしちぇにゃいにぇ!」 それはれいむ種の赤ゆ。 「ゆ!?」 まりさが混乱しているようだが、放っておく。 『よし!』 「「うー☆」」 「ゆ?ゆぴぃーーーーーー!!れみりゃだーーーー!!こっちこにゃいでにぇ!」 「うー☆」 「ゆぴぃ!!?」 「うー☆」 「ゆべぇ!?」 「うー☆」 「ちゃべ・・・ゆべぇ!・・・にゃいでにぇ!・・・れい・・おいじぎゅ・・にゃ・・!!」 私の号令を聞き、赤れいむに群がるれみりゃ達。 「・・ゆ゛・・・・・もっちょ、ゆっきゅ・・・」 「「うー☆」」 あっというまに赤れいむはれみりゃ達の餌となって皮だけを残し、消えた。 「ゆ・・・ゆぅ!?おにいざん!!なんなのごれ!!?」 『れみりゃにご飯をあげたのさ』 「ゆぅ!?」 れみりゃは捕食種だ。最初はゆっくりフードで育てていたのだが、ある時から生き餌に替えた。 生き餌の方が食事毎の狩りが運動になるのか、元気で調子も良くなるのだ。 「うー」 『足りないのか?まぁ待て。今日は特別なごちそうがあるからな』 「「うー☆」」 「お、おにいざん!?まざがばでぃざがぞのごぢぞうじゃないよね!!?」 ほう、勘が良いな。だが、残念。 『はずれだ、まりさ』 「ゆ?」 『ほら、これがごちそうだぞ』 「「うー☆」」 「ー・・・ー・・・」 ケースから取り出したそれは成体のれいむ。 身体にはいくつものチューブが繋がっている。 「ゆ?なんなの、このれいむ・・・」 チューブはオレンジジュースや精子餡の詰まった容器に繋がっている。 これはれみりゃ達のための、生き餌を作る赤ゆ製造器。 「ぜんぜんゆっくりしてないよ・・・」 足は動かぬように焼かれ、口も縫いつけられ、目だけが虚ろに光っている。 と、その虚ろな目が驚きに見開かれ、光を取り戻す。 「ゆ?なんなの?」 「ーーーー!!?ーーーーー!!?」 光を取り戻した目は、まりさを見ている。 必死に何かを伝えようとしているようだ。 『・・・それ、お前の母親な』 「ゆ゛!?」 そう、このれいむはあの母れいむだ。 あの日、自分はどうなってもいいと言ったれいむは赤ゆ製造器となった。 1匹の自分の子を救うために、それよりも多く、自分の子を生き餌として産んだれいむ。 「ーーーーーーーー!!ーーーー!!」 その身体はもうボロボロで、皮はひび割れている。 『・・・対面はこれぐらいで良いか。れみりゃ』 「ゆ゛!?まってね!?おにいさんまってね!?」 「ーーーーーー!!ーーーーーーーー!!」 『よし!』 「「うー☆」」 れみりゃ達がれいむに飛びかかる。 「ーーーーーー!!??」 「やめてね!?おにいさん!?やめてね!?」 ゆっくりと中身を吸われていくれいむ。 長い間、全くゆっくりできていなかったその中身はさぞかし甘くなっていることだろう。 『・・・れいむ、私は約束を守ったよ。まりさは飼いゆっくりになって、ここまで大きくなった。残念ながら勝手に野良と番になって飼いゆでいることを拒否して野良に戻ってしまったけどね』 「ーーーーー!!??」 れいむが暴れ出す。 それは痛みのせいか、それとも我が子の現状を聞いたからか。 『そしたら今日、まりさが私に助けを求めてきたんだよ。あの日の君のように』 「ーーー!?」 繋がっていたチューブが外れていく。 オレンジジュースが、精子餡が飛び散るが、気にせず独白を続ける。 『そう、あの日の君のように、だ。さすが親子だね。細部は違うものの、まったく同じ展開だったよ』 「ーーーーーーーゆがべへぇ!?」 暴れたからだろうか?縫いつけていた口が開いた。 これにも構わず続ける。 『台詞も同じだったよ。自分はどうなってもいいから、子供を助けてくださいってね。大丈夫、君の孫にあたる子まりさは助けたよ』 「ゆがっ!?ぐべっ!?」 ふと見れば、まりさはおそろしーしーを漏らしていた。 『あまりにも一緒すぎてね。感動すら覚えたよ。だから』 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 痙攣が始まる。もう長くはない。 『だから同じ約束をした。この「野良まりさ」は君と同じになる』 「「ーーーーーーーーーーー!!」」 最後の叫びはれいむとまりさ、親子のものだ。 れいむは中身が無くなった断末魔の叫び。その中に我が子の末路を知った絶望も混じっていただろうか? そしてまりさは自分のこれからを知った叫び。 「「うー☆」」 れみりゃ達が満足そうに飛び回っている。 さぞかし、甘いごちそうだったのだろう。 『よかったな、れみりゃ・・・さぁ、「野良まりさ」君』 「ゆ゛!?やめでね!?ゆっぐりざぜでね!!? ゆ、ゆ、ゆわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 「・・・ゆ?きょきょは?」 『ゆっくりおはよう、まりさ』 「ゆ?にんんげんしゃん?」 『昨日のことを覚えているかな?君のお父さんに頼まれて君を助けたんだけど』 「ゆっ!おぼえちぇるよ!ゆっくちありがちょう!」 『なに、感謝するならお父さんにしなさい。自分はどうなってもいいから、子供を助けてくださいって言って、君を助けるために頑張った・・・いや、「頑張っている」んだから、ね』 「ゆ!?そうぢゃよ!おちょうしゃんは!?」 『別の場所で「頑張って」いるよ。・・・ところでまりさ』 「ゆ?」 『私の飼いゆっくりになるかい?』 そうして私は「まりさ」を飼うことになった。 さて、2階に上がってれみりゃ達に生き餌をあげよう。 それからまたいつも通り、仕事に出かけよう。 そう、前と同じ、「まりさ」のいる生活だ。 〈了〉 今までに書いたもの 『おねぇさんのゆっくりプレイス』 『詰める』 『れっつびぎん』 『ぱぺっとショウ』 『おねぇさんのゆっくりプレイス・2』 再開後の作品 『「まりさ」が好きな人』 『ドスまりさになれる授業』 『饅頭(マントウ)』
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『可哀想なゆっくり』 34KB 制裁 自業自得 飼いゆ 野良ゆ ゲス 希少種 現代 17作品目。少し真面目になって書いてみました。 注意書きです。 1 希少種が出ます。 2 酷い目にあうゆっくりと、そうでないゆっくりがいます。 それでもOKという方のみ、どうぞ。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?やめてえぇぇぇぇっ!!」 ……そこは、とある街中の、とある一軒家。 その一軒家のリビングの中に、甲高い悲鳴が響き渡った。 「やめてえぇぇぇぇっ!!なんでこんなことをするのおぉぉぉぉっ!?」 「うるせぇ……!」 そのリビングでは、一人の青年が、一匹のソフトボールサイズのゆっくりれいむを踏み付けていた。 そのれいむは、顔面のあちこちが腫れ上がっていて、歯もボロボロに折れていた。 「……もう一度聞くぞ。あれは、お前がやったんだろ?」 青年は、床の一ヶ所を指差した。 ……そこには、饅頭の餡子や皮が散乱しており、その傍にズタズタに踏まれて潰された、赤ゆっくりの帽子が転がっていた。 その帽子には、飼いゆっくりの証である、銀バッジが付いていた。 「ちがうよおぉぉぉぉっ!!れいむはなんにもわるくないんだよおぉぉぉぉっ!!ほんとうだよおぉぉぉぉっ!!しんじてよおぉぉぉぉっ!!」 「黙れ、この糞饅頭が……!」 れいむは青年に必死にそう訴えたが、青年は全く信用していないようだった。 「なんでぇ……?なんで、れいむばっかり、こんなめにあうのぉ……?」 れいむは、青年に全く信じてもらえない事が、とても悔しかった。 今思えば、自分はとても不遇な立場にあった。 自分は何も悪くないのに、いつも自分が悪者扱いで、蔑みの眼差しで見られていた。 どうして、こうなってしまったのか。 れいむは涙をボロボロと流しながら、自分の不幸で短いゆん生を思い返していた。 ~回想開始~ (ゆぅ……、ゆぅ……) れいむは今、これからの幸せなゆん生を夢見ていた。 「ゆっ……!もうすぐうまれそうだよ!」 自分の下の方から、母親の声が聞こえていた。 れいむは今、母親のゆっくりの頭から生えている茎に実っていた。 (ゆ……、ゆっくちうまれりゅよ……) れいむがそう思ったのと同時に、れいむの体がプルプルと震え、やがてポトリと地面に落ちた。 「ゆ……」 れいむが目を開けると、目の前に、自分と同じれいむ種の、母れいむがいた。 「ゆぅ……!おちびちゃん、ゆっくりしていってね!」 母れいむはれいむの誕生に嬉し涙を流しながら、れいむにそう言った。 (ゆっ……!おきゃーしゃんに、とっちぇもゆっくちした、あいしゃつをしゅるよ……!) れいむは母れいむに対し、生まれて初めての挨拶をしようと、口を開き、大きく息を吸い、そして……。 「ゆゆ~ん!きゃわいくっちぇ、ごみぇんにぇ~!!」 自信に満ち溢れたドヤ顔で、そう挨拶した。 決まった。 とてもゆっくりした挨拶が出来たと確信したれいむは、そう思っていた。 ……が。 「ゆぅ……?おちびちゃん、なんか、おちびちゃんのあいさつは、すこしへんだよ?」 母れいむの対応は、れいむが予想していたものと全く真逆のものだった。 「ゆっ……?」 「おちびちゃん、あいさつはこうするんだよ。……ゆっくりしていってね!……ほら、やってみて」 「ゆ……?にゃんで……?にゃんで、れいみゅのこと、へんっていうにょ……?」 自分の挨拶で、歓喜の涙を流してすりすりしてくれると思っていたれいむは、母れいむにそう聞いた。 「れいみゅ、とっちぇもきゃわいいでしょ……?にゃんで……?」 「おちびちゃんはとってもかわいいよ!でもね、そのあいさつはゆっくりできないんだよ。ゆっくりりかいしてね?」 「ゆ……、ゆっくち、りかいしちゃよ……」 れいむは、母れいむのその返答に釈然としないものの、可愛いという事は認めてもらったので半ば良しとした。 「ほら、おねーちゃん!おねーちゃんも、かわいいいもうとにあいさつしてね!」 母れいむは、れいむの後ろを見ながらそう言った。 「ゆ……?おねーちゃん……?」 一体誰の事を言っているのか分からなかったれいむは、後ろを振り向いた。 ……そこには。 「ゆぴー!」 元気に跳ねている、一匹の、赤まりちゃがいた。 ……が、れいむはその赤まりちゃを見て、こう言った。 「ゆっ……!?にゃんにゃの、こいちゅ……!?じぇんじぇん、ゆっくちしちぇにゃいよ!?」 その赤まりちゃは、髪の毛やお下げがかなり短く、帽子も小さく、口元から涎を垂らしており、目も焦点が合っておらず、何よりバカの顔付きをしていた。 「おちびちゃん!じぶんのいもうとに、そんなことをいっちゃだめだよ!」 「ゆっ……!?れいみゅのいもうちょ……!?」 れいむは母れいむのその言葉が信じられなかった。 ……こいつが、自分の妹? れいむから見て、全くゆっくりしていない赤まりちゃが、自分の妹だという事実が信じられなかった。 「このおちびちゃんはね、ちょっとだけふじゆうなんだよ。だから、へんだとか、そういうことをいっちゃだめだよ?」 「ぴー!」 ……そう、この赤まりちゃは、いわゆる『足りないゆっくり』であった。 体格は普通の赤まりちゃと大差無いものの、中枢餡に異常をきたしており、言語障害や運動障害が現れていた。 そして、この赤まりちゃは、本当はれいむより先に産まれたのだが、母れいむの判断で、姉と妹の立場を交換したのだ。 足りないゆっくりの赤まりちゃを、姉として扱うには無理があると思っての判断だった。 「ゆうぅぅぅぅ……!」 その事を知ってか知らずか、れいむは納得出来ずにいた。 「ほら、おねーちゃん、いもうとにあいさつしてね?」 「ゆ……、よ、よろちくにぇ、まりちゃ」 「ゆぴゃー!」 母れいむに促される形で、れいむは妹まりちゃに渋々と挨拶した。 ……そしてこの日から、れいむのゆっくり出来ないゆん生が始まった。 ……食事の時。 「はい、おちびちゃん、ごはんだよ!」 「むーしゃ……、むーしゃ……」 「むく、むく……」 れいむは母れいむが食べやすいように一度噛み砕いた食べ物を咀嚼していた。 そして、妹まりちゃは、母れいむから口移しで食べ物を食べていた。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!れいみゅにもあーんしちぇにぇ!」 「ごめんね、いまおちびちゃんにたべさせているとちゅうなんだよ。おねえちゃんは、おちびちゃんがたべおわるまでまっててね」 「むく、むく、ゆぴゃぴゃー」 「ゆぅ……!」 ……しーしーの時。 「おちびちゃん、しーしーしようね!」 「ぴゃー、ちー、ちー」 「ゆぅ……!」 赤ゆっくりは自分でうんうんやしーしーを排泄する事が難しいので、親にまむまむなどを舐めてもらって手伝って貰って、排泄を行っていた。 れいむは今、とてもしーしーがしたかったが、母れいむが妹まりちゃのしーしーの介助に時間がかかって、なかなか出来なかった。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!はやきゅれいみゅもちーちーしちゃいよ!」 「ごめんね、おかあさん、おちびちゃんのしーしーのてつだいをしているんだよ。だから、おねえちゃんはもうすこしまっててね」 「ぴー」 「ゆうぅ……!」 ……就寝の時。 「ゆー、ゆーゆー」 「ゆーぴゃーぴゃー」 「しゅーや、しゅーや……、ゆぅ……!」 夜寝る頃になると、母れいむは子守唄のようなものを妹まりちゃに聞かせて、寝付かせていた。 れいむはさっさと寝たかったが、その歌のせいでなかなか寝れずにいた。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!れいみゅははやきゅねちゃいんだよ!しょのへんにゃうたをやめちぇにぇ!!」 「ごめんね、おちびちゃんはこもりうたをうたわないとなかなかねれないんだよ。だから、ねむるまでまっててね」 「ぴゃぴゃー」 「ゆうぅぅぅぅっ……!」 ……れいむは全くゆっくり出来ない日々を送っていた。 母れいむはいつも妹まりちゃに付きっきりで、『お姉ちゃんだから、後でね』と言われてきた。 『我慢してね』とは言われていないものの、何であんなゆっくり出来ない奴なんかを優先するのか、分からなかった。 れいむにとって、妹まりちゃは『妹』では無く、ただ単純に『目障りな奴』としか見えていなかった。 そして何より、自分の暮らしている家から、自由に外へ出る事が出来なかった。 れいむ達はどこかの空き地の段ボールハウスで暮らしていたが、れいむは外の世界を知らなかった。 れいむは母れいむに外へ出かけたいと何度もせがんだが、母れいむは『そとはとてもきけんだから、おおきくなるまででちゃだめ』と言って、れいむが外へ出る事を許さなかった。 遊びたいざかりの年頃のれいむにとって、薄暗くて狭い段ボールハウスで、しかも目障りな妹まりちゃと一緒に一日を過ごす事は、れいむにとってかなりのストレスとなっていた。 ……そして、二週間後。 「ゆっ、それじゃ、おちびちゃんたち!おかあさんはたべものをさがしてくるからね!」 「ゆっ、いってらっしゃい、おかあさん!」 「ぴぴゃー!」 母れいむはれいむと妹まりちゃにそう言うと、食べ物を探しに外へ出かけた。 そして、段ボールハウスに残されたのは、れいむと妹まりちゃだけとなった。 「ぴゃぱぱー!」 「……」 妹まりちゃは、相変わらず奇声を発しながら体を震わせており、その様子をれいむは黙って見ていた。 ……そして、れいむはいきなり、妹まりちゃを揉み上げでバシリと叩いた。 「ぴいぃっ!?」 「いつもいつも、ぴーぴーうるさいよっ!!」 妹まりちゃは何故叩かれているのか分からず泣き出したが、それでもれいむは妹まりちゃを叩くのを止めなかった。 「おまえなんか、れいむのいもうとじゃないよ!おまえがいるから、れいむはちっともゆっくりできないよ!」 「ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「ゆっくりできないゆっくりのくせに!なんでいきてるの!?ばかなの!?しぬの!?おまえはばかなんだから、さっさとしんでね!」 「ぴゃあぁぁぁぁっ!!」 ……この二週間の間で、れいむは一つのストレス解消法を見つけた。 それは、母れいむがいない間に、妹まりちゃを虐める事だった。 全くゆっくり出来ない、役立たずで目障りな存在の妹まりちゃを虐める事に、れいむは全く罪悪感などは感じていなかった。 むしろ、それが当たり前とさえ考えていた。 「れいむはおおきくなったのに、おまえはぜんぜんおおきくならないね!やっぱりばかはせいちょうしないね!」 「ぴゃぱあぁぁぁぁっ!!」 れいむは子ゆっくりサイズまで成長していたが、妹まりちゃは産まれた時と、大きさが殆ど変っていなかった。 妹まりちゃは発育にも異常をきたしていたが、れいむはその事実を知らず、たとえ知っていたとしても、態度は変わらなかっただろう。 れいむにとって、妹まりちゃの価値観は、『目障りな奴』から『ストレス解消道具』に変わっていたのだった。 「しね!しね!やくたたずのぐずは……、ゆっ、もどってきたよ……」 れいむがチラリと外の様子を見ると、母れいむが口の中に食べ物を入れて帰って来たので、れいむは妹まりちゃを叩くのを止めた。 「ぴゅうぅぅぅぅっ!!ぴゅいぃぃぃぃっ!!」 「おちびちゃんたち、ただい……、ゆっ!?どうしたの!?おちびちゃん!?」 「お、おかーさん、またまりちゃがぐずりだしちゃったよ……、れいむ、なきやまそうとしたんだけど……」 「ゆっ、おちびちゃん、いいこいいこ、なかないでね……」 「ゆぴゅいぃぃぃぃ……」 母れいむは、泣き続ける妹まりちゃを必死にあやしていた。 (ゆふふっ!とりあえず、すっきりー!したよ!) れいむは妹まりちゃが喋れない事を良い事に、母れいむにデタラメを言っていた。 そして、妹まりちゃの体に叩いた跡が残らないように、毎回力加減をして妹まりちゃを叩いていたので、母れいむに虐めの事を気付かれずに済んでいたのだ。 「ぴいぃ……、ぴいぃ……」 妹まりちゃは、涙を溜めた目でれいむを見ていたが、れいむの心は全く痛まなかった。 それどころか、かえって怒りが込み上げてきた。 (……おまえがわるいくせに、なんでれいむをわるもののようなめでみるの!?わるいやつはせいっさいっしてとうぜんでしょ!?ばかなの!?しぬの!?) 自分は可哀想で全然ゆっくり出来ていないというのに、何故そんな目で自分を見るのか。 れいむには、それが分からなかった。 ……そして、己のゆん生を大きく変える出来事が起きようとしている事もまた、れいむには分かっていなかった。 ……ある日の事。 「ぴゃややあぁぁぁぁっ!!」 「ゆふふっ!ゆっくりできないゆっくりをせいっさいっするのは、とってもたのしいね!」 れいむはいつものように、母がいない間に、妹まりちゃを虐めて楽しんでいた。 ……が、その日はいつもと違っていた。 「ぴ……、ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「ゆぅっ!?」 いつもはただ叩かれて泣き叫んでいるだけだった妹まりちゃが、急にその場で何度も跳ね、お下げを振り回し始めた。 耐え重なる暴力への訴えか、それとも防衛本能からの行動か、理由は分からなかったが、妹まりちゃはいつもとは違っていた。 「こいつうぅぅぅぅっ!!じぶんがわるいくせに、ぎゃくぎれするなんて、とんでもないげすだよっ!!」 妹まりちゃの行動に腹を立てたれいむは、さらに揉み上げで妹まりちゃを叩こうとした……、が。 「ぴゃいやあぁぁぁぁっ!!」 ベチッ! 「ぴゃあっ!?」 妹まりちゃのお下げが、れいむの顔に当たってしまった。 「ゆ……、ゆ……」 今まで感じた事の無い、痛み。 それがゆっくり出来ない奴によって引き起こされた、痛み。 「ゆ……、ゆがあぁぁぁぁっ!!このくそまりさがあぁぁぁぁっ!!おねえちゃんにぼうりょくをふるいやがってえぇぇぇぇっ!!」 それにより、れいむの逆上は有頂天へと達した。 「このげすがあぁぁぁぁっ!!」 れいむは怒りに身を任せ、赤まりちゃに体当たりをした。 「びゅぽおぉっ!?」 自分より一回りも二回りも大きいれいむの体当たりを受けた妹まりちゃは弾き飛ばされ、段ボールの壁にぶつかった。 「せいっさいっしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむはその場で飛び跳ね、妹まりちゃを押し潰そうとした、その時。 「なにしてるのぉっ!!」 「ゆんやぁっ!?」 後ろから何者かに髪の毛を噛まれ、後ろへと引きずられた。 「おねえちゃん!?いもうとにいったいなにをしているの!?」 「ゆっ!?」 ……そこにいたのは、食べ物探しから帰って来た、母れいむだった。 「ゆ……、こ、これは……」 「おかあさんはみていたよ!おねえちゃんがいもうとにたいあたりをしていたところを!……なんでこんなことをしたの!?」 「ゆ……、ゆぅ!れ、れいむは、なんにもわるくないよ!?こいつが、れいむにいたいおもいをさせるから……!」 バシッ! 母れいむに問い詰められ、そう言い訳をしたれいむの頬を、母れいむが揉み上げで叩いた。 「ゆびゃあぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!!」 「……おねえちゃん。きょうは、ばんごはんはぬきだよ。じぶんがなにをしたのか、ちゃんとはんせいしてね」 母れいむはそう言うと、妹まりちゃの体を舐め始めた。 「おちびちゃん……、いたいのいたいの、とんでいってね……」 「ぴゃあぁ……、ぴゃあぁ……」 「お、おかあさん!れいむのほっぺもいたいよ!れいむにも、ぺーろぺーろしてね!」 れいむは母れいむにそう言ったが、母れいむはその言葉を無視した。 それかられいむは母れいむに再度ぺーろぺーろするよう言ったり、泣き喚いたり、癇癪を上げたりしたが、母れいむは無視する事に徹底していた。 (ゆうぅぅぅぅっ……!?なんでぇ……!?なんでれいむが、こんなめにあうのぉ……!?なんでれいむがおこられなきゃいけないのぉ……!?) れいむには、その原因が全く分かっていなかった。 (ゆぅ……!れいむは、とってもかわいそうだよ……!ぜんぜんゆっくりできないよ……!ゆうぅ……) そしてれいむは、暴れたり、泣いたりした事により疲れ果て、やがて眠ってしまった。 ……夜。 「ゆ……」 れいむが目を覚ますと、昼間でさえ薄暗い段ボールハウスの中がさらに暗くなっていた。 「ゆぅ……、ゆぅ……」 「ぴぴゃー……、ぴゅぴー……」 そして、少し離れた場所で、母れいむと妹まりちゃが身を寄せ合って寝ていた。 「ゆ……!」 その光景を見て、れいむの心に再び憎悪の炎が燃え上がった。 その憎悪の対象は、やはり妹まりちゃだった。 (こいつのせいで……、れいむは、おかあさんにおこられたんだよ……) れいむはじりじりと這いながら、寝息を立てている妹まりちゃに近付いた。 (こいつさえいなければ……!こいつさえいなければ……!) れいむは妹まりちゃを睨みつけながら、少しずつ距離を縮めていった。 (こいつは……、とんでもないげすだよ……!れいむがかわいそうなのは、ぜんぶ、こいつのせいなんだよ……!) ……そして、とうとうれいむは妹まりちゃのすぐ傍まで到達した。 (れいむをいじめる、こんなげすは……!) そして、れいむは大きく口を開け……。 (れいむが、ころしてやるよぉっ!!) 妹まりちゃの頬を、食い千切った。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?」 「ゆっ!?」 妹まりちゃは突然の鋭い痛みに悲鳴を上げ、その悲鳴を聞いて母れいむが目覚めた。 「お、おちびちゃん!?いったいどうし……、な、なんでおちびちゃんのほっぺがちぎれてるのぉっ!?」 「ぴゅぴゃあぁぁぁぁっ!!ぴゅぴいぃぃぃぃっ!!」 母れいむは何故妹まりちゃがこんな惨たらしい姿になっているのか訳が分からず、何か傷口を塞ぐものが無いかと周りを見回し、そして、見てしまった。 「うっめ!こいつ、めっちゃうめぇ!まじぱねぇ!」 れいむが何かを美味しそうに咀嚼している姿を。 ……そして、れいむの頬に付いていた、餡子も同時に。 「ゆっ!おかあさん!おかあさんもいっしょにこいつをころ」 「……でていけ」 「……ゆ?」 れいむのその言葉の先を、母れいむの静かで、ドスの効いた声が遮った。 「お、おかあさん?いったいなにを」 「いもうとをころそうとするげすなんて、おかあさんのこどもじゃないよ」 「な、なんで!?なんでそんなことを」 「でていけえぇぇぇぇっ!!このげすがあぁぁぁぁっ!!」 「!?」 母れいむの怒りの形相を目の当たりにしたれいむは、確信した。 ……本気で、殺されると。 「ぴ……、ぴいぃぃぃぃっ!?」 目の前の死への恐怖から逃れる為に、れいむは必死に跳ねて段ボールハウスから逃げ出した。 目から涙を、体中からは汗を、まむまむからはしーしーを、色々と水分を垂れ流しながら、必死に逃げ出した。 「なんでえぇぇぇぇっ!?れいむはなんにもわるくないのにいぃぃぃぃっ!!」 れいむは叫びながら、一度も振り返る事無く、夜の世界へと逃げ出した。 「ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「おちびちゃん……!しなないでね……!」 ……段ボールハウスに残されたのは、傷の痛みに泣き叫んでいる妹まりちゃと、妹まりちゃの傷口を備蓄の葉っぱなどで必死に塞ごうとしている母れいむの二匹だけとなった。 ……十分後。 「ゆうぅぅぅぅっ!!ゆうぅぅぅぅっ!!」 あれかられいむは、母れいむから少しでも遠ざかろうと、必死に跳ねていた。 涙も、汗も、しーしーも、全て出しきったが、それでもれいむは必死に跳ねていた。 「ゆ……、ゆうぅ……」 ……が、やがて体力の限界が来て、れいむは跳ねるのを止め、ずりずりと這っての移動に切り替えた。 「こ、ここはどこなのぉ……?」 れいむは這いながら、キョロキョロと周りを見回した。 コンクリートの壁。 アスファルト。 街灯。 時折れいむの横を通る、乗用車。 それら全てが、れいむが初めてみる物だった。 ……そして、すぐ近くにある雑木林を見つけた。 「ゆっ……!あ、あそこにかくれるよ……!」 れいむはその雑木林の中へ入っていった。 前へ進むたびに、葉っぱや木の枝がチクチクと体のあちこちに刺さるが、そんな事を気にしている場合では無かった。 そして、比較的周りに葉っぱや木の枝が無いスペースを見つけると、そこで体を休ませた。 「ゆうぅ……。れいむは、ゆっくりできないやつを、えいえんにゆっくりさせなくしようとしただけなのに……。いったい、なにがわるいの……?」 れいむはホロリと涙を流しながら、ボソリと呟いた。 「ゆっ……!そうだよ!れいむはなんっにもわるくないんだよ!!わるいのはぜんぶ、あのまりさなんだよ!」 そしてれいむは何度目になるか分からない責任転換をし始めた。 「そうだよ!おかあさんだって、れいむをころそうとした、とんでもないげすだよ!あんなくそばばあ、れいむのおかあさんなんかじゃないよ!」 とうとうれいむは母れいむまで罵倒し始めた。 「まりさも、くそばばあも、どうしてみんな、れいむをわるものあつかいするの!?ゆっくりできないゆっくりをせいっさいっすることは、ただしいことなのに!!」 一度湧きあがった怒りや不満感はなかなか収まらず、れいむはしばらくの間、妹まりちゃや母れいむの悪口を言っていた。 ……が、跳ねて移動した疲れが徐々に出てきて、れいむは再び睡魔に襲われた。 「ゆぅ……。とりあえず、れいむはす~やす~やたいむにはいるよ……。ねるすがたも、かわいくてごめんねぇ……」 そしてれいむは、比較的安全な場所に隠れたと判断し、眠りにつくのだった。 ……数時間後。 「……ゆ、ゆゆ~ん……、よくねたよぉ……。ねおきすがたも、かわいくてごめんねぇ……」 あれから数時間程寝ていたれいむは、雑木林の隙間から差し込んでくる太陽の光の眩しさで目が覚めた。 どうやら、昼過ぎまで寝ていたようである。 そして、目が覚めるのと同時に、空腹感がれいむを襲った。 「ゆぅ……。おなかがへったよ……」 昨日から何も食べていなかったので、当然と言えば当然である。 「とりあえず、ここからでるよ……」 いつまでもここにいても意味が無いと思ったれいむは、その雑木林を抜ける事にした。 そのまま来た方向へと戻っては、母れいむに見つかると思ったので、反対側へ進む事にした。 ……れいむが雑木林を抜けると、目の前には大きな建物があった。 それは、どこにでもあるような、ありふれた一軒家であった。 「ゆうぅぅぅぅっ!!とってもおおきなおうちだよぉっ!!」 れいむは産まれて初めて見る、とても大きな家に感動して、しーしーを漏らした。 「ゆっ!そうだ!ここをれいむのおうちにするよっ!!れいむはかわいそうなんだから、こういうおうちにすむくらい、とうぜんだよね!」 自分は今まで不遇な立場にあったのだから、これ位は良い思いをしても当然だ。 そう考え、れいむはその家の方へと跳ねていった。 れいむがベランダの方まで来ると、目の前にガラスが立ちはだかっていた。 「ゆうぅっ!!とうめいなかべさん!れいむをいれてね!ぐずはきらいだよ!……どぼぢでいれてくれないのおぉぉぉぉっ!?」 れいむは窓ガラスに自分を中に入れるよう命令したが、そんな事で窓ガラスが開く訳が無かった。 「いれろおぉぉぉぉっ!!かわいそうなれいむをいれ……、ゆっ!?」 痺れを切らして、窓ガラスに体当たりをしようとしたれいむは、家の中のあるものを見て、固まってしまった。 「こぼにぇー……」 家の中のリビングで、一匹の赤ゆっくりがスヤスヤと寝ていた。 ……その赤ゆっくりは、ゆっくりゆゆこだった。 そして、その帽子には、銀色に光るバッジが付いていた。 (な、なんなの?あのゆっくりは……。なんで、れいむのおうちのなかにいるの……!?) れいむの頭の中では、この家は既に自分の家という事になっており、赤ゆゆこはすっかり侵入者扱いされていた。 (ゆぎいぃぃぃぃっ!!れいむのおうちにかってにはいりやがってえぇぇぇぇっ!!そっこくおいだしてやるうぅぅぅぅっ!!) れいむは何とか家の中に入ろうとしたが、窓ガラスは体当たりでは壊れそうになかったので、どうすれば良いものかと餡子脳を悩ませた。 ……すると、ある事に気付いた。 「ゆっ!こんなところに、すきまがあるよ!」 見ると、窓ガラスは僅か数センチ程開いており、鍵はかかっていなかった。 れいむは窓ガラスの隙間に、頭を突っ込ませ、何度も頭を振りながら、無理矢理隙間から侵入しようと試みた。 れいむの体は、段々と隙間の中に入っていき、そして……。 「ゆうぅぅぅぅっ!!ここはれいむのおうちだよおぉぉぉぉっ!!」 リビングへと侵入したれいむは、赤ゆゆこに対し大声を上げた。 「こ……、こぼにぇ!?」 れいむの大声で目覚めた赤ゆゆこは、突然の侵入者に対し、驚きを隠せなかった。 赤ゆゆこが驚き、竦みあがってる内に、れいむは赤ゆゆこの方へと跳ね、どんどん距離を縮めた。 「こいつうぅぅぅぅっ!!おうちせんげんするまえに、せいっさいっしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむは目を血走らせ、赤ゆゆこに体当たりをかました。 「こぼにえぇぇぇぇっ!?」 赤ゆゆこは弾き飛ばされ、コロコロと向こうへ転がっていった。 ……その際に、赤ゆゆこの帽子が落ちてしまった。 「ゆうぅぅぅぅっ!!げすのぼうしなんか、めざわりだから、こうしてやるよっ!!」 れいむはそう言うと、赤ゆゆこの帽子の上に乗っかり、その場で何度も跳ねた。 それにより、赤ゆゆこの帽子は徐々に潰され、あちこちが破けていった。 「こぼにえぇぇぇぇっ……!」 赤ゆゆこは涙を流して泣き叫んだが、れいむの頭の中は『ゲス』の帽子を踏み潰す事で夢中だった。 「ゆふぅ~!いいことしたあとにかくひとあせって、いいものだねぇ!」 ……そして、ゆゆこの帽子は完全にひしゃげてしまった。 れいむの心の中は、正義感と達成感で満たされていた。 「こ……、こぼにえぇぇぇぇ……」 赤ゆゆこは、以前は自分の大切な帽子だった布切れを見て、再び泣き声を上げた。 ……赤ゆゆこのその姿を見たれいむは、苛立ちがピークに達した。 「なんでないてるのおぉぉぉぉっ!?なきたいのはこっちなんだよおぉぉぉぉっ!?れいむのすてきなおうちにふほうしんにゅうしたくせにいぃぃぃぃっ!!」 赤ゆゆこの泣き叫ぶその姿が、妹まりちゃと重なったからだ。 「どいつもこいつもおぉぉぉぉっ!!れいむのことをいじめやがってえぇぇぇぇっ!!」 れいむの頭の中は、赤ゆゆこに対する怒りで一杯だった。 そしてれいむは赤ゆゆこを噛み殺そうと、大口を開けて跳躍しようとした、その時。 「ゆっ!?」 れいむはあるものを見つけ、飛び跳ねようとしたのを止めた。 ……自分から少し離れた場所に、小皿に盛られた、美味しそうな饅頭があったのだ。 それは、赤ゆゆこの為に用意されたおやつだった。 「ゆ……、そういえば、おなかがすいていたね!さきにはらごしらえをするよ!」 昨日から何も食べていなかったれいむは、一旦赤ゆゆこに対する怒りを忘れ、饅頭を食べる事にした。 「ゆふふっ!れいむはこれから、すーぱーむ~しゃむ~しゃたいむにはいるよ!それがおわったら、おまえのばんだからね!」 「こぼにぇ……」 れいむは赤ゆゆこにそう言うと、饅頭の近くまで跳ね、大口を開けて、その饅頭に喰らい付いた。 「む~しゃむ~しゃ!うめぇ!これめっちゃうめぇ!まじぱねぇ!あのくそまりさより、てらうめぇ!」 れいむは饅頭の餡子やら皮やら、あちこちに飛ばしながら、口汚くその饅頭を食べていた。 ……数分後。 「げっぷぅ~!たべるすがたもかわいくてごめんねぇ~!」 饅頭を食べ終えたれいむは、心身共に満足した。 「ゆっふっふ!はらごしらえもおわったことだし、こんどはせいっさいったいむにはいるよぉ!」 食後の軽い運動とばかりに、赤ゆゆこを制裁しようと、赤ゆゆこのいた方を見た、……が。 「ゆうぅぅぅぅっ!?どぼぢでいないのおぉぉぉぉっ!?」 そこに赤ゆゆこの姿はなかった。 れいむはリビングの周りをあちこち見まわしたが、赤ゆゆこはどこにもいなかった。 「にげたなあぁぁぁぁっ!!なんてひきょうなげすなんだあぁぁぁぁっ!!」 しばらくあちこちを探して、ようやく逃げたと気付いたれいむは、怒りと悔しさから叫び声を上げた。 「ころしてやるうぅぅぅぅっ!!みつけたら、そっこくころしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむは赤ゆゆこに対する殺意を剥き出しにし、赤ゆゆこを探すべく、他の場所へ移動しようとした。 「寝惚けた事言ってんじゃねぇぞゴラァッ!!」 ……が、その第一歩を踏み出す前に、何者かに背中を思い切り蹴り飛ばされた。 「ゆびゃあぁぁぁぁっ!?おそらをとんでべびゃあっ!?」 れいむは顔面から壁に激突した。 「チッ……、窓ガラスが開いてたのか……」 「びいぃぃぃぃっ!?でいぶのうづぐじいかおがあぁぁぁぁっ!!でいぶのまっじろなはがあぁぁぁぁっ!!」 壁に当たった際に、顔面を強打し、歯も何本か折れてしまった。 「だれだあぁぁぁぁっ!!でいぶにごんなごどをするげすはあぁぁぁぁっ!!」 れいむは転げ回りながら、そう叫んだ。 「べっ!?」 「俺か?俺はなぁ……」 その何者かは、転げ回るれいむの体を、足で踏み付け、そして、こう言った。 「この家の主人なんだけどさぁ……?」 ~回想終了~ 「二階で昼寝してたらさぁ、何か下の方が騒がしいと思って降りてみたら、廊下でゆゆこが泣いてたのさ。……お前、ゆゆこに何した?」 「れ……れいむは、おうちせんげんしようとしたげすを」 「お家宣言してんのは手前ェだろうが糞饅頭が!ここは俺とゆゆこの家なんだよ!!」 青年はそう言うと、れいむを持ち上げ、床に叩き付けた。 「ばびゃあぁぁぁぁっ!?」 「何も悪くないだぁ?勝手に人様の家に入って、ゆゆこを酷い目に合わせて、何が自分は悪くないだゴラァッ!!」 「れ……、れいむはとってもかわいそうなゆっくりなんだよおぉぉぉぉっ!?だから」 「可哀想だから何だ!?不法侵入や殺しが許されんのか!?他の奴を酷い目に合わせる事が、許されるって事なのか!?」 「あたりまえでしょおぉぉぉぉっ!?かわいそうなゆっくりは、しあわせにならなきゃいけないんだよおぉぉぉぉっ!?なんでそれがわからないのおぉぉぉぉっ!?」 「……」 れいむのその言葉に、何故か青年は黙り込んでしまった。 「かわいそうなゆっくりをひどいめにあわせるげすは、せいっさいっされなきゃ」 「あぁ、そうかいそうかい。分かったよ、お前の言いたい事は。可哀想な奴は、幸せにならなきゃいけない。……そういう事だろ?」 「ゆっ!そ、そうだよ!だかられいむのやったことは、ただしいんだよ!」 「……そうかい。だったら、俺も正しい事をやらせてもらうよ」 青年はそう言うと、れいむの揉み上げを掴み、持ち上げた。 「い、いだいぃぃぃぃっ!!はなぜえぇぇぇぇっ!!でいぶのきゅーてぃくるなもみあげさんが、ちぎれるだろうがあぁぁぁぁっ!!」 れいむは必死に抗議したが、青年はそれを無視し、台所へと言った。 「今、『代わり』を用意するからな、待ってろよ、ゆゆこ」 「こ~ぼにぇ~」 テーブルの上には、先程の赤ゆゆこがいた。 そしてテーブルには、一枚の皿が置かれていた。 「はなじでえぇぇぇぇっ!!」 「もうすぐ離してやるから、待ってろよ糞饅頭」 青年はそう言うと、流し台まで行き、れいむを水で洗い、まな板の上に置いた。 「ゆっ!?な、なにする」 そして暴れようとするれいむを押さえ付け、れいむの髪の毛をリボンごと掴み、思い切り引き抜いた。 「はぎゃあぁぁぁぁっ!?でいぶのさらさらへあーがあぁぁぁぁっ!!げいじゅつてきなおかざりがあぁぁぁぁっ!?」 青年はれいむの叫び声を無視し、再び残っている髪の毛を毟る作業へ戻った。 「はぎっ!?いぎっ!?ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?」 何度も髪の毛を毟られる度に、れいむは悲鳴を上げた。 ……そして、れいむの髪の毛は一本も無くなり、れいむはハゲ饅頭と化した。 「ゆぐぎいぃぃぃぃっ……」 「まだ終わりじゃねぇぞ?」 青年はそう言うと、今度はガスコンロの上に大き目のフライパンを乗せ、火を付けた。 「なっ、なにする」 「これしかねぇだろうがよ!」 青年はれいむを持ち上げると、れいむをそのままフライパンの上に乗せた。 「あぎゃあぁぁぁぁっ!?あづいぃぃぃぃっ!?でいぶのかもしかのようなあんよがあぁぁぁぁっ!?」 れいむは必死にウネウネと体を動かしたが、青年に頭部を押さえつけられていたので、ほとんど効果が無かった。 ……そして、れいむの底部は完全に焼け焦げた。 「あづいよおぉぉぉぉっ!!どぼぢでごんなごどするのおぉぉぉぉっ!?」 れいむは青年が何故こんな事をするのか分からなかった。 「……なぁ、れいむよぉ。……ゆゆこを見て、どう思うよ?」 「ゆうぅぅぅぅっ!?」 急に青年はれいむにそんな事を尋ねた。 「ぼうしがない、みじめなくそゆっくりにきまってるでしょおぉぉぉぉっ!?」 「……そうだよなぁ。大切な帽子が無いなんて、可哀想だよなぁ。……その帽子を潰したのは、お前だよな?」 「たしかにれいむはぼうしをふみつぶしたけど、それがなんだって」 「まだ分からないか?俺が言いたい事が」 「なんだっていうんだあぁぁぁぁっ!?」 「じゃあ分かるように言ってやる。ゆゆこは大切な帽子を失くした『可哀想』なゆっくり、お前はその帽子を潰した『悪い』ゆっくりなんだよ」 「ゆっ!?」 「『可哀想』なゆっくりは幸せになって、『悪い』ゆっくりは制裁されなくちゃいけない。……お前が言った事だろ?」 「あ……、あぁぁぁぁっ……!?」 「お前は、お前が駄目にしちまった饅頭の『代わり』になってもらって、ゆゆこに食べられるんだよ」 「や……、やべでえぇぇぇぇっ!?そんなのゆっぐりできないぃぃぃぃっ!!ゆるじでえぇぇぇぇっ!!」 ここに来て、青年が何をやりたいのかようやく理解したれいむは必死に泣き叫び、命乞いを始めた。 「お前はゆゆこに食われて制裁されて、ゆゆこは腹一杯になって幸せになれる。丸く収まるって訳だ」 「やだあぁぁぁぁっ!!やだやだやだあぁぁぁぁっ!!れいむ、かわいそうなのにいぃぃぃぃっ!!なんでこんなめにあうのおぉぉぉぉっ!?」 「そりゃ、悪い事をしたからさ」 そう言って青年はれいむを持ち上げると、今度は顔面をフライパンに押しつけた。 「ぎゅぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!?」 れいむの口や飴細工で出来た歯が、熱によって焼かれ、溶け、あっと言う間にれいむの口は焼き潰された。 「……!!……!?……!……!!」 青年はフライパンを持ち上げると、テーブルの皿の上に、あちこちを焼かれたれいむを乗せた。 「ほらゆゆこ。腹一杯食べろよ?」 「こ~ぼにぇ~!」 赤ゆゆこは目を輝かせ、待ってましたとばかりにれいむの背中に噛み付いた。 「!!?!?!!!」 「はふっ!はふっ!こぼにぇ~!」 れいむは赤ゆゆこに背中を何度も噛まれ、その度に激痛に襲われ、涙を流した。 青年が口を潰したのは、いちいち叫び声を上げられてはうるさいと思ったからだ。 そんなれいむとは対照的に、赤ゆゆこは幸せそうな笑顔で、美味しそうにホクホクの餡子を食べていた。 「美味いか?ゆゆこ。次は赤ありす達を用意しておくからな。お前はカスタードが大好きだからなぁ」 「こぼにぇ~」 「……!!……!!」 れいむが必死に痛みに耐えている横で、青年と赤ゆゆこは楽しそうに笑っていた。 ……十数分後。 「すぅ……。すぅ……」 「……!!」 「……」 赤ゆゆこが、子ゆっくりサイズのれいむを全て食べきれる訳もなく、赤ゆゆこはれいむを食べ残したまま、スヤスヤと眠っていた。 それとは対照的に、れいむは背中の大部分を食いつくされ、中から飛び出た餡子が空気に触れ、それによる激痛で涙を流していた。 そして、青年はそんなれいむを静かに、黙って見ていた。 「……何かさぁ」 「……」 「今のお前を見ていると、確かに可哀想だなって思ってきたわ」 「!」 青年のその言葉に、れいむの表情が変わった。 「ゆゆこも十分満足しただろうし、もう良いや。この家から出してやるよ、お前」 「ゆぴ……、ゆぴ……」 「ゆぅ……、あんこさんがでなくなったよ……。よかったよ、おちびちゃん……」 そこは、とある空き地の、とある段ボールハウスの中。 その中には、あの母れいむと妹まりちゃがいた。 あれから母れいむは、妹まりちゃの手当てを寝ずに行い、その結果、餡子の流出を食い止める事が出来た。 幸い餡子自体はそれほど失わずに済んだので、安静にさえしていれば命の危険は無かった。 「ゆ……、ゆぴ……」 しかしそれでも、傷口を葉っぱで塞いでいるその姿は、やはり痛々しいものであった。 「……おちびちゃん……。……まりさ……。ごめんね……」 母れいむは目の前の妹まりちゃと、今はもういない、自分の番のまりさに向かって謝った。 母れいむにはかつて、同じ野良であるまりさに一目惚れし、一緒にゆっくりしようと誓い、番同士になった。 母れいむの頭の上に、新しい命が宿った時には、共に涙し、喜んだ。 まりさは母れいむと子供の為に、必死になって食べ物探しに勤しんだ。 ……が、ある日突然、まりさは帰らぬ身となった。 ゴミ袋から得た生ゴミや食べ残しを持ち帰る際に、車に轢かれてしまったのだ。 母れいむはその事故に立ち会った訳でもなく、そのまりさの死体を見た訳でもないが、いつまでもまりさが帰ってこない事で、悟ったのだった。 これで自分はしんぐるまざーになってしまった訳だが、母れいむはその事を言い訳にする気は無かった。 まりさの分まで、自分が頑張る。 そう心に決め、今日まで頑張って来た……、つもりだった。 ……あの時、何故、『あの子』に『自分で考えろ』と言ってしまったのか。 何故、それが悪い事なのか、一から聞かせるべきだった。 そうすれば、こんな事にはならなかった筈だ。 「……おちびちゃん……」 母れいむの頭の中で、様々な思いが渦巻き、次第に目元に涙が溜まり……。 「……ゆー、おきゃーしゃん、なかにゃいで」 その涙がこぼれ落ちる事は、無かった。 「お……、おちびちゃん……?」 「ゆ、ゆー」 「しゃ……、しゃべれるの……?おちびちゃん……?」 「ゆー、ゆぴー、お、おきゃーしゃん」 妹まりちゃは、たどたどしいながらも、必死に自分の口で、初めて母れいむを『お母さん』と呼んだのだ。 れいむに頬を噛まれた際の痛みが、ショック療法となったのかもしれない。 それとも、時間が経てば少しずつ改善出来る状態だったのかもしれない。 あるいは、ただ単に成長が遅かっただけなのかもしれない。 その理由は分からなかったが、母れいむにとって、そんな事はどうでも良かった。 「ゆ……!な、ないてないよ!おかあさん、ないてないからね!」 「ゆー、よかったー」 「お、おちびちゃん、おなかすいたでしょ?お、おかあさん、たべものをさがしてくるから、まっててね!」 母れいむはそう言って、段ボールハウスを飛び出した。 「ゆー、いってらっしゃい」 妹まりちゃの言葉を背に受けながら。 そして、折れかけていた決意が再び蘇り、そして、新しい誓いを立てた。 あの子の一生を、不幸なまま、終わらせない。 それがどれだけ大変な事であるか、それを理解したうえでの誓いだった。 (まりさ……、おちびちゃん……、れいむ、がんばるよ!がんばるからね!) そう思いながら、母れいむはいつもの狩り場である、ゴミ捨て場へと向かったのだった。 ……同時刻。 あれから青年はれいむの食いかけの部分を再び焼き潰し、袋に入れてどこかへ出かけた。 ……そして、青年が辿り着いたのは、青年がよく利用しているゴミ捨て場だった。 「なぁれいむ。俺は外に出すとは言ったけど、自由にするとは言ってないからな?」 青年は袋の中のれいむに話しかけた。 「……!!」 れいむは、青年の言葉に対し、怨みが込められた眼で青年を睨みつけた。 「もしかしたら、他の気の良いゆっくりが、お前を拾って何とかしてくれるかもな。……そうだな、ゆっくりショップで、ゆゆこの帽子を買ってから帰るか」 青年はれいむの入った袋を、ゴミ袋の山へと投げ捨て……。 「じゃあな、『頭』が可哀想なれいむちゃん」 そう言い残し、ゴミ捨て場を後にした。 「……!!」 袋の中のれいむは、青年の後ろ姿を、ただじっと睨みつけていた。 (……れいむは……。れいむは、かわいそうなんだよ……!だれか……!れいむをたすけてね……!) れいむはこの状況になっても、まだ何とかなると思い、諦めていなかった。 (くそまりさ……!くそばばあ……!はやくかわいそうなれいむをたすけろぉ……!!) そして、かつては殺そうとし、そして見捨てられた家族に助けを求めた。 (だれでもいいから……!かわいそうなれいむをここからだせえぇぇぇぇっ!!) どう考えても、れいむのゆん生はとっくに詰んだも同然なのだ。 それはれいむにも分かっていたはずだが、れいむはその事を理解したくはなかった。 自分の一生が、不幸なままでは終われない。 その気持ちが、れいむのゆん生への執着心への原動力となっていた。 ……そして、その気持ちが天へと通じたのか、外側から、何者かが袋を噛み千切ろうとしていた。 (やった!やったよ!れいむはたすかるよ!やっぱり、かわいそうなれいむはさいごにはしあわせになれるんだね!かちぐみでごめんねぇ!) ……そして、袋が完全に破れ……。 「ゆっ!?やったよ!きょうはおまんじゅうさんがあったよ!!」 END あとがき 私がSSを書く際に気を付けている事は、出来るだけシンプルな内容にまとめようとする事です。 今のところ、シンプルにまとまった事が一度もありません。 来週からテストがラッシュでストレスがマッハでヒャアってなりそうなので、もしかしたらしばらくはSSの投下は無理っぽさそうです。 出来れば、小ネタか何か書きたいなーと思っています。 ご意見、御感想、お待ちしています。 作者:ぺけぽん 感想用掲示板はこちら http //jbbs.livedoor.jp/otaku/13854/ ミラーはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1.html 今までに書いたSS anko1656 クズとゲス anko1671 うにゅほのカリスマ求道記 anko1767 あなたは、食べてもいい○○○○? anko1788 そんなの常識ですよ? anko1926~1928 二人はW ~Yは二度と帰らない~ anko2079 しんぐるまざー anko2750 無意識だから anko2786 ともだち anko3189 おちびちゃんは大切だよ! anko3210 バクユギャ anko3221 根本的な間違い anko3249 お兄さんは興味が無い anko3261 それぞれの願い anko3319 好みは人それぞれ anko3330~3331 HENNTAI達の日常~メスブタの家出~ anko3343 HENNTAI達の日常~駄メイドの休日~
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過去作 anko1548『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』前編 anko1744『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』中編-1 anko1745『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』中編-2 「よう、元気でやってるか?」 「!!!!」 お兄さんがやってきた。 引き戸を開け、家族に声をかける。家族は答える余裕もなく、ぶるぶるがたがた震え出した。 「ゆゆっ!おにーしゃん、ゆっくちちていっちぇにぇっ!!」 「おにーしゃん?ゆっくちちていっちぇにぇ!!」 飾りのない二人がクッションから飛び上がり、お兄さんの足元を目指してぴょんぴょん跳ねていく。 「おう、ゆっくりしているか?」 「ゆんっ!まりしゃ、ゆっくちちてりゅよっ!!」 「れーみゅもゆっくちちてりゅよ!!おにーしゃん、いちゅもありがちょう!!」 「よしよし、いい子だな。お飾りがなくたって本当にゆっくりしているよ、お前らは」 「ゆゆ~~んっ♪」 「それにひきかえ……」 お兄さんの視線が、じとりとこちら側に移る。 家族はいよいよがたがた震え、背面のガラス壁に体を押し付けた。 「こっちのゴミクズ共ときたら……なッ!」 ガァン!! 「ゆびいぃっ!!」 お兄さんに蹴られ、水槽が激しく揺れる。 頑丈な水槽はそうそう割れることはないが、それでも安全を保障してはくれない。 「お飾りがないだけで、口がきけないだけで、 自分の子供さえ大喜びで苛めるクソゲスなんだからなぁ………なんでおめおめ生きてられんの?」 「ごめんなさい!!ごめんなさい!!くそげすでごめんなさい!!いぎででごべんなざい!!」 「ゆーっ!!まだまだはんちぇいがたりにゃいよっ!!」 「おにーしゃん、はやきゅ!!はやきゅはじめようにぇっ!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!」 「おう、今日も楽しい楽しい制裁タイムの始まりだ。 たっぷりこいつらで遊んでやろうな」 「ゆゆーんっ!!」 「おでがいでず!!ぼうやべでぐだざい!がらだじゅうがいだいんでず!!ゆっぐじでぎだいんでずぅぅ!!」 「あのなあ、お前らはゴミクズなんだろ?自分で認めたんだろ? ゴミクズは玩具になるしかねえもんなあ。さ、きりきり働こうか」 「ばぢがっでばじだ!!でいぶだぢがばぢがっでばじだ!!ゆっぐじざぜでええぇぇ!!」 「ゆーっ!きょうはぷきゅーしゃんをしゅるよっ!!」 「お、いいな、それでいこう」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぷぐーざんはゆっぐじでぎだいいいいいぃぃ!!!」 毎日の日課、お兄さんからの制裁が今日も始まった。 子ゆっくりの注文に応える形で、ありとあらゆる責め苦が家族に課せられ、それを見て飾りのない二人は楽しむ。 今日の制裁は「ぷくーさん」だった。 口をテープで塞いだあと、透明なラップで全身を厳重にくるまれ密封される。 次にラップの隙間から、先端に風船のついたホースをあにゃるに突っ込まれ、 ポンプでホースから風船に空気を注入される。 体内の風船に押されて全身がまん丸に膨れ上がるが、ラップでくるまれているために、遮られて破裂はできない。 風船は容赦なく膨れ上がり、体内の風船と体外のラップに挟まれて体中の餡子が圧迫まれ、想像を絶する苦痛がえんえんと続く。 「ゆ゛ぶぶぶぶぶぶっぶぶぶぶぶぶっぶぶぶぶぶぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!!」 「ゆーっきゃっきゃっきゃっ!!ぷきゅーきょわ~~い☆」 「たのちい?たのちい?ねえねえぷきゅーたのちいぃ?ゆっくちゆっくちぃ~~♪」 笑い転げる二匹の前で、家族が一匹ずつぷくー責めを受ける。 十数分も続けて餡子を押しつぶされたゆっくり達は、その日一日は動くこともできない苦痛と疲労に悶えることになる。 今また、親れいむが責められていた。 全身を真っ赤にして涙を流し、膨れ上がる。 まん丸に見開かれた両目は半ば飛び出し、慈悲を求めてわが子を見つめ震えていた。 それを見て、二匹の子供はますます笑い声をあげるのだった。 地獄のような毎日。それでも、ただひとつの救いがあった。 まがりなりにも、家族が一緒にいるということだ。 ほとんど会話はなく、そのうち二匹はこのうえもない怨嗟と憎悪と侮蔑を向けてきてはいるが、 家族はたしかに揃っていた。 「ゆぅ……ぺーろ、ぺーろ……」 水槽の中で、ほとんど唯一といえる楽しみ。 家族とのすーりすーりとぺーろぺーろだけが、親まりさ達の正気を保っていると言ってよかった。 「ぺーろ、ぺー………おちび……ちゃん?」 しかし、家族は少しずつ狂いはじめていた。 ぺーろぺーろしていた子まりさが全く反応を返してこないのに疑問を感じ、その顔を覗き込む。 しかし、その子まりさは何も応えず、ただ視線を一点のみに向けていた。 壁の一点。何もない、ただの壁。しかしそれを、日がな一日、食事もとらず動きもせずに見ている。 親まりさがどれだけ呼びかけても、その子まりさが応えることはなかった。 死んでいるのかと思って焦ったが、目はたしかに開いていた。 「だずげでぐだざい!!おぢびぢゃんがゆっぐじでぎでないんでず!!」 「ん?知るかよ。自分でなんとかしろ」 「おでがいじばず!!ばりざだぢじゃだずげであげられだいんでず!!おぢびぢゃんを!!おぢびぢゃっ」 「何をいまさらわめいてんだよ。子供なんかどうでもいいんだろ?なあ、れいむ、まりさ」 「ゆーっ!!れいみゅをこんにゃにしたくちぇに、いましゃらあちゅかまちいよっ!!」 「にゃんでまりしゃはたちゅけにゃかっちゃの!?しょいつもいじみぇればいいでちょっ!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅぅぅ………!!!」 お兄さんに助けを求めるが、すげない答えが返ってくるばかり。 それどころか子供たちにまぜっかえされ、罵倒されるばかりだった。 ぴくりとも動かなくなった子供を、家族は涙にくれながら夜通しぺーろぺーろするしかなかった。 「ゆぢっ!!ゆぢーっ!!ぎゅぐげげげげげ!!びょぢぢ!!」 次の日には、子れいむの一人がおかしくなっていた。 もみあげをひっきりなしにばたばたばたばたばたつかせ、涎と糞尿を垂れ流す。 口にする言葉はもはやほとんど意味をなさない、歯軋りのように不快な雑音に変じていた。 焦点の合わない視線をしきりに泳がせながら、狭い水槽の中で暴れ周り、家族を困らせた。 「うー☆あみゃあみゃだっどぅー!おぜうしゃまのぶりゃんちににゃるんだどぅー☆」 「ゆびっ!!いぢゃいっ!!やべでぇおにぇえじゃんん!!」 子まりさの一人が、れみりゃの声色を真似て姉妹の頬をかじり始めた。 噛む力が弱くなかなか噛み千切るまでにはいかないが、 それでも姉妹は苦痛に泣き、何よりそのゆっくりできない声が家族を苛んだ。 両親がその度にきつく叱り押さえつけることでなんとか事なきを得てはいたが、 子まりさの口調はもはや戻らず、ずっとれみりゃの声色で喋り、隙をついては家族を捕食しようとした。 「んほぉぉぉ!!んっほおおおおぉぉぉ!!!」 子れいむの一人がれいぱーになった。 涎を垂らして小さなぺにぺにを誇示するように突き出し、おぞましくも実の姉妹とすっきりに及ぼうとした。 両親がいくら叱ってもやはり治る気配はなく、、一日中半ば拘束するように押さえつけていなければならなかった。 親のもみあげに押さえつけられていてすら、壁や床にぺにぺにをこすりつけてひとりすっきりーに及ぶわが子を前に、 両親はまたも苦い涙を流した。 「じゃおーん!じゃおーん!」 あの日の苛めに対するあてつけだろうか? 子まりさの一人が、「じゃおーん」しか言わなくなった。 それしか喋れないゆっくりを見てももう苛めないと誓った手前、あまり強くは叱れなかったし、 やたらに楽しげに連呼するわが子を見ながら、両親は、 こんな生活でも楽しんでいられるなら、狂ったほうがよかったのかもしれないと後ろ向きな安堵をさえ覚えた。 「ちーんぽ!でかまら!ぺにす!!」 最後に残った子れいむが狂ったとき、両親は大声で泣き喚いた。 水槽の中に一緒に閉じ込められた愛しい子供たちはどの子も狂い、 もはや意思疎通も適わず、わけのわからないことを言いながら蠢く狂い饅頭となり果てた。 残った二匹は、水槽の外で自分たちをせせら笑っている。 それでも両親は、帽子のない二匹の子供たちにすがろうとした。 「……ゆっくり……ゆっくりしていって……ね…」 「ゆ?ゆゆーん?にゃにいきにゃりはなちかけちぇきちぇるわきぇ~?」 「れーみゅちゃちをぷーすぷーすしちゃごみくじゅがにゃにかいっちぇるよっ!!」 「ごべんね………ごべんね………ゆぐじで………おがあざんをゆぐじで……」 「ごべんにぇ~♪ゆぐじじぇ~♪うんうんぴゅりぴゅり~~♪」 「はんっちぇいっがたりにゃいよ!!ごみくじゅ!!ちにぇ!!」 こんな会話でも、唯一意思の疎通ができる子供達と、 両親はなんとか仲直りしようとわずかな望みをつないだ。 あんなにゆっくりしていた子供たちだから。 根は素直な子供たちだから、きっといつか、きっといつか。 「おちびちゃ………おちびちゃ…………」 「ちにぇ!!ごみくじゅ!!くそげしゅ!!」 「いっしょに………いっしょに、ゆっくり……おがあざん、ど……… ながよぐ、じで…………おでがい…………おでがいだがら……がぞぐ、みんなで……」 「ゆっはああああぁぁぁああああぁぁ!!?にゃにいっちぇるにょおおおおぉぉぉ!!!? しょのかぞきゅをぷーしゅぷーしゅしちゃのはどこのだりぇなんぢゃあああぁぁぁ!!!」 「何やってんだよ、お前ら」 「ゆひぃぃ!!」 お兄さんが、その様子を見咎めてきた。 「ゆーっ!!おにーしゃん!!きょのごみくじゅどみょが、にゃかにゃおりしちゃいっちぇ~~♪」 「ああ?そんな事言ったのか? お前らをこんな目に遭わせといて、どの面下げてそんな事言えるんだか」 「ゆ゛ぐぅぅぅ………」 「可愛い子供たちなら、そこに一杯いるじゃねえか。 そこで一家団欒してりゃいいだろ?え?」 「………みんな、みんな………ゆっくりしてないよ……… ゆっくりできなくなっちゃったよ…………」 「はあ?」 全く動かない妹の頬をかじっている子まりさ。 自分のもみあげの下で暴れているれいぱーの子れいむ。 小さなもみあげをふりみだして何やらわからない言葉を連呼している子れいむ。 「じゃおーん」を連呼する子まりさ、「ちーんぽ」を連呼する子れいむ。 誰一人としてゆっくりしていなかった。 もはやこの水槽は、壊れたゆっくりを収容する精神病院と化していた。 両親でさえ、明日にも発狂寸前の状態だ。 「ふーん?で、そいつらは壊れちゃったから捨てちゃおうと。 最後に残った二匹の子供といちゃいちゃしたいと」 「ゆぷぷ!あちゅかまちーにぇ!!」 「「…………………………」」 「じゃあ、ひとつだけ質問しようか。 その答えによっては、お前らにチャンスをやらんでもない」 「ゆ゛ぅっ!?」 この期に及んで、まだ希望が見えてきたというのか。 両親はお兄さんを食い入るように見つめた。 「子供を作れない子まりさ、目の見えない子れいむ、ともにお飾りのないこの二匹。 一方、お飾りはあるけど壊れちゃったそこの六匹。 さーて、ゆっくりできるのはどっちかな~~?」 「……おかざりのないおちびちゃんのほうがゆっくりしてるよぉっ……!!」 両親の答えに迷いはなかった。 「バーカ」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんは、六匹の子供たちを水槽から取り出して床に並べ、 その頭から次々とお飾りを取り上げた。 「「ゆっ??」」 飾りがなくなったとたんに、個体識別の術がなくなり、 六匹はどこの誰とも知れず得体の知れないゆっくりと化す。 それでも、その動きや喋りを見ていると、ようやく確信が持てた。 こいつらは絶対にまりさたちのおちびちゃんじゃない。 深くため息をつき、お兄さんが解説してきた。 「こいつはただの饅頭に目鼻をマジックで書き込んだだけ。 こいつは野良ゆっくりに捨てられてた未熟児。 こいつらはそれぞれれみりゃ、レイパーありす、めーりん、みょんの子供。 毎日一匹ずつ、お前らが寝てる隙にすり替えさせてもらった」 「…………………!!」 「おい、入っていいぞ」 「「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよっ!!」」」」」」 引き戸の向こうから、六人の子ゆっくりがぴょんぴょん跳ねてきていた。 「ゆーっ!!おきゃーしゃん、まだゆっくちできにゃいの?」 「まりちゃたちはゆっくちちてりゅよっ!!」 「みゃいにちあみゃあみゃをむーちゃむーちゃできりゅんだよ!!ゆっくち!ゆっくち!!」 「おにぇーちゃんたちもゆるちてくれちゃよっ!!」 「ゆあ…………あ……………おちび、ちゃん……?」 傷だらけで、お飾りのない子供たち。 しかし、その表情はこのうえもなくゆっくりできるものだった。 本来、飾りのないゆっくりは大きな不快感を伴って目に映り、他のゆっくりに強い嫌悪感を抱かせる。 だがこの数日で、家族の価値観には大きな変化が起こっていた。 飾りがないのに、むしろ飾りがないからという理由でちやほやされていた二人の子供。 飾りがあっても、ついには精神に異常をきたした子供たち。 それらを目に写しているうちに、家族たちの精神にはある種の刷り込みが行われていた。 「これで三回目。 僕の言いたいことがわかるか?」 「……………………」 「お前らは、飾りしか見ていない。 あれだけ可愛がっていた子供でも、飾りがなければ赤の他人に見え、 全く見ず知らずの、しかも捕食種の子供が、飾りさえ乗っていれば可愛い子供に見える。違うか?」 「…………ちがい、ばぜん………」 「その程度なんだ。 お前らは家族思いのつもりでいるかもしれないが、結局、外見も性格も見ちゃいない。 ひたすらお飾りしか見ていない。子供の頭の上にのっかってるお飾りだけを可愛がっていたんだ。 どうだ、認めるか?」 「………………みどべばず……」 お兄さんは屈み込み、両親の前で指を振って言った。 「いいか。お前達に最後のチャンスをやろう」 「ゆ゛っ!?」 「帽子だけの絆でいいのか? 互いの本質なんて見ずに、お飾りだけを愛でる、そんないびつな家族でいいのか?」 「…………っ!!いや、でずっ………!」 「なあ、やり直さないか。 本当にお互いのことを見て、そのいいところ、悪いところを隅々まで知りあって、 互いのゆん格を認め合ったうえで思いやれる、そんなゆっくりできる家族を目指さないか」 「おにっ、いざん…………」 「ゆっぐじ、じだい…でず……… ……ゆっぐじ、でぎる、がぞぐざんに………なりだい、でずぅぅ……!!」 「いいだろう」 そう言うと、お兄さんは夫婦を水槽から取り上げて床に置いた。 「……おにいさん……?」 「一からやり直しだ。これはもういらない」 まりさとれいむ夫婦のお飾りが取り上げられる。 「ゆぅっ…………!!!」 「こんなものがあるからお互いが見えなくなるんだ。 これは預かっておく。飾りなんかに惑わされずに、本当の意味でお互いを見るんだ。できるな?」 「ゆぐっ…………やり、ばず…………!!」 「よし。さあ、家族同士で改めて挨拶しようか」 お兄さんの手で、総勢十匹の家族が円陣を組んで並べられた。 全員が飾りを失い、互いにほとんど見分けがつかない。 その中心に、れいむとまりさ夫婦、そして最初に虐められた子まりさと子れいむが向かい合っている。 おずおずと、夫婦が口を開いた。 「………おち、びちゃ……………」 子まりさと子れいむは互いに頷き合い、二人で両親に向かって叫んだ。 「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」」 それは、今までで一番の、 二人がこの世に生まれ落ちたときの初めての挨拶よりも、もっともっとゆっくりできる挨拶だった。 やり直そう。 みんなで、また一から始めよう。 おちびちゃんたちも、おとうさんもおかあさんも、今日この時、再び生まれ落ちたのだ。 涙でびしょびしょに濡れた頬を子供に押しつけながら、 まりさとれいむ夫婦はゆっくりしていってねと何度も何度も叫び続けた。 ――――――― 二週間が経ち、我が家のベランダはすっかり賑やかになっていた。 「ゆっ!ゆっ!おちびちゃん、ゆっくりおかあさんのべろさんにのってね!」 「ゆーっ!おしょらをとんでりゅみちゃ~~い!!」 「れいみゅおねーしゃんじゅるい!まりちゃも~~!!」 「ゆふふ、ゆっくりじゅんばんだよ!ゆっくりしていってね!!」 「れいみゅ、こっちぢゃよっ!ゆっくちついてきちぇにぇ!!」 「ゆっくちおにぇーしゃんについていきゅよっ!!ゆっくち、ゆっくち……ゆゆっ?こりぇ、にゃあに?」 「ゆふふ、あててみちぇね!あてられちゃら、れいみゅのもにょだよ!!」 「ゆっ!ぺーりょぺーりょしゅるよ!!………ちあわちぇ~~~!!ゆゆっ、ちょこれーちょしゃんだよっ!!」 「よきゅわきゃっちゃね!!ゆっくちたべちぇいっちぇね!!」 「おにぇーしゃん、ありがちょ~~!!ぺーりょ、ぺーりょ………あみゃあみゃちあわちぇ~~~!! ゆっ、おにぇーしゃん、いっちょにぺーりょぺーりょちようにぇっ♪」 「ゆゆっ!?ありがちょうにぇ!!いっちょにぺーりょぺーりょたいみゅ、はじまりゅよっ☆」 「「「「ゆっくりしていってね~~♪」」」」 例の家族は、飾りがないまま、しかし仲むつまじく団欒していた。 初めのころは飾りがないことでお互いに認識できなかったが、 必死に相手の表情や声、外見を注視することで、少しずつ少しずつ個体識別ができるようになっていった。 今では、十匹の家族はお互い完璧に識別できている。 当たり前だ、識別できないほうがおかしい。 「見分けがつかない」という思い込みを「見分けがつく」という思い込みにすり替えればいいだけの話だ。 見分けがつくと思えば、見分けはつくに決まっている。識別しようという意思、努力が致命的に欠けていたということか。 「ゆーっ、れいむのびせいによいしれていってね!!ゆ~ゆ~♪」 「れいみゅおばしゃんのおうちゃはゆっくちしちぇるにぇ!!」 「ゆっ!ゆっ!まりしゃのだんしゅをみちぇいっちぇにぇ~~」 「おばしゃんもまりしゃもゆっくちしちぇりゅねっ!!」 「じゃおーん!」 「まりしゃとおいきゃけっきょちようにぇっ!!ゆっくち!ゆっくち!」 「じゃおーん!!じゃおーん!!」 「みぇーりんははやしゅぎるよぉ!!でみょ、きょうこちょはまけにゃいよっ!!ゆっくち!!ゆっくちぃぃ!!」 ベランダでゆっくりしているのは家族だけではない。 世話係のさくやの他、帽子すり替え実験のために買ってきたもろもろのゆっくりも仲間に入っている。 野良だったのを拾ってきた飾りのないれいむ、ペットショップで買ってきた子めーりんはすっかり家族と打ち解けていた。 同じくすり替えるために集めてきた当て馬達も、厄介者ではありながら夫婦たちの手で分け隔てなく世話を受けている。 みょん種の赤ゆっくりは子めーりんと同じく一家の団欒に参加できているが、 そもそも捕食種である赤れみりゃや知能に欠陥がある未熟児とレイパーはなかなか難しいようだ。 それでも文句ひとつ言わず、家族たちはかいがいしく世話をしていた。 赤れみりゃなどは、このごろではたどたどしくも家族の輪に入っていきたそうな表情さえ見せている。 初めは家族だけで暮らさせ、互いの識別ができるようになってから、 ゆっくりの数を増やして難度を上げようという意図で余所者のゆっくりを参加させたのだが、 一旦飾りなしの識別ができるようになればあとは早かった。 余所者を虐めたり見下すようなこともまったくない。 自分たちが飾りを失って底辺の存在に堕ちたこと、 そもそも余所者を虐めたばかりにこんなことになってしまったこと、 個体識別のために相手の性格をよく吟味するようになった結果、根拠なく見下すことがなくなったこと。 要因はいろいろ思いつくが、他種への差別心は、少なくとも表に出さなくなったようだ。 ゆっくりがあれだけ執着する頭の飾りだが、こうなってみればないほうがずっといいんじゃないか。 今、僕の目の前では、ゆっくりたちがこのうえもなくゆっくりした笑顔で笑いさざめいている。 飾りを失い、傷だらけの家族たち。 希少種、捕食種、通常の言葉を喋れないめーりんやみょん。 どれも通常の群れにいれば真っ先に差別、虐めの対象にされるはみ出し者だが、 ここではなんの差別もなく、互いに認め合い、慈しみあっている。 ちょっとしたユートピアだ。 下拵えには時間をかけた。 初めに家族に苛められた子まりさと子れいむには、 さんざんに家族を見下し、貶めてやるようにそそのかした。 本人たちも充分に家族を恨んでいたので喜んでやってくれたが、 毎日寝る前には二匹を家に引き入れ、釘を刺した。 「お前達だって前はそうだった、飾りのないゆっくりを虐めていたはずだ」 「お母さんたちも反省すればお前達と同じようにゆっくりできる」と、毎日繰り返し念を押した。 ゆっくりとしては善良な個体であるはずという僕の試算は当たり、 飾りを捨てた家族を、二匹は温かく迎え入れた。 一日ごとに子ゆっくりたちの帽子を奪い、家に招き入れてあまあまを振る舞い、 初めに虐待された二匹からはうってかわった歓迎をもって当たらせ、 飾りがないとゆっくりしている、飾りがないからゆっくりできると教え込んだ。 最後に両親に種明かしをし、家族全員から飾りを取り上げたとき、 すでに飾りに頼らない価値観の下地はできていた。 今、家族に差別心はなく、飾りのないゆっくりこそゆっくりできると信じ込んでいる。 屈託のない団欒を楽しむ家族を眺め、僕は確信した。 頃合いだ。 「ゆっ!おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!ゆっくち!!ゆっくち!!」」」 ベランダに出ると、家族たちが僕に笑顔と挨拶を向けてくる。 どの顔も非常にゆっくりした幸福感に満ち溢れていた。 「やあ、みんなゆっくりしているな」 「ゆーんっ!!おにいさんのおかげだよ!!」 「おかざりさんがないとゆっくりできるよっ!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 「おにいちゃんありがちょー!!」 「そうなのかい?」 「ゆんっ!まりさ、いままではおかざりさんしかみてなかったよ。 でも、おかざりがないと、おちびちゃんやれいむのことをよくみるようになったよ。 みればみるほど、みんなちがうんだよ!おかおも、おこえも、うごきかただって、みんなちがうし、 ちがうけど、みんなみんなかわいいんだよ!!いままできづかなかった、いろんなかわいいところがあったよっ!! きずだらけだけど、まりさのかぞくさんはいままでよりずっとずっとかわいいんだよぉ!!」 「ゆゆぅ~~ん、まりさぁぁ~~♪れいむ、てれちゃうよっ///」 「「「おちょーしゃんゆっくち!ゆっくちぃ!!」」」 「そうか。うん、素晴らしい。みんな本当にゆっくりしているな」 「ゆふ~ん♪」 僕は頷き、ベランダのゆっくり達に声をかけた。 「みんな、今日はまりさたちの家族だけに大事な話があるんだ。 悪いけど、まりさたちだけこっちに来てくれ」 「ゆんっ?ゆっくりりかいしたよ!!」 十匹のまりさ、れいむ家族を、ガラス戸を開けて屋内に迎え入れる。 「ゆっくり!ゆっくり!」「ゆっくち!ゆっくち!」 楽しげに跳ねる家族たちを、僕は奥まった和室に案内した。 和室は僕の寝室であり、隅にたたまれた布団とテレビの他は殺風景なものだ。 家族を並ばせると、僕は家族たちに話しはじめた。 「改めて、みんな。本当にゆっくりしているね」 「ゆふんっ☆てれちゃうよ!」 「お飾りなんかなくても、ちゃんとお互いがわかる。お互いのことをよく見てる。 弱い者苛めなんかするゲスはここには一人もいない。 今度こそ僕は確信して言おう、みんな、本当にゆっくりしたゆっくりだ!」 「ゆゆぅぅぅ~~~~んっ!!まりさ、かんむりょうっ!!だよぉぉ~~~!!」 「おにいさんのおかげだよぉぉ!!ありがとう、おにいさんっ!! おちびちゃんたち、みんなでゆっくりおにいさんにおれいをいおうね!!」 「「「「おにいしゃん、ゆっくちありがちょ~~~~!!」」」」 「うん、うん。僕も本当にうれしいよ。だから…………」 間を置き、笑顔で家族たちを見渡してから僕は言い渡した。 「今度こそ約束を果たしたいと思う。君たちを、森に帰してあげよう!!」 「「「「「「「「「「ゆっ?」」」」」」」」」」 家族の笑顔が止まった。 一瞬の静寂の後、家族の表情はみるみるうちに青ざめていった。 ――――――― 「おでがいじばず!!おにいざん!!ごごにおいでぐだざい!!おいださないでぐだざいいぃ!!」 「もりにがえりだぐだいぃぃ!!ごごがいいよぉ!!ごごじゃないどゆっぐじでぎだいよおおぉぉ!!」 「やぢゃ!!やぢゃ!!いじべられるのやぢゃあああぁぁ!!ゆっぐじじだいいいぃ!!!」 「ぎょわいぎょわいぎょわいいぃぃ!!ゆっぐじ!!ゆっぐじざぜでええぇぇ!!!」 全身から恐怖の汗をしたたらせ、家族一同はお兄さんに懇願していた。 ここに住まわせて、森に帰さないで。 しかし、お兄さんは不思議そうに首をかしげて言った。 「あっれぇ~~~?どうしたんだい、みんな?ようやく元の家に帰れるんじゃないか。もっと喜んでいいんだぞ!」 「やだ!!やだああぁぁ!!もりにがえりだぐない!!ゆっぐじでぎない!!ごごにおいでええぇ!!!」 「おいおい、何を言ってるんだ。もともとあそこでゆっくりしてたんだろ?遠慮しなくていいんだぞ、さあ出発だ!」 「やぢゃやぢゃやぢゃやぢゃやぢゃあああああぁぁ!!!ごご!!ごごぎゃいい!!ごごでゆっぐぢずりゅううぅぅぅ!!!」 飾りを失い、全身を傷だらけにし、おめめやまむまむを失った子まで混じっているこの一家が、 今森に帰されればどうなるかは火を見るより明らかだった。 すぐに他のゆっくりに見咎められ、たちまちのうちにいじめ殺されてしまうだろう。 この家を一歩でも出ることは、自分たちにとって即、死を意味していた。 それがわかっていた一家は、ここを先途とお兄さんにすがりついた。 「ごごでゆっぐりじだいでず!!もりにがえるど、ぼがのゆっぐじにいじべらればず!! ばりざだぢはごごじゃだいどゆっぐじでぎばぜん!!おにいざん!!おにいざああああんおでがいじばずうううう!!!」 「あ、そうなのか。しまった、そうだよな、虐められちゃうよな。それじゃゆっくりできないなあ」 「ゆっ!!そうだよっ!!だからここでゆっくりさせてねっ!!」 「いや、約束だから。約束は守らなきゃいけないもんな、森に帰すよ。しょうがないよね!」 「いいよおおぉぉぉ!!ばぼらだぐでいいいいぃぃぃ!!!ごごにおいでえええぇぇ!!!」 「やだよ、だってここ、僕の家だもん。 お前らがいるから、僕ベランダ使えないんだよね。洗濯物とか干したいし」 「ゆ゛っ!!じゃあぼがのおべやざんでいいでず!!ごのおうぢざんならどごでぼいいでず!!ぼんぐいいばぜええん!!!」 「あのね、僕が文句言ってるの。この家、狭いの。お前らに居座られてると迷惑なの。出てってくれない?」 「ごごがらおいだざれだらばりざだぢじんじゃうよおおおおぉぉぉ!!!」 「だから?知らないよ、そんなこと。自分でなんとかしてね!」 必死にお兄さんの足にすがりつき、涙と涎を撒き散らして懇願するまりさ。 しかしお兄さんは一向に首を縦に振ろうとはせず、それどころか楽しんでさえいるようだった。 夫の無様な姿を見ながら、それまでお兄さんに抱いていた感情が急転していくのをれいむは感じていた。 「………おにい、ざんが……………」 「ん?」 「おにいざんがでいぶだぢをごごにづれでぎだんでじょおおおおおお!!?」 れいむは叫んでいた。 全身をぶるぶる震わせ、怒りをあらわに声をはりあげる。 「おにいざんがっ!!でいぶだぢをもりがらざらっでぎでっ!! おぢびぢゃんだぢをいじべでっ!!ごんながらだにじだんでじょおおおおぉぉ!!?」 「いやまあ、いろいろ制裁したけど。生活に支障が出るほどの傷は負わせてないよ。 この子まりさのまむまむと子れいむのおめめは別だけど、これやったのはき・み・た・ち☆」 「ゆ゛ぐぅっ…………!!」 「おぼうちっ!!おぼうちしゃんがえじぢぇえええ!!」 「ゆっ!!れいみゅもっ!!れいみゅのおりぼんしゃんがえじでにぇ!!」 「ゆゆっ!!そうだよっ!!おかざりさんがあればあんっしんっ!だよっ!!!」 子供たちの声に笑みを取り戻し、まりさはお兄さんに向きなおって言った。 「ゆっ!!まりさたち、もりにかえってもいいよっ!! でもおかざりさんかえしてねっ!!あまあまもいらないよ!!おかざりさんがあればすぐにでていくよっ!!」 「あー、お飾りかあ………ちょっと待ってね。押し入れにしまってあるから」 お兄さんが部屋の壁をずらすと、中に小さなお部屋があり、 その中に、前にみんなで入っていた透明な箱が置いてあった。 お兄さんがそれを取り出して家族たちの前に置く。 見ると、箱の中にみんなのお飾りが山になって入っていた。 家族が狂喜乱舞する。 「ゆぅぅぅ!!あったよ!!まりさのおぼうしあったよおおぉぉ!!」 「よかったぁ!!よかったよおおぉぉ!!れいむのおりぼんさんよかったああぁあ!!」 「まりちゃのおぼうちっ!!おぼうちぃ!!」 「ゆーっ!!ゆっくち!!おりぼんしゃんゆっくちちていってにぇ!!ゆっくちいぃぃ!!」 飛び跳ねながら喜び合っているうちに、光がお飾りの山の上に落ちた。 「ゆゆっ?」 「…………どぼじでおりぼんざんぼえでるのおおおぉぉぉっ!!!?」 お兄さんが落としたものは火だった。 小さな棒の先についていた火は、たちまちのうちにお飾りの山に燃え移り、赤い炎をめらめらと躍らせている。 まりさたちは恐慌をきたして叫び狂った。 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛だべええだべえええええぼえぢゃうおぼうじじゃんぼえぢゃああああ!!!」 「だんでええええ!!?だんでごんだごどずるのおおおおおおおおおあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ゆんやあああああーーーーーーっ!!!ゆびゃああああああーーーーーーーっ!!!」 「だじゅげぢぇ!!だじゅげぢぇ!!おぼうじじゃんだじゅげぢぇええええええっ!!!」 「おにいじゃーーーーーっ!!おにいじゃああああーーーーーーーーっおにいいいいいい」 いくら体当たりしても箱はびくともせず、お兄さんに体当たりしても同じくびくともせずににやにや笑っているばかりである。 ひとときの狂乱を経て、ついにすべてのお飾りは黒い消し炭と化した。 「ゆ゛あ゛……あ゛……あ゛あ゛あ゛…………おぼうぢ………ばりじゃ、の……」 「どぼじで…………どぼじで………どぼぢで…………どぼじ……で」 水槽の壁を力なくぺーろぺーろしながら涙に暮れる家族たち。 その背中に、お兄さんが明るい声をかけた。 「いやー、お飾り燃えちゃったね。でもいいよなっ、お前達はもうお飾りなくてもわかるもんな!」 「おがざりざんがだいどいじべられるでじょおおおおおおおお!!!!?」 「でいぶだぢじんじゃうんだよおおおおぉぉぉぉ!!ごろざれぢゃうんだよおおおおおお!!?」 「うん、そうだね。だから?」 「………っぐ…………ゆっぐじでぎだいおにいざんはゆっぐじじねええええええ!!!」 涙を振り絞り、れいむがお兄さんの足をめがけて突進した。 渾身の突進を受けてもお兄さんは動じず、冷やかにれいむを見下ろしているだけだ。 ぎりぎりと歯軋りし、れいむは慟哭しながら体当たりを繰り返した。 まりさはただただ泣きじゃくりながらその光景を見つめ、子供たちはひたすら燃えカスを囲んで泣き喚いていた。 その時、お兄さんが何かを床に落とした。 「ゆっ?」 涙に濡れた目で、まりさがそれを視界に捉える。 それは、赤いカチューシャだった。 「いじめ殺されるだって?」 足元にまとわりつくれいむを、足でごろんとカチューシャの方に転がしながらお兄さんは言った。 「ちょっと、一緒に面白いビデオを見ないか」 『きょーろきょーろしゅるわっ!きょーろ、きょーろ!』 『はは、落ちないように気をつけろよ』 『おにーしゃんのおちぇちぇはとっちぇもときゃいはにぇ!』 『ふーかふーか!ふーかふーか! このべっどさんとってもとかいはよ!おにいさん、ありがとう!』 『どういたしまして。銀バッジを取ったごほうびだよ』 『ゆんっ!おにいさんのしどうのおかげよっ! これからはもっともっとおにいさんをとかいはにゆっくりさせるわっ!!』 『いちにっ!いちにっ!』 『何してるんだ、ありす』 『ゆっ!だいえっとさんよ!このごろたいじゅうがゆっくりしすぎてるから……』 『ははは、そんなこと気にしてるのか。可愛いやつだな』 『ゆっ、もう!しらないっ!!』 『ゆわあああぁぁ!!とかいは!!とかいはだわあぁ!!』 『そんなにはしゃぐなよ。迷子にならないようにな』 『ゆーんっ!こんなゆっくりできるとかいはなばかんすさんにつれてきてくれてありがとう、おにいさんっ!!』 『ついに金バッジを取れたからな。これからはどんどんいろんなところに遊びに行こうな。 そうだ、約束だったな、今度お婿さんを連れてくるよ。おちびちゃんも作ったらいい』 『とかいは!!とかいはだわぁぁぁ!!おにいさんのかいゆっくりで、ありす、しあわせよおおぉぉ!!』 お兄さんが何やら細工すると、部屋の隅にあった黒い箱の中に映像が流れ始めた。 この家で過ごしているうちに知った、あれはテレビさんというものだ。 そこに流れているのは、一人のゆっくりありすの姿だった。 ビデオの中に姿は映っていないが、 個体の特徴に鋭敏になった今の家族には、ありすに話しかける声がお兄さんのものであることはすぐにわかった。 お兄さんとありすの、幸福そうな生活がながながと流された。 そのありすは気立てがよく、身だしなみも整い、どこから見てもゆっくりできる美ゆっくりだった。 思わず自分の妻と比べそうになり、まりさはつい頭を振った。 「この子は僕の飼いゆっくりだった。とても可愛い、聞き分けのいい子だった」 お兄さんが説明を加えた。 「赤ゆっくりの頃に、捨てられて死にかけていたのを気まぐれで拾ってきたんだ。 ゆっくり飼いの勝手がわからない僕を、むしろありすの方がサポートしてくれた。 至らないところの多い僕に文句を言わず、 助けてもらった感謝を繰り返し、僕をゆっくりさせるために尽くしてくれた。 ついには金バッジまで取得するほど優秀な個体だった。宝クジに当たるくらいの拾い物だったんだ。 赤ゆっくりの頃に捨てられた経験が、いい方向に作用したのかもしれない」 「ゆうぅぅ……………」 流れる映像を見ても、「ゆっくりしてるね!」などとは漏らせなかった。 ありすがすでに鬼籍に入っていることは、すぐそこに転がっているカチューシャを見れば想像できた。 最初から悲劇として語られているこのエピソードがどこに行くのか、にわかには読めなかった。 「ありすの愛情に僕も報いたかった。 ありす自身の安全を考えてバッジ試験も受けさせた。辛い勉強も不満を言わずにやってくれたよ。 ただひとつ、ありすが一度だけ漏らしたわがままは、子供が欲しいということだった。 子供を作ったゆっくりはリスクを抱えている。ゆっくりの生態を調べるうちにそれを知った僕は、 金バッジを取るまでおあずけだと言った」 「ゆぅ………おちびちゃんはゆっくりできるのに……」 まりさが思わず口をはさんだが、お兄さんは全く無視して先を続けた。 家族に話しているというより、ただ独白しているようだった。 「いまでは後悔してる。すごく後悔している。 ありすの望みをすぐに叶えてやらなかったことを。 僕に言われたありすは、それまでの何倍も勉強に身を入れ、とうとう金バッジを取った。 僕は約束通り、つがいを与えて子供を作らせてあげるつもりだったが、 赤ゆっくりができればそうそう外出もできなくなる。 その前に、ご褒美でキャンプに連れていってあげることにしたんだ。 そこで、ありすはゆっくりに殺された」 「ゆううぅ!?ゆっくりごろしはゆっくりできないよ!!」 思わず叫んだれいむに、お兄さんはすぐに屈みこんで答えた。 「そうだよな。ゆっくりできないよな! こんなゆっくりできるありすを殺すなんてひどいことだよな」 「ゆーっ!ゆっくりしてないよ!ありすがかわいそうだよ!!」 「もうすぐおちびちゃんがつくれたのにぃぃ!!」 「ありちゅおにぇーしゃん、きょろしゃにゃいでええぇ!!」 「ありすはひどい殺され方だった。 全身を枝でぷーすぷーすされて、目を潰されて髪もむしられて、最後には生きたまま食われて死んだんだ」 「ゆううぅぅぅ!!きょわいよおおぉぉ!!」 「ひどいよおおぉぉ!!ゆっくりできないよおおぉぉ!!」 「こんなにゆっくりしたありすなのにいぃぃ!!」 現在の状況も忘れて、つい感情にかられて叫ぶ家族たち。 お兄さんは何度も頷いて続けた。 「そんなひどいことをするゆっくりはゆっくりできないよな!」 「ゆっくりできないよ!!」 「ありすが死んだのに、そいつらは今ものんびりゆっくりしてるんだ。許せないよな!」 「ゆるせないよっ!!ゆっくりごろしはせいっさいっしなきゃいけないよ!!」 「苦しんだありすのためにも、たっぷり苦しめて、ゆっくりできない目に遭わせなきゃ割に合わないよなあ!」 「ゆーっ!!かたきうちだよおおぉ!!そんなひどいゆっくりはゆっくりしちゃいけないんだよぉ!!」 「そうか、そうだよな!そう言ってくれるか!!お兄さんは嬉しいよ、みんな!」 「「「「ゆーっ!!」」」」 「まさか、まさか……ありすを殺したやつらが、自分から喜んで罰を受けてくれるなんて!」 「ゆぇっ?」 足元のカチューシャを拾い上げて見つめながら、お兄さんは淡々とした口調に戻って続けた。 「森のそばの川でキャンプをしたとき、ありすは迷子になった。 その時に、カチューシャを落としてしまったんだ。 飾りをなくしてしまったありすを、そこに住んでいたゆっくりの一家が見つけて、 「ゆっくりできないゆっくり」呼ばわりして、なぶり殺しにした」 そこまで言って言葉を切り、お兄さんは笑顔を浮かべて家族をゆっくりと見渡した。 家族は、小刻みに震えはじめた。 「僕がどうして、お前たちを家に連れてきたんだと思う? 野良ゆっくりの家族なんかわざわざ攫ってきたってなんの得にもならない。 見ず知らずのゆっくりを、飾りがなくてもお互いを識別できる、ゆっくりした家族にする。 そんな七面倒臭いことを、純粋な善意でやると思うか? お前らみたいな薄汚いゴミクズを、なんで僕がわざわざゆっくりさせてやらなきゃならないんだ?」 「………………おに、い、さ………ん……」 「お前たちには知ってもらわなければならなかった。 お飾りがなくても、お前らが殺したありすは素晴らしいゆっくりだったということを。 お前らは、罪のない、思いやりの深いゆっくりできるゆっくりを、 ただお飾りがないという、くだらない些細な理由で虐めた。 ゆっくりに満ちた未来が待ち受けていたゆっくりを、喜色満面でなぶり殺しにした。 『せいっさいっ』なんかじゃない、同族殺しのリンチ、暴力だった。 お前らが恃みとする正当性、「お飾りがなかった」という理由は、なんの意味ももたないこじつけだ。 それをお前たちには知ってもらわなければならなかった」 「ゆ゛………ゆ゛………ゆる……ゆるじ………」 「そうでなければ、僕が何をしても、「まりさたちなんにもわるいことしてないのにいいぃ!!」とお前たちは叫ぶだろう。 僕は、ゆっくりできる善良なお前たちにいわれのない暴力を加える悪漢ということになり、 お前たちは誇りと家族愛で自分たちを慰めながら死んでいくだろう。 そんなことは許さない。絶対に許さない。 お前たちが僕の愛する家族にしたことを、僕はお前たちにやり返してやるんだ。 お前達が叫ぶのは毅然たる抗議でも非難でもなく、みじめったらしい謝罪と懇願、命乞いでなければならない」 「あ゛……あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛………………!」 「いやあ、でもよかった!自分から罰を受けてくれるなんて! ありすをなぶり殺しにするような奴はゆっくりしちゃいけない、苦しめなければいけない。 お前達自身の口からそう言ってもらえてよかったよ! もし抵抗されたら面倒だと思っていたんだ。いや、スムーズに進んでよかったよかった」 「ゆ゛るじでぐだざいいいいぃぃぃ!!!」 まりさは床に頭を打ちつけて叫んでいた。 何度も何度も頭を打ち、喉を震わせて叫ぶ。 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!おにいざんのありずをいじべでごべんだざい!! おがざりがだいだげでいじべで、ごろじでごべんだざい!! ぼんどうにぼうじわげありばぜんでじだ!!ばりざだぢがっ、ゆっぐりじでばぜんでじだ!!」 「ああ、そうだね」 れいむもまりさに続いて頭を下げた。 「じらだがっだんでず!!ありずが、あんだにゆっぐじじでだだんで!!あんだにやざじいびゆっぐじだっだだんで!! おがざりがだいがら、わがらだがっだんでずううぅ!! ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆっぐじじでだいでいぶでごべんだざい!!」 「本当だねえ」 親に倣い、子供たちも詫びはじめた。 「ゆびぇええええん!!ぎょべんなぢゃいっ!!ぎょべんなぢゃいいい!!」 「ばりじゃがわりゅがっだでじゅうぅぅ!!ゆるじぢぇえええ!!」 「ぼうじばじぇん!!ぼうわりゅいごどじばじぇえん!!ゆっぐぢぃぃぃ!!」 「うんうん、もう二度とやっちゃだめだぞ」 お兄さんは腕を組んで笑っていた。 まりさは顔を上げ、おずおずと頼んだ。 「お、おに、いざん……ゆぐじで、ぐだざい…………?」 「え、駄目だよ。絶対に許さないよ。何言ってるのかな?」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ごべんだざあああいいいいい!!!」 「うんうん、さあ、罰を受けようね! みんなで森に行って、森のゆっくりたちに虐めてもらおうな!それが罰だよ、ゆっくり理解してね!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やべで!!おでがい!!でいぶだぢはどうなっでぼっ!! おぢびぢゃ!!おぢびぢゃんだげはあぁぁ!!」 「またそれかい?おちびちゃんだけは、か」 「ばいっ!!ばりざどでいぶがいじべらればず!!ごろざればずうぅ!! おぢびぢゃ、だげはっ!!おでがっ!!ごごでぐらざぜでぐだざいいいいぃぃ!!」 「ふざけんなよ、コラ」 低い声で返答し、お兄さんはまりさの頬を蹴り抜いた。 「あぶぎゅうっ!!?」 「ば!!ばりざああぁあ!?」 「ん、なに注文しちゃってんの?罰を受ける立場なんだろ? 一番大事なものだけは見逃してくださいって、なにそれ?お前たちはありすの何を見逃したの?ねえ?」 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆぐじでぐだざいいい!!」 「お前たちがありすを許していれば、僕も考えたんだけどねえ」 「ばんぜいじばじだっ!!でいぶだぢはげずでじだっ!!ぼうにどどじばぜん!! ごごろを、ごごろをいれがえっ!!おぢびぢゃんだぢはっ!!」 「うんうん、本当に悪いことをしちゃったねえ。だから罰を受けようね!」 「おぢびぢゃだげはっ!!おぢびぢゃっ!!」 「しつこいんだよ!」 「ゆぎげべぇ!?」 れいむの頭が勢いよく踏みつけられる。 衝撃でうんうんが漏れてしまうが、意に介する余裕はなかった。 「反省しましたとか、心を入れ替えるとかさ、だからなんなの? 本当に、ほんっと~~~~に悪いことをしたと思って反省してるんならさ、 どんな罰を与えられても喜んで受けるのが筋だろ?やったことの責任をとろう、ってまず考えるのが本当だろ? それが何?反省したから罰は勘弁してくれって?責任をとるのは嫌ですって? それって反省したって言うの?ねえ?ねえねえねえねえ」 「あぎっ!!いびぎぃ!!ゆぎひいいいぃいいびいいいい!!」 「ごべんだざいっ!!わるがっだでずっ!!びどいごどいっでるのはわがっでばずっ!! でぼ、でぼ、ばりざの、おぢびぢゃんは、どっでぼ……ゆっぐじじででっ!!」 「僕のありすもとってもゆっくりしていたよ。 そうかなるほど、ちょうどいいや、とってもゆっくりしているおちびちゃんたちなら僕のありすと見合うね!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛やべでえええええぇぇ!!!」 「え、本気で言ってんの? 僕の一番大事なものを壊しといて、お前たちの一番大事なものは見逃してって頼んでるのお前ら? そんなことして僕になんか見返りあんの?」 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!」 お兄さんの言うとおりだということはわかった。 何から何までお兄さんは正しく、お兄さんの言う罰をみんなで受ければ筋が通ることもわかった。 ここで逃げるのはゆっくりできない。ここで逃げるのは卑怯者だ。 でも、でも、それでも、それだけは。 おちびちゃん。 まりさたちの、ゆっくりした、おちびちゃんたちだけは。 「ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!おでがいじばず!!ぼんどうにおでがいじばず!!ゆぐじでぐだざいいいぃ!!!」 「へえ……それがお前らのルールなんだ」 言いながら、お兄さんはむしるように子れいむの一人を取り上げた。 「おしょらをとんでりゅみちゃいぃ!?」 「ゆああぁぁ!!おぢびぢゃ、おぢびぢゃあぁ!!」 「たとえばこんなことをしても許されるんだよな!!」 「ゆっびゃあああぁぁぁぁっ!!!?」 ガリガリガリガリ お兄さんが子れいむの顔面を壁に押し付けて擦り付けた。 「ごぎょおおおおおぉぉぉびびゃああああぁぁいぢゃばばばばばぎゅううううーーーっ」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やべでやべでやべでやべでええええぇぇ!!!」 「こんなことをしてもっ!!」 勢いよく振りぬき、子れいむの顔面を家族に見せ付ける。 子れいむの顔の右半分は痛々しい擦過傷にまみれ、口の右側が裂けて砕けた歯がこぼれ出し、 右の瞼がけずり落とされて眼球が消失していた。 「ゆ゛………いぢゃ………いぢゃ……あ゛………………びぎゅい゛い゛ぃぃ…………」 「おぢびぢゃーーーーっ!!おぢびぢゃあああああぁぁ!!」 「お前らは許してくれるんだよな! お兄さん悪いことしちゃったよ!かわいいおちびちゃん虐めちゃったよ! でも反省したからね!許してね!ゆっくり許してくれるよね!!ねえ!!」 「………!!………………!!!」 「ゆっくり許してもらったから次にいこうね!次も許してくれるよな!!反省するからさ!!」 「やべでええええぇぇぇおでがいいいいいぃぃぃ!!!」 次の子供を手に取ろうとしたお兄さんを、まりさが必死に制する。 肩で息をしながらお兄さんは手を止め、まりさに向き直ってつぶやくように言った。 「……選べ。 森に行って罰を受けるか、ここで僕の暴力をすべて許すか」 「…………………………!!!!」 まりさはぶるぶる震えて歯を食いしばり、大量の涙を流しながら、やがてがっくりとうなだれた。 (後編2へ)
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ぐずはきらいだよ! 5KB 「ゆっくりかりにいってくるね…」 「ゆっくりしないでいってきてね!ぐずはきらいだよ!!!」 「はやくいっちぇね!」 「あみゃあみゃいっぱいでいいよ!」 「はやくしちぇね!ばきゃなの?ちぬの?」 「ゆぅぅぅぅ…ゆっくりしてないおとうさんでごめんね…ゆっくりいってきます…」 妻子からの罵声を浴びて狩りに出かける親まりさ。 頬がこけ帽子も傷だらけのその姿は見るからにゆっくり出来ていない。 それに対して親れいむと子供達は肌はもちもち、飾りも鮮やかな美ゆっくり揃い。 「ぐずまりさがかえってくるまでみんなでゆっくりしようね!!!」 「おきゃーしゃんはとってもゆっくちしてるね!!!」 「おきゃーしゃんにしゅーりしゅーり♪」 「むーちゃむーちゃちあわしぇ~♪」 巣の中には十分な食料が蓄えられており、れいむと子供達は好きなだけ食べ、遊び、眠ってゆっくりする。 ゆっくりはゆっくりすることで活力を得る、十分にゆっくりすることでれいむと子供達はよりゆっくりしたゆっくりになっていく。 片やまりさは餌集めに駆け回っていた。 「ゆんしょ!ゆんしょ!たしかあっちにきのこさんがはえてたはずだよ…」 「ゆゆっ!ばったさんだよ!ゆっくりまりさのかぞくのごはんになってね!」 「ゆぅ…ゆぅ…これいじょうはゆっくりはこべないよ…そろそろおうちにかえるよ…」 帽子は詰め込まれた食料でパンパンに膨れており、まりさの狩りの腕が低くないことを物語っている。 「ゆっくりただいま…ごはんをとってきたよ…」 「ゆゆっ!おそいよまりさ!!!おちびちゃんがおなかをすかせてゆっくりできなくなったらどうするの!?」 「ゆぅぅぅぅ…おそくなってごめんね…」 「ごめんですんだらてんぐぽりすはいらないよ!!!ばかなの?しぬの?」 巣の中の子供達は腹を空かせているどころか食ったら出すを数回繰り返して今はゆっくり夢の中。 酷い言われ様だがまりさは怒りも反論もしない。 「ゆっくりしてないでうんうんをかたずけてね!ぐずはきらいだよ!!!」 「ゆっくりりかいしたよ…」 まりさは帽子の中の食料を貯蔵庫に移すと、巣に撒き散らされたうんうんを口の中に集めていく。 家族が出したものとはいえゆっくりにとっては汚物、何度やっても耐え難い吐き気に襲われるが 木の枝を咥えてうんうんを一つ一つ突き刺して掃除していては時間がかかり、れいむの機嫌を損ねてしまう。 「うんうんをかたずけたよ…まりさもおちびちゃんたちとすこしだけゆっくりさせてね…」 「ゆっくりおことわりだよ!れいむのおちびちゃんにぐずがうつるよ! まりさはぐずなんだからゆっくりしないでばんごはんをかりにいってね!!!」 「ゆぅぅぅ…ゆっくりいってきます…」 子供とゆっくりした時間を過ごすどころか休憩さえ許されずに巣から追い出されるまりさ。 自分が日中ひたすら集めて回った食料をただ食い散らかし 子供と遊んでいるだけのれいむになぜここまでの仕打ちを受けなければならないのか? だがまりさは自分の置かれた状況がおかしいとは考えない。 れいむはゆっくりしている。 おちびちゃんたちもゆっくりしている。 まりさはゆっくりしていない。 ゆっくりはゆっくりするもの。 ゆっくりしていないまりさはゆっくりしているれいむのいうとおりにするべき。 それがゆっくりしている。 以前はまりさもゆっくりしていた。 周りのゆっくりたちは皆、まりさを狩りの上手なゆっくりしたゆっくりだと言ってくれた。 れいむに一緒にゆっくりしようと言ったらすぐにゆっくりしてくれた。 れいむとすっきりしてゆっくりした子供たちが生まれた。 子供たちのために今までよりも狩りを頑張った。 多少ゆっくりする時間が減ったが家族がゆっくりできていれば自分もゆっくりできた。 子供達の成長に合わせてさらに狩りの範囲を広げた。 慣れない狩り場で肌に怪我をしたり、帽子を引っ掛けて傷を作ったりもしたが よりゆっくりしたゆっくりになっていく家族のためならゆっくりできる、そう思っていた。 だがある日、子供が漏らした言葉にまりさは打ちのめされた。 「おきゃーしゃん、どうちておとーしゃんはゆっくりしてないの?」 自分はゆっくりしてない、それはゆっくりという存在の全否定。 いつの間にかまりさはれいむからも子供達からも「ゆっくりしてないゆっくり」として完全に見下されていた。 ゆっくり日向ぼっこをする時間や子供とゆっくり遊ぶ時間と引き換えに巣に食料を積み上げた結果がこれだった。 「誰のおかげでゆっくりできているのか」という理屈は 原因と結果の関係という論理的思考を持たないゆっくりには意味を成さない。 『ゆっくりしているものはゆっくりしている』それがゆっくりの価値観の根幹であり全てだからだ。 自分がゆっくりしていないゆっくりだと認識させられたまりさはもうゆっくりできない。 ただゆっくりした家族のために食料を集め続ける、それがゆっくりしていない自分に出来る唯一の事だから。 ゆっくりすることがゆっくりの活力、ゆっくりできないゆっくりはどんどん弱っていく。 遠からずまりさは永遠にゆっくりするだろう。 それがゆっくりできなくなったゆっくりに許された最後のゆっくりなのだから。 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!かわいそうなんだよ!だからやさしくしないといけないんだよ!!!」 「開口一番それかよ…『ゆっくりしていってね!!!』だろふつーは…」 「れいむのまりさはぐずでげすなゆっくりだったよ!!!れいむをおいてどこかにいっちゃったよ!!!」 「そのわりにはお前はでっぷり肥えてるように見えるんだが…だいたい子供はどこだよ?」 「まりさがごはんをとってこないからみんなえいえんにゆっくりしちゃったよ!!!」 「お前が狩りに行くという選択肢は無かったのか?…つーかその子供も食ったろお前」 「なにをいってるのかゆっくりわからないよ!そんなことよりれいむはおなかがすいたよ!あまあまでいいよ!!!」 「ゲスとつがいになった癖になんでこんな贅沢で我侭になるんだ?…ほんと理解できんわ…したくもないけどさ」 「ゆっくりしないではやくしてね!ぐずはきらいだよ!はやくしないと(グシャッ ◎終われ トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る グレネードぶち込みたいなこのデブは -- 2014-07-30 22 44 11 やっぱり自分でやっといて他は番のせいにする どぐずにあげるあまあまなんてないよ ほしい?じゃあ自分のまむまむでもくっとけよ ゆっくりしてないのはぐずでいぶだよ! 永遠にゆっくりさせてあげるからかんしゃしてね! やさしくってごめんね! -- 2014-05-09 21 48 39 天狗ポリスワロタwwwwwwww妖怪大裁判かよwwwwww -- 2013-06-08 19 22 53 ざまあwwwwwwwwゆ虐好きの気持ちが分かる -- 2012-07-07 21 19 39 ぐずなのはれいむなんだねー。わかるよー。 -- 2012-02-26 14 28 45 いなかものなでいぶね! -- 2011-10-31 12 35 34 おぉ、カオスカオス♪ -- 2011-07-03 20 26 44 んほぉぉぉぉぉ -- 2011-01-16 14 04 29 ちーんぽ!! -- 2010-09-28 20 31 42 ちぇんだらけだなww ちぇぇぇええええん!! -- 2010-09-27 01 14 09 このれいむはゆっくりできないどげすなんだねーわかるよー -- 2010-09-23 20 23 00 ゆゆ?肝心なせいっさい部分が抜けてるよ! ゆっくりしないでかいてね!すぐでいいよ! -- 2010-09-21 02 40 42 せいっさいの部分をもっと書いて欲しかった -- 2010-07-20 10 03 21 こぼねー♪ -- 2010-07-16 00 43 13 ゆふふ、らんもちぇんたちもうれしそうね。 ゆかりんもゆっかりできるわ。 -- 2010-07-15 07 18 30 ここはちぇんがいっぱいだぞーーー!! ちぇえええええええん!!!! -- 2010-07-07 11 37 28 でいぶはぜんぶしぬべきなんだよーわかるよねー? -- 2010-06-26 09 59 32 げすはみんなえいえんにゆっくりするべきなんだよー -- 2010-06-18 01 18 32 まりさもさっさとわかれよー -- 2010-06-16 04 51 15 このれいむはどくずなんだね。わかるよー -- 2010-05-25 01 19 32
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『初めての正義の味方』 25KB 愛で いじめ 不運 日常模様 同族殺し 赤ゆ 子ゆ れいぱー 現代 ぺにまむ 初投稿です。お目汚し失礼します。 前半愛で 後半いじめとれいぷ 理不尽バッドエンドなのでご注意ください 日向にいると少し汗ばむ位の春の陽気。うららかな午後。 ある公園の、人目につかない木陰のダンボールから子れいむが這い出てくる。 「ゆっきゅり…ゆっくりいってきます!!」 まだ赤ちゃん言葉が抜けきらない子れいむは、ダンボールハウスの中の母れいむに、元気良く声をかける。 父まりさは狩りに出ており不在で、母れいむは、生まれて数日の赤れいむ達が午後のお昼寝たいむで、傍を離れられない。 退屈でたまらない子れいむは初めてのひとりでお散歩に行くようだ。 「ゆ!ゆっくりいってらっしゃい!にんげんさんやねこさんにきをつけるんだよ!こうえんさんからでないでねっ!」 母れいむは、とても心配ながらも子れいむに注意を促して、送り出す。 「ゆゆっ!れいむのぼうっけんっがはじまるよ!れいみゅ…れいむゆうっかんっ!でごめんねっ!!」 育ちざかりの子れいむは好奇心旺盛。 見る物、聞く物、全てが楽しくて刺激的。 それまで親の目の届く範囲でゆっくりすることしかできなかった子れいむには、 自由に遊べる今日のお散歩への期待に胸(?)が膨らむ。 きっと今日は忘れられない一日になる。 帰ったら冒険譚を妹達に聞かせてあげよう、と子れいむは妹達のゆっくりした笑顔を思い浮かべ、飛び跳ねる。 「ゆっくりしていってね!」 巣の近くには噴水がある。 水辺は危険なので、親ゆっくりが水を調達しにいく以外は、子ゆっくり、赤ゆっくりは近づかせてはもらえない。 だから子れいむは、ぼうっけんっの第一歩として、噴水を見に行くことにした。 「ゆわわぁ~おみずしゃんきれい…たいようさんとおみずさんできらきらだよ~ ゆ!にんげんさんもおひるねちゅうだよ!しずかにしないといけないよ!そろ~りそろ~り」 噴水近くのベンチで昼寝中の男性に気づき、子れいむ自身としては静かに噴水を離れる。 大声を出しては意味がないのだが、子れいむの気遣いが伝わったのか伝わってないのか、 男性が目を覚ますことはなかった。 「ぶらんこさん!ゆ~らゆ~らの~びの~び♪ ゆゆぅ~ん ゆっくりしてるよ~ こんどいもーちょたちもつれてくるよっ! いっしょにの~びの~びするよ~ゆゆ~ん♪」 子れいむは、公園に遊びに来ていた子供が降りたばかりで、まだ揺れているブランコを発見した。 いつもは親ゆっくりと一緒に遠目に眺めているだけだったブランコを間近にする。 可愛い妹達と一緒だったらきっともっと楽しいだろうと、 もみあげをぴこぴこさせながら、ブランコの揺れに合わせて自分も体を左右に揺らす。 「ゆぅ~ん♪ゆゆ~ん♪ゆ~らゆ~らの~びのび~♪ぶらんこさんゆっくりー!」 噴水もブランコも人間が集まりやすい場所であり、そこに近づくなどもってのほかで、 親ゆっくりが一緒ならきっと酷く怒られることだろう。 しかし親に怒られるような危険な場所は、子供にとっては楽しい場所であったりもする。 砂場では、同じく公園に住んでいる他の子ゆっくり、赤ゆっくり達とこ~ろこ~ろして遊んだ。 「れいむもこ~ろこ~ろするよっ!こ~ろこ~ろ♪ゆふふん♪」 「ゆゆぅ~~~れいみゅおねーしゃんすっごくゆっきゅりしちぇるよぉぉ~れーみゅもも~っとこ~りょこ~りょしゅるよ!」 「こ~ろこ~ろ♪」「こ~りょこ~りょ♪」「こ~りょこ~りょ♪」「こ~ろこ~ろ♪」「「「「ゆっくり~♪」」」」 みんな揃ってゆっくり声をあげる。 もみあげ、おさげをぴこぴこ、わさわさ。 おしりをぷりんぷりんもるんもるん。 くるりと回ってパチっとウィンク。 周りで微笑みながら見ていた親ゆっくり達は、子ゆっくり達のあまりのゆっくりぶりに、 自身もゆっくりして幸せを噛み締めている。 中には感動でぷしゃっとうれしーしーを漏らす親ゆっくりもいた。 あっちこっち見て回り、散々ぼうっけんっを満喫した子れいむは、いつしか公園の出入り口にまで来てしまっていた。 子れいむは母れいむの言葉を思い出す。 「かわいいおちびちゃん!まちでだれもがふりかえるあいらしいおちびちゃん! こうえんさんのそとにでたらとってもこわいこわ~いだよ!ぜったいにでたらいけないよっ! とってもかしこいおちびちゃんならまもれるよね!と~ってもかしこいおちびちゃんならぜったいにまもれるよねっ!」 妙な誇張があるが公園を出てはいけないということはちゃんと記憶していた子れいむ。 しかし、初めて見る事物に興奮して膨らむ飽くなき好奇心は、子れいむに容易く禁を破らせる。 「ゆうっかんっ!なれいむはそとのせかいをみてけんぶんをひろめるよっ! れいむのふろんってぃあすぴりっつはもうだれにもとめられないよっ!」 興奮のあまり公園の出入り口でもみあげをぴこぴこ♪、おしりをぷりんぷりん♪と愛らしく振る。 「ゆ~~~」 やがて体を縮め、身の内に力を巡らせ、そして 「ゆっくりしていってねっっ!!!」 ジャンプ! そのまま公園の境界線を越え、外に出る。 「このいっぽはちいさいけどぜんせかいにとってはいだいっ!ないっぽだよっ!」 キリッと高らかに、そして誇らしく宣言する。 とうとう公園の外に出てしまった子れいむ。 母れいむの言いつけに背いてしまった罪悪感と、それ以上に新たな世界に踏み込んだ高揚感に体をふるふると震わせる。 さて、公園の外に初めて出た子れいむには、特に指針もないので、どこへ行こうか考えあぐねているようだ。 きょろきょろと辺りを見回していると、コンビニの袋を提げ、スマートフォン片手にのろのろ歩いている青年が目につく。 「あのおにぃさんについていくよっ!ちかづかなければだいじょうぶっだよっ!」 公園の外に出てはいけないという母れいむの言いつけに反した以上は、 せめて人間に近づいてはいけないという教えだけは守ろうと思ったのだろう。 少し距離をあけて青年の後に続く。 母れいむの教えは、そういった距離的に近づくなという意味ではない。 そもそも関わるな、という意味であったのだがこの子れいむにはうまく伝わらなかったのかもしれない。 青年はスマートフォンを弄りながら歩いているので、足の遅い子れいむでも急ぐ必要もなく追いかけることができた。 青年の家は、公園の出入り口から道を真っ直ぐ行き左手にある、普通の一軒家であった。 門を開け、自宅の鍵を開け、特に周囲へ注意を払うことなく家に入る。 子れいむは閉まっている門の下の隙間より中に入り、初めて見る家の大きさに圧倒される。 「ゆわわわわ…これが…にんげんしゃんの…にんげんさんのおうち…とってもゆっくりしてるよ…」 地面にどっしりと構えられている家を見て、子れいむは自分の家を思い出す。 強くて偉大な父まりさが苦労して建てたと語るダンボールハウス。 それより更に大きくて頑丈そうな人間さんのお家。 こんなお家を建ててしまう人間さんとは一体どんな生き物なのか、子れいむは更に興味を掻き立てられた。 「ゆ!こっちにみちがあるよ!」 玄関先から庭の方へ回り込めるようになっており、子れいむはそこを辿り、庭に出る。 すると先ほどの青年が、庭に面した部屋でテレビをつけたまま、遅めの昼食をとっているのが、ガラス越しに見える。 どうやら青年はテレビを観るでもなく、つけっぱなしで食事を摂っているようだ。 子れいむはまず青年の食べているものに気を取られたが、更に興味深いものに目を引かれる。 テレビ画面だ。 そのテレビでは、 『もみあげが三本ある!? TRI-MOMIAGE OF DEATH れいむ! あいつの土下座をみればゲスゆっくりも心震わせる! ゲザーまりさ! どんなゆっくりのぺにぺにもおっきさせる! ぺにまらありす! 続、三ゆんが斬る!』 ゆっくりを主人公にした特撮時代劇というよくわからないジャンルの番組の宣伝が映っていた。 ちなみにこの番組、何故かシリーズ化されており、この作品で五作品目となっている。 一話の制作にゆっくりが2、3000匹は費やされているとか。 その殆どが同じキャラクターの代替で、主人公三ゆんも前のシーンと、次のシーンと、更に次のシーンではそれぞれ別のゆっくりが演じているというのも全く珍しくない。 話を戻すが、子れいむはテレビの番宣でゆっくり達がゲスゆっくりと闘って懲らしめている姿を観て、心をときめかせる。 しかし人間への警戒も忘れてただ見入ってしまっていたのがまずかった。 家の中の青年に見つかってしまったのだ。 「ん?ゆっくりがいる?どこから入ってきたんだろ…」 青年は、食事を中断し、立ち上がってガラス戸をそっと開けて、声をかける。 「おい、お前なにやってんだ?」 「ゆゆっ!?にににんげんしゃん!??ごごごめんなしゃいっ!かってにおうちにはいってごめんなしゃいっ!」 即座に地面に頭をこすり付け謝る子れいむに、青年は特に気を悪くするでもなく声をかける。 「いやだから何してんの?って聞いてんの」 「ゆ!その…ぴかぴかしゃんがおもしろくて…その…」 子れいむはしどろもどろになりながらも、もみあげでテレビを指しながら答える。 「ああ、テレビね。面白いのかこんなんが。何だったら観ていけば?」 「ゆ?」 子れいむは人間の恐ろしさをまだ知らない。 そのため、人間に見つかっても潰されるかも…ということには思い至らない。 しかし母れいむの、人間に近づいてはいけない、という教えを完全に破ったこと、 勝手に人間のお家に入り、家主に見つかったこと、 これらの事実を前にして、母れいむに、人間におしおきされてしまう、という恐怖にとらわれていた。 それに反してこの人間はおしおきどころかお家に入れてくれて、てれび?を観させてくれると言う。 何だかよくわからないけど人間には怒られずに済みそうだと、子れいむは少し安心する。 青年は 「でも新聞紙を敷くからその上からは出るなよ?」 と、流石に子れいむの汚れは気になるのか新聞紙をテーブルに敷き始め、その上に子れいむを乗せる。 子れいむは、初めて人間のお家に入り、不安と期待に胸を高鳴らせ、キョロキョロと部屋の中を見回している。 だがすぐに例の番組が始まったようで、青年は子れいむにテレビを観るよう促す。 子れいむは食い入るようにテレビを観て、青年はのんびりとテレビを観るともなく食事を再開する。 ストーリーは正義の味方の三ゆんが、善良なゆっくり達を苦しめる、ゲスゆっくりを懲らしめるというもの。 やがてコマーシャルに入り、興奮冷めやらぬ子れいむは青年にまくしたてる。 「ゆ~!と~ってもおもしろいよっ!こんなおもしろいものははじめてだよっ!むれのみんなにじまんできるよっ!」 「まだ半分だぞ。しかしこんな番組でもゆっくりとっては面白いんだな。ああ牛乳プリン食べるか?」 「ゆ?ぷりんさん?それおいしいの??」 公園の野良として生まれてこの方、甘いものなど食べたことがない子れいむは、プリンと言われてもその味は想像すらできない。 青年は食後のデザート用に買ってきた牛乳プリンを一匙すくって試しに子れいむに食べさせてみる。 「し…………………ちあわちぇ――――――――――――――――――――――――――――――――― しし――ししし―――しししあわちぇ――――――――――あまあまちあわちぇ――――――――――――――――」 ぷしゃっ!ぷぷぷしっ!ぷしゃっっ!とうれしーしーをちびる子れいむ。 青年は新聞紙を敷いておいて良かったと安堵しつつも、子れいむの一瞬意識を失うかのような素振りに慌てる。 しかし直ぐに幸せと絶叫する子れいむの反応に青年は一息つく。 「あまあまっあまあまっしあわしぇ―――おにぃさん!れいむしあわしぇーだよっ!こんなものたべたことないよっ! きょうははじめてっがいっぱいだよっ!」 「初めてがいっぱい? ああ、そう、残り食べていいぞ。あと、テレビ始まるぞ。」 青年は残りを子れいむに与え、コマーシャルの終わりを告げる。 子れいむは牛乳プリンをつるんと飲み込み、しあわせを叫びながらもテレビに向き直る。 青年はスマートフォンを弄り始め、子れいむは佳境に入り始めた番組に集中する。 暖かな昼下がりのこの上なくゆっくりとした時間であった。 「おにぃさん!ゆっくりおじゃましました!あとぷりんさんありがとう!」 「ああ、そう。でも人間の家に気安く入ると酷い目に遭うぞ。今後は気をつけろよ。」 「ゆ!ゆっくりりかいしたよ!おにぃさんありがとう!」 ちゃんと理解したのか、してないのか、子れいむは良い返事を返し青年の家を出る。 青年は大きく欠伸をしてそのままソファに寝転がる。 余程暇だったのだろう。 子れいむにさしたる興味も抱かず、寝入り始めた。 「ゆっゆっゆゆ~ん♪せいっばいっ!ゆぁーとーぅゆゆゆゆゆーっ」 テレビで観たアクションを真似して子れいむは飛び跳ねる。 気分はスーパーヒーロー、正義の味方。 しあわせいっぱい、ゆめいっぱい、子れいむは公園への道をゆっくりと歩く。 「わがらないよ゛ー!」 「ゆ?」 子れいむの耳に叫び声が届く。 同じゆっくりのちぇんの声だ。 子れいむは声が聞こえた方向へあんよを向ける。 声がしたのは道路わきの細い路地。 子れいむは念のため、陰に隠れて路地の様子を伺ってみる。 「さっさとだすのぜ またいたいめをみたいのぜ?」 「わがっわがらないよ゛ー!!ごればぢぇんのなんだよ゛ー!みのがじでほじいよ゛ー!!」 「ちっ ききわけのないやつなのぜっ!」 どうやら奥にいるちぇんが、手前の柄の悪いまりさに、カラまれているようだ。 まりさがちぇんをおさげでひっぱたく。 「にゃがっ!にぎっ!いだっいだいんだよ゛っやぶっやべでぇぇぇ」 「わかったらさっさともっているあまあまよこすのぜ そしたらちぇんはなぐられずにすむ まりさはあまあまをたべられてしあわせ いいことづくめなのぜ りかいできるのぜ?」 子れいむは理解した。 あのまりさはゲスだ、とびっきりのゲスだ。 ちぇんを助けてあげたい。 しかし辺りを見回しても大人のゆっくりはいない。 ここは公園の外であり、そもそもゆっくり自体見かけない。 助けを求めようにも誰もいないのではどうしようもない。 「ゆゆ…どうしよう………しょうだ!こうえんしゃんまでたすけをよびにいくよ!しゅぐにいくよ!」 慌てて子れいむは踵(?)を返しかけるが、 「ぢゅぶぶぶぶ ひゃぶでぇぇぇ ぢぇんがづぶれるぅぅぅ」 ちぇんの叫びを聞き、思いとどまる。 「れいむは…れいむはこわいよ…こわいから たすけをよぶよ… でも…でも…それはいいわけだよ…ここからにげるためのいいわけだよ…」 子れいむは体をぶるぶると震わせる。 少しおそろしーしーも漏らしてしまう。 しかし人間のお家で観たテレビの内容を思い出す。 そう、正義のゆっくりが悪いゲスを懲らしめる物語だ。 あの物語を思うと、ほんの少しだけ勇気が湧いてくる。 なんてかっこいいのだろう。 あの三ゆんのようになりたい。 ゲスをやっつけて困っているゆっくりを救いたい。 少しの逡巡の後、子れいむはキリッと顔を引き締める。 あんよは震えて力が入らない。 のどはカラカラで、浅い呼吸を繰り返している。 自慢のもみあげも少し萎れて見える。 でもここで退いたらゆっくりがすたる! 「しょ そこまでだよっ!!」 子れいむは震えるあんよに喝を入れ、路地に躍り込み、ぽんぽんの底から声を張り上げた。 ゲスまりさは面倒臭そうに振り返る。 ちぇんの方は、手酷くやられているのか、右目は瞼が腫れて塞がっており、 開いている左目で子れいむの姿を捉える。 「ゆぁ~~~ん?おこさまはおよびじゃないのぜ さっさときえるのぜ やさしいまりささまでもおとなのやることにくちをだすいけないおこさまにはきびしいのぜぇ?」 「わがるよー…たすけがきたんだねー…」 「おっまえはっ!だまっているのぜっ!」 「に゛っ!」 ゲスまりさは子れいむを気にも留めず、ちぇんの頬をおさげで張る。 過剰な暴力を目の当たりさせることで、子れいむの気力を萎えさせようとしているのだ。 しかし子れいむは少しちびりながらも食い下がる。 「ぼ ぼうりょくはいけないんだよ!たゆんのあまあまをうばうなんてゲスのやることだよっ!」 「…」 ゲスまりさは溜息をつきながら振り返り、脅しただけで済ませてやろうというのにこのガキは、 とイラつき交じりに子れいむを睨め付ける。 ゲスまりさは自分のやってることがゲスなことだなんてとうにわかりきっている。 わかった上で、やってるのだ。 なのでゲスだなんだと言われた所で腹が立つことはない。 自分のやっていることをしつこく邪魔されることにムカッ腹が立つのだ。 しかし、と目を細めて子れいむの全身を眺める。 なかなかどうして、まだ幼さの残る容姿だが、健康そうで髪も艶やかだ。 ゲスまりさは子れいむに全身を舐めまわすような視線を送る。 「ゆ…」 子れいむは無言で睨んでくるゲスまりさが怖くて何も言い出せない。 何も言ってこない方がかえって恐ろしい。 子れいむが勇気を振り絞ってなおも言い募ろうとしていると、 ゲスまりさはニヤニヤと下卑た薄笑いを浮かべ始めた。 「おちびちゃんはそこのこうえんにすんでいるのぜ?」 言いながら近づいてくる。 子れいむはあんよが竦んでうまく動けない。 「そんなにこわがらなくてもいいのぜ~まりさはおちびちゃんにしかられてかいっしんっ!したのぜぇ」 子れいむのすぐ傍までゲスまりさがやってきた。 このゲスまりさ実に汚い。 歯は何本か抜け落ちており、更に黄ばんでいて、口臭が実に臭い。 おさげには、黒いものがこびりついているが、よく見るとこれは餡子だ。 今までに張り倒してきたゆっくりの返り餡であろうか。 そもそもおさげの先に何か仕込んでいるのだろうか、ぶらぶらと重みのある振り子のように揺れている。 そのおさげを子れいむの背中に回しながら言う。 「おちびちゃん まりさはこのあたりにきたばかりでまだかってがよくわからないのぜ だからごはんをてにいれようにもかりばがどこにあるかもよくわからないから ちょ~っとちぇんにこのあたりのかりばについておしえてもらっているところだったのぜ」 などと言いながら、路地の奥へと子れいむを連れて行く。 「ゆ…そうだとしてもぼうりょくはいけないことなんだよ…」 子れいむは何かまずいと思いつつも体が竦んで状況に対処できない。 「わかるよーよくわかるよーのぜ~www だからまりさははんせいしたのぜ~ ちぇんにあやまるところをおちびちゃんにもちゃんとみていてもらいたいのぜ~」 「ゆゆ!わかったよ!わかったからこのおさげさんをはなしてねっ!しゅぐでいいよ!」 子れいむはげすまりさのおさげを振り払おうと身をよじる。 しかし、おさげは子れいむの体にガッチリと固定されていて逃げられない。 どういうことだと子れいむはゲスまりさの顔を見上げると、 ゲスまりさは薄笑いを吹き消して無表情で子れいむを見下ろしている。 その完全に無機質な無表情に子れいむは、餡の底から恐怖を憶え、必死に逃げようとするがおさげに阻まれる。 それどころかゲスまりさは体を使って子れいむの逃げ道をふさぎ、尚且つのしかかってきた。 「ゆーゆゆ!おもいよっどいてねっどいてねっくさいよっきたないよっ」 「…」 ゲスまりさは、無言で子れいむを仰向けに抑え付け、おさげを子れいむの口に押し込み、黙らせる。 「おとなしくしていればすぐにおわるのぜ…」 「…!ゅ…!もひゅ…!…っ…!」 口を塞がれても子れいむはじたばたと暴れるが、何しろ子れいむとゲスまりさでは体格が違う。 子れいむはあっさりと組み伏され、ゲスまりさは己の顎の下辺りを子れいむの同じ場所にこすり付け始める。 (ゆゆぅぅぅくしゃいぃぃぃきちゃないぃぃぃなななんかむずむずするよ! やめてね!やめてね!なんかいやだよ!きもちわるいよ!) 「ころしたりはしないからあんしんするのぜっ」 子れいむにはまだ繁殖の知識はない。 しかしゲスまりさのやることに生理的な嫌悪感を抱く。 やがてゲスまりさのこすり付けている部分が隆起し始め、何やら小汚いカスがこびりついた得物が屹立する。 そして得物を子れいむの恥ずかしい場所にあてがい、軽く出し入れする。 先走りの液体だろうか、ぬめぬめとゲスまりさの得物がぬめりを帯びる。 (ゆゆゆゆゆゆやめてねっやめてねっ ちぇん?さっきのちぇんは?たすけてねっれいみゅをたすけてねっ!) 子れいむは必死に身をよじり、ちぇんがいた方向を見るが… 「あのちぇんならいまさっきにげっちまったのぜぇ おちびちゃんがこんなめにあっててもしらんかおだったのぜ たすけてそんしたのぜ? まあまりさにとってはどっちでもいいのぜ ちょっとたまってたところだったのぜぇゅへへへ…」 ゲスまりさは、子れいむの視線を読み取り、ちぇんがさっさと逃げてしまったことを教えてやった。 万が一ちぇんが助けを呼びに行ったとしても、その頃には事は終わっている。 「おちびちゃんは“ばーじんさん”ってしってるのぜえ?おちびちゃんのはじめてっていういみなのぜ そのおちびちゃんのはじめてをまりさがありがたくちょうだいするのぜぇ」 ゲスまりさは前戯は済んだとばかりに得物を子れいむに差しこんだ。 (ゆぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぁぁぁあぁぁぃぢゃぃぃぃ) 子れいむは涙を流しつつ全てを後悔した。 (にゃんでこんなことになっちぇるの… にゃんであそこでちぇんをたしゅけようなんておもっちゃの…にゃんでちぇんはれいみゅをたしゅけてくれにゃいにょ… にゃんでれいみゅはこうえんしゃんのおそとにいるにょ…にゃんでこんにゃにきもちわりゅいにょ…にゃんで…) 子れいむの目が虚ろになり、大人しくなったのを見て、ゲスまりさはおさげを子れいむの口から外す。 そして乱暴に体を子れいむにぶつけたり、得物を子れいむの内部でこねくりまわすように体を揺らす。 「ゆはっ ゆはっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ 」 「 ゆっ… ゆっ… ゆっ… ゆっ… ゆっ… 」 子れいむの顔にゲスまりさの荒い吐息がかかる。 臭い吐息に臭い体をこすり付けられて、綺麗好きの子れいむには悪夢のようだ。 子れいむの目の前でゲスまりさの顔が嗜虐の快感に大きく歪む。 「ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ ゆふっ 」 「 ゆんっ… ゆっ… ゆえっ… ゆっ… ゆっ… 」 子れいむはされるがままで、逃避のためか今日の出来事を思い返す。 きらきらの噴水さん。ゆっくりしたぶらんこさん。砂場でみんなでゆっくり。あまあまぷりんさん。 可愛い妹達。あったかくてやわらかいおかーさん。怒ると怖いけどやさしいおとーさん。 …テレビさん…。 「ゆふっゆふっゆふっゆふっ」 ゲスまりさの体が小刻みに揺れ始める。 達しつつあるのだ。 「ゆふっゆふっゆふっゆ―――――――っ!すっきり――――――――――ぃっ!!」 ゲスまりさはすかさず得物を子れいむから引き抜き、子れいむの額にかからないように、 しかし子れいむの顔からはこぼれないように得物からほとばしる液体をかけ続ける。 得物に残った液体もおさげでしごいて子れいむの顔にこすりつけたり、口の中に突っ込んでなすりつける。 子れいむの体では身ごもると耐え切れずに死んでしまう可能性が高い。 先の言葉通り死なないように妊娠する箇所を避けているようだ。 「おちびちゃん!なかなかいいぐあいだったのぜ!ひさびさにすっきりーなのぜ! じゃあまりさはさっさとにげるのぜ!ゆっくりしていってね!」 残された子れいむは声もなく泣き続ける。 ほんの10分程度前と今とではもう何もかもが違う。 かけられた液体をぬぐうこともせず、子れいむは、痛む体の一部をかばいながら、公園へと帰って行った。 お家に辿り着いた子れいむは、父まりさと母れいむに泣きついた。 子れいむの有様を見た母れいむは半狂乱になる。 やはりひとりで遊びに行かせるべきじゃなかった、自分が馬鹿だった、と髪ともみあげを振り乱す。 父まりさが、母れいむを辛抱強く落ち着かせ、子れいむから詳しい話を聞き出す。 子れいむには辛いかもしれないが、特にゲスまりさの特徴については仔細に聞き出した。 話を聞いた父まりさは、悲惨な目に遭いつつもちゃんと帰ってきた子れいむを褒め、 自身は赤ゆっくり達の世話を、母れいむに子れいむの身繕いをさせる。 そして今夜は、子れいむは母れいむと一緒に寝ることとなった。 身も心も擦り減った子れいむは、母れいむに抱かれ、安心して眠りについた。 父まりさは、この件を公園の群れに有りのままを報告するべきか、 子れいむを慮りゲスまりさへの注意喚起ですませるか頭を悩ませる。 翌朝、少し塞ぎがちな子れいむを母れいむは気晴らしにお散歩に誘う。 父まりさは今日は狩りを休み、赤ゆっくりの相手を務めることにした。 「ゆーおちびちゃんきょうもいいてんきだねっぽーかぽーかあったかさんだよ~」 「ゆん…ぽーかぽーか…」 母れいむは子れいむを元気づけようと頻りに声をかけ、微笑みかける。 しかし母れいむは、同じ公園に住む他のゆっくり達の様子がおかしいことに、気づく。 何故かどのゆっくりも遠巻きに母れいむ達親子を見ているのだ。 何だろうと視線を送ると皆目を逸らす。 何となくゆっくりできない雰囲気だ。 「ゆゆ~みんななんだかおかしいよ…ゆゆっ!?」 母れいむは普段懇意にしているありすを認め、声をかける。 「ゆっくりしていってね!ありす!きょうはいいおてんきだねっ」 「ゆっくりしていってね ええ…いいおてんきね…」 ありすはちゃんと挨拶を返すも視線を逸らしがちだ。 母れいむは思い切ってありすに尋ねた。 「ゆぅありす…なんだかこうえんのみんなのようすがおかしいよ…それにありすも…なんだかゆっくりしてないよ…」 「えっ そ そうね ごめんなさい とかいはじゃなかったわね… …このままだまっているのはもっととかいはじゃないからいうわね…お おちついてきいてね…」 いつもと違って歯切れの悪いありすを訝りながらも母れいむはコクリと頷き、先を促す。 「その おたくのおちびちゃんね…とおりすがりのゲスまりさにれいぷされたんですってね…おきのどくに…」 母れいむは顔が真っ青になるが、子れいむの方は紙のように真っ白で小刻みに震えている。 ありすは親子の様子を痛ましく思いながらも先を続ける。 「なんでみんながしってるかというとね それをもくげきしたっていうちぇんがいてね みんなにはなしてまわったそうなの さいしょはみんなしんじなかったけど おたくのおちびちゃんが…その…いたましいすがたでおうちにかえってくるのを おおぜいがもくげきしてね…じゃあやっぱりほんとだったんだねって…あ!おちびちゃん!!」 子れいむはたまらずに駆け出す。 「ゆゆ!おちびちゃん!まってね!ありす!ごめんなさい!おちびちゃんをおいかけるね!」 子れいむを追って、母れいむも駆け出す。 公園のみんなの視線がゆっくりできないものなのは仕方がない。 ばーじんさんを番に捧げることができなくなった子れいむを、 汚らわしいと見られても仕方がないかもしれない。 制裁対象にはならないだけマシかもしれない。 けれどこの仕打ちはあんまりではないか。 子れいむは、恐らくだが言いふらしたちぇんを助けようとしたのに、 それなのにこの仕打ちはあんまりではないか。 母れいむはちぇんやゲスまりさへの憤りを胸の内に溜めながら子れいむを追いかける。 果たして母れいむは子れいむを見つけた。 公園の片隅でこちらに背を向けてうずくまっている。 母れいむは努めて平静に子れいむに話しかける。 「おちびちゃん おちびちゃんはれいむとまりさのおちびちゃんだよ かわいいおちびちゃんだよ ほかのゆっくりになんといわれようとたいせつなおちびちゃんだよ おかーさんもおとーさんもおちびちゃんといっしょにいられてしあわせいっぱいだよ もしおちびちゃんがどうしてもというならおひっこしもしたっていいんだよ おとーさんはすごいんだからねっ おうちのいっけんやにけんなんてすぐにたてられるよっ すごいねっ だからおちびちゃんはゆっくりしていってね おとーさんとおかーさんといもーとたちとゆっくりしていってね」 母れいむは、子れいむに近づいて、もみあげで優しく抱きしめる。 労わる様に優しくすーりすーりする。 子れいむの将来が明るくなるように、幸せになれますように、と心から願う。 しかし、 「おちびちゃん?」 いつまでたったも子れいむからの返事はない。 母れいむは嫌な予感で叫びだしそうになるのをこらえながら呼びかける。 「おちびちゃん?こっちを…むいてね?おちびちゃん?」 母れいむはもみあげで子れいむをゆっくりとこちらに向かせる。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁゆぎゅっゆぎっぎぎぎぎ…」 子れいむは餡子を吐き出して死んでいた。 その愛らしかった顔は苦悶に歪み、 つぶらだった瞳はもみあげで掻き毟ったのか、まぶた共々引っ掻き傷だらけで潰れている。 そのもみあげも、自分で噛み千切ったのかぼろぼろになり、抜けた毛が辺りに散乱している。 「ゆがぁぁぁぁげずばでぃざ!!ぢぇんん!!おばえらのぜいでぇぇおばえらの!ぜいでっ!」 怒りに狂った母れいむは公園を駆け巡り、言い触らしたちぇんを見つけ、制裁。 母れいむは取り押さえられ、群れの協議にかけられた。 結果、処刑。 ちぇんも酷いが命をとられる程ではないとされ、その制裁は不当であると断じられたため。 父まりさは助命嘆願を繰り返していたが、努力むなしく決は下された。 件のゲスまりさについては見つけ次第群れに報告、捕獲とされる。 が、この件以後そのゲスまりさを見た者はいない。 母れいむは処刑当日、ゲスまりさを殺すまでは死ねないと、のどが潰れるまで叫び続けていた。 終 「くだらねぇwww」と笑えるぺにまむものを書こうとしたらこうなりました。
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『お花を食べたいよ』 7KB 観察 小ネタ 野良ゆ 子ゆ 人間なし 何時もの小ねたです 「ゆわぁぁぁ!おかーしゃん。みてみて、おはなしゃんが、いーっぱいだよ!」 「ゆわぁぁぁ!すごいのじぇぇぇぇ!とーってもゆっくちできるのじぇー!」 「ゆふふ、おちびちゃんたち、あれは、さくらさんだよ!とってもゆっくりできる、おはなさんだよ!」 土手の桜並木を見て、目を輝かせるゆっくりの親子 親れいむと、舌足らずな子ゆっくりが二匹。 共に薄汚れた姿をしている事から、野良ゆっくりだと伺える。 野良の親子は満開の桜の木を前に、幸せそうに体を揺らしている。 「おかーしゃん、このおはなしゃん、たべちぇもいい?れーみゅ、おかなぺっこぺこだよ!」 「ゆゆーん!まりちゃも、たべちゃいのじぇ!たーくしゃん、むーちゃ、むーちゃするのじぇ!!」 「ゆーん…そうだね…このおはんさんは、かだんさんに、はえてるものじゃないから、たべてももんだいないよ!みんなでおひるごはんにしようね!」 『ゆわーい!!』 満開の桜を見て食欲が湧いたのか、桜の花を食べたいと言い出す子ゆっくり達。 親れいむもしばらく悩んだ後、ここは花壇ではないからこの花を食べても大丈夫だと判断する。 親れいむの言葉を聞いた子ゆっくり達は、涎を垂らしながら目を輝かせる。 「それじゃあ、おちびちゃんたち、ゆっくりごはんのじかんだよ!」 『ゆわーい!ゆっくちいただきまーしゅ!』 食事の前に一言言うのは躾が良いからなのか、もと飼いゆっくりだったからなのかは知らないが、待ってましたと言わんばかりに桜の木に向かって跳ねていく子ゆっくり達。 親れいむも、それに続いて桜の木に近づいていく。 「おはなしゃん!かわいーれーみゅに、ゆっくりたべられちぇね!のーびのーび…ゆぅぅぅ?!どーしちぇ、たべらりぇないにょぉぉぉ?!」 「まりちゃの、かわいーおしょくじたいむなのじぇ!むーちゃ、むーちゃ…ゆびぇぇぇぇん!どーしちぇ、おはなしゃん、むーちゃ、むーちゃできないのじぇぇぇ?!」 「おちびちゃんたち、おちついて、ゆっくりしてね!おかーしゃんが、おはなさんをとってあげるよ!のーび、のーび…ゆがーん!どーしておはなさんが、とれないのぉぉぉぉ?!」 桜の木下で、必死に体を伸ばすゆっくり親子。 だが、いくら体を伸ばしても、当然ながら花に届く事はなかった。 ゆっくりと言うのは、高さを正確に認識出来ないらしい。 それ故に少し持ち上げただけで、空を飛んでいると錯覚出来るのだ。 人間を馬鹿にするのも、高さが認識できない為、相手の体の大きさを性格に判断出来ないからだと言われている。 それに加えてゆっくりの大きさの基準は、自分の体のより相手が大きいか小さいかでだけ判断する。 ここで重要なのは、ゆっくりは高さを判断出来ないので、基準となるのはその者の頭部の大きさなのだ。 故に頭部を持たない植物等は、ゆっくりより格が下だと判断される。 昆虫は頭部が小さい物ばかりなので、食料だと思い、動物は、多少大きさが小さくても、毛の量で異形のものと認識しているのだ。 だが人間の場合は、ゆっくりと非常に顔のつくりが似ている。 その為飾りのない、時には髪の毛の少ない人間を馬鹿にするのだ。 そんな訳で、ゆっくりにとっては格下の花が沢山咲いている桜の木を、その高さを理解出来ぬままに花を食べようとしたのだ。 いくら体を伸ばしても、けして届く事のない位置に咲いている桜の花。 それでも体を必死に伸ばし、そこから更に舌を伸ばして桜の花を食べようとする。 傍から見ると、何とも奇妙で滑稽で不気味な姿だ。 「ゆびぇぇぇぇん!おはなしゃん、れーみゅがかわいーからっちぇ、いじわりゅしないでよぉぉぉぉ!」 「ゆんやぁぁぁぁ!むーちゃ、むーちゃ、しちゃいのじぇぇぇぇぇ!ゆえぇぇぇぇん!」 「おはなさん、いじわるしないで、ゆっくりたべられてね!かわいいおちびちゃんたちが、ゆっくりできないでしょぉぉぉ!!」 子ゆっくり達は、いつまで経っても花が食べられないので、ついに諦めてゆんゆんと泣き出した。 それを見た親れいむは、物言わぬ桜の木を相手に、大きく膨れ上がって威嚇し始める。 当然そんな事をしても花が食べられる訳もなく、腹が膨れる訳も無い。 だが親れいむは、桜の木が意地悪を止めると信じて威嚇を続けた。 それから数日経った。 野良親子はあれからも飽きる事無く、毎日桜の木の前に現れては花を食べようとして、結局食べる事が出来ないと騒いでいた。 そして今日も、桜の木の下で大騒ぎを繰り返していた。 「ゆびぇぇぇぇん!ゆびぇぇぇぇぇん!どーしちぇ、おはなしゃん、いじわるしゅるのぉぉぉ!ゆっくちできにゃぁぁぁぁい!」 「ゆぐっ、ゆぐっ、おはなしゃん、むーちゃ、むちゃしちゃいのじぇぇぇ!ゆっくち、ゆっくちぃぃぃ!」 「おはなさん、いつまでもいじわるしないでね!れいむは、ほんきでおこったよ!ゆっくりせいさいしてあげるよ!!」 もう何度目か解らない、「本気」で怒る親れいむ。 制裁と言っても、口に咥えた木の枝を使って、桜の木の幹を突付いている。 しばらくそんな事をしていると、少し強めの風が桜の木を揺らした。 「ゆゆ?!どう?いたかったでしょ?!れいむのこわさがわかったら…ゆぅぅ?!」 風に揺られた桜の枝が、ハラハラと花びらを散らす。 風に舞う花びらは、そのまま川に落ちていき、水面を桜色に染めていく。 「…ゆびぇぇぇぇぇん!おはなしゃんが、かわにおちちゃったよぉぉぉぉ!おかーしゃん、どーしちぇこんなこちょしゅるのぉぉぉぉ!!」 「ゆんやぁぁぁぁ!おかーしゃん、ひどいのじぇぇぇぇ!まりちゃのごはんしゃんがぁぁぁ!」 「ゆぅぅ?!どーなってるのぉぉぉ?!お、おちびちゃん!これはおかーさんが、わるいんじゃないよ!おはなさんが、かってに…ゆぐぐぐぐ…!!」 子ゆっくり達は散り行く桜を悲しそうに眺め、親れいむはそれを悔しそうに睨んでいた。 それから更に数日後。 土手の歩道を何かを探すように移動している、野良ゆっくりの親子。 最近、ここに通いつめていた野良一家だ。 親れいむに比べると、子ゆっくり達が若干やつれている。 理由は、ここの桜の花を目当てにしてたせいで、親れいむはろくに食料を集めなかったためだ。 「ゆぅ…おかーしゃん、もう、はなびらしゃん、おちてにゃいねぇ…ゆっくち…」 「おなかすいちゃ…のじぇ…おかーしゃ…おはなしゃん…いつになっちゃら、はえちぇくる…のじぇ?」 「ゆぅ…おちびちゃん、がまんしてね。もうすぐだよ、またおはなさんが、かってにはえてくるよ!」 そう言っては、桜の木を見上げる親れいむ。 だが既に花は散り終えて、緑の若葉が茂るばかり。 野良ゆっくりの親子は、また花が咲く事を信じて土手を徘徊しているのだった。 ザワザワ… 桜の木が風に揺れ、葉がざわめいた。 ポトッ! 「ゆゆ?」 ゆっくり親子の前に、空から何か降ってきた。 親れいむが周囲を見渡すと、それは歩道の彼方此方で動いていた。 「ゆわぁぁぁぁ!おちびちゃん!ごはんさんだよ!いもむしさんが、れいむたちに、たべてもらいたいっていってるよ!よかったね!ゆっくりできるよ!!」 「ゆぅ?…いもむししゃん?!…ゆわぁぁぁ!いもむししゃんは、ゆっくちできりゅよ!」 「ゆわぁぁい!まりちゃ、いもむししゃん、だいすきなのじぇ!いーっぱいむーちゃ、むーちゃしゅるよ!ゆっくちー!!」 芋虫と聞いた途端、死んだような目をしていた子ゆっくり達の顔に笑顔が戻る。 そして二匹は、自分が選んだ芋虫の元に跳ねて行くと、目を輝かせて涎を垂らす。 『いもむししゃん!ゆっくりいただきましゅ!』 二匹の子ゆっくりは、ほぼ同時に芋虫に噛り付いた。 「むーちゃ、むーちゃ………ゆっぎゃぁぁぁぁぁ!いちゃいよぉぉぉぉ!れーみゅのおくちが、ちくちくしゅるよぉぉぉぉ!!」 「ゆっぴぃぃぃぃ!まりちゃのおくちがぁぁぁぁ!いもむししゃんが、まりちゃをいじめるのじぇぇぇぇぇ!ゆんやぁぁぁぁ!!」 突然、大声で泣き叫ぶ子ゆっくり達。 両目を飛び出さんばかりに見開いて、揉み上げとお下げをぶんぶん振り回す。 そう、野良一家が芋虫だと思っていたのは、毛虫だったのだ。 「ゆぅぅぅ?!どーしたのおちびちゃん!ゆっくり、ゆっくりしてね!…ゆっがぁぁぁ!おちびちゃんをいじめる、ゆっくりできない、いもむしさんは、おかーさんがせいさいするよ!」 大騒ぎする子ゆっくりを見た親れいむは、地面を這いずる毛虫を睨む。 そして小さく跳ねると、毛虫を踏み潰した。 「ゆっふん!おちびちゃんにいじわるするから、こうな………ゆっぎゃぁぁぁ!いだいぃぃぃ!れいむのあんよがぁぁぁぁ!なにかささったよぉぉぉ!!」 毛虫を踏み潰した際に、その毛が足に刺さって大騒ぎする親れいむ。 痛みのあまり、ゴロゴロと歩道を転げまわる。 「どぼじでぇぇぇ?!れいむがこんなめにぃぃぃ!!…ゆっぎゃぁぁぁぁぁ!こーろこーろしでるぅぅぅぅ?!『ザッパーン!』ゆっごぉぉ?!」 親れいむは、周りをよく見ないで転げ回ったせいで、そのまま土手を勢い良く転がり落ちて行った。 そしてそのまま川に落ち、豪快に水しぶきを上げて沈んでいった。 「ゆっびゃぁぁぁぁ?!おかーしゃん?!おかーしゃんが、おみずにおちちゃったよぉぉぉぉ!!」 「ゆびぇぇぇぇぇん!おかーしゃぁぁぁん!どーしちぇ…ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」 親れいむが川に消えていくのを見ていた子ゆっくり達は、その場で何時までもゆんゆんと泣いていた。 数日後、桜の木の下で二匹の子ゆっくりが死んでいた。 子ゆっくりには蟻が沢山集っていた。 完 徒然あき
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俺は以前から実ゆっくりを使ってヤリタイ実験があった・・・ そのためにわざわざ山奥まで行きにんっしんっ!したれいむ(でいぶ)を3匹ほど連れてきた 幸い1匹のゆっくりから5本ほど茎が生えていたので材料には事欠かない その日はわくわくしながら眠りについた 次の日 「ゆっくりしていってね!」 「くそどれいはゆっくりはやくごはんさんをたくさん持ってきてね!」 「くそじじいはあまあまをおちびちゃんのためにさっさとよこしてね!」 まー五月蝿い五月蝿い 爽やかな朝を阻害されたような気分だが我慢しよう 「分かったよ 今持ってくるからNE☆」と胡散臭い笑顔に棒読み口調でさっさとキッチンに行った ちょうど生ごみが溜まっていたのでコンポストとして活用した 腐ってるのもあるけどゆっくりだし、いいや 「おじさんだれなの?」とか言わないあたりこいつらは扱いやすいな… そう思ってる間にも 「うんめっ!めっちゃうめっ!!」 「幸せえええええええ!!」(幸せを頭の中で死遭わせと変換する) 「ゆっ!ゆっ!」 うぜぇ・・・・握りつぶしたくなるが我慢我慢、奴らが食っている間に準備は完了した 実験の開始DAAAA! まずは茎ごとゆっくりを採る! 合計したところ13個の茎が集まった 「でいぶのあ゛がぢゃああああん!!」 「じね゛ええええええ!ごどぐそに゛んげええええん!」 「うんめっ!うんめっ!・・・ゆ?ゆああああ゛あああ!お゛ぢびぢゃああああん!」 うむ!いい返事(?)だ! 1匹遅れた奴いたけど その茎の3本をそれぞれハバネロsoup、廃油、塩水(飽和水溶液)に入れ、あとの7本は冷蔵庫へシュウウウッ! 超exciting! ぎゃーぴー流石にうるさいので「最高にゆっくりしたおちびちゃんになるようにしているんだよ」と言ったら 「ゆ、てんさいのれいむはゆっくり理解したよ!」 「さすがはれいむのくそどれいだね!れいむのうんうん食べてもいいよ!」 「ゆっふふうう!おちびちゃんの美貌にひれ伏したんだね!」 途端に横柄になりやがった・・・1週間後にはどんな表情になるのか 俺は実ゆっくりと親ゆっくりの顔を記録するためにカメラを設置した 1週間後 素晴らしい結果が出た! ハバネロsoupにつけていたのは素晴らしい(虐待鬼威山目線で)表情で死んでいた 廃油につけていたのは全て欠ゆとなって生まれていたし、塩水は生まれたはいいが水の拒否反応がすさまじかった あとの10匹も有効活用したいところだ 「あ゛がぢゃあああん!ゆっぐりじでえええええ!」 「ゆっぐりじでいっでね!・・・どぼじでへんじしでぐれな゛いのおおおおお!!」 「お゛びず飲んでえええええ!」 続く 作者より 初めてssを書いてみました 中3なので駄文は生暖かい目で見つめてやってください、3話に分ける予定です 最後に・・・・ゆ虐は超exciting!
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シュガースナッフ・メロウスイート 38KB 虐待 都会 虐待人間 嬉々として虐待です シュガースナッフ・メロウスイート セットするのは大変だけれど、出来上がった物を見るのはやっぱり楽しい。 ショーウインドーに映る結いあげてシニヨン風にまとめた自分の髪を見ながら少女は思った。 季節は初夏、のどかな休日の午後。柔和な笑顔を浮かべる少女の腕には、 散歩の途中で立ち寄った花屋で購入したネメシアメロウの鉢植えが抱えられている。 スイートシフォンと呼ばれるごくごく薄く色づく紫の花色が、少女のチュニックに良く映えていた。 気持ちよさそうに風を受ける少女は目を閉じて、スイートシフォンの名前通り甘い香りを吸い込む。 そして幸せそうな笑みを浮かべると、足の向くままに歩きだした。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 少女がしばらくのんびりと散策していると、いきなり足元から声をかけられた。 視線を下に向けると、そこにはゆっくりの一家がいた。ゆっくりしていってね、という言葉とは裏腹に、 4つの饅頭はこの機を逃したらもうおしまいだと言わんばかりに必死だ。 少女は小首を傾げると、とりあえず挨拶を返すことにした。 「ゆっくりしていってね」 「「「「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!!」」」」 その言葉を聞いた瞬間、家族の顔がはじけるように咲く。ぴょんぴょんとその場でジャンプを繰り返し、 子供2匹などは涙さえ浮かべている。 「どうしたの?私に何か用?」 しゃがみこんで親ゆっくりの頭を撫でてやると、黒帽子の親ゆっくりがゆんゆん泣きながら喋り出した。 「にんげんさんはゆっくりできるひとだよね!?まりさたちをたすけてほしいよ!」 「助けてって、どう言う事?あなたたち野良ゆっくりなの?」 「まりさたちがおやまさんでいっぱいゆっくりしてゆっくりしてたら、ゆっくりしてないにんげんさんが きて、まりさたちをくらいくらいしたんだよ!」 まりさがそこまで言った所で、紅白リボンを付けた黒髪のゆっくりが言葉を引き継ぐ。 「にんげんさんはれいむたちにぺっとになれっていったんだよ!ゆっくりできないことを いっぱいいってきて、いやだよっていったらいたいいたいしたんだよ!! れいむたちはゆっくりできないから、にんげんさんからがんばってにげたんだよ!!」 「そう・・・・・・。大変だったのね」 いたわりと少しの同情をこめて頭を順番に撫でてやると、ゆっくりの家族は猫のように目を細めた。 なるほど。この子たちはどうやら、ペット用に山から連れてこられた野生のゆっくりのようだ。 ペットショップの管理がずさんだったか、もしくは売られた後で逃げ出したかどちらかなのだろう。 少女はそう当りを付けた。 「にんげんさんにおねがいがあるよ!」 しばらくの間家族は少女に撫でられるがままだったが、つと親まりさが顔を上げ、 眉毛をきりっとさせて言ってきた。 「ん?何?」 「にんげんさんのもってるおはなさんをたべさせてほしいんだよ!まりさたちおなかが ぺーこぺーこなんだよ!!」 涎をだらだらとこぼしながらキラキラした目で要求を伝えるまりさ。 どうやら少女に話しかけたのは、ネメシアメロウの香りにつられてのことだったらしい。 「でもこれは私が今買ったお花で、とても気に入っているのよ」 少女は少し困ったように鉢植えを抱え直す。 「おねがいだよ!れいむたちとってもこまってるよ!きさんがないからかりもできないし、 あついあついでみんなのどもかーらかーらなんだよ!!」 親れいむもぴょんぴょん飛び跳ねながら必死におねだりしてくる。 「「おにゃかすいちゃよー!ゆっくりしゃせちぇー!!!」」 まりさとれいむ一匹ずつの赤ゆっくりは、感極まったように叫びだす。 「うーん・・・・・・。じゃあとりあえず、私の家に来ない?」 「「「「ゆゆっ!?」」」」 「あなたたちが困ってることは良く分かったわ。でも、今このお花をあなたたちに 上げても結局何の解決にもならないでしょう?だから、私のお家に来たら良いわ。 今後のことはそれから考えましょう?」 その言葉を聞いたゆっくりたちは、家族全員泣きだしてしまった。ただし、喜びで。 「ありがとうね!ありがとうね!!」 「やっぱりにんげんさんはゆっくりできるにんげんさんだったんだね!!」 「「ゆっくりしちぇいってね!ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!」」 「じゃあ私についてきてね。お家に着いたらおもてなしするわ」 天使のように笑った少女は、ゆっくりがついてくることができる程度の速度で、軽やかに歩き始めた。 ゆっくりの足に合わせたため、結構な時間をかけて少女たちは家にたどり着いた。 少女の家は、いっそ屋敷と言って良いぐらいの立派な一軒家だった。 「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」 ミュールから室内履きに履き変えた少女は、全員のあんよを濡れタオルで拭いてやった後、 家族を一階の一室に案内した。全員が入った後、少女は扉を閉める。 がくんっ、と、普通のドアを閉めるより重い音がした。 少女がゆっくりを招き入れたのは、10人以上が入っても狭苦しさを感じさせることは無いだろう 広々としたフローリングの部屋だ。壁には琥珀色をした前面ガラス張りの木製キャビネットが 置かれており、そこには楽譜やクラシックのCDなどが収められている。 部屋の一角は一段高くなっており、そこにはグランドピアノが鎮座していた。 ここは少女のピアノレッスン室なのだろう。室内には暖かな色の間接照明に満ちており、 長時間居続けてもストレスを感じさせない作りになっている。 ごつり、ごつり。 靴を鳴らしながら少女は家族を残してグランドピアノに近づくと、ネメシアメロウの鉢植えを 段差の上に置いた。鈍い足音がする原因は、少女が履いている靴だ。 不可思議な事に、少女が履いている靴は、室内履きと言うにはあまりに無骨な安全靴だった。 「少し、ゲームをしましょう」 少女がゆっくりに向かって微笑むと、家族は少し困惑したような顔になった。 「にんげんさん!まりさたちおなかがぺーこぺーこなんだよ?」 「あそんでくれるのは、ごはんさんのあとにしてね!」 「ゲームって言うほどのものじゃないわ。軽い食前の運動みたいなものよ」 少女は鉢植えの横に優雅に腰かけると、 「ほら、ここにあなた達が欲しがってたお花さんがあるでしょう? あなたたちはここの段差を越えて、お花さんを食べてくれたら良いの。簡単でしょう?」 そう言って鉢植えを指差した。 「ゆっ!それならいいよ!かんたんだよ!!」 「そう?それは良かった」 少女は鉢植えを手のひらで示すと、どうぞ、と言った。 家族は一斉に鉢植えに群がって行った。あまあまな匂いのおいしそうなお花さんを ゆっくりたべるよ!!そんな思いで懸命に走るが、少女と鉢植えに近づいていくにつれて、鉢植えは 視界から消えてしまう。その代わりに現れたのは、高い高い障害物。30cm弱の段差は人間には 一足だが、体高が30cmのゆっくりにとっては。ましてやピンポン玉サイズの赤ゆっくりにとっては それは断崖絶壁にも等しいものなのだった。 「ゆっ!ゆっ!おはなさん!まりさにたべられてね!!」 「れいむもたべるよ!おはなさんはそこでゆっくりしていってね!!」 「「たべられちぇね!おはなしゃんはゆっくちたべられちぇね!!」」 お花さんをむーしゃむーしゃできる。その思いだけでただただ盲目的に段差の前でジャンプし続ける 家族と、それを楽しげに眺める少女。二、三分の間それが続いた。 「おねーさん!ここたかすぎるよ!!」 最初に根を上げたのは親まりさだった。自分では届かないということに最初に気付いたという点では 頭が良いのかもしれない。事実、残りの家族は無意味なジャンプを繰り返しており、 赤まりさは断崖を登ろうとしているのか、壁にかりかりと歯を立てている。 「えー、これぐらい登れるでしょう?」 「のぼれるにきまってるでしょ!でももうまりさはつかれたよ!いいからにんげんさんがとってね!!」 からかうように少女が言うと、まりさは反論する。花は食べたいが、出来ないと言う事を認めるのは 嫌らしい。 「頑張れば取れる高さなんだから頑張ってよ。ほら、もうちょっとで届きそうじゃない?」 少女は親まりさの頭をくしゃりと撫でると、 「ワックスが剥げると困るから、齧るのは止めてね」 そう言って、かりかりと壁を齧り続ける赤まりさにでこぴんを見舞った。かん高い鳴き声を上げて ころころと転がっていくその時に、赤まりさの帽子が脱げた。 「おぼいちいいぃぃ!!!まりしゃのおぼうししゃんぬげにゃいでねええぇぇぇ!!」 赤まりさは狂気のような勢いで帽子を追いかけ、食らいつく。ものすごい執着心だ。 いきなり聞こえてきた赤まりさの声に我に返ったのか、それとも跳ぶことに飽きたか。親れいむも 少女に文句を言い始めた。赤れいむはでこぴんにも負けずに再び無駄な跳躍を繰り返し始める。 「にんげんさん!かわいいおちびちゃんになんてことするの!?」 「ゆっくりあやまってね!!あやまったらまりさたちにおはなさんむーしゃむーしゃさせてね!!」 やいのやいのと自分を糾弾してくる親ゆっくりを無視し、少女はお帽子との劇的な再開を喜ぶ 赤まりさに声をかけた。 「おぼうししゃんすーりすーり!ゆっ!まりさのきれいですてきなおぼうししゃんなんだじぇ!! よかったのじぇ!!」 「まりさはそのお帽子がとっても大事なんだね」 「おりぼんしゃんがまっちろでかっこいいおぼうししゃん!ゆっくりまりさにかぶられてね!」 赤まりさは全く聞いていない。 「そんなに大事なら、私が脱げないようにしてあげるね」 無視された少女は髪に手をやると、シニヨンを留めている黒いヘアピンを一本抜き出した。 「ゆんっ!これでまりさのおぼうしもとどおりなんだじぇ!」 そして満足そうに帽子の被り心地を確かめる赤まりさの脳天に、そのヘアピンを 帽子の上から突き刺した。 「・・・・・・ぴぃ?」 いきなり頭部に現れた灼熱感。あまりに強い感覚を許容しきれないまりさは、きょとんとした顔で、 小首をかしげるように体を傾けた。 そしてきっちり三秒後。咆哮を上げる激烈な痛覚が爆発する。 「あ・・・・・・い・・・ちゃい・・・・・・?まりちゃ・・・・・・いちゃいのじぇ・・・・・・?」 目からは勝手に砂糖水の涙がこぼれ、下からはしーしーが零れだす。 「いちゃいいいぃぃぃぃぃぃいいいぃぃぃぃ!!!!いっちゃあああああぁぁぁぃいぃぃぃい!!!」 思い切り天を仰ぎ、絶叫。 体の中でヘアピンがよじれ、さらに体内を掻き回す。 「ぴいぃぃぃー!!いちゃいぃいいーー!!だじゅげでぇ!!ばりじゃをだじゅげでえぇぇぇ!!」 「「おちびちゃん!?」」 いきなり叫び出した我が子に血相を変えて走り寄る両親。だが、両親が赤まりさにたどり着くことは 無かった。少女が赤まりさを摘み上げ、段差の上に乗せてしまったからだ。 「おちびちゃああぁぁぁぁぁん!!」 「かえすんだぜ!おちびちゃんをかえすんだぜえええぇぇぇぇ!!」 必死の形相でジャンプを繰り返す親ゆっくりたち。その姿を見下ろす少女の笑みが深くなっていく。 「大丈夫だよ。まりさはただ、驚いちゃっただけだから」 「なにいってるのおおおぉぉぉ!!おちびちゃんいたがってるでしょおおおぉぉ!?」 「かえしてね!おちびちゃんをかえしてねええぇぇぇぇぇ!!」 「それはだめ。ほら、頑張って登ってくればおちびちゃんに会えるよ?」 「あああぁぁぁぁぁぁ!!!ばっででねおちびぢゃん!!いますぐいぐがらねえぇぇぇぇ!!」 「すぐにだずげであげるからねえぇぇぇぇ!!!」 親ゆっくりはたちは目の前の壁を睨みつけると、自分の体高と同じ高さの段差に身を押し付け、 にじり、飛び跳ね始めた。 「あひいいぃぃぃぃ!!いちゃいいいぃぃぃぃ!!!」 少女と同じ高さに連れてこられた赤まりさ。少し跳ねれば甘い香りのする花を思う存分 むーしゃむーしゃできる位置にいるにも関わらず、まりさはそんなものには一顧だにしない。 「とっちぇえええぇぇぇ!!いちゃいいいいぃぃ!!まりしゃのあたまがいちゃいよおおぉぉ!!!」 ひたすらに泣きわめき転がり回り、それによって生まれる痛みにまた涙を流している。 「そんなに元気に動き回るんじゃ、一本じゃ足りなかったかなぁ?」 そんなまりさを熱っぽい目で見ていた少女が、呟くように言った。もう一度髪に手をやり、 ヘアピンを抜きだす。 「ほら、もう一本プレゼントだよ」 横になって転がるまりさの即頭部から、垂直に差し込んだ。 「あっぴいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」 体を十文字に貫かれたまりさが魂を抜かれるような叫びを上げる。目を剥いて、舌を突き出して。 「やめちぇ・・・・・・まりしゃにいちゃいいちゃいしにゃいでぇ・・・・・・」 過呼吸を起こしているように浅い呼吸を繰り返しながら、まりさはずりずりと這ってこの場から 逃げ出そうとする。しかし、少女がそんなことを許すはずもない。 少女の編み込まれた髪が、少しずつ解けて行く。 少女の髪が解けるたびに、赤まりさの肌に黒い墓標が突き立てられて行った。 「やべろおおおぉぉぉぉ!!!!」 「おぢびじゃあああああぁぁぁぁぁぁん!!」 壁を超えることを諦めた親ゆっくりたちは体をのーびのーびさせ、 なんとかして攫われた赤ゆっくりの姿だけでも見ようとしていた。 「ねぇれいむ、まりさ」 少女がそんな親ゆっくりに話しかける。 「自分だけで登ろうとするから駄目なんじゃないかな?協力して、例えば片方が下で 踏み台になって、もう片方がその上に乗る。そんな風にすれば、登れるんじゃないかな?」 「「!!!」」 目を剥いてその素晴らしい思い付きに感動する親ゆっくり。しかしそれも一瞬のことで、 即座にその思い付きを実行に移す。 「まりさ!したになってね!!れいむがおちびちゃんをたすけにいくよ!!」 「まりさがいきたいよ!!れいむがしたになってね!!!」 ・・・・・・かと思いきや、どちらが下になるかで喧嘩を始めてしまった。 少女はその姿を見ながら、さらに赤まりさを貫き続ける。 「これだけ刺せばもう、どれだけ動き回っても帽子は脱げないよ」 ウェーブのかかった髪を肩に垂らした少女がいとけなく笑う。 何度となくやったように、髪からヘアピンを引き抜いた。 「これが最後の一本。どこに刺してあげようか?」 もはやまともに動くこともできなくなったまりさの顔を正面から見ながら優しく聞いた。 「あ・・・・・・ひ・・・・・・?」 段差の隅に追いつめられた赤まりさはもう、それに答えることもできない。 「あああぁぁぁぁぁ!!!もうやぢゃあああぁぁぁぁぁ!!!おうちきゃえりゅううぅぅぅぅ!!!」 逃げたい。ただただその一心でまりさは少女に背を向け、力を振り絞って跳ねる。 着地するはずの地面は、どこにもなかった。 「「・・・・・・ゆ?」」 二段重ねの饅頭が、自分たちの真横を落下していく何かをぽかんと見つめる。 助ける?どうやって?受け止めようか?この体勢から?無理かな?無理じゃないかな? じゃあ舌を伸ばせば?そうだ舌を伸ばせば届くかもしれない舌を伸ばしておちびちゃんを助け かつん。 やわらかい饅頭のはずのまりさ。それなのに、響いたその音はとても硬く、高く響いた。 「ゆっ!ゆぷっ。えっぷぇ・・・・・・」 落下の衝撃で、全身に埋まるヘアピンが体を抉った。皮のあちこちからヘアピンを覗かせた まりさは、死に至る痙攣を始める。 「「おちびぢゃああぁぁぁぁぁぁん!!」」 両親はもみくちゃになりながらこけつまろびつまりさに跳ね寄り、必死にぺーろぺーろする。 しかし献身的な看護も甲斐は無く、まりさの痙攣は止まらなかった。 ぺーろぺーろは確かに外傷にはある程度の効果がある。しかし今の場合、体内の異物を取り除く こともせずにただ舐めればそれは、体外に露出したヘアピンを通してまりさの体内を滅茶苦茶に 掻き回しているだけのこと。 両親の必死の看護は、かえってまりさを苦しめる結果になっていた。 「ひきっ・・・・・・もっちょ・・・・・・ゆっくりしちゃかっちゃぁ・・・・・・・・」 最後に一度、引き攣るように体を震わせると、赤まりさはその短いゆん生を終えた。 「「あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!!」」 喉が破けるような慟哭。 「「どぼじでごんなごどずるのおおおぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!」」 炎のような激情を宿した瞳で少女を糾弾する親ゆっくり。 叩きつけられる感情の熱量を冷然と受け流すと、少女は片手で解けた髪を掻きあげた。 柔らかな髪をしどけなく体の前に垂らした少女は、透徹した青色の笑みを浮かべて言った。 「何故かって?何故かと言えばそれは、私があなた達を泣かせたり虐めたり殺したりして遊ぶのが、 とっても大好きだからだよ」 「「なにいっでるのおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」」 「あなたたちは、ネメシアメロウの香りに釣られて私に誘拐されたの。これから全員痛い思いをして 信じられないぐらい痛い思いをして、ボロ雑巾みたいになるまで痛い思いをした後私に殺されるんだよ」 「「おうぢがえるうううぅぅぅぅぅぅ!!!!!??」」 「一緒に楽しく遊ぼう?ゆっくりしていってね!」 「「ゆっぐりじでいっでねえええぇぇぇぇぇ!!」」 こんな時でも挨拶をされたら挨拶を返さずにはいられないゆっくり。少女はその「ゆっくりしていってね!」に 満足げに笑うと、家族を置いてキャビネットに向かった。 キャビネットの中には様々な音楽関連の物品に加えて一つ、一抱えほどもある大きな箱が入っていた。 少女がそれを開けると、その中身が露わになる。 ホッチキス。ガムテープ。チャッカマン。割りばし。鉛筆。ビニール紐。下敷き。栓抜き。絵具。 雑多な・・・・・・統一性のない雑多な物の数々。ひたひたと這い寄るような悪意の波動を放つ それらの中から、少女は全長30cmほどのナイフを掴み取った。 「これにしようかな」 うっとりとナイフを眺める少女は、呟きと共に刃に指を滑らせた。 少女の指は落ちない。良く見ればナイフのように見えたそれは、実際には料理用の木べらだった。 ただし少しばかり加工が施してある。木べらを彫刻刀か何かで削り、片刃のナイフのようにしてあるのだ。 小学生の工作の方がマシといった風情の、玩具にしか見えないそれを二、三度確かめるように振ると、 少女は上機嫌に家族の元に戻って行った。 「おちびちゃん!?ここからにげないといけないんだよ!?」 「おはなしゃん!れいむおはなしゃんたべちゃいぃぃぃー!!!」 「ゆぅーん!いまはそれどころじゃないんだよ!こわいこわいにんげんさんがきちゃうんだよ!!」 両親の叫び声も兄弟の死すらも、赤れいむの白痴のような集中力を乱すことは無かったらしい。 ひたすらにひたすらに壁の前でジャンプを繰り返していた赤れいむを、両親が説得しようとしている。 「ただいま。最初に虐められたいのは誰かな?」 少女のその言葉に親ゆっくりたちはびくりと全身を震わせた。しかし一瞬で目くばせを済ませると、 まりさがれいむを庇うように前に進み、れいむは赤れいむを舌で絡め取った。 「かぞくにはてだしさせないんだぜ!まりさのぷくーでこわがっていってね!!!」 「おちびちゃんはこれであんっぜんっだよ!!にんげんさんはどこかにいってね!!!」 まりさが前でぷくーをし、れいむが後ろで赤ゆっくりを口の中に隠す。ゆっくりにできる最大の攻撃と防御。 少女はそれを見ると、まりさの前で膝立ちになった。 「わぁ、怖い。ぷくーってするのを止めてよまりさ」 「ぷくーーーーっ!!!」 「止めてくれたらあまあまあげるよ?」 「ぷくぷくーーーーっ!!!」 「止めてくれないの?れいむと赤ちゃんが大事なんだねまりさ」 「ぷくぷくぷくーーーーっ!!!」 「じゃあ、この帽子とならどっちが大事なのかな?」 「ぷくぷくぷくぷっ・・・・・・ぷしゅるるおぼうしいぃぃ!!!まりさのおぼうしいぃぃぃぃ!!!!」 帽子を取りあげられた途端、一瞬でぷくーを止めたまりさ。少女は間髪いれずにそれを、部屋の隅に放った。 「おぼうしさん!まりさのおぼうしさんゆっくりまってねええぇぇぇぇぇ!!!」 まりさは脇目もふらずに帽子を追いかけて行き、少女の眼前には口をつぐんで膨れた親れいむが残された。 「まりさ、行っちゃったね?」 「・・・・・・・・・・・・・っ!!」 口を開ければ子供が危険に晒される。それを理解している親れいむは何一つ喋らない。 不甲斐ないまりさへの呪詛や少女への反論、百万語を呑み込みながら少女を睨みつけるだけ。 「これからあなたの皮を斬っていきます」 れいむの前で正座した少女が、突然宣告した。 「私が持っているこのナイフで、あなたの皮を斬っていきます。すごく痛いよ。でも口の中の赤ちゃんを 助けたいんなら、絶対に口を開けたらいけません。分かった?分かったらお返事してね」 「・・・・・・・・・・・・」 親れいむは答えない。少女を睨み続けている。 「偉い偉い。ちゃんと私の言うことが分かってるんだね」 少女は膝立ちになってれいむににじり寄ると、左手でれいむの頭を撫でる。 「じゃあ、始めるね」 そのまま撫でていた髪を掴み、そして右手に持った木べらをれいむの唇の端に当て、引き切った。 「~~~~~っ!!!!!」 金属で無い、石器ですらない木製のナイフは、れいむの皮を斬ることは出来なかった。 表現にすれば削る、が一番近いだろうか。凹凸の激しいナイフの表面はれいむの皮を抉り、 抉れた部分が刃に巻き込まれ、巻き込まれた部分がさらに回りを巻き込んでいく。 結局少女の一太刀は、れいむの皮に醜い傷跡を付けるにとどまった。 「っ!!!っ!!!!」 だがそれは、れいむにとって決して幸せな事では無いだろう。 切れ味の良い日本刀より、切れ味の鈍い鋸で切られた方が痛覚はより刺激されるに決まっている。 そして少女の持つ刃は、まさしく木製の鋸と言った風情なのだから。 「このナイフはね、私が自分で作ったんだ」 少女はヴァイオリンの弦を操るように優雅に、木べらをれいむの肌に滑らせる。 二往復させた所で、れいむの餡子が露出した。 「よく斬れるように、でも斬れないように。わざと木の棘が残るようにしたり、凸凹をつけたりね。 刃にぎざぎざを付ける時にちょっと手を怪我しちゃったもしたなぁ。それでも君たちに楽しんで もらうために、頑張って作ったんだよ?」 露出した餡子に木べらの先端を突き込み、そこから傷を真横に切り広げていく。 れいむは涙を零しながら痛みに耐え続けている。 「このままぐるり一周切り裂いてあげる。痛かったらいつでも声を上げていいんだよ?」 少女はれいむの髪を掴んで目を合わせると、穏やかに言った。 「まりさのおぼうしさん!すーりすーり!!しんっぱいっしたんだよ!!よかったよー!」 そして部屋の片隅で、まりさが帽子を取り戻していた。 切り裂く、突き刺さる、削る、押し潰す、破る、引き裂く、抉る。 一本の木べらはその悪夢のような性能を十全に発揮し、万華鏡のような痛みをれいむに与え続けた。 「大丈夫だよ、ちゃんと皮だけを切ってるから。れいむが声を上げない限り、 私はあなたのおちびちゃんには何も出来ないからね?」 少女はれいむに労るように声をかけ、髪に絡ませた手指を酷薄に引き絞る。 「気が紛れるように、他のゆっくりを虐めた時のお話をしてあげようか?ゆっくり聞いてね」 歌うように少女が言ったその瞬間。まりさが今自分の置かれている状況を思い出した。 きょろきょろと周りを見渡し、少女と少女に甚振られているれいむを発見する。 「でいぶううぅぅぅぅぅ!!!いまだずげるがらねえぇぇぇぇぇ!!!」 半狂乱になりながら走り寄るまりさ。しかし少女は一顧だにしない。正確さと繊細さを併せ持った 手つきでれいむを開封しながら、鈴を転がすような声で凄惨な物語を語り始める。 「そうだなぁ。じゃあこのナイフを初めて使った時のお話にしようかな?」 「ばりざゆっくりじないでいそぐよ!?いとしのはにーをゆっくりしないでたすけるよ!!」 「あなたたちと同じまりさとれいむのつがいだったんだけど、あの時は、れいむの方が植物型の にんっしんっをしてたんだよね。私はにんっしんっしてるれいむの額から生えてる茎の、周りだけを 切り取ってあげたの。それから『動いたら赤ちゃん落ちちゃうよ』って言って、れいむの目の前で つがいを虐めて虐めて虐めてあげたんだ。あの時のれいむも我慢強かったなぁ。 まりさの髪を毟っても、飾りを破いても、斬っても突いても踏みつけても叩いても叩いても叩いても 何をしても、れいむは動かなかったんだよ」 れいむと同じで、子供のことがよっぽど大事だったんだね。 そう言うと少女はれいむの髪から手を放し、少女の傍らにたどり着いたまりさの帽子を取りあげると、 先程とは反対の方向に放った。 「ばりざのおぼうじいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 泣き声をあげて帽子を追うまりさには目もくれず、少女はれいむの開封を再開する。 「結局れいむは、まりさが死ぬまでその場を動くことは無かったな。立派なお母さんだね。 私はれいむを放してあげることにしたよ」 口の横から始まった開封は半分が終わり、今はちょうど後頭部を切っている所だ。 れいむはそれでも口を開かない。 「良かったねって言って頭を撫でてあげて、最後に御挨拶をしたんだ。もちろんれいむは元気に 御挨拶を返してくれたよ。ゆっくりだからね。でもね、元気に挨拶したせいで、あんなに頑張って 守った子供が落ちちゃったんだ」 声を落とし悲しそうに・・・・・・表情は穏やかな笑顔のままに、少女は続ける。 「返せ戻せってうるさかったから、れいむのリボンを取って、れいむの餡子をリボンで包んでそこに 茎を挿してあげたの。ほら、木の苗とか買ったらそんな風じゃない?これで大丈夫だよって言って、 まだ何か言ってきたからナイフで喉を滅茶苦茶に突いてあんよを削ぎ落して、赤ちゃんの苗と一緒に 庭の隅に置いておいたの」 四分の三が終わった開封。少女は慎重に木べらを動かしながら、れいむを押さえつける。 「三日ほどたったかな?見に行ってみたのね。そうしたら、残念。れいむも子供も死んじゃってたよ」 可哀そうだね。そう言って少女は口を閉じると、れいむの口に最後の一太刀を入れ、切り開いた。 「上手に出来ました♪」 あはは、と笑うと少女は、持っていた木べらを無造作に放り投げた。そして熱の籠った視線を れいむに向ける。少女に見つめられる眼前のれいむの姿は、悲惨の一語に尽きるだろう。 口裂け女のように頬まで裂けた口は、れいむの姿をとんでもなく醜悪に見せている。 その裂け目はぐるり後頭部にまで達し、言うなればれいむの皮はカプセルトイのカプセルのように、 二つに分かれてしまっているのだ。 「最後まで頑張れたね。えらいえらい」 少女はれいむを視点を合わせ、その目を覗きこんだ。 「良く頑張ったからご褒美上げるね。もう口を開けてもおちびちゃんには何もしないよ」 そう言って少女は、敵意が無いことを示すように両手を上げた。 「っ!?」 二、三度体を動かそうとした後、れいむは絶望的な顔をした。 「あぁ、なんだ。やっぱり皮を一周切っちゃったら口、開けられないんだ。ゆっくりって餡子が 本体だと思ってたけど、皮も無いと駄目なんだ。面白いね」 両手を上げたままの少女が手を下し、れいむの切り口を覗きこんだ。 れいむは声を出そうと、上顎部より上を動かそうとしているのだろう。だが実際に動いたのは 下の部分、あんよや下膨れだけ。 「声も出せない?ほら、喋っても良いんだよ?」 「~~っ!!??」 かくんかくんと頷くように伸びをするれいむ。だが声を発することは一切なく、顎部より上は 下半身の動きに合わせぐらぐらと揺れるだけ。きょときょとと動く目が困惑に揺れている。 「あ、あんまり激しく動かない方がいいよ。だって今動いたら多分、ぱっかり割れちゃうからね」 少女はそう言うとなだめるようにれいむの頭に手を置き・・・・・・揺すった。 「ほら、こんなに脆い。抜けかけの乳歯を触ってるみたいだよ」 ゆらゆらと揺らされるたびに、れいむが目を剥く。人間で言うなら内臓をまとめて捩られ 引き延ばされるような、そんな感覚なのだろうか。 「ぐちゅぐちゅ言ってる。中のおちびちゃんをうっかり噛んじゃったりしないようにほら、しっかり 踏ん張ってみなよ。皮が無いとそれも出来ないかなぁ?」 「っ~~!!!!」 「なにやっでるのおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」 そうやって少女がれいむと遊んでいると、ようやくにしてまりさが戻ってきた。 大事な大事なお帽子はツバがぴんと張り、位置もばっちり決まっている。 「まりさのはにーにひどいことしないでね!!ゆっくりできないにんげんさんはせいっさいっだよ!!」 まりさは少女に何を言う暇も与えず、いきなり体ごとぶつかっていった。 「ゆんっ!」 ぽむん、と少女の腰にぶつかるまりさ。 「いたいでしょ!?まりさのたいあたりはすごいんだよ!! どんなゆっくりもいちっげきっでごめんなさいするんだよ!」 「全然痛くないよ」 得意顔で体当たりを続けるまりさの髪をつかみ、少女が立ち上がった。 「ごめんなさいなんかしてあげないよ、まりさ。人間はそんなことじゃ、倒せないんだよ」 立ち上がった少女はそのまま、持ち上げたまりさを放り投げた。 「おぞらをとんでるみだゆぎぃっ!?」 テンプレートな台詞の途中で頬から着地したまりさは、したたかに打ち付けた頬の痛みに涙を流す。 「人間はね、あなたたちゆっくりよりとっても強いの。だから、そのままじゃ勝てないんだ」 「ぞんなごどないよ!?ばりざはどっでもづよいんだよ!!いまのはまぐれで」 ごん! 「ぴぃ!?」 少女が安全靴を履いた足を、強く床に打ち付けた。 「まぐれだと思うなら、かかってくると良いよまりさ。硬そうな音がしたよね?痛そうな音がしたよね? この音がまぐれだと思うなら、遠慮なくかかってくるといいよまりさ」 反撃するけどね。少女はそう言うと手を後ろで組み、体を揺らしながら楽しそうに笑った。 ちょろろろろ・・・・・・・・・ かたかたと震えながらしーしーを漏し始めたまりさに向かって少女はさらに言葉を重ねる。 「あ、でも勘違いしないでね、まりさ。そのままじゃ勝てないとは言ったけど、でもそれは、 ゆっくりが人間に絶対に勝てないってことじゃないんだよ?」 「・・・・・・ゆ?」 「人間も非力だからね。私はれいむの皮を切るために、道具を使わないといけなかったの。 まりさもちゃんとした道具があれば、私に勝てるかもね」 そういえばあのナイフ、どこにやったかな?今気付いたかのように言うと、少女はきょときょとと 周りを見回し始めた。 恐怖に体を痺れさせているまりさは、逃亡のタイミングをひたすらに計っていた。だが、ふと 自分のすぐ横に、棒のような何かがあることに気付いた。 これは、ひょっとすると・・・・・・? 「ゆゆっ!?これはもしかして、にんげんさんのつかってたないふさんなんだぜ!?」 まりさはその棒に全力で飛び付いた。 「あ!それは!!」 血相を変えて叫ぶ少女。その姿を見たまりさは、この棒こそがないふさんで、人間を打倒しうる 凶器なのだと確信する。 「このないふさんはまりさのものにするんだぜ!これさえあれば、にんげんさんもいちっころっなんだぜ!!」 さっきまでしーしーを漏らして震えていたとは思えない自信満々な表情を浮かべるまりさは、 木べらを口に咥えながらゆっへっへ、とふてぶてしく笑った。 「そんな危ないものは仕舞いましょう?それをこっちに渡して?」 「だまるんだぜ!!!」 少女が伸ばしてきた手を拒絶するように強く木べらを薙ぐと、まりさは少女に突進していった。 「おちびちゃんをずっとゆっくりさせてはにーにもひどいことをしたにんげんさんは、ぜったいに ゆるさないんだぜ!!まりさのないふさんのさびになるんだぜええぇぇぇぇぇ!!!!」 体を低くひしゃげさせ力を貯める。伸びあがる力をゆんっと推進力に変えて、 まりさは乾坤一擲の一撃を繰り出した。 「口に物を咥えて喋るなんて、器用なんだねー」 そんなまりさの渾身の一突きを、少女は危なげもなく横に動いて躱した。 「・・・・・・ゆ?」 驚いたのはまりさだ。ひっさつっの一撃を喰らっていちっげきっでやられてしまうはずの少女が、 いきなり見えなくなってしまったのだから。 まりさのいちっげきっがすごすぎて、跡形も残らずに吹き飛んでしまったのだろうか・・・・・・? きょろきょろと周りを見渡しながらお花畑な結論を導き出しそうになった時、真後ろから声をかけられた。 「こっちだよまりさ。まりさの攻撃、とっても遅くて避けやすかったよ」 「ゆゆっ!!??」 慌てて振り向くとそこには、まりさのいちっげきっでそくししたはずの人間さんが、 変わらぬ姿で立っているのだった。 「ばりざのざいっぎょうっのこうげきどぼじでよげられでるのおおおおぉぉぉぉぉ!!??」 「まりさ。強い武器を持ってても、それを使いこなさなきゃダメだよ。 ただ振りまわすだけじゃ、人間は倒せないよ」 「うるざいうるざあああぁぁぁぁぁぁい!!ばりざのこうげきはひっさつっなんだああぁぁぁぁぁ!!!!」 「まりさの悪い所をアドバイスしてあげるからさ、だからほら、元気を出してもう一回かかっておいで? れいむとおちびちゃんのために、頑張って私を倒しちゃおうよ」 「いまのはまぐれだあああぁぁぁぁぁ!!!ゆっぐりじねええぇぇぇぇぇ!!!」 少女の言葉を聞いているのかいないのか。まりさはぎりりと木べらを噛みしめると、 目を見開きものすごい形相で、再び少女に飛びかかる。 「ほら、飛びかかる前にタメを作ったらタイミングがばれちゃうでしょ?」 軽く一歩下がる。 「ちゃんと相手を見ないと駄目だよ。飛ぶ瞬間に目をつぶっちゃってるじゃない」 足を交差させ、半身になる。 「武器は真っすぐ咥えないとだめだよ。そうそう、目は開けたままでね」 片足を上げ、手を後ろに組んだままピルエット。 そうやって少女は、踊るようにまりさの攻撃を避け続けた。 「ゆひー・・・ひぃ、ぴぃぃ・・・・・・」 数分後。そこには変わらず無傷の少女と、疲労困憊で全身を上下させるまりさがいた。 「んー、ちょっとは良くなってきたけど、まだまだかな」 「どぼじで・・・どぼじであだらないのぉ・・・・・・」 積み重なった疲労に押しつぶされるように平べったくなったまりさが、 少女を恨みのこもった視線で見上げ、睨みつける。 「なんでかって言われたらそれは、まりさが弱くてナイフの使い方が下手くそでお馬鹿さんで 存在そのものがちっぽけだからじゃない?」 「うっがああぁぁぁぁぁぁ!!!ばりざはよわぐないいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 少女の言葉に激昂したまりさ。体を饅頭型に戻すと木べらをぎちりと噛み締め直し、 猛烈な勢いで少女に吶喊していった。 「んー、じゃあそろそろ、最後のレッスンにしようか」 最初より僅かにに切れ味の増したまりさの攻撃を満足げに眺めると、 少女は右の爪先でごつんと一つ床を叩いた。 「武器は真っすぐ咥える。相手を見る。タイミングを読む。良い感じだよまりさ」 嬉しそうに言うと少女は、まりさの攻撃に向かって真っすぐに立ち、ぐんと一歩踏み出す。 「あだれええええぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 「でも私だったら、そもそも口に棒を咥えたまま何かに突進するなんて馬鹿なことはしないかな♪」 そして右足を大きく振ると、安全靴の質量と硬度を、ハンマーのようにまりさに叩きつけた。 「だって噛む力が足りないと、逆に自分に刺さっちゃうでしょ?」 あはは、と、少女は楽しそうに笑った。 銃を思い浮かべてほしい。弾丸が発射されるプロセスを思い浮かべてほしい。 と言っても、専門的な知識が欲しいのではない。極々単純な、初歩のもので十分。すなわち、 撃鉄が雷芯を叩く。 着火された火薬は爆発的な圧力で弾丸を押す。 そして押された弾丸は、銃身の導きに従って飛ぶ。たったこれだけだ。 少女のハンマーのような蹴りは、火薬とのハンマー(撃鉄)の役割を同時に果たした。 爆発的な圧力を受けた弾丸・・・・・・木べらは、まりさの口を銃身として、一直線に吹き飛ぶ。 弾丸は強度の足りない銃身を破壊しながら、まりさの喉に思い切り突き刺さった。 「おぼええぇぇっぇええっふぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 大口を開けて叫ぶまりさ。前歯が上下共にごっそりとヘシ折れていた。 「あびいいぃぃぃいいひいいっひいいいぃぃぃぃ!!!」 錯乱してその場でぐるぐると回りだすと、貫通した木べらの柄が尻尾のように踊った。 「ふいでええぇぇぇぇぇぇぇ!!ごれぬいでええええっぇぇぇぇぇっぇ!!!!」 叫び声を上げ続ける口内に見えるへらの部分。まるで、舌が二枚に増えたようだった。 銃身を口に咥えて引き金を引いたに等しい今のまりさ。 端的に言えばそれは自殺行為で、しかしゆっくりはそんなことでは死なない。 その代わりにまりさは、涙も出ないほどの痛みを味わう羽目になるのだった。 「おっげええぇぇぇぇぇ!!!!うげぇぇぇぇ!!いぢゃい!!ぬいでで!!ででいっでね!!! ばりざのおぐちがらででいっでねえぇぇぇぇぇ!!!」 自分の尾を見ようとするかのように回り、飛び跳ね、えづき、体を揺らし、また飛び跳ね。 まりさは刺さった木べらを抜くためにあらゆる動きを試した。が、それらは全て無駄骨に終わった。 「無理だよまりさ。まりさ一人じゃそれは抜けないよ」 少女はしばらくまりさの一人上手を鑑賞していたが、まりさの動きが鈍った所でひょい、と 持ち上げると、れいむの方を向けて置き直した。 「ゆっくりには人間みたいに手も足も無いんだから、助け合わないとね」 「でいぶううううぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 この痛みから逃れたい。何でも良いから助かりたい!!ただその一心でまりさは走った。 「でいぶううぅぅぅぅ!ごれぬいでええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 れいむの元にたどり着いたまりさはれいむに体当たりのようなすーりすーりをする。 「!!」 しかしやられた方のれいむにはたまったものではない。今のれいむは少しの刺激でも餡子に 響き、吐き気がするほどの痛みが走るのだから。 「ねぇでいぶうぅぅぅ!!ごれぬいでよおおぉぉぉ!!!どぼじでうごいでぐれないのおおぉ!! かわいいかわいいでいぶのばりざがいだがっでるんだよおおおおぉぉぉぉぉ!?」 れいむの事情を知らないまりさはれいむにすーりすーりし続ける。力を込めたすーりすーりは、 見る者にはれいむを転がそうと体当たりしているのと、ほとんど区別がつかない。 「ゆびえぇぇん!!おへんじじでえぇぇ!!どぼじでばりざをだずげでぐれないのおおぉぉ!!」 「~ぃ!!」 押されるれいむが、ズレ始めた。 「ごんなにばりざぐるじんでるんだよおおおぉぉぉ!?でいぶとおちびぢゃんをだずげるだべに がんばっだめいよのふしょうなんだよおおおおぉぉぉぉぉ!!??」 みり、みり、みり、みり。 「げずなのおおぉぉぉ!?でいぶはげすだったのおおおぉぉ!?なにがいええぇぇぇぇ!!」 ぶち切れたまりさがれいむにまごうこと無き体当たりを喰らわせた瞬間。 ぱかり、と、れいむがまっ二つに割れた。 「!!!!!!!!!!!!!!!!」 分かれて落ちたれいむの上半分。うにうにと蠢きながら何か探すように動き回るがもう、 自力で向きを変える力もない。びくびくと震えながら、逆さまになった目から涙を排泄し続けるばかり。 「・・・・・・・・・・・・でいぶ?」 これはまりさ。軽く。そう本当に軽く、親愛の挨拶ぐらいの強さですーりすーりしただけなのに? どうして?これれいむはどうなっちゃってるの?え?死んじゃうの?れいむ死んじゃうのなんで どぼじでいとしのはにーいたいこれぬいてくれないのまりさはなにもしてない 「ゆみゅぅん・・・・・・。ゆ?れいみゅもうおそとにでちぇもいいにょ?」 錯乱し始めたまりさに、ずっと親れいむの口の中にいた・・・・・・今は親れいむの下半分をベッドにした 赤れいむの、暢気な寝起きの声が届いた。どうやら眠ってしまっていたらしい。 体に刺さりっぱなしのないふさん、真っ二つに割れたれいむ。れいむの上に乗ったおちびちゃん。 状況は二次曲線のようにカオスの度合いを増大させていく。まりさの小さな処理回路が 破裂しそうになった瞬間、まりさの後ろに回った少女が、まりさの後頭部から尻尾のように 生えている木べらの柄を掴んだ。 「おはよう、れいむ。ゆっくりしていってね」 「ゆぅ~ん、ゆっくりしちぇいっちぇね!!」 「ひぎぃっぐりじでいっでね!!」 「起きてすぐこんなことを言って悪いとは思うんだけど、大切なことだからゆっくり聞いてね?」 掴んだ柄を掻き回すように動かしながら赤れいむに向かって少女は言う。 「あなたのお父さん、まりさは狂った・・・・・・ゆっくりできないゆっくりになっちゃったの。 まりさはあなたのお母さんを殺して、今度はあなたを食べようとしてるんだ」 「だにいっでるの、ばりざはおげえぇぇうえげえぇえへええぇぇぇぇ」 「ほら見て、どう見てもまともじゃないでしょう?早く逃げないとれいむ、食べられちゃうよ?」 そう言うと少女は、木べらの柄を掴んだまま木べらの開けた穴を押し広げ、 めりめりと拳をまりさの体内に侵入させた。 「ぎゃおー、たーべちゃうぞー・・・・・・ってね」 押し出されるようにまりさの口から飛び出した木べらは、見ようによっては舌のようにも見えて。 「ゆっぴいいぃぃぃぃぃぃ!!!おとうしゃんがれいみゅをたべようちょしゅるううぅぅぅぅぅ!!!! たしゅけちぇおきゃあしゃああああああぁぁぁぁぁん!!!!」 「お母さんはもう死んじゃってるよ。ほら、下を見てごらん?れいむは今、まりさに真っ二つに されちゃったお母さんの上に乗ってるんだから」 「ゆわああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」 認識した途端地面から立ち上る、濃密な死臭。れいむは、少女の言葉が真実だと認識する。 「泣いてる時間はないよ。早く逃げないと、本当にお父さんに食べられちゃうよ」 「れいみゅおうちきゃえりゅうううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」 弾かれたように跳ね始める赤れいむ。それを満足げに見下ろすと、 「狂っちゃったまりさ。おちびちゃんを殺したくなかったら、お口はちゃーんと、閉じておこうね? ひょっとしたら、まりさの噛む力の方が、私の腕の力より強いかもしれないし、ね」 そう言って、手首をまりさの体内で一回転させた。 「ゆぴいいぃぃぃぃ!!こっちこにゃいでええぇぇぇぇ!!」 ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。 「どぼじちぇきょんなこちょしゅりゅにょおおおおぉぉぉ!?」 ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。 「ゆるちてええぇぇぇぇ!!!れいみゅいいこににゃるきゃらああぁぁぁぁ!!!」 ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。 赤ゆっくりがあちらこちらに逃げるたびに、追いかける舌・・・・・・木べらでまりさの歯が折れる。 少女は赤ゆっくりが逃げられる程度の早さで、しかし決して余裕は与えない。そんな意地の悪い 速度を維持しながら、赤ゆっくりの周りの床を叩き続けた。 「ゆぴいいいぃぃぃぃ・・・・・・ちゅかれちゃよおおおぉぉぉ・・・・・・」 「おひぃひひゃんは・・・・・・はりはは・・・・・・・・・・・・」 そうしてしばらくの時間が過ぎ、限界が訪れた。 赤ゆっくりはその柔らかい皮と少ない餡子を限界まで酷使した所為でもう、何をされるまでもなく 倒れそうで。 白目を剥いた親まりさは歯の半分以上を抉られている上に、体には少女の腕が二本は入って しまいそうな大穴が開いて、こちらももう長くは無いと一目で分かるようで。 「そろそろかな」 糖蜜のような背徳遊戯の終わりを締めくくるように、少女はまりさの体から木べらを引き抜くと 腕を大上段に上げ、赤れいむに向けて一気に振り下ろした。 「どしゅうううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ」 がちん。 赤ゆっくりが潰れる音はとてもちっぽけで儚く、少女の耳にそんなものは届かない。 「・・・・・・ドス?」 その耳に届くのは、興味深い赤れいむの末期の台詞だけ。 「ねぇまりさ。もしかして、あなた達が住んでいた山にはドスがいたの?」 少女は木べらを再び無造作に放り出すと、親まりさに詰め寄った。 「ね、ね、教えてよまりさ。あなた達はドスを知ってるの?ドスの群れにいたの?答えて?」 ぽんぽん、と頭を叩くと、穴があいて浮き輪のようになっていたまりさは、凹の形にべっこりとへこんだ。 「あ・・・・・・やりすぎちゃったかな。まりさ、生きてる?」 揺らしてみたり突いてみたり、少女は少しの間まりさが痛がるような事を色々と試したが、 まりさはついにぴくりとも動かず、一声すらも上げなかった。 「ちぇ、死んじゃってるか」 詰まらなさそうに言うと少女は立ち上がる。上機嫌に部屋の真ん中に歩くと爪先立ちになり、 両手を広げてくるくると回り始めた。 「ドスまりさかぁ。私より大きくて、重くて、強いんだろうなぁ」 くるくると、くるくると、 「人間より強い本物のゆっくりの『武器』。武器を持ったゆっくりは、どんな風になるんだろうなぁ」 くるくると、くるくると、 「私がこうやって手を広げて回るよりきっとまだ大きいんだよ。ドスの頭を切り開いて、 その上で踊ってみたいなぁ」 くるくると、くるくると。 「今年の夏休みは楽しくなりそう」 くるくると回りながらくすくすと少女は笑い、とりあえず練習として、次のゆっくりを虐める時には 本物のナイフを使おうことにしようと考えるのだった。 END あとがき ゆっくりを虐めるだけSS第二弾でございます。 今回は虐待派の人間による純粋な虐待です。実はこれまでに虐待をホビーとして楽しむ人間 と言う物を書いたことが無かったため、今作は結構な難産になりました。いかがでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 次のSSの予定はまだ未定です。何が出るのか自分でも分かりません。一番文章量的に 進んでいるのは希少種が出る物語なんですけど・・・・・・予定は未定。 投稿頻度は相変わらず低いと思いますが、次のSSでお会いできたら嬉しいです。 それではここまで読んでくださったあなたに感謝をささげつつ、今日はさようなら。 by ゆンテリアあき