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前 さっそく、まりさは自分の巣にれいむを案内した。 まりさの巣は、長老クラスに次いで群れの中で一番大きかった。 群れへの貢献から、まりさは立地条件の良い巣を譲ってもらい、それを拡張したのだ。 きっとれいむも満足してくれる……にんまりとまりさはほくそえんだ。 「ゆふ~ん、だーりんのとことくらべるとせまいけどまぁまぁだよ。ゆっくりしてあげてもいいよ。」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。といって、特に文句を言うわけでもない。 あの人間と比べられるのは癪だけど、仕方がない。どう頑張ったところで、自分より強い人間より 凄いゆっくりプレイスを作れるわけがないのだ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。そのうちあのにんげんさんのことをわすれて まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 「じゃあまりさはかりにいくから、れいむはゆっくりしていくんだぜ」 「ゆっくりがんばってね。」 まりさはれいむに親愛のすりすりをしてもらうと、元気に出ていった。夫婦としてのすりすり ではないことがまりさには悲しかったが、離婚したばかりなのだ。時間が経てばまりさにもきっと 愛情のすりすりをしてくれるはずだ。 ムカデ、ダンゴムシ、イモムシ、桜の葉、クローバー、大きな蛾。 頬に一杯食べ物を詰めてまりさはれいむの待つ巣に帰ってくる。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「むーしゃ、むーしゃ、それなりー。だーりんのとことくらべるとまずいけどまぁまぁだよ。 ありがとうね、まりさ!!」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。といって、特に文句を言うわけでもない。 あの人間と比べられるのは癪だけど、仕方がない。どう頑張ったところで、自分より強い人間より 美味しい食べ物を採ってこれるわけがないのだ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。そのうちあのにんげんさんのことをわすれて まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 食事の時間が終わり、まったりとした空気が流れる。 まりさはれいむの頬にこすりつけ、だんだんとスピードをあげていく。 いつの間にか体もぶるぶる小刻みに震る。目つきがとろんとしてくる。 つい、劣情に駆られてしまうのを止めるのも野暮なものだろう。 特に今日はあの美れいむをようやくつがいとして向かえた後である。たまりにたまっているのだ。 当然、交尾の時間となる。 「ゆっゆっゆっ……」 ねちゃねちゃとした、粘っこいものが糸を引きそうな音を出してこすり合わせる。 「ゆゆゆゆ……ゆっゆっゆっ……」 「…………」 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 「…………」 二匹のほお擦りは加速していく。だが、興奮するまりさを尻目に、れいむはどこか冷めていた。 「ゆっゆっ……んほぉぉぉぉ!!!」 「すっきりー!!!」 「すっきりー」 二匹の交尾は終わった。 「ゆゆっ、まりさはそーろーだね。だーりんのとくらべるとへたくそだけど、しょうがないよね。」 「ゆあああああああ!!!どうじでぇぞんだごどいぶの~~!!」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。しかも、ボロクソに文句を言っている。 あの人間と比べられるのは癪だけど、意味が分からない。どう頑張ったところで、ゆっくりである自分より人間 がれいむをすっきりさせられるわけがないのだ。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。いまはすっきりーできないけど、おちびちゃんができるのは まりさだけだから、まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 そう思わなければ、まりさを支えるプライドが持たないのだ。 まりさの名誉のために言えば、人間と比べることが間違いなのだ。 そもそも、ただでさえ惰弱なゆっくりが交尾のときは完全な無防備になる。 野生の生物は交尾は早ければ早いほど良いのだ。 気持ちよさなど二の次、とにかく受精したら即警戒態勢に入る必要がある。 ゆっくりも、ご多分に漏れずそのパターンだった。 対して、男がれいむをすっきりーさせていた場合、天敵はいないためいくらでも時間をかけることができる。 手も足も道具もある人間のほうが、ゆっくりよりバリエーションも多いのは当然のことだ。 しかも、悲しいことに人間の足ですっきりーしまくったれいむと違って、まりさは初めてだった。 れいむを思うあまり、ほかのゆっくりに見向きもしなかった結果がこれである。 それでも、何とかれいむを妊娠させることが出来た。 胎児型の出産になるので、2週間後には元気な子供が生まれるだろう。 れいむが来てからの数日、まりさは全然ゆっくり出来なかった。 まりさがどんなに努力しても、れいむはそれなりにしか喜んでくれない。 いや、それはいい。愛するれいむのためなら、どんなに苦労しても、喜んでくれるまで頑張れる。 ただ、常に人間と比べられるのは我慢ならない。どうやっても勝てないと分かっているだけに、まりさ としても嫉妬しようがない。やり場のない怒りを覚えるだけである。 それでも、子供さえできれば……子供さえ出来ればきっとれいむはまりさの良さに気付いてくれる。 そんな願望に近い思いでまりさは耐えていた。 とうとう、出産日を迎えた。 「ゆゆ!?れっれいむ!ゆっくりがんばるんだぜ!!ゆっゆっふー!ゆっゆっふー!」 「が、がっばるがだで!でいぶがっばるがだで!!」 閉じていたれいむの産道が、今にも爆ぜんばかりに開き……ポンと1匹のでかいゆっくりを出産した。 「おっ、おじびじゃん!ゆっぐりじでね!!ゆっぐりじでねぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 れいむは涙ながらに喜んだ。最愛の娘との対面だ。ずっと、ずっとこの子をゆっくりさせてあげよう。 「ゆっくりしていってね!!」 まりさも嬉しかった。長年夢見ていたれいむとの家族だ。嬉しくないはずはない。 「おかーしゃん…?」 「そうだよ!おちびちゃんのおかーさんだよ!」 「ゆっくりしていってね!!というんだぜっ!」 「ゆっきゅり…ちて…いっちぇね」 「そうだぜっ!!がばいいんだじぇぇぇ!!!!」 「れいむ、みるんだぜっ!!とってもゆっくりしたおちびちゃんだぜっ!!」 「ゆー♪そうだねっ!!だーりんもよろこんでくれるよね!!」 静寂 「ゆぶぶぶぶ…………。もういやだぁぁぁ、ゆっぐりじだいんだぜぇぇぇぇ!!」 「ゆゆっ? どーしたの?まりさ。ゆっくりしていってねっ!!おちびちゃんがこわがるでしょ!?ぷんぷん」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 何も変わらなかった。 何一つとして、変わらなかった。 れいむは、まりさがプロポーズしたときから変わってなかった。 れいむの目に、まりさはつがいとして映らなかった。 「で、でいぶばあどじじぃとまりさとどっじがずぎなんだぜぇ!!!!」 れいむはまりさを受け入れてくれたはずなのに、いつまで経ってもあの男の子とは忘れない。 とうとう我慢できなくなったまりさは禁断の言葉を口にした。 「ゆゆっ?そんなの決まってるでしょぉぉおぉ!!まりさはばかなの?」 れいむは即答した。 そうだ、決まっている。 「まりさのほうがすきにきまってるでしょっ!!」 ああ、よかったんだぜ。れいむはやっぱりまりさをあいしているんだぜ。 それなら、まだがまんできるんだぜ。おちびちゃんたちがおおきくなるころにはきっと、 こんどこそまりさとゆっくりできるんだぜ。 「あいしているのはだーりんだけだけどね♪まりさったら、なにいわせるの?はずかしーよ!」 「…………でてってね。」 能面のような顔でまりさは静かに言った。 「ゆっ?」 「まりさのゆっくりプレイスからでていくんだぜぇぇ!!」 そう言うやいなや、まりさはれいむに体当たりを喰らわした。 れいむはまりさをあいしていなかったんだぜ。 そんなれいむとはもうゆっくりできないんだぜ。 「ゆべっ!」 「やめてよねっ!れいむがほんきになったらまりさにまけるわけないでしょっ!!」 いくら、まりさの戦闘力が高くとも、栄養状態の違いから固体の大きさが違いすぎる。 出産の疲れはあるものの、子供を守ろうと強い意志を持つれいむにまりさが勝てる道理 などなかった。 「“かてーないぼーりょく”をするまりさとはゆっくりできないよっ!!りこんするよ!!」 よかった。なにはともあれ、れいむはでていくんだぜ。 これでゆっくりできるんだぜ。 「“いしゃりょー”と“ざいさんぶんよ”をもらうねっ!!あと、“しんけん”はれいむ のものだよっ!!」 「ゆうううううううううううううう!!!やっ、やめるんだぜ!!まりさのたからものをかえすんだぜ!!」 「やべでー!!ばでぃざのだべぼのどらないでぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないいいいい!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ば、ばでぃざのべっどがぁぁ!!」 「じゃあ、これぐらいでいいよっ!!」 そうれいむが言ったあとは酷い様子だった。まるで強盗にでも合ったかのように、家はめちゃくちゃに荒らされた。 まりさが群れを救ったとき、長老達からもらったきれいな石。 まりさがれいむのために寝る間を惜しんで狩りした結果、たまった餌。 都会派のありすから貢いでもらった綿。 まりさの大切な物はほとんど全て奪われた。 「ゆゆっ!じゃあれいむはおうちにかえるね。まりさ、“りこん”したけどこれからもれいむの“しんゆう”でいてねっ!」 「もうにどとくるなだぜぇぇぇぇ!!!!」 ゆ、れいむがあんなにゆっくりできないゆっくりだったなんて……。 今までの思い出を振り返り、まりさは静かに涙を流し続けた。 でも、これでわかったんだぜ。まりさにふさわしいのはありすだぜ。 これからはありすのおもいにこたえるんだぜ。 まりさは気付かなかった。 散々大見得をきって人間のところに行ったものの、完膚なきまでに叩きのめされ、れいむにお情けでつがいにしてもらったのに、 れいむをゆっくりさせることが出来ずに三行半を突きつけられ、挙句実力行使でもれいむの返り討ちにあったまりさが群れのゆ っくりの尊敬を集めるわけなどないことに。 ありすが、れいむに対するまりさほどに辛抱強くないことに。 まりさがれいむと別れるまでの間は、ありすにほかのゆっくりとつがいになるのに充分なほどに時間が過ぎていることに。 「ゆゆっ!ただいま、あなた。」 「ああ、れいむか。久しぶりだね。その様子だと上手く行ったようだね。」 「ゆほーん、かわいいおちびちゃんだよっ!!」 あの晩、男とれいむの会話はこうだ。 「ゆゆ……あなた、ゆっくりきいてね!!たいせつなおはなしがあるの。」 「なんだい、れいむ。急に」 「れ、れいむはおちびちゃんがほしいよ!」 「ほほぅ?だが、僕は君に種付けることはできないよ。お隣さんに頼んで、ゆっくりを貸してもらっても良いが」 「ゆ~、あのねっ!れいむには“しんゆう”のまりさがいるの!!すっごくゆっくりできるんだよ!」 「成る程、じゃあそのゆっくりと子作りをしたいわけだ?」 「ゆっ!そうだよっ!でも、まりさはれいむがあなたとけっこんしている“ひとづま”だってしってるんだよっ! だ、だから、だからでいぶどりごんじでねぇぇ!あなだのごどあいじでるど、ゆっぐぢりがいじでねぇぇ」 途中から涙声になる。 「ああ、別に構わんが、群れに帰るのか。寂しくなるなぁ~」 「ゆゆっ!あなた、あんしんしてねっ!!おちびちゃんがうまれたら、“さいこん”しようねっ!! すこしのあいだだけど、がまんしてね!!」 ほ~。仮想離婚か。なかなか考えるなぁ。ゆっくりなのに。 「そのまりさは、うんというのかい?」 「だいじょうぶだよ、あなたっ!!れいむはまりさのことがだいすきだし、まりさもれいむのことがだいすきだよっ!! あいしているのはあなただけだけど、“しんゆう”のまりさはずっとれいむとかぞくをつくりたがってたしねっ!! きっと、まりさもゆっくりできるよ!!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき 元ネタは童話の「ねずみの嫁入り」(そんな名前だったような気がする) お家宣言して潰されるのなら、お家の人になってしまえば良いじゃない。 かいたもの 甘い話には裏がある。 このSSに感想を付ける
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そのまりさは、幼いころに帽子を痛めた。 具体的には、帽子のつばに切れこみができてしまった。 命のつぎに大切な帽子が傷ものになってしまい、まりさは絶望し、泣きじゃくった。 だが、お家に奥底に縮こまって震えるしかなかったまりさは、やがて自信を快復する。 その契機となったのは、親れいむだった。 「おちびちゃん。ぺーろぺーろしてあげるね!」 そう言って、暗い穴底でせっせと我が子の頬をなめたのだった。 ちびのまりさは、どうしてぺーろぺーろする対象が帽子ではなく自分なのかと、疑問だった。 傷ついているのは、お帽子なのに。 「おちびちゃん。すーりすーりしてあげるんだぜ」 続いてやってきたのは親まりさだった。 自信にあふれた顔つきで、いつまでもいつまでも、頬ずりをしてくれた。 「ゆゆ~。いもーちょに くさしゃんを あげりゅんだじぇっ」 「いもーちょに あまあまとっちぇきったんだじぇ~」 「まりしゃ、ぺーりょぺーりょ しちぇあげりゅねっ」 姉妹たちも群がってくる。 両親も姉妹も、帽子の切れこみについては一言も口にしなかった。 繊細な日常を壊さないように、あるがままにふるまっている。 しだいに、まりさは穴倉に閉じこもっている自分がふしぎに思えてきた。 だから、 「おちびちゃん、おそとに でようっ」 と、家族が言ってきたときも、 「でりゅんだじぇ」 と、素直にうなずくことができた。 ちびまりさは、三日ぶりにお家の洞窟を出た。 陽光のもとに歩みでたとき、まりさは濃厚な春のにおいに包まれた。 やわらかな草が地面を覆っている。木々の黒々とした幹は逞しくかつ美しい。 樹木はことごとく冠を装備する。王冠からしたたる木漏れ日が、草原の上に躍っている。 とりわけ、草むらの中心にたたずんでいる樹木が幼いまりさの目をひいた。 それは、白い樹幹をもっていた。 中空に投げかけられた梢はたっぷりと葉をつけている。 静かな君主が、草むらのただなかにそびえていた。 「……ゆっきゅりぷれいちゅ」 まりさは呆然としながら呟いた。 それらは見慣れたはずの風景、日常の景色にすぎなかった。 だが。 暗い穴の底から這い出てきたまりさの目には、 「きょきょは とっちぇも ゆっきゅり できりゅんだじぇ!」 と、おもわず宣言してしまったほどに、みずみずしいものとして再生されていた。 その快活な声は、一点の濁りもない澄みわたる蒼天に吸いこまれていった。 白濁した空のもとで、ゆっくりたちが草むらにうごめいていた。 その顔には覇気も生気もない。 「むーちゃ、むーちゃ……。ゅげぇ……むーちゃ……。むーちゃ……ゅぐ……」 わきめもふらずに痩せこけた雑草をむさぼっている。 何十頭というゆっくりがいるのに会話もなければ歌声もない。 草と唾液がこねくりまわされる湿った音だけが、無言の生首の這いずりまわる草むらにこだましていた。 草むらの中心には、白い大樹が立ち枯れている。 すでに老樹と化してひさしい。子孫を残す機能などはるかな昔に失われていて、 もはや座して死をまつしかすることがない。しかし樹木であっても死は怖いのか、 まるで救いを求めるように葉のない梢を曇天へと伸ばしている。 その曲がりくねった梢のさき、はるかな高みには、数十もの、はばたかない鴉が悠々と飛んでいた。 それは、戦闘機の編隊だった。 しかしゆっくりたちは空飛ぶ機械などには目もくれない。 空など仰ぐ価値もないと言わんばかりに、ただひたすらに、 あしもとにたむろす痩せこけた雑草を胃の腑にものをつめてゆく。 永遠に続くかとおもわれていた静寂は、しかし突然にひきさかれた。 「ゆぴゃぁぁぁっ!」 悲鳴が草むらにこだまする。 ゆっくりが一斉にふりむく。 広場のすみで、一頭のれいむが野良犬の餌食となっていた。すでに半身を食いちぎられ ていて、中身の餡子はとめどもなく流れだしていた。 「だっ、だずげっ、だずげでねぇっ!」 助けをもとめる濁った悲鳴が空にまう。 混沌が発生した。 ゆっくりできない、こっちこないでね。たすけて。にげるよ。 ゆっくりたちは金切り声をあげながら一目散に逃げだしていゆく。 救援に耳を貸すゆっくりは、ただの一頭もいなかった。 「だずげっ、だずげでっ! ど、どぼじでっ!」 ついにさいごの一頭がれいむの視界から消えた。 すべてのゆっくりが、一度たりとも、ふりむかなかった。 「どぼじでぇ……なんでぇ……ゆぐぅ……ゅぐっ!」 れいむが白目をむいた。 痩せこけた犬がれいむの肌を噛み、そのまま森の暗がりへとひきずりこもうとする。 れいむはあんよを踏ん張ってこれに抵抗した。 ぐるりと眼球が回転し、黒目がもどった。 「やべでぇ……やべ……だずげでっ、だれが、だずげでぇ」 哀訴はとどかない。 ずるずると森のなかへと引きずられてゆき、悲鳴は森の暗やみのなかに吸いこまれた。 こうして、一頭のれいむは仔犬の餌としての運命を歩むことになった。 翌日、草むらのすみには森へと伸びる餡子の道ができていた。 だが、ゆっくりたちはまるで気に留めることなく、草をはみつづけた。 すべては日常の光景だった。 だから驚くにはあたいしない。 猛獣に狩られる同胞も、 曇天に躍る戦闘機の群れも、 ときおり聞こえる爆撃音も、 日常のひとこまにすぎなかった。 星無き夜空の統治がはじまった。 森も山も、まったくの暗がりの満たすところとなる。 白い枯木の広場も例外ではない。 その広場からすこし離れたゆっくりの巣穴では、赤ゆのれいむがさんざんに泣いていた。 「ゆぴぃぃぃーーーー! おにゃきゃ ずいぢゃーーーー! おにゃきゃ ずいぢゃーーー! でいびゅば おにゅぎゃ ずいぢぇりゅにょーーーーーっ! ごばんじゃぁぁーーーんっ!」 この癇癪はいまに始ったことではなかった。それどころか毎晩繰りかえされている。 慟哭がはじまると、家族はいつもおなじ手をつかう。 「おちびちゃん。おかーさんが すーりすーりしてあげるよ。すーりすーり……」 成体のれいむが頬ずりをしてこれをあやす。 「ごはんさんは もうないのぜ。がまんするのぜ。ぺーろぺーろ……」 成体のまりさは舌で頬をなめあげて空腹をまぎらわせようとしていた。 「ゆゅ。れいむがしっかりしないから。すーりすーり……」 成体間近に成長したれいむも、先達にならって頬ずりをする。 しかし赤ゆはいっこうに泣きやむ気配をみせないのだった。 「おなきゃ ずいだのぉぉーーーーっ! でいみゅは おなぎゃ ずいだのぉぉーーーーっ! ゆんやぁぁぁぁーーーーー! ゆんやぁぁぁぁぁーーーーーーっ!」 いくらだだをこねても、食べものは出されない。 あたりまえだ。 巣にはひとかけらの食料も残されていなかったのだから。 だから、赤ゆに供されるものは腹のたしにならない愛情だけであった。 そして、無駄と知りつつ愛情をそそぐ三頭のゆっくりの姿を、 べつの二頭のまりさ種が心配そうな目で見つめている。 このさびれた巣穴には合計六頭のゆっくりが息づいていた。 まず、父まりさと母れいむ。 この二頭には四頭のこどもがいる。 生まれた順かられいむ、まりさ、まりさ、れいむだ。 両親とともに赤ゆをなぐさめているのは、長女たる姉れいむ。 すでにツガイを得ていてもおかしくない年頃だ。 姉まりさはまだ子供といえたが、分別のつかない童でもない。 赤ゆの段階を脱しているもののまだ頼りないのが、妹まりさだ。 そして末っ子れいむ。 けっきょく、赤ゆの嗚咽を止めたのは、 れいむ種の愛情のこもった頬ずりでもまりさ種の温かい舐めあげでもなかった。 泣き疲れと、眠気だった。 子供たちが寝静まると、父まりさはツガイのれいむにつぶやくように告げた。 「……ひっこし、するのぜ」 「ひっこし?」 「もう いやなのぜ」 どれだけ血眼になって探し集めても、土をはんでいるようなまずい草しか食べられない。 森には肉食獣が息づいている。遠雷のような爆音は昼夜をとわず聞こえてくる。 父まりさは限界に達していた。 「ゆぅ……」 母れいむはあいまいな態度をとり、子供たちを横目で見やった。 みんな泣きながら眠っている。涙の理由はよくわかる。子供たちは生まれてこのかた、 一度も満腹をあじわったことがない。寝ても覚めても、空腹がじくじくと痛んでいるにちがいなかった。 「ひっこし するのぜ。あたらしい ゆっくりぷれいすで おちびちゃんたちに おなか いっぱい ごはんさんを たべさせるのぜ」 「……そんなゆっくりぷれいす、あるのかな」 「あるのぜ!」 父まりさが声をあらげた。 母れいむは慌てて子供たちにふりむいたが、起きた子供はいなかった。 「おちびちゃんたちは どーするの?」 桃源郷を探す旅は、長く厳しいものになるだろう。長旅に子供たちが耐えられるかどうか。 姉れいむは問題なくついてこられるはずだ。姉まりさも運動能力にすぐれている、問題はない。 妹まりさにしても、休憩をおおくとるといった工夫しだいでなんとかなる。 問題は、末っ子れいむだ。 「おちびちゃんは まりさが ぼうしのなかに いれて はこぶのぜ」 母れいむは冷たく返答した。 「……まりさのおぼうしには たべものを いれておかなくちゃ」 備蓄はない。 だが、旅に危険はつきものだ。今日食べものが得られてから、 明日も食べられるとは、かぎらない。だからみちみち食べものを集め、余裕をもちながら旅をしなければならない。 このとき運搬具としてまりさの帽子が役に立つ。 逆にいえば、まりさの帽子は食べもの運搬用であり、ここに赤ゆを閉じこめておくわけにはいかなかった。 「ゆぅ……」 父まりさが悲しげにうつむいた。そこにツガイの声がかかる。 「だから。おちびちゃんは れいむがおんぶするよ」 父まりさは顔をあげツガイを見た。母れいむの凛呼とした顔がそこにあった。 「くろうをかけるのぜ……」 翌朝、両親は族長まりさの巣におもむき、旅立ちのむねを伝えた。 族長まりさは特徴的な容姿をもっている。帽子のつばに切れこみがあるのだ。 族長は引っ越しの通告に接して、力なく首を横にふるだけだった。あきらかに反対の意をしめしていた。 だが、明確に反対したわけではなかったので、父まりさは旅立ちを決意した。 こうして、六頭家族は新天地めざして群れを出た。 その日も天空は膿んだ色をたたえていた。 出発してしばらくは、家族は非日常と格闘していた。 引っ越しという初めての経験が、家族にいいしれない不安と緊張と興奮を与えていた。 もっとも末っ子れいむだけは母の頭上で眠りこけていたので、身を切るような緊張とは無関係だった。 しかし、そうした緊張も時間もやがてほぐれていった。 まわりの風景は白の枯木のふるさととあまり変わらず、地獄も天国もそこにはない。 とはいえ、故郷とかわらない景色とは、 痩せさらばえた樹木が呼吸を止めたようにたたずみ、空には濁った雲が渦をつくるばかりの、 生も死も消えてしまったような朽ちかけた光景でせいかなかったのだが。 家族は一列縦隊で行進していた。 先頭をゆくのは父れいむだ。その後ろに補佐役として姉れいむがつづく。 列のまん中をしめるのは妹まりさ。四頭目は姉まりさ。しんがりを担うのは母れいむだ。 いちばん脆弱な赤ゆは、母の頭の乗せられて運ばれていた。 「ゆゆー。しずかなんだじぇー」 妹まりさがぼそりと言った。 その指摘に歯向かうように、末っ子れいむが目をさまし、起きるやいなや泣きだした。 「……ゅ……ゅ……ゆぴゃぁぁぁーーーーーーーーー! おにゃぎゃずいだーーーーーっ! ゆんやぅわぁぁぁーーーーーっ! おにゃが ずいだよぉーーーーーー!」 「ゆぅ……」 行軍がとまり、赤ゆあやしがはじまった。 ただし父まりさは参加しない。 道の行く手に背をむけて、泣きくずれる末っ子れいむとそれをなぐさめる家族たちを見つめるだけだ。 しかし、家族のなかでも一等悲痛な目つきをたたえていたのは、父まりさにほかならなかった。 これからずっと見知らぬ土地を歩くのだ。 どこに危険がひそんでいるか、わかったものではない。 そして、避けられる危険は避けるにこしたことはない。 そのためには息をひそめて、ふかく静かに行軍するのがいちばんだ。 ところが末っ子れいむは親の心配など露知らず、それが赤ゆの本能とはいえ、 ひたすらに自己の欲望を主張するばかりで抑えることをしらない。 こんなことで約束の地に辿りつけるのか。 森に息づき舌なめずりをする危険の網をかいくぐることができるのか。 それを思うと暗澹たる気持ちを抱かざるをえない。 いっそ今からでも戻るべきか……? とさえ、思いはじめていた。 今なら間に合う。今なら……。 「おちびちゃん、しずかにしてね! なけばいーってもんじゃないよ!」 その叱責は、姉れいむのものだった。 家族は水をうったように静まりかえった。 めったに怒りを表明しない姉れいむの怒声は、それだけの効果があった。 「……ゅ……ゅ……!」 末っ子れいむは、母の頭上でふるえた。そして、 「ゆびゃぁぁぁぁーーーーーーーーーっっ! ぼねーぢゃんぎゃ いじばりゅーーーーっ!」 火がついたように泣きだした。 姉れいむの馴れない叱責は、かんぜんに逆効果だった。家族のほうがうろたえてしまう。 ただ父まりさだけは、姉れいむの慌てる姿をみて微笑みをうかべていた。 そのとき、父まりさの背後でかさりと音がした。 家族が音に反応する。 野道のまん中に、猫がいた。 その黒い体毛はひどく薄い。筋肉のもりあがりはすさまじく、ほとんど異形と化している。 爪は曇天からもれる光をふうじて冷たくきらめいている。 その怪物が、琥珀の両眼でゆっくり六頭をしずかに見つめている。 末っ子れいむは狂乱した。 「ゆぎやぁぁぁぁぁーーーーーーー! ぎょばいよぉぉぉぉぉーーーーっ! ねござんば ゆっぎゅり でぎにゃいよぉーーーーー! でいびゅぎょばいぃぃぃーーーーーーーーっ! あっぢ いっでねぇーーーーっ! あっぢ いっでーーーーーっ!」 六頭は立ちすくんでいた。父まりさにいたってはしきりに歯を噛みならしておびえている。 魔物が足を踏みだした。 すると、父まりさの震えがとまった。一家の庇護者たる役割をおもいだした。 一気に頬をふくらまし、 「ぷくぅぅぅーーーーーっっ!」 と、涙ながらに威嚇を展開した。 姉妹たちもそれにつづく。 「ぷ、ぷ、ぷっ……ぷくうぅぅぅっ!」 「ぷきゅーーーーーっ!」 「ぷきゅぅぅぅぅーーーーっ!」 母れいむだけは赤ゆをきづかい、戦闘には参加しなかった。 魔獣とゆっくりによる闘争は、ゆっくりたちの勇気に軍配があがった。 黒猫はしばらくゆっくりを睨みつけていたのち、ぷいと顔をそむけ、草むらに消えた。 家族たちは抱き合っておのれの無事をよろこんだ。 「ぎょばぎゃっだぁぁぁーーーーーーーーーっ! ぎょばがっだぁぁぁーーーーーーーっ!」 しかし末っ子れいむは泣きやまない。 「おちびちゃん、ねこさんは もういないのぜ! かったのぜ!」 父まりさが戦勝を誇ってみせた。 だが赤ゆは、 「おなぎゃずいぢゃぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!」 と、叫びかえした。 その嗚咽を聞き、父まりさはゆるゆるとかぶりをふった。 末っ子れいむの嗚咽をすておいて、行軍の再開を宣言した。 子供らは心配そうな目をしていたが、父まりさは厳しい目つきをするばかりでとりあわなかった。 家族は無言で、背の高い草むらを両脇にしたがえているけものみちを進んだ。 赤ゆはいつしか叫ばなくなっていた。泣きやんだわけではない。 号泣がむせび泣きにかわっただけだ。 「おにゃぎゃ……ゆぐっ……おにゃぎゃっ……ひぐっ」 などと、つぶやいている。 父まりさが口をひらく。 「おちびちゃんたち、おうたを うたって ほしいんだぜ」 すこしでも家族の不安を和らげようとする一家の長の知恵だった。 「おうちゃー、ききちゃーい」 確信があったわけではなかったが、効果があった。末っ子れいむはぴたりと泣きやみ、 母れいむの飾りの上できゃっきゃとさわぐ。 姉れいむが音頭をとった。 「ゆ~は~、ゆっくりの~、ゆぅ~」 ほがらかな歌声がひっそりとした森に広がった。 母と姉妹が声をあわせる。 「ゆ~、ゆ~、ゆ~、ゆっくり~、ゆっくり~、ゆっくりのゆ~」 葬列のような雰囲気は消しとんでいた。上々だと父まりさは胸をなでおろしていた。 赤ゆだけは、 「ゆっくちぃー! ゆっくちぃー!」 と、叫び散らしていたが。本人は歌っているつもりなので、父まりさはよしとした。 ところが、歌声は闖入者によってさえぎられることとなった。 突然、左右に横たわる背のたかい草むらのなかから、ゆっくりが飛びだしてきた。 ありす種だった。 ありすは一列縦隊で進む家族のまんなかを横切ると、そのまま道の反対側に消えた。 「……ゆ?」 先頭をゆく父まりさが振りかえったときには、ありすの姿はすでにない。 「なにかとーったのぜ?」 「ありしゅがいたんだじぇー」 姉まりさが元気よくこたえた。 母れいむも無言でうなずき同意し、しかし直後に悲鳴を上げた。 「おちびちゃんがぁっ! おちびちゃんがいないよぉー!」 一隊のまんなかを歩いていた妹まりさの姿がない。 「まさか……そのありすに……れいむ!」 父まりさが鋭い声を放った。 「ゆゆ?」 「おちびちゃんを みていて ほしいのぜ! さっきのありす なのぜ、おちびちゃんを さらったのぜ! とりかえしてくるのぜ!」 一気呵成にそう言うと、母れいむの了解を待たずして、父まりさは草むらに分けいった。 草むらの向こうで、なにかが逃げてゆく音がする。 あたりの草はおしなべて背がたかく、視界が晴れない。 「はなちぇぇぇーーーー! まりしゃをはなちぇぇーーーー! げしゅぅーーーーーっっ! ゆわぁぁぁーーーーーん! ゆわぁぁーーーーーーーんっっ!」 妹まりさの悲鳴が聞こえてきた。だいぶ遠い。父まりさは殺気立った叫びをあげた。 「おちびちゃんをはなすのぜぇぇぇーーーーー!」 「……ゅ……? ぉ、ぉ、お、おどーじゃぁぁーーーーーーん! だずげでーーーーーっ! ばりざを だずげでぇぇーーーーっ! はなぢぇぇぇーーーーーっ!」 「たすけるのぜぇぇーーっっ」 と、叫びながらも父まりさは焦燥にかられていた。 おもいのほか誘拐犯は足が速かった。 敵には地の利があるらしく、父まりさはなんども石や樹木といった障害物にさえぎられた。 子供の助けをもとめる声も、しだいに小さくなってゆく。 やがて、完全に誘拐犯を見失った。 父まりさはがむしゃらにあたりの草をかきわけた。鋭い葉にあんよが切れる。 石をふみつぶして激痛がはしった。それでも探索の手はやすめなかった。 だが、いくら草むらをかき分けても、痕跡ひとつつかめない。動悸がはやまる。 そのとき、左手方向の遠くから死にいろどられた悲鳴がきこえてきた。 「ゆんやああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっっ!」 父まりさは目をみひらく。 方向を転じて、跳ぶように走った。 「おちびぢゃぁぁぁーーんっ!」 返答はなかった。 もどかしい。 父まりさは歯ぎしりした。 悲鳴を耳にして身をこがすような不安にかられていたのに、 いまはその返事の不在が不安でたまらず、悲鳴でもいい、妹まりさの声がききたかった。 「ゆんっ!?」 とつぜん、藪のような草むらが途切れ、背のひくい草が繁茂する広場に転がり出た。 「おちびちゃん!」 がばりと起きあがりあたりを見回す。 灰色の葉をつけた大樹の足もとに、ありすがいた。 父まりさを蒼ざめた瞳で見つめている。 「……」 二者は黙して対峙した。 「……おちびちゃんは、どこなのぜ」 ありすの体が、びくついた。その目に涙がたまってゆく。 が、それも一瞬のことでしかない。 一転して獰猛な目つきをたたえると、猛然と飛びかかってきた。 父まりさは横っとびに飛びのいて、奇襲を回避した。 敵は着地に失敗してバランスを崩す。 父親はすかさず背後をとった。 地面に落ちていた小枝をひろいあげ、あかいカチューシャのちかく、脳天にふかぶかと突き刺した。 絹を裂くようなするどい悲鳴が、しずかな森をさわがした。 父まりさはありすの上に飛びのり、全力でこれを押しつぶす。 白いクリームがぶっと吐き出された。もういちど、全力で踏みしだく。 こんどは口のみならず肛門と性器からも白濁液が流出した。 ありすは痙攣をはじめた。 父まりさは誘拐犯からおりて、詰問をはじめた。 「おちびちゃんはどこなのぜ。いうのぜ! いますぐ!」 「ゆ……ぐ……あなだの……ごども……」 瀕死の重傷だった。 「そーなのぜ! どこなのぜ! いうのぜ!」 尋問官の目は血走っている。ありすはクリームの涙をながしながら答えた。 「……ゆ……ゅ……ごべ……ごべんな……ざい…………あがぢゃん……が……おなが…… ずいでだがら……ゅ……だがら……」 「ど……どーでもいーことなのぜ! げすのこどもが おなかすいてたから なんなのぜ! こたえるのぜ! おちびちゃんは どこにいるのぜ!」 「……ごべんなざいぃ……」 さいごに謝罪をくりかえすと、ありすはひときわ大きく痙攣し、 せいだいに中身を吐きもらして事切れた。 父まりさは舌打ちして、あたりを見回した。焦燥が父まりさの胸を騒がしていた。 謝罪とは、過去の行いに対する反省の弁にほかならない。 すなわち、ありすは既に何かを実行してしまったことになる。 「おちびちゃーん!」 叫び声は森林に吸い込まれてゆく。 「……?」 どこからか声が聞こえてくる。 くぐもった、甲高い響きだ。 音源へと歩く。 樹木の根もとに、まりさ種の帽子が置かれていた。その帽子のつばには石が置かれている。 大きさから察するに、もちぬしは成体まりさ種であろう。 そして、ゆっくりがお飾りや帽子をその身からはずすことはありえない。 もちぬしのいない帽子など、不気味なだけだ。 振りかえり、ありすの死骸を見やった。ぴくりとも動かない。完全に死んでいる。 また黒帽子を見つめた。 父まりさは帽子に顔を近づけて耳をそばだててみた。 甲高い声が、帽子のなかに渦巻いていた。 『……みゅーちゃ……みゅーちゃ……みゅーちゃ……みゅーちゃ……おいちぃぃーーーー!』 『……おいちぃーわ……とっちぇも ときゃいひゃな おあじにぇ!』 『……ちあわちぇー……。まりしゃは とっちぇも ゆっきゅりしちぇいりゅんだじぇ……』 吹き飛ばすように、帽子をのけた。 蓋の下には、窪みがあった。 そこに七頭の赤ゆがいた。 窪みの底には藁がしかれている。巣のつもりか。 赤ゆらはいきなり明るくなった空をあおぎ、じぶんたちを睨みつける巨大な顔を見つけた。 かれらは同時に失禁し、蜂の巣をつついたような大騒ぎを呈した。 「ゆぴぃぃぃぃーーーーー! しりゃにゃい ゆっきゅりが いりゅぅぅーーーーーーーー! ゆっぐぢ でぎにゃのじぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーっっ!」 「ぶぎゃぁぁぁっ! ゆっぎゅり でぎにゃいぃぃーー! みゃみゃぁぁぁぁーーーーーー! みゃみゃぁぁぁーーーーーー! どっどど だじゅげりょぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!」 「……ま、ま、まままま、まり、まりっ、ま、まりまりまり、まり、まりしゃっ、まりしゃはっ、 ちゅ、ちゅ、ちゅよっ、ちゅちゅちゅちゅ、ちゅよい、ちゅちゅちゅちゅ、ちゅよいっ」 「ゆわぁぁーーーん! ゆわぁぁぁーんっっ! ごっぢごなびでぇぇーーーーーーーっっ!」 曇天のもと、父まりさはひどく澄んだ目つきで、騒然と泣きわめく赤ゆたちを観察した。 まりさ種が三頭と、ありす種が四頭だった。 その口もとは、ことごとく、べったりと黒く汚れていた。 窪みのすみには、もちぬしのいない四つ目の小さな帽子が座っている。 赤ゆのまりさのそれにくらべると、少しばかり大きかった。 草むらのなかから父まりさがその姿を見せると、子供たちはよろこびに沸いた。 母れいむも安堵のため息をもらす。ところが、奪い返しにいったはずの妹まりさの姿が みえず、黒い不安が胸のうちで頭をもたげてきた。 「ね、ねえまりさ」 「おちびちゃんたち。ごめんなのぜ」 父まりさはツガイの呼びかけを無視して、群がってくる子供たちのもとにすすんだ。 そして黒帽子からなにか白い塊をとりだして子供たちの前にさしだした。 それは大量のあまあまだった。カスタードクリームと餡子の混合塊だ。濃厚な甘ったる い匂いが、子供たちの鼻孔を直撃する。 「ゆゆぅぅぅぅーーーーーーーーっっ!」 狂ったような歓声をあげた。 それと同時に。 ぷしっ。 と、いっせいに子供の肛門から尿が吐き出された。唾液はまたたくまによだれとなってあごをつたう。 目は食欲にきらめき、凝然と甘味を見つめている。 父まりさは包容力のある笑みをうかべる。 「すーぱー むーしゃむーしゃ たいむなのぜ。……たべるのぜ」 「ゆ゛ん゛や゛あ゛ぁぁぁぁーーーーーーっ!」 自制心など吹きとんでいた。 三頭のゆっくりは我先にと餡子にむらがって、一心不乱にをむさぼりはじめた。 しかし、母れいむは素直にはよろこべなかった。 妹まりさはどうしたのだ? 父まりさの横顔を見てもよろこんでいるようにはみえない。むしろ悲痛でさえあった。 それに、こんなに大量のあまあまをどこから調達してきたのだろうか。 餡子もクリームも自然界には存在していないのに。 いやちがう。 唯一存在する場所があるが、それは……。 「ねえ、まりさ。これって もしかして」 「れいむ。いうんじゃないのぜ」 おおいかぶせるように言って、ツガイの疑問を遮断した。 「さあ、まりさたちもゆっくりたべるのぜ」 「……これを?」 「おちびちゃんだけに たべさせちゃ だめなのぜ」 母れいむは息を呑んだ。 「わかったよ……」 と、答えたときだった。 「ちあわちぇぇぇぇーーーーっっ!」 末っ子れいむの雄叫びが森にこだました。 「えぐっ……ゆぐっ……ぢあばぢぇぇ……ぢあばじぇだよぉ……」 姉女れいむにいたっては、ふってわいたような幸せかみしめ、むせび泣いている。 その喜悦は想像するにあまりある。 ゆっくりは頭上から茎を生やし、その先に実をつけるように子を成らすことで繁殖する。 その茎型の生殖管は子供が生まれたときにへし折られて食事として子に与えられる。 砂糖水をたっぷりと沁しみこませた茎は極上のあまあまだ。 姉れいむはそのとき以来、一度も甘味をたのしんだことがなかった。 そして、一生涯、二度とあまあまは食べられないものだと悟り、あきらめてさえいた。 忘れかけていた砂糖の味は、陶酔するほどおいしかった。 「おどーじゃん……おいぢーよぉ……ありがどぉ……あり……?」 姉れいむは父を見て声を失った。 父まりさは甘みを一心に見つめるばかりでいっこうに食べようとしていない。 空腹にはちがいないのに。あきらかに挙動が不審だった。 それでも意を決したように甘みを口にふくんだ。その瞬間、目をむいた。苦しんでいる。 甘みと格闘し、死にものぐるいでのみくだした。 どうしてこんなにおいしいのに苦しむのだろう。 姉れいむはクリームと餡子のかたまりを見下ろした。 大量の甘みは、家族にたしかな活力をあたえた。 それから数日間は旅程の消化もはかどった。 さしたる危険を感じずに過ごすことができた。 ときおり上空を戦闘機の轟音が駆けぬけていったが、馴れたものだ、気にしなかった。 唯一の気がかりといえば、 「ゆんやぁぁぁーーーーーーーっ! おねぇぇじゃぁぁーーーーーーーんっ!」 と、ときおり末っ子れいむが思い出したように姉の不在を強調することだけだった。 妹まりさについては、 「しっそう」 ということにされた。追跡したが見失ったと父まりさは言った。 それが嘘だと、すくなくとも母れいむと姉れいむは気づいた。 姉まりさの話題は禁忌となった。しかし、赤ゆに泣きわめかれては家族の努力もむなしくなる。 妹まりさが失踪してから七日目のことだった。 道行く家族の目のまえに、一頭の見知らぬゆっくりが踊り出た。 「ゆゆ!?」 家族はひさしぶりに見たゆっくりに安堵をおぼえた。 ちかくに群れがあるならば迎え入れてもらおう。そんなことさえ思いはじめた。 だが驚きと戸惑いはすぐに恐怖へと転じた。 左右と背後からもゆっくりが飛び出してきて、五頭の家族をすきまなく包囲したためだ。 一家を包囲するゆっくりたちは、一様に瞳を欲望にたぎらせている。 だれもが尖った白い棒で武装していた。それは研磨した動物の骨だった。 「な……なんなのぜ」 父まりさは正面のゆっくりまりさに問いかけた。 「へへ。ひさしぶりの えものなんだぜ」 リーダー格と思わしきゆっくりまりさは、家族を品定めするようにねめつける。 母れいむ、姉れいむ、姉まりさは父まりさの背中によりそった。 末っ子れいむは本能的に事態を察して母の髪の毛のなかにもぐりこむ。 「みちをあけるのぜ……」 乾いた声で、父まりさは言った。 「いやなんだぜ」 リーダーはほくそ笑みながら即答する。 「ぜんいん ここで いただくんだぜ」 「いただくって、なんなのぜ」 リーダーだけではない。襲撃者たちは全員、おびえる家族を見すえてあざ笑っている。 「ふん。どれいにしてやるんだぜ」 「どりぇい!」 その単語に鋭く反応した姉まりさが、父まりさのかたわらに進み出た。 「なにいっちぇるのじぇー!」 「おちびちゃん、さがってるのぜ!」 父まりさは襲撃者をにらみながら大声を張った。ところが姉まりさは下がろうとしない。 「まりしゃは げしゅの どりぇいに なんきゃ ならないんだじぇーっ!」 涙をこらえつつ、姉まりさは朗々と宣言した。 「こいつ……なんなんだぜ?」 山賊頭のまりさは、勇敢なるゆっくりを睥睨した。 「ゆぴっ!」 あらごとに馴れた山賊の敵意はほんものだった。壮絶な敵意をあてられて、 姉まりさは失禁した。それでも引き下がりはしなかった。それどころか対抗した。 「まりしゃは ちゅよいんだじぇ!? しゃっしゃと みちをあけにゃいと……」 「あけないと、なんなんだぜ?」 「せ、せ、せ……」 「おちびちゃん、さがるのぜ、ここはおとーさんに まかせるのぜ!」 「せ?」 姉まりさは目をつむって悲鳴をあげるようにさけんだ。 「せ、せ……『せいっさいっ』しゅるんだじぇーーーっっ!」 「へぇ……やってみてほしいんだぜ、なあ?」 リーダーまりさは仲間を見渡した。七匹の仲間は嗤っていた。侮蔑の笑みだった。 「ま、ま……まりしゃを わりゃうにゃーーーーっ! ゆりゅせにゃいんだじぇーーーっ! もう、あやまっちぇも おしょいんだじぇー! まりしゃの『ぷきゅー』をくりゃえーっ!」 「お、おちびちゃん、おとーしゃんも てつだうのぜ!」 父まりさも同調した。二頭のまりさが息をすいこむ。 「せーの……」 父と子は呼吸をあわせて、 「ぷくぅぅぅぅぅーーーーーーっ!」 「ぷきゅぅぅぅぅーーーーーーっ!」 全身全霊の「ぷくぅ」を見舞った。 はたして勇敢な姿をつきつけられた襲撃者たちは爆笑した。 「ひ……ひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ! うぎゃー。こ、こわいんだぜー! ぷくーはー、 こわいんだぜー。……ってかぁ!? ゆひゃひゃはははひゃはっっ!」 「こわいよ~、くくっ……ぷくーはやめてね~、ぷくーはこわいよー、くくっ。あははっ、 くくっ……こわいよ~、げっひゃひゃひゃっひゃっ!」 『ぷ、ぷ、ぷくくぅぅぅぅーーーーーっっ!』 攻撃意志を表明するたびに哄笑は高まっていった。 「あはははは、まだ、まだやってるんだぜー! けっさくなんだぜー!」 姉れいむの目は涙が落涙した。母れいむも唇をかみしめている。 末っ子れいむは母の髪の毛のなかで震えていた。 そして父まりさと姉まりさは、山賊たちの侮辱など聞こえないとでも言いたげに、 効果のない威嚇を壊れたようにくりかえしていた。 「ひひ……わかったんだぜ。そのぷくーにめんじて……」 威嚇行動が止まった。 父まりさの瞳に希望が差す。 だが、直後に発せられた襲撃者の一言により、一縷の望みはあっけなく断ちきられた。 「……ひとりでゆるしてやるんだぜ」 「ゆ?」 リーダーは父まりさに鋭い眼光を投げつつ、ことばを重ねた。 「ひとりさしだすんだぜ。それでゆるしてやるんだぜ」 「お、おちびちゃんはさしだせないのぜ!」 父まりさは金切り声を発した。 リーダーの笑みが止まった。侮蔑がひっこみんだ。 「なにいってるんだぜ。おちびちゃんが だめなら おまえでもいーんだぜ。おちびちゃ んを さしだすひつようは ないんだぜ。どーして おちびちゃんが ぜんてい なんだ ぜ? けっ……。ぽーずだけ なんだぜ……」 父まりさは言葉に詰まった。ちがうと言いたかった。 じっさい、そんなことは露ほども考えていなかった。 ではなぜおちびちゃんが奪われると思ったのかと問われれば、その理由は思いつかなかった。 「さあ。どいつにするんだぜ?」 「だ、だれも だめなのぜ……」 顔をうつむかせてこたえた。そんな返答で許してもらえるとは思えなかった。 「じゃあ、ぜーいん どれいにして やるだけなんだぜ」 「それは だめなのぜ」 「じゃあ、きめるんだぜ。えらぶんだぜ」 「え、えらべないのぜ……」 「……れいむが!」 姉れいむが凛々と叫んだ。 その場にいたすべてのゆっくりにとり予想外の反応だった。 リーダーはどことなく困惑した顔つきを浮かべつつれいむを見やった。 「れ、れいむが……いくよ」 れいむは震えていた。尿も垂れ流している。涙も浮かべている。 だが口調はしっかりしていた。その毅然とした態度をみて、山賊頭まりさは目をほそめた。 部下に命令をくだす。 「みあげたゆっくりなんだぜ。わかったんだぜ。おい、つれていくんだぜ!」 その命令に従い、部下のゆっくりが姉れいむを家族から引き離した。 襲撃者たちが引き上げてゆく。しかしリーダーは最後まで残っていた。 呆然自失している父まりさを心底から蔑んでいた。 「おやだったら、もっと ていこうするべき なんだぜ。こいつ、あんしんして やがるん だぜ。へどが でるんだぜっ! こどもがさらわれるってのに どうして あんしん で きるんだぜっ! しねっ!」 山賊ゆっくりは力いっぱいぶちかました。 父まりさはかるがると吹き飛ばされ、いくばくかの餡子を吐きもらした。 山賊に前後左右をかためられて、姉れいむは道を歩いている。 おそらくは、もう家族と再会することはない。 「へっ。どーしようもないおやだったんだぜ」 前方を行くリーダーまりさは独りごとのように言った。姉れいむは答えない。 「ほんとうに どーしようもない……」 「あなたも」 姉れいむが静かに口をはさんだ。 「あなたも、いえあなたは、おやにすてられたの?」 リーダーまりさの足が止まった。それにあわせて七匹の仲間も停止した。 姉れいむは金色の後ろ髪を一心にみつめて返答を待った。 「……むかしのことなんて わすれたんだぜ」 そう言って、また歩き出す。 一行は無言で歩きつづけた。 やがて。 前方を行くリーダーまりさが、それを踏みつけた。 人間はそれを、地雷とよんでいる。 爆音が森をおどろかし、爆風が草をなぎ倒す。 火焔があたりの腐った植物をなめ、黒煙が曇天を汚した。 ほどなく、濁った空から砕け散ったゆっくりの残骸が降ってきた。餡子が大地に森にばらまかた。 こうして姉れいむをふくむ九頭のゆっくりは、 悲鳴をあげる権利さえあたえられぬまま、 爆炎にのまれて全滅した。 (下に続く)
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あなたのゆっくりが下痢をしているというのなら、そのゆっくりはかなり危険な状態だ。 ゆっくりは短時間で水を摂取しすぎると下痢になる、その点他の生き物の下痢とは少し違う。 これにかかると液状のうんうんを頻繁に排泄するようになる、 放置すれば中枢餡まで排出してしまい、永遠にゆっくりしてしまうだろう。 梅雨の時期、小さい赤ゆは特に下痢になりやすく、多くのダンボールから泣き声が聞こえるはずだ。 雨のあがった梅雨のある日、公園でのありふれた光景である。 公衆便所に住む家族の一匹の赤ゆが、ゆ下痢で瀕死の状態になってしまった。 ちゃーぷちゃーぷしゅるよ! と水たまりでばかみたいに遊んでいたのがまずかった。 口とあにゃるから大量の水が入って、下痢になってしまった。 「ゆひゅ……ゆひゅ……」 「おちびちゃんじっがりじでええええええ!!!」 「むきゅきゅ、まりさはまだなのかしら……」 れいむとまりさのつがい、そのおちびちゃんの真ん中にあたる子である。 このぱちゅりーは群れの医師役で、人間さんのおうちにりゅうっがくっ(というより拾われて捨てられただけ)して得た 数々の医療知識は公園ゆっくりの間でかなり評判になっていた。 「おれんじじゅーすさんさえあればちりょうができるのに……」 とりあえずなんでもオレンジジュースをかけておけば、というのがぱちゅりーの知識の全てだった。 父まりさはぱちゅりーのアドバイスによってオレンジジュースを手に入れにゆっくりしないで出発していた。 「ゆ゛っ」(ぶりゅ) 下痢うんうんが飛び出す。餡子が減ったことで既に楕円形にまで縮んでいる。 「……とってもきけんなじょうたいよ、ほうっておけばいのちもあぶないわ」 「ぞ、ぞんなあああああ!!!」 母れいむが崩れ落ちる。 他のおちびちゃんたちも、姉妹の重病にさぞかし心を痛めているだろう……。 「まりちゃのおうちにきちゃないうんうんしにゃいでにぇ!」 「びちょびちょうんうんはゆっくちできにゃいよ!」 「おうちでうんうんしゅりゅなんちぇ、たりにゃいことおなじだじぇ!」 「おうちをよごしゃないように、はやくちんでにぇ!」 どうやらそうでもないらしい、四匹の赤ゆは病気の姉妹をごみのように罵倒している。 うんうんは餡子だが、ゆっくりにとっては臭い臭い排泄物だ。 臭いものを出してゆっくりできない奴は、赤ゆたちにとってゲスと同じだった。 「どぼぢでぞんなごどいぶのおおおおおお!!!!????? でいぶおごるよおおおお!!!! ぷぐううう!!!」 「「「「ゆひいい! ごめんなちゃいいいい!!!」」」」 あまりのゆっくりできない言動に、母の教育的措置が発動された。 「れいむ、おれんじさんはなかったけど、みかんさんならあったのぜ!」 「ぶぐ!?」 「まりさ、かえってきたのね!」 まりさが戻ってきたのは丁度その時だった。 息を切らせて、帽子も少し曲がっている。 スーパーさんに忍び込んで命がけで盗んできたみかんさんだった。 「ゆ……、でもぱちゅりーは"おれんじじゅーすさん"って」 「いやいいわ、みかんさんならたぶんだいじょうぶよ、おれんじじゅーすさんをつくるわ」 捨て物のお茶碗の中に皮を剥いたみかんを入れ、思い切りのしかかる。 じゅっじゅっじゅっ、みかんの汁がだんだんあふれてくる。 「ゆわぁ……」 母れいむの目が輝く。 「ぺーろぺーろ、ほらおれんじじゅーすさんがでてきたのぜ……」 飛んできた水滴をなめ、父まりさは言う。 「できたわ! さっそくのませましょう!」 みかん汁を絞り出し、100%果汁のあまあまジュースが完成した。 母れいむがとっさに近づき、口に含んで下痢ゆに与える。 「おちびちゃん、おくすりだよ! げんきになれるよ!」 「ゆひ……」 力を振り絞ってなんとかジュースを口に入れる。 オレンジジュースは万能薬、きっと治るはずだとぱちゅりーは確信していた。 ぶりゅりゅりゅ! あにゃるから出てきたのは更に水分を含んだ、おしるこ状態のうんうんだった。 「れいむ、いそがないとあぶないわ!」 せかすぱちゅりー。 あせって更に口うつしを続ける母れいむ、早くお薬を一杯飲ませないと! しかし次にあにゃる出てきたのは、オレンジと茶色の液体であった。 「ゆひぇ、ゆぴぢぢ……」(ぴゅーぴゅー) 赤ゆが妙な笑い声を洩らす、中枢餡が水分でぐずぐずになっているのだ。 あにゃるの締まりも弱くなって、液がだだもれだ。 「「どぼぢでおちびちゃんげんきにならないのおおおお!!!??」」 うんうんは止まらず、餡子量は更に減少していた。 両親の前にある赤ゆは饅頭というにはぶよぶよで、酷く悲惨な姿になっている。 眼孔のすきまからもうんうんが漏れ、オレンジジュース治療の甲斐なく…… いや、むしろジュースを飲ませるたびに病状は悪化していたようであった。 過剰な水分が原因のゆ下痢なのに、さらに水分を取らせるのは最悪の判断だった。 オレンジジュースは下痢だけには効かないのだ。 「ゆっぢ、ゆっぢぢ……」 「ゆああああ……おぢびちゃんがあああ……」 排泄を繰り返しぺしゃんこになった赤ゆはうんうん汁にまみれて死んでいった。 「ゆっぷ……」 中枢餡の溶けた赤ゆはもっとゆっくりしたかった、という言葉すら言えなかった。 「ちりょうはてきせつだったけど、おちびちゃんのたいりょくがもうなかったのね……」 ちーん。おさげを合わせて黙祷するぱちゅりー。 「ごのやぶいしゃああああああ!!!」 もちろん親はそれで納得しなかった。 ジュースを飲んでからすぐに永遠にゆっくりしたことぐらい、ゆっくりでもわかった。 「むぎゅうううう!!! やべでええええ!!!!」 頬に噛みつき、ちぎる父まりさ。 ぱちゅりーの皮は柔らかく、中身はクリームで漏れやすい。 びりびりと皮が破れると、どろりと景気よくクリームが溢れてきた。 「いやああああ!!! じぬううう!!!」 クリームを漏らしながら必死ではいずりまわり、余ったオレンジジュースにありつこうとする。 「ゆふふふふおれんじじゅーすさんはゆっぐりできるねえええ……」 半笑いでうふうふ笑う母れいむが、おちびちゃんの死体にオレンジジュースを与えていた。 れいむはあまりのショックで狂ってしまった、死臭も感じずおちびちゃんにすりすりしている。 オレンジジュースはもうなかった。 「むぎゅううううう!!! 「おまえみたいなげすにはこれでじゅうぶんなんだぜ!」 父まりさは死臭たっぷりの赤ゆ下痢うんうんを思いきり吸い上げ、ぱちゅりーに吹きかけた。 「むぎょっっ!! えれえれえれ……」 「ゆっぶげええええ!!! げれげれげれ……」 死臭汁を傷口に吹きかけられたぱちゅりーはあまりのゆっくりできなささに中枢餡を吐いた。 しかしそんな劇薬を口に含んだまりさも無事では済まない、餡子を吐いて死んだようだ。 ゆふゆふゆふ……。 にやける母れいむと、取り残された四匹の赤ゆ。 「すごいこえがしたのはこのおうちだねー、わかるよー」 「まちがいないみょん! ゆっくりしんにゅうするみょん!」 このゆっくりできないトイレに新たなゆっくりが現れた。 群れの警察担当のちぇんとみょんだ。 他のゆっくりからつうっほうっがあったのだ。 「「「「ゆわああああんこわかっちゃよおおおお!!!!」」」」 ちぇんはふさふさの尻尾で赤ゆを保護した。 現場を調査するみょんは、ベテランとしての勘をフル活用して事件の真相をあっというまに暴いてみせた。 「そこのよにんのおちびちゃんがはんにんだみょん! げんばでまともにいきてるゆっくりはおちびちゃんたちだけだみょん!」 「「「「にゃ、にゃんでえええ!!??」」」」 ちぇんの尻尾は固い拘束縄に変わった。 赤ゆ四匹は公平な裁判の結果ゆっくり三匹の殺ゆんで死刑になり水洗便所に送られたらしい。 「なにかいうことは」 死刑執行ゆんが尋ねる。 赤ゆたちはあんよを千切られ洋式便所の便座に置かれている。 「まりちゃ(れいみゅ)はなにもしてにゃいよおおお!!!!」 その返事にゆっくりたちはゆーゆー騒ぐ。 「このさつゆんきいいいい!!!!」 「おいしゃさんがいなくてうちのおぢびちゃんがああ!!! おばえらのぜいだあああ!!!」 「づみをみどめてじねええええ!!!!」 長もあからさまに軽蔑の視線を向けている。 「まったくはんせいしていないようね、やってしまいなさい」 「「「「ゆんやああああ!!!!」」」」 突き落とされた赤ゆは便所をくるくる回ったかと思うと、底の方に吸い込まれた。 しかし四匹も居ると一度では流れない。 「「「「やべでよおおおお!!!!」」」」 水が補充されていく、体のあらゆるところからゆっくりできない水がはいりこんでくる。 赤ゆたちはぐちゃぐちゃに溶けるまで完全には流れず、大いに苦しんだという おわり anko1693 2100年のゆっくりたち anko1651 超高級ゆっくり市 anko1637 一人のまぬけでみんな台無し anko1621 れいぱーは人気者 anko1609 幸せ崩壊丼 anko1592 赤ゆが凄い生えちゃった事件
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『風景』 29KB いじめ 観察 日常模様 妊娠 赤ゆ 独自設定 久々に。盛り上がりには欠ける話なので注意 リハビリに表現の描写を過剰気味に一発書いてみた *注 ・ヤマなしオチなしの淡々モノ ・テンプレ乙 ・ゆっくり視点 ・殆ど喋らない ・ゆっくりの性描写あり ・独自設定あり れいむの目には壁が映っていた。 いや、正確には壁『だけ』が映っていた。 れいむと壁の間には何も無く、誰もいない。ただガランと広がっているだけなのだ。 「・・・・・・・・」(ゆぅぅ・・・・・) だがしかし、れいむはその壁を見続けていた。 れいむはどこかに跳ねて行こうともしない。 ―――――――― 当然だ。れいむのあんよは真っ黒に焼き潰されており、移動することなど出来ない。 れいむは別の場所を見ようともしない。 ―――――――― 当たり前だ。れいむの周囲は前を除いてがっちりと別の壁で固められており、正面以外を向くことなどできない。 れいむは何も喋ろうとしない。 ―――――――― 出来るはずがない。れいむの口は溶かされて肌と一体化しており、話すどころか存在すらしていないのだから。 れいむはただ、目の前の風景を見続けていた。 『風景』 れいむはずっと昔から、現在の風景を見てきていた。 それはもう、ゆっくりの少ない記憶領域では思い出せないくらい昔からずっとだ。 「・・・・・・・・」(ひまだよ・・・・) れいむの日常は刺激というものが存在していない。 まず自分自身で何かする、ということが出来ない。 あんよが焼けているため動くことが出来ず、周囲を固められているので身じろぎも難しく、口が無くなっているため独り言すら言えない。 そして外部から何かされる、ということも無い。 何もなく誰も居ないこの場所では音が鳴ることなど殆ど無く、見える景色は壁ばかり。明かりも蛍光灯なため、光の変化すら乏しい。 ぽかぽか太陽も無ければ涼しい風も吹かないこの場所は、温度でさえ一定である。 「・・・・・・・・」(とっっっっても・・・・ひまだよ・・・・) れいむには食事でむ~しゃむしゃする楽しみも、うんうんを出してすっきりー!する解放感も無い。 れいむの後頭部には二本の管が刺さっており、それぞれ食事代わりの栄養補給と排泄を無くす為の吸引を行っているからだ。 「・・・・・・・・」(つまんないよ・・・ひますぎてゆっくりできないよ・・・れいむ、もっとなにかしたいよ・・・) れいむはそんな、変化という刺激が無い時間をただ延々ジッとし続けなければならない。起きてから眠るまで、ゆっくりからすれば長い時間を常にだ。 それはゆっくりすることを何よりも好むゆっくりにとっても望ましくない事だ。退屈とゆっくりは違うということである。 この生活においてれいむが出来ることは2つだけ。目の前を見続けること、胡乱な餡子脳で考えを巡らせること、それだけだ。 「・・・・・・・・・・・・・」(・・・しかたないよ・・・・きょうはもう、れいむはす~やす~やするよ) 一日中ただ目の前にある壁を見続けるだけ、それ以外は一切何も無し。ひたすら退屈なだけで、考えるようなことなど何もない。 だからいつも、れいむは早々に眠りにつく。 「・・・・・・・・・・・・・」(めがさめちゃったよ・・・でも、もうれいむす~やすやはできないよ・・・) だがその眠りは長くは続かない。 全く動いていないため疲労が少なく、体が眠りを欲していないのだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(つまらないよ・・・つまらないよぉ・・・・) 眠ることが出来なくなると、途端に一日が長くなる。 というより起きてから寝るまでを一日としているだけで、そもそもの時間の経過が分からない。 子供が大人に成長するほどの月日が流れたのか、日が昇りそして沈む程度の時間が経ったのか、それともまだ1分もしていないのか、全く把握できていない。 れいむの日常とは、そんな退屈との戦いの日々である。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(ひまだよぉ・・・・ぴょんぴょんしたいよ・・・・こ~ろころやの~びのびがしたいよぉ・・・・) 次の日、れいむは退屈の中で叶わぬ想いを抱きながら一日を過ごした。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(だれかといっしょにゆっくりしたいよぉ・・・れいむ、ひとりぼっちはイヤだよぉ・・・) そのまた次の日、れいむは誰かが傍にいればいいのにと想いながら、一匹だけで何も無い一日を過ごした。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできない・・・これじゃゆっくりできないよぉぉぉ!ゆっくりしたい!ゆっくり!ゆっくりぃぃぃ!!) さらに次の日、れいむはゆっくりできないと心の中で癇癪を起しながら、しかしやっぱりそれまでと変わらぬ一日を過ごした。 次の日も何もなかった。 次の次の日も何も出来なかった。 次の次の次の日もやはり何も起きない。 次の次の次の次の日も何も出来ず何も起きない。 次の次の次の次の次の日もやっぱり何も無く、誰も居ない。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(だれかぁ・・・・ゆぅぅぅ・・・・れいむに・・・・なにか・・ れいむを・・・・ れいむが・・・) 次の日も、 その次の日も、 さらに次の日も、 そのまた次の日も、 さらにその次の日も、 さらにさらに次の日も、 ゆっくりできることも、ゆっくりできないことも、何も無かった。 「・・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・ ・・・ ・・・」(だ…かれいむの…こ…にきて…ぉ…れみりゃ…もいい……、れ…むとい…しょに… ) 何も出来ず何も起きない時間が長く続く、それは徐々に精神を蝕んでいく遅行性の毒のようなものだ。 その毒はゆっくりと全身を巡っていき、やがて心が死ぬことになるだろう。 そうなればれいむはれいむで無くなり、ただの一匹の狂った廃ゆんと化すことになる。 「 ・・ ・ ・ ・ ・・ ・・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・・・」 (あ ? いむ、い ?うな て んだ ?れい ?だれ ? ? らない ・ ・?) れいむも次第に心が、精神が、壊れていっていた。思考が怪しくなり、自分が生きているのかすら分からなくなっていく。 れいむの現状は人ですら辛いと感じるもの、ゆっくりである身で耐えきれるようなレベルではない。 だかられいむが今まで死なずに生きてこれたのは、決して心が特別に強いからなどではない。 ガチャ 「・・・・・!!!」(ゆぴっ!!?) ただ単純に、れいむが壊れきる前にやってくる『非日常』による刺激を与えられていた、それだけだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 音が響く。 それまで無音だった日々に、たった一つだけ音が響き始めていた。 コツ コツ コツ それは何かが固い床を叩く音。 音はまるでリズムをとっているかのように、一定の間隔をもってれいむの居る空間に響いている。 「・・・!?・・・・?」(ゆ!?ゆゆゅ!?・・・あ、あれ?れいむは・・・ゆ?・・・・このおと、は?) そしてその音という刺激に、れいむの意識は急速に回復していった。 そのまま、れいむは急に響きだした音に頭が混乱しながらも、意識を音へと向ける。 コツ コツ コツ コツ コツ コツ 「・・・?・・・・・・・??」(ゆ?・・・・ゆゆゆゆゆ?・・・・これ・・・このおと・・・たしか・・・) 一定の間隔で聞こえてくるこの音。それにれいむは聞き覚えがあった。 精神が壊れかける日常を過ごしても尚れいむの記憶に残っているこの音、その正体は ―― コツ コツ コツ 「・・・・・・・・!?!?」(この・・・このおとは・・・!にんげんさんのっ!?) 人間が歩いてくる音である。れいむは人間の靴が床を叩く音を、それまでの度重なる経験によって記憶に刻みこんでいた。 そして同時にこの音が聞こえる時はれいむへの『行為』が迫っているのだということも、否応なくれいむは思い出していた。 コツ コツ コツ コツ コツ コツ 「・・・・・ッ!・・・・・・ッ!」(きてるっ!にんげんさんがれいむのほうにきてるよぉぉぉ!!?) れいむの目に映っているのは相変わらず壁だけだ。 だがそこにたった一つ音という要素が加わるだけで、全く違ったものへと変化していた。 音が響く度にれいむの目に映る壁はぐにゃりぐにゃりと歪み、隆起と沈降を繰り返して生き物のように蠢きだす。 音が少しずつ大きくなる毎に壁についていた汚れや傷が大きくなっていき、まるで魔物のように恐ろしいモノへとなっていく。 れいむに見える風景は、そんなゆっくりとは程遠いものへと成り果てようとしていた。 もちろん実際にはそんな変貌を遂げているのではない。 だがそのようにれいむには見えてしまうのだ。心を締め付ける『恐怖』という感情によって。 そう、れいむはこの後の『行為』を心底から恐れていた。例えそれのお蔭で変化の無い日常を生きてこれたのだとしても。 コツ コツ コツ コツ コツ コ 「・・・・!!・・・・・・・・ッ」(ゆひっ!と、とまったよ・・・で、でも) 途中で音が止まる。だがそのことがれいむに安堵をもたらすことはない。 いつだって必ず途中で音は止まるのだ。そして少し経ったら再び聞こえ始めるようになる。 停止と再開を繰り返す音のリズムはれいむの心に多大な重圧を掛けており、じっとりとした汗がれいむの肌に浮かんでいく。 コツ コツ コツ 「・・・・・っ!」(れいむのあんよさん、うごいてよ!!にんげんさんがれいむのところにきちゃうよ!ゆんやぁぁぁぁ!うごいてよぉぉぉ!!) ここから今すぐに逃げ出したい ―――― 焦げたあんよはぴくりとも動かない コツ コツ コ 「・・・!・・・っっ!」(いやだよ!れいむ、もういやだよ!もうあんなこといやなんだよぉ!) 少しでも此方に来る人間から離れたい ―――― れいむの周りを固めている壁が身じろぎすら許さない コツ コツ コツ 「・・・・!・・・!・・・!!」(やだよ!やだよやだよやだよ!やだやだやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!) 泣き叫んでこの重圧を少しでも紛らわせたい ―――― 溶けて消えた口が音を出すことは決してない コツ コツ コ その後もれいむの焦燥など関係ないとばかりに音は停止と再開を繰り返し、そして コツ コツ コ ガタッ 「・・・・・・・・!!!!!」(あ・・・あぁ・・・・・に、にんげん、さん・・・・!!) れいむの目に、人間が映りこんだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ カチャ カチャ 「・・・・ッ!・・・・・ッ!・・・・・ッ!」 (や、やめてね?・・・にんげんさん、そんなことしてないでゆっくりしてね?れいむといっしょにゆっくりしてね?) れいむの目に映りこんだ人間はそのまま、れいむの目の前で『行為』の準備を始めた。 これも記憶にある光景。人間はいつも見せつけるかのようにれいむによく見える位置で準備をしていく。 自分への道具を用意していく様を見せつけられるこの時間は、れいむが最も嫌いでゆっくりできないと感じるモノである。 カチッ ピッ 「ッ!!!」(ゆっ!!) だがその時間は長くは無い。すぐに準備は整い、れいむへの『行為』が始まるからだ。 人間がれいむのあんよ近くにあるスイッチを押すと同時に、れいむへの『行為』は始まる。 ヴィィィイィィィィイィィィ 「ーーー!ーーーーー!!」(ゆぁぁぁぁぁぁ!!?や、やめてぇぇぇぇぇぇ!!?) 最初の『行為』、それは強制的な発情である。 れいむの乗っている床が、身じろぎ出来ない程に密着している周囲の壁が、ブルブルととても細かく振動する。 その揺れは当然れいむへと伝わり、体を激しく揺さぶっていく。 ヴィイィィィィィイィッ 「ーーーーっ!ーーーーーーーーーーっ!!!」(ゆぅぅぅぅ!!れいむすっきりしたくないよぉぉぉぉ!!やぁぁぁぁ!!) ゆっくりは振動によって発情する。れいむも揺さぶられることによって、体内の奥底から否応なく快楽を引き出されていく。 だがその気持ちよさとは裏腹に、その行為に対して感じるものはゆっくりしたものから程遠い。 相手のことなどお構いなしに無理やり与えられる快楽は、叩きつけるかのような衝撃をれいむの精神に与えており、むしろ暴力に近しい。 ヴィィィイィィィイィィィイィィ 「ーーッ!!ーーーーーーーっ!!ーーーーーーーーーーーっ!!!!」 (ゆっぐぅぅぅ!!ぎ、ぎぼちいいげどぎぼぢわるい”ぃぃぃぃ!!やべでぇぇぇぇぇぇぇ!!) 与えられ続ける振動は温もりに欠け、れいぱーだって少しはマシだろう最悪なすっきり行為となる。 だがそれでも込み上げてくる快楽に抗うことは出来ず、れいむの体は心とは無関係に高みへと上り詰めていく。 次第に嵐のような振動に見える景色が白濁し、殴りつけるような快楽に体が散り散りになったような幻覚を覚える。すっきりへと至る前兆だ。 ヴィィイイィィィ 「 ! !!!!!!」(ずずずずっぎり”ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?) そして数瞬後、れいむの体は予想通りにすっきりへと至った。 ゆっくりでは実現不可能な凄まじい振動によってもたらされる極大の快楽と、どこまでも無機質に行われた行為に対する最低最悪な心地がない交ぜとなり、れいむの意識が飛ぶ。 そして同時に、れいむの意識が混沌と化すのを狙って人間が動いた。 プスッ 人間はいつの間にかその手に注射器を持っていた。その針先をれいむの額付近へと差し込むと、素早く中身を注いでいく。 注射器の中身、それは他のゆっくりから採取された精子餡だ。それをれいむのすっきりと同時に流し込むことで、疑似的な交尾を再現したのだ。 にょきにょきにょきっ 「・・・・・!・・・・・・!!」 (ゆぁ・・・ぁ・・・おちびちゃん・・・・しょうらい、れいむのすてきなだんなさんと・・・・いっしょにつくろうとおもってたのに・・・・) そんなことをされれば当然のようにゆっくりはにんっしんする。れいむも注射器を刺された所から植物型にんっしん特有の茎が勢いよく生えてきた。 そして茎の途中に小さな蕾が出来ていき、直ぐにちっちゃなゆっくりの形を成し、赤ゆの前身であるつぼみゆっくりとなり ―― ぶちっ 「っ!!!」(ゆぁぁぁぁぁっ!!?れいむのかわいいおちびちゃんがぁぁぁぁぁ!!!?) その段階で人間の手によってれいむの額から茎が毟り取られた。 無理やりで出来たとはいえ自分の餡子を分けた子供が顔も見ぬうちに奪われていく。それは母性の強いれいむからすれば心を引き裂かれる所業だ。 だがそのことをれいむが悲しむ暇はない。 カチッ ピッ ヴィィィィィイィィィイィィ 「~~~~~~~~っ!!~~~~~~~っっ!!!」(ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!?ゆらさないでぇぇぇぇ!!?やべてぇぇぇぇぇぇぇ!!) れいむの『行為』は、一回では終わらないのだから。 再度始まった振動による快楽の強制が、れいむの意識を再び漂白していった。 ・ ・ ・ しばし後、れいむは何度目になるのか分からないほどの回数、すっきりを強制させられていた。 ヴィイイィィィィィィィイイイィィィィィ 「 !!! っ!!!! !っ!!」(かひゅっ!?すっぎりぃ!?こっ!?) プスッ 一回だけでも心身共に負担の大きいすっきりを複数回である。その意識はすでに彼方へと飛び曖昧と化している。 そんなれいむの額にはすっきりの回数だけ生えて毟られた茎の跡が痛々しく残っている。 にょきにょきにょきっ ぶちっ カチッ ピッ ヴィィイィィィイィィィィィイ 「ーーー!!!~~~~~~!!!!―――――――――――――!!!!」(ゆぎっ!!びゅっ!ゆごががががが!?) 人間はまるで機械のように同じ行為を繰り返す。れいむを発情させ、すっきりと同時に注射し、生えてきた茎を毟る。 淡々と、淡々と、繰り返し、繰り返し、リピートし続ける。人間の行為が止まるのが先か、れいむが壊れるのが先か、といった具合だ。 ヴィィィィィイィィィィィイイィィィィ 「 !!!」(っっっすずずっきぎきりりりり”ぃぃいぃぃ!!!?) プスッ そして再びれいむの体がすっきりへと至る。同時に死に際のように痙攣するれいむの額に注射器が刺さり、中身がたっぷりと注がれていく。 すぐさま刺された所から毟り取られた茎の跡をかき分けるように、今回のすっきりによって出来た茎が新しく生えてきた。 にょきにょきにょきっ ぶちっ カチッ ピッ ヴィィイィィィイィィィィィイ 「!!!?ーー!?!?!?!?―――――――――――――!!!!??」(ゆ”っ!!ゆ”ゅ”ゅ”ゅ”ゅ”ゅ”っ!ゆ”びゅぼぼぼぼっぼ!?) そしてやはり即座に茎は毟り取られ、次のすっきりが始まる。だがれいむにそのことを正確に認識する余裕はない。 あるのはただ繰り返される快楽の暴力による精神的苦痛と、着実に近寄ってくるすっきり死の予感だけだ。 ヴィィィィィイィィィィィイイィィィィ 「 !?!!?」(っす”ずっぎきり”り”り”り”ぃ”ぃ”い”ぃ”!!!?) プスッ れいむがすっきりに至ると同時に注射器が刺さり中身が注がれる。 にょきにょきにょき 「ーーーーーーーーー!!」(っ!?ゆぼっ!?びぃ!!) 刺された所から茎が急速に生え、それは同時にれいむの体力をゴッソリと削っていく。それによってより死の気配が濃厚になる。 れいむに残された体力からすればこの茎が限界だった。あと一度でも茎を生やせば、そのまま黒ずんで死ぬことになる。 ガタッ コツ コツ コツ コツ 「――――――――――――」(ゆげっ・・・げっ・・・ゆぶふぉ・・・ゆ”・・・・ゆ・・・・ゅ・・・・) だが今回、その茎は毟り取られることはなかった。ここで唐突に、人間がそれまで繰り返してきた行為を止めたのだ。 人間はれいむの額から茎がしっかりと生えたことを確認すると、そのまま立ち去っていく。 コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ 「 ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・」(ゅ・・・・ゆ”・・・・れい、む・・・まだいぎで・・・る・・・の?) 人間の歩く音が次第に遠ざかり、やがて消える。 これがれいむの『行為』が終わった合図だ。いつもいつも、こうして最後の時だけは子供はすぐには奪われない。 ボンヤリとした頭でれいむは、今回も何とか生き残ったことを理解した。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ れいむの目には壁が映っている。 いつも見ている正面の壁、だがそこには以前と異なり、壁以外に別のモノも映っている。 「・・・・・・・・」(れいむの・・・おちびちゃんたち・・・) 「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」 それは前回の『行為』によって出来たおちびちゃん達だ。 額から生えた茎に実ったおちびちゃん達は、まだつぼみゆっくりであるが故に声も出せなければ身じろぎも殆どしない。 だがその存在は確かなゆっくりを与えるものであり、れいむの殺風景な景色に彩りを加えている。 「・・・・・・・・」(おちびちゃんはかわいいのに・・・・ゆっくりできるのに・・・・) しかしれいむの表情はどこか晴れないものだ。その目は悲しみに満ちており、さらに何とも言えない複雑な感情を表している。 それはおちびちゃん達の将来を知っているが故であり、さらにおちびちゃん達が『どんなゆっくりなのか分からない』が故である。 そう、れいむは今茎に実っている我が子がどんな種のゆっくりであるのかが全く分からないでいた。 通常であれば茎に実っているゆっくりの種類はれいむ種と番の種族だ。 だが直接注射で出来た茎では、その元となる精子餡が誰のものなのかなど欠片も知ることができない。 ゆっくりできるおちびちゃん達のことを愛しく思いながらも、そのおちびちゃんが誰なのかさっぱり分からない。 その事実はれいむの心にシコリを作っており、おちびちゃん達から感じるゆっくりに影を落としていた。 「・・・・・・・・」(おちびちゃん・・・・れいむの・・かわいいおちびちゃんたち・・・) 「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」 子供を身ごもったゆっくりとしては異様な静けさのまま、れいむの日々は過ぎていく。 ・ ・ ・ すこし後、れいむの茎に実ったつぼみゆっくり達は成長し、赤ゆっくりと呼べるサイズにまで大きくなっていた。 ここまでの日々、れいむは多少影を感じていたものの以前とは比べ物にならない程のゆっくりを感じてきた。 日に日に大きくなっていくおちびちゃん達、その成長という変化を感じられる毎日の楽しさは、前の何も起きない時とは雲泥の差があった。 「・・・・・・・・」(ゆぅ・・・おちびちゃんたち、とってもゆっくりしているよぉ・・・・・・・) 「…ュッ…」「……」「…ゅ」「……(ピクッ)」「……」「ゅ…」「……」「……(プルッ)」 今ではおちびちゃん達は偶に小さな声を出したり、僅かに体をピクピクさせたりしており、自分から外界へと働きかける動きを取っている。 小さな命の揺りかご達が懸命に生まれる準備を整えていくその様子、それは何よりも尊いものだとれいむは感じていた。 だがしかし ―― 「・・・・・・・・」(おちびちゃんたちがゆっくりそだっているのに・・・れいむは・・・れいむは・・・!) それらに対してれいむが何か手伝ってやることはできない。何かするにはれいむの状態が致命的に悪い。 消された口ではおちびちゃん達に話しかけることは当然できないし、身じろぎすら殆ど出来ない状況では何か行動することは困難だ。 「・・・・っ!・・・・・・」 (れいむ、おかあさんなのに・・・おちびちゃんたちをゆっくりさせる、おかあさんなのにっ・・・おうたもうたってあげられないなんてっ!) 「……」「…ゅ…」「…ゅっ…」「……」「……(プルプル)」「ゅ…」「…ゅぅ…」「……」 お歌でおちびちゃん達をゆっくり安らかな気持ちにさせることも出来ない。 体を軽く動かして茎を揺らし、上下左右にゆ~らゆらさせて楽しませることも出来ない。 れいむに出来ることはただおちびちゃん達を見続けること、それだけなのだ。 それは母性が強く子育てが何よりも上手だと思っているれいむからすると、何とも落ち着かない歯がゆい想いを湧き立たせることだ。 「・・・・・・・・・・・っ!!っ!!」 (そもそもれいむのおちびちゃんたちはれいむとおなじれいむなのかな?それともまりさ?ありす?ぱちゅりー?みょん?ちぇん?それとも・・・・? ・・・ゆぅぅぅ・・・わからないよぉぉ・・・おかあさんなのにっ!れいむはおちびちゃんたちのおかあさんなのにぃぃぃ!!) さらに言うと、れいむは未だにおちびちゃん達の種別が分からないでいた。 何故なられいむからはおちびちゃん達の髪の毛やお飾りといった、種別を判断できるようなものが見えないためだ。 なぜ見えないのかと言うと、理由は茎の伸び方が通常とは異なっているためである。 前回の『行為』で最後の方、茎はそれまでに毟られた茎の跡をかき分けるように生えてきていた。 その影響なのか、普通なら横方向に伸びるはずの茎が、れいむの場合は縦方向へと伸びてしまったのだ。 そのためおちびちゃん達は普通よりも高い位置に実っており、れいむはおちびちゃん達を真下から見上げる形になっていた。 だかられいむから見えるのはおちびちゃんのあんよ部分のみ、それもおちびちゃんが茎の外向きに実ることから後ろ側が主になる。 あんよの後ろ側、そこはつまるところお尻である。お尻を見て種別を判断できるような特殊技術を、当然れいむは持ち合わせていなかった。 「・・・・・・・・・・!!」(ごめんねぇ!れいむダメなおかあさんでごめんねぇぇっ!ゆえぇぇぇん!) 「…ゅっ!…ゅっ!ゅゅっ!」 「・・・・・・・・・っ!!」(ゆぇぇん!ゆぅぅぅん!ゆぅぅぅぅん!ゆぇぇぇ・・・・ゆ?) 「ゅっゅっ!…ゅっ!ゅゅっ」 「・・・・・・・・・・!!」(おちびちゃん?・・・・もしかしてれいむをはげまそうと・・・?) 「ゅっ!」 「・・・・・・・・・!!!」(ゆぅぅぅ!やっぱりそうなんだね!おちびちゃんは『まえも』そうやってくれたね!!やさしいおちびちゃんだよぉぉ!!) だがしかし、れいむはおちびちゃん達の種別は分からなくても、それぞれを見分けることは出来ていた。 今も一匹のおちびちゃんがれいむを励ますかのように声を出しているのを聞いて、さらにその子が以前も同じような事をしたおちびちゃんであることを認識していた。 (余談だが、励ましの声はれいむの思い込みである。単に件のおちびちゃんが割かし声を頻繁に出す個体なだけだ。) 「…ゅっ!…」「……ゅゅ(プリンッ)」「……ゅっ」「ゅ、ゅ……」「…ゅ~…」「ゅ…」「…ゅ!」「……ゅぅ」 「・・・・・・・・・・・♪」(ほかのおちびちゃんたちも!・・・ゆふふ、そうだね、みんなゆっくりしたおちびちゃんだものね!) ゆっくりは通常、お飾りによって個体を見分ける。逆に言うと、お飾りさえついていれば唯の石ですら我が子に見える。 そんな中、れいむはお飾りが見えないにも関わらずそれぞれの個体を見分けている。それは中々に凄いことのように思えるだろう。 がしかし、それは決して『茎を通して繋がった親子の絆で分かる~』などといった感動的なものでは無い。もっと単純だ。 「・・・・・♪♪♪」 (あにゃるさんがきゅっとしまったあのおちびちゃんはきっとたくましいゆっくりになるよ! ちっちゃくてきゅうとなあにゃるさんのおちびちゃんはきっとびゆっくりになるよ! あにゃあるさんがおおきいあのおちびちゃんはドスみたいにおおきくそだつにきまってるよ! ほかのおちびちゃんたちだって、みんなとってもゆっくりしたあにゃるさんだよ!! そんなあなにゃるさんをもつおちびちゃんたちは、とってもゆっくりしたおちびちゃんだよ!!!) そう、れいむは自分のおちびちゃん達をそのお尻についているあにゃるによって見分けていた。 れいむから見えているのは一直線に並んだ尻、尻、尻。その光景はさながら尻の大名行列だ。自然、そこにある差異が目立つことになるという訳だ。 「ゅゅ……」「……っ」「……」「……ゅ、」「……」「ゅっ…」「……」「ゅ~…」 「・・・♪♪♪♪♪」 (おちびちゃんたちのあにゃるさんをみているだけで、れいむはゆっくりできるよ!おちびちゃんのあにゃるさんはれいむにとって、てんしのあにゃるさんだよぉ!) れいむにとっておちびちゃん達の顔とはあにゃるの形であり、おちびちゃん達の個性とはあにゃるの特徴である。 あにゃるから感じ取ったそれぞれのおちびちゃん達の情報(思い込み)を、れいむは餡子脳内で形にすることでこれまでゆっくりを感じてきていた。 無論、種別も分からない状況なので脳内のおちびちゃん達はどれも薄ボンヤリとした像にしかならない。 だがれいむにとってはそれだけでも十分なゆっくりだった。 「・・・♪♪♪・・・♪♪♪・・・♪♪♪」(おちびちゃんたち!ゆっくりしていってね!!) 現に今、れいむはそんな尻とあにゃるしか見えないおちびちゃん達によって、嘗てでは考えられない程に生き生きとした日々を送ることが出来ている。 おちびちゃんが小さな声を挙げる度に心が癒され、微かに体をプルプルさせるのを見る度に体の奥がほっこりと温かい気持ちになっていく。 あにゃるをヒクヒクさせるおちびちゃんを見るれいむの目からは感動の余り涙がポロポロと溢れ出しており、誰が見ても幸せそうな表情に見えるだろう。 おちびちゃんの存在はれいむの毎日を満たしてくれる、そんな掛け替えのないモノであった。 ガチャッ 「・・・・・!?!」(ゆ”っ!!?) だがそんなれいむの幸せな『非日常』に、再びあの音が響き渡った。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ コツ コツ コツ 音が響く。 れいむの所に再び人間がやってきた、その証である音が。 「・・・・・・!」(ゆぁ・・・ゆああぁぁ・・・!) そしてその音を聞いたれいむは、目の前が真っ暗になるような絶望を感じていた。 なぜなられいむは知っているからだ。かつてれいむに非日常の始まりを告げたこの音が再び聞こえる時、一体何が起こるのかを。 「・・・!・・・!!」(や、やだよ!とられたくない!れいむはもうおちびちゃんをとられたくないよぉぉ!) この音が再び聞こえる時、それはれいむの非日常の終わり。つまりおちびちゃん達が奪われるということであった。 だかられいむはおちびちゃん達が実って直ぐの頃、悲しみに満ちた目をしていたのだ。いつかこの子達も奪われるのだ、と。 だがれいむはそうと知っていながらもおちびちゃん達にしっかりと情が湧いていた。ただ苦しみが増すだけだというのに。 そうしている間も音が響く。 れいむの心情など関係無く、ただ無機質に冷たく、かつてと同じように。 コツ コツ コツ 「・・・・・っ!!」(にげないと!おちびちゃんをまもるためににげないと!にげないといけないのにぃぃぃ!!!) 逃げ隠れておちびちゃん達を守りたい ―――― 真っ黒に焼けたあんよは決して動かない コツ コツ コ 「・・・っ!・・・っ!」(にげてぇぇ!おちびちゃんんんんん!!) せめておちびちゃん達だけでも振り落すことで逃がしたい ―――― 固定された体は微動だにしない コツ コツ コツ 「・・・・!・・・っっ!・・・!!」(ゆんやぁぁぁ!!!だめだよぉぉ!!ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!) 何としてでもおちびちゃん達を守りたい ―――― 口の無いれいむではお口の中に隠すことは勿論、声で威嚇することも、ぷくーすることもできない どう足掻こうとも、れいむは何も出来ない。ただ次第に大きくなってくる音に絶望を膨らませるだけ。 そして、 コツ コツ コ ガタッ 「・・・・・・・・!!!!!」(ゆあ・・・ゆあ、あああ・・・ああぁぁぁ!!) かつてと同じように、れいむの目に人間が映りこんだ。 ・ ・ ・ カチャ カタッ カタッ 「・・・・・!・・・・・!!」(とらないでね!にんげんさん、おねがいだからとらないでね!れいむのおちびちゃんをとらないでね!) れいむは目の前の人間に必死になっておちびちゃんを奪わないように訴えかけようとしていた。 唯一自由に動く目を使い、人間とおちびちゃん達の間で視線を行き来させ、何とか伝えようとする。 だが人間はれいむの方など見ず、ただ茎の様子を確認しながら手元に持っている紙に何やら書き続けている。 「・・・・!・・・!」(ほら!おちびちゃんたちはゆっくりしてるでしょ!?かわいいでしょ!?だから、だから!!) れいむの行動はマルッと無視されているのだが、れいむは構わずその行動を続けていた。 元よりそのような事しかできないし、だからといってただ奪われるのをじっと待つこともできないのだ。 以前の行為の際のように朦朧とした意識の中で奪われるのではない上に、おちびちゃん達には大きな愛情を感じている。 放っておくなど出来なかった。 カタッ カチャ カタ 「・・・・!~~~~~!!」(とらないでねっ!!れいむのおちびちゃんたちを!あにゃるてんしさんたちをとらないでねっ!!) 「ゅ~?」「ゅっ!」「……??」「……?」「ゅっ…ゅっ…」「ゅっゅゅ!」「ゅゅゅ~!」「ゅ?ゅ?」 だがそれも無駄なこと。 れいむは涙を流しながら訴えかけ、おちびちゃん達は初めて見る人間に興味を示し、人間はれいむ達を無視して書き続ける。 誰もかれもが相手のことなど考慮せずに自分中心の行為をしているのみ。意思疎通など叶うはずがない。 故にれいむの想いが通じることも、れいむの願いが叶うことも決して無い。 スッ 「ーーーーーーーーーーー!!!!」(あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁ!!!だめっ!や”べでぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!!!) 「…!!」「…ゅ?」「ゅ~!」「ゅっ?」「ゅ!」「ゅゅ?」「…??」「ゅゅ~!」 書き終えた人間の手がれいむの茎へと伸びる。 非日常を終わらせる手が、れいむからおちびちゃんを奪っていく手が、しっかりと茎を握り 「ーーーーーー!!!------!!!!」(ゆ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”っっっ!!!!!!) 「ゅ♪」「ゅ?」「ゅ~♪」「ゅっ?」「??」「ゅ~」「ゅゅっ?」「ゅゅ~♪」 ブチッ れいむは結局おちびちゃん達の顔を一度も見ることなく、永遠の離別をさせられたのだった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ れいむの目には壁が映っている。 何も無く、誰もいない、そんな壁だけが映っている。 「・・・・・・・・」(・・・・・) 以前はそこに、少しずつ大きくなっていく命の輝きが、天使のようなおちびちゃん達がいた。 だが今は居らず、そのことがれいむの心にぽっかりと穴を空けていた。 おちびちゃん達を奪われたれいむは心に大ダメージを受けており、放心状態で日々を過ごしている。 「・・・・っ!」(・・・・・おちび・・・ちゃん・・・っ!) れいむの脳内には時折おちびちゃん達と過ごした楽しい頃の記憶が過る。 だがそれはゆっくりを感じさせることなどではなく、むしろ現状との落差を、最早感じることが叶わぬ楽しき日々を痛みとして伝えてくる。 「・・・っ・・・っ・・・っ」(どうじで・・れいむがこんなめにぃぃ・・・ゆえええぇぇぇぇぇ・・・) そんな想い出が脳裏を掠める度にれいむの目から悲しみの涙が零れ落ちる。 なぜ自分がこんな目に合わなければならないのか、どうしてこんなゆっくりできない思いをしなければならないのか、と。 悲しくて苦しくて、体が張り裂けそうな想いで一杯であった。もし口さえあれば、即座に自殺のための『お食べなさい』をしていただろう。 だがしかし、れいむの悲しみの深さとは裏腹に、その想いは急速に消えていくことになる。 れいむの後頭部に刺さった二本の管、食事と排泄を肩代わりするそれが強制的にれいむの中身を循環させ、ゆっくりできる想い出も今の感情もすべて押し流していくからだ。 結果、すぐにれいむは今の記憶を忘れ、退屈な日常へと埋没していくことになる。 もし思い出すときが来るとすれば、それは次の非日常が始まるその時だ。 れいむはただ日常と非日常を繰り返し続ける。 いつか死ぬ、あるいは解放されるまでずっと。 れいむはただ、目の前の風景を見続けていた。 ~終~ 後書き ええ、そうです。ただあにゃるを連呼させたかっただけです、はい。 次は話そのものに盛り上がりを持たせたのを書こうかなぁ 過去の作品 anko2643 ある変わったれいむのお話 anko2658 もの好きなゆっくりの日常 anko2677 アグレッシブてるよ anko2682 オーソドックスなものたち anko2704 アクティブこまち anko2711 妖精たちの幻想郷 anko2716 足りないものが多いぱちゅりー anko2823 愛するが故に anko2840 ポジティブぱるすぃ anko2858・anko2859 スカーレット・チャレンジャー 前編 後編 anko2872・anko2891 ゆ食世界の風景・朝食 昼食 anko3072~anko3074 にんっしんと赤ゆのそれぞれ・植物型 動物型 卵生型 anko3215 トラブルしょう anko3296 野菜を得たまりさ
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『野良さん、ありがとう!』 24KB 差別・格差 嫉妬 飼いゆ 野良ゆ ひまつぶしに。 ※※飼いと野良ゆの格差ものです※※ 初夏に手をかけた時節の公園、広場から少し外れた木陰の続く裏道を、ゆんしょゆんしょと二匹のゆっくりが走っていた。二匹ともいまだに小さな子ゆっくりのまりさとれいむ。せいぜいもう赤ちゃんとは呼べないかな?という程度の年頃である。 さてさてこの二匹の子ゆっくり、見るひとが陽光のなかきらめくお飾りにつけられたバッジを見ればわかるとおり、飼いゆっくりだ。もちろん身体も未熟、知識も未熟、まだまだこれからたくさん両親や飼い主さんからじょうしきっを学ばなくてはならない立場。金銀胴なる飼いゆっくりのランク付け以前の、単に「この饅頭は野良ではないですよー」という程度のしるしでしかない。 そんな二匹が人通りの少ない公園の裏道で、両親とも飼い主さんとも離れて子ゆっくり二匹だけで走っている理由は、このさい重大な伏線でもなければドラマティックな何かでもないので一口で言ってしまうと、単に冒険心ゆえ少々周りを見ることを忘れてしまっただけだ。もちろん、この公園までは飼い主さんに連れられて、両親同伴できている。飼い主さんから一家丸ごと自由に遊んでいいよといわれ、さらに両親からも自由に遊んでいいよといわれ、両人ちょっと目を離した隙にこんなところにきてしまったという、まあ子ゆっくりにありがちといえばありがちな話である。 この公園、もちろん子ゆっくりを放して遊べる程度には安全な場所で、子まりさも子れいむも両親の姿が見えなくなったことは気づいているが、不安はない。いや、まったくないといえば嘘になるものの、これも子ゆっくりにありがちだが好奇心のほうが勝っており、少々の不安はだいぼうけんっのスパイスでしかないのだ。それに、なんだかんだで大好きな飼い主さんも大好きなお父さんお母さんも、なにかあれば二匹をすぐ見つけてくれるはず…… しかしいかに平和な公園といえども、子ゆっくりが100%安全なわけではない。例えば間違えて道路にでてしまい車さんに轢かれる、例えば人間さんが遊ぶボールにぶつかってしまう、例えば急な雨さんが降りだしてくる。それに例えば、 「ゆぷぷぷぷ。くさいんだぜ。すっごくくそにんげんくさくて、はながまがりそうなんだぜ!」 「おお、くさいくさい。ほんとうにくそにんげんにかわれる、やせいをうしなったかちくっのにおいはたまらないよ!」 『野良さん、ありがとう!』 これだ。野良ゆっくりである。いきなり子まりさと子れいむの目の前に、大人サイズの野良二匹――野良まりさと野良れいむがあらわれた。 こんな野良ゆっくりたちが人通りの少ない公園の裏道で、両親とも飼い主さんとも離れた子ゆっくり二匹の前に現れた理由も、このさい深遠な理由などなければ何らかの因縁の結果でもないので一口で言ってしまうと、単なる偶然である。実のところ、野良二匹は特に意図して子ゆっくりに絡もうとしたわけですらない。ゆっくりは――野良であろうとバッジ付きであろうと、基本的に自らの考えたことをそのまま口にだしてしまう習性がある。それがどんな状況を引き起こすか、あるいは周りにどんな印象を与えるか、のごとき「機微」や「空気」を読んで「考える」ことが極端に苦手なのだ。 子まりさと子れいむは、ぴたりとあんよを止めた。これがもう少し成長して、飼いゆっくりとしてのきょういくっをもっと受けていれば、こんなミステイクはおこさなかったであろう。野良に関わってなにひとついいことはなく、無視をすべきだというのは飼いゆっくりの「いろは」の「い」である。もちろん二匹とて生まれつきの飼いゆっくり、いちおうそんな程度のことは両親から言われている。要するに一瞬おどろいて足を止めてしまった、というだけなのだが―― 「それにしてもほんとうに、かいゆっくりはぜんゆっくりのなかでもさいていへんっなのぜ! あのひょろひょろあんよのついたきみのわるい『にんげん』みたいなかとうせいぶつに、よりによってえさをめぐんでもらっていきているなんて、まりさならはずかしくてせけんさまにかおむけできないのぜ」 「ゆーん、ほんとうにきびしいやせいのせかいでさばいぶっしているれいむたちにとってすれば、いきているだけではずかしくないのかしんぱいになるよ! こんなくそにんげんくさいおちびをうんだおやも、きっとあくしゅうをまきちらすうんうんゆっくりなんだろうね! うんうんいちぞくだよ!」 「な、なにをいってりゅのじぇー! かいぬしさんをばかにすりゅのはゆりゅしゃないのじぇ!」 「おちょーさんとおかーさんをばかにしにゃいでね! れいむ、ゆりゅせないよ!」 思わずきっと野良二匹をにらみつけ、子ゆっくりたちは声を張り上げた。……張り上げてしまった。自分たちならいざ知らず、敬愛してやまない飼い主さんと、尊敬してやまない両親を、ひとまとめに馬鹿にされたからである。 「ゆあーん?……れいむ、いまなにかきこえたのぜ?」 「……まりさ、なんだかくっさいくっさいいきにのせて、みみざわりなおとがきこえたきがするよ」 先ほどまで嘲笑を浮かべていた野良二匹が、口元を引き締め眉根をよせる。ずい、と一歩野良まりさが前にでた。 「おちびども。いまもしかして、まりさたちにくちごたえっをしたのぜ?」 のーびと身体をそらせて、野良れいむが二匹を見下す。 「うんうんはれいむたちのしかいにはいるだけでつみなんだよ。それをよりによって……」 一メートルほどの距離で睨み合う子ゆっくり二匹と、野良二匹。――子ゆっくりたちは既にぷるぷると小刻みにふるえており、目じりには砂糖水の涙すら浮かべている。はじめて会う野良、はじめて会う明確な敵意。おしつぶされそうな重圧に思わず半ぴょんぴょん下がってしまう。それを見て、にへりと野良二匹は再び笑みを浮かべた。 「あやまるならいまなのぜ。さいっきょうのまりささまが、いまならあんよをなめるぐらいでゆるしてやるのぜ……」 「くっさいかいゆっくりごとき、ぷくーのぷではんごろしなんだからね。ちょうしにのるんじゃないよ」 「あ、あやまりゃないのじぇ!」 「そ、そうじゃそうじゃ!」 恐怖を呑み込むために声を張り上げる。それを聞いて、野良二匹の目に剣呑な光が宿った。そんなにせいっさいがおのぞみなのぜ?……そんな声が音になる、その直前。 「ななななな、なにをやってるのおちびちゃん!!?」 ステレオでそんなシャウトが公園の裏道に轟いた。 次の瞬間、ばっと両組のあいだに影が躍り出る。ゆっくりである。野良たちと同じ程度のサイズの、これまた同じまりさとれいむ。 「お、おちょーさん!」 「おかーさん!」 あらわれたのは子ゆっくりの両親だった。明らかなテンパりとパニクりをその表情に浮かべて、野良を見て子供たちを見て野良を見て、そして子供たちをもう一度見て。 「ここ、こののらさんたちになにかしたのおちびちゃんたち!?」 親まりさはおさげをぶんぶんと振り回しながら、子ゆっくりたちに詰問する。 「ののの、のらさんごめんなさい! おちびちゃんたちがとんだしつれいを!?」 親れいむはあんよを曲げてとにもかくにもと野良たちに頭を下げる。 「おちょーさん、しつれいなのはこいつりゃなのじぇ!」 「しょうだよっ! おかーさんたちだけじゃなく、かいぬしさんもぶじょくっしたんぢゃよ!」 「うんうんおちび、なにをいってるのぜ? まりささまはくそにんげんはゆっくりできないし、そのえさにあさましくくいつくかいゆっくりもゆっくりできない、めいはくなしんじつっをいっただけなのぜ?」 「そうだよ! くっさいうんうんどもはしょせんうんうんなんだから、そこのうんうんれいむのいうとおりいきてるだけでとんだしつれいっだよ。くっさいほもさぴうんうん、かいゆうんうん、はながまがりそうだよ!」 「お、おちょーさん、いみゃのきいたのじぇ……?」 「ゆるせにゃいよ。くさいのはそっちののら……」 「おちびちゃんたち! なんてことをいうのおおおおおお!」 「のらさんたちにわるいでしょおおおおおお!?」 血相を変えて叫ぶ両親に、一種唖然となりすぐに明確な涙目を見せる子ゆっくりたち。そんな情景に、野良まりさも野良れいむもこれ以上ないまですっきりー!なドヤ顔を浮かべた。 「そっちのでかぶつうんうんは、たしょうちからのさ、うまれとそだちのさ、どちらがゆっくりしているかわかっているみたいなのぜ」 「そのとおりだね。かんだいなれいむたちがいまならいっかそろってどげざっぐらいでゆるしてあげなくもないよ」 「いいかいおちびちゃんたち、のらゆっくりさんたちにひどいことをしちゃいけないんだよ」 「ゆぷぷぷぷ、そのとおりなのぜ。まあ、さいっきょうのまりささまにひどいことなんてできるわけがないけど」 「おとーさんまりさのいうとおりだよ。おちびちゃんたちはかいゆっくりでしょ? かいゆっくりならかいゆっくりらしいせつどっがひつようなんだよ」 「そのとおりだよ! うんうんのにおいまきちらしてわがものがおであるくなんて、はんざいっだよ! あめりかさんならそしょうものだよ!」 「のらさんたちだってね、ほんとうはひがいしゃなんだよ」 「そのとお……ゆ?」 「のらさんにひつようなのはあたたかいどうじょうっなんだよ」 「ゆゆゆ?」 いま何か、とてもゆっくりできない言葉が、相変わらずうんうんくさい空気にあわせて流れてきたような……と野良二匹が小首をかしげると、先ほどまで諭すような目で子ゆっくりたちを見つめていた親ゆっくり二匹が、視線を野良たちに移した。 「みてごらんおちびちゃん。のらさんたちのすがたを」 反射的に、野良れいむが答える。 「とってもゆっくりして、うつくしいびーなすっみたいな……」 「きたないよ」 「ゆべえ!?」 ……答える、のを無視して子れいむが思わずぽつりと漏らした言葉に、潰れたカエルのような声をだす野良れいむ。ちょっタンマいまなんていった?きたない?汚いだと?飼いゆっくりふぜいが、うんうんと変わらない存在が、このれいむ様のことを汚いなんて――! 「おいくそちび! いまのもういっか」 「おちびちゃん! だめでしょほんとうのことをいっちゃ! のらさんがきずついちゃうよ!」 「そうだよおちびちゃん! めっ! のらさんだってほんとうはきれいきれいしたいのに、それがかなわないんだよ!?」 「ななななななな、なにをいってるんだこのくそかいゆっぐりぃぃぃぃ!?」 野良二匹の叫びに親ゆっくり二匹は反応を見せず、あえてきびしさっを宿した瞳で子供たちの顔を覗き込んだ。 「おちびちゃん、おちびちゃんはたしかにあんなおかざりもよごれていて、『は』はおはぐろっみたいにまっくろで、はださんもへんなしるがこびりついてて、おまけにあにゃるにはうんうんのかすがもうひとなつもまえからすみついてるような、あんなすがたじゃないよ?」 「……でもね、おちびちゃんたちがひとりっでああならずにすんでいるわけじゃないんだよ。かいぬしさんがきちんとおちびちゃんたちをみてくれて、それではじめてあんなみすぼらしくならずにすんでるんだよ。のらさんはね、ゆっくりできないあんなすがたになりながらも、ひっしにがんばってるんだよ!」 「おちょーさん」 「おかーさん」 そういわれて改めて、子ゆっくりたちは野良に目線を写す。なんだかギリギリと歯ぎしりをし、目を血走らせ、びったんびったんとおさげで地面を叩いている。ゆっくりしていない。ぜんぜんゆっくりできていない。しかし――いま大好きなおとーさんとおかーさんのいったことを考える。なんだかみんながゆっくりするために大事なことの淵に手をかけていると、漠然と二匹は思った。 「おちょーさん、のらさんはひぎゃいしゃ……なのじぇ?」 「そうだよ、おちびちゃん。しゃかいというりふじんっなせかいで、のらさんたちはぜったいにゆっくりできないさだめにうまれてしまったんだよ」 「おかーさん、のらさんはそりぇでもがんばってりゅ……の?」 「おちびちゃん、そのとおりだよ! のらさんたちにとって、かいゆっくりやにんげんさんをばかにすることは、いきるためにひつようなことなんだよ」 「おばえらざっぎがらなにをいっでるんだあああああああ!!!」 「おばえらがうんうん! でいぶだぢがほうぜぎっ! ぞれがしんじづだろうがああああああ!!!!!」 「おちびちゃんたち、のらさんはああおもいこまないとだめなんだよ。たとえばおちびちゃんたちにはしんじられないかもしれないけど、のらさんたちのしょくじはほんとうにひどくて……」 「ひどいっでいうなあああああ!! まりざはかりのめいじんっなのぜえええ!!! ごのまえもいもむしさんにかまきりさんに、それにとんぼさんまではんてぃんぐっしたのぜええええええ!!!」 はっ、とそれを聞いて子ゆっくりどもが目を見開く。どーだまいったかのぜ?このくそちびども、と野良まりさ。 「し、しんじりゃれないのじぇ……」 そうなのぜそうなのぜえええ!?まりさはつばを飛ばして叫ぶ。あめいじんぐっなまりささまの狩りによるご馳走はうんうんどもなんかとは…… 「おちょーさん、もしかして……」 「そのとおりだよ、おちびちゃんたち。のらさんはね、いもむしさんやかまきりさんやとんぼさんをたべてるんだよ」 「ゆゆっ!?」 信じられない両親の発言にびっくり仰天の子ゆっくりたち。 「ゆゆっ!?」 子ゆっくりたちのその反応にびっくり仰天の野良たち。 「で、でみょいもむしさんやかまきりさんやとんぼさんはまじゅいまじゅいだよ……?」 「でもそれがのらさんたちのしょくじなの。かいゆっくりみたいにあさにたらこぱしたさん、ひるはかいせんちゃーはんさん、さんじのおやつにあまあまのけーきさん、よるはおにくたっぷりっのすきやきさん、でざーとにちょこれーとさん……なんてしょくせいかつっはできないんだよ」 「ま、まりしゃそれでもしんじりゃれないのじぇ。むしさんをそのままたべるなんて、きもちわる……」 「おちびちゃん!!」 その時! 親まりさの愛のおさげ鞭が子まりさの頬に飛んだ。ゆゆゆっとじんわり痛む頬を抱える自分のおちびちゃんに、声を強くする。 「のらさんにしつれいでしょ!? のらさんはね、のらさんはね、ごはんをくれるかいぬしさんなんていなんだよおおお!?」 「そうだよおちびちゃん! のらさんはいちにちじめんをはいずりまわって、やっとそのひたべられるだけのむじさんやきのみさんをとってきて、ふしあわせーっなごはんさんでまいにちがんばってるんだよ!?」 「お、おちょーさん……ごめんなのじぇ」 「ちがうでしょおちびちゃん。おとーさんやおかーさんにあやまってもいみがないよ! あやまるならあまあまもたべられず、あじなんてにがにがしかしないむしさんをちょっとだけたべてこれからもまいにちをすごす、ふこうなのらさんたちにでしょ?」 「そ、そうだったのじぇ」 「れ、れいむもひぢょいことをいっちゃったよ。いっしょにあやまりょう、まりしゃ」 いまだに真剣な表情を崩さないお父さんとお母さん。正直なところ、子まりさにとって両親に叩かれたのははじめての経験であったし、子れいむにしたところであそこまで強い口調で何かを教えられたのははじめてだった。だからこそ、だからこそである。これこそが大好きで尊敬できるお父さん、お母さんの子供である自分たちが、本当に学ばなくてはならないことなのだと、直感できた。野良さんに、謝らなくてはならない。 ぴょんぴょんと野良さんたちの前まで跳ねて、二匹は同時に頭を下げて言った。 「のらさんたち、ごめんなさい。ゆっくりしていって――」 「ふふふふふざげるなあああああああああああああああ!! このうんうんっ、うんうんっ、うんうんっくそがいゆっくりどもおおおおおおお!!!!」 野良ゆっくりたちは爆発した。何がたらこぱしたさんだ、何がかいせんちゃーはんさんだ、何がさんじのおやつのあまあまのけーきさんだ、何がおにくたっぷりっすきやきさんだ、何がでざーとのちょこれーとさんだ、何が飼い主さんだ、何が飼いゆっくりだ――!! 「おばえらなんで『じゆう』がまったくないどれいだろうがああああああああ!!!ゆっくりできない、くさいくさいくそにんげんにっ! くびわをつげられたどれいゆっぐりだあああああああ!!!!」 「ぞうなのぜっ!!! 『じゆう』こそがゆっぐり! ゆっぐりこそが『じゆう』!! がいけんなんてうんうんいかなのぜ! おいしいごはんさんなんか、『じゆう』にくらべだらはのあいだにはさまったはくそなのぜええええええ!!!」 「ゆゆ……『じゆう』さん?」 「のらさんたちは『じゆう』なのじぇ?」 ぽかんと不思議そうにこちらを見る子ゆっくりどもに、野良二匹ふーふーと息を整えながらようやく数分ぶりの笑みを浮かべた。これは地獄に一本の蜘蛛の糸が垂れてきたようであった。先ほどまで屈辱という針と怒りという火と嫉妬という金棒によって責め立てられていた野良たちにとっては。 「そ……そ……そうなのぜええ……『じゆう』なのぜ、まりささまたちは……あ、あばあばさんがあっても『じゆう』がなければむいみっなのぜえええ……」」 「ふう……ふう……じ、『じゆう』がないなんてうんうんかいゆっくりどもはほんとうにゆっくりで、できてないね……」 ――さてさて、先ほどまで両親に諭され、ひとつ大人になったかのように見えた子ゆっくりたちも、しょせんまだまだ未熟者である。そうまであからさまに「お前はゆっくりしてない」といわれれば、むくむくとまた反抗心が沸きあがってきてしまう。いぶかしげに聞き返した。 「そそ、そんなに『じゆう』さんはいいのじぇ?」 「ゆふん。そのとおりだよ! くそにんげんにかわれたあわれなかいゆっくりのうんうんあんこのうじゃわからないかもしれないけどね」 「れいむ、あまりかわいそうなくそちびをおいつめちゃだめなのぜ。こいつらは『じゆう』がないから、ゆっくりできていないのぜ」 完全に数分前の余裕を取り戻した、というよりは数分前の余裕を取り戻さねばならないと餡子を総動員させた野良二匹。ぐねりと縦長に反り返り、口元にいやらしい嘲笑を浮かべ、ちびどもを見下ろす。……なお子ゆっくりたちの両親はというと、とりあえずのらさんが元気になってよかったよー、てなものである。 とにもかくにも、野良二匹にはやらねばならないことがあった。先ほどから痛めつけられ、削り取られたプライドの修復である。『じゆう』! このマジックワードを武器に、今こそくそなまいきな子ゆっくりに反撃開始だ。 「ゆーぷぷぷぷぷぷぷ! まりさたち、『じゆう』でごーめんね!」 「ゆっくりしてるれいむたちだからー、『じゆう』があってー、なんでもできるんだよー!」 「ゆゆ? のらさんたちは『じゆう』だから、なんでもできりゅの?」 「そうだよ! それが『じゆう』! だよ!」 「じゃあじゃあ、もしかしてれいみゅいつもいやなあめしゃんのひでも、やっぱり『じゆう』なの?」 「そのとおりなのぜ! きいておどろくなだぜ! 『じゆう』あふれるまりささまたちはっ、なんとっ、あめさんのひでもっ、おうちがしっかりしてるからぬれずにすむのぜええええええええ!!!」 どうだこのくそちびども、お前らこそ屈辱と怒りと嫉妬に身がふるえるがいい、と口から泡を飛ばしておさげをぴっとつきつける。……が、どうにも子ゆっくりたちの反応は芳しくない。不思議そうに小首をかしげて、 「……のらさん、それはあたりまえなのじぇ」 「それに『じゆう』とはあんまりかんけいないきがするよ……」 「はあああああ!? なにをのんきなことをいってるのぜっ!? おうちがしっかりしてるからぬれないのはぜんぜんっあたりまえじゃないのぜ!!? まりささまがみっかみばんねずにえださんやはっぱさんをあつめて、ようやくっかんせいしたのぜえええ!?」 「そうだよくそちびどもおおおお!!!! それにたくさんったいようさんがのぼるとかってにはっぱさんがどこかにいっちゃうから、そのつどあつめなおしっするんだよおおおお!? ぜんぜんっあたりまえじゃないでしょおおお!?」 「でみょ、でみょまりしゃたちにとっては……」 言いかけた子まりさの後頭部が何者かにはたかれる。ゆゆゆっと目を回しながら振り向くと、そこにはぷくー寸前の怖い顔をしたお父さんとお母さんが…… 「おちびちゃんっ! またのらさんをこまらせてるんだね!? いいかいおちびちゃん、おちびちゃんはかいぬしさんのいえのなかで、あめさんもかぜさんも、あつささんもさむささんもかんけいなくかいてきっにくらせるけど、のらさんはそうはいかないんだよ!?」 「それに、あめさんのひはせまいすでさむいさむいにたえてちぢこまるだけののらさんと、ひろいかいぬしさんのいえでおそととかわらずあそべるかいゆっくり、どっちが『じゆう』かはわかるでしょおおお!? のらさんは『じゆう』にすがってるんだよおおお!? それがかんちがいっだとほんとうのことにきづかせるなんて、かわいそうだよおお!!」 「ゆがあああああああああ!!! まだおばえらがああああああ!!! ごのうんうんうんうんうんうんどもおおおおおおお!!!!!」 同時に叫ぶ野良二匹。……と少しして、憤怒で額をぐねぐねと地面にこすり付けていた野良れいむが、「お、お、おばえら……」と餡子から搾り出されるような声をだし、 「おばえらがいゆっぐりはっ、おちびをづぐれないんだろおおおおおおおおおお!!?」 口が張り裂けんばかりに叫んだ。ゆゆゆゆっ、と野良まりさも反応する。 「そそそそ、そうなんだぜっ!! 『じゆう』のないおばえらはおちびをづぐれない、ぞれががいゆっぐりなんだぜえええええ!!!! ねえねえどんなぎもぢどんなぎもぢいいいい!? しそんをのごぜないってどんなぎもぢいいいいいいい!? 『じゆう』がないってどんなぎもぢいいいいいいい!!!??」 「……の、のらさん、まりしゃとれいみゅをうんでりゅから、おちびをつくる『じゆう』はあるきがするのじぇ……」 「――――ゆゆ?」 「それにのらさんたちはつがいだよにぇ? 『じゆう』なのらしゃんたちはおちびちゃんはつくりゃなかったの?」 「――――ゆゆゆゆ?」 野良二匹が同時に押し黙る。おちびちゃん、おちびちゃん……! 今まで忘れていた、というよりはゆっくりできなさすぎてフタをしていた記憶が、餡子の奥から蘇ってくる。確かに二匹にもおちびちゃんがいた。一匹は生まれた次の朝には餓死し、一匹は公園でカラスにつつかれて出餡多量。前者は「なぜうんだにょ?」、後者は「つぎはこんにゃつきゃえないおやどもはいやなのじぇ」が遺言だった。 「おちびちゃん」 そのとき。ひどく冷静な声で。訳知り顔で。同情をその瞳に浮かべて。――ね、おちびちゃん、と親ゆっくりが言った。 「さっきもいったでしょ、のらさんたちがいってる『じゆう』はかんちがいなんだよ。こどもをつくれてそだてることができてるまりさたちと、こどものいないのらさんたち……ね、おちびちゃん、むずかしいかもしれないけどこれでさっしてね」 「わ、わかったのじぇ……のらさんたち、ごめんなのじぇ」 「ごめんなしゃい、のらさん」 ――二匹の野良の餡子のなかで、ぷつん、と何かが切れてしまった。はっきりとその音まで、聞こえた気がした。 「……ね」 「……しね」 「のらさん?」 「いだよ……」 「さいするのぜ……」 「のらさん? の――」 「し、し、しねええええええええええ!!!!! このっ、うんうんのっ、きたならしいっ、くさいごみくずのっ、こえだめよりはえのわいた、ぐぞがいゆっぐりいいいいいい!!!!」 「せいっさいなのぜえええええええええ!! ぜっだいにゆるざないのぜええええええ!!! だんで、だんでばりざざまがごんながいゆっぐりどもにいいいいい!!!! がいゆっぐりどもぞごになおれええええすーぱーせいっさいだいむのはじまりなのぜええええええ!!!」 屈辱が餡子に火をともした! 怒りがあんよによる跳躍を爆発させる! 嫉妬のエネルギーを弾丸のごとき体当たりにこめて! ぽっすん。野良まりさが子まりさに、野良れいむが子れいむに。ぶつかって、跳ね返って、転がって、向き直る。 「の、のらさん……」 子ゆっくりたちがぽつりと呟き、その声が更に野良たちのせいっさいっ感情を増幅させた! 「しねええええ!!! しねええええええええ!!!!!」 「せいっさいなのぜええええ!!! せいっさいなのぜえええええええ!!!!!」 ぽっすん。ぽっすん。ぽっすん。ぽっすん。 ――もう大分傾いた太陽のもと、遠くから聞こえる人間の子供たちの歓声のなか、木陰も涼しい公園の裏道。困惑を顔に貼り付ける子ゆっくりたちと、意味は違うが同じく困惑する親ゆっくりたち。そんな悠長な景色のなかで、凄まじい表情を浮かべひたすら自分より小さな子ゆっくりに体当たりを敢行する野良たちの姿は、もしこれが絵画であるなら「空回り」ないし「場違い」なる題がつくであろう。 野良たちの主観ではたっぷりと、正味なはなし客観的には十秒にも満たないほど短い時間が過ぎ。野良まりさは全身を上下させて仰向けに野良れいむは全身をふるわせてうつぶせに、だらりと倒れこむ。限界だったようだ。 二匹のぜーはーぜーはーどうなのぜきいたのぜしんだのぜくそかいゆっくりがごみになったみたいだねつよくってごめんねぜーはーぜーはー、という途切れ途切れの声をBGMに、ぽつりと子まりさが呟く。 「のらさん、いまのなんだったのじぇ……?」 せい……さいっ……だよ……と野良れいむが答え、だから……さっさとくそちびはしぬのぜ……と野良まりさが続ける。 「でもおきゃしいよ……のらさんのたいあたり、こどものまりしゃとあそびでおすもうっすりゅときより、よわかったよ」 そんなことないのぜ、という意味の抗弁を弱弱しい呼吸で野良まりさが口にしかけるが、その前に親ゆっくりたちがずいっと一歩前にでて口を開いた。 「おちびちゃんたち。これが、これも……のらさんなんだよ。よわかったでしょ? おちびちゃんたちいかだったでしょ? それでも、しかたないんだよ。のらさんはね、ろくなものをうまれたてっのころからたべていないから、ちゃんとせいちょうできないんだよ」 「ようするにねおちびちゃん、のらさんたちとかいゆっくりでは、かんきょうっのちがいだけじゃなくて、ゆっくりとしてのすぺっくっもうめられないさがあるってことなんだよ」 ぽかん、と野良ゆっくりも子ゆっくりも、口を開け放しにする。それってつまり―― 「のらさんたちはまりしゃにはぜったいかてにゃいってことなの……じぇ?」 「おちびちゃんたち。これがげんじつっなんだよ。かいゆっくりじゃない、かいぬしさんがいない。それだけで、ゆんせいにここまでのさがでちゃうんだよ。がいけんはきたないきたない、しょくじはまずいものしかたべられない、『じゆう』もぜんぜんない、そもそもおちびちゃんもまともにそだてられない、そういうかんきょうっのちがいをぜんぶさっぱりーにしても、いっぴきのゆっくりとしてさがありすぎる……」 「そ、そんにゃにょざんこくっすぎりゅよ! じゃあのらさんたちはゆっくりできないよ!」 「そうだよ。おちびちゃんたちみたいなかいゆっくりにとってみれば、のらさんたちはぜったいにゆっくりできないよ。でもね、でもね! おちびちゃんたち、よくかんがえてごらん。それはあくまでかいゆっくりとくらべたら、だよ……だからね、きょうおとーさんとおかーさんがいっただいじなことをおもいだしてごらん」 「ゆ?」 「ゆゆ?」 二匹の子ゆっくりは、今日学んだことを思い出そうとする。大事なこと……みんながゆっくりするためにとても大事なこと。 「のらさんたちも、ゆっくりできにゃいけど、がんばってりゅのじぇ?」 「のらさんがわりゅいんじゃなくて、ひがいしゃなにょ?」 「だからのらさんたちをわりゅくいっちゃだめなのじぇ?」 「ただでしゃえのらさんよりあっとうてきにゆっくりしてるりぇいむたちが……」 「のらさんたちにほんちょうのこちょをいうのはゆっくりしてないんだじぇ」 「そうだよ、おちびちゃんたち! だからかいゆっくりとのらゆっくりのあいだにはくらくてふかいかわっがながれてるんだよ! それがおちびちゃんたちがまだほんのあかちゃんのころから、くちをすっぱくして『のらとはかかわるな』といってるりゆうなんだよ」 「それにね、おちびちゃんたちがやさしいかいぬしさんのもとで、のらさんみたいなひさんっすぎるせいかつをおくらないようにうまれることができたのも、たんなるぐうぜんっだよ! だからかんしゃして、おごらないように、けんきょっにならなきゃいけないんだよ!」 「けんきょ……しょうしないとまりしゃたちはすぐおごっちゃうのじぇ……」 「だきゃらじぶんのためにも……のらさんにほんとうのことをいってばきゃにするのはよくないよ……」 ――はっ、と今まで地面を見つめて考え込んだ子ゆっくり二匹が、目を上げた。その目には紛れもない光が宿っている。古来より、その光をさして人は知性と呼ぶし、光がさすことを成長と呼んだ。ほんの一時間にも満たない出来事であったが、いままさに二匹の子ゆっくりは、単なる「おちびちゃん」から半歩「大人」の世界へ足を踏み入れたのだ。両親がゆっくり、ゆっくりと笑みを浮かべてうなずく。それを教えてくれたのはおとーさんおかーさんと、そして…… 「ゆっ、のらさん!」 二匹は同時に、いまだにだらりと身を地面に横たえる二匹の野良ゆっくりに向き直る。爽やかな風が、裏道を走りぬけた。ざわざわと木々が囁きを交わす。 「ありがとう、ございましたっ!」 ――いって踵を返した二匹の親ゆっくりと、二匹の子ゆっくり。飼い主さんのもとへ、いるべき場所へと帰ってゆく。その影のうちふたつが、つい一日前よりほんの少しだけ伸びているように見えるのは、気のせいだろうか? そして二匹の野良はというと……極めて遺憾ながら、これも二匹の親ゆっくりの「教育」を最後には十全に受け取ってしまっていた。すなわち、自分がどんなに努力しても絶対に届かない「ゆっくり」を享受する存在がいること、そしてそれを知ってしまったからには自分たちは二度と「ゆっくり」できないということ。だからふたりはその場で成長を止めた。あえてその死因を言語化するならば、「絶望」――ということにでも、なるだろう。実のところ、野良には珍しくない死に様であった。
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過去作 anko1548『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』前編 anko1744『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』中編-1 anko1745『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』中編-2 「よう、元気でやってるか?」 「!!!!」 お兄さんがやってきた。 引き戸を開け、家族に声をかける。家族は答える余裕もなく、ぶるぶるがたがた震え出した。 「ゆゆっ!おにーしゃん、ゆっくちちていっちぇにぇっ!!」 「おにーしゃん?ゆっくちちていっちぇにぇ!!」 飾りのない二人がクッションから飛び上がり、お兄さんの足元を目指してぴょんぴょん跳ねていく。 「おう、ゆっくりしているか?」 「ゆんっ!まりしゃ、ゆっくちちてりゅよっ!!」 「れーみゅもゆっくちちてりゅよ!!おにーしゃん、いちゅもありがちょう!!」 「よしよし、いい子だな。お飾りがなくたって本当にゆっくりしているよ、お前らは」 「ゆゆ~~んっ♪」 「それにひきかえ……」 お兄さんの視線が、じとりとこちら側に移る。 家族はいよいよがたがた震え、背面のガラス壁に体を押し付けた。 「こっちのゴミクズ共ときたら……なッ!」 ガァン!! 「ゆびいぃっ!!」 お兄さんに蹴られ、水槽が激しく揺れる。 頑丈な水槽はそうそう割れることはないが、それでも安全を保障してはくれない。 「お飾りがないだけで、口がきけないだけで、 自分の子供さえ大喜びで苛めるクソゲスなんだからなぁ………なんでおめおめ生きてられんの?」 「ごめんなさい!!ごめんなさい!!くそげすでごめんなさい!!いぎででごべんなざい!!」 「ゆーっ!!まだまだはんちぇいがたりにゃいよっ!!」 「おにーしゃん、はやきゅ!!はやきゅはじめようにぇっ!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!」 「おう、今日も楽しい楽しい制裁タイムの始まりだ。 たっぷりこいつらで遊んでやろうな」 「ゆゆーんっ!!」 「おでがいでず!!ぼうやべでぐだざい!がらだじゅうがいだいんでず!!ゆっぐじでぎだいんでずぅぅ!!」 「あのなあ、お前らはゴミクズなんだろ?自分で認めたんだろ? ゴミクズは玩具になるしかねえもんなあ。さ、きりきり働こうか」 「ばぢがっでばじだ!!でいぶだぢがばぢがっでばじだ!!ゆっぐじざぜでええぇぇ!!」 「ゆーっ!きょうはぷきゅーしゃんをしゅるよっ!!」 「お、いいな、それでいこう」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぷぐーざんはゆっぐじでぎだいいいいいぃぃ!!!」 毎日の日課、お兄さんからの制裁が今日も始まった。 子ゆっくりの注文に応える形で、ありとあらゆる責め苦が家族に課せられ、それを見て飾りのない二人は楽しむ。 今日の制裁は「ぷくーさん」だった。 口をテープで塞いだあと、透明なラップで全身を厳重にくるまれ密封される。 次にラップの隙間から、先端に風船のついたホースをあにゃるに突っ込まれ、 ポンプでホースから風船に空気を注入される。 体内の風船に押されて全身がまん丸に膨れ上がるが、ラップでくるまれているために、遮られて破裂はできない。 風船は容赦なく膨れ上がり、体内の風船と体外のラップに挟まれて体中の餡子が圧迫まれ、想像を絶する苦痛がえんえんと続く。 「ゆ゛ぶぶぶぶぶぶっぶぶぶぶぶぶっぶぶぶぶぶぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!!」 「ゆーっきゃっきゃっきゃっ!!ぷきゅーきょわ~~い☆」 「たのちい?たのちい?ねえねえぷきゅーたのちいぃ?ゆっくちゆっくちぃ~~♪」 笑い転げる二匹の前で、家族が一匹ずつぷくー責めを受ける。 十数分も続けて餡子を押しつぶされたゆっくり達は、その日一日は動くこともできない苦痛と疲労に悶えることになる。 今また、親れいむが責められていた。 全身を真っ赤にして涙を流し、膨れ上がる。 まん丸に見開かれた両目は半ば飛び出し、慈悲を求めてわが子を見つめ震えていた。 それを見て、二匹の子供はますます笑い声をあげるのだった。 地獄のような毎日。それでも、ただひとつの救いがあった。 まがりなりにも、家族が一緒にいるということだ。 ほとんど会話はなく、そのうち二匹はこのうえもない怨嗟と憎悪と侮蔑を向けてきてはいるが、 家族はたしかに揃っていた。 「ゆぅ……ぺーろ、ぺーろ……」 水槽の中で、ほとんど唯一といえる楽しみ。 家族とのすーりすーりとぺーろぺーろだけが、親まりさ達の正気を保っていると言ってよかった。 「ぺーろ、ぺー………おちび……ちゃん?」 しかし、家族は少しずつ狂いはじめていた。 ぺーろぺーろしていた子まりさが全く反応を返してこないのに疑問を感じ、その顔を覗き込む。 しかし、その子まりさは何も応えず、ただ視線を一点のみに向けていた。 壁の一点。何もない、ただの壁。しかしそれを、日がな一日、食事もとらず動きもせずに見ている。 親まりさがどれだけ呼びかけても、その子まりさが応えることはなかった。 死んでいるのかと思って焦ったが、目はたしかに開いていた。 「だずげでぐだざい!!おぢびぢゃんがゆっぐじでぎでないんでず!!」 「ん?知るかよ。自分でなんとかしろ」 「おでがいじばず!!ばりざだぢじゃだずげであげられだいんでず!!おぢびぢゃんを!!おぢびぢゃっ」 「何をいまさらわめいてんだよ。子供なんかどうでもいいんだろ?なあ、れいむ、まりさ」 「ゆーっ!!れいみゅをこんにゃにしたくちぇに、いましゃらあちゅかまちいよっ!!」 「にゃんでまりしゃはたちゅけにゃかっちゃの!?しょいつもいじみぇればいいでちょっ!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅぅぅ………!!!」 お兄さんに助けを求めるが、すげない答えが返ってくるばかり。 それどころか子供たちにまぜっかえされ、罵倒されるばかりだった。 ぴくりとも動かなくなった子供を、家族は涙にくれながら夜通しぺーろぺーろするしかなかった。 「ゆぢっ!!ゆぢーっ!!ぎゅぐげげげげげ!!びょぢぢ!!」 次の日には、子れいむの一人がおかしくなっていた。 もみあげをひっきりなしにばたばたばたばたばたつかせ、涎と糞尿を垂れ流す。 口にする言葉はもはやほとんど意味をなさない、歯軋りのように不快な雑音に変じていた。 焦点の合わない視線をしきりに泳がせながら、狭い水槽の中で暴れ周り、家族を困らせた。 「うー☆あみゃあみゃだっどぅー!おぜうしゃまのぶりゃんちににゃるんだどぅー☆」 「ゆびっ!!いぢゃいっ!!やべでぇおにぇえじゃんん!!」 子まりさの一人が、れみりゃの声色を真似て姉妹の頬をかじり始めた。 噛む力が弱くなかなか噛み千切るまでにはいかないが、 それでも姉妹は苦痛に泣き、何よりそのゆっくりできない声が家族を苛んだ。 両親がその度にきつく叱り押さえつけることでなんとか事なきを得てはいたが、 子まりさの口調はもはや戻らず、ずっとれみりゃの声色で喋り、隙をついては家族を捕食しようとした。 「んほぉぉぉ!!んっほおおおおぉぉぉ!!!」 子れいむの一人がれいぱーになった。 涎を垂らして小さなぺにぺにを誇示するように突き出し、おぞましくも実の姉妹とすっきりに及ぼうとした。 両親がいくら叱ってもやはり治る気配はなく、、一日中半ば拘束するように押さえつけていなければならなかった。 親のもみあげに押さえつけられていてすら、壁や床にぺにぺにをこすりつけてひとりすっきりーに及ぶわが子を前に、 両親はまたも苦い涙を流した。 「じゃおーん!じゃおーん!」 あの日の苛めに対するあてつけだろうか? 子まりさの一人が、「じゃおーん」しか言わなくなった。 それしか喋れないゆっくりを見てももう苛めないと誓った手前、あまり強くは叱れなかったし、 やたらに楽しげに連呼するわが子を見ながら、両親は、 こんな生活でも楽しんでいられるなら、狂ったほうがよかったのかもしれないと後ろ向きな安堵をさえ覚えた。 「ちーんぽ!でかまら!ぺにす!!」 最後に残った子れいむが狂ったとき、両親は大声で泣き喚いた。 水槽の中に一緒に閉じ込められた愛しい子供たちはどの子も狂い、 もはや意思疎通も適わず、わけのわからないことを言いながら蠢く狂い饅頭となり果てた。 残った二匹は、水槽の外で自分たちをせせら笑っている。 それでも両親は、帽子のない二匹の子供たちにすがろうとした。 「……ゆっくり……ゆっくりしていって……ね…」 「ゆ?ゆゆーん?にゃにいきにゃりはなちかけちぇきちぇるわきぇ~?」 「れーみゅちゃちをぷーすぷーすしちゃごみくじゅがにゃにかいっちぇるよっ!!」 「ごべんね………ごべんね………ゆぐじで………おがあざんをゆぐじで……」 「ごべんにぇ~♪ゆぐじじぇ~♪うんうんぴゅりぴゅり~~♪」 「はんっちぇいっがたりにゃいよ!!ごみくじゅ!!ちにぇ!!」 こんな会話でも、唯一意思の疎通ができる子供達と、 両親はなんとか仲直りしようとわずかな望みをつないだ。 あんなにゆっくりしていた子供たちだから。 根は素直な子供たちだから、きっといつか、きっといつか。 「おちびちゃ………おちびちゃ…………」 「ちにぇ!!ごみくじゅ!!くそげしゅ!!」 「いっしょに………いっしょに、ゆっくり……おがあざん、ど……… ながよぐ、じで…………おでがい…………おでがいだがら……がぞぐ、みんなで……」 「ゆっはああああぁぁぁああああぁぁ!!?にゃにいっちぇるにょおおおおぉぉぉ!!!? しょのかぞきゅをぷーしゅぷーしゅしちゃのはどこのだりぇなんぢゃあああぁぁぁ!!!」 「何やってんだよ、お前ら」 「ゆひぃぃ!!」 お兄さんが、その様子を見咎めてきた。 「ゆーっ!!おにーしゃん!!きょのごみくじゅどみょが、にゃかにゃおりしちゃいっちぇ~~♪」 「ああ?そんな事言ったのか? お前らをこんな目に遭わせといて、どの面下げてそんな事言えるんだか」 「ゆ゛ぐぅぅぅ………」 「可愛い子供たちなら、そこに一杯いるじゃねえか。 そこで一家団欒してりゃいいだろ?え?」 「………みんな、みんな………ゆっくりしてないよ……… ゆっくりできなくなっちゃったよ…………」 「はあ?」 全く動かない妹の頬をかじっている子まりさ。 自分のもみあげの下で暴れているれいぱーの子れいむ。 小さなもみあげをふりみだして何やらわからない言葉を連呼している子れいむ。 「じゃおーん」を連呼する子まりさ、「ちーんぽ」を連呼する子れいむ。 誰一人としてゆっくりしていなかった。 もはやこの水槽は、壊れたゆっくりを収容する精神病院と化していた。 両親でさえ、明日にも発狂寸前の状態だ。 「ふーん?で、そいつらは壊れちゃったから捨てちゃおうと。 最後に残った二匹の子供といちゃいちゃしたいと」 「ゆぷぷ!あちゅかまちーにぇ!!」 「「…………………………」」 「じゃあ、ひとつだけ質問しようか。 その答えによっては、お前らにチャンスをやらんでもない」 「ゆ゛ぅっ!?」 この期に及んで、まだ希望が見えてきたというのか。 両親はお兄さんを食い入るように見つめた。 「子供を作れない子まりさ、目の見えない子れいむ、ともにお飾りのないこの二匹。 一方、お飾りはあるけど壊れちゃったそこの六匹。 さーて、ゆっくりできるのはどっちかな~~?」 「……おかざりのないおちびちゃんのほうがゆっくりしてるよぉっ……!!」 両親の答えに迷いはなかった。 「バーカ」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんは、六匹の子供たちを水槽から取り出して床に並べ、 その頭から次々とお飾りを取り上げた。 「「ゆっ??」」 飾りがなくなったとたんに、個体識別の術がなくなり、 六匹はどこの誰とも知れず得体の知れないゆっくりと化す。 それでも、その動きや喋りを見ていると、ようやく確信が持てた。 こいつらは絶対にまりさたちのおちびちゃんじゃない。 深くため息をつき、お兄さんが解説してきた。 「こいつはただの饅頭に目鼻をマジックで書き込んだだけ。 こいつは野良ゆっくりに捨てられてた未熟児。 こいつらはそれぞれれみりゃ、レイパーありす、めーりん、みょんの子供。 毎日一匹ずつ、お前らが寝てる隙にすり替えさせてもらった」 「…………………!!」 「おい、入っていいぞ」 「「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよっ!!」」」」」」 引き戸の向こうから、六人の子ゆっくりがぴょんぴょん跳ねてきていた。 「ゆーっ!!おきゃーしゃん、まだゆっくちできにゃいの?」 「まりちゃたちはゆっくちちてりゅよっ!!」 「みゃいにちあみゃあみゃをむーちゃむーちゃできりゅんだよ!!ゆっくち!ゆっくち!!」 「おにぇーちゃんたちもゆるちてくれちゃよっ!!」 「ゆあ…………あ……………おちび、ちゃん……?」 傷だらけで、お飾りのない子供たち。 しかし、その表情はこのうえもなくゆっくりできるものだった。 本来、飾りのないゆっくりは大きな不快感を伴って目に映り、他のゆっくりに強い嫌悪感を抱かせる。 だがこの数日で、家族の価値観には大きな変化が起こっていた。 飾りがないのに、むしろ飾りがないからという理由でちやほやされていた二人の子供。 飾りがあっても、ついには精神に異常をきたした子供たち。 それらを目に写しているうちに、家族たちの精神にはある種の刷り込みが行われていた。 「これで三回目。 僕の言いたいことがわかるか?」 「……………………」 「お前らは、飾りしか見ていない。 あれだけ可愛がっていた子供でも、飾りがなければ赤の他人に見え、 全く見ず知らずの、しかも捕食種の子供が、飾りさえ乗っていれば可愛い子供に見える。違うか?」 「…………ちがい、ばぜん………」 「その程度なんだ。 お前らは家族思いのつもりでいるかもしれないが、結局、外見も性格も見ちゃいない。 ひたすらお飾りしか見ていない。子供の頭の上にのっかってるお飾りだけを可愛がっていたんだ。 どうだ、認めるか?」 「………………みどべばず……」 お兄さんは屈み込み、両親の前で指を振って言った。 「いいか。お前達に最後のチャンスをやろう」 「ゆ゛っ!?」 「帽子だけの絆でいいのか? 互いの本質なんて見ずに、お飾りだけを愛でる、そんないびつな家族でいいのか?」 「…………っ!!いや、でずっ………!」 「なあ、やり直さないか。 本当にお互いのことを見て、そのいいところ、悪いところを隅々まで知りあって、 互いのゆん格を認め合ったうえで思いやれる、そんなゆっくりできる家族を目指さないか」 「おにっ、いざん…………」 「ゆっぐじ、じだい…でず……… ……ゆっぐじ、でぎる、がぞぐざんに………なりだい、でずぅぅ……!!」 「いいだろう」 そう言うと、お兄さんは夫婦を水槽から取り上げて床に置いた。 「……おにいさん……?」 「一からやり直しだ。これはもういらない」 まりさとれいむ夫婦のお飾りが取り上げられる。 「ゆぅっ…………!!!」 「こんなものがあるからお互いが見えなくなるんだ。 これは預かっておく。飾りなんかに惑わされずに、本当の意味でお互いを見るんだ。できるな?」 「ゆぐっ…………やり、ばず…………!!」 「よし。さあ、家族同士で改めて挨拶しようか」 お兄さんの手で、総勢十匹の家族が円陣を組んで並べられた。 全員が飾りを失い、互いにほとんど見分けがつかない。 その中心に、れいむとまりさ夫婦、そして最初に虐められた子まりさと子れいむが向かい合っている。 おずおずと、夫婦が口を開いた。 「………おち、びちゃ……………」 子まりさと子れいむは互いに頷き合い、二人で両親に向かって叫んだ。 「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」」 それは、今までで一番の、 二人がこの世に生まれ落ちたときの初めての挨拶よりも、もっともっとゆっくりできる挨拶だった。 やり直そう。 みんなで、また一から始めよう。 おちびちゃんたちも、おとうさんもおかあさんも、今日この時、再び生まれ落ちたのだ。 涙でびしょびしょに濡れた頬を子供に押しつけながら、 まりさとれいむ夫婦はゆっくりしていってねと何度も何度も叫び続けた。 ――――――― 二週間が経ち、我が家のベランダはすっかり賑やかになっていた。 「ゆっ!ゆっ!おちびちゃん、ゆっくりおかあさんのべろさんにのってね!」 「ゆーっ!おしょらをとんでりゅみちゃ~~い!!」 「れいみゅおねーしゃんじゅるい!まりちゃも~~!!」 「ゆふふ、ゆっくりじゅんばんだよ!ゆっくりしていってね!!」 「れいみゅ、こっちぢゃよっ!ゆっくちついてきちぇにぇ!!」 「ゆっくちおにぇーしゃんについていきゅよっ!!ゆっくち、ゆっくち……ゆゆっ?こりぇ、にゃあに?」 「ゆふふ、あててみちぇね!あてられちゃら、れいみゅのもにょだよ!!」 「ゆっ!ぺーりょぺーりょしゅるよ!!………ちあわちぇ~~~!!ゆゆっ、ちょこれーちょしゃんだよっ!!」 「よきゅわきゃっちゃね!!ゆっくちたべちぇいっちぇね!!」 「おにぇーしゃん、ありがちょ~~!!ぺーりょ、ぺーりょ………あみゃあみゃちあわちぇ~~~!! ゆっ、おにぇーしゃん、いっちょにぺーりょぺーりょちようにぇっ♪」 「ゆゆっ!?ありがちょうにぇ!!いっちょにぺーりょぺーりょたいみゅ、はじまりゅよっ☆」 「「「「ゆっくりしていってね~~♪」」」」 例の家族は、飾りがないまま、しかし仲むつまじく団欒していた。 初めのころは飾りがないことでお互いに認識できなかったが、 必死に相手の表情や声、外見を注視することで、少しずつ少しずつ個体識別ができるようになっていった。 今では、十匹の家族はお互い完璧に識別できている。 当たり前だ、識別できないほうがおかしい。 「見分けがつかない」という思い込みを「見分けがつく」という思い込みにすり替えればいいだけの話だ。 見分けがつくと思えば、見分けはつくに決まっている。識別しようという意思、努力が致命的に欠けていたということか。 「ゆーっ、れいむのびせいによいしれていってね!!ゆ~ゆ~♪」 「れいみゅおばしゃんのおうちゃはゆっくちしちぇるにぇ!!」 「ゆっ!ゆっ!まりしゃのだんしゅをみちぇいっちぇにぇ~~」 「おばしゃんもまりしゃもゆっくちしちぇりゅねっ!!」 「じゃおーん!」 「まりしゃとおいきゃけっきょちようにぇっ!!ゆっくち!ゆっくち!」 「じゃおーん!!じゃおーん!!」 「みぇーりんははやしゅぎるよぉ!!でみょ、きょうこちょはまけにゃいよっ!!ゆっくち!!ゆっくちぃぃ!!」 ベランダでゆっくりしているのは家族だけではない。 世話係のさくやの他、帽子すり替え実験のために買ってきたもろもろのゆっくりも仲間に入っている。 野良だったのを拾ってきた飾りのないれいむ、ペットショップで買ってきた子めーりんはすっかり家族と打ち解けていた。 同じくすり替えるために集めてきた当て馬達も、厄介者ではありながら夫婦たちの手で分け隔てなく世話を受けている。 みょん種の赤ゆっくりは子めーりんと同じく一家の団欒に参加できているが、 そもそも捕食種である赤れみりゃや知能に欠陥がある未熟児とレイパーはなかなか難しいようだ。 それでも文句ひとつ言わず、家族たちはかいがいしく世話をしていた。 赤れみりゃなどは、このごろではたどたどしくも家族の輪に入っていきたそうな表情さえ見せている。 初めは家族だけで暮らさせ、互いの識別ができるようになってから、 ゆっくりの数を増やして難度を上げようという意図で余所者のゆっくりを参加させたのだが、 一旦飾りなしの識別ができるようになればあとは早かった。 余所者を虐めたり見下すようなこともまったくない。 自分たちが飾りを失って底辺の存在に堕ちたこと、 そもそも余所者を虐めたばかりにこんなことになってしまったこと、 個体識別のために相手の性格をよく吟味するようになった結果、根拠なく見下すことがなくなったこと。 要因はいろいろ思いつくが、他種への差別心は、少なくとも表に出さなくなったようだ。 ゆっくりがあれだけ執着する頭の飾りだが、こうなってみればないほうがずっといいんじゃないか。 今、僕の目の前では、ゆっくりたちがこのうえもなくゆっくりした笑顔で笑いさざめいている。 飾りを失い、傷だらけの家族たち。 希少種、捕食種、通常の言葉を喋れないめーりんやみょん。 どれも通常の群れにいれば真っ先に差別、虐めの対象にされるはみ出し者だが、 ここではなんの差別もなく、互いに認め合い、慈しみあっている。 ちょっとしたユートピアだ。 下拵えには時間をかけた。 初めに家族に苛められた子まりさと子れいむには、 さんざんに家族を見下し、貶めてやるようにそそのかした。 本人たちも充分に家族を恨んでいたので喜んでやってくれたが、 毎日寝る前には二匹を家に引き入れ、釘を刺した。 「お前達だって前はそうだった、飾りのないゆっくりを虐めていたはずだ」 「お母さんたちも反省すればお前達と同じようにゆっくりできる」と、毎日繰り返し念を押した。 ゆっくりとしては善良な個体であるはずという僕の試算は当たり、 飾りを捨てた家族を、二匹は温かく迎え入れた。 一日ごとに子ゆっくりたちの帽子を奪い、家に招き入れてあまあまを振る舞い、 初めに虐待された二匹からはうってかわった歓迎をもって当たらせ、 飾りがないとゆっくりしている、飾りがないからゆっくりできると教え込んだ。 最後に両親に種明かしをし、家族全員から飾りを取り上げたとき、 すでに飾りに頼らない価値観の下地はできていた。 今、家族に差別心はなく、飾りのないゆっくりこそゆっくりできると信じ込んでいる。 屈託のない団欒を楽しむ家族を眺め、僕は確信した。 頃合いだ。 「ゆっ!おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!ゆっくち!!ゆっくち!!」」」 ベランダに出ると、家族たちが僕に笑顔と挨拶を向けてくる。 どの顔も非常にゆっくりした幸福感に満ち溢れていた。 「やあ、みんなゆっくりしているな」 「ゆーんっ!!おにいさんのおかげだよ!!」 「おかざりさんがないとゆっくりできるよっ!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 「おにいちゃんありがちょー!!」 「そうなのかい?」 「ゆんっ!まりさ、いままではおかざりさんしかみてなかったよ。 でも、おかざりがないと、おちびちゃんやれいむのことをよくみるようになったよ。 みればみるほど、みんなちがうんだよ!おかおも、おこえも、うごきかただって、みんなちがうし、 ちがうけど、みんなみんなかわいいんだよ!!いままできづかなかった、いろんなかわいいところがあったよっ!! きずだらけだけど、まりさのかぞくさんはいままでよりずっとずっとかわいいんだよぉ!!」 「ゆゆぅ~~ん、まりさぁぁ~~♪れいむ、てれちゃうよっ///」 「「「おちょーしゃんゆっくち!ゆっくちぃ!!」」」 「そうか。うん、素晴らしい。みんな本当にゆっくりしているな」 「ゆふ~ん♪」 僕は頷き、ベランダのゆっくり達に声をかけた。 「みんな、今日はまりさたちの家族だけに大事な話があるんだ。 悪いけど、まりさたちだけこっちに来てくれ」 「ゆんっ?ゆっくりりかいしたよ!!」 十匹のまりさ、れいむ家族を、ガラス戸を開けて屋内に迎え入れる。 「ゆっくり!ゆっくり!」「ゆっくち!ゆっくち!」 楽しげに跳ねる家族たちを、僕は奥まった和室に案内した。 和室は僕の寝室であり、隅にたたまれた布団とテレビの他は殺風景なものだ。 家族を並ばせると、僕は家族たちに話しはじめた。 「改めて、みんな。本当にゆっくりしているね」 「ゆふんっ☆てれちゃうよ!」 「お飾りなんかなくても、ちゃんとお互いがわかる。お互いのことをよく見てる。 弱い者苛めなんかするゲスはここには一人もいない。 今度こそ僕は確信して言おう、みんな、本当にゆっくりしたゆっくりだ!」 「ゆゆぅぅぅ~~~~んっ!!まりさ、かんむりょうっ!!だよぉぉ~~~!!」 「おにいさんのおかげだよぉぉ!!ありがとう、おにいさんっ!! おちびちゃんたち、みんなでゆっくりおにいさんにおれいをいおうね!!」 「「「「おにいしゃん、ゆっくちありがちょ~~~~!!」」」」 「うん、うん。僕も本当にうれしいよ。だから…………」 間を置き、笑顔で家族たちを見渡してから僕は言い渡した。 「今度こそ約束を果たしたいと思う。君たちを、森に帰してあげよう!!」 「「「「「「「「「「ゆっ?」」」」」」」」」」 家族の笑顔が止まった。 一瞬の静寂の後、家族の表情はみるみるうちに青ざめていった。 ――――――― 「おでがいじばず!!おにいざん!!ごごにおいでぐだざい!!おいださないでぐだざいいぃ!!」 「もりにがえりだぐだいぃぃ!!ごごがいいよぉ!!ごごじゃないどゆっぐじでぎだいよおおぉぉ!!」 「やぢゃ!!やぢゃ!!いじべられるのやぢゃあああぁぁ!!ゆっぐじじだいいいぃ!!!」 「ぎょわいぎょわいぎょわいいぃぃ!!ゆっぐじ!!ゆっぐじざぜでええぇぇ!!!」 全身から恐怖の汗をしたたらせ、家族一同はお兄さんに懇願していた。 ここに住まわせて、森に帰さないで。 しかし、お兄さんは不思議そうに首をかしげて言った。 「あっれぇ~~~?どうしたんだい、みんな?ようやく元の家に帰れるんじゃないか。もっと喜んでいいんだぞ!」 「やだ!!やだああぁぁ!!もりにがえりだぐない!!ゆっぐじでぎない!!ごごにおいでええぇ!!!」 「おいおい、何を言ってるんだ。もともとあそこでゆっくりしてたんだろ?遠慮しなくていいんだぞ、さあ出発だ!」 「やぢゃやぢゃやぢゃやぢゃやぢゃあああああぁぁ!!!ごご!!ごごぎゃいい!!ごごでゆっぐぢずりゅううぅぅぅ!!!」 飾りを失い、全身を傷だらけにし、おめめやまむまむを失った子まで混じっているこの一家が、 今森に帰されればどうなるかは火を見るより明らかだった。 すぐに他のゆっくりに見咎められ、たちまちのうちにいじめ殺されてしまうだろう。 この家を一歩でも出ることは、自分たちにとって即、死を意味していた。 それがわかっていた一家は、ここを先途とお兄さんにすがりついた。 「ごごでゆっぐりじだいでず!!もりにがえるど、ぼがのゆっぐじにいじべらればず!! ばりざだぢはごごじゃだいどゆっぐじでぎばぜん!!おにいざん!!おにいざああああんおでがいじばずうううう!!!」 「あ、そうなのか。しまった、そうだよな、虐められちゃうよな。それじゃゆっくりできないなあ」 「ゆっ!!そうだよっ!!だからここでゆっくりさせてねっ!!」 「いや、約束だから。約束は守らなきゃいけないもんな、森に帰すよ。しょうがないよね!」 「いいよおおぉぉぉ!!ばぼらだぐでいいいいぃぃぃ!!!ごごにおいでえええぇぇ!!!」 「やだよ、だってここ、僕の家だもん。 お前らがいるから、僕ベランダ使えないんだよね。洗濯物とか干したいし」 「ゆ゛っ!!じゃあぼがのおべやざんでいいでず!!ごのおうぢざんならどごでぼいいでず!!ぼんぐいいばぜええん!!!」 「あのね、僕が文句言ってるの。この家、狭いの。お前らに居座られてると迷惑なの。出てってくれない?」 「ごごがらおいだざれだらばりざだぢじんじゃうよおおおおぉぉぉ!!!」 「だから?知らないよ、そんなこと。自分でなんとかしてね!」 必死にお兄さんの足にすがりつき、涙と涎を撒き散らして懇願するまりさ。 しかしお兄さんは一向に首を縦に振ろうとはせず、それどころか楽しんでさえいるようだった。 夫の無様な姿を見ながら、それまでお兄さんに抱いていた感情が急転していくのをれいむは感じていた。 「………おにい、ざんが……………」 「ん?」 「おにいざんがでいぶだぢをごごにづれでぎだんでじょおおおおおお!!?」 れいむは叫んでいた。 全身をぶるぶる震わせ、怒りをあらわに声をはりあげる。 「おにいざんがっ!!でいぶだぢをもりがらざらっでぎでっ!! おぢびぢゃんだぢをいじべでっ!!ごんながらだにじだんでじょおおおおぉぉ!!?」 「いやまあ、いろいろ制裁したけど。生活に支障が出るほどの傷は負わせてないよ。 この子まりさのまむまむと子れいむのおめめは別だけど、これやったのはき・み・た・ち☆」 「ゆ゛ぐぅっ…………!!」 「おぼうちっ!!おぼうちしゃんがえじぢぇえええ!!」 「ゆっ!!れいみゅもっ!!れいみゅのおりぼんしゃんがえじでにぇ!!」 「ゆゆっ!!そうだよっ!!おかざりさんがあればあんっしんっ!だよっ!!!」 子供たちの声に笑みを取り戻し、まりさはお兄さんに向きなおって言った。 「ゆっ!!まりさたち、もりにかえってもいいよっ!! でもおかざりさんかえしてねっ!!あまあまもいらないよ!!おかざりさんがあればすぐにでていくよっ!!」 「あー、お飾りかあ………ちょっと待ってね。押し入れにしまってあるから」 お兄さんが部屋の壁をずらすと、中に小さなお部屋があり、 その中に、前にみんなで入っていた透明な箱が置いてあった。 お兄さんがそれを取り出して家族たちの前に置く。 見ると、箱の中にみんなのお飾りが山になって入っていた。 家族が狂喜乱舞する。 「ゆぅぅぅ!!あったよ!!まりさのおぼうしあったよおおぉぉ!!」 「よかったぁ!!よかったよおおぉぉ!!れいむのおりぼんさんよかったああぁあ!!」 「まりちゃのおぼうちっ!!おぼうちぃ!!」 「ゆーっ!!ゆっくち!!おりぼんしゃんゆっくちちていってにぇ!!ゆっくちいぃぃ!!」 飛び跳ねながら喜び合っているうちに、光がお飾りの山の上に落ちた。 「ゆゆっ?」 「…………どぼじでおりぼんざんぼえでるのおおおぉぉぉっ!!!?」 お兄さんが落としたものは火だった。 小さな棒の先についていた火は、たちまちのうちにお飾りの山に燃え移り、赤い炎をめらめらと躍らせている。 まりさたちは恐慌をきたして叫び狂った。 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛だべええだべえええええぼえぢゃうおぼうじじゃんぼえぢゃああああ!!!」 「だんでええええ!!?だんでごんだごどずるのおおおおおおおおおあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ゆんやあああああーーーーーーっ!!!ゆびゃああああああーーーーーーーっ!!!」 「だじゅげぢぇ!!だじゅげぢぇ!!おぼうじじゃんだじゅげぢぇええええええっ!!!」 「おにいじゃーーーーーっ!!おにいじゃああああーーーーーーーーっおにいいいいいい」 いくら体当たりしても箱はびくともせず、お兄さんに体当たりしても同じくびくともせずににやにや笑っているばかりである。 ひとときの狂乱を経て、ついにすべてのお飾りは黒い消し炭と化した。 「ゆ゛あ゛……あ゛……あ゛あ゛あ゛…………おぼうぢ………ばりじゃ、の……」 「どぼじで…………どぼじで………どぼぢで…………どぼじ……で」 水槽の壁を力なくぺーろぺーろしながら涙に暮れる家族たち。 その背中に、お兄さんが明るい声をかけた。 「いやー、お飾り燃えちゃったね。でもいいよなっ、お前達はもうお飾りなくてもわかるもんな!」 「おがざりざんがだいどいじべられるでじょおおおおおおおお!!!!?」 「でいぶだぢじんじゃうんだよおおおおぉぉぉぉ!!ごろざれぢゃうんだよおおおおおお!!?」 「うん、そうだね。だから?」 「………っぐ…………ゆっぐじでぎだいおにいざんはゆっぐじじねええええええ!!!」 涙を振り絞り、れいむがお兄さんの足をめがけて突進した。 渾身の突進を受けてもお兄さんは動じず、冷やかにれいむを見下ろしているだけだ。 ぎりぎりと歯軋りし、れいむは慟哭しながら体当たりを繰り返した。 まりさはただただ泣きじゃくりながらその光景を見つめ、子供たちはひたすら燃えカスを囲んで泣き喚いていた。 その時、お兄さんが何かを床に落とした。 「ゆっ?」 涙に濡れた目で、まりさがそれを視界に捉える。 それは、赤いカチューシャだった。 「いじめ殺されるだって?」 足元にまとわりつくれいむを、足でごろんとカチューシャの方に転がしながらお兄さんは言った。 「ちょっと、一緒に面白いビデオを見ないか」 『きょーろきょーろしゅるわっ!きょーろ、きょーろ!』 『はは、落ちないように気をつけろよ』 『おにーしゃんのおちぇちぇはとっちぇもときゃいはにぇ!』 『ふーかふーか!ふーかふーか! このべっどさんとってもとかいはよ!おにいさん、ありがとう!』 『どういたしまして。銀バッジを取ったごほうびだよ』 『ゆんっ!おにいさんのしどうのおかげよっ! これからはもっともっとおにいさんをとかいはにゆっくりさせるわっ!!』 『いちにっ!いちにっ!』 『何してるんだ、ありす』 『ゆっ!だいえっとさんよ!このごろたいじゅうがゆっくりしすぎてるから……』 『ははは、そんなこと気にしてるのか。可愛いやつだな』 『ゆっ、もう!しらないっ!!』 『ゆわあああぁぁ!!とかいは!!とかいはだわあぁ!!』 『そんなにはしゃぐなよ。迷子にならないようにな』 『ゆーんっ!こんなゆっくりできるとかいはなばかんすさんにつれてきてくれてありがとう、おにいさんっ!!』 『ついに金バッジを取れたからな。これからはどんどんいろんなところに遊びに行こうな。 そうだ、約束だったな、今度お婿さんを連れてくるよ。おちびちゃんも作ったらいい』 『とかいは!!とかいはだわぁぁぁ!!おにいさんのかいゆっくりで、ありす、しあわせよおおぉぉ!!』 お兄さんが何やら細工すると、部屋の隅にあった黒い箱の中に映像が流れ始めた。 この家で過ごしているうちに知った、あれはテレビさんというものだ。 そこに流れているのは、一人のゆっくりありすの姿だった。 ビデオの中に姿は映っていないが、 個体の特徴に鋭敏になった今の家族には、ありすに話しかける声がお兄さんのものであることはすぐにわかった。 お兄さんとありすの、幸福そうな生活がながながと流された。 そのありすは気立てがよく、身だしなみも整い、どこから見てもゆっくりできる美ゆっくりだった。 思わず自分の妻と比べそうになり、まりさはつい頭を振った。 「この子は僕の飼いゆっくりだった。とても可愛い、聞き分けのいい子だった」 お兄さんが説明を加えた。 「赤ゆっくりの頃に、捨てられて死にかけていたのを気まぐれで拾ってきたんだ。 ゆっくり飼いの勝手がわからない僕を、むしろありすの方がサポートしてくれた。 至らないところの多い僕に文句を言わず、 助けてもらった感謝を繰り返し、僕をゆっくりさせるために尽くしてくれた。 ついには金バッジまで取得するほど優秀な個体だった。宝クジに当たるくらいの拾い物だったんだ。 赤ゆっくりの頃に捨てられた経験が、いい方向に作用したのかもしれない」 「ゆうぅぅ……………」 流れる映像を見ても、「ゆっくりしてるね!」などとは漏らせなかった。 ありすがすでに鬼籍に入っていることは、すぐそこに転がっているカチューシャを見れば想像できた。 最初から悲劇として語られているこのエピソードがどこに行くのか、にわかには読めなかった。 「ありすの愛情に僕も報いたかった。 ありす自身の安全を考えてバッジ試験も受けさせた。辛い勉強も不満を言わずにやってくれたよ。 ただひとつ、ありすが一度だけ漏らしたわがままは、子供が欲しいということだった。 子供を作ったゆっくりはリスクを抱えている。ゆっくりの生態を調べるうちにそれを知った僕は、 金バッジを取るまでおあずけだと言った」 「ゆぅ………おちびちゃんはゆっくりできるのに……」 まりさが思わず口をはさんだが、お兄さんは全く無視して先を続けた。 家族に話しているというより、ただ独白しているようだった。 「いまでは後悔してる。すごく後悔している。 ありすの望みをすぐに叶えてやらなかったことを。 僕に言われたありすは、それまでの何倍も勉強に身を入れ、とうとう金バッジを取った。 僕は約束通り、つがいを与えて子供を作らせてあげるつもりだったが、 赤ゆっくりができればそうそう外出もできなくなる。 その前に、ご褒美でキャンプに連れていってあげることにしたんだ。 そこで、ありすはゆっくりに殺された」 「ゆううぅ!?ゆっくりごろしはゆっくりできないよ!!」 思わず叫んだれいむに、お兄さんはすぐに屈みこんで答えた。 「そうだよな。ゆっくりできないよな! こんなゆっくりできるありすを殺すなんてひどいことだよな」 「ゆーっ!ゆっくりしてないよ!ありすがかわいそうだよ!!」 「もうすぐおちびちゃんがつくれたのにぃぃ!!」 「ありちゅおにぇーしゃん、きょろしゃにゃいでええぇ!!」 「ありすはひどい殺され方だった。 全身を枝でぷーすぷーすされて、目を潰されて髪もむしられて、最後には生きたまま食われて死んだんだ」 「ゆううぅぅぅ!!きょわいよおおぉぉ!!」 「ひどいよおおぉぉ!!ゆっくりできないよおおぉぉ!!」 「こんなにゆっくりしたありすなのにいぃぃ!!」 現在の状況も忘れて、つい感情にかられて叫ぶ家族たち。 お兄さんは何度も頷いて続けた。 「そんなひどいことをするゆっくりはゆっくりできないよな!」 「ゆっくりできないよ!!」 「ありすが死んだのに、そいつらは今ものんびりゆっくりしてるんだ。許せないよな!」 「ゆるせないよっ!!ゆっくりごろしはせいっさいっしなきゃいけないよ!!」 「苦しんだありすのためにも、たっぷり苦しめて、ゆっくりできない目に遭わせなきゃ割に合わないよなあ!」 「ゆーっ!!かたきうちだよおおぉ!!そんなひどいゆっくりはゆっくりしちゃいけないんだよぉ!!」 「そうか、そうだよな!そう言ってくれるか!!お兄さんは嬉しいよ、みんな!」 「「「「ゆーっ!!」」」」 「まさか、まさか……ありすを殺したやつらが、自分から喜んで罰を受けてくれるなんて!」 「ゆぇっ?」 足元のカチューシャを拾い上げて見つめながら、お兄さんは淡々とした口調に戻って続けた。 「森のそばの川でキャンプをしたとき、ありすは迷子になった。 その時に、カチューシャを落としてしまったんだ。 飾りをなくしてしまったありすを、そこに住んでいたゆっくりの一家が見つけて、 「ゆっくりできないゆっくり」呼ばわりして、なぶり殺しにした」 そこまで言って言葉を切り、お兄さんは笑顔を浮かべて家族をゆっくりと見渡した。 家族は、小刻みに震えはじめた。 「僕がどうして、お前たちを家に連れてきたんだと思う? 野良ゆっくりの家族なんかわざわざ攫ってきたってなんの得にもならない。 見ず知らずのゆっくりを、飾りがなくてもお互いを識別できる、ゆっくりした家族にする。 そんな七面倒臭いことを、純粋な善意でやると思うか? お前らみたいな薄汚いゴミクズを、なんで僕がわざわざゆっくりさせてやらなきゃならないんだ?」 「………………おに、い、さ………ん……」 「お前たちには知ってもらわなければならなかった。 お飾りがなくても、お前らが殺したありすは素晴らしいゆっくりだったということを。 お前らは、罪のない、思いやりの深いゆっくりできるゆっくりを、 ただお飾りがないという、くだらない些細な理由で虐めた。 ゆっくりに満ちた未来が待ち受けていたゆっくりを、喜色満面でなぶり殺しにした。 『せいっさいっ』なんかじゃない、同族殺しのリンチ、暴力だった。 お前らが恃みとする正当性、「お飾りがなかった」という理由は、なんの意味ももたないこじつけだ。 それをお前たちには知ってもらわなければならなかった」 「ゆ゛………ゆ゛………ゆる……ゆるじ………」 「そうでなければ、僕が何をしても、「まりさたちなんにもわるいことしてないのにいいぃ!!」とお前たちは叫ぶだろう。 僕は、ゆっくりできる善良なお前たちにいわれのない暴力を加える悪漢ということになり、 お前たちは誇りと家族愛で自分たちを慰めながら死んでいくだろう。 そんなことは許さない。絶対に許さない。 お前たちが僕の愛する家族にしたことを、僕はお前たちにやり返してやるんだ。 お前達が叫ぶのは毅然たる抗議でも非難でもなく、みじめったらしい謝罪と懇願、命乞いでなければならない」 「あ゛……あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛………………!」 「いやあ、でもよかった!自分から罰を受けてくれるなんて! ありすをなぶり殺しにするような奴はゆっくりしちゃいけない、苦しめなければいけない。 お前達自身の口からそう言ってもらえてよかったよ! もし抵抗されたら面倒だと思っていたんだ。いや、スムーズに進んでよかったよかった」 「ゆ゛るじでぐだざいいいいぃぃぃ!!!」 まりさは床に頭を打ちつけて叫んでいた。 何度も何度も頭を打ち、喉を震わせて叫ぶ。 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!おにいざんのありずをいじべでごべんだざい!! おがざりがだいだげでいじべで、ごろじでごべんだざい!! ぼんどうにぼうじわげありばぜんでじだ!!ばりざだぢがっ、ゆっぐりじでばぜんでじだ!!」 「ああ、そうだね」 れいむもまりさに続いて頭を下げた。 「じらだがっだんでず!!ありずが、あんだにゆっぐじじでだだんで!!あんだにやざじいびゆっぐじだっだだんで!! おがざりがだいがら、わがらだがっだんでずううぅ!! ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆっぐじじでだいでいぶでごべんだざい!!」 「本当だねえ」 親に倣い、子供たちも詫びはじめた。 「ゆびぇええええん!!ぎょべんなぢゃいっ!!ぎょべんなぢゃいいい!!」 「ばりじゃがわりゅがっだでじゅうぅぅ!!ゆるじぢぇえええ!!」 「ぼうじばじぇん!!ぼうわりゅいごどじばじぇえん!!ゆっぐぢぃぃぃ!!」 「うんうん、もう二度とやっちゃだめだぞ」 お兄さんは腕を組んで笑っていた。 まりさは顔を上げ、おずおずと頼んだ。 「お、おに、いざん……ゆぐじで、ぐだざい…………?」 「え、駄目だよ。絶対に許さないよ。何言ってるのかな?」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ごべんだざあああいいいいい!!!」 「うんうん、さあ、罰を受けようね! みんなで森に行って、森のゆっくりたちに虐めてもらおうな!それが罰だよ、ゆっくり理解してね!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やべで!!おでがい!!でいぶだぢはどうなっでぼっ!! おぢびぢゃ!!おぢびぢゃんだげはあぁぁ!!」 「またそれかい?おちびちゃんだけは、か」 「ばいっ!!ばりざどでいぶがいじべらればず!!ごろざればずうぅ!! おぢびぢゃ、だげはっ!!おでがっ!!ごごでぐらざぜでぐだざいいいいぃぃ!!」 「ふざけんなよ、コラ」 低い声で返答し、お兄さんはまりさの頬を蹴り抜いた。 「あぶぎゅうっ!!?」 「ば!!ばりざああぁあ!?」 「ん、なに注文しちゃってんの?罰を受ける立場なんだろ? 一番大事なものだけは見逃してくださいって、なにそれ?お前たちはありすの何を見逃したの?ねえ?」 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆぐじでぐだざいいい!!」 「お前たちがありすを許していれば、僕も考えたんだけどねえ」 「ばんぜいじばじだっ!!でいぶだぢはげずでじだっ!!ぼうにどどじばぜん!! ごごろを、ごごろをいれがえっ!!おぢびぢゃんだぢはっ!!」 「うんうん、本当に悪いことをしちゃったねえ。だから罰を受けようね!」 「おぢびぢゃだげはっ!!おぢびぢゃっ!!」 「しつこいんだよ!」 「ゆぎげべぇ!?」 れいむの頭が勢いよく踏みつけられる。 衝撃でうんうんが漏れてしまうが、意に介する余裕はなかった。 「反省しましたとか、心を入れ替えるとかさ、だからなんなの? 本当に、ほんっと~~~~に悪いことをしたと思って反省してるんならさ、 どんな罰を与えられても喜んで受けるのが筋だろ?やったことの責任をとろう、ってまず考えるのが本当だろ? それが何?反省したから罰は勘弁してくれって?責任をとるのは嫌ですって? それって反省したって言うの?ねえ?ねえねえねえねえ」 「あぎっ!!いびぎぃ!!ゆぎひいいいぃいいびいいいい!!」 「ごべんだざいっ!!わるがっだでずっ!!びどいごどいっでるのはわがっでばずっ!! でぼ、でぼ、ばりざの、おぢびぢゃんは、どっでぼ……ゆっぐじじででっ!!」 「僕のありすもとってもゆっくりしていたよ。 そうかなるほど、ちょうどいいや、とってもゆっくりしているおちびちゃんたちなら僕のありすと見合うね!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛やべでえええええぇぇ!!!」 「え、本気で言ってんの? 僕の一番大事なものを壊しといて、お前たちの一番大事なものは見逃してって頼んでるのお前ら? そんなことして僕になんか見返りあんの?」 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!」 お兄さんの言うとおりだということはわかった。 何から何までお兄さんは正しく、お兄さんの言う罰をみんなで受ければ筋が通ることもわかった。 ここで逃げるのはゆっくりできない。ここで逃げるのは卑怯者だ。 でも、でも、それでも、それだけは。 おちびちゃん。 まりさたちの、ゆっくりした、おちびちゃんたちだけは。 「ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!おでがいじばず!!ぼんどうにおでがいじばず!!ゆぐじでぐだざいいいぃ!!!」 「へえ……それがお前らのルールなんだ」 言いながら、お兄さんはむしるように子れいむの一人を取り上げた。 「おしょらをとんでりゅみちゃいぃ!?」 「ゆああぁぁ!!おぢびぢゃ、おぢびぢゃあぁ!!」 「たとえばこんなことをしても許されるんだよな!!」 「ゆっびゃあああぁぁぁぁっ!!!?」 ガリガリガリガリ お兄さんが子れいむの顔面を壁に押し付けて擦り付けた。 「ごぎょおおおおおぉぉぉびびゃああああぁぁいぢゃばばばばばぎゅううううーーーっ」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やべでやべでやべでやべでええええぇぇ!!!」 「こんなことをしてもっ!!」 勢いよく振りぬき、子れいむの顔面を家族に見せ付ける。 子れいむの顔の右半分は痛々しい擦過傷にまみれ、口の右側が裂けて砕けた歯がこぼれ出し、 右の瞼がけずり落とされて眼球が消失していた。 「ゆ゛………いぢゃ………いぢゃ……あ゛………………びぎゅい゛い゛ぃぃ…………」 「おぢびぢゃーーーーっ!!おぢびぢゃあああああぁぁ!!」 「お前らは許してくれるんだよな! お兄さん悪いことしちゃったよ!かわいいおちびちゃん虐めちゃったよ! でも反省したからね!許してね!ゆっくり許してくれるよね!!ねえ!!」 「………!!………………!!!」 「ゆっくり許してもらったから次にいこうね!次も許してくれるよな!!反省するからさ!!」 「やべでええええぇぇぇおでがいいいいいぃぃぃ!!!」 次の子供を手に取ろうとしたお兄さんを、まりさが必死に制する。 肩で息をしながらお兄さんは手を止め、まりさに向き直ってつぶやくように言った。 「……選べ。 森に行って罰を受けるか、ここで僕の暴力をすべて許すか」 「…………………………!!!!」 まりさはぶるぶる震えて歯を食いしばり、大量の涙を流しながら、やがてがっくりとうなだれた。 (後編2へ)
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「 」はゆっくり、『 』は人間のセリフです。 独自設定があります。 虐待描写薄め 帰宅すると、飼いゆのまりさとれいむが俺を待ち構えていた。 「おかえりなさい!おにいさん!」 「おかえりなさいだよっ!!」 俺は苦笑いしながら答えた。 『ああ……ただいま』 「きょうはね、とってもゆっくりできたよ!!でもおにいさんにおねがいがあるよ!」 「そうだよ!おにいさん!まりさたちにごはんさんをつくってね!!」 「ちがうでしょおおお!!」 この糞饅頭どもは何を言っているんだ? 『お前ら、何言ってるんだよ?』 「だってまりさがへんなこというんだよ!」 『いや、別に変なことは言ってないだろ。腹でも減ってるんだろう』 「ゆっ!れいむはそんなこといいたいんじゃないんだよ!」 『じゃあ何だよ』 「あのね、まりさたちはこれからもずっとここにいるから、ごはんさんをつくってほしいんだよ!」 『え?なんでだよ?お前らは勝手に住み着いただけだろう』 「ゆ、ゆぅ・・・」 1カ月程前に勝手に家の中にやってきたこのれいまり夫婦は、おうちせんげんもすることなく、初めから飼いゆっくりだったかのように俺に接してきた。俺もちょうどゆっくりを飼おうとしていたところ、ちょうど良かったのでそのまま飼うことにして現在に至る。 ちなみに、このまりさは”だよまりさ”であり、初めて見たときは少し驚いた。大体見かけるまりさは”だぜまりさ”であり、まあまあ希少である。 「ゆ、それはそうだけどぉ・・・」 『まぁ、また今度作ってやるよ。それより今日はちょっと疲れてるんで寝させてくれ』 「わかったよ。おやすみなさい!」 『おやすみ』 そうして1日が平和に終わ「ゆっくりまってね!」 『どうしたれいむ。まだ何かあるのか。飯なら明日な』 「ちがうよっ!れいむは、おちびちゃんがほしいっていおうとしたんだよっ!!」 『は?』 「だからっ!れいむのおちびちゃんをきょかしてねっ!!」 『は?』 「だからっ!れいむのおちびちゃんをきょかしてねっ!!」 『聞こえなかったわけじゃない。意味がわかんねぇんだよ。おちびなんて無理に決まってんだろ』 「おちびちゃんはゆっくりしてるんだよ!だからできるよ!ゆっくりすればなんでもできるんだよっ!!」 『うるせぇ黙れ。とにかく俺はもう寝るぞ。話は明日にしてくれ』 「どおしてそんなこというのお! おちびちゃんはゆっくりできるんだあ!」 『俺は子ゆっくりまで飼うつもりはないし、そもそもお前じゃ育てられねーよ』 「れいむならできるよ!れいむはゆっくりしてるからねっ!れいむ、かんぺきすぎてごめんねー!」 『あっそ。どうせ家庭崩壊のテンプレパターンだろ。先は見えてんだよ、バーカ』 「ゆううううううううう!! まりさもだまってないで、なんかいえええ!」 脇の方で大人しくしていたまりさがビクッとした。 「ゆ、ゆぅ・・・・」 「ゆ?」 「ゆ・・・ゆん・・・」 「ゆん? ゆんってなんだああ!」 「ゆっ、ゆぅ・・・」 『大丈夫かこいつ』 「まりさは、れいむのことすきなんだよっ!」 『はいはい。好き好きだから早く寝ようぜ』 「れいむをばかにするなあ!」 「ゆ、ゆう・・・」 『お前らうるさい。もういい加減にしろ』 俺は居間から出て寝室に向かった。後ろから2匹の鳴き声が聞こえるが無視することにした。 次の日の朝、俺が起きるといつものようにまりさとれいむが待っていた。 「きょうこそはおちびちゃんつくりたいんだよ!」とれいむ。 「まりさはぽんぽんぺーこぺーこだよ!」とまりさ。 『はいはい。今日はお前らの好きなもん食わせてやるから待ってろ』 俺はそう言って朝食の準備を始めた。 まりさとれいむは俺の後をついてまわり、ご飯ができたころには定位置に付いていた。れいむがおちびちゃんおちびちゃんとうるさいが、取りあえず無視。 「いただきます! ゆ、ゆゆゆぅ〜♪」 ご機嫌にご飯を食べるまりさに対し、れいむはなかなか食べようとしなかった。 『どうしたれいむ。まだおちびが欲しいとか言うのか?食いたかなければ、まりさにやるぞ』 「ゆ、れいむもおなかすいてるんだけど・・・」 『じゃあさっさと食えよ』 「ゆ、ゆぅ・・・」 『何だよ』 「お、おちびちゃんが、おちびちゃんがほしいんだよ」 『ハア…』 俺はため息をつきながら、れいむを睨みつけた。 れいむはイライラした様子で、目を逸らす。 そろそろ賞味期限か。あんま保たなかったな。 俺はそう思い、れいむの目の前にあるご飯をまりさに食わせた。 れいむの表情が変わる。 れいむの体が激しく震えだしたが、俺とまりさは気にせず食事を続けた。 そして、最後の一口を食べ終わる頃、れいむの口から言葉が出てきた。 「どぼじでれいぶのごはんさんたべるのおおお!!」 れいむは泣き叫び、俺の方に突進してきた。 俺はそれをかわすと、れいむは壁に激突して転がった。 「おぢびぢゃんがほしいんだあああ! だばっでないで、ばりざもなんがいええええ!!」 昨日と同じ展開だな。寝るにも早すぎるな 『まりさ、こいつのことどう思うよ。』 すると、まりさはこっちを見て、こう言い放った。 「こんなやつしんじゃえばいいとおもうよっ!」 「ゆゆっ!?」 マジか。てっきりれいむの味方でもすると思ったんだが。 れいむは歯軋りをして、まりさを睨んだ。 『ほう』 「ごのぐぞばりざ!はなじがぢがうじゃないかあああ!! おばえ、きのうがらおがじいとおぼったら、うらぎったなあああ!」 「まりさはただゆっくりしたいだけだよ!ゆっくりできないげすは、とっととしんでね!いますぐでいいよ!」 「ゆううううううううう!! このくそばりさめええ!おばえみたいなのがいるから、ゆっくりできないんだあ!」 「ゆっ!れいむも、まりさも、にんげんさんのゆっくりだからだいじょうぶっていわれたんだよ!でも、れいむがゆっくりできないげすだから、まりさはにげるよ!」 「ゆぎゃあああ!もうがまんならないんだよっ!!」 2匹は取っ組み合いを始めた。 俺はそれを見ながら飯の残りを食っていたが、2匹の争いを見るのも飽きたので、ゆっくり回収袋を取り出した。 『お前ら、ちょっとこっち来い』 俺の言葉を聞いた2匹は喧嘩をやめ、こちらを見た。 「なにをするつもりだあ!」 『なあに、お前を処分するだけだ。安心しろ。苦しまないように殺してやる』 「ほんきでいってるの?ばかなの?」 『ああ。本気だ。お前は俺に殺されるってことだ』 俺はそう言って、れいむに近づく。 「ゆんやああっ!」 れいむは必死に逃げようとしたが、すぐに回収袋の中に放り込まれてしまう。 『これでよし。あとはまりさだが・・・』 まりさの方を見ると、なぜか暴れていた。見えない敵と戦っているのだろうか。 『おい、まりさ。こっちに来てくれ』 俺はまりさに声をかけるが、一向に来る気配がない。 仕方ないな。 俺はまりさに近づき、話しかける。 『まりさ、本当にこいつ処分するけどいいのか?一応番だろ?』 すると、まりさはポカンとした表情でこう言った。 「ゆっ?ちがうよ! れいむはまりさのおくさんじゃないよ!」 『じゃあ何だったんだよ』 「れいむは、おちびちゃんをつくるためだけにまりさにちかづいたんだよ! ぜんぜんしらないたゆんだよ!」 『・・・そうなのか?れいむ』 「ゆっ、そんなわけあるかああ!!このけだものおおおっ!!」 袋の中から糞饅頭の鳴き声が聞こえる。 『まあいいや。どうせ潰すし』 俺はれいむを潰してゴミ捨て場に持っていく。 立ち去る前に、まりさに一言。 『今回は潰さないでおくが、お前、相当なゲスだな。まさに裏切り者だよ』 今後、まりさがどんなゲス行為を働くのか楽しみになってきた。別のゆっくりでも用意して試してみるか。 どうやら俺は面白い拾い物をしたようだ。 完
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『Stray 4 ~自称 稀少種~』 46KB 観察 不運 日常模様 都会 現代 第4話です かすがあきです。 注意 anko4487 Stray 3 ~薄れゆくもの~ の続きです。 「」はゆっくりの発言です。 『』は人間の発言です。 善良(?)なゆっくりが酷い目にあいます。 Stray 4 ~自称 稀少種~ 太陽が眩しい中、れいむたち地域ゆっくりは今日も公園の掃除に精をだす。 「ゆぅ………きょうも たいようさんが ゆっくりしてないよ。」 れいむが左の揉み上げで汗を拭いながら、ため息をつく。 れいむは日常の動作の ほとんどを左の揉み上げで行う。 右の揉み上げには待針が隠されており、動かすことができないからだ。 幾多の れいむ種を殺してきた大事な待針である。 この待針、元々ゆ虐趣味の人向けに作られた ゆっくりを一撃で簡単に殺す長めの待針である。 (ちょうど れいむの揉み上げの根元から髪先までの長さ。) 使用者が ゆっくりとはいえ、本来の使い方をされて、待針も本望である。 れいむが まわりを見渡す。 「ゆぷぷ。れいむが いないよ。れいむは れいむだけだよ。ゆぷぷ。」 これまでの努力と人間の偶然による協力により、現在この群れに れいむ種は2匹しかいない。 あと1匹殺せば、群れの れいむ種は れいむだけになり、稀少種になれる。 妹の さなえと同じ稀少種だ。そうすれば、飼いゆっくりになれるハズだ。 辛く長い日々も、間もなく終わる。そう考えた れいむの頬は自然と緩む。 「れいむ。ゆっくりしていってね。 ゆ?れいむが すっごく よい えがおさんを しているよ。 すっごく ゆっくりしているよ。れいむも おさから きいたの?」 「ゆ?ゆっくりしていってね。」 反射で返事をし振り返ると、そこには自分以外で生き残っている最後の れいむ種がいた。 彼女は人間が保育園を襲う前日から掃除をするようになった、れいむよりも若い個体である。 (以後、若れいむと表記。) 「ゆ?れいむ なにも きいてないよ。 いったい なんのことなの?若れいむ?」 「ゆ。まだ きいてないんだね。ゆぷぷ、若れいむが おしえてあげるね。 れいむ、若れいむたちね、すっごく らっきーさん なんだよ! なんとね、けっこんしたら、おちびちゃんを たくっさん うんでいいんだよ!」 「ゆ?おちびちゃんを たくさん? ……ゆぷぷ、なに いっているの若れいむ。 れいむたち ちいきゆっくりは いちかぞくにつき おちびちゃんは ふたりまで なんだよ。 そんなこと、ほいくえんにいる おちびちゃんでも しっているよ。」 若れいむに対して、れいむは笑いながら、少しバカにした口調で言う。 が、若れいむは笑顔のまま続けた。 「ゆぷぷ。しっているよ。でもね、おさが にんげんさんに かけあってくれたんだよ。 そしたら、とくっべつに れいむたちは おちびちゃんを たくっさん うんでいいって おゆるしさんが できたんだよ。 ゆっくりりかしていね!」 若れいむは、笑顔で要領をえない説明をする。 要約すると、 群れの半数を占めていた れいむ種が激減し、このままでは群れの存続が危ないと長ぱちゅりーが判断した。 長ぱちゅりーは、一時的に残っている れいむ種の出産制限をといてほしいと公園の管理者に掛けあった。 そして、制限解除は人間の判断で行うことを条件に、残った れいむ種は一度に れいむ種が3匹・相手似は1匹まで産んでいい許可を得ることができた。 「そ、それって、れいむと若れいむは けっこんして、おちびちゃんを たくっさん うんで いいってこと?」 「さっすがれいむだよ。若れいむと おなじ れいむだけあるね。 りかいが はやくて たすかるよ! そうだよ。若れいむと れいむは おちびちゃんを たくっさん うんで いいんだよ! ゆぷぷ。いっぱいの おちびちゃんに かこまれて くらせるだなんて…… ゆーん そうっぞう しただけで ゆっくりできるよ!ゆっくりーー!!」 若れいむは嬉しそうに叫ぶ。 「………」 若れいむとは対照的に、れいむの顔は沈んでいる。 今まで努力して れいむの数を減らしてきたのに、出産制限がとかれればまた れいむ種が爆発的に増えてしまう。 そうなれば、これまでの努力が無駄になるからだ。 「ねぇ、若れいむ。若れいむは、けっこんしたい ゆっくりが いるの?」 「ゆ!いるよ!ありすだよ!! さっき ありすに おちびちゃんが たくっさん うんでいいことを はなしたら、 すぐに ぷろぽーずさんを してくれたよ!」 「そ……そうなんだ………」 「それじゃぁね、れいむ。若れいむは おとーさんに けっこんの ほうっこくにいくから。」 若れいむは笑顔で立ち去る。 今すぐにでも殺したいが、まわりには掃除をしている ゆっくりたちがおり、それはできない。 れいむは仕方なく、掃除を続けた。 掃除が終わり、長ぱちゅりーのところへ向かう れいむ。 「おさ、おそうじ、おわったよ。」 「むきゅ。れいむ、おつかれさま。れいむに だいっじな おはなしが あるからゆっくりきいてね。」 「おちびちゃんのことなら、若れいむから きいたよ。」 「むきゅ。なら おはなしさんは はやいわ。 れいむ、すぐにでも けっこんなさい。」 れいむはこれまでプロポーズを受けても断ってきた。 結婚相手に自分が殺ゆんをしていることがバレるかもしれないと考えているからだ。 また、結婚し、子供を産めば、当然れいむ種が増える。 れいむ種は自分だけにならなくてはいけないと考えている れいむにとって、 我が子とはいえその存在を許すことはできない。 「ゆ……ゆぅ……おさ、れいむはね けっこんさんは まだ したくないよ。」 「むきゅ。れいむ。そういって いままで ぷろぽーずさんを ことわってきたことは しっているわ。 でもね、かんがえても みなさい。れいむの としだと けっこんしているのが ふつうさんよ。 それにね、たくっさんの おちびちゃんよ。とっても ゆっくりできるでしょ。」 「それは……そうだけど……ゆぅ……」 「むきゅ。れいむが なんで けっこんさんを したくないのか ぱちぇには わからなけど、 これは おさとしての めいっれいよ! あと さんかい たいようさんが のぼるまでに けっこんしなさい! しなければ、むれから ついっほうよ!ゆっくりりかいなさい!」 結婚に乗り気でない れいむにイラついた長ぱちゅりーが声を少し荒げながら言う。 長ぱちゅりーはれいむの態度が気に入らなかった。 群れのために、れいむのために、危険を犯して人間と交渉したにも関わらず れいむが喜ばれなかったからだ。 ------ 自宅に帰る途中、れいむは子まりさと一緒に歩く笑顔の まりさを見かけた。 かつて隣に住んでおり、れいむと一緒に掃除をした まりさだ。 殺ゆんに慣れておらず、元気がなかった頃、れいむは まりさからプロポーズを受け、そして断っている。 ふられた まりさは、その後、他のれいむ種と結婚し、子供を授かった。 まりさの番である れいむ種と まりさの母親である れいむ種は、れいむによって殺されている。 また、娘である れいむ種も先日の人間の騒動で失っている。 今、群れでは父1匹、父と同種の娘1匹という一家や、 番を失ったことで、鰥夫暮らしをしている ゆっくりが多い。 公園の隅を歩きながら、れいむは父娘を見る。 「ゆぅ……まりさたち、とっても しあわせーそうだよ。」 れいむの脳裏に、子供に囲まれる自分の姿が浮かぶ。 想像すればするほど、その姿はとても ゆっくりでき、幸せそうである。 れいむとて、結婚に憧れがないわけではない。 番を持ち、子供を持つ。本能に刻まれた ゆっくりできることだ。 しかし、地域ゆっくりの生活は辛い。 野良に比べると多少はマシかもしれないが、常に死と隣り合わせである。 辛い労働がない。極上の食事。人間からの脅威がない。 飼いゆっくりになるまで、れいむは結婚への憧れを捨てている。 が、幸せそうなまりさを見ることで、れいむの結婚への憧れは強くなる。 加えて、結婚の命令と子供をたくさん産んでよいという特権が与えられた。 「………ゆぅ……おちびちゃんが たくさん…… ゆぷぷ。けっこんさんも わるくないかも……」 結婚し、地域ゆっくりとしてたくさんの子供に囲まれて生活する。 そんな妥協案が れいむの頭によぎる。 -ッ ゴ ッ ジャ ! れいむが妥協案を採用しかけた時、子まりさが飛んできた野球ボール(硬球)によって潰された。 「お!おちびぃいいいい!!」 飛び散った餡子で顔を汚しながら、まりさが絶叫をあげる。 「ぺーろぺーろ……ぺーろぺーろ……おちび!! ゆっくりするのぜ!!ゆっくり めを さますのぜ!! おでがいなのぜ!!おどうざんを ひどりに じないでぼじいのぜ!! おちび!ゆっぐり なおるのぜぇええええ!!」 まりさは潰れた饅頭を泣きながら舐めるが返事はない。 『げー、クソ饅頭にあたっちまった……』 泣いている まりさ側に、ボールの持ち主である少年が近づく。 この少年、友人とキャッチボールをしていたところである。 『はぁ………ボールが餡子で汚れてるよ……汚ねー。 おい、まりさ。』 少年は まりさを軽く蹴りながら言う。 「っゆっばぁ!?な!なんなのぜ??にんげんざん!! ばりざは いば いぞがじいのぜ!おちびが!おちびがぁあああ!!」 『うるさい!』 「っぐっべぇええ……や、やべ……つ……つぶれりゅ…のじぇ……やべでぇ……」 少年は まりさを踏みつけたまま続ける。 『おい、そのボールを あそこの水道まで運べ。 イヤならこの場でお前を潰す。どうする?』 「わ……わがりばじだ……だがら……あじをどげで……」 『よし。じゃぁ運べ。あ、そうそう。口にいれたり、落としたりするなよ。 もししたら、潰すからな。』 「ばいぃいいい!!ゆっぐりわがりばじだぁあああ!!」 まりさの舌がボールを掴む。 その際、子まりさの体内に舌が一時的に入り、まりさにいいようのない悪寒を与える。 が、まりさは悲鳴をあげない。 人間との力関係を理解しているからだ。 もし騒げば、気分を害した人間に殺されるかもしれないからだ。 まりさは ただ涙を流しながら、ボールを舌で持ち上げ、我が子を殺したボールを大事に運ぶ。 母親と妹と妻と娘、そして、最後に残った娘までを人間によって失ったにも関わらず、まりさは人間に従う。 従わなければ、殺されるのだ。まりさは悔し涙を流しながら、必死にボールを運んだ。 (母親・妹・妻は れいむが殺しているのだが、まりさは人間の仕業だと考えている。) 「ばごびばじだぁあああ!!」 『ん。じゃぁ、ここに降ろせ。』 「ばいぃいい!!」 少年の指示通りに水道の下にボールが置かれる。 少年は蛇口をひねり、餡子で汚れたボールを洗う。 『よし、まりさ。もういいぞ。』 ボールを洗い終えた少年はそう言って、友人の元へと駆けてく。 「っゆっばぁあ……た……たすかったのぜぇ…… ゆ!!おちび!!まりさのおちび!!」 残された まりさは安堵すると同時に子まりさの遺体の側による。 「おちび……おぢび……ばりざの おちび…… ど…どぼじで おちびが しぬのぜ?…… どぼじでぇえええ!!??どぼじで おちびがぁあああああ!! っがぁあああああああ!!どぼじで ばりざの だいっじな かぞぐがぁああああ!! ばりざが なにを じだのぜぇえええええ!!?ただ かぞくで ゆっぐり じだいだけなのにぃいいいい!!! ごんなの!!ごんなの ゆっぐりでぎないぃいいいいいいいいいいい!!!!」 まりさは遺体の側で泣叫ぶ。 それは、群れの ゆっくりによって遺体が片付けられても続く。 「むきゅ。まりさ、ゆっくり おちつきなさい。」 「まりさ、ゆっくり おちついてよ。 まりさが ゆっくりしないと、おちびちゃんが あんっしんして おそらの ゆっくりぷれいすに いけないよ。」 泣き止まない まりさを心配して、ぱちゅりーと れいむが声をかける。 「ぱじゅりぃいいい!!れいぶぅうううう!!おちびがぁああ!! ばりざの ゆっくり!ばりざの ゆっくり!ざいごの かぞぐがぁああああ!!!ゆっくり!ゆっくり!」 「まりさ!!」×2 最後の家族を目の前で失い、人間に復讐をすることもできない まりさは、非ゆっくり症を患った。 暫くして、自警団のリーダーを務める幹部まりさが やってきた。 「まりさ………ごめんなのぜ………やすらかに ねむるのぜ。」 そう言って、幹部まりさは咥えた枝を まりさに深々と突き刺した。 非ゆっくり症は群れの ゆっくりでは治せず、また働けない ゆっくりを養える程群れは豊かではないからだ。 まりさの遺体を片付けながら れいむは思う。 例え子供が沢山いたところで、地域ゆっくりでは人間の脅威から身を守れない。 本当に幸せになるには、まず飼いゆっくりとなり、身の安全の保障を得なければならないと。 一瞬だけよぎった、地域ゆっくりのままでもよいという妥協案を れいむは捨てた。 ------ 夜。れいむはダンボール箱からでて公園の中を歩く。 若れいむを探しているのだ。 ゆっくりは基本的に夜は活動をしない。 が、結婚前の若れいむだ。 婚約者とのデートをしている可能性は高いと れいむは考えている。 「ゆ。ありす。ゆっくり こんばんはだよ。若れいむと でーとさんなの?」 しばらく歩くと、れいむは若れいむの婚約者である ありすに出会った。 ありすの頬は真っ赤に染まっている。 「れ!れいむ!こ、こんばんは……そ、それじゃぁ、ありすは もう いくわね……」 ありすは逃げるように れいむから離れていく。 「ゆぷぷ。きっと ありすは若れいむと でーとさんだったんだね。 ということは……あっちのほうに………ゆ!いたよ。若れいむだよ。」 れいむの予想通り、ありすは若れいむとデートをしていた。 2匹は別れ際に唇を交わしており、ありすはその光景を見られたかもと考え、頬を真っ赤に染めていたのだ。 身体を低くし、れいむは見つからないように若れいむの様子を伺う。 口付けの余韻に浸った若れいむが幸せそうに目を閉じ、ゆっくりしている。 若れいむのその姿を見て、れいむは今がチャンスだと確信する。 れいむはゆっくりと右の揉み上げから待針を抜き、口に咥える。 れいむ種を殺すことに もはや躊躇いなどない。 自分が幸せになるためならば、何でもする。 それが例え ゆっくりできないことでも、将来ゆっくりするためならば、今は耐えるしかない。 そして、これが最後の殺ゆんである。 若れいむを殺せば、群れのれいむ種は れいむだけになる。 晴れて稀少種の仲間入りである。れいむの頬が自然とニヤけた。 「もうすこしだよ………あと すこしで れいむは きしょうしゅだよ…… そしたら、かいゆっくりになれるよ………これで……これで さいごだよ……」 呆けている若れいむの背後に ゆっくりと回り込み、狙いを定める。 「っゆっぴ!!!」 そして、一気に跳躍し、若れいむを背後から刺した。 待針は若れいむの中枢餡を貫き、若れいむは短い生涯を終えた。 れいむは慣れた手つき(?)で待針を抜き、舐める。 もはや必要の無い針だが、れいむは取りあえず右の揉み上げにしまうことにした。 いつもの行為だ。いつもどおり、れいむは れいむ種を殺した。 「やったよ………これで……これで れいむは れいむだけだよ……」 最後の殺ゆんを済ませた れいむが、目を閉じて達成感を味わう。 その夜、れいむは満たされた気持ちで、ゆっくりした気分で眠りにつくことができた。 ------ れいむが心地好い眠りについた頃、れいむの妹である さなえはベットの中で眠りにつこうとしていた。 胴付き金バッチの さなえは人間に飼われており、夜は人間の家で、ベットで眠る。 「おにーさん、ねたばこさんは ゆっくりできませんよ。」 眠たい目をこすりながら、青年に話しかける。 青年は横になりながら就寝前のタバコを吸っている。 『ん?………あぁ、そうだな……危ないからな。』 体を起こし、ベットに腰かけながら青年が言う。 『さて、それじゃぁ寝るか。』 暫くして、タバコの始末をした青年が証明を落としながら言う。 「はい。………うふふ……」 布団の中でさなえが笑う。 『ん?ずいぶんと嬉しそうだな。どうしたんだ?』 「あしたは こうえんさんに いけますから、うれしいんです。 だって、おねーさんに あえますから。」 さなえが微笑みながら言う。青年は腕を伸ばし、さなえの頭をなでる。 『そっか。さなえは本当に れいむのことが好きなんだな。』 「はい。おねーさんは とっても ゆっくりしていらして、とても すてきなんですよ。 おねーさんに あって、おはなし して、いっしょに ゆっくりすると、 すごく しあわせに なれるんです。 それに、あしたは おねーさんとの やくそくさんも まもれますし。 おにーさん、ほんっとうに ありがとうございます。」 『なに。俺の大事なさなえのお願いだからな。少しぐらいは聞いてあげないとな。 さ、もう寝るぞ。きょうも疲れただろ?おやすみ。』 「はい。おやすみなさい……。」 しばらくして、さなえが寝息をたてる。 『ほんっとうに眠りにつくのが早いよな、ゆっくりって。』 そう呟いてから青年はタオルケットにうずくまり、眠りについた。 ------ 「れいむ。ゆっくり おきなさい。れいむ。」 翌日、自分以外の れいむ種根絶の目標を達成し、気持ちよく眠っている れいむは長ぱちゅりーに起こされた。 「ゆぁ……?………おさ?……ゆぅ……れいむに なにかようなの? れいむ、まだねむいよ………っゆっべぇええ!?」 左の揉み上げで目を擦っていた れいむが、長ぱちゅりーの隣にいた幹部まりさに思い切りお下げで殴られた。 「いっじゃぁあああ!!どぼじでぇええ!!?? どぼじで れいぶが だだがれるのぉおおお!!??」 「だまるのぜ!!れいむ!!若れいむごろしの ようぎで たいほするのぜ!!」 「ゆ!?どぼじでぇえええ!!??どぼじで じっでるのぉおおお!!?? っれ!れいむじゃないよ!!若れいむを ころしたのは れいむじゃないよぉおお!!」 「むきゅ。ごまかしても むだよ。ぱちぇは きのう この めで みたの。 あなたが若れいむを………若れいむを ころすところを。」 昨晩、長ぱちゅりーはれいむの家を尋ねた。 結婚という本人(本ゆん?)の意思が最大限尊重されなけければならないことを、 強要しようとしたことを恥じたからだ。 謝罪した上で、再度れいむに群れの ゆっくりと結婚するよう頼むつもりであった。 が、家の中に れいむはいなかった。 しかたなく自分の家へと帰ろうとした長ぱちゅりーは れいむを見つけた。 声をかけようとしたが、れいむは身体を屈めてており、様子がおかしかったため、様子を伺うことにした。 そして、長ぱちゅりーは見た。れいむが待針を若れいむを刺すところを。 すぐにでも れいむを捕まえたかったが、 虚弱体質であるため反対に殺される心配をした長ぱちゅりーは れいむが 現場から立ち去るのを待った。 れいむが いなくなった後、若れいむに声をかけ、 若れいむが死んでいることを確認した長ぱちゅりーは幹部まりさの元へと向かう。 幹部まりさも最初は長ぱちゅりーの言葉を半信半疑であったが、若れいむの遺体を見て、話を信じた。 そして、今、長ぱちゅりーと幹部まりさは自警団をつれて れいむを逮捕をしにきているのだ。 「むきゅ。まりさ、れいむの みぎもみあげさんを しらべて。 きのう、れいむが みぎの もみあげさんの なかに きょうきを しまっているのを みたわ。」 「ゆっくりりかいしたのぜ。」 幹部まりさは れいむに体当たりをし、れいむを家から追い出す。 倒れた れいむを自警団の ゆっくりたちが抑え付ける。 幹部まりさは、舌を伸ばし、右の揉み上げの中を調べる。 「ゆ!こ!これは……まちばりさんなのぜ!!」 「むきゅ。この まちばりさんで若れいむを………」 「ちがうよ!!れいむじゃないよ!! むれの れいむたちを ころしたのは れいむじゃないよ!! これは なにかの まちがいだよ!!」 れいむは必死に否定する。 が、ゆっくりは嘘をつくのが生来苦手な生物(なまもの)である。 余計なことまで口にしてしまった。 「むきゅ!?むれの れいむたちって………まさか れいむ!! むれの れいむが どんどん しんでいったのって、れいむが!?」 「っゆっがぁああああ!!なんでしってるのぉおお!!? ちがうよ!!れいむは なにも しらないよ!! まちばりさんで れいむたちを ころしてなんてないよ!! れいむが したけど、ぜんぶ にんげんさんの しわざだよ!!」 「おさ。まちがいないのぜ。れいむたちの おおくは はりさんで しんでいたのぜ。 ゆっくりは はりさんを もっていないから にんげんさんの しわざだと おもっていたけど…… れいむが むれの ゆっくりを ころしていた ようなのぜ。」 「なんて おそろしいことを………。 むきゅ。みんな、れいむが とうっぼうしないように あしを えださんで はかいして。 でも まだ ころしたらだめよ。きんっきゅうしゅうかいで この げすの しょぶんを れんらくするわ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」×たくさん 「やべでぇぇええええ!!れ!っれれれ れいぶは わるぐないよぉおおお!! ご!ごかいだよぉおおおお!!れいぶは なにもじでないよぉおおおお!!! ぜんぶ にんげんざんが しだごどで いいでしょぉおおおお!!れいぶを たすげでぇえええ!!!」 れいむは全身から汗を流しながら嘘をつく。 相手の言うことを基本的に信じるゆっくりだが、証言と証拠、 そしてれいむの言葉から騙される ゆっくりはいなかった。 「うるさいのぜ。この うそつきの げすが。しっかり おさえつけているのぜ……」 幹部まりさが枝を咥えながら言い、れいむの足を枝で刺す。 「っゆっぎゃぁああああ!!や!!やべずえぇぇえええ!! ぷーすぷーす じないでぇええええ!!! っれ!れいぶの!れいぶの がぼじかざんの ような あんよがぁああ!!」 れいむは泣きながら後悔する。あの時、もっとまわりに注意を払っておけばと。 今までは、待針を取り出す前に周囲に誰もいないことを確認していた。 が、昨晩はそれを怠ってしまった。 早くしなければ、若れいむが結婚し、れいむ種が増えるという焦りと 慣れによって心が緩み、れいむは警戒を怠ったのだ。 「っいっじゃぁああ!!やべじぇぇえええ!!!っゆっぎゃぁぁあああああああ!!!」 静かな雑木林の中に、れいむの悲鳴が響き渡る。 ------ 緊急の集会で、長ぱちゅりーは群れの ゆっくりに状況を説明する。 れいむが、群れのれいむ種を殺してきた事実を。 大量殺ゆんの罪で、公開処刑をすることを。 刑を執行するのは、残された遺族。 そして、群れの ゆっくりは全員でれいむが死ぬまで見学をすることを。 「っゆっぎゃあぁぁぁああああああああああ!!!!」 れいむが悲鳴をあげる。 「じね!じね!じね!!!まりざの れいむを ころした げすな れいぶは じねぇえぇええ!!」 「ごの いながぼのぉおお!!ありずの とがいばな およべざんを ごろじだ づみは おぼいのよぉおおお!!」 「むきゅぅぅうう!!!よくも!!よくも!!!ぱちぇの れいぶをぉおおおお!!ひどり むすべをぉおおおお!!!」 「おかーしゃんの かたき なのじぇぇえええ!!」 「いにゃがもにょぉおおお!!」 「けんじゃの おがーじゃんを がえじぇええええ!!」 群れの約半数が れいむによって家族を失った ゆっくりである。 遺族たちは、れいむを罵り、暴行(体当たり)を加えている。 歩行機能を失っているれいむに抵抗も逃亡も許されていない。 ただ、なすがままに暴行をうけ、地面を転がることしかできない。 「っゆっべぇえええ!!やべ!やべでぇえ!! いっじゃぁあああ!!やべりょぉおおお!!!れいぶを いじべるなぁぁああ!! だずげ!だずげでぇええ!!だれがぁあああ!!れいぶを だずげどぉおおおおお!!」 「うっるざいのっぜぇえええ!!おばえ みだいな げずを だれが だずげるがぁあああ!!」 れいむの右の揉み上げを強く噛んだ まりさが叫ぶ。そして、揉み上げを噛んだまま、大きく跳ねる。 「ぞうよ!!れいむ みだいな いながぼの、みだごどないわぁああ!!」 左の揉み上げを噛んだありすが叫び、まりさと反対の方向に跳ねる。 「っゆっぎゃあぁああああ!!っぼ!ぼびあげぎゃあああぁああ!!!」 れいむの両方の揉み上げは逆方向に引っ張れ、れいむに激痛を与える。 - ッ ブ チ ー ン!! そして、れいむの両方の揉み上げは同時に千切れた。 「っゆっぎゃぁああああ!!いい!!いっざやぁぁあああああ!!! っれ!れいぶの ぼみあげぎゃぁああ!! っぼ!ぼうびごびごでぎないぃいいいい!!! おでがいじばずぅうう!!ゆ!!ゆるじでぐだざいぃいいい!!!」 激痛かられいむは泣き叫び、許しを乞うが、その願いは無視される。 家族を殺されたという正しい怒りを彼女達は常に抑えつけていた。 それは、加害者が人間だと思っていたからだ。 人間に対して報復をすれば、逆に自分たちが全滅することを理解していたからだ。 だが、加害者は人間ではなく同じゆっくりの れいむであった。 抑えつけていた怒りは爆発し、 どの ゆっくりも手加減することなく、れいむへの報復を続ける。 「っゆっぎゃぁああああ!!っだ!!だずげでぇえええ!!! おで!おでっぎゃぁあああああ!!いっじゃぁああああぁああ!! ばりざぁあ!!ありずぅうう!!っぱっぱぢゅりぃいい!!だ!!だずげでぇえええ!!」 悲鳴をあげることと、涙を流すことしかできない れいむが見学している ゆっくりに命乞いをする。 「げらげらげらげらげら。なにを いってるのぜ? おまえみたいな げすを たすけるはずないのぜ!」×たくさん 「いなかものを たすけるはずないでしょ? そんなことも りかいできない だなんて、ほんっとうに いなかものね。」×たくさん 「むきゅきゅ。じごうじとくさんと いうものよ。あきらめて しになさい。」×たくさん 当然だが、どの ゆっくりも れいむを助けようとしない。 家族を失ってはいないが、同族殺しという最大のタブーを犯した れいむに対して同情心は当然ない。 加えて、彼女達は毎日ゆっくりできない労働が課せられている地域ゆっくりだ。 野良よりはマシだということを頭でわかっていても、心の中は不満が渦巻いている。 無残な姿になっていき、命乞いをする れいむを見ることで、彼女達はストレス解消をしている。 「むきゅ。みんな、けいは いちじちゅうだんよ。」 長ぱちゅりーの一声で、れいむへの暴行が一時的に止まる。 長ぱちゅりーは れいむの前に貴重な角砂糖をおく。 「れいむ、これをたべなさい。」 「おお、っおざぁああ!?っれれっ れいぶを だずげでぐれるのぉおお!??」 「むきゅ。いいから さっさと たべなさい!」 「ゆっぐりりがいじだよぉおお!!むーじゃむーじゃ……っじあっわっぜぇえええ!!」 角砂糖を食べるにつれ、れいむの顔色がよくなる。 体力が回復し、痛みが次第に引いていく。 それにつれ、れいむが笑顔になる。助かったと考えているからだ。 笑顔のれいむを長ぱちゅりーは冷たい顔で見る。 「むきゅ。げひんな たべかたね。ほんっとうに げすなのね、れいむは。 さぁ、みんな!けいの つづきよ!」 長ぱちゅりーはれいむを許す気などない。 貴重な角砂糖を与えたのは、れいむをすぐに殺さないためだ。 すぐに死なれては ゆっくりたちの気がすまない。 それほどの大罪を れいむは犯したのだ。 「もっと もっと くるしめて、くるしめて。 しにそうになったら かいっふくさせて さらに くるしめるわよ! たくっさんの れいむを ころした れいむは らくに ころさせないわ!」 「ゆっくりりかいしたよ!!」×たくさん れいむの顔が一瞬で絶望に染まる。 「っぞ!っぞんなぁあああ!!! っれいぶはぁあああ!!れいぶはぁあああ!!!っれいぶはぁああああああ!!!」 全ての ゆっくりから敵意を感じ れいむはガタガタ震えながら、失禁をする。 「いっじゃぁあああ!!おでが!おでがいじばずぅうう!! ぼう!っぼぼぼぼう ゆるじでぐだじゃぃいいい!!ごべんなざぃいい!!」 再び始まった暴行に れいむは泣叫ぶ。 惨めな姿を見て、ゆっくりたちの口が微かに緩む。 そして、加虐心はエスカレートしていく。 1匹のまりさが、枝を咥え、れいむの右目に突き刺す。 「っゆっぎゃぁああああああああああああああああああ!!!!っめ!!っめっぎゃぁあああああ!!!」 雑木林に れいむの悲鳴が広がっていく。 ------ 駅・繁華街・住宅街に隣接する形で存在する大きな公園。 ここが、胴つき、金バッチの さなえの生れ故郷だ。 「おにーさん。こっちです。」 『おい、そんなに慌てるなよ。急がなくても ゆっくりは逃げないぞ。』 「それは そうですけど、おねーさんと おはなし できる じかんさんが すくなくなるんですよ。」 『はいはい。』 久しぶりの故郷に、さなえが笑顔で飼い主の青年の手を引っ張る。 「ゆふふ。おにーさん。ありがとうございます。さなえの おねがいを きいてくれて。」 『ん?あぁ……まぁ……』 歯切りの悪い受け答えをする青年でだが、さなえは気にしていない。 さなえの願いは、姉である れいむに頼まれていたことだ。 「いちど いもーとの かいぬしさんを つれてきてね。 いもーとを だいじにしてくれて ありがとうって おれーさんが いいたいよ。」 さなえは れいむと会う度に、飼い主を連れてくるように頼まれていた。 その度に青年にお願いしていたが、青年は それを断っていた。 社会人で忙しいということもあるが、青年は通常種に対してあまり良い感情を持っていない。 礼を言いたいというのは建前で、自分を飼えと言い出すに違いないと青年は決め付けており、 それを断るのが面倒だと考えている。 男性が さなえの頼みごと = れいむの頼みごとを断る度に、さなえは落ち込む。 れいむのお願いを叶えられないことに罪悪感を感じているからだ。 さなえに元気をなくされては困る青年は、 しかたがなく さなえの為に、れいむに会うことにしたのだ。 青年は さなえと一緒に公園に入る。 「あら??」 『ん?どうした?』 公園に入った さなえは、首を傾げる。 「いえ……まだご ぜんちゅうさんなのに、だれも おそうじを していないなぁって……」 『今日は休日なんじゃないか?』 地域ゆっくりに休日などない。 が、青年は地域ゆっくりに対して興味はそれほどないのでそのことを知らない。 「……そう……かもしれませんね。 とりあえず、おねーさんの おうちにいきましょ、おにーさん。」 幼い頃に地域ゆっくりから飼いゆっくりになった為、さなえは地域ゆっくりに休日がないことを忘れていた。 さなえは、深く考えることもなく、姉であるれいむの家を、雑木林の中へと足を向けた。 ------ 雑木林の中、少し開けた場所に、群れの ゆっくりが全て集まっている。 中央には、両方の揉み上げと右目を失った れいむがいる。 殺ゆんを犯した罪で、れいむは制裁を受けている最中である。 「むきゅ。れいむ、この かくざとうさんを はやくたべなさい。」 貴重な角砂糖をれいむの前におき、長ぱちゅりーが冷たい声で言う。 「………や……やだょ……… おでがぃ……れいぶを だずげで……」 角砂糖を食べれば また暴行を受けることをしっている れいむが食べるのを拒む。 「むきゅ。しかたがないわね。まりさ、れいむの口をひらかせなさい!」 「ゆっくりりかいしたのぜ!」 長ぱちゅりーに言われ、幹部まりさはれいむの口に枝をいれ、強制的に口を開かせる。 長ぱちゅりーは開いた隙間に、角砂糖を無理矢理ねじこみ、自らの身体で れいむの口を塞ぐ。 幹部まりさがジャンプをし、れいむの頭にのり、何度も跳ねる。 「ぶぅうう!!ぶぅううう!!ごっぐん………」 飲み込んだことを確認した長ぱちゅりーと幹部まりさが れいむから離れる。 「ゆばぁああ!!の!のんじゃっだよ!! れいぶげんぎになっちゃだよぉおお!!また いじべられるよぉおおお!!」 体力を回復してしまった れいむが嘆く。 そんな れいむに、長ぱちゅりーがニヤついた顔で話しかける。 「むきゅ。れいむ。たすけてほしいかしら?」 「たすけてほしいよ!おねがいだよ!!れいむを たすけてよ!! れいむはかわいぞうなんだよ!みんなにいじめられでるんだよ! だからたすげてよ!おでがいだよ!!れいぶをたすげでぐだざいぃいい!!」 れいむは必死に命乞いをする。 「むきゅ。そうね。ここまでの たいっざいを おかした ゆっくりは ほんらいなら ゆるされないわ。 でも、れいむは げすですって せんげんを したら たすかるかも しれないわ。」 長ぱちゅりーの言葉を聞き、群れの ゆっくりの顔がニヤける。 餡子脳で意思の疎通がまともにできない ゆっくりだが、何故かこういうときだけは真意を理解することができる。 「どうしたのかぜ?げすだって せんげんしないのかぜ?」 「いなかものの げすは じぶんのことも しょうっじきに いえないのね!」 ゆっくりは嘘をつくことに強いストレスを感じる。 そして、自分が常に正しいと根拠のない自信をもつ生物(なまもの)である。 故に、自分がゲスであると宣言することは、 例え自信がゲスであったとしても強いストレスを感じるため決して口にすることはない。 れいむの身体から滝のように汗が流れ、ガタガタと身体が震える。 れいむ自信が、自分はゲスではないと信じているため、 ゲスであるという真実を宣言する = 嘘をつくことに拒絶反応がでているのだ。 右の眼孔に突き刺さった枝が大きく揺れ、れいむに激痛を与えるが、 悲鳴をあげる余裕さえ今の れいむにはない。 「むきゅ。どうするの?れいむ。 もし げすだと みとめたら、ゆるしてもらえるかも しれないわよ。」 長ぱちゅりーの言葉を聞き、れいむは唇を噛み締め、嘘をつく決意をする。 「っゆっばぁあああああ!!!っれ!っれれれ…… っれいぶはぁあああ!!れいぶはぁああああ!!げ!………げずでずぅううう!! だがらぁああ!!だがら だずげでぐだざいぃいいい!!!おでがいじばずぅううう!!!」 餡子の涙を流しながら、れいむは自信がゲスであると宣言をする。 「ゆぁ~~?よく きこえないのぜ? もっと おおきな こえで いってほしいのぜ?」 幹部まりさがお下げを上に持ち上げながら、 人間でいうところの手で外耳を大きくする動作をしながら言う。 「れいぶはぁああ!!れいぶはぁああ!!れいぶは げずでずぅううう!!! げず なんでずぅううう!!どうじようぼない げずなんでずぅうう!! だがら!!だがら だずげでぇえええええええええええええ!!!」 助かりたい一心で屈辱にまみれながら、命乞いをする。 「むっきゅきゅきゅきゅ!!」×たくさん 「ゆぷぷ!!」×たくさん 「げらげらげらげらげらげら!!」×たくさん 泣きながら自分はゲスだと宣言する れいむ。 そんな れいむを見て、群れの ゆっくりたちは笑顔になる。 家族を失った怒りも、地域ゆっくりとしての辛い生活も、他者を見下すことで薄れるからだ。 普段は群れで協力して生活しているため、他者を見下すことはない。 久方ぶりに心からの優越感に浸ることができた彼女達は笑顔で笑う。 当然だが、彼女達は れいむを許す気など毛頭ない。 ゆっくり殺しは大罪である。 それも大量殺ゆん犯である。許せるハズがない。 彼女達は れいむをより苦しませるために、暴行の後に体力の回復をさせ、更にゲスであると宣言をさせた。 この後、更に暴行を加え、最後は殺す気でいる。 自身が行っている行為自体がゲスであるということにも気づかずに、 ゲスであると叫ぶれいむを見下すゆっくりたちである。 「みなさん、たのしそうですね。とっても ゆっくりしてます。 ゆっくりしていってくださいね。」 ゆっくりたちの笑い声につられて、 れいむを探してた さなえと青年が ゆっくりたちに近づく。 「ゆっくりしていってね!!」×たくさん 反射で返事をした ゆっくりたちから笑顔が消えた。 青年の顔を見たからだ。 菓子をくれる優しい人間もいるが、多くの人間は ゆっくりを無視する。 いや、無視ならば まだいい。 人間は気まぐれで ゆっくりを殺すことがあるのだ。 ゆっくり殺しは大罪だが、人間を裁くことは不可能である。 もし、それをしようとすれば、返り討ちにあい、群れの全滅は確定してしまう。 地域ゆっくりにとって人間は恐怖の対象でしかない。 その人間が側にきたのだ。 ゆっくりたちが緊張するには十分な出来事である。 「むきゅ。にんげんさん、ぱちぇが おさめる むれに なにか ごようですか? ぱちぇたちは ちいきゆっくりとして、 にんげんさんの おやくに たてるように ひび がんばってるわ。」 長ぱちゅりーが前にでて挨拶をする。 人間との交渉は基本的に長の勤めである。 「い!!いぼうどぉおおお!!!だ!!だずげでぇえええ!!!」 青年が ゆっくりに話しかけるより早く、れいむが妹である さなえに向かって叫ぶ。 「おねーさん!!いったい どうしたんのですか!!??」 れいむの酷い状態を見て、さなえが驚く。 「び!びんながね!れいぶを いじべるんだよぉおおお!! おでがい!!いぼぉど!!れいぶを だずげでよぉおおお!!」 唯一の肉親であり、飼いゆっくりである さなえならば自分を助けてくれる。 れいむはそう信じ、必死に助けを求める。 「ゆっくり まっていてください!すぐに たすけますね!」 れいむの考え通り、さなえは れいむを助けようとする。 が、さなえの前に幹部まりさがたつ。 「さなえ!ゆっくり まつのぜ!!これは せいっさいなのぜ!! れいむの けがは じごうじとくさんなのぜ!!」」 「せいさい?おねーさんが なにを したっていうのですか? おねーさんは とっても ゆっくりした ゆっくりなんですよ! せいさいを うけることなんて あるはずが ありません!!」 れいむを心から信頼している さなえが声を荒げて言う。 『へぇ、さなえも怒ることがあるんだな。始めてみたよ。 でさ、俺の さなえの姉。れいむが何をしたんだ?言ってみろよ。』 さなえが声を荒げるところを始めて見た青年が、れいむのに興味をもち、尋ねる。 「むきゅ。ゆっくりごろしよ。それも たくっさんの れいむを ころしたわ。 さなえも しっているでしょ?むれに いたころ、がっこうで おそわったでしょ? ゆっくりごろしは たいっざいよ。しけいさんなのよ。」 長ぱちゅりーが前にでて言う。 「!!そ!そんな!おねーさんが そんな ゆっくりできなことを するはずが ありません。 そんなの うそです!なにかの まちがいさんです!!」 れいむの無実を信じている さなえが叫ぶ。 「うそじゃないわ!!ぱちぇは このめで みたのよ! ありすの こんやくしゃの若れいむを ころすところを!!」 「そうなのぜ!それに、れいむの みぎの もみあげさんから きょうきの まちばりさんも でてきたのぜ!!」 「それだけじゃないわ! いなかもので げすな れいむは ほかにも たくっさんの れいむたちをころしたって しょうっげん したわ!! れいむの せいで むれから れいむが いなくなってしまったのよ!!」 「そ!……そんな……」 長ぱちゅりーたちの証言で、さなえの顔色が悪くなる。 「そうなのぜ!れいむの せいで まりさの だいっじな れいむが!! せいっさい すべきなのぜ!!」×たくさん 「いなかものの せいよ!あんな いなかものの げすは ゆるせないわ!! とかいはな せいっさいが ひつようなのよ!」×たくさん 「むきゅ!ここまでの げすは みたことが ないわ! せいっさい しなければ、むれに もっともっと わざわいが おきるわ!」×たくさん 群れの ゆっくりたちが、れいむへの制裁が正当であると声を揃えて叫ぶ。 そして、れいむを罵倒する言葉を各々が叫ぶ。 「っゆっがぁああ!!れ!!れいぶは わるぐないよぉおお!! だがらぁああ!!だがらだずげでぇえええ!!」 れいむは独り自分は悪くないとさけぶが、その声はまわりの ゆっくりの罵声に消され、誰にも届かない。 「………おねーさんが………」 信頼する姉が犯した罪をしり、さなえがショックで膝をつき、涙を流す。 「むきゅ。さなえ。わかったでしょ?れいむが どんなに ひどい ゆっくりかということを。 あねである れいむが おきてによって しけいに なるのが つらいのは わかるわ。 でもね、これは ちいきゆっくりの もんっだいなの。かいゆっくりの あなたには かんっけいが ないことよ。 ゆっくりりかいなさい。」 泣いている さなえに対し、長ぱちゅりーが言う。 『はぁ……』 泣いているさなえを見ながら、青年がため息をつく。 れいむの生死など、青年にとっては興味がない。 が、間の悪いことに、れいむは さなえの姉である。 れいむの悪行をしっただけで膝を付き、泣き出す さなえである。 もし れいむがこのまま殺されれば、酷くショックを受けることは目に見えている。 『ちょっと待て!!』 激しい罵倒の中、青年が声を荒げて叫ぶ。 ショックを受けた さなえを慰めることを面倒だと感じた青年は、 れいむの罪を軽くする方法を模索することにしたのだ。 ゆっくりの甲高い、人によっては不愉快になる声が消えた。 野良と違い、人間の恐怖を正しく理解している地域ゆっくりである。 人間に待てと言われれば、静になる。 『れいむが他の れいむを殺したことは分かった。 で、れいむ。いったい何のためにそんなことをしたんだ? 正直に話してみろ。理由によっては…… えぇっと……情状酌量の余地ありで死刑は免れるかもしれないぞ。』 青年は さなえの頭を撫でながら、使い慣れない単語を交えて言う。 「………」×たくさん ゆっくりの視線が れいむに集まる。 「れ!れいぶはねぇええ!!かいゆっくりに なりたいんでずぅううう!! かいゆっくりなるだべに!!がいゆっぐりになるだべに!! がいゆっぐりになるだべに れいぶいがいの れいぶを ごろじばじだぁああああ!」 れいむが泣きながら殺ゆんを犯した動機を叫ぶ。 「ゆぷぷ!!なにを いってるの?この いなかもの!!」×たくさん 「むっきゅきゅ!ばかだとは おもっていたけど、ここまでの おばかさんだなんて。むっきゅきゅ。」×たくさん 「げらげらげらげらげ!なにを いってるのぜ? どうして ゆっくりごろしをすると かいゆっくりに なれるのかぜ? まったく、これだから ゆっくりしてない げすは こまるのぜ!」×たくさん 「……お……おでぇざ……」 動機を聞いた 群れのゆっくりたちは、笑いだし、さなえは涙を流す。 飼いゆっくりになりたいことは、殺ゆんを犯す動機になるハズがないからだ。 笑われながら れいむは右の眼孔に突き刺さった枝に舌をからませる。 「ぐぎぎぎぃいい!!っゆっがぁあああ!!いじゃい……ゆっぐ!ぼ!ぼうずごじで…… っいっじゃぁああ!!で、でぼ!!でぼ どれだよぉおお!!ど!!どれだよぉおお!!」 痛みに耐え、枝を抜き取った れいむは、動けない身体を必死に動かし、青年に向かって土下座をする。 「にんげんざん!!おでがい じばずぅう!!れいぶを がいゆっぐりに じでぐだざいぃいいい!! にんげんざんは いぼーどを かいゆっぐりにしだでしょ!! いぼーどは れいぶより ゆっぐりじでながったけど、 ものめずらじい きじょうしゅだから かいゆっくりにしたんでしょ! みで!にんげんざん!!もう れいぶは れいぶだけだよ!! れいぶは きしょうじゅに なっだんだよ!!だがら!!だがら れいぶを がっでぐだざいぃいいい!! れいぶはね!れいぶは きしょうじゅなんだよぉおおおお!!! めずらじい きしょうしゅ なんでずぅううう!!だがらぁああ!!だがらぁぁあ!! れいぶを がいゆっぐりにじでぐだざいぃいいいいい!!!」 れいむの土下座を見て、群れの ゆっくりたちは益々笑い出す。 同族殺しを行うような ゆっくりできない存在が飼いゆっくりになれるハズがないと考えているからだ。 『はぁ……期待した俺がやっぱりバカだったか。』 青年はれいむの犯行動機でまともな理由などないと思っていたが、やはりまともな理由ではなかった。 少しでも群れのゆっくりを同情させる動機であれば、なんとか説得するつもりであったが、 この動機ではどうあがいても無理である。 とはいえ、れいむを殺させるわけにはいかない。さなえの為にも、自分の為にも。 『はぁ……しょうがないな。いいよ。飼ってやるよ。』 「っどぼじでぞんなごどいのぉおおおおお!!?? きじょうしゅの れいぶを がっでぐだざいぃいいいい!!おでがいじばずぅううう!! がいゆっくりにならないど、れいぶは ごろざるんでずぅううううう!!!」 興奮しきっている れいむが勘違いをして叫ぶ。 『いや、だから飼うって。今から れいむは俺の飼いゆっくりだ。 だから、群れのゆっくりからは殺されない。安心しろ。あと、さなえも安心しろ。お前の姉は助けたから。』 「……ゆ?ぼ……ぼんどですがぁあああ!!??あ!!ああありがどうございばずぅううう!!!」 「お、おにぃざん……あ、ありがどうございばず。」 れいむと さなえは、涙を流しながら喜ぶ。 夢だった飼いゆっくりになれたことと、命が助かったこと、二つの意味でれいむは感激している。 「………」×たくさん れいむ・さなえ姉妹とは反対に、群れのゆっくりは言葉を失った。 『眼や足は後で治してやるからな。とりえず、これで傷を治せ。』 静かな ゆっくりたちを無視して、青年は れいむにオレンジジュースをかけ、治療を施す。 「ゆぅ………きもちいいよ………おれんじじゅーすさん……さすがかいゆっくりだよ……… ゆぅ…………あんっしんしたら……れいむ……ねむくなってきたよ……」 「よかったですね、おねーさん。もうだいっじょうぶですから、ねむってください。 おにーさん!ほんっとうにありがとうございます。」 さなえの頭を撫でた青年が、エコバックを取り出し、れいむを入れる。 『よし、それじゃぁれいむは俺が連れて帰る。いいな?』 青年が長ぱちゅりーを睨みながら言う。 「むっきゅ!?……………むきゅぅ………」 長ぱちゅりーが言葉をつまらせる。 れいむは連続殺ゆんの罪で、制裁しなければならない。 が、人間がれいむを保護してしまった。人間には逆らうことはできない。 れいむを制裁すべきという心と、人間には抵抗できないという理性で葛藤が生じる。 「に!にんげんさん!!そ!その れいむは ゆっくりできない ゆっくりなのぜ!! だから、かうのは おすすめ できないのぜ!!かうなら、ゆっくりしている まりさを かうべきなのぜ!!」 葛藤で動けない長ぱちゅりーの代わりに、群れの若いまりさが叫ぶ。 「そ!そうよ!!そんな ゆっくりしてない れいむよりも とかいはな ありすを かったほうが にんげんさんの ためよ!かんがえなおして!!」 「むきゅ!けんじゃである ぱちぇを かったほうが にんげんさんの やくにたつは! だからぱちぇを!!」 まりさにつられ、他のゆっくりたちが自分を飼ったほうがいいと叫び出す。 『いや、お前らを飼う気はないなら諦めろ。』 本来ならば れいむだって いらいないと考えている青年は冷たく言う。 「どぼじでぞんなごどいうのぉおおおお!!?? そんなげすより まりさ(・ぱちぇ・ありす)のほうがゆっくりじでるでしょぉおおおお!!!」×たくさん 全ての ゆっくりたちが声を揃えて叫ぶ。 ゲスである れいむより自分の方が ゆっくりしているハズだ。 にも関わらず、自分を飼いゆっくりにせずに、 ゲスである れいむを飼いゆっくりにするという青年の行動は彼女達の理解を越えている。 『いや、だって、俺は通常種に興味がないから。 優秀なお前らは俺以外の人間に飼われてくれ。じゃ、そういうことで。』 「…………」×たくさん 青年の素っ気ない発言に、群れの ゆっくりたちは言葉をなくした。 エコバックを持った青年がその場を立ち去る。 目を赤く腫らした さなえは、目を点にし黙っている ゆっくりたちに大きくお辞儀をしてから青年の後を追う。 ------ - ジー…ツクツクツク…ボーシ!ツクツクボーシ! 青年が立ち去った雑木林にツクツクボウシの鳴き声だけが鳴り響く。 「っど!!どぼじで ぞんなごどいうのぉおおおお!!! ぞんなの!つうっじょうしゅ だがら がいゆっぐりに なれないなんでぇえええ! ぞんなの!!ぞんなの ゆっぐりでぎないぃいいいいいいいいいいいいい!!!」×たくさん どれぐらいの時間がたっただろうか、長い時間をかけて、ゆっくりたちは状況を理解することができた。 ゲスよりも ゆっくりしている自分たちが、通常種だから飼いゆっくりになれないことを知り、ショックを受ける。 「おかしいのぜ!!さいっきょうの まりさは ゆっくりしているのぜ!! なんで さいっきょうの まりさが かいゆっくりになれなくて、あんな げすが かいゆっくりになれるのかぜ!? こんなの なにかの まちがいさんなのぜ!!」×たくさん 「あんな いなかものの げすよりも ありすのほうが ゆっくりしているのにぃいい!!」×たくさん 「むっきゅぅうう!!かしこい ぱちぇを えらばないなんでぇええ!!!」×たくさん 飼いゆっくりになりたいと常に願っている彼女達は、 自分よりも下の存在であるハズのゲスれいむが飼いゆっくりになれたことが悔しく、地団太を踏む。 「っゆっがぁあああ!!まりざぁあ!!おまえが じゃまなのぜぇえええ!!」×たくさん 「この いなかものぉおお!!いなかものの ありすの せいでぇぇええええ!!!!」×たくさん 「むっきゅぅうう!!けんじゃである ぱちぇが かいゆっくりなれないのは ぜんっぶ いつわりの けんじゃである ぱちゅりーの せいよぉおお!!」×たくさん 同種族内で罵り始める ゆっくりたち。 「っゆっがぁああああ!!まりさが いなげでばぁあああ!! せいっさいしてやるぅうう!!さいっきょの まりささまが、 さいっじゃくな まりさを せいっさいしてやるぅうう!!」×たくさん 「いなかものの ありすだななんて とかいはな ありすが せいっさいしてあげるわぁあああ!!!」×たくさん 「むきゅぅうう!!!いつわりの けんじゃは さっさと しになさい! しんの けんじゃである ぱちぇの めいっれいよぉおお!!」×たくさん 彼女達のストレスは頂点に達し、やがて罵り合いは殺し合いに変わった。 さなえとゲスれいむが飼いゆっくりなれたのは稀少種だからだ。 自分はゲスれいむは当然のこと、さなえよりも ゆっくりしている。 ゲスである れいむはともかく、 さなえよりも ゆっくりしているという根拠の無い自信をもっている ゆっくりたちはれいむの成功例を見て確信した。 稀少種になれば飼いゆっくりになれるということに。 青年は さなえのために れいむを救ったにすぎないのだが、彼女達はそのことを知らない。 ただ、れいむのように、同種属を全て殺せば稀少種になり、飼いゆっくりなれる。 誤った認識だが、思い込みの激しい ゆっくりである。 飼いゆっくりになるために、誤った方法を実行する。 それがどんなに ゆっくりできないことであろうとも、飼いゆっくりなれるという話は魅力的すぎるからだ。 ゲスである れいむに すらできたのだ。ゆっくりしている自分にできないハズがない。 彼女達はそう思い込み、殺し合いを続ける。 「っゆっぎゃぁぁぁあああ!!」×たくさん 「いっじゃぃいいいいいい!!」×たくさん 「やべ!やべどぉおおおお!!」たくさん 雑木林に ゆっくりたちの悲鳴がなり響く。 「っゆっぎゃぁああああああああ!!!も!もっど……っゆっぐりじだが……だ……」 やがて、まりさ種・ありす種・ぱちゅりー種がそれぞれ1匹づつになった。 「ゆばぁ~~ご!ごれで!!ごれで!!まりさは きしょうじゅなのっぜぇえええ!!」 「とかいばで、きじょうしゅな ありずは すぐに かいゆっぐりに なれるのよぉおおお!!」 「むっきゅぅうう!!まいにち まどうじょを よみふける ゆうがな かいゆっぐりらいふが はじまるわぁああ!!」 「ゆっぐりでぎる!!ゆっくじでぎる!!これで!!ごれでづいに!! づいにゆっくりでぎるよ!!!………………ゆっくりぃいいいい!!!」×3 勝ち残った3匹は、大量のゆっくりの死骸に囲まれた中で雄叫びをあげる。 長く辛い、永遠に続くと思っていた地域ゆっくりの生活から解放されると信じている 3匹は返り血(返り餡?)まみれで涙を流す。 『………おまえら……これは?』 そんな3匹の耳(?)に人間の声がはいってきた。 声の主は公園管理をしている市職員の男性であった。 「にんげんさん!!まりさは きしょうしゅなのぜ!かいゆっくりにするのぜ!!」 「にんげんさん!!ありすは きしょうしゅなのよ!かいゆっくりにしてね!!」 「にんげんさん!!ぱちぇ はきしょうしゅなのよ!かいゆっくりにしてね!!」 3匹は男性に向かって叫ぶ。 その顔は笑顔で、将来に対して何の不安もない顔である。 『………お前ら、何を言っているんだ?通常種だなんて、捨てるほどいるだろ?』 「ゆ?」×3 男性の言葉を聞いて、3匹の笑顔が泣き顔に変わる。 「なにを いってるのぜぇええ!!」 「とかいはな おめめで もっと よくみてぇえええ!!」 「このむれで ぱちぇは ぱちぇだけなのよぉおおおお!!」 「さいっじゃくな まりさは ぜんっぶ しんだのぜぇええ!!!」 「とかいはな ありすは ありすだけなのよぉおおお!!」 「ぱちぇは きしょうじゅでしょぉおおおお!!!」 泣きながら、3匹は叫んだ。同種属はもういない。だから、自分は稀少種だと。 『…………バカか。いや、悪い。ゆっくりだからバカだったな。 公園から出てみろ。ゆっくりだなんて、絶滅させたくてもできない程いるぞ。 そいつらはお前らと同じ通常種だ。』 「…………」×3 男性の言葉で、3匹が固まる。 『はぁ……公園の利用者から雑木林で ゆっくりの悲鳴が聞こえるって苦情で来てみれば…… お前ら、同族で無意味な殺し合いをしてたんだな。』 「どぼじでわかるのぉおおおお!!??」×3 『お前らの まわりの死骸を見れば分かるだろ。まぁ、いい。とりあえず、コレを喰え。甘いぞ。』 呆れ顔で男性は3匹の前に黄色い錠剤を置く。 「あまあまだぁあああ!!! むーしゃむーしゃ……ごっくん……しあわっせーー!!!」 人間から甘いものを直に貰うことは始めての経験である。 3匹は何も考えず欲望に忠実に錠剤を口内に納める。 「………ゆ?ゆっげぇえ……ぐ、ぐるじ…… っげっぼ!がっばぁ!!……あ……あんござんが……… げっぼ!っげっっぼ!!げっぼぉおおおおおおおおお!!!!」×3 笑顔の3匹は突然苦しみだし、餡子・カスタード・生クリームを吐き出す。 「っげっぼぉおおお!!!っげっぼぉおおおおお!!! っゆばぁああ……ど…どぼじで……げっぼぉおおお!!! ゆばぁ……ゆばぁ……ただゆっぐりじだい……だげなのに…… っげっぼぉおおお!!!も……もっどゆぐり……したか………た……」×3 3匹が食べた錠剤は、猛毒であるカプサイシンを飴でコーティングした毒餌である。 『はぁ……この群れは ゲスがいなくて割と上手くいっていたのにな…… れいむの数が極端に減っていたから特別に出産制限を解いたっていうのに、 同族で殺し合いやるだなんて ゆっくりって本当にわけが分からん。 ま、しょうがないか。ゆっくりだし。 どんな善良だって、ちょっとしたことでゲスになって勝手に滅ぶからな。』 男性が頭を掻きながら言う。 地域ゆっくりの群れにゲスが増えて利用者に迷惑をかけて駆除されたり、自滅することはよくあることである。 公園管理課の職員をしている男性にとって、地域ゆっくりの群れが滅ぶことは珍しいことではない。 『さっさと他の公園から地域ゆっくりをてきとうに連れてきて、掃除をさせないとな。』 他公園に暮らす地域ゆっくりの手配は面倒だが、仕事だ。 男性はブツブツ文句を言いながら、事務所に向かって歩き出す。 雑木林の中には、大量の ゆっくりの死骸だけが残った。 ------ あとがき 次回でラストの予定です。 過去作品 http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/3986.html
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〜ゆっくり達の生涯『冬篭り編』(前編)〜 第1話 〜ゆっくり眠れないまりさ〜 「ゆゆ〜♪ まりさ、はるさんはまだかな?」 「ゆ〜、きがはやいよれいむ。ふゆさんはゆっくりしてるからはるさんはまだこないよ。」 2匹のゆっくりが入り口を塞いだ木の洞の中で仲良くゆっくりしている。 2匹は成長途中であり、将来は夫婦となるであろうが現在のところ非常に仲の良い友達同士と言ったところである。 巣の奥にはキノコや木の実などの食糧が大量に蓄えられており、万全の状態で冬篭りを始めた事がうかがえる。 「ゆぅ〜おうちのなかはせまくておもしろくないよ・・・。」 「しょうがないよれいむ、ゆっくりはるさんをまとうね! す〜り♪ すーり♪ 」 まだ子供心が残るれいむをまりさが頬ずりをしながらなだめている。 ちなみにこのやり取りは本日5回目、所詮は餡子脳なので何気ない会話などすぐに忘れてしまうのだ。 そんなやり取りが繰り返されるうちに1日が終わろうとしていた。 「ゆぅ〜なんだかねむくなってきたよ、まりさおやすみぃ〜・・・z z z z z 。」 「ねてればはるさんはすぐにくるよ、おやすみれいむぅ〜・・・z z z z z 。」 次の日、先に目を覚ましたのはれいむであった。 意識がはっきりするとれいむはすぐに異変に気が付く。 「ゆゆ!まりさどこ!?」 隣で眠っていたはずのまりさの姿は無く、れいむは慌ててまりさの姿を探す。 しかし所詮は小さな洞の中、れいむはまりさの姿をすぐに見つける事ができた。 「ゆゆ? まりさなにやってるの?」 まりさは顔を大量に溜め込んだ食糧に突っ込みスヤスヤと眠っている。 れいむの声を聞きまりさの意識はようやく覚醒する。 「ゆぅ〜おはよぉ〜れいむ。きょうもゆっくりしようねぇ〜。」 このまりさ、まりさ種に多く見られる高慢な態度、いわゆるゲスの素質は微塵も持ち合わせておらず相方思いの良い ゆっくりであるのだが、一つ厄介な癖を持っていた。 それは・・・。 「ゆぅ〜まりさ、ゆっくりねむっててよね!もぅ、ぷんぷん!」 「ゆゆ!ごめんねれいむ、ゆっくりしてるとなんでかいつもこうなっちゃうの。」 そう、このまりさは寝相がとてつもなく悪いのである。 現在は冬篭りのため入り口はがっちり塞いでいるから大丈夫であるが、過去に何度も眠ったまま転がり巣の外で朝を 迎えたことがあった。 運が良かった事もあり捕食種に食べられずに無事ここまで成長する事ができていた。 「ゆ、そういえばあさごはんがまだだよ! はやくたべようね!」 「ゆゆ! そうだったね、はやくごはんをたべたいよ!」 れいむに責められ分の悪いまりさは朝食の話題を出し話題の転換を図った。 結果は予想通り、腹ペコのれいむはコロっとまりさの寝相についての不満を忘れ思考はご飯に乗っ取られてしまった。 「「む〜しゃ♪ む〜しゃ♪ ・・・・・しあわせ〜♪ 」」 2匹は食後のゆっくりタイムを満喫している。 そして、れいむはどこか聞き覚えのある言葉を発するのであった。 「ゆゆ〜♪ まりさ、はるさんはまだかな?」 「ゆ〜、きがはやいよれいむ。ふゆさんはゆっくりしてるからはるさんはまだこないよ。」 こうして昨日と同じ様なやり取りをして何気ない一日が過ぎていくのである。 しかし、そんな平和な巣穴に不幸な出来事が襲い掛かる。 「ゆぅ〜・・・ゆぅ〜・・・はるさん・・・はやくき・・・ゆぅ〜・・・。」 時刻は深夜、れいむは気持ち良さそうに眠っている。 まりさはと言うと毎度の如く巣穴の中をコロコロ転がりながら眠っている。・・・よく目が覚めないものだ。 「ゆぅ〜・・・まりさもっとゆっぐ!」 れいむは突然体に加わった圧力により目を覚ます。 そしてれいむは自らの目を疑う光景を目撃する。 「ゆぅ〜・・・だいすきだよぉれいむぅ・・・むにゃ〜・・・。」 まりさは寝ぼけたまま自らの体をれいむに押し付けており、しかもどこか気持ち良さそうな顔をしている。 「ゆゆ!まりさおきて!ゆっくりねむれないよ!」 れいむが必死に声を上げてまりさを起こそうとするが目を覚ます気配はなかった。 このまりさ、寝相が悪い事に加えて一度眠ったらなかなか起きないのである。 「ゆふふふ・・・なんだかきもちよくなって・・・。」 まりさの顔は次第に紅潮し、体を小刻みに振動させ始める。 まりさの行為の意味を知っていたれいむは血相を変えて騒ぎ出す。 「や、やめてまりさ! れいむまだこどもつくりたくないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」 れいむは必死にまりさから離れようとするが、きっちり押さえつけられているのに加え自らも少しずつ快楽に支配さ れ力が入らず逃れられない。 そして体をくねくねさせて抵抗するうちにれいむのリボンがほどけてしまう。 「ゆゆー! れいむのりぼん! 」 リボンがほどけ気がそれたのがいけなかった。 まりさは好機とばかりに更なる快楽を求めどんどん振動を強くしていく。・・・夢と現実の両方で。 「ゆふ・・・ゆふふふふ・・・んほぉぉおおおぉおぉおぉおお! ! ! 」 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!じにだぐない! じにだぐない! もっどゆっぐりじだいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !まだずっぎりじだぐないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」 「「すっきりー! 」」 まりさは満面の笑みで、れいむはこの世の終わりに遭遇したような表情で“すっきり”を迎えた。 れいむの頭から蔓が芽を出し、涙を浮かべ絶望の表情のまま黒ずんでいく。 まりさは“すっきり”して満足したのか何事もなかったかのようにスヤスヤと眠っている。 翌日、まりさは久しぶりにれいむに起こされずに目覚めた。 「ゆっふ〜〜〜! なんだかとってもすっきりしてるよ!」 軽く伸びをしてれいむの方へ目を向けるとまりさは愕然とする。 まりさの目には黒ずみ朽ちた物体が映っていた。 その物体の頭頂部からは緑の蔓が伸び先端に3つの小さな実が実っていた。 理解を超えている光景にまりさはフリーズしてしまった。 (ゆゆ? れいむはどこにいったの? なんでいないの? おうちのいりぐちはふさいでるよ? なんで? どうして?) フリーズしているまりさの目にある物が映りそれに釘付けとなる。 黒く朽ち果てた物体の横にいつも見ているれいむのかわいらしいリボンが落ちていた。 (なんでれいむのりぼんがおちてるの? ) リボンを見詰めているうちにまりさはある結論にたどり着く。 (ゆゆ!? ひょっとして・・・これって・・・) まりさの思考が間停止する。 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ! ! ! ! ! れいむ! れいむ! でいぶう ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! なんで!? どうして!? でいぶ! ゆっくりしすぎだよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! おぎでよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! いやだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! 」 黒く朽ち果てている物体がれいむであると理解したまりさは大声で泣き喚きだした。 もちろん自分が寝惚けてれいむとすっきりした事に気が付いてなどいない。 その時、泣き声が木霊する巣穴の中に一つの変化が訪れる。 プチッ! プチッ! ・・・・・プチッ! 朽ちたれいむに実った3匹のプチゆっくりが蔓から切り離され落下する。 地面に着地すると3匹は満面の笑みで産声を上げる。 「「「ゆっくりちていってね!」」」 プチゆっくりの産声を聞きまりさは我に返る。 まりさの目線の先ではれいむの忘れ形見である3匹のプチれいむが笑顔で飛び跳ねていた。 「れいむの・・・あかちゃん・・・? 」 声に反応したプチれいむ達とまりさの目が合う。 「「「おか〜しゃ〜ん、おなかちゅいたよ。」」」 この瞬間、まりさの餡子脳の大部分を占めていた悲しみが一気に喜びと母性に入れ替わった。 「ゆゆ! すぐごはんをあげるよ! まっててね! 」 まりさは急いでプチれいむ達が実っていた蔓の元へ駆け寄り食べやすいサイズに食い千切る。 「おちびちゃん! これがごはんだよ! ゆっくりたべてね! 」 「「「おか〜しゃん、ありがちょ〜♪ 」」」 プチれいむ達は目の色を輝かせてパクッと蔓に食い付く。 「「「む〜ちゃ♪ む〜ちゃ♪ ・・・ちあわせ〜♪ 」」」 (ゆゆ〜♪ とってもゆっくりしたおちびちゃんたちだね! れいむのぶんもおちびちゃんたちとゆっくりするからね!) まりさは3匹のプチれいむを見ながらこれから始まる幸福な時間に思いをはせるのであった。 その日の夜、巣穴の中は幸福で包まれていた。 「す〜り♪ す〜り♪ さすがまりさのおちびちゃんだね! とってもゆっくりしてかわいいよ! 」 自分がれいむを無理やりすっきりさせたなどと夢にも思っていないまりさは、既にれいむの事など忘れてプチれいむ 達とスキンシップをはかり幸福の絶頂にいる。 「おか〜しゃんくしゅぐっちゃいよ♪ 」 「いいにゃ〜いいにゃ〜♪ ちゅぎはれいみゅのじゅんばんだよ! 」 「ゆゆ! じゅりゅいよ! れいみゅもしゅ〜り♪ しゅ〜り♪ しちゃいよ! 」 4匹はとてもゆっくりとした時間を過ごしている。 しかし、幸せな時間というものは早く過ぎてしまうものである。 「ゆゆ! おちびちゃん、そろそろおねむのじかんだよ! 」 「「「まだねみゅくにゃいよ! もっちょゆっくりしちゃいよ! 」」」 プチれいむ達は大丈夫だと言い張るが既に目が何度も閉じかかっており、眠くて仕方がない事がうかがえる。 「ゆっくりねむらないとゆっくりしたゆっくりになれないよ。 おちびちゃんたちはゆっくりしたゆっくりになりたいでしょ?」 「「「ゆゆ! ゆっくりしちゃいよ! れいみゅはゆっくりねむりゅよ! 」」」 ゆっくりは“ゆっくり”と言う単語に非常に敏感であり、ゆっくりしたゆっくりを理想像とする。 故に賢い親はその理想像を利用して子供の躾に“ゆっくり”と言う単語をよく使用する。 「ゆ〜、やっぱりまりさのこどもはいいこだね! おちびちゃんたちのべっどはここだよ! 」 まりさの横には落ち葉のベッドが出来上がっていた。 昼間プチれいむ達のために一生懸命作った努力の賜物である。 ベッドを見るや否やプチレイム達は目をキラキラさせる。 「「「ゆゆ〜♪ とっちぇもゆっくりできしょうだよ! おか〜しゃんありがちょ〜♪ 」」」 プチれいむ達の賞賛を聞き、まりさは満更でもなさそうに照れている。 プチれいむ達は各々お気に入りポイントを決めると落ち葉を身にまとい眠る体勢に入る。 「おか〜しゃん、おうたうちゃって〜。」 「ゆゆ! れいみゅもおうたききちゃいよ〜。」 「うちゃって♪ うちゃって♪ 」 プチれいむたちの期待に応えてまりさは目を瞑るとゆっくりと子守唄を歌い始める。 「ゆ〜っく〜り〜〜ゆゆ〜ゆ〜ん〜ゆゆ〜ゆ〜ゆ〜ゆ〜♪ 」 人間が聞いていたら思わず拳が飛んできそうな歌声であるが、プチれいむ達は気持ちよさそうに夢の中へ旅立ってい った。 そしてまりさも幸福で満たされた笑顔のままゆっくりと眠りについた。 深夜・・・。 コロコロコロ・・・コロコロコロ・・・コロコロ「ぴぎゃ・・・。」・・・コロコロコロン・・・ コロコロコロ・・・コロコロ「ゆぎゃ・・・。」・・・コロコロコロ・・・コロコロコロリン・・・ 翌日、巣穴の中は絶望で埋め尽くされていた。 「なんでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛! ! ! どうじでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛! ! ! おちびちゃんがぶだりもづぶれてるのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !?おねがいおぎでよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! ! ! 」 まりさが気持ちよく目覚めると2匹のプチれいむが無残にぺちゃんこに潰されていた。 ご想像通り、深夜まりさの寝相の悪さによって運悪く踏み潰されてしまった2匹である。 残念なことに貧弱な餡子脳では自らが踏み潰したなどと考えは及ばず、まりさは物言わぬ潰れた饅頭となった2匹を 眺めひたすら泣き喚く事しか出来ない。 また、運良く生き残った1匹のプチれいむも熟睡していたせいでまりさが姉妹を踏み潰したなどと思い浮かぶ事無く、 居もしない犯人に怯えながら潰れた2匹に対して涙を流すのであった。 「ゆあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん! ! ! おちびちゃんゆっぐりじずぎだよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! ! ! 」 「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ゆっぐりできにゃいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」 その日、2匹は片時もゆっくりする事ができないのであった。 夜、まりさは追い詰められていた。 この状況に至ってもまりさは自身の寝相で2匹を踏み潰したなどど微塵も思っておらず、どうやって生き残ったプチ れいむを護ろうか悩んでいた。 「ゆぅ・・・このおちびちゃんだけはぜったいまもらないと・・・。」 まりさは貧弱な餡子脳をフル回転させて打開策を考えている。 「ゆゆ! いいことおもいついたよ! 」 そしてある名案を思いつくのである。その名案とは・・・。 ※エンディング分岐です。 プチれいむを口の中に隠す → A プチれいむを帽子の中に隠す → B A:プチれいむを口の中に隠す 「おちびちゃん! おかあさんのおくちのなかにはいってね! 」 「ゆゆ〜? おくちのにゃか? 」 まりさの意図を理解していないプチれいむは頭上に?マークを浮かべている。 「おかあさんのおくちのなかでねむればきっとあんぜんだよ! ゆっくりりかいしてね! 」 「ゆゆ! おか〜しゃんはてんしゃいだね! ゆっくりりかいしちゃよ! 」 大きく開けられたまりさの口の中にプチれいむは勢いよく飛び込む。 「ゆゆぅ、ちょっとくりゃくてこわいよぉ、おか〜しゃん。」 「ごめんねおちびちゃん、おかあさんがまもってあげるからがまんしててね。」 少し怖がっていたプチれいむであったが母親の口の中に居る安心感もあり、すぐに眠りにつく事ができた。 深夜、まりさは眠気と必死に戦いながらまだ起きていた。 2匹のプチれいむを潰した犯人を見つけるために徹夜する覚悟でいた。 「ゆぅ、ぜったいねむらないよ、おちびちゃんはまりさがまも・・・・・z z z z z 。」 しかし、遂に睡眠欲に負け眠ってしまった。 当然といえば当然の事である。 ゆっくりは三大欲求の誘惑に非常に弱いナマモノである。 自然界に生き、人間から特別な訓練を施されていないゆっくりがそれにあがなおうとするのは並大抵の行為ではなく、 まだ成体でもないまりさにとって到底無理な事である。 「ゆぅ〜・・・おか〜しゃんだいしゅ・・・むにゃ〜。」 まりさの口の中でプチれいむは安心しきった寝顔で眠っている。 しかし、一度下り始めた幸福から不幸への下り坂はそう簡単に終わらないのであった。 プチれいむは異変に気が付き目を覚ました。 コロコロコロ「ゆゆ! 」・・・コロコロコロ「おか〜じゃ! 」・・・コロコロ「もっぢょ! 」・・・ コロコロコロ「ゆっぐり゛! 」・・・コロコロコロ「ゆぎゅ! 」・・・コロコロ「ぴぎゃ! 」・・・ まりさの口の中でプチれいむは何度も壁にぶつかっていた。 理由は言うまでもなくまりさが転がりながら眠っているからである。 プチれいむは必死に悲鳴を上げてまりさを起こそうとするが、目を覚ます気配は微塵もない。 コロコロコロ・・・・・「ゆゆ?」・・・・・「とまっちゃの?」 突如まりさの動きが止まり、プチれいむも悲鳴を上げるのを止める。 しかし、口の中にいるプチれいむはなぜまりさが動きを止めたかまではわからなかった。 「ゆゆ〜、やっちょゆっくりねむれりゅよ。」 プチれいむが再び眠ろうとした時異変が起こる。 「ゆぅ〜・・・ゆふふ♪ おいしそうなごはんだ・・・むにゃ〜。」 「おか〜しゃん、れいみゅねむれにゃいよぉ。」 夢の中でまりさは大量のご飯を目の前にしている。 「ゆふ・・・ゆふふ♪ いっただっきま〜す・・・むにゃむにゃ〜。」 「ゆえ〜ん! ねむれにゃ・ゆぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! 」 夢の中で食糧にかぶりつく・・・現実でも同じ様に。 プチれいむは間一髪の所でまりさの歯をかわしていた。 しかし、口の中という足場が不安定で視界も暗い中で的確な行動が取れるはずもない。 「む〜しゃ♪ 「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! 」む〜しゃ♪ 「たべにゃいでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」しあわせ〜♪ 」 翌日、まりさは溜め込んだ食糧に顔をうずめた形で目を覚ます。 昨夜まりさが見た夢はおそろくはこれが原因である。 「ゆ〜っふ〜ん! おちびちゃんきょうもゆっくりしようね! おくちからゆっくりでてね! 」 まりさは大きな口を開けてプチれいむに口から出るように催促する。 しかし、プチれいむが飛び出す気配はなかった。 「ゆゆ〜? おちびちゃんどうしたの? 」 しかたなくまりさは口の中に感じるプチれいむであろう異物を慎重に吐き出す。 ペッ! ベチャ! まりさの目の前には唾液でベタベタになった赤いリボンが現れる。 昨日と同様にまりさの思考が停止する。 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) 〜5分経過〜 (・・・・・あのりぼん・・・・・おちびちゃんのだよね?・・・・・おちびちゃんはどこ?・・・・・) 〜10分経過〜 (・・・・・ひょっとして・・・・・まりさが・・・・・おちびちゃんを・・・・・たべちゃったの?・・・・・) 〜15分経過〜 (・・・・・あれ?・・・・・どこかで・・・・・おなじようなことが・・・・・あったよね?・・・・・) 〜20分経過〜 (・・・・・おきたら・・・・・おちびちゃんがふたり・・・・・いなくなってた・・・・・) 〜25分経過〜 (・・・・・れいむも・・・・・あさ・・・・・いなくなって・・・・・) 〜30分経過〜 貧弱ながらも餡子脳で必死に情報を整理したまりさはある結論にたどりつく。 「あ゛っ! あ゛っ! あ゛っ! ・・・・・ぜんぶばりざのざいなのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !? ゆぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! ごべんなざいごべんなざいごべんなざい! ! ! ぱっ! ぱっ! ・・・ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ っ ! ! ! ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ お お お お お お お お お お ! ! ! 」 普段使わない餡子脳をフル回転させたことに加え自らが犯した過ちに気が付き、それらの重圧に押しつぶされまりさ の心はついに壊れてしまった。 「ゆふふふふふふふふふふ! ゆはははははははははは・・・・・! 」 その日からまりさは溜め込んだ食料に口をつける事無く、眠ることも忘れ笑い続けるのであった。 〜春〜 長い冬を乗り越える事に成功したゆっくり達が巣穴から続々と顔を見せ始める。 まりさのいた巣穴には餓死したまりさの亡骸と大量に残された食糧という矛盾した光景が広がっていた。 こうしてれいむは強制すっきりにより、プチれいむ2匹は踏み潰され、1匹はまりさに食べられ、元凶であるまりさ は何も食べずに餓死し、各々の生涯を閉じたのであった。 B:プチれいむを帽子の中に隠す 「おちびちゃん! おかあさんのぼうしのなかにはいってね! 」 「ゆゆ〜? ぼうちのにゃか? 」 まりさの意図を理解していないプチれいむは頭上に?マークを浮かべている。 「おかあさんのぼうしのなかでねむればぜったいあんぜんだよ! ゆっくりりかいしてね! 」 「ゆゆ! おか〜しゃんはてんしゃいだね! ゆっくりりかいしちゃよ! 」 まりさは舌を出し、プチれいむはそれを踏み台にして帽子まで到達するとゆっくりと中に潜り込む。 「ゆゆ〜♪ ちょっとくりゃいけどゆっくりできしょうだよ♪ 」 「おちびちゃんはおかあさんがまもってあげるからね! またあしたいっしょにゆっくりしようね。」 プチれいむはすぐ傍に母親がいるという安心感もあり、すぐに眠りにつく事ができた。 深夜、まりさは居もしない犯人を見つけるために必死に眠気を我慢して起きていたが、結局睡眠欲に負け眠ってしま う。 「ゆぅ〜ゆぅ〜・・・だいすきだよ・・・・むにゃむにゃ〜。」 「ゆぅ〜・・・おか〜しゃんだいしゅ・・・むにゃ〜。」 プチれいむはまりさの帽子の中で幸せそうな寝顔で眠っている。 しかし、一度転落を始めた幸福から不幸への下り坂はそう簡単に止まる事はなかった。 「ゆぐ!」 プチれいむは突如体に加わった衝撃で目を覚ます。 「ゆぅ〜ゆっくりできにゃいよ〜おか〜・・・?・・・・・ゆゆ!おか〜しゃんがいにゃいよ! 」 現在プチれいむは地面に転がった帽子の中で横向きになっている。 まりさはと言うと帽子が脱げた事になど気づかないままコロコロ転がりながら眠っている。 帽子が傾いているためプチれいむはまりさの姿を確認する事ができず少し不安そうにしている。 「おか〜しゃんをさがしゃないちょ。」 プチれいむは這うようにして傾いた帽子から脱出を図る。 「うんしょうんしょ。」・・・コロコロコロ・・・「おか〜しゃ〜ん! 」・・・コロコロコロ・・・ 「うんしょうんしょ。」・・・コロコロコロ・・・「どこにいりゅにょ〜?」・・・コロコロコロン・・・ プチれいむが帽子の入り口に到達する。 「やっちょおしょとにでられりゅよ。」 ピョンッと外に飛び出した瞬間、プチれいむの目には転がりながら接近するまりさの姿が映っていた。 コロコロコロ「ぴぎゃあぁぁ! とまっちぇぇぇぇぇぇ! 」ブチュ!・・・コロコロコロ・・・ コロコロコロ・・・コロコロコロ・・・コロコロコロ・・・コロコロコロリン・・・ 迫り来る母親の巨体、それがプチれいむの見た最後の光景であった。 翌日、まりさは帽子が脱げた状態で目を覚ます。 「ゆ〜っふ〜ん! ゆゆゆ! まりさのたいせつなぼうしがないよ! どこいったの!?」 まりさは血相を変えて巣の中を見回す。 すぐに帽子を発見し安堵するが、近くに転がっているある物を見つけ表情を凍らせる。 まりさの目線の先には押しつぶされて物言わぬ饅頭となったプチれいむが転がっていた。 「あ゛っ! あ゛っ! あ゛っ! ・・・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! おぢびぢゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! なんでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!?どうじでづぶれでるのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !? ぜんぶばりざのぜいだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! ごべんでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! ばりざがねぢゃっだがらだあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! 」 ついに独りぼっちになってしまったまりさは潰れたプチれいむの横でひたすら泣き続けた。 〜1時間後〜 「いなくなったおちびちゃんおぶんもまりさはゆっくりするからね! 」 あっさり立ち直っていた。 幸い巣穴には1匹なら余裕で春を迎えられるであろう大量の食糧が蓄えられている。 まりさはゆっくりと春を待つのであった。 〜春〜 ガサゴソ・・・ガサゴソ・・・ガサゴソ・・・ヒョコッ! 巣穴からまりさが顔を出す。 「ゆゆ〜♪ やっとはるになったよ♪ これでゆっくりできるね♪ 」 まりさは尊い犠牲(?)により無事春を迎えることができた。 今となっては相方であったれいむや潰れて死んだプチれいむの事はほとんど記憶に残ってはいない。 「ゆっゆゆ〜ん♪ ゆっゆゆ〜ん♪ 」 まりさは希望に胸膨らませて春の森へ繰り出していった。 結局、最後までまりさは自分が原因でれいむやプチれいむが死んでしまった事に気付かなかった。 そして、当然寝相の悪さは直ってなどいない。 この先、まりさは再び気の合うゆっくりを見つけてつがいになるだろう。 そしてそのつがいとなったゆっくりはゆっくりできない生涯を送る事になるのであった。 第1話 〜ゆっくり眠れないまりさ〜 END 「そこまでよ! このすぺ〜すはぱちぇがいただいたわ! 」 なにやら変なのがわきました。 番外編 〜がんばれゆっくりぱちゅりー2〜 「むきゅ〜♪ おうちがかんせいしたわ! これでふゆがこせるわ! 」 現在ぱちゅりーは自分で地面に掘った巣穴の中に居る。 決して広くはないが、体の弱いぱちゅりー種が巣穴を1匹で完成させるのは非常に稀なケースである。 「むきゅ〜♪ ちかくにはたくさんしょくりょうがあるしかんぺきだ・・・。」 パラッ・・・パラッ・・・パラパラパラ・・・ドッシャ〜ン 「むぎゅー! 」 突如巣穴が崩れぱちゅりーは下敷きになってあの世へ旅立った。 少し考えればわかるものだが、体の弱いぱちゅりー種が掘れる場所など柔らかく崩れやすい場所に決まっている。 完成した時はぎりぎり形状を保っていたが、中でぱちゅりーが出した声がトリガーとなり崩壊してしまったのだ。 本来ぱちゅりー種は自らの知識を活かし他のゆっくりと共生することで生き延びる種である。 自らの豊富な知識に自惚れ他のゆっくりに近づこうとしなかったこのぱちゅりーに初めから未来など無かったのだ。 (むっきゅーーー! これじゃまえとおなじじゃない! なんでぱちぇだけこんなにすこしなのーーー! けほっけほっ。) 以前にも似たような事があった気がするけどTAKE2 「むきゅ〜♪ しょくりょうもあつまったしこれでふゆがこせるわ! 」 現在ぱちゅりーは老木の洞の中に居る。 洞の奥には色とりどりの秋の味覚が溜め込まれている。 体の弱いぱちゅりー種がこれだけの量の食糧を1匹で集めるのは非常に稀なケースである。 「しっかりいりぐちをふさいでっと、かんぺきだわ! 」 ぱちゅりーは完璧な計画に胸躍らせながらゆっくりと眠りについた。 ガクガクガクガクガク 大寒波が到来した翌日、ぱちゅりーは寒さに震えていた。 いかに洞の中とはいえ寒さをすべて緩和する事など不可能である。 「ざ、ざむいわ・・・も・もうだめ・・・むぎゅぅ・・・・・。」 寒さに耐えられなくなったぱちゅりーは敢え無くあの世へ旅立った。 ぱちゅりー種はゆっくり一皮が薄く、また中身が生クリームという事もあり寒さにも暑さにも弱い種である。 他のゆっくりと一緒に越冬し、肌を触れ合わせて体温を上昇させ生き延びるのがぱちゅりー種である。 自らの豊富な(ry (むきゅぅ・・・。) 中篇へ続く
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