約 1,509,206 件
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/2399.html
一週間後 律「ゆーいー!!いい加減にしろーー!!」 唯「ふ、ふぇ?」 律「ここんところ毎日のように寝てばっかりじゃないか!練習だってぼーっとしてるし!」 唯「ご、ごめん・・・」 澪「一体毎晩何してるんだ?」 唯「そ、それは・・・その・・・」 紬「唯ちゃん、私たちは唯ちゃんを心配してるのよ?」 梓「そうです!唯先輩にもしものことがあったら・・・私・・・」 唯「だ、大丈夫だよ・・・ちょっと・・・その・・・ゲームを・・・」 律「まぁ・・・そんなことだろうとは思ったけどさ」 律「とにかく、今日は帰ったら寝ること!じゃないと体壊すぞ!」 唯「わ、わかったよぉ・・・」 平沢家 唯「さすがに今日は寝ようかな・・・」 唯「りっちゃんにも怒られちゃったし」 唯「一週間以上、まともに寝てないしね・・・」 唯「それに、なんだか体中から鈍い痛みがするし・・・」 唯「今日はちゃんと寝て、明日からまたおばあちゃんに会いに行こう」 唯「元気な姿を見るのが嬉しいって言ってくれたんだしね」 唯「じゃ、おやすみなさ~い・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 翌日 コンコン 憂「お姉ちゃん、おはよう」 唯「ふあ・・・」 憂「・・・疲れてるみたいだけど、昨日はずっと寝てたんだよね?」 唯「うん・・・帰ってすぐ寝て・・・そのまま・・・・・・」 憂「本当?」 唯「ほんとだよ・・・」 憂「そう・・・じゃあ、ごはんできてるから、降りてきてね」 唯「うん・・・」 唯(12時間以上ぐっすり寝たのに・・・・・・なんでこんなに疲れてるんだろ・・・) 唯(それに・・・体の痛みも取れてない・・・) ―――― 律「・・・唯?」 唯「・・・何?りっちゃん」 律「昨日、ほんとにちゃんと寝たのか?」 唯「寝たよ・・・」 律「にしては、疲れてるというか、生気が無いというか・・・」 唯「そっかなぁ・・・」 梓「憂も昨日は、唯先輩ちゃんと寝たみたいだって言ってましたよ」 律「うーん、そっか」 唯「・・・」 平沢家 唯「ただいまー・・・」 唯「何でこんなに疲れてるんだろ・・・」 唯「でも、今日は夜はなんとしても起きなきゃ・・・」 唯「昨日会ってないしね・・・」 唯「夜まで寝てよう・・・」 唯「おやすみー・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 唯「・・・うーん」 唯「はっ!今何時!?」 唯「・・・夜の2時、ちょうどいい時間・・・」 唯「行かなきゃ・・・」 唯「いてて、やっぱり体中が痛む・・・」 ガタッ 憂「お姉・・・ちゃん・・・?」 唯「う、憂!?」 憂「ふわぁ・・・お姉ちゃん・・・どこ行くの・・・?」 唯「え、えと、ちょっとコンビニまで!」 憂「夜遅いし・・・危ないよ・・・」 唯「だ、大丈夫!憂は寝てていいよぉ」 憂「そう・・・気をつけてね・・・ふわぁ・・・」 唯「うんうん、じゃ、おやすみ~」 パタン 唯「・・・危なかったぁ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 唯「おばあちゃん・・・?」 「唯ちゃん・・・?」 唯「おばあちゃん、こんばんわ」 「こんばんわ、唯ちゃん。昨日は来なかったねぇ」 唯「ちょっと疲れちゃってて、ごめんね」 「あらあら、お大事にね」 唯「うん、ありがとう」 「天国に行ってもすることないしねぇ」 「こうして唯ちゃんとお話しするのが、楽しみでしょうがないんだよ」 唯「私も、おばあちゃんと話すこと、すっごく楽しみにしてるんだ」 唯「だから少しくらい無理してでも、おばあちゃんに会いたいよ」 「そうかい、それは嬉しいねぇ・・・」 唯「今日はもう寝てきたから、大丈夫だよ」 「それなら今日もたくさん、色んな話をしようねぇ・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 翌日 コンコン 憂「お姉ちゃん、おはよう」 唯「・・・おはよ・・・・・・」 憂「・・・大丈夫?お姉ちゃん」 唯「うん・・・大丈・・・うわっ」フラッ 憂「わわっ、お姉ちゃん!?」 唯「えへへ、ちょっと立ちくらみしただけ・・・ごめんね」 憂「お姉ちゃん・・・」 ―――― 澪「ゆ、唯、大丈夫か?」 律「唯、見るからに体調悪いぞ?一時間目体育だけど・・・」 唯「うん・・・大丈夫だよ・・・」 紬「唯ちゃん、無理しなくていいわよ。見学にしたら?」 唯「ううん、昨日だってちゃんと寝たから・・・」 唯「だから・・・大丈夫・・・ありがとね、みんな・・・」 澪「唯・・・」 ―――― 先生「今日はサッカーです。ペアを組んで、パスの練習からしましょう」 律「唯、やろうぜ」 唯「うん・・・」 律「・・・大丈夫か?ほんとに」 唯「うん・・・大丈・・・夫・・・・・・」フラッ ドサッ 律「!? 唯!?大丈夫か!しっかりしろ!!」 澪「唯!?」 紬「唯ちゃん!?」 先生「平沢さん!?・・・すぐに保健室へ!!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 先生「恐らく、貧血でしょう。安静にしておけば大丈夫です」 律「・・・良かったぁ」 先生「少なくとも今日は早退させましょう。朝から調子が優れなかったみたいだし」 澪「ここんとこ、ずっと調子が悪そうだったんで、風邪かなんかかもしれないです」 先生「そうかもしれないわね・・・。とにかく、家で寝ることが第一ね」 紬「唯ちゃん、ここのところ色々あって、疲れが溜まってたのね・・・」 先生「山中先生に頼んで、家まで送ってもらいましょう」 澪「さわ子先生呼んできますね」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ さわ子「はい、唯ちゃん。きっちり家まで送り届けたからね」 唯「さわちゃん・・・ありがとー・・・・・・」 さわ子「・・・どうしても苦しくなったら、救急車でも何でも呼びなさいね」 唯「うん・・・」 さわ子「じゃ、ちゃんと治してから学校に来てね」 唯「はーい・・・・・・」 ブロロロ..... 唯「・・・・・・夜まで、寝よう・・・」 唯「おばあちゃんに・・・会わなきゃ・・・・・・」 オカルト研究会部室 オカ研1「あれ・・・・・・・・・ない・・・・・・」 オカ研2「何が・・・?」 オカ研1「・・・反魂の法のノート・・・」 オカ研2「・・・・・・・・・鍵は・・・?」 オカ研1「ちゃんとかけてあった・・・でも中身がない」 オカ研2「あ・・・」 オカ研1「何・・・?」 オカ研2「反魂樹もない・・・」 オカ研1「えっ・・・」 オカ研2「これは一大事・・・」 オカ研1「心当たりは・・・?」 オカ研2「特になし・・・平沢さんが来た日から・・・触ってない・・・」 オカ研1「・・・平沢さんが持ち出した?」 オカ研2「・・・他に心当たりがない」 オカ研1「あの儀式は、呪いの儀式・・・」 オカ研2「決して・・・行ってはいけない・・・」 オカ研1「平沢さんに・・・聞きに行こう・・・」 オカ研2「うん・・・」 ―――― 律「よーし、今日の授業は終了!唯の見舞いにでも行くかー?」 澪「そうだな・・・」 オカ研1「あの・・・」 律「ん?おぉ、オカ研の二人じゃん、久しぶりー」 オカ研2「久しぶり・・・」 澪「久しぶり、二人とも」 紬「久しぶりね~、今日はどうしたの?」 オカ研1「平沢さんに・・・用事があって」 オカ研2「平沢さんはどこ・・・?」 律「あー、唯なら・・・今日は早退したよ」 オカ研1「えっ」 澪「体育の時間に倒れたんだ。最近調子も悪かったみたいなんだ」 オカ研2「調子が悪い・・・」 オカ研1「・・・平沢さんが、調子が悪かったのは・・・いつごろから?」 澪「えっ?・・・うーん、大体・・・一週間くらい前かなぁ?」 紬「そうね。寝不足っぽくて、ボーっとしてる感じで・・・」 オカ研1「・・・時間が・・・無いかも・・・」 律「時間?」 オカ研2「平沢さんは・・・恐らく・・・禁断の秘術に手を染めた・・・」 澪「禁断の・・・秘術・・・?唯の調子と、関係あるのか・・・?」 オカ研1「話すと・・・少しだけ長くなる・・・」 ――――――――――――――― 「・・・・・・・・・・・・い・・・ちゃん・・・」 「・・・・・・・・・ゆい・・・ちゃん・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 唯「・・・うーん・・・おばあ・・・ちゃん・・・?」 唯「・・・・・・はっ」 唯「・・・夢?」 唯「おばあちゃんが・・・呼んでた・・・・・・」 唯「行かなきゃ・・・おばあちゃんの・・・とこへ・・・行かなきゃ・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ パチ・・・パチ・・・ 唯「おばあちゃん・・・出てきて・・・」 「ゆいちゃん・・・・・・?」 唯「おばあちゃん!」 「唯ちゃん・・・こんにちわ」 唯「こんにちわ、おばあちゃん・・・はぁ・・・はぁ・・・」 「どうしたの、そんなフラフラで」 唯「えへへ、実はちょっと風邪引いててね、体も痛いんだけど・・・おばあちゃんに会いたくてお昼なのに呼んじゃった」 「そう・・・それは嬉しいねぇ」 4
https://w.atwiki.jp/talesofdic/pages/25420.html
にんじゃがしら(忍者頭) 概要 TOPなりきりダンジョンに登場したコスチューム。 登場作品 + 目次 TOPなりきりダンジョン TOPなりきりダンジョン(小説版) テイルズオブファンダム~旅の終わり~ TOWなりきりダンジョン2 ネタ 関連リンク関連項目 被リンクページ TOPなりきりダンジョン にんじゃの おかしら。かしらかしらおかしらかしら? 忍者系コスチューム。ディオ専用。最強コスチュームと名高い。 ▲ TOPなりきりダンジョン(小説版) 4354年の精霊の森からディオはこのコスチュームを着ている。このまま最後まで着通した。これが正攻法です。 最終決戦ではディオが忍者頭のジャポンソードを使いながら、時空剣技を放っているが、これはクレスのコスチュームを着ているのではなく、忍者頭の能力のままクレスの一番弟子として鍛え上げられた成果を発揮しているものと思われる。 ▲ テイルズオブファンダム~旅の終わり~ 4304年の黒騎士団壊滅作戦のためにディオが着たコスチューム。「雷電・改」という技でアドネード親子を襲撃しようとした黒騎士団5名を気絶させた。 クレス達が地下墓地でダオスを叩く作戦の際は棺の封印を解くのに必要なペンダントをこのコスチュームで調達した。 ▲ TOWなりきりダンジョン2 元素属性の忍者系コスチューム。「ニンジャがしら(ニンジャ頭)」。 黄色い装束をまとった「ニンジャ」。 忍者系コスチュームを「てっこうせき」で変化させるか、元素属性の服を「くない」で変化させると、この服になる。 ボーナスアビリティは「がんじょうさアップ」。 成長値は最大HP+50、最大TP+9、攻撃力+8、防御力+6、知力+6、素早さ+12。 特殊な服変化は以下の通り。 使用アイテム 変化後の服 条件 せきしょうせき かえんニンジャ 無し りょくしょうせき アラシ フリオ限定 カマイタチ キャロ限定 せいしょうせき きりがくれ フリオ限定 つなで キャロ限定 きしょうせき つちぐも 無し ししょうせき じらいや フリオ限定 くのいち キャロ限定 はくしょうせき ふうまし 無し こくしょうせき おんみつ スティールソード けんごう くろおび てっけん ロングボウ ごうきゅうへい きょうてん ビショップ れんきんじゅつしょ ウィザードロード フリオ限定 ウィッチロード キャロ限定 カギあけセット トレジャーハンター 無し ダンスシューズ まいひめ キャロ限定 じしょ ぶつりがくしゃ 無し にんとうちざくら すず キャロ(Lv.15以上)限定 ▲ ネタ ▲ 関連リンク 関連項目 被リンクページ + 被リンクページ システム:TOPなりきりダンジョン システム:TOWなりきりダンジョン2 システム:けんごう ▲
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/2008.html
19:これマジで死んじゃう何分前って奴なんじゃないの? 俺、アーネストと浅井うららさんは、廃墟になった病院(医院)に着いた。 そして、うららさんは診察室跡に入るなり俺に診察ベッドの上に寝るよう言った。 俺は言われた通り、仰向けに寝たんだ。 「診察始めまーす」 「え…?」 そう言うなり、うららさんは、俺の股間を撫で回し始めた! えええ! 待って、ちょっと、嘘でしょ、まさかこんな。 「う、うららさ…!?」 「じっとしてて。まずはモノを見ないと」 「モノって、あっ、あん…」 絶妙な手つきに俺はすぐに快感を感じ始めてしまう。ナニが収納されているスリット周辺を、 優しく撫でられるだけで電気が走る。やばい、凄く気持ち良い! そ、そんなのされたら、俺、すぐ…あ、もう、無理、固くなっちゃうよぉ! 「おっ! 出てきたわね…アーネスト君の息子が」 「うううううっ、は、恥ずかし…」 「うわぁ、凄……大きいね…立派だよ……太くて硬くて…長くて…あはっ、ビクビクしてるね」 !! やめ、あ! 触っちゃ駄目だって、マジ、無理! 無理いいいいいいあああああああああ!!!!! 「ガアアアァァァアアァアアアアァアアァアアアアアァア!!!!」 …… …… ああ……。 気が付いた時には真っ白な液に塗れたうららさんがいた。俺の腹も白い液で汚れていた。 なのに俺の愚息は固さを失わないどころがさっきよりも大きくなってるような気がする。 いや、っていうかさ、俺…あ!? お、オ○ニー以外で、い、イっ、 「凄い量ねぇ、アーネスト君、溜めていたの?」 「い、や、その」 「こんなに溜めていたら身体に悪いわ。私に任せて」 「いや、あの、任せるって、え? あ」 うららさんが俺の目の前で服を脱ぎ始めた。 嘘、マジで…そりゃ、こんな綺麗な人と出来たら良いなって思ったけど、まさかこんな簡単に、叶うの? 今までヤりたいと思っても全く出来なかったのに、こんな簡単に。 いや、嫌じゃないぞ。嫌じゃないけど。 そうこうしている内にうららさんは裸になってしまった。靴は履いているけど。 30歳とは思えない、瑞々しい肌と、柔らかそうなおっぱい、そして……ああ。 身体が、熱い…発情してきた…俺も…本能、が、首をもたげ……て。 「…アーネスト君、可愛い」 「うらら、さ……」 診察ベッドの上に乗ったうららさん、が、俺の、肉槍の上に、自分の股間が来るようにしている。 夢の、夢にまで見た、光景……! 「力抜いて…行くよ?」 …… …… あ。 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!! ◆◆◆ 「…ちょっと見てるのも良いかもねぇ」 性的な意味で阿鼻叫喚となっている診察室を覗きながら、片山美咲は己の秘部をまさぐっていた。 【朝/E-2廃医院一階】 【♀01番:浅井うらら】 [状態]全裸、興奮、快感、アーネストと行為中 [装備]コルトローマン(6/6) [持物]基本支給品一式、.357マグナム弾(18)、ワルサーカンプピストル(1/1)、26.6㎜榴弾(3) [思考・行動] 0:殺し合いには乗らない。妹のさららを捜す。 1:アーネスト君を(ry [備考] ※片山美咲には気付いていません。 【♂01番:アーネスト】 [状態]興奮、発情、快感、浅井うららと行為中 [装備]チェーンソー(バッテリー残り100%) [持物]基本支給品一式 [思考・行動] 0:殺し合いをする気は無い。 1:うららさ(ry [備考] ※片山美咲には気付いていません。 【♀05番:片山美咲】 [状態]健康、興奮、快感、自分を慰めている [装備]S WM29(5/6) [持物]基本支給品一式、.44マグナム弾(12)、イジェマッシMP-443(17/17)、MP-443予備マガジン(3)、サバイバルナイフ [思考・行動] 0:殺し合いに乗る。優勝狙い。誰であろうと容赦しない。 1:診察室の二人(浅井うらら、アーネスト)の行為が終わったら、二人を殺すつもり。 [備考] ※特に無し。 018:部外者はモニタ見ながら拍手喝采 目次順 020:素晴らしきこの世界 003:保健医の女とドラゴン…どう言う組み合わせだ 浅井うらら 027:夢を飾り眠る 003:保健医の女とドラゴン…どう言う組み合わせだ アーネスト 027:夢を飾り眠る 014:奪うだけ 片山美咲 027:夢を飾り眠る
https://w.atwiki.jp/sundayrowa/pages/182.html
どじふんじゃった!(前編) ◆AJINORI1nM 上空二十メートル。 芳野ととらの二人は、地図の端へ向かって移動していた。 とらが空を飛び、芳野がとらの背中に乗っている状態だ。 下は一面の海面で、陸地は遠くなってしまった。 「ねえねえとらちゃん、もっととらちゃんの武勇伝を聴かせてよ」 「ふん、仕方ねえなあ。それじゃあ次はこの話を聴かせてやるか」 地図の端へと到達するまでの間、芳野はとらからできるだけ多くの情報を引き出そうとしていた。 とらの話から、とらに関する事や、何かお宝の情報が得られないかと思ってのことだ。 (光覇明宗の総本山の場所は聴きだせたし、鎌鼬の傷薬ってのも高く売れそうね。まさかこれだけのお宝情報が手に入るなんて夢みたいだわ! ここに連れてきてくれたことをブラックに感謝したいくらいよ!) とらの話を聴いている芳野は上機嫌だった。 ここから出たら、早速それらの値打ち物を手に入れに行かなくては。 「うふふふふ」 「急に笑い出してどうした?」 「あ、いや、なんでもないなんでもない! ほら! 話を続けてちょうだい!」 「あ~? おかしなやつだな。まあ、いいか。それでよう、わしは飛頭蛮のやつらを──」 とらが話を続けようとした時である。 二人の首輪から、警告音が鳴りだした。 「な、なんだあ!?」 『会場外へ近付いています。会場外へ近付いています。これ以上進むのは危険です。今すぐ引き返してください。 繰り返します。会場外へ近付いています──』 二人の首輪から、警告音と共に機械音声が流れる。 これ以上進むと危険だという警告だ。 二人はその場で動きを止めた。 「とらちゃん、まさかこのまま進んだりしないわよね? 私達、首輪を付けられてるのよ? とらちゃんは体を真っ二つにされても平気かもしれないけど、私はそうじゃないの! それに、多分何か仕掛けが施してあると思うの。いくらとらちゃんでも、この首輪が爆発したら死んじゃうと思うわ」 「……ふん、これ以上進むなってか。それじゃあ試しにこの先がどうなっとるか、確認してみようじゃねえか」 「確認って……え? とらちゃん!?」 とらは、地図の端に当たる目の前の空間を見据える。 そこから先は海が広がるばかりで、水平線まで見ることができる。 しかし、地図の端の場所からは見えない何かの存在が感じられた。 体に力を込めると、とらは前方に向かって体から雷撃を放った。 「きゃっ!」 「だいじょうぶだ、おめえが雷を浴びないようにしてあっからよ!」 とらから放たれた雷撃は、何もない空間を走る。 そして、二十メートル程進んだところで、壁に阻まれたように平面状に爆散した。 飛び散った雷撃が、一瞬だけ辺りに光をもたらした。 「やっぱりな、結界で行く手を阻んでやがるぜ。こりゃあナガレかしぐれ辺りを見つけねえと、ここから出るのは難しいかもなあ」 「け、結界ぃ!?」 続いて、とらはその大きな口から炎を吐き出す。 すると、炎も雷撃が阻まれた地点と同じ場所で行く手を阻まれ、上空に向かってその動きを変えていた。 どうやら、地図の外へ行けないように、見えない壁のようなものが展開されているらしい。 海面を見てみれば、ある一定の場所で波がその動きを変えている。 外から来る波は、その場所に到達すると壁にぶつかったように飛沫を上げ、内側の海面は外の波など知らないという風に小さく揺れていた。 恐らく、そこが地図にある境界線なのだろう。 ここに集められた者達は、見えない壁によって閉じ込められている状態なのだ。 (結界……。結界かあ。獣の槍を使えば、なんとかなるのかしら? でも、取りだしたら持ち主の潮とかいう子の所に行っちゃいそうだし、 その子に使わせるとしても、その子から獣の槍を取り返すのは面倒そうね……うーん……) 悩む芳野は、とらの話に出てきた参加者の一人を思い出した。 とらは言っていたではないか。 「こりゃあナガレかしぐれ辺りを見つけねえと、ここから出るのは難しいかもなあ」、と。 「あ、とらちゃんとらちゃん。さっき言ってたナガレとかしぐれって人なら、この結界をなんとかしてくれそうなの?」 「あ? ああ、まあわしよりはあいつらの方が結界には詳しいだろうからな。こんな面倒くせえもんは、あいつらにまかせときゃ良いだろ」 それを聴き、芳野は心の中でガッツポーズをとった。 (よしっ! それなら獣の槍を手放さずにここから脱出できるかもしれないわ! あのブラックって奴が、ここに連れてきた者達に破られるような結界を張っているとは思えないけど、頼ってみる価値はありそうね。 ダメな時は、別の脱出方法を考えるってことで) ナガレやしぐれというのは、名簿にあった秋葉流と蒼月紫暮のことであるのはわかっている。 とらの話から、その人となりも把握済みだ。 自分のようなか弱い女の子を襲うような者達ではないようだし、利用するだけ利用してしまおう、と芳野は考えていた。 「ねえ、そろそろ陸の方に戻らない? 結界について調べるなら、海の上よりも地に足着いた所の方が良いと思うわ」 「そうだなあ。この首輪から出る声もうるせえし、戻るとするか」 芳野の提案に同意し、とらは反転すると陸に向かって飛び始めた。 会場の端から遠ざかると首輪の警告音はしなくなり、波の音と風を切る音しか聞こえなくなる。 芳野が再びとらから話を聴こうと口を開くより先に、とらの口から声が漏れた。 「ん!?」 とらの目は夜の闇でもよく見えるし、聴力も優れている。 暗闇の中、とらは何かが高速で飛ぶ音を耳にした。 音のする方を見れば、何かが海に向かって飛んでいるのが目に入った。 金色に輝くそれは、遠くの海面へと突っ込むと、盛大な水柱を上げる。 「今の……何?」 「わからん」 金の流星は、芳野にも見えた。 流星が海面に突撃した地点までは距離があるが、それほど離れてはいない。 「と、とらちゃん! あそこ! あそこ行ってみましょう! 何があるか見てみたいわ!」 「わかった! わかったから背中で飛び跳ねるな!」 芳野の目は、遺物や金目の物を見つけた時と同じものになっていた。 金色に光る流星。 きっと値打ち物に違いない、と。 それが、まさか参加者であるとは夢にも思っていない。 (もしも海に沈んじゃってたらそれまでだけど、場所くらいは頭に入れておかないと!) 一人と一匹は進行方向を変え、巴武士とゼオン・ベルが落下した海上へ向かって進んで行った。 ◆ ◆ ◆ 「お? ガキかあ?」 「子供……?」 目的の場所へと辿りついた芳野ととらは、海面に浮かぶ一人の子供を発見した。 銀色の髪に銀色のマント。 リュックを背負っていることから、参加者の一人なのだろう。 手には髪やマントと同じく銀色をした大きめな本を握っている。 海上には、この子供以外に何も浮かんではいなかった。 「けっ。まずそうなガキだなあ。……いや、この力……。あのガキ、化生の類か?」 「え? あの子もとらちゃんみたいな妖怪ってこと?」 「ま、少なくともニンゲンじゃねえのは確かだな」 とらは、海上に浮かぶゼオンからただならぬ気配を感じ取っていた。 人でないのは確実だろうが、妖怪の気配とは何かが違う。 背中にはよしのも居ることだし、迂闊に近付くのは危ないだろうと、少し離れた所で様子をうかがう。 (とらちゃんと同じ未知の生物? でも、どう見ても人間の子供にしか見えないわね。……一応髪の毛の数本くらいはいただいておこうかしら?) 芳野は、また現れた未知の生物の存在に瞳をぎらつかせる。 とらに加えて、これは貴重な収穫だ。 それに、先程の流星についても何か知っているだろう。 早く情報を訊き出したいという気持ちが、芳野を突き動かす。 「とらちゃん、あの子にさっきの流星の事とか訊きたいし、早く近付きましょうよ!」 「なに言ってんだおめえ。あいつがわしらに襲ってくるようなやつだったらどうすんだよ?」 「何びびってんのよ! 相手は子供じゃない! それに、たとえ襲ってきたって、とらちゃんが私を守ってくれるんでしょ?」 「誰があんなガキにびびるか!! ……ったく、どうなってもわしは知らんからな? 海に落ちんよう捕まっとけよ!」 とらは悪態を吐きながらも、尾で芳野を支えながら海上に浮かぶ少年へと近付いて行く。 さっき大声を出したせいか、少年はこちらに気が付いたようで、近付いてくる芳野ととらへ顔を向けていた。 こんな海のど真ん中から助け出せば、話の一つくらいは聴けるでしょ、と高を括っていた芳野だったが、 そんな甘い相手ではないことを、その身をもって体感することになる。 ◆ ◆ ◆ 海上に浮かぶゼオンは、近付いてくる者達を見て歯を軋ませた。 虎のような魔物と、その背中に乗る人間。 先程叫んでいた声は、波の音と距離があったせいで正確に聴きとる事はできなかったが、 自分を嘗めている(なめている)雰囲気が感じ取れた。 (先程の人間に加えて、こいつらも俺を侮辱するか!) いつもなら、相手の実力も計れぬ愚か者と気にすることもないが、 自分の力を見せてもなお侮られる(あなどられる)屈辱を味わったばかりである。 怒りはまだ治まっていない。 その上、再び己を下に見る者が現れたとあっては、その怒りは膨れ上がる一方だ。 ただでは済まさない。 この雷帝ゼオンを侮辱するとどうなるか、その身をもって思い知らせてくれる! 「……へっ、ガキのくせしてこれほどの殺気を放つたあな。おどろいたぜ」 とらは、ゼオンから発せられた凄まじい殺気を感じ取った。 そこから、この子供が今まで戦ってきたどの妖にも引けを取らない力を秘めていることを理解する。 いつもならば、とらに殺気を放つような奴は八つ裂きにしてやるところではあるが、背中には芳野が乗っている。 下に降ろそうにも、一面に海が広がるばかりで、陸まではまだ遠い。 芳野が泳げるかはわからないが、海水で塩辛くなるのは、美味そうな食事を台無しにするようで気が引けた。 ゼオンとはまだ距離がある。 離れるならば今の内だろうと、とらは空中で動きを止めた。 「ちょっととらちゃん! 急に止まってどうしたのよ!」 「やかましい! おめえはあいつと話しをしたいんだろうが、あのガキは話し合いに応じる気はないらしいぜ。 おめえが海に落ちても良いってんなら、近付いてやっても良いけどよお?」 「それでも良いわ! まずはお宝の情報が最優先よ! ほら、さっさと近付く!」 「ハア!?」 おかしな奴だとは思っていたが、ここまでおかしなニンゲンも初めてだ。 別によしのを背負ったまま戦っても勝てる自信はあるが、よしのを無傷で勝てるかと訊かれると、正直分が悪いとも思う。 ここは、背中でうるさく喚かれようと離れるのが良いだろうと、とらは進行方向をゼオンから陸へと変更した。 「どこ行こうとしてんのよ! そっちじゃないわよ! あっち! あの子の所に行きなさい!!」 「髪を引っ張んじゃねえ!!」 芳野はわーわーぎゃーぎゃーととらの背中で暴れている。 とらはそんな芳野を落とさないようにしているが、流石に堪忍袋の緒が切れるのも近い。 なんでこんなやつの心配をせにゃあならんのだ。 陸に向かうのを止め、銀髪のガキに近付こうかと気持ちを切り替えそうになったその時だ。 銀髪のガキ、ゼオンの殺気が一層膨れ上がったのを感じ取った。 その瞬間、とらはゼオンの方へ振り向いた。 見れば、海上に浮かぶゼオンの体を、その身に纏うマントが包みこんでいるところだった。 ゼオンの体をマントが包みこむと、マントごとゼオンの姿が消え去った。 「あァ!?」 そして、消え去ったはずのゼオンがとらの目の前に姿を現した。 とらとの距離はわずか三メートル足らずだ。 「チィ!! 瞬間移動をつかいやがるのか!!」 「ザケル!!」 ゼオンの叫びと共に右手に持つ魔本が発光し、その左手から雷撃が発せられる。 手加減はしていない。 消し炭にする気持ちで一撃を放つ。 とらはその雷撃をまともに浴びることとなった。 芳野が悲鳴を上げ、とらの背中に身を隠す。 だが、その行為にどれ程の意味があるだろうか。 雷撃はとらの体を走り抜け自分にも届くはずだ。 しがみ付く背から離れ海に逃げようとしたが、とらの尾が体に絡み付いているため離れることができない。 芳野は襲い来るであろう衝撃に目を瞑った。 「小僧、なかなかやるじゃねえか。だがよう」 しかし、芳野に雷撃が届くことはない。 代わりに届いたのはとらの声だ。 とらは雷獣とも呼ばれる雷を操る妖である。 故に、とらは電撃や雷撃といった攻撃との相性が非常に良い。 ゼオンの放った雷撃がとらの耐久を下回っていたこともあり、とらは背負う芳野に雷撃を伝えることなくその身に受け止めることができたのだ。 「そんな雷でわしに挑もうなんざ百年早いわ!!」 お返しとばかりにとらの体からゼオンに向かって雷が放出される。 制限下にあるとはいえ、その威力はゼオンのザケルを上回る。 ゼオンは迫りくる雷に対して、自らのマントでそれを防いだ。 「とらちゃん! あの本を奪うのよ!」 「わかっとるわ!!」 放たれた雷の閃光が晴れた時、とらは既にゼオンに肉薄していた。 同じ雷を操る者同士だ。 今の雷で銀髪の子供を仕留められるとはとらも考えていない。 雷は目眩まし(めくらまし)……と攻撃された仕返しを兼ねて放ったものだったのだ。 本当の狙いは子供の持つ銀色の魔本。 あの本が光輝き、そして呪文と共に子供は雷を発した。 芳野もとらも、その一度で子供の持つ本が攻撃の要であることが推察できたのだ。 芳野はトレジャーハンターとしての経験から。 とらは幾度となく繰り広げた戦いの経験から。 自分の推察が正しいことを確信していた。 「ザケルガ!!」 狙いが本と分かっていて、何も行動しないわけがない。 発光する魔本。かざす左手。 ゼオンが呪文を言い放つと同時に、とらに向けられた左手から一筋の光線のような、一直線に伸びる雷撃が飛び出した。 雷の力を拡散しないように収束し、高密度の状態で放つ術だ。 ザケルガは雷撃による熱、衝撃に加えて物理的な貫通力も有している。 相手が雷に耐性がある魔物だろうが、この術ならばその体を貫くことができる。 とらは身を捻る(ひねる)が、至近距離から放たれた攻撃だったため、完全に回避できず脇腹を貫かれてしまった。 「きゃあ!」 ザケルガはとらの体に穴を開けると、芳野の真横を通り過ぎた。 とらが身を捻らなければ、とらを貫通したザケルガは芳野の体も通り抜けていたことだろう。 「とらちゃん、大丈夫!?」 芳野が尋ねるが、とらは答えない。 ゼオンは追撃をしようと再びとらに左手を向ける。 しかし、その手はとらの右腕に掴まれた。 腹部を貫かれても尚、とらはゼオンへの接近を止めてはいなかったのだ。 「言っただろ、わしは体を二つに裂かれようが動けるってよう!!」 芳野へ返答すると同時に、とらの髪の毛がまるで生物のように動きだし、ゼオンの全身を絡め取った。 「ラウ……!!」 ラウザルクで髪の毛を振り払おうと、ゼオンが口を開いたその時だ。 とらの髪の束が開いた口内に侵入した。 髪はゼオンの口を塞ぎ、喋ることを、呪文を唱えることを不可能にする。 ゼオンは口内の髪の毛を噛み千切ろうとするも、髪の毛は細く噛みにくく、 頭を動かして引き千切ろうにもその動きを他の髪の毛によって邪魔されてしまう。 そのためゼオンは体に絡み付いた髪の毛を、そして掴まれた腕を振り解こう(ふりほどこう)ともがいた。 右腕は魔本を掴んでいるせいで振るうことしかできないが、何も持たない左腕ならばこの邪魔な髪を掴み引き千切ることができる。 ゼオンは左腕を動かすべく力を込めた。 「こいつ! なんつう力だ!」 一体この小さな体のどこにこんな力があるのか。 力には自信のあるとらであったが、ゼオンの力に少々押され気味だ。 この拘束が解かれるのも時間の問題かもしれない。 何か呪文を唱えようとしているのか、ゼオンの持つ魔本は輝きを放ち続けている。 「チッ! しょうがねえ! 先にこいつの本を燃やしちまうぜ!!」 「!?」 「え、ちょ、とらちゃん!?」 ゼオンと芳野に緊張が走った。 見れば、とらの口内には赤い炎が見えている。 芳野はとらの背中を叩いて、叫び、とらを止めようとしているが、とらはそれを無視している。 とらの目はぎらつき、今にも炎を吐き出しそうな雰囲気だ。 不味い、とゼオンは思った。 現在掴まれている左腕をとらの拘束から振り解く事は可能だろう。 だが、とらもそれなりに力が強く、振り解くには時間がかかってしまう。 それまでの間、髪の毛に絡み付かれ動きにくい状態で、放たれようとしている炎から魔本を守り通すことはできるだろうか。 ラウザルクを唱えればこのような拘束など簡単に解いてみせるが、今は呪文が唱えることを妨げられている。 魔本は王を決める戦いにおいて最も重要なものだ。 それを失うということは、王への道を失うのと同等の意味を持つ。 自身を犠牲にしてでも守り通さなければならない。 とらの口から、灼熱の炎が吐き出された。 拘束は未だ振り解けていない。 ゼオンは躊躇うことなく、右手に掴む魔本を炎の魔手より逃がすために放り投げた。 魔本はゼオンの手から離れ、炎はさっきまで魔本を掴んでいたゼオンの右腕を焼き焦がす。 ゼオンは苦痛に顔を歪めたが、声を漏らすことはなかった。 「とらちゃん! あれ!! あの本を取って早く!!!」 放り出された本を見て、芳野はとらの肩から身を乗り出した。 今にも魔本に向けて飛び付きそうな勢いだ。 とらはそんな芳野を左手で背中にへと押し戻すと、伸ばした髪を動かし放り出された魔本を絡め取る。 「危ねえじゃねえか!! 何考えてんだおめえはよう!! ……ったく、ほら、これでいいのか?」 とらは髪に絡め取った魔本を引き寄せると、芳野へと渡した。 「そうよこれよ! これが魔術の核に違いないわ! ……初めて見る文字ね……あれ? この色の変わった部分が読める。読めるわ!!」 芳野は手に入ったお宝に歓喜している。 とらはそんな芳野を見て飽きれていた。 だが、気を緩めるわけにはいかない。 ゼオンの込める力が一層強くなった。 向けられる殺気が膨れ上がっている。 ゼオンの双眸(そうぼう)には、憎悪と怒りが色濃く映っていた。 魔本を手放し自由になった右腕で絡み付く髪を掴み取り、それを一気に引き千切る。 口に侵入している髪も一緒に引き千切り、口内に残った髪を吐き出す。 「貴様ら……許さんぞ……」 憎悪の籠った(こもった)低い声をゼオンは発した。 巴武士に侮られた怒りが、右腕を焼き焦がされた怒りが、そして何より魔本を奪われた怒りがゼオンに充満していた。 「この雷帝ゼオンを虚仮(こけ)にしたこと、死んで悔いるが良い!!!」 叫ぶと、ゼオンは左腕の拘束を振り解いた。 もう、ゼオンの動きを妨げるものは何もない。 その憎悪の籠った瞳を見て、やばいと芳野の本能が告げた。 あの雷帝ゼオンとか言う子供は間違いなくこの本を狙ってくる。 本の影響かとも思ったが、どうやら素で身体能力が常軌を逸しているらしい。 ゼオンの動きでそれがわかった。 では、どうするか。 芳野の右手には『持ち主に魔術を行使させる遺物(オーパーツ)』が握られている。 ゼオンの行動から見て、どうやらこの本を持ち記されている呪文を唱えると使用者の手から雷の魔術が放たれるらしい。 ならばと、上半身をとらの肩の上に乗り出させ、左腕をゼオンへと向ける。 流星のことを訊かなくちゃいけないけれど、このまま暴れられても困る。 あの自在に動くマントも欲しいところだ。 このなんだか強そうな呪文を使って、一時的に気絶してもらおう。 芳野の持つ魔本が輝き始めた。 「ソルド・ザケルガ!!」 さあ、どんな魔術が出て来るの? 期待の込められた芳野の目に映ったものは、自身の左手から放たれる雷の魔術ではなく、ゼオンの手に突然現れた雷の大剣だった。 銀色の本は奪った。 だから、ゼオンは魔術を使えないはずだ。 そう思っていた二人の目の前には、しかし魔術が行使されたゼオンの姿が確かにあった。 「え?」 「愚か者が!!」 巨大な雷刃が振るわれる。 とらが回避行動に移るが、至近距離、そして予想外の出来事だったために避けきれなかった。 魔本は自分では燃やせない。 そのルールにより、例え『ソルド・ザケルガ』が魔本に当たったところで本は燃えないと、 躊躇う必要のない、真横に思い切り振るわれた大剣は、とらの体を半ば(なかば)から上下に分けた。 脚の太腿に辺りが寒くなって、芳野は下を見る。 温かかったとらの下半分が無くなっている。 だから、夜風に当たって太腿が冷えたのだろう。芳野はそう思った。そう、思いたかった。 だが、おかしい。 そこにあるべき自分の両足が、とらの下半分と一緒に消えて無くなってしまっている。 スカートの裾も何故だか短くなっている。 どこにいったのだろうと視線をさらに落とすと、海に落ちる三つの物体があった。 大きいモノが一つと、細長いモノが二つ。 大きい方はとらちゃんの体として、細長い方は………私の、足? 見れば、ぼたぼたとあり得ない量の血液がスカートの中から落ちている。 まさかこの血は私のじゃないわよね? そう思った芳野から、今度は右腕の感覚が消えた。 真横に振られた雷刃が、その速度を保ったまま今度は縦に振り下ろされたのだ。 芳野の右肩に近い上腕部分、そしてとらの右肩を通り過ぎ一直線に雷刃は通過した。 結果、とらの残った上半身は更に二つに分断され、魔本を持った芳野の右腕は体から切り離された。 切り離された右腕に握られている魔本から、まるで命が失われたように輝きが失われる。 芳野はそれを見ると、自分の体の最後の支えである左腕をとらから離し、魔本を持つ切り離された自身の右腕に向けて腕を伸ばした。 その伸ばした腕は切り離された右腕に向けたものなのか、魔本に向けたものなのか、或いは、両方に向けられたものなのか。 左腕を伸ばした芳野の体を浮遊感が襲う。 芳野を支えていたとらの尾はソルド・ザケルガにより切られ遥か下。 最後の支えであった左腕もとらから離したのだ。 全ての支えを失った芳野の体がとらから離れていくのは当然だろう。 芳野の左腕は、まだ魔本を持つ右腕へ向けて伸ばされていた。 ◆ ◆ ◆ 「ふん!」 ゼオンは鼻を鳴らした。 とらに二回攻撃を加えた所でゼオンの手から『ソルド・ザケルガ』が消失したのだ。 恐らくは後ろに居た女が死んだか、本を手放したかで魔本に心の力が送られなくなったからだろう。 そう思っていると、女が海に落ちているのが見えた。 魔本を掴んだ女の右腕も一緒に落ちているが、その回収は後回しだ。 目の前の魔物からは、まだ生気は消えていない。 「やろう!!」 ゼオンに向かって、業火と共にとらの“両腕”が襲いかかる。 とらの口からは火炎、そして残された左腕がゼオンを抹殺すべく動き出しているのだ。 切り離されたはずの右腕も、独自に動いてゼオンへと迫っていた。 とらの下半身はというと、芳野を救おうとしているのか、芳野に向かって直進している。 なるほど、体を裂かれても動けるというのは本当らしい。 ゼオンの体は未だ空中にある。 魔本は無く、術を使うことはできない。 ゼオンは己を切り裂かんとする爪、焼きつくそうとする業火を防ぐべくマントで自身を覆い隠す。 その爪と業火がマントに触れようとする直前、ゼオンの体は空気に溶けるように消え失せた。 「どこにいきやがった!!」 とらの攻撃は空振りした。 最初に見せた瞬間移動を使ったのだろう。 ゼオンはどこへ移動したのか。 気配を探ると、背後からゼオンの気配を感じ取れた。 それと同時に首へ衝撃が起こる。 攻撃を受けたらしいが、とらは構わず振り向きざまに腕を振るう。 何かが砕ける音が首から聞こえた。 振り向いた先には、蹴りの姿勢をしているゼオンの姿があった。 どうやら首に蹴りを入れられたらしい。 振るった爪はゼオンの胴に食い込み、その小さな体を抉り(えぐり)ながら大きく吹き飛ばした。 即座に追撃するべくとらの体が動く。 しかし、とらの追撃がゼオンに届くことはなかった。 とらが追撃のために動きだすと同時に、とらの首から炸裂音が上がる。 それは、最初の広場で見せられた首輪の爆発の音と同じものだった。 爆発音がとらの耳に聞こえるよりも先に、とらの首が胴から離れる。 その吹き飛ばされた頭は怒りの表情に満ちていた。 全ての怒りを集約したかのような、ぞっとする程ぎらついた瞳は、最後までゼオンを睨みつけていた。 ◆ ◆ ◆ 落下の途中。 視界の端でとらの頭が胴から離れるのが見えた。 そして聞こえる爆発音。 とらが死んだのだと、芳野は理解した。 どじを踏んだと自分でも思う。 あの魔本は持ち主に力を与えるのではなく、ゼオンに力を与える物だったのだ。 支給品やとらの話から、何らかのオーパーツだと思ったが、あれはゼオンの元々の持ち物だったのだろうか。 それとも、最初に使用した者に力を与える物だったのだろうか。 それを判断する術を、芳野は持ち合わせていない。 あそこでああすれば良かった。こうすれば良かった。 後悔しても後の祭りだ。 体が海に到達する。 傷口に海水が染み、激痛で意識を失いそうになる。 (ごめんね……とらちゃん………) 芳野の意識は、ここで終わった。 【とら@うしおととら 死亡】 【染井芳野@スプリガン 死亡】 【残り69名】 投下順で読む 前へ:ナビ 戻る 次へ:どじふんじゃった!(後編) 時系列順で読む 前へ:ナビ 戻る 次へ:どじふんじゃった!(後編) キャラを追って読む 019:うしおと――/――ととら 染井芳野 060-b:どじふんじゃった!(後編) とら 028:虹 ゼオン・ベル ▲
https://w.atwiki.jp/nanakazari/pages/214.html
かんなぎれんじゃーの熱い夏 作:みぽりん 神聖巫連盟政庁兵部省裏庭。 なんだか目が受け付けるのを拒否しそうなくらい漢字が羅列したこの場所では目を回したみぽりんを犬士たちが取り囲み、心配そうにしていた。 有馬信乃に連行もとい連れられて、おもに礼儀作法を中心に特訓を受けることかれこれ 二十数時間。 座学が大嫌い、もとい少しばかり苦手なみぽりんはオーバーヒートを起こしぶっ倒れた。 「信乃さまひどいです」 犬士の一人がみぽりんに濡れタオルを当てながらつぶやいた。 涙目である。 「みぽりんさまが何したっていうのでしょうか!」 あ、数人の犬士が目をそらした。 (このあたり『「E127 FVB逆侵攻」4班の思いで』に詳しいので参照されるといい。http //www25.atwiki.jp/nanakazari/pages/210.html) 「みぽりんさんは一所懸命でした。そうでしょう?みなさん!」 数人こそっと逃げ出した。 しかし残った数人がうなづく。 「そうです!私達も、みぽりんさまも一生懸命がんばりました!」 「がんばったのです!わたしたち!!」 手を取り合いうんうんうなづきあう犬士たち。 脳裏にはあの初夏の特訓が思い浮かぶ。 輝いていたの、わたしたち。 しばしうっとりした後、考える。 「信乃さまはどうしてそれをわかってくださらないのでしょうか…」 うーんと考え込む一同。 自分達に欠けているのは何か。 情熱か、熱血か。 そのときむくっと、みぽりんが目を覚ました。 「話は聞かせていただきました!みんなすばらしいです!!」 「みぽりんさま!」 「お体は大丈夫ですか?」 駆け寄り、よろけるみぽりんを支える犬士たち。 そこにはまさしく友情があった。 「ありがとうみなさん!みぽは負けないです。かんなぎれんじゃーの明日のためにっ!」 びしっと夕日を指差すみぽりんに、数人の犬士が感極まって涙する。 ああ、みぽりんさまもすばらしいです。 「で、信乃さんは理由なく怒る人ではありません」 「ではどうして…」 しりあすに考えるみぽりん。 夕日が差す中庭は妙にいい雰囲気だ。 「信乃さんはもしかしたら」 言葉を選びながらみぽりんがいう。 「かんなぎれんじゃーのよさを理解していないのではないでしょうか!」 「理解…、ですか?」 こくりとうなづくみぽりん。 「まだ信乃さんはかんなぎれんじゃーの深遠にふれてはいないのです!だから理解できない」 「な、なるほど!!」 犬士たちがうなづきあう。 「では私達に出来ることは…」 「信乃さんに、『かんなぎれんじゃーのよさ』を教えてあげるですよ!」 だれからともなく手が出され、重なり合う。 ここにかんなぎれんじゃーは、結束を深くした。 /*/ 兵部省。信乃執務室。 めずらしく信乃は執務中に大きなあくびをした。 「信乃さん、眠そうですね」 あるがお茶を入れるために立ち上がった。 「ああ、失礼。代わりますよ」 信乃があとを引き継ぎ、茶器を手にする。 炎天下での訓練とその後の座学の講師。 さすがに今日は体が痛い。 しかし訓練と講義を先延ばしにするわけにはいかなかった。 何事にも「時期」というものがある。 戦闘から時間をおかずに徹底的に行う必要があった。 (あれで犬士もみぽりんさんも懲りただろう) 湯をわかすと、とっておきの玉露と茶器を出す。 慣れた手つきで茶器を温め、適温にした湯を急須に注ぐ。 はじめは部下がやってくれていたが、飲むタイミングと味の好みを考えるうちにこうなった。 もちろん今も忙しいときは任せるし茶の入れ方も教えてあるが、手があいているときは息抜きも兼ねて自分で入れる。 「甘いです。それにとってもいい香り!」 目をまるくして、あるが言う。 信乃はあえて何も言わずに自分の湯のみを手にし、ぬくもりを味わう。 穏やかなひととき。 ふと窓辺に目をやり、信乃は思わず茶を吹きそうになる。 窓辺にあったのは手作りの「かんなぎれんじゃー」のポスターだった。 くらりとくるのをなんとかこらえる。 「午後は自分の仕事に戻りますね。今日はありがとうございました」 あるが礼儀正しく頭を下げる。 今日は兵部省の資料をみせてもらっていたのだ。 「いえ、お疲れ様でした。……ところで、一つお願いしてもいいでしょうか」 「なんでしょう?」 ポスターをはがし 「これを、みぽりんさんに返しておいてください」 「うわあ、よく描けていますね!」 無邪気なあるの声。 本当によく描けている。 どれだけ底なしなのだと脱力感を覚えた。 /*/ 「兵部省執務室!掲示終わりましたであります!」 「おつかれさまであります!」 神聖巫連盟寮、みぽりんの部屋には大きな横断幕がかかっている。 『信乃さんに かんなぎれんじゃーの よさを!!』 信乃がみたら突っ伏しそうな横断幕である。 今日はたまたま休みだったみぽりんが主導になって、他の休みの犬士たち(有志)と、休憩時間などを利用して活動を始めた。 もちろん本業は一所懸命! 信乃さまに「かんなぎれんじゃー」のよさを伝えるために!! みぽりんが猛烈な勢いでポスターを製作している。 こんなとき。どうしてかものすごく力を発揮するみぽりんである。 みぽりんの様子をみて胸を熱くする犬士たち。 「衣装できました!!」 「てーまそんぐ、つくりました!」 「変身のときの爆発、かんがえました!」 次々とあがってくる企画たち。 みぽりんも犬士たちも、目をぐるぐるにして頑張っていた。 /*/ 悪夢だ… 悪い夢を見たように信乃はやつれていた。 はじめは執務室だった。 次は廊下に出たところでずらりと並んだポスターたち。 それを片付け外に出ると、軽快な音とともに『かんなぎれんじゃーショウ』がはじまり、 無視して寮の部屋に帰ると『信乃さんへ☆』と書かれたメモとともに着れといわんばかりの衣装がおいてあった。(しかも振りつけつきだった) 全部みぽりんにつきかえそうと執務室に一時保管していたが、あまりに膨大な量である。 なにより部屋においておくと目障りで仕方ない。 先日、雹のところを訪ねるとそこにも大きなポスターが貼ってあり (『いや、みぽりんさんにたのまれましてw』 雹 談 ) 姫巫女(※神聖巫連盟の藩王)の執務室では等身大フィギュアがかざってあり (『みぽりんにもらったんだよ。もらったものは大事にしなきゃね』 藻女 談 ) ミツキは訪ねてきたときにふと 「最近かんなぎれんじゃー、はやってるんでしょうか」 と、おっとりつぶやいた。 (『え?だってよくみかけますし…』 ミツキ 談) 直談判しようとみぽりんの部屋を訪ねたが、本人は留守だった。 お互い走り回っているからか全く連絡がとれない。 そんななか、訓練の休憩時間に犬士たちは元気に「かんなぎれんじゃー」のポーズを練習していた。 全くどこにそんな元気があったのか。 信乃の口からげっそりとしたため息が漏れる。 /*/ 汗が背中を伝う…。 日差しが目にささる…。 一言でいうと『暑い』!! ふはーとため息をつき、摂政 七比良鸚哥ががくっと肩を落とす。 『大事な話がある』と集団で押し寄せてきたのはこういうことだったか。 「せっしょさまー!!どうですか?みぽ達かっこいいですか?」 さっきから何度もいろんなポーズをみせられた。 どうやら少しずつ違うようだがよくわからない。 なによりもよくわからないのは『これのどこが大事なことなのか』というあたりである。 しかし、こういうときのみぽりん‘S を野放しにするほうが危険である。 (経験談!!) 使命感にも似た何かが自分を支えている。 …… あ、もうだめ…。 七比良鸚哥は最終兵器を発動した。 「みぽりんも、みんなもよくがんばっていますね」 褒め言葉に皆大喜びである。 すかさず後をつづける。 「少し休憩しませんか?ご褒美に『わらびもち』がありますよ」 作戦は大成功だった。 皆、『わらびもち』を食べて大満足だった。 (ふふ、勝った…) 摂政は密かにがっつぽーずをした。 /*/ 兵部省、有馬信乃執務室。 「信乃さん、本、ありがとうございました」 借りていた本を信乃に手渡しながら、あるが言う。 どういたしましてと受け取る信乃。 しばらく信乃の顔を見つめたあるは、心配そうに尋ねる。 「信乃さん、少しやつれましたか?」 力なく笑う信乃。 「ところで、ぼく不思議なんですが、信乃さんはどうしてそんなに『かんなぎれんじゃー』を嫌うのですか?」 少しの沈黙の後、信乃が言う。 「嫌ってはいません。僕は戦闘に支障がなければ別にかまわないと思ってますよ。まあ一緒に歩きたくはないのですが」 「え?でもFVBの戦闘の後の信乃さんは、なんか嫌ってるみたいでしたけど…」 小首をかしげるあるに、信乃が続ける。 「『戦闘に支障がなければ』、ですよ。 FVBの戦いのときはわざわざぽーずを決めてなんて馬鹿なことをしていたでしょう。一瞬の隙が自分や味方を傷つける。そのとき泣くのは、みぽりんさんであり、犬士たちだ。僕が悪者になって改善されるならいくらでもそうしますよ」 「ああ、だから『厳しい訓練をした』?」 「そうです」 ほむほむとあるはうなづく。 ぱずるがぴたっと合う感覚。 しばらく考えていたあるは、『あるもの』を信乃に手渡した。 /*/ 「みぽりんさん」 信乃はやっとつかまえたみぽりんと犬士たちに声をかける。 「信乃さんですー!!」 「信乃さまこんにちは」 みぽりんと犬士たちが元気にご挨拶する。 「たくさんの『かんなぎれんじゃー』のぐっず、ありがとうございました」 「信乃さんよろこんだですか?」 「ええ。ただ量が多いので、厳選して一枚だけいただきました」 「多かったですかー」 ほけほけしながらみぽりんが笑う。 これが『素』だから怖い。 「それで、今日はみなさんのお役に立てればと思いまして、こんなものを用意してみたんですよ」 信乃は数枚の紙と、植物の種、長い布を手渡した。 「ほえ?何ですか?」 「忍術の訓練書です」 信乃の言葉に一同驚き、わくわくする。 「例えばこの種。麻の種なんですが、忍者はこの種の芽を毎日飛び越えて、訓練したそうですよ。麻の生長にあわせて高く跳べるようになるそうです。そしてこの布。腰にまいて、布の端が地面につかないように早く走る訓練です」 「おおおおお!!かっこいいです!!!」 一同の目がきらきらきららと輝く。 「他にもいろいろ訓練を探して書いておきました。『かんなぎれんじゃー』の訓練にお役に立てればよいのですが。頑張ってくださいね!」 信乃の温かい言葉にじんとなる一同。 信乃さまに私達の情熱がつたわった!! 「ただし、実際の戦闘では『かんなぎれんじゃー』はやめましょうね」 一同、右手をあげ、「はーい」とお返事する。 そして早速種をまき、上を跳んでみたり、布を腰につけて走ったりしはじめた。 /*/ 信乃の周りに静寂が戻った。 「こんにちはー。遊びにきました」 ひょこっとあるが顔を出す。 「いらっしゃい。ちょうどお茶を入れたところです」 信乃が笑顔で迎え入れる。 「あるさん、ありがとうございました。おかげで収まりましたよ」 「いえ、どういたしまして。よかったです」 いたずらが成功したように笑うある。 あの日、あるが渡したのは『麻の種』だった。 /*/ 夏空広がる神聖巫連盟。 政庁や寮の中庭では麻を飛び越えたり、布を腰に巻いて走る『訓練』にいそしむみぽりんや犬士たちが見える。 時折ぽーずの練習も欠かさない。 今日も世界は平和である。 【めでたしめでたし】
https://w.atwiki.jp/wiki13_ridatu/pages/57.html
詳細情報 【ハンドル】実は危ないものなんじゃ ◆PwYy9.yeoY 【パートナー・ガイド】金髪のねーちゃん。外国語か片言の日本語しかしゃべらんかった 【初成功までの訓練期間】6ヶ月 【離脱回数/頻度】1 【離脱方法】 まずは頭の中を空っぽにする。何も考えないでリラックス、照明、音楽等は無し 軽く睡魔に襲われたらまどろみと一緒に自分が体から抜けてくのをイメージ。 【離脱直後の状態】目は見えない。元々部屋くらくしてるからかもしれんが。 あとすげー浮遊感。プールとか海に浮かんでるときの感じに近い 【集中開始から離脱までの時間】わからん 【禁則事項】 現実世界での知合いにあったらかかわらんほうがいいって言われた 【離脱前後の状態】 [精神面]五感が狂いまくり。しばらくすると普段に近い状態に。 [肉体面]だるい。脱力感と疲労がかなり。 【備考】 詳細は後記。 とりあえず、パートナーにヴォルホラだかビャルハルだかなんかって所に行こうって進められたんだが 片言だし発音が英語っぽくなかったから誰か実在する単語で心辺りあったらよろ 離脱時体験談 109 名前:実は危ないものなんじゃ ◆PwYy9.yeoY 投稿日: 2006/07/12(水) 22 46 26.65 ID 9jKXOlIq0 とりあえず忘れると困るから書きなぐりだけどスマソ。まとめてから書いたほうがいいなら言ってくらはい まだ入りたてだからかもしれんが空も飛べんかったし壁とかも抜けられん 魔法もダメだった。パートナーっぽい人は最初から近くにいた。 やり方聞いたけどまずは世界に馴染むのが先って言われて教えてくれんかった。 あと、空は普通飛べないらしい。日本語がすごい下手だった。 パートナーの人は英語とは違う言葉喋ってたけど、こっちがわからないってそぶりをみせたら 片言で日本語喋り始めた。名前はたしかドリュスって言ってた。 あ、目覚めたところは自分の部屋じゃなかった。どっかの貸しビルの空き部屋っぽい所だった。 117 名前:実は危ないものなんじゃ ◆PwYy9.yeoY 投稿日: 2006/07/12(水) 22 56 46.77 ID 9jKXOlIq0 んで、とりあえず魂をこっちの世界に馴染ませないといけないって言われて とりあえず日本っぽい所の、中途半端に開けた田舎つれ回された。 イメージ的には軽井沢とかの避暑地みたいな。 んで、ほいほいついていったんだけど、前情報とちがって全然こっちの言う事聞いてくれないし 言葉がみょうに頭に響いて聞いてるだけでぼんやりほいほい頷きそうになるから ちょっと警戒心が生まれた。 で、つれまわされてるときにもし現実世界での知り合いに合ったら気づかない振りしてその場からなるべく 離れろって言われた。理由はよくわからんかったけど、なんか、お互いを認識すると色々まずいらしい。 精神がどうのっていってたかも 121 名前:実は危ないものなんじゃ ◆PwYy9.yeoY 投稿日: 2006/07/12(水) 23 01 11.11 ID 9jKXOlIq0 で、つれまわされてるうちにどんどん人気のない山奥つれてかれて、 ヴァルハラにいかないかみたいな話振ってきて どんなとこって聞いたら楽園だみたいな事いってて行ってみようかなって思ったんだけど なんか入口が洞窟じゃないけど、そこの見えない暗い穴だったから怖くなってやめた。 そもそも聞いてたパートナーと様子が全然違うし正直不安だったから拒否したんだけど その瞬間目がさめた
https://w.atwiki.jp/00805/pages/63.html
「なんか静かですねぇ。スレの中には書き手もいないし他ロワとはえらい違いだ」 「ああ……書き手の戦力は軒並み向こうに回してんのかもな」 「まっ……そんなのもう関係ないですけどね!」 「上機嫌だな」 「そりゃそうですよ! みんな助かるし、タカキも頑張ってたし、俺も頑張らないと!」 「ああ……」 (そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらないかぎり道は続く) キィィッ……!!(書き込みが止まる音) ダン……!!(去っていく書き手) 「ぐわっ!」 ダダダダダダダダン……!! 「団長? ……何やってんだよ!? 団長!!」 「ぐっ! ウゥァォォォォォォォォオオオオァッ!!!!!!」 ダン……! ダン……! 「ぐっ! キュィィィン」 走り去る黒塗りの高級車 「はぁ……はぁ……」 「なんだよ、結構当たんじゃねぇか。ふっ……」 「だ……団長……あっ……あぁ……」 「なんて声、出してやがる……Ride on!」 「だって……だって……」 「俺は金田一ロワ応援団団長オルガ・イツカだぞ。こんくれぇなんてこたぁねぇ」 「そんな……このロワなんかのために……」 「団員を守んのは俺の仕事だ」 「でも!」 「いいから行くぞ! 皆(みな)が……待ってんだ」 (それにミカ……やっと分かったんだ。 金田一ロワにはまともな話なんていらねぇ。 ただ進み続けるだけでいい。 止まんねぇかぎり、道は続く) 回想 「謝ったら許さない」 「ああ……分かってる」 「俺は止まんねぇからよ……」 「お前らが止まんねぇかぎり」 「その先に完結はいるぞ!」 「だからよ……」 「止まるんじゃねぇぞ……」 「オルガ?」 ぽんやり東大美女・斧寺空美は、放送を聞いていた。 先ほどまで彼女は、鯖木が刀丸猛人に追いかけられているのを確認していたが、正直鯖木はやはりどうでもよかった。 というのも、彼女にとって必要なのは刀丸が持っているロープだった。 考えてみると、あの状況で人を襲っている狂人からロープを取るというのはリスキーだった。 そもそもロープなんてその辺のホームセンターで売っているわけで、たかがロープ欲しさに命を左右する選択など馬鹿らしい事この上ない。 たとえば、貴方なら「金田一少年の事件簿27巻セット2000円が売られているが殺人犯が立てこもっているブックオフ」に金田一を買いに行くだろうか。 否だ。 金田一少年の事件簿は大概どのブックオフにでも売っている。わざわざ殺人鬼が立てこもっているブックオフに金田一を買いにはいかない。 それを考えると、彼女がまったりと放送を聞いているのも当たり前の事だった。 鯖木の尊い犠牲を助けないのも、まあ別に悪人ではないにせよ、ひときわ優しいわけでもないそらみちゃんの性格を考えれば致し方ない。 か弱い女性の力で何が出来るというのだろう。 ちなみに放送からわかった情報は次の通りだ。 いっぱい死んだ。 美国礼奈は高校時代マジメだった。 放送は一回に一時間ほどかかる。 放送の最中に人が一人殺されている(推理すればわかる)。 見捨てた鯖木は別に死んでない。 そして、ここから導き出される結論は、早く脱出した方が良いという事だった。 何故早く脱出した方が良いのかというと、普通に人が結構死んでいるからだ。 先ほど鯖木が頑張って殺人鬼から逃げていた事からわかる通り、殺し合いに乗っている人間は膨大にいる。 誰かが殺し合いに乗っているから十五人も死んでいるわけで、全員が体育館のように事故死で死んだとは思えない。 それは流石にやべえ話である。ありえん。 (まあ、そうだとしたら呪いだったりして……なーんてね♪) ……そして、そんな環境下で三日も待つとか無理に決まっていた。 常識である。 殺し合いに何人巻き込まれているのかは正確には知らないが、体育館にいたのはだいたい六十人前後。 僅か六時間で四分の一が死んだ事から考えて、殺し合いを積極的に行おうというちょっとやばい人が一定数集められているらしく、このままいけばいつ死んでもおかしくないのだった。 そこから考えれば、彼女が「脱出」という手段を志している事は先見性のある行為だったと言えよう。 具体的な脱出プランもめどがついているし、後は仲間さえいれば良いのだが……。 ◆ そして、鯖木は、刀丸猛人から逃げていた。 奇跡的にも、三時間逃げきっていた。 ちなみに鯖木は次回登場時に死にます。 【一日目/朝/背氷村@雪夜叉伝説殺人事件】 【斧寺空美@雪鬼伝説殺人事件】 [状態]健康 [装備]萩元殺害時に使われた銃剣@墓場島殺人事件 [所持品]基本支給品一式、身代金2950万円(元は3000万円)@白銀に消えた身代金 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 1:頃詩哀島から二百メートル先に島を発見。 主催があの島にいると思われるので、そちらに渡る。 2:脱出プランを練り、より多くの人間を脱出プランに参加させる。 3:首輪を解除する。 4:ファントムの持っているロープが欲しい。 [備考] ※参戦時期は、「なーんてね♪」って言った後。 ※脱出には、全長200mの形状記憶合金製ワイヤーのようなものや、サーカスの軽業師、氷橋が必要だと考えています。 ※このロワには首輪がないので、エア首輪解除をする予定です。 ※ある程度参戦時期にばらつきがあることを思い付きました。 ※鯖木のこれまでの動向、支給品をある程度把握しています。 ※「それって売ってすぐお金に換えることできるかなー」という発言があるので案外お金にドライなところがあります。 ※現在40万円赤字(斧寺目線)しているのでいずれ黒字にまで持っていくつもりです。 【一日目/朝/ロス】 【鯖木海人@雪鬼伝説殺人事件】 [状態]怒り、恐怖 [装備] なし [所持品]基本支給品一式、双子姉妹探偵@蝋人形城殺人事件、S・Kのイニシャルキーホルダー@悲恋湖伝説殺人事件、身代金50万円 [思考・行動] 基本:『災厄の皇帝(エンペラー)』及び観月旅行者及び小説家多岐川かほるの炎上。 0:炎上させこのロワイアルを終わらせる。 1:ネット環境のある場所へ行く。 2:『災厄の皇帝(エンペラー)』は参加者に紛れ込んでいると疑っている為人は信用しない。 3:誰か助けて……。 [備考] ※参戦時期は、雪鬼伝説殺人事件に巻き込まれる前。 ※外部連絡が通じないということが頭から漏れています。 ※金田一世界の事件をある程度一般人が調べられる範囲で知識があります。 ※リーダーシップの持った人間及び動機のない殺人をする者に『災厄の皇帝(エンペラー)』が紛れ込んでいると推理しています。 ※刀丸猛人に襲われています。 ※次回死にます。 【刀丸猛人@悲恋湖伝説殺人事件】 [状態]ファントム [装備] オペラ座の怪人『ファントム』の仮面@オペラ座館殺人事件、コンビニチェーン店でしか売られていない特殊なロープ@首吊り学園殺人時間 [所持品]基本支給品一式 [思考・行動] 基本:ファントムになりきる。 0:この手で参加者を消していく。 1:順番は違うがジョゼフ・ビュッケを消す。 [備考] ※参戦時期は、逮捕された後。 ※クリスティーン役(ヒロイン)がいれば浄化するかもしれません。 ※妄想と現実の境目がありません。 ※ファントムになりきっているので自分の名前が刀丸猛人という名前だということも役になりきっている間は理解していません。 ※そもそも人と接することが出来ない人間らしい。 ※鯖木を襲っています。 039 SNSより本スレに感想くれると嬉しいです 時系列 041 Sick or Victory 039 SNSより本スレに感想くれると嬉しいです 投下順 041 Sick or Victory 031 斧寺空美の溜息 斧寺空美 031 斧寺空美の溜息 鯖木海人 031 斧寺空美の溜息 刀丸猛人
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/332.html
前ページ次ページSSまとめ 「物事を疑い、考えを巡らせることと、何も考えず盲目に信じることは、表裏一体です。それは嘘かもしれない、という疑念 だけを信じて先に進まないのは、何も考えないのと一緒です。私が、たった一つの言葉を信じて世界が変わるのであれば、 私は信頼した相手の嘘など恐れないです」 「夕映っち……」 「あ〜あ……」 椅子を持っているのがいい加減疲れたのか、龍宮が疲労の声を上げて椅子を下ろした。勢い良く下ろされた ため、背中に衝撃が走る。 「バカじゃないの……。私の時は、信じてくれなかったくせに」 「私は、同じ失敗は犯さないです」 「それが成功って言えるの? 適当に人を信じる事が」 「のどか。今のページ……朝倉さんが椅子に縛り付けられてましたが、のどかが話してくれたのとは、少し違うようですね」 「違うって……何が」 「そのアーティファクトは確か、人の表層意識を読むものでしたね。のどかの絵柄で」 朝倉がその瞬間、はっと顔を上げた。確か修学旅行の時、一度だけ見せてもらった事がある。お世辞にも上手い絵とは言い 難かった。しかし、今見たのは、下手は下手でもどこかが違っていた。わざとそう見せているような、演出じみた感じ、というか、 下手な絵を理解している印象を受けた。 「ハルナに描かせたのですか。ですが、おかげで気付きました。いくら元絵に似せて下手に描いたとしても、ずっと同人創作を 手伝ってきた私には、ハルナの絵柄を見分けるぐらい、簡単です。リアルに見えるように、先を見越して縛られている姿を描 いたのでしょうが、のどかは自分が縛られている姿なんて想像したことがありますか?」 言われて初めて気付く。朝倉は、縛られている自分の全体像を想像しようと試みたが、失敗する。縛られている最中なら、尚更 そんな事を考えている余裕はない。 「本能を読み取れる、というのも嘘ですね」 のどかは一瞬顔をしかめたが、気丈な振る舞いを崩そうとはせず、威圧感を込めて言った。 「だから? それが分かったから、なんだっていうの?」 再び龍宮と刹那に指示が飛んだ。「二人を窒息させてください。死んで しまっても構いません」 木乃香が笑う。「それはあかんやろー」 のどかが怒りに震えている。たとえ気丈なふりをしても、心の奥では冷静さを失っていた。 龍宮は仕方ない、といったふうに、刹那は何かを必死に忘れようとしながら、二人の頭を重力の方向へと向けた。 「刹那さん、そっちじゃありません」 刹那が「え?」という顔をした。一瞬遅れて、言葉の意味に気付く。一歩隣に移動して、一番右の缶の前に立った。 朝倉がいくらやめて、と叫んだところで、事態は変わらない。それでも、今朝倉にできるのは、それぐらいしかなかった。 叫びながら、頭は水の中に浸されていく。そう思って目を瞑ったが、そうはならなかった。 朝倉は目を開けてみたが、視界に映っているのは、体育倉庫の床だった。その直後、水の跳ねる音が聴覚に届く。 龍宮が持っていた椅子は投げ捨てられ、床を転がりながら頭を打ち付けると、鈍い痛みが走った。 何が起きた。いや、その前に夕映は。 「くっそ、なんだ」 龍宮の声からして、周りの皆も状況を把握できていない様子だった。 「障気……?」 刹那が警戒して、木乃香の側に寄る。 朝倉は首の向きを変え、床に寝たまま辺りを確認しようとする。夕映も朝倉と同じような姿勢だった。どうやらニスは被ってい ないらしい。 「はっは〜ん。知ってるぞ、この気」 龍宮がポケットから除霊の道具を取り出す。「出て来い、相坂」 朝倉が顔を起こそうとするが、縛られた縄のせいで上手くいかない。 「さよちゃん!?」 もう一つの缶が持ち上がり、中身が木乃香に降りかかろうとしたが、刹那が全身で受け止めてそれを阻止した。 そう夕映は説明した。 龍宮の魔眼が光り、辺りを散策し始める。同時に、朝倉に不安がよぎった。私達は命の保証はされているのだ。もちろん、 自殺に追い込むという間接的な殺害も彼女達ならやってのける可能性はあるが、今のところ、その点は免れている。 しかし、さよは話が別だ。彼女は既に死んでいる。そして、法律は関与しない。法律では、幽霊は“いないもの”とされて いる。たとえ消滅させたとしても、それは除霊という行為に当たり、なんら罪に問われる事はない。 「さよちゃん、逃げて!」 除霊用の、鋭利な刃物が投げつけられる。当たったら一発で終わりと思ってしまうような、鈍い光を放ったその刃物は、倉庫 の出口に刺さり、的を外した。龍宮が舌打ちをして刹那に伝える。 「外だ。私が行ってくるからお前は二人を見張ってろ」龍宮が扉の閂を外して外へと出る。 「やはり、最初からやっておくべきだったんだ」 『 Sayo 』 天井から外に出たさよは、本校者の方を向いた。遠く離れた窓から、保健室の様子を確認する。どうやら気付いてくれたら しい。あとは、しずな達がここへ来るまで時間稼ぎをしなければならない。 木乃香達なら、たとえ先生が来ようとも、あの場に籠もってやり過ごすことができる。今までそうして、教師の目を誤魔化して きていた。彼女達を引きずり出さなければ。そのためには、あの扉を開けさせるしかない。 あの現場を教師達に見せなければならない。朝倉と夕映の行動が制限されていることを、直接眼球に見せつけなければなら ない。あのままでは朝倉と夕映が窒息で死んでしまう。もし死んだら、恨みを残してくれるだろうか。幽霊になって、今よりも もっと近くにいられるだろうか。珍しくそんな幽霊らしい事を考え、不謹慎だな、と思う。 私は多分、嫌われている。 朝倉のつらさも考えず、勝手なイメージばかりを押しつけた。皆に荷担してはいけない、だなんて、そんなことは朝倉だって分 かっていた。 私自身は何も差し出さず、自己犠牲を押しつけた。嫌われて当然だ。 私だってこの身体ぐらい、捧げなければ。危険だけど、構わない。どうせ幽霊なんだし。 龍宮は更衣室を探していた。すぐに隠れられるように、ロッカーの中から顔半分だけを外に出す。 「そこか」 振り向きざま、勢いよく投げつけられた霊具はロッカーに刺さり、さよの胸の手前で動きを止めた。 慌てて顔を引っ込め、別のロッカーに移動し、姿を潜める。今投げつけられたのは、以前、最初に姿を現した時の道具だ。 幽霊には、怪我という概念がない。最初から身体の一部が無く、苦痛を強いられている霊体もいるが、それ以上傷口が広がる ということもない。そのかわり、霊具などであっという間に成仏してしまう可能性がある。一度もらったら文字通り、即お陀仏だ。 「楽になれ。あの世にはお前の欲しがっている友達がたくさんいるぞ」 否定はできない。しかし、魂ごと消滅するだけ、という可能性も、捨てきれない。人間が、人間とはなにか、と考えるように、幽霊 だって、幽霊に詳しくはないのだ。 「あなたたちが……あなたたちさえいなければ、この学園は平和で、もっと楽しい所だったんです」 こんな言葉で変わる人ではない。彼女は仕事人間だ。でも、訴えたかった。 「どうして……友達を、あんな目に遭わせるんですか」 「仕事だよ。言ってしまえば、金だ」 「お金なんかより……友達の方が、大切です!」 「では聞くが、そのお金で友達の命が救える、と言ったらどうする」 「え……?」 「金で買う関係は世の中に溢れている。しかしな、友の命を救うには、それと同じくらいの、時にそれ以上の額が必要なんだよ」 龍宮の言葉の意味を考える。命を救う? 彼女の友達は、病気を患っているのだろうか。 「でも……でも、そんな事をして稼いだお金で人を救ったって、別の誰かが苦しむだけです! そんなの、絶対おかしいです!」 なんということだ。戦後、日本は民主主義になり、資本主義になった。彼女はそれに忠実に沿って生きている。 「なら聞くがな。もし貴様の体が、金を積めば甦る。そうなったらどうだ」 「そんなことをされて生き返ったって、嬉しくなんてありません」 「お前の事を聞いているんじゃない。お前の友達は、お前の事を一番に考えている親友は、躍起になって金を稼ぐ。その行為を お前は否定できるのか?」 朝倉の顔を思い浮かべる。彼女はそうしてくれるだろうか。今は嫌われている。でも、もしも、仲直りできたなら。そして、私の ために、必死になってお金を稼いでくれたら。 嬉しい。 「貴様に私の生き方を否定する権利はない」 少なくとも、その行為を全面否定はできない。 「……どうなんだ……?」 彼女は僅かに不安を滲ませながら、私に答えを尋ねてきた。救われる立場になった時の、私の答えを求めている。 それは嬉しいのか、と。 「嬉しいですよ……確かに」 龍宮が安堵した様子を見せた。「そうだろう?」 「でも」 頬を涙が伝う。 「でも……だめじゃ……ないですか、そんなの……」 「何……?」 「私が、それを……許しちゃ、ダメじゃないですか……」 「何を言っているんだ」 「なら、朝倉さんが、その人のところに行って同じ質問をしたら、世界中の貧しい子達に向かってそんなこと聞いたら!」 龍宮が言葉を詰まらせる。 「嬉しいだろ? なんて、だから……君は後回しだ、なんて言えるんですか!!」 龍宮の胸に、ずしりと重い石が入り込んだ。 そうか。こいつは60年も精神を積み重ねていたんだ。60年間学校の中で生を羨み、どれだけ実感を得たい、と思った事だろう。 どれだけ人と話がしたいと思ったろう。人の肌に触れたいと思っただろう。おそらく思春期真っただ中で、何も経験することが できない。学校で幽霊扱いされているのと殆ど同じ状況だ。彼女はただ、幽霊であるだけなのだ。そんな中、たった一人だけ できた初めての友を、私が奪うという役目を買っている。 私は、運が良かったのか? たったの数年であの運命を抜け出した私は、幸せなのだろうか。守りたいと思う人がいるというのは。 龍宮が銃を下ろして、ロッカーを挟んで反対側にいるさよに向かって言った。 「でもな、相坂……後回しなんだよ。結局な、そうなってしまうんだ。仕方がないんだ」 しずな達の足音は、さよの耳にはまだ聞こえない。 「上から順番になってしまうんだよ。だからな、私達は……私達は、与えられた順番に従って、前に進むしかないんだ。だから、 君はさっさと成仏して、次の世を楽しんだ方がいい」 ロッカーを蹴り飛ばした先には、さよはいなかった。 「お断りします」 さよは背後に回っていて、呻り声と共にロッカーを浮遊させた。六つ程かき集めて出口を塞ぎ、残りの全てを龍宮に叩き込む。 回避するにも場所がなく、龍宮は両腕で受けるしかなかった。中から出てきたユニフォームが顔にかかる。 さよが念力の限りでロッカーを押しつけると、龍宮の腕力との勝負になった。感情は高ぶり、普段以上の力が溢れている。龍宮 を倉庫に戻したら、閂を閉められてしまう。たとえ霊力が尽きようとも、今、この場で龍宮を止めなければならない。 しかし、埋めることのできないスタミナの差が徐々に表れ、龍宮が押し戻し始める。早く来て、と心の中で願う。頭痛がひどい。 「私を止めているつもりか。なら無駄だ。別に私を中に入れる必要はないんだからな。あいつらなら、私のことなど気にせず、 とっとと鍵を閉めるだろうよ」 とうとう龍宮が完全に押し返した頃になって、ようやくしずな達の足音が聞こえた。さよがへたりこんで呼吸を荒げているところ に、龍宮が銃を突き付ける。 「お別れだな」 「龍宮さん……何、やってるん? 銃なんか持って」 ロッカーが倒れる音を聞いて駆けつけた亜子は、更衣室の入口の異様な光景を見て、中で何かが行われているのではないかと 慌ててロッカーをどけて中に入り込んだが、そこにはただ哀しそうな目をした龍宮が、銃口を斜めに構えているだけだった。 亜子は銃口の向く先を見たが、何もいない。 「いや、なんでもないよ」 普段から見せる威圧的な声色ではなかった。何があったのか聞こうと思ったが、しずなが倉庫の方で大声を出しているのを聞い て、それどころではくなってしまった。 亜子が去った後、誰もいなくなった更衣室で、龍宮はただ「よかったな」とだけ呟いた。 * 私が心配なのは、さよの身だ。ただそれだけだった。 しずなが縄を解くなり、朝倉は静止の声も聞かずに夢中で走り出した。更衣室までは大した距離ではなかったが、非常に長く 感じた。ロッカーが更衣室内から外に転がり出ている。尋常ではない音がしたのは、これか。邪魔な箱を踏み越え、中に入る。 「ねぇ……さよちゃんは?」 どんなテストの結果を聞くより怖かった。自分にしか分からない、友達の生死なのだから。他に誰も悲しむ人がいない。 「……ねぇ、さよちゃんは!?」 「消したよ」 龍宮は、消した、と言った。消えた、ではない。 間違いであって欲しいと願いながらも、間違いなくそう聞いた。 「嘘でしょ……」 「ごめんなさい、だってさ。お前に」 「また、私に対する嫌がらせでしょ?」 龍宮は、泣いてもいなければ、笑ってもいなかった。その真実味のある表情が、朝倉に絶望的な結果を伝えていた。 「人殺し」 朝倉は龍宮の胸元に迫り、訴えた。 「人殺し!!」 もう死んでるじゃないか、という冗談は飛んでこなかった。 「さよちゃん、六十年もこの学校にいたんだよ。ずっと、一人で……友達欲しい、友達欲しいって思いながら、誰に話し掛けても、 何も返って来なかったんだよ! ずっと、みんなの楽しそうな顔、見てるだけだったんだよ!」 「私が、解放してやった」 「都合のいい事言わないでよ! 勝手な事言わないでよ! ただの人殺しじゃない! 戦争で、勝手に人撃ち殺して、“解放して やった”とか、“平和のため”とか言ってるのと一緒じゃない!!」 「お前は、あいつの親類か何かか!」 龍宮が掴まれていた胸元の手を振り払い、逆に朝倉の胸ぐらを掴み返す。 「一年にも満たない付き合いで相坂の事を、死者の気持ちを理解したつもりか!? 調子に乗るな!! お前が奴をこの世に 縛り付けてどうする! お前がいれば相坂は幸せなのか? たった一人の友が、次の世で出会えるかもしれない大勢の人間 達よりも価値があるというのか? 自惚れるな!!」 朝倉が表情が変化し、迷いの様相を浮かべると、龍宮は掴んでいた手を離した。 朝倉は、自分の答えに迷いを見せた。それでいい。今のお前の様な、直情的な感情が答えではない。答えには様々な形がある。 「生きていればな、事を起こせる気力があるなら、まだ何かに期待はできる。でもな、あいつはもう、死んでるんだ。自殺だって できない。お前がいなくなったら、またそういう人生を歩むことになる。寂しい思いをする」 これでいいんだ。最初からこういう約束だった。相坂は守るべき人を守ったし、私は仕事をこなした。何も問題はない。 龍宮は背後に朝倉の呻く声を聞きながら、体育館を後にした。 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/2394.html
「まさか、現実でバトロワする日が来るとは…」 アパートの一室で、椅子に腰かけ呟く◆ymCx/I3enU。 書き手として、何度も人の命を奪ったことはある。 しかし、現実ではそんなことは1つもない。 「とは言え、ゲームに乗らない理由もないし…乗ってみるか」 ゲームに乗るなら、重要な物は支給品だ。 一体何を支給されているのか…。 「何だこれ、薬?」 『変身薬:なりたい物を想像して飲むと、飲むときに思っていた物に変身出来る。』 『無機物・他の参加者・大きすぎる物には変身できない。』 「へー…それじゃ、早速」 カプセルを口に入れ、そのまま飲み込む。 頭の中で、狼を思い浮かべながら。 「変身する時はどんな感じなんだ…?」 そのまま、2・3分待つが、特に変わった感じはしない。 …もしかして、騙された? 「鏡でも見てみるか…」 トイレに向かい、鏡を見る。 「…うおおおおおおっ!本当に、変身してる…!」 流石に、完全に狼と言う訳ではなかった。 狼と人の中間――「人狼」とでも言うべきか? 手には、鋭い爪が。 口元には、鋭利な牙が。 (なかなかいいんじゃない?) そう思ってしばらく人狼に変身していた自分を眺めていた。 ◇ 「あーあ…何で俺が…」 アパートの中に声が響く。 通路が思っているより狭く、音が反響しやすい。 (早速、仕留めさせて貰うか) 気配を殺し、出口のドアの前まで歩いて行く。 声の大きさからして、この部屋の前を通ると予想される。 「やってらんねーよ、こんな…!」 声の主が扉を開け…絶句する。 「そんなにやってらんないなら…ここで死んで貰う」 手で、男の喉元を突く。 爪が、想像以上に簡単に食い込む。 簡単に刺さり過ぎて、拍子抜けするくらいだ。 「あっ…が…」 手を引き抜く。 そのまま、喉元から血を流して倒れた。 「銃持ってたんなら、何で使わなかったんだ?まあ、使ってた所で結果は同じだろうけど」 足元に転がる銃を拾いあげ、デイパックから予備マガジンを抜き取る。 (病院にでも行ってみようかな、人が集まりそうだし。) 【一日目・深夜/F-7:アパート:A棟302号室】 【◆ymCx/I3enU@非リレー書き手】 [状態]:健康、人狼化 [装備]:H K MP5A3(30/30) [所持品]:支給品一式、MP5マガジン×1 [思考・行動] 基本:とりあえず、ゲームに乗る。 1:病院へ行ってみる。 2:書き手さんは…どうしようかな…。 【群馬洋一@オリジナル 死亡】 死因:刺殺 ≪キャラ紹介≫ 【群馬洋一(ぐんま よういち)】 28歳/男/無職 生来の口の悪さ、そして学の無さで無職に。再就職をすることもなく、日々怠けて生きていた。 ちなみに群馬には行ったことが無い。
https://w.atwiki.jp/elizabechu/pages/22.html
「やっぱり、つんぽさん疲れてたのかな・・・」 どうにか落ち着きを取り戻したあたしは、ママと鳥羽さんに事情を説明した。すると鳥羽さんが腕を組んで少し考えてから言った。 「つんぽさん、いつも音楽聴いてたろ?あれさ、ほとんどお通ちゃんの曲なんだよ。ずっと、仕事のこと考えてたんじゃないかな」 するとママも眉間に皺を寄せながら 「新曲の発表まではまだ間があるし、二、三日休んでもらった方が良いかもしれないわね。忙しくなってから倒れられたんじゃかなわないし」 「そうですね、その間は音楽聴いたりしないように言っとかないと」 と言って、鳥羽さんは再び携帯を手にした。 「で、お前、なんで道端に倒れてたわけ?」 あのあと、定春に担がれて(神楽ちゃん、最初、定春に銜えさせようとしてたけど)万事屋銀ちゃんにやってきた男は今、ちょっと突いただけで倒れそうな様子でソファに座っている。銀さんが特別に出してくれたイチゴ牛乳にも、手をつけていない。って、それはどうでもいいか。とにかく、男は銀さんが何を訊いても俯いたまま、応えようとしない。 「おいおい、やっぱコイツ、耳聞こえてねーんじゃねーの?」 銀さんがヤケクソになって「もしも~し」とか言ってる時、ピンポーン、とチャイムが鳴った。 「ったく、こんな時に誰だよ・・・新八、ちょっとでてくんない?」 「はーい」 「あのねぇ、俺たちにも仕事があんだからさ、ぶっちゃけ拾っといてなんだけど、メーワクってゆーかー・・・・・・」 廊下に出ても、銀さんの不機嫌な声は聞こえてくる。玄関の外に居るのが依頼しに来たお客さんだったらどうしよう。 ガラガララッ! 「どちら様で・・・」 心配は無用だったみたいだ。 「こんにちは。あのう、銀時君は居ますか?」 戸を開けると、立っていたのは桂さんとエリザベスだった。 「・・・は、はい。ちょっと取り込み中なんですけど、でも別に、大した用じゃないんで・・・とりあえず、どうぞ」 僕が促すと、二人(?)は家に上がってきた。 「あ、なんか気遣わせちゃってすみません。お邪魔しま~す」 『邪魔するぜ』 とかなんとか言い(?)ながら、ずかずかと居間に向かう二人(?)。まあ、いいんだけどさ。 「銀時!『攘夷がJOY!』に続く新作カツラップが出来たから聞いてほし」 勢い良く居間の戸を開けた桂さんは、そこまで言って固まってしまった。 『お前は・・・』 エリザベスまでもが緊張しているようだ。 そんな状況下で口を開けられる者は居ないだろう。銀さんでさえも、桂さんに突っ込もうとしない。そんな時、奴が動いた。 『鬼兵隊にいたヤツだろ、お前』 『こんなとこで何してやがる』 なんか男前な顔になってるエリザベスが、ケンカ腰で男に近づく。それにつられるようにして桂さんも男に近づいた。すると、ついに男が口を開いた。 「おぬし、その魂のリズム・・・」 男は、聞き取りにくい、小さな声で続けた。 「耳障りで稚拙な腑抜けたラップ・・・、しかしその奥底には、激しい想いと弱き者への愛が聞き取れる・・・不思議な歌だ。面白い。これほどまでに拙者を楽しませる歌がこの世に二つもあったとは・・・否、三つか・・・」 男は顔を上げ、銀さんを見た。 「何だよ、人が話し掛けても返事もしないと思ったら、今度は急にわけわかんねぇことをペラペラ・・・」 単に不機嫌という以上の理由があるのだろう。銀さんが、恐い。 「・・・ったく、この調子じゃあ、ヘッドホンしててもしてなくても一緒か。あ~あ」 あれ?何このライトな感じ?二行前に「銀さんが、恐い。」って書いたよね? しかも、その銀さんの気だるい一言を聞いた男が、また、凄い勢いで泣き始めた。声も出さず、滝のような涙を流している。僕も銀さんも、動揺を隠せなかった。というより、どん引きしていた。で、エリザベスはただ突っ立っているだけ、桂さんと神楽ちゃんは・・・ 「ヅラぁ、やっぱお前のラジカセ、ぶっ壊れてるネ」 「ヅラじゃない、桂だ。それに、壊れているのは俺のラジカセではなく、そのヘッドホンの方だと思うが」 ・・・・・・ 「ちょっとぉぉお!そのヘッドホン、明らかにあの人のでしょ、倉田さん(仮名)のでしょうがぁぁああ!」 僕はツッコミをいれつつヘッドホンを奪い返し、男に差し出した。 男は、ヘッドホンを受け取ると、ヘッドホンを抱きしめるようにして一層激しく泣いた。 「拙者の・・・拙者の・・・すまなかった・・・もと早く気付いてやれば・・・・・・」 どうしよう、この人、ヘッドホンに謝ってるよ。 見かねた銀さんが、男からヘッドホンを取り上げて、桂さんのラジカセに繫げた。 「あー、これ、完全に切れちまってるわ。まあ、でもこれくらいなら・・・」 そういって銀さんは、笑みを浮かべながらヘッドホンを男に返した。 「安心しろ、お前のヘッドホン、前よりパワーアップさせてやっから」 次回でいよいよ完結です。万斉のキャラがぶっ壊れてますが、次回はちゃんと、カッコいい万斉になりますよ。多分。