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《おばさんじゃないよっ!》 イベントカード 使用コスト2/発生コスト2/青 《使用条件》 「種島 ぽぷら」 [メイン/割り込み] 相手のプレイ中の発生コストが2のイベントカード1枚を無効にする。 (なっ……おばさんじゃないよっ!) WORKING!!で登場した青色のイベントカード。 種島 ぽぷらがいる時に発動でき、相手の発生コスト2のイベントカードの発動を無効にする効果を持つ。 《黒幕》と比べると、使用条件があるかわりに発生コストが2と増えたため、万が一腐った場合は手札コストにできる。 発動タイミングの関係上、コンバットトリックには無力。 カードイラストは第6話「宗太の憂鬱、小鳥遊家の女達」のワンシーン。フレーバーはその時のぽぷらのセリフ。 関連項目 《黒幕》 収録 WORKING!! 01-122
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にんじゃ風の情報スキル1 スキル2 進化スキル 評価評価点 対人戦評価 ボス戦評価 育成おすすめサポート おすすめサポート先 おすすめ覚醒 おすすめステータス振り コメント にんじゃ風の情報 画像 スキル1 音速斬り 威力 小 相手単体を攻撃し、自分の速度を1ターン強化する。 Lv2 ダメージ+10% Lv3 ダメージ+10% Lv4 ダメージ+10% 潜在解放5段 なし スキル2 風魔手裏剣 CT 5~2 / 威力 中 相手単体を攻撃し、50%の確率で防御力を1ターン弱化する。この攻撃は速度によって威力が上昇する。次の自分のターン開始時に、もう一度ダメージと弱化を与える。 Lv2 スキル使用間隔-1ターン Lv3 スキル使用間隔-1ターン Lv4 スキル使用間隔-1ターン 潜在解放8段 なし 進化スキル 変わり身の術 HPが0になるとき、HPが一番多い味方からHPを30%もらい生き残る。HP30%以上の味方がいない場合発動しない。CT 2ターン 評価 評価点 7.8点 /10点 対人戦評価 作成中 ボス戦評価 作成中 育成 おすすめサポート 作成中 おすすめサポート先 作成中 おすすめ覚醒 作成中 おすすめステータス振り 作成中 コメント 名前
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2013-06-17 06 53更新 ■番組名 じゃんぐる♥レディOh! ■放送期間 2012年8月6日 ~ 毎週月-水曜 19 00~20 00 (YES-fm) 再放送 同日 25 00~26 00 ■番組概要 大阪市中央区のコミュニティーFM局「 YES-fm 」で放送中のラジオ番組。 「アイドルの アイドルによる アイドルのための番組」と銘打ち週5日放送されている。 NMB48は月曜から水曜までの三日間を担当。 出演者は、各曜日レギュラー2名に「じゃんぐるメイト」と呼ばれる日替わりゲスト1名を加えた計3名。 これまでのところ研究生や3期生が中心で、1時間番組というボリュームもあって、 今までメディア出演の機会が少なかったメンバーの個性をかなり知ることができる貴重な場となっている。 全国どこでも聴取可能。[1] ■レギュラーパーソナリティー 月曜: 梅原真子 黒川葉月 火曜: 日下このみ 小林莉加子 水曜: 石田優美 林萌々香 ■各種データ (第45週 6/12放送分まで更新) 放送リスト(総合) 放送リスト(曜日別) じゃんぐるメイト別 出演日早見表 じゃんぐるメイト別 出演回数 お知らせ川柳募集中 リピート放送開始 放送リスト(総合) 【じゃんぐる♥レディOh! 出演者・放送日一覧】――――――――――――――――――――――――――――――――――#週 Jメイト 月曜 / 火曜 / 水曜 放送日[月-水] メモ――――――――――――――――――――――――――――――――――#01| 古賀 | 山ひ | 中川 | 08/06-08/08 <2012年>#02| 太夢 | 鵜野 | 東郷 | 08/13-08/15#03| 西澤 | 小柳 | 河野 | 08/20-08/22#04| 佐藤 | 山内 | 久田 | 08/27-08/29#05| 河野 | 杉本 | 石塚 | 09/03-09/05#06| 高山 | 井尻 | 三浦 | 09/10-09/12#07| 鵜野 | 植田 | 上枝 | 09/17-09/19#08| 佐藤 | 古賀 | 杉本 | 09/24-09/26#09| 植田 | 久田 | 赤澤 | 10/01-10/03#10| 中川 | 三浦 | 久代 | 10/08-10/10――――――――――――――――――――――――――――――――――#11| 東由 | 石塚 | 山内 | 10/15-10/17#12| 上枝 | 太夢 | 古賀 | 10/22-10/24#13| 室加 | 赤澤 | 井尻 | 10/29-10/31#14| 中川 | 東由 | 高山 | 11/05-11/07#15| 杉本 | 中川 | 山内 | 11/12-11/14#16| 室加 | 佐藤 | 小柳 | 11/19-11/21#17| 三浦 | 井尻 | 西澤 | 11/26-11/28#18| 石塚 | 高山 | 鵜野 | 12/03-12/05#19| 太夢 | 室加 | 東由 | 12/10-12/12#20| 赤澤 | 河野 | 山ひ | 12/17-12/19――――――――――――――――――――――――――――――――――#21| ―― | ―― | 古賀 | 12/24-12/26 ※月火 = クリスマスSP (月火レギュラー4名で出演)#〃| ―― | ―― | 中川 | 〃 ※水曜 = 忘年会SP (ゲスト2名=古賀・中川)#22| 上枝 | 薮下 | 島田 | 12/31-01/02#23| 加藤 | 久代 | 與儀 | 01/07-01/09 <2013年>#24| 山内 | 三浦 | 西澤 | 01/14-01/16#25| 高山 | 植田 | 鵜野 | 01/21-01/23#26| 井尻 | 石塚 | 中川 | 01/28-01/30#27| 太夢 | 室加 | 古賀 | 02/04-02/06#28| 三浦 | 上枝 | 鵜野 | 02/11-02/13#29| 赤澤 | 井尻 | 高山 | 02/18-02/20#30| 石塚 | 河野 | 三浦 | 02/25-02/27――――――――――――――――――――――――――――――――――#31| 植田 | 山内 | 西澤 | 03/04-03/06#32| 薮下 | 加藤 | 中川 | 03/11-03/13#33| 室加 | 赤澤 | 古賀 | 03/18-03/20#34| 上枝 | 太夢 | 高山 | 03/25-03/27#35| 加藤 | 久代 | 三浦 | 04/01-04/03 ※リピート放送開始 #36| 山内 | 植田 | 鵜野 | 04/08-04/10#37| 井尻 | 石塚 | 西村 | 04/15-04/17 ※4期生初登場#38| 太夢 | 上枝 | 西澤 | 04/22-04/24#39| 赤澤 | 河野 | 渋谷 | 04/29-05/01#40| 高山 | 三浦 | 松村 | 05/06-05/08――――――――――――――――――――――――――――――――#41| 久代 | 室加 | 中川 | 05/13-05/15#42| 植田 | 井尻 | 山尾 | 05/20-05/22#43| 河野 | 久代 | 古賀 | 05/27-05/29#44| 石塚 | 森田 | 照井 | 06/03-06/05 #45| 室加 | 太夢 | 鵜野 | 06/10-06/12 上へ戻る 放送リスト(曜日別) 【月曜】 まこぽんとはーこの じゃんぐる♥レディOh! 【まこぽんとはーこの じゃんぐる♥レディOh!】 (月曜担当 梅原・黒川)――――――――――――――――――――#週 放送日 Jメイト 備考――――――――――――――――――――#01 08/06 古賀 <2012年>#02 08/13 太夢#03 08/20 西澤#04 08/27 佐藤#05 09/03 河野#06 09/10 高山#07 09/17 鵜野#08 09/24 佐藤#09 10/01 植田#10 10/08 中川――――――――――――――――――――#11 10/15 東由#12 10/22 上枝#13 10/29 室加#14 11/05 中川#15 11/12 杉本#16 11/19 室加#17 11/26 三浦#18 12/03 石塚#19 12/10 太夢#20 12/17 赤澤――――――――――――――――――――#21 12/24 ―― (クリスマスSPと題して月火レギュラーの4名が出演)#22 12/31 上枝#23 01/07 加藤 <2013年>#24 01/14 山内#25 01/21 高山#26 01/28 井尻#27 02/04 太夢#28 02/11 三浦#29 02/18 赤澤#30 02/25 石塚――――――――――――――――――――#31 03/04 植田#32 03/11 薮下#33 03/18 室加#34 03/25 上枝#35 04/01 加藤 ※リピート放送開始#36 04/08 山内#37 04/15 井尻#38 04/22 太夢#39 04/29 赤澤#40 05/06 高山――――――――――――――――――――#41 05/13 久代#42 05/20 植田#43 05/27 河野#44 06/03 石塚#45 06/10 室加 【火曜】 このみんとりっぴーの じゃんぐる♥レディOh! 【このみんとりっぴーの じゃんぐる♥レディOh!】 (火曜担当 日下・小林)――――――――――――――――――――#週 放送日 Jメイト 備考――――――――――――――――――――#01 08/07 山ひ <2012年>#02 08/14 鵜野#03 08/21 小柳#04 08/28 山内#05 09/04 杉本#06 09/11 井尻#07 09/18 植田#08 09/25 古賀#09 10/02 久田#10 10/09 三浦――――――――――――――――――――#11 10/16 石塚#12 10/23 太夢#13 10/30 赤澤#14 11/06 東由#15 11/13 中川#16 11/20 佐藤#17 11/27 井尻#18 12/04 高山#19 12/11 室加#20 12/18 河野――――――――――――――――――――#21 12/25 ―― (クリスマスSPと題して月火レギュラーの4名が出演)#22 01/01 薮下 <2013年>#23 01/08 久代#24 01/15 三浦#25 01/22 植田#26 01/29 石塚#27 02/05 室加#28 02/12 上枝#29 02/19 井尻#30 02/26 河野――――――――――――――――――――#31 03/05 山内#32 03/12 加藤#33 03/19 赤澤#34 03/26 太夢#35 04/02 久代 ※リピート放送開始#36 04/09 植田#37 04/16 石塚#38 04/23 上枝#39 04/30 河野#40 05/07 三浦――――――――――――――――――――#41 05/14 室加#42 05/21 井尻#43 05/28 久代#44 06/04 森田#45 06/11 太夢 【水曜】 ゆうみんとモカの じゃんぐる♥レディOh! 【ゆうみんとモカの じゃんぐる♥レディOh!】 (水曜担当 石田・林)――――――――――――――――――――#週 放送日 Jメイト 備考――――――――――――――――――――#01 08/08 中川 <2012年>#02 08/15 東郷#03 08/22 河野#04 08/29 久田#05 09/05 石塚#06 09/12 三浦#07 09/19 上枝#08 09/26 杉本#09 10/03 赤澤#10 10/10 久代――――――――――――――――――――#11 10/17 山内#12 10/24 古賀#13 10/31 井尻#14 11/07 高山#15 11/14 山内#16 11/21 小柳#17 11/28 西澤#18 12/05 鵜野#19 12/12 東由#20 12/19 山ひ――――――――――――――――――――#21 12/26 古賀・中川 (忘年会SP)#22 01/02 島田 <2013年>#23 01/09 與儀#24 01/16 西澤#25 01/23 鵜野#26 01/30 中川#27 02/06 古賀#28 02/13 鵜野#29 02/20 高山#30 02/27 三浦――――――――――――――――――――#31 03/06 西澤#32 03/13 中川#33 03/20 古賀#34 03/27 高山#35 04/03 三浦 ※リピート放送開始#36 04/10 鵜野#37 04/18 西村#38 04/25 西澤#39 05/01 渋谷#40 05/08 松村――――――――――――――――――――#41 05/15 中川#42 05/22 山尾#43 05/29 古賀#44 06/05 照井#45 06/12 鵜野 上へ戻る じゃんぐるメイト別 出演日早見表 【 じゃんぐるメイト別 出演日早見表 】―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――小東鵜古佐島中西山與 赤石井植太加上久 河杉高東久三室薮山 渋照西松森山 放送日柳由野賀藤田川澤ひ儀 澤塚尻田夢藤枝代 野本山郷田浦加下内 谷井村村田尾 週 [月 - 水]―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――---月--水-火- -------- --------- ×××××× #01 08/06-08/08--火------- ----月--- ---水----- ×××××× #02 08/13-08/15火------月-- -------- 水-------- ×××××× #03 08/20-08/22----月----- -------- ----水---火 ×××××× #04 08/27-08/29---------- -水------ 月火------- ×××××× #05 09/03-09/05---------- --火----- --月--水--- ×××××× #06 09/10-09/12--月------- ---火--水- --------- ×××××× #07 09/17-09/19---火月----- -------- -水------- ×××××× #08 09/24-09/26---------- 水--月---- ----火---- ×××××× #09 10/01-10/03------月--- -------水 -----火--- ×××××× #10 10/08-10/10―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――-月-------- -火------ ---×----水 ×××××× #11 10/15-10/17---水------ ----火-月- ---×----- ×××××× #12 10/22-10/24---------- 火-水----- ---×--月-- ×××××× #13 10/29-10/31-火----月--- -------- --水×----- ×××××× #14 11/05-11/07------火--- -------- -月-×----水 ×××××× #15 11/12-11/14水---火----- -------- ---×--月-- ×××××× #16 11/19-11/21-------水-- --火----- ---×-月--- ×××××× #17 11/26-11/28--水------- -月------ --火×----- ×××××× #18 12/03-12/05-水-------- ----月--- -×-×--火-- ×××××× #19 12/10-12/12--------水- 月------- 火×-×----- ×××××× #20 12/17-12/19―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――---水×-水--- -------- -×-×----- ------ #21 12/24-12/26----×水---- ------月- -×-×---火- ------ #22 12/31-01/02----×----水 -----月-火 -×-×----- ------ #23 01/07-01/09----×--水-- -------- -×-×-火--月 ------ #24 01/14-01/16--水-×----- ---火---- -×月×----- ------ #25 01/21-01/23----×-水--- -火月----- -×-×----- ------ #26 01/28-01/30---水×----- ----月--- -×-×--火-- ------ #27 02/04-02/06--水-×----- ------火- -×-×-月--- ------ #28 02/11-02/13----×----- 月-火----- -×水×----- ------ #29 02/18-02/20----×----- -月------ 火×-×-水--- ------ #30 02/25-02/27―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――小東鵜古佐島中西山與 赤石井植太加上久 河杉高東久三室薮山 渋照西松森山柳由野賀藤田川澤ひ儀 澤塚尻田夢藤枝代 野本山郷田浦加下内 谷井村村田尾 週 [月 - 水]―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――----×--水-- ---月---- -×-×----火 ------ #31 03/04-03/06----×-水--- -----火-- -×-×---月- ------ #32 03/11-03/13---水×----- 火------- -×-××-月-- ------ #33 03/18-03/20----×----- ----火-月- -×水××---- ------ #34 03/25-03/27----×----- -----月-火 -×-××水--- ------ #35 04/01-04/03--水-×----- ---火---- -×-××---月 ------ #36 04/08-04/10----×----- -火月----- -×-××---- --水--- #37 04/15-04/17----×--水-- ----月-火- -×-××---- ------ #38 04/22-04/24----×----- 月------- 火×-××---- 水----- #39 04/29-05/01----×----- -------- -×月××火--- ---水-- #40 05/06-05/08―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――----×-水--- -------月 -×-××-火-- ------ #41 05/13-05/15----×----- --火月---- -×-××---- -----水 #42 05/20-05/22---水×----- -------火 月×-××---- ------ #43 05/27-05/29----×---×- -月------ -×-××---- -水--火- #44 06/03-06/05--水-×---×- ----火--- -×-××-月-- ------ #45 06/10-06/12小東鵜古佐島中西山與 赤石井植太加上久 河杉高東久三室薮山 渋照西松森山柳由野賀藤田川澤ひ儀 澤塚尻田夢藤枝代 野本山郷田浦加下内 谷井村村田尾02030707030108050201 0607070607030605 060307010208070206 010101010101 上へ戻る じゃんぐるメイト別 出演回数 ―――――――――――――――――――――――――――――― じゃんぐるメイト別 出演回数 (第45週まで)――――――――――――――――――――――――――――――08 中川 三浦07 鵜野 古賀 石塚 井尻 太夢 高山 室加06 赤澤 植田 上枝 河野 山内05 西澤 久代04 03 東由 加藤 (佐藤) (杉本)02 小柳 薮下 (山ひ) (久田)01 島田 與儀 渋谷 照井 西村 松村 森田 山尾 (東郷)―――――――――――――――――――――――――――――― 上へ戻る お知らせ 川柳募集中 → 番組ブログ 「その日のベスト川柳に選ばれた方には、お題のメンバーから“あなただけへのメッセージ”を番組内でプレゼント」。 「『学校や職場で会ったときに言ってほしいひとこと』や『疲れたときに言ってほしいひとこと』など日常でのひとことをプレゼント」中。 リピート放送開始 → 番組ブログ 2013年4月1日よりリピート放送開始(同日深夜1時から)。 なおNMBが担当している月~水曜のリピート放送は少し前の0時59分30秒くらいから聴くとさらに楽しめるとのこと。 ※ 再放送直前に、本放送時には無かった日替わりPRスポット(約20秒)が聴ける。 上へ戻る ■脚注 1^ 聴取可能地域 YES-fmが受信可能なのは「大阪市中央区とその周辺地域」だが サイマルラジオ でも配信されており、 ネット経由であれば全国どこでも聴取可能。 Copyright ©2012-2013 NMB48番組データwiki(仮) All Rights Reserved.
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二人の男女がもんじゃやき、とあざとい筆づかいで描かれたのれんをくぐりに入っていった。(改変余地蟻)暖かい空気に包まれ、女の頬に薄い紅色がぽう、とさす。店内のあちらこちらの鉄板からジュウッ、という食欲をそそる音が立ち上がっていた。女が一通りそれほど広くもない店内を見渡すとちょうど良い席を発見した、と男に一声かけその席に座るように促した。二人が腰を下ろすと初老の店員が水の入ったコップを運んできた。店員がご注文はお決まりになりましたら・・・。と言いかけたのを遮って 「店員さん、カップルデーコースでお願いします。」 と女が大きな声で注文をした。店内の空気がどよめいた。仕事帰りであろうサラリーマンの二人組み、先ほどまで試合の反省会をしていた丸刈り頭が六つ、そして一見おとなしそうな(どちらかと言えば暗そうな)少女これらが一斉に彼らのほうに視線を注いだ。が一番泡を食っていたのは男のほうであった。 「カップルで行こうっす・・・だと。ok,とにかくあんな目立つような声で注文したわけが聞きたい。」 男は掛けている眼鏡を押し込めるようにして顔を手で覆った。 「いや、かっこつけるふりしてその手の下にニヤケ面隠してるところ申し訳ないが今のオーダーには他意はない、君以外には。」 「店員以外の一般客にまで誤解される必要はないと思いますがね。」 「んにゃ、おかげで面白い状況になってきた。ほれ、あそこの一人スパイ大作戦を見ろ。」 そういうと女はテーブルの上にあったヘラで先ほどからこちら様子を伺っていた少女を指した。 男がへらの先を見ると少女がしきりにこちらの様子を伺っている。ほかの客は平静を取り戻し、この場合は装いといったほうが適切か、自分のもんじゃ焼きを焼いているのだが。 「で、あの女ボンドが何なんです。」 「うん、あれは私の命を狙っている殺し屋だ。」 男は女があまりにもとっぴなことを言うのでどう返したらいいものか思案して顔を伏せてしまった。 ーもう何がなにやら。ー 彼は入店早々帰りたくなっていた。が女はそんなことなどどこ吹く風で少々お花を摘みに、と男に断ると壁のトイレ←と書かれた張り紙に従い彼をひとり残して行ってしまった。
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やけ買いなんかするもんじゃない ----*** 1・やけ買いなんかするもんじゃない ***---- 「ごしゅじんさまー。ごしゅじんー。あるじー。マスター。おーい」 「だー! うるさい、暇なら先に寝てろ! ……っひいいいい」 背中の毛がわさわさ一気に立った。ついでに裏声を出してしまった。いきなり後ろから耳にやわやわ噛みついたヤツがそのままの位置でうひひ、と笑うものだから、その息の圧力がまた耳にかかって首筋の毛まで立った。細い指が視界の隅に入ったかと思うと今度は 目元をマッサージされた。 「目の上ひげー。目の上ひげー」 「引っ張るなー! 頼む、邪魔しないでくれ、明日朝まで最低これだけは書類作っとかなきゃいけないんだよう……」 俺、なんでこんなの買っちゃったんだろう。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。なもんで結婚用だったのに使う当てのなくなった、分割払い頭金にするくらいの金はあった。したたかに酔っていた。ヤケをおこした。 ゆえにこいつがここにいる。お嫁さんもらってもしばらくはここで住めるよなー、とか ほわほわ考えていた2LDKの賃貸住宅に、小市民には不釣合いな贅沢品が。 「ここだけの話ですがね、『落ちてきた』ばっかりの新品なんですよ。肌もきれいで健康体、お買い得商品」 黄色い目の口の臭いヒト売りはそう俺に耳打ちして、言い値より遥かに上の値を示した。値切りきれなかったもので、分割払いの先の長さを考えると貧血を起こしそうになる贅沢品になってしまった。 向かい合った俺をきつい目で睨みすえ、ヒトミと名乗ったヒトメスは、今は後ろから手をまわして俺の頬ひげを引っ張っている。 「抜けないもんだね」 「抜かないでお願い」 ……俺、ほんとなんでこんなの買っちゃったんだろう。 ヒトってのは脆弱で魔力がなくてすぐ死んじまうけど、夜の相手に絶品で従順で頭が良くて小器用で特にメスは料理が上手いとか俺、聞いてたんだけど。誰だそんな噂を流したのは。責任取れ。 ヒトミを買った次の朝、遠慮がちに仕事の間の掃除と夕飯を頼んだら、特にメシが大変な事になっていたもので俺はつい、そんな噂を流した奴への怒りもこめてヒトミを怒鳴りつけてしまった。そしたら逆ギレされた。 「文句があるなら電子レンジとレシピ集持ってこい!」 お前は何を言っているのだ。 俺の、頭が一瞬真っ白になった呆れ顔を見てヒトミは逆ギレで紅潮した頬を更に赤くした。 「すみませんね料理下手で。でもコンロも調味料もよくわかんないんですよ! わかったのマタタビ風味塩くらいだよ!」 それで、何かお祝い事があったら食べようと大事にとっておいた青猫印の高級干物が更に塩にまみれているわけか。全体的に塩っぽい食卓に悲しくなってひげを下げたら、へんな形の耳まで赤くなっていたヒトミが青筋を立てた。 「仕方ないでしょ、前のゴシュジンの所じゃちゃんとした料理人がいて私が料理する事なんてなかったんだから」 こちらこそすみませんね料理人なんて雇えない身で……って待て。待てやこいつなんて言った。 前のゴシュジンの所? 「中古かよ!」 「車かよっ」 俺が思わず叫んだ言葉に軽く、よく意味のわからないツッコミを入れながら、瞬時に鋭く吊り上がったヒトミの切れ長の目と、その瞳の奥に見えた光の色は一生忘れないだろう。忘れられないだろう。 「まさか『ワタシ、初めてなの』っていうヒト奴隷を期待してた訳じゃないよね。ガバガバじゃない事は確めたでしょ? 前のゴシュジンサマが大事にしてくれたから、傷もないし。……自分で言うのもなんだけどお買い得だったと思うよ」 喋る声と、喋る間に目を伏せていったヒトミの表情も忘れないだろう。 「いいかげんコタツ片付ければ? コタツ布団抜け毛だらけじゃん。ひえー、コタツ布団が白黒になってる」 「どーせ掃除すんの俺だろ、好きにさせてくれ。コタツに座布団が一番集中できんの」 身の丈に合わない贅沢品を購入してしまったもので稼がねばならんのです、頼むから計算に集中させてください贅沢品さん、尻尾足指でつまむなー頼むー、せめてこの入荷予定表だけは仕上げておかないと……。 付根からリズミカルに尻尾を踏まれたら、俺の理性が俺にさようならー、を告げて去っていった。そのこだまがまだ響くうちに、カギ尻尾ー、と楽しそうに言うヤツの足が、カギ部分を踏む前に。 腕だけ後ろに回してヤツの胴体あたりを抱え、コタツ布団に引きずりこんだ。 家に連れ帰った後俺の、ひそかに気にしているカギ尻尾を見た時ヒトミはそれまで動かさなかった表情を少しだけ緩めて呟いた。 「ミーコもカギ尻尾だったっけなあ……」 「ミーコ?」 「子供の頃うちにいた三毛猫」 ……「落ちモノ」が元いた世界に「猫」って動物がペットとして飼われている事は知っていたが、なんだか複雑な気分になったものだ。そのミーコはどうした、と軽く聞いたらとっくに老衰で死んじゃってる、と答えられたものだからなおさら。 「尻尾さわっていい?」 今にして思えばその時、「ご主人様に対してその口のきき方はなんだ」とでも言って冷静にしつけておけばよかったのだ。だが脳味噌では異世界の猫という動物に思いを馳せ、下半身ではいきなり押し倒してもいいもんかなー柔らかそうだなーなどと考えていた俺は、 実に気さくに「ほいよ」とヤツに背を向けて座ってしまった。 結果、俺は「尻尾で感じちゃうのボク」という新しい自分を発見し、ヒトミは口では「ごしゅじんさま」なんぞと言うものの俺を主人などとは全く思っていないであろう態度となり、現在に至る。 指の第一関節から先を右手から順に十本口に含んでいる間、ヒトミは何も言わない。動かない。じっと俺の口にまかせている。二度目にこれをやった時面白いのか、とだけ聞いてきた。ヒトの指と爪は柔らかくて面白い、と答えたら黙った。それ以降なんとなく抱く際の儀式のようなものになっている。その後ははだけさせた肩に舌を、そのまた後は首筋 にやわやわと牙を。 ……尻尾で興奮して押し倒した最初の日、ヒトはどこがいいのだろうかと慎重にいちいち聞いていたら「くそやかましい!」という声とともに急所を蹴られそうになったもので、試行錯誤という安全策を取らざるを得なくなった。誰だこんなのを買ったのは。俺だ。 「ふ……ん……」 こーいう声を上げさせてからは俺が強い。特に鎖骨がヒトミの弱点。座布団の端を握りのけぞって舌から逃れる体が、布地ごしでも胸の突起を目立たせている。舐めろといわんばかりなので舐めるしかないだろう。ヒトミが勝手に引っ張り出して着ている俺のパジャマを鼻先でまくりあげたら、ひげがくすぐったかったらしく露になった腹が波打った。 何度抱いてもヒトの柔らかさには感動する。こいつだけかもしれないが。胸も尻も太股も、二の腕もしっとり触りごこちがいい。中でもたゆんと揺れている胸がいい。齧りつきたくなるのを我慢してやっぱり我慢できなくて、思いきり口を開けて甘噛みしながら舌で 乳首をつついてやると今度は、くすぐったさへの反応ではない吐息が返ってきた。吐息と、耳をそっと探る指が。 「ああ……耳の毛すべすべ……腕の毛きもちいい……」 「……俺の長所は毛だけかよ」 ヒトミが恍惚とした表情で目を細めているから、まあいいんだけど。肌から離してしまった口をこれまた柔らかい唇に押しつけて、毛にばかり言及する声を封じながらだぶだぶのパジャマズボンと下着を一気に脱がせ、ようとした。コタツに引きずりこんだのは失敗だった。可動範囲が狭いったらない。肘天板にぶつけた。痛い。至近距離で見上げるヒトミが喉で笑って、体をずり上げてくれなかったらもっとお互いの足と腕に青痣が出来るはめになってたんじゃないだろうか。 女の裸が寒そうに見えるのはネコもヒトも同じ、けれど華奢な分こいつの方が痛々しい。こっちも慌てて脱いで覆い被さったら、待ちかねたように肩に顔を埋められた。本気で毛だけか、俺の価値。 それでも緩く抱えこんだ体を膝までゆっくりとなぞり、戻って足の間を探るとヒトミの息で肩が熱くなる。指に感じる液体を粘膜に戻そうとする動きには背に回された腕の力が弱く返ってくる。体温低いくせに、沈めた指の先はねっとりと、荒くなる息より熱い。 「……ヒトミ」 「ん」 「あ、そのまま」 大きく広げようとした両足を跨いで、少しずつ捻じこんでいく。まだ下半身の大部分コタツの中、コタツに当たって痛い思いをするのは俺だけでいい、と冷静なふりをしてみた。 そうでもしないと、苦痛なのか快楽なのか判断のつかないかすかなあえぎと締められる感覚にあっけなく暴発しそうになる。どうしてこいつはこんなに、こらえているような甘い声を出すんだろう。叫べばいいのに。動かしながら、敏感な箇所に根元を押しつけて腰を揺らしてやったらのけぞった喉から鋭く息を吸い込む音がした。コタツが邪魔で大きく動けないの、幸いしたかも。 「ちょっと、うあ、もう、だめかも」 「おれもっ……」 ただでさえ狭い肉の道で、突き入れた奥から順に、太股の筋肉まで総動員して絞り取る動きに耐えきれなかった。のけぞっていた上体が震えてしがみつくとほぼ同時に俺も果ててしまった。今度こそこいつをいかせていかせていかせまくってやる、と思っていたのに。 細かく打ちつけるのをヒトミは好むらしい、と頭の中にメモメモ。出したばかりの冷めた頭の一端では……なんで高い金出して買った相手を必死になっていかせようとしてんの? とかも考えてしまうわけですけれども。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。腕と足を剥き出しにした粗末な服に、手枷足枷首輪鎖が不釣合いにごっつく見えたヒトたちの中、そいつだけは窓と開け放された戸から血走った目を離していなかった。だから、見物人の一人だった俺と目が合ってしまった。反抗的なのがいるな、大変だろう、とからかい混じりに値をつけたらヒト売りがこれもまたからかい混じりにさすがにその値じゃあ、と返した。そのうちついむきになって名刺を出したら即座に分割払いの話になった。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。ヤケをおこした。したたかに酔っていた。買ってしまった。「落ちてきた」ばかりだと言ったヒト売りの言葉を信じてしまったのは合った目の鮮烈な印象からだろう。 腹の下であえぐ顔を見ても、胸に「うははもふもふの面積広い」と頭をすりつける声を聞いても、あの時の、隙を窺う目と全身に緊張感をあらわした姿はいまだにはっきりと記憶に残っていて、たぶんずっと消えない。 「おい」 胸元に眠そうな顔をうずめながら、手を伸ばして背中の和毛を抜いているヒトミの腕を軽く押さえる。ついさっき抜け毛だらけとか言ったくせに、何をやってるんだ。 「二十年? 三十年? そんくらい後か、指差して笑ってやるからな。お前の胸がどんだけ垂れたとか、皺が増えたとかいちいち笑ってやるからな」 「ほう」 「ほうじゃねえ。本気でやってやる。シワシワになったら思いきり笑ってやる」 「へえ」 「今のうちにほーとかへーとか言っとけ」 「ふーん」 「いででででで抜くな、まだそれ抜けない毛!」 柔らかくて頼りない腕が、押さえていた俺の手をすり抜けた。眉間をすりすりと撫でられて俺は瞼を閉じた。 自分で発した言葉に目頭が熱くなったのをごまかすため、なんて絶対言わねー。 ほんと、ヒトなんて買うもんじゃない。 ----*** 幕間・ある日の朝と夜 ***---- 雨が降っている。 「ごしゅじんさまー、もういいかげん起きないと」 雨が降っている。石畳を被った水膜が滴を弾く音か、細やかな刻む音が私を更に苛立たせている。私の記憶が確かなら、起きないと遅刻するんでないかいごしゅじん。うーだのひにゃーだの唸りながら毛布抱えてる暇ないよ。 ミーコがでろんにゃろんと雨の日寝てばかりいたのは覚えている。前のゴシュジンも雨の日はよく居眠りをしていた。しかしこのごしゅじんは勤め人(勤め猫?)だ、本能に負けて遅刻したらいかんと思うのだ。元の世界では、這ってでも無遅刻無欠勤を貫こうとした私の責任感が許せない。 「ごしゅじん……ぬぐぐぐぐぐ」 毛布ひっぺがし失敗。ならば寝台の下に引きずり落とそうとしたが失敗。重い。目も開けやしねえ。ふなふなとか言ってるんじゃないー。 せめて朝ご飯でも用意しようかと、戸棚を開ければ一斤塊のパン、切って売られるべきだろう常識的に考えて、と歯軋りしてパンを戻し、またごしゅじんに声をかけるも答えはないのでブラッシングと洗顔の準備、済ませてもやはり白黒猫はヨダレをたらして寝くたれており、足踏みをしながら果物などコタツに並べ、致し方なく改めてパンを取りだし切ってみたら、「一枚なのに直立する食パン」なる末広がりの立体作品になってしまい、もうなんだか絶望した。 「ごしゅじぃん! 起きないとひげ引っ張るよ!」 「むー……ちゅー」 なに、この子猫がおっぱい吸うみたいな口。 「……お目覚めのちゅーしてくれたら、起きるかもしんない」 「…………」 皿に直立するパンを見て一瞬目を点にしていたごしゅじんは、まだ眠そうな顔のままもそもそそれを食べ終えて、言った。 「俺の勤め先、国内向けの商品しか扱ってないから、従業員みんなネコなんだよね。つまりほとんどみんな雨の日眠いの。今日も三分の一くらい遅刻してくるんじゃないかなー。俺、特に雨弱いから、珍しく早いなってびっくりされると思う。んじゃ、いってきまーす」 ……歪んだ逆台形になってしまったパンを見て湧きあがってくるこの黒い感情は何だろう。 雨はやんだが、ごしゅじんは夕食後もまだ少しぼーっとしている。 「ごしゅじん、そろそろちゃんとお風呂入ったら?」 「ん? 入ってるだろ」 嘘だ。私が湯を使った後に、申し訳程度にぴちゃぴちゃ要所要所を洗っているだけだ。ブラッシングは欠かさないとはいえ、今日のような湿度の高い日は特に、毛先まで脂がまわってぺっそりしているように見える。だいたいこの図体で蚤でもわいた日には、大変な事になるのではなかろうか。 「ヒトミ、そうは言うけどな、厄介なんだぞ男は」 ごしゅじんは短毛じゃないか。長毛にゃんこよりずっとマシだ。濡れるのが嫌なだけだとみた。 「う。うーんと」 何か反論があるのですかごしゅじんさま。 「ヒトミが一緒だったら、ちゃんと風呂入るかもしんない」 「…………」 先に風呂場で待っていたごしゅじんは、ものっすごくわくわくした顔で私を見てから私が手にした物に目を落とし、首を傾げた。 こちらのネコも、悲鳴は猫のそれに似ている。 「おま、お前、お前の世界じゃタワシでネコこするのかよおおお!」 「こするわけないでしょ」 力と体格では到底敵わない相手だが、幸いこちらは弱点を知っている。つかんでいる泡だらけの尻尾の主が、非難するように私を振りかえった。 「こするわけないでしょうが。向こうの猫は小さいんだから」 「大きさが違うからって、みぎゃー!」 「何悲鳴あげてるのごしゅじん、向こうの世界で、タワシ健康法ってあったんだよ? こーんなひ弱いヒトの肌でも耐えられるのに」 こーんな鍋底こすり用の固いタワシは使わないだろうけどね。 「ほんと、か……? ぎゃあお!」 ああ、お風呂での健康法といえば、粗塩こすりつけるってのも、あったっけなあ……。 ----*** 2・ベッタベタでもいいじゃないかよ ***---- 明るいオレンジからだんだん薄紫へと変わっていく空に、今日は月が両方とも白く目立つ。家々から漂ってくる夕食の匂いに腹が鳴った。ヒトミも腹を減らしているだろう。自然足が早まった。「いきなり暴走したり爆発したりしそうで怖い」と魔洸エネルギー器の使用を拒否するのはともかく、メシくらいは作れるくらいになって欲しいよ。昼は果物でしのいでいるらしいが、ある日帰ったらひっそり餓死していそうで怖いったらない。……今更ながら分不相応な買い物をしたもんだ。いや、ヒトミだけの話なのかもしれない、これ。ヒトって料理上手なんじゃなかったのか。 「おっ」 「ぴにゃ」 考えながら歩いていたら、太股のあたりに軽い衝撃がきた。見下ろせばまだ産毛の残るちびネコ坊主。ぶつかった俺を見上げた銅色の瞳がまんまる。すみません、と慌てて追いかけてきた母親らしき人の目も同じ色をしていた。こーいう時だ、結婚してえーと思うのは。 少なくとも分不相応な贅沢品の分割払いが終わるまでは嫁さんなんか貰えませんけどね! 通りから家の窓を確認したら、くせっ毛を風に揺らしながら夕空をぼんやり眺めている、黒髪黒耳の横顔がそこにあった。よかった、ちゃんとネコ女性に見える。ようやくヒトの耳を隠せるくらい髪が伸びたので、付け耳付け尻尾を渡しておいたのだ。「二十五で……ネコミミデビュー……」とかなんとか言いながらヒトミはがっくりうなだれていたが、要らないトラブル防止だ仕方がない。 それにしても。こうして家の窓から、まるで俺の帰りを待つように女性が外を見ているのって……。 なんだかおよめさんがいるみたいだ。 ヒトだよ、ヒトだけどよ。少しくらいひたってもいいじゃないか。 ヒトのヒトミも俺に気付いた。軽く手を上げたら、ヒトミはそれに応じるどころか、窓枠を握りしめて俺をまじまじと睨んだ。傷ついた。いや、傷ついたって言ってもちょびっとだけど。 「……で、ごしゅじん、今度は何持ってきたのかなあ?」 慎ましい夕食(作成者:ほとんど俺)をとり、片付け(担当:半々)を終えるやいなや ヒトミは俺の前にきっちりと座ってこう言った。笑っているけど目が、目が鋭い。なんで。 「ごしゅじんさまがヒゲを全部ぴんと張って尻尾立てて早足で帰ってきた時は、大抵ろくでもない物かろくでもない知識を『猫井』のお友達から仕入れてきた時です。今日は小脇に、朝は持っていなかった包みを大事そうに抱えていました。更に、普段なら『稼がなきゃいけないんだ』と持ち帰り仕事を出すため鞄に手をかけるところなのに、今日はその包みにまず顔を向けてから慌てて目をそらしました。ゆえに、またろくでもない物を持って帰ってきたのだと推測した次第です。以上、何か間違いがありますか?」 ヒトミこわい。俺ちょっと涙目。どっちが主人なんだこれ。いや俺だ俺が主人だ。 「猫井技研からのもの、全部ろくでもないと思っていたのか」 はいここ重要です。一旦言葉を切って物憂げに視線をそらしましょう。 「……『落ちモノ』を、お前を理解しようとして、やっていた事なんだがな……」 「ニーソックスに絶対領域の概念、四十八手図解、ふりふりエプロンと裸エプロンの概念、裸に男物のシャツ概念、裸エプロン派と裸シャツ派対立についての熱い考察、電池切れのあやしいおもちゃ、フランス書院、みさくら語、そんなもんばっかり繰り出された挙句『ヒトってこういうの好きなんだろ?』と言われ続けた日にゃあ、ろくでもないの一言で一括りにもしたくなるっちゅーねんエロヒトオタ猫」 マンガと小説には大喜びしてただろうがよっ! 仕事関係で知り合った猫井技研の奴と心友になって、調査後資料的価値のなくなった落ちモノを格安で譲ってもらっているだけだ。エロヒトオタとかゆーな。 「お前の事を考えて」演技をすぐやめるのは業腹なので、物憂げな顔のまま包みを手に取る。 「お前、泳げる?」 「なに、突然」 「ヒトの健康には水泳がいいって聞いてきたんだよ。穴場でほとんど人がいない場所があるっていうから、連れて行こうと思ってこうやって水着もらってきたのに、全部ろくでもない物扱いか」 ……あれえ。 一瞬反省の顔になったのに、どうしてヒトミさんは包みから紺色の布地が出てきたのを見た途端に正座の姿勢からおでこがゴンっていうくらい思いきり床に突っ伏してるんだろう。 「す……スクール水着か、それ……ベタだ、あまりにもベタだエロヒトオタ猫……」 ベタかよ。エロヒトオタ呼ばわりやめないのかよ。でも負けない。 「ほら、これ、字は違うけどヒトミって書いてあるんだろ? ヒト用だぞちゃんと」 広げた前面に縫い付けられた白布の、滲んだ字を示したらまたヒトミが呻いた。 「うん、高橋瞳って書いてあるね。でも、その上の『5-3』っていう数字には気付いて くれなかったのかなあ?」 「ぬ?」 「子供用! 思いっきり小学生の五年三組瞳ちゃん用! サイズ見てわかんない?」 暴れられました。 「え、でもこれ、伸びるよ、ほら」 「そら獣人の力で伸ばしたら伸びるだろうけども……」 ヒトミは頭を抱えて床を転げています。どうしよう。 それでも、まあ濡らせばもっと伸びるかもね、と言って渋々ながら着てみようとしてくれるあたりが、ヒトミの良い所。 「戸ガリガリするとミーコって呼ぶよごしゅじん!」 風呂場に閉じこもって内側から閂をかけるのは悪い所。しばらく戸のガリガリも我慢して待っていたらドタバタした音の後、低い声がした。 「……大惨事」 なにごとだ。 「……男子レスリンググレコローマンスタイル48キログラム代表……」 だからなにごとだなにが起こっている。 俺は家主だから知っている。この風呂場の戸は、一定のリズムで揺すると閂が外れるのだ。音を出さないようにしていたつもりだったが、地を這う声が返ってきてしまった。 「今開けたら寝ている間にお前のひげを全部切る」 ヒトミまじこわい。紳士であるよう努める事にしますすみません。 無理、と最後に吐き捨てた響きを残したまま扉が開いた。頬を赤らめたヒトミの顔が出てきた。残念ながら着衣ずみ。 「何があった」 「着れなかっただけ」 切れ長の目がいつもよりずっとすわっているので言及するのはやめておく。何を見たのだろう。 そうか、スク水プレイは無理だったか……。 「……スク水プレイ、だとう……?」 あ、あ、頭の中の呟きは途中から声に出ていたようです。瞬時に変わったヒトミの目の色! 怖いすげえ怖い! 「確信犯カッコ誤用カッコ閉じるだったのかエロヒトオタ猫!」 「ぎゃーカッコとか声に出して詳しく怒られた!」 詳しく怒らないで下さい耳捻られると痛い。 それでも俺の方がずるい。ヒトミが絶対にその要求に抗わないのを知っていて、彼女の指を口に含んで黙らせる。 即座に黙って順に指を舐めるに任せている、筈だったが、今回は途中でおずおずヒトミが声を出した。 「あのさごしゅじん。するのはいいんだけど……なんで片手にまだスクール水着握ってん の?」 「大惨事なんだってば! なんでそんな着せようってこだわるのヒトオタ猫!」 一つの萌え要素らしいから。ってのは置いておいて今は嫌がるヒトミに興奮してますすみません。 きつい水着に無理やり両足を通させて太股までずり上げたら拘束プレイみたいで更にいいですね。足が開かない分上体を倒させ、脱がせた肌を撫で下ろして後ろから入り口を探る。と、大人しくなったヒトミが風呂場の壁に向かって言った。 「なんか、この頃足閉じたままの、多くない? 私……ガバガバになってる?」 何バカ言ってんだこいつ。 「何バカ言ってんだ」 爪がかりのない漆喰に空しく立てられた指を観察しながら、滑らかな背に胸を伏せて擦りつける。 「なってねえよ」 今触ってるふくふくの胸とか突っ込んだらキュンキュン締め付けてくるであろうあそことか、ヒト最高ーヒトミいいーとか一々言うのはあほらしいから言わない。壁についていた腕もろとも抱きかかえて、肩に噛み付いて、もしゃもしゃさすって笑い声と甘い声を上げさせるだけ。 「大丈夫か? 入れるよ」 「……あ、う」 上体を抱きかかえて、後ろから具合を見計らいながら入れればやっぱりキュンキュン締め付けられた。のけぞった頭が俺の顎にクリティカルヒットを与えそうになったのを辛うじて避け、首筋に歯形をつけ、思いきり突き上げてやった。 終わった後太股につたう精が紺の布地にわだかまるのを見下ろして、ヒトミが吹き出した。 「結局スク水プレイされてるし」 いやこれは厳密にはスク水プレイとは言わない。 「不満そうな顔しないでよヒトオタ猫」 だからヒトオタとか言うなっての。 ****** 人気のない純白の砂浜、柔らかな風、黒い髪によく合う真新しい淡い色の水着、尻尾の穴をふさいだ部分はちょっとばかり見苦しいかもしれないけれど、似合っていますヒトミさん。なんでそんな怖い顔しておられるのでしょう。鳥肌立てて。 「……海かと思ったら避暑地の湖だし。避暑地。とっても涼しい」 うん。俺もここまで涼しいとは思ってなかった。目吊り上げないで怖いから。 「しかもまだ初夏の高原」 だから穴場で人気がないわけです。あなたも付け耳外して過ごしていられます。 「風邪で殺す気ですかご主人様」 ごめんまじごめん。そんなつもりはなかった。また今日の天気、曇り空で肌寒いときてる。 「さっぶいんじゃー!」 うん……俺も寒いと思う。 「悪かったってばよ!」 「しかもこの湖、火口湖? すごい冷たいよ!」 足指の先で波打ち際をかき混ぜて、水着姿のヒトが口を曲げた。 「お……泳がない、の?」 「三秒後に心臓麻痺で死ぬこの水温で泳いだら」 一応水に入りかけたヒトミが、戻って俺を湖に引きずりこもうとした。確かに冷たいですねごめんなさいごめんなさい濡れるの嫌。 「脱げ」 おお、ヒトミ積極的……じゃないんだな。唇紫色。 「脱げバカ猫!」 おいら暖房器具扱いであります! 毛! 毛だけ求められてる! 「……人肌で暖めあうって、スク水よりベタじゃねえか?」 「うるさい。さむいんじゃ」 ベタでもなんでも震えているので毛で覆うしかない。 涼風の中傾く日の光が湖面を輝かせているのを眺めながら、寒そうな女を後ろから抱えてるのってなんだかあんまりにベタベタだ。 「……ごめん」 「あ、いや、いいよもう」 「お、これってツンデレ?」 「だからなんでそんな概念ばっか詳しくなるかなこのヒトオタ」 どれだけヒトミが暴れても俺の力で軽く押さえる事ができる。でもなんだかじたばたしてるの可愛いんで胸揉んどこ。 「なに、エロ猫、するのお……?」 軽く息を荒げて肩越しに振り返るのそそるからやっちゃお。 胸を揉むうちいつのまにか、最初は醜いと感じていた筈のヒトの毛のない耳がすっぽり俺の口の中に収まっていた。舐り尽くして、胸と肩触って、指駆使して水着の股ずらして、やっちゃう時にはどちらの声が大きいのかわからなくなっていた。 歯を食いしばって声を殺した背が目の前で動く。どれだけ声を出せと言ってもうつむく。 水着脱がせればよかった。入れたのこすれまくり。 「どしたの、ごしゅじん」 いきなり動きを止めた俺に驚いてヒトミが首を捻り、こちらを見た。 「名前、呼んで」 「はいい?」 かなりの間。こいつ俺の名前忘れてるのかひょっとして。 「今更どしたの、キャパ」 「別に」 「なに鼻の頭赤くしてんの」 「うるせ」 ……だんだんと上下する腰の動きにひねりが加わるのはサービスなのだろうか。 「ヒトミ、こっち向けよ」 「ん」 もふっとしたいんだろう? 動きながらさかんに腕の毛撫でてるし、こいつ。 繋がったままもたもたと足を上げ(途中でひっくり返って後頭部を強打しそうになっていたので慌てて抱きとめた)、向かい合うなり、ヒトミは俺の胸に顔を埋めた。 それから背を一杯に伸ばして唇を押し付けてきた。 まだ冷たかった唇が俺の体温と同じになるまで、俺たちは付き合いはじめのガキがするような、不器用に触れ合うだけのキスを続けた。 細かく揺すり上げるたびに胸に感じる息が荒くなる。真っ黒い髪が胸元でがくがく揺れる。水着ごしに乳首を俺の体に擦りつけて、肩の毛を痛いほど握る指。熱く締め付ける脈動は間を狭めるばかり。虚空に放たれる言葉に意味はあるのか。感じる顔を伏せて見せようとしない頭。顔上げて、とかなんで懇願してるかな俺。やだって繰り返す声、いい。 「あう、やあ、だめ、もうだめ……」 いきそうですねいきそうなんですねヒトミさん、今日こそいかせまくってやる頑張れ俺。 「きゃ、キャパあ……いくっ……」 もちませんでした。そんな声反則。 風が立ち、湖面に小波が光る。そのほとりで冷たいー、とやかましく叫びながらヒトミが水着を脱いでいる。 「何もすぐ洗わなくても」 「カピカピになっちゃうでしょ。ざっとすすいどく」 照れたように笑う裸のヒトミかなりイイ、と鼻の下を伸ばしているうちに運命の瞬間が訪れていた。しまった忘れていた。 水着を湖水につけたヒトミが固まっています。 「何、これ」 どうみてもスケスケです本当にありがとうございました。 そう! これこそが、猫井技研がその知識と技術を結集して生み出した、濡れるととっ てもよく透ける水着! 男の欲望は技術を発展させる! 人気の無い場所を選び、じっく りゆっくり堪能しようとした深慮遠謀は今一瞬にして台無しになった! ヒトミの三日月型に開いた口に、無いはずの牙が見えるのはなぜでしょう。 「それで寒いのに泳がせようとしてたんかこのクソエロ猫ぉー!」 ヒゲは抜かないでお願い。あと、 もっかい名前呼んで。 ----*** 幕間・表紙に律儀に名前が書かれた日記 ***---- (以下、抜粋) ○月×日 晴れ 三日前、売り渡された。 こんなもんなのだろう。 新しい主人が細かく気を遣う。日記もその一つ。 前のゴシュジンより気楽にもふもふできる。 キャパシティという名前だそうだ。聞いた瞬間に笑いそうになった。色んな意味でいっぱいいっぱいそうな白黒猫。カギ尻尾。 △月○日 くもり これをごしゅじんに読まれた。ずっと読んでいたのだろうか。読めないとごしゅじんは言っている。本当かどうかは知らない。 まさか人の日記を読んで楽しむような恥知らずではないと、信じている。と書いておく。 ×月×日 雨 猫井のリードさんにキャパは仕事上日本語を少し読めるのだと教えられた。切る。ひげ全部切るくそねこ。 ×月○日 雨 今日は逃げ回るでっかい猫を追いかけて楽しかったです。 もう日記は読まないと耳を伏せて誓っていましたが、今ひとつ信用がなりませんのでここにもきっちり書いておきます。 今度読んだらひげでは済ませない。口でもそう言ってにっこり笑ってみたら涙目で尻尾を膨らませていました。弱え。あんたの方が強い筈なのに弱えよごしゅじん。 -------------------- 「大したこと書いてないだろお……」 「だからって普通読む?」 確かに私はこの猫の所有物で我侭を言える立場ではない。しかしこのごしゅじんは箒の連打を許すので、心置きなく大きく振りかぶって振り下ろせる。 「日記書かせたのは読むためだったんか」 「違う違う違う!」 箒のケバで二人とも咳き込んで一時休戦。 「お前をより良く理解するためにだな」 「斜め四十五度見たポーズで格好つけるなごしゅじん」 あ、また尻尾膨らませた。何というか、Sっけを自覚したよこのごしゅじんの所に来てから。柄は痛いからやめて、とか自分から言うあたり、ごしゅじんはMなのかもしれない。 「せめて、せめて名前呼んでグレッチでぶって」 『グレッチでぶって』って……椎名林檎もこの世界に落ちてきているのか。聞いてみた。ボロボロの歌詞カードだけ落ちてきたのだそうだ。猫井の担当者が解釈に苦労していたとか。だろうなあ。 さて。舞い上がった埃もおさまってきたようだし。 「結局ぶたれるのかあ!」 「ぶってって言ったのはお前だ、キャパシティ=スミス!」 まあ色々あってもこのご主人様の事は気に入っている。言わないけれども。 「で、グレッチでぶつって何?」 「ほんとは私も知らない……結構前の歌だよ、好きだけど」 「どんな曲なのさ」 そうか、たとえCDが落ちてきても再生手段がないのか。 「歌え」 げ。 ***しばらくおまちください*** 「ヒトミ……言っちゃなんだけど、歌下手……」 コロス。 ---------------------- (戸棚の奥に隠された日記帳より) ×月△日 ミーコの夢をみた。正座した私の前にきっちりと座って、うみゃごみゃとかなり長くお説教をしていた。 「やりすぎだ」と言いたかったのだろうか。賢い猫だったから、「立場をわきまえなさい」と言っていたのかもしれない。 ----*** 終・甘バカップルであと数十年 ***---- ヒトミがずっと俺の顔色をうかがっている。ひげを引っ張ったりカギ尻尾を遠慮がちにいじったりしても、こちらが芳しい反応を見せないとすぐに手をひっこめる。気を遣わせてしまっている、と思っても溜息はとまらない。それ以前はほぼ毎日手を出していたのがめっきり、という点が彼女には一番不審なのかもしれない。 原因は一週間前にさかのぼる――。 奇跡のような、とでも言おうか。この世界にはほとんど知り合いがいないだろうヒトミが、ある再会を果たした。 「ヒトミ、なのか?」 「え、御主人様?!」 ヒトミの驚いた声はその時の、付け耳付け尻尾でフードを深く被っていた格好には、不自然な台詞ではないかと俺は慌てた。だが相手の男が……。 御主人様、と呼ばれるのにまことに相応しい風貌だったもので、失礼にも開いた口が塞がらなくなった。 まず彼の出てきた場所が、小市民に縁のない高級品ばかりを取り扱う商会、その威圧感ある本社建物。扉の前で見送っている人とか、いるんですけど。横付けられた彼の迎えらしき馬車は金具から馬具までぴっかぴか、一分の隙もなく着こなした服は一目でわかる高級布地。 相当の実力者らしい上、その顔も体格も。喧嘩も強そうな厚い胸板に、毛色はレッドタビーと言うのだろうか、半長毛がつやつや光を放っていて、黄金の瞳にはくっきり凛々しく白のアイライン。首周りのみ長く伸びた毛並みはご立派の一言につきる。ヒトミと軽く立ち話をしている尻には、曲がってなどいない優美な尻尾がふさふさと伸びていた。 要は圧倒されたわけだ。 ヒトミが彼と話しながら、紹介するように何度か俺の方を振り返っていたが、何も耳に入ってこなかった。正直言うとその場から消えてなくなりたかった。 帰宅するなり付け耳をむしりとったヒトミの頬は、外出の興奮だけでなく赤らんでいるように見えた。 「いやあ、妙な離れ方をしたから気にしてたんだよね」 そうしてこっちが聞いてもいないのに、「前のゴシュジンサマ」の話を始めた。 生まれから毛並みのいい、その上辣腕家のゴシュジンが、別宅に囲っていた妾――ヒトミは「お嬢様」と呼んでいた――の、世話係兼話相手をしていたのだそうだ。 「だから正確には『前のゴシュジン』はお嬢様なんだけど、あの御主人様にも大事にはしてもらったし」 「……大事にされてたなら、どうしてまた売られてたんだ。あんな金持ちっぽい奴だったのに」 普通の顔をして聞いてはいたが、俺の尻尾は座布団をはみ出して床を叩いていた。ヒトミは肩をすくめた。 「御主人様がお嬢様との愛に燃えあがって駆け落ちかました。二人の仲については私も関ってたけど、まさかそこまでいくとはと驚いたっけなあ。……ちょうど、正妻さんの実家が落ちモノ詐欺にひっかかって大変な事になってた時期で、そこから逃げる意味もあったんじゃないかって話だった。案の定すぐ後に正妻さんと借金取りが突撃してきて、お屋敷大騒ぎ」 置いていかれた上売られた身なのに、ヒトミは二人とも幸せそうでよかった、と笑っていた。 「お嬢様を隠して落ち着いてから、堂々戻って正妻さんちに掛け合って、無償で走りまわって借財整理から家業立て直しにまで携わって、正妻さんとはきちんと別れたんだってさ。お嬢様の事、心配だったから安心したよ」 「そりゃあまた男前な話だ」 「御主人様」は察するにあの高級商会の役員か、駆け落ちの醜聞をものともせずにいる様子だったあたり、確かにやり手らしい、などと考えていたので、適当な相槌をうった。ヒトミはそれを興味がないしるしととったらしく、ぽんと立ちあがって夕ご飯にしよっか、と実に珍しい事に俺より先に台所へ向かった。 その夜、寝床の中で「ふかふかのびのびー」と口で言いながら俺の頬を伸ばしているヒトミを見ていたら「御主人様」の立派な鬣状の首周りを思い出してしまい、更にはヒトメスだしなー御主人様ともやっちゃってるよなーと下世話な方に頭がいき、ヒトミの指を咥える事ができなかった。 それから、一週間。 「ごしゅじん、どうしたのさ」 とうとう痺れをきらしたのか、夕食後仕事を広げようとしたちゃぶ台(さすがに夏になってからはコタツを片付けた)を強引に横に押しやったヒトミに、向かい合ってきちんと座られた。どうしたと言われても。 「……ひょっとして、前の御主人様の事?」 こいつはこいつで、様子がおかしいと気付いても言い出せずにいたらしく、「前の御主人様」は口の中でもごもごと発音されている。そのとおりなのだが説明が難しい。 「むー、やはり中古はいやでしたか」 「違う違う違う」 かといってこんなとんでもない誤解をさせたままにしておくわけにもいかない。 ……要は圧倒されたという事。それが一番近い。 むろんこちらも小市民とはいえ勤め人、「御主人様」のような、いやもっと貫禄のある人物(ヒトミが「猫物ではないか」と茶々を入れた)に会った事もある。それでもヒトミと御主人様が向き合っていたあの時、胸によぎってしまった言葉がある。俺ショボい。 「オットコマエだったな御主人様」 呆れたように口を開けてから、何やら言葉を探しているヒトミの顔を見ていたらもう一つ、ずっともやもやしていた思いがはっきりした。 「分不相応な買い物をしてしまった」 「俺なんかが買っていい贅沢品じゃなかったんだ、ヒトってのは。あんな金持ちにまた買われてりゃ、ヒトミもでっかい家に住めてきれいな格好して、美味い物食べてたまに奉仕して」 「そんないい暮らししてるヒト奴隷なんて、ほとんどいないと思う。別に私、ここでの生活に不満なんか、ないよ?」 言おうとした、「もっと幸せだったろうに」を遮って身を乗りだしたヒトミの黒髪が頬で揺れる。指が敷物を擦っている……と思ったら無意識のうちにだろう、俺の抜け毛を集めていた。 「ああ、そう言えば最近掃除もしてくれるよな。ありがとな。こんなさえないエロヒトオタに」 「それは、昼間ヒマだし他に取柄もないから……あーもー、だー、うっとうしい!」 ヒトミが思いきり腹に抱きついて、腕を尻尾に回してきた。落ちこんでいても尻尾は気持ちいいあたり、俺ほんとなんだかなあ。 「ごしゅじん、らしくないよ。エロヒトオタでいいよ、今私を買ってるのはごしゅじんでしょ?」 いつになく積極的に、俺の下半身を服ごしに鼻先で探ろうとしたヒトミを、しかし俺はできるだけ柔らかく止めた。尻尾のカギ部分を扱いていた彼女の指を外して、口に含む代わりに爪の先で撫でた。 「こういうのも、さ」 眉をよせたヒトミの、まっすぐに睨んでくる目からも逃げた。 「今まで甘えてたけど、ヒトの生理以外の時だって、嫌だと思ったらはねつけてよかったんだ。体もきれいで傷もない、具合はもちろんいい、本来なら金持ちに買われるような高級品だったんだろう?」 あの「御主人様」に買われるような。 沈黙の後、ヒトミは俺の指からそっと自分の手を離して……片膝を立てた姿勢になった。どっかりと。 んなわけないでしょう、というのが前置きだった。 曰く、向こうの世界ではごく普通の生まれで中小企業事務員、お嬢様だの御主人様だのがぞろぞろいる上流階級には縁も無し、そういう世界の教養も礼儀も無し。器量も普通で色黒と軽いくせっ毛を気にしていて、高級品などと呼ばれるいわれはまったく無し。ならば、なぜ前のゴシュジンサマがあれだったかというと。 ……曰く。落ちてきた途端えらい目にあって、売り飛ばされて、なんだこの理不尽な扱いはとぶち切れて、ヒト売りをなけなしの色気で油断させ逃げだしたらその通りにたまたま、ぴっかぴかの馬車があったのだと。 「中にいたのがいかにもひ弱そうな猫の『お嬢様』だったからさ、これなら私でも人質にして逃走に使えるかなー、って火事場の馬鹿力で馬車に突入しちゃったんだよね」 突入? ……おいおいおいおいおい! 「すぐ取り押さえられたけど」 「お……お前、よくその場で殴り殺されなかったな……」 そらしていた目をヒトミに戻して、身を乗り出してしまった。ヒトミの話は続く。 お嬢様のやさしさと好奇心、御主人様の鷹揚さと「これが欲しがっているらしいから」の一言で、命拾いして屋敷へ連れて行かれたが、売られる前よりはるかに待遇が良くても、御主人様はじめ周りがその手のモノ扱いをする事には変わりがないものだから。 「もう大暴れ」 大暴れ。どんどん聞くのが怖くなってきた。 「特に、お嬢様もモノっていうか、『着飾ってたまに来る御主人様のご寵愛を受けていればいい者』扱いされてるのが気に入らなかった。御主人様を頭っから怒鳴りつけたり」 あれを怒鳴りつけたのか……尊敬する、ヒトミ。 「仕舞いにはお嬢様つれて逃げようとした。これまたすぐに連れ戻されたけど、御主人様は自分の傲慢に気付いてなかっただけで根はいい人だったから、素直に反省してくれて、このとおりヒト奴隷なのに無傷無罰。運がいいんだろうな私は。また売られたって、いいスジからのモノだからって一応、格上の扱いをされたしね」 ――自分をごく普通だという小柄な頼りない腕力の、柔らかい女性は、どれだけの怒りと絶望を抱えて暴れていたのか。逃げてもどうしようもないと理解し、諦めに至るまでの心の動きは、俺にはとても想像できない。主人で遊ぶようなとんでもないヒト買っちゃった、とはじめ後悔したものだが、あれは丸くなった後どころの話ではなかったのだな、などとぼんやりバカな事を考える。 己の現状を嫌というほど理解させられてもなお足掻こうとして、ヒト奴隷の詰めこまれた馬車から隙を窺っていた彼女は、立てた膝に頬杖をついて微笑んでいる。 「らしくないよごしゅじん。本当に、本気で、ここの生活に不満はないって。庶民出身としましてはお屋敷よりずっと気楽に過ごしてるし。ごしゅじんの尻尾いじるのも面白いし。お買い得品だけど高級品なんかじゃないって、わかった?」 すっかり反省した俺が、謝ろうと口を開く前に、ヒトミがふっとうつむいた。 「ここで最初にごしゅじんに抱かれた時、どこがいいかここがいいか聞かれて、あんまりやかましかったからつい蹴ろうとしちゃったけど」 しだいに小さくなっていく彼女の呟きが、最後にかすかにこう、聞こえた。 ……たとえ少しでも、私の事を対等にみてくれているんだなって、嬉しかったんだよ。 黙って部屋の隅を見ているヒトミの目に映っている絵と、同じ物を見ている筈の俺の目が認識する絵はきっとずいぶん違っていて、どれだけ言葉を費やしてもお互い説明しきれないのだろう。 遅くなった、寝よか、と目をそらしたまま立ち上がったヒトミを、色々もやもや考えてから追いかけると、彼女は寝台の上でうつぶせに寝転がり、行儀悪く足をぱたぱたさせていた。そして、俺に少し前の表情を忘れさせそうになるほど、ごく普通の顔を向けてきた。 「あ、ごしゅじん、言い忘れた。飽きたらさっさと売り払っていいよ。高級品ではないけど大丈夫、優秀な勤め人のごしゅじんなら、きっと買値より高く誰かに売りつけられる! がんばれごしゅじん!」 「なあ?! 何言ってんだバカ!」 バカは俺ですな。 「シワ指差して笑ってやるって言っただろうが!」 ……バカを重ねていますな。どれだけ考えても、謝るのは間が抜けていて、慰めるのは彼女が望んでいないだろうという答えしかでてこないので、更にバカを重ねる事にする。 今こいつはここにいる理由を、行為にのみあると思っていて、行為に飽きられるのが不安なのだとエロヒトオタは今更ながらそれだけは理解した。なのでヒトミをひっくり返してガリガリ指をかじってやった。 「飽きないって」 痛みに顔をしかめても声を出さずにいるヒトミも積み重ねてバカ扱いにしておこう。左手指五本省略。ボタンが飛んでも繕うのは俺だと力でパジャマの前を開いて、 「ガバガバになったって飽きないよバカ」 はだけた肩に一週間ぶりに鼻を強く押しつければ甘い肌の香り。 素裸になってから体をくっつけるのが、最初に抱き合った時よりぎこちないのがなんだかおかしい。まあそれはつかの間で、すぐヒトミは目を細めて俺の首にすりすりと頬ずりしてきたわけですが。やっぱり毛か、毛なのか。 「『御主人様』にもこんな事やってたのか? ああごめん違う、気にしてるんじゃなくて、あの首毛は撫でごこちがよさそうだったから」 「んー、もふるどころか引き千切ろうとしたからなあ」 ……なんだか、ざまみろという気分。しかし凄えなヒトミ。畏縮する俺の方がおかしいんだな。 覆い被さる俺とヒトミ、どちらがより肌の多くの面積を相手に押しつけるか選手権……になってしまった。とにかく互いの体温と感触を貪り、巧緻な技などなんにもなくて、なのに勝手に高まっていく。 ヒトミの息と鼓動、俺の急いた腕の動き、いや逆かもしれない、わからなくなってくる。 あー柔らかいなーいいなーと言ったのが俺で、あったかいよもっとすりすりしてーと言ったのがヒトミだとは辛うじて判別できたがこれも逆だったかも。 彼女の足が腰に絡みついたのと、先っぽ涎だらけになった俺のあれが突き立てられたのはどちらが先だったのやら。 「あうっ、奥、奥いい、もっとお、あ」 だったら締めるなもたねえよ! 奥も入り口も! 「むり、や、きて、きてえ!」 言われなくてもあっけなく。吐き出される脈動と、ヒトミの顎が天を突く動きが同調した。 もそもそ後始末を終えて、もう一度横のヒトミを抱き寄せた。 「およめさんにー、なれー」 「今度は何事だごしゅじん?!」 腕に力をこめて、跳ね起きようとする体を押さえつける。 「うるせーくそ、お前ほんとの心は見せないから悔しいんだよ。嘘でいいから、もっと俺の名前呼べ。およめさんになれー」 俺を主人扱いしなくても抱こうとすると従順になるヒトミ。やけを起こして買ってしまったヒトのヒトミ。 「落ちつけご主人様、キャパ、ちょ、キャパ、何言ってんのいきなり!」 「いきなりじゃないよ」 説明は苦手で、出した金の分後ろめたい。それでも指先の毛で唇に触れた時、ヒトミの目に浮かんだ表情は嫌悪ではないと直感で思う。俺の長所、毛だけでもいい。 「誓えー。ずっと俺の傍にいるって誓えー」 「ヒトだよ私」 いいから。 嘘でも良かったのだけど、ぎゅうぎゅうに抱きしめて口付けた後のヒトミの顔はなんか可愛かった。 「……キャパシティ=スミスとこの世界の神に誓います。私、佐伯仁美はどんだけこのごしゅじんがバカでもエロでも、こいつの傍にいるって、誓います。って、こんなんでいいの?」 「うわー誓いっぽくねえー!」 一緒にげらげら笑っていながら、肩に伏せて顔を上げない頭を抱え込み、胸毛と腕毛でもっふもふにしてからこっちも。 「俺はヒトミに誓う。ひげ抜かれても、エロヒトオタとか言われても、何回でも好きだって言います。おっぱいが垂れてもシワシワになっても好きだよ、ヒトミ、だから……」 この世界の神には誓えなかった。抱きしめて、できるだけ大切にして、あとはこいつに何がしてやれるだろうか。 「だから、泣くなよう……お前が好きなんだよう」 ヒトオタ結構。エロネコ上等。口に出したら胸が軽くなった。 二人で暮らすようになってから伸びた分はどれくらいだろうかと、黒くしっかりした髪を指に巻きつけていじくっていたら、ようやく掠れた声がした。俺の肩毛にしみこんだ跡を見せつけてもこいつは自分が泣いていたのを認めようとしないのだろう。いいけど。いいけど、顔、俺の抜け毛だらけになってるんじゃないか? 「ヒトオタここに極まるって感じ……」 「悪いか。もう開き直ったからな俺。あと二百年くらいもっふもふにしてやんよ」 「二百年て、私ミイラだよバカ」 ヒトなんかほんと買うもんじゃない。でも多分、バカだのヒトオタだの繰り返しながらしがみついてくるこいつは、生まれ変わってきてもすぐに見分けられそうな気がする。シワシワになってからさっさとネコに生まれ変わって、また俺の傍にくればいいんだ。 バカバカ言ってたヒトミが唇を結んで、顎に額を擦り付けてきた。 少なくともあと何十年かは一緒だ絶対に逃がしてなんかやらねえ、覚悟しろ。 誓いの夜から数日。今度はヒトミが挙動不審。今夜は裸エプロンがいいなー、と言っても反撃がこない。 「エロヒトオタとか、言わないの?」 視線をそらすし。なんだか口を開き辛そうにしているし。 やっちまったか、俺。ひげと尻尾を下げたらヒトミが大慌てで見上げてきた。 「いや、あのさ、ごしゅじんだと思ってた人、あ、ネコか、におよめさんとか言われたら妙に意識するっていうか……うあー二十五にもなって私何やってんだ、ごしゅじんがバカ言うからだ!」 照れてた。照れていましたヒトミさん。だからって逆ギレするなよ。 「なんという萌えツンデレー!」 「叫ぶなヒトオタ猫!」 ようやく勢いが戻ったけれど、彼女の顔は真っ赤だった。 先の事は先の事として、今の所、 やけ買いも悪くないのかもしれない。 ----*** 幕間・酔っ払いの拾いもの ***---- 「たらいまあ~~」 「うわ、くっさい。ちょっと玄関で寝ないでよごしゅじん、……うあ?」 「呑んじゃったあごめえんヒトミぃ」 「はいはい、ほんっと弱いんだね、んで、これ、何」 「ヒトミお酒好きぃ?」 「まーね。どーせ通じないだろうけどアイレイ大好きだったよほらごしゅじん、ぐにゃぐ にゃしてないで袖から腕抜いて。もうとっとと寝なさい。水飲んでから。スモーキーマテ ィーニもう一回飲みたかったなあ」 「す……何?」 「スモーキーマティーニ。あっちの世界のカクテル。くっさいアイラ島のモルトウィス キーを、って別にどうでもいい話だよ、ほらほら転ぶよ、足元気いつけなってば」 「ふにゃー……モルトって、ル・ガルの地方から輸入されてるよ、今度買って来るねえー そっかヒトミ酒好きなんだあ、くっさいかはわからないけど、買って来るよお……」 「それはどうでもいいのよ、この、足元にいるの、何」 「ひろったー」 「……明日それは問い詰めようと思うけど、とりあえず何これ」 「知らないー、落ちてたー。お前の世界の『猫』ってこんなんじゃねえのー?」 「違う違う断じて違う! 何この生物! 何食べるのこれどうすればいいの! なんか一 つ目開いた! 目からなんか出した!」 **小ネタ1彼は誰とすれ違ったのか** 今度は何持ってきた。 そろそろ帰ってくる頃かと窓から外を覗いた私の頭に、太ゴチック体で黒々と浮かんだのはそんな文章。 日の暮れるのが早くなり、しんしんと地面から藍色に沈んでいく小路なのに、ネコのように目が良いわけも ない私が瞬時にエロヒトオタ猫を見分けられたのは、彼のスキップせんばかりの足取りがあまりに帰宅途中 の人々(ネコネコ?)の中で目立っていたからだ。特徴あるカギ尻尾は高く上がり、藍に溶け込むハチ割れ 模様の黒部分にきらきら光る黄褐色の瞳、白い鼻面からぴんと伸びるひげ、流石にそこまでは見えなかった がおそらく小鼻が膨らんで鼻の頭がピンク通り越して赤くなっているのだ。 寒気を全く感じていないかのような浮かれた様子、こんな風に帰ってきた時はー、エロヒトオタ歓喜のブ ツか知識を仕入れてきた時であってー、それはたいてい私の眩暈を喚起するようなしろものでー。 あの調子だとかなりのブツかいらん知識だ、と早くも立ちくらみを起こしている私を見上げ、でっかい白 黒猫な夫はものっすごいイイ笑顔で手を振ってよこした。私は窓枠にもたれてずるずると崩れ落ちながら力 なく手を振り返すしかなかった。 「ただいまー! あのな、ヒトミ、あのな」 その手のものを繰り出す場合、今まではどれだけ浮かれていても、夕食後の落ち着いた時間帯だったのだ が今回は違った。そーか玄関開けるなり話題にするほどのシロモノか。覚悟しておこう。 「おかえりごしゅじん。ご飯それともまずその話?」 「ええ?! いきなりいっちゃってもいいの?!」 「……まずご飯にしようね。野菜は切っておいたから」 腹をくくる猶予くらいはくださいごしゅじん。 しかしくくった腹は緩む事になった。 「すっげえ素的な人に会ったんだよ!」 「は?」 これは予想外。普段の倍速で鯵に似た魚に塩をふり天火に放り込み、並行して野菜炒めを作りながらごし ゅじんであり内縁の夫であるでっかい白黒猫はいまだ興奮覚めやらぬ様子で、結局ご飯作りと「話」を並行 した。薄い耳の内側も鼻も、目の縁まで濃いピンク色。あれ? 素的な人って、もしかして出会いってや つ? およめさんにしてもらったとはいえ、私はヒトで彼はネコ。皿を用意しながら私は覚悟のベクトルをずら した。 「お近付きになりたいなー、どーしよーどーすりゃいいのかなあ」 「仕事の関係で会ったんじゃないの?」 「それがすれ違っただけなんだよ」 長身をくにゃくにゃ揺らしていても、でっかい白黒猫の手は的確に調味料を加えていく。小まめで料理も 上手いし気配りもできる、仕事も遅刻以外は真面目らしいごしゅじん、なんで独り身なんだか不思議だった んだ。外見の印象については、ネコの美醜感覚がよくわからないんで横に置いておいても。恋は良い事だ。 ヒトオタになるよりずっと良い事だ。 「まず、声をかけるタイミングだよね。今日初めてすれ違ったの?」 「そう、今度いつ会えるのかもわかんない」 ようやく私もうまく塊のパンを切れるようになった。ニホンジンの感覚では鯵の塩焼きと野菜炒めにパン はいかがなものかと思うが、いまだに自分一人では米を炊けないもので仕方がない。竈の使い方は何とか覚 えたんだけどね。パンも温めておけば良かった、と頭の半分で反省しながら、もう半分では別の事を考えて いる。 さーて、ネコの彼女はヒトメス奴隷のいる家におよめさんに来てくれるものなのかなあ。前の御主人様は お嬢様と私がふにゃふにゃしているの、面白がっていたけれど。 ネコのおよめさんにはネコがいいに決まっている。はじめに聞いたとき比喩でなくひっくり返ったもんね、 ヒトとネコの寿命の違い。ずっと傍にいると誓ったけれども、ごしゅじんが――この極まったヒトオタ猫が、 私が寿命でも病気でもさっさと逝った後どうなるのかを想像して、早いとこネコのちゃんとしたおよめさん をもらった方がいいんでないかいと、常日頃悩んではいたのだ。覚悟のベクトルはまた売られる方向へ向い ている。ヒトオタグッズもきっと高く売れるよな。私は改めて腹に力を入れた。 「そんなに素的な人だったんなら、願え、祈れごしゅじん。努力すればまた会えるかもしれない!」 「うん、今日すれ違ったあたりまたうろついてみる!」 野菜炒めを皿に移し終えたおたまを握りしめ、彼はシャッキーンと上方を見つめていた。 鯵(に似た魚)の塩焼きを頭から齧りながら、でっかい猫がうっとりと頬を緩めている図はなかなかにシ ュールだ。私は箸を使っている。ちなみに私の残した頭や骨も彼が食べる。 「高級そうなスーツ着てたんだよ……どこに勤めてるんだろう、やっぱ猫技かなあ……」 「猫井技研なら伝手があるじゃない」 「なにせあそこ大企業だから。リックと違う部署じゃあ名前も顔も知らない可能性が高い」 どう味付けしたらこんなにパンに合うようになるのか、私には見当もつかない野菜炒めを飲みこんで、つ いでに売られるならどこまで自分用に買ってもらった服を持っていけるのか、まで先走った頭の中の仮定を 一旦飲みこんだ。 「もう一度会えるといいね」 「応援してくれるのかヒトミ!」 「もちろんだとも! で、どんなひと?」 仲人モードにチェーンジ! 情報が得られない事には想定も対策もできん。集中するため大急ぎで残りの 野菜炒めをパンに盛り、行儀が悪いのを承知で口に詰め込んだ。 「まず、センスがいいんだ。ウロコの色にスーツが合っててなあ」 センスはごしゅじん、正直言ってあまり良くないようだからその人と釣り合うかどうか……もぐもぐ。 ん? 今ウロコって? 聞き違い? 「首輪も鎖も着せる服のチョイスも」 ちょっと待った。なんだか、おい、嫌な予感が。口の中のものを一気に飲みこもうとして、胸が詰まった のは重い予感のせいだ。首輪と鎖て、おい。 「ごしゅじん? 素的なひとって、具体的に言ってみ?」 「んだから、洗練された仕草と眼光の」 具体的じゃねえよ。 「こらえきれない歓喜を僅かに出入りする細い舌が表してたりして、それが実にウロコに映えて」 たしかにウロコと言っている。はい消えたー、ネコのおよめさんの線消えたー。予感は黒くなっていくよ。 「クールな彼の表情と斜め後ろの彼女の遠い目との対比が、またこれが」 こ、こ、「これが」とか瞳孔開いて回想するなバカエロ猫。帰宅前の予想と腹くくりの方が正解でしたか、 もしかしなくても。黒い予感が、脳裏に描いた想像図に変わりましたよくそエロねこ。 「……早い話が、首輪鎖の羞恥プレイをしているとっても素的な人とすれ違った、と?」 「そーなんだよすっげえカッコイイヘビ紳士だったんだよ、どうにかしてお友達になれないかなあ?」 「なるなー!」 卓袱台返しならぬコタツ返しをしなかった私の理性を自分で誉める。後片付けの手間を考えて思い留まっ た。 ネコの好奇心に感謝した事もあれども今回は恨む。特にエロ方向に走ってしまったごしゅじんの好奇心を 叩き潰してやりたい。こんだ羞恥プレイかよ。 「応援してくれる筈じゃ……」 皿を洗いながらぽそぽそ呟く声を一切無視して私は拭いた皿を棚にしまった。尻尾がまだふくらんでいる あたり、さっき私どんだけ恐ろしい顔をしたのだろう。 「ヘビ紳士の彼女がさ、ニーソックスはいた時のヒトミと、似た表情でさあ、それで余計」 ……そらそうだろうとも。彼女さん、力一杯同情するよ。二十五でふりふりエプロンだのニーソだのって プレイも十二分に羞恥だと、このネコには理解できんのだろうな。 「ごしゅじん、そーいうSMちっくなのにも興味あったの?」 努力してにっこり笑ったら、エロな夫は後ろに倒していた耳をぴんと立てて何度もうなずいた。 「ほら、もっと尻尾しごいて欲しかったらにゃーって言いなさい」 「えーっと……なんか、違うくねえ?」 うつ伏せの背中に私をまたがらせ、でっかい白黒猫は枕の上で首を傾げている。違いませんごしゅじん。 後ろ手でカギ尻尾を、もう一方の指先で耳の中をくすぐられてひげがさかんに動いているじゃありませんか。 あ、羞恥プレイでしたね。素早く体を180度反転、おしりの白い部分を重点的に攻めてみまーす。 「ふかふかのおしりがぴくってなったよ。本当はたまたまも見て欲しいんでしょ? ふっふっふ」 「ふおお?!」 起き上がろうとした上体にヒップアターック。文字通り尻に敷く体勢は、私のお尻も気持ちが良いことが わかった。天然毛皮クッション体温付き、冷え込む季節に最適です。ぐぎゅ、とか雑音が聞こえたけれども 気にしない。しかしほんとにごしゅじんのお尻可愛いな、悔しい。つるつるの自分の尻が醜く思えてくる。 下でじたばたもがく感触を細かく感じ取れるのも楽しい。 「ヒトミー! いい加減に、ひゃああああ」 「『ひゃあ』じゃないでしょ、『にゃー』でしょ」 ……いや、本気で調教する気は無かったんだ。尻尾とたまたまをさわさわするのは楽しかったけれども。 なのでこんな声が返ってきた時にはどうしようかと思った。 「にゃあ……」 いささか掠れた声で、それでも確かににゃーって言いおったよこのごしゅじん。 ごしゅじん……本気でMか……。 -------------------------- 触発元作品:「The snake under the bed」(作・タダノサケビ氏) タダノサケビさんすみませんすみません。 -------------------------- *小ネタ2過去には暗い穴がある** 繰り返される日常の中、ふと感じた疑問が好奇心が、ひとつの切欠となる事もある。 下手くそな鼻歌など歌いながら、手際よく皿を拭いて片付けているヒトミを見ていたら口から勝手に言葉 がこぼれ出た。 「ヒトミ、向こうの世界で結婚してた?」 料理に関しては、調理器具に慣れてきてもその、あれな、腕だと嫌というほど知っているもので、たぶん そりゃないなーとは思ったけれども、なんとなく。 「はあ? 未婚だったよ、ごしゅじんにまだ言ってなかったっけ? 独り身仲間で飲み会やってアパート帰 ってきたらいきなりこっちに落ちたんだもん」 鼻歌が消え、笑みが消えた。まずいやはり触れるべきでない事柄だったとシャツの下で脂汗が吹き出た。 「言っておくけど、ヒトの25って別に嫁き遅れじゃないよ」 機嫌が悪くなったのはそれを疑われたと思ったせいかよ。今度は安堵の汗が出た。 ……そこでつるっとまた余計な事を口走ってしまうのが俺というネコだ。 「んじゃ、恋人とかいた?」 ヒトミの茶の瞳が焦点を無くした。手は皿を持ったまま止まった。そこでやっとまずい、と口を閉じたが 発してしまった言葉は取り消しがきかない。 ぼく、ふみこんじゃいけないところをふんだみたいです。 「……二年」 ぽそ、とヒトミが食器棚の中に向かって呟いた。 「いっつも二年、続かなかったんだよねえ……」 ふんじゃいけない……けど、ちょっとちがう種類の踏んではいけない場所だったらしい。ヒトミの背後に、 家の中なのに吹き荒れる木枯らしが見えた。 二股かけられた挙句、「彼女には俺が必要なんだ! ヒトミは強いから!」と捨てられる。 受験失敗から自暴自棄になって心中を持ちかけられる。 いきなり辞表を出してアパートに転がり込みパチプロになるとごろごろするばかり。 少し会わなかったら出会い系にはまって性病をうつされてくる。 「もてなかったわけじゃないんだけどねー、なんでかねー、あはははは」 淡淡と話された内容と乾いた笑い声に、俺は背中の毛を逆立てていた。彼女の背後に見える木枯らしは、 猛吹雪に変わっていた。よーするに、ものすごく男運が悪かったらしい。 「んじゃ、恋人とかいた?」 軽く聞いているつもりなのだろうが、開いた口の形が左右非対称だった。コタツで改めて向かい合い、話 してやったらその、牙をのぞかせた口のまま固まっていた。でっかい白黒猫な夫は、お調子者のきらいはあ るもののヒトの私にも気遣ってくれるいいネコだ。 「ごしゅじんこそ、なんで彼女も嫁もいないのさ」 声に出してから、外に内証にしている恋人がいてもおかしくない、と思いついたがそれは要らない想像だ ったようだ。……ごしゅじんの視線が、何もない空中で止まっている。遠い目という表現はあるが近い目と いうのは初めて見た。瞳孔が開いていてちょっと怖い。 「えーと、ネコにも結婚適齢期ってあるのかな?」 ……そこで追い討ちをかけてしまう自分の性格が恨めしい。反省より先に、つるっと言葉が出てきてしま った。 「うん……まあね……俺は、それ、過ぎてるよ……」 開いた瞳孔に灯りを反射させて中空を見るごしゅじんの後ろに、砂漠が見えた。 つまんないそうです。 二百年近い年齢のネコは、それまでの女性遍歴を一言ですませた。そのぽそりとした声色で、彼の背後の 砂漠は更に乾燥を増して細かい砂を巻き上げるようだった。思わずお茶で口を湿してしまいましたよ私は。 「ええ? ごしゅじん、こまめで優しくて真面目でいいひとだよ、もてないわけじゃないでしょ?」 「ん、でも、つまんないんだって。イイヒトだけど、って、だけどが付くんだよーうふふふふふ」 わたし、おもいっきり地雷をふんだみたいです うふふあははと背後に砂嵐を吹き荒れさせる白黒猫に、私はお茶の杯をを放り出しコタツから出てハイハ イで近づいた。 「ごしゅじん、つまんなくなんかないよ、いいひとでいい男だって、白黒はっきりした毛並みもふかふかだ し、かぎ尻尾も可愛いよ!」 「ヒトミ……!」 がっしと抱き合う図は絵に描いたようなバカップルバカ夫婦なのだろうが、誰も見てないからいいよもう。 ざりざりの舌で頬を舐めるのは正直勘弁して欲しいけど。 「ヒトミい、お前もいい女だよう、『サゲマン』なんかじゃないよう」 「……どっから覚えてきたのそんな言葉」 お互い存分にすりすりもふもふぎゅうぎゅうした後、ごしゅじんは私に目を合わせた。下がっていたひげ がようやく元に戻っている。 「俺、賭け事もしないし酒も弱いし浮気もしない、ずーっと真面目な夫でいるからね、ダメ人間になんかな らないからね」 優しいテノールの声と腕の力と、真摯な目、だけれども……。 私を買ってから。 ――マッハでエロヒトオタになってしまったのは誰だ。 「……あれ?」 「……ん……いや、ごしゅじん、これからは少なくともつまんないって言われる事はなくなるかもね……」
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やけ買いなんかするもんじゃない ----*** 1・やけ買いなんかするもんじゃない ***---- 「ごしゅじんさまー。ごしゅじんー。あるじー。マスター。おーい」 「だー! うるさい、暇なら先に寝てろ! ……っひいいいい」 背中の毛がわさわさ一気に立った。ついでに裏声を出してしまった。いきなり後ろから耳にやわやわ噛みついたヤツがそのままの位置でうひひ、と笑うものだから、その息の圧力がまた耳にかかって首筋の毛まで立った。細い指が視界の隅に入ったかと思うと今度は 目元をマッサージされた。 「目の上ひげー。目の上ひげー」 「引っ張るなー! 頼む、邪魔しないでくれ、明日朝まで最低これだけは書類作っとかなきゃいけないんだよう……」 俺、なんでこんなの買っちゃったんだろう。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。なもんで結婚用だったのに使う当てのなくなった、分割払い頭金にするくらいの金はあった。したたかに酔っていた。ヤケをおこした。 ゆえにこいつがここにいる。お嫁さんもらってもしばらくはここで住めるよなー、とか ほわほわ考えていた2LDKの賃貸住宅に、小市民には不釣合いな贅沢品が。 「ここだけの話ですがね、『落ちてきた』ばっかりの新品なんですよ。肌もきれいで健康体、お買い得商品」 黄色い目の口の臭いヒト売りはそう俺に耳打ちして、言い値より遥かに上の値を示した。値切りきれなかったもので、分割払いの先の長さを考えると貧血を起こしそうになる贅沢品になってしまった。 向かい合った俺をきつい目で睨みすえ、ヒトミと名乗ったヒトメスは、今は後ろから手をまわして俺の頬ひげを引っ張っている。 「抜けないもんだね」 「抜かないでお願い」 ……俺、ほんとなんでこんなの買っちゃったんだろう。 ヒトってのは脆弱で魔力がなくてすぐ死んじまうけど、夜の相手に絶品で従順で頭が良くて小器用で特にメスは料理が上手いとか俺、聞いてたんだけど。誰だそんな噂を流したのは。責任取れ。 ヒトミを買った次の朝、遠慮がちに仕事の間の掃除と夕飯を頼んだら、特にメシが大変な事になっていたもので俺はつい、そんな噂を流した奴への怒りもこめてヒトミを怒鳴りつけてしまった。そしたら逆ギレされた。 「文句があるなら電子レンジとレシピ集持ってこい!」 お前は何を言っているのだ。 俺の、頭が一瞬真っ白になった呆れ顔を見てヒトミは逆ギレで紅潮した頬を更に赤くした。 「すみませんね料理下手で。でもコンロも調味料もよくわかんないんですよ! わかったのマタタビ風味塩くらいだよ!」 それで、何かお祝い事があったら食べようと大事にとっておいた青猫印の高級干物が更に塩にまみれているわけか。全体的に塩っぽい食卓に悲しくなってひげを下げたら、へんな形の耳まで赤くなっていたヒトミが青筋を立てた。 「仕方ないでしょ、前のゴシュジンの所じゃちゃんとした料理人がいて私が料理する事なんてなかったんだから」 こちらこそすみませんね料理人なんて雇えない身で……って待て。待てやこいつなんて言った。 前のゴシュジンの所? 「中古かよ!」 「車かよっ」 俺が思わず叫んだ言葉に軽く、よく意味のわからないツッコミを入れながら、瞬時に鋭く吊り上がったヒトミの切れ長の目と、その瞳の奥に見えた光の色は一生忘れないだろう。忘れられないだろう。 「まさか『ワタシ、初めてなの』っていうヒト奴隷を期待してた訳じゃないよね。ガバガバじゃない事は確めたでしょ? 前のゴシュジンサマが大事にしてくれたから、傷もないし。……自分で言うのもなんだけどお買い得だったと思うよ」 喋る声と、喋る間に目を伏せていったヒトミの表情も忘れないだろう。 「いいかげんコタツ片付ければ? コタツ布団抜け毛だらけじゃん。ひえー、コタツ布団が白黒になってる」 「どーせ掃除すんの俺だろ、好きにさせてくれ。コタツに座布団が一番集中できんの」 身の丈に合わない贅沢品を購入してしまったもので稼がねばならんのです、頼むから計算に集中させてください贅沢品さん、尻尾足指でつまむなー頼むー、せめてこの入荷予定表だけは仕上げておかないと……。 付根からリズミカルに尻尾を踏まれたら、俺の理性が俺にさようならー、を告げて去っていった。そのこだまがまだ響くうちに、カギ尻尾ー、と楽しそうに言うヤツの足が、カギ部分を踏む前に。 腕だけ後ろに回してヤツの胴体あたりを抱え、コタツ布団に引きずりこんだ。 家に連れ帰った後俺の、ひそかに気にしているカギ尻尾を見た時ヒトミはそれまで動かさなかった表情を少しだけ緩めて呟いた。 「ミーコもカギ尻尾だったっけなあ……」 「ミーコ?」 「子供の頃うちにいた三毛猫」 ……「落ちモノ」が元いた世界に「猫」って動物がペットとして飼われている事は知っていたが、なんだか複雑な気分になったものだ。そのミーコはどうした、と軽く聞いたらとっくに老衰で死んじゃってる、と答えられたものだからなおさら。 「尻尾さわっていい?」 今にして思えばその時、「ご主人様に対してその口のきき方はなんだ」とでも言って冷静にしつけておけばよかったのだ。だが脳味噌では異世界の猫という動物に思いを馳せ、下半身ではいきなり押し倒してもいいもんかなー柔らかそうだなーなどと考えていた俺は、 実に気さくに「ほいよ」とヤツに背を向けて座ってしまった。 結果、俺は「尻尾で感じちゃうのボク」という新しい自分を発見し、ヒトミは口では「ごしゅじんさま」なんぞと言うものの俺を主人などとは全く思っていないであろう態度となり、現在に至る。 指の第一関節から先を右手から順に十本口に含んでいる間、ヒトミは何も言わない。動かない。じっと俺の口にまかせている。二度目にこれをやった時面白いのか、とだけ聞いてきた。ヒトの指と爪は柔らかくて面白い、と答えたら黙った。それ以降なんとなく抱く際の儀式のようなものになっている。その後ははだけさせた肩に舌を、そのまた後は首筋 にやわやわと牙を。 ……尻尾で興奮して押し倒した最初の日、ヒトはどこがいいのだろうかと慎重にいちいち聞いていたら「くそやかましい!」という声とともに急所を蹴られそうになったもので、試行錯誤という安全策を取らざるを得なくなった。誰だこんなのを買ったのは。俺だ。 「ふ……ん……」 こーいう声を上げさせてからは俺が強い。特に鎖骨がヒトミの弱点。座布団の端を握りのけぞって舌から逃れる体が、布地ごしでも胸の突起を目立たせている。舐めろといわんばかりなので舐めるしかないだろう。ヒトミが勝手に引っ張り出して着ている俺のパジャマを鼻先でまくりあげたら、ひげがくすぐったかったらしく露になった腹が波打った。 何度抱いてもヒトの柔らかさには感動する。こいつだけかもしれないが。胸も尻も太股も、二の腕もしっとり触りごこちがいい。中でもたゆんと揺れている胸がいい。齧りつきたくなるのを我慢してやっぱり我慢できなくて、思いきり口を開けて甘噛みしながら舌で 乳首をつついてやると今度は、くすぐったさへの反応ではない吐息が返ってきた。吐息と、耳をそっと探る指が。 「ああ……耳の毛すべすべ……腕の毛きもちいい……」 「……俺の長所は毛だけかよ」 ヒトミが恍惚とした表情で目を細めているから、まあいいんだけど。肌から離してしまった口をこれまた柔らかい唇に押しつけて、毛にばかり言及する声を封じながらだぶだぶのパジャマズボンと下着を一気に脱がせ、ようとした。コタツに引きずりこんだのは失敗だった。可動範囲が狭いったらない。肘天板にぶつけた。痛い。至近距離で見上げるヒトミが喉で笑って、体をずり上げてくれなかったらもっとお互いの足と腕に青痣が出来るはめになってたんじゃないだろうか。 女の裸が寒そうに見えるのはネコもヒトも同じ、けれど華奢な分こいつの方が痛々しい。こっちも慌てて脱いで覆い被さったら、待ちかねたように肩に顔を埋められた。本気で毛だけか、俺の価値。 それでも緩く抱えこんだ体を膝までゆっくりとなぞり、戻って足の間を探るとヒトミの息で肩が熱くなる。指に感じる液体を粘膜に戻そうとする動きには背に回された腕の力が弱く返ってくる。体温低いくせに、沈めた指の先はねっとりと、荒くなる息より熱い。 「……ヒトミ」 「ん」 「あ、そのまま」 大きく広げようとした両足を跨いで、少しずつ捻じこんでいく。まだ下半身の大部分コタツの中、コタツに当たって痛い思いをするのは俺だけでいい、と冷静なふりをしてみた。 そうでもしないと、苦痛なのか快楽なのか判断のつかないかすかなあえぎと締められる感覚にあっけなく暴発しそうになる。どうしてこいつはこんなに、こらえているような甘い声を出すんだろう。叫べばいいのに。動かしながら、敏感な箇所に根元を押しつけて腰を揺らしてやったらのけぞった喉から鋭く息を吸い込む音がした。コタツが邪魔で大きく動けないの、幸いしたかも。 「ちょっと、うあ、もう、だめかも」 「おれもっ……」 ただでさえ狭い肉の道で、突き入れた奥から順に、太股の筋肉まで総動員して絞り取る動きに耐えきれなかった。のけぞっていた上体が震えてしがみつくとほぼ同時に俺も果ててしまった。今度こそこいつをいかせていかせていかせまくってやる、と思っていたのに。 細かく打ちつけるのをヒトミは好むらしい、と頭の中にメモメモ。出したばかりの冷めた頭の一端では……なんで高い金出して買った相手を必死になっていかせようとしてんの? とかも考えてしまうわけですけれども。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。腕と足を剥き出しにした粗末な服に、手枷足枷首輪鎖が不釣合いにごっつく見えたヒトたちの中、そいつだけは窓と開け放された戸から血走った目を離していなかった。だから、見物人の一人だった俺と目が合ってしまった。反抗的なのがいるな、大変だろう、とからかい混じりに値をつけたらヒト売りがこれもまたからかい混じりにさすがにその値じゃあ、と返した。そのうちついむきになって名刺を出したら即座に分割払いの話になった。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。ヤケをおこした。したたかに酔っていた。買ってしまった。「落ちてきた」ばかりだと言ったヒト売りの言葉を信じてしまったのは合った目の鮮烈な印象からだろう。 腹の下であえぐ顔を見ても、胸に「うははもふもふの面積広い」と頭をすりつける声を聞いても、あの時の、隙を窺う目と全身に緊張感をあらわした姿はいまだにはっきりと記憶に残っていて、たぶんずっと消えない。 「おい」 胸元に眠そうな顔をうずめながら、手を伸ばして背中の和毛を抜いているヒトミの腕を軽く押さえる。ついさっき抜け毛だらけとか言ったくせに、何をやってるんだ。 「二十年? 三十年? そんくらい後か、指差して笑ってやるからな。お前の胸がどんだけ垂れたとか、皺が増えたとかいちいち笑ってやるからな」 「ほう」 「ほうじゃねえ。本気でやってやる。シワシワになったら思いきり笑ってやる」 「へえ」 「今のうちにほーとかへーとか言っとけ」 「ふーん」 「いででででで抜くな、まだそれ抜けない毛!」 柔らかくて頼りない腕が、押さえていた俺の手をすり抜けた。眉間をすりすりと撫でられて俺は瞼を閉じた。 自分で発した言葉に目頭が熱くなったのをごまかすため、なんて絶対言わねー。 ほんと、ヒトなんて買うもんじゃない。 ----*** 幕間・ある日の朝と夜 ***---- 雨が降っている。 「ごしゅじんさまー、もういいかげん起きないと」 雨が降っている。石畳を被った水膜が滴を弾く音か、細やかな刻む音が私を更に苛立たせている。私の記憶が確かなら、起きないと遅刻するんでないかいごしゅじん。うーだのひにゃーだの唸りながら毛布抱えてる暇ないよ。 ミーコがでろんにゃろんと雨の日寝てばかりいたのは覚えている。前のゴシュジンも雨の日はよく居眠りをしていた。しかしこのごしゅじんは勤め人(勤め猫?)だ、本能に負けて遅刻したらいかんと思うのだ。元の世界では、這ってでも無遅刻無欠勤を貫こうとした私の責任感が許せない。 「ごしゅじん……ぬぐぐぐぐぐ」 毛布ひっぺがし失敗。ならば寝台の下に引きずり落とそうとしたが失敗。重い。目も開けやしねえ。ふなふなとか言ってるんじゃないー。 せめて朝ご飯でも用意しようかと、戸棚を開ければ一斤塊のパン、切って売られるべきだろう常識的に考えて、と歯軋りしてパンを戻し、またごしゅじんに声をかけるも答えはないのでブラッシングと洗顔の準備、済ませてもやはり白黒猫はヨダレをたらして寝くたれており、足踏みをしながら果物などコタツに並べ、致し方なく改めてパンを取りだし切ってみたら、「一枚なのに直立する食パン」なる末広がりの立体作品になってしまい、もうなんだか絶望した。 「ごしゅじぃん! 起きないとひげ引っ張るよ!」 「むー……ちゅー」 なに、この子猫がおっぱい吸うみたいな口。 「……お目覚めのちゅーしてくれたら、起きるかもしんない」 「…………」 皿に直立するパンを見て一瞬目を点にしていたごしゅじんは、まだ眠そうな顔のままもそもそそれを食べ終えて、言った。 「俺の勤め先、国内向けの商品しか扱ってないから、従業員みんなネコなんだよね。つまりほとんどみんな雨の日眠いの。今日も三分の一くらい遅刻してくるんじゃないかなー。俺、特に雨弱いから、珍しく早いなってびっくりされると思う。んじゃ、いってきまーす」 ……歪んだ逆台形になってしまったパンを見て湧きあがってくるこの黒い感情は何だろう。 雨はやんだが、ごしゅじんは夕食後もまだ少しぼーっとしている。 「ごしゅじん、そろそろちゃんとお風呂入ったら?」 「ん? 入ってるだろ」 嘘だ。私が湯を使った後に、申し訳程度にぴちゃぴちゃ要所要所を洗っているだけだ。ブラッシングは欠かさないとはいえ、今日のような湿度の高い日は特に、毛先まで脂がまわってぺっそりしているように見える。だいたいこの図体で蚤でもわいた日には、大変な事になるのではなかろうか。 「ヒトミ、そうは言うけどな、厄介なんだぞ男は」 ごしゅじんは短毛じゃないか。長毛にゃんこよりずっとマシだ。濡れるのが嫌なだけだとみた。 「う。うーんと」 何か反論があるのですかごしゅじんさま。 「ヒトミが一緒だったら、ちゃんと風呂入るかもしんない」 「…………」 先に風呂場で待っていたごしゅじんは、ものっすごくわくわくした顔で私を見てから私が手にした物に目を落とし、首を傾げた。 こちらのネコも、悲鳴は猫のそれに似ている。 「おま、お前、お前の世界じゃタワシでネコこするのかよおおお!」 「こするわけないでしょ」 力と体格では到底敵わない相手だが、幸いこちらは弱点を知っている。つかんでいる泡だらけの尻尾の主が、非難するように私を振りかえった。 「こするわけないでしょうが。向こうの猫は小さいんだから」 「大きさが違うからって、みぎゃー!」 「何悲鳴あげてるのごしゅじん、向こうの世界で、タワシ健康法ってあったんだよ? こーんなひ弱いヒトの肌でも耐えられるのに」 こーんな鍋底こすり用の固いタワシは使わないだろうけどね。 「ほんと、か……? ぎゃあお!」 ああ、お風呂での健康法といえば、粗塩こすりつけるってのも、あったっけなあ……。 ----*** 2・ベッタベタでもいいじゃないかよ ***---- 明るいオレンジからだんだん薄紫へと変わっていく空に、今日は月が両方とも白く目立つ。家々から漂ってくる夕食の匂いに腹が鳴った。ヒトミも腹を減らしているだろう。自然足が早まった。「いきなり暴走したり爆発したりしそうで怖い」と魔洸エネルギー器の使用を拒否するのはともかく、メシくらいは作れるくらいになって欲しいよ。昼は果物でしのいでいるらしいが、ある日帰ったらひっそり餓死していそうで怖いったらない。……今更ながら分不相応な買い物をしたもんだ。いや、ヒトミだけの話なのかもしれない、これ。ヒトって料理上手なんじゃなかったのか。 「おっ」 「ぴにゃ」 考えながら歩いていたら、太股のあたりに軽い衝撃がきた。見下ろせばまだ産毛の残るちびネコ坊主。ぶつかった俺を見上げた銅色の瞳がまんまる。すみません、と慌てて追いかけてきた母親らしき人の目も同じ色をしていた。こーいう時だ、結婚してえーと思うのは。 少なくとも分不相応な贅沢品の分割払いが終わるまでは嫁さんなんか貰えませんけどね! 通りから家の窓を確認したら、くせっ毛を風に揺らしながら夕空をぼんやり眺めている、黒髪黒耳の横顔がそこにあった。よかった、ちゃんとネコ女性に見える。ようやくヒトの耳を隠せるくらい髪が伸びたので、付け耳付け尻尾を渡しておいたのだ。「二十五で……ネコミミデビュー……」とかなんとか言いながらヒトミはがっくりうなだれていたが、要らないトラブル防止だ仕方がない。 それにしても。こうして家の窓から、まるで俺の帰りを待つように女性が外を見ているのって……。 なんだかおよめさんがいるみたいだ。 ヒトだよ、ヒトだけどよ。少しくらいひたってもいいじゃないか。 ヒトのヒトミも俺に気付いた。軽く手を上げたら、ヒトミはそれに応じるどころか、窓枠を握りしめて俺をまじまじと睨んだ。傷ついた。いや、傷ついたって言ってもちょびっとだけど。 「……で、ごしゅじん、今度は何持ってきたのかなあ?」 慎ましい夕食(作成者:ほとんど俺)をとり、片付け(担当:半々)を終えるやいなや ヒトミは俺の前にきっちりと座ってこう言った。笑っているけど目が、目が鋭い。なんで。 「ごしゅじんさまがヒゲを全部ぴんと張って尻尾立てて早足で帰ってきた時は、大抵ろくでもない物かろくでもない知識を『猫井』のお友達から仕入れてきた時です。今日は小脇に、朝は持っていなかった包みを大事そうに抱えていました。更に、普段なら『稼がなきゃいけないんだ』と持ち帰り仕事を出すため鞄に手をかけるところなのに、今日はその包みにまず顔を向けてから慌てて目をそらしました。ゆえに、またろくでもない物を持って帰ってきたのだと推測した次第です。以上、何か間違いがありますか?」 ヒトミこわい。俺ちょっと涙目。どっちが主人なんだこれ。いや俺だ俺が主人だ。 「猫井技研からのもの、全部ろくでもないと思っていたのか」 はいここ重要です。一旦言葉を切って物憂げに視線をそらしましょう。 「……『落ちモノ』を、お前を理解しようとして、やっていた事なんだがな……」 「ニーソックスに絶対領域の概念、四十八手図解、ふりふりエプロンと裸エプロンの概念、裸に男物のシャツ概念、裸エプロン派と裸シャツ派対立についての熱い考察、電池切れのあやしいおもちゃ、フランス書院、みさくら語、そんなもんばっかり繰り出された挙句『ヒトってこういうの好きなんだろ?』と言われ続けた日にゃあ、ろくでもないの一言で一括りにもしたくなるっちゅーねんエロヒトオタ猫」 マンガと小説には大喜びしてただろうがよっ! 仕事関係で知り合った猫井技研の奴と心友になって、調査後資料的価値のなくなった落ちモノを格安で譲ってもらっているだけだ。エロヒトオタとかゆーな。 「お前の事を考えて」演技をすぐやめるのは業腹なので、物憂げな顔のまま包みを手に取る。 「お前、泳げる?」 「なに、突然」 「ヒトの健康には水泳がいいって聞いてきたんだよ。穴場でほとんど人がいない場所があるっていうから、連れて行こうと思ってこうやって水着もらってきたのに、全部ろくでもない物扱いか」 ……あれえ。 一瞬反省の顔になったのに、どうしてヒトミさんは包みから紺色の布地が出てきたのを見た途端に正座の姿勢からおでこがゴンっていうくらい思いきり床に突っ伏してるんだろう。 「す……スクール水着か、それ……ベタだ、あまりにもベタだエロヒトオタ猫……」 ベタかよ。エロヒトオタ呼ばわりやめないのかよ。でも負けない。 「ほら、これ、字は違うけどヒトミって書いてあるんだろ? ヒト用だぞちゃんと」 広げた前面に縫い付けられた白布の、滲んだ字を示したらまたヒトミが呻いた。 「うん、高橋瞳って書いてあるね。でも、その上の『5-3』っていう数字には気付いて くれなかったのかなあ?」 「ぬ?」 「子供用! 思いっきり小学生の五年三組瞳ちゃん用! サイズ見てわかんない?」 暴れられました。 「え、でもこれ、伸びるよ、ほら」 「そら獣人の力で伸ばしたら伸びるだろうけども……」 ヒトミは頭を抱えて床を転げています。どうしよう。 それでも、まあ濡らせばもっと伸びるかもね、と言って渋々ながら着てみようとしてくれるあたりが、ヒトミの良い所。 「戸ガリガリするとミーコって呼ぶよごしゅじん!」 風呂場に閉じこもって内側から閂をかけるのは悪い所。しばらく戸のガリガリも我慢して待っていたらドタバタした音の後、低い声がした。 「……大惨事」 なにごとだ。 「……男子レスリンググレコローマンスタイル48キログラム代表……」 だからなにごとだなにが起こっている。 俺は家主だから知っている。この風呂場の戸は、一定のリズムで揺すると閂が外れるのだ。音を出さないようにしていたつもりだったが、地を這う声が返ってきてしまった。 「今開けたら寝ている間にお前のひげを全部切る」 ヒトミまじこわい。紳士であるよう努める事にしますすみません。 無理、と最後に吐き捨てた響きを残したまま扉が開いた。頬を赤らめたヒトミの顔が出てきた。残念ながら着衣ずみ。 「何があった」 「着れなかっただけ」 切れ長の目がいつもよりずっとすわっているので言及するのはやめておく。何を見たのだろう。 そうか、スク水プレイは無理だったか……。 「……スク水プレイ、だとう……?」 あ、あ、頭の中の呟きは途中から声に出ていたようです。瞬時に変わったヒトミの目の色! 怖いすげえ怖い! 「確信犯カッコ誤用カッコ閉じるだったのかエロヒトオタ猫!」 「ぎゃーカッコとか声に出して詳しく怒られた!」 詳しく怒らないで下さい耳捻られると痛い。 それでも俺の方がずるい。ヒトミが絶対にその要求に抗わないのを知っていて、彼女の指を口に含んで黙らせる。 即座に黙って順に指を舐めるに任せている、筈だったが、今回は途中でおずおずヒトミが声を出した。 「あのさごしゅじん。するのはいいんだけど……なんで片手にまだスクール水着握ってん の?」 「大惨事なんだってば! なんでそんな着せようってこだわるのヒトオタ猫!」 一つの萌え要素らしいから。ってのは置いておいて今は嫌がるヒトミに興奮してますすみません。 きつい水着に無理やり両足を通させて太股までずり上げたら拘束プレイみたいで更にいいですね。足が開かない分上体を倒させ、脱がせた肌を撫で下ろして後ろから入り口を探る。と、大人しくなったヒトミが風呂場の壁に向かって言った。 「なんか、この頃足閉じたままの、多くない? 私……ガバガバになってる?」 何バカ言ってんだこいつ。 「何バカ言ってんだ」 爪がかりのない漆喰に空しく立てられた指を観察しながら、滑らかな背に胸を伏せて擦りつける。 「なってねえよ」 今触ってるふくふくの胸とか突っ込んだらキュンキュン締め付けてくるであろうあそことか、ヒト最高ーヒトミいいーとか一々言うのはあほらしいから言わない。壁についていた腕もろとも抱きかかえて、肩に噛み付いて、もしゃもしゃさすって笑い声と甘い声を上げさせるだけ。 「大丈夫か? 入れるよ」 「……あ、う」 上体を抱きかかえて、後ろから具合を見計らいながら入れればやっぱりキュンキュン締め付けられた。のけぞった頭が俺の顎にクリティカルヒットを与えそうになったのを辛うじて避け、首筋に歯形をつけ、思いきり突き上げてやった。 終わった後太股につたう精が紺の布地にわだかまるのを見下ろして、ヒトミが吹き出した。 「結局スク水プレイされてるし」 いやこれは厳密にはスク水プレイとは言わない。 「不満そうな顔しないでよヒトオタ猫」 だからヒトオタとか言うなっての。 ****** 人気のない純白の砂浜、柔らかな風、黒い髪によく合う真新しい淡い色の水着、尻尾の穴をふさいだ部分はちょっとばかり見苦しいかもしれないけれど、似合っていますヒトミさん。なんでそんな怖い顔しておられるのでしょう。鳥肌立てて。 「……海かと思ったら避暑地の湖だし。避暑地。とっても涼しい」 うん。俺もここまで涼しいとは思ってなかった。目吊り上げないで怖いから。 「しかもまだ初夏の高原」 だから穴場で人気がないわけです。あなたも付け耳外して過ごしていられます。 「風邪で殺す気ですかご主人様」 ごめんまじごめん。そんなつもりはなかった。また今日の天気、曇り空で肌寒いときてる。 「さっぶいんじゃー!」 うん……俺も寒いと思う。 「悪かったってばよ!」 「しかもこの湖、火口湖? すごい冷たいよ!」 足指の先で波打ち際をかき混ぜて、水着姿のヒトが口を曲げた。 「お……泳がない、の?」 「三秒後に心臓麻痺で死ぬこの水温で泳いだら」 一応水に入りかけたヒトミが、戻って俺を湖に引きずりこもうとした。確かに冷たいですねごめんなさいごめんなさい濡れるの嫌。 「脱げ」 おお、ヒトミ積極的……じゃないんだな。唇紫色。 「脱げバカ猫!」 おいら暖房器具扱いであります! 毛! 毛だけ求められてる! 「……人肌で暖めあうって、スク水よりベタじゃねえか?」 「うるさい。さむいんじゃ」 ベタでもなんでも震えているので毛で覆うしかない。 涼風の中傾く日の光が湖面を輝かせているのを眺めながら、寒そうな女を後ろから抱えてるのってなんだかあんまりにベタベタだ。 「……ごめん」 「あ、いや、いいよもう」 「お、これってツンデレ?」 「だからなんでそんな概念ばっか詳しくなるかなこのヒトオタ」 どれだけヒトミが暴れても俺の力で軽く押さえる事ができる。でもなんだかじたばたしてるの可愛いんで胸揉んどこ。 「なに、エロ猫、するのお……?」 軽く息を荒げて肩越しに振り返るのそそるからやっちゃお。 胸を揉むうちいつのまにか、最初は醜いと感じていた筈のヒトの毛のない耳がすっぽり俺の口の中に収まっていた。舐り尽くして、胸と肩触って、指駆使して水着の股ずらして、やっちゃう時にはどちらの声が大きいのかわからなくなっていた。 歯を食いしばって声を殺した背が目の前で動く。どれだけ声を出せと言ってもうつむく。 水着脱がせればよかった。入れたのこすれまくり。 「どしたの、ごしゅじん」 いきなり動きを止めた俺に驚いてヒトミが首を捻り、こちらを見た。 「名前、呼んで」 「はいい?」 かなりの間。こいつ俺の名前忘れてるのかひょっとして。 「今更どしたの、キャパ」 「別に」 「なに鼻の頭赤くしてんの」 「うるせ」 ……だんだんと上下する腰の動きにひねりが加わるのはサービスなのだろうか。 「ヒトミ、こっち向けよ」 「ん」 もふっとしたいんだろう? 動きながらさかんに腕の毛撫でてるし、こいつ。 繋がったままもたもたと足を上げ(途中でひっくり返って後頭部を強打しそうになっていたので慌てて抱きとめた)、向かい合うなり、ヒトミは俺の胸に顔を埋めた。 それから背を一杯に伸ばして唇を押し付けてきた。 まだ冷たかった唇が俺の体温と同じになるまで、俺たちは付き合いはじめのガキがするような、不器用に触れ合うだけのキスを続けた。 細かく揺すり上げるたびに胸に感じる息が荒くなる。真っ黒い髪が胸元でがくがく揺れる。水着ごしに乳首を俺の体に擦りつけて、肩の毛を痛いほど握る指。熱く締め付ける脈動は間を狭めるばかり。虚空に放たれる言葉に意味はあるのか。感じる顔を伏せて見せようとしない頭。顔上げて、とかなんで懇願してるかな俺。やだって繰り返す声、いい。 「あう、やあ、だめ、もうだめ……」 いきそうですねいきそうなんですねヒトミさん、今日こそいかせまくってやる頑張れ俺。 「きゃ、キャパあ……いくっ……」 もちませんでした。そんな声反則。 風が立ち、湖面に小波が光る。そのほとりで冷たいー、とやかましく叫びながらヒトミが水着を脱いでいる。 「何もすぐ洗わなくても」 「カピカピになっちゃうでしょ。ざっとすすいどく」 照れたように笑う裸のヒトミかなりイイ、と鼻の下を伸ばしているうちに運命の瞬間が訪れていた。しまった忘れていた。 水着を湖水につけたヒトミが固まっています。 「何、これ」 どうみてもスケスケです本当にありがとうございました。 そう! これこそが、猫井技研がその知識と技術を結集して生み出した、濡れるととっ てもよく透ける水着! 男の欲望は技術を発展させる! 人気の無い場所を選び、じっく りゆっくり堪能しようとした深慮遠謀は今一瞬にして台無しになった! ヒトミの三日月型に開いた口に、無いはずの牙が見えるのはなぜでしょう。 「それで寒いのに泳がせようとしてたんかこのクソエロ猫ぉー!」 ヒゲは抜かないでお願い。あと、 もっかい名前呼んで。 ----*** 幕間・表紙に律儀に名前が書かれた日記 ***---- (以下、抜粋) ○月×日 晴れ 三日前、売り渡された。 こんなもんなのだろう。 新しい主人が細かく気を遣う。日記もその一つ。 前のゴシュジンより気楽にもふもふできる。 キャパシティという名前だそうだ。聞いた瞬間に笑いそうになった。色んな意味でいっぱいいっぱいそうな白黒猫。カギ尻尾。 △月○日 くもり これをごしゅじんに読まれた。ずっと読んでいたのだろうか。読めないとごしゅじんは言っている。本当かどうかは知らない。 まさか人の日記を読んで楽しむような恥知らずではないと、信じている。と書いておく。 ×月×日 雨 猫井のリードさんにキャパは仕事上日本語を少し読めるのだと教えられた。切る。ひげ全部切るくそねこ。 ×月○日 雨 今日は逃げ回るでっかい猫を追いかけて楽しかったです。 もう日記は読まないと耳を伏せて誓っていましたが、今ひとつ信用がなりませんのでここにもきっちり書いておきます。 今度読んだらひげでは済ませない。口でもそう言ってにっこり笑ってみたら涙目で尻尾を膨らませていました。弱え。あんたの方が強い筈なのに弱えよごしゅじん。 -------------------- 「大したこと書いてないだろお……」 「だからって普通読む?」 確かに私はこの猫の所有物で我侭を言える立場ではない。しかしこのごしゅじんは箒の連打を許すので、心置きなく大きく振りかぶって振り下ろせる。 「日記書かせたのは読むためだったんか」 「違う違う違う!」 箒のケバで二人とも咳き込んで一時休戦。 「お前をより良く理解するためにだな」 「斜め四十五度見たポーズで格好つけるなごしゅじん」 あ、また尻尾膨らませた。何というか、Sっけを自覚したよこのごしゅじんの所に来てから。柄は痛いからやめて、とか自分から言うあたり、ごしゅじんはMなのかもしれない。 「せめて、せめて名前呼んでグレッチでぶって」 『グレッチでぶって』って……椎名林檎もこの世界に落ちてきているのか。聞いてみた。ボロボロの歌詞カードだけ落ちてきたのだそうだ。猫井の担当者が解釈に苦労していたとか。だろうなあ。 さて。舞い上がった埃もおさまってきたようだし。 「結局ぶたれるのかあ!」 「ぶってって言ったのはお前だ、キャパシティ=スミス!」 まあ色々あってもこのご主人様の事は気に入っている。言わないけれども。 「で、グレッチでぶつって何?」 「ほんとは私も知らない……結構前の歌だよ、好きだけど」 「どんな曲なのさ」 そうか、たとえCDが落ちてきても再生手段がないのか。 「歌え」 げ。 ***しばらくおまちください*** 「ヒトミ……言っちゃなんだけど、歌下手……」 コロス。 ---------------------- (戸棚の奥に隠された日記帳より) ×月△日 ミーコの夢をみた。正座した私の前にきっちりと座って、うみゃごみゃとかなり長くお説教をしていた。 「やりすぎだ」と言いたかったのだろうか。賢い猫だったから、「立場をわきまえなさい」と言っていたのかもしれない。 ----*** 終・甘バカップルであと数十年 ***---- ヒトミがずっと俺の顔色をうかがっている。ひげを引っ張ったりカギ尻尾を遠慮がちにいじったりしても、こちらが芳しい反応を見せないとすぐに手をひっこめる。気を遣わせてしまっている、と思っても溜息はとまらない。それ以前はほぼ毎日手を出していたのがめっきり、という点が彼女には一番不審なのかもしれない。 原因は一週間前にさかのぼる――。 奇跡のような、とでも言おうか。この世界にはほとんど知り合いがいないだろうヒトミが、ある再会を果たした。 「ヒトミ、なのか?」 「え、御主人様?!」 ヒトミの驚いた声はその時の、付け耳付け尻尾でフードを深く被っていた格好には、不自然な台詞ではないかと俺は慌てた。だが相手の男が……。 御主人様、と呼ばれるのにまことに相応しい風貌だったもので、失礼にも開いた口が塞がらなくなった。 まず彼の出てきた場所が、小市民に縁のない高級品ばかりを取り扱う商会、その威圧感ある本社建物。扉の前で見送っている人とか、いるんですけど。横付けられた彼の迎えらしき馬車は金具から馬具までぴっかぴか、一分の隙もなく着こなした服は一目でわかる高級布地。 相当の実力者らしい上、その顔も体格も。喧嘩も強そうな厚い胸板に、毛色はレッドタビーと言うのだろうか、半長毛がつやつや光を放っていて、黄金の瞳にはくっきり凛々しく白のアイライン。首周りのみ長く伸びた毛並みはご立派の一言につきる。ヒトミと軽く立ち話をしている尻には、曲がってなどいない優美な尻尾がふさふさと伸びていた。 要は圧倒されたわけだ。 ヒトミが彼と話しながら、紹介するように何度か俺の方を振り返っていたが、何も耳に入ってこなかった。正直言うとその場から消えてなくなりたかった。 帰宅するなり付け耳をむしりとったヒトミの頬は、外出の興奮だけでなく赤らんでいるように見えた。 「いやあ、妙な離れ方をしたから気にしてたんだよね」 そうしてこっちが聞いてもいないのに、「前のゴシュジンサマ」の話を始めた。 生まれから毛並みのいい、その上辣腕家のゴシュジンが、別宅に囲っていた妾――ヒトミは「お嬢様」と呼んでいた――の、世話係兼話相手をしていたのだそうだ。 「だから正確には『前のゴシュジン』はお嬢様なんだけど、あの御主人様にも大事にはしてもらったし」 「……大事にされてたなら、どうしてまた売られてたんだ。あんな金持ちっぽい奴だったのに」 普通の顔をして聞いてはいたが、俺の尻尾は座布団をはみ出して床を叩いていた。ヒトミは肩をすくめた。 「御主人様がお嬢様との愛に燃えあがって駆け落ちかました。二人の仲については私も関ってたけど、まさかそこまでいくとはと驚いたっけなあ。……ちょうど、正妻さんの実家が落ちモノ詐欺にひっかかって大変な事になってた時期で、そこから逃げる意味もあったんじゃないかって話だった。案の定すぐ後に正妻さんと借金取りが突撃してきて、お屋敷大騒ぎ」 置いていかれた上売られた身なのに、ヒトミは二人とも幸せそうでよかった、と笑っていた。 「お嬢様を隠して落ち着いてから、堂々戻って正妻さんちに掛け合って、無償で走りまわって借財整理から家業立て直しにまで携わって、正妻さんとはきちんと別れたんだってさ。お嬢様の事、心配だったから安心したよ」 「そりゃあまた男前な話だ」 「御主人様」は察するにあの高級商会の役員か、駆け落ちの醜聞をものともせずにいる様子だったあたり、確かにやり手らしい、などと考えていたので、適当な相槌をうった。ヒトミはそれを興味がないしるしととったらしく、ぽんと立ちあがって夕ご飯にしよっか、と実に珍しい事に俺より先に台所へ向かった。 その夜、寝床の中で「ふかふかのびのびー」と口で言いながら俺の頬を伸ばしているヒトミを見ていたら「御主人様」の立派な鬣状の首周りを思い出してしまい、更にはヒトメスだしなー御主人様ともやっちゃってるよなーと下世話な方に頭がいき、ヒトミの指を咥える事ができなかった。 それから、一週間。 「ごしゅじん、どうしたのさ」 とうとう痺れをきらしたのか、夕食後仕事を広げようとしたちゃぶ台(さすがに夏になってからはコタツを片付けた)を強引に横に押しやったヒトミに、向かい合ってきちんと座られた。どうしたと言われても。 「……ひょっとして、前の御主人様の事?」 こいつはこいつで、様子がおかしいと気付いても言い出せずにいたらしく、「前の御主人様」は口の中でもごもごと発音されている。そのとおりなのだが説明が難しい。 「むー、やはり中古はいやでしたか」 「違う違う違う」 かといってこんなとんでもない誤解をさせたままにしておくわけにもいかない。 ……要は圧倒されたという事。それが一番近い。 むろんこちらも小市民とはいえ勤め人、「御主人様」のような、いやもっと貫禄のある人物(ヒトミが「猫物ではないか」と茶々を入れた)に会った事もある。それでもヒトミと御主人様が向き合っていたあの時、胸によぎってしまった言葉がある。俺ショボい。 「オットコマエだったな御主人様」 呆れたように口を開けてから、何やら言葉を探しているヒトミの顔を見ていたらもう一つ、ずっともやもやしていた思いがはっきりした。 「分不相応な買い物をしてしまった」 「俺なんかが買っていい贅沢品じゃなかったんだ、ヒトってのは。あんな金持ちにまた買われてりゃ、ヒトミもでっかい家に住めてきれいな格好して、美味い物食べてたまに奉仕して」 「そんないい暮らししてるヒト奴隷なんて、ほとんどいないと思う。別に私、ここでの生活に不満なんか、ないよ?」 言おうとした、「もっと幸せだったろうに」を遮って身を乗りだしたヒトミの黒髪が頬で揺れる。指が敷物を擦っている……と思ったら無意識のうちにだろう、俺の抜け毛を集めていた。 「ああ、そう言えば最近掃除もしてくれるよな。ありがとな。こんなさえないエロヒトオタに」 「それは、昼間ヒマだし他に取柄もないから……あーもー、だー、うっとうしい!」 ヒトミが思いきり腹に抱きついて、腕を尻尾に回してきた。落ちこんでいても尻尾は気持ちいいあたり、俺ほんとなんだかなあ。 「ごしゅじん、らしくないよ。エロヒトオタでいいよ、今私を買ってるのはごしゅじんでしょ?」 いつになく積極的に、俺の下半身を服ごしに鼻先で探ろうとしたヒトミを、しかし俺はできるだけ柔らかく止めた。尻尾のカギ部分を扱いていた彼女の指を外して、口に含む代わりに爪の先で撫でた。 「こういうのも、さ」 眉をよせたヒトミの、まっすぐに睨んでくる目からも逃げた。 「今まで甘えてたけど、ヒトの生理以外の時だって、嫌だと思ったらはねつけてよかったんだ。体もきれいで傷もない、具合はもちろんいい、本来なら金持ちに買われるような高級品だったんだろう?」 あの「御主人様」に買われるような。 沈黙の後、ヒトミは俺の指からそっと自分の手を離して……片膝を立てた姿勢になった。どっかりと。 んなわけないでしょう、というのが前置きだった。 曰く、向こうの世界ではごく普通の生まれで中小企業事務員、お嬢様だの御主人様だのがぞろぞろいる上流階級には縁も無し、そういう世界の教養も礼儀も無し。器量も普通で色黒と軽いくせっ毛を気にしていて、高級品などと呼ばれるいわれはまったく無し。ならば、なぜ前のゴシュジンサマがあれだったかというと。 ……曰く。落ちてきた途端えらい目にあって、売り飛ばされて、なんだこの理不尽な扱いはとぶち切れて、ヒト売りをなけなしの色気で油断させ逃げだしたらその通りにたまたま、ぴっかぴかの馬車があったのだと。 「中にいたのがいかにもひ弱そうな猫の『お嬢様』だったからさ、これなら私でも人質にして逃走に使えるかなー、って火事場の馬鹿力で馬車に突入しちゃったんだよね」 突入? ……おいおいおいおいおい! 「すぐ取り押さえられたけど」 「お……お前、よくその場で殴り殺されなかったな……」 そらしていた目をヒトミに戻して、身を乗り出してしまった。ヒトミの話は続く。 お嬢様のやさしさと好奇心、御主人様の鷹揚さと「これが欲しがっているらしいから」の一言で、命拾いして屋敷へ連れて行かれたが、売られる前よりはるかに待遇が良くても、御主人様はじめ周りがその手のモノ扱いをする事には変わりがないものだから。 「もう大暴れ」 大暴れ。どんどん聞くのが怖くなってきた。 「特に、お嬢様もモノっていうか、『着飾ってたまに来る御主人様のご寵愛を受けていればいい者』扱いされてるのが気に入らなかった。御主人様を頭っから怒鳴りつけたり」 あれを怒鳴りつけたのか……尊敬する、ヒトミ。 「仕舞いにはお嬢様つれて逃げようとした。これまたすぐに連れ戻されたけど、御主人様は自分の傲慢に気付いてなかっただけで根はいい人だったから、素直に反省してくれて、このとおりヒト奴隷なのに無傷無罰。運がいいんだろうな私は。また売られたって、いいスジからのモノだからって一応、格上の扱いをされたしね」 ――自分をごく普通だという小柄な頼りない腕力の、柔らかい女性は、どれだけの怒りと絶望を抱えて暴れていたのか。逃げてもどうしようもないと理解し、諦めに至るまでの心の動きは、俺にはとても想像できない。主人で遊ぶようなとんでもないヒト買っちゃった、とはじめ後悔したものだが、あれは丸くなった後どころの話ではなかったのだな、などとぼんやりバカな事を考える。 己の現状を嫌というほど理解させられてもなお足掻こうとして、ヒト奴隷の詰めこまれた馬車から隙を窺っていた彼女は、立てた膝に頬杖をついて微笑んでいる。 「らしくないよごしゅじん。本当に、本気で、ここの生活に不満はないって。庶民出身としましてはお屋敷よりずっと気楽に過ごしてるし。ごしゅじんの尻尾いじるのも面白いし。お買い得品だけど高級品なんかじゃないって、わかった?」 すっかり反省した俺が、謝ろうと口を開く前に、ヒトミがふっとうつむいた。 「ここで最初にごしゅじんに抱かれた時、どこがいいかここがいいか聞かれて、あんまりやかましかったからつい蹴ろうとしちゃったけど」 しだいに小さくなっていく彼女の呟きが、最後にかすかにこう、聞こえた。 ……たとえ少しでも、私の事を対等にみてくれているんだなって、嬉しかったんだよ。 黙って部屋の隅を見ているヒトミの目に映っている絵と、同じ物を見ている筈の俺の目が認識する絵はきっとずいぶん違っていて、どれだけ言葉を費やしてもお互い説明しきれないのだろう。 遅くなった、寝よか、と目をそらしたまま立ち上がったヒトミを、色々もやもや考えてから追いかけると、彼女は寝台の上でうつぶせに寝転がり、行儀悪く足をぱたぱたさせていた。そして、俺に少し前の表情を忘れさせそうになるほど、ごく普通の顔を向けてきた。 「あ、ごしゅじん、言い忘れた。飽きたらさっさと売り払っていいよ。高級品ではないけど大丈夫、優秀な勤め人のごしゅじんなら、きっと買値より高く誰かに売りつけられる! がんばれごしゅじん!」 「なあ?! 何言ってんだバカ!」 バカは俺ですな。 「シワ指差して笑ってやるって言っただろうが!」 ……バカを重ねていますな。どれだけ考えても、謝るのは間が抜けていて、慰めるのは彼女が望んでいないだろうという答えしかでてこないので、更にバカを重ねる事にする。 今こいつはここにいる理由を、行為にのみあると思っていて、行為に飽きられるのが不安なのだとエロヒトオタは今更ながらそれだけは理解した。なのでヒトミをひっくり返してガリガリ指をかじってやった。 「飽きないって」 痛みに顔をしかめても声を出さずにいるヒトミも積み重ねてバカ扱いにしておこう。左手指五本省略。ボタンが飛んでも繕うのは俺だと力でパジャマの前を開いて、 「ガバガバになったって飽きないよバカ」 はだけた肩に一週間ぶりに鼻を強く押しつければ甘い肌の香り。 素裸になってから体をくっつけるのが、最初に抱き合った時よりぎこちないのがなんだかおかしい。まあそれはつかの間で、すぐヒトミは目を細めて俺の首にすりすりと頬ずりしてきたわけですが。やっぱり毛か、毛なのか。 「『御主人様』にもこんな事やってたのか? ああごめん違う、気にしてるんじゃなくて、あの首毛は撫でごこちがよさそうだったから」 「んー、もふるどころか引き千切ろうとしたからなあ」 ……なんだか、ざまみろという気分。しかし凄えなヒトミ。畏縮する俺の方がおかしいんだな。 覆い被さる俺とヒトミ、どちらがより肌の多くの面積を相手に押しつけるか選手権……になってしまった。とにかく互いの体温と感触を貪り、巧緻な技などなんにもなくて、なのに勝手に高まっていく。 ヒトミの息と鼓動、俺の急いた腕の動き、いや逆かもしれない、わからなくなってくる。 あー柔らかいなーいいなーと言ったのが俺で、あったかいよもっとすりすりしてーと言ったのがヒトミだとは辛うじて判別できたがこれも逆だったかも。 彼女の足が腰に絡みついたのと、先っぽ涎だらけになった俺のあれが突き立てられたのはどちらが先だったのやら。 「あうっ、奥、奥いい、もっとお、あ」 だったら締めるなもたねえよ! 奥も入り口も! 「むり、や、きて、きてえ!」 言われなくてもあっけなく。吐き出される脈動と、ヒトミの顎が天を突く動きが同調した。 もそもそ後始末を終えて、もう一度横のヒトミを抱き寄せた。 「およめさんにー、なれー」 「今度は何事だごしゅじん?!」 腕に力をこめて、跳ね起きようとする体を押さえつける。 「うるせーくそ、お前ほんとの心は見せないから悔しいんだよ。嘘でいいから、もっと俺の名前呼べ。およめさんになれー」 俺を主人扱いしなくても抱こうとすると従順になるヒトミ。やけを起こして買ってしまったヒトのヒトミ。 「落ちつけご主人様、キャパ、ちょ、キャパ、何言ってんのいきなり!」 「いきなりじゃないよ」 説明は苦手で、出した金の分後ろめたい。それでも指先の毛で唇に触れた時、ヒトミの目に浮かんだ表情は嫌悪ではないと直感で思う。俺の長所、毛だけでもいい。 「誓えー。ずっと俺の傍にいるって誓えー」 「ヒトだよ私」 いいから。 嘘でも良かったのだけど、ぎゅうぎゅうに抱きしめて口付けた後のヒトミの顔はなんか可愛かった。 「……キャパシティ=スミスとこの世界の神に誓います。私、佐伯仁美はどんだけこのごしゅじんがバカでもエロでも、こいつの傍にいるって、誓います。って、こんなんでいいの?」 「うわー誓いっぽくねえー!」 一緒にげらげら笑っていながら、肩に伏せて顔を上げない頭を抱え込み、胸毛と腕毛でもっふもふにしてからこっちも。 「俺はヒトミに誓う。ひげ抜かれても、エロヒトオタとか言われても、何回でも好きだって言います。おっぱいが垂れてもシワシワになっても好きだよ、ヒトミ、だから……」 この世界の神には誓えなかった。抱きしめて、できるだけ大切にして、あとはこいつに何がしてやれるだろうか。 「だから、泣くなよう……お前が好きなんだよう」 ヒトオタ結構。エロネコ上等。口に出したら胸が軽くなった。 二人で暮らすようになってから伸びた分はどれくらいだろうかと、黒くしっかりした髪を指に巻きつけていじくっていたら、ようやく掠れた声がした。俺の肩毛にしみこんだ跡を見せつけてもこいつは自分が泣いていたのを認めようとしないのだろう。いいけど。いいけど、顔、俺の抜け毛だらけになってるんじゃないか? 「ヒトオタここに極まるって感じ……」 「悪いか。もう開き直ったからな俺。あと二百年くらいもっふもふにしてやんよ」 「二百年て、私ミイラだよバカ」 ヒトなんかほんと買うもんじゃない。でも多分、バカだのヒトオタだの繰り返しながらしがみついてくるこいつは、生まれ変わってきてもすぐに見分けられそうな気がする。シワシワになってからさっさとネコに生まれ変わって、また俺の傍にくればいいんだ。 バカバカ言ってたヒトミが唇を結んで、顎に額を擦り付けてきた。 少なくともあと何十年かは一緒だ絶対に逃がしてなんかやらねえ、覚悟しろ。 誓いの夜から数日。今度はヒトミが挙動不審。今夜は裸エプロンがいいなー、と言っても反撃がこない。 「エロヒトオタとか、言わないの?」 視線をそらすし。なんだか口を開き辛そうにしているし。 やっちまったか、俺。ひげと尻尾を下げたらヒトミが大慌てで見上げてきた。 「いや、あのさ、ごしゅじんだと思ってた人、あ、ネコか、におよめさんとか言われたら妙に意識するっていうか……うあー二十五にもなって私何やってんだ、ごしゅじんがバカ言うからだ!」 照れてた。照れていましたヒトミさん。だからって逆ギレするなよ。 「なんという萌えツンデレー!」 「叫ぶなヒトオタ猫!」 ようやく勢いが戻ったけれど、彼女の顔は真っ赤だった。 先の事は先の事として、今の所、 やけ買いも悪くないのかもしれない。 ----*** 幕間・酔っ払いの拾いもの ***---- 「たらいまあ~~」 「うわ、くっさい。ちょっと玄関で寝ないでよごしゅじん、……うあ?」 「呑んじゃったあごめえんヒトミぃ」 「はいはい、ほんっと弱いんだね、んで、これ、何」 「ヒトミお酒好きぃ?」 「まーね。どーせ通じないだろうけどアイレイ大好きだったよほらごしゅじん、ぐにゃぐ にゃしてないで袖から腕抜いて。もうとっとと寝なさい。水飲んでから。スモーキーマテ ィーニもう一回飲みたかったなあ」 「す……何?」 「スモーキーマティーニ。あっちの世界のカクテル。くっさいアイラ島のモルトウィス キーを、って別にどうでもいい話だよ、ほらほら転ぶよ、足元気いつけなってば」 「ふにゃー……モルトって、ル・ガルの地方から輸入されてるよ、今度買って来るねえー そっかヒトミ酒好きなんだあ、くっさいかはわからないけど、買って来るよお……」 「それはどうでもいいのよ、この、足元にいるの、何」 「ひろったー」 「……明日それは問い詰めようと思うけど、とりあえず何これ」 「知らないー、落ちてたー。お前の世界の『猫』ってこんなんじゃねえのー?」 「違う違う断じて違う! 何この生物! 何食べるのこれどうすればいいの! なんか一 つ目開いた! 目からなんか出した!」 **小ネタ1彼は誰とすれ違ったのか** 今度は何持ってきた。 そろそろ帰ってくる頃かと窓から外を覗いた私の頭に、太ゴチック体で黒々と浮かんだのはそんな文章。 日の暮れるのが早くなり、しんしんと地面から藍色に沈んでいく小路なのに、ネコのように目が良いわけもない私が瞬時にエロヒトオタ猫を見分けられたのは、彼のスキップせんばかりの足取りがあまりに帰宅途中の人々(ネコネコ?)の中で目立っていたからだ。特徴あるカギ尻尾は高く上がり、藍に溶け込むハチ割れ模様の黒部分にきらきら光る黄褐色の瞳、白い鼻面からぴんと伸びるひげ、流石にそこまでは見えなかったがおそらく小鼻が膨らんで鼻の頭がピンク通り越して赤くなっているのだ。 寒気を全く感じていないかのような浮かれた様子、こんな風に帰ってきた時はー、エロヒトオタ歓喜のブツか知識を仕入れてきた時であってー、それはたいてい私の眩暈を喚起するようなしろものでー。 あの調子だとかなりのブツかいらん知識だ、と早くも立ちくらみを起こしている私を見上げ、でっかい白黒猫な夫はものっすごいイイ笑顔で手を振ってよこした。私は窓枠にもたれてずるずると崩れ落ちながら力なく手を振り返すしかなかった。 「ただいまー! あのな、ヒトミ、あのな」 その手のものを繰り出す場合、今まではどれだけ浮かれていても、夕食後の落ち着いた時間帯だったのだが今回は違った。そーか玄関開けるなり話題にするほどのシロモノか。覚悟しておこう。 「おかえりごしゅじん。ご飯それともまずその話?」 「ええ?! いきなりいっちゃってもいいの?!」 「……まずご飯にしようね。野菜は切っておいたから」 腹をくくる猶予くらいはくださいごしゅじん。 しかしくくった腹は緩む事になった。 「すっげえ素的な人に会ったんだよ!」 「は?」 これは予想外。普段の倍速で鯵に似た魚に塩をふり天火に放り込み、並行して野菜炒めを作りながらごしゅじんであり内縁の夫であるでっかい白黒猫はいまだ興奮覚めやらぬ様子で、結局ご飯作りと「話」を並行した。薄い耳の内側も鼻も、目の縁まで濃いピンク色。あれ? 素的な人って、もしかして出会いってやつ? およめさんにしてもらったとはいえ、私はヒトで彼はネコ。皿を用意しながら私は覚悟のベクトルをずらした。 「お近付きになりたいなー、どーしよーどーすりゃいいのかなあ」 「仕事の関係で会ったんじゃないの?」 「それがすれ違っただけなんだよ」 長身をくにゃくにゃ揺らしていても、でっかい白黒猫の手は的確に調味料を加えていく。小まめで料理も上手いし気配りもできる、仕事も遅刻以外は真面目らしいごしゅじん、なんで独り身なんだか不思議だったんだ。外見の印象については、ネコの美醜感覚がよくわからないんで横に置いておいても。恋は良い事だ。ヒトオタになるよりずっと良い事だ。 「まず、声をかけるタイミングだよね。今日初めてすれ違ったの?」 「そう、今度いつ会えるのかもわかんない」 ようやく私もうまく塊のパンを切れるようになった。ニホンジンの感覚では鯵の塩焼きと野菜炒めにパンはいかがなものかと思うが、いまだに自分一人では米を炊けないもので仕方がない。竈の使い方は何とか覚えたんだけどね。パンも温めておけば良かった、と頭の半分で反省しながら、もう半分では別の事を考えている。 さーて、ネコの彼女はヒトメス奴隷のいる家におよめさんに来てくれるものなのかなあ。前の御主人様はお嬢様と私がふにゃふにゃしているの、面白がっていたけれど。 ネコのおよめさんにはネコがいいに決まっている。はじめに聞いたとき比喩でなくひっくり返ったもんね、ヒトとネコの寿命の違い。ずっと傍にいると誓ったけれども、ごしゅじんが――この極まったヒトオタ猫が、私が寿命でも病気でもさっさと逝った後どうなるのかを想像して、早いとこネコのちゃんとしたおよめさんをもらった方がいいんでないかいと、常日頃悩んではいたのだ。覚悟のベクトルはまた売られる方向へ向いている。ヒトオタグッズもきっと高く売れるよな。私は改めて腹に力を入れた。 「そんなに素的な人だったんなら、願え、祈れごしゅじん。努力すればまた会えるかもしれない!」 「うん、今日すれ違ったあたりまたうろついてみる!」 野菜炒めを皿に移し終えたおたまを握りしめ、彼はシャッキーンと上方を見つめていた。 鯵(に似た魚)の塩焼きを頭から齧りながら、でっかい猫がうっとりと頬を緩めている図はなかなかにシュールだ。私は箸を使っている。ちなみに私の残した頭や骨も彼が食べる。 「高級そうなスーツ着てたんだよ……どこに勤めてるんだろう、やっぱ猫技かなあ……」 「猫井技研なら伝手があるじゃない」 「なにせあそこ大企業だから。リックと違う部署じゃあ名前も顔も知らない可能性が高い」 どう味付けしたらこんなにパンに合うようになるのか、私には見当もつかない野菜炒めを飲みこんで、ついでに売られるならどこまで自分用に買ってもらった服を持っていけるのか、まで先走った頭の中の仮定を一旦飲みこんだ。 「もう一度会えるといいね」 「応援してくれるのかヒトミ!」 「もちろんだとも! で、どんなひと?」 仲人モードにチェーンジ! 情報が得られない事には想定も対策もできん。集中するため大急ぎで残りの野菜炒めをパンに盛り、行儀が悪いのを承知で口に詰め込んだ。 「まず、センスがいいんだ。ウロコの色にスーツが合っててなあ」 センスはごしゅじん、正直言ってあまり良くないようだからその人と釣り合うかどうか……もぐもぐ。 ん? 今ウロコって? 聞き違い? 「首輪も鎖も着せる服のチョイスも」 ちょっと待った。なんだか、おい、嫌な予感が。口の中のものを一気に飲みこもうとして、胸が詰まったのは重い予感のせいだ。首輪と鎖て、おい。 「ごしゅじん? 素的なひとって、具体的に言ってみ?」 「んだから、洗練された仕草と眼光の」 具体的じゃねえよ。 「こらえきれない歓喜を僅かに出入りする細い舌が表してたりして、それが実にウロコに映えて」 たしかにウロコと言っている。はい消えたー、ネコのおよめさんの線消えたー。予感は黒くなっていくよ。 「クールな彼の表情と斜め後ろの彼女の遠い目との対比が、またこれが」 こ、こ、「これが」とか瞳孔開いて回想するなバカエロ猫。帰宅前の予想と腹くくりの方が正解でしたか、もしかしなくても。黒い予感が、脳裏に描いた想像図に変わりましたよくそエロねこ。 「……早い話が、首輪鎖の羞恥プレイをしているとっても素的な人とすれ違った、と?」 「そーなんだよすっげえカッコイイヘビ紳士だったんだよ、どうにかしてお友達になれないかなあ?」 「なるなー!」 卓袱台返しならぬコタツ返しをしなかった私の理性を自分で誉める。後片付けの手間を考えて思い留まった。 ネコの好奇心に感謝した事もあれども今回は恨む。特にエロ方向に走ってしまったごしゅじんの好奇心を叩き潰してやりたい。こんだ羞恥プレイかよ。 「応援してくれる筈じゃ……」 皿を洗いながらぽそぽそ呟く声を一切無視して私は拭いた皿を棚にしまった。尻尾がまだふくらんでいるあたり、さっき私どんだけ恐ろしい顔をしたのだろう。 「ヘビ紳士の彼女がさ、ニーソックスはいた時のヒトミと、似た表情でさあ、それで余計」 ……そらそうだろうとも。彼女さん、力一杯同情するよ。二十五でふりふりエプロンだのニーソだのってプレイも十二分に羞恥だと、このネコには理解できんのだろうな。 「ごしゅじん、そーいうSMちっくなのにも興味あったの?」 努力してにっこり笑ったら、エロな夫は後ろに倒していた耳をぴんと立てて何度もうなずいた。 「ほら、もっと尻尾しごいて欲しかったらにゃーって言いなさい」 「えーっと……なんか、違うくねえ?」 うつ伏せの背中に私をまたがらせ、でっかい白黒猫は枕の上で首を傾げている。違いませんごしゅじん。後ろ手でカギ尻尾を、もう一方の指先で耳の中をくすぐられてひげがさかんに動いているじゃありませんか。あ、羞恥プレイでしたね。素早く体を180度反転、おしりの白い部分を重点的に攻めてみまーす。 「ふかふかのおしりがぴくってなったよ。本当はたまたまも見て欲しいんでしょ? ふっふっふ」 「ふおお?!」 起き上がろうとした上体にヒップアターック。文字通り尻に敷く体勢は、私のお尻も気持ちが良いことがわかった。天然毛皮クッション体温付き、冷え込む季節に最適です。ぐぎゅ、とか雑音が聞こえたけれども気にしない。しかしほんとにごしゅじんのお尻可愛いな、悔しい。つるつるの自分の尻が醜く思えてくる。下でじたばたもがく感触を細かく感じ取れるのも楽しい。 「ヒトミー! いい加減に、ひゃああああ」 「『ひゃあ』じゃないでしょ、『にゃー』でしょ」 ……いや、本気で調教する気は無かったんだ。尻尾とたまたまをさわさわするのは楽しかったけれども。 なのでこんな声が返ってきた時にはどうしようかと思った。 「にゃあ……」 いささか掠れた声で、それでも確かににゃーって言いおったよこのごしゅじん。 ごしゅじん……本気でMか……。 -------------------------- 触発元作品:「The snake under the bed」(作・タダノサケビ氏) タダノサケビさんすみませんすみません。 -------------------------- **小ネタ2過去には暗い穴がある** 繰り返される日常の中、ふと感じた疑問が好奇心が、ひとつの切欠となる事もある。 下手くそな鼻歌など歌いながら、手際よく皿を拭いて片付けているヒトミを見ていたら口から勝手に言葉がこぼれ出た。 「ヒトミ、向こうの世界で結婚してた?」 料理に関しては、調理器具に慣れてきてもその、あれな、腕だと嫌というほど知っているもので、たぶんそりゃないなーとは思ったけれども、なんとなく。 「はあ? 未婚だったよ、ごしゅじんにまだ言ってなかったっけ? 独り身仲間で飲み会やってアパート帰ってきたらいきなりこっちに落ちたんだもん」 鼻歌が消え、笑みが消えた。まずいやはり触れるべきでない事柄だったとシャツの下で脂汗が吹き出た。 「言っておくけど、ヒトの25って別に嫁き遅れじゃないよ」 機嫌が悪くなったのはそれを疑われたと思ったせいかよ。今度は安堵の汗が出た。 ……そこでつるっとまた余計な事を口走ってしまうのが俺というネコだ。 「んじゃ、恋人とかいた?」 ヒトミの茶の瞳が焦点を無くした。手は皿を持ったまま止まった。そこでやっとまずい、と口を閉じたが 発してしまった言葉は取り消しがきかない。 ぼく、ふみこんじゃいけないところをふんだみたいです。 「……二年」 ぽそ、とヒトミが食器棚の中に向かって呟いた。 「いっつも二年、続かなかったんだよねえ……」 ふんじゃいけない……けど、ちょっとちがう種類の踏んではいけない場所だったらしい。ヒトミの背後に、家の中なのに吹き荒れる木枯らしが見えた。 二股かけられた挙句、「彼女には俺が必要なんだ! ヒトミは強いから!」と捨てられる。 受験失敗から自暴自棄になって心中を持ちかけられる。 いきなり辞表を出してアパートに転がり込みパチプロになるとごろごろするばかり。 少し会わなかったら出会い系にはまって性病をうつされてくる。 「もてなかったわけじゃないんだけどねー、なんでかねー、あはははは」 淡淡と話された内容と乾いた笑い声に、俺は背中の毛を逆立てていた。彼女の背後に見える木枯らしは、猛吹雪に変わっていた。よーするに、ものすごく男運が悪かったらしい。 「んじゃ、恋人とかいた?」 軽く聞いているつもりなのだろうが、開いた口の形が左右非対称だった。コタツで改めて向かい合い、話してやったらその、牙をのぞかせた口のまま固まっていた。でっかい白黒猫な夫は、お調子者のきらいはあるもののヒトの私にも気遣ってくれるいいネコだ。 「ごしゅじんこそ、なんで彼女も嫁もいないのさ」 声に出してから、外に内証にしている恋人がいてもおかしくない、と思いついたがそれは要らない想像だったようだ。……ごしゅじんの視線が、何もない空中で止まっている。遠い目という表現はあるが近い目というのは初めて見た。瞳孔が開いていてちょっと怖い。 「えーと、ネコにも結婚適齢期ってあるのかな?」 ……そこで追い討ちをかけてしまう自分の性格が恨めしい。反省より先に、つるっと言葉が出てきてしまった。 「うん……まあね……俺は、それ、過ぎてるよ……」 開いた瞳孔に灯りを反射させて中空を見るごしゅじんの後ろに、砂漠が見えた。 つまんないそうです。 二百年近い年齢のネコは、それまでの女性遍歴を一言ですませた。そのぽそりとした声色で、彼の背後の砂漠は更に乾燥を増して細かい砂を巻き上げるようだった。思わずお茶で口を湿してしまいましたよ私は。 「ええ? ごしゅじん、こまめで優しくて真面目でいいひとだよ、もてないわけじゃないでしょ?」 「ん、でも、つまんないんだって。イイヒトだけど、って、だけどが付くんだよーうふふふふふ」 わたし、おもいっきり地雷をふんだみたいです うふふあははと背後に砂嵐を吹き荒れさせる白黒猫に、私はお茶の杯をを放り出しコタツから出てハイハイで近づいた。 「ごしゅじん、つまんなくなんかないよ、いいひとでいい男だって、白黒はっきりした毛並みもふかふかだし、かぎ尻尾も可愛いよ!」 「ヒトミ……!」 がっしと抱き合う図は絵に描いたようなバカップルバカ夫婦なのだろうが、誰も見てないからいいよもう。ざりざりの舌で頬を舐めるのは正直勘弁して欲しいけど。 「ヒトミい、お前もいい女だよう、『サゲマン』なんかじゃないよう」 「……どっから覚えてきたのそんな言葉」 お互い存分にすりすりもふもふぎゅうぎゅうした後、ごしゅじんは私に目を合わせた。下がっていたひげがようやく元に戻っている。 「俺、賭け事もしないし酒も弱いし浮気もしない、ずーっと真面目な夫でいるからね、ダメ人間になんかならないからね」 優しいテノールの声と腕の力と、真摯な目、だけれども……。 私を買ってから。 ――マッハでエロヒトオタになってしまったのは誰だ。 「……あれ?」 「……ん……いや、ごしゅじん、これからは少なくともつまんないって言われる事はなくなるかもね……」
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お祝いなんて、しょっちゅうさ。 作者:なんじゃもんじゃ EFFICACE100号掲載
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前ページ次ページSSまとめ 1-549 1-549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 13 11 28 ID Fpy92SW6O ザジ「オーレンジー色の空ー♪」 ちう「ただいまー。ん?なんだ?歌の練習か?」 ザジ「あっ(;*´ω`)おっ、おかえり・・・」 ちう「そういえばもうすこしで合唱祭だもんなー。お前いつも声出してないから練習しないとな(笑)」 ザジ「そんなことない・・・・」 ちう「えっ?」 ザジ「そっ、そんなことないもん!!!(;_;)」 ちう「なっ、何も泣くことないだろ(焦)」 ザジ「だっ、だって、人前でっ、話すの、恥ずっ」 ちう「あ?、わかった、わかったから」 ザジを抱きしめるちう ちう「もう泣くな(笑)私まで悲しくなるだろ?(涙)」 ザジ「ちう、泣いてるの?ザジのせいだ・・」 ちう「バッ、バカ泣いてなんかないっ・・!・・んっ・・・んー!・・・んぁっ・・はっはぁ・・・バッ、バカ!!どこ触ってんだ!!」 ザジ「ちうのここ泣いてる・・・」 ちう「バッ、ばかっぁん・・・そこはっ・・・だめぇん・・・」 ザジ「気持ちいい?ちう気持ちいい?」 ちう「やっ、はぁん・・・やめっ、やめてぇ・・・」 ザジ「わかった」 ちう「あっ・・・やめちゃうのか・・・」 ザジ「ちう、やめてって言った」 ちう「言ったけど・・このままじゃ・・・」 1-555 名前:549続き[] 投稿日:2005/07/05(火) 13 40 49 ID Fpy92SW6O ちう「やめないで・・・」 ザジ「えっ・・・?」 ちう「やめないでえぇぇぇ!!!このままじゃ私壊れちゃうぅぅぅぅぅ!!!」 ザジ「(驚)じっ、じゃあベットで・・・(*≧∀≦)」 そして・・・ ザジ「ちうのここ、すごい・・・」 ちう「あっ・・んっ・そっ・・それ以上言わないでぇん・・んーっ!」 ザジ「すごい濡れてる、グチョグチョだよ・・・」 ちう「あっ・・はっ・・恥ずかしいぃぃ・・・」 ザジ「ここ、気持ちいい?(クチュクチュ」 ちう「あーっ!!いいっ!!イクっ!!イッちゃう!!」 ザジ「(クチュクチュ)」 ちう「もっ、もっと、はっ激しくしてぇぇん!!」 ザジ「(クチュクチュクチュクチュ)」 ちう「あーっ、もっ、もうだめぇぇぇぇ!!!あっ!ああぁぁぁぁぁぁぁん!!」 ザジ「ちう、イッちゃったの?」 ちう「はぁ・・・はぁ・・・すごい・・・よかった・・・」 ザジ「ちう」 ちう「ん?」 (チュッ) ザジ「大好きヽ(≧∀≦)ノ」 ちう「ふふっ(笑)私も・・・」 (チュッ) ・・・・・・ 1-556 1-556 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 13 41 02 ID ubhrnwB10 ちう「・・・んっ」ぴくんっ! ザジ「・・・んんっ」ぴくんっ! 最近は息も合ってきたもので・・・アレの時も同時に絶頂なお二人。 ちう「(はうー、ここんとこ毎晩だなー。 なんとはなしにザジに流されてる部分多いけど・・・ちら)」 そこにはザジの幸せそうな顔 ちう「ああ、くそっ!なんでこんなにカワイイんだよ!ほっぺぷにぷに!」 ぷにぷにぷに ザジ「ヽ(*≧∀≦*)ノ」 ザジ「・・・」 ちう「ん?なんだよ?」 ザジ「アンコールは、い・か・が?」 ちう「ちょwwwwwおまwwwwwそれ禁句wwwwww」 1-560 1-560 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 13 59 58 ID wqqgFDSc0 ちう「ただいまー…なにしてんだ?」 ザジ「(ゴソゴソ)」 ちう「ちょっと!なんで下着あさってんのよ!?」 ザジ「…水玉、しましま、くまさん」 ちう「だああああああいちいちいわなくていい!」 ザジ「Σ(´・ω・`) …(´・ω・)つT」 ちう「そそそれはコスプレでだな!パンツのラインがでるような衣装の時にはいてるだけで普段は」 ザジ「…ちうH(*ノωノ)」 ちう「ちいぃがああああぁううううぅううぅ!!!」 1-563 1-563 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[落ちてないように祈る] 投稿日:2005/07/05(火) 14 40 26 ID wqqgFDSc0 ザジ「出かけ前保守」 ちう「おーい、何してんだ。早くいくぞー」 ザジ「(こくこく)」 ちう「さて、どこにいく?なんか欲しいとか食べたいとかある?」 ザジ「…ちうと一緒ならどこでも」 ちう「もぉ、答えになってないでしょ…私も同じだけどさ」 ザジ「(*≧∀≦*)」 ちう「こら、あんまりくっつくな歩きにくい!」 1-564 1-564 名前:FAMAS ◆GC.oi3hVd6 [] 投稿日:2005/07/05(火) 14 42 29 ID y6DfXFfm0 アスナ「ねぇ、ちょっとアンタたち」 ちう&ザジ「?」 このか「なぁなぁ、もうしたんけ?」 ちう&ザジ「!!」 1-566 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 15 07 18 ID Qdnl3rbX0 564 ちう「な???ななんあ!??!?!」 このか「ホラー、やっぱわやになってもたー」 アスナ「ヘヘ、ごめんね長谷川。実は・・・さ」 このか「ほら、最近二人急に仲が良くなってきたやんかぁ。」 ちう&ザジ「ΣΣΣ」 このか「そんなびっくりせんでも、バレバレだえ?。 そいでな、その・・・二人がどんなことしてるのか、ってゆーかなぁ、 その・・・やり方を・・・ゴニョゴニョ」 アスナ「わ・・・めずらしい、このかがテレてる。」 ちう「こ・・・こういうのって人から根掘り葉掘り聞くもんじゃないんじゃないか?」 アスナ「そうなんだけど・・・二人を見てたら、こう・・・なんでもこい!って雰囲気だったし・・・」 ザジ「ちう・・・バレちゃイヤだった?」 ちう「そんなことは・・・あるようでないようで・・・そうか・・・バレバレか私たち・・・ で、神楽坂と近衛が・・・その・・・するのか?」 このか「あははー、ちゃうでー、うちが・・・せっちゃんにアタックするんえ?」 アスナ「私は、別に何もしないんだけど、このかが一人は寂しいっていうから・・・」 ちう「ふうん・・・まあ、今度桜咲もつれて、部屋にきなよ。 こうなりゃヤケだろ。」 1-577 1-577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 16 30 42 ID 6J6nQmAW0 ちう「なあザジ」 ザジ「?」 ちう「・・や、やっぱなんでもないっ」 ザジ「(;_;) ちう・・。秘密嫌・・。」 ちう「泣くなよ! ったく・・。今日、誕生日だろ?だから・・欲しい物とか・・。」 ザジ「(*≧∀≦*)ちう!!」 ちう「っうわっ!抱きつくな!泣くなよ!」 1-594 1-594 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 18 09 03 ID rGL7gWIz0 「あ?・・・・やっぱり降ってきたな」 「・・・・・・・・・・・」 「ん?・・・・今晩も・・・なのか?」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・もう・・・しょうがないやつだなぁ・・」 「・・・・・・・・・・・」 「こっ、こらいきなっ・・んぐっ・・あ」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・脱がないと、制服シワシワになっちまうだろう・・」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 「電気・・・消すぞ」 「・・・・・・・・・・・」 「あっ・・んぁあ・・・」 「・・・・・・・・・・チサメ・・・・スキ・・・・」 「うぁっ・・・・・んふぅっ・・あんっ」 「チサメ・・・・・・チサメ・・・・・」 「ザジっ・・・・あっ・・そこ・・」 「・・・・・・・・・・・ hearts」 「・・・・・解ってるよ・・・ん・・・私も・・・・・ hearts」 1-602 1-602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 18 53 54 ID 3C9BwAAGO ちう「何で私には芸見せてくんないだよ?」 ザジ「(*≧A≦*)」 ちう「ひっとして恥ずかしいのか?」 ザジ「(こくこく)」 ちう「そっか?恥ずかしいならしかたないなあ(にやり)」 次の日 ちう「確かザジが練習してるの、この公園だよな。どこかな??」 ちう「あ!いた!子供らに囲まれまくってるwww」 ザジ「ヾ(・∀・)ノ」 ちう「うわぁ・・・ザジの営業スマイルなんか機械的だけど・・・・・凄くかわいいなり」 ザジ「Σ(・∀・)」 ちう「お、こっち気付いた。お?いザジ?頑張れ?」 ザジ「ヾ(*≧A≦*)ノ」 ちう「うはwww失敗してるwww」 1-603 1-603 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 18 57 58 ID rGL7gWIz0 「ありがとなっ、ち・う・ちゃん heartsまたよろしくぅ?っ♪」 「うっせぇよ・・・ったく」 「・・・・・・・・・・・」 「な、何だよ・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 「ちっ、違うってアイツは・・」 「・・・・・・・・・・・」 「だっ、だから、朝倉には、ちうの事で色々とその・・・」 「・・・・・・・・・・・」 「そっ、そんな目で見んなよ」 「・・・・・・・・・・・」 「なっ、泣くなってば、違うんだからっ!」 「・・・・・・・・・・・」 「解ってるだろ、私が・・・その・・」 「・・・・・・・・・・・」 「そうだよ、私は・・・・」 「・・・・・・・・・・・ hearts」 「まったくもう」 「・・・・・・・・・・・」 「えっ?・・・解ったよ・・・目・・閉じろ」 1-616 1-616 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2005/07/05(火) 20 52 42 ID m8qqhjr10 千雨「今日も雨か……この時期蒸し暑いったらないな。」 千雨「シャワーでも浴びてくるか。」 ザジ「……」 千雨「ふう、すっきりするな……」 ザジ「………♪」 千雨「っておい!なんでお前も入ってきてんだ!」 千雨「おい、ちょ、何を、あ」 ザジ「……洗ってあげる」 千雨「どこ、を…洗って……」 千雨「や……ん……」 ザジ「全部洗ってあげる……」 ザジ「手足の指も、耳の裏も、汗の溜まったおっぱいの下も、大事なところも全部……」 1-620 1-620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/05(火) 21 25 04 ID rGL7gWIz0 「あれ?ザジも風呂まだだったのか?」 「・・・・・・・・・・」 「一緒に行くか?」 「・・・・・・・・・・♪」 「って、何だそのボトル、シャンプーか?」 「・・・・・・・・・・ hearts」 「んぁっ・・ふぁっ・・・こらっ・・そんなとこまで・・あっ」 「・・・・・・・・・・ hearts hearts hearts」 「あっ、ヌルヌルが・・あっ・・ダメっ奥は・・・あっ」 「 hearts hearts hearts hearts hearts hearts hearts hearts hearts」 「ダメっ・・イク・・いっちゃう・・んぁっあっ!!!」 「何処でそんなモン手に入れたんだよ・・・」 「・・・・・・・・・・♪」 「まったく・・・・・・まぁ・・・その・・・・」 「・・・・・マダタップリノコッテル・・・・・・マタシテアゲルカラネ・・チサメ」 「・・・・・・・・うん・・・・ hearts」 1-629 1-629 名前:無能[sage] 投稿日:2005/07/05(火) 21 43 54 ID R5YPami50 ここは中等部の校舎の屋上。晴れた日の昼休みはここで、二人だけの時間を過ごすのが習慣だ。 入り口近くの壁に背を預け、取り出したのは今朝、移動購買部から購入したクリームパンだ。 がさがさとビニールを弄くり、見つけた開け口を引き裂いてパンを取り出す。 この楕円の形のパンは、おうとつが多く見た目の良いものではないな。 少しだけパンの形状を眺めると、かぶりつき、粗食する。 ぱさぱさとしていて食感もよろしくない。 しかし市販の菓子パンなどこんなものだろう。小さな紙パックにストローを突き刺し、牛乳で流し飲む。 「ん?」 ふと、視線に気づいた。 隣を見れば、私に体を摺り寄せ、じっと私の手元を眺めるザジがいる。 よほど集中しているのか、私が見つめていることにすら気づいていない様子だ。 子犬のように私の手、いや、クリームパンを見据えるザジの顔を暫し眺め、問いかけた。 「食いさしで良いなら、交換してやろうか?」 「………」 ゆっくりと顔を上げ、キョトンとする。 が、次に私がクリームパンを差し出すと、ぱっと顔をほころばせ、私に抱きついてきた。 ぐりぐりと私の胸に頭を押し付け、ご満悦といった様子だ。そうされると結構息苦しいのだが、やめて欲しいとは思わない。 私は暫くザジの頭を撫で、そして引き剥がした。 少々名残惜しいが、あまり引っ付いてると午後の授業に出るのがあまりにも辛い。 「ほら」 「………」 1-630 名前:無能[sage] 投稿日:2005/07/05(火) 21 45 02 ID R5YPami50 ――時間がゆっくりと流れる。空を見上げれば抜けるような青空が広がり、静かに流れる白い雲が小さく揺れ、控えめな自己主張を競い合う。 優しい太陽は光で私達を包み込んでくれる。良い天気だ。空を眺め、ただひたすらに呆けていた。 だが、こつりと私の肩に重量が加えられると、すぐに現実へと引き戻される。 「――寝てる?」 見れば、ザジが私の肩に寄りかかり、すやすやと寝息を立てている。 そういえば、動物の世話やら何やらで朝が早いからな。ちょっと夜更かししただけで眠くてたまらないのだろう。 掛けてやる布団が無いため、代わりに頭を撫でてやる。本当に小動物みたいに可愛いやつだ。 思わず寝顔に見入ってしまう。そして注意深く観察すると、僅かだが唇にクリームが付着していることが伺える。 「……だらしないな」 指で拭ってやろうと人差し指を伸ばした。しかし、その指が唇に触れることは無い。 なぜなら私が途中で止めたからだ。それはちょっとした思い付きであり、悪戯に近い感覚だ。 私はゆっくりと身をよじり、ザジの顔をしっかりと両手で捕まえて、自分の顔を近づける。 可愛い寝顔に近づけば近づくほど、鼓動が早足になっていくことが分かる。 それでも勇気を振り絞って、ゆっくりと、ザジの唇を舌でなめてみる。 「………ん」 「っ!」 ぴくりとザジの体が動き、私もそれにつられてびくりと驚いてしまう。 しかしザジは目覚めた様子は無く、単に寝苦しく思っただけのようだ。 どくどくと早鐘のように打ち付ける心音を深呼吸でどうにか宥め、再び、ゆっくりと顔を近づけた。 二回目の挑戦。今度はザジは無反応だ。上唇を二・三度なめ、既にクリームはふき取れている。 1-631 名前:無能[sage] 投稿日:2005/07/05(火) 21 46 40 ID R5YPami50 クリーム、最初に食べたときより甘かったな。何故だろうか? ザジの寝顔を見つめ、簡単に結論を導き出した。きっと、ザジが甘いからだろう。 ………ちょっと位、調子乗ったっていいよな。 ほっぺに添えた手をするすると伸ばし、頭を抱えてキスをした。 「……ん、ふっ」 さすがに息苦しさに目が覚めたか、ザジが苦しそうに濁った声を出す。 しかし私は構わずに舌を唇の中に割りいれた。寝起きで無防備のザジは簡単に私の進入を許した。 状況を飲み込めないのだろう。私だっていきなりキスされれば混乱するぞ。 だが好都合だ。抵抗できないザジの口内を舌で押し揉んでやる。 ザジの口に溢れている唾液は、ほんの少しだけ粘度があって、ほんの少しだけ、甘い。 きっとザジは何でも甘い。汗だって、そして肌だって、私なら甘いと感じるだろう。 頬を高揚させ、戸惑うザジの頭をもっと強く抱きしめ、舌を奥へとねじ込む。 おどおどと戸惑う舌をなぞり、掬い上げ、押し付け、ザジの舌を弄ぶ。 「うん、んっ……ふっ」 くぐもった声を出すザジの頭を撫でながら、しかし口内を蹂躙する。 ――そろそろかな?舌の動きをぱたりと止め、ようやくキスを終わらせた。 二人の間に唾液の糸が垂れる。 「あ………」 「おはようv」 1-632 名前:無能[sage] 投稿日:2005/07/05(火) 21 47 01 ID R5YPami50 名残惜しそうな短い声を出したザジに、耳元で呟いた。 途端にザジが顔を真っ赤にして俯いた。どうしたの?と続けて呟いてみる。 自分でも顔がにやついてるのが解る。ザジの照れる仕草はとても可愛らしい。 「続きは部屋に帰ってから、な」 「………」 多少赤く色づいていた肌が一気に紅に染まる。 そんな可愛いザジの頭をくしゃくしゃと撫でてやり、空を仰いだ。 ――ゆっくりと時間が流れる。 うらうらと降り注ぐ陽光は心地よく、私達を柔らかく包み込む。 ザジの頭を撫でながら、思った。明日も晴れると良いな。 1-678 1-678 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/06(水) 00 01 54 ID QYVptvy00 冷却ファンとタイピングの音が、薄暗い部屋の中に響いている。 栗毛の美少女の顔が、モニターの青白い灯りに照らされ浮かび上がっていた。 打ち込まれて行くハイテンションなコメントとは裏腹に、その少女の表情は冴えなかった。 カラカラカラ・・・ 不意にサッシ戸を閉める音が少女の耳に届く。 「あ・・・また降ってきたのか・・・・ありがとな。」 カーテンを閉める褐色の美少女の背中に声を掛ける。 振り向いたその少女は、穏やかな笑顔を見せこくりと頷く。 栗毛の美少女の名は「長谷川 千雨」 褐色の美少女の名は「Zazie Rainyday」 共にその名に、雨を頂いていた。 1-679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/06(水) 00 02 34 ID QYVptvy00 「今日はここまでにしとくか・・・・」 千雨はそう呟くと、その物憂げな言葉とは裏腹なハイテンションなコメントで ネットの向こう側の男達に別れを告げる。 そして、電源を落とし、溜息を漏らした千雨の首に、ザジの腕が絡み付く。 「まったく、雨の日になると・・・」 そう言って振り返った千雨の唇を、ザジが自らの唇を重ね、次の言葉を止める。 ザジは軽く重ねられた唇を離すと、千雨にしか見せない無邪気な笑顔を向ける。 「はいはい、解ったよ・・」 その微笑みに千雨も笑顔で答える。 二人共、他人の前では感情を表さないが、二人きりの時だけは違っていた。 1-680 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/06(水) 00 03 15 ID QYVptvy00 「シャワー・・・浴びるか?」 自分を見つめるザジの瞳が潤んできた事を悟った千雨は、照れながらそう告げる。 ザジはこくりと頷くと、その華奢な体に似つかわしくない力で千雨の体をふわりと浮かび上がらせる。 そして、千雨の手を取り歩き始めたザジだったが、ふと足を止めて振り替える。 「ん?・・・どうした?」 立ち止まったザジに戸惑いの声を掛ける千雨。しかしザジは問い掛けに答える代わりに 千雨の服のボタンに手を掛ける。 「ちょっ・・ここで?」 戸惑いの声を、ザジはその潤んだ瞳で制し、千雨を脱がせてゆく。 ザジは、一糸纏わぬ姿となった千雨の手を取ると、自分の服を脱がせる様に促してゆく。 1-689 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/06(水) 00 42 35 ID QYVptvy00 千雨の指先がザジの柔肌を滑り、服を剥ぎ取ってゆく。 そして生まれたままの姿となった二人は、静かに唇を重ね合う。 「シャワー・・・後にするのか?・・・」 そのの言葉に、ザジは頷くと千雨の乳房に舌先を這わせる。 「あんっ・・・そんな・・いきなり・・あっ」 ザジの不意打ちに、千雨はその場に崩れ落ちる。 「んぁっ・・・あ・・ふぁ・・・」 甘い吐息を漏らす千雨の裸身を、ザジの舌先が優しく丹念に這い回る。 そして、その舌先の動きと同調させて指先も柔肌の上を踊り始めていった。 前ページ次ページSSまとめ
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日向坂で会いましょう #131 6thシングルヒットキャンペーン 「ってか」全員で巨大イラストを描きあげましょう! 高瀬は嘘がつけない。 6thシングル「ってか」のヒットキャンペーンで、日向坂46全員で富士急ハイランドのコーヒーカップに飾るイラストを制作した。 加藤、佐々木久美、高瀬の三人は13~14枚目の「ってか」ゾーンのイラストを担当。右端にシナモロールの頭のような形を模した雲を発見、加藤は高瀬の胸倉をつかみ「なんでシナモロール描いてんの!?」と激怒。高瀬も加藤の胸倉をつかみつつ自身のキャラクター「マナモロールだよ」と言い訳するが、次第に「描いたらって言ったじゃん、描いたらって言ったじゃん」とオフレコな内容を叫び始めるお茶目な一面を魅せた。 加藤と佐々久が事前インタビューで「高瀬がシナモロールを唐突に描き始めないか不安」と答えていたが、ヤラセ疑惑が浮上する事態となった。
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前ページ次ページSSまとめ 26-520 26-520 名前:Dr.アコー診療所2nd・1[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 07 40 45 ID ??? Dr.アコー診療所2nd・1 1/5 麻帆良学園中等部の保健室。そこにはちょっと性癖に難のあるドクターがいました。 「うららかな土曜の昼下がり……。えーカンジでヒマやな〜」 亜子先生はまったりくつろぎながら呟きます。もっとも、その両手は忙しなく動いてますが。 「遠くに聞こえる運動部の声。近くで聞こえるゆーなの声。やっぱ保健室は落ち付くわ〜」 「やぁん! よそ見しないでよ…んっ……はあっ、はあっ、…ああっ!」 裕奈はすっかり息も絶え絶えのようですが、押し寄せるたゆんの波を懸命に堪えながら抗議します。 「えへへ。ちゃんと見とるよー? ゆーなはホンマかわええな〜」 亜子先生は裕奈の生乳をたゆたゆしながら、その上気した頬に軽くキスをします。 「もう……、今度はあたしの番だからねっ!」 もう限界、といわんばかりに裕奈は亜子先生をベッドに押し倒しました。そして、慎重に亜子先生の ナース服を脱がせます。すると亜子先生は、 「しょっぱなからえっちな展開でゴメンな〜?」 と笑顔で手を振りました。 「亜子、誰に言ってんの?」 「朝倉や」 ぴしっ。 裕奈の動きが止まります。そして、カタカタカタ…とからくり人形のように振り返りました。そこには、 「いや〜、思わぬお宝映像ゲットだわ」 入口でデジカメを構えていた朝倉さんがひらひらと手を振っていました。 「こらあぁぁぁっ!! 勝手に覗くなあっ!!」 裕奈は慌てて亜子先生にシーツを掛け、真っ赤になりながら叫びました。と、普段の朝倉さんならここで すたこらさっさと逃げるところです。しかし、朝倉さんは堂々と歩み寄って来ました。 「いや〜、只の取材だったのにサービス満点だね〜、亜子先生」 「……はい?」 裕奈の目が点になります。朝倉さんは取材と言っていました。取材を許可するのは他ならぬ亜子先生です。 つまり、彼女が来る事を亜子先生は知ってたのですね。 26-521 名前:Dr.アコー診療所2nd・1[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 07 41 36 ID ??? 2/5 「えへへ。後でその動画見せてな〜。ゆーなのかわええ顔ばっちり映っとるとええんやけど」 「明日の麻帆スポの見出しはコレで決まりだね! タイトルは『真昼の情事!保健室に響く甘い声!?』かな?」 「やーめーてぇぇぇっ……!!」 嬌声の代わりに、裕奈の絶叫が保健室に響き渡りました――― 「なはは。冗談だって。こんなの記事にしたら亜子先生と私の首も飛ぶっての」 「コレはウチのプライベート用やって」 亜子先生は朝倉さんから受け取ったメモリーカードを裕奈に見せつけます。 「はい没収〜」 裕奈は素早く亜子先生の手からメモカをスティールしました。 「ああっ!? ウチのゆーなが! たゆんたゆんが〜っ!!」 「はいはい。アンタのゆーなさんはここにいるし、たゆんたゆんならそこにもあるでしょ?」 裕奈はにやりと笑いながら朝倉さんを指差しました。先程の報復ですね。 「げっ……!」 朝倉さんが声を上げたのと、亜子先生が手を伸ばしたのは同時でした。 「たゆんたゆんやぁ〜〜〜っ!!」 たゆんたゆんたゆんたゆんたゆんたゆんたゆんたゆん…… 裕奈のお許しが出たのをいいことに、亜子先生は朝倉さんのきょぬーを存分にたゆんたゆんしました。 「たゆんたゆん……。楽しそうですね……」 ぽつり、と誰かが呟きました。朝倉さんの表情がみるみる蒼褪めてしまいます。 「やだっ…あ、亜子先生やめっ…ああっ! さ、さよちゃん見ないでぇ……!」 「たゆんたゆんたゆん…たゆ? さよちゃん?」 ぴたり、と亜子先生は手を休めます。そして、朝倉さんの左肩に浮かび上がる少女を視ました。 「ふーん……。この子がウワサのさよちゃんやね」 「えっ……! さよちゃんが見えるの!?」 朝倉さんは素直に驚いています。 「亜子はまあ……、心の中に鬼を飼ってるからね……」 裕奈は呆れながら説明しました。長い付き合いのせいか、この程度でいちいち驚かなくなったようです。 26-522 名前:Dr.アコー診療所2nd・1[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 07 42 30 ID ??? 3/5 「さよちゃんもたゆんたゆんに興味あるん?」 亜子先生はにっこり微笑みながら尋ねました。 「はい……。あ、いや私の場合、朝倉さんに触ることさえ出来ませんから……」 相坂さんはしょんぼりしながら答えました。 「私もさよちゃんと触れ合いたいけどね……」 朝倉さんも淋しそうに呟きます。二人のただならぬ関係を理解したのでしょうか。亜子先生は腕組みして うんうん唸ってます。ただ一人、裕奈だけは状況を把握してません。 「むーっ。あたしには見えないし、声もサッパリ聞こえないから分かんないや」 「ゆーなは前にとり憑かれとるやん」 と、ツッコミを入れたのと同時に、亜子先生は名案を思い付きました。 「せや! ちょう待っててな。―――ゆーな、こっちおいで〜」 亜子先生は裕奈の手を取り、ベッドへ連れ込みます。そして、カーテンを閉めました。 「ちょっ、亜子何を…ひゃっ! そ、そんなに激しく…ひぃん! あっ、ふあっ、あああっ!!」 カーテン越しに裕奈の嬌声と、たゆたゆたゆたゆたゆという音色が響きます。しばらくして、亜子先生は カーテンを開け放ちました。気のせいでしょうか、亜子先生は実に充実した表情をしています。そしてベッドには ぴくぴくと悶死した裕奈が横たわっていました。 「さよちゃん、今やったらゆーなの身体に入れるで!」 「ええっ!? そ、そんな、明石さんに悪いですから……」 遠慮している相坂さんに、亜子先生は小悪魔の囁きで答えます。 「えへへ。ホンマは触りたいんやろ? 朝倉のきょぬーに……! さよちゃんが遠慮するんなら、ウチが代わりに たゆんたゆんするで?」 「ちょ、亜子先生待って……!」 「まーまー、さよちゃんの為に人肌脱いだってもえーやん」 朝倉さんは慌てて逃げようとしましたが、亜子先生は恐るべき速さで朝倉さんのバックを取り、羽交い締めに します。そして、相坂さんはごくり、と息を飲み、裕奈の身体に入り込みました。 「朝倉さん……!」 目を回したままの裕奈(inさよ)がゆらーりと朝倉さんの前に立ちました。 26-524 名前:Dr.アコー診療所2nd・1[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 07 48 40 ID ??? 4/5 「ちょ、ゆーな、じゃなかったさよちゃんやめっ……」 「朝倉さん……、私……、ずっと前から……」 相坂さんは目を潤ませながら、朝倉さんのきょぬーに手を添えます。そして、 「たゆんたゆんたゆんたゆん……」 恥ずかしそうにたゆんたゆんを始めました。その動きはぎこちないのですが、愛情のこもったたゆんたゆんです。 「んっ……! さ、さよちゃん……、いいよ…ふあっ……、んんっ……!」 「朝倉さん! 朝倉さん!」 「うんうん。さよちゃんはなかなかスジがええな〜」 相坂さんは歓喜に満ちた表情でたゆんたゆんしています。その光景を亜子先生は満足げに見届けていました。 「しかも見た目はゆーなが恥じらいのある表情でたゆたゆしとるカンジやし……。ウチも眼福やで〜」 次第に朝倉さんの息遣いが激しくなり、クライマックスを迎えました――― 「はあっ、はあっ……。さ、さよちゃん……、今度は私が……」 すっかり興奮した朝倉さんは、ゆっくりと唇を近付けました。しかし……、 「はい、そこまで〜」 突然、裕奈が正気に戻り、朝倉の唇を手で塞いだのです。 「す、すみません! 明石さんが起きたようなので……」 相坂さんは既に裕奈の身体から弾き飛ばされていたのでした。何やら朝倉さんにぺこぺこと謝っています。 「……ったく、あたしの唇は亜子のモノだっての」 裕奈はそうつぶやきながら、相坂さんの方に目をやりました。とり憑かれた直後のせいか、どうやら裕奈にも 相坂さんが視えるようですね。 「ま、さよちゃんにあんだけ謝られたら、あたしも怒る気が失せたわ」 相坂さんは裕奈の身体を借りている間、ずっと心の中で裕奈に詫びていたのです。実のところ、裕奈は早々に 意識を取り戻していたのですが、けなげな相坂さんにそのまま主導権を渡してあげてたのでした。 「あはは。まあ、貴重な体験が出来たやろ?」 「は、はい……」 亜子先生の問いに、相坂さんはほんのり頬を染めながら、小さく頷きました。 26-525 名前:Dr.アコー診療所2nd・1[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 07 49 24 ID ??? 5/5 こうして、相坂さんのたゆん体験は終わりました。しかし、どうにも収まりがつかない人がいました。 「さよちゃん! こーなったら今から気絶してる人を探すよっ!」 朝倉さんはやる気まんまんといった様子で保健室を飛び出してしまいました。 「あっ、朝倉さん待ってください。―――あの、ありがとうございました!」 相坂さんは亜子先生と裕奈にぺこりと一礼して、朝倉さんの後を追っていきました。 「あはは。また遊びに来てな〜」 亜子先生はひらひらと手を振りながら見送りました。 「―――さーて、ここからはあたしの番だよね……!」 裕奈は不敵な笑みを浮かべながら、保健室の鍵を閉めました。亜子先生は怯むどころか、期待感に胸を 膨らませています。そして、二人はゆっくりとベッドに倒れ込みました。 「えへへ。いーっぱい可愛がってな、ゆーな……」 「うふふ。たっぷりとお返ししちゃうからね……!」 こうして、亜子先生の周りには今日も愛とたゆんが満ち溢れていました――― 和美「さーて、このかに話付けとかないとね♪」 さよ「い、いいんですか朝倉さん」 和美「あの人なら一番手っ取り早いからね〜」 翌朝。すっかりぼろぼろになった桜咲さんが発見されたそうです。 刹那「汚れちゃった……」 (つづく) 26-537 26-537 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 14 11 05 ID ??? ちょっと早い春をお届け 双子 春 春。暖かくていいお天気。今日は絶好の散歩日和です。 風香「クスクス、ようやくボクらの季節がきたね」 史伽「冬の間にこっそり特訓した成果をみせてやるですよ〜」 冬眠(?)から目覚めてやる気を見せる双子、ここにあり。 早速お散歩をはじめたようです。 てくてくと、麻帆良の街を仲良くおしゃべりをしながら歩きます。 風香「あ、ザジさんだ!ニシシ、史伽、行くよ」 史伽「りょーかいですっ」 世界樹近くのベンチにクラスメイトのザジさんが座っていたもよう。 うれしそうになにやら袋から取り出し、ザジさんの背後にまわります。 風香「クスクス、きっとびっくりするよ〜」 ビロロローーーーーーン 風香が史伽を肩車して、史伽がザジの上からおもちゃの毛虫を垂らします。 (どうやら特訓とは肩車のことだったようです・・・) しかし、肝心の毛虫がいつの間にか見当たりません。 史伽「あれ・・・?」 双子がキョロキョロしていると、ザジさんの頭から1羽の鳥が現れました。 ザジ「食べちゃダメ…」 完 26-539 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 14 22 32 ID ??? 537を勝手に補完しかし、肝心のおもちゃの毛虫がいつの間にか見当たりません。史伽「あれ?」双子がキョロキョロしていると、史伽「あ、あったです」 ぐにょ史伽「ぐにょ?」確かおもちゃの毛虫はもうちょっとビニールな感じが…史伽「い、いやああああ!!?」史伽がつかんだのは、本物の毛虫さんでした。風香「これだから逆ドッキリはやめらないよね」ザジ「………」 26-542 26-542 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 17 12 15 ID ??? ―――「なんでネギが・・・?」――― 次々におきる事件 ―――「被害者にはなにか共通点があるはずよ!」――― 被害者の尻にはネギ ―――「監視カメラに映像が残ってたネ・・・」『ほんま ――― ザザ―――ねぇは ―― ザザ―― ばさん ―― ザザ―― ギャーーーー!!!!』――― 言ってはいけない言葉 ―――「犯人が魔物という可能性も・・・」「ここ数日結界内に侵入したものはいない・・・犯人は学園内のものだ」――― 深まる謎 ―――「・・・私がいきます・・・」 「茶々丸ーーー!!」――― そして・・・ 「ちづ姉おねがい!!もう・・・もうやめて!!」 「夏美・・・」 ついに映画化 『 千 鶴 』 この春まほらは恐怖につつまれる・・・ 前売券はお近くの購買部でお求めください 26-549 26-549 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 19 30 08 ID ??? ザジ「♪〜」カタカタ・・カチッ ふいんき(←何故か変換できない) ( ゚Д゚)? そのとうり(←なぜか変換できない) ( ゚Д゚)? がいしゅつ(←なぜか変換できない) ( ゚Д゚)? しゅずつ(←なぜか変換できない) ( ゚Д゚)? せんたっき(←なぜか変換できる) (゚Д゚) ザジ「♪〜」ペラ 「わが国の領土であるが・・・・」 ほっぽうりょうど(←なぜか返還されない) ( ゚Д゚)? 「憲法9条での・・・・・」 自衛隊(←なぜか派遣できない) ( ゚Д゚)? 千雨「ん?それ、今日の新聞か?」 ザジ「・・・・。」 見つめあうと(←素直におしゃべりできない) (*/∇\*) 26-550 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 19 30 38 ID ??? このか「せっちゃんなんて嫌いや〜!わ〜ん」 刹那「おおおおおおお嬢様あぁぁぁぁ」 千雨(修羅場だな。) ザジ「ち〜う」ベタベタ 千雨「うわ馬鹿、今は!」 このか「じ〜」 千雨(あっちゃ〜) 刹那「おじょう」 このか「せっちゃんのバカー!火よ灯れ!」 刹那「さまああちちちくぁwせdrftgyふじこlp;@:!」 真名「刹那!」 のどか「刹那さん!」 このか「貴様ラモ燃エテシマエ」 真名&のどか「熱くぁwせdrftgyふじこlp;@:!」 明日菜「誰か!水!水もってこい!」 あやか「水ナシ!」 ザジΣ(゚Д゚;≡;゚д゚) 空気(←なぜか読めない) #x0028; #x0028; #x0028;;゚Д゚)) ネギ「ここで使うのは誤用ですね。」 確信犯(←なぜか誤用だと言われる) ( ゚Д゚)? 千雨「なに、日本の歌を覚えたから聴いてくれ?ああ、いいぜ。」 ザジ「♪誰かRomantic 止めてRomantic」 Romantic(←止まらない) (*ノ▽ノ) 千雨「さっきから歌ってたのはそれか。」 26-558 26-558 名前:明日菜 唇 15[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 00 24 32 ID ??? 明日菜 唇 15 真名 「明日菜・・最近クラスメートの唇を奪って回っているというのは本当か?」 メールでのお呼び出し、校舎裏ってありきたりだな 明日菜 「うん。キスしたかったからしてるんだけど・・」 真名 「で、どうして私のところには来ないのだ?」 まったく・・真名こそクラスメートを喰っているくせに・・ 明日菜 「クリスマスのこと、忘れたの?何度もキスしたでしょ、だからしないの」 真名 「なぬっ!!何度でもキスしてやるからかかってこい!!」 明日菜 「・・やだ」 こういう場合、押すより引いた方がいいのよね 真名 「むうう・・ならば強引に!!!」 明日菜 「あ!!アキラ!!」 キスをしようと迫ってくる真名がずっこけそうになった 真名 「わ!!こ、これはな、誤解なんだ!!あれ?」 真名が振り向いてきょろきょろしているが、そこにはアキラはいない。やっぱりアキラの方がいいのか 真名 「どこにもいないじゃないか!!酷い、むうう!!」 半泣きで私を責めようとする真名の唇を塞ぐ。ああん、もうちょっと首を下げてよ、やりにくいじゃない まったく、気が向けばそのうちにキスしてあげるのに・・せっかちだよ 暫くして唇を離す。私は自分の唇を舌で舐めてみた 明日菜 「あんまり味がわかんないな。真名の味、慣れちゃったからかな?」 真名 「明日菜・・そんなにいじめないでくれ」 ・・・自分の胸に手を当てて考えてみなさい。誰でもいじめたくなるわよ 完 26-563 26-563 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 01 01 58 ID ??? 三姉妹 1/2 放課後の麻帆良カフェ。美味しそうにスイーツを口にしている史伽の姿があった。 「史伽ー。一人で何しとるん?」 「珍しいね。今日は一人なの?」 声を掛けたのは亜子と円である。二人を見るなり、史伽はご機嫌な様子で答えた。 「お姉ちゃんと待ち合わせなんですー。お二人ともご一緒にどうですか?」 史伽のお誘いに、二人は穏やかな笑顔で頷く。 「ええよ。ウチもちょい小腹がすいとったトコやし……」 「目の前で美味しそうに食べられたらさ、こっちも欲しくなっちゃうよね」 こうして亜子と円が史伽と同じテーブルにつく。三人は和やかなムードで会食を楽しんだ。 「えへへ。この『木苺のミルクレープ』は絶品ですよー。―――はい、亜子お姉ちゃん」 史伽はくすくす笑いながら自分のスイーツを差し出す。イタズラ好きといっても史伽のは姉とは違い、 この手のかわいいイタズラである。しかし、亜子には効果充分であった。 「ちょ、史伽恥ずいって……!」 亜子はしきりに照れながらわたわたしている。そんな亜子に、円はにやにや笑いながら追い討ちを掛けた。 「ほら、観念してあーんしなよ、亜子お姉ちゃん?」 「し、しゃあないなあ……」 亜子がそっとお口を開けると、史伽は嬉しそうにスイーツを放り込んだ。程好い酸味と甘味が口の中に広がって、 文句無しに美味い。 「えへへ。美味しかったですか?」 史伽は目をきらきらさせながら感想を求めてくる。これでは亜子にスルー出来る筈もなかった。 「うん! さすがは史伽やな〜。スイーツに関してはホンマ詳しいもんなあ……」 「ふふ……。亜子ってば顔が赤いよ?」 と、円が冷やかすのもここまでだった。史伽の鉾先は円にも向けられていたのだ。 「こちらのラムレーズンも美味しいですよ〜。はい、くぎみん」 「くぎみんゆーな、っつーの」 いつものツッコミを入れながら、円は史伽のアイスを口にする。 26-564 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 01 04 48 ID ??? 2/2 「うんうん。確かに美味しい。んじゃお返しに……」 円は自分のティラミスを史伽に差し出す。史伽は嬉しそうに円のお礼をぱくり、と咥えた。 「美味しいです〜。ありがとうございますです〜」 (うっ、史伽もなかなかカワイイじゃない) そう言って史伽が笑うと、円は少しどきりとしてしまう。そして、円の反応を亜子は見逃さなかった。 「おお〜。やっぱ円お姉ちゃんはオトナやな〜。全然動じてへんやん」 亜子は先程のお返しとばかりに茶々を入れてくる。そして、史伽もすかさず乗ってきた。 「オトナの魅力ですー。そうなりますと、円お姉ちゃんが長女で、亜子お姉ちゃんが次女ですね」 亜子と史伽がにこにこしながら円に顔を近付けると、円は口元を押えながらくらくらしていた。 (うあ……、カ、カワイイ妹が二人も……、こ、こんなの反則だって……!) 円は全身を駆け巡る妄想汁に侵食されながら、必死で理性を保とうとしていた。もし、円が真名だったら(ry そんな円に、二人の妹は追い討ちを掛けてきた。まるで実の姉妹のように、ぴったりと息を合わせて。 『円お姉ちゃん!』 二人同時に立ち上がり、亜子が右手を、史伽が左手を取り、円にしがみついたのだった。これには円も危うく cv 若本規夫になりかけてしまう。無邪気に甘えてくる妹二人。お世話好きな次女と素直で快活な三女。この二人に 挟まれた円には、最早長女という選択肢しか残されていなかった。 「あはは……。もういいや。今日はお姉ちゃんのオゴリだ〜っ!」 甘えんぼさんな妹二人に、円はそう答えるのがやっとであった……。 「な、なんか近寄りがたい雰囲気だ……」 その光景を風香は遠巻きに見つめていた。 「なら、風香は拙者とお散歩でもするでござるよ」 「そだね……。じゃあ行こっ、かえで姉!」 実の姉は、妹の幸せを邪魔しないように、楓と共にその場を後にするのだった――― (おしまい) 『姉妹のように?』はどう見てもこのSSの布石です。本当にありがとうございました。 26-582 26-582 名前:明日菜 唇狂想曲[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 18 08 08 ID ??? 注意 これはパル同人です なお、書いたのはパル同人と明日菜唇の中の人です あと、ごめんなさい 明日菜 唇狂想曲 1/2 私がみんなにキスをするのは・・したいから 特にウチのクラスって可愛いのが多いのよね でも、みんなLikeなんだ。Loveじゃないの 私がLoveなのは・・ただ一人、高畑先生だけ・・だと思ってた 私の好みは渋いオジサマ、青いガキんちょは大嫌い まあ、ネギは頑張ってるから必要以上には嫌わないようにするけど・・ とにかくオジサマが好き 何で今まで気がつかなかったのかな? どうしてこんなにも渋くてかっこいいオジサマが近くにいたのに・・ 私のバカ きりりとした眼鏡、ピンと背筋が伸びて隙がない、なんと言っても圧倒的な存在感と行動力 こんなオジサマ、なかなかいないわよ 今までの私の・・バカ だから思い切ってキスしてみよう 相手は私のことなんて思っていないだろうから振られてもいい キス出来れば・・もしかしたらそれがきっかけになる 26-583 名前:明日菜 唇狂想曲[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 18 08 57 ID ??? 2/2 明日菜 「あの・・」 あの人が振り向いた。ああ、そのダンディズムな振り向く仕草は熟年のなせる技なんですね 新田 「むぅ、神楽坂ぁ君ではないかぁ。この私にぃ何かぁ用かね?」(cv若本規夫) 少し白みがかったオールバック、奥底が見えないその深い瞳、全裸なのは別にどうでもいいこと ああ、私の脳内フィルターを通したら声まで違って聞こえるみたい 明日菜 「先生・・」 私はうっとりしながら新田先生の首に手を回して抱きついてみた 新田 「おいおい、どうしたのかね?今更ながら私の魅力に気がついたのかな?」 明日菜 「んっ・・」 これ以上言葉はいらない。ただ唇を重ねれば思いは伝わるだろう 新田 「・・・」 先生は黙って私を優しく抱き寄せてくれた。やはりこれが大人の包容力、子供にはまねできないな 暫くして唇を離す。私は自分の唇を舌で舐めてみた 明日菜 「大人の味・・コーヒー飲みました?」 新田 「私のこと理解したようだね、いいだろう!!私のすべて、君に見せようではないか!!」 ハルナ 「明日菜・・最近どうかしてるよ・・」 今日はロビーにて創作系同人誌を作っていた この前は何もされなかった。アキラに冷たい視線を浴びせられた龍宮さんが撃沈したからだ ハルナ 「もう誰でもいいって感じ?まだ男の人には手を出していないみたいだけど時間の問題よね」 キス、それは愛の行為、友愛の印、そして服従の誓い・・ 明日菜 「新田、やっちゃってよ」 新田 「オーケイ!!オーケイィィ!!お客人、珍奇なる世界へようこそ!!私が案内人の新田であるぞ!!」 完 26-589 26-589 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 21 12 35 ID ??? あ、またきてくれたんや。 久しぶりやん、4ヶ月ぶりかな? そうそう、和泉亜子やで、覚えててくれたんや、嬉しいなぁ〜 前と同じコース? ほな準備しよか まずは縛って… えっ? きつい? んー、でも、きつぅないとアカンからなぁ ほらほら、太いのが浮いてきたで、そしたら、拭いて綺麗にしよか ん? 気持ちええ? でも、ちょっとドキドキしてきたんちゃう? じゃあ、いよいよやな… ふふふ、この時が一番緊張するわ …え? 俺のほうが緊張する? それもそうやな。 あはは ・・・ ・・ ・ 一杯出てるわ〜 まだまだ出せる? アカンアカン、今日はここまでやで また来てくれる? ホンマに? ウチまっとるよ 400ml献血のご協力をお願いします 26-594 26-594 名前:楓 守人5[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 21 35 40 ID ??? 楓 守人5 教会の屋根の上、見れば誰かが寝ているでござる しかし・・今にも落ちそうなのは困ったものでござる 屋根の端から片手をぶらーんと垂れ下げ、あれではあと一回寝返りを打ったら・・おお!!! ごろん・・ 全く期待を裏切らないいたずらシスターでござるな・・・ 脳天から落下したでござる。しかし見ればまだ寝ているでござる。たいしたものでござる ビュゥゥゥ!!! 拙者は一陣の風となりシスター殿の危機をお救いする 落下する身体を抱きしめて綺麗に着地 地べたに寝かすのはかわいそうだったので、あたりに干してあったシーツで寝床を作りそこに寝かす。この間わずか0.1秒 楓 「ふう・・まったく、何を考えているのでござろうか・・」 まあ、何事もなかったので良かったでござるが・・ 楓 「風邪を引かないようにするでござるよ・・」 そう言い残して拙者は立ち去ったでござる 楓 「今日も平和でござるな・・」 シャークティ 「何をしているのです!!せっかく干したシーツが!!起きなさい!!!」 ・・・・はて? 完 26-596 26-596 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/11(土) 21 56 39 ID ??? シャークティー「いいですか、今から浄化の呪文を教えます。 これは悪しきモノを遠ざけたり、浄化できます」 美空「はぁ…」 シャークティー「その他に、場の空気が良くなり、気分を爽やかにする効果もあります。 では…」 美空「って、教えてもらってんだから、試しに教室の空気でも浄化してみますかね」 美空「―――ムニャムニャ ニ●ラム!」 ネギ「あれ? ハルナさんがいないようですけど?」 亜子「さっき、急に気分が悪いゆうて、保健室に行きました」 美空「…まさかね…」 前ページ次ページSSまとめ