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サブ・ゼロの使い魔 第二章 傅く者と裏切る者 ――また、あの夢だった。古びた部屋にいる、誰かになった自分の夢。 だが、今回はいつもと違った。ルイズがその夢を知覚したと同時に、全ての霧はざあっという音と共に消え去り――そしてその瞬間、ルイズは部屋にいる男達のことをまるで遥か昔から知っているように理解していた。 後ろのソファに座って仲良く話している二人・・・ソルベとジェラート。 椅子に座ってテーブルの上の変な物体を叩いている男・・・メローネ。 椅子の背に手を置いて彼の肩越しにそれを覗き込んでいるのは、イルーゾォ。 立ったまま壁に背を預けて本を読んでいるリゾットは、たまにこちらを見てはやれやれといった顔をしている。 そして先ほどから二人して自分に怒鳴り続けているのはホルマジオとプロシュート。 二人がかりの説教を喰らっている自分は・・・そう、ギアッチョだった。 「ギアッチョッ!何度言ったら分かるんだてめーッ!!」 プロシュートが上半身を乗り出して怒鳴っている。 「しょーがねーなぁぁぁ これで何冊目だっつーんだよギアッチョさんよォォ」 右手に持った本だったものの残骸をバンバンと叩きながらホルマジオもプロシュートに加勢するが、当のギアッチョはどこ吹く風で受け流す。 ・・・というか全く聞いていない。 「何で3ページで打ち切りになるんだよォォォ~~~ッ!! ナメてんのかオレをッ!!クソッ!クソッ!!まそっぷって何だ!バカにしやがって!!」 イルーゾォが呆れた顔でプロシュート達を見る。 「だから言ったじゃあないか・・・ギアッチョにだけは物を貸すなってよォー」 「そのくらい諦めるんだな オレなんてパソコンを破壊されてるんだぜ」 同じく顔を上げたメローネはそう言って首を振った。ソルベとジェラートはそんな彼らをニヤニヤ笑いながら眺めている。 「外野は黙ってろッ!今日という今日は許さねぇぜギアッチョ!」 「仲間に対する敬意ってもんが足りねーんじゃあねーか?オイ」 プロシュート達の怒りは全く収まらないようだった。 「やれやれ・・・ お前達・・・その辺にしておけ そんなことをいくら言おうがギアッチョには通じないことぐらい知っているだろう」 パタンと本を閉じて、リゾットがリーダーらしく彼らを制止する。 プロシュートとホルマジオは「甘いぜリゾット」という視線を彼に向けるが、リゾットが続けて「ギアッチョ、お前は弁償しておけ」と言ったのを聞いてとりあえずその場は収めることにした。ギアッチョはその言葉に不満げな表情で財布を出し―― ――場面が飛んだ。 ギアッチョの前には古びた扉がある。決まったリズムでそれを叩くと、少ししてから軋んだ音を立てて扉が開いた。 「仕事は終わったぜ、リゾット」 扉を開けたリゾットにそう報告して、ギアッチョは中に入る。 彼に続いてメローネが入ってきたのを確認して、リゾットは彼らにねぎらいの言葉をかけた。 「・・・ま、今回もくだらねー仕事だったがよォォ どうせやるならもう少し面白みのあるやつを回してもらいてぇもんだ」 とギアッチョが言えば、 「簡単なのに越したことはないさ・・・ こんなはした金で命を捨てたくはないからな」 タッグを組んでいたメローネがそう答える。ギアッチョはフンと鼻を鳴らすとどっかりと椅子に腰を落とした。 と、ウヒャヒャヒャヒャという聞き慣れた笑い声が場に響き、ギアッチョ達は声を発した男に目を向ける。 ホルマジオはイルーゾォと机を挟んで向かい合っていた。 二人の横にはプロシュートが陣取り、奥のソファには相変わらずソルベとジェラートが座っている。 そして彼ら全員の視線が集まっているのは、テーブルの上にあるチェス盤だった。 ホルマジオは盤からイルーゾォに視線を移して言い放つ。 「チェックメイトだ オレの勝ちだぜイルーゾォ!」 「バ・・・バカな・・・ただのポーンなんかにィィィ!」 イルーゾォが信じられないという顔で叫ぶ。 「クハハハハハハッ!分かってねェーなァァ チェスって奴をよォォー! 駒の強さなんてもんは所詮ここの使い方一つだぜェェ~」 ホルマジオは人差し指で自分の頭をトントンと叩きながら言った。 「クッ・・・クソッ!再戦だ!もう一度やらせろ!」 「ダメだね ほら!とっとと賭け金をよこしなよイルーゾォよォ~!」 イルーゾォの願いをホルマジオはあっさり跳ね除けた。イルーゾォはしばらくの間「再戦の拒否は許可しないィィィー!」等と叫んでいたが、結局彼のスタンド、リトル・フィートにガッシリ押さえ込まれて財布から二割増しで金を抜き取られていた。 「やれやれ どきなイルーゾォ オレが仇をとってやるよ・・・なぁに、ボードゲームは得意なんだぜ」 メローネが自信たっぷりに椅子に座り、 速攻で敗北した。 部屋の隅で頭を抱えているメローネを尻目にギアッチョが挑み、敗北。プロシュートが挑み、敗北。ソルベが挑みジェラートが挑み・・・ 敗北。敗北。敗北。 「てめーイカサマやってんじゃねーだろーなァァーー!!」 「何逆ギレしてんだオイ!しょぉぉがねーなァァアァ!」 度重なる敗北についにギアッチョがブチ切れた。 その瞬間、今がチャンスとばかりにプロシュートがホルマジオを蹴っ飛ばし、そのスキにソルベとジェラートが彼に飛び掛り、イルーゾォが一瞬でその財布を奪い取り、メローネが皆の取り分を計算して分配した。 「ちょっ・・・何やってんだてめーらァァァ!!」 「うるせェェェ!勝負になるかボケッ!!」 七人はギャーギャーと騒ぎ続け、リゾットはそれをいつものことだというような眼で見つめていた。 そしてもう一人、ギアッチョの眼を通してルイズもまた彼らを見つめている。 喧嘩ばかりしているが、ルイズの眼には彼らはとても楽しそうに見えた。 常に四面楚歌で命のやり取りをしているからこそ、きっと彼らは死よりも強い絆で結ばれているのだろう。 バカ騒ぎを続ける彼らを、ルイズの心は羨ましそうに見つめていた。 そうしてルイズの夢はいくつもの場面を映し出す。しかしその内容は、徐々に不穏の色を帯びて来た。 場面が過ぎる度に、自分達の理不尽な待遇に、彼らのボスに対する不満は高まって行くのだった。 そして幾度目かの場面転換の後――ついにそれは起こった。 ドンドンドンドンドンドンッ!!! アジトの扉が猛烈に叩かれる。中で待機をしていたギアッチョとメローネ、そしてリゾットとプロシュートは一斉にスタンドを発現させた。 「おいッ!!開けろ・・・!!大変なんだよ!!ジェラートが殺されたッ!!」 「リゾットッ!!オレだ、ホルマジオだッ!!早くここを開けろォォォ!!」 決められたノックをしないことにリゾット達は不審を抱いていたが、その声はどう聞いてもイルーゾォとホルマジオだ。そして彼らが口にした言葉は、彼らにとってこれ以上なく衝撃的なものだった。 プロシュートのザ・グレイトフル・デッドを使って扉を開ける。最初に転がり込んできたイルーゾォの襟首を、ギアッチョが強引に掴んで引き上げた。 「てめーイルーゾォ!!タチの悪い冗談はやめろッ!!」 ギアッチョが人を殺しかねない剣幕で怒鳴る。しかしイルーゾォは苦渋に満ちた顔で答えた。 「嘘じゃない・・・!!『罰』と書かれた紙を身体に貼り付けて・・・ッ!!」 サイレントの魔法がかかったかのように、その場は静まり返った。 ――・・・そんな・・・嘘・・・ ルイズは崩れ落ちそうになった。勿論、今はリプレイされるギアッチョの幻に宿るただの意識である彼女には不可能なことであったが。 ギアッチョの仲間は、リーダーを除き全てが死んだ・・・それは理解しているはずだった。 しかしギアッチョを通して幾つもの場面を共有した今、ルイズに彼らの死を無関心に眺めることなど出来るはずがない。 だがそんな彼女の気持ちなど一顧だにせず、場面は無情に進んで行く。 ジェラートは自宅のソファで、恐怖に顔を引き攣らせて絶命していた。 「ジェラート・・・おいジェラートッ!!」 プロシュートがジェラートを揺さぶる。リゾットは彼の肩を掴んでそれを止めた。 「やめろ・・・プロシュート ・・・ジェラートはもう死んでいる」 「クソッたれがッ!!」 プロシュートは怒りを吐き捨てて立ち上がった。逆にメローネは、その場にがっくりと膝を落とす。 「・・・ボスだ・・・ボスの正体を探ったことがバレて・・・・・・」 ギアッチョは唇を噛んで怒りを耐えていた。ギリギリと音がするほど噛まれた唇からは、彼らの心を代弁するかのように血が流れている。 「・・・ホルマジオ イルーゾォ ソルベはどこだ?」 リゾットが二人に向き直るが、彼らは俯いたまま黙って首を横に振った。 「クソッ・・・!お前達・・・ソルベを探せ!!」 リゾットは焦燥感も露に叫んだ。 そして場面はまた一つ飛ぶ。 ギアッチョ達はアジトに集合していた。彼らの足元の床には、七十サント四方程の箱が数えて三十六個転がっている。 その箱にはガラスのケースに額縁を嵌めたようなものが入っていて、その中に何か気持ちの悪いものが、 ――・・・そんな 彼らは最後の一つまで開封して、やっとそれが何かに気付いた。 ――やめて ・・・いや、解ってはいたが・・・気付かない振りをしていた。彼らが送られてきた順にそれらを並べてみると、 ――お願いだからもうやめて・・・! 三十六個に斬り分けられた、輪切りのソルベが、 ――あぁあぁああああああぁああああッ!!! ルイズはいっそ気絶してしまえたらどんなに楽だろうかと思った。 しかし今はただギアッチョを通して彼の過去を見ている「意識」だけの状態であるルイズには、気絶どころか顔を覆うことも背けることも出来ず・・・彼らの為にただ涙を流すことすら出来なかった。 しかし、眼前の場面は冷徹なまでに滞りなく流れ続ける。自分達を嘲笑うかのように警告の道具としてソルベを惨殺したボスに、誰もが怒りを必死に押し殺す中―― バギャアッ!!! ギアッチョの我慢は限界を超えた。 「あの野郎ォオオォオォォオオーーーーーーーーーーーッ!!!!」 テーブルを叩き割り、ギアッチョは天地が割れんばかりの声で叫んだ。 「殺すッ!!!オレが殺してやるッ!!!」 額縁を梱包していた箱を踏み破りながら、ギアッチョは悪鬼の如き凶相で扉へと向かう。 プロシュートが「早まるんじゃあねぇ!」と手を伸ばすが、ギアッチョは彼に眼も向けずにその手を払いのけた。 しかし、その先でギアッチョの足がピタリと止まる。扉の前に、リゾットが立ちふさがっていた。 「どけよ・・・リゾット!!」 怒りに沸き立つギアッチョの双眸がリゾットを射抜く。しかしリゾットは充血した両眼でギアッチョの視線を真っ向から受け止めた。 「リーダーとして・・・ギアッチョ、お前を行かせるわけにはいかない」 「何故だッ!!」 ギアッチョは激昂して叫ぶ。 「ええ!?オレ達は一体何年屈辱に耐えてきた!?命を賭けて組織の敵を排除し続けてよォォーー・・・オレ達は文字通りパッショーネに命を捧げてきたッ!!いつか忠誠が報われる日が来ると信じてなァァ!! それが何なんだこのザマはッ!!オレ達の誇りだけじゃあ飽き足らず、ボスの野郎はソルベとジェラートを無惨に殺し・・・そしてその死まで侮辱したッ!!ここまでされてよォォォー!!一体いつまで耐え続けろっつーんだッ!!」 ギアッチョは怒りに任せてまくし立てた。 「落ち着けギアッチョ・・・! オレは・・・いや、オレ達の誰一人としてこの状況を受け入れている者はいない・・・ だが耐えるんだ!」 リゾットはそう言うと、ギアッチョが何かを言う前に続ける。 「ボスの正体を探ろうとしたんだ・・・オレ達が関わっていようがいまいが、ボスは既に・・・間違いなくオレ達を監視下に置いているはずだ そんな状態で一体何が出来る・・・?刺し違えるどころか、ボスに辿り着くことすら出来ないだろう」 ギアッチョはぐっと言葉を詰まらせる。 「今は伏して耐えるんだ・・・ ボスを倒す『チャンス』が来るまで!」 リゾットの眼は『覚悟』している者の眼だった。ギアッチョは壁を一発猛烈な音を立てて殴りつけると、その拳を震わせながら収めた。 ルイズは今度こそギアッチョの気持ちを理解した。彼女の耳には、食堂でギアッチョが叫んだ言葉が木霊していた。 『オレ達の命は安かねェんだッ!!!』 これだけの言葉に、一体どれほどの無念が込められていたのだろう。 ルイズにはもう結末が分かっている。リゾットの部下は、全員が死亡する。 ならば例え彼がボスに打ち勝ったとしても、一体その勝利にはどれほどの意味があるのだろうか? 仲間を失くし、ボスを殺して生きる目的までも失ってしまったならば、リゾットはもはや一人で生きていけるのだろうか。 そして、殆ど全ての仲間を失って唯一人生きながらえてしまったギアッチョは? 己が立っていた足場を失い、拠り所にしていた支えも失い――彼は一体何を思って生きているのだろうか。彼は自分を命の恩人だと言う。だけどそれは本心からのものなのだろうか?自分はギアッチョに、ただ終わることすら許されない痛みを与え続けているだけなのではないか―― ルイズには何も解らない。ただひたすら辛く、そして悲しかった。
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51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 00 34.31 ID gckj6eAy0 __ _, ´ `丶、 / \ / , / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ , ハ ヘ. ` , l ! / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ // ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ 「我が名はルイズ・フワンソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ 五つの力を司るペンタゴン。この物に祝福を与え、我の使い魔となせ」 / /./ /¨} ,__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ , } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ 〃 ( ヽ , . / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;> ´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=― ´ 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 03 36.57 ID gckj6eAy0 / \ / / . . ..丶 / / / / \ . ... . . . . ヽ ./ / l . .l / \ . .ヽ丶 . `、 . . . . ハ l l | .!.{ . .{ ._{_, ._ヽ 斗 ト . ,. . .l . . . . , . .} | | l. l厶. イヽ .ヽ . ..ハ. l_}ヽ..}ヽ| . . . . . } / i i V _ヾ{z=k ハ.. . / ィ戈 〒ヾl . . ./∧ ノ ∧. ヽ ,ィf戈. ノ! }. / V≧ソ / / K . . .ヽ 「ん……」 / . / ハ . ,` ヘ≧= ´ ´ ̄ イ . . . .| . .ヽ . .} / .. . / . . ヘ. ヘ . . ! . . . .l . . . . / / . . / . . . . ム . . 、 , ′ . ∧ . . . .{ ヽ . . { . . ./ .l . .ト、 ´’ イ . . . . ./ ヽ_ . . ヽ、 )ノ . .ヽ . . .j ! . l. > 、__, ィ ´ / . . . . ./ `ヽ . . . .  ̄ `ヽ , -一 . . / .∧ } . . V | 〉く ./ . / l . . . . . . . . } / . . . . / . . .{ \/ . . .l Ⅳ⌒ヽ// / / ヽ . . . . . . ., . / . . . . / . . . . .l / . . . } マ=マ / /. . ヽ ∧ . . . . . / { . . . / . . . . . . ./ . . . .人 弋7 { . . . . ヽ___ / l . . . . / `ヽ . . . ヽ . . ./ . ./ ヽV∠-ヘ . . . . . \ ! . . . .{ ノ . . .} . .{ .. . . ./ / ヘ . . . . . ヽ. | . . . . ゝ __ノ! ヾニ二 人 . / . .ヽ . . ./ ∧ \ . . . . . . .j | . . ヽ . _ノ 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 05 42.08 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「何をする貴様! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 俺のファーストキスを奪いおって! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ 許さんぞ!! 後悔するがいい!! \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ 貴様には地獄を見せてやる!!」 ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 09 21.51 ID gckj6eAy0 , イ \ / \ \ / ヽ , | { l | _ 〉 、 | |/ ,、ヽ / \ { / ヽ∨  ̄≧ュ、 〉 __,. , 「ずいぶんと気性の荒い使い魔だが、ちゃんと契約はできたようだねミス・ヴァリエール { ノ r リ  ̄´ 斤ォー / 人間の使い魔というのは聞いたことがないが、しっかりと世話をするんだよ」 ∧ヽゝ ヽ  ̄ー ├ー |ゞ′、/ , \| | ヽ、__ノ !、__ノ _ / l l } / / ヾ ヽ __ ー / ノ ` ー- 、 \ < _ / / \ ヽ __ / _ -──  ̄  ̄/ ̄ 7 、 -─ / / ` ─- 、 / / >ー───── 、 / / / / 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 11 39.66 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「この俺が世話をされるだと? ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! ふぅん。ここまでくると怒りを通り越して呆れるわ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ ……む? なんだ!? 左手が……! ぐぅぅぅ!?」 \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 14 44.55 ID gckj6eAy0 __ _, ´ `丶、 / \ / , / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ , ハ ヘ. ` , l ! 「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ 『使い魔のルーン』が刻まれて……って……えぇ!? // ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ ちょっとあんた!? なによそれ!?」 / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ / /./ /¨} ,__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ , } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ 〃 ( ヽ , . / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;> ´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=― ´ 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 17 41.26 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! 「これは……デュエルディスク!! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 馬鹿な! 何故これが俺の腕に! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 本社の金庫に保管してあるはずだぞ!」 . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 19 40.32 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 「でゅえるでぃすく? ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 なんなのよそれ! ていうかルーンはどうしたのよ!?」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 22 32.59 ID gckj6eAy0 , イ \ / \ \ / ヽ , | { l | _ 〉 、 | |/ ,、ヽ / \ { / ヽ∨  ̄≧ュ、 〉 __,. , 「落ち着きなさい、ミス・ヴァリエール { ノ r リ  ̄´ 斤ォー / よく見たまえ、彼の左手にはちゃんとルーンが刻まれている ∧ヽゝ ヽ  ̄ー ├ー |ゞ′、/ おそらくそのアイテムは使い魔の特殊能力に関連しているんだろう , \| | ヽ、__ノ !、__ノ さぁ、これで全員の契約が終わったな。よし、じゃあみんな教室へ戻るぞ」 _ / l l } / / ヾ ヽ __ ー / ノ ` ー- 、 \ < _ / / \ ヽ __ / _ -──  ̄  ̄/ ̄ 7 、 -─ / / ` ─- 、 / / >ー───── 、 / / / / 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 25 18.88 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! 「くっ……はずすこともできんとは / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! おい貴様、ルイズと言ったな ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! もう一度だけ説明するチャンスをやろう . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ これはいったいどういうことだ」 \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 28 33.58 ID gckj6eAy0 _ __ /´ `ヽ_ , -‐ `ヽ / \ . / / ヽ l / ,′/. / .〃 . .丶 丶 . .ヽ l l l l | l . .l . .ト、/ . . { . . .ヽ. \ .j .! │ l lハ l. . |. ..!. .{\八 . . .ヽ ,__匕厶} │ l ヽ∧ . ! . 从7tーゝヽ . イヘ ノ│ l ヽ、 「なんでこんなに偉そうなのよこの平民……! jハ>ハ `‐ j /  ̄ / リ `ヽ、 ……まぁいいわ、説明してあげる | } ´ 、 / / . . \ 私はあんたのご主人様なんだからね」 _ ノ ゝ , `マZ三)′ 厶;._ } / `ヽ┐ . . . . /> ´ / ヽ . / / ) {_, }. . . . / / _ -ヘ . . . . .∨ { ┐r /. . .〃 /_ -‐ ´ ヽ . . . / 入 / ̄ ̄`V / l | . . . ト、 / . .Y / ̄ ̄ヽ . . . . ./ l l . . . . . . .\ ヽ . .レ l-‐、__{ l { . . . . . . . . . \ ) .l \ \ l ヽ . . . . . . . . . . . ヽ / . .ヽ ヽ ヽ l } . . . . . . . . . . . . } 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 29 39.62 ID gckj6eAy0 -――- 、 , ‐ ´ \ / 、 ヽ |l l /〃 ヽ ヽ} | l , \ .ljハ トkハ 从斗j │ ハ \ l∧}ヾソ V ヾソ ! ! ヽ \ \ __ __ リ.人 v‐┐ / ト、 ヽ ヽ {心下ヽ / >ゝ- <{ Vl } } ゝ<}ノ \ ( Y Y ! ヽヘ { { ~説明中~ 7´ ̄ ) ) ∨ __ ヽ } \ \丶、 / / /ィ ´ヽ ノ / ヽ ヽ `ヽ ! ≦∠__ノ | /ハ / ゝ、 `、 リ ノ | . . l __ヾ\ ≧ 、ヽ { l_ . . / v l \ ヾ  ̄ , }> ヽ. V | ! l∧ Vリ i `ドー rL.」 厶 ! l j ̄ 7 ├‐ ト、 ! \ / / ! ! `、 ! `/ /ー‐‐┤ 「¨¨ ヽ / ,′ / ! ! レ ´ ┴‐┴━━━ゝ-┴ 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 33 07.67 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! 「ふぅん。なるほど魔法世界というわけか / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! よかろう、納得してやる ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! ふぅん、俺も遊戯のせいでオカルトに耐性がついてしまったな . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ よし、女。このあたりの地理を把握する。着いて来て説明するがいい」 \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 37 07.17 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ 「ちょっと!? 待ちなさいよ!! l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 勝手に決めるんじゃないわよ!! ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 あんたは! 使い魔で! 私が! ご主人様なんだからねぇーーーーー!!!!!! `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 20 43 19.70 ID gckj6eAy0 第一話 ~最悪の使い魔~ 終了 予告 第二話 ~瀬人の花嫁?~ / \ / `ヽ 丶 / . ノ , ヽ / / / . . / ヽ . ヽ ヽ V l l. .| / . ./.;イ ヽ ... . l. . . | .. l l ! |. .| . l . \!/ l . { . . .|ヽ . }ヽ . j . .! | . | ヽハ l .| ! . . jV\{ 八 . . .l } /_,j;ィト .l . l . | 「なんで私がこんな目にあうのよ! ヽ从 . iイfチ心ハ 、从ィ厶斗<V . .jl . | それにあいつってばいつも勝手なことばかりして! \ト小._V;zソ ノ/ V;;_z1 / . . . ハ . . 八 あぁ! 使用人のメイドとなにやってるの! リ } . , .. / . . . /. .ヽ . . ヽ あんたは私だけに仕えてればいいのよーー!!」 _..ノ/八 / . . . /. . . . .\ . . \ , -‐´ / . . >,.、 ´ ヽ ィ′ . . . ハ;.__ . . . . \ . .  ̄`丶、 〃 . . / . . . . . ノ ¨ ヽ、_ , ィ≦7 . . ./ ´ ヽ. . . . .` ー- 、 . ヽ l . ./ . . . . . ;. イ\ ノ} /`∨ . . . { ゝー、. . . . . . . ヽ . } {. / . . . . . / } Vx1_/ { . . . ヽ ∧. . . . . . . } . . ,′ 〃 . . . ./ j/  ̄ ̄ ヽ入 . . . . .\ ヽ. . . . ./ . / { . . . .{ | / \ . . . . .\ ) . / .;イ 前へ トップページ 次へ
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歓声と怒号の飛び交うヴェストリの広場。 ルイズとヴィリエが対峙する。 まずはルイズが口を開く。 「開始の合図はどうするのかしら?」 「いつでもよろしくてよ、魔法の使えないゼロのルイズに先制攻撃されたところで私の勝利は変わりませんから」 余裕綽々と答える。 「あら、それじゃあお言葉に甘えておきたいところだけれども…魔法が使えない、は訂正して貰わないとね」 詠唱の短い、コモンマジックを唱える。詠唱は短いが、威力は十分である。 ヴィリエの手前に大穴が空く。 圧倒的にヴィリエムードであった広場はざわめく。 「確かにゼロかもしれないけれど、あなたくらいを吹っ飛ばすくらいの威力はあるわ」 ルイズも負けじと余裕を見せる。 「ゼロのルイズに魔法の侯爵をされたとあっちゃあラインメイジの名が廃れるわね」 しかし、ヴィリエは余裕の姿勢を崩さず、杖を構え、長々と詠唱した。 そして、彼女は2人に増えた。 「これが『偏在』。どう、驚いたでしょ?詠唱が長すぎるから実戦で使えるのはトライアングルの上くらいからだけれど、あなた相手の1対1の決闘なら十分使えるわ」 そう言って偏在を戻す。 しかし、ルイズは挑発に乗らなかった。 「風の魔法の講義、ありがとう。でもミスタ・ギトーの授業で十分でしたわ、じゃあ始めましょうか…… 開始の合図は……貴女がコイントスをして、そのコインが地面に落ちたら詠唱を始める、これでいい?」 「ええ、構わないわ。ただ、手加減はするつもりないの」 ヴィリエは一瞬話すのを止めて、また話し始める。 「この世で最も大切な事は『名誉』であると私は考えているの。すなわち最も忌むべき事は『侮辱』する事と考えているわ。 私たち貴族は平民と違って、金や利益のため、あるいは、劇場や食堂の席を取られたからといって、人と争ったり、命を賭けたりはしないわ。争いは実にくだらんバカのする事。 だけれども、!『侮辱する』という行為に対しては、命を賭ける。殺人も、ブリミル神は許してくれると思っている! ……あなたが決闘を受けた以上、負けたときの仮にも貴族なんだから貴族らしく覚悟くらいはしておきなさい」 観客がざわめく。 食堂の関係者数人は憎憎しげに見つめ、一部の生徒はそうだそうだと野次を飛ばしている。 「あなたこそね、さあ始めましょう」 ルイズは数歩歩き、コインを投げて渡す。 そして、両者が杖を構え、ヴィリエがコインを右手に持つ。 ヴィリエがコインを弾いてトス! コインが高々と空中を舞う。 コインが上がった瞬間! ヴィリエはルイズの意外な行動に驚いていた! なんとルイズは、ヴィリエに向かって突っ走っていった! コインをトスしたために左手だけで杖を持っていたため、杖を構えるのが遅れる。 そして、後ろでコインが地面にあたり甲高い音を鳴らしたときには ヴィリエはルイズのタックルを受け杖を落としていた。 「私の勝ちよ、ミス・ヴィリエ」 ルイズはそう宣言した。 * * * 「な、納得いかないわ、卑怯よ!開始の合図の前に突っ込んでくるなんて!」 「私は、こう言ったのよ『貴女がコイントスをして、そのコインが地面に落ちたら詠唱を始める』 合図の前に走ってはいけないなんて一言も言ってないわ」 ヴィリエは歯軋りをする。 「それだけじゃないわ!コインを自分でトスすればいいのに、わざわざコインを渡すためを装って近づいて、そして相手の片手をコイントスで塞いで注意がコインに言っている間に…」 「なんとでも言うがいいわ。普通にやってたら風のラインメイジ相手にはやればやるほど不利になることはわかってる。 でも、なんにも覚悟も戦術もない、偉そうな口上叩いて余裕ぶっていた相手ならペンタゴンだって私でも倒せるわよ。 負けたからにはあんたのいう、貴族らしくシエスタを許しなさいよ」 ルイズは片膝のヴィリエを見据えて、いや睨んで、そう述べた。 「わかったわ、あんたがなんでそこまであのメイドに肩入れしてるかはわからないけど…貴族らしく約束は守るわ」 それを聞いてルイズは背を向けて去っていく。 しかし、 「でも…あんたは許さないわ……それに、杖を落としたら負けなんて聞いてないわ!エアカッ…」 しかし、その詠唱は止められる。 観客席から乱入してきた2つの物陰に殴られて。 「負けは負けだ、油断するならそれくらいのハンデ与えても十分戦えるようになってからするんだな」 「おーおー、俺も同じ意見だぜ。気が合うな、亜人さん」 ルイズは、ぽかんと口を開ける。 「えーと…ワムウと…あなたは確か……料理長さん?」 「ああ、料理長マルトー、以後お見知りおきをな」 「許さんぞ平民!ジワジワとなぶり殺しにしてくれる!平民の方は逃がさんぞ!覚悟しろッ!」 起き上がったヴィリエが憤怒の表情でマルトーを睨む。 「あんたがどこの貴族だかは知らんが、決闘後に背後から狙った、なんて知れたら貴族の力は使えるのかねえ?」 しかしマルトーは屈しない。 そのセリフを聞いて、ヴィリエは杖を構える。 「決闘なんていうまどろっこしいことはもう終わりよ!ルイズとその使い魔はともかく、平民一人くらい、家の力がなくても…」 マルトーはなにかを取り出しそれを注入する。 すると彼のオーラが変わりだす。 バルバルバルバル!! これがッ! これがッ! これが『ドーピングコンソメスープ』だッ! ウォォォーーム!! 「もしかしてお前、まだ自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」 ヴィリエは、杖を落として逃げた。 * * * ヴィリエが逃げるのを見て、ギーシュとキュルケが手を合わせる。 「しあわせぇ~~~~~っ!」 「私たち金持ちっ………! 億万長者………!」 こっそりと逃げようとする胴元。 それをギーシュがタックルで倒し、押さえ込む。 「嘘だ…夢だろ…これ…夢に決まってる…!」 「ところがどっこい…夢じゃありません!これが現実です!」 「ぐにゃ~~~~」 その日から数日間、ギーシュの羽振りが異常に良くなるが、70スゥくらいなんてすぐ飛んでいくものである。 半分だけでも実家に送れたのは幸運だっただろう。 * * * 「あ、ありがとうございました…」 決闘が終わり、広場を離れて厨房に来ている。 普段の料理長の姿に戻ったマルトーにルイズは礼を述べる。 「なあに、いいってことよ、『我らが杖』よ!俺たちがかばうはずのシエスタをわざわざこんな騒ぎまで起こして守ったんだ! その辺の貴族は嫌いだが…外見や服装だけじゃねえ、あんたは精神的にも貴族だ!気に入ったぜッ!」 周りのコックなども同意見のようで、しきりにうなずいている者も多かった。 「さーて、戦勝祝いだ!おい!1924年物のシュタインベルガーをもってこい!」 ルイズは厨房奥の部屋に案内され、そこの席に座らされる。 すると、料理が運ばれてくる。ヨダレずびっ!なくらい美味しそうだ。 料理に手をつけようとすると、シエスタが厨房に入ってくる。 「ミス・ヴァリエール!大丈夫ですか!」 実際はかすり傷一つしていないのだが、まるで今夜が山だと言われたかのような慌てぶりだった。 「だ、大丈夫よシエスタ、そんなに慌てないでよ」 「で、でもミス・ヴァリエールが私なんかのために決闘を申し込んだなんて気が気じゃなくて…」 「そうやって自分を卑下しないの。ほら、マルトーさんがすごい上等そうなワインを下さったから、一緒に飲みましょう?」 「え、い、いいんですか?ミス・ヴァリエール?」 「前から思ってたけど、そのミス・ヴァリエールっていうのやめてよ、ルイズでいいわ」 「そ、そうですか……じゃあルイズさん、乾杯……」 グラスが鳴る。 「さっ、俺たちも飲みますか。ワムウさんもどうです?」 「少々用があるんでな、その分今日の主役にでも飲ませてやってくれ」 ワムウは食堂から出て行った。 「ひ…ひと思いに宝石を…とっていってくれ」 NO NO NO 「あ…ありがね全部?」 NO NO NO 「りょうほーですかあああーーッ?」 YES YES YES 「もしかして借金ですかァーーッ!?」 YES!YES!YES! ”OH MY GOD” 追記。質素な生徒が一人増えたそうです。
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モンモランシーが牢獄のように頑健な造りの荷馬車から攫われた女の子達を外に出し治療する中、トリッシュとマリコルヌが尋問すると言って、捕まえた男達を連れて消えていった藪の中から時折聞こえる。 悲鳴の様な唸り声に耳を塞ぎつつ、サイトは周辺に男達の仲間が居ないかを警戒する。 「あの……ありがとうございます。お蔭で助かりました」 おずおずと礼を言う、トリステインでは珍しい黒髪の少女にモンモランシーは優しく微笑んでそれに答える。 「ううん、気にしないで。あなたも酷い目に遭ったわね」 「いえっ!あ……あたしは大丈夫です!怪我も治してもらいましたから!」 そう言って少女は顔に手を遣る。モンモランシーの手当てにより男に殴られ腫れ上がっていた頬は後も残らず元通りに治っていた。 「おい、ちょっとこれ見てくれ」 「なに?どうしたの」 周りを見張っていたサイトがモンモランシーの傍に近づき、手に持った棒切れを差し出す。 「これって……杖じゃないの!どこで拾ったのよ?!」 「御者台の近くに落ちてたんだ。たぶん、あの男のじゃないか?」 トリッシュが下っ端の男の相手をしている間にマリコルヌとサイトは馬車の影に隠れながら、御者台に乗っていた眼つきの鋭い男の不意を突いて捕らえる事に成功した。 この杖はそのときに男が使おうと取り出して落としてしまった物なのだろう。 「危なかったわね。魔法を使われる前に捕まえられて良かったわ」 「ああ、そうだな」 モンモランシーの呟きに短く答え、サイトは攫われた少女達を見る。 彼女達の年齢はバラバラで、自分と同じくらいの年頃の少女も居れば、サイトの感覚からすれば小学校高学年か、中学一年程度のまだ子供と言ってもいいような年端の行かぬ少女もいる。 その内の、おそらくは一番幼い少女と目が合った。 その少女はサイトを怯えた表情で見詰めて震えながら近くの少女に縋り付く。 サイトは手に持った、トリッシュから渡された剣を怖がっているのだと思い、それを馬車の影に隠してから少女を安心させようと出来る限り優しく微笑む。 「ひっ…いや……いやああああああ!!」 「お…おい!どうしたんだよ?!」 突然叫びだした少女に驚き心配になったサイトが駆け寄ると、少女は虚ろな目でボソボソと呟きだした。 少女が呟くその言葉を聞いたサイトの顔が情けなく歪む。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 ただそう言っていれば許されるとでも言うように、抑揚もなく呟き続ける少女に近づこうとしてサイトは立ち止まる。怯えさせているのは自分だ。 「ごめん、あっちに行っててくれないかな?」 黒髪の少女がサイトの脇を通り、虚ろな目をして呟き続ける少女の傷ついた心を癒すように優しく強く抱きしめる。 「わりぃ……」 掛ける言葉が見つからず搾り出すようにそれだけを言うと、サイトは少女から見えないように馬車に隠れる。 少女が男達から受けた仕打ちを思い、サイトは静かに怒りを滲ませた。 「きゃあああああああ!!」 暗い藪の中から女性の悲鳴が聞こえる。知っている限りでは藪の中に女性は一人しか存在しない。 「今の声って……まさか…トリッシュ?!」 「アイツしかいねぇだろ!オレが行く!お前はここで待ってろ!!」 サイトは隠していた剣を手に取り、疾風の如き速さで林の中へと駆け出した。 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」 慌ててモンモランシーも後を追おうと走りかけ、ハッと後ろを見る。 そこには少女達が怯えた顔でモンモランシーをジッと見詰めていた。この子達を残してはいけない。 「あの……行って下さい。あたし達なら平気ですから」 黒髪の少女がモンモランシーの気持ちを察して囁きかける。 モンモランシーは行くかどうか悩んだ。トリッシュは取りあえずは無事だろう。 あの男たちは人攫いだ。『商品』となる彼女を殺すとは思えない。そう思いたくない。 しかし、メイジのあの男が予備の杖を持っていてそれを使って反撃してきたのなら、『商品』にならないマリコルヌとサイトでは殺されるだけだ。 あの男が風のメイジなら音も無く殺す事は可能だろう。マリコルヌも風のメイジだが頼りない。 ギーシュのヴェルダンデの方がまだマシだ。同じデブでも向こうの方が可愛いし。 マリコルヌは死んでも良いがトリッシュの事が心配だ。あの男達なら平気でどんな酷い事だってするだろう。 心配そうに自分を見る彼女達を見詰める。最悪の場合、彼女達を守れるのは自分しか居ない。 『そんなに心配なら私が様子を見てこようか?』 「だれっ?!出てきなさい!!」 どこからか声がしてモンモランシーは杖を取り出し、水の系統特有の生命エネルギーを感知する魔法を使い周囲を警戒するが誰かが隠れている様子はまるで無い。 「あの……どうしました?」 「みんなを馬車に乗せて!」 周囲を警戒しつつモンモランシーは黒髪の少女に指示を出し、地面に置いていた鞄を拾い肩に掛ける。 その肩から下げた鞄から何かがもぞもぞと這い出して地面に着地する。 それは彼女の使い魔であるカエルのロビンだった。 「あああ、あなたいつの間に?!」 『君が随分慌てていたんでね、心配になって着いてきたわけさ。まあそんな事はどうでも良い。私が様子を見てくるから君はいつでも逃げられる様に彼女達を馬車に乗せて待っていろ』 「ちょっと私に命令しないでよ!あなたの御主人様なんだからね!!」 カエルと言い合いをするモンモランシーを見て黒髪の少女が途方に暮れていると林の中からトリッシュが慌てた様子で駆け出してきた。 「モモモ、モンモランシー!お水!水を頂戴!!早く!早くしてっ!!」 「え?!わ、わかったわ!」 慌ててルーンを唱えて杖を振ると、杖の先端から水が溢れ出した。 空気中の水蒸気を液体に戻す水系統の初歩の呪文だ。 トリッシュはその水で手を浸しハンカチで削らんばかりに擦り始める。 「トリッシュ待ってよー!置いてかないでくれーっ!!」 顔に青痣を作ったマリコルヌとサイトが捕まえた男達を担いで林の中から姿を現した。 「ちょっと何があったの?教えなさいよ」 馬車の傍でしゃがんで落ち込んでいる二人にモンモランシーが話しかけると ポツポツとマリコルヌが喋りだした。 「いや、それがね……」 マリコルヌによると、尋問の最中に男の垂らした涎やら鼻水がトリッシュの手に掛かり、悲鳴を上げながら それをハンカチで拭いたが、ネバネバしたそれらは逆に手の全体に広がりパニックに陥ってしまった。 マリコルヌがトリッシュを落ち着かせようと近づいたら、汗臭いやら脂ぎって気持ち悪いと罵られながら顔を蹴り飛ばされ、駆けつけたサイトが混乱しているトリッシュの肩を掴んで落ち着かせようとして 臭いやら汚いやらと言われながら肘打ちを喰らってサイトが怯んでいる隙にトリッシュが駆け出して現在に至るのだという。 「まあ…気持ちは判るけど少し落ち着いたら?」 「汗臭くて脂ぎってるとか服が汚れて洗ってない犬の臭いがするのよッ!生理的にダメなのよォーーーッ!」 嫌悪感を露に未だ混乱しているトリッシュを座らせて、モンモランシーはマリコルヌ達を見る。 「どーせ僕はデブさ。太っちょさ。能無しの肥満体さ」 「はいはい犬ですよ。野良犬ですよ。汚らしい雑種ですよ」 言葉の刃で斬り付けられた二人は仲良く蹲って自傷行為を繰り返していた。 静かに泣き濡れる彼等の心は魔法でも癒せない。 二人が立ち直るのを待たず、モンモランシーは少女達を馬車に乗せると自らは御者台に座る。 その隣には黒髪の少女が手綱を持って腰掛けていた。 「それじゃ気をつけてね。それからこれ、役に立つと思うから」 「ええ、ありがとうモンモランシー」 ポーションの入った鞄をトリッシュに渡して、モンモランシーは来た道を帰っていった。 少女達を近くの街道警備隊に保護して貰う為には貴族が居た方が良いと考えた結果、仕方なく彼女が同行することにしたのだ。 これからする事を考えるとマリコルヌ達では不安もあったが、少女達だけで行かせる訳にも行かなかった。 それに男達から聞きだした彼らの雇い主であるモット伯の事を説明する必要もあった。 そうすればモット伯が司法の手により裁かれるのは明白だが、貴族の屋敷を捜査する為にはそれなりの手続きが必要であり、その間にシエスタに危機に陥っては自分達が来た意味が無い。 結局は屋敷に乗り込んで救い出すしか手は無いのだった。 「それじゃ行きましょ。ええと…」 隣の少女に声を掛けて、まだ名前も知らない事に気付く。 「あっ!あたしジェシカです」 家に帰れる喜びなのかハツラツと答えるジェシカが手綱を繰って馬車を走らせる。 少女達と悪党二人を乗せた馬車の頭上に雲が立ち込め、双月が怪しげに瞬いていた。 To be continued…… 18< 戻る
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「言ってる事は……よくわかったよ… だけどはっきり言わせてもらう…」 ”彼”、いや…『パンナコッタ・フーゴ』の顔には興奮気味なのか 玉のような汗が浮かんでいるし、唇もブルブル震えている。 目も躊躇いがち。心ここにあらずと言った様子だったが ついに決心した彼は、目の前の少女と向かい合って叫ぶ。 「ど~して!ぼくが君の下着を洗わなくちゃならないんですかーッ!?」 彼の手には小さな布が握られていた…。 『紫霞の使い魔』 第二話 【使い魔フーゴ;主人からの第一指令】 「やっぱり理解してないんじゃないの!?案外頭が鈍いのね、あんた!」 ネグリジェ姿のルイズがベッドに腰掛けて 怒鳴り散らす。 「わかっていますよ!ここがぼくの居た世界じゃないことは!」 フーゴの指さした先には地球ではありえない『二つの月』…。 しかも、『草原』においても人が宙を浮く様を見せつけられてしまったのだ。 無いと信じていた『鏡の世界』に引きずり込まれたこともあったので ここが『魔法の世界』だと認める事はできた。受け入れたくはなかったが…。 「あんたのいう『ぼくの居た世界』のほうがわからないけどね…。 ま、いいわ。続けなさい…」 上から見下すような態度に心の天秤が傾くが、まだ耐えられた。 「それでっ!貴女達が『魔法使い』だという事も! ぼくが『使い魔』になったのも 帰る方法も無いことも、理解できました!!」 彼の『左手』には奇妙な文字が描かれていた。契約の印『ルーン』。 『珍しい形』といわれたが、そんなことは些細な事。 ”フーゴ”が”ルイズ”の『使い魔』になった証であることが重要なのだ。 使い魔は死ぬまで変えることができない。 つまり、彼が帰れるとすれば『物言わぬ屍』になってから…。 帰還計画は遙かに絶望的である。 「なーんだ。よくわかっているじゃない…。偉い…偉い…」 やるきの欠片もない、だらけた拍手を送るルイズ。 送られた方のフーゴは当然イイ気がするわけない…。 その証拠に、こめかみがピクピク動き始めている。 「けれども!何でそれが君の洗濯物を洗うことになるんですか!!」 しかし、理性が必死に殺意を押さえてくれたおかげで 『まだ』会話を続けることができた。 「そこまで解っていて何で『消去法』ができないのかしら?」 ルイズは、『やれやれだぜ…』と言いたげな様子で指を折り曲げながら話し始めた。 「あんたみたいな露出狂じゃあ 1,『主人の目となり耳となること』はできなかったし 2,『主人の望む物を探してくること』もできそうにないし 3,『主人を敵から守ること』は絶対不可能だわ! というよりもそんな格好しているあんたの方が 圧倒的に『女性の敵』よッ!この変態男!」 フーゴの手が痙攣でも起こしたかのように震え始め、 その閉じられた口の裏で、歯が両顎に押しつぶされかけながらも 彼はじっと耐えて聞いていた。 「そんなあなたでも掃除、洗濯みたいな雑用ぐらいはできるでしょ! それぐらいやって貰わなくちゃ、わたしが困るのよッ!」 突然だが、時限爆弾が目の前に置いてあると仮定してほしい…。 そこには お決まりの『赤』と『青』、二本のコードがある。 残り時間は刻一刻と削られていく…。 早くどちらかを切らなければならない。 普通は爆破コードがどれなのか不明なのだが 今回はわかっている! 『赤』を選べば爆発し、『青』を選べば爆弾解除。 そう聞けば、大体の人は『青』を切るだろう…。 でも自分が『狂気の爆弾犯』だとしたら…? 『切れ!』というのならば当然『赤』を切るしかないッ! 己の中の殺意が囁くままに… そう!『いつものフーゴ』ならば間違いなく『赤』を選ぶはず! だが彼は… 「り…了解しました…。ご主人…様」 『青』を選んだ! (そうだ…耐えるんだ…。元の世界に戻るとしても! このままこの世界に残るとしても! しばらくはここで生活していくしかないんだ…。そのためにも この『忌まわしき自分の欠点』は乗り越えなければならないッ!) 「やっとわかったようね…。」 ルイズが優越感に満ちた笑みをうかべた。 「じゃあ洗濯物はまかせたわ。 あんたの寝床は…この毛布で充分ね。 あと、朝はちゃんと起こすこと!いいわね!」 「…了解しました」 その言葉を聞き、ルイズは満足げにベッドに潜る。 彼女が小さな指をパチンと鳴らすと、辺りは闇に包まれた。 フーゴも毛布を被って床へ横になり この昂ぶった心を落ち着ける事にした… が、無理だった。しばらくすると『怒り』は収まりつつあったが 代わりに『不安』という感情が浮かび上がってきた。 自分のことではなく、仲間に対する『不安』…。 彼らには『亀』があるが、敵に見つからないという保証は …無い。今も危険と隣り合わせで過ごしているのだ。 果たして、今も無事でいるのだろうか? そう考えると異世界にいるとはいえ…いや、絆を断ち切ったといえ 『平和な夜』を過ごしている自分が嫌な奴のように思えてきた…。 ふと、ベッドの方を向くと『新しいボス』が寝息を立てているのが見えた。 まだ中学生くらいなのだろうか?とても小柄で華奢な体つきをしている。 もはや彼女への『怒り』は湧いてこなかった…。 彼女にしてみれば召喚されてきたのが『ただの人間』だったのだ。 機嫌が悪いのも仕方がないことだろう…。 そもそも初めて出会ったばかりで、うち解けあうほうが無理な話。 こういうのは少しずつ分かり合っていくものだ。 (『死』か『殺』の狭間で悩んでいたぼくに この子は『生』の道を開いてくれたのだ…。 この世界で新たな繋がりをつくっていくためにも! そして、この『新しいボス』から『信頼』を得るためにも! 『使い魔』として、できる限りのことをしよう…!) そう考えたフーゴは暗闇の中から起きあがり、洗濯物を抱えて部屋を後にした。 To Be Continued…
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使い魔 本家に記載されていない、ポストマンの使い魔の情報補足分です。 使い魔についてユーザー間で追記補正してください。 (製作中のページです。 追記方法は記事最下部のEditThisPageをクリック、 または、最上部の@wikiメニューの「編集」からページが編集できます。) 皆伝について ■ 皆伝させた側のモンスターの技は、消えても覚え直すことが出来ます。 このとき、教える技が他からの伝授技の場合は 本来覚える技を即獲得可能(一体撃破でOK)。 ただし直前500の倍数経験値で技を獲得していた場合は 次の500の倍数経験値まで獲得できません。 ↑は数回確認しただけです。要検証。複数空きがあるときとか。 元々技を覚えない番号の場合は空欄のまま。 うまく利用すれば技の整理も可能。 ある程度の数の経験値8000以上の使い魔が必要。 ■ 重複する技は伝授できません。 例外として、皆伝させて未獲得状態ならば伝授は可能。 その後経験値を上げれば本来の技も獲得できる。 ■ すでに技がある番号の場合上書きされます。 本来の技を覚え直したい場合は、他の使い魔に伝授する必要があります。 同じ技を同番号に上書き伝授は不可なので、技の整理時には注意。 ■ 他の人から贈られた使い魔でも可能。 贈る場合は4000、伝授してもらう場合には8000の経験値が必要。
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宝探しでギーシュが買ってきた地図は五つ。 いちいち細かく言うのも面倒なのでダイジェストで行こうと思う。 まず一つ目。竜の金貨だ。 これは五つ集めると自分が一人増えるらしい。 どういうことなのかは分からない、偏在みたいなもんか? 竜の金貨があるのはダイナソー陸地と呼ばれる場所だ。 陸地ってのは土地名に使うには正しくない気もするが細かい事は気にしないでおく。 そのダイナソー陸地に着き、地元住民から情報を集めていたらとんでもない事が分かった。 竜の金貨はもう無いのだ! 地元住民のYさん(仮名)が言うには突如現れた赤い帽子のひげ男が『便利だから』と全部とって行ってしまったらしい。 もう無い物を手に入れる事ができるわけも無く、だが次に行くには時間がないのでその日はダイナソー陸地に泊まった。 一日目終了。 二日目。 二つ目は青眼の白龍。 これは龍の形の彫刻とかじゃなくて青い目の白い龍を召還できるお札らしい。 キュルケが言うにはこの秘宝は考えられるとしたらサモンサーヴァントを応用したマジックアイテムらしい。 だがサモンサーヴァントには色々と制約があるため、そんなものはまず存在しないとも言っていた。 だが実際に存在しているのだ。この場合は未知の技術か真っ赤な嘘かのどちらかだろう。 それも実際に見てみればハッキリする。 その青眼の白龍が祭られている神殿に着いた。 だが中には何も無かった。 あるのはただの破壊の跡。 鋭い爪によって抉られただろう壁。 堅い尾によって倒れたと思われる柱。 この傷跡をみればここで龍が暴れただろう事を想像するのは容易かった。 少し離れたところにある壁には何か文字が書かれていた。 近くにいたギーシュが読み上げる。 『これが青眼の白龍か!ウワハハハー!すごいぞーカッコいいぞー!』 どうやらこの龍を手に入れたヤツはどうしようもないヤツらしい。 ギーシュが続きを読む。 『龍を一度戻したらもう出て来なくなってしまったのですがどうすればいいのでしょうか? 分かる人は教えてください。もちろん報酬は出します。 レコン・キスタ総司令官 オリヴァー・クロムウェル』 おれ達は次の場所へと向かった。これはほっといても良いや。 三つ目はブリーシンガメン。 これは首飾りらしい。 これがある寺院はオーク鬼が住み着いていたのでそれを倒す必要があり、 それを終わらせ、中を調べてみたのだが見事なまでに何も無かった。 ギーシュはブリーシンガメンを使ってワルキューレを強くするつもりだったらしくちょっと落ち込んでいた。 「やっとクラスチェンジできると思ったのに…」 まあまあ、スターランサーの方が使い勝手は良いしさ、そっちにするチャンスだと思えよ。 四つ目は退魔の剣らしい。 コレを抜けるのは真の勇者だけだ! みたいなことが地図には書いてあるのだが…これは宝の地図と言うよりは観光パンフレットだ。 その証拠に剣が祭られてる神殿には金を払えば普通に入れるし台座に刺さってる剣を抜く事だってさせてくれた。 だがおれにもキュルケにもタバサにも抜けなかった。 それにしてもおれが何も言われず挑戦できたのには驚いた。 最後にギーシュがチャレンジ。 どうせ抜けないと分かっていてもこういうのはワクワクするらしく顔を輝かせている。 そんなギーシュを見ることもなく次の相談をするおれ達。 全く関係ない人たちと思われても仕方ないくらいのスルーっぷりだ。 おれ達がもう遅いし今日はここに泊まろうと決めたところでギーシュが台座から降りてきた。 だが様子が変だ。 表情がポルナレフのAAみたいになっている。 「あ…ありのまま今起こった事を話すよ!」 台詞までそのままだった。 「僕は剣を抜いたら七年後の世界に飛ばされていてその世界は大変な事になっていて僕がそれを救ったんだ!」 ハイハイワロスワロス。 二日目終了。 三日目。 五つ目にして最後は竜の羽衣。 これを身に着けたものは空を飛べるらしい。 だがはっきり言って必要ない。 だって自力で飛べるもん。紙飛行機みたいに舞うだけだけど。 それでも売れば金になる。 そしておれ達は竜の羽衣があるタルブの村までやってきた。 タルブの村はだだっぴろく綺麗な草原があり、のんびりとした所だ。 おれはこの草原の匂いを嗅いだ事があるような気がする。何故かは分からないが。 これが最後でかつ戦闘も無さそうと言う事でみんなもリラックスしている。 おれは使いそうにないデルフを外し、シルフィードに預けた。 キュルケはこうも言っていた。 「ルイズも来れば良かったのに…」 最近のキュルケはルイズの心配をしている。確かにちょっと様子が変だからな。 おれも昨日の夜キュルケに色々と聞かれたのだが、おれはそこまで気にするほどの話じゃないだろうと思っている。 で、おれが他のヤツに相談したらどうだ?と聞くと 「『自分』にも相談したんだけどやっぱり使い魔である貴方も無視できないでしょう?」 と言われた。なるほど、正論だ。 さてそんな風に気分転換に丁度良いタルブの村だが、おれ達は休暇や観光で来たのではなく冒険に来たのだ。 とりあえず話を聞くために人間を探す。 丁度道の向こうから女が来たのでそいつに話を聞こうと近づく、 おれ達貴族が近づいたのを見て、大名行列みたいに脇にそれ頭を下げる。 素朴な感じで明らかに村娘といった娘だが、かなり胸がデカイ。 そして何故だかおれはこいつがメイド服を着ている姿を思い浮かべてしまうのだ。 その理由はすぐに分かった。草原の匂いの謎と共に。 「よう、シエスタ」 その女はシエスタだった。 メイド服を着ている姿を思い浮かべるのもいつも着ているのだから当たり前。 そして草原の匂いはおそらくここがシエスタの故郷だからだ。 匂いってのはそいつが何処に住んでいるかと、何処で育ったかで違ってくる。 だからシエスタの匂いとこの草原の匂いが重なり、前にこの草原の匂いを嗅いだように感じたのだ。 で、次がこの推理をした名探偵イギーへのシエスタの反応。 「イギーちゃん!?」 『ちゃん』付けだった。 いつもはおれが使い魔だからか『さん』なのに。 きっと今までも心の中ではそう呼んでいたに違いない。 シエスタに会ってからの話は早かった。 おれ達が竜の羽衣を探していると言ったら、それはシエスタの家にあるものだがインチキで名前だけの秘宝だと言う事を教 えてくれた。 それでもここまで来たのだし、一応見ておくことになり、 寺院にある実物を見たのだが、これがビックリ! 飛行機だった! 「まったく、こんなものが飛ぶわけないじゃないの」 キュルケが言い、ギーシュも頷く。 「これはカヌーか何かだろう?それに鳥のおもちゃのように、こんな翼をくっつけたインチキさ。」 「……」 そして相変わらず本を読んでるタバサ。 誰一人としてこれが飛ぶとは思ってないらしい。この馬鹿共が、科学を舐めるな。 ちょっと説明しようとも思ったが、今はもっと情報が欲しい。 おれはシエスタに話しかける。 「シエスタ」 「何?イギーちゃん」 「これについてもっと教えてくれ」 シエスタへの質問の結果、これはシエスタのひいおじいちゃんの物で、そのひいおじいちゃんはこれで飛ぶ事ができなかっ たという事が分かった。 そしてひいおじいちゃんのお墓があると言うのでちょっと見せてもらう事にした。 タルブ村の共同墓地の一画に他の白い石でできたものとは違う、黒い石のものがあった。 それがシエスタのひいおじいちゃんの墓だった。墓石には墓碑銘が刻まれていた。 「ひいおじいちゃんが死ぬ前に自分でつくったそうよ。異国の文字で書いてあるから、 誰も銘が読めなくって。なんて書いてあるんだろうね?イギーちゃん」 さっきからちゃん付けが定着してしまっている。言葉遣いももう友達へのものだ。 「海軍少尉佐々木武雄、異界ニ眠ル」 「え?イギーちゃん読めるの?」 「まあな」 話す事や書く事はできないけど読んだり聞いたりなら六ヶ国語は軽い。 承太郎や花京院、それにアブドゥルと一緒にいたせいか日本語とアラビア語も何とかなる。 寺院に戻ると四人が待っていた。…四人? 「おお!イギー君!」 まばゆく輝くハゲ頭、コルベールだ。何でここにいるんだ? コルベールはかなり興奮している。 「竜の羽衣について君は何か知っている、いや解っているらしいね!?」 多分キュルケ達から話を聞き、そしてそう思ったのだろう。 「是非教えてくれ!」 何でおれが…と前のおれなら思っただろうが、 コルベールとはちょっとした協力関係にあるし、これだって立派な機械だ。 これを応用したものを作るとしても作るのはコルベールだ。知識はあったほうが良い。 そんな訳でキュルケとタバサとギーシュとシエスタは今日泊まる予定の、 そしてコルベールが泊まっている(持ち主の家だかららしい)シエスタの家まで案内され、コルベールとの二人きりでの飛 行機講座は開かれた。 飛行機に触れると左前足のルーンが光り、この飛行機の情報が頭に流れ込んでくる。 そして飛行機が飛ぶ原理やこの飛行機の名前はおそらく『ゼロ戦』で今は燃料がないこと等、今わかっている事や推理した ことを話す。 一通りの事を話し終え、日も暮れてきたところでとりあえず今日は終わりにしようって所でコルベールが口を開いた。 「君は確か異世界から来たといっていたね?」 「ああ、異世界から来た」 コルベールは少し考え、話し出した。 「もしかしたら、君は元いた世界に帰れるかもしれない」 コルベールがこの『竜の羽衣』の存在を知ったのはある伝承からだそうだ。 そしてその伝承によると竜は二匹いたらしい。 その竜は日食と共に現れ、一匹は日食へと消えた。 これはつまり日食が何か関係してるという事。 ゼロ戦に乗って日食に飛び込めば…帰れるかもしれない。 「まあ、証拠なんて一つもありませんがね。けれど、可能性は高いと思われます」 元の世界に帰る。 それは、つまり、あいつらにまた会えるかもしれないという事だ。 しみったれたじいさんが車を運転しながら馬鹿話をして、 そのじいさんのケチな孫がそれを聞き流して、 マヌケなフランス人がそれに笑い、 胡散臭い占い師がそれを聞きながらひょろっちい高校生の事を占ったらヤバイ結果が出て、 その横でおれはガムを食べる。 何が楽しいのかなんて今も分からないけど、楽しかった時を過ごせる。 また、あいつらに会いたい。 これは自分がずっと諦めていた事。 でも諦めきれないから無意識の内に別の目標を作った。 それをする事によって忘れられるように、 『国を作る』そんな事犬にできる訳ないよな、常識的に考えて。 最初は神になるとか言ってた事も会ったけどそれだって本気じゃない。言われた側だってただの誇張表現だと思ってるだろう。 それにおれが帰ることで一つの可能性も伝えられる。 確かアブドゥルと花京院もおれと同じく死んだはずだ。 だがおれはこうしてここに生きている。それは普通にはありえない事だ。 だから花京院とアブドゥルも同じように異世界に飛ばされてるのかもしれない、 もしかしたらハルケギニアの平行世界でルイズの使い魔をやってる可能性だってある。 SPW財団ならこの謎について解明しようとするだろう。 それがもし、上手く行ったのなら。 また、あいつらに会えるかもしれない。 これは嬉しい事だ。 だが、おれは何故だか沈んだ気分でシエスタの家に向かった。 家に入るとシエスタの弟達がやってきた。全員まだ小さい。 そしてそいつらはおれを見て 「犬だ」 一人がおれの体を撫で始めた。 「止めろ」 「喋ったよ」 もう一人なで始めた。だから止めろ。 「可愛いね」 三人目。 「でも元気ないよ」 「じゃあ元気付けよう」 残りも含めて全員でおれの体を撫で始めた。 「おい止めろ!」 だがそう言ってもガキ共はおれの言う事を無視しておれを撫で続ける。 「ああ!もっとやさしく」 一人が胸の方に手を伸ばしてくる。 「そこはダメ!ダメッ!ダメッ!ダメッ!」 何本もの手がおれを撫で回す。 「ああ!やさしくして やさしく!」 トドメとばかりに全員が同じリズムで撫でてくる。 「うああああ!ダメッ!もうダメ~ッ!」 To Be Continued…
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モット伯の屋敷が焼け落ちてから数週間が経過したが、大きな動きはなかった。 王宮としても現在はアルビオンへの対処に頭を悩ませなければならないのでそんな一メイジ、それも悪評が立ちまくりなやつなどどうでもよかったのだ。 領地で働いている平民には事故だと知らされ、もうしばらくすれば複数の領主がその土地を分割する手はずになっていた。 「運がよかったわね」 「そうですね。お尋ね者になってしまえば僕も困ってました」 マチルダと花京院はトリステインとゲルマニアの国境付近にある街の酒場で食事をしていた。二人が顔を合わせるのは久しぶりのこと。 マチルダが屋敷から盗み出した宝石などの貴重品を闇市場で金に替えて分配すると、二人組がどうたらこうたらと手配をされた場合に備えて別々に行動していたのだ。 それも杞憂だった、ということだが。 「さて、無事に再会したのを祝したところで、これからどうする?」 「個人的に、行きたいところがあるんですが」 「どこだい?」 「魔法学院、というところです」 マチルダはあからさまに嫌そうな顔をした。そんなところに行けば水が襲ってくるからである。仮にンドゥールが興味なかったとしてもオスマン当たりなどの実力者に発見されれば手痛い目にあうかもしれないのだ。 勘弁願いたいところである。いくら運命に身を任せたといっても急すぎる。 「とりあえず、理由を聞いてくれませんか?」 「ああ。言ってみな」 「この数週間、そこらの書店を見て周り、この世界にやってきた原因を僕なりに調べていました。それで有力なものが見つかりました」 「なんだい?」 「サモン・サーヴァント、というものです」 マチルダは、そういえばンドゥールもルイズの使い魔であったなと思った。 目の前の男もどこぞのメイジがやったそれの失敗で召喚された可能性は大いにある。 「僕の考えはどうですか?」 「……ああ。正しいと思うよ。ま、どこの阿呆がやってくれたのかは知らないけどね」 「いえ、あのまま死んでいた僕を助けてくれたのだから感謝してますよ」 笑っていた。 マチルダは自分も昔、使い魔召喚の儀式を一人で行ったことを思い出した。失敗したが。 「でもねえ、あんた、学院に行ってどうするの? まさか図書館に入らせてくださいって頼んで、やすやすと入らせてもらえると思ってる?」 「駄目でしょうかね」 「そりゃもちろん。だってこの前、盗みが入ったんだもの。注意深くなるに決まってるじゃないか」 「本人が言いますか」 マチルダがかっかと笑った。彼女はすでに花京院に自分の素性を話している。というよりも『土くれ』のフーケなんですか、と、尋ねられたので肯定しただけだが。手配書のまんまであるため気づいて当たり前だった。 「ですが、それでも駄目もとで尋ねてみます」 「仕方ないねえ……」 花京院は放っておいたとしても一人でいくだろう。マチルダとしてもンドゥールにもう一度顔を合わせて自分の感情を整理させておきたい。そこまで考え、マチルダは最初から決まってるじゃないと心の中で笑った。 「いいわ。明日にでも行きましょう」 「ありがとうございます」 二人は馬を駆り、整備されている街道を走っていった。急ぐ旅でもないため村や街に立ち寄り、時には亜人を退治して金を稼いでもいた。 そして出発してから数日後の夕暮れ、タルブという村に二人は着いた。亜人退治のために訪れたわけではない。単に休息のために立ち寄っただけである。 なんでも、変わった料理があるらしいので、ものはついでと食いたくなったのだ。 マチルダが。 「いやしんぼッ! このいやしんぼめッ!」 「お黙り! 別にいいじゃないのさ。そう急ぐもんじゃないだろ」 「まあそうですけどね。それに、景色もいいですし」 二人の視線の先には草原が広がっている。ところどころ朱に染まった花が咲き乱れ、風が吹くと草が波打っていた。 花京院がその光景を眺めながら笑みを浮かべ、語りはじめる。 「この世界に来る直前も旅をしていたんですが、過酷なところばかりでした。海中、砂漠、飛行機は落ちるし……」 「ひこうき?」 「空を飛ぶもんです。ここにはありません」 竜かなにかかしら、と、マチルダは思った。 花京院はかすかな笑みを浮かべてこう付け加える。 「それでも楽しかったものです」 「なんだか羨ましいね。ほら、さっさと宿を探すよ」 マチルダは草原から離れ、村に入っていった。花京院もあとに続く。 タルブの村はこれまで何度も訪れた農村と同じものだった。果樹園があり、畑があった。 手入れを欠かしたことがないのだろう。いまにも収穫できそうに膨らんだ果実があった。 小さな喜びを積み重ねている村の歴史が想起できた。花京院が仕事帰りの人間に声をかける。 「すいません。どこか泊まれるようなとこはないですか?」 「ん、なんだ、あんたら旅人か? それなら村長のところにいけばいいぜ」 「ありがとうございます」 二人は礼をした。 村長に話をすると、快く招いてくれた。商人をいつも泊めているらしく、離れの客室は立派なものだった。しかし、マチルダは一つだけ不満があった。 「なんで布団が一つなんだい」 「まあ男と女の二人旅ですからね。そう勘違いされるのも仕方ないでしょう」 「あんたと恋仲になったつもりはないんだけどね。飯時にでも言うか。で、これからどうする? 寺院でも見に行くかい?」 寺院というのは本来、始祖ブリミルを祭るものであるがこの村ではちっと違うとのことだ。 いや、ブリミルを崇めることには変わりないが、大昔にふらっとやってきてそのまま 居ついた人物が妙な寺院を建て、『竜の羽衣』と呼ばれる御神体を飾っているとのことだ。 興味は引かれる。 花京院は外を見た。夕日がまた落ちていない。 「そうですね。行ってみます。マチルダさんはどうします?」 「あたしも行くさ。ノリアキ」 村長にすぐ戻ると言いつけ、外れの寺院に向かった。 その寺院は村長の言葉通り、妙な形をしていた。丸木で組み立てられた門に石ではなく板と漆喰で作られた壁、木の柱、白い紙と綱で作られた紐飾り。 一般的なものとは大きく変わっている。 「確かに珍しいねえ。どういう流れでこんな形を取ってるんだろうね」 ブリミルを祭るとはいえ、始祖が降り立ってから数千年が経過しているため地方や国ごとに形は変わっている。 とりわけここ最近のものは新教徒などというものが出てきたため古い寺院と形が大きく変わっているところがあった。 しかし、この目の前のものをマチルダは見たことがない。可能性があるとしたら東方かと、彼女が頭を悩ませていると隣の花京院が地面に崩れ落ちた。 「急にどうしたんだい」 「……あまりに驚いて、その、腰が抜けました。すいません」 マチルダの手を借り、花京院が立ち上がる。彼は額に大粒の汗をかいていた。 「戻って休むかい?」 「いや、それには及びません。中の御神体を見てみましょう」 「わかったよ」 花京院は別に体調が悪くなったようではなかった。マチルダは気に掛けながらも寺院に近づいていった。 ところが、彼女はある奇妙なことに気づく。門がゆれているのだ。それも風に。 脳裏にある男の影が過ぎった。 すぐさま杖を引き抜く。精神を戦闘のできる状態にまで引き上げる。 「ノリアキ、スタンドで中を探って」 マチルダの強い声に、花京院はすぐさま『法王の緑』を出現させる。 しゅるしゅると身体をひも状にして中へ伸ばしていく。 「誰かいる?」 「いえ。ですが痕跡があります。ついさっきまで誰かがここにいました」 「そう。ノリアキ、スタンドを戻して」 マチルダは周囲を見やる。誰もいない。気のせいだったかと思いかけたとき、視界の隅に見覚えのある帽子を被った男がいた。そいつは草原の近くにある森の中に隠れるように走っていった。 なぜあいつがここにいる。マチルダは、背筋に冷たいものを感じ、即座に走り出していた。 「ついてくるんじゃないよ!」 マチルダが森の中に入り、歩き回るうちに日は完全に落ちてしまっていた。それでも彼女が見た人影は見つかっていない。見間違い、だったとは思えない。 寺院の中から吹いた風、あれは間違いなくあの男のものだったのだ。 しかし、どうやら完全に見失ってしまったようであった。彼女はひとまずタルブに戻るべきかと踵を返した。その目前に、男はいた。 「久しぶりだな。マチルダ」 「やっぱりあんただったんだね。ワルド」 男、ワルドは木の幹に背を預けている。右手に影に溶け込む黒の手袋をしていた。 あれはおそらく義手だ、と、マチルダは当たりをつけた。 彼女は杖先を向け、全身にじわりと殺意の熱を伝導させる。 体と心を構えた。 「いまさらこの国に何の用だい」 「下見だ。近々侵攻作戦が行われるのでな」 「へえ。ま、あたしは全然興味ないけどね。勝手にやってたらいいさ。でも、わざわざ顔を出したってことはそれだけじゃないんだろ?」 「話が早くて助かる」 ワルドは杖を抜いた。 「マチルダ。レコン・キスタに来い。我らには優秀なメイジが必要だ」 「いやだね。貴族やらなんやらは懲り懲りだよ」 「そうか」 風が襲い来る。強風ではなく暴風、木をへし折りマチルダを軽々空に舞わした。彼女はそれでも慌てない。宙を舞いながらしっかりとワルドを見つめ、魔法を唱えた。 ワルドのそばにゴーレムが生まれ、土の拳で殴りかかった。それは顔面に命中、したが、彼は霞になった。風の遍在。 マチルダは地面に着地し、身体を思い切り捻った。 肩に痛みが走る。血が飛ぶ。歯を食いしばり蹴りを見舞う。 「――さすがだなマチルダ」 「それはどーも。あんたのせこさに敵いはしないけどね」 マチルダは肩を押さえる。即座に反転したおかげで傷は浅い。 彼女の目の前には脇腹を押さえているワルドがいる。最初から背後に隠れ、遍在で攻撃させたのだ。だがマチルダも経験は豊富。相手の能力がわかっていればどういう作戦を立ててくるかも想像がつくもの。本物が顔を見せるとは砂粒ほども思っていなかった。 「やはりお前の力は欲しい。魔力だけではなくその判断力。レコン・キスタに入れ。 お前ほどのものであればそれなりの地位に着ける」 「いやだっつってんでしょ」 「お前の意見は聞いていない」 杖が唸りを上げて迫った。マチルダはそれを避けながら詠唱を始める。 だが、ワルドもそれは同じ。 『エア・カッター』 『ゴーレム』 ワルドの魔法をゴーレムで防ぐ。錬金が甘かったため簡単に真っ二つになったがその隙にマチルダはナイフを投げた。 「ちい!」 外したマチルダ、かろうじて避けたワルドが発する。 「姑息だな」 「そうさ。あんたみたいにね」 「そう言われれば、もっと卑怯な手を使うことにしよう」 マチルダを暴風が襲う。砂が巻き上げられ、地に踏ん張ることもできなくなり空を飛ぶ。 フライで体勢を変え地上に降り立とうとするが、彼女の視界に杖を差し向ける四人のワルドが見えた。 「マッズイわね、こりゃ」 風が幾重にも重なりマチルダに襲い掛かる。無数の刃に切り裂かれ、細かい傷がつけられる。愛用のコートもずたボロだ。どうにかレビテーションで着地をするも、畳み込むように魔法が向かってきた。殴られ切られ、弱い電撃を浴びせられる。杖は離していないが詠唱する暇がない。このままでは、なぶり殺しにされてしまう。 ちくしょう―― 「ぬおあ!」 急にワルドの悲鳴がした。魔法も止む。 マチルダは痛む身体を起こした。見ると、ワルドの遍在が一体消し飛んでいた。そして彼らが睨むその方向には、深緑の男が立っていた。この短い旅で親交を深めた、花京院。 「やはり、きたか」 ワルドが呟く。 花京院は黒眼鏡を外し、懐に収める。 「まるで予測がついてたようですね」 「そうさ。だから、お前の相手も用意している」 地より水が突き上げた。 「これは……」 それは花京院へ向かう。蛇のような不規則な動きで襲い掛かる。しかし、マチルダの知るものよりはるかに速度が遅い。花京院も『法皇の緑』で宝石を打ち出し水を散らした。 「遅いぞ」 「すいませんね。いや、ちょっと準備に手間取りまして」 そう言って、もう一人姿を現した。顔の半分が火傷に覆われている。マチルダと花京院にも見覚えがあった。先日仕置きをしてやった水のメイジである。 名前は、モット。 「なんであいつが生きているんだい」 「ああ、彼は予備の杖を地下に隠しておいたのだよ。それでも、あの火災で気を失っていたようだがね」 詰めが甘かった。マチルダは悔いるが、遅い。 「よくもまあ、あっさり仲間になったもんだね。女を渡してやるとかいったのかい?」 「ああ。性格は誰よりも醜いが、力だけはある。モット殿、そっちの男は任せましたぞ」 「おお!」 モット、すでにレコン・キスタに魂を売った男は花京院を森の奥に引き寄せた。彼にとって予想外だったのは水を使った攻撃をいとも簡単に打ち払われること、それだけだ。 作戦はすでに進行している。 人がいい、その弱点を突く。 「エメラルド・スプラッシュ!」 緑の像から宝石が打ち出される。モットは俊敏さが皆無のため氷を盾にしてそれを防ごうとする。しかし、なにぶん数が多いため二つほど身体に当たってしまった。 しかし彼も水のトライアングル、すぐさま治癒は完了する。 と、続けざまに宝石が飛んできた。魔法使いではない。詠唱を必要としないのだから厄介な相手である。まともにやりあえば力押しされて今度こそ殺されるか再起不能にされてしまう。だが、モットはただの悪党ではない。腐った悪党であった。モットは物陰に隠していたものを引っ張り出した。 「貴様……」 花京院が攻撃を止めて怒りをもらす。モットの腕の中に、裸の女がいた。 その人物はモットの毒牙にかからずにすんだものだった。 「わかってるだろうなあ。お前が動いたら、この女を見るも無残な姿に変えてやる」 「人質とは、随分汚い手を使う」 「なんとでもいえ。俺を舐めてくれた代償だ。お前たちはぜっっったいに、許さん! 出て来い!」 モットの声に応じ、木の陰から武器を持ったものが何人も出てきた。着ている服から傭兵などではなく農民だというのがわかる。しかし、タルブの村のものではなかった。 彼らの中に、姉を救ってくれと懇願してきた少年がいた。彼は顔面に大きな痣がついている。 「……ごめん、にいちゃん。俺は、」 少年の瞳には涙が溜まっていた。恩人に刃を向ける、そのことがどれほど辛いことか。 そして、己に逆らってきたものたちが苦しむさま、それらがどれほどモットに心地よいものか。 「いいか! さっきの使い魔を出すんじゃないぞ! 出したら即刻この女を殺してやるからな!」 花京院はおとなしくスタンドを消した。 「やれ!」 少年とその親であろう者たちは襲い掛かった。慣れていない武器をふるって花京院を殺そうとした。しかし鍬やカマとは使い勝手が全然違ううえ心が拒否をしている。この男を、恩人を殺したくないと。 標的の身のこなしもあって、いつまでたってもこの戦いは終わりそうになかった。だが、モットはここで一つのゲームを提案する。 懐から短い蝋燭を取り出した。 「いいか。これにいま火を点ける。この蝋燭が溶けきって、それでもまだ毛ほどの傷も男になかったら、この女の胸をえぐる」 「人間、ではないな。罪悪感はないのか」 「ざいあくかんんん~? 虫けらどもにそんなものが湧くか! お前たちはただ俺を楽しませればいいのだ!」 甲高い、醜い笑いがこだまする。 「さあ、スタートだ!」 火をつけられて女の家族はもう心の枷を外した。一心不乱で花京院に襲い掛かる。 何よりも大事なのだ。かけがえのないものなのだ。そのためには罪をも犯す。 涙を流し、喚き、剣を振るった。しかし、花京院にはそれでも当たらなかった。 かすりもしなかった。 「おいおい、当たってあげたらどうなんだ?」 「断る。貴様の思い通りにはならない」 「聞いたか? お前たちの姉がどうなってもいいんだとよ。ほら、早く殺してしまえ」 モットはそういうが、花京院は軽々と避けていく。少年たちは何度も当たってくれと泣き叫んだ。 やがて時間が進み、ろうが溶けきろうとしていた。そのときになって、ようやく花京院は己の足を止めた。 「観念したようだぞ! はやくやれ!」 女の家族たちは武器を握り締め、彼を囲んだ。にげようとしなくなったので心の火が急速に勢いを弱めたようだった。 「ほらほら時間がないぞ。早くしないか」 憎い男の声がした。できることならあの人物を切り刻みたい。みなそう思っていた。 しかし、できない。無力であるから、力がないから言われたとおりにするしかない。 じりじりと、女の弟である少年が花京院に近寄っていった。ナイフの切っ先を向ける。 「――ごめん」 少年のナイフは当たるどころかかすりもしなかった。花京院はすっと彼を避けて歩みだした。拍子抜けしたモットだったが、すぐに水を花京院の目の前に突き出した。 「なんのつもりだ? この女がどうなってもいいのか?」 「いや、よくない」 「なら後ろに下がれ。下がって狩られろ!」 「それはやめておく。痛いのは嫌だ」 「ふざけてるのか!」 「ふざけてない。僕は、たんに貴様の思い通りになるのが嫌なのだ。貴様みたいな小物に従わせられることが。誇りがあるからな」 「誇りだあ? お前みたいな平民がなにを言っているのか。そんなものを口にしていいのは貴族だけだ。俺のような、魔法を使えるメイジだけだ!」 花京院は笑った。 「なにがおかしい」 「おかしいさ。こんなことをしておいて、まだ自分に誇りなんてものがあると思い込んでいるんだからな」 馬鹿にした笑いだった。見下された笑いだった。 それはモットの怒りに薪を注ぎ足す行為だった。 「もう……もういい。お前たちは、泣け。泣き喚け。絶望に身をよじろおおおお!」 花京院の眼前にあった水がモットに飛び掛った。それは女を、身動きのできぬ女を狙ったものだった。 刃はやすやすと肉を突き刺した。 「なあ、なあああああ、なんんでえええ水が俺を刺したんだよおおおおおおおお!」 モットの手から杖が落ち、彼の身体を突き刺していた水は形を成さずに地面に流れた。押さえが外れたためその上に血が流れ落ちる。 人質になっていた女は、モット自身が直前に放したので無事だった。花京院は彼女を抱えて少年たちに向かって歩いていった。 そして大柄な体格をしたもの、恐らく父親に渡した。 「さて、おまえをどうするかだが、どうなりたい。モット」 「ひ、ひぎいい、痛いんだ。痛いんだよおお。な、治してくれええ。杖を取ってくれるだけでもいいからよおおおお」 「そうか助かりたいか」 花京院はモットのところに戻った。 「何も知らないままではかわいそうだ。せめてもの情け、どうして水がお前を突き刺したか、それぐらいは教えてやる。僕のスタンド、法王の緑は紐状になることができる。そして人の身体の中に侵入して操ることができる。僕はお前の意識だけを残し、身体を操った。 さて、それで、これからどうすると思う?」 「た、助けて、助けてくださいいいい。いのち、命だけは、命だけはああ……」 「お前はいままでそう懇願してきたものを助けてきたか?」 いいや、痛めつけて悲鳴を奏でさせた。 「や、やめて、やめて、やめてくれえええ」 「だめだね」 花京院はモットに背を向けた。 「絶望に身をよじり、死ね」 言葉が終わると、モットの中で何かが切れた。彼の人生はここで終結した。 花京院のもとに少年がやってきた。痣だらけの顔には、またしても涙が流れていた。だけど言葉は、生まれてこなかった。謝罪をするべきだ。 礼を言うべきだ。 でも、彼の口からは何も出てこなかった。 「俺、俺……」 花京院は布を当てる。 「その顔、君はあの男に殴られたものだろう?」 縦にうなずいた。片目がつぶれていて腕や足にも傷がついている。 「よくやった。敵わなかったが、それでも君は、この『世界』と戦ったんだ。 誇りに思えばいい。貴族でもないし、魔法も使えないけれども、君は立派だよ」 「……」 「それじゃあね。僕はあの人のところにいかないといけない。今回は駄目だったかもしれないけど、生き残ったんだ。次こそ、いつか危ない目にまたあったとき、守ってやればいい。がんばれ」 「……がんばる」 ぽんぽんと少年の頭を叩き、二人は別れた。 ワルドは改めて杖を構える。花京院とモットは少し離れたところで戦いを始めていた。 「さて、お前の頼みの綱は切れたぞ。フーケよ、まだ下らんか」 「当たり前じゃないか!」 マチルダは地面の土を蹴り上げた。それは魔法で鋭利な刃と化しワルドを襲った。 不意を突いたおかげでいくつか掠めるが軽傷だ。 勢いと重量が足らない。 「どこまで刃向かうつもりだ?」 「そうさね。どこまでもか、ね」 風の拳に殴られる。胃液を吐く。血が出ないことから内臓は大丈夫のはずだ。 打撲ぐらいにはなってたりするかもしれなかったが。 ワルドが近寄り、マチルダを見下ろした。感情のこもっていない瞳。 「お前は、なぜ頑なに拒否をするのだ」 「わからないのかい?」 マチルダは立ち上がる。ふう、ふう、と、荒い呼吸を繰り返す。全身から血が流れ、顔も土に塗れている。圧倒的な敗北、それを前にしている。それでもなお、彼女は以前戦った少年のように強く気高い視線を向けた。 「あんたってさあ、一つのためになりふりかまわず、どんなことでもするでしょう。 どんな汚いことでも、ね」 「ああ。もちろん」 マチルダは笑う。 「だからさ。こんな盗人で、どうしようもないあたしだけど、大切なもんがあるんだよ。 もし、あんたたちに与して、そういうことをして、そこそこの地位を得て、金を得たところで、その大切なもんはきっとあたしから遠ざかっていくんだよ。だから、あんたの仲間になっちゃいけないのさ。だから、あんたたちに――」 マチルダは後ろに下がった。 「負けやしないんだよ!」 杖を振り魔法を使う。その呼びかけに応じ、彼女の足元から大型のゴーレムが生まれ出てきた。 「ふん。くだらん感傷だ。マチルダ、お前には失望した」 「結構だね! やっておしまい!」 命令を受け、ゴーレムは腕を振るった。木々をなぎ倒しワルドを狙う。だがその質量のため動きは遅い。ワルドも風の扱いは一流、蝶のように避け魔法を放つ。それは直撃しないもののマチルダに新たな傷を作っていく。 さらにワルドの遍在も四体に戻り、彼女をペンタゴンのように囲んでしまう。 逃げ場所は、ない。 「まずはその煩わしいゴーレムからだ!」 五人のワルドが同時に魔法を放った。五つの風がゴーレムに食らいかかり巨体を揺らす。破壊力を逸らすこともできず、ゴーレムは粉みじんに砕け散る。土が地面へ降り注いだ。 ワルドはここで気づいた。マチルダがいない。彼女はゴーレムの破壊に乗じてその身を隠したようである。 逃げた、わけではない。土を被り息を殺しているのだろう。ワルドの顔に笑みが浮かんだ。心底滑稽だといわんばかりの。 彼は魔法を使った。風が周囲の土を巻き上げていく。マチルダごと巻き上げてしまいそうな暴風だった、が、彼女は地面に蟻のように張り付いていた。 「無様だな。マチルダよ」 そう言ってワルドは歩み寄る。マチルダはうつぶせになって睨み上げていた。 その瞳にまだ諦めはない。用心をする。 「なにか、まだあるのか?」 ワルドがすぐそばに近寄り、見下ろした。瞬間、マチルダは身体を捻りワルドの身体を剣で切り上げた。錬金で作り上げた剣を地面に埋もれさせていたのだ。 しかし、 「惜しいな。それも遍在だ」 そう言い、ワルドはマチルダの腕を剣杖で貫いた。 「ああ、あああああ!」 「ふむ、妙齢の女の悲鳴か。モットが喜びそうだが、俺にとってはただうるさいだけだ」 マチルダの腹を踏んだ。彼女は息がつまり、悲鳴も止んだ。 ワルドは杖を引き抜いた。 「さて、最期の勧誘だ。レコン・キスタに入れ」 勝敗は決した。兎が虎に勝てぬように、トライアングルはスクウェアには何があろうと勝てはしないのだ。 ワルドはそう思っていた。 マチルダは見上げた。 「あんた、あんたが――………」 「聞こえん。大きな声で言え」 マチルダはつばを飲んだ。 「………あんたが、やったんだ」 「はあ?」 「不思議に、思わないかい?」 「なにをいっている……」 ワルドは気づいた。この最期のときにおいて、マチルダの瞳に絶望というものがないということを。 マチルダは続けた。 「あんたが巻き上げた土。あれは、どこに――」 ワルドは聞けなかった。己の絶叫と、痛みで。 彼の肩に一本の剣が突き刺さっていた。杖が落ちる。 「――な、なんだこれは!」 続けて遍在にも剣が突き刺さり、消えていった。ワルドは上空を睨んだ。空には、信じがたい光景が広がっていた。 剣、ナイフ、それが宙に浮いていた。種類はそれだけだ。だがその数は、空を覆わんばかり。 それほどの無数の刃が彼らに向けて落ちてきていた。 「は、はは、さしずめ『ソード・レイン』っていったところかね」 ワルドはこの土がどこから出てきたのか、すぐに勘付いた。 「貴様、俺が巻き上げた土に錬金を――」 「正解。あたしの風だけじゃ心もとなかったからね。あんたのを利用させてもらった、よ!」 懐のナイフでワルドの足を刺した。 「逃がしはしない。この雨を、受けきりな!」 「よせ! 剣を変えろ! お前も死ぬぞ!」 「それもいいんじゃないかい?」 「そんな! そんな馬鹿な! この俺が、こんなところで――」 ワルドの声が途絶えた。喉を貫かれたからだ。さらに続けて全身を刃が貫く。 剣と血の雨が降った。 マチルダはワルドを蹴っ飛ばした。 彼女の身体には無数の傷がつけられていたが、大きなものは一つもなかった。 自身が作り上げた剣やナイフは当たりはしたが、深くはならなかったのだ。これは運がよかったというのではなく、盾を使ったからだ。 ワルドという肉の盾を。 もはや物言わぬ死体を見下ろし、マチルダは呟いた。 「こういうとき、なんていうのかね」 「正義は勝つ、でいいのでは?」 その声に振り向くと、花京院が立っていた。満身創痍のマチルダと対照的に無傷である。完勝したようであった。 「そっちはどうだったい?」 「少々疲れました」 「あたしはもう動けないぐらいだよ」 花京院が手を差し出した。マチルダはちょっと考えたものの、土と血で汚れたままの腕を差し出した。そのとき、花京院は予想外の行動に出た。 「ちょちょ、ちょっと!」 「どうしました?」 「どうしましたじゃないよ! なんでかかえる必要があるのさ!」 その通り、花京院はマチルダを立たせたのではなく俗に言うお姫様抱っこをしたのだ。 二十を過ぎてこんなことをされては彼女も恥ずかしい。だが、いくら叫んでも彼は彼女を降ろそうとはしない。 「動けないっていったのはあなたじゃないですか」 「それはそうだけど、あたしゃいい年だよ。ちょっとキツイ……」 「我慢してください」 やがてマチルダも体力がないので暴れることをやめ、花京院に身を預けることにした。 しかし、最期に一つ。 「あたしなりの敬意だよ」 魔法を使い、ワルドの体を土に埋めた。墓標はない。 「ああ、もうこれでスッカラカンだ。とりあえず眠るから、説明は頼むわ」 「わかりました」 マチルダは花京院の首に顔をうずめ、静かに眠りについた。
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「ない。ありえない。ディ・モールト(本当に)ありえない。」 高価そうなアンティークが飾られた部屋。 メローネはルイズとこの部屋で二人っきりであった。 しかし!事もあろうにメローネは!こんなディ・モールト(とっても)いい状況でッ! ・・・現実逃避の真っ最中であった。 普段冷静で理屈で動いている者ほど、自分の理解の範疇を超えた物事に遭遇すると それを認めることはできないものである。 「ないないないないナイナイナイナイナイナイ こんなバカなことがあってたま・・・・」 そのとき彼の目に飛び込んできたのは・・・二つの月であった。 ゼロの変態第二話 使い魔暗殺者(ヒットマン)メローネ! 部屋に帰ったメローネがルイズから聞かされたのは、だいたい次のようなことであった。 ・ここはハルケギニア大陸トリステイン王国のトリステイン魔法学院。 ・そこの2年生恒例の『サモン・サーヴァント』の儀式の時メローネは召喚された。 ・使い魔を送り返す魔法なんて無い。少なくにもルイズは知らない。 ・ちなみにここには身分制度がある。 ・貴族(メイジ)は魔法が使える。平民は魔法は使えない。 ・だから貴族が上ッ!平民が下だァァ!! その他諸々のことである。 「・・・信じるしかないようだな。ここが『異世界』だということを・・・。」 信じたくないという顔をしながらメローネはつぶやいた。 「それよりあんたの言ってることの方が信じられないわよ。 だいたい証拠でもあんの?」 「・・・これじゃ証拠にならんか?」 メローネは自分のパソコンを見せた。スタンドパワーで動いているのでここでも使える。 その事だけが彼にとって救いだった。 「たしかにこんなものここにはないけど・・・。」 (だからって怪し過ぎよッ!ただのド田舎モンにきまってるわ!) ルイズがものすごい怪しんでいる一方、メローネの頭は冷静さを取り戻していた。 元々頭脳派のメローネである。冷静さを失ったらただの変態である。 (帰れないとなると、ここで生活するしかないな・・・ 言語すらわからんこの世界では俺ひとりでは・・・きっと暮らせない。 やはり使い魔になるしかないのか・・・) (それに・・・俺はあのとき新入りが作った蛇に噛まれて死んだはずだ・・・ となるとこの女・・・命の恩人という訳か・・・) そしてメローネが出した結論は・・・ 「・・・なるよ。」 「へ?」 「なると言ったんだ。お前の使い魔に。」 「えっ?あっ、そ、そう。や、やっと自分の立場が理解できたのね。」 さすがのルイズも急に話しかけられのでびっくりしている。 「で、使い魔って何をすればいいんだ?」 「ま、あんたにできそうなのは掃除洗濯その他雑用ってとこかしら。 どうせ戦いとかは無理でしょ?」 「ま、まぁ無理だな・・・。」 スタンドのことは言わないでおこう。厄介ごとになるかもしれない。 「じゃ、明日から仕事してもらうから。」 「ヲイ、ちょっと待て。・・・何してる?」 目の前で女の子が服を脱ぎ始めるのである。誰だってそー言う。彼だってそー言った。 「何って・・・寝るから着替えるのよ。」 「・・・・・・わかった。・・・俺はどこで寝ればいい?」 ルイズは黙って指さした。・・・床を。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(毛布があるだけマシか・・・?)」 「あ、あと明日になったらこれ洗濯しといて。」 メローネに下着を投げつけるとルイズはベッドに潜り込み、指を鳴らしてランプを消した。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 メローネは理性を保つので精一杯だった。いろんな理由で。 「やめといた方がよかったか?」 メローネはこれから訪れるであろう受難の日々を想像し、ジャッポーネのゲームなら いろいろオイシイ展開になってるのにと思い、おとなしく寝た。