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作成された各マネージャー様、乙です。 らぶドル~Lovely Idol~ 12期目 http //anime.2ch.net/test/read.cgi/anime/1165132684/423 423 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2006/12/05(火) 22 03 59 ID rymQaEQ0 5枚揃ったので「LoveLoveLoveのせいなのよ!」 パート超・決定版(全体部分は略) (茅原) きーーーめーーーーた! (野川) 運命なんですこれから! 始まる夢には!抵抗でっきなーーい~~~! (酒井&桃井&茅原) う~~~~~~~いぇい♪\(≧∇≦) (中原) キラキラ未来を探して~ 誰もが彷徨う、迷路を抜けたの! 走れ! とぅ~おぶはーと♪ (酒井) そっとそっと肩へと (茅原) (゚∀゚)人(゚∀゚)ぴた♪ (後藤) ほっぺった、くっつけたい♪ (茅原) ちゅ? (酒井&後藤) なぁぁぁああああああああああああっぜぇぇぇええええええええ♪♪ ふーるーえーるぅ~~~~~のぉ~~~? へぇーーーん~~~~~だわ~~~~~~~~~~!!!!!! (茅原)大好きなんです瞳に~ あふ~れるしずくは~純粋なめっせ~じ~~~ (野川&後藤&中原)(う~~~いえ~!) (桃井)ふわふわ気分に抱かれて わた~しは目を閉じ黙ってる待つわ~ つぎ~の~らぶふぉぉ~~ぴ~~~す (後藤)きっときっと空で~は (茅原) (゚∀゚)ふわ♪ (酒井)ほ~ほえむ太陽~ (茅原) (゚∀゚)キラッ♪ (酒井&後藤) ねぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ♪♪ ふーたーりーなぁ~~~~~らぁ~~~? ふらぁーーーい~~とぅ~~~ざ~さ~~~~~~~~~ん!!!!!! サビ部分のヴォーカル配置はおそらくEDアニメの通り左から 後藤、酒井、野川、中原、茅原、桃井と思われるが確証無し 新作追加、2番です。 作成された方、ありがとうございます。 (茅原)大好きなんです瞳に~ あふ~れるしずくは~純粋なめっせ~じ~~~ (野川&後藤&中原)(う~~~いえ~!) (桃井)ふわふわ気分に抱かれて わた~しは目を閉じ黙ってる待つわ~ つぎ~の~らぶふぉぉ~~ぴ~~~す (後藤)きっときっと空で~は (茅原) (゚∀゚)ふわ♪ (酒井)ほ~ほえむ太陽~ (茅原) (゚∀゚)キラッ♪ (酒井&後藤) ねぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ♪♪ ふーたーりーなぁ~~~~~らぁ~~~? ふらぁーーーい~~とぅ~~~ざ~さ~~~~~~~~~ん!!!!! (゚Д゚ ) (゚Д゚ ) 「カエレカエレー!」「ひっこめよー!」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「おぃ、聞いてみろよ」「あん?なんだよ」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「・・・・・・・・・」 ヾ(゚∀゚) (゚∀゚)ノシ「なかなかイイジャン!!」 (゚Д゚ ) (゚Д゚ ) 「カエレカエレー!」「ひっこめよー!」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「おぃ、聞いてみろよ」「あん?なんだよ」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「・・・・・・・・・」 (゚Д゚ ) (゚Д゚ ) 「カエレカエレー!」「ひっこめよー!」
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「ところで、いつ出発する?」 ブチャラティが気絶したアンリエッタをルイズの寝床に運びながら一同に質問した。 彼は王女の背面から腕を回して胴を掴むと同時に、膝の下に差し入れた腕で足を支えている。 俗に言うお姫様抱っこだね。 「本当なら今すぐにでも出発したいところだけど、姫様をこのままにしておくわけにもいかないし……」 ルイズはしばらく考えた後、二人に答えた。 「あなた達にも何かと準備があるでしょう? 出発は明日早朝にしましょう。姫様がおきるまで私が気をつけておくわ。あなたたちは自分たちの用意をしておいて。 朝、日の出の時間に正門前に集合ね」 「わかった」 「ルイズ、君も今日は早めに休むんだぞ」 「ええ、あなたたちもね」 ルイズの部屋を出た直後、露伴が口を開いた。 「ブチャラティ、今日はここで分かれよう。僕はこれからすることがあるんだ」 「どうした? 俺も手伝おうか?」 「いや、手伝いは必要ない。二人の人に、僕のマンガが長期休載になるかもしれないことを知らせておきたいんだ」 露伴はルイズに召喚されたその日から、トリステイン学院内でマンガの連載を開始していた。 「その二人とは誰だ? 場合によって話さないほうがいいかもしれないな」 「まず、一人目はコルベール。彼には出版ギルドへの仲立ちをしてもらっているからな」 学者肌のコルベールは技術書や学術書に目がなく、気に入ったものがあると金目に糸目をつけずにその本を買う癖があった。そのため、トリステイン学院を出入りする本商人にとって、彼と知己を得る事は大変に重要なのであった。 露伴はこのコルベールの人脈を介してトリステイン国中の出版ギルドに渡りをつけ、 それらのギルドの出版能力をすべて審査した。 その結果、露伴はギルドの中で最も有能と思われた『トリスタニア出版ギルド』とマンガの出版の契約を交わしていた。 ちなみに露伴の原稿は、毎週の早朝学院から早馬によってトリスタニアの活版印刷の職人のもとへ持ち出される。 この早馬の便もコルベールがオールド・オスマンを口説き落として(というか辟易させて)露伴の原稿のためだけに新設された便なのだった。 「彼なら秘密を守るだろう。問題ない」 ブチャラティは少し考えた後、落ち着いて太鼓判を押した。 彼ならば生徒の身を第一に考えるだろうから、このような大変な話を外部に漏らすハズはない。ブチャラティはそう考えての結論だった。 「二人目はタバサだ」 「どーしてここにタバサが出てくんだ?」 デルフリンガーの柄の上に、『?』マークが点灯した。ブチャラティも同じ反応だ。 「実は、彼女に僕のマンガのセリフ入れを手伝ってもらっている」 岸部露伴は、文字に関してはコルベール先生に教わっているので、学術的な文語的表現については熟練しているが、セリフなどの日常的な言い回しなどは、とてもではないが書きこなせるレベルには達していない。 なので、毎日空いた時間にタバサと図書館で落ち合い、彼女と一緒に、マンガらしく口語的でわかりやすいセリフを考えているのだ。 さすがの露伴も、彼が旅行中に、タバサに図書館で待ちぼうけを食らわせるのは気が引けた。 「じゃあしばらく取材するとか何とか、適当に言いつくろえばいいんじゃねーか?」 「そうだな。デルフの言うとおり、彼女には任務の内容は話すべきなでないな」 「それもそうだな」 二人と一振りの剣は別れを告げ、ブチャラティは男子寮の方角へ、デルフを持った露伴は教員寮にむかって別々に歩き出した。 その会話から二時間後。梟がどこか遠くで鳴いている。 岸部露伴は悩みながら女子寮の廊下を歩いていた。 今はもう深夜だ。よく考えたらタバサはすでに眠っているんじゃあないか? 今回の密命の件をコルベールに打ち明けると、奴は思ったよりもはるかに強硬に、 ルイズをアルビオンに行かせるなと反対した。 あのコッパゲ野郎め。デルフと二人がかりで何とか説得することに成功したが、今度は命を粗末にするなと何度も念を押してくる。まったくうんざりする。 酒を口に入れながらの話だったから話の内容はどんどん長く、くどくなっていくし。 僕はデルフを残してこっそりと部屋を出たが、コルベールのあの様子じゃあ今でもデルフを相手にクダを巻いてるだろうな。 こんなことなら、コルベールよりも前にタバサの部屋に行くべきだったな…… 起こすか? いや、手紙か何かを部屋の前に置いて行くか? そのようなことを考えながらタバサの部屋の前に到着すると、彼女の部屋から明かりが廊下に漏れている事に気がついた。 「おや、おきているのかな?」 「眠れない。あなたのせい」 部屋ををノックした露伴は、ドアを開けたタバサに開口一番、こういわれた。 彼女は腕を組み、体を震わせている。確かに今のタバサは薄い水色のワンピースを一枚着ただけの薄着だが、寮の中は、魔法でどんな季節でも快適なように設定されているはずだ。実際、露伴は薄着だが寒さを感じてはいない。 どうやら彼女は寒くて震えているわけではないらしい。 「なんでだ?……ってオイ!」 タバサが勢いよく露伴に抱きつく。その目には、おびえの感情が見て取れる。 露伴は、タバサの部屋の前の廊下で、当惑の声を上げるハメになった。 「あれ」 タバサは露伴に抱きついたまま、自分の室内を指差した。 彼女が指差した部屋の中の机の上には、先月にでた『ピンクダークの少年』が半開きに、読みかけのページを下にして放置されていた。 その巻は『ウインドナイツ・ロットの幽霊』の話がメインであり、少年を中心に人気のある、怪談ものの話だった。 「もしかして君、幽霊が苦手なのかい?」 露伴は、タバサの少し赤く充血した目を見つめてみた。 「いわないで」 彼女も、彼のかなり当惑した目を上目遣いに見据えた。 彼女の心の底からこみ上げているだろう、恐怖におびえるさまが、日ごろの無感動な態度と明確なコントラストを生じている。 タバサも年頃の女の子なんだな。 そう思った露伴は微笑みながら自然にタバサの頭をなでていった。 ワシワシワシワシワシワシワシ ワシワシワシワシワシワシワシ 「ん…」 タバサの体の震えが徐々になくなっていく。 それと同時に、彼女の頬に少しずつ赤みがさしていった。 「ちょっとは落ち着いたかい?」 「……うん」 タバサはうれしそうに返事した。彼女の心に安心感が芽生えたようだ。 露伴は本題に入ることにし、タバサに向かってやさしく語りかけた。 「話がある、僕はこれからしばらく取材旅行に出かけようと思ってるんだ」 「だから、明日からは君が図書館に手伝いに来てくれても誰もいない。このことを君に伝えに着たんだ」 「………そう」 わずかに語尾を落として返事したタバサは、目をつぶって露伴にささやいた。 「なら、代わりにもっとして」 「なにを?」 「なでるの。頭」 一瞬惑った露伴であったが、そのようなことであるのなら、と思い直し、素直にタバサの言うとおりにすることにした。 ワシワシワシワシワシワシワシ ワシワシワシワシワシワシワシ 「ん…………?」 露伴にとっては静寂の中、タバサの脳内で聞きなれた声が響き渡った。 一般にメイジと使い魔の感覚は共有できる。それを利用して、タバサの使い魔のシルフィードが自分で声を囁き、タバサにそれを聞かせているのだ。 というか、よく見ると廊下の窓の外から水色のうろこがチラリと見えている。 露伴の背中に面した位置にある窓なので、彼は気づいてはいないようだ。 オネーサマ、キャーナノネ!!!! タバサが突然露伴に抱きつくのをやめ、ドアの近くにある自分の杖をとった。 ……ゴメンナサイナノネ… タバサは元の場所に杖を置いた。 「どうしたんだい?」 「なんでもない。杖が落ちそうだっただけ」 「そうか」 窓の外の青色はもう見えなくなっている。タバサは露伴の正面に改めて向かい、 目を静かに閉じた。 ワシワシワシワシワシワシワシ ワシワシワシワシワシワシワシ 露伴の手の動作は、タバサが「もっと」を十回言い、彼女が満足するまで続いた。 「もういいか?」 「……うん」 満足してベッドに戻ろうとしたタバサは、何かを思いついたのか、露伴のほうに振り返り、声をかけた。 「ひとつ、質問」 タバサは露伴に話しかけながら彼の両手を握った。露伴との位置は、彼になでてもらっていたときよりも少しだけ距離がある。 心なしか、彼女は詰問するような口調だ。 「なんだい?」 「『ブルーライトの少女』……」 ギクウッ! 露伴は自分の動揺を気取られまいと、目をタバサからそむけながら返答した。 「ソレガ、ドウカしたのかな?」 タバサは露伴の顔が見られるところまで自分が移動し、露伴の目を正面から見据えて質問した。 「セリフを考えたのは誰? この『ウインドナイツ・ロットの幽霊』の話も」 「私はやっていないし、あなたが考えたにしては口語的過ぎる」 「それはギーシュだよ! 初期は彼にやってもらっていたんだ!」 露伴の首筋から一筋の汗が流れ落ちる。幸いタバサはそれに気づいていないようだ。 「そう」 タバサは安心したのか、露伴の手を離し、自分のベッドに向かった。 「もう、寝る」 「そ、そうか。おやすみッ!」 「おやすみなさい」 逃げるように部屋を出た岸部露伴は、タバサの独り言を完全に聞き逃していた。 「他の女子ではない……」 トリステイン学院が日の出を迎える頃…… 鶏の鳴き声がどこからか聞こえてくる。 早朝、朝もやが視界を狭いものにしている時刻。トリステインの正門前に、三頭の馬が待機していた。 ルイズたち一行は出発の準備を終え、これから乗馬してアルビオンに向けて旅立とうとしている。 「さてと、出発しましょうか」 ルイズがみなに向かって呼びかける。 彼女の話しかけた先には、ブチャラティと、デルフリンガーを持った岸部露伴がいつもの様子で立っていた。 その様子から、彼らに緊張した様子は見られない。二人とも落ち着いている。 「ルイズ、君は、昨晩あまり眠れなかったようだな、大丈夫か?」 ブチャラティの心配にもルイズは気にすることもなく答えた。 「大丈夫よ、ブチャラティ。姫様が気を取り戻すまで看病を続けていただけで、その後はグッスリよ。自分でも驚いているわ。今から国の運命をかけた使命が待っているって言うのにね」 「その分なら大丈夫な様だな」 ブチャラティは内心安堵した。彼は今回の任務で、ルイズが必要以上に気負いずぎているのでは、と一抹の不安を抱いていた。彼はひとつの懸念がなくなったことを内心で喜びつつ、ルイズに確認した。 「これからまずどこに向かう?」 露伴が自分の馬の鞍の位置を細かく直しながら、背後にいるルイズに話しかけた。 「まず、ラ・ロシュルの港街へ向かい、そこからアルビオンの船に乗るわ」 ルイズが手馴れた様子で馬にまたがりながら露伴の質問に返答する。 「私は姫様の代行だから、途中の馬車駅で馬の交換ができるわね。そう考えると… 無理をすれば、ラ・ロシュルの街まで二日でつけるかもしれないわね」 「そうか」 そう返事したブチャラティは、まだ十分に馬を乗りこなせないので、露伴に手綱捌きを教わっていた。 「基本姿勢は手綱をゆるく、水平に保つんだ。後は、曲がりたいとき、自分の行きたい方角へ手綱を寄せればいい」 「本当にそれだけで良いのか?」 「ああ。この馬は調教されているから、速度は前の馬にあわせてくれるだろうしな。 君は列の先頭に出ない限りこれで馬を操れるはずだ」 「なんだか不安だな。ところで露伴、お前なんで馬に乗れるんだ?」 「これくらいは漫画家としては常識の範囲内さ。マナーといってもいいかな?」 ブチャラティは少し離れたところにいるルイズに気づかれないように、彼女に背を向けた位置に移動し、馬のことを教わる振りをしながら露伴にそっと話しかけた。 「ところで、アンリエッタ王女の『使い魔』の件だが…正体はスタンドか?」 「多分な…」露伴はあいまいに答える。彼の口調には罪悪感は微塵もないが、その返答は心底答えにくそうであった。 「多分? お前は彼女を本にして見たはずだろうが」 「その部分は読んでない」 「Cosa?(何だと?)」 「だから、読んでない。知らない」 「テメーッ!王女のスリーサイズだの初潮の日だの読んでる場合じゃねーだろッ! 一番重要な情報を読んでねーじゃねーかッ!」 思わずチンピラ時代の口調に戻るブチャラティ。 「やあ、君t」 「うるさいな!第一あの時誰かさんが邪魔しなければ読めていたんだよ!」 「つーか最初に『能力』を見ろッ!!」 「『能力』は見たさ!『水』系統のトライアングルクラスだよ! でもメイジに『スタンド』があるなんて普通思わないじゃあないか! 意識して探さない限りあの時間では探せないっての!」 「嘘付けッ!」 「あの…」 「そいつはおでれーた。お前ェはあの時王女にそんなことしてたのか! すげぇな、ロハン」 「デルフ!今はそんな事いってる場合じゃねーだろッ!」 「うわッ!ヒデ!俺も会話に参加したいのにさ…」 だが、この喧騒も彼女の一言で打ち切られることになる。 「ふ~ん……姫様に…………そんなこと……してたんだ…」 「お~い……」 「あんたたち…『プライバシー』って言葉…知らない?」 露伴とブチャラティが振り返ると、そこにはピンクの髪の鬼がいた。 ルイズの周りに、何か鬼気迫る危険なオーラが渦巻いている。 「ウフフフフフフフフフ…………『平民』には何を言ってもわからないのかしら?」 ルイズが杖を振り上げながら何やらブツブツと呪文を詠唱している。 詠唱時間の長さから、それなりに大物の魔法のようだ。 しかし、彼女がどんな魔法でも失敗するという事実はかわらない。 変わるのは、爆発の規模だ。 そして、長い詠唱の後、彼女の光り輝く杖が渾身の力をこめて振り下ろされるッ! 「「ヤバイッ!!」」 まさに振り下ろされる瞬間。 二人は今まで口論していたのが疑問に思われるほど、両者タイミングぴったりに杖の振り下ろされる方向からそろって身をかわした。 「ドォブゥッハァ!!!」 あたりに響き渡る壮絶な爆音。 ブチャラティと露伴には被害はなかったが、少し離れたところに穴が開いている。 その爆心地には、見慣れぬ貴族の青年らしいメイジが半分黒焦げで倒れていた。 意識はとうに吹き飛んでいるようだ。 「大変! 傷薬を!」 正気に返ったルイズが男の元に向かい、手馴れた手つきでその男の治療をしていく。 ほっと一息ついたブチャラティは、傍らにいる露伴に話しかけた。 「おい露伴、ルイズのあの手つき。妙に手馴れてないか? まるで何度も他人の火傷を手当てしたことがあるみたいだ……」 「みなまで言うな。君の言いたいことはわかってるさ…… まッ、なにはともあれ、 ルイズの関心がそれたことだし、これで一安心だな」 「なわけあるかッ!」
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「海軍少尉、佐々木武雄、異界ニ眠ル、か」 シエスタにひい祖父の墓の前に案内されたシュトロハイムが呟く。 「え、シュトロハイムさん、これ読めるのですか!?」 「腐っても大佐だ、ドイツ語はもちろん英語フランス語デンマーク語イタリア語日本語などお茶の子よッ!」 「よくわかんないけどすごいわねー」 キュルケがパチパチと手を叩く。 「へえ、平民で大佐とはすごいな、僕の家も長く武家をやってるが、平民で佐官まで上り詰めた人間なんて そう聞いてないな。君の国はどこなんだい?」 ギーシュがそう尋ねた。 「う、うむ…ま、まあその話はオスマンにでも聞いてくれ…」 すると途端にシュトロハイムの歯切れが悪くなる。 「なによー、別にいいじゃない、言っちゃいなさいよ」 キュルケが促す。 シュトロハイムは特徴的な髪を片手でいじりながらゴホン、と咳をしてから話した。 「うむ、それなんだが…信じてもらえないかもしれないが、違う世界から来たのだ」 「違う世界ですって?そういえば私の使い魔もチキュウというところから来たって言っていたわね」 シュトロハイムがものすごい形相でルイズに振り向いた。 「なんだと、そう、俺もその地球から来たのだ!うむ、一度あってみたいな、その使い魔とやらに!」 「まあ、そのうち会えると思うわ」 「うむ、楽しみにしているぞ!」 シュトロハイムが大きく頷く 「あまり過度な期待はしないほうがいいと思うけれどね」 「よし、これで遺言通り墓碑銘も読んで機体も頂けた、あとはガソリンを入れるだけだぞ、コルベール!」 「うむ、ぜひともあれを飛ばしてみたいですぞ!」 シエスタがにっこりと笑う。 「わたしも、ぜひともあれが飛んでいるところをみたいですね」 「うむ、では初飛行と行こうか、空の羽衣、いや零式艦上戦闘機五二型のな!」 「ふむ…よい整備状況だが、少々無線とかををいじらねばな」 シエスタに空の羽衣の場所まで案内されたシュトロハイムは、周りを調べながら呟いた。 「ほう、無線とはなんですかな?」 コルベールが興味津々で尋ねる。 「まあ待て、コルベール、俺の胴体を一旦解体してくれ…うむ、そうだ、そしてそこの四角い物を 取り出して…ああ!コルベール、もっとやさしく!そこはダメだッ!ダメッ!ダメッ! そう、そうしてそれを取り出したら、横の……」 作業が終わるのを暇そうに一行は眺める。 「それにしてもここは眺めのいいところねー」 キュルケが大きく体を伸ばす。 「ええ、わたしもこの景色、大好きですよ…田舎ですけれどもね」 シエスタがはにかむ。 「ああ、そうでした、ここのワインは景色とならんで自慢なんですよ! 後で振る舞いますのでぜひどうぞ、シュトロハイムさんたちもどうですか?」 しかし、彼らは集中しきって聞いていない。 いつのまにかギーシュも見慣れない部品でできたシュトロハイムの体に興味津々だ。 「まったく、これだから男の子ってのはねえ…」 キュルケがなにかを悟ったように呟いた。 「うむ、これで完成だ!では飛ばすぞ!…しかし、戦闘機に乗るなど久しぶりだな、 ルフトバッフェから降ろされたのがこの体になってからの唯一の心残りだったが、それも晴れた」 エンジンが音を立てて震えだし、シュトロハイムはゼロ戦に乗り込む。 「滑走距離よし、離陸する!」 長い長い草原の上を地平線めがけて車輪が回り、機体が進み始める。 かなり長い距離を進んでいき、そして、ゼロ戦は唐突に車輪が地面から離れた。 ゼロ戦は浮き上がり、そして大空へ舞い上がった。 近くの住民たちが歓声を上げる。コルベールの歓声は一際大きかった。 「天気晴朗な…ど波高し…どう…聞こえ…か?」 空にいるはずのシュトロハイムの声が後ろから聞こえ、驚いてルイズ達は振り向く。 「ど、どこにいるのシュトロハイム!?」 「コルベ…ル…渡した機械に向か…て声を吹き込んでくれ」 コルベールはハッとして四角い箱につながれた小さな箱を拾う。 「こ、これはなんですかシュトロハイムくん!?」 「うむ…よく聞こえるぞ、コルベール、これは無線とい…てな…ある程度離れてもこうやって 会話をすることができるのだ、動力は先ほど俺から取り出したバッテリーで動いているウウウウッ! ゼロ戦にももちろん積んであったが、我がナチスの電撃戦のカギは密接な連絡と指揮ィイイイイッ! 文字通りの機械化歩兵である俺に無線を積んでいないわけがないィイイイイイイッ!」 コルベールは興奮した顔で声を吹き込む。 「すごいですな、シュトロハイムくんの世界は!死ぬ前にお目にかかりたいものです!」 シュトロハイムの笑い声が聞こえた。 「あまりガソリンの無駄遣いはできんからな、そろそろ着陸する…全員機械を抱えて森の方まで避難してくれ」 シュトロハイムの乗ったゼロ戦は空中で華麗に旋回し、地面に車輪をつけ、数百メイル進んだのちに止まり、 中からシュトロハイムが降りてきた。 「どうだった、コルベール?」 「素晴らしいですな!あれにエンジンが使われているというのは驚きですな! 発明家としての血が沸きますぞ!」 「うむ、ではそのうちにこれを魔法学院に持っていく、着陸できそうな所を見繕っておいてくれ、 ではここの名物のワインを頂こうとするか!」 「なによ、あんたちゃっかり聞いてたのね」 キュルケがシュトロハイムをつつく。 「ワインとチーズには目がなくてな、あとはザワークラウトでもあれば言うことなしだな、 うむ、あちらの世界でちゃんと料理を学んでおけばよかった」 シュトロハイムが唸る。 シエスタの家に向かうと、近くの住民たちが集まって大がかりな歓迎会を開いていた。 この村の宝である『空の羽衣』が本当に飛んだのをみて急遽用意した、とのことだった。 村長が泣きながら現れ、コルベールとシュトロハイムに頭を下げ、シュトロハイムに抱きついた。 コルベールに抱きつくのは彼が貴族のため自粛したようだったが。 「素晴らしいワインですな、これは!」 コルベールが感嘆する。 「貴族様にそう言っていただけると光栄です」 そう言った住民にシュトロハイムが首を伸ばして酔った顔で言う。 「おい、そいつはお前が思ってるような貴族じゃないぞ、土と油にまみれた高貴さなんてかけらもない奴だ! そんな奴に敬語なんて使ってもなにもでんぞ、わははははは!」 といって豪快に笑う。 「そ、そんな、畏れ多いですよ…」 「ははは、いいんだよ、一応教師をやっているがこうやって休暇をとって好き勝手やっているんだからね! しかも、生徒たちにこんなところで好き勝手やっていることがバレてしまったし、面目が立たないですな! しかし、それでもこのワインとチーズを楽しめただけでもあの『空の羽衣』を研究した甲斐はありましたぞ!」 「ありがとうございます、コルベール様、それでは次のワインを持ってきますね」 コルベールは頬をかく。 「うむ、なんだか催促したみたいになってしまいましたな…」 生徒たちも思い思いに楽しんでいた。 「UMEEEEEEEEEE!」 「このチーズがワインを、ワインがチーズを引き立てるッ!『ハーモニー』っていうのかしら、 『味の調和』っていうのかしら!例えるならホワイトスネイクとルイズ! 神田に対する栗原!ベルリンフィルハーモニーに対するサイモン!って感じだわ!」 「ところでコルク抜きもってないかしらあ?」 ギーシュ、ルイズ、キュルケも酔っぱらい、 いつのまにかシエスタも飲み始めていた。 「るいずさーん、一発芸やりますねー、口にワインを含んでー、パウパウッ!波紋カッター!」 「すごいわねーシエスタ、それどこで習ったのー?」 「えへへー、曾祖母のリサリサっていう異世界からきたひとからー、あれれー?私の曾祖母は 普通の人ですよねー?えへへーやっぱりわかんないですー」 あまりに酔いすぎているため、これは帰らせるのは無理だと判断したコルベールは泊まっている シュトロハイムの小屋の近くにある宿に放り込んだ。 「あー、頭痛いわ…」 そう言って一階にルイズは降りていく。 ワムウに起こされているせいか、早起きはどうやら得意になったようである。 降りていくと、コーヒーを飲んでいるシュトロハイムがいた。 「ほお、なかなか早いな。あの少年よりは軍人向きかもしれんぞ?」 「あなたは元気ね、シュトロハイムさん。私たちは全員二日酔いで唸ってるわよ」 「軍人だからな、鍛え方が違う。敵は常にウォッカ飲んでるような奴らだったしなおさらだ」 「…ねえ、シュトロハイムさん、異世界から来たって言ったけれど…元の世界は恋しくないの?」 シュトロハイムは頬を緩ませる。 「貴女は優しいな、恋しいこともある。あの風土、食品を味わえんと思うとな」 「家族とか友人は恋しくならないの?」 「父母はいるが、まあなんとかやっていけるだろう。弟は先に戦争で死んだ。友人も、部下も、 優しい上官も厳しい上官も多く死んだ。俺が死なせたものも多くいる。俺がいなくなった戦場はどうなっているか 気がかりであるが…大佐一人で歴史はかわらんさ、閣下のように伍長から政治畑に上っていく器でもない。 なるべくようになるはずだろうな」 ルイズは黙りこくる。 「地球が恋しいこともある。しかし、俺があちらで死んだ以上、あちらでの俺の人生は終わったのだ。 ここはよいところだぞ、ミス・ヴァリエール。俺には帰るべき故郷はない。 ここに骨をうずめられるならば二度目の人生としては上々だろう」 「そうやって諦めきれるものなの…?」 「そうでも思わんとやっていけん」 そう言ってシュトロハイムはコーヒーをぐいっと飲み干した。 「あっちの世界の知識のある俺なら微力ながらやれることくらいはあるだろう。悲惨な戦争を止めるほどの力はないが、 少なくともゼロ戦を飛ばすことくらいはできる。ここの人たちに笑って貰えたのだからな、かなり上等じゃないか、 お前らを襲うオーク鬼も片付けられたしな」 そう言い終わったあと、キュルケとギーシュが降りてきた。 「あら、ルイズ早いわね」 「いたたたたた、おはよう、ルイズ、キュルケは大丈夫なのかい?」 「トリステイン人とは酒への強さが違うわ」 「そうかいそうかい、どうせ僕は軟弱な下戸さ」 キュルケたちはルイズの横に座る。 「それで、どうするの今日は?」 「もう宝の地図はないし、帰るしかないじゃない」 「結局徒労だったってことね」 ルイズの言葉にギーシュがムッとしていう。 「待て待て、あのカヌーのようなものが飛ぶところをみれただけでもこの旅は素晴らしいものだったぞ!」 「学院にいてもシュトロハイムさんがくるとき見れるじゃない」 「う、まあそうだが」 「まあ、ここでグダグダ言っててもしょうがないわよ、帰る準備でもしましょう」 そういってキュルケが立ち上がったとき、轟音が響いた。 「やれやれ、壊滅的とはこのことを言うのだな」 アルビオン艦隊にいわば『騙し討ち』といった形で攻撃されたトリステイン艦隊・ランベルト号艦長は自嘲的に言った。 「白旗をあげている艦も多くおりますな、罵ってやりたいところだが、そうもいきませんな」 側近の部下が艦長にそう漏らす。 「それで、どういたします、艦長?」 「そんなもの決まっておるだろう」 艦長は杖を構えた。 「勝ったつもりでいる奴らを教育してやる他あるまい、なに、運がよければ痛みもなく死ねるだろうからな」 「あなたも馬鹿ですな、貴族であるあなたは捕虜になるのが関の山でしょう」 「そう言うな、馬鹿な参謀め、『ランベルト』号、八時の方向に砲撃開始!一秒でも長くトリステインの空を守るぞ!」 「どうなっているのです、マザリーニ」 「アルビオン軍はタルブの村に上陸作戦を始めたようですな、もう少し言えば、ゲルマニアの助けは 得られそうもありません…さて、どうするのです?姫殿下?」 「不可侵条約があったはずでは?」 「紙のように破られたようですな」 「マザリーニはどうすべきだと思いますか?」 「タルブを捨てるべきか、水際作戦を行なうか、どちらを姫殿下が選ぶかによりますな」 「捨てられるわけがないでしょう」 「ならば、言わずもがなです」 「わかりました。南方の竜騎士部隊を急行させます。行きますよ、マザリーニ!」 「お姉様、タルブの村がなにかおかしなことになってるのね」 「降りる」 「わかったのね、ワムウ様、しっかりつかまってるのね、きゅいきゅいー!」 To Be Continued...
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セドナ、雪の女王、エキドナ、お前たちには世話になった。私は新たな世界へと旅立たねばならぬが、お前たちの事は忘れない、決して!また会おう。 - 名無しさん 2013-07-21 16 25 35 こちらのwikiは、オナニー用のネタwikiなので - 名無しさん 2013-03-01 04 22 46 青wiki安定ですは - 名無しさん 2013-02-28 16 04 44 数年前から思ってたんだけど、このwikiの編集者はなんで余計な一言を考察に入れる訳? - 名無しさん 2013-02-28 16 03 49 P4U以降っていうかゲストはP3 P4 P4Uから参戦って公式に書いてあるんだからわざわざFes以降から参戦かって各必要なくね? - 名無しさん 2013-01-24 02 42 35 アイギステレビの中っていってんだからどう考えてもP4U以降から参戦だろ - 名無しさん 2013-01-24 02 32 53 エステル特殊Nタイタンに112ダメでした。計算結果ATK100っぽいです - 名無しさん 2012-12-23 23 36 34 【】ヴィヴイアン修正後のカウント5カウントだと思います。頂上で確認しました。 - 名無しさん 2012-12-23 05 27 24 エステルの特殊は威力が120になったみたいです - 名無しさん 2012-12-22 02 14 24 氷紋シヴァの特殊はATK160、移動低下は、70%かと - 名無し 2012-12-15 07 44 28 キラーフィッシュ特殊100ダメ - 名無し 2012-11-20 18 38 48 デルビウムの胸のエンブレムは、錨じゃなくてポセイドンの象徴「三叉の矛」じゃないかな? - 名無しさん 2012-11-07 11 09 19 すみません、ファミ通アイギスの弱体はてではなく-100の固定値です。 - 名無しさん 2012-11-06 08 24 27 ↓%ではなく固定値 - 名無しさん 2012-11-06 08 26 49 ファミ通アイギスって、特別称号ないのかな? - ワグナス 2012-11-05 12 31 10 ファミ通アイギスの弱体は、強化効果が無くなり-100/-100修正と攻撃範囲縮小。アイギスにサクリUしても弱体効果が発動すると10コスト以下のステータスになります。 - 名無しさん 2012-11-05 00 01 37 弱体化時間は5カウント - 名無しさん 2012-11-04 20 59 16 弱体したときにATK、DEFともに1で両方とも3C - 名無しさん 2012-11-04 19 27 01 アイギス上昇AKR+50、DEF+30 - 名無しさん 2012-11-04 19 26 34 ヴィヴィアンは他種だと100回復、速度は用検証 - 名無しさん 2012-11-01 22 26 07 イヌタンデムはデネブじゃないのかな? - 名無しさん 2012-11-01 21 17 14 ↓それを書いた奴です。一応消しときました。 - 名無しさん 2012-10-31 23 08 50 イヌタンデムの余談のレグルスと同型ってのは違うんじゃない?一緒に歩かせると動きが違うよ - 名無しさん 2012-10-31 22 29 17 公式の映像でアイギスのATKが5から10上がったから、種族補正考えて+45くらい上がる? - 名無しさん 2012-10-29 14 02 02 デルビウムの特殊ですが、動画を見る限りでは7/8わだつみがDEF105になっていたのと6/4のアプサラスが70になったのを見る限り、種族補正+5が入っているのでDEF25上昇っぽいです。 - 名無しさん 2012-10-23 08 12 46 機甲は前回は人が名づけた星の名前で今回は人が名づけた物や現象からとってるのかね - 名無しさん 2012-10-21 23 36 38 ヴィヴィアンはHPも回復しますよ。4Gamerに情報が載っているので参考にしてみては? - 名無しさん 2012-10-21 21 39 57 ヴィヴィアンは回復しません。HP上限突破+移動速度上昇のみであってる筈 - 名無しさん 2012-10-21 20 12 34 ヴィヴィアンはライフも回復します。修正お願いします。 - 名無しさん 2012-10-20 01 39 35
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 学院の宝物がフーケに盗まれた! そのニュースは学院中を駆け巡り、ルイズと康一が目を覚ましたときにはすでに大騒ぎになっていた。 廊下を歩いていると、キュルケとタバサが駆け寄ってきた。 「おはようダーリン!聞いた?昨晩学院に賊が入ったらしいわよ。」 キュルケはやや興奮気味である。 「それならもう知ってるわよ。この学院で一番最初にそれを知ったのはわたしたちだもの。・・・ていうか、使い魔にはあいさつしてご主人様であるわたしになにもなしってどいういわけ?」 ルイズが口をとがらす。 「あーら、ルイズ。いたのね。あたしの頭はダーリンのことでいっぱいだから、あなたみたいなちんちくりんの入る余地なんてないのよ。・・・で、一番最初にってどういうこと?」 昨夜のことを思い出したルイズがため息をついた。せっかくのチャンスを逃したことでずいぶんと気落ちしている。 「昨日の夜、ぼくらが最初にフーケを見つけたんだ。」 康一が代わりに説明した。 「あら。すごいじゃないの。で、どうだったの?」 「すっごいでかいゴーレムが出てきてさ。捕まえるどころか、逃げ回るので精一杯だったよ。」 「ダーリンが手も足も出ないなんて、さすがハルケギニア中の貴族を翻弄する大盗賊だけあるわね。」 康一は頷いた。ギーシュもゴーレムを使っていたが、はっきり言って桁が違う。 「まぁ、それで朝一で学院長室に出頭するように言われてて、今から行くとこなんだよ。」 「ふーん、おもしろそうね。あたしも行くわ。タバサも行くでしょ?」 後ろに尋ねると、タバサはこくりと頷いた。 「あんたたち、フーケをみた訳じゃないんだから、来たってしょうがないじゃない。」 ルイズは見るからに嫌そうだ。 「このまま授業に出るよりもおもしろそうだもの。ねぇいいでしょダーリン!」 ルイズは渋ったが、結局キュルケとタバサもついていくことになった。 4人が学院長室の扉をあけると、中にはもう十数人の教師たちがいて、殺気だった議論を戦わせていた。 突然入ってきた生徒たちに入り口付近にいた教師たちが不審そうな顔をするが、何も言ってはこなかった。 「この魔法学院に忍び込むとは、なんといまいましい盗人め!」 「しかも盗まれたのはよりにもよってあの『弓と矢』というではないか!王宮になんと申し開きをすれば・・・」 「だいたい昨夜の当直はなにをしておったのだ!」 全員の視線が一人の中年女性に向けられた。 以前ルイズの練金でKOされた、ミセス・シュヴルーズだ。 シュヴルーズは青くなった。唇がわななき、目は泳いでいる。 やせぎすの男性教師がシュヴルーズに詰め寄る。 「確か、昨夜の当直はあなたでしたな。ミセス・シュヴルーズ。さぁ、昨夜にあったことを説明してもらいましょうか!」 シュヴルーズは黙り込んだ。言えない。言えるわけがない。まさか学院に賊が入るとは夢にも思わず、当直をさぼって部屋で寝こけていたとは。 男――ミスタ・ギトーは目を細めた。 「失態ですな。ミセス。この責任をどう取られるおつもりで?」 「わ・・・わたしは・・・」 おろおろと周りを見回すが、同情の視線こそ帰ってくるものの、助けに入ろうとするものはいない。 「まぁまぁ、そのへんにしておきなさい。」 しかし奥の扉から、オールド・オスマンが入ってきて助け船を出した。隣にはミス・ロングビルが控えている。 「しかし、ミセス・シュヴルーズが当直をさぼったおかげで、みすみすフーケの進入を許したのですぞ!この責任をどう取らせるおつもりですか!」 よっこらしょ、とオスマンは椅子にすわった。 「この中に当直をまじめにやったことのあるものはおるかの?おらんじゃろう。それがたまたまミセスの担当日だっただけで、別の日であったとしても、同じことじゃったろう。」 教師たちは黙り込んだ。皆思い当たる節があるのだ。 「わしらは油断しておったのじゃ。まさかメイジの巣たる魔法学院に入るような盗賊がいるわけがない、とな。だから生け贄を探すようなまねはやめなさい。あえて責任を問われるとすれば、学院の長たるこのわしこそがそれにふさわしいじゃろうの。」 ミセス・シュヴルーズはオスマンの手を握り、ひざまづいた。 「ありがとうございます!ありがとうございます!」 うむうむ、とシュヴルーズを労う。 「それにまだすべてが終わったわけではない。わしらで『弓と矢』を取り戻せばよいのじゃからの。」 部屋がシンと静まり返った。 一人の教師がおそるおそる手を挙げる。 「あの・・・王宮に報告して、衛兵を派遣してもらえばいいのでは?」 「だめじゃ。これから王宮に使いを出しておったら、間に合うものも間に合わなくなる。それに、仮にも貴族なら、自らの失敗の責任を自らで取る義務があるはずじゃ。」 もう言い返すものはいない。 「よいかな?それではまず、昨夜の報告から聞こうかの。ミス・ヴァリエール。ミスタ・コーイチ。二人は昨夜フーケと交戦したと聞いたが・・・」 室内がどよめいた。 ルイズは口をきゅっと引き結び、オールド・オスマンの前に進み出た。 「はい。昨夜フーケが巨大なゴーレムを使って宝物庫に進入するのを見ました。捕まえようとしたのですが、力及ばず、逃げられてしまいました。」 本当なら、ここでフーケを捕まえたと報告したかった。そうすれば、みんなに認めて貰えたのに・・・。 オスマンは髭を撫でた。 「では次に、ミス・ロングビルから報告をしてもらおうかの。」 もう、すでに自分は報告を受けているのだろう。手を組み、不安げな教師たちの様子を眺めている。 オスマンの後を受けて、ミス・ロングビルが手元の紙をめくった。 「あれから聞き込み調査を行ったところ、近在の農民からの、フーケらしき男をみたという目撃証言がありました。そしてその居場所らしきところも、もうつかんであります。」 な、なんですと!?教師たちがどよめく。 「その証言者によると、フーケはここから半日ほど先にある森の中の小屋に入っていったそうですわ。」 「要するにじゃ・・・。今回は幸運にも、フーケの居所がつかめているというわけじゃ。」 オスマンはすっくと立ち上がった。 「よって、学院から盗まれた『弓と矢』を我々の手で奪還する!我こそはと思うものは名乗り出よ!」 賢者オールド・オスマンの一喝であった。 しかし名乗り出るものはいない。お互いがお互いの顔を見まわす。 誰かが解決してほしい。しかし自分が危険な目に遭うのは嫌だ。と顔に書いてある。 「どうした!おぬしらには貴族としての誇りがないのか?」 しかし答えるものはいない。 そんな中、一人、決然と手を挙げるものがいた。 「ルイズ!」 「ミス・ヴァリエール!?」 そう、先ほど目撃談を証言し、それで役目を終えたと思われていたルイズである。 「わたしが行きます。」 ルイズには覚悟があった。「貴族としての誇り」。自分が手をあげることで、それが得られるのならば。フーケをむざむざ逃がしてしまったという汚名を返上する機会が与えられるのならば! 「本気かね?」 オスマンは静かに訪ねた。 「はい。」 決意は固い。 それまで黙りこくっていたコルベールが叫んだ。 「取り消しなさい。ミス・ヴァリエール!生徒に解決できるような問題ではありません!」 「だって、先生方は手をお挙げにならないではないですか!」 ぐっ、とコルベールは言葉がつまらせた。 生徒を止めたい。しかし、志願せず、どこかの誰かに責任をゆだねようとした自分に彼女を止められるだけの言葉はない。 今まで黙って聞いていただけだったキュルケがルイズと同じだけ、前に進み出た。 「では、あたしも志願いたしますわ。」 「キュルケ!なんであんたまで・・・!」 ルイズは驚きの声をあげた。 キュルケは優雅に髪をかきあげた。 「ヴァリエールだけに手柄を取らせたとあっては、ツェルプストーの名が泣くわ。」 するともう一人、杖を上げて進み出るものがあった。タバサである。 「タバサ!あなたまで付き合う必要はないのよ!?」 「心配。」 タバサは一言だけ、ぼそりとつぶやいた。 感極まったキュルケはタバサを抱きしめた。 しかし、それでは収まらないものたちがいる。学院の教師たちである。 自分たちは行きたくない。しかし、生徒に生かせては教師として立つ瀬がない。 「学院長!危険すぎます!ここはやはり王宮に応援を頼むべきです!」 ミスタ・ギトーが教師たちの心中を代弁した。 しかしオスマンは、憤る教師たちを制した。 「彼女たちは貴族としての義務を果たすべく、自ら志願したのじゃ。それを止める道理はあるまい?」 「しかし・・・」 「それに、彼女たちがただの学生だと思ったら大きな勘違いじゃ。たとえば・・・」 タバサに目を向ける。 「ミス・タバサはこの年でシュバリエの称号を持っておる。この意味は分かるじゃろう?」 シュバリエとは貴族階級の最下級である騎士位のことである。 子孫に継承することすらできない、一代限りの位である。だからこそ自らの手で手柄を立てなければ持つことのできないということでもあり、実力と経験を証明する特別な称号なのだ。 「それに、そこなミス・ツェルプストーは、代々火の優秀なメイジを輩出しつづけ、ハルケギニアにその名を轟かすツェルプストー家の者であり、本人も相当に卓越した火の使い手と聞いておる。」 キュルケがただでさえ大きい胸を張った。 「そしてミス・ヴァリエールは・・・」 今度はルイズが小さい胸を精一杯張った。 えーっと・・・。オスマンはしばらく中空に言葉を探し、ゴホンと咳払いを一つ。 「ミス・ヴァリエールは非常に努力家であり、今回のフーケ発見も、夜遅くまで魔法の練習をしていたからだと聞いておる。それに、爆発の呪文に長けており、トライアングルクラスのミス・シュヴルーズすら一撃で昏倒する威力と聞く!」 物は言いようである。 「そして、彼女の使い魔は、平民ながら、ドットメイジとしては頭一つ抜けておるギーシュ・ド・グラモンとの一騎打ちに見事勝利した使い手である!」 「おお、なるほど!!」 コルベールがぽんと手を打った。 「ガンダールヴの力があれば、いかにフーケといえども・・・」 「おーっと、頭に蚊が止まっておるぞコルベール君ッ!!」 コルベールが何かをいおうとした瞬間、オスマンの杖が最近殊に薄くなってきたハゲ頭を目にも留まらぬ早さでぶったたいた。 昏倒するコルベール。 コルベール先生も知ってたのかぁー!? 事情を知る康一は、危ういところだったと青くなった。 事情を知らない教師たちはぽかんとしている。 「・・・何でいきなり?」 「うむ。蚊は危険じゃぞ。病気を蔓延させたりするし、夜枕元でプンプンいわれると、気になって眠れなくなったりするからの。」 誰がどう見ても不自然だった。しかしオスマンは持ち前の威厳で無理矢理乗り切ることに決めたようだ。 「さぁ、こんなことは大事の前の小事である!蚊などに気を取られることなく、見事『弓と矢』を取り返してくるがよい!勇者たちよ!」 教師たちは不可解ながらも、まぁそんなものか。と思うことにした。 「ところで、その『弓と矢』というのはいったいなんなんです?聞く限りはそんなに大騒ぎするものとも思えないんですけれど。」 コルベールとかその辺は心底どうでもいいキュルケが手をあげた。 「うむ。いい質問じゃな。」 話題を逸らせてほっと一息のオスマン。 「宝物というからにはもちろんただの弓矢ではない。いや、正確に言うとない『はず』じゃ。」 「はず・・・といいますと?」 「わしも含めて誰もその『弓と矢』が特別なところを見たわけではないからじゃ。見た目もそこまで変わっておらんんし、魔力も感知できん。」 「じゃあただの弓矢なんじゃないですか?」 ルイズが思ったまま疑問を述べた。 「うむ。しかし、あの「『弓と矢』にはトリステイン王家に代々伝わる伝承があるのじゃよ。伝承にはこうある。『此の矢世に出すべからず。平民これを手にするとき、悪魔現る。世界を滅ぼす災厄なり。』とな。」 教師たちはもうその伝承を知っているのであろう。驚く様子はない。しかし、初耳の生徒たちにとっては衝撃的である。 「世界を滅ぼす・・・とは大きくでましたわね。」 キュルケもそういうのが精一杯である。 しかし正直なところをいうと、嘘臭い。 それが顔に出ていたのだろう。オスマンはふぅーっと長く息を吐いた。。 「気持ちはわかる。じゃが実際王家にはこういった伝承が数多くのこされておる。やれ、風よりも早く飛ぶ船やら、始祖の残せし魔導書やら、数え上げるとキリがない。」 「わしもそれが本当かどうかは知らん。じゃが、それでも王家が先祖から守るように言い遣ったものじゃ。盗まれました、なぞと言おうものなら王家の面目は丸つぶれじゃよ。だからなんとしても取り返さねばならん。」 それにしても・・・。ロングビルが眉根をよせた。 「わざわざ平民に渡すな、としているあたり。どう使うのかが疑問ですわね。」 「そうじゃのぉ。魔力もない、形も普通となると、鏃に毒でも塗られておるのかもしれん。もしくは撃って初めて効果が現れる類なのかものぉ。だからといって、実際試してみようというものも今までおらんかったが・・・。」 「そうですわね・・・。」 ロングビルはなにやら考え込んでいるようだ。 「まぁなんにせよ、道案内は必要ですわ。私がその証言にあった小屋までお連れしますね。」 「おお、そうしてくれると助かるのぉ!」 いくら実力があるとはいえ子ども達だけに行かせるのは心配だ。信頼できる大人がついていってくれればこちらとしても安心である。 では、用意が出来次第、出発するように!とオスマンが最後に言って、この場は解散となった。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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その能力、『ヘブンズ・ドアー』によって本に変えたタバサを、露伴は真剣な眼差しで見つめていた。 ガリア。王族。エルフ。母親。人形。雪風。北花壇騎士団。ガーゴイル。使い魔。幽霊。はしばみ草。キュルケ。読書。 風韻竜。シルフィード。王都リュティス。プチ・トロワ。トライアングル。イルククゥ。イザベラ。風の妖精。ジョゼフ。 そよ風。グラン・トロワ。親友。エルフの毒。ヴェルサルテイル宮殿。シャルロット・エレーヌ・オルレアン。 父を暗殺され、母は自分をかばってエルフの毒を飲んで心を蝕まれている。 王家としての名を剥奪され、ガリア王国の汚れ仕事を一手に担う、存在しない『北』の名を持つ騎士団。 そんなタバサの記憶を、露伴はどんな気持ちで読んでいるのだろうか。 タバサの過去を、記憶を。一体どんな気持ちで。 「………『今起こったことは全て忘れる』………と」 「………っ」 「あぁ、起きたかい」 机に突っ伏していたタバサが顔を上げて、最初に目にしたのは真正面のイスに座っている露伴の姿だった。 右手で頬杖を付いて、左手でページをめくって読んでいるそれは、絵本だ。 「ぼくが住んでたところと文字が違うんでね、ほとんど読めない。かろうじて絵柄でストーリーがわかる絵本を読んでいるというわけさ」 訊いていないのに説明する露伴の顔を凝視しながら、タバサは必死で頭の中をバイツァ・ダスト。 何があった、何が起こった? さっきまで何をしていた? 何をされた? なにかを。いったい何を? 凝視するタバサの視線に、露伴は気付いていながらも本へ降ろす視線を決して動かすことはない。 タバサを視無い、文字通りの無視。この上なく理想的な無視だった。 どこから、ヴァリエールの錬金。爆発するのがわかってて外に出て……その後は……。 「おいおい。どうしたって言うんだ? まさか『忘れてしまった』と言うのかい? ぼくが、この『岸辺 露伴』がお願いしたんじゃないか。 ぼくが『何処へ行くのか訊いたら君は「図書室へ」といって、「迷惑でなければ連れていって欲しい」と言ったら君は了承した』んじゃないか」 ……そうだった。キシベロハン。そんな名前だった。 「それが図書館に着いたら急に『倒れてしまった』んじゃないか。思い出したかい?」 ………そう、そうだった。忘れていた。それに倒れるなんて、初めての経験だ。朝ご飯をもっと食べておけば良かったかもしれない。 「……お礼」 「ん? あぁ、気にする事じゃあないさ。むしろお礼を言いたいのはぼくの方さ。あんなにも素晴らしい物を見ることが出来たのだからね」 この間も露伴はタバサに視線を向けることはなかった。 そしてタバサもそれ以上何か言うことはなく、本を探しに立ち上がった。 立ち去る気配にも露伴は視線を動かさない。 じっと、机に広げられている、デフォルメされたキャラクターを凝視しながら、膝の上に乗せた静の頬をくすぐる。 それを、静はその小さな手で握りかえし、嬉しそうに笑った。 この、ヴァリエールの使い魔は本が好きなのだろうか。 そう思いながら、読みかけだった本を取って、タバサは露伴の正面の席に着く。 このトリステイン王立魔法学院の図書室には、国内はもちろん、国外で発行された本も集められている。 その蔵書量は圧巻である、彼が言った『素晴らしいモノ』とはその事だろう。 タバサ自身も、ガリア王家の出身故、それなりの暮らしをしていたとはいえ驚いたくらいだ。 本を愛するものであれば、何らかの感嘆を覚えるのは必然だろう。 だとすれば「読めない」というのは、悲しくはないのだろうか。 本を持ってきたは良い物の開かずに、タバサは露伴の顔をじい、と見つめる。 変わった服。あきらかに平民にしか見えないのに、本に注がれる視線には何か不思議な感慨を覚える。 「………こう言うときは。自分自身を読めないのが不便だな。世の中良いことばかりじゃないか」 「……何」 タバサの言葉に、露伴がようやく顔を上げた。 「ん? あぁ、いや。ただの独り言さ」 露伴はそれだけ言って再び本に視線を降ろす。 それから、露伴はその視線を上げることはなかった。 そしてタバサもあえて話しかけると言うことはなかった。 この時は、まだ。 「ふぇ……あぁ……」 一瞬、赤ん坊が声を上げたかと思ったら、露伴の方がガタンと椅子を蹴飛ばすように立ち上がった。 それをタバサは短く注意する。 「図書室」 静謐な図書室だ、それくらいの音でも他のモノの集中力をガオンッするには十分である。 「あ、あぁすまない、ちょっと急用が。おっと、この本は何処にあったかな」 左腕に静を抱いたまま、露伴は読んでいた本を返そうとするが、何処から取ったのか思い出せない。 「返しておく」 「あ? あぁ、そうかありがとう。ではお願いするよ」 タバサからの思いがけない申し出に、露伴はコレ幸いとその本を預ける。 実際は、その本をタバサの隣に置いただけだったが。 「それじゃまた。失礼するよ。ミス・タバサ」 それだけ言って、露伴は図書室を後にする。 露伴の言葉にはタバサは返事することなく、本に目を落としている。 露伴が急に慌てて出ていった理由は、タバサはきちんと理解していた。 ただ、その事のみに気を取られていて、もっと重要なことには全く気が回っていなかった。 出物腫れ物所嫌わず。 食べる物食べれば出すのは当然のことである。 そう、タオルケットに包まれた静がその中に………。 不快感に泣き出した静だったが、場所が場所だけに緊急手段を取った。 コレが教室だとかルイズの部屋だとかならともかく、図書室で大泣きされては困るからだ。 普段は露伴は静にはそんなことは書き込まない。 赤ん坊が泣くのは赤ん坊からのヘルプのサインであり、言葉を使えない故の唯一の意思伝達方法なのだから。 むしろ『泣かれないと困る』のだ。 泣かれて苦労するのは周囲の人間であり、最も近いのは露伴だが、露伴は子守りという経験を大切にしている。 泣かれることは苦ではない。ヘルプサインをしっかりと出してくれる分にはそれは十分納得のいく理由。 露伴が書き込むことは、極力その本人の性格や人生に影響が出ない程度。 そう、ルイズやタバサ書き込んだ『岸辺 露伴に協力する』と言った程度である。 それくらいならば、その本人の人格に影響しない。 ルイズならばぶつくさ文句を言いながらもちゃんと帰る手段を探すだろう。 タバサも、何度か会ううちに自分から協力を申し出てくるだろう。 タバサの性格は露伴も読んで既に把握しているのだ。 無口で無表情で、人と関わりと持とうとしないのは、自分のせいで心を病んでしまった母が理由。 しかし、人との関わりを断つという割には、あのキュルケを親友と感じているところもある。 結局は彼女も人恋しいのだ。 「だからこそ素晴らしい………。見てみたくなったぞ。魔法の使えない『ゼロのルイズ』。 他者を拒もうとする『雪風のタバサ』。そしてそれさえ溶かす『微熱のキュルケ』」 それが、彼女らのリアル。そして露伴が望むリアリティ。 「………まずは静の処理からだな。とりあえず汚物を処分して体を洗ってやって後着替えか……シエスタに頼むか。広場にいるかな」 彼女達というキャラクターが一体どんなストーリーを作り出しているのか、それを想像するだけで露伴は心が躍るのだ。 心の高ぶりに、露伴の脚は軽やかに螺旋階段を下りていった。 「ぐすっ………何よ、みんなゼロゼロってバカにして。ロハンも私おいてどっかいっちゃうし。何でよ、どうしてよ。ロハンまで私を見捨てるっているの………」 ほとんど半泣きで、一人で、ルイズは未だに部屋の片付けをしていた。 しばらく待っても露伴は帰ってこない、等のロハンはルイズのことをてっきり忘れてしまっていることなど露にも知らず。 幼い頃からそうだった。ヴァリエール公爵家の三女として生まれたにもかかわらず、魔法が一切使えない。 その事を、両親にも落胆され、上の姉にはバカにされ……そして使用人にすら哀れまれる始末。 下の姉だけは、いつかきっと出来るようになると慰めてくれたけれど。 ただ、使い魔が召喚できてとても嬉しかった、それが平民で前例がないとは言っても、始めて、始めて魔法が成功したのだから。 それなのに………それなのに……。 「ちょっとルイズッ」 唐突に教室のドアが勢い良く開かれる。 慌ててルイズは目の端に浮かんだ涙を拭う、こんなところを他の誰かに見られたくない。 「……何よキュルケ。片付け中よ」 慌ててやってきたのは憎きツェルプストーの女。 「あんた使い魔はどうしたのよ」 「知らないわよっ!」 ルイズの叫びにキュルケがひるむ。 「知らないわよあんな奴! 人の話聞かないし。人をご主人様だと思わないし。赤ん坊ばっか気にしてるし。勝手にどっかいっちゃうし。ご主人様ほっぽって……うっ……ぐっ……」 「あんた………泣いてるの」 「泣いてなんかないわよ! なくもんですか! 掃除の邪魔だからどっか行ってよバカァッ」 意固地になっているルイズを、茶化せるほどキュルケはバカではない。 ただ、頭の中でグルグルと何かが渦巻いて前後不覚になっている、それを一発で目を冷ます、気の利いたコークスクリューを放った。 「掃除している場合? あんたの使い魔がいまギーシュと決闘しようって言うのに、あんたはこんなところでのうのうと掃除してるってわけ?」 「今なんて?」 「あんたの使い魔が、ギーシュと決闘するって言ってんの。ヴェストリの広場よ、止めるなら今のうちじゃない?」 ヴェストリの、とまでキュルケが言ったところでルイズはその手に持っていた机の瓦礫を放り捨てて教室を飛び出した。
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トリステイン魔法学院。 中央塔の大講堂にて… 「ブチャラティさんは、ここの授業が面白いんですか?」 ギーシュが眠そうに、座っている男に向かって立ち話をしていた。 午後一番の授業のため、頭より腹に血が回っているのだろう。 「いや、なんと言うか、興味深い。俺自身は、あちらでは小学校までしか行ってないからな」 「ブチャラティは小卒だったのか。なんだか意外だな」 ブチャラティと岸辺露伴が教室の最後尾にある椅子に座っている。 彼らのために用意された椅子の前には、他の学生たちと同じように、机があった。 「それで、今日は何の講義なんだ?」 一段前に座っていたルイズが振り返り、その質問に応じた。 「今回はミスタ・ギトーの『魔法の系統基礎』よ」 「そういえば、ルイズ。君はゼロ(虚無)の系統だったな」 「はいはい……」 ルイズがうわべは気にもしない様子で応じる。私もこのロハンの応対に慣れてきたのかしら、などと考えながら。 以前はゼロといわれただけでとてつもない屈辱を感じたけど…… 「おい、露伴。あまりルイズにゼロゼロいうな」 フォローしているつもりなのかしら。 でも、ゼロといった回数はブチャラティのほうが上ね。 悪気は無いようだけれど、覚えておきましょう。授業が終わった後が楽しみだわ。 あら?私って、こんなに意地が悪かったかしら? ルイズがそんなことを考えている間に、講師が講堂に入ってきた。 ギーシュがあわてて自分の席に向かう。 「それでは講義を始める。本日は最強の系統の話だ……」 『疾風』の二つ名を持つ講師が不精に話を始めていた。 彼の名はミスタ・ギトー。生徒たちにはあまり好かれてはいない。 なぜか? それは彼自身の授業の内容にある。 授業がつまらないのは学院教師共通の問題だが、彼のそれは一味違っていた。 「ミス・ヴァリエール。最強の系統は何かね?」 「虚無です」 ギトーはいらだたしく眉をひそめた。 「伝説の話をしているのではない。現実的な答えを聞いているのだ」 「『風』と答えれば満足でしょうか?ミスタ・ギトー」 彼は口調に秘められた皮肉に気づかない。心の内で、ルイズの内申をあげてやろうと考えていた。 「その通りだ。だが、諸君らの中には納得していないものがいるな」 「たとえば、ミス・ツェルプストー。君は違うようだな」 「はい」 キュルケは礼を失わない顔をしながら、確信した様子で返答した。 彼女にとって、ギトーには何の悪感情を抱いていないが、自分の『火』系統に対する自負は誰にも負けない。 「では、君が最強だと思っている系統の魔法で、私を攻撃したまえ。」 「いいんですか?ミスタ・ギトー。私は手加減はできませんわ」 「かまわん。君の二つ名『微熱』が冗談でないのならな」 キュルケから微笑が消えた。 呪文を唱え、杖を振ると、彼女の目の前に1メイルはありそうな火の玉が出現した。 それを教壇に立つギトーに投げつけるように飛ばす。 ギトーは実をかわすそぶりも見せず、杖を一振り。 烈風が舞い上がり、炎が消え去る。ついでにその向こうにいたキュルケを吹っ飛ばした。 破壊的な速度で教室の壁に頭から突っ込む。が、鍛えられた男の腕により彼女の体はしっかりと受け止められていた。 「大丈夫か?」 「あ、ありがとう、ダーリン」 いつの間にかブチャラティが立ち上がっていた。 ギトーはその様子を見ることも無く講義を続ける。 「諸君。今見たように『風』はすべてをなぎ払う」 ブチャラティがゆっくりと教壇に向かっていく。 キュルケは、彼の背中に、鬼気迫る迫力を感じていた。 「『風』が最強たる理由はこのほかにもある」 「ユビキタス・デル・ウィンデ…ん、なんだ?君は、下がりたまえ、使い魔風情が」 彼はそれを無視して歩き続けた。 ミスタ・コルベールは、いつも自分の額が跳ね返す太陽の光のような陽気さで学院内を歩いていた。 今日の授業はすべて中止である。なぜなら、王女が学院に来訪したからだ。 「生徒たちも喜ぶことでしょう」 そうつぶやきながら、彼の歩きはますます早く、講堂に向かっていた。 通常なら、王女がお忍びで来院したぐらいで授業の中止はない。 だが、学院長のオールド・オスマンはこの機会に乗じて『使い魔の品評会』を行おうとしていた。 決して王室尊崇の志を発揮したわけではない。 要するに、一々会場や応接を手配するのが「めんどくさいワイ」というわけである。 彼の無精は、ミス・ロングビル、もといフーケが捕まったころから酷くなっている。 「生徒の皆さんはこの格好をステキと思ってくれるでしょうか?」 コルベールは、一般的に見て珍妙な格好をしていた。 その『一般』に彼自身は含まれていない。 変なロール(コロネ?)のついた金髪の鬘をつけているため、彼の地毛は見えない。 また、ローブにはテントウ虫のブローチがついており、胸の部分がはだけている。 「みなさ…ん?」 コルベールが教室の中に入っていったが、誰も反応しない。 それどころか、教室中の生徒が静まり返っている。 生徒の雑談が全くない。 彼自身の授業中では一度も実現できなかった静寂だ。 「あは、は、ははは…」 いや、ミス・ヴァリエールが時たま乾いた笑い声を出している。 教壇にはミスタ・ギトーの『首』が生えている。 正確には置いてあり、それに向かってブチャラティが説教をしていた。 時たま、手に持ったメイジの杖でギトーの額をハタいている。 その近くにはミス・ツェルプストーが立ちすくんでいる。 「キュルケもだ、室内であんなに大きな炎を出して…周りに迷惑がかかるだろうが」 「そ、そうね。ごめんなさいダーリン。私少し感情的になりすぎちゃったわ…」 「問題は君だ。ギトー。」 「学生を挑発した挙句ふっとばすだと?怪我をさせたらどうするつもりだ?何を考えている!」 「わ、私はいったいどうなたんだ?!」 目のおびえの様子から察するに、彼は自分の置かれた状況が理解できていない様だ。 「人の話を聞けッ!」 ブチャラティはそう叫んで、今度は頭部を『縦』に分けた。 つまり、前列の生徒たちは…… 生きている人体標本の頭部断面をじっくりと観察するハメになったわけで…… パタパタと机に突っ伏すものが続出した。 「グッ……オェ~!!」 「むっ!いいぞ、マリコルヌ君。その表情!リアルだ!」 「それに生きている脳なんてめったに見られるもんじゃない!」 ギトーは今何もしゃべることができないだろう。 鼻は何とかつながっているので呼吸はできるが。 「おまけにだ…君の話は『風』系統の自慢話ばかりだ。あんなものは『講義』とはいえない。君は教育者としての自覚があるのか? そんなに自分の系統に自慢があるのならば、なぜ破壊の杖捜索に志願しなかった?」 ぺチン。 ギトーの杖と彼の額が間抜けな音を奏でる。 その杖はおそらくミスタギトーから取り上げた杖だろう。 ミスタギトーの『首から下』が、教壇の下に転がっている。もがいているが、仰向けになっている。 そこから移動できていない。 コルベールは意を決して、教室の教壇へと進んでいく。 「み、皆さん!本日の講義はすべて中止です!」 「えー……皆さんにお知らせです」 彼はのけぞって、教室の静寂を取り除こうといっそう声を張り上げた。 その拍子に頭にのせた馬鹿でかいカツラがとれ、彼本来の、光の反射しやすい頭皮が見えた。 「す、滑りやすい」 タバサが、自分の頭をなでながらつぶやいた。 「……」 「……」 「プ…プププ、クックック。ハハハハハハハ!」 露伴が笑い始める。 「フフフ…」 「ハハッ!」 それにつられて、学生たちも笑い始めた。 「ええい、黙りなさい小童共!貴族はそのような笑いをするものではありません!」 彼の剣幕により、教室内はまたもや静寂に包まれたが、身が切れそうな冷徹な雰囲気は霧散していた。 「皆さん、恐れ多くも、アンリエッタ姫殿下が……」 皆がコルベールに率いられ、教室を出て行く。『品評会』の準備をする為だ。 気絶した連中も、コルベールが「レビテーション」の魔法で医務室に連れ出した。 「どうしよう、まだまだ先のことだと思って、何の対策も練ってないわ……しかも姫さまがご覧になるなんて。なんとかしないと……」 ルイズが上の空で教室を出、自分の部屋に向かっていった。 ブチャラティ達がその後に続く。軽快な会話と共に。 「ダーリン。さすがにやりすぎじゃないかしら?」 「いや、ブチャラティさんのやることにお間違いはない」 「ギーシュ、さすがにそれは買いかぶりすぎだ……」 「ムーー!!」(私はどうなっってしまったんだ?) ギトーは元の体に繋ぎ直されていた。 しかし、その代わりに、『お口にチャック』をされていた。リアルで。 そのような光景を見ることも無く、未だ教室内から動こうとしない者達がいた。 その二人は無言で向かい合う。心なしか目元が暗い。 「タバサ……ナイスガッツ」 「グッドフォロー、ロハン」 「…」 「…」 ピシ! ガシ! グッ!グッ! 太陽が、学院全体を明るく照らしていた。
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康一達が全てのケーキを配り終えた頃、騒ぎを聞きつけたルイズが康一に詰め寄ってきた。 「あんた! 何してんのよ!」 「何って、ケーキを配ってたんだけど……」 ルイズは康一の胸倉を掴んで、ガクガクと揺さぶった。 「そうじゃなくて、なんで勝手に決闘なんか約束したのか聞いてんのよ!」 「僕が約束したわけじゃあないよ」 康一は、胸倉を掴んでいたルイズの手を払いのける。 乱れた服を元に戻し、真っ直ぐな目でルイズを見つめた。 「それに、僕は間違ったことを言っちゃあいない」 ルイズはため息をついて、やれやれと肩をすくめた。 「謝っちゃいなさいよ」 「なんで? 悪いのは彼の方じゃあないか」 「怪我をしたくなかったら、謝ってきなさい。 今なら許してくれるかもしれないわ」 そう言って、ルイズは康一を説得しようとする。 しかし、当然のことだが、康一は謝る気など全くない。 「嫌だね」 「いいから」 「嫌だって言ってるんだ」 「わからずや!」 「わからずやなのはそっちだろう!」 「絶対に勝てないし、あんたは怪我をするわ。 いや、怪我済んだら運がいいわよ!」 頑として引かないルイズと康一。 その様子を見ていたシエスタが心配そうにしながら、話に割り込んできた。 「コーイチさん、私のことはいいんです。どうか、私なんかの為に決闘なんてしようとしないで下さい……」 「そうよ! 第一、メイジに平民は絶対に勝てないの!」 そう言って、康一の肩を掴んで何とか止めさせようとする。 しかし、康一の考えは変わらない。例えシエスタが許しても、康一は許せなかった。 康一はルイズの手を振り払い、周りで見ていたギャラリーに聞いた。 「ねえ、ヴェストリの広場ってどこにあるの?」 「こっちだ。平民」 康一達のやり取りを見ていた一人が、ヴェストリの広場まで案内した。 ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある中庭であった。 西側にある広場で、日中でも日があまり差さない。決闘にはうってつけの場所である。 普段は閑散とした広場であるが、今この場は、噂を聞きつけた生徒達で溢れかえっていた。 「諸君! 決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げた。広場に大きな歓声が響き渡る。 「ギーシュが決闘をするぞ! 相手はルイズの平民だ!」 ギーシュは腕を振って、歓声にこたえている。 一方、康一の方はそんな歓声など気にする様子もなく、じっとギーシュを睨んでいた。 「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」 ギーシュは薔薇の花を弄りながら、余裕の笑みをうかべて言った。 「時間も惜しい、早いとこ始めるとしよう」 ギーシュは、弄っていた薔薇の花を振った。 花びらが一枚、宙に舞ったかと思うと、甲冑を着た女戦士の人形になった。 身長は人間と同じぐらいだが、体は硬い金属で出来ているようだった。 淡い太陽の光を受けて、甲冑がきらめいている。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 康一は、女戦士の人形をちらりと見てから、ギーシュに言った。 「……文句なんてないさ。むしろ感謝したいくらいだよ。これで僕も本気で戦えるってことだからね」 「ふん、強がりを……」 ギーシュは薔薇を振って、女戦士の人形を康一の前まで移動させた。 「おっと、言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 女戦士の形をしたゴーレムが、康一に向かって突進してきた。 康一目掛けて、右の拳を振り下ろす。 その拳が康一の腹に命中する寸前、ゴーレムが突然、地面にめり込んだ。 ズンッと、地面の揺れと共に大きな窪みができ、ゴーレムは地面に突っ伏したまま立ち上がらなくなる。 「な……!? ど、どうしたんだ、ワルキューレ!!」 ギーシュは突然のことに驚き、半ば焦りながら、懸命に薔薇を振る。 しかし、ゴーレムは動かない。動かないというよりも、動けないといった感じで、もがき苦しんでいる。 ゴーレムが動けない理由はたった一つ。 康一が、ACT3のFREEZE攻撃を、ゴーレムに命中させていたからだ。 「くそ、どういうことだ……」 まさか、魔法を使ったのでは? と思って康一を睨みつけるが、そんなふうには見えない。 第一、杖を持っていない。杖を持ってないのに、魔法を唱えられるはずがない。 そもそも、あいつはメイジじゃなく、ただの平民じゃないか。 きっと、油断して魔法を失敗してしまったに違いない。そうに決まってる。 そう思って、ギーシュは平静を保とうとする。 そんなギーシュの様子を見てか、康一が挑発するように言った。 「キミの魔法ってのは、この程度なの?」 「なんだとッ!」 ギーシュは憤り、大きく薔薇を振った。 花びらが舞い、新たなゴーレムが六体現れる。 その全てが、康一を取り囲むようにして動き始めた。 「くっ……!」 康一は、思わず言葉を詰まらせた。 一体や二体ならば、ACT3で難なく対処できる。 しかし、既に動けなくしているのを合わせ七体ともなると、かなり分が悪かった。 現在、ACT3で動けなくできる対象は最大二体までなので、残り五体は生身で相手にしなければならないことになる。 「やれ、ワルキューレ!」 ギーシュのかけ声と共に、一斉に飛び掛るゴーレム達。 康一は、真っ先に攻撃してきたゴーレムを、ACT3のFREEZE攻撃で動けなくする。 二体目が康一に攻撃をする。ACT3でガードし、二体目の攻撃はなんとか防ぐことができた。 そうしてるうちに、三体目が康一の背中を目掛けて攻撃する。反応し切れなかった康一は、きりもみしながら吹っ飛ばされた。 「がふっ!」 康一は、うめきながら地面に叩きつけられた。 不幸中の幸いか、背中の骨は折れてはいないようだった。 しかし、生身の康一には充分すぎるほど、背中のダメージは大きかった。 「どうした平民。さっきまでの勢いは」 ギーシュが余裕の笑みを浮かべながら薔薇を弄っている。 康一はなんとか立ち上がろうとするが、背中のダメージが大きく、なかなか立ち上がれない。 そんな康一を、七体のゴーレムが悠然と見下ろした。 さっき、FREEZE攻撃で動けなくしたゴーレムも、射程距離から外れてしまったために復活していたのだった。 康一はなんとかACT3で攻撃しようとするが、七対一では為す術がなかった。 何とか立ち上がった康一の腹に、ゴーレムの重い衝撃が走る。 「がはっ!」 続けて、他のゴーレムが康一の顔面に向けて拳を振り下ろす。 「がふっ!」 さらに、背中、わき腹、足、腕と、拷問をするように、康一を攻撃するゴーレム達。 頃合いを見計らい、ギーシュが薔薇を掲げてゴーレム達を制止する。 ギーシュは薄く笑みを浮かべながら、ヨロヨロと立ち上がる康一に言った。 「さあ、謝れ。謝って命乞いすれば、助けてやる」 康一は右腕を押さえながら、ギーシュを睨みつける。 「誰が……謝るものか……」 そう言った瞬間、一体のゴーレムが康一の腹に向かって拳を振り下ろした。 康一は、うめき声をあげながら地面に崩れる。 「謝れ」 「誰が……お前なんかに……」 「……強情な奴だ。その根性だけは認めてやるよ」 薔薇を振り、ギーシュはゴーレムに攻撃を命じる。 その時、ルイズが人ごみの中から飛び出して、康一のそばに駆け寄った。 「いい加減にして! これ以上やったら……」 「ルイズ、邪魔しないでもらいたいな」 ルイズは、ギーシュを睨みつけながら怒鳴った。 「自分の使い魔が、みすみす怪我するのを、黙って見ていられるわけないじゃない!」 「この程度……怪我の内に入るもんか……」 「コーイチ!」 フラフラになりながら立ち上がった康一を見て、ルイズが悲鳴のような声で名前を呼んだ。 「やっと、僕の事を名前で呼んでくれたね……」 ルイズは震えながら、康一に向かって怒鳴る。 「もうわかったでしょう? 平民は、絶対にメイジに勝てないのよ!」 「まだ……負けたって決まったわけじゃあない……」 康一は覚束ない足取りで、ギーシュに向かって歩き出す。 ルイズがその後を追いかけ、康一の肩を掴む。 「寝てなさいよ! これ以上やったら死んじゃうわよ!」 康一は、ルイズの手を振り払った。 「ムカつくんだ」 「ムカつく? メイジに負けたって、恥でも何でもないのよ!」 康一はよろよろと歩き、ギーシュに一歩、また一歩と近づいていく。 「メイジや貴族って……そんなに偉いのかい?」 「え?」 「一生懸命働いてるシエスタさんは、見下されて……。 メイジや貴族ってだけでエバってるあいつが偉いなんて……。 『逆』じゃあないか? どうしてあいつが悪いのにシエスタさんが悪く言われなくちゃいけないんだ?」 ギーシュは、馬鹿馬鹿しいと言った表情で、康一の話を聞いている。 「言いたいことはそれだけかい?」 「……まだだ」 康一は、ギーシュを挑発するように、ゴーレムを指差して言った。 「お前の……『ワルキューレ』だっけ? ハッキリ言わせてもらうけど、全ッ然ッ弱いねッ! パワーも大したことないし、スピードだって、てんで大したことないよ。『何このガラクタ?』って感じだねッ!」 ギーシュの顔から笑みが消えた。ギリッと歯が軋む音がする。 「お前なんかより、全然凄い能力を持ってる人を、僕は知ってる。 それに比べたら、お前のワルキューレなんて『カメよりスロー』だッ!あくびがでそうだよ。 何がメイジだ! お前なんか、こんなガラクタに頼らなきゃ何も出来ない臆病者じゃあないか!」 ギーシュが体を震わせ、鋭い眼差しで、康一を睨みつける。 ゴーレムの右手が飛んで、康一の顔面を襲う。続けて腹に一発浴びせ、再び顔面に一発攻撃した。 康一は吹っ飛び、鼻が折れ、奥歯が一本抜け落ちた。 さきほどとは比較にならないくらいの一撃だった。 「もう一度……言ってみろ……」 康一は、地面に手をつきながら、やっとのことで体を立ち上がらせる。 「全ッ然ッ……効いてないぞ……ヘッポコワルキューレの攻撃なんて……!」 「貴様ァァァァアアアアア!!!」 自分の魔法をバカにされたギーシュは、怒り狂った。 ゴーレム七体が康一を取り囲み、一斉に攻撃をする。 誰もがギーシュの勝利を確信した、その時だった。 『ドッグォン』という音と共に、七対のワルキューレが全て吹っ飛ばされた。 「な!?」 勝利を確信していたギーシュは、目を疑った。 自慢の魔法でもある、ワルキューレが四方八方に吹っ飛ばされたからだ。 「うわあぁぁあああ!」 爆風と共に飛ばされてきた一体のワルキューレが、ギーシュに命中した。 ギーシュは、ワルキューレと共に、地面を転がる。 その様子を見ていた康一は、ニヤニヤと笑いながら、転げまわるギーシュを見ていた。 「ざ、ざまーみろッ!」 康一は、自分張り付いていた『ドグォン』という文字を回収して、地面にへたり込む。 「く、くそぉぉおおおお!」 ACT2の攻撃は物理的なダメージは殆どない。 そのため、ゴーレムには殆どダメージを与えていなかった。 しかしギーシュは、自分の自慢のワルキューレが傷つけられたと思い、完全に我を忘れていた。 「平民如きがぁぁぁあああー―――ッ!」 再度体勢を立て直したゴーレム達が、一斉に康一に特攻する。 康一は再びACT2で、自分に文字を貼り付けようとする。 しかし、既に体がボロボロになっているため、思うようにいかない。 「まずい……ッ! 体が言うことをきか……」 目の前に迫るワルキューレ。 間に合わない――。康一がそう思った瞬間だった。 「康一さん……!」 「えッ!?」 「なッ!?」 康一の目の前に、シエスタが盾になるように立ち塞がった。 ギーシュは、ワルキューレの攻撃を止めようとするが、その前にワルキューレの拳が、シエスタの体に命中していた。 「シエスタさんッ!!」 康一が、大きな声で叫び、シエスタの元に駆け寄った。 「シエスタさん、しっかりして下さい! シエスタさんッ!」 康一がシエスタを抱きかかえ、何度も呼びかけるが、返事はない。 ACT1で、心音の音を確認する。ドクンドクンと、正常な心音が聞こえた。 どうやら気絶しているだけのようだった。一先ず安心し、シエスタを安全なところに運んだ。 「ち、違うッ! あいつが勝手に飛び出してきたんだ! 僕のせいじゃないッ!!」 シエスタを攻撃したギーシュは、必死に言い訳をしていた。 「よくもシエスタさんを……許さない……」 ザワザワと髪の毛を逆立て、康一はギーシュを睨み付けた。 その時……。康一の左手に刻まれたルーン文字が、光りだした。 To Be Continued →
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巻七十三とは 2014年3月4日発売。 コミック73冊目。 前は巻七十二 次は巻七十四 タイトルは”ドレスローザSOP作戦” 第722話”王族の血統” 第723話”変更作戦” 第724話”ローの作戦” 第725話”無敗の女” 第726話”リク一族” 第727話”待ちぶせするヒーロー” 第728話”悲劇の数” 第729話”七武海ドフラミンゴvs.七武海ロー” 第730話”3枚のカード” 第731話”ドレスローザSOP作戦” 扉絵 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.39「のみこめ工場 働く場所を消しちまえ!!」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.40「英雄ガブル」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.41「恐竜現る」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.42「刃向かう者全滅!隊長連行」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.43「手も足も出ぬ強者、一人犠牲になる孫に、せめて最後のミートパイ」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.44「ババーせいぜい長生きしろよ!!革命家ガブル、再び伝説へ」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.45「ガブルは叫んだ!!おばあちゃんを大切に!!」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.46「ありがとう 孫の様にかわいい海賊カリブー」 主な展開 わかったこと ドンキホーテ・ドフラミンゴは元天竜人(第723話) カン十郎のシルエット(第725話) 元剣闘士リッキーはレベッカの祖父でリク王だったリク・ドルド3世。兵隊さんはレベッカの父親(第726話) 八宝水軍は花ノ国の王の依頼で、武器の密輸を叩き潰すことが真の目的(726話) コアラが革命軍で魚人空手の師範代に(731話) 緑牛は「メチャメチャカッコイイ」らしい(SBS)見た目は三船敏郎?市川雷蔵?(市川雷蔵は藤虎のモデル、勝新太郎とあわせて大映の二枚看板と呼ばれていたが早逝した) 謎 Dブロックで棄権した1名は誰なのか(第722話) 追撃のメイナード?スパルタン?宣教師ガンビア? ドンキホーテ・ドフラミンゴの数奇な人生とは(第723話) シーザーとビッグマムの関係 シーザーはビッグマムから研究費をだまし取っていたと言うが、ビッグマムがシーザーに研究を依頼していたのか? トラファルガー・ローの言う13年前のケジメとは(第724話) ローが言う「あの人」の「本懐」とは(第725話)あの人は「コラさん」? ドンキホーテ・ドフラミンゴがモモの助を狙う理由 コアラ、革命軍の目的 カリブーを倒したのはXドレーク?カリブーをどこへ連れて行ったのか。