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問344 地域における薬剤師の活動に関する記述のうち、適切でないのはどれか。1つ選べ。 1 学校における衛生活動や児童・生徒への薬の教育にたずさわる。 2 地域住民の健康増進に積極的にかかわる。 3 未使用の医療用医薬品を回収し、有効期限内の医薬品を再利用する。 4 保健機能食品に関する情報提供を行う。 次の問題
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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その3』 21KB 考証 戦闘 希少種 幻想郷 独自設定 その気になればどこまでも長くなりそう… かっとビングだぜO☆RE! 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆除業者のお仕事風景』と 『隻眼のまりさ』の二つの共通する最終話となっています。 話のメインは駆除業者の方になりますが 隻眼のまりさも見ていただいた方が、という物になっています。 例によっていくさんをかわいがるので饅・即・虐の方はご注意。 ――――同日、午後1時、駅前―――― 「君は、ゆっくりって何だと考える?」 「は?」 俺は駅の券売機の前でマヌケな声を出した。 「なんだよ?研究者お得意の考察披露か? それとも焦っている俺への嫌がらせなのか?」 「君こそ答えをはぐらかさないで欲しいな。 質問に対して質問で返すのはルール違反だよ」 それを言ったら俺の協力してくれないか?の質問の後に そんなことを聞いてくるお前もお前だけどな、と言いたくなる。 しかし、先ほどの件もありあまり突っ込めそうもなかった。 加えて今の奴の話し方は至って真面目だ。 どうやら俺を試すつもりらしい、と思う。 「ゆっくりを何だと思う、か。 結論から言わせて貰うが『分からない』だな」 「と、いうと?」 千円札を入れて目的地までの切符を買う。 おつりと切符を手に取り改札へ。 「今の俺はゆっくりのことなど何も分かっていない。 逆に考えれば『分からないことが分かっている』のかもしれん」 「そうなんだ」 電話越しにくすりと聞こえ、満足そうな笑みを浮かべるあいつが想像できた。 「で、答えろと言われたから答えたがその質問には何か特別な意味でもあるのか?」 「あるさ、と言うよりはこれが一番重要なことなんじゃないかと思ってるんだよね」 「もったいぶるんじゃない。俺への協力に関する話も宙ぶらりんだろ。 結局何が言いたいのかはっきりしてくれ」 自動改札に切符を入れて駅のホームに入る。 目的の電車が来るにはまだ少々時間があるようだ。 「君さ、ひょっとして去年もこうが火事を起こした場所の近くに向かってないかい?」 「………!!」 俺は息を呑んだ。 そして、パズルの新たなピースがはまるのを感じた。 「…その通りだが、どうして分かった?」 「君ならもう気付きはじめてるんじゃないかな」 「アンタとの話ではさっきからきちんと会話が出来ていない。 分かってて当然、理解しているものだと思うことを省くのは常識だが 説明すべき部分は説明して欲しいんだが」 「それを言ったら、君こそこちらに事情は後で話す、と最初に言ったのはどうなのかな?」 ああもう、と俺は苛立ちを隠せずに携帯電話から耳を離す。 間違いない。こいつは今回の事件に関係のある何かを知っているのだ。 知っている上で、あえて俺を苛立たせるようなはぐらかし方をしている。 「残念ながら、俺は前もってそう断ってから話を始めた。 だがお前は違うだろう。聞かれたことだけに答えろ、と言ってそれを了承した。 だから答えるべきことには答えて欲しいんだが」 「あら、確かにその通りだね。仕方がない、こっちの負けだよ」 「負けだと言うのなら俺の質問に答えてくれるよな?」 「ああ、いいよ。何でも聞いて。答えられることなら答えよう」 えらくあっさり折れたな。 一応、最初から答える気であってはくれたようだ。 だがそう考えると今の会話は全く意味を成さなかったことになる。 また腹が立ってきたのを強引に押さえ込んで質問をぶつけた。 「アンタは最初、大本となる存在が『歩いていけないどこか』と言ったが それは一体どういう意味なんだ」 「言葉通りの意味だけど、ちょっと表現が良くないかもしれない。 なぜならそこには『そこにあると分かっていれば行けるかもしれない場所』であるからだ」 「…なんだって?じゃあやっぱりアンタは、異世界だ何だという話を聞いたことがあるのか?」 「君はすっかり忘れているかもしれないけど、去年一斉駆除が行われた山も 火事になった山も、誰の土地だったか話したよね?」 「だから、答えになっていない! アンタは異世界の存在を知っているのか!?」 「いや、実はよく知らない。ただ去年までゆっくりを飼っていてね」 「…ゆっくりを?」 「ああ、ゆっくりうどんげだよ」 「…!!で、そいつはどうなったんだ!?」 「去年うどんげに誘われるまま、いつもの山に入ったんだ。 知っての通りうどんげ種は喋れない。 それゆえに大人しいし気の弱いゆっくりだけど あの時は頑として自分の行きたい場所があるような主張をしてね」 「それで?」 「あの時のことは支離滅裂で自分でも納得がいってないけどありのままを話すよ? うどんげは山の中を何十分も歩き続けた。 流石に不審に思い始めてうどんげを止めようかと思った時、空中で轟音がしたんだ」 ――――同日、午前11時、上空―――― いくはずっと上空にいた。 むしろ地上を歩くことの方が不自然であるかのように上空は居心地が良い。 「なあ、一つ確認したいんだが…」 「何でしょう?」 「そもそも、どうして特異点が生まれるんだ?」 「………分かりませんが、一つだけ気になっていることがあります」 「気になっていること?」 「ずっと前に、お兄さんが話していたことで気になることがあったんです」 話しながらも周りを見渡す目に隙はない。 どうやら『衣玖』という存在も普段からこうやって飛んでいたらしい。 上空から周りを見回すという行為を体が覚えているため、会話をしながらでも自然に行えた。 「お兄さんは『ハウリングフィードバック現象』というものを ゆっくり研究者の方から聞いたという話をしてくれました」 「何だそれ」 「初めて聞いた後、お兄さんはその話をしたくないようでしたので 詳しく聞いていないのですが、 どうやらゆっくり同士は何らかのつながりがあるという話でした」 「つながり?私とお前にも何かがあるのか?」 「いえ、それはあるかもしれませんしないかもしれません。 ですが私達だけがはっきりわかっていることがあります」 「…まさか、私達の元となった存在のことか?」 「そうです。少なくとも、私達は幻想郷の存在と何らかのつながりがあります。 ゆっくり同士で何か伝わるものがあるかもしれませんが その一環として『霧雨魔理沙』や『永江衣玖』との関係があるのではないでしょうか?」 「それは確かにそうかもしれないが、それが特異点と関係があるのか?」 「分かりませんか?私達は常にその存在を認知しているわけではありません」 「…そうか、逆に考えれば、私達が『記憶』を見ることの出来る瞬間に 何かが起きるということになるのか」 「はい。そして、もう一つ考えてみてください。 特異点は常に開いているわけではありません。 つながりがあるということは、特異点が幻想郷と繋がっているという仮説になりますが 同時にその特異点は、そもそもどうして閉じるのでしょうか?」 あ、とまりさは思った。 そもそも、どうして特異点が開くのか、そして… 「そもそも特異点が何度も開いているのに どうして幻想郷のものがこちらに流入してこない…?」 「はい、そして今の話を全て統合して考えてみた私の結論ですが…。 特異点が開いた時、ゆっくりが『記憶』を見る。 そして幻想郷のものが幻想郷から流出しないようにせき止め 特異点を閉じて回っている誰かがいるということです」 考えてみれば当たり前の話だった。 幻想郷はあくまで人為的に作られた別世界。 その境界が何らかのトラブルで破られてもおかしくないし そして破られたとなると修理しようと思うだろう。 同時に、お互いの世界のものが行き来しないように ブロックしている存在がいるというのもうなずける。 そして隻眼のまりさは、ブロックするであろう存在と修理するであろう存在に心当たりがある。 「つまりは、特異点がある場所へ行けばそこにはこの事態の打開策を持っている奴に 会うことができるかもしれないということか」 「そうです」 「しかし、会ってどうする? 特異点の出現条件が私た…ち………の…………」 「……………………」 まりさは二の句が継げなかった。 ――――去年、午後4時、???―――― 「ねえうどんげ、一体何処まで行くつもりなの?」 「ゲラゲラゲラ」 うどんげはこちらに振り返って進む先を指差す。 何度聞いても返答はそればかりだった。 「さすがにさあ、日も暮れ始めるし帰りたいんだけど…」 「ゲラゲラ!」 その笑い声(?)には長い付き合いでなければ分からない真剣さがあった。 はぁ、とため息をついてからうどんげを押し留めるために頭を撫でる。 「ねえ、今日はもう帰ろうよ。 食事も用意してないし、今度来るときは朝から付き合うからさ」 「ケラ…」 うどんげはうつむいてしまう。 少々気の毒だが行き先が分からないため 極端な話明日の朝になっても歩き続けることになるかもしれない。 いくら自分の土地で歩きなれた山だとしても 深夜に大した装備もなしに徘徊するのはいただけない。 「……ん?」 一瞬、ビリビリと振動を感じた。 ほんの少しだったが、地震かもしれないと思った。 「まあいいや、帰ろう」 そう言ってもうどんげはうなだれたままだ。 仕方ないと思いつつ抱き上げようとすると ドォォォォォオォオオオオオン!!! 「うわ!な!何事!?」 あたり一面に振動が来るほどの爆発音が響き渡った。 うどんげと目線を合わせるためにかがんでいなければ転んでいたかもしれない。 「――――お………――――ね!…ぐや!!!」 「え?え?」 遠くから人の声のようなものが聞こえた。 ドォォォオオオオオオオオオン!! ドガァァァァァアアアン!!! 「うわあああああああああああああ!!!」 今度は爆風を肌で感じた。 木の葉がバサバサと身体に当たる。 倒れこみそうになるのを横にあった竹にしがみついて耐えた。 痛くはなかったが、凄まじい爆音に体が縮こまってしまう。 「貴方!誰ですか!?ここに入ってきては危険ですよ!!」 「え?アンタは…!?」 気が付くと、女の子が立っていた。 腕で顔をかばいつつ、こちらを見下ろしていた。 「とにかく、あちらへ走ってください!早く!!」 ドオオオオオオオオォォォォン!!! 「ひゃ!!」 「うわあああああああああああ!!!」 人生で初めて聞く実物の爆音に足がすくんでいた。 しかも振動があるので立ち上がることが出来そうになかった。 それを察したか、女の子が手を伸ばしてこちらの手をとった。 「急いでください!」 「あ、ああ!!」 助け起こされ、初めてその女の子の姿を見た。 長い薄紫の髪。 ブレザーにネクタイのミニスカート。 頭から突き出た二本の長い耳。 そして一番目に付いたのが…。 「え………?」 「あ…駄目です!!」 ドサッと手を突いて四つんばいになってしまう。 何か赤いものが目に付いた瞬間、体の平衡感覚が失われ倒れてしまったのだ。 「大丈夫ですか!?頑張って立って下さい!!急いで!!」 「わ、分かってる!!」 額に手を当てつつ、何とか立ち上がる。 再び眩暈がしたが正面にあった太陽に目がくらんだのだと思った。 「そのまま、真っ直ぐ走ってください!!」 「…………っ!!」 言われるまま、正面に向かって走り出した。 その後疲れて走れなくなるまで、ひたすらに。 ――――元の日付、午後1時、駅ホーム―――― 「なんだそりゃ…」 「分からない。分からないけど…後から考えたらおかしな点がいくつもあった。 あの山に竹なんか一つも生えていないことや あの時目がくらんだ太陽がまだ高かったこととか そもそもどうしてあの時うどんげの存在を失念していたのだろうとかね」 「その後探しに行かなかったのか?」 「行ったさ。でも見つけることが出来なかった。 何日探し回っても、調査という名目でローラー作戦寸前の真似をしても 結局は見つけることが出来なかった。 あの山は、そんなに広大な土地のはずがないのにね」 「……………」 「まあ、うどんげのことはいいでしょう? 今はうどんげ自身に確認を取ることも出来ないんだし…」 「いや、話していて辛いのはわかるがその話は重要だ」 「…そうなのかな」 初めて、こいつの人間らしい反応をしたような気がする。 うどんげのことは、もう聞かずとも分かる。 そして、俺もうどんげに導かれて竹林のあるあの場所へ行ったことも。 「聞いても答えようがない質問だとは思うが そのうどんげ、何か変わったところはなかったか?」 「変わったところ…?変わったところは別になかったかな。 強いてあげれば、うどんげにしてはちょっと頭が弱かった感じがあったかな…。 でもそうだね。あの日はうどんげにしては何か目的意識が感じられたし いつもより頑固だったから妙だとは思ってたんだけど」 「そうか…」 十中八九、そのうどんげも『記憶』とやらを見たんだろう。 だが、一つおかしな点がある。 「何故、うどんげは見つからなかったんだ?」 「…知らないよ。うどんげ種は珍しいから虐待鬼意山に捕まったのかもしれないし 或いは捕まって売りに出されたのかもしれない。 うどんげは喋れないから、転売してもばれないしね」 少々投げやりな返答が返ってくる。 気持ちは分かる。分かるからこそこいつにこのことを聞いても仕方がないということも。 …うどんげは、攫われても死んでもいなかった。 あの幻想郷と呼ばれる異世界で生きていたのだ。 半年以上経った今でも生きている保証はないが 諦めずに何かをなそうと件の竹林に留まり続けていたのだ。 そして同時に、俺が会ったれいむ種そっくりの女の子。 こいつが会ったうどんげ種そっくりの女の子。 いくつかの問題が、少しずつ繋がっていく。 「一番重要な質問だが、結局お前が大本の存在がいると思ったその理由は うどんげ種そっくりの存在を見たからなのか?」 「そうだけど…ちょっと違うかな」 「?」 そいつは一呼吸置いて続けた。 「一つは異世界が存在して、うどんげがまだ行き続けていてくれればいいという自分の願望」 「…まだあるのか?」 「もう一つは…あの時空中を飛んでた二人かな」 「まだ見た奴が居たのか…というか、空中を!?」 「ああ、あの時黒い煙の中から少しだけ見えた二人。 赤い翼を背負った白い人と、ピンクの服に赤いロングスカートの黒髪の人。 もこうと、テルヨフにそっくりだった」 ――――同日、午後2時、駅前―――― 「…おかしいですね」 「空中から見えたとは言うが、具体的にはどのあたりだったんだ?」 「いえ、このあたりのはずなんです。 実際は何もないので、見ていなかったまりささんには 信じていただけないかもしれませんが…」 「ああいや、そういうことが言いたいんじゃないんだけど…」 いくとまりさは、山中の森林の中を歩いていた。 そこには誰もおらず、不審な点は何一つ見受けられなかった。 「特異点というやつだが、具体的にはどんなものなんだ?」 「分かりません。 幻想郷との行き来を可能にするかもしれないということ以外は、皆目」 「そうじゃない。見た目の話だ」 「ああ、そう、そうですね。 空中に黒い珠が現れるといった具合でしょうか。 うまく言葉で説明できませんが…」 まりさは少し妙に思った。 いくはかなり洞察力に優れている。 それなのに、特異点に関する説明の意味を取り違えるだろうか? 「なあ、あまりここで時間を食うこともないだろう。 上空からこのあたりに特異点が見つかったのはもう分かったが ここまで何もないとなると別の場所を探すなり帰るなり 他の行動に移ったほうがいいんじゃないか?」 「そうですね…早く離れたほうがいいかもしれません」 「…え?」 ギャアギャアギャアギャア バサバサ 少し離れた場所で鳥の飛び立つ音が聞こえた。 それを聞いて、隻眼のまりさも野生の危機感を取り戻した。 この森林には、何かがいる。 それを察したのは第六感かどうかは分からない。 しかし隻眼のまりさの右目にはいくと同様に、緊張感が宿っていた。 ――――同日、午後2時、路上―――― 「随分時間食っちまった…!」 俺は電車を降りた後すぐに走り出した。 思った以上に列車のタイミングが合わなかった。 家から二駅ほど離れた場所なのでタイミングがよければ、十分程度で到着するはず。 「…は、柄にもないんだがな」 あの後、電車内でやることもないので電話越しに今回の件を話した。 マナーがどうだという話は頭のどこかへ吹っ飛び なおかつゆっくりうどんげの話に同情したのか、今回の一件を簡単に説明した。 …すると、あの男は少し興味深い考察を話した。 『じゃあ、一つだけ打開策があるね』 『どういうことだ』 『幻想のものがこちらの世界にあるのが問題なんだろう? だったら話は簡単だ。ゆっくりの謎を全て解き明かしてしまえばいい』 『…なんだって?いや、それ以前にそんなことが可能なのか?』 『さっき君に聞いたよね?ゆっくりって何だと考えるって。 ずっと前からゆっくりの研究をしていて考えたんだけど ゆっくりってひょっとしたらその幻想郷という世界の力というか 言い方を変えれば何かこちらの世界の常識の通用しない 特別な何かが影響しているのかもしれないと思ったんだ』 『だから?』 『察しが悪いね。 幻想郷なんてものが存在するのならば 今回君が関わっている事件は間違いなく幻想郷が絡んでくる。 同時にそれは、君の頑張り次第でこちらの世界にいては絶対に解き明かすことの出来ない ゆっくりの謎を解明する絶好の機会じゃないかってことさ』 『いや、そうじゃなくてだな』 『だーかーらー。 ゆっくりの存在の在り方の全てをこの世界に知らしめて 幻想を幻想でなくせばいいのさ。 そうすれば、ゆっくりはこの世界の当たり前の存在になって 幻想郷との折り合いをつけることができるというわけさ』 『まて、そんなことをすれば逆に幻想郷との境界が曖昧になってしまうのではないか?』 『別に幻想郷全ての謎を解明しろっていっているわけじゃない。 聞いた話によれば、人間は向こうにもいるんだろ? ってことは、当たり前の存在なら幻想郷とこちらに同時に存在しても構わないということで ゆっくりの謎だけを世界に広めれば幻想郷を維持しつつ ゆっくりがこちらに存在し続けることができると言うわけさ。万々歳だろ?』 本当にそうだろうか? 俺は一抹の疑問を感じつつも列車の到着を期に電話を終えた。 あいつの話した内容は確かに一部、的を得ている点もある。 が、同時にそれは危険な賭けでもある。 そもそもあの隻眼のまりさの話では幻想は幻想として 守られてなければならないというようなニュアンスを持っていたように思う。 それこそ、ゆっくりを全て…。 「いやいやいやいや」 頭に浮かんだ馬鹿馬鹿しい話を打ち切る。 俺はどうしてこうして外出してきたんだろうか。 決まっている。いくさんを連れ戻すためだ。 もう既に想像はつく。いくさんは『記憶』を見たのだ。 そして言いくるめようとする俺を避け、自分で気付いた何かを確かめるために外に出たのだ。 実際、いくさんの書置きには『確かめることがある』と書かれていた。 恐らくいくさんの見た『記憶』にはまりさとはまた違った情報があったに違いない。 そして、いくさんが知りえた情報の中で行ける場所。 あいつとの電話ではっきりした幻想郷と一番つながりがありそうな場所。 走って走ってたどり着いたのは 近くで一斉駆除と山火事が起きた、あいつの所有する山。 俺はそのまま走って森の中に入って行った。 ――――同日、午後3時、山中―――― 「いくさーん!!!」 大声でいくさんを呼ぶ。 いるかどうかは分からない。 だが、こうして探さなければ見つかるものも見つからない。 「ふぅ……」 木に手を付いて一休みする。 或いは、ここにいればまた幻想郷に繋がる手がかりが見つかるかもしれない。 そしてそう言う場所だからこそ、いくさんが向かった先である可能性も捨てきれない。 「いくさーん!!!いるかー!!??」 「ゆゆっ!!ここはれいむのゆっくr」 「うるせーよ!!!」 「ぎゅぶげ!!」 現れたクソ饅頭を蹴散らしながらさらに進む。 あのもこうの捜索とは違い、全力で探している。 「ゆっへっへ!!まりささまにせいっさいっされたくなけれb」 「邪魔だっつーの!!!」 「ぐぶべ!!!」 「いくさーん!!!」 「ここはありすのとかいはな」 「うるせー!!!」 「どがいばああああぁぁぁぁぁ………」 「ゆっくr」 「どけ!!!」 「ぶぎゅ!!」 「ゆんやあああああああああああ!!!」 「………ん?」 俺が攻撃をする前から悲鳴を上げているれいむ種がいた。 それ以前に、そいつは俺の走っている方向からこちらに向かって進んできた。 「おい貴様!!止まれ!!」 「ぼうやだああああああああ!!!おうぢがえるううううううううう!!!」 「止まれっつってんだ!!!」 そいつの髪を片手で掴み、空中にぶら下げてやる。 「ゆんやあ!!ゆんやあああああああああ!!! まりざあああああああああああ!!! おぢびぢゃああああああああん!!!」 「おい!答えろ!何があった!」 「やじゃあああああああああ!!! まりざあああああああああああ!!! まりざああああああああああああ!!! がわいいでいびゅをだじゅげでねええええええええ!!!」 「何があった!!!」 両手でホールドし、脅すように聞いてみた。 「じらないよおおおおおおおおお!!! びがーっでなっで、どがーんっでなっで!!! ばりざもおぢびぢゃんもいなぐなっぢゃだよおおおおおお!!!」 「…なんだって!」 まさか本当に、幻想郷というやつとの接点ができているというのか!? 俺は掴んでいたクソ饅頭をその場に放り出すとそいつが走ってきた方向へ向かう。 いくさんがここに来ているのなら、あいつのうどんげのように 見つからなくなってしまうかもしれない。 俺はそう思うといてもたってもいられなくなった。 さらに数分例の方向へ走った頃。 「いくさーん!!!…………え?のわっ!!!」 頭の横を赤い何かが通り過ぎていった。 思わず尻餅をついてしまう。 「ぎゃー!!!」 続けて三連弾。今度は見えた。 信じられないことに火の玉が飛んできたのだ。 「だああああああああああああ!!!」 さらに数発。 その火の玉は、間違いなく俺めがけて飛んできている。 とっさに身をよじってかわすと同時に立ち上がって走り出す。 「あいて!!いででででででっ!!!」 今度は細かい木片のようなものが大量に飛んできた。 幸い服を切り裂くほど強力ではないが、手や顔などの場所は切り傷が出来た。 服を通しても腕や足がチクチクして痛い。 場所によっては刺し傷が出来たかもしれない。 「なんなんだ一体!?いででで!!」 木片は断続的に飛んでくる。 たまらず俺は少し大きめの木の陰に隠れた。 と、同時に火の玉が飛んできた。 一旦は通り過ぎて安堵するのだが 「なんだよそれ!!!」 隠れている俺をピンポイントで狙うような変化球だった。 頭を狙っているようで俺は顔を腕でかばいつつ伏せた。 すると 「うわ!!!」 火の玉は俺に接触する寸前、一瞬の閃光と共に視界から消えた。 「大丈夫ですか!!!」 「いくさん!?」 右から聞こえた声に反応してそちらを見るといくさんがいた。 隻眼のまりさも一緒だ。 いくさんと俺が一瞬安堵の表情を浮かべると同時にまりさが叫んだ。 「伏せろ!!!」 「え!?うおあ!!!」 隻眼のまりさの右目が光ったと思ったら極太のレーザーとも呼べる光が俺の頭頂をかすめた。 あともう少し軌道が下にずれていたらと思うと冷や汗ものだ。 「お兄さん!!!後ろに!!!」 「え!?え!!??」 状況が飲み込めないでいるといくさんが俺の横を通り過ぎて行った。 振り返るとまた火の玉がいくさんめがけて飛んできた。 「いくさん!!!危ない!!!」 が、いくさんの眼前に出現した渦巻きを描く風の壁とも言えるものが火の玉を弾いた。 間髪いれず、いくさんが両手を突き出す。 「えい!!」 すると、火の玉とは比較にならない速度で空中に電気が走り、火の玉の発射点と思しき場所に命中した。 「むぎゅゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!」 「この…!!!」 「とどめだ!!!」 向こうにいる何かと隻眼のまりさが光りだした。 再び攻撃が交差すると思った瞬間だった。 「やめろ!!撃つな!!攻撃をやめるんだ!!!」 あさっての方向からそんな声が聞こえた。 その声が聞こえると同時に、向こうの光は収束して消えた。 だが隻眼のまりさの光は止まらない。 「マスタースパーク!!!」 「やめろって言ってるだろ!!!」 隻眼のまりさからレーザーが放たれる。 それと同時に攻撃目標とまりさの間に何かが割り込んできた。 「ぐぁ……!!!」 一瞬の呻き声がするとまりさから放たれたレーザーが何かを粉砕した。 だが、レーザーの軌道は大きく変わり、全く関係ない方向へと飛んでいった。 「な、なんだ…今のは…」 「あ……」 まりさも、いくさんも、俺も唖然としていた。 恐らく向こうもそうなのだろう。 十秒近く静かな時間が流れた。 だが、その沈黙を破ったのは砕け散った存在だった。 『それ』の破片は瞬く間に膨れ上がるとゆっくりの形をとり、こちらに声をかけてきた。 「やあ、久しぶりだな。『やる気のない駆除業者さん』?」 そこには、口の端を吊り上げたゆっくりもこうが佇んでいた。 続く あとがき 随分長く間が開いてしまってますが、忘れないでいてくれると嬉しいです。 お兄さん、いくさん、隻眼のまりさ、研究者、うどんげ、もこう。 役者が出揃ってきました。あともう少しです。 新しい話や単発もちょくちょく書いているのでこの作品で終了と言うことはないです。 お暇でしたら、そちらも付き合ってくださればと思います。 今回はこの辺で。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話
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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その2』 21KB 考証 独自設定 会話はもっと少なくてもよかったかも? この作品は何処へ向かうのか…。 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆除業者のお仕事風景』と 『隻眼のまりさ』の二つの共通する最終話となっています。 最終話と言いつつ、伸びそうなんで長い目で見ていただければ幸いです。 例によっていくさんをかわいがるので… いや今回はあからさまではありませんが、饅・即・虐の方はご注意。 ――――同日、午後11時、自宅アパート―――― 俺は、全く動けなかった。 …え?なんで?何を言っているんだ? それは、しかし、だが。 いくさんの、その言葉は 「…なんでそれを知っているんだ?」 俺の変わりに隻眼のまりさが神妙な顔でいくさんに問う。 隻眼のまりさの問いは、質問ではなかった。確認だ。 それがよくわかる。 なぜなら、俺は否定して欲しかったからだ。 「貴方の記憶の中でも、そうなんですね?」 流暢な日本語だった。 いくさんの話し方は丁寧であってもどこかぎこちなく ゆっくりらしい喋り方であったはずだ。 もう俺の中では解答が出ている。 いくさんはすでに『スイッチが切り替わっていた』のだ。 「…奇しくも、これはある種の証拠になるな」 確かにそうだ。 例えば、両者をそれぞれ別の場所に分けて交互に同じ質問をしていく。 そしてその回答が合致するものであればこれ以上ない証拠だ。 俺は冷静さを取り繕って聞いた。 「で、いくさん。過去に神社が崩壊したことは分かった。それで?」 「それでも何も今のが何よりの証拠だろ!私が話したのは作り話じゃない!」 「結論を急いでもらっては困るな」 「何?」 「まだ話のすりあわせが出来たわけではないし 今のはお前が話した内容がただの妄想で無いという程度のものだ。 その幻想郷とやらが存在しうるという直接的な証拠にはならないぞ」 「……っ!」 隻眼のまりさが悔しそうに俺から目線をはずす。 とりあえず俺の意見の方が正しいと思ったようだ。 実際、これは状況証拠にしかならない。 「いくさん、神社の崩壊があったのはわかったが…それがどうかしたのか? それともこいつに質問して自分の知りえたことの答え合わせがしたかったのか?」 「……………」 いくさんに質問し直すが、先ほどからしきりに何かを考えている様子。 「さっきからどうしたんだ。 何か思うところでもあるのか?いくさん?おーい…」 「……………」 まりさもだんだん様子が変だと思い始めたらしい。 いくさんに怪訝な目を向ける。 「お兄さん、少し待っていただけないでしょうか?」 「待ってって…なんだ?時間稼ぎのつもりなのか?」 「そういうわけでは…いえ、そうですね。 明日まで考える時間が欲しいんですが…」 「明日までねぇ…」 俺は時計を見る。 確かにもういい時間ではある。 普段から起きる時間の早い俺としては もう寝ていても全く不思議ではない時間帯だ。 「まあいいや、分かった。 いくさんがそこまで言うなら仕方がない。 明日は出張に関する書類を書くだけだから午後半休で帰ってくる。 昼過ぎから話を再開しよう。お前もそれでいいな?」 「私は構わないが、その…」 「大丈夫だ。今すぐ放り出したりはせん。 ただし、明日の夜には何があっても出てってもらうからな」 「すまない」 「ありがとうございます、お兄さん」 「ふん…」 少々気に入らないが、やむを得まい。 何より、いくさんがここまで頑なに自分の意見を持っているのだ。 それがどういうものなのか見てみたい思いもある。 「ほらよ」 「…?これが何か?」 俺の布団を敷いた後隻眼のまりさに 汚れて雑巾にしようかと思い始めていたタオルを 投げて寄越すと、きょとんとされた。 「使えって事だよ。 体拭くなり布団にするなり好きにしな」 「あ、ああ、助かる」 「で、お前の寝床はここな」 トイレのドアを開けて指をさす。 「そこって…便所じゃないのか?」 「家にいてもいいとは言ったが同じ部屋で寝る気はない。 外の方がいいと言うなら止めはしないが」 「…わかったよ」 タオルをくわえてトイレに入るまりさ。 いくさんから一言あるかと思ったが例によって考え事に夢中な様子。 「いくさーん…」 頭を指先でコツコツとつつく。 「…え?あ、はい?」 本気で気付いてないのか…。 「電気消すが、いいか?」 「はい。おやすみなさい、お兄さん」 「…おやすみ」 電気を消して、俺達はそれぞれの思いを胸に眠った。 ――――翌日、午前7時、自宅アパート―――― 「おーい?私はいつまでここにいればいいんだー? 流石に腹も減ってきたんだがー?」 俺は無言でゆっくりフードを一握りつかみ トイレの中にいた隻眼のまりさにくれてやる。 「トイレの中で食わせる気かー?」 「文句を言うな。 それより午後になったら決着をつけるからな。 首を洗って待って…いや、お前に首はなかったな」 そう言うとまりさの方を無視していくさんに声をかける。 「じゃあ、行ってくる」 「はい。いってらっしゃい、お兄さん」 いくさんはいつも通りの笑顔を見せて俺の見送りをしてくれた。 …それを見て、俺は油断していたのかもしれない。 いくさんの背丈では、トイレも、窓も開けられないと。 ――――同日、同時刻、自宅アパート―――― 「じゃあ、行ってくる」 「はい。いってらっしゃい、お兄さん」 ガチャっとドアの閉まる音を聞きいてから声を出す。 「――――お兄さん、ごめんなさい」 そう言うと、いくの足が床から離れた。 ジャンプではない。 何故なら宙に浮いたいくはそのままじわじわ上昇し続けているからだ。 そのままトイレの方へ向かい 床に足をつけていたままでは届かないノブを回しドアを開けた。 「…ん?何だ?…ってお前、飛べたのか?」 「はい、身につけたのは昨日のことですけど…」 いくは昨日、いくつかの『記憶』を見ていた。 それは緋色の剣を持った少女であったり 通常の地面から程遠い場所で角のある者と話している情景だった。 そして何よりも多かったのが、雲の中を行き交う竜宮の使いの姿。 それを知ると、急に自分の体が軽くなるのを感じた。 いくは極めて自然に、空を飛ぶことを身につけていたのだ。 「まりささん、大切なお話があります」 「話?話し合いはあの男が帰ってきてからするんじゃなかったのか?」 いくは首を振る。 「いいえ。これは、私とまりささんだけで話したいことなんです。 …そして、外に出て行く必要があるのです」 「外に…!?だけどお前…!」 「何も言わないで下さい。 これは、昨夜ずっと考えた結果なんです。 そしてこれにはまりささんの力が必要なんです。 お願いします。ついて来てもらえないでしょうか?」 「…………。 私がついて行くこと自体は別に構わないんだが お前がいなくなったのに気付いたら私が殺されないか?」 「それについては完全な保証は出来ませんが 私の方から出来る限りまりささんに手を出さないようにお願いしてみます。 …それに、私たちの話している内容は 不確かな記憶に頼っている以上説明不足になりますし 感覚的な話ばかりで説得力もありません。 午後になって時間をかけて話し合いをしては どのように話を進めようとも必ず言い負かされてしまいます。 私たちがちゃんと行動できるタイミングは今しかありません」 「そう言ってくれるのはありがたいが…」 「携帯電話も持って行きますし場合によってはすぐ帰ってくればいいのです。 あなたも、とりあえず話は伝えられたのですから 無理をしてここにこだわらなくてもいいでしょう?」 「…分かった。そこまで言うなら。 ただ、どうして外に出る必要があるのかよくわからないのだが?」 「それについては、道中お話します」 そう言うといくは荷物を用意し、書置きを残し 隻眼のまりさを連れて窓から飛び立った。 ――――同日、午後1時、自宅アパート―――― 「いくさん…!!」 仕事を終え、自宅に戻った俺はいくさんの書置きを見た。 そこには 『私は、確認したいことが出来ましたので 少し出かけてきたいと思います。 携帯電話は持って行きます。 ですが用事がすむまでは出ないかもしれません。 そして、この外出は私から言い出したことで まりささんに責任はありません。 無理はしませんし、必ず戻ってきます。 その時、私は許されようとは思いません。 ただ、出来れば私が戻ったとき相応の罰を受け 以前のような暮らしに戻りたいという思いはあります。 どうか、少なくともお兄さんは幸せでいて下さい』 「なんだよ、それ…」 気に入らない。 いくさんが出て行ったことも あのまりさがついて行ったことも 俺に相談してくれなかったことも気に入らない。 だが、一番気に入らないのは手紙の末尾に書かれた名前らしき記述。 「『衣玖』って…誰だよ…」 俺の中で様々な感情が渦巻く。 グチャグチャなそれは一向にまとまる気配がないようにも思えたが 最終的には『怒り』が一番強かった。 「…っくっそ!!!」 が、何に対して怒っているのかは分からない。 向ける対象がないのかもしれない。 「探しに行こう」 今の俺にはそれしかない。 そしてその言葉を吐いたと同時に冷静さが戻ってきた。 「荷物…!」 必要になりそうなものを片っ端からリュックサックに入れていく。 財布、時計、ティッシュ…少し迷ってから、タオルや着替え、懐中電灯なども。 場合によっては数日間に渡るかもしれない。 最悪それでも見つからないかもしれない。 いや、本当の最悪は…。 「ええい!!」 いやな思考を打ち切る。 ポケットに手を入れ、携帯電話を確認する。 着信はない。 そして、駄目だとは思いつつも短縮ダイアルにあった いくさんの携帯にかけてみる。 「やっぱり駄目か…」 が、コール音はした。繋がったのだ。 少なくともいくさんの携帯電話は壊れていないし、バッテリーも残っている。 「よし…」 気休めの希望が手に入った。 俺は玄関のドアを開け、鍵をかけ、そして走り出す。 …どこへ? 当てなどない。だから、そこらの人に片っ端から聞くしかない。 正直相手にされそうも無かったが、警察に捜索願を出すもの手か、と思った矢先。 俺は、俺自身が知りえた情報がパズルのピースのように頭に浮かんできた。 隻眼のまりさの毒気に当てられたのだろうか。 あるいはいくさんの行動に思いのほか混乱していたのかもしれない。 去年から俺は様々な不可思議な出来事を見てきた。 が、事実として起こった以上、それぞれが何らかの意味があって起きた事なのだ。 たとえ俺には意味のないことでも、それが何かのために起きたことのはずだ。 全てのピースは出揃ったのか。 いや、全てが出揃っていなくてもジグソーパズルというものは ある程度形が出来てくれば絵は見えてくるはずなのだ。 隻眼のまりさが語ったこと。 そして俺が今まで知り得てきた情報。 今思えば妙に符合する点もあった。 事実として食い違っていても、別の論理に導かれて 意味をなすものもあるかもしれない。 俺は、パズルのピースをさらに増やすために、あるところに電話をかけた。 ――――同日、午前9時、上空―――― 「お空を飛んでるみたい、と言うべきなのか?」 「実際に飛んでいるのですから、必要ないのではないでしょうか。 ですが、空気を読むことはいいことだと思います」 いくと隻眼のまりさは空中にいた。 まりさはタオルにくるまれていくの背中に乗っている状態。 丁度風呂敷を背負っているような格好である。 飛んでいるのは地上100m程の高さ。 場合によっては写真にとられてUFOだと騒がれているかもしれない距離。 肉眼で確認するにはゆっくりは小さすぎた。 「で、結局お前はその『特異点』という場所が怪しいというわけだな?」 「はい、私が見た『記憶』の方はいつも空を飛んでいましたから 何度もその場所を目にしていたのだと思います」 いくと隻眼のまりさはずっと空中で話し込んでいた。 空中を飛んで移動するのはある種危険な行為なのだが 少なくとも地上を歩いていくよりはましだと思ったのだ。 「だが、その特異点はどこにでも突然現れたんだろう? 実際どうやって探せばいいんだ?」 「ですから『記憶』で見た方と同じ方法をとるのです。 上空から見ていればすぐに分かりますからね」 「飛んでいるのはそう言う意味合いもあったのか…」 しかし、いくは地上で言うところの腹を下にした『うつ伏せ』の姿勢で飛んでいる。 この状態では背中に乗っているまりさから地上を見ることは出来ずにいた。 「だが、そんなに簡単に開くものなのか? 私の『記憶』では神社以外に幻想郷に出入りできる場所は 無いように思えるのだが…。 何より、何もかも境界が曖昧な世界で唯一ともいえる境界が 幻想郷とこちらの世界の境界線だというらしいじゃないか」 「分かりません。ですが、貴方の言った事がどうしても気になったのです」 「私の言ったこと?」 「幻想郷との境界が曖昧になっている、ということです。 逆に考えればその幻想郷の崩壊というのが 幻想郷との行き来を可能にする『特異点』の多発と考えれば辻褄が合うのです」 「確かにそうだが…」 だからと言ってそれを確認してどうなる、という言葉をまりさは飲み込んだ。 自分には何をしていいものか全く見当もつかないのだ。 「……………」 「……………」 会話が途切れる。 二人の間には共通するものが少なかった。 人間の元で生まれて人間に飼われていたいく。 山間部で生まれ野生のゆっくりとして生きてきたまりさ。 そして『記憶』の中の存在も共通する点があまりに少なかった。 だが、逆に言えば互いの情報交換によって 様々な新情報が得られるということでもある。 いくは口を開いた。 「今回の一件には全く関係ないのですが まりささんは、野性のゆっくりとして生きてきたんですよね?」 「ああ、それが?」 「私は森の中のことや他のゆっくりと協力して暮らすということを よく知らないのです。 やはり、人間の力を借りずに生きるというのは大変なのですか?」 「そうだな。アンタの言動やあの男の対応を見る限りでは 飼いゆっくりに比べて過酷なのは間違いない。 …ああいや、嫌味のつもりはないんだぞ?」 「お気になさらないで下さい。 やっぱり、まりささんにもお仲間の方たちがいたのですか?」 そう言われ、隻眼のまりさはかつての集落に思いをはせる。 不思議なものだ。 本当にただのゆっくりであった頃と今の自分は全く違った。 『記憶』を得て以降、自分は性格も言動も全く変わってしまっていた。 なにより、あれだけ必死に生きてきた毎日が 色褪せて見えたのが意外だった。 同時に、人間から見ればゆっくりというものが いかにちっぽけなものであるのか否応無しに分かってしまうのだ。 「…ごめんなさい。余計なことを聞いてしまいましたね」 「いや、大丈夫だ」 自分の中になんともいえない感情が渦巻いていたのを察知されたらしい。 しかし、俯瞰してみると本当に妙な感じだった。 あれほどまでに感心していたぱちゅりーの知識が幼稚なものに思えてくる。 今なら上から目線で偉そうに語ることさえ出来そうだ。 あれほどまでに感心したドスの戦いが滑稽なものに思えてくる。 今ならドスさえも単独で倒すことが出来るだろう。 「…不思議なものだ」 「はい?」 我知らず口に出してしまったらしい。 だが、案外聞いてもらうのも悪くないかもしれない。 「私は、変わってしまったんだ。 あの頃の必死さとか、目線の高さとか 昔の自分から見て光り輝いていたものが随分と鈍く見えるよ」 「…………」 まりさは生気のない目で語った。 いくは神妙な顔で次の言葉を待つ。 「昔の私は、本当に子供みたいな感情を持ち続けていたんだ。 不便であったがためにどんなものでも幸せを感じていた。 今の私がそれを得たとしても何の感慨も沸かないようなちっぽけなものでもな」 いくは隻眼のまりさの言う『それ』が 食料や玩具といった即物的でない物を指していることをなんとなく察していた。 「何故だろうな。今でもゆっくりであることに変わりはないはずなのに。 ゆっくりすることをやめた私は、本当にゆっくりでなくなってしまったんだろうか。 …強くなるということは、ゆっくりすることをやめるということは ゆっくりでなくなるということは、私にとっての世界の価値を貶める行為だったんだろうか?」 隻眼のまりさの目に映る世界は変わっていた。 当然だ。人間の目から見れば野性のゆっくりの生活など 劣悪な環境で危険と隣りあわせで生きているろくでもないものだ。 ぱちゅりーと違いまりさが得たのは人間の『知識』ではなく『記憶』だ。 そうなることで次第にゆっくりの価値観は薄れ 逆に人間の価値観に上書きされてしまっていた。 かつてはあれほど輝いていた家も、食事も、仲間も ちっぽけなくだらない存在に見えてくる。 「後悔しているんですか?」 「………少しな」 隻眼のまりさは短く言った。 いくには言葉では理解した。 しかし感情で、深いところで理解することは出来なかった。 何故なら両者には、決定的な違いが多くありすぎたからだ。 『今まで見てきた目線の高さ』 『帰ることの出来る場所』 いくはこの件が綺麗に片付いたらまたあの家に戻り 以前のような暮らしに戻りたいと考えている。 自分は少し変わってしまっていたが『記憶』を得たことを幸運とも不幸とも思わない。 今までの生活と、これからの生活。 戻れることが確定しているわけではないのだが それはいくにとって大きな希望になる。 隻眼のまりさはもう戻るべき場所も 希望となるよりどころも失くしていた。 再び野生に戻ったとしてもまともな幸せは得られないだろう。 そこで得られるのはゆっくりとしての幸せであって人間の幸せではない。 それどころかなまじ人間の知識を得てしまったがために 駆除に怯え、雨に怯え、小動物に怯え…そんな暮らしに戻ることに 魅力が感じられなくなっているだろう。 だが奇しくも、まりさは気付かなかったが これはぱちゅりーが得ていた不安感との戦いに酷似していた。 『人間の知識を得る』これは、ゆっくりにとって本当に幸せなことではないのだ。 ――――同日、午前1時、自宅アパート前路上―――― 俺は、ある場所に電話をかける。 コールは五回。向こうの声が聞こえてきた。 「はい、こちらゆっくり研究所支部です」 「唐突で申し訳ない。そちらの所長に取次ぎをお願いできないだろうか?」 「所長に?…失礼ですが、どちら様でしょうか?」 「以前にそちらの所長にご招待いただいた者だ。 一斉駆除ではお世話になった」 「申し訳ありませんが、事前のご連絡のない方の電話はお取次ぎしかねます。 まずは、広報課か事務室の方へご連絡いただき、それで」 「俺はゆっくり駆除業者の九郎だ! 言えば分かるから伝えてくれ! 急ぎの用事なんだ!!」 「…………」 向こうが眉をひそめているのが電話越しにも分かりそうな沈黙だった。 だが自分でも驚いたが今の俺にはそれほどまでに余裕がない状況なのだ。 「少々お待ちください」 そう言うと保留の音楽が電話越しに聞こえ始めた。 「ええい…!!」 俺はただのんびり待っていることもできず走り出した。 ある場所へ向かって。 そういえば、いくさんはそれほど外出が好きだったわけでもない。 俺と連れ立って外へ出たときも自分から何処へ行きたい、あれはなんだと 外のものに興味を示すことは少なかった。 故に、いくさんの行き先は普段行っていた公園や買い物先を除けばかなり限定される。 俺の知らない場所へ出て行った可能性も無きにしも非ずだが 冷静に考えればいくさんが向かったのは 『いくさんが知りえた情報の中で決定することの出来る場所』ということになる。 『記憶』とやらが異世界のものであるのならこの世界の情報は入っていないはずだ。 つまりはこちらの世界での情報は俺が知らずに いくさんが知っている事柄はかなり限定される。 加えて、ゆっくりだけでは法的に電車やバスは使えない。 人間より早く移動することの出来ないゆっくりならば 何とか探し出すことが出来るかもしれない。 「もしもーし?ゆっくり研究所支部長ですがー?」 「ああ、よかった。あんたに聞きたいことがあるんだ!」 「それは別にいいんだけど、確か名刺あげなかったっけ? 携帯にかけてくれてもよかったんだけど」 「悪いが今は持ってないんでね」 「そう、まあいいけど」 奴のあまりにいつも通りの暢気な口調に苛立ちながらも 感情を抑えつつ、言葉を発した。 「以前アンタが話していたゆっくりの大本となる存在の話しあったよな!? それについてと…他にもいくつか聞きたいことがあるんだが!」 「それは別にいいんだけど…どうしたの?そんなに息せき切って」 「今は事情を説明している暇はない! 全て終わったら話すから今は質問にだけ答えてもらえると助かるんだが!」 「随分一方的だね…まあ、他ならぬ君の頼みだから聞いてあげるけど 一つ貸しにしておくからね?」 「分かった分かった!」 なんというか今更だが、この男の口調は成人男性のものとしては いかがなものかと思ってしまうのは俺だけだろうか? 気のせいだとは思うのだが。 「で、何が聞きたいんだい?」 「アンタの話した、ゆっくりの大本の存在の話しなんだが アンタはそれが一体どういうものだと考えているんだ?」 意識したわけではなかったのだが俺は走るのをやめて歩きに入っていた。 走りながら話すというきつい行為を無意識に嫌ったのかもしれない。 だがそのおかげか、多少冷静さが戻ってきた。 「大本となる存在の話っていうけど、それは仮説の一つにしか過ぎないんだけど?」 「それでは質問の答えになっていない。 俺は『あったとしたらそれはどのようなものだ』と聞いているんだ」 「さあ…ひょっとしたらドスのような突然変異体のようなものかもしれないし 女王蜂や女王蟻のような引きこもって表に出ない何かかもしれない」 「他には?」 「他に……?そうだねぇ。 ひょっとしたら元となる存在も単なる一つのゆっくりに過ぎなくて 大本Aが死んだらその途端に大本Bが現れるというシステムかもしれない。 場合によっては大本となるゆっくりが複数いるかもしれないという考え方も出来るね」 奴の話を聞いていて俺はやっぱり、と思った。 「まああくまで、大本なんてものがいればの話だけどね。 この仮説は仮説の域を出たためしがないわけだし」 「ごまかしは無しにしてくれ。気付いたのはついさっきだが もっと早くに疑問に思うべきだったんだ」 「…………」 「アンタは半年前、大本となる存在が日本にあるかもしれないと言った。 と、同時に日本はゆっくり生息分布のために調査がなされたが 何処にも大きな発見がなかったということも言っていた」 「…それが?」 「おかしいじゃないか。 二つの命題が矛盾しているというだけでなくアンタはわざわざ 『歩いていけないどこか』なんて表現を使った。 日本は山が多いが世界から見れば狭いし、人跡未踏の地なんて存在しない! それに大本となる存在の例が全てゆっくりなのはどういうことだ! あいつらは苛酷な環境で生きていけるはずのない脆弱な連中だ! 南極はもちろん高地や砂漠!雨の多い熱帯でも確認されてはいなかった! なのに何故!アンタは大本がすぐに見つかりそうな日本にあるなんて馬鹿な仮説を考えた!」 「それじゃあ、大本となる存在がいるってこと自体が 間違っているってことじゃあないかな?」 「違う!アンタは自分で言っていただろう!そうであったら矛盾がないと! それ以前にアンタは本職の研究者だ! 俺でも気付いたような今の話を自分で考えなかったはずがない! なのに何故そんな仮説を公の場で話したりしたんだ! アンタ自身の中にこの仮説に他に 何らかの論拠があったからそう思ったんじゃないのか!」 興奮してまくし立てる俺に周りの人たちが変な人を見るような目を向けてくる。 だが、今の俺には全く気にならなかった。 「…君は、研究者というものをちょっと買いかぶってるよ」 聞こえてきたのは静かな声だった。 「確かに、君の言うことは一理あるのかもしれない。 だけど研究者だって人間だ。間違いはある」 「…………っ!!」 冷静に返され俺は歯噛みした。 「間違った仮説を人前で披露してしまったのは確かに恥ずべきことだ。 だけどそれを電話越しに関係者でもない君にそこまで非難されるいわれはないよ」 「…悪かった。先ほどの俺は確かに少々興奮しすぎた。 少々厄介な問題が発生していたものでな」 「だけど、と続けるつもりかい?」 「そうだ。確かに俺が悪かった。申し訳ない。 それでも今の俺には一つでも多くの情報が欲しいんだ。 そしてそれはおそらくあんたが知っているであろう情報なんだ。 …協力してくれないか?」 出来る限り冷静さを持ってそう言った。 そして、今の俺は何故だかはわからないが こいつが嘘をついているという確信があった。 同時に、こいつの持っている情報は絶対に必要なものだということも。 続く あとがき 話を進めていくのが難しい内容になってきました。 作中の会話に矛盾や、前言っていた事と違うじゃないか というような点が出てきやしないかとちょっと不安になります。 ともあれ、私は完結まで(暴走気味に)走り続けるので 皆がハッピーエンディングを迎えられるように応援してくだされば嬉しいです。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その1
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『読書の秋』 9KB 愛で 虐待 飼いゆ 野良ゆ 現代 独自設定 れいむ、まりさ制裁、ぱちゅ優遇。 読書の秋 やあ、僕は読書お兄さん。みんなは秋と言えば何を想像するかな?食欲の秋、スポーツ の秋、芸術の秋、色々あるけど、僕は何と言っても読書の秋。早速読書と言いたいところ だけど、読書って一人ではつまらないと思うんだ。良い本を読んだときの感動や、内容の 議論が出来ないとつまらないよね。でも、周りには読書をするような友人はいないし、人 見知りの僕はネットでの議論も尻込みしてしまって参加できない。どうしようかと悩んで いる内に、良い事を閃いた。 「そうだ、人は駄目でもゆっくりなら大丈夫」 すぐに準備をして近くの自然公園までやってきた。ここには野生のゆっくりが多く生息 していると言われている。あまりゆっくりの知識がない僕だけど、お目当てのゆっくりの 種類は知っている。紫色の髪に三日月型の飾りのついた帽子をかぶった、ゆっくりぱちゅ りーだ。 ゆっくりは種類によって好む物が違ってくる。れいむ種は丸い球のような物、まりさ種 はほうき等である。そして、お目当てのぱちゅりーが好む物は本。うん、僕にぴったりじ ゃないか。 「さてと、ぱちゅりーはどこかな・・・?」 そんな事をつぶやきながら公園を散策していると、目の前に2匹のゆっくりが飛び出して きた。 「ゆっ!じじい、ここはまりさとれいむのゆっくりぷれいすなんだぜ!じじいはしょば だいとしてあまあまをよこすんだぜ!」 「かわいいれいむにあまあまをよこすのはとうぜんなんだよ!かわいくってごめんね!」 成程、これがゲスという奴か。こういった自然公園ではゲスゆっくりは少ないらしいが、 都会では相当な数のゲスゆっくりが生息しており、問題になっているらしい。僕は今まで ゲスと言えど、ゆっくりを潰すという行為には抵抗があったが、これなら仕方が無いだろ う。偏見を持っていた鬼意山達、ごめんなさい。 「ばりざのはなじをぎげー!!!まったく、つかえないじじいなのぜ!」 「どれいのぶんざいででいぶたちをむしずるな!つかえないじじいはゆっくりしね!」 そう言ってれいむのほうが体当たりを仕掛けてきた。僕は足を腰の上あたりに膝がくる ように振りあげて・・・タイミングよく振り下ろした。 グシャッ! 小気味良い音を立てて、れいむは餡子をまき散らしながら絶命した。 「・・・でいぶ?」 あまりの展開の速さに番のまりさの餡子脳はついていけないようだ。それから20秒程経 過した時・・・ 「でいぶうううううう!どぼぢてこんなことするのおおおおおっ!?」 まりさが泣きながら訴えてくる。どこからどうみても自業自得なのだが、餡子脳ではそ れがわからないらしい。ゆっくりとそれを教えてやってもよかったが、生憎時間が無いし、 短時間でこいつが理解できるとも思わない。先程れいむを潰したときのように、僕は右足 を振 り上げた。 「ゆ゛ううううう!ごべんなざい゛い゛い゛い゛!ばりざがわるがっだでずううう!」 お兄さんの足が寸前で止まる。ゆっくりが謝罪行為をするという事が意外だったようだ。 途端に明るい顔になるまりさ。どうやら助けてもらえると思ったらしい。 しかし、お兄さんは冷静だった。 「よし、何が悪かったのか言ってみろ」 ゆっくりの謝罪は9割がただの鳴き声と言われている。心から謝罪する気持ちがあるケ ースは殆ど無いと言っても良いぐらいなのだ。 「ゆぅ・・・ごめんなのぜ!ばりざがわるかったのぜえええええ!」 駄目だこいつ、何もわかっちゃいない・・・。 お兄さんは止めていた右足をそのまま振り下ろした。 「時間取られちゃったな・・・そろそろ暗くなってくるな。ゆっくりしてないで探さな いと」 ゲスと戯れてる間に、時間は16時を過ぎていた。木の洞や不自然に落ち葉や枝が重なっ ている所を重点的に捜索するが、見つかるのは殆どがれいむやまりさ、稀にありすが見つ かるぐらいである。ぱちゅりーは脆弱なゆっくりの中でも特に貧弱なので、個体数が少な いと言われている。勿論お兄さんもそのぐらいは知っているが・・・ 「まさか、ここまで居ない物だとはなあ」 流石にここまで居ないというのは予想外である。暗くなるまで残り30分を切っている。 このままでは、ぱちゅりーは見つけられないだろう。お兄さんの家から自然公園まではそ れなりに遠く、交通費もそれなりにかかっている。このままでは帰るに帰れないお兄さん は最後の作戦にでる。 「ゆっくりしていってね!!!!!!!」 半径100メートル程度に響き渡る程の大声で叫んでみた。人が少ない場所だから良い物の、 これが人の多い公園なら、周囲から物凄く白い目で見られたことは間違いない。そし大声 を上げてジャスト5秒後、タイミングを合わせたかのように 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」 100匹は超えると思われる程の返事が響き渡った。まさかここまでの数が生息している とは、ゆっくりの繁殖力は凄まじい。 間髪いれずにお兄さんは 「ゆっくり出てきてね!!!出てきたらあまあまを上げるよ!!!!!」 なんとも単純な作戦である。こんなことで警戒心の高いと言われている野生のゆっくり は出てくるのだろうか。 「「「「「「ゆぅ!?あまあまさん!?」」」」」 「「「「「「あまあまさんはゆっくりできるよ!」」」」」 「「れいみゅあまあまさんがほちいよ!」」 「「「あみゃあみゃよこちぇー!」」」 「「「あまあまをくれるなんて、とかいはなにんげんさんねっ」」」 「「あまあまをくれるんだね!わかるよー!」」 「「むきゅ!あまあまさんはゆっくりできるわ!」」 そんな叫び声を上げながら至る所からゆっくりが出てきた。こちらもれいむ、まりさが 殆どだが、先程探したとき少なかったありすも比較的多く出てきた。更に自力では見つけ る事の出来なかったちぇんもまじっている、そして・・・ 「おっ、何匹かいるみたいだな、潰れかけているのもいるが・・・」 お兄さんのお目当てのぱちゅりーも見つけることができた。何匹かはゆゴミの中で踏み つけられクリームを吐いているが、数匹のぱちゅりーはお兄さんの周りまでやってきた。 その中から比較的健康そうな個体を掴み、持ってきた透明な箱の中にいれた。 「むきゅ!ぱちゅおそらをとんでるみたいだわ!」 ゆっくりの習性なのか、定番の台詞を叫ぶぱちゅりー。男はそれを見てにっこり微笑む と、バッグから大量のあまあまを取り出し、残ったゆっくり達に向かって叫ぶ。 「よし、お前らの大好きなあまあまだ!」 持っていたあまあまを思いっきり後方へぶん投げる。お兄さんの周りに身動きが取れな くなるほど集まっていたゆっくり達は、あまあまに釣られるように移動を開始する。それ により更に数匹のゆっくりが押しつぶされたが気にしない。 「むきゅ・・・おにいさん、ぱちゅになにするの?」 ぱちゅりーがおそろしーしーをしながらお兄さんに問いかける。 「ぱちゅりー、僕の飼いゆっくりにならないかい?うちにくればあまあまも食べられる し、快適なおうちもあげよう」 「むきゅ・・・でも、ぱちゅにはしょうらいをちかいあったまりさがいるの、まりさを おいてはいけないわ」 どうやらこのぱちゅりーには婚約している恋人まりさがいるようである。飼いゆっくり という言葉は野生に生きるゆっくりにとっては、これ以上ない甘美な言葉である。その言 葉を出しても飼いゆっくりになる事を拒むぱちゅりーにとって、そのまりさはとても特別 な存在だという事がわかる。もう一押し必要と感じたお兄さんは、ぱちゅりーにとって抗 うことが出来ない誘惑をする。 「ぱちゅりー、僕はご本が大好きでね、うちにくれば沢山のご本が読めるし、ぱちゅり ーの好きなご本も沢山買ってあげよう。家の中にぱちゅりーの図書館を作っても良いんだよ」 「むきゅ!?まどうしょさんがいっぱい・・・ぱちゅのとしょかんがつくれる・・・ま どうしょ・・・としょかん・・・」 普通のゆっくりなら条件反射で承諾してしまうような提案を断ったぱちゅりーでも、こ の提案は答えを出せないようだ。そのままぱちゅりーは5分程何かをブツブツ言いながら 悩んでいた。そして 「ぱちゅりーはおにいさんのかいゆっくりになるわ。ゆっくりしていってね!!!」 ついに折れた。 「むきゅ!これがおにいさんのおうちね!たくさんのまどうしょがあるわ!」 家に連れてきたぱちゅりーをお風呂で簡単に綺麗にして飼いゆっくりの証である胴バッ ジをつけた後、自分の部屋に案内してみた。部屋の本棚には百を超える本や漫画が並んで いる。賢い個体でも野生では10以上数える事ができないぱちゅりーには、本の海の中にい るような感覚であっただろう。 「ここはお兄さんのお家でもあるけど、今はもうぱちゅりーのお家でもあるんだよ」 「むっきゅー!ここをぱちゅのゆっくりぷれいすにするわ!」 定番のお家宣言も済ませ、ぱちゅりーを部屋で遊ばせてやる。早速ぱちゅりーは部屋を 探索しだし、床に置かれていた推理小説に夢中になる。お兄さんはそんな光景を微笑まし く眺めていた。これで自分と感動を分かち合えるパートナーが出来たのだ。お兄さんの読 書熱もどんどんと上がっていくものである。 「ぱちゅりー、ご本はゆっくりできるかい?良かったらお兄さんに感想を聞かせてくれ ないかな?」 読んだページ数を考えると、第一の殺人が起こった所だろう。お兄さんはぱちゅりーが どんな感想を言うのか、どんな所に注目してみているのか、気になって仕方がなかった。 「むきゅ!これはとてもかんどうできるらぶすとーりーだわ!」 ずこおおおおっ!!! お兄さんは盛大にズッコケてしまった。ズッコケた拍子に頭に出来てしまったたんこぶ をさすりながらぱちゅりーに問いかける。 「ぱちゅりー・・・もしかして字が読めないのかい・・・?」 「む・・・むきゅ・・・ご、ごめんなさい・・・ぱちゅはまだじさんがよめないのよ・・・」 なんてこった。野生の生活をしていたぱちゅりーはまだ字が読めなかったのだ。ペット ショップで売られているぱちゅりーが字を読むことができるのは、それなりの教育をされ ているからであり、野生のぱちゅりーは、所詮ほかのゆっくりより比較的頭の良いという だけのゆっくりでしかなかった。お兄さんのゆっくりへの知識不足が仇となった瞬間であ った。 「はぁ・・・明日ひらがなのテキストを買ってくるかな・・・」 お兄さんが楽しく読書出来る日はまだまだ遠そうなのであった。 END あとがき ゆっくりの中ではぱちゅりーが一番好きです。ありすの話も書いてみたいですが、 まだまだ表現力不足なので、ありすの都会派な愛を表現するまでは、まだまだ時間 がかかりそうですね・・・。 今までに書いたもの anko2495 一番多いゆっくりは anko2498 日本を支える一大産業(本編) anko2501 胴付きになりたかったまりさ anko2503 新たなエネルギー源 anko2504 冷凍ゆっくり anko2514 新発見、ゆっくりの新しい移動法
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『取り返すために』 37KB 虐待 差別・格差 群れ 赤ゆ 希少種 自然界 現代 虐待人間 独自設定 17作目 「ゆ、ううまれるよ、まりさぁ!」 「ゆゆ、れいむまつのぜ。いまおぼうしをよういするのぜ!」 春のある日の事、とある森のとある番のれいむが出産の時を迎えていた。 夫のまりさは妻の言葉に、慌てて自分の頭からトンガリ帽子を外して構える。 「ゆぅ……ゆぐぐゆぅ!」 力む声の後に何かがすっぽ抜けるような音が巣の中に響く。 そしてれいむの体から飛び出す新たな命、それを受け止めるまりさのお帽子。 「ゆ、う、うまくうけとめられたのかぜ?」 そう言ってまりさは自分のお帽子の中を覗く、 「ゆ、ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」 その中には待ち望んで居た自分に良く似たおちびちゃん、赤まりさが天使のような微笑を目の前の父に向けていた。 「ゆ、ゆわ~ゆっくりしたおちびちゃんだよぉ。ゆっくりしていってね!」 その子供に向って満面の笑みと共に挨拶をする。 そんなまりさの至福の時間は、切羽詰った妻の言葉で中断される事になる。 「ま、まりさ……つぎの、つぎのあかちゃんが!」 「ゆ、れいむ!わかったのぜ!」 そう言って赤まりさをお下げで掴み、お帽子の中から取り出し脇にどける。 赤まりさは一瞬寒そうに身震いすると、隣の父に擦り寄った。 「ゆぅ、れいむ!もうだいじょうぶなのぜ!」 「ゆぐぐぐ、ゆぅ!」 そうして飛び出す新たな命、今度の子供は赤れいむだった、先ほどと同じように親子が挨拶をする。 先に生まれた姉も妹の誕生を歓迎し、いっしょにすーりすーりをする。 続けて生まれたのは、またもや赤まりさ。自分の同じおちびちゃんのたくさんの誕生に父まりさの頬は緩みっぱなしである。 苦しそうな母れいむも、番のそんな様子にゆっくりとした笑みを向ける。 「ま、まりさまただよ、おちびちゃんがあとひとりいるよ!」 自分の体の様子から最後の子供であることに気が付き番に用意を促す。 「いつでもだいじょうぶなのぜ!」 最初は慌て居た父まりさも、4回目となるともう慣れたものである。 傍に3匹の赤ゆっくりを待たせ、母れいむに向けてお帽子を構える。 「ゆぐぐぐ、ゆぅ、まりさ!」 母れいむから飛び出した赤ゆっくりが、放物線を描いて父まりさのお帽子に入った。 「ゆ、れいむ!さいごのおちびちゃんもちゃーんとうまれたのぜ!」 最後の赤ゆっくりをしっかりと受け止めると、先に番が気になったのか母れいむの様子を見に行く。 苦しそうな息をしていた母れいむも何とか息を整えると待望の我が子のいる場所へやってきた。 「ゆ……ゆ~おちびちゃん!」 そう言って涙を見せる母れいむ、赤ゆっくりとの最初のご挨拶はゆっくり達にとって重要な儀式である。 植物性妊娠であれば、出産は短時間であるため両親は一度に子供達とご挨拶が出来るが。 動物性妊娠の場合、母体になるゆっくりにもその番にも負担がかかるため、一度にご挨拶という訳には行かない。 しかしそれでも重要な儀式であることに変わりは無いのである。 近寄ってくる母親に顔を輝かせる赤ゆっくり達、体の自由の利く父まりさは番のれいむと子供達の始めてのご挨拶の為に先行して最後に生まれた赤ゆっくりをお帽子から出してあげるつもりである。 「ゆ~おちびちゃん!でてくるのぜ!」 そう言ってお帽子にお下げを伸ばす父まりさ、地面に置いて潰れたお帽子を開いて中にお下げを差し込む。 「おちびちゃんも、おかあ……ゆっ!」 その時父まりさの顔に驚愕が走った。背後の母れいむも先に生まれた赤ゆっくり達も「ゆっくりしていってね」と言おうとしたところで上がった大声に動きを止めている。 「ゆ……ゆぅ?ま、まりさいったいどうしたの、おおごえはあかちゃんがこわいこわいだよ?」 そう言って父まりさに近づいた母れいむ、そんな彼女も後ろからお帽子の中を覗き動きを止める。 「ゆっ!……ど、どぼじでぇ?」 「ゆあぁ、ど、どういうことなんだぜえええ!」 その言葉に反応して再度疑問の大声を上げる父まりさ。 「「「ゆ、ゆっきゅ!」」」 赤ゆっくり達も引きつった顔になっている。 「ゆ……ゆっきゅり……ゆ?」 父まりさのお帽子の中でそんな家族の様子に驚きを隠せない赤ゆっくり。輝く金髪に真っ赤なカチューシャを飾ったその子供は赤ありす――ゆっくりありすであった。 おうちの中は大混乱に陥った。ゆっくりの常識に置いて両親と違う子供が生まれることなど無い。 子供達とのご挨拶もそこそこに父まりさはおうちを飛び出し、群れの長であり森の賢者であるぱちゅりーを頼るべく長のおうちを目指した。 長のおうちはこの森の外るとても大きな木の下に作られており。中にはいくつもの部屋と食料庫や倉庫、外には侵入者対策の防壁と水害対策の浅い溝が備えられたこの群れでも有数の立派なおうちである。 そのおうちに父まりさが駆け込むと、長ぱちゅりーは保存食を開けてむーしゃむしゃしていた。 「ゆぅ、おさ!ぱちゅりー、たいへんなのぜ!」 「む、むきゅ、まりさ、いったなにがあったの?」 保存食を巻いていた木の葉で食べかけを隠し、口の中の物を飲み込んで聞いてくる。 「たいへんなのぜ、おさ!まりさのおちびちゃんが、たいへんなのぜ!」 慌ててぱちゅりーを連れ出そうと、もみ上げを引っ張ろうとする父まりさ。 「ま、まちなさいちゃんといくから!」 視線と態度で急かすが体が弱いぱちゅりーの動きはゆっくりとしたものである。 結局後ろから父まりさがせっつくようにして、ぱちゅりーを自分のおうちまで連れて行く事になった。 「ふうふう、おじゃまするわね」 息を切らした長ぱちゅりーが、まりさとれいむのおうちに辿り着くと。中で待っていた母れいむが不安そうな顔で歓迎する。 赤ゆっくりとはご挨拶を済ませたのか寄り添っているが、常識外れの事態にやはり皆不安だったのかどこかぎこちない様な空気が流れていた。 しかし番のまりさと頼れる長のぱちゅりーが来た事によって母れいむの顔にも少し明るさが戻る。 「ゆぅ、おさ!きてくれたんだね!」 「むきゅ、だいじょうぶよれいむ!それにしてもまりさ、いったいなにがあったの?」 そう言っておうちの中を見回す、こういう場合ぱちゅりーが呼ばれるのは大体出産がらみのトラブルと決まっている。 しかし既にれいむは出産を終えているようだし、赤ゆっくり達が病気と言うようにも見えない。 その事を疑問に思ったのか、父まりさに問いかける。 「お、おさ、みてほしいのぜ!まりさとれいむのおちびちゃんが!」 「むきゅ……たくさんよね、ゆっくりしたおちびちゃんよ!」 「ちがうのぜおさ!あのおちびちゃんをみるのぜ、ありすなのぜ!」 「むきゅ……む、むきゅーほんとうだわ!ありすよ!」 その言葉におうちの中の視線が赤ありすに集中する。生まれていきなりこんな状況に放り込まれ、唐突にやって来た家族以外のゆっくりに不安そうな表情だった赤ゆっくり達、その中でも特に不安だった赤ありすの顔に驚きが走る。 「ゆ、ゆぴぃ!」 「そうなんだよ、おさ!れいむとまりさのおちびちゃんなのに、あのこだけありすなんだよ!」 「そうなのぜ、いったいなにがあったのぜ?」 「むきゅ……むきゅ……えーと、れいむ?うわきなんて……してないわよね!」 「ゆ!な、なにいってるのぉおさ!れいむがまりさいがいと、そんなことするわけないでしょうぉ!」 「そ、そうなのぜ!れいむはそんなゆっくりじゃないのぜ!」 「それにみるのぜ、おさ!まりさのおちびちゃんもうまれているのぜ!」 「む、むきゅう……こ、これはいじょうなじたいよ……」 「「ゆゅ!!!」」 「まりさ、れいむ、すこしまちなさい!けんじゃのぱちぇのまどうしょをみてくるわ!」 「そうすれば、なにもかもわかるわ!」 そう言って巣の外に走り出す長ぱちゅりー、おうちの中には家族が残された。 「ゆ、ゆぅ、だいじょうぶなのかな、まりさ?」 「だいじょうぶなのぜ、おさはもりのけんじゃなのぜ!」 家族と寄り添う父まりさ、赤ゆっくり達もしばらくぶりの父に体を擦り付ける。 「いままでだって、ぜーんぶおさがおしえてくれたのぜ。だからだいじょうぶなのぜ!」 父まりさと母れいむはあの長のぱちゅりーを信用していた。この群れの長としてはまだ短いが森の賢者と呼ばれ、この群れ一番の知恵を持つゆっくりであり、その知恵と知識でこの群れを助けてきた。 何よりあのぱちゅりーの先祖は、群れの英ゆんなのである。 まりさ達が生まれるより前、この群れが沢山のふらんに襲われると言う大事件があった。 沢山の犠牲を出しながらもふらんを撃退し生き残った賢者でこの群れの基礎を作ったゆっくりでも有るのだ。 あの立派な長のおうちや群れの制度、梅雨や冬に向けて作る保存食の技術を作ったのも彼女であると聞いている。 長のおうちにはそんな「けんじゃのまどうしょ」が有り、長ぱちゅりーだけがそれから様々な知識を読み取る事が出来るのである。 しばらくすると再び息を切らせた長ぱちゅりーがおうちに現れた。 「はぁはぁ、むきゅ、はぁ、わ、わかったわ!」 「ゆぅ、ほんとうなのぜおさ!」 「す、すごいよおさ!」 「はぁはぁ、そうよ、けんじゃのぱちぇにはわかったわ!」 「そのおちびちゃんは……"チェンジリング"なのよ!」 「「ゆっ!?」」 「なんなのぜおさ、そのちぇんじりんぐって?」 「ゆぅ、はやく「むきゅ、まちなさい!」 「ゆ?」 「まりさ、れいむ、ちょっとそとではなしをしたいわ!」 「ゆ、わ、わかったのぜ!」 「ゆぅ、わかったよ!」 母れいむは赤ゆっくりの方を不安そうに見ると、もみ上げで抱きしめ少し外で話すと言い含めて外に出た。 おうちから出ると長ぱちゅりーは神妙な顔になり、二匹を見回す。 「むきゅ、あのおちびちゃんは、とりかえられてしまったよ!」 「「ゆゅ!」」 「まずはききなさい、あなたたちのおちびちゃんは、とってもゆっくりしているわ」 「そういうゆっくりしたおちびちゃんは、よーせいにねらわれるのよ。よーせいがじぶんのおちびちゃんと、とりかえていくのよ!」 「ゆ、そ、それじゃあ、まりさのおびちゃんは?」 「よ、よーせい?そのゆっくりが、れいむのおちびちゃんをさらったの!」 「むきゅ……よーせいは……むきゅ!そうよれいぱーありすよ!」 「れいぱーありすがまりさたちのおちびちゃんをねらって、じぶんのおちびちゃんといれかえたの!」 「げんにあのおちびちゃんは、ありすのおちびちゃんでしょう!」 「ゆ、ゆぅーれいぱーはゆっくりできないのぜ!」 「ゆわーん、れいむの、れいむのおちびちゃんがれいぱーありすに!」 「むきゅ、だいじょうぶよ!おちびちゃんをとりかえすほーほうがあるの!」 「ゆ……お、おさ。ほ、ほんとうなのかぜ?」 「れ、れいむのおちびちゃん、かえってくるの!」 「むきゅ、そうよ!」 「すごいのぜ、やっぱりおさはけんじゃなのぜ!」 「すごいよ、はやくおしえてね、いますぐでいいよ!」 「むきゃっきゃきゃ、ちょちょっとまちなさい!」 詰め寄ってくる親2匹を押し留め、長ぱちゅりーは息を落ち着けて語りだした。 「まりさたちののおちびちゃんをとりかえすには、あのありすをいじめるひつようがあるわ!」 「ゆ、いじめるのぜ!」 「おちびちゃんをいじめるのは、ゆっくりできないよ!」 「そうよ、あのありすのおちびちゃんをいじめることで、よーせい……れいぱーありすがおちびちゃんをかえしにくるのよ!」 「まりさたちもじぶんのおちびちゃんがいじめられたら、ゆっくりできないでしょう!」 「ゆぅ、そうなのぜ……」 「わかったよ!れいむはあのありすをいじめるよ、れいむのおちびちゃんをとりかえしたいからね!」 「れいむ……そうなのぜ、まりさのおちびちゃんをれいぱーなんかにわたせないのぜ!」 そう言って気炎を上げるまりさとれいむ、長ぱちゅりーはそんな2匹を慌てて止める。 「まちなさい、ふたりとも!とりもどすには、いくつかのちゅういがあるの!」 「「ゆっ!」」 こうして長ぱちゅりーは2匹に子供を取り返すための注意を行った。真剣な顔になる父まりさと母れいむ、しばらくしてから長はおうちに帰り、2匹もおうちの中へ戻って行った。 「おきゃーしゃん、おちょーしゃんおかいえりなしゃい!」 父まりさ達がおうちに入ると放置されて不安だったのか赤ゆっくり達が擦り寄って来る。 それには笑顔で返す2匹、おうちの中に明るい空気が広がった。 「おちょうしゃん、ありしゅにも!」 そう言って父まりさに擦り寄る赤ありす、 「れいぱーのくそがきはちかよらないでね!」 「ゆぴぃ!」 そんな空気も赤ありすが父まりさに吹き飛ばされると凍りついた。赤ありすは倒れて痛みにうめいている。 「ゆぴゃぁ、どうちて、れいみゅのいもーちょをどうしちぇ、おきゃーしゃん、おちょーしゃんが!」 母れいむに訴える赤れいむだが、母れいむの目も冷たいままだ。 「ゆ、おちびちゃんいいんだよ、あれはみんなのいもーとじゃないんだよ!」 「そうなのぜ、あれはれいぱーのくそがきなのぜ!」 「しょ、しょーなの!」 「そうだよ、はやくこっちにきてね、おかあさんいっしょにむーしゃむしゃしよーね!」 そう言って赤ありすの方に向おうとした赤れいむを呼び寄せる。 赤れいむもしばらくは倒れている、赤ありすを気にしていたが姉妹と同じように母れいむの元へ向った。 父まりさがおうちの食料庫からとっておきのあまあま――木苺を持ってくる、生まれて直ぐに母れいむから茎を噛み砕いて与えられていた赤ゆっくり達だが、それから随分と時間が経ってしまった。 はじめて見るあまあまによだれを垂らし、目を輝かせている。 「ゆわーおいししょうだよ、おきゃーしゃんたべちぇいいの!」 「いいんだよおちびちゃん、いっぱいむーしゃむしゃしてね」 その言葉に3匹の赤ゆっくりがあまあまに飛びつく。 「「「むーちゃむーちゃ、あみゃあみゃしあわちぇー!」」」 その言葉に父まりさと母れいむの顔にも笑顔が広がった。 「あ、ありちゅにも、ありちゅにもあみゃあみゃちょうだいね!」 しかし、痛む体を押して赤ありすが戻って来ると、その顔に影が差す。 「ゆ、なにいってるの?あまあまはれいむのおちびちゃんのだよ、くそがきはだまってね!」 そう言って蹴飛ばそうとして母れいむを父まりさが抑えた。 「まつのぜれいむ、おさのことば、わすれたのかぜ!」 「ゆっ!」 2匹の頭に長ぱちゅりーの言葉が蘇る。 「むきゅ、あのおちびちゃんだけど、えいえんにゆっくりさせてはだめよ!」 「えいえんにゆっくりさせずにいじめなくては、よーせいはこどもをかえしにこないわ!」 父まりさは再び食料庫に戻り、食料を咥えて来る。 「さぁ、おまえのごはんはこれなのぜ、かんしゃしてむーしゃむしゃするのぜ!」 投げるようにして与えたのは、親達でも保存食としてしか食べない苦い草であった。 「ゆ、ぎょはんにゃのね、ちょかいはよ……むーちゃゆぎぃ!」 草といえば生まれて直ぐに食べたあの茎しか知らない赤ありすは喜んでそれにかぶりつく、しかし口の中に広がったのは刺すよな苦味であった。 「ゆぎぃ、ゆぎゅう、きょれぢょくはいっちぇ……」 草とクリームを吐き出す赤ありす、それをニヤニヤと笑って見つめる両親。 「おお、あわれあわれ、れいぱーのくそがきがくるしんでるよ!」 「きたないね、おちびちゃんはあんなふうになっちゃだめだからね!」 両親の態度に赤れいむと赤まりさ達は驚きを隠せない。 「ゆぅ、れーみゅのいもうちょが……」 しかし赤ゆっくりにとって正義とはイコール親である。 「きにしにゃくちゃいいよ、れいみゅ!」 「しょーじゃよ、ありぇはまりしゃたちのいもーちょじゃにゃいんだよ!」 「で、でみょ……」 「それにあのこはまりしゃでもれいみゅでもないよ、ゆっくりできにゃいこだよ!」 そう言って赤ありすに冷たい目を向ける赤まりさ達、赤れいむは困惑しているがそれ以上は何も出来ない。 「ゆっ、おねーちゃん、どうしちぇありしゅをそんなめで……」 苦しんで誰かに縋ろうと家族の方に目をやるが相変わらず両親からは冷たい目で見られている。 それならば姉達に、と向いた姉達かたら向けられたのは同じような冷たい視線だった。 「ゆぴぴ、どうしちぇ?」 「さっさとたべてね、れいぱーのくそがきにはそれでもぜいたくだよ!」 動きを止めていると父まりさに小突かれる、お下げで口に苦い草が押し込まれる。 吐き出そうともがくが、結局それは赤ありすが全ての草を飲み込むまで続いた。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ……」 おうちの端では赤ありすが体を震わせながら泣いている。非ゆっくち症一歩手前である。普通の赤ゆっくりであれば既に発症してもおかしくは無い、しかし赤ありすは何かに守られているかの様に発症する事は無かった。 「さぁおちびちゃん、おかあさんがおうたをうたってあげるからね。ゆっくりすーやすーやしようね!」 母れいむが赤ゆっくり達を柔らかい草を敷いた場所に呼び寄せる。赤ゆっくりが集まると柔らかい草の中に入れて歌い始めた。 「ゆ~ゆ~ゆっくりしていってね~♪、おちびちゃんはゆっくり~したこだから~ゆっくりおねむしてね~♪」 その歌と隣に居る母の温もりに、赤ゆっくり達のまぶたがストンと落ちる。 寝息が立ち始めた、母れいむは歌いながらゆっくりとした笑顔を浮かべる、父まりさもその様子を見て微笑んだ。 お歌の効果は赤ありすにも平等に現れていた。涙が止まり心の中が少しだけ暖かくなる、まぶたがゆっくりと落ち始めた。 何かを叩いた鈍い音が響いた。 「ゆぴぃ!」 眠りに落ちようとしていた赤ありすが飛び起きる、父まりさが咥えた木の枝で赤ありすを叩いたのだ。 「お、おちょうしゃんにゃに!」 「れいぱーのくそがきがすーやすーやなんてぜいたくだよ、ゆっくりくるしんでね!」 父まりさは長ぱちゅりーの言葉を思い出す。 「むきゅ、それでねあのおちびちゃんをきのえださんでたたくの!」 「ほんとうはめーらめーらでいじめるのもいいんだけど、めーらめーらをつかえるゆっくりはいないし……」 「おちびちゃんのめのまえでむずかしいことをやって、よーせいのこどもにボロをださせるってもあるけど……」 「むきゅ……それはこのけんじゃのぱちぇがきょうりょっくするわ!」 「おまえがくるしまないとまりさのおちびちゃんがかえってこないんだよ!」 「ゆぴぃ、いちゃいいちゃいわ!」 そこに子供を寝かしつけた母れいむがやってくる。 「おきゃーしゃんちゃすけちぇ、おちょーしゃんが!」 「まりさ、おちびちゃんはすーやすーやしちゃったよ、だけどしずかにしてね!」 「ごめんなのぜれいむ」 「おきゃーしゃん!」 「れいむもきょりょっくするよ、だからおそとでやろうね!」 「やじゃあ、やめちぇえ!」 父まりさは赤ありすの髪を咥えお家のそとに放り出す。 「ゆびぃ!」 「れいむ、うまくたたくのぜ、そうしないとおちびちゃんがかえってこないのぜ!」 「わかってるよ、あしたからはむれのみんなにもきょうりょっくしてもらうよ!」 「ゆびぃ、やめちぇえいぎぃ!」 森の中に何かを叩く音が響き渡った。 赤ありすは寒いお外で倒れ付していた、体中に鈍い痛みが広がり意識も朦朧としてくる。 目の前ではおうちの扉が父と母によって厳重に閉じられている、隙間も漏らさぬけっかいは赤ありすへの拒絶への表れだ。 「おちょうしゃん、おかーしゃん、どうしちぇどうしちぇありしゅに……」 「うるさいよ、れいぱーのくそがきがおとうさんなんてよばないでね!」 「そうだよ、これはゆっくりするためにひつようなことなんだよ!これは、れいむたちのおちびちゃんを……」 「「とりかえすためなんだよ!!!」」 夜になった群れの森、空には満月が煌々と浮かび、夜とは思えない明るさである。 本来捕食種の活動時間であり、ゆっくりの居ないはずの時間に出歩いている者があった。 それは通常のゆっくりより一回り大きい体を重そうに動かし、ゆっくりと森の中を進んでいる。 頭には2本の角、薄緑色の髪を月明かりに輝かせる、ゆっくりけーねである。 満月の今夜、ゆっくりけーねは「はんじゅう」に変化し様々な「れきし」の知識を有するのである。 そんな能力を持つけーねだが、決して戦闘能力に優れたゆっくりでは無い。 しかし夜の森を歩くけーねの歩みには少しの怯えも含まれて居なかった。 彼女は知っていたのだ、もうこの森には捕食種は居ない事を。 しばらく進んで森の広場まで来ると、けーねは満月を見上げる。 「久しぶりだな……」 その瞳に映るのは空の満月でも、他のゆっくりでも無い。 この森のゆっくりの達の歴史であった。 「あぁ、もこう、らん、みんなも!」 うつろな目で過去の歴史に浸るけーねの顔には、堪えようの無い喜びが浮かんでいた。 楽しい時間は早く過ぎるもので、しばらくすると月に雲がかかる、興を削がれ不満そうな顔になるけーね。 溜息を付いて長のおうちへの道を引き返す。その途中、ゆっくりのおうちの前に通りかかると泣いてけっかいにすがり付く赤ありすが目に入った。 「……すまない、謝って済むものではないが」 そう言って目を伏せるけーね、 「いや、全て私のせいだな……」 そう、今目の前に居る傷付いた赤ありす、全ての原因はこのけーねにあった。 この森のゆっくりの群れは、このけーねとその番のもこうが作ったものであった。 昔居た群れで希少種という事から、差別されたり危険な仕事を押し付けられていた2匹は旅立ちを決意した。 住み慣れた場所を離れ、旅暮らしをしながら新しい住処を探す。その旅はとても辛く危険な物だった。 多くの場所には先住のゆっくりの群れが居たし、旅のゆっくりであり希少種の2匹を快く迎え入れてくれる群れは無かった。 多くの場合で追い出されたし。受け入れてくれる場合もその能力目当てであったり、すっきりーの対象として狙ったり。 ゲスやレイパーの襲撃を受けた事も一度や二度では無かった。 そんな2匹が長い旅の果てに見つけたのがこの森であった。豊富な自然と豊かな水源を持つこの場所はゆっくりの生活に必要な物が全て揃っており。何故か近くに他の群れが居ないという優良なゆっくりプレイスであった。 さっそくこの場所に自分達のおうちを作り始めるけーねともこう。旅の途中で出会い同じような悩みを抱えていた希少種や仲良くなった通常種の仲間達もいつしか現れ、この場所に群れが作られたのはそれから少し経っての事だった。 群れの長にはもこうが就任し、その番であるけーねが群れの参謀としてサポートすることになったこの群れは順調に発展する事になる。 この辺りで一番の大きな木の下に空いていた穴を拡張して、群れの全てが越冬したりいざと言う時に篭城できる「長のお家」として整備したり。 食料を計画的に収集し、何らかのトラブルや梅雨や冬の食糧不足に備えて「保存食」として加工するなど様々な工夫が凝らされた。 群れの掟も整備され、多くの群れが陥るゆん口問題に向けて妊娠を胎生妊娠で行う事もこの時決まった。 この時期がけーねにとっての幸せの絶頂であった。 けーねともこうの番にもおちびちゃんが一匹生まれたし。仲間達も子宝を授かり群れは拡大していく。 群れが大きくなってくると、その噂を聞きつけて群れに加わりたいと言って来るゆっくりが現れ、もこうは寛大に彼らを仲間に加えた。 そんなけーねの幸せを引き裂く事件が起きたのは季節が変わった頃であった。 この場所に群れを作ったけーねともこうだが、2匹はとある重大な見落としをしていた。 何故こんなゆっくりした場所に、ゆっくりが暮らしていなかったかである。 その答えは、ある夜に群れに襲い掛かった。 「うーしね!しね、しね!」 ふらん達捕食種の集団であった。群れを作った彼女達によって、この場所はゆっくりに荒らされていなかったのだ。 元々この辺りに住んでいたれみりゃすら追い出したふらんの群れの攻撃力は凄まじく、群れの被害がいきなり増大する事になる。 長のもこうは外で戦えば数を生かす間も無く殺されるだけであるとして、長のおうちを使って迎え撃つ事を提案。 元々越冬にも使えるようにと大きく作られていたおうちの外にバリケードを作ったり、中に罠を張り巡らせたりと要塞化を行う。 ふらん達の襲撃を警戒して狩りの成果は振るっていなかったが、群れに残っていた全ての食料を運び込み襲撃を待った。 それまで夕方に外に出ているゆっくりを一気に囲んで捕食していたふらん達だが。ゆっくり達がおうちに篭って出てこないとしばらくは警戒するように外を飛び回っていたが、焦れたのか長のおうちへの攻撃を仕掛けてきた。 長のおうちのでの闘いは熾烈なものになった、子ゆっくり達を奥に隠しておうちの入り口と入って直ぐのホールに仕掛けた罠とで迎え撃った群れのゆっくり達だが。 敵にはふらんが10匹は居たのである、罠にかかったところを奇襲して2匹、中で囲んで4匹を討ち取ったが。 4匹を残して罠は尽きてしまい、おうちの中にも進入されあとは完全な実力の戦いとなった。 けーねはそれまでの襲撃とこの戦いで敵のふらんの数を正確に把握していた。残るふらんはおうちの中に居る者だけである。 長のおうちに作られた隠し通路から、子ゆっくりの脱出を声に出さず提案するけーねに、もこうが目で指示を送る。 その場をもこうに任せて他のゆっくりと共に隠し通路を空けて奥に居た子ゆっくり達を外に送り出す。 それを見送って引き返そうとしたけーねが目にしたのは信じられない事態であった。 「むきゅ、ぱちぇはこんなところでしんでいいゆっくりじゃないのよ、ぱちぇがしねばせかいのそんしつよ!」 「ゆ、まりささまはにげるのぜ、あとはおさたちにまかせるのぜ!」 「ゆぅぅ、れいむはもうこんなところにいたくないよぉ、はやくにげるよ!」 「わかるよーここからにげるんだね!」 子ゆっくりを逃がすための抜け道から、我先にと逃げ出す群れのゆっくり達であった。 もちろん子ゆっくりだけで外に出すことは出来ない、奥に居たみょんを1匹先に出していたし。 後からも数匹追わせるつもりであった。しかしこの時ほとんどのゆっくりが逃げ出してしまったのである。 引き止めるけーねの言葉に耳を貸すものは居ない。結局残ったのはけーねともこう、そして2匹と仲の良かったこの群れの初期から居るゆっくり達だけであった。 この事は重大な危機をもたらした、おうちの中に入っているためふらんの飛翔能力は無いもの考えてよいが、それでもなお捕食種は強敵である。 しかし狭い場所であるため攻撃が避けづらく、犠牲は大きくなるが物量でぶつかれば勝利も掴めるはずであった。 ところがそのためにゆっくりが居なくなってしまったのである、残ったゆっくりには希少種のもこうとらんの攻撃力の高いものも居るがそれでも圧倒的に足りなかった。 もこうの元に駈けて戻る。けーねの表情にもこうは何かを察したのか、 「わかったよ、だいじょうぶ。けーねはもこうがまもるよ!」 そう言って体に炎を身に纏いふらんに飛び込んだ、その後ろかららんが尻尾の米粒の発射で援護する。 それに合わせて仲間たちがふらんに飛び掛った。ふらんの攻撃で一匹また一匹と潰されながらも前に行った者の死体を目隠しにしてふらんに木の枝を突き刺す仲間達。 それはまさにぶつかり合いであった、もこうは噛み付いてきたふらんを一匹消し炭に変えたが、そのふらんから出たところで後ろのふらんの「れーばてぃん」に刺された。 らんは米粒を乱しながら突っ込み方耳に噛み付かれながらもその相手に射撃を集中して相打ちとなった。 他の仲間たちは全ゆで1匹のふらんにあたり、皆潰されながらも相手のふらんをいが栗の様な姿に変えた。 おうちの最奥で最後のふらんと対峙するけーね、ふらんの背後では愛しい夫が、大切な友が仲間が死んでいる。 厳しい表情を崩さずに涙を流す、口に咥えた木の枝を向けられたふらんは、仲間の死が堪えていないのかむしろ面白がるような顔をしている。 「う~しね、しね!」 近づいてくるもこうの敵のふらん、敵は1匹こちらも1匹であった。 にじり寄って来るふらん、けーねが覚悟を決め特攻しようとしたとき、けーねの足元から火の玉が飛び出した。 「おかあしゃんは、もこうがまもるよ!」 飛び出したのけーねともこうのおちびちゃん、子もこうであった。 「ふじゃまぼるけーの!」 そう叫び、ふらんの口の中に飛び込む。 「う、しね?う……うがあああああ!」 ふらんの口から火の手が上がった。目が白く濁り、小さな火柱が噴出す。 まるで炎がゆっくり体を嘗め回しているようだ、全身が炎に包まれると一瞬強い光を発し黒焦げの球体が残る。 辺りに焦げたよう臭いが充満した。 湯気とも煙ともつかないものを上げている、ふらんだった物。 けーねはそれに飛びつくと熱さも忘れて中を開いた。 「おちびちゃん、何処だ?何処に居るんだ?」 消し炭の中を必死になって探すが求めている物は見つからない、気が付くと目の前に残るのは黒い灰だけであった。 周囲を見渡す、長のおうちの中はこげた臭い甘い臭い、そして耐え切れないようなゆっくり出来ない臭いでいっぱいだった。 何処を見ても永遠にゆっくりしたゆっくりの死体が転がっている。目を凝らせばそれらは皆けーねの仲間達である。 仲の良かったらんが居た、頭の良かったまりさが居た、子供達に優しいれいむが居た。 そして、そして奥に転がる黒い物は…… 「も、ぼごうー!」 けーねはそれに駆け寄った、愛しいもこうだと思われるそれにすーりすーりをするが、先ほどのものと同じように粉々の炭に成ってしまう。 「ゆ、ゆがああああ!」 けーねの絶叫が長のおうちの中に響き渡った。 その後の事は思い出したくも無い。暗いおうちの中で家族や仲間たちの死骸を集めて埋めていると隠し通路を戻ってくるものが居たのだ。 それは群れのぱちゅりーだった、その顔には見覚えがあるあの時隠し通路から真っ先に逃げたやつである。 「む、むきゅ……けーね、ふらんたちは?」 覗うような目でこちらを見てくるぱちゅりーを無視して埋葬を続けるけーね、皆はおうちの奥にまとめて埋める事にした。 しばらくキョロキョロろしていたが、何かに納得したのか引き返すぱちゅりー。しばらくすると群れの仲間達も戻ってきた。 その後で群れのゆっくり達が話していたのは信じられない事であった。 「むきゅきゅ、わたしたちはふらんにかったのよ!けんじゃのしょうりよ!」 「むははは、さいっきょうのまりささまにかかればこんなもんなのぜ!」 「れいむたち、ゆっくりしているゆっくりをたべようとするから、こんなことになるんだよ!」 「わかるよー、つよいんだよー!」 何と最初の戦いでも後ろに隠れ、その後は隠し通路で逃げ出したゆっくり達がこれを自分達の勝利だと言い出したのだ。 必死に戦って散っていったゆっくりの埋葬を続けるけーねを手伝おうとするものは居ない。 「むきゃきゃきゃ、これからけんじゃのぱちぇがむれのおさになるわ!」 何がどうなったのかは分からないが、最初に入ってきたぱちゅりーは仲間達の中でゆん望を得たらしく長となっていた。 その様子をけーねは、ただ冷たい目で見ていた。しかし、声を上げようとは思わなかった大切な家族や仲間を失ったけーねの心は凍り付いていたのだから。 この時をもってこの群れはぱちゅりーを長とする群れに変わった。けーねは長ぱちゅりーのおうちとなった、長のおうちの一室を使い何をするでもなく、自分の食料は自分で集め他のゆっくりと関わる事無く暮らしていた。 長ぱちゅりーがそんなけーねに何か言う事は無かった、自分でも分かっていたのかもしれない。しかし困った事があると密かにけーねに知恵を借り、それを自分の知識として群れには発表していた。 元々完成していた群れ、外敵の居ないゆっくりプレイス、この群れは再び発展を始めた。 しかし昔のように新たな掟を作ったり、新しいものを作り出すそんな進歩は起きなかった。 元々あった群れのままゆっくりの数だけ増える、そうしてこの群れは大きくなっていった。 けーねの唯一の心残りは、永遠にゆっくりしてしまった仲間達の子供だったが、彼女達も大きくなるとこの群れに何かゆっくり出来ないものを感じたのか、歯が抜けるように群れから出て行った。 こうして時が流れ、長ぱちゅりーが代替わりし孫の代になる頃には、けーねはかなりの老ゆっくりと成っていた。 けーねの生活は自分のおうちでもある、家族と仲間の墓に祈る事と、簡単な狩りだけになっていた。 そして希少種としてのけーねの力が最も発揮される満月の夜には、その力を使い群れの歴史を読み取って家族や仲間たちに再会するのだ。 月に一度の満月の夜は、けーねにとって失ってしまった者に出会える唯一の日であった。 それは自分ともこう、そして仲間達が作り上げた輝かしい群れの歴史だった。多くの苦労があった、しかしそれを必死で乗り越えたからこそ、今こうして歴史に刻まれているのである。 今の群れは停滞という緩やかな死の中にあった。完成された群れのシステムと居ない外敵、そして問題があったときに頼れる知恵袋の存在は、若いゆっくりを酷く頭の悪いものにしていた。 今の長のぱちゅりーにしてもそうである、その祖母の頃にはある程度の頭の良さがあったが。今では他のゆっくりと変わらない程度である。 このまま行けば長い時間をかけて群れは滅びるかも知れない、しかしそれはけーねの寿命よりも後のことだろう。 あの子ありすの問題がけーねの耳に入ったとき、けーねにはそれが直ぐに「チェンジリング」であると分かった。 低い確率で生まれる両親とは異なる種の赤ゆっくり、チェンジリングは幸運を呼ぶと言われている。 けーねの持つゆっくりの歴史においてもそれは証明されていた。チェンジリングはそれを得た者に幸運を呼び、自身もその幸運によって守られるゆっくりである。 しかし、チェンジリングは両親と異なる外見を持つゆえに、両親に疎外されたり虐待されたりする事の多い子供でもある。 けーねの知る中でも多くのチェンジリングは親に追い出されるなど壮絶なゆん生を送る事となった。 幸運に守られたチェンジリングはそれでも何とか生き延びる事が多いのだが、その幸運の加護をその子を産んだ両親が受けられないのは皮肉と言えるだろう。 その幸運から人間に拾われ、人間を幸せにしているものも多いと言う。 あの赤ありすはこの群れでゆっくりと育てれば、その力をこの群れで発揮しただろう。 しかし、けーねは自分に相談に来た長ぱちゅりーにはそれを教えなかった。 ただチェンジリング――取替え子――に関する知識は与えたのだ。 それは人間の知識であった、人間の歴史においてそう呼ばれた存在がどのような目にあったか、それを教えたのだ。 あのぱちゅりーはけーねの教えた間違った知識を嬉々として親達に教えるだろう。そうなれば子供を取り戻すために何が起きるかは自明の理である。 そしてその結果は今目の前に居るのである。 けーねはゆっくりのチェンジリングに関する負の面も知っていた。幸運を呼ぶ彼女達だが、無下に扱った者や群れに不幸を呼ぶ例があるのだ。 いくら歴史を知っているからとはいえ、そんな物に縋るのは愚かしいと思う、何もしていないあのありすを陥れた自分は間違いなくゲスゆっくりなのだろう。 しかし長い時間をかけてけーねの中にはこの群れのゆっくりへの悪意が育っていたのだ。 何もしないで惰眠をむさぼり、さもその繁栄を自分達の手柄であるかのようにゆっくりしているこの群れのゆっくり達。 違う、この群れは私達の作った群れだ、決してお前達のものでは無い。 もし自分の力がとても大きければ、この群れの歴史を消し去ってしまったと思う。しかし自分にそんな力は無いのだ。 老いたけーねに出来るのは悪意の種を蒔くだけである、その種は育つのだろうか。 今も赤ありすがおうちの扉にすがり付いて泣き声を上げている、中に居る親から怒鳴られた様だ。 「すまないな……これも取り返すためなんだ」 「畜生っ!」 血の滲むジーパンを押さえ込み思わず叫んでしまった。追っていたものに気を取られていたとは言えまさかこんな所で転んでしまうとは。 飛び出していた木の根に足を引っ掛け坂を転がり落ち飛び出していた鋭い枝を刺してしまったのだ。 上を見るが既にアレは居ない、逃がしてしまったか。近道しようとこの道を通ったとき偶々森の中に飛んで行ったゆっくり、銀髪に変わった翼のゆっくりだった、まず間違いなく希少種のゆっくりだろう、場合によっては2桁の福沢諭吉で取引されるそれに引き寄せられるかのように森に入ったのが失敗だった、意外と早く飛ぶそれに対して慣れない森の中では追いつく事が出来ず結局かなり森の奥まで入ってしまった。 その結果は既に見えなくなったあいつと、この足の傷であるとてもじゃ無いがやってられない。 「野郎、捕まえてペットショップに叩き売ってやろうと思ったのにつつっ!」 足を押さえて立ち上がる、何とか歩ける。 「ゆゆ~ん、ちょうちょさんまつのぜ!まりさのおちびちゃんはちょうちょさんがすきなのぜ!」 前方の茂みの奥から癇に障る声がする。これはゆっくりまりさか?ゆっくりで失敗した所にである、畜生あいつを捕まえて潰してやろうか。 「つかまえたのぜ!まりさはおちびちゃんのまつおうちにかえるのぜ!」 ん、今聞き捨て為らない事を言ったぞ、お家……この辺りには野生のゆっくりが住んでいるのか……もしかしてさっきの希少種もこの辺りに住んでいるのでは。 痛む足でもゆっくりなら後を追うのは難しくない、後を着けると確かにそれはあった――野生のゆっくりの群れである。 早速希少種を探そうかと思うが、この足では飛ばれたら逃げられてしまう、ここは我慢してしっかり準備をしなくては。 何群れの位置は確認済みだ、この場所にあの希少種が居れば捕まえるのは簡単だろう、もし居なければ……あの群れにこのイライラを解消させて貰おう。 「ゆ!にんげんさんなのぜ、ここはまりさたちのゆっくりプレイスなのぜ、さっさとでていくのぜ!」 翌日傷の手当てをして装備を整えあの群れに訪れると、早速1匹のまりさに見つかってしまった。 町に居る野良と違い人間を恐れていないのか、こちらに対して高圧的な態度に出てぷくーをしている。 面白い、最近町では味わえない反応である、町の野良はこういう場合は大体逃げてしまうからな。 「きこえないのかぜにんげんさん!みみさんがないのかぜ、おぉあわれあわれ「ゆが!」 うん、どうも随分長い事人間に会って居ないゆっくりの様だ、感動して撃ってしまった。 「ゆがぁいだいのぜ!なんなのぜこれはあんよがうごかないのぜ!いぎゃ!」 指に力を入れると金属を引き抜くような音がする、おぉちゃんと致命傷は避けているし動けなくしている。 意外と冷静だったな自分、3本の釘がまりさの顎の部分と体の左右を地面に縫いとめている。 良かったまりさの態度に当初の目的を忘れるところだった。 「ゆぎぃ、えだざんぬげるのぜ、まりさをはなすのぜ!」 「まりさぁちょっと聞きたい事があるんだけどなぁ!」 「ぬけるのぜぇ、ゆぎぃ!」 話を聞かないまりさの帽子に1本打ち込んでやる。 「まりさ……聞きたい事が有るんだけど」 「は、はひぃなんですか!?」 手に持った物をふらふらさせながら聞いてやる、ちなみにこいつは釘打ち機だ本当はこうやって使ってはいけない。 「この群れに変わったゆっくりは居ないか?銀色で羽が生えたやつなんだけど……?」 「れ、れみりゃはいません!」 「れみりやじゃねーよ!」 もう一方の手に持ったを動かしてやる、金属の回転音が響いた。 「ゆひぃいしりません、しりません!ほんどうにしらないんです!」 回転するドリルの先端を額に当ててやると騒ぎ出した。知らないのか……いやこいつが馬鹿という可能性もある。 「ゆぅ、うるさいよまりさ。ゆぅ、なんでにんげんさんがいるのぉ!」 うん、次の証言者が来た……まりさ、お前は用済みだ。 「ゆ、それをちかづけ、ゆぎゃあああああああ!」 「ゆぴゆぴゆぴゆぴゆぴゆぴ……」 ドリルでまりさの顔面を掘ってやる、表面を掘るつもりだったが最初に力を入れすぎたのか中枢餡にいったのか変な事を言いながら痙攣してる。 「ゆ、ゆわぁ!」 ん、れいむがおそろしーしーを流しながら硬直している。まぁまりさのを見せたしな。 「れいむ……次はお前だからな!」 そう言って釘打ち機をれいむに向けた。 「ちっ、こいつもダメか!」 目の前でボロボロになったちぇんを蹴り飛ばし、悪態をつくあの後10匹ほど同じような目にあわせて話を聞いてみたが誰もあの希少種について知って居ない。 これは……間違えたか。このまま時間が経てばたとえこの群れに居たとしても逃げてしまうかも知れない。 「まりさはおちびちゃんをまもるよ、ぷくーーー!!!」 あー、だいぶゆっくりを殺したんだが、何かこの群れの連中は逃げるって事を知らない。今も1匹のまりさが巣の前で膨らんでいる。 面倒だしムカつくのでさっさと絞めたいがあの希少種を諦めるわけにはいかない、しかしゆっくりの処刑で活躍したドリルはさっきのちぇんのチョコレートで少し切れ味が下がっている。 「にんげんさん、さっさとでていってね!」 「ゆぎっゆぎっゆぎぃ!」 とりあえず動けないように撃っておいてと。 「銀色で羽が「おとうさんはまりさがまもるよ!」 あ、いきなり奥から子まりさが飛び出してきた、 「おちびちゃんさがっているのぜ!」「まりさはおとなだよ、おとうびぃ!!!」 子ゆっくりは知らないだろう、叩く事に定評のあるバールでとりあえず潰しておく。 「お、おぢびじゃああああん!!!」 最近何処の秘密結社だか知らないがバールの様なものなどといって類似品が出回っているが、やはり基本は押さえておきたい。 「お、おねえちゃーん!ぷっぷくー!びぃ……」 あ、奥から子まりさが出てきたから思わず撃ったら何か良いところに当たったのか沈黙してしまった。 「ばりざのおぢぃびじゃんがぁ!」 「れいむはにげるよ、まりさはじかんをかせいでね!」 今度は成体のれいむか、出てきたと思ったら逃げるとか……でいぶってやつか。 「れいむはおちぶぅ!」 「おきゃーしゃーん!」 バールで叩いたら中から何か子れいむが出てきた、煩いが無視する。 「ゆひ、ゆひ、まりざのかぞぐがぁ!」 さてと本番、いやそうだな聞き方を変えてみるか。 「まりさ、この群れで一番物知り……いやこの群れの賢者(笑)は誰だい?」 「まりざの、ゆひぃ、ぱ、ぱじゅりーです!おざのぱじゅりーがけんじゃです!」 「長のぱちゅりーか……で何処に住んでるの?」 「あぞごです、あのおおぎなおざのいえにずんでいまず!」 「そうか、ありがとう!」 「ゆぎぃぃいいい、いじゃいやめで、やめでぐだざい、いじゃい!」 長か盲点だった、最初にそいつに聞けばよかったんだ。このまりさには感謝の気持ちとして小型の鋸で胴体を横に切ってやった。上半分がきれいに後ろに落ちたのは感動だ。 ん、まりさが半分になって巣の中が見えて気が付く。奥で子ありすが倒れてるぞ、こいつらの娘か……いや種類が違うし、れいぱーの子供でも制裁されてたのだろう。長と言う情報源があるので放っておく。 「むきゅうこれはなんなの、なにそこのじじいは!」 まぁぱちゅりーだから逃げてはいないと思ったが、言われたとおり大きな木の前に行くと待ち構えているとは思わなかった。 どうやら群れのゆっくりは長の下に逃げたようだ。 とりあえず、あの希少種はこの場には居ないようだし、話せる口はあの賢者(笑)だけでも良いか。 「おさ、あのじじいだよあのじじいがまりさをころしたんだよ!」 「むきゅう、なんですって!ゆっくりしていないじじいね!さっさとはいじょしなさい!」 「ゆっゆおゆぎぃ!」「ゆが!」「ゆぎぃ!」「ゆぶ!」 「むぎぃぃいだいわぁ!」 釘を乱射しておく、あれぱちゅりーにも当たっちゃったか、まぁ右の頬に刺さっただけだ。死にはしないだろう。 釘が体に刺さり、逃げようとするとさらに刺さって呻いているゆっくり達を避けてぱちゅりーに近づき掴み上げる。 汚ねぇ、クリームが手についたぞ。 「おい!お前がこの群れの長だな!」 「むきゅ、そうよぱちぇがこのむれのいだいなおさよ!ふとうなあつかい、ひぃ!」 何か生意気なので鋸で撫でてやる。道具を背に仕舞いぱちゅりーの頬に刺さった釘を撫でながら優しく聞いてやる。 「なぁぱちゅりー、実は珍しいゆっくりを探してるんだけど……銀色で羽が生えてるんだ、知らないか?」 「むきゅしらな……ゆきぃ、え、と、その、むきゅうそうよ!しってるわ、けーねよ!ひぃおうちのなかにいるわぁ!」 んー、けーね?あれって空飛んだっけ? 何か別のやつが出てきたっぽいがあれも希少種だ、ラッキーと言えるだろう。いやしかしゆっくりの証言だ命乞いの嘘って事を考えないと。 足元で呻いているまりさを足で蹴り起こして聞いてやる。 「おいまりさ、おまえけーねって知ってるか?この群れに居るんだろうな?」 「ゆぎ、けーね……しらないのぜ!そんなゆっくりこのむれにいないのぜ!」 「話が違うじゃねぇか!」 「む、むぎゅううう!むぎ、ぎ、ぎ、ぎ!」 怒りから手に持っていたぱちゅりーを地面に叩きつけ、釘を打ち込んでしまう。 「ちぃ、時間を無駄にした!せめてストレス解消くらいはさせろよ!」 「あの希少種を売ってこの間の馬の負けを取り返そうと思ったのによぉ!」 まったく怪我を押して暑い中時間までかけて収穫なしである。せめて虐待でストレスを発散しておこう、唇を舐め周りを見回す、ゆっくり達の恐怖の視線が気持ちよかった。 あの後30分ほどでストレス解消は終わった。ここに居なかったやつも大半は餡子脳で、こちらにつっかっかって来たので色々と試させてもらった。 とりあえずあの群れのゆっくりほぼ殺したと言っても良いだろう、楽しみに使われた工具の手入れと空の透明な箱が心残りだが気分は爽快だ。 それと全て終わった後、長のお家と呼ばれる大きな木の下の穴を覘いて見ると、大きなゆっくりが白くなって死んでいた。 恐らく老衰だろう、体の大きさからしてかなり高齢だったのかもしれない、なんと驚く事にそのゆっくりがゆっくりけーねであった。 つまりあの長とやらは正しい事を言っていたのだ、悪い事をした、それならもっとじっくり殺してやったのに。 とりあえずバールで殴っておいたが、あのけーねが笑顔で死んでいたのは妙に気にかかった。 終わり 公民あき 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございました。 今回のネタは「チェンジリング」です、これを話に使ってみたくてウィキペディアで取替え子について調べたら…… 人間の方が餡子脳だった時代もあるようです。 あと台詞の間に入れていた改行を無しにしてみました、今までのとどちらが読みやすいでしょうか? こちらの方が読みやすいようでしたらこれからはこっちにして見ます。 過去作品 http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/2942.html 挿絵:車田あき
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/184.html
・レースで使われる用語がたくさん出てきます ____________________________________________________________________________________________________________________ 近年人気が上昇しつつあるレース「すぃーレース」をご存知だろうか。 簡単に説明すると、ゆっくりをすぃーという台車に乗せて速さを競わせるのだ。 普通のカーレースをゆっくりに置き換えただけ、と言えばわかりやすいだろう。 その中でもトップクラスのゆっくり達がナンバー1の座をかけて争うのが ”すぃーナンバー1世界王者決定戦”通称「S1GP」だ。 毎年レベルの上がっていく今大会、今シーズンはどのゆっくりが栄冠を勝ち取るのだろうか…… ~ S1GP 第15戦 決勝 JAPAN ゆうかサーキット ~ 日本国三重県にあるゆうかサーキット。 平日は閑散としているこの場所だが、今日は大勢の人で埋め尽くされている。 それもそのはず、今日はS1GPの決勝戦の日だ。 日本、いや世界中からいろんな人がこのレースを観にやって来ているのだから、混まない方がおかしいだろう。 辺りには様々な出店が並び、まるでお祭りのような騒ぎになっている。 向かいにはゆうかにゃんをモチーフとした「ゆうトピア」という遊園地があるので、是非一度来てもらいたい。 ここで、S1GPについて軽く説明しておこう。 S1GPで使用される機体は通常のすぃーとは異なり、空気抵抗を極限まで減らすよう設計されている。 最高速度は70km/h以上にもなるので(あの大きさにしては)とても迫力がある。 そのため、ゆっくり自身も加速性と安全性を高める為にゆっくり用のヘルメットを装備する。 また、決勝では最低1度以上のタイヤ交換が義務付けられているので、ピットクルーの作業精度もレース結果に影響してくる。 主なチームとして ・ マリセデスGP(まりさ) ・ マクラーれいむ(れいむ) ・ レッドリボン(れいむ) ・ パチューリ(ぱちゅりー) ・ ンホォー(ありす) ・ フォース・みょんでぃあ(みょん) ・ ウィリアムチェン(ちぇん) などが挙げられる。 そして今回の戦場となるゆうかサーキット。 全長2.8km、20箇所のコーナーからなるこのサーキット。 第一の見所は、メインストレートでの最高時速70kmを超えるハイスピードバトル。 そして最終コーナー手前のシケイン。ここではブレーキングによる熱い攻防が繰り広げられる。 今まで数々のドラマを生み出したこのステージ、今日はどんな展開になるのだろうか……。 マリセデスGPのピットではドライバーのまりさが開始の時を待っていた。 普通、S1GPに出るゆっくりは生まれた時から厳しいトレーニングを受けて実力をつける。 だが、このまりさは趣味で始めたすぃーレースで才能を開花し、ワークスにスカウトされたのだ。 天才ルーキーの登場により、今回のS1GPは例年以上に注目されている。 飼い主のおにいさんがまりさに歩み寄る。 『監督が言うには、もしかしたら1位を狙えるかもしれないんだって。 でもまりさ、無理はしちゃ駄目だよ。』 「ゆっ!わかったよおにいさん!」 (すてられたまりさをひろってくれたおにいさん。 まりさをしゅじゅつしてくれたおにいさんのおともだち。 いままでまりさをさぽーとしてくれたみんなのためにも、まりさはがんばらないと。 それで、まりさはがんばってゆうしょうするよ!) 屋外にいた客がぞろぞろと客席へと向かう。 レーススタートの時間が近づいているようだ。 ピットでは作業員がせわしなく動き回っている。最後の点検をしているのだろう。 ちなみに、今回からレッドリボンがエアロフォームを改造した新機体を投入するらしいので、注目していきたい。 コースレーンに全てのマシンが並び、関係者が走ってコースから出て行く。 先頭の黄色いすぃーが動き出し、フォーメーションラップが始まる。 各マシンはジグザグに走ってグリップ力や路面コンディションを確かめている。 ちなみに、すぃーの動力はゆっくりの”意思”と言われている。 つまり、精神的に強いゆっくりほど速く走れるのだ。 サーキットを1周し、各マシンがグリッドにつく レッドシグナル点灯。客席は黙って始まるのを待っている…… そして、全てのシグナルが消えた レーススタート! スタートダッシュに成功したのはマリセデスGPまりさ。 続いてありす、ちぇん、みょん、ぱちゅりーと順に第1コーナーへ突入していく。 スタートでの急加速からコーナー侵入の急ブレーキ。 全身が前方へ投げ出されそうになるのをこらえつつ重心を移動させるために体を右へめいっぱい傾ける。 重心移動の正確さが速さへとつながっていくのだ。 と、みょんのブレーキミスを逃さずにぱちゅりーが車体を内側へねじ込む。 2台は並んだままS字コーナーへと入る。 コーナリング性能の差か、コーナー出口でみょんがぱちゅりーを追い越した。 しばらく順位は変動する事なく、レースは進んでいく。 4周目、最終コーナーでマクラーれいむの機体から白煙が上がる。 そしてホームストレート中盤、観客の目の前で突然炎上し始めた。 バランスを崩し、スピンしながら第1コーナーへ吹っ飛ぶれいむとマシン。 即座にマシンを消火するスタッフ。だがれいむには近づかない。 「あじゅいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」 熱さのあまり暴れまわるれいむ、しかしそのせいで周囲のスタッフが近づけない事にれいむは気づかない。 「でいぶのがわいいぎゃみのげぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 しばらくして全ての髪の毛、お飾りが燃え尽きた後に 「もっぢょ……びゅっぐぢ………じぢゃがっだびょ……」 と言ってれいむはこの世を去った。 このようなアクシデントも勝負の世界では少なくない。 そしてこれがレースを盛り上げる一つの要素であり、観客の楽しみの一つでもあるのだ。 レースは中盤にさしかかる。 マリセデスGPが後続を引き離して大きくリード。 20周を終えた所でピットへ入る。 ピットで停止と同時にタイヤの交換作業を始めるクルー達。 一瞬たりとも止まらない一連の動作は、まさにプロの仕事と言えよう。 交換中の短い時間でドライバーは燃料補給を済ませる。 中身はオレンジジュースなのだが、飲みすぎると車体が重くなるので飲む量は最低限だ。 タイヤ交換が終わり、GOサインと同時にマシンはコースへと復帰していく。 トップのピットインを見て、後続の車両が次々とピットインしていく。 ンホォーが少々ピット作業に時間をとられたが、全てのマシンがコースへ復帰できた。 22周目、デグナーカーブでぱちゅりーがみょんをオーバーテイク。 この周からぱちゅりーのラップタイムが短くなり始め、26周にはベストラップタイムを叩き出した。 勢いにのったぱちゅりーは前を走るありすとちぇん、三つ巴の戦いを繰り広げる。 30周目、最終コーナーで3台が平行に並び、ホームストレートで加速する。 そのまま第1コーナーへと突入。 ブレーキングでぱちゅりーが少し遅れる。 2台でコーナーを曲がり始めるかと思われたが、内側のありすがスリップしちぇんと衝突。 2台ともコースアウトしてしまった。 その間にぱちゅりーが悠々とコーナーを抜けていく。 その後姿を追いかけるようにして2台ともコースへ戻り、再びバトルが始まる。 レースもラスト数周となり、2位争いがますます白熱していく。 抜いては抜かれ、2台で争っているともう1台に抜かれるという展開か続いた。 そしてラスト1周。周回遅れのレッドリボンれいむがその均衡を破った。 スプーンカーブを抜けて集団がれいむを追い抜こうとする。 左からありす、ちぇん、ぱちゅりーの順番で3台は再び平行に並んだ。 れいむはコース中央を走っている。 当然ちぇんがれいむに引っかかり、前に出たありすとぱちゅりーが最終コーナー手前のシケインへ突入する。 ぱちゅりーが先にシケインに入った。普通はこの地点で追い抜く事はできなくなる。 だがありすは限界ギリギリの速度で、しかもコーナーギリギリのライン取りで勝負に出た。 縁石に乗り上げ、大きくハネ上がるありすの車体。 吹っ飛ばされないよう必死に踏ん張るありす。 それに驚いたのか、ぱちゅりーの速度が少し落ちた。 相手のペースダウンを見逃さずに加速して最終コーナーを走り抜けるありす。 一瞬のスキを突かれたぱちゅりーはありすの後ろでチェッカーフラッグを受けた。 本日のレース結果は以下の通りである。 ・ マリセデスGP(まりさ) ・ ンホォー(ありす) ・ パチューリ(ぱちゅりー) ・ ウィリアムチェン(ちぇん) ・ フォース・みょんでぃあ(みょん) 以下プライベートチームが続く。 リタイア:マクラーれいむ(れいむ) 今回のレースでは、マリセデスGPが圧倒的な強さを見せ付ける結果となった。 一方レッドリボンは投入した新機体が裏目に出たようだ。 各選手のレース後のインタビュー。 マリセデスGP「こんかいのしょうりはすたっふをはじめ、さぽーとしてくれたみんなのおかげでかちとれたぜ! いつもこういうてんかいになるとはおもわないけど、これからもかてるようにがんばるぜ! それと、とちゅうでくらっしゅしたれいむはざんねんなじこだったぜ……」 ンホォー「とちゅう、なんかいかぬかれたりしたけど、さいごはとかいはなかけで2いになれたわ!」 パチューリ「むきゅう……さいごのさいごにあんなことをやられるなんておもってなかったわ。 もっとはしりのせいどをよくすることがこんごのかだいね。」 インタビュー終了後 「ゆ……おにいさあぁぁぁん!!!!」 『まりさ~~~!!』 おにいさんの胸へとダイブするまりさ。うれしさのあまり少々泣いている。 「おにいさん、まりさね!はじめて1いになれたんだよ!!」 『ああ、ちゃんと見てたよ。よくがんばったな!』 「それでね、まりさ、おにいさんにおねがいがあるの……」 『ああ、今日は何でも聞いてあげるぞ!』 「あのね……………きょう、いっしょのおふとんでねてもいい?」 『………』 あまあまが食べたいとか、そういう要望を予想していたおにいさんは一瞬固まった。 だが、すぐに笑顔で 『ああ、いいよ。』 と言った。 『まりさはかわいいなぁ~~~~~』 「ゆふん、おにいさんくすぐったいよ~~~♪」 あるゆっくりは飼い主の喜ぶ顔が見たくて あるゆっくりは優勝してめいっぱいあまあまを食べるため あるゆっくりは己の限界に挑戦するため 様々な思いが交錯するS1GP。次戦ではどんなドラマが誕生するのだろうか…… ____________________________________________________________________________________________________________________ ・anko1874 永久機関? ・anko1885 ドスとなった人間 ・anko1908 ゆん月殺法 ・anko1913 奇形児 ・anko1924 バトル・ゆワイヤル _____________________________________________________________________________________________________________ ・マリセデスGPのまりさは「奇形児」のまりさって裏設定 ・深夜にやってたF1やmotoGPを見てて思いついた ・当初は漫画に挑戦してみようと思うも、画力と作業量にあえなく断念 ・文章に迫力を持たせたいです ・「anko1913 奇形児」のイラストを描いてもらっちゃいました! まさか描いてもらえるなんて想像してなかったので、とってもうれしいです!! ・どくしゃさんがゆっくりできてると、さくしゃさんもゆっくりできるよ!
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『孤独なれいむと森に住むぱちゅりー』 29KB 制裁 愛情 自業自得 差別・格差 飾り 同族殺し 群れ 青いリボンのれいむの話。 人里近くの山のふもとに、ゆっくりの小さな群れがあった。 危険な野生動物や捕食種もおらず、ゆっくりたちにとってそれなりに暮らしやすいところである。 そんな群れのテリトリー内にある巣穴の一つから、暢気な歌声が響いてくる。 「ゆっゆ~ん♪おちびちゃんかわいいよ~♪」 「まりさのおちびちゃ~ん♪はやくうまれてくるのぜ~♪」 巣穴の中には植物型妊娠をしてれいむと、伴侶と思われるまりさの二匹のみ。 この二匹は数日前に結ばれたばかりの若い夫婦だ。 しかしれいむの頭にある茎には六つの実ゆっくりがなっており、それら全てがすでに生れ落ちるのに申し分ないほどの大きさに育っている。 不意に、茎の先端に実った実ゆっくりがぷるぷると震え始める。 「ゆ~ゆ~…ゆ!?おちびちゃんがうまれおちそうだよ!まりさ、じゅんびしてね!」 「わかったのぜ!」 まりさは帽子を取ると、それを茎の下に敷く。 二匹が固唾を呑んで見守っていると、先端の実ゆっくりが茎から離れ落ちた。 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「ゆっくりしていってね!ゆううううううおちびちゃんかわいいよおおおおおおおお!」 「ゆっくりしていってね!まりさのはじめてのおちびちゃんなのぜええええええええ!」 拙い挨拶をする赤ゆっくり(種類はれいむ)を見て感激する二匹。 間をおかずして、次々と実ゆっくりが体を震わせる。 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 そんな調子で五匹の赤ゆっくりが茎から離れ、残りは一匹だけとなった。 「ゆ!?このこでさいごだよ!」 「さいごのおちびちゃん!ゆっくりうまれるのぜ!」 最後の実ゆっくりが震え、帽子の上に落下する。 種類はれいむのようだ。 赤れいむは姉妹たちと同じように、両親に顔を向けてお決まりの挨拶をする。 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりして…ゆ?」」 両親はその赤れいむを見た途端、呆然とした顔になる。 「ゆ?……ゆっくちしちぇいっちぇね!」 赤れいむ(以下末れいむと呼ぶ)は挨拶が聞こえなかったのかと思い、先ほどよりもはっきりとした挨拶を返す。 だが、両親の表情はゆるむどころか、ますます険しくなるばかりだ。 「…なんなのこのきもちわるいこは?」 「…ゆっくりしてないんだぜ」 「ゆ?ゆ??」 突然ゆっくり出来ないことを言い出した両親に困惑する末れいむ。 まさか自分に向けられた発言とは思わず、末れいむはゆっくり出来ない存在を探すために周りをきょろきょろ見回す。 両親はそんな末れいむを無視して、先に生まれた姉妹たちの方に向き直る。 「さ、おちびちゃんたち!あんなゆっくりできないくずはむししてごはんさんにしようね!」 「「「「「ゆわーい!ぎょはんぎょはん!」」」」」 親れいむは茎を振り落とすと、それを租借して柔らかくし、姉妹五匹の前に平等に分け与える。 「「「「「むーちゃむーちゃ!ちあわちぇー!」」」」」 姉妹たちは初めての食事を幸せそう顔で貪り、食べかすをあちこちに撒き散らす。 両親はその様子を満足げな表情で眺めていた。 「ゆ!れいみゅも!れいみゅもおにゃかしゅいた!」 末れいむも家族の団欒に加わろうと、姉妹たちの元へ這って行く。 ――ドン 「ゆびぃ!?」 しかし辿り着く前に、親まりさに体当たりされて吹き飛ばされてしまう。 地面を勢いよく転がったものの、何とか致命傷を負わずに済んだ。 しかし生まれたばかりに経験するにはあまりに強烈な痛みに、末れいむは体を動かすどころか声を発することすら出来ないでいた。 「きもちわるいがきはちかよるんじゃないのぜ!」 「まったく!こんなのがれいむのこどもなんてはずかしいよ!」 「ゆぷぷ!こんなゆっくちできにゃいやちゅしゃっしゃところしぇばいいのじぇ!」 「しょーだよ!くじゅはゆっきゅりできにゃいきゃらこりょしゅべきぢゃよ!」 「おちびちゃんそんなこといっちゃいけないよ!たしかにこいつはくずだけどゆっくりごろしはゆっくりできないよ!」 「そうなのぜ!かわいいおちびちゃんたちはころすなんてことばはつかっちゃいけないのぜ!」 「「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」」 (ゆ…どおちて…) なぜ自分がこんな目に遭うのか理解できず、涙を流す末れいむ。 しばらくすると満腹になった姉妹たちは眠り、両親もそんな姉妹たちに寄り添って眠った。 その間、家族に一瞥もされることはなかった末れいむは、姉妹たちがこぼした茎のカスを舐めとって飢えを凌ぐしかなかった。 別に末れいむは奇形児でもないし未熟児でもない。 知能や外見に問題はないし、体型も赤ゆ特有の丸い体で健常そのものである。 お飾りが青色であることを除けばだが。 末れいむのお飾りは、れいむ種特有の紅白リボンではなく青と白の二色で彩られたリボンだった。 極々稀にではあるが、ゆっくりの世界ではお飾りが変だったり、元々お飾りがないゆっくりが生まれることがある。 そういうゆっくりは、大抵は生まれてすぐ親や他のゆっくりに殺されてしまい、ゆっくりの社会に出てくることはそうそうない。 だが幸運と言うべきか不運と言うべきか、末れいむのお飾りがおかしなところは『色』だけで他は全く異常がなかった。 そのため辛うじて他のゆっくりから同族と認識されるも、ゆっくり出来ないゆっくりであると判断されてしまったのだ。 それから、末れいむはゆっくり出来ない毎日を送ることとなった。 「やめちぇね!おねえちゃんやめちぇね!」 「ゆ?くじゅのくしぇににゃにかいっちぇりゅよ!」 「おみゃえにゃんきゃまりしゃのいもうちょじゃにゃいのじぇ!」 「ばきゃにゃの?ちにゅの?げりゃげりゃ!」 「くずなゆっくりをいじめるのはたのちいのじぇ!」 姉妹全員にゆっくりできないと罵倒され、体当たりされてボコボコにされる。髪の毛を引っ張られて引きずり回されたり、枝で軽くぷすぷす刺されたりする。 それが生まれてから一日とて欠かさず行われる、末れいむの日課だった。 「ゆ…ゆ…」 「ゆ?みょうはんにょうしにゃくなっちゃのじぇ?」 「まっちゃく、もりょくちぇちゅかえにゃいどうぎゅだにぇ!」 「おちびちゃん!あんまりやりすぎちゃいけないよ、ころしたらゆっくりできないにおいがうつっちゃうからね!」 「「「「「ゆっきゅりりかいちたよ!」」」」」 あまり暴行が激しいようだと両親が止めることがあったが、暴行をやめるように言うことは一度もない。 末れいむと家族同士の触れ合いは一切なく、末れいむの食事は死なない程度の最低限の量しか与えられなかった。 赤ゆっくりたちが子ゆっくりに成長し、巣穴の外に出るようになっても末れいむに対する扱いは変わらなかった。 むしろ群れのゆっくりたちが加わった分、酷くなったと言っていい。 「だれきゃ…たしゅけちぇ…」 「ゆ!こんなところにゆっくりできないくずがいるよ!」 「あのいっかもこんなくずがみうちにいるなんて…かわいそうなのぜ」 「おまえなんかいきてるだけでめいわくなんだよ!さっさとしんでね!」 「しねくず!」 「ゆ……」 群れのゆっくりたちの末れいむに対する反応は、嘲笑するか見下すか罵倒するかのどれかだった。 青い飾りの末れいむはゆっくりの中では異端の存在であり、ゆっくりは異端を『ゆっくり出来ないゆっくり』として排除する傾向が強い。 末れいむが殺されない理由はただ一つ、『ゆっくり殺しはゆっくり出来ない』という本能に刻み込まれた戒律のためだ。 末れいむの味方はどこにもおらず、周りのゆっくりからは常に嫌がらせや暴行を受けていた。 しかしこんな目にあっても、群れの外に逃げ出すという考えは末れいむにはなかった。 誰も助けてくれない状況で一人で生きていけるとは思えなかったし… こんな扱いを受けていても、家族と一緒にいたいという気持ちがあったからだ。 末れいむが産まれて一ヶ月が経った。 まだ子ゆっくりの段階であるにも関わらず、毎日たっぷりと食べてきた姉妹たちと、生きていける最低限の食事しか与えられなかった末れいむとでは、体格にかなりの差が出ていた。 ――ポスン、ポスン 「おねーしゃんぱしゅなのじぇ!」 「ゆゆ!ゆっくりりかいしたよ!」 「ゅ……」 その日もいつものように、末れいむは姉妹たちに追い掛け回されてボール代わりにされていた。 最近は末れいむも泣き喚くようなことはせず、体当たりされようと何されようと黙って為すがままにされるようになっていた。 今までの経験から、姉妹たちが飽きるのを待ってじっと耐え忍ぶのが最もダメージが少ないと学習したからだ。 「ゆゆ!みんなまっちぇね!」 「「「「ゆ?」」」」 不意に姉妹の一匹が、何かに気づいたように姉妹たちに声を掛ける。 気がつくと子ゆっくりたちの目の前には、日の光もろくに差さないような深い森が見えていた。 「このもりはたしかゆっくりできないもりだよ!おかーさんやおとーさんがちかづいちゃいけないっていってたばしょだよ!」 「ゆゆ!おみょいだしたのじぇ!このもりには『ゆっくりできないゆっくり』がいるってきいたのじぇ!」 「ゆ!れいみゅもおもいだしたよ!」 「はやきゅここからはなれりゅのじぇ!」 この森は群れのゆっくりたちの間で、ゆっくり出来ないゆっくりが住んでいる、ゆっくり出来ない場所と伝えられている。 そのため群れの子ゆっくりは、親からこの場所に近づいてはいけないと何度も注意されていた。 「ゆ、ゆっくりここからはなれりゅよ!」 「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」 長女れいむの号令で、姉妹たちは一斉に森から離れていく。 「ゆ…まっちぇ…れいみゅをおいてかにゃいで……」 意識が朦朧とする中、末れいむは姉妹たちに助けを求めるも、姉妹たちはすでにその場からいなくなっていた。 「ゆぐ…ゆぐ……おとーしゃん…おかーしゃん…おねえちゃん……」 決して報われることのない家族への思いを胸に、末れいむはその場で静かに泣きじゃくっていた。 しかし、そんな末れいむに近づく一匹のゆっくりがいた。 「むきゅ、そこのれいむ。どうして泣いてるのかしら?」 「…ゆ?」 末れいむが顔を上げると、そこには一匹の成体ぱちゅりーがいた。 群れのゆっくりたちとはどこか違う雰囲気を持っており、帽子に特徴的な模様が彫られた木製のバッチが付いている。 「酷い怪我ね…大丈夫?」 「……おねーちゃん……だりぇ?」 「ぱちぇはこの森で暮らしてるものよ。 とりあえず手当てが必要ね、ぱちぇのお家に連れてってあげるわ」 ぱちゅりーは末れいむを頭に抱えると、森の奥へと移動した。 しばらくすると、朽ち果てた巨木が見え、巨木の根元にはゆっくりが一匹分通れる穴が開いている。 ぱちゅりーは末れいむと一緒に、その中へと入っていった。 「むきゅ、ちょっと待ってなさい」 ぱちゅりーは末れいむを柔らかい干草の上に寝かせると、目の前に花や甘い草をすり潰したものを置いた。 「お腹がすいてるでしょう、まずはこれを食べなさい」 そういうとぱちゅりーは巣の奥に移動し、なにやらごそごそと探している。 末れいむはぱちゅりーと目の前の食事を交互に見た後、恐る恐るといった様子で口にした。 「むーちゃ…むーちゃ…ち、ちちちちあわちぇえええええええええ!」 普段食べているものとは比べ物にならないほどおいしい食べ物に、末れいむは感動の涙を流す。 苦くて硬い草しか食べてこなかった末れいむにとって、それは革命的と言っていいほどの食事だった。 末れいむが食事を終えたのを見計らって、ぱちゅりーは綺麗な葉っぱで末れいむの体を拭き、何か液体を末れいむの傷口に塗っていく。 傷口にそれを塗られるたびに、末れいむの体からは傷が消え痛みが引いていった。 「これで良し、と。しばらく安静にしてればすぐに良くなるわ」 「ゆ!ぱちゅりーおねえちゃんありがちょう! ……ぱちゅりーおねえちゃんはれいみゅをいじめにゃいの?」 「むきゅ?おかしなこというわね。こんな可愛らしい子を虐めるわけないじゃない」 「けど…れいみゅのおかざりしゃん、へんでしょ?」 「ぱちぇは別に変だと思わないわ。鮮やかな青色をした、綺麗なお飾りじゃない」 「ほんちょ!?えへへ…」 今まで虐げられる原因だったお飾りを初めて褒められた嬉しさから、末れいむは恐らく生まれて初めての満面の笑みを浮かべる。 「ところでれいむ、あなたはどうしてあんな場所で倒れていたのかしら?」 「ゆ……しょれは…」 末れいむは自分が生まれてからどんな目に遭って来たか、家族や群れのゆっくりたちからどういう目で見られてきたか、 森の近くで倒れていたのは姉妹たちに追いかけまわされたから、ということなどを全て話した。 ぱちゅりーは末れいむの話が終わるまで一言も口を挟まず、黙って耳を傾けていた。 「むきゅ…苦労したのね」 「ぱちゅりーおねえちゃんは、どうちてこんにゃところにひとりでくらしちぇるの?」 「ぱちぇも昔は群れのゆっくりの一員だったのよ。けど群れの皆とはそりが合わなくて、群れから離れてここで暮らすことになったの」 「ふーん…ぱちゅりーおねえちゃん、これにゃーに?」 末れいむは先ほど自分の体に塗られた液体を、ぱちゅりーに尋ねる。 「これはさっきれいむが食べたこの草をすり潰して水で溶いたものよ。わずかな甘みがゆっくりの治癒能力を促進させるの。 軽い怪我ならこれを塗るだけですぐに治せるわ」 「ゆ!しょんなことをしってるにゃんて、ぱちゅりーおねえちゃんはしゅごいにぇ!」 「むきゅ、それほどでもないわ」 「ゆ、おしょとがくらくなってきちゃよ!しょろしょろむれにかえらにゃいと」 「……大丈夫なの?」 「ぱちゅりー…れいみゅはおうちにかえりちゃいよ」 「そう…分かったわ。 森の中を跳ねてたら迷ってしまうでしょうから、ぱちぇが群れの近くまで案内してあげるわ」 巣穴の外へ出たぱちゅりーは末れいむを連れて、森の中を移動する。 しばらくすると、末れいむとぱちゅりーは遠くに群れの広場が見える場所まで辿り着いた。 「ゆ!ここからはひちょりでだいじょうぶだよ!」 「そう、じゃあ案内はここまででいいかしら」 末れいむは群れの方へと跳ねていく。 ぱちゅりーは末れいむを見送るように、じっと後姿を見ている。 「…ぱちゅりーおねえちゃん」 少し進んだところで不意に末れいむは足を止め、ぱちゅりーの方へ向き直る。 「あら、なにかしら?」 「…また、ぱちゅりーおねえちゃんのところにいっちぇもいい?」 「もちろんよ、機会があったらここに来なさい。ぱちぇはいつでもれいむのことを待っているわ」 「…ゆ!ありがちょうぱちゅりーおねえちゃん!」 末れいむは群れの方へと意気揚々と跳ねていく。 ぱちゅりーは末れいむの姿が見えなくなったのを確認すると、森の奥へと消えていった。 「ゆ!?くずがかえってきたのぜ!」 「あのゆっくりできないもりにいったんだってね!おおおろかおろか!」 「くじゅはやっぴゃりくじゅなのじぇ!げりゃげりゃ!」 「くじゅははやきゅしんだほうがいいのじぇ!」 家に帰ってきた末れいむを待っていたのは、普段と変わらない日常だった。 いつものように姉妹たちから暴行を受け、両親からは嘲笑される。 だが、末れいむの心にいつも感じていたような絶望はない。 今日初めて、自分と接してくれるゆっくりと出会えた。そのことは末れいむにとって大きな活力になった。 またぱちゅりーに会いたい、会えるかもしれない…そんな思いを胸に、末れいむは眠りについた。 それから末れいむは、群れのゆっくりたちの隙を見ては、群れの外に出るようになった。 姉妹が目を離した隙や、一家が狩りに出ている最中、家族全員が昼寝をしているときなど… 隙を見つけては森に入り、ぱちゅりーのところに足繁く通った。 「ぱちゅりーおねえちゃん!ゆっくちちていってね!」 「むきゅ、いらっしゃいれいむ。ゆっくりしていってね」 ぱちゅりーはれいむに様々なことを教えた。 本来親が教えるべき狩りの知識や食べられるものの区別、巣穴の作り方、ちょっとした生活の知恵、捕食種や野生動物への対処方法などなど。 そして、人間のことについても教えた 「むきゅ、今日は人間さんについてのお話をしましょう」 「ゆ?にんげんさんってなに?」 「人間さんというのは、ぱちぇたちゆっくりよりも体が大きくて、ゆっくりよりも遥かに力が強くて賢い生き物よ。 群れの北の方にも、大勢の人間さんが住んでる場所があるわ」 「ゆー!そんないきものいるの!?れいむにんげんさんにあってみたいよ!」 「ダメよ、人間さんには不必要に近づくべきではないわ」 「ゆ、どうして?」 「人間さんは、自分のテリトリーを荒らすものは決して許さないわ。 人間さんの一番怖いところは、力が強いところでも頭がいいことでもない、敵と認めたものに対しては一切容赦しないところよ。 例えれいむに悪意がなくても、人間さんに見つかっただけで殺されるということだってありえるのよ」 「ゆ…にんげんさんってこわいね」 「人間さんにはいろんな人がいるのよ。 私たちゆっくりに友好的な態度を示してくれる人もいれば、敵意を持って接してくる人もいるわ。 …少なくとも今は、出来るだけ関わらないほうがいいと思うわ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 末れいむはぱちゅりーから授かった狩りの知識を生かして栄養があるものを採取し、どんどん体が大きくなっていった。 その分姉妹たちの暴力も過激になっていったが、体が丈夫になるにつれて深い傷を負うことがほとんどなくなった。 いつしか末れいむの体は、姉妹たちと寸分違わぬくらいの大きさまで成長していた。 末れいむが成体ゆっくりより一回り小さいくらいまで成長した頃… 季節は秋になり、紅葉が散り始める時期になっていた。 群れでは大量の食料を巣穴に溜め込み、冬篭りの準備を始めなければならない時期でもある。 しかし… 「ゆゆ!おかしいよ!むしさんやはなさんがぜんぜんとれないよ!?」 「どうしておはなさんもむしさんもいないのおおおおおお!?」 「しょくりょうがぜんぜんたりないんだぜ!これじゃふゆをこせないんだぜ!」 群れの近くにある狩場では、獲物が全く採れなくなったのだ。 理由は単純なもので、単に群れのゆっくりが増えすぎたために自然の恵みの生産量が消費量に追いつかなくなっただけのことだが、群れのゆっくりたちにそんなことは分からない。 群れの中に打開策を考えるものはほとんどいなかった。 ゆっくりたちはただただ目の前の問題を嘆くのみで、現状に対する不満をぶつける相手を必死で探していた。 「ゆゆ!わかったよ!」 『ゆゆ!?』 「きっともりにいる『ゆっくりできないゆっくり』がたべものをひとりじめしてるんだよ!」 そして、群れのゆっくりたちは不満をぶつける相手として、森に住むぱちゅりーを選んだ。 「ゆー!なんてことなんだぜ!」 「まえからゆっくりできないとおもってたけど、そんなことまでするなんてさいていのげすなのぜ!」 「せいっさいがひつようだよ!」 「せいっさい!せいっさい!」 群れのゆっくりたちはぱちゅりーを制裁しようという気運が高まっていく。 それの様子を少し離れた場所で見ていた末れいむは、脇目も振らずにぱちゅりーのところへと向かった。 (このままじゃぱちゅりーがころされちゃうよ!はやくしらせないと…) ぱちゅりーの巣穴に辿り着いた末れいむは、すぐさま中へと入る。 「たいへんだよぱちゅりー!むれのゆっくりたちが…ゆ!?」 巣穴の奥で末れいむが見たものは、地面に倒れて蹲まっている弱弱しい様子のぱちゅりーの姿だった。 「ぱちゅりー!?どうしたの!?」 「むきゅ…れいむかしら…ゆっくりしていってね…どうしたの、そんなに慌てて…?」 「ゆ!じつは…」 末れいむは群れの近辺で食料が採れなくなったこと、群れのゆっくりたちはその原因をぱちゅりーのせいにしていること、 ゆっくりたちはぱちゅりーを制裁しようとしていることを説明した。 「このままここにいたらころされちゃうよ!だからはやくにげないと…」 「……ごめんなさいれいむ…ぱちゅりーは逃げられないわ…」 「ゆううう!?」 「ぱちぇは今まで随分長く生きてきたわ…それこそ群れの大人たちの誰よりも長く…だからもう体がまともに動かないの…」 「そ、そんな…」 ぱちゅりーはゆっくりとしてはかなりの高齢であり、そろそろ寿命が近いことを末れいむに説明した。 「だかられいむ…ぱちぇに構わずここから逃げなさい……ここにいたられいむまで殺されてしまうかもしれないわ…」 「い、いやだよ!ぱちゅりーとはなれたくないよ!」 ぱちゅりーはしばらく無言になると、帽子についていた木のバッチを外し、末れいむに渡した。 「人間さんが住んでる場所は、以前教えたわよね……これを持ってそこに行きなさい…」 「ゆ、それはぱちゅりーの…」 「このバッチは…お兄さんがぱちぇを識別するために特別に作ってくれたものなの……これを見せて事情を説明すれば…きっとれいむを保護してくれると思うわ」 「おにいさん…?」 「…ぱちぇはね…元々は人に飼われるゆっくりだったのよ」 かつてぱちゅりーは都会のゆっくり専門ペットショップで生まれたゆっくりだった。 成体で、しかも体が弱い不良品として処分される寸前だったぱちゅりーは、田舎から上京していたある男性に買われることとなった。 山に囲まれた僻地にある小さな村で暮らすことになったぱちゅりーは、飼い主や村人たちにとても大切に育てられた。 ぱちゅりーはそんな人間たちから様々な知識を学び、飼い主や村人たちに日々感謝した。 そして、多くのゆっくりと人間がいがみ合う関係にあることを知ったぱちゅりーは、いつしか『人間とゆっくりが互いを想い合う関係』を作るという夢を持つようになった。 ぱちゅりーは夢を実現するために、まずは野生のゆっくりに接触する必要があると考え、飼い主に頼んで近くの山に住むゆっくりたちの群れに、自分を捨ててくれるよう頼んだ。 飼い主と周りの村人たちは当然猛反対したが、結局ぱちゅりーの説得と強固な決意に折れた。 そこで飼い主が、いつでも帰ってきていいようにと、目印として帽子に模様を彫った木のバッチをつけさせたのだ。 「けど、ぱちぇの話を聞いてくれるゆっくりは誰もいなかったわ……皆人間さんのことを見下すだけで、人間さんのことを一つも知ろうとしない…… そのうち群れの皆はぱちぇのことを鬱陶しく思うようになって、ぱちぇを群れの外へと追い出したの」 「……」 「それからぱちぇは…群れの近くのこの森で、ぱちぇの話を聞いてくれるゆっくりが現れるのを待っていたわ…… ふふ、待ってた甲斐があったわ……れいむ、あなたに会えたのだから」 「ぱちゅりーおねえちゃん…」 「さ、もう行きなさい……群れのゆっくりたちと鉢合わせしたら大変だわ…」 「…さいごに、ひとつだけいい?」 「なにかしら…?」 「…おかあさんって…よんでいい?」 しばらく無言になる二匹。 おもむろに、ぱちゅりーはれいむに顔を寄せ、すーりすーりをした。 「…例え餡子は繋がってなくても……あなたはぱちぇの自慢の娘よ」 「ゆぐ……ぱちゅりー…おがあざん!」 そのまましばらく頬をすり合わせ、二匹はそっと離れる。 時間にして一分にも満たない頬ずりだったが、二匹にはそれで十分だった。 「さ…もう行きなさい」 「……!」 末れいむは名残惜しさを振り切るように、巣穴から飛び出していった。 巣穴から少し離れたところで、不意に背後から大勢のゆっくりの声が聞こえてくる。 ――ゆ!みつけたよ!ここがげすのすみかだよ! ――げすはせいっさいしてやるんだぜ! 末れいむはゆっくりたちの怒号を背に受けながら、森の奥へと消えていった。 翌日―― ぱちゅりーへの『せいっさい』を終えてひとまず満足した群れのゆっくりたちだが… 当然、群れの食料事情は一向に改善しなかった。 「ゆゆ!おかしいよ!むしさんやはなさんがぜんぜんとれないよ!?」 「しょくりょうがぜんぜんたりないんだぜ!これじゃふゆをこせないんだぜ!」 「ゆっくりできないゆっくりはせいっさいしたのにどうしてごはんさんがないのおおおおおおおお!?」 結局わめき散らすことしかしない群れのゆっくりたち。 しかし一匹のれいむがまた、事態を動かす発言をする。 「ゆゆ!こんどこそわかったよ!」 「ゆゆ!?」 「げすぱちゅりーがにんげんさんとなかよくしようとか、わけのわからないことをいってたよ! きっとぱちゅりーはげすなにんげんとてをくんで、ゆっくりしてるれいむたちにいじわるしたんだよ!」 「ゆううう!?それはきづかなかったのぜええええ!」 「それならげすにんげんもせいっさいしないといけないね!」 『せいっさいせいっさい!』 そして群れのゆっくりたちは、今度は人間を『せいっさい』の対象として選んだ。 ぱちゅりーの話を全く聞いていない群れのゆっくりたちの人間に対する認識は、『ばかでおろかでゆっくりできないいきもの』ということのみであり、 人間はどのような存在か、どれだけの力量を持っているかということを知っているゆっくりは、末れいむを除いて皆無だった。 愚かなことに、ぱちゅりーの『せいっさい』に成功したゆっくりたちは、人間に対する『せいっさい』も、同じように成功すると信じて疑わなかった。 「けど、くそにんげんはどこにいるのかわからないよ…」 「そういえばげすぱちゅりーがいってたのぜ!おやさいさんはにんげんがそだててるって! いぜんまりさはおやさいさんをとってきたことがあるけど、きっとそこににんげんがいるのぜ!」 「すごいわまりさ!なんてあたまがいいの!?」 「ゆへへ、それほどでもないんだぜ!」 「じゃあまりさ!れいむたちをそこまであんないしてね!」 「まかせるんだぜ!みんなでくずにんげんをせいっさいしにいくのぜえええ!」 『ゆっゆおー!!!』 以前人里の畑に侵入し、野菜を盗むで生還したゆっくりが群れを先導する。 赤ゆや子ゆも含めた群れの全てのゆっくりが、人里に向けて出発した。 ゆっくりたちは群れを出て北の方に向かってただひたすら跳ねていくと、急に視界が開けた場所に出た。 そこには茅葺屋根で出来た家があちこちに点在し、家の近くには田んぼや畑がいくつもあった。 ゆっくりたちがまず目にしたのは、色とりどりの野菜がたわわに実った、大きな畑だった。 「ゆゆ!おやさいさんがいっぱいあるよ!」 「あれだけのおやさいさんをひとりじめするなんて…ゆるせないんだぜえ!」 「あのおやさいさんはぜんぶれいむのものにするよおおおお!」 「ぜんぶまりささまがむーしゃむーしゃするんだぜええええ!」 畑を前にした途端、当初の目的を忘れて畑に殺到するゆっくり。 『おやさいさんをゆくりたべるよ!』 畑に侵入し、野菜を食べようとした瞬間… 「今だ!」 不意にどこからか掛け声がし、それと同時にゆっくりたちの上に網がかかって身動きが取れなくなった。 「ゆゆ!なんなのこれ!」 「うごけないんだぜ!?」 網に絡まって右往左往するゆっくりたち。 ゆっくりたちの周りを、いつの間にか大勢の人間が取り囲んでいた。 「ゆ!くそにんげんがいるよ!」 「おいくそにんげん!まりさたちをここからだすのぜ!」 「なにぼけっとしてるの!?はやくしろおおおおおお!」 「げすなにんげんはしねええええええええ!」 「おやさいさんをむーしゃむーしゃさせろおおおおおお!」 人間たちの集団から、一人の男と一匹のゆっくりが前に出る。 男の方は見た目はごく普通の青年で、ゆっくりの方はあの一家に虐げられていた末れいむだった。 末れいむのリボンには、ぱちゅりーから託された木製のバッチが付いている。 「ゆゆ!くずがいるのぜ!」 「どおしてくずがそこにいるのおおお!?」 「おいくず!まりさたちをたすけるんだぜ!」 「はやくしろくず!」 たまたま男と末れいむに一番近い位置にいた末れいむの家族が、末れいむに対して助けを求める。 しかし末れいむは群れのゆっくりたちを悲しそうな目で見るだけで、一向に行動を起こそうとしない。 「…れいむ、こいつらとは知り合いなのか?」 「このゆっくりたちは、れいむのおやとしまいだよ」 「そうか…」 「ゆっがああああああああああああ!なにしてるんだぜえええええええ!?はやくまりさたたちをたすけろおおおおおおおお!」 「まぁ待てお前ら、まずは俺の質問に答えてくれないか」 れいむの横にいた男が、ゆっくりたちに声を掛ける。 「ゆゆ!なんでくそにんげんのしつもんにこたえなきゃいけないの?ばかなの?しぬの?」 「質問に答えてくれたら、あまあまをやるよ」 「ゆ!あまあま!?」 「はやくよこすのぜ!」 「よこせ!よこせえ!」 「あまあま!あまあまあああ!」 あまあまという言葉を聞いて騒ぎ出す群れのゆっくりたち。 あまあまを貰ったところで拘束を解いてもらわなければ、結局何の意味がないのだが…群れのゆっくりたちはとりあえず目先の利益に飛びつくことしか頭に無かった。 男はゆっくりたちに問いかける。 「お前たちは何でここに来たんだ?ここはお前たちが住んでるところからも大分離れているはずだ」 「そんなのきまってるよ!くそにんげんをせいさいするためだよ!」 「やまからたべものがとれなくなったのはおまえらくそにんげんのせいなのぜ!」 「れいむたちがかわいいからってしっとするのはみぐるしいよ!ゆっくりしゃざいしてね!」 「山の恵みが足りなくなったのは、単にお前たちゆっくりの数が増えて自然の恵みが減っただけだろう。ぱちゅりーから教わらなかったのか?」 「ゆ?ぱちゅりーって…もしかしてあのゆっくりできないぱちゅりー?」 「あのゆっくりできないぱちゅりーならまりさたちがせいっさいしてやったのぜ!」 その発言を聞いた途端、男や末れいむを含めた全ての村人の纏う空気が変わった。 「…なんで殺したんだ?」 「あのぱちゅりーがゆっくりできなかったからだよ!」 「いつもいつもれいむたちのじゃまばかりして!」 「こどもをつくるのはゆっくりできなくなるとか、わけがわからないことをいってたし!」 「とかいはなこーでぃねーとにかってにくちだししたこともあったわ!」 「あんなくずしんでとうぜんだね!」 「だからこのまえげすぱちゅりーをせいさいしてやったのぜ!」 「あのぱちゅりーをみつけたときは、れいむたちにおそれをなしてそのばでぶるぶるふるえてたよ!ゆぷぷ!」 「まずはおうちからひきずりだして、おかざりをひきさいてやったのぜ!」 「もみあげもひきちぎってやったよ!そのあとぼーるにしてあそんであげたよ!」 「ぼーるあそびのさいちゅうにはんのうをかえさなくなったから、そのあとはおめめやまむまむをぷーすぷーすしてやったよ!」 「さいごはぜんいんでぼこぼこにたいあたりをしてつぶしてやったのぜ!なかみがとびちるさまをみたときはすっきりーしたのぜ!」 「けどはんのうがにぶくていまいちだったのぜ!さいごまでもろくてつかえないどうぐだったのぜ!」 『げらげらげらげらげらげらげらげらげらげら!』 ぱちゅりーをどのようにしてなぶり殺しにしたか、それを嬉々として語るゆっくりたち。 男の方は表情を硬くして拳を硬く握り締め、末れいむは顔を伏せて体を震わせている。 ――グチャ 『……ゆ?』 不意にゆっくり出来ない音が聞こえて、群れのゆっくりたちは音がした方向を見てみる。 そこには怒りの表情でクワを振り下ろした村人と、クワに潰された一匹のれいむの姿があった。 『ゆ…ゆぎゃああああああああああああああああ!?」 「いきなりなにするのおおおおおおおおおおおおお!?」 「よくもれいむをころしたなああああああああああああ!」 「ゆっくりし…」 「死ぬのはお前らだ糞共がぁ!」 そう叫んだ村人の声を皮切りに、激昂した村人たちは群れのゆっくりたちを足や鍬を使って潰し始める。 次々と潰されていく同族を見て、鈍感な群れのゆっくりたちはようやく命の危険を感じた。 「ご、ごめんなざいいいいいいい!」 「ごろざないでえええええええ!」 「やめるのぜ!まりさをころしたら…えぎゅ!?」 周りのゆっくりたちが殺される様子を、末れいむの一家は怯えながら見ていた。 一家は男の傍にいる末れいむに助けを求める。 「お、おいくず!はやくれいむたちをたすけろ!」 「なにぼーっとしてんだくずううううううううう!」 「はやくまりさたちをたすけるのぜえええええええ!」 「さっさとしろおおおおおおお!こののろま!くず!」 「れいむたちをたすけたらさっさとしねええええ!」 一家は末れいむに、自分たちを助けるよう必死で命令する。 末れいむはそんな一家を感情の篭らない目で見ていた。 「…れいむ、こいつらをどうするかはお前が決めていい」 「いいの?おにいさん」 「俺たちにとってこのゆっくり共はぱちゅりーの仇だが、こいつらは…ぱちゅりーの忘れ形見であるお前の家族でもあるからな。 れいむがこいつらを殺さないでと言うのなら、見逃してやってもいい」 「「「「「「「ゆ!?」」」」」」」 男の言葉を耳にした一家は、自分たちの運命が末れいむの一言によって決まることを理解した。 途端に一家は態度を一変させ、媚びへつらうような口調で末れいむに命乞いをする。 「れ、れいむのかわいいおちびちゃん!れいむたちをたすけてね!」 「まりさたちをたすけるのぜ!おちびちゃんはまりさたちのかぞくなのぜ!」 「いままでいじめてごめんね!おねえちゃんはれいむのことだいk…すきだよ!」 「くz…れいむ!おねがいだからまりさをたすけるのぜ!」 「れいむもまりさたちといっしょにいたいのぜ!?そうなのぜ!?」 「そうにきまってるのぜ!れいむはまりさたちのことがすきなのぜ!」 「だってれいむたちはあんこがつながったかぞくなんだからね!」 一家の言葉を受けて末れいむは一度顔を伏せると、再び顔を上げる。 その顔には先ほどまであった悲しみの表情は一切なくなり、怒りと憎しみと恨みに染まっていた。 「…おまえたちなんてかぞくじゃないよ」 「「「「「「「……ゆ?」」」」」」」 「れいむのかぞくは…おまえたちがころしたぱちゅりーおかあさんだけだよ。 ぱちゅりーおかあさんをころしたおまえらは…………ゆっくりしないでしねえええええ!」 「ゆっがああああああなにいってるのぜええええええええ!?」 「このおんしらずうううううううううううう!」 「このくずがああああああ!したてにでてればちょうしにのりやがってええええええええ!」 「決まりだな」 男は鍬を抱えると、一家に向けて振り下ろす構えを占める。 「ああああああああああああああああああいやだいやだああああああ!しにたくないいいいいい!」 「いやだあああああああああ!まりささまはこんなところでしんでいいゆっくりじゃないのぜええええええ!」 「だずげでえええええええええ!くずどいっでごべんなざいいいいいいいい!」 「く…れいぶざま!まりざだぢをだずげでぐだざいいいいいいいい!おねがいでずうううううううう!」 「くずれいぶうううはやぐだずげろおおおおおおおお!」 男は鍬を振り下ろす。 一家が断末魔を上げる様子を淡々とした表情で眺める末れいむ。 しかし、餡子を分けた家族と別れる悲しさによるものか、仇を取れた嬉しさによるものか、それとも両方なのか… 末れいむの目からは一筋の涙が流れ落ちた。 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございます。 いろいろと大変(リアル事情とかSS書きとしての腕前とか集中力とかその他もろもろ)でしたが、何とか書き上げることが出来ました。 よろしければご意見ご感想をお願いします。 「10作品未満の作者4スレ目」 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1299127853/ ではでは。 過去の作品 anko0857 願いの果てに anko3412 親の心子知らず anko3430 子ありすと都会派な人形 anko3445 ある群れの越冬方法 anko3464 とある一家のお話
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『おやすみ、お兄さん』 5KB 愛で 愛情 二次創作 飼いゆ 希少種 現代 独自設定 旧作キャラが少し出るよ ゆうかはとってもお昼寝が好きなゆっくりだった。 おやすみ、お兄さん 嘘あき 年中無休、咲き乱れるひまわりを眺めながら春の日差しに眠気を誘われる。 ゆうかは満足げに口に含んだ水を肥料をまき終えた花壇に撒き散らした。 「ふぅ。これでおしごとおーしまい」 背を曲げてお辞儀をするひまわりの花に二コリと笑みを浮かべて、ゆうかは駆けていった。 「ゆっくりもどるわ!」 窓際に設置して置いた、ゆうかの背丈と同じぐらいの木箱を引っ張り出す。 木箱を踏み台にして、リビングに戻った。 「ふーきふーき」 ゆうかのあんよの下には足ふき用のマットが設置しており、あんよをくねらせてこびり付いた汚れを落とす。 その作業が完了したら、そのあんよでお気に入りの座布団の上に座りお昼寝をする。 「ゆっくりおひるねするわ!」 そんな姿を眺めていたお兄さんはゆうかの頭を優しく撫でた。 ゆうかは夢を見ている。 ぷかぷかと浮かぶすぃーの上にゆうかはある友人と一緒に居た。 「ゆっくりしていってね! ゆうか!!」 その友人は名前は知らないが、天使の羽をもった優しいゆっくりで、いつもゆうかの夢の中に現れては共に遊ぶ仲間である。 「ゆっくりしていってね!」 すぃーは青い空の果てまで浮かび続け、やがて雲の上の国にたどり着く。 そこにはゆっくりてんこといくがたくさん待ち構えていた。 「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 ゆっくりいくはゆっくりとした踊りを見せ、てんこはゆうかと友人に桃を分け与えてくれた。 「ゆっくりありがとう!」 ゆうかはお礼といわんばかりに口の中に常備していたひまわりの種を分け与える。 「これはね、どこにでもさくひまわりのたねさんよ!」 試しにその種をゆうかは雲の中に埋め込み、桃の果汁を水代わりにかけて見せた。 すると、すくすくとひまわりの種は育ち、太陽へと顔を向ける立派なひまわりが生え聳えました。 「ゆゆ! すごいね!! ゆうかはふらわーますたーさんなんだね!!」 長てんこはゆうかの魔法をみてとっても喜びました。 にへらにへらとよだれを垂れ流しながら夢を見るゆうかに、お兄さんは何時ものように放っておいた。 「今日はどんな夢を見てるんだろう」 ゆうかが何時もしてくれる夢の話はとても魅力的な世界で、子どもの頃の夢を感じさせるものだった。 それゆえに、今日一日の楽しみの一つとしてゆうかの話を聞くのは日課となったのだ。 「昨日は確か……ゆっくりの海賊たちにまぎれて宝探しをする話だったかな」 炊飯ジャーが仕事を終えブザーが鳴り響く。 「お、そろそろご飯だ」 母の呼び出す声が聞こえてくる。 「ゆうか、ご飯だよ」 「……むにゃむにゃ。もうごはんなのね………」 ゆうかは目を覚まして、座布団から飛び降りた。 ある日、ゆうかがお昼寝をしていると、友人が一つの提案してきたのだ。 「ゆうか、わたしといっしょにゆめのなかでくらさない?」 りぐるからもらった甘い蜜の出る花を啜るゆうかには良く分からない提案だった。 「ゆめのなかで? どうやって?」 友人はゆうかの頬にすり寄り、目を閉じて答えた。 「それはね、ずっとねむることなの」 体中に電気が走ったかのようにゆうかは凍りついた。 「それって……」 いやいやと友人は首を振ってゆうかの考えを否定する。 「べつにしぬことじゃないわ。ただ、せかいをかえるだけなの」 「せかいを?」 「ゆめのせかいはほんとうのせかい。あなたがみてじっかんしていることすべてがほんものなの」 「ゆっくりせつめいしてね」 「いきていることとゆめをみることにちがいはあるの?」 「それは、ねているかそうじゃないかのちがいじゃ」 「それなら、ねむることがじょうしきなら、おきることがじょうしきでもいいよね?」 友人の言葉が理解できないゆうかは、だんだんと友人が怖くなり始めた。 「あなたのいってることがよくわからないわ!!」 居心地悪そうにしているりぐるにゆうかは感謝の印であるひまわりの種を渡して、目を覚ました。 それ以来、ゆうかはお昼寝をやめてしまった。 お兄さんは不思議がってゆうかに何故だと聞いてみるが、ゆうかは答えようとはしなかった。 ただ、本当に睡眠をとるときだけ、ゆうかは夢をみて友人と変わりのない夢の世界を歩んでいく。 友人も必要以上のことは言わなかったし、いつも通りだった。 だが、現実の世界でゆうかは重大な危機と対面する。 お兄さんが車に轢かれてしまったのだ。 「おにーさん……」 管だらけの体に早変わりしてしまったお兄さんは全く目を覚まそうとはしなかった。 「奥さん、あなたの息子さんは昏睡状態で、何時目が覚めるかわかりません」 その言葉だけ、ゆうかは理解できた。 ただ、理解したところで何もできないのも分かっていた。 「ですが、適度に話しかければ目が覚めるかもしれません」 ゆうかはお兄さんの病室でお昼寝をし続けた。 食事もとらず、ただお兄さんのそばでお昼寝をした。 何度も何度も夢を見て、口に含んであるひまわりの種を消費して、ゆうかは話の種を手に入れて、お兄さんに話しかける。 だが、全く起きる予兆はなく、お兄さんは寝たきりのままだった。 「ゆうか、ゆめのなかでくらそう。いまのゆうかをみているとつらくてみてられないよ」 友人は一生懸命なゆうかを案じるが、ゆうかは否定する。 「ゆうかのいまはげんじつにあるの。だから、ゆめはゆめでなければいけないのよ」 「とってもごういんだね。それなら、ゆめをみせなくしてあげようか」 友人の冷たい言葉にゆうかははっきりと答えた。 「それなら、あなたとはさよならしなくちゃならないわね」 予想外の答えに友人は冷や汗をかいた。 「どういうこと……」 「わたしのゆめはわたしのもの。あなたのものじゃないってことよ」 「うそだ! わたしとゆうかのゆめよ!」 「いいえ、わたしのせかいよ」 友人はこれ以上、何を言っても無駄だと分かり、泣く泣く夢の世界から徐々に消え始めた。 「さようなら、げんげつ……」 ゆうかは最後の一粒であるひまわりの種とげんげつと呼ばれた友人の一粒の涙を交換した。 結局、お兄さんが生き返ることはなく、お医者さんは脳死と判定し、殺してしまった。 ゆうかの世界は全てゆうかの物になってしまった。 「おやすみ、おにいさん」
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『ちょっとした意地悪』 5KB いじめ いたづら 希少種 現代 虐待人間 スレに投下した即興を加筆修正したものです 「ちょっとした意地悪」 ある日、隣で飼われているゆうかが、戯れに始めてみた我が家の家庭菜園を隣家の窓から羨ましそうに眺めていた 遠くから我が子を見つめるようなその視線にちょっとした悪戯心がわき、その日からの一切の世話をやめてみた 当初は私のしていることが理解できず、ゆうかはただ窓の際でおろおろとしているだけであったが 一週間もしない内に段々と萎れ始めた葉を見て私の意図を理解したのか、あの気丈そうな顔からは想像も付かないような泣き顔で私に何かを訴えかけてきた 「なんでおみずさんをあげないの!?」「やめて!ころさないで!」 ゆうかの嘆願を無下に切り捨て、弱ってゆく植物をただ眺め続ける毎日が暫くの間続いた 元々気まぐれに始めたものなのだ。どうなろうが私の知ったことではない いつの間にかゆうかを観察することが日課となっていたが、ゆうかは毎日飽きもせずに泣いていた 彼女にとってこの家庭菜園は子供同然だったのだろう。死に掛けている命に対してだけではなく、自分が何もできないことを認識しているが故に彼女は泣いていたのだ そんじょそこらの野良ゆっくりとは違う、精神の高等に思わず感心させられた しかし、やめる気などさらさら無い 一度始めたことを途中でやめるほど性に合わないことは無いからである 次の日も、家庭菜園に水が遣られることは無かった 雨の少ないこの地方において、水が与えられないということはその植物に対して死を意味する 除草剤などの細工をするまでも無く、我が家の家庭菜園は見事にその栄華を失っていった 残った葉が最後の一枚になった時、ゆうかは危険を顧みず植物を救おうとガラスに体当たりを始めた 当然割れるはずが無い。ああいう希少種を飼う家の窓ガラスは大抵強化ガラスに取り替えられているからだ ゆうかもそれを理解しているのだろう。それでもゆうかは体当たりをやめなかった 所謂意地というものなのだろうか。微笑ましい光景を横目に入れながら、私は最後の一枚を指でつまみ、人生最高の笑顔で引き千切った 一瞬、ゆうかの時が止まり、そしてまた動き出した 私に子を殺された経験など無いし、子を持ったことも恋人と呼べるような相手を見つけたことも無かったが、 あの時のゆうかの表情はまさに子を殺された時のそれであった さすがにちょっとやりすぎたかもしれない。などとは冗談でも思っていない むしろ私にとってそれは大成功であった そして、二ヶ月も経たない内に我が家の家庭菜園は終わりを迎えた。実にあっけない終わり方である 家庭菜園に水をやらない、たったこれだけのことでゆうかは目に見えて窶れ、幽鬼のようになってしまった 最早ゴミそのものと化した家庭菜園を片付ける時だけは爛々と目を輝かせ、恨みがましく私を睨んできたが、 ガラス越しでは折角の迫力もどこか現実離れしているように見えてしまい、それほど興味を持たれることなく、その時のゆうかの顔は記憶から消えてしまった 今考えると忘れてしまったことが非常に悔やまれる。写真にでも撮っておけばよかったのだろうか そういえば、これまでゆうかは一度も飼い主にこのことを告げていなかった 理由など考えるまでも無い、ただの強がりなのだろう 私とて、普段強気に出ている人物に自分の弱いところなど見せたくは無い 気が強いゆうかなら尚更だ 恐らく泣き腫らした目を飼い主にばれないように必死になって隠していたのだろう。なかなか微笑ましい光景である しかし、ただの野菜でここまで悔しがってくれるなど思ってもいなかった 次は花を育ててみようか。その花を野良ゆっくりに荒らさせるのも面白い きっと必死になって窓の向こうの仇敵に体当たりをするに違いない。それが届くかどうかは火を見るよりも明らかであるが そんなことを考えながら、私はゆうかに意地の悪い笑みを投げかけた 「オチ?そんなもの書かなくてもみんな同じものだから書かなくてもいいでしょ?!そんなよりあまあまちょうだいね!」 「森一番の狩の名手と言ったら、まりさしかいない」と群れのゆっくりは口を揃えてそう言う まりさにとって、ひらひらと不規則に空を舞う蝶を、帽子を利用して捕らえるなど朝飯前 帽子に一日の狩の成果を限界まで詰め込んでも、狩場から自宅までノンストップで走破できる自信もある 時には、そこらに落ちているような石礫でれみりゃの目を潰し、長年群れを脅かし続けてきた存在に年貢の納め時を思い知らせてやったこともあった 群れの誰もがまりさを賞賛し、褒め称え、その強さに惹かれた 群れ中のれいむがまりさに何度も求婚した。あるありすは、愛情の余りまりさをレイプしようとし、逆に返り討ちにされた あるまりちゃはまりさの勇猛さを見習おうとし、無謀にも蟷螂に勝負を挑み三枚に下ろされた 群れの中でまりさのことを知らないものは一匹としていなかった まりさにはそれが至福だった。今思えば、そこで満足しておけばよかったのかもしれない 時が経つに連れて、まりさは自分なら何でもできると己の実力を過信するようになった それは愚かな盲信であり、また、破滅への限りない近道でもあった だが、まりさがそれに気づくことなど有り得なかった それほどまでにまりさは群れから祭り上げられ、英雄視されていたのだ 群れの長の地位を満場一致で獲得したまりさの目には、激しく燃える野望の炎が揺らめいていた もちろん未知の世界への恐れが無かったわけではない。前長から外界の話を聞いた時はこんな世界が本当に存在するのかと耳を疑ったものだ しかし、母親の茎から生れ落ち今になるまで一度も森の外に出なかったまりさにとって、外界に満ちている全ての要素は、まりさを遠征に駆り立てる魅力的な材料でしかなかった 前長から聞いた、伝説のゆっくりプレイスに繋がる灰色の道 そこを絶対的な力で支配する、人間という獰猛な動物 囚われた仲間、森に住む全てのゆっくりを半永久的に養うことのできる資源 そしてなによりもまりさを突き動かしたもの、それはまりさ自身の征服欲だった 見知らぬ土地で大成功を納める自分と、それに付き従う無限の軍勢、その下に斃れている哀れな人間たち そんなビジョンがまりさの頭の中にはあった 自分は絶対に成功する。理由など無くても確信できる まりさが少数の手下を引き連れ、生まれ育った森を離れたのはその次の朝だった 輝かしい出発に相応しく、空には雲一つ無い 出掛けには幸運の象徴である四葉のクローバーも見つけた まりさは確信を強めた。自分は必ず、絶対に成功すると 森を抜けて外界へたどり着いて数日 まりさが念に念を入れて選出した優秀な部下たちは、強風に晒された紙吹雪のごとく一匹、一匹と散っていった まりさほどではないが群れの中で俊足を誇っていたちぇんはあんよを石で傷つけてしまい、途中で脱落 森までの護衛にらんが付いていくこととなり、結果的に二匹分の戦力が削がれた 剣の勝負ならまりさと互角に張り合える実力を持ったみょんは、灰色の地面を走る灰色の箱に轢き潰され、遺骸を持ち帰ることすら不可能な状態になってしまった 参謀であるぱちゅりーなどは森を出る前に過労でダウンしてしまった。まるで使い物にならない やはり頼れるのは自分だけだ。今まで脱落していった者にないものが自分にはある そう自分を励まし、まりさは一匹、「町」と呼ばれる人間の本拠地へ向けて木々に囲まれた灰色の道をひた走った。その先にある栄光を信じて
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『たくさん召し上がれ』 1KB 小ネタ 現代 うんしー 汚物注意 『たくさん召し上がれ』 D.O 通勤途中、駅の男子便所に入ったところ、 私が向かいあった小便器から、 幼い少女が甘えてくるような、いかにも場違いな声が聞こえてきた。 「ゆっゆ~ん!おにーしゃん、いっぱいごーくごーくさせちぇにぇ!」 『は?』 ……見ると、私の目の前の小便器、その排水溝にすっぽりと、 赤ゆっくりであろう小さなれいむがはまり込んでいた。 違和感がなさすぎて、トイレボール(あの消臭剤のボールみたいなの)かと思った。 『…何やってんだよ』 「ゆんっ!ここにいたら、おにーしゃんがおれんじじゅーすさんをくれりゅってきいちゃよ!」 『誰だよ、んなこと言った奴』 「ぱちゅりーだよ!」 『そうか……』 なんか納得した私は、母鳥から餌を求めるツバメのヒナのように、 笑顔で口を大きく上に開けた赤れいむの顔面に向けて、 体内に溜まっていたジュースっぽい色の液体を注いでやることにした。 チョロロロ・・・ 「ゆ~ん、ご~きゅご~きゅゴボッ!?ぴっ!?じょっぱいっ!やべじぇにぇ!やべ…!?」 ジョボボボボボボ・・・ 「びゅぉ、ぼ、……」 ジョボジョボジョボジョボ…ジョボボッ…… ジャーーー 詰まったらどうしようかと思ったが、 流れてくれてよかったよかった。 なお、私が用を足している最中に、 大便用個室の方からは、成体ゆっくりの声もしていた。 あの赤れいむの母親とかだろうか。 「ちょこれーとさんちょーだいね!いっぱいでいいよ!」 とか言ってたけど、個室から出てきたオッサンは実にいい表情をしていたし、 勢いの良い排泄音がしている間、そのゆっくりのくぐもった悲鳴が聞こえ続けていたように思うし、 チョコレート的な何かを、お腹一杯ごちそうしてもらえたのだろうか。 最後に望みが叶ったのだから、親子共々、そう悪いゆん生でもなかったのだろうと思いたい。