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・4作目です。 ・虐待ナシです。HENTAIもなしです。 ・虐待しない話を書こうとしたらこうなりました。 ・SSってむずかしいですね・・ 「こらー!ばたばた走らない!もー!」 「だってぇー!れいむがー!」 「れいむのりぼんさんはわたさないよ!ぷんぷん!」 この家ではれいむを飼っていた。 小学生になる娘がれいむとなにか争っている。 どうやられいむのりぼんがどうしてもほしいようだ。 「このりぼんさんほしいー!おおきくて赤くてかわいいのー!」 「はいはい。今度飼買ってあげるから。今度ね?」 「やだー!!!!今ほしいのー!!!」 「これはれいむのだいじなおりぼんさんなんだよ!?りかいできる?」 「困ったわねー・・・れいむちゃん?今日だけ貸してあげてくれない?」 「・・ゆ!?」 れいむはおりぼんさんをはく奪された。 その代わり少女がいつもつけているぼんぼんで髪を結ばれる。 悲しくてなきじゃくるれいむ。 「本当にごめんね。ほら、イチゴショートあげるから・・・」 「ゆん!いちごしょーとさんはゆっくりできるよぉぉ!!!」 れいむはりぼんのことも忘れ、ケーキにがぶりついた。 「汚さないよーにね!れいむちゃんの大事な物なんだからねー!わかった?」 「わーい!ゆっくり理解したよー!!!!」 少女はゆっくりの言葉を真似して、家を飛び出していった。 「もぉ・・・。困った子ねぇ・・・」母はため息がでている。 少女は近くの公園にダッシュでいった。 この公園は野良ゆが沢山いることでも有名な公園。 敷地がとても広く、とても自然にあふれる公園としても有名だ。 野の花があふれ、四季折々の景色をみせるゆっくりぷれいす。 ゆっくりにとってのごはんさんが豊富な為、人間にたかることはほとんどなかった。 そのため野良ゆも人間に迷惑をかけることはほとんどなく、良好な関係が築かれていた。 「えーっと、バッチは取ってと。ゆっくりはどこかなー、、、あった!」 公園の隅、木の影に目立たないように段ボールでつくられたおうち。 無論ゆっくりのおうちだ。 少女は自分の髪にリボンを付け、おもむろに近くの芝生に寝転がり段ボールのなかに顔をつっこんだ。 「ゆ・・・?ゆっくりしていってね!ありすはありすよ!」 『ありすだー♪ゆっくりしいってね!れいむはれいむだよー!』 ここはありすのおうちらしい。 子ゆ達を見るに、まりさとありすの番のようだった。 家でいつもれいむと遊んでいる少女はれいむの口調をまねして挨拶をした。 『ありすー?なにしてるのー?』 「ありすはとかいはなこーでぃねーとをしているのよ!まりさがかりからかえってくるまえに すてきにかざるのよ!とかいはでしょ!」 『そーなんだー。ぷっwなんか変なの~!ごみが沢山あるー!』 「ゆがーん!!!ご、ごみ!!!?と、とかいはよ!そんなこともわからないれいむはいなかものねっ!!!」 『そっか・・・。ごめんね。あ、お詫びに・・・そうだ!これあげるよー!』 少女は自分のポーチに入っていたきれいなビー玉をとりだした。 「ゆん!それはとてもとかいはね!いいこーでぃねーとができそうだわ!」 『そーでしょー!これね、きれいなんだー!沢山あるからありすに一つあげるね!』 「・・・さっきはいなかものなんていってごめんなさいね。てっかいっ!するわ。とてもとかいはなれいむね!」 『ありがとー!じゃーねー!』 そう言い残して少女はありすのおうちを後にした。 ベンチに座り、家から持参した水筒のジュースを飲む。 すると、みるからにボロボロのまりさが少女の前に現れた。 「ゆふん!ゆっくりしないでごはんさんをわたすのぜ!」 この公園ではめずらしいゲスっぽいまりさだ。 帽子はところどころ切り込みが入っていてボロボロ。帽子に付いた白いリボンも色あせている。 「れいむのくせに、いいものもってそうなのぜ!まりささまはきがみじかいのぜ?」 『ふーん。まりさお腹すいてるんだーご飯も自分でとれないぐずなの?』 「ゆ!・・な!なにをいっているのぜ!まりささまはかりのめいじんなのぜ!」 『へー。でも今はごはんないんでしょー?だからあたしにちょうだいって言ってるんでしょー?』 「なまいきなれいむなのぜ・・!こうなったらじつりょっくこうしっ!なのぜぇぇ!!!!」 バスケットボールほどのまりさが少女の足に体当たりを開始した。 ぽよんぽよんと決して痛くない音がする。 『やめてよー!くすぐったいよぉーw』 「ゆ!や、やせがまんはやめるのぜ!!!!そろそろいたくてなきそうなのぜ!?」 『馬鹿じゃないの?餡子脳なの?あははw』 「・・・ゆはぁ、ゆはぁ・・・なかなかしぶといのぜ・・・」 『もういい?終わった?』 「しょうぶなのぜ!!!!どっちがおいしいごはんさんをたくさんあつめるかしょうぶなのぜぇぇ!」 『おもしろそー!いいよー!』 「ないてもしらないのぜ?まりささまがかったらごはんさんをぜんぶおいていくのぜ!」 『おっけぃ!じゃーねー、時間はあの噴水が次に出るまでねー!』 「ないてもしらないのぜー!!!!」 ダッシュでまりさは茂みに消えていった。 この公園の噴水は一時間ごとに高く吹きあがる。 さっき噴水は高く水が噴射していたので、勝負の時間は一時間弱というところか。 『えーっとーどうしよーかなー・・・あ!』 少女は公園を散策していた。そして思い出したかのように広場へ駆けて行った。 そこには比較的背の低いさくらんぼの木があった。 管理されているものではないので、虫がはいっているかもしれない。 いつも少女は食べたりしないのだが、ゆっくり相手ではどうでもいいと思い、さくらんぼをもぎ取ってゆく。 少女はスカートの前面部の下の方を指でつまみ、袋状にし、それを入れ物にして沢山さくらんぼをとった。 『こんなもんでいっかー。もどってよーっと!』 まりさには勝算がある。 相手はれいむだ。ごはんさんをいれるおぼうしもなければ狩りにも慣れてないだろう。 あのれいむがごーくごーくしていたものは人間さんからもらったものに違いない。 それが自分のものになることを考えると、狩りの最中も涎が出っぱなしだった。 まりさは全力で狩りをしていた。 帽子いっぱいにごはんさんをつめこみ、ベンチ前にもどろうとすると、 ちょうど噴水の水が高く上がっていた。 「まりささまのあっしょうっ!!なのぜぇ!!!」 「『せーの!!!』」 合図と同時に少女とまりさは収穫を土の上に広げた。 『さくらんぼだよー!いいでしょーって・・・・うわぁぁぁぁぁ!!!!!!』 「ゆふん!れいむにはかりができないゆっくりしたむしさんたちなのぜぇ!!!」 まりさの帽子からでてくる虫。虫。虫。 ぐったりしている毛虫や、死にかけのバッタ。羽が欠けた蝶、死んだゴキブリ・・・ 少女は気持ち悪くて悲鳴を上げている。 「ゆっふっふ!まりさのかりはすごいのぜ・・・・!ゆ!!!そっちもすごいのぜ!! こんなにゆっくりできるさくらんぼさんがたくさん・・・す、すごいのぜ!!!!」 まりさは純粋にびっくりしていた。 まさか子育て(笑)しかできないれいむが、ここまで狩りの名人とは・・・・ 「ゆぐっ・・・!こんかいはまりささまのまけなのぜ・・・むしさんをもっていくといいのぜ・・・」 ジュースをカツアゲしようとしたところはゲスだが、勝負は正々堂々と負けをみとめたまりさ。 少女に虫たちを差し出す。 『こんなのいらないよぉぉぉー!!!!ぎもぢわるぃぃぃ!!!!』 泣きそうな少女の声をきき、さっきのありすが顔をだした。 「あら?さっきのれいむ?どうしたのかしら?」 「ゆん!ありす!すごいのぜ!このれいむはかりのめいじんなのぜ!」 「・・!と、とかいはだわ!!!!!でも、ありすのまりさもとってもとかいはよ!」 このまりさは、さっきのありすと番のようだった。 「でもおかしいのぜ・・・。ゆっくりしたむしさんなのにれいむいらないというのぜ・・・」 「ゆん!れいむはこのむしさんのじゅーしーなおいしさをしらないのね!?」 そういうとありすはゴキブリを口に運んだ。 「むーしゃむーしゃ!はごたえがあってとてもゆっくりしているわ!」 『うわぁぁぁぁぁぁ!!!!ゴキブリたべたー!!!!やだぁぁぁぁぁ!!!!うわぁぁぁん!!!!』 お友達になったとおもっていたありすがゴキブリを食べた。ショックで泣きだす少女。 なぜ泣いているのかわからないありすとまりさ。おろおろするばかりだった。 すると突然、木陰から見ていたぱちゅりーが顔を出す。 「むきゅ!!!すごいれいむだわ!!!よかったら、みんなにかりのしかたをおしえてもらえないかしら? いままでみたことないれいむだけど・・・このゆっくりぷれいすにすまないかしら?」 「ぱちゅりー!それはとかいはなていあんっ!!だわ!」 「まりささまもみとめるれいむなのぜ・・」 するとそこらかしこから、ゆっくりたちが出てくる。そして口ぐちに 「やっとあたらしいおさのたんじょっう!だね!」 「おーさ!おーさ!」 「さーお!ちーんぽ!きーっこう!しろーとどーてぃっ!!」 何やら盛り上がっているゆっくりたち。 まだ泣きやまない少女。 『うわぁぁーん!もうやだー!おうちかえるーーー!!!!』 少女は全力で帰宅したのだった。 大量のさくらんぼがベンチの前にのこされた。 「むきゅ・・・あのれいむはなんだったのかしら・・・こんなゆっくりしたごはんさんをおいていくなんて」 「きっとごはんさんをとってくれたかみさまだったのぜ・・」 「ありすもきれいなたからものをもらったわ・・・」 なぜか少女は神様になっていた。 「あ、おかえりー!れいむちゃんにりぼんかえしなさいよー。って、なんかあったの?」 まだ涙目の少女を心配する母親。 「ぇっぐっ。もう、、りぼんいらない・・・ぐす・・・」 「何があったの?・・まぁ怪我してないからいいわ。れいむちゃーん!」 「ゆっくりさんじょうっ!だよ!おりぼんさん!ゆっくりかえってきてね!!!!」 その後少女は、れいむのりぼんをほしがることは無くなった。 そして、本物のれいむが公園に散歩に連れてってもらうと、野良ゆに囲まれ歓声をうけたのはまた別のお話。 そして、さくらんぼを集めているときの少女のスカートを 望遠レンズ付きカメラで激写したHENTAIお兄さんがひっそりとタイーホされていたのはご愛敬。 アトガキ 前回のSSを読んでくれた皆様ありがとうございました。 私が人間を交えてゆっくりを書くと、ダメ人間になってしまうようです。 ほんわかした話をかきたいと努力した結果がこれだよ!ぅぐぅ。 日ハム勝てない・・・呪いかなにかでしょうか・・・。 過去に書いたもの anko1396 しゃっきんさん anko1427 しゃっきんさん その後。 anko1439 むしゃくしゃさん
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『バHENTAIンデー』 15KB 愛で ギャグ 愛情 変態 日常模様 飼いゆ れいぱー ぺにまむ バレンネタ 神よ感謝します、この私にこんなHENTAIをくれたことを・・・ リア充?何言ってんのゆっくりとすっきりーしてるやつがリア充なわけない バHENTAIンデー 麦茶あき 二月十四日、この日何があるか世界中の人間は知っているはずだ。 そうバレンタインデーである。 女性が好きな異性にチョコをあげるというキリストだったかギリシャだったかよく調べていないがそんな風習。 最近では同性にチョコをあげたり逆チョコなんてものも流行りだしている。 特にこの日には公衆便所に行くことをお勧めしない。 え?何でかって?それ以上聞いてはいけない。 それはともかくかの有名なHENTAIお姉さんは相変わらずというか、 また性懲りもなくあるものを作っていた。 今日はバレンタインデー、チョコを使ってクイーンありすと特殊なすっきりーをしようと考えて・・・・ 「ふんふふーん♪ふんふふ~ん♪」 台所に立ちスーパーで買ってきた明○チョコを溶かしているお姉さん。 わざわざ板チョコを買いそれを溶かして自分なりのチョコを作ろうとしている。 また作っている最中にどんなチョコにするか、どんないやらしいチョコにしようかも考えていた。 ネットで恋人に送るバレンタインデーチョコ(18禁)を検索しながらどうしようか悩む。 「う~ん、全身チョコ塗はチョコが足りないし・・・いまいちインパクトがね~」 何を言っているこの女は。 「おかーさーん、さっきから甘い匂いするけど何作ってるのー?」 「んほーありすは知っているわ、これはチョコの匂いよ」 「え?チョコなんて作ってるの?」 飼いゆっくりの・・・ではなく子供のありすたちが甘い匂いに誘われて台所へやってきた。 やはりゆっくりなのか甘い匂いの誘惑が気になるようだ。 「あーダメダメ、今日は台所侵入禁止ー!!!」 「「「えー??!」」」 お姉さんに引き留められ台所を追い出される三匹のありすたち。 仕方なく自分たちの部屋で何かすることにした。 「それにしてもなにを作っているのかしら?」 「バレンなんとかってやつじゃない?ほら、人間さんたちの間で流行っている」 「んほ??!なにそれ詳しく聞きたいわ!!!」 三女ありすが教えろというので上海を使ってネット検索した。 上海人形は無線ワイヤレスLANがついており離れていてもインターネットに繋げれるのだ。 高性能すぎないかって?科学は常に進歩しているのです。 「えーと、女性が好きな男性にチョコを贈るイベントですって」 「まぁそーゆーことだったの」 「んほー!じゃあお母さんはお父さんにチョコをあげる準備をしているのねー!!!」 「・・・・・なんか嫌な予感しかしない」 大抵こういうイベントになんらかのHENTAI行為を仕掛けてくるお姉さん、 以前はフルコース、その後は飼い主の目の前で飼いゆっくりとのすっきりーをした常識に囚われないHENTAI。 今回も何かしでかすんじゃないかと次女ありすは頭を・・中身を悩ませていた。 「そぉー・・・・・いぅー・・・・ことー・・・・」 「「「お、お父さん??!」」」 いつの間にか後ろ父のクイーンありすがいた。 何故かやつれており涙目になっている。 「台所に入らせてすっきりーさせてくれないから嫌われたんじゃないかとてっきり・・・」 「って・・・台所にまですっきりーしないでよ!!!汚れるじゃない!!」 「何言っているのおちびちゃん!おちびちゃんが生まれる前は裸エプロンでお姉さんとすっきりーしまくっていたのよ!」 「自慢にならねぇ!!!?」 あのHENTAI、台所でのすっきりーはすでに経験済みだったわけだ。 しかもやりまくっていたらしくあの台所は何度カスタードで汚れたわけだろう。 あまり想像したくない次女ありすだったが長女、三女は脳内再生が完了していた。 「「んひょひょひょひょひょ・・・・・」」 「き、気持ち悪・・・」 想像してにやける姿が気持ち悪く次女ありすが引いてしまった。 「って妄想してにやけている場合じゃないわ、ようするにお父さんのためのチョコを作っているわけだから入らせたくないのね」 「作っているところ見られたらどんなチョコかわかっちゃうからね」 「でも暇だわ・・・甘い匂いに誘惑されて発情しそう・・・・んほっ!」 「何言っているのよおちびちゃんたち、ありすたちはやるべきことがあるでしょ」 「「「???」」」 「いい?チョコ作って甘い匂いが出てるってことはこの家に野良ゆっくりが引き寄せられてくるはずよ」 「「「!!!」」」 そう、チョコを作って甘い匂いが出ている今、野良ゆっくりがこの家にお家宣言をしてくる可能性がある。 というより絶対にある、ゆっくりは甘い匂いには敏感な生ものだからだ。 これは去年のバレンタインデーにも起こったことで千葉に住む俊子さん(仮名)が彼氏のためにチョコを作っている最中に野良ゆっくりが家に侵入して来たのだ。 甘い匂いに惹かれて食い地の張った野良ゆっくりたちは俊子さんを襲い包丁で怪我をする事件があった。 その後携帯でやってきた彼氏に野良ゆっくりを駆除してもらったが怪我が治るのに一か月はかかったという。 世間にも有名な事件でチョコを作る女性は今日に限り家を密閉にしているのだ。 お姉さんはその対策を全く取っていない。 「そうね、野良ゆっくりを撃退しないとチョコを作るどころじゃなくなるわ」 「ゆ?違うわよ」 「え?」 「向こうからやってくるんだから御持て成ししてあげないと!!!」 「「んほー!!!」」 「そっちかい!!!??」 さすがれいぱー、転んでもただでは起きない。 玄関外で陣を張るありすたち。 野良ゆっくりを撃退・・・ではなく御持て成しするため準備をしていた。 しかし二月とはいえまだ肌寒い季節、飼いゆっくり育ちの彼女たちは寒さに震えていた。 「さ、さ、さ、さむいぃぃぃ・・・・・」 「んほぉぉ・・・・まださむいわぁぁ・・・・・」 「あ~ストーブ持ってきてよかった」 次女ありすは寒さに耐えるため部屋からコンパクトストーブを持ってきていた。 コンセントを伸ばして廊下から繋いでいる。 他の姉妹が寒さに震える中次女ありすだけ暖かく待っていた。 「いもうとずるいわよ!!?ありすもあたためさせて!!!」 「ゆ?すっきりーでどうせ暖まるくせに何言ってるのかしら」 『マッタクダゼ』 「さ、さむさでぺにぺにさんがぁ~・・・・んほ?」 三女ありすが向こうから来る野良ゆっくりたちを捉えた。 どうやらお姉さんが作るチョコの匂いに引き寄せられてやってきたようだ。 「すぐちかくなんだぜ!もうすぐあまあまがたべれるおうちにつくんだぜ!!」 「むっきゅっきゅ、さすがまりさね!ものすごいきゅうかくだわ!」 「わかるよー!チョコレートさんのにおいがするんだよー!」 「イカくせえ!」 「はやくたべさせてね!さいしょはれいむなんだよ!!」 噂をすればなんとやら、もう来た。 まだ二月だというのに平気で外を歩いているところを見ると純野良ゆっくりみたいだ。 越冬の概念のない野良ゆっくりたちは寒さに耐える皮を持ち冬でも町を歩ける体になっている。 耐性には限度があるものの、この気温なら平気で外を歩いても大丈夫だった。 この野良ゆっくりたちは寒さでひもじい思いをしてきたので人間の家に上がりこみお家宣言し人間を奴隷にしようと考えていた。 理由は自分たちが寒い思いをして生き抜いてきたからゆっくりさせろという自分勝手な理由。 早速乗っ取ろうと手ごろな家を探していたところに甘々の匂いがする場所を発見したのでそこに決めたのだ。 そこはあのHENTAIお姉さんの家だった。 「ゆっへっへぇ~もしかしたらくそにんげんがまりさたちにあまあまをじゅんびしているかもだぜぇ~」 「むっきゅっきゅ、りっぱなどれいね。ぱちゅがこきつかってやろうかしら」 「「んほぉぉぉぉぉ・・・・・」」 「ゆ?いまなにかいったちぇん?」 「にゃー?ちぇんはなにもいってないよー?」 家の敷地内に入ろうとして前を見たらぺにぺにをギンギンに突き立てて勃起している長女ありすと三女ありすと上海ありす状態になっている次女ありすが戦闘態勢で待っていた。 「「「「(゜Д゜)・・・・・・・・・・・・・」」」」 「「んほおおおおおおおぉぉぉ!!!!まってたわよおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」」 「「「「ゆぎゃあああああああああああ!!!れいぱーだああああああああああああああああああああああああああああ!!!!??」」」」 「ありすは違うわよ」 長女ありすと三女ありすが先頭にいたまりさを捕らえてまむまむとあにゃるにぺにぺにを挿入した。 速い、まずか二秒である。 「ゆぎゃああああああ!!!やめてええぇぇすっきりしたくないいいぃぃぃ!!!」 「な~にいってるのかしらぁぁ!!?じぶんだってぺにぺにをたててほかのゆっくりをおかしているんでしょおおお!!?」 「んほおおおお!!!ありすたちとおなじよおおおおおおおおおおおおお!!!」 「ちがうううううううううううううううう!!!!」 腰を突き立てパンパンと攻めたてる長女と三女。 同時挿入の気持ち良さ・・・ではなく気持ち悪さから自分から腰を動かしてしまうまりさ、 長女ありすは激しく攻めようと舌をまりさの口に入れて中を舐めまわした。 三女も負けじとまりさの金髪にしゃぶり付き興奮しながら腰を打った。 急に締め付けが良くなりそのまますっきりーしてしまう長女と三女、 注ぎ込まれる精子餡がまりさの中身を犯し生殖反応で茎が伸び始めた。 しかし中枢餡に精子餡がぶつかったらしく一発で黒ずんでしまうまりさであった。 「・・・・・・・・」 前回のスーパーマーケット事件といい、可哀そうなまりさ種だ。 「むきゅうううう!!!まりざあああああ・・・えれえれ・・」 「れ、れいむはゆっくりにげるよそろ~り、そろ~り・・・・・・」 「にがさないわよ~」 上からやってきた触手ぺにぺにで捕まったれいむ。 ジタバタともがくが普通サイズのゆっくりがドスサイズのクイーンに勝てるわけもなく、 クイーンの触手はれいむの口、まむまむ、あにゃるにぶち込まれてれいむを犯していく。 「ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!」 ヌチュッ・・・ブチュウッ・・・!!! ぺにぺにのサイズはお姉さんとすっきりーするときに使うサイズではないもののれいむには少し大きすぎる。 口を喉まで攻められて嘔吐感がするが吐き出せない。 まむまむもあにゃるも蹂躙され中身を掻き回される。 全身を丸ごと犯されたれいむはクイーンの精子餡を中に大量に出され精子餡を口、まむまむ、あにゃる、目から噴出しながら黒ずんで死んだ。 すっきりーした影響か、黒ずんで死にながらビクンッビクンッと触手ぺにぺにに犯されながら痙攣していた。 「にゃががが・・・・・ちぇ、ちぇんはあんなしにかたはいやなんだよー!!!ゆっくりしないでにげるよー!!!」 誰だってそんな死に方したくありません(笑) ちぇんは足の速さを利用し仲間を置いて自分だけ逃げようとする。 ちなみにぱちゅりーは自滅した。 だがちぇんの足の速さを持ってしてもれいぱー化した三女ありすからは逃げ切れなかった。 れいぱー化すれば速度はふらん並みになるので逃げれるわけがない。 「んほおぉぉ・・・・あにゃるさんを見せてとうそうなんてさそっているのかしら~??」 「ち、ちがうよおおお!!ちぇんはらんしゃまとすっきりーするんだよおおおお!!!おまえなんかとすっきりーしたくないよぉぉ!!!」 「つんでれねぇぇ・・・・らんよりきもちよくしてあげるわぁぁ・・・・」 「にゃが?!ぬぐぅぅ!!!?」 ぺにぺにをまむまむに挿入するかと思いきや体勢を変えてちぇんの口の中にぺにぺにを入れた三女ありす。 そしてあにゃるを舌で舐め回しちぇんを気持ち良くする。 「んちゅう・・・・はむぅ・・・・える・・・んはぁ・・・・」 「ん゛ー!!!ん゛ー!!!??」 口の中ではぺにぺにを動かしてちぇんの舌の上をなぞる様に犯す三女ありす、 そのままぺにぺにを噛み切られそうも気がするが三女のぺにぺにが太すぎて噛み切ることなんてできなかった。 あにゃる、まむまむを舐め回して満足したところに口に思いっきり射精する三女。 ぺにぺにを抜いてやり精子餡を吐き出すちぇん。 「ゆげぇぇ・・・・げほっげほっ!!!」 「前戯は終わりよぉぉ・・・」 「??!」 あれは前戯だったようだ、恐るべし。 極太のぺにぺにをちぇんのあにゃるに挿入し尻尾を咥える。 「にゃがああ!!!?しっぽはだめえええええええ!!!」 「ここがいいのね??!いいわぁ、気持ち良くしてあげる!!!」 「にゃああああああああああああ!!!??」 あにゃるにぺにぺにを突き立てたまま尻尾をしゃぶり付く。 口の中で舌で舐め回しちぇんの背筋をゾワゾワさせながらレ○プする。 そんな中次女ありすとみょんは決闘をしていた。 「そうにゅう・・・・ごうかんしゅうだんぷれい・・・」 「ごめんなさいね、あなたのお仲間を私の姉妹と父が・・・」 「ひにん・・・ぜっちょう、しきゅうぜめ!!!」 「ええ、いいわよ・・・来なさい!!!」 みょんが木の枝で次女ありすを、次女ありすは上海の槍でみょんを突き刺そうと交差した。 わずか一閃、それだけで勝負が決まった。 「・・・ますたー・・・べー・・しょん・・」ガクッ パァンッ!!!! 倒れた瞬間体が破裂したみょん。 高速、いや音速の一撃がみょんの体ごと貫いたのだ。 違う出会いがあれば戦友として戦っていたかもしれなかったのにと次女ありすは心に噛みしめた。 そんな中ちぇんをすっきりーさせ絶頂する三女ありす。 折角のかっこいい場面が台無しである。 一先ず粗方野良ゆっくりたちを撃退したありすたち。 もう夕方になりそろそろ暗くなる。 町の捕食種たちが動く時間でもう野良ゆっくりはこないだろう。 各自家へ戻った。 「おっまたせぇー!!!チョコできたわよぉー!!!」 「「「ゆおぉぉーーーー!!!」」」 「・・・?どこに???」 テーブルの上にも台所にもチョコは置いてなかった。 できたというならそこらへんにあるはずだが・・・ 「どこ見てんのよ、ここよ、ここ」 「え?」 つんつんと腹に指を指すお姉さん。 何故腹に・・・・と考えた瞬間次女ありすは考えたくもなかった答えが浮かび上がった。 まさか・・・まさか・・・・・ 「なかに・・・・?!!」 「うん♪私の(スキマ送り)に♪」 「やりやがったなああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!??」 「ふっ、この発想はなかったわ・・・発想した自分が恐ろしくて体が震えているもの・・・」 「できねー!!そんな考えぜったいできねー!!!」 「ちょっとまってお姉さん、どうやってたべるのよ」 「そりゃあ舐めるしかないでしょ」 「ちょ・・・」 「さぁ、来て・・・私の(スキマ送り)をおかしなさーい!!!」 「「「んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!奥まで舐め回してやるわああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!」 「さいあくだああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 例のごとく省略中・・・・・・・・ 「はぁ・・・・はぁ・・・・・・・やだぁ・・癖になりそう」 「なるなー!!!!」 犯り終えて床に仰向けになるHENTAI共。 今回はいつもより激しくHENTAIだった。 体に付いた精子餡を舐めとりながら起き上るお姉さん。 次女ありすと上海は精子餡の掃除だ。 「全く、またこんなによごして・・・」 「いやーごめん、ごめーん♪」 長女ありすと三女ありすはもうノックダウンだ。 野良ゆっくりとすっきりーしてしまったせいかいつもより多くはできなかったが、 クイーンありすは舐めプレイに興奮していつもの倍出しまくった。 さすがはクイーン、伊達じゃない。 「んほぉ・・・・・疲れた」 「もう・・・・だめ・・・・」 「ゆふぅー、おちびちゃんもまだまだね」 顔をテカらせるクイーンありす。 この様子だとまだいけるようだ、恐るべし。 「最悪だ、バレンタインデーなんて撲滅してやる・・・」 「まぁまぁ、みんなー!ハイこれ」 「「「「?」」」」 お姉さんは冷蔵庫からタッパーを取出し中から手作りチョコを出した。 チョコ一つ一つに名前が書かれており顔文字まで書いてあった。 「こっちが本家、頑張って作ったからねー」 「・・・・最初からこっち渡せばよかったじゃない」 「いいじゃないあんたたちだって私にチョコあげたし」 「別の意味でな!!!」 「んふ♪私からの愛情よ」 チョコには『大好き』という文字が書いてある。 次女ありすはそれを見て少し笑いチョコを食べ始めた。 「「「「むーしゃ、むーしゃ・・・しあわせー♪」」」」 「おいしーわーいつでも食べたいくらい」 「えー?やだぁー私が疲れるじゃないー」 「作るのに?」 「そうよ?板チョコ溶かして、ココアパウダーとか私の(スキマ送り)汁とか入れて形造って固めなきゃいけないの」 「・・・・は?」 今聞いてはならぬ言葉を耳にしたような・・・ 汁って・・・・まさか・・・ 「隠し味に入れておきましたー♪」 「ゆぎゃびばあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!??」 ペコちゃん顔をしててへっと笑うお姉さんと中身を吐き出す次女ありす。 その後次女ありすは生死を彷徨うことにならなかったり・・・・・ バレンタインデー撲滅委員会。 会員№004444444 次女ありす登録しました。 あとがき バレンタインデー滅びればいいのに 注意 みょんの卑猥語が理解できたあなたはかなりのHENTAIです、用心しましょう 今まで書いたやつ 加工所本部 前編・後編 れいむその後 まりさその後 14番れいむのその後 れみぃと野良豆ゆっくり 前編・後編 あいつらの違い れいむはいい飼いゆっくりさ 折れた「ぐんぐにる」 ドスれいむ 追われるれいむ ゆなら HENTAIお姉さんとクイーンありす 消費期限切れのお菓子を与えてみた HENTAIたちの無双劇 HENTAIフルコース 小舟のお家 ぷでぃんの真実 トンボを捕まえたかっただけなのに・・・ 昼寝中 ありす、家出する 前編・中編・後編 あいつらの成体 もち米らん 飼いゆっくりすっきりー死事件
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『いちゆんまえのまりさ』 61KB 虐待 観察 差別・格差 現代 失礼します。 anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1 anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2 anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3 anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4 anko3456 れいむのゆん生 anko3458 まけいぬとゆっくり anko3461 ゆっくりに生まれて anko3484 ゆっくりブリーダー anko3489 休日とゆっくり anko3652 ドスについて anko3715 ゆっくりに餌を anko3729 はじめてのぎゃくたい anko3730 はじめてのしいく anko3741 ゆっくりショップのバイト anko3794 まりさとの勝負 anko3843 野球部のゆっくり anko3855 ゆっくりと会話してみた anko3932 ゆっくり観察日記 anko3933 ゆっくりと子供 anko3953 しんぐるまざーの朝は早い anko4016 虐められるためのゆっくり anko4094 普通の人とゆっくり anko4153 愛された果てに anko4153 愛された果てに anko4170 むっきゅーさん anko4290 肉体的暴力とゆっくり anko4219 教育番組とゆっくり 「」ゆっくりの台詞 『』人間の台詞でお願いします 「おにいさんっ! いいっかげんにしてね!」 おにいさん、そう呼ばれた青年の飼いゆっくりである成体のまりさ、銀バッジ2980円也が顔を歪ませ叫んでいた。 うんざりとした気分を隠さず残さず溜息にして表した青年は、読みかけの雑誌を伏せて、まりさの方を見た。 まりさがいるのは居間の隅に作られた1m四方のドッグサークル、木で作られた軽い柵だが、ゆっくりの出入りを封じるくらい簡単なレベルだた。 この家では基本的にその中でまりさを飼育している、理由はこのまりさはあまり出来が良くなくていつになっても部屋を荒らすからだ。 青年とまりさが住んでいるのは、彼の親戚筋から借りた一人で暮らすには広い一軒家、その分ボロいけれど、十分な作りになっている。 部屋も余っているしと、青年はまりさを買った当初は放し飼いにしていたのだけれども。 まりさは青年が少し出かけた内に、ゴミ箱を荒らし、物を壊し、そこらにしーしーうんうんをしてしまう。 何度も注意しても直らない、否治さないまりさに業を煮やした彼は物置にあったドッグサークルに放り込むことに決めた。 決めたは良いけど、狭い場所が気に入らないらしいまりさは一々文句を言ってくる。 今日もその類だろうと、青年は立ち上がりサークルの前まで行く。 サークルの中でまりさはふくれっつらをしていた、しかも餌皿をひっくり返して、水もまけてくれやがった。 ……餌も水もタダじゃねーんだぞ。 そんなことを思いながら、また溜息を一つと幸福を交換して青年は口を開く。 『今日はなんだよ、散歩なら明日な明日』 適当にそのものに告げ、水だけでも汲み直そうと腰を屈めて手を伸ばす――が。 「ばかにしないでね!」 叫び一つで、まりさは伸ばされた手に体当たりをしてきた。 実に弱い一撃ではあったけど、その行為自体は人を怒らせるのに十分なものだった。 当たり前であろう、ゆっくり程度に攻撃をされて平静を装えるような奴は聖人君子か、某愛護団体のものくらいだ。 『っ、なにすんだよ!! てめぇ、飯抜きにすっぞ!』 聖人君子でも、愛護団体所属でもない彼は、当然の怒りに任せて、まりさの頭を掴んで押さえつけた。 成体ゆえにある程度雑に扱っても平気だけれども、当たり前に苦しいらしく「ゅぎぐべぇっ!?」と、気色悪い声を漏らしていた。 その情けない姿に少しだけ溜飲を下して、青年はまた溜息一つ。 『んで、今日は何なんだよ? マジでくだらねぇことだったら飯抜きだからな』 饅頭如きに怒るのも馬鹿馬鹿しいと思ったのか、手を離して質問する。 まりさは苦しかったのか、二三度咳き込んでから口を開いた。 「ここからだしてね!」 やっぱりそれか、と部屋にまた溜息が落ちる。。 青年は呆れ顔をしながら、まりさを見下ろす。 『やだよ』 「どうじで!?!」 拒否の言葉に、まりさは納得いかないと言わんばかりに歯を剥き出しにして食いついてくる。 『どうしても何も、お前馬鹿で何度も言っても部屋荒らすだろ、だからだよ』 はい、話はお仕舞い、と青年は肩を竦めながら踵を返す。 彼はまりさとこの手の話は何度もしたし、これからもするだろうから無駄に時間を使いたくないのかも知れない。 雑誌を読み直そうと、元居た場所へ戻ろうとした背中にまりさの声が押し付けられた。 「いいからここからだしてね! まりさはもういちゆんまえなんだよ!」 『はいはい、一人前ねぇ、そんなん自分で生活できるようになってから言おうな?』 具体的には部屋を荒らさないレベル。 青年はそう考え、どうせ無理だと諦めながら雑誌に手を伸ばし、座りなおそうとしたが……。 「ゆぐぐぅ! まりさはおにーさんの おせわになんか ならなくても もう じゅうぶんくらしていけるよ! いちゆんまえなんだよ!」 『…………』 まりさの根拠不明の叫びを聞いて、伸ばした手をそっと戻して振り返った。 『……お前、今なんつったよ?』 視線を受けて、まりさは一瞬ビクっと震えたけれど、直ぐにまた強がる顔に戻り。 「なんかいもいわせないでね! まりさは もう いちゆんまえだよ!」 ……そこまでは良い、饅頭の自意識過剰は今に始まった訳じゃない、と彼は頷く。 「おにーさんの おせわになんかならなくても じゅうぶんくらしていけるよ」 『そうか、わかった』 まりさの言葉に笑顔で頷く青年。 最近何度か、どうしてコイツを飼い始めたんだったか疑問に思い出していた彼は、とびきりの笑顔を見せた。 そして、その手でまりさの頭をむんずと掴むと……。 「ゆ? おにいさんやっとわかったんだね! これからは まりさのいうこ、ゆびゅべっ!?」 『んじゃ、お前今日から庭住みな、しっかり生きろよ?』 庭へ続く戸を開けると、手入れをしていないので草が生え放題のそこへ放り投げた。 まりさは顔面から着地して、情けない声と共にうんうんを漏らして震えている。 青年は胸がスーッとするような爽快感に、久しぶりにまりさといて笑顔になれたな、最初からこうすれば良かったな、と頷いてた。 そして青年は、震えるまりさの背中というかあにゃるに声を放り投げた。 『んじゃ、頑張れよ、いちゆんまえのまりさちゃん』 「ゆ?」 彼がピシャリと戸を閉めると同時に、震えていたまりさは身体を起こした。 そして直ぐに周囲をキョロキョロ見渡して自分が外に、普段おにーさんに頼んで頼んでたまの出して貰う庭にいると気づいた。 「ゆっ! まったくおにーさんは ようやくまりさが いちゆんまえってみとめたんだね!」 まりさは、青年が自分のお願いを聞いてくれて外に出してくれたものと判断したらしく偉そうに踏ん反りかえると直ぐに庭で遊びだした。 普段なら青年が監督しているからあんまり好き勝手出来ないからと、まりさは庭を跳ね回り、草や花を無造作に引きちぎったりして遊んだ。 それから数十分、一人遊びでは限界が来るし、今日は餌も食べずに遊んでいるから空腹を覚えたまりさはしっかり閉められた戸の前に踏ん反り返る。 「おにーさん! まりさはおなかがへったよ! はやくふーきふーきしておうちにいれてね! すぐでいいよ!」 声を高らかかに青年を呼ぶが、まりさの声に応えるものは無く。 戸は閉じられたまま、むなしくそこにあるだけだった。 「ゆゆー!! おにーさん! まりさがよんでるんだよ! はやくでてきてね! なにやってるの!!」 反応が無いことに腹を立てて叫んでみても戸は開かれることはない。 何故なら青年は居間から離れた位置にある自室で、音楽を聞きながら漫画を読むという優雅な時間を過ごしているから。 まりさの声は聞こえないし、例え聞こえていても生意気饅頭の言うことを聞くつもりは一切ないのだ。 そんなことを知らないまりさは、戸の前でぴょんぴょん跳ねながら何度も何度も青年を呼んでいたけれど、やがて疲れたのかその場でつぶれ饅頭みたいに身体を休ませ出した。 「ゆひー、ゆへー……おにーさん、なにしてるのぉ? かわいいまりさが、よんでるのにぃ……」 疲労と空腹、そして着てくれない寂しさに涙を滲ませながら、ゆっくりと暮れだしている空を不安そうに眺めていた。 それから2時間ほどして、泣きつかれたまりさが眠っていると暗くなって久しい居間に電気がついた。 漫画に夢中になっていた青年が、そろそろ夕飯にしようとこちらに出てきたのだ。 光と音でそれを察知したまりさは飛び起きると、頬を膨らませながら待った。 「…………(おにーさんがきたら まりさおこるよ! まりさをこんなにまたせるなんてゆるされないんだから!)」 待った。 「…………(それからあまあまだよ! シュークリームさんをようっきゅうするよ! そのけんりがまりさにはあるんだから!)」 待った。 「…………(それからそれから、きょうからおにーさんがあのさくのなかでくらすんだよ! おうちはまりさのだよ!)」 待った。 だけど、戸は開けられることはかった。 まりさの予想予定妄想では、直ぐに戸が開けられて青年は怒るまりさに平謝り。 それを寛大に許してあげて、あまあまとおうちを手に入れるのだったけれど、青年はまったくこちらに来ようともしない。 『夕飯どーすっかなぁ……おっ、コロッケ買ったの忘れてた、これでいっか』 青年はまりさをかなり本気で忘れて、冷蔵庫から発見したお惣菜を見て笑顔になっていた。 彼にとってこの夕飯時は、一々自分の食べてるものを寄越せと叫ぶまりさと一緒で心休まらない時間だった。 それが今日はないので、とてもゆっくりとした表情のまま夕飯の準備をしていた。 『あー、肉が賞味期限やばいし冷しゃぶにでもするかな……軽く日本酒混ぜて、タレはごま油に醤油に、おっ。トマト缶あるからオリーブオイルのタレもつくっちまおっかな♪』 普段ならば騒ぐまりさにイライラしながらなので、適当な料理になってしまうけれど今日はとても穏やかな気持ちで、ちょっと凝った料理をやってみようかな、とまで思えるほどにリラックスしている青年。 そして、戸の外で今か今かと青年来るのを待つ魔理沙、しかしその今は一向にやってこないでいた。 青年が料理を終えて、それらを座卓に運び終えたときに、彼は初めてまりさを意識した。 『あ……ちっ』 意識した感情は『嫌なもん見た』と言ったものだった。 そこに来てまりさは自分が無視されて―――正確には忘れられて―――いることに気づいてプルプルと怒りに身体を震わせ。 「おにぃいさぁぁぁああああぁぁあん!! なにじでんだぁああああ!! まりさがまってるでしょおおおぉおおおおお!?!?!」 爆発するように叫び出した。 疲れも空腹も忘れて、その場でボスンボスンと地団太を踏みながら大声で喚く。 涙を流して、怒りをそのままに。 だけど、青年は―――。 『トマト冷しゃぶやばいな……正直はまりそう』 「きげぇぇえええええええ!!!! どぼじでぇ! どぼじでむじずるのぉおおおぉおおおお!?!?」 ―――優雅に楽しく夕飯に熱中しているようだった。 「まりざはおながずいですんだよぉおおおぉお!! ざっざどごはんんんんん!!!!!」 『………………』 居間にいて、直ぐそこにいるまりさの声は聞こえてはいるけれど、青年は明らかに無視をしていた。 しかも、無視をしながら必死に自分に声をかけてくるまりさを見ながら優越感に似た喜びを感じているようで、普段よりリラックス出来ている。 それから20分ほど、夕飯を終えてまったりと食後のお茶を飲みながらテレビを見ていた青年は、ふと思い出したように立ち上がり。 今では飛び跳ねる元気もなくなり「ゆぐゆぐ」泣いているまりさの目の前にガラス戸を開けた。 「ゆっぐゆっぐ、ばりざ、ごはんん、ゆ!?」 『さっきから五月蝿いんだけど』 片手の小指で耳を穿りながら、明らかに面倒臭そうな顔をした青年はまりさを見下ろしながらそう言い放った。 「ゆゆ!? なんなのぞのだいどはぁぁぁぁあああああ!!!」 『あー、うるせーうるせー』 青年のあまりにダルそうな態度にまりさは目を見開き、大声で吠え出した。 まりさにしたらここは申し訳なさそうに頭を下げて、そしてあまあまを献上するのが筋だと思っていた。 そしたら「まりさもおにじゃないからね! おにーさんとくべつにゆるしてあげるよ!」と言ってあげるつもりでもあった。 その予定が根底から一気にポーンしてしまったので、まりさの薄い理性もポーンしてしまった。 「ゆっが! ゆが! ゆっぐぉおおお!!」 『何語だよ、それ』 怒りで言葉も喋れなくなったまりさは、その場で身を捩りだしていた。 それを見ながら青年は『うわぁ、きめぇ』と小さく呟く。 「どーゆーつもりなのおにいさん!!! まりさをこんなにまたせておいて! じぶんだけゆっくりしてたくせにぃい!!」 ポーンと飛んでいった理性を拾ってきたのか、まりさは再び人語を喋るようになって怒りのままに青年を怒鳴ったが。 『どーゆーつもりも何も、言ったろお前今日からそこで暮らせって』 「はぁぁぁああぁあああ!?!? なにいっでるの?!」 青年はつまらなそうに言って、まりさはそれに跳ねながら大声をあげた。 その声にイライラするのか、彼は溜息をついてから、戸に手をかけて。 『お前はもう一人前なんだろ? 言ってたろ、俺の世話にならなくても生きていけるって。じゃな、頑張って生きろよ、特別に庭にはいさせてやるから』 「おにぃいさあぁああん!? なにいっで、ちょっどぉおおお!?! なんでしめちゃうのぉおおお!?!?」 言うことを言うと、まりさの反応なんてまたずに青年はさっさと戸を閉めて、そのまま居間の電気を消すと部屋に戻っていた。 そして、優雅にだらだら過ごして寝てしまった。 その間もまりさは騒いで跳ねて、声をあげてそして泣きつかれて寝た。 ……。 …………。 『うーっし、行ってきまーす』 「おにいざん!! ばりざのごはんがまだでしょ!? あとおふろいれてね! あとあまあまちょーだいね!!!」 青年が起きて、朝食を取っている間は騒ぎ倒して、そして無視をされてたので今度は玄関先で待ち伏せをしていたまりさ。 昨日言われたこと、そしてその前に自分が言ったことを忘れてるのか、忘れたことにしているのか、まりさは偉そうに汚れた身体をふんぞり返らせた。 が、しかし―――。 『お前は一人前なんだろ? 一人で頑張れよー、んじゃな』 「ちょ、ま、まっでえっぇええぇええ!!! ごはああああああん!!」 彼はまりさに視線を向けることすらしないで、さっさと家を出ていた。 この家は少し街中から離れた場所にあるので急がなくてはならにのだった。 その分、家賃は安いし、まりさがいくら騒いでも苦情もない。 そんな訳で、爽やかな朝日の中青年はゆっくりでは追いつけない速さでどんどん歩いていってしまう。 「まっで! おにーざん! まっで! ばりざおごってないよ?! いまならゆるずからぁぁああぁああ!!!」 まりさは的を外れて自分に跳ね返ってきそうな勘違いな言葉を吐きながら青年を追うが、直ぐに追いつけなくなってしまう。 人間との運動能力の差は激しいを取り越して無理だし、昨日から何も食べていないまりさは身体に力が入らなくなっていた。 「おなか、すいたよぉ……なんで、まりざがこんなめにぃっ!」 涙を流しながら、ずりずりと這いずってまりさは家の庭に戻ってきた。 「ごはん、おにーさん、どうしてぇ……」 そして、庭に戻ってうろうろ歩き回って、どこかに自分の食事が用意されていないかを探し回るけれど。 青年は何一つ用意することは無かった。 このまりさは生粋の飼いゆっくり、両親も飼いゆっくり、そして自身もある会社の大量生産とは言え飼いゆっくりの教育をされてペットショップを経て青年に買われた。 その間に、野良の生活は見たことはあったけど自分とは関係ない世界の話と思っていたので、こんな状況になると食べるものなど存在しない。 家の庭は草や虫が結構いるので、野良ゆっくりなら数家族楽に養える狩場ではあるのだけれど、まりさには自分の周りにあるものが食べ物と認識出来ていなかった。 なので、その場で蹲って「おにーさんがかえってきたら こんどはまりさおこるよ!」等と空腹を誤魔化すしかなかった。 「ゆぅう、まりさのごはんさん、まりさのごはんさぁん…………」 昨日食べずに撒き散らした餌が今になって恋しくなったまりさは、涙を流しながらうなり続ける。 それでも、まりさの空腹が満たされることなんて絶対なくて、ただただ疲れが溜まるだけだった。 それから数時間、まりさはただただ青年が帰ってくるのを待っていた。 日が暮れた頃に青年が帰ってくると、まりさはずりずりと底部を這わせながら寄っていき。 「……おにーさん、いったいなにをしてたの? まりさおなかがすっごくすいてるんだよ? それなのに ごはんもよういしないで………………いっだいなにじでだんだぁぁぁあぁああぁっぁあぁぁぁあぁああぁああああ!!!!!!!!!」 今まで怒りを溜め込んでいたのか、それを一気に爆発させて口を限界上に開いて叫んだ。 『はぁ?』 完全にまりさを忘れに忘れていた青年は、帰って来て今日は夕飯何にしようかな? とか上がっていたテンションが一気に下降したのを感じた。 足元でぎゃーぎゃー騒ぐ汚い饅頭を見ながら、青年は溜息をつくと、話を聞いてあげるつもりはあるのか家には入らずにその場に立ち止まった。 『んで、何だよ? 要があんならさっさとな』 「な、な、なんなのそのたいどはぁっぁああぁあああああああ!!?!?」 『あー、うるせーうるせー』 叫ぶまりさに、流す青年。 彼は片耳を塞ぎながら、つまらなそうに眼を細める。 『んで何だよ、俺腹減ってんだからさっさと言えよ』 「おながへっでるのはばりざのぼうだよぉおおぉおおおおぉおおおおおおおおお!!!!!」 『話進まねーな、んで何だよ一人前のまりさちゃんよ』 「なにって!! おなかがへってるっていってるんだよ!? まりさが おなかへってるっていったら おにーさんはごはんださなきゃダメでしょぉおおおおお!!!」 まりさの必死に叫びに、青年は溜息一つで。 『なんで?』 「はぁぁぁああああぁぁあっぁあああああああぁぁぁっぁああああぁぁぁぁっぁあああぁあ?!!?!?!?!?!?!?!?!?!」 『うるっせー』 若干まりさの反応が楽しくなってきたのか、彼はニヤニヤ笑いながら耳を塞いでいた。 そして、見下すのに疲れたのかしゃがみこむと、ニヤニヤ笑いながら。 『んで、何で俺が餌を用意しなきゃなんねーんだよ?』 「なんでって、なんでって! おにーさんがまりさにごはん くれるのはじょーしきでしょぉおおぉおお?!!?」 所詮安物銀バッジ、この程度の知能である。 人間が餌をくれるのは当然と思ってはいたけれど、奴隷とまでは見下さないそのレベルだった。 そして、青年もその常識に則ってまりさに餌を与えていたけれど、それも昨日までの話だ。 しゃがんだ青年は、楽しそうに笑って口を開いた。 『常識じゃねーよ、つーか、お前は昨日言ってたろ? 自分はもう一人前だから俺の世話にならないってよ。なのになんで俺に餌貰うんだよ? ばっかじゃねーの?』 「ゆが!? そ、それとごはんさんとはべつでしょぉおおぉおお?!」 投げかけられた正論に言葉をつまらせたまりさは、表面に砂糖水の汗をかきながらゆっくり特有の〔れいっがい〕理論を発動させる。 〔れいっがい〕理論とはゆっくりが正論言われたときに、自分の行いだけは全て正しいから例外だと主張したりするゆっくりなら誰もが備えている餡子理論である。 そんな理論を叫んで青年が納得するハズもなく。 『例外の訳ねーじゃん、お前は俺の世話にならなくても大丈夫って言ったんだぞ? あ、もしかして嘘? やっぱりまりさは俺の手助けなくちゃ生きられないゆっくりなんだぁ、へー、もう大人なのに、ぷっ、赤ゆっくりかっての』 「な、なにほざいてるのぉおお!? まりさはいちゆんまえだよ! おにーさんなんかいなくてもだいじょーぶなんだよぉおおお!!!」 『はい言質取りましたー、んじゃ、ソロ生活頑張れよ?』 まりさの叫びを聞いて彼は立ち上がると、さっさと家の中に入っていってしまった。 その背中を見ながら、叫んだ状態のまま固まっていたまりさ。 再び動き出すのは2分後だった。 しかし、動き出しても、叫び倒しても青年は庭に出ることはなく、まりさ今日も庭で一夜を明かすことになった。 ……。 …………。 「おなが、へっだよ…………」 次の日の昼間、日差しを避けるように庇の下で潰れ饅頭になっているまりさ。 いくら成体で、しかも一昨日までは栄養たっぷりの餌を食べていたとしても二日の絶食と、野宿のゆっくり出来なさに限界が来ていた。 まりさは何で青年が自分に〔いじわる〕するのが未だに解らなかった。 それが自分の根拠の無い見栄や自信により引き起こされている物と気付かないまま、青年が今日は〔かいっしん〕してくれると信じていた。 しかし、そんな訳もなく青年は自分の食事を済ませると、まりさを室内で飼っていたときなんかよりずっとゆっくりした表情で家を出て行った。 その背中を昨日より元気なく追いかけたが、青年はまた。 『まりさは一人前なんだよな? 俺の世話なんかいらないんだよな?』と聞いてきて。 それに反射的に「そうだよ! まりさはなんでもできる いちゆんまえなんだよ!」と答えていた。 それが原因だと未だに気付かないまりさ。 それもそうなのだ、まりさにとってご飯は人間が出してくれるもの、水も巣も全て人間が提供するのが当たり前。 極端な話、人間にとっての呼吸の認識なのだ。 して当たり前、して貰って当たり前、否して貰っているという感覚すらない。 だから、自分を〔いちゆんまえ〕と称してもそれらは自分のすることの範疇に入っていないのだ。 故にまりさは自分が〔いちゆんまえ〕という発言は撤回しないし、今の状況を〔いじわる〕くらいにしか思えないのだ。 このまま食事をしなければ早ければ後2日くらいで死に至ると言うのに。 そして極力動かないまま夕方になり青年が帰ってくるのを玄関先で待っていたまりさ。 『あー、今日は何食うかなぁ……ん? 何してんだ? 邪魔』 「まっでね、おにーさんごはんちょーだいね、まりさ、もうおなかペコペコなんだよ……」 やつれたまりさの言葉を聞いての反応は。 『ふーん』 と、それだけ。 叫ぶ気力もないらしいまりさは、悔しそうに歯を食いしばって彼を見上げると。 「おにーさん、まりさがなにかしたならあやまるよ、だからごはん、ちょーだいね」 まりさにしたら〔なにもわるいことしてないのに〕仕方なしに謝る状況。 その悔しさがしっかり顔に出ているので、青年にはその心境が丸見えなのはご愛嬌。 それが解っているから青年はニヤニヤしながら。 『いや、だからさぁ、まりさは一人前なんだろ?』 「そうだよ、まりさはいちゆんまえだよ? それがどうかしたの?」 『お前さ、一人前ってどんなことか知ってるの? 野良の成体がどんな風に暮らしてるかとか?』 まりさの話に付き合うように、話し出した。 「ゆぅ? いちゆんまえは、いちゆんまえ、だよ? それがどーしたの?」 しかし、悲しいかな安物餡子脳、青年の言葉を簡単には理解してくれない。 『良いかまりさ、一人前ってのはな? 自分で自分の住む家を見つけて、餌も自分でとって、何でも全部出来て一人前なんだよ』 「ゆ、ゆがーん!!」 知らされた一人前の事実にまりさは口を開けてショックを受けていた。 今までまりさが言っていた〔いちゆんまえ〕は特に何の根拠もない発言だったのだ、そこに普段自分では絶対しないことを追加されてしまうとは思いもしなかった。 『お前は、俺に家も餌も水もなんでも用意して貰ってようやっと生きてるマジで赤ちゃんレベルなんだよ、理解できる?』 「ゆ、ゆ、ゆぐぅ…………そ、そんなのうそだよ!! そんなわけないよ! おにーさんはうそつきだよ!」 『はぁ? なんでよ?』 しかし、ゆっくりは自分の常識を覆すことを大いに嫌う。 青年の言葉を嘘だと断言して睨みつける。 「そんなのまりさきいたことないよ!」 『そりゃお前は教えられなかっただけだっつの』 「ちがうよ! うそなんだよ! おにーさんがらくをしたいから まりさにうそいってるだけなんだよ! いじわるだけじゃなくて、うそまでつくなんてゆっくりできないよ!!!!」 『…………』 「おにーさんのうそつき! うそつき! うそつき! このゲス! いいからさっさとまりさにごはんよういしてね!!」 『…………はぁ』 事実を受け入れられない、元から受け入れる気が無いまりさは大声で青年を「うそつき」と罵りその場でゴロゴロと身体を転がしだした。 溜息をついた彼は頭を掻いて立ち上がると、呆れたような眼で、事実呆れきった眼でまりさを見下す。 「なんなの!? なんなのぉおおおおぉお?! わるいのはおにーさんでしょぉおおお!? そのめはなんなのぉおおおおおおおお!!!!」 『何か面倒になっちまったな、ちょっと待ってろ……』 「ゆ! やっとはんっせいしたんだね! さっさとごはんもってきてね!!」 青年はつまらなそうに手を振ると、家の中に入っていき、まりさを飼っていたサークル内に置かれたダンボールと買い置きしておいた餌を皿に盛って庭に戻ると、それらを放り投げた。 『ほれ』 「ゆわーいごはんさんだよぉおおお!! ゆわわーい!!」 まりさは涙を流しながら喜ぶと、餌皿の中に身体全体を突っ込むと久しぶりの食事を堪能していた。 それを見ながらゆっくりは、庭の隅にダンボールを設置すると尻を振りながら食事するまりさをつま先で軽く蹴り飛ばした。 「ゆびゅ!? なにずるの!! やべでね!」 『とりあえずよ、餌はお前にくれてやるよ』 「ゆ?」 彼は庭の隅に設置したダンボールを指差した。 『巣もくれてやるよ、だから、一人前なら一人前らしく一人で生きてみろ』 餌と巣を貰っている時点で一人前には程遠いのだけれど、優しい優しい青年はそう言い放った。 それを聞いたまりさはしばらくフリーズしてから。 「ゆ! わかったよ! おにーさんはやっとじぶんのやくめをおもいだしたんだね! ゆふふ、よかったよ」 そう解釈したらしく、さも理解ある父親みたいな顔をして笑った。 一瞬踏み潰しそうになったのを堪えた青年は、まりさに何度もしっかり約束をさせた。 庭で暮らす。 餌をやるが一日分をまとめて。 それ以外は全部自分でやれ。 と、簡単にこれだけだった。 まりさは「まりさはいちゆんまえなんだよ! これくらいかんたんだよ!」と自信満々と言うか。 新しい生活に希望を抱ききっているようだった。 そして最後に青年は『もし、どうしてもダメだと思ったら、自分が一人じゃ何も出来ない赤ちゃんゆっくり以下のゴミと、認めたら助けてやんよ』と告げて家に入っていった。 まりさはそれに「ぷくー」と膨れて威嚇をして怒りをあらわしていた。 青年が餌をくれて、巣も用意してくれたことでしっかり無敵気分になっているらしい。 そして、まりさは久しぶりにゆっくりとした食事を取ってダンボール内で睡眠をとった。 ……。 …………。 「ゆっ! ゆっくりおきるよ!」 本格的に庭で暮らしだしたまりさの生活は幸せだった。 ダンボールの小屋から外に出れば軒先に餌皿に山盛りになったご飯が置かれているのだ。 それを存分に食べたら、以前は狭いサークル内だったけれど今は広い庭を走り回って遊べる。 相変わらず半日くらいで飽きはくるけど、少ししたらそれも忘れてまた遊びだす、それを繰り返して一日は過ぎていった。 そして、夕方に青年が帰ってきたら。 「おにーさん! まりさよごれたよ! さっさときれいにしてね! きいてるの!? まりさよごれ、はなしをきげぇぇえぇええええ!!」 要求を叫んで無視される日々だった。 本当に口だけ一人前のまりさは、常に青年に頼ろうとしていた。 最初の頃は、一日分の餌を一気に食べつくしてしまい空腹のまま青年を怒鳴りつけたりもしたが、今は何とか学習出来たらしく分割して食べていた。 青年はもはや無視をして、惰性でまりさを飼っているレベルだったので、庭のことは完全に無視をしていた。 毎朝、餌皿に適当にゆっくりフードをぶち込むだけで後は知らない。 そんな関係での生活が続いたある日。 「ゆ、ゆっ! ゆふー、ちょっとつかれたから ごはんにするよ!」 いつもの様に昼間庭を動いていたまりさ。 家で暮らしていた頃より大分汚れているが、餌は十分食べているので元気なようだった。 そして、今もまた朝の食べ残しを食べようとしていたら、不意に背後から声をかけられた。 「ま、まりさ、ゆっくりしていって、ね?」 「ゆん?」 食事をしようとしていたまりさが振り向くと、そこには一匹のれいむがいた。 正確にはれいむと、その影に隠れるように子れいむ子まりさも、だ。 そのどれもが実にボロボロ。 母親なのだろうれいむは、リボンは端々が切れていて汚く汚れているし。 もみ上げをまとめるお飾りも片方なくなっていた、そしてしーしー穴の周りはぐちょぐちょ、あんよは真っ黒。 体中にゴミやらをつけていて、子ゆっくり二匹もそれよりかはまし、程度の一般的な野良だった。 この辺りは民家が少なく、かといってゆっくりが住めそうな場所もないので、まりさは青年に公園へ連れて行って貰う以外にゆっくりを見たことは無かった。 庭で暮らし出してからは、散歩にも連れて行って貰えていなかったのでまりさ的には久しぶりに見たゆっくりだった。 しかし、まりさの眼には警戒というか嫌悪の色が浮かんでいた。 「……なんのようなの? ここはまりさのゆっくりプレイスだよ!」 「ゆ、お、おこらないでね、まりさ……おちびちゃんがこわがってるよ」 「こ、こわいのじぇ……」「おきゃーしゃん、だいじょうぶ?」 庭への招かれざる侵入者を睨むまりさ、そして窺うように見てくれるれいむと、怯える子ゆっくり。 常に綺麗な飼いゆっくりばかり見ていたまりさにとって、目の前の三匹は汚物くらいにみえていたのだ。 そんなまりさも庭暮らしで自分で身体を綺麗にするやり方も知らないもで、綺麗な野良くらいにはなっていたりするのだけれど。 それでも、れいむ達よりかは遥かに綺麗だった。 このれいむは、まぁ、ありがちなくらいありがちなテンプレしんぐるまざーだった。 熱愛そして夫の死というどこでも見られることを経て、自分で狩をしていたけれど満足な餌をとれずにフラフラここに迷い込んだのだ。 そして、そこで美味しそうなものを食べるまりさを見つけて声をかけたのだった。 「まりさ、その、よかったられいむたちにごはんをわけてほしいよ、おちびちゃんが、おなかすかせてるから……」 れいむは控えめに、ゆっくりとしては下からお願いをした。 だけど、まりさは……。 「なにいってるの!? これはまりさのごはんだよ! おまえらみたいなきたないのにはひとつもあげないよ!!」 「ゆゆゆぅ!?」 断られる可能性は考えていたものの、あまりに強い否定にれいむは驚いているようだった。 このれいむが子ゆっくりに二匹を連れて狩をしているのは、子供を見せて同情を引く為でもった。 出汁にするために、虐待をしたりは決してしていないけれど、少しでも餌が手に入るならとの考えで。 可愛い子ゆっくりがお腹を空かせてる可哀相な姿を見せれば、きっと餌が手に入ると信じていた。 なのに、まりさに「きたない」と一蹴されて悔しさに涙が出てきていた。 それを子れいむ子まりさが「ぺーろぺーろ」と舐め取っていく。 「お、おねがいだよまりさぁ! おちびちゃんがおなかをすかせてるんだよぉおお!? そんなにあるんだからすこしぐらい れいむたちにくれても……」 自分の子供に同情される悲しさで、更に涙を流して、れいむは餌皿にある大量の―――野良なら三日は食いつなげる―――食料を見つめた。 「なにいってるの! これはまりさのだっていってるでしょ!」 「ゆう、しょんなにあるのに……」「じゅるいのじぇ」 子ゆっくりたちは、自分たちの身体より高く積まれたゆっくりフードを羨ましそうに眺めていた。 それでも、成体サイズのまりさが怖いのかれいむの影からは出ない窺うだけに留めていた。 「まりさぁ、おねだいだよ! そんなにごはんあつめられるってことは まりさはかりのたつゆんなんでしょ? だったらすこしくらい……」 「ゆ? たつゆん? かり……」 れいむの言葉にまりさは、ボーっと反応した。 頭の中の何処かにあった言葉「かり」そして「たつゆん」 まりさ種ならば大抵一度は自称する「かりのたつゆん」 それがまりさの頭の中に初めて埋め込まれた。 「そうだよ! まりさはかりのたつゆんだよ!」 「だよねだよね! だったられいむたちにすこしくらいわけてくれても だいじょうぶだよね?」 れいむは少しでもまりさをおだてて、どうにか餌を貰おうと必死になっていた。 そんなれいむの心境に気付かないまりさは、自分が「かりのたつゆんだ!」と笑みを漏らして。 「ゆふぅー、しかないね、まりさはかりのたつゆんだし、いちゆんまえだから、れいむみたいなおちびちゃんゆっくりにごはんをあげるよ!」 「ゆ、お、おちびちゃん、ゆっくり?」 それはかつて青年に言われた一言、まりさを強く傷つけた言葉だった。 まりさはそれをれいむに向かって言い放った。 「そうだよ! まんぞくにかりもできないゆっくりは、おちびちゃんといっしょだよ! まったくまりさをみならってほしいよ……」 「ゆぐ!!?」 優越感から汚い笑みを浮かべながら、れいむにそんな言葉を向けた。 自分が以前と何も成長していない、青年の庇護の下に生きるしか出来ない「おちびちゃんゆっくり」だと言うのに。 ゆっくりながら必死に子供二匹を育てるれいむを見下していた。 れいむは悔しさを覚えながらも、ここでまりさの機嫌を損ねる訳にはいかないと歯を食いしばっていた。 「ゆっ、これをあげるからさっさとかえってね!」 そのれいむの前に、まりさはゆっくりフードを一粒放り投げた。 「ゆ、ゆ? ま、まりさ、これ、だけ、なの?」 目の前に落ちたゆっくりフード一粒、大きさは人間の小指の第一関節ほどの円柱型をしているそれが、たった一つ。 れいむはゆっくり出来ないことまで言われて、これしか貰えないのかと呆然としていた。 餌皿にある全て、とは言わないけどせめて半分くらいは貰えるのでは、と内心思っていたのでその落差に開いた口が塞がらなくなっていた。 「まりさ、せめて、せめておちびちゃんが 「あまえないでね!」 ゆひ!?」 「あのねれいむ、らくしてごはんがてにはいると おもわないでね! れいむはおちびちゃんゆっくりだから わからないかもしれないけど まりさは たっくさんがんばってかりをしてるんだよ!!」 一ミリも頑張っていないまりさちゃん(生後5ヶ月)の言葉でした。 「わかったらさっさとそれをもってどっかいってね! まったく、おなじゆっくりとしてはずかしいよ!」 「ゆぅう……」 れいむは目の前のゆっくりフード一粒を頭の上に乗せると、悔しそうに帰ろうとする。 だけど、それまで母の影に隠れるだけだった二匹が初めて前に出た。 「まりしゃおじしゃん! だったらそれがあるばしょおしえてほしいのじぇ!」 「れいみゅたちが がんばってかりしゅるから!」 「お、おちびちゃん…………」 自分の前で必死にまりさに教えを乞おうとする二匹の子供に、れいむは涙を浮かべていた。 そして、自分の不甲斐なさから、れいむ自身も頭を下げる。 「れいむもおねがいするよまりさ! おねがいだから、かりのばしょをおしえてね!!」 「ゅ、ゆゆぅ…………」 三匹に頼み込まれて困ったのはまりさだ。 何故なら、このゆっくりフードは朝青年が持ってきてくれるものなのだから。 どこにあるか、それは家の中なんだろうけれど、それすらまりさには思いつかない。 まりさにとって餌は「おにーさんから、かってにはえてくる」ものなのだ。 「ゅ、そ、それは、えっと……」 「おねがいしゅるのじぇ! かりのたつゆんのおじしゃん!」 「かりのたつゆんしゃん! おねがいしましゅ!」 「まりさぁぁああ!! おねがいだよぉお、かりのたつゆんなんでしょぉおおお!?!?」 困惑するまりさを、三匹は「かりのたつゆん」と褒めながら頭を下げてくる。 そう呼ばれることに快感を得てしまったまりさは、本当のことを言うなんて出来ない。 だからまりさは誤魔化す為に……。 「きょ、きょうはもうまりさつかれたから、ほら、もっとあげるから、またこんどおしえてあげるよ!」 「「「ゅ、ゆわぁぁあ!!」」」 餌皿から、親子三匹なら十分以上のゆっくりフードを明け渡した。 「ありがとうかりのたつゆんのおじしゃん!」 「とってもゆっくちしてるのじぇええ!!」 「ありがとう、ありがとうばりざぁぁあ!!」 涙を流して感謝してくる三匹。 生まれてこの方味わったことない快感に餡子を震わせていたまりさは、ニヤニヤしてしまう。 そして、餌を三匹が食べ始めれば、これまた感謝の「しあわせー!」の連呼。 かつて無いゆっくりを感じているまりさだった。 そしてその後は、子ゆっくり二匹が久しぶりの満腹感に眠りだしてしまった為、れいむ一家はまりさの段ボールに泊まることになった。 そこでもまりさは優越感を得ることになった。 まりさが住んでいる段ボールは数日前まで室内にあったり、野良のゆっくりが使うようにただ横倒しにしたのではなく、青年がしっかり密閉してから壁面にまりさが出入りする穴を開けたものだった。 そして、何より広く中にも雑巾が何枚か敷かれている野良ではありえない豪邸だ。 れいむたちが眼を丸くしているのを見て、それまではあって当然だった段ボールがとても誇らしく思えてきたのだった。 感心して羨ましがり、まりさを褒めるれいむ一家にまりさは気分良くして、久しぶりに他のゆっくりと頬を触れ合わせて眠った。 ……。 …………。 「ゅ、ゆわぁあああ!! すっごいごはんさんだよぉおお!」 「「しゅっごぉおおおおい!!」」 「ゆっへん! それほどじゃないよ!」 次の日の朝、疲れからか、それとも元からかぐっすり寝ているれいむ一家が起きる前に、まりさは青年が用意してくれたゆっくりフードをわざわざ帽子に入れて段ボールまで持ってきた。 目の前に積まれた大量のゆっくりフードに、れいむと子ゆっくりたちは眼を丸くしていた。 昨日は既にまりさが半分近く食べていたので減っていたが、今あるのは青年は補充してくれたばかりなので大量も大量だ、あくまで野良視点ではあるが。 「おじしゃん、こりぇ、たべていいのじぇ?」「ゆっきゅり、ゆっきゅりぃ……」 涎を垂らして眼を輝かせる二匹と、こちらも涎だらだらのれいむ。 「ゆーん、どうしよっかなぁ、まりさがかりしてきた ごはんだし……」 「「「ゆ!?」」」 まりさの言葉に三匹は一気に悲しそうな顔をした。 子れいむはもみ上げをパタパタさせて泣きそうになりながら、子まりさは涎を垂らしながらお下げを振り回していた。 「まったく、しかたないゆっくりたちだね! いちゆんまえのまりさがとくべつにわけてあげるよ!!」 「「「ゆわぁあああい!!」」」 まりさの言葉で爆発するように三匹は食事を始めて、まりさも直ぐに食べだした。 優越感と、同種と一緒に食べる食事にまりさはゆっくりを感じなている。 そして食後、一日分のほとんどを食べ散らかした4匹は、体中を汚していた。 野良一匹ならば六日分くらいはあった食料、それを限界まで食い散らかしたのだった。 まりさも、覚えてきた配分も忘れて入る以上に食いまくった。 「ゆげっぴゅ!」「おなかいっぱいなのじぇえ……」 「まりさ、ほんとうにありがとうね……」 そんな3匹の言葉にまりさは胸を張って。 「ゆふん! まりさはいちゆんまえだからね! これくらいかんたんだよ!」 と偉ぶって宣言したが。 昨日の約束通りに、と狩場を教えるように3匹が言ってきた。 まりさはそれに「きょうもつかれているから!」そう言って、庭で遊びだした。 れいむを含めて、子ゆっくりたちにはこの庭は天国だった。 草が生い茂っていて、危ないものはないし、野良ならば食べられる草が山ほどあった。 しかもそれを横取りするゆっくりもいないという、最高のゆっくりプレイスだった。 れいむは、辛らつなことを言うまりさに感謝しきりで、子ゆっくりたちも感謝を示した。 それがまりさには気分が良くて良くて、今日も段ボールに泊めることになった。 朝ゆっくりフードを食い散らかしたけれど、れいむ一家は草や虫を取って食べていたので食事は特に問題はなかった。 まりさは普段より少なめな、ゆっくりフードを満足しながら食べて寝る。 そんな生活をしばらく続けていた。 早起きなまりさが、青年からの餌を狩の成果といって持ち帰り、それを食べてから餌場への案内を求められて断る、それからは庭で遊んで夜寝る、そんな生活。 その内に、性欲を満たすためのすっきりーをしてしまい子供が出来ると、なし崩しに二匹は番になった。 住食満たされたら次は性欲と、実に欲望に忠実な饅頭らしい流れだ。 れいむの頭には茎が生えて、そこに実ゆっくりがなった。 「ゆわぁああ、まりさのあかちゃん、かわいいよぉお!」 「ゆっくりしてるね、まりさ」 「いもーとたち、はやくうまれてね!」「すぐでいいのぜ!」 一応家族はそれを見てゆっくりしていた。 子ゆっくりも栄養沢山のゆっくりフードのおかげでどんどん成長して、実ゆっくりも順調に育っていた。 初めての我が子にまりさはもうメロメロだった。 こんなに可愛いものが世界にあって良いのかと、本気でそう思うくらいには。 そしてついに生まれることになった赤ゆっくり。 れいむに言われてまりさは帽子でその小さな饅頭たちを受け止めた。 「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」 「ゆ、ゆわっぁあああああ!! ゆっくりしていってねぇぇええええ!!!」 帽子の中で無駄にキラキラ光る眼で挨拶をした我が子にまりさは破顔して喜んだ。 その動きの一つ一つに感動して、感涙を繰り返した。 「おちょーしゃん! おちょーしゃん! れーみゅきゃわいい?」 「あったりまえだよぉおおおおおぉ!! せかいいちだよぉおおおおお!!」 わざとらしい赤れいむの問いかけにも全力で叫び。 「おちょーしゃ! みりゅのじぇ! まぃちゃこーんにゃにじゅーりじゅーりできるのじぇ!」 「さっすがまりさのおちびだよぉお!! さいっきょうかくていだねぇぇぇええ!!」 ちょっと這いずっただけの機動力ナメクジ以下の赤まりさを褒めちぎった。 「まりさは、まりさはしあわせだよぉおおおぉおおおお!!!」 しかし、そんな幸せは続く訳が無い。 「「「むーちゃ、むーちゃ、ゲロまずぅ」」」 赤ゆっくりが生まれて数日、段ボールではゆっくり出来ない声が響く。 それは母れいむ、そしてもう大分大きくなった子れいむ子まりさだった。 彼女らが食べているのは柔らかい草や虫。 以前は大好物だったけれど、ゆっくりフードに慣らされた為のゆっくり出来ない味になっていた。 何故そんなものを食べているかと言うと……。 「むーちゃむーちゃ! しゃぁわしぇぇぇえええ!!」 「おちょーしゃ! おいちいのじぇええええぇええ!!」 「ゆふふ、たくさんたべてね!」 そう、赤ゆっくりだ。 サイズは小さくても食べる量回数が半端じゃない。 しかも、それだけではなく自分の餡子を継ぐ赤ゆっくりをまりさが溺愛しているのだ。 その為に、義理の子である子れいむ子まりさ、そしてれいむにはゆっくりフードをほとんど分けないのだった。 最初はそれに抗議をしたがまりさが「これはまりさがじぶんのおちびちゃんにとってきたんだよ! じぶんのくらいじぶんでどうにかしてね! まったく、いつまでもおちびちゃんきぶんでいないでね!」と、初めて会ったときのように辛辣に言い放ったのだ。 まりさは赤ゆっくりに付きっ切りで、ゆっくりフードを与えて、れいむたちは段ボールの隅で苦い草を食べている。 そんな日々に限界を感じた子ゆっくり二匹は普段よりも早起きをした。 そして、まりさが狩に行った後をつけようとしたのだ。 自分でとったならば誰も文句は言わないだろうと、まりさが起きるのをずっと待っていたら。 『あー、だっりぃ』 「「ゆ?」」 子ゆっくりたちの耳に見知らぬ声が届いた。 そう、この家の庭の一応の持ち主の青年だ。 出かける前に、いつのものように餌皿にゆっくりフードを流し込みにきたのだ。 「れいむ……」 「まりさ……」 二匹は顔を見合わせると、まだ自分たち以外誰も起きていない段ボールからゆっくり出て行く。 「「ゆ!?」」 出た先で見たのは「にんげんさんが、いつもおとーさんが かりしてとってくるおいしいごはんさんを もっている」姿。 まぁ、青年が餌皿にゆっくりフードを注いでる姿そのままなのだけれど。 子ゆっくり二匹は、この状況が理解出来ずにポカンとしていた。 少し前までは野良をやっていたので、人間の存在は勿論しっていたけれど、まさかこんな近くで、しかもいつもまりさが持ってくるご飯とセットで見ると状況の判断が出来なくなるらしい。 この二匹は人間に激しい暴力を受けたことはないけれど、強く自分たちを簡単に殺せることが出来る生き物くらいには理解をしていた。 それと美味しいご飯の結びつきを出来ずにフリーズしていたら、餌を注ぎ終わった青年が二匹に気付いた。 『あぁん? いつの間にガキなんか作ったんだよあいつ』 まりさを庭で飼いだしてから本当に興味を失っていた青年は、今日始めて庭のゆっくりが増えていることに気付いたらしい。 「「ゆひっ!?」」 青年は軽く見ただけだけれど、子ゆっくり二匹は大げさにリアクションを取って、短い悲鳴をあげた。 ゆっくりフードの袋をそこらに置くと、数歩近づいて青年は子ゆっくりに二匹の前でしゃがみこんだ。 『お前ら何してんだ? まりさ、あー、いや、とーちゃんの代わりに餌を取りにきたんか?』 青年は何となく話しかけだした。 彼にしたら、呆れて放置に等しいことをしたまりさが、口だけじゃなくて一人前になって子供まで作ったのか、と少し感慨深かったからだ。 「ゆ?」「えさ?」 『ん? あー、これだよこれゆっくりフード、お前らの餌、代わりに取りに来たんじゃねーの?』 青年の質問に二匹は首を傾げていた。 〔えさ〕も解らなかったし〔ゆっくりフード〕はもっと解らない。 ただ、何となくそれが〔ゆっくりしたごはんさん〕だと理解したらしく、二匹は顔を見合わせた。 「ち、ちがうよ、れいむたちは おとーさんがそのゆっくりしたごはんさんをどこのかりばからもってくるのかしりたかっただけだよ」 「そうなのぜ、おとーさんはさいきんいもーとにしかそのごはんさんあげないから、まりさたちゆっくりできないのぜ!」 『ん~?』 子れいむ子まりさの訴えを聞いて、青年は首を捻った。 どうやらまりさが成長していないのを、何となく感じ取ったらしい。 『そう簡単に赤ちゃんゆっくりから成長しねーか』 「ゆ!? ぁ、あかちゃんゆっくりじゃないよ! れいむはおちびちゃんゆっくりじゃないよ!」 「そうなのぜ! まりさもしっかりかりもできるのぜ!」 青年の一言に妙に敏感に反応する二匹を、彼はまじまじと見ていた。 『なぁ、ちょっとお前ら話を聞かせろよ、ゆっくりフード分けてやるからさ』 ……。 …………。 『ぷっははははは♪』 「わ、わらいごとじゃないのぜ! まりさたちこまってるのぜ!」 「そうだよ! おかーさんもゆっくりしたごはんさんたべたいっていってるのに!」 『いや、悪かった悪かった……へぇ、あのまりさが、ねぇ』 子ゆっくりに二匹を部屋に招いた青年は、今日までの話を聞いていた。 まりさとの出会い、そして罵倒、自慢、家族になり、そして新しい家族が生まれて態度を変えるまでを、感情論メインのゆっくり語りで。 それを聞いた感想は、見ての通りの笑いだった。 青年にとっては実に笑える話なのだ、口だけ一人前のまりさが自分から貰っている餌をさも苦労して手に入れているように語り、あまつさえ野良として厳しい世界を生きてきたれいむ親子を馬鹿にしたなんて、笑うしかなかった。 しかし、事情を知らない二匹は自分たちが馬鹿にされてると思い不機嫌に頬を膨らませていたが、青年の謝罪で渋々空気を吐き出した。 『それで、おとーさんが言ったのか』 「そうなのぜ、いつまでもおちびちゃんきぶんでいるんじゃない、って」 「れいむだってかりしてるのに、でも、ゆっくりしたごはんさんはどこにもはえてないんだよ!」 『へぇ…………』 憂鬱そうにしている二匹を見ながら青年は考えていた。 放置していても良いけれど、自分の知らないとこで調子に乗ってるまりさはうざいな、と。 『俺の存在を隠しているのも小賢しくてうざいし…………』 話を聞くに、まったくと言って青年の話が出ていないので、まりさは意図的に存在を隠しているようだった。 彼にとってそれも気に入らない要因にだった。 『どーすっかなぁ………………あ』 「ゆ? どうかしたのぜ?」 「にんげんさん! やくそくのごはんさんちょうだいね!」 何やら思いついた青年に、まりさは不思議そうに、れいむは空腹が限界なのか約束のご飯をねだっていた。 『ちびっこい赤いの、ちっと待て待て……お前ら良く聞け』 「「ゆ?」」 青年は悪い笑顔で子ゆっくりに話を持ちかけた。 ……。 …………。 それから数日後の段ボール。 「ゆっち、ゆっち! おちょーしゃ! みちぇ! みちぇ! れぃみゅこぉんにゃにうごけりゅよ!」 「ゆゆ! さすがはまりさのおちびちゃんだよぉおお! てんっさいだね!」 「おちょーしゃ! おちょーしゃ! まぃしゃもみるのじぇ! ゆふん! ありしゃんをちゅかまえたのじぇ!!」 「さっすがまりさのおちびちゃん! さいっきょうだねぇぇえ!! まりさもはながたかいよ!」 いつものように、まりさは自分の餡をついだ赤れいむ赤まりさを溺愛しまくっていた。 ちょっと動いた、自分より遥かに小さなを蟻をしとめた、それだけのことを報告してくる一口饅頭を、まりさはその度に褒め、自分のことのように喜んでいた。 「おちびちゃん! がんばったらおなかすいたでしょ? はい、ごはんたんべよーね!」 「ゆわーい!」「まぃちゃごはんだいしゅきなのじぇ!!」 そして、いつものように青年から与えられたゆっくりフードの一部を二匹の前に並べていった。 「ゅう、まりさぁ、れいむたちにも、すこしちょーだいよ、ゆっくりしたいよ」 それを見ながら、れいむはオズオズと無駄と知りながら懇願をする。 自分の前に並ぶ、子れいむ子まりさがとって来てくれた草や虫を見ながら溜息をついていた。 そんな自分の妻を見ながら、まりさはわざとらしく溜息をつくと。 「なんかいもいわせないでね! これはまりさがおちびちゃんのためにとってきたんだよ! じぶんのことはじぶんでやってね! これだからおちびちゃんゆっくりはいやなんだよ! はやくまりさみたいないちゆんまえになってね!」 辛らつに、優越感と侮蔑を合わせた様な視線を向けて言い放った。 れいむは、それを言われるとシュンとなり「ゅう」と小さく鳴くだけだったが。 普段なら一緒に小さく鳴く子れいむ子まりさはお互いに顔を見合わせて。 「ゆぷ、ゆぷぷ」「ゆぷぷぷ♪」 と笑っていた。 「おかーさん、もうすぐだよ、まっててね」 「まりさたちがきっとおいしいごはんをとってくるのぜ!」 「ゆぅ? ……ありがとうね、おちびちゃん」 れいむは二匹の言葉を慰めと判断して、優しい子供を持って幸せだと思いながら笑顔を浮かべた。 しかし、それがただの慰めじゃないと知るのは次の日だった。 ……。 …………。 「ゅ、ゆっくりおきたよ…………」 まりさはいつものように誰よりも早起きをすると、皆が寝ているのを確認してからのそのそ段ボールから出て行った。 そして、青年がいつもゆっくりフードを入れてくれている場所に向かっていき……。 「ゆ? ゆゆ? ゆゆゆゆ?」 普段ならばそこに置かれた餌皿に山盛りあるハズのゆっくりフードが見当たらずに、首を傾げていた。 この時点ではまりさは、焦るのではなく「おにーさんはねぼうしてる」くらいに考えてそこで待っていた。 そして、遅れてやってきた青年を叱ってあまあまを要求しよう、とかまで考えていた。 ここ最近顔を合わせていなかった青年に、未だに何か思うところはないらしく、自分が悪い部分は特にないと考えていた。 「ゆ! そうだよ! いつまでもおちびちゃんをこんなばしょでそだてられないよ!」 そんなまりさが、ふと思いついたのは、再び家に上がり込むことだった。 何で庭で暮らしているかなんてのは最初から頭になかった、ただ向こうの方がゆっくりしているのは知っている。 ゆっくりしたおちびちゃんを育てるならゆっくりした場所で、そんな思考から青年が来たら今日からまた家で暮らすと伝えるつもりになっていた。 お願いするとかではなく、既に決定事項。 青年がまりさとおちびちゃんの身体を丁寧に拭いて、食べきれないあまあまを差し出して、ついでに家も全て今度こそ自分の物になるだろうと確信していた。 「ゆゆん! それがいいよ! いつまでもこんなばしょじゃ おちびちゃんがゆっくりできないからね!」 名案とうんうん頷くと、まりさは青年を待った。 青年を待った。青年を待った。 青年を待った。 「…………おそいよ、おにーさん」 しかし、待てど暮らせど青年はこない。 まりさは苛立ちで身体を揺らしながら、庭に面したガラス戸を睨むけれど、そこにひかれたカーテンが開くことはなく、ただ時間が過ぎていく。 「ゆぅ…………!」 次第に苛立ちに混じって焦りも出てきたまりさ、チラチラと段ボールを見つめては「おにーさん! まだなの?!」と小さ目の声で催促をする。 まりさの感じる焦りは、青年から餌を貰っている姿を見せることだった。 しばらくれいむたちと暮らしている内に、ゆっくりの狩の概念を薄ぼんやり理解したまりさは、自分の「かり」を見られまいと隠してきていた。 自分は「いちゆんまえのかりのたつゆん」で無くてなならないという糞そのままのプライドを持っていたのだ。 青年から餌を貰うのは当然だけど、その姿を見られたくない妙なジレンマを抱えたまま待つ。 が、しかし青年はやって来ない。だけど、代わりに段ボールからはれいむと子ゆっくり二匹が這い出てきた。 「ゆ!?」 「ゆっくりおはよう、まりさ」 「おとーさん、まだかりにはいってないのかぜ?」 「ね、おかーさん、れいむがいったとおりでしょ?」 出てきた三匹、れいむは少し不安そうな顔をしているけど、二匹の子ゆっくりはニヤニヤ笑っていて、子れいむは母に何やら耳打ちをしていた。 まりさは子ゆっくり二匹の行動に気付く余裕もなく。 「かりはいろいろじゅんびがあるんだよ! おちびちゃんゆっくりのおまえたちにはわからないだろうけどね! だまってどっかいってね!」 イライラとそう言い放った。 それに対して子まりさは、逆らうこともなく。 「わかったのぜ、まりさたちはきょうはちょっととおくにかりにいくから もうでるのぜ! おかーさん、れいむいくのぜ!」 「「ゆん!」」 子まりさの言葉に頷いて、三匹は庭のスペースから離れていった。 その背中を見ながらまりさは安堵の溜息を漏らして、またイライラを感じながら戸を睨んでいた。 だけど、相も変わらず青年はやって来ないでその内。 「ゆぴゅ? おちょーしゃん?」「おにゃかしゅいたのじぇぇえええ!!」 「ゆゆ?!」 いつもなら朝起きたら大量の餌がある生活をしていた赤ゆっくり二匹が眼を覚まして直ぐに泣き出した。 その声を聞きつけてまりさは急いで段ボールに戻っていく。 「おちびちゃん! だいじょうぶ?」 「だいじょーぶじゃないのじぇえ! おにゃかがすいたのじぇ!」 「れーみゅも、おにゃかすきまくりだよぉおお!!」 満たせない食欲にもみ上げたしたし、お下げをふりふり二匹は不満を漏らす。 生まれて以来空腹を感じた経験もない甘やかされてきた二匹が初めて感じる痛みに似た感覚に涙を流していた。 普通のゆっくりなら、餌がとれなくてもそれなりの貯蓄をするから一日くらいは何とかなるけれど、相手はこのまりさ、貯蓄なんかする考えすらない。 していないのに、何かないのかと段ボールを見渡すと隅の方にれいむたちが集めて保存しておいた草、虫、花などが置かれていた。 「ゆぅうう、こんなのしかないの!? ほっとにおちびちゃんゆっくりはつかえないね!」 それでも無いよりましかと思い、まりさは以前食べてそれなりに食べれた思い出のある花を下で持つと、無く赤ゆっくりの前においた。 「ほら! おちびちゃん! かりのたつゆんのまりさがごはんとってきたよ! たべてね!」 「ゆぅ?」「にゃにこりぇ」 しかし、相手は生まれてこの方ゆっくりフード育ちの赤ゆっくり。 目の前に置かれた花を食物と認識できないでいる。 それに拍車をかけているのが、親であるまりさが日常的にれいむたちを馬鹿にしていることがあった。 幼くてもゆっくり、他者を見下す性能は世界最強。 自分たちが食べている美味しい物を食べれずに羨ましがるれいむたちを、幼いながらに見下しまくっていた。 実の母、半分は餡子が通じている姉妹をも馬鹿にしていて、そいつらが食べているものなど食べれる訳が無い、という理屈だった。 「やじゃやじゃぁぁああ!! こんにゃのゆっくりできにゃぃいい!!」 「おちょーしゃ! かりのたちゅゆんなのじぇぇぇええ?! はやきゅとっちぇくるのじぇえええぇええ!!」 「ゆ、ゆゆぅ…………」 出した花を弾かれて、まりさは困り顔をする。 いくら泣かれてもないものはないのだから。 まりさは再び庭に出て、未だに空の餌皿に歯軋りをすると……。 「おにぃいいさぁぁぁあぁあああん!!! なにグズグズしてるのぉおお!! さっさとごはぁぁああん!!!」 全力で叫び、戸の下で跳ねまくる。 そこまでしても餌は補充されず、まりさが疲労していくだけに留まった。 「もう! せいっさいだよ! おにーさんにはあきれたよ! おちびがないてるのにぃい!!」 青年を制裁する想像をしているのか、その場で何回も跳ねるまりさ。 そのまりさの背後から元気な声が聞こえてきた。 「たいっりょうだったのぜ!」 「ゆふふ、おちびちゃんはほんとうのかりのたつゆんだね!」 「とうっぜんだよ! れいむたちはいちゆんまえだからね!」 「…………」 暢気に狩の成果を褒めあうれいむたち、まりさは「まぁたおちびちゃんゆっくりがゴミみたいのをもってきたね……」と見下しながらそちらを見て眼を丸くした。 「ゅ、ゆえぇぇえぇええええ!? どぼじでぇぇえええ!!!」 「ゆ? おとーさん、まりさたちかえってきたのぜ!」 「ゆふんたいっりょうだよ!」 まりさが見たのは、れいむ一家全員が口にくわえた透明な袋に入れられた大量のゆっくりフードだった。 ありえない光景に眼を見開いたまりさに見せ付けるように、子ゆっくり二匹はその袋を突き出してみせた。 「ど、どぼ、どぼじで?!」 「どーしてって、まりさがかりのたつゆんだからなのぜ!」 「そうだよ、れいむもたつゆんだよ!」 「じゃあ、おかーさんもたつゆんだね!」 「「「ゆふふ♪」」」 仲睦まじく笑いあう一家とは対照的に、開いた口の塞がらないまりさ。 笑い合っていた一家は、まりさに向き直るとニヤニヤ意地の悪い笑みを浮かべる。 「あれぇ? おとーさん、かりはどうしたのぜぇ?」 「かりの‘たつゆん!‘のおとーさんだから、もういってきたんだよ! そうだよね?」 「ゆぐ、ゆぐぐぐ…………」 青年の発案でまりさに餌をやらずに、庭の反対側で餌を貰い、そこでしっかり事情を教えられた三匹は完全にまりさを見下していた。 今まで馬鹿にされたこともあって一入だ。 それでも、まりさはまだ自分の狩はバレていないと信じているらしく。 「きょ、きょうはちょうしがわるかったんだよ! だから、きょうはおまえたちのとってきたのでがまんするから、さっさとわたしてね!」 偉そうな態度のままそう言い放った。 しかし、そこで「ゆん! わかったよ」と渡す訳もなく。 「ゆあーん? おちびちゃんじゃないんだからじぶんのはじぶんでとってくるのぜ! それとも、そんなこともできないおちびちゃんゆっくりなのかぜぇ?」 「ゆぎ、ゆぐぐぐぐ!!」 子まりさはニヤニヤ笑いながら、そう告げた。 まりさは悔しそうに歯を噛み締めながら。 「い、いままでのおんをわすれるなんて……」と呟いていた。 その様子に大層ゆっくり出来たのか、三匹は笑顔のまま顔を見合わせると。 「それじゃあ、みんなでゆっくりたべようか!」 「そうするのぜ!」「れいむおなかペコペコさんだよ!」 「「「ゆっくりいただきます! むーしゃむーしゃ! しあわせぇぇえぇえぇえええええええ!!!!!」」」 れいむ一家は久しぶりの美味に顔を綻ばせ、まりさは久しぶりの空腹屈辱に顔を歪ませていた。 そこに、声を聞きつけたのか段ボールから赤ゆっくり二匹が這い出てきた。 「ゆ!? ぎょはん!」「やっちゃ! おちょーしゃがかりからかえってきたのじぇ!」 まりさを、父を「かりのたつゆん」と信じる二匹は眼を輝かせていた。 そして、れいむたちが食べているのを見ると不機嫌そうな顔をして。 「ゆ!? おちょーしゃん! なんじぇれぃみゅにじゃなくて、あんなおちびちゃんゆっくちにぎょはんさきにあげちぇるの!?」 「しょーなのじぇ! あいちゅらはさいぎょにあまったらがじょーしきなのんじぇ!」 家族を見下す発言をしながら、頬を膨らませていた。 「ゆ、ゆゆ……」 それにまりさは困ったように小さく声を出すだけだった。 そして、とりあえず赤ゆっくりを段ボールに戻さないとゆっくり出来ないことになる予感を感じて、そちらに進もうとしたら。 予感的中、子まりさ子れいむがニヤニヤ笑いながら赤ゆっくりを見つめて。 「いもーとたち、これはねれいむたちがかりでとってきたんだよ!」 「おとーさんは、きょうはなにもとってないのぜ!」 「「ゆゆ!?」」 まりさにとって絶対言われたくないことをハッキリと言われてしまった。 「お、おちびちゃん! おうちにもどるよ! はやくね! はやくね!」 自分の愛する子供に知られたくないと、まりさは急いで赤ゆっくりを巣に戻そうとしたけれど。 「にゃんでぇぇえ!? れいみゅおにゃかへっちぇるよ?!」 「まぃしゃにもぎょはん たべしゃせりゅのじぇええええぇえぇえ!!!」 「ゅ、ゆゆ、ゆゆぅ!」 二匹の赤ゆっくりは、れいむたちが食べているゆっくりフードを涎を垂らしながら見つめて、まりさの影から出て行く。 「おねーしゃ! まぃちゃにたべさせるのじぇ!」 「れぃみゅがたべてあげるよ! しゃっしゃとよこしてね!」 「お、おちび…………」 赤れいむ赤まりさは、小さな身体をもぞもぞ這わせながら一応の姉妹に近づいていく。 それを見ながらまりさは「ゆ、かわいいおちびちゃんたちになら、きっとあいつらもいじわるはしないはず」と少し安心していた。 が、しかし。 「あげないよ! これはれいむたちのだよ!」 「そうなのぜ! たべたかった、ゆぷぷ、かりのたつゆんのおとーさんにたのむのぜ! まっ、できれば、なのぜぇ」 「「なんじぇぇぇぇえ?!?」」 赤ゆっくりたちもまりさと同じく、可愛い自分たちならくれると信じていたのに、それを裏切られてプルプル震えだした。 「たべちゃい! たべちゃい! たべちゃい! たべちゃい!」 「おちょーしゃ! ぎょはんもっちぇくるのじぇぇぇえぇええええ!!!」 不満を我慢する機能なんて備えていない二匹はその場でジタバタ暴れだすが、れいむたちはその姿を見ながら久しぶりのゆっくりとして食事を続ける。 「おちょーしゃんはかりのたつゆんなんでしょぉおおぉおお!!? しゃっしゃともっちぇくるのじぇぇぇええ!!」 「あんにゃやつらでもとってこれるにょを、おちょーしゃんはとっちぇこれにゃいのぉおおお?!」 「ゆ、ゆぐ、あ、あのね、おちびちゃん、かりは、そのとってもつらくて、いくらかりのたつゆんでも むずかしいひはあるんだよ、ゆっくりりかいしてね?」 「できにゃぃいいいいぃいい!!!」 「おにゃかしゅいたのじぇぇえ! ぎょはん! ぎょっはぁぁあん!!」 まりさの言い訳も空腹の赤ゆっくりの前では意味を成さない。 今の二匹に必要なのは言い訳ではなく食事、それを満たせなければ赤ゆっくりにとって親は親じゃない。 自分のゆっくりを阻害する敵に代わるのだ。 「まいちゃにごはんよこすのじぇぇえぇええ!! しゃっしゃとしろぉおお!!」 「れいみゅをゆっくちさせにゃいくじゅはしにぇぇぇぇえええ!!」 「お、おちびちゃん…………」 怒りに任せて、まだまともに跳ねることも出来ない二匹はまりさの身体にまるですーりすーりするように攻撃を開始したけれど、もちろんダメージなんかはない。 それでも、まりさは自分の子供から向けられた敵意に泣きそうになっていた。 愛情を注ぎ続けた和が子からの攻撃はかなり心に響いたらしい。 そのまりさに追い討ちをかけるように……。 「ゆぷぷ! なさけないねぇ、ゆぷぷ!」 「なさけないのぜ! じぶんのおちびにまともにごはんもあげられないなんて、ゆぷぷ!」 「だめだよぉ、おちびちゃん、あんなんでもいちゆんまえのつもりなんだからぁ」 「ゆぎぎぎぃ!」 れいむたちの言葉にまりさは、悔しそうな顔で俯いていた。 昨日までは自分がずっと上にいたという意識があるために、見下される悔しさもかなりだ。 だけど、青年から餌を貰えない以上まりさにゆっくりフードの入手はありえない。 「おちょーしゃん! はやきゅ! ぎょはん! とってきちぇよぉおお!!」 「そーなのじぇ! そーなのじぇぇぇえ!!」 「お、おちびちゃん、だから、ゆっくりしたごはんは、その、すっごくきけんなとこにしかなくて……」 「きけんって、じゃあ、なんであいちゅらがとってこれてるのじぇええぇぇええ!!」 「ゆぐ!」 言い訳を続けるまりさの痛いところを赤まりさは一突きしてくる。 言葉をつまらせたまりさは、何か上手い言い訳を考えるけれど思いつくはずはなく、れいむたちのニヤニヤを一層強めることになった。 「かりのたつゆんのおとーさんはぁ、まりさたちでもとれるのをとれないのぜぇえ?」 「ゆぷぷ! それでよく かりのたつゆんなんていえたね!」 「だめだよぉ、そんなにいじめちゃ、おちびちゃんたちぃ♪」 見下され続けた恨みから三匹は徹底的にまりさを追い詰めていく。 それに解決策を講じられないまりさは、俯くだけしか出来ない。 「ゆぐ、ゆぐぐぐぐぅううう!!」 『よー、何してんだまりさー』 「ゆ!?」 追い詰められていくまりさ、それを笑うれいむたちが揃う庭に青年がゆっくりと現れた。 まりさは、一瞬皆に狩の正体を知られてはまずい、と焦ったけれど。 直ぐにニヤリと笑い―――。 「おにーさぁぁぁぁああん!! まりさのおうちにゲスなゆっくりがきたんだよぉおおお!! たすけてねぇぇええ!!」 「「「ゆ!?」」」 大声で仮にも家族を売り渡し、排除することを決めたらしい。 まだ小さな自分の子供は後でどうにでも言いくるめられる、良い機会だからいらない家族を排除して家に戻ろうと画策したようだ。 「さっさとこいつらをおいだしてね! せいっさいでもいいよ! はやくしてね!!」 「お、おとーさ 「おにーさぁぁああん!! はやくしてねえぇええ!!」 ゆゆ?!」 自分を父と呼ぼうとしたまりさの言葉をかき消すように叫んで、あくまで家にやってきたゲスとして処理する腹積もりらしい。 『…………へぇ』 「なにやっでるの!? ゲスはさっさとせいっさいだよ! せいっさい! ゆぷぷ! おまえらもおわりだよ!」 動こうとしない青年を怒鳴りつけて、れいむたちを嘲笑う。 まりさの脳内では輝かしい未来への栄光しかなくて、それが破綻する想像なんか一ミリも考えていなかった。 次の瞬間まで―――。 『追い出されるのはお前な、まりさ』 「ゆぇ? ゆべぇぇ!??!」 青年はまりさを踏み潰して、しばらくグリグリと足を動かしてから離した。 すると、中枢餡へのダメージかまりさは目を回して気絶していた。 そのまりさを掴みあげると、青年はれいむ一家を見る。 『んじゃ、お前ら俺に迷惑かけないなら庭に住んでいーからよ』 「ゆ! ゆっくりりかいしたよ!」 「ありがとうなのぜ! まりさはおとーさんみたいな おちびちゃんゆっくりじゃないからだいじょうぶなのぜ!」 青年は子れいむ子まりさに、そのような話をしてあったのだ。 何となく惰性で飼っているまりさ、それがあまりにも調子に乗っているので捨てることを決めて、それだと何か寂しいからと庭の賑やかしにれいむ一家の居住を許すと。 その前にと、子れいむ子まりさは、まりさにやり返したいというので今回のことを仕組んだのだ。 まりさに餌をやらずに、れいむ一家に餌を渡して見下す返す、ただそれだけなのだけれど、日常的に馬鹿にされていたれいむ一家は随分ゆっくり出来たようだった。 「にゃ、にゃに? にゃんにゃ? ゆびゅ!?」 「や、やめりゅのじぇ! まいちゃににゃにかしちゃら、おちょーしゃ、ゆびゅ!?」 『一口饅頭も捕獲っと、んじゃ、俺はこいつら捨ててくっから、餌は毎日やんねーけど適当に暮らせよ』 「ゆ、ゆっくりりかいしたよ」 「おいしいごはんさんは まいにちたべられないのぜ?」 「ゆーん、おちびちゃん、がまんしよーね! くささんも むしさんもがんばればおいしいよ!」 「ゆっくりがまんするのぜ……」 れいむ一家の声を背中に聞きながら、青年は家を出て、まりさと赤ゆっくり二匹を少し離れた場所にある公園に放置した。 ……。 …………。 それから数日後。 「ゆ! おかーさん! たくさんとれたよ!」 「まりさもなのぜ! きょうはあまいこのみがあったのぜ!」 「ゆーん! おちびちゃんたち、もうすっかりいちゆんまえだね! おかーさんもはながたかいよ!」 『ねーだろ、鼻』 「どぼじでぞんなこというのぉおおお!?!」 青年の庭では、何とか草や虫を食べる生活に戻れたれいむ一家が平和に暮らしていた。 庭の持ち主の青年も案外ゆっくりと上手くやっているようで、飼い主飼いゆっくりほどじゃないけれど、微妙な隣人のような距離感をとっているようだった。 居間の戸をあけて、ボーっとする青年に声をあげて、もみ上げをふりながら叫ぶ母れいむ。 狩から帰ってきた二匹の子ゆっくりと、平和な光景がそこにあった。 そして、場面は公園に移る。 「ゆひぃ、ゆひぃいい!! ゆっくり、ゆっくりできないぃい!!」 庭に住みだしてかなり汚れていたけれど、まだそれなりに綺麗だったまりさは見る影もなく、帽子は誰かに踏まれたのか潰れて、金髪にはゴミが絡まり、黒く汚れていた。 饅頭の皮にはいくつも穴のような傷があり、眼の下には涙の痕に沿うようにゴミがついて黒く汚く目立ち、頬には人間の靴痕が刻まれたいた。 青年に公園に放置されたまりさは、何とか生きているようだった。 公園内を這いずり回って、ゴミを探し回っていた。 この公園には群れはないけれど、何匹かのゆっくりが暮らしている。 そのゆっくりたちは……。 「ゆぷぷ、みるのぜ!」「なさけないんだねー」 「みっともないね! あんなゆっくりにはなりたくないよ!」 飼いゆっくりから野良に落ちて、帽子までボロボロのまりさを遠巻きに見ながら嘲笑っていた。 かつて、飼われていた頃はこの公園にやってきていたまりさ、自分たちとは違う世界のゆっくりと羨望と嫉妬をしていた相手が自分たち以下に落ちた姿は、彼女らを実にゆっくりさせているようだった。 「なんで、なんでぇえ! なんでばりざが、ごんなめ、ゆびゅべ!?」 『きったねぇんだよ! 堂々と真ん中歩いてんじゃねぇえよ! ゴミ饅頭が!』 「やべ! いちゃ! ばりじゃ、やべでぇぇ!!」 成果のない狩をしていたまりさを、学生服を着た少年が気に障ったのか尻を蹴り飛ばしてから、更に何回も踏みつけていた。 まりさは痛みに涙を流し、泣き震えていた。 『ったく、気分悪くさせんなよなぁ……ぺっ』 「ゆびゅ?!」 蹴り飽きたのか、最後に唾を吐きかけると少年はその場を去っていった。 殺さなかったのは恐らく気まぐれだろう。 まりさはその気まぐれに助けれた何とか生きていた。 痛みで身体を動かないまりさは、その場でしばらく痙攣を繰り返して少し回復したら、今度は道の端っこをゆっくり這いずっていく。 そして向かっていく先は、公園のトイレの裏側。 そこには薄汚れたビニール袋が一枚おかれていて、その上にやつれた赤ゆっくり二匹が転がっていた。 「ぎょ、はん……まだにゃの?」 「まいしゃ、し、しんじゃうのじぇぇえ」 まともに食事をしていない二匹は、中の餡子が減っていて頬はげっそりこけ、眼球も落ち窪んでいた。 ゆっくりフードで育った二匹は公園で取れるような餌をまともに食べられないのだった。 「お、おちびちゃん、た、ただいま……」 「やっちょ、かえってきちゃのじぇ! しゃっしゃと、ぎょはん、しろなのじぇ……」 「なにやっでるの、むのう、は、さっさと、ぎょはんになっちぇ、ね」 まりさの声に反応してギラギラした瞳を見せる赤ゆっくり二匹は萎びかけた身体を動かして、まりさに近寄っていく。 その眼には親に対する敬意もなく、ただ餌と見ていた。 「きょ、きょうは、やめに、しない? おとーさん、い、いたいいたいは、ゆっくりできな―――」 「「はぁぁぁぁぁあああぁあああ?!?!? なにいってるのぉおおぉおおおお!!!!!」」 「ゆひ!?」 親の言葉に死にかけの姿はどこにやら、怒りと怒りと怒りを混ぜ込んだ赤ゆっくりらしからぬ表情で叫ぶ。 「おばえみだいな むのうのせいで まりちゃたちはくるしんでるのじぇえええ!!!」 「おやづらするなら こどもぐらいゆっぐちさせろおぉおお!!!」 「「ごのおちびちゃんゆっぐりがぁぁぁぁああああ!!!」」 「ご、ごべん、ごべんねぇ…………」 最愛の我が子に詰め寄られてまりさは、涙を流して謝罪をしたが、それでも赤ゆっくりは怒りを納めない。 「あやばっでるひまがあったら、ぎょはんだろぉおおがぁああ!!」 「ごのむのう! くしょげしゅぅううう!!」 「…………ゆ、ゆぅ、ゆっくりりかい、したよ」 まりさはビニールの隅に置かれた、重石代わりの尖った石をお下げで持ち上げると、トイレの壁と自分のお腹の間に挟んで。 「ゆ、ぐ、ゆっぐ、ゆぐ…………」 「しゃっしゃと!」「すぎゅしろ!」 チラッと視線を向けた先では、赤ゆっくりは涎を垂らして待ちかねていた。 「かりもろきゅにできにゃいんだから!」「しゃっしゃとぎょはんになるのじぇえ!!」 その声に背中を押されて、まりさは尖った石をお腹に押し付けたまま、前にジャンプをした。 「ゆっぎぃいぃいいいいいいい!?!?!?」 「やっちゃのじぇ!」「あみゃあみゃ! あみゃあみゃぁああ!!」 お腹に押し付けたままジャンプをした結果、まりさの柔らかい饅頭皮を突き破って石が刺さっていた。 「ゆぐ、ゆぎ、い、いじゃい……!」 涙を流しながら、まりさは石を引き抜くとそこから餡子が漏れ出していた。 赤ゆっくり二匹は、そんなまりさに見向きもしないで零れ落ちた餡子に群がっていく。 これがこの二匹の主な食事だった。 「あみゃあみゃ! あみゃあみゃぁあ!!」「くじゅのあんこでも、しょれなりなのじぇえ!!」 「お、おちびちゃん、ゆ、ゆっくりしてい、ゆぎゃぁぁあああ!!」 何とかゆっくりしだしてくれた我が子に涙の中で笑顔を見せようとしたが、直ぐにそれも苦痛に変わる。 「もっちょ! もっちょだしゅのじぇ!」 「いいよ! まいしゃ! きいちぇるよ!」 「やべ! おちび、やべでぇぇえええええ!!」 赤まりさが、もっと餡子を零させようとまりさの傷口近くに体当たりを繰り出していた。 餡子に響く傷みにまりさは身体をもるんもるんと震わせて、大声を上げて泣いていた。 「まんじょくにかりもできにゃい、おちびちゃんゆっくちなんじゃから、これぎゅらいしてとーじぇんなのじぇ!」 「しょーだよ! れいみゅたちをゆっくちさせられにゃいむのーなんじゃから!」 その泣く姿を見て、赤ゆっくりたちは心を満たして、親の餡子で腹を満たしていく。 まりさは、枯れない涙をいつまでも流していた。 どうしてこんな目にあっているか、死ぬその日まで考えながら。
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『野良に過ぎたるもの』 10KB 思いやり 仲違い 嫉妬 戦闘 同族殺し 群れ ニア殺してでも奪いとる 教授あきの作品です 飼いゆっくりの思考が異常に発達してます それでもよろしければどうぞ ゆっくりグッズの中には、当然ゆっくり用の玩具も含まれている。 玩具にも色々と種類があるが、各種類向け、というものも少なくない。 有名なものだとみょん種のろーかんけんとはくろーけん、れみりゃのぐんぐにるなどがそうだ。 イメージとしてはカモネギの長ネギやカラカラの大きな骨が近い。 そして当然れいむにもそういった専用アイテムがあり、主に3種類。 1つは「おんみょーだま」 野球ボール程の大きさをした太極図を模したボールで、ころころ転がしたりもみあげで投げたりして遊ぶアイテムだ。 もう1つは「おふだ」 お経っぽい文字が書かれているテレフォンカード大のカードで、トレカのようなものだ。 そして最後の1つが「おはらいぼう」である。 大幣――正しくは御幣という、神事に使われる道具を模した玩具だ。 どれもゆっくりが無茶な使い方をしても問題ないような、しっかりとした作りをしているのだが、その分非常に高い。 「ゆわーい! お兄さんゆっくりありがとー!」 ぽよんぽよんという音を立てているのは俺の飼いゆっくりのれいむ。 胴無しの銅バッヂではあるものも、人に感謝する事が出来る、ある意味大当たりなれいむだ。 「このおはらいぼうさん、とってもゆっくりできるよ!」 そのれいむはジグザグになった布が付いた木の棒を嬉しそうにもみあげで振っていた。 「それでよかったのか? 加工所のと結構違うけど」 「ゆん! とってもゆっくりできるよ!」 俺がそう尋ねたのは、今れいむが遊んでいるおはらいぼうが加工所で作られたグッズではなく、俺のお手製だからだ。 親が新聞紙を丸めて作った剣でチャンバラをやったという記憶は誰にしもあるだろう。 子供が出来たら、一番やりたいと思っていたのがそれだ。 自分が作った玩具で子供と遊びたい、というのが俺の夢である。 おはらいぼうを作ろうと思ったきっかけは、知り合いが自分の飼いゆっくりに作ったというゆっくり用の竹刀だ。 折れて使えなくなった竹刀に手を加えてゆっくりサイズにしたその竹刀を見て、自分でも作りたいと思った訳だ。 と言っても、俺が作ったおはらいぼうは竹刀に比べれば簡単に作れた。 布に切り込みを入れてミシンで縫いとめ、棒に結びつけるだけ。子供でも出来る。 加工所の大幣は特殊な和紙を使うが、入手のしやすさと耐久性を考えて布を使うことにした。 そのかわり白だけでなく赤・青・黄・緑の合計5色の布を使って、色だけは豪華になっている。 「ゆーん、ゆーん! おはらいぼうさんでお兄さんの穢れさんをゆっくり払うよー!」 まるで神社の巫女のように、もみあげで持ったおはらいぼうを左右に振った。 「お前……なんで銅バッヂなんだろうなぁ」 所謂金ゲスと呼ばれる不良品がいる反面、こいつのような大当たりがいる。 バッヂ制度というのも、ゆっくりに負けず劣らずいい加減なのかもしれない。 その翌日 「ゆわああああああああん! おにいさああああああん!」 勉強している間庭で遊ばせていたら、れいむが泣きながら家に入ってきた。 しかも転んだのか、少し汚れている。 「どうした……っておはらいぼうどうした?」 そう、アレほど気に入って、外に出るときも持っていた筈のおはらいぼうがなくなっていたのだ。 「のらのれいむにもってかれちゃったあああああああ!」 「はあっ!?」 れいむの話をまとめるとこうだ。 庭で一人で遊んでいると庭に野良れいむの親子がやってきたらしい。 そして野良れいむがれいむのおはらいぼうに目をつけて寄越せと言ってきたそうな。 当然嫌がるものも、荒っぽい野良と取っ組み合いになり、押し飛ばされた。汚れているのはその為だ。 その拍子におはらいぼうを手放してしまい、その隙を狙って野良れいむがおはらいぼうを奪われてしまったという訳だ。 「野良って事は、公園のゆっくりか……」 「ゆぅん。あのれいむは公園でみた覚えがあるよ」 同じゆっくりのれいむが言うのだから間違いはないだろう。 「お兄さんごめんなさい……」 れいむが涙目になって頭を下げるが、それを手を制する。 「れいむ、もう少ししたらでかけるぞ」 「……ゆん?」 俺の予想が正しければ、恐らくそのれいむだけでなく、公園の野良が悲惨な事になっている筈だ。 そう言う訳でそれから約30分後、俺たちは直ぐ近くにある博麗公園に来た訳だが…… 「ど、どうなってるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「あー、やっぱりなぁ」 その光景にれいむは絶叫し、俺は頬を掻いた。 博麗公園はこの近辺でも最大規模の公園で、そこに住んでる野良ゆっくりの数もそれなりの数が“いた”。 過去形なのは、つまるところ、どのゆっくりもすでにえいえんにゆっくりしているからだ。 公園の広場は大量の餡と小麦粉の皮がアチラコチラに散らかっている。 どれもこれも、約30分前までは、普通のゆっくりと同じようにゆっくりしていたのだろうが、今となってはただの生ゴミだ。 その中で一匹だけ、でいぶが餡の海の中であのおはらいぼうを杖にしてもたれかかっていた。 「ゆひぃ、ゆひぃ……これでおはらいぼうさんはでいぶのものだよ……」 「んな訳あるか!」 その一匹だけ残ったでいぶから、おはらいぼうを奪い返す。 するとでいぶはは絶望した目で俺を見上げ、叫びをあげた。 「ど、どうじでにんげんざんが!? ぞれはでいぶのおばらいぼうざんだよ!」 「そいつは俺がこいつのために作ってやったおはらいぼうだ。ここの群れの糞饅頭がこいつから強奪してったんだ」 「しらないよぉぉぉぉ! このゆっくりしたおはらいぼうさんはでいぶがかちとったんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 事情を説明するが、それでもこのでいぶは認めようとしない。 「殺してでも奪いとった、ってか? だが、それを本当にやるとはなぁ」 その場に直接いた訳ではないが、予想するのは小学校のテストを解くよりも簡単だ。 『ゆっゆゆ~ん! すてきなすてきなおはらいぼうさんをてにれたよ~!」 意気揚々と公園に凱旋してきた泥棒でいぶ。 それを見て、ここにいた群れのれいみゅからでいぶにいたるすべてのれいむ種は羨望の眼差しで見ただろう。 『な、なにそれ! とってもゆっくりしっているよ!?』『とってもゆっくりしてるおはらいぼうさんだよ!』 だが、他人がゆっくりしているとそれを自分も手に入れたくなるのがゆっくりである。 『みゃみゃー! れいみゅもあれほしいー!』『ゆゆっ! そうだね、おかーさんもほしいよ!』 そして恐らく最初の一匹が、 『そのゆっくりしたおはらいぼうさんはとってもゆっくりしてるれいむにふさっわしいよ! わかったられいむはゆっくりしないでおはらいぼうさんをれいむにちょうだいね!』 とか言って、ここにいる全てのれいむの欲望を溜め込んだダムに亀裂を作ったのだろう。 そして、ダムは崩壊し、争いがうまれた。 『いいからそのおはらいぼうさんをよこせぇぇぇ!』 『ふ、ふざけるな! このおはらいぼうさんはでいぶべぇぇぇぇ!』 『ゆふっ、ゆふふふ! これはでいぶのおはらいぼうさんだげえええええええ!』 血で血を……もとい餡で餡を洗う血みどろの争い。 全ては自分だけがゆっくりするため。 最初はれいむ種だけだったろうが『おちょーしゃんはかりのめいっじんなんでしょおおおお!?』などの自尊心に問いかける言葉に、まりさ種やみょん種も参戦しだす。 最初は子供のためだっただろうが、次第に闘争心をむき出しにして自分の名誉のために戦いだしだだろう。 その異常な光景に、ぱちゅりー種は勝手に中身を吐き出し、ありす種はとち狂ってれいぱーに変貌して亡骸をれいぷし、討伐される。 かくして、ここにゆっくりによるゆっくりのための地獄が完成した訳だ。 「……他人のゆっくりは許せない。すべてのゆっくりは自分だけのものとは、よく言ったものだ」 「かえしてね! そのおはらいぼうさんはでいぶのだよ!」 怒り狂って俺に体当たりをするでいぶを見下ろして、俺はでいぶに説明しよとする。 「だいたいさ、お前らこれが人が作ったものだって知ってるだろ。つまり最初に持ってたでいぶが盗むか奪ってきたものだって、普通分かるだろ」 「それがどうしたっていうの!? そのおはらいぼうさんはでいぶのものなんだよ! それはせかいのせんったくなんだよ! おにいさんはゆっくりしないでりかいしてね!」 まぁ、わかっていた事だ。 ここの群れのゆっくりは比較的賢いと思っていたが……いや、違うな。 「なあお前……「この馬鹿れいむっ!」……なに?」 俺がそれを指摘しようとして口を開いたと同時に、ウチのれいむがでいぶの頬をもみあげで叩いた。 普段大人しいれいむだが、今はとんでもなく怒っていた。 「たしかにおはらいぼうさんはゆっくりできるよ。でも、だからって他ゆんのものを奪ってまでゆっくりするのはゆっくりしてないゆっくりのすることだよ!」 「ゆひぃぃぃっ!」 あまりの剣幕にでいぶがビビる。 「それに、友達を永遠にゆっくりさせちゃったら、もう一緒に遊べないんだよ? もう一緒にゆっくりできないんだよ? それがどいうことかわかってるでしょおおおおお!」 「ゆぅっ!? そ、そんなの……そんなのわがっでるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 目から滝のように砂糖水の涙を流すでいぶ。 「でもしょうがないでしょおおおおお! れいむは飼いゆっくりだからわからないんだよおおおおおおおおお!」 まぁ、でいぶが言いたいことも分からんでもない。 なにせ野良ゆっくりは毎日が死と隣り合わせだ。 そんな中で、とてつもなくゆっくり出来るアイテムは、飼いゆっくりにとっての価値よりも何倍もの価値がある。 だが…… 「じゃあ、れいむにとってこのおはらいぼうさんは、友達よりも価値のあるものなの? ゆっくりできるものなの?」 れいむにそう言われて、でいぶはより大きな声で泣き叫んだ。 でいぶにだってわかっているのだ。 自分が殺してでも奪いとった布が付いているだけの棒切れと、今まで困難を乗り越えて一緒にゆっくりしてきた仲間と、どちらが大切なのか。 だが、それに気付いたのが少し……遅すぎたのだ。 「……おにいさん」 20分くらいしてやっと泣き止んだでいぶが、加工所を待っていた俺に話しかけてきた。 まぁ、俺が悪い訳ではないが、どちらかと言えば被害者だが、一応関係者として加工所に連絡をしたのだ。 「おはらいぼうさんをでいぶにゆずってほしいんだよ」 他の野良のような高圧的な要求ではなく、誠意のある懇願だ。 「……だってよ、れいむ。どうする?」 俺はあえてウチのれいむに尋ねた。 すると、れいむは何も言わずにおはらいぼうをでいぶに渡した。 「お前、これからどうするんだ」 この公園にいるのはもはやこのでいぶだけだ。 「でいぶはここにのこるよ。それがでいぶのせきっにんだよ」 「そうか。まぁ、ここで死ぬのが怖いとか、死にたくないなんて言っていたら踏みつぶしているところだが……加工所の職員には上手く言っておくよ。だがいざとなったらウチに来な。多少は面倒見てやる」 そこで丁度加工所の車が来たので、職員の人に事情を説明してれいむと共に家に帰った。 加工所の人はもともと一斉駆除するつもりはなかったので、あのでいぶを生かしておいて欲しいという頼みを聞いてくれた。 「お兄さんごめんね。せっかく作ってくれたおはらいぼうさんをあげちゃって」 帰り道で、俺に抱えられたれいむが俺に謝った。 「でも、あのおはらいぼうさんまでなくなっちゃったら、あの子にはなにもなくなっちゃうんだよ……」 「わかってる。俺も少しだが同情してるからな」 仲間もなくなり、仲間を代償にして手にれたおはらいぼうもなくなり、ではあまりにも酷過ぎる。 「まぁいいさ。また作ってやるよ」 「ゆふ~ん! お兄さんありがとう!」 あとがき てんぷらさんの描くゆっくりはかわいいよね! キリさんのれいみゅはなぁ。いじめてオーラがなぁ。ヒャッハー! 教授あきの過去作品 http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/3754.html 教授あきの感想掲示板 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1314547340/l50
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『お風呂場のれいむ』 4KB 小ネタ 自業自得 飼いゆ 都会 現代 人間なし 独自設定 実験作の小ネタです こういった作風のものにも挑戦 実験作です。 れいむの思考だけで構成されています、実際は一部口に出していそうな感じですが。 今回は読み易さを考慮して漢字を使ってあります。 お風呂場のれいむ 今日はぽっかぽっか、れいむの心もぽっかぽか! お兄さんが用意してくれたごはんさんは美味しいね! れいむとってもゆっくりできるよ! ゆゆーん、なんだか眠くなってきちゃったよ。 ゆっくりねるよ……。 ゆっくりおやすみ……。 ゆゆっ! ゆっくりおきたよ! お日様さんも、傾いちゃってるね。 もうすぐお兄さんが帰ってくるよ! まだかな? まだかな? ゆうー……お兄さんが帰ってくるまで、つまんない、つまんないだよ。 そうだ、ゆっくりおうちの中を探検しよう! ゆんゆんゆん~♪ れいむのたんっけん楽しいなー! ゆ? お風呂場さんのドアが開いてるよ。 ゆわあ……お風呂場さんの窓さんから、まっかな、まっかな夕日さんが見えるよぉ! もっと近くにいくよ! ゆっくり! ゆっくり! ゆぅ~ん♪ 夕日さん、とってもきれいだよぉ……。 れいむ、もっと近くで見たいな。夕日さん、見たいな。 風呂桶さんの上からなら、もっとよく見えるのに。 ――ちょっとだけだよ、わるさするわけじゃないから、大丈夫だよね! ゆっゆっゆっ……、ゆわぁ、風呂桶さんは高い高いだよ。 届くかなあ……大丈夫かなあ……? ゆっ……くりっ! 飛び越えたよっ! れいむ、カンガルーさんみたいでごめんねっ! ゆ? お、おそらっ……! いたいよぉ……。お兄さん、蓋さんも閉め忘れてるよぉ……。 ゆっくり出るよっ! ――ゆべっ!? ゆううううう! お風呂の床さん、つるつるで、ぴょんぴょんできないよぉ……。 ゆうしょっ! ゆうしょっ! どぼぢで出られないの!? れいむ悪いことしてないのに! どうしよう、夕日さんが沈む頃に、お風呂さんのお湯が出てきちゃうよ。 それまでに、ここから出ないと、れいむ、溶けちゃうよ……。 ゆぅ……床さん、壁さん、意地悪しないでれいむを出してね……。 ゆっ、お湯さんが出てきたよ! やめてね! ゆっくりやめてね! ゆぅぅ! どぼぢでお湯さんいじわるするのおおお!? ゆっくり向こう側に逃げるよ! お湯さん! 来ないでね! 来ないでね! ――駄目だよぉ……。お湯さん止まってくれないよぉ……。 ごーくごーくするよ! ………………駄目だよ。お湯さん一杯すぎるよぉ……。 もう駄目だよぉ……。お兄さん、助けて。 れいむを助けて! 何でもいうこと聞きます! きちんと挨拶が出来るようになります! おねしょもしません! うんうんはちゃんと、おトイレでします! むーしゃむーしゃでお部屋も汚しません! ゆっくりフードも、それなりー! でいいです! 番が出来ても、勝手にすっきりー! したりしません! お兄さんにありがとうをいうのも忘れません! だから、れいむを助けて!!!!!!!!!! ――もう、あんよさんがぶよぶよだよ……。 れいむ、このまま死んじゃうのかな……? 何も、悪いことしてないのに。 お兄さんと、もっとゆっくりしたいのに。 そうだ……れいむ、お兄さんの言いつけを守ってなかったね。 お風呂さんに勝手に入っちゃったね。 ごめんね、お兄さん。 れいむ、悪い子だったね。 れいむがこうなったのも、悪い子だったからだね。 でも、叶うなら、お兄さんともっとゆっくりしたかったな。 ずっと、ずーっと、ゆっくりしたかったな。 れいむ、死にたくないな……。 死にたくない……。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 ――ごめんなさい。 過去の作品 anko2817 十字傷みょんの出逢い anko2813 ちぇんが敬遠される三つの理由 anko2795 ゆっくり◯◯の一日 anko2788 畑荒らしの正体 anko2785 ゆっくりとお正月を満喫しよう! anko2758 作ろう!ドスまりさ! anko2753 共生 anko2751 ゆっくり餅 anko2737 イヴの夜に anko2561 すぃーはゆっくりできない anko2516 読書の秋 anko2514 新発見、ゆっくりの新しい移動法 anko2504 冷凍ゆっくり anko2503 新たなエネルギー源 anko2501 胴付きになりたかったまりさ anko2498 日本を支える一大産業(本編) anko2495 一番多いゆっくりは コンバートあき 挿絵:○○あき
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『弱くないまりさ』 26KB いじめ いたづら 自業自得 日常模様 お家宣言 野良ゆ 自然界 現代 独自設定 ありがちネタ ありがちなネタな気がするから被ってる可能性がとっても高いよ! それを考えるとすっごい怖いよ! しかもそんなネタですら上手く料理できてないよ! ネタ被ってたらごめんね! つまんなかったらごめんね! 許してね! 許したらあまあまもってきてね 注意事項 ・俺設定注意 ・善良(?)ゆっくり死亡注意 ・虐待殆ど無し注意 それではどうぞ 実のところ、ゆっくりという生物(ナマモノ)は決して弱くないのだ。 『弱くないまりさ』 まりさは群れで一番強いのだ。 自分でそう思っているし、森の中に住んでいる群れのみんなもそう考えている。 その若ゆっくりのまりさは、群れでもダントツに素早いちぇんにかけっこで勝つことができた。 また、木の枝を巧みに操るようむにちゃんばらで勝つことだってできた。 長である年老いたぱちゅりーのきょうっいくっにもまりさ種とは思えない理解力を示し、 とかいはなありす達に並ぶほど物作り(笑)の技術もある。 は? れいむ? ゆっくりプレイスに襲来した胴無し子れみりゃを死闘(笑)の末に打ち倒した頃には、 文武両道を地で行くまりさは群れの勇者(笑)として尊敬と羨望の眼差しを一身に受ける存在になっていた。 普通であればここで驕り高ぶり、ゆっくり特有のゲス気質を発揮して群れを壊滅させたりするものだが、 まりさは鍛練や実績からくるプライドを持ちつつも他ゆんを見くびることをしないゆっくりに育った。 殊更に美ゆっくりとして生まれたわけではないが、おぼうしの形も悪くない。 いや、どちらかと言うのならば、むしろ整った方である。 誰にでも分け隔てなく爽やかな笑顔を向けるまりさと会話をして、頬を赤らめずにいられる未婚ゆっくりはいなかった。 力が強く、技を持ち、頭も悪くなく、そして善良。 野生ゆっくりの群れの中では数十世代に一匹生まれるか生まれないか、 まりさはそんな優れたゆっくりである。 ―――――――――――――――――――― 「ゆっ! それじゃあ、まりさはかりにいってくるよ! おやさいさんをたくっさんっとってくるからゆっくりきたいしててね! かってにはえるおやさいさんをひとりじめするにんげんさんたちをこらしめてくるからね!」 「「「ゆぅーっ! まりさ、ゆっくりがんばってね!」」」 これである。 いかに優秀とは言え、そこは野生ゆっくりの限界。 "勝手に生えてくるお野菜さんを人間さんは独り占めしている" "人間さんは強いけど、まりさ程の勇者なら懲らしめることだって不可能ではない" 残念だが、このような幻想から逃れることはできなかったようだ。 狩り(笑) …群れを離れて数日、辛く険しいまりさの長旅の終着点には素晴らしい景色が広がっていた。 見渡す限りの広大な空き地に、数え切れないくらいのお野菜さん。 群れのみんながここで暮らせば、一体どれほどのしあわせーを享受することができるのだろうか。 ぱちゅりーのおはなしできいてはいたけど、まさかここまでのゆっくりぷれいすだったとはっ…! 幼馴染である"はやぶさのちぇん"や"えんげつさっぽうのようむ"と共に幾多の冒険を繰り広げ、 野生ゆっくりでは考えられないほど多種多様な経験を積んだ"ゆうしゃまりさ"ではあるがしかし、 想像を絶するほど豊かなプレイスを前にして、うれしーしーとおそろ(畏ろ)しーしーを止めることなどできなかった。 胸(?)をぐるぐると駆け巡る感動、そして畏れ。 筆舌に尽くしがたい感情(笑)の渦に身を震わせていたまりさの中に、一つの言葉が浮かんでくる。 は…… た…… け…… それは自分の両親から聞いた言葉ではなく、尊敬する老賢者の長から教わった単語でもない。 まりさの体の内側よりじわじわと滲み出てきた温かい気持ち。 ゆっくりである自分の中に代々受け継がれてきた、本能が伝えてくる言葉であった。 は…た…け…? はたけ…。 ゆっ、そうなんだね このゆっくりぷれいすは"はたけ"さんっていうんだね! 不思議な感覚であったが、まりさはそれを素直に受け止める。 恐るべき咆哮で大地を揺らす獰猛な魔獣(子イヌ) 剣を弾く鎧のような鱗を纏った死を司るドラゴン(子ヘビ) 旅の途中、それまで培った知恵と勇気が通用しない死地において、常に自分を救ってくれたのはこの"本能"だったのだ。 毎日へとへとになるまで繰り返した肉体の鍛練。 ゆっくりと時間をかけて育ててきた知恵と知識。 そしてどんなときでも心の片隅に置いていた全てのゆっくりのしあわせー。 それら全てを駆使して辿りついた場所は、もはやこの世のものとは思えない桃源郷であった。 まりさは理由も分からずぼやける視界を戻すように、一度だけ時間をかけてまばたきをした。 ほんの少し顔を上げ、いまだ止まらない体と心の震えに全てを委ね、その顔はキリッとしたドヤ顔を形作る。 深く深く息を吸い込んで、自然に生まれた笑顔が大きく口を開き…… 「このはたけさんを、まりさたちのゆっくりぷれいすにするよっ!!」 万感の想いと共に、輝かしい"おうちせんげん"が飛び出した。 ―――――――――――――――――――― 「またか…」 思わず溜息をついてしまった。 諦めに似た気分で四、五メートルほど離れた場所で騒ぐ不思議饅頭に目を向ける。 手に持っていたクワを傍に置き、少しずれた麦わら帽子の位置を戻して、 農夫は黒い帽子のゆっくりに近づいて行った。 確か"まりえ"…… いや、前にテレビで聞いたのは"まりあ"だったか? そのゆっくりの名前は覚えていないが、まあそんなことはどうでもいい。 大切なのは、森に近い場所に作ってしまったこの畑の野菜を、時々現れる饅頭が狙っているということだ。 「おい、そこのゆっくり」 「…ゆ?」 なんだかぷるぷると震えていたゆっくりが、こっちを向いた。 声をかけられると思っていなかったのか、不思議そうな表情をしている。 小汚い。 人間の帽子を真似たような形の物体を頭に乗せているが、途中からぐちゃっと折れ曲がっている。 体には土がついているのか、ところどころ茶色い染みが出来ていた。 食品である普通の饅頭と同じ材質、成分だとは知られてるが、 あんな薄汚れた物が地面に転がっていて、食べる人間なんているのだろうか 肌にこびりついている茶色い染み。 土ならばまだ水で流せばいいが、自然の野原を転げまわっている野生ゆっくりのことだ。 それが野生動物の糞などでないという保証はどこにもない。 衛生的に問題無いよう加工するとは言え、肥料として家畜の排泄物を畑にまくことは現在でもある。 この野菜も糞尿にまみれて育ったと考えられないことはないが…。 いやいや、それでもアレは無いな(笑) というか野菜と一緒に考えるのは極端すぎたか 「…………? …………? …………! ………ゆっ!?」 ぽかんとした間抜けな顔が、短い鳴き声と共に驚愕の表情っぽいものに変化した。 他の生物と比べたゆっくりの無能ぶりを舐めてかかってはいけない。 こちらを向いてたっぷり1分は使ったが、ようやく目の前の自分に気がついたのだろう。 これが噂の餡子脳だ。 いつもなら即潰して捨てるだけのゆっくりだが、そろそろキリのいい時間帯である。 休憩がてら野生の饅頭にちょっかいを出してみるのも悪くはない。 このゆっくりはどういう反応をするのだろうか。 気分がのっている今なら、意味も無く潰したりすることもしない。 素直だったり運のいいゆっくりなら生き延びることはできるだろうが、さて。 ―――――――――――――――――――― 突如現れた巨大な影に、まりさは素早く警戒を強めた。 大地に突き刺さる、巨木を思わせる二本の柱。 更に見上げれば、その上に用途の分からぬ謎の塊。 両側からはれいむのおさげさんと同等の働きをする二つの触手。 そして遥か頂上に見える、ゆっくりのお顔を模した体。 ぱちゅりーに聞いている。 その性質は野蛮で残忍。 餡子もクリームも(人間で言うところの「血も涙も」)無い卑劣な手段を好んで使う。 軽々と振るう力は大のゆっくり数ゆん分。(笑) かけっこ自慢のちぇん種に負けずとも劣らぬ速度で大地を移動し、(笑) その無尽蔵の体力と言ったら、狩りの得意なまりさ種を僅かに凌ぐほど。(笑) そして悪知恵だけならぱちゅりー種をも超えるという。(笑) 主にお野菜の勝手に生えてくるゆっくりプレイスに生息する、最凶最悪の巨大生命体…!(笑) その名も"にんげん"さん!! 人間さんには十分注意しろ、と老賢者は眉間にしわを寄せて何度も言っていた。 群れの誰もが遭遇したことは無いが、その恐ろしさだけなら誰でも知っている。 人間さんの中にも道理を理解し、穏やかな気質でゆっくりに従う種族がいると伝わっているが、 それも他の種族と比べたらほんの少ししか生息していないという。 少なくとも、目の前の一匹がマトモな方だと考えるのは早計に過ぎる。 お野菜さんのことを習って人間さんの存在を知った日から、 たとえ相手がその恐るべき悪魔であろうと勝利を勝ち取るため訓練を積んできたという自負を持つまりさ。 しかし、それでも戦闘になれば苦戦を強いられることは間違いない。 いや、下手をすれば負けてしまう可能性だって考えられないことではないのだという。 目の前の人間さんは知性を持った"めで"種族か、それとも強大な力を無闇に振るう"ぎゃくたい"種族なのか。 判別法をぱちゅりーに教わったことを思い出したまりさは、勇気を振り絞って巨大な生き物に問うた。 「ゆっ… にんげんさん! ゆっくりしていってね!?」 「はいはいゆっくりゆっくり」 なんと、彼方の空より響いてきたのはちゃんとした挨拶ではなかった…! ゆぅ、ゆっくりしてないごあいさつだよ これは"めで"じゃないにんげんさんなんだね… まりさは人間さんに気付かれぬよう、警戒の度合いを少し強める。 だが、お野菜さんの生えるプレイスを人間さんが徘徊しているだろうことは百も承知。 その個体が"めで"ではないという可能性だって、もちろん考慮していた。 そう、この次に待っているのはカスタードをチョコレートで(人間で言うところの「血を血で」)洗う死闘なのだ…! しかし如何に理知に欠け、ゆっくりしていない種族とはいえども、無闇に傷つけることをまりさはよしとしない。 全てにおいて完全であるように思えるまりさ。 その唯一の欠点は、獰猛な獣に対しても優しさとゆっくりを与えてしまうという"甘さ"であった。 「にんげんさん! このゆっくりぷれいすはまりさがおうちせんげんしたんだよ! にんげんさんはでていってね! でも、すこしくらいならゆっくりしてもいいからね! ゆっくりしていってね!」 まりさは人間さんを理性で説き伏せることはできないと知ってはいたが、 それでも、温かい慈悲を見せれば心を入れ替えることもあるのではないかと少しだけ期待をかけていた。 ほんの短い間とはいえ、自分のゆっくりプレイスでゆっくりすることを許す。 まりさは人間さんが怯えることの無いよう、優しく穏やかな笑顔を浮かべて伝える。 「……………………」 しかし人間さんは答えない。 彼方を向いて、ああ…そうそう"まりさ"だった…、などと呟いているが、まりさに喋っているのではないのだろう。 もしや、言葉が通じないのか…? 致命的に問題をややこしくさせる可能性にも頭がいったまりさだったが、 一応、言語を扱うことはできると長が教えてくれたのを思い出し、落ち着きを取り戻すまりさ。 そう言えば、先ほども"ゆっくり"という言葉を使っていた。 カタコトではあるが、聞いたり喋ったりする程度の知恵はあるのだろう。 そう思ったまりさは、人間さんの返答をゆっくり待つことにした。 「ふむ、まりさよ お前がおうちせんげんした時、俺は少し向こうにいたよな? だからこのエリア…… いや、ここらへんのプレイスは俺がいないと思ったんだろう」 雲を突き抜ける高みから、人間さんのものと思われる声がようやく届いてきた。 「だがな、お前が今立っているプレイスも俺がさっきいたプレイスも、 実は一つに繋がっているんだ つまり、お前は俺がいたゆっくりプレイスでおうちせんげんしてしまったんだよ」 な…、何を言っているのだこいつは? まりさは愕然とした。 自分達の"おうちせんげん"には、たった一つだけ欠点が存在している。 それは「誰かがいることに気付かず、おうちせんげんしてしまうこと」である。 おうちせんげんは、そのプレイスが自分のものであるという唯一にして確実な証拠。 しかし、先住ゆんの存在に気付かずに行ってしまえば、そのプレイスは誰のものになってしまうのか? この複雑怪奇な問題に対し、ゆっくり達は正しい答えを持っている。 即ち、先に住んでいるゆっくりが後から来たゆっくりのおうちせんげんを邪魔すればいい、ということだ。 そうすれば、先住ゆんに気付かずにおうちせんげんをしかけたゆっくりも、誰かが先にいた事実を理解する。 丁寧に問題点を洗い出され、緻密に組み立てられた"おうちせんげん"システムは完全無欠の法となった。 これは自分達の群れだけではなく、他の群れでも同様に行われているようだ。 まりさが子供の頃にこのお話を聞いたとき、餡子に衝撃を受けたことを覚えている。 自分達の群れだけではない、この広い世界全てのゆっくりが使っている完璧な"おうちせんげん"。 それはつまり、住んでいる土地や文化に関わらず、ゆっくりなら誰でも"おうちせんげん"を思いつき得るということ。 "ゆっくり"という生命に眠る知恵のポテンシャル。 その高さに、まりさは大きな感動を覚えたのだった。 ……だと言うのに! この人間さんは意味の分からない理論を展開し、自分を正当化しようとしてくる! 先にゆっくりプレイスに住んでいる場合、他ゆんのおうちせんげんには途中で声をかける。 生後一週間を過ぎれば赤ゆっくりでも知っているこの方法を、人間さんは行わなかったのだ。 それどころか、恥知らずな人間さんは勝手に都合よくシステムを作りかえ、ゆっくりプレイスの所有権を主張してきた。 それは即ちルール違反! ゆっくりしていないゆっくりとして、即座におうちから叩き出されても仕方ないのだ! 心優しいまりさとて、流石にこれには怒りを覚える。 正義感の強い父に育てられたまりさは、卑劣な行為をなによりも憎んでいるのだ。 「にんげんさん! おうちせんげんがふふくなときは、おうちせんげんのとちゅうにおうちせんげんをするんだよ! そんなこともしらないの!? ばかなの!? かってなことをいわないでね!! まりさおこるよ!!」 それでもまりさは怒りに耐える。 人間さんは卑怯なのではなく物を知らないだけなのだと考え、丁寧に説明をしてあげる。 普通なら「ばかなの? しぬの?」と続けるところを「ばかなの?」で止めてあげることさえした。 それに対する返答は…… 「ほう、なるほどなるほど だがなあ、お前らゆっくりは知らないかもわからんが、 人間さんは元々"おうちせんげん"というのを使わないんだ」 「…………ゆ?」 一瞬、その生物の言っている言葉の内容が理解できず、まりさは硬直した。 その隙をついて、人間さんは更に話を続ける。 「そのルールだと、お家を留守にしている場合 他のゆっくりのおうちせんげんの途中に邪魔できないだろう? だから人間はおうちせんげんの代わりに"ここは自分のお家です"って文字で伝えることにしてるんだ」 めろすは激怒した。 失礼。 まりさは激怒した。 おうちを留守にするとおうちせんげんが邪魔できない? だからみんな、苦労をしておうちに"けっかい!"を張るのだ!! そう言えば、けっかい!が張れないなどと文句を付けるのか? だったらおちびちゃんにお留守番をしてもらえばいいだろう!! ああ言えばこう言い、こう言えばああ言う。 揚げ足取りにすらなっていない屁理屈を繰り返す人間さんの態度に、まりさは目の前が真っ白になったように錯覚した。 それは無論、生まれてこの方感じたことのないような怒りによるものである。 「ふっざけたことをいわないでねええええええええええええ!!? いまどき、おちびちゃんだってもっとまともないいわけをするよおおおおおおおおおおお!!!」 わなわなと怒りに震えるまりさ、ついに堪忍袋の緒が切れてしまった。 にんげんさんがこんなにもわからずやだったとはおもわなかったよ! まりさはもうおこったよ! ぷくー!じゃあすまされないよっ!! そしてまりさは話し合いで解決する意思を放棄する。 もちろん、まりさの知らない事実であるが、それは同時に"まりさの生存する可能性"を捨てることでもあった。 ―――――――――――――――――――― 「いいかげんにしろおおおおおおおおおおおおお!! おんっこうっなまりさもどたまにきたよおおおおおおおおおおおお!!!」 ぶるぶる痙攣していたと思ったら、そのゆっくりは突如ヨダレを撒き散らしながら怒りだしたようだった。 「う、うわっ…… これはキモい……」 歯をむき出しにして作られた表情は、はっきり言って通常の人間では直視に堪えないほど醜い。 ぐねぐねと軟体生物っぽく暴れまわるその動きは、地面と垂直に円を描いているようにも見える。 農夫は少し前のニュースで見た、急に人数が倍増した音楽ユニットのパフォーマンスを思い出した。 本題には関係ないが、先程まりさの主張した"おうちせんげん"。 これは通常「この○○○を、○○○のゆっくりぷれいすにするよ!」という言葉で行われる。 その言葉が開始してから終了するまでの間に先住ゆっくりがおうちせんげん返しをすることのできる可能性は、 普通種、希少種、胴付き、あらゆるゆっくりで調べた結果、0%だと加工所から発表されている。 ゆっくりはただでさえ頭が鈍く餡(脳)の回転が遅い生物(ナマモノ)であり、言葉を理解するだけでワンクッション、 自分にとってショックな内容の言葉だとさらにツークッションを必要としている。 他ゆんのおうちせんげんを言葉が完了してから理解するまでにかかる時間は、普通種で大体1分45秒とのことだ。 このまりさの群れでも、先住ゆんに気付かずにおうちせんげんが為されることは多い。 そうした場合は当然の如くゆっくり同士の殺し合いになるのだが、それを原因として一週間に平均5匹のゆっくりが死亡している事実は、 まりさは当然、長のぱちゅりー以下全てのゆっくりが知らないことである。 よくそれで群れとしてやっていけているものだ。 「ゆっうううううううううううううう!! もうがまんのげんっかいっだよ!! にんげんさんはすこし、いたいめにあったほうがいいよ!! まりさがこらしめてあげるよっ!!」 ひとしきり激昂してから動きを止めたまりさは、へたったおぼうしから木の棒を取り出して口に咥える。 「えいえんにゆっくりはさせないからあんしんしてね! ゆっくりしねええええええええええええええええええええええええ!!!」 とんでもなく矛盾したことを口走りつつ、こちらに向かってぴょんぴょん飛び跳ねてくるまりさ。 その鬼気迫る表情から、恐らく突進をしかけているつもりではないかと予測できる。 ゆっくり如きに人間を怪我させられる道理もないが、それでも尖った木の棒は危険だ。 ズボン越しとはいえ、スネにあたったらかなり痛いだろう。 もしかしたら絆創膏を貼らなければならない事態に陥る可能性もある。 「ふぁーんふぁーんうぃーひっざ……おっと」 当然だが、農夫はまりさが到達する前に軽く足をあげた。 するとこれまた当然、まりさは地面に顔から突っ伏すことになる。 口に木の棒を咥えていたために地面さんと熱いちゅっちゅをかますことにはならなかったが、 激突の瞬間にした"ベキィ!"なる音から、砂糖細工の歯が何本か折れたことが分かる。 「ゆべっ!? ……ばっ…! ばりざのさわやかにしろくかがやくしんじゅのようなはさんがああああああああああ!!?」 言うまでもないが、まりさの歯は白くない。 ゆっくりの歯は砂糖で出来ており、歯磨きなどしたら簡単に歯が削れてしまうのだ。 故に、飼いゆっくり以外のゆっくりの歯はすべからく薄汚れているのが常識である。 「お前の歯が真珠だってんなら、豚にくれてやっても惜しくないなあ… それはさておき、大丈夫か?」 「ゆぐぐ…! まりざのひっさつわざをよけたことはほめてあげるよ! でも、まぐれはなんかいもつづかないよ! こんどこそしねええええええええええええええええええええええええ!!(ぴょーん)」 「ほいっと」 「ゆばぁっ!?(バキィ!) ……ばっ…! ばりざのあらゆるまだむをみりょうするはりうっどはいゆうのようなはさんがああああああああああ!!?」 「そんな俳優はそもそもオーディションで落とされると思うなあ… もう5、6本は歯が抜けちまったぞ?」 「ゆふうっ…… ゆふふうっ……」 そんなやりとりが数回続き、まりさの口の中で無事な歯が2本以上続けて並んでいる場所が無くなってしまったころ、 ようやくまりさは人間に攻撃が当たらないことを理解したようだった。 「ど……! どぼじであだらないのおおおおおおおお!!? どぼじでええええええええええええええええええええ!!!?」 「そりゃあ、あんなに遅い攻撃じゃあな どんなにトロい人間でも、命中させるのは難しいと思うぞ」 「ゆううううううううううううううううううううううう!!?」 ちなみに一般的なまりさ種であれば、歯が1本折れた時点で負け惜しみと共に「もうおうちかえる」と叫び出すところだが、 このまりさはゆっくりにしては驚異的な忍耐力で痛みに耐え、攻撃をし続けた。 群れ一番の勇者の呼び名は、伊達ではないのだ(笑) 「あだればしぬんだああああああああああああああ!! よげるなあああああああああああああああああああああ!! よげないであだれええええええええええええええええええええええ!!」 先程の動きをぐねぐね再現しながら泣きわめくゆっくり。 凄まじく醜い。 「じゃあ、まりさ お前は他のゆっくりと喧嘩をするとき、相手の攻撃を避けないで当たってやるのか?」 「ゆ゛っ…!?」 キモい動きと漫画のような滝状の涙を止め、ちょっと考え込むまりさ。 農夫の一言で、自分の発言がかなりアホだったことを理解したのだ。 これはゆっくりにしては驚異的な理解力である。 群れの賢者に教えを請うた時間は、伊達ではないのだ(笑) 「…まあいいか ほら、次は当たってやるからもう一度攻撃してきな」 「ゆゆ!?」 調子に乗って余裕を見せてくる人間に、まりさは不敵な(と自分では思っている)笑みを浮かべた。 ゆぐふふふ… にんげんさんはばかだね! にんげんさんのぶきはその"ちぇん"とおなじくらいのすぴーどさん! そのすぴーどさんでこうげきをよけることのできるのがつよみなのに、 それをぽーいぽーいしてじぶんからあたりにきてくれるなんてね! こうっかいっするじかんはあたえないよ! せいぜいちょうしさんにのりすぎたことをこうっかいっしていってね! どうしろと言うのだろうか。 まりさはところどころ…いや、大多数が欠けてしまった歯で、再び木の棒を咥えた。 「くらえええええええええええええええええええええええええ!!」 ぴょーんぴょーん 間抜けな音とは裏腹に、憤怒の表情で迫ってくるキモ饅頭。 あの気持ち悪い顔が触るのはちょっとやだなあ、と農夫は若干後悔したが、約束は約束なのでぶつかるまで待ってやる。 「こんどこそほんとうにしねええええええええええええええええええええええ!!(ぴょーん)」 ザクゥッ!! まりさの咥えた木の枝は、かなり危険な長さまで一気に突き刺さった! お分かりだろうが、当然まりさ自身にである。 「…………………… ………あ…… あがああああああああああああああああああああああ!!? いだいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 地面に落ちてから数秒後、びったんびったん飛び跳ねながら、まりさは大口を開けて泣き始めた。 正しく言葉を操れているところを見ると、幸い木の枝は中枢餡に届いていないのだろう。 「どっでええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったん) ごれどっでええええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったんびったん)」 いましがた自分が攻撃した人間に情けない顔で懇願する汚饅頭。 はっはっは、と朗らかに笑いながら、農夫は木の枝を抜いてやった。 「ゆ゛ひっ… ゆ゛ひぃっ… …………………… ……………どっ… どぼじでばりざにざざるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!? どぼじでええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」 餡子の比重はそれなりに高い。 中身が全部餡子のれいむ種やまりさ種、それも成体ゆっくりとなればかなりの重量を誇る。 たとえ勢いの皆無なぴょーんぴょーん攻撃と言えども、全体重を木の枝に乗せてぶつかれば人間も大怪我は免れない。 が、それは木の枝とゆっくりがガッチリ固定されている場合に限る。 一般的に、人間が物を噛む力の最大値は体重と同程度と言われる。 しかしゆっくりの場合、自分の体重と同じくらいの力が砂糖の歯に加われば、即座に歯が砕け散ってしまうのだ。 故にゆっくりの咬筋力は他の生物と比較して、驚くほどの弱さを誇る。 健康的な成体まりさが全力で噛んで歯ぎしりした結果、十分に濡れたコピー用紙にギリギリ穴が開いたと加工所から発表されている。 そんな力で雑多な食事をすることができるのは、ゆっくり特有の思い込みの力によるものだとか。 そういった意味のことをまりさでも理解できるように、農夫は簡単な言葉で懇切丁寧に教えてあげた。 噛む力が弱ければ、武器を持ったとしてもダメージは与えられない。 ならばと体当たりをすれば、ゆっくり程度の跳躍力では中身入り2Lペットボトルをどうにか倒すのが関の山だ。 ゆっくりが人間にも有効な攻撃をするのは、非常に非常に非常に難しい問題なのである。 「……………う…… うぞだああああああああああああああああああああああ!!! ばりざはむれいちっばんっのゆうしゃなんだあああああああああ!!! にんげんにもまげないんだあああああああああああああああああああああ!!!」 再び凄まじい表情で何度も飛び跳ねるまりさ。 確かにこの顔の醜さ、情けなさなら人間のそれにも負けることはないだろう。 「ゆがあああああああああああああああああああああああ!!!(びったんびったん) ばりざはよわぐないいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(びったんびったん) ばりざはよわぐないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(びったんびったん) よわぐないっでいえええええええええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったん)」 「おう? いや、お前が弱いとは言ってないよ」 「ゆがあああああああああああああああああああああああああああ!!(びったんびったん) ゆががああああああああああああああああああああああああああ……(びったんびったん) …………………(びったんびったん…) …………ゆっ?」 やはり数テンポ遅れて言葉の意味を理解したまりさは農夫を見る。 その顔には、侮蔑や冷笑の類は浮かんでいなかった。 「ま゛っ… まりざ、よわぐないの? まりざ、にんげんざんよりよわぐないの?」 「ああ 人間はゆっくりのことを"弱い"なんて思っちゃいないよ」 体の下半分に涙の痕を帯状に残したまりさの顔に、希望の光が差し込んできた。 「まりさ、お前はお花さんや虫さんを食べたりするよな」 「だ、だべるよっ! まりざ、おはなざんもむしざんもいっぱいだべるよっ! まりざはむれでいちっばんっかりが……」 「まりさはそのお花さんや虫さんを"弱い"とは言わないだろ?」 「………………ゆ?」 「そこらに転がってる石や草、空に浮かんだ雲、近くを流れてる川 別に、そういった"物"に強い弱いとか無いだろ?」 伊達ではないまりさには、農夫の言っている言葉の意味がおぼろげにだが理解できてきた。 漠然とした不安を抱え、ゆ? ゆ? と何度も聞き返す。 「だからな、まりさ "強い"とか"弱い"っていうのは、自分と少しはやりあえる生き物を表す言葉なんだ 人間にとってお前らゆっくりは路傍の石コロと大差無い 強さを測る以前に……」 不安はじわじわと大きくなる。 もはやまりさは自分でも理由が分からずに泣きそうな顔だ。 「……"敵"じゃないんだ "物"なんだよ まりさを含め、ゆっくりってのはさ」 群れの老賢者、とても賢いぱちゅりーの元できょうっいくっを受けたまりさは、やはり伊達では無かった。 とてもとても驚くべきことに、"価値観の違い"、"相手が自分をどう扱っているのか"をゆっくりながらに理解できてしまったのだ。 まりさはついに泣きだした。 「…ぢっ! ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ばりざはものじゃないよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 群れの勇者まりさ。 文武両道のまりさ。 強く賢く、みんなの憧れまりさは、群れの赤ゆっくりと同等以上の情けない顔で泣きわめく。 「ばりっ! ばりざっ! ばりざば! にんげんざんをごらじめにぎだんだよおおおおおおおお!! にんげんざんのでぎなんだよおおおおおおおおおおおお!!」 「はっはっはっは まりさ、敵っていうのは攻撃をしてくるものなんだぞ? お前くらい人間に無害な"物"は無いさ」 「ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! まぢがっでるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ぼらっ!(ぽいーん) ぼらぁっ!(ぽいーん) ばりざっ! ごうげぎじでるでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 ぽいーん、ぽいーん、と農夫に向かって飛び跳ねるまりさ。 しかし日々の農作業で鍛えこまれた足腰を持った農夫はビクともせず、ぶつかっては跳ね飛ばされるまりさを笑いながら見ていた。 「はっはっはっはっは そこの石コロが風で転がって足にぶつかってるのと変わらないなあ いや! それよりも痛くないかもしれないなあッ! はっはっはっはっはっは!!」 「ぢがうっ! ぢがうううううううううううううううう!! ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ぢがうでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ごうげぎでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「はっはっはっはっはっは!! あっはっはっはっはっはっは!! あっはっはっはゴホッ!ゲフぅっ! はひっ、はひーっ! むせたっ! あーっはっはっはっはっはっは!!」 「ぼらああああああああああああああああああ!!!(ぽいーん) ぼらあああああああああああああああああああああああああああ!!!(ぽいーん) ごうげぎだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!(ぽいーん) ごうげぎでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?(ぽいーん) ごうげぎじでるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?(ぽいーん)」 あっはっはっはっは……… ぽいーん、ぽいーん……… 十数分後。 周囲に響く間抜けな音と笑い声がやんで静かになった畑の一角には、ひとりの人間と、ひとかたまりの"物"があった。 少しずつ少しずつ黒ずんでいくその"物"は、しばらくの間微弱な痙攣を繰り返していたが、 笑い過ぎで腹筋を痛めた人間に通行の邪魔にならないよう道の端に放り投げられてから1分後、完全に動きを止めた。 野原に咲いた花は弱くない。 道端に転がっている石は弱くない。 ゆっくりも決して、弱くないのだ。 他に書いたSSさん ・anko2094 体感時間は黄金色
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『ゆっくりしてない?』 6KB 小ネタ 餡娘ちゃん四周年、おめでとうございます 失礼します。 『ゆっくりしてない?』 過去作 anko4445 邪気眼を持つ者とゆっくり anko4449 台風の目 anko4452 アメリカンゆんやッカー anko4456 お姉さんは魔女~れいむと、れいむのおちびちゃん~ anko4461 獅子は我が子を…… anko4464 裸の王様 anko4475 二択 anko4494 痛みを喚ぶ者 anko4497 ゆんビックキューブ anko4529 雪の公園で anko4582 まりさのしかばねをこえていくのぜ いつも通り読みづらいです。 ふらりと散歩に出た道で、ゆっくりの親子に出会った。 「ゆぷぷ! あいきゃわらじゅ、くしょにんげんはゆっくちちてないのじぇ!」 「ぷっ……だめだよおちびちゃん、そんなほんとのこといっちゃ!」 親のれいむに、赤ゆっくりサイズのまりさが一匹、という珍しくもなんともない組み合わせだ。 一目で野良と分かる薄汚れた身体に、れいむの方はボロボロのリボン。 そんなゆっくりの親子が、私を見て笑っていた。 昨今珍しくもない光景である。 ゆっくりというのは無駄にプライドが高く、他の生き物を見下している。 だが野良ゆっくりの現実は、「ゆっくりしてない」人間に命を脅かされる毎日。 それはゆっくりにとって相当の屈辱なのだろう。 だからそれを少しでも忘れるために、こうして人間を嘲笑うのだ。 それを理解しているから、一々相手をしてやる人間は少ない。 まあ、基本的に相手をされたらそのゆっくりのゆん生は終わるのだから、それは幸運なことなのだろう。 まあ、それはそれとして――と、私はこの親子を無視して通り過ぎようとしたのだが。 ふと、頭に疑問が浮かび、私は足を止めた。 こいつらの言葉、所詮鳴き声と気に留めたこともなかったが――。 それを解決するため、私は多分無駄骨だろうと思いながらも、こいつらのゆん生を終わらせてやることにした。 「ゆ? くしょにんげんがこっちにきたのじぇ?」 「ゆふふ、かわいいれいむにあまあまをけんっじょう! しにきたんだね!」 そんなはずがないだろう、と私はれいむを軽く踏みつける。 「やべでね! やべで……づぶれるうううううう!」 「おきゃーしゃんをはなしゅのじぇくしょにんげん!」 軸足の方に赤まりさが体当たりしてくるが、痛くも痒くもない。 「どうなのじぇ! しゃいっきょうのまりちゃのたいあたりで、おきゃーしゃんをはなすきになったのじぇ?」 赤まりさの言葉は、半分ほど事実だ。 赤まりさを鬱陶しく感じた私が、赤まりさを蹴飛ばすためにれいむを離す気になったから。 「ゆっびいいいいいい! いぢゃいいいいいいい!」 軽く足を当てただけで、火が付いたように泣き出す赤まりさ。 「れいむはゆっくりにげるよ!」 その刹那そんなことを口にしたれいむの上に足を戻し、質問に答えれば離してやると告げる。 「ごだえばずううううううう! ごだえばずがらばなじでぐだざいいいいいい!」 れいむがそう言い出すまで適当に力を入れたり抜いたりした後、私は問いを口にする。 「ゆっくりしてない」とはどういうことか? それを聞いたれいむは、しばらくぽかんと口を開けていたが――やがて、狂ったように笑い出した。 ゆ虐は忍耐だ、と人は言う。 しかし残念ながら、私は気の短い方だ。よく言われるが、これは直しようがない。 だから、れいむと物理的に会話を再開することにした。 「ゆっぐり、じでないっでいうのばあ……」 顔をボコボコに腫らし、歯の抜けた口で、れいむが必死に言葉を紡ぐ。 「ゆっぐりじでないごどなんでずう……」 こいつは何を言っているのか。 こいつらは、自分で説明することもできない罵倒語を使っているのか。 まあ、それに関しては人間が言えたことでもないかもしれないが……。 しかし。ということは、だ。 「ゆっくりしてない」と嘲笑う自身とて、「ゆっくりしてない」ことは十分に有り得るのではないか? 問うと、れいむは「ぞんなばず……」と反論しようとして、口ごもった。 というより、私が物理的に反論を封じた。 その上で、私は問いを重ねる。 本当に違うのか? 私がゆっくりしていないとしても、れいむ達が私よりゆっくりしていない証明にはならない 自分がゆっくりしていないはずがないと、自信を持って言えるか? 一緒に私を笑った赤まりさが、ゆっくりしていないはずがないと言えるか? 「ゆ……ぐ……」 今度こそ、言葉に詰まるれいむ。 「まりちゃ、ゆっくりしてないのじぇ……?」 そして最後の問いで、一瞬だけれいむが自身に向けた視線、その意味に、まりちゃは目敏くも気付いてしまった。 「ゆ、おちびちゃ……!」 取り繕おうとするれいむをもう一度黙らせ、私はここで、さらに問う。 ゆっくりしてないことの、何が悪いのか? 「ゆ……どういうことなのじぇ……?」 ゆっくりがゆっくりしていないと馬鹿にする人間は、大きな家に住み、あまあまも好きなだけ食べられ―― ゆっくりにとって理想とも言える生活を送っている。(実際はそうでもないが、敢えて事実を伝える必要はない。ややこしくなる)。 他にも、猫は野良として暮らしているようなどんなゆっくりより素早いし、カラスだってれみりゃより高く速く飛べる。 質問に質問で返すな、という叫びを呑み込んで、私は赤まりさに、そうした「ゆっくりしてない生き物の方が、 ゆっくりより高い能力を持っていたり、いい生活をしている」ことを、ゆっくりと、噛み砕いて、1つずつ教えてやる。 その上で、さらに詰め寄る。 ゆっくりしてないことの、何が悪いのか? ゆっくりしてないことは、本当に劣っているのか? 違うだろう、と。 「ゆっくち、ちてない……」 赤まりさは、突きつけられた言葉を噛み締めるように呟く。 「ゆっぐりば……」 そんな、物分りの良さを垣間見せた赤まりさに対して、 「ゆっぐりじでるんだああああああああ! ゆっぐりじでるんだぞおおおおおおお!」 れいむは、切れた。 受け入れがたさが、「ゆっくりしていること、ゆっくりできること」を至上とする思考に 凝り固まった餡子の許容量を超えてしまったのだろう。 老い木は曲がらぬ、ということだろうか。 こうなってしまったら後は、処分するくらいしかこの場でできることはない。 私は別に虐待趣味ではないのだ、わざわざ持って帰ってどうこうしようとは思わない。 たまたま持っていたビニール袋にれいむを入れて、口をきつく結ぶと、上から強く踏みつける。 白い袋に餡子の色が広がり、れいむの声は聞こえなくなった。 さて、れいむの方はこれでいいのだが。 「にんげんしゃん! まりちゃがまちがってたのじぇ! まりちゃはゆっくちちてないのじぇ! でも、ゆっくちちてなくてもなにもわるくないのじぇ! ゆっくちちてなくても、まりちゃはゆっくりできるのじぇ!」 赤まりさをどうしようと視線を移すと、すっきりした、晴れやかな表情の赤まりさが言った。 本当にそんなことを言い出すとは思ってもみなかったのだが……。 私は赤まりさを拾い上げると、 ゆっくりしてないのは悪くないと言ったな。あれは嘘だ。 一言それだけ告げて、赤まりさをビニール袋にねじ込み、ゴミ箱を探して歩き出した。 「まりちゃは、ゆっくちちてない……ゆんやあああああああああああ!」 ビニール袋から、そんな叫び声が上がり、すぐに静かになった。 後書き かなり遅くなってしまいましたが、名前を考えてくださった方々、ありがとうございます。 「横着あき」を使わせていただこうと思っています。
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俺は銀バッチれいむを飼っている。 決して血統書付きでもないし、芸ができるわけでもないただのれいむだ。 でも赤ゆの頃から愛情をたっぷり注いでいるし、俺にとっては家族も同然だ。 その甲斐あってか実にゆっくりしたゆっくりに成長していた。 そんなある日の夕方。 いつものようにれいむを散歩させるため声をかける。 「おーい、れいむ散歩行くぞー」 「ゆっ、おにいさん!ゆっくりまってね!」 足早にれいむが駆け寄ってきた。 「ほら、これを見てごらん」 俺は足元に置いてある『それ』を指し示す。 「ゆ?おにいさんこれなあに?」 俺の足元にある物体に不思議そうな顔をするれいむ。 「ふっふっふ…最近めっきり暑くなっただろ? だからそんなれいむへプレゼントだ!」 俺の足元にあるこの物体。つい先日購入した『ゆっくりひんやりカートさん』という、 いわばゆっくり専用の冷房付き押し車だ。 元はスイカなどの保冷カートらしいが、それを着想に加工所で開発された新商品だ。 掃除機のような流線型の車体に、後部には空調とバッテリーのスペースがある。 また、頭部を覆うように作られた透明のフードと水筒に繋がった水分補給用のチューブ。 これなら時に70度を越す灼熱のアスファルトや突然のにわか雨に臆することなく、 心ゆくまで散歩を満喫できる。 ゆっくりにとってまさに夢のような商品だ。 さて、始めこそ訝しげな顔をしていたれいむだったが、 乗り込んでしばらくするとはじけるような笑顔で喜んでくれた。 「ゆわーい!これならあつあつさんもへいきだよう! おにいさんありがとう!」 すいーの要領で動き回るれいむ。 ああ可愛いよれいむ…。 そんなこんなでれいむがカートに慣れたところで、早速散歩に出発だ。 今年の夏は梅雨明けからいきなりの猛暑日を記録し、夕方でもうだるような暑さだ。 日陰や水分を確保できずに枯れ死んでいるゆっくりが街のあちこちで見かけられた。 そんな中俺のれいむはいたって元気にすいーを乗り回している。 「れいむー、あんまりお兄さんから離れちゃダメだぞー」 「ゆうう、わかってるよおにいさん!」 一応人間が手押しする為の手すりもあるが、台座と車輪さえあればなぜか自走するゆっくりだ。 あんまり離れないようにとだけ言って、ついて来させることにした。 総重量10キロオーバーを押すのも楽ではないし、飼い主にとって一石二鳥だ。 そんなこんなで、比較的大きな公園にやってきた。 行楽シーズンには結構な人がくるのだが、あまりに暑いからか人影はなかった。 一通り公園の散策路を一巡したが、聞こえてくるのはセミの忙しい鳴き声だけ。 そうしてしばらくすると、テニスコートが二つほど入りそうな広場に出た。 「ゆっ、おにいさん。れいむぐーるぐーるしたいよ!」 「おう。お兄さんはここで座ってるから、見えなくなるまで遠くに行っちゃダメだよ」 「ありがとうおにいさん!れいむぐーるぐーるするよ!」 眉をキリッと上げて広場をグルグル回りだした。 ふふっ、可愛いなあ。 しばらく様子を眺めていると、広場の反対側のベンチの前で停止した。 ちょっと心配なので様子を見に行く。 「れいむ?どうした?」 「ゆ?おにいさん。ゆっくりがれいむにたすけてっていってるよ」 ベンチの下に視線を向けると、成体のまりさとれいむ、子供のまりさとれいむがいた。 皆肌に艶がなく目の周りは黒くくすんでいる。明らかに脱水症状だ。 「ゆ…?にんげんさん?まりさだちをだすげでくだざいいい。 のどがからからでしんでじまいぞうなんでずううう…」 「れいむのかわいいおじびぢゃんがくるしんでるんでずううう… おねばいでずがらおみずをぐだざいいい…」 「ゆぎゅ…おみじゅ…おみじゅ…」 「あづいのじぇ…あづいのじぇえ…」 必死に救いを求める親に朦朧としているのか、 うわごとのように単調な台詞を繰り返す子ゆっくり。 子ゆっくりに至っては栄養状態に乏しいのか、まだ赤ゆ語が抜けていない。 これでは蟻の餌になるのは時間の問題だ。 しかし、夏になれば掃いて捨てるほど見かける光景。 いちいち手を貸す道理はない。 「はあ?バカかお前ら。お前らのようなクズがなんで人間様に物乞いしてるワケ? 黙ってさっさとくたばっちまえ」 「「「「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおっっ!!!!」」」」 お決まりのテンプレを返す泥饅頭たち。 「れいみゅおこっちゃよ!ぷきゅゅうしゅるよ!ぷきゅうううう!」 怒りに任せて子れいむがぷくーをした。 途端口の端が裂けた。水分が不足してカサカサになっていたのだろう。 「ゆっ?ゆぎゃあああああ!いじゃいいいいいっ!」 粘り気のあるしーしー垂れ流し号泣する子れいむ。 さすがの俺もその一連の流れにビキッた。 「ふざけんなこの自滅饅頭!餡子散らして死ね!」 足を上げて子れいむを踏み抜こうとしたその時。 「やめてね!おにいさん!」 俺のれいむが止めに入った。 「のらのゆっくりはゆっくりできないよ!でもそんなことするのはもっとゆっくりできないよ! おにいさんれいむたちをたすけてあげてね!れいむからもおねがいだよ!」 目をうるうるさせて助けを乞うれいむ。 …お前にそんな目されちゃ断れないじゃないか! 腹立たしいが野良たちに予備のオレンジジュースをぶっかけてやる。 子ゆっくりの傷も治り、たちまちのうちに一家に生気が蘇った。 「ありがとうございばず!おにいさん!」 「おちびちゃんたちいいいっ!よかったよおおおおおおっ!」 「あまあまー!しゃあわしぇー!」 「ゆっきゅりちゅめたいよっ!ゆっきゅりー!」 「ゆふふ、よかったねみんな」 優しい笑顔でほほえみ返す俺のれいむ。 やっぱりお前は天使だ、マジ天使…。 しかし、野良ゆっくりごときにいつまでも構ってる訳にはいかない。 可愛い俺のれいむが糞餡子脳で汚れるからな。 「ほら、れいむ。こいつらも元気になったみたいだし、そろそろ行こうか」 俺はれいむを促した。 「ゆっ、おにいさん。もうすこしまりさたちとあそびたいよ…」 うる目で催促するれいむ。 「いや…でもな…」 「……だめ?(超うる目)」 「むはぁっ!可愛いよ!可愛いよううっ!はううっ! 仕方ないなぁっ!ちょっとだけだぞちょっとだけえっ!」 れいむのエンジェルスマイルにすっかりやられてしまった。 俺もちょうど喉が乾いたので、そこから離れないように言いつけて、 少し離れたトイレと自販機のある休憩スペースに向かった。 「ゆふ、よかったね!」 銀れいむは一命を取り留めた一家に声をかける。 「おい!」 そこへまりさが切り出した。 「おまえがのってるすいーはなんなのぜ!」 「ゆ?これはおにいさんがくれたすいーだよ! あめさんにもあつあつさんもへっちゃらーなんだよっ!ごくごくさんもあるんだよ!」 「なにいってるのおおおおおおおっっ! なんでれいむなんかがそんなぜいたくしてるのおおおおおおおっっ! おかしいでしょおおおおおっ!」 「くしょごみ!まりしゃさまにすいーをよこすのじぇっ!」 「はやきゅすいーをよこちぇ!くしょれいみゅ!」 「ゆゆっ?どうしたのみんな?なんだかゆっくりしてないよ?」 いきなり手のひらを返したまりさ一家に戸惑う銀れいむ。 「うるさいのぜええええっ!これはにんげんにたすけられるえらばれたまりささまにふさわしんだぜえええっ! はやくおりるんだぜえええっ!」 涎を撒き散らし吠えるまりさ。 「そうよほおおおおおっ!れいむはしんぐるまざーなのよ!かわいそうなのよおおお!」 勝手に家族が死んだことになったれいむ。 「ばきゃなの!しにゅの?」 「ゆぴいいい!しーしーかけてやるのじぇっ!くじゅれいみゅ!」 負けじとばかりと子ゆっくりも罵声を浴びせ始めた。 「ゆゆっ!やめてね?みんなでなかよくしようね?おにいさんがみたらおこるよ?」 「うるさいのぜええええっ!ばやくおりろおおおおおおっ!」 ぽよんぽよんとまりさが体当たりを始めた。 残る家族もそれに続く。 「やめてね?やめてね?ゆうううう…」 カートに守られダメージこそゼロだが、一家の鬼のような形相で当たり狂う姿にすっかり怯えてしまったれいむ。 逃げ出すことも忘れてカートの中でうずくまってしまった。 ぶつかり、のしかかり、ゆすり、フードにへばりつき悪態をわめき散らす。 次第に家族全員がフードに密着した。 「「「「はああやああああくおおおりいいいろおおおおっっ!!!」」」」 おしくら饅頭状態で顔を醜く変形させ視界一杯にむき出しの敵意。 銀れいむはパニックになった。 「ゆっくり♯Ρ¢&=@ゝлふじこ!!」 制御不能となったすいーが凄まじい勢いで加速した。 同時に投げ足される野良一家。 「ゆべっ!くそれいむうううっ!なにするんだぜええええっ!」 「ゆがあっ!しんぐるまざーにはやさしくしないとだめでしょおおおおおっ!?」 「はやきゅあやまりぇ!くしょごみ!あとあまあまちょうぢゃいね!たくしゃんでいいよ!」 「びちぐしょでいぶはゆっきゅりしなゃいであやまりゅんだじぇっ!ゆ…?」 振り落とされ喚く一家に暴走した銀れいむが突っ込んできた。 「ゆゆ!とまりゅんだぶじょっ!」 「こっちぐるなあああっ!…おそらをっ!」 第一撃で子まりさは潰れ、親れいむはきりもみ回転しながら空中に餡子を四散させた。 「ゆああああああっ!ごっぢぐるなあああああっ!ばりざなんにもわるいごおそらをっ!」 ふらふらと不規則な暴走を続ける銀れいむ。次の犠牲者はまりさだった。 きりもみ回転をして公園の端のフェンス、その先は急な坂へとダイブしていった。 「ゆんやああああああっ!ゆんやああああああっ!」 残された子れいむは泣き叫びながら、フェンスへ向かって全力でダッシュした。 フェンスをくぐれば追ってこれない、子ゆっくりのとっさの判断としては非常に優秀だったが… フェンスを超えた辺りで餌食となった。 器用にも広場の隅…フェンスのわずかに切れている箇所からくぐり抜けた銀れいむが、 カーブを描きながら突っ込んできたのだ。 「ゆぐびぇっ!おしょらを…」 潰れながらもご丁寧に『おそらをとんでるみたい!』宣言する子れいむを道連れに、 カートに乗った銀れいむは半ば墜落するように急な坂を転がり落ちていった。 「………なんだこれは…」 数分後休憩を終えて戻ってきた俺の眼前には、なんとも理解しがたい光景があった。 先ほどれいむにせがまれて助けてやったゆっくり…のうち二匹が餡子を散乱させ潰れている。 よく見ると子供の方は車輪で潰されたような跡がある。 そしてそんなことより愛しの銀れいむがいない。 俺は必死になって探した。 公園の草むらやベンチの裏、フェンス越しの危険な坂も。 しかし日没まで探しても見つからずその日は泣く泣く家路についたのだった。 次の日もその次の日も。 俺は有給を全て消化しれいむの捜索に費やした。 30度半ばの酷暑も構わず全身汗まみれになりながら懸命に探した。 そして3日後坂の下の生い茂った雑木林でようやく見つけることができた。 無残にも原型をほとんど留めていない体、 そして蟻が群がっている中に俺のれいむの銀バッチがあった。 ひとしきり泣いた後カートも探したが、結局見つからなかった。 結局銀れいむはカートと共に命を散らしてしまったのだ。 あの時目を離さなければ…。 そう思うと自分の軽率さに胸を締め付けられる思いだ。。 しかし悔やんだ所で可愛い俺のれいむは帰ってこない。 どんな理由であろうと死なせてしまったのには、少なからず命を預っている飼い主に責任がある。 生き物を飼うということは、そういうことなのだ。 「ごめんね…れいむ…」 自宅の庭に作ったれいむの墓。 今日もそこに手を合わせる。 焼け付くような暑さにも構わず毎日毎日。 それが俺にできるれいむへの唯一の贖罪なのだから。 街を一望するようなロケーションにある市民公園。 その公園の坂の下には市有林があった。 年に数回市職員や委託を受けた加工所の職員が訪れるだけで、一般の出入りは全くない場所。 そこは都会に生きるゆっくりにとって、数少ないオアシスだった。 「ゆっくりーのひー♪まったりーのひー♪」 野良ゆにしてはお気楽な歌を歌い、まりさは日課の狩りに勤しんでいた。 「ゆっくりありすはれいぱーだー♪ぺにぺにびんび…ゆ?」 「…ゆんやあああああああっ!」 突如虚空から叫び声がする。 「ゆ?ゆ?ゆうううううっ!?」 まりさが見上げた視線の先には、白く光る物体が降ってきた。 「ゆうう…、なんなんだぜいったい…」 間一髪直撃をまぬがれたまりさ。 縮こまっていた体を起こし周りを観察する。 「ゆう?これは…」 まりさの視線の先には白く光るすいーが横たわっていた。 まりさはふらふらとすいーに近づいていった。 後にこのすいーを巡ってゆっくり同士の争いが起きたり起きなかったり。 だがそれはまた別のお話。 あとがき ふたばに出てたスイカの保冷器を見て触発された…ただそれだけですはい。 過去書いたもの anko1714 『生命の限界』~ゆっくりの現状と改造~ 前編 anko1715 『生命の限界』~ゆっくりの現状と改造~ 後編 anko1783 飼いゆでも anko1819 セミナー anko1866 自分の意思で
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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その2』 21KB 考証 独自設定 会話はもっと少なくてもよかったかも? この作品は何処へ向かうのか…。 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆除業者のお仕事風景』と 『隻眼のまりさ』の二つの共通する最終話となっています。 最終話と言いつつ、伸びそうなんで長い目で見ていただければ幸いです。 例によっていくさんをかわいがるので… いや今回はあからさまではありませんが、饅・即・虐の方はご注意。 ――――同日、午後11時、自宅アパート―――― 俺は、全く動けなかった。 …え?なんで?何を言っているんだ? それは、しかし、だが。 いくさんの、その言葉は 「…なんでそれを知っているんだ?」 俺の変わりに隻眼のまりさが神妙な顔でいくさんに問う。 隻眼のまりさの問いは、質問ではなかった。確認だ。 それがよくわかる。 なぜなら、俺は否定して欲しかったからだ。 「貴方の記憶の中でも、そうなんですね?」 流暢な日本語だった。 いくさんの話し方は丁寧であってもどこかぎこちなく ゆっくりらしい喋り方であったはずだ。 もう俺の中では解答が出ている。 いくさんはすでに『スイッチが切り替わっていた』のだ。 「…奇しくも、これはある種の証拠になるな」 確かにそうだ。 例えば、両者をそれぞれ別の場所に分けて交互に同じ質問をしていく。 そしてその回答が合致するものであればこれ以上ない証拠だ。 俺は冷静さを取り繕って聞いた。 「で、いくさん。過去に神社が崩壊したことは分かった。それで?」 「それでも何も今のが何よりの証拠だろ!私が話したのは作り話じゃない!」 「結論を急いでもらっては困るな」 「何?」 「まだ話のすりあわせが出来たわけではないし 今のはお前が話した内容がただの妄想で無いという程度のものだ。 その幻想郷とやらが存在しうるという直接的な証拠にはならないぞ」 「……っ!」 隻眼のまりさが悔しそうに俺から目線をはずす。 とりあえず俺の意見の方が正しいと思ったようだ。 実際、これは状況証拠にしかならない。 「いくさん、神社の崩壊があったのはわかったが…それがどうかしたのか? それともこいつに質問して自分の知りえたことの答え合わせがしたかったのか?」 「……………」 いくさんに質問し直すが、先ほどからしきりに何かを考えている様子。 「さっきからどうしたんだ。 何か思うところでもあるのか?いくさん?おーい…」 「……………」 まりさもだんだん様子が変だと思い始めたらしい。 いくさんに怪訝な目を向ける。 「お兄さん、少し待っていただけないでしょうか?」 「待ってって…なんだ?時間稼ぎのつもりなのか?」 「そういうわけでは…いえ、そうですね。 明日まで考える時間が欲しいんですが…」 「明日までねぇ…」 俺は時計を見る。 確かにもういい時間ではある。 普段から起きる時間の早い俺としては もう寝ていても全く不思議ではない時間帯だ。 「まあいいや、分かった。 いくさんがそこまで言うなら仕方がない。 明日は出張に関する書類を書くだけだから午後半休で帰ってくる。 昼過ぎから話を再開しよう。お前もそれでいいな?」 「私は構わないが、その…」 「大丈夫だ。今すぐ放り出したりはせん。 ただし、明日の夜には何があっても出てってもらうからな」 「すまない」 「ありがとうございます、お兄さん」 「ふん…」 少々気に入らないが、やむを得まい。 何より、いくさんがここまで頑なに自分の意見を持っているのだ。 それがどういうものなのか見てみたい思いもある。 「ほらよ」 「…?これが何か?」 俺の布団を敷いた後隻眼のまりさに 汚れて雑巾にしようかと思い始めていたタオルを 投げて寄越すと、きょとんとされた。 「使えって事だよ。 体拭くなり布団にするなり好きにしな」 「あ、ああ、助かる」 「で、お前の寝床はここな」 トイレのドアを開けて指をさす。 「そこって…便所じゃないのか?」 「家にいてもいいとは言ったが同じ部屋で寝る気はない。 外の方がいいと言うなら止めはしないが」 「…わかったよ」 タオルをくわえてトイレに入るまりさ。 いくさんから一言あるかと思ったが例によって考え事に夢中な様子。 「いくさーん…」 頭を指先でコツコツとつつく。 「…え?あ、はい?」 本気で気付いてないのか…。 「電気消すが、いいか?」 「はい。おやすみなさい、お兄さん」 「…おやすみ」 電気を消して、俺達はそれぞれの思いを胸に眠った。 ――――翌日、午前7時、自宅アパート―――― 「おーい?私はいつまでここにいればいいんだー? 流石に腹も減ってきたんだがー?」 俺は無言でゆっくりフードを一握りつかみ トイレの中にいた隻眼のまりさにくれてやる。 「トイレの中で食わせる気かー?」 「文句を言うな。 それより午後になったら決着をつけるからな。 首を洗って待って…いや、お前に首はなかったな」 そう言うとまりさの方を無視していくさんに声をかける。 「じゃあ、行ってくる」 「はい。いってらっしゃい、お兄さん」 いくさんはいつも通りの笑顔を見せて俺の見送りをしてくれた。 …それを見て、俺は油断していたのかもしれない。 いくさんの背丈では、トイレも、窓も開けられないと。 ――――同日、同時刻、自宅アパート―――― 「じゃあ、行ってくる」 「はい。いってらっしゃい、お兄さん」 ガチャっとドアの閉まる音を聞きいてから声を出す。 「――――お兄さん、ごめんなさい」 そう言うと、いくの足が床から離れた。 ジャンプではない。 何故なら宙に浮いたいくはそのままじわじわ上昇し続けているからだ。 そのままトイレの方へ向かい 床に足をつけていたままでは届かないノブを回しドアを開けた。 「…ん?何だ?…ってお前、飛べたのか?」 「はい、身につけたのは昨日のことですけど…」 いくは昨日、いくつかの『記憶』を見ていた。 それは緋色の剣を持った少女であったり 通常の地面から程遠い場所で角のある者と話している情景だった。 そして何よりも多かったのが、雲の中を行き交う竜宮の使いの姿。 それを知ると、急に自分の体が軽くなるのを感じた。 いくは極めて自然に、空を飛ぶことを身につけていたのだ。 「まりささん、大切なお話があります」 「話?話し合いはあの男が帰ってきてからするんじゃなかったのか?」 いくは首を振る。 「いいえ。これは、私とまりささんだけで話したいことなんです。 …そして、外に出て行く必要があるのです」 「外に…!?だけどお前…!」 「何も言わないで下さい。 これは、昨夜ずっと考えた結果なんです。 そしてこれにはまりささんの力が必要なんです。 お願いします。ついて来てもらえないでしょうか?」 「…………。 私がついて行くこと自体は別に構わないんだが お前がいなくなったのに気付いたら私が殺されないか?」 「それについては完全な保証は出来ませんが 私の方から出来る限りまりささんに手を出さないようにお願いしてみます。 …それに、私たちの話している内容は 不確かな記憶に頼っている以上説明不足になりますし 感覚的な話ばかりで説得力もありません。 午後になって時間をかけて話し合いをしては どのように話を進めようとも必ず言い負かされてしまいます。 私たちがちゃんと行動できるタイミングは今しかありません」 「そう言ってくれるのはありがたいが…」 「携帯電話も持って行きますし場合によってはすぐ帰ってくればいいのです。 あなたも、とりあえず話は伝えられたのですから 無理をしてここにこだわらなくてもいいでしょう?」 「…分かった。そこまで言うなら。 ただ、どうして外に出る必要があるのかよくわからないのだが?」 「それについては、道中お話します」 そう言うといくは荷物を用意し、書置きを残し 隻眼のまりさを連れて窓から飛び立った。 ――――同日、午後1時、自宅アパート―――― 「いくさん…!!」 仕事を終え、自宅に戻った俺はいくさんの書置きを見た。 そこには 『私は、確認したいことが出来ましたので 少し出かけてきたいと思います。 携帯電話は持って行きます。 ですが用事がすむまでは出ないかもしれません。 そして、この外出は私から言い出したことで まりささんに責任はありません。 無理はしませんし、必ず戻ってきます。 その時、私は許されようとは思いません。 ただ、出来れば私が戻ったとき相応の罰を受け 以前のような暮らしに戻りたいという思いはあります。 どうか、少なくともお兄さんは幸せでいて下さい』 「なんだよ、それ…」 気に入らない。 いくさんが出て行ったことも あのまりさがついて行ったことも 俺に相談してくれなかったことも気に入らない。 だが、一番気に入らないのは手紙の末尾に書かれた名前らしき記述。 「『衣玖』って…誰だよ…」 俺の中で様々な感情が渦巻く。 グチャグチャなそれは一向にまとまる気配がないようにも思えたが 最終的には『怒り』が一番強かった。 「…っくっそ!!!」 が、何に対して怒っているのかは分からない。 向ける対象がないのかもしれない。 「探しに行こう」 今の俺にはそれしかない。 そしてその言葉を吐いたと同時に冷静さが戻ってきた。 「荷物…!」 必要になりそうなものを片っ端からリュックサックに入れていく。 財布、時計、ティッシュ…少し迷ってから、タオルや着替え、懐中電灯なども。 場合によっては数日間に渡るかもしれない。 最悪それでも見つからないかもしれない。 いや、本当の最悪は…。 「ええい!!」 いやな思考を打ち切る。 ポケットに手を入れ、携帯電話を確認する。 着信はない。 そして、駄目だとは思いつつも短縮ダイアルにあった いくさんの携帯にかけてみる。 「やっぱり駄目か…」 が、コール音はした。繋がったのだ。 少なくともいくさんの携帯電話は壊れていないし、バッテリーも残っている。 「よし…」 気休めの希望が手に入った。 俺は玄関のドアを開け、鍵をかけ、そして走り出す。 …どこへ? 当てなどない。だから、そこらの人に片っ端から聞くしかない。 正直相手にされそうも無かったが、警察に捜索願を出すもの手か、と思った矢先。 俺は、俺自身が知りえた情報がパズルのピースのように頭に浮かんできた。 隻眼のまりさの毒気に当てられたのだろうか。 あるいはいくさんの行動に思いのほか混乱していたのかもしれない。 去年から俺は様々な不可思議な出来事を見てきた。 が、事実として起こった以上、それぞれが何らかの意味があって起きた事なのだ。 たとえ俺には意味のないことでも、それが何かのために起きたことのはずだ。 全てのピースは出揃ったのか。 いや、全てが出揃っていなくてもジグソーパズルというものは ある程度形が出来てくれば絵は見えてくるはずなのだ。 隻眼のまりさが語ったこと。 そして俺が今まで知り得てきた情報。 今思えば妙に符合する点もあった。 事実として食い違っていても、別の論理に導かれて 意味をなすものもあるかもしれない。 俺は、パズルのピースをさらに増やすために、あるところに電話をかけた。 ――――同日、午前9時、上空―――― 「お空を飛んでるみたい、と言うべきなのか?」 「実際に飛んでいるのですから、必要ないのではないでしょうか。 ですが、空気を読むことはいいことだと思います」 いくと隻眼のまりさは空中にいた。 まりさはタオルにくるまれていくの背中に乗っている状態。 丁度風呂敷を背負っているような格好である。 飛んでいるのは地上100m程の高さ。 場合によっては写真にとられてUFOだと騒がれているかもしれない距離。 肉眼で確認するにはゆっくりは小さすぎた。 「で、結局お前はその『特異点』という場所が怪しいというわけだな?」 「はい、私が見た『記憶』の方はいつも空を飛んでいましたから 何度もその場所を目にしていたのだと思います」 いくと隻眼のまりさはずっと空中で話し込んでいた。 空中を飛んで移動するのはある種危険な行為なのだが 少なくとも地上を歩いていくよりはましだと思ったのだ。 「だが、その特異点はどこにでも突然現れたんだろう? 実際どうやって探せばいいんだ?」 「ですから『記憶』で見た方と同じ方法をとるのです。 上空から見ていればすぐに分かりますからね」 「飛んでいるのはそう言う意味合いもあったのか…」 しかし、いくは地上で言うところの腹を下にした『うつ伏せ』の姿勢で飛んでいる。 この状態では背中に乗っているまりさから地上を見ることは出来ずにいた。 「だが、そんなに簡単に開くものなのか? 私の『記憶』では神社以外に幻想郷に出入りできる場所は 無いように思えるのだが…。 何より、何もかも境界が曖昧な世界で唯一ともいえる境界が 幻想郷とこちらの世界の境界線だというらしいじゃないか」 「分かりません。ですが、貴方の言った事がどうしても気になったのです」 「私の言ったこと?」 「幻想郷との境界が曖昧になっている、ということです。 逆に考えればその幻想郷の崩壊というのが 幻想郷との行き来を可能にする『特異点』の多発と考えれば辻褄が合うのです」 「確かにそうだが…」 だからと言ってそれを確認してどうなる、という言葉をまりさは飲み込んだ。 自分には何をしていいものか全く見当もつかないのだ。 「……………」 「……………」 会話が途切れる。 二人の間には共通するものが少なかった。 人間の元で生まれて人間に飼われていたいく。 山間部で生まれ野生のゆっくりとして生きてきたまりさ。 そして『記憶』の中の存在も共通する点があまりに少なかった。 だが、逆に言えば互いの情報交換によって 様々な新情報が得られるということでもある。 いくは口を開いた。 「今回の一件には全く関係ないのですが まりささんは、野性のゆっくりとして生きてきたんですよね?」 「ああ、それが?」 「私は森の中のことや他のゆっくりと協力して暮らすということを よく知らないのです。 やはり、人間の力を借りずに生きるというのは大変なのですか?」 「そうだな。アンタの言動やあの男の対応を見る限りでは 飼いゆっくりに比べて過酷なのは間違いない。 …ああいや、嫌味のつもりはないんだぞ?」 「お気になさらないで下さい。 やっぱり、まりささんにもお仲間の方たちがいたのですか?」 そう言われ、隻眼のまりさはかつての集落に思いをはせる。 不思議なものだ。 本当にただのゆっくりであった頃と今の自分は全く違った。 『記憶』を得て以降、自分は性格も言動も全く変わってしまっていた。 なにより、あれだけ必死に生きてきた毎日が 色褪せて見えたのが意外だった。 同時に、人間から見ればゆっくりというものが いかにちっぽけなものであるのか否応無しに分かってしまうのだ。 「…ごめんなさい。余計なことを聞いてしまいましたね」 「いや、大丈夫だ」 自分の中になんともいえない感情が渦巻いていたのを察知されたらしい。 しかし、俯瞰してみると本当に妙な感じだった。 あれほどまでに感心していたぱちゅりーの知識が幼稚なものに思えてくる。 今なら上から目線で偉そうに語ることさえ出来そうだ。 あれほどまでに感心したドスの戦いが滑稽なものに思えてくる。 今ならドスさえも単独で倒すことが出来るだろう。 「…不思議なものだ」 「はい?」 我知らず口に出してしまったらしい。 だが、案外聞いてもらうのも悪くないかもしれない。 「私は、変わってしまったんだ。 あの頃の必死さとか、目線の高さとか 昔の自分から見て光り輝いていたものが随分と鈍く見えるよ」 「…………」 まりさは生気のない目で語った。 いくは神妙な顔で次の言葉を待つ。 「昔の私は、本当に子供みたいな感情を持ち続けていたんだ。 不便であったがためにどんなものでも幸せを感じていた。 今の私がそれを得たとしても何の感慨も沸かないようなちっぽけなものでもな」 いくは隻眼のまりさの言う『それ』が 食料や玩具といった即物的でない物を指していることをなんとなく察していた。 「何故だろうな。今でもゆっくりであることに変わりはないはずなのに。 ゆっくりすることをやめた私は、本当にゆっくりでなくなってしまったんだろうか。 …強くなるということは、ゆっくりすることをやめるということは ゆっくりでなくなるということは、私にとっての世界の価値を貶める行為だったんだろうか?」 隻眼のまりさの目に映る世界は変わっていた。 当然だ。人間の目から見れば野性のゆっくりの生活など 劣悪な環境で危険と隣りあわせで生きているろくでもないものだ。 ぱちゅりーと違いまりさが得たのは人間の『知識』ではなく『記憶』だ。 そうなることで次第にゆっくりの価値観は薄れ 逆に人間の価値観に上書きされてしまっていた。 かつてはあれほど輝いていた家も、食事も、仲間も ちっぽけなくだらない存在に見えてくる。 「後悔しているんですか?」 「………少しな」 隻眼のまりさは短く言った。 いくには言葉では理解した。 しかし感情で、深いところで理解することは出来なかった。 何故なら両者には、決定的な違いが多くありすぎたからだ。 『今まで見てきた目線の高さ』 『帰ることの出来る場所』 いくはこの件が綺麗に片付いたらまたあの家に戻り 以前のような暮らしに戻りたいと考えている。 自分は少し変わってしまっていたが『記憶』を得たことを幸運とも不幸とも思わない。 今までの生活と、これからの生活。 戻れることが確定しているわけではないのだが それはいくにとって大きな希望になる。 隻眼のまりさはもう戻るべき場所も 希望となるよりどころも失くしていた。 再び野生に戻ったとしてもまともな幸せは得られないだろう。 そこで得られるのはゆっくりとしての幸せであって人間の幸せではない。 それどころかなまじ人間の知識を得てしまったがために 駆除に怯え、雨に怯え、小動物に怯え…そんな暮らしに戻ることに 魅力が感じられなくなっているだろう。 だが奇しくも、まりさは気付かなかったが これはぱちゅりーが得ていた不安感との戦いに酷似していた。 『人間の知識を得る』これは、ゆっくりにとって本当に幸せなことではないのだ。 ――――同日、午前1時、自宅アパート前路上―――― 俺は、ある場所に電話をかける。 コールは五回。向こうの声が聞こえてきた。 「はい、こちらゆっくり研究所支部です」 「唐突で申し訳ない。そちらの所長に取次ぎをお願いできないだろうか?」 「所長に?…失礼ですが、どちら様でしょうか?」 「以前にそちらの所長にご招待いただいた者だ。 一斉駆除ではお世話になった」 「申し訳ありませんが、事前のご連絡のない方の電話はお取次ぎしかねます。 まずは、広報課か事務室の方へご連絡いただき、それで」 「俺はゆっくり駆除業者の九郎だ! 言えば分かるから伝えてくれ! 急ぎの用事なんだ!!」 「…………」 向こうが眉をひそめているのが電話越しにも分かりそうな沈黙だった。 だが自分でも驚いたが今の俺にはそれほどまでに余裕がない状況なのだ。 「少々お待ちください」 そう言うと保留の音楽が電話越しに聞こえ始めた。 「ええい…!!」 俺はただのんびり待っていることもできず走り出した。 ある場所へ向かって。 そういえば、いくさんはそれほど外出が好きだったわけでもない。 俺と連れ立って外へ出たときも自分から何処へ行きたい、あれはなんだと 外のものに興味を示すことは少なかった。 故に、いくさんの行き先は普段行っていた公園や買い物先を除けばかなり限定される。 俺の知らない場所へ出て行った可能性も無きにしも非ずだが 冷静に考えればいくさんが向かったのは 『いくさんが知りえた情報の中で決定することの出来る場所』ということになる。 『記憶』とやらが異世界のものであるのならこの世界の情報は入っていないはずだ。 つまりはこちらの世界での情報は俺が知らずに いくさんが知っている事柄はかなり限定される。 加えて、ゆっくりだけでは法的に電車やバスは使えない。 人間より早く移動することの出来ないゆっくりならば 何とか探し出すことが出来るかもしれない。 「もしもーし?ゆっくり研究所支部長ですがー?」 「ああ、よかった。あんたに聞きたいことがあるんだ!」 「それは別にいいんだけど、確か名刺あげなかったっけ? 携帯にかけてくれてもよかったんだけど」 「悪いが今は持ってないんでね」 「そう、まあいいけど」 奴のあまりにいつも通りの暢気な口調に苛立ちながらも 感情を抑えつつ、言葉を発した。 「以前アンタが話していたゆっくりの大本となる存在の話しあったよな!? それについてと…他にもいくつか聞きたいことがあるんだが!」 「それは別にいいんだけど…どうしたの?そんなに息せき切って」 「今は事情を説明している暇はない! 全て終わったら話すから今は質問にだけ答えてもらえると助かるんだが!」 「随分一方的だね…まあ、他ならぬ君の頼みだから聞いてあげるけど 一つ貸しにしておくからね?」 「分かった分かった!」 なんというか今更だが、この男の口調は成人男性のものとしては いかがなものかと思ってしまうのは俺だけだろうか? 気のせいだとは思うのだが。 「で、何が聞きたいんだい?」 「アンタの話した、ゆっくりの大本の存在の話しなんだが アンタはそれが一体どういうものだと考えているんだ?」 意識したわけではなかったのだが俺は走るのをやめて歩きに入っていた。 走りながら話すというきつい行為を無意識に嫌ったのかもしれない。 だがそのおかげか、多少冷静さが戻ってきた。 「大本となる存在の話っていうけど、それは仮説の一つにしか過ぎないんだけど?」 「それでは質問の答えになっていない。 俺は『あったとしたらそれはどのようなものだ』と聞いているんだ」 「さあ…ひょっとしたらドスのような突然変異体のようなものかもしれないし 女王蜂や女王蟻のような引きこもって表に出ない何かかもしれない」 「他には?」 「他に……?そうだねぇ。 ひょっとしたら元となる存在も単なる一つのゆっくりに過ぎなくて 大本Aが死んだらその途端に大本Bが現れるというシステムかもしれない。 場合によっては大本となるゆっくりが複数いるかもしれないという考え方も出来るね」 奴の話を聞いていて俺はやっぱり、と思った。 「まああくまで、大本なんてものがいればの話だけどね。 この仮説は仮説の域を出たためしがないわけだし」 「ごまかしは無しにしてくれ。気付いたのはついさっきだが もっと早くに疑問に思うべきだったんだ」 「…………」 「アンタは半年前、大本となる存在が日本にあるかもしれないと言った。 と、同時に日本はゆっくり生息分布のために調査がなされたが 何処にも大きな発見がなかったということも言っていた」 「…それが?」 「おかしいじゃないか。 二つの命題が矛盾しているというだけでなくアンタはわざわざ 『歩いていけないどこか』なんて表現を使った。 日本は山が多いが世界から見れば狭いし、人跡未踏の地なんて存在しない! それに大本となる存在の例が全てゆっくりなのはどういうことだ! あいつらは苛酷な環境で生きていけるはずのない脆弱な連中だ! 南極はもちろん高地や砂漠!雨の多い熱帯でも確認されてはいなかった! なのに何故!アンタは大本がすぐに見つかりそうな日本にあるなんて馬鹿な仮説を考えた!」 「それじゃあ、大本となる存在がいるってこと自体が 間違っているってことじゃあないかな?」 「違う!アンタは自分で言っていただろう!そうであったら矛盾がないと! それ以前にアンタは本職の研究者だ! 俺でも気付いたような今の話を自分で考えなかったはずがない! なのに何故そんな仮説を公の場で話したりしたんだ! アンタ自身の中にこの仮説に他に 何らかの論拠があったからそう思ったんじゃないのか!」 興奮してまくし立てる俺に周りの人たちが変な人を見るような目を向けてくる。 だが、今の俺には全く気にならなかった。 「…君は、研究者というものをちょっと買いかぶってるよ」 聞こえてきたのは静かな声だった。 「確かに、君の言うことは一理あるのかもしれない。 だけど研究者だって人間だ。間違いはある」 「…………っ!!」 冷静に返され俺は歯噛みした。 「間違った仮説を人前で披露してしまったのは確かに恥ずべきことだ。 だけどそれを電話越しに関係者でもない君にそこまで非難されるいわれはないよ」 「…悪かった。先ほどの俺は確かに少々興奮しすぎた。 少々厄介な問題が発生していたものでな」 「だけど、と続けるつもりかい?」 「そうだ。確かに俺が悪かった。申し訳ない。 それでも今の俺には一つでも多くの情報が欲しいんだ。 そしてそれはおそらくあんたが知っているであろう情報なんだ。 …協力してくれないか?」 出来る限り冷静さを持ってそう言った。 そして、今の俺は何故だかはわからないが こいつが嘘をついているという確信があった。 同時に、こいつの持っている情報は絶対に必要なものだということも。 続く あとがき 話を進めていくのが難しい内容になってきました。 作中の会話に矛盾や、前言っていた事と違うじゃないか というような点が出てきやしないかとちょっと不安になります。 ともあれ、私は完結まで(暴走気味に)走り続けるので 皆がハッピーエンディングを迎えられるように応援してくだされば嬉しいです。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その1
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『たすけてね!』 7KB いじめ 小ネタ 実験 野良ゆ 子ゆ 虐待人間 いつもの小ネタです。 「にんげんざん、おちびちゃんをたすけでくだざいぃぃぃ!おねがいじばずぅぅぅぅぅ!!」 「ゆひゅ…ゆひゅ…ゆ…っち…ゆ…っち…」 汚い格好のまりさが、通りを行きかう人々に向かって叫んでいる。 ポロポロと涙を零し、何度も額を地面に擦り付けて悲願する。 だがどう見ても野良ゆっくりのまりさを、構う人間などいなかった。 傷だらけでよれよれの帽子。 ボサボサで色の悪い金髪。 あちこち変色している薄汚れた顔。 近寄るだけで臭いそうな風貌では、同族すらも見向きもしない。 悔しそうにひび割れた唇を噛み、弱弱しく呼吸をする子まりさを見るまりさ。 乾いた空ろな目。 やつれた体。 パサパサの肌。 子まりさの死はすぐそこまで迫っていた。 「ゆぅ…ぅ………ゆおぉぉぉぉぉぉぉ!おちびちゃぁぁぁぁぁぁん!だれかぁぁぁぁ!だずけでくだざいぃぃぃぃ!おねがいじばずぅぅぅぅ!!」 親まりさの叫び声が虚しく響き渡る。 「うっせーよ!」 ドカッ! 「ゆっぶぅぅぅ?!」 突然蹴られて吹っ飛ぶまりさ。 涙と涎を撒き散らしながらコロコロと転がっていく。 「ゆっびぇぇぇ…いだいぃぃぃ…までぃざのだんでぃなおかおがぁぁぁ…ゆっぐぅぅぅ……」 アスファルトの地面に顔を埋めてうめき声を上げるまりさ。 だがすぐに起き上がると、子まりさの元に跳ねていく。 「おちびちゃぁぁぁぁん!おちびちゃぁぁぁぁん!!」 幸い子まりさは何もされていない様だったが、何度も何度も子まりさを舌で舐める。 まるで自分の痛みを紛らわすように、子まりさに語りかけながら優しく舐め続けた。 「うわっ…きったないわね…これだから野良ゆっくりは…」 一人の少女がまりさ達を避けて通ろうとする。 それに気がついたまりさは、慌ててその少女の足元に跳ねていく。 「おねがいじばずぅぅぅ!まりざの、だいぜつなおちびちゃんを、たすけてあげでくだざいぃぃぃ!までぃざはどうなっでもいいんでずぅぅ!」 額が磨り減らんばかりにアスファルトに擦りつけ、力の限り大声を上げるまりさ。 その願いが叶わない事はうすうす気がついていた。 それでも叫ばずにはいられなかった。 「う~ん…それ本当?本当にあんたはどうなっても良いのね?」 「もう、にんげんざんじかいないんでずぅぅぅ!このままだと………ゆぇ?…」 「だから、本当にあんたはどうなっても良いのね?って聞いたのよ。それなら助けてあげるわよ?」 まりさは驚きのあまりしばらく固まった。 そして動き出すと同時に、少女に何度も頭を下げた。 「じゃあ、そろそろはじめようか?」 「ゆぎぎ…どぼじっで…こんなこどずる…のぜ?」 少女はまりさ親子を家に持ち帰ると、真っ先にまりさの足を焼いた。 そしてまりさを鏡の前に置くと、帽子を奪い取り額に包丁を突き刺した。 「あら?あんたはどうなっても良いって言ってたじゃない。だから、こうなってるのよ?」 ポロポロと涙を零しながら、刺さった包丁を見上げるまりさ。 少女はそんなまりさを見て、楽しそうに鼻歌を歌う。 「ゆっびゃっびゃあぁぁぁぁ!いだいぃぃぃぃ!あだまがわれるぅぅぅぅぅ!やめでよぉぉぉぉぉ!!」 少女は刺さった包丁でそのまま円を描くように、まりさの頭に切込みを入れる。 そしてまりさの頭を切り取ると、まりさの見える位置にそれを放置した。 「ふふふ♪ねえ分かる?これ、あんたの頭よ?面白かった?」 少女はうれしそうに微笑むと、今度は剥きだしになったまりさの餡子にスプーンを突き刺した。 「ゆびゃぁぁぁ!ゆっがぁぁぁぁぁぁ!ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!」 そしてそのまままりさの餡子をオレンジジュースを注ぎながらかき混ぜ始める。 まりさは両目をぐるぐると動かしながら、涙と涎をダラダラと流して叫び続ける。 一通り餡子をかき混ぜた少女は、餡子の中心を掘り進めてまりさの中枢餡を露出させる。 そして弱っていた子まりさの皮と目を剥ぎ取ると、中枢餡のそばに子まりさを置いた。 「ほら、それを食べなさい。そしたら元気になるわよ」 「ゆが…げ…ぐ…むーちゃ…むーちゃ…」 皮を剥かれても殆ど声を上げないが、かろうじて生きていた子まりさは、まりさの中枢餡を少しずつ齧り始める。 「がびゅ?!ごゆ?!げべぇ!!ゆびゃ!びゃびゃい!でびゃ!」 子まりさに中枢餡を度に、大きく震えて叫び声を上げるまりさ。 だらしなく舌を垂らし、しーしーと涙を流しながら口から泡を吹き始める。 「上手くいけば、あんたの子供は元気になるわよ。良かったわね」 少女は呻くまりさに優しく声をかけると、まりさの頭の蓋を閉じてオレンジジュースをかけた。 「ゆびゃ…ゆっびゃぁぁぁぁぁぁ?!……………ゆっひぃ!ゆめ?…こわいゆめだったの…じぇ………ここは…どこなの…じぇ?」 叫び声を上げて目を覚ます子まりさ。 何やら恐い夢を見ていたらしい。 気がつくと目の前には、自分の親であるまりさが鎮座している。 まりさは驚いた様な顔で子まりさを見ている。 「お、おとーしゃん!おとーしゃんなのじぇ?!ゆわぁぁぁぁい!おとーしゃぁぁぁぁん!」 子まりさはまりさの元に跳ねて行こうとするが、あんよが動かない。 子まりさは困惑するが、それでも状況を理解出来ずに何度も跳ねようとする。 「ゆ~ん!ゆ~ん!おとーしゃぁぁぁぁん!ゆ~ん!ゆ~ん!…ゆゆぅ?どーしちぇ、あんよがうごかないのじぇぇぇぇ?!」 「そりゃそうよ、だって私が焼いたんだし。どうやら上手くいったみたいね」 「ゆゆぅ?!なにいってるのじぇ!しゃっしゃとまりちゃのあんよを、なおすのじぇ!そしたら、おとーしゃんといっしょに、おまえをせーさいしてやるのじぇ!!」 子まりさは突然現れた少女を睨んで威嚇する。 だが少女は少しも気にする事無く、子まりさをじろじろと観察するように眺める。 子まりさはそれが気に入らないらしく、頬に空気を貯めて膨れ上がる。 するとまりさも同時に膨れ上がる。 子まりさは父と同時にぷくーした事がなんだかとても嬉しくなる。 「ゆぷぷ!おちーしゃんも、まりちゃといきぴったりなのじぇ!うれちーのじぇ!これでこのくしょにんげんも、あっというまにしんじゃうのじぇ!!」 「あら?あーそうか、鏡を理解してないのね。じゃあ、こうしましょうか」 少女はそういうと、子まりさから帽子を奪い取る。 「ゆぅぅぅ?!まりちゃのおぼーち!おぼーちかえ…しぇ…?」 帽子を取られて慌てる子まりさだったが、少女の持っている帽子を見て固まる。 これが自分の帽子ではなく、まりさの物だという事に気がついたのだ。 「ゆぅぅ?!どーしちぇ、まりちゃのおぼーちが、おとーしゃんのおぼーちなのじぇ?!まちちゃのおぼーちは?ゆっくちかえしぇー!」 「あらら?目を取ってたからよく覚えてないのかもしれないけど、あんたは親を食って親の体を乗っ取ったのよ」 「ゆゆ?!なにいってるのじぇ!まりちゃ、しょんなわるいことしないのじぇ!ゆっくちあやまっちぇね!ぷんぷん!」 子まりさは少女の言葉が気に障ったのか、頬を膨らませて怒り出す。 だがどんなに否定してもこの子まりさは、親の中枢餡を食べ終わった後に周囲の餡子と自分の体が同化して、親まりさの体を自分の物としたのだ。 少女はそんな子まりさが面白いのか、鏡を見せながら帽子を子まりさに返したり、取り上げたりを繰り返す。 「ほら、あんたに帽子を被せてるのに、目の前にあんたの親が現れるのってどういう事だと思う?これが何か理解できる?」 「ゆゆぅ?!なにこりぇ?どーなってるのじぇ?まりちゃがまりちゃ?!おとーしゃんが、まりちゃ?おとーしゃん、まりちゃ、まりちゃおとーしゃ…?」 少女は子まりさの頬を叩く。 すると目の前のまりさの頬が赤く腫れ上がる。 子まりさは痛む自分の頬と、まりさの頬を見比べる。 「ゆえぇ?しょんな…どーしちぇ…?まりちゃが、おとーしゃんになってるのじぇ?ゆえぇぇぇぇ…」 「あんたの親がね、どうなっても良いからあんたを助けてくれって言ったのよ。だから私が手伝ってあげたの。でも親の体を乗っ取ったのはあんたの意思よ」 「どーしちぇ!まりちゃ、そんなことしてないのじぇー!ゆびゃぁぁぁぁん!ゆびゃぁぁぁぁん!」 子まりさは耐え切れずにゆんゆんと泣き出始める。 少女はそれが面白いのか、笑いながら子まりさの頭をポンポンと叩く。 「これだけでかくても、中身はからわないのね。親の記憶とか残ってないのかな?不思議な饅頭ね」 少女は子まりさを抱えると、優しく語り掛ける。 「安心してね、殺したりはしないから。私、ゆっくりについて色々勉強したいから、これからも協力してね。もっといっぱい実験しようね」 「ゆえぇ?!ゆっびゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!いやなのじぇぇぇぇぇぇ!おうちかえしちぇよぉぉぉぉ!ゆびゃぁぁぁぁん!!」 少女はそう言うと子まりさを優しく撫でる。 子まりさは少女から逃げ出そうと、必死に体を伸ばしたりお下げを振り回した。 完 徒然あき 挿絵:絵本あき