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暖かい色の明かりが部屋全体を照らして、太陽が沈み暗闇に落ちた外から人を守るように、光は家族を包んでいる。 街を騒がせる恐怖を煽る猟奇的なニュースにも無縁だと、家の中は笑顔で賑わっていた。 光とは安寧の元だ。神が与えた原初の火に始まり、照らされる場所に人は集まり寄り添う。 人は闇と戦う手段を手に入れ、現代に至るまで光は人と共にある。 「わあすごい!これお姉ちゃんが作ったの!?」 「こらモモ、お行儀が悪いわよ」 四人が囲ってもまだ少し余裕があるテーブルに並ぶのは、色鮮やかな料理の数々。 やわらかいパンに新鮮なサラダ、湯気が立つスープと香ばしく焼けた肉が食欲を誘う。 幼い次女が待ち切れず、フォークを手に取ろうとするのを母がたしなめている。 「お母様の言う通りです。食事の前は神様が降りてくる時間、きちんとお祈りをして感謝の言葉を伝えなければいけませんよ」 「はーい」 まだ神の教えを十分に理解しておらず、作法の大事さもわからない幼子は、しかしもう一人の声には素直に従った。 言葉の内容云ではなく、話した人そのものへの信愛に応えたがためだ。 「ははは、おまえよりマルタさんの言葉の方がよっぽど効果があるようだ。すっかり懐いてしまったな」 椅子に座るのは家族四人と、昨日から家に招かれた長女の友人だ。旅行に海を渡ってこの見滝原に来たものの、運悪く宿泊先の手違いで予約が滞ってしまっていた。 どうしたものかと不安に思っていたところを偶然知り合い、同じ信仰を志す縁で家族のみで暮らすには広い教会に一時の滞在に預かる身であった。 「さあ、それじゃあ祈りましょう」 全員が椅子に座ったところで食前の祈りを捧げる。 父と母は教えに則り感謝の言葉を述べ、まだ意味がよく分からない次女も倣うように手を合わせる。 客分であるその女性は、神父である父から見ても完璧に過ぎた姿勢で祈りに臨んでいた。 清く美しく、無償の愛(アガペー)に満ちた聖なる画の如き佇まい。 自分以上に信仰を積んでいると確信させる女性は、僅かな日数寝食を共にしただけで夫婦双方から大きな信頼を得ていた。 ともすれば目の前のこの人にこそ自分達は祈るべきでないのかと、不遜なる考えを抱いてしまうほど。 全ての信徒が模範とすべき理想形がここには顕在していた。 「―――いただきます」 そして、祈りの動作はちゃんとしながらその光景を眺めていた長女は。 目の前の団欒に目と耳を傾けることなく食事のみに集中していた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 教会屋上。 信仰の象徴たる十字が建てられた下で、冷えた大気に身を晒す二人。 その一人は長い赤の髪を上に纏めた十代前半の少女だ。 星空瞬く空を鏡合わせに、無数の電灯が煌めく地上。 夜の街を一瞥する瞳は生まれてから重ねた年月に釣り合わないほど冷めており―――佐倉杏子の送った人生の苛烈さの証となっている。 住む場所はなく、適当なホテルに無断で宿泊する毎日。 食料の確保には窃盗は当たり前、コンビニのレジをこじ開け金銭を奪うのも日常茶飯事。 荒んだ生活を見た目は中学生の少女が不自由なく送れるのは、奇跡の残滓たる魔法の力あってこそ。 自分の力を自分の欲望に用いる。躊躇などない。そうする事でしか生きられない以上迷いなどない。 杏子の送ってきた生活とはそういものだ。完全に順応して習慣になってしまうほど馴染んでいた。 「でさ……何やってんだよあんた?」 杏子は隣にいる英霊に問いを投げた。 先ほども家族と一緒に食事を共にしていた旅人であった。 清廉。そのような一言が凝縮された女がいた。 それだけで言い表せるような器量で収まらない乙女であるが、見た者は始めにその一言を連想するに違いない。 激する性質を思わせる杏子の赤髪に反した、紫水晶色の長髪。宝石や金銀財宝の豪奢とは異なる、渓谷に注ぐ透き通った水流の自然なる美。 地上の電灯と天空の星々に照らされてるだけの筈のそれは髪自体が光り輝いているよう。 身に纏う衣装は現代の街並みには溶け込まない意向だが、鋼の鎧といった戦士の、戦いの道具という印象からは程遠い。 手足に最低限の装具をはめる以外には実りの均整が取れた体を包む法衣のみ。彼女が武に行き覇を唱えた勇士ではない事を示している。 清らかで優しい、輝くばかりのひと。 その名だけで人々の心の寄る辺となり、希望を在り示してくれる、力ある言葉。 それ即ちは聖女。奇跡を成した聖者の列に身を置く者。 それが佐倉杏子の片翼。聖杯戦争を共に行くサーヴァントだ。 ライダー、その真名をマルタ。 救世主の言葉を直に受け、御子の処刑の後も信仰を捨てる事なく、時の帝国によって追放されるも死せず神の恩寵を受けた者。 布教の道程、ローヌ川沿いのネルルクの町にて、人々を苦しめる暴虐の竜タラスクを鎮めた竜使い。 その宗教に属さずとも知らぬ者はいない、世界中で崇敬されるその人であった。 「何、と言われても。マスターとその家族に料理を振る舞っただけよ?嫌いなものでも入ってた?」 「好き嫌いとかはないよ。ウミガメのスープは美味かったし。肉の叩きも汁がすごかった」 「お粗末様」 杏子を見つめるアクアマリンの瞳は慈しみに満ちていた。 その言葉遣いは、彼女と関わった者の多くが見る顔とは違っていた。 礼節を欠いてるわけではなく。さりとてサーヴァントがマスターに、従者が主に、聖人が他者に向けるものとしては間違いがあるような。 どちらかといえば、穏やかな気質の姉が春を迎える年頃の妹にかけるような、親しい間柄でのみ見せるやり取りだった。 「出されたものは残さず頂く。立派な心がけだわ」 「そんな大層なものでもないだろ。腹が空いたら食えるだけ食っとくってだけの話だ」 選ぶ余裕のない生活を送っていた杏子にとって、食事は取れる時に取っておくという考えだ。 味の善し悪しや心情で手を付けない粗末な真似は自分は勿論、他者にも許さない。だから出された料理は食べるし残しもしない。 幼少から触れてきた教えも少なからず関係しているのだろう。どう受け止めようと過去の習慣は消えずに沁みっている。 「おかわりもしてたものね。うんうん、食べ盛りの子はそうでなくちゃ」 「っガキ扱いすんな!」 杏子の舌に残るのは素朴で、郷愁を誘う母の味だ。今も住居も兼ねている教会で眠っている実の母を尻目にして。 悪くない料理だった。美味しかったという感想に偽りはなく、また口にしたい欲求がある。 懐かしい、と憶えた感情。 家庭の料理などもう長らく食べていないと、口にした瞬間に思い知らされた。 あの日に焼け落ちて止まった記録。これから一生思い出す事のない筈だった味そのものだった。 「だから違えよ。そういう話じゃない」 こんな偽りの円満に加えられる事がなければ、決して。 「あいつらは、あの人たちは、あたしの家族じゃない」 その欺瞞に気付いた時、杏子は己の魂がどす黒く濁るのをはっきりと感じ取れた。 「みんな、みんな、偽物だ。死人だ。あっちゃいけないものなんだ。 これを認めたら、あたしは本当に魔女になっちまう。だからいらないんだよ、こんなおままごとに付き合う真似はさ」 許せなかった。憎らしかった。 こんな偽物を用意して罠に嵌めた相手への怒りだった。 自らの手で失ったありし日で幸福を感じていた自分への怒りだった。 はじめは”魔女の結界”の仕業かと判断した。 奇跡を詐称する御遣いによって得た力、闇を齎す絶望の化身、魔女を討つ希望、魔法少女。 結界は魔女のテリトリーであり餌の狩場でもある。社会に疲れた人間の心の隙に潜り込み囁いて、自分の膝元へ招くのだ。 その中で見つけた、魔法少女の証たる宝珠が放置されているのを不審に思い手を出した直後、杏子の意識はひっくり返った。 狩人の側である魔法少女が無様に誘惑に引っかかったのだと、鬱憤を放出する矛先を定めた。 だが魔女の気配は一切探知しなかった。代わりに痛みと同時に手の甲に顕れた聖痕(スティグマ)の紋様。そして光が集合して形成して出来た聖人の姿。 杏子は事態の全てを知った。聖杯戦争。サーヴァント。殺し合い。願望器。 願いを叶えられるという、儀式。 「家族が死んだのは全部あたしの自業自得だ。誰も恨みやしないさ。けどこんな都合のいい幻想に浸かってるなんて、それだけは許せない。 あんただって、そうじゃないのかよ?死人と戯れるなんてのを聖女さまはお許しになるのかい?」 ―――みんなが、父さんの話をちゃんと聞いてくれますように――― 幻惑。佐倉杏子にとっての禁忌。 困窮する家族の幸せを願い、多くの人を幸せにするものだと信じた祈り。 得られた奇跡の報酬は、願った全ての喪失だった。 人心を誑かす魔女。絶望に染まった顔で罵る父の声は、どんな鋭利な槍よりも杏子の胸を穿った。 自分だけを残し、家族を連れて荒縄で首をつり下げた姿は、杏子の心を残酷に引き裂いた。 教会で教えを説き、裕福に家族と幸せに暮らす。 再演される見滝原の人形劇は滑稽だった。 求めてやまなかった幸せを嘲った形で見せつけられるのが、これほど腹が立つとは思わなかった。 早々に家を出て今までのように流浪の生活に戻ると何度も思った。そして実行する度に、このサーヴァントに首根っこを掴まれ連れ戻されるのだ。 こうして、今も。 「優しい人なのですね、マスターは」 自分を戸惑わせる声を、真っすぐに向けてくる。 「彼らは仮初の住人。聖杯戦争の舞台を回す為の部品として生み出された偽の命。その通りです。 命を模造し争いの消耗品として道具に使う、それはあまりにもは許されざる行為です」 些細な、決定的な変化があった。 顔も声も何もかもが変わりないのに、そこにいるのがライダーだと認識は変わらないのに。明確に印象がひっくり返る。 「けど、だからといって彼らの存在すら罪とするのはどうなのでしょう。 複製といえど彼らには命があり知性がある。死霊などではない、生きた人なのですから」 隠す演技、人格の変更、そんな浅ましいいものではない。 分かってしまう。ライダーは変わっていない。変わらないままに身に纏う雰囲気だけを一変させる。 信仰を受ける聖女としての顔も、どこにでもいる町娘としての顔も、どちらも真なるマルタの素顔なのだ。 「あなたは優しくて、強い人。家族の複製を見て穢されたと感じ、家族を失った事を自らの罪と受け止めている。 なら彼らと向き合ってもよいのではないですか。壊れた夢を見る事には確かに辛いもの。けどそこには、あなたが見失ったものも落ちているかもしれません」 「……随分言ってくれるじゃないか。ほんと何なんだよ、あんた」 「あなたのサーヴァントですよ。あなたを守り、導き、あなたに祝福を送るもの。 これでも聖人ですもの。迷える子を救う事こそ私の使命なのだから」 「だから、ガキ扱いすんなっての」 忌々しいものだった。 自分が何かすれば止めに入り、正論を出しあれこれ説教してくるライダーを杏子は鬱陶しがっていた。 その多くが家を失ってからの荒れた生活で身につけたものなのだから、何も思わない事もないのだが。 発言の意図よりも、なにより、自分に世話を焼く姿勢にこそ原因が多いのではないか。 苛立ちともむず痒いとも言えぬ感情。でもはじめて知ったわけでもない。いつ以来のものであったか。 「ていうかあんた、優勝する気はないんだな」 「当然です。聖杯とは救世主の血を受けたもの。そうでないものは偽なる聖杯。求める道理がありません。 まあこんな儀式を仕組んだ奴らは後でシメ……ンンッ説伏しますが、まずは街で起こる戦いを止めなければなりません」 確かに、聖女なる者が偽の杯を求め殺し合うのは想像すら及ばない選択だ。真の聖杯が殺戮の血を注ぐのを許すとも思えない。 欲得にまみれた黄金の杯。偽物であるからこそこの聖杯は正邪問わず万人の願いを汲み取るのだろう。 だからライダーが聖杯戦争を否定するのはまったく自然な成り行きだ。想像通りというべきか。 名前を知った時点でそう来るだろうとは薄々思っていた。 「冗談」 よって杏子は考えるまでもなく、ライダーの掲げる方針の拒否を即答したのだ。 「素直に乗らないってとこだけは同意だ。奇跡と抜かしておきながらやることが殺し合いだ。どうせ碌なもんじゃない。 けど戦いを止めるだとか、そういう慈善事業はお断りだ。聖女の行進に付き合う気はないよ」 希望が落ちたあの日から決めている。佐倉杏子という魔法少女は、全て自分だけに帰結する戦いをすると。 生きる為。楽しむ為。自分に益があり満たされるのなら何でもいい。好き勝手に生きれば、死ぬのも自分の勝手だ。誰を恨むこともしなくていい。 誰が何を願い動くのは自由だ、好きにすればいい。干渉はしない。 けれど、誰もが聖人になれるわけじゃない。 誰かの為に生きる。万人にとって口当たりのいい言葉を実践できる者は本当に一握りだ。だからこそそれを成した者は聖人と呼ばれる。 杏子はなれなかった。他の見知った魔法少女にもそんな資質の持ち主はいなかった。ただ一人を除いて。 未熟な自分を師として育て、最後まで見捨てようとしなかった黄色の魔法少女。 正義を生きがいに出来る、正しい希望の持ち主と同じ道を行く事を、杏子は出来なかった。今になって再び道を変えるなど甘い事が通用するわけがない。 ライダーに手を伸ばす。届きはしないし、届かせる気もない。 嵌めていた指輪から現出する赤い宝石。魔法少女の証、ソウルジェムを見せる。 「聖女はどうだか知らないけどさ、魔法少女をやるのはタダじゃないんだ。 祈りには対価がある。魔力を使えばソウルジェムが濁る。犠牲がなくちゃそれを補えない。 分かる?誰かが死ななくちゃ魔法少女(あたしら)は食えないのさ。ここに魔女がいるかはともかくな。 どうせ消費するんなら自分のために使うべきだろ?命を賭けてまで、得もないのに誰かの為に戦うなんざ馬鹿げてるよ」 見ず知らずの人間が使い魔に食われても意に介さない。そうして育った魔女を倒してようやくグリーフシードを手に入れられる。 魔法少女として活動を続けるには、使い魔を放置するのが大事だ。聖杯戦争も似たようなものと杏子は考える。 悪目立ちして暴れる敵は放置して消耗を待つ。手堅く、確実な戦法。 「……あんたとはコンビだ。バラバラに動いて片方がヘマしたら残った方も揃ってヤバくなる。ここじゃ全員そうなら尚更さ。 マスターっていうんならあたしの方が上だろ?いいか、あたしは乗らないからな」 マスターという立場を傘に着るわけでもないが、自分のサーヴァントにははっきりと断っておく。 伸ばした手とは逆にある令呪を意識する。ご丁寧に令呪の使用法まで教えてくれた。どう反抗されようともいざとなれば押さえつける手はある。 果たして、ライダーは動いた。向き直ってこちらを見る表情は憮然なれど、その美しさは損ないはしないまま、軽く微笑んで見せた。 意地の悪い笑みだった。杏子の魔法少女としての直感が背筋に寒いものが走るのを鋭敏に捉えてしまっていた。 「……ふぅん」 「な、なんだよ」 「ちょっと借りるわね」 なにか、嫌な予感がする。警戒を強めたその時には、風は過ぎ去った後だった。 掌の上をそよぐ風。何かが、ライダーのたおやかな指が通過した音。 「な、おい!返せ!」 一秒あったか定かではない交差。それでも変化はある。 杏子の側にあった赤い輝きは、いま目の前の聖女の手で依然と瞬いていた。 「ああもう暴れないの、ちょっと見るだけだから」 「あだだだだぁぁーーー!?」 野苺でも摘むような気軽さで杏子のソウルジェムを分捕ったライダーは、手にある宝石をしげしげと観察している。 空の片手では、飛びかかって奪還しようとした杏子の頭部を掴み自分の行動を阻害させないようにして。 眉間にがっちりとはまった指の握撃による痛みは杏子の想像を絶していた。 杏子と変わりない見た目、麗しい聖女のアイアンクローは頭蓋を割らんとする威力で逆らう意識を剥奪させる。 あれほど念頭に入れていた令呪の行使ももはや頭から抜け落ちた。このまま反逆により意識が落ちるか最悪死ぬかと朧に察しはじめたところで縛りから解放された。 「……よし、と。はい返すわね」 「ぁ……とおぉっ!?」 朦朧として霞がかってぼやけた視界で、放り投げられた赤石。 自分のソウルジェムと認識して咄嗟に、必死になって手を出す。どうにか光は無事に手の中に収まった。 「オ、マ、エ、なああああ……!」 赤い旋律が魔力として現実に走って、杏子の体を包み上げる。 武装の展開を構築。怒りと痛みで熱くなった頭はとっくに統制を離れている。槍の一つでもブチ込まねば気が済まないという一念でいっぱいだ。 正常に戻る視界で女を捉え、手に握ったソウルジェムを見据え―――そこで沸騰するほどの熱は冷や水をかけられた。 「……あ?」 ソウルジェムは魔法少女にとっての要だ。戦う姿に変わるための媒体で、中身の濁りで魔力の残量を示す。故に逐一の確認は欠かせない。 今日の状態は濁りが一割。底に僅かに沈殿するのみのもの。 だが今見た宝石の中身はどうか。色鮮やかな赤には一変の濁りもない純度ある美しさを保っている。 初心者の魔法少女でも知る知識。穢れの浄化はグリーフシードを用いでしか出来ない。その常識を壊されて、杏子は首を回す。 そこにいるのは一人の女。過去に起きた偉業を成した夢の具現。聖女のサーヴァント。 奇跡―――。 今目撃したものの意味を、言葉に出来ぬまま。呆然とそれを起こした人をずっと眺める。 一分、いやそれ以上、もしかしたら以下かもしれない間隔の後。 「これで、タダ働きでも問題ないわね?」 「あるに決まってんだろ!」 反射的に叫んでいた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 結局、杏子は最後までライダーの方針を認めないまま寝ると言って下に降りていった。 残ったままのライダー、マルタは一人のまま地を見続けているが、思考は去ったマスターについてに割かれていた。 良い子ではあるのだろう。善性を持って生まれ、愛ある家族に育てられて成長した。 だが家族を襲った悲劇が自分の原因であると背負い、罪人らしく粗暴に振る舞うしか出来なくなってしまった。 家族を殺したのは自分だ。そんな自分は醜い悪ある者でなければいけない。 元来の信心深さが悪い方向に絡み、今の佐倉杏子の人格を歪めて形成している。 この所感はマルタがマスターから直接聞きだした経緯ではない。尋ねても絶対に口を開く真似もしないだろう。 サーヴァントとマスターは契約時に霊的にもパスを共有し、互いに夢という形でそれぞれの過去を覗くというが、それによるものでもない。 彼女を直に観察し、語り合い、そうして得たそのままの印象と分析でしかない。 心を読むといえば特殊な技能なりし異能を必要とするものと思われるが、それは人に予め備わった機能だ。 経験と徳を積み、真に人と向き合う努力を怠らなければ誰であろうとその心を読み解ける。少なくともマルタはそう思っていた。 「女の子捕まえて契約持ちかけた挙句魂を弄るなんて……どの世界でも胡散臭い詐欺師はいるものね」 キュゥべえなるものとの契約により生まれたソウルジェム。 目にした時、聖女としての感覚が訴える声に従いつぶさに調べその正体を看破していた。 あれは……人間の魂を収めている。 杏子は理解しているのか。あの様子では満足に知っている様子ではない。彼女だけでなく他の魔法少女もそうなのか。 その事実を今すぐ詳らかにするのをマルタは禁じた。自分の魂を肉体と切り離されたお知り少なからぬ衝撃を受けるのを避けた。 いずれ伝えなければならない。しかし遠慮なく暴露して徒に彼女の心に更なる傷を与え真似をマルタは冒したくなかった。 だからせめて淀んでいた穢れを浄化した。濁り切ってただ魔法、魔術が使えなくなるだけのものと楽観はしない。 もっと恐ろしいことのためにあれは造られたのだと、マルタの聖女の部分が警鐘を鳴らしている。 人間の『箱詰め』事件。 悪の『救世主』の噂。 街にも幾つもの物騒な噂が蔓延している。 恐るべき『邪悪』が街中に潜み、黄金の日常を食い潰そうとしている。 己が招かれた事態が偶然性が引き起こした事故などではなく、必然の、必要と求められての結果であるとしたら。 世界の焼却にも並ぶ、未曽有の危機の萌芽の可能性すらもが危惧になる。 「……そうねタラスク、今度はちゃんと救いましょう。世界も、あの子も」 それでも。マルタの在り方は変わることはない。 如何なる時代でも、如何なる形であったとしても。 マルタは聖女であり続ける。人々を守り、導くこと。それが、聖者と呼ばれた者の使命。 思われ、願われた……なら、そう在ろうとするまで。 『あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただ一つだけである』 「大丈夫です。私は私の必要なこと、やるべきことを心得ております」 ですから、どうか見守り下さい。 星々の行き交う夜空を見上げ、マルタは手を合わせ天に祈った。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 妹もいる自室。既に寝入っている妹を起こさないように、隣のベッドに潜り込んで布団を頭までかぶる。 早く寝付いてこの嫌な思いを忘れてしまいたかった。なのにこういう時に限って目が冴えたままでいる。 頭にまだ残る鈍痛が原因のひとつでも、まああるのだが。 もぞり、と動く音。横目に見れば寝返りをうった妹の顔。 幼い頃の自分に似た、何もかもあの頃のままの家族の寝顔。 これも偽りなのか。寝息を立てる仕草も、幸せな夢を見ているだろう、蕾のような微笑みも、全て。 ああ、少なくとも自分はそう捉えている。もう戻らないものと認めている。 「優しい子、だとさ。あたしをよ」 何人も欲望のために見捨ててきたあたしを。 正義の味方になれなかった自分を。 見込み違いにも程がある。聖人とは名ばかりかと笑いたくもなる。 「まったく見せてやりたいよ。あたしの本当の家族の最期をさ……」 追いつめられた人間の取る行動。行き着くところまで詰まってしまった末路。 醜さ、憎悪、怒り、悲哀、無情、絶望。世界の負を煮詰めたような光景。 「でも―――あのひとなら……本当に救えていたんだろうな」 なにせ本物の聖女マルタだ。 救世主の言葉に導かれ世界中から信仰を得た崇高なる偉人。 いち宗教家とは、その言葉の質も存在感の重みも”もの”が違う。 今のこの世界と同じく、家を訪れ、言葉を交わし、食事を共にするだけで、 仮に本物であると知れたら滂沱と涙し、自ら膝を折り跪いてしまい、娘が人を惑わず魔女だった絶望など、軽く拭い去ってしまうのだろう。 奇跡になど、頼らずとも。 魔法なんか、使うまでもなく。 培い、積み上げた徳だけで、人の心に希望を宿す。 ……そうだ。反抗しなかったのは怖かったからだ。 幾ら言葉を投げつけても全てを返されてしまい、聖女の威光に自分の虚飾を剥がされるのを拒んだのだ。 彼女の方が望まずとも、彼女の克(つよ)さを見せられる側が自傷に陥ってしまう。 白日の元に投げ出される、無様な自分が残るだけ。 「…………くそ」 ライダーともうひとつ考えが一致した。 この儀式の主催とやらは、悪趣味だ。魔女に聖女を送りつけるんだから間違いない。 ベッドの中で微睡みに落ちるまで、杏子の気は晴れはしなかった。 【クラス】 ライダー 【真名】 マルタ@Fate grand order 【属性】 秩序・善 【パラメーター】 筋力D 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A+ 【クラススキル】 騎乗:A++ 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。 例外的に竜種への騎乗可能なライダーである。 対魔力:A A以下の魔術は全てキャンセル。 事実上、現代の魔術師では○○に傷をつけられない。 【保有スキル】 信仰の加護:A 一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。 加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。 あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。 奇跡:D 時に不可能を可能とする奇跡。固有スキル。 星の開拓者スキルに似た部分があるものの、本質的に異なるものである。 適用される物事についても異なっている。 神性:C 神霊適性を持つかどうか。 高いほどより物質的な神霊との混血とされる。 聖人として世界中で崇敬されており、神性は小宗教や古代の神を凌駕する。 水辺の聖女:C 船上で漂流し、ローヌの畔でタラスクを制したマルタは水に縁深い。 水辺を認識した時、マルタの攻撃力は上昇する。ノッてくるのである。 ヤコブの手足:B ヤコブ、モーセ、そしてマルタへと脈々と受け継がれてきた古き格闘法。極まれば大天使にさえ勝利する。 伝説によれば、これを修めたであろう聖者が、一万二千の天使を率いる『破壊の天使』を撲殺している。 通常時には機能しておらず、一部スキル、聖杖、主の教え、本人の自重、聖女としての威厳を捨てる事と引き換えにステータスを一時的に向上、 素手に手甲(ホーリーナックル)が追加、神霊、死霊、悪魔の類に対して絶大な特効状態が付与される。 【宝具】 『愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)』 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2-50 最大捕捉:100人 リヴァイアサンの仔。半獣半魚の大鉄甲竜。 数多の勇者を屠ってみせた凶猛の怪物をマルタが説伏され付き従うようになった本物の竜種である。 マルタの拳も届かない硬度の甲羅を背負い、太陽に等しい灼熱を放ち、高速回転ながら飛行・突進する。 『刃を通さぬ竜の盾よ(タラスク)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 一時的に怪獣タラスクの甲羅を召喚し、自分や味方を守る。 味方(単体)の防御力を大幅にUPさせる、もしくは短期間の物理ダメージ無効。 『荒れ狂う哀しき竜よ(タラスク)』 ランク:A+ 種別:対人宝具・対竜宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:1人 ヤコブの手足スキル発動中のみ使用可能。 タラスクを相手に落下させた後、その上からマルタ自身が拳のラッシュを浴びせる。まさに鉄拳聖裁。 拳には空手でいう「徹し」「寸勁」の技術が使われているためタラスクにはダメージはない―――が本体曰く実際はかなり痛いらしい。 【weapon】 『聖杖』 救世主たる『彼』から渡された十字架のついた杖。 「これを持っている時くらいは聖女らしくしてはどうか」という教えの通り、マルタの(ちょっとだけ)荒々しい面を抑える精神的リミッターの役割を兼ねている。 なお通常攻撃では、十字架に祈りを捧げる事で対象にダメージが届く。 エネルギー波等の類を射出する過程が殆どなく、目標がひとりでに炸裂、爆発する結果のみが発生している。 【人物背景】 悪竜タラスクを鎮めた、一世紀の聖女。 妹弟と共に歓待した救世主の言葉に導かれ、信仰の人となったとされる。 美しさを備え、魅力に溢れた、完璧なひと。 恐るべき怪獣をメロメロにした聖なる乙女。最後は拳で解決する武闘派聖女。 基本的に優しく清らかで、穏やかなお姉さん風の言動が多いが、親しい者の前では時折聖女でないマルタの面を見せる。 聖女以前の、町娘としてのマルタは表情と言葉が鋭くなり、活動的で勝気。……というよりヤンキー的。 どちらが素というわけではなく彼女の芯は変わらず聖女のまま。要はフィルターのオンオフの違い。 【サーヴァントとしての願い】 聖女マルタは、救世主のものならざる聖杯に何も望むことはない。 かつての時と同じく、サーヴァントとして現界しても聖女として在る。 故に、この戦争も認める事なく真っ向から反抗する。 一度道を外れたマスターが、正しき道に向かう為に。 【マスター】 佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 【マスターとしての願い】 【weapon】 分割する多節槍が主装。巨大化しての具現も出来る。 【能力・技能】 魔法少女として優れた身体能力に合わせ、魔女との戦闘経験も豊富。 防御の術も習得してるがスタイルが攻めに比重が偏ってるため防戦は不向き。 魂はソウルジェムという宝石に収められてるため、魔力さえあればどんな損傷でも回復可能。 ジェム内の濁りが溜まり心が絶望に至った時、その魂は魔女と化す。 かつては願いを反映した『幻惑』の魔法を持っていたが、過去のトラウマから願いを否定した事で使用不可になっている。 【人物背景】 キュゥべえと契約した赤い魔法少女。 好戦的。男勝りな口調。常になんらかの軽食を口にしている。 魔法少女の力ひいては願いや欲望は、自分のためにこそ使うべきとする信条。 他人を救おうとした父を助けたくて願った魔法は、父も家族も全てを燃やした。 魔女と罵りを受けた少女は自暴自棄気味に利己を優先するようになる。 だが根が善人なため堕ち切る事もできず、謳歌してるようで鬱屈した日々を送っていた。 【方針】 願いを叶えるという聖杯そのものについて懐疑的で素直に受け取る気はない。 かといって、積極的に戦う気もなく様子見するつもり。マルタの方針に同意する気は今のところ、ない。
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人はいつでも間違うもの 大切なのはそれからの ◆o.lVkW7N.A ドクンドクンドクンドクン。 鼓動が胸の奥で痛いほど大きく反響し、耳朶を潜って鼓膜に突き刺さった。 野比のび太は今、無力な、――そう余りにも無力な命を腕の中に抱え、人生最大の二択に悩まされている。 殺すか、殺さないか。 言葉にすればあんまりにも簡単で単純なその問いに、けれど彼は答えを出せずにいる。 悩んでいる。考えている。理科や算数や、難しい問題を考えるのは大の苦手なこの眼鏡の少年が。 彼は複雑なことを考えるのが嫌いだった。重要な選択を自分で選び取ることも、不得手だった。 テストのときはいつだって、秘密道具に頼るか、六角鉛筆を転がして出た目の通りにマスを埋めるか、だ。 そうやって、いつもいつものんびりだらだらと結論を先延ばしにして生きてきた。今までは。 けれどこの問題は、自分で答えを掴み取らなければならない類のものだ。 どちらを選ぶにせよ、決めるのは自分自身。誰かに決めてもらうことも、適当な何かに任せることも出来ない。 ……頭が、痛い。 もともと頭を使うのは不得意なほうだ。考え込むと、すぐに頭痛を起こす。 じんじんと側頭部を苛む重い偏頭痛は、更に思考を裁断し、分断する。まさに悪循環。 焦るな、慎重になれ、KOOLになるんだ。氷のようなKOOLさこそが、今は必要なんだ! のび太は自分にそう言い聞かせ、伸ばした指先で頭をがしがしと掻き毟る。 そう暑くも無いのに汗がやたらと流れ落ち、背中をべたつかせて気分が悪い。 おまけに、さっきから目の前を飛び交っている薮蚊の羽音が妙に耳障りだ。苛立ちが膨らむ。 口腔内に纏わりついている粘っこい唾液を、空気の塊とともに無理やりごくんと飲み込む。 けれど口中のべっとりとした不快さは拭いきれず、のび太は舌打ちしてランドセルの中を漁った。 蓋を開けるのももどかしい、といった手つきでペットボトルを取り出して、中の水を一気に流し込む。 ボトルの中身は既に随分と生温くなっていたものの、喉を潤すには十分だった。 いや、十分なんてものではない。リリスから走って逃れ、裏山中を駆け回ったのび太は、本人が感じている以上に疲労していたのだ。 乾いた身体に染み込んでいく水分は、ただの飲料水どころか甘露のようだった。 スネ夫のうちでおやつに出されるアイスクリーム入りのメロンソーダだって、きっとこんなに美味しくはないだろう。 ごっくごっくと喉を鳴らしボトルの半分近くを飲み干して、漸くのび太はほっと人心地をつく。 「た~た~」 泣き声交じりにズボンの裾を引っ張られ、すっかり頭から抜けていたひまわりのことを思い出す。 声のした先に視線をやれば、ひまわりは「じぶんにもくれ」と言いたげに口をぷぅっと膨らませていた。 恐らくひまわりも喉が渇いているのだろう。 彼の手にあるペットボトルを羨ましそうに見上げて、両手をばたばたと振り上げている。 「だ、駄目だよ。これ、僕んなんだからね!!」 正確にはのび太本人の物ではなく、グリーンから譲ってもらった品なのだが構わない。 ひまわりの届かない高さまでペットボトルを持ち上げると、幼児相手に舌を出してあっかんべーをしてみせる。 「絶対に駄~目っ!!」 「あうーっ」 その仕草に癇癪玉が爆発したかのように怒って、ひまわりは尚も手足を振り上げた。 紅葉のように小さな掌でぱたぱたとのび太の腿を叩くものの、当の相手はどこ吹く風だ。 だが、ひまわりはそれしきのことで諦めるほどやわな赤ん坊ではない。 一見普通の健康優良児にしか見えない彼女は、実の所、家族ともども何度も世界を救っているスーパーな赤ちゃんなのだ。 そんな彼女にとって運動音痴の小学五年生など、そうそう手強い相手ではなかった。 「た~、ううっ!」 ひまわりはのび太にちょこちょこと近付くと、グラブから出ている指先で器用に彼のシャツを鷲掴んだ。 コアラのようにぎゅっと抱きつき、全身を芋虫さながらに蠕動させてのび太の身体をよじ登る。 突然の行動に驚いた彼が振り払おうとするも、しがみ付く腕力は予想以上に強く、容易には引き剥がせない。 そのまま虚をついて短い両手を精一杯に伸ばし、のび太の掲げているボトルを奪い取る。 突然のことに目を白黒させている相手を無視して、まだ蓋が開けっ放しだったそれを身体ごと両手で抱え込んだ。 とはいえ対するのび太も流石に、幼児にやられっぱなしで平気なほど鈍い人間ではない。 慌てて立ち上がり、ひまわりの手には少々余るサイズのボトルを再びひったくり返す。 う~う~唸っているひまわりには構わず念入りに硬く蓋を閉め、ランドセルの奥底へボトルを放り入れた。 「あげないよ!」 「あぅあ~っ!!」 「うるさいな、駄目だって言ってるだろっ!」 ひまわりへ叫ぶのび太の言葉の端々に、先刻同様苛立ちが見え隠れし始める。 先ほどは先延ばしにしていた答えを選択するときが、ついにやってきたのかもしれない。 顔を真っ赤にして怒気を含んだ台詞を放ちながら、彼は苛々とひまわりを見据えて再び自問自答する。 殺すか、殺さないか。 目の前には、軟語を喚きながらぶんぶんと両腕を回して自己主張する、ひまわりがいる。 何の役にも立たない、自分一人では身を守ることすら不可能な、小さくて柔らかい命の塊。 それでもこの殺し合いの中では確かな参加者として一人前に扱われ、殺せば『ご褒美』へと一歩近付ける命の塊。 のび太は眼前のひまわりと視線を合わせ、ごくりと固唾を飲み込んだ。 さっき水でべたつきを洗い流したばかりの筈なのに喉は苦しく、やたら痰が引っかかった。 胸元に手を当て、とくとくと鳴り響く鼓動のうるささを抑え込む。 ぴんと張り詰めた静寂の中、その音は実際以上に大きく聞こえていた。 ……赤ちゃんなんて、大っ嫌いだ。 うるさいし、わがままばーっかりだし、自分じゃ何にもできない足手纏いだし。 今も僕の大切な水を取ろうとしたし、これからだってきっとこの子がいたら邪魔になるはずだ。 のび太は自分自身にそう言い聞かせる。 おそらく彼の中で、答えはもう決まっているのだ。二者のどちらを選ぶのか、その回答が。 だから後は無理やりに、そのゴールへ繋がる道筋を、結果へ繋がる過程を考えているだけ。 「それに、……それにこれ以上泣かれたら、僕まで誰か怖い相手に見つかっちゃうかもしれないし。 ひまわりがいたら、走って逃げることだってできないし。だから……、だから今僕がここで殺してやる!!」 のび太は眼下のひまわりをねめつけて宣言すると、肺の奥深くまで大きく酸素を取り込んだ。 心を落ち着かせるため、二度三度とゆっくり深呼吸を重ねる。 恐怖で震える指先を伸ばし、傍らに落ちていた手頃なサイズの石を拾い上げた。 振り上げたときにすっぽ抜けないよう強く握り締めると、ゴツゴツした感触が掌全体を襲う。 尖った底部が掌中に食い込み、刺すような痛みがした。その鈍痛に、のび太はふと考える。 ……これだけでこんなに痛いんじゃ、一体殴ったらどのくらい痛いんだろう。 きっと、ジャイアンの拳骨より痛いよね。ママにお仕置きでお尻を叩かれるのよりも痛いよね。 落とし穴に落ちるのより、ラジコンで小突かれるのより、ずっとずっとずっと痛いよね。苦しいよね。 そう分かってはいても、今ののび太に自身の行いを止めるすべは無かった。 のび太は手にした石塊を振り上げ、未だあうあう呟いているひまわりに狙いを定めた。 外すことなど、到底ありえない距離だ。おまけに相手はただの赤ん坊。 しくじることの方が難しかった。否、その筈だった。 しかしのび太の予想に反し、彼の振りかぶった石がひまわりの頭部へと到達することは無かった。 幼児の脳天めがけて振り下ろされたその石は、瞬間、彼女の周囲に発生した力場によって遮られ、破砕した。 ひまわりはなにも、考えて回避行動をとったわけではない。 ただ本能的な恐れを感じて、両の握り拳で頭を庇っただけに過ぎない。 だが握り締めた拳は特殊な技術により力となって具現化され、そこに現出したのだ。 ――巨大な盾と同等の力を誇る、素晴らしく堅牢な防御壁として。 ひまわりの装着している手袋は、ただの手袋ではない。 ガードグラブと名付けられたそれは、握り締めるだけで強固な力場を作り出し盾代わりの役目を果たす代物だ。 使用法も使用意図も、実に単純にして明快。だがそれ故、乳児のひまわりにも感覚的に使いこなせる! 「た~っ!!」 ひまわりは周囲の力場を継続させたまま、高速のはいはいでのび太へと突進した。 身を守る、という概念くらい乳児にだって存在する。 むしろ言葉も喋れないような幼子のほうが、他者から放たれる悪意には敏感だ。 ひまわりは、のび太の全身を覆っている殺気にしっかり反応し、そして判断した。『このおにいさんは敵だ』と。 だからひまわりは反撃に転じた。 ――拳を、一段強く固める。 己の一撃を防御されたのび太は、未だ驚愕から覚めやらない。あまりの驚きで、呆気に取られていた。 ずんずんと接近してくるひまわりに対処することもできず、その場に立ち尽くすままだ。 その間にひまわりは容赦なくのび太の股座に突っ込むと、脛を狙ってグラブの嵌められた両手を叩きつけた。 単なる赤子の一撃と甘く見てはいけない。周辺に力場を纏わせた拳は、破壊力に長けた十分な戦闘武器だ。 最高の守備は最高の攻撃だ、という言葉がある。だとするなら、最強の盾はある意味で最強の矛だ。 強力な力場を備えたひまわりの両拳もまた、それそのものが一対の矛に匹敵する威力を備えていた。 足元を崩され、のび太の身体が後方へぐらりと大きく傾ぐ。その隙を無駄にせず、ひまわりは更に二打、三打と追撃。 のび太は足を踏ん張ってその衝撃に耐えようとするものの、時を空けずに繰り出される数度の打撃は堪え切れるものではない 膝がすとんと地面へ向けて引っ張られるのを感じると同時に、彼は背中から草の間へ激しく倒れ込んだ。 「くそっ……、何で赤ちゃんなんかに……」 のび太は苛立ちに顔を歪め、足に力を込めてよろよろと立ち上がる。 辺りに散乱している小石を掴んでかき集め、めったやたらにひまわりへと投げつけた。 しかし相手は、何の労苦もなくこれを全弾回避。 その行動がますます頭へ血を上らせ、のび太は大股でひまわりへ走り寄ろうとする。 血走った目でひまわりを見据えるその顔は、まさに子供を追い詰める悪役といった感じだ。 迫るのび太の鬼気迫る表情に、だがひまわりは怯えることなく果敢に対応する。 タイミングを見計らい、走る相手の脚の間を得意のはいはいですり抜ける。 まるで冗談のような綺麗さで股を潜り抜けると、くるりと片腕を軸にして真反対に方向転換。 目の前にある大きな背中を押し倒すようにして、背後から再びガードグラブでの殴打を与える。 確かな手ごたえを感じ、ひまわりはほっと息を吐いた。 自身の前進する勢いに背中を押された衝撃が加わり、のび太はまたしても地面へつんのめった。 同時に、先ほどのび太自身がばら撒いた石に足を取られ、ごろごろと地面を転がる。 バランスを崩し、完全に仰向けになった身体を起こそうと、のび太が身を捩じらせる。 しかしひまわりはそれに目もくれず、今のうちにと急いでその場を走り去った。 何もひまわりだって、のび太の息の根を止めたいわけではないのだ。 ただ自分の安全が確保できれば、この場から逃げ出せればそれでよい。 ひまわりは、一秒でも早くグリーンの元へ戻りたいという焦燥を胸に、できる限りのスピードで地面を這った。 ……もっとも、「してやったり」という達成感が全く無かったと言えば、嘘になるが。 土が黄色のベビー服をあちこち汚し、突き出している小枝や草葉がチクチクと手指を刺す。 汚いし、痛い。お漏らししたまま替えてもらっていないオムツも、むずむずして気持ち悪い。 けれどひまわりはそんなことに構っている余裕などなかった。 手足を這い動かし黙々と、グリーンと別れた森林部を目指す。 (おにいさん、どこ……?) 求める相手が、いまや別の女にメロメロなことを、ひまわりはまだ知らない。 彼女のためなら死んでもいいと、殺しても殺されてもいいとすら思っていることを、ひまわりはまだ知らない。 きっとその事実を知れば、彼女は泣き喚くことだろう。――――悲しみで? いいや、嫉妬で。 何せ、どんなに幼くとも彼女は一人前のレディーなのだから。ジェラシーを感じて、当然だ。 * * * イエローが手を組んだので、リルルも同様に手を組んだ。 イエローが目を瞑ったので、リルルも同様に目を瞑った。 イエローが「おやすみなさい」と呟いたので、リルルも同様に「おやすみなさい」と呟いた。 イエローに強制的に服を着させられた後、(リルルは必要ないと言い張ったが、イエローに怒られて仕方なく袖を通した) レッドの埋葬を手伝ったリルルは、今、彼のために祈っていた。 リルルにも、『祈る』という概念はあった。神や天国、天使の存在を信じてすらいた。 メカトピアにも宗教はある。神は強欲で我侭な人間をお見捨てになり、アムとイムという始祖のロボットを作られたのだ。 神は人間の代わりに天国のような世界を創るよう、自身の作ったロボットに命令なさった。 ――それから数万年の時が経ち、ロボットは確かに天国のような世界を築き上げた。 支配する者もされる者もいない、貴族ロボットも奴隷ロボットもない、夢のように平和な世界だ。 すべてのロボットは平等だ。世界ロボット権宣言でもそれは語られ、広く承認されている。 曰く、『すべてのロボットは、作られながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である』と。 なんて素晴らしい、ロボット社会。欲にまみれ互いに殺し合ってばかりの人間とは、天と地ほどの格差がある。 人間は、ロボットのために奉仕するべきであり、労働するべきであり、支配されるべきだ。 だって彼らはロボットの道具であって、 ロボットが人間を自由にする行為は悪いことではない筈で。 ……その筈なのに、ほんの少し前まで確信していた想いが揺らぐ。 人間には『こころ』があると言う。『人を思いやる気持ち』があるのだと。 ……『こころ』とは何なのだろう。それは、そんなにも素晴らしいものなのか。人間だけに備わっているのだろうか。 『こころ』を有する人間は、ロボットよりも優れた存在なのだろうか? 自身の脳裏を過ぎるその考えを、一概にただのエラーだと切り捨てられない。 桜の下で交わしたサトシとの会話を、先ほど自分を癒そうとした少女の呟きを思い出す。 彼らには、他者の痛みを感じそれを想うことのできる精神があった。 けれど、人間にそんな感情が備わっているだなんて、リルルには疑わしい。そんなの聞いたことも、考えたこともなかった。 何故ならそれらは、メカトピアでは教えられることのなかった知識だからだ。 ロボットこそが万物の長であり、絶対的な君主であるとの思想が当然のこととしてまかり通る祖国。 そこで徹底的に植え付けられた人間への不信感や優越感。 だがリルルの思考回路に錆のようにこびり付いたそれらの常識は、今や少しずつ剥がれ出していた。 それが良い兆候なのか悪い兆候なのかも分からず、リルルは少し恐くなった。 彼女は瞳を開き、隣で膝を折る少女をちらりと横目で確認する。 粛々とした空気を纏わせた彼女は、その視線に反応するかのように両の目蓋を持ち上げる。 僅かにしっとりと濡れた長い睫毛が、呼応するように軽く揺れた。 「ありがとう、……きっと、レッドさんも喜んでくれるよ」 リルルはその言葉に無言で小首を頷かせ、肯定の意を示す。そんな自分の反応が、彼女には不思議だった。 きっとこの殺し合いが始まった当初の彼女なら、『喜ぶ? 彼はもうモノでしかないのに』とでも答えていたことだろう。 けれど今のリルルは、どうしてかその台詞を口にすることが出来なかった。 彼女は今まさに自分に訪れている変化に戸惑いを隠せず、その正直な気持ちの丈をイエローにぶつけた。 「私、自分の中の知識が信じられなくなりそう」 「……どうして?」 「人間は強欲で残忍で身勝手な生物だって、私、ずっと教えられて生きてきたわ。だからこそ、奴隷になっても仕方がないって。 ……でも、私が今まで会った人間は皆、そんな性格には思えないの。のび太さんやサトシさん、それにあなたも。 ねえ、教えてちょうだい。一体、どっちが人間の本当の姿なの? 何が真実なの?」 そう言ったリルルの声は、切実だった。彼女は、まるで縋るようにイエローを見つめて尋ねる。 その視線に射竦められ、イエローもまた、胸から搾り出したように困惑した声で答えた。 「……確かに人間は、我侭だったり欲張りだったりすることもあるよ。 ポケモンをお金儲けのために使ったり、自分の気晴らしのために虐めたりするような酷い人も、中にはいる。 だから、キミが今まで教えられてきたことは多分、そんなに間違ってないと思う。 だけど……、そうじゃない人だって、いっぱいいっぱいいるんだ。 優しくて、あったかくて、誰かのために自分を犠牲にできるような人も、いっぱいいっぱいいるんだよ」 イエローは、自分自身に言い聞かせるように語る。 強欲だったり、残忍だったり、身勝手だったり。そういう人がたくさん存在することを、イエローは知っている。 それでも決して、全ての人間がそうな訳ではない。世界にはきっと、純粋な人も大勢いる。 この殺戮の舞台の中で、後者に当てはまる人間がどれだけいるのか、イエローには判断できない。 もしかしたらほんの数人しか、そんなお人よしはこの場にいないのかもしれない。 軽々しく『人間は皆、善良だ』なんてことは到底言えない。けれどせめて、目の前の彼女には知っていてほしい。 「そういう人が、人間の中には、確かにいるよ」 無力な者の庇護と友人の無事を願って死んでいった、優しい城戸丈のような人。 己の危険も顧みずイエローを戦場から逃がした、強いベルカナのような人。 そんな彼らの存在を、彼女には知っていてほしい。 そして、もし出来るなら――――。 「そして、もしキミがそんな人間に逢えたなら、まずはその人と友達になってみてほしい。 その人と色々話して、付き合ってみて、人間がそう悪いものじゃないって、分かってほしいんだ」 「友達……」 リルルは、イエローの言葉を完全に理解してはいないのかもしれなかった。 彼女が反復した『友達』という単語は、まるで片仮名で書かれた『トモダチ』という別の言葉のように、イエローには聞こえた。 「うん、『友達』。友達っていうのは、うーん……。そう、相手のために、泣いてくれる人、かな」 「私のために、泣いてくれる……? それが、友達の定義なの?」 「定義だなんて、そんな難しいことじゃないよ。ただ、今ボクが思いついただけだから」 「そう……」 リルルは、イエローに語られた内容について考え込んでいるようだった。 表情そのものに大きな変化は無かったが、前髪で見え隠れる眉間に少しだけ皺が寄っている。 その様子に「これでよかったのかな?」と思いながら、イエローは彼女へ告げた。 「ボク、あの子のお墓を作りに行くよ」 「……さっきあなたが言っていた、あなたが壊してしまった相手?」 「うん」 イエローは、心に苦しいものを覚えながらも、真っ直ぐな瞳で肯定する。 自分の罪から目を逸らしてはいけないと思った。見なかったことにして進んでは、いけないと思った。 それに真っ向から向かい合うことが、彼女へのせめてもの償いになるのだろうと。 その言葉にリルルはしばし思案すると、イエローを伺うような声音でぽつりと漏らした。 「……私も、ついて行っていいかしら」 * * * 拾った太い枝を地面に突き刺して、ざくざくと深い穴を掘った。 ろくな道具もなしに人一人入れるだけの穴を独力で堀り上げるのは、なかなかの重労働だ。 ネスは垂れ落ちる汗を掌で拭いながら、それでも一人、無言で墓を掘っていた。 自分に出来ることは限られていた。絶対の信頼を寄せていたPSIも、今はまともに作用しない。 己の腕の中で徐々に弱っていく少女の前で、彼は、何一つ彼女にしてやれなかったのだ。 「僕は、何も出来なかった」 そう口中で呟いて、重い息を吐いた。それは決して、疲労だけのせいではなかった 自身の無力さに嫌気がさす。その苛立ちをぶつけるように、手にした枝を力一杯大地に突き刺した。 垂直に突き立てられたそれを目の端に留めながら、ネスは先刻見た彼女の最期を思い出す。 「……白い女の子……、あたしの大事なひとのカタキ……」そう言葉を遺して、彼女は逝った。 そして切れ切れな声で、自分を見上げ縋るように頼んだ。「おねがい、やっつけて」と。 自分が彼女にしてあげられたことは、ひとつも無かった。けれど、これから『してあげられる』ことはある。 ネスは、決意していた。彼女の仇を打とうと。 自分と彼女は本来友人でも何でもなく、ただ偶然死に際に居合わせただけの関係だ。 けれどそれはネスにとって、『ただそれだけ』と冷静に割り切れるようなものではなかった。 だから彼は、その行為の実行を心に決める。 自分の目の前で死んでいった少女の、せめて最期の望みを果たしてやりたいと、そう思った。 手がかりは、ゼロに等しい。そもそも『白い女の子』の指す意味が、よく分からない。 肌が? 髪が? 服が? 一体何が『白い』のか、どう『白い』のか、彼女の末期の言葉に、ヒントは皆無。 そもそもこの広い島のどこにいるかも不明なその『彼女』と、どうすれば遭遇できるのだろう。 少女の願いを叶えることの難関さ、クリアしなければならない課題の多さを改めて感じる。 問題は、今もって全くのところ山積みだった。 「だけど、きっとやってみせる。……せめて一つくらい、君に何かしてあげたいから」 ネスは傍らに横たわっている少女に視線を移し、そう口にした。 当然ながら返事などしない彼女に「きっとだよ」と念を押して、彼は墓穴掘りを再開した。 漸く形だけは何とかなった穴の中へ少女の遺体を安置しようと、脇の間に手を入れて抱きかかえる。 自分と同じくらいの体格をしている筈の彼女の体は何だかやたら軽くて、きっと魂が抜けてしまったからだろうなと思った。 ネスは掘り終わったばかりの土穴に彼女を横たえようとして、しかしふとその手を止めた。 腕の中の彼女と、目が合った気がしたからだった。どくん、と心臓の音が大きくなる。 こちらを見上げる少女の瞳に恨みがましいところは無く、死者の怨念のようなおどろおどろしいものは感じなかった。 どちらかといえば彼女は、眠っているように穏やかな表情でネスに語りかけている風に見えた。 その視線から瞳を逸らすことなく、想いをしっかと受け取る。無言で頷いて、指先に力を込めた。 * * * 「……構わないけれど、どうして?」 「理由なんて、分からないわ」 リルルは、そういえばさっきも同じ台詞を言った気がするな、と思いながらそう告げた。 実際、理由なんて自分でもよく分かっていなかった。しいて挙げるなら、彼女に対して興味を持ったのだ。 彼女にとって、先ほどのイエローの言葉は衝撃的だった。 人間の過ちを認め、弱い部分を認めたうえで、それでもなお、良い人間はいるのだと彼女は言った。 それはサトシさんやのび太さんのことなのだろうか。或いは、この眼前の少女自身がそうなのだろうか。 リルルはそれを見極めたかった。彼女に同行することで、人間のことをより深く理解したかった。 「いいよ、一緒に行こう。ボクはイエロー。……キミは?」 「……私は、リルル」 「リルルさん、だね」 歩き出したイエローに続こうとして、リルルはそこで今更ながら大切なことを思い出し、「あっ」と声を上げた。 イエローばかりに気を取られていたせいで、元々行動サンプルにする予定だったあの少女のことを、すっかり忘却していたのだ。 リルルは慌てて木々の間を抜け、少女を寝かせた筈の茂みへと戻る。 しかしそこはもぬけの殻で、彼女は思わず落胆に肩を落とした。 僅かに遅れて到着したイエローが、「どうしたの?」と荒い息で尋ねる。 「ここに女の子を寝かせておいたの。でも、もういなくなってしまったみたい」 「いなく……? じゃあ、その人のこと探さなくちゃ」 「いいえ、いいの」 リルルは首を横に振り、イエローの提案を切り捨てる。 それは合理的で機械的な判断のように思えたが、口にする少女の表情は、少しばかり悲しそうにも見えた。 「あの子はきっと、私ともう一度会いたいとは思っていなもの。だから、いいの」 リルルは俯きがちにそう告げると、イエローに口を挟ませる間もなく「さあ、行きましょう」と促した。 それは快活な口ぶりだったが、無理やり元気を出そうとしているように、不思議にもイエローには聞こえた。 * * * 息が苦しい。吸っても吸っても必要な酸素が足りなくて、全身が悲鳴を上げる。 ククリは一人、森の中を逃走していた。背後をちらちらと伺い、あの少女が追いかけてこないことを確認する。 振り返った先には兎一匹おらず、ただ森閑とした森が広がっているだけだ。 しんと静まり返った森の中、そのことに安堵の息を漏らしながらも、ククリは自分の弱さに胸を痛くする。 ……また、私は逃げ出してしまった。 ゴン君のことを勝手に勘違いして、怖がって、逃げてきてしまったときと同じように。 ククリはそんな自分が許せなかった。同じ過ちを繰り返している気がして、悲しかった。 自分がとてつもない卑怯者に感じられて、擦り傷でも出来たみたいに胸がじんじんと痛んだ。 そう。ゴン君の時だって、きちんと話をすれば、きっと誤解することなんてなかったのに。 ゴン君は優しくて勇気がある人で、私を逃がすためにあの女の子と戦ってくれた。 そんないい人だったのに、私はろくに話も聞かずにゴン君を悪い人だって決め付けて、そしてすぐに逃げ出してしまった。 ……本当に私は、なんて自分勝手なお馬鹿さんなんだろう。 ククリは、草陰から盗み聞いていた会話を思い出す。 あの会話を聞いたとき、本当はあの人も、そんなに悪い人でないのかもしれないと思った。 だから本当は、彼女の元に姿を現して、ちゃんと話を聞いてみたかった。 ――でもククリにとってそれは、やっぱりとても勇気がいることだった。 血塗れで自分の前に現れた彼女。 平気な顔して「自分が殺した」と口にした彼女。 そして自分を電撃で気絶させ、連れまわそうとした彼女。 そんな相手を簡単に信用するなんて、怯えるククリには到底出来なかった。 「勇者さまなら、きっと逃げたりしなかったよね」 恋する相手の、きりりと整った涼やかな横顔を脳裏に浮かべる。 彼ならきっとあの女の子に対しても、いつもどおり平気な顔して接するのだろう。 もしかしたら「ふむ、なかなか刺激的な格好だな。してスリーサイズは~」なんてことまで尋ねかねない。 偏見とか思い込みとか、そういうものが勇者さまにはないから。 彼にとって女の子は皆ただ女の子でしかなくて、それがどんな種族かなんて関係ないのだろう。 人間だろうがロボットだろうが、吸血鬼だろうが夢魔だろうが魔砲少女だろうが、勇者さまの前では一緒なんだ。 普段ぼんやりしているようにも思える彼の、そういうところがククリは好きだった。 勿論、「他の女の子ばっかり気にしてないで」って嫉妬したくなることもしょっちゅうだけど。 けれどそれでもククリは、そういうところをひっくるめて彼のことが大好きだった。 「……勇者さま」 会いたいな、と思った。口に出したら余計にその思いが強くなって、ククリはぎゅっと拳を結んだ。 手にしていた杖を握り締め、彼女は心中の彼をひたすらに想う。 勇者さまならきっと、こんな殺し合いの中でも普段と変わらずにいてくれるだろう。 そう、予感があった。いや、それは予感などといった曖昧なものでなく、確信だった。 すぐにでも逢いたい。そう願うククリの心は、ガサガサと音の鳴る前方の茂みに、現実へと引き戻された。 最初は、あの女の子が追いかけてきたのかと思った。こんなところでぐずぐずしている間に追いつかれてしまったのだと。 でも、もしそうならどうして後ろじゃなくて前から足音がするのだろう。 先回りされた? まさか、流石にそれはないはず……。 そこまで考えてククリは、もしかして、と胸を跳ね上がらせる。 そんな偶然あるわけがないと理性が告げる。それが当然だと、ククリだって分かっている。 「噂をすれば影」だなんて単なる諺に過ぎないし、こんなギャグ漫画みたいなタイミングで再会できるなんてわけはないと。 そう理解していても、期待せずにはいられない。 ドキドキと鼓動を弾ませてそちらへ目をやると、なぜか足元の草だけが左右に揺れ動いた。 だがその上方に、人影はない。草を分ける足音だけが、こちらに少しずつ近づいてくる。 「ゆゆゆ幽霊……っ?」 ククリは恐れ戦き、右回りしてその場を離れようかと一歩踏み出した。 しかし瞬間、呼応するように聞こえた声に思わずその足が止まる。 「た~、た~」 …………それは、誰がどう聞いても幽霊の呻き声ではなく。 まだ生まれて間もないような、幼い赤ん坊の声だった。 後編へ
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斑目晴信の憂鬱 【投稿日 2006/07/08】 カテゴリー-その他 管理人注 これは『荻ラヴ』発祥のげんしけんセカンドジェネレーション 『双子症候群』の設定を基にしたSSです。 ○前兆 用務員室は平穏そのものであった。この空間だけは世界紛争とも世間の喧騒とも無縁である。彼は、この部屋の主の斑目は、かつて学生時代に友と共有した時間と空間を思い出した。 そしてその時代に似たこの時間と空間を彼は愛した。 この平穏がいつまでも続きますようにと天に祈った。といって彼は孤独では無かった。時折訪れる来訪者が彼を和ませてくれる。今日もいつもの客がここに来ていた。 「それは大変だったね、春奈ちゃん。」と斑目はいつものようにコーヒーを客人に差し出しながら言った。 「あ、ありがとう。ホント何が何だかさっぱり分かんない。斑目おじさんが言ってた事が本当みたいに思えてきちゃうよ。」と春奈はコーヒーのマグカップを受け取りながらぼやいた。 「でもその子はもう危険じゃないんでしょ?」 「まあねー。すっかり気性も穏やかになって、ぬぬ子に危害が及ばない限りは無害そのもの!つうかもう信者だよね。ぬぬ子に言われたら素直に大人しく離れて見守っているし。」 「斑目おじさん!このお菓子もらい!」と千里がお菓子に飛びついた。 「今日は珍しく、まりちゃんと一緒じゃないんだね。」 「うん。まりと千佳子とぬぬ子ちゃんはヤオイ系の同人誌の新発売だとか言って、いそいそと先に帰っていったよ。何が良いんだか、さっぱり。」と千里が言うと 「ホント、それは同意。よく分からん。」と春奈は頷いた。 「何、発売日?それは本当?しまった!」とスーが叫んだ。 「スー先生はまだ勤務中でしょう。それにここで油売っていていいんですか?本当だったら学習計画とか仕事がいっぱいあるんじゃないんですか?」 普通の中学の教師が多忙なのは他の先生の様子を見れば分かった。 だがスーはケロッとして言った。 「もう終わった。完璧。」 「え?まさかそんな!」斑目は信じがたい表情を浮かべたが、スーならありうると思った。スーだけは未だに底がしれない。 「じゃあたしたちそろそろ帰るね!」そう言って二人はたったか駆け足で用務員室を出てった。 その背中に斑目は声をかけて言った。 「おう、気をつけてな。」 子供たちが帰ってから斑目はスーに向かって、咳払いしながら聞いた。 「ゴッゴホゴホ、とっところで・・・アンは・・・いやアンジェラ・バートンさんはお元気ですか?」 「アン?もちろん元気だよ。子供と一緒に暮らしてるよ。」 「そっそう、結婚してたんだね。幸せそうで良かった。」 「結婚してないよ。」 「へ?」 「シングル・マザーだよ。双子たちより一つ上くらいの男の子と暮らしてる。」 「え?その頃って確か・・・。」 斑目は指を折って数え始めた。 (そんなはずはない。あの頃は・・・。) 「来日してるよ。」 「なっなんだって!」 斑目は『過去』が追いかけて、自分を捕まえる、そんな気がして目の前が暗くなる気がした。 ○事件 次の日、いつものように自分の仕事を終わらしてから、放課後いつもの面々が来るのを斑目は待った。 ところがその日に限って誰も来なかった。まあ、こんな日もあるさと、斑目は勤務時間が終わったのを見計らって帰宅の準備に入った。その時、携帯の着信が入った。 誰だろう、『あいつら』からの飲みの誘いかなと、ディスプレイを見ると、万理からだった。 珍しいこともあるもんだと電話に出た。 「やあ、まりちゃん、今日はどうしたの?」 「・・・・・おじさん・・・。」 打ち沈んだ声の様子に、尋常じゃない何かが起きていると斑目はすぐに察した。 「どっどうした?」 「大変な事が起きたの!!スー先生の家に・・・詳しくは電話じゃ・・・。」 「わっ分かった!」 斑目は通勤用の自家用車で大急ぎでスーの家に向かった。スーの家は学校から提供された賃貸契約マンションで、学校のすぐ近くにあった。 斑目はマンションのエレベーターから急いで降りて、スーの部屋の扉を開けた。 そこには、十数年ぶりで見る女性の姿が見えた。アンジェラだった。 ○発端 「・・・ア・・・ン・・・。」斑目はかすれた声を絞り出してやっとの事でそれだけ言えた。 「お久しぶり。」クスクスと笑いながらそう言った。 「何故君がここに・・・。」 「本当は大野の所に世話になってたんだけど、今回の件があったから。詳しくはこの人たちから聞いて。」 アンジェラの背後には、スーと万理、千佳子、そしてぬぬ子がいた。そしてそのわきには見知らぬ少年が立っていた。 碧眼金髪でスポーツマンタイプの、短く髪を刈り込んだ精悍な少年だった。 そして彼は斑目をキッと憎しみのこもった目で見ていた。 (まさか・・・) だが、今は事情を聞く方が先だと思い、スーの方を向いた。 「いったい・・・。」 だがスーよりも万理の方が先に口を開いた。 「ちさと春奈が誘拐されちゃったの!!」 「ええ!!」 「そう・・・それでここに来てもらったの・・・。」とスーは言った。 「どういう・・・」 「昨日の夕方、二人は下校途中に営利誘拐されたの。正確には春奈が標的で、ちさは巻き込まれたんだけど。」 斑目は呆然としながら聞いた。 「最近、彼女のお母さんの事業、有名になってきたからね・・・。それで警察がすでに介入して報道規制体制に入ってるの。」 「俺も何とかしたいが、だが警察が動いている状況で俺たちに出来ることがあるのか?」 「もっともな意見です。まりちゃんがその答えを持ってます。」 とスーは万理の方を向いた。 「あたし微かだけど、ちさの声が聞こえるの!急に聞こえるようになったの! 誰も信じてくれないんだけど!」 万理は叫んだ。 「そっそんなことが・・・、いや双子の不思議な話はよく聞くし、信じるよ!」 「それがあなたを呼んだ理由です。この子のいう事を無条件で信じられる人。そして自由に行動できる人。警察に言っても捜査の混乱になるだけです。」 「俺に何が・・・。」斑目は困惑の表情で尋ねた。 「万理は被害者の身内で警察の保護下にあり、自由に動けません。学校を長期で休むための相談という方便で今日は来てもらったに過ぎません。」 とスーは普段の様子とは一変した口調で話しつづけた。 「そして犯人も関係者の身辺を監視している可能性もあります。すでに複数犯ということは判明してます。」 スーは大きく一息ついてから言った。 「あなたに二人を救ってもらいます。」 ○再会 呆然としている斑目をそっちのけにスーは段取りをキビキビと進めた。 「ではまりちゃんは今日は帰ってもらいます。連絡はこの盗聴防止の特殊な携帯を渡して、ちさちゃんの状況を私たちに連絡します。その情報を元に私たちが監禁先を分析します。」 ここでスーに代わってアンジェラが口を開いた。 「つまりここが二人の救出本部となるわけね。そしてその分析を元に活動してもらうのがあなた。関係者に無関係で怪しまれず自由に行動できますから。」 ぬぬ子が叫んだ。 「わたしも手伝います!!」 「それは助かります。」アンジェラは微笑みながら言った。 「わっわたしも!!」と千佳子も叫んだがスーが制した。 「駄目です。あなたは関係者に近すぎる。監視されている危険があります。」 「どっどっちも駄目だよ!!中学生に危険な真似は!!」と斑目は叫んだ。 「あら?ヌヌコは戦力じゃなくて?そしてもう一人助っ人をあなたに付けます。」 アンジェラはそう言って少年の方を向いた。 「彼の名はアレクサンダー。アレックと呼んで下さい。彼は役に立ちます。」 斑目が少年の方を向くと、少年はプイッと顔を背けた。 万理は体を震わせて、大きな目に涙をいっぱいためて言った。 「ちさが・・・ちさがいなくなったら・・・わたし・・・わたし・・・」 斑目はかける言葉も見つからなかった。産まれた時からずっと一緒だったのだ。二人の絆は計り知れない。 「解散します。万理と千佳子、そしてぬぬ子ちゃんを送ります。アレックも付いて来て。」 スーと皆は部屋からぞろぞろ出て行った。そしてアレックは退出際に斑目に言った。 「認めない。」 部屋には斑目とアンジェラだけが取り残された。気まずい沈黙の後、斑目は重い口を開いた。 「久しぶり・・・。元気そうで・・・。」 「ええ、あなたも。」とアンジェラはにっこりと笑って答えた。 「君は変わらない。綺麗なままだね。」 「あら?お世辞が言えるようになったのね?でもスーとは違うわ。それ相応に年を取ったわ。」 「そんなことは無い。」 斑目は目の前のアンジェラを見てそう答えた。実際、それなりに年月を感じさせてはいたが、むしろ年相応の艶やかさを身につけていた。 「ありがとう。でも、やっぱりスーとは違うわ。彼女は『特別』だから。『メトセラ』ですから。」 「えっ?」 「あなたは知らなくて良いの。」 「・・・すまなかった。あの子はまさか・・・。」斑目は恐る恐る尋ねた。 「そうよ、あなたの息子よ。気にしなくていいの。あなたが逃げたのは仕様が無い事。わたしが自分の意志で決めた事。」 「・・・やっぱり彼をなおさら危険な事に巻き込んでは・・・」 「彼は大丈夫。ヌヌコの事は聞いてる。彼女は必要だわ。そして彼女を守るには正直あなたは頼りないし。」クスクスと笑いながら言った。 「そっそうだよな。」斑目は顔を赤らめて答えた。 「そうじゃないのよ。あなたは自分が考えている以上に人に必要にされているのよ。あなたはあなたにしかない力がある。」 「おっ俺にも特殊な力が?」 アンジェラは首を振って答えた。 「いいえ、あなたはいたって普通。凡庸。いずれその意味がわかります。そして、ヌヌコ・・・。彼女こそわたしの研究の結晶みたいなものだわ!!」 「一体、彼女の力って・・・?」 ○秘密 アンジェラは碧の目でジッと斑目を見つめながら、顔を斑目に近づけながら喋り続けた。 「美に基準は無いわ。主観の中にこそ美が隠されていて、それに気付いた時に美が現れるのを一番知っているのは日本人よ。」 アンジェラは斑目の首筋に顔を近づけ、吐息をフーとふきかけながら、斑目の耳たぶを軽く噛んだ。 「綺麗な首筋・・・。あなたはわたしが会った男の中で一番セクシーだわ・・・。」 斑目は体を強張らせながらも、抗う事ができなかった。かつてもこのように自分の意志の弱さに屈したのだった・・・。 「それを知っているのはわたしだけ・・・。わたしのものだわ・・・。でも客観的な美もまた存在するわ。でもそれは統一された文化や共有された価値観の下でしか存在しない。」 アンジェラは、流し目で斑目の横顔を見つめながら、斑目の耳元でささやき続ける。 「でもわたしたちは共にアダムとイブの裔なのよ。これは喩えだけどね。人種や文化が異なっても人間であることは一緒なの。」 「そっそれが・・・どういう・・・」 アンジェラの柔らかい白い手は斑目のシャツの隙間に入り込んでいる。 「ヌヌコの表情の中には人間のゲシュタルト知覚に調和を与える抽象化された記号が隠されているのよ。」 「わっわからない」 「つまり、人間は長い歴史の中で絵や人形に見えるような、抽象化の作業を繰り返してきた。この抽象化の能力がゲシュタルト知覚。ヒナの刷り込みの研究で有名なローレンツ博士はこれが直感、霊感、神の啓示に関係すると言ってる。」 すでにアンジェラは斑目を押し倒して、上にまたがっている。そして斑目のシャツのボタンを一つ一つゆっくりと外しながら、微笑んで斑目を見下ろした。 「ヌヌコはそれに調和を与えるの。そして心の不調和な人ほど強制的に心の働きを修正するの。『わたしたち』はそれを日本のサークルで実験してきた。」 「え?」 「なんでもないわ。要はヌヌコは危険な人間を無力化するの。それを抗える者はいない。そしてわたしは肉食動物であなたは草食動物。あなたは抗えないのよ。」 斑目は近づくアンジェラの碧眼に釘付けになった。かつてもそうだったように・・・。 その時、マンションの玄関の方から声がした。 「アン、今帰ったわよ。作戦は明日からね。」 部屋に入ってきたスーはアンジェラが額に血管を浮き上がらせて怒って、逆に斑目がほっとした表情でいるのを不思議そうな目で見た。 「スー、あなたやっぱり気がきかないわ。」 ○作戦 翌朝、日が昇らない時間から斑目はスーのマンションに車を回した。卒業してからしばらく車は必要としなかった。だが、新興住宅地の郊外に位置する今の仕事場になって不便を感じるようになり、中古の安い車だが購入したのだった。 こんな形で活躍することになるとは思ってもいなかったが・・・。 「・・・それで、どうするんだ?」斑目はスーに尋ねた。 「すでに前の晩に万理が千里から監禁先の情報は聞いています。幸い監視役の一人が女性で彼女たちに同情的で当面危険は無いようです。」 「そっそれは良かった。」斑目はほっとした。 「でも急がなければなりません。相手はプロ集団ではなく素人の可能性も大きいです。凶悪さで同じでも予測不能の危険が高まります。長引けば長引くほど危険です。」 スーは淡々と、だが無駄の無い段取りで事を進めた。斑目の車にノートパソコンを積み、万理と同じ携帯を斑目たちに持たせた。 「これで連絡を取り合います。ちさが伝えた情報によると、郊外のプレハブらしい建物に監禁されているらしいのです。トイレの小窓から見た景色と時間帯、太陽の方向から場所を測定します。」 「うん」 「衛星からの映像や分析では不十分です。あなたたちが現場でこちらに細かい情報を伝えてください。警察の情報もハッキングしてます。」 「そっそんなこともできるのかよ!」 斑目は今更ながらスーの底のしれなさを恐ろしく感じた。 「ただし深入りはしてはいけません。日本の警察は優秀ですから、人海戦術で捜査を進めているはずですから、逐一こちらの情報も提供して動いてもらいます。」 「分かった・・・。」 斑目は自分の無力さに脱力感を少し感じた。だが、そんな感情はすぐに打ち消した。大事なのは二人の安全と生命ではないか。自尊心や自負などつまらないものだ。 斑目とアレックとぬぬ子は斑目の車で指示された候補地を廻った。後部座席でアレックはノートパソコンから送られてくる画像や情報をチェックしている。 ぬぬ子もその傍にちょこんと座って、コンパスを片手に一生懸命周囲の景色をアレックに説明している。そして時折画像をパソコンに取り込んで、『本部』に送信していた。 斑目はバックミラーから後部座席の様子をうかがっていた。アレックは一度も斑目の顔を見ず、話しかけもしない。 「なっなあ、ア、アレック・・・君・・・。」 「・・・・・」アレックは黙りこくっている。 「『メトセラ』って何かな?」 「・・・都市伝説ですよ。」重い口を開いてアレックは呟いた。 「『ガースは都市伝説』?」 「何ですか?それ。」 「・・・あ、すみません。」(外した・・・)と斑目は冷や汗を流しながら答えた。 (俺、何を卑屈になってんだ・・・)気まずい空気から無理に話題を作ろうとして、逆に失敗してしまった事を後悔した。 「・・・昔の有名なSF小説家が書いた『長命族』の呼称ですよ。元々は旧約聖書で人類で一番長生きした人の名前らしいんですけど。」 アレックは無表情に話しつづける。 「それがいつしか本当に実在するってアメリカで少しの期間だけ流行したんです。」 「へえ、そうなんだ。」 「一般人に紛れて生活していて、各界の有力者になってるという噂ですけど・・・。もっともスーおば・・・いけねえ、スー姉さん見てると実在を信じちゃいますけどね。」 「ははっ、まったくだ・・・。」 少し馴染んでくれたのかと斑目は思ったが、アレックは気安く会話し過ぎたと思ったらしく、またむっつりと必要な事以外は黙りこくってしまった。傍ではぬぬ子が心配そうにその様子を見ている。 「ここが、推定地域の一つ。車から降りて周囲の景色の情報を送ろう。」 斑目はそう言い、車を有料駐車場に駐車させた。三人の団体行動に不審な様子は無かった。むしろこういう組み合わせに斑目は少し納得した。 斑目一人だけでは出来る事では無い。ぬぬ子と二人だけでも親子に見られるだろうが、撮影機材や携帯を使ってる様子は奇異に映る。アレックは外国人でしかも少年だから、余計一人では不審で目立つ。 三人でいれば、傍目には留学生の少年を連れて、課外学習活動しているようにも見える。 「喉が渇いたろう。飲み物を買ってこよう。」と斑目は自動販売機に向かった。 二人きりになった時、ぬぬ子はアレックに話し掛けた。 「・・・お父さんが嫌いなんですか?」 「・・・父などでは無い。」アレックはにべも無く答えた。 「うわ、すげえ!今時あんな牛乳ビンの底みたいなメガネしてる奴いねえぞ!」 突然、ぬぬ子の方に指を指して嘲笑する少年たちがそばに近寄ってきた。 アレックは声の方向に目を向け、その声の主たちを睨んだ。大柄な外国人の少年に睨みつけられ、その少年たちはひるんで立ち去った。 ぬぬ子はばつ悪そうに下をうつむいてその嘲笑に耐えていた。 「すみません・・・。」 「何故謝る?悪いのはあいつらではないか?何故怒らない?憎まない?」 「・・・・」 ぬぬ子はそれには答えず、下を向いて手を組んでいた。 「?何をしている?」 「・・・お祈りしてます。二人が無事でありますようにと・・・。」 「お祈り?愚かな行為だ。祈って世界が変わるとでも?悪が無くなるとでも?」 ぬぬ子は首を激しく振って答えた。 「ううん、世界が善意ばかりでないことは分かってます。でも・・・うまく言えないけど・・・馬鹿だから・・・わたし・・・こういう事しか出来なくて・・・。」 そう言うぬぬ子の牛乳ビンの底のようなメガネの下から涙がこぼれるのを見て、アレックは激しく動揺した。 「すみません。」そい言ってぬぬ子は駆け去った。 「お?おお?ぬぬ子ちゃん泣いてなかった?アレック・・・君、何かあったのかい?」 そこへ斑目がドリンクを持って帰ってきた。 「・・・何でもありません。あの・・・ヌヌコの本名は・・・。」 「え?服部双子と言うんだよ。」 「ハットリソウコ・・・。」 「・・・ぬぬ子ちゃんの素顔見た?」 「なっ何を言ってるんです!見てません。素顔が何だというんです?ほっ他の人がなんと言おうが、自分が認めたものは自分自身!そうじゃありませんか!」 しどろもどろ顔を真っ赤にしながら、アレックは訳の分からない事を喋っていた。 「・・・・・・・」 (やっぱり、俺の息子だ・・・。) ○発見 しばらくすると、ぬぬ子がばつの悪い顔をしながら、落ち着きを取り戻して戻ってきた。 アレックも何事も無かったように振舞う。三人は早速、探索を再開した。 「たぶんここだ・・・。」 斑目は郊外の廃屋となったプレハブを指差して答えた。 「ちさちゃんがまりちゃんに伝えた情報と一致する。確定するのは早いが。放置されているが、居住可能な状態になってるようだ。」 そう言って、斑目はデーターを『本部』に送信して、携帯で指示を仰いだ。 「おそらくそうでしょう。犯人は警察を撹乱するために、複数で警察をあっちこっち引っぱりまわしてます。ちさちゃんからまりちゃんの情報によると今、プレハブには世話役の女性と監視役の男が一人らしいですね。」 スーは冷静に状況を把握していた。 「二人は?無事なのか?」 「ええ、大丈夫です。ただ二人は疲労が著しいです。犯人の二人もストレスが溜まってるようです。警察に情報をリークして救出してもらいましょう。」 「わっ分かった。二人が無事で良かった!!」斑目とぬぬ子は安堵の表情を浮かべた。 「何を馬鹿な事を!救出されるまで無事とは言い切れない!犯人が二人しかいない今がチャンスだ!しかも危険なのは男一人で女には戦意が無い!」 アレックの言葉に斑目とぬぬ子は驚いた。それ以上に平静を失ったのはその言葉を携帯で聞いたアンジェラだった。 「アレック!馬鹿な事を言ってはいけません!不測の事態に備えて、安全策をとるのです!」 「違う!警察が包囲するのを待つ方が危険なんだ!ここは周囲の見晴らしがいい。大動員してきたら、犯人が気付く。強行突入は不可能になる。時間がかかれば人質に危険が増す!」 「マダラメ!!アレックを止めてください!」アンジェラは半狂乱になって叫んだ。 「アレック君!俺たちだけでは無理だ!」斑目はアレックを諌めた。 「そんな事は無い!俺はあなたとは違う!逃げ出したあなたとは・・・。その為に格闘技だって覚えた・・・。強くなるために・・・。」 アレックは飛び出した。 「アレック!アレック!」 叫びながら斑目とぬぬ子は追いかけた。 ○救出 プレハブの二階へ上がる階段を駆け上がると、アレックはプレハブのドアを蹴破った。簡易プレハブの扉なので容易に破壊できた。犯人の位置や部屋の作りは『本部』からの情報とプレハブの構造から瞬時に推測した。 部屋に突入すると居間に男と女がテーブルに座っていた。激しい音に動揺して、音の方向を二人は見ていた。女は悲鳴を上げ、男は慌てて拳銃を手にした。だが構える暇も与えず、アレックは拳銃を叩き落した。 叩き落すと同じ動作で、瞬時に手刀を男の首に叩きつけた。腕をねじりあげ、足払いをして男を制圧した。地面に叩きつけた時に男は頭を打って気絶した。 体の小さいアレックが大人を倒すのに手加減している余裕は無かった。これで終わったとアレックが思った瞬間、後頭部に鈍痛が走った。アレックの目の前が暗くなった。 遅れて斑目とぬぬ子がプレハブの二階に上がる階段から、ぶち破られた部屋に入ると、最悪の状況がすぐに理解できた。 男が一人倒れている。その傍で後頭部から鈍器で殴られたアレックが血を流して倒れている。 その傍で、動転した女が銃を手にしている。 「もう・・・終わりだわ・・・あの子たちにお金を送れない・・・。」 女は泣きながらヒステリックにわめき散らしている。 「まっまあまあ、落ち着いて!ここは日本人的馴れ合いで!」 「おじちゃん!その人外国人だよ!」 隣の部屋に軟禁されていた千里が部屋から出てきて叫んだ。 「あっ危ないから部屋に隠れていなさい!」と斑目は叫んだ。 「千里ちゃん・・・春奈ちゃん・・・ごめんなさいね・・・わたしは捕まるわけにはいかないの・・・あの子たちのために・・・。」 泣き喚いてすっかり錯乱した女の手にする銃はしっかり斑目の方向を向いていた。 アレックは状況の判断を誤った。危険なのは男の方では無く、女の方だった。斑目の傍でぬぬ子が震えながら斑目にしがみついている。 (そういう事か・・・) 斑目は運命のピースがしっかりはまってパズルが完成するのが見えた。 「ぬぬ子ちゃん、ちょっとごめんね。」 斑目はぬぬ子のメガネをひょいっと外した。 ○解決 「そんじゃ、失礼します!」 そう言って斑目は千里、春奈、アレック、ぬぬ子を連れて部屋を出た。アレックを三人の女の子たちが支えながら歩いている。 「ぬぬ子ちゃん、よくやった!」 そう言って斑目はポンとぬぬ子の頭をヨシヨシとなでた。ぬぬ子は牛乳ビンメガネごしに斑目の顔を見上げて、顔を真っ赤にした。 「ん?」斑目はにっこりしながらぬぬ子を見た。 「いっいえ、何でも!」 アレックはボロボロと涙をこぼしながら言った。 「俺は負けた・・・俺はあいつに負けたんだ・・・。」 ぬぬ子はアレックの手を取って言った。 「いいえ、誰も負けてはいません。全てが善くなったんです。」とにっこり笑った。 ハッとした表情でアレックはぬぬ子の顔を黙って見つめた。 そこへ警官隊が盾を持ちながらドヤドヤとプレハブの階段を駆け上がってきた。 「いやー、皆さんご苦労さまです!!」斑目は手を振った。 警官隊は一斉に斑目に襲い掛かって、斑目を取り押さえた。 無線機で警官が叫ぶ。 「子供たちは無事に保護しました!!犯人の拘束に成功!!繰り返します!子供たちは無事保護!」 「何!違う!俺は違うんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 (以下略) ○斑目晴信の憂鬱 「大変だったね。」とスーはいつも通り無表情で、用務員室備え付けのコーヒーを飲みながら言った。 「それで終わりか!あれから、子供たちの証言で解放されてからも、警察の事情聴取受けるわ、春奈ちゃんの親たちには子供を危険な目にあわせてと泣かれるし・・・。」 「まあまあ、こっちも手を回しておいたけど、詳しい事は言わなかったんでしょ?」 「まあね。警官たち不思議がってたな。一人は気絶して倒れてて、もう一人は泣き崩れて無抵抗なんだから。もっとも少年が大の大人を倒し、少女が精神攻撃で無力化しましたって言っても信じないだろうから。」 「それでいいんです。」 (それに最後に春奈ちゃんの母親の『あの人』は「でもありがとう・・・」って言ってくれたしな・・・) 斑目は一人満足げにニヤニヤした。 「双子たちは?」斑目が聞くと、スーは用務員室のテーブルを指差した。 「ねー、これは何?」 「うーん三角!」 「馬鹿違うでしょ!四角じゃない!」 「馬鹿とは何よ!馬鹿とは!」 「あーやっぱり〈ちさ〉〈まり〉とは趣味あわね!!」 「すっかり能力は消えちゃったわけね・・・。」 苦笑しながら斑目は呟いた。 その様子を遠くでぬぬ子と春奈が見ている。 「斑目さん・・・かっこいいですよね・・・。」 「はあ?あのくたびれたおっさんが?ぬぬ子ちゃんまた視力落ちた?」 「ひどいですね!」 「それよりアレック!彼かっこいいよね!」 (斑目さんとの関係は秘密なのよね・・・)とぬぬ子は思いながら 「そうですか?あんまりわたしは・・・。」と言った。 「そう?じゃあ、わたしが狙ってみるかな!」 斑目は遠くでその会話を聞こえないふりをしながら、うっすらと冷や汗を流した。そして窓に目を移した。 窓からはうららかな陽だまりが差し込んでいる。遠くでは小鳥がさえずっている。子供たちの笑い声も聞こえてくる。そよ風も吹いている。彼は、斑目晴信はこの時間と空間を愛した。 大変な事件が起きたが、そんな事は人生にそう何度も起きるもんじゃない。欲張らなければ人生は満ち足りて楽しい。俺はそれでいい・・・と斑目は思った。 斑目は離日前のアンジェラとの会話を思い出した。 「ありがとう。」 「いや、俺は何も・・・。」 「いいえ、アレックは過信して判断を誤りました。前に言いましたね。あなたにしか無い力があると。」 「うん・・・。」 「それがあなたの力です。あなたは臆病です。平凡極まりなく、だからこそ常に正しい選択を選ぼうとします。あなたがアレックを救いました。」 そう言ってアンジェラは斑目を抱しめた。 「また会いましょう。アレックも変わりました。あなたとの事の他にも何かあったのでしょうか?熱心に日本の事を勉強してます。」 回想から再びこの穏やかな時間と空間に戻った。この平穏がいつまでも続きますようにと天に祈った。世界は美しく平和そのものだ。もうこの平穏がやぶられることは無い・・・ ****************************** その時、千佳子が困った表情で用務員室に入ってきた。 「やあ、千佳子ちゃんどうしたの?」 「それが・・・最近わたしに不思議な事が・・・こんな事誰にも信じてもらえなくて・・・斑目おじさんなら相談にのってくれるかなと思って・・・。」 ****************************** はずだ・・・。
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適者生存 -survival of the fittest- ◆Yue55yrOlY 生き残る種というのは、最も強いものでもなければ、最も知能の高いものでもない。 変わりゆく環境に最も適応できる種が生き残るのである。 チャールズ・ダーウィン ◇ ◇ ◇ 海面を渡ってきた冷たい潮風が、堤防代わりの木立の合間を通り抜けて、びゅうびゅうと風切り音を掻き鳴らす。 氷雨の勢いはいよいよもって激しくなり、殴打されて熱く腫れあがった少女の顔を冷やしていた。 否。 容赦なく体温を奪っていくそれは『冷やす』などと言う、生易しいレベルのものではない。 剥き出しの肌を刺すような寒気は、もはや痛いとさえ言えるものだ。 じっと動かずにいると、目からは自然と涙が滲み、指先は自分のものではないかのように感覚が乏しくなる。 鼻から滴り落ちる血でさえも、今にも凍りついてしまいそうだ。 疲れたから少し休みたい、などという泣き言が許される天候ではなかった。 「うう……」 やむをえず、ゆのは疲れた身体に鞭を打って、のろのろとした動きで立ちあがる。 いつの間にか風に飛ばされて、少し離れた木の枝にひっかかっていたショールを取りに行こうと考えたのだ。 だが、一歩足を踏み出した瞬間、ゆのの股間に鈍痛が走り、少女の表情が苦痛と嫌悪に歪む。 今までに経験した事のない痛みに、思わず喉から悲鳴の声が漏れてしまう。 「痛っ……やだぁ……こんな……」 あの子だ。 あの女の子の指が、まだお尻の中に入っている。 もちろんそんなはずがないのだが、お尻に突きこまれた冷たい異物感は、消える事無く鮮明なままだ。 まるで、死者の遺した呪いを、体内に刻み込まれてしまったかのような悪寒。 もしやあのゾンビ少女の、最後の怨念染みたなにかが、自分の身体の中に注ぎ込まれたのではないだろうか――。 「……なーんちゃってーっ! そんなわけ、ないよねっえへへっ」 僅かに思い浮かべてしまったオカルティックな妄想を、わざとおどけた声で追い払うと、ゆのは痛みを堪えて歩きはじめる。 少しガニマタ気味の奇妙な歩き方で、目的の木の下に近付いたゆのは、ようやくショールを回収するとそれを羽織った。 濡れていなければ良いなと思いながら、手に取ったショールは期待通りに暖かな肌触りで。 その温もりでようやく人心地付いたゆのが溜息を吐くと、真っ白い吐息は一瞬だけ鼻先を温めて儚く消える。 ゆのは、口元を両手で覆うと、再び深く息を吐いた。 落ちついて周囲を見渡してみれば、先程の少女との戦いで散乱した武器やデイパックが転がっている。 その中で一番近くにあった日本刀を手に取ると、ゆのは土の上に倒れている少女の遺体にゆっくりと近付いて行った。 怖い想像を働かせてしまうのは、それがゆのにとって未知の相手で、理解の出来ないモノだからだ。 既に息の根が止まっているとは言え、相手は最初からゾンビめいた少女であったし、ゆの自身が止めをさした訳でもない。 だから、いつか息を吹き返すのではないか。 そんな心配が、ゆのに謂われのない恐怖感を与えていたのだろう。 ならば、ゆのが安心出来るカタチにしてしまえばいい。 寒さにかじかむ手で、しっかりと日本刀を握り締める。 初めて触った刀は、時代劇などで侍が軽々と振り回しているのが信じられないほど、ずっしりとした重みがあった。 だが、この場合に限って言えば、その重みは逆にゆのの仕事の助けになるだろう。 「動かない……よね?」 死体が動かない事を確認したゆのは、仰向けに倒れている遺体に馬乗りして、ギロチンのように刃を押し当てる。 刃の背に添える左手は、誤って切ってしまわないように、にゃんこの手。 そうして準備を整えたゆのは、躊躇いもなく一気に刀に体重を掛けて押し込んだ。 首を、断つ。 感触としては、大型の魚のお頭を落とす感覚に近い。 骨の辺りに若干の抵抗を感じたが、この肉切り包丁の切れ味は素晴らしく、一息の内に首を落とす事が出来た。 噴き出た熱い鮮血が、ゆのの両手を赤く濡らす。 「あはっ、あったかぁい……ホントに、生きてたんだ……」 凍えた手に、じんわりと染みるような暖かさが気持ちいい。 この血の暖かさは、この少女がゾンビなどではなく、ちゃんとした人間であった証。 そして今、首を断った事によって、少女は間違いなく死んだのだ。 もはや、恐れる事は何もない。 ゆのは刀を手放すと、陶然とした心持ちで両手で血を受け止めた。 熱い、熱い命の水を。 ◇ ◇ ◇ そうやって、不意の遭遇戦に始末をつけた後。 ゆのの足取りは再び、北へと向かっていた。 海辺の道は、山間部と比べれば雪が積もりにくくて歩きやすいが、それでも今のゆのには辛い道程だ。 なにか楽しい事でも考えながら歩ければ、楽だったかも知れない。 だが、墨汁をぶちまけたような闇夜の中で脳裏に浮かぶのは、これからどうやって生き抜くか――という事だけだった。 自然、その思考は新しく手に入れたアイテムへと、向けられる事となる。 日本刀。 二丁のマシンガン。 手榴弾。 他にも多数の品物が、ゾンビ少女のデイパックには入っていた。 きっと、数多くの参加者を殺して奪い取ってきたのだろう。 どれも充分に、人を殺せるだけの凶器だった。 もし、あの少女がこれらの装備を自在に使いこなせるだけのコンディションであったなら、今こうしてゆのは生きてはいなかったはずだ。 その想像に秘かに戦慄するゆのであったが、それらの武器も今ではゆのの物である。 自らのデイパックに、丁寧に仕舞われた武骨な武具の手触りは、心強くもあった。 だが、首輪は集めてはいなかったらしく、一つもなかったのが残念だった。 ゆのも集め始めた時は混乱の極致にあった為、使い道など考えも付かなかったが、考えてみればこの首輪は参加者たちを掣肘する 強力な爆弾なのだから、武器として転用する事も可能であろう。 キンブリーとの契約の一件もある。 もはや腕を治して貰う必要はなかったが、あの錬金術師との契約は未だ破棄されたわけではない。 等価交換。 彼の語ったその言葉の意味は、等しい価値を有するものを相互に交換するという意味だ。 ならば何も腕の治療に限らずとも、首輪十個分の対価を得る事は出来るはずだ。 ゆの自身が集めた首輪は、ここまでで六つ。 パックの死体に嵌まったままの首輪も含めれば、七つの首輪がゆのの手元にあった。 加えて首輪に関するレポートという物も手に入ったし、これから先も首輪が手に入る可能性はある。 約束の数には未だ足りないが、交渉次第ではキンブリーの興味を惹く事も出来るだろう。 もっとも、再びゆのがキンブリーと出合うような事があるかどうかは判らないし、今の所は特に頼み事もないのだが……。 これから先、自分が先程の少女のような、酷い目に合わないとも限らない。 ゆのはふと立ち止まると、胸に抱いていた混元珠を小脇に挟み、先程新しく手に入れたばかりの首輪をデイパックから取り出した。 我妻 由乃 よしの――いや、もしかして、ゆの。 首輪の裏側に刻まれた文字は、そう読むのだろうか。 自分と同じ名前。 ただの偶然だ。 深い意味など、あろうはずもない。 同じ名前の人間くらい、世の中にはいっぱいいるし、彼女と自分とはなんの関係もない別の人間だ。 たまたまそれがクロスした程度の事で、うろたえる必要なんてない。 同じ名前だからといって、同じ運命を辿る訳ではないのだ。 死体から外したばかりのこの首輪を、初めて見た時もそう結論していたが、それでも陰鬱な気分は消えない。 ちょっとした事で、すぐに気持ちが落ち込んでしまうのだ。 この島では。 ゆのは一つ溜息を吐くと、首輪をデイパックに戻す。 そして気を取り直すと、再び歩きはじめた。 ここがひだまり荘だったら。 もし、今歩いているのが住み慣れたいつもの土地であったなら、誰かが必ず傍に居てくれた。 落ち込んでいれば励ましてくれたし、調子が悪ければ介抱もしてくれた。 もちろんゆのだって、他の誰かが困っていれば、率先して声をかけたものだ。 そうやって親元を離れた自分達は、暮らしの知恵だとか、安心感だとか、しあわせを共有してきたのだ。 だけど、ここでは――。 「ダメダメ、今はひだまり荘の事は忘れなきゃ……」 ぶんぶんと頭を振るうと、髪に付着していたみぞれと一緒に、赤く染まった何かが振り落とされる。 「あ……」 それは我妻由乃が着ていたブラウスの布地を切り取って、ガーゼ代わりに鼻に詰めていた物だった。 一瞬、ゴミを拾おうと屈みかけたゆのだったが、これくらい別にいいかと思い直す。 屈むのが億劫だったし、この島の環境が少しくらい汚れた所でゆのには関係のない事だ。 それよりも、中々鼻血が止まらない事のほうが、ゆのにとっては重大事だった。 幸い鼻骨は折れていないようだったが、これ以上出血が続くようだと貧血になりそうだと自覚していた。 それほど派手に出血しているわけではなかったが、既に大量に失血していたので一滴の血液さえも無駄には出来ないのだ。 「やっぱり病院に寄って行ったほうがいいかなぁ」 既にゆのの視界には、白い巨大な建造物が入っている。 別に病院を目指して歩いてきたわけではなかったが、せっかく近くまで来たのだから寄って行くのが合理的だ。 全身痛い所だらけで薬が欲しかったし、酷く疲れてしまっていて、まぶたがくっついてしまいそうなくらい眠かった。 こんな状態で競技場に向かっても、死にに行くようなものだ。 死にたくないから足掻いているというのに、それでは本末転倒と言うべきだろう。 そもそも、ゆのがここまで突き進んで来たのは、怖い人たちに脅迫されていたからだ。 一つ、首輪を十個集めてきなさい。 一つ、三人殺してきなさい。 一つ、競技場にきなさい。 という、三つの命令に従って、ゆのは動いてきた。 しかし改めて考えてみれば、一つ目の件は別に急ぎの用という訳でもない。 二つ目の件もパック、胡喜媚、我妻由乃の三名を倒し、既にクリアしている。 ここまでゆのが歩いてきた原因の三つ目の件にしても、別に人質を取られた訳でもないし、無理に実行する必要などどこにもなかった。 出合ったあの場所を離れて、ゆのが隠れてさえしまえば、趙公明たちとは再び出合う事すらないかも知れないのだ。 ああ、なんだ。 別にもう、休んでも良かったんだ――。 その気付きは、ゆのの身体にずっと圧し掛かっていた、重しが取れたような開放感を齎した。 強張っていた身体の緊張がゆるむ。 すると、これまではどうにか我慢していた生理的欲求が、むっくりと頭をもたげてくる。 そうだ。病院に入ったら、お風呂を探そう。 凍えきった身体を、まずは温めたい。 贅沢は言わない。シャワーだけでも良い。 それから薬を探して治療をして、それからそれから厨房で何かを作ろう。 時間が経ってこちこちになっているおにぎりも、水と一緒に鍋に入れて火をかければ、柔らかく煮崩せるだろう。 おかゆみたいにしたそれを食べれば、きっと活力が湧いて来るはずだ。 ああ、でもそれより何よりも、まずは寝たい! 暖かな毛布に包まって、ぐっすりと眠る事が出来れば、他の事は全部後回しでも構わない……。 重たかった足取りが、少しだけ軽くなる。 望みは次から次に出てきて、そのどれもが魅力的に思えた。 瞳に期待の色を宿らせたゆのは、病院の敷地内に足を踏み入れて――。 次の瞬間、目前にそびえ立っていた巨大な建造物が、轟音と共に崩れ落ちて行くのを見た。 身体に感じる振動は、雪崩落ちる瓦礫の衝撃が大地を伝わってきたものだ。 瓦礫同士が擦れ合うような強烈な破砕音で、今にも鼓膜が破けそう。 気が付けば、黒いもやが目前まで迫っている。 土埃と共に天まで舞い散った大規模な粉塵が、瞬く間に敷地内を満たして、ゆのの元へも押し寄せてきたのだ。 ――何が起きたのか、判らなかった。 しゃっくりをした時みたいに、横隔膜が震える。 驚きのあまり、ゆのはしばらく呼吸を止めていた。 周囲には、薄い水色の膜がある。 混元珠によって周囲の雨水を操作したゆのは、自らの周りに即席のバリアを作ったのだ。 物理的な防御力は皆無に等しいとは言え、粉塵を防ぐだけなら上等な対策だった。 これまで、いくつかの非日常的な危機を乗り越えてきた事で、ゆのの対応力も上昇していた。 だが、それは目前まで迫っていた粉塵に対応しただけの事だ。 どうして、いきなり病院が崩壊してしまったのか。 そして、この事態に対して、どういう対応を取ればいいのか。 それがゆのには判らない。 唯一思いつく対策は、この場から逃げ出すという選択肢だけだったが、逃げようにも周囲一帯には濃密な煙幕が立ち込めていて、 視野がまったく確保出来ない状態だ。 このような状況では、下手に動いた方が命取りになるという事も有り得る。 故に、ゆのは小さな身体を更に縮めて、震えながら煙が収まるのを待つしかなかった。 すると、そんな風に怯えているゆのの耳に、奇妙な音が聞こえてきた。 重く、硬質な物体同士がぶつかって擦り合うような、不快な音だった。 目を凝らして、なんとか何が起きているのかを探ろうとするゆのだったが、煙幕の先は十センチすら見通す事は出来ない。 しかし、折からの強風が吹き荒れて、闇のカーテンを払いのける。 視界を塞いでいたもやが薄れたそこには――瓦礫の山が、なかった。 「……えっ?」 そこにあったのは、二本の白い円柱だった。 逆Vの字型にそびえ立つ巨大なそれは、上空で一本に纏まって直立している。 接地している部分は巨大な靴のような形状をしており、よくこれだけで倒れないなと思うような、奇跡的なバランスを演出していた。 「……って言うか、もしかしてこれ……足の……像?」 あったはずの瓦礫の山が無くなっていて、代わりに下半身だけの巨大な石像が立っている。 この結果から導かれる答えは、瓦礫の山を原料として、僅かな時間の内にこの像を建造したという事しか考えられないが、 一体どこの誰が、そんなバカバカしくも非常識な真似をしでかすと言うのだろうか。 建造した方法も謎ながら、わざわざ病院一つ潰してこんな物を作った意図が判らない。 ひたすら固まって、空中にクエスチョンマークを飛ばし続けるゆのの前に、救世主が現れた。 「ふふっ……それは僕さっ!!」 チーンという機械音と共に、像の靴の部分に設置されたドアが開く。 そしてその中から現れた男が、ゆのの考えを読み取ったかのように高らかに宣言した。 鳴り響くヴァイオリンの独奏。 男の名は、趙公明。 二度と会うはずのなかった男であった。 「どっどっどっどっどっ……」 どうして。 どうして、競技場へと向かったはずなのに、まだこんな所にいるのか。 どうして、こんな像を作ったのか。 どうやって、病院を潰したのか。 どうやって、こんな像を作ったのか。 無数のどうしてが頭の中に渦巻き、ゆのは削岩機のように『ど』の音を繰り返す。 だが、実際の所そんな疑問など、どうでも良かった。 この場で重要なのは、再びこの男と出会ってしまったという事実だけだ。 酸素が足りない。 世界が歪む。 男は、ゆのの救世主などではなかった。 このままでは、連れ戻されてしまう。 再び、闘争と苦痛の世界へと。 「おや? 君も道路工事かい? 僕も久々に舞台の建造に勤しんでみたんだが、やはり芸術は良い! いや、先に競技場へと向かってみたのだけれどね。 あまりに華のない所だったので、こうやって舞台を彩る芸術的な像を造りに戻ってきたという訳さ! ハァーッハッハッハッハァー!!」 だが、男はゆのの様子などお構いなしに笑い続ける。 真夜中も近いと言うのに、相も変わらずエネルギッシュに。 代わりに趙公明の背中から、ひょこりと姿を現したのは西沢歩だった。 セミロングだった髪の毛は、ゆのと同じ程度の長さに切り揃えられていた。 切られた後ろ髪に合わせて、長さを揃えたのだろう。 「あ……元気……だったかな?」 予期せぬ再会に、少しだけ気まずげに。 だが、しっかりとゆのの瞳を見つめながら、歩は声を掛ける。 「ッ……」 元気な訳ない。 この格好を見れば、判るでしょう? あれから少ししか時間が経っていないのに、私はゾンビみたいな女の子と、殺し合いをしてきたんだよ? こんなにずぶ濡れになって! 顔をいっぱい、殴られて! 貴方はいいよね。どうせ人質として、大事にされていたんでしょ? 誰かが助けてくれるのを、お姫様みたいにのんきに待っていたんでしょう? そんな憎まれ口を叩きたかったが、慣れない言葉は上手く口から出て来ない。 ゆのは精一杯の敵意を瞳に込めると、歩を睨みかえす。 そんな取り付く島もない様子に歩が苦笑を返すと、ゆのの頬に朱が差した。 バカにしている。 汚くなった私を、綺麗なままで見下して。 こうならなきゃ私は、生きていけなかったのに。 これ以上、この子と一緒に居ると、またおかしくなってしまいそうだった。 ゆのは、歩から視線を外すと趙公明に向き直る。 「あ、あの……それじゃあ競技場で、またお会いしましょう。 わ、私、これで失礼しますね」 「待ちたまえ」 ぺこりと一礼してから、回れ右をしようとしたゆのに、男が待ったをかける。 ぎくりと、背筋が震えた。 「な、なんですか?」 「こうして又会えたのだ。せっかくだから乗って行きたまえ。この『巨大趙公明の像』にっ! 何、遠慮はいらない。 まだ未完成とは言え、ちゃんと内部にはゲスト用の居住スペースを設けてあるからね! 君一人くらい同乗したところで、まったくなんの問題もないのさ」 「きょっ、巨大趙公明の像……? う、ううん。そうじゃなくて……だって、わ、私には人質の価値はないって……」 どうやら、この未だ下半身だけの石像は、趙公明自身をかたどった物らしい。 言われてみれば靴の形などはまったく同じ造形だし、ズボンの三次元的なデザインも中々の腕前だ。 とすると、これから上半身も造る予定なのだろうか。 それは充分に驚くべき話だったが、反応するべきはそこではない。 趙公明は、ゆのに一緒に来るよう求めているようなのだ。 以前は、ゆのには人質の価値がないと言っていたはずなのに。 まさか、競技場へと向かう気を失くした事を、悟られてしまったのだろうか。 「ノンノンノン。もちろん、人質などではない。 特別ゲストとして同行しようという事さ。 確かに君に人質としての価値はないが、僕は別の価値を君に見出したのだよ。 君は、この僅かな時間の間に、また素晴らしい闘いを繰り広げてきたようじゃないか? トレヴィアーン!! 君のその、事件に巻き込まれる力……それはまさに因果律の申し子と言えるだろうっ! 主人公体質と言い換えてもいいっ! その体質に、僕は嫉妬すら覚えてしまっているっ! なぜなら、僕はこの島で起きた大規模な全開バトルに、いつも一歩出遅れてしまうからだ……。 如何に“濃い”キャラ立ちをしているとは言え、サブキャラクターである僕にはその力がない。 しかし、君と同行する事で、その力の恩寵に預かれるかもしれないと、僕は考えたのだよっ!」 趙公明は、再びゆのには理解できない事を、ぺらぺらと捲し立てる。 主人公体質だかなんだか知らないが、ゆのとしては放って置いて欲しい所であった。 競技場へと向かうのは、ゆのにとってあまりにも利が薄い。 さきほど考えた通り、このイベントをスルーして、体力を回復させたいのである。 「さあっ。早く来たまえ。僕は寒いのが大の苦手さっ! 中で熱いお茶でも飲みながら、君の経験した闘いの話を聞こうじゃないかっ!」 だが、そんな都合などお構いなしに、趙公明はゆのに迫る。 差し出された手に怯えるようにゆのは後ずさりして、遂には反転して逃げ出そうとしたのだが――。 「ひっ」 振り向いたら、そこに趙公明がいた。 右にかわして逃げようとしたら、そこにも趙公明がいた。 更に反転して逃げても、左に行っても、後ろに行っても、そこには趙公明がいた。 「い、いやぁ……」 この男は、分裂でもしたと言うのだろうか。 いや、そうではない。 単純に、身体能力が違いすぎて振り切れなかったのである。 そして次の瞬間、趙公明の細腕が空気を切り裂く唸り声をあげた。 腹筋を締める暇すら与えずに、ゆのの無防備な腹部に、鋭い拳を突きさしたのだ。 その威力は、小さなゆのの身体を、軽々と空中に浮かびあがらせる。 狭い腹腔内にきちんと納められた内臓を、無茶苦茶に揺さぶってしまう、重い一撃であった。 「ぐぇぇっ」 たまらずカエルが潰れるような声をあげながら、ゆのは吐瀉物を宙に撒き散らす。 そして受け身も取れずに大地に叩きつけられた身体は、僅かにバウンドするとその動きを止める。 くの字に折曲がった背中が微かに震えると、ゆのは断続的な呻き声をあげた。 それは女の子らしくもない、腹の底から絞り出すような低い苦悶の声であった。 「ふふ、僕は意外と気が短いのさ」 そんなゆのを足元に見下しながら、趙公明は貴公子的に微笑む。 「き、気が短いとかじゃないよっ! 女の子のお腹を殴るだなんて、酷過ぎるんじゃないかなっ!? それが男の人の――貴公子のやる事なの!?」 男を糾弾しながら駆け寄ってきた歩が、拘束された腕でゆのを抱き起こすと、その表情は青黒く変色していた。 腹部を強打された衝撃で、呼吸もまともに出来ないのである。 歩が横向きに寝かせて背中を擦ってやると、ゆのは再び胃液を吐き出した。 酸っぱい臭いがその場に漂い、それを嫌った趙公明は身を翻して石像へと歩きだす。 「ふふふ、残念だったね。貴公子は貴公子でも、ただの貴公子ではない……。 実は悪の貴公子ブラック趙公明Mk-Ⅱだったのさ!!!!」 そう言い放つと、趙公明は雨に濡れた服を脱ぎ捨てる。 すると、ガ○ダムMk-Ⅱ(テ○ターンズ仕様)のような色調へと染め抜かれた同デザインの服が現れた。 「なっ!! だからこんな酷い事を……って、ただ黒くなっただけじゃないっ!! 意味がわからないよっ!?」 「ハァーーーッハッハッハッハーーーーーー!! 落ちついたらゆの君を連れてきたまえっ!!」 それだけを言い残すと、ブラック趙公明Mk-Ⅱの姿は石像の中へと消えた。 石像の靴の部分に備え付けられたエレベーターを使い、上階へと戻ったのだ。 趙公明が去った後も、歩はおろおろしながら、ゆのの背中を擦り続ける。 「だ、大丈夫かな!? しっかりして! ひっひっふぅーだよ!?」 地獄の苦しみの中で涙をこぼしながら、その声を聞いていたゆのは、悔しい気持ちでいっぱいだった。 なぜ、同じ女の子だというのに、自分だけがこんなに惨めなんだろうかと。 この道を選んでしまった、自分の選択が間違っていたのだろうか。 普段通りであろう歩の行動を見るたびに、ゆのの心は揺れ動いてしまう。 大丈夫だよ。人殺しなんてしなくても、ちゃんとこの世界でも生きていけるんだよと言われている様で。 歩が、本当にお姫様みたいに気高くて綺麗だったら、まだ良かった。 別の世界の人間なんだと、諦観していられた。 だけど、歩はごく普通の女の子だった。 大切な人をこの世界で殺されて、自身もゆのに殺されかけて。 ゆのと同じように当たり前の恐怖と、当たり前の憎悪に押し潰されそうになっている、ただの女の子だった。 それでも普通のまま、普通の癖に、しぶとくこの世界で生き永らえている。 だったら、人殺しにまで堕ちてしまった自分はなんなのか。 変わらなければ生きていけないと思ったのは、間違いだったのか。 今までの自分を、全部粉々にして。 そうまでして生き延びてきたのが、間違いだったなんて思いたくない。 そんな事をしなくても、生きて帰れる可能性もあっただなんて、認めたくない。 歩は、もう一人のゆのだった。 この世界でも、変わる事のなかったゆのだった。 その在り方を愛おしいと思うのと同時に、絶対に存在を許してはおけなかった。 この子だけは、この手で殺さなければならない。 もう引き返す事なんて出来ない、自分自身の為に。 以前、歩に感じた恐怖が、明確な殺意へと変わっていく。 命じられたからではなく、自己防衛の為でもなく、純粋な憎しみから生まれ落ちた、本物の殺意。 その殺意を抱きながら、ゆのの意識はゆっくりと闇へと落ちて行った。 【D-2/病院跡/1日目/夜中】 【ブラック趙公明Mk-Ⅱ@封神演義】 [状態]:疲労(中) [服装]:貴族風の服 [装備]:オームの剣@ONE PIECE、交換日記“マルコ”(現所有者名:趙公明)@未来日記 [道具]:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演義、狂戦士の甲冑@ベルセルク、橘文の単行本、小説と漫画多数 [思考] 基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。 1:巨大趙公明の像を完成させる。 2:再び競技場に向かいつつ、パーティーの趣向を考える。 3:カノンやガッツと戦いたい。 4:ナイブズに非常に強い興味。 5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。 6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。 7:キンブリーが決闘を申し込んできたら、喜んで応じる。 8:ネットを通じて更に遊べないか考える。 9:狂戦士の甲冑で遊ぶ。 10:プライドに哀れみの感情。 [備考] ※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。 ※参加者の戦闘に関わらないプロフィールを知っているようです。 ※会場の隠し施設や支給品についても「ある程度」知識があるようです。 ※巨大趙公明の像の完成度は、現在40%程度です。 【西沢歩@ハヤテのごとく!】 [状態]:手にいくつかのマメ、血塗れ(乾燥)、全身に痣と打撲、拘束 [服装]:真っ赤なドレス、ナイブズのマント、ストレートの髪型(短) [装備]:なし [道具]:スコップ、炸裂弾×1@ベルセルク、妖精の燐粉(残り25%)@ベルセルク [思考] 基本:死にたくない。ナイブズに会いたい。 0:だ、大丈夫なのかな? 1:ミッドバレイへの憎しみと、殺意が湧かない自分への戸惑い。 2:ナイブズに対する畏怖と羨望。少し不思議。 3:カラオケをしていた人たちの無事を祈る。 4:孤独でいるのが怖い。 [備考] ※明確な参戦時期は不明。ただし、ナギと知り合いカラオケ対決した後のどこか。 ※ミッドバレイから情報を得ました。 【ゆの@ひだまりスケッチ】 [状態]:疲労(極大)、失血性貧血、顔と頭部に大量の打撲や裂傷、首に絞められた跡と噛まれた跡、左手の甲に傷、肛門裂傷、倫理観崩壊気味、 精神不安定(大)、腹部にダメージ、気絶 [服装]:真っ黒なドレス、ショール、髪留め紛失 [装備]: [道具]: 支給品一式×11(一食分とペットボトル一本消費)、イエニカエリタクナール@未来日記、制服と下着(濡れ)、 機関銃弾倉×1(パニッシャー用)、ダブルファング(残弾100%・100%、100%・100%)@トライガン・マキシマム 首輪に関するレポート、違法改造エアガン(残弾0発)@スパイラル~推理の絆~、ハリセン、 研究所のカードキー(研究棟)×2、鳴海歩のピアノ曲の楽譜@スパイラル~推理の絆~、妖刀「紅桜」@銀魂 パックの死体(ワンピースに包まれている)、エタノールの入った一斗缶×2、閃光弾×2・発煙弾×3・手榴弾×2@鋼の錬金術師、 首輪×6(我妻由乃、胡喜媚・高町亮子・浅月香介・竹内理緒・宮子)、 不明支給品×1(武器ではない) [思考] 基本:死にたくない。 1:人を殺してでも生き延びる。 2:壊れてもいいと思ったら、注射を……。 3:西沢歩を殺したい。 [備考] ※二人の男(ゴルゴ13と安藤(兄))を殺したと思っています。またグリフィスにも大怪我を負わせたと思っています。 ※切断された右腕は繋がりました。パックの鱗粉により感覚も治癒しています。 ※ロビンの能力で常に監視されていると思っています。 ※イエニカエリタクナールを麻薬か劇薬の類だと思っています。 ※混元珠@封神演義はゆのの近くに落ちています。 時系列順で読む Back 不可逆の螺旋軌道 Next [[]] 投下順で読む Back 不可逆の螺旋軌道 Next [[]] 164 全て呪うような黒いドレスで 趙公明 [[]] 164 全て呪うような黒いドレスで 西沢歩 [[]] 169 Small Two of Pieces~JUNO~ ゆの [[]]
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「■■■■」 ――真後ろから、名前を呼ばれたような記憶がある。 しかし、その記憶は、後に思い出そうとするたびに全く違った色合いを伴ってしまう。 女の声だったような気もするし、男の声だったような気もする。 始めての失恋のように懐かしく胸を刺激ものとして思い出される時もあれば、まるで他人事のようにひどく淡泊なものとして思い出される時もある。 だから、それが実際の記憶だったのか、それともただの夢や作り上げた空想の記憶なのか、オレにはもうわからない。 その時でさえ曖昧だったのだ。 それから先、あまりにも時間がたちすぎてしまった。 そう、途方もないほどに、時間がたちすぎてしまった。 「あん?」 とにかく――その時。 オレは、それを聞いて振り返ろうとした瞬間、すさまじい形相のそいつを見る事になる。 そいつは、武器を持っていた。殺意があるのは、次の瞬間矢じりをオレの指先に掠らせた機敏な動きですぐにわかった。 オレにも、持ち合わせた武器がいくつかあった。矢、斧、槍――後でそう呼ばれる類の武器だ。ただ、この時はまだあまり洗練されていない鉄くれに過ぎなかった。 とにかくオレは、憮然としつつもそいつを必死に振り回して、何度かそいつを軽く傷つけたが、何分地の利が悪すぎた。 オレはあまり自由に動けない場所に立って、背中を取られたまま、必死に身動きを取るようにしてそいつに抵抗していたのだ。 ――しかし、なぜ。 そう思った。 なぜ、そいつはオレの命を狙ったのか? ――それは、その時もまたわからなかった。 ただ、疑問だけが湧いた。 「くっ……!」 打撃はオレの首筋へと至った。鋭い何かが、オレも気づかぬうちにそこを射止めていた。 直後に、冷ややかな線が首筋に走り、凄絶な痛みと刺激に襲われていく。 手で触れると、鮮血がオレの手にこびりついた。 それはとめどなく流れ続け、オレを焦らせた。血が止まらないのがわかる。 「ァ……――な、…………ぜ…………」 そうしてオレは、力を失いそこに倒れた。 すぐに体は動かなくなった。 目の前で残雪が朱色になって溶けていく。 大河が轟音を立てているそばで、オレはそいつがそこにいるのか、もう消えたのかもわからないまま寝そべっていた。 首元に残る鈍痛と、冷えていく体、遠ざかっていく意識。 ――冷たい。 そう感じた。 溶けた残雪のかたまりが、木々に持たれるのをやめてオレの身体に圧し掛かったのだ。 オレの視界は完全に闇に包まれた。全てが冷たい雪に覆いかぶさった。 それから、オレの姿を探ったものがいたとして……オレを見つけられる者はいないだろう。 遂に、オレは完全にその命を絶った。 生まれてから死ぬまで、あらゆる喜びと悲しみを繰り返した。 幾人が帰ってこられなかった山を友と登り、共に生還した日も。 我が誇りたる父の死も、愛する母の死も。 命と命のとり合いや狩りに出されても、ほとんど死ぬような状況であれ生き抜いた数十年も。 ただ穏やかに過ごした、平和な一日一日も。 そして、どうあれ明日も生きていくはずだった。 そんなオレの人生にトドメを刺した何者か――。 それは、最後の瞬間、怒りや憎しみ、痛みや悔しさ――あらゆる感情と同時に、ぷっつりと記憶の外に外されてしまった。 ――誰が、何故、俺を殺した。 今はただ、それだけが知りたい。 これだけ時間を隔てても――いや、隔てたからこそ尚更――オレの胸にお前への憎しみはないのだ。 だから、オレはオレの為に、お前の名だけ知りたいのだ。 オレの人生にピリオドを打った、そいつの名前さえ知る事ができれば、それで満足なのだ。 ただ一人の人間として、それを願うのは罰当たりか? 今より先、世界が滅びるまでどれだけの人間が生まれ死んでいくかはわからないが――その一人として、己の死を飾ったその真相を知りたいと思うのは間違っているだろうか? 根拠もない。これといった心当たりもない。 ただ、頭の中を巡る様々な可能性を考え続け、誰も信じられず、誰も疑えず、孤独になった。 関わった者すべてを疑い、疑いきれず。信じようとしても、信じ切れず。 そんな夢を見ていた。 「■■■■」 あの時より五千年。 オレはそれを知りに行く。 そのためならば手段は問わない。 しかし、胸を張り殺しに行くだろう。――すべてを知り尽くすために。 ◆ 京都府京都市。背の低いビル群から垣間見える永久のオリエンタリズム。 点々と残る数百年前の歴史と、その周りを取り囲む当世風の――特徴のない建物たち。 何となしのビル。何となしの家。何となしの駅。 あまりにも……あまりにも……、そこは戦に向いていなかった。 小規模な戦に晒される事はあっても、長らく大きな破壊を伴う戦いのなかった地である。 人々が、「先の戦い」と呼んだならそれは応仁の乱だ、という冗談さえも在る。 ――それくらいの間。五百年もの間、戦争が壊す事のなかった都。 それが、京都という地であった。 勿論、第二次世界大戦で全くの被害がなかったわけではないが、今始まろうとしている戦いは時にそれ以上の破壊を齎す事が想像に難くない。 夜――さる人々は、願いと羨望を胸に杯を目指すだろう。 聖杯戦争という、戦に生きた者たちのバトルロワイアル。杯を目指す魔術師たちに従えられ、戦士がよみがえる。 今夜もまた――、顕現した一人の英霊が街を眺めていた。 ◆ 「――」 それは、『私』にとっては不意打ちであった。 一人暮らしの私の自宅に及んだ、あまりに唐突な戦争の狼煙である。 フローリングの床に浮き上がった朱色の魔法陣より出でた巨大な光、そして私の腕を這う鋭い痛み。 「っ……!!」 聖杯戦争。 なんとなくどこかから教えられていた、そのゲームとそのルールが頭に浮かび上がる。 班目機関によるバイオテロと偶然そこにあった憎しみとが生み出した――あの夏の忌まわしい事件から少し経ち、今日。 また。再び。私は極限の事件に巻き込まれる事になった。 それは今までに遭遇した殺人事件の類ではなく、ファンタジックな戦争の物語で――便宜上『探偵少女』などと呼ばれた私からすると、専門外の事態かもしれない。 しかし、どうあれ、自らのもとにあの呪いめいた体質が呼び起こした不運の一つなのだろう。 私は、どうあれ抵抗するしかない。自らが巻き込まれる運命に。それは単純に、私のこのうら若い命を散らしたくはないからだ。 「……――よォ」 と、渋みのある老人のような声が、挨拶を投げかけた。擦れたその声が、老獪めいた印象を植え付けるのである。 光が晴れていくと、彼の姿もはっきりと浮かび上がる。 私の召喚したらしいサーヴァント――その何重にも深く被った毛皮のフードからは、鋭い茶色の瞳だけが覗いていた。 逆に言えば、それだけが――この名もなき英霊のただ一つ見せる生身であった。 「あなたは……」 私――剣崎比留子は、彼を上目遣いに見つめた。 訝し気な顔をしていただろう。訝し気、というよりは初めて目の当たりにするサーヴァントへの警戒も含まれていた。 当たり前だ。 彼の全身は、あまりに隠されていた。 毛皮のフードだけではなく、腕も、足も、それぞれ体の全てを動物の毛皮で覆っていた。 これでは、性別さえも、あるいは本当に人の姿をしているかさえも判然としない。 しかして、複雑な道具を使いこなすだけの理性と知識のある文化的背景を過ごした戦士であるのは、私にもすぐにわかった。 彼は、小さな手斧を携え、それにまた背中には弓兵の英霊であるかのような巨大な弓を背負っていた。 それがこの聖杯戦争において彼の戦の道具らしい。 「――アンタがオレのマスターかィ」 「……ええ」 サーヴァントの問いに、上ずった声で返事をした。 ……自分でも少し、気に入らない――あまり可愛くない声が響いた。咄嗟な事でも、もう少し上手く返事をしたい。むう。 しかし、サーヴァントは私の声色が艶やかか間抜けであるかには、あまり興味がないようだった。そっけない返事が返ってくる。 「そうかィ。よろしくな」 「そうですね。……いや、うん。これから、よろしく」 調子よく声が出たところで、彼への口調を敬語から改める。 どうあれ、私は主、彼は従者。それならば、年下に効くような口で話しても構わないだろう。 彼もその力関係はよく把握し、納得しているらしい。 「で、早速だがな。どうやら、マスターは何か訊きたそうに見受けられる。 ――ひとまずはそれを晴らしておこう。 何から知りたい? とりあえずは、オレの知ってる限りの事はなんでも応えるぜ」 なんとも私にとって都合の良い事を言ってくれる。 ちょっと調子が狂っていた私は、ひとまず調子を取り戻す。 サーヴァントとして覚悟を伴っている彼と違い、私はすぐには自然な会話に戻れない。 ちょっと深呼吸した。 「……ありがとう。そう言われると助かるよ。 何せ、私は否応なしに聖杯戦争に巻き込まれてしまってね。魔術師ではないから、聖杯戦争そのものを知ったばかりだ。 知りたい事、というよりは知っておかなければならない事が多すぎる」 「なるほどなァ……。それなら尚更だ。情報は生存を左右する」 「ああ。だから、こちらから遠慮なく。 まずは、その背の弓。あなたは……『アーチャー』? で間違いないかい?」 私はまず、彼の背の弓を見て問うた。 聖杯戦争には、基本の七つのクラスと、それに属さないエクストラクラスが存在する事を解している。 セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー……その中のいずれかと言われたなら、彼はそうだろう。 ただ、彼を呼ぶ時になんと呼んでいいのかさえわからないのはあまりに不便だ。 「いや――オレは復讐者、アヴェンジャーさ」 「復讐者……エクストラクラスか……」 「ああ」 「つまり、あなたは過去に誰かに『殺された』という認識で良いかな?」 「……ああ。すっかり、遠い昔の話だが、それは間違いねェ」 「あなたにとっては――その復讐、が最終目的であると」 「――いや。それはまた、違うな」 私の言葉を、アヴェンジャーは遮った。 「オレが望むのは復讐じゃァねェんだ」 「では、何故復讐者として召喚に応じ、何故聖杯戦争に参加したのかな?」 「……オレはな――ただ、知りたいのさ。 オレを殺したのは誰なのかをな」 そう呟く時のアヴェンジャーの少し強くなった語調と、その迫力に圧された。 強い拘りか、やりきれない何かが放出されているように見えた。 まだ契約の結ばれたばかり、情報交換の段階の私たちには信頼はない。何気ない一言が、私に固唾を呑ませる。 すべてがあまりにも私の常識と食い違う存在――いくら主従関係でも、安易に触れるには少しヘビィな相手だった。 アヴェンジャーは、そんな私の様子を察する事もなく、口を開いた。 「――オレは五十年ほどだけ生きた、ごく普通の人間だった。 マスターは幾つか知れねェが、それでも結構苦労や楽しみがあって生きてきた貴重な人生だろう? オレにとっては、その五十年が人生の全て、オレの世界の全てだった。 まあ、あの日から今日までを隔てる五千年なんていう時間に比べれば、大した事ァねェかもしれねェが――」 「……五千年?」 「ああ、五千年だ。考えてみると、ああ、あんまりにも、時間が経ちすぎたな。 それだけ経った次代を見てしまったのなら、自分が死ぬより後にどれだけ生き続ける事になったのかなんて考えたって仕方がねェだろう。 世界が見違えるほど時間が経っているってのに、今更復讐と言って何にもならねェよ」 「まあ、そうかもしれないけど……」 「それに、オレは自分を殺したのが何者なのかも全く知らねェ立場だ。憎もうにも憎みきれねェ。 それじゃあ、恨みを買ったのは、オレに原因があったとも言い切れねェしな。 必ずしも、相手の勝手で殺されたとは言い切れねェ……だから復讐とは行けねェのさ」 私には、殺された人間の気持ちなどわからない。 一方的に殺されたとして、ここまで相手を許せるものなのだろうか。 ……ただ、私には、アヴェンジャーは恨みを捨て去ったのとも、忘れたのとも少し違うように聞こえた。 あっけからんと云おうとしているが、それを隠しきれていない。 「それに、どうせ人はいつか死ぬもんさ。あれから多少生きながらえたとして、この時間にも、この国にも、決して辿りつく事はないワケだ。 なのに、今になって『自分の復讐』なんざやったって意味がねェ」 そう――それは、私には「諦観」に近いニュアンスに聞こえた。 本来なら憎しみが湧いてもおかしくないのを、かつてと今とを隔てた膨大な時間に諦めさせられたようにも聞こえる。 前向きでおおらかというよりは、どうにもならない状況を諦めきったような、無理のある言葉であった。 自分が殺されたという事実もまた、歴史から見れば小さな出来事の一つに過ぎないと悟りきってしまったのだろう。 勿論、それは私の邪推に過ぎないかもしれないが。 「――だが、どうせ終わったのなら、誰が、どうして、オレを終わらせたのか知りてェのさ。 オレの人生の幕を閉じたのが誰なのか、何故なのか、知らぬままには死んでられねェからな。 そう……別に憎んじゃいねェ。ただ、オレは知りてェ……そうしてェんだ」 「心当たりは、まるでないのかな?」 「心当たり?」 「アヴェンジャーを殺した人間の心当たりだよ。大きな恨みを買ったとか」 「……いや、それならあるさ。人並に、ただし、膨大にな。 妻か、弟か、友か、敵か、味方か、通り魔か、偶然か。 オレに対する強い敵意があったのか、それとも不幸な事情があったのか、何かの間違いによる事故なのか。 それこそ、誰にだって突然、殺される理由、その可能性なんて無限にある。 理由がない殺人――それも今のオレからすれば納得のいく理由の一つだな」 「確かに正論だけど。 そこから一つに絞る事は出来ないなら、それは心当たりがないのと同じだよ」 「ああ。まったく、そんなところだな。 云った通り、大きな恨みを買った覚えはほとんどない。 それすらも、何もわからないままに――オレ自身は血まみれになって、氷に沈んだ。 はっきり言うが、やってられん。 ……だから、『知る』為に戦う。 それだけが……【アイスマン】と呼ばれたこのオレの――ただ一つの願いさ」 理不尽に殺され、理由もわからないままな一人の被害者の『やりきれない想い』が、アヴェンジャーの持つ一抹の願いだった。 聖杯に託す願いさえも、絶対ではない。 諦めきれない想いを、せめて癒せるかもしれないというギャンブルに過ぎないように聞こえた。 それが叶ったら良いな、もしその為に戦えるのなら全力を尽くせるだろうな、というような――ある種の神頼みと、チャンスをつかみたい意志。 自分の人生が何故終わらせられなければならなかったのかを、彼はただ知りたい。 それだけが彼の復讐者としての事情であった。 そして――何より。 「そう……なるほど」 アヴェンジャーの持つ『理由』に、私は妙に納得した。 この聖杯戦争なる儀式に応じる者は、いかなる考えを持った人間なのか。 それが納得しきれない事には、自分の安全は確保できない――過去に虐殺を行った英霊ならば、あるいはあまりに異なった価値観を持つ英霊ならば、私もコントロールが難しいからだ。 しかし、ごく一般的にも納得しうる理由で彼は動いている。 それに、彼の『アイスマン』なる名前には聞き覚えがある。 エッツ渓谷で発見されたミイラに名付けられた名前――そのミイラは、『世界で初めて殺された男』などと呼ばれている。 見れば、五千年前という時代にも、この動物の皮をまとったいでたちにも、その境遇にも、ほとんどそれは――あのミイラ男の特徴と一致するのである。 私には、ほとんど確信があった。 彼が――アヴェンジャーこそが、そのアイスマンであると。 それならば、決して強いとは言わずとも、あまりに突飛な思考の英霊にはなりえない。虐殺の逸話もなく、親や主を殺す逸話もない。 ただの、有名な、被害者だ。 安全や安定を求める私にはマッチングしている。 彼は、願いそのものへの執着も他の英霊と比べて薄い事だろうと思う。何せ、自分ならば絶対に願いを叶えられるなどとは思っていない筈だからだ。 成功者でもなければ、万能でもなく、決して勝ち続けた人間でもないが故に、聖杯戦争にかける自信も弱い。 マスターを利用し、マスターを切り捨てるなどといった方針にも至らないだろうし、いざという時には潔く自分の運命を認めるだろう。 あくまで、彼は知名度の高い凡人といったところだ。 そんな彼ならばこそ、私の相棒には相応しい。 「取引しよう、アヴェンジャー」 と、私は云った。 「私の願いは一つだ。私自身が、すべての危険を回避してその場を生き残る事。 あなたの願いは一つだ。あなた自身が、かつて殺された理由を探りだす事。 あなたは私が殺された段階で消滅し、その願いを叶える機会を失ってしまう。それは不本意のはずだ。 つまり、それまであなたは私を守りきらなければならない」 「ああ。もとよりそのつもりだ。だが、マスターに願いはないと?」 「ないわけではない。けど、それは今になって無理に叶えたい物でもない。 リスクが多すぎるし、私には正直、疑念の方が大きいよ」 それが率直な私の気持ちだ。 聖杯の叶える願いが本当ならば魅力的だが、そうでないならば単なる危険な徒労になる。回避しておきたい事象だ。 それよりか、とにかくひたすらに身の安全を守る合理的な方法を追いたいのである。 ならば、降りれば良いかもしれないが――ここにも理屈はある。 「ただ、今すぐゲームを降りるのもリスクは大きいと思ってる。サーヴァントの力は兵器も同然だからね。 人的被害も厭わない性格のヤツも少なからずいるとみて間違いない。と、すると無関係なモノを巻きこまずに戦争を終える事の方が難しい。 その戦場にあって、力がないのはあまりにも心細いし怖いんだ。 だから、正直、私の身を守るナイトが欲しい……となると、それはサーヴァントに他ならない」 「なるほどなァ……否応なしに巻き込まれれば、そうもなるか」 「そこで、アヴェンジャーには最後まで私を守り抜いてくれる事を約束してもらいたい。 そのうえで、最後まで守ってくれたなら、私は聖杯を使う権利をあなたに与える」 この内容なら、アヴェンジャーも考えるまでもないだろう。 サーヴァントは、非力な部類であれ常識離れした能力を持っている。 それが野放しにされている町で、何も助けがないままに行動するのはリスキーだ。 ここで切り捨てる事もなく、アヴェンジャーを利用。そして、同時にアヴェンジャーに利用されるというのが合理的に違いない。 双方、この条件の意味を納得し、契約するのが前提である。 「わかった、取引に応じるぜ。マスター」 「物分かりが良くて助かるよ」 「それで、マスターの質問は終わりか?」 「……そうかな。当面は。アヴェンジャーの番、でいいよ」 私からすれば、訊きたい事は膨大にある。しかし、それらは後で聞いても差し支えないし、いずれを訊いていいのかはわからない。 フードの下には何が隠されているのか。宝具は何か。どういう戦法を使うか、使えるか。過去に殺された時の話、殺される前の話。 しかし、それではあまりに一方的すぎる。 相手方もこちらに訊きたい事は少なくないはずだ。 すると、アヴェンジャーから下された質問はたった一つだった。 「なら質問だ。――マスター、名は」 「ああ……言ってなかったっけ」 そうだ。まだ彼に自分の名前を明かしていなかった。 自分を殺した人間の名前を知りたいがために聖杯戦争に参加したような男だ――自分の命を託すマスターの名前は聞いておきたかったところだろう。 私は、そっとその名前を口にした。 「私は、剣崎比留子。ただの大学生だよ」 ◆ 【クラス】 アヴェンジャー 【真名】 ■■■■(エッツィ・ジ・アイスマン)@史実 【身長・体重】 165cm前後・不明 【ステータス】 筋力D+ 耐久C 敏捷D 魔力B 幸運E 宝具EX 【属性】 秩序・中庸 【クラス別スキル】 復讐者:B 復讐者として、人の怨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。怨み・怨念が貯まりやすい。 周囲から敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。 忘却補正:B 人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。 忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃はクリティカル効果を強化させる。 自己回復(魔力):A 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。 魔力を微量ながら毎ターン回復する。 【保有スキル】 凍てついた呪詛:A アイスマンの木乃伊に関わるものすべてに降りかかる呪い。 彼の身体の非生成部位に触れたもの、嗅いだもの、見たもの、存在を感知したもの――あらゆるものの幸運値を無条件かつ強制的に引き下げる。 時に測定可能なEクラス以下にまで引き下げ、およそありえない偶然の不幸さえも引き起こす。 アイスマンが英霊として形を残している限り、その効果は持続する。 武具作成:B 鉄製の武具を生成するスキル。 何の逸話もない無銘の鉄器であれば、自在に作成できる。 【宝具】 『氷河が遺した屍の記憶(メモリー・オブ・アイスマン)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:2~99 最大捕捉:99人 毛皮の下に隠されたアヴェンジャーの生身。 かつて人として生きた時代の姿と、現代人の前に姿を現したミイラ男としての姿とが混在した悍ましき肉体。 5000年前と今、二つの時代の氷河が見た『一人の人間の姿の記憶』を一身に抱え込んだ怪物である。 それを見たものはサヴァンジャーの敵味方を問わず、例外なく『凍てついた呪詛』にかけられ、あらゆるものに無自覚に敵意を買い、あらゆる偶然に命を狙われ続ける「断続的な不幸」に見舞われる。 事故、災害、自滅、時に契約を結びあっているはずのマスターとサーヴァントの不幸な殺し合いさえも呼び起こす。 ただし、これはアヴェンジャーの意思によらず発動する為、自身のマスターや協力者がそれを見た場合でも発動してしまう諸刃の剣である。 【人物背景】 1991年にエッツ渓谷にて発見されたミイラの男――アイスマン。本名不明。 5000年以上前、青銅器時代に何者かに殺されて以来、氷河でミイラとなって現代まで形を残し続けた。 今もなお彼の死体は研究され続け、生活習慣や死因などを特定されていった。 その過程で彼が殺害された事が判明したのち、彼の存在は「最古の未解決殺人事件」とも呼ばれ、何者がいかにして何故彼を殺したのかも興味を惹き続けている。 あくまで無銘の人物であるが、研究によれば、それなりに身分の高い人間の食事を摂っていたらしい。 死亡時の年齢は40歳~50歳程度。筋肉質な体格であり、動物の皮を身にまとい、斧や矢じりなどの武器を装備していたとされる。 また、現代では、発掘以来関係者が続々と怪死した事から「アイスマンの呪い」という都市伝説が吹聴されるようになった。 これは相当数の関係者がいた事などから全くの偶然ともいわれているが、5000年の時間を氷河に晒されながら形を残し続けた執念は呪いの粋に達していてもおかしくはないだろう。 彼は、この聖杯戦争においては、自分を殺害したのが何者なのかを忘却している。ただ殺された記憶だけが忌まわしく残存されているのである。 犯人が何者なのかをはっきりと思い出せぬまま英霊の座に在り続け、ただその犯人と動機を知る事だけを己の願いとする。 【特徴】 体すべてを負おう動物の毛皮、ただ茶色い瞳だけが覗いている。初見では、二足歩行の生物である事しかわからない。 あくまで男性。本人の年齢は五十歳としているが、その肉体年齢は全盛期のものである。 毛皮の下には、現代の人間が見た「ミイラ」としてのアイスマンの姿が意匠を残しており、その姿を見た物、あるいは感知したものはすべからく『凍てついた呪詛』にかけられる。 いずれにせよ、その真の姿はあまりに醜く、決して目視すべきではない。 【所有武器】 『無銘・弓矢』 『無銘・矢じり』 『無銘・斧』 【聖杯にかける願い】 己を殺した物が誰なのか知る事。 復讐ではなく、それを知る事で永久の休息にたどり着く事が彼の目的である。 【マスター】 剣崎比留子@屍人荘の殺人 【能力・技能】 探偵少女としての知識と知恵。高い推理力と応用力を持ち、いくつもの事件を解決している。 戦闘能力は一般人並だが、作品内の随所で戦闘行為も行っている。 【人物背景】 神紅大学文学部二回生。幾多の事件を解決に導いた探偵少女。実家は横浜の名家で、警察協力章も授与されているらしい。 初登場の描写による外見は以下に抜粋。 『相当な美少女――少女かどうかは微妙だが――である。 黒のブラウスとスカートに身を包み、肩よりも少し長い髪も黒。 身長は百五中センチと少しといったところだが、スカートの腰の位置が高いためすらりとして見える。 風貌は可愛いというよりも、そう、佳麗というのが正しい。 少女と女性という分類のちょうど境目にいるような、とにかくそこいらの女子大生とはまるで違う生き物に思えた。』 (服装は場面によって変動あり) そんな彼女は、いくつもの危険で奇怪な事件に「偶然」にも巻き込まれるという呪いのような体質の持ち主でもある。 彼女が生まれた頃から言えや親族、グループ内で頻繁に事件が発生するようになり、十四歳で殺人事件に遭遇して以来、自分の周りで頻繁に凶悪事件が発生。 現在では三か月に一回は死体を見ているらしい。要するに、金田一くんとか、コナンくんとかと同じ死神体質なのである。 しかし、彼女の場合は、メンタルは普通の少女と同等であるのがネック。 それゆえに、「探偵役」として事件を解決する事はあっても、人が襲われ殺される事件自体は怖くてたまらないと言っている。彼女もまた何度も危険に遭っているらしい。 あくまで彼女が謎を解き犯人を暴くのは「事件からの生還」の為。得体の知れない殺人鬼によって「次のターゲット」にされる前に犯行を暴くというのが目的である。 謎に対する興味や好奇心もなければ、正義感や使命感、真実への執着といったものも人並程度にしか持ち合わせてはいない。 作中では、強かで動じないように見えて、女の子らしい一面を度々見せる。 『屍人荘殺人事件』終了後より参戦。 ちなみに、これは「ネタバレ禁止!」と宣伝されるミステリ作品のキャラだが、これから読む人は彼女が犯人だとか考えてはいけない。一応。 【マスターとしての願い】 下記、方針の方に記載。 【方針】 ①あらゆる手段を用いた生存。 聖杯戦争がどういう形であれ終了し、その結果として自分の安全が確保されているならばそれでいい。 血を見るのも、恨みを買うのも好きではないので、極力他マスターを前にも上手く立ち回る。 ②以降の方針は①の為なら捨て去る。 ②聖杯の入手。 望みは二つある。 一つは、取引の通りにアヴェンジャーの願いを叶える事。取引をした以上、比留子はこちらの願いを優先する。 もう一つは、己の呪い的体質を消し去る事。これはアヴェンジャーの記憶等からアヴェンジャーの殺害者を推理できてしまった場合などに叶える。 ただし、その過程で人間の死や己の身の危険があるならば、いずれも優先順位は低くなる。 ③アヴェンジャーの殺害者を推理する。 あくまで、材料が上手く揃って推理が出来る状況になったらの話。 これが叶った場合、聖杯を入手した際の願いが変動する。
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さぁ、穏やかに鳴く羊よ、 これからはアナタの傍に横たわり、アナタの名で呼ばれる方のことを思い、アナタを見守り涙を流そう。 我が鬣(いきざま)は生命で出来た流れで洗い清められた永遠の黄金のように光り輝く。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――アナタを守り続ける限り。 ウィリアム=ブレイク、無垢と経験のうた、『夜』 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 『世界樹を焼き払う者』の事件から、2年後。 20歳となったゴドリック=ブレイクは信じられないくらいの速さで必要悪の教会の魔術師になっていた。元々あったフリーランスとしての経験が功を奏したのだろう。 『必要悪の教会の魔術師』として初任務もこなし、無事初陣は完了してきた。 そうして、自身の居場所(にちじょう)に帰ってきてから、結婚式を挙げた。 ゴドリックは必要悪の教会の魔術師として任務を終えた後、式を挙げると約束していたのだ。余談だがこの行為は極東の島国では死亡フラグというものになるらしい。 その中にはヤールやニーナ、高校時代の友人であるベンやボニーまで祝ってくれた。 その後は、アパートで二人きりのパーティを開いて。ジュリアが酒を開け、ゴドリックは酔いどれ…… 朝。窓から差し込む光がとても爽やかな晴れた空が目に入る。 そんなゴドリックはあたまを襲う鈍痛に悩みながらムクリとおきる。二日酔いの痛みと、寝過ぎたが故の痛みだった 床を見てみると、服が散らばっていた。こげ茶の上下のスーツと、赤色のワンピース。更になんか下着まで散乱していた。 まさかと思い、布団を捲ってみる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・OH。」 はいてなかった。ついでに隣を見てみる。 蜂蜜色の髪の毛、左頬に刻まれた傷痕。そんな疵すらかすむ快活さ。 自分の隣には27歳となったジュリア=ローウェルがスヤスヤと穏やかそうな顔で眠っていた。 ゆっくりと布団を元の位置に戻し、昨日何があったか思い出してみる。 「(確か、昨日は二人で初任務成功のパーティーを開いて、何故か夕食と酒のつまみを僕が作って、ジュリアが酒を呑んで呑ませて、その後、僕は…………。)」 ようやく思い出した。昨日の夜、ナニがあったか。 そして、同時に赤面する。 「(酒って怖えぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!! ……って待て!!これがまだ学生とかならアウトだけど、もう稼いでるし!!食い扶持あるし!!お祖父さんお祖母さん公認だし!! ってか、ハジメテが酒に酔って、ってどうなんだ!!?)」 ゴドリック、心の叫び。 すっかり混乱してしまっている。 あくまで心の中で叫んでいるのでジュリアには聞こえないから目覚ましにもならない。 「ウ、ン。頭痛い……呑み過ぎた。」 だのにジュリアは起き上がった。 驚いて、ぎょっとしているゴドリックだが、ジュリアは寝ぼけているのか、ゴドリックには気づいておらず、ポーっとしたまま布団から上半身を晒す。 まず、ジュリアは床に散らばった服に気付いた。その中にある自分の下着も発見する。 次に、自分の格好を振り返ってみた。 それから、となりのゴドリックに気付く。 「っ、きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?!!????」 「ぶっは!!」 そして、混乱の末にビンタ。 慌てて自分の体を布団で覆った。 「な、な、なあ、あばっばばばばばばばばばっばばばっばばばっばばばっばばばばばばばばばばばばばばば……!!!」 「落ち着け、ジュリア!!よく昨日を思い出せ!!」 布団かたつむりとなったジュリアにゴドリックは必死に言い聞かせた。 昨日ナニがあったかを。 数分後。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 そこにはベットの上でイギリス人なのに正座している二人がいた。 ゴドリックは照れ臭そうに、申し訳なさそうに頬を掻き、ジュリアは頭を抱えながら反省していた。 ちなみに残念ながら服は着用済みだ。 「お酒のせいって事にしとこう。」 ジュリアの第一声に、ズルッとゴドリックがずっこける。それこそ、まるで日本のお笑い芸人の様に。 「それでいいのかよ!!」 ずっこけた勢いでベットから落ちたゴドリックは思わずツッコんだ。 「いいのよ。細かいこと気にしたって仕方ないし。私達の関係普通で、やましい事なんてないし。……お酒に酔っちゃって、ってのはちょっとアレだけど。」 ジュリアは身体を伸ばしながら、ベットから出て支度を始める。 そのとき、左薬指にはめた指輪が目に入った。 「さて、今日も一日頑張ろうじゃないの。ゴドリックも早く支度しなさいよ?」 そう言って、ジュリアは寝室から出る。おそらくシャワーを浴びに行ったのだろう 「…………好きになってよかったな。」 ポツリ、と思わず口にして、ゴドリックもまた準備を始めた。 しかし、ゴドリックはまだ知らなかった。 己のやらかした所業の結果を。 驚愕の事実が発覚することを。 それからしばらくして。 任務を終えたゴドリックは、ティル=ナ=ノーグへと近づいていた。 ゴドリックが店に入ると、そこには黒いローブを纏っている妙齢の女性魔術師が座っていた。 女性魔術師が振り返る。紫色のフレームの眼鏡をかけているその女性に見覚えがあった。 「あれ、もしかしてニーナ?」 2年の年月が経過しても変わらず……いやイギリス清教に所属する魔術師たちと同盟を組んでちょっと支援の抗議(わがまま)を言った結果僅かながらにも豪華になっているカフェ、ティル・ナ・ノーグ。 そこには懐かしい顔がいた。 「あれ、まさかゴドリックさんですか?」 今度はニーナがゴドリックに聞き返す。 ゴドリックの予測通り、この女性こそニーナだった。 「そうだ。随分と久しぶりだね。」 今のニーナは必要悪の教会の所属ではない。 例の事件の後、彼女自身でも信じられない程にメキメキと頭角を伸ばしていき、『立派な魔女に成る為に修行する』という名目を果たせた。 いまやニーナの母親、ヒルデグントに比類する実力だと噂も立っている。 そんな彼女は世界を渡り歩くためにイギリス清教を脱退したが、交流自体をやめた訳では無く、技術や知識を提供している。 「お帰りなさいゴドリック。今ニーナちゃんが……ってなんだもう会っているのね。」 ジュリアが右手にポット。左手にティーカップを持ってやってきた。 なぜかは解らないが妙にうれしそうな顔をしている。 「それは?」 「ニーナちゃんが造ったハーブティーよ。ティル・ナ・ノーグの新メニューに、って頼んでいたの。私はもうもらったから今度はゴドリックが飲んでいいわよ。」 カップに注がれたソレは普通の紅茶の様な色ではなく、どちらかと言うと日本の緑茶のような色だった。口にしてみるとおいしい。それどころか、身体の奥底から元気が湧き上がるような感覚までする。 「これ、美味いの一言で片づけられるレベルじゃないぞ。疲労がみるみるうちに取れていく。」 「選りすぐりの滋養強壮の効果があるハーブで造ってますから。」 そう言って自慢するニーナには昔の自信無さげな面影は見られない。彼女は魔女としての気品で溢れていた。 「近頃、ゴドリックたらやつれ気味だものね。私よりも7つも若いくせに。」 「仕事で疲れてね。こういったモノを出してくれて助かるよ。」 「まぁ、約束はちゃんと守ってくれているようだけど…………、」 ジュリアは微笑んで、ハーブティーに舌鼓を打っているゴドリックに最大級の地雷(サプライズ)を仕掛けにかかった。 「貴方にはもっと頑張ってもらわないとね、“お腹の中にいる子”のためにも。」 「ブッ……ホ!?ガホゲホォッ!!!」 こうかはばつぐんだ。 ゴドリックは驚愕のあまりハーブティーが気管に入り、むせてしまった。 「え、まさか二人とも遂に……?ゴドリックさん!!?」 ニーナも顔を赤らめて、ゴドリックに問い詰める。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 当の本人は不意に豆鉄砲……いや、貫通の槍(ブリューナク)でも喰らったかのような顔で沈黙してしまった。 「あれ、ゴドリックさん?」 「ゴドリック?聞いてるの?貴方と私の子よ!!こないだのがHITしたのよ!!」 ジュリアがゴドリックを掴み、ガクガクと揺らしている。 「僕と、ジュリアの子供……?本当に?」 「ええ、嘘なんてついてない。本当に子供が出来た。本当に貴方の子よ。」 そういってジュリアはゴドリックの手を掴む。 対するゴドリックはと言うと。 「そうか。……そっかぁ。僕と、君の子か。」 喜んでいた。 感情は一瞬にして驚愕から歓喜へと変わった。 ゴドリックは目に涙を溜めながら、ジュリアの手を握り返す。 「頼みがあるんだ、ジュリア。産んで欲しい!!僕ももっと頑張って君を支えるから。」 「勿論に決まっているじゃない。」 頼んだゴドリックと、頼まれたジュリア。 どちらもいい笑顔をしていた。 そう、断言できた。 それから女の子が生まれた。 エラ=ブレイクと名づけられたその子はゴドリックとジュリアの子としてこの世に生を成した。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 7年後。 27歳となったゴドリック=ブレイクは、必死に教会の中を走っていた。 「そんな…………どうか、どうか無事で………………………………………!!!」 彼の表情には余裕がなく、焦りが浮き彫りになっていた。 そんな彼は足を更に速め、遂に目的地の前まで駆けつける。 慌てて制止する人間をはねのけ、部屋に入った。 部屋の中には一人の魔術師が佇んでいた。 奥の方のベッドにはエラが寄り添っており、中ではジュリアが寝ていた。 もう34歳になる彼女は、11年前と何一つ変わらない容姿だ。 そんな彼女はただただ眠るだけだった。 傍らに置かれている霊装から伸びる管は、彼女の左腕に繋がれていた。それが、ゴドリックにとって最悪の予感を連想させた。 「ジュ、リア? ………おい、どういう事だ?何があったんだ!?」 直ぐそこにいた魔術師に食い掛かり、胸倉を掴む。 話によると、ゴドリックとジュリアに恨みを持つ魔術師がエラを人質にとったらしい。『イギリス清教に助けを乞えば娘の命は無いと思え』という脅迫状もおまけだった。 ゴドリックはその頃任務でフィンランドにいて、イギリスにはいなかった。ジュリア一人でエラを取り戻すしかなかったのだ。 ジュリアは魔術師と交戦して、倒したものの重傷を負った。 エラが助けを求めて、たまたま声をかけたのがイギリス清教に所属していた魔術師だったという。 「ジュリアは、ジュリアは……どうなる?」 「後、一回目覚めるかどうか……。そこの生命維持の霊装から音が鳴れば、彼女が死んだということだ。 ―――――――――――――――――――――――――――――もう、今まで通りに生きる事は出来ないだろう。」 その瞬間、今までにない、絶望感が一気に押し寄せてきた。 …なんで、僕は駆けつけられなかった? ……誰のせいで、ジュリアが傷ついた? ………僕は、何も出来なかったじゃないか。 「パパ。」 絶望に明け暮れているゴドリックに、まだ幼い娘が見上げてくる。 「ごめんなさい。私が、攫われたりしなかったら……。ごめんなさい。」 そうやって謝ってくるエラは、ゴドリックを絶望感に浸るのを踏み止まらせた。 「エラ。一旦家に帰ろう。お爺ちゃんとお祖母ちゃんの所にいるんだ。パパはママの事を見ておくから。」 今は、自分に出来る事をしよう。 そう、ゴドリックは決意した。生き残った我が子を目の前にして。 そうして、数週間後。 ゴドリックはジュリアの部屋で、椅子に座り眠ったままのジュリアを看ていた。 時間帯は真夜中。しかしゴドリックに睡魔は訪れない。あるのは悔しさだった。 今この瞬間にも目覚めるかもしれないし、二度と目覚めることのないまま、霊装が死の宣告をするかもしれない。 僕は何が出来たんだろう。僕は何をするべきだろう。 そんな思いが、ゴドリックの中に渦巻いていた。 「……ゴドリック?」 声が響く。 彼女の声が部屋に響く。 「ジュ、リア?……ジュリア!!目が覚めたのか!!」 ゴドリックは思わず立ち上がる。 「済まないジュリア。それとありがとう、エラはお蔭で無事だ。そうだ、早く皆に伝えないと……。」 謝罪。礼。驚愕。歓喜。 様々な行動と感情がゴドリックのなかに渦巻き、混乱を招く。 「エラは、無事なの?」 そう、ジュリアは不安そうな目で確認する。 まるで、何かを懇願しているかのようにも見えた。 「あぁ、無事だ。待っててくれ今エラとお義祖父さんにお義祖母さんをよんで………!!」 「ゴドリック。その必要は、ないわ。」 「…………え?」 ジュリアの一言が、湧き上がったゴドリックの全てを一気に鎮静させる。 「もうね、私、限界みたいなの。 ……目覚められたのはきっと奇跡。エラやおじいちゃん、おばあちゃんがいないのは残念だけど……貴方がいてよかった。」 「ジュリア、そんな……何言ってるんだよ?」 ジュリアは達観の笑みを浮かべる。 ゴドリックは、そんな彼女の台詞が信じられなかった。 「おじいちゃんと、おばあちゃんに、“先立つ不孝をお許し下さい”って伝えて。」 「そんな冗談言うなよ……。面白くないぞ。君が、死ぬわけない。」 信じたくなかった。 自身に最期の思いを託そうとする愛する人の姿を、ゴドリックは信じたくなかった。 「それから、エラには“元気で真っ直ぐ、生きていって”って。私の分まで、あの子の事をよろしく頼みたいの。」 「そんなの、自分で言えよ。僕が伝える事じゃない。君が直接あの子に会って言う事だ。」 実感がわかなかった。 余りにも現実味がなさ過ぎて、涙を流していることさえ認めたくなかった。 「それからね、ゴドリック。」 「ジュリア。キスなら…………後でイヤと、言うほどするから。まだ死ぬとか言わないでくれよ。」 「ありがとう。私は幸せよ。」 「ッ…………――――――――――――――――――――――!!」 遂に耐えきれなくなったのか、ゴドリックはジュリアの両手を掴む。 目は、彼女を見据える。 涙は止める。今だけは、流せない。 もし、此処で泣けば視界が霞んでジュリアの姿が見えなくなる。 「ああ、僕も君といて幸せだ!愛している!!」 「ありがとう。それと、頼みがあるの。」 「頼、み……?」 「忘れないで。私が死んでも、まだ希望があるの。だから、生きて。私が死んでも貴方ならきっと大丈夫。 ……それと、ありがとう。私を愛してくれて。私は向こうで見守っているから。」 「ジュリア、礼を言うのはこっちだ。君がいなきゃ、君と約束を交わしてなかったら、僕は死んでいた。僕は、君を愛している。」 ゴドリックの言葉を聞き届けたジュリアは微笑んだ。 もう言葉は無い。必要ないと言わんばかりの満足な笑み。 そして、ジュリアは瞼を閉じる。 ピ―――――――――――。という、病院にある機械に似たような空虚な音が鳴り響いた。 「ジュリア……。お休み。むこうでも、元気でいてくれ。 ――――――――――――――――――ア、アア、アアアアアアア…………ッ!!」 そうして、声にならない慟哭が部屋に響き渡る。 今までの全てを思い、吼えて、涙を流して、慟哭した。 慟哭が終わったのは、明け方だった。 「……パパ?」 朝。遺された娘が、病室に入ってくる。 そして、言葉を思い出す。 “私が死んでも、まだ希望があるの。”と。 希望は今、彼の目の前にいた。 「パパ?ママは、どうなったの……?起きるの?」 「ママは……もう起きない。天国に行ったんだ。」 何も知らない子供に真実を告げなければならない。 それも、残酷は真実を。 でも、受け入れなければならない。 かつて自分が兄を喪った時と同じように。 「ママはね、“ 元気で真っ直ぐ、生きていって”って言ってた。ママはこれからも僕たちの心の中で生きていく。 ……今はパパの胸の中で一杯泣いていいから、その後、元気で見送ってあげよう?」 そうして、ゴドリックはエラを、愛娘を抱きしめる。 腕の中では、泣き声が聞こえた。 ゴドリックはその声を聞き届ける。 「(ジュリア……後は任せてくれ。この子を絶対に幸せにする。)」 そう決意して、顔を見上げる。 窓からの光が、目に染みた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 11年後。 イギリス清教の教会内にある墓地。 今日のロンドンの天気は墓場の雰囲気に合わせているかの様に陰鬱な曇り空。そこに飛ぶ鴉がまた陰鬱な雰囲気を引き立てている。 そんな墓場でゴドリック=ブレイクがゆっくりと歩いていた。 現在のゴドリックは20年前とは違った。 38歳になった彼のあごには無精ひげを生えており、もう青年の面影は残っていない。 彼は黒いブリティッシュスタイルのスーツを着こなしており、その上に羽織っている臙脂色のトレンチコートはどこか寒気すら感じる墓場の中で蝋燭の様な温かみを感じる。 何処か達観しているような雰囲気がありながらも何かきっかけがあれば太陽の様に燃え盛る、そんな予感がする男になった。 そんな男は一つの墓の前で立ち止まる。 “ジュリア=ブレイク” その墓の前に座り込み、持っていた花束を置いた。 「ジュリア。済まない。最近任務が忙しくてなかなか来れなかったんだ。」 そう墓前で呟くと持っていたワインを開け、一気に飲む。 「……もう38になっているんだから、君に付き合えるくらいには酒に強くなったよ。エラは君の酒豪ぶりは受け継がなかったみたいだ。」 「あら、悪かったわね。私は飲んだくれの父親は嫌いよ?」 そう、後ろから若い女性の声が聞こえた。 エラ=ブレイク。 ボブカットに整えられた、母から受け継いだ蜂蜜色の髪の毛に、父から受け継いだ碧眼。 18歳という年齢ながらどこか幼さが残る顔の彼女は、その顔に似合わず鋭い穂先を持ったロングボウ型の霊装を持っていた。 エラは魔術師になった。それも必要悪の教会の魔術師だ。 「絶対に認めない」と、ゴドリックは言ったにも関わらず、彼女はその意志を曲げなかった。夜が明けるまで口喧嘩を繰り広げた。 その頑固さはどうやら父親に似たらしい。 そんなゴドリックは、かつて自分がジュリアに誓ったのと同じ様に『絶対に、何があっても生きて帰ってくる』という約束をさせた。 親になって初めてジュリアの気持ちがわかった自分はまだまだ未熟者だな、ともその時感じた。 「エラ。来たのか。」 「母親の墓参りに来ちゃ悪いの?ま、今日はそれ以外にも用事があってきたんだけど。」 「彼氏の紹介か?それなら容赦なく撃ち抜いてやるから。」 「違うよ物騒な事言わないの!!任務よ。」 そう聞いたゴドリックは纏う雰囲気を一辺させる。緊張感でその身体を引き締めた。 「そうか、解った。行こう、エラ。」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「ガッ、フッ…………!!」 イギリス奥地の森の入り口にて、ゴドリックは負傷していた。 任務内容は、魔術結社に攫われた一般人の救出。攫われたのは、幼い少年ただ一人だけ。それだけなら魔術師にとっては何気ないだろうが、ゴドリックにとってはただの救出ではなかった。 少年には年齢の離れた姉がいて、その姉が少年唯一の肉親なのだ。 昔の自分と状況が似ていたのだ。 どうしても、その任務を笑顔で済ましたかったのだ。 その任務をゴドリックとエラが引き受ける事となった。 運よく見つからずに一般人を救出し、逃げ果せている最中に見つかってしまった。 ゴドリック一人が殿を引き受けた。全ては無辜の人々を、娘を護る為に必死になって戦った。 しかし一瞬の隙を突かれたのか、負傷してしまい現在に至る。 「(チッ……声が聞こえる。別の奴らが着たか。この魔術結社の総員は60人。雑魚共20人はッ、二人で潰したから後40人全員が来るのか………!!)」 森の入り口で霊装を杖代わりに立ちながら状況判断をしていく。まさか40人一気には来ないだろうと現実逃避を始めるが、この森と魔術結社の本拠地は1本道。十分にあり得るだろう。 「(ここで、もし倒れれば、奴らは一気に押し寄せてくる。 エラの今の実力じゃ、大勢の人間を護りながら戦い抜くのは、難しい。エラの命も、危ないだろう。 だとすれば…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――、あぁ、打開策は一つしかないじゃないか。」 限られた状況。限られた現状。 その中で、ゴドリックは最善の策を見出す。 「いたぞ!!」 遂に見つかった。 黒いローブを着ている典型的な魔術師と言える切り込み隊長がゴドリックに襲い掛かる。 手にした西洋剣が、ゴドリックの脳天をかち割る。 轟!! 筈だった。 ゴドリックは殺されるどころか、逆に切り込み隊長とその後ろにいた部下4人を焼き貫いた。 20年の歳月で『灼輪の弩槍(ブリューナク=ボウ)』は改良を加えた結果、「五矢」の状態、つまり最大威力で人体を貫き、消炭にする威力を得た。 「殺したければ殺すがいい。」 凶悪な魔改造を施された『灼輪の弩槍』は、35人の魔術師に向けられる。 「通りたければ通ればいい。」 追い打ちとばかりに、1.5mばかりの短槍が燃え上がり、宙に浮かぶ。かつてジュリアが使っていた『業焔の槍(ルイン)』を再現した『弐式・業焔の槍(ルイン=セカンド)』という霊装だった。 「出来るものなら、な…………!!『protege533(唯一つを護り通す為に)』!!!」 防衛戦。 これがすべてを護る為の最善の策だった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「どうか、無事で………ッ!!」 エラは森の中を駆けていた。 救出した男の子は当に安全圏へと逃がした。イギリス清教管轄の教会だ。 殿を務めていた父親(ゴドリック)が戻ってこない。 自分たち二人で20人は倒した。 まさか彼一人で残り全てを相手にしているのかと思うと胸が締め付けられるかのような痛みに襲われる。 「あの馬鹿親父、死んだりなんかしたら許さないんだから……!!」 そう決意して更に足を速める。 彼女に『生きて帰れ』と約束させたのは他でもないゴドリックなのだから。 森を抜ける。 そこには焼死体が40体ほど。どれもこれも穿たれている上に黒焦げだった。 そんな中、一人の男が立ち尽くしていた。 臙脂色の後ろ姿。大地に刺さっている燃え盛る槍。右手に持った5つの刃がついたクロスボウ。 間違いなくゴドリック=ブレイクだった。 ゴドリックの姿を見たエラは思わず目を丸くし、驚きを隠せなくなる。大声で叫ぶ。 ゴドリックの身体は槍で貫かれており、臙脂色のトレンチコートは更に血で赤く染まりきっていた。 そんな中、ゴドリックの体は膝から崩れ落ちた。 「パパ!!」 ようやく、エラが足を動かし、ゴドリックの体を支える。 娘に支えられ膝を地面に着けたまま、腹を槍で貫かれたまま、ゴドリックは朦朧としながらも意識を保っていた。 「あぁ、その声。エラか。」 ゴドリックが発したその言葉。 娘が目の前にいるにも拘らず発したその台詞。 「もう、目が見えてないの……?」 そう、エラは察した。 もしそうでなければ、こんな時に悪すぎる冗談だ。 「ごめん、もう僕は此処で終わるみたいだ。僕はここで死ぬ。」 正しい循環が出来なくなった血液は口から流れだし、貫かれた槍から滴り落ちる。 心臓の鼓動がますます弱まっていく。 蝋燭の炎は消える直前にこそ、一番に燃え盛る。 そんな炎の様に、ゴドリックは最期の力を振り絞り、残りの魔術師を殲滅した。そして命の灯は掻き消えようとしていた。 「―――――――――――――――――――――――――――あの子は、無事か?」 だというのに、ゴドリックが聞いたのはそんな事だった。 「無事よ!!だからその目で確かめて!!生きて確かめてよ!!私に『生きて帰ってくる』って、約束させたじゃない!!なのに、こんな所で死ぬなんて……。」 「そうか、ならいい。……エラ。忘れるな。」 今にも泣き出してしまいそうなエラにゴドリックは伝える。 もう、最期になるであろう言葉を。 「ママが昔パパに、今わの際に言った言葉だ。 “忘れないで。私が死んでも、まだ希望がある。だから、生きて。私が死んでも貴方ならきっと大丈夫。” …………だから、生きろ。生きてさえいれば、希望があるんだ。“これまでの日々”は、きっと、“これからの未来”の糧になるから。」 「パパ…。」 跪くゴドリックと、そんな彼の体を支えるエラ。 そんな二人に、光が降り注ぐ。 曇り空の隙間から、煌々と輝く太陽の光が舞い降りる。 『天使の階段』。或いは『ヤコブの梯子』。或いは『レンブラント光線』。或いは『薄明光線』。 そう呼ばれるモノが、健闘を称賛するかのように二人を包み込んだ。 暗闇の中で輝く一筋の光は、それこそ希望を表しているかのようだった。 その光景に、エラは思わず呆気にとられてしまった。 しかしそんな場合ではない。急いでゴドリックを治療をしなければならない。当のゴドリックは今にも息を引き取りそうなのだ。 だというのに。 今際の際でも、彼はにこやかな顔で、穏やかな顔をしていた。 「あぁ、ジュリア。――――――――――――――エラは、大丈夫、だ。」 そう、口にした瞬間。 ズシリと、ゴドリックの体が重くなった。彼の体から生命の灯は消え去り、一気に冷たくなっていく。 ゴドリック=ブレイクはこの世界からいなくなった。 残ったのは、父の遺言を噛み締め、未来に生きようと決意し、涙した娘一人だった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ゴドリックは、死ぬ前に淡い夢を見た。 気が付けば、ティル・ナ・ノーグの屋上にゴドリック=ブレイクは立っていた。 身体が濡れる感覚がしていた。服に水が浸み込み、髪からは水滴が滴っていた。空を見上げる灰色の雲が厳かに空を覆っていた。そこから降っているのは水。空を覆っているのは雨雲だ。 ふと、ゴドリックはある事実に気付く。 身体が軽い。まるで若返ったかのように軽かった。 いや、実際に若返っていた。服装は任務の時のままなのに、地面に溜まった水溜りに映っていた自分の姿は18歳の頃の自分だ。ふと見てみると、『着せられている』という感じがしてならなかった。 「ここは……ティル・ナ・ノーグ。僕は、どうしたんだろう?」 そう、疑問に思っていながら雨に濡れていた。 何をするべきかも解らず。何をしたいのかすら忘れそうな感覚が、降り注ぐ雨を通して伝わってきた。 「ゴドリック。」 長年聞いてない、懐かしい声が響き渡る。 思わず、ゴドリックは振り返る。 蜂蜜色の髪の毛。左ほほに刻まれた傷痕。その傷が思わず霞み切ってしまうかのような快活さ。 ゴドリックが愛し、ゴドリックを愛した女性が。 いつの間にか晴れ渡った空の下で、あの告白の時の姿で、自分の後ろに立っていた。 空はいつの間にか雨雲から明け切った青空に変わり、空には虹がかかっていた。 その愛おしい女性を見て、ゴドリックは全てを思い出す。 そして、伝える。 「あぁ、ジュリア。――――――――――――――エラは大丈夫だ。」 お疲れ様、ゴドリック。あの子を護ってくれてありがとう。 そう、ジュリアは応えた。 そして、駆け寄った二人の姿はまるで夜明けの告白の時の様に、若々しく歓喜で満ち溢れていた。 口づけをしたところで、淡い夢は終わった。 【とある魔術の騎士讃歌(キャバリック・ロマンス)】 【登場人物】 ゴドリック=ブレイク ジュリア=ローウェル ダーフィット=シュルツ ヤール=エスぺラン マティルダ=エアルドレッド オズウェル=ホーストン 尼乃昂焚 ユマ=ヴェンチェス=バルムブロジオ ディムナ=ハ―リング ハルマン=ゲイン ココ=スタンレイ ディヴィッド=ミラー アヴァルス ディスターブ ジェイク=ワイアルド ニーナ=フォン=リヒテンベルク デヴァウア=エルスティア ハーマン=オラヴィスト ヒルデグント=フォン=リヒテンベルク アンネリーゼ=フォン=リヒテンベルク グレートヒェン=シュタインドルフ ジョフリー=サマーセット 双鴉道化 ルシウス=ウル=プテラミア ダスティ=アルフォード 【スペシャルサンクス】 オリキャラの作者の皆様。 SSの読者様。 スレでコメント・応援をくださった皆様。 『とある魔術の禁書目録』の原作者、鎌池先生 。
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「あら…遅いお目覚めだこと」 舞園を見る時とは違い、愛しさのうちにも苛立ちを含んだ目で、セレスは朝日奈を見る。 言うことを聞かないペットをたしなめるような目つき。 「あ…私…」 ややあって、朝日奈は自分の現状を思い出し、そして舞園と目を合わせ、途端に顔を真っ青にした。 「あなたがなかなか起きないから、仕方なく私が舞園さんの相手をしていたのですよ」 セレスは舞園から手を離し、ベッドを下り、朝日奈の方へと歩み寄る。 朝日奈は上体を起こそうとして、 「んっ…」 どうやら下半身に力が入らないようで、腕で状態を支えたまま、床で突っ伏した。 今更という感じだが、片手で自分の胸を隠し、もう片手で自分の体を支え…ようとして、力が入らずに四苦八苦。 見かねたセレスが、朝日奈の腕をつかみ、その場で立たせた。 ――助かった… 咄嗟に、舞園は思った。 偶然とはいえ、朝日奈が目覚めてくれたことで、セレスの興味が自分から外れた。 そう、愚かにも、舞園は安心してしまった。 その一瞬の気の緩みが、 「ほら…ここからはあなたが舞園さんを責める番ですわ」 より深い反動となって、彼女を絶望へ突き落すことになる。 「「え…」」 朝日奈は胸の前で手を組み、青い顔のまま舞園を見る。 「む、無理だよ…私、出来ないよ」 セレスは目を細くして、朝日奈をベッドに突き飛ばした。 「あぅっ!?」 「ペットが飼い主に逆らうな、と言いましたわよね。あなたはただ、ワンワン吠えて、私が言うとおりにすればいいのです」 「そ、そんな…だって…」 「…まだ、イき足りないようですわね」 ビクッ、と、朝日奈が震える。 すでに心が折られている。舞園は把握した。朝日奈はもう、セレスには逆らえない。 「わ、わんっ…」 「…分かればいいのですわ。そうそう、くれぐれも舞園さんは丁重に扱うこと。あなたと違って繊細なのですから」 「…わん」 セレスは満足そうにうなずくと、例の道具群に手を伸ばした。 「さて、次はどれを…」 舞園は唾を呑みこんだ。 高鳴る鼓動に耳を閉ざし、絶対期待なんかしていないと、自分に言い聞かせながら。 セレスが道具を漁る間、朝日奈は居心地悪そうに、ベッドの上でもぞもぞとしていた。 時折舞園に視線を向けては、目が合うと気まずそうにそらす。 「?」 「…」 おそらく、何かを言いたいのだろうが、セレスの手前で喋ってしまえば、また絶頂させられるのだろう。 それでも朝日奈が、意を決して口を開こうとしたその瞬間に、 「はい、朝日奈さん」 セレスが振り向いて、途端に彼女は口をつぐんでしまった。 手渡されたのは、大きな注射器の尖端に、ゴムのチューブがついたようなもの。 「ふぇ…?」 「使い方は、以前教えたとおりですわ」 「…っ、…わん」 異議を唱えようとして、やはり朝日奈は口をつぐんだ。 「あ、あの…」 代わりに尋ねたのは、舞園。 「それ…浣腸器ですよね…何に使うんですか…?」 尋ねた声はか細く、細い方は頼りなく震え、目には怯えの色が浮かんでいる。 何に使うか、そんなの尋ねる必要はなかった。認めたくないだけなのだ。 「ねえ…『お尻で感じちゃうアイドル』なんて…そそるフレーズじゃありませんか?」 セレスがにこやかにそう言った途端に、どこかに潜んでいた恐怖心が、どっと噴き出してきた。 「やっ、やだっ!嫌ぁっ!」 拘束されていたことも忘れ、パニック状態で舞園が暴れ出す。 「大丈夫、ちゃんと気持ちよくして差し上げますから、安心してくださいな。 私じゃ舞園さんをバスルームまで運べませんから、朝日奈さんが起きるのを待っていたのですけど。 『アイドルはう○ちをしない』って都市伝説…ねえ、舞園さん…本当なのでしょうか?」 セレスは笑っている。笑っているということはつまり、本気ということだ。 舞園は真に恐怖した。背骨が震えていると錯覚するほど。 少しでも期待してしまった自分が、本当に恨めしい。 「嫌ぁあっ!たっ、助け…ふぁああっ!!」 再びセレスがローターの電源を入れ、舞園の助けを求める声もかき消されてしまう。 「んっ…しょ」 朝日奈に軽々と抱えあげられ、宙に浮いた状態で、太ももを掴まれている。 放尿を強制されているような、不安定な体勢が羞恥心を煽る。 背中に柔らかな朝日奈の乳房を感じて、舞園は更に顔を赤くした。 「ひぁっ…」 相変わらずローターで敏感な乳房を刺激され、地に足が付かない不安定さも相まって、 「あっ、あ、あぁああぁっ…」 再び舞園は、簡単に絶頂を迎える。 「あっ…やっ!あぁあぁ…」 辺りに潮を撒き散らし、大きく背をそらせた。 「ま、舞園…ちゃん?」 朝日奈が抱えたまま、心配そうに尋ねる。 「あら…期待しすぎて、先にイっちゃいました?」 セレスがからかうように、ニヤニヤと舞園の顔を覗き込む。羞恥に耐えきれず、舞園は目を潤ませてセレスを睨んだ。 「そんな可愛らしい顔で睨まれても、怖くありませんわよ」 本当に子供をあやす姉のような仕種で、セレスが舞園の頭を撫でる。 悔しさと羞恥心に身を委ね、舞園は唇を噛んだ。 バスルームの中には簡易便器が用意され、舞園はその便座の上に下ろされた。 セレスは汚れ役は嫌なのか、「終わったら呼んでください」と言って、ベッドに戻ってしまった。 朝日奈はローターの電源を切ると、居心地悪そうに扉に背を向けてしまった。 浣腸器を握り締めたまま、不安そうに視線を泳がせている。 やはり彼女としても、浣腸などしたくはないのだろう、なんて考えていると、 「…怒って、るよね」 おもむろに朝日奈が口を開いた。 「へ?」 何のことかわからずに、聞き返してしまう。 その舞園の問い返しを、何と勘違いしたのか、可哀そうなほどに肩を震わせた。 怯えたように後ろを向き、話しながらいそいそと浣腸器の準備を進めていく。 「ゴメンなさい…でも…」 「あっ…ちょっと…!」 何のことかを尋ねる前に、朝日奈が舞園に覆いかぶさった。 「やらなきゃ、私がやられるんだ…だから!」 「いっ、あ゛…!」 注射器にとりつけられた細い管が、肛門を押し分けて入ってくる。 舞園は、声にならない声をあげた。感じたことのない苦しさや嫌悪感が、背筋を駆け上がった。 鋭い痛みと、異物感。 「いくよ…!」 「いやっ、嫌ですっ…!朝日奈さん、待って、ダメっ!!」 問答無用に、注射器の取っ手が押し込まれた。 「うぁ…!は、入ってくる……やっ…あ、ぅあ、っく…いやぁああぁあっ…」 「うっ…ぐ…!」 余りの異物感に、吐き気さえ催す。 内臓が痙攣しているような錯覚さえ覚える。 「いやっ…ひやぁああ…気持ち、悪いぃ…」 舞園はその苦痛から逃れるように体を捩った。 しかし動くたびに、注射器の管が存在を主張し、より強い苦痛を訴えてくる。 朝日奈は注射器を管から外して、追加の液体を込める。 まるで自分がされているかのような、そんな苦悶の表情を、朝日奈は浮かべていた。 だが、舞園にはそれを確認する余裕すらもない。 「ふぅう、うぅううぅ……」 「ゴメン、ゴメンね…」 「ま、まだ…っ、入れるん、ですか?」 朝日奈も、舞園も、涙目のまま声と肩を震わせ、互いが互いに怯えていた。 朝日奈は肯定の代わりに、たっぷりと液体を補給し終えた注射器を、管に取り付ける。 追いつめられた顔のまま、朝日奈は舞園の肛門に注ぎ続ける。 「いやっ…いやぁあはぁああぁう…ダメ、だめっ…もう入らないっ、ですっ…くぁああぁあっ!!」 下腹が少し膨れたのがわかる。管から発射される液が、腸壁を刺激する。 どんどん注がれているのに、気を緩めれば全て出してしまいそうだ。 舞園は必死に足先に力を込め、苦痛と排泄欲に耐える。 キュルルルルル 可愛い音を立てて、腹が異常を訴えている。 「はっ、はぅ、はっ…」 苦しさの余り、肩で息をしてしまう。 「力抜いてね…お尻の穴、無理に力をかけると切れちゃうみたいだから…」 「力を抜いたら…っ、ぐ…出ちゃいますっ…」 それを聞いて、朝日奈は舞園の肛門から管を抜くと、朝日奈は舞園の膨らんだ腹部を、力強くさすった。 「やめっ…!…だ、ダメ、朝日奈さんっ…出ちゃう…!」 「いいよ、出して…もう入れてから時間経ってるから」 「なっ…!?」 舞園は驚愕の眼差しで、朝日奈を凝視した。 言葉が出ない。顔から血の気が引いていく。嫌な汗が額に浮かぶ。 「何…言ってるんですか、朝日奈さん…」 常識的に考えて、人が見ている前で、排泄なんかできるわけがない。 「わ、私…これでも、アイドルなんです!そんな、人の見ている前で、出すなんて…」 「舞園ちゃん…ここじゃもう、アイドルとか、関係ないんだよ。私たちはただ、女であるだけ。 ただ、女に生まれたことを後悔しながら、セレスちゃんのオモチャにされていくんだ…」 舞園に諭すように、自分に言い聞かせるように、朝日奈は言った。 朝日奈の言葉を、舞園は理解できないでいた。 舞園は、自分たちはまだ平穏な日常に戻れると、信じていたから。 「うぶっ!!」 そして、そんな儚い希望を押しつぶすかのように、朝日奈が体重を乗せて腹を押すと、 「ぐっ…うぁあ、ダメ…見ないでっ…!!」 滑稽な空気音とともに、液体が飛び散った。 いやだ。 こんな屈辱、耐えられない。恥ずかしすぎて、死んでしまいたい。 人前で、こんな… 「やだっ…朝日奈、さん゛っ!う、…ふぐっ!!…あ、…ダメぇ…」 何度も、何度も、舞園の腹を朝日奈が荒々しく押しつける。 余程必死なのか、手加減すらなく、殴打のように腹に鈍痛が走る。 しかし、痛みなど、舞園には些末な問題。 朝日奈が腹を押すたびに、我慢しているのに、肛門から飛沫が飛び散る。 そのうち朝日奈が押さずとも、緩まった肛門から、尿のように液体が押し出されてくる。 肛門を水が通り抜けていく。気持ち悪いはずなのに、肛門を刺激されるのが心地いい。 もう、いやだ。こんな羞恥、耐えられない。死んだ方がましだ。 目から、大粒の涙がこぼれおちる。 舞園が、声をあげて泣き出した。 「ふぇっ…うぇえぇええぇっ…っ、うぁあああぁあぁぁ…」 乳首を弄ばれて絶頂した時のような、すすり泣きではない。 本物の、号泣。 けれど泣いても、排泄は止まらず、彼女の肛門を刺激し続ける。 貫くような罪悪感に駆られたのは、朝日奈。 押さえつけていた、考えないようにしていた自責の念が、一度にあふれ出してくる。 テレビ画面の向こう側にいた、笑顔の眩しい、汚れを知らないような、あの憧れのアイドル。 それを裸に剥いて縛り上げ、浣腸器を指し込み、嫌がっているのに排泄を強要し、そして泣かせてしまった。 たちが悪いのは、罪悪感に責め立てられつつも、 この現状に興奮している自分が、ここにいるということ。 『泣いても、乳首をいじめてあげれば、すぐに彼女は泣きやみますわ』 ベッドに戻る前の、セレスの言葉を思い出し、朝日奈はローターの電源に手を伸ばした。 「ふぇえぇえ……っ!?あっ、う…ふひゃあぁ!!」 涙でゆがんでいた舞園の瞳が、一気に見開く。 「あ、さひな、さ…何を…」 ふるふると、顔が震えている。見開かれた目は朝日奈を捉え、懇願するような色を浮かべている。 ぞくり、と、背徳感を刺激される。 「大丈夫だよ、舞園ちゃん…乳首の気持ちいいのに、集中してて…」 「んっ…あぁ、はぅ…」 舞園の様子はまさに、セレスの言葉通り、といったところ。 まだ涙の跡を光らせてはいるものの、その頬にはもう赤みが差している。 「乳首、そんなに気持ちいの…?この器械のせい?それとも…舞園ちゃんが、特別敏感なの…?」 「やだっ、やだぁあ…変な事、言わな…っん、あぁああ…!」 「でも、こうやって耳元で恥ずかしいこと言われるの、ホントは気持ちいいでしょ…? 自分のエッチなところを容赦なく責められるの、ホントは大好きでしょ…? わかるんだよ?そういうの…私も、同じなんだから…」 今度は、朝日奈が舞園の痴態に当てられる番だった。 裸のまま縛られて泣きじゃくる舞園は、とても可愛らしくて、とても官能的。 小動物のような愛おしさがあるのに、これ以上ないくらいにエロい。 守ってあげたくなるのと同時に、もっといじめてやりたくなる。 胸の刺激に耐えきれないのか、大きく背をそらしているけれど、それで胸が突き出されて、 結局もっと刺激を与えられ、跳ねるように体を震わせて、背を丸め…という一連の仕種を、舞園は繰り返している。 「もっかい、入れるからね」 そう言って浣腸を準備する朝日奈を、舞園は蕩けた目で見ている。 「や、やめ…ふぁ…」 言葉だけでも抵抗しようと声を上げるも、意識は半分向こう側にイってしまっているらしい。 心なしか、浣腸を準備する自分の手つきが、焦って見える。 もっと彼女をいじめてやりたい。もっと彼女を堕としてやりたい。 管に注射器を取り付け、舞園の肛門へと差し込む。 一度経験したからか、それとも快感で緩んでいるのか、彼女の肛門はさっきよりも簡単に、奥までそれを加えこんだ。 「まだ、痛い?」 朝日奈が尋ねる。 「ふえ…よ、く、わかんない…です…っく、んぅ…」 蕩けたままの目で、舞園が答える。 乳首に意識を集中させたのは、正解だったかもしれない。 同じ要領で、何度も彼女の中に、ぬるま湯が流し込まれて行く。 「やだ、やだっ…ふあぁああ、乳首、ダメぇ…!」 管を抜くと、だいぶ抵抗なく、ほぼ透明なお湯が押し出され、流れ出てくる。 舞園も嫌がってはいるものの、乳首をこねくり回されて力が入らないようだった。 何度も、何度も。 自分の肛門にぬるま湯が注がれ、そして排泄を繰り返すうちに、 その排泄に、明らかに性的な心地よさを覚えてしまっていることに、舞園はまだ気が付けずにいた。 「そろそろ綺麗になりましたか?」 どれくらいの時間が経ったのか、下着姿のセレスがしびれを切らしたように顔を出す。 舞園は文字通り、『出来あがって』いた。 「はぁ…はぁう…」 パシャパシャと音を立てて水流がアナルを舐めあげ、そのたびに背筋を得も言われぬ感覚が走り抜ける。 たった今、直接内側を泡立てたボディソープで洗われたところだった。 朝日奈がシャワーのノズルを伸ばし、舞園の肛門に当てがっている。 もう力は入らず、時々肛門が物欲しげに開いてはヒクつく。 水流がもたらす、苦しみにも似たむず痒い刺激に、彼女は息を荒げていた。 「良い具合ですね、舞園さん」 セレスが舞園の頬を掴み、顔を自分に向けさせる。 力が入らず、睨み返すことさえできない。蕩けきった目で、舞園はセレスを見上げた。 「痛みや苦しみが消えて、別の感覚が肛門から伝わってくるでしょう? お尻の穴だって、ちゃんと開発してあげれば、立派な性感帯になるのです」 朝日奈に舞園を運ばせ、ベッドの上に横たえさせる。 舞園の身体は、とっくに弱りきっていた。 数分、いや数十分、肛門への刺激を耐え続け、我慢も限界に達している。 そして、結局一度も、まともに股間を弄ってもらえていない。 女としての欲が、絶頂へのフラストレーションが、徐々に肛門から感じる刺激を、性感と認識し始める。 さっきとは逆に、舞園はベッドの上にうつ伏せにされていた。 顔は枕に押し付けたまま、膝を曲げて尻を突き出すような格好を強要されている。 今度は、何をされるのだろう。 抵抗など頭になく、訪れるだろう未知の刺激を、顔を枕にうずめて待つ。 中々触れられず、セレスが朝日奈に何か命じているのも、自分を焦らすためではないかと思ってしまう。 「緊張していますか?」 セレスが身を乗り出し、ベッドの上の舞園に、自分の体を添える。 「あ…」 密着する、肌と肌。 セレスの肌から香る、香水に混じった、雌の匂い。 とても、いやらしく感じてしまう。 「大丈夫、力を抜いていれば、痛くはありませんから」 唐突に、冷たいローションが肛門に垂らされる。 「ふぁっ!?」 急な感覚に戸惑い、思わず尻を締めてしまう。 「ほら、力を抜いて…」 朝日奈に続いて、舞園もまたセレスに屈服しつつあった。 朝日奈のように心を折られたのではなく、純粋に女としての快感を期待させられて。 ほんの数時間前まで、舞園はアイドルである自分に、少なからず矜持を持っていたのに、 今ではその肩書は、『アイドルなのに』と、自分を辱めるための材料でしかなくなっていた。 力を抜いて、なんて言われても、そんな簡単に脱力なんてできるわけじゃない。 まだ感じたことのない、知識でしか巡り合ったことのない、アナルでの快楽に期待してしまう。 「うふふ…お尻の穴、弄って欲しそうにヒクつかせちゃって…もう我慢できないのでしょう?」 枕にうずめた顔の耳元で、セレスが囁いた。 表情を見られたくなくて、もっと力強く枕に顔を押しつける。 「言っておきますが、弄るのは、基本的に朝日奈さんですわ…」 「わん…」 なんでもいい。 とにかく早く弄って欲しい。 気を抜けばそんな、アイドルにあるまじき言葉を口走ってしまいそうで、枕に顔を押し付ける。 それでも体は、彼女の意思とは無関係に、腰をつきあげて誘惑するように振るのだった。 「うぅ…」 朝日奈の指が尻を掴み、その溝をなぞる感覚に、うめき声を上げる。 彼女はいささか力が強く、触り方もどこか乱暴に感じる。 けれど今の舞園には、それは十分すぎる刺激。 アナルの周りにローションをすりこむように、指の腹が円を描く。 「ふっ…う、んっ…」 枕に顔を押し付けているから、何とか声を我慢できた。 あまりにじれったくて、拘束さえなければきっと、今頃自分で自分を慰めているだろう。 「そう、もっと丁寧に…まずは周りのお肉を、ほぐしてあげてください」 「…わん」 こすったり、引っ張ったり、振動を与えたり。朝日奈の指が、単調ながらも変化を与えて刺激する。 「…ん……ふっ…ぅ…っ!!」 「あ…」 「どうしました?…ああ、人間の言葉で答えてよろしいですよ」 「お尻の穴…膨らんできた」 言われて、ビクッと舞園が震える。 顔から火が出る思いだ。 「あらあら…ふふ、顔が真っ赤ですわよ、舞園さん」 恥ずかしくて、思いっきり枕に顔を押し付けるのに、腰は刺激を求めて勝手に高く上る。 「もうそろそろ、指を入れてあげてもいいですわ」 「わん」 ぬるり、と、唐突に、何の抵抗もなく、舞園のアナルが朝日奈の指を咥えこんだ。 「あっ、ぐ…!!!」 余りの感覚に、顔をあげてしまう。 異物感。肛門がそれを排除しようと、力強く締まる。 朝日奈の指は、途中で躊躇いがちに止まったが、 「ほら、奥まで入れてあげなさい」 「っ、わん…」 セレスの言葉に逆らえず、指の根元まで舞園のアナルに突き刺していく。 「ふっ、う、ぅうう…」 「ゆっくり呼吸して…力を抜いてください」 そんなこと言われても、と舞園は当惑した。 天性の脱力の才能があった朝日奈とは違い、緊張した舞園の身体からは、そんな簡単に力を抜けはしない。 痛いくらいに、朝日奈の指を締め付けている。 「はっ、はっ……痛い、苦しい、です…っ、抜いて、ください…」 舞園が苦しそうに訴える顔を、セレスは楽しげに覗きこんでいる。 「…だ、そうですよ、朝日奈さん。ゆっくり、優しく、抜いてあげてください」 「わんっ…」 ずるり 「――っひ…!?」 なまめかしい音が、耳に届く。 実際はそんな音はなかったのだが、あまりの感覚に、舞園の脳がそれを知覚してしまった。 締め付けられたままの指を、ゆっくりと朝日奈が抜いていく。 ぬるぬると、内壁が擦れて引きずり出されてしまうような感覚。 「ふっ、うぁっ…!?……やっ、ダメっ!これダメですっ!!」 舞園は腰を大きく跳ねあげた。 けれども拘束されてろくに抵抗も出来るはずなく、結局自分で暴れて刺激を増長させてしまう。 「あなたが抜いてとお願いしたんですよ?」 跳ね上がった舞園の顔を、セレスがしっかりととらえる。 「あっ、あ、あぁああぁあ…!」 「お尻の穴を弄られて蕩けちゃうアイドルの顔…しっかりと見せてください」 「いやっ、あ、言わないで、くださ…んっ、う…!!」 入れられた時の苦痛とは全く異なる、全身の力を抜きとられるような感覚。 刺激される排泄欲に、自分から朝日奈の指を締め付けてしまい、ますます感覚が強くなる。 くぽっ、と、吸盤のはがれるような音がして、朝日奈が舞園の肛門から、指を引き抜く。 「ふぅ、んっ…ふぅ、んっ…ふぅ、んっ…」 「あら、一度指を出し入れしただけで、こんなになっちゃって…これからもっとすごいことをするというのに」 潤んだ目、真っ赤な頬。 荒い息、蕩けた顔。 もう、セレスに顔を見られていることすら、気にならなくなってきた。 震えながら息を吐く舞園の頭には、もうその一つのことしか浮かばない。 「も、許してくださ…」 「あら、まだまだこれからですわよ?」 「違…ちゃんと、ちゃんと…おまんこ、弄ってください…もう、切なすぎて我慢できないんです…」 結局一度も、まともに弄ってもらえていない。セレスも、それをわかって放置していた。 先ほどからずっと、緩んだ蛇口のように愛液が垂れ続け、膝を伝っている。 「…次は、舌で舐めまわしてあげてください」 「わ、わん」 朝日奈の顔をアナルに押しつけながら、またセレスが舞園の顔を覗き込む。 この、顔を覗きこまれるという行為が、たまらなく羞恥心を煽ってくる。 けれど、もう枕にうずめて顔を隠す力もない。 快楽で蕩けきった自分の顔を、まじまじと覗かれる。 それだけの行為なのに、ひどくドキドキする。 まるでセレスの瞳から、催眠でもかけられているかのようだ。 「ふふ…あのアイドルの舞園さんの口から、そんなエッチな言葉を聞けるなんて…」 すりすりと頬を撫でられる。 それまでは恥ずかしいだけだったのに、頬を滑るセレスの指が気持ちいい。 頭が熱い。 いいのだろうか、こんな。 自分はアイドルなのに。 こんな恥ずかしい恰好をさせられて。 あんな恥ずかしいことを言ってしまって。 「ふっ、うぁっ!?…んっ!」 アナルに入り込んだ朝日奈の舌が、舞園の思考を寸断する。 生温かいザラザラとしたそれが与える刺激は、先ほどまでの指とは比べ物にならない。 「私も鬼じゃありません…アナルでイけたら、ちゃんと前の穴も弄ってあげますわ」 「そ、そんな…無理です…ふっ、うぁあ、ん…」 舞園は泣きじゃくりながら、セレスに訴えかける。 朝日奈の舌が、器用に入口を舐め濡っている。 気持ちいいのに、感じてしまうのに、絶頂には辿りつけない。 「もう、頭おかしくなっちゃいます…んっ……ぁ、ダメ、ダメなんです… さっきからイきそうなのに、ずっと寸止めされてるみたいで、もう無理です…ふっ、ん…! おまんこでイかせてください…お願いします…!」 ゾクリ、と、セレスが恍惚の表情を見せた。 舞園のその懇願だけで、あやうくイってしまいそうなほどに興奮させられる。 「ふ、ふふふ…舞園さんの、こんな…苗木君あたりが見たら、一生もののオカズになるのでしょうね」 「…あっ、うぁあっ!!」 自分の声じゃない。 獣のようなうめき声が漏れた。 想像してしまう。彼の顔を。 全身に緊張が走り、忘れかけていた羞恥心がよみがえってくる。 「ふあっ……舌、押し出されちゃった…」 朝日奈が、口を離す。 舞園の顔を覗き込んでいたセレスは、いやらしく笑ってにじり寄る。 「へえ…」 「まさか、あなたも苗木君を…」 「な、なんの話ですか…」 聞くまでもない。舞園本人も、自身の反応の変わりように驚いていた。 自分の中にある彼への好意を隠すことは、恥ずかしいことではない。 しかし、この状況で、この女に知られることは、 何かとてつもなく致命的な弱みを握られてしまうことのように思えた。 「とぼけても無駄ですわ…体は正直でしたから」 「くっ…」 「…?」 朝日奈に気が付かれなかったことは、せめてもの救いかもしれない。 「…初めてお尻でちゃんと、感じてしまったのでしょう?苗木君のことを考えて…」 「…」 「それならそうと、早く言ってくれればいいのに…良い夢、見せてあげますわ」 セレスは例の小箱を漁る。 おもちゃ箱をひっくり返したように、様々な小道具がベッドの上に広げられた。 ただ散らばったその道具たちは、おもちゃと呼ぶにはあまりにも生々しい。 ヘッドホンが取り付けられた、大仰な目隠し。 男性器を模した、ピンク色のゴムのディルドー。 1㍍はありそうな、定間隔にゴムのこぶが付いているゴムの紐。 「今度は何を…するつもりなんですか」 弱弱しく震えた声で、舞園がたずねた。 答えずにセレスが、ヘッドホンの取り付けられた目隠しをする。 視覚と聴覚を奪われ、思わず舞園は口を閉じた。 どんどん、抵抗ができなくなる。 服を剥がれて体の自由も利かなくなり、目と耳まで塞がれて、忘れていた恐怖心を思い出す。 快感と恐怖の間で弄ばれ、舞園の心はもう壊れかけていて、 だからこそセレスの毒が、より深くしみ込んでいく。 『…舞園さん』 「え…?」 ヘッドホンから届く、その声は。 聞き違うはずはない、愛しい彼の声だった。 目隠しのその向こうでは、ただセレスが蝶ネクタイ型の変声器に声を当てているだけ。 しかしそんなことを、舞園が気づけるはずもない。 それがヘッドホンを通して、耳元で話しかけられているような錯覚を与えられる。 『今から舞園さんのお尻…本格的にぐちょぐちょにしてあげるからね』 「あっ…」 違う、これは彼じゃないと必死に自分に言い聞かせても、 彼女には、耳から流れ込んでくるその声だけが真実だった。 体は彼の声に反応して、じわじわと愛液を流し続ける。 何かがアナルに突きいれられ、そこから冷たい液体が流れ込んでくる。 「うっ、ふぁっああぁあっ…!?」 すぐにローションだと理解する。 冷たさがゾクゾクと背中を這い上がる。 「な、何を…」 『力抜いて…今からすごいの入れるから』 「っ…ふ、う…」 苗木の声に当てられて、本当に力が抜けていく。 耳が気持ちいい。 耳元で直接、彼に囁かれているような。 目を開けば、すぐそばに彼がいて、自分のこんなあられもない姿を見られているかのような。 そんな錯覚に陥らされる。 ぐ、と、肛門の壁を押し分けて、何かが押し入れられてきた。 「うぁあっ…!」 異物感を感じ取り、反射的に排泄を行うと直腸が収縮し、 『ホラ、力抜いて』 「んっ…!?」 苗木の言葉に、身体が従ってしまう。 『ゆっくり深呼吸するよ…吸ってー、吐いてー』 「んっ、ふ、ふぅうう…はぁあぁあ…」 逆らえない。逆らう気力さえ奪われている。 苗木誠の声に、逆らえない。 視覚も聴覚も奪われた彼女にとっては、快楽に似た異物感と、苗木誠の声だけが全て。 それだけが彼女の世界。逆らうことのできない、催眠の世界。 それを、セレスはこの短時間で作り出してみせた。 わざと秘部を弄らなかったのも、彼女のアイドル時代の秘密を暴露したのも、 乳首だけで絶頂を与えたのも、慣れない肛門での性感を覚えさせたのも、 全てはこのため。 もう舞園の意識は、苗木の声――セレスの命令には、逆らえない。
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人外×人間でハァハァするスレ 601-625 1-50 51-100 101-150 151-200 201-250 251-300 301-350 351-400 401-450 451-500 501-550 551-600 601-625 626-650 651-700 701-750 751-800 801-850 851-900 901-972 601. 名無しさん@ピンキー 2008/09/26(金) 02 13 22 ID ESbS7NSE 600 良いね 漫画はたぶん「音禰のないしょ」。葵DESTRUCTION!って短編集に入ってる 602. ◆IyobC7.QNk 2008/09/27(土) 22 08 24 ID E2hg/eLK 今晩は、5レス程お借りします。 スライム♀(擬態練習中)× 人間♂ 124 or 保管庫 参照 エロ少 会話多。 苦手な方はトリップNGでお願いします。 603. 1/5 ◆IyobC7.QNk 2008/09/27(土) 22 10 10 ID E2hg/eLK 前の村から4日目にして、やっとたどり着いた宿は祭りの前とかで込み合っていた。 案内された部屋は狭く、明らかに一人部屋として普段は使われているものだろうと推測 できた。 「狭いベッドが一つ……言えば毛布くらいは借りれるかな」 呟いて部屋を出ようとして俺はつんのめる。 振り返ると旅の連れである青い髪の少女が服の端を掴んでいた。手ではなく髪の毛で。 「おい、物を掴む時は手を使え」 諸事情あって一緒に旅をしている擬態練習中のスライムは俺との距離を詰めると服に 絡めていた髪を離す。 上目遣いに俺を見上げる少女型スライムと視線が合い、鼓動が速まった。 「私、あなたのこと、けっこう気に入ってるンですよ」 個人的な好みの問題だが、少々たれ目な点を除けば整った顔立ちの美少女である。 正体がスライムだと知らなければ嬉しい状況だろう。 唐突に言うスライム少女に、その意味を図りかねて聞き返す。 「だから何だ」 「この間の続きをしませンか?」 空気が凍った。正しくは俺の周りの空気だけだが、背中を嫌な冷たい汗が伝う。 「俺、寝るわ」 誤魔化して出ていこうとした俺の前に回り込んだスライム少女が両手、いや髪を広げて 立ちはだかった。 「何処に行くンですか、部屋はここですよ。ちゃンと今度は優しくしますから、ね?」 「髪を使うなっての……」 一応ツッコミつつ今のは普通は男側のセリフだよなと胸中確認する。 「何が嫌なンですか? 前はすごくのり気で止める私を無視して、無理矢理したンじゃ ないですか」 「それは水に流したんだろ」 「だから、もう一回ヤり直しましょうって言ってるンです」 「発音がおかしい。と言うか忘れろ」 食い下がるスライム少女を一蹴する。 すると顎に手を当て髪をふよふよと泳がせながら暫く悩む仕草をしていたスライム少女の 口から、とんでもない言葉が飛び出した。 「なら、私から強姦する事になりますが」 「女からの強姦は逆レイプと言うんだ。それと」 「そうなンですか、では言い直します。私が逆レイプをしますが、良いンですか?」 どこで覚えたのか物騒な言葉に驚きつつ話題を逸らそうと試みるが早々に割り込まれる。 「いや、良くはない……って言ってるそばから脱ぐなっ!」 「大声を出すと人が来ちゃいますよ。私はバレても構いませンけど?」 「それは女の子の吐くセリフじゃないっ」 服を荷の上に置くとスライム少女はクルリと振り返る。 均整の取れた文字通りシミ一つない身体だったが既に肌の色が抜けていた。 「おーじょうぎわが悪いです。すえぜンは食わねば男のはじになるンです」 「そんな言葉どこで覚えた」 「この間会ったサンゾクの皆さンが言ってましたよ」 「いたな、そんな奴ら」 こいつをスライムとも知らずに手を出したが故に儚くも退治されてしまった憐れな奴等が いた事を思い出す。 説得は諦めた方が良さそうだった、鼻息荒く自信満々である。 「それに私はスライムですからね。オンナノコではありませンし」 「お前はっ、都合で切り替えるなっ」 「さあ、自分で脱ぐか私に消化されるか、どちらか選ンで下さい」 「その2択かよ。まずは俺の話を聞けっ」 「嫌です」 604. 2/5 ◆IyobC7.QNk 2008/09/27(土) 22 11 38 ID E2hg/eLK 暫くの問答の後、俺は全裸で文字通りスライムに包まれている。 人間の女の姿ならまだ興奮もできるが、本性のゼリーのままなので何の感慨もない。 感触としては粘り気はあるがベタベタはしない不思議な感覚だった。 一部を掬い上げてみるが掌を滑りヌルリと落ちる。 これは擬態時にはどの部分なのだろう。 「どンな気分ですか?」 いつもより少々低いスライム少女の声が響く。ただのゼリーに見えるが発声器官はどこに あるのか、気になる点は多い。 「中途半端な温度の風呂に入ってる気分だ」 「そうですか。……あの、ちょっと教えて欲しいンですが」 気を使っているのだろう、スライム少女が控えめに訊ねる。 「何を?」 「局部に前回のような質量の変化が見られないンですが、何でですか?」 「俺にその気が無いからだ」 「えぇ? ややこしいモンですね」 「デリケートなんだよ、ややこしい扱いすんな」 「感覚あるンですか?」 「無いと動かないだろ」 「生えてるンですから当然なンでしょうが、本当に妙なものですね」 他人事だと思って好き勝手なことを言う。 「妙とか言うな。付いてるもんなんだよ」 「へぇ、普段は柔らかいンですね。曲げると痛いンですか? あ、先っぽに穴がある」 「うぁっ、玩具じゃないんだから揉むな」 まだ柔らかいソレを捏ねるように揉まれる。水が意識を持った様な何とも表現し難い感触。 なんでこう無邪気に弄り回せるのか不思議だったが、人間そのものがスライムにとって玩具 だからかと納得する。 「止めろ気色悪い」 「そうなンですか? うーン、硬度を変えてみましょうか。人間のオンナノコの胸部で…… えと、たしか」 ただの水の様だったゼリーはプニプニとした心地好い柔らかさへと転じた。 見た目には何の変化も無いのがまた奇妙だ。 「パイズリ? これなら良いンですか?」 予想外の刺激に反応してしまった。 「あ、ああ」 「ちょっと大きくなりましたよ。その気になりました?」 「……どこで覚えた、こんなもん」 スライムに息子を弄ばれているにも関わらず意外と冷静な自分に驚きつつ訊ねてみる。 あまりにも異常な状況に陥ると、逆に落ち着くと聞いていたが本当だったとは知らなかった。 「以前あなたから貰った“ほん”に載ってたンですよ」 「あれは貸しただけだ。お前が持ってたのか、返せ」 前回の客室半壊時のどさくさ紛れに無くなったと思っていた。 「まだ読み終わってませンからイヤです」 「じっくり読む物じゃないだろ」 「いえいえ、けっこう興味深い内容だったンですよ」 渡してしまった本の内容が内容な上、フィクションだと言っても理解しないだろう。 後悔しても手後れだった。とりあえずSM系でなかったのは救いかもしれない。 605. 3/5 ◆IyobC7.QNk 2008/09/27(土) 22 13 18 ID E2hg/eLK 「お前は楽しそうだな」 「それはもう。“しる”のと“する”のとでは全く違うンですからね」 苦笑いする俺の前に、透明ないつもの顔が造られ舌を出し笑った。 「口も良いですか?」 これもいつもの事だが俺が答えるより早く行動を開始している。 冷たく柔らかい感触が俺の口内に滑り込んだ。 そこでふと思い出す。口は前に消化用とか言って無かったか? 疑問を察したのか口腔内を確認するようになぞりながら下のゼリーが喋る。 「ああ、心配しなくても大丈夫ですよ。それは消化器官に繋いでいませンから」 まぁ、消化されないのならば遠慮する事は無いか。 舌を絡めるとツルリとした相手は戸惑う様にうねったが、直ぐに何重にも巻き付き俺の舌を 引っ張った。 人間ならあり得ない動き。と言うか待て、痛い。 「ひョラ、ひゃて」 当然ながら舌を絡め取られていては喋れない。 ゼリーから腕を抜きスライム少女の首を引き離すと予想に反してその舌が伸びた。 「はりゃせ」 「ああ、すみませン。やり過ぎました」 舌が伸びたまま半透明のスライム少女が驚いた顔をして、ゼリーから答えが返る。 一応、反省しているらしく舌を縮めると絡め直す。 スライムの内部で行われているため殆ど音はしないが、そんな事をしている間も下は下で、 にゅるにゅると流動して無数の指に全身を突きまわされている様な、擽ったいやら何やら解らない。 特にペニスの周辺は念入りに音でもしそうな程に扱き立てられる。 吸い出すように絡み付き気持ち良い、情けないが早々に限界だった。 「あ、イイ感じみたいですね。前回と同等のサイズに……」 呑気な声を後目に全身を駆け抜けそれは発射口へ至る。 「わわっ! なンっ、出すなら出すって合図して下さいよっ」 スライム全体が波打ち、絡められていた舌が引き抜かれた。 「んなもんする隙あるか。お前が急にするからだ」 呆れた直後に意外と反応が普通だと思う。 「そういえば、この前みたいに変な汁とか出してないな」 スライムの特性を活用しているだけで、割と普通だ。普通の尺度がずれてる気もするが。 「優しくするって約束しましたから、使わなかったンですけど……使用しても良いンですか?」 「ダメ」 「私的には使えば楽なンですけど」 「いや、戻って来れなさそうだから止めろ」 「そうですか。まぁこっちの方法もコツは分かりましたし、イケる所までイッちゃって下さい」 「え、おい」 スライム少女は既に流動を再開している。 「ま……」 休憩をくれ俺は普通なんだ。 しかし当然と言うべきか止めるヒマなど無く、頭の隅であの本は絶倫ものだったかな、などと 考えていた。 606. 4/5 ◆IyobC7.QNk 2008/09/27(土) 22 15 16 ID E2hg/eLK 「“ほん”にもありましたが回を重ねるごとに量が少なくなっていくのは面白いもンですね」 俺は面白く無い。 満足げな相手の声を聞きながら意識があるのを不思議に思う。 呼吸の度に肺が灼ける。鼓動の度に心臓が痛い。 気が済んだ相手が動きを止めて結構な時間が過ぎていたが、呼吸は落ち着かず汗で湿った髪が 気色悪く額に貼り付いている。 「前は気がつきませンでしたけど行為が終わるとなンだか、ぐったりしてませンか。 大丈夫です?」 ニュッと触手を伸ばして俺の髪を持ち上げた。流れる汗がスライムに吸収され消える。 「おま、連打させんな」 「スミマセン。あなたの反応が楽しくて……水でも飲みます?」 全く反省していない様子で答えるスライムに脱力する。 「あー。とりあえず、くれ」 「はいはい。どうぞ遠慮なく」 ゼリーから差し出されたのは1本の触手だった。 先が窪んでそこに水が入っている。 「おい、勘弁しろ」 「中身は極々普通の水なンですが」 「頼むからテーブルの水差しを」 「ええ? どうせおンなじ水なのに……」 「いいから、本気で頼む」 「なンで……分かりましたよ、だからその本気で情けない顏を変えて下さい」 喉を潤し一息着いて、どうにか動悸も収まったが、未だに俺を解放しないスライム少女に 前々から気になっていた疑問をぶつけてみる事にした。 「なぁ。出した物とか、吸収してるのか」 青みがかったスライムは最初と同じ様に透き通っている。 濁っていても嫌だが、結構な量が出た筈の精液は既に影も形もない。 「もちろンです」 「……気になるんだが、お前ら的には旨いのか?」 「ええっと、好みの問題だと思うンですけど、けっこう珍味な感じで、血とか他の水分 よりも濃い感じでして。こう、活きが違うンですよ」 珍味なのか、確かに粘るとは思っていたが。 もよもよと表面を動かして一生懸命に説明しようとしている様子は何だか可愛い。 「やっぱり細かく言わなくていい」 「あなたの方から聞いたンじゃないですか」 包んでいたゼリーが不満そうに揺れた。 「で、そろそろ出してくれないか」 「いえいえ、ここからなンですよ。思い付いたのが」 俺の言葉に気を取り直した様子で嬉々として答える。 「お前、思い付きでヤってるのか?」 「いいえ。まえに私の仲間がしてるのを見た事があるンです」 「何をするつもりだ?」 質問に暫しの間を置いて、また声が響く。 「心配しなくても大丈夫ですよ。あ、なンなら少々は飲み込ンでも平気ですから」 「ノミコム? 多少はヘイキ?」 一抹の不穏な空気が流れる。 「多分、一応。まぁ、覚悟はしておいて下さい」 段々と声に自信が無くなり、俺を包んでいたゼリーが揺れ蠢く。 「……覚悟?」 言葉に一時思考が停止する。 607. 5/5 ◆IyobC7.QNk 2008/09/27(土) 22 16 19 ID E2hg/eLK 飲み込んでも、たぶん平気……つまり、これが口の中にまで入る位置にくるって事か? そこでやっと自分の置かれている状況に気がつき自然と口が開くのと、ほぼ同時に スライムが襲いかかる。 ぎゃああああぁ…… 叫んだ筈の俺の悲鳴は弾力性に富んだスライムの中に飲み込まれ消えた。 「やンっ、中で暴れないで下さいっ」 もがく俺の耳に響くスライム少女の声は衝撃に近かった。 “やンっ”じゃない、俺の生命の危機だ。 半分意識が飛びかけた頃、スライム少女が文句を言いつつ頭部を解放する。 「ちょっと、私の声が聞こえてるンですか?」 口に残っていたスライムを吐き出し、返事もできずに必死で肺に空気を送り込んだ。 呼吸を整えてから抗議する。 「お前はっ! 俺を喰う気か、殺す気かっ」 少し食べてしまった。まだ胃の中で動いてる気がする。 「いやですね、そンな言い方。私を食べたのは、あなたの方じゃないですか」 「お前が押し込んだんだろうがっ」 俺は怒鳴る様に応え、おもわず振り降ろした腕に何かが触れる。 「……っ!」 ピリッと何かが走った。 同じ位置を探ると見た目には何もないが、確かに何かがあった。 大きさは手に収まる程度で、軽く握るとブルリとスライム全体に震動が伝わる。 もう一度、また水面が波打った。 「あっ、ちょっ……止め……っ」 「ほほぅ。お前の弱点はここか」 焦りを含んだ声に俺は仕返しとばかりにニヤリと笑うと更に揉む。 「……うンっ、やっ……」 「これは何だ? ん?」 聞く。俺も随分と親父臭いと自覚する。 「……それはっ、消化……のっ」 その言葉に昇りかけていた血の気が引く。 スライムにも内臓があったのか、透明な内臓って何だ。 「……はやくっ、私から出てくださいっ」 「どうやってだ!」 反射的に叫ぶ、できるなら言われなくとも逃げている。 答えより早くゼリーが俺を噴き出した。 「いたたたた……」 派手な音がして、したたかに背中を打つけたが、とりあえず助かったらしい。 ニュルリとスライムの一部が伸び少女の半身を形作った。 「誰かさンが消化器官を刺激してくれたおかげで、お腹がすいちゃいました」 俺の事など気にも留めず屈託のない笑顔でケロリとして空腹を訴える。 「俺は全身がピリピリしてるんだが」 「消化しかけたンですから当然です。あなたが、あンな所を触るからですよ」 半透明な上半身だけ人間の形をしたスライムが身をくねらせた。 「で、何をするつもりだったんだ?」 「今回の案としては、あなたの身体に穿いている穴の、できるかぎり奥まで侵入して内部と 外部両方の反応を観察しようかと……次回の課題は呼吸路の確保ですね」 見る間に成形を終わらせ荷物を探っていたスライム少女は振り返りもせずに答える。 「ない! 絶対に次は無いからなっ」 全力で否定するが、ビチビチと跳ねる何かを食べ始めた相手の答えは無かった。 <終> 608. 名無しさん@ピンキー 2008/09/27(土) 22 16 59 ID E2hg/eLK ↑投下終了です。 お邪魔しました。 609. 名無しさん@ピンキー 2008/09/27(土) 23 34 45 ID iRcsT1/c 規制に継ぐ規制で半年ばかり来てなかったら、こんなスレが 出来てたのな。 557 確か中国の昔話で、女の姿を模った栞が美女になって 古本マニアのとっちゃんぼーやに学問から芸事から あんな事やこんな事まで教えちゃう、みたいな話が あったような希ガス。 でも人間男×人外女はオカルト娘スレ向きかな。 564 民話で女が人外ってのは良くあるけど、女が人間でと言うと…… 聊斎志異だったかなぁ? 馬皮に包まれて蚕になった女の話。 帰りが遅い父親を心配した娘が「お父さんを連れ帰って来たら 結婚しても良い」みたいな事を飼ってた馬に言ったら本当に迎えに 行って、帰って来てから話を聞いた親父が怒って馬を殺して皮を 剥いだんだけど、皮を庭先に干してた所に娘が通り掛ったら突然 その皮に包まれて桑の木の上に行っちゃって、何日かもにょもにょ してるうちにそれが巨大な蚕になってしまった、と言う話。 確かその後にあの世で夫婦になって養蚕の守護神になったとか 言って親父の夢枕に立ったんだっけ? うろ覚えで自信が無いが。 610. 名無しさん@ピンキー 2008/09/27(土) 23 43 57 ID iRcsT1/c ところで、先日メモ帳を整理してたら昔の日記が出て来たんだが、 こんな事を書いていた当時の自分は荒んでいただろうか? ↓ 先日たまたまテレビのチャンネルを変えたら国営放送第二の 教育番組で「伊勢物語」の一節、 「身分違いの恋に焦がれた男が姫君をさらって逃げ出し、 打ち捨てられた蔵の奥に姫君を隠し、入り口に立って寝ずの番を したが、実はそこは『鬼が住んでる』と地元民に忌避されていた 曰くつきの蔵で、姫君は鬼に一口で食い殺されてしまった。 その時姫君は悲鳴を上げたが、折からの雷雨で男には届かず、 男が顛末を知ったのは夜が明けてからだった」 の説明をやっていたんだ。 リア厨の頃に学校の図書室でこの段を読んだ時は 「うわ、男間抜け過ぎっつーか姫君可哀想」 と思ったんだが、それから●●年経った今は 「え〜一口で食べちゃうなんて勿体無いよ鬼さん。俺やったら 朝まであんな事やこんな事しまくって、男の間抜け面を笑い飛ばして やるのになぁ」 などと考え、更に 「姫君が気に入ったんで食わずに掻っ攫って逃亡→寝取られ男 怒りの追跡→三年後、山奥の住処で可愛い鬼っ子と赤子を抱いて めっさ幸せそうな姫君発見→おまいを殺して漏れも死ぬる→ 狩りから帰って来た鬼が一撃粉砕→今日はこいつで鍋でもするか」 みたいな光景が四ページギャグ漫画風に浮かんだ。 ……時の流れって恐ろしい、と、しみじみと思った。 611. 名無しさん@ピンキー 2008/09/28(日) 00 00 49 ID 5r15siSz 608 乙。スラ娘さん可愛いな。 612. 名無しさん@ピンキー 2008/09/29(月) 02 42 25 ID ObKmdfK3 610 早くそれを文章にする作業に戻るんだ 613. 名無しさん@ピンキー 2008/09/29(月) 18 43 57 ID WC7/nkVo 610 でもその話って実際は男が姫を連れ出すことに成功するも姫の家来が助けに来て姫は連れ戻されてしまう 男はそれでは面目が立たないので「実はそこの蔵には鬼が住んでいて姫が食われてしまった」っていう話にした っていうオチだった気がする でもここのスレ的にはそのオチは余計だな、夢がないw 614. 名無しさん@ピンキー 2008/09/29(月) 21 13 24 ID gyEPodik 613 いっそのこと、姫は鬼の生贄として差し出されていたのを見初めた鬼が生かしておいていたら 人間の男が惚れ込んで連れ出したのを連れ戻しに来たって話でよくね? あれ? 615. 名無しさん@ピンキー 2008/09/30(火) 07 13 54 ID lW+56rFb 613 やだなぁ。 610 の勘違い男っぷりが鬼と姫のイチャイチャっぷりをひきたてるんジャマイカ。 616. 名無しさん@ピンキー 2008/10/01(水) 18 46 50 ID X3vHwVmX 573 の亜里の続きを投下します。 一人かくれんぼやコトリのお話が苦手な方は、スルーした方が幸せ。 タイトルの亜里でNGをしてください。 617. 亜里3 2008/10/01(水) 18 47 39 ID X3vHwVmX 暗い面持ちで椅子に座っていた男だが、入室した亜里を一目見るなり腰を浮かせた。 この場にはまるで不釣り合いな、華やいだ紅色。 面会室のガラスに区切られた向こう側、まるで銀幕の女優に着色を施したような洋装の美人が、男の前へ音もなく座る。 「お待たせ致しました。私が山岸亜里でございます」 そう言ってニィと微笑む唇も、緩やかなドレープを描くワンピースも嘘のように紅い。 男は我に返って着席し、上気した顔を恥じらうようにハンカチーフで押さえた。 「山岸先生でいらっしゃいますか。二川と申します。この度は依頼の相談を受けていただけるとのことで…」 二川と名乗る男は随分と身なりのいい若者だった。まだ三十前だろう。 がっちりとした広い肩に上等な仕立ての背広がよく似合っていた。 恐縮した二川の言葉に、亜里は甘い笑みを浮かべる。 「まあ…。私のような卑しい囚人を先生だなんて、勿体の無い…勿体の無い…」 揃った赤い爪で口元を覆い、喉の奥でくつくつと湧く笑みを殺した。 些か芝居がかかった嫌らしさが、彼女の浮世離れした容姿と相まりひどく淫靡だ。 二川は強くときめいた。 霊能者など、どんな化物が出るかと畏れていたのが馬鹿らしい。 618. 亜里4 2008/10/01(水) 18 49 07 ID X3vHwVmX 亜里の背後の壁に控えた看守は、二川の様子に眉をひそめた。 男の依頼者が亜里の外見に心を奪われるのは珍しくない。 しかし、その中でも二川は感情が隠せない類の人間なのだろう。 不躾に亜里を眺めるような真似こそしないが、彼の紅潮した皮膚下に巡る色欲は、誰の目にも明らかだった。 二川はふと思い出したように目線を落とし、膝の上のハンカチーフをきつく握る。 重い扉を押し開くように、彼は静かに語りだした。 「…先生に聞いていただきたいのは、私の屋敷にある土蔵の事なのです」 依頼の話になると亜里もゆらりと姿勢を正す。 亜里はうっすら口角に笑みを乗せたまま二川の話を聴いた。 「先祖の代に建てられた古い蔵でして、中に何が収められているか、私はもちろん、父も祖父の代も把握しておりませんでした」 二川の顔色は徐々にあせていった。 「中を確かめようにも、扉の溝に土が塗り込まれ、壁と一体になっているのです――」 ―中に何が入っているかは判りませんが、高価な物などはないでしょう。 そうならば放っておけばよいのでしょうが、入口のない土蔵が屋敷に在るなど気味の悪い事です。 父の代に、屋敷の改築を兼ねて土蔵を取り壊そうとしました。 619. 亜里5 2008/10/01(水) 18 50 55 ID X3vHwVmX 私も子供でしたが既に屋敷におりましたので、あの時の事はよく覚えております。 土蔵は古く、大きさもさほどありませんでしたから、人力で壊す予定でした。 数人の大工が大槌を手に土蔵を囲みます。 私は父の傍らで、縁側からそれを見守っておりました。 一人の大工が大槌を振りかぶり、力を込めて土壁にそれを降ろしました。 ―私は、その時の事を、未だに夢に見るのです。 ブツンと何かが切れる音が、私の耳にも聞こえた気がしました。 その大工は大槌を振り降ろした格好のまま、しばし静止していました。 やがて、上半身がぐらりと反ります。 天を仰ぐその顔は、まるで笑っているように見えました。 大工仲間が、妙に思ってその大工に声を掛けようと歩み寄ります。 父も私も、何だろうと首を伸ばして彼を注視しました。 大工の下半身から赤黒い物が勢いよく流出し、庭に広がりました。 立ったまま魚のように大きく体を痙攣させた後、大工は自らの排泄物の中に倒れ込みます。 一斉に、周囲から怒号に似た悲鳴が上がりました―― 「―それから、あの土蔵には誰も触れておりません」 そう結んだ二川の唇は、白く乾き震えていた。 620. 亜里6 2008/10/01(水) 18 52 31 ID X3vHwVmX 亜里の真っ黒な目がつうと細められる。 その唇は血のように紅く、未だ平然と笑みの形を保っていた。 共に二川の話を聞いた看守は、肌を粟立たせ立ち竦んでいる。 思わず自らの下腹部にも鈍痛を感じ、脂汗が浮かんでいた。 「それはそれは、大変な事…」 忌まわしい物を語った二川を気遣うような、柔らかく穏やかな声色で亜里はそっと囁いた。 二川は弾かれたように顔を上げ、救いを求める目で亜里を見つめる。 亜里は笑った。 「御依頼…お引き受け致します」 続く 621. 名無しさん@ピンキー 2008/10/01(水) 18 54 58 ID X3vHwVmX 投下以上です 622. 名無しさん@ピンキー 2008/10/01(水) 21 23 34 ID u5X8tpPc 待ってたよ、投下乙 これからの展開が楽しみだ 623. 名無しさん@ピンキー 2008/10/06(月) 02 02 16 ID NupH4qrm 中途半端に古く、マイナーなアニメなんだけど まりんとメラン知ってる人いない? 人外好きにはたまらないアニメだと思うんだが。 624. 名無しさん@ピンキー 2008/10/06(月) 02 37 53 ID tNJVF9iF 623 あれは人外好きで鬱平気なら見て損はない。 自分はDVD全巻買ったけど後悔は全くしていない。 625. 名無しさん@ピンキー 2008/10/06(月) 23 05 08 ID ibmXjh9l 懐かしいなw あれのOPだったか…歌も好きだ。 ←・→ 1-50 51-100 101-150 151-200 201-250 251-300 301-350 351-400 401-450 451-500 501-550 551-600 601-625 626-650 651-700 701-750 751-800 801-850 851-900 901-972
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Aggressive Heartbeat ◆vV5.jnbCYw ああ、素晴らしいよ、この世界は。 俺だけじゃなくて、他の知らない少女も愛を語っている。 この世界で、俺は本当の愛を確かめるよ。 そして、本当の愛を知った暁には、是非ともあの子にそれを告げよう!! □ この殺し合いが始まってすぐの真夜中の草原。 二人の男女が睨み合っていた。 男子の方は、紺色のヒーローコスチュームに身を包み、右が白髪、左が赤髪になっている左右非対称な面持ちをしていた。 彼が右足で踏んでいる箇所から、鋭利に尖った氷が生え、女子の方を攻撃する。 「そうカリカリしなさんな。焦凍くんは目当てではありませんから。」 八重歯と縦長の瞳孔が印象的な少女は、軽口を叩く。 叩きながらも、少年が地面から生やした氷の槍を、確実に躱していく。 まるで路地裏を走るネズミのような、小回りの利いた動きで。 素早い身のこなしで近距離に入り込むと、セーラー服から何かを出す。 それは人を斬れるとは思えないほど、細い刀だった。 彼女のお気に入りの武器である、血を吸い取る針は奪われてしまったが、彼女にとっても軽くて使いやすい武器だった。 「じゃあその妙に細長い刀は何だ。」 彼女の刺突を躱しながら、焦凍と呼ばれた少年は叫ぶ。 今度は左手から炎を出して、敵を焼こうとする。 彼の持ち技は氷だけではない。 炎の個性『ヘルフレイム』を持つ父と、氷の個性を持つ母の間で生まれたヒーローである彼は、その両方を使うことが出来る。 刀で焦凍を串刺しにしようとした少女は、その寸前に攻撃をキャンセルし、宙返りを2度ほどして炎を躱した。 (チッ、氷もそうだが、炎が上手く出ない?もしかしてこの空間、個性に何かの干渉があるのか?) この戦い、最初に襲い掛かったのは彼女、トガヒミコの方だ。 少年の方はヒーローとして、この殺し合いに乗った者を倒そうという使命を全うしようとしているのみ。 「女の子の顔を焼こうとするなんて、随分とひどいヒーローですね。」 八重歯をむき出しにして、妙に腫れぼったい瞳で、焦凍を睨めつける。 進んで他者に危害を加えようとする彼女も、他者に思いを寄せる所は、一人の青い少女だ。 勿論、自身の美貌の一つにも気を使う。 「人の血を吸おうとするヴィランに言われたくはないな。」 冷静に相手の挑発を流す。 その瞬間、トガの周囲に爆発が起こった。 それは何かの偶然という訳ではない。 彼が氷結の個性を用いて空気を冷やした後、炎の個性を用いて急激に気温を上げた熱膨張を利用した爆発技だ。 その爆発の威力は、爆撃をメインとする彼の同期、爆轟にも劣らない。 膨冷熱波と名付けたこの技は、彼の個性の中でも特に高い威力を持っている。 (やはり爆発の威力も落ちているか……) だが、上空でくるりと身を翻し、猫のように着地したトガを見たヒーローの顔は、苦々し気だ。 先の技は轟本気を出して使えば、オールマイトの力を得た緑谷の全力の一撃さえ吹き飛ばせる。 勿論、殺すつもりはなく手加減したことを加味しても、爆発の威力も範囲も小さすぎる。 最初に撃った氷攻撃、穿天氷壁も、本来なら大型ドーム半分を覆えるくらいの広範囲を攻撃出来るはずだった。 だというのに、精々がプロレスリング1つといった所。 天を穿つというには、名前負けも良い所だ。 これはこの殺し合いにおける、ある世界の鬼の血鬼術の制限、はたまた別の世界の否定者の能力の減退と同じようなものだ。 現に彼はこの殺し合いの会場に来てすぐ、自身の居場所を知り合いに知らせるために、高層ビル程の高さを持つ氷山を作ろうとしたが、それは叶わなかった。 「まだまだですよ。轟クン。」 セーラー服やクリーム色のカーディガンはいくらか汚れているし、ダメージも受けてない訳ではないが、致命傷を負ってもない。 トガがかつて異能解放軍との戦いの最中、個性による地雷攻撃を受けたこともある。 その際に、吹き飛ばされた後の受け身の取り方を覚えていたのもあった。 「君の血を奪って変身すれば、私の大好きな出久くんに警戒されずに近づける。 だから、轟くんの血を頂戴してほしいな。」 「そう言われて、渡すヒーローがどこにいると思っているんだ。」 この2人は直接対面したことは無いが、互いにその名は知っている。 片や悪を討つ、未来のプロヒーローとして。 片やその雄英高校を何度も襲い、また一般市民にも危害を加えようとするヴィランとして。 「ああ、でも、ステ様にも会いたい。ステ様のために殺すのもいいかもです。ステ様を殺すのもいいかもです。」 彼女がセリフを言い終わってから、一拍置いて、舌打ちの音が響いた。 顔をぽうっと赤らめ、口角を耳に届くか届かないかというところまで上げる。 まるで狂気と殺気に満ちた場所にいるとは思えない、恋する乙女の表情だった。 恋する乙女と何ら変わらないようで、全く異なる感情を胸に抱いている彼女に、地面から氷の槍が殺到する。 「私の恋路を、邪魔して欲しくないですね。好きで好きで好きな人に会いたいという気持ち、分かりますよね?」 S字を描くように走り、攻撃を躱していく。 「お前がその為に他人に危害を加えようとするからだろうが。」 今度は右手から出る炎が、赤い蛇のようにトガに絡み付こうとする。 「!?」 後ろへ下がろうとするが、ズルンと足を滑らせる。 焦凍の個性によって、地面がスケートリンクのようになっていた。 それでもトガはバランスよく重心をキープし、大縄跳びのように迫りくる炎を飛び越える。 「私の愛を、邪魔しないでくれませんかあ?」 彼女は赦されなかった。 当たり前に生きることを。当たり前に異性を愛することを。 なぜなら、彼女は好きな相手の血を吸うことでしか充足を得ることが出来ないのだから。 それは何が悪いのか?我慢しない彼女が悪いのか?否、それを許さない社会が悪いのだと、彼女は断定した。 だから、ヴィラン連合に入り、自身のあたりまえを許さない癖に身勝手な当たり前を押し付けてくる社会にツバを吐いてやろうとした。 だが、もしこの殺し合いの世界ならば。 従来の法や規則の一切合切が撤廃されたこの世界ならば。 彼女の求めているものは、手を汚さずとも手に入るのではないか。そして願いも叶うのではないか。 そう考えて、彼女は殺し合いに乗った。 10人の命など比べ物にならないくらい、元の世界で手に入らなかったそれは輝かしかった。 勿論同じように殺し合いに巻き込まれた連合のリーダー、死柄木弔を援助しようという気持ちは無いわけではない。 あくまで無いわけではない、というぐらいだ。自身の未来より優先するほどでもない。 「へえ、君も愛を求めているんだ。」 急に第三者の声が聞こえたと思ったら、突然空気が重くなる。 既に戦いによって上がっていた二人の心拍数が上がる。 聞こえたのはおおよそ敵意を感じさせない、聊か高くて穏やかな声。 だというのに、下手なプロヒーローより強いと評価された焦凍や、ヴィランの1人として修羅場を潜って来たトガでさえ、悪寒が走った。 これまで互いしか見ていなかった二人の視線は、離れた場所に立っていた男に集まる。 「やあやあ初めまして。俺の名は童磨。良い夜だねえ。」 そこにはニカニカと笑う、不気味な風貌の男が立っていた。 一昔前の衣装に、虹色の光彩。頭から血を被った様な髪の色をした鬼がそこにいた。 妙に高貴な衣装に身を包み、 今まで全くそりが合わず、争っていた同じ世界の二人は、奇天烈な色をした瞳に見つめられた瞬間に同じ思考を抱いた。 あの男は相当ヤバイと。 「どうしたの?」 次の瞬間、二人は予想が当たっていたことに気付いた。 なにしろ、さっきまで離れていた男が、瞬きもせぬうちに近くにいたからだ。 (コイツは、移動に関する個性の持ち主か?) そう考えながらも、焦凍は氷塊を童磨目掛けて放つ。 まだ目の前の男が完全な悪だと断定したわけではないため、雄英高校体育祭で瀬呂にやったような、拘束するだけの氷技だ。 「おっ、すごいな。君は鬼だったのかい?でも君のような鬼に会ったことはないんだけどな……」 目の前に氷塊が来ても童磨は慌てず騒がず、愛用していた奥義を2,3度振る。 氷はチーズのように簡単に砕けた。 「お返しだよ。血鬼術 蓮葉氷。」 もう一度童磨が金の奥義を振ると、蓮の葉を模した氷が、焦凍の顔面を切り裂こうとする。 だが、かざした左手の炎が、彼を守る。 童磨が放った氷は、瞬く間に水へと融解した。 氷への最大の武器は炎。たとえ個性を持つ者が現れようと、超常的な力を持つ鬼が現れようと、この理は変わらない。 「俺は鬼じゃない。お前のような奴から参加者を救うヒーローだ。」 焦凍は童磨からの疑問に答えると、またしても右手をかざした。 今度は童磨の足元から、氷の山が竹のように出てくる。 いくら度を超えたヴィランだろうと、初見で彼の技を見抜くのは不可能、そうは思わなかった。 焦凍の悪い予想は命中する。 童磨は素早く個性の出所から離れた。 「へえ、救うって、俺と同じじゃん。奇遇だね。」 お前は何を言っているんだという空気が漂う中、童磨は話を続ける。 「俺もね、この殺し合いに無理矢理入れられた可哀想な人たちを、救ってあげようって思「邪魔です。」 ニカニカと、しかし力の入らない笑みを浮かべて話している童磨の首筋を、後ろからトガが刺す。 彼女にとって、笑顔を浮かべて悩みを解決してあげようなどとぬかす輩は、全て憎悪の対象だった。 そんな相手は、彼女が刃物で血を吸い取ろうとした瞬間、悉く異常者として見て来たからだ。 「お?君はどうしてそんなに怒っているんだい?」 後ろ手で刀を受け止めるという離れ業をやってのけるも、表情一つ変えない。 彼が生前に、教祖として信者の悩みを良く聞いていた。 その時に良く浮かべていた屈託のない表情と、何ら変わりはない。 「ッ!離しなさい!!」 人の力を優に超す鬼、しかもその中でも上澄みの童磨の力は強く、その刀を奪うことは出来ない。 「この手触り、この細さ。よく見れば俺の大好きな人の刀じゃないか。懐かしいなあ。 でも、使い方がなってないよ。」 迂闊に振り回すと、細い刀が折れてしまうのはトガにも分かっていた。 だが、愛用の針が無い今、手放すわけにもいかない。 余裕を見せている童磨に、またも氷の刃が迫りくる。 曲がりなりにもヒーローである自分に向かって救うとはなんたる言い草だ、とあきれ半分憤り半分に焦凍が放ったものだ。 今度は狭い範囲に、より鋭利な氷が現れる。 白銀の刃は、童磨の右手を切り落とした。 決して焦凍は、トガを許したわけではない。 だが、それ以上にこの男をどうにかしないといけないと考えただけだ。 「う~ん、やはり血鬼術とは違うのかな?」 童磨は片腕を失っても、ケロリとした表情で目の前の氷を観察していた。 彼ら鬼にとって、それは大した怪我ではないからだ。 (再生も僅かだけど遅くなってる……この世界、あの方の血の呪いに干渉する何かがあるのかな?) 四肢の喪失ぐらい、上弦の鬼ならば一瞬で元通りだ。 だが、腕が生えたばかりの瞬間、トガが彼の虹色の瞳を串刺しにする。 それに続くかのように、焦凍は炎の個性で童磨を焼こうとする。 たとえ相手を焼けなくても、先程と同じように熱膨張によって、爆発技へとつなげることが可能だ。 そんな彼の目論見は、あっさり破綻することになる。 ――血鬼術 散り蓮華 童磨は失ってない方の腕で奥義を振ると、文字通り蓮華の花びらを思わせる氷のつぶてが現れ、焦凍の炎を打ち消す。 氷使い相手に、炎ほど打ってつけな力は無い。そんな常識は、上弦の鬼に通じない。 最も、彼の炎の個性が無ければ、2人共童磨が放った氷を吸って、呼吸さえもままならないことになっているのだが。 (!!) 炎を消してなお、解け切ってない氷の刃が焦凍に殺到する。 咄嗟に後ろに退き、安全地帯まで下がる。 攻撃は避けられた。だが、既に童磨の失った腕は再生していた。 ――血鬼術 蔓蓮華 今度は童磨はトガに向かって奥義を振るう。 現れたのは、植物の蔓を連想させる氷。 それでいて、本物のそれより鋭利であり、彼女の服の袖を傷付けた。 彼女は逃げ足は優れているため、致命傷は追わなかったが、それでも腕を少し切り裂かれた。。 「それが救うって行為か。」 「そうだよ。俺は昔から、苦しんでいる人たちを食べてあげていたんだ。強い者が弱い者を救うのは義務でしょ。」 最初は恐ろしい相手だと思っていたが、実際に対面してみると、存在してはいけない相手だと伝わった。 だが、童磨の氷を操る血鬼術は、自分の個性よりも上手だと同時に思い知らされた。 「そんなことで私を救えると?」 腕を傷付けられて猶、トガは相手を刺し殺そうとする。 ムカつくムカつくムカつくムカつく。 勝手な押し付けで他者を救っている気になっている男が、本当にムカつく。 トガもまた、そんな怒りに任せて童磨を何度も突き刺そうとする。 だが、その刺し傷はすぐに再生してしまう。 「君はさ、さっき愛を語っていたよね?」 童磨の虹色の瞳が、トガの黄色い瞳を見据える。 「俺もさ、愛を求めているんだ。だから同じ悩みを抱えている者同士、話に乗ってやることも出来ると思うんだよ。」 悩み相談の相手は針のような刀で、虹色の瞳を何度も刺す。 目玉が、光彩が、網膜が、水晶体が血に混じって飛び散るが、態度を改める様子はない。 自身をザクザク刺してくる相手に語り掛けているとは思えない穏やかさで話しかける。 「そう構えなくても、俺は君が可哀想な人間ってことはよく理解しているよ」 「~~~~~~~!!!」 刀を握るトガの力が、一層強くなった。 彼女が思い出したのは、異能解放軍の幹部のキュリオス。 記者を名乗っていた彼女もまた、この男のように勝手に自分のことを不幸だ何だと言って来た。 だからこいつも、あの女と同じ目に遭わせてやる。 そんな気持ちで、目玉、首筋、心臓、肺と急所と思い当たる場所を次々刺す。 (私はちっとも不幸じゃない。嬉しい時はにっこり笑うの) 攻めているのは彼女の方。だというのに、勝負は全く有利に傾かない。 「離れろ!!」 その状況を鑑みた焦凍が、トガに指示を出す。 「ヒーローなのに、私に命令しないでください!」 そう言いながらも、トガは後方に避難する。 彼女がいた場所に、尖った氷柱が降り注ぐ。 ――血鬼術 冬ざれ氷柱 「これでも食らってろ!!」 氷柱が落ちてくる場所に、炎が巻き起こり、その後すぐに大爆発が空気を揺らす。 先ほど焦凍が炎と氷を出して爆発を起こしたが、今度はそれを童磨の氷でやってのけた。 最も、相手の氷に合わせて炎の威力を無理矢理強くしたため、彼の疲労も馬鹿にはならないが。 敵の技を利用して大技を打ってなお、彼の表情は固いままだ。 あの程度の爆発くらいで人の皮を被った怪物を倒せると思うほど、彼は楽天家ではない。 「いやあ、驚いたなあ。そっちの女の子が時間を稼ぎして、俺が攻撃してきたところで爆発させる。実に見事!! しかし今の爆発……血鬼術とはやっぱり違うみたいだけど……一体何なんだい?」 鉄扇の一振りで、濛々と上がっていた煙が、一瞬で晴れる。 そこにいたのは、衣服や顔が汚れているが、致命傷らしきものは負っていない童磨。 このままでは勝てない。 感情を露わにしながら戦うトガも、冷静を保ちながら戦う焦凍も、共に心臓が高鳴り始めていた。 全身から冷や汗が止め処なく滴る。 ヒーローとヴィランは、両者の敵を相手にまたも同じことを考える。 そして、トガヒミコは奥の手を使った。 彼女の強さは、そして社会の網から掬われずにいられた理由は、素早さだけではない。 ペロリと刀に付いた、童磨の血を舐める。 棒付きキャンディーの甘味でも味わうかのように、チウチウと吸い取る。 映画やドラマで、三下がやりがちな挙動だが、彼女の場合は威嚇や彼らの真似事などではない。 トガヒミコは、他者の血を飲むことで、姿をその血の持ち主に変えることが出来る。 そして、異能解放軍との戦いで個性が覚醒し、相手の個性までも使えるようになった。 目の前の男は強い。だが、強いからこそ変身した時強力な個性を使える。 そう思ったのが、彼女の不幸だった。 お、と珍しい物でも見るような顔つきで童磨は彼女の行為を見続ける。 「あなたのこと、嫌いで嫌いでたまらないけど、この際仕方な………」 突然、バクンと異常な鼓動が彼女を襲った。 同時に、ズキンと異様な痛みが彼女の身体を走る。 「な……なに……? き、気持ち、悪ぃいィィ……………。」 血走った眼を見開き、歯を砕けるほど食いしばり、ガクリと膝をつく。 彼女はかつて血を爆発させる個性の持ち主の血を吸ってしまったがために、手痛いダメージを受けたことがあるが、それとは全く違う。 まるで毒物でも盛られたかのように苦しみ始める。 事実、それは毒のようなもの。童磨が鬼の首魁、鬼舞辻無惨から承った血は、人間にとっての猛毒になる。 「俺の血を吸ったらそんなことにもなるでしょ。」 この殺し合いの会場では、血鬼術の威力が弱められているように、鬼舞辻無惨の血の毒も弱められているのが、不幸中の幸いだった。 もしそうなっていなかったら、皮膚が内側からドロドロに溶けていたり、そのまま死ぬこともあり得たからだ。 (まずい!) 何が起こったのかは分からなかったが、状況がまずくなったのは焦凍にも分かった。 今までの戦いは、敵が両者に向いていたことで、ギリギリ均衡を保っていられた。 ヴィランに頼るのは癪だが、1対1では間違いなく勝てる相手ではない。 (落ち着け……こういう時こそ、相手がどう出るか考えろ……) ヴィラン連合との戦いで、父エンデヴァーとのヒーロー活動で、自らの個性をどう使うべきか学んでいた。 「辛そうだね、でも大丈夫。俺が救ってあげるよ。」 童磨は瞬間移動でもしたかのような速さで消える。 だが、その先が分かっているかのように、焦凍は地面を凍らせ、スケートの要領で予測地点に走って行く。 目論見通り、敵はトガの首を斬りに、彼女のすぐ近くに現れた。 速さは相手が上。だが、何処に向かうか分かれば、攻撃を当てることも不可能ではない。 (体の熱を限界まで引き上げろ!!) 左半身のエネルギーを上げに上げ、限界まで温度を上げた拳を、童磨の顔面に打ち付けた。 鬼の顔の肉と血が飛び散り、首の上が真っ黒なクレーターになる。 (慣れない技だったが、何とかなったか。) 彼の父が得意としていた赫灼熱拳は、炎の力を一転に集めるのが苦手な彼が撃っても、威力は父の物に比べて数段は落ちる。 それでも、氷によるブーストをかけて撃った渾身の一撃は、上弦の鬼の顔面を打ち抜き、大きく吹き飛ばすことに成功した。 (恐ろしい敵だった……さて、アイツをどうするかだな……) 有害な血を飲んで青息吐息とは、人の血を吸い続けたヴィランらしい末路だが、無視するわけにはいかない。 あのいけすかない異形と同じことを考えたのは癪だったが、もし彼女が死ぬしかないのなら、自分の手で殺してポイントを取っておきたい。 それに、彼が気になったのは同じ高校の友や、殺し合いに巻き込まれた父のこと。 特に父とは長い確執を経てようやく和解の兆しが見え始めた所だ。 こんな所で死ぬとは到底思えないが、それでも早期の再会を望んでいた。 別の方向を見ると、セーラー服の彼女は覚束ない足取りで、それでも必死で走って逃げている。 大分姿が小さくなっているが、追いかけないと面倒なことになるかもしれぬと考え、地面を凍らせて走り出そうとした。 【1日目/未明/D-6・草原】 【轟焦凍@僕のヒーローアカデミア】 [状態]:ダメージ(特大) 疲労(大) [装備]:轟焦凍のコスチューム@僕のヒーローアカデミア [道具]:基本支給品、ランダム支給品3 [思考] 基本:殺し合いに乗っている者を倒す。どうしようもない相手だけは殺してポイントにする 1:まずは、逃げたトガヒミコを追いかける 2:父はどうしているか 3:出来るなら緑谷や爆轟とも再会したい 4:元の世界のヴィラン(死柄木、ステイン、マスキュラー)に警戒 [備考] ※参戦時期はエンディング捕縛後~超常解放戦線前 ※童磨の斬撃によって、脇腹から首筋にかけて致命的な傷がありますが、気付いていません。 不意に逃げるヴィランを入れた視界がぼやけたと思いきや、走ろうとする足が動かなくなった。 おかしい、と思った瞬間、身体から大量の血が迸る。 焦凍は気づかなかった。 自分の身体に、一筋の深い裂傷が刻まれていたことを。 「ああごめんごめん。さっき君が俺の顔を殴った時、俺も君をこうやって斬りつけていたんだよ。」 まだ顔面の一部が焼け砕けているというのに、倒したはずの鬼が立っていた。 ほんの少し前まで、痛みさえも感じなかった。 そうなるのも無理はない。 童磨は生前、鬼殺隊の中でも最高峰の速さを持つ蟲柱の攻撃を受けながら、斬撃を与える離れ業をやってのけたのだ。 「さっきのは中々いい一撃だったよ。俺の友達ほどではないけどね。 でも俺達はそれじゃ殺せないんだ。」 彼の言う通り、鬼は首を斬り落とすか、はたまた太陽の光を当てねば殺せない。 焦凍の不運は、敵の再生力がいつもより落ちていたことだ。 中々顔面の形が戻らなかったからこそ、倒したと思ってしまった。 勿論、彼は敵が回復に関する個性を持っているという可能性も考えていたが、どうにかせねばならない相手が2人いるということも災いした。 「ほら、こんな風にね。」 焦凍はそれでも敵を焼き、氷漬けにしようと、両手を上げようとする。 だが時すでに遅し。 「ま……まだ俺は……。」 「救うのは俺の方だよ。」 鬼は鉄扇をヒュッと振り、彼の胴と頭は生き別れになる。 (う~ん、この人の力の源、知りたかったんだけどな。まあ、あっちの女の子を食べてから考えるか……) 早速トガが逃げた方向に足を速めようとする。 しかし、一瞬足が動かなかった。 焦凍が、最期に自らの血を凍らせ、鬼の足はそれに捕らわれていた。 このヴィランをのさばらせていては、自分以外にも多くの人間が犠牲になる。 ほんの少しでも、止めねば。1人だけでも、殺されるのを止めねば。 それが、プロヒーローの父を持ち、ヒーローであろうとした彼の、最期の意志だった。 だが、それは上弦の鬼にとって、ほんの数秒の時間稼ぎでしかない。 「そんな意味のないことをして、なのに他の人を救った気になって、やっぱり君も哀れな人間だね。」 扇の一撃で、真っ赤な氷は自分の足ごと砕ける。 壊れた脚はすぐに再生する。 「君も食べてあげたいけど、彼女を救うのが先だから、少しだけ待っててね。」 鬼の災害は終わらない。 今度はヴィランの少女と、彼の鬼ごっこが始まった。 (彼女の分も合わせれば、あと8人で上がりというわけか。待っててね、しのぶちゃん。) 蟲柱の彼女の笑顔を、脳裏に浮かべる。 彼の胸が、高鳴るのを感じた。 【轟焦凍@僕のヒーローアカデミア 死亡確認】 【1日目/未明/D-6・草原】 【童磨@鬼滅の刃】 [状態]:健康、しのぶちゃんへの恋心 [装備]:金の鉄扇@鬼滅の刃 [ポイント]:5 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、皮下真の研究資料@夜桜さんちの大作戦 [思考] 基本:生き残って、しのぶちゃんを蘇らせ、結ばれる。 1:無惨様の為になるであろう『夜桜の血』の情報を探る。 2:苦しむ可哀想な少女(トガヒミコ)を追いかけ、殺して食べてあげる 3:鬼殺隊は始末する。特にあの娘(カナヲ)は厄介だから早急になんとかしないと。 4:何時もの如く、可哀相な参加者は救うために喰らう。 5:他参加者へのポイント譲渡のルールを追加させる。 6:黒死牟殿や猗窩座殿、あと黒死牟殿が血をあげた例の新入りは何処にいるのやら? [備考] ※参戦時期は死亡後 「はあっ………はあ……ゲホッ……!!」 金髪の少女が、草原を走る。 その表現はおかしいのだが、そう描写するしかない。 何しろ彼女は、虹色の目の男に姿を変えたり、少女の姿に戻ったりしているのだから。 息を切らし、何度か血の混じった咳をするが、その足を止めることは無い。 支給品を覗いてみたが、薬になりそうな物は無かった。 とにかく、今の状況から脱しないと、殺し合いに勝つどころか、生き残ることさえ難しい。 (あの嫌な奴から逃げないと……!) かつてヴィラン連合に入る前のように、今はとにかく逃げる。 心臓は、ずっと高鳴り続けていた。 【トガヒミコ@僕のヒーローアカデミア】 [状態]:ダメージ(中) 全身に鈍痛 脈の狂い [装備]:胡蝶しのぶの日輪刀(童磨の血入り)@鬼滅の刃 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品2(薬関係は無い) [思考・状況] 基本方針:殺し合いに勝利し、自分が普通に生きられる世界の実現をさせてもらう……はずだったけど? 1:とにかく童磨から逃げる 2:どうにかして、解毒方法を探す 3:デク君(緑谷出久)やステ様(ステイン)に会いたい 4:死柄木やマスキュラーは割とどうでもいい。まあ会ったら支援ぐらいはする [備考] ※参戦時期はアニメ5期終了~超常解放戦線前のいつか ※原作で背中に背負っている背中のボトルにチューブが繋がれた注射器は没収されているため、原作で変身したキャラ(お茶子、ケミィなど)に変身出来ません。 ※童磨から鬼の血を吸ってしまったことで、様々な効果が表れています。鬼化するかは次の書き手にお任せします。 ※現在、姿は童磨になったり元に戻ったりしています。 【金の鉄扇@鬼滅の刃】 童磨が生前から愛用していた、金色の扇。 軽く振っただけで鬼殺隊を隊服ごと切り裂く鋭さを持つ 【胡蝶しのぶの日輪刀@鬼滅の刃】 トガヒミコに支給された、細長い刀。鍔は水色の地に橙色の縁取りが成された蝶の羽を思わせる鍔は水色の地に橙色の縁取りが成された蝶の羽を思わせるデザインをしている。 敵を斬るのには向いていない形をしているが、毒を射し込むことを目的としている。 また、鞘に納刀することで、刀に入れた毒を調合できる。 前話 次話 蜘蛛糸は垂らされず 投下順 沸血インヘリット 蜘蛛糸は垂らされず 時系列順 沸血インヘリット 前話 登場人物 次話 羽化 童磨 激闘開幕 童磨VSカタクリ START 轟焦凍 GAME OVER START トガヒミコ 激闘開幕 童磨VSカタクリ
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スレッド別、痰が飽くなき想像力でひねり出した各種設定(本当は全然なのにでまかせいっちゃった!的なもの)を特集しています。二ページ目 ただし、義理家族に関する設定は、そのほとんどを割愛しています(家族はヲチ対象ではないため、ご理解下さい)。 ページ分割の上、順次収録中。 設定集別ページについては左のメニューから飛ぶこともできます。 【言い訳二等兵】試験全滅とも痰21【口だけ番長】 学生のうちに環境の選択を間違えたばかりに、全く思い通りに暮らしてこられなかった (類似設定あり) (試験前日)はてなアンテナ携帯版を見やすくしていた。 「国1もダメ、裁事もダメ、おまけに国2も県庁もダメだったら…生きていけません」 試験は何回受けても緊張する。というか、今回はいつも以上に緊張しているフリーターについて、という内容でしっかり論文を書いた。 やっぱり愛知県県職員の試験、アテクシ受ける!三重県のも受ける! 来年は裁判所事務官を本命として、国家公務員だけ受験する。地方上級は考えられない今回地方上級を受けたのは、親の手前仕方なく……といった感じ。やりたいことが地方上級では出来ない 地方上級でもやりたいことはあるけれども、まだ言わない ベツニシリタクナイ 誹謗中傷が増えつつあるので、ブログに対するコメント・トラックバックを不可にした。状況改善されれば、受け入れ再開する 北朝鮮の少女の歌を解読した 松坂屋に行ってまぐろの短冊を買った。切らずにそのまま醤油をドボドボかけてかじりついた 試験に受かって採用されるまで、欲しいものは封印した。でも、物欲はかなり乏しくなりつつある 予備校に引っかかる破目になるところだった!このままではダメだからぜひうちに!といわれたが、踏みとどまった 買った冷蔵庫が、一年もたたないうちに壊れた。メーカーに即交換してもらった 試験会場前。ビラを配っている予備校の奴らのせいで、会場に入りづらかった!右翼も煩かった! 前にお世話になっていたところでの、週三日のバイトをきめた。弁当に惹かれて ヒキヌキハドウナッタ 「9月以降に試験関係でびっくりサプライズ暴露します」 架空請求が携帯に来た! なんと驚愕の請求額3000円 一日の勉強量を試算してみたら、それほどがっついて消化する必要はないことに気がついた 【マイルール】通信教材。法改正分に関する教材の変更分は、追加払いなしでくれるべきではないか 「給料貰ったら、松雪泰子ブランドの眼鏡買います」 から揚げ目当てのバイトシリーズバイト先のお店は仕出しがメイン、コンビニはオプション。そのうえ昼時しか客の来ない、無駄の多い店 人を増やしてトヨタのカイゼン方式を使えば大ヒットする 「仕出しに人が多いが故に、レジから棚卸しまでひとりでみんなやらす」 このアテクシが文句を言いながらも、再び雇ってもらったのはここが初めて☆ ムカツク客が、宅配便の配送先住所について明らかな間違いがあるというのに、合っていると主張する!頃ry眉間に皺を隠してw応対。「普通ならDQNな客と叫ぶだろうが、私は、叫ばなかった」 せーの!DQNな客ーーーー! 毎日棚卸がある www 中学生に猥褻雑誌を売ってしまった(週間大衆増刊号 …猥褻?) ヒマな店内、(てんちょの?)こどもたちが走り回っている。 社長と社長の奥さんは仲が悪いので、お互いいつも機嫌も悪い。 アテクシは社長とうちの大家が知り合いだから、必然的に社長の側についてしまう。 【マイルール】従業員が社長の側につくのが厭であれば、再雇用した際に言うべき! 店がこんなんだから、やめる人が後を絶たない。再雇用されてみればずいぶん人も変わり、無駄も増え。 「作り笑いは3時間が限界。海老は鯛で釣れ。=何でも物でてなづける。」6時間も愛想笑いすると相当辛い。バイト先から一歩出ると当り散らしている。 ナニニ!? 親が「ワニ本」を「ビニ本」と聞き間違えた。出せ!といわれたww メールマガジンとmixiをメインに、はてなブログを閉めようかと思っている →休止宣言、再開については未定の予定w「もし再開するとしても、コメントやトラバ受入不可の閲覧だけのblogにします」2007.07.05 「はてなblog再開します。ただし。余計な事考えたくないので、コメント トラバ全面受入不可」2006.07.09 根性がひん曲がってるアテクシは、仲間の合格を素直に祝福することができない 【マイルール】不登校だから仕方ないって言うのは大いに間違っとる。 1年以上継続的な完全ニートも困る。ニート2号についての言及あり (一号は痰ちゃん?w 地方上級の試験は、明らかにコネが強いということがわかった (ポエム日記より)あなた(アテクシ)の髪の毛はごっそり抜け…… 【海老は鯛で釣れ】とも痰22【未定の予定】 親のために働きに行っているようなもの。でも必要な資金を稼ぎきったらバイトはやめる。実家にお金は一切入れない実家に入れる金額として相応なもの以上は親にお金を「やる」つもりはない。 【マイルール】さらに、相応以上の金額をたかるのは親ではない そもそも親とは思っていない。小間使いだと思っている。「親という召使」 見るもの全てがイライラの対象になる 「3度すっころんだら考えるでしょ。 私もそのクチ」「3回受けてダメだったら、その後は大人しく生きるつもり」 (ピー)が毎度のごとく一ヶ月長引いている! アテクシは1人の時間を大切にする人間。無駄は要りませぬ勉強と必要時のバイト以外の生活は全部無駄、子守も無駄、ぼーっとする時間も友人にあって話をするのも時には無駄無駄無駄ァァ! 【マイルール】S運輸はお届け物するときに留守電にメッセージを入れない!お届け物があると伝票を入れていくべき!「来るなり言い訳をおっぱじめたんで、帰ってから文句を言ってやりました」 宅配はクロネコ以外信用しない アテクシはバイト帰りにおみやげの弁当をもらって帰ったり、新製品の試食をさせてもらってるのでつまみ食いの心配はない! 6時間しっかり寝ないとイライラしてくる 「バイトは金が全て。人間関係よくても金が安きゃダメだよと思う、今日この頃」 バイトシリーズバイトの高校生が、勤務中に店の商品を勝手に食べていることを知ったてんちょ夫婦が(自分の?)子どもたちに店のものを勝手に与えている悪影響がバイトにでた 【マイルール】給料日の月末が定休日に。給料支払いは休みの次の日!普通の会社のように、給料は前倒しで払うべき! 普通のフリーターとは違い、都合のいいときに呼びつけられて大変なアテクシ。 シフト聞いても直前まで教えてくれないとか朝からの雇用のはずなのに昼間にされただとか給料が支払われないとか 「給料が振り込みでないのならバイトを即座にやめろ」と親に言われた! パンの大量注文の件でてんちょにどやされた。アテクシは大量注文については聞いてないし引継メモもない!わけがわからずキレた! しゃちょーはふとっぱら!去年に引き続き今年も物をくれた!なんと洗剤! 昔アテクシがボロクソにけなしてたSNS。オープンになったので行ってみたら、はじき出された。アテクシが正論で批判したからね☆【マイルール】人集めのために甘い餌で誘い出し、いらなくなったらゴミのように捨てるのはどうか。mixiの方が発展している 【マイルール】こんな人(友人)とは手を切ったほうがいい家出人(なかなか家に帰らない人) やくざの愛人 、明らかに家がやばい(あばら家) 、宗教一家 アテクシは実際にこういった友人と今年、手を切らされた!親に!! 男はうざい。都合が悪くなれば女を殴るし、アテクシは人に尽くしたくない、むしろ独りになりたい 昔の屈辱を思い出した。 意味不明。この後プライドずたずたにされたとか辛かったとか頃してやろうかと思ったなどのもっと意味不明語り有 クーラーが利きまくった家から外にでられなかった いつの間にエアコンついたのか? 【ニアミスは】あの季節が来たよとも痰23【痰を救う?】 賄いばかり食っているせいで、暑さで脂汗をかいているというのに太った。 バイト先の近所には、落ちこぼれかつ体育バカが通う高校がある。そこの生徒たちがバスの中で騒ぐので、バスの乗客殆どは嫌な顔をする。 乗客が一人しかいないとか たった四問の数的に対し、気がつけば二時間もの間悩み続けたアテクシ (勉強方法について薀蓄)せっついて勉強を続けたためぶち切れ寸前のアテクシ。せっついても何の意味もないと痛感「バイトでも、朝やることプランニングしとかないと、キレるから(笑)」 怒涛のバイトシリーズアテクシのシフトが不確定だった。シフトについて訪ねたら忘れられ、いつもはどうだったかと聞き返された バイト再開時の取り決めによって、試験勉強や試験に絶対響かないようシフト組みする約束だった! 値札シールの貼り方でもめた。ちゃんとやっているのに、勿体無い使い方をするなといわれた挙句、キレられた バイト再開に当たっては、アテクシは譲歩している!時給も最低金額で、交通費ナシで朝早くから行ってやっている 遂にぶちぎれてやったアテクシ! 社長のおばあさんが大家の知り合いだし、他の人にも可愛がってもらっているから行っている! 『あんたなんか雇わなければよかった』といわれた (てんちょの奥さんに?) 勉強の気分転換に始めたバイトなのに、勉強やプライベートwの予定、あらゆる時間を削るようになりかんしゃくおこる 平日だけのシフトにして欲しいと店主の奥さんに相談。この間のことを忘れたかのように快諾された バイトもついに三ヶ月目に突入。「昨年11月から考えたら中断期間抜いたら5ヵ月ほど続いております」 考えんなw バーサン社長(原文ママ。社長のおかあさんのことか)がぼけた。逆切れしてきたので逆切れし返して来た。 JRバスは二度と乗りたくない 今年の試験は、受験範囲を絞りすぎていた!来年は地方完全無視、国家は可能な限りたくさん受けたい 二ヶ月で勉強がワンクールw終わるように設定し、そのなかでゆとりをもった週プランを立てている! 10月までに裁事の試験科目を終わらせる予定 アテクシの家の前を、相当なスピードで自転車漕いで行った女子高生。あれは車に当たると話していたところ、車に撥ねられた 給料が振り込まれない。→ブログ(笑)にそう書いたところ、三時間後に振り込まれた 24時間テレビは、アテクシの人生を破滅に追い込んだ事件の発端になった 昨年購入したテキストに改変が。慌てて新版を取り寄せたが、ほとんど変わらない内容に気づくことなく書き込みしまくった去年のテキストを使うことにした。足りないところだけ(改変部分?)新版を使うようにする 遂に携帯ネット生活脱却!中古ノートパソコン購入!取引成立! ←オクか? 大学は学費の問題で辞めた。 C日程の受験票がこないので問い合わせメールを送った。→入れ違いだった模様、当日とどいた 「相当ランク落として、私からすれば自分のプライドかなぐり捨てて、底辺ぐらいの試験を受ける訳で受からなまずいでしょ…」 萎え 条文・判例を拾い出ししてパソコン入力しようと思ったけれども、あ ま り の 多 さ に や め た なんでもパソコンで管理するようになったアテクシ!ワード・エクセルを駆使するアテクシ!ひみつがいっぱいアテクシのパソコン! 「一番」嫌いなものシリーズw人部門 / ガキ ・試験を純粋に目指さない奴 ・派遣会社の香水臭い女 ・大家族・長電話したがる女 ・専業主婦・親 その他部門 /結婚・偽善・割に合わないバイト・のろまなパソコン 「つまり、一度犯罪を知ると、なかなか抜けられないって事。気をつけてね。犯罪と現実の感覚がわからなくなるから」 「久々に慣れないパンスト履いて、一日中スーツは一次からじゃキツイ」 ←20スレくらいあとのスーツに生足の前フリか バイトの日の勉強時間が、バイトない日の「半分の半分以下になってしまう」。ひどいときはそのまま朝まで寝てしまう 何が何でも(勉強時間は)一日六時間は確保したい バイトは減らしたけれども、これまでの蓄積疲労のせいで体に負荷が。ストレス発散もままならず、休みを削っている 腰痛が激化、布団から起き上がれなくなった体調不良の原因は過労+過多月経による貧血だった 麻生外務大臣と片山さつきが好き。 (義理の妹が内定を掴んだ話にかかり)親は「一族の恥だ」と、内定を辞退させるつもりだ パソコンを『デコデコした』 ←マーブルのシール(笑)で蓮パソコンのできあがり 試験面接。尊敬する人は?と聞かれ、『バイト先の社長』と答えた。頭が低いから バイトを辞めることにしたシリーズ(お金を稼ぐという)目的は達したのでこのバイトはやめる このバイトよりも、派遣のほうが給与がいい。既に何件か、派遣で仕事のオファーが来ているからそちらに乗り換える 店内でお金に絡んだ揉め事があり、巻き込まれた。 この揉め事の連帯責任で、給料が半分以上カットになった=半月近くただ働きの扱いに。やってられないので辞める 【ベテラン受験生】決まらぬとも痰24【睡眠学習】 バイトを辞めることにしたシリーズ(承前)(給料での弁済は違法だとの書き込みを受け)違法性は理解しているので、給料があまりに少なければ労基署に言う 試験やバイトでしばらく忙しかったので、一ヶ月くらい休むつもり。また、その間に条件のいいバイトを探す予定 「円満に辞めちゃった!」 (一度働いたことのあったバイト先、やめてから)ブランクがあったというのによく耐えたアテクシ 給料を大幅に天引きされた!41,850円あったはずが驚きの3,255円!言われもない責任を取らされたアテクシ! 賃金騒動に親が乗り出してきた!そのせいで話がややこしく! バイト側、アテクシ側とそれぞれ警察に行って介入してもらおうとしたが、民事不介入だからと断られた! (働いた証拠になるはずの)帳簿は、アテクシはもうやめた人間だからと見せてもらえない!話にならない! 普通のコンビニなら当たり前にしていること(【マイルール】)があの店では行われていない!防犯カメラの記録もない! アテクシは罪を着せられた。そういうわけでわけもわからず給料をごっそり引かれた… (法定控除以外の控除には本人の同意が必要なのにという書き込みを受け)アテクシは同意はしていない 「ミスはあったんですか?」とアテクシのミスについて訊ねたら、口を濁された 次の仕事を探せと親に言われた (義父の知り合いの店という昔の設定を受けて)「(義父が店に直接)掛け合ってもダメだったんですよ~」 労基署で働いている友人に相談したら損害分を引かれたことは「直接払いの原則に基き、24条違反」だと言われた (労基署へ?)相談時に持っていく書類をパソコンで作るアテクシ!次の仕事の面接用の履歴書も作るアテクシ! コンビニから何も言ってこない。何も行動してこない。 アテクシは給料を貰いに行った日、喧嘩せずに穏便に給料を貰えれば良かっただけなのに、店に行くなり吠えられた このバイト騒動で家が揉めた 労基署に電話したら、出頭するようにコンビニに書類を出し、近いうちに社長たちから事情徴収すると聞かされた この職場にはなあなあな雰囲気があって、このようなトラブルもいつかはあると思っていた!周りの評判から、早くやめねばと思っていた (10/12mixiにて)「明日社長が出頭するという話になっていたが、店が定休日の月曜日に出頭することになったという」 労基署シリーズアテクシの話を女子職員が真剣に聞いてくれた!でも受理するかどうか迷っていた模様。 アテクシの事件wについて、上司と話す職員。給料明細を見られ、「これはひどい」「ミスを全部かぶせられたのでは」と言われた その職員さんたちの勢いに圧倒されつつも、言いたいことを全部言ってやったアテクシ! あまりの額に緊急性を要すということになり、即申請受理された 賃金騒動のその後シリーズついに労基署から連絡が!コンビニ側が支払うことになった!(明日コンビニに連絡し、差額の給与分をとりに行く予定) コンビニ側はいまだに証拠もないまま、アテクシが横領したのだと言い張っている! 「明日、こちらとしては貰うもの貰って、後はやれるもんなら法廷に持ち込んでくれと言うことに決めました」 横領という結論になぜコンビニは至ったか…アテクシが帰ったあとレジ合わせした人がいるが、二回ほど合わなかったから ついにコンビニは報復にでた!警察に届けたと言われた!ちょっと市民相談にいって来る! 「今回の一件を東京で世話になった弁護士さんに、朝、概要を書いてFAXを送った」→そんなところで働いちゃダメだよといわれた!内容証明でアテクシの言い分を送りつけるか、警察が来たら名誉毀損で逆告訴すると言え!と助言された!だから放置することにした(・∀・) ←ナゼソウナル 「オークションで落札して代引で商品送ったのに、 金が入ってこない」 新しいお仕事シリーズ派遣。かなり条件を譲歩したところとんとん拍子に話が進み内定した。水曜日に職場を見に行って、本採用になるらしい (しかし翌日以降の昼前に、また面接があるという) 「派遣の内定貰ってたのをドタキャン。よく考えたら担当者が気に食わないし」 うだうだしているうちに、スーパー裏方の仕事を見つけた。そちらに行こうかと思う 仕事は近いところにあって、次官に融通が利けばいい 条件のいいバイトもなんとか見つかって即採用されるアテクシ!家から激近で週5勤務!長くても二月末までしか働かない! (寝る時間を削って仕事を探しているせいで?)朝と夜しか勉強時間を確保できない。 背中に鈍痛を感じる。多分周囲にやたらと気を使うことが原因の気疲れによるもの。 行政書士の試験のことを忘れていた。行政法だのの試験勉強なにもしていない。 アテクシの嫌いな人は「尊敬するのは親ですという、くっだらない奴。 後、若くして億万長者になった奴」 (C日程撲滅を受け)筆記では手ごたえがあった。敗因は集団面接での失敗。それと地元コネを使わなかったこと。 【マイルール】ニートを作るのはこんな親だ(全て親が子に対しこういうことをするとだめだという設定)過去のマイルールの焼き直し言う事が毎日変わる。 褒めず、プライドを傷つける。 直ぐにダメと言ってやりたい事をやらせない。口出しして抑圧する 子供を自分のペット、操り人形にしている。働いて得たお金を巻き上げる、友達と遊ばせない。 自分が敷いたレールに乗せないと気が済まない、責任転嫁する 、すぐ騙す「兄弟がいる場合、一番上と一番下の者がこれに該当し、鬱病等になりやすく、無気力になります 」 「そしてこういう目にあった人間は、人を信じることが出来ず、不信感を覚え、常にびくつくようになり、自信喪失になります 」 「はっきりいってこうなったら治りません」 マイルール『こんな女は理解できない』 ←義妹に対するもののようなので割愛。香水や着メロやスカート丈が気に入らないらしい 最近の女子高生はすぐに「氏ね」という。これは公立で教育されているせいだと思う家の中に土足で入ったり、アテクシの思うところ騒音を注意したら氏ねって言われた! 【マイルール】労働に関してバイトの場合、(勝手に脳内で)お試しとして、労働期間を三ヶ月と定め割り切って働く。続けられそうならまた三ヶ月働く。 人間関係が悪ければとっとと辞め、居心地がよければ仕事を続ける。 勉強との両立とか遣り甲斐とかほどよく仕事できるかとか勤務条件とか これからはmixiで毒を吐く!はてなブログは「普通の女の子」な記事を書いて行きたい 「朝から、冷蔵庫のドアの自動開閉装置が原因で茶碗を2つ割りました」新バイト先にて バイトの帰りに撥ねられそうになった バイト先に電話してきた奴がいる!2ちゃんねらーか!弁護士へ依頼することを前提に動いています。(何を依頼するのかw) 【年内惨敗】足りないwとも痰25【エセ受験生】 (はてなブログが賑わっているという前置きで)今後も使えそうなアドバイスは取り入れていくつもり リアル(現実世界のことか)に友人はいない、友人にする人を選んでいるため。みんな上っ面だけの知り合い。 アテクシは例の事件で執行猶予判決を下され、それ以来試験勉強をすることで自分を保ってきた試験に落ち落胆。事件当時の所持品を見、事件当時の気持ちが蘇らなければ『全てを諦める』覚悟でいた 今年の試験。「ある程度は(準備を)組んでいたのですが、集団面接では(事前に何もせず)ほぼぶっつけに等しかったので」 ノルマのことシリーズ勉強の予定は自分にある程度の負荷はかかるが、無理はしない範囲で。一週間ごとに予定を立てている 勉強が進んでいなければ「負荷はしっかりかける」。ただしバイト開始時間30分前には終えるようにしている 「ある程度ノルマ設定し、達成感を見出すようにしないと効率が悪い」と対策本に書いてあったので、それを実行している 【マイルール】「勉強してないっていうのは全く昼寝ばかりしてちゃらんぽらんな事を言う」 「あるとこに持っていく書類を作っていた」「今、あるとこへ書類提出する為、出掛けてる」 ←市民法律相談に出かける前フリ(給料天引き・横領騒動に関して)セカンドオピニオン(笑)を求めて、諮問法律相談に出かけた 法律相談にて、何か相手が言ってくるまで放置しろというアドバイス。相談した「東京の先生」と同じことを言われた 万が一依頼をするとしたら地元の弁護士に依頼することになるし、他の方の意見も参考にしたい 「持病の腰痛で夜中に目覚め、全く寝られない」 「県庁の星状態の今のバイトが楽しくなりつつある」 (前のバイトの賃金問題について、元のバイト仲間などに根回ししておくといいですねというコメントを受け)根回しは既にしてある 受験票がこない(いつものこと過ぎて設定に入れるのもどうかと思った) 月曜朝一でこのことを怒鳴り込もうかと思う親が住んでいるほうのポストに10日前に届いており、親が保管していた。手紙の引き出しから出てきたのを見てキレた 人には休むなというくせに、自分は休むようなことをする奴は一番むかつく。さすがにキレた mixiに、僻みとしか思えないコメントがつく。さらに、コメントしてきた者が善人面をしてマイミク申請してくる。マイミク整理中。やり取りをしていない人はマイミク解除する。 【マイルール】(マイミク解除されたら)「二度とこないでね」 「完全なフリーターやニートが羨ましいと思う今日この頃」 【新ジャンル・私の判断】パチンコ店の違法建築→実力行使によって強制的に建設を差し止めるのが正解だと 受験票がこないせいで、宅配野菜の箱の中身が注文したものと違うせいで吠えた。家族には当り散らした。イライラ頂点に 「まだ前の職場の残りの給料が2万ほど本日入る予定」 2006.10.31のプログ(笑)にて給料日なのに、三時まで待っても二万円は振り込まれなかった。また労基署に行かないと 2ちゃんねるの奴らは冷やかしが得意、実生活にも影響を及ぼしてくる。だから看過できない スネに傷のある人間は採用されないかどうかは「最高裁などに説明会の際や直接聞いて確認済み」=採用おkと確認済み 2ちゃんねるを完全に信じている奴は大馬鹿者 (義理の妹?の1人が不登校だという設定を受け)イジメ自殺をうけ、関係機関がすぐに相談に乗ってくれるようになったネットで相談先を探し、「教育委員会(より法務局の人権相談が良いのではと思い、豊田法務局に電話するようにアドバイス」 担任は(妹の不登校に対し?)何もしてくれなかった。それどころか、いつまでも引きずらず(いじめ?)就職先を探せと言った 面接相談をすることになった(法務局と?) 親子でHGの物まねをして腰を痛めた その他家族が睾丸をラップで包んでおいなり遊びとかゴムとかローション三万円分買ったとかフェロモン香水が同どうとかさらに家族が学校ででたらめな性教育の話を披露したとか性教育パンフがエロホン以上のグレードとか 椀にヒモつければブラジャーの出来上がりといったとか家族が勉強中に部屋で無修正AVを見るとか アテクシが裁判傍聴に行くのはなぁぜ?シリーズ短縮版裁判の志望動機を掘り下げ、法廷内観察でモチベーション上げ、二度とあほな事をしないよう自分を戒め、自分ならどう思うかメモる為 【マイルール】東京へ行った際「416号法廷の事件だけはどんな事件だろうと傍聴します」アテクシにとって自分が被告人として裁かれた特別な場所。裁判所事務官になりたいと思った原点がそこに! 「霞っ子クラブの日テレでの放送の話を聞き、遊び半分で裁判傍聴に行く彼女らに腹を立ててる」国民の権利というものを履き違えとる! ブログなどの内容を某掲示板に転載され、法令違反の行為で悩まされた! (食いすぎ)食べたものを消化しないまま寝たせいで胃もたれになった=胃もたれで悪阻 「東京地裁の裁判所事務官になるべく大学時代から頑張ってきました!」 奴らもあたしも大炎上 個人情報をmixiに転載された!(実際転載されたのは爆破予告事件のニュースソース)mixiの運営事務局に通報した! ドコモにたいし電波が入らないとクレームした 気づいたら発狂して台所をうろうろしていた。が、mixiのコメントを見てわれに返った 「バイト先で殆ど違算が出ません」 出さないのが当たり前だハゲ 試験シリーズ明日試験なのに、昼寝したせいで寝られない 「リラックスしてるっていうかソワソワ」 義理の妹の担任がお忍びで試験を受けていたのを発見、電車が来るまで喋り捲ってきた メルマガ終了。「この度、多忙を極めてしまい、blogだけにする事にしました」 PCを買ったため、ストレスのはけ口がPCに移ったw 【二頭追うものは】とも痰w公式スレ26【一頭を得ず】 勉強計画シリーズこのままでは笑いものになると痛感、今ある教材をフル活用・問題演習中心で勉強することに メリハリをつけるため、「完全オフ」を復活させた バイトを大幅に減らしたり、辞めたりするか迷っている。刺激・緊張感を持つにはこれ(今のまま)がいいのだが……三月から忙しくなる(仕事か試験か)ため、辞めるほうに傾いている 長期的なスパン(笑)で、勉強ノルマをつけていくことにした。無理をしないことがモットー バイトトラブル。カード支払いをした客が「差額を現金で返せ、店長を出せ」と吠えてくる。やってられないので飲んだくれた 親以外の人間なら尊敬する。親は尊敬する存在ではなく仲良しごっこの延長としてしか見えず、使い捨てカイロと同じような存在 勉強していない科目ほどよくできるアテクシ 蛾から蝶になったアテクシ!三月に買ったスーツ、痩せたせいでボトムスが合わない!干物になる! バイトから帰ってから、コソコソ晩酌するように。飲んだ後すっきり眠れ、嫌なことも忘れたくらいすっきりと目覚められる 「中国人のいる時に殆どのメンバーに違算が出る」 バイト仲間に中国国籍の人がいるのか?波長が合わないらしい パソコンがアテクシを惑わせる。そのせいか、勉強がはかどらない。ヤフBBでネットに繋いで以来、誘惑の魔物(笑)に 「諸事情により当分の間」ブログを非公開にする 大 親 友知らない法律を教えてもらって助けてくれた。いつも相談に乗ってくれる。彼女wは大親友 mixiとはてなでの記事内容について、実家の親宛に脅迫文が送られてきた私書箱を使い(?)、匿名で、アテクシを精神病呼ばわりしている。カーチャンも大変怒っている。【マイルール】この件は、更生や人権問題に絡んできている アテクシはこんなことを書かれて黙っている人間ではない。社会的制裁は受けていただく (覚悟しろ!のリバイバルかw) 既に思い当たる人物を中心に事情聴取が行われ、関係各所にも相談や届出を行っている マイミクの○○(書き込みではマイミクの名前が挙げられている)、お前が脅迫状を送ってきた犯人だろ! (恐らく濡れ衣) はてなブログについては、今後個人の日記とする。今回の状況がハッキリするまでは二度と公開しないmixiも友人までの公開に。 これまであちこちに書いてきた説明会情報は(パソコンやらノートに記録が取ってあるため)今後詳細書き込みは行わない はてなブログダイジェスト版を作ることにした 苦労して作った(笑)試験関係のファイル(笑)がバックアップ(笑)とりわすれて全あぼーん。復元ソフト(笑)使っても……。パソコンの調子悪い 2ちゃんねるの暇人がmixiに不正アクセスし、友人限定公開の日記を転載している! 「霞っ子クラブに文句いったら個人情報晒された」 ←前スレ「奴らもあたしも大炎上」のあたりの設定 アテクシは自他共に認めるシモネタ女王。シモネタには無性に(笑)反応する昔「無修正」のAVを貰ってみてみたら、足しか映っていなかった。キレた フリーターと同じ扱いをされ、便利屋のようにバイトで呼び出されて困る その1→痰的設定集 その3→痰的設定集3