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デブリの密集宙域を突き進む輸送船。 ぶつかるデブリに、船体は大きな揺れを伴っていた。 「くっ……これで、船はもつのでしょうか」 サブコントロール席に座るクランの顔が曇る。 「祈るしかあるまい。いざとなれば、人型に乗り込んで逃げればいい」 操縦桿を握りながら、ギデオンが言い放つ。 ギデオンの計画。 紫藤兄妹の乗っていた作業艇をオートパイロットで、輸送船とは別の方向へ発進させる。 作業艇はデブリが少ない宙域へ。そして輸送船はデブリの密集宙域へ。 通常なら、密集した宙域などに突っ込ませる馬鹿はいない。そう考える。 部隊を分けるにしても、密集宙域に向かう機体は少ないと狙った。 「クレイジー……だわ」 サブコントロール席につくミランダが、冷や汗を流しながら呟いた。 最大速度でデブリの中を進行する。 デブリは輸送船に衝突し、揺れは酷くなるばかり。 しかし致命傷になるような被害が出ないのは、ギデオンの操縦の賜物だろう。 (デブリ宙域の航行経験3回……伊達ではないということね) 経験のなせる技。 未経験の自分ではこうはいかないだろうと、クランは素直に感心した。 「間もなく、デブリ帯抜けます」 宙域図を映したモニターを見ながら、ミランダが報告する。 しばらくすると、揺れが収まっていった。 輸送船はデブリ宙域を脱出したのだ。 「独立派の機体、来ます!」 焦りが混じった口調でクランが言う。 「ドルダ、発進だ!」 待っていたとばかりに、ギデオンが声を上げた。 格納庫では、ヴァイス達が発進準備を進めていた。 「すまねぇ。お前に頼っちまって」 「うぅん。わたし、みんなを守るよ。お姉ちゃんの、大事な仲間だもん」 ヴァイスにそう言うと、シンシアは小さく笑って、ドルダのコックピットハッチを閉じた。 「怪我したら、モモが手当てしてあげますからね~!」 「戻るぞ。エアロックが開く。シオンもすまねぇな。手伝ってくれてよ」 ヴァイスとモモとシオンは、格納庫を出る。 「俺は別に。でも、俺と年が変わらない、あんな子を……」 言い辛そうに、シオンは口篭もらせた。 ヴァイスもモモも、その事に関しては表情を暗くさせる。 「あの子は……違うんだ」 そして、ヴァイスはろくに言葉も紡げず、そう返した。 3人と壁一枚を挟んだ向こう。格納庫のエアロックが開く。 シンシアはまたズキズキと頭を刺激する鈍痛に耐えながら、ドルダを輸送船から発進させた。 ドルダに乗ると、頭痛が走る。 この機体に自分の無くした記憶に関する鍵があるのか。 「私は、なんなの」 凍てつくほど冷たく、シンシアは呟く。 だが、そんな自分にハッとする。 こんな冷たいような言い方、皆やクランがいる前ではしなかったのに。 シンシアは首を振り、モニターを見据える。 「…………来た」 思考の中に直接、機体が接近してくることが伝えられる。 これがドルダの能力なのは、或いは自分にそのような力があるのか。また別の何かか。 わからないまま、シンシアは戦いを始める。 「やはり戦う気か。良いねぇ。喧嘩っ早くて」 そんなシンシアとドルダに対して、マイケルとディランの駆る2機のローズが迫る。 「一度手を合わせただけだけど、模擬戦で僕を敗かせたニコラス・スウィフト君を唸らせたモビルスーツ。 実に興味があるね。いや、羨望に近いかもしれない。その力があれば、生きることがもっと楽になるよ」 戦うことが生きること。 生きる目的。 そう考えるマイケルにとっては、ドルダという機体は魅力的なのかもしれない。 「ディラン、相手はビームが効かないから、気を付けるようにね」 『了解』 速度を上げ、ドルダに一気に近付く。 「さぁ始めようか。生きるための戦いを!」 2機はレイピアを抜き、ドルダに攻撃を仕掛ける。 「速い!」 レイピアによる攻撃も、機体の動きも。 シンシアは間一髪でそれを避け、間合いを取ろうと後退した。 「駄目だねぇ! 敵に後ろを見せちゃ!」 嬉しそうに、マイケルが言った。 そのまま接近し、ドルダの背部に蹴りの一撃を加える。 一瞬の激しい揺れに襲われるドルダ。 「あくっ……なに!? ろくな攻撃を与えず、こちらを挑発してるの!?」 直ぐ様向き合い、マニピュレーターからビームを発生させ固定する。 そして、マイケルのローズに斬りかかった。 「おっと危ない! ビームを固定するとはね。聞いていた通りこちらを凌駕する技術力だ!」 相手の行動を見ながら、余裕をもって機体を動かす。 飄々とした口調は、実力を伴ってのもの。 戦うことを生きる糧とし、それを楽しみとした男の、 何度も死線を掻い潜った経験からくるものであった。 「ディラン、そろそろアレを使うよ」 『わかった』 ドルダから距離を取る2機。 ローズの肩部のハードポイントに付けられた空のウェポンラックが開く。 否、正確には空、であった。 ビームライフルとレイピア。これが標準装備であるローズ。 後々追加される武装のため、各所にハードポイントが設置されているのである。 そんなハードポイントに付けられたウェポンラックの中には…… 「あぁぁぁ!!」 ドルダに何かがぶつかっていく。 一度ではなく、何度も連続して機体に衝突した。 「うっ、これは……デブリ?」 ドルダの周りに散らばる、機械や何かの装甲と思われる物の残骸。小型のデブリだった。 それが、ドルダに命中していく。 「君達がデブリを利用したように、僕達もデブリを利用させてもらったよ」 ビームが効かない相手。 接近すれば固定した剣状のビームに攻撃される。 そして一時でも攻撃する間を与えれば、 「この……いたぶってえええ!!」 腹部のビーム発射口が開く。 「広域ビームが来るぞ! 奴の後ろに回るんだ!」 いち早くそれを察し、マイケルは声を上げた。 「くっ……!」 その指示に反応し、ディランは機体を旋回される。 直後、ドルダの腹部からビームが放たれた。 辺りのデブリが薙ぎ払われていく。 その圧倒的な破壊力に、ドルダに背後に回り込んだマイケルもディランも圧巻される。 「これは……喰らってたらオダブツかな」 『隊長、相手は疲弊している。一気に畳みかける』 ディランのローズが、再びレイピアを抜いた。 「待つんだ!」 マイケルの焦った声。 それに反応したディランは機体を制止させる。 ディランのローズの目の前を、ビームの一閃が掠めた。 「これは、輸送船からか!」 ディランはカメラを遠方に位置する輸送船に向ける。 「なんとか……撃てたぜ……」 全身に汗をかきながら、ヴァイスが呟いた。 開いた格納庫のハッチから乗り出したローズが、ビームライフルを構えている。 「奴等め……!」 『ディラン。やめるんだ』 「何故だ隊長!?」 『僕が止めなきゃ。君は死んでた』 「!!」 マイケルの言葉に、ディランは絶句する。 「火星調査隊の諸君。今日は素直に敗けを認めよう」 苦笑して、マイケルは言った。 そして、2機のローズは宙域を離脱していった。 「撤退、したのか?」 離れていく2機のローズを見ながら、ギデオンが言う。 「シンシア、聞こえる? 独立派はいなくなったわ。帰ってきて」 クランはドルダに通信を送った。 だが、返事がない。 回線は繋がっている。声は届いているはずだが。 「シンシア? どうかしたの?」 『ハァ……ハァ……』 「シン……シア?」 『ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……』 荒く呼吸を繰り返す少女の吐息。 クランの顔から、血の気が退いた。 (私はシンシアに……重荷を……) 胸の辺りの服をぎゅっと掴んで、クランは唇を噛んだ。 「ヴァイス。操縦が慣れない内に申し訳ないけれど、シンシアを回収してあげて」 『どうした?』 「お願い……!」 強く、切羽詰まった言い方で、クランは懇願した。 そんなクランにヴァイスはそれ以上何も言えず、黙って機体を発進させた。 ギデオンもミランダもかける言葉を探し、結局何も言えずクランの様子を見守るだけであった。 それから数時間後。 ドルダを回収した輸送船は、当初の目的通り第29コロニーに向かっていた。 「第29コロニー、見えました」 ミランダが言う。 「燃料ギリギリでしたね……」 ほっと一息ついて、微笑んでクランはギデオンを見た。 「救難信号を出せ。コロニーのほとんどが制圧されたという。一難去ってまた一難とならなければいいが」 気丈な口調だったが、不安を含むその言葉に、クランもミランダも少しばかり気が張った。 いくらドルダという強大な力を持っていても、自分達はその使い方をわかってはいない。 追撃から逃げられたが、マイケルの『所詮は一般人』という考えは、ある意味正しかったといえる。 救難信号に気付いてか、コロニーから数機のローズが出てきた。 「誘導信号を受信しました。コロニーへの収容を了解したと」 「良かった。独立の強硬派といっても、好戦的な人ばかりじゃないのね」 「まだわからんよ」 ギデオンの瞳は未だに、気丈の中に不安が混じっていた。 ローズの誘導により、輸送船がコロニー港へと着船する。 「こちらが火星から脱出してきた公社の火星調査隊であると報告したところ、離船するようにと通達が着ました」 ミランダがギデオンに顔を向ける。 ギデオンは瞼を伏せ、静かに息を吐いた。 「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」 重苦しく、そう呟く。 ギデオンは船内スピーカーのスイッチを入れた。 「皆、聞いてくれ。コロニーに到着した。船を降りるので集まってくれ」 子供達には冷静に。 微塵の不安も感じさせてはいけないと、ギデオンは思った。 そしてこれからは、その不安さえ捨てなければならない。 (私には16回の隊長職の自負と、プライドがある) ギデオンはクランとミランダと共に、操縦室を出た。 通路には、ギデオンの放送を聞いたヴァイス達が待っていた。 あれから落ち着いたシンシアは、一目散にクランに抱き付く。 命からがらコロニーを脱出してきた紫藤兄妹は、また同じような状況に二人寄り添って離れない。 (この船に乗る全員、生還させるのが私の仕事だ!) 襲ってくる者、追ってくる者。それから何としてでも逃げ、生き延びねばならない。 これは降りかかる災害。調査の延長。 任務はまだ、終わっていない。 隊を任された己だけは、完全な安全が訪れるまで、気は抜けないのだ。 ギデオンはパネルを操作し、輸送船の乗降口を開く。 その途端、開いたそこから一斉に、ライフルを構えた者達が押し寄せてくる。 ヘルガが恐怖に「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。 突き付けられる銃口に、クラン達調査隊の者は手を上げて無抵抗なのを示すしかない。 クラン達は互いを見て、何が起こっているのか確認しようとしていた。 ライフルを構え、その銃口を向けるのは、火星独立派の者とは到底思えない。 何故なら、彼等は地球圏連合軍の制服を身に纏っていたのだから。 (ここでCM。アイキャッチはホールドアップする調査隊の面々。) (CM終わり。アイキャッチは眼光鋭い謎の眼鏡美女。) 地球圏連合軍の制式ライフルを突き付けられたまま、クラン達は輸送船を降ろされた。 降り立ったコロニー港のエントランスでは、複数の兵士に取り囲まれ守られている女性士官の姿があった。 「貴様等が、救難信号を出した公社の調査隊とやらか」 眼鏡をかけたきつい目元。 口調も厳つく、他者を寄せ付けようとはしない。 「そうですが、貴殿は」 ギデオンが冷静に返す。 「私は地球圏連合軍火星方面駐留軍司令代理、メリリヴェイル・ルシェッタ大佐だ」 高圧的な態度。蔑むような眼差し。 自分の信じるもの以外、全てを拒絶しているような、そんな深い色の瞳。 彼女、メリリヴェイルに、ギデオンやクラン達調査隊は気圧され、子供達は怯えていた。 「貴様等の身元が証明されるまで、拘束させてもらう」 「待って下さい。せめて子供達だけは……」 「聞く耳を持たん!!」 ギデオンの訴えが一蹴される。 「子供達だけでは、だと? その子供達が敵のスパイではない確証がどこにある」 キッとギデオンを睨んで、低い声で言った。 その言葉は凶器と変わらない。 「そんなことあるかよ! 俺とヘルガは奴等から必死で逃げてきたんだぞ!!」 激昂したシオンの声が、エントランスに響き渡った。 反発を生むのは、当然であった。 無抵抗な弱者を一方的に責めるようなやり方に、調査隊や子供達は皆、メリリヴェイルに快い印象は持たなかった。 怒りに満ちたシオンの視線にも、メリリヴェイルは動じることはない。 静かに懐から拳銃を取り出し、シオンに向けた。 「貴様等の意見は聞かんと言った」 メリリヴェイルの行動に、ヴァイスがシオンの前に出る。 ヘルガは、シオンの腕を掴んだ。先程よりも強く寄り添う。 クランもシンシアを庇うように抱き締めた。 「私は、今ここで貴様等全員を射殺できる権限を有している」 そう一言告げ、銃をしまう。 「身の潔白を証明したいというなら、我々に従ってもらおう」 それ以上の反論は、意味がないとギデオンは理解した。 言うことを聞かなければ、自分の、部下達の身に危険が迫る。 調査隊とシンシア、難民の紫藤兄妹は、地球圏連合軍に拘束された。 数時間に渡る事情聴取。 時間が経つにつれ、ギデオンとクラン以外の者は別室に移動させられた。 恐らくは訊き出せる情報がないと判断されたのだろうと、ギデオンもクランも考えた。 そして、遂にこの二人にも、解放の時が近付いていた。 部屋に、メリリヴェイルと数名の士官が入ってくる。 「今までの無礼を詫びよう。火星調査隊の方々」 メリリヴェイルはギデオン達と対峙するように、向かい側の席に腰をかける。 相変わらず高圧的な物言いだが、その口振りからして二人は安心する。 「火星開発公社と連絡を取ったところ、君達の身元がここに証明された」 メリリヴェイルの部下が二人に書類を差し出す。 「シオン・シドー並びヘルガ・シドーも市民登録から確認が取れた」 「良かった……」 クランの口から、思わず安堵の言葉が漏れる。 「いや、まだ良くはない。クラン・リザレクター・ナギサカ副隊長」 メリリヴェイルの突き刺すような視線が、クランを襲う。 「シンシア・ナギサカ。彼女については別だ」 「あ、あの子はっ……」 「全火星コロニーの市民登録名簿に、そのような名前はなかった」 凍てつく視線に耐えられなくなったクランの目が泳ぐ。 じんわりと滲んでくる汗。 心なしか、鼓動も速まっていく気がする。 「公社から資料を取り寄せ、貴殿の過去を調べさせてもらった。 ……貴殿の家族は、テロリズム・イヤーで死亡しているな」 「デタラメですッ!!」 焦るクランが、勢い良く席を立つ。 イスが床に転がり、大きな音を立てた。 「シンシアは、あの子は、唯一無二の私の妹です!」 それはまるで、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。 そんなクランに、メリリヴェイルは不敵に、小さな笑みを浮かべた。 「まぁ、いい。土産の4機の代わりに、このことは不問としよう」 「4機?」 「そうだ。火星独立強硬派、今では火星コロニー義勇軍と名乗っている者達の人型兵器。 モビルスーツ、ローズ。そして見慣れぬもう1機のモビルスーツは我々が管理する」 聞き慣れない単語に頭を整理しながら、クランとギデオンはメリリヴェイルの言葉に耳を疑った。 確かに、輸送船に積まれていた独立派、火星コロニー義勇軍の機体は、地球圏連合軍に渡すべきであろう。 火星コロニーのほとんどを制圧したという義勇軍からコロニーを奪い返し、 ローズを自軍の機体として運用しているのだから、宝の持ち腐れにしておくのは勿体ない。 だが、ドルダは別だ。 「報告書も見せましたし、取り調べの時もお話したはずです。 あれはその火星コロニー義勇軍のモビルスーツではありません!」 ドルダを渡してはいけないと、そう直感的に思った。 あれはシンシアの、記憶を失った少女の鍵となる存在だ。 それに、あの強大な力は、地球圏連合軍にも火星コロニー義勇軍にも、渡してはいけないと思った。 「火星の地下建造物から発見されたあの機体は、火星での調査結果の生きた証拠に変わりありません」 「過去に我々の地球人類とは別の歴史が存在した、と?」 メリリヴェイルの目は、何も信じてはいなかった。 「私達はそれを地球の公社本部に持ち帰り、そしてこの計画に資金投資をした全ての国に知らせる義務があります」 ドルダがいなくなれば、シンシアは苦しまずにすむのかもしれない。 だが、記憶をなくした少女のために、ドルダは必要な存在だ。 (私は、シンシアを、あの子を……どちらも守りたい) 一度目も二度目の戦いも乗り越えたドルダなら、苦しむことはあっても、きっと死ぬことはないだろう。 それが、シンシアを守ることに繋がるのなら。 「詭弁だ! それを決めるのは貴様等ではない!」 机を叩き、メリリヴェイルは立ち上がって声を荒げた。 クランの曲げられない瞳。メリリヴェイルの折れない瞳。それがぶつかりあう。 「ドルダ。この機体は我々が頂戴しますよ」 クランとメリリヴェイルの対立に割って入る一声。 室内にいた者全員が、一斉にその声がした方向を見る。 「失礼。白熱していたようだから勝手に入らせてもらった。 俺はカナン・ラヴホールド。公社が寄越した彼等の身元引取人です」 軽く頭を下げ、落ち着いた低い声でそう告げる。 「頂戴するは、どういうことだ……!?」 「公社(うち)のお得意さんが興味を示したみたいなんですよ。 そのお得意さん、火星駐留軍にも結構な援助をしているそうで……」 「軍を脅すのか……!」 「公社は地球側。つまりあなた方の味方ですよ。司令代理殿」 自信に満ち満ちたカナンの発言。 動揺を見せたメリリヴェイルは、机についた手をゆっくりと後ろに持っていく。 「良いだろう。勝手にするがいい」 「助かります。では、マクドガル隊長、ナギサカ副隊長、参りましょう」 「あ、あぁ……」 「えぇ……」 突然の助け舟。 流されるまま、ギデオンとクランはカナンの元に行く。 そして、部屋を出た。 「お姉ちゃん!」 すると、直ぐ様シンシアがクランに抱き付いてきた。 シンシアが来た方向をクランとギデオンが見ると、ヴァイス達も通路にたむろしていた。 ヴァイス達もギデオン達に近寄ってくる。 「君達も無事で何よりだ」 「子供達はみんな寝てましたよ。モモも」 「モモは起きてましたよぉ!」 「どうだか」 膨れっ面で言い返すモモに、ヴァイスはニヤリと笑って見せた。 クランは腕の中にいるシンシアに顔を向ける。 「シンシアも寝ちゃった?」 「うん。色んなことあったから。でもクランに会えるって言われたからさっきまで待ってたの!」 「そう。でもこれから、しばらくはゆっくりできるはずよ。二人でいられる時間も多くなるわ」 クランが笑うと、シンシアも明るい笑みを返した。 あの数々な困難を乗り越えて、また揃うことができた。 クランもシンシアも、ヴァイスもモモも、少し距離を置いたミランダも、 シオンとヘルガも、皆嬉しそうに笑顔を浮かべている。 「ナギサカ君、すまなかったな。あの場面に加勢できないで」 「いえ、私も少し熱くなりすぎたかもしれません」 「私は、女性同士の言い争いが、どうも苦手でな」 「あら、奥様と不倫相手が鉢合わせなされたとか?」 図星だったのか、ギデオンは沈黙してしまった。 一斉に、ヴァイス達の笑い声が辺りを包む。 苦笑していたが、ギデオンは心に満ちる充実感に、彼等と同じように笑顔を見せた。 そんな中、ヴァイス達に追い付くように、後ろから一人の女性がやってくる。 その女性は、カナンの隣に立った。 「改めて挨拶を。俺はカナン・ラヴホールド。火星開発公社火星コロニー支部人事課所属です」 「同じく、部下のヴァニラ・ヴァニニですわ」 軽い口調で言うカナンと、丁寧に頭を下げるヴァニラ。 調査隊と同じ、火星開発公社の役員。 「ヴァニニというと、火星開発事業におけるオブザーバーのヴァニナ・ヴァニニ女史の関係者か?」 ギデオンが疑問を口にする。 「姉ですわ。姉は女性器名称と似た自身の名にとてもコンプレックスを持っておりますの。 もし会った際はファーストネームでは呼ばないでやってくださいましね……ふふっ」 ヴァニラは首を傾げつつ、茶目っ気のある笑顔でそう言った。 挨拶もそこそこに、カナンは歩き始める。 それに続くヴァニラ、ギデオン達も追った。 「公社の施設だが、あんた達に部屋を用意した。今日はゆっくり疲れを取ってくれ」 カナンは小気味良く言い、顔をギデオン達に向けた。 「明日、会ってもらわなくちゃならないからな。あんた達とあの機体を、軍から解放した人に」 ギデオン達は、公社の用意した保養施設に案内される。 カナンとヴァニラは玄関で別れ、コロニー内の支部に帰っていった。 「きゃーん! 久々のシャワータイムぅ!」 モモが嬉々として叫んだ。 女性陣は、真っ先にシャワー室を訪れていた。 「火星適応訓練のせいで、ここ最近はこうやってゆっくりとシャワーを浴びることもしてなかったわね……」 胸に温かいシャワーの水滴を当てながら、クランは体を火照らせていく。 「命の洗濯……ふう」 ミランダも満悦と言った感じで呟いた。 「ヘルガちゃんもそんな離れたところ使わないで、私の隣、使いなさい?」 端の個室で静かにシャワーを浴びていたヘルガに、クランが優しく声をかける。 「でも……」 「じゃあ私がそっちに行くわね」 クランはシャワーを止め、ヘルガのいる個室に向かった。 個室にクランが入ると、ヘルガは恥ずかしそうに顔を紅潮させて慌て始める。 そして、鎖骨辺りを手で覆い、隠した。 「そこ、どうかした?」 「いえ……別に……」 クランに訊かれ、慌てていたヘルガは急に落ち着いて、肌から手を離した。 クランは、「あっ……」と小さく驚きの声を上げる。 そこには塞がってはいるが、一目で銃で撃たれたとわかる、生々しい傷痕があった。 「もう完治はしています。テロリズム・イヤーの時に……」 「そう……」 「私の元々の家族は、ドイツに住んでたんです。右隣の家は、ESEANUの軍の偉い人で、その家の子とは仲良しだったんです」 ヘルガは、遠い目をしながら言った。 「ある日の夜、その隣の家で銃声がしました。気付いた私達一家は、窓から隣の家を見た」 「……」 「その家の人達と、仲良しだった子が、撃ち殺されてるところでした」 淡々と、ヘルガは話していく。 過去を語るヘルガの瞳は、深い深い闇を映していた。 「お父さんは警察に連絡しようと電話機へ走り、お母さんは私を抱き締めながら震えてた。 でもテロリスト達は気付いて、私達の家にもやってきた。お父さんは撃たれて、お母さんも……」 涙が浮かぶ。 「崩れゆくお母さんの隣で、私もテロリストの一人に撃たれた。 でも、撃たれどころが良かったおかげで、こうして……」 撃たれた箇所を押さえて、ヘルガは震える。 ヘルガは必死に、全てを話そうとしていた。 クランは真剣な表情で、黙ってクランの話を聞き続けた。 「助かった後、テロリストはその軍の偉い人の反対勢力で、私達は巻き込まれたと教えてもらいました」 「そして、シオン君やシオン君のお父さんの元に引き取られたのね」 「はい。父子家庭で、男しかいない二人だけの家族の中に私が飛び込んだ」 ヘルガは涙を拭い、なんとか笑顔を作ろうとした。 「初めはお互い四苦八苦してたけど……でも今は、お兄ちゃんもお父さんも、本当の家族だから」 「なら、心配ね。連れ去られたお義父さん」 「はい……」 作った笑顔も、消えていく。 クランはそんなヘルガの手をそっと掴み、自分の左手に、重ねた。 ヘルガにゆっくりと、自分の手を握らせる。 「! クランさん、これ……」 「私も同じだから。だから、絶対に独りで、抱え込まないでね」 クランはとても穏やかな表情をして、ヘルガに言う。 ヘルガは唖然としていたが、クランの言葉を受け止めて、ゆっくりと頷いた。 シャワールーム内はシャワーの水音に包まれている。 響くその音は、どんな会話も、打ち消すだろう。 一通り体を洗い終えたモモは、各自の個室を抜き足で覗きながら歩いていた。 そして、 「えいっ!」 「きゃあ!」 シンシアの声がシャワールームに響いた。 「どうしたのシンシア!? ……って、モモちゃん?」 「むむむ……これは」 「お姉ちゃん、助けてぇ!」 クランが個室に飛び込むと、モモがシンシアの胸を揉んでいたのだ。 「年はあんまり変わらなそうなのに、これは卑怯です!」 「大きい……」 モモは悔しさに声を上げ、クランと共に個室を覗き込んだヘルガは羨ましそうに呟いた。 「クッ……負けたッ」 ミランダも唇を噛んだ。 「ミランダさんまで……もう、シンシアの胸は見せ物じゃないのよ!」 「クランさんは貧乳の悩みがわからないからそういうことが言えるんですよぉ!」 「どうでもいいから手をどけてぇ!!」 シンシアが絶叫する。 束の間の平和。なのかもしれない。 火星圏では、今も尚火星コロニー義勇軍の侵攻と、駐留軍の抵抗が続いている。 戦渦の中に、彼女達はまだ身を置いているのだ。 火星で発見された謎の機体と記憶を失った少女、そしてそれに関わる者達の困難は、続く。 To Be Continued... 名前 コメント
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No. 名前 HP SP 攻撃力 防御力 魔力 敏捷性 弱点属性 耐性属性 説明 弱点ステート 無効ステート 経験値 賞金 アイテム ドロ率 場所 備考 001 赤ぷよ 144 10 19 13 17 15 氷 凶暴化した赤いぷよ。 3 12 最初の森 002 ヤムチャ 1500 55 26 15 21 19 始まりは荒野の大悪党。終わりはただのヘタレ。 40 102 最初の森 ボス 003 リアルスライム 162 10 23 16 19 19 氷 どろどろした単細胞。決してあの愛らしいDQのマスコットではない。 5 18 最初の森 004 キワミ 2600 80 28 18 27 23 フタエノキワミ、アッーー! 62 210 最初の森 ボス 005 野盗・知力25 192 25 26 18 22 22 所詮知力25脳筋。 7 18 赤ポーション 1/100 盗賊の洞窟 006 野盗・器の小さい男 186 40 23 15 22 25 嫉妬深く何より器が小さい。人としてどうかと思う。 7 16 1/100 盗賊の洞窟 007 緑ぷよ 192 25 25 20 20 20 凶暴化した緑ぷよ 6 16 1/50 盗賊の洞窟 008 本気のキワミ 3800 85 35 25 30 31 本気を出しても所詮キワミはキワミ。 80 300 盗賊の洞窟 ボス 009 鈴仙・優曇華院・イナバ 5000 85 36 23 35 34 輝夜と永琳とてゐのおもちゃ。外見のせいもあり新参ホイホイの称号を与えられる。 120 500 ボス 010 上海人形? 270 35 29 28 28 31 電 中華が誇る最先端の二足歩行ロボ。 10 23 1/200 東の塔 011 KFC 260 37 27 29 32 28 電 氷、水 主にクリスマスに活躍する人。クリスマス時期は1時間待ちは当然である。 12 21 東の塔 012 全てを吸い込む者 288 0 29 26 28 33 電 氷、水 ブラックホールにあらず。 11 25 東の塔 013 上海人形 1800 50 35 30 37 32 アリスの操る人形。実物はもふもふしている。 眠り、麻痺 35 122 東の塔 014 アリス・マーガトロイド 6000 100 42 33 39 35 友達いない。アリス・マーガロイドと間違われる。いわゆる可愛そうなキャラ。が、こいつは偽者。 202 300 東の塔 ボス 015 邪神像・M 353 60 41 32 38 38 光 闇 実質1万円するらしい。 16 33 1/125 東の森アリスの館 016 邪神像・S 335 60 44 28 35 36 光 闇 これは酷い! 17 31 青ハーブ 1/125 東の森アリスの館 017 下魔 313 100 42 30 29 35 氷、光 炎 中身はあんこらしい。 14 28 東の森アリスの館 018 スーパーヤムチャ 2000 55 48 33 35 48 どのあたりがスーパーなのか突っ込みたいプレイヤーは数知れず。 100 150 東の森 ボス 019 アリス人形 2200 100 42 33 39 35 アリスそっくりな鈍痛人形。 300 500 アリスの館 020 アリス・マーガトロイド 7000 100 58 38 62 48 友達いない。アリス・マーガロイドと間違われる。いわゆる可愛そうなキャラ。 480 300 アリスの館 ボス 021 Mr.D 9900 100 65 42 65 55 某球団のマスコットだが、球団よりマスコットの方が人気が出てしまっている。 600 500 ボス 022 ジャイアン 455 60 53 43 49 49 雑貨屋の息子ではない。 21 42 青ハーブ 1/125 東の洞窟 023 キワミマインド 453 60 51 46 51 51 未練タラタラのキワミである。 24 38 東の洞窟 024 リアルなスケルトン・T 456 50 50 42 53 48 炎 リアルすぎてぶよも強そうだ。 20 42 東の洞窟 025 水銀燈 12000 250 66 48 58 62 誇り高きローゼンメイデン第一ドール。 800 900 東の洞窟 ボス 026 紫ぷよ 502 100 63 50 56 58 凶暴化した紫ぷよ 37 52 毒消し草 1/50 南西の塔 027 武者 505 100 67 48 58 56 コロッケが好物らしい。 39 48 南西の塔 028 スプー 507 100 66 50 59 56 炎 かなり不気味である。 37 50 南西の塔 029 射命丸・文 13500 300 72 52 65 999 新聞屋。しかし、最近は色恋沙汰ばかり記事にしているのでもはやただの週刊誌化しているようだ。 1300 1150 南西の塔 ボス 030 Mr.M 9900 200 76 48 65 59 ドナルドマジックと称する記述で子どもたちに幻覚を見せる恐ろしいピエロ。 700 900 ボス 031 小町の餌 540 100 71 52 60 61 氷 炎 とてもおいしいらしい。 43 60 南西の森地下工場Ⅰ 032 中魔 563 100 74 54 62 63 氷、光 炎 中身は白あんらしい。 44 58 青ハーブ 1/125 南西の森地下工場Ⅰ 033 汎用人型決戦兵器 555 95 75 49 59 61 電 中国のネルフっぽい機関が開発したらしい歩く粗大ゴミ 45 55 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 南西の森地下工場Ⅰ 034 金糸雀 16000 300 77 56 70 68 ローゼンメイデン第二ドール。本人曰く頭脳派らしい。 1950 2000 南西の森新設の火山 ボス混乱有効 035 キワミシリーズ 2150 85 71 53 55 62 ついに量産化されてしまったキワミ。 800 300 地下工場Ⅰ 036 霧雨魔理沙 13000 650 73 55 87 96 地、風 人間の魔法使い。まだまだ本気じゃない。 2650 1000 地下工場Ⅱ ボス 037 リアルナズーリン? 599 100 76 56 64 68 ドラえもんの天敵である。 50 66 山奥の塔 038 下級妖精 612 180 77 54 70 64 電 妖精の中でも下級の能力。それでも生身の人間なら簡単にピチューンする。 54 70 山奥の塔 039 愛と勇気だけが友達 616 180 79 57 65 61 炎、氷 おなかが空いている人を見かけるとおかまいなしに自分を食わせる。 52 67 山奥の塔 040 風見幽香 16500 650 89 58 81 55 長く生きている妖怪。成り行き上戦うことになったため本気ではない。 2500 1000 山奥の塔 ボス 041 霧雨魔理沙 29000 800 78 58 88 98 地、風 人間の魔法使い。キノコマニア。 4350 2500 山奥の塔 ボス 042 霊烏路・空 38500 1250 85 63 92 100 氷、電、水 炎 特技は臨海核実験。融合分裂どんとこい!放射能汚染関係なし!でも鳥頭。 6000 3500 山奥の塔 ボス 043 バケバケ 601 100 79 59 67 67 炎、光 そこらへんに浮遊しているおばけ。かなりうっとおしい。 50 63 1/125 海底洞窟 044 キワミゴースト 611 100 77 60 68 66 炎、光 キワミシリーズが成仏できないとこうなる。 54 59 海底洞窟 045 フェアリーゴースト 605 182 77 54 74 72 炎 妖精のおばけ。 59 75 海底洞窟 046 西行寺幽々子 6000 300 83 65 83 69 炎、光 闇 1000年以上も亡霊をやってる人。でもこいつは幻影。 3850 2500 海底洞窟 047 西行寺幽々子 29000 1250 87 68 96 105 炎、光 闇 1000年以上も亡霊をやってる人。腹ペコ亡霊。いつでもどこでも食う。 4250 4400 海底洞窟 ボス 048 上魔 660 200 83 61 77 80 氷 炎 中身はうぐいすあんらしい。 59 80 1/125 新設の火山 049 中級妖精 650 350 79 58 95 88 妖精の中でも中級の能力。生身の人間はもちろん、鍛えた人間でもピチューンする。 63 79 新設の火山 050 毒パンマン 680 180 87 60 70 77 炎、氷 おなかが空いている人を見かけるとおかまいなしに自分を食わせる。 60 71 新設の火山 051 翠星石 28500 500 93 112 93 ローゼンメイデン第三ドール。実力はかなりある。 5000 6000 新設の火山 ボス狂気有効 052 エリートキワミ 4500 85 95 60 70 102 量産化されたキワミの中でも特に優秀な部類。 1500 500 新設の火山 053 八意永琳 30000 85 106 77 126 115 光、闇 何やら様子がおかしい。弾幕薄いよなにやってんの! 6000 7500 新設の火山 ボス 054 リアルみすちー?(事後) 715 200 88 66 100 93 炎、地 みすちーの成れの果て? 78 84 北西の森 055 フォレトスキワミ 800 150 96 58 72 99 炎 水、地 森での暮らしが長かったためか、身体が緑になった。 72 63 北西の森 056 決してリグルではない 703 200 92 62 91 133 炎 ただのゴキブリである。断じて蛍ではない。 79 82 北西の森 057 キワミシリーズⅡ 1500 150 97 60 74 99 HPを犠牲にして他の部分を強化したキワミ 500 500 北西の森 058 因幡てゐ 32000 255 106 81 111 119 地上の兎。外見は幼いが幻想郷ではかなりの古参。嘘と詐欺が大好き。 7000 10000 北西の森 ボス狂気有効 059 ガトチュ 918 100 103 66 85 101 元新撰組。強姦パウダーの被害者。 96 105 1/200 魔物の施設 060 悪魔 923 100 101 68 88 97 炎 こんなのに襲われたらひとたまりも無い。 95 103 オリデオコン 1/200 061 上級妖精 950 400 97 65 106 100 炎、風 地 妖精の中でも上位に部類され下級妖怪なら相手にならない。 100 112 魔物の施設 062 多々良・小傘 26000 240 112 80 119 138 炎 雷、水 元は忘れられた傘。人を驚かせるのが生きがい。 6500 9000 魔物の施設 ボス 063 カレーセット 988 100 100 66 91 112 殺さずを誓う人。 112 150 064 ポーズだけルーミア 972 100 99 68 93 138 どこをどう見てもブーン。 108 146 065 フェアリーゾンビ 945 220 95 69 115 115 炎 妖精のゾンビ 110 156 1/150 066 八意永琳 18000 85 105 75 125 122 永遠亭の影の支配者。日々、ニートクイーン輝夜を働かせようと四苦八苦している。 12000 7500 ボス 067 カースドール 995 160 98 64 94 106 炎、光 闇 呪われた人形。夜な夜な奇声を出すらしい。 115 155 068 アイスキワミ 997 154 96 62 92 100 炎 氷、水 長い雪国暮らしで肌が青くなってしまった。血流悪し。 112 150 069 ポリン 990 150 97 65 104 105 ROで一番最初にお世話になる魔物。この物語だと強い。 117 155 1/200 070 雪華綺晶 21500 250 102 66 117 115 ローゼンメイデン第七ドール。本来は実体を持たないアストラルドールであるが、この世界で実体を手に入れた。 16500 12500 ボス 071 ひろし 993 180 105 61 89 95 呪いの館に迷い込んだリーマン。 118 143 072 デビルドール 980 180 104 65 93 91 悪魔が宿るらしい人形。 113 148 073 森の精 989 300 90 65 106 97 森に住む妖精 114 149 074 蓬莱山輝夜 21000 250 703 71 115 105 永遠亭の姫。永遠のニート。 17000 10000 ボス 075 お取り寄せ 1022 100 103 69 97 119 働きたくないでござる! 123 160 1/200 076 ピラミッドの番人 1055 300 91 70 110 100 王様の趣味で妖精に守らせていたらしい。 119 155 1/200 077 墓荒し 1200 100 105 115 95 60 炎 こんなもんで乗り込んだら荒らしどころか壊れる。 120 159 078 霊烏路・空(偽者) 51000 1250 105 68 102 100 氷、雷、水 実は偽者だったため、本物より賢い。 18000 12500 ボス 079 ヒテンミツルギ 2500 200 103 72 105 122 5円引き!! 450 400 080 ロイヤルキワミ 2200 150 106 78 74 115 キワミシリーズで優秀なキワミ。 450 400 081 ナイトマジシャン 70000 3500 111 79 123 115 闇 パチュリーの忠実な僕。ただし中二病。ちょっと気がふれている。 5500 12500 ボス 082 量産型門番 1455 150 112 71 113 123 門番さんの量産型。元が元だけによく寝てサボる。 155 190 083 非想天則? 1438 150 117 67 109 117 どうみても中国製。 148 186 084 最上魔 1459 150 116 69 115 114 氷、水 炎 中身は白あんらしい。 153 183 085 最上級妖精 1350 950 105 60 133 116 妖精の最上位。 160 146 086 雪華綺晶 55000 2800 116 70 133 120 ローゼンメイデン第七ドール。本来は実態を持たないアストラルドールであるが、この世界では実態を手に入れた。そしてついに本気を出した。 45000 38500 ボス 087 マウントキワミ 1725 150 121 83 90 119 山に特化したキワミ 199 202 088 山の精霊 1660 1300 110 70 145 118 炎 山を守っている精霊。 188 179 1/200 089 箱根駅伝5区担当 1669 150 123 88 84 177 山をかける童子?将来は箱根駅伝5区を走りたいらしい。 192 208 090 死神 18500 1500 143 90 166 115 闇 死を裁く神。何故地上にいるのか不明。 10000 10000 091 東風谷早苗 55000 1500 144 96 183 155 水 霊夢の2Pカラーだのルイージだの酷い言われよう。だが、霊夢より人気がある? 30000 32000 ボス 092 量産型門番弐式 1985 330 132 92 118 132 門番さんの量産型の改良型。でも元が元だけに… 225 233 093 ナイトメア 2033 280 128 84 124 140 光 闇 悪魔の馬。ゲフェンダンジョンによく沸く。 232 222 094 EXひろし 1956 220 133 85 105 122 スタイリッシュになった。 226 295 095 フランドール 58000 2200 166 100 172 145 レミリアの妹。理性を失うとこんな感じか。 38000 70000 ボス 096 ゴンズ 5000 330 53 70 52 62 光、闇 魔界から召喚された雑魚 0 0 097 ジャミ 5000 330 47 42 56 55 光、闇 魔界から召喚された雑魚 0 0 098 ドラゴン 2370 400 140 97 135 151 氷、水 炎 ファンタジーの王道。 290 300 099 ダークマージ 2200 1050 130 92 159 148 氷、水 炎 悪魔に魂を売った人間の魔法使い。 295 288 1/200 100 ダンジョンキワミ 2210 150 141 90 120 132 ダンジョンに特化したキワミ 270 255 101 キラーマシン 2250 150 143 92 125 139 こいつに殺されたら死んでも死に切れない。 278 292 オリデオコン 1/150,1/100 102 ヤムチャ 9500 400 132 95 145 139 所詮ヤムチャ。もはや素質の問題だろう。 即死 5000 2500 103 真紅 68000 2000 156 100 202 173 ローゼンメイデン第五ドール。主人公なのだが水銀燈や翠星石の方が人気があり不人気と呼ばれてしまう。 42000 40000 ボス 104 量産型門番参式 3870 800 156 112 178 168 どうあっても門番は門番。 335 402 白ポーション 1/200 105 量産型う詐欺 3750 800 159 116 174 183 量産された詐欺兎 372 359 106 ひまわり妖精 3600 1350 152 108 189 178 ひまわりを持った妖精。 325 379 青ポーション 1/200 107 パチュリーガードキワミ 3770 900 159 109 174 166 パチュリーの肉壁。 342 396 108 ヤムチャ 17000 400 132 95 145 139 二人になってもヤムチャはヤムチャ。 即死 5000 2500 109 νキワミ 3850 900 165 118 185 173 新型のキワミ 358 410 110 キャーイクサーン 3847 915 162 116 190 179 雷、水 幽々子の食材2号にされてしまいそうな感じがする。 365 419 111 ヤムチャ 31000 400 175 18 15 999 死にすぎた結果がこれだよ! 12500 5000 112 翠星石 66000 500 173 115 202 175 ローゼンメイデン第三ドール。実力はかなりある。前回よりパワーアップした。 40000 35000 ボス 113 風見幽香 95000 3000 210 123 190 215 本気を出したゆうかりん。 50000 45000 ボス 114 のうかりん 3890 800 166 115 185 172 ゆうかりんにあらず。 370 410 1/200 115 フランドール 220000 3000 208 118 200 175 炎、光 紅魔城伝説のフランドールさらに本家のフランドールと配合されむりげーになった。 50000 60000 ボス 116 金糸雀 56000 1000 182 115 193 178 実力を出したはいいが相手が悪かったようだ。 35000 30000 ボス 117 量産型アル中 3870 800 172 110 182 168 一応ラスボスではあるがカリスマという次元で語られたことはない。 377 418 1/200 118 ゴリアテ 190000 3000 215 153 200 150 雷 アリスが作った試作品。 49000 50000 ボス 119 CCO 5200 1000 185 135 192 183 炎 全身包帯男。「燃え尽きたぜ、真っ黒に」 395 601 1/200 120 地を這う門番 4990 1000 180 139 188 193 うぞうぞ… 390 588 超モルヒネ 1/200 121 量産型みょん 5400 1000 188 133 180 186 みょーん!! 388 585 122 ファイナルキワミ 5150 900 178 135 185 192 最後のキワミ 400 650 1/200 123 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 イグドラシルの種 1/1 124 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 イグドラシルの実 1/1 125 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 超・モルヒネ 1/1 126 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 青ポーション 1/1 127 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 白ポーション 1/1 128 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 エルニウム 1/1 129 キワミ・ザ・レインボー 3800 900 155 115 150 175 七色のキワミ 3000 5000 オリデオコン 1/1 130 パチュリー・ノーレッジ 330000 5000 245 150 248 180 ダークソウルに乗っとられかけているパチュリー。理性があったりなかったり。 85000 300000 ボス 131 ジ・エンド・オブ・キワミ 7800 900 185 147 198 215 本当の最後のキワミ 615 700 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 132 量産型門番最終形態 7850 900 196 155 191 218 最後の門番 625 700 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 133 ゾフィー 7650 2200 190 145 221 215 炎、光 妖精の幽霊 650 695 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/158 134 量産型桶 7500 900 190 160 193 205 Tomak・・・ではない。 628 695 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 135 量産型有頂天 7690 900 193 163 190 200 有頂天。 640 900 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 136 量産型さぼり魔 7900 900 202 166 182 192 隙あらばサボる。 636 690 オリデオコン、エルニウム 1/200,1/200 137 小悪魔 230000 5000 235 161 241 210 図書館の司書。公式設定があまり無い事をいいことにうp主が好き勝手に設定した結果がこれだよ! 70000 200000 ボス 138 ヤムチャ 10000 400 190 142 178 166 最後もヤムチャもヤムチャであった。 即死 8500 10000 139 ヤムチャ 60000 400 190 142 178 166 最後もヤムチャもヤムチャであった。 即死 8500 10000 140 量産型ゴリアテ 11800 3000 210 159 223 180 雷 アリスが作った試作品を完成させ量産化したもの。本家より性能はだいぶ劣る。 920 1250 オリデオコン、エルニウム 1/30,1/30 141 ファーストフード店の主 12800 1500 220 166 210 195 ドナルドマジックと称する奇術で子供達に幻想を見せる恐ろしいピエロ。 1020 1140 青ポーション、エルニウム 1/40,1/50 142 ナゴヤドームの主 11500 1000 216 155 216 188 某球団のマスコットだが、球団よりマスコットの方が人気が出てしまっている。 990 873 超モルヒネ、オリデオコン 1/50,1/60 143 エクストラキワミ 13000 900 212 175 211 215 EXキワミ 980 889 オリデオコン、エルニウム 1/30,1/30 144 死神 105000 1500 240 160 218 220 闇 死を裁く神。小町の同僚ではないらしい。 30000 35000 145 ナズーリン 250000 5000 230 170 250 252 宝探しが得意なねずみ。同志ナズーリン!地球は青かった! 80000 400000 バスタードチルノソード 1/1 ボス 146 スーパーヤムチャ 350000 400 312 1 1 1 最後もヤムチャはヤムチャであった。 即死 12500 10000 147 姫海棠はたて 420000 7000 282 200 322 300 文のライバル。よくほたてと間違えられる。 200000 900000 ボス 148 霧雨魔理沙EX 290000 8000 280 258 550 355 強化版魔理沙 125000 210000 おまけ 149 西行寺幽々子EX 320000 5500 478 312 455 205 強化版幽々子 125000 200000 おまけ 150 霊烏路・空EX 288000 3250 502 225 400 215 炎 強化版お空 125000 200000 おまけ 151 フランドールEX 410000 2200 498 210 422 235 強化版フランドール 125000 200000 おまけ 152 多々良小傘EX 380000 3200 502 302 498 275 強化版小傘 125000 230000 おまけ 153 グランドマスターキワミ 22500 900 315 287 302 253 最強最悪のキワミ 2250 1350 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 154 超級妖精 17000 2200 288 265 520 275 最強の妖精 2300 1200 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 155 パチュリーソウル 24500 2200 305 275 488 238 パチュリーの魂っぽいもの 2180 1500 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 156 フランちゃんウフフ 26600 1000 535 280 310 263 やはり量産化されていた 2400 1660 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 おまけ 157 レミリアHyper 410000 7500 498 210 422 235 レミリアのコピー 125000 200000 ディスティニー 1/1 おまけ 158 アリスHyper 455000 7000 470 202 498 238 アリスのコピー 140000 200000 フェイト 1/1 おまけ 159 古明地さとり 350000 5500 445 220 515 315 本編では全く出番が無かった。 99000 100000 インフィニティ 1/1 おまけ 160 古明地こいし 328000 5500 622 235 420 250 本編では全く出番が無かった。 99000 100000 メビウス 1/1 おまけ 161 ヤムチャ総集編 160000 3550 355 302 300 999 最後もヤムチャはヤムチャであった。 12800 22000 ヤムチャの証 1/1 おまけ 162 早苗Hyper 400000 7000 560 310 202 288 早苗のコピー 133000 100000 ジェノサイド 1/1 おまけ 163 風見幽香 600000 7000 580 380 490 300 これぞラストバトル100%の力を出した。 200000 100000 164 アリス(嫁補修) 915000 7000 740 350 715 325 ここまで来るともはやうp主の趣味以外のなにものでない。 500000 2000000 165 うどんげシリーズ 31000 2500 487 290 502 269 いつの間にか量産されていた鈴仙。 3650 3220 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 166 ゴッドキワミ 32650 1500 517 312 415 260 ついに神化した 3300 3250 オリデオコン、エルニウム 1/15,1/15 167 さとりソウル 34800 5500 480 300 530 290 さとりの魂のようなもの 4125 3280 168 こいしソウル 35000 5500 548 256 560 250 こいしの魂のようなもの 4100 3958 169 レミリアシリーズ 34250 7500 522 273 422 278 レミリアのコピーのシリーズ化。 4000 3290 イグドラシルの実 1/1 170 早苗シリーズ 33900 7000 482 250 485 271 早苗のコピー 3950 4012 171 八意永琳 358000 4500 589 450 613 489 永遠亭の影の支配者。日々、ニートクイーン輝夜を働かせようと四苦八苦している。ルナティックダンジョンでついに出番が回ってきた。 115000 28900 172 蓬莱山輝夜 319000 3800 652 438 670 422 永遠亭の姫。永遠のニート。蓬莱ニート。 125000 10000 173 鈴仙・優曇華院・イナバ 448000 5200 635 450 615 453 鈴仙の偽者。本編で登場予定であったが没になったためここで出て来ることになった。 160000 25800 174 フランドール 530000 6000 672 480 650 470 本物のフランドール。 180000 30000 175 風見幽香シリーズ 52500 2800 580 380 490 365 ゆうかりんの偽者 6200 3500 176 ナズーリンシリーズ 53000 5000 560 390 480 445 ナズーリンの偽者。 6000 3280 177 キワミ総集編 56000 1500 550 385 480 402 全てのキワミ 6380 3950 1/15,1/15 178 パチュリーシリーズ 62500 2200 450 388 688 398 パチュリーの偽者 6870 4520 起死回生の札、イグドラシルの実 1/15,1/3 179 薔薇水晶 560000 8000 650 470 660 480 TBSメイデン。原作には出てこない。チルノRPGでは本編で登場予定であったが雪華綺晶を仲間にする都合上没キャラとなってしまった。 210000 40000 180 霊烏路・空 600000 8000 710 400 600 425 没仕様の本物の空。没時より約10倍強くなっている。 245000 60000 181 アドベントチルノ 750000 9999 750 450 815 485 あたいったらさいきょーね! 550000 100000 182 ナインボール・チルノ 940000 9999 910 350 912 745 あたいったらさいきょーね! 800000 0 No. 名前 HP SP 攻撃力 防御力 魔力 敏捷性 弱点属性 耐性属性 説明 弱点ステート 無効ステート 経験値 賞金 アイテム ドロ率 場所 備考 どうやらVer2.51が何度か配信されていたようで、12/30までに配信されたデータは修正されていたのでそちらの方を乗せておいた。
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どのくらいこうしているのだろうか。 俺は今、山道を歩いている。 念願だった幻想郷への到達は、思ったより簡単だった。……ってか、散歩してたら目の前にスキマが。 ゆかりんありがとう、と心中で呟きながら――――それでも延々と歩き続けることに辟易しながら、道なき道を歩く。 当たり前のことだが、ここは虫が多い……。 ぷぅん、と耳障りな羽音を立てて近寄ってきた蚊を首筋に叩きつけながら、なおも里を目指そうと一歩踏み出して…… 「ちょっとアンタ! 今私の同族殺したでしょ!?」 と、いきなり飛び蹴りを食らった。 「痛っ――たぁぁぁぁ!? ……ん、りぐるん? うわ、本物だ」 目の前にいるマントを羽織り、どことなく少年のような溌剌とした印象を受けるその少女は、正しく「闇に蠢く光の蟲」こと、リグル・ナイトバグその人であった。 「ん? なんで私の――って、幻想郷縁起でも読んだのね? ……それならなおさら、私の目の前で虫を殺すなんていい度胸じゃないの」 殺意のこもった視線で、こちらを見つめてくる。……なんだか、下手なことを言った瞬間、殺されて虫の餌にされそうな……。 「い、いや、待て待て。こちらにも言い分はあるぞ! ほら、あれだ! 刺されたら痒いじゃないか!」 あ、やべ。 「……へぇ、子孫を残すために、あの子たちには血が必要だってのに、あんたはそんなに身勝手なこと言うんだ~」 そう言いながらこっちににじり寄ってくるリグル。ここからは見えないけれど、側にいるらしき蚊たちに「今たっぷり飲ませてあげるからね~♪」と微笑みかけている。 「吸わせてあげる」じゃなくて「飲ませてあげる」と言ってるあたり、本気で拙い。 「あ、ああ、子孫のために俺の血液を提供するのは別にいいんだ、うん。さっきのは単に『痒いのが嫌だなー』って言っただけでな、まあ、その」 そう俺が口走ると、リグルは何かを思案するかのように小首をかしげた。 ……あ、その仕草可愛い。 そして、何か思いついたような顔をしたと思ったら、「えい!」と体当たりをされた。 仰向けに転ぶ俺。……と、リグルは勢いそのままに、馬乗りになってのしかかってきた。 「なるほど、痒いのが嫌なだけなら、こうすればいいのよね」 リグルはそう言うと、馬乗りの体勢からさらに体を倒してきた。近づく顔と顔。 それがさらに近づき、やがて交差して……首筋に鈍痛。 「ぐっ……」 「ほあ、うおあふぁいお(こら、動かないの)」 そのままの体勢で数秒、やっと俺は、リグルが何をしているのか気付いた。 「……吸血?」 「うん」 ちゅーちゅーと、まるで花の蜜を吸うかのように、俺の血液を奪っていくリグル。 ……美味しいのだろうか、喉をこくこくと鳴らしながら味わっている。 「……まだ、か?」 「おうひょっほ(もうちょっと)」 どうやら、死に至るほどの量を奪われることはなさそうだった。 ひりひりした痛みと共に、リグルの吐息が首筋に感じられて、何だか背筋がゾクゾクする。 ……やがて、最後にぺろりと傷口を舐めた後、リグルは口を離した。 「ごちそうさまでした♪」 そう朗らかに言うと、身軽な動きで俺から飛びのいた。 やっと体を開放された俺も、よっこいしょ、と難儀そうに立ち上がるが、貧血になるほど血液は奪われていないようだった。 「……お粗末さまでした」 「うんうん、ありがとう、助かったよ。 これでこの子達も助かりそう」 「後で分けてあげるからね~♪」と中空を見上げてリグルは言う。 「あ、そうだ、お礼に里までの道、教えてあげるね」 と、俺の手を引いて歩いていく。 その申し出は、素直にありがたく思う。リグルに出会った以上、ここは間違いなく幻想郷であるわけで、そうなると、道中で人食いの妖怪に遭遇する可能性もあるということだ。 目の前の小さな虫姫さまにエスコートされ、やがて俺は里の外れにたどり着くことが出来た。 「ありがとう、リグル。 助かったよ」 「いいのよ、さっきも言ったでしょ? これはお礼だって」 あれっぽっちの血液で安全に里までたどり着けるのなら、安いものだった。 だからだろうか、こんなことを口走っていた。 「……俺に出来ることなら、何でも協力するよ」 「え、いいの……?」 今度は唇に人差し指をあてるポーズで考え込むリグル。 言わずもがな、可愛い。 「正直に言うとね、もっと欲しかったところなのよ」 ……一思いに吸い尽くされなかったのは、矮躯ゆえに貯蔵できる量が限られているからか。 「だから、さ……溜まったら、また私の所に来て♪」 そう、妖しく微笑むと、森の中へと飛び去っていってしまった。 残された俺は、しばらく里の方へと歩き出しもせず、呆然と森の方へ目を向けていた。 首筋には、心地よい痺れを残す、傷痕がある――――。 6スレ目 760-761 ────────────────────────────────────────────────────────────── 「・・・・・・来たな」 この感じはあいつしかいない。 俺は近くに落ちていた手頃な石を持ち、気配を探る。 体中で警報が鳴り響く。これ以上接近されるとマズイ。 全神経を集中し気配のする方向距離角度を瞬時に計算し、自称強肩の豪腕が手に持っている得物を亜音速で放つ。 「そこっ!!!」 「いたっ!!!~~~~~~~何するんだよぅ」 完璧だ。 見事なストレートで放たれた小石は標的の頭部を撃ち抜いたようだった。 ぼすんと音を立て木から落ちてきたのは、触覚に黒マントのゴk 「違う!!」 「どうでもいいよ。どうせ同じ蟲だろ」 「どうでもよくないっ!!」 頬を膨らませ必死で訂正を求めてくるのは小粒な妖怪、リグル・ナイトバグだ。 「で、どうした? 朝蜘蛛なら SA・THU・GA・I したが」 「この外道!! 朝蜘蛛は縁起がいいんだぞ!えらいんだぞ!」 「へぇ」 「無関心!?」 全く朝から騒がしい奴。まぁ朝っぱらから森に出かける俺も変人か。 現在時刻午前⑨時過ぎ。 俺は寝起きに台所でカサカサと粘着性のある固有結界を張っていた八本足の生命体を抹殺した後、別段する事も無く暇だったので散歩をしていたところ、蟲の王リグルに見つかり現在に至った訳で。 しかも最近こういった妖怪に好かれていて困る。八目鰻屋の夜雀や宵闇の妖怪、氷精なんかもちょっかいを出してくる。何だろう・・・小物に好かれる程度の能力か。 「今日こそ君を更生させるよ!」 俺が一体何をした? 「五月蝿いな・・・前から言ってるじゃないか、それは無理だって」 「そんなことないよ。ほら、人間は慣れる生き物って言うし」 そう言いリグルは周りに虫を呼び始める。 ぶーんと蜂、ぱたぱたと蝶、がさがさと蜘蛛、もぞもぞと―――― 「駆除『燻蒸式殺虫結界』」 俺はスペルを発動させる。周りに白い煙がたち込み、虫達が見る見るうちに元気を無くしていく。 「うわぁあ!!やめて~」 じゃあやるなよ。 スペルを中断させる。ちなみにこのスペルは人体への影響は限りなく零の安心設計。 何故かリグルに追われる回数が多いので独自に開発したこのスペルカードは大成功のようだ。 「なんで・・・」 蟲達が逃げ去った後、ボソッとリグルが何か呟いた。 「ん?」 「なんでそうやって、いつも私達を苛めるの?」 リグルが拳を握り締め、顔を俯かせる。 よく見ると目には大粒のなm 「単に虫嫌い」 「言い切った!!」 まだツッ込む余裕があるらしいな。 「それに・・・いつも○○は私に近づこうともしないし」 「単に蟲嫌い。 近づくと鳥肌が立つ。頭痛吐き気発熱寒気がおこる」 「増えた!!それに風邪じゃん」 「要約すると生理的に無理。辛うじて、人間の形してるお前だと半径2メートル外までは許容範囲だ」 「・・・・・・」 なんだ黙りこくって。 流石に言い過ぎたか? 動かなくなったリグルが一瞬心配になり○○はぴったり2メートル離れた位置から顔を覗き込もうとした。 が、 「うわぁああああああ!!○○の馬鹿ぁぁあああああ!!!!!!」 「うぉあ!!危ねぇ」 突然大粒の涙と大量の弾幕を撒き散らして、リグルは視界から消えた。 「・・・やっちまったな」 ○○は弾幕によって荒地となった空間に取り残されてしまった。 * * * 「・・・何よ・・・何なのよ・・・」 ○○の場所から結構離れた泉、ここは非常に澄んだ泉でリグルのお気に入りの場所だ。 そこでリグルは水面に移る自分の顔を眺めていた。 「何もあそこまでハッキリ言わなくてもいいじゃん・・・」 私は、善意で○○に虫を好きになって欲しくて頑張っているのに。 私は、虫だけど、妖怪だけど、○○と仲良くなりたいだけなのに・・・。 私は、少しでもいいから・・・○○と・・・・・・・・・ 「・・・何考えてんだろ、私」 嫌いなものを押し付けたって、逆に嫌われちゃう。 私が馬鹿だったんだ。かえってキッパリ言ってくれて良かったかもしれない。 「あーあ。所詮片想いかぁ・・・」 とさっと仰向けに寝転がる。木漏れ日が差し込んで少しだけ気持ちよかった。 「お、いたいた」 突然、差し込んでいた木漏れ日が何者かによって遮られる。 逆光でよく解らないが、相手は箒に乗って飛んでいる。箒で飛びまわる白黒っぽい人間は一人しか思い当たらない。 「なんの用?」 「悪さをした妖怪を懲らしめに来たんだぜ」 箒から降り立った少女は、霧雨魔理沙だったのだが・・・ 「悪さなんてしてなぶぷぅwww」 気怠く起き上がったリグルの視界に入ったのは、鼻先がピエロのように赤く腫れた普通の魔法使いの姿だった。 「・・・やっぱりお前が犯人だな」 魔理沙の声には異常な程の殺気が篭っている。 「ちょっ、私は何もやって無いよ!?」 「嘘つけ!!お前が私の家に蜂を嗾けたんだ!!そうだ、そうに違いない!!!」 なんという狭視野。同朋の仕業=私かこの女は。これはチルノ並だ! 目の前の少女に色んな意味で危機感を感じつつ、リグルは後退る。 「恋する乙女を無残な姿に・・・・・・こんな顔じゃあ霊夢のとこに遊びに行けないじゃないか。 この罪は重いぜ!」 魔理沙は左手に魔力を、右手に構えた八卦炉にエネルギーを充填する。 膨大な魔力が空間を支配している中、リグルは思った。 今日は本当に、ツいてないなぁ・・・ * * * 遠くから轟音がする。どうやら弾幕勝負でもしているらしい。 上空へと視線をやると、大量の星が木々を蹂躙しているのが見えた。 だが見えるのは星だけ。その星の相手の弾幕は見えない。 「こりゃあ一方的だな」 恐らく星の方が相当な強さなのだろう。自分のいる場所まで衝撃が伝わってくる。 ・・・・・・・・・。 気が付けば自分はその場に来ていた。何となく気になっただけ。 周辺の木々は薙ぎ倒され地面は焼け跡が幾つもあり、星の弾幕の強さを物語っていた。 そして○○は、黒白のエプロンドレスの少女と、あの蟲っ娘を見つけた。 あれは・・・確か霧雨 魔理沙だったか。里で売っていた本に英雄として載っていた気がする。分かり易い格好だな。 それと・・・ボロボロじゃんあいつ。圧倒的にも程があるぞ。 リグルは相当痛めつけられたらしい。飛ぶ力も無いのか、フラフラと宙を飛んでいる。対する魔理沙はというと傷一つ無く、何やら喚きながら闘っているようだ。 英雄の妖怪退治ねぇ・・・。 そんな光景を見ていたら、何故か腹が立ってきた。 ・・・・・・・・・・・・はぁ、俺も可笑しくなったか? 弾幕も張れない、魔法も使えない、身体能力は普通の人間○○は、戦闘によって開けた空間に踏み込んだ。 * * * 「あぐっ!!」 痛い・・・。 背中から木に叩きつけられ、全体に鈍痛が響きわたる。 「・・・どうした? いつもの元気が無いな。もうギブアップなのか?」 魔理沙は木にもたれるリグルの正面に立つ。戦闘中に呼び出した使い魔は消えているが右手にはまだ八卦炉が握られている。 「・・・・・・」 なんだか元気が出ない。理不尽な理由で攻撃してきた魔理沙に対し怒りも沸かない。 先程のが余程精神に来ている。 「答えないならギブアップと取るぜ。じゃあ謝るんだ、ごめんなさいってな」 魔理沙が何を言っているのか解らない。聞いてないから当然か。 戦闘中もずっとだ。忘れようとしているのに頭からさっきの事が離れない。 好きな人に振られ、勝負にも負けるなんて最悪・・・・・・ そんな事を考えていると突然、 「おい、何か答えたらどうだ?」 「そうだぞこの野郎!!」 第三者の声が割り込んできた。 その声は朝自分を拒絶した声、ここに居るはずの無い声だった。 「やっと見つけた!! 今日と言う今日はもう許さねぇ!!!」 憤怒の形相でずんずんと距離を縮め、突然の第三者の介入に驚きっぱなしの魔理沙を通り過ぎ私の目の前にまで来た。 「なんで・・・?」 なんでここに来たの・・・私が嫌いな筈じゃない。それに言動が意味不明だ。 ○○は自身の限界だと言っていた2メートルを過ぎ、木にもたれるリグルの眼前まで到達した。 するとリグルにだけ見えるよう顔をグイッと近づけ、一転して真面目な表情になる。 その表情にドキッとしたがよく見ると額には冷や汗が、露出している肌は鳥肌が立っている。 あ、やっぱり無理してるんだ・・・。 今にも倒れそうな顔色の○○は、リグルだけに聞こえる小さな声で呟いた。 「合図したら地面を攻撃しろ」 「え?」 「え?じゃねぇ!!!」 一瞬で表情が元に戻り、怒号とさらに拳骨が飛んできた。 「きゃあ!!」 「貴様散々人の家を荒らしときやがって・・・罪の意識ってのが無いのか!? それに今度はこんな美少zぶぷぅwwwww」 さっとリグルと距離を取り魔理沙に向き直った○○は盛大に噴いた。 「・・・初見の人を笑うなんて酷いぜ」 「あ、すみませんw 確か、魔理沙さんでしたよね? 本で見ました。 兎に角、こんな可愛らしい英雄さんを見るも無残な姿に!! これは重罪だ!!」 「そ、そうだな」 魔理沙は突如現れた○○の雰囲気に圧倒されていた。現にちょっと引き気味だ。 「ではこれより、霧雨 魔理沙さんによる報復の時間とさせて頂きます」 「いや、仕返しなら十分したつもりで――――」 「生温い!!いいですか魔理沙さん、こいつのやった事は重罪です。数々の蟲を使役し私を狂気へと誘い、あまつさえ幻想の乙女達を襲撃するなんてこれは死罪だ!!そう、蟲を操るなんて能力あってはいけないんですよ。こんな凶悪な能力が存在するなんて私には考えられません!!この妖怪の手に掛れば貴女の家のあらゆる所から蟲を湧き出させカオスフィールドへ・・・嗚呼なんて恐ろしいぃぃぃ!!たかが妖怪されど妖怪。蟲達が反逆を起こす前に根源から断つのが最善策でしょう。それと話は逸れますが貴女強いんですねぇ。いやぁ惚れ惚れしましたよ。妖怪相手に一発も被弾せずに圧勝なんて流石です!できれば今度ゆっくりじっくり英雄伝でも聞きたいくらいだぁぁぁぁぁっ、それ貰ったぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!」 「へ?」 八卦炉が手から消失していた。魔理沙は○○の絶技な舌技で完全に気を抜いてしまっていた。 「さらにぃぃぃっ」 構え、照準、角度OK。システムオールグリーン。 「ん~~~~っファイア!!!!!」 振り抜かれた自称豪腕から放たれた八卦炉は亜音速で遥か遠くへと、森の何処へと消えた。 「ちょっ!? お前何して――――」 「今だ!!」 ○○から合図が出た。 「え、うん!!」 リグルの体力は○○が稼いだ時間で僅かながら回復していた。 残った力を総動員して地面に弾幕を放つ。 「うわっ!?」 先の戦闘で剥き出しとなった地面から砂塵が巻き上げられ三人の視界を覆った。 「この・・・お前!!私の八卦炉何処にやっゲホッゲホ」 「知るか馬ぁ鹿!!この黒の悪魔!主婦の敵! そら、さっさと逃げる」 「きゃっ、うわわわわわわわ!!!」 私の腕が○○に引っ張られ、軽く背負われてしまった。 うわぁ、背中広い・・・。 夢にまで見たこの感覚、思い描いていたシチュエーションとはかけ離れていたが蟲の王様の薄い胸は高鳴っていた。 そして○○の顔は土色に変わり今にも死にそうだが、魔理沙の喚き声が聞こえない場所まで蟲の王様を運びきった。 「終点だ」 「あ・・・ありがと」 人里近くまでやって来た所で、○○はリグルを降ろした。 もう少し○○の背中に居たかったが、そうすれば彼は倒れてしまうだろう。今だって相当無理をしているはずだ。 「ふぅ・・・死ぬかと思った」 リグルを降ろした事で○○の顔色は少し良くなった。 寂しい反面、ほっとする。 「ねぇ」 「ん?」 私は背中で揺られている間、ずっと気になっていた事を聞く。 「どうして、私を助けたの? さっき蟲嫌いだって言ってたのに・・・」 「・・・お前が苛められてんの見たら、なんかムシャクシャした」 それって・・・ 「勘違いするなよ。苛められてんのがお前だろうと誰であろうと助けるのが『筋』ってやつだ。 俺はその『筋』を通しただけだからな」 「私のこと、嫌いじゃない?」 「・・・・・・・・・人の形してるお前なら許容範囲。そう言ったろ」 間が空いたが、彼はそう答えてくれた。 「だが蟲は嫌いだ。絶対無理。お前なんか焼殺か氷殺されてしまえ」 「○○顔赤くなってるよ」 「は、走ったからだ!当然だろ!」 何時ものぶっきらぼうな返事ではなく、どこか歯切れが悪くなった○○の返事。 普段ツンケンなくせに受けだと弱いのか。意外意外。 私はそんな○○の一面を垣間見て、さらに彼への想いを強くした。 「おい、行くぞ」 急に○○は里へと歩き出した。 「え? 何処行くの?」 「さっき助けてやったろ。お礼に昼飯おごれ」 「ちょっ、今月ピンチなんだけど!」 「じゃあ体で払え」 「えっ・・・ま、○○がそう言うなら・・・・・・」 「やっぱ無し。蟲でまな板なんてこっちから願い下げだ」 「ひどっ!!それにまな板って、私だってちょっとはあるんだから!!」 「こっち寄んな蟲野郎!!」 「男でもないー!!」 人里へと続く道、何時もの○○とのやり取りの中、リグルは思った。 例え時間が掛っても、絶対貴方を蟲好きにしてあげるからね!! おまけ( in 里の某定食屋) リ「そういえば○○が助けてくれた時の芝居って何?」 ○「ん、あれは俺の固有結界だ」 リ「固有結界?」 ○「そう。我がソウルブラザーであり心の師である御方と比べれば、威力は足元にも及ばないがな。 そもそもこの技はある領域に達していないと発動すら困難なもので―――――――― ~以後5時間延々と続きます~ ・・・・・・・・・と言うわけだ」 リ「○○、もうお店閉まっちゃったよ」 うpろだ343 ─────────────────────────────────────────────────────────── 俺は、〇〇。とある村の一角で、科学者をやってる。 科学者と言えども大した発明品を作り出せるでもない、ただの修理屋として働いてる程度だ。 「最近は、ちょっとゴキ〇リが増えてきて困ってるのよぉ」 と言う話を小耳に聞いたので、とある自作の研究品を試すことにした。 その名も『ホイホイ四号』。 作り方は簡単、大きな箱の中央にエサを置いて、その周りが接着剤となってるモノだ。 しかし一号や二号とは違い、箱の大きさは大の大人が一人入れるほどに改良してある。 「それを家の裏に置いたらあら驚き、村中にいる大量のゴキ〇リが入ってると言う制法よ」 我ながら失敗続きが続いたので、これで終止符を打てると思いウキウキしてる。 はてさて、結果はどうなるのかな? 夜の十時、自分の成果を楽しみに『ホイホイ四号』のところに向かった。 結果から言えば、大失敗だった。 「ぼっ、僕は――Gなんかじゃない!!」 ええと……少年? 少女? どちらとも言える小柄な子どもが罠に掛かってるだけだった。 これで成功してたらこの子が凄いことになってたし、失敗でよかった。 「えぇと、これは人間のご飯じゃないから食べちゃいけないぞ。 下手したら腹壊すぞ?」 「なっ、なめないで。僕は、こう見えても蛍の妖怪なんだから!!」 頭から足元まで、じっくり眺めてみる。 「……どっから、どう見ても……ん?」 頭から、二本ほど突起が出てることに気付いた。 「どう? これで僕が妖怪であることが証明され「ちょっと失礼」 くぃ、っと突起を掴んでみた。 「ひゃぁ!?」 掴みながら、上、下、左右に動かしてみる。はずれない、本物のようだ。 「ふむ、はずれないな。本物らしい」 「あ、ぅう……解ったでしょ? はっ、放してよぉ」 しかし、頭にアロン〇ルファでくっ付けた可能性も考慮して、根元に触れてみた。 「あぅ――!!!」 根元を見るかぎり、自然に生えてきたらしい。 その他、数回に及ぶ検査の後、その子は頭を振りながら、こちらに言ってきた。 「はぁ、はぁ……わ、解ったんなら、放してよぉ!!」 顔が真っ赤なのは何故だろ? まぁ、いいか。 「しかし、これは自分から生えたのか……ってことは」 「これで、僕が蛍の妖怪だってことが証明されたでしょ?」 そんな事を言う蛍の妖怪様は、接着剤のせいで手足がからまって動けないようだ。 「……最近の妖怪は柔らかいイメージが半分で出来ているんだな」 「こう見えても、僕は虫を操る能力があるんだよ。 馬鹿な事を言ってても……いいのかな?」 はったりじゃないのは雰囲気は分かるが、 疑問が一つだけ。 「なんで、最初っから呼ばなかったんだ?」 「……えっと、だって、」 理由を話そうにも、言いにくそうだ。 妖怪らしくこちらの言い分を聞かずに襲い掛かればいいのに、律儀な奴だ。 そんな中、この場に合わない、ぐぅと言う音がした。この子のお腹から。 「あ、」 恥ずかしそうに顔を俯かせる、蛍の妖怪様。 腕が接着剤のせいでまともに動かないから、お腹を押さえられなくて困っているらしい。 やべぇ、こんなにときめいてるのに相手が男だったらどうしよう? 「要するに、だ。お腹減ったから、里に下りてきて何かを食べようとしてた訳だな?」 「――うん」 「それで、くだらない理由で人間に捕まったことを仲間に知られなかったと?」 「――うん」 本当に素直な妖怪だこと。 「俺の名は〇〇って言うんだが、人の料理くらいならば馳走できるが……いるか?」 「えっ、いいんですか!?」 そんな期待に満ちた目で見られたら、こちらとしても困るのだが。 「食べる前に、名を名乗れ。こちらも既に教えたんだぞ」 その名前で、男か女かを特定できる――!! 「あぁ、ごめん言い忘れてた。 僕の名前はリグル・ナイトバグ。よろしくね、〇〇」 やべぇ、本当に男か女かわかんねぇぞ、その名前……。 「んで、リグル。ご飯は人間のものでも食べれるのか?」 「ここで僕を馬鹿にするかのごとく、エスカルゴ出したら君の事食べちゃうけど」 うは、実はこの料理は命がけですか? 「じゃあ、食べやすいようにスープにするが、いいか?」 「うん」 今更ながら思うが……こんなに可愛い子が女の子なはずがない、よな。 「へぇ、〇〇って料理上手いんだ。以外だなぁ」 「以外は余計だ」 とか言いつつ、美味しそうに食べてもらうのは実は嬉しい。 スープを食べ終わったのか、満足気にこちらを向き、 「料理上手いけど、ずっと一人暮らししてるの? 科学者とか言うのも、変な仕事だし」 と、リグルはなんでもないかのように無邪気に聞いてきたが、俺は内心……胸が潰れるかと思った。 「スマン、ちょっとコーヒー入れてくる」 「えっ、〇〇?」 席を立ち、台所に向かう。コーヒーを二人分注ぎながら、言うのを躊躇った。 なんか、変な風に捉えられるのもアレだが――結局、正直に答えることにした。 「三年前に婚約者はいたんだがな――急に現れたスズメバチの大群に刺されて死んでしまった。お腹の子供と共に」 コーヒーを注ぐ音だけが、辺りを支配していた。 「……〇〇」 「だからと言って、そのスズメバチのことを恨んでるわけでもないんだ」 そう、自然の出来事を許容できなくて、何が人間か。 俺が許せないのは――その出来事を何も出来ずに見つめるしかなかった、自分である。 「香水を着けなければとか、黒い服を着なければとか、刺されたときの対処法とか知ってたら、あいつは死ななかったかもしれない」 だからこれ以上後悔しないためにも、知識を取り入れ、二度と俺らのような人間が出ないようにしている。 ――それが、俺が『科学者』と名乗る理由だ。 そんな事を言いつつ、コーヒーと砂糖とシロップを渡す。 「『科学者』なんて名乗る物好きは俺くらいだし、馬鹿っぽいが、結構楽しいぜ?」 お、ちょっとこのコーヒー苦すぎたかなぁ、なんてリグルに注意してやろうと(甘党と勝手に判断)、振り向いた。 リグルの顔を見て、違う言葉が出てきた。 「おぃ、なんで涙ポロポロ流してる、蛍妖怪」 「だ、だって、家にムカデが出てきた程度で僕をつけ狙う奴もいたのに、世の中にはこんな人もいるんだなぁって思ったら」 あー、蛍の妖怪ってだけで、こいつ苦労してるんだなーとコーヒーを飲みながら思った。 「それは勝手な奴だな、いつかこらしめねば」 「えっと、変な装置から出るビームで山を根こそぎ吹き飛ばしたりするよ?」 「――それは勝手な奴だな、いつかそれはダメだと遠まわしに言ってやらねば」 「意見が小さくなってるよ、〇〇……」 その後、他愛ない話をしていたが、壁に掛かった時計で時間を確認したら、既に夜の十二時だった。 「と、もうそろそろ寝る時間だな」 実はもう少し話していたいが、明日、仕事が溜まってるのだ。 「そ、そっか。そうだよね」 明らかに残念そうに、顔を曇らせるリグルを見て、自然と言葉が出てきた。 「まぁ、暇だったら家に遊びに来い、またスープ程度は奢ってやる」 ピンっ、と頭の突起が立った。あれで感情表現できるって、すげぇな。 「いいのっ!?」 「また、うちの『ホイホイ四号』に引っかかってもらっちゃ困るからな」 「えっ、あ……あはは」 顔を背けるリグル……まさか、そんなフラグを狙ってないよな? で、俺とリグルはドアの前で向き合う形になった。 「お土産に、砂糖とシロップまで貰っちゃって、すみません」 ペコリとお辞儀。どうしても、仲間の虫たちにあげたいらしい。本当に律儀な奴だ。 「後、又、ご馳走になりに着ますので。その時は、お土産ももって行きます」 「あぁ、そうしろそうしろ」 んじゃま、明日のためにも寝ますかと、布団に向かおうとし、 「ねぇ、〇〇。外見てよ」 と、腕を引っ張られて、ちょうどドアの外側で二人で仰向けに寝転ぶ形になり―― ――満点の星空と、無数の蛍たちが舞っていた。 「……」 その光景に、言葉に出来なかった。 「僕から、ご飯のお返しだよ」 綺麗だよね、とリグルは呟くが、そんな言葉程度で表していいものではない気がする。 なんか、俺が見てていいのかと思ってしまうほど、美しい――。 「このまま、寝るか」 「そうだね」 二人で笑いながら星空を見ながら、まどろみに溺れた。 「ヘックシュ」 自分のくしゃみのせいで、起きてしまった。 おぉ、寒いところで寝るのは流石にマヅかったな。 「……あれ?」 いつの間にか、俺にマントがかけられてた。 このマントは、リグルんだよな? 「くそぅ、やられたか!!」 俺の仕事を取りやがって、いつか絶対に俺の上着をお前に掛けてやるからな。 そんな事を考えてながら、時計を確認。やべ、もうすぐで開店時間だ!! 「仕事仕事……グスッ」 うぉ、鼻づまりが酷いな。 一応、風邪薬飲んでおこうか。 しかし、風邪が治る気配も見せなかった。 「ねぇ、〇〇? あんた、顔色マヅいけど大丈夫なのかい?」 「大丈夫ですよ。ちょっと夜景が綺麗なんで、外で寝ただけです……ハックシュ」 「相変わらず知識あるくせに馬鹿なんだからねぇ……待ってな、ドリンク剤持ってきてあげるから。 後、今日の仕事は休んどきな。あんたが死んじゃ、私らも困ってしまう」 ご迷惑かけます、と礼を言っておいた。 「されど、研究とか以外にやることがない俺だったわけだ」 だから『ホイホイ五号』の製作に取り掛かってるが、何をどうするべきだろう? ――エサの強化か? 「リグルが引っかかるくらいだから、それは大丈夫だろう」 ふむふむとドリンク剤を摂取しながら考え、 「誰が、引っかかったって?」 後ろにリグルが腕を組んで立っていた。 むすっ、と不機嫌なご様子。 「ん? どっかの蛍の妖怪の話だが、リグルだなんて一言も言ってないぞ?」 「さっき言ってたの聞こえたんだけど?」 うは、バレてたようだ。クシュン。 「――あー、すまんな。と、それよりも七時に来るなんて、結構早いんだな」 「〇〇のために集会早く終わらせた……じゃなくて、顔赤いけど大丈夫なの〇〇?」 「軽い風邪だ、別段体に障る程度でもないし、『ホイホイ五号』の製作に取り掛かってる」 「その件だけど、ここの里のゴキ〇リは全て退去させたけど」 ……あれ? 「虫を操る能力は、そこまで凄いのか?」 「〇〇は、僕を馬鹿にしてたの? 下位の妖怪でも、これくらいは出来るよ」 ため息をつかれた。いや、待てよ、だったら…… 「今まで作った、『ホイホイ一~四号』の意味が無いのでは!?」 うぁー、八クシュン、結構時間かけちまったんだがなぁ。また違う機械をつくりゃいいか。 「いや、だって……『四号』がなかったら、〇〇に会えなかったし……」 「んぁ? あー、マヅいな鼻声になってきた。で、なんて言ったか聞こえなかったから、もう一回頼む」 「~~っ!! だから、風邪なのにそれを作ってても大丈夫なのって、僕は聞いたの!!」 何故、そんなに顔を赤くさせて怒るんだ? 「病は気からってな。『自分は病気にかかってる』って考えてたら、治るもんも治らんだろう? 要は『自分はいつもと変わらない』と考えて行動するんだ。そしたら、いつの間にか治ってる」 ふふん、と自分の意見に自信満々で……あれ、馬鹿な奴を見るような視線を向けられてるぞ、俺。 「病人は病人らしく、布団で――」 Yシャツを前から力いっぱい引っ張ったらしいが、あまりの体重差で動かないらしい。 「……」 「……いゃん、えっち。クシュン」 「……布団に入りなさい」 「ヤダ」 数秒間の睨み合いが、続いた。 そしてリグルから目をはずして、こう呟いた。 「解った。布団に入らないなら、退去させたゴキ〇リを一挙にここに集結させ 言い切る前に布団に飛び込んだ。 負けた気がしたが、本当にされるよりはましだ。 「それで、〇〇。夕ご飯は何食べたの?」 「いや、ドリンク剤で済ました」 「――それじゃ、体を壊しちゃうよ」 「いつものことだから気にするな」 と、スープを作ってあげなきゃなと思いついて、ベッドから出ようとした。 そんな俺の目にエプロンを付けたリグルが目に入った。 「ちょっ、待てリグル。お前、料理できるのか――!?」 「なんでそこまで驚くのさ?」 呆れたようにと言うより、不満げにこちらに振り向き、 「僕だって、嫁修行くらいはしてます。妖怪だからって、馬鹿にしないでよ……もぅ」 俺は愕然としながら、その言葉を聞いていた。 女の子――だったんだ、こんなに可愛いくせに……!! 「? 〇〇、なんでガッツポーズ取ってるの?」 「いや、俺は今になって世界の真理を全て知った気がしたんだ」 可愛い奴が全員女の子じゃないと言う保障はないんだ――!! 「……? まぁ、冷蔵庫見せてもらうよ」 と、出来上がった料理を見て、正直に思った。 絶対に、こいつは女の子だという確信が出来たんだぜ。風邪になって、本当に良かったんだぜ……。 「一人で盛り上がってる時にこれを言うのは、あれなんだけど味に自信ないよ?」 何も言わずに肉じゃがをパクり――ん、肉じゃがだと? もしゃもしゃと、口で咀嚼しながら考える。ゴックン。 「美味いのだが、一言だけ。深い意味は無いよな?」 「なっ、無いよ!! もちろん、普通に食べて欲しかっただけだから」 こちらの誤解だったか、良かった良かった。 いや、深い意味で物言われたら、家の 「でも、この家のコンロって電気から熱を起こす物で助かったんだけど、電力はどっから供給するの?」 あぁ、やはり妖怪といえども蛍だからな、火は怖いのか。 「電力? そんなの簡単に作れるじゃないか」 「えっ、香林堂の人が簡単には作れないって――」 これがそんなに難しいかなと思いつつ、隣の部屋を開けた。 ネズミが一匹、回し車の上で上からぶら下がったチーズを追っかけてた。 「あの、〇〇?」 「一匹だけで家の電力を全て補ってくれるから、このシステムは画期的だよな」 「これは、どこのカンタ〇ロボ?」 「なんだ、それ?」 あまり興味がなさそうなので、部屋を閉めた。 「だったら、こちらからも質問」 「何?」 「リグルは火が怖いんだよな」 「――ま、まぁね」 「だったら、以前はどうやって嫁修行とかってやったんだ?」 「えっ、と……それは、内緒」 俺の予想では、蛍の発光部位が熱を持っているのかと思ったが、違うらしい。 電気による発光と比べて、かなりの効率がいいらしく熱はあまり持たないらしい。 ――まじめにどうやって料理してるんだろう、こいつ。 熱が下がってきたかなぁと思い、質問してみた。 「そろそろ治ったから、布団から出てもいいか?」 「君はどっかの駄々っ子? 風邪引いたんなら寝てなさい」 と、頭にタオルをのせられた。 ――過保護すぎる気がするが、いやではないな。 それにしても、さっきから思ってたのだがこいつは妖怪にしてくのは惜しいくらいお嫁さん気質だな。 「ゴホン……え、えっと、そろそろ帰ろうかな?」 時間は11時か、なんか寂しい気がするが、あちらにも事情があるのだろう。 「やはり、集会とかあるのか? マントは洗濯しといたから、外に行けばかかってる。 また、遊びに来いよ」 ……あれ? なんか不安そうな顔をしてますが。 「呼び止めて、くれないんだ」 か細い声で、そんなことを言われたら――かなり困る。 うpろだ419・420 ─────────────────────────────────────────────────────────── すこし薄暗い部屋の中。 あえて言うなら、自分の部屋だ。 中には気持ちの悪い虫から、これは虫なのか?と思えるほど美しい虫がケースの中で溢れかえっている。 これらはとあるお方のおかげで外の世界から持ち出すことに成功した。 その部屋の中に自分と、ふんわりした緑色の髪の少女がいた。 ―ほら…綺麗だろ? これはオアシスアゲハという蝶で、お気に入りなんだ。 ひらひらと綺麗な緑色の羽を羽ばたかせる蝶を少女に見せた。 「わぁ~…すごく綺麗…」 ショーケースに納められた宝石を見つめるかのように、少女は黒い2本の触角をそわそわ動かしながら見とれる。 「…ねぇ○○。 私とその蝶…どっちが素敵?」 隣からもどかしげに訊いている。 ―もちろん、リグル。 …君のほうさ。 そういいながら、少女―リグルの頭をやさしくなでた。 「ひゃぅっ…、あんまりなでないでよぉ」 リグルは顔を赤くして、抱きついた。 あぁ、どうして君は虫以外見る目の無かった自分をこんなにも魅力させるんだい? こんなにも愛しいなんて――― ―――少女に出会ったのはおよそ3ヶ月前。 その時の自分は虫を事しか一切興味の無い、ダメ人間だった。 大学を考え始める高校生3年生なのに、成績は理科(生物)意外、もっぱらダメで、友達はおろか、全ての人との関わりを隔離していた。 別に人付き合いが苦手ではない。 しかし、虫に関する話をしてくれないのが嫌で堪らなかっただけである。 幼い時から虫を捕まえ、飼育するのが趣味で周りから畏敬と軽蔑の両方の意味を込めて「ファーブルの生まれ変わり」と呼ばれていた。 始業式が終わると同時に学校を抜け出した自分は虫取り網を片手に、山へ駆け出した。 その日から自分の人生はさらにずれ、外れて、変わり果てていった。 お気に入りの場所で虫の採取をしていると、今まで見た事も無い、瑠璃色の玉虫を見つけた。 その虫が森の中に逃げ込んだとき、自分の視界はその虫に釘付けになり、心は捕まえたいと言う気持ちで満たされてしまった。 網を振り回し、全力で追いかけた。 それをあざ笑うかのように逃げる玉虫。 そして、何かに躓いた瞬間、中に半回転し、地面に後頭部がぶつかり、それでも転がり、深い闇に落ちて―。 気がついたときは夜だった。 満月が照らし出し、周りは見た事も無い森の中を視界に映らせていた。 ―…見た事も無いところだな。 ここは一体…? とりあえず体を動かそうとしたが、全く動かない。 先ほどの後頭部直撃で体が麻痺したのだろうか? いや、それは違った。 視点を体のほうに向けると、白い糸が惜しみなく体中に巻かれていた。 「あら、お目覚めのようね」 突然の少女の声を聞いた自分は、視点を前に戻した。 そこには緑色のショートヘアーの少女がいた。 いや、一目見たときは少年のように見えたが、よく見れば、僅かばかり胸があり、体つきに丸みが帯びてたのがわかったので、少女であることを知ることが出来た。 少女はうっすらと笑みを浮かべながら、唐突な死の宣告を告げられた。 「外の世界の人間であるあなたに悪いけれど、蟲達の養分になって、死んでもらうわ」 そういうなり、少女の周りには無数の黒い『蟲』が、その隣には大きな蜘蛛が現れた。 見た事も無い虫に思わず見とれてしまった。 …それにしても、あまりに唐突である。 しかし、これっと言った恐怖は無かった。 何が何だかもうわからない状態だったので、自分でも驚くくらい冷静に…いや、無感情になったのだ。 ―そうか、それなら好きに。 淡々と諦めるような口調で返事をした。 すると、少女は不思議そうな表情を浮かべた。 予想外の返事だったのだろう。 「なぜ? なぜそんな事がいえるのよ」 ―自分、虫の為に生きている人間だから、虫に殺されるのは本望さ。 まぁ、心残りといえば、あの玉虫が見れないってことかな…。 それきり、沈黙が続いた。 その沈黙がしばらく続いた後、突然糸が切れ、束縛から解放された。 ―どうした、殺すのではなかったのか? 「…さっきのは無かったことにするわ。 その代わり、あなたの話を聞かせて頂戴」 目の前にいた少女は先ほどの嘲笑から、穏やかな笑顔に変わっていた。 最初は互いに自己紹介をし、ここはどこなのか、ここに来るときの経緯について、質問しあった後、虫に関する話を語り合った。 どうやら彼女はリグルと名の蟲を操る妖怪で、ここは幻想郷と呼ばれる異世界であるそうだ。 ムカデや蜘蛛と言ったすごい虫から、蛍と言ったかわいい虫を見せてくれたときには思わず感嘆してしまい、見とれてしまった。 それに負けじと自分もここでいう『外の世界』での虫を教えた。 その話に興味津々に聞いてくれるリグルがすごく嬉しかったのと同時に…別の感情が動き始めた。 語り合ううちにいつの間にか明け方になった。 これだけ長く会話をしたのは人生で初めてだろう。 その時、リグルが質問した。 「ねぇ、あの時…○○は死ぬの怖くなかったの?」 ―全然、と言ったらうそかな。 「そっか、やっぱり怖かったんだね」 ―あぁ、そうさ。 じゃ、逆に訊くが、どうして殺さなかった? 「…虫が好きな人がいたって言うのをしったからよ」 なんとなくわかってたが、敢えてきいてみた。 答えは予想通りであった。 「…そろそろ日が出てくるね。 私帰らなくちゃ。 楽しい話聞かせてくれてありがとう!」 リグルはにこっと笑って、別れを告げた。 …あっ、大事なことを忘れていた。 どうやってここで生きていこうか。 夜でリグルに会うまでは、サバイバル生活をすることは…幸いにも無かった。 たまたま出会った女性、確か…けーねだったか。 その人に人間の里と呼ばれるところに案内させてもらい、空家で住むことになった。 食料のほうは外で取れる魚と木の実を主に、時々けーねと呼ぶ女性から差し入れを頂いて、困ることは無かった。 衣類の方は・・・里の中で売られている服を数着、なけなしのお金で買った。(もともと日本の土地だったからなのか、現在の紙幣が使えた) それからはここでずっと暮らすことになったときを考えて、アルバイトをすることにした。 ただ、心配なのは自宅の虫たちのことだ。 虫を捕まえて飼育することが趣味の自分にはすごく不安である。 皆無事だといいんだが…。 まぁ、いいか。 それからと言うものの、夜毎にリグルと会って話し合ううちに、虫の事よりも、彼女のほうに好意の対象が変わっていった。 彼女の話を聞くたび、彼女が帰るたび、心は彼女のことでいっぱいになって、また会いたいという気持ちが抑えきれなくなってしまうのだ。 これが恋という奴なんだろう。 何とか伝えてやりたい。 しかし、虫のことにしか興味の無かった自分にはとてもじゃ言えないだろう。 …いや、いつかは言っておかないといけない。 ここに住み込んで2ヵ月後、彼女に告白する決心をついた。 そして―――来るべき夜がやってきた。 いつもの様に彼女はやってきた。 うむ、いつものりグルだ。 そう確認した後、すこし大げさに息を吸って、告白の第一歩を踏んだ。 ―リ、リグル。 今夜キミに言いたいことがあるんだ! 第一歩目はまずまずだったかもしれない。 予想通り、リグルは「な、何よ?」とすこし動揺している。 そこで第二歩目を踏み込む。 ―最近、虫のこと…好きでなくなったんだ。 わざと、気を落としていう。 「えっ、えぇ…!? ○○、今日はどうしたの?」 突然のわけのわからない発言に困惑するリグル。 そしてとどめの三歩目。 ―今は、虫のことよりも……リグル、お前のほうがずっとずっと、好きになったんだよ!! 初めてだす、大声。 一斉にリグルの周りにいた蛍が飛び散った。 その声にただ単に驚いたのか、「よく言った!」と賞賛の行動のどっちなのか、自分にはわからなかった。 このどきどき感はしばらく止まりそうも無い。 ―長い沈黙が漂う。 実際はそれよりももっと長かったかもしれないし、あっという間だったかもしれない。 その間、リグルは顔を真っ赤にさせ、震えていた。 今にも泣き出しそうな表情である。 突然、その長い沈黙は終わった。 彼女から、抱きしめたことによって。 「…本当に、わ、私のことが好きなの? ここで冗談だよなんて、言わないよね…?」 上目遣いで問いかける彼女をみて、次の言葉がなかなか見つからなかった。 ―ぁ、あぁ。 これでも自分、すごく勇気を振り絞って、言ったんだ。 それでも、嘘だと思う? 「ううん、そう思わない。 疑ってごめんね…そして、ありがとう…。 私もあなたが大好き」 リグルは涙をこぼし、より強く抱きしめ、かわいい顔を自分の鳩尾にうずめた。 少しして、お互いに微笑んだ後、半月をバックに長いキスをした。 その二人に祝福するかのように蛍が舞っていた。 しばらく抱きしめたあと、ふとリグルの頭をなでたくなったので、優しく頭をなでた。 いや、正確に言うと触角をなでたといったほうがいいか。 なでなでなでなで。 「ひゃぁっ!? あぅぅぅ…///」 驚いたことに、リグルは裏声を上げ、ぶるぶると震えだした。 ―ご、ごめん! 触っちゃだめだったか? 「あんまり、触らないで欲しいな…だって、デリケートな部分なんだよ?」 …どうやら、この触角はただの飾りではないと言うのがわかった。 後ほどの話によると、この触角で空気中に漂う気、魔力、霊力をコントロールし、弾幕を放ったり、蟲たちを操っていると言うことだ。 ―そうだったのか、それはすまなかった。 「いいよ。 けど、あんまり…触っちゃだめだよ」 リグルは再び真っ赤になって手で顔を隠してしまった。 今夜は珍しい一面が見れて内心大満足な自分だった。 ―――それからというものの、結局は幻想郷で暮らすことにきめた。 外の世界に関しては今まで育ててきた虫たちがとある方の協力のおかげで部屋の中に存在している。 なので、もう一切帰りたいなんて思わなかった。 隣にいるリグルが愛しくてたまらない。 あの日から、リグルと一緒に人里で暮らすことにした。 案外周りからの反対はなく、けーねからいくつかの約束事(主に人に襲ってはいけないこととか)を守るだけであった。 そして、今でも幸せに暮らしている。 しかし、自分は人間ではなくなった。 愛しいリグルを守るため。 お世話になっている人里を守るため。 自分自身が強くなりたいため。 彼女に頼んで、自ら虫の妖怪になった。 そして、『虫を操る程度の能力』を得た。 FIN おまけ その一 作中に出てくるとあるお方はゆかりんです。 その二 ○○は後の武●●金のパp(リグルキック) うpろだ620 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「お~い。○○いる?」 「チッ……香霖堂め。掴ませやがったな」 「え? どうしたの?」 「この蚊取り線香ききやしないじゃないか」 「私は蛍だよ!」 「はぁ……で、なにようだリグル」 「里でお祭りやってるみたいなんだけど、一緒に行かない?」 「おいおいおい、勘弁してくれよ。折角いい気分で酔ってるんだぞ? だってのに、何でわざわざ人ごみにくりださなきゃならないんだ。ここでこうしてるほうが楽しいに決まってる」 「うわぁ、おっさんくさい」 「…………なに?」 「そんなんだから年より老けて見えるとか言われるんじゃない?」 「いい度胸だ蟲っ娘。俺という全存在に賭けて祭りを楽しみぬいてやる」 「いや、別にそこまでしなくても」 「はっはっはっ、ついて来い、お前に俺がまだ若いってことを思い知らせてやる」 「いいけど……それって暗に自分が老けてるって認めてない?」 「…………」 「…………」 「いやいやいや、そんなことないぞ。そうともそんなことない」 「いいけどね。私は○○と出かけられたら、それでいいんだし」 「んなッ……」 「へへへ」 「は、恥ずかしいやつめ……まぁいい、おごってやるからついて来い」 「うん!」 8スレ目 282 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ん~♪今日も暖かくて心地いいね」 「……リグル、その発言は敵を作るよ」 「そう? こんなに蟲たちも活発になって、心地いいじゃない」 そりゃ、蟲の天下な季節だけどさ。フツーの人間には厳しいよ。蒸し暑くて死にそうだ 「でも、〇〇の元気がないのもつまらない~。川辺あたりに遊びにいく?あそこなら涼しいと思うよ」 「ふっふっふ、そういわれると思ってな。実は外界の水着を用意してあるんだ。 リグルも着るかい?きっと似合うと思うよ」 スク水ジャスティス 8スレ目 617 ─────────────────────────────────────────────────────────── 森の中を虫たちと一緒に散歩していると見知らぬ子供に出会った。 彼の話を聞くに、どうやら外の世界から来たようだ。 「僕、これからどうなっちゃうの……?」 不安そうな彼のしぐさは、まるで小動物のようでとても可愛らしかった。 ぶっちゃけると私のツボに直撃した。 だから私は彼を助けてあげようと思った。 「大丈夫。私が里まで送っていってあげる。あとはたぶん巫女に頼めば帰れるよ」 「ホント? ホントに!?」 「うん。だから安心して」 「良かったぁ……」 私の言葉に彼は安心した様子を見せた。 「じゃ、日が沈まないうちに早く行こう」 彼の手をとって立ち上がる。 すると彼は満面の笑顔を浮かべながらこう言った。 「うん。ありがとう、リグルおにーちゃん」 11スレ目 169 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ふぁ~あ、今年もよく寝たぁ……ん?」 「よぅ、待ちくたびれたぜ」 「おはよう、いっぱい待たせちゃったね」 そういってリグルは俺の首に手を回してくる。 俺も一冬振りのリグルの感触を楽しみながら抱きしめた。 そこでリグルがふと気づいた様に聞いてきた 「そういえば去年わたしが冬眠するって言ってからどれくらい来てたの?」 「……お前が寝付いてから毎日だ」 「もぉ…恥ずかしいなぁ、暖かくなってからでいいって言ったじゃん」 「惚れた女に逢えないならせめて傍に付いててやりたいのが男ってもんだ」 「馬鹿……。エッチなことしてないでしょうね?」 「そういうサービスはこれからじゃないのか?」 「ホントに馬鹿なんだから……、ほら」 そうため息をつき、リグルは目を瞑って顔を寄せ、キスをせがんで来た。 俺も苦笑しながらそれに答える、そして今年も春が訪れたことを感じるのだった。 13スレ目 379 ───────────────────────────────────────────────────────────
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前ある日の朋与2 洗面所に入った朋与は、まず流水で口をすすぎ、軽く歯を磨いた。 精液が不快だったのではない。できることなら、いつまでも味わっていたかった。 しかし、この後の事を考えると、眞一郎への配慮を欠くわけにはいかない。 タオルで顔を拭ってから、口を手で覆い息を吐き出してみる。 口臭に異常は無い。生臭さは残っていなかった。 (よし、大丈夫) タオルを片付けようとした時、鏡に映る自分と目が合った。 一週間前に自室で出会った淫乱な女が、再び朋与の前で薄笑いを浮かべている。 (本当に……いやらしい顔……) 期待している顔……眞一郎とこれから『する』ことに期待している淫乱な牝の顔。 (……違うわ。これは仲上くんのために……彼のためにしている事……) そう、これはあの『石動乃絵』にも出来ない……自分にしか出来ない事なのだ……。 ………… ………… 寒気を感じた。屋内とはいっても、全裸でウロウロ出来る気温ではない。 (……戻らなきゃ) 照明を切って洗面所を出る。 廊下から居間の時計を見ると、まだ六時を少し回ったところだった。 時間は……十分過ぎるほど残っている。 部屋に戻ると、眞一郎はベッドの縁に腰掛けていた。 「あ、お帰……」 言い終わるのを待たずに、朋与は眞一郎に飛びついて、その唇を味わった。 冷気に晒されていた身体に、眞一郎の体温が伝播して気持ちいい。 上唇、下唇と交互に甘噛みし、仕上げに全体を吸い上げてから、わざと「チュッ」と音を立てて離れる。 (気持ち良くしてあげなきゃ。もっともっと気持ち良く……) 体重をかけて眞一郎を押し倒し、股間の硬直へと手を伸ばす。 「してあげる。仲上くんのして欲しい事、全部してあげる」 再び硬度を取り戻した陰茎に摩擦を加えながら、朋与は眞一郎に問い掛けた。 「ねぇ、言って。して欲しい事……」 「……く、黒部……」 朋与は眞一郎の要求を全て受け入れるつもりだった。 今の朋与なら、眞一郎に「尻を舐めろ」と言われれば、躊躇する事無く菊座に舌を這わせるだろう。 答えが待ちきれず、朋与は眞一郎の乳首へと狙いを定める。 唇が上下に開き、その間から現れたサーモンピンクの物体が攻撃を始めようとしたその時……。 ………… 「待てよ」 眞一郎の両手が朋与の肩を強い力で掴んで、その動きを止めた。 (……あ……) その瞬間、朋与は身体に強烈な電流が駆け抜けるのを感じた。 一週間前と同じ、あの全身を蕩けさせる電気の流れを。 「今度は俺がしたい」 そう告げると、眞一郎は力任せに体勢を入れ替え、朋与の身体をベッドに押し付けた。 「俺が……と、朋与のこと、気持ち良くしたい……」 眞一郎の手から加えられる圧迫感。拘束される快感が全身を貫く。 そしてなによりも、眞一郎が自分の事を名前で呼んでくれたことが、 朋与の神経を痺れさせ、麻酔を打ち込まれた様に身体を弛緩させた。 ………… (あぁ……どうしよう……でも……) 眞一郎が『したい』のなら、させてあげた方がいいのかもしれない……朋与そうは思った。 身体を開いて……全てを任せて……眞一郎の望むままに……蹂躙…される……。 ………… (……それ…………いいかも……) 下腹部の奥にある『女の器官』が、ゆっくりとその位置を変えていく。 これから起こることを想像して、朋与は堪らなく興奮した。 沈黙を了承と解釈した眞一郎は、片方の手を朋与の肩から胸に移動させた。 手の平で半ば硬化していた乳首を円を描くように愛撫したあと、指先に力を込めて全体をグッと鷲掴みにする。 「ッ!!」 発生した痛みが朋与の脳に伝わる。だがそれは『快感』として身体の主には認識された。 「…痛い……か?」 朋与は口元に悦楽の笑みを浮かべながら、首を左右に振った。 「……ううん……凄く……凄くいいッ!!」 自分の膣が、与えられる刺激に反応して収縮するのをハッキリと知覚する。 そこから眞一郎の怒張を受け入れる為の潤滑油が湧き出し始めているのが分かる。 「してっ!もっとしてっ!眞一郎っっ!!」 被虐の悦びの中、朋与は初めて『仲上』という苗字ではなく、眞一郎の名を大声で叫んでいた。 朋与はベッドの上に座り込む形で、眞一郎に後ろから抱きかかえられていた。 眞一郎の両手は、朋与の胸にある二つの膨らみに伸ばされ蠢いている。 眞一郎の才能は本物だった。まさに『性技』の天才と言っていい。 本能的に女の弱点を嗅ぎ取り、そこに相手の最も好む刺激を加える。 「んぁっ……はぁ……眞一郎……眞一郎……」 乳房を強い握力で揉まれながら、朋与が甘い声をあげる。 朋与の胸は大き過ぎず、小さ過ぎず、高校生としては標準的なサイズだった。 眞一郎の直感が、その大きさに合った最適な力を判断し加虐する。 「!!……くぅぅ……」 肋骨に影響が出ないギリギリの圧迫を受けた朋与は、誰にも見せたことのない嬌態を晒した。 (自分でする時よりいいっ……全然気持ちいいっっ!!) 身体をくねらせ、身悶えする朋与。だが、眞一郎の手がポイントを外れることは決して無い。 全体を解す動きから、乳腺を揉む形に動作を移行すると、首筋に顔を埋め込む。 「……朋与……」 深く息を吸うと、朋与から発せられる甘い匂いが眞一郎の肺を満たした。 甘さの源を味わいたいという思いが、眞一郎の舌先に朋与の『うなじ』を襲わせる。 「はうぅぅっ!!」 堪らず首を折って眞一郎の頭を追い立てる朋与。だが、それは無駄な抵抗だった。 眞一郎は変幻自在に左右の首筋、うなじ、耳たぶを舐め上げ、時に噛み付き、 存分に朋与という甘味を味わっていく。 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」 まるで短距離疾走の直後のように、呼吸が激しくなる朋与。が、変調はそれだけではない。 子宮が訴える疼きに耐えられず、両脚をモゾモゾと擦り合わせ始めたのだ。 「下も……触っていいよな……」 目ざとく変化を観察していた眞一郎は、乳房を弄っていた手を片方、朋与の脚の付け根へと向かわせる。 「…いや……恥ずかしい……」 生まれて初めて、男の子が自分の性器に手を触れようとしている……。 (だめ……今…眞一郎に触られたら……それだけで狂う、狂っちゃう!!) 緊張の連続で普段の力の半分も残っていない筋肉に必死に命令し、太腿を閉じ合わせる朋与。 しかし、性に目覚め掛けている牡の突進力は、少女の予想を遙かに越えていた。 眞一郎の「女の子の性器に触れたい」という願いの方が、朋与の防御本能より、数段強力だったのだ。 「い……いやぁ…」 両腕も援軍に加えて抵抗する朋与だったが、眞一郎の欲望の前に、壁は脆くも崩壊する。 …………くちゅ………… 朋与は恥ずかしさで死んでしまうのではないかと思った。 眞一郎の指が触れたその場所は、すでに朋与の胎内から湧き出た淫水で、ビショビショに潤っていたのだ。 暖かな粘液が、眞一郎の指先を濡らす。 「……朋与……これ……」 「…………」 なにも言えずに俯いてしまう朋与。身体が勝手に「私は淫乱です」と宣伝しているようで、本当に気が狂いそうだった。 そんな朋与をよそに、眞一郎は予想もしない行動に出る。 …………ペロッ………… 眞一郎が朋与の愛液に濡れた指を、自分の口に運んだのだ。 「!!!……や、やだ!なにしてるの!?」 水飴でも舐めるように、指を咥えている眞一郎。朋与は咄嗟にその手を口から引き剥がした。 「……き……汚いよ……シャワーだって……浴びてないし……」 朋与はつい先刻、自分が汗にまみれた眞一郎の陰部に、夢中でしゃぶりついていた事を棚に上げて言った。 「朋与もさっきしてくれたじゃないか。…それに、朋与に汚いとこなんかない」 「…………」 声がでなかった。嬉しくて……嬉しくて……嬉しくて……。 朋与の上半身を優しく抱きかかえ、ベッドへ寝かせる眞一郎。 「もっと…呑みたいよ……朋与…」 軽く立てられていた朋与の膝に、眞一郎の手が掛けられ大きく割り拡げられる。 「……いいよ……眞一郎のしたいだけ……して……」 枕に顔を埋め、瞳を閉じる朋与。ささやかな抵抗は完全に止んでいた。 朋与が顔を伏せて大人しくしていられたのは、ほんの数秒だった。 眞一郎の執拗な舌攻めに屈服した外陰部が、すぐに花開き始める。 敏感な粘膜への直接攻撃が始まると、もう声を抑えることは出来なかった。 「つあああっっ!…………だ……いや……くっ!!」 眞一郎の舌先が、八の字を描いて朋与の内陰部を動き回る。 (やっぱり天才だ……眞一郎って天才だ……) 普段の生活態度から推して、眞一郎が女慣れしているとは到底思えない。 間違いなく、眞一郎もこれが『初体験』のはずなのだ。それなのに…… (……くっ……でも……ホントに上手……気持ちいい……) 大陰唇に親指が掛けられ、朋与の女性器が限界まで解放される。 膣口から染み出てくる愛液を舌の上に掬い取り、性器全体に塗り込めて行く眞一郎。 使い切れなかった淫水を飲み込むと、陰核に口付けて「チュゥゥゥ」と吸引する。 「はあああああっっ!!!」 最も敏感な部分を攻められ、朋与の身体が仰け反った。 咄嗟に朋与の手が、眞一郎の髪に伸びる。先ほどとは真逆の構図だ。 「だめぇぇっっ!!……くぁぁっ……そこ…だめぇぇぇぇ!!!!」 朋与の鋭い拒絶の声を聞いても、眞一郎は吸引を止めない。 それどころか、朋与の太腿を腕で抱え込み、逃げられないように固定してしまった。 さらに強さを増す眞一郎の吸い込み。包皮がめくれてクリトリスが強制的に勃起させられる。 剥き出しとなった弱点に眞一郎の舌先があてがわれ、細かな振動を送り込む。 ……そしてそれが『とどめ』となった。 「あああああ!!!…い……いっちゃう……い、イクぅぅっっ!!!!」 眞一郎の頭髪に指先が食い込み、全身の筋肉が極限まで緊張する。 ……そして性器とその周辺の筋肉が、朋与の制御を離れて暴走を始めた。 …………ぴゅ!ぴゅ!ぴゅ!………… 悦楽に支配されながら、朋与は自分の股間が、何か得体の知れない液体を吐き出しているのを感じた。 ……そう……眞一郎の顔めがけて……何度も……何度も……。 眞一郎がティッシュで口元を拭っている横で、朋与は顔を手で覆い泣いていた。 「うぅ……ぐすっ……ぐすっ……ごめんなさい……ごめんなさい……」 幼い子供のように泣きながら、朋与は何度も眞一郎に詫びた。 実際、朋与の射出した『潮』は微量で、眞一郎の顎を僅かに濡らした程度だったのだが、 女の自分が男性に排泄物を吐き出したという事実は、決して容認できるものではなかった。 「朋与」 眞一郎が朋与の顔から両の手を引き剥がし、そのまま全身を抱きしめる。 恥ずかしくて眞一郎の顔をまともに見られない。朋与は視線を逸らした。 「ごめん、俺が悪かった。……少し強引な方が好きかと思って……ホントにゴメン」 快楽の追求という点では眞一郎は何も間違ってはいないのだが、 乙女心はそれとは別の次元に存在するものなのだ。 「…………」 眞一郎の肩に額を付けてもたれていると、不思議と愚図りが収まっていた。 顔を上げると眞一郎と目が合う。朋与は目を瞑りキスを求めた。 ………… 「あの……俺、口すすいでないんだけど……いいの?」 ………… 「ぷっ」と吹き出してしまった。なんだか凄く可笑しい。 ………… 「気にしてくれたんだ」 「だってさ……嫌だろ?」 なんだか凄く間抜けだ。愛撫は一級品なのに、会話の仕方は三級品。……でも…… 朋与は眞一郎を押し倒し、唇を重ねた。 性的な意味のない、愛情表現としての軽めのキス。……そして改めて告げる……。 「好きよ……眞一郎……大好き……」 組み敷かれた眞一郎が、一瞬の躊躇いの後、口を開こうとする。 「…………俺も…」 その先を言わせるわけにはいかなかった。もう一度、キスで唇を塞ぐ。 今度は舌を絡ませるディープキス。『アレ』をする前の挨拶のキス……。 ………… 「……セックス……しよ……」 「…………うん……」 朋与の腕が眞一郎に、眞一郎の腕が朋与にかかる。 ふたりは徐々に四肢を絡ませあて、剥き出しの身体を密着させていった。 体勢を入れ替え、再び朋与が下になる。 平静を装っていたが、朋与は胸の高鳴りを抑えられずにいた。 もうすぐ自分は眞一郎と『ひとつ』になる……。 破瓜の痛みに対する恐怖は拭いきれなかったが、それよりも眞一郎と繋がる悦びの方が勝った。 脚を大きく開き、性器を眞一郎に開放する。もう恥ずかしいとは思わなかった。 「……きて……眞一郎……」 「……朋与……」 ………… 圧し掛かってきた眞一郎の表情が変わる。何か大事なことを思い出したようだった。 「ちょっと待って」と短く言うと、枕の下を探り始める。 (……?……なによ……もう……) 眞一郎が何か小さな袋のようなものを摘み出す。朋与は一目で、それが何なのか分かった。 (……スキン……なんで私の枕の下に?) もちろん、それは朋与の持ち物ではない。……ということは…… (……眞一郎……の?) 朋与に背を向けて、なにやら悪戦苦闘している眞一郎。 少し『醒めて』しまった朋与は、嫌味のひとつも言ってやりたい気分になった。 「そんなの、いつ用意したの?」 「え!?……あぁ……え~っと……さっき朋与が下に降りてる時に……」 装着に手間取っている様子からして、使用するのは初めてと見て間違いない。 「持ち歩いてるんだ」 「三代吉…………の、野伏がさ、くれたんだ。……男の嗜みだから持ってろって……」 「…………」 情交の相手が避妊に気を使ってくれるのは、女としては喜ぶべき事だったが、朋与はとても不満だった。 理屈ではない。眞一郎と自分を隔てようとするモノに、激しい怒りを覚える。 「お待たせ」と振り向いた眞一郎の陰茎を乱暴に掴む朋与。 先端部分を摘んで思い切り引っ張ると、パチンと音を立ててゴムの皮膜は眞一郎から離れた。 朋与は伸びきったスキンを床に投げ捨て、眞一郎に抱きつき訴える。 「こんなの要らない。そのままして」 真剣な朋与の眼差しに、眞一郎は困惑しているようだった。 当然だろう。女に「避妊するな」と言われれば、大抵の男は慌てる。 「俺……自信無いんだ……。初めてだしさ……入れたら途端に出しちゃうかもしれない……」 フェラチオでの失敗が、眞一郎を少々弱気にさせている様だった。 (……もう……優しすぎるんだよ、眞一郎は……) これは眞一郎を癒す為にしている事なのだ。眞一郎は何も心配しなくていい。 ……ただ……好きなようにすればいい……。……今この瞬間、全てを忘れるために……。 「……眞一郎は……したくないの?……その…ナマで……」 「…………」 したいに決まっている。何の障害も無い『膣内射精』は男の遺伝子に刻み込まれた本能だ。 「心配ないよ……その…私、今日……安全日…………だから……」 「!!」 瞬間、眞一郎の手が朋与の上腕を掴み、興奮の極みに達した瞳が朋与の顔を覗き込んでくる。 鼻息が荒い。二つの眼が「本当にいいのか」と真摯に問うていた。 朋与は言葉ではなく、キスと態度で気持ちを表す。 身体を横たえ、両腕を大きく広げて眞一郎を待つ。膣から再び『潤み』が湧き出すのを感じる。 心も身体も、眞一郎を迎える準備は、とっくの昔に出来ていた。 お互いの肌と肌を摺り合わせると、下降気味だった性感はすぐ上昇に転じた。 朋与の全身を薄い汗のベールが包み込み、半開きの唇からは吐息が漏れる。 「はぁ……はぁ、はぁ、はぁ……はぅっ!……」 眞一郎が剥き出しの陰茎を朋与の『溝』に合わせて滑らせる。 それは意図的に調節される『手』の力とは異なり、ごく自然な圧力で朋与の性器を愛撫した。 「うっ……はぁ、はぁ……き、気持ちいいっ……眞一郎ぉ……」 花弁は完全に濡れ開き、牡の侵入を待ち焦がれていた。 「と……朋…与……」 眞一郎の肉茎も自らの淫水と朋与の愛液に濡れ、限界まで張り詰めている。 ……ふたりとも、もう限界だった…… 「……朋与…挿れるよ……」 眞一郎が茎の根元を握り締め、狙いを定める。 朋与は荒い呼吸のまま黙って頷くと、両脚の開きをM字に変えて性器を上向かせた。 そして眞一郎が迷わぬように、陰茎の先端に手を添えて胎内への入口に導く。 亀頭の先端が膣口に触れ、互いの淫水が混ざり合った。 ………… 「……痛がっても止めないで…………最後までして」 さすがに『無理矢理されるのが好き』とまでは白状できなかった。 「…………いくよ……」 眞一郎は朋与の背中と肩に腕を回して逃げられないようにすると、一気に朋与の『ナカ』に押し入る。 「ッッ!!!!!……あ……あ……痛……」 ブツッと何かが千切れる感覚と異物感。閉じられていた空洞がこじ開けられていく。 (……痛い……身体が裂けちゃう……) 充分に愛撫を加えられ解きほぐされていても、やはり処女膜が破れる時の痛みは避けられない。 眞一郎の侵入は続き、裂傷を負った膜が竿の部分に擦られてさらに傷つく。 「うっ…痛……っぅぅっ!!」 額に汗が滲む。眞一郎の背に爪を食い込ませて耐える朋与。……そして…… 「朋与っ!!」 渾身の力を込めて、眞一郎が最後の一突きを送り込むと、陰茎は完全に朋与の膣内へと埋没した。 「かはぁっ!!」 『とどめ』を打ち込まれた瞬間、苦しみとも悦びともつかない声を上げ、仰け反る朋与。 亀頭が内側から子宮を押し上げ、茎の部分が膣の内壁を限界まで拡張する。 ………… (……は……入った……) 舌と口腔で散々味わった眞一郎の分身が今、自分の胎内に埋め込まれている。 入口付近の鈍痛を無視して膣に意識を集中すると、その形が良く分かった。 「朋与、大丈夫か?」 目を開けると眞一郎の顔がある。苦痛の為に歪んだ朋与の眉間を、眞一郎の指がスッと撫ぜた。 不思議と痛みが引いていく気がする。額に浮かんだ険が自然と消えていった。 「……平気よ……痛いけど…気持ちいい。眞一郎は?」 「俺も。朋与の膣(なか)、暖かくてヌルヌルしてて……動いたら出ちゃいそうだ……」 平凡な表現だったが、褒められるのは気分が良い。 朋与としては、すぐに射精されても構わなかったが、この時間を少しでも長く続けたいという想いもあった。 「ちょっと……こうしていようか……」 意外に広い眞一郎の背中に腕を回し、両脚で腰を引き付けて身体を密着させる。 隙間を作りたくなかった。このまま溶けて、本当にひとつになりたかった。 「朋与……」 眞一郎が体重を預けてくる。その重さが心地いい。 (セックスしてる……私……眞一郎とセックスしてる……) 『女』になった充足感と眞一郎のしなやかな腕に包まれて、朋与はこの上なく幸福だった。 どのくらい静止していただろうか。 朋与の息遣いが落ち着いてきた頃、眞一郎の腰が、もどかしげに動き始めた。 「……したくなったの?」 摺り寄せていた頬を離して聞いてみる。 「……うん……したいよ……」 恥ずかしげに視線を逸らす眞一郎。その仕草は子供みたいで可愛いかった。 「……このままじっとしてても…………出そう……うっ!」 眞一郎がうめき声を上げる。 朋与には自覚が無かったが、朋与の膣は高まる性衝動の影響を受け、自然に蠕動していたのだ。 静止したままでも、眞一郎の陰茎を処女特有の膣圧力と『ひだ』の微振動で無自覚に攻め立てる。 快楽から注意を逸らすためか、大きく息を吐き出す眞一郎。 朋与は眞一郎の言葉を待った。 「でも……朋与、まだ痛いんだろ?」 呼吸が安定してきた朋与とは逆に、眞一郎は興奮で息切れしそうだった。 (眞一郎、苦しそう……私が…我慢しなくちゃ) 朋与はそう思った。 「もう大丈夫よ、落ち着いた。……ねぇ、ちょと動いてみて」 生殖行為の開始を促す朋与。眞一郎は指示に従った。 陰茎が半分ほどゆっくりと引き抜かれ、同じ速度で再び埋め込まれる。 「…うっ……」 やはり痛みは残っている。だが、耐えられない程ではなかった。 それに膣奥を……子宮の入口を柔らかな亀頭で刺激されるのは、やはり気持ちがいい。 「つ…つづけて……」 「…………わかった……」 朋与の反応を観察しつつ、二度目、三度目の挿入を施す眞一郎。 肉竿を鞘に収めきったところで、ふたりの目と目が合う。 どちらからともなく唇を求め、舌を絡めた。 「平気、痛くないわ。……して……眞一郎」 「……いいのか?……」 朋与が頷くと、眞一郎の顔が喜びで輝いた。 「優しくするから……」 眞一郎としては精一杯の言葉のつもりだった。だが、朋与は首を横に振る。 「いいの、私の事は考えなくていい。眞一郎がしたいようにして……」 「……朋与……」 少し寂しげに翳った表情とは裏腹に、眞一郎の下半身はゆっくりと連続した前後運動を始めていた。 陰茎の抜き差しが段々と激しさを増していく。 徐々に上昇していく性感と眞一郎のとろけた顔が、朋与に痛みの存在を忘れさせてくれた。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……と、朋与……」 ピストン運動の速度が更に上がり、眞一郎が興奮の高みに昇り詰めて行くのが分かる。 「んん……っふう……はぁ、はぁ……し、眞一郎……眞一郎……」 いつ射精してもおかしくない状態に追い詰められながらも、天性の技を発揮する眞一郎。 無意識のうちに朋与の最も好むリズムを掴み取り、恥丘の裏側にある敏感な部分を刺激する。 浅く、浅く、深く。引き抜く時は膣天井を擦りあげる肉茎。 最深部に到達しては、鈴口から出る分泌液を子宮口に塗りつけ、圧迫する。 「はあああっっ!!!」 注挿の開始から僅か数分で、朋与は自分自身を見失い始めていた。 膣口から僅かに流れていた出血は既に止まり、そこから愛液とは違う白濁した液体が溢れ出す。 (……くっ……眞一郎っ……ホント……凄い……) 注挿運動以外の愛撫は完全に停止していたのだが、それが全く気にならない。 それほどまでに、朋与は眞一郎との結合部に集中していた。 (処女なのに……さっきまで処女だったのに……) 朋与は薄々気づいていた己の淫乱さに呆れながらも、 眞一郎という最良の相手に『初めて』を捧げる事が出来た幸運に感謝した。 (……イける……初めてだけど…………イける……かも……) 喪失による痛みはほとんど無くなって、快感だけが朋与の脳髄を犯し始める。 眞一郎の気持ちを気遣う余裕は消し飛び、己の悦楽だけを追及する利己的な朋与が顔を出す。 「と、朋与っ……はぁ、はぁ……朋与ぉっっ!!」 朋与の名を連呼して悦びを表現する眞一郎に、我慢の限界が近づいていた。 そして牝としての本能的欲求が朋与の精神をを完全に侵食する。 「出してっ眞一郎!……私の中に……精子……いっぱい出してぇぇっ!!」 ふたりの四肢に最大の力が込められ、お互いの身体を抱きしめ合う。 眞一郎の恥骨が朋与の陰核を押し潰し、肉茎が根元まで膣内に突きこまれて痙攣を始める。 「と、朋与っ…出るっっ!!!」 朋与の両脚が眞一郎の腰裏で交差し、ガッチリと食い込む。 肉茎の先端が朋与の子宮を限界まで押し上げた状態で、それは始まった。 ドピュッ!!ドピュッ!!ドピュッ!!ドピュッ!! 「あああああああぁぁっっ!!!」 第一撃を感じ取った朋与の口から、甲高い悲鳴が上がり、絶頂へと押し上げられる! 「い、イクぅっ!!!!」 二撃目、三撃目が膣奥に命中すると、朋与は悦楽の言葉を吐き出して、身体を海老反らせた。 眞一郎の二度目の射精は、口腔で行われたそれとは比較にならない激しさであった。 短時間で再蓄積されたとは思えぬ『量』と『濃さ』のスペルマが、 次々と鈴口から射出され、我先にと朋与の子宮口に襲い掛かる。 (……あぁ……あぁ……出てる…………暖かい……) 朋与は恍惚とする意識の中で、膣奥に生暖かい精液のプールが形成されるのを知覚した。 眞一郎のヌルヌルとした命のスープで、胎内が白く満たされるのをハッキリと感じる。 眞一郎の腰は本人の意思とは関係なく、射出した精液を奥へ奥へと送り込む動きを続けていた。 膣内をいっぱいに満たし終え、行き場を無くしていた精液が、 そのピストンの力を借りて、開きかけた子宮口から胎内深くへ侵入していく。 子宮内の感覚までは明確ではなかったが、朋与には眞一郎の精虫がどこを目指しているか分かっていた。 (……はぁ……きて……眞一郎の…赤ちゃんたち……私のお胎に……きて……) 『眞一郎』そのものの暖かさが子宮を中心に全身へと拡散していく……そう朋与は感じていた。 それは麻薬のように、朋与の身体を弛緩させていく効果があった。 (…………しん…い……ちろ……う…………) 意識が霞んでいく。 あの自慰の時と同じ白い霧が朋与を包み、どこか違う世界へと魂を連れ去っていった。 [つづく] ある日の朋与4
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「鉄ちゃんさぁ…。最近、元気無い?」 ワシに背を向けてブラジャーを着けながら、律子が呟いた。 煙草を銜えたままでのその動作は酷く緩慢で、気怠げだ。 「んぁ…?何言っとんね、おみゃあ」 温くなった枕元のビールを呷って、ワシは不機嫌に返事した。 最近、律子の様子がおかしい。 ワシとこうしてセックスする時の反応が、変わってきたのだ。 女の事はよく分からないが、ワシも経験は豊富なクチで、女が満足しているか否かが分からないほど青くは無い。 だから、ワシの責めに対して律子がどのように感じているのかが、分かってしまうのだ。…つまり、本当にイッたのかそれとも演技をしているのか、と言うことだ。 最近の律子の反応は、明らかに後者だった。 どんなに突いても、別の場所に挿れても、手マンをしても。鈍い反応しかしてこない。 むしろ、明らかに演技と分かる素振りで、ワシにもっと強い刺激を与えろとせがんでくる。さっきも、イッたばかりのワシのチ○ポをくわえて、早く元に戻れと責め立ててきたのだ。 「…ふぅん。ま、いいけど」 攣れない素振りで律子がワシを一瞥し、ブラジャーのホックに手を回す。 その態度が気に食わなくて、ワシはリナの髪をひっ掴み、無理矢理ベッドに引き倒した。 「やっ、ちょっと…!痛いから止めてよ!!」 律子がワシの手に爪を立てるが、お構いなしだ。ワシは毟り取るようにブラジャーを奪うと、律子の体を組み敷いた。 豊満とは言えないが、やや釣り鐘形の胸が目に飛び込む。腰に突いた星の刺青と相俟って、豆電球の光に反射したそれは、酷く淫らに見えた。 「こんダラズがぁ…。何ね、そん態度は」 「何ぁん?ムカツいてんの、鉄っちゃん」 「……!!ホンマ、こんダラズがぁッ!!」 一発、二発と律子の顔にビンタを喰らわせた。激しい音と共に律子の胸が揺れ、ベッドがギシギシと軋む。 ギロリと律子はワシを睨んだ。力では敵わないことを知っているためか、唇を噛んで、睨み続けている。 嗜虐心をそそる良い反応だ。ワシはチ*ポが硬くなっていくのを感じた。 「そおりやぁぁぁッ!!」 その硬くなったチ*ポを律子のマ*コに付き挿れる。不意を突かれて律子が叫び声を上げるがお構いなしだ。 何度も腰を振って、自分自身がイクためだけに、叩き付ける。ぴちぴちという肉同士がぶつかる音が、酷く耳障りだ。 「あぁんっ♪鉄ちゃん、激しいっ☆」 胸をたぷたぷと揺らして、リナが叫ぶ。 クソっ、クソっ、クソっ、クソッ……!! 何だよ、その声は。まるで自分は気持ち良くないのに、早くイッてほしいとばかりの演技じみた声はよオォッ…! もう、ワシは出すことしか考えていなかった。オ*ニーと同じ、自分が気持ちよくなるためだけの単純な動作。 「く、くおおおおお。うりゃぁぁぁ…」 しばらくして、精子を吐き出す。女がどういう状況であろうとも、一定の刺激があれば達してしまうことに、ワシは男の空しさを感じていた。 「ああんっ☆鉄ちゃん。イイよォ…」 ニヤリと、醜悪な笑顔を浮かべて、律子が脱力する。まるで自分がイッていないことを告げるように、その声には感情が無かった。 やめろ、こんダラズが…。ワシに、そんな顔を、見せるな…。 「クソっ、ムカつくのぉ…」 数日後、ワシは一人で興宮の商店街を歩いていた。 6月というのにまるで真夏のような日差しだ。アーケードの有線から流れる音楽も耳障りに聞こえる。 吐息のように抜ける高い歌声。危険地帯だったか停戦地帯だったか、最近流行りのバンドだそうだ。 しかし、今のワシにとっては只の騒音にしか聞こえない。とにかく苛立ちを押さえる為に街に出てきたはずなのに、さらに苛立ちが加速する。 腹立ち紛れに、目の前に路上駐車してあったバイクを蹴飛ばす。すると、ドミノ倒しのように隣のバイクもろとも派手な音を立てて倒れた。 「ああんっ!ナンじゃぃ、ワリャァァ!!」 同時に、バイクの側でウンコ座りをしていた学ラン姿の男達が立ちあがった。ツッパリの歌を歌っているなんたら銀蝿みたいな頭の、世間知らずそうなクソガキだ。 「ナンね!何か文句あんのかぃ、オドレらぁああ!!!」 生意気にもメンチを切って来たこのガキどもに、ワシはホンマのメンチというものを教えてやった。 一気に距離を詰めて、腹からの声をぶつける。怒声と言うものに慣れていない素人ならば、至近距離で鳴り響くドラ声にまず間違い無くビビる。 「え、あ、あっ、うぉ…」 この馬鹿どもも例外ではないようだった。当たり前だ。自分よりも弱い奴にしか凄んでいない奴が、恐喝を本職としているワシのメンチに耐え切れるはずはない! 「おおぅ!?何なぁ、ソン目はァ!!ワシに文句があるんかィ、コラァ!!」 「い、いや、そんな、ことは」 「じゃったらぁ、ナンねアン態度は!!オドレらよりもワシは年上けんねぇ、クチの聞き方知らんのかこんダラズどもがァァ!!!」 「ひ、ぃ…。す、すいません!すいません!!」 最初の威勢はどこにいってしまったのだろうか、ガキどもはすっかり震えあがっていた。ふん、もうこっちのものだ。 ワシはガキどもを見定めた。金は・・・持っていそうに無い。 それならばバイクでも売らせてオトシマエを付けさせるか、それとも女友達をワシに献上させるか、はたまた北○鮮産の白い粉でも買わせるか。 あれこれとこのガキどもから搾り取る算段を考えてながら、ワシは周りを見渡した。怒声によって多くの人間がこちらを遠巻きに見ているが、ワシと目が合えば誰もが視線を反らす。良い気分だ。 その中で、ワシと目が合っても反らさない奴が居た。いや、正確には二人。ワシを見て笑っている・・・? 見覚えのある顔だった。当然だ。ワシを見て笑っている人間の一人は、律子だったのだから。 (り、律子ッ!?) 思わず叫びそうになって、ワシは思いとどまる。律子の隣には男の姿が、仲が良さそうに腕を組んで笑っている男の姿があったからだ。 趣味の悪い白色のスーツに原色のワイシャツ、成金趣味のような金縁眼鏡に、指には見るからに高そうな宝石の指輪。 葉巻を吸い、ニヤけた目でこちらを見ているその様は、どこかの勘違いした田舎者が精一杯の自己主張をしているようにも思える。 この、ワシと同じチンピラの臭いのする男には見覚えがあった。 男の苗字は竜宮。女房に捨てられた、雛見沢に住んでいる甲斐性なしの男のはずだった。 律子が計画を持ちかけてきたのは、数ヶ月前のことだった。 「鉄ちゃん、聞いてよ~。アタシね、また新しいカモ見つけちゃった~☆」 丁度前の美人局でせしめた金も底を付きかけていた時だった。スナックに来た客の中に、良いカモを見つけた律子は、とても上機嫌にその男の事を話していた。 興宮に在る小さな服飾会社の二次会だったらしい。辛気臭い数人の男達が店にやってきた時に律子が接待した男が、その竜宮だった。 女に免疫が無いのか、竜宮は終始丁寧に女の子に接していたらしい。そういった男の心得方を十分に知っている律子は上手く振る舞い、わずかな時間で打ち解ける事が出来たそうだ。 その男はかなり酔っていて自分から身の上話を振って来たそうだった。 女房に男を作られて捨てられた事、娘と二人で逃げ帰るように故郷へ帰ってきた事、友人のツテで服飾会社に再就職した事…。 中でも、「秘密だよ」と言って律子に打ち明けた話が、金になる話だった。 何でも、離婚の手切れ金として女房からかなりの額を貰っており、今は娘の進学資金等のために貯め込んでいるとのことらしい。 「それがねぇ、本当に結構な額なんだってぇ~♪」 金の話になると、嫌になるくらい律子の顔は醜く歪む。だが、それはワシも同じ事だった。 「ね~ぇ、鉄ちゃん。良いでしょ?」 美人局をするには、女が獲物とネンゴロになる事が必要だ。つまり、律子が他の男に抱かれるという事を意味する。 まぁ、自分の女が他の男に抱かれて良い気分をする奴は居ないが、ワシも夢見る童貞少年からは想像も付かないくらい汚れている。だから二つ返事でOKを出した。 「も~ぅ、少しは悩んでよ。何ともないのぉ?」 「馬ぁ鹿、ワシ以外で律子を満足することの出来る奴なんておらんからよぉ…」 律子はこちらも驚くくらいに貪欲である。並の男ならその「おねだり」に耐え切れず、律子を満足させてやることなど出来ない相談だった。 だが、目の前の竜宮と腕を組んでいる律子を見ると、まるで恋人同士が寄りそっているように見える。ワシにも見せたことのない、その、言葉に出来ない色気を隣の竜宮に振りまいているようで…。 「!!」 呆然と律子を見ていたワシは、そこで信じられない光景を見た。 律子が竜宮の唇に顔を近づけて、…キスをしたのだ。 キスをされた竜宮も竜宮で、恥ずかしがる事無く律子の頭に手を回し、ディープ・キスを楽しむ。まるで、このワシに見せ付けるかのようにッ…!! 「お、オンドりゃあぁぁぁ!!」 ワシは叫んだ。「ひっ!」とガキどもが悲鳴を上げて竦むが、お前等にじゃない。あそこにいる二人にだ。 「おお、こわ」 声は聞こえないが、キスを終えてこちらを見ていた律子で口元がそう言っていた。同時に、隣の竜宮が律子の肩を抱き、ワシに背を向けてその場から足を踏み出していった。 「ま、待てぇ、ダラズがァァァ!!」 ガキどものことも忘れ、ワシは二人を追いかけるために後を追った。余程血走った目をしているのだろうか、まるで十戒のように人ごみがさっと二つに分かれる。 二人はすぐ脇の路地に入っていった。確かそのまま抜けるとセブンスマート近くの県道に抜ける道だ。 走って路地へ入ると、二人の背中が少しずつ近づく。歓楽街の路地には人気が無く、こいつらを問い詰めるのにはもってこいの場所だった。 美人局で獲物と恋人ごっこをする事は分かる。しかし、さっきのリナの態度は何だ…! 湧き上がる怒りにまかせ、ワシは何度も路地のわき道に入る二人を追いかけた。あと数歩で手が届く距離にまで追い詰めた気がする。 その時、不意に竜宮がワシへと振り向いた。 (笑っている!?) 嫌な予感がワシの脳裏を掠めた。瞬間、鈍くて強い衝撃が、ワシの頭を襲った。 視界が暗転し、急速に意識が失われる。まるで鉈で峰打ちされたように、頭が割れるような痛み。 「あは、あはははは。鉄平さん、お~持ちかえりぃ~☆」 律子とは別の女の、奇妙なほどに明るい声が聞こえた。 声の主は誰なのだろうか、考える前にワシの意識は、途切れた。 「んっ…。あふぅ…」 頭が痛い。 まるでガキの頃にかかった熱で寝こんだ時のように、痛い。 「はぁ、はぁ、ああ、あああっ…」 苦し気な声。やめてくれ、こちらまで苦しくなる。 「ひゃっ、ひっ、は、はぁぁぁぁぁっ」 くそ、やめてくれ。いや止めろ、止めろと言っているだろう…!! 「だ、ダメっ、い、イッちゃううぅぅぅん!!」 一際大きな叫びに、ワシは目を覚ました。 同時に、手足に鈍い衝撃を覚える。 「な、なんねぇっ、こりゃぁ!!」 ワシの手足、そして腰に自由は無かった。荒縄で縛られて、ベッドの縁らしきものに縛り付けられていたためだ。 そして、ワシの全身は何も来ていない状態で、文字通りすっ裸となっていた。肉厚なワシの胸板の、腕の肌色が見える。 「く、クソっ!こ、こりゃあ、一体!?」 自分を襲った突然の事に、ワシは叫んだ。全身を動かすが、きつく縛られているためかベッドが軋む程度にしか動かない。 「よぉ、お目覚めかい…?」 誰かがワシに声を掛けてきた。しかし、縛られたワシからは木造の天井と蛍光灯の豆電球しか見えない。 「おい…」 声の主が何事かを指示するのと同時に、ワシの髪が乱暴に掴まれ、首の下に太い枕らしきものが差しこまれた。自慢のパンチパーマが抜ける感触と同時に、頭への鈍痛が戻ってくる。 「なッ!!」 痛みに閉じていた目を開けた瞬間、ワシの目に信じがたい光景が写った。 目の前には肌色の塊があった。重なるように引っ付き、奇妙な前後運動を繰り返している。良く見ると、その塊は二つの同じような物体が重なりあい、そこから肉のぶつかり合う音が聞こえていた。 時折、悲鳴のような声が漏れる。まるで、それは。 「以外に遅かったな、先にイッてたぜ」 塊がワシに声を掛けた。間違い無い、こいつは竜宮だ。では、もう一方は…。 「ほら、お前も挨拶してやれよ」 「はう、あ、ふぁ、ひい…」 繋がっていた部分を外して、竜宮がそれを、いやそいつの体制を入れ替える。 「律子っ!!」 濁った目をワシに向けたモノの正体は、律子だった。何も着けていない状態で、胸が、細い腰が、星の刺青が、丸見えになる。 「あ、鉄ちゃん、お久しぶ、りいぃぃぃっっ!!」 呂律の回らない声を出していた律子が、突然叫ぶ。それほど太いとは言えないが、黒光りする竜宮のチ○ポが、律子のマ○コを一気に突いたのだった。 「はふ、あぅぅ、パパぁ、酷いぃ…」 「挨拶が長ぇよ、そら、お仕置きだ」 見せ付けるように、竜宮が腰を振る。後ろから律子を抱きかかえる、いわゆる背面座位の形になっているため、繋がっている部分が丸見えになっていた。 「聞いたぜ。てめぇ、リナと組んで俺をハメようとしたんだってなぁ」 上下運動を繰り返しながら、竜宮がワシに向かって話す。話しながらも指は律子の胸を鷲掴みにし、もう片方は内腿の部分をリズミカルに触っていた。 「美人局かぁ、テメェ上等抜かしてくれるじゃねぇか。なぁ、リナぁ」 「ふぁ、ふぁぃ、パパァ…」 「リナのマ○コで俺をハメるってか、ハハハ、確かにリナのマ○コにゃ、ハメられてるなぁ、気持ちイイからなぁっ!!」 「ひゃうああぁッ!!ダメぇ、クリちゃんいじっちゃダメええッ!!」 「残念だったな、テメェ。リナはテメェのチ○ポよりも、俺の方がイイってよ!ヒャハハハッ!!」 「う、うんっ、パパの、パパのチ○ポの方が大っきくて、太くて、ひもちイイのォォッ!!」 「あぁ~。痒い、テメエのそのド外道な企みを考えると、首が痒くなるぜ…」 時折、竜宮は律子から指を離すと、首筋をボリボリと掻いていた。 掻くというよりも、爪で掻き毟ると言った方が正しいか。首筋の皮が破れて赤い血が滴り落ちている。 「リナもダメな奴だなぁ…。こんな奴の言い成りになっちまって」 「ご、ごめんなふぁぃ、だって、パパのこと知らなかったから、ひゃぅぅっ!!」 「だから教えてやってるんだよ、俺のことを、リナの身体中隅から隅までなぁっ!」 「あはああぁぁっ!!そんなに、奥にぃ…!」 「見てるか、テメェ。リナはもう俺のモンなんだよ。そら、リナ。お前からも言ってやれ」 「は、はい、パパァ。り、リナはぁ、ぱ、パパのものです…」 律子から告げられる残酷な言葉。自分が竜宮のモノであると何の澱みもなく告げたその目に、ワシの姿は写っていなかった。 「違うなぁ、リナ。こうだろ?『はしたないリナは、パパのオマ○コ奴隷です』だろ?」 「ひぁ、はぁ、ふぁ、ふぁぃ。はひたなひ、リナはぁ、パパのオマ○コどれひです…」 「良く言えたなぁ、リナ。こいつはご褒美だッ!!」 「ひっ、ひはぁぁッ!!う、うれひぃっ!パパのオチ○ポが、いっぱいぃぃっ!!」 「オラオラ、そろそろイクぞ、全部ぶち込んでやるから受け止めろォッッッ!!」 「ふうあああっっっ!!パパのが、パパのがリナのオマ○コの中にぃぃぃッッッ!!」 一際大きいピストン運動の後で、律子の身体が痙攣し、果てた。しばらくして繋がった部分から大量の精子が零れる。 律子が、汚されてしまった。当の昔に失ったはずの感情が何故か甦り、ワシは無言のまま涙を流した。 「はぅぅ~。パパぁ、リナさんだけ、ズルいよぉ…」 その時、ワシの頭の上で声がした。 見ると、律子達と同じく裸の少女が、物欲しげな目で二人の様子を見ていた。 「おお、ごめんな、礼奈。ほら、おいで。」 脱力した律子からチ○ポを引き抜いて横たえ、竜宮が手招きをする。赤茶色の髪をした少女は嬉しそうに駆け寄り、胡座をかいたその足の上に、ちょこんと座った。 「まずは、綺麗にしてくれないかな?」 「はぅ~パパのオットセイ☆くん。頂きぃ~」 礼奈と呼ばれた少女は、あっという間に竜宮のチ○ポを口に咥えた。慣れているとしか思えない手付き、舌使いで、見ているだけでそそり立つようなテクニックをしている。 「随分、上手くなったな。最初の頃とは、段違いだぞ…」 「んっ…。らって、リナひゃんが、おひえて、ぐっ…。くれたもん…」 「おやおや、俺が知らない間に、リナとも仲良くやっているようだな~。お父さん嬉しいぞ」 な、なんじゃあ、そりゃぁ…?お父さんだって…? ワシはこいつらの言動に目眩を覚えた。こいつらの言っていることが本当なら、こいつらのやっていることは!! 「最初は嫌がっていたもんなぁ、『お父さん、嫌だよッ!!こんなお父さんなんて嘘だッ!!』なんてなぁ…」 「うん、らってレナはお父さんの娘だし、間違っへるほ、思っへはから…」 「でも、やってみたら気持ちよかったろ?この気持ちよさに比べたら、モラルなんて薄っぺらいモンだからな」 「そうだね…。段々とひもち良くなって。ん…。今じゃお父さんと繋がってひなひと、嫌だよ…」 「俺もだ。どら、もうイイぞ礼奈。そこで横になりなさい」 「はぅ…。お父さんのオットセイ☆くん。おっきくなってる…」 十分に硬さを取り戻した竜宮のチ○ポを、礼奈と呼ばれた少女は名残惜しそうに口から離す。後を引く唾液と精液の雫が、妙にエロティックだ。 礼奈は竜宮の言いつけどおりに床に身を横たえる。律子好みの高級な南国柄の絨毯の上だ。 年にしては育っている胸が仰向けになった瞬間に揺れる。髪の毛が床へと下がり、首筋が顕わになった。 竜宮と同じように、血で真っ赤に塗れている。こいつも痒いのだろうか、しきりに首筋に手をやっていた。 「おっ、もう十分に濡れているな。これなら挿れても大丈夫だな…」 「はぅ~。お父さん、指なんかじゃ、ダメだよ…」 「わかっているさ、礼奈。そらあっ!」 「はっ、はううぅぅ~ッ!!」 一気に竜宮が礼奈に腰を突き出した。ビクンと礼奈の体が跳ね、高い叫び声が聞こえる。 「はぅ、はぅっ、お父さんッ!うあぁぁ…。大きいよお…ッ!!」 「くぅっ、いい反応だッ。どんどん、イクぞぉ!」 竜宮は深く礼奈の膣内を抉るため、礼奈の片足を自分の肩にかけてピストン運動を開始した。いわゆる松葉崩しの体勢だ。 「ふああっ、ふああっ!凄いよ、お父さんの、お父さんのがレナの奥までえっ!!」 「おいおい、まだまだこんなもんじゃないぞ。おおおっ!」 「や、やだぁ、レナ壊れちゃう、壊れちゃうよぉ…!」 「そうだ、壊れてもいいんだぞ、礼奈…。いっそのこと、何も考えられなくなってしまえ!!」 「はぅぅっ、はぁぁうぅっ。レ、レナ、もう、もうっ…」 「くううっ、そうだ、締め付けろ。俺をもっと、締め付けろおっ…」 登りつめようとする親子は完全に男と女だった。いや、自分達が親子だということすらも、快感にしようとしている。 そうだ、裏ビデオで良くある近親相姦モノだ。ワシにそのケは無いが、ああいうジャンルがたまらないと言う奴は以外に多い。 こいつらも、そのクチなのか?いや、それ以上にこいつらは壊れているのか?ワシには全く理解出来なかった。 「あぁん、パパぁ、礼奈ちゃあん…。ワタシも、欲しいよぉ…」 竜宮が娘とイこうとしているその時、床で放心していた律子が二人の元へ近づいていった。 だらしなく開いた口元、とろりと淫らに濡れた瞳。ワシにも見せない色気を持った間宮律子がそこには居た。 「おお、ほったらかしにして悪いな。礼奈、お前も良いか?」 「うん、レナも、リナさんと一緒が良いよ…」 「嬉しい…。ありがとう、礼奈ちゃん」 ああ、もうわけが分からなくなってきた。竜宮も、律子も、礼奈も、こいつらはもう人間じゃない、まるで昔読んだエログロな小説に出てくる陰獣のようだ…! 「はは、ははははははははっ!」 狂った獣達の世界で、竜宮が笑う。それはまるで映画の中の怪物の笑いのようで、酷く現実離れした笑いだった。 「リナも礼奈も仲良くなって、俺は嬉しいぞ…!礼奈、もうすぐ俺とリナは結婚するからな、新しいお母さんになるんだぞぉ!」 「お母さん?新しいお母さん…?」 「えぇ、そうよ、礼奈ちゃん。ワタシね、パパしかもう見えないの、礼奈ちゃんのパパが好きなの。・・・ワタシじゃダメかなぁ?」 「お母さん…。レナのこと、お父さんのこと捨てたりしないかな、かな…?」 「当たり前よ…。ワタシ、もうパパ以外の人じゃダメなの。もう、すっごくて、あなたのお母さんが捨てたことが信じられないッ…!」 「…そうなんだ、あは、あははははっ!それじゃあ、あのお母さんは嘘のお母さんだったんだ。これからは、リナさんが本当のお母さんになるんだ…ッ!」 「そうよ、パパと同じように、ワタシも礼奈ちゃんが好きよ。んんっ…」 「はぅ…。礼奈も好き、好きになれるよ。んっ、お母さん…」 律子と礼奈、女同士のキス。百合というのだろうか、その光景は現実離れしていて滑稽にも思えた。 それはそうだ、ここは陰獣の世界なんだ。だから何が起こっても不思議ではない。 「よし、じゃあリナはここ、礼奈の上になって、礼奈はここでリナを可愛がれ」 竜宮がリナの体を礼奈の顔面の上に持っていく。丁度マ○コの部分が礼奈の口元にやってきて、舌で刺激が出来る状態だ。 「礼奈が潰れるから、腰は上げとけよ、リナ。じゃあ、続きだッ!!」 宣言と一緒に、竜宮が再びピストン運動を始める。同時に礼奈がくぐもった声を上げ、律子が刺激で顔を反らした。 「こりゃ、いいなあ…。礼奈の胸じゃ、まだまだ物足りないから、良いカンジだぜ。礼奈のキツマ○コとリナの胸、たまらねぇッ!」 腰はしっかりと礼奈を貫き、手は強く律子の胸を揉みしだく。竜宮に抱かれる二人も、懸命に動いて快感を貪っていた。 「むっ…。はぅ…。すご、いっ…!お父さんの、良くて、リナさんの、おいしいッッ!!」 「ひゃっ、ひゃぁぁ!パパァ、先っぽはダメ…。あうううっんんッ!!礼奈ちゃんの舌、そんなところにイッッッ!!」 「おおおっ、そろそろイクぞ…。まずは礼奈の膣内にだな」 「あはぁっ、パパぁ、お願い。パパの濃ゆいのワタシにもちょうだい…」 「ああ、この次にな。おらっ、出すぞ!!」 「はぅ、ふぅぅ~。出すの?お父さんの、白いの、出すの?」 「そうだ。白いのを出してやるからな。たっぷりと、妊娠するまでなぁ!!」 「あ、あはは。お父さんと、レナの赤ちゃん…」 「ああ。リナにも出してやる。リナと礼奈の赤ちゃんは可愛いだろうなぁ!」 「はぅ~。赤ちゃん、かぁいぃよぉ…」 その瞬間、竜宮の体が震えた。同時に、礼奈の体も痙攣し、上に乗った律子が竜宮を抱きしめて、果てた。 本当に、娘に膣内出ししやがった…。 俺は悪夢を見ているのだろうか。この狂った陰獣の世界が夢ならば、覚めてしまうことを強く願った。 しかし、その願いは空しく、最悪な形で破られることになった。 「さて、と…」 脱力した二人を尻目に、竜宮が立ち上がる。何度も出したにも関わらず、そのチ○ポが萎える雰囲気は一切無かった。 「よお、チンピラ野郎」 いきり立ったチ○ポのまま、竜宮はこちらに振り向いて近づいてくる。 下卑た笑いを浮かべて、そう、まるで抵抗出来ない女を自分のモノにするようなヤクザ者のように・・・!! 「おやおや、こんなにしちまって」 竜宮はワシの元に近づくと、さっきまでの光景を見て、不覚にも反応してしまったワシのチ○ポを眺めた。 「お、オンドれぇっ!さっさとほどかんかい!!」 精一杯の虚勢を込めて、ワシは叫んだ。 しかし、竜宮はそれを意に介することなく、ワシの、股の間に腰を沈めてきた。 「ひっ!!」 意図を察知して、今度は悲鳴を叫ぶ。 そう、ここは陰獣の世界。 何が起こっても不思議では、ない…。 「そろそろあいつらのマ○コもユルくなってきてなぁ。刺激が足りねぇんだよ…」 「わ、わりゃぁ!何を考え、がっ!」 思い切り顔面を殴られて、ワシは仰け反った。一回り小さな竜宮の体とはいえ、抵抗できないこの体勢では、痛みが倍増する。 「一度ケツってモンを試してみたくてな。なぁに、リナだってヤッちまえばメロメロになったんだ。テメエもその内気持ちよくなるさ」 竜宮がワシの膝を割り、硬いものがケツの穴に触れる感触があった。 「や、やめろ、やめてくれッ!それだけは!!アッーーーー!!!」 竜宮からの返事は無かった。 聞こえてきたのは不快な笑い声だけ。 その笑い声が止んだ瞬間に襲ってきた痛みが、ワシが人間として残った最後の記憶となった。 おわり
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前ページ次ページベール=ゼファーの休日 カウント6 昨日より今日、今日より明日 前からにやにや笑いと共に放たれる直射型の光の矢。 体の痛みを無視して、右前へと跳んでかわし――― 侵魔が、左の人差し指を引く。 ―――かわそうとした時、月匣にあらかじめプログラムされていたシステムが発動。着地予定地点から鉱石じみた槍が突き出される。 悪い予感を感じ取ると同時に空中で何とか身をひねり魔剣を下に向けて振りぬく。がぎんっ、と硬質な音が響き、串刺しを狙う槍から何とか逃れ――― 侵魔が、くるりと人差し指を回した。 ―――逃れて、完全に空中で体勢を崩した柊を、同じく鉱石に似た、彼の横合いからいきなり出現した人ほどの太さはある柱が、ビリヤードのキューのように打ち抜く。 なんとか魔剣を盾に体をかばうが、圧倒的な質量による衝撃までは緩和できない。空中では踏ん張ることもできず、成す術もなく吹き飛ばされる。そこへ。 侵魔が、再び光の矢を解き放った。 あまりの衝撃に手放しかけた意識を意思で強引にねじ伏せ、魔剣を振るう。 頭に直撃する軌道の光の矢を、先端が当たるのを感じてそのまま首を振って受け流す。 心臓を撃つ光の矢を、魔剣を振るって弾き散らす。 わき腹を貫く光の矢の軌道を、魔剣でそらす。 しかし、それが限界だ。 急に変質した体の感覚と、元のままの頭の感覚がかみ合わない。空中で体勢は最悪。そんな状態で雨のごとき掃射から逃れきるのは無理に過ぎた。 光の矢が、肩を、腕を、足を貫く。一つ一つの傷は小さく、焼きぬかれているため血も出ないが、確実に動きが鈍くなっていく。 「ぐ、ぅ……っ!」 光の矢に撃たれたことでさらに体勢を崩し、背中から地面に叩きつけられた。 すぐさま立ち上がろうとして、意識がぐらりと揺らぐ。 さすがに首の動きだけで光の矢を受け流すのは無理があったのか、軽い脳震盪を起こしたようだ。 起き上がることはできても立ち上がるのは難しく、魔剣を突き立て膝をつきながら、それでも敵の動向だけは見逃さぬよう目線だけは侵魔を見据える。 そんな様子を見て、侵魔は嘲った。 「くくく。なかなか不様な姿じゃないか、柊蓮司」 「……ガキ相手じゃなきゃ、強がれもしねぇ弱小エミュレーターが。フルネームで、呼ぶなっつーの」 「なんとでも言え。お前がここで死ぬことに代わりはない。それどころか、今の貴様は私に一太刀すら浴びせることは叶わん」 「たいした自信じゃねぇか、勝負に絶対はねぇんだぜ?」 「勝負になるのならな。 しかし、これは確定した未来だ。貴様は私に触れることすらできずに負ける。 これはすでに確定していることだ―――これまでの貴様の全てを知っている私には、貴様のあがきなど無駄にしかならん」 絶対の優位を確保した侵魔は、笑みをたたえたままそう告げた。 柊は体がいまだうまく動かないことを確認してから、時間稼ぎの意味も含め、侵魔にたずねる。 「確定した未来? 笑わせんな。『日記』でも持ってるってのかよ。 あと―――てめぇが俺の何を知ってるって?」 眼光は鋭く。 まさに射抜くという表現に相応しく、貫くような瞳に睨まれた侵魔は無意識に一歩退る。 それに気づいた瞬間、彼は顔を紅潮させ、ふん、と余裕を見せ付けるように鼻をならし胸の内の動揺を隠すようにしゃべりだす。 「ク―――強がるのもそのあたりにしておけ。 貴様は『逆巻凌』の影響下にある。貴様の肉体がこれまで体験してきた経験は私の手の中にある。 次の行動など手に取るようにわかるのだ、動きの全てが読まれている状況では何をしても無駄と知れ」 「俺の経験……? なんだそりゃ。別に今までのことなんて忘れてねぇぞ」 その言葉に、侵魔は笑みを深くする。 「は。なんだ、噂は本当のようだな。柊蓮司、貴様は本当に頭が―――」 「悪いって言うんだろうがっ!? お前みたいのまで知ってるってどんだけその噂広まってんだっ!? 裏界中か!?」 「当たり前だろう。今更何を言っている」 「今更ってなんだよ今更ってっ!?」 閑話休題。 侵魔は笑みを深めたまま答える。 「冥途の土産に一つ講釈をしてやろう。人間というのは、我々とは異なり肉の器(外)と精神(中)、魂(本質)を持つ。 我々は肉の器を持たない。もともとが精神体だからな、そんなわずらわしいものを持とうとすら思わん。 ともあれ。 通常は、外と中と本質は一つとなって人間を形成し、時を重ねていく。貴様らの言葉で言うところの経験や成長といったところか。 『逆巻凌』は外・中・魂のうちの肉体の経験のみを奪い、戦闘力を奪う魔道具だ」 「あ? お前が言うには体と心と魂ってのは一つなんだろ、その中で肉体の経験だけなんて奪えるのかよ」 「それを成すのが魔導具の魔導具たる所以だ。貴様の体から経験、すなわち成長そのものを奪い私の手にする。それが『逆巻凌』の力だ。 我々は肉の器を持たないゆえに実感としては理解できんがな。 人間は『体が覚える』という表現を使うらしいではないか。経験からくる、肉体がとる反射行動。 考えるでなく感覚が捉えるでもない完全なる反射行動。それは肉体に蓄積された経験からくるものだろう」 つまり、と侵魔は答えを口にした。 「これまで貴様が経験した戦闘において成された肉体の行動経験、それは全て私の手の中にある。 それさえあれば、貴様がどのように動くかを逆算し、あらかじめ月匣に仕掛けを作っておくことなどたやすい。 体が小さくなったのは、いわば副作用にすぎん。お前が頭で考えた行動も、お前の体の経験あってこそだ。 これまでの経験全ての記録があるのなら、貴様が次にどのような行動をとるかなど手にとるようにわかる。わかったか? ―――貴様に勝ち目など、万に一つもないということを」 要はこれまでの体の受けた経験を奪うことで、そのデータを解析してどういう時にどういう行動を取るかを知られている、ということだ。 相手が次に何をしてくるかがわかるのなら、いかに戦う力に差があろうともそれに対して対処ができる。 まして、この月匣のルーラーは侵魔である。先にトラップや仕掛けを作っておくのは造作もない。 そんな話を聞きながら、ようやくある程度体が動くようになったのを確認し、柊は立ち上がって大きく深く息をつく。 「……なるほどな、タネはわかった。土産ついでにもう一つ聞くぞ、そのなんとかって魔導具は。お前を斬れば、効果なくなるのか?」 「今の保有者は私だからな。 逆に言えばそれ以外に解除法はない、なんとかここから逃げ出して、守護者にでも連絡をつける気かも知れんが……そんなことを許すとでも思うか?」 「は。バカ言うな、あいつに今の姿さらすくらいなら異世界すっ飛ばされて魔王ぶった斬るほうが気が楽だぜ。 それに。 ―――勝ち目が0ってわけでもないしな」 大きく腰を落とし。大きく右足を後ろに退り。両手で魔剣を握って体よりも後方下段に構え。ただ強く侵魔を射抜く瞳とともに。 ―――まるで会の時を待つ矢のように。 言葉と立ち居振る舞いからは、相手は傷だらけの子供には見えはしない。 侵魔は魂を鷲づかみにされる悪寒を味わい、しかしその悪寒を彼は首を振ってそれをなんとか引き剥がす。 声を張り上げることで、自身を鼓舞し、魔法を放つ。 「なにを馬鹿なことをっ。貴様の動きの全ては私の手の中だっ、勝ち目など与えんっ! 死ね、<マテリアルシュート>っ!」 同時。 侵魔の前に生まれるのはダーツほどのサイズの鉱石の矢。数は15。それらが柊目掛けて一気に飛来、襲いかかる。 15本の矢は結構な間隔をあけて放たれた。群れを方向を変えることでかわすよりも、自身に当たるものだけを弾き前に進むと予測は答えを出した。 魔剣を跳ね上げた瞬間に地面を隆起、槍と成して貫く仕掛けの起動準備を整える。 しかし。 柊は、魔剣で矢を弾くことはしなかった。ただまっすぐに進んだだけ。 体を貫く鉱石の矢。 動きに支障がでる箇所だけ斜線からずらす。 矢の先端がもぐりこみ、発射の勢いのまま体内を抉り、同じように体の中をくぐりぬけて貫ききる。 ぱたぽたと血が雫となってこぼれて跡を刻む。痛みを飲み込みながら、前へ。 ごくり、と侵魔の喉が鳴る。 悪寒。そうとしか思えぬものが背筋を這い上がる。 歯を食いしばり、まだ無駄になったわけではない仕掛けを発動する。 その仕掛けの一歩前で、彼は体一つ分横へ飛び、槍は空を貫いた。 まるで罠が見えているかのようなその動きに、悪寒が再燃する。 柊は別に罠が見えているわけではない。 これまで放たれてきた仕掛けが設置型のものであると侵魔自身が言ったこと、そして仕掛けは侵魔がトリガーを引かない限り発動しないとこれまでの戦闘で理解している。 この月匣におびき寄せられてから、幾度となくいくつもの仕掛けを受け続けたのだ。仕掛けの配置と種別程度は理解している。 あとは最短のルートで考える時間も与えぬまま叩き斬るだけ。 経験とは今この瞬間も積み重ねられるものだ。 昨日より今日、今日より明日。今までの自分を奪われたのなら、今からの自分を叩きつけるだけ。 前へ、前へ、前へ、もっともっと、前へ。 その意思だけを目に宿し、ただ全力で走り抜ける。 こ、の。と呟いて、侵魔は剣指を振り下ろす。 「潰れろっ!」 言葉と同時に柊は上に視線を向ける。 頭上には、巨大な鉱石の槌。柊はこの距離まで侵魔に近づいたことはない。初見の仕掛けだ。 一つ舌打ち。 プラーナを解放、さらに加速。槌の範囲から逃れた。 侵魔まではすでに数歩の距離。たとえ動きを読まれていたとしても先に到達しさえすればそれで勝てる。 実のところ、柊の方もほとんど余裕はない。 最初の鉱石の矢を魔剣で受けなかったのは、『いつもの自分ならする行動』をしないことで相手の目を撹乱するため。 これまで何度も何度も魔法を受け、鉱石に打ちのめされてきた。子どもの体で魔剣を振り回し続け、体力もとっくに限界を迎えている。 これ以上のダメージを受ければ再び立つのも難しい。回復手段を持っていない以上、この交錯で決めなければならない。 今の槌は相手がご丁寧にも上からくるということを宣言してくれたからこそ回避できた一撃。そう何度も幸運は続かない。 それがわかっているからこそ、彼も一刻も早く決着をつけるために、わき目をふる余裕もなく、駈ける。 侵魔は猛烈な悪寒に襲われる。 彼を恐れさせたのは、彼があらかじめ作っておいた仕掛けをことごとく柊がかわしていくことだ。 まさか相手はこちらが何をするか読めているのではないか? なまじ自分が読めるがゆえに生まれる疑念。 ありえない、と理性が叫ぶ。しかし一度生まれた疑念は雪だるまのように膨らんでいく。 彼は圧倒的な恐怖に心を鷲づかみにされながら。この抵抗さえも無駄なのではないかと恐れながら。それでも、その圧倒的な恐怖と疑念から逃れるために、叫ぶ。 「ち、近づくなぁっ! <ラグナロック、ライト>ぉぉぉぉっ!」 侵魔が目を閉じたまま、破れかぶれに放つのは属性融合高位魔法。 目を灼くほどの陽光よりもなお強い光と、地獄の底からあふれでたような深遠なる暗い闇が渾然となった光の玉が放たれ―――はじける。 爆光。 あまりに至近距離で放たれたため、柊は完全には反応しきれない。できたことといえば光に目を灼かれぬように隠し、ありったけのプラーナを放出すること。 反射的にそれらができただけ、彼は膨れ上がる光に飲み込まれた。 焼かれる。切られる。貫かれる。砕かれる。打たれる。 ありとあらゆる方向から放たれる圧力によって、絶叫すら消し飛ばされる。 どこが痛いのかもわからない。小さな体に残されたプラーナなど、瞬時にかき消すほどの爆圧の嵐。 それでも彼は。その、滅びの爆光の中を。 ―――駆け抜けることだけはやめなかった。 光を抜けた。 そこは、すでに刃(かれ)の間合いだ。 ラストチャンス。今にも崩れそうな体を、たった一度の攻撃に全てを賭けて意志のみで振り回す。 「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」 体を軸に、思い切り魔剣を振り回し―――斬撃の手ごたえを感じながら、意識を手放した。 幕間 空を行くもの全ての主 <Beal-Zephyr> 赤い紅い、月の下。 そこにいるのは、力なく倒れている傷だらけの子供と―――腰を抜かしている、腕のない侵魔。 柊の正真正銘最後の一撃は、侵魔の腕を切り飛ばしただけに終わった。 すでに限界を迎えていたところに属性融合魔法など食らえば、この程度の損傷でいるのが奇跡とも言える。 魔法の範囲内を走り抜けたために最も短い時間で済んだわけなので、その疾走は無駄ではなかったのだが。 しかし、柊は今意識を失っている。 そして侵魔は生きている。それは、致命的に過ぎる隙だった。 侵魔はしばらく目の前の光景の意味が理解できずに硬直していたものの、唐突に笑い出した。 「く、くく。くははははははっ! 今、私は最高に気分がいい。ありとあらゆる魔王が、侵魔が、冥魔すらもが! 煮え湯を飲まされてきた小賢しい人間が! この私の下に屈した! あっははははっ!」 腹を抱え、彼は笑う。 命の安全を得たという安堵。敵を打倒したという満足感。自分よりも上位と認める者たちに勝った人間を倒したという自身への賛美。 それら全てを含んだがゆえの狂笑。禍り曲り捻れ歪み狂う笑み。 「あら。随分と楽しそうじゃない、何かいいことでもあったのかしら」 鈴を転がしたような少女の声が、それに割り込んだ。 ははは、とその声に答える侵魔。 「魔の王と呼ばれる者すら倒した神殺しを、私がこの手で倒したのだ。これで私の名は裏界に知れ渡る! もはや私は主を戴かずとも。いや、魔王と名乗ることすら可能なのだっ! これが喜ばずにいられるものか!」 歓喜とともにそう答える侵魔に、そう、と鈴の音が告げる。 「―――けど。それって、アンタの力じゃないじゃない」 わし、と。華奢な手のひらが彼の頭をつかんだ。 小さな手のひらのはずなのに、その手は万力のごとき力で締め付けてきて身動き一つ取れはしない。 引いたはずの冷や汗が、再び吹き上げる。 鈴の音は続く。 「あたし、そういうの大っ嫌いなのよ。 強大な存在として、こちら側がハンデをつけてあげることはいいとしても……自ら人間ごときにハンデを負わせる、その根性が気に食わない。 あたしの目の前でその無様な真似をさらそうとした、っていうのが一点。 あたしの楽しいはずの一日を邪魔してくれた、っていうのが一点。 あたしの獲物に手を出そうとした、っていうのが一点。 そしてなにより―――」 ふん、と大して面白くもなさそうに鼻を鳴らし、『彼女』は続けた。 「アンタは魔王の名をナメた。侵魔の王とは他の魔王に『世界を滅ぼす力』として認められることにより名乗ることを許されるもの。 好き勝手に名乗った、なんてことがバレたらどうなるか――― ―――その身に刻みなさい」 酷薄さの混じる鈴の音。 刹那。 ばさりっ、とローブだけがその場に落ちた。 赤い月の匣が、しゃらりしゃらりと硝子粉がこすれる音を立てながら、砕けていく――― カウント7 きちんとおこしてあげましょう。 風が頬を撫でていく感覚。 それがやけにくすぐったくて、意識が表層まで上ってくる。くすぐったいのをかわそうと顔を少しだけずらす。 ひゃうっ、と何やらかわいらしい声がした気がした。 けれど、そんな声よりも今は眠さの方が彼にとっては上位にくる。 体の中にずしりと残る重い疲れが意識を完全に表まで持ってくるのはためらわれた。 このまどろみを今手放すのが勿体なくて、無意識に口にする。 「……あと、5分」 沈黙。 静かになったことで、再び意識を深みへと持っていこうとする。 その時。 「そうは……いかないってのよこのすっとこどっこい―――っ!」 典雅さの欠片もない声。 ごすりっ、と重い音と共に星がまぶたの裏に飛ぶ。星が、星が飛んだスターっ! いや飛んでないけどっ! 閑話休題。 頭がじんじんとひどく痛む。すでに打った頭をその上から殴打されたような感覚。濁点だらけの情けないうめきが口をつく。 「いっづぅぅぅ……なんなんだっ!?」 「なんなんだ、じゃないわよ起きなさいこの馬鹿っ! 人がどれだけ……っ!」 痛みに思わず涙目になった瞳を開く。 柊がまず最初に目に映したのは、銀糸。 銀髪の知り合いは案外多いが、金目となれば一人しか心当たりはない。そこにいたのは頬を少し赤く染めたベルだった。 「……ベル?」 「そうよ。どうやら目は壊れてないみたいね」 ふん、と憮然とした表情のベルが柊を上から見下ろしている。 何かおかしい、と柊は思う。そういえば頭だけなにか柔らかいものの上にあるような気が……。 「……ひざまくら?」 「それ以外の何をしてあげてると思うのよアンタは」 不本意そうに柊を睨むベル。 彼は、ようやく正常に働いてきた頭でたずねる。 「なんでお前にひざ枕されてんだ俺」 「……へぇ。そういうことを言うのアンタ。今すぐ落とすわよ」 「まってください頭割れるから」 「ウィザードの頭が割れるわけないでしょうが。それとも何? あたしのひざ枕が不服だって言いたいのアンタ?」 「別にそういうわけじゃねぇが」 「だったら有り難くされてなさい」 ふん、とそっぽを向きながらのベルの言葉にはこの状況について有無を言わせぬ力があり、彼は口をつぐむしかないのだった。 ため息をついて―――ふと気づいた。 「おぉ? ……あれ、ひょっとして―――戻ってるっ!?」 声が低い。眠る前はやけに高くて違和感があった声が、元に戻っていたことに気づく。 あわてて身を起こして確認しようとして、その矢先にぺちんとベルに額を叩かれ、再びの鈍痛に襲われて悶絶する。 そんな様子を見ながら情けない、とため息と共にあきれたように呟いてベルが答える。 「まったく……当たり前じゃないの。アンタを小さくした奴は死んだんだもの、呪いは解けるでしょ」 「ん? いやそうじゃなくて、なんか……手ごたえが小さかったような気がしたんだけどなぁ」 手を持ち上げてまじまじと見ながら、もとに戻ったことを確認するものの釈然としないように首を傾げる柊。 ベルはその言葉に鼓動のギアが一段上がる気がするが、それを外に出さないようそっぽを向いて『そ、そう?』と顔の赤さを見られないようにごまかす。 しかし柊がそんなところに気づくはずもなく。 疲れたように笑って腕をおろした。 「まぁ、いいか。なんとか戻れたんだし」 「……この朴念仁」 「ん? なんか言ったか?」 「いーえ、なんにもっ!」 ふん、と完全に機嫌を損ねたようにため息のベル。 「そういえば、あんだけ暴れたのにだいぶ体が楽なんだが。お前なんかしたのか?」 「別に。体が元に戻ったんだから、その分回復力が上がっただけじゃない?」 不思議そうな柊に、空とぼけるベル。 別に回復魔法をかけてやったわけではない。そこまでの義理はない。 ほんのちょっと昼食の代金分の義理くらいは晴らしてやろうと思っただけ。昼食に食べた食事の分相当のプラーナを寝ている間に分け与えただけだ。方法までは口にしない。 借りは返す。義理は果たす。それくらいも守れずして何が王か、というだけの話。 プラーナさえ補填されれば、柊とてウィザード。安静にさえしていれば体力は戻る。 ふぅん? と不思議そうに頷きながら柊は今度はゆっくりと体を起こす。それに少し不満げに唇を尖らせながら、ベルはそれを許した。 「まぁいいや。とにかく、お前が起きるまで面倒見ててくれてたんだろ。ありがとうな」 「う……きょ、今日は一日アンタがあたしをエスコートするって約束でしょうがっ、起きるまで待ってただけよっ!」 具体的に言うと待っていただけではなかったりする。 体が元に戻った後、動かない柊に対してえんえんと愚痴ったり、大量に文句を言いながらプラーナを分けてやったり、起きるかドキドキしながら髪を撫でてみたり。 ……そんないたずらをしていたら起きかけて奇声を上げたのは失態だったが。 そんなそっぽをむいたベルに、だよな、とさも当然と言わんばかりの言葉をかける柊。 立ち上がりつつ、軽く体を動かすと血が止まっていることを確認。月衣から新しい薄手のロングコートを取り出して羽織る。 「さーて。そんじゃ約束の続きといくか」 「続きって……アンタね。そんなぼろっぼろでどこへ行こうってのよ」 「お前が行きたいところでいいんじゃねぇの?」 借りができたからな、とまったく意識をしない言葉とともに手を差し出してくる青年。 ベルは一つ大きくため息。 なんだか、エスコートさせてるはずなのにこっちばかりがあわてたり苦労したりしている気がする。 手を取る。 「……ちゃんとエスコートしなさいよ」 「へいへい、努力させてもらいますよっと」 「あたしのエスコートなんて、裏界じゃ億単位の下僕どもが願ってやまないのよ? 光栄に思いなさい」 「……この間ちらっと見たなんとかって魔王はお前らの後始末の顛末を延々と居酒屋で愚痴ってたが」 「なっ!? だ、誰がそんなことを……っ!?」 その手は、やっぱりやや乱暴で。けれど、小さいときとなんら変わらず暖かかった。 ラストカウント またあいましょう。 「で? 今日はどうだったよ大魔王様」 ビルの屋上。 月は白く白く輝くだけ。まだ満ちざるその月を眺めながら、ベルは背後からかけられたその声に、ため息をつきながら肩越しに一瞥。 「雑」 一言で切って捨てる。 柊は苦笑しつつ頬をかきながら答える。 「そりゃ、エスコートなんてもんやったことねぇしな。ある程度は大目に見てくれ」 「言い訳は見苦しいわよ。まともな男になるつもりならレディの前ではしないことね」 へいへい、とため息をつきつつ肩をすくめる。 とはいえ。 ベルは柊といて嫌な思いをしたわけではない。 車道側には必ず立つし、階段は必ず一歩先に歩く。ベルがミニスカートなのを考慮し忘れて2、3発スピットレイを0距離でぶち込まれもしたが。 大魔王相手に傷をつけるのは、ウィザードであっても難しい。ラビリンスシティ参照。 それでも柊はベルを「少女」として扱うのだ。 おそらくは魔王としてよりも少女として扱え、と言われたそれに従っている結果なのだろうが……ただそれだけでこの対応はできるものではない。 「まったく。馬鹿と思うべきなのか、頭が悪いと思うべきなのかはっきりしてくれないかしら?」 「それ同じ意味だろっ!?」 「違うわよ。具体的には水底の石ころと月くらい違うわ」 これだから柊蓮司は、といつもの言葉とともに彼女も肩をすくめる。 それでも彼女は極上の笑顔で柊を見ると、言った。 「まぁいいわ。色々と面白いところも教えてもらったしね」 「どっちかっつーと、お前の行きたいとこに引きずり回されたような気がするんだがな」 「ご満足いただけて光栄ですベール=ゼファー様くらいのことを言えないの?」 「言ったら気持ち悪がるだけじゃねぇか」 「それもそうね。 まぁ―――それなりに、楽しかったわよ」 「そいつはよかった」 その極上の笑みを変えることなく静かに目を閉じ、ベルは告げる。 「―――このへんにしましょうか、ねぇ。ウィザード?」 「そうだな。一応言っとくが、今日は見逃してくれるとありがたい。見逃してくれないなら―――それはそれで負ける気はねぇが」 今日一日のこの関係は、ベルの余興のようなものであると柊にはわかっている。 となれば、彼女の気まぐれで『今日』が終わった瞬間、彼らは敵対関係に戻るのだ。 だからこその返答。 ベルから放たれだした剣呑な気配と、柊の呼び方が変わったことで彼は自分の気を引き締めて、それでも一応弁解はした後。 いつでも相棒を引き抜けるよう、体を緊張状態に持っていく。 その状態を見て、ほんの少しも『遊んでいこう』という欲求が生まれなかったかといえば嘘になる。 しかし、ベルはその甘美な誘惑を一瞬で棄却。これだから柊蓮司は、と呟きながら肩をすくめた。 「まったく、自分の言ったことくらい覚えてなさいよ。本当に頭が悪いわね」 「うるせぇよっ!? ……って、俺なんか言ったか?」 「えぇ。このあたしに向けて『弱ってる相手を襲うなんて趣味じゃないこと、絶対やらないのがベール=ゼファーだ』ってね。 そんなこと言われたら見逃してあげるしかなくなっちゃうじゃない」 だから、と言いながら彼女はふわりと浮かびあがる。 白い月により生まれた薄墨色の月影が、彼女の足元からぷつりと接点を失う。 ベルは誇るように芝居がかった言葉をつむぐ。 「遊びの時間はおしまい。 今日は面白いものも見れたことだし、見逃してあげるわ柊蓮司。無愛想な顔も、子供の頃なら可愛らしく見えたわよ?」 「うるせぇ忘れろ今すぐっ!」 「イヤよ。リオンも映像まではわからないんですもの、あの子が知ってるのはアンタが今日一日子供になってたっていう事実だけ。 アンタを柊蓮司として今日一日見てたのはあたしだけなんだもの、そうそう忘れてたまるもんですか」 ふふ、と満足そうに笑って彼女は続きを口にする。 「今日は一日アンタに振り回されたけど、さっきのと今の無様なカッコでチャラにしてあげるって言ってるのよ、ありがたく受け取りなさいな」 「振り回したのはどっちだよ」 「アンタよ、柊蓮司。100%アンタ。たぶん他の誰に聞いてもアンタだって答えるわ。 ―――ま。どうせ自覚なんか死んでも生まれないでしょうけど」 ため息。やれやれ、というように彼女は首を振ると、その琥珀の純度を高めたかのような黄金の瞳で、柊を射抜く。 「それじゃあ―――またあいましょう。 次は、あたしの遊戯盤上(ゲーム)でまた思う存分踊ってもらうわ。 せいぜい踊り狂って、あたしを満足させてから死になさい。でないとコンティニューさせちゃうかもしれないわよ?」 「上等。 せいぜい高みの見物してりゃいい、俺がおとなしく踊ってると思うんだったらな。気づいた時には盤上ひっくり返して、お前を引きずりだしてるかもしれねぇぞ?」 「えぇ、それくらいの手応えを期待してるわ。 じゃあね柊蓮司、次のゲームまで……せいぜいその体を大事にすることね。首もよく洗っておきなさい?」 バイ、と呟いて。 刹那。月の像が揺らいで赤く染まり―――次の瞬間には再び皓々と照る欠けた月に戻る。 頭をかきつつ、柊は踵を返す。 さすがに色々あって疲れている。今日くらいは実家のベッドで眠れることを期待しつつ。 内心。また厄介な約束をしたな、なんてことを思いながら。 それでもその約束を反故にしないため、とりあえず彼は体を休めるための帰路についた。 前ページ次ページベール=ゼファーの休日
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テレビとか新聞とかちゃんと見ないとダメだって ◆IbPU6nWySo 「ジナコや……おきなさい、ジナコや…」 「う、ううーん…?」 謎の声に呼びかけられる。 確か自分はかわいい少女と共にお昼寝していたはず…… まさか再びあの気味の悪い夢を見るのだろうか… ジナコは恐る恐る目を開けた。 そこには肥満体質な男性がはぁーはぁーと息を荒げながらフワフワと浮いている。 まったくもって信じがたい光景が広がっている。 ジナコは怖い夢ではないと分かると安堵はしたが… 男に対してはギョッとして、嫌な汗を浮かべながら訊ねた。 「だ………誰ッスか……?」 「私はあなたの剣『魔剣アヴェンジャー』の精です(ネットで装備しているでしょ?)」 ……… 「擬人化したらこんなおっさんになるとか嘘ッス~!!!!!!」 「あぁっ!逃げないで!!逃げないでっ、っていうか引かないで!!お願い!」 自称:『魔剣アヴェンジャー』の精を名乗る男性は話を続けた。 「今日は毎日使ってくれたお礼に応援をしに参りました。 さぁ、この精霊様になんでも言ってみなさい」 「ん?今、なんでもって言ったッスね!?なんでも……」 ジナコは夢だと分かっていながらも真剣に問うた。 「ボク…死ぬのが怖いッス……死ぬって分かってても、それでも聖杯戦争を生き残りたいッス… あのょぅι゙ょちゃんを殺したくないッス……」 「ふーん?でも君、ショタコンでしょ?」(鼻ホジ) 「今はどうでもいいでしょうがっ!!精霊さん!ボク、あのょぅι゙ょちゃんと一緒なら大丈夫な気がするッス。 あの子もボクと一緒で死ぬのが怖くて…生き残りたいはずッス……ボク……ょぅι゙ょちゃんと一緒なら不幸にならないッスよね? あの子を守り続ければ、元の世界に帰れますよね?」 「……………そうでもないんだけど」 ……… 「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 「ま。待って!ジナコ!!今のナシ!ノーカン!ノーカン!! そんな事によりジナコ!よくお聞き。君、寝ている場合じゃないのよ。 君には今ゴイスー(※スゴイ)でデンジャーなことが迫っているのだよ」 「……へ?」 「さ、早く起きなさい。アーチャー=サンが待ってるから」 「は……はぁ…」 「ようやく起きたか、駄肉」 ジナコが目を覚ますと見知らぬ男性がいた。 夢で見た自称:『魔剣アヴェンジャー』の精よりは断然若く、いい顔の方に近いだろうが 果たしてこの状況はどういうことなのか…… ふと体を起こすと、もう一人。 赤いコートの男性…いや、サーヴァントの姿を見た。 ジナコは途端に焦りが沸騰した。 「ああああああぁぁああぁあああぁっ!!!ごめんなさいいぃぃぃいぃいぃぃ!!! ロリコンじゃないのぉぉおーー!!ショタコンなのぉおぉおぉっ!!!」 「おい」 「もう駄目だ、あたし終わった、死ぬんだ。殺される。こ、ころ、し、死ぬし、死んじゃ……」 「黙れ」 「……」 はぁと男性――ジョンス・リーが溜息をついて改めて話をする。 「いいか、お前がサーヴァントを呼び出すより先に俺とアーチャーは お前にトドメをさせる。分かったな」 ジナコはただ頷くしかなかった。 ちらりとジョンスの手の甲にある令呪を見る。 どうやらすでに二画ほど消費しているようだが、間違いはない。この男はマスター。 状況がうまく飲み込めずジナコはただ話を聞くだけであった。 「この戦争をどうするつもりだ」 「し…死にたくないッス……」 「…聖杯は」 「そんなのどうでもいい!ま、まだやっぱり死にたくないッス…」 「れんげを殺すつもりないってなら、それでいい」 れんげ? あ、あぁ、…ょぅι゙ょちゃんのこと……? 徐々に落ち着いてきたジナコが整理していく。 どうやらこの男(ジョンス)はれんげを保護しているようだった。 もしかしたら家族か何かかもしれないし、とにかく事情があるのだろう。 口ぶりからして聖杯戦争にも積極的ではないのかもしれない。 もし聖杯を狙っているなら、れんげもジナコも殺しているはず。 ジョンスは続けて言う。 「何もするつもりねェなら、れんげを保護してろ」 「え……っとぉ…このょぅι゙ょちゃん?れんげちゃんを…ッスか?」 「あぁ」 「なんで…?」 「…」 「あっ、すいません!聞きません!!何でもアリマセン!!」 「とにかく、れんげは状況を理解してねェ。かといって状況を教えたら何をしでかすかわからねェ 適当に遊んでやれ。わかったな」 「わ、わかったッス!それで見逃してくれるならっ……」 沈黙していたサーヴァント・アーカードが口を開いた。 「迷いはないのだな?我が主」 「二度も言わせるな」 ジョンスが下した決断は――れんげを置いて行く事だった。 ジナコに任せる不安要素があるものの。 彼女の態度を見てハッキリと、これならいいと判断した。 理由としては、やはり二人で闘争を行うとなればれんげを守ることに集中できないからだ。 れんげの存在はそれなりに重要だが、かといってジョンスたちの一番の目的。 闘争そのものを捨てるのならば――彼女はやはり切り捨てなければならない。 戦意のないジナコの意思を確認したところでジョンスの決断は決定されたのだ。 「で、後はだな……」 計画は完璧に通ったものの。 問題はアサシン――カッツェの詳細を掴み、闘争するとなった場合。 奴をすぐに捕捉することであった。 簡単な方法はアサシンをれんげが令呪で呼び出す。 もしくは、あえてれんげを危険に晒す。 これでアサシンがれんげの元へ現れざるおえないだろう。 他には―― 「アーチャー」 「?」 「もしカッツェがお前のところに現れたらすぐ知らせろ。いいな」 「了解した。しかし、それはあるだろうか?」 「大いにある。かなり気にいられてるぞ、お前」 お世辞として受け止めているのか、アーチャーはくっくっと笑う。 ジョンスが冷たくあしらっているからこそ、アーチャーの方へアサシンの意識が向かうのは必然であった。 逆にジョンスのことは避けている態度がある。 その程度のことはジョンスにも感じられた。 だからこそ、ジョンスが目を離した隙にアサシンがアーチャーへ接触することは十分ある。 次はアサシンがれんげの元へ向かった場合。 「おい、駄肉」 「あのー…さすがにいいッスか。ボク、ジナコです。ジナコ・カリギリッス」 「電話番号教えろ」 「はい?」 「ここの。携帯でもいい」 「わっ、わかりました……」 これでれんげの所在が掴めればいい。 いっそこのことアサシンのように携帯を盗んでしまうのも手だったが ルーラーの一件がある以上、ジョンスは目立つ行動を控えようと用心していた。 唯一気になるのはアサシンの行動…… 何かしらやっているかもしれないのはジョンスも分かっているものの。 具体的に何をやらかすのかは…ジョンスよりもアーチャーの方が理解しているかもしれない。 「か、書き終わりましたっ!これでいいッスよね!?」 「あぁ」 それは別にいいか。ジョンスは思考放棄した。 ジナコから電話番号が書かれた紙を受け取ると、ジョンスはそれ以上は何も語らず立ち去る。 同時にアーチャーも霊体化した。 ジナコはポカンとジョンスを見送り、玄関が閉まる音をハッキリと聞いた後 れんげを剥がし、普段は見られない俊敏な動きで鍵をかけた。 「よし!これでよし!!………はぁぁあぁぁあぁ~~~~……」 壮大な溜息をついたジナコだったが 冷静になればあの赤いサーヴァントはれんげのサーヴァントではないということに気づく。 じゃあ……れんげちゃんのサーヴァントは…? なんだろう…思い出したくない…… 何か忘れている気がするが、彼女は体の痛みと吐き気を催したので思考を止めた。 部屋に戻るとまだれんげはスヤスヤと眠りについている。 「…ま、いっか。れんげちゃんから後で聞けばいいッス あの人たちも悪い人じゃなさそうッス!……怖かったケド」 この程度ならアサシン(ゴルゴ)に怒られる事態には陥らないだろうとジナコは慢心する。 「あーあ!完全に目が覚めちゃったし、ネトゲやろーっと」 建前としてはれんげを起こさない為と評して。 カチャカチャとジナコがパソコンを操作し始めた……が。 どうしても気になったのでジナコは交流サイトで月海原の様子を確かめた。 確か、ヤクザさんも調べてたみたいッスけど……どうなっているんだろ… どっか建物でも壊れたり、物騒な事あるんスかね… カチッ 「え……なに…ヤダ、これ…………嘘…」 『なんだこりゃ…』 ランサーの呻きは春紀の思いと重なった。 春紀のバイト先であるケーキ屋が野次馬に囲まれていたのである。 そして、警察の姿。 パトカー。 何もかもか無茶苦茶だ。 茫然とする彼女のところにケーキ屋の店長が姿を現した。 「あっ!春紀ちゃん!!」 「店長…これ、何があったんですか?」 「そ、それが…」 興奮する店長から何とか聞きだしたのは妙な女性が鉄パイプを手に、店内を荒したという。 彼女は駆けつけた警察官にも喧嘩を吹っ掛け あげく、女性は混乱に乗じて逃亡したらしい。 春紀の隣では、その警察官が刑事らしい男性に叱られていた。 「犯人の挑発に乗るなんて、頭に血が昇りすぎだ。現場では冷静になれ」 「は、はい!申し訳ありませんでした!堂島刑事っ!!」 「ったく…あー、そこの――店長さんか?犯人の特徴を知りたいんだが、詳しく話してくれるか?」 「じゃあ、春紀ちゃん。今日のバイトなしってことで…また後で連絡するよ」 「はい。……店長!ちょっと荷物取って行きたいんで店内に入って良いですか?」 店長は返事を堂島と呼ばれた刑事に頼んだ。 堂島は軽く店内を覗いてから 「現場検証は大体終わった。邪魔にならない程度なら構わない」 「ありがとうございます」 春紀が直接店内を見ると、確かに酷い有様だ。 元の店内を知る春紀だからこそ被害を親身になって受け止められる。 しかし、ここが襲撃されたということは―― (まさか……サーヴァント?) ランサーは不満げな声で返事をした。 『さぁ、どうだろうね……あたしらを知っているのはせいぜいライダーたちだけだ。 女性って言うからには可能性としては十分あるけど…こんなことするか?普通』 (他のサーヴァントの可能性もある、か) 『少なくともあのライダーのマスターは、こんな手使う奴には見えなかったけどな』 春紀は調理場へ移動すると、そこには作りかけのケーキや出来たてのものまで放置されているのを発見する。 (どうせ捨てられるんだ。杏子、これも貰っていこう) 『お!ケーキ!!いいところバイトしてんじゃん♪』 (バイトに来たのって、そもそもコレ目的だしな) ランサーの魔力回復にはもって来いである。 ケーキを回収した後、バイトの時間を何に潰そうか春紀は考える。 春紀は念の為、ケーキ屋を襲撃した犯人の情報収集をした。 移動しながら最低限の情報をと春紀は携帯を開いた。 するとすぐに犯人の顔写真、犯行現場を捉えた写真などが交流サイト、掲示板にある。 しかも本名も割れている。 ジナコ・カリギリ…… ランサーもそれを見て悪態をついた。 『おいおい、いくらなんでも酷ぇな……』 (あぁ) 確かに酷い… ネットでの誹謗中傷は常識の範囲だが、これは… 死ねだの、デブ女だの、ただの悪口まで書かれている。 だが春紀は画像を確かめて行く内にジナコという女性の手に令呪があるのが分かった。 マスター!? こんな目立つことして何がしたい訳!? それとも他のマスターたちをおびき寄せる…為……? なんだか罠くさい… 「…?」 その時、春紀の令呪が強く反応を示した。 感覚は魔術師の才がない春紀にも感じられるほどだった。 (杏子、今のって――) 『…こっちだ、あたしも魔力を感じた』 「ああ……ああぁあぁっ……う、あぁ……イヤ…何これ……何これ!」 ジナコはパソコンを叩きつけてしまった。 彼女にとって命より重いかもしれないソレを、思い切り。 何故だが知らないが自分が犯罪を行う写真や動画が出回っている。 よく分からないが、自分が犯罪者だと誹謗中傷されている。 さらには彼女がNPC時代の知り合いの誰かがプライベートな写真が。 どうして? どうして!? どうしてっ!!? このままじゃ無実の罪で警察に捕まる。 そしてそのまま犯罪者のレッテルを永遠に貼られる。 たとえここが方舟だろうが、どこだろうが。 これほどまでに絶望的な状況はない。 「や、ヤクザさん…」 アサシンを呼んだところで何になる? ジナコは途方に暮れた。 何をどうすればいいのか分からない。 「あたし……アタシ…これ……」 ジナコは死ぬのが恐ろしかった。 なのに あれほど死を身近に感じていたのに、恐ろしかったのに。 今は、信じられないほど――死にたいと思えた。 「はは……ははは…はははは……」 彼女は全てから裏切られた。 知り合いからも、知らぬ人間からも、社会からも この世の全てから。 もう、どうでもいいや…こうなったら本当にどうでもいい。 …どうせ皆死ぬ。殺されてもいい。死ぬのは怖い。生きていたい。 でも 「んー……」 れんげが目を覚ました。 混乱しているジナコの前に無垢な少女は周囲を見回した。 カッツェも、アーカードも、ジョンスもいない。 いたのは、カッツェが連れてきたあの女性だけである。 「あの、かっちゃんたちどこですか?」 「…」 ジナコもれんげに気づくと、冷えた目で彼女を見下した。 露知らず、れんげはのんびりと話す。 「どうしたん?気分悪いん??」 「…まさか……あの赤い人のせいなの…?」 「赤い?あっちゃんのことなん?」 「…アタシをこんな目に合わせたの……」 ジナコはれんげに近付く。 どことなくその雰囲気でれんげは悪寒を感じた。 恐怖が生まれ、彼女から後ずさると、栓が抜かれたかの勢いでジナコがれんげを掴もうとする。 何故、彼女がこのような行為をするのか。 れんげにはまったく理解できない。 襲いかかろうとするのを見て、いよいよれんげは逃げた。 初めて見る家だったが、居間を挟んだ先に玄関があったのが幸運である。 礼儀よく靴を履いている暇はない。 靴を掴んで、靴下だけの状態でれんげは外を飛び出した。 「う……」 同時に呻いた。 恐怖で呻いた。 誰もいない、一人ぼっち。 アーカードもジョンスも、カッツェすらいない孤独の彼女に希望はなかった。 「うぅううぅっ……!!」 れんげは必死に走った。 一方のジナコは放心した状態で、玄関で立ちつくしていた。 れんげの悲痛な叫びを聞いて、ジナコは正気を取り戻している。 「あ…アタシ……」 何を考えていたのか。 あんな少女が自分を陥れる訳がない。 少女を守るよう頼んだあの男がこんなことする訳がない。 なのにどうして信じなかったのか。疑ってしまったのか。 ジナコは涙を流す。 「アタシのこと心配してたじゃない…れんげちゃん…… れんげちゃんのこと、強引だけど頼まれたじゃない……! なのに、なんで…アタシッ……!!こんなことも出来ないの…」 ごめんなさい… 【B-10/街外れの一軒家/一日目 午前】 【ジナコ・カリギリ@Fate/EXTRA CCC】 [状態]脇腹に鈍痛、精神消耗(大)、トラウマ抉られて情緒不安定、ストレス性の体調不良(嘔吐、腹痛) 昼夜逆転、現実逃避、空腹、悲しみと罪悪感 [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [所持金]ニートの癖して金はある [思考・状況] 基本行動方針:??? 0.どうしよう… 1.れんげやジョンスに謝りたい、でも外に出るのは怖い [備考] ※彼女のパソコンは破壊され、ネトゲ内の装備も消失しました。 ※密林サイトで新作ゲームを注文しました。二日目の昼には着く予定ですが…… ※カッツェにトラウマを深く抉られました。ですがトラウマを抉ったのがカッツェだとは知りませんし、忘れようと必死です。 ※ジョンスが赤い人(アーチャー・アーカード)のマスターであることを把握しました。 ※ジナコ(カッツェ)の起こした事件を把握しました。 (杏子、この反応って何を意味しているんだ?) 『ライダーの時と同じだ…サーヴァントの宝具に反応しているはずだよ』 移動しながら春紀とランサーは念話により会話を続ける。 『しっかし、昼間から宝具を解放してるってのは工房作っているかもしんねーキャスターか… せいぜいアサシンってところだな。アサシンだったら厄介だよ。気を引き締めな』 (あぁ) そう会話している矢先に彼女たちの前に何かが飛びだす。 一人の少女である。しかも小学生くらいの幼い少女だ。 そして、こけた。 「あっ」 思わず春紀は足を止めた。 少女はしばらくじっと動かず、テンポを遅らせてから立ち上がると膝から血が滲み出ている。 ボロボロと涙が溢れだす。 だが、少女は大きく泣き喚く事はなく、声を抑え気味に泣いていた。 「ああぁ……」 春紀は非常に戸惑った。 放っておけない。 しかし、この辺りにはサーヴァントがいるかもしれない。 だけども…… 「あーもう!」 春紀は優しく少女に話しかける。 「大丈夫?ちょっと痛いかもしれないけど、傷触るよ。いいか?」 (ランサー、水持ってるだろ?) 『はぁ!?……ったくしょうがねぇな…』 ランサーは少し離れ、突然出現したように見せぬように春紀たちに近付いた。 しぶしぶ貴重な食料の一つを渡す。 「ほらよ」 「ごめんごめん、また後で調達しよ」 水で傷口を最低限に消毒してやる。 だが、春紀はハンカチを忘れたことに気づき、代わりになるものを探した。 ふと、少女の手に巻かれてある包帯に目が魅かれた。 手の甲……嘘だ…まさか…… 震える声で春紀は言う。 「ちょっとだけ…この包帯、くれる?」 少女は痛みと悲しみを堪えながら頷いた。 恐る恐る春紀が包帯を解くと――その下から特徴的な痣が露わになった。 この子がマスター…!? するとまた令呪が反応する。警戒したが、やはりサーヴァントの姿はない。 冷や汗を浮かべながらランサーは呟く。 「どういうことだ…?こいつのサーヴァント、何してやがる……」 「取りあえず――」 包帯の半分で傷を覆い、残りで痣を隠してやる春紀。 少し迷ってから春紀は少女に対してしゃがみ込み、背を向けた。 「おんぶしてやるよ。ホラ」 「…ありがとなん」 初めて少女は言葉を発する。 ランサーは思わず「おい!」と声をあげる。 「こいつマスターだろ!?」 「……ごめん、ちょっとだけ…」 「…好きにしな。あたしはマスターの決定には逆らわないからさ」 幼い少女。 二人はこのキーワードにそれなりの思い当たる部分を抱いているのだ。 春紀は妹。 ランサーは死んだ妹。 少女はその影と重なり合う存在である。 ランサーは霊体化して、周囲の警戒に当たる事にした。 春紀は少女から話を聞きだした。 少女は宮内れんげ。 彼女は怖い女性から逃げてきた。 攻撃してきた事から、その女性はマスターか…あるいはサーヴァントと分かる。 他にも『あっちゃん』と『八極拳』なる人物を知っていた。 二人組なのでそれも聖杯戦争の参加者だろう。 れんげの話によれば、二人はれんげを保護していたらしい。 殺意がないのだろうか…… 何より重要な、れんげのサーヴァントについてだが。 そもそも、れんげは聖杯戦争すら理解していなかった。 ルーラーが説明しなかったのか? いや、もしかしたら彼女には説明を理解できる知力がないのかもしれない。 春紀はあえて聖杯戦争には触れずにサーヴァントらしき存在を聞き出そうと試みた。 するとそれらしい『かっちゃん』と呼ばれる存在がいた。 『かっちゃん』は宇宙人で性別はよく分からない?、れんげの親友。 れんげが楽しそうに話す内容から仲の良さは十分伝わった。 「それじゃあ、れんげの家はどこ?」 「うち、家は村にあります」 「えっと…そうじゃなくってだな。ここで住んでる家みたいなの、あるだろ?」 「……?よく分からないん…それ八極拳も聞かれたん……うちの家は、村にしかないん」 「…家。ないのか?まさか――」 「ここには家ありません!いつの間にかここにいました!」 『おいおい…マジかよ……』 さすがにランサーも驚いていた。 きっと八極拳といった人物も苦労しただろう。 春紀は非常に悩む。 ここは警察に保護を頼むのもありだろうか? 春紀たちが見知らぬ少女を連れているのは、周囲の目がどのように見るか分からない。 れんげは春紀の思考を知らずに訊ねた。 「はるるん……かっちゃんたち、探して欲しいんな。 かっちゃん、いつも一緒にいてくれたん。だけど、今はどこにもいないん。 かっちゃん。大丈夫なんな?」 「大丈夫だって。探してやるから」 「会ったら、はるるんもかっちゃんと友達! かっちゃん。ほたるんたちと友達になってないん、でもここで友達沢山できるん!」 「…そうだな」 「かっちゃん…ちょっと恥ずかしがり屋みたいなん。うちの村で皆と会おうとしなかったん」 「へーそうなんだ」 何気なく春紀は話を受け流していた。 が、ただ一人。 ランサーはある事に気づく。 こいつ…今、『村』で……そう言ったよな? サーヴァントは――『ここ』で召喚されるんだ。 だけどこいつ。『自分のいた村』でサーヴァントを呼び出したって、そう話してねぇか…… 大体、NPC時代もないし家もないと来たもんだ。色々変だぞ?こいつ…… 異端。 イレギュラー。 予想外の存在。 普通には存在しえない存在。 いるはずのない参加者。 …いいや、まさかなとランサーは れんげの言いまわしのせいかとマスターである春紀には告げないでおいた。 【B-10/町はずれの住宅地/一日目 午前】 【寒河江春紀@悪魔のリドル】 [状態]健康 れんげをおんぶ [令呪]残り3画 [装備]ガントレット&ナックルガード、仕込みワイヤー付きシュシュ [道具]携帯電話(木片ストラップ付き)、マニキュア、Rocky、うんまい棒、ケーキ [所持金]貧困レベル [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く。一人ずつ着実に落としていく。 1.れんげをどうするか考える。 2.食料調達をする。 [備考] ※ライダー(キリコ・キュービィー)のパラメーター及び宝具『棺たる鉄騎兵(スコープドッグ)』を確認済。 ※テンカワ・アキトとはNPC時代から会ったら軽く雑談する程度の仲でした。 ※春紀の住むアパートは天河食堂の横です。 ※定時制の高校(月海原に定時制があるかは不明、別の高校かもしれません)に通っています。 ※昼はB-10のケーキ屋でバイトをしています。アサシン(カッツェ)の襲撃により当分の開業はありません。 ※ジナコ(カッツェ)が起こした事件を把握しました。事件は罠と判断し、無視するつもりです。 ※ジョンスとアーチャー(アーカード)の情報を入手しました。 ただし本名は把握していません。二人に戦意がないと判断しています。 ※アサシン(カッツェ)の情報を入手しました。 尻尾や変身能力などれんげの知る限りの能力を把握しています。 【ランサー(佐倉杏子)@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]健康 魔力補充(おにぎりとパンを消費) [装備]多節槍 [道具]Rocky、ポテチ、チョコビ、ペットボトル(中身は水、半分ほど消費)、ケーキ [思考・状況] 基本行動方針:寒河江春紀を守りつつ、色々たべものを食う。 1.春紀の護衛。 [備考] ※ジナコ(カッツェ)が起こした事件を把握しました。 ※ジョンスとアーチャー(アーカード)の情報を入手しました。 ただし本名は把握していません。二人に戦意がないと判断しています。 ※アサシン(カッツェ)の情報を入手しました。 尻尾や変身能力などれんげの知る限りの能力を把握しています。 ※れんげの証言から彼女とそのサーヴァントの存在に違和感を覚えています。 れんげをルーラーがどのように判断しているかは後の書き手様に任せます。 【宮内れんげ@のんのんびより】 [状態]魔力消費(小)(睡眠により回復) ジナコへの恐怖 左膝に擦り傷(治療済み) [令呪]残り3画 [装備]包帯(右手の甲の令呪隠し) [道具]なし [所持金]十円 [思考・状況] 基本行動方針:かっちゃんたち探すん! 1.はるるんと友達なん! 2.はるるんとかっちゃんを友達にしたいん! 3.怖かったん…… [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 ※カッツェにキスで魔力を供給しましたが、本人は気付いていません。 ※昼寝したので今日の夜は少し眠れないかもしれません。 ※ジナコを危険人物と判断しています。 【B-10/図書館へ移動中/一日目 午前】 【ジョンス・リー@エアマスター】 [状態]健康、アサシン(カッツェ)に対する苛立ち [令呪]残り1画 [装備]なし [道具]ジナコの自宅の電話番号を書いた紙 [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:闘える奴(主にマスターの方)と戦う 1.アサシン(カッツェ)を八極拳で倒す方法を探す 2.基本行動方針と行動方針1.を叶えるため、図書館へ向かう 3.ある程度したらジナコに連絡をする [備考] ※先のNPCの暴走は十中八九アサシン(カッツェ)が関係していると考えています。 ※現在、アサシン(カッツェ)が一人でなにかやっている可能性が高いと考えています。 ※宝具の発動と令呪の関係に気付きました。索敵に使えるのではないかと考えています。 【アーチャー(アーカード)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:主(ジョンス・リー)に従う 1.新たな闘争のために図書館へ向かう。 2.アサシン(カッツェ)が起こそうとしている戦争には興味がある。 3.アサシン(カッツェ)が接触してきた場合、ジョンスに念話で連絡する。 [備考] ※野次馬(NPC)に違和感を感じています。 ※現在、アサシン(カッツェ)が一人で何かしている可能性が高いと考えています。 BACK NEXT 065 喰らう者たち 喰われる者たち 投下順 067 勇者の邂逅、聖者の会合 065 喰らう者たち 喰われる者たち 時系列順 068 異邦の地で生きるということ BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 053 落とし穴の底はこんな世界 寒河江春紀&ランサー(佐倉杏子) 086 槍は甘さを持つ必要はない 060 Imitation/午前9時52分 宮内れんげ ジョンス・リー&アーチャー(アーカード) 080 対話(物理) ジナコ・カリギリ 091 ひとりぼっち ▲上へ
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194 名前:名無しさん 投稿日:[ここ壊れてます] ID kakukoto0 193 頑張れスネーク そっちに行けないオレのためにまずは美少女をうpするんだ 195 名前:193 投稿日:[ここ壊れてます] ID 876543210 http //*******/***/*****.jpg (マジでグロ注意。画面の端にあるのはID書いた紙な) 見ても文句いうなよホント… 俺なんかメートルぐらいの場所にいるんだぜorz 196 名前:名無しさん 投稿日:[ここ壊れてます] ID kakukoto0 ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!! こっち見んな!! 首だけこっち見て笑うなあああああああああああああ!!!! そのグロ画像がリアルで 193の頭上を滑空した。 反射的にそれを撮影しようと携帯を構えた頃にはもう遅い。群衆の垣根を弾丸のように乗り 越えたグロ画像は交差点のはるか向こうでくるりと宙返りを打ち、羽根を生やすと恐ろしい速 度で天に昇って行った。それめがけて銀色の全身コートが恐ろしい速度で疾駆してもいる。 一体何が起こっているのか分からない。隣の者に聞こうにも、やっぱり携帯片手に呆気に 取られているだけで分からない。 仕方ないので 193は本日二度目のポルナレフAAを使用した。縮小版の。 そして彼(または彼女)のあずかり知らぬ領域で、下記のように状況は推移していた。 「人気のない場所へ奴を誘導する。ついて来い」 ガンマンならば銃口から紫煙がくゆっているだろう。 鐶の居たすぐ前で拳を突き出す防人に斗貴子はそんな錯覚を覚えた。 (私が攻撃するより先に吹き飛ばすとは) バルキリースカートで斬ろうとした頃にはすでにブラウンのグローブがちりちりと空気を焼き ながら鐶の腹に迫っていた。一体いつの間に距離を詰めていたのか。傍観者たる斗貴子さえ 考える余裕もなく、鐶は身を丸め、残暑でむせかえる風を吹き散らかしながら望まぬ飛行を 遂げていた。 (ホムンクルスといえど子供の姿をした者を殴るのは嫌な気分だが、奴らの本拠地を突き止め るにはああするしかない) 銀の長い裾をはためかせながら防人もまた群衆を飛び越え追撃に移った。 どこからともなく、引きつった声が漏れた。 「すげえ。アスファルトがまるでゆで卵の殻みたいに砕けた……」 つま先で蹴り割った道路を起点に加速した銀影が、だだっ広い交差点をグンと縦断していく。 「初め……まして。私は鐶光(たまきひかる)といいます。鐶は金偏(かねへん)……です。でも 王偏(たまへん・おうへん)の環でもいいです。どっちもパソコンの変換候補に……あったような」 空を飛びながら、鐶は誰にともなく自己紹介をしていた。 「…………あれ?」 しかし周囲には誰もいない。彼女は腕組みをして考え込んだ。 そして結論。くるりと宙返りを打つと、みぞおちの辺りに白鳥じみた白い手を当てた。 「殴られて吹き飛んだよう……です」 フクロウのように百八十度旋回した虚ろの視線の先には、夏臭い砂ぼこりを足元にうっすら 毛羽立て徐々に間合いを詰める防人しかいない。群衆ははるか彼方だ。 「……搦め手は無理のようなので…………空中から…………攻撃……しますね」 背中から広げた大きな翼が落下と後退の慣性をふわりと相殺する。 「残量は……十分」 そしてちらりと短剣に一瞥をくれると、緩やかに羽ばたき、ホバリングへと移行。 専門用語ではコレを停空飛翔(ていくうひしょう)という。有名なハチドリ以外ではハヤブサ科 のチョウゲンボウがこの習性を持つ。エサのネズミなどを捉える直前に行うのだ。 「……とにかく、相手はまだ六人…………。『切り札』の出番は……後、ですね」 羽ばたきに波打つスカートからポケットを探り当てた鐶は、そこから取り出した純白のバンダ ナで赤い頭頂部をすっぽり覆い、三つ編みの付け根へリボンのようにくくりつけた。 (まずは俺が先陣を切ろう) 自動車顔負けの速度で周縁視野の景色が流れ行き、停空飛翔中の鐶の姿を防人は捉えた。 バンダナを被った以外変化なし。防人は迷わず足を進める。 (果たしてどこまで戦えるか分からないが) かつて五千百度の炎に身を晒し、「回復しても以前と同様に戦えるかどうか」と明言された 防人である。 攻撃を加えた筈の手に嫌な疼痛が走り、ただの疾走にさえ呼吸は微妙な──傍目からは 一糸も乱れていないが防人にだけは分かる範囲での──乱れを見せている。 「貴殿には私と戦士・斗貴子を敵の元へ運搬してもらう」 「ふぇ!? 無理だよそんなの」 根来に詰め寄られた千歳は、ぶかぶかの再殺部隊の制服の肩やスカートのホックを懸命に 押さえながらぶんぶんと首を振った。 「だってヘルメスドライブが運べる質量は最大百キログラムまでで、大人なら二人分までだよ? だから三人運ぶのなんて無理。みんなで走った方が早いんじゃ」 「いや、無理ではない」 三人の状況を見た斗貴子は根来に同調した。千歳も「あ」と口に手を当てた。 「そういえば皆、服が……」 「振り向くな……! 希望の空に……飛ばせ……イーグル」 それがまるで呪文だったかのように鐶のバンダナへ何かが浮かんだ。 丸々とした瞳と先端が黒く染まった鉤状の黄色いくちばしと、そして布地の上半分を染める 黒の色。こちらは目の少し下から、涙か頬ひげのようにUの字で垂れ下がっている。 明らかにそれは鳥の顔であった。目の下の黒い模様が「頬ひげ状パッチ」という身体的特徴 を意識しているのであればハヤブサの顔だろう。 奇しくも鐶の背中から生える翼もまたハヤブサよろしくブーメランのように尖っている。 ホムンクルス特有のメカニックな形状とハヤブサの色彩(上面は青灰色、下面も白地に黒の 縦斑)を共有しているのだ 「ちなみに……イーグルはワシで、ハヤブサはファルコンですが……えぇと、その、いいです」 何がどういいのか分からぬが、鐶はともかく太陽に向って垂直に上昇した。 「……カラス?」 途中軽く肩が当たった鳥を不思議そうに眺めながら、鐶はゆっくりと頭を下げ──… やや影の濃くなった道路の中央で防人は歩みを止めた。 両側にはビル街があり、正面高くには羽根を生やした少女が浮かんでいる。 (敵がまだもう一人残っている以上、これ以上の戦力の減少は食い止めたい。だからまずは 俺が奴に攻撃を加え、他の戦士の追撃を促す) 昇りゆく鐶に逃走の気配は見えない。 (倒せずともいい。シルバースキンリバースを当てる隙さえ生まれれば──…) 防人は拳を固めると、低く腰を落として身構えた。 (だがただ撃つだけでは仕損じる恐れがある。まずは隙を作るコトに専念だ) 群衆はそれまでそこにいたセーラー服とぶかぶか服の幼女と陰気臭い殺人少年の姿が消 失しているのに気づくとみな一様に首をひねった。 本当にそんな連中は居たのだろうか。 思い返せば一連の出来事は総て夢の中の物だったような気がしてきた。 「あの。すいません。この辺りでこう、銀色のコートを着た体格のいい人を見ませんでしたか? おかっぱ頭のセーラー服の女の子でもいいんですけど」 「えぇと。銀色ならあっちの方に飛んで行ったと思うけど、本当に居たのかなぁ、アレは」 「そう。ありがとう」 問われた者は答える最中こそ茫然としていたが、やがて耳に届く声が恐ろしく湿った艶のあ る声だと気づくと慌てて横を見た。しかしそこではもう長い黒髪が人混みにサっと隠れる瞬間で 声の主がいかなる姿かは分からなかった。 「私の治療のためにちょっと遅れちゃったわね。とにかく急ぎましょう」 「はいはい」 乾いたノド声と同時に二つの影が滑るように交差点を後にした。 ハヤブサは獲物を見つけると、まずはその斜め上まで飛びあがる。 そして獲物めがけて斜めに急降下し、後ろについた鋭い爪(後趾・こうし)によって重傷ない し致命傷を与える。アオバトなどは無残にも片翼が吹き飛ぶというから威力は推して知るべし。 ……そして鐶は防人を獲物と認めたらしい。 翼を揃えバンダナのハヤブサ顔を下向けて、轟然たる滑空を開始した。 群衆はビル街に向って轟然と落下する影を見たが、最早近づこうという者はいなかった。 鳥類最速は急降下時のハヤブサである。 一説では急降下角度が30度なら時速270km。45度ならば実に時速350km。 500系新幹線の最高時速が300kmなのを考えるとなかなか恐ろしい。 資料によってはリニアモーターカーをも凌ぐ時速440kmという驚異的数値さえある。 そもハヤブサの語源は「はやとぶさ(素早い翼)」なのだ。 それが居並ぶビルのガラスを水しぶきのように巻き上げつつ、防人へ殺到! いつしか完全にハヤブサの形状と化した鐶は腰をぐなりと曲げ足を突き出し。 防人はありったけの力でアスファルトを踏みぬきながら、順突きを繰り出した。 転瞬。 蹴りあげる後趾の爪が防護服を貫通し、防人の胸を斬り裂いた。 一方、彼の拳は鐶の服部に深々と突き刺さった。 同時に両者の激突によって行き場をなくした時速300km越えの急降下の衝撃と防人の踏 み込みの衝撃が彼らの接点で拮抗し反駁しあい、やがて爆発のようにあたりを薙いだ。 道路は路側帯も横断歩道も巻き込んで打ち砕け、ガラスの雨もヘキサゴンパネルも吹き飛 んだ。アスファルトの破片が手近なビルの玄関に飛びこみ派手な音を立てた。歩道の隅では 白いガードパイプがいくつも無残にひしゃげ、半ばから折れるイチョウの街路樹さえあった。 もし防人に競り勝った要因を聞けば、「地面に足をついていた」その一点のみ主張するだろう。 奥歯を噛みしめ拳を振り抜いた彼は、かろうじてだが鐶を吹き飛ばした。 彼女は中空に漂っていたため踏ん張りが聞かない。攻撃前はそれでも翼と重力による滑空 によって攻撃に不足はなかったが、しかし攻撃後の支えとするには、防人の攻撃の威力を相 殺するには翼二つではいささか不安定すぎた。 (一撃必殺・ブラボー正拳) 放った技を呼びながら、防人は大腿部に両手を当て痛々しい吐息をついた。 (カウンターならばと思ったが、今の俺ではかつての威力の半分も出せないようだ……) わずかしか戦っていないのに、疼痛と疲労と虚脱感が一気に襲いかかって胃の中の物を全 て戻したくなるほどの嫌な感覚がある。 「だが」 「み、みんな年齢を吸い取られて小さくなったから、一度に三人を運べるんだよ」 一瞬で五十メートルほど吹き飛んだ鐶は薄く眼を剥いた。 吹き飛ぶ彼女のすぐ傍に六角形の楯が出てきたと見るや、三つの影が出現したのだ。 「よって追撃をさせてもらうぞホムンクルス!」 「シークレットトレイル必勝の型。真・鶉隠れ」 舞い飛ぶ鐶が態勢を立て直そうとする頃にはもう遅い。 嵐のような処刑鎌と忍者刀が彼女の身を膾のように切り刻んでいた。 どうやら翼が破れたらしい。墜落し路地裏に滑り込んだ鐶は、ゴミ袋やくすんで雨に汚れた 段ボールを吹き飛ばしながらも何とか人間形態へと姿を戻し、ゆっくりと立ち上がった。 「……合流…………しましたか……」 「ええ。絶縁破壊も何とか身動きできる程度までは治してもらったから」 「クソ! 何で俺が元・信奉者なんかを運ぶために遅刻しなきゃならねェんだ!」 上方から迫りくる矢と戦輪を無表情の短剣で弾いた鐶は、「あ」と声を漏らした。 「コイツがブレミュ最後の一人……って、なんか思ったよりちっこいな」 「とにかく、遅れてすみません先輩! 今度こそは力になります!」 「遅刻しちゃったけど、その分は何とか取り戻すから許して頂戴ね」 うっすら蒼いスターサファイアに似た虚ろな瞳が見上げた先では── エンゼル御前。 早坂桜花。 中村剛太。 一体と二人が建物の屋上から地上を見下ろしていた。 そして路地裏に至る角には、欝蒼とした目つきの根来と彼の影に隠れる千歳。 その横に遅れて着地したのは防人。 「貴様の望むとおり、これで六対一だ」 人混みに潜んで散々奇襲を繰り返したお前だ。文句はいわせない。 歩みを進める斗貴子の眼光は確かにそう告げていた。 「見て……ください」 しかし会話はかみ合わない。 鐶がぼんやりとバンダナを指すと、一体いかなる仕組か、白い生地に黒や黄色や赤の模様 がみるみると浮かび始め、やがてひどく漫画的なニワトリの顔がプリントされた。 . M (・ ・)← こんな感じの。 「スゴい! どこで売ってるのソレ!?」 沈黙する戦士の中で千歳だけがきらっと瞳を輝かせた。 「さっき……首を回転させたフクロウにも……なります」 いうが早いか、バンダナはまたもこんなんになった。→(`・ ・´) 「わぁ、スゴい!」 (アイツが訳の分からないコトを話してる間に仕掛けますか?) (待て。様子を見よう。斃すのではなく生け捕りにしなくてはならないからな) (って話してるようだぜブラ坊たち (総角クンの所在を聞き出すためね) (了解) ヒソヒソと話し出した防人たちに鐶は首を九十度ばかり傾げた。するとバンダナのフクロウ 顔も心持ち不思議そうになったからいやはや何とも不思議な装飾品である。 「あの……。変身した…………鳥さんの顔を浮かべることが……できるのですが」 首を戻し、戦士に手を差し出す鐶はどうやら話を聞いてほしいらしい。そこまで見抜いた斗貴 子だが、しかしホムンクルスには苛烈なのが彼女でもある。 「黙れ化物。仕掛けるならさっさと仕掛けてこい」 「……化物」 相変わらず無表情の鐶だが、バンダナのフクロウは目を丸くしてじんわり泣いた。 「無表情だけど実は傷ついてるんだよね。分かるよ。何か分かるよ!」 「貴殿は少し黙っていろ」 「う」 「あら?」 どうやって登ったのか。二階建ての建物の屋上から地上の戦士へと一瞥をくれた桜花は、 とんでもない異変に気づいた。 そこにいるのは中学生程度まで幼くなった斗貴子と、あまり小さくはなっていないが良く見る とややあどけなく少し縮んでもいる根来、そして明らかに子供になっている千歳である。 (なんで?) めくるめく笑気は口を押さえるだけでは抑えようもなく。美しい顔はみるみると紅潮しクスクス という笑いとともに震えた。 「笑うな! コレは奴の武装錬金のせいでこうなったんだ!」 「気をつけろ。斬りつけられると年齢が吸収される。ちなみに相手は人や鳥ならば自由に姿を 変えられる。例えば河合沙織やハヤブサなどに」 「わ、分かりましたブラボーさん(クス)。津村さんみたいにならないよう(クス)、気をつけます」 「だから笑うか喋るかどっちかにしろ!」 目を三角にして肩をいからす斗貴子を剛太はだらしない顔で見ていた。 (こんな先輩もいいかも) 幼いのに凛然としているギャップがたまらない。セーラー服がややだぶついているのも好印象。 (いいなあ。ちっちゃい先輩もいいなあ) ほんわかと斗貴子を眺める剛太に檄が飛び、 「キミもしっかりしろ!! というか敵に集中しろ!」 「あ……忘れ物…………」 その集中すべき敵は、何かを思い出したように手を口へ突っ込んだ。 もちろんその隙を見逃す斗貴子ではない。一足飛びに斬りかかり…… やにわに鐶の背後で見慣れぬ緑の扇が勃興するのを認めるや、狭い路地を三角飛びに駆 け上がり、桜花たちと合流した。 「クジャクの羽?」 肩を並べた御前が不思議そうに呟き、つられて下を覗き込んだ剛太が血相を変えて桜花と 斗貴子へ飛びかかった。 「きゃ」 剛太の脇にしっかと抱きとめられた桜花はほのかに顔を赤くしたが…… それはさておき、クジャク。ギリシア神話では嫉妬深いコトで有名なゼウスの妻・ヘラの持ち 物である。 ある時彼女はゼウスの浮気相手たるイオを監禁した。 しかし見張りを命じた百目の巨人・アルゴスはヘルメスの持つ笛に眠らされ寝首をかかれた ので、死を惜しみ、その百ある目をクジャクに移し替えたという。 (文献によっては眠らされたアルゴスへの罰としてむしり取ったとも) ちなみに雄のクジャクの持つ立派な扇形の羽根は、一見すると尾羽に見えるが実は違う。 正しくはその一つ上にある「上尾筒(じょうびとう)」なのだ。 さて今、建物同士の狭隘いっぱいに広がったそれから、羽根が嵐のように飛び散った。 剛太が桜花と斗貴子へ飛びかかったのもむべなるかな。鐶から見て前方のみならず上方に さえ羽根は飛散し、先ほどまでの斗貴子の立ち位置を撫で斬られたケーキのように削った。そ の威力をいち早く見抜いた剛太は彼女たちを両脇に抱えるように跳躍したのだ。 かくて直撃を免れた三人だが、しかしその背後で飛ぶ羽根からは、黄色と緑と赤に彩られた 目玉がベアリング弾のように爆裂してめたらやったらに建物を破壊していく。 掠ったのは一つや二つでもない。取り残された御前の「何じゃこりゃあー」という叫びを背後 に聞きつつ剛太は踵の戦輪を唸らせ一気に地上へと飛び立った。 途中視界に入った防人が影さえ見せず嵐のような弾丸をことごとく撃墜していたのに舌を巻く 一方、彼の背後で千歳が頭を抱えてしゃがみこんでいるのは呆れる思いだ。その姿にまたも 笑いを噛み殺した桜花には辟易だ。 もちろん、バルキリースカートで着地の衝撃を殺した斗貴子には惚れぼれする。 そんな剛太に桜花がややムっとしたのには気付かない。剛太だから気付かない。 ともかく着地した剛太が「いい判断でしょ今の」と斗貴子に笑いかけようとした瞬間、ドリルの ように鮮やかにきりもむ飛び蹴りが彼の頭を直撃した。 「やいやいやい! よくもオレ様だけ見捨てやがったなコンチクショー!!」 被弾したらしい。ボロボロの御前が息せききって文句を垂れている。もっとも、蹴りの意味に はもっと別のニュアンスがあるかも知れないが。 一方剛太は情けない声を立て、まるで千歳を真似たようにしばらく頭を抱えてしゃがみこみ…… 鈍痛から立ち直るやいなや立ち上がり、御前と顔を突き合わせて言い争いを始めた。 「るせェ! 武装錬金なら多少ダメージを受けても平気だろうが!」 「平気じゃねーっての! ヤバくなったら自動解除されちまうっての!」 喧々囂々。桜花は満面の笑みでそんな喧嘩を見た。 「ったく。ゴゼンも人格の一部だというのにいけしゃあしゃあと。というかケンカをやめろ!」 一喝によって二人の喧嘩は強制終了した。 剛太はモーターギアを、御前は桜花の手元で矢をそれぞれ羽根に向って撃ち始めた。 並び順でいうと、防人の右に剛太、桜花、斗貴子、後ろに千歳。 左の根来は「忍法天扇弓(てんせんきゅう)。──」と扇を放って羽根を撃墜中。 斗貴子としてはそんな彼らを援護に飛び込んで斬りつけたいところだが、しかし先ほどのクジャ クの羽根のような予想外の行動もある。うかと単独行動すればキドニーダガーの年齢吸収の 餌食になる可能性もある。 踏みとどまったのはそういう理由もあるし、桜花の状態を知りたくもあったからだ。 「ダメージといえばケガの方はどこまで回復した」 「ようやく動けるぐらいまで。……走ったり飛んだりするのはまだ無理そうね」 斗貴子の問いに、桜花の瞳は憂いに満ちている。 弓を構える腕は微妙だが打ち振るえ、姿勢の継続さえ容易ではなさそうだ。 「隠しても仕方ないから白状するけど、剛太クンに手を引いて貰ってやっとココに来れた位」 硝子が弾け壁が割れ、千歳の悲鳴が一段と甲高くなる戦場で桜花は悲しげに目を細めた。 矢が羽根に当たり、共に消滅。しかし相手の攻撃が途絶える気配はない。 「そういえば。例の小札とかいうホムンクルスに神経を破壊されたというが……まだ」 「ええ。半日も経ってないもの。せいぜい5~6時間といったところね」 その小札から回復を浴び病院に搬送され治療を受けた桜花だが、斗貴子の見るところ血色 は悪く、立っているのも辛そうだ。 「だったら何でわざわざ」 「秋水クンがたった一人で三人の敵を倒して核鉄を奪還してくれた以上」 流れてきた羽根を処刑鎌で弾こうとした瞬間、疼痛に体が引きつり反応が遅れた。 「私が寝ていられるワケないじゃない」 しかしそれは、御前が勢いよく射出する矢に見事撃墜された。 「それに半病人はお互いさまじゃなくて?」 桜花はくすりと魅惑的な笑みを浮かべた。 「鳩尾無銘から受けた傷、まだ完治してないでしょ」 言葉に詰まる斗貴子の横で、防人が被弾し剛太が果てなき攻防に憔悴を浮かべた。 「だいたい、怪我をいうなら剛太クンだってブラボーさんだって一緒だし」 物腰こそ柔らかいが、言外には有無をいわさぬピシャリとした気品のある桜花だ。 「そう。マトモに戦えそうなのは再殺部隊の出歯亀ニンジャだけだっての。だって聞いた話じゃ アイツ、今日が退院予定日だしな。で」 もう一人の無傷たる千歳はすっかり年齢が退行し、防人の後ろで空気の読めぬ応援歌を歌っ たり流れ弾にビビり倒している。斗貴子は見た。桜花がそんな千歳に「ウケて」いるのを。 「数の上じゃこっちが有利だけど、状態を考えたらそれでようやく互角かもね」 それが証拠に誰一人として鐶の羽根の乱射に踏み込めずにいる。 (シルバースキンを持つ戦士長ならこのまま歩いて突入していっても良さそうな物を……) しかしその場に留まっているのは、接近したところで決め手に欠けているのを自覚している せいか。もしケガさえなければたちどころに突入し、一撃の元に倒せるかも知れないが。 「……あ、そうそう。私の療養のために借りていた核鉄、返しておくわ」 桜花が差し出したのは。 シリアルナンバーXIII(13)とLXXXIII(83)の核鉄である。 秋水が無銘と貴信から奪い、根来が持ちかえった物である。にも関わらず先ほどの奇襲の 際、防人がこれらを使っていなかった理由が斗貴子にようやく分かった。 きっと桜花は桜花なりに傷を治そうとし、防人もそれを承諾したのだろう。 秋水が奪還した桜花のXXII(22)のみならず無銘や貴信の物を使い、戦線復帰するために。 「まったく。核鉄三つで治療とは無茶をする。いいか。確かに核鉄には治癒効果があるが、そ れは生命力を強制変換しているだけなんだぞ。使いすぎれば却って死に近づく」 手指を拳銃のようにすぼめて斗貴子は思わず詰め寄った。 「以前、キミが瀕死の重傷を負った時にも三つの核鉄で止血をしたが、それは死の危険が迫 っていたのと、カズキにせがまれたから止むを得ず許可しただけだ。今とはワケが違う」 いかに絶縁破壊によって神経のカバーたる髄鞘(ずいしょう)を破壊され身動きできなくなっ たとはいえ、あくまで入院すれば治る見込みのケガなのだ。生命を削ってまで前線に出てくる 必要はない。斗貴子はそれをいいたいらしい。 「あら。気にしてるのはそういうコトなの? 私はてっきり、『核鉄三つも使ったのだからそれに 見合う戦果を上げろ』とでもいわれるかと思ってたけど」 「上げたければ勝手に上げろ。だが戦えなくなったらすぐに離脱しろ。いいな。カズキに感謝し ているなら無駄に命を捨てるような真似はするな」 皮肉交じりの意見に斗貴子はそっぽを向いた。 「ええ。分かってるわ。それにしても」 「なんだ」 「ずいぶんトゲが抜けたみたいだけど、何かいいコトでもあったの?」 「……確かに最近の私は褒められたものではなかった。すまない」 「あらあら」 桜花から斗貴子へと移った核鉄が。 「戦士長! それから戦士・根来」 核鉄が宙を舞う。シリアルナンバーXIII(13)が防人へ、LXXXIII(83)が根来へ。 頷いた彼らの手へとそれぞれ見事に収まった。 「アレ?」 剛太は首を傾げた。 「キャプテンブラボー、LII(52)の核鉄持ってないんスか?」 「それがだな、火渡から、大戦士長の捜索のために戦士・犬飼にしばらく預けろという要請が あって」 「戦団に返却したそうだ」 吐き捨てるように言葉を継ぐ斗貴子は苦渋満面だ。 「って。こっちが核鉄ない時に相変わらず不条理な。ていうかまだ見つからないんですか大戦士長」 「ああ。だからキラーレイビーズを更に増やして捜索にあたるらしい」 いったい何者が照星をさらったのか。気になるところではあるが、戦闘中に熟考する余地は ない。この会話とて片手間なのだ。 「そっちは分かりましたけど、どうして出歯亀ニンジャに核鉄渡したんですか?」 「戦力やケガの状態からいえば私たちより彼がダブル武装錬金を使う方が確実だからだ。流 石に戦闘中に回復をする余裕はないだろうしな」 「なるほど」 納得がいった。そんな様子の剛太に斗貴子は眉を潜めた。 「ええとだ。一応聞いておくが、ケガは大丈夫なのか?」 「まぁそこそこには」 「そこそこって、……やっぱり桜花のいう通り、完治はしていないのか?」 「まあまあ。俺のコトなんか気にしなくてもいいですよ」 彼は親指を立てて嬉しそうに笑った。 「全ては先輩のためですから」 声と同時に投げた戦輪は羽根を何十枚となく両断し、美しい軌道で剛太に還った。 「先輩に笑顔が戻るなら、多少のケガなんて我慢しますよ俺は」 彼はグっと力瘤をつくるような仕草をすると、柄にもなく真剣な表情をした。もっともそれはすぐにいつもの軽薄な表情になり、わいわいまくし立て始めたが。 「相手が何を仕掛けてこようとしっかり守りますから、先輩は大船に乗った気持で安心して戦っ てください! それと、ちょっと元気になったようで何よりです」 はぁ、と斗貴子は肩を落とした。この後輩はどうしてこうも気楽なのか。 「ならいい! 戦うというのならちゃんと戦士長か私に従ってもらうからな!」 「了解ッ!」 ノリ良く直立不動で敬礼する剛太をよそに、根来は薄く呟いた。 「もうそろそろか……」 そんな短いやり取りの間、羽根の発信源たる鐶側では。 「……ずぶずぶ」 拳、手首、一の腕、肘……と鐶の手が口にみるみると呑まれていく。細い頸が異様に波打ち 巨大な質量を嚥下している所をみると、彼女はどうやら消化器系へと手を入れているらしい。 「ずぶ、ごふっ……ごふ。げほ…………」 ちょっと苦しかったらしい。鼻が咳きこみ虚ろな瞳から数滴の涙がこぼれた。だがえずきな がらも鐶は『何か』を掴んで引きずり出した。 それはポシェットだった。唾液などの分泌液にテラテラと濡れ光っているのを除けば、ファン シーグッズショップの店頭にあっても違和感はないポシェット。 色は白く、大人の拳を縦二つ横二つ並べたような大きさ。 「……これは羽毛じゃないので……しまってました」 誰にいっているのか何を考えているか分からないが、鐶はびたびたのポシェットを大事そうに 肩にかけた。
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「ただいま、まりさ。ゆっくりしてたかな?」 ゆっくりまりさは透明な箱の中から人間を見上げた。 野良ゆっくりである自分が人間の手の中にあるという事実を再認識する。 どうしてこんな事に。 なぜ、こんな事に。 さかのぼる事約10時間前。 お兄さんが朝のゴミ出しから帰ってみると、家に居るはずの無い、黒いとんがり帽子を被った喋って 跳ねるという饅頭と遭遇した。 そいつはちゃぶ台の上に乗り、お兄さんの朝食の残りを口に蓄えようとしている最中だった。 まさにばったり、といった効果音が聞こえてきそうな位だったが、まりさが振り向いて お互いの視線が交差するやいなや。 「ごめんなざいごめ゛ん゛な゛ざいぃぃぃぃぃぃぃ」 口から食べ物をこぼしながら、バスケットボール大の侵入者はそう謝りながら全力で駆け出した。 なんとか人間の脇をすり抜けて元の入り口から逃げ出そうというのだ。 しかし、お兄さんの背後にある勝手口が完全に閉じていることを視認すると、パニックに陥り Uターンして家の中をデタラメに跳ねまわり始めた。 3分後。 あっさりと捕獲された。 「おねがいです!みのがしてくださぃぃぃ。さいきん全然ゴハンがたべられなくて 家族みんながゆっくりできないんですぅぅぅぅ」 会社に遅刻寸前だったことを思い出したお兄さんは、髪をつかまれて吊り下げられて喚くまりさを 手際よく透明な箱にいれて急いで出かけていった。 最近、数が増えすぎた野良ゆっくりの食糧事情は深刻になっていた。 この野良まりさの家族も例外ではなく、番のれいむも子ゆっくりたちも常にお腹を空かせていた。 まりさは家族の長としてそんな状況をどうにかしないと、と責任を感じていた最中に開けっ放しの勝手口に遭遇したのだ。 そろーりそろーりと中を覗くが、人気は無い。 少しだけ。少しだけでいいから食べ物を貰って急いで逃げよう。 家族が大喜びする姿を想像し、行動にうつってしまった。 「寝坊したのも、開けっ放しにしたのもボクが悪いんだけどさ、泥棒は良くないよね?」 まりさの入った透明な箱を両手で運びつつ、中身に話しかけるお兄さん。 「たべものが欲しかっただけなんです。もうしませんからまりさを許してくださいいぃぃぃぃ」 「ダメだよまりさ。悪い事したらさ、罰を受けないと」 廊下を移動した先、ドアを開けるとそこはコンクリート土間の無機質な拷問室。 運の悪いことに。 お兄さんは虐待お兄さんだった。 部屋に唯一あるテーブルの上にまりさ入りの箱を置き、カセット式コンロを用意し始める。 「じゃあ始めようか。足をこ~~んがり焼こうね」 コンロから立ち上る青い炎を目にし、まりさは絶句した。 これからこの炎であんよを焼かれる!? 「やめでぐだざい!ぞんなごどされだら゛もう狩りがでぎなぐなっでじまいまず! 家族が死んじゃいまずぅ゛ぅぅぅ」 ガタガタと箱の中で暴れて抗議するが、お兄さんはどこ吹く風。 慎重に箱のフタをあけると、まりさの髪を鷲づかみにしてコンロの上へ。 「あづいぃぃぃぃぃぃぃ!れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 最愛のゆっくりの名を叫びながら底部を焼かれるまりさ。 なんとか熱から逃れようともがくが、お兄さんの両手ががっしりとそれを阻む。 やがて叫ぶ気力も無くなったのか、目をひん剥いて歯を食いしばり、うなるだけに なった頃、まず底部の右半分がすっかり黒焦げになった。 一旦炎の上から離され、お兄さんの目線の高さまで持ち上げられる。 「よしよし。まず半分が終了だ。もう少しだから頑張ろうね」 お兄さんの励ましの甲斐なく、空ろな目をしたままのまりさ。 反応が無いのでつまらなそうに、お兄さんはゆっくりと再びまりさを灼熱の上にかざすと 後半戦の開始の合図が響く。 「いじゃあああああああああ!あづい゛のは、もういじゃああああああああ」 ものの10分程だったろうが、当のまりさ本人には数十時間にも感じられた。 底面を全て黒焦げにされ、ゆぅゆぅと息も絶え絶えになり机の上でぐったりするまりさに 希望が投げかけられる。 「よく耐えたね、まりさ。これで罰は終了だよ」 目線をあげて、お兄さんを仰ぎ見るとそこには爽やかな笑顔。 これで無事開放されるのだろう。 家族の元に帰れる。 しかし。 「でも、まりさは家族の為に泥棒に入った結果こんな酷い目にあったのに、元凶の奥さんや子供が何の咎めも無いなんて… これは連帯責任を負うべきだよ」 まりさにお帽子をそっと被りなおさせて、その上から優しく撫でながら。 「だからまりさ、家族の元に案内してくれないかな。みんなにも罰を受けてもらおう」 自分に対してこんな事をする人間だ。れいむや子供たちには一体どんな罰が与えられるというのだ。 「ぞんな゛事でぎるわ゛げないでじょぉぉぉぉぉ」 即座に拒絶され、まりさを撫でていた手がぴたりと止まる。 「どうしてさ?まさかそんなゲスなゆっくりどもを匿うというのかい?」 「れいむや子供たちの所にお兄さんを連れて行くなんて絶対にしないよ!」 これが先ほどまで息も絶え絶えだったゆっくりだったとは誰が想像もできるだろうか。 その目には家族を守るという強い意志が宿っていた。 お兄さんの笑顔が完全に消え、完全なる虐待おにいさんの容貌へと変化する。 「じゃあゲスゆっくり隠匿の罪でまりさに罰を与えまーーす。案内をしてくれるなら罰は終わるから いつでも言ってね!」 罰だの責任だのともっともな言葉を使ってはいるが、お兄さんはまりさを、いやゆっくりをとにかく 苛められればそれでよかった。 まりさが耐え切れずに家族を売り渡せば一家まとめてヒャッハーー!!だろうし、そうでなければ まりさの精神と肉体が完全に壊れるまでいたぶるつもりなのだ。 机の上にまりさを残し、いそいそと部屋の隅の工具箱から『道具』を用意し始める。 「今回のアイテムはこれに決定」 片手にプラスドライバー、もう片手にはジャラジャラと音のする木の箱を持ち、虐待お兄さんは 戻ってきた。 「刑の執行を開始しまーす」 箱から取り出されたのは長さ約10cm、ねじ径7mmの特製のステンレス木ねじ。 その半ばのあたりまで螺子が切ってある。 「一本目~~」 尖った先端をまりさの左頬に軽くプスリと刺す。 軽い痛みと金属の独特のひんやりとした冷たさに、思わず目をぎゅっと閉じるまりさ。 お兄さんは左手でねじを支えつつ、ドライバーで少しずつ、少しずつ回転を加えていく。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぎい゛っ!ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っゆ゛ゆ゛」 ねじは見る間に真ん中までめり込んでいく。 目と歯を固く閉じたまま、ひたすら激痛に耐えるまりさ。 中枢餡に傷が付かない限りはほぼ死の危険が無いゆっくりにとって、一定の長さのねじは苦痛を 与えるだけの実に都合の良い道具だ。 「これじゃあバランスが悪いから、逆の側にも一本追加するね」 わざわざそう言うと右頬にもねじを当て、じわりじわりとめり込ませてゆく。 「ゆ゛ゆ゛っ……ゆ゛ゆ゛っっぅ~~」 涙と涎でグチャグチャになったまりさに口調だけは優しく問いかけるお兄さん。 「うわ~~、痛そうだね。どうかな?家族を許せなくなったでしょ?こんな目にあってるのはキミ だけのせいじゃ無いんだし。責任を一人で背負い込む事は無いんだよ?」 「ま゛り゛ざはれ゛い゛む゛もこども゛達もう゛ら゛んでま゛ぜん。悪い゛のはま゛り゛ざだけ でず」 「ゲスゆっくりたちをまだ庇うなんて、罰が全然足らないみたいだね」 やれやれと大げさに両手を上げて首を左右に振るジェスチャーをすると、お兄さんはねじを更に合計で6本 まりさの頬にめり込ませた。 まりさは途中何度か白目を剥いて気絶したのでそのつど作業は中断し、ペットボトル入りの オレンジジュースを頭のてっぺんからぶっかけられては覚醒した。 30分後、まりさの頬には4対の突起がまるでヒゲのように誕生した。 「ぷっ。くっ、あはははは、ゴメンゴメン。まるでネズミさんのようだったから。チュウまりさとでも呼ぼうかなあ」 相変わらず軽い態度をとるお兄さんをなんとかに睨み返すまりさ。 足は焼かれ、顔にネジが埋め込まれ、それでもまりさの心は折れなかった。 「今日の所はボクの負けさ。それではまた明日、おやすみ。まりさ」 お兄さんは部屋を出て行き、照明が落とされて暗闇に取り残される。 「おちびたち…お腹を空かせているだろうね…ごめん。れいむ、おちびたちをゆっくり頼むよ」 まりさは残してきた家族のことばかりを心配をしていたが、極度の疲労のためか間もなくまどろみに 落ちていった。 「ゆっくりただいま!みんなおかあさんの言うことを聞いてよい子にしてたかな?」 「おとうしゃんゆっくりおかえりなさい!かえってくるのがおそいから、おかあしゃんがとーーってもしんぱいしたんだよ」 「ゆゆ!?ごめんねれいむ…。でもゆっくりできるゴハンがたくさん取れたよ!」 「今日もゆっくりお疲れ様、まりさ。おちびちゃんたちがかたつむりさんが一杯居る場所を見つけてくれたんだよ。」 「ゆっへん!いもうとたちとみんなで、がんばってとってきたんだよ!」 「すごいね!かたつむりさんがこんなに!?こんな豪華な夕飯は生まれて初めてだよ」 「さあ、みんなお父さんの取ってきた分も合わせて分けたらゆっくりいただきましょう」 「「「むーしゃ、むーしゃ。しあわせ~~~~~!」」」 きっとこれからも何度と無く繰り返されたであろう団欒の風景。 きっともう戻れないであろう幸せの風景。 夢であっても見れたのは正に幸運であったろうか。 次にお兄さんが部屋に来たのは翌日の夜だった。 「遅くなってごめんね。お腹空いただろう?なにか食べるかい」 お菓子やらパンやらの入ったビニール袋を掲げて見せるが、まりさは拒絶する。 「ゆうぅ…なにも食べたくないよ」 「そうかあ。まりさのむーしゃむーしゃ、しあわせ~、を見てみたかったなあ」 がっかりした表情で袋を部屋の隅に置くお兄さん。 「…そのうち出来なくなるんだし」 幸運な事に、ボソリと出た言葉はまりさには届かなかった。 次の瞬間には何事も無かったのごとく明るい表情になるお兄さん。 「じゃあ今日は、熱いのとねじねじとどっちにしようね?」 部屋にある棚から道具を選択しながらの質問。 「どんな事をされてもまりさは負けないよ!」 自分はどうなろうとも、家族の元に虐待お兄さんを連れて行くわけにはいかない。 まりさの覚悟は固いままだった。 「案内したくなったらすぐに言うんだよ?じゃあ、今日のメニューはこれ」 右手にはドライバー、左手にはアルコールランプが。 「熱くてネジネジ♪」 仰向けに寝かされたまりさはベルトで机に固定され、微動だに出来なくなった。 お兄さんはアルコールランプの炎の先がまりさの左右の『ステンレスのおひげ』の先に うまく当たるように位置を調節し、点火した。 熱がねじを伝わり、やがて餡子に到達する。 「ゆ゛あああああぁぁあづい゛あづい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」 皮膚を炙られのとはまた別の、直接餡子に熱が襲う激痛が始まる。 じたばたともがこうとするが、しっかりと固定されたベルトの所為で身動きは取れない。 「針灸みたいで、なんか餡子のめぐりが良くなって健康になりそうだね。これじゃあ 罰にならないかなあ?」 熱くて、が完了したのでネジネジの準備をしながら暢気な感想を述べるお兄さん。 「まずは下ごしらえをしないとね」 手にしたのは裁断用のハサミ。 慣れた手つきで金髪をバサバサと切り落としてゆく。 「あのね、まりさ。誤解してるみたいだけど、なにもまりさの家族を殺しちゃうわけじゃないんだよ?」 ジョキジョキジョキ。 「悪いことに加担したのは確かだけど、なにも泥棒しただけで死刑にはならないさ。 それに、ここにキミが来てから丸2日。最初からお腹を空かせていたんなら、もう すごく心配になってるんじゃないかなあ」 ジョキジョキジョキジョキジョキ。 まりさはただ歯を食いしばり、餡子を蝕む熱に耐えるしかなかった。 「だからさ、意地を張らずに家族に会いに行かないかい?」 ジョキジョキジョキ。 まりさの周辺にきれいな金髪だったモノがうっすらと降り積もった。 お兄さんはハサミをしまいに行き、代わりに3面鏡を抱えて持ってきた。 「チャームポイントのおさげだけ残してみました。お気に召しましたでしょうか」 横たわるまりさに見えるように開いた3面鏡が、熱さに悶えるまりさに変わり果てた姿を映す。 「ま゛り゛ざの髪の毛がぁぁぁぁああ」 3方向から文字通りつるつる饅頭が映し出された鏡を両手に、お兄さんはニコニコ笑顔のままで。 「安心してねまりさ。これから素敵な髪型にしてあげるよ。 ああでも、かっこよくなり過ぎて家族にまりさがわからなくなっちゃうかもね!」 いそいそと鏡をドライバーとネジに持ち替えヘアセットを開始する。 …30分後、まりさの頭部には銀色に輝く直毛がまばらに生えていた。 「こんな感じになりましたけど、いかがでしょうかお客様?ってまた気絶してる」 許容量をはるかに超えた苦痛で、とっくにまりさは口から餡子を吐いて白目を剥いていた。 お兄さんはめんどくさそうに餡子を口に入れなおし、オレンジジュースをドボドボと流し込む。 無理矢理現実に引き戻され、ゲホゲホと咳き込むまりさ。 「どうかな?ここまでされても家族を庇うのかい?」 まだ視界がぼんやりとしたまま、昨夜見た夢を思い出す。 まりさはただ黙ったまま、弱弱しくもお兄さんを睨み返した。 「明日も仕事だし、ここまでかなあ。ホンっトまりさは頑張るね!」 アルコールランプの火を消し、新たな頭髪が植えられた頭部にもオレンジジュースを たっぷりとかけてから。 「今日もまりさの勝ちでいいよ。ゆっくりおやすみ」 拘束しているベルトはそのままに、お兄さんは部屋を後にした。 明かりが落ち、再び暗闇に支配される部屋。 頬のねじを熱せられたことで内部の餡子に軽いヤケドが出来たようで、体の内側から ジンジンと痛みが自己主張を続ける。 頭部のねじの痛みはオレンジジュースでかなり緩和されていたが、餡子まではその効果は あまり届かなかったようだ。 まりさは一晩中、鈍痛でうなされ続けて夢を見るどころか一睡も出来なかった。 「ゆっくりおはよう、まりさ。よく眠れたかい?」 「………」 翌日の晩、お兄さんが部屋に入ってきて声をかけてもまりさは無反応だった。 疲労、睡眠不足、飢え、そして痛みと積み重なってきた『ゆっくりできないこと』は 確実にまりさの精神を蝕んでいった。 「無視するなんてひどいなあ。でも今日の罰も気にせず開始するからね」 昨日髪を無残に切り落としたハサミを再び手に、拘束されたままで動けないまりさの前に現れるお兄さん。 ハサミを持たない方の左手でそっとまりさの口に人差し指を突っ込むと、次に親指とで上の唇をつまむ。 次に何をされるかと想像し、必死に顔を逸らそうとするが既に上唇はガッチリとつままれ 皮がビロンと伸びるのが逆に滑稽だった。 「じゃあ今日の罰のまずは下ごしらえ。まりさの唇を奪いまーす。っていってもチュッチュするわけじゃ ないんだけどね」 鼻歌まじりに、摘まんで伸ばした上唇に遠慮なくハサミを入れていく。 ジョキジョキジョキ。 「ねえ、キミの家族ってさ、帰ってこないお父さんの事を自分たちを捨てたって考えて 怨んでるかもしれないよね?」 まりさは目を見開いたまま何も答えない。 その視線は眼前のお兄さんを捉えているわけでも、何かを見ているというわけでもなかった。 無反応のまりさにつまんないなー、とつぶやきつつも作業を続ける。 元々は饅頭の皮なのだから唇はみるみる切り裂かれて、とうとう上半分が取り除かれた。 「歯も歯茎もむき出しで、おおきもいきもい。では続いて下半分もいっちゃおー」 もう何をされてもまりさはなすがままだった。 このまま、まりさは嬲り殺しにされるだろうね。 別に好きにすればばいよ、生きてここを出る事は諦めちゃった。 ただ心残りは残してきた家族の事だけ。 帰ってこない父親を怨んでいるかもしれない。 既に自分の事など忘れてしまっているかもしれない。 それでもとにかく…無事に皆でゆっくりしていてくれればそれでいいんだ。 「はい。これで上手にごーくごーくも出来ないし、ちゅっちゅも永遠に出来ないまりさの完成でーーす」 切り取った皮を無造作に背後にポイと投げ捨ててお兄さんが宣言する。 「でもこんなのはあくまで準備なんだよ。これからまりさには永遠にむーしゃむーしゃ、しあわせー が出来なくなる事をしちゃうんだけど、何か言うことは無いかな?」 ここまでやっておいて、ここまでされても家族のことを言わないまりさに敢えて聞くお兄さん。 こんな風に全身をメチャクチャにされて、もはや自分は『ゆっくり』と言えるのだろうか。 「殺じで……さっさとま゛り゛ざを殺ぜぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 「ああ残念。ボクが聞きたかった言葉とは違うなあ」 片手に愛用のドライバーと、もう片手には今度はヒゲや頭髪に比べて細くて短めのネジを。 「では邪魔な唇も無くなったし、歯にねじねじしようかなあ。うんうん、虫歯は無いようだね感心感心」 コツンとネジが前歯に当てられ、グリグリと先端で傷を付けて中心を定める。 ネジ頭にドライバーをあてがい、お兄さんの腕にぐっと力がこもる。 ギギギギ、ギリギリ。 ゆっくりの歯は飴細工で出来ているという。 ステンレス製のねじは多少の抵抗を受けつつも、やすやすと貫通していく。 ギリギリギリギリギリ。 わざとらしく、じわりじわりとしかドライバーを回さない。 「ゆぎぃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ殺ぜぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛殺じでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」 4cmほどのねじの丁度半分が歯を貫いたところで1本目の処置が完了した。 歯の厚さを差し引いた分、口の内側に銀色の先端が姿を現している。 唇が無いのでよだれが周辺に飛び放題になり、お兄さんの服にもシミを作ったが、大して気にも留めても居ない。 今は虐待という世間一般には絶対に知られてはならない趣味を全身で堪能しているからだ。 このまりさの、この悲鳴は2度とは奏でられない。 全身全霊をもって発せられるこの音を、一秒たりとも聞き逃す事なんてどうして出来ようか? 「んー。全体のバランス的に考えて、それぞれの前歯に1本ずつで8本。今日はあと7本ねじねじって所かな 時間もあんまり無いしどんどん行ってみよ~!」 ギリギリギリギリギリ、ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。ギリギリギリギリギリ。 ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。 「痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛ 痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛ も゛う゛や゛だお゛う゛ぢ帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅう……」 5本目の途中でガックリと気絶したまりさ。 既に傍らに準備されていたオレンジジュースで、間髪入れずまりさの意識を引き戻すお兄さん。 「やあ、おかえりなさい。まりさ」 笑顔のお兄さんの優しい言葉にまりさは。 「ゆ、ゆっくりただいま…。れいむっ!?」 ほぼ数秒意識が遠のいたときに、家族の元に帰れた幻影でも垣間見ていたのであろうか。 だが幸せなひと時も一転、まりさは自分の置かれている状況を再認識して絶望する。 「ゆ゛んやぁぁぁぁぁああ!ま゛り゛ざ帰る゛の゛!お゛う゛ぢ帰る゛の゛ぉぉぉぉぉぉぉ」 もはやただの駄々っ子と化したまりさに、容赦なくお兄さんは残りの作業を開始する。 途中、一旦入ったねじを逆回転させて戻してからまた入れてみたりとか散々したために、全部の前歯にきれいな ねじ頭が生えた頃には用意したオレンジジュースがほとんど無くなってしまうのだった。 翌日、お兄さんが虐待部屋に来たとき、まりさはうっすら開いた目で天井をぼんやり眺めたまま 「帰りたい」とブツブツ呟くだけだった。 「おうちに帰りたいなら連れてってあげるけど?」 というお兄さんの問いかけにも完全に無反応。 はたして、泥棒してしまう前にかえりたい、こんな姿になる前にかえりたい、という意味だったのか もしれない。 お兄さんはため息一つ、固定していたベルトを外しはじめた。 「ごめんね、まりさ。調子に乗ってやりすぎちゃったみたいだ。しばらくゆっくり休もうね。 あ、そうだ。まりだとは別のゆっくりと今暮らしてるんだ。その子たちに会わせてあげるよ。 すごくゆっくりしたいい子ばかりだから、きっとまりさとも仲良くしてくれるよ」 『ヒゲ』や『頭髪』そして『歯の一部』が邪魔なので透明な箱に入れるわけにもいかず、底面を両手で そっと持ち上げてまりさを運ぶお兄さん。 この悪夢の出発点、台所のある部屋に待っていたもの。 「「「「むーしゃむーしゃ、しあわせーーーー」」」」 「おいちいね!すごくおいちいね!」 「ほらほら、あんまりがーつがーつしちゃ駄目だよ」 床に置かれた皿に山盛りのゆっくりフード。 それを囲んで堪能する成体サイズのゆっくり1匹と4匹の子ゆっくり。 お兄さんが部屋に入って来たことに気づくと、一旦食事を中断して振り向いて。 「「「おにいさん、ゆっくりいただいてます!」」」 それまでブツブツと繰り返していたまりさは、その顔を見てガクガクと震え出した。 自分が死ぬ間際に夢を見ているんだろうか? 見間違えることがあるはずのない、愛しいれいむ、子供たち。 どうして今、このお兄さんの家に? 「あれ?どうしたのまりさ。この子達と知り合いかな?」 自分を抱きかかえたお兄さんの言葉にはっと我に帰る。 まずい。知られてはいけない。 絶対に知られてはいけない。 「し、知りません。ぜんぜん知らないゆっくりだよ」 「あ、そう。じゃあこれから紹介するけど…」 先ほどまで団欒していたゆっくりの親子を見ると、まりさを凝視したまま固まっていた。 飾りのおぼうしも無く、髪も無い。 銀色のヒゲに頭髪。 唇も無く剥き出しの歯からはネジが生えている。 なんなのだろう?一体、全然ゆっくりできない。 「これはボクの家に泥棒に入ったゆっくりなんだ。しかも他に仲間がいるらしいんだけど そいつらのことを教えろって言っても庇うゲスなんだ。 だからたくさん罰を与えた結果、こういう姿になっちゃんだよね」 親子はお兄さんの説明を受けても、これが自分たちと同じゆっくりだとは到底信じられないと いった表情だった。 「そしてこのれいむ親子は3日前だったかなあ。朝仕事に行こうとしてたら、すぐそこの所で 行き倒れになってたんだ。 一旦家まで連れてきて、ゴハンだけあげて急いだんだけどまた遅刻で大目玉さ。 で、帰ってきてから事情を聞くと、お父さんゆっくりが狩りに出たまま一晩戻らなかったって。 お腹を空かせたまま夜明けを待ち続けて、それからずーーっとこの辺を探して回ったって」 今度はまりさに親子の事情を説明するお兄さん。 これで納得がいった。 帰らない自分を心配して一家総出で探しにきたのだ。 結果、数日間まともに食べていないゆっくりが遭難するのは当然のことであろう。 ゆっくりの行動範囲は実際は大して広くは無い。 お決まりの狩り場、というのを探そうとすればこのお兄さんに遭遇するのも仕方が無いこと だった。 「じゃあ、みんな一緒に生活するんだから仲良くしていってね」 まりさを大皿の脇に置いて親子の食卓に参加させるお兄さん。 れいむ達はおぞましい姿のゆっくりが改めて間近に来てビクっとしたが、お兄さんが笑顔のまま 一度だけうなずいて促す。 「で、ではあらためて…」 一匹を新たに加えて食卓を囲む一同が声を合わせて。 「「「「ゆっくりいただきます」」」」 まりさは複雑な気持ちだった。 家族全員無事だった事。 ここならなに不自由なく暮らせるだろう事。 しかし、自分が父だと言い出せない事。 さらに、この人間が本当に家族を飼いゆっくりとしてゆっくりさせるだろうかという事。 「「「むーしゃーむーしゃ、しあわせーーー!」」」 ゆっくり特有の習性。 皆が声を揃えて幸せな気分を表現する。 しかし、まりさには出来なかった。 団欒の中でまりさだけが出来なかった。 物を噛むと歯に激痛が走るからだ。 仕方なく少しずつ舌でペロペロとすくいとり、口に運ぶと噛まずに飲み込むことしか出来ない。 今まで味わったことの無い甘味が口内にしっとりと広がるが、何故かしあわせー、な気分に なることは出来ない。 それでも、再び家族とこうして一緒に居られるなら。 そこがまりさのゆっくりプレイスなのだから。 ゆっくりたちのそれぞれの食事の風景を、目を細めつつ見守るお兄さん。 その胸の内では、次はなにをしよっかなー、と無邪気な虐待魂を燃え上がらせていたのだった。 その日の晩、お兄さんも自分の寝室に行き、親子ゆっくり達もゆぴゆぴと安らかな寝息を立てた頃。 「れいむ起きて。ねえ、れいむ。ゆっくりしていないで起きて」 まりさの少し潜めた感じの呼び声で母れいむは目を覚ました。 「だいじなお話があるんだ。まりさは実はれいむのまりさなんだ。みんなのゴハンを集めなきゃって このおうちに入っちゃってこんな事に……。 ここのお兄さんは全然ゆっくりできない人だから、お願いだからゆっくりしないでここから出て行ってね」 まりさはれいむにだけは真実を話しておこうと思った。 れいむは賢く、冷静なゆっくりだからばれる前に子供たちをつれて上手く脱出できる方法を考えてくれるだろう。 「いきなり何を言ってるの!?そんなこと言われてもゆっくり信じられないよ」 れいむのこの答えも当然だった。 目の前のボロクズのような、ゆっくりとさえ言えない様なモノにいきなり旦那宣言されたのだ。 そこでまりさはれいむとの過去の出会い、永遠に一緒にゆっくりする事になったきっかけや 子供たちが生まれてからのことを出来るだけ細かく思い出しながら説明した。 そこまでされてようやく、れいむは探し続けていた夫を見つけることが出来たのだった。 それと同時に、行き倒れていた自分たちを手厚く保護してくれた同じ人間が、ゆっくりに対してこのような 虐待を行うことが出来るのかと戦慄するのだった。 「ゆぁぁ…まりさ…どうしてこんなことに」 「れいむ達が無事で良かった…頑張った甲斐があったよ…」 れいむがまりさの頬にすがりついて今までの分も含めて思い切りす~りす~りをし、2匹はしばらくそのままで 涙を流すのだった。 ようやく落ち着いた後、しばらくお互いに知らないフリをしてチャンスを伺う事にした。 れいむはまた元の子ゆっくりたちが一かたまりになって眠っている場所に戻っていった。 「ゆっくりおやすみ、れいむ」 「ゆっくりおやすみ、まりさ」 ドア一枚向こうのお兄さん 「ゆっくりおやすみ」 2?に続きます。
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キャラクター CVは一部ダメ絶対音感によるものなので完全に確定はしていませんが キャラクター名の横に声優名があるものは公式・雑誌などで確定済みのものです。 ムービーの呼び方を統一させます 初期PV(ファミ通付録DVD) OP(公式オープニングムービー) ラッシュPV(公式ラッシュムービー) PV A(プロモーションムービーA) PV B(プロモーションムービーB) メインキャラクター主人公(CV:浪川大輔) 花村陽介(CV:森久保祥太郎) 里中千枝(CV:堀江由衣) 天城雪子(CV:小清水亜美) クマ(CV:山口勝平) 巽完二(CV:関智一) 久慈川りせ(CV:釘宮理恵) 白鐘直斗(CV:朴璐美) ベルベットルーム関係者イゴール(CV:田の中勇) マーガレット(CV:大原さやか) サブキャラクター堂島遼太郎(CV:石塚運昇) 堂島菜々子(CV:神田朱未) 足立透(CV 真殿光昭) コミュキャラクター海老原あい(CV 伊藤かな恵) 一条康 長瀬大輔 小沢結実(CV 伊藤かな恵) 松永綾音 キツネ 上原小夜子 南絵里 その他諸岡金四郎 柏木典子(CV 大原さやか) 祖父江貴美子 柊みすず 生田目太郎(CV 服巻浩司) 久保美津夫 伏見千尋(CV:前田愛) 江戸川先生 シャドウ陽介の影(CV:森久保祥太郎) 千枝の影(CV:堀江由衣) 雪子の影(CV:小清水亜美) 完二の影(CV:関智一) りせの影(CV:釘宮理恵) クマの影(CV:山口勝平) 美津夫の影 直斗の影(CV 朴璐美) グラフィックなしガソリンスタンド店員(CV:浪川大輔) 河野剛史 南勇太 中村先生 メインキャラクター 事件に挑むペルソナ使いたち 主人公(CV:浪川大輔) 初期ペルソナ:イザナギ アルカナ:? 武器:長剣 高校2年生の少年。 都会で生まれ育つが、ある日両親がそろって海外へ赴任することに。 言葉も通じない土地に移住するよりはと、母方の親戚を頼って稲羽市へと移住してきた。 親戚の家に居候しながら八十神高校に通うことになる。 彼はこの田舎町で、数々の冒険や戦い、 そして大切な仲間たちとの出会いを経験していくことになる…。 ひそかに手品が趣味らしく、菜々子が落ち込んだ時などよく見せている。 前作同様、女たらしの面もあるものの前作主人公ほど神経は図太く無い。 説明書内部のゲーム画面では、「月森 孝介」とされている(詳細はパロディの項を参照)。 クリティカル演出は横薙ぎ→振り下ろし→ジャンプ斬り上げ。 召喚演出はペルソナカードを握りつぶす。 花村陽介(CV:森久保祥太郎) 初期ペルソナ:ジライヤ アルカナ:魔術師 武器:短剣 主人公の同級生。 もとは都会育ちだが、親の転勤にともない半年前に稲羽市へ引っ越してきた。 父親は市内にオープンしたスーパー「ジュネス」の店長。 陽気な性格だが、実は腹を割って話せる友達が少ない。 地元商店街にとってライバルとなる、スーパーの店長の息子だということが大きく影響しているようだ。 女好きで、お調子者的な側面もあるパーティーのムードメーカーで、 なんやかんやといいながら面倒見が良く、協調性に富み、人当たりも良いため、 顔には出さないが、色々と苦労を背負い込みがちである。 とあるきっかけで事件を解決しようと決意し、 その手立てを持つ主人公に、リーダーとなって自分たちを率いてくれるように頼みこむ。 赤いヘッドホンがトレードマークで、のど飴が好きらしく、いつもポケットに持ち歩いている。 クリティカル演出は右袈裟斬り→左袈裟斬り→ジャンプ斬り上げ。 召喚演出はペルソナカードをアクロバティックな斬り上げで斬る。 追撃は自身をコマのように高速回転させて「クリティカルヒット」。 里中千枝(CV:堀江由衣) 初期ペルソナ:トモエ アルカナ:戦車 武器:靴 主人公の同級生で、小学校、中学校と地元で過ごしてきたごく普通の少女。 行動的でよく喋る、人懐っこい性格で、主人公が転校してくる前から、 無用の反感を持たれている花村とも偏見なしに友達付き合いしていた。 押しの強いタイプだが、切迫した状況に立たされると弱腰になる場面もある。 カンフー映画のマニアで、我流の足技を習得してるようだ。 成績は中の下程度。雪子ほどでは無いにせよ割と美人で性格もいいので校内での人気は高い。 よく体を動かしているせいか、食欲旺盛で、特に肉類が好き。 成龍伝説というDVDを大事にしている。 クリティカル演出は二段踏み蹴りからの飛び蹴り(浴びせ蹴り?)。 召喚演出はペルソナカードを後ろ回し蹴り。 追撃は気合を入れたミドルキックで遥か彼方まで吹っ飛ばして「即死」させる。ラッシュPVで見せていた蹴り飛ばしがコレ。 天城雪子(CV:小清水亜美) 初期ペルソナ:コノハナサクヤ アルカナ:女教皇 武器:扇子 主人公の同級生。 稲羽市で老舗高級旅館として知られる、天城屋旅館の女将の娘。 里中千枝と仲が良く、行動を共にすることが多かったが、現在は女将修行の真っ最中。 頭の回転は速いが、周囲の空気を読むのが苦手であり、やや天然ボケな面も。 外見、性格、成績等が軒並み高レベルであり、校内一の人気を誇っていると言っても過言では無いほど。 そのため通称「天城越え」と呼ばれる現象も起こっている。 脂身の多い肉類は苦手だが、カップラーメン、特に赤いきつねのおあげには目がない。 クマからは「ユキチャン」と呼ばれてる模様。 救出後は、ありのままの姿を見せるようになり、よく食べ、よく笑い、たまに暴言も吐く、普通の少女(少し変わっているが)になった。 クリティカル演出は扇を左右に振って斬りつける→ジャンプ斬り上げ。 召喚演出はペルソナカードを扇で浮かせてから回転斬り。 追撃は集中、狙いすまして扇を放ち「クリティカルヒット+気絶付着」。攻撃時の台詞はドスが効いてて怖い。 クマ(CV:山口勝平) 初期ペルソナ:キントキドウジ アルカナ:星 武器:拳・爪 テレビの中の異世界に、一人で住んでいる謎の存在。 少なくとも人間ではなさそうだが、その正体が何であるかは全く分からない。 クマ自身も自分が何なのか分かっておらず、よく一人で頭を悩ませている。 可愛らしい着ぐるみのような姿をしているが、 その中身は空っぽという、よくよく考えると不気味な存在だ。 また、チャックが付いていると思いきや別にチャックを外さなくても頭が外れるという意味不明な構造。 ナビと戦闘にも参加している。ペルソナを会得した事によって戦闘に参加するようになる。 見た目モチーフはハンプティダンプティ? 語尾は「クマ」。後に特訓の末ちゃんとした身体を手に入れるが、やっぱり語尾は「クマ」。 ただし女を口説くときは語尾からクマが消え、声のトーンも変わる。 寂しん坊ならぬ「寂しんボーイ」らしい。 臭いでシャドウやクマの世界に迷い込んだ人間を感知できる。 クリティカル演出は右手で突き→回転切り→ジャンプ切り上げ(着地時に尻もちをつく)。 召喚演出はペルソナカードを回転切りをする。 追撃は飛んで相手に頭を向け回転して「クリティカルヒット」なぜかキメポーズをする。 巽完二(CV:関智一) 初期ペルソナ:タケミカヅチ アルカナ:皇帝 武器:鈍器(PVではパイプ椅子を装備) 八十神高校の生徒で、主人公よりも一つ下の学年の一年生。 "中学時代に一人で族を潰した"と噂されており、札付きの不良として稲羽市にその名を轟かせている。 しかし、その噂からも分かるように徒党を組んで悪さをするようなタイプではない。 今どき珍しい、硬派な不良のようだ。よく間違えられるが暴走族の類ではない。 逆に、騒音による不眠症で悩む母親のために暴走族を潰したという猛者である。 長身に鋭い目つき、鼻ピアスといったゴツイその外見に反し、一般的にいって女性が嗜好する趣味・趣向を持っている、いわば「オトメン」。 幼い頃は野球等のスポーツよりおままごとを好み、女性以上に裁縫や絵画が得意なため、 それをからかわれ続け、周囲から孤立し、シャドウを産み出してしまう原因となってしまう。 その趣味は現在も変わるどころか、さらに高いスキルを持っている。 クマやキツネなどのふさふさした可愛いものが好きな、動物好きでもある。 完二本人はホモというわけではなく、見た目とギャップのある趣味を馬鹿にする女性を嫌い、 男といたほうが楽、けれどそれもやはり、本来の姿をひた隠しにしての結果であり、 ありのままの自分を周囲に受け入れてほしいという、抑圧された意識と上記の事情からあのシャドウが生まれてしまった。 歳相応の男子高校生らしく、エロスな事柄には鼻血を出す事も。 女性に対しては雪子や千枝には好意的な反応を示す反面、近所付き合いのあるりせとは腐れ縁的な関係のためか、反応が薄い。 しかし、直斗のこととなると時折、超反応を返すほど。 シャドウの時のことをネタに延々と陽介にいじられては、豪快にキョドり、暴走して結果自滅する。 千枝、クマ同様の大食。 どうやらそれは、常に食卓に五人前以上の料理を満載する母親の影響らしい……。 女手一つで育ててくれた母親に対して、人前では強がるが、実は全く頭が上がらず、 たった一人の肉親ということで、ことのほか大事にしている。 ……同時に、素行の良くない自分のことで迷惑をかけていることで後ろめたく思っている部分も。 クリティカル演出は近距離で武器投げ→ケンカキック→スマッシュ。 召喚演出はペルソナカードを武器で薙ぎ払う。 追撃はジャンプして地面に衝撃を与えて「敵全体にクリティカルヒット」。 ペルソナのデザインは「感電によるレントゲン状態」というコンセプトだと思われる。 久慈川りせ(CV:釘宮理恵) 初期ペルソナ:ヒミコ アルカナ:恋愛 全国区で名前が売れている、人気絶頂の準トップアイドル。 数年前に芸能オーディションで優勝し、彗星の如くアイドルデビューを果たした。 都会で活動を続けていたが、突如八十神高校の一年生として転校してくる。 テレビCMにも起用され順風満帆だった彼女に、どのような事情があったのかは一切不明だ。 実は、稲羽市出身らしい…。 スタイル抜群で、いわゆるアイドル体系である。 そのペルソナは、呪術に優れ、未来を予見したという邪馬台国の女王の名を冠しているためか、 その役割は直接戦闘ではなく、探索補助・索敵等のナビゲーションである。 救出後、主人公に好意をもったらしく、ことあるごとに積極的にアピールしてくるため、 他の女性キャラ(特に千枝)からはやや危険視されている。 職業柄、鬱積したものが多く、酔うといろいろ危険なカミングアウトを始めてしまう。 ちなみに彼女の料理は通称「溶岩」。 本人の嗜好がそうなのか、とにかく辛くて鈍痛がするらしい。 アイドル業の時とは異なり、実家である豆腐屋の店番をしている時は割と地味、 そして意外にも生真面目で、自分の家の豆腐に誇りを持っている。 白鐘直斗(CV:朴璐美) 初期ペルソナ:スクナヒコナ アルカナ:運命 武器:銃 高校1年生。 連続怪奇殺人事件への捜査協力を求められ、定期的に稲羽市を訪れている。 そのためか、事件にまつわる場所で、何度も主人公たちと出会うことになるようだ。 どうやら事件の核心につながる手掛かりをつかんでいるようだが、その詳細は謎である。 大正時代から名探偵を輩出してきた名家・白鐘家の若き5代目(携帯用公式ページ情報)。 テレビで「探偵王子」と呼ばれて取材を受けるほどの有名な探偵少年らしい。 探偵として5代目なのか、単に家の跡継ぎとして5代目なのかは、現時点では不明。 持っている銃(形状からしておそらくニューナンブ)が、法的に認められているのかどうかは不明。 セリフの端々から、一匹狼タイプの匂いがうかがえる。 ズボンの裾を折り返していたり、底の厚い靴を履いていたりと、チビキャラ疑惑が濃厚。 寒がりなのか、冬はコタツとホットカーペットを同時に使うらしい。 クールなキャラを装っているが、実は内心どうにもならない悩みを抱えてたりする。 クリティカル演出は銃撃しながら接近→標的を蹴り上げてダウン。 召喚演出はペルソナカードを銃で撃ち抜く。ある意味で前作の召喚演出に近い。 ベルベットルーム関係者 導き手たち イゴール(CV:田の中勇) シリーズでお馴染みの老人、ベルベットルームの主である謎の人物だ。 主人公は、このイゴールの力を借りることでペルソナの合体を行う。 今回はタロットカードで主人公の運命を占ったりしている。 今回のベルベットルームはリムジンの中。 3に比べてよく喋り、よく笑うようになっている。 マーガレット(CV:大原さやか) アルカナ 女帝 イゴールの助手。 マーガレットは、生み出したペルソナをリスト化し、 お金と引き換えにいつでも呼び出せる"ペルソナ全書"を管理している。 主人公の心そのものであるペルソナに乗りたいがために「炎をぬるく」しようとしたり、全く掛かってない謎掛けをしようとしたり、 即興でいい話を考えて披露するも肝心な所で噛んで拗ねたりと 前作のエリザベスに負けず劣らず天然なところがある。 「ペルソナ アインソフ」にも出張中 元ネタはエリザベスと併せ「若草物語」と思われがちだが イゴール・エリザベス・マーガレット全て映画「フランケンシュタイン」「―の花嫁」である(出典:ペルソナ倶楽部3) サブキャラクター 主人公の周辺関連 堂島遼太郎(CV:石塚運昇) アルカナ:法王 主人公の母の弟で、娘の菜々子と二人暮らし。 仕事一筋で眼光鋭く、口調もややぶっきらぼうだが、 両親の仕事の関係で、環境が突然変わった主人公を温かく迎え入れる。 職業は刑事。 年齢は定かではないが、主人公とはそれほど年が離れているわけではない(兄貴というほうが近い)そうなので、 おそらくまだ30代と思われる。 職業柄、不良少年の完二のことには詳しい(少年課の刑事ではないが)。 捜査において、物事を「偶然」で済ませないことをポリシーとしているらしく、 時期や交友関係から主人公を疑わざるを得ない状況に悩んでいる。 服のセンスはイマイチで、菜々子は面白がり、主人公はやや閉口気味なようだ。 家事はほとんどできないが、コーヒーを入れるのだけは一家で彼の役目らしい。 堂島菜々子(CV:神田朱未) アルカナ:正義 堂島 遼太郎の娘で、小学一年生。 主人公の従妹にあたり、やや人見知りはするが、素直で純粋な性格。 まだ幼いが、仕事が忙しくてしょっちゅう家を空ける父に代わり、家事をこなすしっかり者。 が、1人で料理は危ないからとの理由で朝食の目玉焼き程度の物意外はお惣菜などを買っている。 近頃、市内にオープンした大型スーパー「ジュネス」に興味津々。 クラスのブームであるジュネスのテーマソングを特に好み、ことあるごとに歌う癖がある。 彼女のジュネス好きは店長の息子・花村をも感動させる。 ゴールデンウィークをきっかけに、主人公の仲間たちとも親しく付き合うように。 …実は非常に感覚が鋭く、彼女の何気ない言葉が、後に真相を暴く手助けとなる。 足立透(CV 真殿光昭) 堂島の部下の新米刑事。 死体を見て、吐いてしまったりするあたり、あまり気の強いほうではなく、 捜査情報を一般人に漏洩しまくり、よくジュネスで一息ついているなど、 職務にあまり熱心な方ではない。 その辺、仕事一筋で家庭をほとんど顧みようとしない、堂島とは対照的。 度々、堂島宅に上がって主人公達と一緒に夕飯を食べる事もある。 今年、本庁から転勤してきたらしい。 コミュキャラクター 絆を育む人々 海老原あい(CV 伊藤かな恵) アルカナ:月 運動部マネージャーだが、それは単位のためで、実質活動はしてくれない。 今時の遊んでる女子高生です的な外見。素行不良でよく授業を抜け出している。 実はあるトラウマを抱えており、彼女の過去は今の姿からは想像できないほど酷い物だったらしい。 庇ってもらったことをきっかけに、運動部の2人のどちらかに好意を抱くが……? 一条康 アルカナ:剛毅 バスケ部部員でスポーツ万能なだけでなく、顔もよく頭もいいという 要領のよさで、女生徒たちにモテモテ(ただし、本人曰くいい人どまり)。 人当たりが良いため、男子生徒の友達も多い。 …顔が広いせいか、よく合コンなどをしているようだが、 実は、主人公もよく知るある人が本命。 バスケに対する意識は高く、用具の手入れなどもきっちりしており、その真摯さがうかがえる。 やる気のない他の部員たちに頭を悩ませているが…? 実家は名家だが、実は後継ぎとして孤児院から引き取られた養子。 長瀬大輔 アルカナ:剛毅 サッカー部部員。 才能はあるが、どうも全力を出し切っていないようで、 用具の手入れや後片付けなどもかなりいい加減な模様。 一条と合わせて、女生徒に人気があるが、女性嫌いの硬派で有名。 …むしろ、女性を避けているようにさえ思える、冷たく透徹した態度には訳があるようだが…。 小沢結実(CV 伊藤かな恵) アルカナ:太陽 演劇部部員の2年生。 部内では群を抜いて演技力があり、そのためか非常に自信家で、馴れ合いの多い部内のムードを嫌っており、 部長の彼女というだけで副部長になっている1年先輩の女生徒に対しては、挑戦的な態度を取ることが多い。 その陰には、「自分以外の人生を送りたかった=自己からの逃避」というジレンマを抱えている。 松永綾音 アルカナ:太陽 吹奏楽部部員。 演劇部と二者択一。 いつまで経っても演奏が上手くならず、全く活躍出来ず、 雑用に徹してばかりの自分に不満があったが、才能のなさを理由にずっと逃げている。 演奏会への出演者に選ばれたことをきっかけに、そんな自分を変えようと努力し始めるのだが、結局……。 キツネ アルカナ:隠者 辰姫神社で出会う謎のキツネ。 どうやらボロボロになった神社を再建したいらしく、お金(お布施)を必要としている。 目つきが非常に悪いが、仕草はとても可愛い。 何故か不思議な力を持つ葉っぱを多数所持しており、ダンジョンにも現われ、 回復係として、主人公たちの手助けをしてくれるようになる。ただしきっちり有料。 また、コミュランクが上がれば回復料金も安くなる。 ……が、動物らしく、非常に気分屋。 上原小夜子 CV 村上仁美? アルカナ:悪魔 稲羽市立病院で働く看護士。 妖艶な女性で何かと主人公を色仕掛けで誘惑してくる。 ある条件を満たさないとコミュは発生しない。 南絵里 CV 村上仁美? アルカナ:節制 夫の連れ子である義理の息子との付き合い方が分からないらしい。 また主人公と同じく、都会からやってきたことと、後妻という立場から、 周囲から馴染めずにいる。 その他 八十神高校関係者 諸岡金四郎 CV 龍谷修武 主人公、花村、里中、天城の担任。 "えんえんと長い説教をする先生"と有名。 かなり石頭で、高圧的な説教はもはや毒舌の域。 担当教科は倫理。 主人公の部活を「出会い目的」と認識しているが、 実際そのとおりなので言い返せない(コミュ的な意味で)。 生徒間でのあだ名は「モロキン」。 生徒達を容赦なく罵倒したり死んだ人間の尊厳を傷つけたり、 「腐ったミカン帳」なる反抗的な生徒のリストをつけていたりと、人間的にも救いようが無い。 後にこれが、最悪の事態を引き起こす事となる(言ってしまえば、自業自得ではあるが)。 曰く、主人公は都落ちした落ち武者。 余談では女好きで、天城雪子に目をつけ、久慈川りせの写真集なども買っていた。 …どうやら、未だに独身のようだ。 柏木典子(CV 大原さやか) 7月11日から担任となる先生。 若い子を目の敵にしている、少々自意識過剰な女性 地味に40歳を越えているらしいが… 大谷と仲がいいようだ 祖父江貴美子 八十神高校世界史教師。 エジプトのファラオみたいな被り物(メネス)をしている。 一人称が「わらわ」。 見た目に反し授業内容はかなりマトモで、生徒への態度も丁寧なのでウケは悪くない。 生徒間でのあだ名は「カーメン」 趣味はダウジング。 実は3に登場したある人物と非常に深い関係がある。 事件関係者? 柊みすず 演歌界の若きプリンセス。 生田目太郎(CV 服巻浩司) 市議会議員。昨年柊みすずと入籍した。 稲羽市に移り住んだようで、商店街では度々姿を見かける。 久保美津夫 他校の男子生徒。物語序盤で雪子にいきなり告白、そしてあっさり振られ勝手にキレて去って行った。 根暗で、引きこもりがちな生活のためか肌は真っ白、目は全体的に黒目勝ちで焦点が合っていない印象がある。 大きな事ばかり周りに吹聴するも、その実、自分は何もできず、それでいて周りを完璧に見下していると人間的にも救いようが無い。 物語中で起こすある事件から、主人公達に関わる事となるが…… 旅先で出会う人々 伏見千尋(CV:前田愛) 修学旅行で出会う私立月光館学園の生徒。 雑誌による前情報では「利発そうな女子生徒」との紹介であったが、 陽介曰く「一番の眼鏡美人」で完二すらはっきりと「可愛い」と言った。 が、しっかりしてると思いきやどこか抜けてる所はあまり変わってないようだ。 公式仕掛けのマヨナカテレビ7/8分の発表で千尋である事が確定。 江戸川先生 修学旅行で特別授業を受け持つ私立月光館学園の保険医兼科学教師。 女神異聞録ペルソナの黒瓜に引き続く、アトラス社員をモチーフにしたキャラクター。 「ヒヒヒ……」という笑い声が特徴で、オカルトに精通している。 P3では体調が悪い時か風邪の時に尋ねると、実験台にされるというステータス上げイベントがあった。 シャドウ 異形の存在たち 陽介の影(CV:森久保祥太郎) 名前通り陽介のシャドウ。変化前は目が不気味に輝き、いつもとは違い邪悪な笑みを浮かべていた。 暴走形態はジライヤが大型化したような姿で、下半身が大蝦蟇。 陽介が抱える「退屈なものを破壊したい」という感情が具現化された姿。 弱点が電撃系統。戦闘は主人公一人で行うが、ジオを当てれば全く相手にならない。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウ陽介」という名だった。 千枝の影(CV:堀江由衣) 変化前は千枝そのものだが、口調がやや高圧的。 影の様な外見になった千枝から鎖が伸び、その上に鎖を握った女王の様な立ち居振る舞いのトモエが座る。 千枝の抱える「雪子に頼らせたい」という欲望が具現化された姿。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウ千枝」という名だった。 雪子の影(CV:小清水亜美) 変化前は豪華なドレスに身を包み多少過激な性格を出していた。 下部に蝋燭が灯されたシャンデリアのような豪著な鳥籠に、雪子の頭部をもった赤い巨鳥が入っている。 その姿はまさに、「籠の中の鳥」と言えるだろう。 胸部に白い部分があり、ハート型になっている。 雪子が抱える「役目から逃避したい」という願望が具現化された姿。 完二の影(CV:関智一) 変化前は褌姿で顔を赤らめ、口を尖らせながらレポートをしているどう見ても「ソッチの人」な外見。喋り方もオカマ臭い。 首の代わりに沢山の薔薇の花を咲かせた、肉団子のような白黒の巨人から完二の上半身が生えている姿。 横にガチホモブラザーズ(ナイスガイ、タフガイ)を引き連れている。二体とも地味に強い。 一度倒されても、なおも「男」に受け入れてもらおうとした。 完二の持つ「誰にも拒絶されたくない」というトラウマが具現化された姿。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウ完二」という名だった。 りせの影(CV:釘宮理恵) 変化前は水着姿でツーサイドアップの髪型で、本人よりスタイルがよくなっている。 ポールダンスをするストリッパーの様な極彩色で、頭にりせの髪があるヒミコの顔をした女性型シャドウ。 HPが一定以下になると「マハアナライズ」という専用スキルを使い、 以降は一切攻撃が通用しなくなる恐るべき敵。 最終的にクマの特攻で倒された。 りせの持つ「誰も本当の自分を見てくれない」という悩みが具現化された姿。 クマの影(CV:山口勝平) 変化前は少し巨大なクマそのものだが、目が不気味に鋭くなっている。 クマが大型化したような感じで、腐ったパンダみたいな姿。 そのひび割れた顔の奥から、青く不気味に光る眼を覗かせている。 すごくドスの利いた声で喋る。クマとは違い、ネガティブな言動が目立つ。 クマの中にある不安感を象徴したものと言える。 クマの持つ「本当の自分などいるのか」という疑念が具現化された姿。 初期PVやラッシュPVでは「シャドウクマ」という名だった。 美津夫の影 変化前は美津夫そのもの。シャドウになってもやっぱり根暗。本体よりちょっと悟った事を言うがそれでも根暗。 自らを「自分には何も無い、カラッポだ」と言う。 大きな白い赤ん坊の頭の周りに文字化けした文字列が回っているシャドウ。 その姿は、精神的な幼稚さ・何もかもが未熟で「無」でしかない美津夫自身を大きく表していると言える。 開始直後に「キャラメイク」という技で速攻引きこもる。シャドウになってもやっぱり(ry 最後まで美津夫に受け入れてもらえず、消滅した。 美津夫の持つ「大きな虚無感」が具現化された姿。 直斗の影(CV 朴璐美) 変化前は袖が余った白衣を着て、直斗自身の二面性を象徴するかのように泣きじゃくったり急に冷静に核心を突いたことを言う。 直斗がそのままアニメのロボットの様な姿になったシャドウ。 直斗の持つ「カッコいい大人の男になりたい、見られたい」というどうしようもない願望が具現化された姿。 なお、完二の影と同じく、倒されてからもセリフがあった。 グラフィックなし 稲羽市の住人たち ガソリンスタンド店員(CV:浪川大輔) 堂島、菜々子に引き続いて、稲羽市にやってきた主人公を出迎えてくれた人物。 非常にフレンドリーな性格で、主人公をスタンドのバイトに誘いつつ、握手を求めてくる。 その後も、雨の日の街に出現する。 河野剛史 戦車コミュに登場する、里中千枝の幼馴染。 千枝からほのかな想いを寄せられているが、本人は全く気付いておらず、天城雪子に憧れている。 千枝をダシに雪子に近づこうとする、テンプレートなタイプで、 ある意味、千枝のコンプレックスを生み出した原因とも言える。 千枝とは幼稚園から中学校まで同じ学校だったが、現在は他校に通っている。 外見からすでにチャラ男で、どこか人を小馬鹿にしたような物言いをしながらも、 主人公にそれを一喝されると慌てたり、カツアゲされても手も足も出ず、 おまけに庇ってくれた千枝を置き去りにして逃げ、その後、全く悪びれないで姿を現すなど、 ともかく情けない言動が目立つ。 最後には、雪子に対する不用意な発言で、千枝からも見離されてしまう。 はっきり言って、自業自得である。 南勇太 節制コミュに登場する、南絵里の義理の息子。 主人公のバイト先である学童保育に通っている。 周囲の談によれば、成績も悪く、粗暴で、問題行動が多く、 自己中心的なところがある、かなりの悪童だが、根は悪くない。 絵里に対して、態度が悪いのも、子供なりに気を使っているからである。 中村先生 勇太の担任。 父兄には良い先生として評判がいいらしいが、 勇太に手を焼かされているのと、継母である絵里への偏見からか、 かなり失礼な物言いをする、底意地の悪そうな女性。 ◆声優 服巻浩司 福原耕平 伊藤かな恵 吉川未来 臺奈津樹 龍谷修武 坂熊孝彦 遠藤智佳 島田知美 高橋剛 村上仁美