約 40,744 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/939.html
※ゆラディのクロス・・・になるんじゃないかな? ※あんまり強くないドス注意 ※俺設定なところもあったりなかったり その森はゆっくり達の楽園だった。 この森には人間が食べられるものは殆ど実らず、また芽吹かない。 にもかかわらず、ゆっくりの味を好まないが人間の天敵となる動物が生息している。 この2つの要素が合わさることで、森にはゆっくりの脅威となるものが皆無に等しかった。 「「「おにぇーしゃん、きょうはにゃにしゅるの?」」」 「ゆゆっ!きょうはね、ゆっくりみんなでむししゃんをとりにいくよ!」 「「「れーみゅ、ゆっきゅちとりにいきゅよ!」」」 だから、姉の子ゆっくりが3匹の赤ゆっくりを連れて森の中を散策するなんて光景を拝むことが出来たりする。 基本的には鬱蒼としていて薄暗い森だが、ところどころに日の光が差す場所があるので見通しは悪くない。 それに、迷子になってもその陽だまりでじっとしていれば大体成体ゆっくりが見つけて保護してくれる。 こういった要因も重なって大人たちも子どもだけでの行動を止めようとしなかったし、止める必要も無かった。 「おちびちゃんたち!ばんごはんのじかんまでにはゆっくりかえってきてね!」 「もりからでちゃだめだよ!どすとぱちぇにおこられちゃうからね!」 「ゆっくちりかいしたよ!」 「「「ゆっきゅちりきゃいちたよ!」」」 そればかりか、この森にはドスまりさが君臨している。 しかも、彼女のはにーとして森の賢者と呼ばれる大型のぱちゅりーが寄り添っていた。 体高4mほどとまだ駆け出しながらも大型で、どちらかと言えば強さがウリのドスまりさ。 その反面、若干思考の幼い彼女をしっかり補佐し、群れを導くぱちゅりー。 こちらも相当なサイズに達しており体高3mはあった。 「「「どす、きょうもとかいはのおうたをきかせてあげるわ!」」」 「「れいむたちもゆっくりしたおうたをうたうよ!」」 『ありすもれいむもありがとう!ゆっくりおうたをきかせてね!』 『ぱちぇもいっしょにゆっくりさせてもらうわ』 ドスまりさを中心としたその群れの生活の中心となる場所は森の真ん中の大きな広場。 もちろん、森の真ん中に都合よくそんな場所があるはずもなく、ここはドスまりさが頑張って作った場所だった。 雨が降って、近くの川が氾濫しても大丈夫な場所で、開けているために日当たりも悪くない。 それに雨が降ったとき対策も万全で、森の各所に雨宿りにつかえそうな場所を設置させていた。 「ゆゆっ!ゆうか、おやさいさんのようすはどうなんだぜ?」 「ゆ、まりさね。おやさいはゆっくりしているわ」 「ゆぅ〜・・・はやくたべたいんだぜ!」 「ゆっくりがまんしてね!」 この森では種族なんて関係なかった。 れみりゃでも、ゆうかでも、きめぇ丸でも・・・ここにいたいと願うなら、そして仲間を尊重できるならドスの比護を受けてゆっくり出来た。 いや、それどころか、彼女達を受け入れたことが外部から来るゲスへのけん制となり、群れはいっそう平和に暮らせるようになった。 それに、多様な種族が個性を活かして共生することであらゆる面で合理化が図られ、森での暮らしを豊かなものにした。 「まりさ〜、すっきりしましょうね!」 「ゆゆっ!ありすはひるまからせっきょくてきだぜ!でも、ひっにんはわすれちゃだめなんだぜ?」 「とうぜんよ!かんがえなしのにんっしんなんてとかいはじゃないもの!」 また、森の賢者や彼女の教育を受けた賢い個体を中心に他のゆっくりへの教育が推進されていた。 それにとって、この群れでは考えなしの繁殖をするものもおらず、限度を考えずに森の資源を浪費するものもいなかった。 ドスと森の賢者を中心に試行錯誤を繰り返し、この群れの生活圏内で最適なゆっくりの数は1000匹前後であることが判明していた。 その数を越えないように、にんっしんを統制し、アウトローを追放し、身の程知らずの血気盛んなゆっくりは修行の旅に出すなどの措置を行った。 2匹を中心とした群れのたゆまぬ努力が実を結んで、いつの頃からかこの森は「ゆっくりの森」と呼ばれるようになっていた。 ある日、そんな平和な森に見慣れぬゆっくりがやって来た。 赤い髪、猫耳、三つ編み・・・妙にごてごてしたそのゆっくりの名前はゆっくりおりん。 ゆっくりの死体を操る能力を持つと言われ、ゆっくりの間では忌み嫌われる種族だった。 「じゃじゃーん!ゆっくりしていってね!」 『ゆっくりしていってね!』 「おりんをむれにいれてね?」 『むきゅ〜・・・だめよ!』 ぱちゅりーは即座に断った。 確かにこの群れは捕食種も含めて来るもの拒まずのスタンスを取っている。 が、おりんのような異能持ちに関しては少々勝手が違っていた。 「どうして?」 『あなたののうりょくがゆっくりできないからよ!』 「ゆぅ〜・・・ざんねんだよ!ゆっくりあきらめるよ!」 おりんは思いのほかあっさりと引き下がった。 ぴょんこぴょんこと跳ねて群れを後にする彼女の背中を眺めながら、ドスまりさと森の賢者は安堵のため息をつく。 異能持ちはゆっくりの常識を、時には理を覆す。そして、それは必ずと言っていいほど面倒ごとへと発展する。 好き好んで得た力ではないだろうし、出来ることなら一緒にゆっくりしてあげたい。 が、彼女達は群れの長としての立場と責任があり、個人の感情に流されて大局を見誤るわけには行かない。 『『・・・ゆっくりごめんね』』 だから、彼女の背中が寂しそうに見えても、小さな声で謝ることしか出来なかった。 「じゃじゃーん!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちちていってね!」 「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」 群れに加わることを認められなかったおりんは群れの住処から少し離れた場所を探検していた子ども達に元気良く挨拶をしていた。 その満面の笑みからは群れに入れなかったことへの失望などは微塵も感じられる、それどころか何処か晴れ晴れとしていた。 単に馬鹿なのか、それとも妙なポジティブ思考で入れなくてよかったと解釈しているのか。 「ねえ、おちびちゃんたち!おりんりんとゆっくりできるあそびをしようよ!」 「ゆゆっ!ゆっくちできるあそび?」 「「「ゆっきゅちできりゅあしょびしゃんちたいよ!」」」 「じゃあ、おりんについてきてね!」 そう言うと、おりんは子ども達でもついてこられる速さで何処かへ跳ねていった。 疑うことを知らない子ども達は首をかしげながらも、おりんの後をゆっくり追いかけていった。 もっとゆっくりしたいという無邪気で、実にゆっくりらしい動機に従って。 「じゃじゃーん!ここがゆっくりできるばしょだよ!」 「「「ゆゆっ!みちゃことにゃいしゃんはだあれ?」」」 「ゆゆっ!もしかしてにんげんさん?」 おりんについて行った先、そこで子ども達は生まれて始めて人間の男と出会った。 そして、その男やおりんと一緒にとてもゆっくり出来るひとときを過ごした。 子ども達はそれからも友達の子ゆっくりや赤ゆっくりを連れて毎日のようにそこに足を運んだ。 おりんはいつも笑顔で、人間さんはいつもゆっくりしていて、他の子ゆっくり達も満足げに遊んでいた。 少なくとも、同伴した成体ゆっくりの目にはそう映っていたはずだし、ドスまりさにおりんの動向を報告したゆっくり達は「おリンはとってモゆっくリできルこだヨ」と言っていた。 『ぱちゅりー、どうするの?』 『むきゅ〜・・・むずかしいわね』 おりんを群れに加えることを拒んだことはきっと正解だったのだろう。 人間と親しくしていると言う報告だけでも、その点に関しては確信が持てた。 この群れが人間とある程度距離を保っていたからこそ繁栄できたことを思えば間違いなくあの判断は正しいと思える。 が、問題はそこではない。 子ども達がほぼ全員懐柔されてしまい、またおりん自身が成体ゆっくりとも仲良くなってしまっている。 この状況こそ、ドスまりさと森の賢者を悩ませる最大の問題だった。 『もうむれにくわえたらどうかな?』 『むきゅ!それはだめよ!にんげんさんのゆっくりをくわえるのはあぶないわ!』 おりんを群れに加えれば群れと人間の間に接点を作ってしまうことになる。 かといって、無理矢理おりんを排除しようとすれば群れからの反発が懸念されるし、下手に傷つけたりすると人間とも衝突しかねない。 だが、このままずるずるとおりんと群れのゆっくり達の接触を許し、事実上群れの一員になってしまっては元も子もない。 『むきゅ〜・・・おりんののうりょくをいちどつかわれると・・・どうなるかわからないわ!』 『そうだね!しんだものはかえらない・・・あたりまえのことがこわれるとゆっくりできないよ!』 もし、何かの拍子に子どもが死んでしまったとしよう。それをおりんが生き返らせてしまったらどうなるのか? 流石に一介のゆっくりに過ぎないドスまりさ達にそれを正確に予測することは出来ないが、少なくとも蘇って良かったねなんて楽観的な感想を抱くほど愚かではない。 本当に何が起こるか予測できない。これだけでも群れに加えない理由としては十分すぎる。 しかし、既に群れのゆっくり達と仲良くなってしまったものをまだ何もしていないのに森から排除することは流石に躊躇われた。 こうして結論が出ないまま、群れとおりんの交流はなし崩しに続いていった。 1ヵ月後、3日間に渡って降り続いた雨が止んだ夜、群れの一部のゆっくりが何の前触れもなくドスまりさと森の賢者の寝床を襲撃したことで事態は急変する。 『やめてね!こんなことしてもなんのいみもないよ!』 『むきゅ〜・・・このこたち、なにかへんよ!』 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 壊れた玩具のように同じ言葉を繰り返しながらドスまりさやぱちゅりーに噛み付くゆっくり達。 にごった、虚ろな目をした彼女の身体からは何故か死臭が漂っている。 その臭いをかいだドスまりさは当然のようにおりんを疑った。 しかし、ほんの数日前までおりんの下へ行ったゆっくり達からは死臭なんて漂ってこなかった。 それにこの3日間は雨が降っていたため、誰もおりんと接触していないはず。 『じゃあ、どうして・・・?』 『むきゅー・・・わからないわ』 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 出来るだけ慎重に身をよじってゆっくり達に余計な傷をつけないように彼女らを振り落とすドスまりさとぱちゅりー。 死臭が漂っている以上、あまり意味がないように思えるが、心情的な問題と、未知の事態への警戒感が彼女達をそうするように導いていた。 もっとも、その振る舞いが既に死んでいるゆっくり達が何度も何度も立ち上がっては襲い掛かってくると言う結果をもたらしたのだが。 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 『ゆゆっ!?ぱちゅりー、ふえて・・・ぱ、ぱちゅりー!?』 『む、むきゅ・・・』 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 振り払えど振り払えど、多少壊れても平然と立ち上がり襲いかかってくるゆっくり達。 徐々にその数は増えて行き、気がつけばぱちゅりーを覆い尽くすほどの数に達していた。 その面子はおりんの下に行ったことのあるゆっくりばかりだった。 まだ幾つか疑問は残っている。しかし、この事態の元凶がおりんであることは疑いようがなかった。 ドスまりさはおりんを倒して死体を止めるべく重い腰を上げるが、その時、見計らったかのようにおりんが姿を現した。 「じゃじゃーん!ゆっくりしていってね!」 「やあ、ドスまりさ。お邪魔するよ」 『ゆゆっ!よくものこのことやってきたね!?』 出会い頭の先制攻撃。ドスまりさは何の警告もなしに、群れのゆっくりの死体を巻き込むことも辞さずにドスパークを放った。 先ほどまでは3日間の空白と死後にでも漂うはずの死臭がなかったことなどへの疑問がおりん以外に犯ゆっくりがいる可能性を残していた。 しかし、彼女のほうから姿を現し、この光景を見ても平然としている以上、そんな可能性は限りなくゼロに等しい。 それに犯ゆっくりがおりんだと断定できたということは、ドスまりさやぱちゅりーを襲うゆっくりが死んでいることも断定できた。 それゆえに躊躇うことなく先制攻撃を仕掛けることが出来たのだが・・・ 「おりん、きゃっつうぉーく!」 「ゆっくりりかいしたよ、おにーさん!」 問答無用の必殺の一撃はいとも容易く回避されてしまった。 男は思いっきり横に跳躍し、おりんは不思議な力で飛び上がり、ドスまりさの頭の上に着地した。 直後、ドスまりさは起き上がろうとしている男めがけて突進を仕掛ける。 『ゆゆっ!?』 「「「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」」」 『・・・ユっくりしテいってネ・・・』 しかし、つがいの森の賢者ぱちゅりーによって阻まれてしまった。 『どうしてじゃまするの?』・・・いったん距離を取ったドスまりさはそう彼女を問い詰めようと口を開く。 が、ぱちゅりーの皮が破れ、目玉が飛び出し、中身が漏れ出している悲惨な姿を見た瞬間に何も言えなくなってしまった。 ぱちゅりーは既に死んでいて、今ドスまりさの頭上で笑みを浮かべているおりんの支配下に置かれてしまっていた。 『ぱ、ぱちゅ・・・りぃ・・・!?』 「おりん、かえんのしゃりんだ」 「ゆっくりりかいしたよ!みんな、どすをおさえつけていてね!」 ぱちゅりーと無数のゆっくりのの死体に動きを封じられたドスまりさは、おりんの炎を纏った体当たりを喰らい、致命傷を負った。 『おにーさん・・・さいごに、ひとつおしえてほしいことがあるよ・・・』 「なんだ?」 『みんなはいつ・・・ころされちゃったの?』 もはや虫の息で、ドスパークはおろか、身動き一つ取ることの出来ないドスまりさ。 消え行く意識の中で、唯一つ最後まで消えることのなかった疑問の答えを男に尋ねた。 「一番最初に接触した子ゆっくりどもは1ヶ月以上前だな」 『でも、なんのにおいもしなかったよ?』 「そりゃそうだ、防腐処理したからな」 そう言いながら、男はぱちゅりーの巨体を手際よく修復していく。 食いちぎられて破れた場所に適当なゆっくりの皮をあてがって小麦粉と針で縫い合わせる。 漏れ出した餡子は出来るだけ不純物を取り除いてから、良く分からない薬品と混ぜ合わせて体内に戻す。 それから、餡子を引っ張り出しては薬品と混ぜ合わせる作業を繰り返して、それが終わると皮や目玉を再び丁寧に修復した。 『にんげんさんは・・・しんだこもなおすんだね・・・』 「エンバーミングって言ってな、疫病予防とか宗教上の理由で死体を腐りにくくするんだよ」 『だからにおいがしなかったんだね・・・』 「そういう事だな。優れた技術と資金と環境を持つものだと定期的にこれを繰り返すことで何十年も死体を綺麗なまま保存できる」 謎が解けたドスまりさは目を瞑り、静かに息を引き取った。 勿論、彼女の死体も男の手によって修復され、おりんの支配下に置かれることになる。 半ば強引に意識をこの世界に繋ぎとめられ、しかし身体の自由が一切きかないという、今まで想像したことさえもない苦しみ。 その苦痛の中でドスまりさは群れの仲間にこんな苦しみを味あわせていることを悔やみ続けた。 こうしておりんはゆっくりの森の頂点に君臨する存在になった。 そんな地位を欲したのも、屍の兵隊を量産したのも全ては愛するまりさのため。 かつて中堅のゆラディエーターとして闘技場で戦い続けていたあの頃、自分に希望をくれたまりさのため。 流石に死体の持ち込みは出来ない闘技場ではおりんはどんなに頑張ってもCクラス止まりだった。 当時、Cクラスにはきめぇ丸という桁外れの実力者が居座っていたために閉塞感が漂っていた。 今までの努力を圧倒的な力で否定し、弱いゆっくり達を勝負の美名の下になぶり殺しにする黒い翼の悪魔。 その怪物を倒してのけたのが一匹の、後にゲスであることが判明するまりさだった。 その勇姿を見たおりんはまりさに一目惚れしてしまった。 いや、最初はただの憧れだったのかもしれない。 しかし、そのまりさがAランクの戦いでゆっくりさとりに嫁にするという前代未聞の方法で勝ってしまった時に憧れは恋慕に変わった。 心を読む能力のせいでゆっくりから忌み嫌われるゆっくりさとり。 あろうことか、まりさはそのさとりを自分のパートナーにしてしまったのだ。 そして、おりんは確かな観察眼でまりさが何故さとりを気に入ったのかを見抜いていた。 強いから・・・ただそれだけのことだろう、と。 また、その事実はまりさが多様な強さを認めていることを如実に現していた。 普通のゆっくりなら「こころをよむなんてずるくてゆっくりできないよ!」と言うところだろう。 だが、あのまりさはその能力も含めてさとりの強さとして評価していた。 なら、おりんがさとりより強いことを証明できれば、さとりとまりさを倒すことが出来ればおりんとゆっくりしてくれるんじゃないだろうか? そう思った彼女は飼い主のゆっくりエンバーミングの専門家でもあった男性と一緒に街を飛び出し、自分達なりの強さを求める旅に出た。 この森での出来事はその成果の表れだと言えるだろう。 「ねえ、おにーさん!まりさはおりんのことすきになってくれるかな?」 「当たり前だろ?噂を聞きつけてやってくるからその時にまりさに勝てばきっと・・・な?」 男の頼もしい言葉を聞いたおりんは顔をほころばせ、嬉しそうに飛び跳ねる。 そんなおりんの姿を見た男もまた嬉しそうにしている。 そのゆっくりした様子は1人と1匹の周りで繰る広げられる阿鼻叫喚とはあまりに不釣合いだった。 「も゛うやだ!ずっぎぢぢだぐないよ゛!」 「くひっ・・・うふふ、うふ・・・」 「おお、じごくじごく・・・」 「「「ユっくりシてイってネ・・・」」」 「おね゛がいだよ゛!でいうのあがぢゃんをゆっぐぢざせであげでね゛!?」 「えびりゃのあがぢゃんーーーー!?」 「う゛ぅぅぅううぅ・・・ゆっぐぢぢね!」 「ぢぬ゛ぅ・・・ごでいじょうずっぎぢぢだらぢんぢゃううううう!?」 「「「ユっくりシてイってネ・・・」」」 幸せそうなおりんと男の周囲には我が子や、あるいはその死体を盾に取られて好きでもない相手とのすっきりを強制されるゆっくり達の姿があった。 生まれた瞬間に地獄絵図を目の当たりにして恐慌状態に陥る赤ゆっくりの姿があった。 あまりの惨状と恐怖に耐え切れず壊れてしまったゆっくりの、ゆっくりだった何かの姿があった。 腐り、餡子を露出させた酷い姿になってもなお動き続けることを強制される我が子の悲惨な運命に涙する親ゆっくりの姿があった。 ドスの死体を実用可能な状態に保つためだけに子どもを産まされる親ゆっくりの絶望があった 外に目を向ければ死体に監視されながら食料を集めるゆっくりや、いつか死体に加工されるときのためだけに修行に励む子ども達の姿があった。 死体は食料の補給など必要ない。それゆえ一匹辺りの分け前は以前とは比較にならないほど多くなった。 そして、以前よりもずっと早く子ども達が成体サイズに達するようになった。しかし、生きる喜びがなくなった。 ゆっくり達の悲鳴と嗚咽が止むことなく響き渡る森の中、そこにはゆっくり達の地獄があった。 その地獄は群れの外のゆっくりや、事態の解決に乗り出した血気盛んなゆラディエーターまでも巻き込んで今もゆっくりと広がっている。 1人と1匹のたゆまぬ努力と数多のゆっくりの苦しみが実を結んで、いつの頃からかこの森は「屍ゆっくりの森」と呼ばれるようになっていた。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ くそっ・・・レポートが終らん!? それはさて置き、レーニンの死体は今も綺麗な状態で展示されているそうです。 エンバーミングまじぱねぇ! byゆっくりボールマン
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1110.html
[甘い話には裏がある] fuku3059の続き 1.ドスまりさに出てもらいました 2.人間は直接手を下しません 3.制裁でも、虐待でもないと思います 4.行間を読まないとすっきりできないかもしれません それでもよろしければ、読んでください。 おかしい。ドスまりさはいぶしがった。 このところ、群れのゆっくりたちのいざこざが増えている気がする。 警察活動を担当しているみょんに確かめても同じ答えだ。 餌が集まらないのか?いや、群れの誰もがつやつやもちもちとしてる。 ならば、縄張り問題か?いや、バラバラに5組のゆっくりに確かめて見てもそんな様子はなかった。引っ越す前の場所ならともかく、自分達が今いる場所は天然の洞窟も枯れ木も存分にある天然の要塞だ。住む場所が見つからないなど考えにくい。第一、群れに新しいゆっくりが入ってきた様子もない。 どういうことだろう……ドスまりさは悩んだ。 「ゆー、ゆー。ゆ゛っ゛く゛り゛つ゛か゛れ゛た゛ー!!もううごけなんだぜ!」 「まりさ、しっかりしてね!とかいはらしくないわ」 まりさとありすの二匹がとてとてと道を歩いてはや1里。もうまりさは限界だと根を上げているのに対し、ありすは疲れきっているもののまだ大丈夫そうだ。同じ体格なのにこの差は性格によるものだろう。まりさ種の方が元来は体力があるはずなのだから。 ぎゃーぎゃー騒ぎながらも二匹は一軒家の前に来た。 「おおきいね、ここをまりさとありすのゆっくりプレイスにするんだぜ!!」 「ゆゆ?なにいってるの?ばかなの?ありすたちはみんなからたのまれておつかいしているんだよ?しごとをこなせないゆっくりはとかいはじゃないわ。おつかいがおわってからゆっくりプレイスにしようね!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!」結局、ゆっくりプレイスにはなるようだ。 「ゆっくりあけていってね!!」 きんきん響く金切り声を上げて中の人を呼び出す。 「はいはい、今行くよ。ん?君たちは……あの群れのゆっくりかな?」 「はいはいっかいだぜ!!そんなこともわからないの?ばかなの?」 「ああ、ごめんね。それで、用事は何かな?交換かな?」 「そうだぜ!!むれのみんなからあつめたきのことわらびをもってきたんだぜ!とっととあまあまをもってくるんだぜ!あとれいむもよぶんだぜ!」番のアリスと一緒なのにいい度胸である。 「あ~、ちょっとまってね。今もってくるから。れいむはちょっと用事があって外してるんだ。ごめんね?」 「つかえないおじんだぜ!ゆっくりしないでさっさとしぬんだぜ!」 「まりさ!いくらいなかものにたいしてもれいぎってものがあるわ。ほんとうのことでもこころのなかでおもっててね。ほんにんのめのまえていうのはとかいはじゃないわよ。」 「ゆっくりりかいしたよ!!」耳打ちは他人に聞こえないようにすべきだと思うがな。 「よっと、こんなもんかな?」 「ゆゆ?すくないんだぜ!もっとよこすんだぜ!つかえないじじいはし……しばかりにいくんだぜ!」 ありすに言われたことを気にしていたのか、取り繕ってさっきより多少ましな口調で男をののしるまりさ。 当の男はというと、全く気にするそぶりもなく、最初に渡したのと同じ量を二つの瓶に分けて渡した。 「そんなことないよ。人里で確認してくればいいんだけど、妥当な取引だと思うよ?こちらも原価が高いからね。それに、あんまり多くても君達二人じゃあ運べないだろ?」 「おじさん、ありがとー!そんなにきをつかわないでいいよ!いなかもののおじさんがはこんでくれるのでがまんするよ。」それは気を遣いすぎだろ。 「それじゃあ、群れのみんなによろしく。ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!そこはまりさたちのゆっくりプレイスだから、つぎくるときまできちんとかんりするんだぜ! 「ゆっくりしていってね!まりさがしつれいなこといったかもしれないけど、いなかものでたんきなおじさんにわるいってあとでおこっておくわ!」 「気にすることないさ。なくなりかけたらまた来てね」 季節は巡ろうとしている。果実が豊富な秋も終盤に近づき、秋の味覚を集めることも困難になっていく。 群れは困っていた。越冬よりも切実な理由で。 「あれ?今回の交換品は少ないねぇ。それだとこれぐらいしかあげられないよ?」 「ゆゆ!!それはこまるんだぜ!もっとよこすんだぜ!」 「あいかわらず、まりさはゆっくりしてないね!ぷんぷん」今日はいた美れいむ。 「ふ~ん、いいのかな?そんな態度で。別に君達に交換してもらわなくとも僕は別に困らないよ。ほかの人達に売っちゃうだけだから。」 「どぼじでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ー!!おじざん゛ごべんだざび!!!あ゛り゛す゛た゛ち゛が゛わ゛る゛か゛っ゛た゛です゛ぅ゛……こ゛でがさ゛い゛ごな゛ん゛で゛す゛ぅ゛!!あ゛り゛す゛た゛ち゛は゛い゛な゛か゛も゛の゛で゛い゛い゛か゛ら゛、く゛う゛き゛の゛よ゛め゛な゛い゛お゛じさ゛ん゛の゛お゛ん゛じ゛ょ゛う゛をー!!」 「ゆっ!おにーさん、れいむからもおねがい!まりさたちをたすけてあげて!ゆっくりがゆっくりできなくなっちゃうよ!!」 「しょうがないなぁ~。」 「ゆゆっ?ただでくれるんだぜ?おじさんのくせにたすかるんだぜ」 「今回はだめ。次回来るときに多少おまけしてあげるよ。別に嫌なら買わなくてもいいよ。」男はいつになく鋭い目つきをしながら答えた。 「まりさ、よかったね!これでゆっくりできるよ!!」裏表のない純粋な笑顔で喜ぶれいむ。 「ゆぐぐ……かんだいなまりさはれいむにめんじてゆるしてやるんだぜ!」ほんとうにしかたないけど、れいむがみているのだからしょうがないんだぜ。いつかじぶんがひとりできたときにれいむとすっきり!!するためにはたしょうのじょうともひつようだよね。ここはうつわのおおきいところをみせないとね。 まりさ自身は自覚していなかったが、このまりさが人里から帰ってこれた最大の理由は鋭さであった。例え口先でなんと言おうと、まりさは自分が人間に勝てないことを本能で理解していた。目の前で自分を除く一家が皆殺しにされたのだから。 だからこそ、まりさは生き延びてきた。人間が饅頭相手に本気で怒る瞬間を見つけるのが上手かったから、ギリギリのところで媚を売ったり、早々に率いてきた仲間を見捨て命だけは残っていた。 「まって、まりさ!ありすたちはもうつぎにもってくものがないわよ!」 「ああ、成る程ね。本当に困っているんだねぇ~。みんなにあげてるアレは甘いものでしょ? だから、 “ 甘 い も の ” と な ら 交 換 し て も い い よ。カカカッ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「あまいものをさがしてくるわ。いなかもののおじさんがちっちゃいのあたまをしぼってかんがえてくれただけあってたすかるわ。ありがとー!!」 「うん。じゃあね。」 ゆっくりたちは希望を持って群れに帰ったものの、抜本的な解決にはなっていない。 “甘いもの”なんて野生にはほとんどない。そんなものあったらとっくに食べている。 いつもおつかいをしていた二匹は自然とこの問題を群れから任された。 ……思いつかない。このままではアレがもらえなくなってしまう。それは困る。あれだけゆっくりできる食べ物はそうはないのだから。 「ゆー、困ったんだぜ……。」 「まりさ、げんきだして!とかいはのありすもいっしょにかんがえるわ!」 そういって、ありすはまりさを元気付けようとほお擦りをし始めた。 「ゆ~……ゆっ!すーりすーり」 まりさも負けじとほお擦りを仕返す。まったりとした空気が流れる中、だんだんとスピードをあげていく二 匹。いつの間にか体もぶるぶる小刻みに震る。目つきがとろんとしてくる。 最近は冬の準備で忙しくてゆっくりできなかったが、若い二匹のことである。劣情に駆られてしまうのを止めるのも野暮なものだろう。特に今日はあの美れいむを見た後である。たまりにたまっている。 さいきんはいつもよりすっきりするかいすうがおおいきがするんだぜ。 当然、交尾の時間となる。 「ゆっゆっゆっ……」 ねちゃねちゃとした、粘っこいものが糸を引きそうな音を出してこすり合わせる。 「ゆゆゆゆ……ゆっゆっゆっ……」 「ゆぅ……ゆゆゆぅ……」 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 二匹のほお擦りは加速していき、こすれ合う頬は摩擦で真っ赤になっていた。 「ゆっゆっ……んほぉぉぉぉ!!!」 「すっきりー!!!」 二匹の交尾は終わった。 ありすの頭から茎が伸びていく。 ああ、まりさのおちびちゃんができるのか。いまはどうでもいいや。あのあまあまをもらうためにあまあまをみつけることかんがえなきゃ。 まりさは赤ん坊どころではなかった。前にもらったアレはもうなくなりかかっている。どんどんなくなるのが早くなってる気がするが、まりさには原因がよくわからなかった。群れのみんなから案を出せと言われてからもう三日にもなる。ゆっくりの三日といえば相当長い。 まりさは全くゆっくりできなかった。 ふと、まりさが見上げると赤ん坊が微笑んでいた。 はぁ、おちびちゃんにかまってるばあいじゃないよ。このままじゃみんなからまりさがゆっくりできないとおもわれちゃうよ。 群れから買出しを頼まれていることからも分かるように、ドスまりさ一派からは良く思われていなかったがまりさは群れのみんなから尊敬されていた。ときどき人里に行って野菜を少しちょろまかしてきたこともある。れみりぁと死闘を繰り広げ、なんとか群れの被害を最小限に抑えたこともある。 もうまりさは一匹だけでゆっくりすることはできなくなってしまった。 群れのみんなから凄いねと言ってもらうこと。ドスまりさから苦虫をつぶしたような顔で感謝の言葉を述べてもらうこと。最愛のありすにほめてもらうこと。お高くとまった側近のぱちゅりーとありすの目を盗んですっきり!!したあとに体を預けられながらぱちゅりーの賞賛をきくこと。 もし、自分が今回の問題を解決できなければ今まで築き上げた名声が崩れてしまう。もうみんなにゆっくりしてもらえなくなる。それはだめだ。何とかしなくては。 おちびちゃんたちはいいよね!!じぶんでえさとることもないし、まりさとありすにゆっくりしてもらえるし。あんこがたりないあたまがうらやましいよ!ぷんぷん 待て、今なんだって?餡子が足りない頭? あ ん こ が た り な い あ た ま。 餡子って何だっけ? ゆっへっへっへ。まりさはてんさいなんだぜ!! そばで見たありすはこう回想したことだろう。今迄で一番ゆっくりした笑顔だったと。 「クカカカカ……悲劇だ、実に悲劇だ。自分達の現状を弁えずに交換に出るなど…奴等は持ってくるな、間違いなく。」 「うまくいったね!おじさん!だかられいむに“ごほうび”ちょうだいね!!」 「クカカカカ……アレがほしいのか?だが、今回あの饅頭どもは既に追い詰められていた。お前の功績など無きに等しい。だめだね」 「どぼじでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ー!!」 家の中で、男はずっと失笑を浮かべていた。 男は強制するつもりなどない。交換することも、しないことも。そう、強制するつもりなど一切ないのだ。 おかしい。ドスまりさはいぶしがった。 このところ、群れのゆっくりたちから見せられる赤ちゃんゆっくりの数が減っている気がする。 管理しているありすに確かめても同じ答えだ。 餌が集まらないのか?いや、群れの誰もがつやつやもちもちとしてる。 ならば、すっきりー!!を控えている?いや、バラバラに5組のゆっくりに確かめて見てもそんな様子はなかった。顔を真っ赤にして報告してくれたけど。 冬篭りしている最中ならともかく、今は子供を生む最後のチャンスだ。冬になれば自分が凍死や餓死することは経験上わかっているゆっくりが多いため、種の本能に従うのだ。だが嘘をついているなど考えにくい。第一、夜な夜などこかからか嬌声が聞こえてきて自分は眠れないくらいだ。 どういうことだろう……ドスまりさは悩んだ。 そして、動いた。 今までにない事態が起こっているのか?問題が重なるように出ているのに、原因が分からない。どういうことだ。群れを率いる者としてもう黙って見ているわけには行かない。 最近は寒いのか、外に出ないゆっくりも多くいる。気が進まないが、ドスまりさはあのまりさのところに行ってみることにした。悔しいが、若いゆっくりの間での人気は抜群だし、それなりに実力もある。 巣を覗いてみて、ドスまりさは戦慄した。 巣の中から生気がしない。目の前に二匹のゆっくりがいるにもかかわらず、だ。 違和感に気づいた。二匹は目がうつろなのだ。何を考えるのでもなく、目の前にいるドスまりさにさえ反応しない。いつものまりさなら、常にドスまりさを侮蔑するような色を目の奥にたたえているのに、だ。 ある意味、最もゆっくりしているといってもいい。 「ゆっくりしていってね!!」 「……………………………」 「……………………………」 どういうことだ?この二匹はゆっくりの本能であるこの言葉に全く反応しない。 いつも気障で外見を取り繕うありすでさえ、だ。 ふと見ると、二匹は餌を食べに行くようだ。 群れの頭首である自分を目の前にしてこの無礼。一体どうしたのだろう?謀反でも起こすつもりか? 「ぺーろ、ぺーろ、しあわせ♪」 「ぺーろ、ぺーろ、しあわせ♪」 「ゆっ?ドスまりさ、なにしているんだぜ?ゆっくりしていってね!!」 「ありすたちのとかいはなぺんしょんでゆっくりしていってね!!」 あり得ない。この二匹は今私に気付いたというのか?こんなに体が大きいのに? なら、なぜ二匹とも今なんだ? 何かを舐めた後だ。それはなんだ? 「ゆっくりみせてね!!」 「ゆゆ!!これはまりさたちのもんだぜ!ドスまりさといえどぶれいはゆるさないんだぜ」 「そうよ!ひとのものをとるゆっくりはいなかものだわ!!」 「黙っててね!!」 ドスまりさは二匹の抗議に目もくれずに目の前の食べ物を舐めてみた。 「ぺろっ!これはあまあま」 「ゆ!ドスまりさのくせにまりさたちのあまあまに手をつけたんだぜ!!ゆっくりしね!ゆっくりしんでってね!!」 「そうよ!ひとのものをとるいなかものはしねばいいんだわ!」 おかしい。いくらまりさが反抗的とはいえ、たかが1舐めくらいで私と全面戦争でもするつもりなのか?人間よりも強い私に? それにこの甘いのはどこかで舐めた気がする……。 「どこから盗ってきたか、ゆっくり白状してね!!」 「ゆゆ!!まりさたちはぬすんでなんかいないんだぜ!!せーとーなたいかだぜ!!」 「そうよ、ひとのことをぬすっくりあつかいするなんて!ああ、いなかもの、いなかもの。」 「嘘言わないでね!!自然でこんな甘いもの取れるわけないでしょ!!」 「うそじゃないんだぜ!!けちんぼなじじいとつーしょーしたけっかがこれだよ!」 「そうよ、ありすとまりさにゆっくりあやまってね!!」 じじい……そうだ、これはあの優しい人間ときれいなれいむ(ポッ)が持ってきた食べ物だ。 でもあの人間は二回しかここに来ていないはずだ。しかもずっと前に。さらに言えば、ああまい物を持ってきたのは最初の一回だけだ。 この二匹が嘘をついていないとしたら、人間と交換をしたはずだ。二匹の様子を見ていると、嘘をついたとは到底思えない。 「ゆっくり全部話してね!!」 ドスまりさは理解した。群れの献上した餌が減った原因を。群れのいざこざが増えた原因を。群れの赤ゆっくりの顔見せが減った原因を。 ドスまりさは泣いた。自分が油断した結果がこれだよ!人間なんて信用するもんじゃない。 ドスまりさは怒った。「条約」を結んだ自分たちは守っているのに、人間が勝手に破った。 ならばどうする?よろしい、ならば制裁だ。 「ぱちゅりー、群れのみんなを呼んでね!!」 「むきゅ、ドスまりさ。どうするの?」 「ゆっくり戦争だよ!!!!」 群れを全部見渡して、ドスまりさは現状の深刻さを把握した。 皆が無気力でドスまりさの話など聞く耳持たない。 どうにか、ぱちゅりーの人望でみんなを集めたのはいいけど、これでは戦争も何もできない。 仕方がない、この手を使うしかないか。 「みんな、ゆっくり聞いてね!!あの人間があまあまを独占しているんだよ!!そんなずるい人間を倒してみんなでゆっくりしようね!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 「あまあまだねーわかるよー。」 「ひとりじめにするんて、あのにんげんはいなかものだわ!」 今まで自分達で奪いに行くことは無理だったが、ドスまりさがくれば話は別だ。「対価」は残り少なくなったし、いつまでも交換できるものでもない。現状に不安を覚え始めたゆっくりたちはドスまりさの煽動に乗ることにした。 これは兵隊ではない。ただの暴徒だ。人間を制裁した後、アレの摂取を止めさせる手段は分からない。人間の里に襲撃をかけるゆっくりが出てくるかもしれない。最終的には、人間と真っ向対立しかねない。 かまうものか!!自分が育て上げたこの群れを壊した人間など生かしてはおけない。どうせ、この群れはもうだめなんだ。ならば、死なばもろともだ。 頭に餡子が上ったドスまりさは決断した。 あとがき 次で最終話にします。 「美味しい物→ゆっくりの舌が肥えて働かなくなる→人里に行くor群れ崩壊」 テンプレ乙というべきこの内容でどうやって予想外の結果に持っていけるかね。 勘のいい人は「アレ」とか、結末に気付いたかも。 捻りがないのは仕様です。。 続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/719.html
※この作品は以下のものを含みます ドスまりさ×2 善良なゆっくり 悪辣なゆっくり 制裁要素 虐待お兄さん それでも良い方のみ、以下にお進みください ゆっくり禅譲 あるところに一匹のドスまりさがいた。 外敵が少なく餌の多い森林部に暮らし、とても大きくなったまりさだ。 森に生えたキノコを食べて育ち、ドス特有のドスパークやゆっくり光線を身につけるに至った。 まりさには、かつては他に姉妹もいたが、寿命や事故でそれぞれ命を落としていった。 そも、生物として脆弱なゆっくりがドスと呼ばれるまで成長するには、豊富な経験と多大な知識、そして何よりも運が必要だった。 そういった意味で、このドスまりさは強運の星の下に生まれたと言っても過言ではないだろう。 「ゆっへっへ、まりささまもおおきくなったし、そろそろむれをもってもいいころなんだぜ。 もりをでて、てきとうなむれをまりささまのものにするんだぜ」 ただし性格は最低だった。 ドスといえど、元がただのゆっくりである以上、性格はそうそう変わるものではない。 ゆっくりへの情に篤く、人を畏敬し両者の仲を取り持つような存在になるには、またより多くの時間が必要なのである。 そういった意味でこのドスまりさはまだ若輩であった。よって便宜上、このドスまりさを若ドスまりさと称するものとしよう。 「ゆっゆっゆ! おらおら、どすまりささまのおとおりなんだぜ」 誰もいない森の中を、その巨体を揺らしながら、若ドスまりさは出て行った。 あるところに一匹のドスまりさがいた。 人里にほど近い場所にいる群れのリーダーを勤めるドスまりさである。 このドスまりさはドスの中でもかなり長く生きており、まさに歴戦のつわものといった風情であった。 こちらは便宜上、老ドスまりさと呼ぶことにしよう。 老ドスまりさは、非常に責任感が強く、真面目なドスであった。 群れを護ることは当然のこととして、群れに属さないゆっくりや人間とも、可能な限り有効な関係を築こうとしていた。 南にれみりゃ・ふらんあればこれを蹴散らしてゆっくりを護り。 西にいじめられるめーりんあれば間に入ってこれを助け。 北に人間の里あれば「あそこには行くな」と群れに教え。 東に畑持つゆうかあれば群れには手出しさせないから安心しろと言い。 兎にも角にも、群れとその周囲の環境を護るため東奔西走。良きリーダーであろうとするあまり、ゆっくりできる日は一日もなかった。 なおかつ、群れの大半はそんな老ドスまりさの考えをあまり理解してくれなかった。 何度駄目だと言っても、自分の力を過信したゆっくりがれみりゃや人間に殺されたり、めーりんやゆうかを虐めたりするのだ。 幸いにして相手側に被害を与えたことは今のところないが、それも時間の問題であった。 元々からして、この群れはあまり素行の良くない群れであったのだ。それをなんとかしようとしたのが老ドスまりさであった。 だが全く学習してくれない群れの皆に、老ドスは疲れを感じ始めていた。 その姿たるや、さっさと引退して楽隠居を決め込みたい老体そのものであった。 そんな折である。 「ゆっ! どすがきたんだぜ! みんなこのどすまりささまのいうことをきくんだぜ!」 若ドスまりさはたまたま目に付いた群れの前に飛び出すと、早々にリーダー宣言を行った。 しかしゆっくり達の反応は、若ドスまりさの予想とは異なっていた。 「ゆゆ!! どすがもうひとりきたよ!!」 「どうしよう!? とりあえずれいむたちのどすをよんでくるよ!!」 「ゆゆゆ?」 若ドスまりさは困惑した。この群れにはもう他にドスがいたのか? 「ゆっ! 自分以外のドスまりさを見かけるのは久しぶりだよ! どうかゆっくりしていってね!」 やがて、群れのリーダーである老ドスまりさが姿を現した。 両者の大きさは同じほどであるが、見るものが見ればその纏う雰囲気の違いというものが一発で分かっただろう。 貫禄というか偉容というか、老ドスまりさにはそういったものが満ち溢れていた。 対し、若ドスまりさはそんなもの微塵もない。 また初めて山から下りてきたので、当然、ドスに対する信頼の証である髪の毛のリボンも一本もない。 これだけでどちらが格上か分かろうというものだ。 しかし若ドスまりさはそんなこと全然分かっていなかった。 「きょうからここはまりささまのむれなんだぜ! おいぼれどすはとっととでていくんだぜ!」 ここに虐待お兄さんがいたら若ドスまりさを指差してゲラゲラ笑っていたことであろう。 それほどまでに若ドスまりさの言動は身の程知らずであった。 体格とパワーが同じなら、ものを言うのは経験の差である。その点、二匹の差は天地ほどの開きがある。 ここで老ドスまりさが戦おうものなら、一分と持たずに若ドスまりさは地に伏すことであろう。 しかし老ドスまりさの発言も、また意外なものであった。 「分かったよ! この群れはまりさに任せて、私は出て行くよ!」 ここに虐待お兄さんがいたら顎が外れそうなほどに口を開いて呆然とすることだろう。 何しろ老ドスまりさには、この若輩者に立場を譲る意味が全くないからだ。 若ドスまりさも、これには流石に驚いた。 若ドスまりさとしては、群れの目の前で現リーダーを叩きのめし、自らの地位を不動のものとするつもりであったからだ。 老ドスまりさはゆっくりと説明を始めた。 「実は、もう私も歳をとってしまったから、そろそろ引退しようと考えていたんだよ! ちょうどよくまりさが来てくれたことだし、群れのリーダーは若くて強いまりさに譲ろうと思うよ!」 「ゆっ、そういうことなら引き受けてやらなくもないんだぜ!!!」 強いと言われて、若ドスまりさは得意満面である。 このドスは自分の強さに恐れをなし、屈したのだ。自分は戦わずして勝利を納めたのだ。若ドスまりさの中ではそういうことになった。 「そうと決まれば、まずみんなにリーダー交代を教えなきゃいけないよ! れいむ、群れのみんなを広場に集めてね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 一匹のれいむが、群れの仲間達を集めに走り去っていった。 それから一時間ほどして、全てのゆっくりが広場に集められた。 老ドスまりさと若ドスまりさは、普段老ドスまりさが皆に話しかける際に使っている盛り土の近くに控えた。 「ゆゆゆ? どすがふたりいるよ?」 「あっちのどすはだれー?」 群れのゆっくりは混乱しているようだった。一度に二匹のドス級を見ることなど、普通ありえない事態だからだ。 「みんな、落ち着いてね! 今から事情を説明するよ!」 老ドスまりさが声を張り、盛り土の上に乗った。 「突然だけど、私は今日で群れのリーダーを引退するよ!」 「「「「「「「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」 群れは大混乱に陥った。 あまりに突然すぎる話であったし、今日まで老ドスまりさがいたから群れは存続できていたのだ。 このままじゃゆっくりできなくなってしまう、と群れのゆっくり達は総じて思った。 「でも大丈夫だよ! ゆっくり聞いてね!」 老ドスまりさはそう言って一歩引き、若ドス魔理沙に前に出るよう促した。 「今日からは、こっちのドスまりさがみんなのリーダーになってくれるよ! 私の代わりに、今日からはこっちのドスまりさをドスって呼んでね!」 老ドスまりさがそう言うと、混乱は収まったものの、しかしまだ困惑顔のゆっくりも多い。 それが若ドスまりさには不満であった。 (せっかくまりささまがりーだーになってやるっていうのに、なんのふまんがあるんだぜ!!) それを察したかのように、老ドスまりさが若ドスまりさに言う。 「さっ、まりさ、みんなに襲名披露演説をしてね!!」 「ゆっ? しゅーめーひろーえんぜつ?」 聞きなれない言葉に首をかしげる若ドスまりさに、老ドスまりさは頷く。 「そうだよ! 今日からまりさが群れのリーダーになるんだから、その前にみんなの前でリーダーとしての意気込みを語るんだよ! ここでみんなの気持ちをぐっと掴むことができれば、まりさの地位は磐石のものになるよ!!!」 「ゆゆゆっ、そういうことならまかせるんだぜ!!!」 言葉の意味はさっぱりだったが、若ドスまりさはニュアンスでそれとなく理解した。 要するに、自分がいかに頼れるか、強いかを群れの皆に教えてやればいいのだ。 「ゆっ、そういうわけで、きょうからむれのりーだーをすることになった、どすまりさなんだぜ!!!」 若ドスまりさは、老ドスまりさよりもさらに大きな声で自己紹介を行った。 それだけで、群れのゆっくりの殆どは若ドスまりさに好感を持った。 元気だし、活力に満ち溢れているし、何より若々しくて頼りがいがありそうだった。 ……実際は新しいものを目にしたときの錯覚も多分に含まれている認識だが。 「まりさは、むれのみんなにいままでいじょうのゆっくりをあたえることをやくそくするぜ!!! こっちのどすなんかよりもっともっとだぜ!!! にんげんだってやっつけちゃうんだぜ!!!」 「「「「「「「ゆゆーーーーーーーーーーー♪♪♪」」」」」」」 頼もしい若ドスまりさの言葉に、群れはいっせいに色めきたった。 群れが新しいリーダーを認めたという証拠である。 「おめでとう、まりさ! これでまりさが群れの新しいリーダーだよ!」 「ゆへへ、てれるんだぜ!」 笑顔の老ドスまりさに褒められて、若ドスまりさはとても気分が良かった。 ああ、なんと自分は幸運なんだろう。労せずしてこれほどの規模の群れのリーダーになれるとは。 老ドスまりさが、再び皆に向き直る。 「それじゃあ、私が預かっているリボンをみんなに返すから、新しいリーダーに結び直してあげてね! それが終わったら、私は群れを新しいリーダーに任せて、ここを出ていくよ!」 「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」」」」」」 後ろを向いた老ドスまりさに、群れのゆっくりが一列に並んで飛びついていく。 そして自分の分のリボンを取ると、若ドスまりさの髪に結わえ付けていった。 一時間ほどして、ようやくゆっくりがそれぞれ元の位置に戻った。 「ゆゆゆっ?」 ここで若ドスまりさが声を上げる。 てっきり全てのゆっくりがリボンを付け替えてくれたと思ったが、老ドスまりさの頭にはまだいくつかのリボンが残っていた。 そして、どうやらそのリボンの持ち主と思しきゆっくり達が、老ドスまりさの近くに並んでいる。 残っているのは、れいむ一家、まりさ一家、それにありすとぱちゅりーと子れいむが一匹ずつだ。 「ゆっ! ぱちゅりー、これはどういうことなんだぜ! せつめいをようきゅうするんだぜ!」 全てのゆっくりが自分に従っていないと気づいた若ドスまりさは、容易く激昂した。 ここでぱちゅりーが迂闊な答えを返せば、すぐにでも潰さんばかりの勢いである。 しかしぱちゅりーは落ち着いて答えた。 「むきゅ、わたしとありすはこっちのどすの『そっきん』だから、どすといっしょにたびをするわ。 こっちのこどものれいむは、ありすがそだててるこだから、いっしょにつれていくの」 「まりさ! 自分の側近を選ぶのが、群れのリーダーの最初の仕事だよ! まりさも自分の群れの中から、自分に合った側近を探し出してね!」 「ゆっ、そういうことならまぁいいんだぜ」 老ドスまりさにそう言われ、若ドスまりさは納得した。確かにこれだけのゆっくりがいるのだから選り取り見取りであろう。 「そっちのれいむとまりさのかぞくはどうするんだぜ?」 「れいむたちは、こどもがおおきくなってきたから、あたらしいおうちをさがすたびにでるよ!」 「ごはんとおうちはそのままにしておくから、みんなでなかよくわけてね!」 それぞれの家長である母れいむと母まりさが言う。 「そういうことならしかたなくもないんだぜ! わかったからさっさとみんなでていくんだぜ!」 リボンを得たことで、若ドスまりさは既に万軍、いやさ饅軍の長になったかのようなふてぶてしい態度を隠さなかった。 ここに虐待お兄さんがいればモウガマンデキナくなってその拳を振るうところであろうが、老ドスまりさはなおも温和だった。 「そんなこといわないでね! 私に元リーダーとしての最後の仕事をさせてね! 私の巣に、緊急用の備蓄食糧があるから、それをドスのお祝いに使おうと思うよ!」 「ゆゆっ、それはいいあいでぃあなんだぜ! さっさとその『きんきゅうようのびちくしょくりょう』とやらをもってくるんだぜ!」 「わかったよ! それじゃあ持ってくるから、リーダーはそこでゆっくりしていってね!」 恵比須顔のまま老ドスまりさは自分の巣に跳ねていった。 しばらくして戻ってきた老ドスまりさは、口一杯に含んでいた食糧を吐き出す。 「ゆゆゆう! ごちそうがいっぱいなんだぜ!」 「今日は皆でそれを食べて、新しいリーダーをお祝いしてあげてね! それじゃあまりさ達はもう行くよ! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていくんだぜ!」 老ドスまりさの最後の言葉に振り向きもせず若ドスまりさは答え、目の前の食糧に突進していった。 他のゆっくりも食糧に齧りつき、思い思いに口に収めていく。 「…………」 老ドスまりさはそれを一瞥すると、ぱちゅりー達と一緒に旅立っていった。 明けて朝。 「ゆゆんっ、ちょっときのうはたべすぎちゃったんだぜ!」 老ドスまりさの住処をそのまま我が物とした若ドスまりさ──いや、もう区別する必要もないのでドスまりさと呼ぼう。 ドスまりさは食糧庫を見て溜息をついた。 昨日はちょっと羽目を外しすぎたようだ。食糧庫の中には、昨日食べた量の半分程度しか餌がない。これでは今後が少々不安だ。 「れいむー! れいむ、はやくくるんだぜー!」 ドスまりさは側近のれいむを呼んだ。 「ゆ! どす、なんのよう?」 このれいむ、頭の出来は普通だが中々の美ゆっくりであり、ドスまりさは昨日の歓迎パーティで一目見たときから気に入っていた。 そのため即日自分の側近とすることに決め、こうして巣の中で一緒に暮らしていた。 「ごはんのりょうがこころもとないから、ちょうたつにいこうとおもうんだぜ。 このあたりでたくさんごはんがありそうなところをしっていたら、おしえてほしいんだぜ」 「ゆゆ! それならひがしにゆうかのはたけがあるよ! あのゆうかったら、きれいなおはなやおいしいくだものをひとりじめして、れいむたちにはわけてくれないんだよ!」 れいむはぷんぷん怒りながら言う。 「それならさっさとうばっちゃえばよかったんだぜ! なんでそうしなかったんだぜ!」 「だって、ゆうかをいじめるとまえのどすがうるさかったんだよ! れいむたちがいじめると、いっつもゆうかにあやまってたよ!」 「なんておくびょうなどすなんだぜ! あんなやつこのむれからおいだしてせいかいだったんだぜ!」 どうやらドスまりさの中では、『前の臆病で弱いドスまりさを自分の力で追い出した』ということになっているらしい。 「でもまりささまはそんなよわいどすとはちがうんだぜ! れいむ! みんなをあつめてくるんだぜ! ゆうかりんのはたけを、まるごとまりささまたちのものにしちゃうんだぜ!」 「ゆーん! かっこいいよ、どす! さっそくみんなをよんでくるよ!」 ドスまりさの呼びかけに応じ、群れのゆっくりの大半が集まった。 「それじゃあさっそくえんせいにいくんだぜ」 「「「「「「「ゆーーーー!!!!!」」」」」」」 気勢を上げるゆっくり達の軍勢は、森を抜け、程なく開けた場所についた。ゆうかの花畑である。 視界一杯に花々が咲き乱れ、とてもゆっくりできそうな場所だったが、しかし今、そこに主の姿はない。 「ゆゆっ? ゆうかがいないよ?」 「つごうがいいんだぜ! いまのうちにみんなでぜんぶいただいてしまうんだぜ!」 「「「「「「「ゆっくりいただいていくよ!!!!!」」」」」」」 ゆっくり達は、それぞれが思い思いに花畑の中でゆっくりし始める。 むーしゃむーしゃするもの、ごろごろと転がるもの、家に持ち帰ろうと集めるもの。 ドスまりさは花を食べたり集めたりしながら、ときどき周囲の森に横目を向けた。 どこからかゆうかが見ていたら、それに喧嘩を売ろうという魂胆である。 怒りに駆られでてきたゆうかを皆の前で叩き潰せば、皆の尊敬の眼差しはより強いものになるだろう。 しかし結局、ドスまりさが食事を終えてもゆうかは出てこなかった。 「ちっ、つまんないんだぜ! せっかくゆうかをいじめられるとおもったのに!」 「ゆー、しかたないよ、どす! きっとどすのつよさにおそれをなしてにげちゃったんだよ!」 「おくびょうなやつなんだぜ! ゆぇーっへっへっへっへ!!!」 「「「「「「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!!」」」」」」」 ゆっくり達は大笑いすると、既にぼろぼろになった花畑を自分達の縄張りにすることを決め、群れに戻っていった。 午後からは、西にいるというめーりん一家のところに行ってみることにした。 「ゆゆっ! くずめーりんがいないよ!」 「おいっ、くずめーりん! さっさとでてくるんだぜ! またいじめてやるんだぜ!」 ゆっくり達は口々に、めーりん一家の住処である古木のうろに向かって叫び続けるが、出てくる気配はない。 ドスからめーりんを虐めることを厳禁されていたこともあって、ゆっくり達のめーりん一家への憎悪は並々ならぬものがあった。 「ゆっゆっゆ、まぁまぁみんな、そんなにあせることはないんだぜ」 いかにも大物らしく身体をゆすり、ドスまりさは笑う。 「どうせめーりんも、このまりささまのきょうだいさにおそれをなし、すがたをかくしているにちがいないんだぜ。 だからいまはみのがしておいてやるんだぜ。そのかわりいつかみつけだして、そのときはじっくりいたぶってやるんだぜ。 せいぜいのこりみじかいじんせいをたのしむがいいんだぜ」 「むきゅん! さすがどすらしい、かんだいなおこころだわ!」 「めーりんもいのちびろいできて、どすにかんしゃしてるはずなんだぜ!」 「ゆぇっへっへっへ!!! そうだぜ、まりささまはやさしいんだぜ!!!」 笑いながら、ゆっくり達は元来た道を戻っていった。 さて。 戻ってきたはいいが、結局あまり食糧は集まらなかった。 朝に比べればそこそこの量にはなったが、しかしこれではすぐになくなってしまうという予感がドスまりさにはあった。 昨日食べたほどの量をなんとか恒常的に確保したい、というのがドスの願いである。 一度贅沢を覚えてしまうと、多少のものでは満足できなくなってしまうものだ。 「しかたないよどす! きょうのところはがまんして、あしたまたたくさんあつめようね!」 にこにこ顔で側近れいむが言う。その美しい笑顔に思わず見とれてしまうが、しかしやはり食糧は欲しかった。 何か名案はないものか、とドスまりさは考え、そしてぴんと思いついた。 「そうだぜ! にんげんのたべものをうばってしまえばいいんだぜ!」 「ゆゆゆ!」 側近れいむが色を喪う。 「にんげんはだめだよ! ゆっくりできなくなっちゃうよ! むれのなかまも、なんにんもにんげんのところにいってもどってきてないんだよ! まえのどすも、にんげんにだけはちかづいちゃいけないっていってたよ!」 だがドスまりさは気にした風もなく、力強く言った。 「だいじょうぶなんだぜ! まりささまはまえのよわっちいどすとはちがうんだぜ! にんげんなんてちょちょいのちょいなんだぜ! しんじるんだぜ!」 バチン、とれいむに向けて含みを持たせたウインクをする。キモイ。 「ゆゆん……! かっこいいよぉ、どすぅ……!」 その勇ましい顔に、れいむは瞳を潤ませる。キモイ。 「それじゃあ、まりささまはこれからにんげんのところにいってくるんだぜ! れいむたちはみんなといっしょにまりささまのかえりをまってるんだぜ!」 「ゆっくりまってるよ!」 れいむの見送りを受け、ドスまりさは森の中を跳ねていった。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 そうしながら、ドスまりさは思考する。 さっきはついあんなことを言ってしまったが、ドスまりさとてそう簡単に人間から食糧を得られるとは思っていなかった。 しかし、それほど難しいとも思っていなかった。 何しろ人間の里の近くで、あれだけの群れが維持されてきたのだ。恐らく、老ドスまりさと人間達の関係は良好であったに違いない。 なら自分が新しいドスを襲名したと言えば、昨日の老ドスまりさのように、お祝いとしてある程度の食糧は用意してくれるだろう。 いや、そうでなければならない。このつよいまりささまに、にんげんはしたがうべきなのだ。 従わなくても、こちらにはドスパークがある。その威力は実証済みだ。 人間を見たことはなかったが、話に聞いた限りでは、それほど強いものだとも思えなかった。 「ゆっへっへ、このよのすべてはまりささまのものなんだぜ……!」 そう意気込みながら、ドスまりさは森を下っていった。 そして開けた場所に出る。地面には規則正しく野菜が並び、その真ん中で直立した細長い生き物がどすまりさを見ていた。 あれが多分人間なのだろう、とドスまりさは思った。思っていたよりもずっと弱そうである。これなら労せずして食糧を得られるに違いない。 とりあえず、ドスまりさはゆっくりのリーダーとして挨拶をすることにした。 「ゆっ、おじさん、まりささまは「ドスまりさが来たぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!」ゆゆゆっ??」 ドスまりさの言葉を最後まで聞かず、人間は後ろを振り返って大きな声で叫んだ。 何事かとドスまりさが思っていると、遠くから両手を上に上げた人間達が、大きな声を上げながらこっちに走ってくる。 (ゆゆっ、みんなでまりささまのりーだーしゅうめいをおいわいしてくれてるんだぜ!) そう思ったまりさは、まず人間達を落ち着かせようと声を発した。 「あわてなくていいんだぜ! まずひとりずつならんで、それからまりささまにごはんを「死ねこの化け饅頭が!!!」ゆびゃえっ!!??」 人間の一人が振り下ろした大木槌が、ドスまりさの額にめり込んだ。 「とうとう来やがったな、クソ饅頭ッ!!」 「オラァッ、潰れろッ!!」 「やっぱり餡子脳じゃ『協定』のことは忘れちまったようだなぁ!!!」 何も言わないうちに、ドスまりさは複数の屈強な男達からタコ殴りにされた。 「ゆびぇっ、ゆげべっ、べぇえええ!! やべでえええええ!!」 ドスまりさは突然の事態についていけなかった。 身体が大きく、ドスパークを使えようとも、このドスまりさには経験が足りなかった。 しかも痛みらしい痛みも知らずに育ったため、最初の一撃ですっかり闘志を折られてしまっていたのである。 「うるせぇっ! 約束も守らねぇゆっくりにかける情けなんかねぇんだよっ!!!」 「折角、最後の頼みだって言うから聞いてやったってのに! 甘さを見せた結果がこれだよ!!!」 「じらないぃぃぃ!!! やぐぞぐなんでじらないんだぜえええ!!!」 「しらばっくれるんじゃねぇ!!!」 「げびっ!!!」 ドスまりさの口から、大量の餡子が吐き出された。 ……実は、前リーダーである老ドスまりさは、人間達と『絶対不可侵協定』なるものを結んでいた。 その内容とは、ゆっくりが人間の里に一歩でも入った場合、その後の進退にドスまりさは関与しないというものであった。 ドスまりさの威光を笠に着たゆっくり達の度重なる襲撃に業を煮やした人間達が、老ドスまりさに突きつけた最後通牒であった。 もしドスまりさが罪を犯したゆっくりを庇い立てするなら、いかなる犠牲を払おうとドスまりさを討伐するとまで宣言して、である。 老ドスまりさは、すんなりとこれを呑んだ。 老ドスまりさとしても、正直なところ人間に迷惑をかけるゆっくりの扱いには頭を痛めていたのだ。 注意しておいたのに、それに従わないゆっくりにかける情けはない、と老ドスまりさも決断したのである。 しかし今のドスまりさ──若ドスまりさはそれを知らなかった。 当然だ。老ドスまりさがそれを教えなかったのだから。 いや、教えずとも、れいむを通して注意は喚起されていた。だがドスまりさは、それを無視した。 リーダーが変わろうと協定はいまだ有効であり──その範囲には、当然ドスまりさも含まれていた。 「ぢがうぅぅぅう!! まりざざまはどずなんがじゃないんだぜええええ!!」 ようやく殴られる理由を理解したドスまりさは、必死に主張した。 ドスまりさからしてみれば、自分の知らないところで交わされた約束で撲殺されようとしているのだからたまったものではない。 「嘘つくんじゃねぇ! そんなに髪にビラビラとリボンつけたゆっくりが、他にどこにいるってんだよ!!!」 「今更言い逃れしようなんざふてぇ野郎だ!!!」 だが人間達にとっては、その言葉は通用しなかった。 当然である。普通の人間に、ゆっくりの顔の区別はつかない。ましてや、ほとんど姿を見せないドスまりさである。 人間達にとって、『人間より大きく髪の毛にたくさんリボンをつけているゆっくり』が、即ちドスまりさなのだ。 「オラァ! さっさと逝けやデカブツがぁあ!」 「ゆがばぁあああああ!!!」 人間達が、木槌で、木刀で、もしくは石で、ドスまりさを滅多打ちにしていく。その度に、ドスまりさは口から餡子を吐き出していった。 そんな折、ドスまりさの帽子からぽろりと大きなキノコが落ちてきた。 (ゆ……!) そこに、ドスまりさは希望を見出した。落ちてきたのは、ドスパーク用の魔法のキノコであったからだ。 必殺のドスパークを使えば、こんな人間達など一発で消し飛ばせる。そう思い必死に舌を伸ばして、 「させねぇよ馬鹿!」 「ゆんびぇっ!!!???」 キノコを蹴り飛ばされた挙句、伸ばした舌を踏みつけられた。最後の希望を絶たれたドスまりさは、両目から目幅大の涙を流した。 もっともチャージタイムのかかるドスパークでは、撃つ前に阻止されていただろうが、ドスまりさはそんなことにも気づかなかった。 舌を踏みつけた男が、チッ、と忌々しげに舌打ちをする。 「こうなった以上、群れも放置しておくわけにゃいかねぇな。おい又八、他の男衆連れて森のゆっくり片付けろや。加工所にも応援呼んどけ」 「おうよ」 「どっ……どぉじでええええええ!!!??? まりざのむれになにずるのぉおおおおおおお!!!???」 男の一人が唾を吐き捨てた。 「ほれ見ろ。やっぱこいつ覚えちゃいねぇ。自分から言い出しやがったくせに」 「ドスっていうくらいだからちったぁマシな気もしたが、そんなことはなかったぜ!」 かつて老ドスまりさが人間と結んだ協定には、もう一つの要素があった。 もしドスまりさ自ら人間の里に侵入した場合は、群れ全体を殲滅して良いという内容だった。 これは老ドスまりさが人間への誠意の証として自ら提案したものであり、それを受け、人間も人里に入ったゆっくり以外には手を出さないと決めたのだ。 勿論、このドスまりさはそんなことは知らない。 「じらないいいいいい!!! まりざはぞんなやぐぞぐじでないいいいいいい!!!」 「ああうっせぇ。おい、さっさと黙らせようや」 「おうよ」 それからドスまりさは男達からしこたま殴られ、餡子をきっかり半分吐き出させられると、リヤカーに乗せられ、縄で縛り付けられた。 「ゆ……が……が……」 息も絶え絶えなドスまりさは、男達の手によって、森の奥まで運ばれていく。 そしてある地点に辿り着くと、男はリヤカーを傾け、その光景をドスまりさに見せ付けた。 「……ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 ドスまりさは叫んだ。 あたり一面に広がる餡子の海が、一体なんであるのかを理解した。 生き残っているゆっくり達は、その全てが人間の持つ網の中に詰め込まれていた。 「むれがあああああああ、まりざのむれがあああああああああああ!!!」 「うるせぇ!」 「ぐぎぇっ!」 男の拳が、傷だらけになった顔面を殴りつける。 「うわああああああん!」 「ゆっくりできないよぉおぉぉぉぉ!」 「どすぅぅぅぅ! たすけてぇえええええ!!!」 数匹のゆっくりが、人間の手を逃れてドスまりさのほうへ向かってくる。 「まーだいやがったか」 近くにいた人間が、それを足で一匹ずつ踏み潰していく。 「ゆぎぇっ!」 「おねーじゃああああわびゅっ!」 「どうじでええええ! なんでだずげでぐれないのどずううううう!!!」 「ああ、ああああ……」 ゆっくり達は、ドスまりさに助けを求めながら、ドスまりさの前で朽ち果てていった。 その中には、あのれいむもいた。 「れいぶぅぅぅぅぅぅ!!!」 れいむは後ろ半分を踏み潰されていたが、まだ息はあった。美しい髪も半分以上が喪われ、見る影もない。 「じっがりずるんだぜっ! れいぶ、じんじゃだめなんだぜええええええ!!!」 どう見ても助からない傷だったが、ドスまりさは叫んだ。叫ばずにはいられなかった。 尋常ならざるドスまりさの様子に、男達はれいむにトドメを刺すのを待ってやった。 れいむは、自分に赦された最後の力を振り絞って、ドスまりさへの別れの言葉を呟いた。 「……どずの、ぜいだ……」 「ゆゆっ!?」 「どずが……にんげんだぢに……でをだじだりなんがずるがらだ……」 「どぉしてぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉ!!??」 「うるざいッ!!!」 死に体だとは思えぬ大喝に、ドスまりさは竦んだ。 「うぞづぎっ、うぞづぎっ、にんげんなんがに、がでるなんで、どうじでぞんなうぞづいだのぉぉ……。 おまえみだいなぐぞまりざ、どずでもなんでもないよ……!」 「ぢがっ、ぢがうううう!!! まりざざまはほんどにづよいんだぜぇええええ!!! ほんどなんだぜえええ!!!」 だがれいむには、もう答える気力も残されていなかった。 話が終わったと見て、男はれいむを踏み潰すために足を振り上げた。 「ゆっくり……しね……」 それを最期の言葉として、れいむは飛び散った。 ドスまりさは、自分の群れの崩壊を最後まで見せ付けられた。 そしてそのまま、森の中に放置された。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1562.html
※餡子ンペ09出展作品です。 テーマ 4.群れ「ミニ社会化」……のつもり ※独自設定垂れ流し 「まりしゃも、もみもみしゃんほしいなあ……」 子まりさはぽつりとつぶやいた。 巣の中、四匹のゆっくりが身を寄せ合っていた。親まりさと親れいむのツガイと、その子 供の子まりさと子れいむだ。 子まりさと子れいむは、親れいむの二本のモミアゲそれぞれに優しく暖かに抱かれていた。 とてもとても、ゆっくりできる、家族の時間。 だが子まりさにはひとつだけ、ゆっくりできないことがあった。 それは自分にモミアゲがないことだ。 子れいむは親れいむのモミアゲが大好きだった。モミアゲで抱かれると、とてもとてもゆ っくりできた。 まりさ種にもおさげはあったが、れいむ種のモミアゲほど自由に動かせないし、一本しか ない。 自分が大人になったとしても親れいむのように子供を抱いてあげることができない。 それがなんだか、さびしかったのだ。 子まりさのそんなささやかな不満に、親れいむは困り顔だ。 そこに、親まりさが助け舟を出した。 「おちびちゃん。おちびちゃんにはもみもみがなくても、りっぱなおぼうしがあるよ!」 「ゆ? おぼうししゃん?」 「そうだよ! おちびちゃんのおぼうしは、とってもゆっくりできるよ!」 「もみもみさんよりゆっくりできる?」 「もみもみとおんなじくらいゆっくりできるよ! だっておぼうしには、たくさんの『ゆ っくりできること』をつめこめるんだからね!」 子まりさは親まりさのおぼうしを見上げた。 おぼうし。その中にはいつだって「ゆっくりできること」があった。 狩りから帰った親まりさのおぼうしの中には、いつだっていっぱいゆっくりできる食べ物 があった。おでかけのときにはおぼうしの中に入れてもらった。おぼうしの中はとっても ゆっくりできた。 子まりさは理解した。おぼうしは、ゆっくりできるものだ。 「おぼうしに『ゆっくりできること』をいっぱいつめこめば、みんなをゆっくりさせてあ げられる! もみもみはおちびちゃんをだきしめて、みんなをゆっくりさせてあげられる! おちびちゃんたちは、おとなになったらすっごくゆっくりできるんだよ!」 親まりさの言葉に、子供たちは大喜びだ。 「れーみゅ、おとなになっちゃらおかーしゃんみたいに、もみもみしゃんでおちびちゃん をだいてあげりゅんだ!」 子れいむはモミアゲをぴこぴこさせてはしゃいだ。 「まりしゃも! まりしゃも! おとなになっちゃら、おぼうしさんを『ゆっくちできる こと』でいっぱいにして、みんにゃをゆっくちしゃせてあげりゅんだ!」 子まりさはゆん、と胸をはり、おぼうしを誇らしげに掲げた。 そんな子供たちのほほえましい姿に、親ゆっくりは笑った。つられて子供たちも笑い出し た。 しあわせがあった。ゆっくりがあった。だから、みんなでいっせいに、元気よく叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 忘れやすい餡子脳だが、まりさはずっとこの日のことだけはわすれなかった。 おぼうしに「ゆっくりできること」をつめこんで、みんなをゆっくりさせてあげる。 その夢を見続け、ずっとがんばった。 そしてまりさは、その夢を実現させた。 おぼうしのなかにあったもの 「ゆ! ここがまりさがみつけたあたらしい『かりば』だよ!」 まりさの声が森の中に響いた。 おぼうしに「ゆっくりできること」をつめこみ、みんなをゆっくりさせることを夢みた子 まりさ。 今はすっかり成体ゆっくりまで成長し、独り立ちしていた。 そして今日、まりさは自分が見つけた狩場……すなわちきのこや木の実が豊富にある、と っておきの場所にみんなを連れてきたのだ。 「ゆゆ! いっぱいきのこさんがあるんだぜ!」 「わかるよー、きのみさんもいっぱいおちてるんだよー!」 「な、なかなかとかいはなかりばね! ありすもみとめてあげてもいいわ!」 一様に驚く群れのゆっくり達。満足げにみんなを眺めると、まりさは再び声を張り上げる。 「ここにくるまえにもいったけど、かりをするだけじゃなくてまわりの『とくちょー』を しっかりみてね! おんなじ『とくちょー』のばしょがみつかれば、そこがあたらしいか りばになるかもしれないよ!」 まりさは満面の笑みを浮かべた。 「そうすれば、みんなでもっとゆっくりできるよ!」 まりさが自分の狩場にみんなを連れてきたのは、ご馳走をするためだけではない。 他のゆっくりにも自分と同じように狩場を見つけてもらうためだ。 狩場がたくさん見つかれば、たくさん食べ物が集まる。そうすればみんながもっともっと ゆっくりできる。 「ゆっくりりかいしたよ!」 みんなも理解してくれた。 まりさはうれしそうにうなずき、そして楽しい狩りが始まった。 子供の頃の夢。 おぼうしに「ゆっくりできること」をつめこんで、みんなをゆっくりさせてあげる。 そのためにまりさは努力し続けた。全力でがんばった。 そして気づけば群れの人気者になり、みんなに推され、群れの長にまでのぼりつめた。 まりさは喜んだ。権力を得たからではない。群れの長なら、みんなをもっといっぱいゆっ くりさせられると思ったからだ。 長になってからも、まりさは群れのみんなのゆっくりのために尽力し続けた。 「まりさ! さいきんれいむのまりさがけがをしちゃって、ごはんがたりないの。なんと かならない?」 「ゆ! むれのたくわえをわけてあげるよ! れいむのまりさがげんきになったら、いっ しょにかりをしてたくわえをふやそうね!」 「まりさ! さいきんありす、すごくむらむらするの……れいぱーになっちゃったらどう しよう!?」 「おおきなきのしたにすんでるおねえさんありすが、じょうずな『ひとりすっきりー』の やりかたをしってるよ! おしえてもらって、まいにち『ひとりすっきりー』をいっぱい すればだいじょうぶだよ!」 「わからないよー! わからないよー!」 「だいじょうぶだよ、ちぇん! わかるまでいっしょにゆっくりかんがえよう!」 こうして、まりさは群れで起きる様々な問題を解決し、よりみんなをゆっくりさせた。 だが、時には簡単に解決できない問題にもぶつかることがある。 「むきゅ、まりさ。ちぇんとみょんがまた……」 「まだふたりとも、なかなおりしてくれないの?」 「むきゅん……」 ぱちゅりーが持ちかけてきたのは、ちぇんとみょんのケンカだ。両方とも身体能力が高く、 狩りがうまい。それぞれ競い合うのはいいことだが、それが原因で次第にいがみ合うよう になってしまったのだ。 まりさもぱちゅりーも何度か二匹が仲直りするよう諭したが、どうにもうまくいかない。 二人とも、ゆっくりするためにがんばっているだけなのに、どうして仲良く出来ないのだ ろう。難問だった。 だが、まりさは胸を張って見せた。 「ゆ! まりさにまかせてね! ゆっくりかんがえて、ふたりをなかなおりさせるよ!」 まりさの自信には理由がある。こうした悩みを解決する、とっておきの方法があるのだ。 「おにいさん、ゆっくりしていってね!」 まりさがやってきたのは、群れから一時間ほどの位置にある小さな山小屋だ。 まりさが声をかけると、おにいさんが出てきた。 山の中にある小屋には似つかわしくない、メガネをかけた細身の男だ。どこか学者を思わ せる風貌だった。その柔和な顔は、いつもまりさをゆっくりさせてくれる。 「やあまりさ。また何かあったのかい?」 「そうだよ! おにいさんにそうだんしたいことがあるんだよ!」 家の前の木の切り株におにいさんが腰を下ろすと、まりさはぴょんとひと跳びしてそのひ ざの上にのっかった。一人と一匹、どちらもなれた様子だった。 そして、まりさはぱちゅりーから相談された困りごと……狩りの成果を競うあまり、仲良 くしてくれないちぇんとみょんのことをおにいさんに説明した。 「…それで、ちぇんとみょんがゆっくりしてくれないんだ」 「まりさ。いつも言っているように、迷ったときはまりさが一番ゆっくりできると思うこ とを選ぶんだ」 「ゆーん……」 まりさは考え込む。 望むことはみんながゆっくりできること。みんなで、みんなで……。 そして、まりさはひらめいた。 「そうだよ! ちぇんもみょんも『きょうそう』してるからいけないんだ! 『きょうり ょく』すればいいんだよ!」 「へえ、どうするんだい?」 「ふたりでいっしょにかりにいってもらうんだよ! ふたりのとってきたものをあわせて むれのものにすればいいんだよ! いっしょにかりをすれば、ちぇんもみょんもあいての いいところがわかって、けんかなんかしなくなるよ!」 「でも二人はケンカしているんだろう? いっしょに行ってくれるかな?」 「そうだね、ゆーん……」 「仲直りを手伝ってくれるゆっくりがいればいいのにね」 「ゆ! そうだね! さいしょはまりさがいっしょにいくよ!」 ゆっくりは単純なナマモノだ。つまらないことでケンカしたかと思えば、簡単に仲直りす る。だが、そのきっかけはやはり難しいことだ。それは人間と変わらない。 まりさの考えたことは、そのきっかけ作り。群れの長であり、みんなと仲良くしているま りさがうまく立ち回れば、確かに成功しそうだ。 おにいさんも賛成してくれた。 「まりさはとってもゆっくりしたいいこだね」 おにいさんはやさしくまりさの髪をなでた。まりさはゆゆーんとうれしさに身をくねらし た。 こうしてほめられるとまりさはうれしくてたまらなくなる。でも今は、それに浸ってはい られない。 「さっそくかえって、ちぇんとみょんにはなしてくるよ!」 「うまくいくことを祈ってるよ」 「おにいさんありがとう! ゆっくりしていってね!」 「はい。ゆっくりしていってね!」 おにいさんの柔和な顔に見送られ、まりさは群れへと急いだ。 まりさとおにいさんが出会ったのは偶然だった。たまたま冒険気分で、まりさは山小屋に やってきた。 そこで、いつの間にか暮らし始めていたおにいさんに見つかったのだ。 初めはまりさは警戒した。人間はゆっくりできないと親ゆっくりから聞いていたからだ。 人間はゆっくりよりずっと強い。いい人間もいるが、悪い人間もいる。悪い人間はあまあ まを餌にゆっくりを誘い込み、とてつもなくゆっくりできないことをする、などなど。 ゆっくりとしては賢い親に、人間に対するそれなりに正しい知識を与えられていたのだ。 ところがおにいさんは、その知識からまりさのイメージしていた「にんげんさん」とは違 っていた。 「まりさ。こんにちは。ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 柔和な顔で、優しく挨拶してくれた。 それに、まりさのことを食べ物で手なずけようともしなかった。 「まりさ。少し君とお話したいんだけど、いいかな? ああ、おびえないで。怖いなら近 づかなくてもいいよ。どうしても嫌なら逃げてもいい。でも、できたら……僕とお話、し てくれないかな?」 「ゆうう……」 初めはおっかなびっくりだったが、話すうちにまりさはこのおにいさんが悪い人間ではな いことがわかった。言葉は丁寧、話題もゆっくりできることばかり。 まりさは思いつくままに自分の生活を話し、おにいさんはそれにゆっくりした感想を言っ てくれた。小一時間も話せば、一人と一匹はすっかり仲良くなった。 それからまりさは、時折山小屋にやってきてはおにいさんとお話しするようになった。 だが、このおにいさんのことを群れのみんなに話したことはない。 おにいさんにお願いされたからだ。 「まりさ、おにいさんのことは群れのみんなには話さないで欲しいんだ」 「どうして? おにいさんはとってもゆっくりできるひとだよ! きっとおともだちがた くさんできて、もっとゆっくりできるよ!」 おにいさんは悲しげに頭を振った。 「おにいさんはひとりで静かに暮らしたくてこんな山のなかで暮らしているんだ。まりさ だけならいいけど、たくさん来たら落ち着けない。それに、人間を怖がるゆっくりもきっ といる。怖がられるのは、おにいさんにも『ゆっくりできないこと』だから……」 「ゆゆ~、そうだね……」 「でも、まりさ。君は大切な友達だ。暇なときでいいから来てくれて、僕の話相手になっ てくれると嬉しい。いいかな?」 「もちろんだよ! おにいさん、ゆっくりしていってね!」 「うん。ゆっくりしていってね!」 おにいさんは一度もまりさに食べ物をふるまうことはせず、まりさから食べ物をねだるこ とをしなかった。利害関係抜きの関係。それは本当の意味での友達ということだ。それが なおさらまりさを安心させてくれた。 今はこうして、困ったときは相談するような仲にまでなったの。 そして、群れの長にまでなれたのは、おにいさんとのおかげも大きかった。 まりさにとって、おにいさんはなくてはならない大切なお友達だった。 おにいさんとの相談、なによりまりさのがんばりによって、群れの内部事情はどんどん改 善されていった。 群れのみんなは仲良くなり、協力することで食糧事情も良くなった。 それによってゆっくりの数は急速に増えた。30匹あまりだった群れは、今では100を 超えている。それでありながら、まだまだ増えるだけの余裕があった。ゆっくりみんなが 協力すれば、いくら増えても大条文なのだ。 大きくなった群れ。その長であるまりさは、おぼうしが重たくなったと感じた。当然だ。 まりさの決断には100を超えるゆっくりの運命がかかっているのだ。 だがまりさはそれを負担だとは思わない。むしろ誇らしく思った。おぼうしの重さは、群 れのみんなの「ゆっくりできること」が、つまっているとことの証。それはまさしく、ま りさが夢みていたことだ。 そんなまりさだったが、まだツガイを見つけてはいなかった。ゆっくりにしては珍しく、 成体になっても積極的に相手を求めようと話しなかった。まりさにとって群れのみんなが 家族みたいに思えるからさびしくはなかったし、長の仕事が忙しすぎたこともある。 だが、そんなまりさにも春が訪れた。 「まりさ! れいむはまりさと、ずっといっしょにゆっくりしたいよ!」 告白してきたのは幼馴染のれいむだった。ずっと仲良しだった。長の仕事もよく手伝って くれた。 突然の出来事に、まりさは目をぱちくりさせるばかりだった。今までれいむのことを、そ ういう相手としてみたことはなかったのだ。 だが、告白された瞬間、まりさの餡子を衝撃が駆け抜けた。 それは「しあわせー」だった。 今までどんなにおいしいものを食べても、どれだけゆっくりしても感じたことのない、衝 撃的な「しあわせー」。 まりさは群れをゆっくりさせればしあわせになれると思っていた。 でも、まだしあわせがあった。家族を持つこと。大好きな親れいむや親まりさのように、 かわいいおちびちゃんと暮らすこと。今までぼんやり考えていたそれが目の前に来たとき、 その「しあわせー」の大きさにまりさは驚くばかりだった。 「ま、ま、ま! ままままりさも! れれれれいむとずっといっしょにゆっくりしたいよ!」 どもってしまったが、どうにか答えることが出来た。 れいむは恥ずかしげに、でも嬉しそうに頷いてくれた。 まりさはまさに、しあわせの絶頂にあった。 「ゆふー、つかれたー。まりさ、ちょっとがんばりすぎちゃったよ……」 告白を受けた後、早速まりさはれいむをおうちに呼んだ。そこで、ある問題にぶつかった。 まりさの住むおうちはひとりで住む分には十分だが、家族で暮らすには手狭であることに 気がついた。 「ま、ま、まりさは! おうちをおおきくしたら、れいむをむかえにいくよ!」 「ゆっくりまってるよ、まりさ!」 思わずそんなかっこつけたことを言ってしまった。ゆっくりは告白直後にすっきりーも珍 しくないものだが、みんなのゆっくりのために心身を砕いてきたまりさはそういう方面に は奥手なのだった。 ここ数日、まりさはおうち作りに励んでいた。だが決して長としての仕事もおろそかには していなかった。 家族ができるとゆっくりはゲス化するのはよくあることだ。家族を一番に考え、他の優先 順位を極端に下げてしまう。頭が悪く視野の狭いゆっくりでは仕方ないことといえる。 まりさもれいむの告白に舞い上がりはした。だが、決して群れについて考えることを忘れ はしなかった。群れがゆっくりしていれば、家族もまたゆっくりできる。当たり前の、し かし多くのゆっくりが忘れがちなこの理屈を、長としての経験が長いまりさは餡子の奥ま で刻み込んでいたのだ。 長の仕事とおうち作りの両立にまりさはおおいに疲れさせたが、その苦労も報われようと していた。おうちは大きくなった。家族を養うのに十分な広さまで、遂に拡張したのだ。 「あした、あさいちばんにれいむをむかえにいくよ!」 まりさはそう心に決め、まりさはゆっくり休もうと目を閉じた。だがドキドキして眠れそ うになかった。 そんなモンモンととしていた時だ。 突然、入り口がどん、と大きな音を立てた。 「ゆっ!?」 驚き、まりさは身構える。 誰か来たとしたら、どんなにあわてていても入り口の「ドア」を叩く前に声をかけてくる はずだ。 捕食種が襲ってきた、というのも考えにくい。まりさのおうちの入り口は、群れのみんな で考えた特別製の「ドア」がついている。れいむの「けっかい」が施されており、簡単に は見つからないはずだ。 まりさが思いをめぐらす中、二度、三度とドアは叩かれる。 「ゆゆうっ!?」 一度であきらめないということは、中にまりさがいることを確信しており、それを狙った 攻撃であるのは間違いない。だが、誰が何のためにそんなことをするのか、まりさには想 像がつかない。 固唾を呑んで見つめる。 「ドア」はまりさの経験とぱちゅりーの知識が合わさり、強固な作りになっている。内側 から枝で閂をかけられているため、外からではれみりゃであっても開けられないはずだ。 だが、何度目かの衝撃によってついに閂は折れ、「ドア」取り去られてしまった。 そして、一匹のゆっくりが入り込んでくる。 「うー!」 ピンクのないとキャップに青い髪。こうもりの翼にこの声は間違いない。 「れ、れ、れみりゃあだあああああ!」 れみりゃはすぐには襲い掛かってこず、じりじりとまりさに迫ってくる。入り口はひとつ、 れみりゃの後ろ。逃げ場はない。 まりさは恐怖をどうにか飲み込み、、おぼうしの中からとがった枝を取り出す。 順風満帆に見えるまりさのゆん生だが、危険なこともいくつも経験してきた。れみりゃに 襲われたこともある。もっとも、そのときは運よく逃げ延びただけだ。逃げ場のないおう ちで捕食種と一対一の対峙など、初めてのことだった。 「ゆ、ゆうう……」 「うー!」 まりさのくわえたとがった枝を警戒しながら、しかしひるむことなく、れみりゃはじわじ わと距離を詰めてくる。 まりさの中で恐怖が爆発しそうになった。泣き喚いて全てを投げ出したいという誘惑にと らわれた。 だが、そのときだ。 まりさはおぼうしの重みを思い出した。 おぼうしの中には、群れのみんなが「ゆっくりできること」が詰まっている。 もし、まりさがこのまままりさがやられたらどうなる? おぼうしの中の「ゆっくりでき ること」はどうなる? まりさは冷静さを取り戻し、餡子脳をフル稼働させ、思考を巡らせた。 もし、このまままりさがやられたらどうなるか? きっとれみりゃは、群れのみんなを襲 うに違いない。 特製の「ドア」は、ほとんどのおうちに備えられている。普通のれみりゃだったら安全だ ろう。だが、目の前のこのれみりゃは、それを開けてみせたのだ。 長の導きもないまま、こんな危険なれみりゃが群れを襲う……なんてゆっくりできないこ とだろう。そんなこと、まりさには許せなかった。 そう思った瞬間、体は動いていた。 「ゆー!」 叫び、口にくわえた枝を突き出し、まりさは突進した。 いかに考えをめぐらそうと、ゆっくりにできることなどこの程度だ。だが、この攻撃は悪 くない。 拡張され大きくなったおうちとはいえ、れみりゃが飛ぶのはとても無理。枝はともかく、 突進するまりさの体をかわすのは難しい。枝で傷つけられなくとも、体当たりでひるませ れば勝機も少しは見えてくる。 だが、れみりゃの動きは、まりさのまったく夢にも思わないことだった。 「ゆうう!?」 れみりゃは、翼を使った。 翼で木の枝を受け流し、するりとまりさの脇を抜け、まりさ決死の突撃をなんなくかわし たのだ。ゆっくりとは思えない見事な回避動作だった。 そして、二匹はすれ違い、お互いの位置を入れ換えた。 あわてて振り返ると、爛と輝くれみりゃの目が合い、まりさは凍りついた。攻撃をかわし たからといって、れみりゃはやみくもに攻めてこなかった。侮れない相手だと、慎重にま りさのことを品定めしているのだ。 ドアを破り、翼で枝を受け流し、そして今、油断がない。明らかに普通のれみりゃではな かった。 だが、まりさは幸運だった。その幸運はふたつ。 ひとつはれみりゃと位置が入れ替わったこと、もうひとつはそれにまりさが気が付いたこ とだ。 「ふっ!」 まりさは枝をれみりゃに向かって吹いて飛ばした。もちろんそんなものは通用しない。れ みりゃは翼で簡単に枝を払った。 だが、それでいい。少しの隙ができれば十分だった。 突進により、まりさとれみりゃの位置は入れ替わった。つまり、まりさの背後に入り口が あるのだ。 まりさは急いで外に出ると、「ドア」で入り口をふさぎ、全体重をかけた。閂は壊された ものの、幸い「ドア」そのものはほとんど破損していなかった。 「うー! うー!」 何度か内側からぶつかられたが、入り口は下向きだ。捕食種の身体能力が優れていると言 っても、上から押さえつけるまりさの方が有利だ。 まりさはほっとした。後はみんなを呼んで、この「ドア」の上に重い石でも置いてれみり ゃをとじこめてしまえばいい。時間を置いて、れみりゃが弱ったところでやっつけるなり、 餓死を待つなりすればいい。 まずは、みんなを呼ぼう。大声を出そうと、まりさが息を大きく吸い込んだときだ。 「うー! みんな、ちょっとてごわいまりさがいるんだどー! てつだってほしいどー!」 まりさより先に、れみりゃが助けを呼んだ。 みんな? れみりゃは、一匹じゃない? 戦慄するまりさは、そのときようやく、静かであるはずの夜の群れが騒がしいことに気が 付いた。 いくつもの声が聞こえる。そのいずれもが……悲鳴だ。 「どぼじでれみりゃあがいるのおおお!」 「おかーしゃああああん! ゆわあああ! たちゅけてええええ!」 「いぢゃいいぢゃいいぢゃいいいい! やべでええええ! ずわないでええええ!」 群れに大変なことが起きている。 もう、おぼうしの重みを感じなおすまでもない。まりさは長としてとっくに覚悟を決めて いる。 今、「ドア」から衝撃はない。れみりゃは仲間が来るのを待っているのだろう。 「そろーり、そろーり……」 まりさは気づかれないよう、出来る限り静かに離れる。幸い、れみりゃはまりさの行動に 気づいていないようだ。ある程度の距離を稼ぐと、まりさは群れの中心へと駆け出した。 平和な群れは凄惨な、とてつもなくゆっくりできない地獄と化していた。 ありとあらゆる場所で、一方的な蹂躙が行われていた。一、二、三……ゆっくりの餡子脳 では数え切れないたくさんのれみりゃが、ゆっくり達を次々と狩っていた。 「どうして……れみりゃがこんなにいっぱいいるの……」 まりさが呆然とつぶやくのも無理はない。 れみりゃは普通、群れを作らない。基本的には一匹で行動する。複数でいたとしても、そ れは家族である場合がほとんどだ。その場合は、親ゆっくり二匹に子ゆっくり数匹という 構成だ。 だが、群れを襲っている無数のれみりゃは、見た限り全てが成体ゆっくりであり、たくさ んいた。 「ゆわあああああああ!」 お友達のまりさが追われている。後ろからはれみりゃに追いかけられているのだ。 ところが、逃げた先には、 「どぼじでれみりゃがいるのおおおお!?」 まるで待ち受けていたように別のれみりゃがいた。 「おめめがーっ! ありしゅのつぶらなおめめがー!」 「いぢゃあああいい! いぢゃいよおお! みえないいよおお!」 「くらいよおお! まっくらだよおおおおお! こわいよおおお!」 声に振り向けば、そこにはゆっくりの目を狙って襲うれみりゃがいた。異様なのは、目を 壊すだけでそれ以上のことはしないことだ。次々とゆっくり達の光を奪い、しかしかぶり ついて餡子を吸い出すということをしない。まるで、目をつぶすことが自分の役目だとい うように。 そして、それを待っていたかのように、今度は体は大きいものの動きは鈍そうなデブれみ りゃがやってきた。そして目が見えずろくに逃げることも出来ないゆっくり達を、次々と 吸い尽くしていく。 「れいむのおちびちゃんをかえせえええ!」 遠くでは、子供を取られたれいむがいる。 まるで見せ付けるように子ゆっくりを殺さず口にくわえるているれみりゃ。れいむの目は それに釘付けだ。 その後ろから、別のれみりゃが襲い掛かった。なすすべもなくれいむは吸い尽くされ、子 ゆっくりも同じ運命をたどった。 「なんなの……これ……なにがおきてるのおおおお!?」 群れをなしてれみりゃが襲い掛かってきた。しかも、連携して。 まりさはもう、この状況がなんであるかわからなかった。 だが、長としてできることは一つだけだ。 「みんなー! ここはもうだめだよー! 『ひなんばしょ』ににげてー!」 叫びながら、地獄となった群れを駆け抜ける。 あらかじめ緊急事態用の避難場所は決めていた。 そこへみんなを誘導すること。まりさにできることはそれだけだった。 声に気づいたれみりゃが襲い掛かってくる。 「! このれみりゃはおめめをねらってるんだね!」 さっき見ていたれみりゃだったことが幸いした。あらかじめわかっていた狙いをタイミン グを合わせてかわす。 「みんなー! にげてー!」 まりさは、叫び、走る。 絶望の中を、わずかな希望にすがりながら。 「ゆう、ゆう、ゆう……」 荒い息ばかりを吐き、まりさは必死に跳ねていた。あれからまりさは群れに避難を呼びか けながら走り回り、そしてどうにかれみりゃ達から逃げ切り、秘密の避難場所の入り口近 くまでたどり着いていた。 「みんなを……まもれなかったよ……」 まりさが逃げられたのは、れみりゃを無視してずっと走り続けたためだ。 れみりゃの多くは陽動やけん制をする役としとめる役に分かれていたようだった。陽動に もけん制にもかまわずただ駆け続けるまりさはそのコンビネーションにはまらず、標的に なりにくかったのだ。なにより、他のゆっくりがたくさんいたことが大きい。まりさは皮 肉にも、群れを守るどころか、群れに守られてしまったのだ。 「れいむ……だいじょうぶかな……」 群れを一旦離れて思うことは、ずっとゆっくりすることを約束したれいむのこと。 「きっとだいじょうぶだよ……! さきに『ひなんばしょ』でまってるにきまってるよ!」 まりさはそう自分に言い聞かせると、避難場所への入り口と向かう。 緊急用の秘密の避難場所とは、滝の裏の洞窟だった。 水に弱いゆっくりがいるとは誰だってなかなか思わない場所だ。捕食種はよりつきもしな い。 湿気が高いので長く暮らすのには向かないが、短期の避難場所としては絶好のゆっくりス ポットだった。 そして、その入り口近くまで来たところで、まりさはようやく気がついた。 洞窟の中から、悲鳴が聞こえる。 「ゆゆ!?」 驚きのあまり、飛び上がった。 それが、幸いした。 「うー!」 まりさの下をれみりゃが通り過ぎた。 れみりゃは口惜しそうにまりさを見ながら、しかし勢いはとまらず、そのまま洞窟の中へ と飛び込んで行った。 「そ、そんなああ!? どぼじでれみりゃがいるのおおおお!?」 まりさはつけられていたのだ。先に避難場所に着いたゆっくりもまた尾行され、既に避難 場所はれみりゃに蹂躙されている。洞窟からの悲鳴はその結果だ。 あえて逃がし、避難場所を知る。このれみりゃたちはゆっくりとは思えないほど狡猾だっ た。 「どうして……どうして……」 なんでこんなことに。 なにがいけなかったのか。 なにか間違えたのだろうか。 わからない、わからない、わからない。 餡子脳は過負荷に沸騰してしまいそうだった。まりさはもう、何をしていいのかわからな くなってしまい、動きを止めた。 そんなまりさを、現実に引き戻す声があった。 「まり……さ……?」 いつの間にかうつむいていた顔を跳ね上げた。声はあの、ずっとゆっくりすることを約束 したれいむのものだったのだ。 まりさの前に、れいむがいた。 れみりゃにかぶりつかれながら必死にはいずる、れいむがいた。 ひどいありさまだった。 あのふっくらしていた肌は、惨めにしなびてしまっている。しっとりとしてた髪も、恐怖 と痛みで色が薄くなっていた。目の光も弱い。明らかに、もう先は長くない。永遠にゆっ くりするのも時間の問題だろう。 れいむはまりさを見た。まりさは助けてやりたかった。どうにかして、れいむを救いたか った。 「まりさ……にげて……!」 だが、れいむは救いを望まなかった。自分が永遠にゆっくりしそうな状況にありながら… …いや、だからこそ、最愛のまりさが生き延びることを望んだのだ。 「れ、れいむっ……!」 「まりさ……だいすきだよ……まりさは、ずっと……ゆっくり……していっ……」 そして、れみりゃは餡子を吸い尽くされた。 自分のことを省みず、最後までまりさのことを想い、れいむは永遠にゆっくりした。 からっぽになったからだの中に、光を失った目がぼこり、と落ちた。餡子という支えを失 った皮はくしゃりと力なくつぶれた。 「ゆわああああああああああああああ!」 絶叫した。体中の餡子を吐き出さんばかりの勢いでまりさは絶叫した。 そんなまりさに、れみりゃはまるでひるむことなく、けぷ、とひとつゲップを吐くと、鋭 い視線を向けた。その目はふてぶてしく語っている。「次はお前だ」、と。 「ゆっがあああああああああああああ!」 武器となる木の枝はない。策も何もない。勝てる見込みなどひとつもない。何も考えず、 まりさは飛び掛った。 ただ全力で、憎しみの全てを叩きつけるように。 れみりゃの目が変わった。 目の前のまりさが、無力な餌ではなく注意すべき敵であると認識したのだ。 すばやく飛び上がる。かわしきれず、まりさのおぼうしの先っぽがかする。予想外の接触 に驚き、れみりゃの姿勢がわずかに崩れる。 「ゆうう!」 まりさはすぐさま着地し、振り返り追撃しようとした。 だが、出来なかった。着地すべき地面がなかった。 まりさが突っ込んだ先はガケだったのだ。滝が降り注ぐ先へと、まりさは頭からまっさか まさに落ちていった。 「……ゆ?」 気がつけば川に打ち上げられていた。 おちたとき、川におちた。頭からまっさかさまに落ちたのが幸いした。おぼうしからうま く着水し、まりさは水に浮くことができたのだ。そして流され一命を取り留めたのだ。 まりさはおぼうしをかぶりなおす。 水を吸ったおぼうしは重みを増していた。だが、まりさはそう感じなかった。 むしろ、軽いと思った。 昨日までは「ゆっくりできること」でいっぱいだった、誇らしい重みのおぼうし。 今はずぶぬれの水の重さだけ。そんなもの、惨めなだけだった。 暗い森の中、しんと月明かりだけが照らしている。あの惨劇が嘘のような、あまりに静か な夜の森だった。 まりさは歩き出した。 行かなきゃ、と思った。 どこへ、とは考えなかった。 歩けば、どこかにたどりつけると思ったから。 止まったら嫌な考えに囚われてしまいそうだったから。 だから、ただただ進み続けた。 そして、気づけばまりさはおにいさんの住む山小屋にたどり着いていた。 窓からは暖かな光が漏れていた。まりさの瞳から涙がこぼれた。 「おにいさん、おにいさん! でてきて! でてきてよおお! まりさのおはなしをきい てええ! まりさ、もう、もう、もう! どうしたらゆっくりできるのか、わからないん だよおおお!」 まりさが呼びかけると、小屋の中でどたばたと音がし、あわてた様子でおにいさんが現れ た。 「ま、まりさ!? いったいどうして……」 「お、おにいざーん!!」 まりさが飛びつくと、おにいさんはやさしく抱きとめてくれた。 あたたかい感触に、まりさは安堵を得る。だが今は、その暖かさに浸れなかった。群れの みんながゆっくりできない今、自分だけがゆっくりしたくはなかった。 おにいさんなら、なんとかしてくれるかもしれない。その思いにすがった。 「おにいざん、おにいざん! あのね、あのね……」 「驚いた、よくあのれみりゃの包囲から抜けられたものだね」 「……ゆ?」 まりさは人間が賢いことを知っている。いろんなことを知っているということを、知って いる。 でも、それでも納得できなかった。 「どうしておにいさん、れみりゃのことしってるの……?」 「まあ、中で話そうか」 そうして、まりさはおにいさんに抱かれたまま、中へと連れて行かれた。 まりさが山小屋の中へ招かれるのは初めてだった。 初めて見る部屋の中。 まりさは一目見て、 「なんなのこれええええええ!?」 絶叫した。 通された部屋の中には、無数のモニターが設置されていた。 そのいずれにも、襲われる群れのゆっくり達の様子が映し出されているのだ。 れいむが、ありすが、ぱちゅりーが、みょんが。 れみりゃに襲われ、噛み付かれて、吸い尽くされる。そんな様子が無数に映し出されてい るのだ。 「れみりゃにつけたカメラの映像さ」 「ゆ?」 「つまり、れみりゃ達が見てるものをここで全部見れるんだよ」 「ゆ? ゆゆ?」 まりさにはおにいさんが何を言っているのか理解できなかった。 ただ、予感があった。知ってはいけない、しかし知らずにいられない。そんな恐ろしい、 ゆっくりできないこと。それがここにはあるという、不吉な予感。 おにさんはまりさを机の上に置いた。全てのモニタが見渡せる特等席だ。 「モニターの1番は……技術はあるし発想もいいんだが、たまに止めを刺さず投げっぱな しにするのがよくない。36番は試験に二回落ちただけあって堅実だ。でも、ちょっとや りすぎな感じはあるな……」 ぶつぶつとつぶやくおにいさんの声もまりさにはゆっくりできない。 「お、おに、おにいさん……これはいったいどういうことなの……?」 「見てのとおり、れみりゃが君の群れを殲滅している。それだけのことさ」 おにいさんはいつもと変わらない様子で、さも当たり前のように語る。 まりさは本能的に悟った。目の前の惨劇。それを、このおにいさんが引き起こしたという ことに。 だから、叫んだ。 「ど、どぼじでごんなごどずるのおおおお!?」 それに対するおにいさんの答えはシンプルだった。 「通常種のゆっくりが邪魔だからさ」 まりさは絶句した。 そんなまりさを優しくなでながら、おにいさんは言葉を続けた。 「ゆっくりってやつは、やたらと山の自然を荒らすし人家にも被害を出すことがある。ゆ っくりは単体では脆いナマモノだけど、種としては強靭だ。あっという間に数を増やすか ら、殺すのは簡単なのに根絶となると異常に難しい。繁殖力がありすぎる。増えるたびに 駆除してたら、金も手間もいくらあっても足りやしない。そこで、れみりゃを使うことに したのさ」 おにいさんはモニターのひとつを指差した。 そこにはれいむを吸い尽くすれみりゃの姿があった。 「見てのとおり、れみりゃは邪魔な通常種のゆっくりを食べてくれる。ふらんでも良かっ たけど、あっちは性格にムラがあるし、数も増やしにくい。で、れみりゃを使うことにし たのはいいんだけど、あれもゆっくりには違いないから頭は良くないし、群れを壊滅させ るほど大食いでもない。実際に大量のれみりゃを山に放す実験が行われたらしいけど、あ まり効果は上がらなかったようだ。れみりゃの狩りの効率を、ゆっくりの繁殖力が圧倒的 に上回っているんだ。それなりに頭のいいゆっくりは、普通のれみりゃに襲われないよう に工夫するから、どうしても討ち漏らす、ってのも大きな原因のひとつ。れみりゃの狩り はぬるすぎるんだ」 おにいさんの説明はまりさには理解できなかった。 ただ、ただ、歯を食いしばり、食い入るようにモニタを凝視していた。 「でも人間はバカじゃない。すぐに新しい方法が考えられた。れみりゃが使い物にならな いなら、加工して強化し、訓練して役に立つレベルまで引き上げればいい。結果、通常よ り高い身体能力を持ち、複数で連携をとって確実に群れを殲滅する捕食種のできあがり、 というわけさ」 今度は別のモニターを映し出した。 口に枝をくわえるみょんとちぇんの二匹だ。れみりゃを、二匹で協力して倒すつもりらし い。 そこに、後ろから別のれみりゃ達が襲い掛かった。真後ろからの不意打ちに、二匹はあっ さりと倒されてしまった。 カメラを持ったれみりゃは、二匹の注意をひきつけるおとりだったのだ。 まりさも実際に現場でいくつも目にしていた。れみりゃたちは実に巧みに連携をとって、 群れのみんなを狩っていた。 まりさはただただ目を見開いていた。 だからその呟きはまりさも意識せず漏れた。 「どうして……? まりさたち、なんにもわるいことしてないのに……」 無意識の呟きに、おにいさんは聞きとった。 「悪いことをしない――つまり、善良な野生のゆっくり。それがいけないんだ」 「どう……して……?」 「ゲスが台頭した群れは大して増えない。圧制をしいて死ぬゆっくりが多くて適性数を保 ったり、あるいは勝手に自滅してくれる。でも、本当に善良なゆっくりはだめだ。増える。 際限なく増える。増えすぎて山を丸裸にしてしまった例だってあるくらいだ。山の生態系 にとって、なにもしない善良なゆっくりこそ最大の害悪なんだよ」 「そん……な……」 あまりにゆっくりできないことの連続に、まりさの餡子脳はまともな思考を手放そうとし ていた。だがそれを、お兄さんの言葉が引き止めた。 「それで、これからが君に関係する話だ」 「ゆ? ま、まりさに……?」 「そう。群れ殲滅用の捕食種は完成した。でも、実運用の前には実地試験が必要だ。その 対象はなるべく数が多くて賢い群れが望ましい。それも人間の手の加わっていない、野生 の群れが最適だ。人間の手が加わると、ゆっくりってやつはどうしてもゲスな面を出すか らね。さっきも言ったけどゲスなゆっくりは増えすぎないから駆除対象にならないから、 実地試験に向かない」 「わからないよ……」 「まりさにわかるように言えば、僕達が必要としたのは、そうだな……とってもゆっくり した大きな群れがだった、ってとこかな?」 「ゆっくりした……むれ……」 まりさの瞳からとめどなく涙が流れた。 ゆっくりした群れ。まりさはそこにいた。群れをゆっくりさせるために、全てを費やした。 夢だった。あの群れは、まりさの夢そのものだった。 しかし、夢は願うだけでは叶わない。夢を実現させてくれたのはなんだっただろうか? 「だから僕は君にアドバイスしたのさ」 そうだ。おにいさんがいたからだ。いつもまりさの相談にのってくれるおにいさんの存在 なくして、あれほどゆっくりとした群れはありえなかった。 「いや、ずいぶん気を使ったよ。実地試験には人間の手が加わっていない、という条件が あったから、ゆっくりの領分を越える知識を与えちゃいけない。なるべくゆっくり自身に 考えさせて、群れにゆっくりらしい発展を遂げてもらわなきゃならない。難題だったけど うまくいったよ。僕のアドバイスで、君はゆっくりできただろう? 群れをゆっくりさせ られただろう?」 そうだった。 まりさが悩んで相談を持ちかけたとき、おにいさんは回答を言うことはなかった。それと なく考える道を示してくれただけ。ほとんどの悩みを、まりさは自分なりの考えで解決し てきたのだ。 「いや、まりさに出会えてよかったよ。君は本当に性格のいいゆっくりだった。初めは君 一匹に働きかけるだけじゃうまくいかないだろうと他のゆっくりに声をかけることも考え ていたけど……いやいや、こんなにうまくいくとは思わなかったよ。まりさは最高の『群 れの長』だ。実にいい素材を用意してくれた。ほら、見てごらん。君の群れのゆっくり達 は実によくがんばってくれている」 モニターの向こうではゆっくりたちが奮戦していた。 子ゆっくりを逃がすため、自ら身を差し出すれいむがいた。 おぼうしを引き裂かれても、他のゆっくりをかばって戦うまりさがいた。 あきらめず、みんなを逃げ道に誘導しようと必死に声を張り上げるぱちゅりーがいた。 目をつぶされたのに、少しでもれみりゃを傷つけてやろうと木の枝をふりまわすみょんが いた。 誰かを見捨てるゲスゆっくりは一匹もいない。どのゆっくりも、みんながゆっくりするた めに、最後まであきらめずがんばっていた。 本当に、ゆっくりとした最高の群れだった。 それなのに……いや、それだからこそ。れみりゃ達の実地試験の素材として、最高のゆっ くりたちだと言えた。 群れのゆっくり達の決死の行動は、結局のところなにもかもが無駄だった。どんな抵抗も、 人間によって身体能力を強化され、連携を徹底的な訓練により教え込まれたれみりゃ達の 前には役に立たなかった。 モニターにはひとつとして、奇跡の逆転劇も幸運な脱出劇も映されない。ただただ、惨劇 ばかりが展開されていた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ!」 「まりさ?」 まりさは震えていた。恐ろしさに、なにより絶望に。 おにいさんの言葉はゆっくりであるまりさには難しく、まりさはおにいさんの話を理解し ていない。 「……まりさ、おにいさんがなにをいっているのかぜんぜんわからない。ぜんぜんわから ないよ……」 いや、本当のところは既にわかっていた。本質は、餡子脳の奥で理解していた。だが、わ かりたくなかった。認めたくなかった。 それなのに。 「ああ、つい熱が入ってしまった。ごめんね、まりさ。いつものように、まりさにもわか るように言ってあげるよ」 おにいさんは優しく、しかし残酷にまりさの逃げ道をふさぐ。 「まりさ。君は、れみりゃに滅ぼされるために、群れを大きくしたんだ」 「ゆ、ゆ、ゆああああああああああああああああああああああああああああ!」 まりさは絶叫した。 餡子が沸騰せんばかりの激情に身を焦がされ、その炎を吹き出すように叫んだ。 まりさのがんばってきたこと。しあわせなこと。ゆっくりできると思っていたこと。 いままで生きてきたゆん生で積み上げてきたありとあらゆるもの。なにもかもがこの惨劇 に向かうためのものでしかなかったなど、受け入れられるはずがなかった。 しかし、まりさがどう思おうと目の前の悲劇は終わらない。現実は変わらない。目の前の 無数のモニターではただ淡々と、今もゆっくり達がれみりゃによって滅ぼされる様を映し 出し続けている。 まりさは叫んで叫んで、声が尽きて……そして、叫びに口を広げたまま、動かなくなった。 そんなまりさを、おにいさんはただただいつものように柔和な顔で、しかし感情のない冷 静な目で眺めている。 おにいさんは学者だった。自分の研究を行い、それを発表することに無上の喜びを感じる、 純粋すぎるぐらいの学者だった。こうしてまりさに全てを話したのも、ただ自分の研究が うまく言ったことを話すのに熱中しただけに過ぎない。 そしておにいさんは、研究に情というものを持ち込まない人間だった。 「まりさ。君にはこれからも実験につき合ってもらうよ。あの包囲を抜けた君は研究対象 として興味深いし、れみりゃ達の訓練の相手にもちょうどいいだろう。これからも、ゆっ くりしていってね!」 まりさにはなんの反応も示さなかったが、おにいさんには関係なかった。 透明な箱にでも閉じ込めておくかと、おにいさんが机からまりさを持ち上げると、おぼう しがぱさりと落ちた。 「おや、珍しいな」 ゆっくりのお飾りは、人間の手で簡単に奪えるが、こんな風に自然に落ちてしまうなんて ことはまずない。不思議と落ちないようになっているのだ。 まりさの中にわずかに残った意識が、それを当然のことだと思った。 まりさはおぼうしのなかを凝視した。 何もない。空っぽだった。がらんどうのおぼうしだ。 あれだけたくさんつめこまれていたはずの「ゆっくりできること」。 それがみんなみんな、なくなってしまったのだ。 だから、まりさのおぼうしは、すっかり軽くなってしまい、ちょっとゆれただけで簡単に 落ちてしまったのだ。 おぼうしはおにいさんの手によってかぶらされた。 まりさはもう頭の上のおぼうしに、もうなんの重さも感じなかった。 了 by触発あき 挿絵 by触発あき * 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 172 とてもゆっくりした蛇口 ふたば系ゆっくりいじめ 180 ゆっくりばけてでるよ! ふたば系ゆっくりいじめ 181 ゆっくりばけてでるよ!後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 199 ゆっくりたねをまいてね! ふたば系ゆっくりいじめ 201 ゆっくりはじけてね! ふたば系ゆっくりいじめ 204 餡小話の感想れいむ・その後 ふたば系ゆっくりいじめ 211 むかしなつかしゆーどろ遊び ふたば系ゆっくりいじめ 213 制裁は誰がために ふたば系ゆっくりいじめ 233 どすらりー ふたば系ゆっくりいじめ 465 おぼうしをおいかけて ふたば系ゆっくりいじめ 469 おぼうしをぶん投げて 上記以前の過去作品一覧は下記作品に収録 ふたば系ゆっくりいじめ 151 ゆっくりみわけてね! 挿絵:触発あき
https://w.atwiki.jp/n4908bv/pages/1394.html
N8E1マップのグレータースノウドラゴン率いる群れを倒すことで取得できる。 N8W1マップの巨人王の謎掛けとともにN9マップへ行くために必要な称号の一つ。 討伐対象となるモンスターの群れ グレータースノウドラゴン スノウドラゴン 戦闘終了インフォはなし。 初出 519話
https://w.atwiki.jp/tapdefenders_mobirix/pages/28.html
一般モンスター ボスモンスター [部分編集] 一般モンスター 名称 属性 タイプ HP 移動速度 ゴールド 群れ 特殊能力 図鑑説明 ゴブリン 近接 地上 低 速い 低 1 なし 体の小さいゴブリンです。小さいからと甘く見ると痛い目に合うかも。 ボスモンスター 名称 属性 タイプ HP 移動速度 ゴールド 群れ 特殊能力 図鑑説明
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4407.html
『ナルキッソス』 6KB 愛で 小ネタ 思いやり 愛情 追放 群れ 希少種 自然界 人間なし ピクミンれいむとネガティブゆうか 山の斜面に構えたゆっくりの群れ。そこはとってもお花にあふれていた絶好のゆっくりプレイスでした。 そんな場所にはたくさんのゆっくりが集まり、ほのぼのとした生活が過ぎていくのでした。 花を眺めることから始まり、花を摘んでお飾りにつけたり、輪っかにして遊んだり、食べちゃったり。 「おはなさんであそぶなんてゆっくりしてないわ……」 そんなゆっくりの中に悄気た顔をするゆっくりがいました。ゆっくりゆうかです。 「ゆぷぷ、ま~たゆうかがなにかいってるのぜ?」 「そうだねーおはなさんはゆっくりのためにはえてくるんだよーわかれよー」 はっきり言って、ゆうかは異端でした。花を食べるな、花で遊ぶなというゆうかの考えはゆっくりしてないのです。 そもそも、ゆっくりにとって花は食料であり、物なのです。それに、この群れのゆっくりの主食は花です。 花を眺めるだけに留めて欲しいという、ゆうかの言葉は群れのゆっくりには理解できませんでした。 「ゆうかはあっちにいくんだねー!」 ちぇんはまりさと一緒にゆうかをあざ笑いました。ゆうかは、ぐっと涙をこらえてその場をのそのそと去っていきます。 ナルキッソス 嘘あき 「ゆうか、れいむはゆうかのきもちはわかるよ」 頭に真っ直ぐ花を生やしたれいむが顔を伏せて泣くゆうかを慰めました。そう、れいむはゆうかの唯一の友達です。 ゆうかが以前住んでいた群れを捨てて、この花畑に憧れを持ってやってきた時からの友達です。 「でもね、ゆうかもわかってるとおもうんだ。おはなさんはたべもので、むれのみんなのだいじなごはんさんだって」 ゆうかだって、理解しています。他に食べるものがあまりないから、一年中その場に生えてくる花を食べなければならないことを。 食料源を食べるなというのは暴力的な意見だということも理解しています。 ですが、花を愛でるゆっくりとしては辛抱たまらんのです。何よりも、無意味に花を引っこ抜くゆっくりなんて言語道断。 「ゆうかは、ゆうかは、どうしても、おはなさんをだいじにしてほしいのよ」 そのために、ゆうかは花を食べずに数少ない山の食料を食べて生活しています。虫や雑草を探して食べているのです。 一生懸命に狩りをする姿をバカにされながら、ゆうかは一人で戦っています。 「ゆーん、ゆうかもがんこさんだね。でも、きらいじゃないよ!」 れいむはゆうかの頬に自分の頬を擦り当てました。 「すーりすーり!」 「ゆゆ、すーりすーり……」 頬に垂れていた涙は途絶え、ゆうかは少し微笑むことが出来ました。 群れのゆっくりからは馬鹿にされ、ゆっくりしていないゆっくりというレッテルを貼られたゆうかは自分が嫌いでした。 どうせなら、お花が好きな気持がなくなればいいのかなと常々思うのです。 そうすれば、他のみんなと仲良くできて、ゆっくりできるんじゃないかと。 ゆうかは他のゆっくりよりも愛に飢えている傾向があります。それは、チェンジリングの子として生まれたからです。 両親からもバカにされ、姉妹にもバカにされ、周囲のゆっくりにもバカにされ、逃げた先のこの群れでもバカにされ。 もう、うんざりでした。 「ゆうかはゆっくりしてないのかなぁ」 ポジティブシンキングの多いゆっくりの中ではかなり、ネガティブな状況だといっていいでしょう。 人間で言えば鬱状態といっても差し支えありません。 思案にふけながら森を探索していると、ゆうかは不思議な匂いをキャッチしました。 「ゆゆ、なんだかとってもゆっくりしたにおいだわ。なんというか、すがすがしいきぶんね」 その匂いに釣られながらゆうかは歩を進めていきました。緑の雑草が生い茂る深いところへと進んで行きました。 すると、とっても静かな場所についたのです。静かさが伝わるぐらいに染み入るような音がしました。 「これは、みずうみさんかしら?」 青々とした水が広がる、小さな湖でした。ですが、とても綺麗な水だと見て分かるぐらいに。 「すこし、おみずをのみましょう!」 いつも飲んでいる水は貯めた雨水や群れの汚い泥水混じった湖の水ばかりでした。 こんなにも濁っておらず、澄んでいる水は初めてです。 「いっただっきまーす!」 ゆうかは水を飲もうとします。しかし、一旦、ゆうかは動きを止めました。目の前に誰かがいるのです。 「と、とってもきれいなゆっくりだわ……」 眼の前にいるゆっくりはとてつもない美ゆっくりでした。いつも見ているくろんぼの帽子やゴワゴワの金髪とはわけが違います。 左右非対称なネコミミやお手入れをしていない黒髪、帽子のかぶり方が変な紫髪とは違う、なだらかにしとやかな緑髪。 そして、なによりも、他のゆっくりが間抜けっ面に見えてしまうぐらいに整った顔。その顔が驚いた表情を見せてきました。 「あ、あの、ゆ、ゆうかは!」 別に驚かそうとしたわけじゃない、ゆうかはそう言おうとしたら、向こうは慌てた顔をしました。 「えっとね……」 もじもじとしながらゆうかは言葉に迷っていると相手も困った顔をします。ゆうかは自分と気持ちが通じ合っているのではないかと思いました。 「あ、あのね! ゆうかはゆうかなの! いっしょにゆっくりしてね!」 精一杯の笑顔でゆうかが相手に答えると、向こうも笑顔で返してくれました。その答えだけでゆうかはとっても嬉しかったのです。 ですが、きゅうに顔が赤くなってしまい、もどかしくなりました。 「きょう、きょうはこれで!!」 恥ずかしくなったのです。あまりにも綺麗な美ゆっくりがクズな自分に笑顔を向けてくれたそれだけで嬉しかったのです。 とあるまりさは、昨日ゆうかが美ゆっくりに出会った湖に来ていました。 「ゆぁ~ん、ここがびゆっくりがでるみずうみさんなのぜ?」 あまりの嬉しさにゆうかは湖に美ゆっくりが現れることを群れのみんなに広めていったのです。その噂を聞きつけたまりさは湖の前に現れました。 「びゆっくり、さっさとまりさのめのまえにでるのぜ!」 ですが、目の前に現れたのは怒った顔の厳つい不細工なまりさでした。 「な、なんあのぜこいつは!! けんかをうってるのかぜ!!?」 怒鳴り返すと向こうも大きな口を開けて何かをほざいてきます。 「ゆゆゆ、ゆるさないのぜ!! そのけんかかってやるのぜぇええ!!」 そういうと、まりさは水面へと突撃しました。 それ以来、そのまりさを見たものはいません。 ゆうかの噂が出まわってから一週間が経ちました。試しに行ったゆっくりは数知れず。しかし、帰ってきたゆっくりは皆一様に言います。 「ゆっくりしてないゆっくりしかいなかったよ!!」と。 そして、ゆうかは嘘つきゆっくり呼ばわりされました。 「ゆうかはうそつきでゆっくりしてないゆっくりだよ!!」と。 村八分の目にあったゆうかは、涙を流しながら他の場所に移る準備をしてました。 嘘扱いされたゆうかは再度、湖に行って、美ゆっくりがいることを確認し、嘘じゃないと言いましたが、信じてくれませんでした。 ですが、れいむだけは信じてくれました。 れいむは知っていたのです。湖に現れたのはもう一匹のゆうかであることを。群れのみんなは湖に自分が映ることを知らなかったのです。 そもそも、人間以外に鏡の原理を知る生物はいません。ですが、唯一、れいむだけは知っていました。 話はさておき、れいむは知っています。ゆうかが群れ一番の最も美しい、ゆっくりしたゆっくりであることを。 「これで、さよならなんてかなしいわね」 「さよならじゃないよ、れいむ、ゆうかにあいにいくから」 「え?」 れいむは自分の出来る限りの笑顔をゆうかに見せました。 「だって、ゆうかはゆっくりしてるもん! だから、ゆうかがわらえば、きっと、れいむはみつけられる」 「ゆ、ゆゆゆゆゆ」 れいむのこっ恥ずかしい台詞に身を悶えさせるゆうか。 「だから、もうなくのはやめてね! ゆうかはもっとわらってね!!」 目をパチリコとウィンクするれいむにゆうかは我慢していた涙腺の蛇口を緩めてしまいました。 「ゆっくじ、りがいじだわぁあああ!!」 うわぁーん、うわぁーんと泣きながら、ゆうかは体一つで群れを去って行きました。 れいむは信じています。本当にゆっくりしたゆっくりが報われることを。 そう、れいむこと花の神様はゆうかに微笑みました。 凛々と咲くナルキッソスの花弁は風に揺られて散っていきます。 終わり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/679.html
山の中をゆっくりと歩く。 普段からこの近辺の里の人間はこの山の恩恵を預かっている。 その山にゆっくりの群れが移住してきたというので私がそれを確かめに行く事になった。 山の中を歩いていると程なく目的の物体を見つけた。 言うまでもない、ゆっくりだ。 「ゆ~♪みてまりさ!ここにはごはんがいっぱいあるよ!!」 「本当だねれいむ!ここはゆっくりできるね!」 オーソドックスなペアの饅頭を見つけると私は話しかけた。 「やあこんにちは。ゆっくりしているかい?」 「「ゆ!ゆっくりしていってね!!」」 こちらに気づいてお決まりの挨拶を返した 「おじさんもゆっくりしていってね!」 「おじさんはゆっくりできるひと?」 まだ対して山に踏み入っていないのに見つかるとは……思ったよりも人里の近くに住み着いたんだろうか。 「ああ、ゆっくりできるよ。ほら、これをやろう」 そういって私は持っていた袋の中からお菓子を渡してやる。 「「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~!!」」 よし、食ったな……。 「「おじさんありがとう!もっとお菓子をちょうだいね!!」」 さてと、目的を果たさないとな 「ああ、もっとあげよう、ただその前にちょっと聞いていいかい?」 「「ゆ!ゆっくりきかせてね!!」」 私は質問を続けた。 「君たちの群れのリーダーに会わせてくれないかい?」 「りーだー?ねえまりさどうしよう?」 「ゆ!だいじょうぶだよれいむ!このおにいさんはゆっくりできるひとだよ!」 「わかったよまりさ!ゆっくりつれていこうね!」 「「ゆっくりついてきてね!!」」 そういってゆっくりたちは私を案内する様に跳ねていった。 よし、まずは成功と。 少しの間歩くと、開けた草原にたどり着いた。 ここは里から来た時に休憩に使ったりする人も多い場所だ。 今は山に立ち入る時期でもないから人の姿を見る事はない。 その代わりに、大量のゆっくりがゆっくりとしていた 数が多いな……。 「「ゆ!ついたよ!!ゆっくりおかしをちょうだいね!!」」 全くこの饅頭、もう約束を忘れているな。 「その前にリーダーを連れてきてね。そうすれば皆にもお菓子をあげるよ」 そんな問答をしていると、突然目の前に鈍い音を共に巨大な何かが降ってきた。ふむ、これは…… 「「「どすまりさだーー!!」」」 ゆっくりの群れってのはドスが登場する時は必ずこう言うのであろうか?まあどうでもいいが とつぜんのドスの登場に群れのゆっくり達も集まってきていた。 「ゆ!人間がなんの用なの!ここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!!」 そう言って威嚇している。 「ゆゆ!ちがうんだよどす!!」 「そうだよ!このおにいさんはゆっくりできるひとだよ!!」 「ゆ?どういうことなの?」 そうドスが聞き返したので代わりに答える。 「いやなに、最近ここらにゆっくりが住み着いたっていうからね、これはお近づきの印だよ」 そう言うと私は持っていた袋を逆さまにして中身をぶちまけた。 あふれ出るお菓子の山に集まっていたゆっくり達は呆然としていた。 「ゆ?ゆゆ??」 「おかしだ!ゆっくりできるよ!!」 「でもにんげんのもってきたものだよ!たべたらゆっくりできなくなるかもしれないよ!!」 「ゆ~でもおいしそうだよ!!」 「おか~しゃんゆっきゅりちゃべたいよ!!」 突然の出来事にゆっくり達がざわめく。ここで一斉に群がらなかったのは意外ではあった。 「ドスまりさ、私は別にお前達をどうこうしようと思ってきたわけじゃない。ちょっと聞きたいことがあるんだ」 とつぜん食べ物をくれる人間に正直戸惑いを隠せないドスまりさだが 食べ物が増えるのは正直望ましい。 「だいじょうぶだよどす!」 「さっきまりさたちもたべたけどゆっくりできたよ!」 その言葉が決定打になったのか、ドスまりさは私のほうに向かって口を開いた。 「分かったよ!人間さんはゆっくりできそうだね!皆!食べてもいいよ!!」 その言葉を皮切りに、群れ全体がお菓子の山に向かって殺到していった。 ゆっくり達の群がる山から聞こえるしあわせ~の連呼。 それを尻目に私はドスまりさに質問を始めた。 「じゃあ聞きたいんだがドスまりさ。お前達はなんでここに移住していきたんだ?」 「前に済んでいたお山さんがゆっくりできなくなっちゃんだんだよ!!」 「ふむ…それは何でだ?」 「皆でゆっくりしようと食べ物を集めていたんだけど、虫さん達やお花さんたちがいなくなっちゃったんだよ!!」 「なるほど、それでここに来たのか」 そこまで聞いて私は話す内容を変えることにした。 「ところでドスまりさ。お前はいっぱいリボンがついているな」 「そうだよ!皆が自分の命よりも大事なおリボンをつけてくれたんだよ!!」 そういって誇らしげに胸(?)を張った。 「そのリボンはこの群れのゆっくりたちのなのかい?」 「そうだよ!それだけ皆に信用されているんだよ!!」 「ふぅむ。なあドスまりさ、それは群れの皆のリボンなんだよな?」 「そうだよ!さっきも言ったでしょ!!」 ……こいつは気づいていないのか? 「じゃあドスまりさ。なんでここのゆっくり達はお前にリボンを預けているのに、リボン無しのゆっくりがいないんだ?」 「……ゆ?…ゆゆゆ!??」 ここまで言われてやっと気づいたらしい、この群れには飾りのないゆっくりが一匹もいない事に。 「どゔい゙ゔごどな゙の゙ーーーー!!!??」 その言葉を聞いて一匹のゆっくりれいむがドスに近づいてきた、このタイミングで来たってことはサブリーダーか何かかな? 「どうしたのどす!ゆっくりしようよ!」 「れ゙い゙む゙!!ごの゙り゙ぼん゙ばど゙ごがら゙もっ゙でぎだの゙ーーー!!? その一言で察したのか、ゆっくりれいむは慌てた様子だった。 「ちがうんだよどす!これはどすがよろこぶとおもってみんなでやったんだよ!!」 「ゆ゙ゔゔゔ!!?どゔじでぞん゙な゙ごどずる゙の゙!??」 尚も言い募るれいむだが横槍を入れてやる 「あーあ。可愛そうにな、そのリボンのゆっくりたちは今頃全然ゆっくりできなくなっているだなあー」 「ゆ゙ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!??」 ドスまりさはショックで叫んでいる。さて少し様子をを見るか。ちょうど騒ぎを聞きつけたゆっくり達が固唾を呑んでいる。 ……しばらくたって叫び続けていたドスまりさがいきなり黙った。落ち着いたようだ。 さて、どうでるかな。 「ゆうう……。仕方ないね!おリボンを取られたゆっくりは可哀想だけど皆でゆっくりしようね!!」 ふむ……それがお前の答えか、ドスまりさ。 その答えを聞いたゆっくり達は安心したかのようだった。 「そうだよ!しかたないよ!」 「どすにつけるからっていったのにいやがったゆっくりたちがわるいんだよ!」 「れいむたちのリボンはあげちゃうとゆっくりできなくなるからそうしたんだよ!しかたないよね!!」 次々と言い出すゆっくりたち。 さて、じゃあ最後の仕事にかかるかな…。 「ふーん。まあいいや、ところでドスまりさ。ちょっとこっちを見てくれ」 「ゆ?ゆっくり見るよお兄さん」 そういって素直にこちらを見つめるドスまりさに 私は隠し持っていたものをゆっくりを突きつけた。 「ゆゆ?お兄さんそれは何?」 そう言ったドスまりさの声と、突きつけられたものから出た轟音は同時だった。 「ゆ゙っぎ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙っ゙ぃ゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い」 「「「「「「どずま゙り゙ざがあ゙あ゙あ゙あ」」」」」」 轟音の後には片目から大量の餡子を流して悶えるドスまりさと、それを見て混乱に陥ったゆっくりの群れだった。 別にたいしたことはしていない、ただ隠し持っていた猟銃をほぼ零距離でドスまりさの目に向かって撃っただけだ。 いくら硬い皮だといっても目は別だ、至近距離で当てれば目を突き破り中まで弾丸で抉られる。 変わったところといえばその猟銃は隠しやすいように銃身を切り詰めてあるのと、中に入っているのが対巨大ゆっくり用の 弾丸である所くらいだ。その弾丸はゆっくりの体内で反応を起こしてゆっくりの餡子をどろどろにしてしまう。 即効性が高く即巨大ゆっくりを行動できなくして、じわじわと死に至らしめる。 この弾丸、試してはいないが実はドスまりさの皮に当たっても体内にめり込んでくれるらしいので、当たりさえすればいいらしいが わざわざ目に撃ち込んだのこの方が苦しいからというのと、弾丸を撃ち込むゆっくりは大体気に食わないというだけだ。 普通ならば銃を突きつける前にドスまりさに警戒されるようなものだが、前もってお菓子を与えた事と話をしたことで ワンクッション置いてから、握手をするように銃を突きつけたことがドスまりさの判断を鈍らせることになった。 「さてドスまりさ、お前に言っておくことがある」 「ゆ゙ぎ゙ぎ゙ぎ゙ぎ゙ぎ゙ぎ゙ぎ゙」 身悶えているがこちらを睨んでいる事から聞こえてはいるだろう。 「お前は前いた山から食べ物が消えたといったな?それは間違いだ。お前達が後の事を考えずに取りすぎた結果だ」 「ゆ゙……だっ゙でだべも゙の゙な゙い゙どみ゙ん゙な゙ゆ゙っ゙ぐり゙でぎな゙い゙でじょ゙よ゙お゙お゙!!」 「それも間違いだ。お前が群れを考えなしに肥大化させずに管理していれば、その山はそんな事にはならなかった」 さらに私は続ける 「そしてお前は自分のリボンは他のゆっくりを犠牲にしたものであるにも分かったのに外さなかった。自分の群れの事しか考えられない お前達はこの山を食い尽くし、その後は近くの人里にも襲い掛かるだろう。そんな群れはここに置くわけにはいかない」 まあ他にも言いたいことはあるが大まかにはこんなものだ。 「ぞん゙な゙ごどじな゙い゙よ゙お゙お゙お゙お!!!!」 弾丸の毒が効いて動けないドスまりさが叫ぶ。 叫びながら餡子を口から大量に吐き出した。あ、なんか幻覚とかドスパークとかに使うキノコも一緒に出てる。 これで完全に危険は無くなったな。まあどのみち後は死ぬだけだが。 「お前がどう思おうと別にそれはどうでもいいんだ。問題はお前達はいずれはそうするから駆除するって事だけさ」 そう言いながら、私は用が済んだので帰り支度をする。 そうしている私の周りをゆっくり達が取り囲んだ。 「よ゙ぐも゙どずを゙ごろ゙じだな゙!お゙ま゙え゙ばゆ゙っ゙ぐり゙じね゙!!」 「「「「「「「ゆ゙っ゙ぐり゙じね゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!!」」」」」」」 そう言って群れ全体が波のように私になだれ込んできた。 もうドスは死亡認定かよ。 ここで反省すれば死なずに済んだかもしれないのに…。 そう思っていると私を囲んで突進してきたゆっくり達が私にたどり着く前に突進する勢いのまま倒れ込んでいった。 「ゆ゙ゔ!!ぐる゙じい゙よ゙お゙お゙お゙!!」 「どゔじでえ゙え゙え゙え゙え゙!!」 「ゆ゙ぎゅゔゔゔゔぐる゙ぢい゙よ゙お゙お゙お゙お゙お゙゙!!!!」 まあさっきあげた菓子にも当然一服盛ってある。 これも特殊なものでゆっくりのみに反応する毒らしい。 食べても普通に生活する分には問題は無いが、殺意を持った攻撃を仕掛けたりする位興奮すると反応するらしい。 それにしてもこれをくれたあの鬼意山…一体どうやってこんなものを。 そう思いながら私はゆっくりと苦しみながら壊滅するしかない群れを後にした。 私のする事はたいしたことではない。新しく来たゆっくりの群れがそこにいても大丈夫なものかを判別するだけだ。 山の生態系を再起不能なまで壊さないか、人間に害が無いかぐらいを確かめて、大丈夫ならば何もしない。 どんな群れでもとりあえず毒入りの菓子は渡しておく。 群れが心変わりした時の為の、言わば保険だ。 毒の効き目は一世代のみらしいので次の世代のゆっくりや新しく群れに加わったゆっくりがゲスだったりしたら あまり意味は無いが他の問題は別に対処する鬼意山がいるので私の考えることではない。 あくまでも私のすることは住み着いた時点のゆっくりの査定だけだ。 最近はドスのふりをした巨大ゲスゆっくりとかもいるらしいし、案外今回もそうだったかもしれないなあ。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1869.html
※ゆラディのクロス・・・になるんじゃないかな? ※あんまり強くないドス注意 ※俺設定なところもあったりなかったり その森はゆっくり達の楽園だった。 この森には人間が食べられるものは殆ど実らず、また芽吹かない。 にもかかわらず、ゆっくりの味を好まないが人間の天敵となる動物が生息している。 この2つの要素が合わさることで、森にはゆっくりの脅威となるものが皆無に等しかった。 「「「おにぇーしゃん、きょうはにゃにしゅるの?」」」 「ゆゆっ!きょうはね、ゆっくりみんなでむししゃんをとりにいくよ!」 「「「れーみゅ、ゆっきゅちとりにいきゅよ!」」」 だから、姉の子ゆっくりが3匹の赤ゆっくりを連れて森の中を散策するなんて光景を拝むことが出来たりする。 基本的には鬱蒼としていて薄暗い森だが、ところどころに日の光が差す場所があるので見通しは悪くない。 それに、迷子になってもその陽だまりでじっとしていれば大体成体ゆっくりが見つけて保護してくれる。 こういった要因も重なって大人たちも子どもだけでの行動を止めようとしなかったし、止める必要も無かった。 「おちびちゃんたち!ばんごはんのじかんまでにはゆっくりかえってきてね!」 「もりからでちゃだめだよ!どすとぱちぇにおこられちゃうからね!」 「ゆっくちりかいしたよ!」 「「「ゆっきゅちりきゃいちたよ!」」」 そればかりか、この森にはドスまりさが君臨している。 しかも、彼女のはにーとして森の賢者と呼ばれる大型のぱちゅりーが寄り添っていた。 体高4mほどとまだ駆け出しながらも大型で、どちらかと言えば強さがウリのドスまりさ。 その反面、若干思考の幼い彼女をしっかり補佐し、群れを導くぱちゅりー。 こちらも相当なサイズに達しており体高3mはあった。 「「「どす、きょうもとかいはのおうたをきかせてあげるわ!」」」 「「れいむたちもゆっくりしたおうたをうたうよ!」」 『ありすもれいむもありがとう!ゆっくりおうたをきかせてね!』 『ぱちぇもいっしょにゆっくりさせてもらうわ』 ドスまりさを中心としたその群れの生活の中心となる場所は森の真ん中の大きな広場。 もちろん、森の真ん中に都合よくそんな場所があるはずもなく、ここはドスまりさが頑張って作った場所だった。 雨が降って、近くの川が氾濫しても大丈夫な場所で、開けているために日当たりも悪くない。 それに雨が降ったとき対策も万全で、森の各所に雨宿りにつかえそうな場所を設置させていた。 「ゆゆっ!ゆうか、おやさいさんのようすはどうなんだぜ?」 「ゆ、まりさね。おやさいはゆっくりしているわ」 「ゆぅ?・・・はやくたべたいんだぜ!」 「ゆっくりがまんしてね!」 この森では種族なんて関係なかった。 れみりゃでも、ゆうかでも、きめぇ丸でも・・・ここにいたいと願うなら、そして仲間を尊重できるならドスの比護を受けてゆっくり出来た。 いや、それどころか、彼女達を受け入れたことが外部から来るゲスへのけん制となり、群れはいっそう平和に暮らせるようになった。 それに、多様な種族が個性を活かして共生することであらゆる面で合理化が図られ、森での暮らしを豊かなものにした。 「まりさ?、すっきりしましょうね!」 「ゆゆっ!ありすはひるまからせっきょくてきだぜ!でも、ひっにんはわすれちゃだめなんだぜ?」 「とうぜんよ!かんがえなしのにんっしんなんてとかいはじゃないもの!」 また、森の賢者や彼女の教育を受けた賢い個体を中心に他のゆっくりへの教育が推進されていた。 それにとって、この群れでは考えなしの繁殖をするものもおらず、限度を考えずに森の資源を浪費するものもいなかった。 ドスと森の賢者を中心に試行錯誤を繰り返し、この群れの生活圏内で最適なゆっくりの数は1000匹前後であることが判明していた。 その数を越えないように、にんっしんを統制し、アウトローを追放し、身の程知らずの血気盛んなゆっくりは修行の旅に出すなどの措置を行った。 2匹を中心とした群れのたゆまぬ努力が実を結んで、いつの頃からかこの森は「ゆっくりの森」と呼ばれるようになっていた。 ある日、そんな平和な森に見慣れぬゆっくりがやって来た。 赤い髪、猫耳、三つ編み・・・妙にごてごてしたそのゆっくりの名前はゆっくりおりん。 ゆっくりの死体を操る能力を持つと言われ、ゆっくりの間では忌み嫌われる種族だった。 「じゃじゃーん!ゆっくりしていってね!」 『ゆっくりしていってね!』 「おりんをむれにいれてね?」 『むきゅ?・・・だめよ!』 ぱちゅりーは即座に断った。 確かにこの群れは捕食種も含めて来るもの拒まずのスタンスを取っている。 が、おりんのような異能持ちに関しては少々勝手が違っていた。 「どうして?」 『あなたののうりょくがゆっくりできないからよ!』 「ゆぅ?・・・ざんねんだよ!ゆっくりあきらめるよ!」 おりんは思いのほかあっさりと引き下がった。 ぴょんこぴょんこと跳ねて群れを後にする彼女の背中を眺めながら、ドスまりさと森の賢者は安堵のため息をつく。 異能持ちはゆっくりの常識を、時には理を覆す。そして、それは必ずと言っていいほど面倒ごとへと発展する。 好き好んで得た力ではないだろうし、出来ることなら一緒にゆっくりしてあげたい。 が、彼女達は群れの長としての立場と責任があり、個人の感情に流されて大局を見誤るわけには行かない。 『『・・・ゆっくりごめんね』』 だから、彼女の背中が寂しそうに見えても、小さな声で謝ることしか出来なかった。 「じゃじゃーん!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちちていってね!」 「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」 群れに加わることを認められなかったおりんは群れの住処から少し離れた場所を探検していた子ども達に元気良く挨拶をしていた。 その満面の笑みからは群れに入れなかったことへの失望などは微塵も感じられる、それどころか何処か晴れ晴れとしていた。 単に馬鹿なのか、それとも妙なポジティブ思考で入れなくてよかったと解釈しているのか。 「ねえ、おちびちゃんたち!おりんりんとゆっくりできるあそびをしようよ!」 「ゆゆっ!ゆっくちできるあそび?」 「「「ゆっきゅちできりゅあしょびしゃんちたいよ!」」」 「じゃあ、おりんについてきてね!」 そう言うと、おりんは子ども達でもついてこられる速さで何処かへ跳ねていった。 疑うことを知らない子ども達は首をかしげながらも、おりんの後をゆっくり追いかけていった。 もっとゆっくりしたいという無邪気で、実にゆっくりらしい動機に従って。 「じゃじゃーん!ここがゆっくりできるばしょだよ!」 「「「ゆゆっ!みちゃことにゃいしゃんはだあれ?」」」 「ゆゆっ!もしかしてにんげんさん?」 おりんについて行った先、そこで子ども達は生まれて始めて人間の男と出会った。 そして、その男やおりんと一緒にとてもゆっくり出来るひとときを過ごした。 子ども達はそれからも友達の子ゆっくりや赤ゆっくりを連れて毎日のようにそこに足を運んだ。 おりんはいつも笑顔で、人間さんはいつもゆっくりしていて、他の子ゆっくり達も満足げに遊んでいた。 少なくとも、同伴した成体ゆっくりの目にはそう映っていたはずだし、ドスまりさにおりんの動向を報告したゆっくり達は「おリンはとってモゆっくリできルこだヨ」と言っていた。 『ぱちゅりー、どうするの?』 『むきゅ?・・・むずかしいわね』 おりんを群れに加えることを拒んだことはきっと正解だったのだろう。 人間と親しくしていると言う報告だけでも、その点に関しては確信が持てた。 この群れが人間とある程度距離を保っていたからこそ繁栄できたことを思えば間違いなくあの判断は正しいと思える。 が、問題はそこではない。 子ども達がほぼ全員懐柔されてしまい、またおりん自身が成体ゆっくりとも仲良くなってしまっている。 この状況こそ、ドスまりさと森の賢者を悩ませる最大の問題だった。 『もうむれにくわえたらどうかな?』 『むきゅ!それはだめよ!にんげんさんのゆっくりをくわえるのはあぶないわ!』 おりんを群れに加えれば群れと人間の間に接点を作ってしまうことになる。 かといって、無理矢理おりんを排除しようとすれば群れからの反発が懸念されるし、下手に傷つけたりすると人間とも衝突しかねない。 だが、このままずるずるとおりんと群れのゆっくり達の接触を許し、事実上群れの一員になってしまっては元も子もない。 『むきゅ?・・・おりんののうりょくをいちどつかわれると・・・どうなるかわからないわ!』 『そうだね!しんだものはかえらない・・・あたりまえのことがこわれるとゆっくりできないよ!』 もし、何かの拍子に子どもが死んでしまったとしよう。それをおりんが生き返らせてしまったらどうなるのか? 流石に一介のゆっくりに過ぎないドスまりさ達にそれを正確に予測することは出来ないが、少なくとも蘇って良かったねなんて楽観的な感想を抱くほど愚かではない。 本当に何が起こるか予測できない。これだけでも群れに加えない理由としては十分すぎる。 しかし、既に群れのゆっくり達と仲良くなってしまったものをまだ何もしていないのに森から排除することは流石に躊躇われた。 こうして結論が出ないまま、群れとおりんの交流はなし崩しに続いていった。 1ヵ月後、3日間に渡って降り続いた雨が止んだ夜、群れの一部のゆっくりが何の前触れもなくドスまりさと森の賢者の寝床を襲撃したことで事態は急変する。 『やめてね!こんなことしてもなんのいみもないよ!』 『むきゅ?・・・このこたち、なにかへんよ!』 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 壊れた玩具のように同じ言葉を繰り返しながらドスまりさやぱちゅりーに噛み付くゆっくり達。 にごった、虚ろな目をした彼女の身体からは何故か死臭が漂っている。 その臭いをかいだドスまりさは当然のようにおりんを疑った。 しかし、ほんの数日前までおりんの下へ行ったゆっくり達からは死臭なんて漂ってこなかった。 それにこの3日間は雨が降っていたため、誰もおりんと接触していないはず。 『じゃあ、どうして・・・?』 『むきゅー・・・わからないわ』 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 出来るだけ慎重に身をよじってゆっくり達に余計な傷をつけないように彼女らを振り落とすドスまりさとぱちゅりー。 死臭が漂っている以上、あまり意味がないように思えるが、心情的な問題と、未知の事態への警戒感が彼女達をそうするように導いていた。 もっとも、その振る舞いが既に死んでいるゆっくり達が何度も何度も立ち上がっては襲い掛かってくると言う結果をもたらしたのだが。 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 『ゆゆっ!?ぱちゅりー、ふえて・・・ぱ、ぱちゅりー!?』 『む、むきゅ・・・』 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」 振り払えど振り払えど、多少壊れても平然と立ち上がり襲いかかってくるゆっくり達。 徐々にその数は増えて行き、気がつけばぱちゅりーを覆い尽くすほどの数に達していた。 その面子はおりんの下に行ったことのあるゆっくりばかりだった。 まだ幾つか疑問は残っている。しかし、この事態の元凶がおりんであることは疑いようがなかった。 ドスまりさはおりんを倒して死体を止めるべく重い腰を上げるが、その時、見計らったかのようにおりんが姿を現した。 「じゃじゃーん!ゆっくりしていってね!」 「やあ、ドスまりさ。お邪魔するよ」 『ゆゆっ!よくものこのことやってきたね!?』 出会い頭の先制攻撃。ドスまりさは何の警告もなしに、群れのゆっくりの死体を巻き込むことも辞さずにドスパークを放った。 先ほどまでは3日間の空白と死後にでも漂うはずの死臭がなかったことなどへの疑問がおりん以外に犯ゆっくりがいる可能性を残していた。 しかし、彼女のほうから姿を現し、この光景を見ても平然としている以上、そんな可能性は限りなくゼロに等しい。 それに犯ゆっくりがおりんだと断定できたということは、ドスまりさやぱちゅりーを襲うゆっくりが死んでいることも断定できた。 それゆえに躊躇うことなく先制攻撃を仕掛けることが出来たのだが・・・ 「おりん、きゃっつうぉーく!」 「ゆっくりりかいしたよ、おにーさん!」 問答無用の必殺の一撃はいとも容易く回避されてしまった。 男は思いっきり横に跳躍し、おりんは不思議な力で飛び上がり、ドスまりさの頭の上に着地した。 直後、ドスまりさは起き上がろうとしている男めがけて突進を仕掛ける。 『ゆゆっ!?』 「「「「「「「・・・ユっくりしテいってネ・・・」」」」」」」 『・・・ユっくりしテいってネ・・・』 しかし、つがいの森の賢者ぱちゅりーによって阻まれてしまった。 『どうしてじゃまするの?』・・・いったん距離を取ったドスまりさはそう彼女を問い詰めようと口を開く。 が、ぱちゅりーの皮が破れ、目玉が飛び出し、中身が漏れ出している悲惨な姿を見た瞬間に何も言えなくなってしまった。 ぱちゅりーは既に死んでいて、今ドスまりさの頭上で笑みを浮かべているおりんの支配下に置かれてしまっていた。 『ぱ、ぱちゅ・・・りぃ・・・!?』 「おりん、かえんのしゃりんだ」 「ゆっくりりかいしたよ!みんな、どすをおさえつけていてね!」 ぱちゅりーと無数のゆっくりのの死体に動きを封じられたドスまりさは、おりんの炎を纏った体当たりを喰らい、致命傷を負った。 『おにーさん・・・さいごに、ひとつおしえてほしいことがあるよ・・・』 「なんだ?」 『みんなはいつ・・・ころされちゃったの?』 もはや虫の息で、ドスパークはおろか、身動き一つ取ることの出来ないドスまりさ。 消え行く意識の中で、唯一つ最後まで消えることのなかった疑問の答えを男に尋ねた。 「一番最初に接触した子ゆっくりどもは1ヶ月以上前だな」 『でも、なんのにおいもしなかったよ?』 「そりゃそうだ、防腐処理したからな」 そう言いながら、男はぱちゅりーの巨体を手際よく修復していく。 食いちぎられて破れた場所に適当なゆっくりの皮をあてがって小麦粉と針で縫い合わせる。 漏れ出した餡子は出来るだけ不純物を取り除いてから、良く分からない薬品と混ぜ合わせて体内に戻す。 それから、餡子を引っ張り出しては薬品と混ぜ合わせる作業を繰り返して、それが終わると皮や目玉を再び丁寧に修復した。 『にんげんさんは・・・しんだこもなおすんだね・・・』 「エンバーミングって言ってな、疫病予防とか宗教上の理由で死体を腐りにくくするんだよ」 『だからにおいがしなかったんだね・・・』 「そういう事だな。優れた技術と資金と環境を持つものだと定期的にこれを繰り返すことで何十年も死体を綺麗なまま保存できる」 謎が解けたドスまりさは目を瞑り、静かに息を引き取った。 勿論、彼女の死体も男の手によって修復され、おりんの支配下に置かれることになる。 半ば強引に意識をこの世界に繋ぎとめられ、しかし身体の自由が一切きかないという、今まで想像したことさえもない苦しみ。 その苦痛の中でドスまりさは群れの仲間にこんな苦しみを味あわせていることを悔やみ続けた。 こうしておりんはゆっくりの森の頂点に君臨する存在になった。 そんな地位を欲したのも、屍の兵隊を量産したのも全ては愛するまりさのため。 かつて中堅のゆラディエーターとして闘技場で戦い続けていたあの頃、自分に希望をくれたまりさのため。 流石に死体の持ち込みは出来ない闘技場ではおりんはどんなに頑張ってもCクラス止まりだった。 当時、Cクラスにはきめぇ丸という桁外れの実力者が居座っていたために閉塞感が漂っていた。 今までの努力を圧倒的な力で否定し、弱いゆっくり達を勝負の美名の下になぶり殺しにする黒い翼の悪魔。 その怪物を倒してのけたのが一匹の、後にゲスであることが判明するまりさだった。 その勇姿を見たおりんはまりさに一目惚れしてしまった。 いや、最初はただの憧れだったのかもしれない。 しかし、そのまりさがAランクの戦いでゆっくりさとりに嫁にするという前代未聞の方法で勝ってしまった時に憧れは恋慕に変わった。 心を読む能力のせいでゆっくりから忌み嫌われるゆっくりさとり。 あろうことか、まりさはそのさとりを自分のパートナーにしてしまったのだ。 そして、おりんは確かな観察眼でまりさが何故さとりを気に入ったのかを見抜いていた。 強いから・・・ただそれだけのことだろう、と。 また、その事実はまりさが多様な強さを認めていることを如実に現していた。 普通のゆっくりなら「こころをよむなんてずるくてゆっくりできないよ!」と言うところだろう。 だが、あのまりさはその能力も含めてさとりの強さとして評価していた。 なら、おりんがさとりより強いことを証明できれば、さとりとまりさを倒すことが出来ればおりんとゆっくりしてくれるんじゃないだろうか? そう思った彼女は飼い主のゆっくりエンバーミングの専門家でもあった男性と一緒に街を飛び出し、自分達なりの強さを求める旅に出た。 この森での出来事はその成果の表れだと言えるだろう。 「ねえ、おにーさん!まりさはおりんのことすきになってくれるかな?」 「当たり前だろ?噂を聞きつけてやってくるからその時にまりさに勝てばきっと・・・な?」 男の頼もしい言葉を聞いたおりんは顔をほころばせ、嬉しそうに飛び跳ねる。 そんなおりんの姿を見た男もまた嬉しそうにしている。 そのゆっくりした様子は1人と1匹の周りで繰る広げられる阿鼻叫喚とはあまりに不釣合いだった。 「も゛うやだ!ずっぎぢぢだぐないよ゛!」 「くひっ・・・うふふ、うふ・・・」 「おお、じごくじごく・・・」 「「「ユっくりシてイってネ・・・」」」 「おね゛がいだよ゛!でいうのあがぢゃんをゆっぐぢざせであげでね゛!?」 「えびりゃのあがぢゃんーーーー!?」 「う゛ぅぅぅううぅ・・・ゆっぐぢぢね!」 「ぢぬ゛ぅ・・・ごでいじょうずっぎぢぢだらぢんぢゃううううう!?」 「「「ユっくりシてイってネ・・・」」」 幸せそうなおりんと男の周囲には我が子や、あるいはその死体を盾に取られて好きでもない相手とのすっきりを強制されるゆっくり達の姿があった。 生まれた瞬間に地獄絵図を目の当たりにして恐慌状態に陥る赤ゆっくりの姿があった。 あまりの惨状と恐怖に耐え切れず壊れてしまったゆっくりの、ゆっくりだった何かの姿があった。 腐り、餡子を露出させた酷い姿になってもなお動き続けることを強制される我が子の悲惨な運命に涙する親ゆっくりの姿があった。 ドスの死体を実用可能な状態に保つためだけに子どもを産まされる親ゆっくりの絶望があった 外に目を向ければ死体に監視されながら食料を集めるゆっくりや、いつか死体に加工されるときのためだけに修行に励む子ども達の姿があった。 死体は食料の補給など必要ない。それゆえ一匹辺りの分け前は以前とは比較にならないほど多くなった。 そして、以前よりもずっと早く子ども達が成体サイズに達するようになった。しかし、生きる喜びがなくなった。 ゆっくり達の悲鳴と嗚咽が止むことなく響き渡る森の中、そこにはゆっくり達の地獄があった。 その地獄は群れの外のゆっくりや、事態の解決に乗り出した血気盛んなゆラディエーターまでも巻き込んで今もゆっくりと広がっている。 1人と1匹のたゆまぬ努力と数多のゆっくりの苦しみが実を結んで、いつの頃からかこの森は「屍ゆっくりの森」と呼ばれるようになっていた。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ くそっ・・・レポートが終らん!? それはさて置き、レーニンの死体は今も綺麗な状態で展示されているそうです。 エンバーミングまじぱねぇ! byゆっくりボールマン
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/21197.html
登録日:2010/08/01(日) 16 59 07 更新日:2021/03/31 Wed 18 26 28 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 ファン倶楽部 七星 北斗七星 大群 屍 屍姫 性 ←さが せいなんて読むなよ! 擬似家族 病のように現れ 霧のように殺す群れ 我等こそが「七星」 屍姫に登場する屍の群れ。 七星北斗を頂点にそれに集った屍の集団。七名の極めて狂暴で強力な屍で構成されていて、全員が体の一部に北斗七星の徴を刻んでいる。 一年半前に星村家を滅ぼし、星村マキナの全てを奪った仇敵。 屍の群れの中でも突出した存在。殺戮だけを目的としている風でもなく、しかし明確な結果を求めて動いているわけでもない。「病のように現れ殺し、霧のように消える群れ」と言われている。 屍に信奉者を持つ数少ない群れの一つで、その強い妄執に引き寄せられ多くの屍が群れに入りたがる。 「七星」の存在理由は北斗の広告。未練を超えた「性」を持つ屍の頂点、北斗という理想を知らしめる為に存在しており、「七星」とは北斗という至高の存在を知らしめる為に周りを明滅する星(あかり)にして北斗を標として集う屍。北斗を見い出した狭間が、北斗の宿縁の相手を見つける為に集めた屍の群れである。 北斗を除く全員が北斗の性に魅せられて引き寄せられており、自らの命よりも欲を優先させる性と北斗への執着心を持っている。 「七星」の加入条件として己の「性」に生きることと「性」に死ぬことまでを含んでいる。また流儀には個々の性はいついかなる時も全てにおいて優先される、と言うものもある。が、決して刹那的な思考ではなく、知と理も兼ね備えてある。 現在は大群に組み込まれている。 【メンバー】 第七星【北斗(ホクト)】 CV藤村知可(テレビアニメ)、高垣彩陽(ドラマCD) 「七星」の頂点。みんなのアイドル。巫女装束の少女の姿をしている。「七星」最強にしてヤンデレ。おにぎりをダメにされると半泣きになる。 徴は左頬。 第六星【頭屋(トーヤ)】 CV諸星すみれ 首から上が五つの風船になっており、その一つに北斗七星の星の部分を目と口に変えて描かれて顔になっている。飄々とした態度で掴み所がない。 徴は顔。 アニメだと幼女。原作でも幼女。 第五星【重無(エナ)】 CV新野美知 眼鏡をかけた男の娘。自称「天才美少女口寄せ師」。独自の美意識を持っている。巨大な鈴と生者の怨霊(生魑魅)を操る。またそれを応用して「ヒトガタ」と呼ばれるものを作り、忌土地の仕上げに使用した。 徴は腹部。薔薇をあしらってある。 第四星【雷輪(イズワ)】 フード付きのコートを着た男。「ひそひそ様」という都市伝説を作り人間を虐殺していった。 一番最初に登場した「七星」であり、最初に殺された。影が薄く、七巻のおまけ漫画でネタにされた。 更にアニメではクビになり、代わりに【湖惑(コワク)】(CV早志勇紀)が登場している。 徴は舌。 第三星【忌逆(イサカ)】 CV土師孝也 コートを着た、初老の男。屍として破格の「陣地」を作製出来る。北斗を永遠の刺激として崇めている。 徴は左の掌。 第二星【歪質(ヒズチ)】 CV鈴木達央 モミアゲを編み込んだ青年。気性が荒く喧嘩っ早い。体の一部を獣の腕にすることが出来、完全体になると爬虫類と鯨を足したような頭に獣のような手足を着けた姿になる。 徴は人間時は不明。獣の姿の時には額。 第一星【狭間(ハザマ)】 CV大川透(テレビアニメ)、石塚運昇(ドラマCD) 「七星」の頭目にして創始者。口髭を生やした和服の男。蟲の屍を操る。人の屍ではなく蟲の屍の集合体。「七星」の行動指針は基本的に彼が決めており、他の「七星」もそれに従っている。北斗の保護者的立場。最近娘がどこの馬の骨と分からヤツに熱上げている事にご立腹中。 徴は顎から首にかけてある。 病のように現れ追記し 霧のように修正する群れ 我等こそが「wiki籠り」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 狭間さん 最早完全にお父さん -- 松永さん (2013-11-16 00 58 18) 狭間に関しては北斗が人間な時から入れ込んでるからな~ -- 名無しさん (2014-06-30 19 20 36) 本当に家族だったね。 頭屋と狭間の絡みとか最後まで北斗に拘る所とか敵ながら凄く魅力的に描かれてた。 個人的にはダイ大のハドラー親衛隊並に好きな敵軍団だった。 -- 名無しさん (2014-12-15 15 08 48) 4星が雑魚だったから噛ませ軍団かと思ったら他のメンバーはガッツリ活躍してたな、城作るおじいさんはちょっと微妙だったけど派手だったし -- 名無しさん (2016-11-24 13 58 10) 名前 コメント