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No.3065 ヒエロニュムス・フォン・ミュンヒハウゼン 前のサーヴァント:四狗スブタイ 次のサーヴァント:源頼政(鵺(おかん)) データ 登場歴 データ ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓ ≪クラス≫:ライダー ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┓ 【真名】:ヒエロニュムス・フォン・ミュンヒハウゼン 【属性】:秩序・中庸 ┣━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━┻━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┓ 【筋力】:A 【耐久】:A 【敏捷】:A 【魔力】:A 【幸運】:A 【宝具】:A- ┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫ ////メ///,>.、 _ //////////>、//,>..、_, ヾ、//>...、 ノ///////////////゙77777} `</////≧ミx///////////////////,j `<'" )//≧x//////////////,'リ , ' //ァ'  ̄`Y/≧x//////////' , ,. >'´ . .///<///≧三三リ! / / ' . /. .` <//`ーミ三三{.、___ ,. ´ ∠斗ミ,. .γ⌒ヽ マ////////////////,フ -- ミ ,' ____j' 乂__ノ. .`</////>= '"´ ` < j '" Y .○. ! \ ノ ,...斗j_,ノ. ,' ,>≦77777≧f´ / ./. / ////////'//,ヘ≧-----彡' / / ///////j//'. . . . . . `メ//∧-彡'.` ー- ___ -‐ ´ ._ //////ソ/f. . . . . . . . . . . }//∧////,メ |////{≧s..。_ > '/ ,フ` メ.、 //>'////|. . . . . . . . j. . ハ///}///////\´ ̄V!メ.、`ヽ ≧' / / / ヾ ,-----ミ、 //{//!{///!. @., イ. . ハ////!/` <////∧ V´ ヽ ヽア ,' / ,. ' ,ィア'Yj'`ヽ///,j //{//!{///!ー. ´. . . . {'///>'//////` <,/ヽ ! ヽ_!、 ! {__,/(_,.ィ´、> ..、/i /,人/i {//. . . . ,ィ. . .{/>'/////////////`<, ' , ∨¨`ー' ヾ____`< >< > ....、 //////'. . . ィ´//>'"////////////////////ハ ,〉、 {///ヽ. . ` < >< > ...、 /////'。s≦´//////////////////////////ハ、 //ハ..、 j/////!. . . . . . V`< >< AA:球体紳士(2chオリジナル) ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【クラススキル】 ◆対魔力:D 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。 ◆騎乗:C 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、 野獣ランクの獣は乗りこなせない。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【保有スキル】 ◆嘘から出た真実:C++ 語り手としての話術の才能が、物語としての真実となったスキル。 一度口に出せば、彼の語る作り話は全て存在し得るモノとなってしまう。 例え滅茶苦茶で不可能な理論だとしても、彼は出来ると言ってしまえば成し遂げてしまうのだ。 ◆無辜の英雄:A+++ 多くの人間に語り継がれ、時代とともに多くの英雄譚を取り込んだ作られた英雄。 風評によって語られ、望まれ、作り上げられた偽りの英雄は、本物の英雄にすら届きえる。 しかし、それでも彼は“偽りの英雄”である。 それを暴かれてしまえば、英雄としての彼は脆く消え去ってしまう。 ◆彼方への想い:E- 憧れ、恋い焦がれ、だが届くことは決してなかった彼方の夢―――。 この儚き夢(イマ)を守ることこそが、彼の戦いを最後まで支える原動力である ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ____ (巛ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡)ミ彡ミ彡) / \ ,,从. / ̄ ̄\..彡ミ彡)ミ彡ミ彡ミ彡) / ─\ 人./ _ノ \ .彡ミ彡)ミ彡彡) / (●) \ ,,..、;; ~''"゙゙ | ( ●)(●) ..ミ彡ミ彡)ミ彡) | (__ノ)イ_,,..、;; ~- ''"゙⌒゙ .| (__人__)...ヽ 彡" ./ ̄ ̄.三 \ ____| ゙ ゙ | ` ⌒´ノ .ミ彡)彡'" ./ ヽ. 三 ....../ く \/` / ̄ ̄`丶、 ;;,_ | },,ノ彡~''" ....(◎)(◎) u 三 / ヽ , -―'-=、 \ `゙"''~-、,, .....ヽ } .| |. U 三 /  ̄ 三 \ ヽ ."⌒.,ノ.ヽ、.,__ __ノヽ .|__`_ U ......三 .// .,. -─- 、 ..\/^\/ハ /_\ ヽ ノ . / `ー-、__ .{r┬-| 三 |./ \.._ ヽ10/ Vl| .,. -‐'´. . |! . ヽヽ、ヾ__ ー | ...  ̄``ー-、 .{ ┴-' .....ノ/⌒ ̄ ̄' ̄ ̄). / `、.‐ハ 6 |i/..r'´. . . . .. . ∧ . . . (__) | . . . ... r \ ヽ 三三三三 ◯ ○ l .ニー| |' _ . . . . . l |! . ハ |;;;; . . . >.... .| .. 、 ヽ (⌒ヽ、 / ヽ 三 ..l l .ニ= !/ /)__ノn)).___ヾ . . . . .| ∨ ┴…'´ー‐-、| . . .. \ | . . |、 .. .\ ヽ /\ 三 、 /..l | 〈 , - ―'_ノ′. . . . . ``ー-、L.. __〉.'" \ . . . . . .ヽ . ./ . . / \ .....\__/ \ 三 .\ / / / rノー/ ̄./-、 . . ... __ . Y´ _,. =ミ . \_;;;;;V;;;/ヽ l / ノ 三 .__` ー- -‐´___./ ノノ 〈 -`二l. ノ|! _}‐‐ . . .. ,r‐'´ ノ. . lr'´ " ;;;| . .`ー'⌒ | | / /\ 三 ./^\ ̄厂/_,/(二 ノ `¬ァ┘./⌒| . _;. -'´... / . l! . ;;;;;| . . ', ∧ { ────ヘ.. ./,二 〉 ー「广T´_ `\ ( /`ヾ| レ'ヽ . . . / . . . . . . . . .|! . . ... rぅ... .;;;;; ∧ . . . ヽ. | \ \____ソ | / /^.,..¨ ̄ ̄¨丶.. /-――' . .| / /r─  ̄〉. . . . . . .人;;;;;;;;;,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,;;;;;/ ∧ . . . ...... ヾ \ ヽ{: {/ \,,.,,,,.,,,,,.,,,,.,,.,,.. . . / /. . /__ノィ' ̄〉‐一'´___  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄lヾ、 / \_ . . l| ヽ ヽ./ \、 ヽ, ミ /[|_|ュ__ ─ i - ソ /-|,-‐-、|] ( ●) / ミ |__l {◎}l|. ´ / ミ ミ 《===》⌒ / __f` ト、 ≧、 l| __ |l` fゞ'/ 、‐-く ! ヽ |丶`‐| [r‐‐ュ]|'´ ヽ`ゞ´/ / | / l ヽ ,r〉/.皿 l.| ト´、/メ _ |_/ | r‐,Υ⌒_〈|ノ⌒ヽ_! | _ ニ  ̄ ,|____ rヾ、 ,〉 ','´-ヽ{ r |i _ - / !ヽ、 _, -`=ー-- 、 / __ l `y‐ゝ( )y'`´ r/lヽ -ー- / ! ヽ、 `ヽ、 rゝ‐ /l ヽ、`_´ _.ノ l l`ヽ、 ,〈 ゙,' \ \ { ' | l T` ´_ / | ! / ヽヽ \ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【宝具】 ◆『ほら吹き男爵の冒険譚(アーヴェントイアー・デス・フライヘア・フォン・ミュンヒハウゼン)』 ランク:A- 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:- ライダーの語る奇想天外な冒険譚の数々。 その物語の中で欠かせない彼の4人の部下と愛馬を召喚する宝具。 ”快速男(あしじまん)のバートホールド” ”鉄砲名人(てっぽうじまん)のアドルファス” ”千里耳男(みみじまん)で風吹き男のグスタヴァス” ”怪力男(かいりきじまん)のアルブレヒト” そして”愛馬のブケパロス” それぞれ単体で召喚もでき、ブケパロス以外の4人はサーヴァント(従者)のクラスで召喚される。 彼ら4人の従者の正体はライダー/ミュンヒハウゼンの深層心理から作り出された彼自身のそれぞれの理想像。 ライダーの精神による物が大きく、それが大きく崩れ去ってしまうと彼らは霊基を保てなくなる。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【来歴】 ほら吹き男爵の名で知られるミュンヒハウゼン男爵。 実際は18世紀のドイツに実在していた貴族の一人である。 若いころロシアの軍に所属、オスマン帝国との戦争にも参加している経歴を持つ。 彼は英雄願望が強かった 様々な物語で語られる英雄たちの業績。 望むものなら自分もその一人になりたかった。 しかし結果は戦争から運よく生き残りはしたものの決してよい戦果は挙げられずそのまま軍を退役。 ミュンヒハウゼン家の後を継ぐこととなった。 それから数十年と言う時がすぎ、彼の領に住む子供たちが彼の下へとやってきて彼の話をしてほしいと聞いてきた。 彼は老後の娯楽として自身を主人公とした嘘真っ赤で奇想天外な冒険譚を子供達に聞かせていった。 大人たちは遂に領主はボケたかと鼻で笑ったが、子供たちにとって見ればその物語は魅力的であり そしてそれを語るミュンヒハウゼン男爵は憧れの的となっていった。 そして彼も老後の楽しみとして語っていた物語に引き込まれていき、その物語の自分に憧れを抱くと同時に今の何もない自分に劣等感を抱いていった。 その後彼の物語は誰かの手によって一冊の本として作られていく。 1797年 彼は貴族としてはごく平凡な人生を送りこの世を去った・・・・・。憧れの自分になりたいという未練をこの世に残して。 死後彼の物語は様々な民話から繋がっていき、その冒険譚は数多くの英雄達の物語にも匹敵するほどの物となっていく。 そしてひょんなことから彼の願いは叶うこととなる・・・。 【能力】 ◆嘘から出た真実により自分有利のフィールドを展開することが出来る。 ステータス上は全てAランク相当となっているがこれは◆無辜の英雄によるもの。 彼の真名が明かされた瞬間、宝具・スキルが全て使用不可能となってしまう。 【性格】 一人称は『吾輩』 誇り高く英雄である自分に絶対的な自信を持ち 自分の真名を相手に名乗ることも厭わない。 派手好きで尊大、自分を大きく見せるような立ち振る舞いには思わず苦笑いがこぼれる。 だがこれは彼本来の性格では無い。 本来の一人称は『私』 本来のフリードリヒ・ヒエロニュムスは英雄願望の強い小心者の男である。ただし仕事には誠実であった。 英雄になりたくて戦場に出た者の何の戦果も得られず帰ったことに強いコンプレックスを持って居る。 その為現在ライダーのサーヴァントとして、ミュンヒハウゼンという英雄像を必死で守ろうと執着している。 【聖杯への願い】 ミュンヒハウゼンの願いそれは【憧れの自分になること】。 しかしそれは自身がサーヴァントとして召喚されることにより叶ってはいた。 だがそれはあくまで一時的なもの もし聖杯戦争が終われば彼の夢は終わり、普段の自分に戻る。 それは彼にとって耐えがたい苦痛でもある 故に彼は執着する【この夢が永遠に続くこと】を。 【その他コメント】 かつてパスタイムさんのところで使用されたサーヴァントのリメイク。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 登場歴 【二次創作聖杯戦争】Fate Pastime Game【募集鯖】 16代目(第一次四大家戦争) 1( 473~) 2 3 4 (リメイク前のデータが登場している)
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《理想のメイド!? 新田由美》 プログレスカード レベル3/青/ATK7000/DEF8000/STK1 【LINK(4)-ΩΣ】ATK+6000。 1枚引く。 side α/side βで登場のレベル3・青のプログレスカード。 収録 side α/side β 1-004 ブリリアントパック Vol.1 1-004
https://w.atwiki.jp/jsda/pages/43.html
ジェットリー尾崎はこう考える基本方針例外:「人間以外の生物の権利」が「人間の権利」よりも優先される条件 前提となる考え方 動物の区別ごとの理想の関係食用にする動物(人間の生存目的,娯楽目的)a.に該当する例 b.に該当する例 殺されないけど成果物を利用される動物 愛玩動物(人間の娯楽目的) 使役動物(人間の娯楽目的) 使役動物(人間の福祉目的) 使役動物(人間の労働補助目的) 食用以外に殺す動物(人間の嗜好) 食用以外に殺す動物(人間の福祉,科学教育) 害獣/害虫として駆除される動物(人間の生存目的) 事故で死ぬ動物
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使用人の朝は早い。布団の外へ差し出した手に触れる、外気のあまりの冷たさに驚く。ウンディーネデーカンの月も半ばに差し掛かったというのに、冬の寒さは一向に衰えを知らない。 ガイは意を決しベッドから滑り降りると顔を洗う為、洗面所へ向かった。 今日は買出しの仕事がある。使用人の仕事も四年ともなれば大分板について来たもので、様々な仕事がガイにも回ってくるようになった。 厨房へ向かい、朝食を済ませると中庭へ向かう。先に起きていたらしい同郷の庭師がガイに気付いた。挨拶にガイも軽く手を上げて返す。 「お早いですな、ガイラルディア様」花壇に手を差し込んだままペールが言った。周囲に人の目がない事を確認してから、ガイは老人に近付く。 「ルーク様でしたら朝の礼拝かと。買出しついでにお迎えに行って差し上げるくらいで丁度良いでしょう」 口元に浮かぶ微笑は穏やかですらあるというのに、言葉に含まれる意味合いを思うと酷薄さすら感じさせる。そんな老人の様子に、ガイは自然と笑みを溢した。この屋敷に来てからというものの、そんな風に笑いあえるのはこの老人をおいて他にいなかった。 それから他愛のない言葉を交わしあい、老人の昔話が本格的に長くなる前にガイは買出しに向かった。 エントランスではいつものように、使用人達が朝の清掃をしていた。挨拶をすれば返されて、それは故郷にいた頃と何ら変りのない生活のように思えた。けれどそれは酷く遠い、酷く残酷な日常でしかなかった。立ち並ぶ柱の中央に飾られた宝剣に目配せをし、ガイは扉をくぐった。気をつけてね、と日頃から仲の良いメイドが声を掛けてきた。返事をしようかとも迷ったが、結局上手く笑顔を作れる自信がなかったので、聞こえなかったふりをした。 朝の礼拝を終えた人々が教会から出てくるのが見えた。小さな「主殿」は、奥の礼拝堂を貸し切っている筈なので、もう暫らくは掛かるだろう。これなら一度屋敷に荷物を置いてから、再度出迎えに来るくらいの余裕はありそうだ、とガイは思った。 今朝早くに定期連絡線で、ダアトを経由して来たマルクトの物資が仕入れられた所為か、いつものこの時間に比べると集合商店の中はかなりの人込みになっていた。その間をすり抜けるようにして、器用にガイは覚書きに記された品物を購入していく。両手に合わせて三つ袋を抱えて、残りの荷物は後で屋敷の方へ届けてもらえるよう算段をつける事に成功した。両手に余る程の荷物だったが、ガイはそれを危なげなく抱えて歩く。見張りの兵士が気をつかって扉を開けてくれた。それにガイは礼を言うと会釈し、そのまま集合商店を後にした。 屋敷前へ直通の昇降機に向かう途中、林檎を落とした。その拍子にずり落ちそうになる紙袋を慌てて抱え直したところで、通り掛かりの男が石畳に転がった林檎を拾い上げた。男は十代後半ほどに見えたが、大柄な体躯とローレライの教団服とが、随分と落ち着いた印象を与え実年齢を曖昧にしている。 「あ、あの……」と口早にガイは礼を言う。「すみません、有難うございます」 男は少し驚いたような顔をして、それからすぐに微笑んだ。そんな男の笑顔に理由のない懐かしさを感じ、ガイは思わず俯く。 「家のお使いか?偉いな」 男は林檎を紙袋へ戻しながら言った。 「あ、いえ!俺はファブレ家の使用人で……あ」 頭を振った拍子にまたしても林檎が落ちた。足元を紅い玉が転がって行く様を、ガイも男も言葉を無くして目で追った。 居た堪れなさに閉口していると、そんなガイの様子に堪り兼ねたかの様に男が笑い出した。そしてそれから再び林檎を拾い上げ、袋の中へ戻すとそのままガイの腕から袋を二つ抜き取った。 「手伝おう」 「『神託の盾(オラクル)』の騎士様に、そんな事はさせられません!俺が怒られてしまいます」 ガイは突然軽くなった両腕と、男の唐突な行動に困惑した。必死に紙袋を返してもらおうと試みるが、男はただ笑うばかりだ。こんな事なら無茶をせずに、二袋に留めておけば良かったろうか、と数分前の自身をガイは呪った。 「久しぶりに笑えた気がした。これはほんの礼だ。気に病む事はない」 そう言って笑う男の顔がどうしようもなく淋しげで、それでいて何処か過去を懐かしむようであったからガイはそれ以上何も言えなくなる。 自分自身とこの男との印象が重なった所為かも知れない。遠い昔、まだ自分が陰謀も裏切りも知らずただ幸せであった頃、兄の様に、影の様に付き従っていてくれた使用人に、この男の笑顔が何処か似ている気がしたからかも知れない。 昇降機に向かって歩き出す男の後を追う。屋敷の前で荷物を返され、男と別れてからガイは名前を聞くのを忘れたな、と思った。 屋敷に戻ってすぐに、エントランスでペールに出くわした。土に汚れた軍手もそのままに、ガイを待っていたようだ。 午後からの客人を公爵家総出で出迎えなくてはならないらしい。紙袋を受け取ると、ペールは教会へ行くよう促す。ガイは後から届く荷物があることだけを伝えると、今来た道を引き返した。 階段を下りてすぐに、教会の前に目的の人物を見つけた。 公爵子息、ルーク・フォン・ファブレは深緋の髪を肩口に掛かる程度まで伸ばしている。何度か公爵夫人に髪を切るよう勧められていたが、結局そのままで来ているようだ。特に手入れをしているといった話を聞いた事はない。長さも疎らで前髪も目元に掛かっていたが、不思議と鬱陶しさは感じさせられない。 ガイの姿を見止めると、彼は「ガイ!」と嬉しそうに顔を綻ばせ駆け寄って来た。年はガイより四つ下だったと記憶している。並ぶと、頭一つ分と少し低いところでルークの赤毛が揺れた。 「悪い悪い、ちょっと遅れたか」 「平気。ガイ忙しいのに、いつもごめんね」 一転して、ルークの表情が少し曇る。またこれか、とガイは思いながら苦笑いを浮かべる。 貴族だろうと使用人だろうと、彼は心をくだき過ぎる。そんなルークを見る度に、ガイは少しの罪悪感と、そこから来る苛立ちを覚えた。 「ばーか、気にすんなって。あんま暇な使用人ってのも、格好がつかねぇからな」 「それに朝は免除されてるし」と付け加える。 「とはいえ、目と鼻の先の教会を行き来するのにわざわざ送り迎えを付けて、その上教会の内院貸し切るっていうのも結構、過保護な話だと思うけどね、実際」 貴族の子息らしからぬ気安さで、肩を竦めルークが言う。言いながら、それでも顔に浮かぶのは屈託のない年相応の笑みだった。 「それはまぁ、なぁ」 曖昧に笑みを浮かべて、ガイは適当な相槌を打った。 ルークの言うことはいつも正しい気がした。発せられる言葉の端々に、幼いながらも王族としての知性と教養とが見え隠れした。そこには誠実さこそあれど嫌味はなく、育ちの良さを感じさせる。人の上に立つべく育てられた、理想像ともいうべき姿なのだろう。そしてガイは、それを少しの羨望と、昏い情念の篭った目で見つめる。 「そう云えばさ、今日面白いことに気付いたんだ」 「また、か」 ルークの考えは面白い。自分より年下だというのに、時折真理をつくような難しいことも言う。言葉は年相応に拙いが、聡い子供だった。 「うん。あのね……」 「まあ、お前の言うことは難しくて、俺にはよく解かんねぇんだけどな」 言い掛けたルークの言葉をガイは遮った。ガイをそうさせたのは、煩わしさというより嫉妬だった。 遠い昔に、故郷と共に死んでしまった己の影を、彼の中に見つける度ガイは堪らなく辛い気持ちになる。もしかしたら今も自分は、こうして何の憂いも陰りもなく笑っていられたのかも知れない。何の恨みも憎しみも知らず、世界を美しいものだと捉えられていたのかも知れない。ガイがルークに抱く感情は、いつだって憐憫を孕んだ憎悪だった。 「そっか」 大して気にした風でもなくルークはそう言って笑った。ガイがこうしてルークの言葉を遮るのは初めてではなかったからかも知れない。 そして理不尽にも、ガイはそんなルークの態度に苛つく。言い掛けた言葉を飲み込み、自身を抑制する凡そ子供らしからぬ態度を、ガイは不快に思う。まるでガイのつまらぬ嘘や虚勢などお見通しなのだと、嘲られているように感じられるからだ。 遠くで教会の鐘が鳴る。今日も良い天気だ。 昼食を終え暫らく経った頃、屋敷の中が少し騒がしくなった。夫人に手をひかれながら、不満そうなルークが応接室に消えて十五分後のことだった。例の客人が来たのだろう、と思ったがガイには特に興味の惹かれる事ではなかった。一度だけ中庭からエントランスの窓の方に目を向け、またすぐに手元に戻す。今のガイには上流階級の社交よりも、花壇の害虫駆除の方が重大な任務だった。 一通りの作業を終えると、後は薬を撒くだけですから、と庭師に言い渡された。土いじりは昔から嫌いではなかったので、多少の名残惜しさを感じながらガイは中庭を後にした。 手を漱ぎながら、空いた時間をどう潰したものか、と考える。結局やる事もないので、ガイはエントランスへ向かった。怪しまれるかとも思ったがこの屋敷で心安らぐ場所など、そう多くはない。 飾られた宝剣を仰ぎ見た。金色の柄にはホド独特の文様が細工され、隼をあしらっている。真っ直ぐに伸びた刀身は細身で、蒼く輝いている中に、古代イスパニア文字で書かれた預言が薄く浮かび上がっている。 その剣の名を、心の中で唱えた。優しい呪文のように、それはガイの胸に広がる。決心を新たに迷いを拭う。それでも、矢張りガイはまた揺れる。その繰り返しだ。 応接室の扉が開き、教団服に身を包んだ男が数人出て来た。慌ててガイは柱から離れ部屋の隅に寄る。頭を下げ、視線は床に落とす。どうやら話は長く続くようで、合間に休憩が入ったらしい。公爵の案内で、そのまま中庭へ向かったようだ。一息ついて、それから改めて顔を上げる。そしてまだ部屋の中に人が残っている事に気付き慌てて再度頭を下げようとして、とどまった。 エントランスの丁度中央に、その柱はある。白亜の柱に飾られた宝剣は、かつてホドの地を収めていた領主の首級と共にファブレ侯爵が持ち帰ったものだ。それを、一人の男が見上げていた。 ローレライの教団服を着たその男は、つい数時間前に会ったあの男だった。その横顔から、感情は読み取れない。けれどガイはそれに一つの確信を抱く。無感動な眼差しは、いつも自分が剣に向けるものと同じだったからだ。 男が、ガイに気付いた。すぐに今朝方会った子供なのだと思い当たったようで、柔らかな笑みを浮かべてこちらに近付いてきた。 「また会ったな」 言って笑う男に、ガイは何と声を掛けて良いのか分からなかった。握り締めた拳が、汗で滑る。目の奥が熱い。反射的に俯くガイを、男は怪訝そうに見つめている。しゃがみ込んで、顔を覗きこまれる。 「どうした?」と訊かれ、頭に手を乗せられる。堪らなくなって、ガイの目から涙が溢れる。涙と一緒に、言葉も溢れた。 「ヴァン……!」 男の顔から笑みが引いた。驚きに目が見開かれて、彼は言葉を失う。そんな彼とは対象にガイは嗚咽と共に、今度こそ明確な意志を以ってを吐き出した。 「ヴァン、デス……デルカ……ッ」 こんなところを人に見られたらどう言い訳をして良いか判らないというのに、ガイは感情を抑えられなかった。六年、その歳月全てが台無しになるかも知れない。それでも、とガイは男の名を呼んだ。呼んで、ただ泣きじゃくった。男は言葉を失ったまま、それでもガイを抱きしめた。 「ガイラルディア様!」やっと紡がれた男の言葉は震えていた。ガイはただ泣きながら頷いた。 </>
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087 溢れ出る気持ちは誰のもの? ◆BEQBTq4Ltk ――もしも、またみんなと一緒に笑えたら。 それはとっても嬉しいなって―― 島村卯月が目を覚ましたのは放送よりも前だった。 彼女は運が良い。寝過ごしては大事な情報が手に入らないから。 「……ひっ」 寝起きの彼女が真っ先に取った行動は歯磨きでも洗顔でもない。 普通の少女に似合わない挙動で腕を首に回した。 首輪の金属がひんやりと掌に伝わる中、彼女は何回も手を擦っていた。 「ある……ある……」 触っても物足りない。 右拳を握り、首輪を含め自分の首を島村卯月は殴り始めた。 「ひぐっ……ある……」 衝撃により呼吸が出来なくなる時もあるが、彼女は構わず殴り続ける。 メトロノームのように何度も一定に、機械のように何度も何度も何度も……。 「ある……あ、る……」 やがて疲れたのか、拳を解きだらしなくベッドに右腕を降ろす。 疲労したのは右腕だけではなく、彼女の瞳は黒く濁っていた。 睡眠を取った人間の瞳とは思えないそれは、数時間前の悲劇が焼き付いてる。 セリュー・ユビキタス。 島村卯月が殺し合いの中で一番最初に出会った参加者である。 その笑顔の輝きは人一倍で、正義感溢れる強い女性だった。 その強さは人間を殺せる程の覚悟を持っていて、島村卯月とは別次元の存在。 「あるよ……りんちゃん……みおちゃん……わた、私」 輝かしい笑顔を持っている女性はセリュー・ユビリタス以外にも知っている。 同じ仲間であり親友である渋谷凛と本田未央を始めとする少女達。 アイドルの理想像を共に目指す島村卯月にとっての宝物。 でも、セリュー・ユビリタスの笑顔は悪魔のようだった。 「私は……首、あるよ……」 セリュー・ユビリタスが生命を奪った南ことりには首がない。 あぁそうだ。南ことりは死んだ。 誰が殺した、それはセリュー・ユビリタスだ。 セリュー・ユビリタスはどんな人間だ。 恐怖に怯えている島村卯月を励ました強い人間だ。 近くの見回りも率先して行った勇気在る人間だ。 その強さの源は何処から来る、それは人間を殺すことの出来る覚悟と倫理観だ。 覚悟を持っていれば、倫理観が常識を逸脱していれば人を殺せるのか。 ならば南ことりはセリュー・ユビリタスと同じ人種なのか。 違う。彼女――南ことりは普通の女子高生だった。 運が悪かった。殺し合いに巻き込まれた時点で彼女の運命は大きく変わってしまった。 大切な仲間を守るために。 仲間と共に叶える夢と自分のためだけに叶える夢。 道の選択を悩んでいた南ことりの背中を押し、腕を引っ張ってくれた存在。 その存在を始めとする仲間を――守りたかっただけ。 「ことりちゃん……私は生きてるよ……」 セリュー・ユビリタスに首を切断された女性の名前を呟きながら、首を触る。 触るよりも絞めるに近いその動作はまるで自分の生命を確かめているようだった。 生きている、自分は南ことりと違って生きている。 生きているという当たり前の感覚が今の島村卯月にとってどれ程嬉しいものなのか。 顔こそ笑顔ではないが、生命在ることを彼女は人生の中で一番喜んでいた。 「嬉しい……っ、私、ちょっと疲れてるか……な」 自分が壊れそうだ。 死体を、それも生首を初めて目撃した島村卯月の感情は大きく歪み始めている。 生きている、が当たり前ではなく、選ばれた人間だけ。 生存が彼女の中で肥大していき、嬉しいと小言を漏らすほどに膨れていた。 だが否定したい。 自分ではないようで。 嬉しいと言葉を漏らす自分が自分ではないようで。 生命の実感を真摯に受けている自分が、もう戻れない道を歩んでいるようで。 「――ひっ」 突如流れるノイズが彼女の心を圧迫する。 ベッドから身体を動かしはしないが、視線は扉の向こう側を見つめている。 誰かが部屋に来たと思ったが、実際は放送に係る音声のノイズであった。 思えば上条当麻なる男性が殺された時、広川が何かを言っていたような気がする。 誰に言われたわけでもなく、島村卯月は自然とバッグの中から名簿と地図と筆記用具を取り出していた。 ☆ 「ことりちゃん……」 死者を読み上げる広川。 彼が一番最初に宣告を告げた名前は島村卯月が知っている南ことり。 数時間前まで生を帯びていたその存在を思い出しながら、名簿に線を引いていく。 禁止エリアを塗り潰すよりも心労が溜まる作業だ。 ――人間の死を作業と捉えていいのだろうか? 「……首は、ある……」 何度目か解らないが、首に手を伸ばし生命を実感する。 私は生きている、夢じゃなくて、現実で生きている。 現実逃避したい現状から逃げずに、自分に何度も何度も言い聞かせるように首を触る。 「美遊・エーデルフェルト、知らない。浦上、知らない。比企谷八幡、知らない。 佐天涙子、知らない。クロメ、知らない。クマ、知らない……」 告がれていく名前を復唱しながら名簿に取り消し線を増やしていく。 数時間の間にどれだけの人間が死んだのか。 改めて考えると、目覚めた時、近くにセリュー・ユビリタスの姿は無かった。 彼女は何処かで南ことりの時と同じように他の参加者を殺していたかもしれない。 「渋谷凛、知らない」 復唱しながら取り消し線を引く。 同じ行動を起伏無しに何度も繰り返す姿は正確無比のロボットのようだ。 弱音を吐くことも無ければ強がることもない。 プログラムされた記号を只管に何度も繰り返す冷たくて悲しい機械のように。 「モモカ・萩野目、知らない」 「星空凛……あっ、ことりちゃんの友達……」 南ことりが死ぬ前に。 まだ己を隠していた頃、語ってくれたスクールアイドルの仲間。 アイドルグループの存在は知らなかった。 部活の一環として活動する彼女達と同じ舞台に立てれればいいな、そう思っていた。 「あれ……星空凛ちゃんはもう潰してある」 星空凛の名前が記載されている欄に取り消し線を引こうとした時、既に引かれていた。 名前を復唱しながら線を引いていたため、間違いをすることは無いはずである。 不思議に思いながら、呼ばれていく名前に線を引いていく。 結果として十六人の名前が呼ばれ、引かれた線は十五。一人足りない。 名簿をもう一度見渡すが、線の数は十五。 しかし足りない理由はすぐに解った。 「渋谷凛……凛ちゃんの名前が呼ばれた時、間違って星空凛ちゃんの名前に線を引いたんだ」 「トイレ、行ってきます」 誰に言ったかも解らずに、バッグを持って島村卯月は立ち上がった。 ☆ 水を流すのは何度目だろう。 吐きすぎて胃から固形の物は出て来なくて、気持ち悪い液だけが出て来ます。 凛ちゃんの名前に気付いた時、時間が止まりました。 私だけが世界に取り残されたみたいで。 でも、実際は凛ちゃんだけが世界から除外されてたみたいなんです。 信じられないと思いました。でも、受け入れるのは早かった。 ことりちゃんの名前が呼ばれた時点で、この放送に嘘はないと思いました。 だってことりちゃんは私の目の前で死んだから。 死んだから……素直に思える私が私じゃないみたいで気持ち悪い。 「なんでこんなことになったんだろう……」 もう、涙も出て来ません。 たくさん泣いて、たくさん吐いて。 凛ちゃんはもういない。私は、島村卯月はもう二度と渋谷凛に出会えない。 ニュージェネレーションズはもう二度と、あの笑顔で舞台に立つことが出来ない。 どこで間違ったんだろう。 最初にセリューさんに心を許したのが悪かったのか。 ことりちゃんの暴走を止められなかったのが悪いのか。 私には解りません。 プロデューサーならどうするんでしょうか。 未央ちゃんならどうやったのかな。 私だから駄目だったのかな。誰か教えてください。 8 :名無しさん:2015/07/23(木) 22 06 26 ID 3h.TAs0.0 どうすれば凛ちゃんを助けれたのかな。 高い山の頂上に咲く花のようにかっこいい凛ちゃん。 孤高を気取る訳でもなくて、心優しい友達思いの凛ちゃんが大好きです。 誰が凛ちゃんを殺したんだろう。 知りたい、いや、知りたくない? 知ってどうするんだろう……私にも解りません。 「追い掛けるのはできないよ……ごめんね凛ちゃん」 私も死にたくなってバッグに入っている糸で死のうとしました。 首を吊ろうにも糸は細くて、巻き付けた首から血が出る程鋭利だったので、やめました。 説明書みたいな紙を読むと、とても頑丈なので、服の下に纏いました。 「これから……」 服を来た所で、私はどうすればいいんだろう。 トイレを出て、うがいを済まして顔を洗いました。 試しに鏡の前で笑顔を作っても、悪魔が笑っているような……本当の笑顔じゃ無い気がします。 凛ちゃんが死んだこと、信じられません。 でも放送が嘘だなんて思えません。 私は何を信じればいいんでしょうか。 今頼れる人間、それはセリューさんだけです。 あの人は人間を殺せる怖い人で、でも、私に危害を加えない人でもあります。 ひ弱な私は彼女に頼るしかありません。 「セリューさん……外にいるのかな……?」 だから私はセリューさんを探すために外に向かおうと思います。 この選択が正しいか間違っているか何て解りません。 そもそも今の自分が誰かなのも解りません。 目が覚めてから首を触っている時、島村卯月が別人に変わっているようでした。 ことりちゃんと自分を比べた時、島村卯月が別人に変わっているようでした。 壊れた機械のように放送で呼ばれた名前に線を引いた時、島村卯月が別人に変わっているようでした。 凛ちゃんの名前を無意識で飛ばした時、私は島村卯月でした。 自殺を図った時、私は誰だったのでしょうか。 凛ちゃんの死を現実だと認識した時、私は何を考えていたのでしょう。 私には解りません。 でも、どうすることも出来ません。 今は悪い魔法に掛けられていて、魔法が解けたら全部夢のように消えてくれれば。 それはとっても嬉しいなって。 こんな時に、こんな事を考えてしまう私は本当に島村卯月でしょうか。 【D-4/イェーガーズ本部内/一日目/早朝】 【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]:悲しみ、セリューに対する依存、自我の崩壊(極小)、精神疲労(大)、『首』に対する執着、首に傷 [装備]:千変万化クローステール@アカメが斬る! [道具]:ディバック、基本支給品、賢者の石@鋼の錬金術師 [思考] 基本:元の場所に帰りたい。 0:どうすればいいのかわからない。 1:セリューとの合流。 2:助けてもらいたい。 3:凛ちゃんを殺したのは誰だろう。 4:助けて。 [備考] ※参加しているμ sメンバーの名前を知りました。 ※渋谷凛の死を受け入れたくありませんが、現実であると認識しています。 ※服の下はクローステールによって覆われています。 ※自分の考えが自分ではない。一種の自我崩壊が始まるかもしれません。 ※『首』に対する異常な執着心が芽生えました。 ※無意識の内にセリューを求めています。 ※彼女が所有している名簿には渋谷凛を除く、第一回放送で呼ばれた名前に取り消し線が引かれています。 【千変万化クローステール@アカメが斬る!】 ナイトレイドの一員であるラバックが所有していた糸の帝具。 用途は罠、索敵、防御、攻撃など多種多様な万能で豊富。 とっておきの一本と呼ばれる界断糸は強度、鋭さ共に通常の糸を遥かに上回る。 奥の手は存在するが原作では未登場である。 時系列順で読む Back 汚れちまった悲しみに Next 端緒 投下順で読む Back 亀裂 Next 邂逅 賢者の意思/意志 036 やはり私の正義は間違っているなんてことは微塵もない。 島村卯月 098 正義の戦士たちよ立ち上がり悪を倒せ
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理想のウィンタープリズン ■シスターナナ シスターナナ 2回 (君と私の間に壁 p.7 二年F組弁当合戦 p.13) ナナ 1回 (二年F組弁当合戦 p.12)
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理想のディティック・ベル ■一人称 私 1回 (in Dreamland 前編12) ■二人称 君 1回 (in Dreamland 前編06) ■不定称 何者 1回 (in Dreamland 前編12) ■ディティック・ベル 君 1回 (in Dreamland 前編06)
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すれ違う理想と友情 その出来事は、『放送』が始まるより前まで遡る。 「はい皆、一旦きゅうけーい!」 南の街の、とある民家。 そこにぞろぞろと、5人もの少女達が入ってきた。 当然、そこに住人はいない。ただ、空き家というわけでもなく、ある程度家具も置かれている。 まるで、前に誰かが住んでいたのかと思わせるかのような雰囲気があったが、推測するにはそれ以上の証拠がなかった。 「結構立派な家ね……」 「私、ちょっとキッチン見てくるね!」 先ほど、声を張り上げたのはこの集団を先導する、所恵美。 部屋の広さに関心しているのは如月千早、我先にと奥へ向かったのは佐竹美奈子。 その後ろからは、松田亜利沙と高槻やよいが浮かない表情を浮かべ、ついてくる。 皆、思い思いに行動していく。そこに、殺伐としたものはない。 ここにいた少女達は皆、この『殺し合いの場』において、そんな行為に反抗する意思を持っていた。 (……まだ、油断できないです…チャンスを、待たないと……) ――少なくとも、表面上は。 やよいが浮かべた、苦々しい表情を見たものは、誰もいない。 それぞれの内に秘めた思いは、誰も知る事はない。 「所さん…ここでしばらく休憩って、言っていたけど」 「皆、結構疲れてるでしょ? それに、うちらが知ってる事も整理しなくちゃって思ってね」 一旦、民家に入って休もうと提案したのは恵美だった。 街までの道で合流した美奈子とやよい、そして市民プール前で合流した亜利沙。 特に亜利沙に言えたことだが、この異常な状況下で、皆疲労の色が見え隠れしている。 それに彼女達も、ここに至るまでに誰かと会い、何か経験したかもしれない。 一度どこかで腰を落ち着けて、そんな情報を共有するべきだと、彼女は考えていた。 「それに……もうすぐ、なんか発表とかあるらしいじゃん。備えとかないと」 そして、懸念していたのはそれだけではない。 恵美の言葉に、皆がぴくりと反応を示す。 「えっと……6時間ごとに、って言ってましたから、あと30分ぐらい…ですよねー」 「確か…死んだ人を発表する、って……」 場に、重苦しい雰囲気が漂う。 こうしている間にも、このイベントは進行している。 自分達のように反抗するものだけならいいのだが、正直、嫌な想像の方がいくらでもできる。 そんな事を考えてしまう状況、誰しも心中穏やかではない。 「………っ」 そしてここには、唯一それを現実として目の当たりにしている少女がいた。 俯く少女、松田亜利沙の顔色は悪く、ここに来てから何も喋れていない。 これからの事を考えるなら、自分の知る事を皆に言うべきなのだろう。 けれど、今に至るまでできないでいた。 市民プールの前で、4人に合流した時、ひどく消耗していた彼女に対し皆は気にかけた。 ここに来るまで、何かあったのか。誰か、出会ったのか、と。 そんな問いにさえも、口を開けられていなかった。 それだけ、彼女の知っている現実は、あまりにも残酷で。 「………?」 何より、彼女の前で言う事がはばかられた。 思わず彼女――如月千早と目があって、あわてて目を逸らす。 亜利沙が未だ自分が今までの事を話せないのは、彼女がいるからに他ならない。 自らが知っている『彼女の死』に、一番動揺するであろう人物は彼女だから。 それだけ2人は仲が良くて。彼女の中で、大きな存在になっている。 アイドル達の事をよく見ていた彼女には、それが辛い程によくわかっていた。 結局、合流したその時は口を閉ざす亜利沙を見て、主に恵美の提案の元、一旦保留という事になった。 薄汚れた制服。不自然な恰好。挙動不審に近い態度。 不信感を抱いてもおかしくなかっただろうに、そうせずに皆は彼女を気遣って。 亜利沙は、そんな皆に感謝の気持ちと、一種の負い目を抱いていた。 「松田さん」 そんな中、いきなり声がかけられる。 ハッとして顔を上げると、そこにはさっきまである程度距離があった筈の人の姿。 千早が、目の前にまで来ていた。 「あっ、あの」 「隣、失礼するわね」 慌てて何か声をかけようとする亜利沙を横目に、千早は彼女が座るソファの横に腰掛ける。 そして、流れる気まずい沈黙。 ここに来るまで、随分と挙動不審だった。 何を聞かれても、何を言われても。不思議じゃない。 「一つだけ、聞いてもいい?」 そして、言葉をかけられる。 優しく言い聞かせるかのような、穏やかな声。 あたりを見ても、美奈子はまだ帰っておらず、恵美とやよいは互いに何か話している。 2人は2人で、情報交換でもしているのだろう。他に、誰かが聞いているという事はなさそうだった。 亜利沙は意を決し、「はい」と返事を返す。 何を聞かれるのかは、分からないけれど。 「……春香に、会ったの?」 その言葉を聞いた瞬間、心臓をわしづかみにされたかのような感覚を受けた。 「っ!?」 「図星、みたいね」 突然言い当てられ、びくりと体が跳ね狼狽える亜利沙を見て、千早は息を吐く。 その表情は、憂いを帯びていた。 一体、何故分かったのか。息は自然と荒くなり、心臓はばくばくと暴れる。 「なっ、な……」 「確証があったわけじゃないのだけれど……。 少し、それに見覚えがあって。もしかしたら……って」 驚いて呂律も回らない亜利沙の事を、見つめる。 その視線は、彼女の顔よりも少し上を向いていて、それで気付いた。 (……あっ) 彼女は長い髪を束ねてはいるが、いつもは簡素な髪留めで済ます事が多い。 こうして、リボンを使う事自体まれで、可愛げのある赤いリボンが、目についたのだろうか。 決意の為につけていた、彼女の形見。 そうして、自らその形見を手にふれ。 「―――――!」 血の気が、さっと引いた。 そのリボンに、赤黒くにじんでいた――血にふれて。 「ちっ、違います千早さん!これは……っ!!」 思わずがたりと立ち上がって、弁解する。 その物音に、蚊帳の外にいた恵美とやよいがこちらに気付く。 言葉が、続かない。否定しようとしても、何も言えない。 血に染まった友人のリボンを見て、想像する事。 それは、違ってなどいないのだから。どう取り繕っても、言い訳にしかならない。 「……その……」 一転して、場がしんと静まりかえる。 気まずい雰囲気が、流れる。 何も喋ってはいないが、この態度と状況を見れば嫌でも察するだろう。 天海春香は、どうしたのか。出会ったとして、何故今ここにいないのか。 そして、こんな態度では勘違いされてもおかしくはない。 松田亜利沙が、天海春香を――― 「心配しなくても、疑ってなんかないわ」 そんな心を、見透かしたかのように。 挙動不審に狼狽える彼女に、千早は声をかける。 「あなたが……アイドルの事が大好きなあなたが、アイドルに手をかけるはずないもの」 「……っ!」 そして穏やかに紡いだ言葉は、亜利沙の言葉を詰まらせる。 当たり前、とでも言う程に彼女はあっさりと言いのけていた。 そんなの、この異常な状況ではどうとでもなるかも分からないのに。 「ねえ……話して、もらえないかしら」 そして、千早は口を開く。 彼女の方でも、最悪の可能性が頭を過り、それが否定したくても、否定できないでいて。 亜利沙の知る事が、残酷な事であるというのも薄々分かっていても。 「何が起きたのか……知りたいから」 大切な人の事から、目を逸らしたくはなかった。 「……!」 透き通るような、まっすぐな瞳を向けられて、亜利沙はぴくりと体をこわばらせる。 彼女の決意が、目の前に突き付けられているかのような。そんな錯覚を起こす。 「教えてもらったの。諦めない事、逃げない事を」 ちらりと、千早は横を見やる。 そこには、まだ2人が何を話しているのか理解しきれていない恵美の姿があった。 ここで終わろうと――逃げようとした自分を、止めた人。 彼女に感化されて生きると決意した以上、どんな現実でも受け止めて、それでも前へ進まないといけない。 「だから……教えて。あなたの、知っている事……春香に、何があったのか」 瞳が、より近づけられる。 千早の言った、『春香』という名前に、見ていた2人もぴくりと反応する。 まだ亜利沙は、直接春香にあったと明言したわけじゃない。 ただ、その反応は確実に何かを知っている。 「………ッ」 そして、それが言いづらいような、とても辛い事だと知るには十分すぎた。 恵美もやよいも、神妙な面持ちでそちらの方に目を向けている。 「ただいま~……あれ? 皆、どうしたの?」 そんなタイミングで、家の中の探索を終えた美奈子が戻ってくる。 妙に緊迫した場の雰囲気に、戸惑う。 話すべき仲間、4人はここに集まり、丁度良く舞台は整った。 「……分かりました」 そして彼女は、閉ざしていた口を、開く。 * * * 亜利沙が話し終えて、静まり返る。 彼女が見た事、全てを話し終えた。 とは言っても、そこまで多いわけじゃない。 ただ―――天海春香の死体を見た、それだけの事。 「そんな……っ」 不意に声を漏らしたのは、佐竹美奈子だった。 アイドルが、天海春香が、死んでいた。誰に、殺されたかも分からずに。 殺し合いなんてありえない。誰もしないんだと言う甘い考えを、淡々と打ち砕かれて。 息も震えるほどの、衝撃を受けていた。 「………」 恵美とやよいも、実際に死人が出たと聞いて何も感じないわけじゃない。 かつて仲間だった子が、仲間を殺した。 実際にそれを見たわけじゃなくとも、現状はそうとしか考えられず。 突きつけられた現実は、場を重くする。 けれど、彼女達はそれ以上に。 「……そう」 その事実を。 友人の死を聞かされた彼女の事を気にかけていた。 「千早……」 恵美が、ちらりとそちらの方をみやる。 気持ちうつむいていた彼女の表情は、思っていたよりは落ち着いている。 けれど、腕を握る手はぎゅっと強く絞められていて、震えていた。 「……誰が、というのは……」 「ありさが見た時には、もう……だから、分からないです…」 自殺なんていうのは、ありえない。 となれば、確実に殺した誰かがいるという事だ。 けれど、亜利沙は誰が手をかけたかというのまでは分からなかった。 どこかも分からない場所で親友が死に、誰のせいかも分からない。 その心中を深くまで察する事なんて、できやしない。 「……話してくれて、ありがとう」 それでも、取り乱す事はなく話し終えた亜利沙に声をかける。 そんな彼女の姿に、亜利沙は言葉を返すでもなく不安気な表情を浮かべる。 彼女もまた、親友が死んでしまった千早の心中ばかりが気にかかっていた。 表面上は冷静を保っているように見えるからこそ、不安を感じずにはいられない。 「……あのっ」 ふと、亜利沙は声を上げる。 そして、自らの髪を結んでいたリボンを解いた。 血で汚れてはいるが、まだところどころに鮮やかな赤は残っている。 「これっ、もしよかったら、千早さん、に…」 「私はいいわ」 これは千早にとって、親友の形見となるもの。 だから、彼女に託した方がいいと手渡そうとして、しかし彼女はそれを首を振って拒否する。 「あなたの、決意の表れなんでしょう? なら、あなたに使ってくれた方が……」 どこかぎこちない笑みを浮かべて、彼女にそのリボンをぎゅっと握らせる。 千早にとっても、亜利沙が説明をする中で、強い決意の元、それを持ち出した事は分かっていた。 その形見が、彼女に力を与えているのなら。それは、彼女に託していた方がいいのだろう。 「千早さん……」 「……っ」 その方が、あの子も良いと思ってくれるだろうから。 そう思った瞬間に、言葉に、詰まる。 彼女はもう、この世にいないのだと。 段々と、実感しつつある自身を感じていて。 「……ごめんなさい。すこし、外の空気を吸ってくるわね」 やがて彼女は、逃げだすように振り向き、去っていく。 「あ……っ」 それを止められる者は、誰もいない。 彼女がどれだけ辛いか、それを止めて、慰められもしない。 誰も、かけられる言葉も、呼び止める声さえも出せなかった。 そして、理由は単純にそれだけではない。 仲間が殺されていた。おそらく、かつての仲間の手によって。 それは千早ほどでないにしても、他の皆にも少なからず衝撃を与えていた。 千早がいなくなって、気まずい沈黙が流れる。 誰も何も、言葉を発する事すらできない。 先ほどまでの、仲間と共にいるが故のある程度希望に満ちていた雰囲気はどこにもない。 この先、どうなってしまうのだろう。自分達も、いずれそうなってしまうのだろうか。 誰が口に出すでもなく、そんな不安を感じずにはいられない。 「……ごめんね、亜利沙」 そんな空気の中で、一人声を出す。 「えっ?」 「辛かったでしょ、話すの。 それに、千早の事。気遣って、ずっと背負ってて、さ」 突然声をかけられて困惑する亜利沙をよそに、恵美は語る。 情報を伝えられて、皆、ショックを受けただろう。 けれど、それで心に傷を負ったのは伝えられた皆、だけじゃない。 この中で唯一、実際にそれを見て『しまった』子。 一番近くで、その絶望を見て。 合流して、ずっと悩んでいて。 「…ありがと。よく頑張ったね、亜利沙」 そうして今にも崩れ落ちそうな、彼女の頭を、撫でた。 「………っ」 俯いていた彼女の姿が、震える。 ここに至るまで、ずっと気張っていた精神がゆれる。 違う、褒められる事なんかじゃない。 「そ、そんな……ちがいます、ありさ、は、なにも……!!」 そう思いながら、視界がにじんでいく。 触れた優しさ、何もできなかった自分への不甲斐なさ。 色んな思いがまじりあって、胸の奥底からこみあげるものを押えきれない。 じわりと視界がにじんで、そしてぼろぼろと涙がこぼれだした。 「なにも、できなくて……っ! うぅ、うあぁぁぁっ…!! えぐっ、ひぐっ……!」 「おー、よしよしよし。ごめんね、そこまで思い詰めさせちゃって…」 止まらず、泣きじゃくる彼女を抱きしめる。 これからどうするか、なんて恵美にも分からない。 けれど、それでもなお目の前で思い詰めている仲間の事を見過ごす事はできなかった。 落ち着くまで、少しの間でも一緒にいてあげる。 やがて嗚咽も落ち着いてきた頃、恵美はちらりと美奈子の方を見た。 「よーし……ねぇ、美奈子」 「えっ、あ、何?」 「ごめん、ちょっと亜利沙とやよいの事任せていい?」 胸にうずくまる亜利沙の頭をポンとたたいて、美奈子にお願いをする。 この場では、美奈子が一番の年長者だ。頼るなら、彼女になるだろう。 まだショックの余韻の抜けない美奈子は、少し上の空といったようにうなずく。 それを見た恵美は、亜利沙を優しく座らせる。 「千早の事も、ほっとけないからさ。それじゃ、よろしくね!」 一人席を外した千早の事も、彼女はもちろん心配だった。 何と声をかければよいのか分からない、というのは彼女も一緒である。 けれど、だからと言って放っておくわけにもいかない。 一旦ここを置いて、千早の元へいこうとする。 「……恵美ちゃん」 「ん、何?」 それを、美奈子は呼び止める。 振り返ると、彼女は不安気な表情を浮かべていた。 確かに、今ここの一番の年長者は彼女だ。 年上として、少しはみんなの事を見ているつもりだった。 「無理、しないでね?」 だからこそ、そうやって、皆を気に掛けすぎる彼女の事が心配になった。 「………ん」 そんな美奈子の言葉に、はっきりとしない返答をする。 無理をするな。そういわれても、分かったとはっきり言えない。 今、無理をしてないといえば嘘になる。けれど、だからと言って仲間を放ってはおけない。 少しだけばつの悪そうな表情を浮かべた後、恵美も千早の行った方向へと向かっていった。 「……」 それを見送ると、美奈子は振り返り、この場に残った子達をみやる。 亜利沙は落ち着いたとはいえ、まだ情緒が不安定な部分がある。 やよいも、あれから険しい表情を崩せない。 そして、現実を伝えられて衝撃を受けているのは美奈子も同じだ。 (……ううん、私がしっかりしないと) そんな弱い心を、首をぶんぶんと振って追い払おうとする。 みんな、不安なんだ。 私が一番お姉さんなんだから、しっかりしないと。 そんな風に、自分を鼓舞する。 なによりも、このどんよりとした雰囲気が耐えられない。 このままじゃ、認めたくなかった『何か』を、認めてしまう。 いつも通りで、いないといけない。こんなのは、嫌だ。 ……いつも通りとは、何だろう。こんな時、『佐竹美奈子』はどうやって、皆を元気づけるだろうか。 重い空気の中で、何か焦りのようなものも感じる中、 ぴーんぽーんぱーんぽーん。 追い打ちをかけるように、それを始まった。 * * * 放送が流れ終わり、部屋の中にいる3人は一様に黙り込んでいた。 「うそ…なんで…そんな……!」 しんとした中で声が響いて、やよいは少し顔を上げてちらりとあたりを見渡す。 亜利沙はがたがたと震えて、頭を抱えている。 瞳は揺れて、唇まで真っ青に染まっている。 対して美奈子の方も、目の焦点が合っていないように思えた。 どちらも、精神的にかなり動揺しているようだ。 当然だろう。この事実には、彼女も驚愕を隠せないでいたのだから。 12人。この6時間の間に、死んだ人数。 おおよそ、全体の4分の1。考えていた以上に、早いペースだ。 やよいの思っていた以上に、このイベントに積極的になり、仲間を殺した人がいるのかもしれない。 かつての、仲間が。その事に哀しみを覚え、そして自分もそうである事に負い目を感じる。 けれど、その考えをやよいはすぐに振り払った。 たった1人生き残ると決めた以上、そんな事を思ってる暇はない、と。 口に出すこともせず、決意を固める。 「………ね、ねぇ」 ふと、誰かが口を開いた 何事かと俯いていた顔を上げると、美奈子が一歩前に踏み出していた。 ぎこちない笑顔で、額に浮かぶ汗をぬぐおうともしない。 無理に、自身を鼓舞しているようにも見える。 「皆……そんな、落ち込まないで、ね?」 こんな状況で励まそうとしているのだろうか。 けれど、それでどうにかなるような状態でないのは明らかだ。 事実、彼女自身も相当狼狽えている。 とすれば、彼女はどうするだろうか……。 そこまで考えて、はっとする。 ここにいる皆を元気づけようと、世話焼きの彼女が起こす行動。 丁度ここは民家で、時間も時間。なら、もしかすると。 運命の時は、近づいている。やよいは、心の中ではやる気持ちを抑え。 「……そうだ! もうお昼だし、何か食べようよ!私が作ってあげるから! お腹いっぱいになったら、きっと元気がでるよっ!」 ――来た。 その瞬間、やよいの心臓はどくりと反応した。 食材も、場所もある。時間も丁度、正午。こんな提案をするのは、必然だったのかもしれない。 そして、それは同時にやよいの持つ『武器』が使える、その瞬間でもあって。 「…そう、ですよねっ!私もお手伝いしますから、元気出してくださいー!」 やよいも声を上げ、その提案に呼応する。 その瞬間に、心がちくりと痛んだ。 自らの信念、家族の掟を、破る瞬間が近づいてきている。 信頼してくれている皆の事を、裏切る瞬間が近づいてきている。 それでも、やりとげる為に。偽りの言葉と、偽りの笑顔を浮かべる。 亜利沙は相変わらず、反応らしい反応がない。 12人もの、仲間が死んだのだ。 アイドルが、仲間が大好きだった彼女への、追い打ちをかけるかのような衝撃は、痛いぐらいによくわかる。 けれど、今はその方が都合がいい。 目ざとい彼女が万全な状態だったなら、こうやって自分を偽る事も見破られてしまいそうだったから。 「じゃあ、2人が帰ってくる前に食材の下ごしらえでもしよっか! さっき探してたら、ちゃんと色々あったんだよ! 腕、振るわないとね!」 やよいが同調してくれた事で、美奈子はぱぁっと笑顔を見せた。 焦っているか、錯乱しているかのような。 その姿は、やよいにもわかる程に無理をしている。 先ほど彼女自身が恵美に指摘した事が、そのまま今の彼女のような状態で。 けれど、それを指摘する事はない。それもまた、都合がいいから。 仲間の心配すべき状態を、都合がいいからという理由で、切り捨てる。 それだけじゃない。最終的には、殺すのだ。 食事に毒を仕込むという、一番、彼女の思い出を穢す方法で。 どれだけ、どれだけの罪を重ねても、彼女の悲痛な歩みは止まらない。 アイドルと、笑顔と、仲間を信じ抜こうとする松田亜利沙。 危うい中でいつも通りに執着し、そうあろうとする佐竹美奈子。 そして、たった一人生き残る為、心の内でその時を伺う高槻やよい。 彼女達がそれぞれ抱く『理想』は、致命的な程にすれ違う。 【一日目/日中/G-4 民家】 【松田亜利沙】 [状態]健康 、深い悲しみ [装備]天海春香のリボン、競泳水着 [所持品]基本支給品一式、不明支給品1~2 [思考・行動] 基本:笑顔の力を信じる。 1:??? 【高槻やよい】 [状態]健康 [装備]なし [所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)、青酸カリ [思考・行動] 基本:最後の一人になる。 1:焦燥。絶対に死ねない。 2:料理に、毒を仕込む……? 3:とにかく機会を窺い、慎重に動く。 【佐竹美奈子】 [状態]健康 [装備]なし [所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2) [思考・行動] 基本:仲間と一緒に脱出っ、わっほ~い! 1:皆を元気づけるために、料理を振る舞おう! 2:不安。誰かと接していないと押し潰されそう。 3:みんなと一緒ならきっと何とかなるよね……? * * * 真上の太陽が照らす街中で、恵美は追いかける事も忘れ立ち尽くしていた。 彼女も、千早を探す道中ですぐに放送によって足を止められていた。 放送、12人の名前、死亡、禁止エリア。たくさんの情報が、頭の中で浮かんでは消えていく。 頭を抱えた。楽観的に考えていたつもりはなかったのだが、まさかここまで、だなんて。 「………?」 そんな中、恵美の耳に何かひきつるかのような声が聞こえた。 泣き声、だろうか。それが何か、すぐに思い当たる。 その瞬間に、恵美はその方向へと駆け出す。 まだ、整理はつかないが、今は近くの仲間の方が優先だ。 「……っ、う………」 走っているうちに、探し人はすぐに見つかった。 5人が入った民家から、そう遠くない道で。 千早は、へたりこんでいた。声をかけようと、後ろから近づく。 「どうして……あなたまで私を、おいて……っ!」 けれど、その伸ばした手が触れられる事はなかった。 後ろにいる恵美の事も気づく事なく、彼女は誰に言うでもなく泣き崩れている。 それに、かける言葉が見つからなかった。 「……っ」 伸ばした手が下ろされ、恵美は目を逸らす。 彼女が大切な人に先立たれる、という事は、これが初めてではなかった。 それは、彼女の中でも特に深刻な問題で、フラッシュバックしてしまえば、その衝撃は大きい。 他人の言葉で、癒せるものではない程に。 (…何やってんの、アタシ) 下ろした手を、ぎゅっと握りしめる。 沢山の仲間が死んで、目の前で仲間が悲しんでいて。 そんな中で、一体彼女は何ができた? この6時間の間、ただ殺し合いの実感も十分にないまま歩いていただけ。 それが自分の無力さを、まじまじと見せつけられているようで。ただ、歯痒さと自己嫌悪が頭の中を支配する。 かなしみに暮れる彼女の後ろで、今もこうして、何もできずに立ち尽くして。 かつて信じていた『友情』さえも、哀しい程にすれ違う。 【一日目/日中/G-4】 【如月千早】 [状態]健康 [装備]なし [所持品]支給品一式、プラスチックのスティック [思考・行動] 基本:最後まで諦めない。皆で脱出する。 1:春香…… 【所恵美】 [状態]健康 [装備]灰皿 [所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1) [思考・行動] 基本:最後まで諦めない。皆で脱出する。 1:落ち着いたなら、千早を連れ戻したい、けど…… 2:自身に疑問と、嫌悪。 刻まれてる誓い 時系列順に読む かざはな 刻まれてる誓い 投下順に読む かざはな The Trojan Horse 如月千早 紳士の昼食会 松田亜利沙 佐竹美奈子 高槻やよい 所恵美 ▲上へ戻る
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「この世の支配者」 その男はそう世間で呼ばれていたし、事実その通りでもあった。 世界中の政治と経済に絶大な影響力を持つ超巨大組織ロードリアス財団の頂点にいる男。 ギャラガー・C・ロードリアス。 「我が生涯は常に過ちを正すためにあった」 ギャラガーが言う。薄暗い廃墟の町に朗々とした声が響く。 「『歪み』も『汚れ』も常に悪である。人はこれらを排し『完全』を目指す義務があるのだ。人生とは即ちこの『完全』へと至る道程に他ならん」 ・・・? 何を言っている・・・? 「そして大きな力を持つ者は、それに見合っただけの物を背負いそれを成さねばならぬのだ。この私とて例外ではない。故にこの世の歪みを矯正し、世界を正しき姿へと調整し、この世界に生きる者たちを導く・・・それが我が天命であり、この世界の意思である」 ギャラガーは右手を腰に当てると、顎をやや上げて見下ろすように私を見た。 「わかるか、バーンハルト。それが我が宿願『理想郷計画』だ。その為に私は『神の門』を手に入れる必要がある」 『理想郷計画』・・・? 矯正? 調整? ・・・私には何がなにやらさっぱりだ。 大体、『神の門』とは異界へも転移できるワープゲートだろう。それが何故世界の矯正だのという話に繋がるんだ。 「そうか・・・。バーンハルトよ、お前にはまず『神の門』が何であるかの説明からしてやる必要があるか。・・・エメラダよ」 ギャラガーが私の背後で傅いていた先ほどの褐色の肌の女性を見る。 エメラダ・・・そうか。彼女は総帥夫人、エメラダ・ロードリアスだ。 再度エメラダはギャラガーに深く頭を下げて礼をとり立ち上がった。 「では、ご説明いたしますわ。『神の門』の機能と『理想郷計画』の概要を」 そう言うとエメラダは片手を上げる。 上空に魔力でスクリーンが形作られる。 ・・・彼らは、私に何を語る気なのだ・・・。 大空に紅蓮の花が咲く。 赤い炎の花だ。 無数のミサイルが飛翔するルクシオンとマチルダのペガサスを追う。 シュヴァイツァーの駆る巨大機動魔道兵器「アマテラス」はその怒涛の攻撃でルクシオン達にまったく付け入る隙を与えてはくれない。 『どうした! 逃げ回るだけか!!』 シュヴァイツァーの声が大空に響く。 「・・・中々頭上が取れませんね」 マチルダの腰に掴まりながらパルテリースがいつもの静かな調子で言った。 「ごめんね~。上は特に弾幕が厚いの」 言いながらマチルダは巧みに手綱を操ってミサイルを回避している。 そのマチルダ目掛けて更なるミサイルの束が放たれる。 「くっ!! 何発搭載してるんですか~!」 「マチルダ・・・下がってください!!」 横合いからルクシオンが「竜閃」(ドラゴンレイ)を放つ。 一直線に空に伸びた赤い光がミサイルを爆散させる。 そしてその爆炎の中で、アマテラスは僅かな間標的の姿を見失った。 (・・・今だ!) マチルダが槍を振りかざし、全身に雷精を纏う。 「ライトニングディザスター!!!!」 雷電のレーザーが空を駆ける。 『効かんぞ!!! 「電磁結界」!!!!!」 バチバチ!!!とアマテラスが激しく放電しマチルダのライトニングディザスターを無効化する。 「・・・そんな!!」 マチルダが呆然となる。 『バカめ!! お前の様に特技が知れ渡っていれば研究攻略の対象となって当然だろう!!』 響き渡るシュヴァイツァーの勝ち誇った声に、マチルダがきゅっと唇を噛んだ。 その死闘の真下、水晶洞窟の入り口にちりんちり~んと緊張感の無いベルの音を響かせて1台の自転車が到着した。 「・・・雨上がりの夜空に~♪ って・・・何だドカンドカンうるせーな、今日は運動会かぁ?」 自転車を下りたレイガルドが顔をしかめて空を見上げる。 「あー・・・何だ戦ってんのか。どーれ加勢してやるとすっか・・・お」 アマテラスに必死に食らい付くルクシオンの姿をレイガルドが見つける。 「そういう事じゃ俺が顔出すワケにゃいかねぇなぁ。お前はできるよな、ルク。ちっちぇー頃から『自分の事は自分でやれ』って散々教えてきたもんな」 そう言ってフッと微笑むとレイガルドは洞窟の入り口へ向かった。 ・・・と思ったら足を止めた。 周囲をキョロキョロと見回して握り拳大の石を1つ拾い上げる。 「・・・1発くらいならいいよな? イヤ、これは決してルクが心配とか加勢するとかじゃなくてだな。単に騒音公害への抗議を込めた一撃であってだな・・・」 誰もいないのにぶつぶつと言い訳するレイガルド。 そして彼は、大きく振りかぶって上空へ向けて石を投げた。 突如アマテラスの後部で爆発が起こり、その巨体が大きくグラついた。 『ぐおおおおぁぁぁぁ!!! 何だ!!!??』 操縦席のシュヴァイツァーが絶叫する。 『左エンジンが大破だと!!! バカなどこからの攻撃だ!!!』 それが地上からの投石によるものだと知る由もないシュヴァイツァーは必死にレーダーの中に敵影を探す。 しかし有効攻撃範囲の中にそれらしき反応は見つからない。 「・・・隙あり、ですね」 そしてその隙に頭上を取ったペガサスからパルテリースがアマテラスの上に飛び降りていた。 「アントワネットちゃん・・・よろしく」 パルテリースの懐からぴょんと子豚のアントワネットが飛び降りると「ぷぎー」と一声鳴いてトコトコとアマテラスの上を歩いていく。 そしてゴアアアアアアッと咆哮を上げるとアントワネットの身体が見る見るうちに変容し巨大化していく。 立派な鬣と角を持つ獅子にも竜にも見える魔獣・・・巨神獣(ヴィヒモス)がそこにいた。 アントワネットが前身を持ち上げ、重力波と共に力一杯前足を打ち下ろす。 「烈震」(メガクェイク)がアマテラスのボディを揺さ振り破壊する。 そして揺らぐアマテラス上で、パルテリースが愛用の細身のロングソードを抜き放った。 剣を地面と垂直に構えて顔の前に置き、彼女が静かに目を閉じる。 「『鋼鉄の幻想曲』(フルメタルファンタジア)」 呟いて目を開いた彼女が剣を振るってアマテラス上を駆ける。 そして途中、子豚に戻っているアントワネットを拾い上げてアマテラスから飛び降りた。 そのパルテリースを空中でルクシオンが抱きとめ、マチルダのペガサスへ戻す。 「・・・また、愉快なものを斬ってしまった」 呟くパルテリースの眼前で、アマテラスの巨体の中央部分に一筋、線が入ったかと思うとそこから前後がズレて分かれた。 次の瞬間、大気を震わせてアマテラスが大爆発する。 「・・・やった・・・」 ルクシオンが呟くように言う。 『・・・いいや、まだだな!!!!!』 爆炎を裂いて黒い影が空に躍り出る。 「・・・っ!! 中にもう一機!!!!』 マチルダが目を見開いた。 それは黒い魔道機械兵だった。アマテラスの様に巨大な物ではない通常の装甲兵サイズの物だ。 手に大剣を持ち、背には翼がある。 『褒めてやるぞ貴様ら!!! まさかアマテラスの中からこの『スサノオ』を引っ張り出すとはな!!!!』 叫びながら大剣を構え、シュヴァイツァーは空中の3人に襲い掛かった。 水晶洞窟に入ったレイガルドは、予め悠陽に説明を受けていた通りの道順で遺跡へと足を踏み入れた。 (・・・む) その足が止まる。目の前に誰かが先行しているのだ。 赤い髪の男だった。 しっかりとした太目の木の枝を杖代わりに、フラつく足取りで奥を目指しているようだが・・・。 男はレイガルドの目の前で、段差に躓いて膝を折る。 「・・・おいおい」 歩み寄ったレイガルドが男を抱えて起こした。 「げ」 そのレイガルドの手にべったりと赤い血が付いた。 男がクリストファー・緑という名で『ハイドラ』の1人である事をレイガルドは知らない。 「すまないな。誰かはわからんが・・・礼を言う」 苦しい息の中でリューが言う。 彼の眼は既に光を失いつつあった。眼前のレイガルドの顔も薄ぼんやりとしか見えていない。 「行く場所間違えてねえか。この下に医者はねえよ」 言いながらもレイガルドには、この男がもう今から医者へ向かっても間に合わないであろう事がわかっていた。 フッとリューが苦笑する。 ・・・彼も、自分の身体がもう手遅れである事を理解していた。 「初めて会う相手にこの様な事頼めた義理ではないのだが・・・どうか下を目指すのなら俺を連れて行ってくれまいか。やらなければならない事があるのだ」 言われてレイガルドが困ったように頭を掻く。 「戻るべきなんじゃねえか? お前の大事な人らが泣くぞ?」 「自分の身体だ・・・自分でもう手遅れである事はわかっている。それに大事な者など・・・」 言いかけたリューの脳裏に1人の姿が思い浮かぶ。 「いや・・・。いるにはいるのだが・・・困った事に既に遺せる物は遺してしまったのだ。遺品のつもりはなかったが、何でもやっておくものだな・・・」 半ば見えていない目でリューが遠くを見る。 その顔には既に死の影が濃い。だが表情はどこか清々しい。 「だからもう本当に思い残す事は何もない。・・・この先に1人どうしても道連れに逝かなければならない男がいる事を除いてな」 そのリューにレイガルドが肩を貸した。 「連れて行くだけだ。事情とか知らんしな。下着いたら勝手にしろ」 ぶっきらぼうに行ってリューを担ぐように歩き出すレイガルドに、 「謝々」 とリューが頭を下げた。 始まりの船の居住区。 廃墟の立ち並ぶ中に一際威容を放つ高層のビル群。 その内の一棟の屋上に風に吹かれる人影があった。 白いスーツ姿・・・財団のピョートルである。 「ンーッフッフッフ・・・役者が揃ってきましたなぁ」 彼は遠く遺跡部、ゲートへと向かうレイガルドとリューの姿を見ていた。 「折角そんな身体に鞭打ってここまで辿り着いたのです。是非、この場にて彼と彼女との邂逅を果たして頂きたいものです」 バッと開いた扇子で口元を隠すピョートル。 「愛と憎しみの交差するその時にこそ、このピョートルの目的も果たされるのですよ。・・・ンフフフフ」 不気味に笑うピョートルの瞳が冷たい輝きを放った。 第26話 Friendship← →第27話 2