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前ページ次ページネコミミの使い魔 わたしが目覚めて一番最初に目についたのは、桃色が混じったブロンドの髪を持った綺麗な女の人だった。 そういえば昨日召喚されて、一緒に眠ったんだっけ。それと回復の魔法を使ったけどソウルジェムが全く曇ってないのを確認する。 やっぱり変だ、グリーフシードの気配も感じられないし、ココはやっぱり異世界なんだろう。 キョーコやマミお姉ちゃんとはもう出会えないのかな。 そう思うと涙が出そうに鳴る。 わたしが動いたのを感じて、ルイズのお姉ちゃんが身動ぎした。 「目を、覚ましたのね……わたしも起きないと」 そう言って身体を起こす。 清々しい朝の日差しに包まれて、髪の毛がキラキラと輝く。 やっぱり綺麗な人だな、と思った。 「ねえ、ゆま、わたしの使い魔」 「うん!」 「……あなたに仕事を言い渡すわ、できるかしら?」 「がんばるよ!」 どんなことを言われるんだろう、ドキドキする。 ルイズのお姉ちゃんはひとしきり考えるような仕草をした後、タンスの方を指さした。 「あそこに私の下着があるわ、上下、取ってきなさい」 「わかった!」 簡単なお仕事でよかった! コレで食事を用意しなさいとか言われたら、マミお姉ちゃんと一緒に習った、ティロ・ケーキ*お菓子作り*を使わないといけないところだった。 タンスの指さされたところには下着がたくさん入っていた、キョーコと同じくらいの大きさかな、マミお姉ちゃんに比べたらかなり小さい。 「下着、持ってきたよ!」 「ありがとう、そうしたら、そこに制服があるでしょう、取って頂戴」 「わかった!」 目に見える範囲にあった、昨日ルイズのお姉ちゃんが着ていた制服。 その途中に服と下着が用意してあった。 {{行頭下げ}}【ゆまたんへ あしながおねーちゃんより】 「ルイズのお姉ちゃん、これ、お姉ちゃんが用意したの?」 「何その服、ゆまたんへ? さあ、知らないわ」 「ととと、とりあえず制服を持って行かないとね」 とりあえず置かれた服を放っておいて、制服をルイズのお姉ちゃんに届けに行った。 「ゆま、その服をとりあえず来てみなさい、昨日と同じ格好では嫌でしょう?」 「うん! 着てみる!」 緑色を基調としたふりふりの憑いたワンピースの吹くと、リボンの付いたパンツだった。それを身につけると、ルイズのお姉ちゃんが可愛いわと褒めてくれて嬉しい。 「洗濯は……まあ、平民が入ってきて勝手にするでしょう、このカゴに二人分入れておきましょう」 二人で一緒に部屋を出ると、チョコレート色の木の扉が3つ並んでいた。 その扉の一つが開いて、キョーコと同じような髪と、マミお姉ちゃんと同じような胸を持ったお姉ちゃんが姿を表した。 わたしと比べるとすごく背が高くて、ルイズのお姉ちゃんよりも大きい、それにスタイルもよくてそれに自信を持っている様子だった、 その人はルイズのお姉ちゃんを見ると、ニヤリと笑った、 「おはようルイズ」 ルイズのお姉ちゃんは期限が悪そうに眉をひそめると、唇を尖らせながら挨拶を返す。 「おはようキュルケ」 そしてわたしのほうに優しげな表情を向けて、 「おはよう、ゆま、ステキな名前ね」 「おはようございます、キュルケお姉ちゃん?」 「ええ、あたしの名前はキュルケ、覚えておいてね」 そう言って優雅に微笑んだ。 ルイズのお姉ちゃんはわたしを守るように前に立つ。 「サモン・サーヴァントでそんなに可愛い子を呼ぶなんてすごいじゃないのルイズ」 「褒めてるのそれ?」 「褒めてるわよ、ま、あたしの使い魔は更に凄いけれど、フレイムー」 キュルケのお姉ちゃんは勝ち誇ったような声で使い魔を呼んだ。確か昨日教室で見た使い魔たちよりもすごいのかな、なんて思った。 部屋からのっそりと四つ足で登場をしたのは、巨大な爬虫類だった。魔女の使い魔とはちょっと違って、こちらは動物っぽい。 ただ尻尾は熱そうに燃えていて、こういうのは動物園にはいないなと思った。 「すごいね、でっかい、トカゲ?」 「んー、ちょっと違うわね、火トカゲよ」 「うーん、変身したら勝てるかな……ちょっと自信ない」 「あなた変身できるの? 不思議ね、まあ、使い魔っていうのは普通こういうのなのよ」 さすがに虎くらいの大きさのトカゲだから、火トカゲなんだろうか。 「それって、サラマンダー?」 「そうよ、見て、この尻尾。ココまで鮮やかで大きな炎の尻尾じゃ間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ、ブランド物よー? 好事家なんか見せたら値段なんかつかないわよ? ……まあ、人間の変身する使い魔も値段がつかないでしょうけど」 ちらちらと、別の扉を気にしながらキュルケのお姉ちゃんは言った。 「まあ、わたしの使い魔もステキだけど、よかったわね」 「ええ、私の属性にぴったり」 「あなた、火属性ですもんね」 「ええ、微熱のキュルケですものささやかに燃える炎は微熱、でも男の子はそれでイチコロなのですわ、あなたと違ってね」 確かにマミお姉ちゃんみたいな胸を大胆に露出させていたら、男の子の視線はその胸に向かうだろう。でも、マミお姉ちゃんと違って紅茶を入れるのが得意だったり、ケーキを買って食べさせてくれたり、料理が得意だったりとは違いそうだ。 「ゆま、火属性というのは、こんなんなのよ、あんまり近づかないようにね」 「失礼ねゼロのルイズ、まあいいわ、お先にー」 「悔しー! ……まあ、ゆまもいい使い魔だからいいか」 「ルイズのお姉ちゃんもフレイムみたいのがよかったの?」 「メイジの実力を見るには、使い魔を見よという言葉があるの、ゆまが変身できたりしても、見た目の差で、ちょっとこちらの負けかもね」 「うー、ゆま、頑張るよ!」 決意するわたしを、ルイズのお姉ちゃんは可愛い物を見るかのように目を細めて見つめていた。 そういえば最後に、キュルケのお姉ちゃんはゼロのルイズといった、ゼロってことはないってことだよね、きっと悪い意味に違いない、だから聞かなかったことにしようっと。 トリステイン魔法学院の食堂は、真ん中の本塔の中にあった。食堂の中にはすごく長いテーブルが三つ並んでいる、学年別に分かれているのかなと思った。百人は座れそうなテーブルの真中にルイズのお姉ちゃんの隣りに座った。 左のほうにあるルイズのお姉ちゃんより*キュルケのお姉ちゃんよりもお色気な人もいた*大人びた顔をした人たちは紫色のマントを付けて、左側の席に座っていた。 右側のテーブルに座った、ちょっと幼い顔の人たちは、茶色のマントをつけている、ルイズのお姉ちゃんとは違うものだから、きっと一年生だ。 一階のちょっと上になっている所に先生らしき人たちが見えた、どうやらココでみんな食事をとるみたいだ。 いくつものローソクが並べられて、花が飾られて、フルーツが盛られたかごが乗っている。キョーコがいたら、あれもきっと食べてしまうに違いない、食い物を粗末にすんじゃねえと言いながら、そしたらルイズのお姉ちゃんはどんな顔をするだろうか。 「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」 「ふえ」 「メイジはほぼ全員が貴族なの……まあ、ゆまみたいな例外もいるけれど、貴族は魔法を持ってその精神をなすのモットーのもと、貴族たるべき教育を存分に受けるのよ、だから食堂も貴族の食卓にふさわしいものでなければならないの、ちょっと難しかったかしら?」 「とりあえず、貴族らしーんだね?」 「ええ、本当は貴族ではないゆまはここには座れないんだけれども、わたしの特別な計らいでココに座れるの、感謝してよね」 と、いたずらっぽく言った。 「でも、ゆまどうしよう、こんなお料理、貴族らしく食べられるかな?」 「ふふ、取り分けてあげるわよ」 「いいの? 使い魔なのに?」 「使い魔だけど、妹分みたいなものよ」 私はルイズのお姉ちゃんの手の動きを眺めながら、いつかルイズのお姉ちゃんの手を借りずに食事ができるようにがんばろうと思った。 昨日も行った魔法学院の教室は、マミお姉ちゃんの学校とはまた違った感じだった。椅子がいっぱい並べられて、椅子もいっぱい並んでいる。 昨日も一緒に授業を受けたけれど、あんまり内容はわからず、ルイズのお姉ちゃんがところどころ分かりやすく説明してくれてやった少しだけ分かるくらいだった。 きっと、ルイズのお姉ちゃんは勉強がよく出来るに違いない。だからこそ初心者のゆまにしっかりと教えられるんだろう。 教室の中にはキュルケのお姉ちゃんがいた、男の人に取り囲まれている、本当だ男の人はイチコロなんだと思った。 不意に、誰かと目があった気がした、そっちの方向を見ると、赤いメガネのお姉ちゃんが無表情でこちらを見ているような? そんなことないか。 そして窓の外には巨大な蛇がいた、教室の中に入れない使い魔もいるんだね、猫とか、カラスとかフクロウとかもいるけれど。 あと、魔女の使い魔みたいな使い魔もいる、見た目がちょっと変な使い魔だ。ああいうのも優秀な使い魔なんだろうか、不思議な世界だ。 「ゆま、わたしの隣に座りなさい」 「うん!」 「それと、この紙、できるだけ先生の話をメモしてなさい、分からないところは昨日と同じように教えてあげるから」 ようし、がんばるぞ! 私は気合を入れて先生を待つ。 扉が開いて先生を待った。 おばさんだった、紫色のローブに身を包んで帽子をかぶっている。バザーでキョーコと喧嘩したおばさんとよく似ている。 きっと、あの人もメイジなんだろう、なんてたって先生だもんね、あんまり失礼な態度は取らないようにしないと。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね、このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔を見るのがとても楽しみなのですよ」 その時、ルイズのお姉ちゃんがちょっとだけ俯いた。 「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね、ミス・ヴァリエール」 ミス・ヴァリエール……たしか、ルイズお姉ちゃんの名前だ。 ということは、変わった使い魔というのはわたしのことだ。 うー、わたしのことはいいけど、ルイズのお姉ちゃんを言うのは許せないなあ。 教室中が笑いに包まれて、ルイズのお姉ちゃんの顔が赤く染まる。 「ルイズ! しょうか!? ぐへぇ!」 なんだろうか、からかおうとした声が聞こえたような気がしたけど。 「げほっ、召喚出来なかったからって平民を連れてきたんだろ!」 「そんなことないわ! わたしはちゃんと成功したわよ!」 「そうだよ! ルイズのお姉ちゃんを悪く言うのはゆまが許さないよ!」 そう言ってソウルジェムを掲げて変身する。 すっかり姿が変わったわたしに、教室中が騒然とした。 「ゆま……あなた本当に変身できたのね……」 「ルイズのおねえちゃんを笑う人はゆまが懲らしめちゃうんだから」 そういって、からかっていた太っちょの人に向けてハンマーを向ける。 その時、何かの気配を感じて、杏子から習った結界を張った、ばちばちばち! とすごい音がする、目の前に赤土が落ちていた。 「……では、授業を始めましょう、使い魔さんも席について」 わたしはおとなしく席に座った。 これ以上喧嘩してたらルイズのお姉ちゃんに迷惑がかかっちゃうし。 「私の二つ名は赤土、赤土のシュヴルーズです、土の系統の魔法をこれから一年皆さんに講義します。魔法の四大系統はご存知ですね、ミスタマリコルヌ」 えーっと、先生は赤土。土の先生。っと。 「はい! ミセス・シュヴルーズ。火水土風の4つです!」 ということは、火の先生、水の先生、土の先生、風の先生がいると。 「今は失われた系統の魔法である虚無を含めて、全部で五つの系統があることはみなさんも知っての通りです。その五つの系統の中で土が最も重要なポジションであることを占めていると私は考えます。それは決して私は土系統だからというわけではありませんし、単純な身びいきでもありません」 あんまり説得力がないような気がした。 「土の系統の魔法は万物の組成を司る、重要な魔法であるのです。このような魔法がなければ重要な金属を作り出すことはできないし、大きな石を切り出して建物を建てることも出来なければ、農作物の収穫も今よりも手間取ることでしょう、このように土の系統はみなさんの生活に密接に関係しているのです」 ってことは、魔法がゆまたちの世界のノコギリとか、チェーンソーとか、釘とか、そういう道具に該当しているってことなんだ。 魔法を使えるってだけで偉いっていうのがなんとなく分かった気がする。でも、魔法を使わなくても生活している人もいるのにな、とも考えた。 苦労をすれば魔法も使わず、いろいろな技術が進歩するだろうに、魔法のせいできっとそれが遅れちゃってるんだろう。 「今から皆さんには、土系統の魔法の基本である錬金の魔法を覚えてもらいます、一年の時にできるようになった人もいるでしょうが基本は大事です、もう一度おさらいすることに致します」 錬金錬金っと、基本。っと。 先生は石ころに向かって魔法を使った。 光が収まると、ただの石ころがキラキラ光る真鍮に変わっていた。 「ゴゴゴ、ゴールドですか! ミセス・シュヴルーズ!」 キュルケお姉ちゃんが盛り上がっていたけど、真鍮と金だとだいぶその価値が違うと思う。 「いいえ、コレはただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのはスクウェアクラスのメイジだけです、私はただの、トライアングルですから」 スクウェア? トライアングル? 「ゆま、スクウェアやトライアングルというのは、メイジのレベルのことよ」 わたしが質問する前に、ルイズのお姉ちゃんが説明をしてくれる。 きっと予測をしていたのだろう。 「先ほどの4つの属性を、足す火水土風ね、それぞれ同じ属性を足したりすることによって、強力な魔法が使えるように鳴るわ」 「トライアングルってことは、{{英数字}}3つってこと?」 「そのとおり、一つだと、ドット、二つだとライン、{{英数字}}4つでスクウェアね」 なるほど……。 「ミス・ヴァリエール、授業中に私語をするなら、錬金をやってご覧なさい」 しまった、ゆまとのおしゃべりのせいでルイズのお姉ちゃんが指名されちゃった。 どうしよう、私はキョーコにもマミお姉ちゃんにも錬金なんて習ってない、習ったのは分身魔法と結界と、銃の出し方と、大砲の出し方だけだ。 ティロ・フィナーレなんてしたら授業がめちゃくちゃになっちゃうし……。 「わかりました」 ルイズのお姉ちゃんが答える。 わたしは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 そうして、教室の前に歩いていったお姉ちゃんは不思議と緊張をしている様子だった。 そして、他のクラスメートの人達も、なんでだろ? 「ミス・ヴァリエール、錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」 目を閉じて呪文を唱え始めたルイズのお姉ちゃんはとても綺麗だった。 わたしを魔法少女にした、織莉子お姉ちゃんよりも、ある時突然消えてしまったほむらおねえちゃんと同じくらいに綺麗だった。 このクラスでは赤いメガネのお姉ちゃんと、キュルケお姉ちゃんくらいしか、ルイズのおねえちゃんと同じくらいに綺麗な人はいない。 そして、ルイズのお姉ちゃんは杖を振り下ろした。 その瞬間机ごと石ころが爆発した。私はキョーコに習った結界魔法を全開で使い自分自身を守ったけど、ルイズのおねえちゃんと先生は黒板に吹っ飛ばされた。 教室の中にいた使い魔たちが暴れだし、教室の中はすごい騒ぎになる。 ――これなら、ティロ・フィナーレをしてたほうが良かったかも。 「怪我をした人はゆまに言ってね? 治してあげるよ!」 近くで傷を抱えていた使い魔や、メイジの人たちに回復魔法をかける、それでもソウルジェムは曇らない、大丈夫、どんどん使える。 そうだ、先生とルイズのお姉ちゃんは! すすで真っ黒になったルイズのおねえちゃんがムクリと立ち上がり、ポケットから取り出したハンカチですすを吹きながら淡々とした声で言った。 「ちょっと失敗しちゃったみたいね」 「おねえちゃん大丈夫!」 「だいじょうぶよゆま、それよりも先生を回復させてあげて」 「うん!」 そうしている間にも教室中からゼロのルイズだの、 「いつだって魔法の成功率ゼロじゃねえかよ!」 といった声が聞こえてくる。 そっか、だからあの時ゼロのルイズってキュルケのお姉ちゃんは……って、大変、気絶した先生を回復させないと! 前ページ次ページネコミミの使い魔
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 魔法学院の教室は、以前大学見学のときにみた講義室のようだった。 ただ、全体が石造りだし、天井の明かりは蛍光灯ではなく、何か白熱電球のような光がふわふわと浮いていたりするのだった。 「(うーん、魔法だ・・・)」 康一は改めて、ここが魔法の世界だということを確認した。 ルイズと康一が入ると、教室のあちこちからクスクスという笑い声がする。 ルイズはそれが聞えないふりをしていたが、康一からはルイズの耳が赤くなっているのがわかった。 教室を見回すと、様々な動物がいる。というか見たこともないような生き物があちらこちらでうようよしている。 でっかい目玉おばけがふよふよと浮いていたり、下半身が蛸の女性が大きなあくびをしていたりするのが見える。 康一は目を擦ってみたがやはり見間違いや幻覚ではないようだ。 誰も騒ぎにしないところを見ると使い魔というやつなのだろう。 その中に朝出会った赤くて大きなトカゲをみつけた。 案の定、その近くの席にキュルケが座っていた。周りを男達に囲まれているのを見て「やっぱり男のほうが放っておかないよなぁー」と思う。 向こうもこちらに気づいて、康一にひらひらと手を振ってきた。 こちらも手を振り返したら、ルイズに後頭部を叩かれた。 ルイズが席の一つに座ったので、康一も隣に座った。 ルイズが変な顔をした。 「あんた、なにやってんの?」 「なにって・・・」 「そこはメイジの席よ。使い魔は座っちゃダメ」 「じゃあ、どこに座ればいいのさ!」 どこを見渡しても『使い魔用の席』なんてものは見当たらない。 「床に座ればいいじゃない。」 ルイズはさも当然そうにいった。 康一はまた出て行きたくなったが、ぐっとこらえてルイズの近くの段差に座り込んだ。 石畳に座るとおしりがつめたい・・・。康一は黙って立ち上がると、教室のうしろに立っていることにした。 ルイズはその様子を見ていたが、何も言わなかった。 そうしていると、扉が開いて中年の女の人が入ってきた。 紫色のローブに身を包み、帽子を被っている、ややふくよかで優しそうな人である。 彼女は教壇に立ち、教室を見回すと、満足そうに微笑んでいった。 「皆さん。春の使い魔召還は、大成功のようですわね。『メイジを知るには使い魔を見よ』といいます。このシュヴルーズ、みなさんが立派に使い魔を召還できたことを誇りに思いますよ。」 クスクスという笑い声が教室のあちこちから聞える。 シュヴルーズは教室の後に立っている康一を見つけると、誰だろうかとしばらく考えていたが、思い至ったらしい。 「ああ、そこの平民の男の子は、ミス・ヴァリエールの使い魔ですね?なかなか個性的というかなんというか・・・」 と先生が呆れたようにいうと、教室がどっと笑いに包まれた。 ルイズは顔を真っ赤にして身を縮めている。 シュヴルーズはさっと手を振り、教室の笑いを沈めると、教師の顔に戻って言った。 「それでは授業を始めます。私の二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです。二つ名の通り、『土属性』のメイジです。では、まずはおさらいから。魔法の四大系統はご存知ですね?」 教室を見回す。 「ミスタ・マリコルヌ?」 名前を呼ばれた太っちょな生徒が立ち上がった。 「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。「火」「水」「風」「土」の四つです!」 シュヴルーズは頷いた。 「よくできました。ミスタ・マリコルヌ。これに今は失われた『虚無』の系統を加えて、全部で五つの系統があります。我々メイジは、今までこの始祖より与えられた『系統魔法』を使い、人々の暮らしを豊かにしてきました。」 シュヴルーズは講義する。魔物から土地を解放し、開拓し、建物を立て、暮らしに必要なものを作る。病気を癒し、天候を読み、人々を守る。魔法の恩恵があるからこそ今の世の中があるのだと。 康一はうーん、と腕組みをした。なるほど、メイジが威張るのにも理由があるんだなぁ~。 シュヴルーズは教卓を右に左にと歩きながら続けた。 「そうした系統魔法の中で、『土』は一際生活に密着した属性であると言えるでしょう。そこで、まずは皆さんに『土』系統の基礎である、『錬金』のおさらいをしてもらいます。」 そういうと杖を振った。 教卓の上に数個の石ころが並べられる。そのうちの一つに杖を当てた。 シュヴルーズが短いルーンを唱えると、そのただの石ころが一瞬眩しく光り、黄金色の金属に変わっていた。 「う、うわぁー!ただの石っころが黄金になったぁー!!」 康一は思わず声をあげた。 教室中からまた小さな笑い声がする。 ルイズは康一をキッと睨み、ぱくぱくと口だけで「あんたは黙ってなさい!」と言った。 シュヴルーズは康一のことを少し見た。 「・・・いいえ、これは黄金ではなく真鍮です。私はただの『トライアングル』ですから・・・。黄金練成は『スクウェア』クラスでないと不可能です。」 教室を見回す。 「みなさんのほとんどは『ドット』か『ライン』ですが、真鍮への練成は『ドット』クラスでも可能です。」 「せんせー!『ゼロ』クラスでも可能でしょうかー!」 金髪の少年が手を上げて言うと、教室がどっと笑いに包まれた。 ルイズがその場でがたっと立ち上がった。 「ギーシュ!あんたは黙ってなさいよ!」 「別に、ぼくはただ授業における健全な質問をしただけだよ。無駄口は慎みたまえ『ゼロ』のルイズ。」 金髪の少年は手に持った薔薇で口元を隠し、にやりと笑った。 なんとなく康一はむっとした。 「はい、そこまでです。静かにしなさい。」 シュヴルーズが手を叩くと、再び教室が静かになる。 「ミスタ・グラモン。お友達を挑発するものではありません。」 シュヴルーズが注意すると、ギーシュは「かしこまりました、ミセス。」と大仰に一礼をした。 「では、ミス・ヴァリエール。あなたに、この真鍮への錬金をやってもらいましょうか。」 教室がどよめいた。 「え、わたしですか?」 ルイズは自分を指差した。 「そうです。さぁ、教卓の前に出てきなさい。」 と机の上の小石を杖で示した。 ルイズはなぜか立ち上がらない。どうしようかと迷っているようだ。 発表するのが恥ずかしいのかな?だとしたら意外な一面だ。と康一は思った。 「さぁ、恥ずかしがらずに!私はあなたが非常に勤勉な生徒であると聞いてますよ?落ち着いてやれば大丈夫です。さぁ、失敗を恐れずに!」 シュヴルーズは促した。 ルイズはそれでも迷っていたようだが、やがて決心したように立ち上がった。 教室から悲鳴が上がった。 「ルイズ、やめて。」 キュルケがおびえたように言う。 「うわぁー、ゼロが魔法を使うぞぉー!」 「みんなかくれろぉー!!」 それらの声を意に介することもなく、ルイズは緊張した面持ちで教室を降りていく。 ルイズがシュヴルーズ先生の前に立ったころには、教室内の生徒は皆机の下に隠れていた。 シュヴルーズはそんな生徒達を不思議に思ったが、とりあえずルイズに試させることにした。 「さぁ、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を思い浮かべるのです。この場合は真鍮ですね。」 ルイズはその言葉にこくりと頷くと、一度大きく息をして手にもった杖を振り上げた。 思い切ったように、目を瞑り、杖を振り下ろす。 その瞬間。石ころが机ごと爆発した。 爆炎と机の破片が飛び散る。生徒達は机の下に隠れて無事だったが、シュヴルーズは至近距離で爆発を喰らい、吹き飛んだ。 教室の後方にも爆風が及んだ。 「ACT3!」 康一はとっさにスタンドで身を守った。 だが、隠れ切れなかったほかの使い魔は爆風と爆音でパニック状態になる。 火トカゲは火を吹き、バジリスクはカラスを石にした。目玉オバケの触手に絡み取られたマリコルヌの股間に大蛇が噛み付いた。 「うぎゃぁーー!!!」 教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。 一方この惨状を巻き起こした張本人といえば、最も近くで爆発を受けたはずなのに、吹き飛ばされもしないで立っていた。 ただ、全身煤と埃まみれで、服はぼろぼろ。スカートが破れて、少しパンティが見えていた。 こほっ、とルイズは煤で真っ黒な咳をした。 「ちょっと失敗したみたいね。」 教室中から怒号が飛んだ。 「どこがちょっとなんだよ!この魔法成功確率『ゼロ』のルイズがぁーーー!」 「だからやめてっていったじゃない!」 「メディック!メディーーック!」 「もう、ヴァリエールは退学にしてくれよ!!」 康一は、ようやく『ゼロ』の意味を理解した。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 午後 彼女は授業を終え自室に戻る最中だった。 当然カイトも一緒だ。 今日は何もなく、いい気分だった。 周りのものがあからさまに彼女に皮肉を言わなかったのである。 また、昨夜つっかえたものを吐き出したこともあるだろう。 いつもと変わらない世界が新しく見えた。 そんな感じで廊下を歩いているとメイドが突然声をかけてきた。 ルイズはその声に振り返るとそこには自分よりはるかにスタイルのよい少女がいた。 この生意気な体の女は誰? 「えと、あなた誰だったっけ?」 その問いに慌ててメイドは答える。 「え、あ!す、すいません。私はこの学院のメイドをさせてもらっているシエスタといいます。 昨日のギーシュ様の件についてのお礼をしたいのですが…」 そこまでいわれルイズは思い出した。 そうだ、あのときギーシュにひたすら謝ってた…。 話を聞くとどうやら自分の不手際を助けてくれた2人にお礼がしたいらしい。 どうか厨房まで来てくれないか、と彼女は頼んだ。 だがその誘いをルイズは断った。 「別にいいわよ。あれは勝手にやっただけの事だから」 「で、でも」 食い下がるシエスタを見てルイズはカイトを見る。 「私は休んでいるから、あんただけでも行って来なさいよ」 「…ハアアアアア」 それじゃ、と言ってルイズはその場を去った。 残されたのはシエスタとカイトの2人だけ。 彼女はルイズを誘うのを諦めたのかカイトの方を見て微笑む。 「それでは、こちらにいらしてください」 そういってカイトを連れ出そうとする。 了解したのかカイトは声を出した。 「…ハアアアアア」 ビクッ! 彼女の反応は分かりやすかった。 普通なら、「わかった」とか言う所をいきなり唸るともため息とも取れない声を出したのだ。 ルイズだって未だに慣れていない。 震えながらも彼女は声を出す。 「あ、あの。あなたは平民の使い魔なんですよね?」 「…ハアアアアア」 こればかりははっきりいって相手が悪い。 少し涙目になりながらシエスタはカイトを厨房へと連れて行った。 何度か勇気を振り絞って話しかけてみたがすべて撃沈だったと言う…。 場所は変わり厨房 待っていたのはコックとその料理長である。 「『我等の剣』が来たぞ!」 彼はうれしそうに大声で言う。 どうやら歓迎しているようだ。 「よくシエスタを助けてくれた。あの生意気な貴族がお前にコテンパンにやられた時はスカッとしたぜ」 「…ドウモ」 彼は豪快に笑う。 マルトーはカイトを無理やり椅子に座らせご馳走を持ってくる。 それを見て彼は不思議そうにそれを見る コレハナニ? 「The World」では食料などない。 仮想の世界なのだから当然だ。 だからカイトにとってそれは未知のアイテムにしか映らなかった。 ご馳走を出しても何も反応しないカイトにマルトーは不思議そうな顔をする。 (もしかしてこいつロクなもの食わされてねえんじゃないのか?) 彼はカイトが作られたモノだとは知らない。 だからカイトのことをこう曲解した。 ご馳走に反応しない→今までロクな物を食わされたことがない →主人がそうするようにした→その主人→貴族=敵! ぜんぜん違う。というか論点がずれている。 「けっ!これだから貴族ってやつは!」 だがカイトはそれを否定する言葉を出すことは出来ない。 彼がヒートアップしていくのにシエスタは気づいた。 この悪くなってきた空気をかえようとカイトに声をかける。 「あの、カイトさんって言うんですよね?これはシチューって言って…」 そういってスプーンを持たせシチューをすくわせる。 一から教えていくシエスタはまるで出来の悪い弟を見る姉のようだった。 カイトは難しそうにスプーンでシチューをすくい口に入れる。 瞬間、彼は満たされていく感じがした。 なるほど、ルイズが厨房に行けとあの日言われたのはこのことだったのだろう。 口の中の料理が彼の舌を刺激する。 以前グルメのカードを送られたときは「ナイ」と返した。 だが今なら彼は「シチュー」と返すだろう。 普通の人間なら当たり前の事が彼にとっては革命に近かっただろう。 シエスタは一心不乱にシチューを食べるカイト見て不憫に思っていた。 それほどまでにひどい物しか食べてこなかったのだろうか、と。 そして、無邪気な子供を見ているようで、かわいいとも思ってしまった。 最初は怖かった。何者も寄せ付けない雰囲気に。 でも、助けてくれた。 決闘のときは怪我をすると思った。 自分のせいで。 だけど、彼は勝った。 シエスタは微笑んだ。 いつの間にか周りはにやついている。 いつもなら顔を赤くさせ、逃げてしまうところだが、 今日ぐらいは良いだろう。 (もっと、あなたのことが知りたいです。カイトさん…) 次に来たときは自分の料理をご馳走させようと誓ったシエスタだった。 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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「――ルイズちゃん。今私たちがどこに向かっているか、差し支えなければ教えてくれないかね?」 「食堂よ」 「ああ、朝食をとるんだね!それには賛成だ。実を言うと私はさっきからお腹がペコペコでね!」 食堂に着いた双識は高級レストランさながらの豪華な佇まいに感心した。 天井からはシャンデリアが吊り下げられ、銀の燭台が瀟洒な皿を飾りたてている。 並べられている料理は朝食とは思えないほどに豪勢で、朝食を余り摂らない双識は、見るだけで胸焼けがして来そうだった。 あたりは既に食事を始めている生徒や教師で賑わっている。 その歓談の間を縫うようにして、ルイズは中央テーブル端の席に座った。 双識もその横に座ろうと思ったが、席の両側は既に食事をしている生徒で埋まっていた。 その上、ルイズの前にある料理は、どう控えめに見ても二人分の量があるようには見えない。 「これはまた随分とおいしそうな料理だね。――で、私はどこに座って、何を食べればいいのかな?」 「あんたは、これ」 ルイズの指さす先――床を見ると、そこには、堅そうなパンと粗末なスープが置いてある。 ひょっとして、いやひょっとしなくても、これが自分の食事なのか。 双識はルイズの顔を、見る。淡い希望を抱いて。 「あんたみたいな使い魔は本当は外、私の特別な計らいで中で食べられるんだから感謝して欲しいぐらいね」 双識の視線を意にも介さず、的外れな慰めをかけるルイズ。 ルイズはあくまで使い魔と主人の上下関係をはっきりとさせておきたいらしい。 「――モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独り静かで豊かで……」 「馬鹿なこと言ってないで、早く食べなさいよ」 双識は諦めて外見通りに堅いパンを囓りながら、食事する生徒たちを見渡す。 何人か好みに合う生徒がいたらしく、双識の顔が緩む。それをルイズが目ざとく見つける。 「言っとくけど、他の生徒に手を出したら、殺すからね」 「ああ、ルイズちゃんはそれほどまでに私のことを愛して――」 「違うわよ!平民と貴族は身分が違うの。もしバレたら、即刻打ち首よ。それでとばっちりを受けるのは私なんだから」 なんだそんなことか、と双識は首を振る。 「それは安心したまえ!私はルイズちゃん一筋なんだ!」 「全然わかってないじゃないの……」 食事を終えたルイズと消化を終えた双識は、授業を行う教室に移動した。 魔法の授業をするぐらいだからと、双識はもっと特殊な部屋だと思っていたのだが、意外なことに何の変哲もない講義室だった。 そして、食堂の出来事から半ば予想していたことだが、やはり双識は席に着かせてもらえなかった。 そうこうしているうちに授業が始まるのか、中年の女性が入ってくる。 この女性も魔法使い――メイジなのだろう。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね」 女性は生徒全員を見渡す――と、ある一点で目が留まる。 「あなたは随分と変わった使い魔を召喚したようですわね。ミス・ヴァリエール」 女性教師の冗談に、教室のあちらこちらからクスクスという笑いが漏れる。 「なんたって、ゼロのルイズだからな!」 「何ですって!かぜっぴきのマリコルヌの癖に、私を侮辱するの?」 太った生徒の飛ばした野次に敏感に反応するルイズ。 売り言葉に買い言葉。 あれよあれよという間に、ルイズとマリコルヌという生徒は口げんかを始める。 その熱気にあてられたのか、教室中もにわかに騒がしさを増した。 結局、例の女性教師が魔法で場を強引に纏めて授業が始まった。 時々不明瞭な単語が出てくるものの、授業で説明する内容自体は昨日ルイズに聞いたことと変わらない。 が、実際に目の前で魔法が使われているのをじっくりと見るのは初めての体験だ。 『練金』と言う魔法らしく、目の前で石が金属に変わる。それはとても双識の興味を引いた。 食い入るように教壇を見ている双識を、ルイズは不審そうに見る。 「――何よ、そんなに集中しちゃって。授業がそんなに楽しい?」 「魔法をじっくり見る機会は私にとっては初めての体験だからね。少なくとも、種が割れた手品よりは面白い」 「テジナ――って何?その――」 「ミス・ヴァリエール!授業中の私語は厳禁ですよ!」 教壇から厳しい叱咤の声が飛んでくる。 私語がばれたのだろう。さっきまで説明をしていた女性教師が、腰に手を当ててこちらをにらんでいるのが見えた。 「すみません……ミセス・シュヴルーズ」 「授業中に私語をしているほど余裕なら、ミス・ヴァリエール。『練金』はあなたにやってもらいましょう。さあ、前に出てきなさい」 女性教師――シュヴルーズの言葉に教室の空気が変わる。不思議そうな顔をするシュヴルーズに、キュルケがおずおずと言う。 「あの……ミセス・シュヴルーズ。それは止めておいたほうが……」 「何故ですか?ミス・ヴァリエールは努力家だと聞いています。自己研鑽の機会を与えるのが何か不味いことなのでしょうか?」 「「「「「「爆発します!!」」」」」」 教室の中にいるルイズを除いた生徒全員の声がハモる。 だが、シュヴルーズには生徒たちが何故猛反対するのか、その理由が全くわからなかった。 彼女はルイズの仇名と、その由来を知らなかったのだ。 「――とにかく『練金』はミス・ヴァリエールにやってもらいます。さあ、練金したい金属を強く心に思い浮かべて」 その決定に、生徒たちの顔が引きつる。泣き出す生徒や、念仏を唱えだす生徒もいた。 「何よ!あんたたち!今度こそは成功するに決まってるんだから!」 そのどこから来るのかわからない自信を胸に、ルイズは石と向かい合う。 シュヴルーズは真剣な表情で杖を振るその様子を、自分の過去の姿を重ね合わせる。 そうそう、私も魔法を覚えたての頃はこんな感じ―― 盛大な爆発が起こった。 使い魔が暴れて人が飛び人がぶつかって物が壊れて使い魔にぶつかり使い魔が暴れて―― ルイズの爆発から教室は一転、阿鼻叫喚の地獄と化していた。 「だからゼロのルイズにやらせるなって言ったのよ!」 「俺の使い魔が!ラッキーが!蛇に飲まれちまった!ラッキー!」 「大きな星がついたり消えたりしている……彗星かな?違うな、彗星はもっと、パァーッって動くもんなあ……」 生徒の絶叫が聞こえる。いくつか断末魔も混ざっているようだ。 原因の一端を担ったシュヴルーズは床に倒れ、筋肉の赴くままに痙攣を繰り返していた。 その余りにも不気味な体操に、生徒が何人か失神する。可哀想だが、向こう三ヶ月はあの動きが夢に出てくることだろう。 パニックは、もはや収集がつかない状況になりつつあった。 「ふうん。なるほど――ね。だから『ゼロ』か」 双識も爆発に巻き込まれてはいたが、二次災害の範囲からはどうにか逃れていた。 教室の隅の柱に背中を預けて、教壇付近で生徒たちに囲まれているルイズを見る。 生徒たちの文句を浴びているようだが、ルイズはそれをどこ吹く風といった調子で受け流していた。 煤で汚れた双識の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。 どうやらルイズもこの世界では『普通』ではないようだ。 かつての世界で、双識がそうだったように。 行き詰まった殺人鬼を召喚した、行き詰まった魔法使い。 言葉にするとそれは随分と滑稽な有様だろう。 自分の弟なら、こう言うに違いない。 「――傑作、だな」 (ゼロのルイズ――合格) (第四話――了)
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虚無の日。それはいわゆる休日らしい。 おれは今日はのんびり過ごそうと思っていたのだが、ルイズのこの一言によってその願いは砕かれた。 「出かけるわよ」 「いつ?どこに?だれが?なにを?なぜ?どのように?」 おれの5W1Hを無視してルイズは部屋をでる。 畜生!おれに安らぎの日は無いのか!おれの人権は何処に言った! 「もともと犬でしょあんた」 そうだった。 「フーケの時は大活躍だったしね。何か買ってあげてもいいわよ」 よし、すぐ行こう! 意気揚々と城下町にやってきたおれだが… 「イマイチだな」 あまり面白い物はなさそうだ。 俺が来たのは単純におやつが欲しかったからだ。 この世界にはコーヒー味のチューインガムは無いらしい。 そもそもガムそのものが無いんだそうだ(ケーキはあるのになー)。 だから代わりの物でも、と思ったのだがこんな所にまともな物は無いだろう。 厨房で甘い物を探していた方が幸せだった。 さらば我が幸福よ。 まあでも、折角きたので色々と見て回ることにした。 人間切り替えが肝心だ。おれ犬だけど。 通りにある店を見回って遊んでいたがあまり面白い物は見つからない。 やっぱ来なけりゃ良かったかなー。 その時、路地裏に人の気配を感じた。 おれは路地裏を覗き込む。そこには何と… 「ヒック。どうせ僕なんてたいした事ないんだー」 酔っ払いがいた。 あれ?でもコイツどっかで見たような… 「ケティには階段から落とされるしー、モンモランシーには爪を剥がれるしー」 あ、やっと分かった。ギーシュだ。 「挙句の果てには唯一の見せ場すら省略されるしー」 そんなこと言われてもなあ。 「僕も、僕にも、僕にだって!」 お、なんだ?メイジの主張? 「出番が欲しいよー!」 ああ、それなら大丈夫だって、実は今回で七回目の投下になるけど、 お前はそのうち四回も出てるんだぞ。 キュルケが四回、タバサが三回。 ほら、キュルケと同点だ。よかったな。 「イギー、行くわよー!」 お、ルイズが呼んでる。じゃあな。 「何かあったの?」 「うん、人生の負け犬を」 「まったくもう、そんなの見てると頭が悪くなるわよ」 クラスメイトにその言い草は無いんじゃねーの? さてしばらく見回っていたがふいにルイズが話しかけてきた。 「イギー?何してるのよ?」 おれは銜えていた物を見せる。 「キャベツにリンゴ…どこで手に入れたの?…あっ!市場を通った時に盗んだわね!すばしこいヤツ!」 ルイズに蹴られた。何でだろ。 そのまま蹴られた事を理由に逃げ出し、適当な店を見つけ隠れるため中に入る。 「は~い、いらっしゃ~…ってアレ?犬?なんだよ客じゃね~のか。シッシッ!」 おれを追い出そうとする店員(おそらく店主)。何か腹が立ったので 「おいおい、おれは客だぜ~?客にそんな態度でいいのかよ?」 「い、犬が喋った~!?」 おい大声を出すな! 「悪い犬はいねが~~~~」 ほら来た、大声を出すからだ、まったく。 「主人から逃げるような犬はいねが~~~」 「いませーん」 「なら何故にこんな所にいるど~~~~」 「ここで買いたい物があるから~」 必死の言い訳。 「ここで買いたい物?」 「そう、ここで」 「でもここって」 ここって? 「武器屋、よね?」 おいおれ、こんな所で犬が何を買うってんだよ。 「いや、武器が欲しくなったんだ」 「何で?」 「何か買ってくれるって言ったろ?」 「なんで武器なの?」 「ザ・フールだけじゃ辛い時もあるからさ~」 「┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨」 「口で言うな口で」 釘宮ボイスでこれもアリかもな。 しばしの睨み合いの後、何とか言いくるめて武器を買ってもらえることになった。 でもおれに武器なんか使えるのか?と思っていたその時! 「な~にが武器が欲しくなっただ。お前なんかその辺の骨でも買ってもらえ」 バカにされた様な声が聞こえてきた。 店主だと思いそっちを睨むが、店主もまた別の方向を睨んでいた。 とりあえず店主が睨んでいる方向を見てみると…誰もいなかった。 だが店主はその空間に話しかける。 「やい!デル公!お前は黙ってろ!」 「ヘン!そんな事言ったって犬に剣なんか振れないこと分かってんだろ!」 おれはその声の主を特定し、ソイツに飛びかかった。 「イテ!何するんだこの犬コロ!」 「うるせー!」 そのままコイツをザ・フールでぶっ壊そうとする 「おでれーた!お前使い手か?」 「そうだ!じゃあ地獄に落ちろ!」 ザ・フールを使おうとするがその剣に何か言われる。 「待て!お前俺を買え!」 「いいぞ!さっさとくたばりやがれ!」 今度こそザ・フールを使おうとするが 「聞いてねーじゃねーか!」 あ、ホントだ。聞いてなかった。 よく話を聞くとコイツはデルフリンガーと言う名前で、意思を持っている武器らしい。 そして握っているヤツの実力も分かるのだとか。 つまりおれは実力者って事だ。良く分かってるなコイツ、気に入った。 「ルイズ、コレが良い」 「コレって…ちゃんと使えるの?」 「大丈夫だよ。で、いくら?」 後半は店主に向かって言った。 「それだったら新金貨で50になります。 あと普通は鞘に入れればおとなしくなりますけど…そいつは勝手に出てきたりしますよ?」 「別にいいぜ」 おれがそう言い、ルイズが金を払う。 これでインテリジェンスダガーのデルフリンガーはおれの物になった。 To Be Continued…
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前ページ次ページ攻撃力0の使い魔 どこか別の次元・別の宇宙の「彼女」と同じく、もはや手足の指では数えられないほどの失敗の後 彼女……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの行った 使い魔召喚の魔法『サモン・サーヴァント』は成功した。 「……亜人?」 ルイズの召喚に応じて現れたのは亜人だった。 この世界の人間の知識では「亜人」としか呼びようが無い。 200サントを超える背丈の、紫色の肌をした女性の亜人。 背中にはドラゴンのような翼が2枚 生えている。 ……女性? いや、違った。 たしかに、亜人の右半身は女性のように見える。 胸には乳房があり、骨盤は大きく丸みを帯びている。 だが それに対して、左半身は男性のように見えた。 胸には脂肪が無く 大胸筋が盛り上がっており、右足の太腿にも逞しい筋肉がついている。 この亜人は、身体の右半分と左半分で まったく違う体型……というか性別をしている。 また、左右非対称なのは 体型だけではなかった。 まず目につくのは、髪。 肩のあたりまで伸びたボサボサの髪は、右半分が薄い灰色で 左半分がくすんだ青色をしている。 その次は、目。 亜人の目は、右が橙色で 左が緑色の オッドアイだった。 さらに 額の中心にも、大きなダイヤ型の黄色い目が付いている。虹彩は赤い。 あと腕も 右と左で明らかに違う見た目をしているが、表面のテクスチャーを張り替えたような違いでしかないので、省略する。 もちろん、どちらも人間のそれとは だいたいの形しか一致しない。 唯一 背中の翼だけは、綺麗に左右対称となっていた。 ちなみに、翼のカラーリングは 外側が黒で内側が紫となっている。 あと特筆すべき外見の特徴は、亜人の体で 衣服のように変色している部分があることくらいか。 人間なら下着をつけているであろう部位は、翼の外側と同じような黒い色をしている。 それが皮膚なのか衣服なのかはわからないが、とにかく人間が下着で隠そうとするような部分が 黒に覆われているのだ。 一般的な男性が 女性と違ってブラをつけないように、亜人の左の胸は顔と同じ紫色をしているのに対し 右の胸は黒色をしている。 もっとも、なぜか腿については逆に、右が黒で 左が紫となっていた。 また、衣服のように見えるわけではないが、亜人の両肩・両肘・左右の腰骨には 翼と同じ色と質感をした ヒレのようなツノのような突起物が生えている。 何の機能があるのかはわからない。 妙にダラダラと亜人の外見を描写することになってしまったが、その亜人の外見は それくらい まさに「異形」と呼ぶにふさわしいものだったのだ。 そんな異形の姿を ようやく脳内で処理し終えたのか、その場に居合わせた者たちは 口々に銘々の感想を述べ始めた…… 「何あれ……」 「と…とりあえず『亜人』としか……」 「禍々しくも ふつくしい……」 人でないのに人の形をしている存在への、生理的な恐怖。 必死で勉強したハズの座学の知識の中にも存在しない 正体不明の亜人に対する恐怖。 そして……そんな世にも珍しい存在を使い魔として召喚したことへの感動。 加えて魔法成功率がゼロでなくなった感動。 ルイズの中で、感動が恐怖に打ち勝った。 使い魔の契約『コントラクト・サーヴァント』を行うため、深呼吸をして、自分が呼びだした亜人に歩み寄る。 それまで静かに周囲を観察していた亜人の3つの目が、すべてルイズに向けられる。 「…………」 目の前の少女が自分に用がある と気づいたのか、亜人は姿勢を低くして目線をルイズに合わせると その緑色の唇を開いた。 「……キミは?」 トーンの押さえられた、女性の声だった。 「……!」 やはり、人語を解するらしい。 人間と同等か それより上の知能を持った亜人である可能性も十分にある。 だが、自分が使い魔とするため呼びだした以上、主人が威厳を失うわけにもいかない。 ちょうど相手の顔の高さも自分にとって都合の良い位置にきていることだし……と、ルイズは そのまま『コントラクト・サーヴァント』を実行に移すことにした。 「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ……!」 杖を亜人の額に……当てようにも、そこには亜人の第3の目がある。 さすがに、正体不明かつ初対面の相手を目潰しで怒らせるわけにもいかないので、ルイズは亜人の眉間に杖を当て、緑色の唇に口づけをした。 「ッ!? おまえ、何を……!」 いきなり唇を奪われて驚いたのか それとも使い魔のルーンが刻まれる痛みに驚いたのかは わからないが、 先程までの冷静さとは うって変わって、亜人は明らかに感情を表に出した。 そんな亜人の 額にある第3の目が発光している。 いや、目が光っていたのではなく、使い魔の証であるルーン文字が刻まれている最中なのだ。 「あ、それは使い魔のルーンが刻まれてるだ…けッ!?」 突如、額に走った鋭い痛みにルイズは悶絶する。 突然の謎の痛みに ふらつき倒れそうになるルイズを、服の首ねっこを掴んで 亜人が支えた。 「ふふふっ……大丈夫かい? それが…今 僕が感じた痛みなんだ」 「……っ!」 召喚者の威厳を保つため、できるだけ迅速に立ち直る。痛み自体は とっくに消えていた。 「…………」 ルイズの召喚した亜人が、3つの目で彼女を見下ろしている。 「……!」 ルイズと 教師のコルベールが、あることに気づく。 亜人の額にルーンが刻まれている。 いや……額…というか……額にある第3の目の中に。 (う…わ……) 眼球にルーンが刻まれる…… 想像するだけで嫌な汗が滲む。いったい どれほどの激痛なのだろう…… (……え? 激痛?) 激痛といえば、先程 突然ルイズを襲った痛みも、分類としては かなりの激痛だった。 沁みるような刺すような鋭い痛み。 目に塩水が入ったときの痛みの強化版のような激痛…… しかも、その痛みが ちょうど額に…… (まさか……) 契約を結んだ その瞬間から、使い魔と感覚を共有した、ということだろうか。 ……視覚でも聴覚でもなく、よりによって 痛覚を。 亜人が、そんな懸念を抱くルイズのほうを向いた。 「……ねぇ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 「っ! な、何……!?」 1回しか言っていないのに、いきなりフルネームで呼ばれた。 記憶力に優れているのか、それとも長い名前に慣れているのか。 「ボクを この次元へ呼んだのはキミなんだろう? キミは、さっき『使い魔』って言ってたけど……説明してもらおうか」 「……! そ、その前に……! あんたも自己紹介しなさい……! ご主人様が使い魔のことを知るのは当然でしょ……!」 「ほう……本気でボクを使い魔にできると思っているのかい」 いきなりの ご主人様を馬鹿にしているような発言。 「う……そ、そうよ! もうコントラクト・サーヴァントは完了してるんだから!」 「……ふふっ、まあいい。僕は……ユベル。闇属性・悪魔族の精霊だ。 もしキミが 長い名前が好きなら『ユベル-Das Abscheulich Ritter』とか 『ユベル-Das Extremer Traurig Drachen』でもいいけどね」 「ゆべるだす……って、え!? アクマぁ!?」 闇属性、悪魔族、精霊。精霊はともかく、闇属性? 悪魔? 「……もしかして…エルフと何か関係が……?」 「闇」「悪魔」といった単語から ごく自然に連想されて 思わず口に出してしまう。 だが…… 「あぁ……キミたちと同じ 魔法使い族のエルフのことかい? 残念だが、ボクには あまり関係が無いねぇ」 「魔法使い…族?」 たしかに、人間のメイジもエルフも 魔法を使いはする。 だが その魔法力には大きな差があり、魔法の使い手として人間とエルフを同列に扱うのは無理がある。 にもかかわらず、このユベルと名乗った亜人は、ハルケギニア最高の先住魔法の使い手であるエルフと そんなエルフを恐れる人間を、 あたかも同程度の種族であるかのように言う。 この亜人が属する「悪魔族」という種族にとって、人間もエルフも大差無いということだろうか……? それとも単に人間とエルフの区別をする習慣が無いだけなのか。 「まさか…本当に悪魔……!?」 人間どころかエルフすら軽視できるほどの存在。 そして、闇・悪魔……闇を担う悪魔…の精霊……? 「悪魔…族って……?」 「そんな種族の亜人もいるのか……」 「闇属性って? 系統?」 「ゼロのルイズが、化け物を……?」 「ってか あれ、男? 女?」 「なにげに胸が大きい」 得体の知れない亜人が出現した ほとぼりはとっくにさめている。 だが、亜人の口にした「闇」「悪魔」という単語は、新たな話題のタネとなっているようだ。 もちろん、そんな存在を「ゼロ」のルイズがいきなり召喚したことも。 「そういえば、さっきから気になっていたんだけど……『ゼロ』というのはキミの あだ名かい?」 「……! そ、それは…っ!」 軽い調子でユベルが問いかける。 もちろん、彼…彼女…彼……とにかく、ユベルはその由来を知らない。 だが ルイズは、不名誉なあだ名のことを話題に出されて言葉に詰まる。 「ふふふっ、そうか……これがキミの『心の闇』なんだね」 心の奥底まで見透かすようなユベルの視線が、ルイズの体を貫く。 「え……?」 「いいよ。今日からボクたちは友達だ。ボクも ある意味、キミと同じ『ゼロ』だからねぇ」 「あんたも…ゼロ……?」 「あぁ。ボクは元々、攻撃力も守備力も0なんだ。もっとも……ボクには そんなもの 必要無いけどね」 「こ、攻撃力と守備力ゼロって……え!? じゃあ戦う力が無いってこと!?」 見るからに化け物チックな この使い魔は、その外見に反して 自分に戦う力が無いと告白した。 せっかく世にも珍しい使い魔の召喚に成功して、ゼロの汚名を晴らせるかと思ったのに…… この使い魔自身も戦う力が「ゼロ」であると言う。 ゼロの魔法使い が 戦闘力ゼロの使い魔 を召喚してしまった。 (べ…別に戦闘能力だけが すべてじゃないわよ……きっと何か それ以上にすごいことができるハズ……!) そう思い直すルイズに、ユベルが声をかける。 「勘違いしてないかい……?」 「え?」 「たしかにボクは攻撃力も守備力も持っていない。けど、戦う力が無いなんて言ってないだろう? 実際、ボクは今まで ほとんど負けたことが無いからねぇ」 虚勢を張っている様子は無い。 むしろ、ゼロだからこそ負けない、とでも言わんばかりに毅然としている。 「……ふふふっ、いずれわかる」 それまで ただ じっと使い魔を観察していたコルベールは、攻撃力0のくだりを聞いて ひとり納得していた。 この亜人は、たしかに「闇」としか言いようの無い性質の魔力を持っている。いや、ある意味「魔力そのもの」と言ってもいい。 それも「神」というものと同等のレベルの存在であることは間違い無い。 だが、この亜人には いっさいの攻撃性を感じられなかった。 そこに「攻撃力0」という自己申告。 とりあえず、この正体不明の亜人に 誰かに危害を加える力は無いらしい。 そのことがわかると、コルベールは生徒たちを教室へ向かうように促す。 そして…… 『フライ』の魔法で校舎に飛んで行った生徒たちはともかく、 ミス・ヴァリエールと その使い魔まで いつのまにか姿を消していることに気づいたコルベールは、 ルイズの使い魔の額に刻まれたルーンが珍しいものだったことを思い出す。 「……あ、スケッチ……」 その頃、トリステイン魔法学院内のどこかの廊下を、やや筋肉質になった桃色の髪の小柄な少女が 双眸を金色に輝かせながら歩いていた。 (十代……どこにいるんだ……十代……) 前ページ次ページ攻撃力0の使い魔
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今は昔 一五六五年頃 王位継承を争った ふたりの女王がいた 一人は女王エリザベス一世 もうひとりは美貌の23歳メアリー・スチュアート ともにチューダー王家の血統を継ぐ親戚同士で タルカスと黒騎士ブラフォードはメアリーの忠実なる家来だった (中略) 二人は捕らえられた そして処刑されるその寸前聞かされたことは 「メアリーはすでに処刑した」 ふたりはこうして処刑された、強い恨みを残して処刑されたのだ タルカスは その筋肉が怒りのため硬直し首を切り落とすのに処刑人は 何本ものオノを折ったという ブラフォードは その長髪がどういうわけか 処刑人の足にからみつきにいくまでくい込んで 死んでいったという そしておよそ300年後吸血鬼ディオによりゾンビとして蘇ったブラフォードとタルカス しかしタルカスは一夜で今度はただのゾンビとして再び歴史の闇に消えた 一方ブラフォードは人の心を取り戻し 300年後の世界の友人ににpluck(勇気)の剣を託して眠った しかしブラフォードは女王のもとにではなく新たな主人のもとへと旅たつ事になった 使い魔は英雄 「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!神聖で美しく!そして強力な使い魔よ! 私は心より求め!訴えるわ !我が導きに答えなさい!」 青い空、緑の草原にすさまじい爆音が響いた 「やった!さすがルイズ!何も召還できてないぜ!」 波紋が吸血鬼に流れるような勢いで笑いが広がった 「ゼロの分際で高望みしすぎたんだ」 「さようなら!ルイズ君の事はわすれない!」 「退学ゥ!退学ゥ!」 「貴族として終了のお知らせ」 「ちょっとまて!な・・・何かいるぞッ!!!」 野次を飛ばしていた内の一人が叫んだ 「こ・・・これは・・・HE・・・I・・・MI・・・・N・・・・」 その時ルイズの周りでわかりやすく「プツン」と決定的何かが切れた音が響いたという 「ミスタ・コルベール!もう一度召還さs「NO(だめでございます)」 「(しかし成功には変わりない!今すぐ契約しにいかないと!)」 ルイズがそう思ったときにはすでに使い魔に向かって全力で走り出していた! ズギュウゥウウウン! 「UOOOOOOOOOOOO!!!!」 ブラフォードは激痛により目を覚ました 「(ここは何処だ・・・!た・・・太陽!俺はゾンビになって倒されてあの世に行ったはずでは・・・」 「お・・・おわりました!」 ガクガク震えながらもルイズは契約できたと伝えた 「ふむ・・・・珍しいルーンだな・・・」 とコルベールはスタープラチナもびっくりなスピードと精密動作で ブラフォードの手に刻まれたルーンを紙に写した 「さて教室へ戻ろうか」 コルベールがそう言おうとしたときには既にほぼ全員が帰っていた 「アンタ名前は?」 「俺の名は・・・ブラフォード・・・黒騎士ブラフォードだ・・・」
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浮かぶ雲によって太陽が遮られた草原の真ん中で、少女は呆然と目の前の地面を見つめていた。 周りからは先程までの喧騒が消え、異様な静寂で満ちている。 何回も失敗を重ね、他の生徒に嘲笑されながらもやっと「サモン・サーヴァント」に成功した その少女、ルイズ・フランボワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの前には、彼女が今召喚したばかりの使い魔がいた。 しかしその使い魔は、彼女が望んでいたドラゴンやサラマンダーなどの幻獣の類ではない。 また、烏や梟、猫や大蛇などの普通の動物でもなかった。 彼女が使い魔として呼び出したもの、そう、それは―――― 植木鉢に植えられた、一本の『草』だったのだ。 「…………何なのよ、これ」 彼女の呟きは、静寂の中を悠々と横切る風に流されていった。 使い魔はゼロのメイジが好き 第一話 何故使い魔を呼ぶ神聖なる儀式「サモン・サーヴァント」で単なる『草』が召喚されたのか、 そしてこれは、一体何なのかというルイズの疑問は、 「…………ぶあっははははははははは!!」 彼女の召喚を見ていた生徒の一人が発した笑い声によってかき消された。 ガラガラ声で笑い続ける彼はその手でルイズを指さし、可笑しくてたまらないというような声で喋り出す。 「流石は『ゼロ』のルイズだぜ!召喚の儀式でただの草を呼び出すなんてよ!」 その声で我に返ったほかの生徒は、彼に同調するように笑い出す。中には、ルイズに罵声を浴びせる者までいた。 「そうよ、珍しく成功したと思ったらこれだもの」 「使い魔ぐらいきちんと呼べよ、ゼロのルイズ!」 「どういう事だよッ!クソッ!草って、どういう事だッ!魔法ナメやがってクソッ!クソッ!」 「……ちょっと間違っただけよ!失敗なんかしてないわ!」 彼らの嘲笑混じりの罵声に、彼女は耳まで真っ赤にして反論する。 そして後ろを振り返り、儀式の監督を行っていた教師に叫んだ。 「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しをさせて下さい!」 すると、生徒達の間からローブを纏った頭髪が寂しい男が姿を現した。その表情は困惑しきっている。 彼こそが儀式を監督していた教師、コルベールだった。 「うむ……これは……」 滅多に見ない彼の困った表情を見て、ルイズはもう一度チャンスが貰えるかもしれないという淡い期待を抱いた。 だが、その期待は次の言葉により砕かれることになる。 「いや、それは駄目だ。どんなものを呼び出そうと、召喚だけはやり直す事は出来ない」 その返答に、ルイズは少し苛立つ。やり直せないならどうすればいいのだ。こんな草が使い魔になっても、一体何を してくれるというのだろうか。 いつのまにか出てきた太陽に照らされて、強く輝く彼の頭。それを見るも無残な事にしてやろうか、そんな事を考えている間も コルベールの話は続いていた。 「君も分かっているだろうが、今回呼び出した使い魔で今後の……」 そこまで話したところで、唐突に彼の言葉が止まる。 想像の中で彼の頭の焼畑農業を行っていたルイズも、それに気付いて顔を上げた。 「どうかしましたか?ミスタ・コルベー…」 「み、ミス・ヴァリエール!君、あの『草』に何かしたか?」 その視線はルイズの方には向いていない。ルイズの後ろ、さっき召喚した草の方に向けられていた。 コルベールの顔からはさっきまでの困惑が吹っ飛び、ただ驚きと狼狽の色だけが浮かんでいる。 「『草』ですか?別に私は何もしてませんけど」 急に変わった彼の表情を、彼女は訝しみながら質問に答える。あんな草の何に驚いているんだろう、この人は。 「ならッ!ならあれは何なんだミス・ヴァリエール!答えなさい!」 彼の表情が「驚き」から「焦り」に変わった。まるで、信じられないものでも見たかのように。 その表情に圧倒され、ルイズも後ろを振り返る。半分はこの男に対する呆れの気持ちで、そしてもう半分は恐れの気持ちで。 そして彼女は、本当に信じられないものを見る。魔法を自由に扱うメイジでさえ、思わずうろたえるものを。 後ろを振り返って草を見たルイズ、その鳶色の瞳が瞬時に驚きと困惑、そして恐怖に塗り替えられた。 彼女が呼んだ『草』――――さっきまで確かに萎れて土の上に倒れていたはずの『草』が、起き上がっていた。 言葉さえも出ないルイズとコルベール、そして事の異常さに気付いた生徒達が見守る中、その草はゆっくりと起き上がる。 乾いた地面に水が染み込むように、ゆっくりと、だが力強く。 そして完全に起き上がった『草』は、一度大きく震えると、人間でいう『頭』のような部分を持ちあげる。そこには、猫のような 目と口が存在していた。 不意に、生徒達の一群がどっと崩れた。未知の植物に恐怖した生徒が、この場から逃げ出そうとしたらしい。 逃げようとした生徒と留まろうとした生徒が入り乱れ、たちまち辺りは混乱した。 そんな混乱を愛らしい二つの瞳で見つめながら、この世界に召喚された『猫草』は、そんなの関係ないねとでも言うように 小さな欠伸をして、ウニャンと鳴いた。 To Be Continued...?
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戦う司書シリーズからモッカニアの本を召喚 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-01 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-02 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-03 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-04 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-05 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-06 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-07-1/2/3 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-08 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-09-1/2 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-10 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-11-1/2 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-12-1/2 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-13 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-14 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-15 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔-16
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注)前半はネタが混じっています。 コルベールがオスマンにガンダールヴの事を報告する下りですので、あまり好きではないという方は飛ばして下さい。 ミス・ヴァリエールが召喚した人間。彼は一見異世界から来たただの平民にすぎない。だが、彼の左手に刻まれていたルーン、 あれはまさか……伝説の使い魔のルーンではないだろうか… おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 幕間其の二 伝説の使い魔ガンダールヴ 図書館で一人の教師が調べ物をしている。時折本を取り出してはパラパラとめくり、ため息をついて本を戻す。 何冊目になるだろうか、教師のみ閲覧を許される部屋で本をめくっていた彼はとある本を食い入るかのように読みはじめ、 やがて本を持って走り去った。 トリステイン魔法学院の院長オールド・オスマン。白い口髭と長い白髪に覆われた外見の彼は一見するとただの老人に見えるが、 その正体は年老いてなお膨大な魔力を持つメイジである。 そんな彼は今本を読んでいる。近くの椅子ではオスマンが雇った秘書、ミス・ロングビルが同じく本を片手に何かを書いている。 ゆったりと無限とも思われる時間が流れていく空間は突然入ってきた太陽、もとい光が頭に反射して眩しい コルベールが入ってきた事によって壊された。 「たた、大変です!オールド・オスマン!」 ちょうどシーザーという青年が吸血鬼になった祖父の弟子を倒すという山場を中断されたオスマンはあからさまに不機嫌な様子で本、 いや吸血鬼が連載しているという噂のある「戦闘潮流」と題した『マンガ』を置く。 「大変な事などあるものか。『味方だったはずの男が吸血鬼になった』事に比べればすべては小事じゃ。 …ええとなんだっけ………そう…コルベールよ。」 しかしコルベールは先程まで図書館で読んでいた『始祖ブリミルの使い魔たち』を押し付け、とあるページを指差す。 それに何事かを察したオスマンは 「ミス・ロングビル、席を外しなさい」 とロングビルに退席を命じる。 ロングビルはぼうっとした顔をしていたが、怒ったような泣いたような不思議な顔をしながら先程まで書いていた手紙を持ち、 ふらふらと部屋を出ていった。 ロングビルをちらちらと見るコルベールの目に「あーん!スト様が死んだ!」という手紙の文面が目に入ったが、 訃報を覗くのはよくないと思い直し、それ以上見るのをやめた。 「それでは話を聞こうではないか」 説明を始めるコルベール。 「先日ミス・ヴァリエールが不思議なルーンを持つ使い魔を召喚した事はすでにご報告した通りです。 その後、そのルーンが気になり調べていたのですが、ついに同一の物を発見致しました。 あのミス・ヴァリエールが召喚した使い魔のルーン!彼は間違いなく始祖ブリミルの使い魔、ガンダールヴです!」 オスマンの眉がピクリ、と上がる。 「ほう、始祖ブリミルの使い魔、ガンダールヴとな?」 「はい。何故彼がガンダールヴなのか、何故ミス・ヴァリエールに召喚されたのかはまだわかりませんがこれは大事に違いありません!」 伝説の使い魔が召喚されてきたという事はただ事ではない。それが何かはまだわからないが、いずれにせよ重大な事が起こるのであろう。 だが、万万が一コルベールの口からその事が伝わろうものなら騒ぎになるのは目に見えている。オスマンはとりあえず誤魔化す事にした。 「ふむ、しかしルーンが同じだからといってガンダールヴと決めつけるのは早計かもしれん。」 「…はあ…そうですか」 不承不承ながらも納得するコルベール。 と、突然扉が開かれる。先程出ていったロングビルだ。 「オールド・オスマン!大変です!ヴェストリ広場で決闘騒ぎです!教師達が眠りの鐘の使用許可を求めています!」 「決闘などたいした事もなかろう。どうせ若気の至りじゃろ」 「しかし、決闘しているのはギーシュ・ド・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔の青年です!」 「「なんだと(ですって)!!」」 オスマンが慌てて遠見の鏡を起動させると、二人は広場の様子を食い入るように見つめるのであった。 to be continued…