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- 右手は右のコンガ、左手は左のコンガ が基本。右手で1拍食って15/16や16/16を叩けばあとは自由に自然に出てくる。 戻る コメント 名前 コメント
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質問 左手に同じ武器を装備して二刀流にしてもダメージが倍になりません。左手の攻撃力はどれくらい加算されるのでしょうか? 回答 プリ以外の職の左手の武器の攻撃力は半分、属性ダメージと能力ボーナスは100%加算されます。 プリの場合、左手の武器の攻撃力は0%、属性ダメージと能力ボーナスだけは100%加算されます。 つまり左手に属性なしのプリーストインパクト+10を装備するよりもプリーストモール+1雷ダメージ10の方が強いのです。
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名称 ☆ 分類 威力 弾数 弾速 誘導 リロード HP SPD EN Weight 射撃 近接 防御 備考 プレートシールド 1 シールド - - - - - 500 0 0 250 0 0 0 ラージシールド 2 シールド - - - - - 900 0 0 950 0 0 0 ブレードシールド 2 シールド 200×1 1 - 120 0 280 0 120 350 0 0 0 ハンドミサイル 2 サブ 90×1 24 20 105 - 180 0 0 180 0 0 0 プロトビームシールド 3 シールド - - - - - 740 0 -1102 90 0 0 12 メガブレイド 3 サブ 352×1 1 - 120 0 200 0 -380 280 0 0 0 ビーム内臓シールド 3 シールド 279×1 1 - 11 20 350 0 -255 295 5 0 0 アームレーザーガン 3 サブ 38×3 12 65 1 20 160 0 -270 120 0 0 0 ビームシールド 4 シールド - - - - - 620 0 -415 50 0 0 24 小型ビームシールド 4 シールド - - - - - 420 0 -220 45 10 0 6 ラッシュシールド 4 シールド 69×3 12 75 0 10 400 0 -210 220 5 0 0 ハンドガトリングガン 4 サブ 73×5 45 60 1 - 430 0 0 300 2 0 0 小型シールド 4 シールド - - - - - 480 0 0 130 0 0 0 ハンドグレネード 4 サブ 279×1 6 70 50 - 120 0 0 540 10 0 0 ハンド多弾頭ミサイル 4 サブ 314×1 5 15 42 - 340 0 0 220 0 0 0 ヴァリュアブルシールド 4 シールド - - - - - 800 0 -240 275 0 0 0 オウガネイル 4 サブ 293×1 1 - 240 0 160 0 -500 380 0 0 0 プレデタークロウ 4 サブ 293×1 1 - 120 0 240 0 -480 200 0 0 0 へビィシールド 4 シールド - - - - - 1200 0 -550 800 0 0 12 ゴルドネイルL 4 サブ 409×1 1 - 240 0 100 0 0 110 0 0 0 白昼の乱入者交換所 ブレードシールドB 4 サブ 223×1 1 - 120 0 280 0 -380 350 0 0 0 白昼の乱入者交換所
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唯「今日もムギちゃんのお菓子おいしかったね~」 梓「はい!……って明日こそは練習ですよ!」 唯「わかってるよ~」 なにげない会話なんだけど、唯先輩と一緒にいるこの時間。 私はこの時間が大好きだ。 時々横目で唯先輩を見ながら。 今日もそんな感じで私たちは一緒に帰っている。 唯「明日はムギちゃん何を持ってきてくれるのかな?」 梓「唯先輩!?」 唯「冗談だよあずにゃん」 相変わらず練習はしてくれない。 でもいざとなるとあんな演奏をするんだからすごい。 梓「唯先輩が言うと冗談に聞こえません」 唯「ぶーぶー」 ふてくされた顔もかわいいな。 …いやいや何を考えてるの私は。 慌てた私は話題を変えてみる。 梓「き、今日も寒いですね、唯先輩」 唯「ほんとだよね。もう十二月だもんね~、うう寒い…」 そう言って唯先輩は寒いというジェスチャーをする。 唯「あ、そだあーずにゃんっ」だきっ 梓「はい?にゃっ!?」 …どうやら私にこの話題は逆効果だったみたいだ。 唯「あれー?あずにゃん顔赤いよ?」 梓「なんでもないです!」 梓「じゃ、じゃあ私こっちなんで。失礼しますっ」 恥ずかしくなって逃げてきてしまった。 ほんとは嬉しいはずなのに… いつからだろうか、こんなに唯先輩を意識しだしたのは。 夏?秋?なんかあったかな? もしかしたら初めて唯先輩を見た時かもしれない。 …まあいいや、今日は帰ろう。 翌日、放課後 今日もこの時間がやって来た。 私は唯先輩とならんで歩く。 梓「結局今日も練習できませんでしたね…」 唯「まあまあいいじゃないかあずにゃんや。それよりね…」 梓「どうしたんですか?」 唯「あーずにゃんっ」だきっ 梓「にゃっ!?」 唯「昨日全然抱きつかせてもらえなかったからね、今日は…」 和「あら、あなたたち仲がいいのね」 唯「あ、和ちゃん」ぱっ 梓「あっ…」 唯「和ちゃん今日はどうしたの?」 和「生徒会が今ちょうど終わったのよ、明後日から冬休みだからそれまでに終わらせておきたい仕事がたくさんあるのよね」 唯「へ~そうなんだ。とことで和ちゃん、今日も寒いね~」だきっ 和「分かったから離れなさい」 唯「えー、いーじゃんもうちょっと」 和「はあ…梓ちゃんも大変ね」 梓「あ、いえ…大丈夫…です」 梓「じゃ、じゃあ私こっちなんで」 唯「ばいばいあずにゃん」 梓「はい、失礼します」 はあ… また逃げて来てしまった。 唯先輩ってああやって誰にでも抱きつくのかな? 私だけに抱きついて欲しいな…なんて。 …はっ!そういえば! 唯先輩って抱きつくのはいろんな人にするけど、手ってつないだことあるのかな? うーん…どうなんだろ? 明日唯先輩と手を繋いでみよう。 できるかな?まあ楽しみだな♪ 翌日、放課後 さて、今日もいつものように唯先輩とならんでいるわけだけれども… なかなかうまくいかない。 手の距離はいつもより近くにあるはずなのにあと少しが私にはできない。 唯「あずにゃん、今日はなんだか近いね」 梓「そ、そうですか?そんなことないですって」 唯「いや~、絶対近いよ。…あずにゃん寒いの?」 梓「いや、そんなことは…」 唯「素直になりなよあずにゃん」だきっ あったかい… …まあいっか明日で。 翌日、放課後 よし、今日こそは… 私は隙を狙うために唯先輩を観察する。 唯「あずにゃんそんなに見ないでよ~」てれてれ ああかわいい。 でもこのままだとまた抱きつかれて終わりになっちゃうからね、ここは… 梓「あ、すいません。そんなに見てたつもり無いんですけどね」 唯「えー、そうなの~?残念…」しゅん かわいいな。 …いやいやだからそうじゃなくて! 今がチャンスなんだよ! 私は唯先輩の少し後ろに行くように歩く速さを遅める。 手を伸ばす、そーっと… 唯「あれ?あずにゃんどうしちゃったの?疲れちゃった?」くるっ 梓「あ…いえ、そんなことは…。な、なんでもないです、はい」 失敗した… 後ろにいっちゃダメなのかな? でも後ろに行くしか私には思いつかないし…うーん… 唯「あずにゃん今日なんだか面白いね!」 私は大真面目ですよ。 声には出さず、私はもう一度隙を狙う。 唯「ところであずにゃん、明日から冬休みだね~」 おお、そうだった。 今日終業式したけど、手を繋ぐことで頭がいっぱいで忘れてた。 梓「そういえばそうですね」 唯「そういえば…ってあずにゃん忘れてたの?」 梓「覚えてましたよ!」 私が立ち止まってこの言葉を言ったおかげで、自然と唯先輩の後ろに行くことができた。たまたまだ。 でもここで決めないと、明日からはもう会えないんだよね。 …よし。 私は唯先輩の手に向かって手を伸ばす。 唯「…」 唯先輩の顔を見るのも忘れて。 そーっと… 唯「…」さっ あ…… 私は唯先輩の顔を見る。 唯先輩は前を見"続けて"いる、ように私には見えた。 唯「…あずにゃん今日も寒いね」 梓「あ、はい、そうですね…」 私達は今日も並んで歩く。 何時の間にか私の左手はあったかくなっていた。 唯「あずにゃん、冬休み終わってももよろしくね」 梓「はい、こちらこそ」 こんなに楽しみな冬休みは初めてだ。 ーーーーーー ーーーー ーー えーっと… よろしくとは言ったものの、何をすればいいんだろう? こういう関係になりたいとは思っていたけど、いざなってみると何も思い浮かばない。 困った私はとりあえず微笑みかける。 …困った顔を返してくる。当たり前だよね、突然笑いかけてきたんだもん。 もんもんとした気持ちを抱えたまま、いつもの別れ道まで来た。 唯「あずにゃんばいばーい」 私は右手を離し、挨拶をする。 …少し残念だけど、また明日。 って明日から休みか。 梓「はい、失礼します!」 あずにゃんもどこか嬉しそうにしてくれている。 よかった… ――― 唯「ただいまー」 憂「あ、お姉ちゃんおかえりー」 唯「ふいー、疲れたよ~」 憂「お疲れ様♪ご飯できてるよ」 唯「うん、ありがと」 何時もの何気ない会話。 憂はまだ私達のことを知らない。 唯「いただきまーす」 憂「いただきます」 唯「あー、学校終わっちゃったね~」 憂「明日から冬休みだね~」 唯「クリスマス会、今年も楽しみだな~」 憂「あ、今年もあるんだ」 唯「たぶんあると思うよ~」 憂「それって24日かな?」 唯「うーん、どんなんだろ…?たぶんそうなんじゃないかな?」 憂「そっか…ねえお姉ちゃん?」 唯「ん?どうしたの?」 憂「次の日……25日にさ、私達だけでクリスマスパーティーやらない?」 唯「おおっ、やろうやろう!」 憂「それじゃあお姉ちゃんの大好物、いっぱい作ってあげるからね!」 唯「ありがと、憂。楽しみにしてるよ」 憂「うん、楽しみにしててね!」 唯「ごちそうさま、私部屋行ってるね」 憂「うんっ♪」 クリスマスパーティーかあ… 少しもやもやとしながら私は自分の部屋へ入る。 がちゃ 唯「あっ」 …携帯だ、携帯が光っている。 誰からだろう? 唯「あずにゃん…」 私はあずにゃんに掛け直すことにした。 ーーーーーー ーーーー ーー 梓「ただーいまー」 っていっても誰もいない。 私はカバンとギター、そして制服を置き、着替え終わるとソファーに腰掛けた。 梓「はあ…」 唯先輩と手、繋げたんだな… あったかかったな。 それでその後…… 顔が熱くなるのが自分でも分かる。 まあとりあえず、ご飯でも食べようかな。 私はテーブルにある2千円を財布に入れて家を出る。 梓「おっと」 携帯を忘れるところだった。 梓「いってきまーす」 …ああ寒い。 さっきまで寒く感じなかったのはなんでだろう? 理由は分かっている。 私は携帯を取り出すと電話を掛けた。 梓「…でない」 ご飯の途中かな? またあとで掛けてみよっかな。 2
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前ページ次ページもう一人の『左手』 ――これは……!? コルベールは、思わず身体を堅くした。 ディティクト・マジックでその男の肉体を走査した瞬間、これまで見たことも無い反応が起こるのを感じたからだ。 その長身の男は人間だった。 生物学的に言えば、それは疑いようも無い。 黒革の上下に、襟元からスカーフをなびかせたその男は、見るからに精悍な相貌をしていた。 だが、――同時に、男は『ただの』人間ではなかった。 皮膚、筋肉、神経・骨格をはじめ、ありとあらゆる内臓器官が、コルベールの見たことも無い物質によって組成され、代替され、全身の肉体を構成している。 しかし、しかしそれでも、“彼”は人間なのだ。 それはコルベール自身のディティクト・マジックの反応が証明している。 一体……何者……なんだ!? コルベールは、『サモン・サーヴァント』で、ゲートから出現して以来、いまだ意識を取り戻さない謎の男から、彼を召喚した一人の少女に視線をやる。 少女――ルイズ・ラ・ヴァリエールは、自分が召喚した、もう一人の平民の少年と激しい口論を展開していた。 そう、このルイズという生徒は、学園創設以来の劣等生として『ゼロ』という、不名誉極まりない二つ名で呼ばれている少女だった。その彼女が、またもトラブル――と呼ぶべきかどうかさえ現段階では分からないが――を起こしたのだ。 彼女も所属する、トリステイン魔法学園の生徒は、二年生に進級する際、使い魔を召喚する。この儀式は、魔法学園に於ける必修行事であり、魔法関連の科目でことごとく単位を落としている彼女にとって、この儀式での失敗は留年を意味する。 そして、――案の定と言っては何だが―― 十数回の召喚失敗の果てに、ルイズが呼び出したのは、なんと幻獣でも魔獣でもない、二人の人間であった。 これは前代未聞の事態であった。 召喚に応じたのが人間、と言っても、ただの平民であったという珍妙な事実に衝撃を受けたルイズは、再度の召喚のやり直しを主張する。 が、コルベールはそんな彼女を説き伏せ、ヒラガサイトと名乗る少年と、未だ目を覚まさぬ長身の男に、契約の儀式を結ばせた。 すると、驚くべし、なんと使い魔のルーンが――しかも寸分たがわぬ同じルーンが――その二人の平民の左手の甲に刻まれてしまったからだ。しかも、コルベールの長い教師生活の中でも、まるで見たことの無いような、変わったルーンが。 メイジが使役できる使い魔は、通常一体。 『サモン・サーヴァント』で複数の生物が召喚される場合は、非常に稀であるが、在り得ない訳ではない。しかし、契約の接吻を複数の個体全てと交わしたとしても、使い魔のルーンを刻まれるのは、そのうちの一体であるとされていた。 現役の使い魔が死亡せぬ限り、『サモン・サーヴァント』のゲートが開かないのはそのためだ。 複数の使い魔と同時に契約を交わし、使役したメイジなど、始祖ブリミルくらいであろう。 そう考えた瞬間、コルベールの頭脳にもう一つの事実が閃いた。 始祖ブリミルが召喚した使い魔たちも、また人間であったという伝説を……。 ――これは、どういうことだ……!? そう思い、召喚に応じた二人の平民たちに――片方は眠ったままだったが――気付かれぬよう、ディティクトマジックをかけてみたが、少年の方は、何の変哲も無い人間だった。だが、――この長身の男は、亜人ですらない、まさしく謎の生物と呼ぶべき人間だった。 コルベールは、ルイズに二人の平民――特に、この得体の知れない男との契約を強制した事実を、今になって激しく後悔していた。 「では皆さん、教室に戻ってください」 可能な限り平静を装い、コルベールは生徒たちに指示する。 長身の男が覚醒する前に、教え子たちを出来るだけ、この場から遠ざけた方がいい。 そう思ったからだ。 あとは、未だに少年と口論を続けているルイズだが、……最悪の場合は、彼女を護って、この男と戦う可能性も考えておかねばならない。 「だからっ! お前が何を言ってるのか、全然わかんねえって言ってるんだよ!!」 「いい加減にしなさいよ、この平民っ!! さっきからワケ分かんないこと言ってるのはアンタの方じゃないのっ!! 大体、平民ごときが貴族にそんな口の利き方していいと思ってんのっ!!」 「魔法だの貴族だの使い魔だの、意味不明なこと言ってるのはテメエじゃねえかっ! 頭おかしいんじゃねえか!?」 「あ~~、そこの君、ちょっといいかね?」 「は!? なんスか!? オレいま、このキチガイ女の相手で忙しいんスけど!!」 「きっ、キチガイとは何よっ、この田舎平民!!」 「君は、君とともに現れた、あの男と知り合いなのかね?」 「知りませんよ、そんな奴!!」 「ちょっとアンタ、どっち向いてんのよっ!! こっち向きなさいっ!!」 「ああ!? キチガイがキチガイ語で喋っても、意味分かんねえん……だ、よ……!?」 自分を召喚した少女と、つかみ合い寸前の勢いで争っていた彼は、突然ぽかんと空を見上げて驚きの表情を見せた。 フライ。 魔力によって自分を浮かせ、飛翔する。近距離であれば移動にも使える呪文。 コモンマジックの中でも初歩に属する魔法。 しかし、彼――ヒラガサイトという少年は、半ば茫然としながら、校舎に向かって飛んでゆく生徒たちを見て、呟いた。 「――あれが……魔法……!?」 その表情を見て、コルベールは確信した。 この少年は、メイジを初めて見たのだ、と。 いや、魔法そのものの存在をいま、初めて知ったのだ、と。 ありえない。 およそ、このハルケギニアの住人であるならば、どこの誰であろうが、魔法の存在すら知らないなどという事は、まず考えられない。 ならば結論は、おのずと明らかだ。 ――彼らは少なくとも、このブリミル教圏の人間ではない……? 「はっ! アンタ『フライ』も見たこと無いの!? それこそが、アンタが未開の国の野蛮人である事の証明じゃないのっ!!」 驚愕の表情で上空を見上げる少年を、ルイズは更に罵りつづける。 「ミス・ヴァリエール、いい加減にしなさい」 「でも先生、この平民さっきからスッゴク生意気で――」 「いいから、――落ち着きなさいと言ってるんだっ!!」 「……はい」 普段は温厚篤実なコルベールは、滅多な事で声を荒げるような真似はしない。相手が生徒であれば、それは尚更だ。 だからこそ、その怒声の威力はさすがに大きかったらしく、ルイズは、たちまち静かになった。「……ええっと、君、名前は?」 「ヒラガ、サイトです」 「ここは、ハルケギニア大陸にある、トリステイン王国王立魔法学院。私は教師のコルベールだ。で、――いま私が言った言葉の中で、一つでも知っている単語はあるかね?」 そう言われて、才人はしばらく黙っていたが、やがて悲しげに首を振った。 「……ありません」 「はあ!? アンタいくら何でも、そんなわけ無いでしょっ!?」 「君は黙っていなさい、ミス・ヴァリエール」 「……でも、先生コイツは――」 しかし、コルベールは喚き立てる少女を無視して、なおも才人に質問を続けた。 「では、君の故郷はどこかね?」 「……地球……日本……東京……」 「……」 「聞いた事ありません、か……?」 初めて聞く言葉だった。 ルイズは、もう何も言わなかったが、どこの秘境よソレ?と言わんばかりの表情をしていた。 「ならば――四国、高知という地名は?」 錆びの利いた低い声が、一同の背後から響いた。 「バダン――という名の組織に聞き覚えは?」 そこには、さっきまで意識を失っていたはずの長身の男が立っていた。 その精悍な容貌によく似合う、まるで氷のような冷たい瞳を光らせて。 バカな!? この私が、何の気配も感じずに、むざむざ背中を取られただと!? コルベールは杖を構えながら、無意識に教え子をかばいつつ、男から距離を取った。 長いブランクこそあるが、これでも彼は元凄腕の軍人である。気付かぬうちに素人に背中を取られた事なぞ、20年の教師生活の中でも、一度も無いと言っていい。 つまり――、 素人じゃない。いや、この男、……素人がどうとかの世界には住んでいない……!! コルベールは、半ば絶望とともに確信した。 ――この男は、危険だ……!! 男の眼を見た瞬間に、コルベールには分かっていた。 男の、その眼光は、ただ単に目付きが鋭いというだけのものではない。それこそ、数え切れないほどの“地獄”を見てきた者でなければ出来ない目だ、という事を。 そして、自分がこの男に、表現しがたい警戒心を抱いたのは、ディティクトマジックの結果反応だけでは無かったのだ、という事を。 この男に沁み付いた、一流の戦士だけが身にまとう空気感――同じく戦場を駆け抜けた過去を持つ者として、自分にも共振するような“何か”を感じていたからだ、という事を。 そして男は、コルベールの警戒に対応するように、じわりと殺気をその眼光に含ませる。 「ミス・ヴァリエ-ル、絶対に私より前には出ないで下さい……」 「コルベール先生……?」 ルイズの呼びかけにも、もう彼は答えない。 コルベールは、低く小さな、それでいて恐ろしいほどの早口で呪文を詠唱している。 この男がメイジであるかどうかは、まだ分からない。 だが、分かる事もある。 コルベールほどの者なら、対峙すれば、敵の強さは、おおよそ肌で感じ取れるからだ。 そして、いま彼の勘は、明確に警報を鳴らしている。 ――戦うな、と。 つまり、それは、この男が現有する戦力は、恐らくトライアングル・メイジである自分をはるかに凌ぐであろう、という確実な予感であった。 トリステイン魔法学院にメイジ多しといえど、この男とまともに戦える者があるとすれば、恐らくは学院長、『偉大なる』オールド・オスマンくらいであろうか。 そう思った瞬間、コルベールは、軍を辞して以来、久しく封じ込めていたはずの、戦いの“血”が騒ぐのを感じた。 ルイズにも、いまやコルベールと長身の男との間に張られた、ただならぬ緊張の糸に気付いている。しかし、彼が一体、何に反応してそこまで戦闘的になるのかが分からない。 ただの目付きの悪い、しかも丸腰の平民相手に、トライアングル・メイジであるこの先生が、ムキになって杖を向ける理由が分からない。 彼女の知るこの教師は、少々変わり者ではあるが、あくまで静かで、穏やかな人格者のはずだからだ。 しかし、それはある意味、当然のことだった。 お嬢様育ちの公爵家の令嬢などに、しかも階級制の偏見に凝り固まった少女などに、眼前の平民の危険度を測れといっても、当然、出来ない相談であろう。 それは、歴戦の強者『炎蛇』のコルベールにして、初めて測れる事実だったからだ。 「……どうやら俺の質問の答えは、腕ずくで聞き出すしか無さそうだな」 そう男が呟いた瞬間、 「寄るな!!」 コルベールの叫びと共に、杖から赤い火柱が迸った。 「なっ!!?」 呆気に取れたように、今まで脇で成り行きを見ていた才人は、あらためて驚きの声を上げた。 コルベールの杖から走った炎は、彼の頭上で収斂され、一個の球体となり、さらに、どんどんその体積が膨張しているのが見えたからだ。 気が付けば、その炎球は、もはや半径1メートルほどにまで膨れ上がっている。 あんなものをぶつけられたら、人間なんぞ骨も残らないだろう。 ――あのコッパゲのおっさんが、あの玉を造っているっていうのか……!! 才人は、慄然たる思いで、杖を振りかざす眼鏡の中年を見た。 「平賀才人、だったか」 しかし、その錆びた声に思わず振り向いた瞬間、才人はさらに唖然とした。 「もう少し退がっていろ。火傷したくなければな」 男は、笑っていた。 眼前の奇跡にまるで動じる事も無く、その口元には切れるような笑みが浮かんでいた。 その笑みを見た瞬間、コルベールは、自分が男に抱いた本能的な警戒心が間違っていなかった事を確信した。それと同時に――今更ながらではあるが――もはや戦わずして、この場を生きてくぐり抜ける事は出来ないであろう事も。 コルベールが読み取った、男の笑みの意味――それは、もはや覆しようも無いほど明確な“敵意”だった。 「悪く思わんでくれよ……これは正当防衛なのだからな……!!」 「正当防衛……? それはこっちの台詞のはずだがな」 そう答えた男の笑みに、皮肉的なニュアンスが混じった瞬間、 「黙れっ!!」 コルベールは『ファイヤーボール』を放った。 彼が持てる魔力の半分以上を込めた、渾身の一発だった。 しかし、猛スピードで迫った火球が男を飲み込んだ瞬間、コルベールは自分の目を疑った。 人間の肉体など瞬時に焼き尽くし、溶解させるほどの熱量にもかかわらず、――火球に飲み込まれたはずの男が、 「――ばっ、ばかなぁぁっ!!?」 何と、火球の内部から、火球そのものを弾き飛ばしたのだ。 そして、炎の巨球を内側から破裂させ、煙の中から姿を現したその人影に、さっきまでの面影は無かった。 男は、先程と変わらず“居た”。 しかし、その姿は一変してしまっていた。 黒革の上下も、スカーフも、彼は身に纏ってはいなかった。 「……うっ、うそだろ……!!」 今度は才人が、うめくような驚愕の声をあげる。 いや、彼のうめき声の対象は、自分の呪文を破られたコルベールの悲鳴とは、明らかに異なる。 才人は見たのだ。 明らかに存在すべきではない、存在するはずの無い、その顔を。 直径2メートルに及ぶ、高熱の球体を内側から破壊して、なおも悠然と屹立する男の顔を。――いや、男の顔を覆う、その仮面を。 赤い仮面。 白いマフラー。 複眼。 アンテナ。 立てられた襟。 そして、腰に巻かれた“変身ベルト”。 高度成長期以降の日本で育った子供なら、彼を知らない者などいるはずも無い。 伝説的な人気を誇った不死身のヒーロー。 だが、あくまでも彼はフィクションの、――画面の中の存在であったはずなのだ。 しかし、しかし、……“彼”は、ここにいる! 絶対的なまでの存在感と戦闘力を誇示しながら! 「あ……あんた、一体、何者なの……!?」 コルベールの背後で、文字通り腰を抜かしたルイズが尋ねる。 「オレの名は風見志郎。またの名を――」 「うそだぁぁぁ!!」 才人は叫んだ。 聞くまでもなく、才人は仮面の男の正体を知っている。 だが聞きたくなかった。 聞いた瞬間、この覚めない悪夢が本物の現実になってしまいそうだったから。 聞いた瞬間、もう二度と自分の故郷に――平成の日本に帰れなくなってしまいそうだったから。 いや、それ以前に自分の、平賀才人という人格が正気を保っているのかどうか、それすら分からなくなってしまいそうだったから。 だが、そんな才人の思いは、“彼”には全く届かなかった。 「またの名を――仮面ライダーV3」 才人は、意識を失った。 前ページ次ページもう一人の『左手』
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前ページ次ページもう一人の『左手』 「かっ、風見さんっ!! おっ、おれの事はいいから、このクソ女を……うぁぁぁぁ!!」 ゴーレムが、少し手に力を込めただけで、才人が、その勇ましい発言内容を、あっさり覆す呻き声を上げる。 「余計なこと言うんじゃないよ坊や」 女は、そう言いながら、ゴーレムの肩から地上のV3を睨みつけた。 V3は己の迂闊さに、ほぞを噛んだ。 眼前のミス・ロングビルが戦いを挑んで来たのは、あくまで、この自分――V3を、学院に仇なす不審な亜人と判断したからだ、そう思っていた。 だが……違う! 仮にも教育機関の構成員たる者が、不審人物を取り押さえる為の戦闘中に、人質を取るような真似をするはずが無い。 この女は、もとより、ただの秘書などではなかったのだ。 なぜ気付けなかったのだ!? もし、もっと早く気付いていれば、……こんな結果にはならなかったものを! 「それとも試してみるかい? 私のゴーレムが坊やを握り潰すのと、アンタの跳び蹴りと、どっちが早いか?」 「くっ……!!」 それを試す気は、さすがにV3には無かった。 「このゴーレムの“眼”は、アタシと繋がってるんだ。下手な真似をしたら、すぐ分かるんだからね」 そう釘をさすと、フーケは、そのまま自分を乗せた巨大な掌を壁の穴につけ、校舎の中に侵入した。 もとよりV3は、壁の向こう側が、魔法学院の宝物庫である事実を知らない。 なにより『土』系のメイジが錬成したゴーレムが、術者と五感まで共有できるのかどうかなど、知る由も無い。 逆にフーケは、オスマンの秘書として、風見や才人がこの世ならぬ別世界の人間である、という情報を聞いていたので、安心してハッタリをかます事が出来た。 . 女が、壁の穴から潜り込んで数分後、何者かの足音が聞こえてきた。 謎の地響きを調べに来た者。その二人目がようやく現れたのだ。 しかし、その人物が、V3にとって、事態を好転させる存在であろうはずが無い。 (まずい。) V3は反射的に変身を解いたが、しかし現れたのは、生徒や名も知らぬ教師ではなく、コルベールであった。 「かっ、かっ、カザミさん! これは一体どういう事かね!?」 風見は思わずホッとしたが、当のコルベールは狼狽しきっている。 まあ、それも当然だろう。身長数十mのゴーレムが、校舎の壁をブチ破って、中に手を突っ込んでいる“絵”を見れば、冷静でいろと言う方が難しい。 「コルベール先生、騒がないでくれ。――木偶人形の左手を見ろ」 「あれは……!!」 さすがに理性的なコルベールは、人質としてゴーレムに握られている才人を見た瞬間、全ての成り行きを察したようだった。 「今は……様子を見るしかない……だから、騒がないでくれ、先生……!!」 結果として、二人は、女が1・5mほどの細長い木箱を抱えて、再び壁の穴から出てくるまで、動く事が出来なかったのである。 「あらあら、ミスタ・コルベールじゃありませんか? こんな夜更けにどうなさったんです? 夜更かしは育毛の敵ですわよ」 「ミス・ロングビル……!?」 フーケは、壁の穴から外を覗き、無粋な見物人が一人増えている事を確認したが、全く動じなかった。目的のものを手に入れた以上、学院長秘書としての顔は、もはや必要ないと見極めたのだろう。 「あら、色男に戻っているじゃないの、昆虫男さん? 確か、カザミシロウ、とか言ったっけ?」 ――ぎりっ。 風見の奥歯が凄まじい歯ぎしりを立てる。 . 「ミス・ロングビル!! 一体、何をやっているのかね!? これは全部貴女の仕業なのか!?」 コルベールが、この一目瞭然の現実を信じられないように叫ぶ。 フーケは、そんなコルベールに流し目を送ると、 「いいえ、全部だなんてとんでもない。少なくとも、どうやって破ろうかと苦心していた宝物庫の外壁を、いとも簡単に蹴り破ってくれたのは、そこのダンディさんですわ」 「なっ!?」 コルベールが、驚きの表情で、風見を見る。 「そうそう、宝物庫の扉を開けるより、物理的な力で破った方が早いと教えてくれたのは、貴方でしたわね、ミスタ・コルベール」 今度は、風見がコルベールをじろりと睨む。 眼下の二人を嘲弄し終わると、フーケはそれまでのお上品な口調を、がらりと変えた。 「さあ、ご協力感謝するよ昆虫男!! 謝礼の証しとして、この坊やは適当な所で解放してやるよ。もっとも、アンタらが私を追わなかったらの話だけどね!!」 「俺たちが追わなかったとしても、貴様が平賀を殺さない保障がどこにある!?」 女は、にやりと口を歪めた。 「無いさ、保障なんてね。――ただ、私が嫌いなのは、偉ぶった貴族だけなんでね。行きがかりとは言え、人質の平民を殺すような寝覚めの悪い真似をする気は無いさ……多分ね」 恐らくは、それも嘘ではなかろう。 この女は、無用な血は流さない。それを誇りとさえしているようだ。だが、それと同時に、血を流す事をためらう甘さも持ち合わせていないだろう。自分が、少しでも追う素振りを見せたら、躊躇無く才人を殺すはずだ。 風見は、屈辱の中でそう判断した。 才人は、失神したのか、もはやピクリとも動かない。 風見は叫んだ。 「いいだろう、行け! その代わり平賀を殺したら、俺は貴様を絶対に許さんぞ! それだけは覚えておけ!!」 「カッ、カザミさんっ!?」 コルベールが青い表情で振り返るが、風見の眼差しがコルベールに向けられる事は無かった。 彼女は、その言葉を聞いてニヤリと笑うと、 「そうかい。じゃあ、見逃してくれる御礼をしなきゃねえ……!!」 その瞬間だった。 ゴーレムの巨大な爪先が、風見を襲った。 「ぐふぅぅっ!!」 ――完全に不意を突かれた。 風見は、躱しもならず、数十トンの威力を持つサッカーボールキックを、どてっ腹に喰らい、文字通り虫けらのように吹き飛ばされ、塔の壁に激突した。 「カザミさんっ!!」 「きゃはははははっっ!! ミスタ・コルベール、オスマンのスケベジジイに伝えておくれ!! 『破壊の杖』は、この『土くれ』のフーケ様が、確かに戴きましたってねぇ!!」 . 「とりあえず、もう一度確認するが、確かに盗られたのは『破壊の杖』だけなんじゃな?」 宝物庫にところ狭しと並べられた、数々のマジックアイテム。 目録を片手に確認作業をしていた数人の教師たちが、オスマンの声を聞いて、顔を上げる。 「――はい、確かに、他に盗られたものは無さそうです」 オスマンは、コルベールに目をやる。 「ミス――いや、あの女性が手に持っていたのは、1・5メイルほどの細長い木箱でした」 コルベールが重い眼で、そう頷いた。 「しかし、ミスタ・コルベール、……本当にミス・ロングビルが、あの『土くれ』のフーケだったのですか……? 私には何だか、とても信じられないのですが……」 「わ、私が嘘をついてると言うのですかっ!? ミセス・シュヴルーズ!!」 「そうは申しませんけど、――ねえ、学院長……?」 ミセス・シュヴルーズは、オスマンを振り返った。 壁には、黒々とした文字で、 『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』と書かれている。 「いや……たしかにこれは……ミス・ロングビルの筆跡じゃ……」 オスマンも、その墨痕累々たる“犯行声明”を睨み、深い溜め息をつきつつ、宝物庫を見渡した。 コルベールは、壁に叩き付けられた風見を介抱し、その足ですぐさまオールド・オスマンの私室へ飛び、事の顛末を話した。 最初は、寝入りっぱなを叩き起こされて、少々不機嫌だった老人も、やがて事態の重大さを悟ると、すぐさま全教員を起こし、宝物庫の現場検証を開始したのである。 . 風見は、“目撃者”として、自分も現場検証に立ち会うと主張したが、さすがにコルベールが聞き入れなかった。 喰らったのはゴーレムの蹴りである。 叩き付けられたのは、城壁並みの厚みを持つ塔の外壁である。 いかに改造人間の風見志郎といえど、――しかも、蹴り飛ばされた時、彼は変身を解除していた。 コルベールならずとも、彼にこれ以上の活動を許す気にはならなかったであろう。 そして、代わりといっては何だが、“目撃者”風見と、“人質”才人の主として、ルイズが現場に呼び出されていた。 たまたま彼女と喋り込んでいたキュルケも、何故かついてきたが、教師たちは面倒くさかったのか、キュルケを追い出さなかった。 「オールド・オスマン、これは魔法学院への、いや、トリステイン王国への重大なる挑戦と受け止めるべきです!! すぐにでも王宮へ使いを走らせ、王室衛士隊の出動を要請しましょう!!」 「いや、トリスタニアに頼るまでも無い。我ら魔法学院教師だけで追跡隊を編成しましょう!! 降りかかった火の粉は、自らの手で払うのが貴族の慣わしというもの!!」 ミスタ・ギトーが勇ましく叫ぶ。 いや、ギトーだけではない。男性教諭の何人かは、彼の強硬意見に賛成の声を上げる。 「なっ、何を言ってるんですっ!? フーケはサイトを――わたしの使い魔を人質に取っているんですよっ!!」 ルイズが金切り声を上げて、ギトーを見上げるが、彼は冷たく言い放つ。 「分からんのかミス・ヴァリエール。これは非常事態なのだ。たかが平民一人の命と、宝物庫のマジックアイテムが釣り合うと思うのかね!?」 「でっ、でも……!」 「しかも『破壊の杖』といえば、ただのマジックアイテムではない。数週間後にアカデミーが、研究のために引き取りに来る予定があったほどのレア・アイテムなのだ。それを、むざむざ奪われましたなどと……そんな事が言えると思うか!!」 「そんな……!? じゃあ、面子のために、わたしの使い魔を身殺しにするって言うんですかっ!?」 「面子ではないっ! これはメイジとしての誇りの問題なのだっ! 君とてメイジの端くれならば、理解できぬはずがあるまい!!」 「ならば先生は、メイジに使い魔を見捨てろとおっしゃるんですかっ!?」 「使い魔使い魔と君は言うが、所詮は単なる平民ではないか!! そんな下賎な命など、我らが誇りと、重さを測る価値も無いわ!!」 「――そこまでにしたまえ」 肺腑を貫くような重い声でオスマンが言った。 . その瞬間に、宝物庫に満ちていたざわめきは、ぴたりと聞こえなくなった。 当然であろう。――真顔になった『偉大なる』オールド・オスマンの前で、私語の出来る者など、この学院には一人もいない。 「ミスタ・ギトー」 「は、はい」 「君の言い分も道理ではあるが、わしはそれを正しいとは思わん。人命よりも尊いアイテムなど、この世にありはせん」 「しかし、学院長!」 「今一度言う、――わしは君の意見を正しいとは思わん」 「……はい」 さすがに、そこまで言い切られては、この短気な教師もぐうの音も出ない。 「さて、ミス・ヴァリエール」 「はっ、はいっ」 「ミスタ・コルベールの話じゃと、フーケは、平民は殺さんと言ったそうじゃ」 「そっ……それを……信用しろって言うんですか……!?」 「わしは信用できると思う」 「何故ですっ!?」 「わしは、これでも二ヶ月間、秘書と学院長という立場で、彼女と接してきた。正体こそ見抜けなんだが、それでも、人を簡単に殺せる女性ではないと断言できる」 「……」 「どのみち、どこへ逃げたかさえ分からん。後を追おうにも、夜が明けぬ限り足跡も追えぬ」 確かに、フーケほどの大盗賊が、闇にまぎれて逃げた以上、素人がデタラメに追っても、捕らえるのは困難だ。それは子供でもわかる理屈である。 「じゃあ……学院長は、どうなさるって言うんですか……!?」 「……とりあえず朝になってからじゃ。朝になったら学院の周囲の森を、しらみつぶしに捜索しよう。生徒たちも動員してな。もしフーケが、君の使い魔を解放しておったならば、必ず見つかるはずじゃ」 オスマンはそう言ったが、ルイズは、もはや泣き顔を隠さなかった。 もう二度と才人と会えないかも知れない。そう思ったら、何故か、胸が張り裂けそうだったからだ。 「とにもかくにも、今晩はこれで解散じゃ。どのみち明日は払暁には動き出さねばならん。今のうちに眠っておくべきじゃろう」 . その声は、有無を言わさぬ雰囲気を持っていた。 そして、半ばホッとした雰囲気すら伴って、教師たちはぞろぞろと宝物庫から帰って行ったが、廊下からあくびが聞こえた瞬間、ルイズは、そんな教師たちに殺意すら覚えた。 「ルイズ……あたしたちも帰りましょう」 それまで黙っていたキュルケが、かつて無いほどの優しい声で、ルイズに囁く。 気が付けば、宝物庫に残っているのは、ルイズとキュルケ、そしてオスマンとコルベールの4人だけになっていた。 先祖累代の宿敵といえど、まさかこんな状況で憎まれ口を叩くほど、キュルケは空気の読めない女ではない。 「あんたの気持ちも分かるけど、今はもう、どうしようもないわ。サイトの無事は、始祖ブリミルにお願いしましょう」 「……」 「大丈夫よ。あたしもあなたの三倍、祈ってあげるから」 「――いや、その必要は無い」 その声に、その場にいた全員が、振り返った。 宝物庫の重い扉を開けて、入って来たのは風見志郎だった。 「なっ、何やってるんだカザミさん!? 君はこんなところに来れる体じゃ――」 「カザミィィッッ!!」 コルベールが、風見に寄ろうとした瞬間には、もう遅かった。 ルイズの拳が、風見のボディに叩き込まれていた。 「ミス・ヴァリエール! やめなさいっ!!」 しかし、そのコルベールの声も、いまのルイズには届かない。 「あんた――あんたがついていながら、何でサイトがこんな目に! こんな目に遭わなきゃいけないのよっ!!」 (ぐっ!!) 風見は、その一撃に思わず声を上げそうになる。 「あんた、カイゾーニンゲンなんでしょっ!? 普通の平民じゃないんでしょっ!? なのに……なのに……何でサイトを守れなかったのよぉっ!!」 そして、7発目の鉄拳制裁が、みぞおちに決まった時、風見は思わず、膝をつきそうになった。 「……え?」 その、余りにも予想外な反応に、ルイズは一瞬ぽかんとする。 「やめなさいと言ったでしょう!! 彼は、サイト君を助けようとして、フーケのゴーレムのキックをまともに喰らったのですよ!!」 ルイズは、呆然となった。 「先生……、あの、フーケのゴーレムって……たしか身の丈30メイルほどあって、宝物庫の壁を外からぶち抜いたっていう、アレ……ですよね?」 キュルケが、おそるおそる訊いてくる。 「彼でなければ、即死だったでしょう。今、立ってここにいる事が奇跡だと――」 「余計な事はいいんだ。先生」 風見の錆びた声が、コルベールの弁護を遮る。 そして、さらにオスマンが、風見を遮った。 「それで……カザミくん。さっきの君の台詞は、ありゃ、どういう意味じゃ?」 風見は、目を光らせ、答えた。 「言葉通りの意味ですよ、Mr.オスマン。――平賀はまだ生きている。そして、あの女の居場所も分かっている。だから、これから俺は救出に向かう。そう言ってるんです」 前ページ次ページもう一人の『左手』
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前ページ次ページもう一人の『左手』 「キュルケ」 「なによ」 「あんた、……確か、風竜を使い魔にしている、あの娘と仲が良かったわよね?」 「タバサのこと? まあ、付き合いはあるけど……それが?」 「その娘、まだ起きてる?」 「まあ、宵っ張りで本の虫だから、ひょっとしたら、まだ起きてるかも……って、どこ行くのよアンタ!?」 「決まってるでしょっ!! その娘のところに行って、ドラゴンを借りるのよっ!!」 そう叫ぶや否や、ルイズは宝物庫を飛び出した。……それから15分後、紆余曲折の果てに、魔法学院の上空に、赤・青・桃の3色の頭を乗せたシルフィードが飛び立って行くのが見えた。誰も見ている者はいなかったが。 夜風が身にしみる。 寒風吹きすさぶ冬の夜空を駆けるドラゴンの背は、恐ろしく寒い。本来なら、暖かいベッドの中で布団にくるまれている時間であるだけに、この寒さは一際だ。 キュルケとしても、もはや行きがかり上、ルイズに付き合わざるを得なかったとは言え、この成り行きに100%納得しているわけではない。 だから、タバサが、こうもアッサリこの一件に協力してくれた事を、キュルケは、かなり不思議に思っていた。いつもは、他人の揉め事など全く興味を示さないはずの、この寡黙な少女が、なぜ、ここまで協力的な態度を示すのか。 「ルイズ」 それまで、竜の首に跨って、黙々と読書に勤しんでいたはずの彼女が、ふと、眼鏡の位置を直しながら、ルイズを振り返った。 「――え? なに?」 高速移動中ゆえの向かい風にガチガチ震えていたルイズは、不意に名を呼ばれて、驚きの声を出す。だが、ルイズからすれば無理も無い。普段は聾唖者かと思われるほどに無口なこの少女が、いきなり自分の名を呼んだのだ。 こんな夜中に叩き起こして、使い魔を借りておいて今更だが――それでも、この寡黙な少女が自らコミュニケーションを取って来たことに、驚きを禁じえなかった。 「聞きたいことがある」 そう言うと、タバサは器用に、シルフィードの背をずりずりと座ったまま、移動してきた。 「なっ、なによ……?」 「カザミシロウのこと」 その名を出された瞬間、ルイズの顔から感情は消えた。 「彼は何者なの?」 「かめ……ばずーか?」 たしかに、『杖』の中ほどに、ちょこんと、小さな黒い物体が付着している 言われて見れば、亀の甲羅に見えないことも無い……。 しかし、それが一体どうしたというのだ? 亀はともかく、「ばずーか」という言葉の意味は分からない。だが、それでもフーケにとって、この才人の反応が、全く不可解なものであったのは当然だ。 そして、その疑問は、やがて、この『杖』に対する期待へと置換される。 覗き見た者を、これほどまでに怯えさせる“情報”とは一体何だったのか? それほどの“情報”を秘めた、この『杖』の正体とは、一体何だったのか? ――少なくとも、単なるガラクタじゃない事は、確かだねえ……!! 「立ちな、坊や!!」 フーケは、山小屋の隅でガタガタ震える才人を捕まえ、無理やり立たせた。しかし、彼はまだショックから立ち直れないらしく、顔を真っ青にしてブツブツ小声で、何かを呟いている。 「かっ、カメバズーカ……!? 嘘だろ? ありえねえありえねえありえねえありえねえ……」 「いい加減にしな!! 何を見たのか知らないが――いや、何を見たのか、今すぐここで、全部吐いてもらうよっ!! アレは一体、何だったんだいっ!?」 才人は、うつろな、仔犬のように怯えた眼差しで、フーケを見た。 フーケは、その目を見た瞬間、さすがに嫌な予感に気圧されてしまった。 もとよりフーケは、この少年がただの“平民”では無いことを知っている。 学院長室の壁に、『練金』で小さな穴をあけ、そこで為される会話を、可能な限り“盗聴”している彼女は、ルイズ・ラ・ヴァリエールが召喚したこの少年が、何者であるかを既に知っている。 (そのクセに、風見が改造人間であることを知らなかったが) 異世界から召喚された、伝説のルーンをその身に刻む、虚無の使い魔『ガンダールヴ』。 ドットクラスとはいえ、メイジと決闘し、なおかつ一歩も退かない激しい気性の持ち主。 そんな少年を、ここまで怯えさせるとは、……もしかして自分は、何かとんでもなく危険な“物体”を持ち出してしまったのか……? そう思った瞬間、才人の口が、ようやく他人に伝達する意思を含んだ言葉を、彼女の耳に届かせた。 「――カメバズーカ……デストロンの怪人、改造人間……東京都全滅作戦のために、体内に――げっ、げっ、げっ、げっ……!!」 「はあっ!? なに言ってるんだいアンタ!?」 「原爆を……ヒロシマ型原子爆弾を内臓……!!」 「――爆弾……だってぇ!?」 さすがに、その一言は、フーケを黙らせるだけの威力を持ち合わせていた。 そして、その瞬間、才人は先程食べたパンを――それ以前に食べた昼食を含めて――吐いた。 才人は、文字通り気が狂いそうだった。 その妙ちくりんなバズーカを触った瞬間、圧倒的な量の情報が脳に流し込まれた。 改造人間カメバズーカという個体が所有する、驚異的な戦闘能力と破壊能力。 彼を改造した、暗黒組織デストロンの暝い意思・歪んだ野望・社会と世界に対する純粋な悪意。 東京都全滅作戦を妨害し、自分を殺した仮面ライダー1号2号への苛烈なまでの復讐心。 そして、デストロンによって誘拐、改造され、洗脳によって封じ込められた、名もなき健康な、一人の市民の悲鳴……!! いや、いや、いや、問題はそこじゃねえ!! なのに、何故コイツがここにいる!? 『仮面ライダーV3』は、あくまでフィクションだったはずなのだ。 すでにして、風見志郎が身近に召喚されている以上、彼と戦っていた“怪人”がここにいても、何の不思議も無い。――というのは理屈だ。あくまでも理屈だ。納得しろと言われて、納得できる者など、いるわけが無い。 この怪人の実在を認めると言う事は、本郷猛や一文字隼人の存在も、いやいや、それだけではない。才人がかつて熱狂した、ブラウン管の向こう側の存在、それらがみな実在している可能性すら内包している事になる。 いやいやいやいや!! 問題はそれですらねえ!! ハルケギニアに召喚されて、すでに一週間以上たつが、――才人は風見を、未だにある種の抵抗無しには見られない。むしろ、異邦人であるはずのルイズやキュルケの方が、現実味のある存在として受け入れられる。 それは何故か? ふと、そう思った時、ようやく才人は理解した。 風見や、このカメバズーカの存在が、才人に、嫌でも『サモン・サーヴァント』に於ける、ある恐るべき可能性を示唆している事実に気付いたからだ。 いや、気付いたのは今ではない。もうずっと前、風見志郎と初めて出会った瞬間から、もう才人は気付いていたはずなのだ。ただ、潜在意識がそれを認めてしまうのを、必死になって抵抗していただけだったのだ。 「もういやだ……母ちゃん……おれ、耐えられないよ……!!」 才人の正気は、これ以上、この受け入れがたい現実を前に、回路を切った。 自我を、狂気の侵蝕から防衛するために。 自身の吐裟物にまみれた床の上に、糸を切られた人形のように、才人は崩れ落ちた。 「ちょっ、ちょっと、坊や、――なに寝てるんだよっ!! とっとと起きなっ!!」 再び失神した才人を、叩き起こそうとしてフーケは、不意に動きを止めた。 『破壊の杖』にへばりついた、小さな石ころのように干からびた、亀の甲羅。 「まさか、ね……!」 それが、僅かながら、……動いた気がしたのだ。 そして、おそろしく小さい音であったが、何かがうめくような声さえも。 ……ずぅぅぅぅ……かぁぁぁぁぁ……。 目的地まで、あと約2km。 V3ホッパーの教える最終誘導地は、この林道沿いの小さな山小屋。 いかに『土くれのフーケ』が名うての盗賊だったといっても、まさか、こんなに早く正確に、自分が追いついてくるとは予想していまい。ならば、不意をつける。上手くすれば、女がゴーレムを出す前にカタをつけられるかも知れない。 しかし、この暗い山道のどこかに、もしフーケの使い魔が見張りをしていたら、バイクの駆動音は、いくら何でも目立ち過ぎる。そういう意味では、ライトも同じだ。 ならば、そろそろ、ハリケーンを捨てるか? ハルケギニアの夜は明るい。二つの月が煌煌と輝いている以上、闇夜に方角を失う事は無い。 俺が気配を消して、徒歩で近付けば、……しかし、いまの体調を鑑みれば、体力の無駄な消耗は、可能な限り避けたい。 (っっ!?) だが、その瞬間、風見は、遥か上空から自分めがけて、何者かが接近してくるのを感じた。重く、太い、大きな気配が。 「――ちっ!」 思わず、舌打ちをし、急ブレーキをかける。 一瞬、フーケの使い魔かと思ったが、次の刹那には、気配の正体に風見は気付いていたからだ。 重くて大きい気配に混じって、敵意なき無邪気な気配、――それが三つ。 おそらくは、彼の主を名乗る少女と、その級友たち。 果たして、彼の数m先に舞い降りた、巨大な竜の背に乗っていた、3人の少女たち。 「カザミ!!」 そこからぴょんと飛び降りて、まっしぐらにこっちへ向かってくるピンク色の頭髪。 ――ルイズ・ラ・ヴァリエール。 風見は小さく溜め息をついた。 「アンタどういう了見!? 御主人様を置いて先に行くなんて!!」 「……」 風見は肩をすくませながら、エンジンを切り、ヘルメットを脱いだ。 「何をしに来たヴァリエール」 彼の眼差しは、相変わらず人を拒む冷たい光を放っていた。 「――何をしにって……!!」 イキナリそう言われて、ルイズは、思わず立ち竦む さすがに彼女といえど、ここまでの言われようは予想外だったようだ。ルイズはてっきり、風見が、自分とともに才人を救いに行く事に、同意していると思っていたから。 だが、彼女を見つめる男の瞳は、おそろしく冷ややかだった。 「きみたち」 風見は、その目をルイズではなく、その向こうの風竜の背にいまだ座っている二人の少女に目を向けた。確か一人は、ルイズの隣人のツェルプストーとかいったか。もう一人の青い髪の少女は知らなかったが、おそらくは、彼女たちの学友か級友か。 まあ、どっちでもいい。 そう思った瞬間、風見は気付いた。三人目の名も知らぬ碧髪の少女が放つ、尋常ならざる鋭い眼光に。 (何者だ!?) 思わず、体が警戒信号を放つ。 しかし、今はそんな事をしている場合ではない。 ルイズの傍らにいるということは、少なくとも、敵ではないと判断していいはずだ。 なら、取り敢えずは、問題ではない。 風見は、先程言いかけた言葉を、再び口にした。 「きみたち、済まないが、ヴァリエールを学院まで送り届けてくれないか?」 ルイズは、しばし、絶句した。 「まっ、待ちなさいよっ!! アンタ一体どういうつもりっ!?」 「どうもこうもない。便宜上とは言え、お前は俺の主だ。あえて死地に道ずれにする気は無い」 「サイトは――サイトはわたしの使い魔なのよっ!! 貴族に使い魔の命を見捨てろって言うの!?」 「主を死なせては、使い魔もクソも無い」 「いやよっ!! 絶対に帰らないわっ!!」 ルイズの拳は、その白い肌が、さらに青白くなるまで握り締められ、彼女の並々ならぬ決心と覚悟を物語っていた。 「――ねえ、カザミ」 キュルケが、シルフィードの背から飛び降り、ルイズの隣に並ぶ。 「確かに貴方の言う事にも一理あるわ。でも、この子は仮にも貴方の主なのよ? そう邪険にする事は無いでしょう?」 そう言われて、風見は、お前は口を出すなと言わんばかりの目で、キュルケを見つめたが、……やがて、諦めたように、深い溜め息をついた。 「なら、――言い方を変えよう」 「どういう意味?」 そう問い掛けるキュルケには答えず、風見は言った。 「ヴァリエール。お前がいると戦闘の邪魔なんだ」 「なっ!?」 「お前は奴らとは戦えない。自分の身を自分で守れない。――足手まといだ」 ルイズは震えた。 体から、全ての力が流れ出し、思わずへたり込みそうになった。 しかし、何とかこらえ、風見を睨みつける。 そうやって気を張っていないと、二度と立てなくなってしまいそうだったから。 ギーシュに『メイジじゃない』と言われた時も、同様の震えは起きた。が、今度の風見の言葉の刃の鋭さは、ギーシュの比ではない。 ギーシュの言葉に含まれた、安っぽい悪意、挑発、傲慢、偏見。そういったニュアンスを、ルイズは、今の風見の言葉に、1mmたりとも見つけられなかったからだ。 彼のいま発した言葉は、紛れも無い客観的事実にのみ基づいた言葉である、ということが、彼女にもはっきりと感じ取れたからだ。 「あ、あんた……平民のクセに、いったい何様のつもりよぉっ!!」 いまの風見の“暴言”には、さすがにキュルケも反応せざるを得ない。 永年の宿敵であり、悪友とでも呼ぶべき少女を侮辱された、というだけではない。 風見のいまの言葉が、何もルイズ一人にのみ向けられた言葉ではないことを、キュルケは敏感に感じ取ったからだ。 しかし、風見は眉一筋動かさない。少女たちの火のような視線を、こともなげに受け止め、ハリケーンから降り立つ。 「確かに俺は貴族では――メイジではない」 その時、風見の身体から、熱い風のうねりのようなものが発散された。 (えっ?) いや、錯覚ではない。その証拠に、風見の腰に燦然と輝く、変身ベルト“ダブルタイフーン” ――変身、 「だが、……俺はそれ以上に」 ――V3!! 「ただの人間でも、無い……!!」 「カザミシロウ……カイゾーニンゲン……!!」 シルフィードの背で、タバサが呟いた。その目を驚愕で、大きく見開きながら。 そんなタバサの囁き声が聞き取れないほど、V3の五官はにぶくはない。 (やはり、喋ってやがったか、ヴァリエールの奴) しかし、その事に対する腹立ちは無い。 その事態を予想したからこそ、あえて変身し、この異形の姿を見せつけたのだ。 俺は――風見志郎は、ただの平民ではないと。 お前らでは戦えないと彼女たちに指摘した以上、俺独りでも、フーケのゴーレム相手に充分戦えるのだと、そう分からせるために。 V3が恐れているのは、彼女たちがフーケに何かをされることではない。 いまの、パワーの調節が利かない自分とゴーレムとの戦闘に、彼女たちを巻き込んでしまう。それこそが、彼の最も忌むべき事態だったのだ。 風見――V3は、そのままハリケーンから離れ、ルイズとキュルケの横を、スレ違うように通り過ぎる。 どちらにしろ、彼はここからは、徒歩で向かうつもりだった。 そして、タバサとシルフィードの前に差し掛かった瞬間、 「待ちなさいよっ!!」 ルイズの一喝が、彼の足を止めた。 「お前は戦えない……そう言ったわよね、あんた」 「ああ」 「意見を変えろ、とは言わないわ。確かにそれは、あんたの言う通りだから――でも」 「でも?」 そこでV3は初めて、ルイズを振り返った。 少女の、小さな身体に似合わぬ、爛々と光る目がそこにあった。 「サイトは、……ギーシュと戦えると思ったから戦ったわけじゃないわ!!」 「……」 「戦えると思うから戦う。戦えないと思うから戦わない。――それは正しいかも知れない。でも、でも……」 「……」 「――人には、戦うべきときがあるはずよっ!! 勝ち負けに関係なくね!!」 そう叫んだルイズの眼差しは、さしものV3すらたじろがせる気迫があった。 「ヴァリエール……」 そう呟いたV3に、タバサがぽつりと言った。 「あなたの負け」 (ちっ) 内心、舌打ちをすると同時に、風見の胸の内に、苦笑いが込み上げる。 (確かに、一本取られたか……) 彼の胸中に、家族を自分の眼前で、むざむざとハサミジャガーに殺された時の、あの言いようの無い怒りが、疼くように思い出される。 (戦えないから戦わない……それは違う。たしかにな……) 「ヴァリエール、俺の指示に従えるか?」 「えっ?」 V3は、タバサを含めて、その場にいる3人の少女を順々に見回し、 「いや、ヴァリエールだけじゃない。お前ら全員、俺の指示に従えるかと訊いているんだ」 「……どういう事……?」 「平賀の救出作戦に、お前らが参加するならば、改めてプランを練り直す必要がある。お前ら一人一人に、何が出来て、何が出来ないのか、それらを把握した上で、新たに作戦を立てる必要がある」 「あんたが戦闘指揮をとる。――そういう事?」 キュルケが、いかにも不服そうに口を開く。 「あんたみたいな得体の知れない奴には従えない、って言ったら、どうするの?」 「ここから帰ってもらう」 ナタで割ったように、V3は即答する。 「帰りたくないし、従う気もない。そう言うなら、――悪いが、ここで全員、眠ってもらう事になる」 「へえ……!」 さすがに、そこまで言われては、キュルケの赤毛も、怒りで逆立つ。 「一応言っとくけど、あたしとタバサはトライアングルよ……それでも、あたしたち全員を相手に勝てるつもりなの……!?」 「待ってキュルケっ!!」 そう言って、一触即発のV3とキュルケの間に入って来たのは、ルイズだった。 「従うわカザミっ!! あなたが立てた作戦に。だから、もうこれ以上はやめてっ!!」 「ルイズっ! どきなさいっ!!」 目を血走らせて、杖を構えるキュルケ。しかし、そんな彼女の胸倉を、ルイズは引っ掴んだ。 「いま、この瞬間にも、サイトは殺されかけているかも知れないのよ……!! こんなところで遊んでる暇なんか、どこにも無いのよっ!! 何で、それがわからないのよっ!?」 その時だった。 「あなたに任せる」 叫んだルイズ。 怒鳴られたキュルケ。 そんな二人の気勢を削ぐように、タバサがV3を見つめて、低く響く声で言った。 「タバサ……!?」 「それが一番早い」 タバサが、キュルケを向き直って言った。 そしてルイズも、上目遣いにキュルケを睨みつける。 もはや、こうなってしまっては、いかに強情な彼女といえど、空気を読まざるを得ない。 「分かったわよっ!! 言うこと聞きゃあいいんでしょっ!! 好きにしなさいよ、もうっ!!」 亀の甲羅が、ぴくりと震えだしてから、もう数十秒が立っている。 そして、その振動が増すごとに、甲羅の体積が、徐々に徐々に、巨大化してゆく。 ……ずぅぅぅぅ……かぁぁぁぁ……!! 地獄の底から聞こえてくるような、そんなうなり声が響く。 その瞬間、ようやくフーケは、凍り付いていた体のヒューズが繋がった事に気付く。 もう、間違いない。疑いようが無い。 幾多の危機を乗り越えてきた、フーケの無二の相棒『女の勘』が、警報ランプを音量最大にして、わめきたてる。 ――やばい、やばい、やばい、やばいやばいやばいやばいやばい!! フーケは走った。 才人を、ドアから山小屋の外に放り出し、自らも飛び出すと、すぐさま可能な限り巨大なゴーレムを錬成する。――が、ありったけの魔力を込めたにもかかわらず、ゴーレムの身長は、10m以上伸びなかった。 (ちぃっ!!) 分かっている。 V3を相手に戦った時に、ゴーレムの錬成に使った魔力が、まだ回復していないのだ。 普通なら、10mクラスのゴーレムでも、並みのメイジなら束になってかかられても怖くは無い。 しかし、――今は違う。 この得体の知れない恐怖から逃れるためには、たとえ30mクラスのゴーレムでも、不安だった。 「ずぅぅぅぅかぁぁぁぁぁ!!」 その瞬間だった。 山小屋が、凄まじい音を立てて、爆発を起こした。 「くあああっ!?」 フーケは、才人を引っ掴むと、とっさにゴーレムを盾にして爆風を逃れた。 しかし、その肝心のゴーレムは、彼女の本来の魔力の三分の一のパワーしか発揮できない。 爆発そのものは、ゴーレムが壁になってくれたおかげで、やりすごせた。 だが、その数秒後、ゴーレムがこっちに倒れ込んでくるのが、彼女には見えた。 「うわあああああああっ!!」 ゴーレムの下敷きになる、という確実な死の予感が、フーケの動きを凍りつかせる。 しかし、……ゴーレムが地響きを立てて倒れた時、彼女は少年の胸に抱かれていた。 「おいっ、大丈夫かよっ!?」 才人の左手のルーンが光っている。 見ると、彼はフーケを抱き上げながらも、その右手に、赤く錆びたナタを握っている。 おそらくは、山小屋の薪割り用の物であろうが、少年が、いつの間にそんな物を握ったのか、彼女自身全く気付けなかったことに、内心舌打ちをする。 が、次の瞬間、そんな苛立ちなど、吹き飛んでしまうほどの戦慄が、フーケを襲った。 ケシ飛んだはずの山小屋。 そのもうもうたる土煙の中で、誰かが、――いや、“何か”が蠢いているのが見える。 「――カメ……バズーカ……!!」 才人が、絶望に満ちた声で、つぶやく。 「ズゥゥゥゥゥカァァァァァァ!!!」 なるほど、カメバズーカとはよく名付けたものだ。 ウミガメほどもある巨大な甲羅を背負い、直立歩行する一匹のカメ。 その背(甲羅)には、『破壊の杖』の本体たる、1・5mほどの灰色のバズーカガ取り付けられ、何故か黒い手袋に黒いブーツ。ベルトのバックルは、サソリのリレーフが刻まれている。 「な……なに、あれ……!!?」 ――ばけものだ。 カザミシロウが変身した時も、その異形の姿に瞠目したものだが、――あの“ばけもの”が放つ、凄絶なまでの妖気は、まさにカザミの比ではない!! 「ゴーレム!!」 反射的にフーケは、ゴーレムに命令を出していたが、その瞬間、カメバズーカはこちらの殺気に気付いたかのように、ギラリと青く光る目を向け、背中のバズーカを発射した。 「うそ……!!」 信じられなかった。 いかに本来の魔力の三分の一しか発揮できなかったとはいえ、この『土くれ』のゴーレムが、一撃で、コナゴナに粉砕されてしまったなどと!! 「逃げろっ!! 逃げるんだ!!」 ルーンを光らせた才人が、フーケを抱えて、人間離れした速度で走り出す。 だが、その一瞬、彼は見ていた。 カメバズーカの胸に刻まれた、光り輝く刻印を。 そして、それは、自分や風見の左手に刻まれた謎のルーン文字と、同じ文体であったことを。 前ページ次ページもう一人の『左手』
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前ページ次ページ銀の左手 破壊の右手 ――――どんなときでも、あなたは一人じゃないよ 春の使い魔召喚でルイズが召喚がしたのは岩に刺さった一本の剣と、一人の娘であった。 剣と契約など冗談ではない、そう思ったルイズは娘と契約しようとしその姿に息を呑む。 娘は美しかった、これがただ顔形が整っているだけならルイズはけしてコントラクト・サーヴァントを途中で踏みとどまったりはしなかっただろう。 実際、娘の服装や容貌自体はこれと言って珍しいものではない。 あえて言うなら長く伸ばして二つに束ねた青みがかった黒髪くらいのものだろう、だがそれ以外は至って普通。 着ている白と紫の服も、革の手袋と靴も、頭を飾る赤いカチューシャと揃いの硝子の髪飾りも。 その気になれば平民でも手に入れることが出来るだろう品だった。 だが娘は美しいのだ。 何処にでもいる普通の娘、なのに何故こんなに心を揺さぶられるのか……そう考えてはたとルイズは気づく。 雰囲気だ。 娘が纏う雰囲気が平凡なものだけで構成された娘の姿をまるで剣のように研ぎ澄ましている。 荘厳な儀式に望む聖女のような、戦場を駆ける戦士のような、そしてどこにでもいる普通の娘のような。 そんな相反する印象が、しかし互いに背信を行う事無く重なり合い、娘を包んでいた。 娘纏う雰囲気がこれまで出会ったことのないものであったからこそ、ルイズは思わず気後れしてしまったのだ。 「貴女は、一体……」 その言葉に、まるで信じられない天変地異が起こったかのように稚気を色濃く残す瞳できょろきょろと周囲の状況を伺っていた娘はルイズを認め。 「えっと、あの、此処、何処……?」 これまでの雰囲気をぶち壊すような、実に頼りない言葉を放った。 「使い魔の契約?」 「ええ、君には申し訳ないのですが使い魔が死ぬまで契約は解除できないのですが」 「ごめんなさい、貴女が貴族ともっと早く知っていたら……」 「いいわ、退屈してたし。それに……」 わたしはもう死んでいるもの。 続けようとしたその言葉は口からは出てこなかった。 娘は思う、死んだはずの自分が何故生身の肉体を持って呼び出されたのか? しかも―― 見つめた先には紫の光を放つ剣。 かつて自分が使ったこの剣も岩に刺さった状態で呼ばれるなんて…… 娘は咽喉奥までせりあがってきた一つの回答を飲み込むと、ルイズに付いて歩き出した。 せいぜいやりたかったこと、やりたくても出来なかった沢山の事をやろうと思った。 とりあえずさし当たってはまず自己紹介から。そう言って手を差し出した娘に向かって、ルイズもおずおずと言った感じで手を差し出す。 「アナスタシア・ルン・ヴァレリアです」 「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。これからよろしくお願いね」 至極自然に実の姉に対してするような穏やかな口調が漏れる、そのことに一番驚いたのは他ならぬルイズ自身だった。 もっとももこんな驚きなど序の口であったと、後にルイズはさんざ思い知ることになる。 騒がしい日々の幕開けであった。 「ギーシュくん、モンモンちゃんとはどれくらい進んでるのかなー?」 「は、はは。何を言っているのかな、ぼくとモンモランシーがそんな……」 「おうおう照れちゃって、愛い奴じゃのぉ。お姉さん可愛がってあげたくなっちゃう」 これまで眺めてるだけだった人の恋路に横槍を入れてみたり。 「やっぱりね、ルイズちゃんにはこの“ふりふりレース”が似合うと思うの!」 「甘いわね、ここはルイズのコケティッシュな魅力を最大限引き立たせる“小悪魔ビスチェ”よ!」 「着ぐるみ」 「え、俺の出番これだけ?」 ルイズを使ってウインドゥショッピングとしゃれ込んでみたり。 「そりゃあお姉さんだってHなことくらい考えるわよ!」 「そうよそうよ、なんであそこで露骨にモーションかけてるのに他の女に靡くのよギーシュの奴……」 「いいじゃない、別に恥ずかしいことじゃないわ」 「あんたたちこんな時間に人の部屋で何やってんのよ! ああもぅ洪水のモンモランシーや脳みそ十八禁なツェルプストーまで連れ込んで……」 友人と酒盛りに高じて長年の無聊を慰めてみたり。 兎に角、まるで一分一秒さえ惜しいとでも言うようにアナスタシアは色々なことに嘴を突っ込んだ。 ルイズに付き添っての魔法の授業から厨房に通って料理を習ったり、周囲の恋の悩みに頼まれてもいないのに全力で突っ込んでいったり。 そんな彼女を疎んじる者も多かったが、しかし彼女を慕う者はそれよりもずっと多かった。 特にコック長のマルトーやメイドのシエスタは貴族でありながら気取らないアナスタシアの姿に崇敬にも近い感覚を抱いているし、アナスタシアの口利きで壊れかけたモンモランシーとの仲を修復できたギーシュは今でも彼女に頭が上がらない。 その他にも親身になって恋の相談相手になってくれたことに感謝するケティ、ルイズに積極的に突っかかってくるキュルケとその友人である雪風の二つ名を持つ少女はアナスタシアに出来た大切な友人の一人であった。 かつてアナスタシアにもたくさんの友人が居た。 あまりにも短い青春を共に笑いあい、喧嘩し、そして共に泣いた友人達がいた。 彼らはもう居ない、焔の災厄で命を落とした者もいれば、天寿を全うした者もいる――が、事象地平の彼方で彷徨い続けるアナスタシアを一人残し、皆ファルガイアを去っていった。 唯一彼女の傍に居ることが出来たのは、人外として悠久を生きる者たちだけ。 欲望を司る守護獣と、夜の支配者たる少女だけである。 だからこうして普通の少女として、ただのアナスタシアとして過ごすことの出来る時間は彼女にとって何より楽しく、そしてかけがえのないものだった。 それこそ寸暇を惜しみ、寝る時間を削る程に。 ――だからいくら超人的な体力を誇るアナスタシアと言っても、限界を超えて気絶するように眠ってしまったとしてもおかしくはない。 「ふにゃ?」 実に可愛らしい声を上げながらアナスタシアは目覚めた、此処はどこだろう? そんな風に考えて周囲を見回す。 天高く聳える本の山と、年経た黴が醸す時代の香り、そして自分の背中に掛けられたブランケット。 図書館に用意してあるソファーの上だと理解する。 続いて何故此処にいるのかと暫し考えてアナスタシアは得心した、食堂でご飯を食べてルイズちゃんの部屋に戻る途中七日間の徹夜の無理が祟って倒れたのだろう、そしてそれを見つけた誰かが此処に運んで毛布を掛けてくれたのだ。 アナスタシアの寝ぼけ頭の推論を裏付けるように、ソファーの後ろ側に座り黙々と本を読み続ける少女が一人。 「タバサちゃん?」 「大丈夫?」 振り返りもせずそう聞いてくる少女に笑みを返すと、アナスタシアは硬くなった体をほぐす様にゆっくりと伸びをする。 「ええ、おかげさまで風邪を引かずに済んだかな」 ありがとう、ただ一言万感の思いを込めてそう告げるとアナスタシアはタバサの隣に腰を下ろした。 そのことに何か口を挟むでもなくタバサはただ本を読み続ける、まるで人形のような印象を周囲に与える少女だがアナスタシアは少女のなかにたくさんの感情が隠れていることに気づいていた。だから、アナスタシアは何も言わない。 しとしととしばらく雨の音だけが静かに図書館に満ち、二人の間には穏やかな空気が漂う。 ――が、騒ぎたい盛りのアナスタシアにはあまり長い時間じっとしていろなどと言うのは無理な注文であった。 「イー……ヴぅあ……?」 「イーヴァルディの勇者」 タバサが読んでいた本の表紙をたどたどしい知識で読み上げたアナスタシアに、タバサの冷静な訂正が入る。 「へぇ、どんな物語なの?」 「それは……」 その問いに思案するようにタバサは押し黙り、やがてかみ締めるようにしてその英雄譚を語りだした。 それは少女の憧れと夢そのもの、ただ一夜の食事のお礼と言うだけで命を賭けて強大な相手に挑むことが出来る存在の伝説。 光る左手に剣を、右手に槍を携えて、怯えながら弱き人の為にその力を振るう者。 その物語を聞いてアナスタシアは思わず苦笑した、そして見たこともないイーヴァルディと言う存在に共感を覚えた。彼が一体何を思って勇者となったかは知らない、ただ震えながら竜に向かって剣を向ける姿にかつての自分を思い出したのだろう。 「それじゃあ、お礼にわたしの知っている物語も……」 語るのは 剣の聖女 の物語、当事者としての真相の物語ではなく、誰もが憧れた一人の英雄の物語。 多くの者たちが己の理想から削りだした欺瞞から成る英雄譚。 だがアナスタシアには彼女に語るこの物語こそ相応しいと思えたのだ。 それが真実でないとしても、いくつのも悲しみとしがらみを生み出してきた英雄の話よりはずっと…… 「此処からは遥か遠い“ファルガイア”と言う世界を焔の朱に染めた災厄があった」 アナスタシアは知らない、その物語を聞いている相手がもう一人いるだなんてことを。 図書館の入り口でルイズはまるで引き込まれるようにアナスタシアの話を聞いていた。 ――地から伸びた焔は天を焦がし、星の未来さえ焼き尽くさんと渦を巻く あっちへふらふら、こっちへふらふら、寝る暇を惜しんで動き回るアナスタシアを今日こそ部屋へ連れ帰る為である。 ――存亡の危機に晒された人類が縋った最後の可能性。それが剣の聖女でした。 出来ればもっと一緒に居たいし、それに彼女はルイズの使い魔なのだから。 ――名も無き下級貴族の娘として生を受けた彼女は、ガーディアンブレード『アガートラーム』の呼び声に導かれて立ち上がります だから必死で探したと言うのに、当の本人はこんなところでタバサ相手に御伽噺を語っているのだ。ルイズの嫉妬交じりの怒りが燃え上がったとしてもなんら不思議は無い。 ――為すすべもなかった人々は、聖女の剣の一振りに希望を託し、未来を信じる。 だがいざ文句を言いに行こうとして、ルイズは金縛りにあったように動けなくなった。 ――そして聖女が剣を手にして七日目の夜、彼女はすべての焔の災厄と共に光の奔流のなかへ消えていったそうです。 輝かしい筈のその物語を語るアナスタシアの様子があまりにも悲しげだったから。 ――後に、地面に突き立った一振りの剣を残して ルイズには、ただ立ち竦むことしかできなくなったのだ。 「ねぇルイズちゃん、もしこの国が戦争に巻き込まれたら貴女はどうするの?」 噂程度に漏れ聞こえてくるアルビオンのレコンキスタ、トリステインを覆う暗雲は隠しようもない。 そのことにアナスタシアは凄く悲しい気持ちになっていた、何故わざわざ人と人とが争わねばならないのか? わざわざ互いに殺しあわなくても滅びの種などあちらこちらに転がっていると言うのに…… 「勿論、戦うわ。姫殿下に忠誠を誓い、いざと言う時にはお助けするのが貴族ですもの!」 「戦争に、人を殺す訓練をしていない人が行っても邪魔なだけよ。きっと……」 「それでも私は貴族だもの!」 万感の思いで叫んだルイズに、アナスタシアは一つ嘆息する。 その様はかつて見た 聖女 の末裔として剣を求めた一人の青年の姿を思い起こさせたからだ。 聖女 の血など何の意味さえないと言うのに…… 暗く沈んだアナスタシアの様子に思うところがあるのか、いつも通りきざったらしい仕草で隣に座っていたギーシュは言った。 「そうだね、ぼくも戦場へ馳せ参じることになるだろう。ぼくの父は元帥だし、それに――男と言うのは戦場で武勲を立てて英雄と呼ばれることを夢見るものだからね」 ふふん、と笑ったギーシュに帰ってきたきたのは底冷えするような声だった。 「知ってる?」 「え? な、なな何をだい?」 訳の分からない悪寒に背筋を振るわせたギーシュにアナスタシアは言った。 「『英雄』って言葉は、『生贄』の別の呼び方でしかないってことに」 そう告げるアナスタシアの言葉は、とてもとても悲しそうだった。 ――しかしその悲しみは長続きしなかった。 オォォォォォォン 窓の外から聞こえてきた遠吠えにみんな揃って顔を出す、そこには二つの月を背に高く高く吼え声を上げる勇ましき狼の姿があった。 「ルシエドッ!」 みなぎる喜色を隠さずにアナスタシアは友人の名を呼び、紫の狼は応えるようにもう一度吼えた。 そのまま今まで立っていた宝物庫の塔を垂直に駆け下りると、窓からルイズの部屋へと飛び込んだのである。 突然の闖入者にルイズとギーシュが目を白くさせるなか、アナスタシアの胸に飛び込んだルシエドはそのまま勢い余ってアナスタシアを押し倒すような格好になり…… 「こんの馬鹿犬! アナスタシアから離れなさい」 ――あとはもうお約束である。 暗い予感を孕みつつも、大過なく魔法学院での平穏な日常は過ぎていく。 だが日常がかけがえの無いものだと言うことにまだルイズは気づかなかった。
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スゴロクロニクル ~右手に剣を左手にサイコロを~ コンパイルハート 2008.11.20 Wii ドカポン系のボードゲーム サイコロでマス目を移動して、お金を目標金額までためる為に、土地を所有したり、モンスターを配置したりする
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ビギナーフレイム 50Gold/50CP 能力値 60 耐性 強 ようやく成功した火の術。攻撃には使えないが、敵は怯むだろう クインナイフレフト 150Gold/100CP 能力値 96 耐性 強 左の武器は敵からの反撃を迎撃する牽制用だ プレンウィグリモア 300G/150CP 能力値 132 耐性 強 比較的簡単な魔術書。術者を脅威から守る様々な呪文が書かれている ブルータスシールド 500Gold/200CP 能力値 252 耐性 強 おお、ブルータス。お前も買うのか。古の英雄が用いた盾の模造品 マジッククロス 750G/250CP 能力値 353 耐性 強 溶かした金属に防衛の魔力を込め、鋳造した十字架。高い防御効果を秘める 旅人のサヤ 1050G/300CP 能力値 552 耐性 強 短刀の鞘。敵の攻撃を打ち払うくらいには使えるだろう セイクルリング 1600G/400CP 能力値 696 耐性 水 天使の翼をかたどった指輪。持ち主を襲い掛かる悪意から護るという ブレイブシールド 2250G/500CP 能力値 840 耐性 強 勇者を護る盾、闇の力から持ち主を護るぞ! 水の守り瓶 3000G/600CP 能力値 1275 耐性 水 意志を持つ水がたたえられた瓶。持ち主を脅威から護る 黄昏の残光 3800G/700CP 能力値 1500 耐性 土 暮れ行く陽光のような濃く鋭い赤光を放つサークルシールド ロゼンジシールド 4800G/800CP 能力値 1815 耐性 強 高貴な戦士に似合う盾。敵の攻撃を華麗に受け流す! イグニスレフティ 5850G/900CP 能力値 2130 耐性 火 左腕に刻む烈火の加護。烈火の暴虐から戦士を守る タビュラーレフティ 7000G/1000CP 能力値 2490 耐性 風 左腕に刻む疾風の加護。疾風の騒乱から戦士を守る フロスレフティ 8250G/1100CP 能力値 2850 耐性 水 左腕に刻む銀氷の加護。銀氷の恐怖から戦士を守る ガイアアーマー 9600G/1200CP 能力値 3300 耐性 土 左腕に刻む大地の加護。大地の猛威から戦士を守る 精霊の宝珠 11050G/1300CP 能力値 3840 耐性 光 精霊の霊力を結晶化したもの。妖精と心を通わせることを可能とする宝珠 ギガスガントレット 12600G/1400CP 能力値 4515 耐性 闇 かつて巨人族が開発したという超硬度の合金から作られた篭手 邪竜の宝玉 14250G/1500CP 能力値 5190 耐性 火 邪竜の悪意が込められた宝玉。持つ者の心を悪意で満たす ディバンシールド 17000G/1700CP 能力値 7038 耐性 天 地上に存在するあらゆる剣戟を弾き返す魔法の盾。神々への反逆の象徴 妖刀の鞘 21000G/2000CP 能力値 6666 耐性 強 凄まじい妖力を秘めた刀身を封印するために必要な妖刀の鞘。鞘自体に魔除けの力がある