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最近ほんとカラオケに行ってないなぁ。歌いたい、歌いたいです。皆さんはどんな時に歌いに行きますか? 散髪屋さんで頭を洗ってもらう時にしっかりと描いてもらいます。自分で書くのと違ってとても気持ちいいです。 バンダイが「PROJECT BM! ポピニカ魂 金田のバイク」を発売するそうです。全国のもけいてん、がんぐてん、かでん・りょうはんてんのもけい・玩具売場、インターネット通販などで販売だとか。 ふ~ん、なるほどねぇ・・・ てっ、この話どこ行くの・・・ そうそう、指輪って普通は左手薬指に付けるよね、では右手の薬指に付ける理由を知りませんか? すぐに役立つ情報がどこかにないかなと今日も探しています。 未来を紡ぐ格言・名言:諸君は必ず失敗する。成功があるかもしれませぬけど、成功より失敗が多い。失敗に落胆しなさるな。失敗に打ち勝たねばならぬ。 それでは今晩はこの辺で終了です。
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2023年07月29日08時48分のカオスバトル キャラ名 作者 体力 TYPE LIFE 勝利数 再翻スカ ブロちよiPhone 10 堅守高速 1 2 ィ゛ゃゾ┛A 鎌田白菜 15 堅守高速 1 0 超魔王の左手 名無しサン 22 攻防強化 1 0 ああああ猫mkII LragR 14 堅守高速 1 0 第1615回C-BR杯がスタートです! 現在再翻スカがタイトルを1回防衛しています! 挑戦者がタイトルを奪取するのか、チャンピオンが防衛記録を伸ばすのか!? ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率5%) ああああ猫mkII、連続攻撃!!! ああああ猫mkII 「あああああ!くらえええ ああああ」 超魔王の左手に1のダメージをあたえた!! 超魔王の左手に1のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A 15 , 超魔王の左手 20 , ああああ猫mkII 14 ) 再翻スカの攻撃!(命中率91%/会心率5%) 再翻スカ「私はムスカ大佐です。私が緊急事態の指揮を執ります」 ミス!ィ゛ゃゾ┛Aにダメージをあたえられない! 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A 15 , 超魔王の左手 20 , ああああ猫mkII 14 ) ィ゛ゃゾ┛Aの攻撃!(命中率95%/会心率5%) ィ゛ゃゾ┛A 「ィ゛ゃゾ┛Aののしかかり!」 超魔王の左手に1のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A 15 , 超魔王の左手 19 , ああああ猫mkII 14 ) 超魔王の左手の攻撃!(命中率58%/会心率5%) 超魔王の左手、痛烈な一撃!!! 超魔王の左手 「ィ゛ゃゾ┛Aよ。これが超魔王の左手の拳だ!」 ィ゛ゃゾ┛Aに5のダメージをあたえた!! ィ゛ゃゾ┛Aの防御 が22ダウンした!! ィ゛ゃゾ┛A 「 M」 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A 10 , 超魔王の左手 19 , ああああ猫mkII 14 ) ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率5%) ああああ猫mkII 「あああああ!くらえええ ああああ」 超魔王の左手に2のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A 10 , 超魔王の左手 17 , ああああ猫mkII 14 ) 再翻スカの攻撃!(命中率95%/会心率12%) 再翻スカ 「私はムスカ大佐です。私が緊急事態の指揮を執ります」 ィ゛ゃゾ┛Aに3のダメージをあたえた!! ィ゛ゃゾ┛A 「 M」 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A 7 , 超魔王の左手 17 , ああああ猫mkII 14 ) ィ゛ゃゾ┛Aの攻撃!(命中率95%/会心率14%) ィ゛ゃゾ┛A 「ィ゛ゃゾ┛Aののしかかり!」 超魔王の左手に2のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A 7 , 超魔王の左手 15 , ああああ猫mkII 14 ) 超魔王の左手の攻撃!(命中率62%/会心率8%) 超魔王の左手、会心の一撃!!! 超魔王の左手 「この超魔王の左手に勝てると思ったのか!?」 ィ゛ゃゾ┛Aに48のダメージをあたえた!! 残り体力( 再翻スカ 10 , ィ゛ゃゾ┛A -41 , 超魔王の左手 15 , ああああ猫mkII 14 ) ィ゛ゃゾ┛AのLIFEは0になった! ィ゛ゃゾ┛Aは爆散した・・・ ィ゛ゃゾ┛A 「ィ゛ゃゾ┛Aはたおれれれれれれれか い め つ」 ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率9%) ああああ猫mkII「あああああ!くらえええ ああああ」 ミス!再翻スカにダメージをあたえられない! 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 15 , ああああ猫mkII 14 ) 再翻スカの攻撃!(命中率77%/会心率20%) 再翻スカ 「私はムスカ大佐です。私が緊急事態の指揮を執ります」 ああああ猫mkIIに3のダメージをあたえた!! ああああ猫mkII 「うわあああああ!あ」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 15 , ああああ猫mkII 11 ) 超魔王の左手の攻撃!(命中率42%/会心率11%) 超魔王の左手 「ああああ猫mkIIよ。これが超魔王の左手の拳だ!」 ああああ猫mkIIに9のダメージをあたえた!! ああああ猫mkII 「うわあああああ!あ」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 15 , ああああ猫mkII 2 ) ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率36%) ああああ猫mkII 「あああああ!くらえええ ああああ」 超魔王の左手に3のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 12 , ああああ猫mkII 2 ) 再翻スカの攻撃!(命中率95%/会心率26%) 再翻スカ、連続攻撃!!! 再翻スカ 「私はムスカ大佐です。私が緊急事態の指揮を執ります」 超魔王の左手に1のダメージをあたえた!! 超魔王の左手に1のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 10 , ああああ猫mkII 2 ) 超魔王の左手の攻撃!(命中率40%/会心率28%) 超魔王の左手 「ああああ猫mkIIよ。これが超魔王の左手の拳だ!」 ああああ猫mkIIはゆうゆうとかわした。 ああああ猫mkII 「あああ!」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 10 , ああああ猫mkII 2 ) ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率42%) ああああ猫mkII「あああああ!くらえええ ああああ」 ミス!再翻スカにダメージをあたえられない! 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 10 , ああああ猫mkII 2 ) 再翻スカの攻撃!(命中率78%/会心率30%) 再翻スカ 「私はムスカ大佐です。私が緊急事態の指揮を執ります」 ああああ猫mkIIに1のダメージをあたえた!! ああああ猫mkII 「うわあああああ!あ」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 10 , ああああ猫mkII 1 ) 超魔王の左手の攻撃!(命中率70%/会心率30%) 超魔王の左手 「再翻スカよ。これが超魔王の左手の拳だ!」 再翻スカは素早くかわした。 再翻スカ 「ひざまずく!命乞いしてください!」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 10 , ああああ猫mkII 1 ) ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率60%) ああああ猫mkII 「あああああ!くらえええ ああああ」 超魔王の左手に4のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 6 , ああああ猫mkII 1 ) 再翻スカの攻撃!(命中率68%/会心率30%) 再翻スカ 「私はムスカ大佐です。私が緊急事態の指揮を執ります」 ああああ猫mkIIはギリギリかわした。 ああああ猫mkII 「あああ!」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 6 , ああああ猫mkII 1 ) 超魔王の左手の攻撃!(命中率32%/会心率30%) 超魔王の左手 「ああああ猫mkIIよ。これが超魔王の左手の拳だ!」 ああああ猫mkIIはゆうゆうとかわした。 ああああ猫mkII 「あああ!」 残り体力( 再翻スカ 10 , 超魔王の左手 6 , ああああ猫mkII 1 ) ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率60%) ああああ猫mkII、会心の一撃!!! ああああ猫mkII 「うううううあああああああああ!!!!」 再翻スカに26のダメージをあたえた!! 残り体力( 再翻スカ -16 , 超魔王の左手 6 , ああああ猫mkII 1 ) 再翻スカのLIFEは0になった! 再翻スカは爆散した・・・ 「あ~目が~目が~!」 超魔王の左手の攻撃!(命中率32%/会心率30%) 超魔王の左手 「ああああ猫mkIIよ。これが超魔王の左手の拳だ!」 ああああ猫mkIIはゆうゆうとかわした。 ああああ猫mkII 「あああ!」 残り体力( 超魔王の左手 6 , ああああ猫mkII 1 ) ああああ猫mkIIの攻撃!(命中率95%/会心率60%) ああああ猫mkII 「あああああ!くらえええ ああああ」 超魔王の左手に2のダメージをあたえた!! 超魔王の左手 「くっ、まだまだ、こんなものでは!」 残り体力( 超魔王の左手 4 , ああああ猫mkII 1 ) 超魔王の左手の攻撃!(命中率37%/会心率45%) 超魔王の左手、会心の一撃!!! 超魔王の左手 「この超魔王の左手に勝てると思ったのか!?」 ああああ猫mkIIに48のダメージをあたえた!! 残り体力( 超魔王の左手 4 , ああああ猫mkII -47 ) ああああ猫mkIIのLIFEは0になった! ああああ猫mkIIは爆散した・・・ 「く蘇がああああああああ!!」 勝ち残ったのは超魔王の左手です! 超魔王の左手が見事にC-BR杯を制覇しました! 超魔王の左手 「お前たちではこの超魔王の左手には勝てん!」 ああああねこたちは 負けてしまった・・・ 全滅・・・・・・・ ??? 「がっくし」 でん!でけでん!でん!でん! まさかの片手無双...... 超魔王は本当は左利き説が浮上してきました・・・ 左手ってこんな強いなら右手も来れば鬼に金棒では!? by.Donald-2nd-R
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前ページ次ページもう一人の『左手』 . 「なぜ知っているだと……? テメエ一体、さっきから何言ってやがるんだ」 じわりと声に殺気を込めて、平田がそのままカウンターから立ち上がり、風見ににじり寄る。それはまるで、猫科の大型肉食獣が威嚇するような迫力があった。 ――が、そんな見る者の目さえ背けさせるような圧力を、風見は無言のまま、弾き返すような鋭い眼光で睨み返している。口元の冷笑さえも、いまだ浮かべたままだ。 (――ちがう) 不意にフーケは気付いた。 この男は確かに、風見志郎だ。 顔と体格が同じというだけではない。そんな外見的特徴など、魔法を使えば、いくらでも似せられる。だが、そんなことでは、絶対に解決出来ない内面的特徴というものがある。 そういう意味では、この男は紛れもなく風見志郎本人だ。 この雰囲気、体臭、なにより余人には絶対に真似の出来ない、その氷のような眼差し――『土くれ』の名でトリステインを荒らし回った自分を、一睨みで『死』さえ予感させた鋭い眼光。……こんな目のできる男が、ハルケギニアに二人といるとは思えない。 だが……だが、違うのだ。 自分が知っている風見志郎と、この男は……明らかに違う。 どう違うと問われれば、上手く言語変換できないほどの違和感でしかないが、学院長秘書ミス・ロングビルとして、少なからず彼と接した記憶から照らし合わせ、それだけは断言できる。 ――この男は、自分が知る風見志郎とは、明らかに別人だ。 (どういうこと……!!?) フーケは混乱した。 結論から言えば、眼前の男は、風見志郎であって、風見志郎ではない。 そんな事がありえるだろうか!?? 「いいだろう……お前がその気なら、相手になってやろうじゃねえか……!!」 低い声でそう呟くと、平田は、その場で軽く腰を落とし、瞑目する。それと同時に、彼の全身を、吐き気を催すような緑色の霧が包んだ。そして、彼の殺気が、その煙の中で、歴然と変質してゆく。――妖気ともいうべき、おぞましの空気へ。 その不気味な煙の中から光る二つの光――それこそまさしく、フーケにも見覚えがある、改造人間カメバズーカの目であった。 「ほう……?」 平田の煙幕を見た途端、風見の口元からようやく笑みが消える。 そして彼は、平田の“変身”に呼応するように、自らの両腕を右横に流し、ポーズをとった。その瞬間、彼の腰に出現する変身ベルト――ダブルタイフーン。 「――おやめなさい!!」 二人の改造人間の間に割って入り、凛とした声を響かせたのは、さきほど紹介された黒いローブの女だった。 「このような愚劣な諍いは許しません!! どうしても続けたければ、私を殺してからになさい!!」 . ――風見は、やや驚いた表情をしていたが、やがてポーズを解き、苦笑しながら平田に背を向けると、無言でこの場を去っていった。 平田――カメバズーカも、緑の煙の中で無気味に光る瞳を閉じると、その数瞬後に消えた煙の中から現れたのは、……さっきまで不味そうに酒を飲んでいた、中年のおっさんだった。そして、そのまま彼も、部屋の外に姿を消した。 大した度胸だ。フーケは、女の胆力に思わず舌を巻いた。 あの二人が、もしその気になれば、女の細首一本など、文字通り一ひねりのはずだ。しかも二人ともに、他人の言葉に容易に従うような男たちではないはずなのに。 そういえば、フーケが知る風見と共に召喚された、才人という少年も、底抜けに向こう見ずなガキだった。 そこまで思い出して、あまりに明確な事実にフーケは気付く。 才人のルーンは、彼の左手の甲に刻まれている。それは伝説の使い魔“ガンダールヴ”のルーン。かつてフーケ自身が才人を拉致して、その能力を利用しようとしたから、それは確認済みだ。 だが、その情報を盗み聞きした時、オスマンのジジイはこうも言っていた。 才人と同時に召喚された風見にも、同じ箇所に、全く同じルーンがあると。――むしろ、その事実の方が、驚愕に価する、と。 しかし、いま見た風見志郎が、その身にルーンを刻んでいたのは、左手ではなく、額であった!! 「あなた」 不意に声をかけられて、反射的にフーケは振り向く。 「カザミシロウを知っているのね?」 その微妙に湿り気を帯びた声も、フーケは気にいらなかったが、それでも彼女は訊かずに入られなかった。 「あんたシェフィールド、とか言ったっけ? 一体全体これはどういう事なの……? あのカザミは一体何者なの……?」 フーケは、もはや恐る恐ると言った感じで尋ねるが、彼女は切れるような笑みを浮かべ、こう答えた。 「それは、あなたが知る必要のないことよ」 「こんなところにいたのか、ルイズ」 トリステイン船籍のマリーガラント号。そのデッキに、彼女はいた。 「ここは冷える。風邪を引いたら大変だから、なかに入りなさい」 そう優しく言うワルドに、ルイズはあいまいな笑みで答えた。 「だって子爵様、船の中は、いかにも汚くて……」 彼女はまだ、あまり元気も回復していないようだったが、それでもマシになった方だと言える。なにせ、往路のグリフォンでは、ロクに口も聞いてくれなかったからな。――そう、ワルドは胸中で呟く。 . 「まあ、客船じゃないんだ。そこはガマンするしかないよ」 「でも――汗臭い平民の船員たちが、大勢いるでしょう。それでつい……」 その瞬間、ワルドの眉間がピクリと震えたが、――目深に被った羽帽子のおかげで、彼女には気付かれなかったようだ。 「そうか……なら、仕方ない。ぼくも付き合うよ」 「あら、仕方無しなら、別に付き合って戴かなくて結構よ。子爵様」 ルイズは、ちょっぴり拗ねたような目を向ける。 「おっと、これは失言だったねレディ。ではもう一度」 ワルドは、片膝をつき、帽子を脱いで、うやうやしくルイズの手にキスを捧げた。 「我が麗しの婚約者よ、どうかこのわたしが、貴女の傍らに侍ることを許したまえ」 「もう―― 子爵様ったら……」 完成された美丈夫といった雰囲気を持つワルドが、こういう態度をとると、まるで一枚の絵画のようなカッコよさがある。さすがに、そういう大人の男のダンディな魅力にかけては、才人はワルドの足元にも及ばない。 (いやだわ、わたしったら……こんなときでも、またサイトのことなんか……) 思わずワルドから目を逸らし、ルイズは取り繕うように言った。 「ゆっ、許しますわ、子爵様……。どうぞ、お願いします」 「……ありがとう」 ワルドは再び、羽帽子を目深に被り、ルイズの傍に立った。 (汗臭い平民、か……) その顔色は、もはや帽子に隠れて見えなかった。 「ねえ、子爵様――」 「その、子爵様というのも、いい加減やめないかい? ルイズ」 「え? ――だって」 「さっきも言ったと思うけど、その他人行儀な口の利き方は、そろそろやめよう。ぼくらは、将来を誓い合った仲なんだから」 そう言われて、ルイズは反射的に俯いた。 「すいません子爵様……でも、その、……やっぱり、帰国したらすぐに結婚と言うのは、早すぎるような気がするんです……お父様にも意見を伺わなくてはいけないし、ですから……」 「そうか」 「……」 「分かった。――まだ当分時間はあるからね。ゆっくり考えてくれたまえ」 そう。――あせる必要はない。この少女を口説き落とす時間なら、まだまだたっぷり残っている。かつて王都で、プレイボーイの代名詞とまで言われた自分だ。こんな年端も行かぬ少女を惚れさせるなど、それこそ、赤子の手を捻るようなものだ。 しかし、同時にワルドも理解している。 いまルイズに、自分のプロポーズにためらわせている本当の理由は、彼女が口にした年齢や公爵の意向などではなく、使い魔である、あの少年の存在なのだという事が。 ――だが、手はすでに打ってある。 早晩、あの少年は間違いなくアルビオンにやってくるだろう。そのときに、改めて彼の自信を砕いてやればいい。自信を無くした男から女を奪うなど、やはり赤子の手を捻るよりも簡単だ。 ただ、問題はあの風見という男だ。奴がその時どう動くかは、流石のワルドと言えど予想しかねる (どっちのカザミも、手を焼かせやがる……!!) そんな思いはおくびにも出さず、ちらりとワルドは、困惑したような瞳で下を向く婚約者を見る。 俺はこの娘を手に入れる。 手に入れなければならないのだ。 そう心に誓う。 誓う相手は、勿論、ルイズでもなければブリミルごときでもない。 もうこの世にはいない、ワルドが心底から愛した、ただ一人の女性だ。 その女性を愛したからこそ、いまのワルドがある。 ――そしてワルドは、今の自分をとても誇りに思っていた。ルイズのような、ただの貴族娘とは違う女を愛した自分も。愛することによって、かつての自分と様変わりした、いまの自分も。 . 「ねえ、子爵様」 「――ん?」 「なんで、そんなにわたしとの結婚にこだわるの? だってわたしは、魔法もろくに使えない『ゼロ』なのよ」 自嘲するようにルイズは言う。 だが、彼女は知らない。周囲が『ゼロ』と嘲る、魔法失敗による怪現象が、一体何を意味しているか。――しかし、ワルドは知っていた。 彼女とその使い魔が『土くれのフーケ』を捕らえたと聞いた時に、彼はそれまで放置していた婚約者の情報を、徹底的に集め、吟味したのだ。 幸い、魔法学院には、同じく“風”のスクウェアたる旧友のギトーが奉職していたので、ルイズの情報を集めるのは簡単だった。退屈な教師生活に飽き飽きしていたギトーは、魔法衛士隊への再就職をほのめかすと、すぐに食いついてきたからだ。 そして、ギトーからもたらされる情報を分析した結果、結論は、おのずと明らかだった。 「ルイズ、きみは『ゼロ』なんかじゃない。いや、それどころか、きみには計り知れないほどの魔法の才能が眠っているはずだ。それはこのぼくが保障する」 「何を言ってるんです子爵様、わたしは――」 「聞くんだ、ルイズ」 ワルドは少女の顔を覗き込み、真摯な目線で語り始める。 きみの魔力によって起こる爆発は、確かに系統魔法では説明不可能な怪現象である。 しかし、かつて魔法学院の教師たちの中で、魔力の発現が爆発にいたるプロセスを解明した者がいるか? 誰もいやしない。それは彼らが無能だという事もあるが、それ以上に、説明の仕様がないからだ、と。 逆に考えれば、きみはおそらく、このハルケギニアで唯一、四つの系統で括りきれない魔法を操る事が出来る存在なのだ、と。 つまり、断じて、ただの失敗魔法などではないのだ、と。 その証拠に、きみは、サモン・サーヴァントで人間を召喚したではないか。普通、召喚の儀式は、使い魔が高等生物であればあるほど成功とされる。ならば、人類に勝る高等生物が、この世にいるか? いやしない。 これこそが、きみがただのメイジではない、何よりの証明である、と。 ワルドの話は、きわめて論理的だった。 だからこそ、その話は、文字通りルイズの魂を貫いた。 かつて、こんなに論旨明快に、自分が『ゼロ』であることを否定してくれた者は、どこにもいなかったからだ。 無論、系統魔法を使えないルイズを慰めてくれた者たちは、いた。 カトレアを始めとする、彼女の家族。そして、使い魔たる才人。 だが、家族の慰め方は、常に同じだった。今はともかく、いつかは魔法が使えるようになるでしょう。だから、諦めずに頑張りなさい。端的に言えば、そういう事だ。 才人にいたっては、この世界に於ける、“魔法の使えない貴族”がいかに惨めな存在かも分かっていない。――だからこそ、余人とは違う偏見のない目線で、彼女を見てくれる、ということなのだが、やはりそれでは、ルイズの心は完全に癒しきれない。 今は『ゼロ』であっても、いずれはなんとかなる、という家族。 『ゼロ』と呼ばれる事が、おまえの全人格を否定する材料になるのか? という才人。 だが、違うのだ。 ルイズが欲していたのは、自分が『ゼロ』ではない、と言ってくれる存在であり、そのことを論理的に証明してくれる者であったのだ。 無論、ワルドは自分が至った結論の全てを話したわけではない。 彼女が何者なのかなど、それこそルイズが召喚した使い魔たちのルーンを調べれば、バカでも分かる事なのだが、いまのワルドは、それを彼女に告げるつもりはない。ルイズを自分に惚れさせるためには、彼女の劣等感を残した方が、何かと便利だからだ。 しかし、ルイズに、そんなワルドの胸中は分からない。 ――やっぱり、わたしの本当の騎士(シュヴァリエ)は、この人なのかもしれない……。 ルイズは熱っぽい視線で、婚約者を見上げながら、何故かズキリと痛む心で、そう思った。 . 「――で、早速、その作戦とやらを聞こうか?」 ギーシュが鼻水を拭きながら、風見に言う。 上空数十mの高度を、滑るように飛行する風竜の背。 その寒気そのものと呼ぶべき薄い空気が、おそるべき風速の向かい風となって乗り手を襲う、ウィンドドラゴンによる高速飛行移動。……寒気忍び寄るこの季節に、それを初体験したギーシュは、ラ・ロシェールに降り立った時、さすがに鼻声になっていた。 「あわてるな。話はツェルプストーたちが帰って来てからだ」 風見は、振り向きもせず、ギーシュに告げる。 その口の利き方といい、どう考えても、平民が貴族に対する態度ではない。不遜そのものだ。 ――だが彼に、風見と面と向かって、その無礼を咎める度胸はなかった。 ギーシュは、その端正な顔をゆがめると、才人を振り向き、風見に聞こえぬように囁いた。 「なあサイト、あのカザミってのは、一体何者なんだ? 何であんなに偉そうなんだ?」 そう問われても、才人としては答えようもない。 「まあ、ナニモノって訊かれても……見た通りの人だとしか……ってか、そんな怒りをおれにぶつけられても、正直こまるんだが……」 「どういうことかね? きみと彼は、同じくルイズの使い魔だったんじゃないのかね?」 「だから言ってるじゃねえか、――見た通りの人だって、よ」 「そっ、それで説明しているつもりかね、きみぃぃっ!!」 ここは港町ラ・ロシェール。 タバサ、キュルケ、ギーシュ、そしてギーシュの使い魔ヴェルダンデを乗せたシルフィードは、一度この地で小休止を取っていた。 乗り手がタバサだけならば、単独でガリアまでの連続飛行すらこなすシルフィードだが、さすがに3人もの少年少女に加え、体重数百kgのジャイアントモールまで背に載せては、その状態で、学院からアルビオンまで直接飛べと言っても、出来ない相談だ。 それでも、学院から早馬で二日の距離にあるラ・ロシェールまで、たった半日ほどで辿り着けたのは、さすがにシルフィードと言わざるを得ない。 ――もっとも、当のシルフィードとしては、眼下の街道を、タンデムに才人を積んで爆走する、風見のハリケーンを、ついに引き離せなかった事の方が、悔しいらしかったが……。 「ただいま」 「ふう、行って来たわ」 タバサとキュルケが帰ってきた。 で、どうだった? と風見が訊く前に、キュルケは結論を口にする。 「――ダメね。ここからアルビオンに向かう便は、次はもう、いつになるか分からないってさ」 ギーシュが、ええっ!?っという表情をする。 港町からフネが出ないという事は、ここからアルビオンに向かうには当然――。 「つまり、またシルフィードの厄介になるしかないって事よ」 「そっか。……ごめんな、タバサ」 「わたしは構わない」 才人の謝罪に、タバサはこともなげに言う。 だが、こんな一文の得にもならない仕事で、他人の使い魔を酷使している事実は、才人にとっては、非常に申し訳ない状況でしかない。 「そうよサイト、どうせ謝るなら、ギーシュに謝った方がいいんじゃないの? これからまた、お寒い思いをさせちゃうけど、頑張ってガマンしてねって、ね?」 キュルケは、悪戯っぽい流し目でギーシュを振り返る。 そこには、やや狼狽したまま固まった、金髪の少年がいた。 「なっ、何を言ってるんだキュルケ!! 仮にもぼくは貴族の一員だぞ! 暑さ寒さでコーディネイトを変えるようなポリシーのない真似なんて――」 そう。彼の上着は、いつもの胸元が開いたフリルの薄手のシャツ一枚に、マントのみという、お世辞にも旅行向きとはいえない格好だった。 出立前に、あれほどみんなが注意したのに、彼は“ポリシー”の一言で、それを無視したのだ。 派手好きのキュルケですら、少しは厚手の野暮ったいコートを羽織っているというのに。 「おいギーシュ」 才人が、さっきのタバサに向けた目と180度真逆の冷たい視線で言う。 「おまえ、ここにいる間に、ちゃんと買っとけよ、防寒着」 . 「とりあえず、今晩はこの町で一泊しましょう。一秒でも早く熱いお風呂を浴びて、ワインでもやらなきゃ、ギーシュじゃないけど眠れそうにないわ」 キュルケが、そう言いながら宿場町――ラ・ロシェールは、一応港町なので、諸侯や太守クラスの大貴族が利用する官営旅館『本陣』が存在する――の方向に歩き出し、不意に振り向く。 「カザミ、宿ではちゃんと聞かせてもらえるんでしょうね? アルビオンに着いてからプランとやらは!?」 そう。すでに賽は投げられ、矢は放たれた。 才人は、この場の誰よりも心配そうな目で、風見を見る。 聞いた話では、ワルドは『成算はある』と風見に告げたようだが、いまや、そのワルドは一行の中にはいない。いない以上、風見が述べた任務遂行上の問題点――それらを全て、独力で解決しなければならないということだ。 制空権を握られた、アルビオンへの空路。 数万の大軍勢が包囲する、ニューカッスル城塞への潜入。 城塞への潜入後、トリステインの正式大使を名乗り、返還交渉に及ばねばならない王女の“手紙”。 ちなみに、王女の私的な隠密行動であるため、自分たちが正式な“大使”である事を保障する公式書類は、一枚も用意されてはいない。万が一、事が露見した場合を考えて、アンリエッタは極力、証拠は残さないようにしたいのだろう。 ……風見は一体、こんなムチャクチャな任務に、どうやって活路を見出そうと言うのだろう。そもそもワルド子爵は、本当に成算などあったのだろうか? いや、不安要素はさらにまだ存在する。 レコン・キスタが“増援”として送り出したという、もう一人の改造人間カメバズーカこと平田拓馬……!! 考えるほどに、才人は、これからの旅程のおぞましさに、背筋が寒くなる。 だが……ルイズはもう、今頃アルビオンに着いているであろう。その傍らに自分がいない。そう思うと、自分たちを待ち受ける困難の、さらに数百倍の後悔と不安が、才人を苛むのだ。 一刻も早く、ルイズと合流せねばならない。後の事はそれから考えればいい。本音を言えば、こんなところで、ぐずぐず一泊している暇さえ才人には惜しいのだ。 そして風見は、隣を歩く才人の焦燥など、全く知らぬ者のように、確かな声でキュルケに応える。 「ああ、安心しろ。確実なプランはすでに――」 そう言って、風見は自分の眉間をちょんちょんと突付くと、 「ここにある」 「大丈夫さ、ルイズ。君はぼくに全てを任せていればいいんだ」 昨夜、風見が洩らした任務遂行上の問題点。 さすがのルイズも、今になって少しは不安になってきたらしい。 が、そんな少女の不安を物ともしない、太い声で、子爵は微笑む。 「ちゃんと、確実なプランは、――ここにあるからね」 誇らしげに、ワルドは、自分の羽帽子を突付く。――同時刻に、ラ・ロシェールで風見が全く同じ台詞を、全く同じポーズで言ったと知ったなら、彼は思わず失笑するだろうが。 だが、ワルドと風見では、プランの内容は全く異なる。 そもそもプランも何も、レコン・キスタの大幹部たる顔を持つワルドにとって、たとえ何万の軍がニューカッスルを囲んでいたとしても、全く関係のないことなのだ。 何故なら、城塞を包囲する貴族派の母体となった組織こそが、レコン・キスタという反王制思想組織なのだから。つまり彼にとっては、アルビオンを埋め尽くす包囲軍は、敵ではなく味方に過ぎないのだ。 当然、彼の懐には、レコン・キスタ最高司令官クロムウェルの書付が眠っている。 これを使えば、道中の不安どころか、道行く貴族派は、逆に、護衛すらつけようと言い出しかねない。勿論、そこまでの好意は、自分がスパイである事を喧伝しているようなものなので、受諾する気はないが。 . アルビオンが見えてきた。 隣の少女には見えなかっただろうが、グリフォンでの長距離飛行に慣れたワルドの、鍛えられた視力には見えた。その空中にポツンと浮かぶ白い“石ころ”が。 白く見えるのは、視覚的に月光に反射するのが、大陸の下半分を包む霧の部分だけだからだ。 これが昼間ならば、下半分の白霧に加え、今は夜空に隠された、上半分の黒々とした山塊という、白黒まだらの見事な“石ころ”が、青空をバックにとても美しく展開するであろう。 その“石ころ”が、本来の浮遊大陸と呼ぶに相応しい巨大さを、見る者に意識させるには、まだかなりの距離と時間がかかるであろう。――おそらく夜明け頃まで。 だがワルドは、いまの遠目に見えるアルビオンの眺め――空中にポツンと、寂しげに佇む、孤独な“石ころ”の眺めが、たまらなく好きであった。 (あの者に一度、見せてやりたかった) ズキリとした胸の痛みと共に、ある女の顔が浮かぶ。 彼がまだ、グリフォン隊の平隊士だった頃。 王都で、“メイジの花形”魔法衛士の名を辱めぬ程度の女遊びに励んでいた、あの当時。 勿論ただでさえワルドは女にもてた。 そんな彼が魔法衛士隊の名を出せば、口説けぬ女などいなかった、と言っていい。 そんな中、出会ってしまった一人の女。 彼の行きつけのカフェの斜向かいにある、花屋の娘。 貴族娘のように、驕慢でも横暴でも自侭でもなく、あくまでその場で咲き続ける事を本貫とする、路傍の花。その美しさを必要以上に訴える事すらない、ささやかで、それ以上に淑やかな花。 それでいて明るく、元気で、傍にいる者――いや傍どころか――斜向かいの店から彼女を見ているワルドさえ、ホッとさせるような、あたたかな空気の持ち主。 歴とした子爵位を継いでいるワルドにとって、そんな町娘など、釣り合おうはずもない。それどころか、彼は、その娘に話し掛けた事さえなかった。無論、その娘が話し掛けてくる事も。彼は貴族で、何より彼女は平民だったから。 そして、ある日、彼女は唐突に、――死んだ。 道行く貴族の馬車を遮ったという理由で、“無礼討ち”として、真っ昼間の公衆の面前で、焼き殺されてしまったのだ。 カフェの親父から、その事を聞かされた時、ワルドは呆然と立ち尽くした。 彼は泣く事さえ出来なかった。敬愛していた母の訃報の聞いた時の、さらに数倍の衝撃に、心を攪拌されていたからだ。その、あまりに大き過ぎる衝撃に、彼の心は、その感情をどう表現すべきか、分からなくなってしまっていたのだ。 そして、ワルドは不意に知った。 自分は、彼女を愛していたのだ、と。 しかし、――それでも、彼の心は『慟哭する』という表現解答を、見出せなかった。 そして、その日から、ワルドは泣けなくなった。 ワルドは今でも忘れてはいない。彼女の弔問に、花を持っていった時の、突き刺さるような遺族の、いや遺族を含む、すべての平民たちの視線を。 無論、彼女を殺した貴族はワルドではないし、それどころか、その場に自分がいれば、むざむざ彼女を殺させる事もなかったであろう。 しかし、彼女が平民であり、貴族に平民を殺す権利がある以上、今この瞬間にも、彼女と同じ、非業の死を遂げている平民たちがいることも間違いないのだ。そして、貴族の権利を始祖が保障しているなら……神がいる以上、平民たちは救われない事になる。 . ワルドは、気付いてしまったのだ。世界の大いなる矛盾に。 万民の幸福を保障すべき、神と始祖が、同じ理屈で、他者の幸福を蹂躙している事実に。 そして彼は、復讐を誓った。神と始祖と王家を頂点とする、社会の全てに対して。 口すら利かず、名すら知らぬ、自分がただ一人愛した、平民の少女のために。 ワルドは、その日から変わった。 魔法衛士隊のたしなみとも言われた女遊びも、スッパリと足を洗い、ひたすら魔法の勉強と戦闘訓練、そして幻獣調教の腕を上げることに励んだ。 彼の頭を支配していたのはただ一つ、――出世してやる、という一事だった。 ただひたすらに、王よりも、始祖よりも、神よりも偉くなり、全てをこの手で創り変えてやる。 それが俺の、この世に対する復讐なのだ、と。 そのためだけに、ひたすら謹厳実直に隊務を勤め、そして彼はグリフォン隊の隊長にまでなった。 これまで以上に礼儀正しく、そして平民たちには容赦しなくなった。平民どもに媚びている、という悪評は、出世の足を恐ろしく引っ張る事を知っていたからだ。 ルイズとの結婚を、いまさら強く望むのも、出世のためだ。 長女エレオノールの悪名は、貴族サロンに轟き渡っている。いまさら彼女と結婚を前提に交際しようと考える男など、まずいまい。次女カトレアに至っては死病に取り憑かれ、あと数年で死に至るだろう。 何よりルイズの属性が、彼の予想通り“虚無”であるならば、『虚無の担い手』の夫として、公爵家を継ぐ事さえ、決して夢ではない。 そして、レコン・キスタという組織を知り、加盟を果たし、今では幹部格の扱いすら受けている。幹部格、どころではない。いまやトリステインにおける貴族派の、事実上の束ね役といっても過言ではないだろう。 彼らの提唱する『共和制』という概念には、確かに魅力を感じる。 『王家』を固定せず、一国を束ねるに足る能力を持った貴族を、議会“貴族院”が選び、国王に任命する。 任期は終身。だが世襲権はなく、王の息子が王位を継ぐのは、王位を継ぐに足る器量の所有者と、議会が認めたときのみ。……真に優れた王のみを選ばんとするシステムだ。 だがいずれ、その精神は失われ、所詮は王家に取って変わりたいだけの俗物が覇を競う、愚劣なパワーゲームの場になってゆくはずだ。そして、司令官クロムウェルや、他の大貴族どもが、小賢しい俗物に過ぎないことを彼は知っている。 しかし、彼ほどの才覚者が、公爵家の爵位と領地と兵力を継ぎ、『虚無の担い手』ルイズを妻としたならば、――俗物ひしめく貴族派内でワルドに逆らえる者は、すぐにいなくなるだろう。 ならば、最終的にハルケギニアを、この手に握る事さえ、決して出来ない相談ではない。 ワルドは、傍らの少女を優しげな眼差しで見下ろした。 自分の野望のためとは言え、こんな、いたいけな少女に犠牲を強要する事に、まるで胸が痛まないと言えば、いくら何でも、それは嘘だ。 思えば、不憫な娘だ。――ワルドはそう思う。 生まれてこの方、魔法が使えないことを周囲にひたすらバカにされ、その挙げ句、ようやく心を通じ合わせた少年とは、生木を裂くように引き離され、この自分に愛のない結婚を選ばされようとしている。 だから、――せめて、この俺に惚れさせてやる。 強制的に俺を選ばされたのではなく、俺に惚れて、せめて自分から俺を選んだ、というかたちにしてやる。そのためならば、俺はいくらでも優しくなろう。どんな事でもしてやろう。 そう思う。 だが、――心までは、くれてやるつもりはない。 俺の心はお前の物ではない。 そして当然、俺の物ですらない。 俺の心を所有できるのは、所有者の名乗りをあげられるのは、ただ一人、名すら知らぬ、あの少女だけなのだから。 その時、鐘楼に登った見張りの船員が叫んだ。 「右舷上方の雲中より、フネが接近してきまぁすっ!!」 なるほど、確かに一隻のフネが、ゆらゆらと近付いてくる。 それを見てルイズは、 「いやだわ……反乱軍のフネかしら」 そう、眉をしかめた。 ならば、逆にこっちとしても、手間が省けるな。 ワルドは胸の内で呟いた。 だが、彼は知らなかった。 ワルドに取っては致命的なことに、……そのフネが、空賊を装った、王党派の私掠船であることを。 前ページ次ページもう一人の『左手』
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アイテム名 装備レベル レベル 攻 防 魔 魅 運 早 火 水 風 土 入手 備考 AAライオンシールド 1 0推定値 2.00 11.00 - 3.00 - - - - - - 銀袋 2007お正月 40 10.00 55.00 - 15.00 - - - - - - 青バサミL 1 0推定値 4.00 - - - - - - 2.80 - - 青ガニ 15 10.00 - - - - - - 7.00 - - 青マタンゴ人形 1 0推定値 - 0.71 - 1.78 - - - 1.78 - - 青マタンゴ・青マタンゴー 18 - 2.00 - 5.00 - - - 5.00 - - 赤ガーベラの花束 100 0推定値 3.00 3.50 1.50 2.00 0.50 - - - - - お中元大 2007夏祭り 10 6.00 7.00 3.00 4.00 1.00 - - - - - 赤なまはげの手桶 40 0推定値 - 8.46 3.07 - - - - - - - キャッシュ 2009 1~2月 16 - 22.00 8.00 - - - - - - - 赤マタンゴ人形 1 0推定値 - 0.78 - 1.84 - - 1.84 - - - 赤マタンゴ・赤マタンゴー 28 - 3.00 - 7.00 - - 7.00 - - - アリン 200 0推定値 - 20.00 - 13.63 - - - - - - 花町仕立て 1 - 22.00 - 15.00 - - - - - - 飯桐団大尉マント 1 0推定値 - 7.50 - 4.00 - 1.50 - - - - お中元普 2008夏祭り 30 - 30.00 - 16.00 - 6.00 - - - - イエローキャンドルL 1 0推定値 0.66 0.66 - 0.66 - - 2.66 - - 0.66 エンジェル黄キャンド 2006クリスマス 5 1.00 1.00 - 1.00 - - 4.00 - - 1.00 生きた六つの魂 80 0推定値 2.91 10.83 - - - - - - - - プレゼントBOX 2008クリスマス 14 7.00 26.00 - - - - - - - - 伊勢海老御節 41 0推定値 - 6.92 - 1.92 3.84 - - - - - キャッシュ 2007お正月 16 - 18.00 - 5.00 10.00 - - - - - イチゴケーキL 20 0推定値 - 2.72 - 5.45 - - - - - - クリスマスタウン依頼 2006クリスマス 1 - 3.00 - 6.00 - - - - - - 苺チョコドナッツ 22 0推定値 - 1.81 - 3.63 - - - 1.81 - - スウィートタウン依頼 1 - 2.00 - 4.00 - - - 2.00 - - 苺ペロッチュ - 0推定値 - - - - - - - - - - スウィートタウン仕立て 2007ホワイトデー - - - - - - - - - - - 1羽の仲間 40 0推定値 1.15 6.92 - 1.53 - 1.92 - - - - キャッシュ 2008 9~10月 16 3.00 18.00 - 4.00 - 5.00 - - - - イルカの小盾 40 0推定値 - 5.00 2.69 1.92 - - - 1.92 - - キャッシュ 2008 7~8月 16 - 13.00 7.00 5.00 - - - 5.00 - - イルカの抱き枕 57 0推定値 - 3.63 - 2.72 - - - - - - ピノコ仕立て 夏祭り 1 - 4.00 - 3.00 - - - - - - ウィンブスノボー 70 0推定値 - 10.68 - - - 6.20 - 1.03 1.03 - キャッシュ 2009 1月 19 - 31.00 - - - 18.00 - 3.00 3.00 - ウィンピスノボバッグ 120 0推定値 - 14.00 - 0.85 - 8.85 - - - - キャッシュ 2009 1月 25 - 49.00 - 3.00 - 31.00 - - - - ウエストソード青 115 0推定値 7.27 - - - 1.81 - - - - - スウィートタウン依頼 1 8.00 - - - 2.00 - - - - - 打上花火緑 55 0推定値 1.00 - 2.00 - - 2.00 1.00 - 3.00 - 打上グリーン 夏祭り 30 4.00 - 8.00 - - 8.00 4.00 - 12.00 - 梅八分咲き 90 0推定値 - 12.18 5.00 - - - - - - - キャッシュ 2009 1~2月 22 - 39.00 16.00 - - - - - - - ウロコカッター 105 0推定値 6.00 2.00 - 3.00 - - - 2.00 - - ダイオウイカ 夏祭り 30 24.00 8.00 - 12.00 - - - 8.00 - - うろこの盾 1 0推定値 - 2.72 - - - - 0.90 - - - 城下・ティンバー・マランダ 1 - 3.00 - - - - 1.00 - - - エムイチロク 70 0推定値 6.78 5.35 - - 1.78 - - - - - お中元普 2008夏祭り 18 19.00 15.00 - - 5.00 - - - - - 苧環隊少将マント 70 0推定値 - 9.50 2.00 - 3.00 2.00 - - - - お中元普 2008夏祭り 30 - 38.00 8.00 - 12.00 8.00 - - - - おばけ盾 25 0推定値 - 3.33 - 0.83 0.83 - - - - - ごーくん ハロウィン 14 - 8.00 - 2.00 2.00 - - - - - 親子丼 1 0推定値 - 2.66 - - 2.00 - - - - - コケコ 5 - 4.00 - - 3.00 - - - - - 柿の盾 105 0推定値 - 8.00 - 3.00 - - - - - 1.00 漆黒の宝猫 夏祭り 30 - 32.00 - 12.00 - - - - - 4.00 カジマ 110 0推定値 - 15.88 - 1.17 0.88 - - 2.94 - - キャッシュ 2008 12月 24 - 54.00 - 4.00 3.00 - - 10.00 - - カパボール 29 0推定値 0.90 1.81 - - 0.90 - - 2.72 - - アジアンリゾート 夏祭り 1 1.00 2.00 - - 1.00 - - 3.00 - - カボチャケーキ 30 0推定値 - 3.00 - 2.00 - - - - - - タマッキ ハロウィン 20 - 9.00 - 6.00 - - - - - - カボチャスープ 11 0推定値 - 1.00 - 1.50 - - - - - - チョッキー ハロウィン 10 - 2.00 - 3.00 - - - - - - カボチャ人形 36 0推定値 - 0.90 - 2.50 2.50 - - - - 0.90 カボッチ ハロウィン 34 - 4.00 - 11.00 11.00 - - - - 4.00 革の盾 1 0推定値 - 1.81 - - - - - - - - ライナ 1 - 2.00 - - - - - - - - キウイペロッチュ 25 0推定値 - 3.63 - 1.81 - - - - - - スウィートタウン仕立て 2007ホワイトデー 1 - 4.00 - 2.00 - - - - - - 黄マタンゴ人形 1 0推定値 - 1.00 - 2.00 - - - - - 2.00 黄マタンゴ・黄マタンゴー 30 - 4.00 - 8.00 - - - - - 8.00 牛丼 24 0推定値 0.95 2.85 - 0.95 - - - - - - 寝モーモ 11 2.00 6.00 - 2.00 - - - - - - 巨大ツリーL? 65 0推定値 - 7.66 - 3.33 2.33 - - - - - キャッシュ 2006クリスマス 20 - 23.00 - 10.00 7.00 - - - - - 金鞘 50 0推定値 1.85 10.00 - 1.85 0.74 - - - - - キャッシュ 2008夏祭り 17 5.00 27.00 - 5.00 2.00 - - - - - 楠団団旗 30 0推定値 2.00 4.00 - 2.00 - - - - - - お中元小 2008夏祭り 15 5.00 10.00 - 5.00 - - - - - - クリーム 1 0推定値 - - - 0.71 0.71 - - - - - ミルクもっちーも 4 - - - 1.00 1.00 - - - - - グリーンカレー 34 0推定値 - 2.00 0.66 2.00 - - - 0.66 - - アジアンリゾート依頼 夏祭り 5 - 3.00 1.00 3.00 - - - 1.00 - - グリーンキャンドルL 45 0推定値 0.68 3.79 - 1.72 - - 2.75 - 0.68 - エンジェル緑キャンド 2006クリスマス 19 2.00 11.00 - 5.00 - - 8.00 - 2.00 - クリス聖書 160 0推定値 - 16.36 1.81 1.81 - - - - - - クリスマスタウン依頼 2008クリスマス 1 - 18.00 2.00 2.00 - - - - - - クリスマスシールド 55 0推定値 - 6.92 3.84 2.69 - - - - - - キャッシュ 2006クリスマス 16 - 18.00 10.00 7.00 - - - - - - クリスマスディナー 86 0推定値 - 10.00 - 5.86 2.41 - - - - - キャッシュ 2006クリスマス 19 - 29.00 - 17.00 7.00 - - - - - クリスマステーブル 84 0推定値 - 6.36 - - - - - - - - ティンバー依頼 1 - 7.00 - - - - - - - - 黒トゲシールド 155 0推定値 5.45 12.72 - - - - - - - - ピノコ依頼 1 6.00 14.00 - - - - - - - - 黒猫大 50 0推定値 - 7.93 - 5.86 - 0.68 - - - - お中元普 2008夏祭り 19 - 23.00 - 17.00 - 2.00 - - - - クロスシールド赤 32 0推定値 - 4.80 - 4.00 1.20 - - - - - キャッシュ 2006クリスマス 15 - 12.00 - 10.00 3.00 - - - - - 食われ飴苺 1 0推定値 - 1.00 - 2.00 - - - - - - 苺ペロッチュ 2007ホワイトデー 10 - 2.00 - 4.00 - - - - - - 食われ飴キウイ 1 0推定値 - 2.00 - 0.50 - - - - - - キウイペロッチュ 2007ホワイトデー 10 - 4.00 - 1.00 - - - - - - 食われ飴ソーダ 1 0推定値 - 0.55 - - - 1.66 - - - - ソーダペロッチュ 2007ホワイトデー 8 - 1.00 - - - 3.00 - - - - 食われ飴葡萄 1 0推定値 - 0.58 - 0.58 0.58 - - - - - 葡萄ペロッチュ 2007ホワイトデー 7 - 1.00 - 1.00 1.00 - - - - - 食われ飴蜜柑 1 0推定値 - 0.95 - - 1.90 - - - - - 蜜柑ペロッチュ 2007ホワイトデー 11 - 2.00 - - 4.00 - - - - - 食われ飴桃 1 0推定値 - 0.83 0.83 0.83 - - - - - - 桃ペロッチュ 2007ホワイトデー 14 - 2.00 2.00 2.00 - - - - - - 元気トナバッグ 88 0推定値 2.50 10.00 - - - - - - - - キャッシュ 2007クリスマス 22 8.00 32.00 - - - - - - - - 元気のみなもと 50 0推定値 - 11.48 - 0.37 - - - - - - キャッシュ 2009お正月 17 - 31.00 - 1.00 - - - - - - 豪華キャンデー 40 0推定値 - 4.00 - 5.00 - - - - - - キャッシュ 2007ホワイトデー 30 - 16.00 - 20.00 - - - - - - 豪華クッキー 20 0推定値 - 2.50 - 5.00 - - - - - - キャッシュ 2007ホワイトデー 30 - 10.00 - 20.00 - - - - - - サマードーム 76 0推定値 - 3.00 2.00 4.00 - - - 2.00 - - でかクマンミー 夏祭り 30 - 12.00 8.00 16.00 - - - 8.00 - - さらぽよ 5 0推定値 - 2.00 - 1.00 - - - 1.00 - - マランダ仕立て 10 - 4.00 - 2.00 - - - 2.00 - - サランラップ 35 0推定値 3.15 - - - 1.05 2.10 - - - - お中元小 2007夏祭り 9 6.00 - - - 2.00 4.00 - - - - さんしょー 22 0推定値 - 5.21 - 0.86 - - - - - - 福袋小 2008お正月 13 - 12.00 - 2.00 - - - - - - 三段ホットケーキ 22 0推定値 - 1.81 - 2.72 - - - - - - 城下仕立て 1 - 2.00 - 3.00 - - - - - - サンフラワー 80 0推定値 - 11.29 - 1.93 1.93 1.29 - - - - キャッシュ 2008 6~7月 21 - 35.00 - 6.00 6.00 4.00 - - - - 三枚の大葉の紅葉 80 0推定値 - 11.29 0.64 1.93 - 1.93 - - 1.61 - キャッシュ 2008 10~11月 21 - 35.00 2.00 6.00 - 6.00 - - 5.00 - シールドソード 65 0推定値 4.00 7.00 - 2.00 - - - - - - 福袋大 2007お正月 10 8.00 14.00 - 4.00 - - - - - - シブドルマント 40 0推定値 - 9.62 - 0.74 0.74 - - - - - クリスマスBOX普 2008クリスマス 17 - 26.00 - 2.00 2.00 - - - - - シャーク戦隊銃 50 0推定値 - 6.80 - 0.80 1.20 - - - - - 福袋 2008お正月 15 - 17.00 - 2.00 3.00 - - - - - ジャガーズCD 80 0推定値 - 15.18 - 2.96 2.96 - - - - - クリスマスBOX普 2008クリスマス 17 - 41.00 - 8.00 8.00 - - - - - シャチノリ 90 0推定値 2.18 8.75 - 3.43 - - - 3.75 - - キャッシュ 2008 7~8月 22 7.00 28.00 - 11.00 - - - 12.00 - - 召喚トリックブック 91 0推定値 - 5.50 2.00 - - - 1.00 1.00 1.00 1.00 マジカルぽよ ハロウィン 30 - 22.00 8.00 - - - 4.00 4.00 4.00 4.00 シラ華のカバン 110 0推定値 - 5.29 3.23 - - - - - - - キャッシュ 2009お正月 24 - 18.00 11.00 - - - - - - - 汁付きベイベスプーン 62 0推定値 - 4.00 - 2.00 - - 3.00 - - - ピノコ依頼 10 - 8.00 - 4.00 - - 6.00 - - - シルバーバックラー 1 0推定値 - 10.58 - 1.17 2.94 - - - - - 銀箱1 2006クリスマス 7 - 18.00 - 2.00 5.00 - - - - - 真紅の手鏡 50 0推定値 - 3.60 1.20 2.80 - - - - - - お中元小 2007夏祭り 15 - 9.00 3.00 7.00 - - - - - - シンプル浮輪桃 25 0推定値 - 1.81 - 1.81 - - - 0.90 - - ライナ依頼 夏祭り 1 - 2.00 - 2.00 - - - 1.00 - - 睡蓮の雨傘 180 0推定値 - 20.00 - 3.50 2.50 - - 4.50 -1.00 - キャッシュ 2008 5~6月 30 - 80.00 - 14.00 10.00 - - 18.00 -4.00 - スータロー 60 0推定値 0.83 8.33 - - - 0.83 - - - - プレゼントBOX 2008クリスマス 2 1.00 10.00 - - - 1.00 - - - - スーツケース桃 29 0推定値 - 6.00 - - 1.50 - - - - - クリスマスBOX小 2007クリスマス 10 - 12.00 - - 3.00 - - - - - スケバンヨーヨー 48 0推定値 1.85 3.70 - 2.96 2.96 - - - - - キャッシュ 2006クリスマス 17 5.00 10.00 - 8.00 8.00 - - - - - ススキウサギ 70 0推定値 - 9.33 - 2.33 1.66 2.33 - - - - キャッシュ 2008 9月 20 - 28.00 - 7.00 5.00 7.00 - - - - スプンDEベイベ 40 0推定値 - 2.72 - 1.81 - - - - - 1.81 ピノコ仕立て 1 - 3.00 - 2.00 - - - - - 2.00 聖騎士の盾 90 0推定値 - 11.33 1.00 2.33 - 2.33 - - - - 福袋普 2008お正月 20 - 34.00 3.00 7.00 - 7.00 - - - - 清掃ゴミ箱蓋 50 0推定値 - 5.50 - 0.50 - 0.50 - 1.00 - - お中元中 2007夏祭り 10 - 11.00 - 1.00 - 1.00 - 2.00 - - 清掃用洗剤 35 0推定値 2.77 0.55 - - 0.55 0.55 - - - - お中元小 2007夏祭り 8 5.00 1.00 - - 1.00 1.00 - - - - 青銅の盾 1 0推定値 - 3.63 - - - - - - - - 城下・ティンバー・マランダ 1 - 4.00 - - - - - - - - セクシー鞭 50 0推定値 3.33 0.95 0.95 1.42 - 1.42 - - - - お中元大 2007夏祭り 11 7.00 2.00 2.00 3.00 - 3.00 - - - - ソーダペロッチュ 25 0推定値 - 2.72 - - - 3.63 - - - - スウィートタウン仕立て 2007ホワイトデー 1 - 3.00 - - - 4.00 - - - - 隊旗 60 0推定値 3.75 6.25 - - - - - - - - お中元小 2008夏祭り 14 9.00 15.00 - - - - - - - - 団子兎 150 0推定値 - 16.84 - 2.63 2.63 0.78 - - - - キャッシュ 2008 9月 28 - 64.00 - 10.00 10.00 3.00 - - - - ダンディズム造り 94 0推定値 - 6.00 - 5.00 - - - - - - マンボー 夏祭り 50 - 36.00 - 30.00 - - - - - - チーズ 8 0推定値 - - - 2.00 - - - - - - なまけメーメー 10 - - - 4.00 - - - - - - チビミルク 11 0推定値 - 0.71 - - 0.71 - - - - 0.71 モーモ 4 - 1.00 - - 1.00 - - - - 1.00 チビヨーグルト 14 0推定値 - - 0.66 2.00 - - - - - - なまけメーメー 5 - - 1.00 3.00 - - - - - - 茶マタンゴ人形 1 0推定値 - 0.81 - 1.89 - - - 0.81 - 0.81 茶マタンゴ・茶マタンゴー 27 - 3.00 - 7.00 - - - 3.00 - 3.00 チョコ&チョコ 52 0推定値 - 4.81 - 10.00 - - - - - - キャッシュ 2007バレンタイン 17 - 13.00 - 27.00 - - - - - -
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前ページ次ページもう一人の『左手』 雲と霧の白い闇を抜けると、一抹の光さえ差さない、真の闇がそこに待っていた。 浮遊大陸アルビオンの“真下”である。 四人の少年少女を乗せたシルフィードは、ためらうことなく、その暗黒の中に身を紛れ込ませた。 「タバサ! 待ってくれっ!! 風見さんを置いて行く気かっ!?」 才人が必死に叫んでいる。 だが、待つわけには行かない。 自分たちが大陸の下側に逃げ込んだのは、確実に目撃されているだろう。 少なくとも、先程のフネを乗艦とする竜騎士が追って来れない程度の距離を、この暗闇の中で稼がねばならない。 貴族派の空軍は、大陸の下側には入って来ないと風見は言っていたが、いくら何でも、100メイルや200メイル程度の距離なら、たちまち竜騎士に臭いを辿られ、追いつかれてしまう。少なくとも3~4リーグは距離を稼がねば、安全とは言えないはずなのだ。 だが、そこから先は? タバサは唇を噛みしめる。 ニューカッスルの正確な座標を知っているのは、風見だけだ。 こんな暗闇の中を、闇雲に飛び回ったところで、何ら埒があくわけではない。風韻竜シルフィードといえど体力には限界がある。いつ頭上の岩塊に、頭をぶつけるかも知れない危険な闇の中を、無限に飛びつづけるわけには行かない。 ――どうする? タバサは、その怜悧な頭脳を働かせる。 (危険だけど、一度、アルビオンの地上に出るしかない) 幸い、こっちにはヴェルダンデがいる。 さっきのフネから飛び立ったはずの竜騎士をやり過ごし、シルフィードが抱えるジャイアント・モールに地上に向けての穴を掘らせ、地上に出る。 穴の向こうが貴族派の陣かも知れない――いや、アルビオン貴族派のほとんどは、ニューカッスル周辺に陣を構えているはずだ。城から少し距離を置けば、“上陸地点”としては逆に安全といえるかもしれない。 しかし、ニューカッスルの座標どころか、自分たちの現在位置さえ読めない現状では、地上に出るリスクは避けられない。 ――どうする? 昨夜、出立の前に地図上で確認した時、ニューカッスル城は、大陸から突き出た岬の突端に築かれていたはずだった。つまり、アルビオンの内陸に飛べば飛ぶほど、目的地から距離を取れる事になる。 最悪、ラ・ロシェールに帰還するという選択肢も考えつつ、タバサは、あと1リーグ直進したのち、地上への縦穴を掘る決意を固めていた。 (カザミに頼りすぎだった) タバサの奥歯が、ぎしりと音を立てた。 「……まただ、また、おれは……風見さんを見捨てちまった……!!」 才人がへコんだ声を出している。 「あの時と……同じだ……あの時と……っっ!!」 「黙って」 タバサは、いつになく硬い声で才人を制する。 たとえ傍らにいるのが貴族だろうが平民だろうが、この少年は誰はばかる事無く自分の心情を吐露する事をためらわない。そんな彼のことを、タバサは決して嫌ってはいなかった。 「あなたの気持ちは分かる」 だが、それでも、時と場所は選んでもらわなければならない。 ここはもはや、平和な魔法学院ではないのだから。 「でも、いまは黙って。――あなたの、その呟き声さえ、追っ手の竜の耳には聞こえてしまう」 一寸先さえ見えない闇の中で、一同がぎょっとした気配が伝わってくる。 それも当然だろう。 彼らの中で、一番ドラゴンの生態に詳しいのは誰かと訊かれれば、間違いなく、竜を使い魔としている、この少女なのだから。 「心配要らない」 だが、黙れと言ったはずのタバサ自身は、何故か口を閉ざさなかった。 「カザミは死んでない。絶対に生きている」 いや、タバサ自身、なぜ才人にこんな事を言っているのか、よく分かっていなかった。 「タバサ……!?」 いつになく雄弁な彼女に、キュルケが訝しげな声をあげる。 当然だ。人を慰めるなんて、どう考えても自分の任ではないはずなのだ。だが、何故か彼女の口は、言葉を発することをやめられなかった。 「わたしはカザミを信じている。だから、あなたも信じなさい」 タバサのその声に、もはや硬い響きはなかった。 そして、今はそんな情況ではないと分かっていてなお、タバサは何故か、今の自分が不愉快ではなかった。 (ぐっ……!!) 8発目の砲弾を食い止めたV3は、ようやくシルフィードが大陸の真下側に潜り込んだ事を確認した。 (ようやく行ったか……まったく……!!) その事実は、激痛の中、彼に束の間の安堵をもたらす。 だが、V3の仕事は、これで終わったわけではない。むしろこれからなのだ。 あのフネの注意を惹きつけ、シルフィードへの追っ手を極力引き受けねばならない。 彼は、ハリケーンに跨ると、ジェット・ノズルの出力を最大に上げた。 竜騎士を、近代空軍に於ける艦載機だと見なすならば、フネは航空母艦というべき存在であろう。ならば、やるべき事はただ一つだ。 ――フネを制圧する。 すでに数騎の竜騎士たちが、フネを発進したのをV3は目撃している。間違いなくシルフィードへの追跡隊であろう。だが、それでも眼前で母艦が攻撃されれば、奴らも追跡どころではなくなるはずだ。 (殺しはせん。ただ、少し手荒い真似はさせてもらうがな) 心中にそう呟いた瞬間だった。 その砲弾が飛来したのは。 「っ!?」 その一発を喰らった瞬間、V3は全身が、骨の髄までバラバラになりそうな衝撃を覚えた。 躱せなかったのだ。――仮面ライダーV3ともあろう者が。 さっきまでの火砲とは全く違う。威力も、速度も、命中精度も。 おそらく、この砲撃を弾幕に混ぜられていたら、さすがのV3もシルフィードを庇いきれなかったに違いない。風竜かV3か、どちらかが確実に死んでいただろう。 直撃の衝撃でハリケーンから落ちなかったのが、まさしく僥倖という他はない。 こんな砲弾をハルケギニアで撃てる者は、おそらくただ一人。 いや、推測するまでもない。V3はこの一撃を、かつて何度も喰らった覚えがあったのだから。 「あいつ……か……!!」 ――改造人間カメバズーカこと、平田拓馬……!! エレクトロ・アイの透視装置を、望遠に切り替える。それと同時に改造人間探知回路であるOシグナルを開く。だが……その瞬間、V3は愕然となった。 (反応が……二つ……!?) 誰だ!? カメバズーカと俺以外に、まだハルケギニアに改造人間がいるというのか!? 一気に上昇し、フネを眼下に収める高度までハリケーンを駆る。 そこからフネに飛び降り、一息に制圧する予定だった。 相手が人間なら知らず、改造人間ならば、自分のの鉄腕を振るうに不足な相手ではない。 バダンによって魂を抜かれた再生怪人ならばともかく、意思持つ二人の改造人間相手に、まともに戦えるかどうか――それはもはやV3にとって、どうでもいい事だった。 (何故だ……!! 何故、貴様らは……!!) 何を目的として、異世界の争乱に力を貸し、血を流す事を厭わないのか。改造人間のパワーを、ただの人間に振るうということの意味を、何故考えようとしないのか。 それがV3――風見志郎には、どうにも許せないのだ。 だが、その瞬間、彼のあらゆる思考は、一気に吹き飛んだ。 フネの上甲板に立っていた二人の改造人間――カメバズーカと、もう一人の男。 ZX以外の仮面ライダーは、総勢9人。 その中で、彼と結城丈二――ライダーマンが直接知るデストロン以外に、少なくとも10社の“秘密結社”が、かつて世界征服を目指して、改造人間を量産している。だから当然、カメバズーカの隣に立つ者がV3の知らない怪人であっても、不思議はなかった。 しかし、そこにいたのは、彼のあらゆる想像を超えた存在だった。 「俺……だと……!?」 見間違えるわけがなかった。 赤い仮面。 緑の複眼。 立てた襟。 二本のマフラー。 レッドボーン。 そして……ダブルタイフーン。 「しまっ……!!?」 驚愕のあまり動きが止まった瞬間だった。 そこにいた、もう一人のV3のベルトから、凄まじい指向性エネルギーが発射されたのだ。 (逆ダブルタイフーン……だとぉ!?) その刹那、彼は眼前が真っ白になったのを感じた……。 「おい」 「なんだ?」 「本当によかったのか? あれは一応、“お前”なんだろう?」 カメバズーカが、呆れたように傍らの男に話し掛ける。 そこには、紺色のYシャツに白いベストに身を包んだ、精悍な相貌の男が立っていた。 逆ダブルタイフーンは、変身のために使用する全エネルギーを放出するため、三時間は変身が不可能になるほどの壮絶技である。カメバズーカとしても、まさかこの男が、“自分自身”に対し、ここまでやるとは思っていなかった。 だが、 「風見志郎は、一人でいい」 そう呟いた“風見志郎”は、眉一筋動かさなかった。 暗黒の中を、二隻のフネが音もなく進む。 王党派の巡洋艦『イーグル』号が、アルビオン上空で拿捕した『マリーガラント』号を引き連れ、ニューカッスルの地下侵入港に向かっているのだ。 「貴族派というが、所詮あいつらは、空を知らぬ無粋者さ」 そう言って、ウェールズはルイズに笑いかけた。 だがワルドは、そんなウェールズを横目に、全く別な事を考えていた。 ニューカッスル城に王党派を追い詰めて、かなりの日数が経つ。 にもかかわらず、浮遊大陸の真下に、こんな侵入口が存在していた事に気付かなかったとは、迂闊にも程がある。 王党派の城塞すべてに、このような地下港があるのか。それともニューカッスルにだけ、こんな、フネさえ侵入可能なほどの天然の縦穴が、存在していたのか。 (おそらく後者か) 王党派の城塞全てに、こんな大規模設備の用意があったなら、いくら何でも、貴族派の誰も、その存在を知らないなどという事は在り得ない。いや、それ以前に、ここまであっさり王党派も、制空権を奪われたりはしないはずだ。 なら、王党派が、ニューカッスルに逃げ込んだのも、あながち考え無しではなかったという事か。 この大穴を利用して、密かに兵站の補給を続け、可能な限り篭城を長引かせる。その間にハルケギニアの列国に、対レコン・キスタの世論が沸騰すれば、救援さえもあながち期待できない話ではない。……あくまでも糸のように細い期待ではあるが。 空賊たちが、王党派の偽装だったと判明した時は、さすがのワルドもほっと胸を撫で下ろした。常識的に言えば、ワルドの大博打は、どう考えても外れる確率のほうが高かったからだ。 このまま“大使”を名乗り、ニューカッスルまで連れて行ってもらえば、目的の全てを、ほぼ問題なく達成できるだろう。いや、城外の貴族派と上手く連絡を取り合えば、今日・明日中にも、城に貴族派の軍を手引きできるかもしれない。 自分の強運に驚きながらも、ワルドはむしろ沈鬱な表情を崩さず、言った。 「まるで空賊ですな、殿下」 「まさに空賊なのだよ、子爵」 「喜べ、パリー!! 硫黄だ、硫黄!!」 「おお、硫黄ですと!? 火の秘薬ではござらんか!! これで我々の名誉も守られるというものですな!!」 老メイジと抱き合うようにして喜びを分かち合うウェールズ。 「先の陛下よりお仕えして60年……こんな嬉しい日はありませんぞ殿下。叛乱が起こってからは苦渋を舐めっぱなしでありましたが、なに、これだけの硫黄があれば……!!」 「そうだ。――まだまだ我々は戦えるぞっ!!」 聞くも凛々しい、その王子の宣言に、うおお~~っと、地下港に集まった兵たちの歓声が上がる。 その光景に、ルイズも少女らしい興奮を押さえきれなかったようだ。 「そうよそうよ!! レコン・キスタみたいな反乱軍に、由緒正しい王家の人たちが負けるなんて、そんなこと、神と始祖がお許しにならないわ!! ね、子爵さまっ?」 「ああ、ぼくもそう思うよルイズ」 だがワルドは、婚約者に向けた笑顔の下で、彼らを罵倒せずにはいられなかった。 (この、馬鹿めが) アルビオンに住む国民一人一人の事を考えるならば、こんな内戦など、長引いたところで、まさしく百害あって一利もありはしないのだ。 戦が長引けば長引くほど、包囲軍は、戦費や糧食を、ニューカッスル現地民から徴収し、銅貨一枚の見返りすら支払う事はない。そして、内戦の結果、彼ら平民にもたらされるものは何か? 何もありはしない。 残るものは、戦場となって焼き尽くされた田畑であり、糧食として軍に奪い尽くされた収穫であり、兵卒として徴用された農村の壮丁たちの死体だけだ。 しかも、季節はこれから冬を迎える。 食糧や家畜を奪われ、働き手の若者を失い、冬を越せなくなった大量の農民が、文字通り、難民として都市部に流入するだろう。そして彼らは、仕事と食物を奪い合い、結果として恐るべき不景気が、アルビオンを見舞うはずだ。 無論、レコン・キスタの大幹部の一人として、ワルドは、何らかの対応策を打つつもりではあるが。 この内戦が、レコン・キスタによる一方的な侵略戦争であることは承知している。 だが、それでもワルドは、わずかなプライドを掲げて、勝ち目のない戦争をやめようとしない眼前の王党派たちに、言い知れぬ怒りを覚える。 (なぜ、降伏しようとは思わないのだ) その問いの答えは簡単だ。 ――こいつらは死ぬことに酔っている。名誉を守るという大義名分に酔っている。 この連中は、一日早く戦が終われば、その分だけ、民のこうむる戦禍も少なくなるなどとは、おそらく考えた事もないのだろう。 ウェールズという男に何の恨みもないが、それでもこの瞬間に、ワルドの中で、ウェールズに対する、一分の情は消えたと言っていい。 (この王子を殺せば、王党派は瓦解する) ワルドは、ウェールズ暗殺のための具体案を腹の中で練り始めた。 その時だった。 不意の地響きが、地下の鍾乳洞を改築した、この港にまで響いてきた。 「殿下! 貴族派の空襲です!!」 初々しい少年兵が、伝令として駆け込んでくる。 空襲? 貴族派空軍の艦砲射撃か? ワルドは、妙に納得してしまった。 何隻の戦艦が雁首そろえてやってきたかは知らないが、少なくとも2隻や3隻ではなかろう。二個艦隊か三個艦隊は編隊を組んでいるはずだ。にもかかわらず、この地下施設の耐震強度はどうだ? まるでシェルター並みではないか。 周囲を見回すと、やはり怯えた兵など一人もいない。不安げな顔をしているのは、ルイズだけだ。 ルイズのその様子に気が付いたのだろう。 ウェールズは、動揺のカケラも感じさせない陽気さで、少女に話し掛ける。 「はははっ、気にすることは無いよ、ラ・ヴァリエール嬢。奴らの砲撃くらいでは、このニューカッスルの地下宮殿はびくともしないさ」 「地下宮殿、ですか?」 「ああ。このニューカッスルにとって、本当の堀や城壁は、この分厚い岩盤なのさ。地上の施設がどれだけ灰になっても、痛くも痒くもない。なぜなら武器庫も食糧庫も居住区すらも、すべて、この広大な鍾乳洞の中にあるのだから」 「それじゃあ、殿下」 「ああ、我らがニューカッスルを最後の拠点としたのは、この難攻不落の地下宮殿があるからさ」 それを聞いて、――ワルドは、頬が緩むのを懸命にこらえた。 ウェールズの言うことが本当ならば、もはやこの城は陥ちたも同然だ。 地下港の出入り口になっている縦穴を、貴族派のフネで一気に制圧し、地上と地下の両方から、兵団を同時に送り込めばいい。ものの二時間もあれば、呆気なく決着はつくだろう。 「しかし、やられっぱなしというのも業腹だ。我らがテューダー朝アルビオンにも、人なきに非ずということを、貴族派の謀反人どもに教えてやろう」 ウェールズは、にっこりとルイズに笑いかけると、一転した厳しい声で、伝令の少年に叫び返す。 「V3を出撃させろ!! 叛徒どもを、一人たりとも生かして返すなっ!!」 「……ぶい……すりー?」 きょとんとした顔でルイズは、金髪の王子さまを見上げる。 いや、呆けたように見えたのは、その刹那だけだ。 次の瞬間には、彼女が必死になって何かを思い出そうとしているように見えた。 しかし、ワルドは知っている。その名を持つ存在が、何を意味しているのかを。 (ばかな……このニューカッスルに、“奴”がいるというのか……!?) そんな情報は聞いていない。 だが、在り得ない話ではない。アルビオン王家が、始祖の“虚無”を受け継ぐ家系である限り、可能性は100%絶対にないと言い切れる話ではないのだ。 そして、その推測を裏付けるようにウェールズは笑う。 「我が従姉妹が召喚せし、無敵の使い魔さ。彼がいるかぎり、我々がレコン・キスタを駆逐して、再びアルビオンに君臨する事も、決して夢ではないだろう」 前ページ次ページもう一人の『左手』
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前ページ次ページもう一人の『左手』 <フリッグの舞踏会、PM9:15> 「――あのばか犬……!!」 ルイズは、一人呟いた。 ドレスに着飾り、普段あまり熱を入れない化粧にも時間をかけ、持ち前の高飛車オーラを、普段余り見せない淑やかさでカバーした彼女は、確かに美しかった。いつもの彼女を知らない者たちには、――神々しい、とさえ見えるほどに。 それまで彼女を、ただの劣等生としか見ていなかった、この学院の男子生徒たちが色めきたったのも、むべなるかな。彼らは、この少女・ルイズ・ラ・ヴァリエールが、元来、校内屈指の美少女であった事実を、ようやく思い出したのだ。 当然、紳士たちによるダンスの誘いが殺到したが、ルイズは、それらの甘い言葉を、普段はまるで垣間見せぬ優雅な振る舞いで、――拒絶し、壁の花に甘んじた。 「ちっ、なんだい。『ゼロ』のくせに、お高く止まりやがって」 少年たちは、この美少女が――物腰こそ典雅ではあっても――自分たちなどまるで眼中にない事に気付くと、次第に彼女を敬遠し、距離を取って毒づいた。 そして女の子たちも、自分たちの恋人・彼氏の視線を、一時ではあっても独占した彼女を、当然のごとく冷たい目で見た。 「ふん、何よアレ、『ゼロのルイズ』のくせに」 しかし、ルイズはもとより、そんな視線など気にもしていなかった。 いや、それはこの場だけの話ではない。今では以前ほど、彼らに『ゼロ』と呼ばれる事が気にならなくなってきている。それは確かだ。 『ゼロ』呼ばわりされる事に慣れたわけではない。 ただ、彼ら同級生たちに何を言われ、笑われても、ムキになって感情を爆発させるのが、バカバカしくなってきただけだ。 「ねえねえ、『ゼロ』のルイズって、たしか今日の品評会の、あの……?」 「おお、あれあれ、――メイジを知りたきゃ使い魔を見ろって言うけど、あそこまでアレだったら、むしろ哀れすぎて言葉も出ねえよ」 「姫殿下の御前で、あそこまで使い魔に恥をかかされたら……わたしだったら、殺してしまうかも知れないわ……!!」 「姫様、ウケてたけどな」 「むしろ、ウケてたの、姫様だけだったじゃねえか」 級友たちが、才人の話をしている。 まあ、今日の品評会で、あのバカがやった事を思い出したら、その程度の噂は当然だったが、……それでも、あんな奴らに才人を悪し様に言われる筋合いは無い。その怒りは、むしろ自分が『ゼロ』呼ばわりされた時よりも深いものだった。 だが、それと同時に、こうも思う。 (しょせん、あいつらにサイトの価値は分からない) そう思うことで、彼女は僅かながらに、溜飲を下ろした。 ――確かにルイズは変わったかも知れない。 これまでルイズは、彼ら級友たちの輪に、なんとかして入りたいと思っていた。 『ゼロ』と呼ばれ、馬鹿にされ、親しい友人すら作れず、それでもルイズは、彼らに認められることを望んだのだ。彼ら同級生たちはイヤな奴らであったが、それでも、彼らは貴族――自分と同じ世界の住人だったからだ。 逆に言えば、これまでの彼女にとって、貴族たちのいない風景は、『世界』ではなかった。 だから、たとえ自分と同じく魔法が使えない者たち――平民たちと交遊するという選択肢は、完全にルイズの発想の外だった。何故なら『平民』たちは、彼女の世界の住人ではなかったからだ。 だが、ここ最近、彼女の思考回路は、確実に変わりつつあった。 たとえ、どれほど名門の貴族であっても、優秀なメイジであっても、人間の価値は、そこにはない。才人や風見を身近で見るにつけ、彼女は無意識の内に気付いてしまったからかもしれない。 現に、ついさっきまで、自分を『ゼロ』と白眼視していながら、ちょっと着飾って現れれば、それだけで掌を返したように、次から次へとダンスを申し込んでくる、軽薄な男たち。 そして断られれば、その傷付けられた、ちっぽけなプライドを癒すために、いとも簡単に、返した掌を再度ひっくり返すことに、何の躊躇も恥じらいも持たぬ者たち。 彼らはまぎれも無い貴族――自分が所属し、それを認めてもらう事を切に願った者たち――なのだ。 そんな連中の視線に、いちいち反応する事に何の意味がある? ルイズは、級友たちへの失望とともに、いつしか、そう考えるようになっていた。 しかし、ルイズが、彼らを拒絶したのは、ただそれだけではない。 彼女が心に決めた今宵のダンスパートナーは、彼らならぬ、ただ一人の少年だけだったからだ。その彼のためだけに、少女は一張羅のドレスを引っ張り出し、不慣れな化粧に時間を費やしたのだから。 この頑固な少女は、その事実をあくまで認めたがらないであろうが。 しかし、その少年――平賀才人は、いま、ここにはいない。 <フリッグの舞踏会から8時間前> 晴天に恵まれた『使い魔品評会』も、いまや佳境を迎えていた。 次から次へと登場する、種々様々な使い魔たち。 そして、その使い魔たちの“芸”を誇らしげに見せつける、若きメイジの卵たち。 しかし……にこやかな笑顔の下で、その実、アンリエッタの目は、ほとんど何も見ていない。 アニエスだけが、それに気付いていた。 アニエスは、アンリエッタの近侍として仕えるようになって、はや数年経つ。 警護役――というわけではない。 彼女が騎士に叙勲され、『銃士隊』を束ねるようになるには、さらに時を待たねばならないからだ。 だが、それ以前から彼女は、アンリエッタの信頼深き侍従として、つねに女王の近くにあった。 平民上がりではあるが、彼女の硬骨で頼りになる人柄や、つねに冷静で、機転が利く判断力が、王女は気に入っているのだろう。、 毎年恒例のこの行事。 アンリエッタの従者として、アニエスがこの品評会を鑑賞するのは、今年で5回目になる。 だが彼女たちが、純粋に品評会を楽しめたのは、最初の二回までだった。 学生たちが召喚した、色々な使い魔たちは、確かに興味をそそられて然るべきだ。 だが、――彼らは、その使い魔に『何をさせるか』という一点において、ほぼ哀れむべきレベルで、発想が貧困だった。 サラマンダーが炎を吐き、鉄塊を溶かす。 バグベアードが、その巨大な瞳で、人に催眠をかける。 バジリスクがその猛毒で、巨大な牛を噛み殺す。 ジャイアントモールが地中を掘り進み、地面にバラ撒かれた宝石を、一粒残らず拾い集める。 確かにスゴイ、と思う。 本来なら、滅多にお目にかかれない生物が、その特性を生かして“芸”をしてみせる姿は、とても微笑ましいものがある。 しかし、――しかし、だ。 鳥が空を飛ぶのを見て、感動する者がいるだろうか? いるとすれば、それは鳥という生物を、生まれて初めて見た者だけだ。 そして悲しい事に、毎年この品評会に招かれているアンリエッタたちには、もはやメイジの使い魔として召喚される生物の大半に見覚えがある。だから、その使い魔を見れば、どんな“芸”をするのか、できるのかが、大体予想がついてしまうのだ。 なぜなら、品評会に参加するメイジのほとんどが、その使い魔が『出来る事』しか、やらせようとはしないからだ。 ――もっと、いい意味でわたしを裏切ってくれる者は……やはり今年もいませんでしたね。 そう言って、帰途の車中で寂しく笑うアンリエッタを、もうアニエスは見飽きている。 その思いは、例年通り、今回もまったく変わらない。 だか――それでもアンリエッタは、笑顔と拍手は欠かさない。 アニエスと二人きりの状況ならば知らず、公の場での彼女は、見事なまでに王女のままだった。 つまらない“芸”を、さも誇らしげに披露しながら去ってゆく学生たちに、いかにも感動したという態度を、何があっても崩さない。 この場で“芸”を披露してくれている彼らの根幹にあるのは、王家と自分に対する忠誠心であると、アンリエッタは深く理解しているからだ。 忠誠を捧げてくれる者に、礼を返すのは、王族たる者の義務である。そして、この場における礼とは、彼らに対する、いかにも感動したという“演技”に他ならない。 それが、自分がここにいる意味だと、彼女は理解しているからだ。 そんなアンリエッタを、アニエスは素直に誇りに思っていた。 アニエスにとって、王女とともに出席を義務付けられている退屈なイベントなど、この品評会以外にも、掃いて捨てるほどある。 だから、彼女にとって、退屈が不慣れだというのば、ほぼ嘘に近い。 しかし、それを言うなら、自分以上にアンリエッタとて同じ事だったはずだ。 彼女は王族だ。退屈を退屈として楽しむ術くらいは身に付けている。だから、本来ならば、毎年恒例の退屈なイベントも、それなりに楽しく過ごせていたはずだったのだ。 ――去年までは。 だが、今年に限って言えば、アンリエッタにそんな余裕は感じられない。 一見、その笑顔も眼差しも、いつもと何も変わらないように見える。 だが、それでもアニエスには分かる。主の笑顔の下に隠された、焦りや苛立ちが。 彼女に何があったのか――それは一介の従者でしかないアニエスには分からない。 いまのアニエスに出来る事は、せめてこの退屈な品評会が早く終わり、主が自分に、その胸中を相談してくれる事を祈ることくらいなのだ。 (あと何人ガマンすればいいの……?) そんな思いを、顔に出さないように、懸命に努力しながら、参加者名簿をちらりと見る。 その時、アンリエッタは初めて気付いた。 自分が、ここに来た目的であるはずの彼女が、この品評会にエントリーしていない事を。 (おかしいわね……。何故ルイズの名前が無いのかしら) 彼女はさり気なく、学生たちが座る客席に目を向けた。 ルイズは、いた。 彼女のピンク色の頭髪は、遠目にもよく目立っていたので、あまり視力のよくないアンリエッタにも、すぐに彼女は見つかった。 しかし、……何故かルイズは席には座らず、後方の塔の壁にもたれて、ぼんやりとしていた。 いや、その隣に、もう一人誰かいるようだった。 青い髪をした、眼鏡をかけた少女が。 「ねえ、タバサ」 「なに?」 「あなた、なぜ品評会に参加しなかったの?」 ――そう、今回の『使い魔品評会』にエントリーしていない生徒が、自分以外にもいたと聞いて、ルイズは驚きを禁じえなかったが、……それがタバサと聞いて、妙に納得してしまった。 「興味ない」 まるで測ったように予想通りの答えが返ってくる。 まあ、この子なら、そう言うだろうなと思いつつ、問いを重ねてみた。 「興味ないって……優勝すれば、姫様から直々にお言葉を頂戴できるのよ? それに賞金も入るし……第一、シルフィードなら普通に優勝を狙えるじゃない?」 「興味ない」 「それは、姫様のこと? それとも、賞金のこと?」 「両方」 「……あんまりそういう事、他人に言わない方がいいわよ」 予想通りとは言え、さすがに何の躊躇もなく、そういう事を言われてしまうと、ルイズとしても、眉をひそめざるを得ない。 アンリエッタ姫は、ルイズにとっても、かけがえのない“幼馴染み”であり、それ以上に、崇拝してやまない忠誠の対象だからだ。 しかし、タバサはそう言われても、本から顔を上げようともしない。 ルイズは、溜め息をついた。 この子は、目立つのが嫌いらしいというのは、雰囲気で分かる。 だから、この学院の一大イベントを、こともなげに欠席できる。 自分と違って、アンリエッタ姫に、特に思い入れも無いようだ。 そう思って、ルイズは思い出した。 このタバサは、キュルケと並んで、自分たちの学年のたった二人のトライアングル・メイジであったことを。 タバサほどの魔法の才があれば、誰かに認めてもらいたいなどと、切に願った事など無いのかも知れない。 ルイズは、ぼんやりとそう思った。 ふと舞台に目をやると、モンモランシーのカエルが、喉を鳴らして、曲を演奏しているようだったが、ルイズはすぐに見るのを止めた。 モンモランシー自身ガチガチに緊張しているようだったし、何より曲自体、音もリズムもバラバラで、聞くだけで頭痛がするような、ひどいメロディだったからだ。 確か、プログラムによると、彼女がトリだったはずだ。 なら、ようやく、この品評会も終わりということか。 結局、風見は見つからず、品評会への参加を命じる事は出来なかったが、まあ、彼への苦手意識が払拭できないルイズは、ある意味、風見に逆説教を受けなかっただけ、幸運かも知れないと、自分を慰めた。 ルイズは、自分の席に戻るべく、壁際を離れた。 タバサはまだ本を広げていたが、声をかける気にもならなかった。 来賓席のアンリエッタをちらりと見る。 彼女は舞台を一心不乱に見ているようだった。 さすがに一国を背負う者は違う。あんな、見るも無残な芸であっても、真摯に聞く態度を崩さない。 席についた頃、ようやくオールド・オスマンの終了の挨拶が始まったようだった。 その時だった。 「ちょっと待ったぁっ!!」 ――どこかで聞いたことのある声だった。 ふと舞台に向き直った瞬間、ルイズは驚きのあまり、のけぞり返りそうになった。 彼女のよく知る少年が、何より、ここにはいないはずの少年が、舞台に上がりこもうとしていたのである。 「サイト……あの、ばか……なんでここに……!!?」 ルイズは知っている。 彼のパーカーに覆われた包帯の下は、再び開いた火傷の傷痕からの出血と化膿で、ぐずぐずになっており、決して無理が出来るコンディションではないということを。 才人は、抜き身のままのデルフリンガーを片手に持ち、舞台の中央に陣取ると、そこにデルフを突き立てた。 そして、そのまま来賓席に向き直り、呆気にとられているアンリエッタに、 「お初にお目にかかります、お姫様。おれはヒラガサイト。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ラ・ド・ヴァリエールの使い魔でございます」 そう言うと、深々と一礼する。 (間違えてるし! アイツ御主人様のフルネーム、間違えてるし!!) 何をする気だ、あのバカは!? ルイズの拳は震えていた。 <フリッグの舞踏会終了から2時間後> 「お隣、空いておられますか?」 そう言って、ボックス席の差し向かいに座ってきた青年に、男は、いぶかしげな目を向けた。 ここは、トリステインの城下町――トリスタニアにある、とある大衆酒場。 男は店の隅にある、一番おんぼろなテーブルに陣取り、酒を飲んでいた。 『酒神(バッカス)の盃亭』と名付けられた酒場の主人は、男の人間離れした怪力を見て、二つ返事で彼を用心棒に雇ったが、すぐにこの契約が失敗であった事を悟った。 なにせ男は何もしない。トコトンなまでに何もしない。 眼前で、客が喧嘩を始めても、酔った貴族が、店付きの娼婦にからんでも、ただ黙々とまずそうに酒盃を嘗めるだけだ。 その凄まじい怪力を、目の当たりにしているだけに、主人は今更クビだとは言えない。 解雇を直接宣告するには、男が不気味すぎるという点がある。 また、それ以上に、まだ雇って二日しか経っていないという事実もある。もう少し様子を見よう。――主人は、そう妥協した。 そんな晩だった。 その、得体の知れない用心棒の前に、青年が現れたのは。 青年――たしかに、若い男だ。 羽帽子を目深にかぶっているが、その隙間から見える眼光は、鷹のように鋭く、顎まで伸びた見事なヒゲは、まるで『三国志』の関羽のようだ。そして、その動きのしなやかさは、体術にも、相当な心得があるように感じられた。 「席なら、向こうにいくらでも空いてるだろ。消えな」 「いえ、わたしはここに座りたいのです。――と言うより、貴方と一緒に酒を酌み交わしたいのです。いかがです?」 しかし、男は、青年の馴れ馴れしい発言の裏にある、かつて嗅ぎ慣れた匂いを思い出した。 「おめえ、メイジか?」 間違いない。マントこそ羽織っていないが、他人に命令する事に慣れた声音――貴族独特の傲慢な空気が匂ってくる。 どこかに杖を隠し持っているのだろうが、――まあ、どっちでもよかった。 男にとっては、眼前の青年が、たとえスクウェア・クラスであっても、全く怖くはない。 ただ、怖くは無いが、気に入らないのも間違いない。そして男は、自分が気に入らない者と、酒を飲む習慣は無かった。 「失せな。俺はメイジが嫌いだ」 男がそう言うと、青年は静かに微笑んだ。 「確かにわたしはメイジです。しかし、貴方ほどのお方が、一介のメイジを嫌う理由は無いでしょう? 仮にも、伝説の魔獣として、一国を滅亡の淵まで追い込んだお方には」 男はピクリと眉を潜めた。 が、青年は意にも介さず、男の、空になったグラスに酒を注ぐ。 「貴方の、そのお力をわたしたちに、今一度お貸し願いたいのですよ、魔獣殿。――いや、『破壊の杖』の悪魔殿、と呼んだ方が宜しいですかな?」 男は、無言で目を細めた。。 眠っていた獅子が、むくりと起き上がったかのような、凄絶なまでの迫力があった。 「自殺しに来たのかい、坊や」 しかし青年は、眼前の男――改造人間カメバズーカこと、平田拓馬の炎のような“気”を受けて、顔色一つ変えない。 前ページ次ページもう一人の『左手』
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アイテム名 装備レベル レベル 攻 防 魔 魅 運 早 火 水 風 土 入手 備考 ベルギーチョコケーキ 20 0推定値 - 8.5 - - - 2 - - - - キャッシュ 2009バレンタイン 10 - 17 - - - 4 - - - - モフバニーポシェット 160 0推定値 - 17.18 - 11.54 2.05 - - - 1.79 - キャッシュ 2009 2月 29 - 67 - 45 8 - - - 7 - ガトーショコラ 200 0推定値 - 26.25 - - 6 - - - - - キャッシュ 2009バレンタイン 30 - 105 - - 24 - - - - - スプラウトノート 170 0推定値 - 20.51 - 4.87 4.87 - - - - - キャッシュ 2009 3月 29 - 80 - 19 19 - - - - - ラブベアー 130 0推定値 - 17.22 - 5 3.33 - - - - - キャッシュ 2009 ホワイトデー 26 - 62 - 18 12 - - - - - イルカシールド 100 0推定値 - 11.21 1.81 2.72 - - - 3.93 - - キャッシュ 2008 7~8月 23 - 37 6 9 - - - 13 - - グール 60 0推定値 - 11.43 - - 3.93 - - 1.79 - - キャッシュ 2009 5月 18 - 32 - - 11 - - 5 - - コスモスバスケット 66 0推定値 - 15.86 - 4.83 2.76 - - - - - キャッシュ 2009 10月 19 - 46 - 14 8 - - - - - セイグルシールド 70 0推定値 - 13 2 1.33 5 - 2.33 2.33 2.33 2.33 キャッシュ 2009 12月 20 - 39 6 4 15 - 7 7 7 7 スカイツールボックス 80 0推定値 1.94 10.97 - 3.87 - - - - - - キャッシュ 2009 6月 21 6 34 - 12 - - - - - - リトニスバッグ 80 0推定値 - 18.44 - 5.94 3.75 - - - - - キャッシュ 2009 12月 22 - 59 - 19 12 - - - - - カシフラギフト 100 0推定値 - 12 - 3.25 2.5 - - - - - キャッシュ 2009 4月 30 - 48 - 13 10 - - - - - スノウランプ 120 0推定値 - 25.14 - 0.86 4 - - 2.86 - - キャッシュ 2009 11月 25 - 88 - 3 14 - - 10 - - 空翼盾 150 0推定値 - 21.05 - - - 1.84 0.79 0.79 1.58 0.79 キャッシュ 2009 6月 28 - 80 - - - 7 3 3 6 3 アップルキャンディ 120 0推定値 - 29.5 - 7 1 - - - - - 豪華チケット 2009夏祭り 30 - 115 - 20 16 - - - - - お返しクッキー 100 0推定値 - 19.69 - 6.96 5.15 - - - - - キャッシュ 2010 ホワイトデー 23 - 65 ー 23 17 - - - - - オウカクリアボール 40 0推定値 - 15.76 - 1.92 3.41 - - - - - キャッシュ 2010 3~5月 16 - 41 - 5 9 - - - - - メジロと紅梅扇子 150 0推定値 - 22.36 - 10.78 12.1 - - - - - キャッシュ 2010 2~4月 28 - 85 - 41 46 - - - - - 黒紅華扇・堅 110 0推定値 - 18 - 15.7 5.7 - - - - - キャッシュ 2010 クリスマス 50 - 108 - 94 34 - - - - - カリューザシールド 1 0推定値 - 57 - 14.18 14.18 - - - - - お中元普 2011夏祭り 100 - 627 - 156 156 - - - - - オヴェロニアの麗扇 1 0推定値 - 37.72 8 13 13 13 - - - - 金箱普 2011クリスマス 100 - 415 88 143 143 143 - - - - 鉄の盾 1 0推定値 - 4.54 - - - - - - - - 城下・ティンバー 1 - 5.00 - - - - - - - - 鉄の盾α 25 0推定値 - 7.00 - - - - - - - - 福袋中 2007お正月 10 - 14.00 - - - - - - - - 手にした財宝 90 0推定値 - 8.75 2.50 2.81 3.75 - - - - - キャッシュ 2008 9~10月 22 - 28.00 8.00 9.00 12.00 - - - - - 手のりサンゴー 85 0推定値 - 5.90 - 3.63 3.63 - - 3.18 - - サンゴー 夏祭り 12 - 13.00 - 8.00 8.00 - - 7.00 - - 手乗りチャック 53 0推定値 0.90 0.90 0.90 - 2.72 - - 2.72 - - ピノコ依頼 夏祭り 1 1.00 1.00 1.00 - 3.00 - - 3.00 - - 手乗りツリーL 15 0推定値 - 2.00 - 4.00 2.00 - - - - - クリスマスタウン依頼 2006クリスマス 10 - 4.00 - 8.00 4.00 - - - - - 手持ちカボチャ 18 0推定値 1.36 1.36 - - - - - - - 0.90 みどっきゃ ハロウィン 12 3.00 3.00 - - - - - - - 2.00 テリヤキコケコL 30 0推定値 - 3.00 - 3.00 5.00 - - - - - クリスマスタウン依頼 2006クリスマス 10 - 6.00 - 6.00 10.00 - - - - - てるてる君 60 0推定値 - 7.85 - 1.78 4.28 - - 2.85 - - キャッシュ 2008 5~6月 18 - 22.00 - 5.00 12.00 - - 8.00 - - 銅の盾 1 0推定値 - 2.72 - - - - - - - - 福袋小 2007お正月 1 - 3.00 - - - - - - - - トゲトゲシールド 55 0推定値 2.72 7.27 - - - - - - - - ピノコ依頼 1 3.00 8.00 - - - - - - - - トナカイシールド 51 0推定値 - 5.00 - 1.92 2.69 - - - - - ピカトナ 2006クリスマス 16 - 13.00 - 5.00 7.00 - - - - - トナタテ 110 0推定値 - 10.00 - 1.00 4.00 - - - - - ファストナー 2006クリスマス 30 - 40.00 - 4.00 16.00 - - - - - 投げみずたま 6 0推定値 0.88 - - 0.88 - - - 1.76 - - 水玉小箱 みずたまくん祭り 24 3.00 - - 3.00 - - - 6.00 - - にょこおばけ人形 25 0推定値 - 1.66 - 2.22 2.22 - - - - - びよよんおばけ ハロウィン 8 - 3.00 - 4.00 4.00 - - - - - ネコネコシールド 1 0推定値 - 2.00 - 2.00 5.00 - - - - - キャッシュ 10 - 4.00 - 4.00 10.00 - - - - - バースディ花束 60 0推定値 - 11.57 1.84 4.21 - - - - - - クリスマスBOX普 2008クリスマス 28 - 44.00 7.00 16.00 - - - - - - ハート扇 120 0推定値 - 10.66 1.00 3.33 1.00 - - - - - お中元普 2007夏祭り 20 - 32.00 3.00 10.00 3.00 - - - - - バシバシむっち黒 126 0推定値 7.27 - - - 0.90 1.81 - - - - マランダ依頼 1 8.00 - - - 1.00 2.00 - - - - ハッピーカドマL? 24 0推定値 - 5.90 - 1.36 2.72 - - - - - キャッシュ 2007お正月 12 - 13.00 - 3.00 6.00 - - - - - 放さぬ魂 30 0推定値 0.52 5.78 - 1.57 - - - - - - プレゼントBOX小 2008クリスマス 9 1.00 11.00 - 3.00 - - - - - - ハロウィバルーン 30 0推定値 - 3.50 - 2.00 1.00 - - - - - スウィートタウン依頼 ハロウィン 10 - 7.00 - 4.00 2.00 - - - - - パンプキンパイ 36 0推定値 - 2.04 - 3.46 - - - - - - 愛しのワンちゃん ハロウィン 39 - 10.00 - 17.00 - - - - - - ビート人形 30 0推定値 - 2.72 - 0.90 0.90 - - - - - ライナ仕立て 1周年 1 - 3.00 - 1.00 1.00 - - - - - ビート人形β 23 0推定値 - 3.00 - 0.50 0.50 - - - - - ビート 1周年 10 - 6.00 - 1.00 1.00 - - - - - ビートの羽 26 0推定値 - 2.57 - 0.85 - 1.42 - - 0.85 - ビート 1周年 25 - 9.00 - 3.00 - 5.00 - - 3.00 - ビートパペット 23 0推定値 - 3.63 - 1.81 1.81 - - - - - キャッシュ 1周年 12 - 8.00 - 4.00 4.00 - - - - - 柊団艦船モデル 100 0推定値 - 12.40 - 2.00 4.00 - - - - - お中元大 2008夏祭り 15 - 31.00 - 5.00 10.00 - - - - - ビチ☆パラ水 22 0推定値 - 2.96 - 2.96 - - - - - - 行水スイカ 夏祭り 17 - 8.00 - 8.00 - - - - - - ビックベリーホール 58 0推定値 - 1.76 1.76 5.88 - - - - - - ベリーホール 24 - 6.00 6.00 20.00 - - - - - - 引っ張られコウベ 10 0推定値 - 0.40 4.80 - - - - - - - プレゼントBOX小 2008クリスマス 15 - 1.00 12.00 - - - - - - - ピノキングシールド 63 0推定値 - 9.00 - 3.00 1.00 - - - - - 腹黒でかキノコ 30 - 36.00 - 12.00 4.00 - - - - - ヒマワリブーケ 120 0推定値 - 15.14 - 3.42 - 1.42 2.00 - - - キャッシュ 2008 6~7月 25 - 53.00 - 12.00 - 5.00 7.00 - - - 負傷トナバッグ 28 0推定値 1.30 5.65 - - - - - - - - キャッシュ 2007クリスマス 13 3.00 13.00 - - - - - - - - 葡萄ペロッチュ 25 0推定値 - 3.00 - 1.00 3.00 - - - - - スウィートタウン仕立て 2007ホワイトデー 10 - 6.00 - 2.00 6.00 - - - - - ブリドルグローブ 20 0推定値 - 7.33 - 2.00 - - - - - - クリスマスBOX普 2008クリスマス 20 - 22.00 - 6.00 - - - - - - ブルーガラス 90 0推定値 - 13.12 - 2.81 - - - - - - キャッシュ 2008夏祭り 22 - 42.00 - 9.00 - - - - - - ブルーキャンドルL 98 0推定値 1.00 5.00 - 3.00 - - 3.00 1.00 - - エンジェル青キャンド 2006クリスマス 30 4.00 20.00 - 12.00 - - 12.00 4.00 - - ぷるぷるキノコ盾 31 0推定値 - 4.00 - 2.00 - - - - - - ノリノリキノコ 30 - 16.00 - 8.00 - - - - - - プルメリ浮輪 25 0推定値 - 2.50 - 3.00 - - - 2.00 - - ライナ仕立て 夏祭り 10 - 5.00 - 6.00 - - - 4.00 - - プレゼント袋L? 35 0推定値 - 5.83 - 3.75 3.75 - - - - - キャッシュ 2006クリスマス 14 - 14.00 - 9.00 9.00 - - - - - 兵隊アントの盾 5 0推定値 - 5.83 - - - - - - - 1.66 上級兵隊アント 14 - 14.00 - - - - - - - 4.00 ペロッチュ苺 25 0推定値 - 2.00 - 3.00 - - - - - - スウィートタウン依頼 2007ホワイトデー 10 - 4.00 - 6.00 - - - - - - ペロッチュキウイ 25 0推定値 - 3.00 - 1.50 - - - - - - スウィートタウン依頼 2007ホワイトデー 10 - 6.00 - 3.00 - - - - - - ペロッチュソーダ 25 0推定値 - 2.00 - - - 1.50 - - - - スウィートタウン依頼 2007ホワイトデー 10 - 4.00 - - - 3.00 - - - - ペロッチュ葡萄 25 0推定値 - 2.00 - 1.00 2.00 - - - - - スウィートタウン依頼 2007ホワイトデー 10 - 4.00 - 2.00 4.00 - - - - - ペロッチュ蜜柑 25 0推定値 - 2.00 - - 3.00 - - - - - スウィートタウン依頼 2007ホワイトデー 10 - 4.00 - - 6.00 - - - - - ペロッチュ桃 25 0推定値 - 2.00 1.00 2.00 - - - - - - スウィートタウン依頼 2007ホワイトデー 10 - 4.00 2.00 4.00 - - - - - - 防犯スプレー 61 0推定値 - 6.00 - 5.00 4.00 3.00 - - - - クリスマスBOX 2007クリスマス 10 - 12.00 - 10.00 8.00 6.00 - - - - 骨付きビーフ 23 0推定値 1.90 1.90 - - - - - - - - スキップモーモ 11 4.00 4.00 - - - - - - - - ぽよの盾 1 0推定値 - 3.00 - 3.00 - - - 1.00 - - ライナ依頼 10 - 6.00 - 6.00 - - - 2.00 - - ぽよのもぐぅ花添え 25 0推定値 - 1.00 - 2.00 1.00 - - 2.00 - - マランダ依頼 10 - 2.00 - 4.00 2.00 - - 4.00 - - ポリスリフレクト 48 0推定値 - 9.47 - - 0.52 - - - - - クリスマスBOX 2007クリスマス 9 - 18.00 - - 1.00 - - - - - ホワイトベリーケーキ 22 0推定値 - 2.85 - 8.57 - - - - - - キャッシュ 2007バレンタイン 11 - 6.00 - 18.00 - - - - - - マジックキャンディ 23 0推定値 0.95 0.95 - 1.90 3.80 - - - - - ファンキーキャンディ ハロウィン 11 2.00 2.00 - 4.00 8.00 - - - - - 魔法少女コンパクト 45 0推定値 - 5.83 1.25 1.66 - - - - - - 福袋 2008お正月 14 - 14.00 3.00 4.00 - - - - - - 蜜柑ペロッチュ 25 0推定値 - 2.72 - - 3.63 - - - - - スウィートタウン仕立て 2007ホワイトデー 1 - 3.00 - - 4.00 - - - - - ミニ注連縄 75 0推定値 - 9.33 - - 10.00 - - - - - キャッシュ 2009お正月 20 - 28.00 - - 30.00 - - - - - ミルクティー 120 0推定値 - 10.66 2.00 3.00 - - - - - - お中元普 2007夏祭り 20 - 32.00 6.00 9.00 - - - - - - ムール貝のたて 43 0推定値 - 4.83 - - - - - 2.90 - - ムールウィザード 夏祭り 21 - 15.00 - - - - - 9.00 - - 木槿団兵器 90 0推定値 4.09 10.00 - 0.90 - - - - - - お中元大 2008夏祭り 12 9.00 22.00 - 2.00 - - - - - - 虫食いビーフ 47 0推定値 2.75 2.75 - 0.34 - - - - - - ブラウンモーモ 19 8.00 8.00 - 1.00 - - - - - - モーモぐるみ 140 0推定値 - 17.29 - 10.00 - - - - - - キャッシュ 2009お正月 27 - 64.00 - 37.00 - - - - - - 桃クマハンドL 30 0推定値 - 4.54 - - - - - - - - クリスマスタウン仕立て 2007クリスマス 1 - 5.00 - - - - - - - - モモ華のカバン 60 0推定値 - 7.85 - 3.92 0.71 4.64 - - - - キャッシュ 2009お正月 18 - 22.00 - 11.00 2.00 13.00 - - - - 桃ペロッチュ 25 0推定値 - 2.72 0.90 2.72 - - - - - - スウィートタウン仕立て 2007ホワイトデー 1 - 3.00 1.00 3.00 - - - - - - 八手の葉 50 0推定値 - 8.88 0.37 0.74 0.74 1.11 - - 1.48 - キャッシュ 2008 10~11月 17 - 24.00 1.00 2.00 2.00 3.00 - - 4.00 - 雪かきスコップL 1 0推定値 - 4.54 - -0.90 - - - 1.81 - - 福袋大 2007お正月 1 - 5.00 - -1.00 - - - 2.00 - - ラッパーラジカセ 50 0推定値 - 5.41 0.83 - - - - - - - お中元大 2007夏祭り 14 - 13.00 2.00 - - - - - - - ラビットクロック 60 0推定値 1.00 3.00 2.00 2.00 - 3.00 - - - - お中元普 2007夏祭り 10 2.00 6.00 4.00 4.00 - 6.00 - - - - ラブチョコシールド 20 0推定値 - 2.50 - 1.66 0.83 - - - - - チョコフェアリー 2007バレンタイン 2 - 3.00 - 2.00 1.00 - - - - - 陸タイガー団の旗 72 0推定値 - 5.88 - 2.94 - - - - - - 三輪トラ 夏祭り 7 - 10.00 - 5.00 - - - - - - リザードマンの盾 25 0推定値 - 4.87 - 0.25 - - - 2.82 - - リメストリザード 29 - 19.00 - 1.00 - - - 11.00 - - レッドキャンドルL 25 0推定値 0.71 2.85 - 0.71 - - 3.57 - - - エンジェル赤キャンド 2006クリスマス 4 1.00 4.00 - 1.00 - - 5.00 - - - ローズトリュフ 20 0推定値 - 1.00 - 3.00 1.00 - - - - - キャッシュ 2008バレンタイン 10 - 2.00 - 6.00 2.00 - - - - -
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前ページ次ページもう一人の『左手』 . 「さあ、聞かせてもらいましょうか。あんたが一体、どういうつもりなのか」 そう、押し殺した声で言ったキュルケは、怒っていた。 ここは酒場だ。周囲の喧騒からして、盗み聞きされるとは思えないが、それでも、最低限の用心だけは欠かすわけにはいかない。 キュルケが、眼前の人物を怒鳴りつけたいのを、必死になってこらえているのは、話の内容だけではなく、いま自分が会っている人物が誰であるか、絶対に周囲に知られるわけにはいかないからでもあった。 そのため、目立ち過ぎる貴族のマントを脱ぎ捨て、町娘の扮装までしているのだが、しかし、キュルケ持ち前の雰囲気と、庶民の娘にしては派手なコーディネイトのおかげで――哀しいかな、街の娼婦しかに見えなかった。 そんな彼女が、目深にフードを被った、いかにも済まなさそうな、ワケあり風の女性を睨みつけている“絵”は、ちょっと見には、娼婦同士の縄張り争いにさえも見えた。 いや、見えたどころではない。……実は、こんな場末の酒場で女二人が飲んでいる、というシチュエーションにもかかわらず、男たちが声を掛けるのを躊躇っているのは、そのためだった。 「いや、――あんたが怒るのももっともだよね……。わたしがあんたの立場だったら、やっぱり同じ事を言ってたと思うよ」 うつむいて、そう言うフードの女性。 そんな彼女を見て、キュルケは深い溜め息をつくと、ようやく、その眼光から険を抜いた。 「で、説明してくれるんでしょうね? ――ミス・ロングビル」 『土くれのフーケ』が、王都への移送中に脱走した、と聞いて、一番腹を立てたのは、彼女に家宝を盗まれた門閥貴族でもなく、護送の任に当たっていた魔法衛士隊でもなく、この少女――キュルケ・フォン・ツェルプストーであろう。 何故ならキュルケは、このまま処刑されるであろうフーケ本人から直々に、アルビオンに残した家族の事を、彼女から頼まれていたからだ。 『破壊の杖』強奪事件で、軽口を叩き合う仲になったとはいえ、フーケがなぜ自分に、そんな事を頼んだのか、想像もつかない――といえば、それは嘘に近い。 彼女が、そもそもどんな理由があって、盗賊に身をやつす事になったのか、それは分からない。 だが、――口の悪さはともかく――学院長の秘書をしていた時の、彼女の立居振舞は、その育ちのよさを充分に匂わせるものだった。 彼女の人生を、一体何が狂わせたのか。それを訊くほどキュルケは野暮ではない。 しかし、そんな女性から、家族を頼むと言われてしまえば、断る事など出来るものではない。少々ためらいはあったが、それでもキュルケは“後は任せて、安心して法の裁きを受けな”と言ったものだが……。 何ぞ知らん、後事を頼んだ当の本人が、監獄に移送される最中に脱走を図るとは!! . 「だから……わたしだって、そもそも脱走したくて、したわけじゃないんだから。――まあ、逃げたくなかったと言えば、嘘になるけどさ」 「……どういうことよ」 「魔法衛士隊を皆殺しにした、ゴリラみたいなメイジが、わたしを迎えに来たんだよ。一緒に来なきゃ、お前も殺す。いかにも、そう言いたげな素振りでね。――いくらわたしでも、杖も無しでそんな化物と戦う気にはならないよ」 「ずいぶん情けないことを言うのね。仮にも『土くれ』の名で、ハルケギニアの全貴族を震え上がらせた女が」 そう言われては、フーケも苦笑するしかない。 「まったくさ。世の中ままならない事ばかりで困っちまうよ」 苦笑いのまま、だが、しれっとそんなことを言う彼女に、キュルケもつられて表情を崩す。 しかし、そのまま杯を飲み干すと、彼女は褐色の頬をきりりと引き締め、フーケに向き直った。 「――で、その『土くれ』さんとしては、これからどうするつもりなの?」 「取り敢えず、奴らについていくよ。あんたにゃ悪いけど、逮捕前にわたしが頼んだ事はチャラにしておくれでないかい?」 「アルビオンにいる、家族のこと?」 「ああ。――どのみち、わたしらも向こうに行かなきゃならないんだ。奴らの当座の目的は、アルビオンらしいからね」 「どういう事? アルビオンが目的って、――大体あそこは今、内戦中のはず……」 そこまで聞いて、キュルケ顔色が変わった。 「まさか……あんたを迎えに来た『奴ら』って……!?」 「ああ」 フーケは唾でも吐き捨てそうな、苦々しい表情で、 「レコン・キスタさ」 ――そう言った。 「ルイズ」 「……」 「ルイズ」 「――っ!? 子爵、様っ……!?」 振り返ったルイズを待っていたのは、苦笑いをしたワルドの優しげな瞳だった。 「元気がないね? そんな調子じゃ、殿下から頼まれた大事な任務が果たせないぞ?」 手綱を握るワルドが心配するのも、ある意味、無理はないかも知れない。 街道を疾駆する一匹の魁偉なグリフォン。騎手である青年貴族の懐に抱かれる形でルイズは、その幻獣に同乗していた。 . 出立してから、もう、かなりの距離を走破している。 学院を出るときは登り切ってすらいなかった太陽が、もう遥か西に彼方に沈もうとしていた。しかし、浮遊大陸アルビオンへの中継地たる、ラ・ロシェールの港町への行程は、まだまだ半分といったところだ。 それでも、早馬で二日はかかるという旅程を、たったの数時間で道半ばに達するという脚力は、ドラゴンにも比肩されるという、高位の幻獣グリフォンならではであったろう。 しかし、そんな強行軍は、当然乗り手にも、それなりの体力を要求する。 ワルドは、仮にも魔法衛士隊の隊長であるから、当然とも言えるが、その同乗者たるルイズも、やはり弱音一つ吐かない。 だが、それが彼女ならではの気丈さ故でないことは、ワルドにも分かっていた。 なぜなら彼女は――出発してから数時間、全く口を利こうとはしなかったからだ。 無論、話し掛ければ答えてはくれるが、それは質疑応答……質問に対する答えであり、『会話』でも何でもない。『会話』のキャッチボールをする気にもなれないのだろう。 膝に乗る、婚約者の矮躯が、さらに小さく感じるのは、決して青年貴族の勘違いではあるまい。 ワルドは――ルイズに気付かれぬように――小さく溜め息をついた。 「そんな……わたしは元気ですわ、子爵様」 「だといいが……しかし、どうやらぼくは、君を放って置き過ぎたようだね」 「え?」 「しばらく会わないうちに、君はさっきの平民の少年と、すっかり気持ちを通じ合わせてしまっているようだ」 「そんなっ――!?」 「そんなことはない……かい?」 ルイズを見下ろすワルドの目に、硬い光が含まれる。少女は、反射的に身を竦ませるが、再度、婚約者を見上げた時、彼の瞳は、いつもの優しげなものに戻っていた。 しかし、たった今、ワルドが言った一言は、やはり少女の胸元を、少なからず抉った。( (サイト……!!) 瞑目するまでもない。 気がつけば、ふと脳裡に浮かんでいる。あの、バカで間抜けな使い魔の少年。 「さっき教えてやったろうが……女の子を傷付けて恥じないようなクソ男は、おれは気にいらねえってな。……それだけさ」 そう言って、瀕死の重傷を負いながらも立ち上がったアイツ。 「お前が何で泣いてるのか、おれには分からないけど――お前が考えてる事は、多分間違ってるぜ」 そう言って、わたしの不安を否定してくれたアイツ。 「迷惑……だったか?」 気絶しそうな激痛の中で、なお、わたしを気遣ってくれたアイツ。 「美しいレディ。どうかこのおれと、ダンスを一曲お付き合い願えませんか?」 月光の下、傷を押して、わたしをダンスに誘ってくれたアイツ。 ――思い出すだけで、胸が締め付けられそうになる。 そんな苦くて、それでも甘い、数々の記憶。 (分かってる……本当は、わたしだって) 才人が、部屋で言った一言。 「魔法が使えないお前が一緒に行っても、ぶっちゃけ、邪魔になるだけじゃねえか?」 あれは、かつて同級生たちから散々浴びた、誹謗混じり軽口とは違う。文字通り、口を滑らせただけの一言でしかないという事も。何より、あの少年が、本気でそんな事を言うわけがないという事も。 全部、ルイズには分かっている。 . ルイズがあの時、激発する切欠となった一言――才人が自分の手を払いのけ、『触るな』と叫んだ事すら、冷静になってしまえば、当然の事として納得できる。 彼は――ただ、火傷が痛かっただけなのだ。 傷が引きつるから『触るな』と言いたかっただけなのだ。 だからこそ――彼女は、呆然自失たらざるを得ない。 自分は、何という事を言ってしまったのだろう。何という取り返しのつかない事を言ってしまったのだろう、と。 「もう二度と、顔を見せないで」 そう言ってしまったのだ。 そんな事を言ってしまったのだ。 そもそも自分に、あの少年を責める資格があるだろうか? そして自分は、あの少年に許される資格があるだろうか? ――もう、どんな顔をしてサイトに会えばいいのかも、分からないわ……! 「大丈夫だ、ルイズ」 「え……?」 「あの少年は、今までぼくに代わって君を守ってくれていたのだろう?」 ワルドが手綱から片手を離し、ルイズの肩を、そっと抱きしめる。 「君は黙っていたが、ぼくは知っている。君が魔法学院の中で、どんな目で見られ、どんな扱いを受けてきたのか。――そして、彼は、君を庇って決闘騒ぎまでやらかしている」 「……」 「でも、もう安心していいんだ。これからは、ぼくがいる。ぼくが君を守る」 「――ししゃく……さま……」 「彼――正確には彼らだが――には、やるべき事があるはずだ。自分の世界に帰る方法を模索するという“仕事”が。だから、心置きなくそれに専念させてあげよう。君が、彼らに本当に償う道があるとすれば、おそらくそれしかない」 その時、少女を抱きしめるワルドの左手に力が篭もった。だが、ルイズはそれに、なんら嫌悪感を感じなかった。 「そのためには何より、彼らに教えてあげねばならない。ルイズ・ラ・ヴァリエールは、もう自分の足で立てる一人前なのだと。守ってもらわねばならない子供ではないのだと。――そう思わないか?」 「……」 「無論、イキナリ一人で放り出されても差し支えないほど君は強くない。それは承知しているつもりだ。だから――ぼくがいる。君の本来の婚約者たる、このジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドが、これからは君を守る」 ワルドの優しげな瞳が――その瞳に込められた、凛々しい力が、ルイズを射抜く。 「ルイズ――結婚しよう。ぼくらのために。そして何より、彼らのために」 . 「……ちょっと――サイトぉ!! あんたもう、いい加減にしなさいよぉっ!!」 自室に飛び込むなり、キュルケはそう叫んだ。 無論、壁に向かっての怒号ではない。 昨夜いきなり、泊めてくれと言って現れた少年に、だ。 たまたま昨晩は、男を引っ張り込んでなかったから、泊めてやったが、それでも彼がただならぬ雰囲気を発散しているのは分かった。 付き添い然として彼の後ろにいた風見が言うには、少年は、ルイズとかなり派手な喧嘩をやらかしたらしい。詳細が気になったが、『ルイズのアルビオン行きに関して、口論になった』と言うのみで、風見は多くを語ってくれなかった。 一方、当事者の才人に至っては、完全に放心状態だったので、訊く気にもならなかった。 ――まあいいか。 そのときはそう思った。 何より彼女は眠たかった。キュルケとしても久しぶりの孤閨なのだ。ゆっくり四肢を伸ばしてベッドに横たわる心地良さは、男との同衾とは、また違うものがある。他人の修羅場は、明日にでも訊けばいい。 そう思い、毛布とソファを貸してやり、彼女は眠った。 朝、目覚めてからも、凝然と宙を睨み続ける彼(その時すでに才人は目覚めていた)に、異常を覚えたが、それでもキュルケは気にしなかった。これから授業をサボり、王都で『土くれのフーケ』と会う用を控えていたし、――何より、女の朝は忙しい。 で、部屋に帰宅してみれば、少年は、彼女が出かけた時と全く変わらぬ姿勢で、呆然とし続けている。間違いない。彼は確実に――朝、自分が出かけた時から、まったく微動だにせず、時を過ごしていたのだろう。 そしていま、“家主”であるキュルケの叫びにも、彼は、すがすがしいほどに反応しない。完璧な無視だ。それも、意図的なシカトではない。自責やら後悔やらの声で耳をふさがれ、完全に外界からの声が聞こえていない状態なのだろう。 キュルケは溜め息混じりに呟いた。 死人を動かすキーワード……さっきフーケから聞いた情報の結論を。 「サイト、あんた――ルイズが危ないって聞いても、まだそんな風でいられるの?」 その瞬間、才人は、親の訃報を聞いたように、彼女を睨み付けていた。 「どういうことだ……!?」 だが、キュルケは、そんな視線にたじろぐような少女ではない。 「事情は知らないけど、いまルイズはアルビオンにいるんでしょう? そのアルビオンが、大変な事になってるって言っているのよ」 そう聞いて、才人は少し落ち着いたようだった。 「アルビオンが今、内戦状態にあるっていうなら知ってるさ。……でも、アイツなら大丈夫さ。頼りになる婚約者の貴族サマがついてるからな」 「婚約者?」 「それに……おれは『二度と顔を見せるな』って言われちまったんだ。今更もう、やれることなんて……!!」 (なるほど……そういうわけね) この底抜けに向こう見ずな少年が、ここまで意気消沈しているからには、さぞかし激しい喧嘩をしたものだろうと思ったが――キュルケは思わず納得してしまった。ただの諍いではない。『恋敵』が絡んでいたのだ。 公爵家の娘の婚約者というからには、おそらく出自・実力ともに折り紙付きのメイジのはずだ。風見のような改造人間ならともかく、肉体的には『ただの平民』に過ぎない彼が、ヘコんでしまうのも、まあ無理はない。 (もう少しホネがある――と思ったんだけどなぁ……) . キュルケは、そんなだらしない才人に苛立ったのか、先程よりも少々厳しい声を出した。 「アルビオンが内戦状態だっていうのは、誰だって知ってるわ。でも、あたしが話したいのは、膠着状態に陥ってる“今の戦況”じゃない。あと二・三日後の“これからの戦況”よ」 二・三日後と聞いて、少しだけ才人の顔色が変わった。今朝、学院を出立したルイズが、丁度アルビオンに到着する頃ではないか。 「二・三日後に、アルビオンが一体どうなるってんだ……?」 キュルケは、マントを翻した。 「いまアルビオンの王党派を包囲している貴族派が、レコン・キスタって名乗ってるのは知ってるわね? その貴族派が再び何人かのメイジを編成して、アルビオンに向かうって、さっき聞いたのよ」 「何人かのメイジ……?」 「なかなか城が陥ちない現状に、イラついたんでしょうね。かなりの手練を揃えたみたいだけど、その『援軍』の中に、あんたも知ってる――あの、大砲背負った亀のカイゾーニンゲンがいるらしいのよ」 才人は目を見張った。 平田さんが? あの人がアルビオンに!? なんで!? ――問うまでもない。解答は、明白だ。 「もし学院長が言っていた“250年前の魔獣”が、あの怪物なら、何しにアルビオンに行くのかバカでも想像がつくわ。そして、そんな怪物がアルビオンで何をするのかもね」 一度、この手で滅ぼしたはずの王国が、自分が眠っている間に、うまうまと再興を果たし、何事もなかったかのように国土に君臨している。もしカメバズーカ――平田拓馬が、そんな状況を気に入らなければ、やる事は一つだ。 しかし、才人には、にわかに信じられなかった。 「平田さんが、今度は自分からアルビオンに出向いて、250年前のケリをつけようとしてるって言うのか……!? まさかそんな!? そんなバカな!!」 しかし才人とは違い、人間“平田拓馬”を知らないキュルケの目は、あくまで冷ややかだった。 「あたしは――その、まさかの話をしているの。学院長の話が確かなら、あの怪物は、たった一人でスクウェア・メイジ百人分の戦力を持つはずよ。そんな奴が本気で暴れ回る矛先に、もしルイズがいるとしたら……!!」 「その話、詳しく聞かせてもらうぞ、ツェルプストー」 風見志郎が、そう言いながらキュルケの部屋に入って来た。 「もし奴が、破壊と殺戮を本貫とする“デストロン怪人”に再び戻るつもりなら、断じて見過ごす事は出来ん」 「行くつもりですか風見さん!? まさか……ルイズのいるアルビオンに!?」 才人が驚きの声を上げる。 「おれたちは『二度と顔を見せるな』って言われたんですよ!? 今更どのツラ下げて――」 しかし、風見はそんな才人の躊躇を、切って捨てる。 「そんな事は、もう関係ない」 . 「――かっ、関係ないって……いくら何でもそんな……」 「もしカメバズーカが、本気で王党派に復讐するためにアルビオンに向かったのだとするなら、いくら何でも見逃すわけにはいかん。俺はまだ――“仮面ライダー”を辞めたつもりはないんでな」 「風見……さん……!!」 風見は、あくまで“仮面ライダーV3”としての自分を崩そうとはしない。 彼にとっては、おそらくルイズを救出することすら、二次的な問題に過ぎないのだろう。 これまで単なる高校生として、なんとなく生きてきた才人とは違い、“仮面ライダー”という明確な価値観のもとに行われる彼の行動は、清々しいほどに単純で、真っ直ぐだ。 才人は、今ほど風見が羨ましいと思ったことはなかった。 風見には、このハルケギニアの全てに優先する、明確な目的意識と使命感がある。だが、それは自分にはない。――ない以上、下らない人間関係のしがらみを優先せざるを得ない。 たとえば……主であるはずのルイズから、ツラ見せるなと言われてしまえば、やはり、彼女の下に赴くのは、気が引けてしまう。 「平賀、お前はどうする?」 「おっ、おれ?」 「カメバズーカ――平田拓馬を正面から説得できるとすれば、おそらくそれはお前だけだ」 風見の言いたいことは、才人にも分かる。 これを機に、ルイズと再び逢えと言っているのだ。そして関係を修復しろ、と。 「でっ、……でも……!!」 「それともここで、留守番していたいか?」 「……でも……やっぱり……」 ためらう才人に、風見は悪戯っぽい目でキュルケを振り向き、合図をする。 そして少女も合図を受け、その意図する言葉を正確に吐く。 「ダメよカザミ、無理強いはよくないわ。そもそもサイトは、まだケガも治り切ってないんだから」 「そうだな。なら仕方がない」 「ええ、本当に仕方がないわ」 「……あああっ!! 分かりましたよ!! 行けばいいんでしょう、行けば!!」 そんな彼を見て、風見は満足げな笑みを浮かべる。 「そうか、やはり行ってくれるか」 「――でも、勘違いしないで下さいよ!! おれはあくまで、平田さんを説得しに行くんスからね!! 断じて、ルイズにワビ入れに行くんじゃないっスよ!! 誤解しないで下さいよっ!!」 「はいはい、わかったわかった。――でも、向こうであの子と会うことがあったら、ついでに仲直りしても、罰は当たらないんじゃない?」 皮肉っぽく言うキュルケに、才人は……ぐうの音も出なかった。 . アルビオンに向かう、この飛行帆船――フネは、かなり豪華な型だったらしく、船室の数も多く、ちょっとしたバーまで設置されていた。 フーケは、これ幸いと酒を飲みに来たが、先客を見て、やや鼻じろんでしまった。 ――カイゾーニンゲン・カメバズーカこと、ヒラタタクマ。 カウンターに座り、ワインをチビチビと――いかにも不味そうに――呑んでいる。 いまさら引き返すのも業腹なので、フーケはワインボトルとグラスだけ掴むと、男を避けるように、バーの隅のボックスに座った。 彼女は、怪人カメバズーカの、いかにも禍々しい姿を知っている。 ――いや、知っているどころではない。何となれば、彼を復活させたのは、フーケ自身だからだ。 だから、白い半仮面のメイジから、あの時の“ばけもの”が、レコン・キスタ陣営に参戦する、と聞いたときは仰天したし、その情報をツェルプストーの娘にも流して警告しておいた。命が惜しかったら、しばらくアルビオンには行くな、と。 だが、肝心の平田拓馬と引き合わされた時、フーケは違和感を禁じえなかった。 筋骨隆々ではあるが、こんな50過ぎの、しょぼくれたおっさんが、あの怪物に“変身”するって……本当に……? 「ここにいたのか」 そう言って、バーに入って来たのは、羽帽子を被った白い半仮面のメイジ。 いや、その後ろに、さらに一人の女がいるようだが、フーケからは丁度、逆光になって、彼女の顔は見えなかった。 「ちょうどいい。ヒラタさんもいる事だし、ここで紹介させてもらおう」 そう言って、半仮面は女を前に出し、バーの明かりを点ける。 「レコン・キスタ総司令官クロムウェル大司教の秘書を勤められる、ミス・シェフィールド。今、わざわざアルビオンから小型艇で挨拶に参られた」 「よろしく」 黒いローブに身を包んだ女が、濡れたような声で言う。 フーケは、一応会釈だけはしたが、平田は視線を向けようとさえしない。 半仮面は、そんな平田に苦笑し、先にフーケを右手で指し示した。 「――こちらが、かの高名な怪盗『土くれのフーケ』。名の示す通り、“土”のトライアングルです」 . その瞬間、フーケは思わず席を立ち、呆然と女を見た。 いや、正確には、彼女が見たのはシェフィールドと名乗った女ではない。シェフィールドのさらに背後に立っていた青年だ。 「――あんた……カザミ……シロウ……?」 そして、フーケの呟いた名を聞き、訝しげに振り向いた平田も、その青年を見て、同じく呻き声を上げた。 「おめえ……何故ここにいる……V3……!?」 二人にとっては見間違えようもない。 フーケにとっては、敵でありながら、何故か成り行きで共闘まで果たした男の名であり、平田にとっては、それこそ忘れようもない宿敵の名だ。 「ほう……?」 そして、名を呼ばれた青年は、フードの女の陰から姿を現し、 「いかにも俺は風見志郎だが……面白いな」 切れるような、不敵な笑みを浮かべた。 「なぜ貴様らが、俺のもう一つの名を知っている?」 そう言いながら、口元に反して、全く笑っていない氷のような視線を、二人に送り付ける青年の額には、ローブの女と同じく、見たこともないルーン文字が刻まれていた。 見る者が見れば、その二人のルーン文字が、全く同じく、こう記されている事を読めたであろう。 ――『ミョズニトニルン』と。 前ページ次ページもう一人の『左手』
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前ページ次ページもう一人の『左手』 . 「離して子爵さまぁっ!! いたのよっ!! サイトがっ、わたしの使い魔がっ」 そう叫びながら、ルイズは甲板に飛び出そうともがく。 だが、彼女を取り押さえるワルドの逞しい腕は、まるで微動だにせず、ルイズの抵抗を空しくさせる。 しかし、――確かに彼女は見たのだ。『イーグル』号の艦橋舷窓から。 地面の中から泥まみれになって、のそのそとモグラのように貴族派の陣中に這い出してきた少年を。 たとえ双月が夜空を煌煌と照らしていたとしても、そして『マリーガラント』号の自沈攻撃によって、戦場が紅蓮の炎に包まれていたとしても、――それでも今は、夜だ。『イーグル』号の小さな舷窓から、一人の少年を視認したというには、やや無理がある。 だが、それでも、ルイズは……才人を見たのだ。 しかし、それを主張する少女の姿は、傍目に見て、かなり異様なものであった。 「いい加減にしたまえルイズ!! いまは戦闘中だぞ!! 殿下たちに御迷惑をかけている事に気付かないのかっ!?」 その婚約者の一声は、少女に理性と常識を回復させてしまった。 ウェールズや、その他の『イーグル』号のクルーが、唖然として自分を見ている。 見られている。自分が意味不明なことを言って取り乱したところを――という意識は、気位の異常に高いこの少女に、普段の羞恥心を復活させ、その羞恥心は少女のマイナス思考を呼び起こした。 (そうよ、だいたい、こんな距離でサイトが見えるわけが無い。ううん、サイトがそもそも……アルビオンに来ているかどうかさえ……!!) 才人と風見の一行が、タバサの風竜に乗ってアルビオンに現れたという目撃情報はある。 だが、……それでも、彼らの存在に確証があるわけではない。現に、ヴァリエール家の旗を掲げたニューカッスルに、彼らからの連絡はついに無かった。 「ゴメンなさい、子爵さま……わたし、どうかしていました……」 少女は、結局――自分の中に芽生えた、使い魔の少年との“絆”を信じることができなかった。 「全軍、そのまま突き進めいっ!! 逆賊どもの陣中を、縦に切り裂くのじゃぁっ!!」 地上部隊の戦闘指揮をとる王党派の貴族、ジェラルド・マーヴェリー卿の号令のもと、騎兵を中核とする、王党派本軍二百の兵団が、炎逆巻く貴族派の包囲軍を、中央突破してゆく。 浮き足立った貴族派の部隊は、勢いに乗った王党派の軍を止める事は出来なかった。 王党派がニューカッスル城に掲げた、トリステインの有力諸侯ヴァリエール公爵家の旗。 家旗掲揚を依頼したルイズの思惑はともかく、その旗は寄せ手を混乱させ、戦況を膠着状態に持ち込ませるには充分な威力を持っていた。 ――と、見せかけ、密かにニューカッスル真下の大穴への艦隊行動を起こしたレコン・キスタ。地上と地下から同時に攻撃を仕掛け、今度こそ、この難攻不落の城塞を攻略するはずだった。 だが、何ぞ知らん。その大穴の存在こそ、王党派が渾身の力を振り絞って仕掛けた、最後の大罠であろうとは!! 浮遊大陸アルビオンの真下。――昼間でも、光一筋差さぬ暗礁空域。 ぶち当たれば、フネさえも無事では済まぬ巨大な岩塊が、まさしく雨後のタケノコのごとく乱立し、貴族派が制空権を確保してからも、容易に踏み込む事をためらわせた漆黒の危険地帯。 そこに仕掛けられた『火』の秘薬は、暗闇の中をニューカッスルに向けて、おっかなびっくり進む貴族派の艦隊を巻き込んで大爆発を起こし、そして雨あられのごとく降り注いだ巨大な岩礁は、貴族派四個艦隊をあっさり海の藻屑と変えたのだ。 ――無論、秘薬の引火は自然発火ではない。 コウモリを使い魔とするメイジたちによって、暗中でも精密射撃を可能とした王立空軍砲兵科の、卓抜した技術あってこその策であった。 そして、大陸直下の大爆発を号令として、城塞地下の天井を破壊し、そこを突破口として地上に奇襲を仕掛けた王党派本軍。 ――と言っても、実質兵数二百余程度の無勢だが、いずれも王家に殉ずる覚悟を決めた、誇り高いメイジを中心とする精兵たちだ。 また、貴族派本陣付近に、神風特攻隊よろしく自沈攻撃を仕掛けた『マリーガラント』号の船蔵に満載された硫黄は、墜落と同時に大爆発を巻き起こし、地上部隊の中央突破を援護する。 もはや威風堂々たる貴族派の重包囲網は、見るも無残な大混乱に陥り、指揮系統を失った大軍は、統制の取れぬ人の群れに成り下がっていた。 そして、壊乱状態の寄せ手を、さらに恐怖に叩き込む一人の戦士。 長さ数メイルほどの鉄柱を軽々と振り回し、王党派の先陣で敵を蹴散らす赤い仮面。胸のレッドボーンに輝くルーンを刻み込んだ、記憶を持たない改造人間。 ――ティファニアの使い魔“ブイスリー”。 その腕力は、重量1トンもの鉄柱を颶風のごとく振り回し、その脚力は、王党派鉄騎軍の先頭に立ちながら、後続の味方の騎馬さえ引き離しかねない速度を誇り、その不死身の肉体は、貴族派の魔法攻撃を一身に引き受けながら、全く怯む様子すら見せない。 いや、攻撃を喰らうほどに、胸のルーンは光を放ち、その怪物のような威圧感は増すばかりだ。 もはや、この赤い死神の前に立ちはだかる愚を、貴族派の兵たちは十二分に思い知らされていた。 「ここは……どこだ……?」 ワルドは、頭を振り、上った血を下げながらあたりを見回す。 自分も驚いてはいるが、それ以上に驚愕の表情で、こちらを見返す軍人たちが、こっちを取り囲むように立ち竦んでいる。 一体どうなっているんだ? 「ここは『レキシントン』の艦橋ですわ」 その声に、ワルドとフーケは、反射的に振り向いた。 日光さえ遮りそうな厚手の黒コートを着た女が、涼しい顔でそこに立っていた。 思わずワルドが呟く。 「ミス・シェフィールド……!?」 そのフードに覆われた女の額から、ルーンが美しい輝きを放っている。 だが、輝くルーン以上に蒼い光をたたえた彼女の双眸は、呆然としているワルドや、うさんくさそうな目で彼女を見上げるフーケ、さらには、だらしなく気を失っているクロムウェルにさえ、一瞥たりとも注がれてはいなかった。 彼女の眼差しは、ただ艦橋から見える唯一の敵艦に向けられている。 王立空軍最後のフネ――戦列艦『イーグル』号。 ――そうだ。 あのとき『マリーガラント』号が、『イーグル』号に艫綱を切られ、レコン・キスタの本陣に突っ込んできていたはずだ。 ワルドは思い出していた。 彼は――いや、フーケもクロムウェルも、そしてシェフィールド自身さえも、自沈攻撃にさらされた当の本陣にいたのだ。 本来なら、フネの爆発に巻き込まれ、骨すら残らずに灰になっているはずだったのだ。 空が丸ごと落下して来たような、あの圧迫感と恐怖は、沈毅重厚なワルドでさえも、思い返せば身の毛もよだつ。 現に、標的とされたクロムウェル本人は恐怖のあまり失神し、未だに目を覚まさない。 それが何故、こんなところで俺たちは生きている? 確か『レキシントン』の艦橋だと言っていたか? 「“転移の腕輪”……術者の脳裡に描かれた空間に、一瞬の内に瞬間移動できるマジックアイテムです。これを使わなかったら、今頃わたしたちは、閣下もろともヴァルハラの門を叩いていたはずですわ」 こちらにまるで視線を向けもしないくせに、ワルドとフーケ、そして艦橋に居並ぶ軍人たちの疑問に直接の解答を投げかけるシェフィールド。 だが、彼女が本当に言いたいことは、そんな魔道具の自慢ではなかったらしい。 「それより艦長、――早くこちらとしても竜騎士を発進させないと、『イーグル』号の射程距離に入られてしまいますわよ?」 その言葉で、貴族派連合空軍旗艦『レキシントン』艦長ヘンリー・ボーウッドは、ようやく我に返った。 そして自他共に許す“空の男”たる自分が、首領の秘書とはいえ、女一匹ごときに、状況を指摘されたという、羞恥心さえも同時に回復する。 「全竜騎士を発進させいっ!! 生き残った他の艦にも、竜騎士を出せと発光信号を送れっ!! 敵は一隻だ。デタラメに撃てば同士討ちの危険がある。それより竜騎士に任せて、敵艦の包囲を固めよとなっ!!」 だが、シェフィールドは涼しい顔で口を挟む。 「的確な御指示ですわ。ですが、どうせならば艦砲射撃で竜騎士を援護なされても宜しいのでは?」 ボーウッドの額に、青筋がはしる。 だが、ボーウッドは、彼女に鋭い一瞥を投げただけで、何も言い返さなかった。 ただ、戸惑ったような顔をして、艦長と議長秘書の女を交互に見返す連絡士官を怒鳴りつけただけだった。 「何をしておるっ!! 艦長の命令が聞こえなかったのかっ!?」 「はっ、はいっ!!」 尻を蹴り飛ばされたような顔をして、連絡士官が、発光信号を担当する通信士たる風メイジ――信号に用いる『光』は、風系の“ライト”の魔法を使う――への伝声管に走る。 この、相手を逆なでするような口を利く女と、これ以上会話したくなかった。それもある。 だが、それ以上にボーウッドは、たった一隻の敵艦相手に、味方の竜騎士を撃ち落しかねない攻撃を仕掛ける危険は避けるべきだ。――そう判断したのだ。 奇襲部隊たる四個艦隊が、一瞬で全滅した。それは事実だ。だが、それでも当方には、二個艦隊――20隻以上の艦がいまだ健在だ。慌てる事は何も無い。 ヘンリー・ボーウッドの瞳は、光を取り戻しつつあった。 「敵残存艦隊、後退して行きますっ!! いや……竜騎士ですっ、竜騎士の編隊が、こちらに向かってきますっ!! その数およそ、……三十騎っ!!」 伝声管から響く、索敵班の悲鳴のような報告に、『イーグル』号の艦橋士官たちは蒼白になった。 大艦巨砲主義では、艦載機による一撃離脱を防ぎ切れない。 太平洋戦争によって確立されたこの概念は、戦史的に地球より遥かに以前から、軍事行動に航空戦力を投入してきたハルケギニアに於いて、すでに一種の常識であった。 つまり、竜騎士による包囲攻撃を仕掛けられれば、どんな巨艦でも、袋叩きにされざるを得ない。 ましてや『イーグル』号は、空賊船に身をやつすほどの艤装しか、艦に施してはいないのだ。三十騎もの竜騎士から、一斉に攻撃されれば、10分とは保たないだろう。 ――あと少しで『ロイヤル・ソヴリン』を射程距離に捉える事が出来たものを……!! ウェールズは思わず舌打ちをしそうになるのを懸命にこらえる。 「でっ、殿下っ、どうなさいますっ!?」 副官のパリーが、こちらを振り返る。 どうするもクソも無い。 マーヴェリー卿率いる地上部隊は、いまだ包囲網を突破し切っていない。 今ここで沈められるわけには行かないのだ。 ――奇襲部隊が、一瞬で壊滅したという貴族派の動揺をさらに利用し、残存艦隊が恐慌状態から脱しないうちに射程距離に入り、各個撃破を繰り返す事で、今度は敵艦隊の目を、逆に地上部隊から逸らす。 それが、この作戦の戦術的骨子である。 敵艦隊の目が地上部隊に向くのだけは、どうしても避けねばならない。何故なら、航空戦力からの艦砲射撃こそが、陸軍に対する最も有効な戦法だからだ。 だから『イーグル』号としては、敵艦隊が恐慌状態から脱しないうちに、なんとしても敵旗艦たる『ロイヤル・ソヴリン』=『レキシントン』を墜としてしまいたかったのだ。 『イーグル』号は敵旗艦を墜とし、敵の恐慌状態を維持する。 地上部隊は、“ブイスリー”を鏃(やじり)として中央突破を敢行し、敵の恐慌状態を維持する。 何より重要なのは、敵の混乱を収束させない事。そして、陸・空による連携を絶対に取らせない事。 それが出来なければ、王党派としては敗北するしかないのだ。 ハッキリ言って、策としてはムチャクチャもいいところだ。何といっても、敵の総数五万に対し、こっちは三百しか手勢を持っていないのだから。 幸い、現段階では作戦は上手くいっていた。しかし、もし今『イーグル』号が沈めば、敵艦隊の目は、たちまち地上部隊に向くだろう。 そうなったら、王党派は潰滅するしかない。 だが、まだ方策が無いわけではない。 そもそも、混乱を利用すると言えば聞こえはいいが、いつ敵が冷静さを取り戻すか知れない以上、最悪の場合の対応策を立案しないほど、ウェールズは間抜けではない。 彼は全艦直通の伝声管を握り締めた。 ――ためらいがあるとすれば、この作戦は、かなり破れかぶれな色合いが濃く、かなりの数の部下を危険に晒してしまうことだ。だが、……それでもやるしかない。 「全艦に通達! 航海班と砲兵科を残し、総員、白兵戦用意っ!!」 ウェールズはそう叫ぶと、パリーを振り返った。 「艦の指揮は任せる。ヴァリエール嬢に傷一つ付けるわけにはいかん。『イーグル号』はこのまま竜騎士隊を引き付けよ。最悪の場合、暗礁空域に避難しても構わん。――絶対に艦を沈めるな」 はっ!! とパリーが直立不動の軍礼を返す。 そして、ウェールズは伝声管を握ると、再度声を張り上げた。 「繰り返すっ!! 総員、白兵戦用意!! 準備の整った者から、急ぎ出撃せよ!! 目標は敵旗艦『ロイヤル・ソヴリン』!! 戦闘指揮は、このウェールズが執る!!」 「子爵さまっ、一体、どういう事っ!?」 軍事に疎いルイズには、いまのウェールズの指示の意味が、よく理解できない。理解出来たのは、自分を守るために『イーグル』号を避難させるといった一節だけだ。 そんなルイズに、ワルドは、こともなげに答える。 「斬り込むのさ。“フライ”で直接、敵のフネにね」 ルイズは、絶句した。 「本気、なの……!?」 「悪い策ではない。逃げ回る『イーグル』号を囮として竜騎士を引き付け、その間に直接、敵の旗艦を攻め落とす。――もし上手くいけば、いまの戦況を引っくり返せる」 「上手くいけばって、……上手くいくの……?」 「分かるものか」 とは、ワルドは言わなかった。 ただ、彼はウェールズを振り返り、こう言っただけだった。 「ウェールズ殿下、わたしもお供させていただけましょうな?」 「ぷはっ、――まったく、ひどい目にあったよ」 泥まみれになって、地面から這い出してきたギーシュは呟いた。 ニューカッスル城まで、あと少しというところだったのに、何でこんな……!! その瞬間だった。 眼前にいた、身長2メイル以上の巨躯を持つ豚面の怪物と、ばっちり目が合ってしまったのは。 「――ぶひ?」 おっ、おっ、おっ、オーク鬼……!? 何で、こんなところにオーク鬼が、こんなにたくさん!? いや、怪物はその一匹だけではない。 気がつけば、周囲ぐるりを、二十匹以上のオーク鬼たちが取り囲み、突如、地下から出現した自分たちを、呆気に取られた表情で見ている。 そのときになって、ようやくギーシュは思い出した。 アルビオン北部の高地地帯には、野生の幻獣のみならず、種々の亜人が数多く棲息しており、戦時ともなれば、血と戦闘を好んで、自ら参戦を志願してくる、と。 (つまりこいつら、……敵?) 才人がぼそりと呟く声が聞こえた。 「どうやら、本当にひどい目に遭うのは、これからみたいだな」 同時に、彼が、背中のデルフリンガーとかいう長剣を引き抜く音も。 「わっ、わわっ、ワルキューレっ!!」 ギーシュが薔薇をかたどった杖を振るい、タバサもキュルケも、問答無用で眼前の亜人たちに攻撃を仕掛ける。 「ぶひぃっ、ぶひひひぶひゅひゅう!!」 オークたちが火だるまに、あるいは氷の矢に串刺しにされて斃れるが、無論、疲労困憊の彼らの魔法だけで、周囲全てのオーク兵が怯むわけも無い。 「きゅいきゅいきゅい~~~~~~!!」 いまだに地面から完全に出られず、ジタバタしているシルフィードに襲い掛からんとしていたオーク鬼を、才人は背中から斬り付け、彼女を引っ張り上げようと、その手を握る。 「シルフィ、はやく竜に戻って!! 空に逃げなきゃ殺されちゃうわっ!!」 そう叫ぶキュルケを、ギーシュは反射的に振り返った。 冗談じゃない、このオーク鬼の部隊の向こうには、貴族派の正規軍が五万といるんだぞ!? そんな中で、背中に四人も乗っけた風竜が逃げられるものか!! たちまち弓矢や魔法で攻撃をかけられて、ヴァルハラ行きだ。 降伏だよ、降伏!! それ以外にこの場を生き延びる道が在るもんか!! ……という言葉が頭に浮かんだが、ギーシュはそれを口にしなかった。 血に飢えたオーク鬼に、降伏という言葉は通じない。そのくらいの常識は、彼にもあったからだ。 その時だった。 オーク鬼たちが、不意にその動きを止めたのは。 「え?」 目をぱちくりさせるギーシュ。 いや、動きを止めただけではない。 自分たちを包囲していた全てのオークが、いきなり背を向け、何事も無かったようにぞろぞろと、移動し始めたのだ。 ある意味壮観な眺めであったが、あまりにも不可解な現実に、ギーシュはへたり込む事さえ忘れてしまう。 「ちょっと、なに? なに? なに? なに!? どういうこと!?」 キュルケが、やはり素っ頓狂な声を上げているが、その疑問に答えられる者は、当のオーク鬼だけだ。そんなに知りたきゃキュルケ、ぼくの代わりに訊きに行ってくれよと、ギーシュは言いたかったが、言ったあとでキュルケに殴られそうなのでやめておいた。 「大丈夫か? ――ったく、こんな子供を戦場に連れてくるなんて、ロクな世界じゃねえな、まったく……」 聞き覚えのある声であった。 いや、いかにギーシュといえど、どうしてその特徴的な錆びた声を忘れられようか!? 平民のクセに、貴族を貴族とも思わぬ態度をとる、目付きの悪いエラそうな男。 それでいて、自分たちのアルビオン上陸を、文字通り身体を張って援護してくれた男。 「かっ、風見さんっっ!!」 才人が、泣きそうな声を出して、突然現れた、黒革の上下に身を包んだ男にすがりつく。 「生きてたんだねっ!! よかったっ、よかったっ、……本当に、……よかっ……!!」 どうやら彼は、感極まって涙まで流し始めたらしい。 いや、アルビオン上陸時の、才人の死にそうな顔色を思い出せば、無理も無いだろう。 そう思って、ギーシュは我知らず頬をほころばせた。 ――だが、 「ええっと、失礼だが、……どこかで会ったかな?」 「え……?」 きょとんとした顔で、才人が風見を見上げる。 いや、才人だけではない。 「……ちょっと、何ふざけてんのよカザミ? あんたそんなキャラじゃないでしょう?」 キュルケも、タバサも、何を言われたのか理解できない顔をしている。 いや、困った顔をしているのは、当の風見も同じだ。その目にはむしろ、この場の誰よりも当惑しているような光さえ浮かんでいる。 自分たちを見て、そんな顔色を見せる風見に、才人は激しい衝撃を受けた。 「風見さん、何言ってるんだよっ!? おれだよっ、あんたと同じく日本からルイズに召喚された、ガンダールヴの平賀才人だよっ!!」 その途端、風見の目が鋭く光り、ややあって、事情を納得したような、そんな笑みが彼の口元に浮かんだ。 「なるほど、そういうことか。なら……人違いだ」 優しく笑いながら、だが風見は確実な拒絶の意味を込めて、才人をぐいっと自分から引き離し、右手の皮手袋を外した。 才人は、いや、キュルケもタバサも、ギーシュも呆然と立ち尽くしている。 この男はいま、人違いと言った。それが一体どういう意味なのか、いや、そもそも風見が一体何を言おうとしているのか、もはや少年少女たちには見当もつかなかったからだ。 「俺は確かに風見志郎だが、君の言うガンダールヴの風見じゃない」 その瞬間、風見の右手が光り始めた。 「あっ!?」 才人は思わず声を上げる。 風見の右手で光を放つもの――それは、自分たちと同じく刻まれた、当代のハルケギニアでは、もはや使う者さえ無き古代ルーン文字……!! しかし、右手ではない! 自分と風見に刻まれたルーンは、右手ではなく左手だったはずだ!! それが何故……!? 「俺はヴィンダールヴ。ヴィンダールヴの風見志郎。心優しき神の笛――そう呼ばれた存在さ」 ヴィンダールヴの風見志郎。 正直そう言われたところで、才人たちには何のことだかサッパリ意味が分からない。 分かる事があるとすれば、この妙に飄々とした“風見”は、本当に自分たちの知る風見志郎とは別人なのかという、漠然とした疑問が自分たちの心中に浮かんだという事だけだ。 いわんや、彼の右手から放たれた、その光に支配された竜騎士の竜たちが、一斉に『イーグル』号から反転し、その背に乗せた騎士たちの手綱を全く無視して、旗艦たる『レキシントン』に襲い掛かっている事など、知る由も無かった。 「ぬうぅぅぅぅんっっ!!」 眼前に現れた、貴族派とおぼしき年若いメイジ兵に、“ブイスリー”は、何のためらいも無く、手にした鉄柱を叩きつける。 「ひいぃっっ!!」 彼らは悲鳴を上げて、杖を放り出し、恐怖のあまり逃げる事さえ思いつかない。“ブイスリー”の攻撃が速過ぎて、思考が身体についていかないのだ。 これまでも、今までもそうしてきたように。ただ敵意だけで人を殺す。その動作の一つを機械的に繰り返し、次の瞬間には、この哀れなメイジ兵は原形を留めぬ無残な屍と化す。 ――はずだった。 「っ!?」 音がしなかった。 手応えも無かった。 だから一瞬、“ブイスリー”には、何が起こったのか分からなかった。 凄まじい威力と速度を以って振るわれた死神の“棍棒”は、それと同次元のパワーによって受け止められていたのだ。――それも、片手で。 無論、腰を抜かして、自らが排出した尿溜まりにへたり込んでいる、若きメイジの仕業ではない。 「そこまでだ」 あまりに巨大すぎる“ブイスリー”の鉄柱。その凶悪なサイズは、それを受け止めた男の姿が、鉄柱の陰にすっぽり隠れてしまうほどだ。 だが、姿さえ判別できない男の、その呟きは、王党派・貴族派問わず、周囲にいる全ての者たちの動きを封じた。 「貴様、何者だ……!?」 その声の威に服さなかった唯一の者は“ブイスリー”のみだったと言っていい。 だが、その誰何の声が震えを帯びるのは、彼の心を、別種の衝撃が捉えていたからだ。 (俺と、同じ声……だと!?) そして、鉄柱の陰から姿を現した、その男。 「なっ!?」 「――ばっ、ばかなっ!?」 不気味に輝くルーンを額に刻み込み、1t近い質量を片腕一本で抑え込んだ男の姿は、その声に動きを封じられていた周囲の兵たちから、さらに驚愕の声を上げさせた。 赤い仮面、緑の複眼、白い手袋――。 「自分の声に聞き覚えが無いのか?」 そこには、“ブイスリー”と全く同じボディを持った、奇妙な亜人が立っていた。 いまここに、ガンダールヴを除いた、すべてのV3が、一つの戦場に集結したのである。 前ページ次ページもう一人の『左手』
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前ページ次ページもう一人の『左手』 「アルビオン……だと?」 「ええ、いま言った通りよ」 「本気で言ってるのか、ヴァリエール?」 風見は、普段ルイズの部屋ではなく、コルベールの部屋に居候している。 だから、今では、ハルケギニアの世情に、少しは詳しくなっている。そして、彼の知識によると、いまアルビオンは確か……。 「当たり前でしょう! こんな名誉ある任務をお断りするバカがどこにいるの!?」 ルイズが、えへんと胸を張る。 まあ、その気持ちは、風見にも分からないではない。 幼馴染みとはいえ、王家の象徴たる姫殿下が、自分を頼ってくれた事が、ルイズにとっては誇らしくてたまらないのだろう。 だから、コルベールを通じて、自分を呼び出したルイズが、嬉々として、王女に個人的な任務を命じられたことを話されたとき、風見は純粋にルイズのために喜んでやった。 ……ルイズが、その“任務”の内容について話し出すまでは。 「気に入らんな」 風見の態度に腹を立てたのだろう。ルイズの傍らにいた、美髯の貴族が、切り込むように言った。 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。 メイジの花形である王宮魔法衛士隊の一つ、グリフォン隊の隊長。アンリエッタが一行の護衛にと、直々に命を下した“風”のスクウェア・メイジであり、そしてルイズ・ラ・ヴァリエールの許婚者……。 「君は、使い魔のくせに、主が名誉の任務を与えられた事に不服なのか?」 しかし風見は、そんなワルドの想像を絶した返答を、こともなげに返す。 「当たり前だ。お前らの名誉など、俺には関係ない」 「なっ……!?」 自分を真っ直ぐ見つめて、そう言い返す『平民』に、ワルドは呆気にとられ、思わずルイズを見る。 見られた彼女は、非常に済まなさそうな表情で、小さくワルドに謝る。 ――そんな二人の貴族の様子が、壁にもたれて座り込んだ才人には、非常に、気に食わなかった。 さっきまで才人は、ルイズと二人、とてもいい雰囲気だったのだ。 オーケストラも照明効果も無い、寒夜の校庭だったが、才人とルイズにとっては、何にも勝るロマンチックなダンスパーティ。 そして、部屋に帰ってからも、そのムードが続けば、――いかに不器用な才人であっても――行けるとこまで行けちゃうかも知れない。 そんな淡い期待もあったのだが……その夢は、あっさり潰えた。 それはもう、見事なまでに。 部屋で彼らを待っていたお姫様――アンリエッタが、彼女に持ち込んだ依頼。 それを聞いたルイズは、もはや才人の事など忘れたかのごとく、舞い上がってしまったのだ。 ――まあ、それはいい。 『ゼロ』と呼ばれて久しいルイズが、いかに“名誉”に飢えているか、才人は知ってしまっている。 だが、気に入らないのは、お姫様が連れてきた――ワルドとかいう男だった。 一目で分かるモテ男オーラを発散する、精悍な美男子。 彼を見た瞬間、ルイズが目を潤ませて頬を染め、声を上ずらせて眩しそうに視線を逸らし、つまり今まで才人に全く見せた事のない表情をしたのだ。 いくら彼が、二次元の女性しか知らない鈍感でも、ここまで露骨だったらバカでも分かる。 これは、恋する少女の表情だ。 しかも、ただの恋ではない。好意と憧憬が組み合わさった、第三者には、ほぼ介入の余地が無い恋愛感情。 名門に生まれ、他人を無意識に見下す少女が、『見上げる』形で表現する愛情表現。――いうなれば“恋慕”というべき感情。 そして――その青年が、ルイズの許婚者であると聞いた時、才人は、足元がガラガラと崩れていくのを感じた。 無論、崩壊したのは地面や床ではない。 これまでルイズとの間に築いてきたはずの、絆のようなものが、である。 しかも、その貴族が、将来を嘱望されるエリート・メイジだと聞いた日には。 「もう一度、状況を整理するぞヴァリエール」 「好きになさいよ」 ルイズは、そっぽを向く。 “名誉”を解さぬ使い魔が、婚約者の前で自分に恥をかかせた事が、少女を苛立たせるのだろうが、風見は無論、彼女のそんな自尊心など意にも介さない。 「王女の命令とやらを平たく言えば、こうなる」 「内戦の真っ只中にあるアルビオンに出向き、レコン・キスタと名乗る反乱軍に包囲された篭城中の城に忍び込み――」 「侵入者である自分たちを信用させ、国交断絶を一方的に宣告した上で、手紙の返還を交渉し――」 「そして、再び包囲軍を突破し、制空権を支配された浮遊大陸から、無事に手紙を持ち帰る――」 「しかも、王女の個人的な極秘任務のため、国からの正式な紹介状は勿論、必要経費すら与えられず、王宮からの援軍は、このワルド子爵ただ一人のみ――」 「以上で間違いはないか?」 才人は、あんぐりと口を開けていた。 なんだそりゃ……!? アンリエッタが喋っている時は、ワルドとルイズに対する妙な絶望感で、ほとんど話を聞いていなかったが、――こうやって聞くと、身の毛もよだつ話だ。 そんな任務を――いかに信用できる幼馴染みだからとはいえ――魔法学院の劣等生に命令するオヒメサマとやらに、才人は恐怖さえ覚えた。 そして、それを“名誉”だと言ってはばからないルイズにも。 そう思い、ちらりとルイズを見た才人は、さらに唖然とする。 ルイズは――真っ青になっていた。 風見に、無理やり話を“整理”され、自分が安請け合いした任務が、いかに困難に満ちたものかを、ようやく自覚したらしい。 (……ってか、分かってなかったのかよ、お前!!) 才人は、そんなルイズの性格にも、かなりドン引きだったが、同時に安心もした。 ルイズが、その任務の困難さを全て理解した上で、嬉々として命令を受けたのだったら、彼女の価値観は、あまりにも才人と異質すぎる事になる。 彼は、自分が惹かれつつある少女の、そんな理解を絶した一面を見たくは無かった。 「きゃはははは!! コイツぁひで~や! おい、貴族の娘っ子!! オメエ実は、お姫様に恨まれてるって事はねえかぁ!?」 やぶれかぶれな笑い声を上げるデルフリンガーに、ルイズがぎょっとしたような反応を見せる。 「なっ、なに言い出だすのよ、この錆び刀!!」 「だってよぉ、オレにはこの仕事、オメエに『死ね』っつってるようにしか聞こえねえぜ?」 「やめろデルフ!!」 才人は、あわてて剣を無理やり鞘に収めたが、もはや場の空気は収拾しようが無い。 彼はもはや、ルイズがどんな表情をしているか、確認する勇気さえなかった。 なにせ、この剣が言った事は、この場にいる全員が等しく思っているはずのことだからだ。 いや、全員……? 「そうだ。それが我らの任務だ」 ワルドが、――彼だけは全く動じた様子も見せず、そう応えた。 そうなのだ。 この貴族だけは、任務の内容も何もかも承知の上で、ここにいるはずなのだ。 にもかかわらず、何故そんな顔が出来るのだろう。 格好つけてるだけ、じゃ、ない、のか……? 「大丈夫だルイズ、心配するには及ばない。君のことはぼくが守る。たとえ命に代えてもだ」 「子爵様……!!」 ルイズが、そう言われて頬を再度赤らめた時、才人は無性に腹が立った。 なぁ~にが『ぼくが守る』だ! 無責任なこと言いやがって!! 守りきる前に、肝心のお前が殺されちまうケースを考えないのかよ!? 戦場で、ルイズが独り、取り残されちまったら、どうする気なんだ!? そう思った瞬間、才人はふと、一つの疑問が頭をもたげるのを感じた。 「なあ、ルイズ」 「――え?」 ワルドと見つめ合って頬を染めていたルイズは、弾かれたように、その照れた顔を才人に向ける。 ――そんな彼女の様子が、ますます才人の癇に障る。だから必要以上に声に毒が込もった。 「なんでお前が行かなきゃならないんだ?」 「なによそれ、どういう意味よ……!!」 ルイズの額に険が走る。 返答次第じゃ、許さないと言いたげな目の色だ。 だが、それ以上にイラついていた才人は、言葉を選ばなかった。 「だから――わざわざ、お前が行かなきゃならない理由が分からねえって言ってるのさ。そっちの護衛役の貴族サマが一人で行った方が、よっぽど成功率は高いだろう?」 「なっ……なんですってぇ!?」 やばい!! やばいやばいやばいやばい!! 脳が、ボリュームを最大にして、警報を鳴らす。 これ以上は喋るな。これ以上喋ると、地雷に触れる!! 絶対に触れちゃあいけない核地雷に!! しかし、彼の理性はすでに、引っ込みのつかない嫉妬で破壊されてしまっていた。 「魔法が使えないお前が一緒に行っても、ぶっちゃけ、邪魔になるだけじゃねえか。そうだろ?」 その瞬間、才人の身体は吹き飛んでいた。 魔法で喰らったダメージとは全く違う、骨の髄までずしんと響く一撃。 その一発のおかげで意識が飛び、壁に叩きつけられたおかげで、その意識が回復する。 あとに残されたのは、切れた唇に折れた歯。 才人は、自分が殴られたことに気付いた。 殴ったのは、無論ルイズではない。ワルドとかいう彼女の婚約者だ。 「平民、貴様は言ってはならぬ事を言った。――もう一度同じ事をほざいてみろ!! 二度と、まともな口が利けない身体にしてやるぞっ!!」 怒ってるよ、この大将。 まあ、当然か? 確かに、こいつの言う通り、一番言っちゃあならねえトコロを言っちまったからなぁ……。 フィアンセとしちゃあ、一発くらいブン殴りたくもなるよなあ。 そう思った瞬間、才人は自分のコンディションを思い出した。 全身数箇所に負った火傷と、度重なる無理な運動で、限界が近付きつつあったことを。 その瞬間、痛みがぶり返した。 しかし、この場で苦悶のうめきを上げることは、嫉妬によって歪まされた、彼の矜持が許さなかった。 そこにワルドがいたから。 そして、ワルドのさらに後ろに、ルイズが見えたから。 才人は、……立ち上がった。 「なんだその目は? いまの暴言を取り消すつもりは無いとでも言いたげだな?」 そう言いながらワルドが、つかつかと才人に近付く。 「待って、子爵様!」 ルイズが才人とワルドとの間に、割って入る。しかし、彼女が才人の身体に僅かに触れた瞬間、少年の全身に電撃を浴びたような激痛が走った。 「~~~~~~~~~っっっ!!!!」 思わずうずくまる才人。 「サイト……!? 大丈夫サイト!!」 「うるせえ触るなっ!!」 ルイズは、痛みに悶える才人に手を差し伸べようとしたに過ぎない。だが彼は、そんな少女を突き飛ばし、思わず、そう叫んでしまったのだ。 それは反射行為だった。傷口に触れようとする他者に対し、無意識が命じた防衛本能。 ――だが、“絵”としては、これ以上ないほどに象徴的だった。 少女に対する、少年の峻厳なまでの『拒絶』。 当然、才人は次の瞬間に、自分の行動がとった意味を理解し、何かを言わんとする。 いまのは違う。いまの言動に意味はない。おれに、お前を拒絶する意思はない、と。 が、その瞬間、部屋に響いたワルドの声が、その声を掻き消した。 「平民、やはり貴様もルイズを侮るのか」 愕然とワルドを振り返る才人。だが、そこにいたルイズの婚約者は、むしろ沈鬱な声で、才人に止めを刺す。 「貴様も使い魔の端くれならば、主が『ゼロ』という蔑称に、どれだけ心痛めているか、百も承知であろう。にもかかわらず、貴様は……!!」 ――違う!! おれはそんなつもりはない!! おれはただ……!! だが、才人のその言葉も、ルイズの目を見た途端に、彼の咽頭で自壊してしまう。 「そう、――やっぱりそうだったのね……!!」 彼女の目は、怒っていた。 それは、短気なルイズが、これまで見せた事のないほどの深度の怒り。 そんな目を見せられては、もう才人に吐ける言葉は、この世に存在しなかった。 「結局、なんだかんだ言って、――あんたもわたしのことをバカにしてたのね……? 貴族のくせに魔法も使えない『ゼロ』だって。何も出来ないくせに主ヅラした、鼻持ちならないチビだって。――そうなのね……!!」 「……ちがう……」 「あんたは……あんただけは違うって思ってたのに……、やっぱり他の奴らと同じだったのね!!」 「違うんだルイズ!! 聞いてくれ――」 「出て行って!! いますぐここから出て行って!! 二人とも、二度とわたしの前に顔を見せないでっ!!」 「わかったよ……」 才人は、そう呟くと、うつむいたまま、扉の向こうに姿を消した。それこそ、主に見捨てられた犬のような表情をして。 ルイズは、それこそ悪鬼のような表情で、才人を睨み付けていたが、彼の背が、そのまま部屋を出てゆくのを確認した途端、ベッドに突っ伏して泣き始めた。 それはまさに、号泣と呼ぶに相応しい慟哭だった。 風見は、そんな少年少女のドラマに、疲れたような溜め息をつくと、しばらく一人にさせてやろうという視線で、ワルドを誘い、廊下に出た。 「まったく――困った事をしてくれたな。おかげでぼくは、一晩中ルイズを慰めねばならなくなった。どうやら今宵は眠れそうもないよ」 さっきまでの荘重な怒りはどこへやらといった風で、何事も無かったように軽口を叩いてくるワルドに、風見はやや戸惑いを覚える。 「あんたは、俺が気に入らないんじゃなかったのか?」 「はは……、そんな事はないさ。これでもぼくは、――さっきの少年はともかく――君らを買っているんだよ。あの『土くれのフーケ』を首尾よく捕らえたという、君たちルイズの使い魔をね」 「……」 「さっきの君の意見、あれはなかなか鋭い指摘だったよ。だからといっては何だが、おそらくフーケを捕らえる主軸となったのは、君なんだろう?」 「……いまは、そんな話をしている時ではないはずだ」 「ごもっとも。――で、何か話があったんじゃないのかい?」 「ああ。――あんたには、正直なところ、腹を割って話を聞きたいと思ってな」 「話?」 「今回のこの一件、成算はあるのか?」 「……ある」 だが、――とワルドは付け加えた。 「その詳細を言うわけにはいかない。君たちは既に、ルイズによって一行から外されてしまった身だからね。策は密なるを以ってよしとする。“部外者”に、機密を洩らすわけにはいかないさ」 「“部外者”、か……」 風見は、思わず苦笑する。 「ああ、気に障ったら許してくれ。――ともかく、ルイズはぼくが守る。なにしろ彼女は、我が愛しの婚約者だからね。君たちも、大船に乗った気分でいてくれたまえ」 その笑顔には、確信があった。 風見は、何故ワルドが、この危険な任務に、そこまで確信をもてるのか分からなかったが、……それでも、彼の言葉と表情は、風見から不安を奪った。 「本当に、俺たちがついていかなくていいんだな?」 その言葉を聞いて、今度はワルドが苦笑する。 「いまさら、ルイズが君たちの同行を許すとは思えんよ。彼女を心配してくれるのは嬉しいが、――まあ、任せてくれたまえ」 翌朝、払暁――ルイズは校庭に降り立った。 ワルドの騎乗するグリフォンに乗って、出立するために。 彼女は、その瞬間、何かを訴えるような目で、母校を見つめたが、――やがて、決意したように振り返り、ワルドに言った。 「行きましょう子爵様。アルビオンへ」 だが、彼女の傍らに、その使い魔たちの姿はない。 前ページ次ページもう一人の『左手』