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ここに作品タイトル等を記入 更新日:2022/03/28 Mon 07 52 43NEW! タグ一覧 セブンスカラー 今回のあらすじを担当するトゥバン様だ!前回は何か色々あったな〜。黒鳥の奴が大恋愛の末にフラれて……ククッ、傑作だったなありゃ…。 だが、龍香とシオンの間に暗雲が……? 気になるぞ!どうなる第二十五話! 蝋燭の灯りが部屋を照らす書斎でプロウフが読書をしていると、コンコンと部屋がノックされる。 「どうぞ。」 プロウフがそう言うとガチャリとドアが開き、赤黒髪の少女プロキオンが入ってくる。 だが今のプロキオンは見るからにいつもの元気はなく、落ち込んでいる様子だった。 「おや、プロキオン。どうしました?」 そんなプロキオンを見たプロウフは本を閉じて尋ねる。 「その、プロウフに相談があって。」 「おや。昨日のアルレシャとカストルの事ですか?彼らのことは残念でしたが…」 プロウフの言葉にプロキオンは一瞬口籠ったがプロウフに悩みを打ち明けることにした。 「その。龍香のことなんだけど。」 「?彼女がどうかしましたか?」 「あの、龍香が、実はあの敵で…多分“新月”で。」 「なんと。」 プロウフはそう言って立ち上がる。そんなプロウフにプロキオンはおずおずと言った様子で尋ねる。 「プロウフ?」 「アルタイル、デネブ、ベガ。」 プロウフが名を呼ぶと、何処からともなく疾風と共に三体の荒々しい猛禽類のような、麗しき琴をあしらった意匠のような、美しい滑らかな曲線の鳥獣のような怪物達がその姿を現す。 「プロウフ様の懐刀!」 「疾風の三衛士!」 「エスティーヴォ、参上致しました!何なりとご命令を。」 三体の怪物達は恭しく片膝をついてプロウフに首を垂れる。それを見たプロウフは一枚の薄紫色の髪の少女、龍香の写真を取り出すと三人に。 「この少女と、カノープスを粛清を命じます。」 「「「はっ!」」」 プロウフの指令に怪物達は応、と答える。それを見たプロキオンはギョッとすると、慌てて。 「ま、待って!り、龍香は友達なの!」 「えぇ。ですが我々の同胞を葬ってきたのも事実です。」 「そ、それは……。」 迷うプロキオンにプロウフは尋ねる。 「まさかと思いますが、我々を裏切り向こうに着く…と言う訳ではないですよね?」 プロウフがそう言うと三人が殺気立つ。プロキオンは慌てて手を振って、言う。 「そ、そんなことはしないよ!けど」 尚も迷う彼女にプロウフは肩をすくめると、彼女に耳打ちする。 「いいでしょう。彼女は見逃します。しかしカノープスだけは粛清させて貰います。それが終われば彼女のことは好きにしてもいいですよ。」 「ほ、ホント?」 不安げに尋ねるプロキオンにプロウフはコクリと頷いて肯定の意を示す。 「えぇ。エスティーヴォの皆さんも分かりましたね。」 「「「はっ!」」」 「龍香……。」 俯きながらプロキオンが呟く。その様子をドア越しに聞き耳を立てていた白龍香はニヤリと笑う。 「へぇ……面白くなってきた。」 「あれ、黒鳥は?」 トレーニング室に入った雪花がランニングマシンで走っている赤羽に尋ねると彼女は少しため息をついて。 「寝込んでるわ。よっぽどあのシードゥスに入れ込んでたみたいよ。」 「アイツ意外と感情的なのよね…。」 雪花も今回は事情が事情なだけに一息つくと同じようにランニングマシンに上がって設定をいじる。 そして走り出すと、少しして赤羽が話し出す。 「そう言えば、アンタが前に龍香と黒鳥と女の子とその祖父に奢って貰ったって言ってたじゃない。」 「ん?あぁ。シオン…だったっけな。それがどうかしたの?」 「その子、シードゥスかもしれないわ。」 「……は。」 驚く雪花に赤羽は続ける。 「その子、例のシードゥスと一緒にいたの。何だったらソイツと親しげに話してたわ。」 「いや、ほら。あのど変態に狙われてたのかも。」 「まぁ、その可能性もない訳じゃないけど。取り敢えず用心するに越したことはないわ。」 「そう、ね。」 雪花は赤羽にそうは言ったが、内心は穏やかではなかった。別にその子がどうと言うわけではない。ただ好意を向けられ、それを受け入れている龍香のことがどうにも気にかかった。 「……龍香に話すべきかしら。」 兄の見舞いの帰り道を龍香が一人で歩いていると、後ろから声をかけられる。 「おーい、龍香ー!」 「あ、かおり、藤正君。」 龍香が振り返るとそこにはかおりと藤正がいた。二人は近づくなりマジマジと龍香の顔を見る。 じっと見つめられて気恥ずかしくなった龍香は少し頬を紅くしながら二人に尋ねる。 「な、何?なんか付いてる?」 「いや、結局カラコンやめたんだ、って思って。」 「へ?」 「まぁ、学校でやったら怒られちゃうしね。まぁちょっと冒険したい気持ちも分かるケド。」 「え…何のこと?」 《カラコン?》 龍香とカノープスがキョトンとすると、二人も話の食い違いを感じて。 「あれ?昨日お前してたじゃん赤いカラコン。」 「そうそう。兎みたいに赤い目の。」 「え?え?」 二人の言葉に余計混乱する龍香。すると、事情を察したカノープスは納得したようにあぁ、と言う。 《多分、お前らが会ったのは龍香をコピーした人形だ。》 「龍香を、コピーした人形?」 「それは本当なの?」 カノープスの言葉に二人の目の色が変わり、龍香を問い詰める。 「う、うん。多分目つきとか言葉使いとか悪かったでしょ?」 「そう?目つきはどうだか知らないけど、急に抱きついて来たり、茶目っ気があってそんな気にならなかったわ。」 「抱きついたの!?」 「あぁ、何か普段の龍香とは違う面を見れてちょっとドキドキしたわ。」 「ちょっと?」 「ちょっと!!」 揶揄うかおりに藤正が言い返すのを見ながら龍香はカノープスに尋ねる。 「ど、どういうこと?」 《分からんが…もしかしたら二人をお前と偽って騙そうとしたんじゃないか。取り敢えず二人に注意をしておけ。》 カノープスにそう言われ、龍香が注意しようとしたその時だった。 「龍香!」 またもや名前を呼ばれて龍香が声がした方に目を向けると、そこには何故か引き攣ったような、不自然な笑顔を浮かべながらこちらに歩いてくるシオンの姿があった。 「し、シオンちゃん?」 「どうしたのその顔?」 「えっ、そ、そうかなー?」 シオンはハハッと笑う。その表情は何かを誤魔化そうと無理をしているように見えた。 そんな彼女に龍香が心配そうに声をかけようとすると、藤正が口を開く。 「なぁ、四人いるし今から遊ばねぇか?」 「お、いいねー?何する?」 藤正の提案にかおりが乗る。それに対して少したじろぐシオンに藤正が 「何悩んでいるか知らねーけど、今だけは忘れて楽しもうぜ。な?」 「う…ん。」 「行こうシオンちゃん。」 龍香が差し出した手を見て、シオンは一瞬戸惑うが恐る恐る手を伸ばし、その手を取った。 (何やってんだろ、アタシ。) 木の影に隠れて俯きながら、シオンはぼんやりとそんなことを思案する。 「もーいいーかーい!?」 龍香の叫ぶ声が聞こえ、そしてかおりと藤正のまーだだよ、と返事が返っていく。 (龍香は敵。カストルやアルレシャ達を倒した敵。) 他にも数々の仲間達を倒してきた魔龍少女である彼女は憎むべき敵だ。 仕返しをしたいと思う反面、それを躊躇い、戦いたくないと言う思いもある。 相入れるはずもない相反の気持ちの揺らぎにシオンの感情は頭の中がグチャグチャになる。 「何してんの?」 「え?」 声をかけられ、顔をあげるとそこには藤正の姿があった。 「声出すと見つかっちまうぞ?」 「えっ、声出てた?」 「うん。めっちゃ唸ってた。」 そう言われ、またも俯くシオンに藤正が言う。 「なぁ。何を悩んでんだ?」 「………。」 言えるハズもない。お前の友達を殺そうか殺さないか悩んでいるだなんて。 口をつぐんで何も言おうとしないシオンを見て、藤正は。 「まぁ、いいよ。言いたくないことだってあるもんな。」 それ以上の追求をやめた。しかし何かを思い出したように藤正は言う。 「あ、でもこう言う時はな、一つ一つ物事を並べるのが大事なんだぜ。」 「一つ一つ?」 「最初に悩み事を置いて、それから何でそれを悩んでいるか、を順番に考えていくだ。物事は綺麗に並べると意外と答えが見つかる……らしい。」 「らしい?」 何故か断言しない藤正にシオンが聞き返すと、藤正は少し恥ずかしそうに頬を掻いて。 「…その、アレだ。これ父さんから聞いたから。」 「何それ。」 なんとなくおかしくて、シオンが笑う。 「ちょ、笑うなよ。」 「ふふっ、ごめんね?」 シオンはそう返しながら、藤正の言ってた通り一つ一つ整理して考えてみる事にした。 (龍香は仲間の仇。絶対に倒さないといけない。でも、戦いたくない。何故?何故私は龍香と戦いたくないの?恩人だから?仲良くしてくれる知り合いだから?) 龍香と何故戦いたくないか、思いつく限りの理由をあげつらねるが、どれもしっくりこない。思考の坩堝に落ちていく感覚。 そして答えが出せぬまままた無意識に唸っている時だった。 「シオンちゃん、見つけた!」 目の前に龍香がいた。龍香はニッコリと笑うとシオンに手を伸ばす。 (あぁ。なんだ。そんなことか。) シオンはその笑顔を見て、今まで悩んでいたのが馬鹿らしく成る程単純で、そして明確な答えが思い浮かんだ。 (アタシ、龍香のことが好きなんだ。) その心を自覚した瞬間。自身の何かに火がついて、それと同時に頭が冷えていく感覚を覚えると同時にぼんやりと新たな想いが湧き出る。 (龍香が他のシードゥスに倒されるのを見るのは、嫌だなぁ。) そう。例え仲間でも、プロウフでも。龍香がその前に倒れることにプロキオンは激しく嫌悪感を抱く。 (だったら。私がしたいことは。するべきは。) シオンは龍香の手を取り、立ち上がるとその手を持って歩き出す。 「し、シオンちゃん?」 怪訝な声を出す龍香に、シオンは微笑んでしーっと人差し指を唇にあてて、言った。 「龍香。案内したいところがあるの。着いてきて。」 「調子はどう?龍賢君。」 「左腕が動かないこと以外はそれなりですよ。」 見舞いに来た山形に龍賢は少し笑って返す。 「それにしても派手にやったね。お医者さんに何やったらこうなるんだ、ってスゴイ怒られちゃったもんねボクら。」 「すみません。俺が不甲斐ないばかりに。」 「全然そんな事ないですよ!林張さん?」 「ご、ごめんって。」 火元に睨まれて林張が慌てて謝る。その様子を龍賢は別に気にしていないのに、と思いながら見ていると。 「ケンケン、お客さんよー。」 そう言って風見は龍賢の秘書、雲原を病室に入れる。 「社長、頼まれていたものをお持ちしました。」 「ありがとう雲原さん。」 雲原が手に持っていたのは一台のノートパソコン。龍賢はそれを手に取ると早速立ち上げ、右手でカタカタと何かを打ち込み始める。 「何してるの?」 林張が尋ねると、龍賢は。 「いえ、私事で2日も業務を止めてしまったので。」 そう言って彼が続けようとすると、凄い勢いで雲原に龍賢のPCは没収されてしまった。 「…雲原さん?」 「社長。そんな事だろうとは思いましたが、怪我をしているんですから今は治療に専念してください。」 「いや、しかし……」 龍賢がションボリと捨てられた子犬のような目で、雲原を見上げる。その瞳に雲原は大いに何かをくすぐられ、唸るが首を振って己を保つと。 「ダメです!」 雲原にそう言われ、龍賢はそうか。と言って枕に頭を沈める。 「あらあら。完全に尻に敷かれちゃってるわね。ケンケン。」 「雲原さん、彼をよろしくね。すぐ無茶をする子だから。」 風見と山形が茶化す。 「龍賢さんは兄妹揃って純粋ですからねー。」 火元の言葉に龍賢は尋ねる。 「龍香はともかく俺、そんなに純粋ですか?」 「うん。二人とも誰かの為に頑張れる純粋な方じゃないですか。でも、気をつけてくださいね。」 火元は龍賢の目を見ながら続ける。 「純粋って、何かに影響されて染まりやすいって事でもありますから。」 「し、シオンちゃん。何処に行くの?」 「もうすぐだよ。龍香。」 さろそろ日も傾いて辺りが黄昏て行く中、シオンに誘われるまま、龍香はちょっとした小山を登っていた。 そしてそのまま木々を抜け、広い所に出ると。 「うわぁ……」 小山の頂上は少し開けた広場になっており。そこから見下ろす街全体を見渡せる景色は、自分が住んでいる場所なのに、視点が違うだけで特別で綺麗に見えた。 「綺麗だね。シオンちゃん。」 「うん。ここお気に入りの場所なんだ。龍香に見せたかったの。」 「私に?」 「うん。だって私龍香のこと好きだから。」 シオンの言葉に龍香は一瞬固まった後、少し頬を紅潮させる。 「あ、ありがとう。」 照れながらもお礼を言う龍香にシオンは微笑みながら。 「うん。だからね。龍香に隠し事をするのはもうやめたの。」 「隠し事?」 「それはね。」 「龍香!ソイツから離れなさい!」 シオンの言葉を遮って叫び声が響く。後ろを振り返れば、そこにはぜぇぜぇと息を切らす雪花がいた。 「雪花ちゃん?」 「どうしてここが。」 「藤正とかおりに聞いて、黒鳥に手伝って貰ったのよ。」 近くにカァと鳴いて烏が降り立つ。しかし、それよりも気になるのは。 「ど、どうしたの雪花ちゃん。いきなりシオンちゃんから離れろだなんて。いくらなんでも失礼じゃ」 「良いから離れなさい!」 叫ぶ雪花に困惑する龍香。横槍を入れてきた雪花に対してシオンが呟く。 「邪魔だなぁ…」 そう言った瞬間シオンの後ろに三体の怪物が降り立つ。その様子を見た龍香達が驚いてギョッとした顔になる。 《シードゥス!》 「シオンちゃん危ない!」 龍香が叫ぶが、三体は特にシオンに攻撃を加えるような姿勢は見せない。 龍香達がどうするか考えあぐねていると、シオンは三体の怪物達に言う。 「私が一対一でやる。手出し無用だからね。」 「了解。」 「え。」 シオンの言葉に龍香が耳を疑う。だがシオンがそう言った瞬間三体の怪物……アルタイル、デネブ、ベガが雪花に迫る。 「クソッやっぱりこうなるの!?」 雪花はすぐさま変身すると三体と応戦しながら山中へと消える。 そして再び龍香はシオンと二人きりとなる。だが、龍香は信じられないようなものを見る目でシオンを見て、そして震える声で違うと言って欲しいと懇願するように尋ねた。 「し、シオンちゃん?さ、さっきのは。嘘だよね…?」 「ううん。ホント。龍香も見たでしょう?」 しかし、その儚い願望は他ならぬシオンの言葉で完全に否定される。 「あと、私はホントはシオンって名前じゃない。」 そして次の瞬間、シオンの身体がさざめくように揺らいだかと思うと。その場には赤紫色で、犬のような、小柄な身体が特徴的な怪物がいた。 「アタシの本当の名前はプロキオン。貴方の敵、シードゥスのプロキオンよ。」 その事実に龍香は目の前がまっくらになったかのような衝撃を受ける。 「そんな……。私を、私達を騙してたの?私のことを好きって、言ったのも嘘?」 その言葉にプロキオンは一瞬俯く。だが、すぐに顔をあげると。 「うん。全部嘘。私の仲間を殺してきた貴方なんて大嫌い。」 《マズイ!》 次の瞬間プロキオンが地面を蹴ると同時に、攻撃を察知したカノープスが龍香を強制的に変身させる。 そして振るわれた刃を龍香は反射的に“タイラントアックス”で防ぐが、不意の一撃ということも相まって龍香はジリジリと圧される。そして龍香に顔を近づけながらプロキオンが言う。 「だから貴方を討つの。今、この場所で!」 プロキオンはそう叫ぶと龍香に蹴りを入れる。衝撃に思わず呻くがプロキオンが振るった刃を見て咄嗟に避ける。 「シオンちゃん!やめて!」 「私はプロキオンだ!」 振るわれた刃が龍香の頬を掠める。振るわれた攻撃を龍香が受け止める。まさしく防戦一方という展開。 そんな龍香をカノープスが叱咤する。 《何やってんだ龍香!?このままだとやられるぞ!》 「で、でも。」 「はあああ!」 攻撃をためらう龍香に対して、プロキオンは容赦なく攻撃を加えていく。そしてとうとうプロキオンの一撃が龍香の胸元に直撃し、胸部装甲から火花が飛び散り、強い衝撃が龍香を襲う。 「きゃっ!?」 強い衝撃を受けて地面を転がる龍香。倒れる龍香にプロキオンが迫る。 《龍香!》 カノープスが叫ぶ。龍香の頭の中はぐちゃぐちゃだった。いきなり親友だと思っていた、好意を見せてくれた友人はシードゥスで。そして仲間のために自分を倒す。そのために演技をしていたと言う。 戦え。戦え。彼女はシードゥスで、敵なんだといくら自分に言い聞かせても身体は動かないし思考が纏まらない。 「どう、したら」 《龍香!取り敢えずここを凌げ!一旦引くぞ!》 「させない!」 プロキオンが肉薄する。龍香は思考の纏まらない頭で身体を無理矢理動かす。 「…!!」 龍香は繰り出された刃をかわしながらカノープスに触れ、オレンジ色の形態、プレシオカラーになると鞭型の武器“プレシオウィップ”を取り出しそれを勢いよくしならせる。 「はァッ!」 龍香が鞭を振るう。プロキオンはそれを跳躍して避けるが、龍香は巧みに鞭を操作してプロキオンを狙い続ける。 そしてとうとう鞭がプロキオンを捉え、その身体をがんじがらめて締め上げ拘束する。 「うぅ!」 拘束され、もがくプロキオンを龍香は見下ろして。 「……もう、やめよう。私、シオンちゃんとは戦えない…」 「……で」 小声で呟いたかと思うとプロキオンは叫ぶ。 「何で真面目に戦ってくれないの!?私は貴方のこと嫌いだって嘘をついたのに!!本気で戦ってよ!“新月”何でしょ!?私の仲間を沢山殺したのに私とは戦えないって…!龍香は私のこと嫌いなの!?」 泣き喚く子供のように捲し立てるプロキオン。その様子と言動に龍香は困惑する。 「え、え?」 「龍香のこと嫌いって言ったけど!ホントは好き!大好き!一生側にいてほしい!」 「なら、なんで。私を、襲うの?」 龍香の問いにプロキオンは喚くのをやめて、静かに立ち上がって呆気からんとした様子で。 「好きだから。好きだからこうやって答えを出すの。私は本気の貴方を倒す。そして貴方は本気の私を倒す。そうすればいずれ答えが出る。これが私の見つけた答えを出す方法なの。」 「何を、言って。」 「私はシードゥスで龍香は“新月”。…戦うしかない。運命は私に選べ、って言っている。」 そう言うプロキオンの身体が青く、毒々しい色に染まっていき、そして小柄で華奢な身体がドンドンと逞しく強靭な姿へと変貌していく。 「なっ」 龍香が慌てて締め付けるが、禍々しい姿へと変貌したプロキオンが力を込めると、“プレシオウィップ”は弾けてしまう。 「そんなっ」 最早文字通り怪物と化したプロキオンは龍香を真っ直ぐ見つめながら刃の部分に犬の牙のような刃がビッシリと並んだ長剣を構えながら尋ねる。 「龍香は私のこと、好き?」 「…うん、シオンちゃんのこと、私は好きだよ。だから、こんなことはもう止め」 「だったら本気で戦って。私も本気で龍香と戦うから。」 そう言ってプロキオンは長剣の切っ先を龍香へと向ける。 ポツポツと雨が二人に降り注ぎ始めた。 「コイツら!」 三体一の状況で、雪花はライフルを三体に向けて放つ。鳥のような外見のアルタイルとデネブは跳躍して避けるが、一方のハープのような装飾が特徴的なベガが身体の糸を振るわせると弾丸の軌道が捻れて、明後日の方へと飛んでいく。 「何よっ!」 迫る二体に対応するために雪花は“マタンII”を取り出すとデネブが翼を広げて白い羽根を無数に射出する。 「くっ!」 雪花はそれを横に跳んで避ける。避けながらライフルをデネブに放つ。 しかし放たれた銃弾は割って入ったベガの手によって軌道を歪められ、防がれてしまう。 「こんのっ」 雪花がそれに歯噛みをするが、それと同時にいつの間にやら距離を詰めていたアルタイルが雪花に刃を突き出す。 「なっ」 「そこっ!」 アルタイルが繰り出した剣の一撃を雪花は身体を捻ってかわそうとするが、完璧には避けきれず左肩に刃が命中する。 「うわっ!」 バランスを崩して、雪花が倒れる。すぐさま起き上がって雪花は追撃に備えるが、三体は追撃することなく、陣形を組む。 (コイツら、集団戦に慣れてる!) 今までのシードゥスと違い、連携して戦う三体に雪花は苦戦を予感する。 「我らはプロウフ様の懐刀。」 「疾風の三衛士。」 「エスティーヴォ。プロウフ様の命によりそのお命、頂戴する!」 三体が攻撃の構えを見せる。 「エステサロンだかなんだか知らないけど!私を舐めないでよね…!」 退く訳にもいかず、雪花が迎え撃とうとしたその時。 上空から弾丸が雨霰と三体に降り注ぐ。予想外の攻撃に三体が攻撃の手を止める。 「なんだ!?」 「聞かれては、答えねばなるまい!」 その掛け声と共に上空から機械の鳥、ピーコックと共に月乃助が降り立つ。 「諸君らを倒す女、この天才結衣月乃助の名をな。」 フッと髪をかき上げながらカッコつける月乃助に雪花は一瞬ポカンとするも。 「なんでアンタがここに?」 「君が駆け出したのを心配した赤羽君から連絡があってね。苦戦してるようだから助太刀に来たんだが?」 「なんか鼻につくわねその言い方。」 「新手が来ようとも!行くぞ!」 「あぁ!」 なんてやっていると、三体が連携して二人に襲い掛かってくる。 「!気をつけて!アイツら連携して襲ってくるわ!」 「ほう。」 《それは興味深いな。私達シードゥス同士が協力するなんて。》 「呑気に分析してる場合じゃないわよ!」 雪花がそう言うと、月乃助はチッチッと指を振って。 「こんな場合だからこそ、だ。落ち着いて分析すれば攻略の目が見える。そう。」 襲い掛かってくる三体を見ながら、月乃助が銃を構えると同時にピーコックが月乃助から離れる。 「こんな風に!」 そう言うと月乃助は先頭のデネブに向けて銃撃を放つ。 「させるか!」 またもやベガが間に入り、身体中の糸を震わせて銃弾の軌道を捻じ曲げる。しかし、月乃助はそれを意に介さずベガに撃ち込み続ける。 「無駄だ!お前にこの鉄壁の守りは!」 「ピーコック!」 《あぁ!》 次の瞬間上空から月乃助の指示を受け、ピーコックがベガの後ろに隠れてる二人に銃弾を浴びせる。 「ぬおおおお!?」 「おおお!?」 これには堪らず、二体はそれを避けようとベガの後ろから飛び出す。 「あっ、バカっ」 その結果ベガが捻じ曲げた銃弾の射線に入ってしまい二人の身体から火花が散る。 「どうだい?まさしく天才の戦い方だろう?」 「む、ぐっ……」 雪花が何か納得出来ず、唸っていると月乃助が雪花の肩を叩く。 「君は龍香君の援護に行きたまえ。私の武器では足止めは出来てもあのハープの防御を突破できない。だから、さっさと龍香君をこっち連れてきてくれたまえ。」 「えっ、でも。」 「なぁに、黒鳥君と赤羽君ももう少ししたら来るさ。さ、頼んだよスノーガール?」 「…雪花!戻ってくるまでくたばんじゃないわよ!」 雪花はそう言うと山頂に向けて駆け出す。その様子を見送ると、月乃助は弾切れになった銃を捨て、ピーコックの尾部に仕込まれている奥の手、円形武器、粒子加速砲“サークルソーサラー•フィナーレ”を取り出す。 体勢を立て直し、こちらを睨みつける三体を見てヒュゥと口笛を吹いて軽口を叩いた。 「さて、今回ばかりは本気で行かせて貰おうかな。」 「うあっ!」 雨が降りしきる中、龍香が泥を撥ねながら地面を転がる。 「ふんっ!」 倒れた龍香をプロキオンが思い切り蹴り上げる。 「ぐっ」 またもや地面を転がり、泥だらけになって倒れる龍香にプロキオンが長剣を振り下ろす。 《龍香!》 「!」 振り下ろされた一撃を龍香は間一髪“タイラントアックス”で受け止める。だが馬力が違うのか龍香は徐々に押し込まれる。 《くっ、龍香!迷うのも分かるが今は!》 「う、ぅぅぅ」 この力の込め具合からして、幼いながらに龍香はプロキオンが本気で自分を殺しに来ているのを察する。 しかし、どうしても龍香はシオンと戦う決意が固まらない。迷う龍香に、プロキオンは。 「戦って!戦って龍香!これは本気で戦わないと意味がないの!」 「なんで…!何で、私にそんなことを言うの…!?」 「言ったでしょ!私は龍香が好きなの!」 「何を」 龍香はそこまで言いかけて、ふとプロキオンが苦しそうに見えた。 「私以外に龍香が倒されるのを見たくない!だから、戦うの!例え私が負けたとしても、私龍香になら殺されてもいい!どうせどっちかが死ぬなら、悔いなく覚えておいてほしいから!覚えていたいから!」 そう叫ぶプロキオンは雨に濡れているのも相まって、龍香には無理して泣いているように見えた。 それを見た瞬間、龍香は胸を締め付けられるような思いが溢れ出す。 「う、ううう、ううううううう!!」 龍香は唸ると、“タイラントブレイド”を出現させて手に取り、それをプロキオンに突き出す。 「がっ」 思い切り突かれたプロキオンは地面に倒れる。龍香はその隙に立ち上がると。 「カノープス!」 《おうよ!》 そう叫ぶと龍香は強化形態、アトロシアスへとその姿を変える。そして右手に“タイラントブレイド”、左手に“タイラントアックス”を構えると。 「うわぁぁぁぁぁ!!」 そのままプロキオンに向けて走り出す。 「くっ、」 プロキオンが龍香が振り下ろした“タイラントブレイド”を長剣で受け止めるが、受け止めたと同時に龍香は左手の“タイラントアックス”を振るい、プロキオンの腹部に叩きつける。 「ごっ、はっ…うれしいよ、龍香。ようやく本気に」 「うあああああっ!」 よろめくプロキオンの顔面を“タイラントブレイド”の柄でブン殴る。しかしプロキオンも負けじと拳を振るって龍香の頬を張り飛ばす。 「ぐぅ、うううう!」 龍香が“タイラントアックス”を振るい、プロキオンはそれを後ろへ跳んで避ける。しかし、龍香は地面を蹴って距離を詰めると、勢いそのまま思い切り頭突きをかます。 「ごっ」 「たぁっ!」 プロキオンが怯んだその隙を逃さず、龍香が刃を振るうと火花を散らしながら彼女は地面を転がる。 「はぁっ、はぁっ」 龍香は倒れるプロキオンを見ながら無作法に“タイラントアックス”を投げ捨てると、両手で“タイラントブレイド”を構える。 「……!」 その構えを見て、この一撃で龍香が決着をつけるつもりだと察したプロキオンと長剣を両手で持ち、迎え撃つ構えを見せる。 「プロキオン!!」 「龍香ぁっ!!」 二人が駆け出す。そして互いに手持ちの武器を振るう。お互いが振るった武器がかち合い、鍔迫り合いとなる。 「「うおおおおおお!!」」 龍香とプロキオンが絶叫する。少しでも相手に、自分を刻むために。 永遠のようで刹那の時間。決着の時は訪れた。ピシッ、プロキオンの長剣から割れる音がした。 そしてついには長剣は折れて砕け、龍香の振るう“タイラントブレイド”がプロキオンに迫る。 (負けた。) そう察した瞬間プロキオンはそっと目を閉じる。そして下された運命を受け入れようと、襲ってくるであろう衝撃に身を任せようとする。 だがその衝撃はいつまで経っても訪れなかった。 「……?」 不思議に思い、プロキオンが目を開けると、自分の首筋に刃が突きつけられているのが見えて──震えながらその剣を持つ手を止める龍香がいた。 《龍香!?》 「……龍香。」 「ごめん。シオンちゃん。私には出来ない。」 そう言うと龍香は“タイラントブレイド”を下ろす。それを見たプロキオンはカッと頭に血が昇るの感じた。 「……ふざけないでっ!!」 プロキオンは龍香を思い切り殴る。殴られた龍香はそのまま地面に倒れる。倒れた龍香に馬乗りになってプロキオンは拳を振り下ろしながら絶叫する。 「情けをかけられて、私が納得すると思う!?なんで!なんで戦ってくれないの!?アタシは龍香に殺されても良い位好きなのに!殺したいくらい好きなのに!龍香は私のことが嫌いなの!?」 プロキオンが髪の毛を掴んで地面に叩きつける。呻く龍香の胸ぐらを掴んで怒りで吐息を荒くしながら龍香に詰め寄る。だが、龍香は口から血を流しながらも、顔を上げると。 「……私は、シオンちゃんが好き。シオンちゃんに生きていてほしい。だから殺さない。それが私の答え、本心だから。」 「…っ!龍香っ」 一瞬俯くが、再びプロキオンが龍香に拳を振り下ろそうとした瞬間。 「シオンちゃんこそ嘘をつかないでよ!」 龍香に叫ばれ、プロキオンは動きを止める。 「な、何を言ってるの。私が嘘、なんて。」 「なら、なんで泣いてるの?」 「えっ」 プロキオンは自分の目元に目をやると、冷たい雨に混じって、温かい液体が頬を伝うのを感じる。 「い、いやっ。これは。」 「私はまだ一緒にいたい!また、シオンちゃんと遊びたい!もっと色んな場所に生きたい!シオンちゃんはいいの!?ねぇ、ホントのことを言ってよ!もう、嘘はつかないでっ!」 「わ、私は…。なんでっ。龍香を…!…龍香と…!」 次の瞬間プロキオンは悲鳴を上げながらその拳を振り下ろした。 ──龍香の顔のすぐ横の地面に。 「シオンちゃん……。」 「ぐっ、うぅ……そう、そうよ、そうだよ!ホントは龍香とずっと一緒にいたい!もっと藤正やかおり達と一緒に遊びたい!死んでほしくない!殺したくもない!けど、しょうがないじゃない!私は、私は…!」 「シオンちゃん。」 そう言うと、シオンの姿が見る見る内に元の姿へと戻っていき、いつもの赤黒髪の少女の姿になる。 力無く泣くプロキオンの頬に龍香が手を添える。 「……良かった。シオンちゃんの本音が聞けて。」 「龍香……。」 二人は互いに見つめ合う。 そうしていると森を抜け、頂上にたどり着いた雪花が龍香達を見つけ、ライフルを構えるが様子が何か変だと感じ、トリガーに指をかけたまま止まる。 「どうしたら、良いのかな。私達。」 シオンの問いに龍香は答える。 「……難しいかもしれないけど、シードゥスと“新月”の戦いを、止める。それしかないよ。」 「でも、それは。」 「……出来るよ。だって“新月”の私と、シードゥスのシオンちゃんが分かり合えたんだから。」 「龍香……は、ハハ。凄いね、龍香は。」 シオンは泣きながら微笑んで龍香の手を取ると、それを下ろす。 「やっぱり、龍香と出会ったのは、運め」 シオンがそう言いかけた瞬間。龍香の顔に何か液体が掛かる。雨かと思い龍香がそれを拭うと、拭った手の甲が赤黒く染まっていた。 そしてシオンの身体を剣が刺し貫いているのも。 「え」 剣が引き抜かれると、同時にシオンの身体が糸が切れた人形のように倒れる。 「シオンちゃん!!」 「あ……」 シオンは龍香の握ったままの手に一瞬力を入れるが……すぐに力が抜けて、目を閉じてしまう。 「な、」 その光景を見ていた雪花も絶句する。龍香が剣に目を向けると、そこには。 「くっ、ハハッ、ハハハハッ!!何絆されてんのよ敵に!ハハッ!バッカじゃないの!?」 呆然とする龍香を見下ろしながら血振るいをする白龍香がいた。 《お前……!》 唖然として、力無く横たわるシオンの身体を支えながら、龍香は白龍香に言う。 「な、んで。シオンちゃんはあなた達の仲間なのに…」 「はぁ?敵に絆されて寝返ろうとした奴が仲間ァ?寝ぼけてんのか?」 「違う、シオンちゃんは戦いを…」 「はっ、どっちにしても一緒だっつーの。…にしても下らない奴ね。敵と仲良くなった結果どっちつかずでフラフラフラフラと。その結果ちょっと優しくされたら敵の方に着こうとする。頭の緩いとんだバカ女よ。」 白龍香の言葉に龍香の目が見開かれる。そして俯いて肩を震わせながら、呟く。 「……黙れ。」 「あ?何?バカのことバカって言って何が悪いのよ。死んで当然のバカでしょ。ホンットくだらない人生だったわね。まっ、笑いの種くらいにはな」 「黙れぇぇぇぇ!!」 次の瞬間目を赤く染め、頬が裂け、尻尾を生やした禍々しい姿、ティラノカラー•マーデロゥスになった龍香が白龍香に殴りかかる。 しかしアトロシアスと同等の力をコピーした、ティラノカラー•プリテンダーの形態になった白龍香はその拳を何なく受け止める。 「はっ、バカね。その形態でこの私に敵うとでも」 「うあぁぁぁぁぁぁ!!」 さらにもう片方の拳を振るう龍香。白龍香はそれをまたも受け止めようとすると、片腕に尻尾が巻きついてくる。 「なっ」 その結果尻尾に防御を邪魔された白龍香の顔面に拳が叩き込まれる。 「ごっ」 殴られた白龍香がよろめく。そして次の瞬間、その細い首に龍香が手をかけると、思い切り締めあげる。 「あっ、がっ」 「ふぅーッ!ふぅーッ!」 万力の如き力で締め上げられ、白龍香が喘ぐ。そんな白龍香を、龍香は殺意の篭った目で睨みながらさらに手に力を入れる。 その瞳を見た白龍香は首を締め上げられながらもニヤリと嗤うと。 「ふ、ハハッ!いいっ、いいよっその面!少しは本心が見えてきたんじゃない?」 「黙れ…!」 龍香が脅すが、白龍香は関せずと言ったように龍香に尋ねる。 「…なら一つ聞くけど、あのガキに裏切られた、と思った時怒りを微塵も覚えなかったの?」 「………ッ!」 「あんなに優しくしてきたのにホントはシードゥスで!訳わからない理屈で私を殺しに来て!ホンット鬱陶しいなって思わなかった?」 「もう喋らないで……」 「他の時もそう!貴方は皆に不満があるのを隠してる!どうして約束を破ったの?どうして一人にしたの?どうしてこんなに痛くて辛い思いをしなきゃいけないの?どうして、どうしてどうして」 「喋るなァッ!!」 次の瞬間ボキッという音が辺りに響く。すると、龍香の腕を掴んでいた白龍香の手がだらん、と力無く落ちる。 「龍香……」 その様子を見ていた雪花がなんと声をかけようかと悩んでいると。 「あぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁ!!」 龍香は白龍香の身体を持ち上げると思い切り地面に叩きつけた。 「黙れ!壊れろ!潰れろ!この、この、このぉぉぉぉ!」 最早悲鳴に近い絶叫を上げながら、龍香は白龍香の身体に暴行を加える。振るった拳がその顎を砕き、鎧を引っぺがして、生身の部分を潰す。紛い物の赤黒い液体が飛び散り、雨と泥に混ざる。 「龍香!やめなさい!もう、決着は着いたでしょ!」 錯乱した龍香を雪花が慌てて止めに入る。龍香はミチミチと音を立てながら白龍香の腕を引き千切り、乱暴に捨てるが、雪花に肩を掴まれて揺さぶられるとパタッと動きを止める。 だが、振り返った龍香の顔を見て雪花はギョッとする。血まみれの顔も勿論だが、何よりもその左目が赤黒く変色していたのだ。 「どうしよう雪花ちゃん」 「見て、雪花ちゃん」 声が二重に聞こえてくる。一つは絶望し、悲痛に満ちた声。そしてもう一つは、無邪気な子供のような楽しそうな声。 手を擦りながら龍香は雪花に訴えるように、自慢するように言う。 「どれだけ洗っても落ちないの。」 「真っ赤で綺麗でしょ?」 「私、友達を殺しちゃった。」 「私、あのクソ野郎を殺したの。」 「な、あ。」 どう見ても異常な事態に雪花が唖然としていると。 《に、逃げろ、雪花。》 「カノープス?」 苦しそうに呻きながらカノープスが雪花に警告する。 《俺にはもう、止められない……!!》 次の瞬間両目が赤黒く染まり、口角を吊り上げて龍香が嗤う。 「ミンナ、ミンナミンナ、コロス。」 次の瞬間龍香の身体が暴走し、うねりを上げる装甲に全身を包まれる。驚いた雪花が尻餅をつき、唖然としている中、龍香の身体は強靭な逆関節の脚へと、細長く鋭い爪を生やした腕に、尻尾の先端に突起が付き、より強靭に、背中から咆哮する怪物のような翼が生え、おどろおどろしく禍々しい姿へとなる。 そして顔もボロを纏い、包帯でぐるぐる巻きにした怪物のような装甲に包まれる。 「龍、香…?」 そして雨が降りしきる中、凶悪で醜悪な怪物が天を仰ぎ、何かを吐き出すようにその産声を上げた。 To be continued…… 関連作品 セブンスカラー
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2012 10.9 チャットは10月13日ぐらいに導入する予定です。 2012.10.13チャット準備は少し延期させていただきます。 2012.10.20チャットはメンバーが増えた時に導入したいと思っています。
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E.G.M それいけ!お天気娘ズ 暁星家 暁星 明斗 創作注意事項 小説イラスト等あらゆる創作で自由に使ってOK カラーや服装のアレンジ可 ネタやパロディOK 目次 概要プロフィール 人物像 容貌・服装 趣味 各作品での活躍 関連人物家族 頂いたイラスト ライジングのTwitterアカウント 概要 プロフィール 本名 暁星 明斗(あけぼし あきと) 旧姓 朝生 明斗(あそう -) 年齢 36歳 誕生日 12月21日 身長 181cm 体重 75kg 一人称 普段は「俺」、仕事中は「私」 二人称 〇〇さん、〇〇ちゃん(娘の友達に対して) 好きなもの 嫁LOVE娘たちLOVE 嫌いなもの 家族に危害を加えるもの 趣味 筋トレ、キャンプ 人物像 2人の娘の父で惜しみない愛情を捧げているのは妻・天晴と同じ。天晴とは昔からの馴染みだったが天晴の大学卒業を機に結婚した。 E.G.Mの科学部門で研究をしているのだが娘2人はそのことを知らない。 同じくE.G.Mで働く永栄 理花ちゃんが娘と同い年でしこたま驚いている。 容貌・服装 ガタイがよく研究者らしく白衣を着ているが、この白衣の背中部分には天晴さんの女児符号「魁晴」の力を貯めて活動するブースターが組まれており符号がなくとも超人的な身体能力を得る。 この白衣のことを「白日衣」と呼んでおり幼いからから改良を重ねて使用している。 趣味 娘2人と全力で遊ぶためには自身も体を鍛えなければと思い始めた筋トレにすっかりハマってしまった。 また各地でフィールドワークをすることからキャンプもするがそこでもより快適に過ごすためにいろいろ調べるうちにハマっていった。 各作品での活躍 関連人物 家族 ライジング-暁星 旭- 長女、明るく活発で元気よく育ってて父さんうれしいぞ。 シャイニング-暁星 輝- 次女、お菓子ばっか食べてると晩飯が入らないぞ?え?これが最後?しょうがないなあ。 暁星 天晴 妻、俺の人生全てを捧げても後悔はない、それくらい素晴らしい人さ。 エクリプス-暁星 明- この子はうちの旭と似ているがいったい…? 頂いたイラスト
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(吉寅小町) 目次 創作注意事項 概要 プロフィール 人物像 一人称・二人称 容貌・服装 女児符号 各作品での活躍登場作品名 関連人物家族 関連イラスト 更新日:2023/07/14 Fri 14 56 59NEW! タグ一覧 創作注意事項 ネタやパロディOK 各種創作に自由に使ってOK カラーや服装のアレンジ可 概要 プロフィール 本名 吉寅小町 (よしとら こまち) 愛称 こまさん 女将さんなど 種族 天狗と人間のクォーター 年齢 100歳程度 好きなもの おもてなしのお仕事 お客様に楽しんでもらえる新しいサービスの構想を練る事 苦手もの 想定外のトラブル 生魚(特にサバ) 趣味 お絵描き 花火鑑賞 人物像 明るく元気で、天狗や人間世界の勉強よりも父の経営している旅館の仕事の方が好きな活発な女の子。 褒められたり熱くなったりして一つのことに夢中になるとほかのものが見えなくなる事もあるが、いつも客のために一生懸命で、難しい客でも正面から向き合い真剣に考えることができる。 どんなお客相手でも、昔からの親友のようにすぐに仲良くなれ、客に喜んでもらうのが何よりも楽しいと思っている。 しかし極端に鈍く、世間知らずな面もある。(同年代の子供と対等に接した事がないのも原因の一つである) 思ったことをすぐ口に出すタイプだが、長い時間の考え事は苦手で、たくさん考えると、そもそも何を考えていたかわからなくなってしまう。 相棒のカテキンちゃん曰く運と要領がよくない。(因みにカテキンちゃんの名付けは小町のセンス) 仕事の癖で、言葉遣いは見た目より丁寧。 喫茶オウマがトキの新しい常連で、ここで新しいイベントの構想を練っている。 一人称・二人称 一人称 私 二人称 貴方or貴女 さん付け お客様など (友達にはちゃん付け) 容貌・服装 妖怪の血が流れているが見た目は殆ど人間。 青緑色の髪を一纏めにしている。仕事中は同じく青緑の着物を着ているが、私服は洋服が多い。 女児符号 壱 弐 後日記載 各作品での活躍 登場作品名 関連人物 家族 カテキンちゃん:オウマがトキで出会った相棒です♪ 関連イラスト 相棒と喫茶オウマがトキにて
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(のじゃロリ猫) タグ一覧 のじゃロリ猫 創作注意事項 ネタやエロネタ、パロディちょーOK 各種創作に自由に使ってOK(もう好き勝手に使って良いですぜ!進行役や教え役、敵役やちょいとしたスケベ役にも可) カラーや服装のアレンジ可(むしろ各作者のそれぞれの解釈とか見たいから全然OKです!わからない部分があれば聞きますb) 概要 プロフィール 愛称 のじゃちゃん、化け猫さん、のじゃ猫ちゃん 本名 ワシにもわからぬ 年齢 数え忘れたは 誕生日 さぁ~のぉ~。ただ、ワシが作られた日は7月29日じゃな!(おっとこれは言ってはいけないことかの(ಡᾥಡ)) 身長 決まった形はないのぉ~今の少女の姿では130ちょいかのぉ~?各々作品に任せる←メタネタ 体重 ここも身長と同じく決まっておらぬ 一人称 ワシ 二人称 お主、お前さん(上or下の名前呼び) 好きなもの 自分の興味があるものなら 嫌いなもの 自分の嫌いなものなら 趣味 酒飲んでグータラする事と女子の柔らかい部分を堪能する事じゃ♡ ↑ のじゃ「まぁいろいろ言ったが、どれも正解であって正解ではない。皆が考えるワシがワシなのだ。これはあくまで生み出した奴の一つの指標であるのじゃ!悩んだら上記を参考にすると良いじゃろ。」 人物像 本名は不明、誰にも解らない。 遥か昔から存在している妖怪であり、不老不死の化け物。 少女の姿をしているが、それはあくまで他の人間から「少女の姿として認識させている」のであって、実際は不定形の存在なのかも知れない。とにかく謎が多い人外系合法ロリである。 性格は褒められたものではなく、欲望に忠実でしたい事はし、したくない事はしない主義。 容貌・服装 普段はビキニにホットパンツとブーツを着用しているが、冬は各女児ズから「寒そう」と苦情が入る為、長袖も着用する事がある。 女児符号 特にない。 妖怪ゆえ怪力で素早く、数々の妖術を用いる。 各作品での活躍 登場作品名 関連人物 ライジングちゃんとは友達というよりも悪友関係の方が近い。 家族 アナザー 関連イラスト 制作者必見ポイント! 妖怪の人外女児ゆえ様々な事が出来るから物語進行におおいに役立つぞ!不老不死だからボッコボコにも出来し欠損も可能だ!! トラブルメーカー、敵役、スケベ要員に持って来いの万能キャラだ!!! アへ顔も顔芸もできるゾ~♪ ぶっちゃけ困ったらコイツ使っとけ 「のじゃえも~~ん(ಡᾥಡ)」
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-環 天月- 「私は環天月、虹富玲亜...貴方のアナザーよ...」 概要 ぐれあ/虹富 玲亜の実の姉。 両親を女児符号を研究する機関に処され、目の前で妹のぐれあちゃんを異次元に追放され、その後機関に拉致される。 機関では軍事利用されることを目的に戦闘技術、女児符号の訓練など過酷な訓練を虐げられた。 その後、タイミングを見計らい、機関を脱出すべく脱走及び組織を壊滅まで追いやる事態を引き起こす。 その戦利品として「異次元転移装置」を手に途方に暮れていたところをニンジャ軍団に拾われ現在は環 天月 (たまき あずき)を名乗り、いつか出会うであろう妹の「虹富玲亜」ことぐれあちゃんを追っている。 プロフィール 本名:虹富 美亜(にじとみ みあ) 年齢:17 誕生日:10月28日 身長:163cm 体重:最近測ってない 家族構成:父、母、妹 好きなもの(こと):日向でゆっくり寝ること 嫌いなもの(こと):争い 好きな食べ物:サンドイッチ 嫌いな食べ物:辛い物全般 一人称 :私 二人称 :名前(さん、ちゃん) 性格・人物像 物静かでありながら面倒見はとても良い。 いざというとき頼りになる正に長女の鏡。 容姿 紺色の髪に目、太い眉毛が特徴的。 高身長。 最近の悩みは雄一見えている二の腕の筋肉が付きすぎて太く見えること。 加速符号 【真・慈愛空間(Compassion Space TRUE)】 慈愛空間を極限まで極めた最終形態。 通常の慈愛空間より防御、治癒効果に圧倒的に差があり、気持ちの強さの概念はなく発動させるだけで最強の防御と回復効果を備えている。 究極符号???
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EX1. 或いは、それが夢として カタカタ。 カタカタカタ。 カタカタカタカタ。 ッターン!! 「ふ、ふふふっ、ふふふふっ!! さぁさぁ、完成だ。ようやくお披露目の時が来た!あぁ、この時をどれだけ待ちわびた事か!!」 「さぁ、始めよう。 私は!!世界に!!宣戦布告する!!!」 ブォン!! 完成したシステムを起動する。 規定されたコードに従い、次々にプログラムが書き換えられて行く。 画面が、赤く染まる。 それはまるで、これからの世界の行く末を 示しているかのようで。 私は、これを見るだけで、 とてもとても興奮するのだ。 世界が、変わる。 私が変えるのだ。 こんな無価値で無意味で無情な世界は。 全て消え去る。 誰も私を止める事はできない。 否、否、否!! 止められるものなら止めてみろ!! 止めてみるがいい、うら若き少女たちよ!! 世界は、この時を中心に、裏返る。 第3章へ
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雨空の昴星 第11話『刃、再び』 「......はっ」 目が覚めた時、私は薄暗い部屋の中に居た。薬品の匂い、機械の駆動音......此処は、何処かの研究室だろうか。 「気がついたか、音羽 悠弦。」 頭上で響く嗄れた声。目線だけを動かしていくと、此方を見下ろす年老いた男と目が合った。 「.....貴方は........Dr.アトラ...........」 「ふむ、正常に起動したようだな。そうだ、ワシはお前に新たな命を吹き込んだ恩人だ。」 「新たな......命............?うっ!?」 その瞬間、私の脳裏に突然ある光景が浮かび上がる。それは、燃え盛る研究所の中、私が爆風に飲まれていく光景だった。足から身体、腕、頭......私の全てが炎に焼かれ、灰になっていく。そして、焼け焦げた頭蓋骨が地面に落ち、粉々に砕け......生々しい脳髄が剥き出しになった。 「はぁっ、はぁっ.....ぐゥッ、オェ......ッ.......!!」 あまりにも凄惨で、それでいて妙に現実味のあるその光景を見た私は、苦痛と不快感にのたうち回り、腹部から喉奥に込み上げてきたものを吐き出した。床に撒き散らされたその吐瀉物からは、オイルのような臭いが立ち込めている。 「.....わ.......私は.............どうなってしまったんだ..........?」 「お前は死んだ。その頭に埋め込まれた脳髄だけを残してな。」 「死んだ.......?嘘だ、なら何故私は此処に居る!?」 「ワシが新たな身体を造ってやったのだ、機械の身体をな。お前がワシへの協力を拒んだ時は思わず手が出てしまったが.....やはりお前は、死ぬには惜しい人材だ。」 Dr.は私の肩を掴み、ニヤリと口角を上げて不気味に笑う。 「だが、勿論タダでお前を救ったわけではない。代償として、お前の力を貸せ。ワシの.....『PleiaDeath』の計画の為にな。」 やはり、そうなるか。 「....何度言われようと、私の答えは変わらない!私は力を貸すつもりは....グッ!?」 肩を掴むDr.の手の力が、一気に強くなる。 「ならば......お前の家族がどうなっても良いと言うのだな?」 「!!!」 「確か、生前お前は娘の誕生日が近いと言っていたな。.....お前がワシに協力すると言うのなら、お前の可愛い娘や愛する妻には手を出さない。だがワシは短気な性格でな.....これ以上要求を拒むつもりなら、そろそろ痺れが切れるかもしれん....」 Dr.の顔に、血管の筋が浮かび上がる。目は血走り、唇も僅かに震えている。彼が相当腹を立てていることは、私にも容易に察しがついた。これ以上抵抗すれば、妻や娘の命が危ない。 「..........た...............」 「ん?聞こえんな、はっきり言え。」 「.................分かり、ました..........協力します........................」 ああ、妻よ、娘よ、愚かな父を許してくれ。お前達を助けるには、こうするしかなかったんだ........... 「........良いだろう。ではお前を『PleiaDeath』の科学者として迎え入れてやる。ワシの研究に携われることを誇りに思え。」 そう言いながら、Dr.は肩から手を離した。ようやく解放された私は、よろけながらも立ち上がる。 「.....あぁ、そうだ。お前に見せたいものがある。来い。」 Dr.に案内され、私は研究室の奥へと足を踏み入れた。すると、そこには金色の髪をした裸の少女が横たわっていた。 「あれは......!!私が造ったアンドロイド.....!!」 それは紛れもなく、私が娘の誕生日プレゼントとして造ったアンドロイドだった。あの火災で燃えたとばかり思っていたのに。 「どうだ、優しいだろう?お前がどうしてもと言うから持って帰ってきてやったのだ。」 「か....彼女をどうするつもりだ!」 「お前と同じだ、ワシの手駒にする。此奴を使ってな。」 Dr.は、アンドロイドの首筋に空いた隙間にパーツを埋め込んだ。あれは人工思考回路だ、私が組み上げたプログラムをインストールする為の大切なパーツだ。 「やはりお前は素晴らしい、こんな高性能なアンドロイドは見たことがない......」 「その回路に何を仕込んだ!!」 「決まっているだろう、ワシがプログラミングしたデータだよ。」 回路を埋め込まれたアンドロイドは、瞳を青く発光させながら起動した。 「................」 「目が覚めたか、我が娘よ。お前はワシに造られたアンドロイドだ、分かるな?」 私の発明品をも奪い、自分の物にするなんて......何処まで下衆なんだ、この男は........! 「......はい、Dr.アトラ。ワタシは、アナタの娘でス。」 「よろしい。だがワシは他の研究で忙しいのでな、お前の世話はこの男に任せる。」 Dr.はそう言って、私を指差した。 「わ、私が.....?」 「そうだ、お前が此奴の主となる男だ。此奴にはお前を主として認識するようプログラムをインストールしてある、逆らうようなことはないから安心しろ。」 金髪のアンドロイドはゆっくりと私の方を向き、小さく首を傾けた。 「.........アナタが、ワタシの主様......でスか?」 「...........ああ、どうやらそういうことになったらしい........」 「では、ワタシがアナタを主様と認識出来るよう、主様ご自身でワタシに名前を付けて下サい。」 「.....名前..........」 彼女は、元々娘の誕生日プレゼントとなる筈のアンドロイドだった。そして以前、まだ娘が小さかった頃にも、私はこの少女と似た小さなロボットを造って娘にプレゼントしている。娘はそれを喜んで受け取り、自分で名前を付けて可愛がっていた。確か、その名前は........ 「...........カレン」 「..........」 「.....お前の名前は、カレンだ。」 「カレン...............ありがとうございまス、主様。これよりワタシの事は、カレンとお呼び下サい。」 もしも、カレンが居なかったら、私はこのままDr.の手駒として働いていたかもしれない。 だが、カレンがひとまず無事だと分かった時、私の未来に再び希望が見えた。 そして私は、心に決めた。 今は素直にDr.に従おう、だがいずれ隙を見つけ出して『PleiaDeath』を離反し、必ず娘の元に帰ってみせると。 その暁には、カレンに本来のプログラミングデータを移植し、改めて娘にプレゼントしよう。私が付けた“カレン”という名は、私が彼女の主として認められる為ではなく、再び初の元に届ける為の名前だ。それを達成するまで、私は死ぬわけにはいかない。 Dr.から再び受けたこの命......有り難く、使わせて貰う。 「待っていてくれ........初.................!」 ......................... ......................................... 「たぁあああああッ!!」 「オラァアアアッ!!」 「はぁっ!!」 旭が放つ高熱の光、みっちゃんと杏が繰り出す鋭い斬撃。それらを同時に喰らっても尚、巨人ATLASはびくともしなかった。 「無駄だ、たとえ打撃で揺らいだところで此奴の回復能力の前には剣も熱も効かん!」 「せやったら、ひたすらどつき回すしかないな!もういっちょウチのゲンコツを喰らえ!」 巨大化した群鮫さんの重い一撃が、ATLASの鳩尾に叩き込まれた。 「くっ.....!でも、硬い......っ!うわぁっ!」 ATLASは群鮫さんの腕を掴み、そのまま投げ倒した。 「み、皆.....力を、貸して......!」 今度は久乱さんが、弱々しい声でそう叫ぶ。すると、地面から異常なまでに巨大化した毒虫達が這い出てきた。 「うげっ、あいつ虫使いか何かかよ!?」 「あれが久乱さんの言ってた“お友達”....なのかな。」 虫達はATLASに群がり、足元を覆い尽くして動きを止めた。しかし、ATLASは両眼から熱線を放ち、虫達を薙ぎ払った。 「い、いくら何でも強すぎるやろ!」 「同意.....このまま無闇な攻撃を続けても、此方が一方的に体力を削られるだけです。」 「一体どうすれば.........」 私はギリッと歯軋りし、巨人の顔を睨みつける。あの巨人の頭部には、お父さんの脳髄が埋め込まれている。半透明のコクピットの中で無数のコードに繋がれ、ドク、ドクッと脈打っているのが見える。あれさえどうにか取り除けば、こいつは少しでも弱体化するかもしれない。 「お前達が何をしたところで、此奴に勝つことは出来ん。諦めて実験材料となるか、それとも此処で死ぬか.....ワシもあまり気は長くない、さっさと決めて貰おうか。」 「んだと......ふざけんな!そんなのどっちに転んでも死ぬじゃねーか!」 頰を伝う血を拭いながら、みっちゃんが怒鳴る。 「アタシはどっちもお断りだ、代わりにてめーをブッ潰すっていう三つ目の選択肢を付け加えてやるよ!!」 「そうだよ....あたし達は、こんな所じゃ終わらないんだから!」 「そこまで言われたら、こっちももう手加減せえへんで!!」 「フン.......ガキが、戯言はごっこ遊びの時だけにしておけ!!」 アトラがそう言うと同時に、ATLASは再び目を光らせて熱線を撃ち込んできた。 「《断絶》ッ!!」 そこに、杏が割り込んで熱線を叩き斬る。何とか防ぎ切ったものの、杏が手に持っている二本の刃は長い戦いのせいでもうかなり刃毀れしていた。 「提案.....もうこれしか方法はありません。あのコクピットを破壊し、脳髄だけを奪いましょう。今なら、まだ間に合うかもしれません。」 「でも、どうやって.....」 「......ボクがやる。」 静かに、しかしはっきりと、ユーマがそう言って前に出てきた。 「ユーマ!」 「知ってるでしょ、ボクは無機物なら何でも食べられる。あのコクピットの窓ガラスを食べれば、中の脳みそも取り出せるんじゃないかな。」 「賛同。私も今までの戦いでATLASを分析しましたが、あのコクピットはDr.アトラの言っていた自動修復機能が搭載されていないただのガラスです。破壊されれば、元には戻りません。」 「.....分かった。でも無茶はしないで、脳髄を取り出すのは私がやるから。」 「うん。....群鮫ちゃん、ボクをあいつの頭に投げ飛ばして。」 「おっしゃ、任せとき!しっかり着地するんやで!」 群鮫さんはユーマを手に乗せ、巨人の頭部目掛けて投げ飛ばした。ユーマはロケットのように、一直線に巨人に向かって飛んでいく。 「馬鹿が、躱せATLAS!」 「させるか!動くな化け物!!」 私が《言羽》を放つと、ATLASの身体は瞬時に硬直した。 「何!?」 「っとと、よし!着地成功!」 その隙に、巨人の肩に上手く掴まったユーマは、頭部によじ登りコクピットの窓ガラスを食べ始めた。 「ガリッ、バリッ.....!」 「よし、良いぞユーマ!全部食い尽くせ!」 「好機、だいぶ中身が見えてきました。今です、音羽 初!」 「分かった!はぁあああっ!!」 私は片翼を広げ、ATLASの頭部に向かって飛び立った。 「ユーマ!今行く!」 「初ちゃん!」 「ククク.......仕方あるまい。」 私が近づこうとした、その時。 巨人の頭は、突然爆発した。 「な..................っ!?」 「クハハハハハハハ!!!残念だったな!!出来ればワシも使いたくはなかったが........頭部に仕込んだ自爆装置だ!!」 黒い煙を上げながら燃え盛る巨人の頭部、その炎の中から、ユーマが墜ちていくのが見えた。 「ユーマ!!!!!」 私は急いで方向を変え、堕ちていくユーマを抱き止めた。 「ユーマ!!しっかり!!ユーマぁッ!!!」 「......ぅ.......ぅ..............」 ユーマは瀕死だった。肌は焼け爛れ、呼吸もままならない状態だった。しかし。 「.....ぅぃ.......ちゃ...........これ.............」 その腕の中には、まだ脈打っているお父さんの脳髄が抱き抱えられていた。 「........!!」 「....ごめ、ん.........無茶するな、って....言われたのにね.......でも.........どうしても、取り返したかった............」 「........ユーマ..............」 「へへ......失敗作な、ボクだけど......ちょっとは、役に.............立てた............か.......な.............」 ユーマは、薄らと穏やかな笑みを浮かべていた。緑色の瞳から、徐々に光が消えていき......その瞼は、硬く閉ざされた。 「...............................................」 私は唇を噛みしめ、ユーマをそっと地面に寝かせた。最期の瞬間まで大事に守ってくれた脳髄を受け取り、近くに居た杏に預けた。 「............初ちゃん......?」 「う、初..........」 「....................皆、下がってて。」 一言だけそう言い残し、私はアトラの方に向き直る。 「やれやれ、失敗作の分際で最後までワシの手を煩わせやがって..........ま、邪魔者が無様に散ってくれたから清々したわ。クハハハハハ!!」 「...........よ」 「ん?何だ、何か言ったか?」 「.......笑ってんじゃねえよ!!!!!!!!」 瞳を真っ赤に光らせ、巨人に向かって手を翳す。その瞬間、巨人は大爆発を起こし、たちまち森中に火の雨が降り注いだ。 「あの巨人が、一撃で.....!」 「しかもあいつ、あのマイク使ってねえぞ!?」 跡形もなく消えた巨人は、それ以上復活することはなかった。 「ほう........ようやく本気になったようだな。それがお前の持つ《言刃》の真の力か!」 「.......お前の罪は私が裁く.............私のこの手で、地獄に叩き堕としてやる!!!!!!」 「面白い......やれるものならやってみせろ!!!」 「うぅぅぅぅううううぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」 燃えるように熱く、赤く輝く私の瞳。 命を弄ぶ悪魔の科学者、Dr.アトラ。 こいつに遠慮なんか必要ない。 私が放つ言葉の刃...... 《言刃》の錆となるが良い!! 続く
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『明日』 更新日:2020/07/17 Fri 22 41 55 タグ一覧 「どう?私とでち鼠の名コンビネーション」 ボロボロになったのじゃロリ猫を見て、だもん梟は勝ち誇る。 「……ヤバい」 その光景を隠れて見ていた少女が一人。愛歩のクラスメイト、天降号姫だ。 「のじゃロリ猫ちゃんがピンチだ……」 震える手を必死に押さえて、天号は自分に出来ることが無いか必死に考えた。 ーーーチューチュートレイン、未来を読み取る君の女児符号とホーの能力なら、負ける事はない!ーーー あの化け物はさっきそう言った。 化け物が掴んでいる小さな鼠が女児符号を使ったのだろうか? だとしたら…… 天号は閃く。 でも怖い。あの場に出たら死んでしまうかもしれない。愛歩はどこにいるのだろうと目を凝らして見てみると、吹っ飛ばされて大分遠くにいるが、頭から大量に血を流しつつ梟と猫の戦いを見守っているのが分かった。 「宿題はいつやるの?」 頭の中で今日おばあちゃんに言われた言葉が反復して来た。 「明日やるよ!」 夏休みの宿題はいつやるのか?初めはそう言われたと天号は思っていた。でも、おばあちゃんの言った宿題はこの気持ちの事なのかもしれない。 愛歩に迷惑をかけてしまったのに、彼女はそれを気にする所か、友達として接してくれた。 「私だって何かしなくっちゃな…」 天号は呟く。その瞳にはもう、迷いはなかった。 「おばあちゃん!明日って今さ!」 天号は駆け出す。 「天号?!」 「だぁれ?」 猫と梟は新たな登場人物に驚いた。 鼠が我を忘れたようにだもんロリ梟の手の中で暴れだし、中々抜け出せないと悟るとだもんロリ梟の手にガブリと噛み付いた。 だもんロリ梟は、急に噛んだでちロリ鼠を驚いて放り投げてしまった。 天号はそのでちロリ鼠に向かって女児符号を発動させた。 「永遠の日常!」 『永遠の日常=エターナル・エブリデイ』 他の子の女児符号を打ち消す能力。効果は永続する。 「なんだ?!」 だもんロリ梟は突然の事態に慌てた。こんな事、でちロリ鼠から聞いていない。 肝心の鼠を探そうにも、目の前のガキに気を取られて見失ってしまった。 「は!どうやら名コンビだと思っていたのはお主だけのようじゃの」 のじゃロリ猫の嘲笑に、だもんロリ梟は逆上した。 「きさッ!」 だもんロリ梟が挑発に乗る前に、のじゃロリ猫は顔面パンチを叩き込んだ。 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!!」 「ふげぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 だもんロリ梟は絶叫を上げながらぶっ飛んでいく。 それでものじゃロリ猫は攻撃の手を緩めなかった。 「あ、あなたは」 「ご、ごめなさい、隠れさせてくださいでち」 頭の痛みに耐えながら攻防を見守っていた愛歩は、指を舐められる感覚にハッとした。 「あなたは私を食べないの?」 「とんでもないでち、アタチ、あいつに脅されてたんでちよ。申し訳ないでち」 でちロリ鼠は即答し、また愛歩の手を舐め始める。 愛歩はその言葉に安心したものの、心のどこかにしこりが残っていた。 「くそ!」 だもんロリ梟は渾身の力で蹴りをかまし、のじゃロリ猫から距離を取った。 真っ赤な血が全身を濡らし、髪はボサボサになって、今にも倒れそうなのに、その目だけは不気味にランランと輝いている。 その瞳が奥に避難していた天号を捕らえる。 「よくも邪魔してくれたね……君、名前はしらないけど顔は覚えたもんね」 ドスの聞いた声で脅すだもんロリ梟。のじゃロリ猫はだもんロリ梟の目線を邪魔するように移動した。 「いつか絶対復讐してやるぞ……覚えておけよ!」 「ハッ!復讐より先にコミュ力を上げてこい。お前に仲間なんていなかったんじゃからな鳥頭」 「あ、あ、あ、あんまりだぁぁぁぁぁぁぁ」 なんだかちょっと情けない捨てぜりふを吐き、だもんロリ梟は夜空に消えていったのだった。 「愛歩ちゃん!大丈夫?」 「天号ちゃん、ありがとう。ちょっと頭が痛いけど……このねずみちゃんが舐めてくれたら血が固まってきたよ」 愛歩はまだ指を舐めている鼠を二人に見せた。 「あ、こいつ」 のじゃロリ猫がそう言い、鼠を覗き込むと、鼠は飛び上がって逃げ出した。 「あ、ねずみちゃん…」 少し残念そうな顔をみて、のじゃロリ猫は面白くなさそうな顔をする。 「愛歩は鼠の方が良いのか、ふーん」 「え、あ、違うよ?!別にそういう訳じゃなくて」 まるで嫁と旦那のようなやり取りだ、と天号は思った。 「あ、あのさ」 天号は二人の漫才の波に飲まれないように話を切り替えた。 「あの時は本当にごめん!私、愛歩ちゃんがどんな思いをするか、分からなかった!」 天号は頭を下げた。愛歩はその姿を見つめる。 「アルコールランプとか、火とか、私が持っていたせいで……」 (そも"火を使って何か悪戯しよう"と考え行動させたのは、あのクソ狐なんじゃが……) のじゃロリ猫は思ったが、黙って様子を見守ることにした。 「天号ちゃん。謝ってくれてありがとう。私はあの時の事とかあんまり覚えてはいないけれど……やっぱり火は危ないからやめよう?火とか凄く危険じゃないなら、イタズラもいいんじゃない?」 愛歩はにこりと笑った。 「天号ちゃんのイタズラ、楽しくて好きだよ」 「愛歩ちゃん……ありがとう!」 天号と愛歩は、心の底から笑いあったのだった。 もう辺りがすっかり真っ暗になった午後9時。 愛歩はのじゃロリ猫の肩を借り、血を流しすぎてフラフラになった足を必死に動かして帰宅した。 「あ、悪い。わしここで帰るわ」 「え?」 「なんと言うか……お主の両親に顔見せしづらいというか……」 「そっか…」 自分の分身が娘を襲ったのだから、顔を見せづらいと言う事か? 愛歩は少し残念に思いながら家のチャイムを鳴らした。 お母さんとお父さんはひどく動揺し、狼狽えながら愛歩を出迎えた。 「ああ、頭を怪我してるじゃないか?!」 「一体何があったの!?」 愛歩はなんと言ったらいいか分からなかった。 妖怪に襲われていると言うべきか?でも心配はかけたくない…… 「友達と河川敷で遊んでてさ、躓いて石に頭ぶつけちゃってさ。でも大したことないよ。既に血は止まったし」 そう誤魔化すと、お母さんが愛歩の顔をひっぱたいた。 「お、お母さん?」 「こんな時間に帰ってきて、何が対した事ないよ……あんたどんなに心配かけたか分からないの?!」 愛歩はお母さんの顔を見つめた。涙を流している。 「最初に言ったよね!どこにもいかないでって、石にぶつかって死んでたかもしれないのよ!その傷から菌が入って死んじゃうかもしれないのよ!」 お母さんの絶叫が心に響く。愛歩はどうすればよかったのか分からなかった。 本当の事を言っていれば、お母さんは(お父さんも)もっと心配するだろう。 「ごめんなさい……」 泣きながら項垂れると、お母さんがギュっとハグしてくれた。 「大切な子なんだから……もう危険な事はしないで」 血の繋がらない母子が身を寄せあって泣く。 完全に叱ったり怒ったりするタイミングを逃したお父さんは、少し悩んでから救急箱を取りにリビングに向かうのだった。 大石一家が寝静まった頃、台所でピチャピチャと音がしていた。 一匹の鼠が、野菜屑や残り物を漁っていた。 「うまく行ったでち」 でちロリ鼠はシチューが入っていた鍋の底に張り付いていた人参をモゴモゴと食べた。 「確かにあの女の子のせいで女児符号は使えなくなったでちが……」 「鐘明の血を飲む事は出来たでち」 と言っても、心臓ではなかった為、のじゃロリ猫のように動けるわけでは無いが。 「アタチは未来がちょっと見れればそれでいいでち」 でちロリ鼠は目を光らせる。今までのように沢山の未来が見れる訳では無いが、それはもうよしとしよう。大切な事はだもんロリ梟と離れられた事である。うまく利用できて良かった。 「おや、これは……」 女児符号チューチュートレインでは無くなった能力……妖術・子沢山確率未来で見た景色に、でちロリ鼠は興味をそそられた。 緑色の女の子がこちらを疑わしげに見つめている…… 「面白そうでちね、暫くここに留まってみるでちか」 ああ、今日は人生最良の日! でちロリ鼠は邪悪に笑った。