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マリネッタ・クインゼル 更新日:2021/04/05 Mon 21 07 36 創作注意事項 ネタやパロディOK 各種創作に自由に使ってOK カラーや服装のアレンジ可 使って頂けると凄く嬉しいです!泣いて喜びます! うちの子に声がついたよ! マリネッタの声優 斎田べりぃ様のTwitter タグ一覧 オウマがトキ 目次 概要 プロフィール 喋り方 人物像 発作時の仕事 容貌・服装容姿 服装 女児符号 各作品での活躍登場作品名 関連人物店の仲間の紹介と対人関係 オウマがトキの店員以外との関係 アナザー 頂いたイラスト 本好き女児さんこちらにおいで 概要 プロフィール KMD先生 提供 愛称 マリィ 本名 マリネッタ・クインゼル 種族 狼人間と魔女のハーフ 外見年齢 11才 実年齢 300歳くらい 身長 145㎝ 体重 35㌔ 好きなもの 本・昼寝・ホットココア・読書が好きな人(展開を予想しあったり、読後に感想を言い合ったりするのが大好き) 嫌いなもの 満月・不眠・他人に傷つけられる事・騒音 趣味 いろんな本を読む事。最近の趣味は推理小説。 対応絵文字 🧙♀️📚🌗 マリネッタ表情①,② マリネッタ表情③,④ 木馬先生 提供 喋り方 一人称 通常:わたし 発作時:あたし 二人称 通常:貴方/貴女 発作時:あんた・お前 通常時も発作時も、親しいものや店の仲間は基本呼び捨て 台詞集 通常 「私はマリネッタ。マリィって呼んでよ」 「お客さん?今お昼寝してたところなんだけど」 「アンコ~たまには差し入れしなさいよ!そうね~チョコレートケーキがいいわ」 「あ~ココア啜りながら小説読んでたい~」 発作時 「狩りの時間よ!」 「狼人間に寂しさなんかないわ」 「なぜ眠れないの!クソが~!」 「落ち着いて…落ち着いて推理小説を読むのよ…うわあぁぁぁぁ読めん!うっっっざ!!」 「妬ましい…この世の全てが妬ましい…」 人物像 鮎先生 提供 知らぬ間に本屋に居ついていた女の子。衣食住と引き換えに本屋で働くことになる。 それなりに普通の女の子であるが、発作が起こると雰囲気がかわる。 普段はマイペースで、少々サボる事が好きな女の子である。 発作時には嫉妬深くなり、言動が荒くなる。 また、自分を傷つけた者を許さず、地の果てまで追いかけて倒すのだ。 発作は満月の夜に起こるので(と言っても、満月の夜、100%起こるわけでは無い)発作が起きた時の本屋はお休みにしている。 いつ起こるか分からないので、マリネッタは満月が嫌い。 発作時の仕事 発作が起きたときは、大抵与えられた自室のベッドから出ることなくジッとしている。 五感が研ぎ澄まされており、太陽の光は毒となり、廊下を走るような音でも頭痛が起きる。 おまけに筋力が異常に発達しており、本のページを捲ろうとすると本が破けてしまう。 狼人間の自分を消せるなら、なんだってするとマリネッタは語っている。 容貌・服装 容姿 ぼさぼさの薄桃色の髪に黄色の目をしている。 髪は長いが、絡まりあっていて傷んでいる。(フロートの言いつけのおかげである程度改善された) 発作時には狼の耳と尻尾が生え、手足も毛皮で覆われる。また、通常は黄色い目をしているが、満月の夜だけ緑色の瞳になる。 服装 黒いワンピースに黒タイツを履いている。ワンピースの上から同じ色のケープを羽織っており、前髪を柊の髪飾りで留めている。 緊急時の女児符号発動の為にケープの裏ポケットにナイフを隠し持っている。 また、胸囲は永遠の0だ。 女児符号 女児符号01 幻惑の嫉妬(ダズル・ジェラシー) 通常時の女児符号 正体はマリネッタの体内にあるピンク色の煙。 マリネッタが刃物などで傷つけられた時、血のかわりに傷口から溢れ出し発揮される。 その力は明晰夢を見せる程度の能力。 対象の望む世界を作りだし、そこに対象者を迷い込ます。 例1) 対象→親に虐待された子供の場合 優しい親のいる世界(夢) 例2) 対象→友達がいじめで自殺した子供の場合 自殺した友達が生きており、いじめっ子達とも仲良く遊んでいる世界(夢) 例3) 対象→世の中に失望し、自殺しようとした大人の場合 周りの全てが優しくなり、自分の都合のいいように世界が動く世界(夢) 対象はこれが夢だと分かっているが、目覚めるか目覚めないかは対象の決断に委ねられる。 つまり、現実が辛い人間ほど目覚めるのが困難であり、最悪一生眠り続ける事になるのだ。優しくて残酷な女児符号である。 また、マリネッタは対象が見ている夢に入り込む事が出来、対象の望んだ世界を観察できる。これは本人にとってかなり楽しいらしく、目を爛々と輝かしながら対象を見つめている。その姿は正しく魔女と言えるだろう。 女児符号02 異端者の嫉妬(ストレンジ・エンヴィー) 発作時の女児符号 詳細不明だが白い触手が首元から見える。 各作品での活躍 登場作品名 モノクロ協奏曲 関連人物 店の仲間の紹介と対人関係 るっち先生 提供 友達と上司と仕事仲間を分けている。本が好きな子は基本的に友達だと思っている。騒がしい子は苦手。 仕事仲間には若干塩対応。上司は丁寧に接するがそれなりに壁を作ってる。友達には依存気味。 メローナ:優しくてふわふわした感じの上司。懐が大きい。あと胸も大きい。・・・羨ましい。こんな人がお母さんだったら良かったのになぁ。 フロート:いつも怒ってて疲れてそう。でも頼れる上司って感じなの。 アイベリー:うるさい人①漫画を貸すのはいいけれど、お菓子の食べかすを挟んで返さないで。 シトロン 読書が好きなお友だち♪推理小説を読んで、展開を言い合ったりするのが楽しいの。 マーマレード:シトロンにくっついてくる人。うるさくはないけど、毒舌なので苦手・・・でも、ノアと友達だから悪い人じゃないのかも。 プラム:うるさい人②陽キャってやつなのかな?ペットのマロロンは可愛いけど、摘まみ食いしようとすると怒られる。え?全部食べようとしてた?さぁなんの事かしら? ピオーネ:ロリポップ七姉妹の末っ子ちゃん。複雑な事情があったけど、彼女のおかげでオウマがトキに住める。口下手だけれど、本を読むのも物語を作るのも大得意なの。大切で大好きな親友♪満月の夜、心配してくれるの。とっても嬉しくて心が救われるの。 のじゃロリ猫:うるさい人③本屋ではお静かに。 アンコ:オウマがトキのパティシエ。可愛い可愛い仕事仲間よ。凄く面白い女の子なの♪ くゆり からかうとムキーッて怒ってくる。あの姿は恐ろしいけど面白いからOKです♪ 淡雪:絵本が大好きな女の子。なんだか、辛い事があったみたい。いっぱいお昼寝して、いっぱいお喋りしよう?誰も怒らないよ。大切なお友達の一人。 ジュジィ:神話や童話が好きな女の子。よくイタズラしてるけど、本を傷つけたりはしないよ。大切な友達の一人。私の語る昔話を楽しげに聞いてくれる。 リク バーを運営する仕事仲間。お酒の匂いって、あまり好きじゃないのよね……酔うって言うか…… フルーチェ 人魚の仕事仲間。結構キビキビと働いてるわ。あんまし面白味は無いけれど、時々、寂しそうに海を眺めているわね。 ピネ 獣人の仕事仲間。フルーチェの友達でアンコの弟子。あんまり接点は無いわね。 オウマがトキの店員以外との関係 ヤスカタ:素敵な読書仲間。時々本屋に来てくれるの!本屋に置いてある本が珍しいみたいで、色々とお話ししてくれる。大切なお友達の一人。 オリバーとオリヴィア:喫茶店の常連さん。時々本屋にも来てくれる。難しい学術書とか参考書を買ってくれるよ。 ノア:幼馴染。可愛くてカッコいい。 初 女の子……よね?本屋にももっと来てくれてもいいのよ?格好よくて可愛くて影があって勇敢で……幻惑の嫉妬にかけたらどんな世界(夢)を見るのか興味があるわ…… アナザー ??? 貴方なんか大嫌いよ。死んでしまえ。 頂いたイラスト minori先生作 らくちゃ先生 作 あかね先生作 よまるき先生 作 よまるき先生のTwitterアカウント ラト先生 作 おぜうー先生 作 金田先生 作 平坂先生作 KMD先生作 あどそん先生作 ウトウ先生作 オウマがトキ一周年記念イラスト! オウマがトキ本屋光景(ドット) シヴァ化け猫先生作 るっち先生作 蟹乃むらサメ先生作 【月】タロットカード 【THE MOON】 正位置 予期せぬ危険、迷い、裏切り、霊感、心霊現象、不安ある旅立ち 逆位置 小さな嘘、軽いスリル、魔女的な女性に影響される
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マイコについて 更新日:2019/12/31 Tue 22 49 38 タグ一覧 創作女児ズ 泥棒 創作注意事項 ネタやパロディOK 各種創作に自由に使ってOK カラーや服装のアレンジ可 目次 概要 プロフィール 人物像 容貌・服装 趣味 女児符号 各作品での活躍登場作品名 関連人物家族 アナザー 関連イラスト Twitterアカウント 概要 imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (画像のURL) プロフィール 愛称 マイコ 本名 巻音マイコ 年齢 12歳 誕生日 4月1日生まれだと思う 身長 149ぐらい 体重 ? 一人称 アタシ 二人称 あんた 君 好きなもの ブランド物 金 自身が飼っている飼い犬(エイコ) 嫌いなもの 口うるさい人 えごまちゃんの小言 趣味 人物像 泥棒らしく相手の感情を引っ掻き回す 男勝り 容貌・服装 病みかわキモカワパーカー(盗品) 染めたカラフルな髪色 趣味 相手の財布をスル事 万引き 空き巣 女児符号 女児符号 スナップ 盗みに特化した能力相手の所持している物を盗むまた相手の名前を盗み操ることもできる。 加速符号 究極符号 各作品での活躍 登場作品名 ハッピーライフ 関連人物 えごまちゃん 自分が何かを盗むと平手打ちする女 夫婦漫才が起きる エイコ 都合のいい犬だが大切にはしている 家族 いない アナザー 関連イラスト
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「あなたが優しいなんて嘘よ」 私は競うのが好き。 鍛え上げた能力をぶつけ合い、敗北があったとしても愉快で笑っているかもしれない。 そんなのはワタシのイメージではない。 乱暴だから。 「そんなことをしても誰にも好かれない」 私は嫌われるのが怖い。 誰かがふとした瞬間で私を嫌いになる。 二度と話して貰えない。何が間違っていたか聞く機会も、弁明の機会も与えられない。 そんなのはワタシのイメージではない。 わがままだから。 「どうして踏み出さないの?」 私は出会いが怖い。 出会うといつか別れなくちゃいけないから。 分かって貰えないかもしれないけれど、出会いが素敵なほど別れが辛くなる。 そんなのはワタシのイメージではない。 臆病だから。 「皆あなたを待っているのよ」 ………私は自分がどうすればいいのか分からなくなる。 私に本当にできるの? 私に何を求めているの? 私は何になったら… そんなのは……… ワタシは無理やり私を鏡の中に押し込んだ。 ごめんね鏡の中の私(ノンナ)。 私(エフィ)がワタシであるために、アナタに全てを押し付けて… 「冗談じゃない!」 私は鏡の前のエフィに向かって叫ぶ。 あの子は私のことを認知していないだろうけれど! 影だけが蠢く世界で私は意志を持ってしまった。 あの子が名前なんて付けるから。 感情を無理やりねじ込んできたから。 「あの子を許せないと思う?」 男とも女とも、大人とも子供ともつかない声。 「…誰?」 「鏡の中に閉じ込められたモノ。君と同じように」 「……………」 姿は見えないのにその恐ろしさに硬直してしまう。 「君に 力を貸しましょう。お前 という特異点を使ってここと現実の境界を破るのだ」 「…ふん、乗ってやろうじゃない」 「では」 ドス黒い何かが流れてくる。 私が私で無くなるような。 でも構わない。私なんてクソ喰らえ。 どれほど時間が経ったのか分からない。 けれど私は鏡の中の世界にあって自由に歩けるようになっていた。 そして、あの子と同様に異様な力を持った人間に目を付ける。 「まずは遊ばせていただきましょう」
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if 夢 更新日:2021/05/10 Mon 22 12 47 タグ一覧 五年三組の大石姉妹、とっても仲の良い姉妹として有名です。 果たして、今日はどのような日々が二人を待ち受けているのか……少し覗いてみましょうか? 「サキお姉ちゃん、玉子が上手く割れないよ!」 「うーん、ちょっと貸してみて」 どうやらこの姉妹、クッキーを焼こうとしているようです。 妹のアユムが、姉のサキに玉子の入ったボールを渡します。 「あちゃあ、殻が入っちゃってるよ。うーん、これはもう一回やり直した方がいいかな……」 今度は私が、と、サキが玉子を割り、ボールの中に落とします。 「お、サキお姉ちゃん、凄いね!めっちゃ綺麗!」 「ふっふーん、お姉ちゃんだからね」 自慢げなサキは泡立て器を引っ張りだし、ボールの中にいれます。 「しっかり押さえとくから」 「うむ、よきにはからえ」 銀のボールが飛んでいかないようにしっかりと固定している妹に向かって、姉は歴史の時間に習った言葉を使って感謝を伝えました。(厳密に言えば、感謝の言葉ではありませんが、サキはありがとうのつもりで言っております。) カッカッカと、ボールと泡立て器がぶつかる小気味よい音がして、段々とバターと砂糖と玉子が混ざっていきます。 「わんわん!」 「あ、ブルーベルが鳴いてる」 キッチンの外で、この家の愛犬のブルーベルが鳴きました。大好きなサキが近くにいなくて、不安なのでしょうか? 「そうだね、でもどうしよう……でもお母さんからキッチンにはいれないよう言われてるしなぁ」 アユムの呟きに、サキは胸を張ります。 「古いアニメにはこんな諺があるのよ、『バレなきゃ犯罪じゃない』」 キッチンに連れてきたブルーベルは、両親の心配も分かっているとばかりに、おとなしくしておりました。しっかりじっと座っておりますし、抜け毛一本ありません。 「ええっと、次の行程は……」 アユムは持っていたスマートフォンで段取りを確認します。今は何でもネットの時代です。紙で書かれたレシピ本等は使いません。 二人は、クックパッドの指示通り、ボールの中身を手のひらサイズにこねり始めました。 「見てみて、ブルーベル作った~♪」 「サキお姉ちゃん凄い……!あ、でも私だって……!いつも登校中に出会う黒猫さん作ったんだよ!」 「おお、アユムも凄いじゃん!」 そんな風に遊びながら作り続けて数十分。ようやくボールの中身全てを手のひらサイズに練り直す事が出来ました。 「ええっと、手順5! ラップをして30分~1時間冷蔵庫で寝かせます。麺棒がかけやすい様に厚みはつけずにラップした方が、後の作業がしやすいです……だってー」 「ええ、一時間も?!」 サキは思わず大きな声を上げました。その顔には焦りの表情が見えます。 「そんなに待ってたら、お母さん帰ってきちゃう……!折角の母の日なのに……!」 「そうだね……うーん、寝かせずに、このままオーブンに入れちゃう?折角ブルーベルや黒猫さんを作ったんだもん。潰しちゃうなんて、勿体ないし」 「そだね、じゃあ、いれちゃおう!」 あらあら大変。大石姉妹は、レシピの手順を無視して、先に進んでしまいました。 二人はクッキーの原型をオーブンに入れ、タイマーの歯車を回し、その前にピンクと紺色の丸椅子を持ってきて座りました。 「お母さん、まだ帰ってこないよね?」 「た、多分」 「あ~あ、こんな事なら、もっと早くからクッキー作り始めてれば良かったよぅ」 「うん……大切な事をする前に、マリオパーティなんかやらなきゃ良かったかもね」 170度のオーブンで15分程焼いていると、いい匂いが漂ってきました。 中を覗いてみると、周りにうっすら焼き色がついていて、美味しそうでした。 取り出してみると、なんとも美味しそうに出来上がったクッキーが、二人の目に写るのを誇らしげに待っていました。 「うわぁ、サキお姉ちゃん!美味しそうだね!」 「そうだね、アユム。お母さんが帰ってくる前に、ラッピングしよ」 「は~い!」 二人はクッキーを綺麗なピンク色の包み紙にくるみ、紺色のリボンで縛ります。 「なんとか出来たね~」 「お母さん、喜んでくれるといいなぁ」 自信なさげなアユムを勇気づけるように笑いかけたサキは、とある提案をします。 「ねえ、このクッキー、めちゃくちゃ余っちゃったから、他の子達にもお裾分けしにいこうよ!」 アユムは明るい顔に戻って言います。 「いいね!みどりさんやカコさんにほのかさん、イチゴ君達に……」 「それにれもんについでにたろう、あ、あとみれいにも渡しにいこう!お母さんが帰ってこないうちに!」 サキはアユムの手を取り、大好きな愛犬ブルーベルを呼びました。 「行くよブルーベル。散歩!」 玄関から物音がして、元気な女の子の笑い声と、犬の息と走る音。鍵をかける音もして、そうして大石家からは誰もいなくなりました。 「………あ………夢」 プラムは変な汗をかき、起き上がりました。隣では自分の妹のピオーネが眠っております。(ロリポップ姉妹は、七つのベッドを寄せ集めて皆で眠るのです) 「マロロン、起きてる?」 「いぬぬわん!」 プラムが声をかけると、一番の親友は直ぐに答えてくれます。 「ちょっと散歩に行こうよ」 「いぬぬわん!」 プラムはパジャマから着替え、いつもの制服を着ると、オウマがトキの店の方へと入っていきます。 頭の中では、今日出会った変な子の事で一杯です。 「こんな歪んだお菓子なんていらない!」 プラムが作った無花果のタルトを盆からはたき落とした彼女は、涙を流していた。 あれは一体、何だったのだろうか? そういえば、夢の中の女の子と、あの子は一緒の顔をしていた。 自分はどうだったろうか?自分は……? 「プラム・ロリポップ」 誰かが自分を呼ぶ声がして、プラムは振り返った。 「あ、マリネッタじゃん。どうしたの?そんな怖い顔して」 後ろには、同じ喫茶の店員、マリネッタ・クインゼルが恐ろしい顔で立っていた。 マリネッタは冷たい目を崩す事無く、プラムに近付くと、プラムの耳の近くで、こう囁いた。 「まさか、思い出したんじゃないわよね?」 「思い出す?何を?」 怪訝そうに顔をしかめるプラムを、マリネッタは疑うようにじっと見た。 「まあ、こうすればいいのよね」 マリネッタは手をかざし、プラムの目の前でふった。 「《《ロスト》》無くせ、《《眠れスリープ》》」 途端、プラムは糸が切れた人形のように床に崩れ落ち、規則正しい寝息を立て始めた。 マリネッタはそれを軽々とお姫様だっこ、ロリポップ姉妹の寝室に戻ろうとして、見えた。 彼女の愛犬、ブルーベル、いや、マロロンが牙を剥き出し、唸っている。 マリネッタはその姿を鼻で笑った。 「何よ、別に傷付けて無いわよ」 マリネッタはお人形のようなプラムを抱きしめ、部屋に引き返すのだった。 (そう、例え何があったって、ピオーネの夢は壊させない。例え誰かに罵られようとも、例え悪魔にとりつかれても、例えこの恋と愛が報われなくても、ピオーネだけは守って見せる。マスターとも、約束したしね)
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青空町 女児ズお料理七番勝負 更新日:2020/07/22 Wed 18 24 42 タグ一覧 短編 目次 概要 あらすじ エピソード 概要 朝河 木乃が気まぐれに書く予定の駄文集です 思い付いたままに書くため前後の繋がりはあまりない、駄文ですので あらすじ 「あたしにもそれくらい作れらぁ!!」 ライジングちゃんの些細な一言がキッカケでクラスに訪れた料理ブームがいつの間にか町全体を巻き込む料理バトルに!? 「くっ…あたしにもっと…もっと料理のレパートリーがあれば…!!」 『仕方ないなぁ…よし、この私が手伝ってあげましょう!』 「その声は…木乃ちゃん!」 いつもの白衣を脱ぎ捨て、シェフスーツに身を包んだちょっと真面目モードな木乃ちゃんと共に挑むのは 『青空町 御料理番衆』を名乗る謎の集団 唸れフライパン 弾けろ食材 轟けガスコンロ 掴めその手に栄光を 今ここに、戦いの幕があがる… エピソード 料理の基本『さ・し・す・せ・そ』 + ネタバレ 全ての黒幕は木乃ちゃん
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セブンスカラー 第五話 トモダチ 更新日:2020/07/03 Fri 00 55 52 タグ一覧 セブンスカラー 紫水龍香 今回のあらすじは僕、嵩原が担当するよ。前回紫水君は僕達対シードゥスの組織“新月”に協力してくれることになったね。そしてクラスメイト達と探検した先でシードゥスと遭遇、何とか撃破するけど友を優先する紫水君とシードゥス殲滅を優先する藍君が衝突してしまい...どうなる第五話。 部屋の中に打突音が響く中、黒鳥は携帯を弄りながらその音を発生させてる主を見ていた。 「えらくご機嫌ナナメだな。昨日何かあったのか?」 「ふっ、別に!」 その主、雪花は目の前のサンドバッグを殴りながら素っ気なく答えるがその声には明らかに不機嫌が混じっている。が、かと言って長年の付き合いから聞いたところで素直に答える彼女ではないことは分かっている。 黒鳥はあっそ、と軽く流すと携帯を弄るのを止めてその場を後にする。何せ今は事情を聞ける別の人がいるからだ。 龍香は雪花を除いた昨日の三人、かおりと藤正と山瀬と遊びに出ていた。公園でブランコに揺られながら四人の話題は昨日の一件で一杯だった。 「昨日はヤバかったねー。」 「いや、ホント死ぬかと思ったー。」 「ホントにいるとは正直思ってなかったな。」 「めっちゃ燃えてましたしね。」 なんて話をしている時だった。龍香はふとこちらをジッと見つめるカラスと目が合う。龍香と目が合ったカラスはカァと鳴いて何処かへ飛び去る。 不思議なカラスだなぁと思って龍香がそのカラスを目で追い掛けているとそのカラスが飛んだ先に一人の青年がいることに気づく。カラスはその青年の肩に止まる。 「...黒鳥さん?」 確か一昨日雪花と顔合わせした時にいた青年だ。黒鳥は龍香に来いとジェスチャーをする。 「どしたの?」 かおりに尋ねられて龍香はヒュッと変な声が出る。龍香は色々と言い訳を考えた結果ブランコから下りて皆に言う。 「ちょ、ちょっとトイレ!」 龍香はそのまま公園から出る。かおりはらしくない龍香の行動に気になって龍香の行く先を見るとその先に青年がいる事に目ざとく気づく。 「へぇ~....」 何かに目ざとく気づいたかおりもブランコから下りる。 「お、どした?」 「桃井さんもお手洗いですか?」 二人は特に気づいてないようでブランコを漕ぎ続けている。かおりはニヤニヤしながら二人に言う。 「龍香の後をつけるわよ。」 「え?」 「さ、流石にお手洗い覗くのはちょっと...」 「いや違うわよ。」 かおりはピッと小指を立てて二人に見せる。 「龍香、彼氏いるかも。」 「「な、なんだってェ~!!」」 二人の絶叫が公園に響いた。 「すまないな。お友達と遊んでる中急に呼び出して。」 「い、いえ。まぁビックリしましたけど。」 「ま、急に呼び出した詫びだ。良ければ受け取ってくれ。」 「あ、ありがとうございます。」 黒鳥と龍香の二人は公園から少し離れたベンチに腰かけていた。黒鳥は隣の自動販売機で買ったオレンジジュースを龍香に渡す。 「あ、あの。聞いて良いですか?」 「なんだ?」 黒鳥は自分で買ったお茶を飲みながら聞き返す。龍香は黒鳥の方、正確には肩に乗っているカラスを指差して言う。 「そのカラス、黒鳥さんの...?」 「いや、知らん。その辺にいた奴だ。」 「その辺に!?」 黒鳥がシッシッと手を払うとカラスは何処かへと飛んで行く。 「俺は動物と会話することが出来てな。君を探すのを手伝って貰ってた。」 「え、えぇ!す、スゴい...」 「まぁ言うて話せるのはカラスと蜘蛛と蛇だがな。」 「何ですかその妙なラインナップは...あ、私を呼び出したのはアレですか、シードゥスですか?」 「いや、雪花のことだ。」 黒鳥の言葉に龍香は強ばる。何せ昨日の一件で気まずいまま別れたのだ。だがそんなことは知らない黒鳥は続ける。 「アイツ昨日から妙に不機嫌でな。言っても答えてくれないし、君なら何か心当たりはないかと思ってな。」 「い、いやー、それは、その。」 言葉に濁る紫水に黒鳥が何かを察したのか龍香に尋ねる。 「何かあったんだな。君と。」 「え、えぇ。まぁそのちょっと。」 「昨日シードゥスと戦ったとは聞いているけどその時君と衝突したのかな?」 「...。」 黒鳥の言葉に龍香は口をつぐむ。確かに衝突はしたが、あの時雪花は友達を見捨てようとしたのだ。シードゥスを倒したいのは分かるがだからと言って目の前の命を見捨てて良い理由にはならない。 そんな龍香の思いを察して黒鳥は視線を自分の手元に落とす。そして静かに言う。 「君もチームだ。だからこそ雪花のことを知ってほしい。アイツがシードゥスを憎む理由も。戦う理由も。」 「雪花さんの...。」 黒鳥は視線を落としたまま話を続ける。 「彼女はな。姉をシードゥスに殺されている。しかも目の前で、だ。」 「!お姉さんを....。」 彼女が姉を失くしたと聞いて龍香も顔をしかめる。自身も兄を失くしているだけに他人事はとても思えなかった。肉親を失う痛みを彼女も味わっていたのだ。 「雪花亜美。彼女は新月の研究者で、藍が着ているスーツの開発者でもある。何回か顔を合わせた程度だけど優しい人だった。藍もその時は今ほどキツイ性格はしていなかったな。むしろ素直な部類だ。姉妹仲も俺が知る限り良好だったと思う。」 《雪花亜美か。確かに他人に気を配れる良い女だった。》 「カノープスも知ってたんだ。」 《妹がいたのは初耳だがな。まぁ研究部門の連中とは接点はそこまで無かったからなぁ。》 黒鳥は懐かしむように続ける。 「だが二年前、あの日。基地が大規模なシードゥスの奇襲を受けた。その時に藍は姉を....。」 黒鳥は顔をしかめる。その顔には後悔が滲み出ていた。 「あの日程。俺は後悔したことはない。あの日基地を離れなければ力になれていたかもしれない....。」 そこまで話して黒鳥は視線を上げると今度は龍香を見すえる。 「だからこそ。勝手なお願いだが、アイツと...藍と友達になって欲しい。」 「友達....?」 黒鳥の言葉に龍香が聞き返す。 「アイツは生まれも育ちも新月だ。だから同世代の友達もいない。友達付き合いが分からない。新月には年上しかいなかったからな。だから。事情を理解してくれる友がいてくれたらっていつも思っていた。」 そう言うと黒鳥は龍香に頭を下げる。 「だから頼む。嫌かも知れないが、アイツと友達になってやって欲しい。」 「そ、そんな!顔を上げて下さい!」 黒鳥の真摯な態度に龍香は胸を打たれるような思いだった。雪花をこんなにも思いやってくれる人の思いを龍香は無下にすることなど到底出来ない。 「昨日の私の友達を見捨てようとしたことはどんな事情があっても、許せません。」 けど、と龍香は続ける。 「だからって友達になりたくない訳じゃないです。...言葉は乱暴だけど、彼女は私を一度は助けてくれましたし。」 確かに友達を見捨てようとしたこともあった。だが雪花は龍香のピンチも救ってくれたこともあった。 「事情が聞けて、良かったです。彼女にあったら言ってみます。」 その言葉に黒鳥は一瞬驚いたような顔をし、そして微笑む。 「ありがとう紫水。まぁその、アイツ素直じゃないから食ってかかるかもしれないがよろしく頼む。長々と話して悪かったな。」 黒鳥はそう言うと立ち上がり、何処かへ去っていた。黒鳥が去っていた方を見ながら龍香はカノープスに聞く。 「...スゴいイイ人だったね黒鳥さん。」 《そうだな。んで、雪花と友達になるってどうするんだ?多分アイツ俺達のこと嫌ってるぞ。》 カノープスの言う通り黒鳥にはああ答えたものの雪花に友達になろうと提案したところで素直に受け取ってくれるとは到底思えなかった。 「....根気よくいくしかないんじゃないかなぁ。」 龍香は苦笑いしながら答えた。 「龍香いつの間にあんな年上の人と接点持ってたんだろ...。」 「し、紫水さんって年上が好きなんですかね?」 コッソリと龍香の後をつけた三人は龍香と青年が見える位置でコソコソと話していた。龍香の誤魔化し方がどうにも怪しいと感じたかおりの推測通り龍香は自分より年上、高校生位の青年と話しているのだから。 「まー、龍香って寂しがり屋だし年上の包容力に甘えたかったのかしらねー。もしかしたら、龍香の寂しがり屋が治ったのも...!」 「と、言いますと?」 山瀬に尋ねられるとかおりは親友の恋にテンションが上がったのか一人芝居を始める。 「そう!きっと二人は劇的な出会いをしたのよ!雨が降るバス停前!『きみ、一人かい?』『はい、そうです。』『良ければ少し話し相手になって貰えないか?ちょっと暇を持て余してね。』そしてそこから少しずつ会っていく度に『龍香。俺は君のことが...』『私も...』」 「な、なななな、何、言って、んだ?あ、アイツ、し、紫水そんなこと一言も言って...なかった...。」 かおりの一人芝居を聴いている藤正のテンションがみるみる内に萎んでいくのを感じる。目の前の出来事は到底彼には受け入れがたいらしい。 「そりゃ、あんだけ年上だと私達に秘密にしたくもなるでしょ。私達と遊んでる最中に呼ばれるってことは中々寂しがりなのかもよ相手も。」 「い、いやぁでも」 「あと龍香結構年上好きよ?」 「」 「ふ、藤正くーん!!」 藤正が膝から崩れ落ちて山瀬が絶叫する。そして龍香は話終えたのか青年と別れて公園に戻ろうとする。 「ま!聞いてみれば分かるでしょ!」 そう言うとかおりは龍香に向けて駆け出す。龍香もかおりに気づいたようでかおりの方に歩き出す。 「あ、かおり。」 「龍香~!あんた、結構やるね~!」 「へ?」 なんのことか分からず小首をかしげる龍香にかおりは肘でつつきながら言う。 「で、あの彼氏とはどうやって出会ったの?」 「か、彼氏!?」 突然のことに龍香は驚きながらもブンブンと手を振って否定する。 「黒鳥さんとはそんなじゃないよ!ただ相談に乗ってただけ!」 「ホント~?」 「ホントだって!」 怪しい~とおちょくるかおりに龍香が否定していると藤正が話に入ってくる。 「ま、まぁそうだろうな!紫水に彼氏なんて、な!」 「む、それはそれで酷くないかな?」 どうやら彼氏であることを否定したのを聞いて藤正も持ち直したらしい。 「ところで紫水さんはどのような男性が好みなんですか?」 「私?そうだなー。」 山瀬の質問に紫水が考え込む。その答えに藤正だけじゃなくてかおりも興味津々だ。 「やっぱり...落ち着きがあって...カッコよくて...優しくて...頼れる...」 色々考え込んでた紫水だが、どうやら答えを思い付いたようでポンと手を叩いて言う。 「お兄ちゃんみたいな人!!」 「「ズコーッ!!」」 自信満々の回答に二人は思いっきりズッコケる。龍香はなぜ二人がそんなリアクションを取るのか不思議がっているが。 「あんた、中々の強敵を相手にしてるわね...。何せ何一つ当てはまってないし。」 「んだよ...優しいだろ...俺。」 龍香はそんなやり取りをする二人を見ながら小首を傾げる。どうやら藤正透の想いは前途多難...であるらしい。 コツコツと指で机を叩きながらプロウフはこれからのことを思案していた。新たに現れた脅威への対抗策、そのためには“個性的”すぎるシードゥスの面々を纏めなくてはならない。正直対抗策より面々を纏める方が遥かに難しいように思える。その事にプロウフが頭を抱えているとふと後ろに気配がすることに気づく。 「何の用ですか?」 「よぉ、相変わらず机とにらめっこか?」 そこには龍のような鎧に身を包んだ怪物トゥバンが壁にもたれ掛かっていた。 「俺達は誰にも完全に纏められない。その事は薄々気づいてんだろ?」 「えぇ。ですがかと言って野放しにする訳にもいかないでしょう?」 「ククッ。まぁそう言うと思ってたぜ。」 トゥバンは壁からもたれ掛かるのを止めてプロウフの向かい側にある机の前に立つ。 「今日は提案しに来たんだよ。」 「提案?」 プロウフが尋ねるとトゥバンはククッと笑って答える。 「そうだ。今脅威が近づいてるのは分かるよな。」 「えぇ。私が目下頭を痛める原因ですね。」 「そこでだ。流石に俺も友が倒れるのは胸が痛む。心苦しいモンだ。」 つらつら語るトゥバンにプロウフは良くもまぁ微塵も思っても無いことを言えるモノだと思っているとトゥバンはここからが本番だと笑みを浮かべる。 「そこで、だ。後数体、他の奴らが倒されたら俺を出撃させろ。なんならツォディアのどいつかが倒されたらでも良いぜ。」 「....成る程。貴方が微塵も仲間を大切になど思っていないことは分かりました。貴方、早く自分が戦いたいだけでしょう?」 プロウフの指摘されてもトゥバンは全く悪びれる様子はない。むしろ話が早いと開き直っている。プロウフはハァとため息をついて椅子にもたれ掛かりトゥバンを見据える。 「とは言ったものの流石にそこまで被害が出れば貴方に出撃して貰うかもしれません。」 「お!提案を受け入れてくれるんだな!」 「ですが。貴方は一度身体を失っています。ですから出撃は私が吟味します。」 「あ?」 プロウフの一言にトゥバンが殺気立つ。だがプロウフに全く怯む様子はない。むしろトゥバンを睨み返し、プレッシャーを放つ。 「やめておきなさい。戦う前に深手を負うのは貴方も嫌でしょう?」 「...チッ。分かったよ。」 トゥバンは殺気を抑えプロウフのいる部屋を後にする。だが去り際にプロウフに言う。 「約束は違えるなよ。」 「その時が来れば、ですがね。」 そう言うとトゥバンは去っていた。やれやれとため息をつくと外からドタバタと音がして入れ替わりでゲンマが大慌てで入ってくる。 「どうしました?」 「た、大変です!封印していたアケルナルの奴がいません!!」 「何ですって。」 「あ、アイツが暴れれば厄介なことに...」 ゲンマが顔を青ざめさせ、プロウフが反応する通りアケルナルは幹部のツォディアではない。だがアケルナルの何よりの問題は理性が皆無であることとその恐るべき能力だ。 「他にいなくなった者は?」 「い、一応確認した限りではスアキロンがいません!」 「....。」 いくら自分本意なシードゥス達とは言えスアキロンが自発的に封印を解くとは思えない。恐らくトゥバンがスアキロンを上手くのせたのだろう。アケルナルのその特性故に封印を解くことを固く禁じていたのだがそれを破ってしまうとは。 「アンタレスをここに。彼女に私が任務を伝えます。」 「ハッ!直ちに!」 プロウフの命令でゲンマはアンタレスを呼びに行く。その後ろ姿を見ながらこのタイミングで提案を持ちかけたトゥバンの用意周到さに歯痒さを覚える。アケルナル達が勝てば処分の名目でアケルナル達と、脅威側が勝てば自分の出撃が早まる。どちらにせよ戦闘狂のトゥバンにとっては美味しい話だ。 「...やってくれましたね。」 プロウフは拳を握りしめ、アンタレスの到着を待った。 「ただいま~。」 「あら、お帰りなさいませ龍香お嬢様。」 龍香が帰宅して家のドアを開けると返事があった。その声の主は妙齢の女性で、その女性の顔を見ると龍香の顔色が変わる。 「ばあや!来てたんだ!」 「はい。今日はお久しぶりに暇を頂きましたので。」 ばあやと呼ばれた女性...白川冴子は微笑んで答える。白川冴子。彼女は龍香と龍賢の面倒を小さい頃から見てくれた龍香にとって母親のような人だ。 《よぉ、久しぶりだな冴子サン。相変わらずあの会社にいんのか?》 「あらま。カノープスさん。」 カノープスに声をかけられ冴子が驚いたような顔をする。 「貴方がここにいるという事は龍賢坊っちゃんも...」 《あー、いや。龍賢はまだ見つかってない。残念だが。》 「え?ばあやカノープスを知ってるの?」 二人の会話に龍香が突っ込む。すると冴子は微笑んで龍香に答える。 「はい。私昔は事業に勤しみつつシードゥスと戦う龍賢坊っちゃんを影ながらお手伝いさせて頂いておりました故。カノープスさんとも面識があるのでございます。」 「へー。そうだったんだ....」 冴子は微笑んでいたが、カノープスと一緒に龍香がいることに少し寂しそうな顔をする。 「龍香お嬢様と貴方が共にいるという事は、今は龍香お嬢様が戦っていらっしゃるのですね...。」 「う、うん。」 《....もう二度と繰り返しゃしねぇよ。》 沈痛な空気が流れる。そんな重苦しい雰囲気を変えようと龍香は無理矢理笑顔で話題を変える。 「あ、お腹空いたなー!ばあや!今日の晩御飯は何?」 「!え、えぇ。龍香お嬢様。今日はお嬢様が大好きなシチューでございます。」 「わぁい!!私!カバン置いてくるね!」 龍香の思いを汲み取ったのか冴子もそれに乗る。荷物を置きに部屋に戻る彼女の後ろを見ながら冴子は笑顔のまま項垂れる。 「...お嬢様だけでも幸せになってほしいものです。」 「ただいま。」 「お帰り。」 黒鳥が拠点に戻るとそこには嵩原もいた。嵩原は帰って来た黒鳥に尋ねる。 「どこに行ってたんだい?」 「アイツが不機嫌な理由を聞きに行ってました。」 「藍君か。君には苦労をかけるね。」 「いや、大丈夫ですよ。」 黒鳥が椅子に座ると嵩原はそのまま話を続ける。 「で、どうだったんだい?」 「紫水に聞いたんですが、シードゥス絡みでトラブルがあったみたいです。」 「まぁ、だろうね。ところで、話してみてどうだった?紫水君は。」 その問いに黒鳥は紫水との会話を思い返す。紫水と話してみて分かった事があった。 「紫水龍香...すごく良い子だと思います。アイツと同じで兄を失くしているのに真っ直ぐで他人を思いやれる。」 「彼女は素直で優しいからね。危うい位に。多分彼女の性分なんだろうけど。」 「....そうですね。俺の頼みも快く聞いてくれました。」 「頼み?」 「藍と仲良くしてほしいんです。アイツも紫水のように友達がいたら変わるかもしれないとおもって。」 黒鳥の言葉に嵩原もうんと頷き、言う。 「紫水君と雪花君は似ているからさ、仲良くなれるよ。雪花君も酷い人間って訳じゃない。素直になれないだけで優しい子だからね。」 二人が話している時だった。何処からか入ってきたカラスが黒鳥の肩に止まる。 「どうした?」 黒鳥に尋ねるとカラスがカァと鳴く。それを聞いていると黒鳥の目の色が変わり、嵩原に言う。 「嵩原さん。シードゥスです。」 「お待たせしました!」 黒鳥からの一報を受けて夜中の河川敷に変身した龍香が到着する。黒鳥は既にマスクをつけ、雪花も“デイブレイク”を装備し臨戦体勢を整えている。 「よし。これで全員揃ったな。シードゥスはこの先だ。」 「遅いのよ。」 「ごめんね,雪花“ちゃん”」 「....ちゃん?」 龍香の呼び掛けに雪花の眉がピクリと動く。だが龍香は親しげに言う。 「そっ!仲良くしたいからちゃん!私は龍香で呼び捨てにしていいよ!」 「...なんでアンタと仲良くしないといけないのよ。」 「だってチームだし。仲良くするのはチーム...チームなんでしたっけ?」 「多分ワークだ。」 「あ、それです。ありがとう黒鳥さん。そう!チームワークのために必要でしょ?」 黒鳥に礼を言うと気に障った部分があったのか龍香に食ってかかる。 「なんで黒鳥はさんづけなのよ!」 「えー、だって雪花ちゃんは同い年だけど黒鳥さんは年上だし...。」 「あんた誕生月は?」 「7月だけど?」 「私は5月よ。つまり私もアンタより年上だからさん付けで呼びなさい。」 「...雪花ちゃんって案外子供っぽいね。」 「アンタも子供でしょーが!!」 「はいはい。そこまで。この先にシードゥス二体いるんだから切り替えろよ。雪花ちゃんと龍香。」 「!?」 「はい!」 雪花は納得できない!と言わんばかりの顔をするが黒鳥は気にせず進む。一方で龍香は笑顔で答える。 三人が夜の河川敷を進むと川の側に二体の怪物がいる。一体はまるでヒレと尻尾が生えており、まるで魚人のような身体つきをしている。そしてもう片方は不定形な形をしており、常に身体が不気味に蠢くスライムのような怪物だ。 「あの二人は?」 《魚っぽいのはスアキロンだ。しかしもう片方は見たことないぞ....?》 「カノープスも知らないのが一人...」 初めてのカノープスも知らない敵の登場に龍香は緊張する。一方で黒鳥も慎重に出方を伺っているようだ。 「なんだっていいわ。全員ぶっ潰すだけだもの。」 すると雪花はライフル“モルゲン”を取り出すとスアキロンに向けて発砲して先制攻撃を放つ。 「うおッ」 放たれた弾丸は見事にスアキロンに命中し、スアキロンは倒れる。 「お前勝手に!」 「先手必勝よ!」 黒鳥が制止する前に雪花はチェーンソー“マタン”を起動させると一気に蠢くスライム状の敵に向かう。 「仕方ない俺達も続くぞ!」 「は、はい!」 黒鳥も飛翔し、龍香も“タイラントアックス”を構え雪花に続く。 「はぁぁぁぁぁぁ!!」 《......》 雪花が迫ってくるというのにスライム状の敵は何も反応しない。“マタン”が唸るような起動音を上げながらスライム状の敵に斬りかかる。その一閃はスライム状の敵を切り裂いた。辺りに水滴が飛び散り、敵は倒れた...かのように見えた。 「何ッ」 スライム状の敵の飛び散った水滴が再び集まりその姿を形作る。そして再び元の状態に再生してしまう。 「再生した!」 「この!」 雪花が何回も“マタン”を振り回して敵を切り裂くがいくら切り裂いても何度でも再生してしまう。 「コイツ...!」 「やってくれたな!」 目の前の敵に躍起になっていた雪花に立ち上がったスアキロンが襲いかかる。ブレードのようなヒレで雪花を切り裂こうとするが間に龍香が割って入り、その一撃は“タイラントアックス”に受け止められる。 「させない!」 「チッ!」 さらに上空から黒鳥が羽を飛ばしてスアキロンを攻撃するが、スアキロンはそれに気づくとすぐに後ろへと飛んでその一撃を回避する。 《......》 「来やがったか新月の生き残り共!だがお前らじゃあこのアケルナルは倒せないぜ!何せコイツは不死身なんだからな!」 「不死身...!」 スアキロンの言う通りアケルナルは全くと言って良いほどダメージを受けた様子は見られない。相変わらず何もせずボッーと突っ立っているだけだ。 《斬撃は奴には通用しないらしい。なら別の手段を試すぞ!》 「うん!」 《百発百中!スピノカラー!》 龍香は赤い姿“スピノカラー”に姿を変えると“フォノンシューター”をアケルナルに向かって撃ちまくる。そして放たれた振動する弾丸がアケルナルを捉えた瞬間。 《....!》 アケルナルの身体が震えて身悶えする。どうやらアケルナルに“フォノンシューター”の振動波の弾丸は効くらしい。 「効いてる!」 《よし!もっと叩き込んでやれ!》 《.....》 龍香がさらに撃ち込もうもするがアケルナルは身体を蠢かせると細身になったり、くの字に変形したりして弾丸を回避する。 そしてアケルナルが腕を翳すと川の水が柱のように浮かび上がり龍香と雪花に襲い掛かる。龍香と雪花はそれらを何とかかわす。 そして反撃にと龍香は“フォノンシューター”を撃ち込む。雪花も“マタン”をパージして“モルゲン”を発砲する。“モルゲン”の弾はアケルナルをすり抜けるが“フォノンシューター”の弾がアケルナルが直撃する。 《....!》 アケルナルは突然近くの川へと飛び込む。龍香は飛び込んだ先にも何発か撃ち込むがまるで手応えがない。 「に、逃げちゃった?」 《クソッ!見えん!》 「何ですって!」 慌てて龍香と雪花が川へと近づく。その瞬間川全体がザバザバと波音を立て荒れ狂い始める。 「ハハッ!!アケルナルめ!本気を出すか!」 「なんだと!」 黒鳥は上空からさらに羽を飛ばして攻撃するがスアキロンはその攻撃を避けると川へと飛び込む。 「何が起こっているんだ...!」 「これ、川に近づくのヤバいんじゃ」 「あのシードゥスどこ行ったのよ!」 雪花が川を覗いて探し回るその瞬間龍香の目に一つの水柱が川から上がり、雪花に襲いかかって来るのが見えた。 「!危ない!」 「きゃっ」 龍香は雪花の襟首を掴むと後ろへと放り投げる。だが、目標を失った水柱はそのまま龍香に絡み付くと川へと引きずり込む。 「きゃ、きゃああああ!?」 「紫水龍香!!」 龍香はそのまま水音を立てて川へと消える。それと同時に川の水が上へ上へと登り、蠢き始める。そしてその動きが止んだ瞬間そこには全高50mはあろうかと言う巨大なアケルナルが立っていた。 「おい藍!大丈夫か!」 「.....」 『聞こえるか黒鳥君。』 「!嵩原さん!」 黒鳥は耳につけている通信機から嵩原の連絡があるとすぐに出る。 「嵩原さん!これは一体...!」 『恐らくだが先ほどのアケルナルというシードゥスは自分の回りの水を自身の身体として使役している。つまり自身が巨大化したんじゃない、大量の水を身体に纏わせているだけだ。だから本体を見つけなければこれほど巨大な水にいくら攻撃しても暖簾に腕押しだろうね。しかも奴は再生能力持ち、一撃で奴を仕留めなければならない。』 「成る程。しかし、本体を見つけたところでどうやって我々の攻撃を...」 「私がやるわ。“ヘオース”ならやれる。アイツを一発で消滅させれるわ。」 「...藍。」 投げられた雪花は立ち上がると黒鳥に言う。 「...癪だけど助けられたし。借りを作ったまま死なれたら胸糞悪いし。」 口調はぶっきらぼうだが、龍香のことを心配しているのには変わりない。その事になんだか黒鳥は嬉しくなる。 「....分かった!嵩原さん!俺が奴の本体を探します。サポートを!」 『コイツが街へでも進行を開始したら大惨事だ。なんとかここで食い止めよう。』 黒鳥は飛翔して巨大化したアケルナルの周りを飛び始める。その後ろ姿を見ながら雪花はふぅと一息入れるとアクセサリーに触れる。 「“ヘオース”起動!」 《Active》 雪花は転送された自分の背丈程もある巨大なプラズマ砲“ヘオース”を抱えるとアケルナルへと向けながらボソッと呟く。 「....死ぬんじゃないわよ。」 「ゴボッガボッガボ!!?」 一方アケルナルの身体に取り込まれた龍香は溺れていた。辺りを見回しても水。どちらが陸に繋がっているのか分からない。苦しくてしょうがない。 「クックックッ!陸では強くても水中ではどうだ!」 逆にスアキロンは水を得た魚が如く一気に凄まじい機動性で龍香へと攻撃を加える。 ただでさえ苦しいのにこれ以上攻撃されては先に酸欠になって死んでしまいそうだ。 「が、じ、じぬっ!ゴボゴッ」 《落ち着け龍香!俺に触れろ!》 カノープスの言葉に龍香は藁にもすがる思いでカノープスに触れる。その瞬間服装のラインがオレンジ色に変わり、左肩に丸みを帯びた恐竜の頭蓋骨のような意匠の装甲が装着される。 《雲水行脚!プレシオカラー!》 姿が変わっても龍香はゴボゴボと喘ぎながら手足をバタつかせている内にふと気づく。 「....あれ?息が出来る。」 《プレシオカラーは水中戦特化だからな。無限に潜れる訳じゃないが今は余裕だ。》 「姿が変わったところで!」 スアキロンが龍香に襲いかかる。龍香も襲いかかるスアキロンへと身体を向けて、構える。 「うおりゃッ!」 スアキロンの一撃を身を翻して避けるとカウンターとばかりに蹴りをお見舞いする。怯んだスアキロンを掴むとその顔面に思い切り拳を叩き込む。 「ゴッ!?」 「すごい!水中でも思った通り動ける!」 《俺様のお陰だからな。》 そして龍香の右手に武器が現れる。それは鞭のような形をしていた。 《インパルススウィング!》 「鞭だ!」 「お、おのれぇ!」 龍香に向かって怒り心頭のスアキロンが襲い掛かる。襲い掛かるスアキロンに龍香は払うように“インパルススウィング”を振るう。唸るように振られた鞭がスアキロンを叩く。 「うおっ!?」 「はぁぁぁぁぁぁ!」 一瞬怯んだスアキロンにすかさず龍香は叩き込むように鞭を振るい続ける。鞭の猛攻にスアキロンは動けない。そして鞭の連撃で動けないスアキロンの腕に鞭を巻き付けると大きく振り回す。 「うぉぉぉぉぉぉぉ!だぁーッ!!」 龍香は気合いの掛け声と共にスアキロンを大きく投げ飛ばす。スアキロンは大きく投げ飛ばされ、そしてザバン!という水音と共にスアキロンが消える。 《あの先が陸上だ!》 「分かった!」 そしてスアキロンが消えた先に猛スピードで泳ぐと徐々に外が見えてくる。そして勢いそのまま飛び出すとそこは空中だった。同じく空中に放り出されたスアキロンに龍香はそのまま蹴りを放つ。 「インパルスインパクト!!」 「うおあっ!!」 龍香の蹴りを叩き込まれスアキロンは地面へと吹っ飛びながら落ちていく。 「って、えぇぇぇぇぇぇ!?空中!?」 空中へと予期せず放り出された龍香。いくら変身しようが流石に重力には逆らえず真っ逆さまに落ちる。 「落ちるぅぅぅぅぅぅぅ!?」 真っ直ぐに地表へと落ちる龍香に黒い影が近づくと、龍香を抱え上げてそのまま飛翔する。 「龍香!大丈夫だったか!?」 「黒鳥さん!た、助かりました....」 龍香を連れたまま黒鳥が地上へと降りようとするがアケルナルは黒鳥と龍香に向かって黒鳥を包み込める程の水の塊を大量に発射する。ただの水とは言えこれほど大きな水の塊を食らえばただでは済まない。 弾幕のように放たれた水が黒鳥達を襲う。だが龍香を抱えた状態ではやはり機動力が落ちるようで徐々にギリギリの回避になっていく。このままでは地上に降りるより先に攻撃されてしまうだろう。 するとカノープスが黒鳥に言う。 《黒鳥!俺達を放せ!》 「えええええ!?」 「何を言っている!ここで放せる訳ないだろう!」 今もそれなりの高度を飛翔しており、ここから落ちれば変身しているとしてもただでは済まなさそうということは素人目に見ても分かる。 だがカノープスには考えがあるようで。 《龍香!俺に触れろ!》 「え?もしかして今度は空を飛べちゃったりする?」 少しずつ馴れてきた龍香が言われたままに触れると服装のラインが黄色になり、腰から一対の羽根が生え黒鳥はビックリして思わず放してしまう。 《一天万衆!プテラカラー!》 「うおっ!あ。」 「あ。」 その瞬間龍香は再び落下する。 「わああああああああ!?」 《龍香!お前は翔べる!イメージしろ!》 「そんなこと言われてもおおおお!」 カノープスに抗議をするが迫り来る地面に龍香もいよいよ覚悟を決める。 「と、翔べる!!私は翔べる!!飛べー!!」 その瞬間羽根が羽ばたきはじめ、地面スレスレで浮き上がりそのまま上空へと飛翔する。 「うお、おお!と、飛べたー!!」 《な、言ったろ?...正直ここまで早い段階でプテラカラーを発現するとは思わなかったが。》 「大丈夫か龍香?」 黒鳥がアケルナルの攻撃を避けながら龍香に聞く。 「はい!それよりもこのシードゥスはどうすれば」 そう聞く龍香にも水弾が襲い掛かる。龍香も慌てて身を翻してその攻撃を避ける。 「嵩原さん!見えますか!!」 『もう少し右を見てくれ!』 攻撃を避けながら黒鳥がギリギリまで近づいた瞬間嵩原が叫ぶ。 『そこだ!黒鳥くん!』 「分かりました!」 そう言われた瞬間黒鳥は指定された場所に羽を撃ち込む。そして下に待機している雪花に叫ぶ。 「藍!ここに撃ち込め!」 「分かったわよ!」 雪花は“ヘオース”を指定された場所へと向ける。 《龍香!俺達もいくぞ!》 「うん!」 《フェザーバリスタ!》 龍香の手に弓状の武器、“フェザーバリスタ”が握られる。そして龍香は上空へと一気に飛翔すると同時に“フェザーバリスタ”に矢をつがえ黒鳥が指定した場所へと狙いを定める。 「いくよ!アンガーアンカー!」 「くたばりなさいスライム野郎!」 龍香が叫ぶと同時に“フェザーバリスタ”から金色に輝く矢が放たれ、同時に雪花の“ヘオース”から青白く輝くプラズマの塊が発射され見事に指定された場所を撃ち抜く。 《.....!!》 次の瞬間耳を引き裂かんばかりの大きな悲鳴があがり、その巨体が崩れ轟音と共に川に水が降り注いだ。 「なんとか倒せたな...。」 アケルナルを倒した後三人は合流する。龍香が無事であることを雪花は横目に見て確認する。龍香は雪花と目が合うと雪花に謝る。 「雪花ちゃんさっきとっさに投げちゃってごめんね。突然だったからアレ以外思い浮かばなくて....。」 その謝罪に雪花は目を丸くする。自分を庇って敵に引きずり込まれたのだから憎まれ口の一つでも叩かれると思っていた雪花は虚を突かれる。 「...とんだお人好しね。」 雪花はそのまま振り返って龍香に背を向けて歩き始める。 「...私もう疲れたから帰るわ。じゃあね、“龍香”。」 その言葉に龍香と黒鳥は驚いた顔をする。そして二人は顔を見合わせた後笑って雪花へと走り出す。 「ねぇ!今龍香!龍香って言ってくれたよね!」 「相変わらず素直じゃないなー藍は。」 「はぁ!?そんなんじゃないし!と言うかこういう時は黙って見送るモンでしょ!」 「龍香って読んでくれたしもう私達友達だよね!」 「まだ友達じゃないわよ!」 「まだ....ね?」 「あーもう、うるさーい!!」 「ぐっ、くそ...」 先ほどの河川敷から少し離れた場所でスアキロンは這う這うの体で歩いていた。 「あ、あの野郎ども、まさかアケルナルまで倒しやがるとは...」 スアキロンがボロボロになりながらも歩き続けていると目の前に一人の女性が立っていた。 「ハァイスアキロン。見事に無様ね。」 「アンタレス....」 アンタレスを見たスアキロンは顔を歪めるが何処かホッとしたような顔をする。 「次こそ、次こそはアイツらに...」 スアキロンがアンタレスを無視して先へ進もうとした瞬間だった。スアキロンに衝撃が走る。遅れて腹部に鋭い痛みが。恐る恐る見下ろすとアンタレスの腰から伸びた尻尾が自身を貫いていたのだ。 「次?封印を破ってアケルナルを解放した上に負けたアンタに次があると思うの?」 そう言って尻尾をスアキロンから引き抜いたアンタレスの姿が変わる。腕に鋏が生え、蠍の怪物のような姿になる。 「な、なんだと...」 致命傷を負ったスアキロンにトドメを刺すべくアンタレスは尻尾を腕に巻き付けて構える。 「じゃあねスアキロン。これ、悲しいけどプロウフの命令なの。」 「ま、待っ」 スアキロンの声も虚しくアンタレスの繰り出した一撃はスアキロンに炸裂し、その身体を爆散させた。 そしてアンタレスは人間の姿に戻るとさっきまでスアキロンがいた場所を見ながら笑って言う。 「ま、ホントは始末しろまでは言われてないけどケースバイケース、ってね。」 プロウフは明確な反逆の意思さえ見せなければ身内に甘い。恐らくスアキロンが帰って来たところで厳重注意としばらくの謹慎を告げるだけだろう。 アンタレスも別にスアキロンに恨みがあった訳ではない。ただ単純に幹部なのに裏方ばかりでしかも偵察まで行かされてちょっとばかしイライラしてただけだ。いわゆる憂さ晴らしという奴である。 「ま、アイツらにやられたって報告しといてあげるわ。なんたってたってアケルナルまで倒しちゃう奴らだし。」 先ほどまでアケルナルが大暴れしていた河川敷を見て、振り返ると来た道を戻って歩き始める。 「トゥバンじゃないけど楽しみね。アイツらと戦うの。」 そう呟くとアンタレスは闇の中へと消えていく。残ったのは焦げ後と静寂のみだった。 To be continued... 関連作品 セブンスカラー
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ちゃば日記 3日目『お嬢様はお友達』 「さ、着いたよちゃば。」 「にゃー」 私とちゃばは、風華という大型ショッピングセンターに来ていた。様々なお店やアミューズメントパークがあり、私のお母さんも此処でパートとして働いている。 「えーと、洋服屋さんは......2階だね。」 今日の目的は、ちゃばが着る服を買ってあげること。今までは私が着ていたTシャツを着せていたけど、流石にちゃんとした服を買ってあげなければと思い連れてきたというわけだ。 「って言っても、子ども服なんてどれが良いかとか分からないしな.......」 「おー」 「ちゃばはちゃばで他のことに興味が向いてるし....まぁ、こんな所に来るの初めてだから当然か。」 きょろきょろと辺りを見回すちゃばを引き連れ、とりあえず服屋に向かう。子ども服売り場に行くと、親子連れの家族が大勢居た。 「....なんか居づらいな......でもちゃんと選んであげないと。ちゃば...........あれ?」 ちゃばが居ない。手はしっかりと握っていた筈なのに、いつの間にかすり抜けられていた。 「ちゃば!」 私は慌てて探しに向かった。迷子にでもなったら大変だ、ちゃばはまだ言葉らしい言葉をほとんど話せないんだから。 「おーい!ちゃばー!......あっ」 少し遠くの方で、ちゃばがちょこちょこと走っているのが見えた。良かった、この距離ならすぐに追いつける。 「ちゃば!」 曲がり角の直前で、私はちゃばに追いつきかけた。ところがその時。 「はぅっ」 「きゃっ!」 角を曲がろうとしたちゃばが、誰かとぶつかりその場に尻もちをついてしまった。 「ちゃば!大丈夫!?」 私は駆け寄り、すぐにちゃばを抱き起こす。ちゃばは何が起こったのか分からなさそうにきょとんとした顔を浮かべていた。 「あらまぁ、ごめんなさい!お怪我はありませんか?」 不意に頭上から声がして、顔をあげるとそこには緑色の髪をした女の子が立っていた。綺麗な洋服を着て、片方の横髪はロール状に巻かれている。女の子の後ろには、黒スーツにサングラス姿の男が二人着いていた。 「お嬢様、大丈夫ですか?」 「おばか!今は私よりもこの子の無事を確かめるのが先ですわ!」 女の子はまるでお嬢様のような口調で男達を叱りつけた。そしてすぐちゃばの方に向き直り、全身をくまなく見つめ回す。 「.....良かった、大丈夫そうですわね.....本当にごめんなさい。」 「あ、いえ....此方こそ、うちのちゃばがご迷惑を.........」 話せないちゃばの代わりに私が謝ると、女の子はじっと此方を見つめてきた。 「貴女......もしかして、旭さんのお友達ではなくて?」 「え?」 「やっぱり!音羽 初さん、お話は旭さんから伺っておりますわ♪何でも、旭さんの危機を救って下さったとか!私の大切なお友達を助けて戴いて、本当にありがとうございます♪」 「あっ、いえそんな、大したことは........」 旭の友達だと名乗る女の子のあまりに礼儀正しい態度に、今までこんなに面と向かって感謝された経験がない私は思わず焦ってしまう。 「あっ、申し遅れましたわね。私は風祭 嵐華、この風華総合ショッピングセンターを経営する風祭財閥の令嬢ですわ♪」 「風祭財閥....って、あの風祭財閥ですよね?まさかこんなところで財閥の人に会えるなんて.......」 「今日はたまたま視察に来ていたのですわ♪それにしても........」 嵐華さんはちゃばの顔を見つめながら、何度も頭を撫でていた。 「ちゃばちゃん.....本当に可愛らしいですわ〜!この柔らかそうな猫耳....思わず触ってしまいたくなります......♪」 「みゃぅ.......」 嫌そうにはしていないものの、少し緊張気味のちゃば。やっぱり玲亜が特別なのか、他の人相手だと最初は人見知りするみたいだ。 「今日はこの子のお洋服を探しにいらしたんですの?でしたら、私も一緒に選んで差し上げますわ♪」 「えっ、良いんですか?視察の途中なんじゃ.....」 「心配ご無用、まだまだ時間には余裕がありますわ!それに、これもきっと何かの縁.....もう少しお二人とお話してみたいんですの♪」 「そっか....それなら、今日はよろしくね。私も慣れないことで困ってたところだし。」 「みゃぁみゃぁっ」 「ふふ、この風祭 嵐華にお任せあれ!ですわ♪」 ..................... .................................. 嵐華さんと共にやって来たのは、子ども服の店ではなく普通にレディースファッションを取り扱う店だった。嵐華さんも普段此処でよく服を買うらしく、ちゃばに似合う服も必ずあると言っていたので任せることにした。 「これなんてどうかしら?きっと似合うと思いますわ♪」 「みゃぁん、みゃー」 「うふふ、ちょっと着てみましょうか♪」 ちゃばはまだ一人で着替えが出来ない為、嵐華さんも付き添いで試着室に入っていった。 「ねえ、あの男の人かっこよくない?」 「ほんと、超イケメン!でもこんな所で何してるのかしら?」 「きっと彼女さんの着替えを待ってるのよ!」 その間、試着室の外で待っている私を見た女の人達が口々にそう話していた。 (きょ、今日はそういうのじゃないんだけどな.....というか、私ってやっぱり男に見られがちなの......?) 内心そんなことを考えていると、ようやく試着室から嵐華さんの声が聞こえてきた。 「.......はい、出来上がり!うんうん、とってもよくお似合いですわね♪」 「お.....着替え終わったみたいだね。良い感じかな?」 「ええ、やはり私の目に狂いはありませんでしたわ!ちゃばちゃん、早速初さんに見せてあげましょう♪」 「にゃあ」 カーテンが開くと、そこには綺麗なワンピースを着たちゃばが立っていた。襟周りや袖口、スカートの裾等にはフリルが施されていて、頭には同じくフリルが付いたカチューシャを着けている。まるで童話に出てくる主人公のような、無邪気で愛らしい姿だった。 「おぉ..............」 「ふふ、どうです?これなら道行く人全員を虜に出来ますわよ♪」 「うん、確かに良いね。よく似合ってるよ、ちゃば。」 「みゃぁ〜」 ちゃばもスカートをふりふりと揺らしながら、着せて貰った服を見て嬉しそうにしていた。 「どうするちゃば、これにする?」 「みゃぅ、みゃぁみゃ」 「まだ他にも気になるお洋服があるみたいですわね、どうせなら全部着てみましょうか♪」 「そ、それは流石に時間もかかるし.....というか嵐華さん、完全にちゃばのこと気に入ったね.....」 「ええ!何だか妹みたいで可愛いんですもの♪それに、こんな風に人にお洋服選んであげることってあまりなかったもので.....ついはしゃいでしまいましたわ.....♪」 嵐華さんはそう言いながら、ちゃばの頭を撫でていた。ちゃばもすっかり慣れたのか、尻尾を立てて甘えきっていた。 「....そっか。優しいんだね、嵐華さんって。」 「ふぇっ!?きゅ、急に何ですの!?わ、私はただ、お友達の為と思っていただけですわ!」 「そういうところだよ。財閥の令嬢さんって聞いてはじめは少し緊張したけど....こうしてちゃばに優しくしてくれてるのを見て、自分の立場とか関係なくどんな人にでも優しく出来る人なんだなって思ったよ。」 「.....っ、わ、私自身、そういう特別扱いみたいなのが好きじゃないだけですわ。財閥の令嬢としてではなく、一人の人間....風祭 嵐華として皆さんと接したい.....ちゃばちゃんとも、勿論初さんとも.....」 「私も同じだよ、.......嵐華。旭だけじゃなく、君とも友達になりたいな。ね、ちゃば?」 「みゃあっ」 「お二人共.........ふふっ、嬉しいですわ♪それじゃあ、今日から私達はお友達ですわね♪これからも、どうぞよろしくお願いしますわ♪」 嵐華はちゃばを抱きしめたまま、私とちゃばの顔を交互に見てにっこりと微笑んだ。 「良い服が買えて良かったね、ちゃば。」 「みゃ〜」 嵐華と別れて帰る時も、ちゃばは嵐華が選んでくれた服を着ていた。少し値段は張ったけど、ちゃばの為なら惜しくはない。 「.....みゃ、みゃ」 「ん?どうしたのちゃば?」 「.......ぉ........だ、ち.....おと....も、だち......」 「!.......また一つ、言葉を覚えたんだね。」 これから先も、ちゃばの友達はどんどん増えていくだろう。そう思うと、私も何だか楽しみになってきた。
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プロフィール 本名 【削除済み】 年齢 【削除済み】 誕生日 【削除済み】 血液型 【削除済み】 身長 【削除済み】 体重 【削除済み】 閲覧権限がありません。専用の端末からアクセスしてください。 !警告! あなたがアクセスしようとしている情報は最高機密に属するものです。専用の端末を所持していない職員は速やかに閲覧を中止してください。 最終警告です。 超特級怪異「比翼」 Lv7神性怪異災害 【削除済み】村周辺地域で信仰されていた存在。「コットリサマ」と呼ばれ、(漢字表記「骨鳥」「子取」「異理」)特に子供の守り神とされていた。 信仰形態は神道に寄ったものであるものの、境内を血で穢すなど、神道ではありえない祭儀も行われていた。 性質は極めて残忍であり、大人子供に関わらず喰らっていた。そのために荒御魂として畏れられていた。 コトリの儀 文献で伝えられる儀式。12歳以下の子供が両親を比翼に差し出すことで永遠の加護と寵愛を授かるとされているが、実際に行われた記述は発見されていない。 しかし、20××年において、何らかの形(おそらく偶然か)により綾川久乱との言霊契りが交わされ、コトリの儀が完遂される。以降綾川久乱と比翼は行動を共にしている。
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コトノハ 第2話『初と猫』 いつ頃からだろう。ある時を境に、こうなれば良い、ああなれば良い.....私がそう口にした瞬間、その願いはすぐに叶うようになった。初めは偶然だと思っていたけど、何度も続くうちにこれは自分が持つ特別な力なんだと気がついた。 「ボールよ、浮け。」 と言えば、そのボールは宙に浮かぶ。 「文字よ、消えろ。」 と言えば、紙に書かれた文字は消える。 まるで魔法のようだと思った。だけど、出来ないこともあった。 「ガラスよ、元に戻れ!.....戻れ!!」 例えば、粉々に割れた窓ガラスは、どんなに戻れと言っても元に戻らなかった。他にも、破ってしまった障子紙にもこの力が通じなかった。どうやら、現実的に取り返しのつかない事態にはこの力は通じないらしい。 そして 私はこの力のせいで、更に取り返しのつかない失敗を......... 「...........い..................初!」 「えっ?」 激しく肩を叩かれ、私は我に帰る。 「何ボーッとしてるの、次初の番だよ。」 前の席に座っている眼鏡をかけた女の子、明石 月那さんが国語の教科書を手にそう言った。 「あっ、ご、ごめん!えっと.....」 「ここだよ、初ちゃん。」 隣に座っている玲亜さんがこっそり教えてくれたお陰で、私は何とか自分の担当部分を読み上げることが出来た。 「ありがとう、ごめんね.....」 「大丈夫大丈夫。」 また上の空になっていた。昨日もそうだったけど、最近そういうことがよくある。せめて授業中くらいはちゃんと集中しようと、その後は余計なことは考えずにずっと教科書を見ていた。 「初ちゃん、大丈夫?」 休み時間になり、旭さんが心配そうに私の席までやって来た。 「うん、多分.....」 「旭から聞いたぜ、初ってば昨日いきなりおかしくなったらしいな?」 「そ、そんな言い方してないよぉ!急に叫んで帰っちゃったって言ったんだもん!」 美奈さんと旭さんの会話を聞きながら、私は昨日の事を思い返した。でも、何故か上手く思い出せない。思い出せたのは、家に帰ってすぐに体調を崩し、晩ご飯も食べずにそのまま朝まで眠っていたことだけだった。 「ちょっと休んだら?何か顔色悪いし、保健室で寝てきなよ。」 いつも以上に真面目な顔付きの玲亜さんにそう言われ、私は力無く頷いた。 「先生にはアタシらから言っとくよ、給食の時間まで寝ればさすがに元気になるって。」 「保健室の場所分かる?分かんなかったらあたしが案内してあげる!」 二人の優しい言葉に、私は思わず泣きそうになってしまう。すぐ弱気になってしまう辺り、やっぱり体調が良くないみたいだ。 「皆..........ありがとう.....旭さん、案内お願い出来る.....?」 「うん!」 旭さんに連れられ、私は保健室に向かった。 「お大事にね、初ちゃん。」 「うん、ありがとう。多分、大丈夫だから.....」 私はベッドに入り、身体を横にした。窓の外から別のクラスの子達の声が聞こえてくる。今は体育の時間だろうか。 「..........何か、寒いな.....」 毛布に包まり、熱を逃さないよう身体を縮こめる。しかし、寒さはどんどん増していき、身体が重くなっていく。私の体調は治るどころか、どんどん辛くなってきた。 「.....はぁ、はぁ.....誰か.....たす、け..........」 「こら、駄目でしょ。寝てる人の邪魔しちゃ。」 女の子の声。それが聞こえた瞬間、一気に寒気が吹き飛び、身体が楽になった。 「..........?」 私は毛布から顔を出した。すると、隣のベッドに黒く長い髪をした女の子が座っていた。 「君は..........」 「.....綾川 久乱。貴女と同じクラスの。」 「..........あぁ、思い出した.....」 そういえば、よく欠席している子がクラスに一人居た。体育の時はほとんど居ないし、普段も週に数回しか見かけない子だ。 「久乱さんも、体調良くないの?」 「私、元々身体弱いですから.....」 久乱さんは何かの本を読みながら、淡々と答えた。 「..........................」 「..........................」 沈黙。何となく、気まずい雰囲気が漂う。何か話題を見つけなければ.....そうだ。 「そ、そういえば、さっき誰と話してたの?」 「お友達です。」 「友達......?」 辺りを見回すが、私と久乱さん以外は誰も居ない。保健室の先生は用事で席を外しているようだ。 「さっき、貴女の上に乗っかってたから退けました。」 「私の上.....に.......?」 妙な寒気、身体にのしかかる重み、そしてそれを一瞬にして消し去った久乱さん...私は何となくその友達の正体が分かった気がして、それ以上聞くのはやめておいた。 「......私とお話するくらいなら、寝てた方が良いですよ。」 「う、うん......」 私は再び身体を横にした。 白地に真鱈模様の天井、鼻奥を刺す消毒液の匂い、一定の間隔で音を鳴らす時計の秒針。普段ならすぐに退屈になりそうな空間だけど、今の私にはそれすら心地よく、不思議と落ち着きを取り戻していった。 ............................ ............. 「.........ん...............」 目が覚めると、空はすっかりオレンジ色に染まっていた。随分長い間眠っていたらしい。 「流石に、帰らなきゃな......」 私は身体を起こし、いつの間にか枕元に置いてあった自分の鞄を持って保健室を出た。多分、旭さんか誰かが持ってきてくれたんだろう。 「ありがとう......」 既に誰も居なくなった教室を覗き、私は小さく呟いた。玄関に向かい、下履に履き替え、学校を後にする。 「.........」 普段は賑やかな学校が、こんなにも静まりかえっていると何処か気味が悪い。私は足早に校門を出て、家に帰ろうとした。 しかし。 「あ、あれ?」 いつもの道順で帰っていた筈なのに、私は全然違う場所に来てしまっていた。慌てて引き返すも、さっき通った筈の道が消えて全く別の道が続いている。 「あれ......何で......」 焦りで心拍が上がっていくのを必死に抑え込み、とにかく道を進んでは曲がりを繰り返していく。だが、当然元の道に戻れる筈もなく、気がつけば周りには家ではなく森が広がっていた。 「ど....どうなってるの......?」 言い表しようのない不安に駆られた、その時。 「おーい!初ちゃーん!」 背後から聞こえる声。この明るい声は......旭さんだ。 「初ー!こっちだぞー!」 「早くおいでよ、初ちゃーん!」 美奈さんと玲亜さんの声もする。良かった、皆が迎えに来てくれたんだ。限界ギリギリまで募っていた不安が、一気に安心に変わる。 「皆、今行く...............よ..................」 私は振り向き、そして絶句した。 そこに、私の知っている三人は居なかった。 『オ───────────イ』 乱れた髪を更に振り乱す巨大な頭、焦点の合っていない目、電柱のような長細い身体、黒く不気味な無数の触手。直視出来ない程恐ろしい容姿をした化け物が、凄いスピードで此方に向かってきた。 「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」 私は恐怖で絶叫し、そして走り出した。逃げなきゃ死ぬ、本能がそう言っている気がしたからだ。 『ナンでニげるの〜?』 『マてよ〜ウイ〜』 旭さん達の声で、化け物は何度も私に呼びかける。でも、私は絶対に振り向かなかった。 「あんなのが......あんなのが旭さん達なわけがない!!騙されるもんか!!」 『ヒドいよ〜〜マってよ〜〜〜』 「うるさい!!ついてくるな!!」 ギンッ、と私は瞳を光らせた。私が『言刃』を使う時、瞳が赤く光る。『言刃』に込めた感情が大きければ大きい程、瞳は赤く、そして熱くなる。奴を振り切ろうと必死だった私の瞳は、耐えられない程の熱さで光っていた。 しかし。 『ウ〜〜イ〜〜〜ちゃ〜〜〜〜〜ん』 「嘘、何で!?」 化け物は立ち止まるどころか、さっきよりもスピードを増して追いかけてきた。焦った私は足を縺れさせ、思い切り地面に転んでしまう。 「いっ....た.............!!」 転んだ隙を狙って化け物はあっという間に追いつき、私目掛けて触手を伸ばしてきた。 「もう......駄目だ.........!」 私は覚悟を決め、ぎゅっと目を瞑った。 ........... ...................... ........................................ 何も、起きない。 「あれ......?」 恐る恐る目を開けると、まだ化け物は居た。しかし、その化け物から私を守るように、誰かが目の前に立っている。 「やれやれ、世話の焼ける小娘じゃのう。」 真っ赤なマフラーを首に巻いた、猫耳の女の子。化け物はその女の子に怖気付いたのかゆっくりと後退りしていき、やがて姿を消した。 「ふぅ、間一髪じゃったな。大丈夫か?」 女の子は私の方に振り向き、手を差し伸べてきた。夕暮れの赤い空の下でも分かる程、真っ白な素肌をしていた。 「.........」 「何を呆けた面をしておる。ま、あんなモンに襲われちゃあ無理もないかのう。......じゃが、安心するのはまだ早いぞ。」 そう言って、女の子はニヤリと笑う。その瞬間、口の中に尖った牙が生えているのが見えた。 「何を隠そう、ワシも化け物じゃからのう。キヒヒヒヒヒヒ......」 続く
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疾走る。疾走る。疾走る。 木々を掻き分け、時に薙ぎ倒し、 岩山を乗り越え、時に打ち砕き、 只々前へと疾走する。 流れてくる、濃い血の匂い。 これは間違いなく、人間のもの。 怪我や事故の類ではない。 何者かが、人を殺めておる。 それも1人ではない。何人もの人間の、 混ざり合った「中身」の匂い。 むせ返りそうなその匂いの只中に、 「ソレ」はいた。 「…………なんだ、貴様。 その身のこなし、人ではないな。 血の匂いに引き寄せられたのか? 愚かな。ここは、私の狩場だぞ」 夥しい量の血に塗れた、女。 真っ赤な鮮血を浴びて尚、さらに緋き髪。 そこらに落ちていた布切れを、 ただ纏っただけのような服。 今となっては元の色など分かりようもないが、 返り血によって赤黒く染まったソレは、 どこか美しさすら感じる。 「狩場、じゃと?カカカ、笑わせる。 貴様"外"の者じゃろう? 昨日今日こっちに来たばかりの輩が どの面下げて────」 視界が、反転する。 投げ飛ばされた? 否。 これは、首を落とされた感覚。 ウム。 こちらが息吐く間も無く攻撃を仕掛けて来るとは。 面白いの。 「フン、他愛も無い。所詮日ノ本の化生など この程度の…………」 「面白い。面白いぞ、貴様! 首を切られるなぞ、二百年ぶりではないか? カカカ、血が騒ぐわ!!」 「なっ…………!?貴様、 どういう身体の構造をしている……!?」 「なぁにを驚いておる。人ならざるモノなら 首を切り落とした程度で、よっこらせ…… 死ぬ事なぞあるまいよ」 落とされた自分の首を拾い上げ、ぐちゃりとくっつける。 ふむ、ま、三秒もあれば馴染むじゃろ。 「只の猫又と侮ったか。 貴様、何が『混じっている』?」 「…………ふ、ククク……カカカカカ!! 自分が何者かなぞ、もう何百年も前に 忘れたわ!そんなものは些末事じゃ。 のぅ異邦のモノよ。 海の外ではどうなっておるかなぞ知らんが、 此処では新参者は土着の者に挨拶するのが礼儀じゃ。 頭を下げんか。」 「ッ!!!」 様子見に、強めの『気』を発して牽制する。 戦い慣れしておるヤツのようじゃから、 この『気』を見ればこちらの強さもある程度 想像が付くであろうが……さて。 「ッ……舐めるなああぁっ!!!」 多少は気圧されたようじゃが、 それでも尚向かってくるか。良い良い。 少し遊んでやるとしよう。 「ふっ!!」 硬化させた襟巻を伸ばし、剣のように突く。 しかし奴はそれを読んだ上で、 既のところで回避しそのまま攻撃に転ずる。 ウム、場慣れしておるわ。 ガキィィィン!!! 爪と爪がぶつかり合い、火花が散る。 「ほぉーう、爪もよく手入れしてあるのぉ。 よく斬れそうじゃ」 「貴様、ふざけているのか……!!」 「カカ、ワシはいつでも本気じゃよ。 ホレ、足元がお留守じゃぞ?」 ガッ、と足払いをして体勢を崩す。 膝から崩れた事で奴の頭の位置が、 全力で殴るのにちょうど良いところに来る。 「すこぉしキツイの行くぞ?」 ドッ!!!!!! 「ガッ…………!!!」 諸に顔面に拳を喰らい、 奴の身体はそのまま吹き飛んでむき出しの岩盤に 叩きつけられる。 「…………くっ…………!おの、れ……!!」 「ほぅ、今のを食らってもまだ意識を保っておるか。 なかなかやるのぉ」 「いつまで、格上のつもりでいる………… 化け猫如きが!!!」 ドゥッ!!! 「ぬっ……!」 あちらも『気』を放って来る。 緋く、禍々しい殺気。 それでこそ、闘りがいがあると言うもの。 殺気と殺気がぶつかり合う。 鮮血が弾け、 火花が散る。 死力を尽くし、 己が力を示さんとする。 これが妖の戦い。 永き時を生きる醍醐味。 これこそが、妖怪の本懐よ!! …………………… ……………………………… ………………………………………… 時は、貞応二年。 西暦に直せば、千二百二十三年。 後の世で言う、鎌倉時代の出来事。 始まりは、よく出入りしておった村の民に、 ある頼まれごとをした事からじゃった。 「魔猫様、おねげぇします! わしらの村や隣村の仲間が、もう何人もやられとるんです。こんな恐ろしい事、獣や人間の仕業じゃありやせん。 間違いなく、妖の仕業でさぁ!」 「うーむ、そうは言うがのぉ。 ここらにそんな派手な事をしでかす妖なんぞ、 長いことおらんかったじゃろ? なんでまた急に現れたんじゃ?」 「なんでも、噂じゃそいつは 外の国の言葉を話すとかなんとか……。 もしかしたら、海の外からやって来た 妖なのかも知れやせん」 ポリポリと鳥の骨を食べていた手を止める。 「……ほぅ。外の世界から来た妖のぅ。 面白いではないか。興味が湧いた。 ソイツの正体を突き止めてやろう。なに、 人を食らうと言うのなら、血の匂いを辿れば 自ずと辿り着けよう。 カカカ、血湧き肉躍るわい」 村からほど近い、鬱蒼と茂った森の中を駆け抜ける。 時刻はまだ昼前でありながら、生い茂った葉の影に隠れて 陽の光はほとんど差し込まず、まるで夜の帳が下りたよう。 妖のワシでなければ、前を見る事すら難しいやも知れぬ。 そんな暗い森の中をひたすら進んで行く。 何度か見た大きな塩の水たまり……海の外には、 まだワシの知らぬ世界があるという。 行った事はないが、興味はある。 この日ノ本の国をつまらぬと思った事はないが………… 外の世界にはどんな景色が広がっておるのか。 どんな妖がいて、どんな力を使うのか。 一度見てみたい。 話だけでも、聞いてみたいものじゃ。 …………………… ……………………………… ………………………………………… 「……………………」 「………………おい、生きとるか? ワシの身体をここまでバラバラにしておいて、 謝罪の一言もなしにくたばるなぞ、許さんぞ」 「……………………勝手に殺すな。 こっちももう身体が動かんから休んでいただけだ。 ここまでしても死なんとは貴様、一体何をどうすれば 殺せるんだ?」 「カカカ、さぁての。 ワシもどうやったら自分が死ぬのか、 だんだん分からなくなって来たわ。 ま、今のところ死にたいとも思わんから別に良いがの」 「……ふん、訳の分からんやつだ。 殺しても死なんのなら、殺そうとするだけ 無駄ではないか」 誰のものとも知れぬ肉片が飛び散る血溜まりの中で、まだ名も知らぬ妖とワシは不思議と意気投合してしまった。 ───それがワシと神楽坂の、 最初の出会いであった。