約 1,802 件
https://w.atwiki.jp/shinmanga/pages/186.html
天国とは神のおわすことなり ◆JvezCBil8U 暗く、眩い星の海を、硝子の階段が一直線に割っている。 いや、硝子と見えたのは錯覚か。 蛍のような淡く白い光の粒子が、階段の形を描き出しているのだ。 その輪郭は薄らと滲み、虚空の闇へと溶け消えていく。 ここには天も地もない。 ただ黒一色の空間に、彩光の渦が配置されているのみだ。 もしかしたらそれらは星ですらないのかもしれない。 生き物のように細動を繰り返す煌めきは、重力から解き放たれた雪とも呼ぶべき幻想的な光景を見せつけてやまないのだから。 例外は一つ。 何処から続いているとも知れない儚い道、高みへと続く梯子だけ。 その行き着く先に――在り得べからざるモノが現出していた。 本来そこに鎮座しているべき宮殿、あるいは聖堂は、今は白い霧に包まれ姿を隠している。 その霧は、まるで意志を持つかのように感情を大いに表して、昂ぶっていた。 ――しばしの沈黙と蠢き。 そして、不意に。 霧を構成する水滴の一つ一つが、何かを穿つかのように一点に凝集する。 豪風を生む。 天災が降誕する。 凄まじい勢いで、天の果てを貫く。 同時――世界を埋め尽くす雷の帯が、この空間を支配した。 地獄の猛犬の叫びすら赤子の声にも等しく感じられる咆哮が、耳に聞こえる全てとなる。 霧の白と、雷の白。 二つの意志によって生み出された、二つの白。 闇がしばし塗り替えられ、然る後に静寂を取り戻す。 ――何一つ変わらない光景が、ただそこに存在していた。 彼らの試みは大いなる流れに呑み込まれ、塵一つとて残さない。 * シンセサイザーと歌い声のハーモニー。 あるいは、遠目より響く唄への不協和な伴奏。 嵐を呼ぶ風と共に訪れた不意の客。 大きな大きな女性の像の、その作り出す異常な状況に傾注していた4人――いや、3人にとって、闖入してきた電子音は唐突に過ぎた。 ある者は悠然と笑い、 ある者は目を細め、 ある者は口を開け、 三者三様の反応は、目を細めた一人に収束される。 視線を受けてひとまずの治療を終えたゾルフ・J・キンブリーが懐に入れて取り出したるは、2つの携帯電話。 その片割れが、この場で最も避けるべき騒音を奏で続けている。 ――キンブリーに支給された物品の一つこそ、これら一対の携帯電話である。 「う、うわ、うわわわぁ……っ! き、キンブリーさん! それっ、取れっ……じゃなくて、取って下さいっ!」 「はて、『取る』……と言いますと?」 慌てふためく森あいは、そこでようやくキンブリーが『携帯電話』の知識がないという事に思い当たる。 見ればキンブリーは形容しがたい種類の笑みを浮かべ、目の前の物体を矯めつ眇めつしているようだ。 ……このまま放っておけば相手が諦めて電話を切ってしまうかもしれない。 となると、その人に迷惑がかかってしまう。こんな状況で電話をかけてくる程度には友好的な相手が、だ。 それは、この心細い状況で自ら蜘蛛の糸を振り払ってしまうように思えて――、 「ちょ、ちょっと貸して! ……下さいっ!」 仕方なく森は、キンブリーの弄ぶカラクリの小箱、その片方に手を伸ばす。 『なぜキンブリーが携帯電話を持っているのか』 『持ち主が使い方も知らない携帯電話に掛けてくる相手とはいったい誰なのか』 『どうして、この図ったようなタイミングで電話をかけてきたのか』 そんな事に思い至る暇もないまま、日常の習慣で森はぱかりと画面を開く。 そこに示された名前は、彼女の知らない外国人の名。 「じょん、ば……?」 何も知らない森は、ついついその名を読みあげようとして――、 「あっ……!」 更に横から、掻っ攫われた。 趙公明が胡散臭いほどに爽やかな笑みを浮かべ、ウィンクしつつ通話ボタンを押す。 と、ぽん、と小さな風とともに自分の肩に手が置かれた。 ようやく気付く、ウィンクをして見せた先は自分ではないのだ、と。 「ふむ……、分かりました。 あいさん、どうやら私たちではなく彼が担当すべき事案のようです。 邪魔をしてしまうのも悪いですし、少し離れたところでこちらの――彼女の処遇をどうするか決めるとしましょうか」 振り返れば、キンブリーが狐のように目を細めて微笑を浮かべている。 肩に置かれた手の存在感が、何故か気持ち悪い。 大した力は入っていないのに、まるで万力で締め付けられるかのように伸ばした手が動かない。 首元の手がまるで刃物のように感じられて、森は自分でも気付かないうちにキンブリーの言う通りに動いている。 動かされている。 * 「……やあ! 数時間……いや、既に半日ぶりだね」 橋の方に向かったキンブリー達が十分に離れたのを確認し、ようやく趙公明は第一声を放つ。 「“彼”の部下としての役職名と、君自身の持つ能力と――、 二重の意味で“ウォッチャー”である君がわざわざどうしたんだい?」 電話の相手が、何がしかを囁いた。 轟、と、吹きつける風の音に掻き消され、声の主の台詞は趙公明以外の誰にも聞き咎められることはない。 「……御挨拶だね。あそこにあるだろう映像宝貝は僕が千年もかけて作った舞台装置だよ? 所有物を取り戻しに行って、何が悪いのかな」 巻く風は朝方に比べ次第に、着実に強くなってきている。 見れば、空の彼方に黒雲の帯が手繰り寄せられつつあるのが確認出来た。 雨か、雪か、はたまた嵐か吹雪か。 遠からず、この島は天の気まぐれに付き合わされることになるのだろう。 「あそこで起こるであろう舞踏会への招待状を握り潰すなんて! 普段の僕ならば聞き入る耳を持たないが、“彼”のお達し……という訳ならば話は別か。 トレビアーンな美的センスの同志の言葉とあらば、確かに僕も無視はできないからね!」 ――そう。 天候を統べることこそ、“神”にとっては古来より最も普遍的に弄ぶ力の一端だ。 遥か悠久の昔から、人は天の神に祈る。 雨をもたらし、豊かな恵みを下賜したまえと。 岩戸を開けて、陽光を眼下に与えたまえと。 「だが――、華やかなるステージを見て僕に動くな、というのはあまりに残酷! 無碍に断るのも好ましくないから、様子を見る段階は確かに踏まえよう。 だが、最終的に僕がどう動くかは僕が決めさせてもらう! 僕はあくまで利害の一致に基づく協力者、という事を忘れた物言いは感心しないな」 神を覆う薄靄のヴェールは、今まさに着々と剥がれ続けている。 「……まあ、“彼”の事だ。 こう告げる事で結果的に僕がどう動くのかすら、最初から織り込み済みなのだろう? 要するに、僕がどれだけ好き勝手にやろうと予定に狂いはあり得ない。そして、僕もそれで構わないよ。 何故なら“彼”は“ユーゼス”や“ゴルゴム”、そういう次元に佇む存在なのだからね!」 趙公明が言葉を切る。 すると電話相手はそれを待っていたのか、別の話題を新たに振った。 彼の妄言はその殆どが聞き流されていたのだろう。 あからさまに疲れたような溜息が、確かに受話器の向こうから届く。 天に太陽は輝いているのに、張り付くように辺りの気温は一向に上がらない。 心なしか、吐く息が白く色づいてきてさえいるかもしれない。 「……成程ね。“ネット”も思惑通りに軌道に乗り始めているのか。 となると、その掲示板とやらに麗しき僕の動画をリンクとして張り、皆に知らしめるのも面白いかもしれない! いや、blogとやらを拓いてみせるのも面白いかもしれな――、ん?」 電脳の海を使ったロクでもない催しを脳内に展開する趙公明の耳に、少しばかり予想外の話が届く。 「……ふむ。いいだろう、代わってみたまえ。 一体僕にどういう用事かな?」 聞けば、電話を代わって自分と話したい御仁がいるらしい。 見知った相手の名前を聞かされ、趙公明は鷹揚と頷いた。 そして耳に入るは、まさしく最強の道士と謳われる傍観者のその声が。 『何時如何なる時でもあなたは全く自分というものがブレませんね、趙公明。 それは確かに、あなたの強さではありますが』 「申公豹! 君がわざわざ僕に連絡を取るとはどういう風向きだい?」 旧友と出会った時のように声に喜色を滲ませて、気取ったポーズを虚空に見せる。 様にはなっているものの、いちいちその所作は演技臭く、くどいと言わざるを得ない。 『……いえ。いくつか不測の事態が発生しましてね。 あくまで我々にとっては、ですが。 王天君などは不満を隠すどころか苛立ちを露骨に表に出していますが……、おそらく分かっているからこそでしょう。 口では予定が狂った、などと言いつつも、その実掌の上で駒を踊らせているだけの“彼”の性格を』 なんでも紅水陣を用いての雑用に赴かされたのだとか。 封神計画の裏の遂行者であった頃からの苦労人ぶりに、ぶわっと趙公明は目の幅の涙を流す。 「――なるほど、確かに“彼”ならば僕たちにさえ全てを告げないのはむしろ当然だろう。 おそらくあのムルムルであっても全貌は知らされていないだろうね。 それどころか、僕たちがそれぞれに知らされた断片情報を持ち寄ってさえ、その意図にたどり着けないかもしれない! 全く、実に素晴らしい脚本家だよ、“彼”は!」 まあ、そんな気遣わしげな所作が長続きするはずもなく、趙公明はコロコロ表情を切り替える。 既にその眼の中にはキラキラと輝く星が散りばめられていた。 “彼”とやらによほど近しいものを感じているのだろう、美的センスの相性もあって親愛すら抱いているらしい。 そんな奇矯者に対する反応も手慣れたもので、申公豹は相手の言葉を遮って話を切り出した。 『まあそれは置いておいて、本題に入るとしましょうか。 ……私は現時点を以って主催者を辞め、傍観者に戻ります』 ――沈黙。 珍しく、趙公明が顔の表情全てを消す。 僅かに言葉を口の中で転がして、平坦な口調で紡ぎ出した。 「…………。 太公望くんが斃れたからかい? それとも、他に理由があるのかな。 このバトルロワイヤルに僕や王天君を誘った当人が、最大の目的が消えてしまったから手を引くというのは――、 いささか、身勝手に過ぎないかな?」 また――一迅。 強く、鋭く、寒風が吹き付け走り去った。 貴族衣装が音とともにはためいて、ふわりと棚引いては落ち着いていく。 『無論、太公望の肉体の喪失が理由の大きな部分を占めているのは確かです。 始まりの人に戻る前の太公望と戦える――、それがまたも難しくなった以上はね。 ですが理由は、それだけではない』 一拍の静寂を置いて、申公豹は語る。 『……見届けてみたくなったのですよ、あなた達全員の行く末を。 その為には当事者よりも傍観者――“観測者”と言い換えてもいいですが――が望ましい。 その意味では、私は今しばらくこの祭事に関わり続けます。 場合によっては、また積極的に関わらせて頂くことになるかもしれませんね。立場は変わるかもしれませんが。 その時はあなたたちと敵対する可能性すらあるかもしれません』 台詞の最後の一文に、趙公明は僅かに表情を取り戻す。 そこに現れたのは紛れもない、羨望だった。 「“彼”に牙を剥いたのかい? 申公豹」 敵対の可能性の示唆。即ち『戦い』がそこに生まれ出るという事は。 因果の因となる何らかを、申公豹は試みたのだという事。 そして戦いを至上とする趙公明にとって、それは胸を焦がすほどに手を伸ばしたい代物なのだ。 『そこまでのものではありません。ただ、“彼”という存在を試してみたくなったのですよ。 なにせ、『太公望が早期に退場する』という事を分かった上で敢えて私に協力を要請したとあらば、 “彼”は最初から利用するためだけに私に近づいたという事なのですからね』 「そしてそれは、ほぼ確実なことである――、と」 口端だけを、歪めて答える。 申公豹の機嫌を損ね、しかしこの催しに何ら障害が出ていないという事は。 申公豹が、淡々と事実だけを連ねているという事は。 『……ええ。 なので私と、タイミング良く彼に意見を申し立てようとするもう一人とで“彼”と相対することになったのですが。 やはりといいますか、私では――私たちでは、“彼”に傷を与える事にすら手が届かないようです』 「ほう?」 まさしく、思った通り。 『雷公鞭を放ったところで、雷の全てが“彼”の横を通りすがって行くのですよ。 まるで、十戒の導き手が海を割るように。 その中で“彼”は悠然とただ立っていました。指一つ動かさずにね』 素晴らしい、と、その一言しか思い浮かばない。 “彼”との接点を作ってくれたこと。 それはまさしく申公豹に感謝すべき事で、だからこそ身勝手さと相殺して進ぜよう。 極上の笑みを浮かべながら、趙公明は一人頷いた。 『“彼”の前に力は無意味です。 手を届かせることが出来るとすれば、それは力ではなく――』 そして、受話器を手にしたまま、ゆっくりと首をを動かしていく。 視線の先に在るものをしっかと捉えながら、呟くように話を打ち切った。 「……失礼。どうやらエルロック・ショルメくんが来訪してしまったようだ」 言葉だけ見れば、唐突な闖入者に対応する字面。 されどその態度は穏やかに過ぎて、分かっていて敢えて聞かせたのかとさえ勘繰る事が出来てしまう。 一連の、会話を。 「さて、招かれざるマドモアゼルこと、ガンスリンガーガールあいくん。 キンブリーくんにこの事を告げたらどうなるか……、分かっているね?」 優雅な一礼を披露しながら、趙公明は携帯電話の電源を落とす。 そのまま念を押すかのように告げた言葉には、一切の温かみが存在していなかった。 酷薄な笑みとともに、金の髪持つ男は少女を見下ろして動かない。 ――何処から聞いていたのだろう。何時からそこにいたのだろう。 森あいも、ガクガクと体を震わせたまま動かない。 彼女は、知らないのだ。 キンブリーが、趙公明が“神”の陣営に座する事を知った上で、敢えて手を組んでいた事を。 「彼は持っている異能も頭脳の聡さも特別だからね。 こうして僕のようなものが近くにいるのも――、全く以って不思議ではない、と思わないかい?」 だから、こんなにも簡単な口車で勘違いをしてしまう。 『善良かつ蘇生の力を持つキンブリーを監視するために、趙公明が彼を騙して側にいたのだ』と。 趙公明は、嘘を吐いてはいない。 だからこそ、その言葉の響きが確からしさを伴って森に突き刺さった。 幾重もの雑多な考えが、森の脳内を乱舞する。 それは取り留めもなく拡散し、これからどうすべきかというのも纏まらない。 「……ぁ、」 ただただ、目の前の男が自分たちをここに放り込んだ連中の一味だと、それを知ってしまった恐怖が膨れ上がり、渦巻いている。 ごく、という唾を呑む音がやけに生々しく響いた。 キンブリーに頼りたい、という選択肢が真っ先に浮かび、しかしそれは趙公明の第一声が否定し尽くしている。 キンブリーくんにこの事を告げたらどうなるか……、分かっているね? 何度も何度もその一声がリフレイン。 もう、彼女にキンブリーを疑う余地はなくなっており――、だからこそ、彼の下に戻る事はできなくなった。 趙公明を出し抜かねば未来はないと、彼女の脳は勝手に決断を下してしまう。 植木を蘇らせるという小さな願いを叶えるために、キンブリーをこの男の魔の手から助けねばならないのだ、と。 押し潰されそうな重圧の中、一人ぼっちの彼女は息を荒くする。 不意に、じり、と音がした。 気がつけば静かに、趙公明はこちらににじり寄ってきていた。 「……う、ぁ、やだぁ……っ、ひゃ」 ずい、と押し出された手が禍々しく、トマトを握り潰すように脳天を掴もうとしている。 そこが、限界だった。 訳の分からない衝動が風船を割るかのように弾け飛ぶ。 「ひ、ぁ、わぁぁぁああぁぁあぁああぁぁあぁぁぁああぁああああぁぁぁああああぁぁぁ……っ!」 何処へ向かうとも知れず――、森あいは、駆けだした。 キンブリーを趙公明から救い、優勝させ、皆を蘇らせることだけをよすがとして。 そんな儚い砂の城だけが、今の彼女を彼女たらしめる唯一の頼り。 その幻想がぶち殺された時、彼女は果たしてどこへ落ちていくのだろうか。 知るとするならば、それはきっと“神”だけだろう。 【H-08/三叉路付近/1日目/午前】 【森あい@うえきの法則】 【状態】:疲労(中) 精神的疲労(中)、混乱 【装備】:眼鏡(頭に乗っています) キンブリーが練成した腕輪 【道具】:支給品一式、M16A2(30/30)、予備弾装×3 【思考】: 基本:「みんなの為に」キンブリーに協力 0:……植木……ごめんね…… 1:キンブリーを優勝させる。 2:鈴子ちゃん…… 3:能力を使わない(というより使えない)。 4:なんで戦い終わってるんだろ……? 5:趙公明からキンブリーを助け出したい。 6:趙公明に恐怖。何処でもいいから急いで逃走。 7:安藤潤也に不信感。 【備考】 ※第15巻、バロウチームに勝利した直後からの参戦です。その為、他の植木チームのみんなも一緒に来ていると思っています。 ※この殺し合い=自分達の戦いと考えています。 ※デウス=自分達の世界にいた神様の名前と思っています。 ※植木から聞いた話を、事情はわかりませんが真実だと判断しました。 ※キンブリーの話を大方信用しました。 ※趙公明の電話を何処まで聞いていたかは不明ですが、彼がジョーカーである事は悟っています。 ※どの方角へ向かったかは次の書き手さんにお任せします。 小さくなる彼女の背を一瞥し、趙公明はやれやれと嘆息する。 淑女たるものもっと優雅に振舞うべきだというのに。 少し脅し過ぎたとはいえ、せめてその銃で自分を打倒しようという気概くらいは見せて欲しかった。 聞かれてしまったのは少し注意不足だったかもしれない。 だが、フォローのおかげでこれはこれで面白い事態になったと言えるだろう。 戦闘快楽主義たる趙公明は、だから再度電話を手にすることにした。 掛ける先はWatcherでも最強の道士でもなく――、 * 見よう見まねで電話を取ったキンブリーが趙公明と待ち合わせたのは、橋の手前。 ――灰色づき始めた空を見渡せる、拓けた空間に二人の男が集い合う。 「……やれやれ。 だから勝手な事はするなと言ったのに」 あらぬ方向を見ながら独りごちるキンブリーの言葉は、無論森あいという少女に向けたものだった。 「おや、反応が薄いね。 少しばかり残念がるか、あるいは僕に憤ってくれた方が面白いのに!」 道化じみた態度を崩さない趙公明への対応も最早手慣れたもの。 眉を下げたうすら笑いを返しつつ、両手を開いて肩を竦める。 「その状況ではあなたの対応は及第点ですよ。 要は私に信を預けたという状態がクリアされてれば良い訳ですからね。 しかし――、これはあなたに同行することがやや難しくなったという事でもある。 今しばらくは平気でも、場合によっては後々別行動を考えなくてはいけないでしょう」 つまり、これからどうするか。問題はそこに集約される。 ひとまず趙公明は、向こうに見える巨大な女性の立体映像に関しては静観するよう釘を刺されたらしい。 が、この男の事だから、首を突っ込むのも時間の問題だろう。果たしてどこまで言いつけを守るやら。 他にも聞かされた話のいくつかでは、ネット、とやらにも興味が惹かれる。 この携帯電話という道具でも接続できるらしく、後で試してみようと心中呟く。 そして、それ以上にいろいろ楽しめそうな玩具が一つ。 「それにこちらとしても面白い素材を見つけましてね。 まあ、これ以上あの少女に構っても時間対効果は低いですし、丁度いい頃合いですよ」 目を向けた先には、倒れ伏した血塗れの少年が転がっていた。 肉体的にも精神的にも疲れ切ったのか今はぐったりとしており、しばらく目を覚ます事はないだろう。 正直な話、森あいにはこの少年との遭遇当初の険悪な雰囲気をもう少し耐えて欲しかったところだ。 血塗れで言動も支離滅裂なこの少年に恐怖を感じたのも仕方ないとはいえ、自分が彼と相対したほんの少しの隙に勝手に趙公明に助けを求めたとは。 その試みも何の意味もなかった上に、仕込みの仕上げを完了させることも出来なかった。 けれど、過去を振り返っていても得るものは何もない。 さしあたって今は目の前の少年――安藤潤也でどう面白おかしく遊ぶかを焦点にしよう。 邂逅のその瞬間を思い出す。 錯乱さえ感じさせる言動とともに覚束ない足取りでこちらの方へと駆けてきたこの少年は、 妲己や兄貴、金剛などと気になる単語をいくつも吐いていた。 どうやら何処の誰かは知らないが、下拵えを完璧に整えてくれていたらしい。 キンブリーでさえ舌を巻くその手腕は実に大したものだ。 また、この少年はキンブリー自身の事をどこかで聞きつけていたらしく、 自己紹介の折に『蘇生が出来るのは本当か』などと凄い剣幕で詰め寄ってきた。 無論、と鷹揚に頷いてやったら、その場で力尽きたらしくがくりとへたり込んでそのまま沈むように眠ってしまったのだ。 恐らくは先に仕込みを終えた白雪宮拳経由の情報だろう、種が育ってまた新たな種を育む様は見ていてとても嬉しいものである。 まさしく文字通り、糸を切ったように唐突に眠り込んでしまった少年。 まだまだ詳しい話は全く聞いていないが、それは目覚めてからのお楽しみにしておこう。 もう一つの問題として、さて、この治療を施した少女をどう扱うか、というものがある。 こちらもまた目覚める様子はなく、予定通り打ち捨てておくのが賢明か。 なにせ森あいがいなくなったとあれば、まさしく不要な代物でしかないのだから。 どうせはぐれるのなら、せめて無駄に力を使う前にしてほしかったですね、と内心愚痴をこぼすキンブリー。 まあ、一見ガラクタにしか見えないものにも使い道が残っている時もあるのも確かだ。 ひとまずこちらは保留とすべきか。 「――話を戻しましょう。 やっと合点がいきましたよ、私にこんなものが支給された理由がね。 あのカタログにあった“交換日記”――それがこの、ケイタイデンワ、とやらの機能だったとは」 この鬼札と彼自身の遭遇さえ予定されたこと。 そのサポートの道具まで目の前にある事に嘆息するも、悪い気はしない。 つまりはそれだけ、自分は“神”の陣営に近しいと見込まれているということなのだから。 頬肉をわずかに吊り上げ、く、と快を漏らす。 「まさしくお誂え向きに僕たちのために用意されたものだろうね! たとえ別行動をしたとしても互いに連絡し合い、フォローをしあうことが出来るアイテムだ!」 未来日記所有者7th――戦場マルコと美神愛。 本来は彼らが持っていた未来日記こそが、今、キンブリーと趙公明がそれぞれ手に持つ“交換日記”だ。 その機能は簡潔に説明すると、お互いの未来を予知し合うというものである。 片方だけ用いるならば“雪輝日記”とさほど性能に差はないが、二つ組み合わせることで所有者たちの“完全予知”を行う事が可能となる。 総合的な情報量が多いが雪輝中心の未来のみを予知する“無差別日記”+“雪輝日記”と違い、 情報量そのものは少ないものの使用者たち双方の未来をカバーすることが出来る性質を持つ。 逆に言えば。 所有者自身の未来を予知する事は出来ず、有効活用するためには相方との連携が必須とされる未来日記でもある。 「……加えて、使用にはリスクが伴う。 使用者の首輪から半径2m以内でこの“プロフィール欄”を編集し、本人の名前を入力することにより機能を解放することが出来ますが――、」 本来ならばマルコと愛専用の未来日記をこの殺し合いで用いることが出来るようにする措置なのか、 手順を踏むことで予知対象を変更することが可能だと説明書きには記されている。 “マルコ”の携帯電話からは“愛”の携帯電話の使用者の、“愛”の携帯電話からは“マルコ”の携帯電話の使用者の予知が可能となるようだ。 一見便利にもほどがあるアイテムだが、しかしキンブリーは使用に躊躇する。 そうは問屋が卸さないとばかりに説明書きの続きには無視など到底できない記述が存在していたのだ。 はあ、と心底渋い顔で長い長い息を吐く。 「……止めておきましょうか。現状そこまでの危難も存在しませんし、使う必要はないでしょう」 研究対象としても非常に興味深いし、未来予知によるリターンは非常に魅力的だが、致し方あるまい。 何より、この未来日記を使用するには相方への絶対の信頼が必要不可欠だ。 自分の未来を予知されては、いざ敵に回った時に確実に詰む。 ……特に。 現在の自分の相方のような、絶対に油断のならない存在に対しては、尚更。 向こうの行動を予知できるのはこちらも同じだが、地力の差が圧倒的だ。 策を弄してもその策まで知られてしまうようではお話にならないのだから。 確かに感性の近さなどから親近感のようなものは無きにしも非ずだが、流石に自分の未来を預けられるほどではない。 そもそもが唐突な出会いだったのだ、何時この協働関係が崩れてもおかしくない以上、身を委ねるには不安が過ぎる。 内心の不信を押し隠しながら、ちらり、と横目で趙公明を見る。 「……な、」 絶句。 さしものキンブリーであろうと、ただ、絶句するしかない事態がそこにはあった。 珍しく口をあんぐりと開け固まったキンブリーの耳に、ゲーム版封神演義のカラオケで披露された麗しき子安ボイスが入り込む。 「この電話が破壊された時、プロフィール欄に記された名前の持ち主もまた、死亡する……? 構わないじゃないか、戦いにはリスクが付き物だ! 自身が敗れる可能性もないまま力を振るうのは断じて僕の望む闘争などではない――、ただの子供の癇癪さ」 趙公明は目の前で、己自身の名前をプロフィール欄に入力して見せていた。 そして――、にこやかにそれを自分に放り投げてよこすのだ。 動けない。 目の前の奇行に理解が及ばず、時が完全に凍りついている。 だってそれは、心臓を手に握らせるのと同じこと。 キンブリーが今、受け取った携帯電話をちょいと割り折っただけで、たったそれだけでこの男は死ぬことになるのだ。 だと言うのに、趙公明は静水の如く全く揺らがない。 態度の意味が、分からない。 絞り出した声は途切れ途切れで、キンブリーの脳内は白に塗り潰されそうなのが目に見える。 「……一体、何を……考えている、のですか? 仮に今ここで私がこの携帯電話を破壊したら、あなたはあっさり死ぬことになるのですよ? 正面からあなたを倒すのは難しいでしょうが、握った電話の破壊だけならやってやれない事はない。 折しも今、あなた自身の言った通りに」 困惑を通り越し、狼狽とさえ呼べる反応を返すキンブリー。 趙公明はそれを見て満足したのか破顔し――、 「ハァーッハハハハッ! 愛さ、愛だよキンブリーくん!」 場違いな単語で、疑問の全てに答えて見せた。 「愛……?」 「そうとも。僕は君がそんな事をしないであろうという事を確信している。 親愛、信愛、友愛、人愛、敬愛、恩愛……。 僅かな時間の付き合いながら、君の嗜好は僕がそれらの感情を抱くのに十分だった。 僕は君のその美学に敬意を払い、同時に親近感を抱いているのさ。 数多ある感情の全てに共通する一字があるのなら、それこそが真実。 これを愛と呼ばずに何と呼ぶのだろう!」 ブワリと趙公明の周りに何処からともなく黄金の花弁が舞い散った。 じぃ、と星を抱いて自分を見つめる真摯な瞳。 意識せずに、キンブリーの頬が思わず朱に染まる。 顔が熱を持つのを、自覚してしまう。 「愛――それは一なる元素。 僕はその愛を、これからも君と深めていきたいと思う!」 飛び込んで来いとばかりに鷹揚と両手を広げる趙公明。 何処までもまっすぐな視線は、確かにキンブリーへの十全の信頼を証明していた。 「……やれやれ。そうまで言いきられてしまっては、ね。 此方としても断ったら立つ瀬がなくなってしまうではありませんか」 キンブリーは、その強さに耐えられない。 目線を逸らす――、きっとそれは陥落を意味していたのだろう。 キンブリーは照れを隠すように頬を掌で隠し、自分自身の携帯電話を取り出した。 慣れない手つきで一字一字、慈しむように自分の名前を打ち込んでいく。 「……この催しを更に楽しむために最適な手段だと思ったからこそ、こうするだけですよ。 決して、あなたの為にした訳ではありませんからね」 相変わらず目線を合わさないキンブリーに、趙公明は静かに頷いた。 「無論、今はそれでいいとも。今は……ね」 「――ッ……!」 不意の言葉に息を呑み込む。 ようやく名前を打ち込むと、そこには確かに、手を取り合った自分たちの未来が示されていた。 「……ご自愛を。 流石に自分自身の命くらいは、己の手に収めておくべきですよ」 ゆっくりと歩み寄り、パートナーに電話を返す。 手と手で受け渡されるそれは、まるで指輪の交換のようだった。 観測者はここに、薔薇の花を幻視する。 いつしか真っ赤な花が、確かに咲き乱れていた。 【H-08/橋の手前/1日目/午前】 【趙公明@封神演技】 【状態】:健康 【服装】:貴族風の服 【装備】:オームの剣@ワンピース、交換日記“マルコ”(現所有者名:趙公明)@未来日記 【道具】:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演技 橘文の単行本 小説と漫画多数 【思考】: 基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。 1:闘う相手を捜す。 2:映像宝貝を手に入れに南に向かいたいが、お達し通り様子見。 しかし、楽しそうなら乱入する。 3:カノンと再戦する。 4:ヴァッシュに非常に強い興味。 5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。 6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。 7:映像宝貝を手に入れたら人を集めて楽しく闘争する。 8:競技場を目指したいが……。(ルートはどうでもいい) 9:キンブリーが決闘を申し込んできたら、喜んで応じる。 10:ネットを通じて遊べないか考える。 【備考】」 ※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。 ※参加者などについてある程度の事前知識を持っているようです。 【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師】 【状態】:健康 【服装】:白いスーツ 【装備】:交換日記“愛”(現所有者名:キンブリー)@未来日記 【道具】:支給品一式*2、ヒロの首輪、不明支給品×1、小説数冊、錬金術関連の本 学術書多数 悪魔の実百科、宝貝辞典、未来日記カタログ、職能力図鑑、その他辞典多数 【思考】 基本:優勝する。 1:趙公明に協力。 2:首輪を調べたい。 3:剛力番長を利用して参加者を減らす。 4:森あいが火種として働いてくれる事に期待。 5:参加者に「火種」を仕込みたい。 6:入手した本から「知識」を仕入れる。 7:ゆのは現状放置の方向性で考える。 8:潤也が目覚めたら楽しく仕込む。 9:携帯電話から“ネット”を利用して火種を撒く。 【備考】 ※剛力番長に伝えた蘇生の情報はすべてデマカセです。 ※剛力番長に伝えた人がバケモノに変えられる情報もデマカセです。 ※制限により錬金術の性能が落ちています。 ※趙公明から電話の内容を聞いてはいますが、どの程度まで知らされたのかは不明です。 【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】 【状態】:疲労(大)、精神的疲労(大)、情緒不安定、吐き気、 右手首骨折、泥の様に深い眠り 【服装】:返り血で真っ赤、特に左手。吐瀉物まみれ。 【装備】:獣の槍、首輪@銀魂(鎖は途中で切れている) 【所持品】:空の注射器×1 【思考】 基本:兄貴に会いたい。 0:……。 1:旅館に行って兄貴と会う。 2:キンブリーから蘇生について話を聞く。 【備考】 ※参戦時期は少なくとも7巻以降(蝉と対面以降)。 ※能力そのものは制限されていませんが、副作用が課されている可能性があります。 ※キンブリーを危険人物として認識していたはずが……? ※人殺しや裏切り、残虐行為に完全に抵抗感が無くなりました。 ※獣の槍の回復効果で軽度の怪我は回復しました。 【ゆの@ひだまりスケッチ】 【状態】:貧血、後頭部に小さなたんこぶ、洗剤塗れ、気絶 【服装】:キンブリーの白いコート 【装備】: 【道具】: 【思考】 基本:??? 1:ひだまり荘に帰りたい。 【備考】 ※首輪探知機を携帯電話だと思ってます。 ※PDAの機能、バッテリーの持ち時間などは後続の作者さんにお任せします。 ※二人の男(ゴルゴ13と安藤(兄))を殺したと思っています。 ※混元珠@封神演義、ゆののデイパックが三叉路付近の路地裏に放置されています。 ※切断された右腕は繋がりましたが動くかどうかは後続の作者さんにお任せします。 【交換日記@未来日記】 未来日記所有者7th、戦場マルコ&美神愛の所有する未来日記。 我妻由乃の“雪輝日記”の様に、特定の一人だけを予知する機能を持つ二つで一つの未来日記である。 使用者自身の予知は出来ないが、互いに未来を予知し合う事で完全予知を実現する。 今ロワには7thが参加していないため、携帯電話のプロフィール機能を用いることで予知の対象を変えることが出来る措置がなされている。 具体的には、使用者の首輪から半径2m以内でプロフィールの名前欄に本人の名前を入力することで機能が解放される。 予知の対象はもう片方の交換日記のプロフィールに記された名前の相手となる。 ただし未来日記のルールに則り、名前を入力した時点から携帯電話の破壊=使用者の死亡となる。 “無差別日記”や“逃亡日記”などで予知の対象変更が可能かどうかは不明。 * 1:【生きている人】尋ね人・待ち合わせ総合スレ【いますか】(Res 6) 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYArE スレタイ通り、人探しや待ち合わせの呼びかけをするためのスレです。 どこで敵の目が光っているか分からないので、利用する際にはくれぐれも気をつけて! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 6 名前:ポテトマッシャーな名無しさん 投稿日:1日目・午前 ID:mIKami7Ai 森あいさんと潤也さんのお兄様を探しています。 ご本人か行き先を知っていらっしゃる方がいましたら、ご連絡ください。 * 光の飛沫が形作る独演会。 半透明なパイプオルガンから噴水のように吹き上げては降り注ぐ金粉の流れが、天上の舞台を描き出している。 同心円状に拡散する煌めく粒子は、円盤の端に辿り着くと滝に呑まれて眼下に降り注いでいった。 まるで古代人の描いた地球のような円盤状の大地。 全天を闇と彩雲に包まれたその場所で、二つの影が世界を睥睨する。 木枠と扉だけが無数に宙に漂っており、その開いた向こう側には数多の人の生き様が映し出されていた。 ひとつは、純白のスーツに身を包み、長髪を後頭部で括った青年。 ひとつは、異形の剣を異形の身に佩く髑髏の男。 「事象を一面から捉える事は叶わぬ。 誰もが悪夢と罵る催事であろうと、兆しを待つ者には深淵へと渡された蜘蛛の糸として、千載一遇の好機となる折さえ在る。 我等の様に」 馬上の騎士が呟いたその声に、青年は応えを返さない。 ただ、その手に摘まんだ一輪の花を鼻に近づけ――、 「この美しく整った盤面に、願わくば」 虚空へと、投じた。 「なるべくなら良き日々が多くありますよう――」 花は光の濁流に飲み込まれ、千切られ、翻弄され――見えなくなる。 そして、誰も見届けることのない流れの中で、闇の中へと融け消え入った。 花の名前は曼珠沙華。またの名を彼岸花。 意味する花言葉は――、 時系列順で読む Back 燃えよ剣(下) Next 厨BOSS BATTLE-BERSERK- 投下順で読む Back 燃えよ剣(下) Next 厨BOSS BATTLE-BERSERK- 115 燃えよ剣(下) 安藤潤也 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻 108 Guilty or Not Guilty ゾルフ・J・キンブリー 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻 108 Guilty or Not Guilty 趙公明 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻 108 Guilty or Not Guilty 森あい 125 「あの未来に続く為」だけ、の戦いだった 108 Guilty or Not Guilty ゆの 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1765.html
10話 後編 勢いを盛り返したキュルケとタバサがラングラーを追い詰める。 「いくわよ、タバサ!」 キュルケの声とともに、複数のファイア・ボールがラングラーに殺到するッ! それと同時にラングラーは鉄クズの弾丸を二人に向けて放つが、 タバサのウィンド・ブレイクがそれらを全て元の軌道からそらす。 二人を貫くはずだった鉄クズはギリギリのところで二人には当たらず、 その後ろの壁に突き刺さる。 そしてラングラーも、自分に向かってきたファイア・ボールは 全て唾を吐きかけた掌で消滅させる。 互いの技術と能力が、互いの攻撃を無力化する。 このままでは、押し込まれかねない。 ラングラーはそう思った。 相手の小娘メイジは二対一で戦うことで精神力の磨り減りを遅くしている。 しかしさっきから鉄クズを撃ちまくっている自分は、残弾にあまり余裕がない。 チョロい仕事だと思って補給二回分の鉄クズしか持ってこなかったのが、 この状況ではかなり痛い。 一回目の補給は既にしてしまったので、次の補給が最後になる。 今までのようにハイペースで撃ちまくることは出来ない。 しかし――手数を減らす事はできない あの青髪の小娘。 あれがいる限り、こちらの攻撃が直撃する事は望めない。 加えて今はこっちの攻撃を防御するのに徹してるからいいが、 こっちの攻撃の度合いが弱まればすぐ攻撃に参加してくるだろう。 接近戦に持ち込む、というのも考えたがすぐに止めた。 そんなことをしたら確実にホワイトスネイクが動く。 赤髪の小娘の炎を消しつつ、 JJFの射撃をほぼ凌ぎきったホワイトスネイクと接近戦で立ち回れるほど JJFは器用じゃないし、自分もそうじゃない。 このままでは、詰まれる。 その焦りが、ラングラーに一つの決断をさせた。 この二人の小娘を、カラカラのミイラにしてやると。 こんな小娘相手に「これ」をやるのは腹立たしいが、 やらずに負けて死ぬよりはずっとマシだ。 そしてキュルケのファイア・ボールの弾幕が一瞬途切れた瞬間、 ラングラーはJJFの両腕のリングを開いた。 鉄クズの弾幕が途切れる。 それと同時にタバサが素早くルーンを唱え、身の丈より長い杖を軽く振る。 ラングラーがJJFの腕のリングに唾を素早く吐き入れたのは、 それのコンマ一秒、二秒ほど後。 直後、タバサのエア・ハンマーがラングラーに襲い掛かる。 ゴォアッ! 唸りを上げて自分に迫る風圧の塊をラングラーはモロに食らい、 壁に叩きつけられる。 ドグシャァッ! 「があッ!」 自分の体に走った衝撃と鈍痛にラングラーが呻いた。 だが顔を苦悶に歪めながらも、ラングラーの口は笑みの形に歪んでいた。 JJFの腕のリングは既に閉じ、高速で回転していた。 そのリングの中で、先ほど吐き入れられた唾は拡散、分散し、 リングの中の全ての鉄クズに付着した。 無重力の世界を生み、さらに真空の世界を作り出すラングラーの唾。 それが、弾丸として発射される鉄クズをコーティングした。 この世界でラングラーが編み出した、 JJFの究極にして最悪の戦術が始まった。 「ようやく・・・追い詰めたってとこかしら?」 タバサのエア・ハンマーで確実なダメージを受けて膝を突くラングラーを見て、 キュルケはそう呟いた。 「まだ油断できない」 タバサはそれを制するように言い、杖をラングラーに向ける。 キュルケはそれに頷くと、タバサと同様に杖を構える。 二人とも残りの精神力にはあまり余裕が無い。 決着をつけるなら、次しかなかった。 そのときだ。 「しかし・・・お前らは・・・よく頑張ったよ」 ラングラーが二人に声をかけた。 エア・ハンマーをまともに食らった割には、その声に張りがあった。 「・・・どういう意味よ?」 警戒しつつ、キュルケが答える。 「まだハタチにもならねえってのに・・・トライアングルで・・・ オレとここまで・・・やりあえるとはな・・・恐れ入ったよ」 「だから何が言いたいのよ!?」 明らかに追い詰められた状況でありながらも余裕を崩さないラングラーに、 キュルケは得体の知れない恐怖を感じた。 タバサも口こそ開かなかったが、キュルケと同様にそれを感じていた。 「だがな・・・お前らは・・・これから詰まれるんだぜッ!」 瞬間、JJFがリングに残る全ての鉄クズを、部屋中に無差別に撃ち放った。 ドドドドドドドドドドドッ! 放たれた鉄クズは、あるものはキュルケ、タバサ、そしてルイズへと向かい、 またあるものは壁に突き刺さり、またあるものは壁を跳ねた。 タバサは自分たちの方向へ飛んでくるものを正確に見極め、 ウィンド・ブレイクで射線をずらす。 ルイズへと向かうものは、ホワイトスネイクがルイズのベッドをひっくり返し、 それを盾にしてガードした。 タバサはこの防御で、これでラングラーの攻撃が終わったと思った。 自分の方に向かってきた鉄クズ全てに対処しきったからだ。 だが――ラングラーの攻撃はまだ終わっていなかった。 ホワイトスネイクにはそれが分かっていた。 部屋全体にばら撒くような射撃。 ホワイトスネイクもこれでダメージを受けた。 この攻撃における、ラングラーの狙いは―― 「ソイツハ『跳弾』ダ! 警戒シロ!」 ホワイトスネイクが二人に向かって叫ぶ。 だが、それは遅すぎた。 いや、仮に遅くなかったとしてもこの世界には「跳弾」などという言葉は無い。 故にタバサがその言葉の意味を理解し、正確な防御に移る事は不可能だった。 ドシュシュシュシュシュシュッ! 直後、キュルケとタバサは全身に鉄クズの銃撃を受けた。 同時に二人の体から鮮血が飛び散る。 「がはっ・・・・・・」 「っ・・・く・・・・・・」 呻き声を上げながら崩れ落ちる二人。 「キュルケ! タバサ!」 ルイズが悲鳴を上げる。 「そんな・・・・・・なんで・・・・・・」 「『跳弾』ダ。鉄クズヲ撃ツ角度ヲ調節シ、 壁ヤ天井デ鉄クズノ弾丸ガ軌道ヲ変エルヨウニシタノダ」 「な、なによそれ・・・弾丸が壁とか天井とかで跳ね返って、 それがキュルケたちを攻撃したの? そんなの、ありえないわよ!」 「ダガ現実トシテ二人ハ銃撃ヲ食ラッタ。 ソシテ私モ、先程ソレデダメージヲ受ケテイル」 「そんな・・・・・・」 ホワイトスネイクの言葉に、打ちひしがれるルイズ。 「その通り・・・・・・だ。 そして今の弾丸・・・ただ身体に・・・穴が開くだけじゃあ・・・ない。 もっと・・・・・・面白く・・・なる」 「面白クナル・・・ダト?」 「そうだ・・・・・・見ていろ・・・・・・。 奴らの血で、この床と天井に真っ赤な水彩画を描いてやるぞ・・・」 場所は変わってまたトリステイン魔法学院の校庭。 ある者は命がけで戦い、ある者は盗みを働こうとするこの日の夜。 そんな夜に、二人の男女が校庭を歩いていた。 少女の方の名前はモンモランシー。 二つ名は「香水」。 そして一週間前に、恋人のギーシュに二股かけられた本人だ。 そして男の方は―― 「ああ、モンモランシー! 君は本当に美しいよ! 天高く輝くあの双月も、君の前ではその美しさが霞んでしまうほどに! いや・・・きっと彼らもわかっているんだ。 どれだけ輝こうとも君の美しさには敵わないってね。 だからああして輝きを弱めて、君の美しさを引き立てているのさ! きっとそうだよ! 僕の愛しいモンモランシー!」 …一週間前、モンモランシーがいながら二股をかけた、ギーシュその人であった。 そもそも何故最悪な関係に陥っていたはずの二人がこうして一緒に歩いているのか、それを説明せねばなるまい。 事の発端はギーシュがモンモランシーを夜の散歩の誘ったことであった。 ギーシュは二股かけてたことがバレて傍に女の子がいなくなった状態が一週間も続いていた。 それで寂しくなったからモンモランシーに泣きついたのだ。 だが実際に傍に女の子がいなくなる、という状況に陥って、真っ先にモンモランシーのところに来る辺り、 ギーシュとしての本命はモンモランシーなのだろう。多分。 浮気ばっかりしてるけど、多分そうに違いない。多分。 そしてモンモランシーの方も、それまではホワイトスネイクとの決闘で死に掛けたギーシュを心配はしたものの、 二股をかけられたことが思い出されて、あまりギーシュとは一緒にいたくない気分だった。 だが「一週間経ったから許してあげようか」という気持ちと、 やはりギーシュに対するまだ捨てきれない気持ちがあって、夜の散歩を了承した。 そしてさっきからもう10分もの間、ギーシュの歯が浮くようなお世辞をノンストップで聞き続けているのだ。 普通の女の子なら耳が痛くなってくるようなお世辞の数々だが、 モンモランシーには、むしろそれが気分がよく感じられた。 モンモランシーはおだてに弱いタイプだった。 だからこそ、ギーシュが他の女の子にフラフラと近づいて そのままお近づきになってしまうのをその時こそは怒っても、 そのうちすぐに許してしまうのだった。 二股駆けるギーシュがダメダメなのは言うまでも無いことだが、 モンモランシーも何だかんだでダメだった。 でもそうだからこそ、似合いのカップルなのかもしれないが。 ひたすらモンモランシーに愛の言葉を重ねるギーシュ。 それを頬を紅潮させながら聞くモンモランシー。 二人はまだ知らない。 今この瞬間も、この学院の中で死闘が続いていることを。 「くぅっ・・・・・・タバサ・・・大丈夫?」 「・・・大丈夫。まだ、やれる」 「ウソ・・・でしょ、それ・・・。 ギリギリのところで使えた魔法を、殆どあたしを守るために・・・・・・」 「・・・・・・大丈夫、だから・・・・・・」 そう言うタバサの顔は青ざめている。 無理も無い。 タバサが先ほどの攻撃で受けた傷は、鉄クズの直撃が右足に3つ、右腕に2つ。 鉄クズのかすり傷が、脇腹に1つ、肩に1つ。 また、キュルケは鉄クズの直撃が左足に1つ、左腕に1つ。 それのかすり傷が左大腿に一つ、頭に一つ傷が出来ている。 ラングラーの射撃が二人を襲う直前、タバサはウィンド・ブレイクを使っていた。 しかしそれは、魔力を殆ど込める間もなかった弱弱しいものだった。 にもかかわらず、タバサはそれの殆どをキュルケを守るために使った。 そのため彼女が受けたダメージはキュルケのそれよりも、 ずっと多く、そして深いものになったのだ。 傷の激痛で奪われそうになる意識を必死に留めながら、 タバサは思考を回転させる。 このままではまずい。 あの男・・・こちらが思っていたよりも遥かに強かった。 まさか、天井や壁で撃った鉄クズを反射させて、 想定外の方向からこちらを狙うなんて。 さっきのエア・ハンマーでダメージを受けたように見えたのは演技だったのか、 それともダメージを押してあの攻撃を仕掛けてきたか。 いずれにしても、今度は完全にこちらが追い詰められてしまった。 もう一度あの射撃を仕掛けられでも、今の自分ではそれを防御出来ない。 そう考えていると、ふと自分の体に奇妙な違和感を感じた。 体が、軽い。 まるで風に巻き上げられた落ち葉のように、まるで自分の体に重みを感じない。 さっきまで、あの男から受けた傷の激痛で体が鉛のように重かったのに・・・。 いや、違う! 「軽く感じている」などという程度ではない。 自分の体が浮いている! 風も無いのに、何かの力が働いているでも無いのに、 自分の体が宙に浮き上がっている! いや、そればかりではない。 手や足を動かすたびに体がグルグルと回転し、重心が定まらない! これは、一体。 「タ、タバサ・・・こ、これ!」 声がした方を見ると、キュルケの身体も宙に浮き上がり、空中で二転三転している。 一体何が起きた? さっきの弾丸に、何か特別な魔法でも仕掛けたのか? でもこんなことができる魔法は、系統魔法の中には無い。 ならば、こいつが使っているのは――。 「エルフの先住魔法・・・か?」 突然タバサに、ラングラーから声がかかった。 「オレと戦ったものは・・・皆・・・そう言う。 先住の魔法・・・エルフの魔法・・・とな。 当然だ・・・火の魔法・・・風の魔法は・・・使うことすら出来ず・・・ 土の魔法・・・水の魔法は・・・まともなコントロールさえ・・・出来ない。 このオレが・・・・・・『魔法殺し』と・・・呼ばれるのは、そのためだ。 だが・・・オレが使うのは・・・そんなものではない。 それらより強力で・・・それらより凶悪なものだ・・・。 その力で殺されることを・・・誇りに思うがいい・・・・・・」 先住の魔法ではない? だとしたら、一体何がこれを引き起こしている? 考えても考えても、自分に起こったこの現象が説明できない。 とにかく自分の体を固定しなければ。 そう思い、杖を振ってレビテーションを唱え始める。 一体どういう原理で浮き上がっているのかは不明だが、 レビテーションなら身体を魔法で浮かせ、身体を空中に固定できるはずだ。 そう判断してのことだった。 そして、状況が変化したのはその瞬間だった。 傷口から流れ出ていた血の勢いが、突然強くなった。 まるで傷口から血が噴出すように、溢れ出るように流血し始めた。 そして次第にそれすらも通り越し、瞬く間に流血の勢いは強くなり、 まるで噴水のように傷口から出血しているッ! 「こ・・・これは・・・・・・」 「・・・・・・」 自分の身に起こった現象に呆然とするキュルケ。 そして自分の体から血が吹き出るという現実に驚愕したのはタバサも同じだったが、 風のメイジであった彼女にはそれ以上のことが理解できた。 自分の周りから、極端に空気が少なくなっている。 それに呼吸もしにくくなっている。 このままでは窒息してしまう。 それ以前に全身の血液がなくなって、干からびてしまう! どうすれば、どうすればこの状況から抜け出せる! 自分はまだ、死ぬわけにはいかないのに・・・・・・。 そしてその様子を、ルイズも見ていた。 ルイズは、自分を責めていた。 何も出来ないばっかりに守られて、 それで守ってくれる人が死にかけているのに、それでも何も出来ない自分を。 守られていながら、助けることさえ出来ない自分を。 自分が水のメイジだったなら、二人を治療できた。 火や風のメイジだったなら、アイツと戦えた。 土のメイジだったなら、ゴーレムの一つでも錬金して時間稼ぎが出来た。 なのに自分はそのどれでもない。 自分は「ゼロ」だ。 何の魔法も使えない、役立たずの「ゼロ」。 一週間前のギーシュとの決闘は、自分に何か光が見えたように思えた。 爆発しか起きない「ゼロ」の自分でも、 役立たずの「ゼロ」じゃないんだと思えた。 だが現実は違った。 結局自分は何も出来ない、役立たずの「ゼロ」だった。 自分を助けてくれた人が窮地に陥っても、 それに何の助けも出せない「ゼロ」だった。 ルイズにはそれがどうにも許せなくて、そして悔しかった。 悔しさで涙がこぼれそうになった、その時。 「マスター」 自分の前に立っているホワイトスネイクから声がかけられた。 顔はこちらには向いていない。 「・・・なによ。ホワイトスネイク」 こぼれそうになった涙を拭って、ルイズは不機嫌に聞こえるように答える。 「アノ二人ノタメニ命ヲ賭ケラレルカ?」 「・・・当たり前よ。何でそんなこと聞くのよ」 「今アノ現象ハ、アノ二人ヲ中心ニ起コッテイル。 ソシテ二人ヲ助ケルニハ、マスターモアノ近クヘ行カネバナラナイ。 マスターガラング・ラングラーニ殺サレタナラ、二人ノ努力ガ無駄ニナル。 デアル以上、マスターハ私トトモニ行動シ、私ガ護衛シナケレバナラナイ。 故ニマスターモアノ症状ガ出ル空間マデ行カネバナラナイ。 ・・・ソレデモ助ケルノカ?」 「それでも、よ」 ルイズの言葉に、迷いは無かった。 「・・・キュルケトカイウ女ハマスタートハ不仲ダ。 ソシテタバサトカイウ小娘ハ今日初メテ会ッタバカリ。 命ヲ賭ケルニハ、アマリニモ安イ間柄ダ。 ナノニ、何故ソノ二人ノタメニ命ヲ投ゲ出セル? 親友デモ、血族デモナイ相手ニ何故ソコマデデキル?」 それは、ホワイトスネイクにとって率直な疑問だった。 以前ホワイトスネイクがいた世界 ――かつての自身の本体、プッチ神父とともにあった世界でのこと。 あの世界で戦った男――空条承太郎は、 娘を守るために千載一遇の勝機を捨てた。 そしてその空条承太郎の娘、空条徐倫もまた、 父親の記憶のためにプッチ神父を仕留めるための最大の好機を逃した。 何故そのようなことが出来るのか。 それは親子だからだ。 互いに血を分けた存在だからだ、とホワイトスネイクは考えていた。 また、スタンドを探して世界中を巡った旅の中で、 プッチ神父を友の仇、親友の仇として襲うスタンド使いもいた。 そうしなれば、プッチ神父にスタンドを奪われることも、 その後にドロドロにされて死ぬことも無かったのに。 なのに彼らはプッチ神父に挑まざるを得なかった。 挑まなければ、自分の心に決着を付けられなかった。 何故そのようなことが出来るのか。 それは親友だからだ。 互いが互い無くしては生きては行けない存在だからだ、 とまたホワイトスネイクは考えていた。 だが、この状況は違う。 今自分の主人の前で死に掛けている二人の小娘は、 主人の血族でもなければ主人の親友でもない。 なのにこの小さな主人は、そんな二人のために命を賭けると言っている。 何故そんなことが出来る? 何故自分の命をそこまで簡単に扱える? それが、ホワイトスネイクには理解できなかったのだ。 「ソシテ助ケタイ、トイウノハ自己満足カ? ソレトモ偽善カ?」 さらにホワイトスネイクは厳しい問いをぶつける。 「・・・そうかもしれない。 役立たずになりたくないって気持ちが、わたしの中にあるもの。 でもそれは二人を助けない理由には絶対にならない。 だから、助けるのよ。 わたしが助けたいから、助けるの」 それが、ルイズの真摯な思いだった。 確かにキュルケには気に入らないところもある。 タバサって女の子に至っては、助ける義理も何も無い。 それでも、見殺しには出来ない。 だから、助ける。 自分が助けたいから、助ける。 それが、ルイズの答えだった。 「ソウカ」 ホワイトスネイクはそう短く言うと、ルイズに向き直る。 そしてルイズを片手で抱え上げる。 「覚悟ハイイナ?」 「いつでも」 ホワイトスネイクの問いに、ルイズが短く答える。 「承知ッ!」 その答えにホワイトスネイクが力強く応えるッ! そして床を強く蹴り、二人の少女の下へと疾走するッ! 「なッ、なにしてやがるッ!!」 それに驚いたのはラングラーである。 無傷で確保しなければならない相手が自分が作り出した死の空間へと、 何のためらいも無くホワイトスネイクとともに突っ込もうとしているのだ。 このままでは「無傷での確保」は不可能。ならば、阻止するしかないッ! ラングラーは最後の補給を終えたばかりのJJFに腕を構えさせる。 ドンドンドンドンドンドンッ! そしてホワイトスネイクの動きを追うように、 JJFにありったけの鉄クズを撃ち放たせるッ! 計画性のカケラもない行動だった。 だが任務を完遂することの方が、ラングラーには重要だった。 しかしホワイトスネイクは速い。 放たれた鉄クズの半数はホワイトスネイクが通り過ぎた直後の空間を貫き、 ホワイトスネイクにはかすりもせず、 しかし残り半分はホワイトスネイクへと殺到する。 だがホワイトスネイクはそれらを拳で弾き飛ばそうとはしない。 逆にルイズを庇うようにガードを固める。 ドシュシュシュッ! そのホワイトスネイクに、いくつもの鉄クズが突き刺さるッ! その数、4発。 足に、脇腹、腕に、そして頭に着弾し、頭部に命中したものはその一部を吹き飛ばしたッ! しかしホワイトスネイクは止まらないッ! 苦しみもがきながら空中を漂うキュルケとタバサの元へと一直線に駆けるッ! そして、キュルケとタバサを苦しめる症状 ――真空の魔の手が、ルイズにも襲い掛かる。 ルイズの鼻から、突然鼻血が噴出す。 同時に、ルイズの呼吸も苦しくなってくる。 ホワイトスネイクが自身の腕からDISCを抜き取ったのはその瞬間だった。 そして抜き取ったDISCを間髪いれずにルイズの頭部に差し込むッ! 「命令スル。『体内気圧を限りなくゼロに近いレベルまで、一気に低下させろ』」 ホワイトスネイクが、静かにそう命令する。 と同時に、ルイズの鼻血が止まった。 外気圧と体内気圧の差のために体内から血液が押し出されるのを、 この命令によって防いだのだ。 しかし、ルイズの呼吸が苦しいのは変わらない。 ルイズの周囲に殆ど酸素が存在しない状況を変えることは、 ホワイトスネイクのDISCの命令ではできないからだ。 しかし、血液が全て体外に押し出されてミイラになるよりは、 まだ死ぬのが遅い。 その僅かなタイムラグに、ホワイトスネイクは全てを賭けたのだ。 やがて、酸欠でルイズが意識を手放す。 ルイズは自分の意識が真っ白になっていくのを感じながら、 ホワイトスネイクが、二人を救ってくれることを祈った。 そしてホワイトスネイクは、キュルケとタバサの元へ到達した。 スデに意識を失っていた二人に、ルイズにしたものと同じ命令を差し込む。 後数秒でも遅れていたならば二人の命は無かっただろう。 しかしこれで二人の命はもう1、2分は稼いだ。 あとは・・・ラング・ラングラーを倒すのみ。 そう決意してキュルケとタバサを背負うと、ラングラーのほうへ振り向く。 そして振り向いた先には、驚愕に顔を歪めるラングラーがいた。 「バカな・・・真空の中で・・・何故・・・血を吹き出さねえ・・・。 ホワイトスネイク・・・テメー一体・・・何を、しやがった・・・」 「何ヲシタカ・・・カ。ソレヲ貴様ガ知ル必要ハナイナ。 何故ナラ貴様ハココデ死ヌカラダ・・・ラング・ラングラー。 貴様ノ無重力ノ能力ガ作リ出シタ真空デナ・・・・・・。」 そう言い終わるや否や、ラングラーに向けて突進するホワイトスネイク。 真空の発生源であるキュルケとタバサはホワイトスネイクに担がれているッ! つまり、この状況は―― 「テメーッ! オレが作った真空で、オレを攻撃する気かッ!」 ホワイトスネイクの目論見を理解したラングラーは、すかさず後方に下がる。 だがすぐに壁に背がぶつかる。 もう後ろには下がれない。 正面から迫るホワイトスネイクは、 自分を真空の範囲に捉えるまであと数歩の位置。 ならば―― 「ジャンピン・ジャック・フラァァァッシュッ!!」 咆哮とともにJJFがラングラーの正面に回りこむ。 そしてコンマ数秒単位で腕を構え、ホワイトスネイクへと向けるッ! 「くらえッ!!」 ドンドン! そして、その腕から鉄クズを撃ち放つ。 だが狙いは甘かった。 大半はホワイトスネイクに当たらず、その周囲へと逸れていった。 ラングラーが一瞬抱いた真空への恐怖が、 その照準を正確なものにしなかったのだ。 だが、3つ。 それだけの数の鉄クズは、ホワイトスネイクへと向かった。 しかもその全てが、ホワイトスネイクへの直撃コース。 だがホワイトスネイクは避けようともしない。 自分を敵の弾丸が貫くのを承知で、 真正面からラングラーのいる方向へと突っ込むッ! ドシュシュッ! そしてホワイトスネイクの胴体を、3つの鉄クズが撃ち貫く。 ホワイトスネイクの、膝が落ちる。 勝った、とラングラーは感じた。 だが、ホワイトスネイクは止まらなかった。 落ちかけた膝を無理やり引き上げ、床を蹴り、 レスラーがタックルをかけるようにラングラーへと襲い掛かるッ! ホワイトスネイクはスタンドである。 そして今のホワイトスネイクは、 本体の状態に一切左右されないスタンドであるッ! そのため人間ならば致命傷の攻撃でも、まだ十分に活動可能ッ! 「バカなッ! こいつ、何故止まらないッ!?」 それを知らないラングラーは驚愕のままにタックルをモロに食らい、 壁にたたきつけられる。 JJFで防御する余裕すらなかった。 そして、真空の範囲にラングラーが入った。 真空が、ラングラーに襲い掛かるッ! 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 時間の経過のために、より強力になった真空がラングラーを襲う。 そして、ラングラーの体の組織を次々と破壊してゆくッ! (マ・・・マズイ・・・ぞ・・・・・。このままじゃあ・・・オレが・・・ヤバイッ! 壁に押さえつけられた・・・この体勢じゃあ・・・逃げられねえッ! くッ・・・こうなったらッ!!) 完全に追い詰められた状況ッ! そしてラングラーが、そこから脱出を図るッ! 「ジャンピン・ジャック・フラッシューーーーーーーーッ!」 ラングラーの絶叫とともに、JJFが部屋の壁に拳のラッシュを叩き込むッ! 追い詰められ、生へとしがみつこうとする精神によって昂ぶり強化された拳は、 壁を一瞬にしてベコベコに破壊し、そしてひび割れさせていくッ! そしてラッシュが始まってから一秒経ったか経たないか、それだけの時間で、壁に大穴が空いた。 そしてラングラーの体が、その後ろから押さえつけるホワイトスネイクのパワーに押され、ルイズの部屋から空中に放り出された。 その瞬間。 「ジャンピン・ジャック・フラッシュ解除ォーーーーーーーーーーーーーッ!!」 ラングラーの絶叫とともに真空が解除されるッ! そして周囲の気圧は突然正常に戻り、ホワイトスネイクとラングラーの身体は、 二人を取り囲んでいた真空地帯へ吹き込んだ突風に、 木の葉のように吹き飛ばされるッ! ラングラーの身体は上空へ吹き飛ばされ、 ホワイトスネイクの身体は地上へと、一気に叩き落されるッ! しかしホワイトスネイクは抱きかかえる3人の身体を手放しはしないッ! 手放す前に、やらねばならないことがあるからだ。 (解除・・・ダトッ!? マズイゾッ! コノママデハ、 外気圧ニマスタータチノ体ガ潰サレルッ! ソノ前ニッ!) ホワイトスネイクは素早くルイズの頭部から命令のDISCを抜き取る。 そしてキュルケ、タバサの頭部からも命令のDISCを抜き取り、3人の体内気圧を正常に戻す。 だがまだ油断は出来ない。 地上が、眼前に迫っている。 今の加速した状態で地面に叩きつけられれば、並の人間はただではすまない。 ましてや今の状況では重傷を負った人間が二人もいるのだ。 ホワイトスネイクが手を離し、勢いのままに地面に激突したならば、間違いなく死ぬ。 ホワイトスネイクは何も持たない状態なら自由に空中を移動できる。 そして軽いものならば抱えたままで空中を移動できる。 だが今ホワイトスネイクが抱え、背負うのは三人の人間。 抱えたまま空中に留まるのは不可能だ。 そうである以上、着地はホワイトスネイクがやらねばならない。 しかしホワイトスネイクの両足はJJFの射撃でダメージを受けている。 着地の衝撃に耐えられるかどうかは怪しい。 出来るか。 ホワイトスネイクは現在の自分の状況に相談し、そして覚悟を決めた。 その直後、ホワイトスネイクは3人を抱えたまま、地面に着地した。 そして着地の衝撃がホワイトスネイクの両足を襲う。 無重力解除による風圧、そして人間3人分の重力が生んだ衝撃が、ホワイトスネイクの足をズタズタに破壊してゆく。 だがホワイトスネイクは膝を突かない。 膝を突かず、衝撃に耐え、着地したままの状態を保ち続ける。 そして、耐え切った。 そのことを実感すると、 ホワイトスネイクは3人の身体をそっと地面に横たえた。 ホワイトスネイクの身体に新たな衝撃が走ったのは、その瞬間だった。 衝撃の発生源は腹部。 そこに目を向ける。 自分の腹部から、握り拳が突き出ているのが見えた。 そして、やられた、と思った。 JJFの拳が、背後からホワイトスネイクの身体を貫いていた。 空中に飛ばされたラングラーは、手足の吸盤で校舎の壁に張り付き、 風圧に耐えていた。 そして耐え切ると、間髪いれずに空中からホワイトスネイクの背後に迫った。 落下の音、衝撃は吸盤で吸収し、ホワイトスネイクに気づかれることは無かった。 そして、あの一撃をホワイトスネイクに叩き込んだ。 ホワイトスネイクの膝が、がくりと落ちる。 もはや両足で立つこともできない。 そしてボロボロの両手では、手刀を使うことも出来ない。 ホワイトスネイクの身体は、もう戦える身体ではなかった。 「これで・・・テメーは・・・もう・・・戦えねえ。 あとは・・・ガキを・・・頂いていく・・・だけだ。 だが・・・・・・その前に・・・テメーは破壊する。 オレを散々ナメてくれたテメーを・・・生かしておくつもりはねえッ!」 そう言いつつ、JJFの拳をホワイトスネイクの腹から引き抜くラングラー。 それと同時にホワイトスネイクの体が崩れ落ちる。 ダメージは、あまりにも大きかった。 これ以上戦えぬほどに、これ以上立つこともできぬほどに。 そして床に倒れこむホワイトスネイクの頭部に、ラングラーはJJFの拳の狙いを定める。 「これで終わりだッ! 今度こそ、ここで死ねッ!!」 そして、JJFの拳が、ホワイトスネイクの頭部へ振り下ろされる。 「勝ったッ!!」 ラングラーが今度こそ勝利を確信し、叫んだ。 ドグシャアッ! ドシュンッ! 直後、二つの音が交錯する。 JJFの拳がホワイトスネイクを破壊する音、 そしてそれとは別の音が校庭に響いた。 そして視界が真っ暗になる。 何だ? とラングラーは一瞬首を捻りかける。 捻りかけて、理解した。 自分の額に、あの忌々しいDISCが突き刺さっている。 そのDISCに目隠しされているのだ、と。 そしてそうだ。 「これ」はさっき見ていた。 これはホワイトスネイクが、あの三人のガキの頭から抜き取ったものだ。 ホワイトスネイクはこのDISCで、自分の真空から三人を守っていた。 しかし、だとしたらその効果は一体・・・。 「ソノDISCノ効果・・・教エテヤロウ」 「!!??」 バカな!? 何故ホワイトスネイクが生きている!? ヤツの頭部は、自分のJJFで完全に破壊したハズ。 手ごたえも十分にあった! …いや、本当にそうだったのか? 本当に、自分が破壊したのはヤツの頭部だったのか? インパクトの瞬間、オレはヤツのDISCで目隠しされたんだ。 だとしたら、そのときに・・・まさか・・・・・・。 「『体内気圧を限りなくゼロに近いレベルまで、一気に低下させろ』・・・ダ。 ソレデ何ガ起コルカ・・・・・・貴様ニハ・・・スグ分カル」 暗闇の中で、ホワイトスネイクがこちらの意思とは関係ナシに喋り続ける。 『体内気圧を限りなくゼロに近いレベルまで、一気に低下させろ』・・・だと? …何だとッ!? じゃあまさか、これからオレはッ!? 「感ヅイタヨウダナ・・・。貴様ノ体ハコレカラ・・・外気圧ニ潰サレテ、 ペシャンコニナル。 セイゼイソレマデノ間、残サレタ命ヲ楽シメ・・・・・・」 その言葉の直後、ラングラーの体に異変が起こる。 まず、息が出来なくなった。 正確には、肺から空気が一気に押し出されたッ! そして破壊はさらに進行するッ! ラングラーの体はあっという間に圧縮されていき、 ラングラーの全身の穴という穴から血が噴出すッ! 「ガッ・・・ゴボ・・・・・・ガボ、ゴッ・・・・・・」 声にならない声を上げ、ラングラーが呻く。 呻きながらも、JJFに指示を出す。 自分をこんな目に合わせた奴らを、せめて一人でも道連れにするために・・・。 だが、それもすぐに止められた。 JJFの腕が、動かない。 ホワイトスネイクがJJFの両腕をガッチリと捕まえ、その腕輪の照準が三人の少女にそして自分へと向かぬよう、 そして照準が誰もいない上空へ向くように押さえ込むッ! 「ア・・・アガ・・・ゴバ、ガ・・・ガボバ・・・・・・」 しかしラングラーは止まらない。 JJFへの指示を止めはしない。 そして主人のダメージに従ってボロボロとその身を崩壊させていくJJFは、 主人の命令に忠実に、最後の足掻きを見せたッ! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!! それは戦いの序盤でホワイトスネイクに対して行った、マシンガンのような集中射撃。 JJFはそれが自分の最後の輝きであるかのように、ホワイトスネイクに押さえつけられたまま、上空に向かって撃ち続けた。 今までで最大の威力を持った、鉄クズの射撃だった。 撃ち放たれた無数の鉄クズはその大半が校舎に当たり、 そしてそれらを抉り、無数のひびを入れた。 巨大なゴーレムの一撃ですら破壊できない壁に、目に見える形で損傷を与えた。 そして残弾が完全に尽きたのと同時に、 ラング・ラングラーは全身の血を外気圧に絞り取られて絶命した。 ジャンピン・ジャック・フラッシュの姿は、もうその傍らには無かった。 「終ワッタ・・・・・・カ・・・・・・」 ラングラーが死んだのを確認し、ホワイトスネイクはそう呟いた。 そして周りを見回す。 見回して、ひどい有様だと思った。 周囲一体がラングラーの血で染まって真っ赤になっている。 ルイズ、キュルケ、タバサの三人も例外ではない。 全員の衣服が、血で真っ赤になっていた。 もっともキュルケとタバサの衣服は彼女達自身の血でスデに赤く染まっていたが。 (シカシ・・・マズイナ。今ノ私ハ、ホトンド行動不能。 ソレニ助ケヲ呼ブコトモママナラナイ。 マスターハマダ大丈夫ダガ・・・コノ二人ハ応急処置ガ必要ダ。 クソッ・・・・・・ドウスル・・・・・・?) 自身も再起不能寸前でありながらも、冷静に状況を判断するホワイトスネイク。 その時―― 「ルイズの使い魔君ッ! 君の命がけの行動、僕は敬意を表するッ!!」 バカみたいにでかくて、それでいて妙に気取った声が聞こえてきた。 どこか聞き覚えがあった声だ、と思いながらホワイトスネイクがそちらを見る。 「ちょっとギーシュ! あんた分かってるの? あいつはあなたを殺しかけたようなやつなのよ?」 「黙っていてくれモンモランシー。僕は今猛烈に感動しているんだ!」 声の主はやっぱりギーシュだった。 そしてその後ろから、モンモランシーがギーシュを引きとめようとしている。 しかしギーシュはそれを引きずるようにしてこっちにやってきた。 「・・・・・・何シニ来タ」 ジト目でギーシュを見ながら言うホワイトスネイク。 「そんなことを連れないことを言わないでくれ、使い魔君。 僕は君の命がけの戦いの一部始終を見ていた。 それで・・・感動したんだ! 不届き者から三人のレディーを守り、 満身創痍になりながらも勝利した君の姿に! そして実感したよ! 君と僕は似たもの同士だったんだ! 君は一週間前のあの日、僕と決闘したろう? それが何故なのか、ずっと気になっていたんだ。 でもそれが分かったよ! 君は君の主人であるルイズのために、 レディーのために戦ったんだね! あのメイドを僕の勝手から守ったのも、 レディーを守るという君の新年に基づいたものだったと分かったんだよ! はっはっは! そんな神妙な顔をしないでくれ! 何も言わずとも分かる! 君のその行動こそが君の精神のあkガボゴババゴボ・・・・・・」 延々と喋り捲っていたギーシュが、突然彼を包み込んだ水によって黙らされた。 やったのはモンモランシーである。 しかしギーシュもなんと言うか、相当にアレだ。 一週間前に自分を危うく殺すところだった相手にここまでフレンドリーになれてしまうとは。 お調子者というべきか、能天気というべきか、とにかく色々と心配だ。 そしてギーシュを黙らせたモンモランシーがその前に出て、 じろりとホワイトスネイクをにらむ。 ホワイトスネイクも、それを正面から見返す。 「・・・あんたがギーシュに決闘でしたこと。私は忘れて無いわ。 でも・・・・・・」 そういって、地面に横たわる三人に目を向けると、短くルーンを唱える。 すると、キュルケとタバサの傷が、溶けるようにして浅くなっていく。 水のメイジにしか使えない、「治癒」の魔法だ。 ホワイトスネイクは驚いてモンモランシーを見る。 「この三人がケガをしてるのは別の話よ。 応急処置をしてくれる人を探してたんでしょ? ・・・だったら私がしてあげるわよ。 この三人のケガはどれも致命傷じゃないし、 水のラインメイジの私なら応急処置が出来る。 ただ、キュルケとこの青髪の女の子は相当に弱ってるから、 魔法薬での治療が必要になるけど。 ・・・別に、あんたがしたことを許したわけじゃないんだからね。 勘違いしないでよ」 「・・・覚エテオク」 ホワイトスネイクがそれだけ言うと、 モンモランシーはぷい、とそっぽを向いてギーシュのほうへ戻っていった。 そのギーシュが、何やらゴボゴボ言っている。 「どうしたのよ、ギーシュ?」 「ばべ! ばべぼびべぐべぼ!」 「・・・何言ってるかわかんないわよ、ギーシュ」 「ばばらばればぼ! ぼぼばび! びびぼぶびぼごべば!」 モンモランシーの魔法で水攻めにされたまま、 ギーシュが指を差しながら何か言っている。 だがモンモランシーには何が言いたいのか全く理解できない。 かろうじて、何がしたいかが理解できたホワイトスネイクが、 ギーシュが指差す先を見ると―― 「・・・・・・何ダ、アレハ?」 そこには、全長30メイルは下らない、巨大なゴーレムがいた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1373.html
「ふわぁ~、朝早く目が覚めたのはいいけど……な~んか暇だなぁ」 欠伸をしながらPCの電源を落とす。 春休みに入って数日が経った。 この数日間は、漫画・DVD・積ゲーの処理を寝る間も惜しんでやった。 もちろん、合間合間にネトゲもやった。 集中的に遊びすぎて、さすがにどれも飽きてきた感がある。 「今日はかがみ達と会って遊ぶかねぇ」 現在時刻は朝の8時30分。 今から誘いをかければ午後からたっぷり遊べるだろう。 もちろん、ただ遊ぶだけが目的ではないのだけれども。 今年はこの短い休みにも宿題がきっちりと出されていた。 できることなら、最終日までに余裕をもって写しておきたい。 宿題を写して憂いを絶つ、それもかがみを誘う目的のひとつだ。 それはそうとして、だ。 いったい今日は何月何日で、休みはあと何日残っているのだろうか。 確認するためにカレンダーを見る。 まあ、カレンダーは好きな絵師のところで止めてあり、ここ何ヶ月も捲っていないので見たところで無駄なのだが。 「あ。そういえば」 ベッドを置いてある方の壁を見る。 そこには日めくりカレンダーが掛かっていた。 『今日が何月何日かぐらい常に把握しろ』 とか言って、お節介にもかがみが勝手に掛けていったものだ。 まあ、自分が持て余してたのを持って来ただけなのかもしれない。 ちなみにこのカレンダー、私はまだ一度も捲ったことがない。 捲っているのはかがみだ。 この部屋に遊びに来るたび、文句を言いながら4~5枚捲っている。 『私がせっかくプレゼントした意味がないじゃないの!』 とかなんとか言いながら。 今は、かがみが最後に家に遊びにきた日――3月25日――で止まったままだ。 「たまには、自分でめくってみようかネ」 記憶をたどり、深夜アニメを見た回数分だけびりびりと捲る。 今期は割と良作が揃っていて、毎日アニメを見ているから捲る枚数を間違えることは絶対にない。 極めて私流ではあるが、このカウント方法に頼るのが1番確実だったりする。 捲ったカレンダーはくしゃくしゃにまるめて、ゴミ箱にポイだ。 「……ほほう」 カレンダーが示している日付を見て、ニヤリと笑う。 体のダルさが吹き飛び、頭の中が冴え渡ってくる。 その日付表示は、私のエンジンに火をつけたのだ。 4月1日。 そう、今日はエイプリルフール。 つまり、嘘をついていい日。 なんだか、よくわからない使命感で み な ぎ っ て き た 。 よし!毎日の勉強で疲れているだろう友人達に、最高のユーモアをプレゼントしてさしあげようじゃないか! かの有名な“ド○えもん”という作品において、源し○か氏はこのような事を言っていた。 『人を喜ばせておいて、がっかりさせるような嘘はよくない』 『だから、嘘とわかった時に喜べるような“親切な嘘”をつくべきだ』 ここに高らかに宣言する!私はつこう、親切な嘘を!! ☆ まずは、かがみからだ。 携帯に電話をかける。 休みだというのに既に起きて活動していたのであろう、数回のコールですぐに出た。 「もしもし、こなた?あんたにしては珍しく早起きね」 「……かがみ……」 「どうしたのよ、なんか元気ないわねー。休みボケかぁ?」 「はは……そんなとこ、かな」 「ちょ、ちょっと、ホントに大丈夫なの?」 かがみの声色が心配を含んだものに変わる。 ここまでは順調。 「う、うん。まあ、だいじょぶ」 「そう?ならいいけど。それで、用件は?」 「えっとね、実は、私……や、やっぱいいや!」 「はぁ?」 「うん、悪いけど今のナシ。忘れて!じゃあね!」 「あっ、待ちなさいよ!」 ここで一方的に電話を切る。 かがみの性格からしてすぐにでも電話が……よし、かかってきた! 少し間を置いてから電話にでる。 「も、もしもし?」 「ちょっと、こなた!さっきの電話は何なのよ!?一方的に切ったりして!」 「なんでもないよ」 「とりあえず用件を最後までちゃんと言いなさいよ!気になるじゃない!」 「だから、なんでもないって」 「だから、なんでもないなら最後まで言えばいいって言ってんでしょ!?」 「しつこいよ!!なんでもないんだってば!!!!」 「……」 「……ごめん。怒鳴ったりして」 「……ううん。私もちょっと、大人気なかったわ。えっと、もう切るわね」 「あ、待って!……ねえ、かがみはさ……私の友達、だよね?」 「何?急にどうしたのよ?」 「いいから答えて!言っとくけど、私、真剣だよ?ネタとかじゃないよ?」 「……もちろん友達よ。親友って言ってもいいわ」 さあ、盛り上がってまいりました。 かがみの声は真剣そのもの。 微塵も私が演技をしていると疑っていないことうけあい。 いやあ、私もなかなかの演技派だネ。 「ありがと、本当に嬉しいよ……実はね、私、虐められてるんだ」 「イジメ?そんな……ウソ、でしょ?」 「かがみには隠してたけど、同じクラスのみんなから、私……私ッ!」 「何よソレ!!許せない!!いつから!?いったい誰が!?」 「去年の11月くらいから、カナ。始めたのは……その……つかさ、だよ」 「なっ……!!」 さて、仕上げに移りますか。 「ね、かがみ。いろいろ相談したいからさ、できればウチに来てほしいんだ」 「……いいわ。いつ行けばいいの?」 「じゃあ、1時頃に来てくれる?もちろん、つかさとみゆきさんには内緒で」 「ええ。わかったわ」 「ねえ、かがみに電話したこと、2人には内緒にしといてもらえるよね?」 「大丈夫よ、安心して。何があっても、私はあんたの味方だから」 「ありがと。かがみ」 「お礼なんていらないわよ」 「ついでに、春休みの宿題を見せてくれると嬉しいんだけどなぁ」 「ふふっ、いつもの調子が戻ってきたじゃない。ま、考えとくわ。じゃあ1時にね」 これでよし。 ウチに来たら全てをばらして、その後は一緒に遊べばいい。 完璧な計画だ。 ☆ さて、ターゲットは残り2人。 次の狙いは当然つかさだ。 早めに攻略しておかないと、かがみへの嘘がバレるかもしれないしね。 携帯に電話をかける。 3回も留守番電話センターに接続され、諦めようかなんて思い始めた頃にやっと出てくれた。 「もしもし、つかさ?」 「もしもし~、こなちゃん?……ふわぁ~、おはよ~」 「おはよ。ごめんね、朝早くに電話しちゃって」 「ううん、いいよ~。今日は早く起きるつもりだったし」 「そうなんだ」 「うん。今日から宿題をがんばろうかな~って。えへへ」 つかさの声はまだ眠そうだ。 この様子だと、少しばかり荒唐無稽な嘘でも信じてくれるだろう。 「ねえ、つかさに相談したい事があるんだけど」 「え?相談?」 「うん。いいかな?」 「うん。いいよ~。でも、私よりお姉ちゃんやゆきちゃんの方が――」 「つかさじゃなきゃダメなんだよ」 「えっ?」 「あの2人には、相談できないんだ」 「えっ?ど、どういうこと?」 急に真剣みを帯びた私の声に、つかさが戸惑いをみせる。 我、機を得たり。 ここからは一気にたたみかけよう。 「実はね、私、みゆきさんのモルモットにされてるんだ」 「も、もるもっと?」 「うん。いわゆる実験動物。いろんな薬を飲まされたり、注射されたり……」 「へ、変な冗談はやめてよ、こなちゃん。ゆきちゃんは、そんなことするような――」 「かがみも被害者なんだよ?かがみは私よりずっと前からみゆきさんに遊ばれてたんだ」 「お、お姉ちゃんが?」 「私もかがみから同じように相談されてさ、その時は何かのネタだと思って信じなかった。でも、それが間違いだった」 「う、嘘!嘘だよね、こなちゃん!?ねえ――」 「私はかがみを救えなかったんだ……今のかがみはみゆきさんの命令に逆らえなくなってて、私を監視しているみたい」 「そんなの嘘だよ!こなちゃん、いくら私でもいいかげん怒るよ!?」 「お願いだから信じてよ、つかさ……ねえ、最近さ、かがみの様子に何か、その、違和感とか感じなかった?」 「あ……」 つかさが黙り込む。 なんたる幸運。 何かしら思い当たる事でもあったのだろう。 だとしたら、これ以上の演技は蛇足だ。 そろそろ仕上げに移ってもいいだろう。 「ね、つかさ。いろいろ相談したいからさ、できればウチに来てほしいんだ」 「……うん。いつ行けばいいの?」 「じゃあ、1時半頃に来てくれるかな?わかってるとは思うけど、かがみとみゆきさんには内緒だよ」 「うん」 「もちろん、私がこんな電話をしたことも内緒だよ?つかさだって無事じゃいられないかもしれないし」 「う、うん。わかった。気をつけるよ」 「ありがと。つかさ」 「お礼なんていいよ。私もひとりじゃ心細いし」 「それと、出かける時だけどさ、かがみには図書館で宿題してくるとか言ってごまかせばいいと思うよ」 「うん。そうするよ。えっと、1時半だよね」 これでよし。 これで、つかさがかがみに接近する可能性はぐっと低くなった。 かがみへの嘘もバレにくくなったという訳だ。 それに、つかさは宿題の道具を持って移動することになるから、ばらした後に一緒に宿題をすることもできる。 我ながら完璧な配慮だ。 先に着いているかがみと一緒になってネタばらしをして楽しめば、かがみの怒りもいくらか収まることだろう。 さてさて、ターゲットは残り1人。 ☆ 「それで、みゆきさんに相談したいことがあってさ。いいかな?」 「はい。私でよろしければ、遠慮なくどうぞ」 ラストバッターは陵桜の誇る秀才、みゆきさんだ。 かなり手ごわい相手といえるだろう。 嘘を信じさせるためには、相手のバランスを崩しスキをつくらなければならない。 かがみは、親友が虐められているという情報にカッとなりスキが生まれた。 つかさは、まあ、いつものとおりスキだらけだった。寝起きだったしね。 「つかさにはまだ内緒にしててほしいんだけどさ、私ね、去年の冬休み初日にかがみに告白されたんだ」 「はあ。告白、ですか?」 「うん。愛の告白ってやつ」 「ええっ!?し、しかし、泉さんとかがみさんは、その……」 「うん。女の子同士、なんだよね。もちろん私はそういった趣味ないからさ、きっぱり断ったんだ」 「は、はあ」 「翌日からはいつもどおりの関係に戻ろうねって話で決着がついたから、みんなは気が付かなかったと思うけど」 「そうですね。少なくとも私は、まったく気がつきませんでした」 「だよね。だから私は、かがみもちゃんと諦めてくれたんだ、と思って安心してたんだけどね……でも、そうじゃなかったんだ」 「ということは、かがみさんと何かあったのですか?」 「……襲われちゃったんだ」 「え?襲われ?え?……ええっ!?」 「春休みの前日、いつものようにかがみが家に遊びに来たんだ。その日は家に私しかいなかったんだけど――」 「い、泉さん!悪質な冗談はやめてください!私には、かがみさんがそのような事をするお方に思えません!」 「私だって!!!!私だって、かがみがそんなことするなんて思ってなかった!!!!」 「あ……」 「私はその日、写真まで撮られた。その日からかがみはその写真をネタに、私のことを毎日のように――」 「そんな……嘘……嘘です。そんな、ひどいこと……」 そこからは私の妄想を織り交ぜつつ、かがみが私を襲った状況を簡単に説明。 みゆきさんを崩すには、みゆきさんの知識・経験が乏しい世界を舞台にする必要がある。 つまり、18歳未満禁止かつアブノーマルな、とっても危ない世界。 バーチャルとは言え、私の方は経験豊富なのだ。 この土俵で闘えば、私が負ける要素はほとんどない。 「ね、みゆきさん。できれば会って相談したいんだ。ウチに来てくれないかな」 「……わかりました。いつ、お伺いすればよろしいのでしょうか?」 「急で悪いんだけど、今日の2時とかじゃダメかな?その時間、家は私ひとりになっちゃうし」 「わかりました。2時、ですね」 「それから、この話なんだけどさ」 「はい。誰にも話しませんので、安心してください」 「ありがと。みゆきさん」 「いえ。私でお力になれるかどうか」 「それと、かがみが感づいた時のために、表向きは今日は勉強会ってことにしてほしいんだ」 「わかりました。勉強会、ですね」 みゆきさんは『恐れ入りますが、まだ泉さんの言い分を全て信じた訳ではありませんので』と言ってから電話を切った。 ううむ。この辺りはさすがに手ごわい。 まあ、とりあえずミッションコンプリートだ。 これで、上手くいけば2時には4人が勉強道具持参で我が家に集うわけだ。 それまで何をして待っていようかなぁ。 あ、そうだ。 一応、嘘をついたおわびとして手作りお菓子でも用意して待っていよう。 そうと決まれば台所へ行きますかネ。 よっこいしょういち、っと。 ☆ まさか、こなたがイジメをうけていただなんて。 しかもつかさが、私の妹が、その犯人だなんて…… 一刻も早く事の詳細を知りたい。 いてもたってもいられない。 約束は1時だが、30分程度なら早めに行っても問題ないだろう。 お昼はパンでも買って食べて、さっさとこなたの家に向かおう。 手早くまとめた荷物をもって自分の部屋から出ると、つかさとばったり出会ってしまう。 つかさも出かけるところなのか、私と同じように荷物を持っている。 思わず睨みつけそうになるが、ぐっと我慢する。 私がイジメの事を知っていると悟られたら、情報源のこなたに迷惑がかかるかもしれない。 「おはよう、つかさ。今日は早起きね」 「おおお、おはよう。お、お姉ちゃん。え、え~っと、何だか目が覚めちゃって」 「何をそんなに慌ててるのかしら?」 「えっ!?あ、慌ててなんかないよ?お、お姉ちゃんこそ、恐い顔してどうしたの?」 いけない。怒りが顔に出てしまっていたようだ。 「な、なんでもないわ。宿題でわからない問題があって、少しイライラしてただけ」 「そ、そうなんだ」 「そういえば、つかさも出かけるところなの?」 「あ、うん。お姉ちゃんも?」 「そうだけど……ねえ、もしかして……つかさは、こなたの家に行くつもりだったりする?」 「え!?ううん、ち、違うよ!!……図書館!そう、私は図書館に宿題をしに行くんだよ!」 ☆ 最近、お姉ちゃんの様子がおかしい。 食事の量も減ったみたいだし、お菓子もあまり食べようとしない。 些細な事ですぐイライラするようになったみたいで、私も何度か怒鳴られたりした。 もちろん、その度に後から謝ってはくれるのだけど。 机にふせっていることが増えたし、夜こっそりと出かける回数も増えていた。 ――こなちゃんの言ってたことは、やっぱり本当なんだろうか。 こなちゃんは1時半って言ってたけど、もう行ってしまおうかな。 こんな状態でお姉ちゃんと同じ屋根の下にいたら、私の気持ちがまいっちゃうよ。 とりあえず、早く相談して、早く解決しなきゃ。 カモフラージュ用の勉強道具をバッグに詰めて部屋を出る。 しかしそこで、タイミング悪くお姉ちゃんと会ってしまった。 「――つかさは、こなたの家に行くつもりだったりする?」 「え!?ううん、ち、違うよ!!……図書館!そう、私は図書館に宿題をしに行くんだよ!」 「ふーん……珍しいわね」 「そ、そろそろ頑張ろうかな~って思って」 「それが本当なら、いいことなんだけどね」 こなちゃんの言った事は、やっぱり本当だ。 お姉ちゃんの様子はやっぱりおかしい。 私のことをじっと睨みつけてきたかと思えば、品定めするようにジロジロと見てくる。 それに何故か、私の行き先がこなちゃんの家かどうか、なんて質問を突然にしてきた。 こなちゃんの家に私が行くと都合が悪いのだろうか? もしかして、こなちゃんの身に何かが…… そうか!もしかしたら、まさに今、ゆきちゃんがこなちゃんのことを狙っているのかもしれない! だから、他の誰かがこなちゃん家に行ったら不都合なんだ。 お姉ちゃんは、私がこなちゃん家に行かないよう監視しているんだ。 そうだ!そうに違いない! 私がこなちゃんを救わなきゃ! 「お姉ちゃん、私いそいでるから!もう行くから!」 「え?あ、うん。気をつけていってらっしゃい」 私は家を飛び出し、全力で自転車をこぐ。 「待っててね、こなちゃん!」 ☆ 窓から外を見ると、つかさの自転車が猛スピードで遠ざかっていくのが見えた。 つかさってあんなに早く自転車をこげたんだ。 それにしても、さっきからのつかさの慌てっぷりは異常だ。 こなたの名前を出した瞬間、わずかに顔色が変わったのを私は見逃さなかった。 つかさが犯人だなんて思いたくなかったけど、まさか本当に…… そこまで考えてハッとする。 何故、つかさはあんなに慌てていたのか。急いで出かけたのか。 もしかして、つかさは私とこなたの電話でのやりとりを聞いてしまったのではないだろうか。 あの時は私も興奮して大きな声を出していたから、その可能性は十分にある。 だとしたら、今つかさが向かっている先は…… マズイ。 最悪の事態だ。 私も急いでこなたの家に向かわなくては! 私はすぐに家を飛び出し、妹を追いかけるように必死に自転車をこぐ。 「待ってなさいよ、こなた!」 ☆ 4月1日。 今日、私は友達に嘘をついた。 後は至福のネタばらしが残るのみ、ときたもんだ。 私はその瞬間を楽しみにしながら、お菓子作りに精を出していた。 「よっし。こんなもんかな」 程なく手作りクッキーが完成する。 つかさ程ではないにしろ、我ながらなかなかにいい出来だ。 やはり、気分がノッている時は何をやっても上手くいくものだ。 時計を確認。 おっと、もう12時を過ぎている。 かがみが来るまであと1時間もない。 あまり時間が無いので、今日のお昼はカップ麺ですませることにする。 お湯を注いで居間へと移動。 あと3分♪ 特にやる事もないので、とりあえずTVをつける。 お昼の時間ということで、どこも面白い番組はやっていない。 適当にチャンネルを変え、リモコンを放置する。 あと2分♪ お気に入りのマグカップにお茶を淹れ、ささやかな昼食の準備が整う。 いやぁ、日本茶は心が落ち着きますなぁ。 その時、つけっぱなしのTVから信じられない言葉が聞こえた。 『――こんにちは。3月31日、お昼のニュースです。本日、○○内閣の――』 なん……だと……!? 重力に惹かれ、鈍い音と共に不時着を敢行するマグカップ。 そして、景気よく床にぶちまけられる適温の緑茶。 馬鹿なッ!! 今日はエイプリルフールではなかったというのかッッ!! 頭が真っ白になる。 いままでかいたことのない類の嫌な汗が、体中からドッと噴き出す。 天国から地獄。 私の気分は真っ逆さまに光の世界から暗闇のどん底へと叩き落される。 麺がのびのびになってカップから溢れ出た頃、私はようやく我に返った。 ☆ 「待っていてください、泉さん」 泉さんのお宅まであと少し。 泉さんは2時と言っていましたが、1時間以上も早めに来てしまいました。 事の真偽を早く確かめたくて、どうしてもじっとしていられなかったのです。 それに、もし泉さんの話が全て本当だった場合、かがみさんの行動を警戒する必要があります。 かがみさんが休みに乗じて泉家に来る可能性は高いですから、ゆっくりしている暇はありません。 泉さんとの約束の時間を違えてしまうのは失礼かとは思いますが、事態は急を要します。 一応ですが、携帯の方には早めに伺う旨をメールで送っておきましたし―― 「ゆ、ゆきちゃん!?」 「え?……あ、つかささん?」 何やら慌てている様子のつかささんと出会いました。 何故でしょうか、大変驚かれているようです。 それにしても、ここで会ったという事は…… 「つかささんも、泉さんに会いに来たのですか?」 「え。えっとね、わたしは、その……」 「?」 「ぐ、偶然通りかかっただけだよ~」 「そうなのですか?」 「う、うん。そうそう、偶然なんだ」 つかささんが嘘をつく理由は無いでしょうから、本当に偶然なのでしょう。 何かとても不自然な気はしますが。 「ゆきちゃんは、こなちゃんの家に行くんだ?」 「はい。その、泉さんに勉強会をしようと誘われたものですから」 「そ、そっか」 「つかささんは、何をしていたのですか?」 「え。え~っとね……」 「2人とも、何の相談をしているのかしら?」 つかささんと話していると、突然、背後から声を掛けられました。 振り返ると、今は一番会いたくなかった人が腕を組んで立っていました。 ☆ 「お、お姉ちゃん!?」 「つかさ、あんた図書館に行ったんじゃなかったの?」 まさか、つかさとみゆきが合流するとは。 みゆきまでもがこなたイジメに参加していたとは思わなかった。 いや、思いたくなかった。 冷静に考えてみれば、みゆきが自分の身近で起きているイジメの兆候を見逃すはずなど無いのだ……自分がイジメる側でない限りは。 私という邪魔者が現れたことに機嫌を悪くしたのか、みゆきがこちらを軽く睨んだように見えた。 「こんにちは、かがみさん。こちらへは何をしに来られたのですか?」 「こんにちは、みゆき。私はこなたの家に遊びに来たの。一緒に勉強もする予定よ」 「あら、奇遇ですね。私も泉さんと勉強会をする予定なんですよ?」 「へえ。そうなんだ」 「ええ。そうなんです」 「私は、こなたに誘われてきたんだけど?」 「もちろん私も、泉さんに誘われたから来たんです」 心なしかみゆきの言動が余所余所しい、というか冷たい。 それにしても、よくもまあ堂々と嘘をつくものだ。 私には分かる。みゆきが言っている事は嘘だ。 今のこなたが、加害者サイドのこの2人を自宅へ誘うはずが無い。 そういえば、こなたが私に相談したことをみゆきは知っているのだろうか? つかさから既に情報を得ている可能性はあるが、まだ知らない可能性もある。 それに仮に情報を得ていたとしても、みゆきならばつかさからの情報を100%信じることはないだろう。 我が妹ながらつかさは少しばかりぬけているところがあるからだ。 とりあえず、みゆきを油断させるためにも、今は事情を知らないフリをした方が良さそうだ。 「そう。じゃあ、こなたは4人で勉強会を開くつもりだったのかしらね」 「それなんですが、つかささんは誘われて無いみたいですよ?」 そう言って、みゆきはつかさの方をチラリと見た。 これは……つかさに別行動をとるように促しているのか? よくわからないが、みゆきの作戦か何かなのだろうか? だとしたら、阻止しておいた方がいいのかもしれない。 最初の実行犯を逃がすわけにはいかないし、できれば4人が揃った状態でケリをつけたい。 私の目的はこなたを救うことだけでは無いのだから。 難しいかもしれないが、私はこの4人の間にあった友情を取り戻したいのだ。 「……それなんだけど、こなたから電話があったのって、つかさが出かけた後だったのよ」 ☆ 「それでつかさも誘おうかと思ったんだけど、図書館に行くって言ってたから携帯にかけるのは遠慮したの」 「そ、そうだったんだ」 「あんたマナーモードにしないでしょ?だから、頃合を見計らってメールでもするつもりだったんだけどね」 「メール?」 「そ、メール。つかさもこなたの家で一緒に勉強しないか、ってね。」 これは、どういう状況なんだろう。 ゆきちゃんとお姉ちゃんの間に、なにかトゲトゲしい空気が流れている。 お姉ちゃんはゆきちゃんに従わされているハズなのに。 もしかして、今のお姉ちゃんは薬がきれたりとかで正気に戻っているのだろうか? お姉ちゃんはなんでここに来たのかな? なんで私を誘ってるのかな? えっと……今、お姉ちゃんはこなちゃんと合流してゆきちゃんを何とかしようとしているところか何かで―― それで、私にも協力をしてほしがっている―― そうか。そういう事だったのか。 つまり、これは、千載一遇のチャンスなのだ。 「じゃ、じゃあさ、私も一緒に行っていいんだよね、お姉ちゃん?ほら、ちゃんと勉強道具も持ってるし」 「そうね。いいんじゃない?……ね、みゆき?」 「……そうですね。人数が多い方が、勉強会らしくていいのではないでしょうか?」 「じゃあ、決まりだね!」 ほんの僅かだけど、ゆきちゃんの表情が陰るのがわかった。 ゆきちゃんは、少し悲しそうな顔で私の方を見た。 ……ごめんね、ゆきちゃん。 でも、ゆきちゃんがやっていることは、良くない事なんだよ? 大丈夫。きっと明日からは、また前までのように4人で仲良くできるよ。 そうなれるように私が頑張るよ! 私は決意を胸に秘め、こなちゃん家への一歩を踏み出した。 ☆ かがみさんは頭の良い方です。 もしかしたら、私の態度から何か察するところがあったのかもしれません。 つかささんを勉強会に誘ったのは、私に対する牽制でしょうか。 つかささんがいれば、私はかがみさんのことを問い詰めにくくなります。 しかし、かがみさんの行為が泉さんの話すとおりであるならば、それは許される事ではありません。 こんな悲しい出来事は、一刻も早く、できれば今日の内にでも断ち切ってしまわなければなりません。 例えつかささんがいようと、私はそれをやらなければならないのです。 できれば、つかささんにはすべてが解決してからお話をしたかったのですが。 ……いえ、実の姉と友人との話ですから、つかささんも立ち会うべきなのでしょう。 つかささんには大変辛いお話になるかとは思いますが、これも運命なのでしょう。 ふと、つかささんの方を見ると、その顔は心なしか頼もしく見えました。 そして、つかささんは一歩一歩、泉さんのお宅へと歩んでいきます。 まるで迷える私を導くかのように。 ふふっ。いけませんね。私が弱気になっては。 泉さんにつかささん、そしてかがみさんを救うという役割が私にはあるのですから。 再びいつもの4人組として楽しく笑いあえるよう、私は頑張ります! 「では、参りましょうか。かがみさん」 ☆ 私は今日、わりと洒落にならない嘘をついた。 もし今日が4月1日なら、私にはまだ救いの道がある。 もし今日が3月31日なら、私に残された道はひとつしかない。 それは、間違いなく地獄に続く道。 慌てて家中のあらゆるモノで日付を確認する。 TV、ラジオ、携帯、パソコン……思いつく限りのモノで。 何を見ても3月31日。そう、まぎれもなく3月31日。 あの日めくりカレンダー以外の全てが、今日が最悪な1日になると告げていた。 どうしよう。 どうしたらいいんだろう。 といっても、もう、なるようにしかならないのだけど。 なんで、どうして、こんなことになったんだろう。 日めくりを捨てたゴミ箱を漁ってみる。 2枚重ねて捲る、などといった漫画のようなミスはしていない。 捲るべき枚数も絶対に間違っていない。 今朝の私の行動自体にミスは無かった筈だ。 それならば、何故? ……?? ……!? ……!! 思い出した!!そういうことだったのか!! そう、今朝の時点で私のカレンダーには1日分の誤差が生じていたのだ。 かがみが最後に遊びにきた日、こんなことがあった。 『ちょっと、こなた。またカレンダー捲ってないじゃないの』 『ん~、そだね~』 『そだねー、じゃないっての。もう、いい加減にしなさいよね』 『かがみの楽しみをとっておいてあげたのだよ』 『こんなのが楽しみなわけが無いっつーの!まったく!』 びり、びりびり……びりりっ! 『あれ、かがみ。今日は確か24日だよ?捲りすぎじゃない?』 『あ、あんたが横からいろいろ言うから変に力がはいっちゃったのよ!』 『あ~あ、これじゃあせっかくのカレンダーが台無しだよ~』 『ど、どうせ捲らないんだから1日くらいいいじゃない!そう、これは明日の分よ、明日の分!』 このことを忘れてきっちり捲ったせいで、日付を間違えてしまったということだ。 日付を間違えた原因はわかったが、だからといって何の解決になるわけじゃない。 覚悟を決めよう。 ここは潔く、1人1人、来た順に謝るしかない。 ☆ 「こなちゃん、少し早いけど来ちゃったよ~」 「こんにちは、泉さん。すみません、早く来てしまいました。メールは送ったのですが……」 「おーす、こなた。ちょっと早いけど、いいわよね?」 何 故 全 員 揃 っ て い る。 「いいいいいいい、いらっしゃいいいい、みみみみ、みんななな。ずずず、ずいぶん早かったたたネ」 「なに慌ててんのよ?……まあ、心配しなくても、大丈夫よ」 「そうですね。私がいますから何も心配しなくて大丈夫ですよ、泉さん」 「こ、こなちゃん、私がいるからね!」 あれ?何この雰囲気? そうか、お互いがお互いを牽制しあっているんだ。 主に私の嘘のせいで。 これは、本当の事を言い辛いってレベルじゃないよ。 何とかして1人ずつ相手をするようにしなきゃ。 とりあえずは、みんなに私の部屋まであがってもらって…… 「ええっと、ジュースでも持ってくるね。それで、誰か運ぶの手伝ってほしいんだけど」 「私が行くわ!」 「いえ。かがみさんはゆっくりしていてください。ここは私が」 「ゆきちゃんもお姉ちゃんとゆっくりしてなよ。私が行くから」 「2人とも、そんなに気を遣わなくていいわよ。ここは私が――」 「そうですね。かがみさんもつかささんも気を遣わないでください。やはり私が――」 「わ、私は気を遣ってないよ。ただ、こなちゃんを手伝いたいだけ。だから私が――」 「ちょ、みんな。落ち着いてよ。か、かがみ。かがみでいいよ」 「ほらね。こなたもこう言ってるし、私が行くわ」 「泉さん、遠慮なさらずにおっしゃっていただいてもいいんですよ?」 「こなちゃん、私じゃ頼りにならないかなぁ?」 「い、いや、そんな大したことじゃないし。それにすぐに戻ってくるから」 「じゃあ、早く行きましょ。こなた」 台所で人数分のジュースとクッキーを用意する。 とりあえず、この時間を利用してかがみに謝っておこう。 「あ、あのさ、かがみ」 「わかってる。ごめんね、こなた。びっくりしたでしょ?つかさとみゆきが一緒じゃやっぱり辛いよね」 「い、いや。そうじゃなくって――」 「でもね、こうなったら仕方ないわ。少し早いのかもしれないけど……私ね、今日決着をつけちゃおうと思ってるの」 「ちょ、かがみ、私の話を――」 「わかるわ、不安よね。でも大丈夫。私がついてるから。何があっても守ってあげるから。さあ、行きましょ!」 「あっ、待ってよ、かがみ――」 「いいから、ここは私に任せなさいって。とりあえず、2人に謝ってもらうところから始めなきゃね!」 あんまり遅くなると怪しまれるわよ、と言ってかがみはクッキーの皿を手に部屋へと戻っていった。 優しい笑顔を残して去るかがみを呆然と見送ることしかできない私。 かがみに謝るどころか、謝られちゃったよ。てへ☆ ……いや、そうでなくて。 今のかがみの様子からすると、1人ずつ相手をしていくという私の計画は難しそうだ。 何があったかのかは知らないが、かがみはテンションが上がりきっていた。 さっきの部屋でのやり取りから察するに、おそらく他の2人も似たような感じだろう。 私の話を聞いてくれる心の余裕がなさそうだ。 それに、3人とも私が他の誰かと2人きりになるような状況はなかなか許してくれなさそうだ。 ……こうなったらもう、みんながもめ始める前に土下座でも決めるしかない。 どこか遠いところへ逃げたくなる気持ちを抑え、私は地獄へと続く廊下をゆっくりと進む。 いつもの倍以上の時間をかけて自分の部屋の前までくると、既にヒートアップした3人の声が聞こえてきた。 「まだわかんないの!?まず、こなたに謝れって言ってんのよ!!あんた達、こなたが苦しんでるのがわからないの!?」 「ですから!何度も言うようですが、人のせいにしないでください!!かがみさんが泉さんを苦しめているのでしょう!?」 「やめなよ、ゆきちゃん!隠さなくても、もうみんなわかってるんだよ!?」 「そうよ!つかさの言うとおり、私はみんなわかってるのよ!?みゆき、あんた少しは反省したらどうなの!?」 「あくまで人のせいにすると言うのですか!?つかささんだって、苦しんでいるのですよ!?」 「はぁ!?だからなんだってのよ!つかさは自業自得じゃない!!元はと言えば、つかさのせいなんだから!」 「ひどい!相談もしてくれずにそんな言い方ってないよ!ねえ、なんで最初がこなちゃんだったの!?なんで、私じゃなかったの!?」 「何よ!?私があんたのことを一番にかまわなかったのが原因だとでも言いたいの!?甘ったれんじゃないわよっ!!」 「つかささんにまで当たらないで下さい!!かがみさん、見損ないました!……あなたは間違っていますッ!!」 「っ!?……みゆきぃっ!よくもっ!よくも、ぶったわねっ!!このっ!!」 「きゃあっ!?」 「や、やめなよ、お姉ちゃん!ゆきちゃんも!暴力はよくないよ!!……ひゃあっ!?」 うん。わかっているとも。 今すぐ部屋に飛び込んで土下座、それ以外に選択肢はないよね。 ☆ 「ごめんなさい」 「おまっ……謝って許されるとでも……!!」 「泉さん。いくらなんでも、これは……!!」 「ひどいよ。私、本気で信じたのに……!!」 事情はひととおり説明したが、当然笑って許してくれる筈もなく。 三者三様の絶句の後は、ただただ、重苦しい沈黙が場を支配する。 私は土下座したままの姿勢で固まることしかできない。 穴が開くのではないかと思えるほどに、じっと床の一点を見つめ続ける。 申し訳なさ過ぎて、みんなにあわせる顔なんてない。 あんなに仲の良いみんなが、勘違いとは言え私のせいで喧嘩までしたのだ。 みゆきさんはかがみの頬を平手で打ち、かがみはみゆきさんに掴みかかった。 あと一歩間違えれば、私達の友情は消えてなくなっていたかもしれない。 床にシミがひとつ、ふたつ……あれ?私、泣いてる? 床のシミはみるみるうちに数を増やしていく。 「……泉さんに悪意が無かったという事は、わかりました」 「……そうだね。もともと、こなちゃんは私達と遊びたかっただけなんだよね」 「……こなたらしいいたずら、ってとこね。あまりにも度が過ぎてたけど」 優しい言葉。 勇気を振り絞って顔をあげると、みんな少し呆れたように笑っていた。 私は胸がいっぱいになる。 「ごめん、本当にごめんなさい、ごめんね、みんな。うあ、うわああああああん」 「ほら、泣かないの」 「ぐすっ。だって、こんな私を笑って許してくれるなんて、なんだか嬉しくって」 「あら、誰が許すって言ったかしら?」 「ふぇ?」 「もちろん、それなりのお礼はさせてもらうわよ?」 「そうですね。1回は1回ですよ、泉さん」 「あはは、こなちゃん。これで終わりだと思ってるだなんて、どんだけ~」 「ちょっ、みんな、目がこわいデスヨ?……いったい何を……」 「そうね、私達もこれからひとつずつ嘘をつかせてもらうわ」 「う、嘘を?……あれ?それだけ?」 「はい。それだけです」 「なぁんだ。びっくりさせないでよ。そんな簡単なことなら――」 「ねえ、こなた。あんた今日は、とっ~ても平和に過ごすわ。嫌と言うほどね」 「泉さん。泉さんは今日という日を、驚くほど簡単に忘れてしまえるでしょう」 「こなちゃん。こなちゃんにとって、今日がいっちばん幸せな日になるんだよ」 「え?……も、もしかして、それが嘘?……ってことは……あ……やめっ――!!!!」 ☆ 今日は正真正銘の4月1日、エイプリルフールだ。 せっかくだから、嘘をついてみようと思う。 『昨日はとても楽しかった。 突然遊びに来たかがみとつかさとみゆきさんが、私に素敵なプレゼントをくれたのだ。 昨日という日は、私にとって今までで一番幸せな日だったんじゃないかと思う。 でも、きっとそれもすぐに忘れてしまうことになるんだろう。 とても平和だったという点においては、いつもとなんら変わらないただの1日だったから。 そしてまた、素敵な1日が始まろうとしている。 私はかがみから呼び出しなんかされていないし、つかさも一緒に待ち構えていないし、集合場所はみゆきさんの家ではない。 まあ、偶然にもみんなと会うことがあれば、たぶん昨日の事について幸せな気分で笑いながら語り合うことになるだろうね。 ああ、できることなら、誰も私の事を助けないでほしい。神様が本当にいるのなら、どうか私の事を救わないでほしい』 うん。我ながら上出来だ。
https://w.atwiki.jp/sundayrowa/pages/256.html
殺したらおわり(前編)◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 横島忠男の眼球を抉り取ろうとしていたさとりは、唐突にその動きを止めた。 三日月状の刀剣・魔道具『海月』を振りかざしたまま、不自然な体勢で硬直する。 「な、なんだってんだ、いきなり……」 対する横島のほうもまた、霊波刀を構えた状態で首を傾げる。 よもやこちらの意図を汲んで、人殺しをやめてくれる気になったのだろうか。 いや、そうに違いない。たまには勇気を振り絞ってみるものだ。超逃げたかったけど、そうしなくて正解だった。よかったよかった。 そんな思考が『心を読む妖(バケモノ)』であるさとりに流れ込んでくるものの、まったくの見当違いだ。 横島の言い分なぞ、知ったことではない。 そもそも、さとりには横島の言わんとすることの半分も理解できていない。 妖でも家族になれる可能性があるのならば、同行者に一度伝えてみようと思ったくらいだ。 つまるところ、動きを止めた原因は他にある。 これまで静止していたさとりが、凄まじい速度で首を捻る。 その視線の先にいるのは、三人の少年少女だ。 へたり込んでいる華奢な少年、バロウ・エシャロット。 彼を庇うように立つ筋肉質なモヒカン少年、石島土門。 剣を構える額から二本の角を生やした少女、霧沢風子。 彼らの思考が、さとりへと流れ込んでくる。 彼らがいったいなにをしようとしているのか、さとりには読み取れる。 『彼ら』というより、『彼女』が問題だった。 霧沢風子の脳内は、さとりの同行者への殺意で埋め尽くされていた。 その全身から放たれる妖気は、彼女が少女の外見をした妖であることを雄弁に語っている。 「バロウ……!」 意図せず、さとりは同行者の名を呟いた。 ほんの数ヶ月前まで―― さとりという名の妖は、一人きりで山奥に生きていた。 どれだけ日にちが経とうと、どれだけ季節が過ぎようと、どれだけ年が変わろうと。 いつだって、たった一人。 心を読む能力を持っているというのに、一人ぼっち。 別に、山が嫌いだったワケではない。 むしろ、自分の住処のことは好いていた。 石も、花も、樹も、みなそれぞれ美しい。 ただ、考えていることはいつもあまり変わらない。 時たま鳥や虫を見つけても、彼らはすぐにいなくなってしまう。 それに、彼らもまた、ほとんど常に考えていることは同じだ。 退屈な日々を、はたしてどれだけ過ごしただろうか。 なまじそうそう早く寿命を迎えぬ妖ゆえ、過ぎた年月はもはや数えることさえできなくなっていた。 そんなある日、さとりは人間に出会った。 本来人間など足を踏み入れぬ山奥に、偶然にも飛行機が墜落したのだ。 その事故唯一の生存者であったミノルという少年は、それまでさとりが見てきた他のものとはまったく違っていた。 石よりも、花よりも、樹よりも、鳥よりも、虫よりも、ずっとずっと多くのことを考えていた。 最初は恐怖で埋め尽くされていた思考が、少し声をかけただけで安心感に変わっていく。 飛行機の破片が散らばる場所では危険だからと、ちょっと手を引いてやっただけで、その安心感は増していく くれてやった木の実が苦いというので、車を襲って調達したパンを手渡した。ただそれだけなのに、脳内に感謝と歓喜の念が満ち溢れる。 さとりは、そのような存在を知らなかった。 心を読む能力を持ち合わせていながら、自分へと向けられた思いを読んだのは――初めての経験であった。 かつて気まぐれで鳥に餌をやったことがあったが、これほど豊かな感情を抱かれたことはない。 ただ好きに食い散らかして、すぐに飛び立ってしまうばかりだった。 腹を満たせたことへの安心こそあれど、そこにさとりへの思いはない。 だが、ミノルは違った。 満面の笑みを浮かべて喜び、感謝し、そしてこう呼んでくれるのだ。 『お父さん』――と。 理由はよく分からないが、さとりには嬉しかった。 ミノルが笑みを浮かべてくれると、胸が熱くなるのだ。 それまで退屈だった日々が、キレイに彩られたようだった。 だから、さとりはキース・ブラックの指示に従った。 ミノルの目が治れば、きっともっと微笑んでくれるはずだから。 そう信じて、最後の一人になる決意を固めたのだ。 しかしその願いが叶わないことを知るまでに、さして時間はかからなかった。 夜明け前に遭遇したバロウが、きっぱりと否定したのである。 『妖では、人間の家族にはなれない』 他の誰かが否定してきたのなら、さとりは信じなかっただろう。 でまかせと決め付けて、海月で斬り捨てていたはずだ。 それをしなかったのは、バロウもまた人間ではなかったからだ。 人間ではなく、人間でないがゆえに――人間と家族になれなかった。 そんな悲痛な記憶が流れ込んでくれば、いかにさとりとて信じるしかない。 そうして目的を失ったさとりに、バロウは手を伸ばしてくれた。 『おじさんも、人間になればいいじゃないか』 人間でないにもかかわらず、人間と家族になりたい。 バロウが語った夢は、さとりが望むものとまったく同一であった。 その話を聞いている際に流れ込んできたのは、バロウが描く幸せな未来のヴィジョン。 妖でなくなったバロウは、屈託のない笑顔を浮かべていた。 それを視てしまったがゆえに、さとりは伸ばされた手を取った。 すると、バロウは――たしかに微笑んだ。 ミノルと同じように、心からの笑みを浮かべたのだ。 その笑顔を崩したくないと、さとりは思った。 できることならば、ミノルだけでなく、バロウとも笑って幸せに暮らしたい。 それが叶わないのは、さとりにも分かっている。 バロウの望みは、さとりではない他の誰かと家族になることだ。 願いを叶えられるのが一人である以上、いつか確実にぶつかることになる。 心を読めるさとりは、バロウがいずれさとりを殺すつもりであるのも承知している。 それでも、構わなかった。 最終的に殺し合うのを承知で――ただ、一緒にいたかった。 「バロウに怖いことさせるものか」 言い終えるより先に、さとりは跳び上がっていた。 虚を衝かれたらしい横島の驚愕する声が背後から聞こえたが、耳を貸す気はない。 横島の眼球を手に入れるよりも、優先せねばならない事態である。 「バロウに近づくなァ!」 ほんの三回跳んだだけで、さとりは風子の下へ到達する。 すぐ近くにいた土門を無視して、標的を風子一人に絞る。 とうに読めている思考を踏まえて、剣で受け切れぬ方向へと海月を振り下ろす。 ――彼女の身体に触れる寸前で、三日月状の刃は静止した。 そこにはなにも存在しないはずなのに、どれだけ力を籠めようと海月は風子に届かない。 「なん、であ゛ッ」 さとりの驚愕の声は、半ばでくぐもったものに変わる。 なにか目に見えぬものが、凄まじい速度で鳩尾に激突したのだ。 衝撃で僅かに呼吸が止まる間に、さとりは黙視できぬなにかの正体を知った。 いや、知ったのではない。 ご丁寧なことに、『教えられた』のだ。 眼前の少女でも、他の二人でもない――別の声に。 『身の程を知るがよい、妖怪。 貴様ごときが、我が風を破れるはずがなかろう』 ここに至って、さとりはようやく相対している妖の正体を理解する。 風子のほうはあくまで憑代であり、本体は彼女の持つ風神剣であったのだ。 まるで威圧するかのように、風子が一歩ずつゆっくりと歩み寄ってくる。 さとりは逃げ出すことさえできない。 思考が読めるからこそ、逃げたところで意味がないと分かってしまう。 ただ、背後で震えるバロウを守るように、ほんの僅かに前に出ただけだ。 「死ね」 短く吐き捨ててて、少女は剣を振り下ろ――さなかった。 「おいおいおいおい、風子様よォ。 せっかくのデートなのに彼氏放って他の男とお楽しみなんて、そりゃあねえだろうが」 風子とさとりの間に、石島土門が割って入っていた。 その手には、真っ赤なバラの花束が握られている。 「いやいや、最初に道具確認したときから思ってたけど、キース・ブラックのヤツも意外に気の利いたもん渡しやがるよな。 この俺にバラの花束なんて、まったくお似合いってレベルじゃねえ。ま、アイツに感謝なんか死んでもしてやらねえけどよ」 軽口を叩くような口調とともに、土門は花束を前に突き出す。 「俺だけじゃねえんだぜ、風子。 お前に似合うのはそんな物騒な剣じゃねえ。こいつだ。どうか受け取ってくれよ、マイステディ」 「ふざけんな」 ウインクを決めての決めゼリフは、たった五文字で切って捨てられた。 土門はやけに演技がかった大げさな動作で、肩を落としてみせる。 そんな素振りが癇に障り、風子は語気を強くする。 「テメェ……いい加減にしろッ! 脳ミソとろけちまったのか、腐乱犬! ンなふざけたことぬかしてる場合じゃあねえだろうがッ!! 烈火は死んだんだぞ、みーちゃんもだ! それ分かってんのか! もしかして『実は生きてる』とか、そんなありえねー夢見てんじゃねえだろうなッ!?」 風神剣から放たれる風が、あからさまに強くなる。 激しい風にモヒカンをなびかせながら、土門は微かに目を細めた。 「分ぁーってんだよ、んなこと」 「なら――」 「るっせえな。黙って話聞いてろよ」 風子の声を制して、土門は一呼吸置いてから切り出す。 「下らねえ夢なんか見てられるワケねえだろ。 花菱のバカ野郎は、この土門ちゃん逃がすために命捨てやがったんだからよ」 「――――っ」 「バカだよな、ほんと。 死んだら終わりだってことくれー、アイツもよく知ってるだろうに。 何せ、俺たちゃこの歳で、何人も死んでくヤツら見てきちまったんだからよ。 はっ! あんまり寂しくて夢に出てくるくれーなら、死んでんじゃねーっつんだよな」 「だ、だったら……!」 風子の身体が小刻みに震える。 困惑と怒りがない交ぜになっているのが、さとりには読み取れた。 「だったらなおさらだ! バカ野郎はテメェだ、バカ野郎! 目の前で烈火殺されて、なにのうのうとしてやがんだ! そんなんでいいのか、テメェは!?」 絶叫は住宅街に響き渡らず、付近にいるものにしか届かない。 よりいっそう激しくなった風によって、掻き消されているのだ。 「ああ、いいぜ。 おっ死んじまったヤツのために、わざわざ手ぇ汚す気はねえよ。汚させる気もねえ。それこそバカ野郎じゃねえか」 風子は目を見開いたのち、ゆっくりと頭を垂らす。 表情が窺えない状態で出てきた声は、やけに低く冷たい。 「そう……かよ。だったら知らねえ。知ったこっちゃねえ。 どかねえってんなら――無理矢理吹き飛ばしてやるっ!!」 その声に呼応するかのように、周囲に異変が生じる。 先ほどまで縦横無尽に吹いていた風が、いきなり止んだのだ。 住宅街中を流れていた風が集束し、風神剣の刀身を覆っていく。 風神剣の柄に埋め込まれた宝玉が仄かに光り、その中心部に『風』という文字が浮かぶ。 明確な宣戦布告を受けたというのに、土門はたじろがない。 風子を見据えたまま、さとりとバロウの前から動こうとしない。 「お、お前、どうして……俺たちが憎くねェのか……?」 「憎いに決まってんだろうが! どんだけ痛かったと思ってんだ、バカチン! テメェ、ハラキリって死ぬヤツだからな! あの清麿ってヤツがなんかARMSとかいうの持ってただけで、本来死ぬヤツだからな!」 その返答は、さとりがすでに読み取っていたのと同じものだった。 土門のなかには、自分たちへの憎しみがある。 ならば、どうして―― そんな疑問は問いかけるまでもなく、土門自身により解消される。 「けどよ……ムカつくからって殺してたんじゃ、俺たち火影がブッ飛ばしてきたクソ野郎どもと――なんにも変わんねえだろうがッ!!!」 そう言い切ると、彼の着込んでいる漆黒のボディスーツが膨れ上がった。 ◇ ◇ ◇ 時を同じくして、近接エリアであるB-2の南部。 蒼月紫暮とルシール・ベルヌイユの二人は、民家の壁に背中を預けて身体を休めていた。 自動人形(オートマータ)・ドットーレに気付かれぬよう、どうにか距離を取ったところである。 法力僧と人形破壊者(しろがね)といえど、精神的な疲労がないワケではない。 瞳を閉ざして、心を落ち着ける。 睡眠をとらなくても、数分こうしているだけでだいぶ回復するものだ。 両者はいちいち言葉で意思の疎通を行わずに、取るべき行動を理解していた。 ――不意に、紫暮の身体が震えた。 「これは……!」 閉じておくはずの目が見開かれ、声が勝手に零れる。 休息状態から臨戦態勢へと、身体が即座に切り替わる。 傍らで紫暮の声を聞いたらしいルシールも、また同じくだ。 「いったい、なにが起こったんだい?」 ただ、ルシールのほうはなにも捉えていないらしい。 これにより、むしろ紫暮はなにか起こっているという確信を強めた。 紫暮が捉えたのは、戦闘音ではなく『妖気』だ。 もう全盛期から長らく年月が過ぎ、五十歳も近くなっている。 肉体や法力は衰えていくばかりだが、感覚だけはかつてよりも研ぎ澄まされている。 その感覚が告げるのだ。 ――強大な妖気が、南部から発せられている。 捉えた気配は、かなり暗く重たい。 大きな憎しみに満ちているのは、間違いない。 浮かんだのは、憎しみを食らう大妖の姿である。 アレほどではないだろうが、同種という可能性は少なくない。 だとすれば、法力僧たる自分が向かわねばならないだろう。 紫暮はその旨を伝えるが、ルシールの返事は積極的なものではなかった。 「行ったところで、なにができると言うんだい?」 「ぐ……」 あまりに的確な指摘であった。 紫暮に支給された道具は、鍋のフタだけ。 そのフタの素材が法力を通しやすい代物ならばともかく、単なるアルミ製だ。 いざ戦場に辿り着いたところで、素手の紫暮にできることなどたかがしれている。 (とはいえ――) 先の放送で、井上真由子という名前が呼ばれていた。 彼女は戦う術を持たぬ、単なる一般的な女子高生である。 そんな彼女が殺し合いに呼び出されて、命を落としてしまっている。 ドットーレのいた学校に人の気配はなかったが、いま感じた妖気の元には誰もいないとは限らない。 真由子のような力を持たない誰かが、強烈な妖気と相対しているかもしれないのだ。 法具がなくとも、誰かを逃がすくらいはできるかもしれない。 決して、断言はできない。 息子のうしおならば『できる』と言い切るだろうが、年老いた紫暮には不可能だ。 だが断言できないからといって、行かなくていいのだろうか。 護るべきか、見捨てるべきか。 向かうべきか、向かわぬべきか。 考え込み、迷い、逡巡し、それでも踏ん切りがつかず―― 『ゆくことが、貴方の使命ですよ』 いつか聞いた声が蘇り、紫暮ははっとする。 (はは、いまさらだったな) 同じ迷いを抱いたことがあった。 そして答えを見出したことがあった。 そう――もう、答えは出ていたのだ。 それも、十六年も前にだ。 あの日から一日とて、固めた決意は揺らいでいない。 ならば、どうしていまこの場で決めかねることがあろう。 紫暮はルシールのほうに向き直り、静かな口調で言い放つ。 「人々に仇なす妖を封じるのが、私の使命です。 同行を強制するつもりはありませんし、もしものときは見捨てていただいて構いません」 これは、ルシールに向けられたものではない。 紫暮が自身に言い聞かすためのものでもない。 いま現在も海の底で使命を全うしている、思いを寄せる女への――誓いだ。 「そうかえ。ではいざとなったら、安心して見捨ててさせてもらうとするかね」 くつくつ笑いながら、ルシールは紫暮の前に立つ。 そうして呆然とする紫暮を急かすように、こう告げるのだった。 「どうしたんだい? 『お守りしてくれる』んだろう?」 ルシールに遅れて、紫暮も口元を緩めた。 ◇ ◇ ◇ 「はぁ……はぁ……クソッ!」 いつの間にか荒くなっていた呼吸で毒づきながら、風子は風神剣を振り下ろす。 離れた場所にいる土門への威嚇のために、単に剣を振るっているだけではない。 一薙ぎするたびに、刀身を覆っている風がいくつもの弾丸となって放たれているのだ。 にもかかわらず、土門は一向に退かない。 どれだけ風玉を放っても意に介さず、まっすぐに進んでくる。 横に跳んで回避することこそあれど、一度たりとも後退することはない。 風玉に囲まれて避け切れなくなれば、その場で立ち止まって身体に力を籠めて受ける。 ずっと攻撃を続けている風子のほうが、詰められた距離を開けるために後退してばかりだ。 「ちィ……! どうなってんだよ、テメェの着てるそれはよォ!」 「俺が知るか! 負けらんねえと思ったら思っただけ強くなるんだよ、このアーマーなんちゃらスーツはッ!」 意味の分からない返答とともに、土門が地面を蹴った。 風子は咄嗟に風刃を撃ち出すが、土門は顔面だけを庇うように腕でガードする。 やはりボディスーツの表面が削れるばかりで、内部にあるはずの肌さえ露にならない。 しようがないので飛び退こうとする風子だったが、とても間に合わない。 風子が知る土門の限界を超えたスピードで、土門は接近していた。 走る勢いそのままに、バラの花束を持っていないほうの右手をかざし―― ――ぱちんっ。 「…………は?」 「目ェ覚めたかよ、お姫様。 王子様のキッスのほうをお望みってんなら、何百回だってしてやるぜ」 風子は遠ざかることも、刃を返すこともできずにいた。 そんな千載一遇の機会を得たというのに、土門がやったのは――いったいなんだ。 わざわざ考えるまでもないほどに、明らかである。 ――『頬っぺたをはたいた』だけだ。 それも、子どもを叱りつけるような微かな力でだ。 風子は、自分のなかでなにかがキレる音を聞いた。 「おちょくってんじゃあねェェェーーーーーーッ!!」 これまで研ぎ澄まされていた精神が、一気に決壊した。 風神剣の刀身だけを高密度で覆っていた風が、再び外界へと解き放たれる。 住宅街一帯に吹き荒れ、かつて民家だった瓦礫が宙を舞い、張り巡らされた電線が激しく揺れ動く。 そんな暴風のなかで、土門は焦らず二本の足に力を籠めて立ち尽くす。 依然として左手に花束を持ったままであり、風子はその姿が気に入らなかった。 これだけの風速のなかでは、通常なら涼しい顔など浮かべていられないはずなのだ。 「ナメんな、クソッタレ!」 刀身を風で覆うこともせずに、そのまま風神剣を袈裟に振るう。 単なる刃でしかない刀身は、簡単に仰け反って回避されてしまう。 発生させた風の勢いで強引に刃を戻しての逆袈裟も、これまた飛び退いて回避される。 強引な連撃で体勢を崩したところを狙って、土門が再度肉薄してくる。 ――ぱちんっ。 「テメェ……!」 またしても、土門は同じ行動を取った。 またしても、せっかくの好機をふいにしてきた。 風子の苛立ちが増していき、風神剣の宝玉がさらに光り輝く。 「バカにすんのも、大概にしやがれッ!!」 身体を風で強引に加速させて斬りかかるが、土門の右腕に阻まれる。 ボディスーツに数センチ刃が埋もれた感覚はあったが、そこから進む気配はない。 無理に刃を押し入れようとして、そのまま前に倒れ込んでしまう。 土門が腕をうしろに引いたために、かけていた力が行き場を失ったのだ。 体力バカであるはずの土門に、巧みにあしらわれた。 その事実を受けて、風神剣を握る力がさらに強くなる。 こんなはずはないと、風子は歯を軋ませる。 石島土門は力バカで、霧沢風子は技巧派。 その認識に誤りなど在り得ない。 長い付き合いなのだから、お互い分かっている。分かり切っている。そうに決まっている。 「剣みてえな慣れねえもん使いやがって。勝てるワケねーだろ」 這い蹲っている最中に浴びせられた言葉によって、風子の怒りはついに沸点に達した。 「ざッけんなッ! 私はずっと練習してたんだ! 緋水の神慮伸刀を託されてから、ずっと!! 殺すッ! いい加減なことばっか言いやがってッ! クソッ! クソッ! マジでブッ殺すぞッ!!」 発生させた風で飛び上がるようにして強引に立ち上がりながら、風子は声を張り上げる。 それでも、土門はなぜだか寂しそうな表情を浮かべるばかりだ。 一向に本気で戦うそぶりを見せない土門に、風子の苛立ちは加速していく。 「確信したぜ、風子」 土門が左手を伸ばし、バラの花束を前に突き出す形になる。 「いまのお前は、火影の誰よりも弱い」 風刃でも飛ばしてやろうとしていた風子だったが、一瞬完全に思考が飛んでしまう。 はたして土門がいったいなにを話しているのか、まったく理解できなかった。 「っつーか、アイツより弱えんじゃねえの。 なんだっけ、あの、空海んとこの……南尾じゃなくて、ほらお前が戦った、えーと」 いや、それはないだろう。 さすがに、そんなふざけたことは言わないだろう。 風子のそんな期待は、あっさりと覆されることになる。 「ああ、藤丸だ。あの鎌使う変態野郎。 自分のやりてえことを自分で決めらんねえっていう点で、いまのお前はアイツにも負けてるぜ。 アイツはどうしようもねえクソ野郎だったけど、でもやりてえことは自分でちゃんと決めてたもんな」 ここに至って、風子の思考は白く染まった。 怒りは臨界点を超え、殺意へと切り替わっていく。 かつてないほどの速度で風を作り出し、一気に土門へと射出する。 これまでのように一方向からばかりではなく、四方を覆うように風刃を生み出す。 もはや一切の容赦も躊躇もなく、首や心臓といった人体の急所にさえ残撃を飛ばす。 「……はっ。ナメたことぬかしやがって……」 轟音が響き渡り、辺りに土煙が立ち込める。 はたして土門がどうなったのかは、定かではない。 少なく見積もっても、数十の肉片と成り果てただろう。 せっかくだし、突風で土煙を吹き飛ばして確認してやろうか。 そのように思考を巡らす風子だったが、確認なぞ必要なかった。 「ナメてんのも、おちょくってのも、バカにしてんのも……全部お前だろうがッ、風子ォ!」 土煙のなかから、聞き慣れた声が響いたのだ。 目を凝らしてみると、巨大な影が迫ってきている。 その正体が誰なのかなど、特徴的なモヒカン頭を見れば明白だ。 左手に持った花束は健在だ。アレだけやったのに、風子は花束さえ吹き飛ばせなかった。 「……ぐッ!」 「逃がすかよ」 距離を取ろうとした風子だったが、バックステップを踏むことさえ叶わない。 土煙から飛び出てきた土門に、その肩を掴まれたのである。 着込んでいるボディスーツはボロボロだが、未だ形状を保っている。 現れた土門の額には、『鉄』の文字が浮かんでいた。 「めんどくせえから、はっきり言わせてもらうぜ。俺はいまのお前が気に喰わねえ」 ――ぱちんっ。 「仲間だなんだぬかして、花菱や水鏡に責任を押し付けてるのが、腹立って仕方ねえ。 アイツらを理由にしてんじゃねえ。ほんとにやりてえんなら、『自分が殺してえから』って言えよ。 なのになんだっけ、お前。俺たちを『守るために』とか言ってやがったな。ナメんな。いらねえよ、そんな気遣い。ふざけてんのか、オイ」 ――ぱちんっ。 「いいか。自分がいったいなにをしてえのか、それをまず考えろ」 ――ぱちんっ。 鋼鉄化した肉体であるゆえ、極限まで力を抑えているのだろう。 風子の頬を打つビンタの威力は、これまでとほとんど変わらない。 その手は鉄特有の冷たさを誇るはずなのに、やたらと熱く感じた。 「さっきまで俺とタイマンってたヤツな、サイボーグなんだぜ。スゲェだろ。 作ってくれたドクターなんちゃらの命令には逆らえないとか、強情張っててな。 でも、アイツは変わったぜ。製作者様の言いなりなんかじゃなく、自分のやりてえことをやるってな」 風子は俯いたが、頬を掴まれて強引に顔を上げられる。 せっかく目を伏せたというのに、見たくなかった土門の瞳を直視するはめになる。 その視線もまた、ひどく熱かった。 「お前はどうなんだよ、風子。 清麿から聞いたぜ。その剣、風神剣っつーんだろ? その風神剣とかいう魔剣様の言いなりになってんじゃねえのか。 ほんとに人を殺してえのか。本心から、心の底から、そう思ってんのか。 だったら言ってみせろよ。仲間のためでもなんでもなく、自分が殺してえから殺すって――そう断言してみせろよ、この野郎!」 「そ、そうに決まって……」 言葉の途中で、風子は口籠ってしまう。 肯定してやろうとしたが、できなかったのだ。 海月が土門の腹を斬り裂いたのを見たとき、剣から流れ込む声に身を委ねてしまったのだから。 「聞こえねえな。はっきり言えよ。 霧沢風子ってのは、なんか訊かれたらすぱっと答える気持ちいい女だっただろうが」 視線を逸らそうとしても、土門は首を動かして追ってくる。 黙秘は許されない。なにか答えねばならない。 そう認識し、風子は―― 「るッせええええええええええええええええッ!!」 絶叫した。 風神剣へと意識を集中させると、収まっていた風が再び激しくなる。 「私が人を殺したいかどうかなんか知らねえよ、ボケ! でも仕方ねえじゃねえか! 人殺しするヤツを殺さなきゃ、また誰か殺されちまうんだ! 分かってんだろうが、テメェも! 邪魔すんじゃねえ! 邪魔すんだったら、テメェだって――!!」 その言い分が支離滅裂なのは、風子自身にも理解できていた。 大切な仲間が殺されないように、人殺しを先に殺すはずだった。 なのに、どうして仲間である土門を真っ先に殺そうとしているのか。 これでは、守るべき仲間がいなくなってしまう。本末転倒ではないか。 生まれた懸念は、風を作れば作るほどに薄れていく。 視界の片隅のほうで、風神剣の宝玉が妖しく煌めいている。 自分の行動は決して誤っていないと、吹きすさぶ風が認めてくれているような――そんな気がした。 風子は自身に突風を当てる。 風の勢いに乗れば、土門から離れられる。 いくら土門が力バカであろうと、風が強くなればいずれ手放すはずだ。 「なんッで放さねえんだよッ! いい加減、諦めろよッ!」 一向に力が緩まる気配がなく、風子は語気を荒げる。 対して土門はというと、ふてぶてしく笑うばかりだ。 「放すわきゃねえだろうが、バーカ。 俺はいつだってお前を支えてやるって、心に誓ってんだよ。 お前が断っても、何度だって何度だって抱き締めてやるんだよ!」 「……なに言ってんだ、お前ッ! もういい加減、そのうるせえ口閉じてろよ!!」 怒りを露にし、風子は風刃を生み出す。 現時点においても、土門は花束を手放していない。 つまり、右手に風子を、左手に花束を持っているのだ。 ならば、ガードなどできるはずがない。 いかに魔道具『鉄丸』で身体を鋼鉄化させていようと、微かな衝撃は走るものだ。 風刃に頬を斬りつけてやると、ほんの僅かにだが土門の右手に籠められた力が弱くなる。 風子が、その隙を逃すはずがない。 掴んでいる手を強引に振り払うと、土門の肉体を蹴り飛ばす。 蹴った勢いを突風に乗せて一気に加速し、距離を取ってやる。 「させッかよ!!」 初めて見せた焦りの表情に、風子は口角を吊り上げる。 (もう、遅ェっつーんだよ) すでに、土門にも突風を放っている。 その風向きは風子が浴びているのは逆方向であり、ようは土門にとって向かい風だ。 こうしておけば、いくらなんでもやすやすと追いつけまい。 そんな風子の予想を覆す事態が、眼前で展開された。 土門の右腕が――『伸びた』のだ。 生物と鉱物が一体化したような、その腕には見覚えがあった。 プログラムの説明の際、高槻涼と呼ばれた少年の腕がこのような外見になって伸びていた。 (いや、いまはンなこたどうでもいい!) 空中で風刃を生み出し、伸びてくる腕へと放つ。 伸びた部位までボディスーツで覆われているはずもなく、生身だからであろう。 ようやく、風刃は土門の肉体を傷付けることに成功する。 ところが、あくまで最初の一撃だけだった。 その傷は瞬く間に回復し、二撃目以降では表面に切れ目すら入らない。 唖然とするしかない風子は、ほどなくして土門の腕に捕らえられる。 長く伸びた腕は、土門の身体の元へと勢いよく収束していく。 「……どうなってんだよ、その腕」 「たとえ人間の身体じゃなくなっても、土門ちゃんは風子様を抱き締めてやるってことだよ!!」 風子が苦々しい表情で問いかけると、土門は自信満々に言い放つ。 なんにも質問に答えてねえじゃねえか――抗議しようとした風子の右手に、鋭い痛みが走る。 「痛う……っ」 反射的に目を閉じてしまってから、風子は違和感に気付く。 いまのいままで握っていた得物が、右手から消えていた。 叩き落とされたのだと察するまで、大した時間はかからない。 だがそのほんの僅かな時間でも、土門には十分であったようだ。 落下した風神剣を離れた場所に蹴り飛ばして、もうすでに追いついている。 「さっきのたわ言のうち、どこまでお前の考えで、どっから剣のせいなのかは知らねえよ。 でもよォ、なんも言わねえで逃げたってことは、そういうことなんだろ。 だったら、容赦なく否定してやるぜ! 悩みに悩んで出した結論とかじゃなく、考えるのやめてこんな剣の言いなりになる気だったんならな!」 風神剣を踏みつけて固定すると、土門は風子に向ける眼差しを鋭くする。 「よく聞け、大バカ野郎! 仲間が殺されないように、誰かを殺すなんざ認めねえぞ! 人なんか殺しちまったらな、一生背負わなきゃなんねえんだぞ! 忘れられるワケあるか! 永遠に覚えてるに決まってんだろ! 他のなにかしてるときだってついて回るし、夢にだって出るだろうよ! 安まる日なんざねえよ、百パー。生きた心地しねーぜ、そんなもん。 仲間のために、一生モンの悔い残してどうすんだよ! そんなもん望むか! 少なくとも俺は望まねえ! 俺は、風子が後悔引きずるなんざ真っ平だ!」 一息で言い切ってから、土門は呼気を整える。 そうして拳を固く握り締めてから、真下の風神剣に視線を向ける。 彼がいったいなにをしようとしているのか、風子には予想できてしまった。 「やめろ、土門っ!!」 風子が、思い切り地面を蹴る。 風神剣を破壊させるワケにはいかない。 アレは魔道具『風神』を愛用している風子にとって、かなり相性のいい武器だ。 アレを失ってしまったら、風子の戦闘力は著しく低下する。 無慈悲に人の命が踏み躙られるこの場で、足掻くことさえできなくなるのだ。 そんな事態に陥っていいはずがない。 花菱烈火と水鏡凍季也が死んだというのに、使い勝手のいい武器を持たぬ少女に成り下がるワケにはいかない。 頭ではそう恐れているはずなのに、どうしてであろうか。 自身に力を与えてくれる剣を、握っているだけで高揚感を抱かせる剣を、『殺せ』としつこく命じてくる剣を―― 土門が完膚なきまでに破壊すると思うと、風子は不思議と胸が高鳴った。 「やめねえっ! 十回でも百回でも言ってやるぜ、風子!」 ゆえにであろう。 土門がこう断言したとき、風子は足を止めてしまった。 頭に響く風神剣の『拾え』と命ずる声は、土門の叫びにかき消される。 「殺しちまったら――なにもかも終わりなんだよ!!」 風子の視界が、スローモーションじみたものとなる。 固く握られた拳が、ゆっくりと風神剣へと迫っていく。 あと、もう少しだ。 ほんの少し待てば、土門の拳が風神剣を割り砕いてくれる。 剣から流れ込んでくるやかましい声を、二度と聞かずに済むのだ。 「…………あ?」 風子には、眼前の光景が理解できなかった。 思わず零れた呆けた声を、自身のものだと判別することさえできない。 拳が風神剣に触れる寸前で、土門の身体が『跳ね上がった』。 「ぐ、ガ……ァ! クソ……もうちょっと、だってのによォ……!」 困惑しているのは、風子だけではないらしい。 土門のほうも目を丸くして、暴走する身体に手を回して押さえ込もうとしている。 そんな意図もむなしく、土門の右腕に亀裂が入っていく。 亀裂は見る見る全身に及び、すぐに立つことさえままならなくなる。 くずおれるように倒れ込むと、身体が――『崩れて』いく。 このような現象を見た経験は、風子にはない。 それでも分かる。 分かってしまう。 何せ、身体が崩れているのだ。 さながら乾燥した泥のように、砕け散っているのだ。 それは、誰の目にも明らかなほどに分かりやすい――『死』の兆候だった。 「ど、もん……?」 風子は土門に歩み寄り、崩れゆく身体に視線を這わす。 向けられる力強い視線に反して、その肉体はあまりに脆い。 鍛え抜かれていた筋肉の面影など、いまとなっては窺えない。 とても見ていられるものではなく、風子は目を覆いたくなった。 その心情を読み取ったかのように、理想的な誘いがかかる。 『我を手に取れば、すべて忘れられるぞ』 鼓膜を介さずに、頭のなかへと届いてくる。 懐柔するような声音が、胸に開いた穴へと染み渡る。 ――風子は、再び風神剣を手に取った。 『殺せ。 我を用いて殺せ。我を紅く染めて殺せ。我が刀身を生き血で照らして殺せ。 斬り殺せ。刺し殺せ。貫き殺せ。抉り殺せ。断ち殺せ。刻み殺せ。削ぎ殺せ。 殺して殺せ。殺して殺して殺せ。殺して殺して殺して――そうしてさらに殺せ』 途端、甘い声は一変。 これまでと変わらぬ冷たいものに戻る。 「あ、あああああァァァ――――!」 喉を削るような絶叫に呼応して、風神剣より強大な風が溢れ出す。 その衝撃により、崩れかけの土門の身体は彼方に投げ出される。 風が渦を巻いて旋風となり、次第に膨れ上がっていく。 ほどなくして、風子を中心とした巨大な竜巻が展開される。 アスファルトが剥がれ、その下にあった土が舞い上がり、風子の足元がすり鉢状に抉られる。 民家は軋むような音を立てたのち、根元から吹き飛ばされる。 竜巻内を上昇する過程で、風圧によって見る見る微細な破片に砕かれていく。 『貴様、なぜその竜巻を放たない』 (うるせえ) 訝しむような風神剣の問いに、風子は短く答える。 彼女の目的は、すでに人殺しの殺害ではなくなっていた。 唯一望むのは、もう誰も近づけないことだ。 伸ばされた手が崩れていくのを見るのは、もう御免だった。 だったら最初から誰も近付いてくれないほうが、よっぽどマシだと――そう思ったのだ。 『ふん。まあよいわ。 依然として、角は生え揃ったまま。 貴様が我が力に魅入られていることに、些かの変わりもない。 ならば精神力を磨り減らすのを待ち、真に従順なる我が憑代とするのみよ』 風子が予想していたよりあっさりと、風神は引き下がって行った。 あるいは、長き時を経てきたゆえの余裕か。 (…………どうでもいいや) 舞い上がった赤いバラの花弁が視界に入り、風子の瞳から一筋の涙が零れた。 投下順で読む 前へ:誘雷 戻る 次へ:殺したらおわり(後編) 時系列順で読む 前へ:置き手紙 戻る 次へ:殺したらおわり(後編) キャラを追って読む 110:貫くということ 霧沢風子 117:殺したらおわり(後編) 横島忠夫 高嶺清麿 石島土門 マシン番長 バロウ・エシャロット さとり 087:二百年も待ったのだ 蒼月紫暮 ルシール・ベルヌイユ ▲
https://w.atwiki.jp/hyourirowa/pages/161.html
2匹の不浄猫が、デマオン目掛けて突進する瞬間を確認すると、吉良はすぐに逃げ出した。 いくら何でも分が悪い。 だが、今ここで殺さずとも、逆転の機会を掴むまで逃げ隠れを続ければいい。 空条承太郎と東方仗助に追い詰められながらも逃げおおせた時と同じ。生きていれば必ずチャンスは巡って来る。 「自身の力では敵わぬと見て、ついにはケダモノに頼り始めたか。だが何をしようと無駄だ。」 不浄猫はデマオンに近づく前に、森の木に隠れる。 戦いによって幾分か、望まれぬ開拓をされてしまった森だが、それでも隠れられるほどには樹は立っている。 「すこしは知能のある生き物のようだ。だが、主人を見捨てるとはな!」 デマオンは隠れた不浄猫を無視し、吉良を追いかける。 だが、その瞬間を彼らは待っていた。 不浄猫とはいつの世でも、犠牲による安寧を貪ろうとする者を守るために、傍若無人に振る舞う悪鬼を粛清する。 魔王が吉良にかかり切りになったと判断した瞬間、三毛模様の方が静かにデマオンの背後に忍び寄る。 足音も立てず、昼間の空き巣以上に静かに。 不浄猫の得意なことは、相手の一瞬のスキを見つけることだ。 デマオンは相手を見ることなく、後ろ手で炎魔法を放つ。 背後からの攻撃など、大魔王になる前から幾度となく受けたことがある。 しかし、当たったのは生き物ではなく1本の樹。 今のタイミングで不浄猫は狙ったのではない。 不浄猫は獲物をしとめる時、2度近づく。 1度目は獲物に飛びかかるタイミングを伺う時。 そして、次こそが本番だ。 体の細長さも相まって、獲物を狙う時の動き方は猫というより蛇を彷彿とさせる。 そして襲い掛かるのは、先程近づいた不浄猫ではなく、もう一匹、別の場所に隠れていた方だ。 満を持して、大きく口が開かれる。その先は魔王の首筋。 不浄猫の牙は尖ってはいない。食い殺すのではなく、絞め殺すのだ。 いや、ここがバトルロワイヤルというルールに則った世界である以上、『絞め』殺す必要もない。 呼吸に差し支えるほどの圧力がかかれば、自ずと首輪が作動し、数10秒で首より上が綺麗さっぱり無くなる。 だが牙がデマオンに触れた瞬間、不浄猫の方が鈍い悲鳴を上げた。 突然、獣の体毛が逆立ったと思いきや、全身が炎に包まれる。 そのまま死骸は明後日の方向に飛んで行く。 今の魔法は、デマオンが自身にかけておいた、一種のカウンターだ。 誰かが魔法の術者を攻撃した時、トリガーになる。 彼の生まれの魔界星は、不浄猫のような異形の生物などいくらでもいる。 真っ赤な瞳を輝かせ、集団で獲物を骨だけにしてしまう魔界のハイエナ。 常識を超えた巨体と力を持っているツノクジラ。 そのツノクジラのもとに、自分の歌を聞いた者を否応なく引き寄せる人魚。 神栖66町では、子供を攫うネコダマシとして恐れられる不浄猫も、彼にとっては少し厄介な生き物でしかない。 魔王は獣には目もくれず、ただ自身を謀った地球人の命を狙う。 残った一匹の不浄猫は、攻撃のチャンスを見失ったからか、攻撃に出る気配はない。 「岩よ。雷となり、地球人を打ち砕け!!」 何度目か、邪悪な岩の精霊が、吉良へと襲い来る。 既に見慣れた攻撃であるので、スタンドで殴り飛ばすことに成功する。だが、その間には逃げることをやめねばならない。 殺人鬼の下へ巨大な黒い壁が、ゆっくり、ゆっくりと迫り来る。 (何か……何かいい方法は無いのか……。) 戦うにしろ、逃げるにしろ、常に主導権を握られる。 吉良は必死で頭を回転させながら、魔王を出し抜く方法を模索する。 ■ (しまった……あの方向には……) 不浄猫の死骸が、戦場の外へ飛んで行った瞬間。 ナナの背筋を、うすら寒いものが走った。 あの怪物は、間違いなく全身を焼かれて死んでいる。 だから何だというのだ。 むしろ彼女にとって、あの猫のような豹のような生き物が生きているより、死んでいる方が問題なのだ。 その理由は言うまでもない。 (これは……願ってもみない幸運ってやつね。) 金髪の少女、佐々木ユウカは近くに死体が転がり込んでくると、すぐにその場所へ走る。 邪な笑みを浮かべ、その口の端からは今にも涎がこぼれそうだ。 何しろ、欲しかった死骸(どうぐ)が手に入ったのだから。 焼け焦げていて、生命の活動を停止した生き物が、むくりと立ち上がる。 全身の火傷は無くなり、その姿はデマオンの魔法を食らう前と同じだ。 映画館で焼け死んだはずの風間シンジと同様、その姿は死んでいるとは到底思えない。 (早くアイツから持ち物を奪わないと!!) ユウカの能力の発動のトリガーは「操る死体の持ち物を持っていること」。 一瞬、ユウカが不浄猫の毛を一房毟っていたいたことから、彼女が右手に握りしめたものを奪えば良いと思っていた。 慌てて彼女がいる場所へ走ろうとするが、時すでに遅し。 「チェックメイトだね。」 不浄猫のひんやりとした牙が、柊ナナの首に触れるまで、あとほんの数センチ。 彼女が身じろぎしたり、何らかの拍子で身を捩っても、届くぐらいの距離だ。 「少しでも動いたら、この子がナナちゃんの首を嚙み千切るよ。」 ユウカのその言葉で、ナナは足を止めざるを得なくなる。 既に柊ナナのすぐ近くには、不浄猫が今にも飛びかかろうとしていた。 本来の不浄猫とは使い方が違うとはいえ、柊ナナぐらいの少女にとって脅威となるのは確かだ。 「どうやらお前は、ここでもロクなことをしていないようだな。」 「大切なシンジと結ばれるためにね。そして、シンジとの仲を引き裂いたナナちゃんをこうやって殺すためにね。」 この佐々木ユウカというドブにまみれた性根の人間が、この世界でも全く変わってないことに、呆れを覚えるしか無かった。 馬鹿は死ななきゃ治らないと言うが、この場合、馬鹿は死んでも治らないという方が正確だろう。 「呆れるくらい愚かな奴だ。まだ自分をアカの他人の恋人だと思って……。」 「うるさい。そんなことより、最後に言い遺すことだけ考えなよ。」 不浄猫と、佐々木ユウカ。 4つの爛々と輝く眼が、ナナの命を奪える瞬間を今か今かと待ち望んでいる。 元の世界とは、立場が完全に逆転した。 「さーて、どうやってシンジとあたしの怨みを晴らそうかな~。」 足を怪我し、逃げる力も戦う力もない子犬を、どう虐めてやろうか考える子供のような表情を浮かべる。 だが、その余裕の一瞬が命取り。 ナナは地面に落ちてある石を掴んで、ユウカの顔面目掛けて投げる。 「うわ!痛っ!!シンジに会う前に顔をケガしたらどうするのよ…!!」 しかし、彼女の肩に石が当たっても、殺すことは出来ない。 そもそも、ナナがこれまで能力者を殺すことが出来た背景には、暗殺用の道具があった場合か、断崖絶壁など地理的な条件が味方した場合のみだ。 (くそ……) ナナの行動を抵抗と見なした不浄猫が、先の尖ってない牙でナナを絞め殺そうとする。 だが、標的と定めた少女は、急に宙へ浮いた。 「「え?」」 不浄猫の牙は、何もない所を噛むことになる。 3次元的な動きをし始めた復讐相手に、ユウカは驚く。いや、ナナ自身も驚いていた。 何しろ柊ナナは無能力者であり、空を自由に飛ぶ能力など持っていないのだから。 「地球人共が、静かに出来んのか!!」 彼女を宙に浮かせているのは、デマオンの魔法によるものだった。 勿論、デマオンは決してナナが心配だったという訳ではない。 これから目の前の男を殺すというのに、近くで乱痴気騒ぎをされてはたまってものではない。 「ちょ、ちょっと、ナナちゃんの邪魔をしないで……。」 良い所を邪魔されたユウカは、デマオンに文句を吐き出そうとする。 だが、その口調は尻切れトンボも良い所だった。 なにしろ、死体を操れる能力以外は一介の女子高生でしかないユウカが、魔族の王に睨まれたのだ。 そのショックで気絶やら失禁やらしないだけでも、褒められたものだろう。 「邪魔なのは貴様なのが分からぬのか!!」 怒鳴り声に合わせて、ユウカのすぐ近くから炎が立ち上る 「あちちち!!」 牽制のつもりで撃たれた炎だが、彼女の身体の先端を僅かに炙った。 それだけで、脱兎のごとき勢いで逃げていく。 勿論、不浄猫の死骸も一緒に。 「あ、ありがとうございます。」 「馬鹿者が。王が罪人を処刑する間ぐらいは静かにせぬか。」 デマオンとしては、ユウカも邪魔な地球人ではあるが、処すべきは自分を謀った吉良の方だ。 先程のやり取りの間に、またも吉良は逃げ出そうとする。 だが、魔王がナナとユウカの争いを止めたのは、吉良に対する慢心ではなく余裕。 そして、王たる自身に不届きな行為を行った相手を、処刑するための会場の準備だ。 「ドカン、ドカン」 後ろを振り返り、吉良はまたも爆弾と化した空気弾を撃つ。 「無駄だと言ったはずだ。」 しかしデマオンはナナを雑に地面に置いた後、新たな魔法を練る。 持ち前の魔法で追い風を起こし、空気弾を真逆の咆哮へと飛ばす。 空気弾の爆発のタイミングを、自由に決定できるのは吉良のみだ。 だが、それがデマオンに近づくことは無い。 そのまま風に乗って、吉良も逃げようとするが、その足が動かない。 「風と共に逃げるつもりか?生憎だが、わしら魔族を利用しようとした地球人は、常に八つ裂きの刑を受けて来た。」 先ほどナナに対して使った念力を、今度は吉良に使う。 手足をばたつかせ、必死で魔力に抗おうとするも、革靴を履いた足を地から離される。 さらに指をパチンと鳴らすと、吉良のすぐ下から炎が出る。 まるで炙り焼でも作っているかのような有様だ。 「もう逃げられんぞ。わしが何かの気まぐれを起こしたり、そこの石に躓いて魔法を解いたりすれば、きさまはすぐにでもバーベキューよ。」 「く……くそ……。」 吉良はスタンドを出すが、近距離パワー型スタンドであるキラークイーンでは、魔王に届かない。 「あの爆発する使い魔を出しても無駄だ。奴は炎に反応して向かってくるのだろう?」 正確には高温に反応して動くのだが、そのために吉良のすぐ近くに炎を出した。 唯一離れた敵に通じるシアーハートアタックも、上手く動かない以上はどうにもならない。 「さて、最後に言い遺すことはあるか?」 (くそ……何かこの男を攪乱できる方法はないのか……。) デマオンの燃え盛る炎のような瞳に見つめられながらも、必死で吉良は思考する。 これが最後のチャンス。逃せば後は無い。 とはいえ、相手は大魔王。ちんけな嘘では逆鱗に触れるのは目に見えているし、申し開きや命乞いをする相手でもない。 「そう怯えなくともよい。貴様は地球人にしては良く戦った。一思いに消し炭にしてくれよう。」 デマオンの右手に炎が宿る。 彼の高鳴る鼓動に合わせて、吉良吉影という殺人鬼の命が、カウントダウンを刻み始める。 そんな中、デマオンの近くにいた少女に目が入った。 (!!!!!!) その瞬間、吉良は閃いた。 起死回生の一手、などと呼べるほど素晴らしい物ではない。 0%だった生存率が、10%に上がれば良いという程度だ。 それでも、この魔王から逃れるために、やってみる価値はある。そんな方法だった。 「じゃあ、最後に聞いておきたいことがあるんだが、答えてくれるかな?」 吉良のえらく冷静な態度に、デマオンは聊か戸惑うも、すぐに立て直す。 ここからならばどう足掻かれようと魔王が勝ち、吉良が破れる。余程のへまをしない限りは、それは決まっている。 だから、適当に質問を聞き流して、切りの良い所で魔法を放とう。そう考えていた。 「大魔王である君に問いたいことだが、私以外に裏切者が近くにいた時はどうする?」 この瞬間、心拍数が一番ハイペースになった者は、吉良からナナに変わった。 だが、彼女は平静を突き通す。 確かに自分は吉良に、デマオンやアイラを裏切った上での同盟を持ちかけようとした。 だが、この状況なら、自分のことを名指しで言われても苦し紛れの虚言と惚ければいいだけの話だ。 「隣にいる彼女はね、たしかに私にこう頼んだんだよ?『わたしと一緒に参加者を殺せ。』とね。」 柊ナナは思わず、足が出てしまいそうになった。 吉良の顔面を殴り、その口を塞ごうという衝動に駆られる。 (落ち着け……コイツの言ったことが本当だという証拠はない。) 勿論、そんなことを言われても、魔王はただのつまらぬウソだと考えてしまう。 目の前の地球人はこの期に及んで自分を言いくるめようとし、内輪揉めを狙っているにちがいない。 低くて聞き心地の良い声だけが取り柄のエセモラリストを焼き殺し、それでこの戦いを終わりにするだけ。 味方陣営にいる他の誰かから、柊ナナを疑えとでも言われなければ。 ――デマオン様、あの柊ナナという少女はどう思いますか? ――ただの地球人の子供ではないか……何が言いたい。 ――何か分からないものを感じます。もしかすると私達を利用しているかもしれません。 ――たとえそうだとしても、ワシや部下のきさまが地球人1人に後れを取る訳なかろう。 デマオンは図書館で柊ナナに会ってから、最初の放送までの間、アイラからナナという少女が疑わしいと言われていた。 もしもの話、デマオンがアイラから忠告を受けていなければ。 吉良の言葉など、取るにならない嘘だと一蹴しただろう。 ここで、魔王の脳内に初めて葛藤が生まれた。 早くこの男を殺せと言う言葉と、話を聞くまで待てと言う言葉だ。 一度疑ってしまうと、疑念は関係のない所まで広がる。 図書館の放火は、襲撃者が柊ナナと結託して行われたことだとか。 そこで、そんなはずはないと自らに否定の言葉をかける。 現に自身が満月博士に襲われた際に、柊は満月博士を攻撃した。 だが、あの躊躇のない攻撃は、どうにもあの地球人の少年たちと同じ人間だとは思えない。 大魔王デマオンとは、悲しいほど何かを疑うことに慣れていない生き物なのだ。 彼は長い生涯、地球を手に入れることに力を注いできた。 地球は悪魔族が代々望んできた惑星であり、それを手に入れることに何の疑いも無かった。 だから、些細なことでも疑うことに時間をかけてしまう。 事実、地球人ナルニアデスが悪魔達の仲間になったふりをして乗り込んだ際、裏切りに気付くのに時間を要してしまった。 「話を逸らすようで悪いが、君の世界では蝙蝠という生き物はいるのかな? だとしたら知っていると思うが、裏切りで有名な彼らは何の道徳も哲学も持たず、日陰から自分の安全な日陰へと移動するしか能のない生き物だ。」 (今、この男は何と言った?) しかし、彼の言葉に反応したのは、柊ナナの方だった。 吉良吉影が言った蝙蝠の例えは、自分のことだと気付かないほど、ナナは鈍感ではない。 自分を、能力者たちを殺す任務を承った自分を、あろうことか道徳も哲学もない人間と言ったのだ。 彼女の気持ちを知ってか知らずか、吉良は宙づりにされたまま訥々と語る。 傍から見れば、どちらが追い詰められているのか分からない。 デマオンの胸の中で、薄々嫌な予感が湧き始めた。 この男を野放しにせず、すぐに殺してしまえと。胸の奥で何かが告げる。 左手の炎の弾を飛ばす準備をする。 「それだけなら飼ってやる価値もあるかもしれないが、あろうことか奴ら感染症の原因となる病原体を保有している。 温情のつもりで味方にしてやったはいいが、奴らが媒介する細菌には気を付け……」 自分の能力に胡坐をかき、好き放題やった悪人の分際で何を言うか。お前のような奴に私の両親は殺されたんだ。 吉良吉影のあまりの勝手な態度に、そんな言葉がナナの胸の内をよぎった。 デマオンが殺す前に、徒手空拳でもいいからこの男を殴らねばならない。 その時、奇跡が起こった。 「どういうことだ……。」 吉良にとって最高の、デマオンにとって最悪の奇跡が。 死んだ。 悲鳴を上げる暇さえ無く焼け死んだ。 柊ナナは、悲鳴も上げずに、魔王の放った炎によって灰燼に帰した。 いくらナナが動揺し、デマオンの前に出たと言っても、魔界で一番の力を持つ彼が間違って彼女に当てるようなことはない。 この場に、吉良とナナ、デマオン以外の誰も居なければ。 吉良の支給品にあったもう一匹の不浄猫が、主を守ろうと、そして主に歯向かう者を殺そうとした上での結果だ。 不意に吉良への足を止められた柊に、災厄が襲い掛かった。 柊と不浄猫は、共に炎に包まれ死んでいた。 自身の部下を殺害するという、してはならないことをした魔王は、一瞬だが集中力を手放し、放心状態になった。 それは、ひどく大魔王にあるまじき行為だった。 地球人など命の内には入らないし、不手際を犯した部下や裏切った部下を、顔色一つ変えずに粛清して来た。 違う。それらは全てデマオンの意志でやってきたことだ。 意志にそぐわず、しかも姑息な地球人の策略に嵌められたことで、部下を殺したことが問題だ。 「ドカン」 魔法が切れたことで、宙づりから解放された吉良は、炎が燃え盛る地面に空気砲を打つ。 元々デマオンが集中力を切らしたことで、弱まっていた炎は、完全に消えた。 1割あるかないかの賭けに成功した。このチャンスを無駄にするわけにはいかない。 「待て!地球人よ!!たかが少しの幸運ぐらいぐらいで逃げられると思うな!!」 その怒声は、先程よりも勢いが薄れていた。 逃がしてはおけない。 柊ナナを殺したのはこの男が原因だ、そして彼女が吉良と手を組もうとしたからだ。 そんな体のいい言葉で、自分を誤魔化す。 部下を他者に嵌められて殺したことなど、王たる者として一番やってはならないことだからだ。 今から殺せばいい。まだ間に合う。 しかし、焦りが如実に表れる為、魔法のコントロールが乱れている。 破壊したのは、森の中の木々のみだ。 炎を纏った樹木が倒れ、下敷きになりかけるも、必死で走る。 魔王は倒れた木をもさらに吹き飛ばし、地球人を追いかける。 「岩よ!雷となり、地球人を打ち砕け!!」 岩の邪精霊は、不気味な声と共に倒れた木を吹き飛ばす。 ついに吉良を捕らえたと思ったら、何かが爆ぜた。 「吉影ェーーーーーーッ!!!!」 写真だ。 空を飛ぶ写真が間に入りこみ、吉良を魔法から庇った。 吉良の敵になる精霊あらば、彼の守護神になる幽霊も存在する。 「!?」 一体何なのか、吉良自身も一瞬混乱した。 この世界線の吉良は、まだ写真と化した父親に出会っていない。 確かに父の声をしていた何かが、自身を助けてくれたのだと理解した。 自身の父親が繋いでくれた一瞬を、彼は無駄にはしない。 「まだ逃げるか!地球人よ!!」 猶もデマオンが追いかけてくる。 だが、逃げる算段が付いた以上は、恐れることは無い。 「そこで点火だ。」 「!!?」 デマオンの足元で、地面が爆ぜた。 地面に散らばった木の欠片をスタンドで爆弾に変え、簡易的な地雷とした。 魔王の生命力があるため、足が無くなったり、ましてや命が失われることは無い。 それでも、走ることが出来なくなるくらいにはダメージを受けた。 そして、自分が狙おうとしていた獲物を逃がしてしまった。 騒がしかった森は、瞬く間に静寂に包まれる。 柊ナナと1匹の不浄猫の死骸、そして生き残ってしまった魔王を残して。 「そうだ……再び作戦を練らねば……あの、赤い地球人はどうしている……。」 吉良が去ってからしばらして、デマオンはそう呟いた。 その言葉を聞く者は誰もいない。 だというのに、何故か言葉を紡がずにはいられなかった。 だが、彼は知らない。 あの時不浄猫を殺したことが原因で、悲劇はまだ終わっていないということを。 [柊ナナ@無能なナナ 死亡] [写真のおやじ@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 破壊] [残り 18人] 【D-4 森・南 午後】 【デマオン@のび太の魔界大冒険 】 [状態]:ダメージ(大)片足にダメージ(大) 魔力消費(大) 嵌められて柊ナナを殺したことによる放心状態 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2 [思考・状況] 基本行動方針:不遜なるデク人形(オルゴ・デミーラ、ザント)をこの手で滅し、参加者どもの世界を征服する……はずだったが? 1.どうすればいい……? 【D-5 荒野 午後】 【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:ダメージ(大)スーツがボロボロ 苛立ち(中) [装備]:空気砲(65/100)@ドラえもん のび太の魔界大冒険 [道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2 [思考・状況] 基本行動方針:脱出派の勢力に潜り込み、信頼を勝ち取る。 1.邪魔者を殺し、この場からさっさと逃走する。 2.名簿に載っていた、仗助、康一、重ちー、隼人、そしてシャークに警戒。争うことになるならば殺す 3.早人やミチルにもスタンドが見えたことに対する疑問 4.ヤン達からは距離を置きたい。 5.絵の中の少女、秋月真理亜の手が欲しい ※参戦時期は川尻耕作に姿を変えてから、カップルを殺害した直後です ☆ (ふざけないでよ……何なのよアイツは……!!) 火柱で丸焼きにされることを辛うじて避け、ひたすらにユウカは逃げていた。 余りの恐怖で、柊ナナを殺す千載一遇のチャンスを奪われた怒りも失せていた。 もう少しあの場で待っていれば、仇敵の死を見ることが出来て、溜飲の一つも下がったかもしれないが だが、一度離れると、自分の町に待ったお楽しみを邪魔された怒りがわき上がって来る。 彼女は、柊ナナが学校で言った『人類の敵』など半信半疑だったし、どうでも良かった。 けれどはっきり分かった。あの男が、人類の敵なのだと。 柊ナナはその人類の敵と結託して、能力者たちを殺していたのだと。 シンジと結ばれるためには、たとえデマオンが人類の敵じゃなくても、倒さねばならない。 そのためには、不浄猫などより比べ物にならないほど強い死体を手に入れるしかない。 ひとまずバツガルフの下に戻ることにする。 死体集めの為には、彼もまたいなくてはならない存在だ。 同盟解消の時間が来るまで、力になってもらおうと考える。 その場所に来ると、先程襲って来た女剣士とバツガルフが、何もせずにただ睨み合っていた。 彼女は知らない。秘密裏にバツガルフが自身を捨て、アイラと組もうとしているなど。 (仕方ないわね……手助けしてあげるから、勝ちなさいよ。) 不浄猫を走らせ、アイラを襲わせる。 知らないからこそ、横槍を入れることが出来る。 味方か敵か、どちらが有利になるか分からない横槍を。 ☆ (どうすればいいのよ……) アイラはなおも、目の前の敵を倒すべきか、はたまたナナを助けに行くか決めかねていた。 「一つ言っておこう。ワタシとは違い、あのユウカとかいう小娘は人を殺そうとしている。 早く助けに行く方が良いんじゃないのか?」 「………。」 バツガルフの言うことは最もだ。 彼女自身もそう思っている。 少し離れた場所から爆発音を聞くたびに、その気持ちが加速する。 だが、この男を逃がしてしまったことや、後ろから刺されることを考えると、どうにも言うことを鵜吞みに出来ない。 そんな中、ひときわ大きい爆発が森の中に響く。 やはり、デマオンやナナの安否の為にも、一旦この男を置いておこう。 そう決断することにした。 「分かったわ。でもあなたを許した訳じゃないか……!?」 何かが、アイラの足を斬りつけた。 爪のような、刃物のような何かだ。 「やっぱり、後ろから攻撃しようとしていたのね……。」 「!?」 だが、ある意味これで良かった。 これで躊躇なくバツガルフを倒して、それからナナ達の下へ行けるから。 すかさずアイラは、怪我してない方の足で地面を蹴り、颯爽と敵の近くへ向かった。 「疾風突き!!」 まずはバツガルフの腹に一発、ディフェンサーからの突きを見舞う。 「ま……待て!!」 「今更遅いわよ!!」 突きから、そのまま斬り上げに一発。 「く…バツバリアン展開……」 「させるか!」 バツガルフは魔法を出し、彼女を無力化しようとする。 だが、杖から出たのは黒い煙だけ。 彼の杖を縦笛とするなら、魔力は杖に送り込む呼気。魔法はそこから出る様々な音。 笛にヒビが入れば正しい音が出ないように、アイラの一撃をモロに食らった杖は、一時的に魔法が出なくなった。 「これで終わりよ。剣の舞!!」 すぐにとどめを刺すためにも、アイラは切り札を切る。 舞の道と剣の道、踊り子と戦士。二つの技術を積まねば出来ぬ4連撃だ。 袈裟斬り、横薙ぎ、くるりと回転しながら逆袈裟。上空で縦に一回転して兜割り。 大剣が、バツガルフの電子頭脳を破壊する。 「く……おのれえ……。」 バツガルフのアイセンサーから、光が消えた。 (終わった……?何だかいやにあっさりしているけど……。) 彼を倒したアイラは、何とも不完全燃焼、といった気分を味わった。 それまでの、斬っても付いても全く倒れる様子が無かった相手が、嘘のようにあっさりやられた。 まるで自分が不意打ちで倒したかのようだ。 倒したという達成感など、あった様なものではない。 その時、ザッ、と何かが木の葉を擦った音がした。 (何があったの?あの男と一緒にいた女の子が戻って来たとか?それとも別の敵がいたの?) 静かで鋭く、狩りに慣れた獣のような動き。 それが森の茂みの中を走る。 アイラは動かなくなったバツガルフを置き去りにし、その敵を追いかける。 足を怪我したため少し動きが鈍っているが、問題は無い。 「ギラ!」 閃光魔法を放つが、そこには当たらない。 そして、出てくることは無い。 今度は火柱を立てる。手ごたえが無い。それも外した。 急に、アイラは嫌な予感を覚えた。 先程まで動き回っていたはずの何かが、全く動く気配がしない。 木の上から、ドサリと何かが落ちてくる音がした。 それは、猫を彷彿とさせる、生き物だった。 やけに長い爪を持っていたことから、自分の足を斬りつけたのはこの魔物だと考える。 (死んでる……。どういうこと?さっきの攻撃は当たってないよね……?) まるで自分が戦いをすることを忘れていたかのように動きの鈍いバツガルフ。 襲って来たかと思いきや、いつのまにか死んでいた猫の魔物。 何が何だか、全く分からないといった状況だ。 その瞬間、地面が揺れた。 敵が使って来たじひびきのような、明らかに敵にダメージを与えることを仮定した地震だ。 それだけで倒れることは無い。だが、確実に彼女に隙が生まれた。 その時、一筋の光線が、アイラの背中に命中した。 「アイスビーム。」 (これは!?) 患部から氷がじわりじわりと広がり、彼女を動けなくさせる。 ほとんどの状態異常を無効化させるイツーモゲンキを付けているが、火傷や凍結状態など、温度変化に影響するものは意味を為さない。 アイラが驚いたのは、未知の魔法ではない。 そこに殺したはずのバツガルフが立っていたことだ。 (どういうこと?確かに倒したはずなのに……。) 殺し損ねたということは無い。 それをアイラは確かに断言出来た。 頭を砕かれて生きているはずなど無いし、1人だけでこんな回りくどいことをする必要はない。 「メガサンダー。」 アイラの頭上に雷が落ちる。 動きを封じられ、避けることも出来ない。 鋭い痛みと共に、視界がまばゆい光に包まれてぼやけていく。 そんな中、バツガルフの後ろであの金髪の少女の姿が見え、ようやく気付いた。 あの金髪の少女が、死体を操る能力を持っていたのだと。 猫の魔物やバツガルフが生きていたり死んでいたりするのも、そういうからくりがあったのだと。 嵌められたのは、バツガルフの方だったと。 そんなことが分かった瞬間、もう一発雷が落とされた。 (あーあ、最悪。) 薄れゆく意識の中、頭の中でそんな言葉を紡ぐ。 目の前のバツガルフに最後の攻撃をしても意味が無いし、こんなことになった金髪の少女を攻撃するには遠すぎる。 氷に閉じ込められたまま、それでも右手だけを氷から引きはがし、指を鳴らす。 そして、最後の火柱を放った。 バツガルフでもユウカにでもなく、自分自身に。 氷が溶けても、ダメージが大きすぎる以上は、反撃に出ることは出来ない。 それでも、目的は一つだけある。 死ぬことよりも、あんな年端も行かないヤツにいいように扱われ、メルビンやシャークを傷付ける方が真っ平ごめんだから。 だから、そんな自分なんか焼き払ってしまえと。 剣と盾を残し、彼女の肉体は灰へと消えた。 ☆ 「あーよかった。でもこれ、同時に使う必要ないじゃん。」 まだ彼女がバツガルフから奪っていたのは、コートの袖だけだ。 バツガルフから死体を回収し、支給品のPOWブロックを鞄に入れる。 死体を操るトリガーには、死者の持ち物が必要である以上、道具はあればあるほどいいし、本来の道具として使うことも出来る。 うっかり自分のミスで彼を殺してしまった際にはどうしようかと一瞬パニックになったが、結果は大成功だった。 不浄猫の死骸を捨て、すぐにバツガルフの死体を手に取ったのが功を奏した。 もしもの話、デマオンが不浄猫を殺すことが無ければ。 ユウカの死骸を囮とした作戦は通用せず、彼女の方が倒れていただろう。 魔王の牙にかかったのは、彼の敵だけではなかった。 死骸となった男は、ユウカに跪く。 傲岸不遜を極めたような男がするとは到底思えない仕草だった。 [アイラ@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち 死亡] [バツガルフ@ペーパーマリオRPG 死亡] [不浄猫×2 新世界より 死亡] [残り 16名] 腹の底で溜めていた笑いを、一気に吐き出す。 「あははははははははははは!!」 成果は上々。邪魔な参加者が2人死んで、武器も手に入った。 デマオンに睨まれた恐怖も、高揚感でいくらか薄まった。 アイラの死体から、彼女の世界の情報を聞けなかったのが少し残念なくらい。 バツガルフという強い力を持った死体を、デマオンにぶつけてやればいい。 そして今度こそ、柊ナナを殺す。 そんなことを考え、[C-4]を出た瞬間だった。 「随分と馬鹿笑いをしているんだな。良い事でもあったのか?」 そこにいたのは、ハイラル駅で見た、緑色の服の青年だった。 彼はまだユウカのことを知らない。 だが、因縁の相手であったバツガルフと同行している時点で、同罪のようなものだった。 【C-3 森・東 午後】 【佐々木ユウカ@無能なナナ】 [状態]:ナナへの憎悪(極大) デマオンへの恐怖(中) [装備]:POWブロック@ペーパーマリオRPG [道具]:イリアの死体@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス、基本支給品×2(自分、ピーチ)、遺体収納用のエニグマの紙×2@ジョジョの奇妙な冒険 陶器の馬笛@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス、虹村家の写真@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品×1(彼女でも使える類)、愛のフライパン@FF4 不浄猫の死骸@新世界より+不浄猫の毛玉 ディフェンダー@ FINAL FANTASY IV 魔法の盾@ドラゴンクエストVII まだら蜘蛛糸×3@ドラゴンクエストVII [思考・状況] 基本行動方針:シンジと添い遂げるために優勝する 1:どうにかしてナナを殺す 2:この場から逃げたい ※まだ昼ですが、太陽が隠れたため、ネクロマンサーの能力を使えるようになりました。 ※参戦時期は死亡後で、制服ではありません。 ※死体の記憶を共有する能力で、リンク、仗助、ピーチ、マリオの情報を得ました。 イリアの参戦時期は記憶が戻った後です。 ※由花子との情報交換でジョジョの奇妙な冒険の参加者の能力と人柄、世界観を理解しました。 但し重ちー、ミカタカ、早人に対する情報は乏しい、或いはありません(由花子の参戦時期で多少変動) 【バツガルフ@ペーパーマリオRPG】 [状態]:死亡 ユウカの能力で操られている。 [装備]:えいゆうのつえ@ドラゴンクエスト7 [道具]:基本支給品 なし [思考・状況] 基本行動方針:×××× 1:佐々木ユウカに仕える 【リンク@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】 [状態]:ハート1/6 肋骨一本損傷 服に裂け目 所々に火傷 凍傷(治療済み) 疲労(中) 死霊使い(佐々木ユウカ)に対する怒り(大) [装備]:マスターソード@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス トルナードの盾@DQ7 アイスナグーリ@ペーパーマリオRPG [道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2 水中爆弾×5@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス アルスのランダム支給品1~2 (武器ではない) 正宗@Final Fantasy IV 柊ナナのスマホ@無能なナナ 火縄銃@新世界より 美夜子の剣@ドラえもん [思考・状況] 基本行動方針:主催を倒す 1.イリアを操っているはずの死霊使いを殺す。 2.ピンクのツインテールの少女(彼女が殺し合いに乗っているかは半信半疑)から、可能ならば死霊使いの情報を聞く 3.アルスの想いを継いで、仲間を探し、デミーラを必ず倒す ※参戦時期は少なくともザントを倒した後です。 ※地図・名簿の確認は済みました。 ※奥義は全種類習得してます 【ルビカンテ@Final Fantasy IV】 [状態]:HP 1/8 魔力:中 疲労(中) [装備]:炎の爪@ドラゴンクエストVII フラワーセツヤク@ペーパーマリオRPG [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:この殺し合いを終わらせて受けた屈辱を晴らし、生き延びた者と闘う 1.リンクと共に、殺し合いに乗っている者を倒す ※少なくとも1度はセシルたちに敗れた後です。 ※アイラの剣と盾以外の支給品、および柊ナナの支給品は、焼失しました。 [支給品紹介] [不浄猫×2@新世界より] 吉良吉影に支給された意思持ち支給品。呪力による変異を利用した品種改良で強化された猫で、何らかの理由で「不要」と判断された人間を密かに始末するための生物兵器。 先の尖ってない牙で敵を絞め殺したり、尖った爪で引き裂いたりする。2匹1セット。 Back← 093 →Next 092 Twilight Trail 時系列順 094 見え始めた光明 投下順 084 炎と森のカーニバル デマオン 095 しかし、誰が四枚目のカードになるのか? アイラ GAME OVER バツガルフ 佐々木ユウカ 096 赤くて痛くて脆い(前編) 077 イントゥ・ザ・ウッズ 柊ナナ GAME OVER 吉良吉影 095 しかし、誰が四枚目のカードになるのか? 083 影濃くなれども リンク 096 赤くて痛くて脆い(前編) ルビカンテ
https://w.atwiki.jp/fireinki3/pages/43.html
301 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 22 54 ID 6t/3E4Wt0 292 それは違うと思う。 残留争いと優勝争いを同列で論じるのは暴論だと思うぞ。 現に優勝争いをしている大分以外のチームで露骨なメンツを行って、尚且つジャイアントキリングを許したチームはないわけだから。 第一、大分のスケジュールって他と比べてそんなにハードだったか?? 302 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 24 39 ID rSAj2Q83O 若手の成長、選手のコンディション維持より、 疲弊した選手を使えと犬飼は言うわけだけど、 日本では昔から「二兎追う者は一兎も獲ず」と 言われているのに、ホントに馬鹿な奴だな。 304 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 27 14 ID 6U/P7AGq0 278 似てるw ほんと似てるw 305 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 27 27 ID nds9iFTiO 294 一個人の意見が、あるチームのサポーターの総意、なんてことはないだろうからね。 ただ、ターンオーバーについて言えば、そういう手法が生み出された背景に、故障回避やコンディション維持の目的もあると思うから、『温存』の側面も否定できないと思うよ。 306 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 28 15 ID u63CI2lN0 なんでこんなマジキチが会長になっちゃったんだろ? 307 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 28 59 ID 8o8e+FTS0 現状は犬飼の改革についていけないクラブも多いだろうね だけどはじめっから否定するのもどうかと思うよ 308 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 29 02 ID DUgxF73U0 306 川淵の最後っ屁 309 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 29 15 ID brdyooRw0 296 まあ、もう少し書けば「欧州のサッカーチームがリーグとカップで選手を入れ替えた事」ってのが サッカー界で「ターンオーバー」という言葉が使われた起源なんだけどね。 まさに今回は「ターンオーバー」の是非を問われたケース。 310 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 30 38 ID izJOCuZZ0 301 8日間で3試合だよ大分。 311 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 30 44 ID u63CI2lN0 307 だったら理念に賛同するクラブだけで新リーグでも作ってそっちで勝手にやってくれ どれくらい集まるかは知らんがな 312 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 32 01 ID o1/CFrd/O 戦術は同じじゃないよ実力的にはほぼ均等だが ラツィオ時代のエリクソンが守備の固い相手の国内戦用と 攻撃力のあるチャンピオンリーグ戦用で最終ライン以外の選手を入れ換えてたのを 指して言ってたのが最初 つまりトップチームが二つあるということ 313 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 32 44 ID NX4j9gHxO 浦和なしではJは生きていけないからなぁ 浦和のアウェイ動員は美味しいよなぁ 314 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 34 27 ID brdyooRw0 313 それなんて一昔前の巨人? 315 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 34 46 ID 6t/3E4Wt0 310 それってACL出たチームとかはこなしてるよね。 海外移動も含めて。 なんにせよルール化してないわけで、大分の社長が謝罪してるわけだから今回はこれ以上責めるのはおかしい罠。 316 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 35 12 ID 9HTI5jih0 今季のバルサ好調の理由 ttp //sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/0809/spain/text/200811100015-spnavi_2.html 317 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 35 29 ID rSAj2Q83O そもそもクラブはサッカー選手として選手に給料を払ってるのだから どういう起用をしようが、リーグからクレームがつくのはおかしい。 しかも、サッカーは連携が重要なんだし、ある程度コンビネーションが 取れている組み合わせにするのは普通だろ? 318 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 37 44 ID nds9iFTiO 301 大分には失礼な言い方になるけど、大分の選手層はさほど厚い訳ではないし、浦和、鹿島、ガンバのように、常に優勝を視野に入れて戦えるほど、資金がある訳でもない。 そう考えれば『千載一遇の好機』を、何としてもモノにしたい、と監督が考えても、不思議ではないと思うよ。 一時はチームの存続さえ危ぶまれたのだから、本当に必死なんだろう、という風に自分は考えてる。 319 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 38 57 ID NSZyO/4z0 301 鹿島、浦和、名古屋、川崎、大分の現時点での上位組の中で、大分のチーム規模は… 320 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 39 58 ID NX4j9gHxO もう勝ち目のない戦いをするだけ無駄やで・・・ 千葉さんも早く土下座しとこうや・・・ 所詮犬飼さんの掌の上や・・・ 321 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 41 50 ID cYxH/fje0 305 まったくその通りだと思う、温存から生まれた策だと思う。 言っちゃあ何だ協会がいくら権威を大会に押し付けようとサポが求める栄冠は別にあるって所だな。 俺らには俺らなりに目指したいタイトルがある訳だし、それと天皇杯を同等に見ろと 言われても今更この流れは変えられないだろう。 322 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 41 57 ID 1hErnKUO0 ムカついたら根拠無く処分できるなんてありえないんだよ 犬害が浦和にムカつくわけないし 浦和に勝ったら処分されかねん やらせるわけにはいかないよ 323 名前:酉[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 43 32 ID hzoD7jB+0 正直これで今季のカップ戦は全て辞退とするといわれて ナビスコ奪われたしないかと戦々恐々です。 メンバーについては彼らだって登録選手、十分戦ったと俺は思っている。 空回りしてるのが多い印象だったけどね。 324 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 44 09 ID fE3S6rafO mixiの追放コミュもじわじわ人が増えてきたな 支援よろ 325 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 45 54 ID rSAj2Q83O ターンオーバーしても勝ち抜けるようなクラブが最高なのになぁ。 欧米かぶれのくせにひょっとしたら、知らないんじゃねーか? ドイツ人あたりに言われたらさっさと考えを変えたりして。 326 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 46 26 ID txWFsZMX0 おいおい磐田なんか総とっかえじゃん。 [J30節(10月25日)スタメン] GK 1 川口 能活 DF 15 加賀 健一 DF 5 田中 誠 DF 3 茶野 隆行 MF 25 駒野 友一 MF 38 ロドリゴ MF 17 犬塚 友輔 MF 14 村井 慎二 MF 24 松浦 拓弥 FW 18 前田 遼一 FW 8 ジウシーニョ 327 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 47 59 ID 3gpLErvpO あれ?チップさん涙目で逃亡?w 328 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 48 19 ID 9ipI+pG6O 一般サッカーファンと犬飼教信者の対決を 焼き豚がニヤニヤしながら見ていますw 329 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 48 48 ID +awMNVw90 チップスターよ 何故磐田はメンバー入替えOKなのかにも答えてよ 330 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 51 58 ID tCwRi6CgO 323 ナビ剥奪まで言い出したら、元官僚の社長に頑張って貰うしかない。 省が違うからいろいろあるだろうけど、高級官僚のツテをつたっていけば、 監督官庁の文科省まで繋がるだろ。 331 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 19 54 59 ID Fw7jgnIg0 329 入れ替えても、勝てるメンバーだったからだろ。 鳥栖には悪いが、その前の2試合で9失点もしている、しかも下位リーグのチームだよ。 そこにメンバーを落として、惨敗している大分の姿勢を問われているんだよ。 332 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 55 11 ID 6U/P7AGq0 330 そんなことしたら他サポだって黙ってないから 安心しるw 333 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 57 28 ID brdyooRw0 ゲームの中で、選手は選手なりにマネージメントするのが当たり前なわけで、例えばキックオフ直後から 全力で走り続ければ途中でスタミナが尽きて総体的に見ればその選手はマネージメントを間違えたと言えるし チームのゲームの中でのネガティヴポイントと評価される。 まあ、それは極端な例だとしても、選手は自分のスタミナが許す範囲で、ゲームの中で「ここだ!」というところでスプリントをする。 それが最もチームの勝利に近づく為の最善の策だから。 視点を変えて、チームのマネージメントについても似た事が言える。 全てのゲームでよっぽどの故障が無い限り能力の高い選手を出し続ける事が、リーグ戦カップ戦通して チームの勝利に近づく為の最善の策なのか、そうじゃないのか。 プロなのだから常に全力で走り続けるべきっていうのは正に愚策としか言いようが無い。 「キモチガハイッテナイヨ!」って言われても、気持ちだけではどうにもならない部分もある。 リーグの終盤になってスプリントができないチームは、マネージメントを失敗したと言うべきだし それはプロとして恥ずかしい行為だとも言えるかもしれない。 何が言いたいかというと、犬飼のバーカ。 334 名前:酉[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 57 45 ID hzoD7jB+0 330 荒唐無稽だとは思うけど、今の犬飼だとそれも言い出しそうで本当怖い。 ウチの社長は正直図に乗りやすいし脇も時々甘いお調子者の馬鹿だけど、 トリニータへの気持ちはホンモンだし、西川や上本の件で選手を守ったり して今年は見直した…というより男を上げてる部分が多いんだよね。 今回謝ったのは本当に「大人の対応」をしようよってことだったんだと思う。 でも犬飼側がそれを受けなかったから、処分がそういう最終段階まできたら 多分ウチの社長は戦うと思うよ。 他サポさん、この件ではご迷惑をおかけしていますがどうか力をお貸しください。 335 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 00 18 ID vnkJsJBu0 ちんこ巻き社長は世の渡り方をわかってるからのう 336 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 00 22 ID JDB6SfuWO まあ犬害のキチガイぶりも、劣頭脳だから仕方ない。 337 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 01 49 ID tCwRi6CgO 332 今でも黙ってないからこんな伸びてるんだけどなw 実際こんなん許したらその後犬飼の気分次第で何でもありになっちゃう 338 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 03 44 ID DIMvdydP0 サッカー協会への抗議はコチラ 財団法人 日本サッカー協会 〒113-8311 東京都文京区サッカー通り(本郷3丁目10番15号)JFAハウス 電話 03-3830-2004(代表) FAX 03-3830-2005 339 名前:牛[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 04 37 ID 9kJ/VV4Q0 334 選手を守りたいっていう社長の心意気は ウチも五輪の時味わったからすげーわかる。 ナビスコ剥奪なんてマジでやりやがったら 協会に抗議メール毎日送るわ。 340 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 04 58 ID 7M3K8hEY0 331 磐は勝って大分は負けた、だから大分だけが問題ってのは結果論に過ぎないだろ(犬なんか負けただけなのにとばっちりw) 基準がぶれてるというかブレる以前に定まってないんだよ犬飼は・・・ 334 去年の赤の件とか磐の件とか犬の件とか、無知っぷりというかダブルスタンダードっぷりが酷いから もしそんな事を言い出したらサポもマスコミなど各所に凸しまくれ。当然うちも応援したる 341 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 05 09 ID BJnuHFxSO むしろ問題は狂人の暴走を止める気配がない協会にある カワブチの時と変わらず独裁政治、どーしよーもねーなー 342 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 05 33 ID M2RHmuum0 いいから擁護してる浦和サポは去年ポンテワシントンなど数人 温存して愛媛に負けたことにも触れろよ。 人数が違う?ポンテワシントンがいなきゃ何も出来ないんだから負けるのわかってたろ。 部分的にせよ犬飼擁護する奴って何で決まって浦和サポなんだろうな・・・ 343 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 07 39 ID M2RHmuum0 331 直前とほぼ同じベストメンバー(笑)で負けてもやはり叩かれるということですね。 あれ、じゃあ緑はw? 344 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 09 47 ID 1Pq4rXuOO 犬飼は「遡及処罰を合法化しろ」と法務相を訴えるかねんな 345 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 10 55 ID JXtO+hAB0 記事によると、鬼武チェアマンは「ルールを改正しなければ」っていう 発言になってるね。今の時点での処分には言及してない ルール破ってないのに責めてるのは同じだけど、何かしら行動を起こすなら なんとか来年以降の変更として、というふうに持っていって欲しい 事後法で2チームを裁くなんてことだけは許しちゃいけない 346 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 11 29 ID VrVb5DBqP まあ普通にこれはどこのチームも抗議してしかるべきだと思うけどな 何のルールなくても会長のさじ加減で自由に処分可能、 なんてことが当たり前になったらこれから先そんな奴ばっかり出てくるぞ 347 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 18 56 ID INLMGpEkO 去年の川崎とかに文句言うのはおかしいけど、さすがに大分はやり過ぎただろ… でも、謝ったんだから許してやれとw 348 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 19 57 ID K5fg6OGh0 磐田はリーグ組と天皇杯組に分かれて練習してるって散々報道されてたのに、 それに関して事前に全く発言しなかったのは何故だ。 349 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 20 57 ID kOcEO3bW0 川崎サポだけどさ 去年のウチが柏戦の時にメンツ落としてそれを犬飼がイチャモンって、チャーター機云々の 件も含めて少しはわからんでもないよ(ルール守ってる以上納得はいかないけど) ただ、ならなんでそれを柏に負けた直後に言わないんだよ 犬飼が言い出したのはウチがセパハンに敗退した試合の直後に等々力のスタ内でだぜ? 今回の事もそうだけど、結局感情的でダブルスタンダードなんだよな 高見の見物してる他チームも、今は大丈夫・・・と思ってても後でとんでもないイチャモンつけられるかもしれんよ 350 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 33 05 ID n6gewp+d0 明文化されていないルールで処罰はおかしいのは火を見るより明らかだし 大体選手温存の何が悪いのかわからん あるクラブにとって天皇杯より大事なものがあって何かおかしいのか totoがどうのつったってターンオーバー当たり前の欧州でも賭けは成立してるし 351 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 33 14 ID fE3S6rafO 解任までage 352 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 35 13 ID qquqqrrw0 348 勝てば官軍なんだろうね。 犬飼さんに広島VS東京Vの感想でも聞いてみたいところだw 353 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 36 33 ID Z/Thksc/O ベストメンバー規定なんて廃止したらどう?失笑もんだよ 354 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[age] 投稿日:2008/11/11(火) 20 44 06 ID W3w/k6BL0 最強メンバーww どこの小学生って話だよな (-人-)1日でも早く犬っころが解任されますように 355 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 45 49 ID o1/CFrd/O 345 鬼武は部下が上司になっちゃった という悲惨な境遇 しかも天皇杯は協会の主催なので処分に直接関われない 356 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 47 46 ID kOcEO3bW0 そもそも今回の件、同じ様な事したけど勝った磐田が処罰無しで、 負けた大分と千葉は処罰有りなんて、そんな馬鹿な話があるかい 357 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 47 48 ID nds9iFTiO 334 万一、今回の件で大分が処分を受けるようなことがあれば、多くのサッカーファン(及びスポーツファン)がトリニータを応援すると思うよ。 きちんと定められたルールの下、厳正に運営されるのがスポーツの大原則。 (あくまで建前だとしても) 事後法やら事後裁定の横行は、スポーツマンシップを破壊するようなもの。 それに、大分のナビスコ制覇は、地方クラブに希望を与えた快挙でもあるのだから。 358 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 48 42 ID E/fjsq0MO 物事を一方向からしか観れない こうだと1度考えたら、他の声に一切聞く耳を持たない 自分の考えが通らないと発狂 ま さ に 劣 頭 脳 359 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 51 31 ID kZTBTJda0 125 スルガ銀行の本店は沼津にある 360 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 54 36 ID V+zd6j4r0 今なら、ドッキリと書かれた看板持って、 「ウッソぴょ~ん!」 って言ったら丸く収まるぞ!<犬飼 361 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 55 48 ID b3yBr4CQO 本当にバカだよな犬飼 こんなの上から強引に押さえつけたら反発が出るだけなのに。バカだからそういうの理解できないんだろうな。 たぶんこれから、天皇杯直前に、天皇杯に向けての全力練習中に怪我して全治1~2週間って人が増えるだろうね 362 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 20 58 07 ID izJOCuZZ0 大分が8日で3試合で大変、けが人も多い、千葉は適用したとしてもベストメンバー規定に違反して いないとちゃんと報道してるマスコミってあったっけ? 363 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 59 41 ID rW9Ld/7H0 これが「プロ野球を反面教師」にした結果のリーグ運営ですか。 遡及処罰なんてナベツネでもやらんわ。 364 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 01 12 ID kOcEO3bW0 後、スポンサーっていうけどさ 大会の方のならそんな重要な大会に代表の強化試合かぶせるなよと思うし、 千葉からすればJ2落ちのこの危機に天皇杯なんて・・・って思うだろうな>スポンサー 365 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 01 52 ID 4+zhQoFv0 ,. -‐'""¨¨¨ヽ (.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! |i i| }! }} //| |l、{ j} /,,ィ//| i| !ヾ、_ノ/ u { }//ヘ 『川淵のほうがましだった』 |リ u } ,ノ _,!V,ハ | /´fト、_{ル{,ィ eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが / ヾ|宀| {´,)⌒`/ | ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった… ,゙ / )ヽ iLレ u | | ヾlトハ〉 |/_/ ハ !ニ⊇ / } V ヽ 頭がどうにかなりそうだった… // 二二二7 T /u __ / /`ヽ / ´r -―一ァ‐゙T´ "´ / /-‐ \ 院政だとか川淵企画だとか / // 广¨´ / / /´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ ノ / ノ `ー-、___/ // ヽ } _/`丶 /  ̄`ー-{ ... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… 366 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 02 08 ID LozfP+Jj0 マガ巻頭の西部コラムでばっさり 367 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 02 08 ID SAL5+m/P0 【サッカー】犬飼会長が提唱するJリーグ秋春制、将来構想委員会が「7月開幕・5月終了」をシミュレーション 1 名前: すてきな夜空φ ★ [sage] 投稿日: 2008/11/11(火) 06 43 34 ID ???0 日本サッカー協会・犬飼基昭会長(66)が提唱するJリーグのシーズン移行問題に 関連して、日本協会・Jリーグ将来構想委員会が「7月下旬開幕・5月下旬シーズン 終了」をシミュレーションしていることが10日、分かった。 「秋―春制」は実質「夏―春制」として、各クラブの社長クラスが出席する 実行委員会(J1・11日、J2・12日)で議論が本格化される。 7月下旬―5月下旬シーズンとなると、現在の「3月上旬開幕・12月上旬閉幕」より 期間は約1か月長くなる。関係者によると、その大きな理由は2つ。 観客動員が期待できる夏休みの開催と、日本代表の活動期間確保のためという。 日本協会では10―11年シーズンからの移行を目標に各クラブに理解を求めていく。 ソースはhttp //hochi.yomiuri.co.jp/soccer/jleague/news/20081111-OHT1T00080.htm 368 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 03 10 ID PP/1qsyR0 今更予選から参加と言われても、参加できない件について・・・ サッカー協会の会長なのに、天皇杯予選の実態を把握しとけと。 682 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 45 05 ID rYg02J7D0 天皇杯スレより 248 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch 投稿日:2008/11/11(火) 19 33 08 ID WRscfERy0 247 あのー千葉県はもう2010年元旦決勝の大会の1回戦始まってるんですけど? ttp //www.chiba-fa.gr.jp/06category1/category1champ_block.html プログラムに載ってる本大会だけが一回戦じゃねえんだよ 本当の底辺の底辺の試合はもう始まってるんだ、犬飼めバカにしやがって ということだそうだ。 369 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 05 18 ID od0S6JMYO カワブチ→犬飼 政府→田母神 要はそんな人間をトップに任命する奴らは責任感じて、辞めさせるべき… 370 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 06 58 ID n6gewp+d0 367 結局酷暑の中でも試合をやるし 寒気にさらされても試合をやるわけだ こりゃ選手もサポも大変だなあ 371 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 07 05 ID W9PfYziF0 犬養ナベツネ以下wwww 372 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 08 09 ID 7AGOFS1V0 15日の試合に行く人はぜひ「犬飼ヤメロ」の横断幕を揚げてクダサイ! 373 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 08 33 ID kOcEO3bW0 つか、真夏の試合開催は勘弁してほしいわ 選手が危険だってーの 374 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 10 02 ID BG7RYmSGO 犬飼やめろあげ。 375 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 10 36 ID CrvFF1+E0 349 ただ、ならなんでそれを柏に負けた直後に言わないんだよ 犬飼が言い出したのはウチがセパハンに敗退した試合の直後に等々力のスタ内でだぜ 犬飼が川崎の社長を罵倒したのは、たしかセパハン戦の直前。 大一番の直前にチームの社長が公衆の面前で罵倒された。 ACL担当が聞いてあきれる。足引っ張っているだけ。 ちなみに、07年は浦和はホームで川崎に敗退している。 376 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 10 57 ID H0K4AnAK0 雷の危険性、とかはどうでもよくなってるなw 377 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 14 11 ID JFKrg0h5O 去年の柏vs浦和での闘莉王の肘うちを処分しなかったのってビデオによる処分は規定にないからとかだったような・・・ 378 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 14 24 ID wriUvDjh0 ベスメンでまず川崎に因縁 →川崎サポから総スカン ものすごいアバウトにメリットを強調して秋春制主張 →東北、甲信越クラブと対立 大分、千葉にケンカ売る →新たに2チームが嫌犬飼に 秋春じゃなくて実質夏春 →秋春賛成派も首を傾げる 犬飼ってマゾなの? 自分の体に火をつけて崖に向ってダッシュしてるようにしか見えん 379 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 14 57 ID CrvFF1+E0 367 犬飼の挙げた秋春制のメリット ゲリラ豪雨の回避 炎天下の入場行列回避 選手と家族の夏休み 猛暑試合による選手消耗の回避 「7月下旬開幕・5月下旬シーズン 終了」をシミュレーションしている はぁ??? 380 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 15 12 ID De5+WdNOO 375 この件といい、千葉の件といい、結局ただの逆恨みじゃないか。 ひょっとしたら、大分の件だって、浦和が有利になるように仕組んだナビスコで優勝した事への逆恨みじゃないか? 381 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 15 23 ID uTbyY92Q0 368 下を見れば天皇杯県大会予選の参加権を争うトーナメントまであったはず。 もちろん犬飼は把握して無いだろうが 382 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 20 18 ID CrvFF1+E0 380 恨みというより、浦和に不利な相手を蹴落としただけに感じる。 何しろ、ガンバが日本を代表して決勝進出したのに 「浦和が負けてがっかりした」って言う奴だからな。 本来ならお得意の 「Jクラブはガンバ大阪を応援しています」って キャンペーンの先頭に立つべきだろ。 383 名前:U-名無しさん [sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 21 39 ID ofwL6T6s0 357 犬飼にスポーツマンシップ求めるの無理でしょ。そもそも犬なんだからw 384 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 21 50 ID kOcEO3bW0 377 IDが城福だなw 385 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 22 06 ID tCwRi6CgO 375 大一番の直前にチームの社長が公衆の面前で罵倒された。 しかも犬飼自ら記者を引き連れてな。 さすがに記者達も異常だと思ったんだろうな、記事は川崎寄りだった。 386 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 22 55 ID izJOCuZZ0 選手と家族の夏休み、キャンプにはいかないの? 387 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 23 33 ID iQ+HRGoJ0 382 ヒント:脚は天皇杯(ベスメン汁)のあと赤戦 388 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 23 33 ID aZYJk8V50 38 僕も抗議電話送った。 本当に届くんだろうか… 389 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 24 21 ID PP/1qsyR0 379 ゲリラ豪雨が多いのは、7月末~9月中旬までだと思うんだが。 回避になってないじゃん。 390 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 25 25 ID kOcEO3bW0 天皇杯の決勝ってシーズン終了した後だからこそなんていうか神聖なイメージもあったけど シーズン中じゃ単なるカップ戦で権威落ちそうだな 391 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 28 46 ID aZYJk8V50 176 メール送るところが無い 392 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[] 投稿日:2008/11/11(火) 21 30 24 ID JFKrg0h5O 7月下旬開幕の5月下旬閉幕だとした場合 来期契約をしない選手にはいつまでに伝えるのだろうか? 現行は3月開幕で11月末までに伝える。 現行に準拠するなら4月末までになる。 393 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 30 27 ID 2Oo5L9UqO 俺も夕方に電話したよ。 なかなか繋がらなかったから、受話器外されてるのかと思った。 受付の女性に「会長の発言ですけど」と言ったら「答えられないですがご意見伺います」と。 矛盾してる点を伝えたが、上にいくのかな。いくといいな。 394 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 31 24 ID bj3ja+/T0 「あれがベストメンバーというならとリーグ最終戦は 全チーム天皇杯4回戦と同じメンバーで戦うこと!」 と言われてもそんなに困らないのが千葉。 395 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 31 27 ID nds9iFTiO 379 もはや『移行すること』それ自体が目的化していて、客観的にメリットとデメリットを検証できなくなっているんだろうね。 犬飼氏が『バックパス禁止』やら『大分、千葉を処分』等の少々不可解な発言を繰り返すのも、鳴り物入りでぶち上げた『秋春制移行』が、なかなか上手く行かないせいかも知れない、とも思う。 まあ、過去に何度か俎上に上がりながら、その都度見送られたプランを実行するには、もっと綿密な計算が必要なコトくらい、わからなかったのかなぁ。 396 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[age] 投稿日:2008/11/11(火) 21 31 50 ID ZKR3Pz3A0 387 ここまで考えてそうで怖いなw 犬は。。 まじで解任してほしい 397 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 32 33 ID wriUvDjh0 いかねーだろそりゃw ただ行動することは大事 398 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 32 54 ID 8P6a1Qc40 こいつは・・・ 天皇杯の件で大分と千葉をスケープゴードにしてまで、秋春制に移行したいんだろうね。 どこの国の独裁者でつか? 来年から天皇杯はJ1チームボイコットでいいんじゃね? 選手死ぬよ マジで。 どこもJ2落ちるのは嫌でしょ? J2は寂しくて苦しいよ~。 もう一回言うけど、本当に選手死ぬかもよ。 こんなチンケな奴が会長か。。 独立リーグ作ろうぜw 399 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 33 20 ID DUgxF73U0 393 こういう抗議の電話なんて内容より数だよ 400 名前:U-名無しさん@実況はサッカーch[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 35 41 ID 8wbYcsE30 こういうダンマクを次の天皇杯で出したい。 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃.代表招集でベストメンバーが組めません.┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/2.html
投下いきます。固有名詞は特にありません。 カップリングはルシェローグ♂×黒髪サムライ♀ 触手属性あり。中盤の帝竜の名前などのネタバレあり。 今回、黒咲練導『放課後プレイ』と、いうネタの着想元があり、 ネタ元となった原作の雰囲気を損ねている可能性があります。 事前に示し合わせた通りのノックがあったんで、 ドアを開けると黒髪ぱっつんの女サムライが居て いきなりキスされた。 ったく、このキス魔が。 玄関先でいきなり口付けされたら爪先立ちキッスになるからヤなんだよ この体勢でいっぺん足つって大変なことになったのをもう忘れやがったのか? ……オレの方が、な。 そう、屈辱的なことに背伸びさせられてるのはオレなのである。 理想的なモデル体系のこの女と、発育不良のこのオレとでは頭一個分くらいの身長差があって、 並んで歩いたりすると釣り合わないのなんのって。 ――もっとも、そういう機会はこれまでに無く、これからも無いのだろうが。 しばらく唇と唇を合わせていると、物足りなくなったのか舌を捻じ込んできやがったので、 軽く身体を押し返してやんわりと拒否する。人に見られちゃ困るからこんなトコで逢引きしてんのに、 ドア開けっ放しでディープキスとかなに考えてんだ。 「もー! こーんな可愛い子が遊びに来てやったってのに、何よそのリアクション!」 コイツは柳眉を逆立てて、げしげし蹴りを入れてくる。痛ぇな、馬鹿。 「自分で可愛いとかいってんじゃねえ。だいたいお前、挨拶より先にキスとか馬鹿じゃねえの?」 まー、実際かわいい……っつーか、かなりレベル高い部類には入ると思うがそれでも自分で言うな。 「馬鹿とは何よ馬鹿。アイゼンじゃ普通の挨拶よ、こんなの」 「ねーよ。初めてのキスのとき恥ずかしさが限界突破して半泣きになってたのはどこの小娘だ?」 「アンタの方こそあの時は固まって何も出来なかったくせに、このガキ」 くっ、墓穴を掘ったか。俺だってキスはあん時が初めてだったんだよ、悪かったな! 「うっせーよ! つーか、とっとと部屋入れ!」 照れ隠しに軽く怒鳴ると、コイツは後ろ手にドアを閉めながら、 「そっちこそうるさいっての。だいたいアンタ生意気なのよ奴隷種族のくせに」 平気でそんなことを言う。もう言われ慣れたから、いちいちどうとも思わんし それこそ挨拶みたいなもんだ。だがこの女、初めて会った頃は本気で心の底から ルシェを奴隷だと蔑んでいるような、バリバリのアイゼン中華主義者だったのだ。 (今でもその傾向は多分に残っちゃ居るが、マシといえばマシになってる) 「お前だって男に対する口のきき方がなってねーっての。アイゼン皇族の躾ってのはその程度のもんか?」 とは言え、アイゼン中華主義者なのはそれもそのはず、 コイツは(低位ではあるが)皇位継承権を持つマジモンのお姫さんなのだから。 「ルシェに礼儀を払えって? 馬鹿言わないで。奴隷に対する頭の下げ方なんて教わっちゃ居ないわ」 「……ふん、頭だったらさっきは下げてた癖によ」 自虐かつ自爆だが一矢むくいてやった。 身長差があるから、立ってキスするときはコイツの方も頭を下げ腰をかがめる必要がある。 「うっさい、チビ」 「チビ言うな、貧乳」 「貧乳っていうなぁぁっ! この童貞野郎っ!」 「女が童貞野郎とか言ってんじゃねーよ……つーか、こないだお前とヤったからもう違うし……」 何を言わすんだ、何を。 「それはっ……そのっ…うぅ、うぁ、うぅぅぅ……思い出しちゃったじゃんよ、ばかぁ……」 顔赤らめんな、頭を手で抱えてイヤイヤをするな、こっちまで思い出しちまうじゃねーか。 あーもー、処女と童貞はじめて同士とか、痛いわ恥ずいわで大変なだけだったっつーの。 んで、まあ、ともかく。 色々あってオレとコイツは付き合ってたりする。 所属は別ギルド。 オレの所はネパン軍からカザンへ出向してきたルシェのチームで(実はいまも軍属)、一応オレがリーダー。 この女のチームはアイゼン皇家から『新興国の教育と視察』の名目で派遣された皇女と不愉快な家来たち。 当然のように互いのギルドの中は悪い……と、いうか最初の頃は敵対に近かった。 そんなオレとコイツが何故こんな間柄かって、戦いを通じて敵愾心がライバル意識となり、 そのライバル心が友情に変化した頃、一つ二つ厄介な出来事を共同で解消しなきゃならん事情があって、 それが終わった後にゃお互い友情が愛情へと昇華されていた。ベタと言いたきゃ言うがいい。 ……とは言え、そんな関係を築くことが出来たのは、オレとコイツの二人だけで、 ウチの面子はこの女とその家来達にさんざん侮辱されたことを忘れてないし、 向こうの面子はアイゼン中華思想に凝り固まったお貴族様ばかりだ。仲良くやれるわけが無い。 そんなこんなでおおっぴらに会ったりする訳にもいかず、こーやってこそこそ逢引きしてるというわけだ。 ここはオレの仲間にも秘密のセーフハウス。知ってるのはそれこそコイツとオレだけ。 「ったく……女の子呼びつけといて、殺風景な部屋よね」 うるさい。隠れ家なんだから最低限のモノ意外置いてないだけだっつの。 「呼んでねーよ。お前が勝手に来てんだろ……だいたい今日は何の用だよ?」 「面白い物買ったから見せびらかしに来たの」 「お前なぁ……」 急に来るから何かと思えば、コレだ。 根っからのお嬢様気質というか、スゲーしょーもない事情で 他人の時間を浪費させることをなんとも思ってない。 そしてコイツが取り出したのが、 「じゃじゃーん! ろぉぱぁうどんでーす! 一緒に使お?」 思ってたよりはマトモだ。ろぉぱぁうどんは見た目は悪いが味はまぁまぁイケる。 ゲテモノほど美味いという言葉を残した食通が居たがあながち嘘でもないらしい。 「嫌いじゃないけどよ……夏場のクソ暑いときならともかく、春先にそんな冷たいもん食うって辛くねえ?」 ただ、基本的にキンキンに冷やして涼を取る為の食いもんなんで季節的にはどうなんだって話である。 「はぁ? ルシェの分際で耳腐ってんの? あたしは食べるなんて言ってないわ『使う』って言ったの」 「『使う』って……お前まさか……」 イヤな予感しかしねえ。 「アンタさ、触手プレイとか好きでしょ?」 ……ほら来た、やっぱりな。 「アホか。オレはそんな属性ねーよ」 「えー? 強がんなくてもいいのよ?」 「意外そうな顔をすんな!」ったく、つくづく失礼な女だ。 「だけど、ほら……アンタ今はそんなだけど、プレロマの学士あがりだって言ってたじゃない」 「お前なァ……プレロマの学士が皆そんなん好きだと思うなよ……」 「ホントに?!」 タチ悪りぃ。嫌味じゃなくてマジでそう思っていたらしい。 ただ……実際、プレロマの野郎どもの間でその手のポルノが流行ってるのは事実といえば事実だし、 ついでに言うならプレロマ女子はたいてい腐ったベーコンレタスが大好きだ(あのエメル学士長でさえも!) ところで、この女のいう通りオレはプレロマ留学組だったりする。 留学組でメイジや研究職以外を目指すってのも珍しい話なんだが、各種のハントマンのスキルを 研究するうちにローグというクラスに興味を持ち、実践の場を求めてネバンプレス本国軍に志願したわけだ。 ただ、親の方針で物心ついたときには既にプレロマ学府に居たおかげで、 オレには良くも悪くもネバンっつーかルシェへの帰属意識があんまし無い。 「もー! 好きって事にしときなさいよ、せっかく買ってきてやったんだからっ!」 「イヤなもんはイヤに決まってんだろっ!」 「あるじの言うことは黙って聞くものよ、この奴隷種族っ!」 「お前がいつからオレのご主人様になったんだよっ! 大体ここはアイゼンじゃねえ!」 幸か不幸か、この根性腐った女と会話が成立するのはそのためだろう。 『ルシェの誇り』なんてものをオレが持ってたら即行で殺し合いになること間違い無しだ。 「つーかさ、お前の方こそ触手に興味あったりすんのかよ?」 「え、そ、そのっ……そのぉ…ちょっとだけ……」 あんのかよ。頬染めんな。目ぇそらすな。うつむくな。 「……エロ女」 まー、皇女様なんて商売は色々溜まるモンもあるんだろうけどさぁ……。 「うっさい! ルシェの癖に生意気よ……こーなったらねえっ!」 「ちょ……お前っ…なに考えてっ……」 逃げる間もなく、がっちり首根っこをホールドされた。 無手を極めつつあるコイツには流石に素手じゃぁ太刀打ちできん。 「アンタを触手に目覚めさせてやるわ!」 椀からうどん玉のごとく触手がこぼれ落ち、開かれた襟からオレの服内へと注ぎ込まれた。 「ぐぉおぉぉおぉっ?! つっ冷た……っぁぁあ…動いてるっ!? なんかぬるぬるしてるっ!」 そして始まるろぉぱぁうどんによる陵辱。もぞもぞぐねりとオレの肌を撫で回し、這い蠢く。 エロ本だったら『くやしいっ……でも感じちゃうっ』ってシチュだが、コレは無いわ。 実際やられるとただひたすらにキモいだけ、悪い意味でたまらねえ。オマケに冷えるのなんのって。 「くっそ……コレ洒落になんねー……ひゃぁんっ!!」 不覚。乳首の辺りを撫で動かれて思わず変な声がでる。 「あははははは、おっかしーの! 男のクセにそーんな可愛い声出しちゃってさぁ!」 「テメェっ……後で覚え……っ…ひゃっ…あぁぁぁっ!!」 「あははははは」 ムカつく女だ。涙まで流して大爆笑してやがる。マジ後で覚えてろ。 とにかくオレは二昔前の芸人みたいなリアクションを晒しつつ、 あばれ、もがきながら、服を脱ぎ捨て触手を身体から振り払っていく。 食べ物を粗末にしやがって。視聴者の皆さんから抗議の電話が来るレベルだぞ、これ。 パンツの中にまでもぐりこんでいた最後の触手をつかんで床にたたきつけたあと、 オレは下着姿でベッドに突っ伏した。シーツも当然うどんの出汁で濡れるが、とにかく今は横になりたい。 ……ううっ、汚されてしまった。 汁まみれになった床では未だにびったんびったん触手が暴れ、エロ女はひぃひぃ言いながら笑い続けてる。 「あはははは、サイコーだったわよ。触手のお味はどうだった?」 知るか、このエロ女。 「どーしたのよ、ほら、感想は?」 うるせぇバカ。 「……なに黙ってんのよ」 今は口もききたくねえよ。 「ねー、なんか言いなさいよ……」 ほっといてくれ。 「……怒っちゃった?」 ムカついてるに決まってんだろ。 「スネないでよ……ほんとガキなんだから……」 ガキで悪かったな。 そのまましばらくベッドに伏せたまま、シカトを決め込んでいたのだが、 「……ぐすっ」 なにやらすすり泣く声が聞こえてきた……って、おいおいおい……。 「ううっ……ひぐっ……」 枕から軽く顔をあげて様子を盗み見れば、あいつがガン泣きしていた。 あーもー、女ってめんどくせー。お前が悪いのに何でお前が泣くんだよ……。 「なぁ……どしたんだよ?」 流石にオレも空気に耐えかねてシカト中断、一言声をかけたのだが、 「どうしたって……うぅ……なんで無視するのよぉ……」 「なんでって……」 「ひくっ……アンタいっつもムスっとしてるからさぁ…… ぐすっ…ちょっと笑顔が見たかっただけなのにっ…… 喜んでもらえると思ったのにっ……」 確かに仮にもコイツは恋人なんだから、もうちょっと愛想を売ってやっても良かったかもしれない。 「き、嫌われたかと思って……こわかったんだからぁ……」 「……あ、その……ごめんな」 だからって、なんでオレが謝る流れになってんだよ……。 「こっちこそ…………ゴメン……あんな、いきなり、変なことして…… うっ、ひっく…ごめんね、キライになっちゃったよね、こんな馬鹿な女はキライだよね……」 「落ち着けって、嫌いじゃねーよ」 なんというかその……コイツはメンタル弱いところあるんだよなあ。 結局オレはそこを支えてやりたくなっちゃったというか。 「……ホントに?」 「……まぁな」 「じゃあ、私のこと好き?」 言えというのか。答えろというのか。応じろというのか。 「……まぁな」 「そんなんじゃ駄目。好きって言って」 ったく、コイツはホント……。 言いよどむとかえって恥ずかしくなるから 「好きだよ」 がっつり短く言い切ったが、ぐあー、それでもこっぱずかしー。 「えへへへへ」 さっきまで泣いてたカラスがもう笑いやがったよ。女ってのはコレだから。 「そーゆーお前はどうなんだよ。その、オレのこと……」 「……はぁ? ルシェごときにこのあたしが告白しろって? あつかましいにも程があるわ」 調子が戻ったといえばそーなんだろうが、ホンっとムカつく女だよな、コイツは! ……と、憤りかけていたのだが、 「――でもね、今日は特別。一個だけ言うこと聞いてくれたら答えたげる」 しおらしい顔をしてそんな風に続けてきた。……くそ、こーゆー顔はかわいいんだよな、コイツ。 お前が条件出せる立場かよとは思ったが、断ってもめんどい事になりそうだし一応うなずいたら、 「たまにはアンタからキスして。そしたら……ね?」 「ぐっ……」 なかなか恥ずかしい条件を突きつけてきた。 しかし確かに、オレらの場合キスは大抵コイツからだ。そーゆー意味ではコイツの方が色々と積極的だし、 オレも好意に甘えてまかせっきりにしてるところがある。……ま、たまには男をみせとけって事ですかね。 「じゃ、その……目ぇつぶれよ」 「……うん」 言うままにコイツは目を閉じ、軽く唇を突き出す。長いまつげが浮いた目じりが実に艶っぽい。 いつも気ィ張ってる一流のサムライとしちゃ信じられないぐらい無防備な姿がそこにあった。 ――くっくっく、マヌケめ。キスはしてやる。ただしその前にオレが体験した地獄をお前も味わえ! 「きゃぁっ!! な、なにっ、なによっ…コレっ……、ひ、あぁっ!!」 オレは♀サムライ特有のユニフォームであるコイツの黒い全身タイツの首元を引っ張り伸ばし、 空いた隙間へ床で蠢いていた触手を3,4本拾って一気にねじ込んでいた。 「なにって、ろぉぱぁうどんだよ。ろぉぱぁうどん」 やり返すならさっきコイツが目ぇ閉じたときが千載一遇のチャンスだったわけで。 この女がここまでスキだらけになることってまず無いからな。 「うそつきっ、うそつきぃぃ! キスしてくれるんじゃぁっ……あ、あ、あぁぁあっ!?」 「嘘なんてついてねー。キスだったら触手でお前がへばった後たっぷりしてやるからよ」 身体にぴったり密着した黒タイツと地肌の隙間を、数匹のウナギのように触手が這いまわっている様子が タイツを押し上げてくっきりはっきり浮き上がって見える。 見ようによっては皮膚の一枚下を蠢くタイプの寄生虫みたいでちょっとキモいが。 「や、やぁぁっ! とって、とってぇ……コレとってよぉぉっ!」 ほうほう、今は右胸のあたりをうねうねぐねぐねしてますね? うはははは、確かに鑑賞する立場になればコリャおもしれぇ。 「オレみたいに脱げばぁ?」 「いじわるぅ……コレすぐに脱げないの知ってる…くせ、にぃっ!!」 そうなのだ。この黒タイツ、あまりにタイトに全身を包んでいるので脱ぐのも着るのも一苦労。 こないだいろいろ手伝ったからよーく知ってる。 そして放置すること五分。 「……なー、お前、ガチで感じてきてねぇ?」 顔は赤らみ、乳首が勃ってきている。 「んぅ……感じてなんか……やぁああ……いないもん」 だったら何でそんな艶っぽい声出してんだ。 コイツと身体を重ねたことは数えるほどしかないが、 それでもただの悲鳴と、蕩けたオンナの嬌声の区別くらいはつく。 「つーかさ……お前、濡れてきてんじゃん」 元々密着度の高い衣装だが、その下腹部は内側からあふれる蜜によってさらにぴったりと張り付いて、 いやらしく割れ目を浮き上がらせていた。 「……ふぇっ?! やぁだぁ…ばかぁ……見るなぁ……」 明らかな官能の証拠を突きつければ、流石に言い逃れることも出来ないらしく、 股間を手で覆い隠してしまったの、だが―― 「――ひぁっ?!」 ――あまりに急に隠した為、指が敏感な部分に触れてしまったのだろう、 腰がびくんと跳ねて激しく反応していた。 「めちゃくちゃ感じてんじゃん……」 「……う、ううっ……うー」 ……やべ、オレまで勃ってきた。 ちょっとした悪戯で済ませるつもりだったのに、どーすんだよ、こんなの。 「そうか、皇女様は触手で気持ちよくなっちゃう変態だったか」 流石に『ちょっとだけ興味が』と言うだけの事はある。オレには無理。 「こんなときだけ何が皇女……ふえぇっ?! や、やだっ、こっちきちゃダメっ!」 メスの匂いに反応したのだろうか。それまで体の各所で勝手に蠢いていた触手たちが、 一斉に股座を目指して黒布の一枚下を這い進み始めたのだ。 「おいおいおい……」 「黙って見てないでどうにか……やぁぁっ! 入っちゃダメっ! 入っちゃだめぇっ!」 ついに蜜の源泉にたどり着いた一本の触手が入り口をこじ開けて胎内に侵入しようとしているらしい。 触手の分際で生意気な! そこはオレもまだ片手で数えるほどしか挿れたことが無いってのに! 「こ、ここはあなたの以外は入れたくないの……お願い……お願いだからぁ……抜いてぇ……」 涙目になり、顔を上気させながら、そんなことをお願いされてしまった。 うわ、コイツから『あなた』とか初めて言われちまったよ。 ちゅーか、理性が飛びかけてるんだろう、かなりすごいことを口走っている。 「わかったよ……けど、どうやって……」 こうなってくると、こんな着脱に時間のかかるものイチイチ脱がしてられん。 「切っていいっ! 破って良いからっ、はっ、早くぅぅ……」 なんとも素晴らしい許可が出た。 オレは愛用のダガーを取り出し、こいつの地肌を傷つけないように注意しながら 黒タイツの局部部分を一気に切り裂く。今まさに秘所を犯そうとしている触手の一本を 引っこ抜き、そのまま雌の花弁へと集結しつつあった他の触手もタイツから引きずり出して 戻ってこないように遠くへ投げ捨てた。やれやれ……。 「は……はぁ……はぁー」 さっきのオレと同じく、性も根も尽き果てたのだろう。 コイツは息を荒げたまま、タイツが破れて露出した秘所を隠そうともせず床に転がっている。 しかし、いやらしくも最高な光景だった。 この女は今、雌として隠すべき一番大事な部分『だけ』が剥き出しになっているのだ。 なんて無防備。なんて官能的。なんて愛らしい。 タイツの破損箇所からは、きめの細かい白い地肌が露出して、布地の黒と対照して実に良く映える。 さらにその白い皮膚の中心には、紅い粘膜が息づいてる。恥毛は申し訳程度にしか生えてない。 普段はぴっちり閉じている粘膜の花弁は、触手の官能にさらされたせいか左右に軽く花開き、 そこから見えるメスの肉はしっとりと愛液に濡れていて、 包皮の下では小粒なクリトリスが膨らんでお外に顔を出したがってる。 発情状態の雌器官がそこにあった。 舐めたい。 気付けばオレは本能の命ずるままに秘裂に口付け舌を這わせていた。 「んっ、んぅう…な、何してんのょぉ……あ、ぁやぁあっ!」 一度は開放されたはずの性的刺激を再開されて放心していたこいつの意識がかえってくる。 「何って……キスしてんだよ。だから言え、俺のことを好きか嫌いか」 「そ、そんなトコのは、違っ……あ、あ、うぅうんっ!」 「違う? じゃあ止めるか」 「え……?」 口唇愛撫を中断し、こいつの顔をじっと見つめ返す。だめだめ、そんな物欲しそうな顔して強がったって。 「いじわる……」 「何がいじわるだよ。して欲しいんならちゃんと言え」 「こ、このあたしがルシェに懇願しろってのっ……?」 すげーよ、コイツの貴族根性。ここまで来るとむしろ尊敬に値する。 「別にお貴族様らしく命令でも良いんだぜ」 命令だろうと懇願だろうと、どの道いやらしい欲求を口にしないといけないのは同じだがな。 「……キスを…つづけなさい」 まあお前の性格だったらそういうよな。じゃあオレのターン。トラップカードオープン。 「じゃあ認めるんだな、コレがキスだって」 「うー、み、認めてあげる…わ」 「じゃあ言え、好きか嫌いか」 「……そ、そのぉ……………だいすき」 だいすき、ってそりゃ反則だ。俺のハートにクリティカルヒットしちまったじゃねーか。 「ちくしょうオレだって大好きだ」 こっちも大好きといった途端に、コイツの顔がますます紅潮する。 ああもう可愛いな! いくらだって感じさせてやるよ! 肉の花弁を指で大きく割り開く。 酒とチーズそしてどこか植物に似た青臭さが入り混じったメスの匂いが香りたち、 針でつついたような尿道口とモノを求めてひくつく膣口があらわになった。 色といい形といい匂いといい何かに似てると思ったらフロワロだ。 紅く妖しく咲き誇って人の魂を吸い尽くす。まるでコイツそのものみてーだ。 「そ、そんな……開いちゃやだよぉ……」 肉色の杯にはたっぷりと愛液がたたえられ、羞恥で腰が動くと、蜜もまた揺れ、そして零れ落ちた。 そのまま犬が皿のミルクを飲むようにあさましく舐めしゃぶる。 今のオレならルシェの家畜野郎といわれても文句は言えない。 「ダメっ……そんな激しくしちゃダメぇっ……!」 ダメとか言いながら俺の顔を押し付けてきてんじゃねーよ、このエロ女。 肉孔からは舐めとっても舐めとっても、いやらしい蜜がいくらでもあふれ出てくる。 なんと言うか実にメスの味だ。旨いモノじゃないが実に旨い。 舐めるだけじゃ我慢できなくなって、舌先を尖らせ膣内へとゆっくり、ゆっくり挿入して こいつの一番大事な部分を文字通り舌全体で『味わう』。 「ひゃぁん…な、なにしてる……のよぉ……」 この状態で答えられるわけが無い。 まあでも旨いもん飲ませてもらってるお礼はしてやろう。 クリの包皮を指先で剥き、一番敏感な部分を外気にさらして一気にこね回せば、 「――ひっ!」 一声甲高く鳴いた後に、膣肉がきゅうんとオレの舌を締め付けてきた。 イッたな、コレは。 舌を肉孔から引っこ抜くと、唾液と愛液の混合液がエロい糸を引く。 「イッた?」 「……うっさい、ばか」 見られるのが恥ずかしいのだろう。顔を両手で覆い隠してるが、 隠した指の隙間からオレの勃ったイチモツをちらちら盗み見てるのはバレてるぞ。 「顔見せろよ」 「や……だめ……」 たいした抵抗もなく隠した掌を引き剥がせば、いつもの傲慢でツンケンした尖りが すっかり抜け落ちた、蕩けたメスの顔がそこにあった。いつもこうなら可愛いのにな。 間近で眺めたくなってオレも顔を近づけると、もうたまらなくなってたんだろう、 コイツの方からキスしてきた。 不意をつかれて割とされるがままになってしまい、さっきのお返しだといわんばかりに コイツの舌がオレの口内を犯し尽くしていく。ちくしょうやっぱこの女キス上手ぇな。 こちらも多少の反撃は試みた物のたいした戦果も得られない。 あー、やべぇ、脳みそ溶けそう、くらくらする。 しばらくいじめられてようやく開放されたがこりゃ絶対に顔赤いな。 赤面を見られたくなくて、視線をそらし顔をそらす。くそ、さっきと逆じゃねーか。 「ふふん、あなたって普通のキスはまだまだお子様よね」 「キスとか……良かったのかよ…その、舐めたばっかだったってのに……」 「……こうなってもいい様にお風呂入ってきたから綺麗だもん」 用意周到じゃねーか。まあ触手プレイとか言い出す時点でそのつもりだったんだろうが。 「じゃあ、最後までするつもりもあるんだよな?」 「……あなたがしたいんだったらしても良いけど?」 「……お前がヤりたいんだったらヤってやるけど?」 そのまましばらく見つめ合っていたのだが、 残念ながらお互いそれ以上意地が張れるほど余裕は無かったらしく 「……するか?」「……しよっか?」 ほとんど同時に誘いを交わした。 なんだかおかしくなってくすくす笑いあった後、キスをして、ベッドへ連れ立った。 オレは既に下着姿だし、パンツさえ脱いじまえば準備は整う。 痛いほどに勃起した一物の先端には先走りの汁がにじみ出てあふれんばかりになっている。 「……ねー、はやく」 こいつはと言えば羽織りは外していたものの、例の全身タイツは身に付けたままだった。 「はやく……ってお前、それ脱がなくて良いのかよ」 「……その、破いちゃったし、このままできるでしょ。どうせもうこれ着れないし」 「そりゃそうなんだろうけどよ……」 裸よりエロ過ぎるだろ、そのカッコ。 「局部露出の黒タイツプレイなんてコレを逃せば機会はないわよ……興味ない?」 ある。 触手プレイに比べりゃよっぽど。 黒い布地が破れて露出した陰部だけが強調されて、まるでセックス専用衣装って感じだ。 口答で返事する代わりにベッドへと押し倒し、こいつのタイツに包まれたままの脚を割り開いてのしかかった。 長くて黒くてきれいな髪が乱れてベッドに広がる。 「お前って……ほんとエロに貪欲だよな」 まあ、あの三バカが側近では溜まる物も多かろう。せっかくだからスッキリさせてやりたい。 「あなたこそ、もう我慢できないって顔してる……」 んで、オレの方だってもちろんスッキリしたい。 「まあな……もう準備とか要らないよな……?」 「うん……今すぐ、して……」 性器と性器の距離が近づき、そして触れ合う。 愛液で濡れそぼった秘裂と先走りのあふれた陰茎をなであわせて、 いやらしい液体同士をじっくりと混ぜ合わせる。 「焦らさないでよぉ……」 「……そう急くなって」 焦らしてるわけじゃなく、まだまだセックスそのものに不慣れで 勝手がつかめてないだけなのだが、そこは伏せとく。 しばし四苦八苦してようやく亀頭が膣口をとらえ、体重をかけてゆっくり突き入れていく。 すげー気持ちいい。 あったかくてぬるりとした膣肉が四方八方から陰茎をきゅうんと締め上げてくる。 この、挿れた瞬間はいつも、男の子に生まれてよかった……とか思う。 「あは、おちんちん入ってきたよぉ……」 「おち……って、お前なぁ……」 そーゆー直接的な単語は勘弁してくれ。言われたオレが恥ずいので。 そりゃオレもヤりたい盛りの青少年だけどさ、まだまだ純情なお年頃でもあるんだよ。 「なによ、おちんちんって言ったぐらいで照れちゃって……かわいいんだから」 「……うっせ」 「それより、どう、私のおま…………ナカは?」 そっちの単語は言えねーのかよ。まあ、気持ちはわかる。要するに、 「ああ、すげー気持ち良いよ……お前のおまんこ」 自分についてない方なら、口に出すのもそんな抵抗はないのだ。 「……ばか、仕返しのつもり?」 「いや、そんなんじゃなくて、なんつーか……いつもとぜんぜん違う。 マジすげー良いおまんこになってる、今日は」 「もー、ばか……」 単純に若く、そして経験が少ないせいだろうが、普段のこいつの膣は生硬なところがあって 挿れるとどこかゴリゴリした感触がある。それが今日は、 触手やらなんやらでじっくりたっぷり熟させたせいだろう、 ねっとりしっとりと熱い媚肉がからみついてくる。 この肉を、もっと味わいたい。 「……動いていいか?」 「……うん」 情けない話だが、経験不足なもんで最初のうちは結合部を目視しながらじゃないと動けない。 エンジンかかってきたら本能のままに腰振ってもわりとどうにかなるのだが。 「つながってるトコじろじろ見ちゃやだ……」 「……そういうお前がガン見のくせに」 膣口は一杯に口を広げていじらしく俺のモノをくわえ込んでいる。 繋がっている粘膜感触もさることながら、こうして結合部を目にすると セックスしてるんだ、と否応無しに実感する。心臓が跳ね回り、鼓動がオレを鼓舞する。 「いくぞ」 「うん」 陰茎を半ばまで引き抜けば、それはもちろん愛液にまみれていた。 亀頭が見えるほどにまで抜いて、また突き入れる。 痺れるような快感がペニスを核にして腰の方まで広がってくる。 出し入れを、繰り返す。単純な動き。それしか出来ない。 多分、オレはまだまだ下手の部類に入るんだろう。 「あ、あぁあ……ナカ、かきまぜられてるよぉ……」 でも、そんな未熟な抽送でもコイツは感じてくれていて、 ねっとりぬめった膣壁でオレのペニスをマッサージしてお返ししてくれる。 「んぅ……きもち良いよぉ、つながってる…所っ、 ぐちゃぐちゃって、えっちな、音してる…よぉぉっ!」 だから、聞いてる方が恥ずいのでイチイチそーゆー実況はしなくてよろしい。 ……あーもー、こういうのって男女逆だろ普通は。キスで唇をふさいで黙らせようとも思ったが 身長差のせいでどうにも上手くいかない。くそ、マジ格好悪りぃ。 だが、キスしたいという意思は伝わったらしく、 「つながった、まま……キス、だね……しよ」 下から抱すくめられる様にして、それはそれは情熱的に口付けされた。 身長差と動きが激しすぎるせいで唇を合わせ続けることが難しいが、 それでもお互い舌を伸ばし、唇を突き出して精一杯に求め合った。 たまらない。かわいいなこいつ。かわいくて、そしていとおしい。 「好きだ」 口付けが途切れた一瞬、好意の言葉が自然に口からあふれ出た。 「あたしもぉ……すきぃ……」 そして互いに好きだ、好きだ、と言い合いながら身体を求め合う。 愛し合う、ってたぶんこういう事なんだろうな。 こんなに気持ちよくて、こんなに興奮して、こんなに幸せなセックス。 ……だからこそ、身体は一気に高められてしまって 残念ながら未熟なオレたち二人では長く味わうにはまだまだ経験不足。 「あ、あぁっ、やぁぁっ……いっ、いぃっ、イッちゃぁ……っ!!」 っていうかお前もうイッてるだろ。 逃がさない、搾り取ってやる、とばかりに膣肉がオレの剛直をめちゃくちゃに締め付けてきている。 そしてオレだってもう限界。 ナカで果てたいという気持ちはもちろんあったが、そこは本能を全力でねじ伏せて 寸前でペニスを膣から引き抜いた。たちまちのうちに鈴口からは快感と精液がほとばしって こいつの黒いタイツに覆われたままの腹を、胸を、白く汚していく。 黒い物を白く汚すのは異様なまでに背徳的な悦びがあって、射精前より出した後の方がむしろ興奮している。 その実に官能的な風体をしばし眺めていると、不機嫌ながらも蕩けた声で苦情を言われた。 「うぅん……もー、あなたってばそーろー野郎なんだからぁ…もっとがんばりなさいよぉ……」 「……まあ、早いっちゃ早かったけどよ、お前もちゃんとイッてたじゃん」 「イッてたけどぉ……イキながら奥をぐりぐりされるのが好きなのにぃ……」 「お前の欲求はいちいちエグいんだよ……」 こいつ、二ヶ月前までは確かに処女だったのになあ……などとため息をつく暇も無く、 「……って、お前何してんだよっ!」 吐精を終えてもまだ硬いままだったオレの陰茎がしゃぶりつかれていた。 「何って……きれいに、してあげてるの……せーえき付いたままだと、だめ、だから……」 剛直にこびり付いたままだった精液が舌で舐めとられ、尿道に残っていたのも吸い取られる。 こんな丁寧にお掃除してくれるってことは、だ。 「……ね、もっかい、しよ?」 やはり二回戦のお誘いか。 オレも再び出さないことにはおさまる物もおさまりそうに無かったんで、エキストラターンの開始である。 出した後だし多少は射精のコントロールも利くから今度はお望みどおり こいつがイッてる最中にガンガンに奥をつついてやったのだが、 「感じすぎちゃうからいやぁ……!」 などと泣き出した挙句、事後にはものすごい怒られた。 あんまりきーきーうるさかったんで、キスして唇をふさぐとようやく静かになって、疲れ果てたのか眠り始めた。 まったく、この皇女様はわがままにも程があるぞ。オレにどーしろと言うのだ。 ――いつの間にかオレの方もうとうとしてたようだ。 気付けばあいつは先に目を覚ましていたらしく、真新しいサムライ衣装に着替えてた。 「……そんな新品、どこにあったんだよ」 「んー? いつかこーゆーこともあるかなーって、こないだ来た時ここのクローゼットにぶち込んどいたの」 「どういう事態を想定してたんだよ……」 ぬう、こっちだけ裸だと妙に気恥ずかしい。オレも適当に服を取り出しいそいそと着込んでいく。 「ところでさ、アンタん所にメナスのアホから呼び出しあった?」 「あー、来た来た来た。お前んトコも呼び出し?」 明日の11時に大統領府に顔出せと、そういう話だった。 「そーそー。あの馬鹿、またあたし達に競合させる気よ」 「だろーな」 現在の対竜ギルドの最先鋒はオレのところとコイツのところが双璧なのだが、 メナスの野郎はあえて仲の悪いオレたちをカチ合わせることで より良い戦果を拾おうとすることがたびたびあり、時にはオレ等があい争ってる間に カザン子飼いのギルドである『王者の剣』が漁夫の利でおいしい所を持っていくことすらあった。 そこで対抗策として時々こうやって、談合じみた真似もしていると言うわけだ。 メナスの野郎だってアイゼン貴族とルシェのリーダーがデキているとは想像すらしていまい。 「たぶん、こないだ逃がしちまったフレイムイーターの後始末をしろっつー話だと思うんだが……」 「あ、アレは結果オーライだから。っていうか、絶対討伐しちゃダメよ」 「……なんでだよ?」 「帝竜が逃げ込んだドーマ火山周辺ってのはさ、ジェン爺って地方豪族の支配地域なんだけどね、 アイツ中央の言うこと聞かないし守銭奴だしあたし大っ嫌いなのよ。放置してせいぜい苦しめてやればいいわ」 「おいおい……帝竜を放置する理由が私怨かよ」 「まあ、政治の話をするとさ、あのへんの領土をソウゲン叔父様が欲しがってんのよね。 ほっときゃそのうち中央に泣きついてくるだろうから、帝竜退治を名目に金色の騎士団を 派兵して何もかもぶん捕ってやろうってワケ」 「お前ホンっと、悪巧みしてるときは輝いてるよなぁ……」 「ふふん、それほどでもないわ。密約、談合、権謀術数、アイゼン貴族のたしなみだもの」 褒めてねえよ。 まあオレ達も、本来はカザン領であるノザン=ペスタの遺跡から『旧世界』の技術を たっぷりいただいてネバン本国へと送りつけてるんだから人のことは言えない。 「んじゃ、明日の呼び出しはのらくらかわして先延ばしにする方向で良いんだな?」 「うん、それでお願い」 「代わりと言っちゃなんだけどよ、ドレッドノートはオレ等にやらしてくれねえ? ネバンとしてもマレアイアには恩を売っときたいから」 「……えー? あそこに恩売りたいのはあたしも同じなんだけどなー」 ――などと、いかにも軽いノリで話しちゃいるが、世界の命運は今まさに決まりつつあった。 人類がドラゴンと言う共通の敵を得て一時的とはいえ結束してるのと似たようなもんで、 オレとコイツがくっつくきっかけとなったのも、メナスという共通の敵がいたからである。 「こら。人が話してんのになーにボサっとしてんのよ」 「してねえよ……」 「ところでさ、ろぉぱぁうどん以外にも買って来たのがあるんだけどね……」 「ハァ?! まだやる気かよ?! お前馬鹿じゃねえの?!」 「馬鹿って何よ! アンタほんとルシェの分際で生意気なんだから!!」 ――ま、こんな面白い女と引き合わせてくれたって所だけは、あのメガネ野郎に感謝してやっても良い。 <了>
https://w.atwiki.jp/rin_1224/pages/117.html
和泉 ちるみ vs 香川結香 和泉 ちるみさんがリングに上がりました (11/12 23 49) 和泉 ちるみさんのプロフィール 借金を返すために地下プロレスに出場している15歳の少女。 (11/12 23 49) 香川結香さんがリングに上がりました (11/12 23 50) 香川結香さんのプロフィール 小悪魔チックな巨乳中学生。勝てばOKの精神で何でもやる。 (11/12 23 50) 和泉 ちるみ うぅ、、、が、、、がんばらなきゃ、、、、、(ピンクのレオタードのようなリングコスチュームでリングにあがるちるみ。 家が多額の借金をしていて、返済の為に地下プロレスに出始めて、もう数試合目。 戦う事は好きではないが、、、、返済のためには仕方の無い事だ、、。 すぅっと大きく息を吸い込み、緊張を和らげながら、相手の入場を待つ) (11/12 23 58) 香川結香 あはっ、今日の相手の子、可愛い~♪ やっぱり、可愛い子だとやる気が出るよね♪(バニーガールのコスプレでリングに上がる結香。その胸もお尻も、ぱつんぱつんにコスチュームを押し上げている) (11/13 00 00) 和泉 ちるみ う、、、、(相手は自分とそう年の変わらない少女だが、その胸も、お尻も、そして度胸も自分より大きいらしく、リングに立っているのに、少しも緊張していない様子である。) ・・・・よし!(覚悟を決めたように深呼吸をやめ、結香を見る!) (11/13 00 04) 香川結香 ええと、ちるみちゃん、だよね? うふ、可愛がってあげるから楽しみにしててね?(元々趣味とバイト代のために地下プロレスに通っている結香、明るく振舞う) (11/13 00 06) 和泉 ちるみ よ、、よろしくおねがいします!(小悪魔のような笑みに、ビクっとなりながらも、深くお辞儀をするちるみ。 そして、、、、) カーーーン!(試合開始のゴングがならされる!) (11/13 00 09) 香川結香 行くよ!(ゴングと同時にダッシュ! ちるみの顔めがけてバストをぶつけるバストアタック!!)ほぉら♪ (11/13 00 09) 和泉 ちるみ な、、、あぐぅっ!(ゴングと同時の攻撃を、気の緩んでいたちるみはもろに食らってしまう。 バストに弾かれ、後ろに転がるちるみ。) (11/13 00 11) 香川結香 あはっ、ちるみちゃん弱~い!(笑いながらおいかけて……)えいっ♪(今度はヒップドロップ! 大きなお尻がちるみに降り注ぐ) (11/13 00 13) 和泉 ちるみ んうぅっ!(胸に続いて、ヒップドロップもまともに受けてしまうちるみ! (11/13 00 14) 香川結香 ほらほらぁ、そんなに弱い子には、お仕置きしなくちゃだよ?(素早く足を掴む結香、そして……)ほぉら! うりうりうりうりうり~♪(足を股間に押し当て、ぐりぐりと電気アンマ攻撃!) (11/13 00 16) 和泉 ちるみ え、、あ、、、、や、、、やあぁぁぁぁぁぁぁ~~!!!!!(結香の恐ろしい連続攻撃! 股間に強烈な振動が加えられ、必死に体をひねって悶えるちるみ!) (11/13 00 18) 香川結香 ふふっ、可愛いよぉ、ちるみちゃん! このまま悶えて負けちゃえ!(小悪魔チックな笑みを浮かべながら、激しい電気アンマでちるみを激しく責め立てる) (11/13 00 19) 和泉 ちるみ あぐぐぐぐぐぅぅぅぅっぅぅぅ~~~~~~(結香の足の上から股間を押さえ、振動を押さえようとするが、手の力では止められそうもない、、。 足をバタバタと暴れさせ、開放しようとする!) (11/13 00 22) 香川結香 うふ、まだまだ元気だね。もっと可愛がってあげないとダメかな?(足を離してちるみから離れる) (11/13 00 23) 和泉 ちるみ あはぁ、、、はぁ、、、、はぁ、、、、、(ササっと起き上がるも、痛みと快感に、股間を押さえる、、。) うぅ、、、ま、、負けるわけには、、いかないんですっ!(今度はちるみからダッシュで近づき、結香にタックルを仕掛ける) (11/13 00 25) 香川結香 きゃっ!(タックルで押し倒されてしまう結香)いったぁい……(そのまま組み伏せられてしまう) (11/13 00 27) 和泉 ちるみ こ、、こんどはこっちの番です!(結香の上で体位を変え、69の方向になり、、、、結香の顔の上に腰を下ろす!) (11/13 00 28) 香川結香 むぎゅっ……(顔をちるみの可愛いお尻に押し潰される結香)んっ……こういう格好が好きなんだ?(からかい口調で言いながら、まだ余裕の表情) (11/13 00 30) 和泉 ちるみ ほ、、ほんとは、、、こんな事したくないけど、、、、(結香の上のお尻を鼻先に固定して、、、、、)ス、、、、すかぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~(強烈なオナラが結香に浴びせられる!) (11/13 00 32) 香川結香 え……あぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!?(思わぬちるみの攻撃に、余裕の表情が一瞬で消えて悶絶する)く、くさぁぁいっ! 目にしみるぅぅっ!!(目を潤ませながらじたばたともがく) (11/13 00 33) 和泉 ちるみ は、、早く降参しないともっと苦しむことになりますよっ!(そういってお尻の谷間に結香の鼻を押し込んで、後頭部を手で固定する!) (11/13 00 35) 香川結香 んはぅっ……こ、降参なんか……(涙目になりながらちるみのお尻をにらみつける)ど、退きなさいよぅっ! (11/13 00 37) 和泉 ちるみ ん、、、、まだ、、、、降参する気はないみたいですね、、、じゃぁ、、、(お尻をグリグリと押し付けて、、、2は詰めの準備にかかる) (11/13 00 38) 香川結香 こ、このままじゃ……え、ええいっ!!(指を突き出し、ちるみの股間を弄り回して力を奪おうとする) (11/13 00 40) 和泉 ちるみ あぅっ!? うぁぅぅぅぅ、、、、(2発目を発射しようとした瞬間に、股間を弄くり回され、腰が少し浮いてしまう、、、、) (11/13 00 42) 香川結香 い、いまだっ! 必殺・七年殺し!(指をそろえて、ちるみのお尻にカンチョー攻撃)こんな臭いお尻、蓋してあげるんだから! (11/13 00 43) 和泉 ちるみ んあぁぁぁ!(お尻に走る痛みに、思わず腰を上げて、前方向に転がってしまう!) (11/13 00 45) 香川結香 はぁ、はぁっ……逃がさないよ! 七年殺しぃ!(転がって逃げたちるみをおいかけ、再びカンチョー! そのまま……)あんな悪い事するお尻にはお仕置きなんだから!(ぐりぐりと指でお尻を抉って行く) (11/13 00 46) 和泉 ちるみ あぐぅっ! や、、やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(再びお尻を刺し貫かれる! 自分の最大の武器にこんな攻撃を仕掛けられるなんて、、、)うぅぅ、、こ、、このぉ、、、(お尻に力を入れ、押し出そうとする!) (11/13 00 48) 香川結香 んっ、くっ……さ、させないよっ! あんな臭いオナラ、出させないんだから!(押し出されそうになる指を必死に突き出し、ちるみのお尻を責め立てる) (11/13 00 49) 和泉 ちるみ うぅぅ、、、ぬいてぇぇぇぇぇ!!(お腹に力をいれ、さらに手を使い結香の指を引き抜こうとする) (11/13 00 51) 香川結香 くっ……ああっ!(ちるみのお尻のすごい力に、指がひり出されてしまう) (11/13 00 52) 和泉 ちるみ んんんん、、、、、、、っ!!(徐々にカンチョーが浅くなっていき、、、スポっと抜けた瞬間にお尻を結香の方に向ける! そして、、、、)ぶうぅぅぅぅっぅゥぅぅぅぅぅっぅう~~~~!!(圧縮されたガスが結香の顔面を覆いつくす!) (11/13 00 56) 香川結香 はぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!(鼻を押さえてリングをのた打ち回る! 先程のオナラより、圧縮されている分さらに臭い……)な、何食べたらこんなオナラが出るのよぉっ……!! (11/13 00 57) 和泉 ちるみ た、食べ物じゃなくて、体質ですっ!(そういって鼻を押さえている両手を掴み、地面に押し付ける! そして、今度はさっきと逆向きに結香の顔に座り込む!) (11/13 01 02) 香川結香 きゃっ……離しなさいよっ! 体質だかなんだか知らないけど……人前でオナラなんかして恥ずかしくないの!(もう食らいたくないと言う一心で、ちるみのお尻の下でぎゃいぎゃいと騒ぎ暴れる) (11/13 01 03) 和泉 ちるみ これも、、借金を返すためですっ! 恥ずかしくなんて、、、ないですっ!!(吹っ切れたかのように言い切り、自分のお尻の下で騒ぐ結香を黙らせるべく、、、、)ぷぅぅ、、、んぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~、、、、(毒ガスを鼻に流し込む!) (11/13 01 05) 香川結香 んむ~~~~~~~~~~っ!!(あまりの臭さに身体をぴくぴくと痙攣させる) (11/13 01 06) 和泉 ちるみ どうですか!? オナラで気絶したくなければギブアップしてくださいっ!(そういって残り香を鼻に擦りこむ様にお尻を押し付ける!) (11/13 01 08) 香川結香 んむっ、むぅぅぅぅっ!!(残り香も嗅がされ、涙を浮かべる結香)く、臭すぎるよぉ…… (11/13 01 09) 和泉 ちるみ まだ、、、ギブアップしないなら、、、、(グリグリしていたお尻を再び固定して、、、発射体勢に入る!) (11/13 01 10) 香川結香 っ……さ、させないっ!!(舌を突き出し、ちるみの股間をぺろぺろと舐める)これでどうっ!? (11/13 01 12) 和泉 ちるみ はぁうっ!!(手も封じ、ガスも大量に嗅がせて、もう結香は反撃不能だろうと油断していた、、! 股間を襲う快感に、動きが止まる、、) (11/13 01 14) 香川結香 れろ、れろれろ……(手を封じられているため、舌を動かすしかない……必死にちるみの股間を嘗め回していく) (11/13 01 15) 和泉 ちるみ や、、、ぁ、、、、うぅ、、、、(股間を舐められるが、、さっきのようにお尻を上げてしまったらまた、、。 なんとかお尻は結香の顔から動かさないで入るが、、、手を押さえつける力が弱くなってしまう、、) (11/13 01 16) 香川結香 ええいっ!(すかさず手の拘束を跳ね除けると、両手と舌で股間を一気に攻め立てる!!) (11/13 01 19) 和泉 ちるみ あぁっ!! (手が外れてしまった事に気付くが、、後の祭り) やあぁっ! やぁぁぁぁぁ~~!!(前のめりになり悶えるちるみ!) (11/13 01 20) 香川結香 ほらぁっ! うりうりうり、すりすりすり、ぺろぺろぺろ……さっさと、退きなさいっ!(激しい股間への攻めで力を奪うと、そのままちるみを跳ね除ける!) (11/13 01 21) 和泉 ちるみ あぁぁぁぅぅぅぅぅ~~!(舌と手での激しい責めに、力が抜けてゆき、、、) きゃっ!(ついに跳ね除けられてしまう!) (11/13 01 22) 香川結香 はぁっ……はぁっ……よくも、やってくれたねっ……(鼻を摘んで顔の前を扇ぎながら、跳ね除けたちるみをにらみつける) (11/13 01 24) 和泉 ちるみ うぅぅ、、、、、(快感を堪えながら、立ち上がろうとするちるみ。) (11/13 01 26) 香川結香 させないもんっ!(ちるみの背中に、大きなお尻でヒップドロップ!)もう、許さないんだから! (11/13 01 27) 和泉 ちるみ うわっ!(立ちきる前に、背中にヒップドロップを食らってしまい、再び前のめりに倒れるちるみ!) (11/13 01 28) 香川結香 ふふん……覚悟は良い?(手をわきわきさせ、笑みを浮かべる) (11/13 01 29) 和泉 ちるみ え、、、、な、、、や、、やぁぁ、、(怪しい笑みに危機を覚えて、表情を引きつらせるちるみ。 ゆっくりと、匍匐前進のように逃げようとするが、、、) (11/13 01 31) 香川結香 にがさなぁい……ほぉらっ、こちょこちょこちょこちょ……(ちるみの脇腹からわきの下にかけてを、くすぐりまわす!!) (11/13 01 32) 和泉 ちるみ あや、、きゃはははっはあはははははっ!!やっ、、、やめっ、、、 (意外な攻撃に笑い転げる!) (11/13 01 34) 香川結香 ほれほれ~♪ 結構効くでしょ? それにこの攻撃、お腹を使わせるから……オナラが漏れちゃうかもよ?(結香はちるみの頭の方を向いているので、もしオナラが出ても被害はない) (11/13 01 35) 和泉 ちるみ きゃはははははっ!(涙を流しながら笑い転げるちるみ。 やがて、、)ぷ、、ぷぅぅ、、、ぷぅぅぅぅぅぅ~(あまりのくすぐったさに、ガスがもれてしまう) (11/13 01 37) 香川結香 あはは、このまま全部オナラを出し尽くしてあげる……そうしたら、ちるみちゃんなんか恐れるに足らず、だもんね♪(激しいくすぐりでちるみを激しく責め立てる) (11/13 01 38) 和泉 ちるみ あ、、、あふ、、、、や、、、やめてぇぇ~~!(くすぐりで笑わせられながらも、逃げ出そうと必死で暴れる!)ぷぅぅぅぅ~~~ す、、すぅぅぅぅぅぅぅ~~~ (その間にもどんどんガスが漏れてしまう) (11/13 01 41) 香川結香 逃がさないって言ってるでしょ……うりうりうり、こちょこちょこちょ♪(大きなお尻でちるみを押さえ込み、くすぐりを続ける結香。だが、さすがにちるみが暴れまわるとだんだんと腰が浮いてきてしまう) (11/13 01 43) 和泉 ちるみ あ、、、く、、、、、ふぅぅ、、、、(笑いすぎて息も絶え絶えになってきたが、もう少しで結香のお尻が持ち上がり、脱出できる!、、という所だったが、、、) すうぅ、、、すうぅぅぅ、、、、、、、、、、(ガスの噴射が止まる、、)あ、、、あぁ、、、、、、 (11/13 01 45) 香川結香 あはっ、ぜーんぶ出しちゃった♪ これで、ちるみちゃんは無力な女の子だね(満足して立ち上がる) (11/13 01 47) 和泉 ちるみ あ、、、ぁ、、、、、(これで勝ち目はなくなってしまった、、、。結香のお尻がどいたというのに、立ち上がらずに放心したようにうつ伏せのままのちるみ) (11/13 01 49) 香川結香 ふふん……さ、トドメを刺してあげるね♪(ちるみを仰向けにして……)ほぉら、おっぱいフォール♪(その爆乳で顔を挟み込み、締め付ける) (11/13 01 50) 和泉 ちるみ あむぅっ!!(ひっくり返され我に返ったちるみだが、胸に挟み込まれてしまう! うめき声を上げるも、胸にふさがれて声にならない) (11/13 01 52) 香川結香 ほらほらぁ、気持ち良い? このまま窒息させてあげるから♪(ぎゅむぎゅむと胸でちるみの顔を挟み込み押し潰し、呼吸を奪っていく) (11/13 01 53) 和泉 ちるみ むぅぅ~! んむぅぅぅ~~~!(顔を左右に振って逃げ出そうとするが、胸の弾力によってすぐに正面にもどされてしまう) (11/13 01 55) 香川結香 ふふん……ちるみちゃん、今まで負けたことないんだって? じゃあ、私が初めてちるみちゃんを負かしてあげる♪(勝利を確信すると、そのままギュウウウッ、とちるみの顔を押し潰す!) (11/13 01 57) 和泉 ちるみ む、、むぅぅぅ、、、、、(呼吸困難と圧力で、苦しむちるみ! 徐々にもがく力が弱くなっていく) (11/13 01 59) 香川結香 ふふっ、このまま……と、あ、でも、ちるみちゃんの得意技に敬意を表して……(胸をどかし、お尻をちるみの顔に近づける)こっちで潰してあげるね♪ (11/13 02 00) 和泉 ちるみ っぷは、、、うぅ、、、(胸から開放され、貪る様に空気を吸い込むが、、目の前に迫る巨大なお尻に、息を呑む) (11/13 02 02) 香川結香 ふふん……オナラは出ないけど、その分大きいよ……ほらっ!(ギュウウッ、とちるみの顔を押し潰す!) (11/13 02 03) 和泉 ちるみ んむぅぅぅぅぅっ!(大きなお尻に覆われ、再び呼吸を断たれる!!) (11/13 02 04) 香川結香 ほらほら、うりうり♪(お尻でちるみの顔を弄び、押し潰して呼吸を奪っていく) (11/13 02 05) 和泉 ちるみ ふむっ! ふむぅぅぅ~~!(今までの胸での責めで、かなり消耗していたちるみに、それに勝るとも劣らないオシリでの責めが襲い掛かる! 小さな抵抗は見せるも、されるがままに顔を弄ばれる、、、) (11/13 02 07) 香川結香 うふふ……さあ、ちるみちゃん、フェイスシッティングで窒息しちゃいます! 女の子のお尻の下で失神です! ふふ、恥ずかしいね♪ でも、恥ずかしい気持ちのまま気絶しちゃえ!(ぎゅうう、とひときわ強くお知りを押し付ける) (11/13 02 08) 和泉 ちるみ うぅぅ、、ぅぅ、、、、(ひときわ強くお尻を押し付けられ、、、ピクピクと小さく痙攣した後に、、ガクっと力なく崩れるちるみ) (11/13 02 10) 香川結香 ふふん……完全勝利! うふふ、楽しかったよ……オナラは臭かったけどね(立ち上がると、勝ち名乗りを上げる)結香のしょーりぃ! (11/13 02 11) 和泉 ちるみ (涙を流し、苦しそうに浅く呼吸をしているちるみ。 完全に意識を飛ばされてしまっている、、、、) (11/13 02 13) 香川結香 あは、またやろうね、またオナラを漏らさせてあげる♪(笑みを浮かべてリングを去っていく) (11/13 02 14) 閉鎖されました 春山 桃 vs 前園 智香 前園 智香さんがリングに上がりました (08/23 00 51) 前園 智香 アナウンス>さぁてそれではぁ~、次の挑戦者ぁ~(音の割れたスピーカーから声が響き、それに合わせるように花道を少女が歩いてくる。このリングでは、選手の強さによって3つほどの階級に分かれており、これはその中でも一番上。大体、ある程度の経験を積むか、実績が無ければ来れない類のリング。しかし、智香は地下レスリングにデビューしてからまだこれで3戦目。しかし、最初の2戦でデビューしたばかりらしからぬ強さを見せつけてしまい、急遽こっちのリングに上がる事に。内気な性格の為か、出来るだけ露出の少ない衣装をと選んだ結果、衣装室の奥にしまいこまれていたメイド服を着込んでの入場) (08/23 01 11) 春山 桃 あなたが智香ちゃん? たしか、3戦目でこの階級に来たとか、、だよね? んふふふふ~~♪ 楽しみっ!(智香に少し遅れて入ってきた桃。 今日の相手は凄いルーキーだと聞いて、ワクワクしている。 彼女はこ段階に来るまで10戦以上かけて上がってきている。 素質では相手が上、、だが桃はこのランクで戦った経験が自信になっている! 着慣れたリングコスチュームのブルマと体操着を着てリングにたつ!) (08/23 01 20) 前園 智香 (注意深く相手を観察し、見極めようとする。ここに来るまでは、どんな所か分からず、噂から想像するしかなかったものの、思っていたより、相手が強そうに歯見えないことに胸を撫で下ろす)よろしくお願いします・・・(軽く頭を下げると、エプロンで押さえつけられた巨乳が震える。長く、腰まで届きそうなストレートの髪がパサリと広がり、目元を隠してしまうが、それがなくともどこか暗い感じの美少女。胸やお尻が大きく、身長が低いせいで厚ぼったい服を着ると太って見えがちだが、細くて長い手足のおかげで、辛うじて細く見える) (08/23 01 25) 春山 桃 よろしく~~! (巨乳、巨尻は圧巻だが、、、なんだかあんまり強くなさそうな、気の弱そうな雰囲気を感じる桃。 しかし相手は2戦でここまで上ってきた大物ルーキー。 油断しかけていた気をいさめ、戦闘の準備をする。 そして、、、) アナウンス>それでは、、レディーー・・・・・・・ファイッ!(アナウンスの合図と同時に試合が開始される!) (08/23 01 33) 前園 智香 くっ・・・(たどたどしく構えるが、その構えは素人同然。そして、長いスカートが足に絡まりそうで、素早く動けそうに無い。元々ロングのスカートは智香の低い身長のせいで踝にまで達する超ロングになり、服の胸元は限界まで張って、胸元のボタンが上から2つほど止まっていない。袖も少し長く、全体的に動きやすい格好には見えない) (08/23 01 38) 春山 桃 ふふふ、、、いっくよー!(動きづらそうにしている智香に向かってダッシュする桃。 メイド服と比べ、体操服は格段に動きやすいようである。 そのまま、智香の手を掴み組みの状態になる!) ふふ~ん! 捕まえた! (08/23 01 47) 前園 智香 あっ・・・このっ!!(捕まえられると、手を引き戻すようにして桃を振り払おうとする。これまで相手した二人のたどたどしい動きとは裏腹の素早い動きに、いきなり度肝を抜かれた気分で、慌てて後ろに下がろうとする) (08/23 01 49) 春山 桃 それぇ!(掴んだ手を、智香が後ろに下がろうとすると同時に倒すように押し出す桃。 智香にはやはり経験が足りていない!と踏み、落ち着かれる前に一気に攻めに出る!) (08/23 01 54) 前園 智香 ああっ!!(後ろに倒れ、反射的に受身を取る。しかし、素人の受身、それも片手を掴まれていては、完全とはいかず、痛みに腰を抑えて転げまわる事に)うぅ・・・っ・・!!(頭を打たなかったのは幸いだが、腰の痛さについつい、警戒が甘くなってしまっていた) (08/23 01 56) 春山 桃 へへへ~! このランクの厳しさを教えてあげる!(反射で受身を取れた事に驚くも、今が好機と、転げまわっている智香を仰向けで固定し覆いかぶさるように押さえ込みにかかる桃!) (08/23 02 01) 前園 智香 えっ・・・嫌っ!!(押し返そうと、見た目の細さに比べて意外なほどの力で相手を押し返そうとする。しかしそれも、落ち着いていればともかく、腰を抑えて転げ周り、相手の体がすぐそこに迫っていては碌に力も入らない) (08/23 02 02) 春山 桃 春山 桃 動かないの~~!(押さえつけながらゆっくりと体を回転させ、69の体制になる。 そして、、) まだ2戦じゃこれやられるのは初めてかな~?(智香の恐怖感をあおるようにゆっくりとお尻を智香の顔に降ろしていく!) (08/23 02 08) 前園 智香 あっ・・それは・・・!!(された事は無いが、見た事はある。確か、フェイスシットとか言う技で、前まで智香がいたクラスでは、決まれば勝負が決まる事もある技だった。思えば、何度か相手が狙ってきた事はあったが、いずれも勝手に自滅してくれたようなもので、有効な対策など知るはずも無い)あっ・・・やっ・・・!!(始めて受ける技の恐怖に怯えながらも、目前に迫った桃の尻を前に、逃げ場さえ見つからない) (08/23 02 11) 春山 桃 それ~~~!(そのまま、降ろすペースで智香の顔に顔を押し付ける桃。 円を描くようにお尻を押し付けグニグニと柔らかいお尻で智香の顔を練り潰していく!) (08/23 02 13) 前園 智香 んっ・・・ぐぐっ・・・ふぐっ!!(顔を潰され、羞恥心もあって激しく悶え苦しむ。まだまだ息苦しくは無いものの、こんな調子ではすぐに限界を迎えそう) (08/23 02 15) 春山 桃 んふふ~! いい座り心地だよ~!(悶え苦しむ智香を満足そうに見る桃。 円を描くように押し付けていたお尻を、今度は前後にこすりつけ始める。 智香の鼻と口にお尻の谷間を擦り付けるように、、、、) (08/23 02 17) 前園 智香 んっ・・・ぐっ・・・ぐぅ・・・(必死に否定しようとするが、相手のお尻を顔に乗せられる羞恥は思った以上に強く、経験の浅い少女にはこの上ない拷問のよう。試合半ばならばまだマシだったのかもしれないが、いきなりの事に、エンジンのかかりが悪い内気な少女は翻弄されるばかり) (08/23 02 18) 春山 桃 どうしたのかな~? このままじゃやられちゃうよ~?(そういいながら智香の頭を両手で掴み、お尻の谷間から脱出できないようにする。 そして、、、、) それじゃ、、、覚悟してね~? (08/23 02 22) 前園 智香 ぐっ・・・ん・・・(息苦しさからか、ようやく、わずかながらも落ち着きを取り戻し、桃のお尻から脱出しようともがく。冷静になったのは良い事だが、それでも、窮地なのは変わらない) (08/23 02 24) 春山 桃 ・・・・・ん~~~っ! (すかぁぁ~~~~! 桃のお尻から強烈な臭いのおならが噴射される! そのガスは、桃のブルマを染み、お尻の捕えている獲物に襲い掛かる!) (08/23 02 27) 前園 智香 んっ・・・!!!(息苦しさに喘いでいた所に襲い掛かるオナラ。その悪臭に、体を激しく震わせて逃げようとする) (08/23 02 28) 春山 桃 ・・・っふぅ。 えへへ~。 逃がさないよ!(逃げようとする智香の頭を両手でお尻に押し付け、鼻をガスの噴射口に押し付ける!) 私の得意技のお味はどうかな~? (08/23 02 31) 前園 智香 あ・・・うぅ・・・あ・・・・(あまりの悪臭に、苦しんで返事が出来ない。仮に出来たとしても、桃のお尻に敷かれていては、どこまで聞こえるかは疑問だが) (08/23 02 33) 春山 桃 んふふ~。相当利いたみたいだね! おかわりが欲しければ何回でもあげるよ?(またも智香の鼻をお尻の間で固定しておなら発射のそぶりを見せる桃!) (08/23 02 36) 前園 智香 うっ・・・させないっ!!(何度もやられてはたまらないと、桃のブルマを掴んで上に向かって思い切り引っ張り上げる) (08/23 02 37) 春山 桃 あうぅ!? (ブルマが上に引っ張り上げられ、股間に食い込んでしまう! 思いがけない反撃に思わず腰が浮いて力が抜けてしまう) (08/23 02 38) 前園 智香 は・・・今っ!!(千載一遇のチャンスに、桃のお尻を思い切り叩いて顔を引き抜く。久しぶりのまともな空気を吸い込みながら、素早く転がって桃から離れ、油断無く立ち上がる) (08/23 02 40) 春山 桃 はぁぅ!(お尻を叩かれさらに腰が上がってしまい、その隙に智香に逃げられてしまう。)うぅ~、、大人しくしてればすぐ楽にしてあげたのに、、、(立ち上がった智香をみてぶーたれる桃) (08/23 02 43) 前園 智香 はぁ・・・はぁ・・・そんな事、させないから・・・(構えを取って桃に近づいていき、今度は先手を取られまいと、素早く飛び掛る。身長が低い事もあってか、相手の足元に組み付くかのようなタックル。技術はさほどでも無いが、勢いだけは十分) (08/23 02 47) 春山 桃 え、、!?うわぁ!!(智香から攻めて来るとは予想外だった桃。 しかも低い、足元に来るタックルで、そのままひっくり返ってしまう!) (08/23 02 49) 前園 智香 これなら、さっきみたいな事は出来ないはず・・・・(桃の腰の辺りを押さえ込みながら、顔を睨み付ける。体重をかけて押さえつけているが、そのせいで智香の豊かな胸が桃の股間から太ももにかけてを多い尽くすようになっていた。攻撃と言うわけではないものの、その重量感はエプロンで押さえつけられているだけに、見た目以上ではある) (08/23 02 52) 春山 桃 う、、うぅぅ、、、(倒れた拍子に少し頭を打ったらしく、さすりながら上体を起こすが、、腰や太ももを智香の巨乳で押さえつけられているせいで、おもうように動かせない) ちょ、、ちょっと!は、、離してよぉ! (08/23 02 56) 前園 智香 離さない・・・・(更に胸を押し付けるようにして、今度は桃の太ももに腕を回して押さえつけにかかる) (08/23 02 57) 春山 桃 こ、、このぉ!(足をジタバタさせ離させようとするも、豊満な胸にしっかり抱え込まれてしまいもがく事すら難しい。 (08/23 02 59) 前園 智香 さっきのっ・・・(改めて両足を掴みなおし、そのまま前に向かって倒す。お尻を上に向けさせるような形で、周りからは桃の股間が強調された上に良く見えるような格好) (08/23 03 01) 春山 桃 ぅ、、ちょ、、、な、、何する気?(苦しい体勢にされ、呻くように声を出す桃。 呻きながらも股間を両手で客から見えないように隠す) (08/23 03 04) 前園 智香 こうするのっ!!(小さく飛び上がると、桃のお尻目掛けてヒップドロップ。顔を潰した事への怒りも合ってか、お尻同士をぶつけるのにも容赦が無い) (08/23 03 06) 春山 桃 あああうぅっ!!(智香の巨大なお尻が桃のお尻に落とされる! お尻では多少の自信があったが、メイド服に隠れた智香のお尻のボリュームは桃のそれを上回る大きさで、桃のお尻を打ちつける!) (08/23 03 09) 前園 智香 まだまだ・・・(再び、今度は更に強く桃の体を押さえつけてから飛び上がり、お尻を落す。無茶な体勢を取らせている以上、ダメージもいくはず。それ以上に、あれだけの恥ずかしい思いをさせられたからか、見た目以上に力強い動きのヒップドロップ) (08/23 03 11) 春山 桃 っあああぅぅぅぅうう!(またも落とされる智香のお尻に悶える桃。 お尻の痛みだけではなく全身に響くような苦痛に涙が滲む。 それに加えて恥ずかしいポーズをさせられているのに逃げ出せない悔しさで、ジタバタ暴れようとするが、この体勢ではもぞもぞと動くだけでしかない、、) (08/23 03 15) 前園 智香 最後は・・・(お尻を2度叩きつけて、そのまま次の狙いを定める。未だ少し抵抗があるものの、自分がされた事を思えばそれも些細な事。ふわりとスカートを広げて飛び上がると、3度目は桃の顔目掛けてのヒップドロップ。スカートが広がると、その下にある下着に包まれたヒップのラインが桃の目の前に広がる) (08/23 03 18) 春山 桃 ふぎゅぅぅぅぅ!(智香のお尻が勢い良く桃の顔に落とされる! 柔らかく弾力に富み、なおかつボリュームのあるお尻のプレスで、目の前を星が飛ぶ桃。 お尻に敷かれている上にスカートが覆いかぶさり、屈辱感を増させる) (08/23 03 22) 前園 智香 んっ・・・っ・・・何だか変な感じ・・・(慣れない顔面騎乗で桃の口や鼻がお尻に当たると、少し違和感を感じてかお尻をモゾモゾと動かす。しかし、相手の顔をお尻で敷き潰すのはまんざらでない様子) (08/23 03 24) 春山 桃 んむ、、むぅぅ、、、(ぎこちないながらもパワーのあるフェイスシッティングに、悲鳴も上げられずにお尻の下で顔をそらそうともがく、、) (08/23 03 27) 前園 智香 んっ・・・どう、これで・・・ギブアップ?(どれくらいやれば良いのかも分からず、しかし、手を抜くのも後が怖いので、細かくお尻を擦り付けながら言う。不慣れとは言え、そのお尻の大きさは十分、技術を補って余りある威力がある) (08/23 03 29) 春山 桃 ん~~・・・・(No~と言いたいが声が出せない。 それに、、徐々に呼吸が苦しくなってくる、、。 呼吸困難とお尻の擦り付けで体力を奪われ、それにお尻に敷かれているという屈辱感がそれに拍車をかける。) (08/23 03 33) 前園 智香 んっ・・・ふっ・・・ん・・・(大きく広がったスカートが桃の顔を覆い隠し、見かたによっては智香が一人座り込んでいるかのよう。それでも、見よう見まねで腰を動かして桃を攻め立てていく) (08/23 03 35) 春山 桃 んむ、、、んむ、、、(大きなお尻で覆い潰され、必死に呻く桃。 足をジタバタさせ、なんとか脱出を図ろうとするも、ヒラヒラをスカートを揺らすことしかできない、、、、) (08/23 03 38) 前園 智香 んっ・・・ほら、もういい加減に・・・(初めて使う攻撃に、逆に自分が戸惑いを覚える。大きさにはコンプレックスさえ感じる巨尻で完全に押さえ込んだ相手が、こんなにも長い間呼吸を奪われていて大丈夫なのか、そんな、不慣れだからこその不安のせいで、動きも緩く、最初のような勢いもなくなってしまっていた) (08/23 03 47) 春山 桃 んむぅ、、、、?(苦しさで意識が揺らぎだした桃だが、、、智香の擦り付けが弱くなり、重さもそれほど感じなくなってくる。 何故だか不思議におもいながらも。これはチャンスとばかりに足を跳ね上げ智香の頭に絡みつける!) (08/23 03 50) 前園 智香 あっ・・・きゃあっ!!(顔を挟まれ、そのまま引っ張られるままに体が前傾する。そのせいか、完全に捕らえていたはずの桃の顔からお尻が離れ、倒されそうに) (08/23 03 51) 春山 桃 っぷはぁ! このぉ!!(大きなお尻から顔を開放され、大きく息を吸い込む桃。 そして、智香の頭を絡めた足を前に倒しながら自分の顔で精一杯智香のお尻を押し、でんぐり返しさせるように転がそうとする!) (08/23 03 54) 前園 智香 あっ、あっ・・・・きゃあっ!!(コロンと転がり、またしても仰向けに転がってしまう。何とかフェイスシットだけは防ごうと、体を捻って抵抗するが、それでも、逃げ出すことは出来そうに無い) (08/23 03 56) 春山 桃 はぁ、、、はぁ、、、、ふふ、、、また逆転だね?(ダメージの残る体を引きずり、四つんばいのまま智香の顔の上までお尻を持っていき、、、)今度は逃がさないよ!(そういってブルマで顔を覆いこむように座り込む!) (08/23 03 58) 前園 智香 うっ・・・んっ・・・!!(慌てて片腕で顔を庇おうとして、不完全ながらも多少の空気が入り込む余地亜確保する。しかし、抵抗もそれまでで、またしても、顔をお尻に覆われてしまった) (08/23 04 01) 春山 桃 ふふ~ん! そんなの意味無いよぉ! (そういって挟んだ手ごとムニムニとお尻を押し付けていく桃。 残った片手を片手で押さえ、もう片手を智香の頭に回し逃げられ無いようにする) 参りました桃サマっていうまで許してあげないよ~? (08/23 04 04) 前園 智香 うっ・・・んっ・・・っく!!(そんな事は言わないと、体を揺すって逃げ出そうともがくと、片腕の拘束を振りほどこうと、何度も激しく振ってみる) (08/23 04 05) 春山 桃 無駄無駄~♪ そんなに振り回しても絶対離さないよ! それじゃ、、鳴かないなら、、鳴かせちゃおうかな? ・・・んぅぅ~!(むっすぅぅぅぅぅぅ~~~~! 再び桃のすかしっぺが智香を覆いこむ!) (08/23 04 07) 前園 智香 んぐぅっ・・・んんっ・・・んむぅぅぅううっ!!(足をばたつかせ、逃げ出そうともがく。さすがに、こう何度も続けられては溜まらず、なんとしても逃げ出そうと、一層必死に) (08/23 04 08) 春山 桃 えへへ♪ どう? 参った? (バタバタ暴れる智香から、お尻を少しずらしギリギリ声が出せるようにして、降参を促す) (08/23 04 10) 前園 智香 あっ・・・降参は・・・(口を動かし、震える声で言う)降参は・・・しませんっ!!(桃がお尻をずらした時に自由になった手で、桃の体操服を掴んで引っ張る) (08/23 04 13) 春山 桃 あぅ、、、くぅ、、、そ、、その脱出方法は、、、もう、、させなぃ、、、(食い込んだ股間に耐えながらも、その反撃は警戒していたので、なんとか腰を上げずに、再び智香の顔を覆いこむ!) (08/23 04 17) 前園 智香 んぐっ・・・む・・・(それでも、まだまだ諦めずに桃の体操服を引っ張り続ける。これを離してしまったら、そのまま潰されてしまいそう) (08/23 04 18) 春山 桃 ぅぅぅ、、、、、(股間に食い込むブルマに、腰を上げてしまいそうになるが、、さっきの智香のフェイスシットの恐怖が頭をよぎり、なんとかこのまま倒してしまおうとする桃。)こ、、これで、、気絶、、してぇ!(むすぅ~~。 最後の頼みとばかりに食い込むお尻からガスを発射する) (08/23 04 22) 前園 智香 ううっ!!(これを耐えればと、口を硬く閉ざして耐えながら、桃のブルマを思い切り引っ張る) (08/23 04 23) 春山 桃 っあぐぅぅ!!(お尻の力を緩めたせいで、ブルマが深く食い込み思わず腰が浮いてしまう。) (08/23 04 25)
https://w.atwiki.jp/tmnanoha/pages/279.html
金の櫛で優雅に髪を撫で付けながら、金の後光を背景に 前方からのっしのしと闊歩してくる金色の影。 それは紛う事なき――― ――― ヤツだった ――― 金、金、金、金、煩わし過ぎる。 埋蔵金と共に仏像のカッコで埋まっていても納得してしまう出で立ちだ。 正月に見た紅白歌合戦で、こんな背景演出で歌っていた人がいたっけ…と思案に暮れる執務官。 だが今はそんな事はどうでもいい。 サーヴァントとの遭遇はいつだって突然だ。 だが、まさかこんな―― こんなエチケットなところであの黄金のサーヴァントと出くわすとは…! 「――――、」 「あ、ッ………」 ビク、と肩を震わせるフェイト。 全く予期せぬタイミングで、至近距離に相対するには―― ―― それは桁違いすぎる威圧感 ―― フェイトとてサーヴァントとの交戦経験はある。 彼女自身、幾年ものキャリアを持つ歴戦の魔道士にして一流の戦士だ。 ちょっとやそっとの事では浮き足立ったりはしない筈だというのに―― 今、目の前にしている存在は怪物そのものだった紫紺の騎兵や不死身に等しい漆黒の巨人。 無双の絶技の使い手だった槍兵や狂乱の幽鬼そのものだった黒衣の戦士、等 いずれも管理局を震撼せしめる力の持ち主であった彼らですら、小さく見えるほどに圧倒的―― エースオブエース高町なのはがこの男をあそこまで警戒するのも分かろうというものだ。 緊張で一瞬のうちに握った手に汗が滲む。 自身、その事にすら気づけないほどに、フェイトの全知覚が男と相対してしまったという事実に引っ張られていた。 「―――、」 まさに蛇に睨まれた蛙の心境。 息をする行為すらが重苦しい―― だが男もまたお色直しの用向きだったのだろう。 体の強張った魔道士を一瞥しフン、と鼻を鳴らしながらその場を後にする彼。 カツン、カツン、と轡のなる音が遠のいていく。 それをしばし呆然と聞きながら……ほう、と溜息をつく執務官。 見かけに寄らず勇猛果敢な彼女をして、相対しただけで寿命が縮む事など初めてだ。 一瞬、目が合っただけだが――その、まるで人を塵芥でも見るかのような瞳がイヤだった。 頭を振って今目に焼きついた映像を頭から叩き出すフェイト。 男とはそのまま眼も合わせずに無言で通り過ぎようとする。 (…………いや…) 待てよ…と――フェイトはここでハッと我にかえる。 (……………) ――― これは好機ではないのか? ――― そう……千載一遇の――― 今まさに事無きを得て、すれ違った影に対し、振り向いて相手の後姿を見やる。 知らずゴクリと唾を飲む彼女… 胸を撫で下ろした筈の感情が今またザワザワと泡立っていくのが分かる。 緊張で渇く喉に、鞭打つような心境の内で―― 「……待ってください」 迂闊な問答は出来ないと躊躇いながら―― フェイトは息を大きく吸い込み そのまま、あの危険極まりないサーヴァントに自ら接触していたのだ。 ―――――― ―――ここで臆してどうする? あれは、あれこそが元凶。 高町なのはを苦しめている原因だと分かっているというのに。 ―――ここで臆してどうするというのか? ―― それは避けて通れない道 ―― 彼がなのはの敵だと言うのなら―― なのはに害を与えるというのなら―― この男とは折を見て話をつけなければいけないと思っていたところに―――この邂逅 ならば、なのはのいない今こそ逆に腹を割って離す絶好の機会なのだ。 「待って下さい……」 「―――、」 一回目の声は恙無く無視された。 まるで虫の羽音ほども気にかからぬ素振りで つかつか、と歩を進めていく黄金のサーヴァント。 「サーヴァントの人……少し話をしませんか?」 それでも根気良く声をかける執務官。 ズカズカと歩みを止めない彼。 (まずい……このまま行けば、) 前方は男子トイレだ、! 淑女が立ち入ってはならない禁断の園。 男性が用を足す所に男の人と同伴するなど法を尊ぶ執務官であるフェイトに出来る筈もない。 (くっ……!) 息を呑み、早足でギルガメッシュについて行く。 (タイミングが遅れた……先回り、出来ない!) 決して広くない廊下。 このままソニックフォームを使えば男を弾き飛ばしてしまうだろう。 壁走りも同様だ……唇を噛む魔道士。 「どうしてなのはをあそこまで目の仇にするのか聞きたいんだ…! なのはと一体、何があったんですかっ!?」 その背中に向かって必死に叫ぶ。 駄目元で強引に会話を持ちかけたフェイト。 そのまま行ってしまうかと思われた英雄王。 だが、ややもして――息を切らした彼女の身に背中越しに男の両の目が向けられる。 暴と威の塊のような視線―― 一体、どのような思考を内に宿せばこんな目が出来るのか。 常人ならば目を合わせただけで平伏したくなる。 そんな視線に晒されるフェイトであったが―― (…………よし、!) だがもはやこの執務官に臆する気持ちは微塵もない。 ここで膝を突いてしまうほど彼女の潜ってきた修羅場は温くはない。 「―――貴様はあの女の何だというのだ?」 良く通る抑揚のある声がフェイトに向けられる。 それは人類最上クラスのカリスマを持つ男の声だ。 さっきまでは何気なく聞いていたがこうしてマンツーマンで相対するとやはり感じ入る物がある。 「私は彼女の友達です」 「―――友とな?」 まずは会話が成立した事に一喜。自信を持って受け答えるフェイト。 「なのはの何か?」と問われれば、彼女にはそう答える以外にはないだろう。 だが――― 「―――ハ、」 「何がおかしいんですか……?」 「訪れてより常に奴の顔色を伺い、機嫌を取り、怯えたような目で這いずり回る道化。 さして気にも留めなんだ。せいぜいあの女の従者か何かと思っていたが―― 友と……? ク、、これは然り。」 「………」 打ち返してくる悪意むき出しの返答に顔を曇らせるフェイト。 あくまで平和的に解決したい彼女にとって出だしは最悪。 悲痛な面持ちを表に出しかけたが、ここはぐっと堪える。 (やっぱ一筋縄ではいかないな。でも頑張らないと…) 必死にふんばる執務官の心境はまるで難攻不落の要塞に攻め入る前のそれ。 「そんな風にケンカ腰にならずに改めて平和的に話を進めたい。 なのはと何があったのかは分からない。でも不幸な行き違いで争いになるのは悲しい事だと思う… 普通に話をすれば、彼女ともきっと仲良くなれる筈だよ。だから…」 「言葉は交わしたぞ」 「え?」 「万死に値する無礼者であった―――」 「っ! そ、そんな筈は……」 血色を変えて反論するフェイト。 自分の友達は思いやりに溢れた人格者だ。 このように一言で切られるような人間では断じてない。 だが続いて繰られる男の言葉を聞いて―― 「王である我を前に対等の口を利く。対等の目線で物を見ようとする。 平伏せよとの命に銃砲を以って答え、 お話 などと称して我が興を余さず殺ぐ。 いずれも身の程を解さぬ万死に値する所業である事は明白。 我の知る限り、アレほどの無礼者は我が記憶に悉くかからぬ――」 ―――人によるのかも知れない……と思い直す執務官。 確かに、こういう人とはなのはは間違いなく衝突するだろうなと。 「そ、それは悪い解釈をし過ぎだと思うよ…」 だがそれで納得して終わらせてしまえば所詮そこまでの話。 自身の親友、高町なのはという人物は衝突をとことんまで突き詰めて良い関係を築くタイプの人間だ。 そのやり方で彼女は自分も含め、敵である者とも分かり合えてきたのだ。 ならこの男とだって可能性はある筈。 一度は衝突する側についたとしても腹を割って話し合えば―― なのはの良さが……スルメのように噛めば噛むほどに出るあの味が分かる筈! 「相手に譲歩を求めねば迎合できぬ理屈――― そのようなモノを我の前に提げる事こそ分を超えた所業であると理解せよ。 王の裁断こそ絶対。良きも悪しもない。雑種はただ我を理解すれば良いのだ。 出来ねば必滅の理に沿うだけの事―――」 「なっ!?」 「当たり前の事をこの王の口より紡がせる――貴様も我を愚弄するか?人形」 しかしながら王の言葉は傲岸不遜。 百戦錬磨の執務官の名に恥じぬ冷静さを保っていたフェイトだったが―― (に、人形………) その急所である「人形」という言葉に血相を変える彼女。 一瞬、言葉に詰まった魔道士に対し畳み掛けるギルガメッシュ。 「そも、あの女と我を和解させるのが貴様の真義ではなかろう? 本心を覆う下卑た思考で王に会見を求めるなど愚劣の極み。 貴様は―――ただ一刻も早く戦場から逃れたいだけの臆病者に過ぎぬであろうが?」 「そんなつもりは……無い! 私は本当に…」 「先ほどから一人で鏡に向って述べていたではないか? ク、、なかなに聞かせる戯言であったぞ?」 「じ、女子トイレに聞き耳を立てていたのかっ!?」 「たわけ。我が耳は世の事象を須らく見聞する王の耳。 厠の壁如きが我の知覚を阻める筈もあるまい――」 ――人類最古の英雄はとんだ変態野郎なのかも知れない (ま、負けるもんか…) 頬を赤らめるフェイト。だが恥しがっている場合ではない。 覗き魔現行犯でしょっ引くのは後でも出来るが今はそんな事よりも―― 「なら話は早い。確かに本音を言えば…… 私はなのはを貴方たちの近くに居させたくありません。」 「ふん。何という惰弱――― 初手から剣に気も篭らず、厄災に抗う気概も見せぬと思っていたが… そのような覚悟で戦場に足を踏み入れたというのか?」 「わけの分からない事を言わないで下さい。 ここはただの釣堀屋で戦場じゃない。貴方の行っている事はおかしい。」 「否。我と貴様らが出会いし時より其処は即ち戦場となる。 異質なる者が出会う刻――取り得る唯一の道は戦い滅ぼし合うが定め。」 「自分たちは遊びに来ただけです…! そんなとんでもない理屈を押し付けられる謂れはありません!」 難物相手の交渉は数多くこなして来た執務官だったが―― やはり彼はこちらと和解する意思が全く無い。 「私達は貴方との衝突を望んではいない。 貴方がどうしてもこちらを気にいらないと言うのならすぐにここを発ちます……でも」 結果的に撤退するにしても なのはに襲い掛かる憂いだけは何としても取り除かねばならない。 「震えている事しか術を見出せぬ惰弱な人形よ。 尻尾を巻いて逃げ帰るというのであれば好きにするがよい―― もっとも……あの女がそれに従うかは疑問だが」 「……納得させる」 「そうか―――――ならば敗残の徒に一つ、我が言葉を賜ってやろう」 愉快そうに両の灼眼を眼前の女性にねめつけながらに言う王。 「躊躇も無くアレの友を名乗り上げてはいたが―― 貴様は友の何たるかをまるで理解しておらぬ。 所詮はヒトの形をした偽者……友情など語るに足らぬ出来損ないという事よ。」 「私は偽者なんかじゃない…… いい加減にして下さい。何を根拠に……」 「まずは貴様はあの女の本性を知らぬ。 知らぬがままに己が都合の良い部分だけを容れ―― 全てを理解したと嘯き、悦に浸っているに過ぎぬ。」 フェイトの白い頬がカァッと真っ赤になる。 なのはとの友情をこんな輩に否定されれば、流石の彼女も語気を荒くせざるを得ない。 「よく聞け人形。友とは並び立ち、競い、袂違えば生死を賭して闘う。そのような者同士の事を言うのだ。 戦場において並び闘う意思を持たぬ今の貴様が友を語るなど論外。 我が断じてやろう。有難く拝聴致せよ――お前はあの雑種と並び立つ事など叶わぬ」 「ずっと並んできたっ! ずっと競い合って支え合ってきたっ!!」 ズキン―――― まただ………… 当然のように「高町なのは」を己が知る者のように語ってくるサーヴァント―― こんな人達に………なのはの何が分かるというのか。 このような行きずりのサーヴァントなどに―― 自分となのはの絆の何が―― フェイトの顔はもはや知人の見た事すらない程に、渦巻く感情によって歪んでいた。 ―――――― 随分とあのサーヴァント達と親しくなったんだね。 正直、驚いてる……何時の間にって。 色々な意味で強烈な人達だからね。 ギルガメッシュさんに関してはもう色々慣れたし アーチャーさんの助言は昔から恐ろしく的確なんだ。度々助けられてる。 「…………」 敵になったらこれほど厄介な人いないんだけどね。ふふ…… ズキン―― ―――――― まただ……… 胸が――――ジクジクと痛む。 高町なのはを語る時のサーヴァント。 そしてサーヴァントを語る時のなのは。 その顔を見る度に私の胸に去来する得体の知れない痛み―― なのはの彼らに対する、一見無造作でぶっきらぼうな言い回し。 そこにはあまり好意的な印象を持っていないように見える。 それは普通に考えればそうだろう。 敵対する事の多く、また単体では管理局魔道士を遥かに凌駕する力を持つ相手との邂逅だ。 良い顔など出来るはずが無い。 だが、なのはに限って言えばそれは実は逆だった。 なのはは親しくも近しくもない人には決してああいう言い回しはしない。 あまり好いていない人の事は――彼女はこういう風には語らないのだ。 これは――これは、そう。 一定以上、心の内に相手を受け容れた事による気安さ…… 事ここに至って私は、そう確信せざるを得なかった。 なのはとあの英霊達とのやり取りはまるでずっと昔から知っている 互いに認め合ったライバル同士の競い合い… 認め合う者同士だからこそ交し合えるやり取りにしかもはや見えない。 …………… この痛みは――ならば、これは嫉妬だろうか? 突然出てきてなのはにちょっかいをかけて来る者に対する―― そして当のなのはもまんざらでは無さそうに見えてしまう そういう物に対する私の醜く歪んだ感情…? 初めはそう思っていたんだ――― この胸のイヤなざわつき。 ああ、いけないなって… 自重しなきゃって… だからこうして水を被って気を落ち着けに来たんだ…… でも、今ははっきりと言える――― 恐らくは、違う…… そういうのじゃなかった。 断じて違ってた。 むしろ――その程度なら安い問題なのだ。 それならば私が少しだけ、我慢すれば良いだけの事なんだから――― なら、コレの正体は何なのか? さっきからずっと……ずっと考えていた。 なのはにもなのはの事情や付き合いがある。 お互い子供ではないのだからそれは私が占拠して良い者では断じてない。 なのはが交友関係を広げていくのはとても良い事だと思っている。 ――それは偽ざる本心 次元世界を渡り歩く私達、管理局魔道士は時に 凄く変わった種族、人種と交流を交し合う事がある。 だからなのはの周囲をとんでもなく変わった人が囲んでいたとしても、それは想定範囲。 不安に感じる事じゃない。 もしそうした過程においてなのはに恋人や添い遂げる伴侶が現れたならば―― 私は素直に祝福できるだろう。ちょっと寂しい気はするけれど…… だけど…… ――― だけど ――― 今日見ていて―― さっきから考えて考えて―― はっきりと思った。 ―― あのサーヴァント達となのはを引き合わせるのは駄目だ、と ―― アーチャーと意気投合しているなのはの姿を見て 英雄王と相対しているなのはの姿を見て 言い知れぬ不安が収まらない。こんな事は初めてだ… なのはは――― ――― 特別な何かを持っていると思う ――― 私が高町なのはという女の子を、自らの境遇から特別視しているという事は自覚している。 でもそれを差し引いても――なのはは私とは違うものを身に抱いていると確信している。 それは魔力や戦技でない……私には決して持つ事の出来ない何か。 生まれながらに持っている宿命みたいなもの。運命のようなもの。 私は今になって思う……あるいはそれは―― ――― あの英霊と呼ばれる者が須らく持つ「何か」と ――― 同じものなのかも知れないと。 だからこそなのははサーヴァント達と対等に相対し、同じ目線で言葉を交わせるのではないかと思う。 何か共通する要素、共有する思いがなければ 人はああやって相手と話すことは出来ないのだから。 自分なんて表面上は取り繕っていてもあのサーヴァント達の圧倒的な存在感に気圧され、終始身構えっ放し。 情けない事に今も手汗で両掌がぐっしょりだ。 この英雄王との会話にしたって、見た通りまるで相手にされていない。 ――ミッドの無敵の空戦魔道士 ――不屈のエースオブエース なのはが正式に管理局に入り、数々の任務を成功に導いて そう呼ばれるようになって久しい。 既に若くしてミッドチルダの空の英雄と称される私の親友・高町なのは。 ――――誇るべき事だと思う 自分の友達がそうやって評価される事。 こうして伝説に残る英雄と仮にも対等に競える。 それほどに強く逞しいものを持っている、そんななのはという人物の凄さに―― だけど、今は誇らしい気持ちよりも―― ――― ただ恐かった ――― 十年間、片時も離れる事のなかった一緒に歩いてきた親友――なのは そんな私が全く知らない――なのは 英霊たちとの邂逅によって構築されていく 私のよく知っているなのはとは別のなのは。 そんなものの一端を、今日―――垣間見た気がした その要素がなのはを凄く遠い存在に感じさせた。 ―――何故だろう どうしてそんな事を思ってしまったのか…… なのははなのはだ。 彼女が高町なのはである以上、自分―― フェイトテスタロッサハラオウンが高町なのはに対して不安に感じる要素などある筈が無い。 でも……英霊と話してる、英霊と競っているそんななのはを見て―― なのはが私の知ってるなのはでなくなってしまう感覚に襲われる。 サーヴァントと深く関われば関わるほどに何か別の世界に 私の知らない別の理に引っ張り込まれてしまう錯覚に囚われてしまう。 奇しくもそれは今、目の前にいる男に指摘された通り―― 私ではなのはに着いていけないという言葉を―― なのはの内の内に、私では届かない部分があるという事を自ら肯定しかけた事に他ならない。 それが許せない―――そんな自分が、許せない…… 今までこの世界においてなのはと共に歩んできて ずっと順風満帆に歩いていける事に何の疑問も沸かなかった。 ――絶対なんてない 普段から固めてきた足場なんてふとしたきっかけで一瞬で崩れ去る。 世界は薄氷なんだと実感する瞬間はいつだってそこにある。 それはずっと分かっていた事だった―― クロノお兄ちゃんの口癖。 ―― 世界はこんな事じゃない事ばかりだ ―― 以前からも……幸せな事ばかりじゃなかったから。 辛い事も一杯あって、歯を食い縛って、それらを乗り越えてきたつもりだった。 ――― だけど ――― 彼らサーヴァントという強大な存在。 現実に降り立った、伝説そのもの―― 私が彼らと遭遇して目を惹かれたのがその戦闘力よりも むしろ彼らの生きてきた、彼らの刻んできた物語の――始まりと終わりについてだった。 華やかな偉業と非業の最期―― その生きてきた世界。物語にしか過ぎなかった彼らの生涯。 それがこうして具現化されて、目の前に事実として展開されてしまった事。 ――― それは明らかに違う ――― 困難の中にあってもそこに光を見出せる者、結果的に見出せた者と 闇しか見えなかった者、闇に沈んでいった者とでは やはり違うのだと理解させられた。 決定的な破滅への道しるべというものはやはりあるのだと。 そういう世界で生きてきた者がいる以上、それは身近に存在するものなのだと。 どれだけ走ろうが……いや、走れば走るほど…… そのゴールには初めから奈落しかなくて吸い寄せられるように堕ちていくのだ。 堕ちていくのに止められない――歩みを止められない―― 善意を悪意が飲み込む中で、安寧を混沌が侵食する中で ヒトが抱いた理想、培ってきた力は、思いは、泣きたくなるほど無力で―― 本当にどうしようもないんだ…… もしあの感覚になのはが囚われたとして―― それでも彼女は高く、高く、傷だらけの翼を休める事無く飛ぶだろう。 地に叩きつけられてその身を砕くまで弱音を吐く事無く飛び続けるだろう。 私とは違う……苦しくて切なくて救いを求めた私とは。 救いを求めることの出来た、手を差し伸べて貰えた私と違って―― 誰よりも高く飛んでいる者に手を差し伸べられる者はいない。 故になのはは自らの手を、決して誰かに伸ばす事無く最後まで飛ぼうとするだろう。 そして高く高く舞い上がっている者―― つまり、「英雄」とかそんな風に呼ばれているものほど その時が来れば地に堕ちて、粉々に叩きつけられるのだ。 そうなったら、もう――私がどれだけ手を伸ばしても ――― 堕ちていく親友を引っ張り上げる事は適わない ――― ―――――― (何を……何を考えているんだ私は…) 何でそんな恐ろしい―― そんな吐き気がするほどおぞましい光景が見えてしまったのか。 何の不安もなかった筈なのに―― いつまでも順風満帆に行けると信じてる筈なのに―― どこまでも飛び続けた挙句―― あのアーチャーのように磨耗したなのはが―― 「う、うぅ……」 ――全てを失い、ヴィヴィオをその手で××て 「ハァ………ハァ……」 ――憎むように、世界に対し怨嗟の声を挙げて 「………あ、あぁ、」 ――自分すらを拒絶して最後は、私に殺される事を望―― ―――――― 「ッッッッッううぅぅぅううッ!!!!!」 ゴッッ!!!!!!!!!!!、という凄まじい音が廊中に鳴り響いた。 「………………」 無言でそれを見つめる男の眼前で――フェイトが拳を壁に叩きつけていたのだ。 (最、悪だ、………) たちの悪い妄想にもほどがある。 一瞬でもこんな事を考えてしまった自分の脳みそに食塩水でもぶっ掛けてやりたい。 そんな事は……無い。 あり得るはずが無い。 高町なのはがこの世界に見放され、高町なのはがこの世界の敵になり、 自分が高町なのはの敵になるなどという可能性が―― そんな事があるはずがないのだ。 もし数多ある可能性の中にそんな世界が一つでもあれば…… それを万が一、この身がはっきりと認知し、演じる事になってしまったら―― ―――自分の心は間違いなく自壊してしまうだろう。 かつて母、プレシアテスタロッサがそうであったように――― (痛い……) 手が痺れる。 手首はおろか肘関節にまで痺れが残るほどに強く強く――その拳を叩き付けた。 でも、それでもこの胸に生じる痛みを消す事は出来なかった。 あんな光景が少しでも頭を過ぎってしまった事に自己嫌悪を覚える。 (だからイヤなんだ……この人達と絡むのは) だから―――イヤなんだ。 私はあんな世界には行きたくない… この温かい日常を壊されたくない… 幸せを手に入れてしまったこの身には―― 失うことに臆病になってしまったこの身には―― あんな昏い世界は絶えられない。 ―――恐い とても怖い… ――――――― 「震えているぞ……どうしたというのだ? まさか今更になって恐ろしくなったか?」 目の前の女の悶える様はなかなかに愉悦だった。 故に喜色を称えた視線で見回していた黄金のサーヴァント。 造り物の紛い物とはいえ、己が全霊にて苦悩を重ねる者の葛藤は掛け値なしに良い魅せ物だ。 息を荒げるフェイトを見下ろすギルガメッシュの言葉はただただ、寒気がするほどにおぞましい。 「答えよ贋作。あの女が己の宿業に引き摺りこまれ、為す術も無く砕き潰れるのが恐ろしいか? あの汚らわしいフェイカーや騎士王のように世界から拒絶され、全身を引き裂かれるのが恐ろしいか? ふむ―――白昼の悪夢とはいえ、ソレが見えるとは……愚鈍な人形にしては上等といったところか。」 高らかに語る王の中の王。英霊中、最も偉大なる英霊。 今はただ、その愉悦に満ちた声が神経に障る。 はっきり言って耳障りでしょうがない―――― 「………………貴方はそんなに偉いのか」 「―――何ィ?」 頭痛と忌わしい感覚に苛まれ 蹲って下を見ていたフェイトがゆっくりと顔を上げる。 「なのはがヴィヴィオの母だという事を否定し…… 今度は私がなのはの友達だという事を否定し…… で、そんな風に人の事をどうこう言う貴方は…… 貴方はそこまで立派な人間なのかと聞いてるんだ。」 従来の彼女から想像もつかない剃刀のような眼が黄金の王に向いていた。 「――――は、」 一瞬だが、完全に言葉に詰まってしまうサーヴァントである。 自分を、この自分に対して 英霊の中の英霊――人類史上、最も強大な王を指して 貴方は偉いですかと問われるとは……言葉が無い。 どう答えて良いのやら本気で悩むというものだ。 「その顔………さぞや私の事が無知なバカに見えてるんだろうね。 英霊という座にまで上り詰めた歴史上の偉人。当然、凄い人なのは知ってる。 だけど違う星で生まれた私には残念ながら、そんな威光は正直ピンと来ないんだ。」 「―――、」 「少なくとも今日見た限り……… 貴方は人の苦しむ姿を見てニヤニヤ笑っているだけの最低の人間だよ。 褒める所も、共感できる所も一切見出せなかった。」 「―――、」 金髪の魔道士の瞳はただ、ただ、冷たい。 ギルガメッシュの圧倒的な立場から下されるソレとはまた異質の「無価値なものを見る眼」とはこういうものだ。 先ほどアーチャーが「キミの眼は優しすぎて敵を圧する事など出来ない」とい言い放ったが 今のフェイトを見て、彼は断じて同じ事は言えないだろう。 「貴方は他者を迫害し、蔑み、傷つけているだけじゃないか。 どんな偉業を成したか分からないけれど、少なくとも貴方が見下してバカにしているなのはは 常に人のためを思って頑張ってる………」 私だって――― そう―――私だってなのはに救われたんだ 胸に手を当ててはっきりと言い放つ。 こんな男に尊敬する友人を決して侮辱させない。 そんな事は許さないと、キッパリと意思表示をするフェイト。 「なのはがいなければ私の世界は……私は前に進めなかった。 私だけじゃなく、なのはがいたからこそ世界が開けた人は沢山いる。 英雄っていうのがどういうものか私には分からないけど……」 少なくとも――なのはのような人間の事を人は英雄と呼ぶんだ そう、人類最古の英雄王を前に臆する事なく言い放つ。 「―――、」 男は先ほどから押し黙り 奇妙なモノを見るような目で彼女を見ている。 構うものか――どう思われようとどうバカにされようと これは……この自分の思いは本物だ あのギルガメッシュを相手に己が言葉を叩きつけるフェイト。 その威風堂々たる姿は戦場から逃げていると蔑まれた彼女と同一人物とは思えない。 言うべき事を言ったフェイトが相手の出方を待っていると――― 「この身が偉大か否かなど改めて語って聞かせるものではないのだが―― 重ねて言うぞ。今、大層にのたまった貴様のソレは友情ではなかろう。」 ほどなくして王が口を開く。 「我の教唆した友の定義を忘れてはいまいな? それに基づくならば貴様のアレに対する感情は友情、愛情を超え……既に崇拝の域に達している。 故に常に対等であるべき友に対するそれとは最も程遠い感情―――それを貴様は奴に抱いている。」 「…………」 「故にお前がアレを守る……汚されたくないとする感情は即ち 拠る者、崇める対象を―――崩れれば己の拠る辺を失うが故にただ必死に守っているに過ぎぬ。 支えを求めて神にすがり付く人間のようにな。」 王の言は続く。 「もう一つ。お前はアレを人を常に救い続けてきたからこそ偉大だと言ったか? だが奴の如きモノはな。人を救うことによってしか己が救われぬ――そうした種類のモノなのだ。」 「………」 「人を救わねばという強迫観念に憑かれ、その行為によって生ずる充足に依存する。 依存せねば耐えられぬモノ―― お前は奴に救われたと言うが、奴こそお前を救った事で救われたのだ。 極稀に世界にそのような壊れた思考を持つモノが産み落とされる。 人を救うという役目を担いし世の歯車。「救う」という機能に過ぎぬモノ共。 己の意思で行動しているかも怪しいそのような者と我を天秤にかけるとは―― ふん、似たような雑種を最近見た気がするぞ? この愚か者が!」 「関係ない事だ。話を逸らさないで欲しい…」 敵意すら隠さずに言うフェイト。 「否定なんていくらでも出来るんだ。 なのはの行為を指して自己満足、偽善、自己犠牲に酔っている、と 影でそういう風に言う人間は決して少なくなかった。 エースオブエースという輝かしい名の裏に篭められる嫉妬や誹謗。 私はそれを、なのはの横でずっと一緒に見てきたんだ。」 その感情が抑えられず、フェイトは拳を握り締める。 「世の中は綺麗な事だらけじゃない。そういう辛い側面もまた世界なんだ。 でも、そういう中傷にはいつも、だからどうした?って言わせて貰ってるよ。 現になのはは多くのものを救ってきた。それで救われたものがいる。」 崇高な思想を持って血反吐を吐きながら助けた100人と 自身の自己満足のために自身が傷つく事も無く助けた100人 前者と後者は、ひょっとするとその思想の違いから相争うのかも知れないが―― 救われた100人の命の重さに違いはない。 人を救うという行為にそんな難しい理屈なんていらないのだ。 「仮に経過、動機、胸中がどうあれ形としてなのはの行動は崇高だ。 そこに自身のどんな感情が作用したかなんて関係ない。 少なくとも――人を傷つけることしか出来ない貴方よりは上だよ…… ギルガメッシュ……貴方になのはを見下したり批判する資格なんてないよ…!」 変に捻じ曲げ、難しく考える必要がどこにある? 素直に喜びを分かち合えない事の何と愚かな事か―― 「………貴方こそ救いが無い」 そう言い放つフェイトの瞳には一片の迷いも無かった。 「――――聞かせるではないか」 それは噴火寸前の火口の中で煮えたぎるマグマか。 鉄の鍋蓋に立ってするに等しい問答は互いに灼熱を感じさせ その激情が爆発すれば、場で己が身が焼き尽くされる。 そんな危険極まりない邂逅―― 「ならば最後に一つ返して見せよ」 男の性格を考えれば蔑みの対象であるフェイトにこのような口を利かれた以上 既に血の雨が降っていてもおかしくはないのだが―― 何故か未だに黄金のサーヴァントはフェイトとの会話を続けている。 「――アレを不遜にも我や他の英霊と並べていたな? ならば教えてやろう。 その盲目的な崇拝こそが奴を、ヒトから英雄という座に押し上げる起因となるのだぞ? お前は奴に尽くすつもりで、救うつもりで、自らあの端女を奈落へ誘う手助けをしている。」 「っ……!」 「お前はあの女に尽くすという名目で奴に重荷を背負わせ あの端女の背中を押し、英雄の座という奈落に叩き落とそうとしているのだ。 これが喜劇でなくて何だというのか――?」 ギルガメッシュは不遜な笑みを称えて嘲笑う。 「でありながら―――貴様は無様にもその時が来れば手遅れ、などと絶望していたな。 だが真に友ならば奴を破滅の道から引き上げる事など造作も無いであろう? 一言――お前の道は間違っていると……そう言って奴の前に立ちはだかってやれば良いのだ。」 「……くっ、」 「だが出来まい? 崇拝に塗れたその思考では。 奴を間違っている、などと断ずる考えすら及ぶまい。 故に!―――――――やはり貴様は道化だ。 今宵、我を前に無様を晒したように、その手は友を救う事はなく 己が無力な傀儡ぶりに苦悩し、悶え苦しむのみのモノになるであろう。」 ――――― 体の震えが止まらない。 眼は相手から決して逸らさないままに―― だが顔が苦渋に染まるのを彼女は抑えられない。 ――それは、この敵に言われるまでもない…… ――自身が心の奥で常に思っていた事だったからだ かつてなのはが11歳の頃、 不意の襲撃を受けて撃墜され、生死の境を彷徨った時 その前後の自分は、自分達はどう思っていたか――― 何を考えていて、なのはの体にヒビが入り 決壊寸前にまで痛んでいる事に気づけなかったのか。 それは………… ―― 過信 ―― もはや崇拝に等しい、愚か極まりない「過信」であった。 なのはならば大丈夫。 なのはならば決して堕ちる事は無い。 なのはが、あの沈む事を知らない無敵のエースが―― まさかそんな事にはならないだろう……そう誰もが思っていた。 当然、自分もそう考えていた――――そんな矢先の出来事だった 全身を包帯で巻かれ、チューブにぐるぐる巻きにされた親友の姿。 片方の手と足が一本ずつ歪に折れ曲がり、壊れたマネキン人形と見紛うような―― そんななのはを見て……それがなのはだと分かった瞬間―――フェイトは吐いた。 獣のように嗚咽しながら、胃の中の内包物を残らず搾り出した。 その後、一週間……衰弱寸前まで何も口に出来なかった。 執務官試験を前にして己を呪った。自身の迂闊を。過信を。 友達を一方的な思い込みで信じた事を死ぬほど呪った。 こんな愚かな人間が人を救う執務官になどなれるはずがないと―― 皆の誇大に誇大を重ねた期待を一心に背負い それに答えようとした高町なのは。 既に未来のミッドチルダの平和を担う小さな英雄と称されていた彼女は のっぴきならない状況の中、必死に体に鞭打って飛び続けた。 そして―――その反動で、命を落としかけたのだ。 あの頃の事は一生忘れない――― もっとも――― ジジ、ジ――、と 鮮明に思い出そうとすると、まるで脳に霞掛かったノイズが紛れて気がヘンになりそうになる。 思考が閉ざされ、泥に沈んでいくような感覚に苛まれていたあの頃の自分。 そうしている間に執務官試験が終わってしまい、まるで腑抜けた結果しか残せなかった事。 それとシグナムに鉄拳という名の喝を、立てなくなるほど入れられた事くらいだ。覚えているのは、、 やがてなのはの命に別状がないという診察の結果が出て その体が回復し、結局――― 友達は今も空に上がり ある時は戦場の一番危ない最前線に突っ込み ある時は味方の防衛線を担って砲弾の前にその身を晒す そんな生き方を選んだ。 あの時、私は何を思ったのだろうか……? やめて欲しいという気持ち? もう危険な事はして欲しくないという気持ち? あった…… そういう気持ちは確かにあった…… でも――― ――――結局、止められなかったんだ 不屈のエースはあんな目に会ってなお空に還る事を望んだ。 周囲は騒然としてた。冗談だろう?と。 何かに取り憑かれているのか?あの娘は?と。 周囲が真っ青になるような、辛くて痛い極限のリハビリを経て――再び空に舞い上がる白い翼 それを複雑な気持ちで見守ってきたその双眸 一つだけ決まっていた事は―― 自分はどんな結果になろうと―― なのはと離れる事は決してないという事だ。 この男の言うとおり、空で生き甲斐を見出す友人を止めるには 力づくでその翼を毟り取り、その夢を潰すしかない。 でもそれは出来なかった。 そんな事はとても、私の手では出来なかった―― なのはの選んだ道を潰す。 なのはの抱いた夢を砕く。 なのはの翼を否定する事が出来なかったんだ。 それはこの英霊の言う通り―― 他ならぬ自分が、この翼によって救われたから。 この翼に一番初めに、そして一番深く 魅入ってしまったのが自分だったのだから だからこそ――― 出来なかった自分 故にだからこそ――― 決めた自分 あの時―――生涯のものになるであろう決意を抱いた自分。 「だからこそ……私が守るんだ」 そう―――その決意を私は この強大な王を見据えてはっきりと口に出したのだった。 前 目次 次
https://w.atwiki.jp/sundayrowa/pages/191.html
ばかやろう節(2) ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ ギイ・クリストフ・レッシュの脳内にふと蘇ったのは、栗色の髪をした少女の姿であった。 不可解な事態に巻き込まれてなお明るく振舞い、屈託のない笑顔を浮かべていた――井上真由子。 当初、ギイは死した自分が生きている現実に戸惑い、まだ殺し合いに対してどう動くかを決めかねていたのだ。 混乱しながらも、とりあえず武器を確認しようと思い立った。 知らぬうちに背負っていたリュックサックを引っくり返すと、すぐに彼女は現れた。 「だめぇぇーーーーっ!」 と、叫びながら。 自分より動転している相手を見ると、妙に冷静になるものだ。 彼女をどうにか落ち着かせて話を聞いてみると、なんでも支給された刀が妖気を放っているので危険だという。 ギイは内心で疑いながらも口には出さず、同封されていた説明書を確認してみれば、その刀は『八房』という名の妖刀だと記されていた。 その説明書を見せると、真由子は安堵したように大きく息を吐いた。 「ふぅーー……危ないところだったぁぁ~~~。 もし剣を抜いてたらどうなっていたか……なにがあっても、絶対に抜かないでくださいね」 そもそも懸糸傀儡『ジャック・オー・ランタン(略してジャコ)』が入っていた時点で、ギイには刀を使うつもりなどなかった。 だというのに、真由子は他者を案じて走ってきたのだ。 こちらがどういう人間なのかも知らなかったというのに。 相手が相手ならば、そのまま殺されてしまっていたところである。 いかに危険な行動であったかをギイが教えると、なぜか彼女は笑った。 「でもお兄さんは、私を殺さなかったじゃないですか」 最初はなにを言っているのか分からず、聞き返しそうになったほどだ。 数分かけて意味を理解するとどうしようもなくおかしくなり、ギイは自らの名を明かした。 告げられた名前を数回復唱してから「難しい名前ですね」とはにかむと、真由子はハッとしたようにリュックサックを開いた。 「私には使えないんですけど、もしかしてギイさんは使えませんか? あの、私のせいで刀を使えなくなっちゃいましたし……せめて武器をなにか……」 言いながら取り出した蔵王から出てきたのは、視力のいいギイでさえ目を凝らさねば見えぬほど極細のワイヤー。 説明書によれば、『殺鳥(あやとり)』という暗殺術に用いられる逸品だという。 ワイヤーは特殊金属製で、触れた物質をたやすく切断するとのことだ。 専用の手袋があれば糸に触れることができ、それこそあやとりのように糸を操れるらしい。 とはいえ真由子に支給されたのはワイヤーが五本だけであり、安易に触れれば指を欠損しかねない。 ギイは長年マリオネットを操ってきたので、糸捌きには自信がある。 手袋さえあれば多少使えるかもしれない――が、なければさすがに不可能だ。 正直に言いかけて、ギイはやめた。 どうやら真由子は、刀を抜くのを制したことに負い目を感じているらしかった。 話を聞く限りむしろギイは助けられたのだが、そのように説明すれば余計に恐縮してしまうかもしれない。 「使えなくもなさそうだ。ありがたく受け取っておくよ、マユコ」 そんなやり取りをしてから二人で名簿を確認して、ギイは見つけてしまった。 何を捨ててでも守らねばならない、他の誰よりも優先すべき、才賀エレオノールの名前を。 以降、真由子と会話を交わしながらも上の空で、ひたすら思考を巡らせ――決断した。 エレオノールだけを生還させよう、と。 そして、ギイは真由子を裏切ったのだ。 彼女の命を奪った上に、他者から信用を得るためだけに妖刀を抜かせ、さらに。 またしても、だ。 真由子がワイヤーを渡したとき、このような使い方をされるとは思っていなかっただろう。 未だ残る人の心が、ギイ自身を制そうとする。 黒衣(くろご)となる決意をしたというのに。 良心を振り払うように。 くいっ、と。 指を動かし―― ――ギイ・クリストフ・レッシュは糸を引いた。 人形遣いが糸を引けば、果たしてなにが起こるのか。 ――――人形が踊り、劇が動くのだ。 ◇ ◇ ◇ 宮本武蔵は、妖刀の鍔を親指で押した。 鞘から染み出していた妖気は、ほんの少し刀身を露にしただけで外界に噴き出す。 底冷えする気配を肌で感じ取り躊躇しかけるも、武蔵は腹を決める。 宮本武蔵は、伝説の剣豪である。 いくら年老いたといえど、剣一本に怯えてなにが剣豪か。 いざというときに退いてしまうのが伝説であるのならば、そのような伝説は燃やしてしまえ。 相対している憲兵番町は、魔剣を思いのままにしているのだ。 若造が魔を従えて見せたのならば、老いぼれは妖(あやかし)を抑え込んで見せてくれる。 己を奮い立たせ、宮本武蔵は妖刀を抜いた。 柄を強く握り、勢いよく一閃した――つもりであった。 思い切り振るったと同時に、妖刀ごと右腕はあらぬ方向へと飛んで行った。 妖刀を渡される際、ギイの操るジャコが武蔵の周囲を回転していた。 そのときに、ジャコは武蔵の身体に極細のワイヤーを巻き付けていたのだ。 察知できぬほどに緩く纏わりついていたのだが、その状態で居合いを放ってしまった。 自ら、チタン合金をも両断するワイヤーに向かって力をかけたのである。 同じくして――ジャコの体内にある歯車が回転し、軋むような音を上げる。 左手で抱きかかえていた烈火を落下させ、右手に握った巨大鎌を高速振動させる。 烈火は、未だ事態を呑み込めていない。 しかし理解し切っていないながらも、振りかざされた鎌が次にいかなる動きをするのかは分かる。 咄嗟に炎を発現させるようと、人差し指で空中に文字を記す。 選択した火竜は『円』。 憲兵番町の斬撃をも防いだ防護壁ならば、超高速で振動する鎌とて防げるだろう。 だが二画目の半ばまでしか書き終えていないところで、烈火の右手は斬り落とされた。 手首から先が宙を舞うのを目にしながらも、烈火は左の人差し指を伸ばす。 伸ばし切ったところで、左手首を鎌が切断した。 重力に引っ張られていき背を地面にぶつけてから、遅れて激痛が烈火を襲った。 たまらず表情を歪めていると、ジャコは続いて両足首へと鎌を下ろした。 今度は、声を抑えられなかった。 「…………殺鳥、だと?」 絶叫が二つ響くなか、憲兵番町は冷静に武蔵の腕を切断した凶器を見極めた。 得物の元まで這いずろうとしている武蔵を蹴り飛ばし、妖刀を拾い上げる。 刀にくっついていた腕を放り投げて、ギイのほうを向き直る。 うずくまる老剣士にも、のた打ち回る炎術士にも、憲兵番町はもはや興味などなかった。 彼の食指を動かすのは肉ではなく、命なのだから。 「どういうつもりだい、人形遣い……いや糸遣いと改めたほうがいいかな」 「人形遣いで構わない。糸を使ったのは初めてだ」 「そうかい。だけど、そちらは本題じゃなくてね」 妖刀の刃が、ギイへと伸ばされる。 「人の獲物を掻っ攫う君は、どういうつもりなのか。 小生はそれが聞きたくて聞きたくて、たまらないのだよ」 「提案がある」 睨みつけてくる視線の鋭さを意に介さず、ギイは切り出す。 返答次第では憲兵番長が飛びかかってくるのは明らかであったが、ギイは一世紀以上に渡り自動人形(オートマータ)と死闘を繰り広げてきた身だ。 外見こそ青年であるが、殺気を浴びせられたくらいで取り乱すほど若くはない。 憲兵番町の周囲を回るようにジャコを近付かせ、雷神剣を手渡させてから戻す。 「憲兵番町――君、僕と組まないか。 最後の一人になろうにも、八十人近くも一人で殺すのはさすがに骨が折れるのではと思い始めてね」 この言葉には、嘘が含まれている。 エレオノールが生きている現在、ギイ自身には最後の一人となるつもりはない。 もう一つ。 マリオネットが手元にある以上、八十人程度殺害するのはギイにとってたやすい。 二百体もの自動人形を一晩に破壊した実績のある人形破壊者(しろがね)であるのだから。 問題なのは、八十人の詳細である。 ギイがかねてより知っていた名前は、彼を除いて十三個。 うち十二名が、全力で戦わねばならないほどの実力者ばかりだ。 除かれた一名とて自動人形であり、決して気は抜けない。 もちろん十二名のうちエレオノールは殺さないにしても、それでも十一名。 その全員が、使い慣れないジャコでは厳しいかもしれないと思わせる相手である。 フェイスレスに至っては、愛用のマリオネット『オリンピア』をもってしても苦戦は必至だ。 しかも、エレオノールを生還させる上で高い壁となるのは十一名だけではない。 骨董屋前で出くわした氣法師、憲兵番町、花菱烈火、宮本武蔵――と見てきて、ギイは確信した。 出会った五人中四人、全員がかなりの強者である。 いま思えば、真由子の言っていた『法力』うんぬんといった話は真実だったのかもしれない。 だとすれば、五人全員がなにかしら人間の域を超えた力を持っていることになる。 ゆえに、結論を下したのだ。 ギイ・クリストフ・レッシュ一人で殺し尽くせるほど、このプログラムは甘くない。 誰かと手を組まねばならない。 できるだけ強く、人殺しに躊躇のない――そんな参加者と。 そして、憲兵番町を選択した。 最初は言葉の通じぬ狂戦士かとも思ったが、戦闘を見ているうちにすぐ認識を改めた。 思いのほか頭が回り、交渉の余地があるように思えたのだ。 下手をすれば噛み付かれかねないが、危ない橋を渡らねば到底目的を達成できないことは明白だ。 「断ると言ったら?」 「それは困るな。どうしたらいいものか」 「まったく、よく言う」 妖刀を手放すと、憲兵番町は雷神剣を振るわずに電撃を放つ。 青白い火花が刃となって、身体に巻きつけられたワイヤーを切り刻む。 「きちんと考えた上で、保険までかけておいて。 殺鳥を相手にするのは初めてだが、一度見て考慮してなければ危ないところだったな」 「組むに値するかの試験さ」 「やれやれ、人形遣いも糸遣いも相応しくはなかったね。 君はとんだ『道化』だよ。すでに道化の名を冠する者がいるのが残念だ」 絡み付いていたワイヤーを切断したのを確認して、憲兵番町は雷神剣をかざす。 激しい炸裂音とともに、雷光が刃を覆って雷刃を構成していく。 「ところで、なぜ彼の手と足をまず落としたんだい。 小生のように音色を楽しむのならばともかく、殺すつもりなら首や心臓を狙えば終いだったろうに」 「……指が攻撃の起点となっているのは明らかだった。 急所を突いて終わってくれればいいが、死に切らずに竜など呼ばれては困るからね」 当時は話半分であったものの真由子から妖(ばけもの)の話を聞いていたし、ギイ自身もしろがねだ。 死ぬまでに時間のかかる存在を知っているからこそ、まず攻撃手段と足を奪った。 「なるほど、死に至る負傷でも倒れない輩もいるからねえ」 「本当にね。身体が冷たくなっているというのに、気合だけで立つ人種までいる」 「そんな輩を斬るのがたまらないんだけどね」 「そうかい」 「そんな輩でも、君は殺すつもりなのだろう?」 「そうなるな」 「くくっ」 「……ふん」 会話をしている間も、雷神剣は未だ眩く輝いたままである。 本来の刀身の倍以上の長さとなっても、新たな刃を作り出すのをやめようともしない。 平静を装いながらも、ギイはいつでも指を動かせるよう憲兵番町の動きを見据えている。 いざというときは、ジャコに乗って飛び立てばよいだけだ。 ギイの足元でだくだくと血を流して横たわっている烈火と異なり、憲兵番町の攻撃では上空までは届かない。 「いやはや、本当に愉快だ。 信用させてから殺す非道さ、安全のためにより苦しむ攻撃を選ぶ残忍さ、小生相手に罠を仕掛ける大胆さ。 うむ、気に入ったよ。一緒に行動しようじゃないか」 などと言って、憲兵番町は雷神剣を下ろした。 刺すような視線も穏やかなものになり、刀身を覆っていた電撃は霧散している。 予想外の一言に驚愕するしかないギイの背中に、衝撃が走った。 ジャコもろとも吹き飛ばされながら、ギイは自分のいた地点を確認する。 瞳に映ったのは、黒いボディスーツを纏ったモヒカン男。 なぜ、あれほど接近されるまで気が付かなかったのか。 答えは明白だった。 意識が雷神剣に向けられていたからである。 雑貨屋へと突っ込んでいく寸前、どうにか首を動かしたギイが見たのは憲兵番町の笑顔であった。 「別に、提案されてすぐ言ってもよかったのだけどね。 これから組むというのに貸しがあるというのも、どうかと思ったのでね。 小生はとても優しいので、獲物を横取りした分はこれでチャラにしておくよ」 「花菱! オイ花菱! 起きろ、オイッ!!」 朦朧としていた烈火の意識を引き戻したのは、聞き覚えのある声だった。 目を開けるのにやけに時間がかかり、やっと視界に石島土門の姿が飛び込んでくる。 いつもおどけている彼がやけに真剣な表情を浮かべているのは、なんだか滑稽だった。 よく見れば、漫画でしか見たことないような黒光りするボディスーツで全身を包んでいる。 腹を抱えて笑いたかったが、思うように身体が動かなかった 「ンだよ、そのカッコ……頭おかしいんじゃねえの」 「おかしいのはテメェだろうが! なに勝手に死にかけてんだッ、火影の大将だろうが!」 「あぁ、そうだったな……悪い」 「だから俺ァ、前々から戦場で花火なんて打つなって言ってたろうがッ!」 「はん……でもお前、来たじゃねえか」 「うるせえ!!」 声を張り上げながら、土門は烈火の身体を掴んだ。 いつもなら大したことないだろう衝撃で、烈火は吐き気を催してしまう。 「テメェ、柳はまだ誘拐されっぱなんだぞッ! このまま死んでみやがれ、ゼッテー許さねえかんな! オラッ! 早く傷口焼いて血ィ止めろ、このウンコタレ!!」 「厳しいこと言いやがるぜ……」 烈火は火竜を召還できないものの、どうにか形のない炎を生み出す。 火力は極めて弱かったものの、どうにか血は止まった。 もはや炎に触れても熱さを感じないのが明らかになってしまったが、烈火は口に出さない。 土門に余計な心配をさせたくないというよりも、単純に声を出すのが億劫という気持ちが強かった。 「なにボーッとしてやがるッ! 終わったんなら早く掴まれッ、いったん逃げ」 「――できると、思っているのかね?」 憲兵番町の低く冷たい声が割って入る。 「同盟を組んだ相手を殴られて、小生がみすみす逃がすとでも?」 自分を見つめるあまりにも暗い闇色の瞳に、土門は思わず絶句してしまった。 土門の装着しているAMスーツには斬撃を通さないらしいが、彼の携えた青白く光る剣までも防げるかは疑問であった。 「……いったい、どの口で言っているのか」 憲兵番町の隙を窺っているうちに、ギイまで雑貨屋より飛び出してくる。 血を吐いたのか服が汚れているが、人形を動かすのに支障はないらしい。 一人ならばAMスーツのジャンプ力で撹乱できただろうが、二人となればとてもただでは逃げられまい。戦うしかない。 しかしここまで来るうちにAMスーツにはある程度慣れたとはいえ、烈火をここまで追いやる相手に勝てるのだろうか。 土門が取るべき行動を決め切れずにいると、しわがれた声が浴びせられる。 「行けィ! お前のことは烈火から聞いておる! ここは老いぼれに任せて、できるだけ遠くまで逃げるんじゃ!」 あまりに小さすぎて土門の目に入っていなかった老人――宮元武蔵が、両の足で地面を踏みしめていた。 和服の帯を巻きつけることで止血し、その手には憲兵番町が捨てた妖刀『八房』が握られていた。 「驚いたよ。まさか立てるとは」 「ふん、ワシのしぶとさは筋金入りじゃ!」 本当に意外だったようで、憲兵番町は目を丸くしている。 なにか隠し玉がある素振りで、武蔵は含みのある笑みを作った。 「なにをしておるかっ、このボンクラゴリラめ! 早う行け!」 武蔵に引き止められるのは、一人だけだ。 それも、ほんの短い時間であろう。 どうにか相手の興味を引き、時間を稼げればよいが。 そう思っている武蔵の鼓膜を、土門の無念そうな声が震わせた。 「……ジイちゃん、すまねえ。こんなときに新手が来ちまった」 まさかと振り返った武蔵の目に映ったのは、和服を纏ったチョンマゲ頭――佐々木小次郎であった。 「む、武蔵……っ」 こちらを見て漏らした声からも、本人なのは明らかであった。 どうやら小次郎のほうも剣を没収されたらしく、やたら物騒な鞭を携えている。 あれでは他者を殺す気と受け取られても、しようがあるまい。 「安心せい! そやつは佐々木小次郎! しまりのないツラ通りの阿呆じゃが、殺し合えと言われて従うような男ではない! ええい小次郎! 早くそっちの人形遣いを相手にせぬか、このバカタレがっ! 真に不愉快じゃが、肩を並べて戦ってやってもかまわぬ!」 憎まれ口を叩きながらも、顔はほころんでいる。 顔を合わせるたびにいがみ合う相手であるのに、今回ばかりは会えて安堵している自分に武蔵は気付いた。 ――その安堵を覆すような言葉が、土門より発せられる。 「違ぇんだ、ジイちゃん。こいつ、いっぺん俺を襲ってきやがったんだ」 「な、なんじゃと……? バッ、バカな!? まさか小次郎、誰かに操られ」 「違うぞ、武蔵ッ!!」 遮るように、小次郎は宣言する。 「拙者はっ! 拙者自身の意思でっ! 天下一の侍を目指し、最後の一人となるまで人を斬ることを決めたのでござるっ!」 「なるほど」と頷く憲兵番町は納得したようだが、武蔵には信じることができなかった。 天下一を志すのは、剣を持つものとして当然のことだ。 武蔵とて、四百年ほど生きてなお志している。 なかには、自分以外すべて斬ってでも至ろうとするものもいるだろう。 分かってはいても、好敵手たる佐々木小次郎がそうするのは認められなかった。 だいぶ血を流してしまったはずなのに、武蔵は不思議と頭が熱くなって気がした。 「愚か者めっ! これは武術大会などではないんじゃぞ!? 名簿は確認したのか!? 『峰さやか』という名を見たか!? いまからでも目を通すがよい!! 剣の道に行きてきた武士だけならばともかく、力なき少女まで参加させられておるのだぞ!? にもかかわらず――」 武蔵は、言い切ることができなかった。 憲兵番町が振り下ろした刃が、武蔵の腹を撫で切ったのである。 崩れ落ちる最中、傷跡から臓物が零れ落ちるのを感じた。 小次郎を叱咤しようにも、うまく声が声にならない。 それでも、小次郎の声だけはたしかに届いていた。 「そのようなこと……っ! とうに、分かっているでござる! ここまで来る道中でも、すでに少女の亡骸を発見した。骨董屋の前で、まだ幼い少女がもう死んでおった! ふくらはぎの腱への的確な一太刀に、臓器を狙い済ましたかのような胸への刺突! 惨たらしい遺体だったわ!」 「だっ……たら、なぜ」 「拙者が誰もかれも守れるほど強ければ、あの少女は死なずに済んだ! 力が……っ、いまの拙者にはっ! 絶望的に足りんっ! 強くならねばならぬのだっ!」 「こじ、ろう……」 顔を上げることもできず、武蔵には小次郎の表情は見えない。 そのはずなのに、彼が泣き出しそうな顔をしている姿が浮かんでいる。 もはや説得などできなかった。 年が離れているのならばともかく、武蔵と小次郎は同じ時代を生きた人間なのだ。 己の力不足を実感した男を、いったいどうして誰が責められよう。 ゆえに意識が薄れていくなか、武蔵はこう告げるのだった。 「悔い……は、残すでない、ぞ」 パチ、パチ、パチ――と。 手を叩く音が、広がりかけた静寂を破る。 「『強くなりたい』。その気持ち、とてもよく分かるよ。 うむうむ。剣士たるもの、そうでなくてはいけない。痺れたよ」 武蔵を切り伏せた憲兵番町が、白い歯を見せる。 「佐々木小次郎くん、小生たちと組まないかい? ともに剣技を極めようじゃないか」 小次郎は、思わず耳を疑った。 己が天下一に程遠いのだと気付かせてくれたのが、他ならぬ憲兵番町の戦いぶりなのである。 そんな強者からの申し出を受け入れぬ手はない。 小次郎が首肯しようとしたときであった。 憲兵番町がギイに視線を移すと、いかにもふと思い出したように首を傾げる。 「…………はて。 思い出してみれば、君が来たのも小次郎くんと同じ方向だったよねぇ。 殺す前にわざわざ両手足首を斬り落として攻撃も逃亡もできなくした、そこの道化くん。 おやおやよく見てみれば、ずっとつけているそのひょっとこ面はなかなか年季が入っているね。 到底、そこらの量販店で買えるような安物とは思えない。まるで――骨董屋に置いてある品物みたいじゃないか」 小次郎の目が見開かれる。 即座にギイのほうを振り返り、何事かを尋ねようと口を開く。 しかし考えがまとまっていないらしく、うまく言葉になっていない。 そんな小次郎の言わんとすることを理解して、ギイはたしかに言い切る。 「……そうだ。マユコを殺したのは、僕だ」 「なんとなんと。これはまた、意外な繋がりもあったものだ」 憲兵番町は驚いたような口ぶりを作っているが、吊り上った口角は隠せていない。 仮面の下でギイが睨みつけているのに勘付いるのに、素知らぬ顔である。 「道化くんが最後の一人となるべく、小次郎くんが剣技を極めるために、小生が人を斬る音色を聞きたいがゆえ…… そういうことで三人同盟といこうじゃないか」 憲兵番町の言葉を受けても、小次郎は目を見開いたまま微動だにしない。 再び静寂が周囲を支配するなか、隙が生まれるのを待っていた土門が耐え切れず口を開こうとする。 武蔵と小次郎のやり取りは、聞こえていた。 強くなりたいとの叫びには、身につまされるような思いであった。 烈火の惨状を目の当たりにしてしまった土門もまた、まったく同じことを考えていたのだ。 もっと自分が強ければ――と。 だからこそ、気に食わなかった。 少女の死が悔しいのならば、やるべきことは一つだ。 少女を殺したヤツの手を握るくらいなら、そいつをブン殴らなくてはいけない。 そう言ってやろうとして、土門は逆に声を浴びせられた。 「行け、小僧」 「は?」 「早く行かぬかと言っている!!」 小次郎は声を荒げると、せかすように拷問鞭を振るう。 しなやかに宙を踊った鞭は、土門の足元に触れて爆ぜるような音を立てた。 今度は隠そうともせず、憲兵番町は堂々と笑っていた。 「お主との勝負は、こやつらの後にしてやるでござる! せいぜい拙者に感謝して、その怪我人を連れていけっ!!」 「…………いいのかよ」 振り返りもせずに、小次郎は土門の心配を鼻で笑う。 「この超ハイパーウルトラデラックス美形剣士が遅れをとるものか!」 断言して飛び込んでいった背中をしばらく眺めたのち、土門は意識を失っている烈火を担ぐ。 持ち上げる際に呻き声を上げたことに安心して、思い切り地面を蹴った。 遠ざかっていく土門の気配に、小次郎は安堵の息を吐く。 本当のことを言ってしまえば、ギイと憲兵番町の二人を相手に勝つ自信などない。 自分の弱さを思い知り強くならねばならないと分かっていたはずなのに、勝負を挑んでしまったのだ。 彼らと同盟を組めば、侍として成長できるだろうとは思っていた。 憲兵番町の剣術を間近で見られるし、ギイの冷酷さを取り入れることもできたかもしれない。 一皮剥ける機会を得たはずなのに、どうして伸ばされた手を払いのけたのだろう。 なぜかと考えて、小次郎は笑った。 とうに、答えなど分かっている。 正確には、思い出したと言うべきか。 少し、自分を見誤っていたのだ。 天下一になるのが他のすべてより大きな望みである、と。 実際は違った。 別に天下一を目指していないワケではないが、それには理由があったのだ。 ただただ理由もなく、誰より強くなりたかったのではない。 佐々木小次郎は――――女子(おなご)のために、強くありたかったのだ。 なにを勘違いしていたのか。 そういう人間だとよく知っていたはずなのに、不覚にも忘れてしまっていた。 天下一の侍であれば、巷の女子からチヤホヤされること間違いなし。 ただでさえ美形だというのに、さらに天下一の称号など得た日には、それはもう。 世の女子独り占めとて夢ではない。 不純な動機と揶揄されるかもしれないが、知ったことではない。 だって、そうではないか。 佐々木小次郎が天下一の侍であり、世の女子すべてが佐々木小次郎の下に集まれば―― どの女子が泣くことも傷つくことも、絶対にないのだから。 女子に涙を流させぬため。 女子に血を流させぬため。 それこそ、小次郎が天下一を目指す理由であったのだ。 目標ばかり残って、『なぜそうなりたいのか』がすっかり抜けていた。 らしくもなく悩みに悩んで、小次郎はようやく思い出した。 佐々木小次郎が強くなりたかったのは―― 「貴様のような外道が、女子を虐げるからっ! だから拙者のような男が、天下一であらねばならんのだ!!」 声を張り上げて、拷問鞭を振るう。 たやすく抉り取った地面を目くらましにし、ギイの視界を奪う。 その隙に鞭を伸ばして、ジャコの持つ巨大鎌を払い落とす。 千載一遇の好機が生まれた。 鞭を振り上げて、ギイへの距離を詰める。 まだジャコは鎌を拾っていない。 無防備なギイへと鞭が振り下ろされる――より早く、小次郎は爆炎に飲み込まれた。 なにが起こったのか理解できないが、とにかくたまらなく熱かった。 体重を支えることができず、受身も取れないまま倒れ込む。 顔に触れた地面が、小次郎にはやけに冷たく感じた。 混濁した意識のなか、聴覚だけはやけに研ぎ澄まされていた。 足音が、ゆっくりと近付いてくる。 「へえ。その人形、そんなものまで搭載してるんだ」 「…………弾丸には限りがある。極力、使いたくはなかった」 「そいつは残念だったねぇ」 なるほど、との小次郎の思いは声にならない。 不自然な音を立てて、肺の中の息が吐き出されるに終わった。 「どうして追わなかったんだい」 「君たちの戦いが気になってね、『外道』くん。 命を賭した真剣勝負から目を離すなんて、もったいなくてもったいなくて」 「…………」 「それにしても『外道』、ね。 とてもいい響きで、見合った呼び名だと思うのだが……外道もいるのだよなぁ」 結局、できたのは足止めだけらしい。 短い時間だったが、土門ならばすでに追跡できないところにいるだろう。何せ、縮地法の使い手であるのだ。 己に言い聞かせると、小次郎は身体から力を抜いた。 やけに身体が重く、ひどく眠たい。 生き返って以来、ここまでの疲労は初めてかもしれない。 足音がもう一つ接近してくるのが聞こえたが、小次郎は眠気に身を委ねることにした。 ◇ ◇ ◇ 老人型自動人形・シルベストリは、とても落胆を隠すことができなかった。 殺し合いの舞台に打ち上げられた花火は、人間がこのような状況であろうと『群れ』ようとする証である。 だからこそ彼はとてもゆっくりと、本物の老人のような速度で歩んできたのだ。 戦闘が繰り広げられているのは分かっていた。 自動人形の聴覚は、まだ離れた地点でも戦闘音を捉えていた。 それでも、シルベストリは確信していたのだ。 到着したころには、人間たちは群れているはずだと。 だって、そうではないか。 ほんの数十年前に戦争をした国同士にもかかわらず、現在は友好関係を結んでいたりする。 殺し合った相手と、手を結んでいるのだ。 ならばこの場でもそうなるだろうと思っていた。 だというのに、実際はどうだ。 辿りついてみれば、死体が二つ転がっている。 立っている二人のうち片方は人間ではない、人形破壊者だ。仮面で覆い切れていない銀髪とマリオネットで分かる。 もう一人は人間のようだが、一人でいる人間に意味はない。 シルベストリが惹かれるのは、群れている人間だけなのだから。 人間であればため息を吐いていただろうかなどと考えて、シルベストリは携えている菊一文字を構えた。 自動人形と人形破壊者が出会えば戦闘が始まる――はずであった。 事実、シルベストリは刀を抜き、ギイはジャコを前に出している。 だというのに、どちらも硬直してしまっている。 というのは、憲兵番町が割って入ったからである。 目が離せないと言ったはずの真剣勝負に、思い切り水を差している。 「……どういうつもりだ、憲兵」 「剣技相手ならば小生だろう?」 返答とともに、雷神剣が雷刃を纏う。 どうやら自分が戦いたかっただけらしい。 ギイは肩を竦めながらも、ジャコを臨戦態勢のまま保つ。 シルベストリは、自動人形のなかでも強者として有名だ。 戦闘の機会が少なくて済むのならば嬉しいが、今回の相手ばかりは憲兵番町に任せるワケにはいかなかった。 「自動人形相手に剣はまずい。 一目で武器だと分かる得物を持っていると、ヤツらは本来のスペックで暴れまわってしまうからな」 善意からの忠告だったというのに、憲兵番町は雷神剣をかざして駆け出す。 大きく舌を打ったギイへと、振り返らずに言い放つ。 「いい情報をありがとう。同盟を組んだ甲斐があるというものだよ」 刃を交えつつ、シルベストリは怪訝な声を漏らす。 刀身を覆う青白い電撃に、菊一文字の刃が防がれているのだ。 奇妙な武器だなと思うが、と言っても外見があからさまに剣である。 自動人形の黄金律は作動せず、シルベストリは本来の力を出すことができる。 互いに背後に跳んだときを見計らって、疾風じみた速度で距離を詰める。 迫り来るシルベストリを前に、憲兵番町もまた前に出た。 ぎぃん――という鈍い音が、二つの影が交差する瞬間に響いた。 「鮮やか」 振り向いた憲兵番町の制服は、胸元が大きく真一文字に斬られていた。 内臓までは届いていないものの、じんわりと制服が赤黒く染まっている。 「そちらもな」 シルベストリのほうにも、まったく同じ傷がついていた。 黒いロングコートの胸元が切られ、得物を収納するためがらんどうの内部が露になっている。 それを見た憲兵番町が眉をひそめたのち、大きく頷く。 「なるほど……自動人形とは、通り名ではなく真名か」 ひとりごちて、憲兵番町が戦闘態勢を解く。 人を斬る音色が聞けないのならば、戦う理由などないのだ。 「なかなかの腕前だね、気に入った。 小生たちは他の参加者を殺すつもりなのだけど、きみも一緒に来ないかい?」 未だ腰を低く落としたシルベストリに告げると、憲兵番町は回収していた妖刀を放り投げる。 自身の足に触れた刀に少し視線を向けただけで、シルベストリは動かない。 「それを渡そう。妖気を帯びているようだが、音色は所詮一種類。 四色の音色を持つ金糸雀や、無限の鳴き声を秘めた雷神剣とは比べ物になるまい」 返事を待たず、憲兵番町はギイの元へと歩み寄っていく。 「構わないだろう?」 「待て、僕は自動人形と組む気など」 険しい表情を浮かべたギイの反論は、しかし半ばまでしか述べられない。 憲兵番町が目を細めて、耳元で言ったのだ。 「まあ、君たちに何かしら因縁があるのは見て取れたけれど…… 最後の一人になりたいのだろう? ならば方法を選んでいる余裕はあるのかい? 見ず知らずの人間に外道と侮蔑されるようなやり方で、将来があった少女を殺しておいて」 息を呑んだギイへと追い討ちをかけるように。 「――いまさら、えり好みできるのかい?」 ギイには、遠ざかっていく憲兵番長の背中を見ることしかできなかった。 服の下で身体を伝う汗が、やたらと冷たく感じる。 「一つ訊かせてくれ」 「なんだい?」 いままで黙考していたシルベストリが、菊一文字を構えたまま口を開く。 質問の許可を得てもしばらく口を開かず、一分ほど経ってついに尋ねた。 「お前たちは、なぜ群れる」 憲兵番町は、考える素振りすらしない。 「互いの目的が一致したからさ。 彼は最後の一人になりたくて、小生は人を斬りたい。簡単な話だろう?」 その答えは、シルベストリの求めているものではなかった。 生きるために必要な人間関係ではなく、生きるのに不必要なのに築かれている人間関係こそシルベストリの興味を引いているのだ。 期待はずれの解答に失望していると、憲兵番町が近寄ってくる。 「と彼は答えるだろうが、小生の場合は違う」 シルベストリにしか聞こえないほど小声で、耳打ちするように。 「そんなもの、彼といるとおもしろそうだからに決まっている」 またしても黙考したのち、シルベストリは菊一文字を鞘に収めて体内に収納した。 妖刀を拾い上げると、数回上下に振って重さを確認して携える。 「私も造物主様を生き残らせるため、参加者を殺すつもりだ。同行しよう」 一人で殺していく手間を三人で分担できるのだ。理に適っている。 というのが、自動人形と人形破壊者の思考である。 なんの魅力もない、興味も沸かない、合理的な考え方。 しかし『おもしろいそうだから』という憲兵番町の言葉が、シルベストリのなかに引っかかっていた。 思えば、人を斬りたいだけの彼に他者と組むメリットはない。 だというのに、ただ『おもしろい』という感情があるから『群れて』いる。 そこに、長年抱いている疑問の答えがあるような気がした。 ともに行動しているうちに、答えを見出せるのではないかと思った。 ゆえにシルベストリは、伸ばされた手を握ったのだった。 朝であろうと夜であろうと行動に支障のない自動人形でありながら、姿を見せた朝日に不思議と安らぎのようなものを感じた――ような気がした。 【宮本武蔵 死亡確認】 【佐々木小次郎 死亡確認】 【残り65名】 【D-4 商店街/一日目 早朝】 【伊崎剣司(憲兵番長)】 [時間軸]:居合番長との再戦前 [状態]:疲労(大)、胸元に真一文字の傷、制服ちょい焦げ [装備]:雷神剣@YAIBA [道具]:基本支給品一式×2、錫杖@うしおととら、ランダム支給品0~4 [基本方針]:人を斬る。おもしろいのでギイと行動。 【ギイ・クリストフ・レッシュ】 [時間軸]:本編で死亡後 [状態]:背中にダメージ(回復中) [装備]:ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス、殺鳥用ワイヤー×3@金剛番長 [道具]:基本支給品一式×3、拷問鞭@金剛番長、ランダム支給品0~6(うち0~2は小次郎から見て武器となるものなし) [基本方針]:他者と組み、エレオノールを優勝させる。 【シルベストリ】 [時間軸]:34巻、勝戦直前 [状態]:健康、服の胸元に真一文字の傷 [装備]:妖刀『八房』@GS美神 [道具]:ランダム支給品2(刀剣類なし、確認済み)、菊一文字@YAIBA [基本方針]:他者と組んでフェイスレスの優勝をサポートしつつ、人間が群れる理由を解き明かす。植木耕助に会う。 投下順で読む 前へ:ばかやろう節(1) 戻る 次へ:ばかやろう節(3) 時系列順で読む 前へ:ばかやろう節(1) 戻る 次へ:ばかやろう節(3) キャラを追って読む 066:ばかやろう節(1) 花菱烈火 066:ばかやろう節(3) 宮本武蔵 GAME OVER ギイ・クリストフ・レッシュ 066:ばかやろう節(3) 伊崎剣司(憲兵番長 佐々木小次郎 GAME OVER 石島土門 066:ばかやろう節(3) アシュタロス シルベストリ マシン番長 ▲