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まだ本当の意味での外に出た事の無い、小さな勇者である、子供のころ。 前日に、彼女に微笑みを投げかけるような色彩豊かな自家の庭の前で、雨にも挫けずに丹念に剣の素振りを行っていた少女は、心挫けずとも体が挫け、自室で寝込んでいた。 普段、時計の針が半周するほどの長い時間を布団で過ごした事の無かった少女は、 外に出られないもどかしさを切に感じ、自らの弱さについて切に省み、そのせいあってか彼女はなかなか睡魔とは無縁の関係が程暫く続いていた。 ごろんごろんと、冷たさを失った布団の中で、何度も何度も寝返りをうち、やがて心地よい眠りが彼女を包み始めた時、少女は何の気なしに状態を仰向けに戻した。 すると、どうだろうか。今までは気付きもしなかった、天井に得体の知れない物がいることに少女は突如気がついた。そこには少女の目から見たら、可笑しな顔をした“異形の者たち”がいた。 それは、誰の目からも動いていないように見えながらも、自分を襲わんばかりに今や今やと天井の中で蠢いているように少女には感じられた。 少女は独り、慄いた。 顔の形をした魔物が、果たして天井のシミや模様によって見える錯覚だと、当時の少女は気付くことはなかった。 彼女は一瞬でも怯えた気持ちを追い払い、たくさんの顔が蠢いている“異形の者たち”に言葉を語らずして、 自分の寝床に、そして万が一にでも自家に舞い降りて襲ってこないよう、目で彼等を牽制した。 数刻の後、少女は人知れず、高揚感に似たものを感じた。 剣の師から褒詞を賜ること、同年代の異性を自らの実力で負かした事、頭の中で瞬間的に感じたそれは、少女にとってそれらと似た気持ちを抱かせた。 自らの勇敢さに半ば満足した少女は、最も充足感を得ることができる眠りの動作に入った。天井に嫌が追うにも意識を集中させたのだ。 幼い少女がある物事に意識を長時間保たせることなど、苦に近い行いであった。 だが、彼女の研ぎ澄まされた神経は眠っても尚休むことをしらない。少なくとも、少女はそう自負していた。 瞼を閉じていても、“異形の者たち”が襲いかかってきて構わないように意識を天井に集中させていた。ふと、少女は休憩の意味を込めて、意識を手放した。 幼いながらも、自らの限界を、この少女は十二分に理解していたのである。 自然と肩にかかっていた力が、霧のように霞んでいく。彼女の瞳の中には、一面の緑が広がっていた。 今までに、数える程しか来た事がないドレス、いつか大切な人にこの姿を見せる日は来るのだろうか、 それを見につけた少女はそのような思いを頭の中に霞めながらも、緑の中を走る。 終わらない緑、 いつまでも、いつまでも。 長いような、短いような時間。 次に重い瞼を自らの意思で開けた時、視界には穏やかな笑顔を浮かべた母と、この世で最も幸福感を得ることができる母からの抱擁が待っていた。顔いっぱいに広がる母の大海原から、天井を垣間見ることはできなかったが、少女はそれを行おうとはしなかった。なぜか。 少女は母の胸の中で確信したのだ。 私は勝ったのだ。 一歩も動かずとも、敵を打ち破ることが私には可能なのだ。 風邪、という単語を聞くと、騎士アグリアスは幼少期の体験として以上のことを、言わずとも思い出すのである。 ――――― Antipyretic ――――― 巨蟹の月の2日目。その日は、騎士アグリアスの生誕日の翌日にあたる。 前日までの貿易都市ドーター周辺の特有のカラッとした天候は鳴りを潜め、 その日は、どす黒い雨雲からまるで異星人の襲来とばかりに放たれる強烈な雨の雫が、ラムザ一行の宿泊する宿の窓に容赦なくうちつけていた。 ムスタディオを始めとする男性陣からの贈り物、祝辞、苦楽をともにした仲間からのお祝いの花束などをもらい、人生で一番の幸せな瞬間を噛みしめていたアグリアスだが、 日を跨ぐに従って、アグリアスの体調と機嫌は次第に雨模様となっていったのであった。 そして、まるでアグリアスが雨雲を、焼き酒に付き合わせるために呼び寄せたかのようにドーター市街に悲しみの雨がシトシトと、 そして突然怒りにかわったかのように盆をかえしたような降りになって今にいたるのであった。 そして、幼い頃寝込んでいた時と同じように、アグリアスは額に濡れ布巾を乗せながら、今、天井を迷いなき目で見つめていたのであった。 アグリアスは布団の裾を顔に近づかせた。 天井に潜んでいるこやつらは私が何度追い払おうとも、私が寝込んでいる隙を見つけてはすぐにその姿を現す。 襲ってはこないものの、いつでも気を張りつめておかないといけない。 顔の半分を布団に隠しながらも、三つ編みを下ろしたブロンドの髪の間から覗いている二つの瞳だけは天井にしっかりと向けたまま、アグリアスはそのように思った。 アグリアスの寝床での宿敵が今日も天井に顔を覗かせていた。彼女はその存在に気づくや否や、すぐさま自分が寝込んでいる部屋の天井全てを見まわした。 その数はおよそ60。 天井に張り付いている顔の数のことである。 騎士は常人が驚くほどの速さで、すぐさま敵の数を確認するに至った。 敵を知らないことには戦略を立てることなど不可能であるのだ。騎士は風邪にうなされながらも、自らの騎士としての仕事を見事に全うした。 アグリアスは、枕元に立て掛けてある愛剣に手を伸ばすような事はしなかったが、あくる日の再現のように、目で“異形の者たち”の牽制を続けた。 アグリアスの両の目の先には、60もの敵の中でひと際顔の形が大きく、“ひょっとこ”のように左右に顔がくしゃりと曲がった、ひと際目につく下賤な顔を持った異形の者の姿があった。 彼女は寝床の上から、それを数ある敵集団の中の親玉と推測した。たとえ風邪で寝込んでいようとも、騎士は冷静にそして瞬時に敵の内状を見極めなくてはならないのだ。 アカデミー時代に教官から教わった訓示が実践されている瞬間であった。 辺りからの音が一瞬途絶えたようにアグリアスは思えた。 時が静止したようであった。 そんな事態にも、アグリアスは目をカッと開いて天井を見続けた。傍から見れば十分に危険な行為ではあった。しかし、たとえアグリアスの傍に第二者が立っていたとしても、彼女を止める事は出来なかったに違いない。 それほど、彼女は余すことなく、戦士特有の気を放っていた。 その後、それを打ち破るように響いてきた音は、窓に叩きつけるように降っている雨音だった。 自然の摂理からすれば、雨音が聞こえるのは当然のことであるが、アグリアスはその音に心を揺らされたかのように酷く驚いた。 もしかすると、自然の摂理ではなく、アグリアスの尋常ではない様子に、心配をして雨音で窓を叩いたのかもしれない。 万物の自然とは、総じてお節介な性格をしている。 昔の書物にそのように書かれていた文章を、アグリアスは読んだ事があった。 途端に聞こえ始めた雨音が、先程まで少しの休暇をもらっていた彼女の耳の中に広がっていった。 彼女は幼いころ、中耳炎にかかったことがあったが、その片鱗ともいえる痛みが瞬間的に彼女を襲った。 ふと、アグリアスは視線を天井から逸らした。 敵の圧倒的な数の前にさしもの騎士も恐れをなしたか、 はたまた天井の事を投げ出すほどの痛みであったのか。 果たして、前者でも後者でもなかった。 彼女は、急にこの遊びが馬鹿らしくなったのである。 幼いころ、少女は病気で寝込むと必ずと言っていいほど、天井を見上げては“異形の者たち”を睨んだ。 少女アグリアスは初め本当に天井には魔物の類が住み着いているものであると思い込んでいた。 その家屋の住人に天井に潜む魔物討伐の案を出したことは、元来、正義感に熱い彼女からすれば、想像に難くない出来事であった。 その夜、少女一人で過ごすには不釣り合いなほどの大きさをほこる自室のベッドの上で、彼女は今日の自分の愚行をしきりに恥じた。 羽毛の布団を頭まですっぽりとかぶり外の世界から、正確には天井にいる忌々しい魔物と同じ空気を吸わないように、自分の殻に閉じこもった。 その結果、何の罪もない枕がおおよそ窒息するかのような勢いで彼女にきつく抱きしめられながら、彼女と夜をともにすることとなった。 質素で殺風景ながら生活の最低限を取りそろえるために端に置かれていた肩身が狭い家具たちからは、恐らく遠慮がちな悲鳴があがったに違いない。 顔から火が出る思いを、少女は初めて感じた。 それとともに、少女は誰に宣言するでもなく堅く誓った。 もう二度とあのような馬鹿げたことは言わない、と。 しかし、誓約を終えた彼女が布団の中で三度目の寝返りをうった時、こうも思い始めた。 別に、他人に口外しなければいい。 この馬鹿げた楽しみを、自分だけの楽しみにすればいいのだ。 少女はハッとした気持ちで、自分の殻を破り、勢いよく天井を眺めた。 そこには相変わらずギラギラと視線をぎらつかせた下賤のような顔を持った魔物たちがひしめいていた。 まるで自分の考えが全て見透かされているようなそれらの目に、少女は内心で怒りを覚えながらも、前と変えることなく目でそれらを牽制した。 その日から、少女が魔物たちを睨む度合いはそれまでと比べて、穏やかにして力強くなった。 ちなみに、一旦は少女の手から離れ九死に一生を得た枕は一息つく間もなく すぐに自らの考えに満足感を得た少女に先ほどよりもきつく、きつく、抱きしめられることとなった事をここに捕捉しておく。 以来、彼女は風邪という単語を聞くと、 寝込むことによる苦しさと、その中で生まれるほんの少しの暇つぶしに心を躍らせる気持ちを思い出すようになったのであった。 先日、大地に足をつけてから23年目を迎えた彼女は、この暇つぶしにいい加減飽き飽きとした気持ちを抱いたのであろうか。 周りから見れば、はたまた奇妙な事を彼女は行っているものである。 彼女は状態をうつ伏せにした。 湿度の影響か、木造の部屋からは微かにお互いを押しあうかのような、こそばゆい音が響いていた。 仲間たちの声は聞こえてこない。朝食の直後なら、今は広間で会議を行っているに違いない。本当なら、その場に私が、ラムザの隣に… 彼女はそこで、誰に対するわけでもなくかぶりをふった。 そして両手で枕を益々顔に近づけた。今日の生贄は彼であろうか。 魔物たちの顔をこれ以上凝視していたくなかった事もあるが、別の要因で彼女はまた自分の殻に入ろうとしていた。 彼女は暫く、一人心の中でごねていた。 顔の二倍の面積はあるであろう枕に顔を押し付け、誰にも聞こえないほど小さな声で、しかしはっきりと、こう呟いた。 ――ラムザの、バカ。 隊の長たる、青年ラムザが並み相応の感覚を持ち合わせてはいないということはラムザを知る者からすれば、周知の事実であった。 詰まる所、彼は鈍感であった。 彼の鈍感さには度々、頭を捻る者、彼の脛をけり上げる者、枕に泣きごとを言う者が現れ、自覚がないまでも周りを振り回していた。 参考までに、該当者は一名である。 その該当者はある時、周りの者に、自らの隊の長への気持ちを尋ねられた時に、こう声高に公言した。 ――ラムザは隊の長で、あくまで私はその片腕だ。万が一でも、そのような立場にいる者が、その、そういった関係を持つことは好ましくない。 第一、私はラムザを人柄の良さ、統率力、戦略面の発案家という点で尊敬している。 単純にそのような好いた気持ちを向けているわけではないことをここに言わせてもらおう。 アグリアスを良く知る者も、知らぬ者も、彼女の口から出た言葉が真意であるとは誰も信じてはいなかった。 ただ一人の、愛想をふりまく朴念仁を除いて。 ラムザとアグリアスはお互いを憎からず思っている、と常時変わらず下馬評は上がっていた。 噂に違わず、確かに二人はお互いの事を特別な思いで見つめていた。 見つめていた、だけである。 そんなある時、色恋関係に敏い部下二人にけしかけられるように、アグリアスはラムザと、戦略面関係以外の、下心ある話を漕ぎつけるに至った。 ――今日は空が綺麗だな。どうやら明日も、この天候は続きそうだ。 ――へえ、アグリアスさんは明日の天気がわかるんですか? ――うむ。風と雲の向き、それとボコの毛並みの具合でだ。天気が崩れる直前だとボコの毛並みはゴワゴワとした触感になるんだ。晴れているときはサラサラと。 ――すごいですね、アグリアスさん。 ――いや、騎士たるもの明日の行き先がわからないようではオヴェリア様の護衛など… 本来、三社が意図している話の雲行きが怪しくなってきたため、 部下の一人が、崇拝の対象である上司に向けて、傍に転がっていた木の実を投げつけた。 ――アグリアスさん!?うずくまってどうしたんですか。 ――ラヴィアン、覚えていろよ…いや、なんでもないんだ。ところで、ラムザ。明日もこの天候は続きそうなんだ。 ――その話は先程聞きましたよ。 ――それで、だ。よかったら、貴殿とともに、明日… ――ああ、わかりました。 ――なに!?私の言うことがわかったのか? ――ええ。前にアグリアスさんが話していた、明日この町で開かれるカエル取り大会のことですよね? ――…いや、ラムザ。私の話を… ――その大会に参加したかったんですよ。是非、一緒に出ましょう。 ――…ああ。 上司の方向性の違った成就に、物陰で成り行きを見守っていた部下二人は涙を流さずにはいられなかった。 それが果たして、上司の複雑な気持ちを理解できたからか、はたまたこれから迫りくる恐ろしい出来事に恐れをなしたか。 どちらにしろ、二人は次の日、顔と体のあちこちを腫らせて一行に姿を見せた。 あの二人は足からも涙を流す事が出来るのか。 長年、国を跨いでまでも人々の成り行きを肌で感じるまでとなっていた自分が、まさか新しい発見をする日が来るとは。そう言外に感嘆と恐れをにじませながら、剣聖シドはそう言葉を発した。他の仲間は目を背けた。 真相は今も不明である。 少女は今日も寝込んでいた。 そして、今日も天井の異形の者たちとの戦いを行っていた。 少女は思った。 今日は100人いる。前日より増えている、と。 少女は知っていた。これは遊びでしかないということを。 天井にへばりついている顔のようなものは天井のシミや建築材料の模様でしかないということを。 しかし、正しいはずの彼女の考えは、有り得ない出来事とともにうち破られた。 決して顔を動かすことのない魔物たちが一斉に少女へ目を向けたのである。 起こり得ない事態に、少女は目をパチクリとさせた。幼き騎士の心はどこかに吹き飛び、この時ばかりは幼く儚い少女の心が彼女の心情を占めるに至った。 そのうちに、一匹の魔物が天井からニュッと擬音が辺りに響くような顔の覗かせ方をした。 魔物の顔が外気に触れる。どす黒い、絵具の色でも表せないようなどぎつい色彩をはなっている。 最初の一匹に続くように、次々に魔物が天井から姿を出し彼女に向かって彼女にとって、最低とも言える下衆な笑いをカラカラとした。 あたかも逆立ちをしているような魔物たちの恰好は、少女の予感が正しければ、間もなく、ベッドの上に続々と降り立つことだろう。 身の危険を感じた少女は、風邪だという事を微塵も感じさせないような、驚くほどの身のこなしで半身を上げ、枕元にある剣を手に取ろうとした。 少女は途端にハッとした。 剣?どうして? 少女は自らの潜在意識に困惑した。 若干5歳を迎えた少女の枕元に剣を置くことは、いくら護衛騎士を幾度も輩出した名門オークス家といえども、まだ許可を下ろすことはできなかったのだ。 では、なぜ自分は有るはずの無い剣をとろうとしたのか? 少女は自問した。すぐに、答えを導き出した。 ――そうか。これは夢なのだ。 言葉に出して、少女は呟いた。そうだ、夢に違いない。 何者も寄せ付けない気をはなっていた少女は途端に、空気の抜けた人形のように少女は起き上げた上半身をベッドにうちつけた。 弾力のあるベッドの心地よさに少女は、ほう、と息を吐き、瞼を閉じた。 自分に向かってきているであろう異形の者たちなど、すでに少女は気にも留めていなかった。 これは夢なのだ。 少女は再びそう呟いた。汗で顔にへばりついている長いブロンドの髪をかき上げた。 あれほど体が熱く汗で濡れていた服がうっとうしかったというのに、今は服が冷気をまとっているかのようだ。 少女は言いようのない心地よさを感じた。 この夢が終わり瞼を開ければ、そこには穏やかな優しい笑みを浮かべた母が待っているのである。 少女は期待に胸を膨らませ、腕を目元にかぶせた。途端に視界が暗くなる。 ―― アグ…ス…。 ―― ほら、私を呼ぶ声が聞こえてきた。少女は暗闇の世界の中で、笑みを浮かべずにはいられない。 ――アグリ…ん。 ―― そうだ。目が覚めたら、母の胸に飛び込んで驚かせてやろう。母が心配するまで、寝たふりを続けるのも悪くない。 そして、そして… 「アグリアスさん。」 アグリアスはゆっくりと瞼を開けた。 そこには、自分と同じ金色の髪を後ろで束ね、薄い化粧が様になっている少女の母の姿はなく、 少々頼りの無い、しかし外見とは裏腹に芯の強い瞳を携えた優男がアグリアスを心配そうに見つめていた。 「目が覚めましたか。よかった。とてもうなされていたようなので。」 アグリアスの無事を見て安堵した気持ちと、寝ている合間に無理やり起こしてしまったことに対する申し訳なさとを複雑に絡ませた表情を浮かべながら、 ラムザはベッドに横たわっているアグリアスにそう告げた。 アグリアスはほんの一瞬だけポカンとしたような表情を見せたが、すぐに緊張感ある、 否、仏頂面に表情を変えラムザに背を向けるように寝返りをうった。 「何の用だ、出発は明日のはずだろう。安心しろ、貴公に迷惑はかけぬ。明日にはこの風邪もすっかり治っている。」 アグリアスは半ば物事を投げ出すような心持で、背中越しのラムザにそう告げた。 ラムザは頬を人差し指でポリポリとかいた。アグリアスのその態度に、決して覚えがないわけではない。だが、このような弱みに付け込むかのような状況に乗じて彼女の許しを得ようとは考えていなかった。 彼は、ただ彼女の看病をする一心でこの部屋に訪れたからであった。 その裏にはアグリアスの部下である二人がニタニタ顔で暗躍していたそうだが、幸い騎士に伝わる事はなかった。 彼女等も毎回命がけでこの千載一遇の機会に取り組んでいるのである。 今のこのような状況は、事情を知らぬものが見ようものなら二人が佳境に入っているように見える。 しかし、決して二人はこのような倦怠期さながらの間柄ではなかった。 アグリアスをこのような状況に追い込んだ原因は、今アグリアスを心配そうに見つめているラムザの人柄にあった。 時間はその前の日まで遡る。巨蟹の月の一日目。ラムザ隊一行は、ドーターに宿を借り、そこでアグリアスの誕生日パーティを開いていた。 宴も酣、皆が皆、美酒に酔いしがれているときに、その日の主賓と隊の長はテラスに降り立ち、 視界では捉えきれないほど、無造作に、しかし決して雑ではなく埋め尽くされた満点の星空を眺めていた。手を伸ばせばあの星に届いていまいそうだ。ラムザはふとそう思った。 「綺麗ですね、アグリアスさん。」 「うむ。」 二人はグラスを片手に、飽くことなく星空を見つめていた。言葉で語ることはない。 誰よりも信頼しきっている二人にお互いが陳腐な甘い言葉をかけあうことなど不要な行為であった。 どれくらいの時間が経ったのだろうか。暫くしたのち、手元にある酒を口に含むために視線を戻したアグリアスはラムザに見つからないように頬をパンパンと叩いた。 思ってもみないような展開。彼女の心は、星空の華麗さと相まって舞い上がっていた。 彼女はこれから交わされる自分と彼の会話風景を思い起こし、一人頬を赤らめた。 岩よりも堅物、と評されていた彼女を茹でダコのようにしてしまうとは、さしもの預言者も言い当てることはできなかったに違いない。ちなみに、今回、部下二人はノータッチである。 暫くしたのち、彼女は顔を静かに、少年のように目をきらめかせて星を眺めている青年ラムザに向けた。 そして、意を決して、長い間心の中の酒樽で醸造していた想いを開けてみることにした。 「なあ、ラムザ。私が貴殿に付き添ってから、もう幾重の月日が流れようとしている。」 言いたいことをいうがために、このような堅苦しい文章を始めに語らないといけない自分を、アグリアスは改めて恥じた。 ラムザは、アグリアスの張りつめたような緊張感を感じ取ったのか、少し驚いたようにアグリアスを見つめた。 「私は今までの自分の行ってきた行為に後悔を覚えたことはない。 近衛騎士としてルザリア聖近衛騎士団に入ったこと、オヴェリア様の護衛についたこと、 そして、貴殿と出会えたこと。」 アグリアスは、自らが述べていることを一字一句確かめるように、ラムザに向かって話し続けた。 ラムザはそんな彼女の思いを知ってか知らずか、彼女に向かって優しく相槌をうち、先を促した。 「貴公は、どうなのだ。私と出会って、迷惑をしなかったか。」 おっかなびっくりなアグリアスの言い方に、ラムザは彼女に一種の愛着を感じた。 「いえ、そのようなことは一度もありません。あなたと出会えて、僕はとても…ええ、とても幸運でした。」 言葉を言い終えてから星空から目を背く形でうつむいていたアグリアスは、その言葉にすぐさまラムザに顔を向けた。 ラムザは一旦言葉を切り、笑顔とともに次の言葉を口にした。 「僕なんかより遥かにお強いので。」 アグリアスは昨日の顛末を思い出し、かぶりをふった。 私はただの戦力としてしか見られていなかったのか。私は歩く兵隊なのか。 またも枕の中でアグリアスはかぶりをふった。 違う。わかっている。 ラムザがそんなことを考えるはずがない。わかっている。ラムザは心優しい男だ。 アグリアスはラムザの良き理解者であり、良き片腕であった。 彼のそのような所に惹かれ、そしてそのような所に悩まされた彼女が彼の性格を理解できないはずはなかった。 彼のその性格にアグリアスは人知れず笑みを浮かべていたのだ。 だからこそ、ただ、言ってほしかっただけなのだ。 再びアグリアスは思考の海に身を委ねた。 自分にとって私は必要だ、と、ただその言葉がほしかっただけなのだ。なのに、なのに、ラムザは… 枕元で唸っているアグリアスに、堪らずラムザは声をかける。 「あ、アグリアスさん。大丈夫ですか。今、濡れ布巾を取り替えて…」 突然のラムザの声。 その時、アグリアスは急に思考の海を、モーゼのように水を二つに割ることに成功した。 そうか、聞けばいいんだ、もう一度。強引に。 待て!そんな事は騎士道に反している! 思考の中で、エジプト軍と同立場にいる“正義と大義を重んじる騎士アグリアス”の軍団がその言葉を述べるや否や、既に川を渡り終えた“真実の愛を求める女性としてのアグリアス”の軍団に迫った。 だが、アグリアスは迷う事をしない。 間髪をいれずに、騎士としてのアグリアスを洗い流した。 何故、こんな初歩的なことがわからなかったのだろう。アグリアスは、一瞬で辿り着いた答えに驚きと同時に期待を抱いた。 ラムザがそう告げた直後であった。 枕の中で、うーうーと唸っていたアグリアスは、いきなり糸を弾かれた人形のように上半身をおこし、ラムザにくるりと顔を向けた。 ラムザは思わず目を丸くした。 普段、人ひとり分はあるであろう重さの鎧を身に着けていた彼女の姿を見慣れていただけに、薄生地の絹の服を身につけている今の彼女の体の線が現れているその恰好は、ラムザの胸を飛びあがらせるには十分であった。 風邪で薄っすらと頬が朱をさしている顔、何か言葉を発そうとしているのか半開きになっている口、三つ編みの髪を解き、汗で濡れた髪が額に幾つかへばり付いているその恰好も、ラムザの胸の高鳴りに益々拍車をかけた。 「ラムザ。はっきりと言ってくれ。私のことを思っているのか、否か。」 アグリアスはそう尋ねながら、枕元に置いてある愛剣の鞘に手を伸ばした。 ラムザは、瞬間、一気に背中から汗がひいていくのを感じ取った。 「アグリアスさん!?落ち着いてください、目がすわってます!」 突然の出来事にラムザは別の意味で胸を高鳴らせた。 命が危ない。 人生において常人ならぬ戦の場数を踏んだ彼は、歴戦で培った神経を最大限に研ぎ澄ませた。 「さあ、言え。ラムザ。どうなのか。」 アグリアスがゆっくりと足を床につけると同時に、ベッドが悲鳴をあげた。 悲鳴をあげたくなる気持ちもわかる、ラムザは頭の隅でそう同調した。ベッドはラムザと同じ気持ちを共有していたのであろうか。 それは定かではないが、ラムザは背中に冷や汗をかきながら、じりじりと扉の付近まで後退を始めた。 「何故逃げる。好きか嫌いか答えるだけだぞ。」 「答えられないのは、アグリアスさんの右手に持っている物が原因だと思います。」 あまり刺激を加えないよう、ラムザは引きつる顔を見せないように、必死にアグリアスにそう告げた。 聞こえているのか、いないのか、アグリアスはそれでもふらふらと、そしてゆっくりとした足取りでラムザに近づいていく。 熱に浮かされたように顔を赤くしたアグリアスは手には愛用の剣を持ち、一歩間違えれば狂気ともとれる笑みを浮かべていた。 後退を続けていたラムザだが、扉と背中が遂に対面を果たしてしまったため、 彼は次に、アグリアスを説得しようと試みた。 「落ち着いてください、アグリアスさん!今のあなたは熱に浮かされているんです!だから、その鞘を抜こうとしている左手をおろしてください!」 ラムザは助けを呼びたかったが、下手に大声を出すとアグリアスが強硬手段に出るかもしれない。 そもそも、それは彼女の本意ではないだろう。鈍感たる彼も、この時ばかりは彼女の気持ちをくみ取っていた。 「ふ、ふふ。ラムザ。さあ答えろ。好いているのか、いないのか。」 アグリアスの思考はもはや熱に浮かされているといった具合ではなくなっていたように見えた。 あるいはこれが、身も心も鎧で束縛されていた彼女の本当の姿なのかもしれない。 だとしたら、このような姿は二度と拝めないかもしれない。 死の淵にいるであろうラムザに一瞬、そのような邪念が浮かんだ。瞬時に彼は、彼女のあられもない姿と自らの命を天秤にかけた。 誇張表現だった。 彼はすぐさまに天秤の中身を、狂気にまみれ剣を振り回す彼女の暴走行為と自らの命、とに修正した。 状況が状況であった。うっかり見とれていると、それが自分の網膜が映す生前の最後の映像にならざるを得ない。 考える暇など寸分しかなかった。 ええい、ままよ。 ラムザはそう呟き、一世一代の賭けに出た。 「さあラムザ!こたえ…」 随分と凶暴化していたアグリアスの言葉はここで途絶えた。 目を丸く見開いた彼女は、もしかしたら人生で一番の予期せぬ事態に出くわしたのかもしれない。 ラムザが、抱きついている。私に。 いつの間にか背伸びをしないと自分と身長が同等にならなくなってしまった彼に気づいたら首元まで手を回されていた事に、彼女は数秒後やっと気付いた。 元来堅物である彼女にその手の類のうわさ話や、よもやその手の行為を致す事は言語道断であり、ラムザもそれは重々と承知していた。 勿論、彼にこの戦場においての勝算があっての行為であるはずがない。彼はそのような計算高い男ではない。それに、そもそも、ラムザはアグリアスが自分の事をなんとも思ってない、と根本的な考えを否定していたからである。 アグリアスがその事を知ったら恐らくため息をつくに違いない。 そんなアグリアスとて、ラムザは自分の事をなんとも思っていないと否定している分に、人の事は言えなかった。 彼が私に抱擁をしている。 その事実を理解した途端、アグリアスは体が硬直してしまった。 しかし、とても不思議なことに、堅物が売りの彼女は自然と今の事態もこれから起こる事も受け止めることができた。 そのままどちらともなく唇をあわせる。アグリアスは終始目をつむっていた。 全ての時間が静止したように彼女は思えた。 また雨音が聞こえなくなった。 ラムザの口から離れたアグリアスは、ぼうとした頭の中でそう思った。 「アグリアスさん。質問にお答えできなくてすみません。ですが、これが僕の答えです。」 アグリアスを力強く抱きしめながら、ラムザはそう告げた。 アグリアスはというと、今の出来事に頭がクラクラとなっていた。気づかぬうちに、手から鞘が離れていく。直後、剣が床に落ちる乾いた音が響いた。 アグリアスは、しかし、愛剣は気にも留めず、熱だけが原因ではないであろう耳まで真っ赤にした顔をラムザ首元に預け、おずおずと必死にラムザの腰に手を回し彼の言葉に応えた。 「わかっています。愚かな行為だとは。隊の長と副隊長がこのような関係になってはいけないとおっしゃったのは貴方自身ですから。 誓約を破るような形になってしまいすみません。今後、こんなことはしませんから、せめて今だけでも。」 ラムザはそうポツリポツリと告げ、実力の立つ腕前とは比例しない、線が細く美しい女性から体を離した。否、離したつもりであった。 「待て。」 その言葉とともに、彼女は掴んでいた彼の腰を離れないように強く引き付けた。 結果として、頭がアグリアスから離れ、腰より下が彼女に密接するという弓張のようになったラムザは一連の事件の後、酷い腰痛に悩まされたという。 「愚かな、お前は愚かな行為と言うのか。 …お前は、本当に鈍感な奴だ。どんな気持ちで私が、今まで貴公と接してきたか、知らないとでも言うのか。 この身を貴公に預けると、確かにそう告げたではないか。」 最初は弱弱しかった口調も、最後はラムザをキッと見上げ自らの言える精一杯の言葉で紡いだ。 同時に、アグリアスは掴んでいるラムザの服の裾を強く握りしめた。 ラムザはアグリアスの言葉に呆気にとられていたような顔を彼女に向けていた。 先程の汗が残っていたのか、ラムザの額に一筋の汗が流れた。暗い室内にそれだけが光を反射しており、アグリアスはまぶしそうに眼を細めた。 「…本当に、僕なんかでいいんですか。」 「何度も言わせるな。」 説教めいた口調にラムザは内心でくすりと笑った。 そして、精一杯気丈に振ふるまっている目の前の愛しい女性に、腰痛をなんとも思わせないような笑顔で告げた。 「わかりました。」 ラムザの答えに納得したのか、ラムザの首元でアグリアスは、うんうん、と何度も頷いた。 頷くたびに彼女の揺れる髪の臭いを感じていたラムザは、今日何度目かの意識を飛ばしそうになった。 しかし、彼は必死に耐えた。そのような事で意識を手放しては自分の、男としての面目が立たない。 彼のそのような葛藤に当然アグリアスは気付く事はなかったが、彼女は一旦顔を首元から離した。ラムザの心中には、気絶を免れた事に対する安堵と、離れてしまった事に対する寂しさが残った。 そして、ラムザに向き合わせいつもの命令的な口調で、ラムザに遠まわしにおねだりをした。 「うむ。わかったのだな。うん、わかったら、ほら。その、行動で示せ。」 ラムザは彼女の言葉に思わずくすりと笑った。彼の笑顔に感化されたのか、アグリアスもラムザにつられるように笑った。 そして、和やかなムードが部屋を包み込む中、二人の姿が再び重なり合った。 窓がガタガタと音を立てて揺れた。 二人の空模様とは違った様相を見せている外の天候も窓に何度も雨をうちつけ、拍手で二人を祝福した、のかもしれない。 やはり彼等はどこかお節介なのかもしれない。 次の日、案の定と言うべきか、隊の長が副隊長と同じく夏風邪をこじらせた。 前日の風邪はどこへやら、ピンピンとした副隊長が隊長の看病をすることになったのだが、それはまた別の話として語られるべきであろう。 はてさて、彼女の体温を著しく上げていたように思えるものの、隊長はさながら副隊長の解熱剤というところであろうか。 この真相を知るは当人たちだけであり、疑われはするもののこの件に関して確たる証拠を掴んだ者はいなかったそうである。事実は闇に消えた。 ただ、アグリアスがラムザと二人きりになると手を繋ぐようになったという事実は残った。 以来、風邪という単語を耳にすると幼少期の奮闘、そして甘い甘い、朝食で彼が飲んだミルクの味がアグリアスの記憶から引っ張り出されるようになった。 こうして、雨降る巨蟹の2日、幼き頃と変わらぬ生真面目さと純粋さを持ち合わせた騎士は、 酒樽で、あるいはワインセーラーで大切に保管していた自らの思いを成就させることができたのであった。 ――――――― 「プレゼントがあるんですよ、アグリアスさん。」 「本当か!?今だから言うが、昨日は少し期待していたんだぞ。(わくわく もそもそ)」 「すいません。ですが、渡す機会を損ねてしまって。」 「いいんだ。(ごそごそ) …これは?」 「双眼鏡と呼ばれるものらしいです。昨日、アグリアスさんが突然、機嫌を悪くされたのは星空をよく観察できないからだと思って。 ほら、見てください。遠くまでよく見えますよ!」 「……」 二人の意思疎通がお互いに絡み合うようになるには、今暫くの時が必要であった。 fin.
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麻生太郎ファンクラブ5 1-100 101-200 201-300 301-400 401-500 501-600 ■ 701-750 751-800 801-900 901-1000 601名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)00 19 59ID QEiHEfcd0 コピペ野郎は ただの腰抜けばかりってことですよw 602名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)01 12 16ID D4QjQERY0 しかももうネンネしたみたいねw 600 そのスレ読んでないけど中国の掲示板で麻生批判って、 中国に関しては「共存じゃなくて共益」って言ってるし その意味では中国の経済成長は歓迎のスタンスなのにね。 元々タカ派じゃなくて中道の人なんだし、強硬姿勢一辺倒じゃない所も魅力と思うから 一部の嫌韓嫌中な人達はガッカリしたりしないかちょっと心配になってくる。 まあ期待通りの部分もあるだろうから大丈夫かな?w あとこの写真にトロけた。 http //sankei.jp.msn.com/photos/politics/situation/080902/stt0809021122003-p7.htm 603名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)01 18 18ID vwZweCTMO 太郎さんが総理になってもマスゴミと無能野党と工作員が叩くだろうから嫌だなあ 頑張ってよ・・・ 604名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)01 21 29ID FxOCGP910 もう飽きてきたからそろそろ たくさん変えたい 605名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)01 26 00ID ZLYZD7ixP 602 あああ私も同じ写真にとろけましたよー 吸い込まれそうな目だ・・・ 待受にしたよ。 606名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)01 48 21ID lfGP+MgC0 麻生太郎が総理になって、選挙制度を変えて大統領制にして初代大統領に って夢を見た。 607名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)02 04 16ID t5pNutmG0 605 602ってまさか麻生じーさんで、そのコメントじゃないよな?w? 606も含めて基地外工作員がうじゃうじゃだな 608名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)04 19 19ID WJmzje020 ここもやたらとキムチ臭くなったな 609名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)07 38 35ID CIIgsTwl0 タロちゃん安置の方が、余程工作員に見える バロスwww 610名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)07 57 02ID 0/X3dCJR0 私は普通に応援してるよ。 麻生さん頑張れ〜! 611名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)08 03 42ID SkePJpjA0 麻生さんが総理になって 実際に生活がどう変わるか期待している。 612名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)08 05 25ID XwhzKIrr0 それも総選挙に勝ったらの話だけどね 613名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)08 46 15ID Fvw9KlPzO 599 鴻池のおっさんは、何かあったらダンビラ抜きかねないとこがたまらんw 614名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)08 58 03ID ZBK/h4dq0 日本人が今こそ試させられてるんだと思う 嘘だかホントだか きちんと確認もしないで ネガティブ情報を鵜呑みにするような人たちが たくさんいるからね せめて仲間を背中から撃つようなマネだけは 今度は絶対にしない 太郎を信じる 615名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)10 06 05ID mZvatHLZ0 【不払い・成果承認拒否】 楽天アフィリエイトは間引き詐欺します。 楽天アフィリエイトは誤魔化し詐欺します。 楽天アフィリエイトは報酬不払い詐欺します。 楽天(社長=三木谷浩)は詐欺会社です。 死ねクソ野郎さっさと死ね詐欺野郎 死ねクソ野郎さっさと死ね詐欺野郎 死ねクソ野郎さっさと死ね詐欺野郎 616名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)12 54 40ID FQk0Frn20 http //blog.goo.ne.jp/toidahimeji/ 皇国の興亡この総裁選にあり(水間政憲) 2008-09-0209 31 06 皆さん。すでに御承知のように、 福田首相が辞任しました。9・23の決起以来、 麻生太郎氏を応援し続けてきた覚醒しているインターネット住民の皆さん。 この総裁選は、日本解体をギリギリのところで、阻止できるかどうかの戦いになりま す。 1000万移民を推進する中川秀直、小池百合子、小泉純一郎連合軍 との総力戦になります。「9・23」と「3・10」に集結していただいた 皆さんにお願いがあります。 メディアは、小池百合子を応援することは想像できます。 そこで、メディアによる麻生包囲網が構築される前に、 全国の自民党支部、自民党支持団体、国会・地方議会の自民党議員の ホームページ並びにブログに麻生太郎議員への支持を訴えましょう。 麻生太郎議員が首相になることは、反日三法案 (1000万移民、平成の治安維持法、外国人参政権) をまとめて潰す千載一遇のチャンスなのです。 日本をこのまま終わらさないために、 この一戦で勝利の「Z旗」を高々と揚げられるように 渾身の力を出すときなのです。 皆さん頑張りましょう。 ジャーナリスト水間政憲。転載フリー 617名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)13 06 16ID JupjXOOH0 あんまりこういうので まとめられたくないなぁ… 自主的に応援していけばいいと思う 618名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)13 11 02ID VHa6x+Xz0 「麻生適任じゃない」71%…TBSラジオ番組で調査 予想外の不人気振り http //namidame.2ch.net/test/read.cgi/news/1220414652/ 619名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)14 13 05ID yGPy+3Oz0 TBSがそういうなら日本の為になる総理って事だな 620名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)14 42 34ID rZsa4rS90 麻生叩きが始まったな・・・安倍といっしょ。 売国中川が推す、小池になってもらいたいんでしょ、売国TBSは。 621名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)15 14 50ID d+iO1wtn0 総理になっても次の衆院選でどうせ野党の党首になっちゃうわけでしょ? なんか貧乏クジじゃない? それとも今回を逃したらもう総理のチャンスないの? 622名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)15 22 55ID mDF1PlxkO 618 何でまたTBSがやるのかね。 その調査結果の殆どはかの国の人だろうし。 まぁ麻生か石原がなるならどっちでもいいや。 小池はいらん。 623名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)15 27 57ID vfybLcK5O あいつはいらないこいつはだめだ 頷ける部分はあるんだが対立候補出さないとね 禅譲密約でタロサはおろか党自体がマズー 624名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)15 37 55ID N5AOyeaz0 618の投票、私は「適任だ」に投票したんだよぉ。・゚・(ノД`)・゚・。 時間が夕方だし、聴取層はネットやってないようなオジサンオバサンばっかりの番組だから仕方ないかなと思う。 あとはTBSだしね、捏造得意だしさ。なんら不思議はないって。 625名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)15 40 00ID fOPPwnq60 ノビテルはダメだろ。 バックにエロ拓がいるし、なんか頼りない感じ。 それにノビテル総理でオヤジ都知事じゃ 石原家に日本は乗っ取られてるようなもんだしなw 小池さんは売国的ではないし、的確なポストに入れたら それなりに仕事してくれそうだからいいけど バックにいるのが移民1000万推進の中川女だからな。 626名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)15 42 55ID N5AOyeaz0 622 これは毎日夕方からやってる番組で通常は金曜日に行う「国民大審判」ってコーナーなんだよ。 今回は臨時にってことで昨日火曜日に調査した模様。 NTTのテレゴングと携帯サイトを使って調査しているので、どの程度の正確さがあるのかはまったくわかりません。 ただまぁ、朝鮮人が大量に投票したというよりは 聴取層が団塊世代が多いのかなという印象だし、なんたってTBSだからこういう結果になったのかなと思ってます。 627名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)15 58 46ID s44uwiUY0 625 山崎派は 甘利さん中心に麻生さん支持で固まると思うけど。 (あそこは派閥会長が浮いてる感じ) だから、ノビテルは 昨日中川(女)と会ったりしてるわけで。 清和会が「5人続けて自派閥から出すのもまずいか」と思ったとき用の カードだと思う。 (「5人続けてでもいいや」と開き直れば、そのまま小池ゆりりん出すかと) 628名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)16 04 46ID fMFuo3hT0 621 まずない。 麻生も結構な年だし、あの少数派閥では誰もやりたがらないような時じゃないと総裁にはなれない。 つまり、今しかない。 629名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)16 06 09ID bbecm0OE0 602 私がタロサに惚れたときと比べるとちょっとだけおでこが広くなったけど、 それでも素敵だわ。 野中ジジイの意地悪には負けないでください。 630名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)16 26 19ID sf5YMoJV0 有事、乱世に立つ男 私は日本を大切にしたいから太郎を応援する がんばれ! 631名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)16 36 42ID s44uwiUY0 今、世界中できな臭いから、 しっかりリーダーシップ取れて 各国首脳と対等に渡り合える総理が必要だと思う。 それだけに、麻生さんが総理になってくれれば 一番いいんだけどな。 632名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)17 08 51ID d+iO1wtn0 麻生vs小池で決まり? 633名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)17 22 03ID wuZ1VTwx0 ここは何人の糞工作員が導入されてるの?? ジジィのことを『タロサに惚れ〜』とかキモすぎだっての!!!!!!!!!! 634名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)18 03 52ID eKWLM7Ui0 人の好みにケチつけんなよ 635名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)18 09 21ID ZLYZD7ixP 年齢は関係ないです 636名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)18 23 31ID 0oT+GYmS0 若いというのは特権だけれど、悲しいことに絶対的好条件にならない。 もてない若い男性もいる。 それが現実。 若いころにもてたが今はもてない男性もいるだろうし、年をへてもてはじめた男性もいるだろう。 麻生さんは、若いころからずっともてたタイプだと思うけれどね。 麻生さん、かっこよすぎ。中身も外見も。 637名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)18 23 55ID 1sZvrLZb0 なあ、このスレのみんな。 今、麻生の歩いているテレビの姿をみて、急に感じたんだが 「口」の曲がった、肌の浅黒い麻生って、 「猿」に似てないか?ww 「麻生猿太郎」「麻生猿」「猿」「ローゼン猿」と呼ぼうぜ、麻生のことをwwww 638名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)18 31 57ID Km6oQqEG0 工作員が必死ですね 韓国系なのかしらそれとも中国系なのかしら 639名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)18 39 49ID +UvQYVFy0 630 ほんと有事・乱世の男だよね。 内政にしても、外交関係にしても凄いピーキーな状態。 ロシアはあんなだし・・・ 640名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)18 54 45ID 4a66Fz/CO 9月末までで人気番組『なるトモ!』(読売テレビ)の司会を降板することが決まっている陣内智則。 降板の真相は陣内の度重なる遅刻に共演者・スタッフがキレた、というのが真相のようだが、 実は最近の陣内は心身ともにボロボロで仕事ができるような状態ではなかったという。 「ただでさえ紀香との夜の夫婦生活がうまくいっていないのに、ここに来て陣内の“元カノジョ”である セクシータレントが陣内に厳しい追い込みをかけてきてるんです」(テレビ関係者) そのセクシータレントとは、元トップAV女優の及川奈央だという。 「もともと陣内が状況したときに、東京の遊び場所を案内したり、身の回りの世話をしていたのが及川なんです。 彼女は、陣内との結婚まで考えていたそうですよ。ところが、何の別れ話もなく陣内とは連絡が取れなくなり…… しばらくしたら紀香と結婚発表でしょう。及川が怒るのも無理はないですよ」(芸能プロ幹部) 未だに及川は陣内への恨み節を周囲にこぼしているというだけに「年内にも、タイミングを見て及川の衝撃告白 が週刊誌などに出るかもしれませんね。そうなったら、さすがの吉本興業も陣内をかばえないでしょう。 紀香との離婚にも発展しかねないですよ」(前同)という。 陣内はこの危機を脱出することができるのだろうか。 http //www.cyzo.com/2008/09/post_907.html 641名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)19 01 43ID TqvTw7GP0 野中と加藤と古賀とエロ拓が推す人はイヤ 642名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)19 17 03ID d+iO1wtn0 なんかマスゴミが麻生が本命って連呼するたび 麻生総理が遠のいていくような気がしてなんだかな〜 643名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)19 21 34ID rZsa4rS90 642 っていうか、 マスゴミが小池ばかり追いかけるから、 麻生が霞んじゃっている気がする。 正直、小池だけは勘弁してよ・・・ 644名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)19 27 07ID 8Ohj19f50 643 それも作戦かもね 曖昧なままだとずーっと張り付いてくれる。 実際今TVは「本命麻生の対抗馬は?」って感じで 麻生さん以外の人を取り上げて番組作ってるからね 645名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)19 39 47ID d+iO1wtn0 絶対麻生さんに総理になって欲しい。 一主婦に出来る事なんて祈るぐらいだけど。 646名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)19 40 52ID s44uwiUY0 643 どうなんだろね。 清和会の動向を追いかけてると、 早々と自主投票を決めたとはいえ、 自派閥から候補者を出すことに抵抗あるのは 結構いるみたいだよ。 「自派閥から出た首相が、2回も突然の辞任で党に迷惑を掛けた以上、 今回は自粛すべき」 「さすがに4人続けて首相出してるし」って感じで。 小池を担ごうとしているのは、清和会の中でも中川(女)に近いグループだけだし、 そのグループの中でも「さすがに派閥内からは自重」っていうのは 結構いるんじゃないかと。 647名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)20 04 58ID uFc4il6X0 また、マスコミの偏向報道と捏造が始まるのでは?と思うと 気が気じゃない。 売国勢力が、消えてくれれば日本もよくなるのにね。 648名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)20 17 44ID 7bBAfEnO0 本当に凄い数の工作員でファンを装ってるんですね。 これも税金使ってるんですか?? 649名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)20 18 06ID t7LSEoQ20 647 既に幾つか偏向報道ありましたよ マスゴミは麻生さんのことがよっぽどお嫌いなようで 650名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)20 29 48ID LDzWlZxE0 告示日までどうなるか分かりませんね 誰が出るのか、断念するのか… 651名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)20 39 45ID DpoELZEn0 こんな団体あったんかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 【総裁選】アキバ系を統率する団体としては最大規模の互助会『AOA』、麻生氏支持を表明 http //society6.2ch.net/test/read.cgi/river/1206280794/ 652名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)21 27 06ID wHhs0KQTO 太郎がんばれ! 機は熟した 653名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)21 28 47ID Oso7kFq00 やっぱ格好いいね ttp //d.yimg.com/us.yimg.com/p/rids/20080903/i/r4070997366.jpg 654名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)21 29 47ID ZCXDBCIl0 私も太郎さん応援する。 選挙なんてほとんど行かない主婦ですが、 この動乱の時期、何かあれば、自民党に票は入れる! 太郎さんは遠くの空から応援してる! 655名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)21 33 48ID St52KRI70 偏向報道があればあるほど 太郎さんじゃなければダメなんだと実感。 656名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)21 36 50ID YwVkiTis0 小池は推薦人20人無理なんじゃない? 森がシャブとコイケの動きに不快感って あたりまえよね。 がんばれ、森!!(・・? 657名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)21 41 33ID ZCXDBCIl0 なんで日本の首相を決めるのに よその国に配慮して、立派な人をつぶさなきゃいけないのか分からない。 なんで自分の国の首相を決めるのになぜ? 658名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)22 20 45ID IChOF84g0 麻生さん好きだったけど、創価と手を組んだのが間違い。 あれでかなりの人気を落としたと思う。 今は応援しようかどうか?微妙 659名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)22 24 13ID ZCXDBCIl0 中韓が猛烈反対ってことは日本にとってはイイのだとおもうよ。 あの民族の逆を行けば間違いない。 660名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)22 24 57ID rfeiEUDu0 私は応援するよ。 公明に魂を売ったとは思いたくない。。。 661名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)22 29 15ID L1O8bKIp0 自分も麻生さんがいいと思っているんだけど、 こんなねじれ国会の中、何も麻生さんの力を発揮できないから、 あと、一年半ぐらい後の方が良いと思うんだけど。 麻生さんにもっともっと色々な法案を決めてもらいたいし、 どんどんシビアにやってもらいたいのに、今の状況だと 麻生さんの良さが消されちゃうような気がして。 自分は若年層に名が通る候補として、山本一太か、石破元防衛大臣 がいいと思うんだけど。 662名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)22 36 44ID ZLYZD7ixP 体力チェックでは40代前半並らしいけど、あと半月で68歳だからね。 いつまでも温存じゃ気の毒。 できるだけ元気なうちに総理になってもらいたい。 孔明・層化は自発的に支持してくれてるだけでしょう。 逆に彼らが支持していることで、次の選挙が心配な議員たちが 票欲しさに麻生支持にまわるかも・・・って虫が良すぎるかな? 663名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)22 45 39ID bYsjYWJX0 一年半後だと確実に民主政権ですが何か。 664名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)22 48 27ID bYsjYWJX0 658 公明の定額減税に真っ先に反対したのが麻生幹事長。 公明は与党でありたいから人気のある麻生にすり寄り、麻生は利用出来るものは利用しているだけ。 手を組むって表現自体が間違い。 665名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)22 54 14ID j0lqxGLEO こんなに風雲急を告げる事態になってるのに ひめくり神さんの更新が見られないのがさびしいな 666名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 00 41ID 04mrn+B30 661 本気で言っているの? 山本一太か、石破元防衛大臣 間違いなく民主政権誕生なんですが。 667名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)23 02 04ID WrLBzcBo0 これを聞いて麻生総理を応援しよう! http //www.nicovideo.jp/watch/sm345104 668名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 09 01ID wUaZ6jZR0 658 こんな記事もありますが。 連立を組む公明党内にも“麻生アレルギー”が存在。同党の太田代表に近い人物は「党としては静観の構えをみせているが、公明党が提言した定額減税に真っ先に反対したのは麻生氏。そのしこりは消えていない」と強調。支持母体の創価学会内でも「選挙の実動部隊である婦人部を中心にタカ派の麻生総理誕生は好ましくないとの意見が出ている」という。(抜粋) 669名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 23 20ID s44uwiUY0 656 小泉チルドレンをある程度巻き込めれば 20人は揃うと思う。 670名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 23 39ID M2cWiuIQ0 663 半年後には民主政権だろうけど その1年後まで持つかどうか。 671名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 25 27ID wd5LAVqI0 そんな記事もあったんだね 浜四津氏のコメントだけ取り上げて 「創化・公明は麻生支持!」てのを作りたいんだと思ってた 672名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 29 59ID L1O8bKIp0 次の総選挙には皆自民党と書きましょう。 小選挙区の方には自民党員の名前を、比例区には自民党の名前を 書かなきゃ駄目だよ。 一年半もたせなきゃ。 ここで民主党が政権をとるって行っているやつってなんだろうって思う。 麻生太郎のファンなら自民党を応援するのが常だろう。 麻生さんのいる自民党大好きにならなきゃ駄目だろう。 若者が選挙に行かないから高齢者、壮年層の思うがままの動きになるんだろう。 皆選挙に行こうぜ。 若者皆で行けば良いと思うよ。 皆、小選挙区は自民党の候補者。 そして、比例区は自民党の名前。 を忘れずにな。 673名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 34 05ID 7IFT6CkN0 出来レースはつまらんね 例によって、マスコミは煽るんだろうけど 麻生も化けの皮が剥がれたし というか、創価と組んだらダメでしょw 674名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/03(水)23 56 08ID 4a66Fz/CO フジテレビも、去年自民党総会で謝罪させられた麻生さんのクーデター疑惑の件を強調して報道してた!! 675名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 58 43ID RhzbkDBu0 出来レースではないよ。 山崎、加藤、古賀の新YKKが反麻生包囲網をしこうと画策してる 前回福田を担いで失敗してるのに。 中川は小池を担ぎ出そうとしてるし。 肝心の町村派は自主投票だしまだまだ予断は許さない展開だよ 676名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/03(水)23 59 59ID RhzbkDBu0 ■おすすめ2ちゃんねる開発中。。。byFOX★ このスレを見ている人はこんなスレも見ています。(ver0.20) 【ねがわくば】麻生太郎研究第131弾【お前の膝にてわれ死なん】[ニュース極東] 【毎日の記事だから】麻生太郎研究第132弾【信用が無かったとか】[ニュース極東] 【リーダーシップは】麻生太郎研究第133弾【取らねばならぬもの】[ニュース極東] 【酒】中川昭一研究第九弾【チューリプ】[ニュース極東] 「麻生太郎」首相を実現しよう@議員板 12期目[議員・選挙] つーかなんだこれwwwww 677名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 00 11ID H04P5DJx0 コイツが総理になったら、民主に政権とられます。 678名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/04(木)00 02 03ID rvg0IQhBO 672 お前みたいな馬鹿男がスレに書き込みするから麻生アンチがわくんだよ 引っ込んでて欲しい 679名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 13 13ID 9RXFo8sF0 672 誰の影響かと言われれば、 お前らみたいな仕込の麻生爺ファン♪が こんな所で書き込んでるから、叩かれるんだよ。 だいたい、不自然すぎるんだよ! あのジジィが素敵だの、見つめられたらどうのって。。おえっ お前ら、どんだけ無理な工作してるかわかってないのなww 680名前:679メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 18 44ID 9RXFo8sF0 672じゃなくて 679の変態へのレスな 681名前:可愛い奥様メェル:0投稿日:2008/09/04(木)00 18 49ID fwE99eTJ0 バラマキ麻生は日本の将来のために出馬しないでください。 682名前:689メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 21 21ID 9RXFo8sF0 あはははh ここの工作員がキモすぎてレス番まちがうわ。 679は 678のド変態へなw 683名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 21 22ID fx5RAmQu0 だからと言って 小池や石原伸晃じゃ問題外なんだよな。 684名前:おたく名無しさん投稿日:2008/09/04(木)00 29 13ID YV5eJXKM0 _______________ |麻生炭鉱 強制連行 | :検索  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 、z=ニ三三ニヽ、 ,,{{彡ニ三ニ三ニミヽ }仆ソ `´ ーー ""`ヾミi lミ{ ニ==二 lミ| /) {ミ| ,=、、 ,.=-、 ljハ // / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ {t! ィ・= r・=, !3l /つ^^ヽ | ツマンネーこと検索すんなよ `!、 ,イ__ヘ l‐ / テノノノ < 愚民が!! Y{ r=、__`jハ/ / / \____________ / / _____ (⌒) / | | ̄ ̄\ \ ,-r┤~.l / | | | ̄ ̄| rf.| | ヽ / | | |__| .lヽλ_八_ ,, ̄) |__|__/ / `ー┬‐-ー  ̄) | ̄ ̄ ̄ ̄| 〔 ̄ ̄〕 685名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 31 43ID ohOQg1Q60 ファンスレでネガキャンなんかしても、かえって燃え上がってしまうだけってことがわからないのかしら。 686名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 41 23ID vTjiiY2b0 創価と組んだから無敵タロウをナメんなや 687名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)00 52 32ID PZIsDzao0 創価の婦人部は麻生が嫌いですが。w 688名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)01 15 41ID MrKsn5t50 創価と組んで福田を背中から刺す! これ去年の安部さんクーデター事件と変わらないじゃん? 麻生は相変わらず腹黒冷血だね。 韓国を敵にまわしたり、逆に韓国トンネルでは韓国に媚売ったり。 宮崎勤事件では散々漫画アニメを批判してた奴が、人気取りで秋葉のヲタに「漫画アニメいいよなぁ」と媚売る卑しさとか。 本当にポリシーがない奴だよね。 ミーハー馬鹿女と違って、ちゃんと見てる人間には通用しないよ!! 689名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)01 22 31ID Ev0whTIC0 こんなところにきてまで… よほどヒマなんですな 690名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)01 30 20ID hx0JvSuJO 684 このおたく名無しって昨日も居たね 691名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/04(木)01 54 01ID vQZqmK0N0 麻生さんに総理になって欲しいなら地元自民議員にメールを送りましょう。 「麻生総理を生む気が無いなら自民党には入れない」と。 実際もう麻生さんしか居ないでしょう‥国益一番に考えてるのって‥ 中韓と野中が大反発してるし何よりの証明。 692名前:加齢臭が香水メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)01 55 58ID HnCTvoWo0 この時間に2ちゃんねるをやっている奥様は水商売とかでバイトでもしているのですか? 加齢臭が香水で水商売、ご苦労様です。 693名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)01 56 04ID waF035zq0 口がひん曲がってるからイヤだ。 694名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)02 42 51ID PZIsDzao0 692 じゃアンタはなんなの??????? 695名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)03 06 48ID oQyEg7+g0 毎度ながらアンチのこのワンパターンかつ低劣さは何なんだろうな。どういう教育受けたらこんなに脳みそが腐るんだろう。 696名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)03 08 30ID VuXKbqZj0 なんか、何のためにここを荒らしてるのか本気でわからないな。 多少でも政治に興味がある奥様方は目の前の箱で調べるから 創価だの公明だのデタラメ並べても鵜呑みにするわけないし、 政治に興味ない奥様はそもそもこんなスレ開きゃしないのに。 697名前:可愛い奥様投稿日:2008/09/04(木)04 29 33ID DoNqVXvp0 キリストのメッセージ 「最も大きな罪を犯した人であっても、わたしの憐れみを願うならば、わたしは、彼に罰を与えることが出来ない。 その代わりに、わたしの限りない、はかり知れないいつくしみによって彼を義とする」 http //www.nowaksvd.net/jp/jiai/jiai02.htm ご遺体は腐敗していなかった 日本を愛した宣教師 チマッティ神父様 http //www.v-cimatti.com/pub/cimatti/intro/intro.htm http //www.v-cimatti.com/pub/beatification/reppuku_chosa.htm 煉獄に居る霊魂の驚くべき秘訣 http //www.sanpaolo-shop.com/product/4359 キリストと会話できる女性 ヴァッスーラ・ライデン http //www.tlig.org/jp.html キリストの人生を見せられた女性 マリア・ワルトルタ http //swedenborgian.hp.infoseek.co.jp/valt.htm キリストの受難を目撃し体験した女性 アレキサンドリーナ・ダ・コスタ http //www.salesio.jp/web/sdb_saints/biography/alessandrina.htm http //salveregina.dyndns.org/avemaria/data/book2.html 病を患いながらも信仰心が篤かった女性 マルタ・ロバン http //homepage3.nifty.com/mercy/treasure/marthe01.html カトリック書店/日本国内にあるカトリック教会の住所と地図 http //www.donboscosha.com/ http //www.sanpaolo-shop.com/ http //shop-pauline.jp/ http //www.cbcj.catholic.jp/publish/shoten.htm http //www.cbcj.catholic.jp/jpn/diocese/index.htm 698名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)06 12 17ID kr7c4lyo0 695 そっくりそのまま返されると思うけどw この単発IDの工作員は本当に何??気味が悪い 麻生って本当にバカだということだけはよくわかりました ここでは『自分は主婦にモテモテ〜』像を工作してるんでしょ どこまで情けない爺さんなんでしょう! 恥を知る能力もないだろうけど 恥を知れっ!!! あえて忠告しておきますわ 699名前:可愛い奥様メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)07 07 40ID VeVbp6De0 必死だなホント 700名前:加齢臭が香水メェル:sage投稿日:2008/09/04(木)07 19 21ID HnCTvoWo0 口が曲がっているのだからチンチンも曲がっている。 麻生支持の奥様はそれにフェラチオをしたがるのだから変態そのもの。 曲がったキュウリでもしゃぶってなさい。 麻生太郎ファンクラブ5 1-100 101-200 201-300 301-400 401-500 501-600 ■ 701-750 751-800 801-900 901-1000
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第27話「14体目の戦士」 へ戻る 第28話「運命の対決」 新垣里沙の装着するG3-Mは他のライダーとは大きく異なっていた。 強化装甲という位置付けであるため、服を着るように鎧の一つ一つを装着しなくてはならないのだ。 仮面ライダーらしく一瞬で変身、というわけにはいかないのである。 しかもこのスーツ、一人で着ることが出来ない仕様になっている。 戦闘中に外れたりしないように、プロに装着をサポートしてもらわないといけないのだ。 そのため里沙はいつでも好きに変身することが出来ず、 G3トレーラーというG3-M装備を搭載した車両の中でしか準備をすることが出来ない。 これらは原作に準拠した設定となっており、 里沙がなかなかライダーバトルに参加出来なかったのはこの制約が有ったからである。 だがタチバナの技術力ならG3-Mを一瞬で変身できるよう改良出来たはずだ。 それでも彼らはあえて面倒な変身方法を採用していた。 その理由には、ハロプロ内の人事が関係していた。 ハロプロにライダーバトルをさせる計画は最近始動したわけではない。 一年以上前から始まっていたのだ。 メンバーそれぞれの特性を調査し、誰がどのライダーに適合しているか確認するのにかなりの時間を要したのである。 最後の適合者、飯窪春菜を発見したところでタチバナに悪いニュースが舞い降りる。 それは新垣里沙のハロプロ卒業のお知らせだ。 その時には既にG3-Mを里沙に合うよう改造と調整を終わらせていたので 今更他の適合者を探し出し、その人に仕様を合わせるのは無理があった。 難しい状況でも里沙にはライダーバトルに出てもらうしか無かったのだ。 だがそうなると、卒業したのにモベキマスのセンターを目指すという図式になる。 里沙のライダーが他のライダーと同条件ではどこからか不満が湧き出てしまうだろう。 そのため、タチバナはG3-Mにハンディキャップを設定することにした。 それが装着変身という手間のかかる方法というわけだ。 ライダーバトルに参加しにくい仕様なので、タチバナは埋め合わせとしてG3-Mの訓練施設を用意した。 里沙はすぐに施設を気に入り、さらにお気に入りの武器を見つけたようだった。 里沙はその武器でイクタとディエッグを倒すつもりだ。 「ちょっとぉ~梨沙子ちゃんバラさないでよ!」 いきなり梨沙子が秘密を喋りだしたのでG3は焦ってしまう。 なぜ梨沙子がそんな情報を知っているのか疑問だったが その隣にいた青年を見てすぐに納得する。 (あいつか!) G3だけでなくイクタとディエッグも梨沙子のほうを振り向く。 そして、そこにいた青年を見て驚いてしまう。二人も青年を知っていたのだ。 「幸太郎!うわ、なんでここにおるの?サイン欲しいっちゃん……」 「ノブアキさんがどうしてこんなところに?……王様ゲームの裏話おしえてほしいなあ」 「ちょっとちょっと、二人ともどうして本名で呼ばないの?」 「本名?」「えーっと」 「忘れたの!?僕ら一応共演してるんだけどね!」 青年らが漫才をしているうちにG3はイクタから距離をとっていく。 そして、これまで使っていたガトリング銃を折りたたみ、 代わりに小型のサブマシンガンを取り出す。 武器のスケールはダウンしたが、このサブマシンガンには狙いを定めるためのスコープがついている。 これでチョコマカ逃げるイクタに確実に当てようとしているのだ。 気配を感じたイクタはサブマシンガンに気づくなりディエッグに知らせる。 「あれはGM-01スコーピオン!小さいけど強力な銃っちゃん!」 「よく知ってるじゃない生田、でも名前が違う!これはチサトって言うんだよ」 ディエッグにはG3の持つ銃が危険とは思えなかった。 どちらかと言えば先ほどのガトリングのほうが凶悪に感じられる。 小さいサブマシンガンなので弱く思えたのだろう。 「え?あまり強そうには見えないんだけど……」 「あの銃はGG-02サラマンダーと合体してランチャーになるったい!」 「ランチャー?なにそれ」 「いいから気をつけて!」 イクタが言う通りにG3は「GH-01チサト」の銃身にタンブラーのような形状のアタッチメントを取り付ける。 これによりサブマシンガンはグレネードランチャーに変化したのだ。 G3はチサトのスコープを覗き、イクタに視線を送る。 このシセンからはもう逃げられないだろう。 「本当に詳しいわねぇアンタは……でもまたまた名前が違う。 そんなにかっこいい名前なんかじゃない、私のはチサトとミノリって言うのよ。」 G3は引き金を引き、グレネード弾を発射する。 「GH-01チサト」の命中制度と「GM-02ミノリ」の爆発力が組み合わさっているので、 高い確率でイクタのスーツを爆破することが出来るだろう。 それだけは避けたいとイクタは必死で逃走するが、 行動パターンを理解しだしたG3にとって当てるのは難しいことではなかった。 イクタの行き先を先読みして、そこにランチャーをぶっ放したのである。 このまま進めば順調にイクタに着弾するだろう。 G3がそう思った時には、ディエッグはすでに生写真を銃に挿入していた。 『ハローライド・タムラメイミ!』 「まゆげ、ビーーム!!」 芽実の眉毛から閃光が放たれ、グレネード弾を空中で爆発させてしまう。 危機一髪だったのでイクタはディエッグに感謝する。 「わぁ!みずきありがとう!」 「ふふふ、任せて」 ディエッグは偉大な先輩を召喚するほど負担増になると以前書いたが、 逆に言えば同期や後輩ならそれほどコストを使わずに呼ぶことが出来るということになる。 9期10期、そしてスマイレージ2期ならば省エネ可能だとディエッグは考えたのだ。 もっとも、同じカードを間をおかずに使用することは出来ないので 鞘師里保、石田亜佑美、佐藤優樹、工藤遥、田村芽実以外の新メンバーを使わなくてはならない。 残りの生写真をどこで使うかがディエッグの腕の見せ所だ。 好機を見出したディエッグに対して、G3は浮かない表情をしていた。 (なかなか良いビーム出すじゃないの……ちょっとやばくなってきたわね) G3は芽実の映像にグレネード弾を落とされたので、焦燥感を感じてしまう。 まさか過去に自分が使った技にしてやられるとは思ってなかったのだ。 だがG3にはまだ武器が残されている。 ビームを受けても平気で、かつ確実にダメージを与えるウェポンを使えば良いのだ。 G3は右手に新たなアタッチメントを取り付ける。 その武器は先端がモリのように尖っていた。 「GA-04アンタレスっちゃん!みずき気をつけるっちゃ、あの武器は伸びる!」 イクタが言うが早いか、G3は右手に取り付けられたモリを芽実に向けて発射する。 尖った先端と右手はワイヤーで繋がっているので、 まるで新体操の選手が長いリボンを操っているかのように見える。 ワイヤーはビームを貰ってもブレることなく、芽実を一突きして消滅させてしまう。 「アンタレスじゃなくてカオルよカオル。」 G3はGT-04カオルが取り付けられた右手に力を入れて、ワイヤーの軌道を変更する。 次の狙いは芽実の近くにいたディエッグだ。 モリの先端がディエッグ目指して飛んでいく。 (怖い……でもこれくらいなら受け止められる!) ディエッグは飛んできたモリを両手で掴み、ロックしてみせる。 動きを止めてしまえばなんてことないと考えたのだ。 だがこの対応は悪手であった。 「みずきダメ!離して!!」 リボンを扱う要領でG3はワイヤーをぐるぐると回していく。 その結果GT-04カオルはディエッグの腕に巻きつき、ガチガチに固めてしまった。 ディエッグはロックしようとして、逆に自分がロックされたことになる。 それを確認したG3はワイヤーをさらに大きく回していく。 その回転はとても力強く、ディエッグは全身引っ張られてしまう。 一回転するたびに地面に叩きつけられるので、ディエッグのスーツがどんどん破壊されていく。 「うっ……」 リィサーコ戦での蓄積もあるので、ディエッグの耐久力は限界に近づいていた。 これはまずいと思ったイクタは逃げるのを辞めて、 G3目掛けて一直線に前転運動を開始する。 加速してからのキックをぶつければ大ダメージを与えられるとイクタは考えたのだ。 ところがG3は、イクタが迫ってくるというのに焦りの一つも見せない。 (まったく生田は単純なんだから、思った通りに動いてくれちゃって) G3はイクタが近くに来るように仕向けていたのだ。 ディエッグに集中して隙を見せたのも、全てはイクタを倒すためだ。 G3は手に取り付けていたGT-04カオルをすぐに取り外し、 右手に巨大なノコギリ状のソード、左手にコンバットナイフを装着する。 そしてキックを繰り出すイクタに刃のカウンターを喰らわせるのだった。 二刀流の威力はすさまじく、イクタのスーツを深く切り裂いてしまう。 「うぁっ……」 「残念生田、私は銃よりこっちのほうが得意なのよ。」 G3の斬撃にやられたイクタは弾き飛ばされ、地面に倒れこむ。 ソードとコンバットナイフをG3が扱うというのはイクタも知っていた。 原作ではGS-03デストロイヤーとGK-06ユニコーンという名前だったことも記憶している。 しかしそれらの武器は作中での活躍がいまいちであったため、印象が薄かったのだ。 イクタの中ではG3は重火器をメインウェポンとするライダーとなっていた。 少なくともソードとナイフでバリバリ近接戦闘を行うようなライダーでは無かったはずだ。 だというのにG3がいきなり剣術スタイルを取り出したので、 イクタは対応しきれず斬られてしまったのである。 だがイクタは斬られながらもあることを感じ取っていた。 それを確かめるためにイクタはG3に質問をする。 「やっぱり新垣さんは凄いです……ところで、一つ聞いていいですか?」 「ん?言ってごらん」 「今、新垣さんが使ってる武器ってなんて名前なんですか? デストロイヤーやユニコーンじゃないってことは分かるんですけど」 「おぉ~学習したじゃん、そう、私の武器の名前はユキノとジャンヌって言うのよ。 剣がユキノでナイフがジャンヌね。」 「!!……そうですか、分かりました、戦いを続けましょう」 「よぉし、かかってきな」 ソードとコンバットナイフの名を聞いてイクタは確信した。 だがその確信は、イクタがG3に勝つ確率を大きく下げる要因にもなっていた。 (えりがハンドスプリングやバトンとかの個性をライダーに反映させたように、 新垣さんも個性を反映させとるったい…… しかもよりによって、新垣さんが反映させたのは"殺陣"の技術っちゃ。 新垣さんの迫力ある殺陣で襲い来られたら勝てる気がしないっちゃね…… う~~~ん、どうしたら勝てるとよ……) 歴代モーニング娘。が本気で喧嘩をしたら誰が勝つだろうか。 上下関係完全無視の状況下では誰が最強なのか考えてみよう。 運動神経の良い吉澤ひとみが有利かもしれない。 拳での殴り合いなら根性のある藤本美貴が勝つように思える。 では、そこに木刀が有ったらどうなるだろうか? 木刀でなくてもいい、その辺に落ちてる角材の使用を許可したらどうなるか。 おそらくだが、新垣里沙の勝率が大幅に上がるだろう。 里沙は自身の出演する舞台で本格的な殺陣を経験している。 殺陣は相手を倒すことを目的としている訳ではないが それでも未経験の素人よりはずっと上手く立ち回ることが出来るはずだ。 しかも里沙はつい最近まで現役のモーニング娘。であった。 体力面ではまったく問題ないと言える。 妊娠による身体の女性化についても当分は関係なさそうだ。 以上の理由から、喧嘩最強は新垣里沙であると推測出来る。 そんな里沙が、二刀流でイクタの前に立ちはだかっている。 今のG3はさっきと違ってスキがまったくない。 どこから攻めても反撃されそうだとイクタは感じる。 G3にスキがあると思いこませるために「大スキ大スキ大スキ~~~!!」と叫びながら襲いかかるのはどうかと考えるが、 イクタはすぐに却下する。ろくなことにならないのが目に見えている。 (みずきはどうしてると?) イクタはディエッグのほうにチラリと視線を送った。 地面に何度も叩きつけられたのが効いているようで、 まだ両膝を地につきうずくまっていた。 この様子だと応援は期待出来なさそうだ。 イクタがそう感じたその時、G3は距離を大きく縮めた。 視線を送る一瞬の間に迫ってきていたのだ。 「余所見しないっ!!」 イクタは直前になってG3の攻撃に気づき、エビ反りの形でソードを回避する。 運動神経が良いだけあってその反射神経はなかなかのものだった。 しかしこの体勢ではもう一振りの刃を避けることは出来ない。 G3は下からナイフを突き上げ、ピンと張った背中を切り裂いていく。 「しまった……!」 G3は刺さったナイフをガリガリと動かしてイクタのスーツを傷つけていく。 小型な剣とは言え切れ味は十分だ。さすがはジャンヌの名を冠した武器である。 イクタはナイフから離れるため半身を上げようとするが それを阻止しようと、G3はソードを装着した腕で上から押さえつける。 イクタは無理のある体勢で上下から来る刃に耐えなくてはいけなくなってしまった。 (本格的にまずかね……はやくなんとかせんと) イクタはどこからともなくイクタキャリバーを取り出す。 剣にも銃にもなるこの武器で状況を打破しようと思ったのだ。 この武器についてはG3も知っていた。 空飛ぶリィサーコを撃ち落すため使用したのを見ていたのだ。 (これはたしか梨沙子ちゃんを撃ってた銃!まさかこの距離で撃つつもり? あ、でも剣にもなってたっけ、生田アンタいったい何をするつもりなのよ。) G3は早々に決着をつけようと、両腕に更なる力を加える。 おかげでナイフもソードも装甲の深くまで入り込むことが出来た。 さらに全身をイクタに密着させることで、イクタキャリバーの攻撃が当たらないように備える。 ボクシングで言えばクリンチのような状態だ。 G3は密着しながらも刃を押し込めば良い。 しかしイクタはある程度のリーチが無ければG3にダメージを与えることが出来ない。 G3とイクタは条件がまったく違ったのだ。 G3が刃を進ませるたびに背中らへんがバチバチ言ってるのをイクタは感じる。 ナイフはもう装着者を護るセイフティガードの表面にまで達しているのだろう。 その深さを保ちながら刀身を移動させたらイクタの重要な機構を壊せるはず。 G3はスイカの皮を切るようにゆっくりとナイフを動かしていく。 イクタはイクタキャリバーから銃弾をバンバン撃つことで抵抗するが、 完全に身体を密着されてしまっているので弾丸を当てることが出来なかった。 「無駄だよ、覚悟しな」 「うぅ……」 現役時代は何度も里沙に抱きつきたいと思ってた衣梨奈だったが よもやこんな形で向こうから抱きついてくるとは思ってもいなかった。 スーツ越しの抱擁なんて気持ち良くもなんともない。 胸に刺さるソードを止めるのに必死で、むしろ苦しい程だ。 この辛さから開放されるにはどうすれば良いのか考えた結果、 最強フォームになるしかないという結論にイクタは達した。 ライジングイクタになれば性能が向上し、G3も振り払うことが可能と思ったのだ。 しかし彼女には最強フォームになる方法が分からなかった。 以前から試しているが、一向に姿が変わらないのである。 ここでイクタはタチバナから送られた、リィサーコ参加のお知らせメールを思い出す。 そこには「リィサーコは条件を満たしても最強フォームにはなれない」と書かれていた。 つまり変身にはある条件が必要ということだ。 ディエッグにあって自分にないものは何か、イクタは頭をフル回転させて考える。 (あ、勝利数っちゃん) これまでディエッグは「オーデン」「ハウガ」の二体に勝利している。 それに対してイクタは「めん王」に一勝しただけだ。 この一勝の差が最強フォームになれるかどうかの境目である可能性は十分にある。 しかし、そこまで分かっていても今のイクタには何も出来なかった。 今すぐG3のホールドから逃れたいから力が欲しいのに、 ライダーをあと一人倒さないといけないなんてナンセンスだ。 ところが、その一勝をすぐに手に入れる方法が一つだけ残されていた。 (みずきを……倒せばいいんだ) 今のディエッグはかなり弱っている。 イクタキャリバーで狙撃すれば倒せるかもしれないのである。 背中を全て剥ぎ取られる前に勝ち星を一つ増やし、 その後すぐに最強フォームになればG3にも勝てる。 危険だし、安定感のかけらもない作戦ではあるが 試す価値が無いとも言い切れない。 イクタはうずくまるディエッグの方へ重厚を向け、 一発パァンと銃弾をを放つ。 イクタの銃弾はディエッグのすぐそばの地面に撃ち込まれていた。 外れたのではない、外したのだ。 トリガーを引く直前で銃口の向きをズラしたのである。 (倒せるわけなかよ、約束を破ったらえりは人間じゃなくなるっちゃん……) イクタとディエッグは二人で決勝戦を行う約束をしていた。 だからこそディエッグはリィサーコ戦で協力してくれたのだ。 そんなディエッグを裏切るなんてイクタには出来ない。 ましてや尊敬する新垣里沙の前ならなおさらだ。 仲間を裏切る形でG3に勝っても意味が無いと思ったのだろう。 だがしかし、イクタは勝負を諦めてはいなかった。 より不確実で、不安定で、危険ではあるが、 このピンチから脱する手段をイクタは思いついていたのだ。 ヒントを与えてくれたのはイクタの背中だった。 傷つけられてバチバチと鳴っているの聞いて、閃いたのである。 (えりはえりの力で新垣さんを倒す!! 最強フォームになれなくても出来ることはある!!) イクタは銃を地面に落とし、その手でベルト側面についているフエッスルを掴み取る。 今回選んだフエッスルは緑色の「バッシャーフェイク」だった。 イクタはそれをベルトのバックルに差し込み、音を鳴らせる。 「なにこの音!なにをしたの!」 「新垣さん……一緒にシャワー浴びませんか」 「ヒッ!?」 この音はバッシャーマグナムという名の水鉄砲を手元に呼び寄せる効果を持っている。 リィサーコの弾丸の勢いを落とす時に使った程なので、水圧と水量はなかなかだ。 イクタは水鉄砲を掴むと、すぐに上空に向けて撃っていく。 激流は勢いよく空に舞い上がり、そして滝のように降ってくる。 イクタとG3はあっという間にビショ濡れになってしまった。 イクタもG3も最新の技術で作られた機械であるため、 当然のように防水機能を備えている。 だから本来ならばズブ濡れになっても影響は無いはずだった。 しかしいくら防水性が高くても、中身の基盤が剥き出しではふせぐことが出来ない。 イクタの背中の機械は一瞬にしてショートしてしまった。 水が大量に流れ込むことでイクタの背面はショートしてしまった。 スーツ内部の機械がオジャンになるとイクタは戦えなくなってしまう。 背中が焼けただけでは全機能が停止するわけではないが、大損害には変わりない。 だが、そのおかげでイクタはG3を道連れにすることが出来た。 イクタの背中をガリガリと削っていたナイフはもちろん金属製だ。 発生した電気は伝導体であるナイフを伝わり、G3のスーツに強烈な電流を流し込んでいく。 しかも電気の通り道はナイフのみではない、滝ように降り注ぐ水流すべてが伝導体なのだ。 イクタから流れる電気がビショ濡れのG3を焼いていく。 「新垣さん!これがえりの本気です!」 「い、生田、アンタ正気なの!?」 激しく流れる電気はイクタとG3の体を行ったり来たりしている。 この電気の流れは、水鉄砲を持つ握力を失うまで続いていた。 おかげでどちらのスーツも真っ黒に焼き焦げてしまっている。 ここまで酷い損傷なら装着者の安否も心配になってくる。 梨沙子は隣にいた青年に必死の形相で尋ねだす。 「ねぇ、あれ大丈夫なの!新垣さんと生田ちゃん、生きてる!?」 「落ち着いて梨沙子ちゃん、タチバナのシステムはあの程度の電気には負けないよ。 ハロプロの子たちを傷つけないことを最優先に設計したんだ、絶対大丈夫。 ただ、あの二人の戦いはもう長くは続かないだろうね。」 イクタもG3も膝から崩れ落ち、地面に倒れこんでしまう。 スーツが弾け飛ばないということはまだ大破とは見なされていないようだ。 青年の言うとおり、ここから戦いはクライマックスへと突入する。 (手は動く、脚は……残念、動かん。 それになんだか身体が凄く重かね……) イクタのスーツはほぼ全ての機能を失っていた。 まだ一部は動作するが、まともに戦えたものではなかった。 イクタキャリバーなどの各種武器の呼び出し機能停止。 装着者の運動神経をライダーに反映させる機能停止。 跳躍のサポート停止。 メインモニターの八割が損傷。 パンチ力、キック力などの基本スペック97%減。 そして、自重を支える人工筋肉が全損傷だ。 これから衣梨奈は重いスーツを自分で支えながら戦わなくてはならない。 こうなってはもう、スーツを脱いだほうが強いのではないかと思うレベルだ。 (くっ……重い……立てたもんじゃなかよ) 戦闘用の機械がたくさん詰まっているスーツは重くて当然だった。 見た目はスリムだが、その分密度が凄いのだ。 中学生の少女が支えられるものでは決して無く、イクタは地面を這うことしか出来なかった。 そんなイクタに対して、G3は二本の足で立ち上がっていた。 同程度の損傷だと思い込んでたイクタはひどく驚く。 「新垣さん!?どうして立てるんですか!」 「鍛え方が違うのよ、鍛え方が」 里沙はこう言っているが、実際はスーツの破損度が違うだけだった。 どちらも同じ電流を浴びていたが、 イクタはスーツ内部から、G3はスーツ外部から受けたという点で差がついたのだ。 そのためG3は立つことが出来たと言うわけだ。 とは言ってもG3の損傷だってかなりのものである。 立っているだけでフラつくし、腕の力もソード「ユキノ」を握るのがやっとだ。 こんな状況では殺陣を見せることなど出来ないだろう。 「……正直悔しいよ、生田にもっと私の剣術を見せてあげたかった。 なんでこんなに身体が重いかなあ……」 「えりも悔しいです!えりはこんなもんじゃなかですよ!! バトンも、ゴルフも新垣さんに見て欲しかったのに……もう何も出来ません。」 イクタには攻撃手段は一つしか残されていなかった。 ただのパンチ、本当にそれしか無いのである。 技術でも個性でもなんでもない原始的な攻撃でしか勝つことが出来ないのだ。 G3は一歩一歩イクタに近づいて行く。 先ほどの足捌きと比べると笑ってしまうような遅さだが、 歩くことが出来ないイクタにとってはそれだけで脅威になっていた。 このままでは主導権を握られてしまうので、イクタは地を這って前進していく。 鉄の塊を身につけてほふく前進をするようなものだが、なんとか移動することが出来た。 しかし、これがいったい何になると言うのだろう。 G3のところに着いたところで何も状況は変わらない。 足を殴るくらいしか出来ないイクタに対して、G3は剣を持っているのだ。 リーチも破壊力も段違いすぎる。 「生田……もう観念しな、アンタにはまだ早すぎたのよ」 G3は地面を這うイクタを攻撃するために、刃を下にむけて倒れこむ。 ヘナチョコな剣術しか使えなくても、重力を利用すれば速い斬撃を放つことが出来るのだ。 ほとんどソードを落とすような形で、イクタの肩を傷付ける。 イクタの装甲はかなり脆くなっており、ただソードがぶつかっただけで派手な火花を散らしてしまった。 そしてスーツが弱体化しているのはG3も同じだ。 勢い余って顔から地面にぶつかってしまい、全身が破裂音とともにスパークしてしまう。 その様はまるで地雷でも踏んだかのようだった。 イクタの肩を壊しただけで全身にダメージを受けるのはまったく割に合わない。 この程度で傷つく己の弱さにG3は驚きを隠せなかった。 (なにこれ、私こんなに弱ってるの!? なるべく反動が来ないように戦わないといけないのね……) 少しの衝撃で破裂してしまうのならば、 イクタの弱々しい攻撃を受けてもダメージが大きいのではないかとG3は考えた。 それならばここは一旦離れるのが得策だ。 まだ動く脚で距離をとろうとG3は起き上がる。 しかしイクタがそれを許さなかった。 千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないのだ。 上半身に力を入れ、G3の右足に飛びかかる。 飛びかかったとは言っても30cmも跳べていなかったが、 足を掴むとという目的は達成出来た。 「逃がしませんよ新垣さぁん……」 (相変わらずね生田、その執念にはホント頭が下がるわ) イクタはこれが好機と足を叩こうとするが、 それより先にG3に左足で顔を蹴られてしまった。 その衝撃で、イクタの仮面とG3の左足のどちらも火花をあげて炸裂する。 「ぎゃあ!」 (生田、許して!!) 里沙にとって後輩の顔を蹴るなんて不本意でしか無かったが ここで負けるわけにはいかなかった。 いや、正確にはイクタを勝たせるわけにはいかないのだ。 イクタから離れることに成功したG3だったが、その胸の内はモヤモヤしていた。 自分の行為は「逃げ」だったのではないかと思ったのだ。 後のことを考えての戦略的撤退であるので恥じることは何もないし、 ここから巻き返せば良いだけの話なのだが、 まっすぐぶつかってくる後輩から退いたことに負い目を感じてしまったのだ。 (生田、ボロボロだったじゃん……なんで私は逃げたの? 逃げなくても勝てたんじゃないの?先輩なのに、なっさけない。) 考えなくても良いことを考えてしまうことで、G3に隙が生じてしまった。 そのせいで、突如後ろに出現した謎の存在に気づけなかったのだ。 凄い力で抱きつかれることで、G3はようやく存在を認識する。 「だれ!?」 振り向いた先にいたのはスマイレージの中西香菜であった。 言うまでもなく、この中西香菜は本人ではない。 ディエッグの呼んだ映像だ。 ゴリラ並の力でG3を押さえつけているのがその証拠である。 「フクちゃん!うずくまってたはずじゃ……」 「もう平気です、えりぽんに起こされましたから」 「!?」 何度も地面に叩きつけられて弱っていたディエッグだったが 自分の付近に銃弾が撃ちこまれたことが気付けとなり、復活することが出来た。 スーツはあちこち損傷しているし、エネルギーも不足しているし、 さらにグルグルと回されたことで吐きそうなくらい気持ちが悪いが イクタのピンチを無視するわけにはいかなかったのだ。 (さっきの弾丸、えりぽんはみずきを起こすために撃ってくれたんだよね。 ごめんねえりぽん、二人で新垣さんを倒すはずだったのに、私だけ休憩しちゃって…… 私にはかななんを呼ぶことくらいしか出来ないけど、きっと役にたってくれるはずだよ!) 残り少ないエネルギーを搾り出し、省エネで召喚出来る中西香菜を呼んだのだ。 香菜の映像は闘争心が弱く、他人を攻撃することなど出来やしない。 それでも相手に抱きつくことは出来るのだ。 おかげでG3の動きを止めることに成功した。 後はイクタがG3の機能を停止させるまで殴れば良い。 「えりぽん今だよ!」 声を出してけしかけるディエッグだったが、イクタの様子がおかしい。 せっかくのチャンスだと言うのにG3の方を見ていないし なにやらキョロキョロして落ち着かないようだった。 次に出るイクタの発言を聞いて、ディエッグもG3も驚愕することになる。 「見えない……なんにも見えない!!」 イクタの発言にG3は青ざめる。 自分が顔面を蹴ったから、それで衣梨奈の目を傷つけてしまったのではないかと思ったのだ。 そんな里沙を安心させるかのように青年の声が聞こえてくる。 「生田ちゃん落ち着いて!痛みとかは無いんだよね?」 「うん、痛くなかとよ」 「じゃあ安心だ、何も見えないのはイクタのカメラが故障したからだよ。 ライダーシステムは神に誓って君達を傷つけないから、心配しないで」 青年の声を聞いて里沙と聖は安心する。 衣梨奈に危険が及ぶようなら悲しみで発狂したかもしれなかったからだ。 だが当のイクタは安心などしてられなかった。 まったく目が見えなくてはG3の居場所を突き止められない。 居場所が分からければ殴ることなど出来ない。状況は最悪だ。 G3の声のする位置を耳で探ろうとするが、それも難しい。 外部の音をスーツ内に入れる機能までもが壊れかけているのかもしれない。 (どうしよう本当にわからん……あとちょっとなのに!) イクタの困惑をディエッグは感じ取る。 本当ならディエッグ自らG3にトドメをさしたいところだが あいにくにもエネルギーが枯渇寸前で動くことが出来ないのだ。 聖には衣梨奈のように重い鎧を気ながらほふく全身をする体力も無いため そこに突っ立っていることしか出来なかった。 そんなディエッグがイクタを助けたいと考えた結果、ある方法を思いつく。 「えりぽん!みずきがえりぽんの目になるよ!!」 「みずき……」 「えりぽんから見て、1番!黙ってキスでもしろ!香音ちゃん!」 「はぁ!?……あぁ、そうか!」 (フクちゃんいったいどうしちゃったの?) 背中にまとわりつく香菜の映像と格闘しながら、G3は疑問に思う。 イクタの目になる宣言をしたかと思えば、キスだの香音だの言い出す。 傍から見ればディエッグがおかしくなったようにしか見えなかった。 だが、これは聖と衣梨菜の間で通じる暗号なのだ。 この暗号は里沙がモーニング娘。を卒業した今だからこそ通用する。 「わかったっちゃん!そっちやね!」 イクタは今居た位置から右斜め45度の方向に向かってほふく前進を開始する。 そちらはまさにG3がいる方向であった。 ディエッグの意味不明な言葉でイクタが正確に動きだしたのでG3は混乱する。 さらに、ディエッグはイクタが進むたびにメンバーの名前をあげていっている。 それもまた意味の取りにくい暗号であった。 「田中さん、あゆみん、里保ちゃん、そうそう合ってる合ってる。」 どんどん接近してくるイクタに、G3は恐怖を感じてしまう。 すぐには来ないだろうとタカをくくっていたのだが こうも円滑に来られたら早急に背中の香菜をどうにかしないといけなくなる。 膝打ちをしたり、足を踏んだりしてみるがなかなか消えてくれない。 そうこうしているうちにイクタはさらに接近してきている。 「道重さん、みずき、はるなん、そこだよえりぽん!」 「捕まえたっちゃ!!」 イクタに足を掴まれたところでG3はやっと暗号の意味を理解した。 ディエッグが喋っていた名前はモーニング娘。現メンバーのものだ。 ということは、名前の順は何かの曲のフォーメーションの順なのだ。 そういえば「黙ってキスでもしろ」という歌詞をつい最近耳にしたことがある。 (ワクテカ Take a chance、か……) G3も思った通り、ディエッグの暗号はモーニング娘。の新曲から来たものであった。 新垣里沙も知らない曲を取り上げることで何のことか分からなくさせることが狙いだったのである。 「1番」はワクテカ Take a chanceの1番の歌詞を表す。 「黙ってキスでもしろ」はその歌詞が流れる時のフォーメーションを表す。 「香音ちゃん」は衣梨奈から見た鈴木香音の位置と距離を表す。 つまり「1番!黙ってキスでもしろ!香音ちゃん!」とは 「ワクテカ Take a chance」の「黙ってキスでもしろ」という歌詞の時の「鈴木香音」の位置と距離を示しすこととなる。 だんだんとメンバーの名前が変わっていくのはイクタとG3の間の距離が縮まっていっているからだ。 香音が一番遠く、飯窪春菜が一番近い。 秋コンのためにレッスンをし続けたディエッグとイクタは、相手との距離感覚を身体で覚えていたのである。 譜久村聖は学校の勉強は苦手だが、ハロプロに関しては天才的であることを分かっていただけただろう。 イクタはディエッグに感謝をしながらG3に襲い掛かる。 「新垣さん、えりは絶対センターになりたいんです!!」 「!」 1発、イクタは重い腕をあげてG3の足へとぶつけていく。 これにより脚部が故障してしまい、G3は立てなくなってしまった。 2発、香菜ごと倒れこんでくるG3の胸の位置に頭を持っていく。 イクタの頭とG3のボディが激しく衝突し、パァンといった爆発音が聞こえる。 3発、イクタは力の入らない拳を握り締めてG3の顔に当てようとする。 同じようにG3もソードを装着した腕をあげていたが これほど近い距離ならば長いリーチはむしろ邪魔になっていた。 イクタのパンチが見事、G3の仮面にヒットする。 「えりの勝ちです!!!」 今までの火花とは比べ物にならない程の爆発が起こった。 二人とも動かなくなったかと思えば、 そのすぐ後にG3-Mのスーツが弾け飛んでしまった。 これはG3-Mが敗北したことを意味する。 「やったぁ!えりぽん勝ったね!」 勝利の喜びに酔いしれるディエッグだったが、 どうやらまたイクタの様子がおかしいことに気づいてしまう。 いくら声をかけても返事をしないのだ。 目だけでなく耳の機能まで停止してしまったように。 「えりぽん?どうしたの?大丈夫なの!?」 ディエッグの心配が最高潮に達した時、イクタはアクションを起こした。 なんとG3-M同様に変身が強制解除されてしまったのだ。 敗北以外で変身が解除されることはありえないので、ディエッグは混乱する。 「なんで?どうして?おかしいよ!えりぽん勝ったのに!!」 何が起きたのか確かめようとディエッグはケータイを確認する。 デスメールを見れば何か分かると思ったのだ。 「仮面ライダーG3-M」 が 「仮面ライダーイクタ」 に 敗北したことをお伝えします。 「仮面ライダーイクタ」 が 「仮面ライダーG3-M」 に 敗北したことをお伝えします。 第29話「もしも…」 に進む 仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈 敗退 仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音 敗退 仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退 仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞 敗退 仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退 仮面ライダーパレット / 鈴木愛理 仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖 仮面ライダーBig W / 熊井友理奈&徳永千奈美 敗退 仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退 仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀 敗退 仮面ライダー910 / 中島早貴 敗退 仮面ライダーめん王 / 勝田里奈 敗退 仮面ライダーリィサーコ / 菅谷梨沙子 敗退 仮面ライダーG3-M / 新垣里沙 敗退
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自分のベッドでのんびりくつろいでいた昼下がり。 急に騒がしくなった部屋の外。ふざけんな。イラッとする。 「…んだよ、ったく」 ドアを開けると下級兵がどたばたと走り回っている。 何かめんどくさそうなことがあったんだろうなぁと、 他人事のように思って、いやたぶん実際他人事なんだからと、無視してベッドに戻った。 『緊急!緊急!』 『集合しろ! 広場へ集まれ!』 『遅れるな! 指令を下す! 警戒態勢だ!』 …っるせーよ! 下っ端が人サマをドタバタに巻き込むんじゃねーよ。 こっちは、昨日遅くまで寝てないっつーの。 だいたい下っ端が幹部サマの部屋の前通るんじゃねーよ。 お前らが通る通路ってのは別にあるだろうが。 もうちょい、幹部サマを敬え――― ドンドンドン! 『ミティ様! ミティ様! お開けください!』 『緊急の指令の発令です! ご出席ください!』 げっ。何か来やがった。 カンベンしてくれよ、こんな騒動巻き込まれるのはゴメンだ。 お前たちだけで何とかしてくれよ。ミキはそんな性分じゃないんだよ。 ミキは部屋の窓を開けて、晴れた外へと飛び出した。 地上では混乱しまくりの下っ端が行き場を求めて右往左往してる。 アイツらほんとアホだよ。 あんなゴチャゴチャした群衆の中なんてやってられないっつーの。 だいたい緊急時にあんなにドタバタと集まって、何か指令聞かされて、 あの様子で冷静に対応できるワケないじゃん。 わーわーぎゃーぎゃーと集団でやるのなんて、ミキやっぱり得意じゃない。 こうやって、ひとりで空を飛んでる方が気楽だし。 気の向いた時にあちらさんにちょっかい出しに行って様子を探ってくる。 正直、組織の方針とは違っちゃうけど、部隊率いてリゾナンターに当たるとかめんどくさい。 ってか、まず組織率いるのがめんどくさくね? 地上でどっとわき上がる声。どうやらやっと指令が発表されたみたいだった。 ―――監視対象者、新垣里沙の脱走。 ダークネスからの離脱、リゾナンターへの完全な転換を確認。 脱走者逮捕および処刑のため、精兵による出撃を決行。 指揮を執る幹部、動員する精兵の選定、決行は本日中――― 「へー、ガキんちょが脱走、ねぇ…」 とはいえ、別に驚きもしなかった。 そんなことは時間の問題だろうと思っていた。 どう考えたってヌルい監視しかしていなかったくせに、 いざ脱走したとなって大騒ぎするとか。 そんなに大事なお客様なら、もっと丁重におもてなししなきゃダメじゃね? 相変わらずこの組織は、どこかボケてるとしか思えない。 勢いだけは一人前の下っ端兵士の集団は、 脱走者の名前が明らかになった瞬間こそどよめきが起きたけど、 処刑の意向が伝えられると同時に雄叫びを上げて士気を高めていた。 正直、ウルサイ。ヤカマシイ。落ち着けよ。 いっちょ、根性入れ直してやろっかな。何か気にくわない。 お前らみたいなのがどうにかすればあの相手に勝てるって思ってるのがムカツク。 どいつもこいつも身の程知らずもいいとこだ。 どうせお前らが寄ってたかってかかっていって勝てるような、 そんな甘っちょろい組織じゃねーんだよね。あちらさんも。 相手、誰だと思ってんの? お前らより相当強いよ? つーか、ゼッタイ勝てないよ? ミキたちみたいな幹部クラスならまだ余裕で戦えるけど、 そこらの隊長クラスじゃ、あっという間に光の彼方に消えちゃうよ? あ、それともカンタンに操られて発狂しちゃうかもよ? 「ま、せいぜいガンバレってことだ」 ミキは、まだ地上で吠えている下っ端どもと、 この下っ端を率いるであろうかわいそうな幹部に向けて呟いた。 空が青くてなんかムカついて、進むスピードを少し上げた。 * * * * * 「は?」 「と、ダークネス様のお達しですので…」 「もう一回言ってみろ」 「いや、ですから…」 ぐるりと空を飛んで帰ってきたミキを部屋の前で待っていたのは、 ダークネス様の伝言を伝えに来ていた、ダークネス様の側近。 「…新垣里沙処刑の指揮を、ミティ様にお任せすると…」 「はぁ?」 なぜか側近はますます怯えて一歩下がる。 あ、スイマセンね、この不機嫌な顔はいつものことですから。 「…ありえねー」 その仕事があり得ないんじゃない。 あのアホ下っ端どもをどうにかしなきゃいけないことが、頭痛い。 ミキは思わずこめかみの辺りをおさえていた。 ガキんちょの処刑くらい、ある程度簡単にできるだろう。 ただ、それはミキが好きなように動いて、が条件。 「それ、幹部、決定?」 「はい、命令書も実はこちらに…」 側近がもったいぶって取りだしたのは、 確かにミキを今回の指揮官に命じている文書。 そんなもんが出されてる以上、さすがに出動しなきゃいけない。 「ちなみに、動員する部隊は」 「第2部隊です」 「だいにっ…」 …よりにもよって一番筋肉バカの集団じゃねーの。 そんなヤツらじゃこのミティ様についてこれねーっつーの。 「それはムリ」 「いや、しかし…」 「動員するのは構わないけど、ミキそいつらのこと置いてくから」 「はぁ…」 「じゃないと、ミキ、この仕事お断りだから」 「いや、しかしミティ様…」 「ヤツら勝手について来りゃいいよ。ミキは空飛んで先行くし」 「これも決まってしまったこt…」 「あぁもうウルサイなっ!」 バカ正直な側近にいい加減うんざりして、 ミキは右腕を振りかざして、花瓶に刺さっていた花を氷漬けにした。 「お前もこうなりたいのか? あ?」 「あ、いえ、その…」 「じゃ、よろしく。ミキひとりで行くからね」 「は、はい、失礼し…」 言い終わるか終わらないかのうちに、逃げるようにして側近は帰った。 ミキは氷漬けの花を人差し指で弾く。 パリン、と乾いた音を立てて、花は跡形もなく砕け散った。 「マジありえねー…」 こういう仕事って、それこそ粛清人のキショいヤツの仕事じゃないの? 犯罪者を処罰するのがお得意な仕事でしょ? 何でミキなんかに回ってくるんだか。 この組織、対応もヌルいけど考えることもヌルいんだよマッタク。 粛清人の亜弥ちゃんと、マイペースなGと、銀翼の天使組ませたこともあったかな。 そんなことしたら上手く回ってくワケないじゃん。 内部でバチバチしてるに決まってんじゃん。 そこにキショいの入れたってどうにかなるはずないじゃん。 トップが考えてることは、やっぱどこかおかしい。 とはいえ、リゾナンターにちょっかいを出す程度だったミキの動きも、 今回はかなり本気でかかって、一気に仕留めて行かなきゃいけなくなる。 いつものように、お遊び気分で相手に向かってはいけない。 ガキんちょを、処刑するのがミキの仕事。 そう考えると、ミキですら自然と気合いが入る。 目を閉じて考える。 考えられるあらゆるパターンのヤツらの動きをイメージして、 自分の最大の攻撃チャンスを描き出していく。 闇色の氷で、串刺しにしてみせる瞬間を。 ミキの思考が、深く深くなった時だった。 「ミキちゃんっ!!!!!!!」 勢いよくドアの開く音ともに、大声で名前を呼ばれて目を開く。 声のした方には、息を切らせてミキを見つめている白衣の科学者。 「…なに、こん…」 「今日出た指令の…担当が…ミキちゃん、て、ホントなの…?」 ミキが何かを言うより前に走り寄ってきて、息も絶え絶えになりながら問いかけてくる。 その目は、とにかく必死だった。何かに怯えているようにも見えた。 実際、ミキの両肩をつかんだ手が小刻みに震えている。 じっとその目を見ていると、涙が浮かんでいた。 いったい、何? 正直、ダークネスにやってきてからしばらく経つけど、 いつだって冷静沈着なDr.マルシェがこんなに取り乱してる姿なんて、初めて見たかもしれない。 今日出された指令。新垣里沙の処刑指令。 それと、こうも怯えるマルシェをつなぐモノって、一体なに? …ってか、そんなのは考えるまでもなくすぐに結びつく。 ガキんちょ。マルシェ。脱走。処刑。 そこに、今ではなく、昔を当てはめれば、答えなんて自ずと出てくる。 「…ガキんちょを殺してくるのは、ミキの役目だよ」 だから、まっすぐに言ってやった。 当然、マルシェの表情は一気に青ざめていった。 「それとも、ガキんちょが死んだら何か問題あんの? もう、取るようなデータだってないんでしょ? スパイ活動中のデータは記録済み、こっちへの帰還後は最終チェックとその後は処刑。 それが元々のあいつの運命でしょ? それがちょっと早まるだけじゃん」 「やめて…ミキちゃん…」 ガタガタと身体まで震わせて、マルシェはその場に膝をついて頭を抱える。 「…マルシェさんともあろうお方が、裏切り者の脱走を手助けですか?」 なんだよ。裏切り者が2人もいるなんてどれだけメデタい組織なんだよ。 マルシェはゆっくりとミキの顔を見上げる。 青ざめた顔は涙でぐちゃぐちゃだ。 「…別に、ミキはアンタをどうこうしようとか思ってもないけど」 少し開いた窓から入り込んだ風が、ミキの髪を、そしてマルシェの白衣を跳ね上げる。 「これは、“指令”ですので。 ダークネスの幹部として、これは守らなくてはなりませんから」 「やっ、ミキちゃ…っ!!!」 ローブの裾を引かれて歩き出そうとした足が止まる。 あのマルシェが、こんなにも必死な姿。それを冷たく見下ろす、ミキ。 「ミキちゃん…、ガキさんを、ガキさんに、何か、ないの…?」 「…はぁ?」 彼女の問いかけは、あまりにも漠然としていてまったくその意味が読めなかった。 「いくら、今、敵同士だといっても、あんなに一緒に―――」 「それが何だっつーの」 何? 敵の命乞い? そんなお涙頂戴の話なんて聞きたくもない。 「だって! 処刑なんて…殺しちゃうなんて、そんな、あんまりだよ…!」 「…ガキんちょは殺されるに十分な理由がある」 「そんなの、組織としてでしょ…? ミキちゃんに、ミキちゃんの中にはガキさんの思い出はないの…?」 「そんな思い出なんて、とっくに捨てたし」 「お願いだから、見逃してあげて…助けてあげて―――」 「問答無用」 ミキはローブにすがるマルシェを振り払って窓を開けた。 無様に床に伏せる格好になったマルシェ。 いったい、何がここまで彼女をそうさせる? いや、きっと、そんなこと知ったところで得られるモノなんて何もない。 「…このことは他の誰にも報告はしないでおくよ。 だから、今回のことは、もう諦めな」 ミキの名を呼ぶ叫び声が聞こえた。けど、それにはもう耳を貸さない。 ミキにはミキの役目がある。私情は挟まないし、挟む必要もない。 けど、ミキは気づいていなかった。 マルシェがミキのことを、「ミキちゃん」と呼び続けていたことに。 すっかり、「ミティ」と呼ばれることに慣れていたというのに。 そして、もうひとつ。 マルシェのことを、「紺ちゃん」と、昔の呼び名で呼ぼうとしていたことに。 * * * * * 辺りはすっかり夜になっていた。 ミキはあのまま自分の部屋に帰る気にもなれず、ずっと空を飛び回っていた。 空高いところにある三日月。 空には他には小さな星しか見えないくせに、あの月だけは爛々と輝いている。 それが、なぜか憎たらしい。 その存在を見せつけているようで、憎い。 それなのにあまりにも美しくて、目が離せない。 あと少ししたら、ミキは敵地へと奇襲をかけに行く。 真夜中に。 ヤツらがいろんなことに備えていつでも警戒しているような戦士だとしても、 街も静まった夜中ならば、その意識も少しは薄れるだろう。 実際、昔の自分がそうだった。 警戒レベルがゼロになるわけじゃない。けど、100のままでいるわけでもない。 そんな時間帯は、やっぱり真夜中だった。 黒のローブで敵の目にも入りづらいだろう。その分、やりやすい。 …昔? なに、ミキ、何でそんなこと思い出したんだろ。 「魔女さんでも月なんて見るんスか」 不意に近くから聞こえた声。返事はしない。 どうせあの目障りな金髪がニヤニヤしてるだけだ。 せっかくひとりで考えてた時間を壊されたのがあまりにも癪に障ったから、 思いっきりそいつの顔を睨み付けるようにして振り返ってやった。 案の定、隣に滑り込んできた大剣を提げた戦士は、こちらの顔を見てにやついていた。 「…そう怒ることないじゃないスか」 「月を見てて何が悪いっつーの」 「や、悪いとかじゃなくって」 単純に疑問に思っただけ、と彼女は続けた。 面白くない。 だいたい、アンタはいつまでどっちつかずの態度取ってんだよ。 ここはダークネス。アンタは明らかにリゾナンター寄り。 アンタの力が強すぎるからこうしてこっちで飼い殺してるけど。 いい加減どうにかしろよ。正直、メーワクなんだよ。 冷たい夜空に浮かぶ涼しい表情の月。 今のミキにはないモノばっかり持っているようで、尊いじゃないか。 「青い空なんて、ダークネスに、特にミキになんて似合わないんだよ。 真っ黒なローブで全てを隠すように、夜の闇が全てを覆う、その方がミキに合う」 金髪はその髪に月光を柔らかく反射させていた。 それが、妙に目に眩しい。 「で、指令の実行、行くんスか」 「今から行ってくる。 ってか、いいタイミングでアンタが来たからまだ行けないだけ」 「ありゃ、そらしっつれいしました」 わざとおどけてみせるこの態度が、今はものすごく気にくわない。 「あたしにそういう指令なんて来ることはないでしょうけど、 どちみちそういうのが来たところで自分の性に合わないんで」 自分の部屋から見守らせてもらいます、と金髪は言った。 マルシェとは違って妙に落ち着いた様子だ。 お前だって、あいつが殺されたとしたら悲しむこともあるだろうが。 「…じゃ、ミティ様、ご武運を。―――それから」 金髪は大きな剣を背中で揺らしながら、空中でミキに正対した。 「青空だってけっこういいもんスよ。今度、見てみてください。 あと、夜空で輝く月みたいに、ミティ様の中にも“光”ってあるんスよ。 きっと、気づいていない、見ようとしてないだけで」 「なっ…」 唐突な言葉にミキは言葉を失う。 気づいた時には、金髪はもうこの場にはいなかった。 …何が青空だ。何が光だ。そんなもの、昔にミキは捨てたんだ。 どいつもこいつも、なんで余計なことばっかり言いやがる。 ミキは、むしゃくしゃする想いを胸にしながら敵地に目を向けた。 * * * * * 上空から見下ろす喫茶店には、この時間には相応しくなく灯りがついていた。 ということは、ヤツらの拠点「リゾナント」に、ガキんちょは無事に戻ったということだろう。 夜遅くまで、一体どんな話をしているのやら。 とっとと寝静まってくれてた方が、こっちとしては都合もいいっつーのに。 冷たい風が肌を撫でる。 自分の魔力がその冷気に反応して疼くのがわかった。 今か今かと、その時を待つ。そのために最善の手段を頭に描きながら。 せっかく愛すべき場所に戻ったところで、本当に運のない女よ。 スパイとして育てられ、敵組織へ送り込まれて調査を命じられ、 けれどその組織に魅入られ、あげく寝返ってみせるとはね。 捕らわれ逃げ出して舞い戻ったところだが、今度はこのミティ様が命ごと奪ってやる。 いきなり乗り込んでいって血祭りに上げてやろうか。 それとも店の周りを凍らせて、逃げ道なくしてじわじわ追い込んでやろうか。 どちらも名案だ。 怯え、恐れるヤツらの顔を見ることが出来るだろう。 けど、せっかくここまで来たんだ。 一瞬でカタ付けて帰るのももったいない。 氷に囲まれて凍えるがいい。 永遠に溶けることなき絶望の柱の中で、苦しむがいい。 ミキは、右手にありったけの魔力を注ぎ込んだ。 周囲の温度が急激に下がって、風を切る音も強くなる。 十分な力を溜め込んだ右手を見て、―――ミキは絶句した。 「…なっ、なに、コレは…」 掲げた右手に集まった魔力は、三日月の光を透かして蒼色に輝いていた。 「ど、どうしてこんなことがッ…!」 蒼い氷塊。 それは、昔のミキの、必殺の能力で――― ―――フラッシュバックするのは、意志に反して昔の記憶ばかり。 蒼い氷の槍が彼女たちを救っていた 絶体絶命のピンチで、蒼い氷柱が相手を封じることもあった 『美貴ちゃん!後ろ任せたで!』 『ガキんちょあいつの動き止めといて!』 『愛ちゃん、ミキティ、攻撃はヨロシクね!』 手を取り合って戦った、あの日の“仲間”たち――― 「今さら…、昔が、昔が、何だって言うんだ…」 氷の蒼は月の明かりを受けて、より深く蒼く輝く。 ミキは、とっくの昔にその蒼き心なんて捨てたはずなのに。 今は闇に魅入られ、闇色の氷で相手を苦しめる。 それが、ダークネスの魔女・ミティ。それなのに… 『ミキちゃん!』 『処刑なんて』 『ガキさんを』 『助けてあげて』 『見逃してあげて』 『お願いだから』 『だって、元々は』 『一緒に過ごした仲間じゃない』 『ねぇ、ミキちゃん―――!』 目を閉じればさっきのマルシェの声がリフレインする。 あの金髪が言い残した、闇の中にある光ってこれだったのか? あいつが、いったいミキの何を知っていたって言うんだ? 「…ちく…しょ……」 捨てたはずの記憶は、こんな肝心な時に頭の裏の方から這い出してきた。 ありえない。もう、ミキには闇しかないはずなんだ。 光にあこがれて光を求め、光に挑んで光に敗れたミキには、闇だけしか残っていないはずなんだ。 フラッシュバックしたもう一つの記憶。 それは、ミキがリゾナンターを離れるその日の朝だった。 誰にも言わずに離れたのに、ガキんちょは何かを悟ったのか、 わざわざミキを追いかけてきて、語りかけてきた。 味方としては、二度と会うことはないだろうと告げたミキに、 自分だってダークネスのスパイであることなんて延々と隠し通しておいたくせに、 あいつは微笑んで、こう言ったんだった――― 『ミキティと一緒に戦えて、ホント、楽しかったよ―――』 「う、う、うわああああああああああああああああっ!!!!!!!!」 ミキはその手に集まった魔力を一気に解放した。 氷同士がぶつかり合い、ミシミシと軋んだ音を立てながら空を駆ける。 月へ。 …ミキはその手を、月へとかざしていた。 標的に届くことのない氷塊たちは空中でゆっくりと消えていく。 そこに、うっすらと蒼い影を残しながら。 「どうして……」 ミキはぼんやりと虚空を見つめていた。 リゾナンターを仕留める千載一遇のチャンスだったのに。 まさか…まさか、自分がこんなことになるなんて、思ってもいなかった。 「ミキは…アイツらに…何の想いが…」 わからない。 何度考えても、わからない。 マルシェのことをさんざん言っておきながら、自分はいったいどんなザマなのかと… ミキはよろよろと、その場を後にした。 三日月が、悲しいくらいにまばゆく輝いていた。 * * * * * 「ミティ様からこちらにいらっしゃるなんてめずらしーじゃないスか」 「…頼みがあって来た」 「へぇ?」 ミキは施設に戻ると、真っ先に金髪の部屋を訪れた。 そこには、なぜかマルシェも一緒にいた。 金髪は片方の眉を上げて面白そうにミキの顔を覗き込む。 マルシェはそれを見て、何か複雑そうに表情を変えたのがわかった。 「ミティ様からの頼みって、なんなんでしょーか」 金髪はゆっくりと立ち上がって、ミキの前にゆらりと歩み出た。 覚悟は、もう決めてある。 「斬ってくれ」 任務を放棄して逃げてきた哀れなこの魔女を、お前の手で斬ってくれ。 亡骸はどこへでも捨てておいてくれていい。 そう言うと、それまでヘラヘラしていた金髪はすっと表情を変えて、 背中の長剣を鞘から静かに抜き取ると、ミキの正面で構えた。 「…承知しました、お望みの通りに」 金髪は、静かに答えた。 金髪に刃先を向けられ、ミキは目を閉じた。 「吉澤さ…、やめてっ…、ミキちゃん…!!!!」 マルシェ、いや、紺ちゃんが泣き叫ぶ声が耳に届く。 紺ちゃん、あんたはこんなミキにいつも優しくしてくれてたね。 ミキもあんたのことは絶対に憎めなかった。 でも、なんかミキの変なプライドが邪魔してて、ここじゃうまく話もできなかった。 昔ほどかわいがってあげられなかったのは心残りだよ。 でも、早く弁当くらい、1人で決められるようになれよ。 金髪…、いや、よっちゃん。 まさか、あんたにこんな最期を見せるなんて思ってなかった。 何でも話せた親友。何でも分かち合えた戦友。 ダークネスに降り幹部になった自分と、 ダークネスに捕らわれながらも光を捨てなかったあんたと、 その違いがいつの間にかお互いの立場を崩して、壊して、 昔みたいにじゃれ合うこともできなかったけど、 今、この役目を頼んで、改めて気づかされた。 心のどこかで、ずっとずっとずっと頼りにしてたんだと…。 そして… リゾナンターたち。 アイツらのせいで、いや、アイツらのおかげで、 きっと、ミキは今、忘れ去っていた正義のために死を迎えようとしている。 ミキの中に蒼き正義のカケラが残っていたのだとしたら、 きっとそれは、本当の蒼き正義を壊さないための正義なのかもしれない。 タッ、と短い音を床に残して、長剣の戦士は動いたようだった。 覚悟は決めたくせに、身体がこわばる。 鋭い刃先が空気と触れ合う音が、ミキの耳に微かに届いた。 そして、剣が空中を舞う音。 風が駆け抜けて、意識を手放す。 これで、終わりだと。 思い残すことなく、ミキは、魔女・ミティとして、ここで果てられると。 そう思った。 …思った? あれ? 長剣が鞘に吸い込まれる静かな音を聞いて、恐る恐る目を開いた。 辺りの様子は、さっき目を閉じる前と何ら変わりがない。 何これ? ミキ、もう死後の世界に来ちゃってる? その割には空気とかえらいリアルなんだけど? 身体透けてないし、足もあるし…、って、これ…? 「…ミティ様は、理由はどうあれまだ死んじゃいけないんじゃないっスかねぇ」 見事なまでに黒いローブは切り裂かれ、痛みを感じない程度に皮膚に傷もついていた。 一見、激しい戦いを繰り広げた後のように。 ミキは、まだ生きている。ボロボロに姿を変えて、どうやら生きている。 金髪を揺らしながら、よっちゃんは振り返った。 そしてこの2年間、聞くことの出来なかった口調でまくし立ててきた。 「ってかさぁミキティ、アンタ別にリゾナンターに殺意は持ってないんだろ? 確かにあのメンバーは、お互いがお互いをライバルとして認めている。 そんなライバルを越えた関係に憧れてただけなんだろ? ミキティはリゾナンターを愛しきれないことに負けただけなんじゃねーの? ライバルに勝てない自分から逃げ出したかっただけなんじゃねーの?」 出会ってきたリゾナンターの顔が一瞬で頭に浮かんでは消え、ミキはぐっと拳を握りしめた。 言葉が出ない。悔しいけど、たぶん図星だった。 自覚なんてしてなかったけど、きっと、よっちゃんの言うとおりなんだ。 崩れた仲は、ミキに対してよっちゃんに敬語を使わせていた。 ダークネスの中で歪んだ上下関係が生まれていても、 よっちゃんは、対等な目線の親友のまま、的確にミキの心の中を見抜いていた。 「ダークネスの魔女であることも大事だけど、 ミキティがミキティであることももっと大事だと思うんだけどな」 「う、うるさいっ! お前なんかに…なにがわかるっ!!!!」 プライドをズタズタにされて、ミキは部屋を飛び出した。 きっとそのプライドは、ミキがずっと目をそらしてきた部分で、 ずばり声に出して指摘されると、それはとんでもなくどうしようもないことだった。 ミキがミキでいること。そんなの、当たり前だ。 でも、ミティはダークネスの魔女。誰もが恐れる闇を纏う魔女。 誰よりも気高く、強く、美しく、そうあるべきだと思ってきた。 でも、そんな必要はどこにもなかったのかもしれない。 自分の部屋に戻ると、ミキはベッドに突っ伏した。 このままダークネスの幹部として、生き続けてもいいのだろうか? それとも自ら命を絶って、逃げた罪を償わなければいけないだろうか? 窓の外にはまだ三日月があった。 さっきよりはだいぶ傾いているけど。光はまだ、失われない。 「闇の中に輝く光…、か」 よっちゃんの言葉が思い出される。 あの時は何を言ってやがると思ったのに、まったく、どうしてこんな…。 ミキは、ひとつの決心を胸に立ち上がった。 「…リゾナンターは、あまりにも強大な組織でした。 おそらく、私ひとりでなく隊員を引き連れたとしても、 今のままでは、結果は同じだったでしょう―――」 ミキは、そう報告した。 血だらけの右足を引きずりながら。 ダークネス様はそんな芝居に気づいていたのか、ただ見逃しているだけなのか、 何も言わずにその報告を聞いていた。 でも、その報告もたぶん、そこまで嘘じゃない。 きっと今のミキが飛び込んでいったところで、リゾナンターに勝てた気はしない。 心が、もう負けていたから。 あんな心理状態で、9人がそろって士気の上がる彼女ら相手に、勝算はない。 ただ何も得るモノもなく逃げ出して、なお無傷であることは恥ずかしかった。 だから自分への戒めのために、右足を魔力で打ち抜いた。 まだ、蒼い色の氷で。蒼き正義の色で。 蒼に傷つけられた足は、ひどく痛んだ。 朦朧とする意識の中で、これはミキが負わなきゃいけない罰であり試練だと思ってた。 この痛みを乗り越えれば、きっとミキをひとつ強くするのだろうと信じて…。 いろんな顔が思い浮かぶ。 なぜだろう。今日はずっと、こいつらの顔ばっかり頭の中で見てきた。 忘れていたようで忘れていなかった…、蒼き戦士たち。 ミキは、まだ、やっぱり、心の、どこか、で…… 通路に血溜まりを作りながらやっとの思いで自分の部屋に戻り、 …ドアをくぐったところで、もう、意識が途絶えていた―――。 * * * * * 『あーし、美貴ちゃんにこんな力使いたくないんやで?』 愛ちゃんがミキに向けて、手のひらをかざしていた。 でも、攻撃を仕掛けてくる様子はない。 ミキは本気だった。愛ちゃんにその気がなくても、ミキは攻撃するつもりでいた。 勝てると思っていた。圧倒的な力の差があると思っていた。 名実ともにトップであることが、ミキをさらに強くするんだと。 『ミキは愛ちゃんに勝って、リゾナンターで一番の戦士になるっ…!』 ミキはありったけの力で、氷の槍を愛ちゃんに浴びせた。 小さな身体に次々に降り注ぐ刃物は、あっという間に彼女の姿を氷の中に閉じ込めていた。 味方を傷つけられない優しさは、時に脆さを生み出して人を弱くさせる。 その弱さを打ち破れない限り、戦士は、前に進むことなんてできない。 …ミキは、そう考えていた。 『…この、わからずやああああああああっ!!!!!!』 鼓膜を揺るがすような叫び声が上がり、 同時に生まれた光の束は、瞬く間にミキの氷を彼方へと消し去っていく。 まばゆい光を背負って現れた愛ちゃんは、 怒りとか、憎しみとか、あらゆる感情をその表情ににじませながら、 悲しげな視線と、光に包まれた右手をミキに向けた。 『…美貴ちゃん、アンタはリゾナンター失格や』 頬に熱い痛みを感じる。そっと触れると血がにじんでいた。 まさか、いつの間に、その光で…? 『…この光は、光の力は、誰かを傷つけるためのモンやない…。 大切な人を守り、助ける力なんやってあーしは信じとる』 愛ちゃんは一歩一歩、ミキに近づいてくる。 その瞬間、ミキは光の力の前に屈したと、この人には勝てないとハッキリと認識した。 『リゾナンターも同じや。 支え合いながら成長して、弱いところを補い合って強くなるんやと思っとる。 …決して、自分勝手な想いで、人のことを傷つけたりなんてせん!』 愛ちゃんが叫ぶとミキの足元が白く光り、次の瞬間には地面に大きな穴を開けていた。 『…もう、「リゾナント」に戻ってこんでや…』 彼女はその場から姿を消し、そこにはミキと瓦礫だけが残った。 …ミキは、高橋愛に、光の力に勝つことができなかった。 ただ、彼女に負けたくないという純粋だった想いは、 少しずつ歪んで、越えられない壁を見せつけられてねじれた想いに変わった。 自分がリゾナンターであることは、どうでも良くなっていた。 高橋愛に勝ちたいと、そればかりが頭を支配していた。 蒼が嫌いになった。蒼い戦士たちが嫌いになった。 気ままに動くことを好むミキには、元々共鳴なんて邪魔だったんだと、そう思うようになった。 全て、自分にそう言い聞かせるように――― 蒼の色なんて、何もなかったことにするために――― * * * * * 「……ん……?」 目が覚めると、そこは相変わらずミキの部屋だった。 部屋にたどり着いた記憶はある。その先の記憶はない。 けど、ミキは今確かにベッドの上で、規則正しい向きで横になっている。 「…夢…?」 妙に懐かしい夢を見たような気がする。 懐かしくて、でも苦しくて切ない記憶。 ミキがリゾナンターを離れ、ダークネスに落ちるまでの過去。 ミキは、力だけで愛ちゃんを越えようと思っていた。 今のリゾナンターは、どうやらそうじゃないらしい。 力だけじゃなくて、揺るがない絆と想いと共鳴があって初めて、拳を交わせるらしい。 そんなようなことを、いつか紺ちゃんに聞かされたのを思い出した。 彼女なりの研究の成果だって言ってたかな。 きっと、そこには自分の体験も含まれているんだろう。 そう考えると紺ちゃんがあんなにも必死になってミキを止めたのもわかる気がする。 ダークネスの幹部になって、共鳴なんて力こそなくなってしまったとはいっても、 大切な絆ってのがきっと、残っていたんだろう。 そしてミキにも、ほんのわずかだけど残っていたからこそ…、 リゾナンターを殺すことなんてできなかった、と。 「…わっかんねーなー…」 いくら頭でいろんなことを考えていても、 自分の本当に本当の本音なんて、意外と身体の奥底に埋まってるのかもしれない。 それが何のきっかけで顔を出すのかなんて、わかんないもの。 寝返りをうったミキの目に留まったのはあの時手渡された指令書。 それで思い出した。 ミキ、自分の足を撃ち抜いたんじゃなかったっけ? はっとして触れてみた右足には、痛みはまったく残っていなかった。 ベッドから抜け出して見てみると、包帯こそ巻かれていたけど、傷は残っていない。 立ち上がってみて、机の上に小さな手紙も置かれていたことに気づいた。 開けてみると、そこには懐かしい丸っこい文字。 “ミキちゃんのバカ! ムチャなんてしないでよ! ミキちゃんが死んじゃったら困るんだからね! …でも、ワガママなお願い聞いてくれてありがとう。 そのケガは、ミキちゃんが目を覚ます頃には治るように、 私がちょっとおまじないをかけておきました。 Asami.Kon” …ミキはこんなにも紺ちゃんに心配されてたのかと、ちょっと驚いた。 これもどこかに残ってた、蒼の絆と絆の生み出した何かなのかな。 そういえば、紺ちゃんに「ミキちゃん」なんて呼ばれてから何かが変わっていった。 たかが呼び方ひとつなのに、こんなにも人の心を揺さぶってしまうのか。 「…なんか、なんだかなぁ…」 それにしても、とミキは苦笑いするしかなかった。 共鳴することを忘れ、孤独であることに誇りさえ感じながら生きてきた。 正義なんてカッコイイ言葉は捨てて、邪悪な感情のままに生きようとしてきた。 なのに、やっぱりミキはどこか、そうはできないところがあるらしい。 「蒼き正義に共鳴せよ…、か」 ミキがまだリゾナンターだった頃、口にしていた言葉。 この言葉ひとつで、メンバーもひとつになれる。 自分のお守りのように繰り返してきたフレーズは、 今、ミキの中の何かを壊さないように、静かに守ってくれたみたいだ。 「もう、仲間ってわけじゃないけどね…」 ダークネスの幹部として、リゾナンターは倒さねばならない相手。 ミキにとっては、越えなければいけない相手。 ヤツらを越える前に、ヤツらに死なれても困るしこっちが死んでも困る。 指令を理由に殺すとか、意表を突いて殺すとか、そんな半端な動機はやめよう。 その時は、殺るか殺られるか。 ダークネスの魔女・ミティとしての威厳を胸に覚悟を決めて、 ミキはミキとして、正々堂々と手合わせしてみたい。その方がいい。 その方が、勝ったって負けたってきっと気分がいい。 ミキのプライドのひとつは、よっちゃんにボロボロにされた。それは、それでいい。 ミキのプライドのもうひとつは、悔しいけど蒼き正義に守られたんだ。 窓から見えた空は、雲ひとつなく晴れていた。 朝の太陽がミキの顔を照らす。 どこまでも続く青空に未来を託したこともあった。 今はその青さが過去を連想させるようで、もう見るのも嫌だって思ったりしてた。 「…くっそー、眩しいな」 太陽の光が、ミキの何かを照らしたような気がする。 まだまだ、ミキにはやらなきゃいけないことがたくさんある。 光に導かれようとしてるなんて、ミキも、まだまだ甘っちょろいな。 「…待ってやがれ、青空め」 真新しい黒のローブに着替えて、青空へと飛び出す。 何か、ミキ、ちょっとやる気出てきたみたい。 光も、蒼も、闇も、黒も、全てをミキの力に変えて。 いつか必ず、リゾナンターを越えてやる。 待ってやがれ、蒼き戦士たちよ。 ―――『BLUE PROMISES 番外編 -Darkness has BLUE-』 Fin.
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【神話時代 エル=ネイシア 惑星間宇宙】 虚空に浮かび、瞬かぬ星々の光に照らされた石造りの巨大神殿。その入り口前の階段に、巡回任務から帰還した星精霊たちの報告を 受ける美貌の青年神― 第三世界エル=ネイシアの世界の守護者・星王神エルンシャの姿があった。 「星王神さま。惑星規模の瘴気塊を見つけたでスター」 「星王神さま。風星周辺で精霊獣を見かけたでエステル」 「星王神さま。皇王星付近に冥界門が開いたでシュテルン」 「よくぞ知らせてくれた、我が愛しき星精霊たちよ」 エルンシャは整った貌を引き締めて頷き、右手に持った星の錫杖を星精霊の一人が指差す方向へ― 瘴気の吹き溜まりへと向けた。 「滅せよ」 一言呟くや、星の錫杖から一筋の光条が放たれる。地上からは彗星のようにも見えるそれは、冥界から立ち上り蟠った瘴気を包み込 み、瞬く間に浄化し尽くしていき― その光景を見つめながら、エルンシャは誰にともなく呟いた。 「キリが無いな。アンゼとイクスは二人でこれを遣りながら、同時に地上の管理もしていたのか。それでは、過労で倒れるのも当然だ」 「ええ。だからこそ、エルンシャ様に来ていただいて、わたくしもイクスも大変感謝しているのですわ」 突然声をかけられ、驚いて振り向いたエルンシャに、アンゼロットは花が綻ぶような笑顔を向けてケーキとティーセットを入れたバ スケットを軽く持ち上げて見せた。 「お疲れ様です、エルンシャ様。今日はシフォンケーキを焼いてみました。召し上がって戴けませんか? それと、風星の精霊獣はここに来る途中でわたくしがぺちっとへち倒してきましたから安心してくださいな」 「おお、ありがとう、アンゼ。今、冥界門を閉じてしまうから少し待ってくれないか」 エルンシャは錫杖の飾りを変形させて内部に一つの銀河を収めた宝玉を顕わした。そして、地上からは超新星にも見える、だが決し てアンゼロットの左目を晦ませることのない柔らかく暖かい輝きを放つ巨大な光球を作り出し、エル=ネイシアを隅々まで照らし出す。 「我が錫杖に込められしは・・・・・銀河」 エルンシャは遥か皇王星の衛星軌道上に開いた冥界門に向けて錫杖を一振りし、数天文単位の距離を数秒で横断した浄化を齎す光球 は、狙い過たず冥界門を撃ち抜き、一瞬にして消滅させた。 「これでしばらくは冥魔が迷い込むこともないだろう。では、アンゼ。遠慮なくケーキをいただくよ」 成果に満足したエルンシャはケーキを一切れ掴み取ってはぐはぐと頬張り、アンゼロットに微笑んだ。 「うん、おいしいよ、アンゼ。もう一切れもらおうかな」 「ええ、どうぞ。全部食べてくださいな。さ、星精霊たち。あなたたちもお食べなさい」 「ありがとうでスター!」 「いただきますでエステル!」 「とってもうれしいでシュテルン!」 背中に小さな翼を備え、頭上に光の輪を浮かべた、金色の巻き毛も愛らしい仔猫ほどの大きさの糸目の赤子の姿をした星精霊たちは 歓声を挙げてケーキに群がり、その光景をエルンシャは、穏やかな表情で微笑ましく見守り。 そして、アンゼロットは、その青年の姿をした神の美しい横顔に、目を奪われて陶然とした。 エルンシャはとても美しい。 慈愛に満ちた眼差し 包容力を感じさせる声 逞しい胸 文字通り神の手で創られた、男性美の結晶だ。 父親とエルンシャ以外の男性を見た事がないアンゼロットには、彼よりも美しい男がいるとはとても思えなかった。それに、美しい のは外見だけではない。その心もまた、美しかった。優しく、寛大で、思い遣りに満ちていた。 最初に差し入れを持って来たとき、アンゼロットは緊張のあまり、熱いお茶を零して彼にかけてしまったが、彼は一言も彼女を責め はなかった。 寧ろ、アンゼロットが火傷をしていないかどうか、そちらの方を気にしていたのだ。 そして、何度も会いに来るうちに気の大きくなったアンゼロットは次第に彼に甘えたり我儘を言うようになったが、彼は何時でも何 でも言う事を聞いてくれたのだ。 「エルンシャ様ー、だっこー」 「おう、よしよし」 「んー、ちゅーしてー、むちゅー」 「ああ、分かったよ、アンゼ」 (ああ、アンゼ様、すっかり幼児退行してるでスター) (なんちゅーか、らぶらぶバカップルっちゅーよりも、甘えん坊な幼女とだだ甘な叔父さんって感じでヤンスなぁ) (アンゼ様は、こないだ過労で倒れたばかりで病み上がりなんで、プラーナが足りてないでエステル) (赤ん坊とゆーのは、愛と安らぎに満ちたプラーナを最も効率よく吸収できる形態なんでシュテルン) アンゼロットは目を閉じて軽く顎を上げて唇を突き出し。 エルンシャは、アンゼロットの前髪をかき上げて優しく額に口付けた。 「逃げたー! ギリギリで逃げたでスター!」 「てゆーか、ナニをDoすりゃいーのか、まったく分かってないでエステル」 「エルンシャ様のアンゼ様への愛は、混じりっ気なしに純粋な神の愛なんでシュテルン」 「そこ、うるさいですわよ」 囁き交わす星精霊たちに気付いたアンゼロットは居住まいを正し、バスケットからティーセットを取り出した。慣れた手付きでお茶 を淹れ、石造りの階段に並んで腰掛けたエルンシャに勧める。 「はい、どうぞ。今日のお茶はミルクティですわ」 「ありがとう、アンゼ」 エルンシャは礼を言って受け取ったミルクティを一口飲んで微笑み。 その笑みがあまりにも眩しくて。 アンゼロットは朱に染まった頬に手を当てて目を逸らした。 「エルンシャ様も大変ですわね。ずっと虚空を漂って、瘴気の浄化を続けているのですもの」 「君とイクスが交代で差し入れをしてくれるお陰で、随分と助かっているよ。それに、これも至高神様たちが幻夢界を完成させるまで のことだ。闇界・冥界を封じる蓋が出来れば、私も地上の管理を手伝いにいけるだろう」 「ええ。その日を楽しみにしていますわ」 アンゼロットは応え・・・・・・星精霊の頭を優しく撫でるエルンシャの手に、目を留めた。 綺麗な、手だった。 一度も、剣を握ったことのない、手。 一度も、血に濡れたことのない、手。 一度も、誰かを殴ったことのない、手。 冥魔を殺すためではなく、皆を慈しむためにある、手。 アンゼロットはエルンシャから目を離し、肘までを覆う、黒く長い手袋をはめた自分の両手を見下ろした。 長年に渡って武器を振るい続け、硬くなった手。 幾度となく、血に濡れた手。 何千体もの冥魔の臓腑を抉り、頭蓋を握り潰してきた手。 人の子らを慈しむためではなく、敵を殺すために鍛えられた、手。 (手だけでは・・・・・・・・・・・ありませんわね) そっと、前髪を撫で付け、右目を ― 冥界の魔力を導く金色の邪眼を ― 隠す。 星の錫杖が放つ、浄化の光を遮るために。エルンシャの視線を、避けるために。 「どうしたのだ、アンゼロット?」 その仕草を見咎め、エルンシャがティーカップを口元に運ぶ手を止めた。 「いえ、その・・・・・・ご存知のとおり、わたくしの右目は邪眼です。もしもエルンシャ様のお目に触れて何かありましては・・・・・・・・・」 「恥じることないよ、アンゼロット」 慌てて右目を押さえるアンゼロットに、エルンシャは暖かく力強い手を伸ばし、優しく頬を撫で、右目を覆う前髪を除けると銀の双 眸でアンゼロットの金色の右目を覗き込んだ。 「君の瞳は美しい。人々の安息を願う、君の優しい心を映し出している。それに、この手も」 逞しく、包容力を感じさせる手がアンゼロットの手を取って手袋を外し、エルンシャは自らの頬にアンゼロットの手を当てた。 「この手は、皆を守ってくれた手だ。人の子らを慈しむためにあるものだ。私やイクスや、星精霊たちや至上神様のためにケーキをつ くってくれる手だ。君は、世界の守護者だ。死を与える戦女神ではなく、安らぎを与える女神なのだ」 「エルンシャ様・・・・・・・・・・」 アンゼロットは潤んだ瞳でエルンシャを見つめてゆっくりと身を寄せていき、エルンシャは彼女を優しく抱き締めた。 (エルンシャ様、全力全開でアンゼロット様を口説いてるでスター) (いやいやいや、アレだけやって本人は口説いてる自覚ないでエステル) (てゆーか、エルンシャ様は慈愛の神だから、なんかよく分からないけどアンゼ様が急に落ち込んだんで慰めてるだけでシュテルン) 傍でケーキを貪る星精霊たちの交わす言葉を気にも留めず、エルンシャはアンゼロットに囁いた。 「アンゼロット。私はね、まだ、人の子らを見た事がないのだよ。ずっと、ここで瘴気の浄化をしているからね。それでも。私は、自 分が何を守っているのかを決して忘れはしない。それは、君と“イクスが”会いに来てくれるからだ」 「ソレは湿原でスター!」 「ココで他の女の名前出しちゃダメでエステル!」 「今のでアンゼ様は大変ご機嫌を害されたでシュテルン!」 「ん? 何か気に障る事を言ったかな、アンゼロット?」 「いいえ。何も」 急に騒ぎ出した星精霊たちに困惑したエルンシャから身を放し、アンゼロットはすっと表情を引き締めた。 「お邪魔して申し訳ありませんでした、エルンシャ様。もう行かなくてはなりませんわ」 「そうだな。お互い、そろそろ仕事に戻らねば。もう少し、ゆっくりと話せる時間が取れれば良いのだが」 「お父様が戻ってくれば、きっとそうなりますわ。では失礼いたします」 エルンシャの前を辞したアンゼロットは光速で自分の神殿に舞い戻ると、真っ直ぐに厨房に飛び込んだ。材料をチェックし、新たな ケーキのアイデアを練り、闇の精霊たちに命じて足りない材料を取ってこさせ、猛然と調理に取り掛かる。 「負けませんわよ、イクスィム! 絶対に、エルンシャ様は譲れませんわ!」 その頃、地上で。封印された古代神が復活しつつある事など、露とも知らずに。 【現代 忘却世界 ラグシア城跡 100階ダンジョン最下層 元・エンディヴィエ封印の間 入り口付近】 (あの後・・・・・・・・帰ってきたお父様は地上の荒廃に激怒し、エルンシャ様を引き裂いて聖姫たちに作り変えたのでしたわね・・・・・・・・・) 更にその後、紆余曲折を経て彼は蘇ったが、再度復活した強大な古代神を一人で相手取れる筈もなく、古女王に倒され、今に至る。 (あの女は・・・・・・・・・・わたくしの手で倒さなければなりません) 通路の奥。曲がり角の向こうから新たな冥魔の一団が現れたのを認め、アンゼロットはやや脚色された回想から眼の前の現実へと意 識を戻した。まずは冥魔たちを倒さなければならない。戦姫に指揮された下僕は、本来の力を遥かに超える脅威となるのだ。 柊に戦姫の相手を任せはしたが、今日の柊に運命の加護はない。実力とおりに闘い、実力とおりに負けるだろう。だが、エルンシャ が共にいるのだ。死ぬことだけはありえない。自分が行くまで、足止めさえしてくれればそれでいい。 「コイズミ!」 「ロンギヌス・ビーム!」 ロンギヌス・コイズミの放った光は、カバーリングに入ったトータスの鏡のような甲羅に跳ね返され、コイズミ自身の胸を打つ。 「くっ!」「よくやりました、コイズミ!」 ディフェンダーが囮にひっかかった隙を突き、月女王の繰り出した範囲攻撃魔法が冥魔の群れを薙ぎ払う― かと思われた、瞬間。 冥界の銀で作られたゴーレムが空間を歪めて攻撃を収束させ、総ての威力をその身に集め、ただ一人、灰燼と化し、そこに捻れた樹 怪が蘇生の光を浴びせて復活させた。 「くっ! やはり範囲攻撃は効果が低いですわね・・・・・・・・・黒き刃よ、敵を切り裂けい! 『ダーク=エッジ』!」 アンゼロットは呻き、闇の刃を生み出して。 手近にいた冥魔ヘドロンガーに斬りつけ、一太刀で首を刎ねた。 「どうやら、一体づつ仕留めていくしか― っ!」 頭部を失った冥魔の身体はヘドロの山と成り果て、崩れ落ちるも、床に落ちた頭部は切断面から手を生やし、アンゼロットの足首に 爪を立てていた。 「アンゼロット様! 今行きま― しまった!」「ガッデム!」 慌ててかけよろうとしたコイズミの脚を樹怪の根が絡めとって動きを封じ、黒い火トカゲが炎を吹き付ける。 アンゼロットはコイズミに防御魔法を飛ばしながら刃を振るって冥魔に止めを刺し、コイズミも樹怪の根をビームで焼き切って後退 し、額に冷や汗を浮かべて問いかけた。 「アンゼロット様! 冥魔とは斯様に士気高く、連携を取って襲ってくるものなのですか?!」 「いいえ! この冥魔たちは古代神が思念を送って指揮しているのですわ。下僕の覚悟と連携と、冥魔の力を兼ね備えた強敵です。 コイズミ、くれぐれも気を抜いてはなりません!」 「はっ! 承知致しました!」 広間に通じる通路で迫り来る冥魔の群れを向かえ討つ。広い場所で戦えば数で劣るこちら側はたちまち取り囲まれてしまう。なんと しても、この狭い通路で倒さなければならないのだ。 「我が鞭を受けられるか!」 アンゼロットの振るう魔力の鞭がダーク・サラマンダーの背骨を打ち砕く。しかし、冥魔は最期の力を振り絞り、炎の魔力を込めた 視線で彼女を“視”た。 「効きませんわ!」 片手を振り、パァンと魔力を弾き飛ばし。その一瞬を突いて殴りかかった冥界の銀で作られたゴーレムの一撃をカバーに入ったコイ ズミが受け止めて。程無く、アンゼロットの攻撃が冥魔たちに止めを刺した。 「はぁ、はぁ、はぁ。や、やっと、片付きましたな、アンゼロット様」 「え、ええ・・・・・・・思ったより梃子摺りましたわね」 呼吸を整える二人の身体には、無数の小さな傷があった。その殆どが、倒したと思った瞬間に最期の力で反撃されて受けた傷だった。 「これが・・・・・・・かつて、エルヴィデンス自身が不覚をとったという最強の下僕技、“一人1hp削り”。自分がされる側になってみると 凄まじくうっとおしいですわね」 「柊様と戦いながら、知性が無い筈の冥魔の群れをここまで統率するとは・・・・・・・・・以前、戦姫の最大の能力は数を力に変えるところだ と聖華姫が言っていましたが、我が身で実感致しました」 個々の冥魔の能力はアンゼロットの敵ではなかったが、連携し、出し惜しみせずに力を絞り尽くすことで無視できないだけの被害を 与えていたのだ。だが、それももう、終ったようだ。アンゼロットは通路の奥の様子を伺ったが、最早、冥魔の気配は絶えていた。 「どうやら、今の一団で最後だったようですわね」 「はい。では、いよいよ柊様たちの援護に向かいましょう!」 二人は広間の方へと視線を向け― 悲鳴を上げた。 戦姫の手に握られた神殺しの魔剣が、本来の持ち主の胸を貫いていた。あれでは、その身に宿った星王神も・・・・・・・・・ 「そんな・・・・・エルンシャ様・・・・・・・・」 胸の中を、冷たい風が吹き抜ける。眩暈がする。眼の前が暗くなる。床がせりあがってきて― 『リザレクションソウル』 「えっ?」 暖かく落ち着いた、包容力を感じさせる力強い男の声が耳を打ち、柊の命の灯が再び燃え上がり、その手の魔剣が跳ね上がり、戦姫 の脇腹へと突きたてられた。 「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」 「――――――――――――――――――――――――!」 柊は雄叫びを上げ、戦姫の脇腹へと強引に魔剣を捻じ込み、ありったけの命とプラーナを注ぎ込み。 エルンシャもまた、魔剣を通じて瘴気を消し去る浄化の光を戦姫の体内に流し込む。 戦姫の全身が内側から白く淡く輝き、其の身を包む瘴気が薄れゆくのを認め、柊は更に刃を押し込んだ。 戦姫の左手が魔剣の刃を掴んで固定し。 戦姫の右手がウィッチブレードを振り上げ、柊の左手がその手首を掴んで押し止め。 二人の視線が、ぶつかりあった。 「はっ、私に一刺しくれた事は褒めてやる。今の一撃、中々のものだったぞ」 「へっ、ありがてぇこった。じゃ、ご褒美に俺の魔剣返してくれよ」 「そうはいかんな。たった今から、貴様の事は道具ではなく障害物として認識するぞ」 エルヴィデンスは掴んだ魔剣を力ずくで傷口から引き抜き、裂けるような笑みを湛えて柊を見た。 「しかし驚いたぞ。レベルや学年がひとつふたつ下がった程度で身も世もなく泣き喚く腑抜けが、如何にエルンシャの治癒力を当てに したとて一旦死んで見せるとはな」 『まあ、本来の力を99%以上封じられた状態で、単身、世界を相手取って勝ったお前にとっては柊君の苦難も苦労の内に入らないのか もしれないが、人の子にとってはとても大きな痛手なのだと思うよ。それを乗り越えた柊君の意思力を甘く見たな、エルヴィデンス』 「ああ、そのようだな」 古女王はエルンシャの言に同意し、柊の目を見つめて問いかける。 「何故、其処までする、柊蓮司? 貴様は別に、アンゼロットに忠誠を誓っているのでも、惚れ込んでいるのでもないのだろう?」 「俺は仲間を見捨てねぇ! 俺の仲間に手を出す奴は、絶対に許さねぇ! それが、総てだ!」 柊は叫び、今一度魔剣を押し込み、生命を注ぐ。全身の毛細血管が破裂し、柊の姿が真紅の霧に包まれる。一瞬後、その血煙は魔剣 へと吸い込まれ、晶の魔剣は歓喜の声を上げて刀身に刻まれた魔術文字をより強く光らせた。 「おっ、おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」 「ぐっ・・・・がっ・・・・・・・・・ッッ! このッ!」 戦姫の黒翼が左右から柊の脇下を打ち据え、肋骨を砕く。 折れた骨が突き刺さり、破れた肺から血が溢れ出る。熱いモノが喉をせりあがる。 ゴボリ、っと柊の吐いた血塊が晶の魔剣の宝玉を濡らし、更に、より一層輝きを増し、戦姫の手を灼いた魔剣を 柊はより深く、力任せに捻じ込んだ。 「やれ、エルンシャ!!」 『おおッ!』 一際眩い閃光が迸り、広間を白く染め上げて。 そして、その光が消えたとき。 そこに、黒翼の戦姫の姿は、なかった。 「結構、苦戦してるわねぇ、セルヴィ。わらわも手伝おうかしら?」 「いや、要らぬよ。エルンシャが復活した時点でこの計画は捨てている。後は遊びだ。こうしている間にも、第三世界では私の下僕達 がアンゼロットを迎え撃つ準備を進めている。丸一日、時間を稼げただけでも収穫はあったのだ。アンゼロットとの決着は向こうで着 ける。今日のところは十年前に遣り損ねた遊びを楽しむだけよ。アンゼロットの自害によって味わい損ねた、奴との闘争をな」 空間転移で上の階に逃れ、癒しの風に身を包んだエルヴィデンスは喉の奥でクククッと愉しげに嗤い、脇腹の傷を撫で回した。 「其れにしても、生命力を攻撃力に変換する柊蓮司と無限の治癒力を持つエルンシャか。あの二人、片方だけならどうという事も無い が、組み合わさると中々楽しませてくれるわ。ところでプリギュラ」 「なぁに?」 ぐったりとした闇海姫を両手に抱えて寄ってきたプリギュラに、一転して疑わしげな視線を向け。 「奴等の仲間の攻撃によって、このダンジョンは1階から最下層まで吹き抜けになっているが、私の呼び寄せた冥魔達がこの穴を利用 しないのはどうした事だ? 飛行能力を持つ者もいた筈だが?」 「わらわじゃないわよぅ。アイツがなんかやったんじゃないのぉ?」 言外にお前の仕業かと問う古女王に冥魔王は笑って返し。 その視線を追った先には、熊の縫いぐるみを抱えた黒髪の幼女が立っていた。 「そうか、貴様か、寝ボスケ。運命の名の下に魔王と人間達を弄び、七つの人間界と天界の同胞達を見捨てて惰眠を貪る下種めが」 「・・・・・・・・・ひどい言われようだね。それはともかく、貴女がどんなに強くても、柊のお兄ちゃんは絶対に負けないよ、エルヴィデンス」 侮蔑も露に睨みつけ、忌々しげに吐き捨てるエルヴィデンスに、一旦、肩を竦めてからTISは微笑みを浮かべて宣言した。 「アレが貴様の理想とする人間の姿か、幻夢神」 「そうだよ」 幼女は誇らしげに胸を張り 「何処まで見下げ果てた輩だ。私は貴様を軽蔑するぞ」 面罵され戸惑った顔になった。 慈愛の念に満ち、強い意志を持ち、決して諦めず、常に信念を貫き通す。それを理想と言って、何故軽蔑されるのか? 「あれ程まで神に、為政者に都合の悪い者など初めて見たわ。あんな者が理想だと? 貴様には神としての、世界の管理者としての意 識は全く無いのだな」 「人は、自分の足で歩いていける。わたしたちは必要ないんだよ」 「ふざけるな。人間が自立出来ん事は第一、第三、第五世界の現状が証明している。神の加護無くして、人間が冥界から身を守るのは 不可能だ。尤もらしい事を言っているがな、結局のところ、貴様は仕事をサボりたいだけだろうが。そうやって人間を放置したが為に 信仰心が薄れ、幻夢界を維持するプラーナを確保出来なくなったのだろう? 主八界の現状は総て、貴様の怠慢が原因だ。 貴様が真面目に働いておれば、私とてイマイチ信用ならん冥界と手を組む必要もなかったのだ」 「もしもぉし」 何か言いたそうな冥魔王を黙殺し、古女王は更にTISを罵倒する。 「そもそも、神の為に人が居るのだ。神を崇めぬ人間こそ、主八界には不要な存在なのだ」 「その神が、貴女である必然もないよ、エルヴィデンス」 「ふんっ、人間には自らが崇める神を選ぶ権利がある。それくらいの自由は認めるさ。そして、私が選ばれないなら、選ばれるように 策を練る。が、神そのものを必要としない人間だと? そんな者は人間の存在意義に反するわ。天界の者達とて、其の存在を認めはせ んよ。永年に渡り、幻夢界で闇界から立ち上る瘴気を浴び続けて狂ったか、幻夢神」 「貴女には理解出来ないんだね・・・・・・・・」 「あらぁ、わらわは分かるわよぉ」 悲しげに呟いたTISに、意外にもプリギュラが賛意を示し、満面に亀裂めいた笑みを浮かべて惜しみない賛辞を送る。 「人間に転生した魔王たちを因果律で守って世界を守る為に手を汚す覚悟を決めた者達を舞台から締め出して無力感を味あわせ、闘う 覚悟のない者に世界の命運を押し付けて大事な家族を殺させる。アンタのシナリオ、とっても残酷で卑劣で鬼畜で非道で素晴らしいわ ぁ。第八世界は怒りと憎しみと悲しみと自己嫌悪の念に満ちた負の感情で味付けされたプラーナで一杯よぉ。ホント、いい趣味してる じゃないのぉ。ねぇ、わらわ達と手を組まない? 一緒に地獄を造りましょうよぉ」 「違うよ。あたしはそんなつもりじゃ―」 「違わんよ。貴様が遣っている事はな、裏界のポンコツどもなどより遥かに多くの苦痛と悲嘆を世界に押し付けているのだ、幻夢神」 古女王に反論を封殺されたTISは目を伏せると、呆れ果てた、と言った風情で首を振った。 「古女王陛下お得意の精神破壊攻撃って奴だね。でも、あたしには効かないよ」 聖姫と闇姫の能力は、ほぼ同じ。故に、千日戦争に陥った彼女らは勝利を得るべく様々な手段を模索した。 下僕を集め、戦術を磨き、多彩なプリンセス・モンスターを製造し、数多の魔道具を造り。 そして出来上がった基本戦術とは。 まずは舌鋒で敵の胸を抉り、冷静な判断力を奪い 次に下僕を嗾けて敵の下僕を一掃し、出来るならば手傷を与え 心身共に僅かなりとも弱体化させたところで踊りかかる・・・・・・・・・というものだった。 つまり、戦姫同士の戦いは、横で聞いている者が耳を塞ぎたくなる凄まじい罵詈雑言の応酬から始まるのだ。 呪言や思念波を組み合わせ、脆弱な自我しか持ち合わせぬ者ならば其れだけで正気を失いかねない精神攻撃を繰り出し合うのだ。 油断と慢心が裸で歩いているポンコツがデカイ面出来る程度のヌルい世界の住人には全く想像の及ばない、苛烈な戦場が現れるのだ。 「どこぞの軍曹の罵りがインフルエンザの予防注射なら、戦姫の舌鋒はクラーレ毒を塗ったパイルバンカーのようなもの」 「そんだけ威力あったら毒関係なくない?」 「でもね、どんなに鋭い刺突でも、どんなに強力な猛毒でも、当たらなければ効果はないよ。 そして、あたしやお兄ちゃんの心がどこにあるか、貴女には絶対に分からない。 人間は神の家畜だと、信じて疑わない貴女には」 「人間は神の家畜だ。超至高神の命により、其の様に創ったのだ、我等108の古代神がな。 其を否定する貴様は最早、超至高神の臣下では無いぞ。 そして、私の様に人の子らを下僕として面倒を見て遣る事もなく、気が向いた時だけ干渉し、人の子らの生涯に悲劇を齎す貴様は裏 界のポンコツどもと変わらんよ。 己と対等以上の存在から目を背け、圧倒的弱者を虐げて己を全能と信じたがる負け犬だ」 「あー、はいはい、ヘイト乙っと。貴女と話す事は何もないよ、エルヴィデンス」 TISは溜息をついて空間転移で姿を消し。 古代神は麗しい貌を嫌悪に歪め、冥魔王は愛らしい顔に嘲笑を浮かべてそれを見送った。 「あーあ、逃げちゃった。にしてもぉ、セルヴィと柊蓮司って、結構、面白い組み合わせよねぇ」 絶大な力を持ちながらもその大半を封じられ、敵から奪った力で戦い、無理がたたって敗れ続けるエルヴィデンスと。 何の力も無いにも拘らず、更に味方から色々下げられて、それでも勝ち続ける柊蓮司。 何度も敗れても、そのたびに、それ以前よりも状況を好転させ、遂には世界を奪ったエルヴィデンスと。 何度勝利しても、決して世界を平和に出来ない柊蓮司。 なんと皮肉な対比だろうか。 思いを巡らす冥魔王の腕の中で、ぐったりとした幼姫がうわ言を呟いた。 「・・・・・・・ぱぱぁ・・・・ぱぱぁ・・・・・」 「うーん。闇海姫ちゃんは大分具合が悪いみたいねぇ」 「プリギュラ。お前は闇海姫を連れて先に帰れ。私は、もう少しアンゼロットと遊んでから戻るとしよう」 「お待たせしました、エルンシャ様、柊さん! 冥魔の方は片付きましたわ!」 「ご無事でしたか、お二方!」 「遅せえじゃねぇか、二人とも。こっちも、もう片付いたぜ、って魔剣! 俺の魔剣はッ?!」 柊は、全身を蝕む激痛を物ともせず、駆け寄ってきたアンゼロットとコイズミに軽口を返し。 次の瞬間、戦姫の消えた場所に奪われた魔剣が落ちていないのに気付き、顔を青ざめてうろたえた。 『落ち着き給え、柊君。すぐ上の階から強いプラーナを感じる。どうやら、空間転移で一時撤退したようだな。 だが、アンゼロットが八大神から切り離されている今はエルヴィデンスにとって千載一遇の好機。 傷を癒して、すぐに再戦を挑んでくるだろう』 「ですが、先の一撃で、あの女の瘴気は殆ど浄化されていました。もう、さっきまでのような力はないのではありませんか?」 「それでも、魔王たる者、そう簡単には自分の優位を疑いはしないでしょう。まだ、心のどこかで柊様を侮っている筈です。 きっと戻ってきますよ」 「そ、そうか? ならいいんだ」 安堵した柊の体内でエルンシャの治癒力が渦巻き、砕けた肋骨が再生し、破れた肺が直り、破裂した毛細血管が修復され、失った血 液が増産されていく。 今回は、実にいい仲間に恵まれた。 改めて、その幸せを噛み締める。能力だけの事じゃない。エルンシャもコイズミも、たまにちょっとボケたところを見せるときもあ るが、とても真面目で誠実で、一緒にいて気持ちのいい漢たちだ。 (コイズミが俺を見る目は、正直、くすぐったくてしょうがねぇけどよ。コイツら、いつもの連中と違って俺をおちょくらねぇし、ど んなにピンチになっても絶対に諦めねぇ。安心して命を預けられる、素晴らしい仲間たちだぜ) その分、敵が半端なかった気がするが。例えるなら、ベルと安藤のおっさんを足して、嫌味にしたような感じだろうか? 「しかし、柊様はよく古代神の神気と精神干渉に耐えられましたなぁ」 感慨に耽る柊に、仮面越しでもソレと分かるほどに崇拝の念を露にしたコイズミが手放しで賛辞の言葉を投げかけた。 「私も、向こうで戦っている間中、ずっと頭の中で“諦めろ、諦めろ”と囁く声が聞こえてきて、何度も何度も挫けそうになりました が、柊様はもっと強烈な呪詛を浴び続けていたのですよね?」 『うむ。柊君の意思の強さには私も驚いた。幾らかは私が緩和させたが、常人なら0.05秒で精神崩壊を起こすだろう威力の思念波を浴 び続け、幾度となく致命傷を受けながらも此処まで戦い抜いたのだからな。今迄、どれ程の苦難を乗り越えてきたのかが偲ばれるよ』 「・・・・・・・・・俺はそんなモンを受けてたのか」 今更ながら、ひどく無謀な真似をしたものだと背筋を震わせていると、アンゼロットが勝ち誇った表情で口を挟んだ。 「エルンシャ様、柊さんはわたくしが手塩にかけて育てあげたのですよ。わたくしの薫陶があればこそ、今の柊さんがあるのです」 「嘘つけ! お前はただ遊んでただけじゃねぇか! おい、エルンシャさんよ。コイツが俺に何をしたか、俺の記憶を“観て”くれよ」 『ふむ、どれどれ?』 「あ! やめて、やめてください、エルンシャ様!」 『おお! なんと!』 アンゼロットの制止も僅かに遅く、柊の記憶を覗いたエルンシャはショックを受けた様子で呻いた。 『あの優しいアンゼロットが・・・・・世界を守るためとはいえ、こんなにも残酷な仕打ちを・・・・さぞや、辛かっただろうな、アンゼロット』 「分かってくださいますか、エルンシャ様!」 「おら、ちょっと待て!」 『柊君。君も色々大変だっただろうが、アンゼロットの苦しみも分かってやってくれ。アンゼロットは、運命に選ばれる事の多い君が その重圧に潰されないように君の心を紛らわせたり、鍛えたりしなければならなかったのだ。その為に、アンゼロットは涙を飲んで君 を逆境に追い込んでいたのだよ』 「ああ、エルンシャ様! 貴方は本当にわたくしのコトをよく分かってくださいますわ!」 「いくら何でも好意的解釈が過ぎるだろッ! アンタがそうやって甘やかすからコイツはッ!」 『いや、柊君。どうか、アンゼの苦しみも分かってやってくれないか?』 「柊様とエルンシャ様がアンゼロット様を巡って対立するのではないかと案じておりましたが、まるで姪御さんの教育方針を巡って争 う叔父さんのようですね」 「俺がこのオバハンの叔父みたいだって? よしてくれよ!」「ちょ、柊さまッ! エルンシャ様が―」 『ふむ。今のアンゼロットの容姿をそのように評するとは、些か上限が低すぎはしないかな、柊君?』 「妙な誤解すんじゃねぇよ!」「落ち着いてください、柊様」 憤慨する柊をコイズミが通夜のような鎮痛な表情で宥めにかかった、そのとき。 突如、柊がビクンッと身体を仰け反らせた。 「ッぐぁッッ?! こ・・・・・これは・・・・・・・・」「柊様!」「どうしました、柊さん!」 冷たい手が柊を掴み、頭の中を掻き回す。柊蓮司は識っていた。これが“何”なんのか。初めて世界の危機に対峙した、あのとき。 あの赤い小惑星と対峙したときに受けた、あの感覚。“アイツ”と一緒にひっかかった精神的トラップに、とてもよく似たものだった。 『これはエルヴィデンスの精神干渉! よもや、上の階から仕掛けてこようとはッ!』 「あ゛・・・・・・・・が・・・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・ああああぁぁぁあぁぁぁぁッ!」 ―――先ほどは的を外したが、此度はそうはいかん。貴様の持つ、最大の心の傷を見せて貰おうか――― 心が読まれる。記憶を“観”られる。魂が裸にされ、邪神の知覚に晒される。 「や・・・・・やめ・・・・・・・・やめ・・・・・・・・やが・・・・・・・・・れ・・・・・・・・・・・・」 目が霞む。一人の少年の姿が、脳裏に浮かぶ。 “そこの柊さん。天文部に入って、お友達を作ってみませんか?” “シバくぞこの野郎ッ!” 「・・・・・・よ・・・・せ・・・・・・・・・ヤ・・・・・メ・・・・ロ・・・・・・・・」 ―――クックック。そうか、コレか。コレが貴様の原点にして、決して己を許せぬ大罪か――― “でね、コイツったら、迷子の男の子のお母さんを探し回ってるうちに、今度は自分が迷子になっちゃって” “小学生の頃の話じゃないかぁ” “おめーいい奴だな。携帯の番号教えろよ” 思い出す。思い出す。思い出す。彼と交わした、数々の会話を。 “いったい、どうしたんですか、柊さん、赤羽先輩?!” “おめーの力を貸して欲しいんだ。今、俺たちはギリギリの崖っぷちでさ” “あの、もしかして、駆け落ちですか?” “馬鹿っ! そんなんじゃねぇよ!” ―――さあ、柊蓮司。今こそ自らの咎、しかと見据えるのだ――― 邪神の嘲笑が響き、気付けば、目の前に彼が立っていた。眼鏡をかけた、小柄な、大人しそうな少年が。 柊は彼を知っていた。もう一度会いたいと日夜望み、そして、その願いが適わぬ事に、心のどこかで安堵していた相手。 悔やんでも悔やみ切れぬ悪行の犠牲者。なかったことになった、柊蓮司が、犠牲にした戦友だった。 ← Prev Next →
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★は宝石賢者のみ購入可能(QMA6~8からの引継ぎ可)。△は全国大会で該当する称号を獲った者のみ獲得できる(購入不要、前作からの引継ぎ可)。ちなみに2012/12/5追加分の「候(そうろう、こう)」と侯爵の「侯」は本来は別の字であるが、字形が似通っている上あいさつの単語としては候の方がふさわしいと判断してか凡ミスなのかは不明 あ行 あ ぁ/40 アー/20 愛/20 アイ/20 挨拶/20 アイス/20 相棒/20 アイランド/20※7/4 アウト/20※4/11 青/20 青い/20 赤/20 赤い/20 アカデミー/10 明るい/20 崇めよ/20 上がる/20 秋/20 握手/20 悪魔/20 あけまして/30 朝/20 浅い/20※7/4 脚/20 アシスト/20※10/10 紫陽花(あじさい)/20※13/6/5 あたい/20 あたし/20 暖かい/20 アタック/20※10/10 頭/20 新しい/20 あちら/20 あっち/20 アツ/20※13/8/7 あつい/20 あと/20 アドバンテージ/20※13/7/3 アドベンチャー/10※11/7 あなた/20※13/3/6 あなた達/20 兄/20 アニゲー/10 アニメ&ゲーム/10 姉/20 あの/20 阿鼻叫喚/20※9/5 アプローチ/20※13/11/6 アマ/20※4/11 甘い/20 アム/20 雨/20 飴/20※13/3/6 ありがとう/30 アル/40 主(あるじ・ぬし・しゅ・おも)/20※12/5 アルバトロス/20※13/11/6 あれ/30 安心/20 アンダー/20※10/10 あんな/20 い ぃ/40 亥/20 イーグル/20※13/11/6 イーブン/20※13/11/6 いい気分/20 家/20 イエス/20※10/10 イエロー/20※13/7/3 以下/20 いかに/20 意外/20 以外/20 行く/20 育成/20 以心伝心/20※9/5 以上/20 イズ/20 いずこ/20 遺跡/10 いただき/20 一撃/20 一族/20 市場/10 一番/20 一問多答/10 意中/20※13/2/6 一蓮托生/20※9/5 一家/20 一攫千金/20※9/5 一騎当千/20※9/5 いっしょ/20 一刀両断/20※11/7 いつ/20 いとしい/20 いとしさ/20 以内/20 イヌ/20 戌/20 イノシシ/20 命/20 今/20 妹/20 イヤー/20 嫌な/20 依頼/20 いらっしゃい/20 いらない/20※13/2/6 いる/20※13/2/6 イルカ/20 イレブン/20※13/7/3 色々/20 う ぅ/40 卯/20 ウィ/20 ウィップ/20※13/12/4 ウイング/20※13/7/3 ウォント/20 ウサギ/20 ウシ/20 丑/20 渦/20※7/4 嘘/20 有象無象/20※9/5 歌/20 宇宙/20 うっかり/20 美しい/20 卯月/20 腕/20 ウマ/20 午/20 馬/20※13/12/4 うまい/20 海/20 梅/20 うるさい/20 嬉しい/20 嬉しくない/20 運/20 運動会/20 え ぇ/40 Ace/20※13/1/9 エース/20 叡智/10※6/6 英雄の間/10 エナジー/20※8/8 エネルギー/20※8/8 エフェクト/10 FC/20※13/7/3 FW/20※13/7/3 MF/20※13/7/3 エリア/20※13/7/3 遠泳/20※13/8/7 エンジョイ/20 延長/20※4/11 エントランス/10 お ぉ/40 オート/20※8/8 オーナー/20※13/12/4 オーバー/20※10/10 OB/20※13/11/6 オープン/20※13/11/6 追い込み/20※13/12/4 おいら/20 王/20※12/5 ★黄玉/10 牡牛/20 王者/20 王手/20 狼/20 お返し/20※13/3/6 沖/20※7/4 贈らない/20※13/2/6 贈り/20※13/2/6 贈る/20※13/2/6 贈ろう/20※13/2/6 おことわり/20 お仕置き/20 おすすめ/20 夫/20 乙/20 お天気/10※13/9/4 弟/20 お年玉/20 乙女/20 鬼/20 斧/20※11/7 十八番(おはこ)/20 おはよう/20 オバケ/20※13/10/2 お久しぶり/20 牡羊/20 オフ/20※10/10 オフェンス/20※10/10 オフサイド/20※13/7/3 オブ/20 覚えた/20 覚える/20 おまえ/20※13/3/6 おまえ達/20※13/3/6 おまかせ/20 お守り/10※3/21 おめでとう/30 おもい/20 お餅/20 親/20 おやすみ/20 泳ぎ/20※7/4 (泳ぐ/20※7/4 泳げ/20※7/4 俺/20 愚か/20 終わった/20 終わらない/20 終わり/20 終わる/20 終われない/20 御/20 オン/20※10/10 音楽室/10 オンライン/10※3/21 か行 か か?/40 カード/20※13/7/3 階/20 怪異/20※13/10/2 海岸/10 怪奇/20※13/10/2 階級/20 解決/20 開催/20※13/2/6 解散/10※13/2/6 開始/20 解析/10※6/6 階段/10※3/21 海底神殿/10 怪物/20※13/10/2 カウンター/20※13/7/3 返さない/20※13/3/6 返し/20※13/3/6 返す/20※13/3/6 返せ/20※13/3/6 返そう/20※13/3/6 カエル/20※13/6/5 カオス/20 科学/20 化学/20 輝き/20※13/8/7 輝く/20※13/8/7 輝け/20※13/8/7 角(かど・かく・つの)/20※11/7 確定/10※13/1/9 格別/20 影/20 過去/20 下降/10※13/9/4 傘/20※13/6/5 火山/10 賢い/20 風/20 肩/20 カタツムリ/20※13/6/5 刀/20 勝ち/20 かっこいい/20 喝采/20 勝っちゃう/20 カット/20※10/10 カップ/20※13/11/6 カップル/20 勝つ/20 活動/20 家庭科室/10 勝てない/20 勝てる/20 かなり/20 蟹/20 金/20 彼女/20※13/2/6 カボチャ/20※13/10/2 神/20 雷/20 仮面/20 から/30※5/9 辛い/20 かるい/20 彼/20※13/2/6 華麗/20 彼氏/20※13/2/6 かわいい/20 かわらない/20※7/4 かわり/20 かわる/20 かわれ/20 歓迎/20 感謝/20 簡単/20 カントリー/20※13/11/6 神無月/20 勘弁/20 完璧/20 が/50 ガーゴイル/10 ガーッ/30 ガード/20※10/10 ガーン/30 ガイコツ/20※13/10/2 外燃/20※8/8 学園/20 学習/20 崖っぷち/20※7/4 臥薪嘗胆/20※9/5 ガジェット/20※8/8 ガチャ/30 学校/20 ガン/20※10/10 頑張り/20 き 黄/20 木/20 己/20 癸/20 貴/20※12/5 キーパー/20※13/7/3 黄色い/20 機械/20※8/8 帰還/20 機関/20※8/8 機関室/10 危機一髪/20※9/5 気球/10※13/9/4 聞く/20 聞け/20 機構/20※8/8 聞こえる/20 妃/20※13/9/4 如月/20 騎士/20※13/9/4 起死回生/20※11/7 騎手/20※13/12/4 奇数/20 絆/10※6/6 奇跡/20 奇想天外/20※9/5 来た/20 北/20 北風/20 キック/20※13/7/3 キツネ/20 機動/20※8/8 機能/20※8/8 キノコの森/10 厳しい/20 決まらない/20※13/1/9 決まる/20※13/1/9 君/20 キミ達/20 決め/20※13/1/9 決める/20※13/1/9 肝試し/20※13/8/7 キャッスル/10 キャッチャー/20※4/11 キャディー/20※13/11/6 キャリー/20※13/11/6 キャンディー/20※13/3/6 キューブ/10 旧/20 級/20 吸血/20※13/10/2 きゅん/20 卿/20※12/5 強化/20 狂喜乱舞/20※9/5 教室/10 強者/20※13/1/9 強弱/20※13/1/9 競争/20※7/4 競走/20 恐怖/20※13/10/2 強力/20 協力プレー/20 許可/20 虚数/20 キライ/20 キラキラ/20 きらめき/20 きらめく/20 切札/20 気流/10※13/9/4 きれい/20 キング/20 筋肉隆々/20※11/7 禁止/20 義/20 技術/20 ギミック/20※8/8 ギューン/30 玉砕/20 玉石混淆/20※9/5 ギラギラ/20※13/8/7 銀/20 く クイーン/20 クイズ/10 空前絶後/20※9/5 クエスト/10 クジラ/20 クマ/20 クマフィー/10 組/10 雲/20※13/6/5 暗い/20 位/20※12/5 クラブ/20 クリア/20※10/10 クリスタル/20※3/21 Xmas/30 クリティカル/20※11/7 黒/20 黒い/20 クロス/20※10/10 訓練/20 偶数/20 偶然/20 グラウンド/10 グランネーブル/10※3/21 グリーン/20※13/11/6 グループ分け/10※3/21 け 継/20 系/20※11/7 軽快/20 継続/20 結果/20 決勝/20 決する/20※1/9 決定/20※13/1/9 けど/30 獣/20※13/10/2 けれど/30 剣/20 △賢王/-- 研究/20 健康/20 賢者/10 △賢将/-- △賢神/-- △賢帝/-- 検定/10 ゲーム/20※3/21 芸能/10 原因/20 玄武/20 こ 子/20 コース/10 コーヒー/20 コーナー/20※10/10 来い/20 恋/20 甲/20 庚(こう・かのえ)/20 候(こう・そうろう)/20※12/5 公(こう・おおやけ・きみ)/20※12/5 皇(こう・すめらぎ・すめら・きみ)/20※12/5 工学/20 高貴/20 ★紅玉/10 貢献/20※13/1/9 貢献度/20※13/1/9 攻撃/20 神々しい/20 鉱山/10 後退/20※6/6 好調/20 肯定/20 高度/10※13/9/4 後半戦/10 コウモリ/20 校門/10 声/20 告白/20 ★黒耀/10 ココア/20 心/20 古城/10※3/21 こそ/20 コタツ/20 こちら/20 こっそり/20 こっち/20 この/20 このままでは/20 ★琥珀/10 拳/20 困らない/20 困る/20 こりごり/20 これ/30 これから/20 頃/20 コロシアム/10 怖い/20 怖くない/20 今回/20 ★金剛/10 コンテスト/10※13/9/4 こんな/20 こんにちは/20 こんばんは/20 ゴーグル/20※13/12/4 ゴースト/20※13/10/2 ゴーストタウン/10※3/21 ゴール/20 ゴールド/10 剛腕/20 ごきげんよう/20 ゴゴゴ/30 ござい/20 ござる/40 ごとき/30 ごめんなさい/20 ゴルフ/20※13/11/6 言語道断/20※9/5 ゴンドラ/10※13/9/4 さ行 さ サー/20※12/5 サークル/10 サード/20※4/11 さぁ/30※5/9 最下/20 最強/20 最後/20 最初/20 才色兼備/20※9/5 最弱/20 最上/20 サイド/20※7/4 采配/20※6/6 魚/20 下がる/20 作戦/20※6/6 さくら/20 ササッ/30 ささやき/20 ささやく/20 差し/20※13/12/4 蠍/20 サッカー/20※13/7/3 さっぱり/20 皐月/20 さて/30※5/9 砂糖/20 砂漠/10 寂しい/20 サブ/20※3/21 サポーター/20※13/7/3 サポート/20※13/7/3 様/20 サマー/20※13/8/7 様々/20 五月雨(さみだれ・さつきあめ)/20※13/6/5 寒い/20 侍/20 さようなら/20 さらに/30※5/9 サラブレット/20※13/12/4 サル/20 申/20 されど/30※5/9 さん/20 参加/20 サンキュー/20 サンダル/20※13/8/7 桟橋/10 三番/20 座/20 ザ/20 ザーッ/30 し 詩/20 シー/20※7/4 シーズン/20※4/11 しーん/30 幸せ/20 塩/20 仕掛け/20※8/8 しかし/30 獅子/20 システム/20※8/8 静か/20 自然/20 七転八起(しちてんはっき・ななころびやおき)/20※9/5 七転八倒(しちてんばっとう)/20※9/5 視聴覚室/10 失敗/20 質実剛健/20※9/5 シニア/20※13/11/6 死神/20※13/10/2 忍び/20 忍ぶ/20 ★紫宝/10 島/20※7/4 四面楚歌/20※9/5 霜月/20 社会/10 爵/20※12/5 灼熱/20※13/8/7 射手/20 シュート/20※10/10 集合/20※13/2/6 終了/20 修練生/10 祝/20 粛々/20 淑女/20 宿題/20※13/8/7 守護/10※13/1/9 出発/20 瞬間/20※3/21 俊敏/20 書/20 ショート/20※4/11 正月/30 昇級/20 将軍/20 勝者/20※13/1/9 正直/20※6/6 勝敗/20※13/1/9 商売/20 勝負/20※13/12/4 証明/20 醤油/20 勝利/20 初級魔術士/10 諸行無常/20※9/5 職員室/10 食堂/10 初心/20 ショット/20※10/10 使用/20※11/7 シリーズ/20※4/11 シルバー/10 城/10 白/20 白い/20 師走/20 新/20 真/20 辛/20 新規/20 シングル/20 紳士/20 慎重/20 審判/20※13/7/3 神話/20 GK/20※13/7/3 じーっ/30 ジェントルマン/20※12/5 時間/20 自画自賛/20※9/5 事件/20 地獄/20 実験室/10 実力/20 自動/20※8/8 自分/20※13/2/6 じゃー!/40 ジャーン/30 弱者/20※13/1/9 弱体化/20 弱肉強食/20※11/7 ジャック/20 ジャンプ/20※10/10 呪術/20 順番当て/10 準備/20 自由/20※13/8/7 ジョーカー/20 上級魔術士/10 上昇/10※13/9/4 成就/20 女子/20 ジョッキー/20※13/12/4 壬/20 す 酢/20 スイート/20※13/3/6 スイーパー/20※13/7/3 水泳/20※13/8/7 水晶/10※3/21 スイッチ/20※10/10 スイム/20※13/8/7 スイング/20※13/11/6 スキ/20 朱雀/20 進む/20 進め/20 涼しい/20 スター/10※13/1/9 スタート/20 ステップ/20※10/10 すでに/30 ストライカー/20※13/7/3 ストライク/20※4/11 ストロング/20※11/7 砂/20※7/4 砂時計/10※6/6 スピード/20※11/7 スピリッツ/20※13/10/2 全て/20 スペード/20 スポーツ/10 スライス/20※13/11/6 スルー/20※13/7/3 スロー/20※10/10 スローイン/20※13/7/3 スロット/10 ずばり/20 せ 正解/20 成功/20 精神/20※11/7 成績/20 成長/20 生徒/20 聖なる/20 青龍/20 世界/20 セカンド/20※4/11 拙者/20 せつない/20 せつなさ/20 節分/30 世話/20 先行/20※13/12/4 千載一遇/20※9/5 戦士/20※11/7 選手/20※4/11 戦術/20※6/6 船上/10 潜水/20※13/8/7 先生/20 センター/20※4/11 センタリング/20※13/7/3 線結び/10 戦略/20※6/6 ぜ!/40 絶体絶命/20※9/5 絶/30 全国/20※3/21 全国大会/10 前進/20※6/6 前人未到/20※9/5 前半戦/10 全力/20 そ 祖/20 層/20 相思相愛/20※9/5 草食/20 僧正/20※13/9/4 装置/20※8/8 想伝/10※6/6 そして/30※5/9 素数/20 育つ/20 育てる/20 そちら/20 そっち/20 卒業/20 その/20 園/10※3/21 そば/20 空/20 それ/30 某(それがし・ぼう)/20 そんな/20 増数/10※13/1/9 族/20 た行 た ターン/20※10/10 大安吉日/20※9/5 体育館/10 大会/20 大将/20 体操/20 タイピング/10 台風/20 大変/20 太陽/20 体力/20※11/7 タカ/20 高い/20 宝箱/10 互い/20 竹/20 猛々しい/20 助け/20 助けて/20 助ける/20※13/1/9 戦い/20 ただいま/20 たっぷり/20 辰/20 盾/20 七夕/20 楽しい/20 頼もしい/20 度々/20 タフ/20※11/7 魂/20※13/10/2 頼りない/20 タライ/20 他力本願/20※9/5 足りない/20 単純/20 だ!/40 ダーク/20※13/12/4 ダービー/20※13/12/4 ダーリン/20 第一/10 大賢者/10 大事/20 大丈夫/20 大聖堂/10 大聖堂前広場/10 第七/10 大胆不敵/20※9/5 ダイビング/20※7/4 ダイブ/20※7/4 大魔導士/10 ダイヤ/20 だから/30※5/9 だが/30 だけど/30 だし/20 ダダダ/30 ダブル/20 だもん!/40 誰/20 だろ!/40 段/20 男子/20 ダンジョン/10 旦那/20 ち 地/20 チーム/10※13/1/9 チェック/20 チェンジ/20※4/11 知恵/20※6/6 近い/20 地下街/10 力/20※11/7 知識/20※6/6 地図/20 父/20 茶/20 チャージ/20※13/7/3 ちゃっかり/20 ちゃん/20 チャンス/20 チャンピオン/20 チューリップ/20 中級魔術士/10 中継/20※4/11 中止/20※13/2/6 超/30 丁/20 頂上/20 頂点/20 調理/20 チョコ/20※13/2/6 チョコレート/20 直球/20※4/11 ちょっと/20 猪突猛進/20※9/5 知略/20※6/6 つ っ/40 ツアー/20※13/11/6 って/30 っぽい/30 ついに/20 通過/20 杖/20 使い/20※11/7 使う/20※11/7 使え/20※11/7 使おう/20※11/7 使って/20※11/7 使わない/20※11/7 月/20 土/20 翼/20 妻/20 つまり/30※5/9 冷たい/20 強い/20 て ティー/20※13/11/6 的/30※6/6 テクニック/20※8/8 テスト/10※13/1/9 撤退/20※6/6 鉄腕/20 てるてる坊主/20※13/6/5 天/20 天国/20 天使/20 ★天青/10 店内対戦/10 天秤/20 で/50 デー/20※13/2/6 出会い/20 DF/20※13/7/3 ディフェンス/20※10/10 ディフェンダー/20※13/7/3 出来ない/20 です/40 ですぅ/40 ですわ/40 でも/30 伝説/20 と と/50 トゥ/20※13/2/6 トーナメント/10 塔/10 登校/20 当然/20 灯台/20※7/4 討伐/10※10/10 遠い/20 時/20※3/21 ときめき/20 ときめく/20 刻(とき)戻し/10※6/6 得意/20 時計/10※3/21 解けた/20 解けない/20 解ける/20 ところが/30 ところで/30※5/9 年/20 年越し/30 徒手空拳/20※9/5 図書室/10 特訓/20 トップ/20 届かない/20 届け/20 殿/20※12/5 扉/10※3/21 とぶ/20 とべ/20 友/20※13/2/6 友達/20 トラ/20 寅/20 トラップ/20※10/10 鳥/20 酉/20 トリックオアトリート/30 トリプル/20 ドーン/30 銅/20 洞窟/10 堂々/20 ドカーン/30 ドキドキ/20 ドクロ/20※13/10/2 どこ/20 どこからでも/20 どちら/20 どっこい/30 どっち/20 ドドド/30 どの/20 ドライバー/20※13/11/6 ドラキュラ/20※13/10/2 ドラゴン/10 ドリブル/20※10/10 どれ/30 ドン/30 鈍重/20 どんな/20 な行 な な/50 ない/20 ナイス/20※13/11/6 泣いた/20 ナイト/20 内燃/20※8/8 ナウい/20 なかなか/20 仲間/20 長月/20 泣く/20 投げ/20 投げる/20 情け/20 なし/20 茄子/20 何故/30 謎/20 夏/20 なつい/20※13/8/7 懐かしい/20 鍋/20 名前/20 波/20※7/4 並べ替え/10 なり/20 なりたい/20 なんともない/20 に に/50 ニード/20 にがい/20 苦手/20 にく/20 肉/20※11/7 肉食/20 逃げ/20※13/12/4 逃げられない/20※13/12/4 逃げる/20※13/12/4 逃げろ/20※13/12/4 西/20 二番/20 ニュー/30 入学/20 女房/20 庭/10※3/21 人間/20 忍者/20 忍術/20 忍法/20 ぬ ※「ぬ」で始まる単語はありません。 ね 願い/20 願う/20※6/6 ネコ/20 ネズミ/20 熱帯/20※13/8/7 熱/20※8/8 の の/50 ノー/20※10/10 脳/20 望み/20 のにぃ/40 のよ/40 呪い/20 呪う/20 ノンジャンル/10 は行 は は/50 ハート/20 敗者/20※13/1/9 敗退/20 敗北/20 覇王/20 伯/20※12/5 歯車/20※8/8 橋/10 覇者/20※6/6 走り/20 走る/20 始まった/20 始まり/20 始まる/20 始め/20 ハットトリック20※13/7/3 葉月/20 鼻/20 花火/20 ハニー/20 羽/20 母/20 浜/20※7/4 早起き/20※13/8/7 早寝/20※13/8/7 波乱万丈/20※9/5 春/20 晴れ/20※13/6/5 晴れる/20※13/6/5 ハロー/20 ハロウィン/30 ハンド/20※13/7/3 ハンデ/20※13/11/6 バーッ/30 バーディー/20※13/11/6 バーニング/20※13/8/7 バーン/30 バカンス/20※13/8/7 化物/20※13/10/2 バッター/20※4/11 バット/20※4/11 バトル/20 バルーン/10※13/9/4 バレンタイン/30 バン/30 バンカー/20※13/11/6 バンパイア/20※13/10/2 パー/20※13/11/6 パーッ/30 パートナー/20 パーフェクト/20 パス/20※10/10 パター/20※13/11/6 パット/20※13/11/6 パワー/20※11/7 ひ 火/20 日/20 ヒート/20※13/8/7 光/20 東/20 低い/20 ★翡翠/10 必殺/20 ヒット/20※4/11 ヒツジ/20 必然/20 否定/20 人/20 ひとり/20 酷い/20 日々/20 ひまわり畑/10 姫/20 百戦錬磨/20※9/5 100点/20 非力/20 昼/20 疲労困憊/20※9/5 広場/10 ビーチ/10 ビショップ/20 ビジター/20※4/11 ビジネス/20 美術室/10 ビター/20※13/3/6 ビタミン/20 ビニール/20※13/6/5 美味/20 白虎/20 ピース/20 ピッチャー/20※4/11 ピリオド/10※13/9/4 ふ ファー/20※13/11/6 ファースト/20※4/11 ファイヤー/20※13/8/7 ファウル/20※13/7/3 ファスト/20※10/10 ファミリー/20 ファンタジスタ/20※13/7/3 ファンブル/20※11/7 不安/20 フィールド/10 風船/10※13/9/4 フェアウェイ/20※13/11/6 フェアリー/10 フェイント/20※13/7/3 フェニックス/10 フォー/20※13/2/6 フォワード/20※13/7/3 深い※7/4 服/20※13/12/4 複雑/20 不幸/20 不思議/20 富士/20 不自由/20※13/8/7 不正解/20 双子/20 ふたり/20 不調/20 普通/20 フック/20※13/11/6 不得意/20 船着場/10 船/20※7/4 文月/20 不明/20 冬/20 降らない/20※13/6/5 降り/20※13/6/5 フリー/20※13/7/3 フル/20※3/21 降る/20※13/6/5 古い/20 降れ/20※13/6/5 フレンド/20 ブースター/10※13/9/4 ブーン/30 武器/20 武士/20 ブラック/20※13/3/6 ブロンズ/10 ブワーッ/30 文学/20 文系学問/10 文武両道/20※11/7 プール/10 プラチナ/10 プレゼント/20※13/2/6 プロ/20※4/11 へ へ/50 丙/20 ヘビ/20 ヘルメット/20※13/12/4 変化/20 変化球/20※4/11 ベース/20※4/11 ベイビー/20 べからず/20 ベリー/20※13/3/6 ベンチ/20※4/11 ペナルティ/20※13/7/3 ペン/20 ほ ホース/20※13/12/4 ホーム/20※4/11 ホール/20※13/11/6 ホールインワン/20※13/11/6 ホールド/20※13/7/3 泡沫/20※6/6 星/20 細腕/20 細々/20 ホット/20 仏/20 骨/20※11/7 歩兵/20※13/9/4 ほれぼれ/20 ホワイト/20※13/3/6 本/20 本当/20 本末転倒/20※9/5 戊/20 ボーッ/30 ボート/20※7/4 ボール/20※4/11 ボーン/30 防御/20 防具/20 冒険/20 傍若無人/20※9/5 ボギー/20※13/11/6 僕/20 ぼく/20 ボク/20 募集/20 墓地/10 ぼちぼち/20 盆/20 ボン/30 ポーン/20 ポジション/20※13/7/3 ポン/30 ま行 ま マーク/20※10/10 マイ/20 毎日/20 マイルーム/10 マイレージ/10※13/9/4 マイン/20 任せて/20 任せろ/20 禍々しい/20 まくらない/20※13/12/4 まくり/20※13/12/4 まくる/20※13/12/4 まくれ/20※13/12/4 負け/20 負けない/20 負ける/20 誠/20 孫/20 ました/20 マシュマロ/20※13/3/6 ましょう/40 マシン/20※8/8 マジカ/10 魔術/20 魔女/20※13/10/2 ます/40 マスター/20 マスターズ/20※13/11/6 ません/40※11/7 まだ/20 街/10 まった/20 マッチング/10※3/21 松/20 魔導士/10 まぶしい/20 魔法/20 魔龍/10※10/10 魔力/20 まるで/30※5/9 ○×(まるばつ)/10 満足/20 満点/20 み 巳/20 未/20 ミー/20 帝(みかど・てい)/20※12/5 岬/20※7/4 ミス/20※12/5 ミスター/20※12/5 Mr.(ミスター)/20※12/5 水/20 ミズ/20※12/5 Ms.(ミズ)/20※12/5 水瓶/20 水着/20※13/8/7 水玉/20※13/6/5 水たまり/20※13/6/5 ミセス/20※12/5 味噌/20 道/20 三日天下/20※9/5 ミッション/20※6/6 ミッドフィールダー/20※13/7/3 緑/20 水無月/20 港/10 湊/20※7/4 南/20 見習魔術士/10 ミノタウロス/10 身分/20※12/5 未満/20 耳/20 未来/20 む ムーン/10※1/9 昔/20 無我夢中/20※9/5 婿/20 武者/20 無情/20 ムチ/20※13/12/4 睦月/20 無病息災/20※9/5 紫/20 め 明快/20 迷宮/20 明瞭止水/20※9/5 メイト/20 メイン/20※3/21 メカ/20 メガホン/10※6/6 目指し/20 目指す/20 目指せ/20 めし/20 メダル/10 めでたい/20 芽吹く/20 免許皆伝/20※9/5 メンタル/20※11/7 メンバー/10 面目躍如/20※11/7 も も/50 モアイ/10 もう/30 燃える/20※13/8/7 燃えろ/20※13/8/7 黙示録/20 潜り/20※7/4 潜る/20※7/4 潜れ/20※7/4 もし/30※5/9 文字パネル/10 もちろん/30 物足りない/20 モヤモヤ/20 萌ゆ/20 もらった/20 森/10 モンスター/20※13/10/2 問題/20 や行 や ゃ/40 刃/20 館/20 野球/20※4/11 山羊/20 約束/20 やさしい/20 休み/20 野生/20※11/7 やっぱり/20 宿り/20※13/6/5 山/20 止まない/20※13/6/5 闇/20 止む/20※13/6/5 止め/20※13/6/5 弥生/20 やれやれ/20 ゆ ゅ/40 ユー/20 ユア/20 優雅/20 勇気/20 優勝/20 勇猛果敢/20※11/7 幽霊/20※13/10/2 雪/20 油断大敵/20※9/5 ユニコーン/10 夢/20 よ ょ/40 よ!/40 よー/40 良い/20 曜/20 ようこそ/20 妖術/20 ような/30 ように/30※5/9 予感/20 欲/20※6/6 良くない/20 予習/10 予選/20 ヨット/20※7/4 呼ぶ/20 呼べ/20 嫁/20 より/30※5/9 夜/20 鎧/20 弱い/20 四択/10 呼んで/20 ら行 ら 来/20 ライオン/20 ライダー/20※13/12/4 ライト/20※4/11 ライフスタイル/10 ライン/20※10/10 ラウンド/20※13/11/6 ラジオ/20※13/8/7 ラップ/20※13/12/4 ラフ/20※13/11/6 ラブ/30 ラン/20※4/11 乱気流/10※13/9/4 ランタン/20※13/10/2 ランダム/10 ランナー/20※4/11 り 理/20※13/2/6 リーグ/20※4/11 リーチ/20 理系学問/10 リゾート/20※13/8/7 リタイア/20 リベロ/20※13/7/3 竜/20 寮/10 料理/20 凛々しい/20 る ルーク/20 ルーペ/10※6/6 ★瑠璃/10 れ レース/20※13/12/4 霊/20※13/10/2 0点/20 レイニー/20※13/6/5 レイン/20※13/6/5 レコード/20※13/12/4 レッド/20※13/7/3 レディ/20※12/5 レフト/20※4/11 レベル/20 LV.1/10※3/21 LV.2/10※3/21 LV.3/10※3/21 LV.4/10※3/21 LV.5/10※3/21 連想/10 ろ ローテーション/20※10/10 廊下/10 ロボ/20※8/8 ロボット/20※8/8 わ行 わ ゎ/40 ワイナリー/10※3/21 ワイルド/20※11/7 わからない/20 わかる/20 別れ/20 わがまま/20 分け/10※1/9 分ける/10※1/9 技/20※8/8 ワシ/20 忘れた/20 忘れない/20 忘れる/20 わずか/20 わたくし/20 私/20 わたし/20 罠/20 悪い/20 悪くない/20 我/20 我々/20 を を/50 記号・数字 記号・数字 !/20 ?/20 …/20 &/20 壱/20 弐/20 参/20 肆/20 伍/20 陸/20 漆/20 捌/20 玖/20 拾/20 ↑/20 ↓/20 ←/20 →/20 ♪/20 ☆/20 ♯/20 ♭/20 @/20 ※/20 ∞/20 、/20 ZZZ/30 +/20※5/9 -/20※5/9 ±/20※5/9 ×/20※5/9 ÷/20※5/9 =/20※5/9 ≠/20※5/9 </20※5/9 >/20※5/9 ≦/20※5/9 ≧/20※5/9 (/20※5/9 )/20※5/9
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――― 誰が一番強いのか? ――― あらゆる次元から人材を募る時空管理局はその都度、優秀な魔導士を数多く排出してきた。 その中にはもはや伝説的な逸話を持つ輩も少なからずいる。 例えばあの三提督のように。 そんな武装隊の面々の間でしばしば話題に上がるのがズバリ、これである。 下世話なランク付けだとは思うが、彼らが腕を頼りに職務を全うする人種である事を考えれば 興味の矛先がそこに向かうのも仕方の無い事かも知れない。 事に最近では、ニアSクラスを出来得る限り集めて結成された八神はやて率いる機動6課。 彼女達は後にも先にも「これ以上はない」と言われるほどのドリームチームと言われ 局全域に近年稀に見るほどの話題を提供する事になったという。 スバル達、新人が口に出して盛り上がっていた話題は、実は局中で口に上がっていた話題でもあったのだ。 そんな中、やはり皆の口から最も多く名前が上がったのが―――その名にしおうエースオブエース・高町なのは。 生い立ちと人気と実力。 教導官として幅広く活躍する彼女ゆえ、ファンが多いというのもある。 数々のドラマティックな逸話を持ち、やや童顔でありながらも凛々しさを称えたルックス。 そして達成してきた任務の数、困難さ。 戦技披露会での圧倒的な強さ。 おまけに年若い女性魔導士だ。 これだけの要素を持っているのだから注目されない方がおかしい。 教導隊全ての総称とされていた「エースオブエース」を己が代名詞としてしまうほどに、なのはは今や万人に認められる存在となった。 だが――――そうしたある種、祭り上げられたエ-スオブエースの威名と並行するかのように 機動6課において高町なのはよりも強いのでは?と囁かれる存在があった。 「なのはさんも強えけど、俺はシグナム姉さんが負けるとこなんて想像出来ねえなぁ」 これはとある陸曹の言葉である。 そう、6課内においては烈火の将シグナムこそが実力は上ではないかという見方も数多くあった。 彼女はなのはとは対照的な古代ベルカ式の使い手。 その質実剛健の働きぶりは見るものを唸らせるほど凄まじいものであるが、裏腹に過度に名声が先立ってしまう事はほとんどない。 恐らくそれは夜天の主の僕としての分を弁え、決して表に出たり目立つ事を良しとしない性格故か。 また脛に傷持つ彼女の経歴が、なのはとは違い、局全体がプロパガンダとして使用するのを躊躇う空気もあったからであろう。 だがそれでも彼女の圧倒的な強さは隠しようがない。 以前、行われた戦技披露会においてのエースオブエースとの「血戦」は語り草である。 修羅さながらの潰し合い。 魔力ダメージによる攻防などという事実は衝撃だけで砕けるBJによってすっかり忘れ去られ 吐血しながらも相手の肉を、骨を砕かんと激突する両者の形相は殺し合いでは?疑うほどのもの。 見物人の顔面を蒼白に染め上げるに十分な死闘が繰り広げられる事、数十分。 闘いが終わり、使い込まれたボロ雑巾のようになった両者が笑いながら引き上げていったその後 会場は恐怖と驚愕を称えた沈黙に包まれ、生唾を飲み込む音すらしなかったという。 今となっては微笑ましい、それは昔の物語。 なつかしくも儚い彼女達の黄金時代である。 閑話休題―――そして、舞台は現代へ。 ―――――― 剣を持つのは高町なのはをも追い詰める力を持った烈将。 かつてない最強の敵を前に、その眠れる力を解放する。 今はもう呼ばれなくなって久しい―――かつて次元を恐れさせた一騎当千ヴォルケンリッター。 一騎打ちなら負けは無しとまで言われた最強の剣士……あの烈火の将が炎を纏いて顕現したのだ。 現世でも逢世でもない隔世で、彼女は誰にも見せる事のなかった本当の力を解放する。 空からの圧倒的な火力で焼き尽くす「空爆」と呼ばれる殲滅戦。 本来の航空機動隊の戦い方がこれである。 敵を寄せ付けぬ圧倒的なパワー、スピード、防御力。 ミッドチルダの犯罪者達を震え上がらせ、抵抗は無意味とまで悟らせる管理局武装隊のその力。 トップクラスの騎士の手による凄まじい轟音と爆風を伴った攻撃が、竜の尾が蜘蛛の子を蹴散らすかのような光景と共になお続く。 「ぶ、ぁ………あぶねッ!」 相手もまた凡庸とは程遠い、星の記憶に刻まれた英霊。 苛烈な将の攻撃を紙一重、皮一枚で残して見せるが……それでも、もはや時間の問題だろう。 魔導士フェイトテスタロッサハラオウンの完璧なフォローの存在が彼らの反撃の可能性を余さず潰しているからだ。 雌雄一対の役割を微塵の狂いもなく果たすライトニング隊にはもう一寸の隙も無く 勝ちの目が無いサーヴァント達はまさに王手飛車角取りをかけられた状態だ。 ―――残り10minute 決定的優位の元に、彼女達は最後の攻防の火蓋を切って落としたのである。 ―――――― ??? ――― かつてミッドチルダを恐怖で震撼させた聖王の揺り篭が、決して余人の踏み込む事のない次元の狭間にて、その巨大な全身を横たえていた。 といってもそれは本来の10%の性能も持ち得ないレプリカであったのだが…… 形だけは大層なハリボテを本拠とする者たちは、強大なロストロギアの力によって開催された祭を取り仕切る実行委員でもある。 同時に祭会場にばら撒かれた無数の宝を、あわよくば拾い集めようと目論む浅ましくも悲しい敗残者たち。 しかしてその巣窟において場違いな男が一人、モニター越しに映る戦いを興味無さげに見つめていた。 黒衣のカソックに身を包んだ四肢をソファに横たえ、我ながら良い身分になったものだと皮肉げに哂う男。 その表情にはまともな人間らしい感情が宿っているかも疑わしい。 「剣の英霊……あいつ苦しそうだったな…」 変わってぽつりと漏れた言葉は、神父の脇に侍っていた少女のものである。 先の邂逅で出会った騎士王の安否を気遣うこの少女は戦闘機人のナンバー5・チンク。 スカリエッティが生み出せし姉妹の5女にして、異邦の客人の世話係としてこの男に付き従う羽目になった今回一番の被害者である。 狂気とやらが生み出したにしてはあまりにも愛くるしい愛玩人形の如き相貌。 人好きのする性格。 嫌な任務でも腐らず、へこたれずに健気にこなす姿は愛らしいの一言では到底片付かない。 「彼女はどうすれば私を受け入れてくれるのだろうか? そもそも、あいつは大丈夫なのか? 神父」 「私に答えられるわけもなかろう。 怪しげな茶番の舞台に強引極まりない方法でサーヴァントを顕現させたのはお前達だ」 「確かに……あの方法については未だ不明な点が多い。 一刻も早い掌握が必要なのだが…」 「そも拾った宝に名前を書いて己が物とする……それは紛う事なき盗人の所業だ。 仮にも私は神の代行者でな。 不心得者に口徳を授けるというのも職業柄、抵抗がある。」 「……神父の仕える神様は一宿一晩の恩というものを教えてはくれなかったのか?」 流石にムッとして床に伏せたまま反論するチンク。 その銀の長髪を称えた頭に―――目の前の皿に盛られた内包物を無言でぶちまける神父……否、人でなし。 「えっ………??」 何が起こったのか分からずに間の抜けた声をあげてフリーズした少女が―― 「、ッッッッあっづォォォォーーーーーーー!!?」 直後、怪鳥音じみた悲鳴を応接室に木霊させる。 ぐつぐつに煮立った餡かけが頭頂部を犯し、後頭部を経てスーツの間から背中に進入。 火を司る料理と言われる中華の熱さを文字通り体感した少女が悶絶して転げ回る。 「な、何てことをするんだっ!?」 「一宿一晩が聞いて呆れる。 未だ私はまともな飯の類を口にしていないわけだが? 客人に生ゴミを食わせる輩が恩義などとよく口に出来た……そんな事であの剣の英霊を手なづけられるものか」 銀髪を振り乱して床をのたうち回ると、その頭からゴロゴロと転がるゴムのような物体があった。 それは彼女が「豚のカクニ」と称して神父に出した、セイバーとの友情の証……もとい、滋養豚の残骸だった。 「な、なまっ!? そんな食べもしないで!」 「生憎、セイバーのように昏倒させられる気はない。 全く世話係などとよく言えたな。 優秀な機械人形と嘯いてはいるが貴様、その実何も出来んのではあるまいな?」 「失礼な……妹やゼストの世話は全部、私が担当したのだぞ! 料理は初めてだから勝手が分からないが個体の洗浄などは大得意だ……!」 「―――ならば洗浄して貰おうか―――」 「へ……?」 憤然と神父と相対していた少女がカエルの詰まったような声を出した。 その前で……おもむろに上着を脱ぎ出す神の御使い言峰綺礼―――― ―――――― 業に入らば郷に従え、とは現地のニンゲンのコトワザだ。 ならば嗜み物も舞台に合わせるのが粋であろう。 男の手に持っているのはサロン・ブランド・ブランブリュット。 10年で僅か3回しか造られない幻のシャンパーニュである。 そんな貴重な葡萄酒を片手に神父と語り合おうと部屋を訪れたのは 言峰綺礼とは対照的な出で立ちの白衣の男、天才科学者ジェイルスカリエッティ。 だがしかし、彼が客間の前まで来た瞬間――― 「うわああああああああああんッッ!!!」 目の前の鉄扉がバタァン!と凄まじい音を放ち、内側から脱兎の如く逃げ出す影一つ。 人外の脚力を発揮し、トップスピードに乗ってあっという間に見えなくなった――― その後姿と、なびく銀髪だけが辛うじて博士の視界に残る事となった。 「ふうむ………………取り込み中だったかね?」 「そうでもない。 少し考え事がしたかったのでな……小娘には出て行って貰った。」 ほどなくお前が来たので何の意味も成さなかったが、と付け加えた神父。 鍛え抜かれた強靭な上半身を再びカソックで隠す仕草の何と絵になる事だろう。 「それは済まない事をしたねぇ。私はてっきりキミが……」 「私が何だ?」 「キミが我が娘に情欲を催してくれたのではないかと淡い期待を抱いたのだが。」 随分と歪な「淡い」もあったもんである。 「しかし姉妹の中でも随一の気骨を持つチンクがあんな声を発して逃げ惑うとは…… 滅多に無い反応が見れて僥倖の極みだよ。 キミは彼女をどう思う? 綺礼。」 どう思うと言われても返す言葉が無い。 生憎、幼女を私物化して侍らせるという好事家にとっては狂喜乱舞するようなシチュエーションも 人が幸せだと思う事にとんと無頓着な言峰綺礼には猫に小判である。 「もしかしたらキミを強く意識しているのかも知れないねぇ。 これが噂に聞く思春期というやつか……」 「気持ちの悪い事を言うな。」 「いやいや実に興味深い。 私は残念ながらニンゲンというものが今一、理解出来ない。 あの娘たちは悲しいかな外界から閉ざされた純正培養の中で育ってきた。 だから今までは戦闘機人の 人 の部分を学習させるに至らなかったわけだが…」 芝居がかった大仰な仕草でいつもの演説を始める白衣の科学者。 「ニンゲン……それもキミほどの強力な毒を持った個体は実に珍しい! その毒は娘たちにも何らかの影響を与えてくれるらしいねぇ! ああ……それは実に喜ばしい事だ……最悪の生きた見本としてキミは極めて良い教材になれるだろうよ! いっそ義理の娘としてキミにチンクを預けてしまおうか! そう! 大事だからこそキミに預けたい! 私が求めてやまぬ生命の揺らぎ……ッ、ことにキミは他人を揺さぶる事にかけては絶品だ! ふふふ、つくづくキミに目をつけた私の目に狂いはなかったといえるだろう。 ああ言えるとも!」 「お前だけには言われたくないと憤慨すれば良いのか私は? 否定はせんが――」 狂乱の白とは対照的な黒が気の無い返事を帰す。 相変わらず人を食った、どこまでが冗談か分からぬ男だった。 ある意味、娘の成長を憂い喜ぶ父親に見えない事もないが(それはもう慈愛に満ちた好意的な解釈をもって)まあ何にせよ、だ。 生まれ故郷を遠く離れた地に、既に死した身を叩き起こされて、まずさせられる事が家族ゴッコだというのだから良い迷惑である。 ことにあの小娘の銀髪を見ていると、どうにも琴線に触れる。 どうやら自分の種から生成されたらしい娘も銀の長髪だと聞いたが、ソレと被って居心地が悪いとでも言うのだろうか? (ふ……馬鹿な。 そんな殊勝な心の持ち主でもあるまい……私は。) 本来、持ちえぬ記憶を持った偽りの自分。 歪なイレモノに感情というデータのみを書き換えられた偽りのコトミネキレイは、ただ溜息をつくのみ。 かつて世界の毒として生を受けたこの身は、もはやあの世界に戻る事も影響を及ぼす事もない。 今回、自分は何の当事者でもない。 この茶番劇において狂言回し以外の役割を担う事もないだろう。 以前のような悪意と狂気に満ちた行動力は既に枯れ、暢気に晩酌などを嗜んでいるその目下。 かつての自分の使い走りが悪戦苦闘している様を精気の抜けた双眸にて見下ろすのみ。 (―――それにしてもランサーよ。) 自身と同様の哀れな姿にも気づかず、令呪による縛りから解放されて全力で駆ける男の姿が瞳に映る。 (そんなザマでも思うままに飛び跳ねられるのが嬉しいのか……) まるで首輪を外されてはしゃぎ回る犬ッコロだと、にべのない感想を抱くのも忘れない。 冬木の地で凌ぎを削ったサーヴァント達が今、再び蟲毒の檻にて踊り狂う。 だが聖杯に変わり、英霊召還の無理を押し通すオーバーテクノロジーのシステムはそのまま彼らを好き勝手に弄ぶ傲慢な縛鎖に他ならない。 戯れに戯れを塗り込んだ無礼に過ぎる仕様。 彼らはもはやギルガメッシュの言った通りの紛い物の人形だった。 ランサー。 ライダー。 そして、セイバー。 正視出来ぬほどに歪になってしまった地球の神秘、幻想の具現たち。 何も知らずに舞い狂う彼らも、いずれはその袋小路の運命に絶望するのだろう。 ………無表情の男の口元が微かに歪む。 「せめてそれまでは足掻いて欲しいものだな。 ことにランサー……せっかく私の手綱から逃れたのだ。 ろくに観客を笑わせぬうちに退場する道化もなかろうよ」 含んだ笑いと共にかつての自分のサーヴァントに彼なりのエールを送る神父。 その相貌が矯笑に騒ぐスカリエッティの視界の外で暗く――――どこまでも暗く淀み沈むのであった。 ―――――― 果たして槍兵にとっては全く嬉しくない人物からの応援が届いたか否か――― 推し量れるほどに男は今、生易しい状況に置かれてはいなかった。 何せ怒れる火竜の蹂躙がすぐそこにある。 轟炎の剣士と炎の剣精のデバイス。 JS事件における最終決戦で初めてその身を同化させたシグナムとアギトが叩き出した破壊力は 恐らくは全リミッターを解除したなのはと同等以上という壮絶にして余りある数値を叩き出した。 この世にパワーバランスを司る何かが働いているのだとしたら、二者を引き合わせてしまったのは明らかに彼らの職務怠慢だろう。 まるで竜種そのもの――それは正しく人ではない、大空に駆ける飛竜だ。 轟々と燃え盛る炎を纏い、生物の頂点に立つ最強の亜種。 竜の威厳と変わらぬそれを以って、剣士は二体のサーヴァントを蹴散らし続ける。 「………」 「ランサー?」 加えて電撃使いの雷のダメージは体の外側でなく芯に残り、直撃すれば骨も残らぬ剣閃烈火が頭上スレスレを通り過ぎるのも幾度目の事か。 このままでは丸焼けになるか塩漬けになるか……勝機はおろか生還すら絶望的な状況だ。 そんな明らかな劣勢において、普段は騒がしい槍のサーヴァントが沈黙している。 訝しむ騎兵。 敗色濃厚で意気消沈するとは情けないと皮肉の一つも投げてやるべく、その相貌を覗き見る。 果たしてその横顔は――― 「竜殺しか……………こりゃいい。 喰いでがありそうだ」 ―――憎たらしいほどに、いつも通りの男の顔であった。 「命脈尽きてなお巨頭に挑む機会を与えてくれた古今東西の戦の神に感謝するぜ。 アレは俺の相手だ……お前にゃ渡さねえよ。」 ここに来てまだ一騎打ちにこだわっていたりする槍兵。 仮にこの地で討ち果たされても本望という意思さえ感じ取れる。 流石は戦バカ……否、戦ヲタク。 とても並の神経では理解できない。 (どうしたものか…) 当然、対面のライダーの思考は対照的だ。 彼女はここで果てる気などはない。 戦いに結果以外の意味など求める性分ではないし、この槍兵と一緒に討ち果たされる義理も無い。 狂人に付き合って枕を並べて討ち死になど笑い草も良いところだ。 唯一心残りなのは頭上、あの炎の騎士の遥か後方でこちらを見下ろす黒衣の魔導士。 もはや到底あれに手が届く状況ではないのだが……それにしても口惜しい。 (ペガサス――) ―――は、駄目だ。 神殿を破られた影響で自身の体内に残る魔力がほとんどない。 弾奏に残った最後の一発は周囲全てが敵である乱戦ではとても使えない。 (何とか再び彼女らを引き剥がせれば、また話は違ってくるのですが……) あの美しい獲物を取り逃がすのは癪だ…… しかしいよいよとなれば隣の男を盾にしてでも撤退を決め込むしかないだろう。 既に佳境に入ったこの戦い。 四つの思考が乱れ飛ぶ中――― Last assault 開始後2分 ――― 時限を現す時計の針が五分の一ほど進んだ事を場に示していた。 ―――――― ラストアサルト――最後の急襲作戦は既に発動した。 よっしゃあ絶好調! シンクロもばっちりだぜ! 「……」 もはや後戻りは出来ない。 オーバードライブの安全弁を開けてしまった今となってはやり直しも効かない。 その攻勢の第一波を思う存分、サーヴァントを追い散らす事で果たしたシグナムとアギト。 10分20分と暴れまわったように感じた彼女らが、改めて要した時間は2分にも満たず。 こちとら力が有り余ってるんだ! 見てろ……一泡も二泡も吹かせてやるぜ! 「調子に乗るなアギト。」 (わ、分かってらぁ…) 圧倒的優位にて序盤を折り返すユニゾンシグナム。 しかし遠巻きから見てなお、相手の動きにも目の内に宿った闘志にも衰えはない。 果たしてこのまま決めさせてくれのか? 騎士の心胆には未だ暗雲が立ち込めていた。 回避の一点張りを決め込む二対を相手にどうしてもクリーンヒットを奪えない。 一撃でもまともに当たればそれで終了だというのに…… 凄まじい火力に追い立てられ、一方的に削られて、ほどなく動けなくなるとしても 今は頭を伏せ、あるか無いかの一瞬のチャンスを待ち続けているようにも見える敵。 凄まじい胆力だ。 それだけで驚嘆に値する所業であるが…… (感心している場合ではないな……終盤の一手を誤れば詰まされるのは我らだ) 苛烈に、そしてあくまで冷静に二体を追い立てるシグナム。 その懐から鞭のようにしなる火竜の尻尾を再び眼前に叩きつけ――― また一つ、巨大なクレ-ターを場に刻む。 ―――――― シグナムが振り被った炎尾の業火を掻い潜る英霊二体。 相手にセイバー並の剣速がなかった事がせめてもの救いであるが、それも不幸中の幸いに過ぎない。 加えて高速で飛来するフェイトが巨大なザンバーを構えて彼らを強襲。 後方支援に徹するかと思いきや、隙を見せれば一足で踏み込んでくる……それがこの魔導士の恐ろしいところだ。 ソニックインパクトのトップスピードは英霊を凌ぎ、到底カウンターを合わせるどころではない。 戦闘機によるぶちかましを髣髴とさせる当たりでランサー、ライダーを吹き飛ばす。 再び散り散りにされる蒼と紫。 そして尻餅をついたライダーの腕に―――将の蛇腹剣が巻きつく。 ジュウ、という肉を焦がす音と匂い。 諸共に凄まじい牽引力が騎兵の身体を引き摺り始める。 そのままライダーを引き回し、先ほどの返礼とばかりに力任せに叩きつけようとするシグナム。 「むう……!」 だが騎兵とてそう簡単に力負けはしない。 彼女が四肢を……否、捕られられた右腕以外の三肢をフル稼働。 片腕両足の指を地面に食い込ませて場に踏み止まる。 ガクン、という凄まじい抵抗を受け、驚くべき手応えに将が息を呑む。 灼熱の蛇腹剣に二の腕を締められているのだ。 だのに食い込む刃を意にも介さず、女怪は右手で剣を掴みながら騎士と互角の力比べに挑んでいる! 「ふッ――!」 「こいつッ! つくづく…」 どっかおかしいんじゃ無いのか、あの女ッ!? ルーみたいな顔しやがって!と悪態をつく妖精を尻目にシグナムの脳裏に過ぎるは 地球において最もポピュラーな昆虫――甲虫最強の一本角のアレであった。 木や地面から引き離される際、そうはさせじと四肢を踏ん張り、驚くべき抵抗を見せる彼らを彷彿とさせる光景だ。 何の! ぶっこ抜いちまえッ!! 「言われるまでもない!」 更なる出力を発揮する空の騎士。 女怪の地を食む片手両足がミシミシと悲鳴をあげ、爪にビシリとひびが入る。 それでも大地に根差した大木のように動かない痩身。 怒れる竜と、その尾を掴んだ魔性の怪物――幻種同士の剛力比べが始まった。 ―――――― (……シグナムっ!) 止まらぬ連携が――止まった! 否、力づくで止めたライダー。 魔導士に焦燥が浮かぶ。 途切れたコンビネーションの隙を見逃す相手ではない。 防戦一転、ランサーが一気呵成に反撃に出る。 10を超える射撃魔法を残らず撃ち落とし、男はあっという間にフェイトに肉薄。 「世間様に迷惑ばかりかけて来た怪物が、たまには人の役に立つじゃねえか! そのまま一時でいいから抑えとけ! すぐに―――終わるからよ」 豪壮無纏に槍を回転させてフェイトの体に照準をピタリと合わせる男。 凛とした佇まいに淀み無い殺気。 対面するフェイトの心胆に氷柱が打ち込まれる。 何度相対してもゾクっと総身を貫かれるような感覚にまるで生きた心地がしない。 無数の矢を再び装填し、槍兵に突撃を敢行するフェイト。 肌にジャストフィットしたボディスーツにスパッツ。 露になった肩から二の腕、太股の辺りまでしか覆っていない下半身。 奇しくも男のそれに勝るほどの超軽装は、あの騎兵を凌ぐ疾走を見せた彼女の決戦モードだ。 「嬢ちゃん。 こうなった以上、主義も主張も関係ねえ……悪いが一気に叩き潰させてもらうぜ!」 「やれるものならやってみろ…!」 先ほど後れを取ったランサーに再度、臆せず斬り込む魔導士。 その顔に気後れなどは微塵も無い。 二撃三撃と打ち込みながら先の二の轍を踏まぬように軌道修正。 スピードと引き換えに失った各種ステータスは決して馬鹿に出来ず 四者の中ではっきりと自分が一番、体力、耐久力では劣っている事を自覚しているフェイト。 故に速度よりも馬力とタフネスがものを言うこうした乱戦下では、間違いなく自分が一番撃墜される可能性が高い。 少しでも気を抜けばバッサリとやられる。 考えている暇などない。 あっという間に景色が流れ、色々なものを追いてきぼりにする両者の交錯は既に始まっている。 当然のようにレッドゾーンを超えてアクセルを開けなければならないこの現状。 絞り潰されそうな心臓の動悸を無視して押さえ付け、執務官はサーヴァントと交戦する。 男の四方を撹乱しながら一瞬でランサーの後方に回り込み、彼女はノーモ-ションで肩口に鎌を振り下す。 「潔さは買う……だが甘えッ! 打ち込む気まで消せれば完璧だったがなっ!」 負傷した目を突いた死角からの一撃を事もあろうに眼で追いもせず、後ろ向きのままに上段で受けるランサー。 こんなのは時代劇でしか見たことがない……研ぎ澄まされた心眼、相手の行動に対する読み。 やはりこの男――最上級の達人だ! しかしこれで終わりではない! 途端、ランサーの前方よりフェイトの雷の矢が飛来する! 男の後方に回り込む前に既に撃ち放ったプラズマランサーだ。 自身の放った弾丸すらをも追い越す速度を持つフェイトだからこそ可能な全方位移動攻撃の真髄。 上方の鎌を受けて晒した男の胴に、このままでは矢が突き刺さるは必定。 無防備な胸と腹部に襲い掛かる鋭い先端が勢い良く飛び荒び、ランサーの目前に迫る。 「おらあああっ!!」 「うっ!??」 しかし槍と鍔迫り合っていたフェイトがバルディッシュごと前方に引き摺られる。 男が受けた鎌ごと強引にフェイトを引っこ抜き、背負い投げの要領でぶん投げたのだ。 視界ごと天地が引っくり返り、軽々と投げ放たれるフェイトの痩身。 前方に投げ放たれた先には自身の放ったプラズマランサーが今なお飛び向かってくる。 このままでは墓穴―――己の放った矢に全身を串刺しにされてしまう! 「何…!?」 だがそこで驚愕したのはランサーだった。 指向性を持った魔法の矢……それがフェイトのプラズマランサー。 コンマの速さで揺れ動く戦況に際し、フェイトの戦術思考は聊かの遅れもなく追随し、修正を開始。 衝突する筈だった彼女と無数の雷は、矢の方がまるで意思を持ったように彼女の体を回避し 歪な鋭角軌道でフェイトの体を避けて、その全てが再びランサーに降り注ぐ。 「野郎っ! 器用な真似しやがる!」 自由になった両手で扇風機のように魔槍を回転させて矢を弾き散らすランサー。 だが最中、敵の様相を見据えて再び舌打ちをする。 投げられ、地面と平行に滑空しながら魔導士は手の平をこちらへとかざしていた。 背中と頭を地面に擦るような低空飛行で、逆さまの姿勢のままに打ち放つフェイト18番の砲撃――サンダースマッシャーだ! 「うおおっ!?」 槍で弾き返すには大きすぎる大砲を、なりふり構わず地を転がって回避する槍兵。 すぐ横を黄金の射線が通り過ぎる。 地面を転がり、すぐさま立ち構える槍兵と、こちらも地を滑って投げの勢いを殺し、迎え撃つように立ち上がるフェイト。 「役不足だ、なんて二度は言わせないぞ!」 普段は優しくておとなしい性格の彼女だが、突き付けられた屈辱を跳ね除けられないような弱虫では断じてない。 その顔、その目には先ほどの槍兵の言葉……「相手にならない」と断ぜられた事に対する反骨心がありありと浮かぶ。 「いやいや不足どころか実際、大したタマだぜ…」 通常、あれもこれもと手を出せばどっちつかずの中途半端な代物にしかならないが あの娘は全範囲、全方位において全ての距離を高い水準でモノにしている。 正直一番嫌なタイプであり、その技量――評価しないわけにはいかない。 (あっちは何時まで持つか……つうか何で宝具を使わねえんだ、あの馬鹿) 凌ぎを削るライダーとシグナムの方をチラっと見る男。 立ち塞がる美貌の少女。 英霊とはいえ、これを一息に飲み込む事は至難だ。 ただの人間がサーヴァントに比肩するだけの天才的なセンスを発揮するなどという事が本当にあるのか? 「何にせよ、信条の違い―――覆すには刃で証明するしかないもんなぁ。 もう止めろとは言わねえよ……俺の理屈、否定出来るものならやってみやがれっ!」 吼えるランサー。 空気がビリビリと震える。 Last assault 開始後3分 ――― 例え刹那の出来事だったとしても刃で語り合えるのならば―――男にとってその時間はかけがえの無い宝だ。 再び槍を唸らせ踏み込むランサー。 フェイトも意を決したように、相手の突撃に合わせて低空飛行。 地面スレスレを潜りながら槍兵の足元をサイスで狙う。 決して正面からはぶつからない。 この男とまともに切り結んだら潰されるだけだ。 上空三方向から牽制の矢を降らせ、敵の攻め手を殺ぐ魔導士。 男が射撃を弾いた一瞬の間でフェイトはミドルレンジにまで後退。 三日月の刃――中距離射出魔法ハーケンセイバーを飛ばす。 (これは多分、避けられる……けどっ!) それを追いかけるように飛翔する黒衣。 腰の燕尾が突風ではためく。 美しいムーンサルトの機動を描き、常に男の死角へ死角へと回り込むフェイト。 その逃げていく金の髪をどこまでも執拗に追いかけるランサー。 赤き魔槍の連突も激烈さを増す。 (さすが……なら、これで!) 空中で回転し、遠心力でデバイスをアッパースイング気味にランサーに叩き付ける。 それはサイスの時には感じなかった凄まじい重さを持つ戦斧の一撃だ。 「む……!?」 間を詰めようとした男が重い一撃で後方に半歩下がる。 状況に応じて変化する武器が攻防においてこれほどに有効に作用するとは―― 彼女の機動力も相まって、まるで別の武器を持った何人もの敵を相手にするようだ。 当然、持ち主にピーキーな技量を要求するマルチウェポンはフェイトを主とするならば何の不足もない性能を発揮する。 「ロックオン……バルディッシュ!!」 間髪入れずに大砲の砲身を相手に向けるフェイト。 男に命中させるのは困難だろう。 しかし―――その背後! 「!! おいライダー! 避けられるなら避けな!」 「――――、!」 男が、炎の騎士と力比べをしていたライダーに向けて叫ぶ。 「サンダースマッシャー!!」 と同時に放たれたサンダースマッシャー。 同時ロックオンによる砲撃が同一軸線上に並んだサーヴァント二人を薙ぎ払う。 一人は中空。 一人は必死に身をよじり、金の濁流から命辛々身をかわす。 必殺の雷撃が薙いだ刻印を大地に刻み付けるその矢先―― 「おおおおっ!!」 支えを失い宙に浮いたライダーを、捕らえた右手ごとシグナムが振り回す。 その肉体が数回転ほど宙を彷徨い―――勢い良く地面に叩き付けられる! ゴシャァッッ、と鈍い音が辺りに木霊し、地面をバウンドして滑るその体。 衝撃に声の無い苦悶を漏らすライダー。 紫の髪が泥に塗れ、無様に這ったその横で―― 「おかえり。」 「…………」 槍のサーヴァントがばつの悪そうな顔で佇んでいた。 「……成果は無しですか? 口だけ男」 「俺もなまったのかね……いや、あの嬢ちゃん、マジで強えんだよ」 窮地を脱する千載一遇のチャンスだったにも関わらず、それを生かせず再び合流した事に対する苦笑いが双方に浮かぶ。 ゴール直前で振り出しに戻る双六のやるせなさを存分に感じ取れる瞬間だ。 「どうにもならんか……いよいよ持ってジリ貧だな」 槍兵がいちかばちかの覚悟を決め、騎兵が何とか窮地を脱出しようと画策し―― Last assault 4分経過 ――― 追い詰められているのはサーヴァント。 しかして背水の陣を敷き、じりじりと相手を攻め立てながら「時限付き」の攻勢を消化していく魔導士と騎士。 焼け付く体内を推しての戦いはなお続く。 彼女らに残された時間はあと6分足らず。 それまでに―――それまでに敵を沈黙させねば…… ―――――― 「提案があります」 「あとにしろ。」 言うまでもなくチーム戦では個々の能力よりもパートナーとの相性が重要となってくる。 故に思う―――やはりというか予想通りというか、つくづく相性が悪すぎる。 敵同士とはいえ、火急の事態で共闘を余儀なくされるケースは決して少なくはない。 先ほどまで本気で殺し合っていた者同士が新たな敵に対して見事な連携を見せて戦う。 戦場においてそういった光景は珍しくはない。 しかしながら二人は思う。 こいつとは……どんなに戦いを通じても―――駄目だろうな、と…… 「提案があります」 「うるせえな! 今忙しいんだよ! さっさと言え!」 「では言います。これでは埒があかない。 死ぬほど嫌ですが貴方に私と協力する権利を与えましょう。 何とかして彼女らを分断し、一対一へと持っていく手助けをしなさい。」 「オマエな……脳みそ湧いてんのか? 第一、協力などせんでも……うおっとぉ!」 頭上を通り過ぎていく火竜の尾を屈んで交わす二人。 背中の肉が焼け焦げて削れる。 それだけでも人間ならば致命傷だ。 「協力などせんでも、お前がどっか行きゃ済む話じゃねえのか?」 「済みませんよ。 フェイトの射撃は明らかに私と貴方を離脱させまいと放たれています。 どうやら向こうは我々が敵同士だと気づいているようですね。 袋の鼠は一緒に叩く――彼女らは実によく分かっている。」 「感心してる場合か阿呆! 敵の思惑が分かっていながら、こっちは足を引っ張り合って何も出来ねえ! これじゃネズミ以下だぜ俺たちは!」 「このままでは二人揃ってここで倒されますね。 サーヴァントが文字通り雁首を揃えて敗北……初戦敗退の不名誉と相成って後世に恥を残す事に。」 流石にそいつはいただけない……彼らには一様に誇りがある。 召還された自分が「取るに足らないサーヴァントだった」などという不名誉は彼らにとっては耐え難く そんな無様な結果を残したくないという感情は全サーヴァント共通の本能のようなものだ。 「一回だ……一回だけ協力してやる」 「決まりですね。 私はフェイトの相手をします……文句は無いでしょう?」 「好きにしな。 こちらも好都合だ」 鉄の結束を見せるライトニングの二人に対して、今にも止めを刺されそうになり ようやく精一杯の譲歩を見せた両者にインスタントな絆が芽生える。 「おらっ! 今だ!」 相変わらず間断なく降らせられる剣撃の雨あられ。 触れれば即、体のどこかを持っていかれる苛烈な攻撃を掻い潜り その中の一撃を選んでまずはライダーがアクションを起こす。 シグナムの横薙ぎを避け損ない、紫の肢体が無様にきりもみ状に吹き飛ばされた。 騎士の剛剣がついに強敵の片翼をなぎ払っていたのだ。 「―――、」 否、そう見せかけて自分で飛んだ! 重爆撃のような衝撃に逆らわず、身を預けるように宙に浮いたライダー。 その彼女に向かって槍の男が駆ける! 「おっしゃ! 飛ぉべぇぇッッ!!!!!」 一足飛びで騎兵に肉迫する蒼い肢体。 上空、騎士と魔導士の顔色が変わる。 今までとは違う動き、違うリズム。 何より互いに敬遠し合っていた相手が初めて呼吸を合わせたのだ。 無様に飛ばされた筈のライダーがそれを見越したかのように反応。 自在に空中で姿勢を変え、駆けつける槍兵に両足を向ける。 そしてランサーの飛び蹴りが突き出したライダーの足に炸裂! ライダーの身体がピストンで打ち出された弾丸のように暴発じみた速度で――打ち出されたっ! 「なっ!?」 爆発的な加速で射出された騎兵の髪が尾を引いて、流れ星のような軌跡を描く。 フェイトをも遥かに超えた速度にて、一瞬で相手の間合いを犯したライダーが獲物に組み付かんと迫る。 ニ敵を射抜く見事な軌道。 流石は投擲自慢の槍兵の射出と言わざるを得ない。 強力なサーヴァント達が初めてチームとして機能した結果だ! 改めて空の敵を射殺そうと放たれたあれこそ本当の紫電の煌き。 ライトニングの二人をして、相手の即興のコンビネーションは計算していなかった。 いなかったが故に―――回避が間に合わない! 「ぐ、あっ!?」 シグナム…!? うわぁ!?? 薄紫の髪をはためかせて空を切り裂く騎兵ミサイルがまずはシグナムに追突し、あっさりと吹き飛ばす。 高熱で形成される四枚の羽の一枚を難なくぶち砕かれ、バランスを崩して墜落する将。 必死でリカバーするが意識を持っていかれるほどの衝撃は彼女に瞬時の戦前復帰を許さない。 そしてシグナムを抜いた騎兵が真に狙うは―――― 「貴方ですよ。 フェイトッ!!」 ―――後方の司令塔フェイトテスタロッサハラオウンに他ならない! 敵のまさかのアクションに圧倒的に反応が遅れたのはフェイトも同じ。 直上へ回避しようとした魔導士が、あっ!?と息を呑んだ時には――― あの禍々しい縛鎖が自らの足首を捕らえた後だったのだ! ジャラリ、と右足に生じた感覚はまるで忌わしき毒蜘蛛の糸が足首に巻きついているかのよう。 罠にかかった猫の如く、ほとんど反射的に空中に舞い上がるフェイト。 (ここで撃墜されたら全てが台無しになる…!) バックアップを失った前衛では、あの速い相手を時間内に仕留められる確率は五分以下に落ち込んでしまう。 Last assault 5分経過 ――― 魔導士がライダーを振り剥がすべく、最大全速にて―――雲を突き抜け離陸した。 前 目次 次
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「そ~れっ!」 黄色い声が元気にこだまする。 ここはバレーボールの練習場だ。 紺色のブルマーと真っ白のシャツに身を包んだ、2年生エースのハルカが飛び跳ねる。 172cmの長身と驚異のジャンプ力で2年生にしてジュニアのエースに駆け上がり、近いうちの 全日本代表間違いなしと言われている逸材だ。 また、実力だけでなくアイドル顔負けのルックスとスタイルで早くもマスコミを騒がせている人気者でもある。 そんなハルカが休憩時間に休んでいると、隣の練習場で練習していたはずの男子ボクシングチームの 1人が姿を現した。 「ハルカちゃん、お疲れ様。」 男子ボクシング フライ級代表の加藤が声をかける。 「お疲れ様です!ボクシングの皆さんも休憩ですか?」 「いやそれがお願いがあってさ。練習中に飲むはずのドリンクを無くしちゃったんだよね。 そっちに余ってるのがあったら分けてもらえないかなと思って。」 「たくさんあるから大丈夫だと思いますよ。あのドリンクサーバー1つ持って行って良いですよ。」 「ありがとう。で、申し訳ないんだけど俺これじゃない。ちょっと運んでもらってもいいかな?」 加藤はボクシンググローブで覆われた自分の手を見せる。 親切なハルカは2つ返事でOKした。 ボクシングの練習場に入ったその瞬間であった。 「キャー!何するんですか!」 加藤がハルカのお尻をなでまわしていた。 「たまんねーよ、ハルカちゃん。その顔、スタイル、かわいらしい声。俺ら禁欲生活を送ってるから、 そんな刺激的な格好されたら我慢できなくなっちゃうよ。」 ブルマーのお尻を舐めまわすように見る男子ボクシング部員たち。 「ちょっと、わたし帰ります。」 帰ろうとしたハルカを遮るように、入口の前に立ち、後ろ手でカギを絞める加藤。 「いいじゃんかよ。一発やらせてくれよ。素直に言うこと聞けば傷めつけたりしねーから。 それとも処女だったか?まあ、処女膜が破れての出血は痛めつけたうちに入らないよな。」 信じられない事を言ってくる。 ここには4人のボクシング代表選手がいたが、いずれも昔は札付きのワルばかりであった。 更生したように見えても本来の性質の悪さは隠しようもなかった。 「酷いじゃないですか。こっちは親切でドリンクを持ってきてあげたのに。どうしてそんなことするんですか?」 「決まってんじゃん。君がかわいすぎるからだよ。かわいいって罪だよなw」 ゲスな笑いを浮かべる男子部員達。 「さあどうする。素直に1発やらせるか。はむかって痛い目に合うか。」 答えられないハルカ。 「よ~しわかった。じゃあ、チャンスをやるよ。グローブを付けてリングへ上がりな。 それで1ラウンド3分間俺の攻撃を耐えきることができたらそのまま帰してやるよ。 その代わり耐えきれなかったら俺ら4人と1発やる。どうだ?」 本来なら取引にもならないむちゃくちゃな要求だったが、思わぬ事態でパニックに陥っている ハルカには冷静な判断が出来なくなっていた。 わずかでも、わずかでも助かる可能性があるならとそちらへ飛び着いてしまった。 それが加藤の罠であるとも知らずに。 「わかりました。本当に3分耐えられたら帰してくれるんですね?」 「ああ、俺は約束を守る男さ。誠実さだけが取り柄なんでね。」 しめしめ、やっぱり女はバカだな。ど素人が、しかも女がオリンピック代表選手のパンチを3分も耐えられると思ってんのか? ドSの加藤はハルカを痛めつける姿を想像し、早くも股間を膨らませていた。 8オンスグローブ、ヘッドギアなし、10カウントもしくは3度のダウンで試合終了。 ノックアウトされずに1ラウンドを乗り切ったらハルカの勝ちというルールになった。 ハルカにとっては生まれて初めてつけるボクシンググローブだ。 バレーシューズとブルマーとボクシンググローブを付けている美少女がリングに上がっている姿は ラウンドガールの様にしか見えない。 しかし、これから行われる試合は真剣勝負である。プロのリングでボクサーがラウンドガールに 殴りかかっている光景を思い浮かべてほしい。 如何に異様な変則試合が行われようとしているか想像できるだろう。 両者がマウスピースを口に含んで試合開始だ。 カーン! 運命のゴングが打ち鳴らされた。 加藤は典型的なドSだった。今回も一番の目的はハルカとのセックスではなく、まさに今行われているように ハルカをリングに引きずりだし、文字通り徹底的に痛めつけることだった。 簡単には終わらせねえ。3分間た~ぷりいたぶってやるからな。 まずはジャブを繰り出す。しかし顔に当てる気はない。まずはガードしている腕を徹底的に痛めつけてやる。 パンッパンッパンッ! 軽快なジャブがハルカのグローブをはじく。ハルカはガードを固めて亀ガードする事しかできない。 「ふふ、いつまでそのガードを上げてられるかな。」 今度はもう少し力を入れたジャブをさらにガード目がけて打ちこんでいく。 バンッバンッバンッ! バンッバンッ! バンッバンッバンッ! まったくパンチをよけられないハルカは全てのジャブをグローブや腕でうけてしまった。 「はは、まあど素人じゃガードを固めることくらいしかできないだろうな。だがな、ボクシングってのはガードしても 腕にダメージが溜まっていくもんなんだ。すぐに苦悶の表情を浮かべてガードを下げることになるだろうぜ。」 加藤は余裕の表情でそんなことを考えていた。 試合は1分を経過した。相変わらず加藤のジャブがハルカのガードを叩く展開が続いていた。 おかしい。こいついつまでガードを上げていられるんだ?これだけ打ち込めばボクサーですら普通は ガードが下がってくるもんなのに、なんでいつまでもガードを上げていられる? まあそうか。貞操が掛かってるとなりゃ死に物狂いにもなるか。だがな、ボクシングのパンチはジャブだけじゃないんだぜ。 右ストレートはジャブの何倍もの威力があるんだ。これでガードをこじ開けてやるぜ。 加藤はこの試合、初めての右ストレートを繰り出した。 過去何十人もの対戦相手をノックアウトしてきた、加藤の一番の得意パンチである。 バーン!! 先ほどまでとは比べ物にならない激しいパンチ音が場内にこだまする。 手ごたえありだ!これであいつも苦悶の表情を浮かべてガードを下げているはずだ。だ?あぁ!? しかし、加藤の思惑とは裏腹にハルカのガードは微動だにしていなかった。 皆さんはバレー部員のアタックを受けたことがあるだろうか?一度受けただけで腕が真っ赤に腫れあがり、 骨まで染みるような痛みを味わったはずだ。1流のバレー選手はそんな激しいアタックを1日に何回も 何十回もいや何百回も受けるのである。刀を作る際、叩けば叩くほど強い刀になるように、彼女達の腕は 数え切れないほどの激しいアタックを受け続けたことにより、常人では計り知れないほどに衝撃に強い 腕になっていたのだ。そんな彼女からしてみれば、たかだかフライ級ボクサーのパンチを受けとめることなど 造作もないことだったのである。 なんだろう?加藤さん、さっきから軽いパンチを私の腕に当ててくるだけで、全然倒しに来ない。 初めて右のパンチも出してきたけど、これもそんなに強いパンチじゃないし、これならいつも受けている ユカちゃんやメグちゃんのアタックの方が全然威力があるよ。 あ!そうか!加藤さんあんなこと言ってるけど冗談なんだ。あんなこと言って私を脅した振りして、 ちょっとリング上で遊びたかっただけなんだ。あ~良かった。よく考えたら当たり前だよね。 そんなことするわけないもんね。 ハルカは安堵感から思わず笑みがこぼれてしまった。 しかし、その笑みは加藤にはまったく逆の意味で伝わっていた。 あのアマ!笑ってやがる。俺の渾身のストレートを受けて余裕の笑みを浮かべてやがる! 俺のパンチなんか効かないってか!舐めやがって、もう遊びは終わりだ。 ガードの隙間を狙って、ボディ・顔面を打ち抜いてやる!血反吐を履いて倒れるがいい!! 加藤は渾身の左フックを今度はボディめがけて思いっきり打ちこんだ! ドボオォ! ハルカのガラ空きのボディにパンチがめり込んだ! ハルカはさっきまでの攻防で、これが真剣勝負ではなく遊びだと誤解していたため、加藤のパンチに対して まったくの無防備となっていた。不意に打たれたパンチは通常とは比較にならないダメージを与える。 ハルカは立っていることができず、膝をついてしまった。ダウンだ! 「見たか!このアマ!男を、ボクサーを舐めるんじゃねえぞ!」 バカにされたと誤解している加藤は、ようやくハルカにあたえられたダメージに興奮していた。 「げほぉ、げほぉ。酷い、酷いです。どうしてこんなことするんですか?遊びだったんじゃ無いんですか?」 苦痛に顔をゆがめながらハルカが訴える。 「いまさら何言ってやがる!遊びなわけねーだろ。真剣勝負だ真剣勝負。」 「じゃあ、3分耐えられなかったら・・その・・・あれ・・・っていうのも?」 「あれって何だよw ハッキリ言えよw」 「いや、その・・あれ・・私が・皆さんと・その・・セ・セック・・・を・・」 「なにカマトトぶってやがる。それともあれか?本当に処女なのか?いや~これは楽しみだぜ!」 ハルカは愕然とした。 やっぱり、やっぱり本気なんだ。遊びなんかじゃない。本当に3分耐えられなければあれをさせられるんだ。 いやだ、そんなの絶対いやだ。耐えてみせる。絶対に耐えきってやる! お腹の苦しさに耐えながら、ハルカは何とかカウント9で立ちあがった。 「へへ、良く立ちあがったな。まあ、アレで終わりじゃもの足りねぇ。もっと痛めつけさせてくれなきゃな。」 加藤がじりじりとハルカとの距離を詰める。 ハルカは考えた。 ここはボクシングのリング。相手はオリンピック代表ボクサー。まともにボクシングしたんじゃ勝てっこない。 わたしはわたしにできることをやらなきゃ。わたしにできること、そう、バレーボール。わたしには バレーボールがある。競技は違えどバレーで身につけた知識と技術を駆使して戦うの。 大丈夫、自分を信じてハルカ!絶対にあきらめないで!あんな腐った連中の思い通りになんか 絶対にならないんだから! 加藤は先ほどダウンを奪った左フックを再びボディに繰り出した。当たる! しかし、加藤は奇妙な光景を目の当たりにした。 ハルカは下向きに両手を伸ばしてグローブ同士をくっつけて、そう、バレーのレシーブの体制を取った。 バーン! 加藤の左ボディはハルカのレシーブに完全にブロックされた。 「はぁ!?なんだそのガードは?そんなものボクシングのセオリーに無いぞ。」 再度左右フックをボディに放つ。 バン!バン! 先ほどと同じく、レシーブに防がれる。 くそっ、想像以上にボディのガードがかてえ。じゃあ、お望み通り顔面にパンチをブチ込んでやるよ。 そのきれいな顔を、男が寄り付かないようなボコボコの顔に変形させてやる。 加藤は顔面に向かって渾身の右ストレートを打ち込む。 バン! これは先ほどまでと同様、がっちりと亀ガードに防がれる。 ボディを狙えばレシーブで、顔面を狙えば亀ガードで、加藤のパンチはハルカの堅いガードをまったく 崩す事が出来ない。 そうこうしているうちに、1ラウンドの残り時間が少なくなってきた。 まさか?倒しきれないのか?この俺が、オリンピック代表ボクサーのこの俺が、ど素人のバレーボール選手を、 ブルマー姿の女子バレー選手を倒しきれないっていうのか? 俺はパンチが無い方じゃない。全日本選手権でも、世界選手権でも何度も1ラウンドKOを演じてきた。 その俺がこんなど素人の女子高生を倒せないだと?うそだ!そんなことはあり得ない。あってはならないんだ。 何をやったっていい。どんな手を使ったっていい。とにかくコイツを、この女をマットに這わせるんだ! 加藤は拳を握り込むと、ハルカの下腹部へ向けて思いっきりパンチを打ち込んでいった! ローブローである。もちろん反則行為だ! しかも、反則行為であるがゆえに、ローブローは非常に避けるのが難しい。意図的に狙われたローブローを 避けることは一流のプロボクサーにすら難しい行為だ。それでいてとてつもないダメージを与えられる。 だからこそ禁止されている、本当に危険な行為であった。 しかし!! ハルカはそのローブローにさえ素早く反応した! 先ほどから見せているバレー式のレシーブである! バレーボールのレシーブは、普通に構えると、まさに、下腹部を隠す角度になるのだ! つまり、ボクサーではないがゆえに、バレボール選手であるがゆえに、ハルカはローブローを 完璧にブロックすることが出来たのである。 これは、本職のボクサーには絶対にできない芸当であった。 どんな手を使ってでも!という思いで繰り出した渾身のローブローを防がれ、予想だにしていなかった 結果に動揺し、加藤の思考が、動きが一瞬止まる。 と、ハルカの目の前に前傾姿勢になった無防備な加藤の頭が投げだされる。 あれっ?これってどこかで見たような? そうだ、ボールだ!サーブを打つ時のボールだ! ハルカには目の前にある加藤の頭が、サーブを打つ時のボールに見えた。 よ~し!得意の天井サーブ決めてやれ~! ハルカは加藤の頭を左手のグローブで押さえつけると、天井サーブを打つ要領で、膝を曲げ、勢いを付け、 そして全身を伸ばしながら、加藤の頭を右手で思いっきり下から上へと打ち抜いた!!!! 「そ~れっ!」 バキーーーーーーーー!!!! 300グラム近いバレーボールを何十メートルも打ち上げる天井サーブである。 小柄なフライ級ボクサーの顎など簡単に跳ね上げられた! 「グハァ!」 加藤の足がもつれる、ガードが下がる、あきらかなダメージだ! よろめく加藤の頭がハルカの胸の高さにさらけ出される。 よし!今度はサイドハンドサーブだ! ハルカは思いっきり身体を捻ると、加藤の頭めがけて、腕を思いっきりフルスイングした!! 「そ~れっ!」 バーーーーーーーーーーーン!!! ハルカのこぶしが加藤の顔面にめり込む。 ズダーーーーーーン!! 小柄な加藤の体はボロ雑巾のように吹っ飛ばされ、キャンパスへなぎ倒された! 加藤はまったく受け身を取れず、後頭部を打ちつけ、白目をむいて失神した。 ビィーー! 1ラウンド3分の終わりを告げるブザーが鳴り響く。 その時、リングに立っていたのは紺色のブルマー姿の女子1人。 本職の男子ボクサーは大の字に倒れ、ピクリとも動かない。 ハルカの、文句なしのノックアウト勝利だ! 「やったー! 今のブザー1ラウンド終了の合図ですよね。3分間立っていたから私の勝ちですよね。 これで帰してもらえるんですよね? よかった~! あっ、いけない!早く加藤さんをお医者さんに見せないと大変。ごめんなさいよろこんじゃって。 よろこんでる場合じゃないですよね。」 3分間立っていたどころの話ではない。相手を、本職のボクサーを完全にノックアウトしたのだが、 本人はその快挙にまったく気が付いていない。ただただ、難を逃れたことだけを純粋に喜んでいた。 さらには倒してしまった相手の事まで心配している。 この天然さが、純粋さが、男子ボクサーたちをさらに苛立たせた。 「ちょっと待ちな。このまま帰すわけないはいかねーな。」 男子ボクシングチームのエース、ミドル級の竹村がハルカを呼びとめる。 「わかってます。ちゃんと医務室へ連れて行きますから。手伝っていただけますか?」 「バカヤロー!そんなことを言ってるんじゃねえ。油断したとはいえ女に倒されるような情けない奴の事など知らん。 その辺に転がしておけ。それよりも、お前を解放するわけにはいかねーと言ってるんだ。」 「どうしてですか?3分間耐えられたら帰してくれる約束じゃないですか?約束を破るんですか?」 「約束は守るぜ。だがそれはお前がルールを守ったらの話だ。 さっきのパンチはなんだ。加藤の頭を押さえてただろ。あれはボクシングの世界じゃルール違反、 反則パンチなんだよ。反則した以上、お前が3分間耐えきったとは認められない。お前の反則負けだ。」 「そんな・・わたしボクシングのルールなんて知らないし・・」 「知らないじゃ済まされないぜ。反則は反則だ。」 これは言いがかりに等しい話だった。たしかにボクシングのルールを厳密に適用すればハルカのパンチは 反則と判定されてもおかしくは無い。しかし、さっきのパンチはインパクトの瞬間に左手を加藤の頭から 離しており、実際のボクシングの試合の流れの中ではよく行われる、ほぼ問題にされないレベルの反則だった。 もし公式戦でこの程度で反則負けを宣告されれば、負けた選手がクレームをつけるだろう。 むしろ、加藤の放ったローブローの方が、はるかに悪質な反則であることは誰の目にも明らかだった。 しかし、卑怯な男子ボクシング部員はハルカの無知につけ込んだ。 「さて、本来ならお前の反則負けだが、やさしい俺たちはお前に再チャンスをやるよ。今度は俺の相手をしな。 ただし、再チャンスだからな。条件は厳しくさせてもらうぜ。決着はKOのみだ。どちらかが倒れるまで続ける。 どうだ?悪い話じゃないだろ。」 ミドル級の竹村はフライ級の加藤とは比較にならない体格、パワーの持ち主だ。 加藤に対しては体格で上回ったハルカだが、竹村は身長、体重、体格、全てにおいてハルカを凌駕していた。 しかも、先ほどとは違い、KO決着のみということで、ガードで耐えきって時間切れを待つこともできない。 ハルカにとっては到底勝ち目のない、「悪い話じゃない」どころの話では無かった。 しかし、反則負けを許してもらえると負い目を感じているハルカは、この申し出を断ることができなかった。 「わかりました。それで反則負けを許してもらえるなら。 でも、その前にボクシングのルールを教えていただけますか?また知らないうちに反則しちゃうかもしれないし。」 「いいよいいよ、面倒くさい。今度は反則とかちんけな事いわねーから、好きなようにやりな。 あ、ただしチンコをうつのだけは禁止だぞ。ハハハ!」 竹村はハルカを完全に舐め切っていた。 カーン! 第2試合開始のゴングが鳴り響く。 竹村は、日本人として初めてミドル級での世界選手権メダリストとなり、オリンピックでも金メダル候補に あげられている、まさに日本のアマチュアボクシングを背負う存在だ。 と同時に素行の悪さも有名で、数々のストリートファイトや問題行動を起こし、オリンピック代表の座を剥奪されそうな 危機も一度や二度ではなかった。 それでも代表に選ばれたのは、やはり、その圧倒的な実力が故であった。 判定決着が多いアマチュアボクシングにおいて、竹村はその勝利のほとんどをKO・RSC勝ちで飾っており、 数少ない負け試合は、全てがアウトボクサーにポイントアウトされての負けであり、KO・RSC負けは一度もない。 つまり、KO決着オンリーという今回のルールで戦う限りにおいて、竹村と渡り合えるボクサーは、上の階級を別にすれば 世界中に誰1人存在しないのだ! そして、もちろん、ハルカの体重は、竹村よりはるかに下の階級だった。 竹村がジャブを繰り出す。 バン! 加藤のパンチとは比較にならない衝撃がハルカの腕を襲う。思わず顔をしかめるハルカ。 ジャブに続くストレート。 バーン!!! 加藤のパンチではビクともしなかったハルカのガードが弾き飛ばされる!顔が無防備にさらされる。 「これで終わりだな。」 竹村はハルカの顔面へ右ストレートを放った。 ビュン!! すんでのところでかわすハルカ。思わず竹村から距離を取った。 「よく避けられたな。だが、まぐれは何度も続かねーぜ。」 またも強烈なパンチでガードを弾き飛ばし、今度は左フックを顔面へ見舞う。 ブン!! ハルカは必死にしゃがみこみ、またしても被弾を防ぐ。 「ちょこまかとうざってえ。さっさと捕まりやがれ!」 1発KOを狙って大ぶりのパンチを繰り出す竹村。しかし、その全てをハルカは驚異的な反射神経で避けまくった。 1流ボクサーのパンチのスピードは、トップスピードで時速30km程度と言われている。それに対して、 バレーボールのスパイクは女子の1流選手でなんと時速100kmを超えるのである! 実に1流ボクサーのパンチの3倍を超えるすさまじいスピードである。 女子バレーでは、そんな凄まじいスピードのボールを1瞬の判断でブロックやレシーブをしたり、また、 インかアウトかを見極めたりする動体視力や反射神経が要求される。 そんな世界で鍛えられているハルカにとって、ボクサーの1発狙いの大ぶりパンチを見切ることは そう難しい事ではなかった。 「くっそー。ど素人にしてはやけにパンチへの反応が良いな。その反射神経の良さだけは認めてやるよ。 だがな、ボクシングには色々な崩し方ってものがあるんだ。反射神経だけではどうにもならない 領域ってものがあるんだよ。それを教えてやるぜ。」 竹村はハルカのボディーめがけて左フックをふるう。 上半身と異なり、下半身はそう簡単に素早く動かせるものではない。ハルカもパンチに反応することはできたが、 避けきることは出来なかった。 バーン! ビリビリビリ!! 先ほどの試合でも見せたバレー式レシーブで何とか直撃を避ける。しかし、加藤のパンチとは比べ物にならない 威力で、レシーブしたハルカの腕にダメージを与える。さらにはレシーブ越しにボディにも衝撃が伝わってきた。 「うっ」 思わずうめき声を発するハルカ。 「へっ、さすがに効いたみたいだな。反射神経には驚かされたが、まぐれもここまでだ。さて、いつまでそのガードを 続けられるかな。」 竹村のボディ連打がハルカを襲う。3発、4発、5発、6発・・無数のパンチがハルカの腕に、レシーブに突き刺さる。 バレーで鍛え上げられたハルカの腕もついに限界を迎えようとしていた。 鉄壁と思われたハルカのバレー式レシーブがなぜ崩されようとしているのか?竹村がミドル級であること、 世界的なハードパンチャーであること、それも大きな理由である。しかし、もうひとつ見逃してはならない大きな 理由があった。 この試合では両者8オンスグローブを使用している。通常ボクシンググローブは大きければ大きいほど逆に 相手にあたえるダメージは小さく、小さければ小さいほどあたえるダメージは大きくなるのだ。 現在、危険性などを考慮し、アマチュアでは全階級10オンスのグローブを、スペクタクル性を売りにするプロの リングでさえ、重量級は10オンスグローブを着用している。 つまり、ミドル級選手のパンチを8オンスグローブで受けるなどということは、プロのリングですら認められていないほど、 威力があり過ぎて危険とされているのだった。 それを階級がはるかに下の、ボクシングど素人の、ブルマー姿のジュニア女子バレー選手相手に行っているのだから、 いかに男子ボクシングチームが卑劣な悪党かということがわかるだろう。 さらに忘れてはならないのは、ハルカはこの日2試合目であり、1試合目でも腕に相当数のパンチを受けているのだ。 そんな卑怯なことをされてしまえば、さすがに鉄壁のハルカのレシーブも崩されざるを得なかったのである。 痛い、腕が痛い。ダメ、このままじゃいつか倒されちゃう。考えて、考えるのよハルカ。諦めなければ絶対道は 開けるんだから。そう、私はバレーボール選手なんだから。バレーボールをやればいい。ここをリングではなく コートだと思って、バレーボールをやろう! バレーボールだったらあんなウスノロなんかに絶対負けないんだから。見てなさいよ! ハルカのガードが完全に下がった。 「ふふ、もう限界だな。じゃあ、決めさせてもらうぜ。死ねやー!」 左ボディがハルカの右わき腹を狙う。ガードも上がらない。もらった! 勝ちを確信した竹村の視界に、想像だにしなかった光景が映し出された! ダンッ!! なんと、パンチの当たる瞬間、ハルカはキャンパスに向かって、自ら横っ跳びにダイブしたのだ! そしてそのまま体を一回転させ、リングの上に片膝をついた格好でしゃがみこんだ。 そう、バレーボールの回転レシーブの動きである! 「はあぁ?何やってんだお前!キャンパスに手を突いたり、横になったり、片膝をついたり、 全部反則だ!早く立ちあがりやがれ!」 「あれ?竹村さん言いましたよね。反則なんてちんけなこと言わない。好きなようにやれって。 ただし・・・」 ここで少し言いよどむ。 「あの、その、お、おチンチン・・・を打つのだけは禁止だって。」 消え入るような声で、顔を真っ赤にしながら、竹村の決めたルールを復唱するハルカ。 「うっ。てめえ、この・・」 竹村は面食らった。たしかにそういう発言はした。ただし、彼の頭にあったのはあくまでもボクシングという 競技の範囲内での反則。頭を押さえる行為、ホールディング、背中や後頭部への打撃、オープンブローや バックブローなど通常の試合で起こりえる範囲の反則行為しか想定していなかった。 しかし、今ハルカが行ったのは、そもそもボクシングという競技をまったく無視した、もはや反則という概念にすら あてはまらない行為であった。 しかし、認めてしまったのだ。好きなようにやれと。言葉尻をうまく利用されてしまったと気づいても、もはや 後の祭りであった。 「まあいい、多少面食らったが、殴り倒せばいい事に変わりはない。舐めた真似しやがるから 余計に痛めつけてやりたくなったぜ。」 しゃがみこんでいるハルカにじりじりとにじり寄る竹村。 ハルカの頭の位置はキャンパスから1mあるかどうか。こんな低い的は打ったことが無い。 竹村は普段よりも大幅に身を低くして、ハルカに殴りかかった。 しかし、不自然な体勢からのパンチなので切れが無い。あっさりとハルカに回転レシーブで逃げられてしまう。 またしてもハルカは片膝をついた格好で竹村と対峙する。 「このアマ、ちょこまかと!」 竹村はハルカに向かって一直線に走り込み、低い体勢でおもいっきりパンチを振るっていった。 ハルカのボクシングとは思えない動きに影響されたのか、または、なかなかパンチをあてられない焦りからか、 ボクシングの基本を忘れたかのような、大ぶりパンチとなっていた。 竹村の右パンチに対して、ハルカは左側にダイブして避ける。 と、竹村の顔面が自分の右脚から近い位置にあることに気づく。 え?これって、今脚を振り上げたら当たるんじゃない?ううん、考えている暇はないわ。とにかく思いっきり 脚を振り上げよう! 「え~い!」 ハルカは紺色のブルマーから伸びた健康的な脚を、バレーボールのジャンプで鍛えたムチムチの脚を、 思いっきり、竹村の顔面に向かって蹴り上げた!!! ゴキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!! 竹村の走り込む勢い、パンチを振るう勢い、ハルカのダイブの勢い、そして驚異のジャンプ力を生むハルカの 鍛えられた脚から生み出されるキック力! その全てが完璧なタイミングでカウンターとなり、竹村の顔面を直撃した!! バターーーーーーーン!! 竹村は受け身を取ることすら出来ず、顔面からキャンパスへダイブした!! 「うっ、うっ」 竹村はなんとか身を起こそうとするがなかなか立ち上がることができない。 それはそうだろう。絶妙のカウンターで強烈なキックを顔面に食らったのだ。普段の公式試合で、10オンスグローブと ヘッドギアに守られている公式試合で受けるパンチとは比較にならない破壊力だ。 世界の1流男子ボクサーを相手にダウン経験のないタフネスを誇っていた竹村が、女子の、格闘家では無い女子の、 ブルマー姿の女子バレー選手のキックにダウンさせられた。 あごの骨が折れたのか。口から大量の血を流している竹村を見てハルカが心配そうに声をかける。 「大丈夫ですか?ごめんなさい、ちょっと力を入れすぎちゃいました。ボクサーの人に私のキックがこんなに効くなんて 思わなかったので。すぐにお医者さん呼んできますね。」 自分が襲われていたことも忘れ、あくまでも竹村の体を心配して、リングを降りようとするハルカ。 「ま・まて・・。まだ・・勝負は・・終わってないぞ・・。逃げるんじゃ・・ねえ・・」 キャンパスに這いつくばりながら、息も絶え絶えに竹村が声を発する。 残る男子ボクシング部員もハルカを遮るように出口をふさぐ。 「なに言ってるんですか。酷い出血じゃないですか。勝負なんて言ってる場合じゃないです。早くお医者さん に見せないと。」 「ボクシングには・・ダウンや出血はつきものなんだ。・・バレーみたいなお嬢様スポーツと一緒にするな。」 ついに竹村は立ちあがった。 この間、ダウンしてから立ちあがるまで、ゆうに1分は経過していた。 ボクシングルールを適用するならこの時点でハルカのノックアウト勝ちだった。 しかし、すでにこの試合はボクシングのルールを大幅に逸脱しており、いまさら10カウントルールなどは 何の意味も為さなかった。この試合の決着は、相手の戦意を喪失させるか、相手を完全に失神させるかでしか もたらされないだろう。 竹村は立ちあがりはしたもののダメージはありありで、なんとかロープに寄りかかって、体を支えている状況だ。 いま、ハルカが攻撃に行けば、素人のパンチでも、女の子のパンチでも簡単に倒せるだろう。 しかし、こころのやさしいハルカは、あれだけの事をされてもなお、弱っている人間を、攻撃してこない人間を 自分から攻撃することは出来なかった。 そして、お互いに見合うこと数分間。ついに竹村は足を動かせるまでにダメージから回復した。 「へへ、バカが。俺がダメージを負っている間に止めを刺さなかったことを後悔させてやるぜ。 千載一遇のチャンスだったのになあ。もうあんなチャンスは2度とないぜ。」 竹村はパンチを放つ。 だが、やはりダメージが残っており、先ほどまでとは比べ物にならないほど、スピードも威力も欠けたパンチだった。 ハルカは余裕を持ってパンチをかわす。 続いてボディブローを放つ。 パン! しかし、威力の落ちたパンチでは先ほどのようにハルカの堅いガードを崩す事は出来ない。あっさりとレシーブされて しまった。 「もう諦めて下さい。今の竹村さんの体じゃ、わたしを倒すパンチは打てません。さっきの一撃で勝負は ついたんです。わたし、看護の勉強もしてるのでわかります。人間の体はあれだけのダメージを受けたら、そんなに 短時間では回復できません。もうこれ以上の勝負には何の意味もありません。私は竹村さんを必要以上に 傷つけたくないんです。お願いです。もうやめましょう。こんな意味のないこと、もうやめましょうよ!」 竹村の体を案じ、必死に説得を試みるハルカ。 しかし、この言葉が竹村のプライドをさらに刺激する。 「俺を傷つけたくないだ?なに上から目線でしゃべってやがる!お前の生殺与奪を握ってるのは俺なんだよ! 勘違いするな。ボクシング日本代表の俺様に対して、バレー選手ごときが、女ごときが偉そうなこと抜かすな!」 竹村はこりずにハルカの顔面に向かってパンチを放つ。 ハルカが先ほど同様、余裕を持ってかわそうとしたその時! ガシッ! ガシッ! ロープ際に立っていたハルカの両足を、リングサイドで見ていた2人のボクシング部員が掴んだ! 身動きが取れないハルカ! バーン!! 避けきれないと悟ったハルカは何とかガードを戻し、間一髪のところでパンチの直撃を免れた。 「はははは!このアマちゃんが!ここがボクシングチームの、敵のアジトの真っ只中ってことを忘れたか! 女に負けておめおめと諦めるとでも思ったか!どんな手を使ってでもお前を痛めつけて、レイプしてやる! 陵辱してやるぜ!無事に帰れると思うなよ!」 竹村は身動きの取れないハルカをロープ際で滅多打ちにした。 ハルカは驚異的な反射神経で顔への、美しいアイドル顔への直撃だけはなんとか逃れていたが、 ボディや腕には何発も良いパンチを打ち込まれた。 プツン ハルカの中でなにかが切れた。 子どもの頃から厳格な両親に厳しくしつけられてきた。人の嫌がることをしてはいけません。人にやさしくしなければ いけません。人を憎んではいけません。そして、人を傷つけてはいけません。 忠実に守ってきた。小学、中学、高校とハルカは常に優等生で、明るく素直でまっすぐで、誰に見られても 恥ずかしくない人生を送ってきた。 「あんなやつ死刑にしちゃえばいいんだよ!」 犯罪報道を見て同級生が過激な事を発言する。 そのたびにハルカはたしなめてきた。「そんなこと言ってはいけない。生まれながらに悪い人はいない。人を憎むの ではなく、犯罪の元を立つようにしなければ」と。 今回も理不尽な勝負を挑まれた。卑怯な手を使われた。それでも相手を憎んではいけない。傷つけることを 望んではいけない。誠実に話し合えば相手にもわかってもらえる。そう信じていた。 しかし、こんな人間もいるんだ。いくら誠実に話し合ってもわかってもらえない、常に卑劣な事ばかり考えている、 そんなクズみたいな人間もいるんだ。今までの17年の人生では学べなかったことだ。 お父さん、お母さん、ごめんなさい。ハルカは初めて人を憎みます。初めて自分から望んで人を傷つけます。 でも間違ったことはしてません。自分の行動に恥じることもありません。だから、だから、許して下さい。 「わかった。あなたはそういう人間なのね。もう情けをかけるのはやめる。本気で相手してあげるわ。」 「あぁ、本気だぁ?この状態から何ができるっていうんだ。強がりもたいがいにしな。」 「その手を放しなさい!」 ハルカは足を掴んでいる部員の手を簡単に振りほどく。 驚異のジャンプ力を誇るハルカの脚力の前では、ボクサーの腕力など及ぶべくもない。 「もう手遅れだ!食らえ!」 竹村の右ストレートがハルカの顔面を襲う。 ハルカはしゃがみこんでそのパンチをよける。そして 「レシーーーブ!!」 といいながら、手をレシーブの形に構え、そのまま竹村の顔面に向けて思いっきり振り上げた! バキーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 両こぶしで振り上げたレシーブ式アッパーは、ボクシングのアッパーの2倍の威力で竹村に襲いかかる! 竹村の体が前のめりに倒れかける。 ハルカはふたたびしゃがみこみ、今度はバレーボールのトスの要領で、両手で竹村の顔面を跳ね上げる。 「トーーーース!!」 バシーーーーーーー!!! 竹村の顔面が上を向く。もう、まったくガードする体制は作れていない。無防備な状態だ! ハルカはバレーボールで鍛えた驚異のジャンプ力で思いっきり飛び跳ねた! 「アタッーーーーーーーーーク!!!!」 ハルカのこぶしが、3メートルを超える高さからすさまじく加速されたこぶしが、ハルカの全体重を乗せて、 とてつもない破壊力となって、竹村の顔面に撃ち落とされた! バキィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!!!! リングサイドから見上げていた男子部員には、照明に照らされながら上空から落ちてくるハルカの姿が まるで雷のように見えた。 雷が大木を直撃した! ぐしゃぁぁぁ!! 竹村は文字通り雷に打たれたように、その場に膝から崩れ落ち、両手や首は力なくキャンパスへ横たわった。 当分起き上がれないであろう。命の危険すら感じる、完全失神KOだった! ハルカは残り2人のボクシング部員をリング上から見下ろす。 「まだやるの?やるんだったらリングに上がって。」 しかし、今まで見たこともない凄惨なKO劇を見せつけられた2人は、恐怖に足が震えていた。 目の前の女は、自分たちの雲の上の存在である竹村を、畏怖の対象であった竹村を、完膚なきまでに叩きのめした。 たとえ2人掛かりであっても、とてもではないが、向かっていく勇気を持つことは出来ない。 「い、いえ。やりません。やりません!僕らの負けです。すいませんでした。 どうか、どうか許して下さい。」 真っ青な顔をしてハルカに許しを請う。 「もう2度とこんな真似しない?また同じような事をしたらその時は。わかってるわよね。」 「はい!絶対にやりません。2度とこんなバカな真似はしません。神に誓います。 すいませんでした!本当にすいませんでした!」 土下座せんばかりに深々と頭を下げる。 ハルカは無言でリングを降り、出口へと向かった。 と、何かを思い出したように振り返り、声をかける。 「ねえ。」 「はっ、はい!」 直立不動で返事をする2人。やっぱり許してもらえないのか、俺らも制裁を受けることになるのか。 恐怖で震える2人に対し、ハルカの掛けた言葉は意外なものだった。 「竹村さんと加藤さん、早くお医者さんに見せてあげて下さいね。」 「ハルカ~どこ行ってたのよ?もう休憩終わってるよ!」 「ごめん、ごめ~ん」 ハルカはコートを見る。メンバーみんなが元気に飛び跳ねては、アタック、レシーブを繰り返している。 やっぱりこれだ。バレーボールはこうじゃなくっちゃ。 殴ったり、殴られたりとかそんなの大っ嫌い。 もう2度と、バレーボールの技で人を傷つけたりなんかしない。絶対に。 みんなが笑顔になれる楽しいスポーツ。それがバレーボールなんだから。 「ちょっとハルカ、なにニヤニヤしてるのよ。なんか良いことでもあった?」 ハルカは澄み切った笑顔を浮かべてこう言った。 「先輩 やっぱりバレーボールって最高ですね!」 バレーボール編 完
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日記/2012年08月29日(WED)/ニュース記事 2012-09-03 【記事一覧】 首相への問責決議 賛成多数で可決 NHKニュース 民主赤松氏ら 独自候補を擁立へ NHKニュース 南海トラフ 巨大地震と津波の被害想定 NHKニュース 奇跡の一本松 来月12日に伐採 NHKニュース 奇跡の一本松、9月12日切断 保存に向け防腐処理 :日本経済新聞 女子5人に乱暴の男に懲役30年 NHKニュース 妊婦血液で出生前検査 異常99%判明 NHKニュース 北朝鮮“新たな遺骨埋葬地” NHKニュース 拉致問題相“時間との戦い” NHKニュース 中国政府“真剣に調べ進めている” NHKニュース シリア 爆発で27人死亡 NHKニュース 「もう何も期待できない…受注がゼロに」 取引企業、シャープ失速に悲鳴 (産経新聞) - Yahoo!ニュース 韓国で学ぶ世界史がすごい! 「世界四大文明」に“コリアン文明”を勝手に追加したよ – ゴールドラッシュ 韓国旅行に行った日本人モデルに韓国人が暴言「くそ猿野郎」 「あなたは可愛い。純日本人じゃないでしょ?」 | ロケットニュース24 首相への問責決議 賛成多数で可決 NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014628941000.html +記事コピペ収納 首相への問責決議 賛成多数で可決 8月29日 20時10分 国民の生活が第一やみんなの党などが提出した野田総理大臣に対する問責決議は、参議院本会議で野党側の賛成多数で可決されました。 これに対し、野田総理大臣は問責決議に法的な拘束力はないなどとして、衆議院の解散などには応じない方針です。 国会は参議院議院運営委員会で、国民の生活が第一やみんなの党など、参議院の野党7会派が提出した野田総理大臣に対する問責決議案を本会議で採決することを、賛成多数で決めました。 一方、自民・公明両党が28日に提出した問責決議案は、反対多数で上程されませんでした。 そして、午後5時から参議院本会議が開かれ、法案の採決などが行われたあと、問責決議案の審議に入りました。 この中で、みんなの党の小野次郎氏が「野田内閣が押し通した消費税率引き上げ法は、先の衆議院選挙での民主党のマニフェストに違反しており、国民への約束に背く政治姿勢をとり続ける野田総理大臣の責任は極めて重大だ」などと、問責決議案を提出した理由を説明しました。 また、自民党の川口順子氏が「野田政権と民主党には、震災復興や竹島・尖閣諸島を巡る摩擦など、解決を迫られている課題を解決に導くための国家運営能力、すなわち『与党力』が絶対的に欠如し責任感もない」と述べました。 これに対し、民主党の武内則男氏が「自民党が党利党略を重視して問責決議案に賛成するのは、節操のない厚顔無恥の暴挙で、3党合意をほごにするものだ。『近いうちに解散する』という約束も無効にせざるを得ない」と反論しました。 このあと、決議案は記名投票による採決が行われ、賛成129票、反対91票で野党側の賛成多で可決されました。 ただ、野党のうち公明党は「消費税率の引き上げ反対を理由とする問責決議案には賛成できない」として、採決を欠席しました。 また、自民党の丸山和也参議院議員が「問責決議が可決されれば、解散が近くなるということでやっているだけで、自己矛盾も甚だしい」として、採決を棄権しました。 総理大臣に対する問責決議が可決されたのは、4年前に福田総理大臣、3年前に麻生総理大臣に対する決議が可決されたのに続いて、今回で3例目で、民主党政権では初めてです。 野田総理大臣は、問責決議は内閣不信任決議と違って法的な拘束力はないなどとして、辞任や衆議院の解散には応じない方針です。 民主赤松氏ら 独自候補を擁立へ NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014616851000.html +記事コピペ収納 民主赤松氏ら 独自候補を擁立へ 8月29日 14時19分民主党の赤松元農林水産大臣が代表を務める議員グループが会合を開き、来月行われる党の代表選挙について「民主党の再生に向けて新しい体制を作るべきだ」として、独自候補の擁立を目指す方針を確認しました。 東京都内のホテルで開かれた会合には、赤松・元農林水産大臣など民主党のおよそ10人の議員が出席し、来月行われる党の代表選挙に向けてグループとしての対応を協議しました。 この中で出席者からは「野田政権は自民・公明両党との協力を優先するあまり、民主党が目指してきたものを失いつつある」という意見や、「党の再生に向けて団結できる新しい体制を作るべきだ」などという指摘が出されました。 そして、将来的に原発をゼロにすることや、TPP・環太平洋パートナーシップ協定への対応は慎重に判断することなどを掲げて、独自候補の擁立を目指す方針を確認しました。 会合のあと、赤松・元農林水産大臣は記者団に対し「党が掲げたマニフェストはまだやりきれておらず、それを実行していくことが党の再生につながる。代表選挙ではわれわれの政策と合致する人をグループとして応援したい」と述べました。 南海トラフ 巨大地震と津波の被害想定 NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014624091000.html +記事コピペ収納 南海トラフ 巨大地震と津波の被害想定 8月29日 17時17分 K10046240911_1208291726_1208291728.mp4 太平洋沿岸の「南海トラフ」付近で起きる巨大地震と津波で、国は最悪の場合、およそ32万3000人が死亡するおそれがあるという被害の新たな想定を公表しました。 一方で、早めの避難や耐震化などの対策を進めれば、大幅に被害を減らすことができるとしています。 東日本大震災をきっかけに、国は去年、東海から西の太平洋沿岸の「南海トラフ」付近で起きる巨大地震の防災対策を見直すため、専門家による検討会などを設けました。 そして、ことし3月末、マグニチュード9クラスの最大級の巨大地震が起きた場合の揺れの強さや津波の高さなどを推計し、結果の一部を公表しました。 29日に新たに公表されたのは、津波の詳しい想定と、揺れと津波による被害の想定などで、地震や津波のさまざまな発生のパターンや時間帯などを考慮して、複数のケースごとに想定をまとめています。 このうち津波の高さは、沿岸部の詳細な地形に基づいて改めて計算され、高知県と静岡県、それに伊豆諸島の一部で最大30メートルを超えるなど、8つの都や県の23の市町村で20メートル以上に達すると推計しています。 また、津波で浸水する地域は最大で1000平方キロ余りと、去年3月の大津波の1.8倍に及ぶ可能性があるとしています。 さらに、想定される被害は、人口の多い東海地域で揺れや津波が大きくなるケースの地震で最も大きくなり、最悪の場合、関東から九州にかけての30の都府県で合わせておよそ32万3000人が死亡し、揺れや火災、津波などで238万棟余りの建物が全壊したり焼失したりすると推計しています。 一方、今回の想定では、避難や防災対策によって被害が軽減される効果も示され、多くの人が早めに避難して避難ビルなどを活用した場合、津波の犠牲者は最大でおよそ80%少なくなり、建物の耐震化率を引き上げれば建物の倒壊はおよそ40%減らせると推計しています。 国は今後、巨大地震や津波による経済的な被害なども推計したうえで、この冬までに国の新たな防災対策を取りまとめることにしています。 奇跡の一本松 来月12日に伐採 NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014631641000.html +記事コピペ収納 奇跡の一本松 来月12日に伐採 8月29日 20時54分 K10046316411_1208292321_1208292339.mp4 岩手県陸前高田市で津波に耐えて1本だけ残り、その後、枯れていることが分かった「奇跡の一本松」と呼ばれる松の木について、モニュメントにして保存するために木を切る作業が、来月12日に行われることになりました。 「奇跡の一本松」は、7万本の松が立ち並ぶ陸前高田市の「高田松原」で、津波に流されずに1本だけ残った高さ28メートル余りの樹齢270年の松の木です。 震災のあと、被災した人たちの復活のシンボルとなりましたが、その後の調査で枯れていることが分かり、陸前高田市は、モニュメントにして保存することを決めました。 保存には、いったん木を根元から切って防腐処理などをする必要があり、市は天候に問題がなければ、東日本大震災から1年半が経過した翌日の来月12日に木を切る作業を行うことを決めました。 当日は記念の式典が開かれ、松の木はのこぎりを使って切り取られるということです。 その後、木は5つ以上に分割され、中に金属製の棒を通してつなぎ、同じ形にして元の場所に戻すということです。 市では、東日本大震災から2年になる前の来年2月末までにすべての作業を終わらせたいとしていて、地元の人たちに愛された「奇跡の一本松」は、永遠にその姿を残すことになります。 奇跡の一本松、9月12日切断 保存に向け防腐処理 :日本経済新聞 ttp //www.nikkei.com/article/DGXNASDG2904O_Z20C12A8CR8000/ +記事コピペ収納 奇跡の一本松、9月12日切断 保存に向け防腐処理 陸前高田市、募金呼びかけ 2012/8/29 22 26 小サイズに変更javascript void(0)中サイズに変更javascript void(0)大サイズに変更javascript void(0)印刷 来月12日に切り倒され、保存に向けた防腐処理に入ることが分かった「奇跡の一本松」(28日午後、岩手県陸前高田市)=共同 東日本大震災の大津波に耐えた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」が来月12日に切り倒され、保存に向けた防腐処理に入ることが29日、市関係者への取材で分かった。 当日はセレモニーも開く予定で、震災2年を迎える来年3月11日までに元の場所に立て直すとしている。 市によると、高さ約27メートルの一本松を根元から切断して幹を5分割。芯をくりぬき、防腐処理を施す。その後、金属の心棒を通して立ち姿のまま保存する。 保存費用は約1億5千万円。市はホームページや交流サイト「フェイスブック」で募金を呼び掛けている。〔共同〕 女子5人に乱暴の男に懲役30年 NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014606851000.html +記事コピペ収納 女子5人に乱暴の男に懲役30年 8月29日 0時54分千葉県内で女子児童など合わせて5人に乱暴してけがをさせたなどとして罪に問われた37歳の男に対し、千葉地方裁判所は「常習性は明らかで再犯のおそれも否定しがたい」として、有期刑の上限の懲役30年の判決を言い渡しました。 千葉県松戸市の無職、佐藤晃一被告(37)は、去年7月までの半年余りで当時11歳から18歳までの女子児童や生徒、合わせて5人に乱暴し、けがをさせたなどとして罪に問われました。 28日の判決で、千葉地方裁判所の丹羽敏彦裁判長は「被告は同種の事件で服役したにもかかわらず、出所僅か半年後から短期間に犯行を行い常習性は明らかだ」と指摘しました。 そのうえで、「再犯のおそれも否定しがたく有期懲役刑の上限をもって臨むことはやむをえない」と述べ、検察の求刑どおり懲役30年の判決を言い渡しました。 妊婦血液で出生前検査 異常99%判明 NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014608571000.html +記事コピペ収納 妊婦血液で出生前検査 異常99%判明 8月29日 11時0分 K10046085711_1208291114_1208291115.mp4 妊婦の血液を調べるだけで胎児にダウン症などの染色体の異常がないかどうか99%の確率で分かるとされる新たな出生前検査が、来月、国内の2つの病院で始まることが分かりました。 検査を希望する人は大幅に増えることが予想され、異常が見つかれば人工妊娠中絶にもつながることから、検査前後のカウンセリングなどの態勢を整えていくことが課題です。 新たな出生前検査を始めるのは、いずれも東京にある昭和大学病院と国立成育医療研究センターです。 検査は、アメリカの検査会社が去年10月から行っているもので、妊娠10週目以降の妊婦の血液を調べるだけで、ダウン症など3種類の染色体の異常がないかどうか99%の確率で分かるとされています。 現在、出生前検査として行われている「羊水検査」は、妊婦のおなかに針を刺すため、0.3%の割合で流産の危険性がありましたが、新たな検査は採血だけで済むため、流産の危険性がなく、同様の検査はアメリカやヨーロッパなどで広がりつつあります。 2つの病院のほか、今後、導入を検討している病院の医師らが31日、研究組織を立ち上げ、検査を行う際の共通のルールを作ることにしています。 この中では、検査の対象は、胎児の染色体異常のリスクが高まる35歳以上の高齢出産の妊婦などとしたうえで、検査の前に専門の医師らが30分以上カウンセリングを行うことや、検査後も小児科医らが妊婦のサポートを続けていくことなどを検討しています。 費用は保険が適用されないため21万円かかりますが、高齢出産の妊婦が増えていることなどから、検査を希望する人は大幅に増えることが予想されます。 異常が見つかれば人工妊娠中絶にもつながることから、正しい情報に基づいて妊婦が判断できるよう検査前後のカウンセリングなどの態勢を整えていくことが課題です。 現在の出生前検査は 子どもが生まれる前に病気などがあるかどうか調べる出生前検査は、現在、国内では▽「羊水検査」▽「絨毛検査」▽「母体血清マーカー検査」などが行われています。 専門家によりますと、こうした検査を受ける妊婦は、年間の出産数およそ100万件のうち3%前後に当たる3万人と推計されています。 このうち、羊水や絨毛といわれる組織を採取して調べる「羊水検査」と「絨毛検査」は、胎児にダウン症などの染色体の異常がないかどうか確定診断ができます。 しかし、母親のおなかに針を刺すため、羊水検査は0.3%、絨毛検査は1%ほど流産の危険性があるほか、破水や出血のおそれもあり、母体への負担もあります。 費用は保険が適用されていないため、10万円から15万円かかります。 「母体血清マーカー検査」は、今回の新たな検査と同じように妊婦の血液を調べるもので、流産などのリスクはありませんが、ダウン症などの確率が分かるだけで確定診断はできません。 十分な情報提供の態勢を 新たな検査が始まることについて、日本ダウン症協会の玉井邦夫理事長は「海外の動向からいずれ日本でも検査が必ず始まると思っていた。新しい技術ができ、それによって分かることを知りたいと思うのは個人の権利なので、検査の導入は否定できないが、ダウン症の子どもたちや家族を否定するような世の中につながることは絶対にあってはならない。検査が簡単になっても結果の重みは変わらないので、安易な気持ちで検査を受ける妊婦が増え、混乱が広がることが懸念される」と話しています。 そのうえで、「今回、検査を始める病院が共通のルールを作ることは評価できるが、今後、導入するすべての病院がルールを守るようチェックしていくべきだ。妊婦やその家族が正しい情報に基づいて考えられるよう、元気に暮らしているダウン症の子どもをよく知る小児科の医師らが、十分な情報を提供できる態勢を整えてほしい」と話しています。 北朝鮮“新たな遺骨埋葬地” NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014626971000.html +記事コピペ収納 北朝鮮“新たな遺骨埋葬地” 8月29日 18時39分 K10046269711_1208291943_1208291946.mp4 日本と北朝鮮の政府間協議が行われるなか、北朝鮮は、終戦前後に現在の北朝鮮領内で亡くなった日本人の遺骨の埋葬地が、最近新たに見つかったと説明し、日本政府に対して遺骨の収集に積極的に取り組むよう重ねて求めました。 これは、北朝鮮で日本人の遺骨や埋葬地の調査を行っている、社会科学院歴史研究所のチョ・ヒスン所長が、29日、NHKをはじめ、ピョンヤンを訪れている一部の日本メディアと会見して明らかにしたものです。 この中で、チョ所長は、日本人の遺骨の埋葬地について去年から本格的な調査を始め、地元住民の証言を基に発掘調査を行ったところ、最近、北東部などで新たに3か所の埋葬地が見つかり、日本人の遺骨の埋葬地は合わせて5か所になったと説明しました。 また、チョ所長は、発掘作業で見つかったという、日本人が着ていたとみられる衣服の一部や、銀色のボタンなどの写真を見せました。 会見のあと、チョ所長は、そうした埋葬地の一つで発掘作業の様子を公開しました。 この埋葬地はピョンヤン近郊にあり、およそ2400人の日本人の遺骨が埋葬されていて、最近も新たな遺骨が見つかっているということです。 チョ所長は「必要があれば日本との共同調査も可能だ」と述べ、日朝協議が4年ぶりに行われたことを歓迎したうえで、日本政府に対して遺骨収集の問題に積極的に取り組むよう重ねて求めました。 今回、北朝鮮には、遺骨収集に向けた現地調査を行うために日本人の関係者たちが訪れており、30日から北東部などに行き、埋葬地を確認する予定です。 【亡くなった人“3万4600人”】 厚生労働省によりますと、現在の北朝鮮の地域で終戦前後に亡くなった人の数は、引き揚げてきた人たちへの聞き取り調査などから、およそ3万4600人とみられています。 多くは旧ソビエトの侵攻による混乱のなかで、戦闘に巻き込まれたり、病気や飢えで死亡したりしたとみられています。 このうち、1万3000人の遺骨は引き揚げてきた人たちが持ち帰りましたが、残る2万1600人ついては、北朝鮮との間に国交がないことから、遺骨の収集に向けた調査を行うことができず、北朝鮮に残されたままになっています。 北朝鮮に眠る肉親を弔いたいという思いを抱えた人は少なくありません。 遺骨の場所 今も分からず 終戦当時、旧満州にいた、群馬県安中市の多胡湊一郎さん(74)は、日本に引き揚げるため、家族5人で南へと向かいました。 飢えに苦しみながらの道中、途中で滞在した今の北朝鮮のピョンヤンで3歳の妹が亡くなりました。 それから3か月もたたないうちに、5歳の弟と母親も相次いで栄養失調のため息絶えました。 3人の遺体は、大きな穴を掘って、ほかの日本人の遺体とともに埋葬されたということで、当時7歳だった多胡さんのもとに残ったのは、母親の裁ちばさみと遺髪、それに印鑑だけでした。 多胡さんは当時を振り返り、「周りが栄養失調でどんどん亡くなっていくので、死に対する恐怖感のようなものがなくなり、まさに極限状態でした。母が亡くなる直前、『絶対にお前たちは日本に引き揚げるんだよ』と言ったので、そのことだけを考えました」と話しました。 妹と2人残された多胡さんが、身寄りのある群馬県にたどり着いたのは、引き揚げを始めてからおよそ1年後のことでした。 戦後67年がたっても、3人の遺骨がある詳しい場所は分かっていません。 また、母親が亡くなる2か月ほど前に出産した乳児の生死も分からないままです。 安中市にある先祖の墓には、母親の遺髪と、ピョンヤンの埋葬場所から持ち帰った土が納められており、今でも命日には必ずお参りしているということです。 多胡さんは「日朝協議が始まると聞き、霊前に『お墓参りに行けるかもしれない』と声をかけました。拉致問題を含む日朝間の問題が解決され、国交が正常化すれば、遺骨を持って帰って分骨したい」と話しています。 墓地の名簿に母と妹の名前が 名古屋市の瀧澤眞紗子さん(82)は、終戦直前、旧ソ連軍の侵攻を前に、旧満州の奉天から家族6人で、着のみ着のまま、今の北朝鮮のピョンヤンに移りました。 当時15歳だった瀧澤さんは、ピョンヤンにあった学校の講堂などに移されましたが、寒さが厳しくなるなか、2人の祖母が相次いで亡くなり、年明けには母親のハツさんが肺炎にかかって命を落としました。 それから2週間後、4歳の妹も栄養失調のため帰らぬ人となり、瀧澤さんは、氷点下の屋外にむしろにくるまれて置かれた母親と妹の遺体を、4つ下の弟の手を借りて墓地まで運んだということです。 瀧澤さんは「おなかがすいて、おなかがすいて、体力がなくなるけど、お金もなくなるので物が買えない生活でした」と振り返ったうえで、「肉親の死を事実として受け止められず、毎晩、母親や妹たちが元気で生きている夢を見ました。夢のほうを信じたいと思っていました」と話しました。 終戦からおよそ10か月後に弟と共に引き揚げを果たした瀧澤さんにとって、母親が残した羽織がただ一つの形見でしたが、帰国して60年がたった平成18年、当時の墓地の名簿を持ち帰った人がいることを知りました。 「リョンサン(竜山)墓地」と名付けられたこの墓の名簿を取り寄せたところ、母親と妹の名前が載っており、北朝鮮に遺骨が残ったままの肉親への思いがよみがえってきたということです。 瀧澤さんは「遺骨の問題を巡って日本と北朝鮮の協議が行われることになったのは意義深いと思っています。墓参りが実現すれば、自分の中でようやく一つの区切りがつくかもしれません」と話しています。 拉致問題相“時間との戦い” NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014616481000.html +記事コピペ収納 拉致問題相“時間との戦い” 8月29日 13時40分 K10046164811_1208291412_1208291424.mp4 松原拉致問題担当大臣は、鳥取県の平井知事と会談し、4年ぶりに行われる日本と北朝鮮の政府間協議を通じて拉致問題の早期解決を図るよう要請されたのに対し「拉致被害者の家族が高齢化するなか時間との戦いだ」と述べ、全力で取り組む考えを示しました。 この中で平井知事は、鳥取県出身の拉致被害者の松本京子さんの兄、孟さんからの手紙を紹介し「母も89歳となり妹の名前を言うのがやっとです。今回の協議を千載一遇の機会ととらえ取り組んでほしい」と読み上げました。 そのうえで、平井知事は「今回の北朝鮮との政府間協議で拉致問題を交渉のテーブルにのせ、早期解決を目指してほしい」と要請しました。 これに対し、松原拉致問題担当大臣は「北朝鮮側も日本との関係を良好なものにしたいという思いがあるだろうしこの機会が勝負だ。拉致問題を解決しないと日朝関係の打開はあり得ず、北朝鮮側にも得はないことを訴えたい。拉致被害者の家族が高齢化するなか拉致問題の解決は時間との戦いだ。要請を重く受け止め私も政府内で行動したい」と述べました。 会談の後、平井知事は記者団に対し「きょうは非常に大事な日だと繰り返し訴えた。ご家族の思いは強くこの機会に解決に結びつけてもらいたい」と述べました。 中国政府“真剣に調べ進めている” NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014631631000.html +記事コピペ収納 中国政府“真剣に調べ進めている” 8月29日 21時5分 K10046316311_1208292327_1208292339.mp4 中国駐在の丹羽大使の乗った公用車が、北京市内を走行中に、乗用車に乗った男らに無理やり停止させられ、日本の国旗が奪われた事件について、中国政府は「現在、真剣に調べを進めている」としており、犯人の特定と容疑の裏付けを急いでいることを明らかにしました。 この事件は、27日、北京市内の環状道路を走行していた、丹羽宇一郎大使が乗った公用車が、2台の車に走行を妨げられたあと、無理やり停止させられ、車から降りてきた男に前部に付けられていた日本の国旗を奪われたものです。 事件を受けて、日本大使館は北京市の警察に当時の詳しい状況を説明するとともに、証拠として2台の車と国旗を奪った男の写真を提出しています。 中国外務省は29日、NHKの取材に対し、「関係部門が現在、真剣に調査を進めている。日本側とも連絡を取っている」と答え、警察が、日本側から提供された資料を基に犯人の特定と容疑の裏付けを急いでいることを明らかにしました。 一方、日本大使館の関係者によりますと、29日はこれまでのところ、警察からの接触や連絡はないということで、日本大使館は速やかな犯人検挙を求めて働きかけを続けていくことにしています。 シリア 爆発で27人死亡 NHKニュース ttp //www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/k10014615601000.html +記事コピペ収納 シリア 爆発で27人死亡 8月29日 13時40分 K10046156011_1208291322_1208291325.mp4 内戦状態が続くシリアの首都、ダマスカスの近郊で28日、アサド政権支持者の葬儀が行われていた会場の近くで爆弾が爆発し、参列者など27人が死亡しました。 シリアの首都、ダマスカスの南東にあるジャラマナで、28日午後、駐車中の自動車に仕掛けられていた爆弾が爆発し、現地で活動する人権監視団体などによりますと、27人が死亡、40人以上がけがをしました。 また、この爆発で周辺にある建物は壁の一部が崩れたり、窓ガラスが割れたりするなどの被害を受け、爆弾の威力の強さをうかがわせていました。 現場では当時、前日に起きた爆発で死亡したアサド政権支持者の葬儀が行われていて、犠牲者の多くは葬儀の参列者だったということです。 シリアの国営通信は、反政府勢力による攻撃だと非難していますが、反政府勢力側はアサド政権による空爆などで多くの市民が犠牲者になっていることから、国民の関心をそらそうと、政権みずからが企てたものだと反論しています。 シリアでは3日前にもダマスカス近郊のダラヤで、少なくとも120人の遺体が見つかり、政権側と反政府勢力の双方が相手側による虐殺だと非難しています。 「もう何も期待できない…受注がゼロに」 取引企業、シャープ失速に悲鳴 (産経新聞) - Yahoo!ニュース ttp //headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120827-00000506-san-bus_all +記事コピペ収納 「もう何も期待できない…受注がゼロに」 取引企業、シャープ失速に悲鳴 産経新聞 8月27日(月)10時20分配信 拡大写真 シャープ本社=大阪市阿倍野区(前川純一郎撮影)(写真:産経新聞) シャープと台湾・鴻海精密工業との提携見直し協議が大詰めを迎える一方で、部品などを納入するシャープの取引企業への影響が深刻化している。生産縮小に伴い、社員の削減を余儀なくされた中小企業もあり、地域の雇用や地元経済への影響は少なくない。主力のテレビ事業の不振などに加え、事業リストラの先行き不透明感から「受注がなくなる」との悲鳴も上がっている。 [フォト] 運命を分けた分岐点 中国を選んだアップル、日本に固執したシャープ 「シャープには、もう何も期待できない」 シャープに液晶テレビ部品などを納入する大阪府内の製造業者は、落胆した表情で打ち明けた。 同社は昨年、シャープの経営悪化に伴い受注が半減し、大幅な人員削減に踏み切ったばかり。「まさに弱り目にたたり目。今もほとんど受注がない現状だが、今後はゼロになると覚悟している。対策の打ちようもない」と悲痛な声で窮状を訴えた。 シャープからの受注が大半を占める別の企業関係者も「今後、(シャープの)人員削減や設備投資の抑制が、どれだけ経営に影響がでるか全く予測できない」と不安を口にする。 “シャープショック”に備え、同社の工場がある地元自治体も対策に動き出した。シャープのカラーテレビ組立工場を抱える栃木県矢板市は、再就職の支援などを目的に、遠藤忠市長を委員長とする連絡調整会議を設置した。テレビ事業縮小に伴う人員削減を視野にいれたものだ。 昭和43年に操業を開始した同工場は、約1650人の従業員のうち、地元住民らが半分近くを占める。地域の雇用に与える影響は計り知れないが、「シャープから詳細な情報はなく、対策が打ち出せない」(同会関係者)といらだちを隠せない。 東京商工リサーチによると今月17日現在、国内でシャープグループと直接取引する企業は計2031社で、総従業員数は54万人以上にのぼる。「シャープの生産縮小などが膨らめば、下請けの製造業はもろに影響を受ける」(証券アナリスト)と、懸念を強めている。 【関連記事】 シャープより重症? 縮小均衡“連鎖”にはまったNEC、いまだ出口みえず シャープ幹部懸念隠せず「どこまで…」 暴動、自殺…鴻海残酷物語 なぜカカクコム最安店に注文が殺到しないの? アマゾンが強いナゾ シャープ、絶体絶命の危機!第2の三洋電機か 土壇場シャープ 空気清浄機と電子レンジの価値は高いと識者 最終更新 8月27日(月)16時17分 韓国で学ぶ世界史がすごい! 「世界四大文明」に“コリアン文明”を勝手に追加したよ – ゴールドラッシュ ttp //getgold.jp/p/13532 +記事コピペ収納 韓国で学ぶ世界史がすごい! 「世界四大文明」に“コリアン文明”を勝手に追加したよ 2012.08.29 06 27 58 by ソル category アジア 政治・経済・社会 Tags コリアン文明 世界五大文明 世界四大文明 捏造 韓国 More Sharing ServicesShare 閉鎖的だと言われている韓国の教育には方法は度々日本のネットで話題になる。例えば小学校で教える反日教育や偏向した歴史など……。 今回紹介するのは韓国で学べる「世界五大文明」というものである。と、ここで「おや?」と思った人もいるだろう。そう、実際は「世界四大文明(または四大河文明)」なのである。何故1つ増えているのか。では順を追って文明を紹介したい。 世界四大文明はメソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明・黄河文明(中国文明)の4つを指す。学校でそれぞれ習ったのでみんなもご存じだろう。しかし韓国ではこれにさらにもう1つ加わり“コリアン文明”という文明が追加される。 私自身は“コリアン文明”は聞いたこと無い。そもそも世界的に考古学の記録に無い文明を韓国では“コリアン文明”と名付け学ばせているのだ。 韓国が出来る前は三韓、新羅・百済、新羅、高羅、朝鮮(李朝)、そして日本に統治されその後に大韓民国となった。コリアンという呼び名にそんなに歴史が無いことから後付けっぽさ満載である。それだけではなく、その教材には北海道は日本の土地ではなく韓国の土地だったと書かれており、更に韓国はアジアのほとんどを占めていたとも書かれている。もちろん学校で教えられた生徒や学生は、それを当たり前のように受け止め信じてしまうだろう。「学校が嘘を教えるはずがない」と思うのが普通である。 こういう発想がやはり他人のパクリに繋がるのではないだろうかう。古くは『マジンガーZ』のパクリの『テコンV』や『ポケットモンスター』のパクリの『PowerMon』、そして家電製品やお菓子など。 このように韓国では洗脳するかのように「自国は強い」と教育を通じて教え込んでいるのだ。韓国は2年間の徴兵制度があるので、若い内から国民を堕落させてはいけないという考えなようだ。北の某国に通じるものがある……。 日本よりも受験戦争が激しいと言われている韓国だが、教えている内容がこれでは全く意味が無いようなきがするが。 韓国旅行に行った日本人モデルに韓国人が暴言「くそ猿野郎」 「あなたは可愛い。純日本人じゃないでしょ?」 | ロケットニュース24 ttp //rocketnews24.com/2012/08/29/244254/ +記事コピペ収納 費用の安さや移動時間の短さから、手軽な海外旅行として韓国へ行く人は多い。 連日テレビなどで ”韓流スター” のイケメンや美女のアイドル歌手などが出演しているので、「馴染みのある韓国へ旅行に行きたい!」という人は多いと思うが、残念な出来事が起こってしまったようだ。 それは人気モデル「本田麻里絵」さんが旅行で韓国に行ったところ、さまざまな場面で日本人に対する侮辱的な言葉を韓国人から受けていたというのだ。韓国が好きという本田さんも、さすがにショックを受けているようである。 ブログによると、まず、サッカーを観戦している親しくしていた韓国の友人が「日本どうか負けろ」、「日本に負けたら国の恥」、「私達の領土を私達のものと主張してオリンピックはなにを怒っているのか」と言うのを聞いたそうだ。オリンピックの場で政治的な主張するべきではないと反論した本田さんに対しても「なにがいけないのですか?」と開き直り、本田さんは驚いたという。 また、友人の母も出会って20分で「独島は私達のものだから!」と主張。マッサージ店でも本田さんが韓国語を分からないと思った店員が、韓国語でさまざまな悪口を言っていたとのこと。さらにひどいのは音楽フェスティバルで「くそ猿野郎」と暴言を吐かれたり、ここでも「独島は我が国の領土」とわざわざ聞こえるように言われたとのこと。 そのなかでも特に本田さんが怒りを感じたのが、「とてもかわいいですねー! オリジナル日本(お父さんもお母さんも日本人)じゃないでしょ? 絶対!」と何回か韓国人から聞かれたことだそうだ。日本人の本田さんに対して、いくらなんでもそんな言い方はひど過ぎる。韓国が好きで、普段は温厚な本田さんもさすがに言い返したくなってしまったそうだ。 本田さんは熱烈な韓国ファンだっただけに、きっと今回の旅行は相当残念に思ったことだろう。しかし彼女のブログには「とりあえずまた韓国いってきます(中略)今回は楽しい旅になりますように…」と書いてあるので、怒りはしたものの韓国の全てを嫌いになったわけではないようだ。彼女が願うように、楽しい韓国旅行になることを切に願うばかりである。 参照元:本田麻里絵オフィシャルブログ 名前 コメント ◇◆前へ/次へ/目次へ
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アンソニー・エドワード・スターク――トニー・スターク。 大企業“スターク・インダストリーズ”の社長職を務めていた彼は、経済界において無視できぬビッグネーム。 企業運営に辣腕を振るい、科学者としても他の追随を許さない優れた才覚を示す。 さらに自ら開発したパワードスーツ“アイアンマン”を身に纏い、ヒーローとして世界の危機と日夜戦い続ける男。 世に言う、“戦う実業家”である。 「“鋼鉄の男”(Iron Man)。実業家のあだ名としては、やや固すぎやしないか?」 「文字通りに、ですね。マスター」 その肩書は、この聖杯戦争の舞台においても有効に機能する。 近年、本社を置くアメリカからこの日本に進出してきた世界的大企業、スターク・インダストリーズ。 その日本支社に長期出張し、どっしりとこの国に根を張り巡らす野心家の社長――それが、トニーに与えられた役割(ロール)。 多方面の事業に手を出しことごとく成功を収めるトニーの手腕は、スーツを纏ってもいないのにも関わらず“鋼鉄の男”と囁かれるほど、らしい。 「と言って、僕にはまったくそんな記憶はないんだけどな。まあ、兵器を扱っていないことだけは本当にありがたいが」 ただ一点、トニーが心底から安堵したことに、このスターク・インダストリーズは軍需企業ではなくなっていた。 取り扱うのは生活に便利な家電、身体的に不自由な者の介助をする器具、運転者・歩行者双方の安全を可能な限り保護する自動車、など。 世のため人のためになる商材を扱っている、真っ当な企業。それが、この聖杯戦争において構築されたスターク・インダストリーズである。 かつての苦い経験から軍事産業に関わることを放棄したトニーとしては、“本当のスターク・インダストリーズ”に極めて近い、理想的な企業と言えた。 「日本の安全保障は専守防衛を掲げている。そんな国を舞台とするにあたり、軍事企業の存在は好ましくない……そんなところか」 「肯定です、ミスタ・スターク。日本は世界的に見ても稀に見る治安の良さを誇ります。 軍事企業としてのスターク・インダストリーズが存在していれば、銃火器の調達も容易となってしまいます」 「それでは治安などあってないようなもの。戦闘行動はあくまでサーヴァントという戦力を用いて行うもの、という訳か」 「例外は、マスター。あなたのように自前の戦闘手段を持つマスターたち、ですね」 トニーに相槌を返すのは、古典的な女給服に身を包んだ長髪の女性。シールダーのクラスを司る、トニーのサーヴァント。 この館そのものがシールダーの実体であるので、目の前の彼女は触れることのできない立体映像に過ぎないが。 トニーの極めて個人的かつセンシティブな事情により、彼女の呼称はクラス名であるシールダーではなく“フライデイ”とされている。 「フライデイ? “我が社”のビジネス状況はどうなっている?」 「業績は極めて好調です。この冬木市においても、財界・政界多方面に多少の口利きができる程度の影響力は保持しています」 トニーの眼前に幾つものグラフ・表が投影される。社の状況をわかりやすく整理した資料。シールダーは優秀な秘書でもあるようだ。 極めて好調。シールダーの言葉通り、ぱっと見て何かしらトニーが干渉すべき事案はなさそうに見えた。 この分なら、放っておいても業務は滞りなく行われる。トニーの行動を縛るものではない。今のところは。 「ふむ、予期せぬ朗報だな。少なくとも、行動を制約されるどころか、採れる選択肢は大きく広まるだろう」 「一般的なマスターと比較し、金銭的な面で我々は圧倒的なアドバンテージを得ていると言えます。ですが、デメリットも」 「有名税かな? 僕は我が国屈指の高額納税者だと自負しているんだけどね」 「イエス、マスター。仮にマスターがこの館から一歩も出なかったとしても、あなたの名が何かのニュースで読み上げられない日はないでしょう」 アメリカに本社を置くスターク・インダストリーズ、その社長が直々に日本支部に出張してきているのだ。 なるほど、少し調べてみればトニーの名はネットで容易に目にすることができた。 曰く、会社運営だけでなく新商品開発も自ら手掛ける天才科学者。 曰く、恵まれない子どもたちに多額の寄付を行う慈善家。 曰く、見目麗しい女性に目がない尻軽プレイボーイ―― 「おい、なんだこれは。風評被害も甚だしいぞ」 「そうでしょうか? 極めて妥当な評価だと言えるのでは」 「まださっきのニッタミナミ嬢のことを引きずるのか? 君は結構根に持つタイプだな」 「学習の成果です」 「まったく……まあ、いい。次、スーツの方はどうだ?」 トニーが手を振ると社の資料は跡形もなく消え失せ、代わりに人型の影を捉えた映像が表示される。 空飛ぶ鋼鉄の鎧。トニー・スタークのアイデンティティ。 すなわち、アイアンマン・スーツ。 トニーがシールダーと初めて会ったとき、スーツは着用していなかった。 戦車以上の戦力を持つスーツそのものを持ち込むのはさすがにアンフェアと判断されたのだろう。 護身用としてか、腕時計から変形する掌だけのスーツ――言うなればアイアン・ガントレットだけは持っていたが、さすがにこれでは心許ない。 故にトニーは、館をバージョンアップするのと平行してアイアンマン・スーツの作成にもとりかかっていた。 「間もなくマークⅣ’がロールアウトします。その後、マークⅦ’の建造に着手する予定です」 「ふむ。技術者としては、古いバージョンを再利用するのは些か抵抗がないでもないが、まずモノがないと話にすらならないからな」 トニーがまずシールダーに生産を急がせたのは、第四世代のアイアンマン。 装着車の衣服を問わず装着でき、また独立したアーク・リアクターを搭載しているためトニーの胸のアーク・リアクターに負荷をかけないモデルである。 これ以前のバージョンでは安定性に難があり、これ以降のバージョンは生産に時間が掛かる。 まず一体確保しておくべきと、時間と戦力を秤にかけ選んだのがこのモデルだった。 マークⅦはマークⅣの三世代後のモデル。過日のチタウリ襲来の際、最後に使用した決戦用のスーツだ。 それ以前のモデルとは違い、完全なスタンドアロン型で飛行も可能。 メカニックアームに頼らず身体一つで装着できるため、基地に帰還せずどこでも着脱可能という汎用性の高さが自慢であり、トニーが記憶している中で最も戦闘力に秀でたスーツだ。 これ以降ともなると、現在構想中の新型か。だがそれはまだ実用化できていない――トニー本来の環境においても。 「しかし、“マークⅣ’”か。そのままではサーヴァントに通用しないというのは悔しいところではあるな」 「ミスタ・スタークは魔術に関しては門外漢です。仕方のないことでしょう」 「不思議なものだな。設計自体は何も変えていないのに、メイド・イン・フライデイのパーツで組んだだけで魔術的にも有効になるものとは」 「ですが、マスター。先ほどお伝えした通り」 「サーヴァントとの直接戦闘は危険、だろ。わかっているよ」 シールダーによって生産されたアイアンマン・スーツは純機械でありながら神秘を帯び、サーヴァントとも戦闘が可能となる。 が、それはイコールで勝てる、というものでもない。 トニーが試算したところ、どんな高性能のスーツを開発したとしても、勝算は“まったく相手にもならない”から“多少は食い下がることができる”程度にしか変動しない。 それほどにサーヴァントという存在が持つ戦力は、トニーの常識を逸脱したものであった。 「戦闘力に優れた三騎士にはまず勝てない。同じ理由でバーサーカーも不可。 英霊にもよるが、スーツ以上の空中機動力を持つであろうライダーも厳しい。となると、やりあえそうなのはキャスターとアサシンくらいか」 「その二つも、よほどの例外が重なったときにかろうじて、というものです。基本的にはマスターが押し勝てる存在ではありません」 「やれやれ。この冬木市では泣く子も黙るアイアンマンも型なしだな?」 しかしトニーは特に沈んだ素振りも見せず、シールダーににやりと笑う。 それを強がりと取るか無理解と取るか迷ったシールダーだったが、 「僕より強い奴がいるなんて、別に初めてって訳じゃない。 なんならソー、バナー……ハルクだって、本気を出せばそりゃもう手がつけられないからね」 意外なほどに晴れやかなトニーの表情を見て、これはネガティブな意味ではないとシールダーは悟る。 トニー/アイアンマンが所属するスーパーヒーローチーム、アベンジャーズ。 かつて共に戦った盟友、マイティ・ソーとブルース・バナー/ハルク。 彼らが持つ武力は、アイアンマン・スーツの遥か上を行くものだったとトニーは語る。 ソーは別世界の神々の一柱であり、天を引き裂く雷と大地を砕くハンマーを振るう。 かつてトニーはソーと戦ったことがあった。一見互角に渡り合ったように見えたが、ソーは人間の世界を守るために動いていたのだ。 今にして思えば、ソーはあのときは手を抜いていたのだろう。チタウリ決戦でソーが見せた巨大な雷を食らっていれば、アイアンマン・スーツなど一溜まりもなかったはずだ。 ハルクはトニーと同じ世界の出だが、特殊な実験によって巨人と化す体質になった男だ。 ソーのような雷も武器もないが、ハルクの脅威はただ、異常とも言える怪力ただ一点に尽きる。 カーボンナノチューブのワイヤーを百万本束ねてもこうはならない、という説明不能な強度としなやかさを併せ持つ肉体。 その豪腕から繰り出されるパンチは、ただの一発で巨大な飛行戦艦をばらばらに粉砕せしめる。 ちなみに、ソーもハルクとほぼ同等の身体能力を誇るらしい。さすが神々だともはや笑えてくる。 「ここにいる連中は手加減無し、本気のソーとハルクばかりだ、と思うとわかりやすい。それは僕一人で太刀打ちできるはずがない」 「ええ、ですから私が存在するのです」 「頼りにしているよ、フライデイ」 トニーとて、いくらスーツが用意できても一人で戦うつもりなど毛頭ない。 シールダーは元来、防戦に特化したサーヴァントだ。移動できない代わりに、鉄壁の防御と豊富な迎撃兵装を誇る。 アイアンマンが活躍するとすれば、敵を誘い込んでのシールダーとの共同戦線。 彼女の援護を得たのなら、対サーヴァント戦の勝敗は“多少は食い下がることができる”のではなく“返り討ちにする”ことが可能なはずだ。 「では、当面の予定としては。迎撃兵装の増産、マスターのスーツの作成。平行して市内の情報を収集、でよろしいでしょうか?」 「ああ、頼む。戦力が整わないうちから打って出るのはバカバカしいからな。 さて……僕は少し休むとするよ。ずっと机に向かってたらさすがに肩が凝ってきた」 「浴槽は最適な温度をキープしています。入浴後はシャンパンを開けられますか?」 「魅力的な提案だが、さすがにアルコールは止めておこう。何か動きがあったら知らせてくれ」 あくびを一つ、ぐっと伸びをしたトニーは席を立って浴室へ向かう。 ついてこようとしたシールダーに無言で止まれ、とジェスチャーし、しばしの休息を堪能することにした。 熱い湯を全身に浴びると、疲労で鈍っていた頭が爽快に動き出す。 睡眠不足の根本的な解決にはならないが、いまはそう長く思考を止めていられる状況でもない。 「アベンジャーズの仲間はいない。だが孤立無援という訳でもない……」 ここに、彼らがいれば。 神話より出でし天翔ける雷神、ソー。 剛力無双、憤怒の化身、ハルク。 美しく危険な女、ブラックウィドウ。 俊敏で精確、百発百中のホークアイ。 気心の知れたもう一人の“鋼鉄の男”、ローディ。 そして――アメリカの英雄。 父から何度名を聞かされたか。スクールの教科書で、ペーパーバックで、フィルム・ピクチャーで、何度その名を目にしたか。 そう、彼はアメリカの象徴。彼を示す言葉はひとつ――“正義”。それだけで事足りる。 キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャース。 かつてアメリカを、ひいては世界を救った男。本物の、英雄。 冷たい海より蘇りし、旧時代の遺物。トニーとは意見信条主義嗜好と何もかもが食い違う、まさに骨董品たる堅物。 だが。 口惜しいことに、否定できない。 ここにキャプテンがいてくれれば、隣りに立って共に戦ってくれるのならば。 どれほど、心強いことか。 「……まったく。“アイアンマン”が、聞いて呆れるな」 弱気の虫を冷たい水で押し流す。ないものねだりをしてもしょうがない。 いまここにいるトニーが、いまここにあるもので戦うしかないのだ。 カランを捻り水を止め、トニーは浴槽に身を沈めた。胸のアーク・リアクターには防水加工が施してあり、浸水の心配はない。 温かい湯が身体の奥まで染み込んできて、払ったはずの眠気が再び忍び寄ってくるのを感じる。 「孤立無援ではない……そう、必要なのは協力者だ。僕と同じ志を持つ、善意の協力者」 すなわち、街を、市民を、そして平和を守る者。 トニーはシールダーを魅力的な研究対象として捉えてはいるが、だからと言って他のマスターを皆殺しにしてまでその力が欲しいと思っている訳ではない。 それはトニーが憎む悪の所業だ。戦火を広げる者を討つ、それがいまのトニーを突き動かす唯一にして絶対の行動原理。 故に、トニーが“聖杯”を獲る方法は優勝ではない。 この知識で、この智慧で、この機転で、この想像力で、奇跡もたらす“聖杯”を徹底的に分析し尽くす。 “奇跡”を、人の手で再現できるように。 得体の知れないオカルティックな遺物を、ロジックが支配する科学の領域に引きずり下ろす。 “奇跡”ならぬ“性能”を以って、襲いかかる敵を撃退する。永遠に。犠牲を出すことなく。 そうすることでトニーの願いも――人々が怖れることなく心安らかに暮らし、戦士たちも武器を捨てて家に帰る――叶う。 「なんなら、そうだな……僕に協力してくれるのなら、その誰かの願いもついでに叶えたって良い……。 ホワイトハウスを買い取る? 太平洋に新大陸を創造する? 十人前のピザを一分で食べられるようになる? はは、何だって思いのままだ……逆上がりだってできるようにしてやるぞ……」 思考の体を成さず、無意識にこぼれ落ちる言葉の数々。 その羅列は、突如耳と言わず鼻と言わず流れ込んできた湯によって強制的に遮断された。 「……っぷぁ! はっ……なんだ、眠ってしまったのか」 慌ててバスタブの縁を掴み、身体を引き上げる。 思いのほか、長湯したようだ。一瞬とはいえ完全に意識が飛んでいた。 「……出よう。さっぱりしたことだしな」 浴室を出て、タオルで身体を拭いて衣服を身につける。 ふと、シールダーは何をしているのだろう、と思った。 「マスターが溺れかけたってのに、薄情なやつだ」 子どものような失敗をした気恥ずかしさからか、八つ当たり気味に口を尖らせる。 もちろん、シールダーが見ていたら見ていたでトニーはプライバシーの侵害だの母親気取りかだの、何かしら文句を言ったのだが。 ぶつぶつと呟きながら作戦室――設備の設計を行い、また市内の様子をモニターできるように設えた部屋――に戻ってきたトニーを、 「フライデイ? 悪いが熱いコーヒーを……どうした?」 「マスター……これを」 出迎えたのは、先ほどの打ち解けた様子もどこへやら、緊張した面持ちで立ち尽くすシールダーだった。 その手が握り締めているのは(彼女はホログラムだから実際に握っているのは彼女専用に作ってやったロボットアームだが)、一枚の手紙だった。 「この聖杯戦争の主催者からの、通達です」 微睡みの時間は終わりのようだ。 トニーは頭を拭いていたタオルを放り出し、シールダーから受け取った手紙を開封して一息に読む。 ご丁寧に写真まで同封されていたそれは、文面を読んでいないシールダーにさえ容易に内容を想像できるものだった。 「……どこにも馬鹿はいるものだ。まさかこんなに早く動き出すとはな」 「とすると、その手紙はやはり討伐令でしたか?」 「ああ。しかも二組! まったく、クリスマス前だからってはしゃぎ過ぎだ! 良い子にしてないとサンタは来ないっていうのにな」 苛立たしげに吐き捨て、トニーは手紙を机に叩きつけた。 そこに写っているのは、片目が紅いフードを被った男と、二メートルを越す長身の女。どちらも赤い。返り血の赤か。 こいつらは人を喰う。比喩ではなく文字通りに。血の海になった路地裏の写真が吐き気を催す。 人間は同族を食わない。人間を食うのは、人間はないモノ。人間とは、相容れない存在。 もう一組の写真は、二人の男。だがどう見ても、これは―― 「双子のピエロかな?」 「いえ、おそらくサーヴァントがマスターの姿を真似ているものかと」 「……そうだな」 さすがにこの状況ではジョークを返してくれないシールダーにやや凹まされ、トニーは写真をひらひら振ってみせる。 写っているのは瓜二つどころではない、まったく同じ容貌の男だ。 白く染め抜いた顔に、口紅を引いたように赤い唇が三日月のような弧を描く。笑っていた。嗤っていた。嘲笑っていた。 さも愉快そうに、愉しそうに。トニーの心中に抑えがたい不快感が込み上がる。 「こいつらは両方ともバーサーカーだと。ここまで見境がないのも納得だな」 「ですが、マスター。彼らはサーヴァントだけが狂っているのではなく」 「ああ、マスターも同様だ。人喰いの化け物に、快楽殺人者。なんでこんなイカれた奴らに制御できないクラスを割り当てたのか、理解に苦しむね」 「そういうマスターだから……かも、しれません。彼らは今後引き起こされる闘争の中心に位置することでしょう」 「争いを誘発する存在、か。本当に度し難いな」 トニーの言葉には紛れもない嫌悪感が満ち満ちている。 それも当然だ。二人のバーサーカーのマスターは、ヒーローたるトニーの対極に位置すると言っていい。 騒乱を巻き起こし、破壊を振り撒いて、人の命を奪う。一分一秒、生存を許してはならない邪悪。 「どう致しますか、マスター。我々も動きますか?」 「そうしたいところだが……バーサーカーともなると、間違いなくこいつらは強い。僕だけが出向いても、熱々のピザをデリバリーするようなものだな」 「はい……残念ですが。この近辺に現れたならともかく、こちらから仕掛けることは困難です」 「こうして大々的に狩れと命じてきたからには、僕ら以外の奴らにも声をかけているだろう。 令呪は貴重だ。すぐにでも動く奴はいるはずだ……とすると、市内は戦場になる。僕らはそっちのフォローに回ろう」 「了解です、マスター。市内を巡回しているアンドロイドに指令を出します」 「逃走経路の構築、避難誘導の文言、ああ、シェルターも用意しないと。近くならここでいいんだが、ただの建築物がサーヴァントの戦闘に耐えられるはずもないしな。 よし……フライデイ。追加の発注だ、十数人が乗り込めるバスを作ってくれ。有事にはそれで市民をピックアップし、ここまで連れてくるんだ。 運転は僕がプログラムを組もう。とにかく数とスピードが最優先だ、市内の倉庫を幾つか買い取ろう。そこにバスを待機させて」 矢継ぎ早に指示を繰り出すトニー、その命令を忠実に実行していくシールダー。 が、まるでゼンマイが切れたかのようにその動きがぎこちなく停止する。 「フライデイ?」 「マスター、アンドロイドの一つが接触しました……ピエロの二人組です!」 鋭い刃のようなシールダーの報告が作戦室を貫き、トニーを身構えさせる。 「モニターに出せ!」 スクリーンに投影されたのは……奇妙なほどに澄んだ瞳だ。 覗き込んでいるとどこまでも吸い込まれそうな。あるいは、呑み込まれそうな。 カメラが引く。いや、引いたのは瞳だ。 「……っ!」 トニーは息を呑む。思わず引いた身体が机にぶつかり、空のカップが落ちた。 レンズが捉えたのは、満面の笑みを浮かべる道化師の男。 バーサーカーのマスター、ジョーカーという男だった。 ◆ HA HA HA HA HA HA HA HA ――――――――…… 笑声は後方に置き去られる。 朝日に照らされ始めた道を疾走するのは影なる鋼鉄の騎馬、二騎。 まばらな車影を縫うように、凄まじいスピードで駆け抜けていく。 闇そのものを固めて形作ったバイクに跨るのは、首から上を失くしたライダー。 その後ろにタンデムするのは、道化師の男。男たち。 影のバイクは先を争うようにコーナーに侵入し、焼けたタイヤが煙を立ち登らせた。 「GOOOOOOOOOOOAL!! YEAR! チェッカーフラッグはオレのもんだな」 「“オレの”ものということは、“オレの”ものだ。つまりはオレの勝ちだな」 「HAHAHA、そうだったなァ、じゃあノーゲームか。次は何する?」 「モグラ叩きはどうだ?」 「いいねェ! 乗った!」 バイクは車線を空けていた先行車に寄せる。するとジョーカーが身を乗り出した。 振り下ろされたのはどこにでもある鉄パイプ。無骨な、太い、変哲もないただの鈍器。 自動車のフロントガラスが破砕する。コントロールを失った車体は大きくスピンし、あるものは転倒、あるものはガードレールに衝突。 やがてそこかしこから爆発音と真っ赤な炎が吹き上がる。 片手では足りない数の自動車をクラッシュさせて、ふとジョーカーは首なしライダーの背をトントンと叩き停車させた。 「どうした?」 「見ろよ、アレ。面白いものがあるぜ」 首なしライダーのバイクから降りたジョーカーとバーサーカーは、大破した車の一台に歩み寄った。 ドライバーの手が割れたガラスからはみ出ている。その手が流す血は、赤ではなく黒い。血ではなく、オイルだ。 骨は金属のフレーム、神経はケーブル。人のものとは似ても似つかぬ、メカニカルなパーツ。 いくつもの死体の中に一つだけ、死体ではないものがあった。 「なんだこりゃ。最近の義手は良くできてるな」 「カッコいいねえ。オレも作ってもらおうか?」 「そいつぁいい。そうだ、ついでにパンをトーストする機能もつけてもらおうか」 「こんがり焼かないとな ……お? まだ動くな、こいつ」 ジョーカーは、あるいはバーサーカーは車からメカ人間を引きずり出した。 顔面――を偽装していた合成樹脂を引き剥がす。現れたのはやはり、金属の頭蓋骨。 眼球はカメラのレンズ。そのレンズがぎょろりと動き、ジョーカーを映した。 ◆ ――うん? こいつ、オレを見てるぞ? ――こいつは使い魔の一種だな。映像を何処かに送信している。 ――ほう、ほーう。じゃあ何か、こいつを通して誰かがオレたちを覗き見てるってことか! ――誰か、じゃなくてサーヴァントだなあ。誰だ? オレたちと遊びたいのか? モニターに映った二人の道化師は、寸分違わぬ狂笑を張り付かせてレンズの向こうのトニーを見据えていた。 こちらの存在を認識しているはずはないのに、何故だかトニーはジョーカーに見られている感覚を打ち消せなかった。 「フライデイ、こちらの情報が漏れることはあるか?」 「ハッキングは受けていません。今のところは問題ないはずです」 トニーとシールダー合作のアンドロイドは、魔術と機械のハイブリッドだ。 捕獲され、解析されればこの場所を辿ることも不可能ではないが、それにはシールダーと同等の魔力、さらにトニーに匹敵する技術力あってこそだ。 見たところ、ジョーカーとバーサーカーにそれはない。故に、トニー達の情報を知られる可能性はほぼない、はずだった。 もちろんこちらからコンタクトをとることは不可能ではない。が、トニーはどうしてもそうする気になれなかった。 理由は、ジョーカーの瞳を見てしまったからだ。 あの、底なし沼のごとく見る者を引きずり込む引力を放つ狂気の…… ――……おいおい、だんまりか。つれないなぁ。 ――恥ずかしがり屋の“ピーピング・トム”、出ておいで、ってな。 ――まあ、いいさ。こうやって偶然当たりを引いたってことは、街を歩けばまだいくらでもこいつらがいるだろ。 ――ショーには観客がつきものだからな。 ――安心したぜ。オレたちの功績まで全部あのグールに持ってかれちゃあ堪らんからな。 ――つまり、“お前が”オレたちの“スコアラー”ってことだ! よォく見てろよ? 数えとけよ? ――ああ、なんだかやる気が出てきたぞ! 見られるってキモチいいなァ! 二人のピエロはステップを踏み、手と手を取り合ってダンスする。 まるで子どものように。無邪気に、愉快そうに、そして残酷に。トニーに見ろと、記憶しろと迫る。 彼らがこれから行う破壊と殺戮、混沌と悲嘆のパレードを。余すところなく見届けろと。 ギリッと、噛み締めた奥歯が鳴る。最初に感じた怯えはどこかへ吹き飛んだ。 こいつは……こいつらは、放っておいてはいけない。いや、生かしておくのすら許されはしない。 ――いよォし! じゃあ次行くか! どこ行く!? ――そうだなァー……おっ、これどうだ? 沸々と怒りのボルテージを上げるトニーをよそに、ひとしきり踊って満足したかピエロたちは辺りの散策を始めた。 アンドロイド同様、ひっくり返って絶命した市民――助けられなかった。頭痛がひどい――の懐を探り、一枚のチラシを取り出した。 シールダーがすかさず拡大する。文字を読み取る。 442プロ主催、クリスマスライブ。 出演アイドル【高垣楓】【新田美波】【神谷奈緒】【白菊ほたる】【市原仁奈】…… アイドル。ライブ。新田美波、ニッタミナミ。数時間前にテレビで見た、美しい女性。 ぞくり、とトニーの背筋を悪寒が這い上がる。 予想通り、そのチラシを見たピエロどもはにんまりと満面の笑みを浮かべていた。 ――見ろこれ見ろこれ、ライブだとよ。楽しそうじゃないか? ――ああ、きっと楽しいぞ。でも見てるのは退屈だ。だからオレたちも一つ、盛り上げてやろうじゃないか! ――演出か! やったことはないが、いや待てあるか? ああ、こういうのは得意だぜ。 ――ジョーカー&バーサーカーが送るサプライズイベント! こいつは見逃せないな、“ピーピング・トム”! ――明日の15時、特設ステージ……なんてこった、時間がねえぞ! こりゃ急いで準備しないとな! ――そうと決まればこうしちゃいられねえな、行こうぜ“オレ”! ――OKOK、楽しいクリスマスパーティの始まりだ! HA HA! BAN! 銃声を最後にアンドロイドからの映像は途絶えた。 そのまま、静寂が作戦室を支配する。 「……マスター? あの、どう致しますか……?」 たっぷり数分は待っても主が動かないので、シールダーは恐る恐る問いかけた。 それでもトニーはやはり動かない。その手はぐっと胸を――心臓を押さえつけている。 動悸よ静まれと念じるように。あるいは、神に勝利を誓う戦士のように。 さらに数分、トニーはようやく目を開く。 「……フライデイ、プラン変更だ。打って出るぞ」 「マスター!? 危険です、それは!」 「こいつらを野放しにしておくのは危険だ。どれほどの犠牲が出るかわかったものじゃない」 「それはわかります。ですが……!」 ジョーカーの挑発に乗る、とトニーは言った。だがそれは自殺行為だ。 そんなことはシールダーに言われるまでもなく、トニー自身が一番理解している。 「落ち着けよ、フライデイ。なにもこいつらのところに正面から殴り込むって言ってるんじゃない。 それは他の奴らがやるだろう。人喰いの方は、遺憾だが他の誰かに任せる。 僕らは表から……いや、裏から、かな? ピエロどもの動きを封じるんだ」 トニーは机に向かい、新たな設計図を引いていく。 そのペンは先程にも増して早い。ジョーカーに対する怒りと嫌悪がトニーを突き動かしていた。 聖杯戦争の常道、つまりサーヴァント同士の戦闘を“表”とするなら、トニーがこれからやるのはまさしく“裏”の戦法だ。 「スーツを用意してくれ。ああ、パワードスーツじゃないぞ。カメラ映えする、ビシっとしたビジネススーツをだ。 それと、スターク・インダストリーズの名前を使ってテレビ局にコンタクトを取ってくれ。この僕、トニー・スタークがアイドルたちのライブに大いに興味を持っているとな」 「テレビ局に、ですか。不可能ではありませんが」 「あと、442プロダクションと言ったか。僕が、スターク・インダストリーズがスポンサーになると申し出ろ。 今からではライブ開演に口を出すのは無理だろうが、関係の理由付けにはなる。 とにかく今日、僕がアイドルと接触できるような場を作るんだ。トークショーでも取材でも何でもいい」 単純な戦闘力では、いまのトニーとシールダーでは、ジョーカーとバーサーカーを仕留められない。 だからこそ、トニーは“戦わない”。 トニー・スタークの一番の強みは、戦闘力ではない。 創り、生み出し、活用する。それがトニーの、アイアンマンのスタイル。 それはモノには限らない。行動を起こす機会でさえも、自らの意志で創り上げるもの。 「ライブに出演するアイドルを全員、“ここに”、このウィンチェスター・ハウスに保護する。 そして彼女たちと入れ替わったアンドロイドは“事故”に遭ってもらい、土壇場で明日のライブを中止させるんだ」 これが、トニーの頭脳が弾き出したプラン。 犠牲を最小限に抑え、かつジョーカーとバーサーカーを確実に討伐する。 ライブを見せ餌とし、ジョーカーたちを誘い出し、その目論見を挫いた上で全戦力を投入し、カタをつける。 一人二人の欠員ではライブは続行するだろう。だが出場予定のタレントが全員いなくなればどうか。 穴埋めの人員は一日では手配できまい。仮に無理やり都合をつけたとして、それは本来のライブとは比べるべくもないお粗末なものとなるだろう。 そんな舞台であのジョーカーは満足するか? 答えは否だ。 行動を取りやめることまではしないかもしれない。だが、打撃には違いあるまい。その僅かな間隙を千載一遇の好機に変えるのがトニーの仕事だ。 工作のための資金は、幸運な事に潤沢だ。戦闘力に劣る代わりに、トニーに与えられたロールが最大の効力を発揮する。 昨夜見たニッタミナミ嬢ら、アイドル諸君には申し訳なくも思うのだが、人名が最優先だ。 首尾よくジョーカーらを始末できれば、改めてライブを開けば良い。そのための資金は全額スターク・インダストリーズが補償しよう。 「金はいくらかかってもいい。もし足りないのなら本社の株を売るなり特許を売るなり、あらゆる手を使ってかき集めろ」 「いえ、おそらく資金は問題ありませんが。ライブを中止に、ですか。それであのピエロたちが諦めるでしょうか?」 「ないな。だが、少なくともこちらがイニシアチブを取れるはずだ。 ライブ会場の見取り図を用意しろ。万全の体制で奴らを誘い込み、迎え撃つぞ」 ジョーカーが攻める、のではなく、ジョーカーに攻めさせる。 来るとわかっているのならば、またそこに罠を仕掛けられるのならば、主導権を握るのは容易いことだ。 トニーの目的はあくまで狂ったピエロの打倒であって、報酬である令呪にはさほど興味がない。 ジョーカーを倒しやすい舞台に誘導し、周辺被害の心配もなくしてやれば、猟犬のように集まってくる血気盛んな誰かが勝手に倒してくれるだろう。 「さっき言った通り、避難用のバスの生産は続けろ。それと平行して、乗用車もいくつか作れ。 その車に攻撃用の兵器を幾つか積む。自走式の砲台だ。これなら館から離れてもある程度の火力を運用できるだろう。 完成次第、さっき言った空き倉庫を適当に買い上げて詰め込んでおけ。 あと、僕のスーツ……パワードスーツの方だが、マークⅦ’の製造は一旦保留。代わりにマークⅤ’を再優先だ」 「マークⅤというと、携帯用ですか?」 アイアンマン・マークVは携帯性に優れたモデル。 アタッシュケース型のボックスにまで縮小したパーツを展開することで、いつでもどこでもアイアンマンになれる。 小型化の代償として性能はお話にならないものだが、それでも戦車くらいなら軽くスクラップにできる。 サーヴァントと殴り合えるものではないが、少なくともある程度逃げ回ることくらいは可能なはずだ。 「そうだ。本当はマークⅦ以降の完全スタンドアロン型が理想だが、人目につくのもまずい。 あれなら持ち歩いてもアタッシュケースと言い張れるからな」 「その分、性能に不安が残ります」 「緊急離脱用だ。戦闘力はさほど問題じゃない……というか、そういう状況にはならないようにする」 人目につく場所でアイドルを拉致するからには、当然トニー自身が疑われる状況は避けねばならない。 そういった点でも、手軽に携帯できて数秒で完全に容姿を変更できるアイアンマン・マークⅤは非常に有用だ。 無論、トニー自身が手を下すのは最終手段だ。 基本的には、シールダーが送り込む人間に擬態したアンドロイドに任せるつもりでいる。 「しかし……この館を出ては私の力は届きません。それではマスターを守れない……」 「反対か? 僕も正直、こんな危ない橋は渡りたくない。 だが今は、動かせるユニットは僕自身だけだ。助っ人がいれば別だが、そうではない以上他に選択肢はない」 「……了解しました。でも、ご自身の安全を再優先にしてください、マスター。 あなたがいなくなれば私も消える。街を、人々を守れる存在が消えてしまう」 「させないよ、そんなことはな。大丈夫だ、僕はやれる……やってみせるさ」 守ってみせる。この街も、人々も。 傷つき倒れた仲間たちのビジョン――あんなものを現実にしてはならない。 トニー・スタークは一人かもしれない。だが孤独であることが、戦いを止める理由になどなりはしない。 あの日、初めてアイアンマンを名乗った日から、トニー・スタークに立ち止まることは許されていないのだから。 数時間後。 冬木市に住む人々が朝のニュースを見るべくテレビを点けたとき、そこには一人のアメリカ人が映っていた。 家庭の食卓に留まらず、通勤中の携帯端末で、街頭の大型モニターで、何百人もの人々がその男を目撃した。 一部の乱れもなく完璧にスーツを着こなす洒脱なその男は、カメラに向かって微笑みかけ、溢れる自信を言葉へ変えて放つ。 「ごきげんよう、日本の皆さん。少しだけ、皆さんの貴重な時間を拝借したい。 私の名はトニー・スターク……そして」 すぅ、と一息。 行け、行け、行け。 戦いを始めろ。 鋼鉄の鎧を身に纏え。 開始せよ、トニー・スターク! 自らに言い聞かせるように、胸の内で唱える。 そして。 「I am Iron Man.」 この偽りと闘争の世界の真ん中で。 人を/街を/すべてを守るため、アイアンマンの戦いが幕を開ける。 【新都 テレビ局/1日目 早朝】 【トニー・スターク@マーベル・シネマティック・ユニバース】 [状態] 健康 [装備] [道具] アイアンマン・スーツ・マークⅤ’@マーベル・シネマティック・ユニバース [令呪] 残り三画 [所持金] 潤沢 [思考・状況] 基本行動方針:街を、市民を守る。 [備考] 1.442プロのアイドルと接触、アンドロイドと入れ替えて明日のライブを中止させる。 2.ジョーカー&バーサーカーの目論見を阻止する。 3.協力者を探す(あまり期待はしていない)。 ※アイアンマン・スーツ・マークⅤ’ 13.6kgのアタッシュケースに偽装されたコンパクトなアイアンマン・スーツ。 携帯性に優れるが、武装・装甲ともに貧弱。とはいえ、車を蹴飛ばすなど超人的なパワーは健在である。 シールダーにより生産されたため神秘を帯びており、サーヴァントやそれに準ずる存在とも戦闘行動が可能になっている。 【深山町 ウィンチェスター・ミステリー・ハウス/1日目 早朝】 【ウィンチェスター・ミステリー・ハウス@シールダー】 [状態] 健康 [装備] 防衛兵装、防衛アンドロイド多数。 [道具] [思考・状況] 基本行動方針:マスターを守り、市民を守る。 [備考] 1.トニーのバックアップ。 2.避難用のバス、攻撃用の兵器搭載自動車、アイアンマン・スーツの製造。 3 市内各地の空き倉庫を買収、仮拠点の作成。 4.市内の情報を収集。 ※現在、市民避難用のバス、攻撃用の兵器搭載自動車、アイアンマン・スーツを製造中。 【深山町/1日目 未明】 【ジョーカー@ダークナイト】 [状態] 健康 [装備] 拳銃、鉄パイプ、その他色々 [道具] 442プロ主催クリスマスライブのチラシ [令呪] 残り三画 [所持金] 二百万円前後。 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を自分好みに“演出”する。 [備考] 1.聖夜に最高のパーティを。 【フォークロア@バーサーカー】 [状態] 健康 [装備] [道具] [思考・状況] 基本行動方針:(ジョーカーに準ずる) [備考] 1.(ジョーカーに準ずる) 時系列順 Back Belley Star Next 勇者と竜と魔王と俺と 投下順 Back Belley Star Next 勇者と竜と魔王と俺と ←Back Character name Next→ WINter soldiers トニー・スターク Hurt Voice シールダー(ウィンチェスター・ミステリー・ハウス) ←Back Character name Next→ WINter soldiers ジョーカー たんぽぽ食べて バーサーカー(フォークロア)