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二つ名:硝子の勇者 名前: 詳細: 硝子のように壊れやすいが絶大な切れ味を誇る結晶剣を扱うことのできる数少ない剣士。その剣の特性故に筋力をつけてはいけないため、重たいものが持てないのが悩み その他:
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第3部 序章-第二幕- 五つの滅将 第3部 序章-第一幕- 第3部 序章-第三幕- イノ=ヘレティックが魔神軍を正式に発足してから数日―― ただでさえ駆逐されつつあったイグジスターは勇者軍、魔神軍、 そして各国軍の協力によって完全絶滅も遠くないと思われていた。 そう、希望はすぐ先に見え始めていたはずだった。 一方、勇者軍気象観測センターにおいては ウォルフ王子の指揮下において監視活動を行っていた 予備役隊員が異常なものを発見したところであった。 「あれは……! ウォルフ王子、王子!!」 「騒々しいですよ……どうしました?」 「どうしたもこうしたもありません、映像回します!」 「…………!?」 ウォルフ王子は驚愕に目を見開いた。 それはイグジスターを生み出す、通称『ブラック・レイン』。 黒き雨にしか見えない災厄そのものであった。 それがまた、再び惑星アースに訪れたのだ。 「また……ですか……!」 ようやくシェルターやら避難施設やらから一般市民を 順次帰宅させる算段を整え始めていたというタイミングで、 この有り様である。下手を打てば暴動に発展しかねない。 いざとなったら強権を発動する必要さえあるだろう。 「観測しているのはこのカメラだけではありません!」 「各国どころか、惑星アース外のコロニーからも支援要請が!」 「なんと!?」 ウォルフ王子は更に驚愕する。 少なくとも前回の戦争には無かった現象である。 ブラック・レインもその大半がザン共和王国内で 発生したものであったし、残りもダイギン共和国の内部で起こった。 間違っても惑星アース外で発生したという報告は無かったはずだ。 「くっ……いざとなったら市民を疎開させようという計画も これで水泡に帰す事となるのか……! だが反撃の手は緩められない! せめて物流の最大拠点であるスペースポートに増援を送れ! あそこを遮断されたら、相互のライフラインが途絶えかねない! 最終的には連携すら考えているのに、それだけは許容出来ない!」 「は、はい! 周囲の友軍を検索……これは!」 一縷の希望を見出したように予備役隊員は叫ぶ。 「ロバート隊長とエナ伍長です! 偶然ですが、近くにいます!」 「それは不幸中の幸いです。最優先で行かせなさい!」 「更に、多少距離がありますがローザ中尉も所在、確認出来ました! 暗号通信で緊急支援要請、出します! 許可を!!」 「言うまでもありませんし多少遅れても構いません、すぐに!」 「はっ!」 一息つきながらもウォルフ王子は対策を練り始めていた。 「コロニーも駄目、陸地も論外、ならばどこに市民を逃がす……!?」 途方も無いような問いを自問自答しながら、ウォルフ王子は悩んだ。 すぐに解決策は出なくとも、早期に結論は出さねばならないのだから。 ウォルフ王子がその存在を察知し、勇者ロバート達の支援を 待ち始めた頃、更に情勢は大きく動き始めていた。 イグジスターの多くは無抵抗の市民を丸呑みし、擬態し、 充分に識別装置の揃い切らない 現状の市街地をひたすら蹂躙し始めた。 だがそれらの中にわずかなイレギュラーが混ざっており、 群れからうっかりはぐれて行動した結果、民間人以外の、 しかも極めて強力なナインサークルの生物を丸呑みした イグジスターが五体ほども現れ、頭一つ抜けて頭角を現したのだ。 「…………」 竜族の王城、竜宮城からはかなり離れた森林地帯にて 一人の竜人――ドラグーン形態を保った竜族を丸呑みした イグジスターが、ゆらり、と立ち上がった。 相当に疲労していたのだろうか、あっさり丸呑み出来た。 だがそのポテンシャルや知性は高く、人の言語も操り得る。 極めて強力な竜族――ミズチの個体と言えるだろう。 「これが、こいつの武器か」 傍に転がっていた斧を握り締める。手にしっくりきた。 「よし、他にも俺のようなイレギュラーがいるかもしれん、探すか」 ミズチ・イグジスターはすぐさまその場を離れた。 下手に他の竜族に見つかっては厄介であるからだ。 それも、ミズチ自身の知識であるのだが。 「中途半端だこと」 人魚の亜人族、セイレーンを丸呑みしたイグジスターが一言こぼす。 だが、人魚でありながら空を飛行する事が出来る。 それがセイレーン族の特徴でもあった。それを理解し、 セイレーン・イグジスターはニヤリと笑う。 「慣れてしまえば便利そうね。気に入ったわ。声もいいし」 そう言うと岩礁から去り、水の中へと潜っていった。 「みーっ!」 人語こそ話せないものの、 希少な生物を丸呑みしたイグジスターが叫ぶ。 彼が呑んだのは妖精族の小型生物、カーバンクル。 極寒の地にわずかな数だけ生きている超絶希少生物だ。 基本的に臆病であまり他者の前に姿を晒さないその生態を 忠実に再現して、こっそりと隠れるカーバンクル・イグジスター。 「………………」 人もいない寂れた某所の洋館にて、 がちゃがちゃ、と中身の無い鎧が動き出す。 イグジスターといえど非実体である怪物族のゴースト種は呑めないが、 リビングメイルという物理媒体を通す事で辛うじてそれを実現した。 リビングメイル・イグジスターはその場に落ちていた 頑強そうな槍を拾い、ただ無言でその場を後にする。 そして最後に、放置されたきりの旧魔神王教団本部施設。 腐敗した謎の人間と思しき死体を丸呑みしたイグジスターがいた。 「この人間の怨念……並々ならぬものがある、面白い。 どうせ俗物とは思うが、我が力として使ってくれよう!」 そう、その腐敗した死体は魔神王教団教皇、エッセ=ギーゼン。 死してなお、彼女の身体に安息は許されていなかった。 エッセ=イグジスターは彼女の武器、爪杖ベアーズクローを手に取り、 病んだような薄笑いを浮かべながら、ゆるりとその場を去る。 その後、この五体のイグジスターは速やかに合流し、 『イグジスター五滅将』と名乗って他のイグジスターを指揮し始めた。 今までバラバラ、あるいは小規模で動いていたイグジスターが 大規模な統制の下に動き始めた事で、事態はより悪化を深め、 勇者軍の対策すら無意味にしかねないほど、 勢力拡大を進めるのであった―― <第3部 序章-第三幕- へ続く>
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第二十章-第四幕- 対たる蒼紅の鎧 第二十章-第三幕- 第二十章-第五幕- 「う……んん……?」 キョウカ王妃の胸に優しく抱かれたメイベルが意識を取り戻した。 アルヘイ島から大きく離れ、既に大陸へと戻っている。 「キョウカ様……戦況は!?」 キョウカ王妃は黙って顔で方向を示す。アルヘイ島の方向だ。 「あれは……!?」 メイベルも気が付いた。 あまりに巨大な竜が……否、龍がそこにいる。 「太古の昔にはあのような形の龍が多く版図を広げたと聞きます。 太古龍……エンシェント・ドラゴンというところでしょうか。 それにネイチャー・ファンダメンタルが 遺伝子調整を加えたのでしょう」 「大変……行かないと!」 「お待ち下さい、メイベルさん! スカーレット・アーマーも アースシールドも無いというのに、無茶はいけません!!」 「止めないで下さい、キョウカ様! 兄様が! みんなが……!!」 涙をぼろぼろとこぼしながら、 承諾を得るために説得するメイベル。 「キョウカ王妃の言う通りだ、メイベル、無理をしてはいけない」 「その声は……」 突如二人の前に姿を現した声の持ち主は―― 「疾風剣! 烈風剣! 疾風剣!! 烈風剣!!」 もはやなりふり構わず、 ライナスは突貫をかけて身体をひたすら切り裂く。 鱗が剥がれ、血は吹き出し、たちまち傷だらけになるマキナ。 だがあまりの巨体に、少々のダメージ程度にしかならないようだった。 しかも呪鞘カオスリキッドの力を借りてこの始末である。 それでも痛いのは痛いのか、マキナは時折怯み、 トップクラスのダメージソースを叩き出すライナスを狙う。 「させんぞ、マキナ!!」 そこへヴァジェスが割って入り、 大口径のレーザー・ブレスを放つ。 彼自身の必殺奥技でもあったが、流石にマキナは冷静に対処。 「レーザー・ブレス!!」 二人のレーザー・ブレスが同時に放たれ、 正面からぶつかり合うが、ヴァジェスのブレスがパワー負けし、 ヴァジェスは寸前の所で上空に退避して 難を逃れるのが精一杯であった。 「化け物か、こいつは!?」 「ふ、皮肉なものだな。普段化け物呼ばわりされ続けている 勇者軍に似つかわしくない台詞だ。言い慣れまい?」 「この期に及んでブラックジョークは 無しにしてほしいんだけど!?」 レイリアがとにかくありったけの火器を叩き込むが、 やはりライナス同様に、少々のダメージ程度が精一杯だった。 「どれ、少しは動くか」 マキナはロクに身体を動かしていなかったが、 派手に地面をはいずり始める。鱗も逆立ち、 文字通り逆鱗となって刃と化す。そのまま移動する事で、 勇者軍のかなりのメンバーが 砕けた破片によって傷まみれになる。 唯一無事なのは飛行している ヴァジェスとフローベールぐらいであった。 「動くだけで災害級の攻撃とはね……!」 リュミエルが愚痴りながらも攻撃の手は緩めない。 「もう手段は選べねぇ!! 親父、聞こえてるか! また出番だぞ!!」 『分かっています、コンラッド。 しかし到着に少し時間がかかります。 引き潮が終わっていないので 移動可能区域が限られているのです』 「……なるべく早くでいい、頼むぜ!!」 コンラッドが通信を切る。もはや猫の手も借りたかった。 一方で、エイリアやギースなど近接攻撃ばかりが得意で、 かつスピードとテクニックに特化したメンバーは 更なる苦戦を強いられた。 もはや回避に専念するより他無い、というほどの状況悪化ぶりだ。 かろうじてダメージソースとなっているのはエイリアだけで、 フローベールも、バスクも、ゼクウも手を出しあぐねていた。 「爆!」 ゼクウは早くもありったけの爆薬を叩き込むが、 それは辛うじてダメージソースとなった。 しかしそれだけで終わってしまう。 そして爆薬はもちろん無限ではない。 「例のスチールボールボム、とかいう兵器だったか。 あれの使い所を間違ったと見える。 友軍救出などという任務なら己の独力でこなせただろうに、 あのような兵器に頼ったのは……勇者軍よ、 明らかに君達の怠慢の結果と言えるだろう!」 「仲間を救出するために全力を尽くしただけの事なのよ!」 フローベールがマキナの爪を回避しつつも抗弁する。 「そうだ! ソニアさんが死んだりしていれば隊長が泣いた! キョウカ王妃が死んでいればイスティーム王や皆が泣いた! 俺やフローベールが死ねば親父もお袋もきっと泣いたさ!! みんなの親父やお袋、親兄弟がみんな泣くんだ! 本当は来たかったはずのメンバーも、ユイナ姫だって泣く! マキナ! お前にはそれが分からないのか!?」 「バスク……」 その剣幕にフローベールは驚いた。 これだけの事を言ってのける胆力が備わっている程に 自らの弟が成長を見せているとは思いもしなかったのだ。 「分かりたくても理解しようがあるまい! 我に親兄弟はおらぬ! 心を通わせた友も、今自らこの手でその命を絶ったのだからな! その道義を押し通す気ならば、我が命を絶ってそれを成せ!」 「もはやそうするしかあるまいな、マキナ」 と、ギースも同意する。 「それにスチールボールボムなど無くても俺達は勝つ!」 「是」 ギースにつられてゼクウも同意する。 「見るがいい! 僕達の後方より現れるは人類史上最強の私設軍筆頭! 勇気と、技と、機智との象徴にして、地上最強の勇者!! その名もジルベルト=ストレンジャーだ! 慄け天よ、震え地よ! 人よ命よ、始まりを見ろ! 我等が隊長殿のお通りだ!! 道を開けろぉッ!!」 これ以上無いほどの確信を持ってサイモンが呼ばわると、 後方からいよいよジルベルトが砲剣自身の推進力で飛翔し、 マキナの眼前へと躍り出る。 「ぬぅぅぅぅぅあああああああああ!」 マキナが最大出力でのレーザー・ブレスを放つが、 巧みに軌道を変え、ジルベルトは回避。 バキン! 魔力により生み出した魔力弾のベルトリンクを全てパージする。 それをマキナの背に叩き込み、即座に射撃態勢に移った。 「終焉来撃砲!!」 間髪入れず即座に全力砲撃。魔力弾も全て破裂し、 凄まじい爆発力と爆風を生む。 イスティーム王以下全ての人間が 大きく身じろぐわ、吹き飛ぶわ、転げ回るわの阿鼻叫喚だ。 「やったのか!?」 テディがその遠くまで見渡す視力で周囲を見回すが、 大量に出血こそしているものの、マキナは未だ健在だった。 それに比べ、ジルベルトは その魔力のほとんどを使い果たした。 「いかん、聖杯ライブチャージャーよ、力を!」 温存していた力を供給し、何とかジルベルトを通常の状態に戻す。 「くっ、だがこんな調子ではすぐに力が底を尽くぞ!」 テディまでもが遂に愚痴をこぼし始める。 「兄様ーッ!!」 するとそこに、何故かスカーレット・アーマーを着た メイベルが飛び込んでくる。壊されたはずなのだが。 「メイベル!?」 あまりにびっくりしてソニアもつい名を呼ぶ。 「アフターバーナータックルっ!!」 どごんッ! 赤き鋼鉄の塊と化したメイベルが体当たりをかける。 だが、速度はともかく、質量があまりに小さすぎた。 相手は8000トンクラスのエンシェント・ドラゴンなのだ。 それに比べて、メイベルは鎧を含めても200キロを下回る。 これではいくら速度が速かろうが、 人間に砂糖で攻撃するようなものだ。 「あーうぅ~……」 よろよろふらふらと着地し、何とか態勢を整えるメイベル。 一方、ジルベルトはこの隙に離脱を終えていた。 もっとも彼自身もメイベルが復帰した謎は理解できていないが。 「勇者軍サブメンバー、推参!!」 すると、引き潮だった地続きの道から勇者軍らしき人物が現れた。 先陣を切っているのはジルベルトの叔父、ケヴィンである。 「ケヴィン、どうしてここに!?」 ヴァジェスも流石に驚く。 「一筋縄ではいかない相手のようだからな。 無条件に信じて去っていったド天然姉貴の代理をしに来た。 俺はそこまでオプチミスト(楽観主義者)でもなくてね。 ……まあ性分だ。気にしなくていい」 「悪いが、この老骨も参加させてもらうぞ」 後ろにはその祖父、グスタフもいる。 いや、しかもそれだけではない。 エリシャの部下達となっていた者達どころか、 ジルベルトの祖父、エドウィンの部下だった者達まで、 いるわいるわ、総勢数十名規模の(勇者軍的な)大隊規模である。 「そうか、メイベルのアーマーはケヴィンさんが……!」 ルシアもようやく事情を察したようであった。 そしてケヴィン一行の最後尾にはキョウカ王妃とチトセもいる。 どうやら戦況の変化が気になって戻ってきたようだった。 「突撃だ、野郎共! 現役の若造共に遅れを取るな!」 「おおおおーッ!」 多くの英傑達がめいめいに攻撃ターゲットを分散し、 任意に攻撃を開始した。マキナは少々うろたえたが…… 「少々数が増えたぐらいでどうにかなるものか!」 とむしろ激昂し、地面へ潜る。 「なっ!?」 ソニアが驚愕する。あの巨体で地中へ潜るとは、 まさに常識の範囲外からの攻撃である。 ずどごぉぉぉぉん!! そして地下から飛び出て牙を剥く。 「うううおおおおおおおッ!!」 「テディ!」 カリン=カレン。テディの母親の悲鳴が響く。 マキナの口にくわえ込まれ、今にも噛み砕かれようとしていた。 しかしテディはすんでのところで手と足で踏ん張る事で、 上下から迫る牙の脅威から、何とか逃れていた。 実はライブチャージャーの生命力を放出し続けて成せる技であり、 ここでも彼は家宝に助けられたと言って良かった。 ずどごん!! 「!!?」 突然遠距離からミサイルと砲弾が飛び込んでくる。 マキナは衝撃に耐えかね、大口を開けてしまった。 その隙にテディは難なく脱出に成功したようだった。 「とっておきですよ……四大精霊元素爆裂剣!!」 同時にそれをフォローするために、 イスティーム王の幻杖レプリアーツが、 ストックしておいた、総帥エリシャの使う必殺奥技を叩き込む。 「カーティスか! ナイスタイミングだ!」 ケヴィンが素直に同僚の力を賞賛する。 が、その時、ケヴィンがジルベルトの立ち回りを見て気付く。 色こそ違うが、スカーレット・アーマーのフレームに似た何かを ジルベルトが振り回している。気にならないはずもない。 「まさか、あの形は……ジルベルト、すぐ来てくれ!」 その要請に応じて、ジルベルトは飛来する。 「?」 「ジルベルト、お前のその剣のフレームは…… まさか、スカーレット・アーマーなのか? その剣を交えて進化したというのか?」 「……」 ただこくこくと頷くジルベルト。そわそわしている。 前方では味方が奮戦しているのだ、 時間はかけられないのだろう。 「この設計図はスカーレット・アーマーの没デザインだ。 見てくれジルベルト。お前の砲剣とそっくりだろう?」 「!」 渡された図面を見ると、確かにそっくりだった。 「これは変形機構を備え、 武器と一体化するプランだったものだ。 ひょっとすると、お前の砲剣にその機能が備わっていないか? よく装飾やその他の部分を見直してみてくれ。 あるいは、そこに活路があるかもしれん」 慌ててジルベルトは砲剣のあちこちを見渡す。 中折れ式フレーム。砲撃用砲門、剣の刃、そしてセレクター。 更に見れば明らかに今までに無い 撃鉄らしき稼動部が入っている。 (……これかな?) ジルベルトがその撃鉄らしき部位を押し込むと、 絶壁砲剣『矛盾』を覆っていた スカーレット・アーマーがパージされた。 ジルベルトの魔力に反応して砲剣自体も、 そしてジルベルト自身も浮く。 (何、何、何!?) ジルベルトは内心慌てるが、もはや成り行きに任せるしかない。 すると装甲は鎧のような形となり、まず胴を包み、 腰を包み、両腕を、両足を、そして頭を包み込む。 それはさながら、スカーレット・アーマーの 再来のようであった。 「技術的難点から実現しなかったが、 まさか完成をこの目で見れるとは。 これはスカーレット・アーマーとは言い難いが、見事だ…… まさに、真紅の鎧と双璧を成すべき逸品だろう」 ケヴィンは驚きつつも賞賛する。 スカーレット・アーマーを模した全身鎧。 ただ違いは青い色と、そしてフルフェイスに近い兜である。 Y字型のスリットにより、 目と、鼻と、口の行き場だけが確保されている。 「そうだな、アズール・アーマーと呼ぶべきところか。 ジルベルト、その鎧がきっとお前を守ってくれる…… そしてそのアースシールドと砲剣もお前の力となる。 行って来い、そして必ず帰って来い!!」 「うん!」 ジルベルトはアズール・アーマーのブースターを吹かして飛翔。 青き空へ蒼き勇者が輝かしく飛び立ったのであった。 戦いは、いよいよ最終局面へと向かおうとしている。 <第二十章-第五幕-へと続く>
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二つ名:蛍石の勇者 名前: 詳細: もうどれだけ生きただろうか、やり直したいことは両手両足使っても数えきれないほどあった。勇者は過去に戻ることを選んだ。だがまさか、体だけが過去の姿に戻るとは思わなかっただろう。 勇者が発動した「過去に戻る魔法」はまだ発動し続けている。 その他:
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スタッフ キャスト クレジットOP 第一話 乙女の真心 第二話 ろうたけたる思い 第三話 風格ある振る舞い 第四話 輝く心 第五話 困難に打ち勝つ 第六話 明日に期待して 第七話 牧歌的な喜び 第八話 神の祝福 第九話 心の痛みを判る人 第十話 愛情の絆 第十一話 情熱 第十二話 貴方に微笑む スタッフ 原作 Project 2H 企画原案 タカヒロ(みなとそふと) 監督 岸 誠二 シリーズ構成 上江洲誠 キャラクターデザイン原案 BUNBUN アニメーションキャラクターデザイン 総作画監督 酒井孝裕 コンセプトアート D.K&JWWORKS 音楽 岡部啓一・MONACA アニメーション制作 Studio五組 キャスト 結城友奈 CV 照井春佳 東郷美森 CV 三森すずこ 犬吠埼風 CV 内山夕実 犬吠埼樹 CV 黒沢ともよ 三好夏凜 CV 長妻樹里 乃木園子 CV 花澤香菜 クレジット OP 原作 Projcet 2H 企画・原案 タカヒロ(みなとそふと) エグゼクティブ・プロデューサー 古川陽子【ポニーキャニオン】 鈴木一智【KADOKAWA アスキー・メディアワークス】 山西太平【電通】 今泉貴博【タカヒロ当人】 柴田知典【Studio五組】 太布尚弘【ムービック】 武智恒雄【クロックワークス】 チーフプロデューサー 笹木孝弘【ポニーキャニオン】 丸山博雄【MBS】 高野希義【KADOKAWA アスキー・メディアワークス】 青木隆夫【Studio五組】 金庭こず恵【ムービック】 遠藤哲哉【電通】 シリーズ構成 上江洲誠 キャラクターデザイン原案 BUNBUN コンセプト・アート D.K&JWWORKS アニメーションキャラクターデザイン/総作画監督 酒井孝裕 メインアニメーター 高部光章/田邉博 美術監督 下山和人/宮越歩 美術デザイン チーム・ティルドーン 色彩設計 伊東さき子 撮影監督 峰岸健太郎 3DCG監督 千葉高雪 編集 高橋一歩 音響監督 飯田里樹 音楽 岡部啓一・MONACA 音楽制作 ポニーキャニオン 音楽プロデューサー 鎗水善史 オープニングテーマ「ホシトハナ」 歌:讃州中学勇者部(照井春佳 三森すずこ 内山夕実 黒沢ともよ 長妻樹里【4話から】) 作詞:中村彼方 作曲・編曲:岡部啓一(MONACA) プロデューサー 木下哲哉【ポニーキャニオン】 前田俊博【MBS】 小荒井孝典【KADOKAWA アスキー・メディアワークス】 原裕和【電通】 林洋平【ムービック】 福田順【クロックワークス】 宣伝プロデューサー 野島鉄平【ポニーキャニオン】 寺田悠輔【ポニーキャニオン】 アニメーションプロデューサー 上野勲 アニメーション制作 Studio五組 監督 岸誠二 製作 結城友奈は勇者である製作委員会 (ポニーキャニオン、KADOKAWA アスキー・メディアワークス、電通、ムービック、クロックワークス) MBS 第一話 乙女の真心 第二話 ろうたけたる思い 第三話 風格ある振る舞い 第四話 輝く心 第五話 困難に打ち勝つ 第六話 明日に期待して 第七話 牧歌的な喜び 第八話 神の祝福 第九話 心の痛みを判る人 第十話 愛情の絆 第十一話 情熱 第十二話 貴方に微笑む
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二つ名:探索の勇者 名前: 詳細: 各地の怪事件を調べており大抵が魔王による超常的な事件であるが、本人に武力は備わっていないのであらゆる知略を駆使して退けている。今調べているのは人が赤い花になって消えてしまう事件 その他:
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第十八章-第二幕- 突貫作戦 第十八章-第一幕- 第十八章-第三幕- 勇者軍主力部隊は レッド・ワイズマンMk-Ⅱの到着を確認するなり、 すぐに乗船。新たにイスティーム王を加え、 引き続きキョウカ王妃を護衛しつつ、 北上してクルーズ・シティに近い陸地を直接目指した。 ドルカスの献策通り、実にスムーズに、かつ迅速に上陸した彼等は、 一気にクルーズ・シティ郊外にある惑星アース国際平和機構本部の 建物を目指し、一気に突撃作戦を敢行するのだった。 「方角はこちらになります。お急ぎを!」 ユイナ王女の愛馬、チトセに騎乗したまま、キョウカ王妃が言う。 「おう!」 全員、一斉に駆け出す。出来れば敵の大部隊に接触する前に 建物を目視するところまでは行きたかった。 が、勿論そう上手くいくわけもなかった。 「予想通り来たぞ! 通すな!!」 正面に敵の大部隊。推測するに数は三千名前後。 「勇者軍主力部隊は撃退するだけでいい! 我等のターゲットは レイリア、エイリア両名とゼクウとかいうクローンのニンジャ! それと奴等の連れている猫共だ! 集中攻撃をかけよ!!」 「怒」 怒りも露に、ゼクウがむしろ先陣へと斬り込む。 ラング=ユウキのクローンとして生まれた事を 悪し様に言われる事が許せないのであろう。 「この程度の数で!」 「我々が殺れると思っては迷惑だ!!」 レイリア、エイリア両名もむしろ前へ前へと出て暴れまくる。 「うにゃー!!」 「ってあんた達はダメ! 今回は流石に大人しくしなさい!!」 それにつられて前に出ようとした大福達はソニアの手によって とっ捕まえられて、キョウカの元へ放り込まれた。 「うぅぅりゃぁぁぁぁぁ!」 強引に突破を試み、敵陣中央で大暴れをかましているのは バスク。それにフローベールのタッグだった。 ルシアやドルカスも遠くから牽制射撃を雨あられと浴びせる。 「ウィンドブラスター!!」 イスティーム王の幻杖レプリアーツが、 あらかじめ貯蔵していた魔法を解放し、 キョウカ王妃や猫に近寄る敵を全てなぎ払う。 討ち漏らしは、丁寧にメイベルやヴァジェスが処理。 遅れてサイモン、テディ、コンラッドが敵の攻撃を 真っ向から受け止め、そして丁寧に無力化していく。 たちまち敵兵の数が凄まじい勢いで減っていく。 聖杯ライブチャージャーなど使う必要も無かった。 一方最も先に進攻しているのはライナスとソニア。 そしてジルベルトの三名であった。 ライナスも呪鞘カオスリキッドに剣を収めたまま、 なんと予備の剣だけで敵を多数駆逐していた。 その際に巻き起こる怨嗟の声が、呪鞘カオスリキッドに 負の感情の力を与えていく。要するに敵を駆逐し、 パワーをチャージしているのであった。 ソニアはいつも通りの俊足を生かしての乱戦。 そしてジルベルトは砲剣ストレンジバスターを構える。 「そんなデカブツが当たるかよ!!」 そう言い、怯まず突っ込んでくる敵集団に向けて かなり遠距離から砲撃を開始する。 ずどごん!! 凄まじい爆風がジルベルト自身をも後退させるが、 それに伴い、多数の敵が爆風に巻き上げられ、吹き飛ぶ。 やはり人類相手に利用するには規格外過ぎて、 こういう運用ぐらいしか出来ないが、むしろ集団戦では もっとも効果的に性能を発揮出来ると言っても良かった。 二千五百……二千三百……二千……千六百……千二百…… ものの三十分も経たないうちに、かなり本気の勇者軍に あっという間に蹴散らされていく、 ネイチャー・ファンダメンタルの大部隊。 「何だアレは!? 俺達は化け物を相手にしているのか!?」 戦慄したネイチャー・ファンダメンタルの大部隊は パニックに陥り、一人、二人と戦列を離れていく。 「敵の戦列が崩れたぞ、今だ、王妃!!」 「はい!」 ヴァジェスの指示が飛んだ。 キョウカ王妃が前へ出る。勿論抱き上げられている猫や 愛馬チトセ、それにイスティーム王や 護衛に付いているメイベルなども一緒である。 「突っ切れ! 王妃に続くぞ!!」 「ええ!」 「了解!!」 テディの指示が響き、まずドルカスが、 そして残りのメンツが応じる。 「まだ惑星アース国際平和機構の本部は見えませんか!?」 「あと三キロメートルほどですわ、元帥閣下!」 イスティームの問いに答えるキョウカ王妃。 迎撃大部隊を蹴散らした以上、そう遠い距離ではないが、 まだいくらかの疾走を余儀なくされる勇者軍主力部隊であった。 しかし、キョウカ王妃がチトセの足を止めさせる。 「どうしました、キョウカ!?」 「私達の輸送機、ブリッドライクを襲撃した マシンのエンジン音に酷似した反応! 端末のレーダーにも機動兵器の反応を確認! 多数、来ますわ!! 応戦準備を……!」 どうやら敵の第二波が訪れつつあるようだった。 陸から、空から、かなりの戦闘機や武装ヘリ、 そして戦車などがメイベルなどの目からも目視出来た。 「敵の増援のおでましか。生命反応は?」 追いついてきた斬り込みチームのライナスが言う。 「ありません! 全て無人兵器ですよ!」 バスクが端末の生命反応探知機能を使う。 「なら遠慮は要らんな」 「是」 テディやゼクウらも、無事に追いついてきたようだ。 ばらばらと、一斉に他の味方も追いついてくる。 戦力は再度集結しつつあった。後はここを突破すれば 惑星アース国際平和機構は目の前である。 決戦の時はいよいよ近付きつつあった。 所詮、この戦いも前座に過ぎないのは確かなのだが―― <第十八章-第三幕-へと続く>
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ジャンプ勇者 プレイヤー コメント 日本コロムビアが2015年9月9日から配信されたニンテンドー3DS用ダウンロードソフト。 基本操作は“Aボタンでジャンプ”のみなので、HGSSのパフォーマンスはジャンプだけを特化しておきたい。 プレイヤー エアームドorザシアン(けんのおう):アルク 技:エアスラッシュorきょじゅうざん(聖剣) 持ち物:くちたけん トリデプスorギルガルド(シールドフォルム)orザマゼンタ(たてのおう):ヴェイグ 技:キングシールドorワイドガード(耐火重盾) 持ち物:くちたたて ムウマージorブリムオン:セシル 前者の特性:ふゆう モルフォン:蓮花 使い手のアンズはくノ一っぽい 技:ひみつのちから(3段ジャンプ) 色違いのサーナイト:エリー 技:テレポート(転移魔法) ガラガラ:??? コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る ???の候補のガラガラはとびはねるが覚えられないのでものまねするのが良い。 -- (ユリス) 2020-04-04 20 39 46 登場人物 -- (名無しさん) 2018-12-28 17 43 47
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第二十九章-第三幕- 民政部の真意(後編) 第二十九章-第二幕- 第三十章-第一幕- 勇者軍主力部隊は民政部の幹部達の総がかり攻撃によって、 なし崩し的に乱戦へと持ち込まれてしまった。 多数の人員が負傷もしくは一時的に拘束されたりしながらも、 なんとかミミックマン、メロウ、フィアナの三名を撃退した。 ようやくメロウ=クミンを撃退して一息ついたライナス達のチームだが、 そこへヴェルファイア=ブレッドと愛竜コモドが切り込んでくる。 「うわわッ!?」 大慌てでその場から退避するライナス。 「させません!」 怪球ミームを掲げ、シルヴィアが即座に対応しようとする。 「コモド! ストレイトシャウトだ!!」 「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 甲高く、しかも凄まじい音量の咆哮が辺りに轟く。 直接戦闘している者だけでなく、他区域での者まで 思わず動きを止めて耳を塞いでしまう。 耳を塞がなければ鼓膜をやられてしまいかねない破壊力だ。 シルヴィアも例外ではなく、ミームの制御に失敗した。 「みー、みー!」 怪球ミームはてーん、てーんとバウンドして 遠くへ離れてしまった。 途中で制御が解かれてしまったせいである。 「今だ、コモド!」 ヴェルファイアが相変わらず仁王立ちのまま指示を飛ばす。 コモドは即座に対応し、突撃を敢行する。 「そうは……させない……!」 メイベルが前に出る。鎧のおかげでいくらか騒音が軽減されたのだ。 「アフターバーナータックル!」 ずごぅッ! 赤い鋼鉄の塊と化したメイベルが轟音をあげて突貫。 ずがんッ!! これまた凄まじい轟音を立てて激突。 「ぬぐぉッ!?」 「ぎゃぁぅ!!」 ヴェルファイアとコモドは揃って転倒。 マキナのような超巨大物が対象で無ければ、 やはりこの攻撃も破格の破壊力があった。 「クロス!」 更にリゼルが奥技で仕掛ける。 「アイアンメイデン!!」 下から大地が隆起、上から氷柱の二段攻めで 鋼鉄の処女の如く、上下からコモドを挟み撃ちにするリゼル。 「ぎゃぅぅ!!」 まともに動けなくなったコモド。 どうやらヴェルファイア自身が大した戦闘力を持っていないようで、 実質、コモドの救助に専念せざるを得ないようであった。 「首相ーッ!」 そのリゼルの横から戦域を離脱してまで レオンハルトと愛馬エルトリオンが仕掛けてくる。 リゼルの退避はすぐには間に合わない。 「無理をするな! 下がれッ!」 そこへテディとドルカス、そしてセシリアが立ちはだかる。 「とぉぉりゃあぁ!」 テディのハンマーがレオンハルトの槍とぶつかり合う。 「そこッ!」 ドルカスの狙撃銃と、セシリアの弓がレオンハルトを狙うが、 レオンハルトは一切の無駄の無い動きで回避してみせる。 「ブレインフォックス、貴君か!」 「その名でなど、今更!」 更にドルカスが仕掛けようとすると、レオンハルトが構える。 「ブレイド・オブ・アイシクル!!」 氷柱が槍を覆い、強化される。彼の奥技だ。 「そんな距離で槍なんて!」 ドルカスも追撃しようとするが、レオンハルトは槍を突き出した。 「バスタァァァァショットォ!」 なんと、氷柱がそのままバスター系魔法の如く飛来する。 「これは!? ソニアの真似だとでもいうの!? そしてソニアが一つの戦闘の流れを作った、と!?」 予想外だった。ドルカスはすんでのところで回避するが、 次々とブレイド・オブ・アイシクル・バスターショットが セシリアやドルカスをかすめていく。 「させん! マグマロックストライク!!」 地面を隆起させるテディのハンマー。 土塊に地熱を帯びさせて叩き込む。 思わず槍でガードしてしまうレオンハルトだが、 隙はそこにこそあった。 「二ノンの翼、発動!」 セシリアが二ノンの翼を発動させて、そのまま疾走する。 陸上歩行の補助装置として使っても異常に優秀である。 相手の背後まで回りこんでから弓を一撃叩き込む。 それでもレオンハルトは寸前で回避するが、 そこにドルカスの狙撃砲が待ち受けていた。 「予測射撃! アイズ・オブ・バーバリアン!」 狙撃砲『アイズ・オブ・バーバリアン』が火を噴き、 彼の槍の穂先ごと、肩を撃ち貫いた。 「ぐおっ!」 とうとう落馬するレオンハルト。パラディンとしても 破格の実力であるが、やはり多人数相手では分が悪かったようだ。 そのテディとドルカスに向けて、ソーサーが飛来する。 「ぬおっ!」 「わわっ!」 二人は大きく退避し、聖杯ライブチャージャーの力で 周囲の補助に回る事にするつもりだったが、ソーサーは それを許さず、二人を追撃にかかろうとする。 だが、そこにソーサーが一枚対抗してかかる。 ジルベルトが念動力で動かしているものであった。 もう一枚のソーサーもソニアが見事に受けた。 アースナックルをホールド状態で使っているのだ。 もちろん、ソーサーの使い手はリルル、否―― 念動力使用中のみの人格、シャルル=ブレッドである。 「これ以上好き勝手はさせないわ!」 更に三枚のソーサーを展開。脇から乱入しようとした コンラッドを抑制し、残る二枚をユイナ姫に向けた。 これでコンラッドは完全に動きを封じられてしまった。 「チトセ、好きに動いていいわ! 武器は私が抑えます!」 「ぶるひひん!」 チトセに機動を任せ、自らは二枚のソーサーを何とか払いのける。 「私を忘れちゃ駄目なのよね!」 シエルが無理矢理乱入し、呪文でソーサーを攻撃する。 「シエル! 無理しちゃ駄目!」 「この構図、懐かしいたらありゃしなくて、 それで燃えちゃうのよね。おかしいかしら!?」 シエルが生き生きと回復呪文を唱えつつ言う。 「懐かしい?」 「私と、お兄ちゃんと、ユイナ姫とソニアさん! 初陣の時と同じメンツなんだもの! ここにいる人って!」 「そう言えばそうですね!」 妙な一言で士気が上がり、ユイナ姫は槍をしまう。 「チトセ! 五十秒時間をちょうだい、それで決めます!」 「ひひん!」 チトセは懸命にソーサーから逃げ回る。 「ユイナ姫! 大人しく降参して! 怪我をするわ!」 あくまで強気にシャルルが言い放つ。 「シャルル! 勇者軍の底力を甘く見ない方がいいわ。 幻杖レプリアーツ! 力を示してちょうだい!」 幻杖レプリアーツが輝き、その力を示す。 その中から現状に最適な技を選び出し、抜き取り、使う。 「デスヴォイスシャウト!!」 ジルベルトとシエルの義姉、ラティシアの奥技だ。 彼女の声が衝撃波となって伝わり、周囲の地盤が緩み、 電波が撹乱され、地面に軽く亀裂まで走る。 そのレベルの音波攻撃の前では、シャルルも力を失い、 リルルに戻るしかなかった。こうなれば無力である。 「はぁぁぁぁぁッ!」 槍を取り出し、一気に接近する。 シャルルならともかく、リルルでは反撃の術は持たない。 「きゃぁぁぁぁッ!?」 「殺しはしません! ただ痛いのは我慢して!」 ユイナ姫が斬りかかろうとする、が―― 「そこまで! 我々の敗北である!」 と、ようやくコモドを助け出したヴェルファイア首相が 声も高らかに、しかも威風堂々と宣言してのけた。 「そこまで、って……」 あまりに唐突な終了宣言に、ユイナ姫も、リルルも呆然とする。 「並びたまえ、諸君! 我々民政部はこれより 勇者軍主力部隊と、共同戦線を張る!!」 「えええええッ!?」 主にフィアナとリルルのあげた声であるが、民政部一同、驚いた。 勿論、勇者軍も驚いた。壮絶にである。 「ど、どういう事ですか、首相!?」 だが、フィアナの言葉は無視して、ユイナ姫を呼ぶ首相。 「ユイナ姫もよろしいか!? 我々はこれより協力して、 FSノア49を完全に撃墜する作戦に当たる!」 「と、言われましても、なんでいきなりそんな事に? 民政部はFSノア49と停戦交渉を続けるつもりだったのでは!?」 「あれは――嘘だッ!!」 あまりにも堂々とした態度に、開いた口が塞がらない一同。 ただし、レオンハルトを除いて、ではあるが。 「嘘ぉ!?」 「うむ。勇者軍にも、民政部にも嘘をついていた! 私の狙いは、あまりにも強大なFSノア49に対して、 勇者軍の警戒心を煽り、全力を出す決意をさせた末に、 最初から民政部と共闘して事に当たる事にあったのだ!」 「だ、だったら最初から言って下されば良かったのに……」 「自衛だ何だと慢心更々の寝言を聞いているだけの 余裕を出して勝てる相手ではない。だからこそ我々は 自ら憎まれ役を買って出て、あなた方の危機感を煽った。 それこそ、味方まで騙して、だ。すまなかった」 「…………」 何か釈然としないものはあった。ここまで策略で 好き勝手に弄ばれていい気分がするものではない。 だが、四の五の言っている場合でもなかった。何より―― (分かったのー。一緒に頑張るのー) という身も蓋も無いジルベルトの同意があっては誰も拒否出来ない。 「では案内しよう、もうすぐFSノア49が修理を完了する。 出来れば我々の内輪揉めで警戒が緩んだ隙を突きたい、急ぐぞ」 「りょ、了解!」 あくまでヴェルファイア首相及び民政部の主導で、 勇者軍主力部隊は共同戦線を張る事となった。 最終決戦はもう目前である。 FSノア49は、そう離れていない位置で修理を進めていた―― <第三十章-第一幕-へ続く>
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二つ名:浅碧の勇者 名前: 詳細: その少女を知る勇者は少ない。なぜなら彼女ははるか昔にいなくなった勇者であるからだ。彼女は聖界のどこかにある呪われた洞窟の奥深く、邪悪な何者かを封印するため、ずっとそこにいる。彼女が外に出るのは、その封印が解かれて肉塊にでもされたときだろう。 その他: