約 50,304 件
https://w.atwiki.jp/wiki5_aozora/pages/82.html
第8話『クサリ縁/シャロウ・リバース(前編)』 勝利条件 敗北条件 ボーナス条件 味方情報 新規加入キャラクター キャラクター レベル ランク 特殊能力 - - - - 初期配置 - 味方増援 - 敵ネームド情報 キャラクター レベル HP EN 特殊能力 - - - - - 敵増援 - 攻略情報 - 第7話『返すもの/恩か仇か掌か』 第8話『クサリ縁/シャロウ・リバース(後編)?』
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/2271.html
前編 16 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 19 07.78 ID hfMbdPed0 [7/32] 「君は一体何を見ているんだい?」 彼女は空を見上げていた。 「………………何って…………………空…ですが?」 彼女の眠たげな翠色の瞳に映るのはスオムスの寒空。 「そうか……。」 でも、彼女が見ているものはきっと別のものだ。 「………。」 俺には到底知り得ない、ずっと遠くのものを見ている。彼女はそんな雰囲気を醸し出していた。 「隣………いい?」 俺に割り当てられたハンガーの仕事の休憩時間を彼女といっしょに過ごしてみよう。何故だか分からないけど、なんとなくそう思ったんだ。 「…………………どうぞ。」 彼女は気だるげにそう答えた。 これが、俺とジュゼッピーナ・チュインニ准尉の出会いだった。 『パスタ准尉は空を見上げて何を思う』 17 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 24 12.27 ID hfMbdPed0 [8/32] 俺「ふわぁ……。」 だらしなく欠伸が出た。昨日は出撃があったから、掃除が夜遅くまで終わらなかったからなぁ。 俺が今いるのはスオムス対ネウロイ戦線最前線カウハバ基地のハンガー裏手にある大きな木の下。 この木の根っこは腰かけるのにちょうどいい形をしており、幹を背もたれにすると、とても快適なイスとなりうる。 俺「休憩時間はあと20分か…。」 ここを見つけて以来、作業の合間の休憩時間はいつもここで過ごしている。ハンガーの休憩室はオッサンが吸うタバコが臭くてしょうがないんだよな。 まだ18にも満たない俺にとっては、タバコなんて何がいいのか分からない。煙たいだけじゃん。 ここは、休憩時間を快適に過ごせる場所。ここを見つけたのは、 ジュゼッピーナ「………。」ボーッ チュインニ准尉に初めて出会った3日前のことだった。 俺「なぁ、君は一体何を見ているんだ?」 ジュゼッピーナ「…………何って…空ですが?」 ジュゼッピーナ・チュインニ准尉はいつも通りに空をボーッと見上げている。 この娘と会ったのはつい3日前。 休憩時間中に暇だったから基地の周りを散歩していた時、この木の下で今みたいに空を見上げるこの娘を見つけた。 19 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 29 04.37 ID hfMbdPed0 [9/32] 俺「ええと……空に何かあるのか?」 ジュゼッピーナ「………ご覧の通り何もありません。」 俺「うん……そうだね…。」 出会ってからの3日間、俺は何度もこの質問をしてきた。 それに対するチュインニ准尉の答えはいつも同じ。 『ただ空を見上げているだけ。』 う~ん……そんなことはないと思うんだけどなぁ…。 ジュゼッピーナ「………。」 この娘は何か空とは違うものを見ている。そんな気がしてならないのだ。 この娘の故郷のロマーニャか? いや、違うな。 もっと違う………俺なんかじゃ想像することすら出来ないものを見ているはずだ。 俺「はぁ……まだまだ暖かくならないなぁ。」 ジュゼッピーナ「………。」 俺はそんなことを思いながら、チュインニ准尉の隣に座っている 21 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 31 37.32 ID hfMbdPed0 [10/32] 日が当たる場所は限られているから、必然的に二人の距離は近くなる。 わずかに褐色の入ったカフェオレのような美しい肌と透き通るような翠眼を持つこの娘は、女性をあまり見たことがない俺の目から見ても美人だと分かる容姿をしていた。 平気に振る舞っているが、内心では気が気でない。 俺「………。」ポリポリ ちょっと体を動かせば、肌と肌が触れ合う距離。女の子とそんな状態になるなんて、今までまったくと言っていいほど無かった。 だから…緊張してほとんど同じこと以外話せなくたってヘタレじゃないよな? ジュゼッピーナ「………。」ボーッ 俺「休憩時間はあと10分か……。」 眠たげに空を見上げ続けるチュインニ准尉の横で、胸の鼓動が高鳴るのを抑えて休憩時間を浪費する。 それは、俺の日課となりつつあった。 22 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 36 08.91 ID hfMbdPed0 [11/32] 俺「よっ! やっぱり今日もいたか。」 今日は久しぶりにカウハバ基地に大雪が降った。そのおかげで今日は朝からずっと雪かきをしている。 今は休憩時間だから、いつもの木の下にやって来た。 だろうとは思ったけど、こんな日でも君はいつも通り空を見上げているんだね。 ジュゼッピーナ「………。」ボーッ 俺「ほらほら、雪が積もっちゃってるよ。」 チュインニ准尉に積もった雪を払ってやり、部屋から持ってきたコートを被せてやる。 この娘はいつも通りロマーニャ軍の冬用軍服しか着ていない。 俺「まったく、穴拭中尉が心配していたよ?」 ついさっき聞いたことなんだけど、どうもこの娘は昔の記憶を忘れているらしい。 そんな彼女がこんな大雪の日にいなくなってしまったのだ。隊長が心配するのも当然だ。 ジュゼッピーナ「………。」 記憶がないのか……なるほど、チュインニ准尉のこのミステリアスな雰囲気の正体はそれか。 24 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 42 12.77 ID hfMbdPed0 [12/32] 俺「空を見上げて、失くした記憶でも探しているの?」 柄にもなく詩的なことを言ってみる。 俺だって年頃の男なんだから、ちょっとくらい格好つけてもいいじゃないか。 それに対する彼女の答えは、 ジュゼッピーナ「…………ただ空を見上げているだけです。」 やっぱりいつもと変わらない。 ちぇー、つまんねぇの。人がせっかくカッコつけたんだから、乗ってくれてもいいのに。 う~ん………どうも、チュインニ准尉からは人間味を感じることが出来ないなぁ…。 ジュゼッピーナ「……………あの…。」 俺「?」 ジュゼッピーナ「……コート、ありがとうございます…。」 俺「………。」 びっくりして言葉が出なかった。 今まで、俺の質問に答えること以外は一切話さなかったこの娘がまさか感謝の言葉を口にするとは……。 何だよ……妖精か何かだと思っていたけど、れっきとした人間じゃないか。 26 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 48 08.36 ID hfMbdPed0 [13/32] 俺「ハハハ…どういたしまして。」ニコッ それが、嬉しかったから。何故だかとてつもなく嬉しかったから。 とびきりの笑顔をチュインニ准尉に向ける。彼女の瞳は空にしか向いていないから、俺の顔は目に入っていないだろうけど、それでもいいや。 そうしたいっていう俺の自己満足だ。 ジュゼッピーナ「………。」 今日は世界全体が真っ白だ。その中で、彼女の褐色の肌は一層映えて見えた。 ジュゼッピーナ「……あの…。」 俺「ん?」 ジュゼッピーナ「あなたは……寒くないの?」 俺「おうっ! スオムスっ子をなめるなっ!」 本当はかなり寒い。すぐにでもハンガーに戻りたい。 でも、これは日課だから。休憩時間をこの娘と過ごすのは日課だから。 それを疎かにしたら、調子が狂ってしまう。 ジュゼッピーナ「不思議です……。貴方が近くにいると、ちょっとだけ暖かい気がします…。」 俺「うん。俺もだよ。」 29 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 21 54 11.31 ID hfMbdPed0 [14/32] ジュゼッピーナ「私が見ているものを知ったら、貴方はどう思うの?」 俺「は?」 チュインニ准尉と出会って一週間が経った。 今日はこの前の大雪が嘘のような爽やかな晴天。今日も今日とてこの娘は眠たげに空を見上げている。 ジュゼッピーナ「私が見ているものが何かを知ったら、貴方は私のことを嫌いになりますか?」 視線を空に向けたまま、チュインニ准尉は表情一つ変えずに俺にそう問うた。 あの大雪の日以来、准尉とはちょっとずつ言葉を交わすようになっており、准尉から話しかけくれることも割とあったのだが…… こんなに意味不明な質問は初めてだ。 俺「えっと………君が見ているものを言ってくれないことには…。」 ジュゼッピーナ「それはそうですね。すいません、このことは忘れてください。」 准尉はそう言ったきりまた黙ってしまった。 う~ん……結局何が言いたかったんだ…? でも、これだけは言っておこう。 俺「まぁ、たとえ君が何を見ていようとも、俺が君を嫌いになることはないよ。」 31 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 22 00 09.11 ID hfMbdPed0 [15/32] ジュゼッピーナ「………ありえません。私の正体を知ったら、貴方はきっと…」 俺「君が何者だろうと、友達のいなくて暇な俺に付き合ってくれている君を嫌いになったりはしないさ。」 俺の言葉を聞いたっきり、チュインニ准尉は何も言わなくなった。 彼女はいつもと同じように、眠たげに空を見上げ続ける。 俺「あっ……もうこんな時間か。それじゃあ、作業に戻るよ。またね。」 俺がそう言って立ち上がった時、 ジュゼッピーナ「………。」ニコッ 体中を電気が走りぬけた。 チュインニ准尉が………俺と目を合わすことすらしなかった准尉が、俺に笑いかけたのだ。 俺「……ッ!」ダッ 頬が熱くなるのを感じ、彼女に背を向けて走り出した。 ヤバイ、胸が苦しい。どうなってるんだこれは。たった1秒足らずしか見なかったのに、彼女の笑顔が頭から離れない。 いつもの生命を超越した何かのような眠たげな表情からは想像もつかない、子犬のような可愛らしい笑顔。 この笑顔が俺の頭の中をグルグル回り続けている。 ハァ……ハァ……どうしちまったんだ、俺は? 68 自分返信:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 23 12 17.78 ID hfMbdPed0 [23/32] 俺「う~ん……ちょっとずつだけど、暖かくなってきたかなぁ。」 ハンガーの掃除任務の休憩時間、いつもの木の下で伸びをする。 3月になって、スオムスにも春がやってきた………はずなのだが… 俺「君は一年中あったかいロマーニャの出身だろ? この寒さは応えない?」 北欧のここスオムスはまだ雪も降り止まないし、気温もほとんど上がらない。 生まれも育ちもスオムスの俺なら微妙に暖かくなっていることも気付けるんだけど、余所から来た人は全然分からないだろうな。 ジュゼッピーナ「………私にはロマーニャにいた頃の記憶がありませんので…。」 俺「そ、そうだったなゴメン…!」 しまった……この娘には以前の記憶がないんだった…。 多分気にしてないだろうけど……悪いことしちゃったな…。 ジュゼッピーナ「…………貴方は寒さは平気なの?」 俺「ん~…平気っていうわけではないけど、もう慣れたからそこまで苦痛ではないね。」 俺達はお互い目も合わせずに言葉を交わしている。 傍から見たら奇妙な光景だろうな。 70 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 23 18 04.75 ID hfMbdPed0 [24/32] ジュゼッピーナ「…………そうですか。ずっとここスオムスに住んでいるんですか?」 俺「うん。俺の家はけっこうこの基地に近くてね。」 この娘は空を見上げていて、俺は足元に雪だるまを作っている。 昨日、チュインニ准尉の笑顔を見て以来、何故か准尉の顔を見るたびに顔が赤らんでしまうのだ。 下を見て雪だるまをシコシコ作るなんて、我ながら情けない姿だ。 ジュゼッピーナ「…………それで、この基地に?」 俺「そうだよ。家が近かったから司令さんにここで働かせてくれないか、って言ったらハンガーの掃除係として雇ってくれた。」 ジュゼッピーナ「………。」 俺「それにしても、急にどうしたの? 今日は妙に俺のことについて訊いてくるけど。」 こんなに話す准尉は見たことないぞ? ジュゼッピーナ「…………貴方のことをもっと知りたいから。」 そう言って、 ジュゼッピーナ「ダメ……かな?」ニコッ 彼女はまた俺に笑いかけた。 71 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 23 23 34.05 ID hfMbdPed0 [25/32] 俺「い、いやっ………全然いいよっ!」 やっぱり、胸の鼓動が速くなった。顔も雪に突っ込みたいほど熱い。 ジュゼッピーナ「………貴方がここで掃除係になる前の話が聞きたいです。」 苦しい。でも、決して悪い気分ではない。 こんな気持ちは初めてだ。 そういえば、幼馴染のハンスが言っていたな。 俺「そうか…。俺の生まれた村はこの森を抜けてすぐの所にあってさ……」 人を好きになると、胸が苦しくなって、その人のことしか考えられなくなるって。 知ったかぶりのハンスが言うことだから、にわかには考えられないことだけど……もしそれが本当なら、 俺はチュインニ准尉のことが好きだっていうことになるよな。 72 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 23 30 11.48 ID hfMbdPed0 [26/32] 俺の生まれた村はとても小さな村だ。子供も数えるほどしかいない。 だから、俺の生活には『女の子』という存在は皆無だった。歳が近い子供は幼馴染のハンスだけ。 そのせいで俺はこの歳まで誰かを好きになったことはなかった。 確かに、近所に住んでいたお姉さんに憧れたりしたことはあったけど、あれは好きという感じとは違うよなぁ。 つまり、 俺「今日は君に伝えたいことがあるんだ。」 このチュインニ准尉に対する思いは、俺の初恋ということになる。 ジュゼッピーナ「………………………………何ですか?」 いつものように眠たげな反応を返された。准尉の視線はやっぱり空を向いている。 俺「俺は……」 不思議と緊張はしていない。愛の告白っていうのは心臓が壊れそうになるほど緊張するものだとハンスは言ってたけど、あれは嘘だったのかな? ジュゼッピーナ「………。」ボーッ いや、この娘がそばにいるからか。 チュインニ准尉といっしょにいると、妙に安心出来るんだよな。 74 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 23 32 12.57 ID hfMbdPed0 [27/32] 俺達人間を超越した何かを感じさせるその雰囲気に、何故だかはよく分からないけど心が休まる。 俺「俺は君のことが好きだ。」 思いをぶつける。 熱くて、苦しくて、あたたかいこの気持ちを君にぶつける。 学の無い俺らしく、単純で陳腐なブリタニア語だけど、精一杯の気持ちを込めた愛の告白を君にぶつける。 ジュゼッピーナ「………。」 俺を不思議と安心させてくれる、君の佇まいが好きだ。 そのキレイな褐色の肌が好きだ。 君の子犬のような笑顔が好きだ。 俺「俺は君と特別な関係になりたい。」 このまま、ただ休憩場所を共有するだけの関係でいるのは嫌なんだ。 ジュゼッピーナ「………好き…ですか…。」 告白しておいてなんだけど、この娘には好き云々の感情というのはあるのだろうか? 普段から感情をまったく見せないからなぁ。 76 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 23 34 29.97 ID hfMbdPed0 [28/32] ジュゼッピーナ「その好きという感情は正直よく分かりません。でも、ハルカ一飛曹が智子中尉に言っていたような意味なら、」 チュインニ准尉は俺の方に目すら向けず、 ジュゼッピーナ「私は貴方のことが好きなのでしょう。」 俺の一世一代の告白を受け入れてくれた。 お互い目も合わせずに好きだと言い合うなんて、なんとも変な光景だな。 ジュゼッピーナ「私という存在は………貴方には想像が及ばないような異質なものです。」 准尉は独り言を言うようにポツポツと言葉を紡ぐ。 ジュゼッピーナ「…………それでも、貴方は私の傍にいてくれるんでしょ?」 俺「当たり前だ。」ニッ ジュゼッピーナ「その言葉を聞くと……心臓の鼓動が速くなります。これは、好きという感情でいいんですよね?」 俺「うん。俺も君の笑顔を見た時そうなるからね。」 ジュゼッピーナ「……私も、貴方と特別な関係になりたい。特別な関係ってどういうことをするの?」 ふむ……そう言われると困るな…。当然だけど、今までに経験がないからな。正直何をしたらいいか分からん。とりあえず、今したいことをそのまま口に出すとすると… 俺「とりあえず、俺に笑いかけてくれない?」 ジュゼッピーナ「お安いご用です。」ニコッ 77 自分:パスタ短編[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 23 36 33.28 ID hfMbdPed0 [29/32] その日は、俺の初恋が叶った日。 あの笑顔を最も愛する者が俺だと証明された日。 その日は俺の人生で2番目に忘れられない日になるだろう。 「俺、聞いたか? 実は、ジュゼッピーナ・チュインニ准尉はネウロイに操られていたらしい。」 告白をした次の日、彼女の真実をレイヴォネン中尉のストライカーを整備していたおっちゃんが告げてくれた。 この日は俺の初恋が潰えた日。 俺の愛する彼女がいなくなった日。 この日は俺の人生で1番忘れられない日になるだろう。 後編へ続く
https://w.atwiki.jp/jyakiganmatome/pages/745.html
15.遠き月を見つめて 前編 ―――――もし、できたらでいい あなたが、オルドローズを助けてやってほしい (また、この人… 誰なの……?) ――――わたしはあなた あなたと私は一緒。 ……もう時間もないみたいね 手遅れにならないといいけど… あなた達に雷神の加護がありますように。 (待って… まだ何もわからないよ……) 待って、と暗闇の中に伸ばされた手は 何を掴むでもなく宙に浮いていた 「……ン、…ラン…!…フラーテル!」 「えぅ…?」 何度か呼ばれ、フラーテルは眼を覚ました 「ここ、は………?」 眼が覚めたばかり、ということもあるだろうが 窓から入ってくる強い日差しが強すぎて、こちらに声をかけている人の顔が見えない 「フラン、おきなよ」 いや、確かめるまでもなかった 声の主は「ソロン」。 自分の兄だ 「うーん………」 とはいえ、まだ意識がはっきりしない 時計を見ると、まだ午前9時だ まぶたを擦りながら、フラーテルは起き上がった 「ここはJ3の第16研究所。昨日から泊まってたんだよ?」 兄の言葉によって思い出す ついに配属先が決まったのだ。 それで、"眼"を得るために違う研究施設へと移されたのである 「ねぇ、お兄ちゃん」 「なぁに?フラン。」 「ボクたち、もうあそこには戻れないのかな…?」 「たぶん… でも、いいじゃんか あんな狭いところよりも、この広い部屋のほうが! ゆっくりと本も読めるし……」 「だって、ボク オルドローズに何も言ってないよ!」 「…っ!」 「お兄ちゃんだって…オルドローズが好きだって、言ってたよね…?」 「…僕だって、オルドローズに一言くらい言いたかったよ でも、組織の命令は絶対なんだ。 移動は急だったけど、仕方ないんだ……」 二人は黙ってしまった 考えが食い違うことは何回かあったが、今回はいままでと違う どちらかが妥協したところで、どうしようもなかった 「せめて、もう一度会いたいよ… オルドローズ……」 ――――――――――――…… …魔女と氷仙の戦いから2日後の夜 雨が降りしきる中 一台の黒い車が夜の一本道を走る 中には運転手を含め、3人の男が乗っていた 「どうだ、ガンロン。 日本は慣れたか?」 長髪の男が口を開く 「えぇ、まぁ… 別にどうということはありませんよ」 ガンロンと呼ばれた若い白髪の男は適当に返す それを聞いて運転手が前を見ながら話に入った 「もうじき到着します "体"の方はいかかでしょうか? 早すぎるようでしたら、回り道をしていきますが…」 運転手の男は、アメリカ人でありながら上手く日本語を話す ガンロンも中国人だが、日本語は得意だ でなければ、長髪の男と一緒にいることはできないからという理由もある 「問題ない、もう少し急いでもいいくらいだ リチャード。 俺の体になる奴とは早く会いたい」 ニヤリ、と笑って長髪の男は言った 「9人目も敗北したとの通知、来ましたからねぇ」 「そうだ 王の配下の奴がやられた以上、俺の行動は決まっている "魔女"は庭番にしておくには惜しい…」 不吉を乗せた車は、濡れた路面に水音をたてながら走り続けた ………
https://w.atwiki.jp/kendora/pages/79.html
ChatGPTとGoogle翻訳で訳しました。 スペルや文法にミスがあればご自由に訂正されて構いません。 Host "Now, please enjoy Doraemon show." Host "Today, we performed at the 'Children's Gathering'. The theme of our performance was the new headquarters building." Host "The mascot costumes were original creations handmade with care by the Fuyou Theater Company." Host "In addition, the background artwork was created with great passion by four volunteers from the boys' and girls' art departments." Host "Please enjoy the delightful Doraemon show." (BGM OK!) Narrator "Good evening, everyone!" Girls' Department "Good evening~" Narrator "Oh? It seems like everyone's voice is not energetic. Did you all have dinner?" Narrator "Alright then, let's try again with more energy! Good evening, everyone!" Girls' Department "Good evening!" Narrator "Today, Doraemon and his friends came to play at the Art Festival!" Narrator "Actually, today Nobita made up his mind to perform religious services!" Narrator "And then, he received the great merit of no longer being bullied by Big G and Suneo!" Narrator "And now, we have an important announcement for everyone today." Narrator "Surprisingly, the Doraemon family has also moved near the new main headquarters building in Omiya!" Narrator "Now, let's call for Doraemon and the others! Everyone, come out!" Doraemon and the others "OK!" (Applause) Doraemon "I'm Doraemon. Today, I came to listen to everyone's singing and performances." Shizuka "The Fuyou Orchestra's performance is absolutely wonderful! Haru no Urara no..." Nobita "Shizuka, you're so talented! You can definitely join the Fuyou Chorus!" Nobita "Oh, Shizuka, listen! We also moved near the New Headquarters Building!" Nobita's Mom "That's right. Actually, until recently, your dad wasn't attending the morning prayers." Nobita's Mom "He participated in that amazing Senior Division tournament... and underwent a huge transformation!" Nobita "And so, dad said he wants to move to Omiya!" Nobita's Dad "The Senior Division tournament was really amazing. It made me realize that I need to work hard too!" Nobita's Mom "Now, let's all move forward together and make great progress! Our Women's Division will also power up even more!" Nobita's Mom "Right? Shizuka's mom, don't you think so too?" Shizuka's Mom "That's right. We'll give our full effort in patrolling the facility and serving on the volunteer team!" Nobita "Hey, hey, let's do religious services, Big G and Suneo!" Suneo "Yeah, you're right. My family is wealthy, but my parents have a bad relationship. Maybe I should give the religious service a try." Big G "If I perform the religious service, will my beautiful singing voice become even more beautiful?" Big G "I am Big G, the leader of the kids!" Big G "Ah, never mind. It's no good after all. If my scary mom finds out that I'm doing the religious service, she'll hit me. It's definitely not a good idea..." Nobita "Doraemon, please help me. How can we make Big G and Suneo start practicing religious services?" Doraemon "In situations like this... Prayer beads and a sutra book!" Doraemon "Nobita, you need to pray earnestly to the deity. In the battle for spreading the teachings, it's all about 'praying, fighting, and winning.'" Doraemon "And besides... if you complain about something like that, you'll be laughed at by Mr. Jinkichi Tanaka, who is still going strong at 83 years old!" Shizuka "Big G, Suneo, the garden at the headquarters temple is absolutely wonderful. The Carp in the pond have laid eggs, and little babies have been born!" Shizuka's Mom "And besides, in spring, bamboo shoots start popping up, and in early summer, the pure white flowers of gardenia bloom and give off a wonderful fragrance." Nobita's Dad "Big G and Suneo, when people don't have unwavering faith in Buddhism that they are willing to risk their lives for, they are weak and fragile. Especially, men may seem strong, but they are actually fragile." Big G Suneo "Hmm, is that so?" Nobita's Mom "And also, at the Fuyou Tea House, there are plenty of delicious and nutritious foods." Doraemon "That's right. I stopped eating dorayaki, which I love, and started eating walnut bread and whole wheat bread, and I actually lost weight. Look? I told you." Nobita "Oh, right! Today, let me introduce you to a friend who works hard at the Fuyou Tea House." Nobita "Natto Squad, come out!" Natto Squad "OK." (BGM Aa Jinsei Ni Namida Ari) Big G "Who are you guys!?" Suneo "That's right, that's right!" Captain Straw "We work at the Fuyou Tea House and serve mainly at the Mito Hall in Ibaraki Prefecture." Natto Squad "Natto Squad!" Vice-captain Pack "Eating natto gives you energy, you know!" Reader Cup "Not only that, but it also makes your brain smarter!" Captain Straw "Today, we'll all work together so that even people who hate natto will come to love it... Let's..." Natto Squad "Let’s do Natto Exercise!" (Singing a parody of "Oh Vreneli") From the morning, pour soy sauce over the Natto, add chopped green onions and Japanese mustard, and to top it off, crack an egg and mix it in. Naaaaaaaaaaattoooooooooo,HI! sticky sticky Natto sticky sticky Natto sticky sticky natto sticky sticky Naaaaaaaaaaattoooooooooo,HI! sticky sticky Natto sticky sticky Natto sticky and sticky Nattotto. Captain Straw "The boys' camp was amazing, wasn't it? Right, vice-captain!" Vice-captain Pack "Yes, Captain. We'll stand firm with even more tenacious devotion! Right, Leader?" Leader Cup "Yes! We must do our best... Sticky~." Nobita "Hey, Gian and Suneo, isn't this fun? If we do religious services, it'll be even more enjoyable!" Suneo "Um, maybe I'll try doing religious services..." Shizuka "That's right, Suneo. You'll even get to see baby carp!" Nobita's Mom "Big G and Suneo, if we spread the 'Total Punishment' without thinking, all Japanese people will have nowhere to escape!" Doraemon "And on top of that, a big earthquake is coming soon." Big G "A-a big earthquake!? I'm more scared of earthquakes than anything, even more than my mom! I'll do! I'll do religious services! I'll give it a try!" Nobita "Wow, really!? That's great! From now on, we can all do religious services together!" Shizuka "Hey, let's all do Doraemon Exercise together!" Everyone "OK!" (I'm Doraemon) Everyone "Hey!" (Applause) Suneo Big G "Wow, that was so much fun!" Doraemon "Everyone in the girls' section, please do your best with the big chorus of 'Flower'! I'll be listening from the next room. Well then, it's a bit lonely, but goodbye~" Everyone "Goodbye!" (Applause) (BGM I've Got a Victory Badge!) Nobita's Dad "I will also be participating in the middle-aged group training camp starting from the 19th. Well then." Doraemon "I'll do my best to aim for 9 and a half laps. I have to hurry. I should be able to run faster now that I've lost weight, but..." Doraemon "Heave-ho, wait for me~. Whoopsie-daisy. Where am I? Is it over there, maybe?" Doraemon "Heave-ho, sorry. Thank you, sorry, goodbye." Shizuka "Everyone, listen up! Even if the formidable enemy in Class 3 gets angry, I won't lose!" Shizuka "If I get arrested, I will immediately call a lawyer! I won't sign any false statement!" Shizuka "Finally, let's all create a women's club in all 47 prefectures!" Doraemon more "OK!" (Applause) Shizuka "Goodbye!" Host "We will then take a 5-minute break again. During this time, the orchestra played..."
https://w.atwiki.jp/jyakiganmatome/pages/726.html
3.魔女 箱庭で、魔女と出会った。 本の中でしか「魔女」は見たことが無かったが、人目でその言葉が浮かんだ 「えっと…月から来た魔女……?」 フラーテルは、真面目に「ソレ」を問う 「………………」 『魔女』は黙っている。 月明かりに照らされた雪色の肌が幻想的な雰囲気を感じさせる 「クスクス… 私がお月様の魔女に見えた?」 フラーテルの足元に刺さっていた短剣を拾い上げて彼女は言った 「うん… だって見たことない顔だし、魔女の服着てるもん」 『魔女』の着ているローブを呼び刺す 「魔女ってローブ着てたかしら?もっとこう、ロングスカートっぽいアレよね…」 どうにか手で表現しようとしたが、諦めた様子で腰に手を当てた 「でも、魔女っていうのは正解」 「魔女、本当にいたんだね!」 紅色の眼を細めて微笑む魔女に、フラーテルは合わせるように喜んだ。 少しして、再び彼女が口を開いた 「だからって月から来たわけじゃないの。あなたと同じね」 ため息混じりに話しながら、フラーテルが腰掛けていた岩に座る魔女は、月を見上げた 「実験体…なの?」 「……………」 答える必要もないのか、月を見上げ続けている彼女を見て、フラーテルは質問を変えた 「番号は…?」 それも嫌な質問だったのか、顔を少し歪めてフラーテルを見る 「そんなものはね、とっくの昔に忘れたわよ。今は名前があるの」 フラーテルは『名前』というワードに反応した 「名前って、ボクみたいな…?」 「あなたの名前は知らないけど、私は『深紅のオルドローズ』。あなたの名前も教えてちょうだい」 深紅(クリムゾン)のオルドローズと彼女は名乗った。 フラーテルとしては、名前も魔女らしいというイメージしかなかったのだが。 「…No.5924……」 戻っていた魔女「オルドローズ」の表情がまた変わる 「だからね、そういうのは名前じゃないの。あなたが言った『ソレ』はただの番号。生年月日となんら変わらない」 自分でも嫌いな番号を言ったのは、施設で名前を呼び合うのは禁止されているから そもそも普通は名前なんて与えられないからだ しかし、彼女は当然のように名前を名乗った それに戸惑ってしまったのだ。 「えっと……フラーテル…」 フラーテルが名前を言うと、魔女は嬉しそうに微笑んだ 「よく表情が変わる」という印象も与えられてしまったが、フラーテルは口に出さなかった 「うん、そうね それが名前。いい名前じゃない ちゃんと覚えたから フラーテル… ううん、呼びやすいからフランでいいね」 「えっ?あ、うん……」 ソロンと同じ呼ばれ方をしたので、少し驚いて頷いた そんな会話を続けていると、月が雲に覆われて庭は一気に暗くなった 「あ……」 「あら… せっかく満月が出ていたのにね」 二人は顔を合わせて残念そうにした 「そういえば明日は雨が降るかもって。 忘れていたわ…」 「うー… じゃあもういいや……」 明日も月が見れないだろうと思い、フラーテルは足元の石を蹴って施設内に戻った 魔女はまだ庭にいる 「あぁ、明日もここにいるから 気が向いたら来てね あなた知り合いに似てるし。」 後ろからそんなことが聞こえたので、『知り合い』という言葉を疑問に思いつつ適当に手を振りながら部屋に戻った 実験体はあまり人と喋らないために、普通よりも「言葉」による理解力は低い コミュニケーションについては施設から出る時にしか教えられない というのが決まりであった だから自ら学ぶ他ない。 そのために簡単な漢字も読めない子供がほとんどだ。 完全に言葉を理解しているのは「ソロン」くらいで、フランはそれほどでもなかった
https://w.atwiki.jp/zillollparody/pages/159.html
貴族が統治する大都市――ロストール。 ここにある一軒の宿屋のベランダで1人の少女が苛立った表情で空を眺めていた。 見上げる空には憎たらしくなるぐらいに輝く月と、いくつもの星々が輝いている。 しかしその美しさを持ってしても、少女の心を落ち着かせる事は出来なかった。 (ああ、もう! 気に入らない! 気に入らないわ~!!) 今にでもその場で地団駄を踏みそうな様子の少女、フェティ。 しかし内心に居る彼女は、もう何十回も地団駄を踏んでいた。 自分がこんなに苛立っている原因はとっくに分かっている。 自称“高貴なエルフ”は鈍感ではないのだ。 「フェティ……そこで苛々してても、アレンは帰ってこないよ?」 室内からずっとフェティの後ろ姿を見ていた少女、エステルは呆れ気味に言った。 同じ仲間であるコーンス族の少年、ナッジも読んでいた本を閉じ、苦笑している。 アレンとはこのパーティのリーダーであり、無限のソウルの持ち主である青年の名だ。 「べ、別にアレンの帰りを待っているわけではなくてよ! ただ空を眺めてただけよー!」 「ふ~ん……」 エステルがニヤニヤとした表情を浮かべた。 「な、何が可笑しいんですの!」 「単に気付いてないだけかもしれないけどさぁ……」 エステルが未だに苦笑しているナッジに視線を移した。 どうやら代わりに言え、と言う事らしい。 「空を見ながらアレンの名前、二十回以上呟いてたよ……?」 「――――ッ!?!?」 ナッジにそう言われた瞬間、フェティの顔がグローギガースのように真っ赤になった。 顔から火が出るとは、まさに今の彼女の事なのだろう。見事に体現してしまっている。 「な、な、な……何を下らない事を数えているのよーッ! 下らない、下らないわーッ!」 癇癪を起こしている彼女を宥めつつ、やんわりとナッジが言った。 「もうすぐここに帰って来ると思うよ? アトレイアのところに行ってから、もう随分経つし……」 「でも今回、いつもより長いよねえ。アレンが沢山話してるのか、アトレイアが引き止めてるのか……」 アトレイア――ロストールに住む姫君であり、以前は盲目だった女性である。 しかしとある依頼をアレン達がこなした事によって、眼に光が戻ったのだ。 その縁からか、ここロストールに寄った時は、アレンは彼女の元を度々尋ねるようになったのである。 そして尋ねる度、自分が今まで仲間と共に体験した数々の冒険話をアトレイアに聞かせてあげていた。 今まで暗闇の世界に住んでいた分、外の世界の楽しさを知ってほしい――アレンの純粋な願いだった。 (それが気に入らないのよ……!) フェティは昂った己の感情を抑えつつ、苛立ちの原因であるアレンの事を思い浮かべた。 彼と冒険してから、もう随分と時間が経つ。出会いこそ最悪だったものの、こうして上手くやってきていた。 彼は言った、世界は驚きに満ちていると。彼は笑顔で言った、旅の中で驚きに満ちた世界を見せてあげると。 確かに彼は言葉通り、驚きに満ちた世界を沢山見せてくれた。今まで自分がどれだけ世界を知らなかったか思い知らされた。 その過程で多くの仲間達と出会い、時には危機に陥りながらも、こうして旅を続けてきた。とても充実していて楽しかった。 彼と過ごす時間が、仲間達と旅をする時間が、とても楽しく――彼が愛おしかった。だが今彼は別の女性と時間を過ごしている。 アレンがとても優しく、お節介な性格である事は仲間内なら誰もが知っている。しかしフェティは納得する事が出来なかった。 (アタクシの気持ちも知らないで……!!) 卑しいまでの嫉妬心――高貴なエルフを自称する自分が心底愚かしいと思った。 以前の自分ならこんな感情など、鼻で笑い飛ばしていただろう。だが今は違う。 こんな些細な事でさえも、嫉妬と言う感情は敏感に反応し、自分を狂わせる。 「ただいま!」 室内に能天気な声が響いた。たった今噂をしていた人物、アレンである。 声を聞いたフェティの耳がピクリと動き、ゆっくりと彼の方へ向く。 「お帰りアレン。アトレイアは元気だった?」 「ああ、笑顔で出迎えてくれたよ。冒険話も興味津々で聞いてくれたしね」 ナッジに笑顔でそう報告したすぐ後、アレンはエステルに引っ張られた。 驚く暇も無く、アレンはエステルによって、ある方向に首を向けられる。 そしてみるみるアレンの顔色が青くなっていった。 「うわぁ……」 「ほらアレン、高貴なエルフ様がお怒りだよ?」 「…………いつ頃からでございましょうか?」 「アトレイアのところに出掛けてからずっと」 「…………マジ?」 「冗談だと思う……? ほら行って!」 エステルに背中を押され、アレンは恐る恐るフェティに近づいていく。 彼女は背を向けているものの、身体中から黒いオーラを放っていた。 あのままの状態ならば、ダークエルフ化してしまいそうなぐらいだ。 「あの~……フェティさん?」 「…………」 「フェティ様? 高貴なエルフ様ぁ~?」 無言である。だがそれ故に怖さが一層増す。 その恐怖を振り切り、アレンが彼女の肩に手を掛けようとした時―― 「この――下等生物ッ!!」 腕を掴まれた。しかも罵倒されながら。 「えっ? ちょ、フェティ?」 「話があるわ! アタクシに付き合いなさい!!」 「いや、でも俺、今帰ってきたばかり……」 「貴方に拒否権は無くってよ! 付き合いなさい!」 そう押し切られ、アレンは引きずられるようにフェティに連れて行かれた。 唖然としながら2人を見送るナッジと、呆れながら溜め息を吐くエステル。 妙に対照的な居残り組だった。 「行っちゃったね? 2人とも」 「ホント。協力なライバルがもう1人……はあ、ザギヴだけで十分なのに」 「エステル? どうしたの?」 「……ううん、何でもない。それよりナッジ、ちょっと愚痴に付き合って」 「あ、うん。別に良いけど」 「2人が戻るまでお願いね。ふふ……」
https://w.atwiki.jp/comic_wikki/pages/98.html
むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんとが暮らしておりました。 ある日おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけました。 おばあさんが川で洗濯をしていると川の上流のほうから大きな桃がどんぶらこと流れてきました。 おばあさんはおじいさんと一緒にその桃を食べようと、桃を家まで持って帰りました。 おじいさんとおばあさんとが桃を切ると、桃の中には男の赤ん坊がおりました。 おじいさんとおばあさんとにはこどもがなかったため、ふたりはこの赤ん坊を桃太郎と名付け、育てることにしました。 おじいさんは年老いた体に無理を言わせながらも、桃太郎とすもうを取って遊んでやったり芝刈りや縄綯いを教えてやったりと、たいそう桃太郎をかわいがりました。 おばあさんはいつも桃太郎の怪我を心配し健康に気を使い、桃太郎が風邪を引いたときには一晩中寝ずに看病してやり、大切に大切に育てました。 十数年後、桃太郎はたくましい少年となりました。 そのころ里では、恐ろしい鬼どもが出没し、人間を襲ったり食べ物を盗んでいったりという事件が頻繁に起こっていました。 鬼たちはその本拠地を「鬼ヶ島」という島に構え、ひとびとはたいそう恐れていました。 自分のちからに自信を持ち、世の中の役に立とうと意気込んでいた桃太郎は、ある日、おじいさんとおばあさんとにこう言います。 「おじいさん、おばあさん、ぼくは鬼ヶ島に行って悪い鬼たちを懲らしめてきます。そして偉い人にご褒美をもらって、おじいさんとおばあさんとを楽に暮らせるようにしてあげましょう。」 おじいさんもおばあさんも反対しました。 「そんな危ないことはせんでもええ。わしらは今の暮らしに満足しているし、お前が健やかに育ってくれることだけが生きがいなのだから。」 「そうですよ桃太郎、大事なお前を鬼のところにやるくらいなら、私たちがお前の代わりに鬼のところに行っていくさをしてきたほうがましですよ。」 けれど桃太郎はどうしても鬼を退治してくると言って聞かなかったため、おじいさんとおばあさんとはしぶしぶ桃太郎を旅立たせることにしました。 旅のために出来るだけの荷物を持たせてやりたかったところなのですが、おじいさんとおばあさんとの家は裕福ではなかったため、弁当としてきびだんごをいくつか持たせてやることしかできませんでした。 桃太郎は鬼ヶ島に向かう途中、犬と猿と雉とに出会い、彼らにきびだんごを与え、鬼退治のお供として連れて行くことになりました。 漁師から小船を借り桃太郎は鬼ヶ島に渡ります。 鬼ヶ島に着いた桃太郎を、体の大きな鬼が迎えました。鬼は額にとがった形をした帽子をつけていました。 「何者だお前は。鬼ヶ島に何をしに来た!」 「我こそは桃から生まれた桃太郎! お前たち悪さをする鬼を退治しに来た!」 「なんだって!? 桃から生まれただって!? お、おまえ、そこで待ってろ、いま王様を呼んでくるから!」 鬼退治をしに来たはずの桃太郎は鬼の反応に首を傾げましたが、根が素直なので言われるままにその場で待っていました。 鬼は鬼ヶ島の王様とそのお妃さまとを連れて来ました。 王様が桃太郎に口を利きます。 「貴様、桃から生まれたというのはまことか?」 「もちろんだい! 『桃から生まれた桃太郎』! おじいさんとおばあさんとにつけてもらった大切な名前が証拠だい!」 すると鬼のお妃さまが泣き崩れて言いました。 「ああ、すると、お前が、いとしい私の息子!」 鬼ヶ島の王様から聞いた話はこうでした。 「いまから十数年前、我々の一族は山にこもってひっそりと暮らしていた。 けれど里の人間たちは風習も体格も違う我々をむやみに不気味がっていた。我々がかぶる風習を持つこのとんがり帽子の事を指して『ツノ』だと言い、ついには我々を化け物扱いするようになった。 ある日、里の人間の中でも乱暴な若者たちが集まり、武器を持って我々の集落を襲撃する事件があった。我々の仲間の多くが理由も無く殺された。 私たち夫婦も死を覚悟したのだが、オウガと名づけ生まれたばかりのお前だけは生き延びて欲しいと神に祈りを捧げたところ、集落の谷を流れる川にお前を流せというお告げがあった。 我々がお前を川の流れに乗せると、不思議なことにいつの間にかお前は大きな桃にくるまれて流れていった。私たちは安心し、同胞たちと運命を共にするべく集落にもどった。 我々の同胞は力を合わせて人間たちと戦っていた。私たちは戦いに加わり、追われるようにして山から山へと逃げ、ついに現在のこの地、鬼ヶ島に至ってようやく人間どもに煩わされない生活を取り戻すことが出来た。 我々は我々を迫害した人間たちを憎んだ。また、川に逃がしたお前の運命をずっと気に掛けていた。 鬼ヶ島の生活で力を蓄えてきた我々は人間たちに復讐をするようになった。われわれが味わった苦しみを人間どもにも味わわせなくてはならないからだ。 そして運命のお導きか、オウガ、我が子であるお前も私たちの元に帰ってきてくれた。 さあオウガ、この島で私たちと一緒に暮らそう。お前にはこの島と我々一族との王の跡取りになってもらわなくてはならないが、そんなものは後まわしで良い。父としてお前に語りたいことがいくらでもある。お前の母は、母としてお前に聞きたい話がいくらでもあるだろう。 離れ離れになっていたが、これからはずっと一緒に、幸せに暮らそうではないか…」 桃太郎は自分を育ててくれたおじいさんとおばあさんとが大好きです。 一方で、自分の生みの親であるという鬼ヶ島の王様とお妃さまにも言いようの無い懐かしさ・いとおしさを感じました。 桃太郎はどのような人生を選択するのでしょうか… (後編へ続く) この企画は「『ある決まりきった結末』に向かっているわけではないお話の結末を『自分で描く』ことで決着させよう」という、視聴者参加型ストーリーテリングです。 この記事(桃太郎/オウガ 前編)を投稿したいしいたけるは、後編を書きません。 続きは皆さんが自分で書いて、思い思いの結末を選んでください。 桃太郎としておじいさんおばあさんのところに戻ってもいいです。 オウガとして鬼ヶ島に残ってもいいです。 おじいさんおばあさんを鬼ヶ島に呼んで仲良く暮らしましたでもいいです。 おじさんおばあさんを鬼ヶ島に呼ぼうと思ったら「人間だけは信用できない」と両親に反対されてしまってもいいです。 つまりどう書いてもいいです。いきなり桃太郎が鬼ヶ島で出会ったかわいい少女と恋に落ちて駆け落ちしてもいいです。犬猿雉になにか設定を与えて話をまとめさせる原動力にしてもいいです。 注目して欲しいのはここまでの話は「あるひとつの決まりきったラストに向かっていない」という、今後の展開にさいころを振るにあたっての自由さですね。どうやって書けばいいんだろう・自分はどういうラストを求めているんだろうという問いを自ら行っていただけるきっかけになってくれたらと思います。 そしてその問いかけは非常に刺激的で面白いものになるのではないかと期待します。 「桃太郎/オウガ 後編(○○版)」というページ名でコミックウィキにそれぞれの結末を投稿してくれたらうれしいなあと思いますぞ。○○のところには投稿者名が入ります。 カウンター - 登録タグ いしいたける 小説 桃太郎/オウガ コメント コメント 自分の文章というか自分の描いた物語をさらすという恥ずかしさと向き合うための材料としても使っていただけたら光栄です。 (2008-01-17 23 20 03) これは・・・ 週末までにはとても書けへん。手をつける勇気ががが (2008-01-17 19 40 06) パーフェクトハーモニー…そう、完全調和ってヤツか! (2008-01-16 20 26 33) メグミ:こりゃおもしろい! (2008-01-16 14 05 57) このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/hachinai_nanj/pages/3425.html
あの日見た陽炎 前編 最終更新日時 2024/08/16 17 11 /このページを編集 イベント概要 開催期間 【恒常化】2024/08/09(金) 12 00 ~ 【ボーナス期間】2024/08/09(金) 12 00 ~ 2024/08/31(土) 23 59 本イベントのStage1~Stage6と累積報酬(~100万pt)は恒常開催。 Bonus~ExBonusと累積報酬(105万pt~1000万pt)は開催期間が限られている。 このほかの開催中イベントはこちらを参照。 チャプターの時期と開放条件 時期 3年生編 7月下旬 開放条件 ? プレイの優先度 相手のチーム評価 恒常ステージ:S1~SSS2期間限定ステージ:SSS2~EX2 オススメ度 オススメ 報酬 メイン報酬 画像 アイテム名 備考 ストーリーメダル 【期間限定】累積報酬で10枚獲得できる 絆の記憶(極) 【期間限定】累積報酬で5個獲得できる絆の結晶(極)の交換には15個必要 絆の結晶(極) 【恒常】累積報酬で1個獲得できる【期間限定】累積報酬で1個獲得できる向日葵スキル習得やメモリアルリンクのレベル上げなどに必要な素材 累積報酬 + 累積報酬一覧 画像 名前 恒常時個数 Bonus個数 おこづかい 4000 3000 ソウルストーン(種) 60 100 ソウルストーン(芽) 30 50 ソウルストーン(花) 10 20 絆の結晶(小) 40 100 絆の結晶(中) 20 60 絆の結晶(大) 10 20 絆の結晶(超) 1 1 絆の結晶(極) 1 1 思い出のしおり 50 100 努力のしおり 2 5 結束のしおり 2 5 Dr.ベアマックス(S) 1 ストーリーメダル 10 絆の記憶(極) 5 ストーリーメダルについて 累積報酬のストーリーメダルは購買部で下記アイテムに変換できる。 ココロのカギ(大)とクリスタルコインの交換回数は毎月末にリセット。 画像 アイテム名 必要数 交換上限 絆の結晶(極) ×1 3 なし ココロのカギ(大) ×1 6 1回 SSR確定チケット ×1 3 なし シンデレラチケット ×50 1 なし Dr.ベアマックス(S) ×1 3 なし クリスタルコイン ×25 1 8回 イベント構成と獲得評価pt + ... 恒常部分 ステージ名 相手評価 初回報酬 消費元気 対戦ボーナス ドロップアイテム Stage1 S1 ×1 ×1 ×1 ×1 12 +401.0% × × × × Stage2 S3 ×1 ×1 ×1 ×1 +421.0% × × × × Stage3 SS1 ×1 ×1 ×1 ×1 15 +627.0% × × × × Stage4 SS3 ×1 ×1 ×1 ×1 +740.0% × × × × Stage5 SS5 ×1 ×1 ×1 ×1 +853.0% × × × × Stage6 SSS2 ×1 ×1 ×1 ×1 +1043.0% × × × × 期間限定部分(8/31まで) ステージ名 相手評価 初回報酬 消費元気 対戦ボーナス ドロップアイテム Bonus SSS2 ×1 ×200 15 +2150.0% × × × × ExBonus EX2 ×2 ×200 +3300.0% × × × × 獲得評価pt計算式 試合内容(恒常ステージ・ボーナスステージ) 評価pt 単打 二塁打 三塁打 HR 四球 盗塁 打点 猛打賞 奪三振 失点 三振 エラー 被安打 被HR 勝利 引き分け 敗北 50 100 150 300 10 50 300 300 50 -500 -25 -100 -50 -300 7000 6000 5000 (評価pt)=(試合内容の合計)×(1+対戦相手ボーナス) Q.彡(゚)(゚)「んで、どのステージがおすすめなんや?」 A.(´・ω・`)「 BonusステージがあるうちはBonusステージの8割程度は勝てるステージを繰り返し挑戦すると良いよ。 」 コメント 名前
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/612.html
『実家帰省 ~前編~』 久しぶりにインターホンを押す 入学して以来ご無沙汰の自分の家 「はいはーい。どちらさま……って!兄貴お帰りー!」 「ただいまー。って帰ってきて早々頭を撫でくり回すのはやめろ!」 出てきた妹の手を払いのける こういう所はまるっきり変わってない妹に安堵する 「ところで兄貴、隣の美人さんは誰?」 妹の視線は僕の隣に立つ彼女に向いた 「美人って……私が?」 「そうだよ。霧切さんは綺麗だもの」 「絶望した!久しぶりに帰ってきた兄貴の惚けに絶望した!!」 何気に失礼だなこの妹は……兄を何だと思ってるんだ 彼女――霧切さんの手を取り僕は実家へと帰宅した ――――――――――― 冬休みも半ばを過ぎた頃 部屋の片付けも終えた僕は霧切さんと一緒に僕の家、ようは実家へと帰る事にした 学園長にも一応知らせて許可を貰った その時の霧切さんが学園長と赤の他人のように接するのを見てて少しだけ悲しかった 『霧切さん、まだ学園長のこと許せないの?』 『……』 僕は霧切さんと学園長――霧切さんのお父さんである霧切仁さんのことを聞いている 告白して付き合い始めた頃お互いの家族の話になった時に話してくれた 『……頭では分かってるの。何か理由があったと。でも納得はできないしどうしても……憎いのよ』 そう言ってから僕のほうを見る霧切さん 『それよりも本当に私も一緒でいいのかしら?』 『う、うん。この間のニュース見てたらしくて見舞いに来た時にその……近況洗い浚い吐かされちゃって』 『私達の関係も?』 『……うん。むしろ連れて来いって母さんに念を押された』 『……覚悟をしないといけないみたいね』 その言葉の意味 僕は彼女がそっと自分の手を握ったのを見て悟る きっとこの帰省は僕達にとって大きな転機になるのだろう そんな予感がした ――――――――――― リビングにてくつろいでいた父さんとテーブルを挟んで向かい合う形で僕が対面に座る 父さんの右隣に母さんが座り妹はちょうどその中間に座った そして僕の隣に霧切さんが座る いつもと同じポーカーフェイスに見えるがほんの僅かだけど目を落とした みんなに気づかれないようにそっと霧切さんの手を握る ほんの僅かに震えていた手に僕の手を重ねることで少しでも不安を消せるように 「話は聞いてるけどこうして会うのは初めてだね」 「誠ったらこんなに綺麗な彼女さんができたのに連絡一つよこさないんだから」 父さんと母さんの言葉がグサッと刺さる 確かに連絡してなかったのは悪いと思うけど…… 「はじめましておじ様、おば様。苗木君とお付き合いさせていただいてます霧切響子です」 「ほんとに兄貴と付き合ってるんだー。将来は私のお義姉ちゃんになるのかな?」 「ぶほっ!!」 霧切さんの自己紹介に妹がそんな事を言い出した あまりの不意打ちに飲んでいた紅茶が気管支にはいったのか僕はむせた チラッと霧切さんを見たら僅かに頬が赤くなっていた 「あらあら」 こっちを見ながらニヤニヤしてる母さん とりあえず妹よ、後で覚えてろよ そんな事を考えていると父さんから切り出してきた 「さて誠、病院では事故直後ということもあったから見なかったが……手はどうなんだ?」 空気が変わる 父さんの前で僕は手袋を外す 「……大丈夫、っていったら嘘になるけど感覚は残ってるよ」 「そうか……不自由はしてないんだな?」 「してないよ。クラスメートの皆も優しいし」 父さんと母さんに妹も僕を心配してくれてたのだろう それを聞いて安堵の表情を見せてくれた 「……ごめんなさい」 霧切さんの発した一言に家族全員が霧切さんを見る 一瞬ビクついた彼女の背を押すように僕は家族には見えないように背を撫でた 「本当は最初に話そうと思っていました。でもどうしても覚悟ができなくて……ですが苗木君のご家族にはやっぱり知っておいて貰いたいんです」 そう言って震える手で霧切さんは手袋を――外して見せた 「それは……」 「私はあの人、学園長によって入学させられるまで超高校級とまで呼ばれるある才能を生かしてある事をしていました」 霧切さんの才能は探偵 僕は彼女の助手として色々と手伝ってるし教わってもいる 「でも才能はあっても経験不足だったんです。ある時感情のまま行動して……捕まって当時一緒に行動していた仲間の居場所を知りたがった相手が……」 当時の霧切さんはまだ探偵としては一人で行動するには未熟だったと僕は聞いている 今僕が教わっていることも知らなかったらしい 「この手を……焼きました」 妹が息を呑んだのが分かる 確かに妹はこういう裏側を知らないだろうし普段なら漫画のような話だと言うだろうけど…… あの手を見てそんな事を言ったら妹だろうと僕がキレるだろう 「幸いにも仲間に私は助けられましたが……この火傷は傷痕として残りました」 まっすぐ霧切さんが父さんと母さんを見据える 「私は――探偵です。苗木君のような人と本来なら交際などしてはいけない裏方の人間です」 それでも、と言葉を紡ぐ 「私は苗木君と一緒にいたい。この傷を受け入れてくれた彼と一緒にいたいんです」 霧切さんが頭を下げる 「こんな傷物の私ですが……彼との交際を許していただけませんか」 「それは「それは違うな」」 僕が霧切さんのある言葉を否定しようと声をあげる前に父さんの声が響いた 「霧切さん、答える前にここだけは否定しておくよ。君は傷物なんかではない」 「おじ様……ですが私は」 「そう余り自分を卑下することはないさ。仮にそうだとしても誠が認めた相手だ。こちらからよろしくお願いしたいくらいだ」 すると父さんと母さんが僕達の手を取り重ね合わせた 「この傷で苦労することもあるだろう」 「でもあなた達なら大丈夫。二人で乗り越えていけるわ」 父さんと母さんの言葉 霧切さんが望んでいた何よりの言葉 「ありが、とう、ございますっ」 嗚咽交じりで涙を流し答えた霧切さん よかったね霧切さん そんな想いをこめて彼女の涙をそっと拭い続けた ~中編へ続く~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3247.html
どうしてこんなことになっているのか、どうしてこんな状況になってしまったのか、あたしは全く分からなかった。 ねえ、どうしてなの?キョン。 ▼▼▼▼▼ いつもと変わらずに部室へと向かう俺。まぁ少し変わったことと言えば、最近妙に部室への足取りが軽くなったことくらいか。 俺は確かに今の高校生生活を楽しんでいる。近頃はハルヒがらみの妙なこともないし、古泉も神人狩り回数が格段と少なくなって 「このままでは体が鈍ってしまいますよ。今は出てきて欲しいくらいです。」と余裕のコメントさえする程だ。 それくらい、今のSOS団は平和と言い切れるね。 俺の気分がいいのはそれだけじゃあないんだが、話すと少し長くなる。 ひとつは一週間後に、一学期と二学期の間に挟む夏休みという素晴らしきロングホリデイがあるのだ。そのほとんどがハルヒの為に費やされるのは覚悟しているが、 学校に行かなくて良いというだけで俺の心は青春真っ盛りの青年の清清しさをも凌駕するぜ!宿題はハルヒに任せることにしよう、うん。 ふたつめ。…実は考えてない。何個か挙げておけばそれっぽいものになると思ったんだが、ひとつしかないようだ。すまん。 そしてこの一週間の間で起こる事。これがそのまま無かったことになって夏休みを迎えることなんてことができたら、どれだけ嬉しいのか見当が付かない。 いや、ただ待ち遠しいってことじゃないんだ。あんな事になるなんて、もちろん俺は思ってもみなかったさ。 月曜日に終業式を控えているその前の金曜日。ハルヒは早速土日の予定を立てだした。 「みんなは何処か行きたい場所ある?」 そろそろ自分の行きたい場所が少なくなってきた団長さんの質問に、ニヤケスマイルが答えた。 「僕は別に…。あなたはどうですか?」 俺に話を振るなよ。俺は何処に行きたい?と訊かれてすぐ答えが出るような好奇心旺盛な男児じゃないぞ。 「たまには休みにしたらどうだ。遊びなら夏休みに嫌というほどできるさ。」 「夏休み前だからこそ行くのよ!それで万全の状態で夏休みに挑むの。」 夏休みを迎える万全な状態というのはどういうものなのか考えつつ、俺はお茶をすする。 「みくるちゃんは?」 「えっ、別に…何処にも。」 「有希は…ないわよね。」 「そう」 未来人も宇宙人も行きたい所はないようだ。むしろ長門が行きたい場所ってものを見てみたいね。 「うーん…あっ、そうだ!温泉に行きましょう、温泉!」 そりゃまた唐突なこった。 「何故このくそ熱い夏に温泉なんか行かにゃならんのだ。」 「今、無性に旅館の温泉に入りたくなったわ!ね、いいでしょ?」 「ああ、そういえば僕の知り合いに旅館を経営している者をおりまして…」 おいおい待て古泉。さすがにこの時期に温泉はお前でも気が引けるだろ。 「マイナスをマイナスで掛けたらプラスになるでしょ?それと同じよ。暑さも暑さで掛けたらきっと涼しくなるものよ!」 どんな理論だ。明らかにプラスをプラスで掛けた結果になりそうで、余計暑くなりそうだ。 暑さ=マイナスという定義から間違っている。冷房が効いてるならまだしも…。 「じゃあ古泉くん、その知り合いさんに連絡をよろしくね!そうね…明日一時に集合!場所は当日連絡するわ。」 「了解しました。」 「分かりましたぁ~」 「………」 つくづくこう思うね。やれやれ。 ここまでは日常茶飯事な話だ。ハルヒの突発的な思い付きで色々と振り回される。いい加減慣れた、というかもう呆れている。 だが問題の日はやってきた。何の音沙汰も立てずに、突然と。 朝、俺は目覚めて時計を確認する。目覚ましの時針は8をさしている。俺にしては珍しく早い目覚めだな、等と思いつつ携帯に手を伸ばす。 俺が着信2件、涼宮ハルヒという液晶に浮き出ている文字をしばし見つめていると、携帯がバイブによって震えた。 『やっと起きた!いつも思うんだけど、あんたもうちょっと早く起きれないの?』 「休日くらいもう少し寝させてくれよ。」 『他三人はちゃんと一回目の電話で出てくれたわ。あんただけよ、三回目でなんて。』 俺をあの三人と比べられたら困るぜ。あいつらは明らかに非常識だ。誠実に人生を真っ当している俺は普通の高校生男子を演じているのさ。 『用件だけど、今日駅前に一時集合だからねっ。忘れるんじゃないわよ。』 「ああ、分かった。」 『じゃねっ』 …きっと泊まりだろうな。どうせなら夏休みに三泊四日の旅でもしてきたかったが…贅沢も言ってられないか。 時は一時。一日分の着替えをまとめて俺は駅前に到着する。 「おっそーい!」 「で、今日は何を奢ればいいんだ。」 俺は覚悟を決めていた。それ故に先手を打ったのだ。 「列車賃、全員分払ってよね。」 「列車賃…?だいたいいくらだ。」 「三千円はかかるでしょうね。さっ、行くわよみんな!」 三千円だと?俺は財布の中身を確認し、大きな溜息をわざとらしくした後にそそくさと歩く団長さんの後を追った。 列車で揺られること数時間。雪山へスキーに行った時くらいか、それ以上くらいかの時間を列車の中で過ごした。 乗車一時間半程まではハルヒもわんさかと騒いでいたが、二時間もするとさすがに騒ぎ疲れたらしく、黙って座っている。 俺は窓の縁に肘を乗せて流れる景色に視界の全てを任せていたんだが、徐々にまぶたが落ちていき、暗闇の世界へと引き込まれる。 「さぁ起きてください。着きましたよ。」 古泉の声で目が覚めた俺は時計を確認する。午後五時…随分長いこと移動していたんだな。その証拠に、窓の景色はすっかり森林のある田舎な雰囲気だ。 列車を降りて数分歩いた先にその旅館はあった。いかにも古き良き時代の旅館という感じで、『和』の字が五つ並ぶような木製の旅館だった。 「ふぇ、ふぇぇ…なんかすごいです~」 朝比奈さんも可愛らしいコメントを垂らす。残念ながらどうやってもコメンテーターにはなれなさそうな感想だが、ルックスで押し通せばなんとかなるんじゃないかね。 その際には是非俺は朝比奈さんのマネージャーでもやらせていただこう。 「穴場な場所なんですよ。雰囲気は最高にもかかわらず、来客数も少ないのですよ。今日は僕たちしか客は来ないそうです。」 「それはいいわね!あたしたちだけで楽しめるなんて、なんて最高な旅館なのかしら!」 他の客に迷惑をかけないで済むという利点で俺もそれには同意しておく。 「ようこそいらっしゃいました。」 旅館の玄関に入って真っ先に出てきたのは着物姿の女将さん的な人だった。この人も古泉の仲間なのか?それとも、元々この旅館の女将さんなのか? まぁ別に知ってどうなることでもないから、そこは気にしない方向でいこうと思う。 「こちらこそ、今回はお招きいただいてありがとうございます!今日と明日、宜しくお願いします!」 ハルヒの丁寧な挨拶が済んで、俺たちは部屋へ案内される。無論のこと、和室だった。 部屋の隅に荷物を置いて、その横にもうひとつ荷物が並ぶのを確認する。 「ここは俺の部屋だろ?」 「あなたと僕の部屋ですよ。こちらの不手際で部屋がふたつしか取れませんでした。まあいいじゃないですか、複数人の方が楽しいですよ。」 冗談じゃない。こいつと同じ部屋で寝たりなんかしたら何が起こるか分かりもしない。 「心配しないでくさい。何もしませんよ。」 「当たり前だ。」 低いテーブルに置いてあった和菓子にでも手を伸ばそうとすると、ノックなしに部屋の襖が開いた。 「あたし達は温泉に入ってくるから!あんたらも早く入りなさいよ。あとでじっくり遊ぶんだからねっ」 「ならば僕たちも入ってきましょうか。」 ニヤケ顔で俺にそう言った古泉は、部屋に設備されていた大タオル小タオルを俺に差し出した。 「お前と入るのは気が進まないがな。」 そう言ってタオルを渋々と受け取る。 「当然解ってるわね、キョン。」 何のことだ? 「ほんっとあんたは記憶力ってもんがないのね。」 「大丈夫ですよ涼宮さん。僕がしっかり見張っておきましょう。」 「そう?じゃあよろしくね、古泉くん。」 一体何だよ、見張るって。 「涼宮さんらの入浴光景を忍び見る、所謂覗きという行為ですね。」 男湯と女湯の境が竹だけとかいう美味しい状況でもあるのか?それ以前に俺はそんな俗な行為はしないから安心しろ。 「そうですね。じゃあ、行きましょうか。」 くすくすと笑いながら部屋を出て行く古泉に追って着いた先は、案の定、まさに美味しい状況だったね。 細い竹が何本も連なってできている境界線。強くタックルすればそのまま女湯へ進入できそうな強度に見える。もちろんしないけどな。 脱衣所を出てすぐ乳白色の湯に浸かってひとつの大きな溜息をつく。その一息に疲れの全てが凝縮されていたかのように体がすっと軽くなった。 これ以上に極楽という言葉がふさわしい物はないと思ったね。 「んー、やっぱりその胸羨ましいわね!」 「ひゃっ、やめてぇ~…!」 向こう側からハルヒと朝比奈さんの声が聞こえる。いやぁなんというか、和むね。 「いいんですか?朝比奈さんが困っているようですが。」 声さえ笑っている助言により、俺は我に帰る。 「おいハルヒ。朝比奈さんが困ってるだろ、もうやめろ。」 「ん…キョン?あ、あんたどっから見てるのよ!」 「見てるわけじゃねぇ。聞こえるのは声だけだ。」 「本当でしょうね?」 「どうやらそのようです。会話だけはできるようになっているようですね。」 どうやらって…もっときっぱりと言ってくれよ。 「有希の小っちゃいわねー、あたしが大きくしてあげよっか?」 いきなり過激的なことを言い出したハルヒの行動が頭に浮かぶ。 「………」 「確か揉んでると血行がよくなったり、ツボにいいんだって!」 「………」 いかん、俺が妄想を始める前にやめさせなくては。 「おい、ハルヒ!やめろって言ってるだろ。」 「あんたに言われる義理はないわよ!何ならあんたも触る?」 「遠慮する!」 「あっ、そう。」 ここに居るだけで理性が崩れそうな気がしてきた俺は、さっさと体を洗って温泉から出ることにした。 まぁ体を洗ってる最中にもハルヒが何やら騒いでたんだが、朝比奈さんや長門には悪いが俺にはもう手が付けられない。 浴衣を着て部屋でゆっくりしていると、何とも風流な庭に目を奪われて、来ても良かったなという気分になる。 だが、俺の安らかさを保っている心を打ち砕くように奴が入ってきた。 「卓球やるわよ!卓球!」 その言葉から始まって、それから俺たちは強制的に卓球テーブルのある場所に連れて行かれたり、枕投げの為の枕を集めさせられたりなど、色々とこき使われた。 気付くと時計の針は8時をさしていて、夕食を終えた9時に再収集をかけられた。 「まだ何かするのか?」 「一番大事なものが残ってるじゃないの。夏の風物詩といえばあれよ!」 集合場所が旅館の近くの暗い森林であることから少しは察していたが、やはりすることはひとつしかないようだ。 俗に言う(言わなくてもか)肝試しというやつだ。朝比奈さんは既に怯えの表情を露にしており、それに追い討ちをかけるように古泉が話した。 「ここには昔、墓地があったと言われていましてね。今でもその怨念たちが集まっているという崖が何処かにあるという言い伝えがあるのです。」 「ぼ、墓地ですかぁ~?」 なるほど、一般的な女子高生を怖がらせるには十分な言い伝えだな。どうやら怯えているのは女性三人の内一人だけのようだが。 「怨念でもお化けでもゾンビでも何でも出てきなさい、望むところよ!」 そんなこと望まんでもいい。どうせ苦労するのは俺らなんだからな、解ってるのか? 「この光の勇者様が全部まとめて相手にしてやるわよ!」 まるで光の剣でも手にしたかのような自信に満ち溢れた顔でハルヒは 「さ、行きましょ!」 と先陣を切って歩き始めた。 「五人でまとまって行くのか?それじゃあ肝試しにもスリルが感じられないだろ。」 提案をする俺。まぁどうせやるなら楽しい方がいいもんな。 「それもそうね、一人ずつじゃみくるちゃんが可哀想だから、二組に分かれましょっか。」 「ひぇ、五人がいいですぅ~」 朝比奈さんのささやかな抗議も虚しく、ハルヒは例の(不思議探索時に使われる)方法で二組に分かれさせた。 これで朝比奈さんとのツーショットが取れれば、なんてことを考えていた俺は愚かだったね。 勇者にお供する見習い魔法使い的なポジションを取らされた俺は、さっさと歩いていく勇者様を追う前に 「じゃあ行って来ます。」 と、残る三人メンバー(朝比奈さんに向けてなんだが)に伝える。 「キョンくん、気をつけてね。」 という朝比奈さんがかけてくれた無敵の呪文が俺の心の支えになった。 その言葉を聞けるなら何十回でも行きますよ、肝試しなんてものはね。 …というさっきの言葉は撤回しておこう。さすがにあれだ、気味が悪くなってきたぞ、この森。 「何、あんたもしかして怖いの?」 「んなわけあるか。お前はもうちょっと怖がれ。そして俺の腕にでもしがみついて来いよ。」 「ば、ばっかじゃないの!?そんなのはね、みくるちゃんくらいの怖がりでしかしないのよ!」 なるほど。 「ところでだ。この肝試しは何をすればいいんだ?」 「別に何も考えてないけど?」 「じゃあどうするんだ。適当な場所で引き返したりでもするのか。」 「そうねー…ちょっと面白い所を見つけてやるの。それから後の三人にそこまで行って来て、帰って来てもらいましょ。」 どこまで計画性のない奴なんだろうな、この勇者様は。 「ほら、さっさと歩くわよ!」 ハルヒは俺の手首を掴んで早歩きを始める。自分で歩けるから引っ張るな、手首を痛める。 何分間か意味の無い森林探索をしていた俺だが、そろそろ本当に痛くなってきたんですが…手首。 「…うわあ…!!」 その探索を一時中止させたのはハルヒのいつもより高いトーンの声だった。それと同時に手を離したが、時既に遅し、俺の手首は赤く手跡が付いている。 「ねぇ見て、キョン!」 なんだなんだと顔を上げる。そこには何十個、いや何百個もの緑色の光が宙を漂っていた。 「きれい…こんな湖があったなんて。」 後から聞いた話になるんだが、古泉の話にはまだ続きがあったらしい。 「昔に墓地があったのに加え、その横の湖は蛍の生息地なんですよ。この時期が一番活動が盛んでしてね、だからあの旅館にしたのですよ。」だ、そうだ。 まぁこの時はこんな話知らなかったもんだから驚いたし、さすがに俺でも少しは感動したね。強く頭に焼きつかれたイメージというのか、上手く語原化できない。 ハルヒは珍しく呆然と立ち尽くしている。こいつにも感動できる心があったのか。 「…この蛍、一匹や二匹連れて帰ってもバレないわよね?」 前言撤回!こいつはやはりアホだった。 「こんな光景、拝めただけでもありがたいと思え。そんなことしたら今に罰があたるぞ。」 「うー…分かったわよ。でも、よーく目に焼き付けておきなさい、この光景を!きっと二度と見れないわよこんなの!」 だろうな。心配するな、よーく頭ん中に刻み込んださ。 「じゃあ残った三人には、ここを目指してもらえば丁度いいんじゃないか?」 「えっ…だってそれは…」 「ん、何か不都合でもあるのか?」 「これはあんたとあたしだけの…」 「もうちっとはっきりと喋れよ。」 「い、いいわよ!早く戻るわよ!」 「いだだ!手首を掴むなって!」 「早く!走るのっ!」 「おっ、おいっ!」 痛む手首を引っ張られて俺はハルヒに連れられている。走りにくいこと山の如しだ。 「怒ってんのか?」 「別に!」 「怒ってるんだろ?」 「怒ってないわよ!」 「怒ってるんなら…謝るよ、すまん。」 「っ…!!」 ハルヒはいきなり立ち止まった。 「いきなり止まるなよ…。ッ――」 言葉が出なかった。振り向いたハルヒの顔は、怒っている顔でも疲れている顔でも無かった。 うっすらと目に涙を溜めて、必死に涙を落とすまいとこらえている我慢の顔だった。 ▽▽▽▽▽ せっかく…二人きりであんなきれいな蛍が見れたのに…せっかく… 「ど、どうしたんだよハルヒ。」 キョンは何も分かってない…! 「あっ、あたしは…!」 キョンは顔に困惑の色を浮かべてる。どうしよう…あたしがこんなこと言ったら… 「な、なんだよ…」 気持ちを伝えても…キョンがもしあたしを拒絶したら…あたし… 「ハルヒ…?」 キョンと離れたくない…でも… 「あ、あたしはね…?」 声が震える。大丈夫、ちゃんと言える… 「あんたのこと…その…す…」 「…ハルヒ、俺はお前の事が好きだぞ。」 …え? 「は、はあ…!?」 「何度も言わせんな。好きっつったんだよ。」 一気に目の奥から涙が湧き出てくる。堪えてたのに…だめ、キョンにこんなみっともない顔… 「俺は前から告白は自分からって決めてたんだよ。悪いな、横取りしちゃって。」 「ほんとよ…ばかぁ…ばかばかばかばかばかばかぁぁぁ!」 抱き付いて何度もキョンの胸を叩く。嬉しい。滝の様に流れる涙は止まりそうもない。 「痛いっつの…そう何度も叩くなって。」 「あたしも好きだからねっ…お、覚えといてよ!」 「ああ、分かったよ。」 キョンの腕があたしの背中にまわるのが分かる。あたし、抱きしめられてるんだ。だ、だめよ。こういうのは…ふ、不潔よ。 「居心地いいから…もうちょっとこのままでいさせてくれ。」 「あ、あと十秒だけ…だからね。」 結局、ずっとあたし達は抱き合ってた。あと十秒って言ったのに…キョンのばかっ。 「…そろそろ戻るか。みんなが心配してるだろうし。」 長い抱擁の時間を終わらせたのはキョンの言葉だった。 「そ、そうね…」 あたしが大きく一歩を踏み出そうとした時。 ――それは、起こってしまった。 Love Memory 中編へ