約 50,304 件
https://w.atwiki.jp/ranoberowa/pages/576.html
第549話:最強証明(前編) 作:◆CC0Zm79P5c 空を舞うシャナの超視覚は、すでに四人を捉えていた。 故に、その変化も見逃さない。 「……二手に分かれた。ひとりがこっちに向かってくる」 「本当? どっちを狙うの?」 「三人の方を。逃げられると厄介だから――っ」 だが判断した途端、狙ったようなタイミングで銃弾が炎の翼を掠めた。 射撃は恐ろしいほど正確。初撃からここまで迫れるとは、並みの腕ではない。 「……訂正、銃を持ってる。背後を突かれると面倒だから、先にひとりの方を――」 シャナはその視界に敵を収める。ならば、そいつは最早逃げられない。 彼女たちは言霊を口にした。自分たちを存続させる言霊を。 「殺す」 「壊す」 翼を翻し、シャナは標的を捉える。 左目に視界を開き、フリウ・ハリスコーは標的を見据える。 最大の終末達は、ちっぽけな標的に迫る―― ◇◇◇ かつて人は闇を恐れた。 見通せない暗闇を。人智の及ばない何かが潜んでいそうな黒色を恐れた。 人は灯りを造った。知識の灯火は、しだいに暗闇を生活の圏内から遠ざけていった。 だが、それでも暗闇は無くならない。闇を忘れても、人は闇を恐れる。 パイフウは暗闇の森を全力で走る。そこに恐怖はない。あるとすれば怖いくらいの歓喜だった。 彼女の足取りに迷いはない。外套を脱ぎ捨てたパイフウの体は軽い。 だがそれ以上に、彼女の体を強く後押ししている物がある。 それはとてもとても古くさく―― それはとてもとても青くさく―― だが世界の何よりも強靭だった。 聞かれれば赤面してしまうほど恥ずかしい。だが、いまはそれがむしろ誇らしい。 今も昔もこれからも、これはきっと最強の武装だ。 その最強を胸中に抱き、パイフウは歓喜を吼える。 (ほのちゃんを助けられる。ほのちゃんの為に戦える) 冷徹を気取り、管理者の犬になることは我慢できた。 だが、嫌悪はあった。いくら押し込められても気に入らないことには変わりない。 いまは、それがない。 (私はいま――臆面もなくほのちゃんの為に戦えている!) 空を見上げる。輝く翼で飛行する物体は目立ったが、的は小さい。 構わずにパイフウはライフルを構えた。彼我の距離は遠いが照準は瞬時。一発だけの射撃。 観測手は居ない。だが弾丸は敵を掠めた。有り得ざる手応えにそれを感じた。感覚がひたすら鋭敏になっている―― (私は最強だ) パイフウは一点の疑問もなくそれを信じることが出来た。 自分は死ぬ。それはきっとひどく火乃香を悲しませるだろう。 ごめんなさい。ほのちゃん。あなただけにはこの苦しみを背負わせたくなかった。 (私が殺した人達も……きっとそう。悲しんだ人がいた) 静かに、認める。 どうしようもなかったのだ。パイフウは火乃香を守りたかった。 だけどそれは彼女の都合。それを押しつけられ、殺された連中にとって知ったことではない。 (ごめんなさいとは言えない。償うことも出来ない。 これは代償なんでしょうね。悲しみは連鎖する。それが私の所までやってきた) だから、逃れられない。パイフウはここで死ぬ。 (だから……今一度の、自分勝手を) パイフウは跳躍した。 太い木の枝に掴まり、逆上がりの要領で一回転。幹に背を預けて、射撃体勢を取る。 ――思ったよりも速い。スコープに映った大きな影を、パイフウは睨み付けた。 きっとあれは自分を殺す。 そしてきっと、あれは自分より弱い。 思わず唇の端が吊り上がり、真珠色の犬歯が覗く。 弾倉内に残っていた弾丸を全て撃ち込む。火薬が連続して炸裂する威力に銃が震える。 だが、パイフウはそれを完全にコントロールしきっていた。迫る二人組が回避の為に旋回し、僅かに遠ざかる。 パイフウはすぐにその場から飛び降りた。一秒後、影が再び接近し、樹上に銀の巨人が現れる。 タリスマンのブーストを飛行に使っているので、破壊精霊の力は再び制限されている。 それでも銀の一撃は、パイフウが足場に使っていた大樹を粉微塵に打ち砕いていた。 パイフウは走る。できるだけ火乃香達から遠ざかるように。 背後で銀の巨人が消え、再び影が上空に舞う。 (やはり、あの巨人はある程度近づかないと使えない) どれだけ離れても使えるのなら、先程の戦闘であんな奇襲をする必要はない。 地上に降りてくれば、闇に乗じての狙撃と奇襲に秀でるパイフウの餌食になる可能性がある。 だから空の利を捨てるつもりは無いのだろう。しかし、ならば一撃でパイフウを仕留めなければならない。 (ならば一撃で殺されなければいい) その根拠の無い自信は、無限に沸き上がってくる。 疑問の声が聞こえた。落ち着き払った、だがどこか苛立ちを含んでいるようにも聞こえる。 『……君は誰だ。かつてのミズー・ビアンカなのか?』 その質問に、彼女は大笑した。 誰が発した疑問なのかは知らないが、馬鹿げたことを言う。 「愚問」 彼女はパイフウ。ただのパイフウ。 現在、この島にいるどの参加者よりも強い最強者。誰にも冒せない無敵の存在。 『何故奪えない……君は心の証明なのか?』 証明せよ。心の実在を証明せよ。 問うことだけしなかった精霊は、理解できない。 ――それはとてもとても古くさく―― ――それはとてもとても青くさく―― どこまでも陳腐なそれは、だが世界の何よりも強靭だった。 「私から、心を奪う?」 浮かべるのは優しい笑み。火乃香のことを想うだけで、この笑みはひたすらに尽きない。 それを論理で証明することは出来ない。それでも尽きないと断言できる。尽きないのなら奪えない。 「奪いたければ触れるがいい。だけど、誰も私からは奪えない」 空を見上げる。影は直上から一気に降下。最速の加速を付けて、炎弾と破壊精霊を繰り出してくる。 パイフウは、吼えた。ライフルに新しいカートリッジを叩き込み、初弾を薬室に装填する。 ――彼女は取り戻した。完全にとまではいかないが、奪われていた物を取り戻した。 「――私は、最強だ!」 ◇◇◇ ――それから数分後。 (……思ったよりも手間取った) 地面に着地して、無感動にシャナは呟いた。 幾度目かの突進の末、解放された破壊精霊ウルトプライドはその豪腕を標的に叩きつけた。 標的が、この世界にいたという痕跡も残さずに消失する。 今の彼女にとって、殺人とは時間の経過という意味でしかない。 だがその無感動の中に、彼女は奇妙な違和感を覚えていた。 (なぜだか、勝った気がしない) 確かに『殺した』。確かに『殺されていない』。自分は負けていない。 こうしてわざわざ地面に降りて確認もしてみた。討ち損じた、という訳でもない。 だというのに、なぜだか――実感が湧かない。 (……まあいいか) それよりも、自分にはやるべきことがある。 振り返る。そこには精霊を封じ、空虚な眼差しを彷徨わせているフリウの姿があった。 「さあ急ぐわよ――あの三人も、そして他の参加者も」 「うん……全部、壊す」 再びデモン・ブラッドを活性化させ、増幅した翼を具現化。破壊と殺人の申し子は空に舞い―― そして二人同時に眉をひそめた。 「……なに、あれ」 鬱蒼と木が生い茂る森。 先程まで、確かに森だった場所。 その一部分。ある箇所に生えている木々の群れが、次々と切り倒されていた。 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第548話 第549話 第549話 第553話 時系列順 第549話 第548話 ヘイズ 第549話 第545話 フリウ 第549話 第548話 火乃香 第549話 第548話 パイフウ 第549話 第545話 シャナ 第549話 第547話 オーフェン 第549話 第548話 コミクロン 第549話 第545話 ウルトプライド 第549話 第547話 スィリー 第549話 第541話 アマワ 第560話
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/33.html
イナズマイレブン 37話「帝国の逆襲・前編!」 02 別ページで見れます!→イナズマイレブン 第37話「帝国の逆襲・前編!!」 イナズマイレブン 37 アニメ トップページ
https://w.atwiki.jp/hachinai_nanj/pages/1804.html
夏果てに放つ号砲 前編 最終更新日時 2022/08/02 00 02 29 このページを編集 開催期間 【恒常化】2020/08/09(日) 00 00 ~ 【ボーナス期間】2020/08/09(日) 00 00 ~ 2020/08/24(月) 12 59 2021/04/05(月) 12 00 ~ 2021/04/15(木) 16 59 2021/08/01(日) 00 00 ~ 2021/08/16(月) 16 59 2022/03/16(水) 17 00 ~ 2022/03/31(木) 12 59 2022/08/01(月) 12 00 ~ 2022/08/16(火) 11 59 チャプターの時期 2年生編 7月下旬 チャプター開放条件 『?』 メイン報酬 画像 アイテム名 備考 英知のカケラ 【恒常】初回報酬、累計報酬で900獲得できる【期間限定】累計報酬で2100獲得できる英知のカケラがどんなアイテムかについては「戦術機能」を参照。 絆の記憶(極) 【期間限定】累積報酬で3個獲得できる絆の結晶(極)の交換には15個必要 初心者の方の優先度 【難易度】C5~A1(恒常ステージ)、D2~C1(期間限定ステージ) 【オススメ度】オススメ Bonus期間中なら英知のカケラが大量に手に入る。 イベント概要 本イベントのStage1~Stage4と累計報酬(~190万pt)は恒常開催。 Bonus1~Bonus3と累計報酬(200万pt~500万pt)は開催期間が限られている。 イベント構成 恒常部分 ステージ名 相手評価 初回報酬 消費元気 対戦ボーナス ドロップアイテム Stage1 C5 ×50 7 +184.0% × × × × ×3 × × × Stage2 B3 ×50 10 +309.0% × ×1 × × × × × × Stage3 B5 ×50 +311.0% × × × ×2 × × × × Stage4 A1 ×1 +312.0% × × × × × × × × × × ×1 × 期間限定部分(8/24まで) ステージ名 相手評価 初回報酬 消費元気 対戦ボーナス ドロップアイテム Bonus1 D2 ×1 7 +300.0% × × × ×1 × × × × Bonus2 D4 ×1 +400.0% × × × × × × ×1 × Bonus3 C1 ×1 +670.0% × × × × ×3 × × × 獲得評価pt計算式 試合内容(恒常ステージ・ボーナスステージ) 評価pt 単打 二塁打 三塁打 HR 四球 盗塁 打点 猛打賞 奪三振 失点 三振 エラー 被安打 被HR 勝利 引き分け 敗北 50 100 150 300 10 50 300 300 50 -500 -25 -100 -50 -300 7000 6000 5000 (評価pt)=(試合内容の合計)×(1+対戦相手ボーナス) Q.彡(゚)(゚)「んで、どのステージがおすすめなんや?」 A.(´・ω・`)「BonusステージがあるうちはBonusステージの8割程度は勝てるステージを繰り返し挑戦すると良いよ。」 累計報酬 画像 名前 恒常時個数 Bonus個数 英知のカケラ 750 2100 べアマックス(中)【花】 1 べアマックス(中)【蝶】 1 べアマックス(中)【風】 1 べアマックス(中)【月】 1 ココロの欠片【風】 5 ソウルストーン(種) 30 ソウルストーン(芽) 15 ソウルストーン(花) 1 元気ドリンク 1 1 絆の記憶(極) 3 コメントフォーム 名前
https://w.atwiki.jp/onlinesilkroad/pages/103.html
中国シナリオ#1-男性キャラクター(前編の前編) キャラクター名が日本版と韓国版とで食い違っていますが、原文を尊重し、そのままで書いてあります。 あと、固有名詞は同音異義語が多すぎるので適当に決めてあります。 眼帯男と鬼の話です。 炎 暗剣(イエン・アンジャン) 韓国版名:柳照影 職業:冒険家 年齢:21 数十年前、まだ強豪の7門派がその勢力を確固できずに基盤を固めていた時代、中原は混乱の時期にあった。多くの群小派閥ができてよい地域を占領するために小競り合いがあり、各自がもつ多様な信念のために多くの英雄が生まれ、死んでいった。その頃、中原に柳郭という武士が憤然と立ち、青林派という門派を立てて混乱した世間の一部を整理し始めた。 人々は突如として現れ、人々を困難から救ってくれた柳郭を英雄だと褒め称えたが、柳郭は空から現れた英雄ではない自分を守り、周辺の人々を守るために世間に飛び込んだただの青年であった。 両親が宿屋を経営していて幼い頃から多様な人々に出会った柳郭は、宿屋に泊まった武士に少しずつ多様な武術を学び、またそれは体系がない武功であったがそれを自分のものにするために多くの努力をした。 歳が経つにつれて柳郭はますます多くの武功を学び、それらを融合させる能力もますます身につけ、彼が20を過ぎる頃には自分で武功を創案するほどまで成長した。 彼が初めて人に向けて剣を振るったのは自分の両親を守るためであった。世間がますます乱れると中原には盗賊たちが増え始め、彼が住んでいた村を守っていた小さな門派も盗賊たちによって滅門され、村が盗賊たちの手に落ちてしまった。盗賊たちの手に落ちた村には盗賊たちが尋ねてきて人々を苦しめ、盗賊たちを恐れて村を通る旅行客も消えてしまったので、柳郭の宿屋は金を稼ぐことが出来ず、盗賊たちに税金を出すことが出来なくなった。すると盗賊たちは宿屋に常駐して柳郭の両親をいじめはじめ、それに耐えられなかった柳郭の父が盗賊に食って掛かって逆に袋叩きに遭い、それを見ていた柳郭は剣を振るって宿屋にいた盗賊たちに大怪我をさせた。 しかしその盗賊の中の一人が柳郭の妹を人質にして盗賊の巣窟まで逃亡し、柳郭は馬に乗って盗賊へついていき、一人で数十人の盗賊の群れを皆殺しにした後、妹を助け、村を盗賊の手から救出した。 その後、柳郭は自分の村のように困難を経験している村を救うために自分と同じ意思の若者を集め、青林派という名前をつけて盗賊たちと戦争を始め、柳郭のと同じ意思を持つ人々がますます増えていくことによって青林派の勢力はますます大きくなった。 このように歳月が経ち、中原はますます安定して行き、中原は三門三宮一谷一派にその勢力が分かれていった。自分だけの武器術を扱う三門、多様な気功を扱う三宮、そして医術に精進する一谷は深みのある武功の学習を願う人々にだけその門戸を開き、入門が難しかった。しかし、どのような武器でも自由自在に扱え、派手で変化が大きいが長い時間を投資しなくても易しく武術を学べて入門にどのような制約もない青林派の武術は楽に武功を練ろうとする若者たちに多くの人気を呼んでいた。 しかし、そのような姿を他の門派達――特に同じ武器術を扱う三門の長老たちに目の上のたんこぶのように思われ、彼らの秘密会議では度々青林派をそのままにしておくと強豪の武術が全て青林派のように見掛けが派手なだけで武術に深みがない見掛け倒しの武士だらけになってしまうという懸念の声ばかりが行き交っていた。 そしていくらも経たないうちに長安の一宿屋にて黒殺門の幼い弟子と青林派の幼い弟子が是非を求めて対決する事件が起こった。当時八門派の中で一番強い門派と噂されていた黒殺門であったが、基本技を磨くためにまだまともに技さえ学べなかった黒殺門の弟子達が入門してから多様な技を学んだ青林派の弟子たちに槍を一度も当てることも出来ずに敗れると、人々はその理由も知らずに青林派が最高の門派だと称し始め、そのことにより黒殺門と青林派の関係は急激に悪くなった。 黒殺門の長老たちは門主に、落ちた威信を回復するためには青林派と戦争でもやらなければならないという強硬な意見を広げたが、前代門主が殺害されてから黒殺門の席に上がってから間もなかった黒殺門主は、黒殺門を導いていった「黒殺竜」楊鄭が死んで炎火客神武が消えた今、黒殺門を青林派との戦争はその勝利を保障できなかったので一応自体を見守るために決めた。しかしまだ門主に完全に従わなかった長老の中の一部は、青林派をあのように差し置いた場合、黒殺門が青林派に滅門されるかもしれないと考え、秘密裏に他の門派達に密使を派遣して青林派を崩すために自分と意を共にする長老たちを集め始めた。 密書に対する返事が戻ってくると黒殺門の長老たちは意外と青林派に対する反感を持っている人々が多いことを知り、彼らは会合を持って青林派を滅門させるための計略を巡らせ始めた。 それからいくらか後、青林派に皇宮の執政官から書信が届いた。皇帝が青林派の名声を聞き、青林派の武功を見たいから青林派の門主と高位長老たちは準備をして半月後に皇宮まで来てほしいという内容であった。 皇帝が強豪の門派の武術に関心を持つことは異例であったが、指名されたので柳郭と数人の長老たちが弟子を呼び、皇帝に見せる武術を用意することになった。半月後柳郭は人々を連れて皇宮に行き、柳郭の息子柳照影(日本版名:炎暗剣)は父の代わりに門派を守るために残ることになった。 青林派の仲間が皇宮に到着した時はすでに宴会が始まっていた。皇宮の執政官に会い、様々な注意事項を聞いた青林派一同はしばらく後皇帝の前へ出ることになった。 青林派の演技が始まり、その派手な技が皇帝の目を楽しませていた中、急に青林派の弟子二人が皇帝に向かって剣を持って駆けつけた。不測の事態に柳郭は彼らをとめることが出来ず、皇帝を暗殺しようとした弟子が皇帝のもとまで近づいた時に皇帝の守護武士が現れ、弟子たちの攻撃を阻止した後一気に捕まえてしまった。捕まった弟子たちは柳郭に向かって、命令を履行することが出来ず申し訳ない、と涙を流して容赦を請い、訳の分からない彼らの言葉にあわてた柳郭も皇宮兵士達によって捕縛されて事態は収拾した。 皇帝を殺害しようとした青林派の弟子たちは黒殺門によって買収された物達であり、皇宮の執政官も青林派を滅門させようとする物達によって買収され、全ての事件を企てたのであった。 青林派が善悪より分けずに人々を受け入れ、弟子たちには青林派に対して忠誠心の少ないものが多いことを看破した黒殺門の長老たちの計略は完璧であった。陰謀に遭ったが、自分がどのような計略に巻き込まれたのかも分からなかった柳郭は拷問に会い死んで行きながらも悔しさを訴え、結局一番大きな勢力を持っていた青林派の門主は皇宮の監獄でその命を失ってしまった。 柳郭が死んだあと、反逆を企んだ者に対する国法によって皇宮の兵士達は柳郭の家族と親戚たちを滅ぼすために出動し、罪のない柳郭の血族たちは一人二人とその命を失っていった。 柳郭が死んで皇宮の兵士達が来るということを聞いた青林派の弟子たちは、自分にまで被害が及ぶことを恐れて柳郭の家族を捨てたまま逃げ出し、多くの人々に満たされていた青林派の建物は幾ばくもなく柳郭の家族と幾人かの小間使いを残したまま死んだように物静かになってしまった。 柳照影は人々に助けを求めるために弟子を捕まえたが、全て柳照影の手を振り解いて逃げるために忙しく、柳照影は今まで父が成したことがあまりにも偽りだらけで空しかったことを悟り無心のまま家族とともに死の時を待つことを心に決めた。 きれいな服に着替えて家族が待つ部屋に入った柳照影は部屋の扉を開ける途中急に高等部を殴られ気を失った。柳照影だけでも生かして青林派の命脈を残そうとした家族たちは、柳照影が自分と一緒に死のうとしたことを知り、気絶させて逃がすことに決め、小間使い一人を柳照影のように変装させて皇宮兵士を迎えたのである。 柳照影が我に返ったときには全てのことが終わった後であった。家族たちは死に、青林派の建物は燃え、自分は青林派の建物からずいぶん離れたところに倒れていた。 その時全てのことを把握した柳照影は嗚咽しながら剣を取り出し、家族の後を追って死のうとしたが、彼を逃がした小間使いによって阻止され、狂ったように泣いた後再び気を失った。 しばらく後我に返った柳照影に身を寄せられた小間使いは、祖父の手紙を渡しながら、自分がすべきことは終えたのでこれで、と道を発った。小間使いを恨む気にもならなかった柳照影は涙を拭って祖父の手紙を読んだ。 その手紙は長くはなかったが、祖父が知った父に対する陰謀と必ず彼らに復讐をしてほしいという内容が書いてあった。 自分の家族を殺した者達に対する怒りがこみ上げたが、怒ってばかりでは復讐できないことが分かっているので少しずつ気を収めながら復讐する方法を考えた。 そして数日後柳照影はまだ自分が復讐するには力不足だと知り、父がそうであったように強豪に残った門派達の武術を学んだ後、その武術に青林派の武術を混合して新しい青林派を作り、元首たちに仇を討つ決心をする。 自分を知っている者達に出会うかもしれないことを警戒して片一方の目を覆った柳照影は、元首たちの武功を学ぶために長安に向かい、復讐のための旅は始まる。 雷鬼(レイグォイ) 韓国版名:顔宮雷 職業:鬼族 年齢:26 中原には多様な一族が存在しており、彼らは数が多くても少なくても一つの家門を成して勢力を持っていた。 数多くの家門の中に鬼族で成り立つ鬼殺勢家(日本版名:鬼王家)という家門があり、そこの人々は代々重罪人が捕らえられている秘密監獄を護衛する役目を遂行しながら生きていった。 鬼殺勢家の人々は代々いやらしい顔を持って生まれるのが特徴であった。 普通の人々は鬼殺勢を怖がり近づくことも嫌がっており、どのような人々も夜中に彼らに会うと悲鳴を上げて逃げ出したりしていた。 そのように人々が嫌がる家門であったので正常な職業につくことが出来ず、結局は人々が目立たないところで罪人たちを守ることになったのである。監獄へ来た囚人たちは初めは彼らの姿を見て怖がって素直に言うことを聞いていたが、時が経つと彼らが世間で無視されている人々ということを知って、逆に蔑むようになる人もいた。 そんな鬼殺勢家の門主の子供の中で長男として生まれ、家門を導く後継者に育った顔宮雷(日本版名:雷鬼)は、自分たちを蔑む人間をとても嫌っていた。顔宮雷が一番嫌がったのはいやらしい顔に生まれた自分の姿であったが、それに劣らず普通の人間が自分の家門を蔑めば死を賭して争うほど、人々に蔑視されることが嫌いであった。 顔宮雷は自分に対する人々の態度を変えようと多くの努力をした。しかし世の中は鬼殺勢家に多くのことを許容しなかったし、返ってくるものはより一層大きな蔑視だけであったので、顔宮雷の人々に対する憤りはますます大きくなっていく。 そんなある日、監獄を点検しに一監察官が鬼殺勢家の守っている秘密監獄を訪問した。予告なしに訪ねてきた監察官に鬼殺勢家の人々は少し驚いたが、いつも規則どおり行動する彼ら名ので大きな心配はしなかった。 実は状態点検はただの口実であり、監察官はちょっとした問題点でもあればそれを理由に金を取ってしまうつもりで訪問した悪徳管理人であったことだ。しかし、文書作成から監獄の状態まであまりにも完璧でけちをつけることが出来ない秘密監獄の姿に気持ちの悪くなった監察官は、嫌な顔をして監獄の中を歩き回り、元々はやってはいけない囚人達との対話をためらわずにした。卑劣な微笑をして監察官は数人の囚人と話をし、囚人はこの監獄に入ってきて経験した不法な顧問と暴力に対して騒ぎ立てた。原理原則のみを守りながら暮らしてきて監察官の意図をまったく把握できなかった鬼殺勢家の門主はそんなことはないと監察官に抗議し、謝罪の一言と袖の下数文を握らせれば終わることに対して色をなして抗議する姿にさらに気味が悪くなった監察官は鬼殺勢家の門主にあらゆる悪口を吹き込んだ。 そういう状況を見るに耐えられなかった顔宮雷は囚人たちに駆けつけて真実を言えと脅し、その姿を見た監察官は顔宮雷を指して自分が見ている時にでもこのような行動をするのならば普段はどれだけ囚人たちを苦しませてるのだと一層意気揚々とした。監察官と囚人たちが手を組んで自分に嫌がらせをしていることに気づいた顔宮雷は怒りを抑えることが出来ず監察官の胸座を掴み、何が望みでこんないやらしい演技をしているのだ、と大声で叫んだ。 まさか自分の胸座まで掴まれるとは思わなかった監察官は金だけとって去ろうとした予定が完全に変わり、金はあきらめて自分に無礼なことにした顔宮雷を処罰することを心に決め、自分に対する反抗は皇帝に対する反抗のようなものだと叫び、死してこの罪を償わねばならないといって暴れまわった。 状況が複雑になると鬼殺勢家の門主は監察官を落ち着かせるために跪いて祈り、自分の偶発的な行動のために事態が大きくなることに顔宮雷はどうすることも出来ずに恐慌状態に陥った。 慌てている鬼殺勢家の人々の姿を見て少し気分がよくなった監察官は自惚れて彼らをより一層脅し、少し時が経つと全ての鬼殺勢家の人々が監察官の前で頭をついて容赦を請うようになった。 顔宮雷は悔しさで頭にきて叫びたかったが、自分のせいで起こった事態なので仕方なく他の人々と一緒に監察官に頭を下げた。すると監察官は自分がものすごい善処を施すように、卑しくて愚かな者がやらかした間違いなので特別に命は奪わない代わりに門主と顔宮雷に鞭打ちのみを下だすといった。 こうして鞭打ちが行われて監察官は立ち去った。命を奪われなかっただけであり、二人は気を失うほど鞭に打たれ、若い顔宮雷は幸いにも数日後に意識を取り戻したが、顔宮雷の父である門主は一週間が経っても意識が戻らないまま生死をさまよった。 このような事件が起こった後、他の人間たちに対する憎しみの極まった顔宮雷は毎日床に臥している父のそばに座って復讐の念を押した。そして傷が完全に癒えて活動に差支えがなくなると旅に出る準備をした。 父が目覚めたならば挨拶をしてから去りたかったが、到底待つことが出来ないと思った顔宮雷は手紙一枚だけを残し、監察官に対する復讐と自分をぞんざいに取り扱う人間達に警戒心を与えるために人知れず監獄を脱走して道を発った。 顔宮雷はまず自分が行く場所を皇帝がいる長安に決め、そのようにして彼はシルクロードに復讐を決めた重い足を踏み出し始めた。
https://w.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/674.html
Top 【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】 異形世界・「よくある話」 よくある話 前編 安流は、その横顔に見惚れた。 息は止まり、時が止まり、鼓動さえ止まってしまったような気がした。 凍えるほど冷たいような美貌でありながら、焼け付くほど灼熱の麗貌。 女神と見紛うほどの、美しさがそこにあった。 つい数秒前まで、 ――嗚呼、死ぬ と達観していたのが、まるで遥かな昔のように感じる。 高く結い上げた黒く艶やかな髪。 驚くほどに白い玲瓏たる面。 切れ長の双眸は凛と敵を見据え動じず。 薄く整った唇が、開けば鈴の鳴るような声が安流の耳に届いた。 「燕の子安貝」 瞬間、二人を囲むような、薄幕が展開される。 まるでその形状は、四方を包み込む貝のような。 そして派手な衝撃音。 安流が腰を抜かして尻餅をついた姿勢で後ずさる。 無理もない。 自分と、正体不明の美貌の人の周囲は、貝の薄幕を隔てて二十を超える異形に包囲されているのだから。 なんの事はない。 安流の旅すがら、廃墟となったかつて街であった場所で異形に囲まれた。 よくある話である。 獣のような、しかし不自然な四肢と体躯を備えた異形たち。 数秒前まで、安流はこの異形たちに食われる事が確定していた。 なのに、まるで、天からの使いのようにこの美貌がやってきた。 どのような類の魔法かは知らない。 しかし現実問題として、異形たちがこの貝の防壁を突破できないのを安流は見る。 夢か、幻か、それとも現か。 「これを」 ふと気づけば、美貌の人から外套を放られた。 ねずみの色をした、大きな外套。 「包まって、決して離さないで」 尻餅をつく安流は、自然とその美形を見上げる格好。 また、見惚れた。 ただ思考を停止させて、じっと見詰るしかできない。 あわせた目を、そらせない。 なにか、どこか、胸の奥から郷愁に似た感情が沸く手前、美貌の人が異形たちに向き直る。 すぅ、と貝の防壁が音もなく消えていく。 「あ」 「包まって」 やや強い語調で繰り返されて、安流は必死の思いでねずみ色の外套に包まった。 それはまるですがりつくような。 ぎゅっと、外套にすがりつき、安流はまぶたもきつく閉じて念仏を唱えるのだ。 一方で、美貌の人はまるで怖気もなく唱えた。 「龍の首の珠――赤龍の息吹」 どっと、つぶったまぶたの向こう側から突如として熱風が叩きつけられる。 ひ、と悲鳴を上げて、安流はがたがたと震えた。 しかし痛みはない。熱いとは感じるが苦痛なほどではない。 なんなのだ。 恐る恐る、薄目を開ければ、―― 「嗚呼……」 地獄を見た。 赤い地獄。 炎が、踊る。 いや、踊るなどというものではない。 炎しか、見えない。 灼熱の地獄。 赤い世界。 自分と美貌の人だけがその世界から抜け落ちたように無事だ。 その他一切を排斥するかのように、炎が全てを蹂躙する。 異形どもを、焼き尽くす。 どれほど、呆然とその炎の地獄を見ていたのだろう。 気づけば、本当に気づけば鎮火していた。 ただ周囲の全てがとろけて滅びてしまっている。 あれほどいた異形は、もう跡形もない。 灰すらも、残っていなかった。 夢か、幻か、それとも現か。 「大丈夫ですか?」 涼やかな声音が安流の耳を打つ。 見上げれば、美貌の人が見下ろしていた。 こくこくと、言葉もなく安流はただ頷くしかない。 なぜ、あれほどの炎の中で無事なのか、逆に不思議だ。 「良かった」 美貌が、微笑んだ。 安流は、見惚れた。 ◇ 「自己紹介をしましょう。かぐやと申します」 炎の地獄を見て、それほどを経ず。 宵の口を過ぎた頃合、焚き火を囲んで向かい合う。 まず口を開いたのは、麗しの魔法使いであった。 「安流(あんりゅう)と申します」 僧帽を取り、つるりと禿げ上がった頭を下げて安流はぎこちなく、丁寧に礼を施す。 僧形である。 ただそれほど袈裟もくたびれておらず、錫杖もそれほど痛んでいない。 行脚にしても、初心者も初心者だろう。 そもそも、あそこまで異形に囲まれるような旅をする時点で知識も経験もない。 「このたびは、助けていただきまことにありがとう御座いました」 「安流さん……」 かぐやが、焚き火の向こうからじっと見詰てくる。 吸い込まれそうな双眸だった。 思わず安流がうつむいてしまう。 「迂闊すぎます」 「はぁ」 と気の抜けた返事をして、かぐやの眉がひそまる。 その所作でさえ、新たな魅力にしか見えず安流は戸惑った。 「旅慣れている様子とは見受けられません。それでふらふらとしては命がいくつあっても足りませんよ」 「嗚呼」 「何が嗚呼、なのですか?」 「僕は説教をされているのですね」 「そうです」 「申し訳ありません」 「駄目です」 「これは手厳しい」 かぐやが嘆息した。その様さえ、美しい。 「厳しくありません。普通です」 「はぁ」 「死んでしまって、おかしくなかったのですよ?」 「はぁ、まぁ、旅の最中に僧侶が一人命を落とす……、よくある話です」 「よくあって、良いはずがありません」 「……そうですね」 安流も、微笑んだ。 かぐやが少しだけ、気圧されたように表情を固める。 「次から、気をつけます」 「安流さん」 「はい」 「安流さんは、世間知らずですね」 断定された。 ただ、返答は是である。 「はぁ、お恥ずかしながらずっと寺におりましたもので」 「それがこの物騒な世を行脚ですか?」 「はぁ、寺が……異形に襲われまして」 「……」 沈黙が、降りた。 うつむきかけた安流を、真正面から見据えてかぐやが言う。 「申し訳ありません」 「いえ、なに……よくある話です」 「……」 「かぐや殿は、ずいぶんと達者な魔術の遣い手のご様子」 安流が話題を変えた。空気を、変えようとしたのは明らかだ。 少しだけかぐやが安堵するような心地になる。 「……ええ、厳しい訓練を受けたものですから」 「目的地は、どちらまで?」 「足柄のあたりまでです」 静岡の山の名称だ。人も住んでいるには住んでいるが、しかし異形の縄張りのほうが広いはずである。 すでにここが神奈川圏内であるから、そう遠くはない。 「もしよろしければ、かぐや殿とご同行させて頂けないでしょうか?」 「ふむ……」 「ずっと、とは申しません。途中まで、……かぐや殿の都合のよろしい所までで、構いません」 「いえ、足柄の人の集落に安流さんを送り届ける、という話でいかがでしょう?」 「おぉ、それはありがたい。それでかぐや殿、かぐや殿はいかな理由で足柄まで?」 かぐやの唇が引き結ばれた。 迷うように眉をひそめて、じっと、焚き火に目を向ける。 「あ……いえ、お話したくなれけば、構いません」 「……身の上話を、いたしましょう」 微苦笑が、かぐやから漏れる。 この脈絡であれば、生い立ちが足柄へ向かう理由なのだろうと、安流は黙って耳を傾けた。 「私は捨て子です。あ、いえ、捨て子かどうかも分からぬ、気づけば施設にいたという人間です」 「よくある話ですね」 「はい、よくある話です。物心ついた頃には、すでに訓練と実験を繰り返されていました」 「その……施設で、ですか?」 「はい。非合法の組織で、しかし黙認されていた組織の施設です」 「はぁ……黙認、ですか」 「対異形に役に立つ研究だったのです」 「そちらで魔法を、という話ですか」 「はい。ずいぶんと、命が軽く扱われる類の施設でして……対異形用の兵器を創る実験と試作を繰り返す場所でした」 「先程の、貝のような?」 「あれもその一環です。ちなみに先程の貝の防壁の媒体は、これです」 懐からかぐやが取り出し、見せてくれたのは貝だった。 どこからどうみても、ただの貝にしか見えない。 とどのつまりは、防壁の魔法の媒体なのであろう。 「僕にも使えたりするのでしょうか?」 「いえ、起動の承認は遺伝子認識になりますので……」 「それは残念」 「これを一つのために、何人もの犠牲がありました。あそこでは、人間のために対異形用の兵器を開発するのではなく、対異形用の兵器のために人間を開発するのです」 「それは……」 それは、とても、 「よくある話ですね」 「ええ、よくある話です。運が良かったのか、運が悪かったのか、いくつかの兵器に私は適合したらしい。五つの破格の魔装を、使いこなせるよう生かされ、強化され、開発され、改造され、そして戦わされ続けました」 「……異形と?」 「それが、私の生きる意味だったと言って過言ではありませんでした」 「では、第二次掃討作戦にも……?」 「参加しています」 「なるほど、足柄には異形討伐のために?」 「いえ……すでに私は異形討伐を生きる意味にしていません」 「良い事です。では、かぐや殿の生きる意味とは?」 「兄弟を、探す事です」 「兄弟……」 安流が、繰り返す。 とても、心に染み入る言葉だった。 「組織の運営する施設は一つではなかったらしく、私のように兵装のために開発されたり実験されたり使い捨てられたり、異形と人間を掛け合わせたり、様々あったようです」 「つまり、被験者の方々がかぐや殿の兄弟、と?」 「まさしく」 「では足柄にもそのような研究施設があるのですか?」 「嗚呼、いえ、もうその組織というのも瓦解しています。頭領が死んだ後、統率が取れずに不安定だったところを、私よりも後期に開発された武蔵という男が叛乱を起こして組織の一切を破壊しました」 「豪傑ですね」 「豪傑です。豪傑すぎて、自由になった今でも異形を狩る事をまだ続けています」 「しかしかぐや殿は……兄弟を探す?」 己と同じ境遇の誰か。 異形に対する能力を押付けられた誰か。 かぐやが頷いた。 「その方が足柄にいると?」 「名は金時。龍型の異形の遺伝子と、異形に近しくなるよう改造された人間の遺伝子を掛け合わせて生まれた子です。記録から数えればまだ10歳に満たないはずです」 「それは……」 それは、それは本当に兄弟だろうか? 魔装を扱うために強化、開発、改造を繰り返されたらしいかぐやに比べ、その出生はあまりに……おぞましい。 「仰りたい事は、分かるつもりです。これは私の自己満足……私は親兄弟を知りません。家族を知りません。だから……だから境遇を同じくする者たちで、支えあいたい……」 かぐやがうつむいた。 ままごと、と言うのは簡単だ。 だが、しかし、このご時勢に肩を寄せ合う事を否定的に見るなど安流にはできなかった。 それは、異形を一掃する力を持っているからこそ、一層同じ者が欲しいのだろう。 同じ者と、兄弟であると思いたいのだろう。 「私も、天涯孤独の身を寺に拾われたのです……家族が欲しいという気持ちは、よく分かります」 「ありがとう御座います」 かぐやが、とても、とても可憐に微笑んだ。 安流も、微笑んだ。 「いつか、子を産んで、本当の家族が出来れば良いですね」 「………………………………………………………………私は男です」 ついてるらしい。 よくあr ねーよ。 上へ
https://w.atwiki.jp/shinatuki/pages/88.html
JOJO'S BIZARRE ADVENTURE Part4×東方Project 東方天国扉(とうほうヘブンズ・ドアー) TIPS 杜王町と国際電話とスキマ妖怪と 前編 2000年のある日の夕方、岸辺露伴の玄関前。 ピンポォ~ン インターホンを押す小柄な金髪の高校生。 その後ろに鼻に絆創膏を貼った黒髪の大学生が立っている。 「あれぇ~ッ?今日も露伴先生居ないなぁー」 「取材じゃあないかな?あーでも、来週のピンクダークの少年読みたかったのにな」 ぼやく黒髪の少年。 それに金髪の少年が反論する。 「『少なくとも今秋までは杜王町に居るよ』って言ってたし、行き成り取材旅行とかに行かないと思いますよ。 先生はあれでも言ったことはきちんと守るし、何処かに行く筈は無いんです」 「じゃあ、気が変わったんじゃない?俺は帰るよ康一君」 「あ、はい。見かけたら教えてくださいよ、間田さん」 それから3日後の昼。 金髪の少年―――広瀬康一は、カフェ・ドゥ・マゴに居た。 「仗助君達、遅いなぁ……あ!」 「康一ィー!」 「仗助君!億泰君!二人とも遅いよぉ~!」 康一に手を振る、リーゼントヘアーと強面の大柄な二人組。 リーゼントヘアーの方が東方仗助、強面の方が虹村億泰である。 二人は椅子にどっかりと座り込む。 「で、露伴について話があるっつってたが…アイツがどーしたんだ?」 「実は……露伴先生が、1週間前から行方不明なんだ」 「「行方不明ぃぃ~~?」」 「どーいうことだ?」 「よくわからないけど、この1週間一度も先生は帰ってきていないみたい」 それにふむ、と考え込む仗助。 「どっか遠いとこに取材に行ってる訳じゃあないのか?それこそ県外とか、国外とかよォー」 「編集者の人にも言って無かったみたいだし、それは無いんじゃあないかな。 (そういえば編集者の人、泣いてたっけなぁ)」 頭を悩ます3人。 突然、はっと億泰が顔を上げて真面目な顔をする。 「もしかして、『スタンド攻撃』に遭ったんじゃあねーか!?ほらよォー、あの『吉良吉影』みてェーのに!」 「…そ、そうか!奴みたいに【死体を消すことの出来るスタンド使い】なら行方不明でもおかしくない! だとしたら…露伴先生はもう……」 「落ち着け康一、まだそうと決まったわけじゃあねーぜ。 何処にいるかは分からなくても、生死ぐらいなら探れる『スタンド使い』が居るだろ?電話に金は掛かるけどな」 康一は、頭にはてなマークを出す。 「えーっと…誰だろう?」 「ほら、俺らの知り合いだ。去年此処に来てたろ」 「…………あっ、そうか!」 ―――――――――――――――――――――――――――― 露伴の家(鍵はスタンドで開けた)。 「―――つー事でよォ、ちと露伴のヤローを『ハーミット・パープル』で念写してくんねーかなァーッジジイ」 其処で、仗助が電話をかけている相手は――― 『いいじゃろう、彼には世話になったしのォ。このジョセフ・ジョースター、老いてもまだまだスタンドは使えるわい』 そう、2部の主人公を飾り、3部では孫とエジプトへ向かった、仗助の父『ジョセフ・ジョースター』である。 『ハーミット・パープル』は茨のスタンド、念じたものを映し出せるスタンドだ。 「じゃあとっととやってくれ!」 『ちと待っとれ、今やるからの……………………ん。ほぉ、こりゃあ…』 「おい、どうなったんだ?」 『まずは彼の生死じゃな……露伴くんは生きておるようだのォ』 「生きてるらしいぜェー」 それを聞き、ほっと息をつく3人。 『次に彼の居る場所じゃが……実際に見た方が早いじゃろう。露伴君の自宅なら、FAXがある筈じゃが…今から送るからのォー』 ピピ、ピピー… 出てきた紙を、素早く取る仗助。 「こいつだな?どれどれ…」 其処に写っていたのは…? To Be Continued... 目次へ 続き
https://w.atwiki.jp/srwk/pages/84.html
第11-1話 『ガイキング絶体絶命!!・前編』 勝利条件 プロイストの撃破 増援後 プロイストの撃破 ハイパー鉄獣グラネプスHP50%以下 敗北条件 いずれかの味方機体の撃墜 増援後 味方戦艦の撃沈 ダイヤの撃墜 ステージデータ 初期 初期味方 ガイキング(PU不可) 初期味方 スティンガー(PU不可) 初期味方 サーペント(PU不可) 初期味方 キルジャガー(PU不可) 初期味方 キングゲイナー 初期味方 ムラサメライガー 初期味方 ソードウルフ 初期味方 鋼鉄ジーグ 初期味方 ビッグシューター(新) 初期味方 レヴリアス 初期味方 セリウスII 初期敵 ゼルガイアー 初期敵 魔獣ドメガ×2 初期敵 鉄獣プロテクス×2 初期敵 鉄獣プロテクス&鉄獣ガルゴラス 初期敵 魔獣ビトラ×2 初期敵 魔獣ビトラ&鉄獣プロテクス 初期敵 鉄獣ガルゴラス×2 初期敵 鉄獣ガルゴラス&魔獣ビトラ 4PPorゼルガイアーのHP50%以下 味方増援 大空魔竜 味方増援 選択13機 敵増援 ハイパー鉄獣グラネプス 敵増援 鉄獣プロテクス×2 敵増援 魔獣ビトラ&鉄獣プロテクス×2 敵増援 鉄獣ガルゴラス&魔獣ビトラ×2 敵データ 初期 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 基本経験値 数 撃破アイテム 備考 ゼルガイアー プロイスト +4 20300 8(3) 8000 290 1 学習型OS援護攻撃Lv+1 ダイヤ狙い 魔獣ドメガ 魔獣 +2 15300 5(3) 4000 130 2 - - 鉄獣プロテクス 鉄獣 +1 6800 5(1) 1300 110 4 - SU2PUのメインとして1機PUのサブとして1機 魔獣ビトラ 魔獣 +1 6600 5(1) 1400 100 4 - SU2PUのメインとして1機PUのサブとして1機 鉄獣ガルゴラス 鉄獣 +1 6300 5(1) 1200 100 4 - SU2PUのメインとして1機PUのサブとして1機 4PPorゼルガイアーのHP50%以下 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 基本経験値 数 撃破アイテム 備考 ハイパー鉄獣グラネプス 鉄獣 +3 18000 8(3) 6000 130 1 ハイブリットアーマースーパーリペアキット格闘+10 ダイヤ狙い 鉄獣プロテクス 鉄獣 +1 6800 5(1) 1300 110 4 - SU2PUのサブとして2機 魔獣ビトラ 魔獣 +1 6600 5(1) 1400 100 4 - PUのメインとして2機PUのサブとして2機 鉄獣ガルゴラス 鉄獣 +1 6300 5(1) 1200 100 2 - PUのメインとして2機 イベント・敵撤退情報等 アンジェリカは出撃不可。 ゼルガイアー撃墜かハイパー鉄獣グラネプスのHP50%以下でステージクリア。 攻略アドバイス 初期配置の味方を改造していないなら、味方の増援到着まで後退しつつ削って行こう。 キルジャガーは陸Sなので地上に下ろした方が安定する。 グラネプスはガイキングを優先して狙って来る。ゼルガイアーとどちらを倒すかはお好みで。資金はゼルガイアーの方が持っているが、パーツ売却額も考えるとグラネプスの方が高額になる。 グラネプスの撤退HPがこの時点では高めだが、ガイキングの合体攻撃なら無改造でも倒せる。 ガイキング以外での撃墜なら合体攻撃のあるミストとシェルディアが有力だが、武器改造がないと辛い。改造段階が同じ場合、直撃が使えるシェルディアの方がダメージを出せる。 1週目でも2体同時撃墜は不可能ではないが・・・詳しくは難敵攻略を参照。 戦闘前会話 ダリウス軍:ダイヤ、ピュリア、ディック ハイパー鉄獣グラネプス:ダイヤ、ディック、剣児 隣接シナリオ 第10話『黒き炎の将軍』 第11-2話『ガイキング絶体絶命!!・後編』
https://w.atwiki.jp/fukumotoroyale/pages/319.html
悪夢(前編) ◆6lu8FNGFaw氏 ……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る…… 兵藤和也はギャンブルルームの椅子に座り、第3回定時放送に耳をすませていた。 テーブルに見立てた雀卓に肘を突き、対面や下家に座る男達の様子を横目で伺う。 下家に座る一条は、簡単な応急処置を済ませた後である。放送を聴きながら村上の淹れたコーヒーを飲んでいる。 対面に座る赤木しげるは、村上が場の流れで渋々出したコーヒーに口をつけようともせず、指を組んでじっとカップの中の闇を見つめている。 (……やれやれ、妙なことになっちまってるよなぁ…) 上家近くに立つ村上へちらりと視線をやると、村上も困惑を隠せないまま一条とアカギの顔を見比べている。 少し離れたところにあるソファーには鷲巣巌が、おざなりに仰向けに寝かされたまま、まだ目を覚ます気配も無い。 ◆ 数十分前。 ギャンブルルームの入り口の前で、和也は地面に転がっている鷲巣を見下ろしていた。 やっかいな人物を連れて来た一条を恨めしく思うも、その原因が自分のせいであることも重々承知していた。 (このまま、殺っちまうか…?) 和也の目に暗い影が過ぎる。村上は今、一条の応急処置にやっきになっている。 一条は明らかに顔色が悪かった、こちらのことを気にかける気力はないだろう。 (…と言っても、『仲間にしたい』っていう嘘がある手前、なんとか上手く事故に見せかけらんねーかなぁ…。 この爺さんの持っている支給品とかで…例えば爆発物がうっかり爆発したとかさぁ…) 和也はしゃがみ込み、ごそごそと鷲巣の懐を探る。 (……って何だこの銃、ひん曲がってるじゃん…!) それは一度、鷲巣に突きつけられた拳銃。和也は舌打ちした。 「…チッ!そうと知ってりゃ、あの場で殺してたのによ…」 和也は思わず文句を垂れた。 急場を凌ぐ為にとっさに思いついた特別ルールのおかげで後の事が穏便に進んだとはいえ…それとこれとは別である。 「鷲巣が急に目を覚まして銃で俺を撃とうと…そこで銃が暴発…ってシナリオに見せかけるとか…。 いやいや、鷲巣が気絶してんのにどうやって撃たせるんだよ? 俺が撃…ったら俺が怪我するっつーの…!無しっ…!」 和也はあーあ、と空を仰いだ。 視界の隅に人の影が映る。和也はぎょっとしてすぐに視線を向けた。 朝日を背に浴びてゆっくりと歩いてきたのは赤木しげるであった。 盗聴器ごしに宣戦布告したとはいえ、まだ直接の面識は無い。だが、その白い髪、飄々とした出で立ちからすぐに察した。 「鷲巣………」 アカギはつぶやきながら、小型の銃をこちらに向け歩いてきた。 (しまった……!) 和也は慌てた。せっかく在全とのゲームで武器を入手したというのに、ギャンブルルームの中に置いたままだ。 なんという失態…考えられぬ愚行…! 和也の心境を知ってか知らずか、アカギは着実に距離を詰めてくる。 とっさに鷲巣の懐から奪った『曲がった銃』を構え、和也は叫んだ。 「と、止まれっ……!」 「…………」 アカギは全く動じない。あと数メートルというところまで近づいてきて、ようやく立ち止まった。 「お前、殺したのか…鷲巣を…?」 「死んでねえよ…!」 捨て鉢になって和也は答える。 大声を上げれば一条が飛んでくるだろうか、それとも声を上げると同時に撃たれるだろうか、と和也は必死に思考を巡らせた。 「そうか…ならいい」 朝日が逆光になり、アカギの顔はよく見えない。 鷲巣が死んでないなら良い…ということは鷲巣と共闘でもしているのだろうか。 「ちょうど良かった…鷲巣が適任だと思っていたが、アンタなら…より都合が良い」 「あ…?」 「アンタと話をしたいと思っていたんだ…どうだ…?ギャンブルルームの中で話さないか」 「は……?」 和也は面食らった。数時間前、和也はアカギにターゲット宣告をしたはずである。 そんなことを全く意に介さないかのようなアカギの振る舞いに、和也はただあっけにとられた。 「それとも、撃ち比べがしたいのか…?見たところ、その銃が使い物になるようには見えねえが…」 「…チッ…!一体何を企んでいる…?」 暗闇ならともかく、光の中で銃の変形は一目瞭然である。 曲がった銃を自分の懐にしまいながら、和也は聞いた。アカギは薄く笑った。 「中で話すさ」 ◆ 驚く村上に『鷲巣の分も立て替える、2人で30分』と200万を押し付け、アカギは鷲巣を担いでギャンブブルームに入ってきた。 「和也様…これは一体…!?」 ソファーに座って応急処置をしていた一条も、顔色を変えて立ち上がる。 「あー…なんかアカギが俺に話があるんだとよ…よく分かんねぇけど…!」 「は…?」 開いた口が塞がらないといった表情の一条を一瞥し、アカギは一条の座っていたソファーに鷲巣を乱暴に降ろした。 呻き声を上げる鷲巣に気を留めることなく、アカギはギャンブルルームの中を見渡す。 盗聴器を見つけると、アカギは一人納得したように頷いた。 「で、アカギ、俺に話って…」 「その銃は…利根川先生の……!」 一条がアカギの手にあるデリンジャーに気がつき、睨みつける。と同時に、和也の顔色を伺った。 一条としては利根川が死んだことに特別な感慨は無い。あくまで目的が同じ者同士、一時的に組んでいた人間という感覚だった。 だが和也の手前、多少は『仲間の死』をもたらした人物に対し怒りを見せるというポーズをとっておくべきかと計算してのことだった。 「ああ、アカギが利根川を殺したんだ」 盗聴器である程度の状況を把握していた和也は、アカギを指差して言い切る。 だがアカギはあっさりとそれを否定した。 「利根川を殺したのは俺じゃない」 「は…?何だそれ…どういう意味だ…?」 和也はただ不思議そうに答える。一条は和也の様子に、演技する必要は無さそうだと判断した。 「利根川が襲い掛かってきて…俺も、奴を返り討ちにするつもりだったが…色々あってな。 あえて言うなら…奴の死は身から出た錆…。利根川は自分自身に殺されたようなもの…」 「はあ……?」 和也は首をかしげ、一条は鼻で笑った。 「下らない…相手にすることありませんよ、和也様。コイツはただ意味ありげな言葉を並べ、我々を煙に巻こうとしているだけ…!」 「アンタ…名前は確か…」 「生憎、小汚いチンピラに名乗る名前など持ち合わせていませんね…!」 一条の皮肉に、アカギは表情一つ変えずに言った。 「…そうか。“名無しの権兵衛”さん、アンタがそう思うんならそうなんだろう。 俺の目には、アンタも小汚いチンピラに見えるがね…」 鷲巣との戦いでつけられた傷。服もところどころ破れてぼろぼろになっている。 一条のこめかみに青筋が浮き立つのがはっきりと見て取れた。 一触即発の一条とアカギとのやりとりを、和也は心配するでもなく…むしろ興味深く眺めていた。 アカギに銃を向けられ、『話がある』と持ち出されたとき、感じたのは恐怖よりも…好奇心のほうが勝っていた。 “悪漢(ピカロ)”と呼ばれるあの赤木しげるが、俺に一体何の話があるというんだ…?と。 飄々として突拍子も無いことを言い出すアカギに、和也は興味を持ち始めていた。 (面白えっ…!この男…面白えっ…!) 一条を早速自分のペースに巻き込み、翻弄しているのを見て、和也はニヤつくのを押さえられずにいた。 「も…もうすぐ第3回放送の時間ですっ…!!」 そこへ、村上が割って入った。 「皆様、コーヒーでも飲みませんか…?コーヒーの香りにはリラックス効果があります…! 身体を休め、落ち着いて放送をお聞きになるのが良いかとっ…!」 雀卓をテーブルに見立て、椅子を用意し、村上は早速コーヒーを持ってきた。 「どうぞ…」 村上は真っ先に一条の前にコーヒーを差し出す。続いて和也、アカギにもコーヒーを出した。 「ああ、ありがとう」 一条は落ち着きを取り戻したようだった。村上はほっと胸を撫で下ろす。 あのままでは、ギャンブルルームの中にもかかわらず撃ち合いでも始めかねなかった。 疲れて気が立っているのだろう。無理も無い。夜通し寝ていない上に島を走り回り、命のやり取りをしてきたのだから。 あえて和也に『後』にコーヒーを出したのは、『参加者に優劣をつけない』という村上なりのさりげない意思表示だった。 ……参加者の諸君、黒崎だ…これより第三回定時放送を行う…… 放送が始まると、皆黙り込んで放送に聞き入っていた。 ……前回から今回の放送までの間に敗れ去った敗者の名を発表する。 『天貴史』、『石田光司』、『村岡隆』、『治』、『利根川幸雄』、『市川』、『南郷』、『遠藤勇次』…… ◆ (……やれやれ、妙なことになっちまってるよなぁ…) 放送が終わった後も、一条は済ました顔でコーヒーを飲み、アカギは相変わらず何を考えているのか読めない。 「コーヒー飲まねえの…?」 沈黙に耐えかねた和也がアカギに聞くと、アカギはああ、と興味無さげに答える。 「一応、敵地だからな…。この黒服とアンタらは深い関わりがあるようだし…。ここで出されるものはお茶一杯口にしたくない…!」 村上はムッとした顔をし、一条は嘲笑った。 「つまり、度胸が無いってことですね…?」 「どうとでも取ればいい…」 一条の嫌味を一蹴し、アカギは組んでいた指を解いて和也に言った。 「さて、本題に入ろうか。兵藤和也…」 「おお、やっとか…!待ちくたびれたぜ」 和也は大げさに伸びをしてみせる。アカギは唐突に切り出した。 「これから病院を探索してみないか…?」 「は……病院……?」 「アンタ、病院に興味はないのか…?」 和也が首をひねると、アカギは驚いた顔で逆に聞き返してきた。 「興味っつっても…」 「そうか。興味があるから、このギャンブルルームを選んだのだと思っていた…いつでも探索出来るように…」 アカギの口振りに、和也は苛立ちを覚える。 だが、元来和也は知ったかぶりをしない、率直なところがあった。 「いや、単純に人が多く集まってくるかなーって思っただけだ。アカギは何?あそこに何があると思ってるんだ…?」 「ゲームの根本に繋がるもの…もしくは、ゲームの舞台…この島の歴史があそこにあると推測している…」 「…は?歴史…?」 「どっちにしろ…バトルロワイアル…このゲームを制する者なら…制する可能性のある者なら、 見ておかなきゃあならない…!それを生かすも殺すも当人次第…!」 「ゲームを…“制する者”……」 「俺も、アンタらも、せっかく明確な意思を持ってゲームに参加してるんだ…。 だったら見なくちゃ…!このゲームの原初…根本にあるもの…!」 アカギは薄く笑う。アカギの言葉に、興味をそそられる…惹かれるだけの危うい“何か”があった。 覚悟無く首を突っ込んだら、あっという間に骨まで焼かれそうな“何か”…… ドンッ…! 重い音に、和也ははっと我に返る。一条が雀卓に拳を落したのだ。 「戯言を…!」 一条はアカギを睨め付け、指を指してアカギを詰る。 「この男の言葉はまやかしだっ…!その証拠に何ら具体的なことを示さない…! 言葉巧みに抽象的な言葉を並べ、和也様を操ろうとしているんだっ……!」 「俺が操られる…?」 「そうです!ですから、この男の言葉に耳を傾けては…!」 「お前、誰に向かってモノ言ってる…?」 一条は、はっと口を噤む。和也の目には明らかな怒りの色があった。 「俺は人を見る目があるつもりだ。薄っぺらいペテン師、詐欺師なんざこの目で何人も見てきた。そうそう謀られたりしねえよ…!」 一条は己の失態に歯噛みした。 いくら参加者が須らく同等の条件、平等だと謡っても、あるのだ…この世には…差がっ…毅然と…! 「も…申し訳ございません。出過ぎたことを申しました…!」 「…いいよ、もう…!お前だって、俺のことを気遣うあまりに出た言葉だろ…?気にすんな…!」 平身低頭の一条に、和也はひらひらと手を振り、何でもないことだと示す。 「…さて、話を戻そうか。アカギ…病院には何があるってんだ…? 抽象的な言葉だと分からねえよ。もっと俺にも分かりやすく言ってくれねえか…?」 「…抽象的な言葉になるのは、まだ出来ないからだ…断定が…。 この目で見て、情報を得て確信しない限り、話をすることが出来ねえな」 「……ふうん?だが、何かしら見当はついているんだろ…? 仮説でいいから、言ってみ…!それによって同行するかどうか、判断させてもらう」 アカギは少し間を空けてから、切り出した。 「……数年前。この島で人が…おそらく集団で、急に消えている」 「あ……?」 「数十人…いや、数百人か…?この島にいた集団の身に何かが起こった。 そして、この島の規模としては妙に大きい病院…あの病院がその何かに関係していないわけが無い……!」 「……数年前、何かが起きて、この島の住人がいなくなった。 で?それが今やってるこのゲームと何の関係があるんだ?」 「あるさ……このゲームがあの男…カイジの言っていた『見世物』であるなら……」 “カイジ”。 その名前に、一条、和也ははっきりと反応を見せた。 「カイジが何か言ってたのかっ…!?」 和也が興奮した様子でアカギに詰め寄る。 「『帝愛』という組織について、そして帝愛が行っていた大掛かりなギャンブルについて聞いた。 組織については、俺の想像していた主催者像とずれは無かった。だが、大掛かりなギャンブルのことは初耳…。 『見世物』として楽しむ…それだけではなく、競馬のようにゲームの優勝者が誰か、賭けをやっているという話…」 アカギは淡々と答える。 「それ以外のことは…?」 「特に何も…。アンタのこと…兵藤和也、そして帝愛の一条、利根川のことを聞いたくらいだ」 和也は頷きながら言った。 「…つまり、今回のゲームと『病院』に何かあるかもってのを結びつけるのは、アンタ個人の考えってことだな?」 「ああ」 「ふうん…そっか…」 一条は不安げに和也を見る。 和也の身に何かあったら、一条にとっての『救済』、和也の特別ルールが消し飛んでしまう。 「病院を探索し終えるまでは互いに休戦、という契約を交わすのはどうだ…?」 アカギが切り出した。 「ギャンブルルーム内と同様、一切の暴力行為禁止…。 病院を探索し、兵藤和也がこのギャンブルルームに再び戻るまで…」 「…その取り決め、アンタに有利な取り決めじゃね? 分かってるか…?俺達、ゲームに“乗ってる”んだぜ…?」 「…なら、特別な取り決めをせずに行くか。俺はそれでも構わないが…。 アンタ、路上でケンカをした経験は…?」 アカギは事も無げに聞いてくる。和也はつい言い返した。 「良いのかよ、そんな態度でっ…!俺は『行かない』って選択も出来るんだぜ…!」 「それならそれでいい。少しだけ情報を纏めるのが遅くなるだけの話…。 それに、アンタは同行するさ…!ゲームの根本を知りたいって誘惑には抗えないはず…!」 「…フン…まあそうだけどなっ…!」 和也は不貞腐れつつも素直に認めた。 「和也様…!」 一条の浮かない顔を見て、和也はむしろ、行かなくてはという思いを強くした。 最後の最後、優勝争いで殺すまでは一条とは『仲間』だから…。 このくらいで尻込みしてるようでは、お先が知れると思われる…! 『病院を探索し終えるまで休戦』の誓約書を和也と取り交わすと、アカギはソファの鷲巣を揺さぶり起こした。 「なっ…何じゃ!?ここはどこじゃ!?」 飛び上がり、慌てる鷲巣に、アカギは簡潔にここがギャンブルルームであること、ギャンブルルーム前で倒れていたのを運び込んだことを伝えた。 「……鷲巣、200万返せよ、今払えるんなら」 アカギが鷲巣のデイパックを指差すと、鷲巣は愚痴り出した。 「100万はお前が勝手に立て替えたんじゃろうが…運び込んで欲しいと頼んだ覚えはないわっ!」 「クク…そうか。そのまま転がしておけば良かったな…。 何にせよ、黒服に『立て替える』と言って入ったのだから、それを反故にするとすればアンタの首輪が爆発…」 「チッ…分かったわっ!払えばいいんじゃろ!ほれっ!」 鷲巣はデイパックに手を突っ込み、アカギに200万のチップを投げつけた。アカギは右手で素早くキャッチする。 「で…これからどうする、鷲巣?」 「どうする、とは…?」 アカギは他にもギャンブルルームを使用している者達がいることをあごで示す。 「ああああああああああっ…貴様らっ…!」 一条、和也を見た鷲巣は、恐怖とも怒りとも付かない奇声を上げ、近くにあった松葉杖を振り上げて威嚇する。 「元気なじいさんだよな…今更こんなこと言うのもあれだが、仲間にしても共闘出来る気がしねぇよ…!」 「え、では仲間にしないのですか…?」 和也の言葉に、一条は少し驚いた様子で問いかける。 「確かに人数は多いほうがいいと思ってた、少し前までは。けど、今は少数精鋭の方がいいって思うな…!」 「…確かに、じゃじゃ馬がいるとかえって邪魔になることもありますね」 内心鷲巣のことを良く思っていなかった一条は、ここぞとばかりに同調した。 (よっしゃっ…!『鷲巣を仲間に』って嘘、回避出来るっ…!) 内心喜んでいたのは、むしろ和也のほうであった。 「……だ、そうだ。鷲巣」 「あ…?何じゃ…?」 アカギは、鷲巣にあっさりと言ってのけた。 「今すぐにここを出て、全力で逃げたほうが良いようだぜ。 俺は今、兵藤和也と一時的に手を組んでいるが、アンタはこいつらにとって敵でしかないからな…!」 鷲巣の行動は早かった…!どこにそんな余力が残っているのか、満身創痍であることを忘れてしまうくらいに見事な速さで、荷物を抱えてあっという間にギャンブルルームから走り去った。 「さすが、生きたがりの鷲巣巌…!」 皆があっけに取られる中、アカギはクク…と笑い声を漏らした。 悪夢(後編)
https://w.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/270.html
カラ、コロ、 カラ、コロ。 境内に続く石畳の上を、下駄履きの素足が小走りにしていく。道の左右に広がるのは、社を守る高い木々によって構築された豊かな空間で、夜をその身に落としたアスファルトよりもひんやりと、霊所に相応しい土の匂いを一帯に漂わせている。高木がしめやかな土から立ち上る冷気をその傘の中に捉え、逃さないでいるのだ。そのうす暗がりを、ちらほらと、人影が楽しむように点在していて、ひそやかな会話たちが、森閑とした中を、耳にではなく、肌身に聞こえるように満たしている。 そんな中を、歩調こそ違えど、似たようないくつもの足音…ぺたりぺたりと草履の音も重なって、今は珍しく灯の入った石灯籠が構えた、階段脇に集まりやがて止んでいく。まあるく人の手と歳月が一緒になって削り出した石灯籠の内側から、ゆらゆらと、生きた火にしか出せない淡さで放射されている光、浮かび上がるのは男女種々の浴衣姿。影が、はしゃいでいるかのように、とめどなく揺れていた。 風が熱く、そしてどこかしら甘い、夏の夜のことだった。 /*/ ~祭囃子:前編~ /*/ 祭りの会場からはひっきりなしに上がる屋台の掛け声、子供たちの不思議によく通る甲高い声で、あれやこれやの珍しい品々を子らなりに品評している面白おかしそうな様子や、その面倒を見ている大人達の彼らを追いかけるゆったりとした足音、それに、射的や、祭りに付き物のフランクフルト、焼きそば、たこ焼き、いか焼き、お好み焼きといった、すぐに暖まる焼き物のじゅうじゅう鳴る脂ぎったうまそうな音、綿あめを回す機械のごうんごうんと低く響き渡る音などが、ぎゅうぎゅうに詰まって立ち上っている。 「では、行こうか。人数が多いからはぐれないように。はぐれたら、やぐらのところに集合ね」 浴衣の袂に手をつっこみながら、穏やかな調子で述べたのは、後ほねっこ男爵領の領主である火足水極であった。彼の同行者たちはあんまりに人数が多いものだから、中心人物となる2つのゲストを取り巻いて、二つの同心円を描いており、一つには、いかにも引率らしい先生と呼ばれる男とその賑やかしい細君を中心に、もう一つには、これまた友好国である愛鳴藩国の面々と国元の仲間が取り巻く、一人の少女と男を中心にしたグループとで構成されている。 その、少女のグループの、やや後ろの方からみなを促すように、火足は全体を視界に収めて立ち位置を決めていた。引率といえばこれも引率らしく、はぐれるもの、不都合の出るものがいないよう、しんがりで見ているつもりなのだろう。やや面長の、見るものをおっとりさせるような落ち着いた雰囲気が、その行動に違和感を持たせない。 わらり、それまでにも賑やかにしてた集団が、突如の来訪者によって緊張を帯びた。 /*/ 神社の裏山に現れた英吏と斎藤奈津子は、眼下の喧騒を避けて、ぐるりと迂回しながら進んでいた。 「……」 「ここが未確認の勢力下であることを忘れるなよ、斎藤」 「あ、はい!?」 ごくん、と生唾を飲みながらもの欲しそうにしていた斎藤は、英吏に手を引かれながら図星をつかれて二重の意味でどぎまぎした。 はわわ、手、手をつないじゃってます! 加えて彼女の高性能な両の目は、それでもこんな暗がりから容易に祭り会場の催し物を判別し続ける。ああ、あのお面はなんでしょう、猫のような狸のような…リンゴ、リンゴも、なんだかぴかぴか光ってます。透明な何かに包まれて、うわーおいしそう! いけないまた英吏さんに怒られる、でもでも、うわー、うわー、バナナが、バナナがチョコで綺麗でおいしそう…! そんな人間最終兵器の内心の挙動不審を、見透かしているのか、いないのか、英吏に幼体の頃から躾けられた動物兵器である狐型雷電クイーンは、きゅんとも鳴かずに二人の後ろを追走している。 英吏は油断なく索敵を行っていた。状況を掌握していない地域において、何が起こるかわからない。女性にしては長身な斎藤よりも遥かに高く、でかいその巨躯を、機敏に体捌きながら林の中を突き進む。身につけた銃器の重みが心強い。じりじりと、祭りの会場に近づきながら目を配る。実弾はフルに込めてある、素性はなんだかわからんが、ああして動いている限りは生物だろう、生物なら、こいつを喰らって無事で済むものもいるまい。 「―――!!」 「ふぇ?」 気の抜けた声を漏らした斎藤の口を無意識のうちに押さえながら英吏は立ち止まる。あの姿、確か―― 「~~~~!!」 「暴れるな…静かにしていろ」 手元でこくこく斎藤が頷くのを感じながら、たった今、ちらりと目にした少女の情報を頭の中で検索。 肌の色は前に見たより幾分白いか、髪も、ストレートに変わっている。だが、骨格などの特徴が記憶と合致する。 周りを取り巻いているのは…りゅうへんげとやらの仲間だろう、ちょうどいい、あれを人質に問い質してやる。 「行くぞ、斎藤」 「は、はい!!」 英吏さん、手、手に私のつばが…! 言われるがまま、慌てて身構えながらも、斎藤の頭の中はさっぱり状況についていっていなかった。 /*/ 「では、行こうか。人数が多いからはぐれないように。はぐれたら、やぐらのところに集合ね」 しんがりをつとめているらしい、長髪の男がそう言ったのを見計らい、英吏は飛び出し懐から機関拳銃を抜き放った。飛び出した、とも言えぬほど、静かでひそやかな、しかし示威的な挙動だった。 「!!」 みなが緊張し身構える中、火足はとっさに後ろを振り返った。せっかくの祭りに、どんな誤解があっても寂しい。皆が必要なことをしているのなら、自分はそれ以外の必要なことをしよう。そう思った。 果たして少女、後藤亜細亜の後ろ、構えられた機関拳銃の射線上に、射的会場はなかった。 /*/ 英吏は警戒しているようだけど、なっこちゃんは展開についていってない。トーゴさんが身構えていないのなら、この場はきっと安心なのだろう。誤解をまずは解きながら、亜細亜ちゃんのいいようにしてあげられるといいな。 火足は眼前で進む展開を見守りながら、そんなことを思っていた。 あ、亜細亜ちゃん舌噛んだ。ガチガチだなー。 「逃げないあたりに進歩が見れますね」 押し倒せー!との、自分の奥方の野次をさておきながら、吹雪先生は火足に話し掛ける。何度か会って、通じるものがあると感じてくれているのだろう。頷きながら、 「ちょっと荒療治かともおもわんではないのですが。目覚しいですな」 さておかれた方の吹雪先生の奥さんは、旦那につっこみを入れられて夫婦喧嘩を始めている。ものすごい勢いで亜細亜をプッシュ、というよりけしかけようとしている奥さんに、さすがと火足は笑いながら感心した。さすが、子供と遊ぶ時も手を抜かないでコテンパンにするひとだなあ。 展開の方はというと、自分が知らない英吏の女性関係がいきなり次から次へと繰り広げられて、なっこちゃんがほとんど怯えるように緊張している。英吏は英吏で相変わらず銃を構えたまま、人を殺せそうな目で、亜細亜に対して尋問まがいの会話を続けている。 「やっぱり抱きついてキスしたほうがはやいんじゃないの?」 「だれかこの人とめてくれ!」 「お前夫だろう」 トーゴが吹雪夫妻の喧嘩につっこみを入れた。 「先生が止めんで誰が止められるんですかー」 火足も続いてつっこみを入れた。 一方とうとう緊迫感が頂点に達してしまった会話に、亜細亜もなっこちゃんも泣き出した。たまきとミーアがそれぞれぎゅうっと安心させるように彼女らの手を握る。 「さっきからずっと思ってたんだが、りゅうへんへんげってなんじゃね」 「ああ。この間海法よけ藩国の人がですね。あ、いいですか、解説」 しかめっ面で英吏が連呼する名前について聞き返すトーゴに、なんとか奥さんの攻撃から脱しながら吹雪先生が答える。 火足はひたすら状況を見守りながら、促した。 「吹雪先生よろしく」 /*/ 後藤亜細亜は緊張していた。 一つには、英吏ともう一度会えるから。 一つには、自分で英吏ともう一度会おうとしているから。 一つには、周りのみんなを騙して、あの時の英吏と、もう一度会おうとしているから。 シロ宰相からもらったマイルで呼び出す相手を藩国逗留の英吏から、何も知らずに呼び出されてしまった英吏に切り替えた。着用アイドレスを、吹雪先生の奥さんの着付けで夏祭り用の金魚風浴衣に着替える時も、それで緊張した。 まんまるくて大きなぬいぐるみに、こっそり英吏と名前をつけて可愛がっていた。ガンオケ緑の英吏は格好いい。自分で直接会ってみて、ますますその思いが強まった。 火足さんたちから、また小笠原に行こうと声を掛けられた時、ひそかにこの計画を実行しようと思いついて、我ながら驚くほどの行動に、やっぱり緊張した。先生の奥さんに一所懸命お化粧してもらって、自分でもちょっとびっくりするくらい変わった姿に、ほんの少しだけ、心が期待で躍った。 いつもより、ずっとずっと、緊張した。周りにいっぱい人がいて、わーっとなるのより、周りの人たちに気付かれて何か言われないか、英吏さんにまた会えるけどほんとに会ってしまったらどうしようどうしよう、とか、そんなことで緊張した。 唾がのみこめないくらい、緊張した。 いきなり現れた英吏に突きつけられたのは、銃口だった。 /*/ 「英、吏、さん……」 英吏がこういう人間だということは知っていた。だから亜細亜はそのことでは動揺しなかった。 「なぜ私の名前を知っている?」 「し、調べましたっ」 少しでも、英吏に答えよう、答えようと、必死に会話を続けた。 「どうやって、調べた?」 英吏は人殺しのような冷たい目で、自分を見ている。 「もう一度尋ねる。どうやって調べた?」 「イ、インターネットです」 冷たい口調に、知らず、ぎゅうと手を固く握りこんでいた。 「それはナショナルネットワークのようなものか」 頭がかーっとなって、冷たくなって、頬が強張った。英吏さんのいる世界は第五世界で第五世界はインターネットがなくて、ええと、ナショナルネットワークってどんなものだっけ、何か答えないと、何か答えないと…… 「あと、ゲームです。ガンオケ緑を買ってもらって」 「りゅうへんげが言っていたのだな。どういうものだ。いえっ!」 怒鳴られた。 /*/ 「怒鳴らないであげて!」 隣で誰かがしゃべってる。 「子供を泣かせるのが貴方の趣味ですか?英吏さん。」 また別の誰かが言う。 違う。違うの。 思いながらぼろぼろ涙がこぼれてきた。 「まあまあ、子供相手に大人気ないかと」 涙をぬぐうことすら思いつかずに、凍りついて立ち尽くしながら、唇を噛む。 違うの。 英吏さんは悪くない。 英吏さんは悪くない。 悪いのは私。 みんなを騙して、英吏さんを怒らせてしまった私。 なっこちゃんの泣いてる音もする。誰かがなっこちゃんに寄り添ってる。 ごめんなさい、なっこちゃん。 ごめんなさい、先生。ごめんなさい、先生の奥さん。ごめんなさい、トーゴさん。 ごめんなさい、みんな。 ごめんなさい、英吏さん。 ごめんなさい。 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。 ごめんな、さい… 立ち尽くしている肩に、暖かな手が置かれた。 /*/ 火足は、ずっと懐に差し込んでいた手を抜いて、亜細亜の肩に手を置いた。それで少しは落ち着いたのだろうか、手に感じる亜細亜の体はわずか、ほぐれたようだった。 吹雪先生がみんなに状況説明を始めている。一人、ほねっこの仲間が飲み物を買いに走ってくれた。ありがとうと思いながら自分も説明に耳を傾ける。 「ああ。この間海法よけ藩国の人がですね。あ、いいですか、解説……亜細亜に聞いたんですが、亜細亜と英吏を呼んだらしいんですよ。それでその、まあ、英吏は大変不機嫌だったようで、イベントは夏祭りだったかな。まあ、ところがですね。亜細亜はあれ以来どういうわけだか英吏英吏とうるさくて。ぬいぐるみに英吏って名前をですね」 ここまで説明が来て、亜細亜が不意に火足の手から逃れて走り出した。真っ赤になって、英吏の顔を見てからのことだった。 ありゃ。 「あああ、下駄で走ると危ないってばー」 慌てて声をかけるが恥ずかしくて聞いていない。かわりに彼女を追いかけてくれる仲間たち。よし、そっちは任せよう…任せた! 「ところで、吹雪先生。あなた、学校で女生徒から何か言われたりしませんでしたか、もー(この無神経!)」 火足は、落ち着きかけた場に一服の清涼剤となるべく、吹雪先生に話し掛けた。 華麗にスルーされた。 /*/ 気に食わん、と英吏は思う。 気に食わんことだらけだ。 状況は不明で、にも関わらず相手方には自分の情報を相当のところまで握られている。当人達にそのつもりはないのだろうが、ぬいぐるみだの、女の子の特権だの、あれこれと余計な話が間に加わってくると、余計にいらいらする。 亜細亜は逃げる、状況はさっぱり把握できない、にも関わらずこいつらは必要以上に慌てない。苛立っている自分の方が弱い立場にいるようで、ますます頭に来る。 「ここはどこで、お前達はなにかだ。そこから話せ」 例の、しんがりに立っていた髪の長い男、亜細亜に先ほどまで手をかけていた、火足とかいう奴が、話し出した。やはりこいつがこの一群のリーダーか、と思いながら、荒唐無稽な話を聞く。 「私達は、自分達の世界をニューワールドと呼んでいます。かつていた世界から、我々は落ち延びました。そこで世界を発見、開拓しました。こことは別です」 「頭が痛くなるようなおとぎ話だな。それを信じろと?」 意外なことに、冷静な答えが返ってきた。 「そうですね、まず仮定として考えてくれても構いません」 /*/ 事情を聞いてみると、思ったより状況は悪くないようだった。 「あなたに会いたい、そういう人がたくさんいたからです。英吏さんの都合をお聞きできなかったのは、申し訳なく思いますが」 「自由に呼び出せるわけではありません。想いが一定量にならないと、奇跡めいた現象はおきません」 「人に焦がれ、一目でも姿を、声を、存在を感じていたいという想いです。それは魔術と呼ぶには、少しばかり原始的に過ぎる」 自分が誰かの思い通りに無限に呼び出される危険性はないと、わかっただけでも充分だ。試すまでは、信用できないが、思ったよりこの男は話せた。言っていることは曖昧で感傷的な言い回しをするが、言おうとしていることが何なのかは、よくわかった。 「…………」 なにより一番大事なことは。 俺を呼ぶ、こいつらがいなくなれば二度とこういうことは起こらないと理解出来たことだ。 /*/ わあ、なんだか賑やかな催し物がやってますー、英吏さんと二人きり、て、手をつないでもらって…… などとのん気に思えていたのはほんの少しの間だった。 「お願い、ちょっと待って!」 「あいにく、私は私の勝手にやる、人に命令されるのはまっぴらだ。給料でもでないかぎり。抵抗するなら射殺する」 気付いたら、英吏さんは知らない人たちの前に立って拳銃を突きつけている。しかも、なんだかよくわからないけど、お、女の子が英吏さんの前に出てきて、しししかも英吏さんとしりしり知りあいみたいであああああ。 「この間、さらわれて、こりてなかったと見える」 さらった? 英吏さんが、この女の子を? 「押し倒せー!」 無責任な野次が心に刺さる。そ、そうなの? そうなんですか、英吏さん? 「やっぱり抱きついてキスしたほうがはやいんじゃないの?」 の、ノー!! 「りゅうへんげが言っていたのだな。どういうものだ。いえっ!」 なぜだかわからないけど、英吏さんが大声を出して、それでもう緊張の糸が切れてしまった。斎藤は、誰かに手を握られながらほろほろ泣いた。知らない人に涙をぬぐってもらいながら、はー、はー、と落ち着くために深呼吸。 「なっこちゃん、大丈夫?」 「ありがとうございます。でも、まあ、そうですよね」 二人きりで、一緒なんて。 こんな私にそんなラッキーなことが起こるわけなんて、 「そんなにうまくいくわけもなく……」 /*/ 亜細亜は暗いところで一人しゃがみこんで泣いていた。 ジュースを差し出されても、反応がない。 /*/ 「こいっ、クイーンオブハート!」 英吏の朗々たる韻律を持った声があたりに響き渡り、闇から獣が立ち現れた。 /*/ -The undersigned:Joker as a Clown:城 華一郎
https://w.atwiki.jp/syoutyuu/pages/92.html
ひんぬー少女ときょぬー少女のお話です。 前後編の前編を投下。 俺の楽しみは、公園でのんびりと読書をすることだ。 ゴールデンウィーク──穏やかな日差しが降り注ぐ暖かな午後、花はとっくに 散って青々とした葉を茂らせた桜の下で、ベンチに腰掛けて読書を嗜んでいる。 さして広い公園ではない。住宅街の一角にある、ブランコと砂場、いくつかの ベンチがあるだけの、こじんまりとした公園だ。 ブランコには数人の男の子たちが群がり、角度を競い合っている。 砂場では小さな子たちが、こしらえた山にトンネルを掘ったりしている。 反対側にあるベンチには老人たちが腰掛け、わいわいと騒ぐ子供たちを微笑ま しげに眺めながら、何やら世間話にでも興じている様子だ。 俺は一人、古びたベンチで本を読んでいる。 とはいうものの、実のところ読書というのは方便で、本当の目的は別にある。 「ゆうちゃんはろー!」 「お兄ちゃんこんにちは~」 目当ての二人がやってきた。 「おう、こんちは」 半年ほど前から親しくなった二人の女の子── ひとりは、すらりと背が高く、ストレートの髪を両耳の上で束ね、ツイン テールに結んでいる、元気で快活、ちょっと悪戯好きな少女だ。 白瀬美紅(しらせ・みく)ちゃんという名前である。 小学生の女の子にしてはなかなかの長身で、クラスでも一番らしい。くりっと した釣り眼が特徴的で、顔立ちも大人っぽい。 厚めのTシャツを着ていて、下は太腿がほとんど露になったショートパンツを 穿いている。細くしなやかな脚は長く、少女モデルでも通用しそうだ。 時々、中学生に間違えられることもあるようだが、胸の膨らみはまだまだで、 歳相応といったところである。 もうひとりは、可愛らしいという表現がぴったりの、ゆったりとウェーブした 長い髪が背中のランドセルに掛かっている、おっとりした雰囲気の少女だ。 名は、杉野紗希(すぎの・さき)ちゃんという。 こちらも厚手の長袖Tシャツだが、膝の覗く程度の丈のミニスカートを穿いて いて、美紅ちゃん以上に細い脚が伸びている。 美紅ちゃんよりも十五センチは背が低く、同年代の子と比べても小柄だろう。 身体つきも華奢で、子供っぽい──のだが、それがいっそう、彼女の一番の 外見的特長を際立たせている。 紗希ちゃんの胸は、小学生離れした、まさに巨乳と呼ぶに相応しい膨らみを 備えているのだ。訊いた事は無いが、おそらくDカップか、それ以上あるのでは ないかと思うほどに大きい。 二人とも、近所の小学校に通う六年生になったばかりの女の子だ。 「紗希ちゃん、今日も可愛いね~」 「ありがとう……お兄ちゃん」 紗希ちゃんは俺をお兄ちゃんと呼んで慕ってくれる。くすぐったいが、俺の ような男にとって、それは憧れの言葉でもある。 「あたしはー?」 「もちろん美紅ちゃんも可愛いよ」 「ほんとかなー。ゆうちゃんは紗希のおっぱいに夢中だしぃ」 美紅ちゃんは、俺のことをゆうちゃんと呼ぶ。 佐々木優(ささき・ゆう)というのが俺の名である。 「やだ、美紅ちゃん……」 「こらこらっ」 周りに聴かれやしないかと焦ってしまう。 紗希ちゃんは顔を赤くして、うつむいてしまっている。 対する美紅ちゃんは、今にも紗希ちゃんの胸に手を伸ばさんかというばかりに 悪戯っぽい笑みを浮かべていた。 「ったく……ほんとだって。二人ともいつも可愛いよ」 「お兄ちゃん……」 「んっ……」 俺がの頭を撫でてやると、二人とも照れ臭そうに頬を赤らめ、紗希ちゃんは うつむいて上目遣いに、美紅ちゃんはそっぽを向いて横目で俺を見た。 こんなようなやりとりが、最近の定番になりつつあった。 俺が公園に来る一番の目的は、この二人とお喋りをすることだった。 俺の名は、佐々木優。二十五歳、独身、一人暮らし、彼女ナシ── 正直に言えば、俺はロリコンだ。 大学を卒業したものの、定職に就くでもなく、ふらふらとアルバイトで一人 暮らしを続けている俺にも、多少なりと恋愛経験が無いわけではない。 けれど、高校の時に初めてできた彼女は下級生だったし、大学の時にネットで 知り合って付き合った子は、中学生だった。 年々自分の好みの年齢が下がっている気がする。 自分でもマズイとは思っているが、こうした好みという奴は、どうやら自分の 意志で矯正できるものではないらしい。 もちろん大人の女性に興味がないわけではないし、幼い少女にしか欲情しない なんてわけでもない。 ただ、男なら普段からあれこれと妄想することもあるわけだが、そういった 妄想のほとんどが少女であるというだけで── と、まぁ、何を言っても言い訳にしかならないというのは解かってはいるの だが──好きなものは好きなのだからしかたがない。 「うわ、また散らかってる!」 俺が暮らす1Kのアパートに、二人を招いたのはこれが二度目だった。 俺的にはこれでも片づけているつもりなのだが、美紅ちゃんはお気に召さな かったようだ。 「女の子が遊びに来るんだから、ちゃんと片づけなよ~」 「ごめんごめん。でも、昨日一日かけて片づけたんだよ?」 言い訳めいた言葉を口にするが、美紅ちゃんは腰に手を当てて呆れ顔だ。 「いつもどんなんなってんのー? もー、ゆうちゃんはひとりじゃお掃除も できないんだね~」 「もう、美紅ちゃん……お兄ちゃん、だいじょうぶだよぉ? うちのお父さんの 部屋より綺麗だもん」 すかさずフォローしてくれる紗希ちゃん。 だが、美紅ちゃんは呆れた顔で首を左右に振る。 「紗希のお父さんの部屋って……あれと比べたら、どんな部屋だって綺麗だと 思うんだけど……?」 「そ、そんなすごいの?」 「だって、大地震の直後みたいな部屋なんだよ?」 「そんなことないよ? ちょっと、床が見えないぐらいで……」 訂正──紗希ちゃんのそれも、フォローにはなっていなかった。 紗希ちゃんもそれに気づいたようで、申し訳なさそうに上目遣いに俺を見る。 ああ、可愛い── この眼がいけない。 俺は彼女のこの表情にたまらなく──劣情をそそられる。 しかし、彼女らの前でそんな気持ちを起こしてはいけない。 いくら俺がロリコンだといっても、リアル小学生に手を出すわけには── 「わっ、エッチな本見っけー!」 「えっ!?」 心臓が口から飛び出すような感じというのは、まさにこのことなのだろう。 美紅ちゃんは、部屋の隅にまとめておいた雑誌の山から、それを見つけて しまった。 「うわぁ、やらしー!」 固まってしまった俺の前で、ぺたんと座った彼女は、ぱらぱらと雑誌を捲る。 「やだ……美紅ちゃん……勝手に出しちゃダメだよぉ」 とかなんとか言いながら、紗希ちゃんも美紅ちゃんと一緒になって、それを 覗き見ている。 「えっと、いや……ふ、ふたりには、まだ早いから……ね?」 「え~? 何が早いの~? わっ……これって……えぇ~!?」 そう──あろうことか、それは俺の嗜好を見事に表した、成人向け漫画雑誌 だったのだ。 もっと端的に言えば、ロリコン向けエロ漫画雑誌だ。 小学生や中学生──彼女らふたりぐらいの少女と、あんなことやこんなことを してしまう、法令ギリギリ──そろそろ完璧に法に抵触するであろうジャンルの エロ漫画雑誌だ。 あぁ、ふたりが今見ているカラーページは、小学六年生の子とやっちゃう話 だった気が── 「すごぉい……これって、あたしたちぐらいの子なんだぁ……」 「美紅ちゃん、ダメだってばぁ……お兄ちゃん困ってるよぉ?」 普段から、美紅ちゃんは積極的だ。 その手の話題も時々振ってくることがあって、俺はどう対応していいか困る ことも多い。 対して、紗希ちゃんはおとなしい性格なのもあるだろう、エロスな話題には 消極的で、恥ずかしそうに顔を赤らめるだけだった──今もそうだ。 「わぁ、わぁっ……すごいよ紗希、ほらっ!」 「やだっ、美紅ちゃん……」 美紅ちゃんが雑誌を広げ、まさに挿入というシーンを紗希ちゃんに見せる。 紗希ちゃんは両手で顔を覆って耳まで真っ赤になっていた。 もっとも、美紅ちゃんも口では茶化しているが、顔は朱に染まっている。 どうしたもんか── 大人としては──そう、俺は大人だ。幼い彼女らに、こんな雑誌を見せては いけないだろう。 だが、幼い少女たちが、そんな漫画を見ながら顔を赤らめる姿をずっと眺めて いたいとも思ってしまう。 「わぁ……フェラだって……こんなこと、しちゃうんだぁ……」 「ダメだよ、美紅ちゃん……」 興味津々──というより、のめり込んでしまっているような美紅ちゃんと、 その横でちらちらと俺を覗いながらも、やはり雑誌から眼を離せないといった 紗希ちゃん── そして、頭を掻きながら眺めている俺──股間はとっくに起き上がっている。 もちろん膝を立てて気づかれないようにし、こっそりポジショニングを変えて みたりしている。 「ゆうちゃんも……するの?」 「え?」 いきなり美紅ちゃんが訊いてきた。 こっちをじっと見つめていた。 彼女の眼は潤んでいて、いつもの元気で無邪気な少女のそれとは違っていた。 惹き込まれてしまうような──欲望をそそられる艶めかしい光が宿っていた。 「こういう、エッチなこと……」 「えっ、いや……まぁ……」 俺は口籠ってしまう。 どう答えていいのか迷う。 今現在、俺は特定の恋人はいない。もちろんセフレなんてハイカラな相手も いるわけがない。 だが、経験はある。それなりに。 彼女はどうしてそんなことを訊くのだろう? やっぱり、小学生とはいえ、六年生ともなればそれなりに性行為に興味を持ち はじめる時期だからだろうか。 あたしもしたい──そんなことを言われたらどうしよう。 ゆうちゃんとエッチしたい── いや、まさか──それは俺の都合のいい解釈だ。 まて、都合のいい解釈ってなんだ? 俺は彼女と── 「ゆうちゃんって、エッチなんだ……」 「ま、まぁ……そりゃ、人並みには、ね?」 ははは、と乾いた笑いで俺は誤魔化そうとする。 「美紅ちゃん? お兄ちゃん……?」 紗希ちゃんが困った顔で美紅ちゃんと俺の顔を交互に覗っている。 美紅ちゃんが、雑誌を置いて、ずいと身を乗り出してきた。 「じゃあ……あたしと……エッチ、できる……?」 「えっ……?」 俺は彼女の言葉にきっかり二秒固まった。 「いや、あの、美紅ちゃん……?」 「あたし……ゆうちゃんと、エッチしたい……」 俺はきっと、どうしようもなく間抜けな面をしていたに違いない。 「あはははっ! ゆうちゃん本気にした? あっはははっ!」 「へっ……?」 美紅ちゃんは、さも愉快そうに、雑誌をばんばん叩きながら笑い転げる。 今度は、きっかり五秒固まった。 やられた──! いつもそうだ。 俺は美紅ちゃんのどっきり発言によく惑わされるのだ。 「紗希のおっぱい、すっごい軟らかくて気持ちいいんだよ」 「あたし、ゆうちゃんのことが好きなの……お嫁さんにして」 「この前、男子におっぱい見られちゃった」 「ゆうちゃんは、あたしと紗希のどっちが好きなの?」 「パンツ見えた? 見せたんだよ……ゆうちゃんにだけ、だよ?」 そんなどきっとするような冗談をよく言うのだ。 俺は懲りずに彼女の冗談を間に受けてしまったというわけだ。 「もう、美紅ちゃん……お兄ちゃん困らせちゃダメだよぉ」 けたけたと笑い続ける美紅ちゃんに、紗希ちゃんが口を尖らせた。 「え~? でも、ゆうちゃん、ちょっと本気にしたんじゃないの~?」 それでも美紅ちゃんは笑い続ける。 「いや、マジで……美紅ちゃん……心臓に悪い冗談はやめてくれ……」 俺はぐたーっと肩を下ろして溜息をついた。 と同時に──この小悪魔にどうやって仕返ししてやろうかと考える。 いっそ、本気で襲ってやろうか──いや、それはさすがにまずい。 どうしてやろうか── うん、よし──いいことを思いついた。 すかさず実行に移す。 俺はがっくりとうなだれて、紗希ちゃんに顔を向けた。 「美紅ちゃんはひどいねぇ、俺をもてあそんで……ね、紗希ちゃん?」 「え? うん……」 紗希ちゃんは曖昧な笑みを浮かべる。 大事な友達と、お兄ちゃんと呼んで慕ってくれる俺の狭間で揺れているの だろう。本当にいい子だと思う。 「紗希ちゃんだってそう思うよね? 美紅ちゃんはひどいや……それに比べて、 紗希ちゃんは優しくていい子だなぁ。美紅ちゃんみたいに意地悪しないし……」 言いながら、俺は紗希ちゃんの頭を撫でる。 「んぅ、お兄ちゃん……」 紗希ちゃんはくすぐったそうに首をすぼめる。 「あぅ……」 美紅ちゃんは、急にむっとした顔になる。 「変な悪戯もしないし、紗希ちゃんの方が可愛いねぇ。うん、やっぱお嫁さんに するなら、紗希ちゃんみたいないい子じゃないとねぇ」 「えぇっ……!?」 美紅ちゃんは縋るような眼で俺を見る。 してやったり── 俺は心の内でにやりと笑う。顔には出さないように。 「うんうん、女の子は優しいのが一番だ。紗希ちゃんと美紅ちゃん、どっちを 選ぶかって訊かれたら……答えは決まってるよなぁ」 美紅ちゃんはうつむいてしまった。 肩が震えていた。 ちょっと、やりすぎたか── そう思った瞬間だった。 「ゆうちゃんっ! やだよぉっ……!」 美紅ちゃんが俺に飛びかってきた──いや、抱きついてきたのだ。 「うわっ……美紅ちゃん?」 後ろに倒れそうになって、慌てて後ろに手を突く。 「うぅ……ごめんなさいっ、ゆうちゃん……許して……」 「美紅ちゃん……」 彼女の声は震えていた。 顔が押し付けられた肩口が熱い。 多感な年頃だ──あの程度でもじゅうぶんな破壊力を持っていたようだ。 さすがに泣かれてしまっては、俺も罪悪感を覚える。 「美紅ちゃん、ごめん……俺も、冗談だから、ね?」 震えた身体を優しく抱いてやる。 頭を撫でる。 ぐすぐすと鼻をすする音が── 違う、何かおかしい── 「あはっ……あはははっ!」 顔を上げた彼女は、悪戯が成功した子供のような顔をしていた。 いや──文字通り、この子は悪戯に成功したのだ。 「びっくりした? あたし、泣いちゃったと思った? あははっ!」 またやられた──!? 俺はちょっと頭に来た──大人気ない話だが。 こんな悪戯をする子にはお仕置きが必要だ── 俺は美紅ちゃんの背に回した腕に力を籠め、くるりと身体を半回転させる。 「きゃっ!?」 俺は彼女を下にして馬乗りに──マウントポジションの体勢になった。 「ゆ、ゆうちゃん……怒った……?」 美紅ちゃんは引き攣った笑みを浮かべる。 俺は何も応えず、美紅ちゃんの腕を掴んで、万歳をさせるように頭の向こうに 持ってゆく。 左手一本で両の手首をまとめて掴む──それが容易くできるほど彼女の腕は 細く、改めて幼さを実感した。 「ゆうちゃん……? え? えっ?」 「エッチ……したいんでしょ?」 俺はにやりと笑って言う。 美紅ちゃんは眼を丸くして絶句した。 俺は右手で、彼女の小さな膨らみに触れる。 「やっ……!?」 びくんと美紅ちゃんの華奢な身体が震えた。 まだ膨らみはじめたばかりの控えめな乳房──しかし、ふっくらと柔らかく、 張りがあって、確かな弾力が感じられる。 「お兄ちゃん……!?」 紗希ちゃんもびっくりしているようだ。 それはそうだろう。俺がこんなことをするなんて思ってもいなかったはずだ。 「美紅ちゃん……エッチ、したいんでしょ?」 「あっ、ぅ……」 「教えてあげるよ、エッチのやりかた……」 美紅ちゃんは真っ赤になって顔を背けてしまう。 俺は小さな膨らみに手を乗せたまま、ゆっくりと撫でる。 「まずは、こうやって……おっぱいからするんだよ」 「んっ、あぅっ……」 彼女はびくんと震える。ぎゅっと眼を閉じている。 まだ六年生になったばかりなのに、感じているのだろうか── 二度の彼女の悪戯で萎みかけていたはずの俺の欲望は、そんな彼女の反応に ふつふつと滾りはじめていた。 俺は美紅ちゃんのTシャツの裾から、右手を侵入させた。 すべすべの瑞々しい肌が、俺の劣情を刺激する。 本気になっちゃいけない── ほんの少しだけのつもりだ。美紅ちゃんが本気で嫌がる前にやめるのだ。 「んっ、ふぁっ……」 しっとりとした幼い肌を撫でると、美紅ちゃんは艶っぽい吐息をもらして 身をよじらせた。 そのまま手を奥に進めてゆく── 俺の腕に引っ張られるようにTシャツが捲れ上がり、彼女の白いお腹が露に なった。 ゆるやかな腰のくびれは、彼女の身体がじょじょに大人へと成長しつつある ことを如実に表している。 なだらかに窪んだお腹と、小さなおへそが可愛らしい。 指先に触れた柔らかな生地は、コットンだろうか。 厚手のTシャツの上からではよくわからなかったが、彼女もブラジャーを しているようだ。 ブラジャーというよりは、ハーフトップというやつだろうか。薄いパッドが 入っているらしいのが判る。 「あっ、はぅっ!」 さらに奥へと進めると、美紅ちゃんは逃れようと身をくねらせる。 だが、左手で手首を押さえられ、馬乗りにされていては逃れられるはずもない。 いくら彼女の背が高いといっても、大人の男の力には敵うはずもない。俺は ほとんど力を入れることなく、彼女の動きを封じていた。 彼女をこのまま犯してしまうことなど容易いだろう── 「ん、ゆうちゃん……ふぁっ!」 俺の手が柔らかな乳房に重なる。 ゆっくりと膨らみをなぞるように指を滑らせてゆく。 「んっ、あぅっ……」 美紅ちゃんはぴくぴくと震える。 感じてるんだ── そう思うと、俺はますます興奮してしまう。 「んぅっ! ふぁ……」 胸を覆う布地の上からまさぐる。 薄いパッドを通して、わずかに硬直した乳首らしき突起を発見した。 「んぁっ! はぅっ!」 指先で周囲を撫で、弾くように指を走らせると、美紅ちゃんはびくびくと 身体を弾ませた。 「やっ、ふぁ……ひゃぅっ」 小さく明けられた口からもれる吐息が、艶を帯びてくる。 やっぱり、感じてる── 美紅ちゃんはもう快感を覚える身体になっているようだ。 しかし、彼女はまだ小学生だ。こんなことをしていい年齢ではない。 俺は大人だ。小学生の少女に、こんなことをしてはダメだ。 欲望に流されそうになる俺に、理性が訴えていた。 そろそろおしまいにしなければ── と、思ったときだった。 「お兄ちゃん……!」 「うわっ!?」 いきなり、後ろから紗希ちゃんが抱きついてきた。 俺は、美紅ちゃんに体重がかかってしまわないように脚に力を籠める。 「紗希……?」 驚いたのは美紅ちゃんもだったようだ。 紅潮した顔で眼を見開いている。 「ちょっ、紗希ちゃん……?」 背中に──小学生とは思えぬほどの豊満な膨らみが当たっている。 「お兄ちゃん……美紅ちゃんを、許してあげて……」 「えっ?」 「美紅ちゃん、悪気はないの……冗談だから……」 どうやら、俺が本気で美紅ちゃんを襲っているのだと勘違いしたようだ。 「だ、ダメなら……わたし、代わりに……」 「えぇっ……!?」 「わたしの、お、おっぱい……触って、お兄ちゃん……」 何を言いだすんだ、この子は── 「ちょっと、あのさ、紗希ちゃん……?」 紗希ちゃんは抱きついたまま、俺の腕を掴んで美紅ちゃんから離そうとする。 美紅ちゃん以上に力のない彼女では、そんなことは適うはずもなかったが、 俺は苦笑しながら手を引き、身体を起こした。 「いや、えっと……紗希ちゃん、だいじょうぶだから、ね?」 「お兄ちゃん……?」 「だから、ちょっと、放してくれるかな?」 紗希ちゃんがおずおずと俺の身体から離れる。 俺はすぐに美紅ちゃんの上からどいた。 「いや、ごめん……俺も冗談。もう、すぐやめるつもりだったんだ……」 なんと説得力のないセリフだろうと自分でも思う。 半分本気になりかけてたのはどこのどいつだ──と脳内でセルフ突っ込み。 「冗談……?」 「まぁ……悪ふざけ、かな?」 泣きそうな顔の紗希ちゃんの頭を撫てやる。 紗希ちゃんはうつむいて、潤んだ眼で上目遣いに俺を見つめる。 「美紅ちゃんも……ごめんね。嫌だったろ?」 ははは、と照れ隠しに苦笑する。 「ちょっと、やりすぎた……ごめんね」 美紅ちゃんは捲れ上がったTシャツの裾はそのままに、自分の胸にてのひらを 重ねて、やはり潤んだ眼を俺に向けていた。 「い、嫌じゃ……なかったよ……」 「えっ──?」 まいった──これは本気で想定外だ。 俺の眼前で、美紅ちゃんと紗希ちゃんが、並んで座っている。女の子座りと いうか、あひる座りというか──床に、ぺたんとお尻をつけている。 背が高く大人びた雰囲気だが、細身で胸の膨らみも控えめな美紅ちゃん。 小柄で華奢、まだまだ子供っぽいのに、胸は大人でも羨むほどの紗希ちゃん。 ふたりの前に座っている俺は、彼女らが自分でTシャツを捲ってゆく姿を、 夢でも見ているんじゃないかという気持ちで眺めていた。 「気持ち、よかった……もっと、してほしい、かも……」 美紅ちゃんは恥ずかしそうに、か細い声でそう言ったのだ。 俺は耳を疑った。 そして、さらにこうも続けたのだ。 「紗希も、してもらいなよ……気持ちいいよ?」 紗希ちゃんは驚いたように美紅ちゃんと俺を交互に見て、小さく頷いたのだ。 これは、やばいだろう── 俺の中の真っ当な人格が、お前は犯罪者になるつもりかと言っていた。十三歳 未満の少女に手を出せば、同意の如何にかかわらず、強姦罪── 俺のダメ人格は、こんなチャンス、あとにも先にも二度とないぞと言っていた。 誰にも知られなければ問題ない。バレなければどうということはない── いや、刑罰の問題ではない。 成人男性として、まだ小学生の幼い少女に淫らな行為をするということ自体が 間違っている。 これもきっと美紅ちゃんのどっきり── いや、それはありえない。 彼女だけならまだしも、紗希ちゃんがそれに乗っかることありえない。 ふたりはもう、無防備にも白いお腹を曝している。 なだらかな双丘の美紅ちゃん。 こんもりと膨らんだ紗希ちゃん。 あとすこしで、ふたりの胸を覆う下着が見えてしまう。 見たい──ふたりの乳房を見たい。 止めろ──大人のお前が止めなくてどうする。 「ゆうちゃん……」 「お兄ちゃん……」 潤んだ眼で見つめるふたり── 理性と欲望の勝負──結果は分かりきっていた。 ごめんなさい、お母さん。息子はダメな男になってしまいました。あなたの 教育が間違っていたわけではありません。僕がひとりで勝手におかしな人間に なってしまっただけなんです── ついに、ふたりの膨らみを包む布地が露になった。 美紅ちゃんは、淡いピンク色のハーフトップ──少しだけ膨らんだ可愛らしい 胸をすっぽりと覆っている。 紗希ちゃんは、白いシンプルなブラジャー──小学生とは思えぬほどに大きく 膨らんだ乳房は、深い谷間を作っている。 ふたりはTシャツを脱ぎ捨ててしまう。 細い上半身を隠すものは、胸を覆う下着だけ── 俺はごくりと生唾を飲み込んだ。 据え膳食わぬはなんとやら──まさにそんな状況だった。 美紅ちゃんのツインテールの髪が、肩にかかって揺れている。 紗希ちゃんのウェーブした髪は、大きな膨らみに届いている。 「んぅっ……」 「ひゃぅ……」 俺は右手で美紅ちゃんの小さな膨らみに、左手で紗希ちゃんの大きなそれに、 同時に触れた。 ふたりとも、びくんと身体を震わせる。 恥ずかしいのだろう──頬を朱に染めてうつむいている。 「美紅ちゃんのおっぱい……可愛いね」 「はぅっ……んぅ」 美紅ちゃんの、歳相応の膨らみを、下着の上から撫でる。小さな丘は、俺の 手のひらにすっぽりと収まってしまう。 膨らみの中央で、突起がきゅっと硬直しているのがよく判る。 「紗希ちゃんのおっぱいは……ほんとにおっきいね」 「やぅっ、ふぁっ」 紗希ちゃんの、小学生離れした膨らみを、下着の上から揉む。大きな乳房は、 俺の手をいっぱいに広げてようやく収まるほどだ。 柔らかで弾力に満ちていて、小柄な身体とのアンバランスさが刺激的だ。 「やっ、あぅっ!」 紗希ちゃんの突起の居場所も、すぐに見つけられた。 ふたりとも興奮している──俺の愛撫に、幼い欲情を刺激されているのだ。 「どう? 気持ちいい?」 美紅ちゃんの乳房を優しく揉みながら、下着越しに乳首を弾いてやる。 「あっ! んぅ、気持ちいいよぉ……」 「それはよかった……紗希ちゃんも、気持ちいい?」 紗希ちゃんの乳房を優しく揉みながら、その大きさを確かめるように下から 持ち上げつつ、指先で乳首を引っ掻く。 「んっ、ふぁっ……気持ちいいの……」 小学六年生になったばかりの幼い少女たちが、俺の愛撫に可憐に身を震わせ、 色っぽく吐息をもらしている。 俺の劣情は、心臓が鼓動を打つたびに膨れ上がってゆく。ジーパンの中で、 はちきれそうなほどにそそり立っていた。 ふたりの顔も、じょじょに変化してゆく。 羞恥に頬を染めた少女の顔から、官能に昂ぶる女の顔に変わってゆく。 「もっと、気持ちよくなりたい?」 俺が訊くと、ふたりはそろって頷いた。