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前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~ ある日 これは、ある日の物語である。 恐怖とは耐えるものではなく、克服するモノである。とは誰の言葉だったか。 誰だかわからないが、たぶん本当の勇気を知る人だったのだろう。 そんなわけで私は恐怖を克服するために留守中の記録ディスク、例の3本を調べて見ることにしたのである。 べ、別にイケない好奇心が沸いて沸いて仕方がないんじゃないんだからねっ!! そんなこんなで窓閉めてドア閉めてカーテン閉めて、×BOXにDISCを放り込んでスイッチオン。 モニターに映像が映し出される。 四角の中にあの字の入ったロゴが出る。凝ってるな。 尋問中のロングビルが映し出される。尋問しているのはワルド様だ。 ハズレだ。ちっ カツ丼を奨められてる。アレっておごりじゃないのよね。 フーケがふくれっつらでカツ丼を突っ返すと、 ワルド様は懐からマヨネーズを取り出してぶっかけて自分で食べてしまった。 ワルドさま・・・・・。ナニやってんのかしら。私恥ずかしい。 その後、レコンキスタの使いを名乗る傘をかぶった鎧の男WDによって牢獄から解放されるフーケ。 隠密用『うぉーどれす』:『静寂』とテロップが入った。 そしてそのままラ・ロシェーヌで待ち伏せを命じられる。 命令はやってくるピンク髪、つまり私たちを襲えというものだ。 命を救われ、復讐でき、大金を弾まれ、よいパトロンもつくと言われ、了解するフーケ。 ラ・ロシェーヌの宿屋の一室を借り切り、街道を見張っているフーケ。 5分後 フーケに動きなし。 10分後 動きなし。アホらしくなったので早送りすることにする。 1時間後 動きなし 半日後 ダレてきている。 1日後 傘の男が現れて、いらただしげに命令の変更が命じられた。『大木』を盗めというのだ。 さすがに躊躇するフーケ。 貴族を襲うならともかく、歴史的な港を破壊するのは貴族だけではなく平民にも影響が出る。 盗賊としてのお尋ね者から、国の威信をかけたテロ犯にランクアップしてしまう。軍や憲兵に追われることになる。 男が実名で呼びかけるマチルダ・オブ・サウスゴータ。フーケはアルビオン人だったのか。 そして彼女の家族はティファニアというそうだ。 家族がどこにいるのかはまだ知らない、だが私はBALLSの網の一部を握っているので、見つけるのは時間の問題だ、と脅されてる。 ボイスチェンジャーで声を変えているが、私にはわかる。こいつは悪党だ。メイジの風上にも置けない。 フーケがあきらめて折れた。 ゴーレム出して、ラ・ロシェーヌの木の枝をもぐの手伝わされてた。 なんてことだ。 2日後 フーケが悪態つきながらいなくなった。 なるほど………これはたしかに放置プレイだ。 始めだけは。私はネタ動画見るテンションで見てましたよ。 後半は裏事情の暴露だ。 ミス・ロングビル、もといフーケが脱獄したのか、これは注意しないといけないかもしれない。 あと、家族のために脅されていた。傘の男のBALLSの情報網を握っているという言葉も気になる。 あの傘の男には貴族としての誇りはないのだろうか。 あと、姫様の手紙の件がいつのまにか情報漏れしていたことも気になる。 フーケは尻尾をつかまれることになったことが原因でBALLSが嫌いになり、BALLS排斥論者になってるらしいが、余計に嫌いになってるだろうな。 次だ、気を取り直して次いってみよう!確立2分の1! さあ、百合が出るか、蛇が出るか…………。 画面一面に映る肌色のもの。ちょっとかぶりつき。 カメラがゆっくりと引きになっていく。だんだんと見えてくる。前ふり長い、はよしろ。 だんだんと見えてくる、汗ばんだ肌。躍動的に動いている。 だんだんと見えてくる上半身裸の背中。 なんだかいけないもの見てる気がしてきた。そわそわ。 肌がキレイでつるっとしてる。 だんだんと見えてくる上半身裸のつるっとしたハゲアタマ。 ………………………………………。 ………………………………………。 蛇がでた。コッパゲだ。しかも何故か髪の毛を植える前のコッパゲだ。何故脱いでる。 「おはよう!ミス・ヴァリエール!!」 おいおい、いきなり名指しで呼ばれましたよ。一体どういうことですかコレは。 「今回の任務を伝えよう。」 何の任務ですか。それはいいから画面に顔近づけすぎです。マイク吹いてますよ。 「魔法学園中の靴下を集めろ!」 いやです。いやすぎます。もう勘弁してください。 そもそも学園中の靴下はアンタが狩り集めて品薄状態です。 「なお、このDISCは自動的に消滅する」 な 爆発 …………………………。 わ、わたしの×BOXが・・・これでは最後の一枚が見れない。 そんな光景を見ていたグランパ曰く、これは仕様です。なめんな。 …………………………。 ってアンタ見てたの!?ドアが開いていた!?しまった鍵かけ忘れてた!! ナニ見てんのよ! 出て行きなさい!!出て行かないなら私が出て行くわぁ!! 衝動的に杖と本を引っつかんでダッシュ。 寮から出て、最近なんか近代的になっている研究室に飛び込む。 エオルー・スーヌ…… くねくね踊ってるもじゃ毛コッパゲ上半身裸(ら)に爆発! 轟音 発明は爆発だ アフロになって散るヅラ頭。 ああ、夢にまで見た初めて系統に目覚める瞬間を、まさかこんな形で迎えることになろうとは…………。 …………。…………。…………。…………。 系統に目覚めたけど別にどうってことはないわね。私が悪いのか、場所と時が悪いのか…………。 ともかく、これで明日から安心して靴下が履ける。 アレ?そもそも私は何してたんだっけ? 次の日 コルベール先生はアタマも性格も元のコッパゲに戻りましたが、くつした狩人なのは変わりませんでした。 最後の一枚のDISCもいつの間にかどこかに消えていた。 私が18歳未満だったかららしい。なら最初から出すな。 ある日 モンモランシーが水兵ふくにスカートとマントという格好で授業に来ていた。 ギーシュはメロメロだ。マリコヌルは息が荒い。コルベール先生はカモメのアップリケ靴下に釘付けだ。自重自重。 私が授業でコモンマジックを成功させたらみんなビビッていた。失礼な。 すると、まっさきにキュルケが拍手し始めた。 続いてグランパ、ギーシュ、タバサ、先生、モグラ、竜と拍手し始めた。 みんなも拍手し始めた。集団心理というヤツだ。大勢がやってるのなら、自分もやらないと居心地が悪くなるというアレだ。 最後にシブイ顔でモンモランシーも拍手し始めた。だからギーシュとはなんでもないんだって。 「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」「おめでとうきゅいきゅい(CV若本)」 「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」「きゅいきゅい」 「べ、別にうれしくなんかないんだからね………」 拍手が続く。 「……………ありがとう」 私は補完された。 さて、めでたく補完はなされたものの、私が系統魔法を使えないという事実は残るわけで、どうにかならないものだろうか? 虚無の魔法を使いこなせるようになったら、他の属性の魔法も使えるようにならないだろうか? フライとか、フライとか、フライとか 錬金とか、錬金とか、錬金とか せめて見かけだけでも普通のメイジらしく見せたいものだ。 そんなことを考えながら私は机にペンを置いた。 お、脳年齢がエレオノール姉さまと同い年になった。 翌日 BALLSたちが何故かHAYAKAZEと金延べ棒を持ってきた。 コレで私に何をしろと言うのだろう? モンモランシーの服装は水兵ふくのままだったが、ギーシュが失言して怒らせると、元の学園制服に戻っていた。 どうもギーシュとの仲の進展に関係があるらしい。 ちなみに、ドキドキしてじらされて外されたからこそ虚無が発動したのでした グランパの性格が悪ければ計画通り!といっていただろう 前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~
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虚無の曜日。 休日であるこの日、シエスタは朝早く自分の服を掃除し、洗濯する。 一通り部屋の掃除を終わらせた後、マジックアイテムの入ったポーチを腰に付け、マントは畳んで小さなバッグにしまい込む。 一般的なメイジ達よりも小さく作られた杖は、腰ではなく脇の下に下げて、外出の準備を終えた。 魔法学院の裏門で、貴族用に作られた靴よりも丈夫に作られた靴の紐を確認する。 シエスタの曾祖母が伝えたという”ブーツ”という靴らしい。 忘れ物がないか再度確認すると、シエスタは駆けだした。 走りながら考える。 貴族の生徒達と一緒に授業を受け、最初に感じたのは恐怖だった。 何せ貴族の使う魔法は、この世界で無くてはならないものであり、同時に平民を蹂躙する力でもある。 貴族の生徒の中に放り込まれ、シエスタは泣きそうになった。 だが、シエスタという異質な存在を受け入れさせるため、オールド・オスマンはルイズを利用する。 オールド・オスマンは、土くれのフーケを道連れにルイズが起こした爆発の規模を教師陣に説明し、一つの仮説を立てた。 「ミス・ヴァリエールは魔法を『失敗』していたのではなく『暴走』させていたのではないか」 魔法の暴走などという事象は聞いたこともない。 しかし、その破壊力と、自分自身までをも傷つけてしまう危険な魔法がこれから先現れないとも限らないとし、トリスティン魔法学院は既存の魔法だけではなく、文献に残された『特殊なケース』に目を向けることになる。 それが他ならぬオールド・オスマン自身であり、シエスタでもあった。 魔法の原理を研究するため、自身の身体を実験台としていたオールド・オスマンは、まったくの偶然で長寿を手に入れたと説明した。 もちろんこれには『波紋』が関わっているが、その事はロングビルとシエスタ以外には伏せられている。 シエスタの場合は、曾祖母リサリサが『東方より癒しの力を伝えた人物である』と説明することで一応話はまとまった。 この背後には、ルイズの母、カリーナ・デジレの働きもある。 若きメイジ達の育成に細心の注意を払い、未知の現象をただ『失敗』と断じるのではなく、その原因究明に勤めるようにとメッセージが届いたのだ。 また、意外なことに、魔法学院の教師の一人『疾風のギトー』がシエスタを評価してくれた。 疾風のギトーは風系統のメイジであり、風の魔法に強い自信を持っている。 授業が始まれば「風は最強だ」「風に勝る属性はない」ばかりを繰り返し、度が過ぎるためか、同じ風系統のメイジからも煙たがられている。 その評価が変わるのは、ギトーがシエスタを指名した日だった。 「……む、今日から一人多いのだったな、右奥の君」 「はっ、はい!」 「ミス・シエスタだったかな、オールド・オスマンから話を聞いている」 シエスタは突然名前を呼ばれ、緊張して返事が上ずってしまう。 「早速だが、私の属性は風、二つ名を『疾風のギトー』という」 依然、シエスタに視線を向けたままのギトーは、杖を取り出して得意げに言った。 「諸君らの前で、風が最強であることを示そう。折角だ…ミス・シエスタ、君の得意な魔法を私に放ってみたまえ」 「えっ!?」 「オールド・オスマンが言うには、君は特殊な魔法を使うそうだな、良い機会だと思ってね」 シエスタは驚き、慌てたが、そこでキュルケが助け船を出した。 「ミスタ・ギトー。ミス・シエスタは治癒に特化したメイジですわ、そんな彼女に人を傷つけさせようなどと仰っては、疾風の名が泣きますわよ」 キュルケの言葉を聞いて、ギトーが顔を綻ばせた。意外だった。 「ほう!治癒か!これはいい、なら是非それを見せてくれないか」 「えっ…えっと…」 シエスタが困ったように辺りを見回す、すると、窓際に置かれている花瓶に気が付いた。 いつも手入れされている教室には珍しく、何本かの花は枯れかけていた。 シエスタはおもむろに立ち上がり花瓶に手を当てると、呼吸を整える。 そしてオールド・オスマンの言葉を思い出す。 『君はいつも、重い物を持ち上げる時、呼吸を整えてから持ち上げるそうじゃな?それをやってみたまえ』 大丈夫。 何回も練習した。 だから大丈夫。 シエスタは身体の中を流れる”何か”を感じていた。 呼吸をする度に身体の内側から”何か”が流れていく。 呼吸がそれを押し出すように、一定の方向にそれを向かわせるように、ゆっくりと確実に呼吸を整えていく。 生徒達の耳に、コォォォォォォォ…という風のような音が聞こえたかと思うと、花瓶に挿された花に異変が起こった。 つい先ほどまで萎れていた花が、水分を吸収できずに枯れかけて変色した花が、まだ花の咲かぬ蕾のまま腐りかけた花が、だんだんと生気を取り戻していく。 三十秒ほど続けた後、花は生けられた時のように、いや、野に生えるよりも活き活きとその花を咲かせた。 そして教室にふわりと風が舞う、実際には窓の閉められた教室で、魔法も使わずに風が起こるはずはない。 花から漂ってくる香りが、まるで風のように教室中に舞ったのだ。 それと同時に、シエスタの身体が光り輝いて見えた生徒も居たが、目の錯覚だと思い黙っていた。 「素晴らしい…」 ギトーが、呟いた。 ギトーの言葉は生徒達にとって意外なものだった。 何人かの生徒は、シエスタの魔法(波紋)を見て『それぐらい水のメイジなら誰だって出来る』と言おうとしたが、ギトーの言葉にそれを挫かれた。 「諸君、風は最強だ、すべての障難を吹き飛ばし、また風は偏在する」 そう言いながら杖でシエスタの席を指し、シエスタに自席に戻るよう促す。 「だが今の治癒を見て分かるとおり、治癒に適する水の魔法のようなことはできない、風は最強であるが故に攻撃に特化しているのだよ」 それから一時間、授業は皆の予想とは違う方向に進んだ。 相変わらず『風は最強だ』とか『風は何者にも負けない』と繰り返すが、それは攻撃手段としてのもの。 最強だからこそ、『傷』を癒す『水』のメイジを、風の系統が保護してやらねばならないと熱弁していた。 シエスタをからかってやろうと思っていた貴族は出鼻を挫かれたのだ。 不満そうに腕を組んで黙り込んでいたのを見ると、ギトーの言葉に驚いたが納得はしていない様子だ。 授業が終わると、興味を牽かれた生徒達から質問攻めにされ、シエスタはしどろもどろになりながら”波紋”について答えた。 オールド・オスマンから口止めされている部分もあるので、詳しく説明することは出来なかった。 しかし、水の魔法と違い生命を癒す能力に特化していると説明すると、特殊な治癒魔法の使い手として生徒達に受け入れられるのだった。 それには、ルイズの死が関係している。 微熱のキュルケ、風上のマリコルヌ、青銅のギーシュ、香水のモンモランシーは特にルイズのことを良く覚えていた。 常日頃馬鹿にしていた相手が、その失敗魔法が原因で死んだというある種のトラウマがあるのだ。 ルイズは爆発を起こすという特殊なケースだった。 今度のシエスタは、爆発ではなく癒しの力を使う。 ある者からは贖罪のためにシエスタを受け入れ、ある者からは癒し手としてシエスタを受け入れ、ある者は成り上がりの平民を嫌い、そしてタバサは……… 「……もしかしたら」 シエスタの”力”に、一つの可能性を期待していた。 魔法学院から馬で二時間ほどの距離にある、小さな池。 ルイズが死んだと言われている場所だが、オールド・オスマンが言うには、訓練に丁度良い場所らしいい。 シエスタはここで”波紋”の訓練をしろと言われていた。 ここにたどり着くまで、シエスタは馬と大差ない速度で走り続けていた。 そればかりか、途中で休憩すらしていない。 タルブ村にいた頃は、一日がかりで山菜を採りに行くこともあった。 重い荷物を遠くから運んでくることもあった、しかし、これほど長距離を休まず走り続けた事があっただろうか。 シエスタは、自分の身体の中に、不思議な力がわき上がってくるのを実感した。 一通りの訓練を終えて、夕焼けが射す頃に、シエスタは魔法学院に帰還した。 「失礼します」 「鍵はかかっとらんよ、入りなさい」 シエスタはオールド・オスマンに一日の様子を報告した。 訓練の内容、成果、それらを毎日報告しろと言われていたのだ。 今日はロングビルが休みのため、学院長室にはオールド・オスマンとシエスタの二人しかいない。 「よく分かった、やはり水の上に立つのはまだ無理かのう」 「はい…申し訳ありません…」 「……ついこの間まで平民として過ごしていたんじゃ、上達が遅いのは仕方ない。…しかし、こちらにも急がねばならぬ理由があるんじゃ」 「理由、ですか?」 オールド・オスマンは、懐から一冊の本を取り出した。 それは土くれのフーケに盗まれ、ロングビルが持ち帰った『太陽の書』だった。 「それは、この間の本ですね」 「うむ、いいかねミス・シエスタ、これから言うことを誰にも言ってはならんぞ」 「…はい」 オスマンがディティクトマジックを唱え、次にサイレントの魔法を唱える。 」 「君がタルブ村から持ってきた、ひいお爺さんの日記は読ませて貰ったんじゃが…ワシには全部は読めん。この『太陽の書』と同じ、異国の文字で書かれておるようでのう」 「はい、その本も、日記も、ひいお爺さんの生まれた国の文字で書かれてるそうです」 「そうじゃろう、そうじゃろう。そして君はその文字を教わっている…と。」 オールド・オスマンは『太陽の書』のあるページを開き、それをシエスタに見せた。 「このページを読んでみなさい、君なら読めるはずじゃよ」 「はい。えーと…」 『この仮面は人間を吸血鬼に変身させ…』 学院長室に、シエスタの音読する声だけが響く。 しかし、シエスタの声はだんだん小さくなっていき、一ページ読み終わる頃には顔が青ざめていた。 「吸血鬼って、怖いんですね…本当にひいお婆ちゃんが、こんな吸血鬼と戦っていたんでしょうか」 「………ショックを受けるのはまだ早いぞ、これを見たまえ」 オールド・オスマンが差し出したのは小さな箱、中には復元された『石仮面』が入っている。 「これって、この本に書かれている『石仮面』ですか?」 「本物は唇と顎の部分じゃ、他は全部復元した物であって、人間を吸血鬼にしてしまうような効果はないわい」 「そうなんですか…でも、これが存在するという事は、吸血鬼が存在するって事…ですよね」 「まあ、そういう事になるじゃろうな」 「それじゃあ、私は、この石仮面で吸血鬼になった人を……退治するために魔法学院に入学させられたんですか」 オスマンは無言で頷いた。 「無理に、とは言わん、だが、人間と吸血鬼を区別できる魔法など、存在しないんじゃよ。その”波紋”意外にはのう」 「……わかりました、やります、私、自分にできることをします」 「ルイズ様が仰っていました、貴族は貴族の、平民には平民の、一芸に秀でた物には一芸に秀でた物としての役割があるって…ですから、私、精一杯やってみます」 オスマンはにっこりと微笑んだ。 しかし、微笑みの仮面の裏に、途方もない罪悪感があることを、シエスタは知らない。 To Be Continued → 17< 目次
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前ページ次ページ使い魔の炎 「姫に近づくんじゃねえ…!!」 傷だらけの烈火。 身を挺して君主であるルイズを守ろうと、渾身の炎を目の前の男に放つ。 しかし、不気味な仮面の男は微動せず、徐々にふたりに詰め寄ってくる。 「レッカ…」 怯えるルイズは烈火の服の裾をギュッとつかむ。 すでに烈火の体は傷だらけだったが、何とかルイズを守るために再び立ち上がった。 なんで…こいつには俺の炎が効かねえんだ!? この男には、自分の炎がまったく通じない。 その事実に、烈火は恐怖を覚えた。 しかし、その恐怖も長くは続かなかった。 次の瞬間、堕天使の姿をかたどった炎に、烈火は飲み込まれたからだ。 そんな…なんでコイツも炎を…!? 「うああああああああ!!」 「ど、どうしたの!? レッカ!?」 烈火は目を覚ました。 いつも通り、ルイズの部屋の藁の上で。 ルイズはベッドの上で体を起こしていた。烈火の悲鳴に驚いたらしい。 「い、いや…なんでもねえ。ちょっと目覚めの悪い夢をみただけだ」 ルイズに心配をかけないために、多少無理矢理気味に烈火は嘘をついた。 「…そう、アンタも夢をみたのね」 微妙な表情でルイズが呟く。 「アンタ"も"? 姫もなんか夢を見たのか?」 烈火の問いかけに、ルイズの顔が一瞬にして赤くなった。 「そ、そんな訳ないでしょ!? 私が夢なんか見るわけないじゃない!」 ルイズは烈火に背を向け恐ろしいスピードでベットに潜り込んだ。 「何怒ってんだ…?」 烈火は考え込んだが、理由がわからなかった。 夢の中の婚約者が、烈火になっている夢をみたなどと、ルイズに言えるはずがなかったのである。 次の朝、いつも通り朝食をとった烈火とルイズは授業に向かった。 授業では、"風"系統の教師であるミスター・ギトーとキュルケが風と炎、どちらが最強の系統であるかを議論、いや口論していた。 口論の始まりは、ミスター・ギトーがキュルケが最初に最強だとあげた"虚無"と呼ばれる幻の系統をただの『伝説』だと言い、自分の"風"系統こそが最強だと言ったことによる。 烈火は、まあ何が最強であろうと関係ねえけどキュルケが危なくなったら助太刀してやろう、ぐらいしか考えておらず、ぼんやり授業を聞き流していた。 そんなことより気になるのは、今朝の夢のこと。 一体あの男は誰だ? ただの夢だと言ってしまえばそれまでだが、あの炎…烈火のものとは似て非なるもの。 不意に、ルイズに肩を叩かれた。かなり長い時間考え込んでいたらしい。 烈火が気づくと、教室は一色触発の空気に包まれていた。 すでにギトーとキュルケからは闘気が溢れでている。 ルイズはこの雰囲気を察して烈火に知らせたのだろう。 「風が最強たる所以を教えてやろう。 ユビキタス・デル・ウィンデ…」 ギトーが呪文を唱え始めた。 これは危ねえな…烈火が立ち上がり、戦いを止めようとした、そのとき。 「あやや、失礼しますぞ!!」 あまりに場違いな声に、思わず烈火はずっこけた。 声と共に教室に姿を見せたのは、似合わないカツラをつけたコルベールだった。 「おや、取り込み中ですか? まあよいです…おっほん。 今日の授業はすべて中止であります!」 コルベールは、トリステインの王女、アンリエッタ姫が魔法学院に来ていることを告げた。 急な事態にキュルケとギトーの争いもなし崩し的に終了し、生徒たちは次々と教室からでていく。 ルイズはふう、と息をついた。 「何も起きなくてよかったわ。 私たちも部屋に戻るわよ、レッカ」 「御意、姫」 烈火とルイズも部屋に戻ることにした。 その夜、夕食を終えたふたりは寝る支度を始めていた。 藁の上、手持ち無沙汰になった烈火は、無意識のうちに右手にはめられた手甲を撫でていた。 その様子が気になったルイズは、烈火に問いかける。 「その手甲、いつもつけてるわね。 何か意味でもあるの?」 「いや…なんかこれ付けてると温かいっていうか…お守りみたいなもんだな」 さすがに母ちゃんと一緒にいるみたい、という子供じみたことは恥ずかしくて言えなかったが、烈火はほとんど思ったままを口にした。 ルイズはふーん、と興味なさそうに呟いただけだった。 そのとき、いきなりコンコン、とドアがノックされた。 ルイズの体がビクッと反応する。 「誰だ? こんな時間に」 烈火が立ち上がってドアに向かう。 ノックは規則正しく、初めに長く二回、それから短く三回…。 ルイズがはっとした表情で立ち上がり、烈火を押しのけて扉を開いた。 扉が開かれるやいなや、真っ黒な頭巾をかぶった少女が、そそくさと部屋に入ってきた。 「…あなたは?」 ルイズが問いかけると、頭巾をかぶった少女は静かに、と口元に指を立て、杖をマントから取り出して軽く振った。 光の粉が部屋に舞う。 「…ディティクトマジック?」 ルイズが尋ねると、少女は静かに頷いた。 「どこに耳が、目が光ってるかわかりませんからね」 周りを確認し終わると、少女は頭巾を外した。 現れたのは、神々しいほどの高貴さを持つ美少女だった。 「…誰だ?」 烈火が間抜けな声をあげるのと、ルイズが使い魔の頭をぶっ叩いたのはほぼ同時だった。 「姫殿下!」 ルイズは慌てて膝をついた。 それを見て姫殿下、アンリエッタは笑みを浮かべた。 「お久しぶりね。 ルイズ・フランソワーズ」 「つまり、こちらの王女様と姫は、幼なじみってわけか」 幼少時代のふたりのおてんばという表現では済まされない思い出話を聞いた烈火の言葉に、ルイズは頷いて答える。 「姫さまがご幼少のみぎり、恐れ多くもお遊び相手を務めさせていただいたのよ」 王女はその言葉を聞いて、深いため息をついた。 「あの頃は、毎日が楽しかったわ。 何にも悩みがなくて」 声には深い疲れと憂いが滲んでいた。 「…結婚するのよ、わたくし」 事態を字面通り読みとった烈火は、明るい声をあげた。 「おお、そりゃ良かったじゃねえか!」 「あんたは黙ってなさい!」 烈火は再び、後頭部を強かに殴られた。 「いてえええ! 何すんだよ姫!?」 そんな烈火を無視し、ルイズは沈んだ声で言った。 「おめでとうございます…」 そこでようやく吹っ飛ばされた烈火の存在に気付いたアンリエッタは寂しさを隠すように笑い、ルイズに話しかけた。 「そこの彼はあなたの恋人なの? ごめんなさい、もしかしてお邪魔だったかしら」 今朝の夢を思い出して真っ赤になったルイズは、慌てて否定しようとする。 「いや、俺は恋人じゃねえ、忍だ」 しかし、烈火はルイズが言うする前に自ら否定した。 「そうです、彼はただの使い魔です」 「使い魔じゃねえ、忍」 「どっちだっていいでしょ!?」 「よくねえよ!」 「いいの!」 「よくねえ!」 つまらないことでにらみ合う二人。 そんな様子を見て、アンリエッタの口元には自然に笑みが浮かんだ。 「ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけど、相変わらずよね」 しかし笑みはすぐに消え、再びアンリエッタはため息をついた。 「姫さま、どうなさったんですか?」 「…わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが…」 アンリエッタの言葉に、ルイズが驚いたような声をあげた。 「ゲルマニアですって! あんな野蛮な成り上がりどもの国にどうして!?」 「しかたないことなのです…同盟を結ぶためなのですから」 ここで烈火もようやく気付いた。 結婚するというのに、アンリエッタが少しも嬉しそうな顔をしない理由。 昔は日本でもしばしばあったこと…政略結婚だ。 「姫さま…」 「しかし、アルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません。 血眼になって婚姻をさまたげる材料を探しているのです」 神妙に話を聞いていたルイズが尋ねる。 「…もしかして、婚姻をさまたげる材料が?」 その言葉を聞いたアンリエッタは、床に崩れ落ちた。 「おお、始祖ブリミルよ…この不幸な姫をお救いください…」 芝居がかった様子で臭いセリフを呟くアンリエッタ。 烈火はわざとらしいその仕草に少しあきれた。 しかし、どうやら君主であるルイズは違ったらしい。 「言って! 姫さま! 何が姫さまの婚姻を邪魔する材料なの!? このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、姫さまの危機となれば、何処なりと向かいますわ!」 興奮した様子でアンリエッタに駆け寄るルイズを見て、烈火は思った。 また面倒くさいことに巻き込まれそうだな。 「で、結局俺らが行くわけか」 朝もやの中、鞍をつけた馬を引っ張り歩く。 「仕方ないでしょ。 他ならぬ姫さまのためなんだから」 予想通りのルイズの返事に、烈火はため息をついた。 烈火は、王女や国を守ることには興味がない。 ルイズの正義感の強さやプライドの高さは承知していたし、そこを気に入って彼女を君主にしたともいえる。 しかし、今回の戦いはギーシュとの決闘のときや『破壊の杖』の件とは事情が違う。 アンリエッタは、明らかにルイズを利用したいだけだ。 この任務はあなたにはやらしたくないだのなんだの言っていたが、部屋に来た時点でやらせる気満々である。 ルイズはアンリエッタを盲目的なほど信頼しているから気づいていないらしいが、烈火は任務とはいえ親友を戦地に送り込むアンリエッタがいまいち気に入らなかった。 それに、いくら本人が望んだとはいえ、本意でない政略結婚のための任務をやる気にはなれなかった。 しかし、大切な君主が自ら動くとなれば自分も行くしかない。 烈火は指を立てた。 「質問もう一個」 「何よ」 「何でコイツがいるんだ?」 烈火は自分の隣を歩く金髪の少年を指さした。 気合い十分の顔でふんぞり返っている。 "青銅"のギーシュだ。 「部屋の外で立ち聞きしてたらしいのよ。 可憐な姫さまを救うって、すっかりその気になってるみたい」 はあ、とルイズはため息をついた。 「二人とも、僕がついているんだから大船に乗ったつもりでいたまえ!」 はあ。 烈火もため息をついた。 「あ、そういえば願いがあるんだが…」 「なによ」 ギーシュにルイズが無愛想に言葉を返す。 「使い魔を連れていきたいんだよ」 「お前に使い魔なんかいんのか?」 烈火がさして興味もなさそうに言う。 「もちろんさ。もう来ているよ」 烈火とルイズは辺りを見回し、それから顔を合わせた。 「「どこに?」」 綺麗にハモった。 「ここだよ! でておいで、ヴェルダンデ!!」 すると、地面が盛り上がり、巨大なモグラが姿を現した。 「ああ、ヴェルダンデ! 可愛いヴェルダンデ! なんて愛らしい! ああ!!」 すさっ!と膝をついてヴェルダンデに頬ずりするギーシュ。 そんなギーシュを烈火とルイズが冷ややかに見つめる。 そのとき、突然巨大モグラがルイズに向き直り、飛びかかった。 「きゃあ! 何すんのよ!」 ルイズの体を鼻でまさぐるヴェルダンデ。 どうやら目的はルイズの指にはめられたアンリエッタからの預かりものである"水のルビー"らしい。 「ああ、ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」 ギーシュは納得という顔。 「主人と同じで女好きなのかと思ったぜ…」 烈火が毒づく。 「あんたら、喋ってないで助けなさいよ!!」 ルイズが悲鳴をあげる。 「いや~、モグラに押し倒される美少女というのも良いもん…フガっ!?」 最後まで言い終える前に烈火はギーシュを殴った。 「良いわけねえだろ!! 姫、大丈夫か!?」 烈火がヴェルダンデをルイズから引き離そうとしたそのとき。 強風がヴェルダンデを襲い、吹き飛ばした。 目を回している。 魔法!? 烈火が振り向くと、そこには剣のような形の杖をかまえた精悍な顔つきをした、長身の男が立っていた。 「誰だ貴様はッ! ぼくのヴェルダンデに何をする!?」 ダメージから立ち直ったギーシュがヴェルダンデを抱きかかえて叫ぶ。 「婚約者がモグラに襲われてるのを見て見ぬ振りは出来なくてね」 冷静な男の言葉を聞いて、烈火とギーシュは目を見開いた。 「こ…婚約者!?」 「ワルドさま…」 ルイズが震える声で呟いた。 「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」 ワルドはルイズを軽々と抱き上げた。 「お久しぶりでございます、ワルドさま」 ルイズは頬を染めている。 それから、男は烈火たちに向き直って言った。 「驚かせてすまない。 君たちに同行することを命じられた。 女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 前ページ次ページ使い魔の炎
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前ページ次ページゼロと波動 「おお!”我らの拳”よ!よく来た!さあ、じゃんじゃん食ってくれ!」 厨房に入ったリュウを、マルトーを筆頭に皆が迎える。 特にマルトーなど超のつく上機嫌だ。 「リュウさん!」 ドオオォンッ!! 奥にいたシエスタもリュウに気づき、満面の笑みを浮かべながら飛びついてきた。 「おおっ!シエスタのハグを受け止めたぞ!」 「俺たちなら数メイルは吹っ飛ぶのにな!」 「流石は”我らの拳”だ!」 ルイズは一緒にアルヴィーズの食堂で食べるように薦めたのだが、 堅苦しい場所が苦手なリュウはそれをやんわり断り、厨房で食べることにした。 それで昼食をとりに厨房に来たところ、この大歓迎である。 「何だこの騒ぎは?」 ギシギシとリュウの胴を締め上げながら顔と胸を擦り付けてくるシエスタを困惑しつつ引き剥がして席に着く。 リュウの前に次々と運び込まれる、明らかに賄いとは思えない豪華な料理たち。 「なあに、祝勝会みたいなもんさ!まさかお前さん、貴族に勝っちまうとはな!」 「俺も見てたぞー!なんて強さだ!惚れ惚れしたぜ!!」 「よっ!我ら平民の希望!!」 貴族嫌いで有名なマルトーを中心に次々と囃し立てる。 「よしてくれ・・・」 ああだこうだと奉りたてられて辟易するリュウ。 こんなことならルイズと一緒に食堂で食べた方がマシだったと後悔するがもう遅い。 「シエスタに聞いたぜ、”ブドー”ってヤツを使ったんだろ?」 「まあ、そんなところだ」 一刻も早く開放してもらえることを祈りながら答えるリュウ。 「シエスタの爺さんも”ブドー”ってのをやってたらしいが、”ブドー”ってのはすげえんだな。あっさりメイジに勝っちまうんだもんなぁ!」 「そんなことはない、彼は強敵だった」 「おお!やはり達人は言うことが違う!達人は謙虚だ!あれだけ実力の違いを見せていながら決して偉そうにしない!」 「いや、別にそういうことでは・・・」 これはもうダメだと諦めるリュウ。 散々騒ぎ立てたあと、マルトーが急に真面目な顔になった。 「なんでも馬鹿貴族からシエスタを庇ってくれたんだってな。俺からも礼を言うぜ」 と言って頭を下げる。 隣でシエスタもそれに倣う。 「よしてくれ。そんなんじゃないんだ。俺はおかしいと思ったからそう言っただけだ」 「やっぱり達人は言うことが違う!!」 再び大喝采。 「ルイズ・・・助けてくれ・・・」 リュウの魂の呟きは喧騒に掻き消され誰の耳にも届かなかった。 ようやく開放されたリュウは中庭で一人立っていた。 足を肩幅に、肩と平行に開いて爪先を若干内側に向け、膝を軽く曲げて左の拳を前に、右の拳を腰に据える。 「ふんっ!」 パアンッと言う風を切り裂く鋭い音と共に凄まじい速度で突き出される拳。 一瞬、拳の先の空気が揺らぐ。 あまりに速いため、拳の先の気圧が跳ね上がって蜃気楼のような現象がおこる。 そこに近づく一人の少女。 碧い髪に碧い瞳でルイズよりも一回りほど小さい身体に、自分の身の丈ほどもある大きな杖を持っている。 確かキュルケと一緒にいた少女だ。 「君は・・・」 「タバサ・・・」 「そうか、で、どうしたんだ?タバサ」 「聞きたいことがある・・・」 年齢に似つかわしくない、全てを見透かすような瞳でリュウを見つめるタバサ。 顔には一切の表情がない。この齢にして、きっと幾つもの辛い思いや修羅場を経験したのであろう。 そしてまた、この少女が強さを求めるあまり、自ら修羅の道に進もうとしていることをもリュウは感じ取っていた。 「なんだい?」 「あなたは決闘のとき手加減はしないと言った」 「ああ、手加減はしなかった」 「でもあなたはまったく本気じゃなかった。なぜ?」 表情の無い顔のまま問うタバサ。 「本気じゃなかったワケじゃない。あれは俺の求める答えなんだ」 「答え?」 タバサが繰り返す。 ―― 一撃必殺 風の拳 ―― この少女には伝えてやりたい。 そう思い、リュウは静かに語り始めた。 「俺は”真の格闘家”を目指して生きてきた。 そして、その道の中で俺の前に立ちはだかったのは”拳を極めし者”と呼ばれる男だった」 黙って耳を傾けるタバサ。 「彼は無類の強さで全てを破壊しつくした。”殺意の波動”と共に。 ひとたび拳を振るえば全てが終わる。正に”一撃必殺”を具現した男だ。 その強さといい、生き様といい、確かに彼は”真の格闘家”だった」 「サツイノ・・・ハドウ・・・」 タバサが尋ねる。 「ああ、彼や・・・俺の中にもいる。あまねく全てを破壊しつくす、魂の化け物みたいなものだ。 それに取り込まれると・・・まあ、一言で言えば修羅になる。」 「修羅・・・」 タバサが繰り返す。 「そう、修羅だ。だがそれは俺の求める強さとは違った。」 自分の拳を見つめながら続けるリュウ。 「最初、俺は”殺意の波動”を俺の中から追い出そうと思った。 だが、それはできなかった。 ”殺意の波動”は俺の中に流れているんだ。それを消し去ることはできない。 だったら飼い慣らすしかないだろう? 暴走する力を抑えつけるのもまた修行だな・・・ おかげでほんの入り口程度なら、なんとか理性を保ったまま扱えるようになった。 もっとも、あまり好き好んで使うような力ではないがな。 ただ、残念ながら単純な破壊力として”殺意の波動”を上回るモノが今の俺にはまだない。 だから、使うべきときには使う」 そう言いつつ複雑な表情で自分の拳を見つめるリュウ。 「だが、破壊することが全てではない。現に俺の暴走した”殺意の波動”によって一度倒れた男は、再び俺の前に立ちはだかってくれた。 ”殺意の波動”では『倒す』ことはできても『勝つ』ことはできないんだ」 リュウの話に引き込まれていくタバサ。 「そして、俺は真の強さとは何かを考えるようになった。 それを教えてくれたのが一本の大木だった」 「大木・・・」 タバサが呟く。 「風には色も形もない。 じゃあ風はどうすれば自分の存在を知らしめることができると思う? 大木をなぎ倒せばいいのか・・・?全てを吹き飛ばせばいいのか?」 タバサは首をかしげ、しばらく考え込む。 「ほんの少し、ほんの少し木の葉を揺らしてやればいい。それで十分だ」 リュウの言葉を聞いてタバサの顔が、何かに気づいたようにはっとする。 「それが俺の一撃必殺”風の拳”なんだ」 改めて自分の拳を握り締めるリュウ。 「ただ、魔法を相手に闘うのは初めてだったから上手くいかなかったけどな。 だから、俺が未熟だっただけで手加減してたワケではないんだ」 笑いながらタバサの頭をクシャクシャと撫でる。 その大きな手に、タバサは自分の中にある氷のようなものが溶けていくような気がした。 タバサがリュウに対して心を開き始めていた頃、その一部始終を建物の陰から見ていた人影があった。 「何の話をしてるのかしら?ま、それはいいとして、ええと・・・確か・・・」 足を肩幅に開き膝を軽く曲げ、左手を前に、右手を腰に据える。 「こう・・・だったかしら・・・?見よう見まねで・・・」 腰を回転させ、同時に握り締めた右手を思いっきり突き出してみる。 「えいっ!」 グボンッ! 可愛らしい掛け声とは対照的に響き渡る轟音。 「ひっ!?」 驚いた人影は慌ててその場を離れた。 スカートの両端を指で摘み上げ、一目散に逃げる。 「なんだ!?今の音は?」 急いで音のした方へ向かうリュウとタバサ。 そこで見たものは、驚異的な速さで走り去っていくメイドの後姿と 建物の壁に開いた大きな穴だった。 後日談としては、固定化の魔法がかかった壁に穴を穿つなどという常識外れなことができるのはリュウぐらいしかいないとルイズに疑われたが、 同席していたタバサが彼の無実を証明してくれてほっと胸を撫でおろすリュウであった。 その日の晩のルイズの部屋 「・・・やっぱりわたしと一緒にアルヴィーズの食堂で食べれば良かったじゃない」 一通り話を聞いてふてくされたように言うルイズ。 「まったくルイズの言う通りだ」 厨房での扱いを思い出して苦笑いを浮かべるリュウ。 「それにしても・・・その服をまずなんとかしたいわね」 リュウの全身を見渡す。 「服もボロ布だし、だいたい裸足だなんて平民云々以前に蛮人よ・・・ ホント、物乞いと言われても仕方ない格好ね。どれだけ貧乏人だったのよ」 歯に衣着せぬ物言いのルイズ。 「これは道着と言ってな、これを着てると気が引き締まる。ボロなのは俺と一緒に修行の日々を過ごしてきたからだ。本当にダメになったら新調するさ。 それに、靴は好きで履かないんだ。買えない訳じゃない」 「ダメ。とにかく、そんなんじゃヴァリエール家の使い魔として相応しくないわ。 今度の虚無の曜日は授業がないから、町にアンタの服を買いに行くわよ」 「いや、だから、これは道着でだな・・・」 「ダメったらダメ!!買いに行くの!!ついでにアンタの剣も買いたいしね」 「剣?それはいらん。俺は剣の使い方なんて知らんしな」 リュウが困惑気味に答える。 「え?アンタ、それだけ強いのに剣の扱い方も知らないの?」 驚くルイズ。 「ああ、握ったこともない」 「へぇ・・・もったいないわねぇ・・・せっかくなんだしこの際、剣も覚えたら?」 ――ううむ・・・ルイズはどうしても俺に剣を持たせたいらしい―― 確かに何も知らない少女に格闘家のなんたるかを説明しても理解してもらえるとは思えない。 どうしたものかと考えた末、良い言い訳を思いついた。 「それにな、自分で言うのもなんだが、俺は割りと力が強い。俺が振り回したら剣の方が折れると思うんだが・・・」 青銅製のゴーレムをまるで紙細工のように扱っていたことを思い出し、ルイズも渋々納得する。 「確かにそうかもね・・・でも、やっぱり剣は買うわ。使わなくてもいいから持ってなさい」 結局、見た目を優先するルイズなのだった。 ルイズとリュウの二人はトリステインの城下町を歩いていた。 すれ違う人々がマントを羽織ったルイズを見て、貴族に絡まれてはたまらないと道を空け その斜め後ろを歩くリュウを見てその肉体の見事さに溜息をつく。 「ここがブルドンネ街よ。トリステインで一番の大通りなの」 自慢気にルイズが説明する。 「なるほど、確かに賑やかだな」 確かに人通りは多いがリュウの感覚としてはどちらかと言うと狭い通りだ。 機械技術など皆無のこの国でそれほど大掛かりな都市整備はできないのだろう。 だが一応、ルイズの機嫌を損ねないように話を合わせておく。 普段は学院内で生活している上、必要なものは全て揃っているので街まで来ることは滅多にないのだろう、ルイズも楽しそうにしている。 っていうか、これってデートってヤツなんじゃない周りからはわたしたちってカップルに見えてるのかしら平民のクセに貴族とデートできるなんて生意気ね などと思いながら頬が緩みっぱなしのルイズ。 冷静に見てみると結構気持ち悪い。 幸いリュウはルイズの斜め後ろについているので、ルイズのニヤけた顔が見えていなかったが。 「じゃあまず、服屋さんね、アンタの服を見繕うわ」 「だから、何度も言うがこれは大事な服で、これ以外の・・・」 「しつこい!ダメ!買うの!」 がっくりと項垂れるリュウを連れてご機嫌で服屋に入るルイズ。 「いやぁ・・・旦那の体型に合う服なんてちょっと置いてませんねぇ・・・」 規格外の筋肉質であるリュウに合う服など置いているはずもない。 「じゃあ、仕立てて頂戴。デザインは・・・そうねぇ」 チラリとリュウの方を見る。 「今着てるのと同じデザインのでお願いするわ。できる限り頑丈な素材で作って頂戴」 どうやら道着を作ってくれるらしい ほっと胸をなでおろし、「ゆったりと作ってくれれば、後は適当でいい」と言いながら店の主人の採寸に応じるリュウ。 採寸するために道着の上を脱ぐと、そこから現れたのは改めて主人の度肝を抜くような盛り上がった筋肉と そしてルイズの度肝を抜くような大きな傷跡だった。 「ちょ・・・ちょっとリュウ?何、この傷跡・・・」 胸の辺り、ギリギリ道着で隠れるか隠れないかという辺りと、その丁度裏側にあたる背中の大きな傷跡。 どうみても身体を貫通しているようにしか見えない。 「ああ、ちょっと前にな」 こともなげに言うリュウ。 身体のこんな場所を貫かれても、人間は死なないものなのだろうか? それ以前に、何をしたらこの途轍もなく強い男にこれだけの傷を負わせることができるのだろう。 ルイズのリュウに対する疑問、興味は増す一方だった。 そしてその興味と畏敬の念が、年頃の少女の例の漏れず恋愛感情を加速させつつある。 もっとも本人はそれを認めようとしなかったが。 次にルイズが目指したのは武器屋だった。 小さな路地裏に入り、どんどん奥の方に進んでいく。 ゴミや汚物が道端に転がり、すえた臭いが鼻をつく。 リュウは辺りに気を配りながらルイズの後をついていった。 物陰から手にナイフやら手斧やらを持った目つきの悪い男たちがルイズの頭から爪先までを舐めるように値踏みする。 「ありゃあ、どこぞの貴族の娘だな。あれだけの上玉だ、相当な額になるぜ。笑いが止まんねぇな・・・」 下卑た笑いを浮かべ、目配せし合う男たち。 それに気づいたリュウはルイズに危険が及ばないように、わざと抜き身の剣のような気迫を、それでもルイズでは気づかない程度に漂わせる。 それだけで危険に対しては鼻の利くゴロツキ共には十分に効果があった。 獲物のすぐ後ろにいるリュウの身体つきやそこから発せられる猛者の放つ気迫に諦め、舌打ちしながら去っていく。 「あまりいい場所とは言えんな」 「ホントはあまり来たくないのよ・・・」 苦い顔をしたルイズが辺りを見回す。 「確か・・・ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺りのはずなんだけど・・・」 それから剣を模した看板を見つけ、嬉しそうにつぶやいた。 「あったあった」 リュウとルイズは扉を開けて中に入った。 「らっしゃい・・・ととと!?お、お貴族さまがなんの御用で?うちはマットウな商売やってますぜ」 カウンターに肘をつき、気だるげにしていた店主は入ってきたのが貴族だと判るや否や背筋を伸ばして揉手し、冷や汗をかきながら愛想を振りまく。 「客よ。剣が欲しいの」 愛想を振りまく店主とは対照的に無愛想に応じるルイズ。 難癖つけられてはたまらないとペコペコしていた店主は相手が客と聞いて素早く商売モードに切り替えた。 面倒くさい相手ではあるが、何しろ貴族は金を持っている。 しかも、金を持っている上に世間の常識に欠けている。 相場の2倍3倍・・・いや、上手くすれば桁ひとつ増やしたところで買っていく貴族もいる。 こんな葱を背負った鴨を見逃す手はない。 「ああ・・・なるほど、後ろの従者の方に持たせるんですね。最近、”土くれのフーケ”やなんやで物騒ですからねェ」 後ろに控えるリュウの身体を見て納得したように頷く店主。 「土くれのフーケ?」 首をかしげるルイズに答える店主。 「へぇ、最近巷を賑わしてる盗人でさぁ。金持ちの貴族しか狙わないってんで、平民の間ではちょっとしたヒーローでさあね。ちょいとお待ちくだせぇ」 そう言って店主は奥に引っ込んだ。 「盗人がヒーローだなんて不謹慎だわ!!リュウもそう思うでしょ!?」 プリプリと怒りながらリュウに同意を求めるルイズ。 「人間は権力に抑圧されると、その権力に歯向かう者を応援するもんだ。 街の人々が如何に貴族という権力に抑圧されているかということだ。とはいえ、確かに盗人とは褒められたもんではないな。」 尚プリプリ怒っているルイズをリュウが諌めていると、店主がゴソゴソと1本の剣を持って出てきた。 「こいつぁ、かの有名なシュペー卿が鍛えた逸品ものでさぁ。 並の人間じゃあとても扱いきれやせんが、そちらの従者の方にはお似合いの剣ですぜ」 2メイルはあろうかという刀身に宝石などで飾り立てられた煌びやかな剣を得意げに説明する。 「魔法がかかってますからね、鉄だって切れますぜ」 剣を見た瞬間、ルイズは魔法云々よりも見た目の豪華さに心打たれた。 「ねぇ、リュウ、これなんか良くない?」 一発で気に入り、すっかり買う気になっているルイズ。 「俺としてはもっと飾り気の無いものの方がいいんだが」 『質実剛健』や『実直』などの言葉をそのまま人間にしたようなリュウの趣味嗜好からは遠くかけ離れている剣を見て思わず呟く。 「却下。わたしが気に入ったから、これに決めた」 どうやらリュウの意見など端から聞く気は無かったらしい。 勝手に決める。 「これ、おいくら?」 「へぇエキュー金貨で2000でさぁ」 「高いわねぇ・・・それだけあれば森付きのお屋敷が買えるじゃない・・・」 剣の相場など知らないルイズは絶句する。 もっとも、相場を知っていればその金額が桁一つ多いことに気づけたのだが。 「命を預けるのが剣ですからね、命は金では買えませんや。しかも、名工シュペー卿の作ですから、これぐらいはしますやね」 言って愛想笑いを浮かべる店主。 「困ったわね。今日はエキュー金貨で100しか持ってきてないわ」 アッサリ所持金を白状する。 ルイズは自分で買い物をすることなどない大貴族なので、こういう交渉はしたことがない。 そして、ハルケギニアの相場を知らない上に交渉が下手ということに関しては、リュウも一緒だった。 ただ、剣一本に森付きの屋敷という値段には違和感を覚えたが、魔法が関わってくると全く見当がつかないので、そういうものなのかと納得せざるをえない。 「それじゃあ碌な剣は買えませんやねぇ・・・」 困った顔をした店主はそういうと再び奥に入っていく。 後ろを向いた店主の顔はニヤニヤしていた。 「せいぜいカモらせてもらうか・・・」誰にも聞こえないように呟くと、奥から別の一本を持ってきた。 「それでしたら、これなんかどうですかい?本当は120エキューなんですが、100にまけときますぜ」 ルイズの前に差し出されたのは1メイルほどの刀身の、何の意匠も凝らされていない細身の剣だった。 「なんか貧相ね・・・」 先ほどの剣が頭から離れず、あからさまに落胆の色が見えるルイズ。 「いや、俺はむしろこっちの方がいいと思うがな」 リュウが感想を漏らすと、背後から声が聞こえた。 「けっ。おめえみてーなド素人が剣なんざ持ったところで死ぬだけだ、やめとけ」 思わず振り返るリュウとルイズ。 だが、そこには誰もいない。あるのは所狭しと並べられた剣や槍などの武器。 「やいデル公!お客様になんて口利きやがる!!」 誰もいない場所に向かって文句を言う店主。 リュウとルイズの二人が頭に「?」を浮かべていると、またしても誰もいない場所から声が聞こえた。 「な~にがお客様だ!そんなカスみてーな剣売りつけやがって!どーみたって金貨10枚もしねーよーなガラクタじゃねーか」 目を凝らすが、やはり誰もいない。 しかし、姿は見えずとも声はしっかりと聞こえてくる。 「おめえもこんなガラクタ見せられて『こっちの方がいいと思う』とか言ってんじゃねー。 ガラクタかどうかの見分けもつかねーヤツが剣なんて持ったって早死にするだけだっつーの」 リュウは剣が並べられた一角に行くと、錆の浮いた一本の古い剣を取り出した。 「お前が・・・喋ってるのか・・・?」 驚きながら、手にした剣に話しかける。 傍から見れば危ない人に見えなくもないが、近くで見れば彼が精神的にも健康であることが判る。 なぜなら、彼が手にしている錆びてボロボロの剣が喋ったからだ。 「おうよ。俺っちが喋ってるのよ。判ったか、ド素人」 剣の柄の部分をカチカチ言わせながら喋る剣。 「イ・・・インテリジェンス・ソード・・・?」 ルイズは噂で聞いたことがあった。高位のメイジが剣に人格を付与することがあると。 そしてそれはインテリジェンス・ソードと呼ばれている。 「おうよ!俺っちがインテリジェンス・ソードのデルフリンガーさまだ!おきやがれ!!」 まくし立てるように喋る剣。 後ろから飛ぶ店主の怒り声。 「いい加減黙ってろデル公!!溶かして鉄くずにしちまうぞ!」 「ああ!やれるもんならやってみろってーの! どーせ6000年も生きてきて飽き飽きしてたところだ!いっそ溶かしてくれた方がせいせいするってーの!」 「お前・・・6000年も生きてるのか?」 「おうよ!最近はとんとつまんねーしな!もうこの世に未練なんてねーっての・・・ってか、おい・・・」 「ん?どうしたんだ?」 突然押し黙っってしまった喋る剣に尋ねるリュウ。 「おでれーた・・・おめえ・・・”使い手”か・・・」 「使い手・・・?何の話だ?」 いぶかしむリュウ。 「よし、おめえ、俺っちを買え」 それには答えず自分を買えという剣。 「わかった。親父、この剣はいくらだい?」 リュウは躊躇い無く答えると、店主に尋ねた。 「へぇ、それでしたらエキュー金貨100で結構ですぜ。うちとしても厄介払いができてせいせいしやすからね。 煩いときは鞘に閉まっちまえば大人しくなりまさぁ」 「っというわけだ、ルイズ。俺はこの剣がいい」 あまりの急展開に目を白黒させるルイズ。 「ちょ・・・ちょっとリュウ!!もうちょっとちゃんと選びなさいよ!だいたい、そのボロ剣、錆びちゃってるじゃないの!」 「ああ、ちゃんと選んださ。この剣が買えと言ったからな。年長者の言うことは聞くもんだ」 ボロ剣とはなんだ!と文句を言うデルフリンガーを鞘に収め リュウは笑いながら、ルイズから預かっている財布の中から100エキューを取り出し店主に支払った。 前ページ次ページゼロと波動
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前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ 「んだてめぇっ、じろじろ見やがって何か用でもあんのかよっ」 「ひぃぃっ」 イザベラは頭を抱えた。つくづく何故こんなのを呼び出してしまったのだろう自分は。 全てはあの、あの、あの、クソ忌々しい鉄面皮・・・名を出すのも憚られるからtbs(仮名)としておこう。 そうあのtbsが呼び出したという青い風竜。あれの姿に一瞬でも心奪われてしまった自分が憎らしい。その思いが背中を押しまくり、 だからして「どーせオマエにゃ無理だよだってオレの娘だし(プ」とほざくクソ親父の制止も意に介さず、 イケイケドンドンな感じで自室でサモン・サーヴァントを実行したのである。そして出てきたのが、 『あ?・・・なんだこりゃ。おいお前、何処だここ。お前もあのバカどもの仲間って訳か?』 まず目に付いたのが頭部全てを覆う赤いマスク。・・・いや兜と言ったほうがいいのかもしれない。イザベラの持ち合わせる常識ではそう言えた。 そして着ている物はその頭部の重装(?)に比してあまりにも貧弱な・・・少なくともイザベラには平民が着るだけの服に見えた。 もちろん、実際そうであり、それはサンレッドにとってあまりいい気がしない認識だった。彼も一時は自分を養う彼女の為に定職に就こうとしたのだ・・・。 『へ、平民・・・何であいつは竜で・・・このあたしにあんたみたいなボンクラが!!』 『あぁ?』 正義のヒーローは子供に手を出してはいけない。そんな事は常識も常識、社会の大原則だ。 だがこの日パチンコで完敗していたサンレッドの怒りはまさにこの瞬間頂点に達し、そして「目の前のガキ=フロシャイムの何か」というあまりにも不条理な方程式が完成する。 悪の組織の一員ならガキでも容赦する必要は無い。悪の組織のガキは容赦してほしくて悪の組織のガキをやっているのに違いないからだ。 日頃あのアニマルソルジャーども相手に辛酸を舐めさせられている(?)サンレッドの決断は早かった。 『きゃあああっ』 『イザベラ様っ、如何しm・・・何だ貴様は!平民風情がこんなk』 悲鳴を聞き扉を開けて入ってきた守衛は王女のデコを掴んで持ち上げている狼藉者に挑みかかるも、 哀れな一兵卒は正義のヒーローの正義の一撃の前に地に臥した。追撃のローキックをこめかみに叩き込まれ動かなくなるカステルモール。 『あぁ、あ・・・』 あー私終わったな。自分がサモン・サーヴァントで呼び出した平民(よりによって!)にブッ殺される王女なんぞお笑い種だ。 自分の葬儀の席で大爆笑するクソ親父の、顔を伏せながら必死で笑いを堪えるtbsの姿がありありと・・・ちくしょうお前ら絶対枕元に立ってやる。 全く表情の読み取れないその男がへたり込んだ自分を見おろしている最中、イザベラの頭の中ではそんな思いが駆け巡り・・・ 『くそっ、泣くこたぁねーだろ。これだからガキは・・・』 サンレッドはこれでも大人だった。かなりどうしようもない部類には入るが、ビビりまくって泣きじゃくる子供を脅す趣味も性癖も無かった。 とりあえず泣き止まないその少女を引っ掴み、部屋を出て責任者と思しきこの趣味の悪い家の家主を恐喝・・・もとい事情を窺う事に。 『ブッハハハハハハハハ!さっすが俺の娘だ!よりによってそんなボンクラ平民を呼び出s』 『悪かったなボンクラでよぉっ』 ヤクザキック一撃で黙りこくる自称国王。国王て。自称将軍のあのヒゲがどれほど謙虚かサンレッドは理解した。 しかし一撃とは意外と拍子抜けである。コンクリート片で殴打してもアパートに這って帰る連中はやっぱり身体の造りが違うのか。 『貴様、そのお方が誰k』 『蛮人め!狙いは何だ!?まさか貴様があのガンd』 女をじわじわといたぶる趣味も無いし、客間で平然とコスプレしている変態に手加減するほどの慈悲も持っていないのがサンレッドだった。 それぞれ下アゴへの一撃で白目を剥いてKOする様にちょっぴり罪悪感を覚えたが、どうせ死なないだろう悪の組織の奴なんだし、とも思った。 『ったく、何だよこの家は。まともに客の話聞こうって奴ぁいねぇのかよ。おいガキ!何とか言えっての』 前々からいけ好かなかったあの女とエルフを簀巻きにして井戸に叩き込んだ後(蓋はしなかった。なんて慈悲深いあたし)に目を覚ましたクソ親父は、このチンピラをいたくお気に入りあそばされたようだった。 一通りの事情を聞いて「元の世界に戻せ」とクソ親父の首をガンガン振るチンピラ―――サンレッドと言った―――を宥めすかし、 とりあえず戻す算段がつくまで私の使い魔・・・なんて言ったらまたキレるだろうから、召使いでいろ、と言ってみたところ、 『ていの良い事言ってるけど「使い魔」ってやつだろ。ジジイが言ってたぞ。・・・まあ暇潰し程度に付き合ってやるよ』 で、「とりあえずここがどんな世界なのか見せてくれや」とお願いされ・・・お願いであって命令とか脅しとかじゃ断じてない、とイザベラは必死で自分に言い聞かせる。 こいつを呼び出したのは自分だ。私が主。こいつは使い魔。だからこいつに引け目なんて感じる必要は無い! だからイザベラはこうやってサンレッドを連れて城下をぶらついてるのであるが・・・。 「おいっ、何か用かって聞いてんだよっ。ガン飛ばしてんじゃねぇぞこらぁっ」 「うわぁぁっすいませんっすいませんっ」 「何でこいつはこう・・・」 チンピラだ。チンピラ丸出しだ。 『名前?サンレッド。向こうで正義の味方やってた』 嘘だろこれ。絶対嘘だ。どう考えても退治される側のチンピラAだろこいつ。 だがイザベラの脳裏によぎるのは先程の、あの化物・・・メイジ数人がかりでようやく仕留められる実力を秘めるというエルフ、 その中でも更に戦いの為に身を研ぎ澄ましたあの化物を一瞬で、一撃で地に這いつくばらせたあの姿。 (実は自称正義の味方で、周りからは悪の帝王とか呼ばれてるんじゃないのか?) そんな疑念が湧き出てくるのは至極当然の事だった。 「あんたっ、正義の味方が一般人にそんな事して恥ずかしくないのかいっ」 「どーせ俺はここじゃ治外法権なんだからいいだろがっ」 「法律がどうとか以前に、人として踏み外しちゃいけない道理ってもんもわかんないのかいっ」 「ちっ、かよ子と同じような事言いやがってガキのくせに・・・」 ハッキリ言ってイザベラ自身こんな台詞を言えた義理では無かったが、 何しろこいつのボンクラぶりを見るにつけとても放置していいものとは思えず、 湧き上がる恐怖を押さえ込みつつどうにかこの使い魔の手綱を握ろうと苦心していた。 (このあたしがまさか他人の為に心を砕くなんてね。因果応報ってやつかね) くくっ、と口の端が歪む。ひたすら己に降りかかる運命を恨み抜き、ひたすら部下とtbs相手に鬱憤を晴らすだけの日々。 その行為はいつだって終わった後に猛烈な罪悪感という重圧に変わり自分の心に圧し掛かってきた。 だが、この暴君を相手にしているこの瞬間は、そんなしがらみの一切から解き放たれている事にイザベラは気付いた。 (・・・ひょっとして、こいつはあたしの心を救いに来てくれたのか?) そんな事を思い至るイザベラだったが、 「~~~貴っ様~~~もう勘弁ならん!このデコ娘ならまだしも城下の民に手を出すなd」 「うるせえよっ」 固定化されている石の塀に穴が空く勢いで頭をぶつけられたカステルモールを見て、その考えを全力で否定するのであった。 前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ
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前ページ次ページ重攻の使い魔 第10話『高貴なる空賊』 空賊に捕らえられ、ルイズたち一行は雑然と荷物が積まれた船倉へと押し込められていた。メイジである彼らは皆同様に杖を取り上げられ、手も足も出ない。扉には鍵が掛けられ、押しても引いてもびくとも動かなかった。マリーガラント号の船員達は自らの船を曳航させる作業を強要されているらしい。貴族と平民を隔離する目的もあるのだろう。ここには平民の姿は見えなかった。 皆が押し黙る中、海賊船にしては随分としっかりと造られた扉が軋みを上げながら開かれる。薄暗い船倉の中に海賊の一人であろう、小太りの男が入ってきた。男はルイズの前まで来ると、細い腕を無造作に掴んだ。 「おい、桃色頭のチビ。頭がてめぇをご指名だ。ついてこい」 「ま、待ってくれ。彼女は僕の婚約者なんだ。手荒なことはしないでくれ、頼む」 自らの婚約者である少女が単独連れて行かれそうになり、流石にワルドが割って入る。しかし、空賊の男はそんなワルドの顔を見ると、小馬鹿にした表情となり端正な顔に唾を吐いた。 「俺に指図できる立場だと思ってんのか、ええ? 他人のことより自分の未来でも心配しやがれ」 そう言い放ち、男はワルドを足蹴にする。ルイズはさっと男の手を振り払うと、無言で立ち上がった。船倉を出ろという命令に逆らうこともなく大人しくついていく。 「……ルイズ、諦めてはいけない。絶対、絶対にだ」 腹を蹴り上げられ、呻いていたワルドが発した言葉にもルイズは何ら反応しなかった。ギーシュらは扉が開いた瞬間に脱出しようかとも考えたが、見張りがいないなどということもなく、あえなく断念することとなった。 扉は再び軋みを上げながら閉じられ、船室は薄暗さを取り戻した。キュルケとタバサがとりあえずワルドの応急処置をする。とはいえ杖も持ち物も全て取り上げられてしまった以上、大したことができる訳もない。どうにか反乱軍の追っ手を振り切ったと思った所でのこの事態。ギーシュは思わず歯噛みする。 後ろから空賊に押しやられ、狭い通路を通り、細い階段を上り、ルイズが連れて行かれた先は空賊に似つかわしくない程に立派な調度が施された部屋であった。甲板上に設けられたその部屋こそが船長室であるらしい。 がちゃりと重々しい音を立てながら扉が開かれると、商人に見せればどれほどの値が付くか分からないような、精緻なエングレーブに飾られたディナーテーブルが置かれていた。最上座には先ほどの頭が尊大な態度で腰掛けている。 頭は足をテーブルの上に投げ出し、大きな水晶が取り付けられた杖を弄っていた。粗野な身なりとは裏腹に、それなりのメイジであるようだ。室内には頭以外にも多くの空賊がおり、入室してきたルイズをにやにやと下品な笑を顔に貼り付けながら眺めている。 後ろから挨拶をするように急かされるが、ルイズは頭を睨みつけるばかりで、口はきっと引き結ばれていた。そんなルイズを見ても、頭はなんら感じ入る所はない、むしろますます面白いとばかりに含み笑いを漏らす。 「くくっ、気の強い女は好きだぜ。たとえガキだとしてもな。さて、てめぇは今日から俺の嫁にすることにした。名前ぐらいは教えてもらわねぇとな」 「……黙りなさいよ。わたしがあんたの嫁ですって? 笑わせるわ」 ライデンを奪われたことで怒り心頭となっていたルイズは、自らの身を顧みることもなく、敵対的な態度を取り続けた。しかし意外なことに、空賊たちは特別ルイズに危害を加えようとはしない。 「大体、どんぱちやってるアルビオンにトリステイン貴族様が何の用だ? 戦争に巻き込まれてぇのか?」 「あんたたちに話すことなんて何もないわ」 頭はそこで、それまで纏っていた粗野な態度を若干改める。獲物を狙う鷲のように鋭い視線を向けた。それは幾度も危険な綱渡りをしてきたであろう、空賊を束ねる男に相応しい瞳だった。 「この時期にメイジがアルビオンへ渡るとすれば、それは戦争に何らかの形で関わるもの以外にない、と俺は考えている。……大方てめぇらもその口なんじゃねぇのか?」 頭の言葉にルイズは無言を貫いた。今の今まで怒りで冷静さを失っていたが、自分がアルビオンへ向かうのは正にそれが目的だったからだ。何も言わないルイズをよそに、頭は話し続ける。 「そしてわざわざ王党派に味方するような馬鹿がいるはずはねぇ。自分から死にに行くようなもんだからな。あんたたちは貴族派の応援にいくつもりなんだろう?」 「……何ですって?」 「ああ、とぼけなくてもいい。実はな、俺達は貴族派の連中相手に商売させてもらってるのさ。ついでに王党派に味方しようとする馬鹿を捕らえるのも請負ってるんだが、あいつらが言うような王党派に味方する馬鹿なんて一人もいねぇ」 「あんたたち反乱軍だったのね……!?」 「あくまで対等な立場ってやつさ。まああんたらには悪いことをしたな。こっちとしても馬鹿を捕まえるっていう建前があるんでな。ちょいとばかり乱暴なやりかたをしちまったが勘弁願おうか」 頭の話を聞いているうちに、ルイズの顔はみるみる真赤になっていく。ただでさえ怒りが許容量を超えていたところにこの話を聞いたことで、ルイズの怒りは大河が氾濫するが如く爆発する。 「ふざけるんじゃないわよっ! わたしたちが貴族派……? 馬鹿にするなっ!」 「へぇ、ってことはあんたらは王党派に味方する馬鹿の記念すべき第一号ってことか。おい、てめぇら聞いたか! こんな馬鹿がまだいたようだぜ!」 頭の言葉に空賊たちは大口を開けて笑い始める。腹を抱えて、これ以上おかしなことはないとでも言いたげな笑い方であった。 その様子を見て、ルイズはますます怒りを加速させる。 「あんたたちみたいな屑がいるからっ。ライデンも姫様もっ……!」 そう、反乱軍さえいなければアンリエッタが苦しむことも、ライデンが雷撃を受けて動かなくなることもなかった。ずっと平和な時間を過ごすことができたのだ。それを思い出し、ルイズの目尻にはかすかな涙が溜まる。 目の前の少女が思わず零してしまったであろう言葉を頭は聞き逃さなかった。席を立つと悠然とルイズの前へとやってくる。 「まあ王党派だってんなら予定通り捕らえなけりゃあな。ただ、お前を貴族派に引き渡して殺しちまうのはもったいない。あの赤毛の女と青髪のガキもだ。慰み者として生かしておいてやる。感謝するんだな」 「……っ! だ、誰が慰み者だっての!? そんな脅しが効くもんですか!」 慰み者という言葉にルイズの体は一瞬恐怖に凍りつく。自分だけでなくキュルケとタバサまでもが男達の玩具にされるという未来を予想し、思わず顔が青ざめてしまう。しかし気丈にも屈することはしなかった。 あくまで抵抗するルイズに、頭はにやにやと笑い続ける。 「くくっ、脅しじゃねぇぜ。貴族派につくってんなら話は別だが、そんなつもりは毛頭ねぇんだろ?」 「当たり前よっ! あんな連中に味方するくらいなら今ここで死んでやるわっ!」 頭は下卑た笑いを収めると、再度ルイズに質問する。 「あくまで王党派だってんだな?」 「何度も言わせるんじゃないわよっ!」 そこで頭は後ろを振り向き、湧き上がってくる笑いを抑えられないとばかりに肩を震わせる。そしてそれまでの品のない笑い方とは一転して、朗らかな、それでいて高貴な雰囲気を漂わせた笑い声を張り上げる。 ルイズが豹変した頭に呆然としていると、頭は優雅な動きで結んでいた布を取ると、爽やかな笑顔で語り掛けた。 「失礼した。どうやら君達は本当に王党派に味方してくれるらしい」 頭の豹変と同時に、それまで優雅さとはかけ離れていた雰囲気を漂わせていた空賊たちは一斉に直立不動の姿勢となる。 頭は縮れた黒い長髪を剥ぐと、下からは美しい金髪が現れる。眼帯を取り外し、作り物らしい髭を剥ぎ取り、顔に塗りたくっていた塗料を拭き取ると、そこにいたのは金髪の凛々しい青年であった。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……、そしてアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。といっても今となっては意味のない肩書きだがね」 突然の事態に完全に置いてきぼりとなっているルイズに、ウェールズは申し訳なさそうに謝罪する。 「色々と手荒な真似をして誠に申し訳ない。こちらとしても迂闊に正体を現すわけにはいかなくてね。君の本心を聞くまで、どうしても疑念を捨て切れなかったのだ」 空賊から王国の兵士と姿を変えた部下達にワルド達を連れてくるように命令すると、苦々しげな表情を浮かべ、皇太子は更に話を続けた。 「全くもって情けない話だ。空賊を装うことでかろうじて貴族派の目から逃れられている。王族でありながら空賊稼業に身をやつした人間は私だけだろうね」 そこにワルド、ギーシュを連れた男が戻ってきた。キュルケとタバサがいないのは、少なくとも表向きはこの任務と無関係だからだ。事情を聞いたワルドが部屋の外で待っているように言ったらしかった。自己紹介をしたワルドとギーシュを見て、ウェールズは改めて謝罪する。 「ジャン・ジャック・ワルド子爵、ギーシュ君。今回は誠に申し訳ないことをした。部下のしたことは全て私に責任がある」 「いえ、殿下のなさることに私ごときが異論を唱えられるはずもありませぬ。殿下には何ら非はございません」 「本当にすまない子爵……。して、君達は何故戦乱吹き荒れるアルビオンへ向かっていたのだ?」 未だ呆けたままのルイズを見てワルドは内心溜息を付いたが、気を取り直して優雅な態度でウェールズへ自らが承った任務を話す。 「アンリエッタ姫殿下より、アルビオン王家への大使として密書を言付かって参りました」 「ふむ、姫殿下とな。と、そういえば、未だそちらのお嬢さんの名を聞いていないのだが」 そこでようやく、ルイズは正気を取り戻した。放心・激怒・放心と短期間に余りに感情を激しく起伏させてしまったので、ある種毒気を抜かれることとなった。 「も、申し訳ありません。わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールでございます」 「なるほど、ラ・ヴァリエール公爵のご息女か。私の親衛隊に君達のようなメイジがもう十人ほどいれば、もう少し違った今があったかもしれないな。して、その密書とやらはどこにあるのだね?」 ルイズは自らの胸ポケットに収められたアンリエッタの手紙を取り出し、ウェールズへと渡す為に恭しく跪こうとしたところでふと尋ねた。 「あの、このようなことをお尋ねするのはあるまじき失礼であると存じ上げますが、……本当に皇太子殿下なのですか?」 「まあ、先ほどまでの顔と態度を見れば、そう思うのも致し方ない。でも僕は正真正銘の皇太子だよ。疑うのなら証拠をお見せしよう」 ウェールズは苦笑しながら自らの左薬指から透き通った宝石は嵌められた指輪を引き抜くと、ルイズの手を取り『水のルビー』に近づけた。二つの宝石は共鳴し合い、船長室に小さな虹の架け橋が現れる。 「この指輪はアルビオン王家に伝わる『風のルビー』だ。君がその指に嵌めているのはアンリエッタの『水のルビー』だね?」 ルイズが頷いたのを見ると、皇太子は軽く頭をかきながらきまりが悪そうに告げた。 「実はね、先ほど甲板で君がこの『水のルビー』を身に着けているのを見て、我が目を疑ったんだよ。なぜアンリエッタの指輪を君が付けているのだろう、とね。だから先に君だけを呼び出したんだが、全く、婦女子に対してあるまじき行いをしてしまった。怖かっただろう?」 「い、いえ! わ、わたしはその、ええと、……はい、怖かったです」 皇太子に頭を下げられ、ルイズは慌てて取り繕おうとしたが、安堵した心が本音を言うように強制した。 そんな少女を見て、皇太子は涼しげな笑顔を見せる。 「ははは、君は正直な女の子だな。それでいいんだよ」 それから、皇太子はルイズから手紙を受け取ると、愛おしそうにトリステイン王家の花押をなぞり接吻した。破らないよう慎重に封を解き、中に収められた便箋を取り出すと、真剣な表情で読み始める。徐々に表情は暗くなっていき、最後の一文に目を通すと、まるでアンリエッタがそこにいるかのように記された署名を指でなぞった。 「姫は結婚するのか? あの愛らしいアンリエッタが。私の可愛い……従妹は……」 ワルドら三人は無言で頭を下げ、肯定の意を表した。ルイズは皇太子が最後、少し言い留まったことが気になった。皇太子の声には紛れもない悲しみとやるせなさが含まれていたことを、少女は敏感に感じ取っていたのだ。 皇太子は軽く目を瞑り、しばらくの間黙りこくっていると、先ほどの憂いを感じさせない声音で告げる。 「了解した。姫はあの手紙を返して欲しいと、この私に告げている。何より大切な姫から貰った手紙だが、姫の望みは私の望みだ。その通りにしよう」 「それでは……」 ワルドが顔を上げるが、皇太子は手で制する。 「しかしながら、今は手元にない。ニューカッスル城の私の私室に置いてある。よもや大切な姫の手紙を空賊船に持ってくるわけにはいかないのでね。多少面倒だが、我が居城までご足労願いたい」 未だ任務が終わることはなかった。 前ページ次ページ重攻の使い魔
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前ページ次ページ悪魔の虹 ここ、トリステイン魔法学院では今年二年生となった生徒達が 春の使い魔召喚 の儀式で様々な使い魔達を呼び出し、契約していた。 ある生徒は火竜山脈に棲むとされるサラマンダーやら絶滅したとされている古代の幻種に属する風韻竜を召喚したり、またある生徒は仕草などが微妙に愛らしいジャイアントモールを召喚したりと賑やかだった。 そんな中ただ一人、どれだけ時間をかけても使い魔を召喚できない者がいる……。 「いつまで経かってるんだ、あいつは……」 「所詮はゼロのルイズだ。あいつなんかにサモン・サーヴァントが成功するもんか」 既に使い魔を召喚し終えていた生徒達からぼそぼそと、陰湿な悪口が飛ぶ。 桃色のブロンドを揺らす少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは幾度もの召喚の儀式に失敗していた。生徒達はもちろん、初めは彼女を励ましてくれていた教師コルベールも今では彼女の失敗に辟易としていた。 コルベールがまた後日に行おう、と持ちかけてもルイズは諦めずに続ける。 しかし、いくらやっても爆発が起きるだけで使い魔は召喚されない。 他の生徒達にもこれ以上、時間を割く訳にもいかない。コルベールはルイズに「次で最後ですよ」と通告する。 これで最後だと言われ、ルイズも息を飲みながら杖を構える。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!」 もう失敗は許されない。このまま、ゼロのままで終わる訳にはいかない。 「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」 この際、どんなものが呼び出されても構わない。魔物だろうが悪魔だろうが。 「私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!!」 ――お願い! 出てきて! あたしの使い魔!! ルイズは杖を振り、そしてまた爆発は起きた。 また失敗か、と誰もが思っていた。が、今度は違うようだった。 爆発の煙の中から現れたのは――人のようだった。それも、ただの平民。見た事のない変な服を着ているのだから間違いない。 「見ろよ! ルイズが召喚したのは平民だぜ!?」 「さすがはゼロのルイズだな! 平民を呼び出すとは!」 ドッ、と生徒達が爆笑していた。そして、召喚したルイズを馬鹿にしたように野次が飛ぶ。 多くの生徒達が爆笑する中、たった一人だけ笑っていない生徒がいた。 青い髪をした眼鏡をかける小柄な少女。風韻竜を召喚したタバサは興味も無さげに読書を続けていたが、野次を耳にしてちらりとそちらへ視線をやる。 青い変な服を着た平民の少年だった。召喚したルイズがコルベールにもう一度だけやらせて欲しいとかみついているが、一度呼び出したからもうやり直しは認められない、と言って彼女を諭している。 ルイズは渋々と平民にコントラクト・サーヴァントの儀式を行おうと口付けをしている。一応、儀式は成功したようだ。苦痛に喘ぐ彼の左手にもルーンが浮かんでいる。 別にどうという訳ではない。……ただ、彼の足元に転がっている小さな物体がタバサは気になっていた。 「ふむ、珍しいルーンですね……。では皆さん、教室に戻りましょう!」 コルベールはルイズが召喚した使い魔(といっても平民だが)の少年の左手のルーンを確認すると、生徒達を促す。 「わぁー、何これ?」 「きれーい」 すると、女子生徒達が見惚れたような声を上げている。 コルベールはそちらを振り向き、顔を顰めた。 「綺麗なオパールね……」 赤髪に褐色の肌をした女子生徒、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーも見惚れたようにそれを手にし、指先でなぞっていた。 「しかも、こんなに大きい……」 彼女の手にあるのは、ちょうど手の平程度の大きさをした虹色の光沢を放つ卵上の物体だった。 多くの女子生徒達がその物体に惹かれて集まり、取り合いになっている。 あれは、ただの宝石とは思えない。コルベールはそう感じた。 「君達、ちょっと待ちなさい!」 コルベールは慌てて彼女らの元へと駆け寄り、虹色の物体を取り上げる。 自分の手の中にあるその物体を近くで凝視するコルベール。 確かに、見た目は美しく大きな宝石に見えるが……。 「……これは、宝石ではないな」 「ええ? それでは、何なのですか」 取り合いに混じっていたルイズが尋ねてきた。 眼鏡を掴み、さらにじっと睨み付けるように観察するコルベールはその形状、大きさなどからこの物体が何なのかを断定する。 「……何かの、卵だね」 「卵?」 「あ、そいつは俺の傍に転がってたやつ……」 ルイズが召喚した使い魔の少年が、コルベールの手にするそれを不思議そうな目で見つめてくる。 そういえば彼がルーンを刻まれている時に苦しんでいた際、彼の傍らに虹色の光沢を放つ物体があった。それがこれだろう。 「と、いう事はこれは君と一緒に召喚された物なのかな」 「そ、それじゃあ!」 顎をつまみながら推測するコルベールだが、召喚したルイズ本人は途端に狂喜乱舞したようにはしゃぎだす。 「この中に、凄い幻獣とかが眠っているんですね!?」 コルベールの手からその物体を引ったくり、愛おしそうに間近でそれを見つめている。 「卵のままじゃ、孵化するのにどれだけ経かると思ってるの……」 「やっぱり、ゼロのルイズだな。卵のまま召喚しちまうとは……」 そんな陰口が野次馬達の中から飛ぶのが聞こえた。 「何をしているんだ、君達。教室に戻りなさいと言っただろう?」 すぐ様コルベールが野次馬の生徒達を再度、叱るように促していた。生徒達は次々と中庭を後にしていく。 そして、ルイズの手から虹色の物体を取り上げる。 「ミズ・ヴァリエール。たとえこれが君が召喚した物だとしても、君は既に使い魔と契約をしている」 「いいえ! こんな平民は、使い魔じゃありません!」 平民の少年を指差し、喚くルイズ。 「その幻獣が、あたしの本当の使い魔なんです! こいつは間違って召喚されてしまっただけです!」 「しかし、二体も使い魔を持つなんて特例は許されないし、そもそもこれがまだ幻獣の卵だと決まった訳ではないのだよ?」 と、諭されてルイズも低く唸りながら不満そうにしていた。 「とにかく……これが何なのか分からない以上、私達が預かっておくから、君も教室に戻りなさい」 渋々とした顔で頬を膨らませるルイズはようやく納得したのか、平民の使い魔を連れて中庭を後にしていた。 同じように中庭を後にしていくコルベールは、手の中に納まる物体を睨んでいた。 こんな卵は、見た事がない。動物なのか幻獣なのかは分からないが、綿密に調べてみる必要がありそうだ。 もし本当にミス・ヴァリエールの言うようにとてつもない幻獣か何かだとしたら……。 前ページ次ページ悪魔の虹
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2013年冬アニメも終盤にさしかかると、いよいよスレ民も柳田には賢者モードで接し、まじめに 分別を説く場面が多くなりました。 母親を騙った自演など、堕ちるところまで堕ちた感にいよいよ「祭りの終わり」が見えはじめた のですが、アスペ柳田はそんな温度差にはお構い無し。恥知らずな成り済ましはまだまだ続いた のでした。 恒例となったアンチスレ民の説教から始まり、結局予想通り親に完全依存のガチニートである事 が明らかになって、自演キャラをフル動員するもあっさり看破されてしまうまでを収録しました。 リトルバスターズ!は糞原作をトレースし切った糞アニメ16 青字ID=赤字ID=橙ID=緑ID=柳田 714 : 忍法帖【Lv=5,xxxP】(1+0:5) [sage] :投稿日:2013/03/18 21 28 48 ID Q0IYtdcO0 [1/1回(PC)] エロゲッティ柳田は学生時代「自分の容姿のせいで悲惨な目にあった」って言ってたよね? でも2ちゃんねるっていう相手の容姿が全く見えない場所で毎日フルボッコにされてwiki作られるまで嫌われてるじゃん 容姿関係ないよね?だって俺たちお前の姿見えないし 性格がどうしようもなくどす黒く濁って捻くれてるからだろ?だから忌み嫌われてたんだよ 容姿のせいもあるかもしれないけど本質はその人間性の問題ね だからね 容姿のせいで親を逆恨みするのは全くの間違いなの お前の逃げの言い訳にするのは止めな 715 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 22 43 01 ID TK4sFTlXP [1/1回(p2.2ch.net)] それはフツメンの意見だろ 俺も不細工だから言えるが、容姿悪いだけで周りの目は奇異に見て来るし、 常に絶望を顔に宿しているようなもんだぞ だから柳田の苦しみも少しわかるは 716 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 22 45 51 ID Cq/eESva0 [1/1回(PC)] 柳田君ちょっと君気持ち悪いよ あ、いや容姿だけってわけじゃなく・・・ 717 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 02 41 ID hugr6Np+P [1/1回(p2.2ch.net)] 715 顔関係なくお前がアスペかつ性格捻じ曲がってるからだよ 顔の見えないねっとで鍵信者にすら嫌われてる柳田よ いい加減自己弁護して逃避すんのやめて現実見ろよ 718 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 02 53 ID qLgkLniuO [1/1回(携帯)] 自動車工場の班長はもう辞めたのか?w ※以前に演じた自演キャラの設定です 719 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 08 55 ID Nt9bIcUS0 [3/3回(PC)] 715 柳田の場合ブサメンを言い訳に努力を怠ってるだけ まぁそうやっていつまでも言い訳して逃げ続けてればいいよ 困るのは本人だけだし正直どうでもいい 720 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 16 45 ID EolFsrZnO [3/3回(携帯)] お、久しぶりにだはだはキャラ使ってんのか でもな、そのキャラを末尾Pの書き込みに使うと過去の設定と矛盾するぞ ※以前に演じた携帯用自演キャラについてです 自分で作った設定忘れてんじゃねーよ 721 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 22 28 ID Y1UF6EVP0 [2/2回(PC)] お前の親が可哀想だよ。少ない年金や貯金を崩しながら 30越したおっさん糞ニートを養わさせられるなんてさ。 722 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 22 46 ID juyTd+NQ0 [1/1回(PC)] 柳田おじさん、母親の書き込みについての言い訳はまだですか? ※以前に演じた自演キャラについてです 723 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/18 23 49 39 ID 2Ad9+wfJ0 [1/1回(PC)] おい柳田 リアルでもネットでも不満撒き散らしてるだけじゃ何も変わらないぞ 文句垂れてたら救いの手が差し伸べられると思ってるなら大間違いだ 変わりたかったら自分が頑張るしかない というか自立するのに顔は関係ないぞ なんでもかんでもブサメンを理由に逃げるのやめろ 724 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 08 27 ID IygHhgqi0 [1/5回(PC)] 柳田ゲッティいい加減にしないとお前の知名度が増々あがるぞ 本当に取り返しのつかなくなることが起きる前にアンチスレ荒らしなんてやめろ vipにwikiを貼る奴とかが出る前にやめろ 725 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 15 43 ID pNwtDaJX0 [1/5回(PC)] 柳田に対する嫌悪感はもちろんあるんだが、俺も忠告で言っといてやるよ もう(リトバスに限らず)アンチスレ荒らしは止めとけ お前はもう2ch住民から反感買ったら お前の人生自体がどうにかされる可能性があるところまで来てんだよ 726 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 37 25 ID 5gsO4saCO [1/3回(携帯)] 725 はい、脅迫罪でタイーホ 727 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 40 48 ID 5gsO4saCO [2/3回(携帯)] これで俺は脅迫罪という武器を手にした そして弁護士権を使われたくないならアンチをやめることだ 俺は寛大な心を持っているが、仏にも限界がある 柳田は悲しからずや空の青海の青にも染まず漂う 728 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 40 55 ID qeNNzyKA0 [1/1回(PC)] ちょwww柳田wwww 729 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 48 13 ID VyAVsBnQ0 [1/4回(PC)] 30歳職歴無ニートが弁護士雇う金あんのか?w 730 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 50 27 ID cNTbSScFO [1/2回(携帯)] 弁護士権とか狙いすぎててツマンネ 731 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 00 51 36 ID VyAVsBnQ0 [2/4回(PC)] さっさと仏さんになっちまえよw 親も大喜びだぞw 732 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 02 33 ID jHexRgg50 [1/1回(PC)] 弁護料は親御さんに払わせるとか情けない事を言わないでくれよ柳田くん 733 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 09 22 ID 5gsO4saCO[3/3回(携帯)] 732 あいつらに払わせてやるわ 俺の金でもあるから当然 弁護士様にびびってアンチのカキコ減ってて笑い止まらんわ 笑いながら寝るか 734 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 15 01 ID qCDq9vrL0 [1/1回(PC)] 偽ゲッティがいるな あのアスぺ特有のキレがない お前つまんねぇから 735 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 17 28 ID pNwtDaJX0 [2/5回(PC)] 727 「俺が」お前の人生をどうにかするなんて 725には一言も書いてないのに 俺の書き込みに対してどうやって脅迫罪を適用するの? 世間知らずもいい加減にしとけ 736 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 18 16 ID VyAVsBnQ0 [3/4回(PC)] これがウンコと無駄な精液製造してるだけの憐れな30歳職歴無糞ニート、柳田ゲッティであるw 737 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 18 25 ID pNwtDaJX0 [3/5回(PC)] 特定にびびって柳田のカキコ減ってて笑い止まらんわ 笑いながら寝るか 738 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 22 08 ID IygHhgqi0 [2/5回(PC)] 法律の知識や社会常識がないってのがまるわかり 中学でいじめにあいそれからひきこもり歴10年の人間の思考だな はやく病院を受診しな、楽になれるぞ 739 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 22 20 ID pNwtDaJX0 [4/5回(PC)] まぁこんだけ親切に忠告してやっても聞く耳持たない様だし もうどうしようもないな 苗字バレしただけでも偽おかんに成り済ますくらいビビりまくってる奴が マジで本人特定されたらどうするんだろうな? 万が一特定されてから慌てて泣き入っても全てが手遅れなんだぞ? 740 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 58 01 ID eu3OT/l/P [1/4回(p2.2ch.net)] 釈明のために弁明すれば、吉田ッティは携帯持ってない メールで聞いたが取り上げられたってさ なのでなりすましだし彼は書き込んでない 741 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 01 59 27 ID pA4Zs4Y00 [1/1回(PC)] 釈明のために弁明 742 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 08 54 ID RiE1tpa8P [1/1回(p2.2ch.net)] 740 ホントもう色々酷いなお前wwww 743 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 12 25 ID VyAVsBnQ0 [4/4回(PC)] 30歳ガンバレヨw 744 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 15 05 ID rUuW3u+qO [1/1回(携帯)] 今日の昼あたり日本語が不自由でアスペな自称弁護士が出てきそうだな 末尾0で 745 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 33 17 ID wwL0PrkQ0 [1/3回(PC)] あいつらに払わせてやるわ 俺の金でもあるから当然 終わってんなこいつ 746 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 41 53 ID IygHhgqi0 [3/5回(PC)] いまだに柳田はスレに書き込むことによってスレ民を困らせてやってるとか考えてるんだろ おもちゃにして楽しんでる奴か、憐れみの視線を向ける奴しかいないのに リトバスは糞作品だがましに見えるほどに、柳田の糞さが凄すぎる よって柳田は糞以下、ゴキか北朝鮮と同等 747 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 02 44 00 ID zT2uJfiX0 [1/1回(PC)] 740 日本語になってないし吉田さんの知り合いっていうなら仮のコテハンくらい名乗ってくれw 748 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 03 09 06 ID znS71fs+0 [1/1回(PC)] 柳田、つまんねえよお前 下らん設定や別人の振りはいいから、もっと素のクズっぷり見せろや お前みたいなゴミは俺らに笑われるしか価値ねえんだから 749 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 05 27 55 ID O5X4eQl60 [1/1回(PC)] ID 5gsO4saCOはさすがになりすましだろ 750 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 05 55 33 ID MO7feDi10 [1/1回(PC)] 普通ならなりすましかな?ぐらいは思うけどこれまでの行いがあまりにアレなので… 751 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 05 59 02 ID wwL0PrkQ0 [2/3回(PC)] 例の如く通りすがりのP( 740=柳田)があり得ん嘘ついて擁護してるんだから ID 5gsO4saCOは柳田 思いつくまま本音で書き殴ったけど、後でビビって引っ込めるいつもの腰抜けパターン 大体、あのレベルの常識の無さとキチガイじみた日本語は 真似しようと思って出来るもんじゃないんだよ 752 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 03 48 ID eu3OT/l/P [2/4回(p2.2ch.net)] だから何度も言ってるだろ 所詮アンチスレ民なんて性格捻くれたのばっかなんだし、 エロゲッティ騙って何度レスしてるか計り知れなし ゲッティが好きなのは佳奈多や姉御、さささであって クドや鈴を一度でも好きと言ったか? 753 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 06 57 ID wwL0PrkQ0 [3/3回(PC)] 752 ID 5gsO4saCO はキャラに関することは一言も言っていない。話そらすなよ それで、”お前”は柳田から「携帯取り上げられた」ってメール貰えるような関係なんだ?w 馬鹿かよオッサンw 754 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 37 55 ID 5qvRhJTJ0 [1/1回(PC)] カスニート柳田はアンチ民にぼろかすに叩かれて相当悔しいらしいな 755 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 06 42 39 ID Ei5ZyI4d0 [1/2回(PC)] この必死ぶりはもしもしの書き込みがヤバかったってようやく気づいたのかw 「自分の金」でオタ生活満喫して何が悪いとか言ってたのも 結局ぜんぶ親の金だったのがバレちゃったもんな。クズ過ぎ。 自分の為にもう出てくんなって散々言われてるのに何やってるんだよ 756 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 07 48 15 ID eu3OT/l/P [3/4回(p2.2ch.net)] 別にモシモシのアホがどうなろうが知ったことないってさ 趣味の金はちゃんとバイトで稼いだ金だとも言ってるし、 どうやら今まで仕事したことないって思われてて甚だ心外だそうだ 757 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 08 24 40 ID kMPuMSow0 [1/1回(PC)] まあ発言に責任を持てと言ったのは俺ら自身だしな 今頃ID 5gsO4saCOはガクブル状態で布団に篭ってるだろうよ 758 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 09 00 05 ID eu3OT/l/P [4/4回(p2.2ch.net)] 了解 ID 5gsO4saCOはアンチでも儲でもない真のクズってことでFAだわ 759 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[] :投稿日:2013/03/19 09 03 08 ID EWIt/ATZ0 [1/1回(PC)] 自演くさいなあ 760 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 09 50 11 ID 9Sao43e80 [1/1回(PC)] 友達設定ふいたw 761 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 10 09 41 ID Ei5ZyI4d0 [2/2回(PC)] 758 アホかお前 762 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 11 07 16 ID cNTbSScFO [2/2回(携帯)] 屑はお前だろ 柳田ッティさんよ 763 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 12 14 24 ID pNwtDaJX0 [5/5回(PC)] 「甚だ心外」って言葉使うのは柳田本人しかいない ボキャブラリー貧困すぎて別人の振りもままならないという現実 764 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 14 45 37 ID bAbACego0 [1/1回(PC)] 別人の振りが成功した事がただの一度もないから今更すぎる とことん無能っすなあ 765 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :投稿日:2013/03/19 14 52 24 ID IygHhgqi0 [4/5回(PC)] 別人のフリなんて成功するわけないから病院にいけ
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前ページ次ページGIFT 虚無の曜日。 ブルドンネ街に出向いたルイズが最初に入った店は、床屋だった。 「さっぱり短く切ってちょうだい」 どのようにいたしましょうか、と聞かれたルイズは迷うことなくそう言った。 「短くともうしますと、どの程度に?」 「そうね」 ちょっと考え、 「あの子と同じくらい」 そう言ってルイズが指したのは、店で働いている十一、二ほどの少年だった。 スポーティーな短髪である。 「よろしいのですか?」 床屋のほうはとまどった様子で、 「こんな綺麗な髪の毛を……もったいない」 「いいの」 確かにその髪は、コンプレックスだらけのルイズにとって、誇れるものの一つだった。 しかし、今のルイズには、そんな小さなものにすがる必要などまったくない。 むしろあのクールなコスチュームを完全にまとう時、長い髪は邪魔になるだけだ。 「早くしてちょうだい。それとも、私が後で難癖つけるとでも思ってるの?」 鋭い声でルイズはせかした。 せっかくの休日の時間を、つまらないことで無駄に浪費したくはないのだ。 「い、いえ! まさか、そのような……」 あわてた床屋は、すぐさま散髪にとりかかった。 散髪が行なわれる間、ルイズは目を閉じていた。 闇の中で、数日前の出来事を思い出された。 今ではまるではるかな昔のことのように思えるが。 使い魔召喚の儀式前日の夜を……。 きたるべき明日に備え、ルイズは幾度もリハーサルを繰り返した後、腕を組み机の上に突っ伏していた。 やっているのは、偉大なる始祖への祈りであり、願いであった。 ……血の出るような思いのこめられた。 「ルイズ……。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 ルイズは自分の名をつぶやき、神話の存在である始祖へ問いかけていた。 お尋ねします。 ルイズは唇を噛んだ。 どうして、私は魔法が使えないのですか? コモン・マジックすら満足に扱えず、いまだ自分の系統すらわからないのです……。 努力や勉強が足らないのですか? しかし、偉大なる始祖ブリミル……。 あなたは、これを自画自賛だとお笑いになられるでしょうが……。 私はこれまで身を削り、心を削って、励んできました。 しかし、その全てがまるで意味を成さないのです。これは、どういうわけでしょうか? 私は貴族に相応しくないからですか? でも、では、どのようにすれば貴族らしいといえるのでしょう? わかりません、もう、何もわかりません。 魔法が使えないために、私はあらゆる人間から軽蔑されています。 これが、貴族の生きかたですか? どうして、これほどまでに恥辱を受け続けねばならないのです……。 私がどんな罪を犯したと? 魔法の才能がゼロなのは、何故なのですか。 いえ、どうして私は貴族の、それも名門ヴァリエールの家に生まれついたのです。 私のような出来損ないが、どうして。 何かの間違いですか? あるいは、始祖よ。あなたの気まぐれなのですか? 平民として生まれていたなら、こんな思いをするなどなかったのに……。 なまじ、貴族などに生まれてしまったばかりに、私はどこまでも蔑まれ続けねばならない……。 まるで毒の茨で覆われた道を、ひたすらに歩き続けるようです。 私は貴族としての誇りを守るため、全てを費やしてきました。 魔法が使えないのなら、せめて心だけでもと。 しかし、それはどうやら愚かな自己満足にすぎないということを思い知らせてきました。 今までの、人生の中で。 恥の多い人生を送ってきました。 でも、もう力つきそうです。 明日、もしも使い魔の召喚ができなかったら……。 私はこれまで以上に、屈辱にまみれて生きていかねばならないでしょう。 そうであるなら、もはや私には生きていく意味などありません。 屈辱を受けるだけの人生など……。 いつ家名を剥奪され、あらゆる人から唾を吐きかけられることに脅えるだけの人生なら……。 願わくば、始祖よ。 どうか、私に使い魔を……。忠実なるしもべを……。 それがかなわないのなら―― 誰にも聞こえない小さな声。 でも、ルイズははっきりと口に出して言った。 「どうか、私を殺してください……」 そして……。 願いは、かなえられた。 ルイズは、神聖で美しく、強大な力を持った忠実な使い魔を得たのだ。 偉大なる、毒の名を持つ贈り物を得た―― 散髪が終わった後、そこにはまるで違うルイズがいた。 もともと人並外れた美貌のルイズである。短髪になったからといって魅力がなくなるわけではなかった。 これはこれでよい。まるで男装でもしているかのような趣がある。 「けっこう。いいできだわ」 ルイズは不安げな床屋に料金を少し多めに払ってやり、上機嫌で店を出た。 次に入ったのは、靴屋だった。 頑丈で動きやすく、黒いものを選ぶ。 その次は服屋だった。 前から考えていたように、黒い服、それに革製の黒いズボンを買った。 店主のいうところ、通気性もよく、破れにくく、丈夫らしい。 確かに着心地はいいし、動きやすかった。 それに、これならあのコスチューム……手袋ともよくあいそうだ。 試着室で、ルイズは密かに持って来たブラック・コスチュームを、マスクをのぞく全てを着こんだ。 その上に服、ズボン。それに、新調したばかりの靴をはいた。 鏡に映る自分。 その姿に、ルイズは非常に満足した。 新しきルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、もはや傷つくことはない。 まわりから馬鹿にされ、平民にすら蔑まれるような存在ではない。 その努力や誇りが、何の意味もないことのように踏みつけにされることもない。 ルイズは残るマスクをつけて、さらに完全な状態になりたい気持ちになった。 さすがにそれは思いとどまったが……。 服屋を後にしたルイズは、颯爽というよりも傲慢な雰囲気をまとって街を歩いた。 まるで自分がこの街の主であるかのように。 制服やマントは店がサービスでつけてくれた小さなショルダーバックにまとめて放り込んだ。 もはや、まず貴族の令嬢には見えない。 もっとも、目のある者なら、すぐにぴんとくるだろうが。 ルイズは広い場所を全力で走りまわりたい衝動にかられながら、以前はあまり細部を見ていなかった街を観察してみた。 こうしてみると、以前は見ているつもりで多くのものを見過ごしていたことに気づく。 街というのは人間と同じでいくつもの別の顔を持っているものらしい。 露店を見ているうちに、ルイズはちくりと警戒信号を感じた。 ルイズの見えない糸に何者かが触れたのだ。 マントをつけていなくても、その立ち振る舞いで『お嬢様』とわかったのか、悪意を持った者が近づいてくる。 おそらく、スリか何かだ。 目で見ていなくても、ルイズには全てが感じ取れた。 どうやってさり気なく近づき、どうやってルイズの懐に手を入れるつもりなのか、全てわかった。 ルイズはタイミングを見計らい、すっと露店から離れた。 そのとたんに一人の男がつんのめり、露天の中に頭から突っこんでいった。 怒号と悲鳴が飛び交い、野次馬たちが群がる中、ルイズはさっさと歩き出していた。 ぶらぶら歩いていると、また別の視線が向けられていることを察知する。 それも、今度は複数。 おかしな相手に目をつけられたのかもしれない。 ルイズは使い魔の力を試してみたくなったが、さすがに人通りの多い場所ではまずいと思い、路地裏のほうに入った。 適当な場所を探すうちに、銅製の武器屋の看板が目に映った。 すぐに通り過ぎようと思ったが、何となく惹かれるものがあり、ルイズは武器屋に入ってみた。 店の親父はルイズをじろりと見るとドスのきいた声で、 「坊や、ここにゃお菓子やオモチャはおいてないぜ」 ルイズは一瞬何のことかと思ったが、よく考えれば今のルイズの服装は少年と間違われても仕方がない。 ムッとしかけるが、すぐにそれが利点であることに気づく。 自分をつけてくる相手も、少年だと勘違いしているのかもしれない。 ……少年だと思われるのなら、少女であるルイズには目が向きにくくなる。 あれ? ルイズは、少し奇妙に思った。 店の中には、気配が二つある。 一つはまぎれもなく店の親父のものだが、もう一つはよくわからなかった。 始めて感じる気配だった。 人間や獣、ドラゴンやサラマンダーなどの幻獣とも違っていた。 まあ、いい。 特に殺気や危険は感じないので、ここは知らん顔してもいいだろう。 ルイズは並んでいる商品を見たり、つついたりし始めた。 「おい、坊主。聞こえねえのか? そういうことはママのおっぱいを卒業してから…………」 店主は脅すように言ったが、すぐさま顔から血の気が引き始めた。 ルイズが商品の一つを片手に持って、近づいてきたからだ。 それは、バトルアックス……戦斧と呼ばれる武器の一種だが―― 通常のものよりも刃を大きくした分、重量も跳ね上がり、鍛えた大の男でも扱うのに苦労する代物だ。 『華奢な少年』には扱うどころか、持ち運ぶことすらできかねる。 そのはずなのに、目の前の子供はニヤニヤしながら、まるで軽い棒切れのように軽々と振り回しながら、こっち向かってくる。 しかも―― このガキ、本気だ……。 長年の勘で、店主は相手が迷うことなく、自分の脳天に斧を振り下ろすことを予測した。 店主は自分が悪い夢でも見ているのではないかと、いや、夢であることを切に願った。 ぶんぶんという斧が発する不気味な音を聞きながら。 この時、『少年』の左にはめた手袋が淡く光っていることに、すっかり動転した気づきもしなかった。 「おい、ちょ、やめ……まて……まって!」 店主は必死で制止しようとするが、まるで意味がなかった。 ルイズはどんどん店主に近づいていく。 やがて――店主は気づく。 どうして、この『少年』がこれほど恐ろしいのかを。 商売柄、いかつい大男やゴロツキどもの相手は慣れており、少々の脅しでがたつくような玉ではなかった。 だが、今相手にしているのは、過去に見たどんな傭兵や腕自慢とも違っていた。 得体の知れない、はるか遠方の秘境からきた魔物でも相手にしているような気分だった。 直感する。 こいつは、人間じゃない。 姿こそ、少女のような顔をした『こせがれ』だが……。 その雰囲気にもっとも近いものは、まだガキの頃、最初に見たオーガ鬼だ。 あの人に似て、人とはまるで異なる筋肉の塊みたいな化け物に震えあがった、その恐怖はいまだに忘れられない。 きっと、死ぬまで忘れることはかなわないだろう。 お前はなんだ。 店主は悲鳴にならない、悲鳴をあげた。 そして、カウンターに近づいたルイズは、無造作に斧を振り下ろした。 「ひいい!」 女みたいな声を出して、店主は頭を抱えてうずくまる。 しかし、痛みもショックがなかった。 恐る恐る目を開けると、カウンターを真っ二つにし、床に刃を叩き込んだバトルアックスが見えた。 「はずれちゃった……」 ルイズはニヤリとして、羽根ペンでも持ち上げるみたいに、バトルアックスを持ち上げる。 その笑みから、わざと外したことがわかった。 「でも、次こそは!」 ルイズは構え直し、じろりと店主を見下ろした。 冗談じゃねえよ!! 店主はゴキブリみたいに壁際まで這って逃げた。 ルイズはそれを追い、バトルアックスを持ったまま、ひょいとカウンターをジャンプで飛び越え、店主の前に立った。 もはや、店主は生きた心地さえしなかった。 「カンベンしてくれぇッッ!! カンベンしてくれぇッッ!! 俺が悪かったあああッッ!!」 店主は土下座し、必死で許しを乞う。 「ふん」 その態度にルイズは冷笑する。 「おいおい、そこまでにしとけや! そんな親父殺したってしょうがねーだろうが!!」 予期せぬ声が、ルイズを制止した。 「誰?」 ルイズは声のほうを振り向き、すぐに一本の錆びついた薄手の長剣を見つけた。 こいつが…? いや、もしかすると。 「あんた、インテリジェンスソード?」 声をかけると、剣は応えた。 「おう、そうとも。俺様ことデルフリンガー! 通称クレイジーモンキー!」 「はあ?」 「しょっぱなの軽いギャグよ。気にするな。それよりあんちゃん……」 剣は笑みを含んだ声で、 「見かけのわりにてーした馬鹿力じゃねーかい。どうだ、俺を買わねえか? 損はさせねーぞ?」 「生憎剣なんか使ったことないんだけど」 言いながら、ルイズはおしゃべりソードの柄を握る。 また左手袋が、正しくはそれに刻まれた使い魔のルーンが輝く。 すると、剣はいきなり黙りこんだ。 「なに? おしゃべりはおしまい?」 「おでれーた。おめ、『使い手』か? いや、違う……のか? いや、間違いねえ。間違いねえが……。ま、いいやな。おい、俺を買え」 「やだ」 ルイズは断った。 「にゃにおう?!」 「なんであんたみたいなボロ剣……。贈り物っていうのなら、もらわなくもないけど」 ルイズはちらりと店主を見る。 「ひ…! さ、さしあげます! そんな剣でよろしけりゃあ、いくらでもさしあげますんで。命ばっかりは……」 店主は床に膝をついたまま両手を合わす。 「なに、それ。それじゃまるで強奪してるみたい……」 「いえ、とんでもない! どうぞ、お受け取りくださいませ!」 店主はあわてて首を振った。 「こんなボロ小屋で埃かぶってるよか、あなた様のようなお強いおかたにもらっていただけるほうが何倍も幸せです!」 「そこまで言われたら、断るわけにもいかない」 ルイズはふっと微笑んだ。 店主はほっと胸を撫でおろしたが、その矢先、錆びた剣先を鼻面に突きつけられた。 悲鳴をあげることもできず硬直しているところへ、 「抜き身で往来に出るわけにもいかない。鞘もプレゼントしてくれると大感激なんだけど」 『少女』のような、優しい声が上から降ってきた。 「容赦ねえなあ……。だが、気に入ったぜ、相棒!」 デルフリンガーの嬉しそうな声が、ひどく遠くに聞こえた。 「人を見かけで判断して、うかつな言動をするとろくでもない目にあう。勉強になった?」 ルイズは鞘におさまったデルフリンガーを受け取ると、ちゅっと店主に投げキッスをして店を出ていった。 「……………てめーは俺の親父の名にかけてクソッタレだ、ちきしょう」 一人になった店主は、破壊されたカウンターを見ながら、半泣きでつぶやいた。 「こんな商売、もうやめだあ……!!」 「いたか」 「いねえ」 数人の男たちが互いにしかめっつらを見せ合いながら路地裏で話していた。 いずれも人相の良くない男たちだ。 俗にゴロツキとかいわれるような連中だった。 街で金持ちのお坊ちゃんらしい『少年』を見かけ、鴨にしようと追っていたのだが……。 武器屋から剣を手に出てきた後、ふいに姿が見えなくなってしまった。 まるで、天に昇ったか、地に潜ったか。 「あいつ、メイジだったんじゃねえのか?」 「でも、マントつけてなかったぜ」 「馬鹿か。そんなやつはいくらでもいるさ」 ゴロツキたちは憶測を飛ばし合いながら、ぼやいていた。 あれが少年であれ、少女であれ、捕まえてその筋に流せば、好事家が高い値で買ってくれる。 場合によっては――美少年は絶世の美女よりもはるかに高い値がつくのだ。 それを逃したとなると、非常に悔しいことだった。 男たちはぼやき続ける。 自分たちが追っていた相手が、すぐ近くで自分を観察しているとも知らずに。 ルイズは愉しげにその会話を聞いていたが、口元に残忍な笑みを浮かべ、背負った長剣に手を伸ばす。 だが、すぐに思い直したように手を止めた。 そして、ポケットから大事そうに黒いマスクを取り出した……。 「ママとはぐれちゃったの、仔猫ちゃんたち?」 頭上から陽気な声をかけられ、ゴロツキたちは身をすくませた。 どこから現れたのか、上の壁に真っ黒な怪人が張りついていた。 まるで、巨大な蜘蛛のように。 「あ……?」 「なんだあ……」 驚く男たちの前、怪人は音もなく飛び降りると、いきなり手近な相手を殴り倒した。 男は壁に叩きつけられ、動かなくなる。 死んではいないが、下顎が見事に砕けていた。 当分の間、悪くすると一生ステーキは食えないだろう。 いきなりの展開にぽかんとしているところに、次の犠牲者が出た。 胸倉をつかまれ、放り投げられたのだ。 投げられた男はくるくる回転しながら踏み潰されたガマガエルのように地面に叩きつけられた。 「て、てめえ!」 「なんだ、おめえはッッ!!」 やっと男たちは臨戦体勢に入った。 しかし黒い怪人はかすかに小首をかしげ、蜘蛛のようなポーズで男たちを見ている。 マスクをして表情が見えないが、雰囲気から明らかに馬鹿にしているのがわかった。 男の一人が小剣をつかみ、踊りかかるが、剣を振り下ろす前に顎にハイキックを受けて昏倒した。 黒い影は風のよう動き、矢継ぎ早にゴロツキに襲いかかった。 次に停止した時、たっているゴロツキは一人もいなかった。 時間にして一分もたってはいない。 「蜘蛛の糸を使う必要もなかったわねえ……」 少々不満そうな声でつぶやき、黒い怪人はさっと姿を消した。 この後、街はにおかしな噂がたつことになる。 壁を這いまわる不気味な黒い化け物の噂が……。 「相棒もつれねえよなあ」 女子寮の部屋。鞘から三分の一ほど刀身を出したデルフリンガーは不満そうな声でルイズに呼びかける。 「早速に活躍できるかと思ったのに、俺様ぬきでやっつけちまうんだもの」 「血でも吸いたかったわけ?」 ルイズは机で予習復習をしながら、返事だけする。 「俺様は吸血鬼じゃねえよ。でも、剣として造られたからにはなあ……」 「私も使おうかと思ったんだけど」 ルイズは手を休め、 「武器を持った状態じゃ、全員殺してたかもしれないから」 何でもないことのように、物騒な発言をする。 「ふーん。気を使ったってわけかい」 「別に? あの連中が死のうが知ったことじゃないけど、素晴らしい発見をして嬉しかったら……ね?」 ルイズは左手袋のルーンを見て、微笑む。 あの店でバトルアックスを持った瞬間、体が異様に軽くなり、パワーが数倍、それ以上に増幅されるのを感じた。 まったく驚きだ。 この優れた使い魔はまだ素敵な能力を秘めていたのである。 その気になれば、一国の軍隊とも戦えそうに思えた。 無論勝利することも。 「気分が良かったから、見逃してやったってえわけね……」 デルフリンガーがかちかちと音をたてる。 ルイズはそれに応えず、ニッと笑っただけだった。 「しかし、おでれーた。使い魔とメイジは一心同体ってえけど、まさかそこまでに一つになってるなんてなあ」 デルフリンガーは感心したようにつぶやく。 「それにしても、変わった生き物だよなあ。ぱっと見布切れみてえなのに……」 「生き物。やっぱり、生き物なのね」 ルイズは服ごしにコスチュームをなでた。 「ああ、それだけは間違いねえな。俺みてえに魔法で造られたもんでもねーよ、きっと」 この使い魔がどこからきたのか考えると、実に不思議な気分になった。 まあ、いい。 ルイズは肩を揺する。 問題は、ないのだ。 「言っとくけど……」 「わかってらあな。こいつは秘密だ。相棒の秘密は絶対にもらさねえ」 「よろしい」 会話も途切れ、ルイズは改めて勉強に専念しようと机に向かう。 が。 ぴくり、と健康や育ちの良さを示すその頬が動いた。 ルイズはペンを置き、椅子を動かしてドアのほうへと体を向ける。 どんどんと粗雑な音が響いた。 「開いてるわ」 乱暴にドアが開かれ、金髪の少年が入ってきた。 目つきが物騒で、下手をすれば刃物でも取り出しそうだった。 「デートのお誘いかしら、ギーシュ・ド・グラモン」 ルイズは足を組みながら客を出迎えた。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 来客の声は殺気に満ちていたが、ルイズは笑みを消そうとしない。 ギーシュはルイズを見て一瞬ぽかんとした。 え? 誰? そんな表情だった。 長い髪の少女が少年のような短髪になっていたのだから、しょうがなくもあるが。 ギーシュはすぐにキッと表情をこわばらせ、 「僕と、決闘しろ……」 「また、それ?」 ルイズは息を吐き、 「女の子を前にして、物騒なことね。薔薇の存在意義はどうしたの? ああ、身のほどを知って返上したのかしら」 「黙れっ!!」 ギーシュは顔を歪めて杖を突きつける。 その表情に、へらへらと女子の尻を追いかけ、プレイボーイを気取っていた時の余裕はなかった。 追いつめられ、逃げ場を失ったドブネズミのようだった。 ルイズは立ち上がり、息がかかるほどの距離まで顔を近づけた。 「ゼロのルイズに虚仮にされたのが、それほど恥ずかしかった――?」 「……!」 ギーシュは一瞬驚いて飛びすさる。 あの食堂で恥辱を受けて以来、ギーシュは一分も安らいだ時間が得られなかった。 仲間内では馬鹿にされ、女子からも軽蔑の目で見られるようになった。 ルイズにやられる直前、二股がバレて二人の少女から別れのビンタとワインの洗礼を受けたことも相乗効果となっていた。 先にルイズに平手を受けたマリコルヌは部屋に引きこもっている。 噂ではまだ寝こんでいるそうだ。 目の前で杖を折られて捨てられた上、その憎い相手に一矢報いることさえできなかったことがショックだったのだろう。 それも、相手は学院始まって以来の劣等生、ゼロのルイズ。 しかし――自分は違う。 こんな相手に、ヴァリエールとは名ばかりのゼロに馬鹿にされてたまるものか。 「決闘だ……。ヴァリエール」 杖を握りしめ、ギーシュはうなった 「……やめておいたほうがいいと思うけど?」 ルイズはステップでも踏むように後ろにさがってから、またギーシュに顔を近づけ、耳もとで囁いた。 「恥の上塗りって言葉知ってる?」 くすくすとルイズは笑った。 その言葉を受け、ギーシュの目から理性の炎が消失していく。 ルイズはそれを観察しながら、 「まあ……。それほどまでにいうのなら、受けてあげていいわよ?」 「明日の昼休み……ヴェストリの広場だ」 「いいわ。素敵なお花を用意してきてよね?」 うなるギーシュに、ルイズはまるでデートのOKを出すかのように、花のような笑みを浮かべた。 美しく、可憐な容姿とは裏腹に、人を蝕み、死に至らしめる毒花のような微笑を。 そんな相棒を見ながら、 どーせ、決闘でも俺の出番はねえんだろうなあ……。 デルフリンガーはちょっとセンチになっていた。 前ページ次ページGIFT
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前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~ 初日 さて、私は遂に念願の使い魔を召喚したわけですが、 「こんな小さいゴーレムなんてハズレよね~~」 私が召喚したゴーレムは丸いボディに4本の折りたたみ収納式の足。 見た目はちょっとカワイイが、役に立つかどうかは疑問なゴーレムだった。 しかもコイツときたら立派なヒゲ、の落書きまでしてあったりする。あきらかに誰かの所有物だ。 なんでもここに来る前は保育園の子供たちの世話をしていたらしい。名前はグランパ。 見た目はカワイイので適役だろう。 とりあえず洗濯を命じて、床で寝させた。 次の日 授業に出て部屋に帰ってきたらベッドが2つになっていた。 なんでもゴーレムが一晩で作ったそうだ。器用な奴だ。 よっぽど床で寝ろといったのが気に入らなかったらしい。 ゴーレムなのに飲み食いもするし眠気も覚えるし、トイレにも行く。 コイツは一体なんなんだろう? ちなみにベッドは私のベッドよりもふかふかで寝心地が良かった。なんかムカツク。 でも、なんだかスイッチとかボタンとかいうでっぱりが多く、不審な感じだった。 押し込んだら光ながらぐるぐる回った。ナニコレ。 次の日 部屋に戻ると壊れていた椅子が新品に直っていた。 ただ、座るとなぜか90度回転して机に向かわせる機能は必要ないと思う。この辺無駄に器用だ。 でもまあ、なかなかやるじゃないと褒めたらなぜか『おちゃ』というのをくれた。 東方の茶葉で貴重品のはずだが、どうやってもってきたんだろう? 次の日 私の窓の所にひさし状の屋根がついた。 しかもただの屋根じゃなく、金属製で鏡張りのぎらぎらしたヤツだ。 作って取り付けたのはもちろん丸いアイツ。 なんでもこれでグランパの稼動に必要なエネルギーが得られるらしい。 太陽光発電というらしい。よくわからない。 次の日 水汲み場付近に変なオブジェクトが建設された。 なんでも『こいんらんどり~』というものらしい。かなり器用な奴だ。 金貨を入れてスイッチを押して蓋を閉めると勝手に洗濯し、乾燥までしてくれるらしい。 しかし、カゴ一つの洗濯物を洗うのに、風呂ぐらいの水を使うのは経済的じゃないと思う。 洗濯に金貨一枚というのも暴利だと思う。 やはり私のゴーレムはどこか抜けている。 ありがたがって使ってたのは男やもめ40歳のコルベール先生だけだった。 ありゃ勝手に洗濯してくれる箱が珍しいだけだよね。 洗濯物をかき集めては入れるを繰り返してる。 ナニがそんなに楽しいのか。 おや? ポ~~~ン コルベールが水汲み場で倒れました。 次の日 私の部屋にまた変な箱ができていた。 スイッチを押すと勝手に『こーひー』というものが出てくるらしい。 まためずらしいものだ。これもまたお茶と同じく遠い土地でしか取れないものではなかったか? 早速飲んでみる。入れたては熱い。これも驚きだ。いただきます。 うげっ 苦い。ダメです。超甘党ではしばみ嫌いの私には飲めません。 普通は砂糖とミルクで味付けするらしい。貴重品なので手に入らなかったそうだ。 グランパはなぜかうれしそうにして真っ黒なこーひーを飲んでいた。 これって私のためじゃなくて、アンタが飲みたくて作ったんじゃないの? ある日 ふと気づくとゴーレムが2体に増えていた。 どうやって増えたのかを問い詰める。 平民の職人みたいに材料を加工して、切ったり繋げたり縫ったりして作り上げたそうだ。 メイジが杖を振ってちょいちょいで5秒で出来ることに1日かけたそうだ。無駄なことをしている。 こいんらんどり~の金額が金貨じゃなく銅貨1枚になっていた。 1週間後 ゴーレムの数はネズミ算式に増えてもう100体を越えていた。 え~~~~?ナニよソレは? 倍々ゲームで増えて言ってるわけ? 1日で倍に増えるとして、2の7乗だから128…………… この調子で増えると1月後には億とか兆の数になってる? まさかね。 次の日 皆さんお待ちかねぇ~~~ 今日の対戦相手はギーシュ・ド・グラモン。 拾われた香水の件で決闘を開いてくれました。 「僕はメイジなので魔法でお相手しよう」 「我々はBALLSなので物量でお相手しよう」 7対200というイジメみたいな状況が始まった。 この時点で物量差がおかしすぎるとか言わない時点で、ギーシュは軍人として大成できないだろうなと『こーらー』を飲みながら思った。 いくらメイジでも200のゴーレムは相手にしたらダメだった。なんせギーシュもゴーレム使いだったしね。戦争は数だよ兄貴。 女性型ゴーレムのワルキューレに30近いゴーレムがまとわりついて、浴びせ倒しを見舞うのは凌辱的光景だった。 ギーシュは50近いゴーレムにぐるりと囲まれて生きた心地がしないようだった。 決闘後、なぜかグランパがメイドと仲良くなっていた。一緒に部屋に行ってナニをしていたんだろう? 次の日 ゴーレムがハズレじゃなかったので調子に乗ってたら、錬金の失敗で教室を大破させてしまった。 ポ~~~ン シュヴルーズが教室で倒れました。 それはもういいって 罰として、ゴーレムと総出で直した。 が、 「ミスヴァリエール、私は片付けろとは言いましたが、リフォームしろとまでは言わなかったはずです」 ゴミ捨てに目を放していた隙に、なんだか教室がビバ!近未来な感じにリフォームされてました。 なんか金属質な床、勝手に開いたり閉まったりするドア、 ランプもないのに光ってる照明、色んな風景を映し出してるガラス板。 机は木からなにかの樹脂を固めたものになり、机の下の引き出しを引き出すと文字盤が並んでいる。 「すごいよこの教室!机に教科書乗せると、内容がガラス板に映し出されるYO!!」 コルベール先生は今にも脱糞しそうなぐらいのはしゃぎっぷりだ。自重しろ40歳。 机の上の文字盤を押すと色々なものが表示されるようだ。 あ、この机でババ抜きと七並べができるのか。 他にはせーれーきどーだんとかおれのしかばねをこえていけとかわけのわからない遊び道具が入っているらしい。 今頃気づいたんだけど、器用の域を超えてるよね。 ただ、私が実技をしようとすると自動で出てくる防火シャッターと金属防御壁、緊急サイレンはムカついた。 対火対爆使用なんだそうだ。 もろともに吹っ飛ばされたのがそんなにイヤだったか。 ポ~~ン コルベールが教室で倒れました。 1月後 ゴーレムはとりあえず100万までで自重したらしい。 学園内にきっちり101体置き、残りはどこかに旅立っていった。どこいったんだろ。 なお、他のメイジがゴーレムに頼みごとをすると、たいていは聞いてくれているらしい。 ただ、ふつうに使用人に頼んだ方が効率も確実性も高いのが玉に瑕だそうだ。 料理はこげてたり半生だったりしてかろうじて食べられるレベルだった。 あと話しかけるとやっぱりたまにお茶をくれる。なんで? ある日 破壊の杖が盗まれた! とりあえず教師たちが見回りのサボりの件で責任を押し付けあってると、ゴーレムたちが盗まれたはずの破壊の杖を持ってきた。 「これは……いや、形は似ているが、新しすぎる。ニセモノじゃな」 カチ ど~~ん ゴーレムは学園長室の窓から破壊の杖を作動させた。庭にどでかいクレーターができた。 みんな唖然。私も唖然。学園長入れ歯吹き唖然。 私の失敗魔法の数十倍の規模の爆発は、破壊の杖が本物だということを証明した。 なんでもこのゴーレムたちは盗まれてから4時間で破壊の杖そのものを作ってしまったらしい。 作り直せば事態は解決するもんでもないと思うがそこはそれ、メンツは守れるか? どうも破壊の杖がなくなって困った困ったと言ってるのが、ゴーレムたちの奉仕精神を刺激したらしい。 元々短い時間で安く大量生産できるように簡単なつくりをしていた武器だそうなので、ゴーレムたちには楽に作れたらしい。 楽に伝説の杖を作ってしまう辺り、おかしいぐらい器用だと思う。 その後、馬で片道4時間かかる距離を4時間で往復して、ついでに聞き込みまでしてきたと言ったミス・ロングビルがお縄になっていた。 みんな落ち着いて考えたらおかしいな~~と思うよね~~。 まあ実はゴーレムがフーケが盗むところを見ていて、その記憶を『てれびじょん』に映してたら、ゴーレム動かしてたのがロングビルだとばれた訳ですが。 そんなタイミングでフーケを見つけたと駆け込んできたロングビルは間が悪い。 ゴーレムは学園内だけで百いるからどこかに必ず1体はいるもんね。教師の見回りはやっぱり必要ないみたいだ ポ~~ン ロングビルが学園からいなくなりました。 前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~