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前ページ次ページ日本一の使い魔 決闘騒ぎは貴族の子弟たちにっとって意外な形で幕を下ろした。 「なんだったんだアレは?」 「あいつレビテーション もフライも使わないで、火の塔から飛び降りたよ な?」 キュルケとタバサも何が起きたのか話をしていた。 「ねえタバサ、あれってケンよね?」 「あの人は、さすらいのヒーロー快傑スバット。そう名乗った。」 「魔法も使わずにアレって反則なんじゃ、、、」 「魔法、、、『お約束』、、、」 学院長室でもオスマンとコルベールが、あれやこれやと話をしていた。 「なんじゃったんじゃアレは?」 「私にも何がなんだか、、、」 「あまり触れてはいかん気がするしのう。」 「それにしても、遠見の鏡はどうしたんじゃ?」 「それについても解らないのですが、遠見の鏡はそうせざるを得なかったとし か。」 「ふむ、謎じゃのぅ。しかも彼がガンダールヴであるという確証は得られなかっ たしのう。もし、アレがガンダールヴのルーンの効果による物とすれば、動きに どこかしらの不慣れが出るものと思うが、しかしアレはさも当たり前のように振 舞っておったし、あの赤い服が何か関係があるのかのう。」 「いずれにしても、調査は必要と言う事でしょうか、、、」 「あの服、どこかで見た事あるような気がするのじゃが、、、」 噂話の中心、早川はと言うと、自分の体の変調について考えていた。 「(いくらズバットスーツを着ているとは言え、あの人形を吹き飛ばすつもりで ズバットの鞭を振るったし、本気とは言えない威力で放ったズバットアタックで 人があそこまで吹き飛ぶとは。しかも妙に気持ちが高ぶった。何だったん だ?)」 ---ズバットスーツ--- 早川健の親友である飛鳥五郎が、設計・開発した宇宙探検用強化スーツ そのスーツをベースに早川が亡き飛鳥の意思を継ぎ完成させた強化服。 通常の何倍もの怪力を生み、防御能力もかなり高い。 10トンの重量に耐える特殊スチール製の鎖を引きちぎり、実験でズバットスーツ を鉄の棒で殴れば鉄の棒がひん曲がる程の防御力を持った強化服。 -------------------- 早川が部屋に戻ると、そこにはルイズが仁王立ちで睨んでいた。 「色々と言いたい事あるけど、アレは何?」 「なんの事でしょ?」 自分の正体が周りにバレているにも関わらず、とぼける早川。キレるルイズ。 早川は踵を返し、部屋の外に ハヤカワはにげだした しかしまわりこまれてしまった 「あんたが、ギーシュのゴーレムにボコボコにされちゃったと思ったらいなくて、 いきなりあの『ずばっかー』に乗って現れたと思ったら変な服着てて、 あっと言う間にやっつけちゃって、、、」 言葉につまるルイズ、見ると泣いている。 観念した早川は、ズバットスーツ、ズバッカー、そして亡き親友について語る。 「飛鳥五郎という親友がいた。優秀な学者だった。飛鳥が宇宙、、、宇宙ってい うのは空のずっとずっと上の場所さ。その宇宙を探検する為に設計した身体を強 化する服、そして乗り物。そいつを俺が完成させた。」 「ねぇ、親友だったって喧嘩でもしたの?」 「死んじまったのさ。ウジ虫に殺されちまった。俺は飛鳥を殺した奴に復讐を誓 った。飛鳥が残したズバットスーツ、ズバッカー、俺はあいつと一緒にあいつを 殺した奴に復讐する為犯人を捜している。」 キザで明るく、何でも器用にこなし、皮肉屋で、でも憎めない自分の使い魔の影 の部分、笑顔の裏が垣間見えた。そして一つの考えが浮かんだが、慌てて自分の 中で否定した。 ・ ・ ・ ドアノブに手をかけ早川は外に向かおうとする。ルイズは自分の使い魔がどこか に行ってしまうと思い慌てて追いかけようとする。 早川はニコっと笑い、テンガロンハットを投げルイズの頭に被せる。 「ちょっと小腹が空いたんで厨房にでも行ってきますかね。何かいるかい?」 そう言うと手をヒラヒラさせて出て行った。 早川が厨房に到着する。料理長のマルトーは顔を輝かせ、 「見ていたぞ~、カッコ良かったぞ~、我等の鞭! 」 「ヒュンと飛んで、ズバ、ズバ、ズバっと鞭を振るって、こうやって」 他の給仕に聞く所によると、マルトーは貴族や魔法が大嫌いらしい。 それでこの興奮である。まるでテレビの前のチビっ子のように。 「マルトーさんよ、ちょいと小腹が空いたもんで」 早川が言い切る前にマルトーは更に顔を輝かせ、 「俺の作った飯を我等が鞭は食いに来てくれたってのか。」 貴族の夕食よりも豪華な食事が並んだという。 しきりにマルトーがこっちを見ている。苦笑いを浮かべて食事をしていると、 シエスタがやって来た。 「ケンさん、あの時は逃げちゃったりしてすみませんでした。」 「気にしなさんな。怖かっただろ?だがもう安心だ。」 逃げた事を気にし、うつむくシエスタの頭をなでて微笑む。 「はい、ケンさんが守ってくれるので安心です。ありがとうございました。」 頬を染めるシエスタに手を広げ肩をすくめる。マルトーがニヤニヤとこっちを見 ている。一通り食事を済ませ、ルイズの分にと取り分けて貰った食事を手にし立 ち上がる 「ごちそうさん。さてと、帰るとしますか。」 立ち去る早川に向かい、マルトーが慌てて尋ねる。 「もう帰っちまうのか?お、俺の料理はうまかったか?」 早川は振り向かずに 「泣き虫のご主人様を待たせてるんでね。マルトーの旦那、あんたの料理の腕、 日本じゃ、、、」 立てた2本指の中指を曲げ、 「1番かもな、うまかったぜ。じゃあな。」 前ページ次ページ日本一の使い魔
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前ページ次ページ紙袋の使い魔 決闘の日から一週間程の時間が流れた。 ファウストの自室はルイズしか入らなかったが、人の出入りが多くなった。 あの日以来、ギーシュは平民だからといって高慢な態度を取る事は無くなり、モンモランシーとの中も好調であるらしい。ときおりファウストの下へ話をしにきたりしているようだ。 シエスタ、マルトー、コックやメイド達は、自らの体を張ってシエスタを守ってくれたファウストを「我等が槍」、「紙袋の名医師」、「お茶目なお医者様」と呼び慕っている。 キュルケは今まで以上にルイズをからかい、タバサはちびファウストくんと共に遊びに来ては彼に病の事について話をしにきている。 ルイズはと言うと・・・・。 決闘以来、今まで自分に対して馬鹿にした態度を取っていた生徒たちが、畏敬の視線を浴びせてくるようになった事を疑問に感じていた。 ファウストのおかげかしら?と自分に優位な考えで解釈していたが。 今まで通り、ファウストと自身の魔法について意見を交わし、裏庭なんかで実験を繰り返す。 そんな日々である。 あっという間に一週間が立ち、虚無の曜日がやってくるのであった。 「ファウスト。今日は虚無の日よ。街へ買い物に行きましょう」 「虚無の日?お休みの日ですか?」 「ええそうよ。前に言ってたでしょ?武器が無いって。この前の決闘の時の槍ってニセモノだったんでしょ?街でちゃんとした物を買ってあげるわ」 「別に武器が欲しい訳じゃないんですがねぇ・・・。まぁ、折角のご好意。断る訳には行けませんねー」 その日も、普段どおり部屋にて勉強、そして練習を行うと思っていたファウストであったが、今日は違うようだ。 この世界の町というものを見たことが無かったので、準備をし、ルイズへと着いていった。 「ルイズさん、街は遠いのですか?」 「そうね。馬に乗って三時間くらいね」 「案外かかりますねぇー。ルイズさん、詳しい場所は分かるのですか?」 「大丈夫よ。何故かしら?」 「それならコレを使って行きましょう」 鞄をガサゴソと漁ると、とても大きな扉が出てくる。 「何処○もどあ~」 少ししゃがれた声で高らかに言った。 あの鞄の中身はどうなっているのであろうか?気になってしょうがない。 「・・・・それは何なのかしら?」 「コレを使えば知っている場所へすぐ着きますヨ。さぁルイズさん、場所を思い浮かべて下さい」 「気にしない気にしない。一休み一休み・・。気にしたら負けね。行きましょうか」 考えるのを止めたルイズはファウストと共に、扉へと入っていった。 その日もタバサは、朝早く起きて読書をしていた。庭の木の下でだ。 隣にはちびファウストくんと彼女の使い魔である、シルフィードが遊んでいる。 「きゅいきゅい!ちびファウストくん!そこはダメなのね!」 タバサは無言で杖の頭でシルフィードを叩いた。 「喋ってはダメ。だれが見ているか分からない」 「お姉さまのイジワル。だってちびファウストくんがシルフィの変なとこ舐めるのね」 「喉元を舐められただけ。そういうサービス発言はいらない」 彼女の言っている意味が分からないシルフィードはそのままちびファウストくんとじゃれあっていた。 「そろそろ時間。ちびファウスト。あなたのご主人様の所へ行きましょう」 彼女はお昼過ぎのこの時間、いつもファウストの元へと向かうのであった。 自分が知らない未知の魔法について、そして医者だという彼に病についての質問をしている。 頷いたちびファウストくんを引き連れ、彼女はファウストの元へと向かった。 「いってらっしゃいなのねー。お姉さ・・・痛っ・・・・」 シルフィードに軽いエアハンマーでオシオキした後、ファウストの部屋の前に着いた。 しかし、ノックをしたが反応が無い。彼女は一応断りの台詞を入れて部屋を開けた。 「・・・・誰もいない。ルイズも。虚無の曜日だから出掛けた・・・?」 部屋の前で考えているとキュルケが自室から出て来たらしく話しかけてきた。 「どうしたのタバサ?何、今日もミスタ・ファウストへ質問タイム?熱心ねぇ。それで、部屋の前で何してるのかしら?」 「居ない。どこかに出掛けたらしい」 彼女の台詞を聞いたちびファウストくんが服を引っ張っていた。 「・・・場所が分かるの?着いて来い?」 こくこくと呟くちびファウスト君。 「すごいじゃないのタバサ!話が分かるの?」 「何となく」 「それで、行くのかしら?私も着いてっていいかしら?」 こくりと頷くと、部屋の窓を開け、口笛を吹いた。 窓枠によじ登り、そのまま外へと飛び降りた。 何も知らない者が見たら頭を疑うであろうその行動にキュルケは全く動じず、自身もその身を空へと躍らせた。 ばっさばっさと力強く翼を羽ばたかせ、シルフィードは彼女等を受け止める。 「いつ見ても貴女のシルフィードは惚れ惚れするわねぇ」 そう、タバサの使い魔、シルフィードは竜の幼生なのであった。 「どっち?」 ちびファウストくんはその問いに、東の方へと指をさす。 「あっちは街のほうね。虚無の曜日だから街に買い物にでも出かけたのじゃないかしら?」 キュルケの恐ろしいまでの推理にタバサは頷き、シルフィードを街の方へと急がせるのであった。 扉から出ると、そこには街が広がっていた。 「ほんとーに何でもありねあんた・・・。驚かないって決めてたのに驚いちゃったわ。その内奇跡の一つでも平然とおこしそうね・・・」 「ルイズさん・・・奇跡とは、待つものではないのです。日々の努力が奇跡へと繋げるのです。そして奇跡を起こさなきゃいけないのが医者なんですよ。例え1%を切っている確率でも、我々医者は成功しなきゃいけない。いえ、させるのです」 「これはお医者様とは何の関係無いでしょう!?ごまかそうとしたってそうはいかないんだから!」 「あひゃ!バレましたか!細かい事気にしてたらハゲちゃいますよぉ~ルイズさん!」 もう付き合ってられないとばかりに、ファウストへと背を向けると、街の奥へと歩いていった。 途中、ファウストは何度も人とぶつかっていたが、その度に相手から何とも言えない声がしていた。 「ルイズさん。ここはスリが多いですねぇ~」 「え!?あんたもしかしてスラレたの!?」 「そんな訳無いじゃないですかー。スロウとしてたのでぶつかって来た時に体を少し弄ってあげただけですよぉー」 その日、町でスリをしていた連中は、変な被り物をしている貴族の連れから財布をスロウとしたが ことごとく失敗に終わった。その際、体に軽い違和感を感じ意識を失ったのだが、目が覚めるとニキビが治っていたり、水虫が治っていたり、体のありとあらゆる異常が治っていた。 紙袋を被ったあの男は始祖の使いに違いない、そう信じ、あの男に救って貰ったこの体。悪さをすることは出来ぬと改心し、まっとうな職を探すのであった。 その日以来、街での犯罪件数が激減したのであった。 ルイズは目的の店の看板を見つけると嬉しそうに呟いた。 「あったわ。中に入りましょう」 店の中は薄暗く、ランプの灯りが灯っていた。周りを見渡すと、甲冑や剣、大きな出刃包丁のような剣など様々な武器が置いてある。いかにも武器屋といった様子だ。 店の奥でパイプを咥えていた50がらみの店主らしき男は、店に入って来た人物が貴族であると気付くと低い声で喋った。 「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売をしてますぜ。貴族様に目をつけられる様な事は一切合財しておりませんや」 「違うわ。客よ」 「これはこれは!貴族様が剣を!こりゃおったまげた!」 「違うわ。私のを買いに来たのではないわ。ファウスト。入ってらっしゃいな」 店主は黙ってその様子を見ていたが、入ってきた男に驚き声を出すことが出来なかった。 なんせその男扉を狭そうにくぐったかと思うと部屋の中で立ち上がった。 自分が見上げる程の大男。店主は自身の体格で見上げる程の男に出会うのは武器屋生活25年間の中で初めてである。 「貴族様・・・こちらの方用の武器で御座いますか?」 「ええ。そうよ。私の使い魔のファウストよ。槍を探しに来たのだけども・・・」 主人はいそいそと店の奥へと消えると、次々と槍を並べていった。 「貴族様、そちらの方にあうような武器になりますと当店にはこのくらいしか御座いません」 そういうと店主は槍の説明をしていった。 「右から、かつて伝説の白い魔人が使ったと言われる「テックランサー」、何度倒されても決して諦めずに姫を救った騎士アーサーの使ったと言われる槍、ナイトと呼ばれた騎士が使ったとされる全てを貫く「ミストルテイン」で御座います」 「どれも強そうな槍ねぇ・・・どれがオススメなのかしら?」 「どれもオススメで御座いますよお客様。これらの武器なら世間を騒が盗賊を見事撃退できますぜ」 「盗賊・・?」 「ええ。何でも土くれとか呼ばれているメイジの盗賊が、貴族のお宝を盗みまくってるらしいですぜ」 ルイズは盗賊へはあまり興味は無かったが、見れば見るほど素晴らしい武器たちに目移りしてばかりである。 「どう?ファウスト。この中にあんたに使えそうな槍はあるかしら・・・?」 「う~ん。私は別に凄い武器が欲しいって訳じゃないんですがねぇー。どれもこれも強い何かを感じるのですが」 その時、乱雑に積み上げられた剣の中から、声がした。渋く、若本御大のような声が。 「何言ってるんだ?オメェ。武器屋に来て武器をいらないとはどういう要件でぇ」 ルイズとファウストは、声のする方へ近づくがそこには人の影はない。 「何~処見てんだいお前さんたち?俺ぁ、目の前に居るゼェ~?」 どうやら声は目の前の剣から発せられているらしい。 「面白いデスね。剣が喋るとわ!実に興味深い!あ・・・そういえば鍵も喋ってましたね・・・」 ファウストがそういうと、店主は剣へと怒鳴りかけた。 「デル公!大事なお客様に変な事言うんじゃない!」 「お客様だぁ?そいつ武器を求めていないじゃないのさぁ~!」 剣と店主の間で険悪なムードが広がる。 少し考えるとファウストは、間へと割って入った。 「まぁまぁ。抑えて下さいお二人さん。デル公さんあなた面白いですよぉー実にね」 「武器がいらねぇ奴に褒められても嬉しく無いッつーの!それに俺の名はデルフリンガーって名があらあなぁ!」 「それはすみません。私の名はファウスト。以後お見知りおきを・・・」 剣は黙ると、じっとファウストを観察するように声一つ発しなかった。 しばらくし、剣は小さな声で喋り始めた。 「こ~いつはおでれぇたぁ!おめぇ使い手じゃないのさぁ~」 「使い手・・・と申しますと?」 「自分の事も把握してないのかいぃ?まぁいい。俺を買いな。武器屋に来たって事は一応なりにもそれ相応の物を探しに来たんだろう?損はさせないゼェ?」 剣を手にし、沈黙していたファウストはルイズへと話しかけた。 「ルイズさん。私、このデルフリンガーくんでいいです」 「ちょっとファウスト。あんた槍がいいんじゃないの?」 「まぁそこの所は何とでもなりますヨ。それに面白いじゃありませんか。喋る武器・・・。デルフリンガーくん?」 「何だぁ?使い手」 「君を買いましょう。ただし、条件が一つあります」 「何でも聞いてやるぜぇ。こんな場所で朽ち果てていくくらいならどんな条件でも受け入れてやらあなぁ!」 「それは重畳。ではルイズさん。お願いします」 ルイズは多少不満げな顔をしていたが、自分の使い魔のいう事を素直に信じる事にした。 本人がこれでいいと言っているのだ。無理に止める事もないだろう。 「あれ、おいくら?」 「あれなら百で結構でさぁ」 「あら安いわね。今日は家が買えるくらいのお金は持って来てたのに」 「あっても邪魔ばっかするんで、こちらとしてもいい厄介払いでさ。ちなみに先ほどの槍なら一本でお客様の手持ち分程で御座いまさぁ」 ルイズは財布から、金貨百枚を店主へと手渡すとファウストと共に店を出て行った。 店を出ると、ファウストは喋る剣へと話しかける。 「それではデルフリンガーくん。先ほどの話、聞いていただきますよ?」 「おう!ど~んと来いやぁ!男に二言は無いゼェ!」 「では、あなたを私の使いやすい様にイジらせて貰いますネ!」 「・・・・は?何の話をして・・・」 「それでは!オペ開始デス!」 ルイズの目の前で嬉しそうなファウストと泣き叫ぶ剣の狂宴が始まった・・・。 ルイズは何が行われているかをあまり見たくないので、耳を塞ぎながら 後ろを向いてしゃがみこんだ。 「ちょ・・・何をぉ・・・あっ!そこはダメ!」 「大丈夫デス。すぐ済みます。ほら段々と・・・」 「そんな所までぇ・・・ダメだぁ・・・バカになるぅ!」 剣が喘ぎだした・・・ルイズは今朝あまり御飯を食べてこなくて良かったと 本気で思った。 「らめぇぇぇぇぇ!俺は・・・俺は・・・アッー!!」 どうやらそのおぞましい何かが終わったようだ。 ルイズはゆっくりと振り返る・・・。 「オペ完了デス。お疲れ様でしたデルフリンガーくん」 めそめそと小さい声で呟く。 「ううっ・・・ブリミル・・・オレァ・・・汚されちまった・・・。6000年間生きてきたがこんな使い手初めてだ・・・。ところでブリミルって誰っけか?」 「フフフ・・・あなたは生まれ変わったのですよデルフリンガーくん!そう!私の使う万能文化メス・・・デルフちゃんとして!」 デルフリンガーは既に剣では無かった・・・。この世界には存在しない武器(?)ファウストのメスとして生まれ変わったのだ。初めてみる形にルイズは興味を持つ。 「へぇ・・・これがアンタが言ってたメスってやつなんだ?」 「そうですよ。あるときは手術時の最愛のパートナー・・・またあるときは私を守る武器・・・そしてオシオキ兵器」 デルフリンガーを掲げながらうっとりとする。 「どうです?ルイズさん・・・いい輝きでしょう?フフフ・・・フフ・・」 ファウストがいつにもなく怪しい。 「そ、それは良かったわね。目的の物も手に入った事だし帰るとしましょうか」 「・・・そうですね。何処で○どあ~」 それから程なくして街へと着いたタバサとキュルケであったが、目的の人物たちが既に帰った事を武器屋の店主から聞くと・・・。 「タバサ・・・私たちって・・・完全に・・・」 「それは言わない方がいい。自分たちが傷つくだけだから」 「そうね・・・・」 彼女等は素直に学院へと帰っていった・・・。 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契約! クールでタフな使い魔! その② 承太郎が左手を押さえてうめいていると、コルベールがやって来て刻まれたルーンを見た。 「ふむ……珍しい使い魔のルーンだな。さてと、じゃあみんな教室に戻るぞ」 そう言って彼は宙に浮く。その光景に承太郎は息を呑んだ。 いつぞやのポルナレフのようにスタンドで身体を持ち上げている訳ではない。 本当に宙に浮いているのだ、恐らく魔法か何かで。 そして他の面々も宙に浮いて城のような建物に飛んでいった。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」 フライ。どうやらそれが空を飛ぶ魔法のようだった。 そしてその魔法が使えないらしいルイズと二人きりで承太郎は残される。 「……あんた、何なのよ!」 「てめーこそ何だ? ここはどこだ? お前達は何者だ? 質問に答えな」 「ったく。どこの田舎から来たのか知らないけど、説明して上げる。 ここはかの有名なトリステイン魔法学院よ!」 「…………」 魔法学院。本当にこいつ等は魔法使いらしい。ファンタジーの世界らしい。 それでも念のため、ここが地球であるという願いを込めて承太郎は問う。 「アメリカか日本って国は知らないか?」 「聞いた事ないわねそんな国」 仮にも人を平民呼ばわりする文化圏の連中が、世界一有名なアメリカを知らぬはずがない。 つまりここは地球ではない可能性が極めて高い。 「じゃあここは?」 「トリステインよ」 魔法学院と同じ名前……すなわち……。 承太郎の推理が正しければ! ここ! トリステイン魔法学院はッ! ほぼ間違いなくッ! 国立だッ!! ド―――――z______ン もっともこの学院が私立だろうと国立だろうと知ったこっちゃない話だ。 重要なのは。 「つまりこういう訳か? お前達は魔法使いだ……と」 「メイジよ」 「…………」 どうやら呼び方にこだわりがあるらしい。 とりあえず当面はこのルイズからこの世界の基礎知識を学ぶ必要がありそうだ。 他に今のうちに訊いておく事はあるだろうか? 承太郎はしばし考え――。 「てめー、何で俺にキスしやがった」 ルイズが真っ赤になる。そりゃもう赤い。マジシャンズレッドより赤い。 「あああ、あれは使い魔と契約するためのもので……」 「この左手の文字。使い魔のルーンとか言ってたな」 「そうよ。それこそあんたがこの私、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔になった証よ。 つまり今日から私はあんたのご主人様よ、覚えておきなさい!」 「…………やれやれだぜ」 こうして校舎まで戻ったルイズは、承太郎を入口に残して教室へと入っていった。 そして授業が終わってルイズが出てくるまで、承太郎は考え事をしていた。 空条承太郎。十七歳。 母ホリィの命を救うため、百年の時を経て復活した邪悪の化身DIOを倒し、 仲間を喪いながらも日本へ帰ってきて数ヶ月……。 DIOとの戦いで受けた傷もすっかり癒え、 祖父母のジョセフとスージーQはアメリカに帰り、 少し真面目に高校生活を送るようになっていた。 そんなある日、彼の前に突然光る鏡のようなものが現れた。 スタンド攻撃かと思った。 戦闘経験の豊富な承太郎がその光に警戒しない訳がない。 だが……その時の承太郎は電車に乗っていたのだ。 座席は埋まり、車両内には何人かの乗客が吊革を手に立っていた。 承太郎もその中の一人だ。 そして、突然目の前に光が現れて、避けようと思ったが、みっつの要因により失敗した。 ひとつ、車両内に逃げ場がほとんど無かった。横には乗客が座っているし、上は天井だ。 ふたつ、承太郎は物思いにふけっていたため反応が遅れた。 みっつ、光の鏡は電車ごと移動するような事はなく、承太郎は電車の速度で鏡に突っ込んだ。 そして気がついたら、ここ、トリステイン魔法学院にいた。 「……やれやれだぜ」 日が暮れる。腕時計を見る。 本来なら今頃、適当な花屋で花を買って、花京院の墓に添え、帰りの電車に乗っている時間だ。 結局墓参りどころか、花さえ買えずこんな所に来てしまうとは。 (こういう訳の解らないトラブルはポルナレフの役目だぜ) 何気に酷い事を考える承太郎だったが正しい見解でもあった。 そして授業を終えたルイズに連れられ、承太郎は学生寮のルイズの部屋に通される。 十二畳ほどの広さの部屋には、高級そうなアンティークが並んでいた。 そこで承太郎はルイズが夜食にと持ってきたパンを食べながら、 開けた窓に腰かけて静かに夜空を眺めている。 「ねえジョー……えっと、名前なんだっけ?」 「承太郎だ」 「ジョータロー。あんたの話、本当なの?」 「…………」 無言。肯定なのか否定なのかも解らない。ルイズはちょっと苛立った。 「だって、信じられない。別の世界って何よ? そんなもの本当にあるの?」 「さあな……。少なくともここは、俺の知る世界じゃねぇ。あの月が証拠だ」 「月がひとつしかない世界なんて、聞いた事がないわ。 ねえ、やっぱり嘘ついてるんでしょう? 平民が意地張ってどうすんのよ」 「俺を平民呼ばわりするんじゃねえ!」 一喝すると、ルイズはすぐ驚いて黙る。それだけ承太郎の迫力がすごい。 だがプライドが非常に高いルイズは負けっぱなしではいない。 すぐに何か言い返そうとして――承太郎が懐から何かを取り出すのを見た。 「何よ、さっきパン上げたでしょ? 食べ物を持ってるなら最初からそれ食べなさいよ」 承太郎が取り出したそれを口に運ぶのを見てルイズは意地の悪い口調で言った。 承太郎は細長い棒状の食べ物を咥えたまま、ルイズを睨む。 実は普通にルイズに視線を向けただけだが、睨まれたとルイズは思った。 「てめー……タバコを知らねーのか?」 「は? タバコ? あんたの世界の食べ物?」 「……やれやれだぜ」 そう呟くと、承太郎はタバコを箱に戻し、懐にしまった。 「食べないの?」 「食べ物じゃねえ」 この世界にタバコが無いとすると、今持ってる一箱を吸い終わったら補充不能。 それは喫煙家の承太郎にとってかなりの苦痛だった。 「ルイズ、てめーの説明でこの世界の事はだいたい解った。 ハルケギニアという世界だという事も、貴族……メイジと平民の違いも。 だが一番重要な事をまだ説明してもらってねーぜ……それは……」 「何よ?」 「俺が元の世界に帰る方法はあるのか?」 「無理よ」 曰く、異なる世界をつなぐ魔法などない。 サモン・サーヴァントは元々この世界の生き物を使い魔として召喚する魔法。 何で別の世界の平民を召喚してしまったのかなんて全然ちっとも完璧に解らない。 だいたい別の世界なんて本当にあるのかルイズは信じきっていないようだ。 何か証拠を見せろ、と言われたが承太郎の持ち物は財布とタバコ程度。 後は電車の切符くらいだ。 ルイズ相手にいくら話をしても無駄に思えてきた承太郎は、口を閉ざしてしまう。 ルイズはというと、そんな承太郎の態度に怒りをつのらせる。 だって、平民ですよ? 使い魔が平民ですよ? 使い魔は主人の目となり耳となったりするが、そういった様子は無い。 一番の役目である『主人を守る』というのも無理。 平民がメイジやモンスターと戦える訳がない。 嫌味たっぷりにそう言ってやった時、承太郎はなぜか視線をそらした。 ルイズはそれを『図星を突かれた』と判断した。 という訳で承太郎ができる事など何もないと思い込んだルイズは命令する。 「仕方ないからあんたができそうな事をやらせて上げるわ。 洗濯。掃除。その他雑用」 「…………」 無言。肯定とも否定とも取れない。 でも文句なんて言えないだろうしルイズは勝手に肯定の意として受け取った。 「さてと、喋ってたら眠くなってきちゃったわ。おやすみ平民」 「待ちな」 ようやく、承太郎が口を開く。窓を閉めてルイズを睨みつける。 「な、何よ……もう眠いんだから、話はまた明日って事にして」 「俺の寝床が見当たらねえぜ」 ルイズは床を指差した。 「……何が言いたいのか解らねえ。ふざけているのか? この状況で」 「はい、毛布」 一枚の毛布を投げ渡され、承太郎はそれを受け取る。 直後、ルイズはブラウスのボタンを外し始めた。 「……何やってんだてめー」 「? 寝るから着替えてるのよ」 「…………」 承太郎は無言で背中を向けた。その背中に、何かが投げつけられる。 「…………」 承太郎は投げつけられた物を手に取り、無言で立ち尽くしている。 「それ、明日になったら洗濯しといて」 それはレースのついたキャミソールに白いパンティであった。 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 承太郎は無言で振り向き、 ネグリジェに着替えたルイズにキャミソールとパンティを投げ返した。 「……これは何の真似?」 「やかましい! それくらいてめーでやりやがれ!」 「な、何よ! あんた平民でしょ! 私の使い魔でしょ!?」 「俺はてめーの使い魔になるつもりはねえ」 「フーン? でも私の言う事聞かないと、衣食住誰が面倒見るの?」 「……やれやれだぜ」 承太郎はそう言うと、毛布に包まって床に寝転がった。 それを見たルイズは満足気に微笑み、やわらかなベッドで眠った。 承太郎が「うっとおしいから今日はもう寝よう、洗濯はしねえ」と考えていて、 使い魔になる気ゼロな事に微塵も気づかずに。 戻る 目次 続く
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 「そろそろ朝食の時間ね、あんたもついてきなさい。」 とルイズが言うので、彼女について康一は部屋を出た。 すると丁度康一の左手のドアが開いて、女の人が出てきた。 「(あっ、昨日の女の人だ)」 と、康一は気づいた。 炎のような真っ赤な髪と褐色の肌。ルイズと同じ服装(たぶん魔法学院ってやつの制服なんだろう)なのに、上のボタンを大きく開けて豊満な胸を露出しているせいかずいぶんと印象が違う。 ルイズが『美少女』ならばこちらは『美女』だろう。とびっきりの、とつけたいところだ。 康一はついつい胸元に目が行きそうになるのをこらえた。 「(だ、だめだだめだ!こんなところ由花子さんに見られたらどんな目にあうか!)」 付き合うようになってからの由花子は、暴力で康一をどうこうすることはなくなった。 だが、代わりにあの気の強そうな目を細めてずっと康一を睨むのである。 ・・・もう由花子さんには会えないのかなぁ・・・。 康一は切なくなった。 康一は切なくなった。 『美女』はこちらに気づくとにこりと笑った。 「おはようルイズ。昨夜は楽しめて?」 「た、楽しんでなんてないわよ!あれは使い魔の持ち物をチェックしてただけなんだから!勘違いしないでよね!」 「まぁ、あなたの恋路には口を挟む気はないわ。それより・・・」 ルイズが「恋路って何よ!色ボケキュルケ!」と叫ぶのを無視して、キュルケは康一のことをじろじろと眺めた。 「な、なに?」 康一はこんなに色気のある人と出会ったのは初めてだったので、目のやり場に困って顔を赤くした。 「ふーん・・・ホントに人間じゃない!人間を使い魔にするなんて、さすがはゼロのルイズ!」 ルイズはむっとした。 「うるさいわね。私だって好きで平民を呼び出したわけじゃないわよ!」 ぼくだって好きで君に召還されたわけじゃないよ!と康一は思ったが口には出さなかった。 「あたしも昨日使い魔を召還したのよ?どこかの誰かさんと違って一発で成功したわ。」 そういうと、キュルケの部屋からのそりと大きな何かが姿を現した。 「うわぁ!」 康一は飛びのいた。 真っ赤なトカゲである。それだけなら一向に構わないのだが、その大きさが虎ほどもあった! 四つんばいなのに頭が康一の胸の高さにある。なぜか尻尾の先が松明のように燃え上がっており、むんという熱気が康一のところまで届く。 使い魔といわれて犬とか猫とかネズミとかを想像していた康一は悲鳴をあげた。 「そ!それなに!?」 「あたしの使い魔・・・『火トカゲ』のフレイムよ。見て!この大きさ!鮮やかな炎!わたしにぴったりの使い魔だわ!」 「あんた『火』属性だもんね。」 ルイズは苦々しく言った。 「ええ、あたしは『微熱』のキュルケ。ささやかに胸を焦がす情熱の炎よ!」と胸を張った。 さらに突き出した胸に、康一はごくりと生唾を飲み込んだ。これはさぞやモテることだろう。 キュルケは腰を屈め、康一に顔を近づけた。大きな胸がさらに強調されて、康一はドギマギした。 「それで・・・あなたのお名前は?」 「ひ、広瀬康一・・・」 「そう。変わったお名前ね。あたしはキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。」 そして康一の耳元に唇を近づけて言った。 「あたし、あなたに興味があるの。また今度二人きりでお話したいわ・・・」 「はわわわわ・・・」康一は顔を真っ赤にした。 「ちょっと!わたしの使い魔になにしてんのよ!!」 ルイズが二人をぐいっと引き離す。 「あら、独占欲?力ずくは醜いわよルイズ!」 「違うわよ!この色ボケ!!行くわよ、平民!」 康一の襟を引っつかんでずるずると引き摺っていく。 「わ、わぁ。ちょっと!歩く!歩くから!」 康一は引き摺られながら悲鳴をあげた。 「またね~~♪」 キュルケは満面の笑顔で手を振って見送った。 「ほんとにもう!ツェルプストーなんかにデレデレしてっ!この馬鹿犬!」 ついに犬に格下げですかぁー!?もう怒る気も失せる。 「あの人と仲悪いの?」 「ヴァリエールとツェルプストーとは先祖代々犬猿の仲なのよ。」 ルイズは歩きながら説明した。 要するに、ルイズのヴァリエール家とキュルケのツェルプストー家はトリステインとゲルマニアっていう二つの国の国境沿いで領地を接していて、代々何かと戦ってきた間柄らしい。 しかもなぜかいつも恋のライバルでもあったようで、代々ヴァリエール家は代々ツェルプストー家に恋人を取られ続けてきた歴史があるのだという。 「なんとなく想像つくなぁー」 康一はちらりとルイズを見た。 ものすごくきつい性格のルイズと比べて、あっちのキュルケは包容力がありそうだ。 それに何より、ストーン!としたルイズとボイーン!としたキュルケ。 ふらふらとあちらに行きたくなったヴァリエール家ご先祖様達の気持ちが康一にも分かる気がした。 「・・・なによ。」 ルイズがじろりと睨む。 「いーえ・・・なんでも・・・・」 康一は目を逸らした。 「うわぁ!すごい豪勢だなぁ!!」 康一は目を輝かせた。 ここは『アルヴィーズの食堂』。トリステイン魔法学院の貴族は、みなここで食事をとる。 学院の中で最も高い、真ん中の本塔の一室にある食堂は、驚くほど広い空間だった。 学校の体育館ほどの広さがあるだろうか。だが、これだけ広いのに、イタリアで見た教会の大聖堂ような荘厳な雰囲気を漂わせている。 3列に並べられた長い長いテーブルには真っ白なテーブルクロスがかけられ、その上には燭台が並べられ、フルーツの篭やでかい鳥のロースト、ワインや鱒の形をしたパイなどが所狭しと並べられている。 ゴクリ・・・。康一は口の中でよだれが出てくるのを感じた。そういえば昨日の昼に召還されてから何も食べていないのだ。 「うわぁー!すごい豪勢な食事だなぁー!朝からこんなに食べられるかなぁー!」 康一はここにきて初めて、「召還されていいこともあるなァー!」と思った。 ルイズは眉をひそめた。 「何言ってるの。ここは貴族の食卓よ?あんたみたいな平民が席を同じくできるわけないじゃない。」 「え・・・?」康一は目を見開いた。 「じゃあ、ぼくの朝食はどこにあるっていうのさ!」 そういうとルイズはそこで初めて気がついたように、「あー、そういえば。」と言った。 「あんたの食事、手配するの忘れてたわ。」 「わ、忘れてただってェー!!」 「しょ、しょうがないじゃない。手配するような暇がなかったんだもん。」 ばつが悪そうにしてつぶやく。 「じゃあ、ぼくは何を食べればいいのさ!」 「一食抜いたくらいじゃ死にはしないわよ。悪いけど我慢してちょうだい。」 「ぼくは昨日の夜も食べてないよっ!」 「うるさいわねー。わたしだって食べてないわよ。それよりも、椅子を引いてちょうだい。気の利かない使い魔ね。」 「こ、このぉー!!」 こいつ、可愛い顔して血も涙もないッ!ギブ&テイクといっても限度がある!大体お前がぼくを無理矢理こんなところに連れてきたんじゃないか!! 康一は踵を返した。 「ちょっと、どこ行くのよ。」ルイズが呼ぶが、 「知るもんかッ!!」康一は振り返らずにアルヴィーズの食堂を後にした。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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影の使い魔 Shadow Familiars 出典 Secrets of Magic 228ページ 使い魔は、共生関係の中で自分自身を人間に結びつける。シャドウキャスターのウィッチ、特に夜の守護者を持つものは、影の力に精通している可能性が最も高い。他にも、影の血脈を持つソーサラーや闇の領域のクレリックなど、影の使い魔を持つものは他にもいる。 影の使い魔 Shadow Familiar アンコモン 影 出典 Secrets of Magic 229ページ 使用権 シャドウキャスターであること 必要能力数 7 与えられる能力 暗視、操作能力、主人形態、抵抗([氷雪]および[負のエネルギー])、影歩き 術者や儀式執行者の中には、使い魔を招来して拘束するのではなく、自分の影を使い魔に変えるものもいる。これらの術者は、その場所の光のレベルに関係なく影がないことや、身に着けている衣類や宝石が奇妙に落ち着いて見えることで識別できる。用心深い人や迷信深い人にヴァンパイアやその他のアンデッドと間違われることもあるが、それでもこれらの術者は、自分の影と使い魔の固有な能力とを交換する取引に価値を見出している。 影の使い魔は特定の使い魔の一種である。全てのシャドウキャスターはこの使い魔への使用権を持つ。影の使い魔を得るための適切な魔法を学ぶ別の経路もある。 影化 [one-action] Become Shadow 影 変成術 出典 Secrets of Magic 229ページ 影の使い魔は、その体をかろうじて形を持った影に変える。使い魔は君のレベルの半分に等しい全てのダメージ([力場]を除く)に対する抵抗を得るが、肉体を必要とする全てのアクションを使用できなくなる。加えて、使い魔は幅2インチまでの隙間に入り込むことができ、“無理矢理入り込む”により幅1インチまでの隙間に侵入できる。使い魔はこのアクションをもう一度行うことで、通常の姿に戻ることができる。 このアクションは君の魔法系統に対応する特性(君が術者でない場合は伝承)を持つ。 影の中のすり足 Slink In Shadows 出典 Secrets of Magic 229ページ 影の使い魔はクリーチャーあるいは物体の影にいるときに“隠れ身”を行ったり“忍び足”を終了したりすることができる。 影盗み [one-action] Steal Shadow 死霊術 出典 Secrets of Magic 229ページ 頻度 10分に1回;効果 影の使い魔は君の呪文攻撃ロール修正値に等しい攻撃ロール修正値で近接攻撃を1回行う。この“打撃”が成功したなら、目標は虚弱状態1となり、影が消えてしまう。24時間後、この虚弱状態は終了し、影は元に戻る。虚弱状態を取り除く効果は影も同様に回復させる。 このアクションは君の魔法体系に対応する特性を持つ。君が術者でない場合、伝承を持つ。 使い魔能力 闇喰い Darkeater 出典 Secrets of Magic 229ページ 能力種別 使い魔 君の使い魔は影の中で自然回復する。薄暗い光あるいは暗闇の中で連続した10分を過ごした後、君の使い魔はヒット・ポイントを君のレベルの半分だけ回復する。この能力は影の使い魔専用だ。しかし、シャドウキャスターはいかなる種類の使い魔にもこの能力を選択できる。 影歩き Shadow Step 出典 Secrets of Magic 229ページ 能力種別 使い魔 この能力は影の使い魔専用である。しかし、シャドウキャスターはいかなる種類の使い魔にもこの能力を選択できる。君の使い魔は“影のステップ”アクションを得る。君がこの使い魔能力を使い魔に選択させるには、君は7レベル以上でなければならない。 “影歩き” [one-action](召喚術、影、瞬間移動) 必要条件 使い魔が薄暗い光あるいは暗闇の中にいる。効果 使い魔は自身を30フィートまで瞬間移動させる。到着地点は薄暗い光あるいは暗闇の中でなければならず、使い魔から視線と効果線が通っていなければならない。このアクションは君の魔法体系に対応する特性を持つ。君が術者でない場合、伝承を持つ。
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前ページ次ページ死人の使い魔 第三話 グレイヴを召喚してから数日が過ぎた。ルイズとグレイヴの生活にも 一定のパターンができあがってきていた。 朝、ルイズがベットで目覚めるとともにグレイヴは初日に与えられた イスで目を開く。特に本人からの要望はなかったのでイスが彼の寝床と なった。寝床兼生活スペースかもしれなかった。ルイズの部屋にいる間は、 ほとんどをそこに座って過ごしている。 案外気に入っているのかしらね。そんな風に思う。 グレイヴとの生活が始まってからルイズの目覚めはよくなった。 一度寝坊しかけて彼に起こされたときは心臓が止まるかと思った。 割と本気で。それ以来、彼より早く起きるように心がけている。 朝の準備を終えるとルイズは朝食をとるために食堂へと向かう。 グレイヴは食事をとらないため、授業まで部屋で待機させている。 授業の時間になると教室でグレイヴと合流する。 恐らく、グレイヴは教室に移動するときまで、部屋のイスに 座りっぱなしのはずだ。確認したことはないが正しいと思う。 もしかして私が部屋を出たあと、私のベットでゴロゴロしてたりして。 そんなことを想像する。 ……ありえないわね。万が一それが真実だったとしてもその場面だけは 目撃しないようにしないと。私の今後のために。 グレイヴは喋らない平民の使い魔として学院で少し知られてきた。 ときどき、本当にときどきだが彼の正体について言ってやりたくなる ときがある。 昼食の時間になると再びグレイヴと別れる。部屋で午後の授業まで 待たせているのだが、コルベールに呼ばれ彼の研究室、もしくは トレーラーに行くことがある。少しでも手掛かりが欲しいらしいが 結果は芳しくないようだ。 そんなある日、コルベールは彼の左手に目をやる。 召喚されたものにばかり気を取られていましたが、珍しいルーンですね。 一応メモしておきましょう。 その日の夜、彼はそのルーンが伝説の『ガンダールヴ』のルーンと 同じであることに気づく。すぐにオスマンに知らせたが、彼も頭を 抱えていた。 『ガンダールヴ』とは始祖ブリミルの使い魔であったされるものだ。 あらゆる武器をつかいこなし、その強さは並みのメイジでは歯が 立たないくらいだったとされている。 「ただでさえ厄介なのにこのうえ『ガンダールヴ』じゃと」 「とりあえずこれも秘密じゃな、ミス・ヴァリエールにもな」 「彼女にもですか?」 「これ以上秘密を抱えさせるのもかわいそうじゃろ、それに、この問題は ひょっとしたらガーゴイルということよりもやっかいかもしれんしな、 他言無用じゃ」 「わかりました」 最近というかグレイヴを召喚してからルイズは、彼のことを考える時間が 多くなった。もちろん、恋などではない。グレイヴの正体についてだ。 彼はなんのために作られたのだろうか?そう彼が人為的に生み出されたの ならきっと何か目的があるはずだ。それも並大抵ではない。なんせ人の血で 動くのだ。家事などをするために作られたのだとしたら、ちぐはぐ過ぎる。 人の生き血をすする召使い。ありえないわね。 しかし想像はつく。ミスタ・コルベールも気づいているだろう。 彼は戦うために生み出されたのではないか?その想像はきっと正しい。 想像を裏付けるものの一つとは彼の持っている鞄と棺桶だ。 非常に重いのだ。それを軽々と持ち運ぶ怪力。鞄の中に入っている二つの ものは鈍器なのでは?棺桶もなんらかの武器かもしれない。 そう考えると彼が鞄を手放さない理由もわかる。戦うために生み出された 彼が武器を手放すわけにはいかないのだ。 両手にあの鈍器を持って戦う彼を想像する。少し、いや大分かっこ悪い気がする。 ちゃんとした武器を与えたほうがいいかしら?見栄えのする大剣とか。 でも買う前にミスタ・コルベールに相談したほうがいいかもしれないわね。 剣を持たせるなどとんでもないと反対されるかもしれないし。 しかしそれは杞憂に終わった。彼は特に反対しなかった。 コルベールは相談されたことについて考えていた。グレイヴに剣を持たせる。 彼は『ガンダールヴ』でもあるのだ。どんな反応をするか、持ち前の好奇心が うずいた。 彼が剣を持つ危険についても考えてみたが、剣を持たせるくらいは 大丈夫な気がする。ここ数日、彼と付き合ってみての印象だ。少なくとも 学院の人々に危害は加えないと思う。もしかしたらこの学院で一番 グレイヴを信用している人物は彼かもしれなかった。 虚無の曜日になりルイズはグレイヴを連れ剣を買いに出かけた。 遠出をするとグレイヴに伝えると、彼はいつもの鞄に加え棺桶まで 持っていこうとした。あんなもの馬に乗せられるわけないと置いてこさせたが、 鞄はしっかり持ってきている。 トリステインの城下町を武器屋に向けて歩いているが、グレイヴはやはり 目立っていた。長身に加えてあの格好である。かなり目を引く。 それに彼の雰囲気を感じてか、微妙にだが周りの人が道を譲ってくれている ように思える。見た目だけでも護衛の役目を果たしているわね。そんなことを 考えながら歩いていると、武器屋に到着した。 どんな剣がいいか分からないので、グレイヴに選ばせてみる。 「グレイヴ、好きな剣を選んでいいのよ」 しかし彼は何も選ばない。イライラし声をかけようとすると、不意に声が 聞こえた。 「迷っているなら俺を買え、おめえさん『使い手』だろう?体格も立派だし、 雰囲気もただもんじゃねえ。是非とも、おめえさんに使って貰いてえ」 グレイヴは声のほうを向く。ルイズには彼が驚いているようにみえた。 そこには一本のボロボロの剣があった。ルイズも最初驚いたが インテリジェンスソードと知って納得する。 それよりもグレイヴの反応が気になった。いつもと明らかに違う反応。 もしやあの剣の言ったことに何か関係しているのだろうか?確か『使い手』 とか言っていた。 本当はインテリジェンスソードの存在を知らなかったからの反応だったの だが、ルイズには分からなかった。まさかインテリジェンスソードの存在を 知らないとは思いもしなかったのだ。 よし、これにしよう。 見た目はみすぼらしくグレイヴに持たせたくはなかったが、彼の正体を知る きっかけになるかもしれない。インテリジェンスソードを買い、グレイヴに 持たせる。デルフリンガーというらしい。 帰る道中デルフリンガーにグレイヴのことや、『使い手』のことを尋ねて みるが、どうにも要領を得ない。 グレイヴも特に反応はしないし、あの剣を買ったのは失敗だったかしら? 学院に着くとルイズはグレイヴを連れて中庭に向かう。そこでルイズは グレイヴにデルフリンガーを抜かせてみた。詳しいことは分からないが様に なっているようにみえる。するとデルフリンガーが気になることを言う。 「おでれーた、相棒、おめえさん人間じゃないな?それに心も感じられねえ」 ルイズが驚きながらに言う。 「あんたグレイヴのことが分かるの?教えなさい。今すぐ、できる限り詳しく」 「待て、待て、落ち着け、俺もそんなに詳しく分かるわけじゃねえ。 ただなんとなくそう感じただけだ」 「なによ、当てにならないわね。でもグレイヴが人間じゃないってことは 秘密だからね、誰にも言うんじゃないわよ。それからグレイヴのことが何か 分かったらすぐに教えなさい。いいわね」 「いいともさ、俺も相棒のことを言いふらしたりはしないよ」 そんな会話の中、グレイヴは突然デルフリンガーを地面に突き立てる。 「おーい、相棒?」 アタッシュケースを開けケルベロスを手に取る。 何をしたいのかしら?ルイズは疑問に思うが、デルフリンガーは気づいた ようだった。 「そりゃないよ、せっかく俺を買ったんだから俺を使ってくれよ。銃より剣の ほうがいいぜ」 「あれって銃なの?」 あんな形の銃など見たことがない。そういわれてみれば引き金らしきものがある。 「ねえ、グレイヴ、一発撃ってみなさい。どれくらいの威力があるか 見てみたいわ」 横でデルフリンガーが銃なんて邪道だ、などと言っているが無視する。 しかしグレイヴは撃たない。何故かしら?目標を決めてないから? 周囲を見ると丁度いい目標があった。本塔の壁である。確か固定化の魔法が かかっていて、そのうえ厚みもあり凄い丈夫なはずだ。いい的だと思ったのだ。 そのときは。 変な形をしているし片手で扱う銃のようなので、かなり距離のある的まで 届きすらしないかも、そう思い気軽に言う。 「ほら、撃ってみてって」 グレイヴが本塔の壁に銃を向ける。 せめて届いてほしいわねなどと考える 引き金が引かれる。 轟音が響き、思わず耳を押さえる。本塔に近づき銃弾のあとを確かめようと する。しかしそんなに近づかずとも本塔の壁にヒビが入っているのが見えた。 「嘘……」 思わず声が漏れる。あれがあの変な銃の威力?信じられない威力だ。 「おでれーた、これが相棒の銃の威力かい?」 デルフリンガーも驚いている。 突然、グレイヴの気配が変わった。持っていたデルフリンガーを投げ捨て、 先ほど撃った銃を一丁ずつ両手に構える。下からデルフリンガーの苦情が 聞こえてくる。 どうかしたの?と聞こうとするが、その言葉を発する前に巨大な土ゴーレムが 現れた。ゴーレムはルイズ達のことなど気にもせず、本塔のヒビの入っている 壁を殴り、穴を開ける。 ルイズはあまりのことに頭がついていってなかった。グレイヴも銃を構えた まま動かない、様子をうかがっているのかもしれない。 それからゴーレムは学院の外へと歩き出す。 我に返ったルイズがあわてて言う。 「あそこは確か宝物庫だったはずよ、急いで追いかけないと」 「もう無理だ、追いつけないって。ずいぶん離されちまった」 デルフリンガーが引き止める。しかし追いつけなくとも、何か手がかり くらいは見つけられるかもしれない。ゴーレムの逃げたほうへ走り出す。 グレイヴもついてくる。 「お~い、置いていかないでくれえ」 後ろでデルフリンガーが叫んでいたが気にしている余裕はない。 上空には何か飛んでいるのが見える。あの盗賊の使い魔だろうか? 空を飛んで逃げられたら絶対に追いつけない。焦りながら懸命に走る、 すると遠くでゴーレムが突然崩れるのが見えた。 空を飛んでいた何かも、いつの間にかいなくなっていた。崩れたゴーレムに 追いついたが、そこには土の山があるだけだった。 こういうときこそ、落ち着かなくては。そう自分に言い聞かせ事態を 整理する。 あのゴーレムは本塔にあったヒビを殴っていた。その結果穴が開き、 宝物庫が襲われた。つまり襲われた原因、少なくとも穴が開いた原因は あのヒビのせいということになる。あのヒビの原因は考えるまでもない。 盗賊について思いだそうとするが離れていたこともあり、黒いローブに すっぽり身を包んでいたことくらいしか分からない。 盗賊には逃げられ、手がかりもない。ルイズは頭を抱えた。 前ページ次ページ死人の使い魔
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「言ってる事は……よくわかったよ… だけどはっきり言わせてもらう…」 ”彼”、いや…『パンナコッタ・フーゴ』の顔には興奮気味なのか 玉のような汗が浮かんでいるし、唇もブルブル震えている。 目も躊躇いがち。心ここにあらずと言った様子だったが ついに決心した彼は、目の前の少女と向かい合って叫ぶ。 「ど~して!ぼくが君の下着を洗わなくちゃならないんですかーッ!?」 彼の手には小さな布が握られていた…。 『紫霞の使い魔』 第二話 【使い魔フーゴ;主人からの第一指令】 「やっぱり理解してないんじゃないの!?案外頭が鈍いのね、あんた!」 ネグリジェ姿のルイズがベッドに腰掛けて 怒鳴り散らす。 「わかっていますよ!ここがぼくの居た世界じゃないことは!」 フーゴの指さした先には地球ではありえない『二つの月』…。 しかも、『草原』においても人が宙を浮く様を見せつけられてしまったのだ。 無いと信じていた『鏡の世界』に引きずり込まれたこともあったので ここが『魔法の世界』だと認める事はできた。受け入れたくはなかったが…。 「あんたのいう『ぼくの居た世界』のほうがわからないけどね…。 ま、いいわ。続けなさい…」 上から見下すような態度に心の天秤が傾くが、まだ耐えられた。 「それでっ!貴女達が『魔法使い』だという事も! ぼくが『使い魔』になったのも 帰る方法も無いことも、理解できました!!」 彼の『左手』には奇妙な文字が描かれていた。契約の印『ルーン』。 『珍しい形』といわれたが、そんなことは些細な事。 ”フーゴ”が”ルイズ”の『使い魔』になった証であることが重要なのだ。 使い魔は死ぬまで変えることができない。 つまり、彼が帰れるとすれば『物言わぬ屍』になってから…。 帰還計画は遙かに絶望的である。 「なーんだ。よくわかっているじゃない…。偉い…偉い…」 やるきの欠片もない、だらけた拍手を送るルイズ。 送られた方のフーゴは当然イイ気がするわけない…。 その証拠に、こめかみがピクピク動き始めている。 「けれども!何でそれが君の洗濯物を洗うことになるんですか!!」 しかし、理性が必死に殺意を押さえてくれたおかげで 『まだ』会話を続けることができた。 「そこまで解っていて何で『消去法』ができないのかしら?」 ルイズは、『やれやれだぜ…』と言いたげな様子で指を折り曲げながら話し始めた。 「あんたみたいな露出狂じゃあ 1,『主人の目となり耳となること』はできなかったし 2,『主人の望む物を探してくること』もできそうにないし 3,『主人を敵から守ること』は絶対不可能だわ! というよりもそんな格好しているあんたの方が 圧倒的に『女性の敵』よッ!この変態男!」 フーゴの手が痙攣でも起こしたかのように震え始め、 その閉じられた口の裏で、歯が両顎に押しつぶされかけながらも 彼はじっと耐えて聞いていた。 「そんなあなたでも掃除、洗濯みたいな雑用ぐらいはできるでしょ! それぐらいやって貰わなくちゃ、わたしが困るのよッ!」 突然だが、時限爆弾が目の前に置いてあると仮定してほしい…。 そこには お決まりの『赤』と『青』、二本のコードがある。 残り時間は刻一刻と削られていく…。 早くどちらかを切らなければならない。 普通は爆破コードがどれなのか不明なのだが 今回はわかっている! 『赤』を選べば爆発し、『青』を選べば爆弾解除。 そう聞けば、大体の人は『青』を切るだろう…。 でも自分が『狂気の爆弾犯』だとしたら…? 『切れ!』というのならば当然『赤』を切るしかないッ! 己の中の殺意が囁くままに… そう!『いつものフーゴ』ならば間違いなく『赤』を選ぶはず! だが彼は… 「り…了解しました…。ご主人…様」 『青』を選んだ! (そうだ…耐えるんだ…。元の世界に戻るとしても! このままこの世界に残るとしても! しばらくはここで生活していくしかないんだ…。そのためにも この『忌まわしき自分の欠点』は乗り越えなければならないッ!) 「やっとわかったようね…。」 ルイズが優越感に満ちた笑みをうかべた。 「じゃあ洗濯物はまかせたわ。 あんたの寝床は…この毛布で充分ね。 あと、朝はちゃんと起こすこと!いいわね!」 「…了解しました」 その言葉を聞き、ルイズは満足げにベッドに潜る。 彼女が小さな指をパチンと鳴らすと、辺りは闇に包まれた。 フーゴも毛布を被って床へ横になり この昂ぶった心を落ち着ける事にした… が、無理だった。しばらくすると『怒り』は収まりつつあったが 代わりに『不安』という感情が浮かび上がってきた。 自分のことではなく、仲間に対する『不安』…。 彼らには『亀』があるが、敵に見つからないという保証は …無い。今も危険と隣り合わせで過ごしているのだ。 果たして、今も無事でいるのだろうか? そう考えると異世界にいるとはいえ…いや、絆を断ち切ったといえ 『平和な夜』を過ごしている自分が嫌な奴のように思えてきた…。 ふと、ベッドの方を向くと『新しいボス』が寝息を立てているのが見えた。 まだ中学生くらいなのだろうか?とても小柄で華奢な体つきをしている。 もはや彼女への『怒り』は湧いてこなかった…。 彼女にしてみれば召喚されてきたのが『ただの人間』だったのだ。 機嫌が悪いのも仕方がないことだろう…。 そもそも初めて出会ったばかりで、うち解けあうほうが無理な話。 こういうのは少しずつ分かり合っていくものだ。 (『死』か『殺』の狭間で悩んでいたぼくに この子は『生』の道を開いてくれたのだ…。 この世界で新たな繋がりをつくっていくためにも! そして、この『新しいボス』から『信頼』を得るためにも! 『使い魔』として、できる限りのことをしよう…!) そう考えたフーゴは暗闇の中から起きあがり、洗濯物を抱えて部屋を後にした。 To Be Continued…
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わたしの目の前に男が現れた、やっと成功したサモン・サーヴァントだというのに 唯の平民を召喚してしまったようだ。 「あんた誰?」 とりあえず名前を聞いてみることにする 「・・・俺はプロシュートだ」 この目の前にいる男はプロシュートというらしい 「けっこうイイ男じゃない、ルイズあんた使い魔じゃなく恋人を召喚したの?」 キュルケがそう言うと、みんながどっと笑う・・・腹立つ 「違うわよ!」 すぐそっち方面に話が跳ぶキュルケに否定する 「さて、では、儀式を続けなさい」 コルベール先生が続きを促してくる。そうだった、まだ儀式は途中だったんだ 今まで、わたしは使い魔にはモンスターが召喚されるとずっと思ってた だから契約のキスもファースト・キスじゃないとおもってたけど目の前には男の人がいる。 これってつまり、これがファーストキスになるってこと? 召喚した使い魔、プロシュートをよく見る、キュルケの言うとおり ちょっとだけど、渋くてイイ男じゃない。 わたしは覚悟を決めプロシュートに唇を重ねる 「いきなり何をするんだ?」 わたしがキスをしたっていうのに冷たい口調のままでプロシュートが質問してきた 「何って、契約したの、わたしがご主人様であんたが使い魔」 「ぐあ!ぐぁあああああ」 プロシュートの左手にルーンが刻まれていく 「ふざけるな!」 ビシィ プロシュートがいきなり平手打ちをしてきた 「なにをするの?主人に手を上げる使い魔なんて聞いたことないわ」 わたしが睨みつけるとプロシュートは自分の頬を押さえていた 何よ、痛いのはわたしのほうでしょ 「どういう事だ?」 プロシュートは、今度は反対側の頬をつねり上げてきた」 「いたい痛い、やめなさいよ、やめて、やめてください」 ようやく、つねるのを止めたと思うと1人でブツブツ言い始めた 「ご主人様のダメージ、イコール使い魔のダメージってコトか」 「あんた、なんなのよ!」 「ルイズと言ったな、理解したぜ、お前がご主人様で俺が使い魔だってなあ」 あっさりと言われた怒りが何処かにいってしまった 「わっ解ればいいのよ、教室に行くわよ付いて来なさい」 プロシュートはだまって後を付いて来る 納得はできねえがな 頭の中に声が響いてきた To Be Continued
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魔法学院の教室の1つ。 ルイズ達二年生は、今日はここで『土』系統の魔法の講義を受けることになっていた。 皆、様々な使い魔を連れていた。 キュルケのサラマンダーをはじめとして、フクロウや、カラスや、ヘビやドラゴンや…実に多種多様だ。 召喚が終わってから初めての授業、本来なら使い魔の見せ合いで騒がしくなるはずなのだが、 彼らは今日は一段と静かだった。 皆、1人の生徒の登場を待っていた。 『ゼロ』のルイズ。 魔法を全く使えない彼女が、サモン・サーヴァントでとんでもない化け物を呼び出し、挙げ句の果てにコルベール先生に重傷を負わせたらしいという噂が、まことしやかに囁かれていた。 目撃者の証言によると、彼女が召喚したのは化け物ではなくて『死体』…それもバラバラの… だそうだが、彼らの叫びは他の生徒の、常識という箱に入れられ、蓋を閉められた。 大体の生徒は、化け物説を信じ、期待とスリルに胸をふるわせていた。 ギイと、重々しく講義室の扉が開いた。 他の生徒は皆そろっていたので、残る1人は必然的に噂の『ゼロ』ということになる。 果たして、入ってきたのはルイズであった。 皆の視線がルイズに向けられていた。 そして、ルイズに続いて入ってきた、1人の男に。 だれもかれもが、あっけにとられていた。 "なんだ。どんな化け物かと思ったら、ただの平民じゃないか" 1人また1人くすくすと笑い始める。 だが、キュルケとタバサは鋭い視線を男に向け、 そしてルイズの召喚を間近で見ていた一部の生徒は、困惑しながらも怯えていた。 そしてさらに一部の生徒は、その男が自分達と同じ食卓についていたことを思い出し、眉をひそめた。 ルイズは不機嫌そうにドカっと席についた。 そしてルイズが男と一言二言、言葉を交わすと、男は生徒達の間をゆっくりと通り抜け、後ろの壁にもたれかかり、腕を組んだ。 初めは興味深そうに生徒達の使い魔を観察していたが、 やがて飽きたのか、その手に抱えていた本を読み始めた。 先日ルイズが与えたものなのだが、どうみても子供向けなそのタイトルが、 ますます生徒の笑いを誘った。 そうしているうちに扉が開いて、先生が入ってきた。 優しげなおばさんの雰囲気を漂わせている彼女は、ミス・シュヴルーズといった。 彼女は教室を見回すと、満足そうにほほえんで言った。 「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。 私はこうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 ルイズは皮肉気な笑みを浮かべた。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。 ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズが後ろで本を読んでいる男を見て、とぼけた声で言うと、教室はどっと笑いに包まれた。 「おい『ゼロ』!召喚に失敗したからって、その辺歩いてた平民 を連れてくるなよ」 ルイズはだんまりを決め込んだ。 それをどう誤解したのか、クラスメイトの嘲りはますますひどくなっていった。 『かぜっぴき』のマリコルヌが、ゲラゲラ笑った。 「あの『ゼロ』だぜ? 失敗に決まってるじゃんか。 皆、知ってるよな?今までルイズがまともな魔法に成功した回 数は?」 "『ゼロ』だ!"と、他の生徒が唱和した。 再びゲラゲラ笑い。 調子に乗って歌まで歌いだした。 "♪ルイルイルイズはダメルイズ~♪魔法が出来ない魔法使い♪…" みんなして調子を合わせられているところを見ると、影で結構歌われているようだ。 ルイズは拳を握りしめて屈辱に耐えていた。 爪が食い込んで血が垂れる。 どうせ、言ったってわからない奴らなのだと、必死にそう自分に言い聞かせた。 シュヴルーズは、厳しい顔で教室を見回した。 そして、杖を振ると、ゲラゲラ笑っている生徒の口に、どこから現れたのか、ぴたっと赤土の粘土が押しつけられた。 「お友達を侮辱するものではありません。 あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」 教室の笑いが収まった。一見するとシュヴルーズの懐の深さが示されたように見えるが、 そのキッカケを作ったのは間違いなくシュヴルーズであったし、マリコルヌたちの狼藉をしばらく見過ごしていたのも、シュヴルーズであった。 楽しんでいるのだ、結局。 ルイズは思う。 自分が笑われているところを楽しむだけ楽しんでおいて、 キリのいいところで、どこかの聖者よろしく 「貧しい者こそ救われる」とばかりに手を差し伸ばすのだ。 とんだ自己満足だ。 貧しいのはそっちの脳みその方だ、この偽善者め…! ルイズは心の中で吐き捨てた。 そんなルイズの胸中を知らずに、シュヴルーズは授業を再開した。 彼女が杖を振ると、机の上に石ころがいくつか現れた。 そして、この授業のメインである、『錬金』の講義をはじめた。 知識だけは他の生徒よりはあるルイズは、耳タコなその内容に飽き飽きして、ボーッとしていた。 「私はただの、『トライアングル』ですから…」 そんなシュヴルーズの声が聞こえた。 えぇカッコしぃめ…! と思いながら、ルイズは後ろを振り返った。 後ろでは、自分の使い魔であるDIOが、本に目を注いでいたが、シュヴルーズが石ころを真鍮に変える魔法を使っている時には、しげしげと前を向いていた。 (一応聞いてはいるんだ…) 案外好奇心旺盛ね、とルイズが考えているところに、シュヴルーズからの呼び声がかかった。 「ミス・ヴァリエール! よそ見をしている暇があるのなら、あ なたにやってもらいましょうか」 「え、わたしですか?」 突然のことに、ルイズは焦った。 話を全く聞いてなかった。 「そうです。ここにある石ころを、あなたの望む金属にかえてご らんなさい」 あっさり話の内容をネタバレしたシュヴルーズを小馬鹿に思いつつ、ルイズは俯いて、密かにほくそ笑んだ。 一発かますチャンスだ。 そして、これ以上ないってほどの作り笑顔で、立ち上がった。 「わかりました、ミス・シュヴルーズ! わたし、失敗するかも しれないけど、精一杯やってみますわ…!」 キラキラと瞳を輝かせる様が嘘くさかった。 ルイズの恐ろしいほくそ笑みをしっかり見ていたキュルケは、空恐ろしいものを感じ取り、止めに入った。 『ゼロ』ネタでからかわれた後のルイズは、何をするか分からない。 「ミス・シュヴルーズ。やめたほうがいいと思いま…ひっ!」 ルイズはギロリと、シュヴルーズには分からないようにキュルケを睨んだ。 "邪魔するならあんたから吹き飛ばす"ルイズの目がそう言っていた。 そしてルイズは、目尻に涙を蓄えながら、よよと嘆いた。 「そうですわね。ミス・ツェルプストーの言うとおりですわ。私 なんかがやったら、皆さんの大切な授業の妨げになってしまい ます……」 そうして、悲しそうにうつむいて席に座ろうとするルイズを、シュヴルーズは引き止めた。 「いいえ、いいえ、ミス・ヴァリエール。誰にだって失敗はあり ますとも! さぁ、やってごらんなさい。失敗を恐れていては、何も出来ま せんよ」 (………計画通り…!) ハナから勝負にならなかったのだが…。 ルイズはいかにも可憐な笑顔を浮かべて立ち上がった。 しかし、彼女の背中には、目にもの見せてくれてやると、どす黒いオーラがただよっていた。 キュルケの横を通り過ぎるとき、ルイズはドスのきいた、低い声で呟いた。 「友達のよしみよ。さっさと消えなさいな、ツェルプストー」 もうダメだ。おしまいだ---顔面蒼白でキュルケは戦慄した。 そうして、わざわざ教壇の側に回り、石が全員に見えるようにして、 離れた所から錬金の魔法にしては異常な量の魔力を石の全てに込めだしたルイズを尻目に、 キュルケはじっとDIOに視線を向け続けるタバサをひっつかんで教室を脱出した。 ―――次の瞬間、教室の中で、学院全体が揺らぐほどの大爆発が起こっていた。 間一髪だ……、キュルケは己の生を始祖ブリミルに感謝して、床にへたり込んだ。 to be continued…… 19へ
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反省する使い魔! 第十四話「追跡計画中計画実行中」 音石明はこの世界でルイズの使い魔を続けている内に 何度も同じ疑問を自分の頭のなかで浮かべていたことがある。 別によ~~、このオレがわざわざルイズみてぇな やかましい小娘に仕える必要なんて本当はどこにもねぇんぜぇ~~? 仮にだ、ルイズに義理みてぇなモンがあったとしよう。 オレがそんなモンわざわざ守ると思うかぁ? オレは御伽噺や漫画に出てくるような 義理堅い勇者野郎でもなんでもねぇんだよぉ~~~~……………。 しかしだ!よく考えてみてくれよ。俺は刑務所で三年の月日を費やした。 三年だ!たったの三年!! あの杜王町で俺がやったことがたった三年で許されるだとぉ~~~ッ!? わざわざ殺人まで覚悟してやった俺のあの行いが たった三年で許されるような安っぽいモノだとでも思ってんのかッ!! はやく出所できたんだから得だとかそういう問題じゃねぇ! 俺は納得したいんだよ! 三年前俺は間違いなく罪を犯した。 そして刑務所を出たと思ったら、今度はワケのわからねぇ世界で 小娘のお守りときたもんだ。まったくお笑いだぜ………。 最初にルイズの使い魔になれという要求を承諾したのも はっきり言っちまえば召喚の時にクラスメイトから バカにされてたルイズに対してのくだらんねぇ同情からだった。 だがルイズを見ていくうちにわかったことがある。 ルイズは魔法が使えない魔法使いだ、 どんな魔法を使ってもお決まりに爆発する。 クラスメイトの連中はそんなルイズを見下していたがよぉ あの爆発は使い方によっちゃあ間違いなく兇器になる。 このままじゃルイズはいずれ、 自分の中で押さえ込んでいる劣等感をクラスメイトを 傷つける武器にしちまう………。 だからよぉ、そんなルイズだからこそ オレを召喚したんじゃねぇかって時々思うんだよ 道を踏み外して過ちを犯すということを知っていて 今なおそんな自分の罪滅ぼしに納得していない俺だからこそな……… そして今、ルイズはやべぇ状況にいる。 なんでも今度の相手は結構名の知れた盗賊らしいじゃねぇか、 そういう奴をやっつけてルイズを守ってやればよ~~~ 少しでも俺の中にあるこのモヤモヤが晴れるかもしれねぇ! だから今はこの目の前のデカブツをぶっ壊すことに集中するぜ!! 「しっかしでけぇーなー、 ギーシュの『ワルキューレ』は2メートルくらいあったが こいつぁ10メートルは超えてんじゃねぇのか?」 ゴーレムから30メートル程の距離をあけて 音石は土くれのフーケの操る巨大ゴーレムを見上げていた。 「まあ、それくらいのほうがやりごたえがあるってもんか?」 「オトイシッ!!」 自分の使い魔の登場にルイズはゴーレムの足元で 歓喜と驚きの声を上げた。 「おいルイズゥ、そこ危ねぇからはやくこっち来い!」 音石はルイズの身を案じ、 自分の元に来るように手招きのジェスチャーを送る。 ルイズもソレに応じ、音石の元に駆け寄ろうとしたが ソレを許すフーケではない! 「おっと、逃がしゃあしないよ!」 先程破壊された腕が回復され、すぐさま元通りになる。 そしてその腕は瞬く間にルイズ目掛けて襲い掛かってきた! しかしその行為を安々許す音石でもない! 「ふっふっふっ生憎とな、そう易々攻撃を当てさせないところが 俺と『レッド・ホット・チリ・ペッパー』のいいトコなんだぜぇ?」 ゴーレムの上空を飛び回っていたスピットファイヤーが ルイズ目指して滑空を始める。 そのスピードはゴーレムの攻撃速度を圧倒的に上回っていた。 ルイズの近くまで接近すると、スピットファイヤーから レッド・ホット・チリ・ペッパーの腕だけを出現させ、 ルイズのマントを掴み取った。 「いいいいぃぃぃやああああぁぁぁぁっ!!?」 時速150キロという高スピードのなか、 ルイズは悲鳴をあげてマントからぶら下がった形で音石の元まで移動し ゴーレムの攻撃を回避した。 音石の近くまでやってくるとスピットファイヤーのスピードを緩め ルイズを自分の隣に落とすようにレッド・ホット・チリ・ペッパーは手を離した。 【ドスンッ】「キャアッ!」 「ウ~~シッ!ルイズを回収すりゃこっちのもんだぜ あのゴーレムを操ってるフーケってやつはあそこの壁の向こうにある 宝物庫を狙ってんだろ?だったらゴーレムをあそこから動かすって真似は しねぇはずだ、奴自身無駄に時間を喰ってる暇なんてないはずだからな 空中にはキュルケとタバサ、こっちだってスピットファイヤーがあるんだ 本体の俺が攻撃されないように距離も十分にとってある、 今のあの野郎は将棋で言う『詰み』に入ってるっつーわけだぁっ!」 「こ……こ……この馬鹿ギタリストォーーーーッ!!!」 ルイズが音石目掛けて飛び蹴りを放った!! 【ガスッ】「オガァッ!!?」 蹴りはものの見事に音石の横腹に命中した。 「いっててぇぇぇっ!!?いきなりなにすんだコラァッ!!」 「ソレはこっちの台詞よぉ!ご主人様に対してなんて事すんのよっ!! 助けてくれたことには感謝してるけど、もっとマシな方法なかったの!? あの持ち方!!もう少しで首が絞まるトコだったじゃない!!」 「おいバカ!杖をこっち向けんなって!あーするしかなかったんだよ! 仮にマントじゃなく腕や脇から持ち上げたりしたらその長い髪が あのスピットファイヤーのプロペラに巻き込まれかねねぇだろうがっ!」 「ハッ!そうよオトイシッ、説明しなさい! あれは一体何なの!?もしかして竜の子供!?」 オトイシとの会話中にルイズは自分の中にある一番の疑問に気付き、 その疑問にむかって怒鳴るように指差した。 「竜の子供だぁ?そんなんじゃねぇーよぉー、 『スピットファイヤー』 イギリスのスーパーマリン製単発レシプロ単座戦闘機 大戦時にはイギリス空軍をはじめとする連合軍が使用していた戦闘機で ロールス・ロイス製の強力なエンジンを搭載、空気抵抗も少なく その性能はその手のレースで三度も優勝してるほどの優秀さを誇る。 主任設計技師であるR.J.ミッチェルとジョセフ・スミスを 始めとする後継者たちによって設計され、パイロットたちの支持も厚く 1950年代まで23,000機あまりが生産され さまざまな戦場で活躍した…………そのラジコンバージョンだ」 「……………ごめん、あんたが何を言ってるのか理解できないわ」 「………………………………まあいい、話は後だ 今重要なのはあの盗賊フーケなんだからな~~~」 巨大なゴーレムを眺めながら音石は勝利の確信の笑みを浮かべるが ルイズは対照的にどこか腑に落ちない顔をしていた。 しかし音石の予想通り、フーケにとってこの状況は 非常に不味いものだった。 「まずい、非常にやばいわね アレが何かは検討も付かないけど、あの使い魔は厄介だわ しかも制空権を完璧に向こうに取られてる……… あの使い魔が操ってる思わしき鉄の子竜、そしてもう一人、 さっきから距離をとってこっちの様子を伺ってるあの風竜……」 フーケは首を上に傾け、タバサとキュルケを乗せたシルフィードを睨んだ。 「多少の邪魔は想定内だったけど、竜が二体なんて反則だよ! 『フライ』を使って飛んで逃げることもできやしない!」 苛立ちを隠せないフーケだったが、自分の中で無理やり心を落ち着かせ 状況整理と作戦を冷静に練り始める。 (これ以上グズグズしていられない! いずれ学院長や教師連中がやってくる、 その前にこの状況を打破しなければ………ッ! しかしどうする!?連中はこっちの時間が少ない焦りを利用して 距離をとってやがるし、ゴーレムを操る魔力もそろそろ限界に来てる 考えろ!なにか策があるはず………………ッ!?) 思考を張り巡らしているうちにフーケはあることに気付いた。 自分と対峙している竜たちが一向に自分に攻撃してくる様子を 見せていないのだ。まさか!と思い、フーケは咄嗟に音石を見た……。 かなり距離が離れているはずなのに、フーケにはそれがはっきりと見えた。 笑っていた。音石のその表情がすべてを悟っていた! (降参を誘っているつもりかいッ!!? こっちの不利な状況を理解して……ッ!舐めやがってッ!! この『土くれ』のフーケをここまでコケにしやがるなんてっ………!!) ギュゥィィイイイイイイアァァァァンッ! 音石は愛用のギターを絶好調に響かせた。 「ハッハァーッ!よかったなぁルイズ! コレでお前は明日から英雄だぜ、より胸はって学生生活も送れるってわけだぁっ! 実家で病弱だっていうお前の姉貴も喜ぶぜぇっ!ギャハハハハッ!! よっしゃあせっかくだぁ、なにか弾いてやるからリクエストしてみろよ! おっとしまった、この世界の住人のお前じゃリクエストなんて無理だな 仕方ねぇな、だったら俺が選曲して聞かせてやるぜっ! そうだな……………よしっ! 『エアロスミス』の『WALK THIS WAY』あたりでも…………」 (たしかにオトイシの言う通り、この状況は圧倒的にこっちが有利…… でもなんなの!?さっきからわたしのなかで渦巻いている このモヤモヤ感は!?いやな予感がしてならない………ってこと?) 未だルイズが不安を隠せないことも気付かずに、 いつの間にか音石はルイズの隣で……… ズッタンッズッズッタン!と勝利の確信に酔い踊っていた。 「なっ!?この『土くれ』のフーケを前にして踊ってやがるッ!? なんてムカつく奴なんだい!思えばあいつの登場で なにもかもぶち壊しだよっ! 当初の目的だった宝物庫の宝も結局取れまず仕舞い………え!?」 一瞬宝物庫の壁に目を向けたとき、フーケは目を疑った。 なんと壁に『ヒビ』が入っていたのだ! ばかなっ!さっきまでいくらゴーレムで攻撃しても駄目だった 壁にどうして今になってヒビが!?とフーケは疑問に思ったが その原因であるべき正体を思い出した。 「まさか………、あのゼロのルイズがさっき放った爆発でッ!?」 ますます理解不能だった、なぜあのゼロの失敗の爆発でこの壁が? しかし、これは二度とないチャンスであるという事実が そんな疑問を掻き消した。 そして閃いてしまった、この状況を打破する策を………! 「アンタにはもう少し働いてもらうよ!!」 フーケは杖を振り、ゴーレムを再び動かし始めた。 ソレを見た音石が踊りと演奏を止め、行動に移った。 「ゴーレムを動かしやがったか、 その行動………、殺されちまっても文句はねぇモンだと判断するぜっ!」 音石はシルフィードを操っているタバサを見てアイコンタクトを送る。 それを合図にスピットファイヤーとシルフィードは ゴーレムに向かって飛来していった。 ただ一人、自分がなにもしていないことに気付いた ルイズは精一杯の手助けをと思い、音石アドバイスを送った。 「オトイシ!ゴーレムの肩に乗っているフーケ本体を狙うのよ! そうすればあのゴーレムは動かないわ!!」 「それぐらいは言われなくたってわかってるぜぇルイズ! そこらへんの原理はスタンド使いと一緒だからなぁ~!!」 (お願い!わたしのなかのこの予感が、どうかわたしの勘違いであって……!) ルイズは自分の胸に手を当てて、祈った。 生命の予感や察知とはなんとも不思議なものだ。 自分の身にナニかが迫ると無意識のうちに自分の中でそれを感じ取る、 犬や猫などが、飼い主が帰ってくること時にソワソワするのと同じだ。 ルイズは正確にその嫌な予感を的中させてしまった。 なぜなら、その嫌な予感の元凶を作ったのがルイズ本人であるのだから………。 フーケのゴーレムがスピットファイヤーたちを無視して、 宝物庫の壁に拳を飛ばし、なんと壁を粉砕してしまったのだ! 「ナニィッ!?」「そんなっ!?」 音石とキュルケの驚きの声が重なった。 壁がえぐれた部分にゴーレムの肩に乗っていたフーケが飛び移った、 「まずいわ!宝を盗まれてしまうわ!」 キュルケがバッと音石にアイコンタクトを送った、 えぐれた壁の隙間に入っていったフーケを攻撃できるのは 音石が操るスピットファイヤーしかないと判断したからこその合図だ。 音石もそのキュルケの合図には気付いていたが、 一方でゴーレムのある変化にも気付いた。そして驚愕した! 「タバサァッ!!ゴーレムに近づくんじゃねぇっ!! こっちに向かって倒れて来てるぞぉ!!」 それを合図に、シルフィードとスピットファイヤーはすぐさま真上に上昇したが、 30メートル近くあるゴーレムの転倒の衝撃は並なものではない。 凄まじい砂煙が広範囲に広がり始めていった。 地上にいる音石とルイズがそれに巻き込まれはじめたのも当然のことだった。 「伏せろルイズッ!絶対に目をあけるんじゃねぇぞ!!」 「きゃあぁぁぁぁっ!!」 咄嗟の行動だった、目の前まで迫ってきている砂塵に襲われる前に 音石はルイズのマントを引っぺがし、彼女を片手で抱き寄せると 体の体勢を低くし、引っぺがしたマントを二人の体を覆うように被り 迫り来る砂塵を受け流した。 【ビュオオオオォォォォォォ……………】 「オトイシくん、大丈夫かい!?」 マントを覆い被って数分、遠くから聞こえるコルベールの声が聞こえ 音石は覆い被っていたマントから顔を覗くと、 コルベールとオールド・オスマンがこっちに向かってきていた。 そのほかにも大勢の教師や生徒、衛兵がぞろぞろとやってきていた。 「………ふう、おらよルイズ。マント返すぜ 砂埃だらけだが、洗えば取れるよ」 ルイズは「ありがとオトイシ」と礼を言ってマントを受け取ると、 すぐさまオールド・オスマンたちのもとへと駆け寄った。 「ほっほ、ミス・ヴァリエール。 随分と無茶したようじゃが、怪我はないかの?」 「お気遣い感謝いたしますオールド・オスマン ですが大丈夫です、私の使い魔が守ってくれましたから……」 その時一瞬、ルイズは軽く頬を染め誇らしそうな顔をすると すぐにまたスイッチを繰り返した。 「それよりも学院長!たった今緊急事態がッ!」 「ふむ、コルベール君に事情は聞いておる 『土くれ』のフーケ、まさかこのトリスティン魔法学院を狙うとはの…… その上、固定化をかけておいた壁をも打ち破るとはたいした奴じゃわい」 それに対してはルイズも共感した。 固定化の魔法とは、その名の通り。 対象の物質などを時を止めたかのように固定し、 固定された物質は腐ることもなく、壊れることもない。 並みのメイジがかけた固定化ならばそれなりの実力者のメイジでも 破壊することはむずかしくはないが あそこの宝物庫の壁は学院長直々に固定化の魔法をかけているほどのものだ それを破るなんて、フーケとはそれほどの実力者だったとは………と ルイズは少し身震いした。しかしルイズは永遠に知ることはない、 その固定化を打ち破った本当の原因は紛れもなく自分だということを………。 「学院長!」 宝物庫を調べていた教師の一人がフライの魔法で上から降りてきた。 「ほとんどの宝は無事だったのですが、ただひとつ 『破壊の杖』だけがどこにもありません」 「ふぅーむ、フーケめ よりにもよって『破壊の杖』を………、ほかに手掛かりは?」 「はい、この置手紙がひとつ」 「なになに~、『破壊の杖、確かに頂戴しました 土くれのフーケ』か フォフォフォッ、なんとも律儀なもんじゃわい」 口では笑ってはいるオールド・オスマンだが その目は真剣そのものだ、今この老人のなかでは これからどうするかの方針が練りこまれているのだろう。 「ねえオトイシ、あんたのあの竜の子でフーケを探せないの?」 「だから竜じゃなくて………、はぁ……上見てみろ」 そう言われてルイズが顔を上に上げると、スピットファイヤーと シルフィードが学院の上空をグルグルと飛び回っていた。 何人かの教師がスピットファイヤーの姿に「オオッ!?」と驚きの声をあげた。 「さっきからタバサのシルフィードと一緒に探しちゃいるんだが、 なにしろあの砂煙だし、フーケは名の知れた盗賊だからな 見つからないように身を潜めることに関しちゃあ、 向こうのほうが圧倒的上手だ。どうしようもねぇよ……」 スピットファイヤーを地上まで下ろすと、音石は片手でそれを持ち上げると その姿にコルベールは感動と歓喜の声をあげ始めた。 「おお!なんとも素晴らしい!! 見ましたか学院長!?あれほどの文化が彼の故郷には 当たり前のように発達しているのですぞ!」 「コルベール君、君が喜ぶのも理解できるは 今もっとも重要なのは『破壊の杖』を持ち去ったフーケのほうじゃぞ?」 「あっ……こ、これは失礼しました」 どこか残念そうだが興奮を落ち着かせたコルベールだったが、 タイミングを見計らったように、タバサとキュルケを乗せたシルフィードが 降下しはじめ、地上へと舞い降り、そんな二人に音石は声をかけた。 「そっちはどうだったよ?」 「やっぱりだめだったわ、フーケがどっちの方角逃げたかもわからないし 第一こんなに暗いんじゃねぇ………」 「もっともだな、………なあタバサ、お前なら奴をどう探す?」 「………夜明けを待つ、それに情報も…………」 ――夜が明け始め、現在学院長室―― タバサの意見がもっともだと賛成した一同が学院長室に集まっていた。 今ここにいるのは、音石たちとオールド・オスマン、コルベール そして何人かの教師陣たちだった。 「さて………こうして夜が明け始めたのはよいが 周囲を捜索させた衛兵たちの報告はどうなんじゃ、コルベール君?」 「残念ながら……、現在のところそう言った報告はまだ………」 「はっ、衛兵と言えど所詮平民、 平民のような役立たずなどあてにしても仕方ありませんぞ!」 「じゃあテメェはどうにかできんのかよ?」 「なにぃっ!!?」 一人の教師が鼻で笑った言葉に、音石がポツリと嫌味を呟き その教師が音石を睨むが、しかし音石は眼中にないかのように その教師と目を合わせなかった。 「コレコレよさんか二人とも、今はフーケが問題じゃろう しかし、オヌシの今の発言はいささか言葉が過ぎるぞ?」 「………ッ、申し訳…ありません…」 その教師が詫びると、オールド・オスマンはやれやれと息を吐いた。 こんな非常時に相変わらずな教師たちに呆れながら 見渡しているとあることに気付いた。 「おや?ミス・ロングビルの姿が見えんの」 【ガチャッ】「私ならここにいます学院長、ハァッ…、遅れて申し訳ありません」 噂をすればなんとやらだ、 突然扉が開かれ、ミス・ロングビルが息を切らしながら入ってきた。 「おお、心配したぞミス・ロングビル ん?えらく息がきれているようじゃが……なにかあったのかの?」 「はぁ…はぁ…、土くれのフーケの件で…調査していました」 「ふむ、仕事がはやくて助かるのミス・ロングビル」 「お褒めにあずかり光栄です、それで調査の結果なのですが 土くれのフーケの居場所が掴めました」 その言葉に学院長室が一気にどよめきはじめるが オールド・オスマンは落ち着いた物腰と口調で問う。 「ほう、フーケめの居場所をのぉ~~…… 一体それはどうやって調べたのじゃ?」 「はい、実はフーケが破壊の杖を持ち出し 逃亡したところを私が目撃したのです」 周囲のどよめきが一層に増す、ルイズたちもその言葉には驚いた。 しかし音石はなにか引っかかるものを感じていたが、 今は黙ってロングビルの話を聞いておくことにした。 「まさかだと思うがミス・ロングビル……… 君はそのまま…………フーケの後を尾行したのかね?」 「身勝手な行動をお許しくださいオールド・オスマン 学院の衛兵である、『サリー』と『エンリケス』を連れて……… そしてフーケがここから馬で2時間~3時間ほどの とある森の廃屋を拠点にしていたことがわかりました」 「ふ~~~む、ミス・ロングビル…… 叱ってやるのはこの騒ぎが終わってからとしよう………。 しかし『サリー』と『エンリケス』?聞かん名じゃのぉ」 コルベールが手元にあったファイルを開き始める。 どうやらそれは学院に所属する衛兵や使用人などのプロフィールのようだ。 ページをめくっていくと発見したのか、詳細をオールド・オスマンに伝える。 「つい最近この学院に所属したばかりの二人組の衛兵ですね」 「はい、現在フーケが潜んでいる廃屋を見張らしています」 「なんじゃとっ!?ミス・ロングビル! 君はそんな危険なところに衛兵を置いてきたのかッ!? もしもその二人になにかあったらどうするつもりじゃッ!!」 オールド・オスマンが珍しく声を荒げて張り上げ、椅子から立ち上がった。 心優しいこの老人のことだ、危険で凶暴なメイジの近くに 平民でしかない衛兵を置いとくなどどれだけ酷なことか、 それに対して怒っているのだろう。 今まで見たことなかった学院長の怒りの光景に教師たちが動揺し始めた。 しかしコルベールがロングビルをサポートするかのように言葉を挟み その場を落ち着かせようとした。 「お気持ちは理解できますが学院長!彼らのことを思っているのならっ! 今は一刻も早く王宮にこのことを報告して助けを呼ぶべきかとッ!!」 コルベールが間に入ったことによって、 心を落ち着かせたオールド・オスマンは椅子に座りなおした 「そんな悠長な時間もないじゃろう、コルベール君………、 王宮に連絡してからでは時間がかかりすぎる、 よってじゃ!この一件は我々魔法学院内で解決するとしよう そうとなれば早速捜査隊を編成する! 我こそはと思うものは杖をかかげ志を示すがよいッ!!」 しかし残念なことに、この学院の教師たちは 口だけが達者なトーシロの集まりのようなものだ。 教師それぞれが顔を見合すだけで、誰も杖を上げようとはしなかった。 そんな教師たちにオールド・オスマンはますます呆れた溜め息を上げると たった一人、そう……ルイズだけがそのなかで杖をかかげた! 「ミス・ヴァリエール!あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて」 シュヴルーズが止めようとしたが、ルイズは牙を剥くように怒鳴り返した。 「誰も杖をかかげようとはしません! ならばわたしがフーケを追います! 元々フーケをみすみす取り逃がした責任はわたしにあります あの場に私はいたのですから!」 「それだったら私たちにもその責任はあるわよヴァリエール? あんたと同じように、私たちだってあそこにいたのだから………」 ルイズに続くように、キュルケとタバサが杖をかかげる。 その行為に次に驚いたのはコルベールだった。 「ミス・テェルプストー!気持ちはわかるがあまりにも危険だッ!! 君たちもあのゴーレムを見ただろう!?」 「お気遣い感謝しますがミスと・コルベール ですがヴァリエールには負けたくありませんので……… ねぇ、タバサ?」 「………別に家名なんてどうでもいい……でも心配」 「ありがとうタバサ、やっぱりあなたは最高の親友だわ!」 キュルケとタバサが友情を深め合う中、教師達は猛反対を開始した。 だがオールド・オスマンが「では君が行くかね?」と問うと、 皆体調不良などを訴えて断る。 オールド・オスマンは勇気ある志願者三人を見て微笑んだ。 「彼女達は、我々より敵を知っている。実際に見ておるのじゃからな その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておる 実力は保証できるじゃろう」 教師達は驚いたようにタバサを見つめ、キュルケも驚いた。 「そんなの初耳よ!?それ本当なのタバサ? なんで黙っていたのよ?教えてくれればよかったのに……」 「騒がしくなるから……」 「ウフッ、もうっ、タバサらしいんだから!」 キュルケが納得とばかりに微笑んだ。 音石が後から聞いた話だが、 『シュヴァリエ』というのは王室から与えられる爵位であり 階級で言えば最下級のものだが、 ルイズ達のような若さで与えられるような生易しいものではないらしい、 しかもシュヴァリエは他の爵位と違い純粋な業績に対して与えられる爵位。 いわば戦果と実力の称号である。 するとオールド・オスマンが話を続ける。 「ミス・ツェルプストーは、 ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、 彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いておるぞ」 キュルケは得意げに髪をかき上げた。 さて次はルイズの番と、オールド・オスマンは視線を向けて、 褒める場所を探し、コホンッと咳払い。 「その……ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出した ヴァリエール公爵家の息女で、うむ、それにじゃ…… 将来有望なメイジと聞いておる。 しかもその使い魔は、平民でありながらも あのグラモン元帥の息子である ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという戦績がある」 明らかにルイズよりを音石を褒めている発言に、 ルイズは少しムッとしたが事実だから仕方ない。 音石は思わず少し苦笑してしまった。 「………オトイシくん」 「あん?」 ルイズたちが並んで前に出ている後ろのほうで、 壁にもたれ掛っている音石にオスマンは突然声を掛けた。 「これはこの年寄りからの………いや、学院長であるワシからの頼みじゃ 君も彼女たちと共にフーケを追ってくれんか? 当然、君が望むのであればいくらでも礼は弾む」 「が、学院長ッ!?」 このオールド・オスマンの言葉に教師たちが驚きの声をあげた。 由緒正しき魔法学院の長が、一人の平民……しかも使い魔相手に そのような頼みを言うなどこの世界の常識では考えられないことだった。 だが音石からしてみれば、そのようなことを頼まれてもどうしようもないことだ。 なぜなら、頼まれるまでもないのだ…………。 「オトイシ、あんたは私の使い魔よ」 ルイズという自分の主人がこう言われてしまった以上………。 「まあ、そういうことだジイさん 今のオレはルイズの使い魔、そしてそのルイズがフーケを追う以上 オレが行かねぇわけにもいかねぇだろ? それに『勝算』だってこっちにはある、任せておけよ」 そう言いながら音石は、先程から脇に抱えている スピットファイヤーをつよく握り締めた。 (さっきは油断したが次はそうはいかねぇ…… ルイズたちはああ言ったが、フーケを逃がした一番の理由は オレの過信からきた油断だ……、反省しなくちゃなぁ~~~ 次もヘマ踏まねぇようによ~~~~) 学院の門付近にて、音石とルイズ、キュルケとタバサ、 そしてオスマン、コルベール、ロングビルがそこに集まっていた。 「ミス・ロングビルはフーケの居場所を知っておる故 君らの道案内役として同行させよう、 なによりミス・ロングビル、君には衛兵の二人の件もある ……………わかっておるな?彼女たちを手伝ってやってくれ」 「はい、オールド・オスマン……… もとよりそのつもりです……」 ロングビルの言葉にオスマンは渋るような顔で頷く。 「ふむ、では馬車を用意せんとな………」 「学院長、その馬車なのですが…… 屋根付きの馬車では見通しも限られますし、 なによりいざ何かあった時に動きにくいかと………」 「ふ~む、コルベールくんの意見がもっともじゃな……」 「でしたら屋根のない荷馬車を用意しましょう」 「うむ、任せたぞミス・ロングビル」 そう言って、ロングビルは厩舎小屋へと駆け出していった。 そんなロングビルを見送っていた音石だったが、 そんな彼の上着の裾を突然誰かが引っ張ってきた。 見てみると、引っ張っていたのはタバサだった。 「………質問がある」 「こいつ(スピットファイヤー)のことなら黙秘するが?」 「………………そう……」 表情こそ変えなかったタバサだったが、どこか残念そうな雰囲気で 裾から手を離し、本を読む作業に戻った。 その様子を見ていたキュルケは溜め息をはいた。 (やっぱり教えてくれないか……… オトイシって、ほんと何者なのかしら……… でも彼と一緒にフーケを追えば、少しでも真実に近づくような気がするわね) 「コルベールさん、今更なんだがあんたに頼みが………」 「言わなくてもわかっているよ、それは(スピットファイヤー)君に譲るよ」 コルベールはスピットファイヤーに目を向けそう言ったが さすがにこの発言には音石も驚いた。 あくまで「借りたい」と言うつもりだったのだが まさか譲るとまで言ってくれるとは予想してなかったのだ。 「いいのか!?あんたが大金払って手に入れたモンなんだろ?」 「確かに、しかしオトイシくん。私はとても満足している 君がそれを動かすのを見たとき感動で涙がでそうにもなった…… なにより誇りにすら思っているのだよ私は……… 少しでも君やミス・ヴァリエールの助けになるなら 私は君に手を貸すのを惜しまないよ………」 「…………感謝します、コルベールさん」 音石は目の前の聖人のような男に軽く頭を下げるのだった………。 すると横から見ていたルイズがあるモノに気づき声を掛けてきた 「そういえばオトイシ、あんたそれもっていくつもり?」 「なんでぇ娘っ子、おれ様も一緒にいっちゃあ問題でもあんのかよ?」 ルイズが指差したのは、音石が部屋からもってきた 意思を持つ剣、デルフリンガーの事だった。 「だって別にねぇ~……、オトイシにはレッド・ホット・チリ・ペッパーが あるんだから、わざわざあんたみたいな薄汚い剣持っていかなくても……」 「ひっでぇなっ!あんまりだぜ、そんな言い草ッ!!?」 「事実を言ってるだけでしょうっ!」 自分を挟んでのやかましいいい争いに、 音石はやれやれと呟き二人の間に助け舟を出した。 「まぁ、ルイズが言ってることがもっともなんだがな」 「おいおい相棒、そりゃあねぇよ~~ッ!?」 「だがまあルイズ、ないよりはマシだろ? それにこいつの助けが必要になる状況もあるかもしれねぇしな、 例えば俺がスピット・ファイヤーでフーケのゴーレムを攻撃してる時に フーケ本体がオレ本体を狙ってくるかもしれねぇ………。 手元に武器がありゃ幾分かマシだぜ?ナイフも何本か持ってきたしな」 そう言って音石は、上着の内ポケットに仕舞っているナイフを ルイズにチラつかせた。 内側のナイフをチラつかせている音石の姿が あまりにも様になっていたのにルイズは苦笑いを浮かべるのであった。 「まあ、薄汚いボロ剣ってのは事実だから仕方ねぇがな」 「なに勝手に『ボロ』付け足してんだよっ!? 使い魔、主人そろってひでぇぜお前らッ!!」 デルフの虚しい叫びも、音石とルイズが目を黒い影で塗りつぶし 無視されるのであった。 ミス・ロングビルはまず、荷台を引くための馬を用意するために 厩舎小屋で適度な馬を選んでいた。 本来、大盗賊土くれのフーケを追うような危険な調査では 誰もが不安を隠せない表情を浮かべるのが普通だろう。 しかしこの時彼女の顔は、邪悪な笑みで口元を歪めていた。 「ふっふっふっ、まずは第一段落終了だね……… できれば教師に出てきてほしかったけど、まぁ仕方ないわね この学校の教師たちったら口だけで腑抜けばかりだもの……」 「どうやら計画は順調に進んでるようじゃねぇかフーケ」 「!?」 すると突然、厩舎小屋の奥から声が聞こえてきた。 暗闇で顔こそは見えなかったものの、 ミス・ロングビルもとい土くれのフーケはその声に聞き覚えがあった。 「ッ!?あんた、なんでこんなところにいるんだいっ!? 私が獲物を連れてくるまで持ち場で待機してろって………」 「ヒヒヒヒッ、そう硬いこと言わないでほしぃ~ね~ あんたを捕まえようなんて考えている馬鹿な命知らずがどんなヤツらか ちょいと気になったからよ~~、見に来ただけじゃねぇか~ あんたまさか『土くれ』って ふたつ名のくせして 人のおちゃめも通じねえコチコチのクソ石頭の持ち主って こたあないでしょうね~~~~~?」 暗闇のなかにいる相手の言葉にフーケは苛立ちを覚えるが こいつの人を頭から馬鹿にしたようなしゃべり方は今に始まったことじゃないと 自分に言い聞かせ、怒りを堪えた。 「どうせそっちは馬車なんだからナメクジみてぇにノロノロ来るんだろう? あんたの考えた計画をおれがわざわざめちゃくちゃにするとでも思ったかい? そこらへんはちゃ~~~~~んと考えてるぜぇ~~~~~?」 「………ふんっ、そりゃよかったね。 だったらとっとと持ち場に戻って………」 「いんや~~、おれも最初はそうしようと思ったんだけどなぁ~~…… これだけはあんたに伝えといといたほうがいいかなぁ~~っと思って、 わざわざこんな馬糞くせぇところであんたを待ってやったってわけだぜ?」 「伝えたいこと?」 「ああ、あんたが言ってた妙な使い魔……… ありゃ~~~十中八九『スタンド使い』だぜ 以前あんたは伝説の使い魔ガンダーなんとかの能力とかなんとかって バカづらさげて言ってたがよ~~~………」 その言葉にフーケは身目を見開かせ、驚きを隠せない顔をしていた。 「そうそう、丁度そんな感じのバカづらだぁ~、ヒヒヒヒヒ あんた顔面の表情操作が意外とうまいねぇ~」 「つまりあの使い魔はあんたの世界から召喚されたっていうのかいっ!?」 「ケッ、そこはあえてスルーですか…… まぁ、そういうことになるんだろうなぁ~~~~ あいつの格好、ぶら下げてるギター。間違いなくおれの世界の文化だ しかもギタリストとは………なかなかイカシてると思わねぇかい?」 フーケは爪を歯で噛みながら、なにかを考えふけっていた。 「あんた………あの使い魔を倒せるのかい? あの使い魔、はっきり言ってかなり強力だよ…………」 「モノは考えてから言えやこのボゲ、このおれが負けるとでも思ってんのかよ? もしそうだとしたら、アンタ今からこのガキのションベンくせぇ 学院の医務室に行って、ケツの穴に温度計ブッ刺されたほうが いいって助言してやるぜ?」 「ふんっ、相変わらず減らず口が絶えないやつだよ まあ、それを聞いて安心したよ。 今回の作戦はあんたの働きに掛かってるんだからね」 そういってフーケは相手が潜んでいる暗闇から視線を外し、 馬を二頭選び、厩舎小屋から引っ張り出した。 そして自分が気になっていたことを思い出し、 再度小屋の奥の暗闇に視線を戻した。 「そう言えば、あんたに言われたから攫ってきた衛兵の二人 一体なにに使うんだい?」 しかし、その時には暗闇には誰もおらず、 ただ小屋のなかにいる馬の鳴き声と窓から流れる風の音が 静寂に小さく唸るだけだった………………。