約 2,024,995 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/653.html
「ヤミと帽子と本の旅人」のコゲが召喚される話 ゼロと帽子と本の使い魔01 ゼロと帽子と本の使い魔02
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1850.html
前ページ次ページサイヤの使い魔 彼――孫悟空――は、自らの身に起こった出来事に二重の意味で困惑していた。 一つ、どう贔屓目に見てもここは、さっきまで自分がいたあの世の風景ではない。 一つ、我慢できないくらい体が熱い。 悟空がいくら鍛えているとはいえ、その身体は生身である。 外部からの衝撃には滅法強くても、火を点けられれば火傷はするし、雪国に行けば凍傷を起こす。 だから、彼の身を苛む熱の奔流もまた、無視できる類のものではなかった。 「うあぢい~~~~!!!!!」 本能的に叫びながら、見えない炎を消すかのようにゴロゴロと転がりまわる。 その様子を見て「天使相手に、ちとやりすぎたか?」と、さすがに慌てたルイズが声をかけた。 「だ、大丈夫!『使い魔のルーン』が刻まれたら、すぐに収まりますから!」 それを言い終わるか終わらないかの内に、悟空の身体から急速に熱が引いていく。 「はあっ、はあっ…」 這いつくばって荒い息をつく天使(仮)の元に、コルベールが素早く駆け寄り、左手に刻まれた紋章を確認する。 「ふむ…珍しいルーンだな」 「天使にも刻めるものなんですねえ」 「ともあれ、これでミス・ヴァリエールの契約も完了、と。お疲れ様。さてと、じゃあみんな教室に戻るぞ」 当たり前のように空を飛んでいく禿頭を、天使(仮)は呆けた様子で見送る。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」 物言わぬ聴衆と化していた他の生徒達も、いつもの調子を取り戻したのか、ルイズに挨拶代わりの罵声を浴びせながら飛んでいく。 しかし、今のルイズにそんなものを気にかける余裕は無い。 「……あの」 恐る恐る、天使(仮)に声をかける。 「……なあ、おめえ、誰だ?」 疑問を顔に貼りつけて、天使(仮)がルイズたちに詰問する。 「私はルイ――」 「ここどこだ? オラ、何でこんなとこにいんだ?」」 ルイズの説明を聞く様子も無く、次々と疑問の言葉を投げかける。 「落ちついて。一度に多くを訊いても多くを答えるのは無理」 珍しく、自主的にこの場に留まっていたタバサが口を開いた。 「降りてこられたばかりでまだ混乱しているかと存じますが、まずは私達の説明を聞いて下さいませ」 タバサに付き添っていたキュルケもフォローする。 天使(仮)に対し失礼の無いよう、声色に気をつかって。 「天使様は、ここにいるミス・ヴァリエールの使い魔となられたのです。不本意とは存じますが、ご了承下さいませ」 「ちょっとキュルケ。不本意ってどういう意味よ」 「だって相手は天使様なのよ!? それがヘッポコ魔術師の使い魔だなんてどう考えたっておかしいじゃない」 「ななななぁんですってぇ~!!」 「……なあ、さっきから言ってる天使ってオラの事か?」 ようやく話の流れをつかんだ悟空がルイズに質問する。 以前、ヤードラット星に流れ着いたときも似たような出来事があったのを悟空は懐かしく思い出したが、さすがに 天使扱いされるのはこれが初めてであった。 「あ、当たり前じゃない」 他に誰がいるというのか。ルイズは喉から出かかった言葉を辛うじて飲み込んだ。 「オラは孫悟空だ。天使じゃねえぞ」 「『ソンゴクウ』って名前の天使様ですか。私はキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。以後お見知り置きを」 キュルケがうやうやしく頭を下げる。 「なに人の使い魔に色目使ってんのよ」 「これをどう考えたら色目使ってるように見えるのよ!」 まあちょっとばかしそのつもりでもあったが。 「だからオラは天使じゃねえって…あ、わかった。おめえたち、オラが頭の上に輪っかつけてるから 天使だと思ってんだな?」 「思うも何も、頭に輪っかついてるのは天使しかいないじゃない」 「おめえは死んだ事無いから知らないかもしんねえけどよ、死んだら頭の上に輪っかがつくんだぞ」 空気が死んだ。輪っかはつかない。 「…………え?」 「オラ死んでっから輪っかがついてんだ」 「幽…霊?」 そう呟いたタバサが、直立した体勢のまま斜めにゆっくりと傾く。 倒れた。 「タバサッ!?」 血相を変えたキュルケが慌てて駆け寄り、ゆさゆさとタバサを揺する。 タバサの顔は真っ青を通り越してほとんど白い。 元々血色のいい肌ではなかったが、ここまで顔面蒼白になっているタバサをキュルケは見た事が無い。 過呼吸も併発しているのだろうか、呼吸が浅く、弱々しい。 「ど、どうしよう……」 「おい、おめえ大丈夫か!?」 「保険委員(メディック)!! 保険委員(メーディーック)!!!!!」 だが、既に他の生徒は校舎に戻っている。 今ここに居るのはルイズ、キュルケ、フレイム、気絶しているタバサ、シルフィード、 そして天使改め幽霊にクラスチェンジした謎の使い魔。 ギーシュは薄情にも既に帰っていた。 「シルフィード!来なさい!ていうか来て!」 キュルケが本来はタバサのものである使い魔を呼ぶ。 ふわりと舞い降りたドラゴンの背に、気絶したタバサをそっと横たえ、 「学院の医務室に運んでちょうだい。私もつきそうから」 自分もフレイムを連れて乗り込む。 「きゅいきゅい!」 一声鳴いて飛び立つ。ルイズにはその鳴き声が了解、と聞こえた。 あっという間に視界から飛び去っていくドラゴンを見送り、ルイズは密かにその姿に憧れた。 せめて使い魔が飛べたら、私も惨めにトボトボ歩かなくて済むのに。 やりきれない思いはやがてやり場の無い怒りへと変わり、それを隠そうともせず、謎の幽霊男に向き直る。 天使でないと判った以上、もうこいつに対しかしこまる必要も無い。 「で、あなたは何なの?」 悟空の説明は最初から最後までルイズの理解を超えていた。 曰く、自分はセル(それが何なのかはルイズには判らない)の自爆に巻き込まれて死んだ。 曰く、死んだ後肉体を貰って、あの世で修行するためにカイオウとかいう奴と一緒に蛇の道(何処だよ!)を歩いていた。 曰く、せっかくだから地獄のゴズとメズに挨拶しようと地獄に寄り道する事にした。 曰く、蛇の道を飛び降りて地獄に行こうとしたら、突然現れた鏡に落っこちた。 それで今ここにいるという。 「…そんな突拍子も無い話が信じられるとでも思ってるの?」 「嘘じゃねえって」 それがまた問題なのだ。 そもそも、コントラクト・サーヴァントは生きているもの(当たり前だが)を対象として行われ、 サーヴァントの死をきっかけに、また新たなサーヴァントと契約を交わすようになる。 初めから死んでいる、しかも平民を対象に契約を交わすなど前代未聞だ。 最後の手段「サーヴァントぶっ殺してもう一度召喚」が使えない。 ルイズにだって人を見る目はあると自負している。 この幽霊男は嘘をついているとは思えない。 とすれば選択肢は二つ、本当の事を言っているか、イカレているかだ。 しかし、言っている事がにわかには信じられない内容である事以外、この男の言動はしっかりしている。 少なくとも悪い人間ではないのかもしれない。 気付けば、あたりはすっかり暗くなっていた。今夜も綺麗な月が出ている。 ルイズにつられて空を仰ぎ見た悟空は「うえっ!?」と驚きの声をあげた。 「何?」 「月が二つあるぞ…。ここ地球じゃなかったのか」 「チキュウ?」 「なあ、ここ何てとこだ?」 「ハルケギニア。そしてここはトリステイン魔法学院」 「ハルキゲニア星っつうのか…。オラいつの間にかよその星に来ちまってたんだな…」 前言撤回。やっぱこいつイカレてる。 「ハ・ル・ケ・ギ・ニ・ア! ああもうあんたの意味不明な説明聞いてたらすっかり遅くなっちゃったじゃない! 帰るわよ!」 返事も待たず、ずんずんと歩いて行く。 「あ、ああ…」 有無を言わせぬ迫力に気圧され、悟空はルイズの後をついて行った。 (よくわかんねえけど、まあいっか) 死して尚、能天気な男である。 「どこに行くんだ?」 「部屋に帰るのよ。あ、でもその前にタバサの見舞に行った方が…でもキュルケに会うのは癪だし……」 ぶつぶつと考え込むルイズを眺めていた悟空がふと思い出す。 「タバサって、さっきぶっ倒れた奴か?」 「そうよ。あまり面識無いけど、一応あんたを引っ張り出すの手伝ってもらった手前、礼は言っておかなきゃね」 「よし、じゃあオラが連れてってやる」 そう言うなり、悟空はルイズの手を取った。 「きゃ!? ちょ、ちょっと何を―」 もう片方の手を自分の顔の前に持って行き、人差し指と中指を眉間に当てる。 「する―」 ルイズが非難の言葉を言い終わらないうちに、二人の姿は「ピシュン」と音を立てて忽然と消えた。 「…タバサ、大丈夫?」 「……幽霊嫌い」 「判ってる」 「みんなには内緒」 「大丈夫よ。それにしてもルイズの奴、よりによって幽霊なんか召喚するなんて嫌みったらしいったらありゃしないわね」 トリステイン学院、医務室。 騒ぎを聞き駆けつけたコルベール先生の判断により、モンモランシーが呼ばれ、その場で気付け用の香水を特別調合することにより、タバサは程無くして目を覚ました。 今はベッドに付き添うキュルケと二人きりだ。 タバサは何も言わないが、今夜一緒にいて欲しいのは長年の付き合いであるキュルケには判っていた。 「見ておきなさい、明日会ったら只じゃ済まさないわよ…」 タバサの顔色は未だ悪いままだ。 身体にかけられたシーツの端を、指が白くなるほどきつく掴んでいる。 親友を恐怖のズンドコ、もといどん底に叩き落したあの使い魔とそのマスターにどんなし返しをしてやろうかと考えていると― ピシュン「―のよっ! 平民の分際で!! 放しなさいったら!!!!」 ――件の人物が、眼前に現れた。 「…へ?」 「…あ?」 「…ひ」 最初の声はキュルケの、次の声はルイズの、最後の声は目を恐怖に見開き、唇をわなわなと振るわせたタバサのものである。 「オッス」 空気を読まない幽霊男が呑気に挨拶する。 それがスイッチとなり、 「ヒア―――――――――――――――――――!!!!!」 トリステイン学院に、本日二度目の絶叫が響き渡った。 「だあぁぁぁ~……」 ぼふっ。 ルイズは力無く自室のベッドに倒れ込んだ。 あの後、錯乱し見境無く攻撃魔法を連発するタバサから杖を奪い取るのと、駆け付けたコルベールに事情を説明するのとで (こっちは結局日が昇ってから改めて行なわれる事になった)、精魂尽き果てたルイズはもう何も考えたくなかった。 タバサの悲鳴に共鳴して割れた窓ガラス37枚の修理費、740エキュー。 半壊した医務室の修理費、350エキュー。 使い物にならなくなった薬剤や医療器具の弁償代金、2070エキュー。 タバサを抑えつけるのに要した労力、プライスレス。 キュルケと折半とはいえ、痛手にもほどがある。 早く寝てしまいたい。 だが、その前にやらなくてはいけない事がある。 気力を振り絞り、ルイズは上体を起こして悟空に向かい合った。 この男、手加減無しのタバサの攻撃魔法を殆どその身に受けていたというのに、全くダメージを受けた様子が無い。 幽霊ってば便利よねとルイズは結論付けた。 実際には肉体がある以上、生理的には生きている人間と何ら変わりは無いのだが、ルイズはそれをまだ知らない。 知っていれば質問攻めにしていただろう。さっきの理解不能な移動手段といい、不可解な事が多過ぎる。 だが、「幽霊である」という前提と、限界をとうに超えた疲労感が、ルイズから正常な思考力を奪っていた。 ちなみにタバサは幾ら攻撃しても全く怯まない悟空を見て理性の糸が切れ、泡を吹いて再び昏倒した。 キュルケも今は披露困憊して自室で寝ている。 「おめえも寝た方がいいんじゃねえか? だいぶ疲れてるみてえだぞ」 あんたのせいよと罵ってやりたかったが、今はその気力すらない。 「…寝る前にいくつか言っておかなきゃいけない事があるの」 「ああ」 「あんたはあたしの使い魔になった以上、やんなきゃなんない事があるの」 「…なあ、使い魔って何だ?」 あ、ダメ。 いまので力抜けた。 「…そ…そこから説明させる気……?」 「かったるそうだから喋らなくていいぞ。ちょっと探らせてくれ」 そう言うと、悟空はベッドの上に突っ伏しているルイズの頭に手を置いた。 指先一本動かすのも億劫な彼女には、頭に置かれた幽霊の手すらどこか心地よく感じた。 「…なによまた何処かに連れてこうっての~…?」 「また」とは、悟空がヤードラット人に習っためちゃんこ便利な移動手段、瞬間移動の事である。 『フライ』や『レビテーション』などとは比較にならない超高等な技術であり、魔法が使えない代わりにその知識をしこたま 頭に詰め込んだルイズですら知らない未知の技術であったが、疲労で頭が麻痺しているルイズにはそれに対する疑問すら起こらない。 やがて、ルイズの頭から手が離れた。 「いろいろわかったぞ。とりあえずオラはおめえの使い魔になっておめえのために色々しなきゃなんねえんだな」 そ~よ~、と力の無い返事をする。 かつて悟空がナメック星でクリリンの頭に手を置いた時に披露した読心術なのだが、ルイズには知る由も無い。 「けどオラが見てるものが本当におめえにも見えてるのか?」 「無理みたいね~…。あんた幽霊だってこと以外平民と変わらないみたいだし~…」 疲れからか、ルイズの口調は少し間延びしていた。 「あと、オラはこの世界の人間じゃねえみてえだから、秘薬とか見つけんのも多分無理だと思う」 「でしょ~ね~」 「だけど、おめえを守るってのは出来ると思うぞ」 「ふ~ん…そう……って、え!?」 ガバ、とルイズが飛び起きた。 「あんた強いの!?」 「まあ、結構」 「何か特殊な能力とか使える!?」 「さっきの瞬間移動とか、あとまあ色々」 「掃除洗濯その他雑用とかできる!?」 「掃除と洗濯くれえなら楽勝だ」 カメハウスや神様の神殿で修行をしていた頃に、基本的な生活の作法は叩き込まれている。 亀仙流の基本「よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む」の「よく学び」の成果である。 「あんたそこそこ…使える…かもね……。…だめ、もう限界」 ルイズは今度こそベッドに突っ伏した。 服を脱ぐ余力はおろか、ハナクソをほじる力すら残っていない。 呟くような声で、幽霊改め使い魔に命令する。 「あんたはとりあえず床で寝てて…私の毛布1枚使って…いいから…」 「あ、ああ」 ルイズが指差した毛布を取る。 部屋の隅に丁度よさそうな空間があったので、とりあえずそこに毛布を敷いた。 「朝になったら…私起こして…今着てる服洗濯してきて…ね…」 「おう」 「じゃおやすみー」 僅かに残った力で、ルイズが寝っ転がった体勢のままぱちんと指を弾いた。 ランプの火と、ルイズの意識が消えるのはほぼ同時だった。 前ページ次ページサイヤの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4499.html
前ページ次ページ鮮血の使い魔 「では式を始める」 教会にて、ウェールズは始祖ブリミル像の前で宣言した。 彼の前に立つワルドはあごを引いて口を真一文字に結ぶ。 その隣でルイズはうつむいていた。 「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして妻とする事を誓いますか」 「誓います」 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン……」 どこか遠い所で声がしていると、ルイズは思った。 ワルドとの結婚。夢見た光景ではある、しかし、心だけ置いてきぼりされているような気分。 後ろの席に座っている言葉は、どんな表情をしているだろうか。 隣に立つワルドは、どんな表情をしているだろうか。 ワルドは本当に自分を愛しているのだろうか? いや、そうではなく、自分は本当にワルドを愛しているのだろうか? 憧れていて、頼もしく思い、信頼もしているけれど、これは、恋や愛と呼べるものだろうか? (コトノハ。私の使い魔。恋人の、マコトの死を受け入れられず、首を抱きしめる女の子) もし、ここでワルドが殺されたとしたら、自分はどうするだろうか? 言葉のように、ワルドの遺体を抱いて嘆き、死という現実を否定し、逃避するのだろうか。 しないだろう。常識的な問題で、しないだろう。 しないだろう。そうするには足りないから、しないだろう。 足りない? 何が足りない? 「新婦?」 ウェールズのいぶかしげな声に、ハッと顔を上げるルイズ。式は、まだ途中だ。 「緊張しているのかい?」 ワルドが気遣うように微笑み、優しい声で言う。 「君はまだ若いし、初めての事だ、仕方ないさ。でも安心して。 僕がついている。今日この日からは、ずっと、永遠に」 首を振るルイズ。なぜ、首を振ったのかルイズ自身にも解らなかった。 だからもちろん、首を振るという拒絶の意を示した理由を、ワルドやウェールズが解るはずもない。 「ルイズ、どうしたんだい?」 再び首を振るルイズ。 昨晩、一人で考え事をしたいと部屋にこもっていたのを思い出したワルドは、心配げな表情になる。 「もしまだ具合が悪いのなら、殿下には申し訳ないが、日を改めて……」 「違うんですワルド様。そうじゃなくて、ごめんなさい、私、解らなくて……」 「何が解らないんだい? ルイズ」 「だから」 顔を上げた。瞳は濡れている。 「ワルド様とは、結婚できません」 予想外の事態にワルドとウェールズは困惑した。 どう対処すればいいのか、ワルドが考えつくより先にウェールズの口が開いた。 「新婦は、この結婚を望まぬのか?」 「いいえ、そうではありません。ですが、いえ、そうです。私は、この結婚を望んでいません。 ウェールズ殿下には、なんとお詫びしていいか……大変な失礼を致してしまい……」 やはり、ルイズにとってこの結婚は性急すぎた。 気持ちが現在に追いつかず、幼き日の憧れのまま、ワルドとの結婚式を迎えてしまった。 だからこんな半端な気持ちのままでは、結婚などできようはずがない。 しかしそんなルイズの気持ちに気づかないらしいワルドは、 恥をかかされたと頬を赤くし唇を歪めた。 よくない雰囲気だと、ウェールズは穏便に事を収めようとする。 「花嫁が望まぬ式を、これ以上続ける訳んもいかぬ。子爵、この場は……」 ウェールズの気遣いを無視して、ワルドはルイズの両手を引っ掴んだ。 「緊張しているんだ、そうだろう? 僕との、結婚を拒むなど、ありえないはずだ」 「ごめんなさい、ワルド様。憧れていました、幼いながら恋をしていました。でも」 でも、言葉を見ていて思うから。 真なる愛情は、心を壊すほどに深い。 しかし狂気に呑み込まれても尚、決して消えぬもの。 (私は、それほどまでにワルド様を想ってはいない。少なくとも、今は、まだ) だからいつか、もっと時が経って、自分を、ワルドを見つめ直して、納得できた日には。 憧れではなく、本当に心から愛せた時には。 結婚したい。そう思った、しかし。 「世界だ……世界だぞ、ルイズ!」 ワルドの声が熱を帯びた。怒りや苛立ちの類の、熱を。 「世界だ……世界だぞ、ルイズ!」 言葉の淀んだ瞳が揺らいだ。 ワルドが何事かを叫んでいる。 セ……何? セカ……セ……。 「そのために君が必要なんだ! 世界を手に入れるために!」 「な、何を仰っているのか、解りません。世界……だなんて、いきなり、ワルド様?」 「君には力が! 才能があるんだ! 始祖ブリミルに劣らぬ才能! 僕達の輝かしい未来は、ここから始まるはずだ! ルイズ!!」 何を言っているのだろうと、言葉は思いながら鞄を、開けた。 力と才能。そんなもの持ってはいないけれど、ワルドはそれを欲している。 じゃあ……私は? ルイズは理解した。ワルドは自分を愛していない。 じゃあ……結婚は? 拒絶したのは自分からだ。でもそれは『今』の事であって『未来』まで拒絶してはいない。 しかしこのワルド、求めているのは『今』だった。 『今』が無ければ『未来』も無い。その『未来』とは、ルイズではなく、世界だ。 「ミス・コトノハ! 君も! 君からも何か言ってやってくれ!」 言われて、言葉は鞄の中の獲物を掴んだ。 「……ワルドさんは、ルイズさんを愛していらっしゃる……そうでしたよね?」 「そうだ! ルイズを手に入れるためにここまできたのだ、今更引き下がれるものか! ルイズと! ガンダールヴがいれば! 私は……私達は世界を手に入れられる!」 「セ、カ、イ……?」 瞬間、弾ける記憶――思い出――絶望――。 優しくしてくれた。 相談に乗ってくれた。 アドバイスをしてくれた。 嬉しかった、幸せだったのに。 全部、全部、嘘だった。 裏切った。 裏切られた。 信じてたのに。 いい人だって、友達だって思っていたのに! 世界……世界……西園寺世界!! 「ワルドさん」 久し振りの感覚だった。あの日、あの時を思い出す。 クリスマスの夜の出来事を。 言葉は鞄を椅子に置いて、中からチェーンソーを引っ張り出す。 「こ、コトノハ?」 それが強力な武器であると知っているルイズが困惑の声を上げる。 言葉はそれを起動させ、静かに歩み寄る。 「ミス・コトノハ? 何をするつもりだ、それは何だ」 結託しているはずの言葉が、奇怪な剣を取り出したのを見てワルドは顔をしかめる。 「答えてくださいワルドさん。貴方はルイズさんを利用するつもりだったんですか?」 「何を言っている、ミス・コトノハ。君は私の味方だろう」 「ルイズさんを裏切っていた……そうなんですね」 殺気。 刃のような鋭さは無い、しかし全身を毛虫が這うようなおぞましさがあった。 夜の海のように深く、暗く、冷たい。しかし同時にマグマのように熱い。 憎悪と憤怒が激流となってほとばしる。 この女は私を殺す気だと、ワルドは直感的に悟った。 「いいのか? 私を裏切れば、君の願いもかなわぬのだぞ!」 「死んでください」 轟音。言葉は左手のルーンを輝かせ、チェーンソーを起動させた。 疾駆。一瞬にして隼の如き速度で肉薄する言葉。 閃光。二つ名にたがわぬ速度を持って反応するワルド。 一瞬の出来事だった。 困惑するルイズはシャツを切り裂かれ、懐にしまっていたアンリエッタの手紙を落とす。 咄嗟に杖を抜いたウェールズは、跳ね上がった足を腹部にめり込まされ苦悶によろめく。 回転する凶刃を振り下ろした言葉は、ワルドの速度に届かず唇を噛んだ。 ルイズから手紙を回収し、ウェールズを蹴り飛ばして距離を取り、言葉の斬撃を回避し、 ワルドはマントをひるがえして跳躍し体勢を立て直した。 「予定変更、この場にいる全員を始末するとしよう」 「ワルド様!? それは、いったいどういう意味ですか!」 「ルイズさん、彼はレコン・キスタ……貴族派のスパイ、裏切り者です」 言葉の発言に、ルイズとウェールズは驚愕に震える。 しかし。 「それはお互い様だろう、ミス・コトノハ。 君は主人であるルイズに隠れて盗賊土くれのフーケを脱獄させ結託し、 さらに我がレコン・キスタに入るべく君達を売ろうとしていたのだから」 「コトノハが!?」 続け様に明かされる事実に、ルイズの頭は真っ白になってしまった。 「僕を裏切り者と呼んだな、ミス・コトノハ。だが君も裏切り者だ。 ルイズを裏切り、僕を裏切り、今度は誰を裏切る!?」 言葉は冷笑した。 それは、彼女の狂気を一番長く見てきたルイズでさえ、恐怖に凍りつくほどの。 裏切り者の笑み。 優しくしてくれた、正直でいてくれた、本当の気持ちを話してくれた、ルイズを裏切った。 この世界でただ一人、心を許せた人を裏切ってしまった。 ならばもう、他のすべてもろともに、等しく価値は無いだろう。 故に、裏切るというのなら、この世界の者でない誠を除くすべて。 すなわち。 「世界を」 このハルケギニアという世界すべてを裏切ってでも、彼女は征く。 すべては、最愛の恋人のために。 誠のために。 チェーンソーを軽々と持ち上げて、言葉は再びワルドに迫る。 が、ワルドは素早く詠唱をすると、その姿を五つに増やした。 幻? 否、これは。 「風の遍在!? 逃げてコトノハ!」 ルイズの悲鳴にも似た叫びに、言葉は危機を感じ立ち止まった。 風の遍在。 この魔法によって、ワルドはルイズと共にいながら、言葉とフーケの密会を目撃したのだ。 だがこの魔法の恐ろしさは、術者と力を等しくする遍在が複数現れる事にある。 スクウェアクラスが五人、同一であるがゆえの完全な連携で襲ってくる。 まともに戦っても勝機は無い。 「エア・カッター!」 不可視の刃が、言葉の後方から飛び、その横を通り抜けワルドに迫った。 ウェールズが唱えた魔法だったが、ワルド達は四方に散って回避し詠唱を始める。 「エア・ハンマー!」 「ウインド・ブレイク!」 言葉は風の塊に殴り飛ばされ、教会の長椅子に突っ込んだ。 ウェールズはルイズを抱き支えながら、ウインド・ブレイクに飛ばされぬよう耐える。 「くっ、このままでは……」 ウェールズは、自分達の敗北を悟った。 平民であるはずの言葉が驚異的な戦闘能力を持っている事は解ったが、 武器が剣である以上、接近戦しかできない。 同じ風のメイジの自分はトライアングル。希望があるとすればルイズだが――。 「ミス・ヴァリエール。君の系統とクラスは?」 「わ、私は……使い魔召喚と契約以外、一度も魔法が成功した事がなくて……。 初歩のコモン・マジックすら使えません」 これで、敗北は確たるものになった。 だがそれでウェールズはあきらめるつもりはない、かなわぬまでも一矢報いるのみだ。 それに、全力で盾となれば、アンリエッタの友人を、ルイズを逃がすくらいはできるかもしれない。 だがワルドとてそれは承知している。計算外の事が起きても、すべて対処する自信があった。 計算外の存在。 それは言葉。 彼女がガンダールヴという、伝説の使い魔である事を、調査の結果ワルドは知っていた。 だが所詮、武器を振るうだけの存在のようだ。ならば問題は無い。 しかし知らない、ガンダールヴの強さは心の震えに呼応して高まる。 心の震えならば何でもいい。 喜び、怒り、悲しみ……憎しみ。 心を壊すほどの悲しみと、怒りと、憎しみが、今、燃え立っている。 言葉の眉は釣り上がり、瞳はさらにさらに暗く深く暗く深く暗く深く沈み沈み沈み……。 「貴方は、私達は、ルイズさんを裏切った……だから!」 赦せない。赦さない。憎い、憎くて、たまらない。 裏切ったワルドが、裏切った自分自身が、殺したいほどに憎い。 いや殺す。少なくともワルドは殺す。今殺す。 左手のルーンが輝きを増した。 疾風怒濤となって、遍在の一人に迫る言葉の瞬斬。 それは近くにあった木製の椅子ごと、遍在を木っ端微塵に粉砕する。 接近戦は分が悪いと、ワルド達は詠唱する。 「エア・カッター!」 「エア・カッター!」 「ウインド・ブレイク!」 三人が風の魔法で攻撃する間に、残る一人がやや長い詠唱を終えようとする。 「ライトニング・クラ――」 「エア・カッター!」 あまりにも驚異的な瞬発力と破壊力を目の当たりにしたワルドの注意は言葉に向き、 隙が生まれたと判断したウェールズは詠唱しながら、 己の魔法では一人しか狙えないため、どの遍在を撃つか見定めていた。 決めたのは、一番危険な魔法を使おうとしたワルドだ。 ライトニング・クラウドを放とうとしていた遍在は杖を持つ腕を切断され、後ずさりする。 「くっ、だがその程度の魔法で――」 次の瞬間、その遍在が爆発し、煙と共に消えた。 ルイズの魔法だ。本当は風のドット・スペルを唱えたのだが、 やはり失敗し爆発が起きたのだ。しかしそれで遍在を一人倒せたのだから僥倖だろう。 言葉の予想外の活躍で一人倒し、そこで生まれた隙を突いてさらにもう一人。 絶望の中、勝機の光わずかながら見えてきた。 だがさすがはワルド、すかさずエア・カッターでウェールズ達をけん制する。 慌ててウェールズはルイズの肩を掴み、力いっぱい引っ張って魔法を回避する。 その間に、二人のワルドが狡猾に言葉を仕留めに向かっていた。 「エア・ニードル!」 杖の先端に風の槍を作り、あえて接近戦を挑んでくる遍在。 返り討ちにするつもりでチェーンソーで切り込む。が。 「いかに速かろうと、動きが直線的ではな!」 かろやかに舞い、攻撃を回避する遍在。 構わず言葉はチェーンソーを振るった、回転する刃が遍在の杖を切り落とす。 エア・ニードルごと消えてなくなる杖。しかし遍在はまだ消えていない。 冷笑を浮かべて、言葉は遍在の肩から胴体へと切り刻み、バラバラにする。 遍在が消えた直後。 「ライトニング」 言葉はもう一人の遍在に身体を向け、ライトニングという単語から電気を連想した。 電気の速度を回避するなどいかにガンダールヴといえど不可能。 そして、先ほどウェールズが唯一妨害したこの魔法、恐ろしい威力だろうと推察される。 それらの事をはっきりと思考した訳ではないが、狂気ゆえに研ぎ澄まされた感覚により、 言葉は咄嗟にチェーンソーを前に出して指を開いた。 「クラウド」 青白い閃光が一瞬ほとばしる。 バチンと大きな音を立てて、言葉のチェーンソーから煙が上がる。 同時に言葉の両手が弾けるようにチェーンソーから離れた。 本来ならチェーンソーを通って言葉の身体も電気に焼かれていたはずだが、 言葉の一瞬の判断により武器を壊されるだけにすんだ。 しかし武器を失ったガンダールヴなど、ただの平民にすぎない。 これでもう計算外の事態は起きない、ワルドは会心の笑みを浮かべる。 遍在はもうひとつしかないが、本人を含めて二人なら、 ここにいる三人を十分始末できる。 トライアングルのウェールズなど敵ではない。 武器を失ったガンダールヴなど話にもならない。 後はルイズの、秘められた才能、あの爆発にさえ注意すればいい。 「ふふふっ。ウェールズ、貴様の命もらい受けるぞ。 ルイズ、私の崇高な想いを理解できぬならここで死ぬがいい。 我が覇道はレコン・キスタと共に!」 これからルイズ達は成すすべなく殺されていくだろう。 その様子を、わずかに開いた教会の戸から覗き込んでいる者がいた。 誠以外のすべてを裏切ると決めた言葉だが、しかし、まだ――。 第14話 世界を裏切って 前ページ次ページ鮮血の使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/295.html
しかし意外だな。ルイズの家は王女と交流があったのか。 ということは王族と交流があるってことだな。貴族の中でも地位は高いんじゃないか? そんな家柄で魔法が使えないのは結構やばくないか?家族でも厄介者扱いされてたりしてな。貴族ってプライドは無駄に高いからありえるな。 だから貴族に拘ってるのかもしれないな。私には関係ないがな。 「結婚するのよ。わたくし」 色々考えているとそんな言葉が聞こえ現実に戻ってくる。へぇ、王女は結婚するのか。 「……おめでとうございます」 先程までの楽しそうな雰囲気は霧散しルイズは沈んだ口調で言った。何故だ?王女が結婚するんだったら普通喜ぶものだろう? つまり何か事情があるってことか。なるほどね。 突然王女が今気づいたという風にこちらを見る。気づいてなかったのか? 「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」 「お邪魔?どうして?」 「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?いやだわ。わたくしったら、つい懐かしさにかまけて、とんだ粗相をいたしてしまったみたいね」 「はい?恋人?あの生き物が?」 酷い言い草だな。しかし王女がそう思うのも無理はないかもしれない。普通人間を使い魔にするなんて思うわけないだろうしな。 「姫さま!あれはただの使い魔です!恋人だなんて冗談じゃないわ!」 ルイズが首を激しく振りながら否定する。 「使い魔?」 王女が疑問に満ちた面持ちで私を見つめてくる。 「人にしか見えませんが……」 人は人でもガンダールヴとかいう伝説の使い魔だけどな。 「そうよね。はぁ、ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」 「好きであれを使い魔にしたわけじゃありません」 ルイズは憮然として言い返す。私も好きでされたわけじゃないぞ。 王女が突然ため息ををついた。何だか胡散臭いため息だな。 「姫さま、どうなさったんですか?」 「いえ、なんでもないわ。ごめんなさいね……」 嘘だな。これ見よがしに私困ってますって感じを見せ付けてるじゃないか。 「いやだわ、自分が恥ずかしいわ。あなたに話せるようなことじゃないのに……、わたくしってば……」 「おしゃってください。あんなに明るかった姫様が、そんな風にため息をつくってことは、なにかとんでもないお悩みがおありなのでしょう?」 「……いえ、話せません。悩みがあると言ったことは忘れてちょうだい。ルイズ」 じゃあお前何しに来たんだよ。 「いけません!昔はなんでも話し合ったじゃございませんか!わたしをおともだちと呼んでくださったのは姫さまです。そのおともだちに、悩みを話せないのですか?」 ルイズの言葉を聞き王女はなんとも嬉しそうに微笑む。 「わたくしをおともだちと呼んでくれるのね、ルイズ・フランソワーズ。とても嬉しいわ」 王女が頷く。 「今から話すことは、誰にも話してはいけません」 付き合いきれないな。部屋から出るとしよう。これ以上は私を巻き込まずにやってくれ。 そう思いドアに向かって歩き出す。 「何処行くのよ、ヨシカゲ」 ルイズが私を呼び止める。 「なにやら重大な話のようだから席でも外そうと思ってな」 「いや、メイジにとって使い魔は一心同体。席を外す理由がありません」 王女が首を振りながら言う。じゃあ今の私の心はルイズが思っているのと同じなんだな。 今私はこう思っている。巻き込むな!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/652.html
「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」 その教師はそう自己紹介をした。 教室中が静かになる。どうにも慕われているというより、嫌われているので目を付けられたくないかららしい。 だがおれにはそんな事関係ない。 おれが考えているのはただ一つ。あの教師の長い黒髪を思いっきりむしりたい。コレだけだ。 前にやったときは頭に飛びついた時点で反撃を受けたからな。 今度は慎重にやる必要がある。我慢だ、おれ。 そんな風に自分を抑えていると、キュルケが立ち上がってギトーに向かって炎の玉を作り出し、打ち込んだ。 俺の獲物に手を出すな! と言いそうになったがその前にギトーが風を起こし、炎の玉を掻き消し、キュルケを吹っ飛ばした。 おいおい大丈夫か?キュルケのヤツ。 それはそうとヤツの武器は風らしい、 風はすべてを吹き飛ばすとか言ってるがそんなのは相性によっていくらでも覆される。 だがおれのザ・フールでは相性が悪いだろう。 この前気づいた事だがスタンドと魔法は相互干渉するらしい、 だから風で吹き飛ばされれば固めてる状態ならともかく砂の状態で操れなくなってしまうだろう。 やはり死角から飛びついて杖をなんとかしてからだろうか。 「もう一つ、風が最強たる所以は…」 お、また一つ手の内を明かしてくれるらしい。風が強くてもコイツはバカだな。 ギトーが詠唱を始め、呪文を唱える。 そしてギトーは分身した。 「うわ、スゲー何アレ?」 おれがつい声をあげると、ルイズに睨まれた。黙ってろって?分かったよ。 ギトーが分身の説明をしようとするが出来なかった。 変な格好の教師が入ってきたからだ。 頭にある金髪ロールの髪、それを見ておれは理性を失った。 「うおりゃああぁぁぁ!」 飛びついてむしる。だが失敗した。頭に飛びついた瞬間その髪がズレたのだ。 新手のスタンド使いか!? そう思ったが違うらしい。ただのカツラだ。 「チクショーーーーー!」 騙された恨みを晴らすべくそのカツラをズタズタに引き裂く。 「あぁ~それ高かったのに~」 情けない中年の声なんか気にしない。 みんなは真似しちゃDANEDAZE♪ ってあれ?教室中が静かだぞ?何で? おれはこの重い沈黙を破る方法を探した。だがおれにはどうしようもない。誰かなんとかしてくれ。 そして動いたのはタバサだった。そのカツラ野郎の頭を指差して 「滑りやすい」 途端に大爆笑が起きる。ナイスフォローだタバサ。 よく見るとカツラ野郎はコルベールだった。髪だけ見てたから気づかなかったが服も変な物を着ている。 具体的に言うとレースの飾りやら刺繍とか、絶対変だ。 「いいセンスだ…」 おいギーシュ、本気で言ってるのか? 「それで?何の用ですかな?ミスタ・コルベール」 「ああ、そうだった。今日の授業はすべて中止です」 歓声があがった。どこの学校でも授業というのは潰れて欲しいものらしい。 「中止の理由は何ですかな?」 ギトーが不機嫌そうに尋ねる。自分の見せ場を潰されたんだし当然だろう。 「本日がトリステイン魔法学院にとって良い日になるからです。何と…」 そこでもったいぶって言葉を切る。 なかなか続きを言わないので煽ってみる。 「早く言えよハゲー」 あ、ヤベ、睨まれた。 「恐れ多くも、アンリエッタ姫殿下がこの魔法学院に行幸なされるのです」 その言葉で教室がざわつく。それに負けないような声でハゲ…じゃなかったコルベールは続ける。 「したがって、粗相があってはいけません。今から歓迎式典の準備を行うので今日の授業は中止」 なるほど、そういうことか。 「生徒諸君は正装し、門に整列する事」 そう言い残してハゲベールは出て行った。 アレ?名前これでいいんだっけ? ルイズにこれから来る姫殿下の事を聞いてみた。必要な事をまとめるとこんな感じだ。 まず名前はアンリエッタと言い、他に兄弟はいないらしい。以上。 名前と他の兄弟の事。大事なのはこれだけだ。 何故かというと他に兄弟がいない、 それはつまりいつかは『王』になると言う事だ。 ここがおれとアンリエッタの共通点。 コイツをどう叩きのめすかが問題になってくる。 そんなワケで敵情視察だ、とは言っても正門にルイズと一緒に並んでみるだけなんだが。 お、馬車から降りてきた。 外見はかなり美人。よし、あれも部下にしよう。 馬車を引いてるのはユニコーンだな。あいつらから聞き込みが出来ないだろうか。 周りの警備は…四方を囲んでいる奴らがいる。けっこう強そうだがおれの敵じゃあないな。 よし、情報集めはこれでいいだろう。 戦闘面ならともかく、今回のような事ではは見るだけで得られる情報は少ないからな。 そう思ったおれは周りの連中の反応を見ることにした。 「あれが王女?ふん、勝ったわね」 胸の事か?おれもそう思うぞキュルケ。 「……」 お前はいつも通りだな、タバサ。 ルイズは…驚いてる?何を見てるんだ? おれはルイズの見ている方向を見る。 おっさんがいた。あいつは誰だろう? その夜。おれがどうやってアイツを蹴落とし、地位を手に入れるかを考えているとドアがノックされた。 初めに長く二回、それから短く三回。 それを聞いたルイズは 「このノックは!?」 ノックだよ。聞けば分かるだろ? 「合言葉を言わなくちゃ」 合言葉?ああそういう合図なのか。 「ノックされてもしも~し」 「ハッピー、うれピー、よろピくねー」 よく分からない合言葉の後、ルイズがドアを開けた。 入ってきたのはアンリエッタだった。 こんな所に王女が来るのは不思議だったが どうにもルイズとアンリエッタは昔馴染みらしい。 さっきから抱き合ったりしている。 そしてふと悲しそうな顔になったが、少しルイズと会話して何かを決意したらしく、何かを話し始めた。 「わたくしは同盟を結ぶためにゲルマニアの皇帝に嫁ぐ事になったのですが…… 礼儀知らずのアルビオンの貴族たちはこの同盟を望んではいません。 二本の矢も束ねずに一本ずつなら楽に折れますからね。 したがって、わたくしの婚姻を妨げるための材料を血眼になって探しています。 もし、そのような物が見つかったら…」 「姫様、あるのですか?」 「……はい、わたくしが以前したためた一通の手紙なのです。それがアルビオンの貴族達の手に渡ったら… 彼らはすぐにゲルマニアの皇帝にそれを届けるでしょう」 「どんな内容の手紙なんですか?」 「それは言えません。でも、それを読んだら、ゲルマニアの皇帝はこのわたくしを許さないでしょう。 婚姻はつぶれ、トリステインとの同盟は反故。となると、トリステインは一国にてあの強力なアルビオンに立ち向かわ ねばならないでしょうね」 「その手紙はどこにあるのですか?」 「手元にはないのです。実はアルビオンに…」 「アルビオンですって!ではすでに敵の手中に?」 「反乱勢ではなく反乱勢と戦っている、王家のウェールズ皇太子が…」 「ウェールズ皇太子が?ではわたしに頼みたい事とは…」 「無理よルイズ。アルビオンに赴くなんて危険な事、出来るわけないでしょう」 「姫様の御為とあらば、何処へでも向かいますわ!このルイズ、姫様の危機を見過ごすわけにはまいりません!」 ルイズがこっちを向いた。 「行くわよ!イギー!」 「え?どこへ?」 つい反射的に答えてしまう。 「話聞いてた?」 「翠星石は俺の嫁、までなら」 ルイズに蹴られそうになったが、そうはならなかった。 ドアから新たな人間が入って来たからだ。 「姫殿下の話を聞かないとは何事かー!」 ギーシュだ。 おれはすぐにデルフリンガーを抜く、するとルーンが光り体中に力がみなぎる。これがガンダールヴの力らしい。 ギーシュから三メイルほどの所で地面を蹴って飛び上がり、頬を蹴り込む。 「必殺!デルフリンガーキック!」 「おれ関係ねー!」 デルフの残念そうな声を聞きながらギーシュが倒れるのを見届ける。 だがギーシュは立ち上がってきた。もいっぱつ蹴ろうかと思ったがルイズの声が先だった。 「ギーシュ!今の話を立ち聞きしてたの?」 ギーシュはそれを無視してアンリエッタに話しかける。 「バラの様に見目麗しい姫様のあとをつけてみたらこんな所へ…そして様子を伺えば何やら大変な事になっているよう で…」 そういって薔薇を振り、ポーズをとりながら次の言葉を言った。 「その任務!このギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」 図々しいヤツだ。 「グラモン?あの、グラモン元帥の?」 「息子でございます。姫殿下」 「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」 「任務の一員に加えてくれるのならこれはもう望外の幸せにございます」 どうやらギーシュも参加するらしい。 おれも乗り気になっていた。 その手紙をおれが回収すれば何らかの切り札になるかもしれないしな。 To Be Continued…
https://w.atwiki.jp/encyclepedia_rougui/pages/164.html
Arzt Kochenの使い魔(アルツト コッヒェンノツカイマ) 目次 back→<魔女、使い魔に戻る> プロフィール Arzt Kochenの使い魔 プロフィール 商業作品 各作品の総括 Arzt Kochenの使い魔 各作品の総括 本編 アニメーション 関連作品(外伝、パロディを含む) ドラマCD コミック Arzt Kochenの使い魔 魔法少女かずみ☆マギカ 〜The innocent malice〜 小説 ゲーム ネット上での扱い(注意!人によっては不快な内容を含む恐れあり!) ネット上での扱いの総括 Arzt Kochenの使い魔:ネット上での扱いの総括 二次設定とネタ(あるいは叩き) Arzt Kochenの使い魔 二次設定とネタ(あるいは叩き) 各所での扱い Arzt Kochenの使い魔 2ちゃんねる、コピペブログでの扱い Arzt Kochenの使い魔 ニコニコ動画(ニコニコ大百科)での扱い Arzt Kochenの使い魔 Pixv(ピクシブ百科事典)での扱い back→<魔女、使い魔に戻る>
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1038.html
春の麗らかな風景に爆発音が響いていた。 爆発音の発信源はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 彼女は他のクラスメート達や教師が見守る中、サモン・サーヴァントの儀式を行っていたが、爆発ばかり繰り返していた。 その数も既に20を裕に越えており、始めは冷やかしていたクラスメート達も、流石に飽き飽きしていた。 いつまでたっても成功しないのを見て、U字禿の教師コルベールは「次で成功しなかったら良くて留年、最悪の場合退学になりますぞ」とルイズに脅すように言った。 「五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ。」 ルイズはありったけの魔力をこめ、いつになく真剣な面持ちで唱えた。 しかし、ルイズの思いも虚しくまた杖を向けた先で爆発が起こった。 それを見た全員がまた失敗かと思った。が、もくもくと土煙が立ち込める中に爆発する前には無かったはずの『何か』があった。 ルイズはそれに気が付くとゆっくりと警戒しながらその何かに近づいていき、それを手にとってみた。 「これは…『矢』?」 爆発の跡にあったのは一本の古びた矢だった。鏃は金属でなく石で作られ刃の部分は鋭く出来ていたが、その装飾からして実戦で使うものではないようだ。 だが、彼女にとって生物でない物に用はない。サモン・サーヴァントは使い魔となる生物を呼び出す儀式。明らかに無機質な矢などお呼びでないのだ。 ルイズは溜め息をついた。爆発ばかり繰り返し、簡単なコモンマジックどころかまともに使い魔すら召喚出来ない『ゼロ』…自分の将来を憂え今すぐ泣き出したくなったその時、 サクサクと草原を誰かが歩く音がした。 クラスメートの誰かが自分を慰めに来たのか、それともコルベールが退学を宣告しに来たのか。ルイズはいずれにせよ振り向く気になれなかった。 だが、その音の正体がどちらとも違う事がクラスメートが次々にしゃべった事で明らかになった。 「おい、何か黒いのがいるぞ!」 「遂に成功したの!?やったじゃないルイズ!」 えっ!?と驚きルイズが振り向くと黒い人らしき「物」がこちらに背を向け歩いていた。 カウボーイハットの様な帽子を被り、肩にはドーナッツ形の飾りを幾つも付けている。 腰にはゆるゆるとしたベルト、更に乗馬用のブーツみたいな靴を履いている。 だがその姿はどこまでも漆黒であり、生物と非生物の間のような存在感を出していた。 ルイズは成功してこれを呼び出したのにこれに対し何とも言えない不気味さを感じた。 こいつは何かヤバイ気がする…契約をすべきなんだろうか… そう思った時、既に異変は始まっていた。 いきなり周りにいたクラスメート達が何の前触れも無くその場で倒れると眠りだしたのだ。彼らの使い魔達も、である。 その異常な光景にルイズは呆然としたが、ふと気付いた。自分の手からいつの間にか矢が地面に落ちていたのだ。 そして矢は斜面でもないのにその漆黒の『何か』の元まで転がって行った。漆黒の『何か』は立ち止まり矢を拾いあげると再び歩き出した。 「ちょ、ちょっと!これはあんたの…」 そこまで言うといきなり足に力が入らなくなり、ストンと地面に腰を落としてしまった。 「な…た…立てな……」 そして意識が朦朧とし、他のクラスメートやコルベール同様地面に横たわり、眠ってしまった。 それでも漆黒の『何か』…前の世界で『鎮魂歌』と呼ばれたそれは城の方へとゆっくり歩いて行った… シトシト… 気付いたら夕方になり小雨が降り出していた。 ルイズはいつの間にか自分が寝てしまった事を思い出し、起き上がろうとした。 しかし、地面に手を付けた瞬間グラリとした。なにかおかしい…身体が『重い』…いやサイズに『合わない』感じがする。 「何が起きたの」 自分の周りを取り囲んでいた中にいたはずのキュルケがいつの間にか近くにいた。 「分からない…いつの間にか寝ちゃって…」 ルイズが答える。視覚がまだぼんやりしていた。 「ルイズの使い魔のせい?」 キュルケが淡々とした感情の起伏の無いしゃべり方をしているのにルイズは違和感を覚えた。キュルケの普段のしゃべり方はこんなのじゃない… 「し、しし知らないわよ!私だって何がなんだか…」 「私?」 キュルケが首を傾げた。ルイズはますます違和感を覚え、尋ねてみた。 「あんた…本当にキュルケ?」 その問いにキュルケは首を横に振ることで答えた。 「冗談はよしてよ!あなた、どう見たって…」 そこではっとした。自分の背が明らかに延びていたのだ。手もよく見てみたら成人男性のような… もしかして!と思い、頭に手をやるとそこには無かった。自分のトレードマークとも言えるものが! 「無い!あたしの髪が無い!」 「元々」 キュルケが突っ込んだ時、「うぅ…」 また近くでうめき声が上がった。キュルケの隣で寝ていたタバサだった。 「何なのよ…いきなり眠くなって…」 タバサが起き上がってキュルケを見た。キュルケも起きたタバサを見た。 「「………」」 二人は五秒ほど沈黙した後、 「きゃああああああああ!」 タバサ、いやタバサの中のキュルケが絶叫した。キュルケの中のタバサも驚いて目を丸くしている。 だが、彼女達よりショックを受けた人達がいた。 ルイズは頭に髪が無いので気付いた。辺りを見渡すとすぐに見つけた。今にも起き上がろうとしている自分の身体を! その自分の身体も自分を見た。 「いやぁぁぁぁぁぁ!」 「うぉぉぉぉ何事ぉぉぉ!?」 両者共にキュルケより遥かに大きな声で絶叫した。 しばらくして心と状況の整理が出来た。 まず、どういう訳か分からないが、魂が入れ代わったということ。 しかもほとんどが使い魔と入れ代わったらしく、話しかけても全然通じなかった。例外は四人の他、ギーシュとマリコルヌだけであった。 次に、これは仮説だが、この現象はルイズが呼び出した使い魔が引き起こした物だということ。 そして最後に、得意魔法等は魂と一緒についてきた。 ということである。 「困りましたぞぉぉ」 ルイズの中のコルベールが頭を抱える。頭の上が豊かなことや若返ったのは嬉しいらしいが、そんなことを言っている場合では無い。 これがもしハルキゲニア中に広まったら大変な事になる。 しかしその元凶がどこに行ったのかも、どうやれば元に戻るかも分からなかった。 焦ってばかりで役に立たない教師を尻目にキュルケとタバサはいち早く動き出した。 「黒い人のようなのよ。捜して来て!」 キュルケはシルフィードと入れ代わったフレイムに命令した。 「きゅるきゅる」 フレイムは慣れない様子で飛び上がり、辺りを旋回しだした。 「森の中。」 タバサもシルフィードに探索するよう命じた。 「きゅい!」 シルフィードは森の中に入って行った。 10分ぐらいしてフレイムが本塔の近くでレクイエムを発見した。 キュルケはフレイムに足止めを頼みつつ、六人はレクイエムの元へと急いだ。(当然だが、マリコルヌと入れ代わったギーシュはおいてけぼりだった。) To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5576.html
前ページ次ページ狂蛇の使い魔 第四話 目の前で一体何が起こったのか、ギーシュには理解できなかった。 マジックアイテムらしき箱を使い、奇妙な鎧を身に纏ったルイズの使い魔の平民。 不思議な形をした剣をどこからともなく呼び出すと、ワルキューレに向かって駆け出したのだ。 「でやあぁぁぁ!!」 そしてワルキューレが攻撃の体勢に入るよりも早く、順手に持ち変えた剣を上から振り降ろしてきた。 ワルキューレは青銅でできている。 たとえ相手が武器を持っていようと、並みの攻撃ではびくともしないはずだ。 攻撃を受け止め、その隙をついて攻撃を仕掛ければいい。 そう、僕はふんでいた。 しかし、やつが二度三度と剣を振るっただけで、その考えは脆くも崩れ去った。 やつの斬撃に、自慢の防御力が意味をなさないどころか、攻撃を受けた箇所にヒビが入り、ついには砕け始めた。 「ハァッ!」 トドメとばかりに下から放たれたその一撃で、ワルキューレの体が宙を舞い、僕の目の前に落ちてきた。 もはや戦える状態にない。 「ふん……もう終わりか? つまらんな」 剣で肩をトントンと叩きながら、『平民だったもの』が呟いた。 「ま、まだだ! 勝負はこれからだ!」 正直、侮りすぎていた。 あのパワーとスピードでは、ワルキューレ一体だけだと相手にならないだろう。 (だが、複数ならば此方にも分がある!) そう思うと、すぐに二体のワルキューレを出現させ、指示をだす。 「いけ!」 青銅の長剣で武装した二体が、同時に走り出す。 「ほう。もうしばらくは楽しめそうだな」 そう言って、手にした剣を放り投げる。 再び紫の杖を取り出すと、箱からカードを引き、杖に差し込んだ。 『SWING VENT』 杖から声がすると、鏡から赤色の鞭が飛び出し、先ほどの剣と同じように王蛇の手に収まる。 エビルウィップと呼ばれるこの鞭は、剣よりも広い攻撃範囲と、自在な動きで敵を翻弄する。 王蛇は鞭を地面に一振りすると、近づいてきた二体の人形に向けて、上下左右あらゆる方向に何度も振り抜いた。 その攻撃に、ワルキューレたちは思うように近づけず、ついには二体とも武器が弾き飛ばされてしまった。 今は二体とも両腕で守りを固めているが、体のあちこちに傷や破損が目立つ。 頃合いを見計らって、王蛇はワルキューレたちに猛スピードで近づくと、その場で勢いよく回転し、右から回し蹴りを叩き込む。 蹴り飛ばされた一体がもう一体を巻き込み、観衆がいる方向へと飛んでいった。 見物人たちが悲鳴をあげてそれを避ける。 王蛇に傷一つつけることができぬまま、またしてもワルキューレたちはその機能を停止した。 (くそっ、こうなったら……!) ギーシュは残る四体のワルキューレを呼び出し、突撃の指示を出す。 各々が剣や槍で武装されている。 「ほう……」 王蛇は手にした鞭を投げ捨て、紫の杖を取り出す。 箱からカードを引き、杖に差し込んだ。 『STRIKE VENT』 杖から声がし、鏡から鉄の盾のような物体が飛び出すと、王蛇の右腕に装着された。 メタルホーンと呼ばれるそれは、腕に着ける灰色の盾のような部分と、先端部分から伸びる黄色い角のような突起物でできている。 その形状から、攻撃と防御を両方ともこなすことのできる武器なのである。 突撃してきた四体のワルキューレに向かって、王蛇はメタルホーンを構えた。 王蛇は一体目と二体目の攻撃を避けると、残る二体の攻撃を両方とも盾の部分で受け止め、そのまま横になぎはらった。 二体のワルキューレが地面に転がる。 攻撃を避けられた一体が、再び攻撃を仕掛けた。 が、攻撃が届くよりも前に、王蛇によって上から振り降ろされた一撃を顔面にくらい、地面に叩きつけられる。 その顔には、縦に大きな亀裂が走っていた。 もう一体も王蛇に攻撃を仕掛けたが、盾の部分で攻撃を受け止められると、蹴りで武器を叩き落とされた。 そして、無防備になったその胴体に、王蛇はメタルホーンを勢いよく突き出す。 ワルキューレは咄嗟に避けようとしたが、間に合わず脇腹に攻撃をくらい、弾き飛ばされた。 脇腹の一部が砕け散る。 地面へ倒れたところに、王蛇はすかさず追撃を仕掛ける。 「ダァァッ!!」 メタルホーンの角がワルキューレの首元を砕き、首から上が吹き飛ばされた。 なぎはらわれ、地面に倒れていた二体が起き上がるのを見ると、王蛇は言った 「今日はなぜか調子がいい。……だが、そろそろ雑魚の相手も飽きてきたな」 王蛇はメタルホーンを腕から外すと、そのまま地面に振り落とし、紫の杖を取り出す。 紫の箱から、それと同じ模様が描かれたカードを引くと、杖に差し込んだ。 『FINAL VENT』 杖から声がし、その直後手鏡から巨大な紫の蛇が現れた。 観客たちが悲鳴をあげる。 顔の周りに無数の鋭い刃を持つその大蛇―名をベノスネーカーという―は、シューという声をあげながら、王蛇の方に向かって地を這い進む。 王蛇はその場で構えると、後ろに向かって大きくバック宙をした。 そして、王蛇の背後にまで迫ったベノスネーカーが、口から毒液を吐き出す。 その勢いに乗り、王蛇が二体のワルキューレたちに向かって、両足を交互に上下させる、奇妙な形式の蹴りを放った。 「ウオオオォォ!!!」 (避けられない!!) 獲物を何度も噛み砕く、蛇の牙を彷彿とさせるその攻撃は、身構えるワルキューレたちをものともせずに蹴り砕いていき、そして――爆発した。 二体のワルキューレは木っ端微塵に吹き飛ぶ。 「そん……な……」 ギーシュが、崩れるようにして膝をつき、うつむく。 いくら奇妙な鎧を纏ったとはいえ、ワルキューレたちが平民を相手に、全く手も足も出なかった。 それどころか、戦いにすらなっていなかった。 あったのは、圧倒的な力による、破壊。 一方的な暴力のみだ。 「この感覚……! やっぱり戦いは最っ高だ……!!」 しばらく愕然としていると、王蛇がギーシュに近づいてきた。 「おい。……ギーシュとかいったか」 「ひぃっ!!」 殺される!と思ったギーシュであったが。 「時々、俺の相手をしろ。……モンスター以下だが、少しはイライラも収まる」 返ってきたのは、予想もできない言葉であった。 一方で、ルイズもまた、愕然としていた。 ただの乱暴者だと思っていた男が、何かとてつもない力を秘めていた。 しかも、この上なく強い。 (あんなのを使い魔にしちゃったのか、私……) 頼れる使い魔だったという喜びよりも、もしあいつが牙をむいたら、という恐怖が、ルイズの胸の中に広がっていく。 ルイズは思わず身震いした。 ――これからどう接すればいいんだろう。 そんな疑問を抱えながら、ルイズは広場を立ち去った浅倉の後を追うのであった。 前ページ次ページ狂蛇の使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/46.html
唇が離れる。 「終わりました」 顔を赤くしながらそう言った。照れているようだが照れるならしなければいいのに…… さっきの言葉を総合すると今のが私を使い魔とやらにするという宣言なのだろう。多分キスはそれの一旦だろう。 なにやら五月蠅くなったと思うとルイズと巻き髪の少女が言い合いをしている。それを先程の男性が宥めはじめた。 どうやら考え込んでいて周りへの注意が疎かになっているようだ。しかし考えが尽きないのだから困ったものだ。 そう考えている感じたことない感覚が身体を駆け抜ける! 「うぐああああああああああああああああああああああああ!」 体を抱きしめる!そうだ!これは熱さだ! 前はこんな感覚は感じなかった!しかし生きていた時の感覚として残っている!間違いない! しかし私にとっては初めてと同じだ!耐えられるわけがない! だが熱はすぐに治まった。どうやらほんの少しの間だったようだ。助かった。 何故こんな思いをしなければならないんだ!本当はターゲットがここに来るんじゃなかったのか!? どうして私なんだ!幸福になりたいだけなのに! 「なにをした!」 「うるさいわね。『使い魔のルーン』を刻んだだけよ」 刻む!?一体何を刻んだというんだ! 「お前に何の権限があっ「あのね?」?」 いきなり話しかけられ勢いが削がれる。 「平民が、貴族にそんな口利いていいと思ってるの?」 「貴族?」 この娘が貴族だというのか?つまりここは外国か?今世襲貴族を認めているのはイギリスやヨーロッパ諸国だ。 ではなぜ会話が成立している?私は日本語で喋っているんだぞ? くそっ!頭が爆発しそうだ! 「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」 中年の男性が踵を返す。そして……宙に浮かぶ。 他の連中も一斉に宙に浮かぶ。そして浮かんだ連中は城に向かって飛んでいく。 「……ハハハ」 笑うしかないというのはこういうことなのだろう。帽子がずれ落ちる。 もう私は理解しようとする意思はなかった。 ここにいるのは私とルイズの二人だけだった。 ルイズはため息をつくと私のほうを向いてくる。 「あんた、なんなよ!」 いきなり怒鳴ってくる。五月蠅いことだ。今の私はもはや混乱はない。とても冷静だ。 さっきのでもう色々吹っ切れたようだ。 「言ったと思うがね。私は吉良吉影。分かったら色々教えてくれないか?いきなり連れてこられて訳がわからないんだよ。」 「ったく!何処の田舎から来たか知らないけど、説明してあげる」 ありがたい。 その本当に色々聴いた。ルイズは本当に何処の田舎ものだという風に私を見ていたが気にしない。 総合するとここはファンタジーだ。ドラゴン、魔法使い、魔法学院、使い魔、召還、契約…… なんてものに巻き込まれてしまったんだ。 それに私は元の場所に戻れないんだそうだ。別の世界と繋ぐ魔法はないらしい。召還したというのにまったく無責任な話しだ。 足に何か当たったので足元を見ると弾丸が入った箱が落ちていた。 慌てて懐に手を当てる。銃の存在を確認できた。よかった。なくなっていないようだ。弾丸が入った箱を手に取る。 辺りは暗くなりかけていた。 その後ルイズに連れられ十二畳ほどの部屋連れてこられた。ルイズの部屋らしい。 ルイズは夜食のパンを食べている。 窓から空を見るととても大きい月が二つあった。まぁ眺めはいいかもしれない。 「このヴァリエール家の三女が、由緒正しい旧い家柄を誇る貴族のわたしが、なんであんたみたいな辺鄙な田舎の平民を使い魔にしなくちゃ いけないの……」 突然口を開いたかと思えば愚痴だ。やれやれ、自分が召還したというのに。器の程度が知れてるな。 私の仕事は洗濯、掃除その他雑用だそうだ。 本来の使い魔の仕事は私では出来ないからな。 このままルイズのそばで与えられた仕事をこなしていけばさらに色々知ることができるだろう。 逃げるのその後だ。危険は少ないほうがいいに決まっている。 「さてと、色々あったから眠くなってきちゃったわ」 そう言うとルイズがあくびをしながら着替え始めた。そのまま下着になる。羞恥心が無いのか? 「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」 そういうとキャミソールにパンティを投げてくる。 そして大き目のネグリジェを頭からかぶる。 ルイズが指を弾くとランプの明かりが消える。 ルイズが布団にもぐりこむと暫らくして寝息が聞こえ始めた。 窓から月を見つつ手袋をはずし左の手の甲を見る。ミミズがのたくった様な模様が刻まれている。 これが『使い魔のルーン』というやつだろう。 手袋を嵌めまた月を見ながら思う。左手が戻ってきった。他人に見えるようになった。 生きているのと同じ感覚が味わえる。生命に触られても何の問題も無い。 結論から言うと吉良吉影は生き返った。 これからはどうやったら『幸福』になれるか考えていこう。 吉良吉影の使い魔としての生活が始まった 4へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6731.html
前ページ次ページ滅殺の使い魔 「ヤスムコト……ユルサヌ……タダ……ヒタスラ……」 横たわる『鬼』の亡骸に、得体の知れない力が集まっていく。 「ヤスムコト……ユルサヌ……タダ……ヒタスラ……」 やがてその力は渦を成し、『鬼』を覆い、そして―― ――その日、その世界から『鬼』が消えた 「五つの力を司るペンタゴン…我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!」 桃色の髪の少女が、また一度詠唱し、杖を振り、また爆発を起こす。 彼女はもう何度もこの作業を繰り返してはいるが、まだ一度も本来の魔法を発動できないでいた。 『使い魔召喚の儀』―― 学院の生徒が、一年から二年へと進級する為の大事な儀式。 と、同時に、生徒一人一人の専門とする属性をきめる、正に今後のメイジとしての人生を左右するものである。 たった今、その『サモン・サーヴァント』の詠唱で失敗し、爆発を起こした少女は、もう何度目かもわからなくなるほど失敗し、その全てを爆発に変えた。 「どうして!」 と、これまたもう何度目かもわからない叫びをあげる。 そして、禿げ頭の教師が少女に告げた。 『次に失敗したら、それで終わり』だと。 周りを行きかう少女を蔑む言葉。 それに負けじと、少女は流れそうになる涙をこらえ、『最後』の呪文を唱えた。 「宇宙の果てのどこかにいる,私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より訴えるわ、我が導きに答えなさい!」 刹那、大爆発。 終わった、と誰もが思った、いや確信した。しかし少女は、まだ諦めては居なかった。 ――その男は、ひたすら強さを求めていた―― あらゆる闘い方をする強者を『殺』し、自分の糧としてきた。 だが、それももう終わった。 『殺』されたのだ、強者に、より強き者たちに。 自らが大阪城で闘い、『殺』した者に、暗黒の力を注入され、不本意な強さを手に入れ、自我は崩壊し、その果ての敗北、そして死。 その男は、それで終わった筈だった。 「あんた、誰?」 煙の中から現れた男に、ルイズは問う。 「ぬぅ……」 男は呻きながら立ち上がった。 やがて煙が晴れ、周りの生徒達や教師にもその姿が見えた。 逆立った赤髪、ボロボロの紫の服、それに屈強な体。 「平民だ!」 「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」 ここぞとばかりにルイズを馬鹿にする生徒達だが、それは禿げ頭の教師によって遮られ、場は静まる。 禿げ頭の教師はそれを確認すると、ルイズと男に歩み寄り、柔和な笑みを浮かべた。 が、言葉を発する前に、ルイズの怒鳴り声が彼を襲った。 「ミスタ・コルベール!再召喚を!」 「それは出来ない。サモン・サーヴァントは神聖な儀式だ。再召喚は認められない」 悲痛な表情でそれを却下するコルベール。 彼自身、ルイズを哀れに思い、同情していたのだが、例外を認めることは出来ない。 「……ここはどこだ」 「っ! ミス・ヴァリエール、下がって!」 男がはじめて言葉を発する。 その言葉に反応するようにコルベールが動いた。 ルイズをかばう様に前に立ち、こともあろうに杖を向けたのである。 コルベール自身、この男に違和感を感じていたものの、やはり平民だと決め付けていた。 それ故に、前代未聞である『人間を召喚』という事態にも危険を感じず、にこやかにしていることが出来たのである。 だが、この男が言葉を発し、コルベールをにらんだ瞬間にコルベールは危険を察知し、戦闘状態になった。 男が殺気を放ったからである。 コルベールとて周りには知られていないが数々の戦闘を経験している。 それゆえ、殺気と言うものには慣れてはいたし、このような状況で、殺気立つのは不思議では無い。 「貴様、何者だ!」 男に対してコルベールが叫ぶ。 コルベールは恐怖していた。 この男は普通ではない。そう本能が叫ぶ。 杖を持つ手が汗ばむ、足が震える。 それを悟られぬように勤めていた。 また、コルベールが叫ぶと同時に、男が構えた。 「くっ……ミス・ヴァリエール、離れるんだ!」 「な、なんでですか!」 「いいから早く!」 ルイズをこの場から下がったことを確認したコルベールは、再び男を睨む。 戦うしか無い。 正直勝てる気はしないが、絶対に生徒を傷つけさせはしないと、必死で自分を奮い立たせていた。 それに対し、男は構えて微動だにせず、コルベールを睨んでいた。 コルベールは決死の覚悟でバックステップで距離をとり、魔法を放つ。 「ファイヤーボール!」 杖の先から放たれた炎の球は、一直線に男へと飛んで行き、男の眼前へと迫る。 だが。 「ふんっ!」 男は飛来した炎の球を、なんと腕を少し動かしただけで手の甲で弾いたのだ。 弾かれた炎はその場で消え、跡形も無くなった。 「なっ!?」 驚きを隠せないコルベール。 対して男は、自ら攻撃をする所か、構えを解いてしまう。 騒然とする場。 平民が魔法を素手で弾いたのだから、驚くのも無理は無い。 「ここはどこだ」 男は再びコルベールに問う。 構えを解いたことは、戦う意思が無いからなのか、それとも油断させようとわざとそうしているのか、コルベールには皆目見当がつかなかった。 「あ、あんた、何者よ!?」 いつのまにか戻ってきていたルイズが、男に背後から問いかける。 男はルイズに視線をやると、こう言った。 「我こそ、拳を極めし者」 その背中に、『神人』の文字を浮かばせて―― 前ページ次ページ滅殺の使い魔